東方人外録 (きらりんぱ三上)
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天馬、神の不手際で死す

小説は始めて書きます、この小説はいろいろと僕の妄想がはいっております


終わりの始まり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある少年が今日もニート生活をしている。

毎日パソコンを弄りネトゲをしタバコを吸ってはまた同じ作業に戻る。

だらだらと生きてだらだらとその日を暮らす、典型的な親の脛かじり。

ついに親にも見放され毎月仕送りの金を送ってもらういつも通りの生活

だがある日事は訪れる。

 

「ついに壊れたか・・・・」

 

少年はうんともすんともいわないパソコンを見つめながら呟く。

 

「いやー時々重い時があったがこうなるとはな・・・」

 

「今日はネトゲのイベントで経験値二倍なんだけどなぁ、あーだる」

 

立ち上がり一言呟く。

自分がやっているネットゲームでのこういうイベントは少ないのでここぞという時にかなりパソコンを使っていたからか。

 

「つったっててもしょうがない、飲み物とタバコでも買いにきますか」

 

少し苛つきを隠せないが今は昼間で暖かい気温、外に出れば気分も良くなるだろう。あちこちに物が散乱している部屋を出て外へ繰り出す。

 

「おばちゃんマルボロのアイスブラストとこれね」

 

歩いて五分の酒屋と駄菓子屋が混ざったような店に着き、ジュースとタバコをレジの近くに置いて奥の部屋から出てきた店主に軽い挨拶をして、何時もの会話。

 

「あいよ、440円と115円ね」

「560円で」

「お釣り5円ね」

「はいよまたくるよ」

「毎度ありー」

 

店を出て少し歩いたところに公園があるので一服でもするかと歩きながら公園のベンチに座りタバコに火をつける、公園と言っても遊具が見当たらないためか子供がいない、ジジババ共のゲートボール大会位だろうか大勢集まるのは。

 

 

「いやぁしかしあの店飲み物が115円て微妙だよな120円でいいよもう」

 

微妙な値下げ程面倒臭い物はない、ましてやたった5円、財布の中に5円があるのは珍しい為毎回10円払ってるのだが5円下げるならもう5円値下げしてもらいたいものだ。あ、そうだ。ゲーム友達にしばらくログイン出来ないことを報告するのを忘れていた。

 

「メールでフレンドにパソコン壊れたこと報告するかーあ、あと銀行いって金おろしてPCパーツかわねぇとなぁ」

 

ベンチから立ち上がり電気店へと歩みを進めながらパソコンの故障具合を想像する、たしかいきなりブラックアウトして電源がつかなくなったんだよな・・・するとなると。

 

「多分マザボ辺りが逝かれたんだな、この際PC新調するか」

 

途中銀行に寄り、数少ない貯金の7万円を下ろす。

働いてはいないのだが親の仕送りが少ないためこれでも結構貯金はしてあったと思ったんだが予想以上に少なかった。

 

「くそぉ、あと五万しか貯金がねぇ家賃払えるかなぁ」

 

大通りに差し掛かり、電器店に向かう道をひたすら歩く。

ふと横の道路を見てみると、少女が母親らしき人に手を振り一目散に寄って行く

 

「俺以外皆幸せそうだねぇ・・・ん?車きてるけど大丈夫なんかね?」

 

すると母親らしき人物は大声を出しながら来るなと言っている、目の前で事故が起きそうな予感が半端ない。

 

「あらら、これは・・・・助けたらいい系?でも追いつくかな」

 

と言いながら最大限の力を振り絞り少女に追いつき思い切り歩道側に投げ出す

 

「いやぁ、間に合って良かっただけどこれ俺が絶対に引かれるなぁ」

 

助けてもらった代わりに謝礼として金銭かなにかを頂きたかったんだが・・・まぁこれも運命というものなのか、そう思った瞬間に速度60kmほどの鉄の塊が急ブレーキをしながら此方にめがけ俺は吹っ飛んだ。

 

 

 

目を開けると俺は真っ白な空間にいた。

いやホント、真っ白。宙に浮いているような気もしないではないが。

 

 

「なんだ?天国か?ここは、いや俺の場合地獄だな」

 

自分の人生を数秒を考え、結論としては地獄行き確定かリーチだろうか。

しかし地獄というのは想像してたのとは全く違うな。

 

「ここは天国でも地獄でもない、君にもう一度チャンスを与える場だ」

「うおっ」

 

突如目の前にスゥッといきなり現れ、天使の羽の様な物が生えたおっさんが出てくる。やべぇギャップに笑えてくる。

 

「なんだあんたは?死神か?神か?チャンスってなんだ?」

「天使の部類だな、チャンスと言うのはだな・・・」

 

天使・・・天使ということは天の使いか、いや文字通り天使っぽいわ。

 

「へぇー天使ということは神はいるんだな、俺無神論者だから信じて無かったわ」

 

論理したことは無いのだがネット環境さえあれば通話が出来るツールで良くキリストの話やら仏教の話をしたもんだが全て馬鹿にしたような返答をするから論理でいいのかこれ。

 

「現にここにいるんだから信じとけ、それでチャンスというのはだな・・・」

「天使とかゲームでしか見たことなかったわ、いやー感激感激」

 

なんだっけ?二丁拳銃ででっかい剣を持った男が天使共を殺していくというゲームを思い出してしまった、やつらどう見ても悪魔的な何かに近い造形をしているのに天使なんだよなぁ。

 

「緊張感ないなお前、いいか?話を聞けチャンスというのはだな・・・」

 

ん?違うな、この展開なんかのアニメで見たことがあるぞ・・・たしか主人公は他の世界に転生していたなそういえば。

 

「いいよいいよ別に言わなくてどうせ転生か違う世界に一から飛ばされるんだろ?」

「そういうことになるがお前は話を聞け、まぁまず転生だがこれはできない」

「何でだよー女の子助けたんだぜぇ?それくらいいいだろぅよぉー。」

「助けるならメリットを持とうとするんじゃぁない、それとある事情でな、お前はいろいろと罪が多すぎる。」

「まじかーじゃぁできねぇな出来れば転生したかったんだが。」

「転生は無理だがこの世界とは違う世界で生きることはできるぞ」

 

転生はできないのにほかの世界で生きることが出来るとは・・・何か矛盾している様な気がしてならないがこの天使とかいうおっさんの機嫌を損ねようとすると最悪じゃぁ地獄行きでってなるのも嫌だしな、なぁなぁで流すか。

 

「なるほどー、じゃぁ東方の世界がいいな女の子一杯いるし」

「即決すぎないか?もっと考えないのか?」

「んーめんどくせぇし東方の世界ならちょこっと知ってるしな、あんたも早い方がいいだろ?」

 

考えさせず、即決できまった方が良い。東方の世界ならば面白そうだしな。

 

「まぁな、まぁその世界にいくあたり、その地で順応するために能力を与えるんだが。」

「能力?たしか程度の能力だっけ?」

「そうだな、その世界には人を殺す輩がいるしなある程度生きたいだろ?」

「ふーむ、迷うねぇ一個だけなのかい能力は?」

「いやお前はこっちの失態で死んだんだ、二個くらいはいいぞ」

「失態で俺は死んだのか、まぁいいけどねあのまま生きていても意味ないし。」

 

あのまま生きていたとしても毎日ゲームをやる生活だからな、生きる意味がないというのは本当だ。親だって俺が死んだ方が楽だろうし生命保険掛けてあれば降りると思うしな、あるいみ最高の親孝行じゃない?

 

「それでいいのか、まぁそれでいいんだろうなお前はどんな能力が欲しい?」

「そうだなーPROTOTYPEの主人公みたいな能力と、なんでも創造できる能力がいいなぁ」

 

前から思っていたがあの主人公の能力があれば面白いし強い、まぁそれ以外思いつかねぇし二個めに至ってはもうなんでもいいや的な投げやり。

 

「欲張りすぎだろそれ、てかそれチート級だろ」

「だって強い方がいいじゃん? もてたいじゃん?」

 

女の子にモテたいというのは男の性、東方なら可愛い女の子達がよみどりみどりだぜ?最高じゃねぇか。

 

「ふぅむ・・・・まぁいいだろうじゃぁそれで決まりな」

「じゃぁさっさとその世界に行かせておくれ。」

「わかった、じゃぁ飛ばすぞ?」

「はいよ、じゃぁな天使さんよまた会えたら会おうぜ」

「俺はもう会いたくないけどな、最後に聞くがお前の名前は?」

 

俺の足が少しずつ消えていくのが見える、たぶんもうそろそろ他の世界に行くのだろう、しかし親から譲り受けたこの名前・・・まぁいいか。最後だしな。

 

「俺の名前か?・・・・俺の名前はだな・・・・小鳥遊天馬 だ!あばよ!」

 

シュン!と音と共に天馬は白い空間から消えた。

 

天使「いったな・・・さて疲れたな、いつまで生きれるかねあいつは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが東方の世界か、頑張って新しい人生を楽しむかな」

 

辺り一面森のところに転送された。

まずは与えられた能力を試して見るためにいろいろと試行錯誤する

 

「まずは創造の能力からだな、なんでも創造出来るのかね?とりあえずタバコ出してみるか」

 

すこしタバコのことを想像し出ろ、と念じる

すると目の前に見慣れた銘柄の煙草がポンッと出てきた。

なにこれめっちゃ便利。

 

「おー出てきた出てきた便利だなぁこれ、あとはライターもだな」

 

ライターを創造し見慣れた手つきで火をつける

うぅむ、自分で創造した煙草を吸うとは・・・なかなかに新鮮?いや、複雑な気分。

 

「いやぁー吸い慣れた味だなぁ、メンソールもっと強くしようかな次は」

 

メンソール以外の煙草はすこし吸いにくいんだよね、喉に引っかかる感じ。

適当に煙草を吸いながら森を歩いていると近代的な大きな建物を見つける、おおう、なんか未来に来た感じ。

 

「ん?なんだあれ?でかいな・・・でもここからじゃ遠いな・・・走るか!」

 

そう呟いて足に力を入れ、ダッシュをすると時速200kmくらいの速度で走り出した。

 

「うお!?早い!早すぎる!!ちょ・・・・木にぶつかる!」

 

思い切り木にぶつかる音と共に木にぶつかった様な・・・気がした

 

「・・・・無事だな、どうなってやがる・・・思い切り足に力込めて走ったらめちゃくちゃ早くなったな」

 

服に付いた砂埃と木の破片を払うと、あの天使のおっさんから聞いた言葉を思い出す。

 

「あ、そういえばもう一つ能力もらったんだっけ」

 

その事に気づき、目を閉じて頭に浮かんだ文字を読む。

目を閉じて俺の能力と思うとゆっくりと文字が見えるようになってきた。

 

「ありとあらゆる物を創造する程度の能力?と人外になれる程度の能力???」

 

人外・・・あの主人公の・・・。

 

「なるほど、人外かぁ人外っていうより化け物だよなぁこれ」

 

たしかゲームだとNewGameからでも5mは軽く飛んでいたよな・・・しかし物すごい早く走ったしなぁ・・・強くてニューゲームみたいな感じに近いなこれ。

 

「じゃぁ思いっきりジャンプすればもっと早いな!・・・・・それ!!!」

 

足に思い切り力を込め地を斜め上方向に蹴る。

するとまるで地上と空が反対になったかのように重力が消えていく。

 

「うぉお、怖っ!高ぇ!高すぎる!!!落ちる!」

 

軽く受身をとりながら音を立てて地面に着陸すると前の方向から声がした。

 

「なんだ!?なにか音がしたぞ!妖怪か!?」

 

前を見るとすこし離れているところに人が見え、重厚な鎧を着た男が近寄り見にくる、あ・・・これは見つかったらいけない感じだったのか?しくった。

 

「あ・・・・こんにちは・・・・」

「止まれ!貴様何者だ! 妖怪か!?」

「あ、いや!人間です!人間なんです!」

「なぜ人間がここにいる! 」

「散歩にでて森の空気でも吸おうかと思いまして・・・・」

「怪しいやつだな!取り敢えず連行するぞ!」

「あ、はいわかりました・・・・」

 

勢いのままに連行されることになったな・・・まぁ中に入れるっぽいし事情を説明すればいいだろう。

 

飛んだからかかなり近代的な建物が目の前にあり10m程歩くとかなりデカイ門がみえてくる。

 

でかい門の中に入るとやはり外から見える通り近未来的な建物があり驚愕した

少し歩くと周りが俺を見てくるが気にせず歩き、施設みたいなところに着くやいなや「入れ」といわれたので言う通りにしていると。

 

 

「あら、なにかあったのかしら?」

 

と艶やかな声が後ろから聞こえたので振り向くと赤と青のかなり奇抜な服装と長いポニーテール&三つ編みの姿。一瞬であの有名な薬氏と出会う。

 

「(うお!永琳だよなあれ!かわぇえ)」

「これはこれは八意殿!門の外に怪しい者をひっ捉えた故穢れ検査機で調べるところです!」

「そうですか、わかりました」

 

本当に東方プロジェクトの世界にきてしまったんだな俺は・・・はっ!?やばいやばい、早く何か関係を持たねばやばいかもしれん!永琳が離れて行ってしまう!

 

「(あぁ!!行ってしまう・・・今声を掛けないとめんどくさいことになってしまいそうだ!)」

「助けてえーりん!!いや助けてください!」

「えっ!?」

 

永琳が驚愕の顔を見せている、あ・・・そういえば俺は知っていても永琳は俺の事を微塵も知らないんだった、墓穴ッた!!

 

「貴様!なぜ八意殿の名前を知っておる!」

「えと!それはその!あの!えーーーと!」

 

鎧をきたおっさんがその事について追求してくるがどう答えを出せばいいものか・・・まさか別の世界から来て永琳のことをしっているなんて行ったならば即連れて行かれてしまう。

 

何か無いか・・・何かこのおっさん上手く騙せる方法・・・を考えていると永琳が声を掛けてきた。

 

「そこの貴方ちょっと来なさい」

「八意殿!?此奴は穢れているかも知れないのですぞ!万一危害など加えたら・・・!」

 

失礼な、お風呂は一日一回ははいっとるわい!汚れだなんてあるわけないだろう!え?その汚れじゃない?

 

「あら私がこんな奴より弱く見えるのかしら?」

「そういうわけでは無いですが!」

 

こんなやつ・・・まぁ身長低いし筋肉もないけどこんなやつっていうのは少々傷つくぜ。

 

「ならいいじゃない、この人には話しを聞いてあとで私が連れていくわ」

「ふぅむ・・・八意殿がそういうのならば・・・ですが気をつけてくだされ」

「ありがと、そういうわけだから貴方はこっちに来なさい」

 

 

どうやら鎧のおっさんは永琳には頭が上がらないらしい、俺も心が折れそうだ。

 

「あ、はい、わかりました」

「貴様、なにかしでかしたら容赦しないからな」

「うるせぇぶっころすぞ・・・」

「何か言ったか!?」

「いいえ!なんでもございません!」

 

 

危ない危ない・・・おっさんは地獄耳なのか?ボソボソっと言っただけで聞こえてたぞ。おっさんはグチグチ言いながら、腕の拘束を取ってくれた、いやぁ縛られるのは嫌いなんだよね。

 

永琳はその俺の一部始終を見てすこし笑いながら部屋の前に着いて、こっちよ、と言いながら永琳は部屋に入っていった。

 

「おじゃましま~す、先程は助けていただきありがとうございましたっと」

「いいのよ、それより貴方なんで私の名前を知っているの?」

 

そういいながら永琳がそこの椅子に座るように促す。

はぁ~やっと休憩ができる、ありがたい。

 

「いやぁ、実はですねぇ前に永琳さんに会ったことがありまして一言二言くらいの挨拶でしたが」

「そうなの?まったく覚えてないわねぇ・・・貴方の名前は?」

「申し遅れましたが私、小鳥遊天馬と申します」

「うーん・・・知らないわねぇ・・・なんで拘束されていたの?」

「いやぁちょっとした散歩のつもりだったんですがいつのまにか出ていたようで」

「ふーん・・・・」

 

 

やばい・・・怪しんでいるな確実に、とりあえず嘘をつき通さねばいかんなこれ。

 

「お茶でも飲むかしら?粗茶だけど」

「いえいえ遠慮させて頂きます自分で出せるので」

「え?どういうことかしら?」

「こういうことですよ」

 

ジュースを創造して蓋を開けて飲む、ううむこの柑橘系オレンジの少し炭酸がはいったジュース・・・うまぃな。

 

「便利ねぇー」

「まぁ便利ですねぇ、あ、タバコ吸ってもいいですかね?」

「タバコって何よ?」

「まぁ一種の嗜好品です」

「あっそ いいわよ別に」

「では遠慮なく」

 

永琳の許可をもらったので、煙草を創造する そしてついでに携帯灰皿とライターを取り出しタバコに火をつける。

 

「スハァー いやぁーメンソールきついすなぁ」

「なにその白い煙吸ったり吐いたりしてるけど?」

「お一ついかがです?」

 

そういうと永琳にタバコを渡す

 

「この煙を肺にいれて味わうんですよ」

「へぇー・・・・!!!ケホ!!ゴホ!! なによこれ!?よく吸えるわね!!」

「まぁ慣れですよ慣れ吸い続けてると美味しく感じますよ」

「そういうものなのね・・・私は遠慮しとくわ・・・」

 

あら残念、慣れると美味しい・・・?美味しいんだなぁ。

 

「それでですね永琳さん」

「はい?」

「私は家と呼べるものがありませんので、よければですが雨風凌げる場所はありませんかね?」

「あら?そうなの?だったらここで働きながら住み込んでもいいのよ?」

「いいのですか?迷惑になりませんかね?」

「あなた悪い人でもなさそうだしその能力材料集めに最適だわぁ」

 

たぶん研究材料のことだろう、まぁなんでも創造できるってのは最高だろうしな、社会貢献?できるのは嬉しいが・・・・。

 

「ありがとうございます、ではどこで今日は寝ればいいですかね?」

「ここでいいじゃない?他に部屋空いてないし私の部屋だけど」

「え」

「え?」

「いや永琳さんが良ければいいんですけれど女の人の部屋に男が居つくというのも・・・」

「いいじゃない別に私気にしないし」

「僕がきにするんですよ・・・・」

「へぇ、それはなぜかしら?」

 

永琳は俺の頭の中を見たかのようにニヤニヤしながら聞いてくる、くそうわかってやがるなこの人・・・。

 

「いや、永琳さんはお美しいですし見事なプロポーションをしておるので・・・」

「あら?そうなの、ありがと」

「私も一応男ですからあのーそのー」

「まぁまぁ気にしなきゃいいじゃない」

「まぁ・・・永琳さんがそれでいいのであればいいんですけどね」

「じゃぁそういうことでよろしくね?天馬くん」

「よろしくお願いします永琳さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして俺の東方の世界は始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この小説をお読みになってありがとうござます

 

 

 

 

 

 

 

 




批評 感想などあればうれしいです

批評のところは直しながら書いて行きますので以後よろしくおねがいします


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天馬、輝夜と遊ぶ

ついに天馬が行動・・・・・するのか・・・?


変な施設から数日立った日

 

「いやー永琳は可愛いし毎日楽しいし能力で楽はできるし最高だな」

と独り言を言いながらタバコを吸う、何時もの毎日

 

「でもこの都市のゲームはだめだなつまらん、登場人物が可愛くない永琳見てる方がましだ」

 

そう言っていると永琳が部屋に入ってくる

 

「天馬、仕事よ」

「あいあいさー」

 

一昨日ほど前に敬語をやめろといわれた天馬は敬語をやめ気さくに話している

 

天馬は吸いかけのタバコを灰皿にぎゅっと押し当て火種が残らないように消す

 

「天馬タバコ吸うのはいいけど、換気してくれないかしら臭いわよ」

「すまない永琳次から電子タバコでもすってるよ」

 

「わかったならよし」

 

「で?今日は何の仕事だい?材料創造かい??」

「いや、今日は違うわよ」

「ほう、ではどんな仕事だい?」

「子守みたいなものよ、いまからキッズルームにいくのよ」

「あぁ新しく作った部屋かい、子供は苦手なんだよなぁ」

「あなたも十分子供よ」

「それはいわんでくれ」

 

数分ほど施設の中を歩くと中から女の子の声がする

 

「着いたわよ、あとは頑張ってね」

「え・・・ちょ・・・そんだけ?」

 

「なにか必要なの?」

「いや必要だろう名前とか好きなものとかいろいろ」

「名前は輝夜よ、好きなものは甘いもの以上」

 

そういうと永琳はどっかいってしまった

 

「輝夜か・・・たしか黒髪少女のやつかどんだけ可愛いんだろうな」

 

そういいながら天馬はドアを開ける

 

「ういーっす」

「こんにちは、お兄さんはだれ?」

「(うお・・・か・・・かわいい・・・俺はロリコンではないが可愛いと思うほど可愛い)」

「どうしたの?」

「いやなんでもない天馬ってもんだよろしく、輝夜の子守役だよ」

「えーりんたら!また私を子供扱いして!私は赤ちゃんじゃないのよ!」

「まぁまぁそう怒るな、永琳も忙しいんだ」

「それとこれとは話が別!でもまぁいいわ」

「そうかそうか輝夜は大人扱いして欲しいのか」

「 そりゃぁそうよ!私は大人なんだから!」

 

輝夜の小さい頃はチルノと同じくらいの立ち位置なのかね?

 

「じゃぁ大人扱いしてやるよ、コーヒーでも飲むか?ブラックだけど」

「私は大人なんだからブラックでも何でも飲めるわよ!こーひーってなに?」

「んー大人の飲み物かな? じゃぁコーヒーつくるね」

 

そういうと天馬の目の前にコーヒーがポン!とでてきた

 

「はいどうぞ冷ましてからのんだほうがいいよ熱いからね」

「これがこーひー? いい匂いね!」

 

そういうと輝夜はコーヒーをふうふうと冷ましている

 

「(かわいいなぁ・・・同世代くらいになったらどんだけかわいいんだろうなぁ)」

 

そう思ってると冷まし終えたのか輝夜はコーヒーをクピっと飲んだ

 

「苦いぃぃぃ」

 

輝夜は涙目になりながら叫んでいる

 

「ほら苦い、輝夜はまだ子供だよ」

 

創造したティッシュで口の周りを吹きながらそう言った

 

「あんただって子供じゃない!!」

「なんだ八つ当たりか、 でもまぁそうだなぁ俺は子供だ」

「え?」

 

反論されると思ったのか輝夜は意外という感じで見てきた

 

「子供はいいぞぉ好きなことしても怒られないし我儘いっても変に見られないからな」

「ふぅん・・・・そんなもんなの?」

「そんなものだよ」

「じゃぁ大人になるのやめようかなぁ」

「そうしとけそうしとけそれが一番だよ、うん」

 

輝夜は嬉しそうだ

 

「じゃぁ輝夜俺と一緒にお話しているか遊ぶかどっちがいい?」

「お話したい!いろいろ聞きたいし!」

「そうかそうかじゃぁ椅子に座ろうか」

 

そういいながら俺は椅子にすわった

 

と思ったら輝夜は俺の膝に座ってきた

 

「輝夜、椅子はあっちにもあるぞ?」

「ここがいいの!よく聞こえるしよく見えるでしょ!」

「そうだな、まぁどっちでもいいか」

「てんまののーりょくってなに?さっきこーひー?だしてたよね!」

「俺の能力か?ありとあらゆる物を創造できる程度の能力だよ」

「何それすごい!じゃぁじゃぁえーりんだしてみて!」

「なかなかに怖いこというなぁ 生き物は創造できないんだよ」

「なんだざんねんねー」

 

一応はできるのだが意識を持たないというか魂そのもの宿してないものが創造される

 

そんなものは輝夜にはみせられないのでここは出来ないと言っておくのがいいだろう

 

「輝夜の能力はなんだい?」

 

「私ののーりょくはねー!えいえんとしゅゆを操る程度ののーりょくよ!」

 

えっへん!という感じに胸をはる

 

「永遠と須臾ねぇ・・・・すごいなぁ輝夜は見直した!」

「でしょでしょー?」

 

そんなこと喋りながら二時間後

 

「すぅ・・・・すぅ・・・・」

「おやおや寝ちゃったよこの子ご丁寧に服を掴んでらっしゃる」

 

俺も寝ちゃおうかな?そう思いながらタバコを取り出そうとするが気が引けた

 

輝夜の寝顔を見ると吸う気になれない

 

「あータバコすいてー・・・・でも眠いー・・・よし寝ちゃお」

 

そういうと天馬は背もたれに背をつきゆっくりと目を閉じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てん・・・・て・・ま・・・天馬!

 

「うお!!なんだよ永琳か・・・・驚かすな

「しょうがないじゃない起きないんだもの」

「それは済まんかったね、そういえば輝夜は?」

「ベッドに移したわよもう」

「そうかそうかそれはよかった風邪引くと困るしな」

「あなたも早く部屋に戻って寝なさい」

「一緒に寝るかい?永琳?」」

 

永琳は少し顔を赤らめたあと

 

「何言ってんのよもう少し大人になってから言いなさいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供扱いってひどい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうやって輝夜の世話をしたりしながら生活して早1年

 

 

永琳からあることを告げられる

 

「天馬 月に移住するわよ」

「・・・・?それはなぜだい? 」

「穢れがね、ここにまで来たのよね。だから月夜見様が月に移住することを決めたの」

「そうか・・・・」

「勿論天馬も来るわよね?一応聞くけど」

「・・・・・・」

「天馬?」

「永琳、俺は月には行かないよ・・・」

「ッ!貴方ならそういうと思ったわ、でもどうしてなの?」

「月に行ったらつまらないじゃないか」

「それでも行った方がいいわよ?穢れが襲うわよ貴方を」

「永琳、俺は穢れても大丈夫だよ」

「・・・・・どういうこと?」

「永琳、俺はねもう一つ能力があるんだよ隠していたけどね」

「なによそれ聞いてないわ・・・!」

「ごめんね、怖がらせないために隠していたんだ」

「どんな能力なのよ?」

「それはね、人外になれる程度の能力だよ、だから死なないんだ。」

「まさか2つも能力があるとはね、しかも人外ねぇ」

「そっ、そういうことだから俺は地上に残るよ」

「私たちのことはどうでもいいっていうの?」

「それはどういう意味だい?永琳」

「私もそうだけど、輝夜も月に行くのよ?」

「そうか・・・子守役がいなくなるな、済まない・・・・」

「それだけなの?後は何もないの?」

「何が言いたいんだい?」

「私はね?あなたがいなくなると、とても寂しいわ。」

「あぁ、俺も寂しいよ永琳」

「私とあなた一生会えなくなるのよ?それでもいいの?」

「それはない、僕たちは絶対にまた会うよ?」

「なんでそう言い切れるのよ?」

「そういう運命だからさ」

「運命?天馬、私はね・・・絶対に会えるという確証がないと嫌なのよ」

「俺が証明するよ 俺が確証だ 俺たちは絶対に会える」

「そんなの信じられないわ」

「それはなぜだい?」

「あなたは私に隠し事をしていた、そんな人を信じると思う?」

「すまない永琳、 それは永琳を怖がらせないため隠したんだよ」

「そんなの信じられないわ、だからあなたも一緒に行くのよ」

 

「それは無理なんだ永琳、わかってくれ」

「どうして!?どうしてそんなに地上に残りたいの!?」

「永琳、俺は変化の起こらない毎日なんて暮らしたくないんだよ」

「なんで!?あなた毎日同じような暮らしをしていたじゃない!!」

「 たはは・・・・そうやって言われるとなぁ・・・・」

「もう勝手にしなさい!!着たくなければこなければいいわ!!」

「ごめんよ永琳、本当にすまない・・・・」

 

そういうと永琳は黙って行ってしまった

 

「あはは・・・つらいなぁ別れというものは・・・」

 

そういいながら天馬は目に手をかけこぼれ落ちる涙を拭った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月移住最終日

 

 

 

 

 

 

 

「永琳、いってらっしゃいあっちでも元気で」

「・・・・・・・・・・・」

「あはは、これはとことん嫌われたなぁ。」

 

そう言いながら天馬は笑う

 

出発する直後にに永琳は何かを天馬にいった

 

天馬は出発したロケットを見ながらこう呟く

 

「また、絶対に会いましょうね・・・・か・・・」

 

もちろんさ絶対に会ってやる、たとえ会えなくても無理矢理会いに行ってみせる。

 

そう思いを込めながらロケットを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見送ったあとになにかが落ちてきた

 

「ん?なんだあれ?」

 

 

 

 

 

その落ちてきた物が地上についた時大爆発をした

 

 

 

 

「ぐおぉ!!何が起こったんだ・・・・」

 

周りを見てみると辺りは焼け野原しかない

 

あの落ちてきた物は核だったのだ

 

「くそ、物陰にいなければ消滅していたところだった・・・・」

 

死なないといっても消滅までさせられたら生きれない

 

天馬はため息をついてタバコを取り出す、そして一息つくとこうつぶやいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからなん億年も退屈になるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから1億か2億年たった もう数えるほど覚えていない

 

「いやぁ今日もいい天気だ」

 

天馬は長い放浪の旅をしていた

 

「こんな日はどっか遠くに行くのが一番だね!」

 

そういいながら天馬はどっか歩みを進める

 

5時間ほど歩いていると大きな手入れされた道にでる

 

「お、街道かな? このまま沿って行けば大きな街にいけそうだな」

 

そのみちの途中茶菓子屋があったので立ち寄って見る

 

「いらっしゃい!」

「店主かい?少し聞きたいことがあるんだが」

「何でも聞いてくれ!あとおすすめの当店自慢の団子を食って行ってくだされ」

「ちゃっかりしてるねえ、じゃあその団子3つほどいただけるかな?」

「あいよ!少しお待ちくだされ」

 

少し待つと団子三つ運ばれてくる

 

「それで店主、聞きたいことがあるのだが」

 

運ばれた団子を頬張りながら言う うまい

 

「なんですかい?」

「この先に村か待ちがあるのかい?」

「いいや、旦那あるのは国でさぁ」

「国?随分でかいんだねぇ名前はなんていうんだい?」

「洩矢の王国っていうんでさぁ」

「ほうほう、中には入れるのかい?」

「いんや、 商人か貢ぎ物をもってかないと入れないですぜ」

「なるほど、店主ありがとな。お代はここにおいとくよあとは情報提供料だ」

「こんなにいいんですかい?」

「いいよいいよ取っておけ」

「ではお言葉に甘えて」

「ではまたくるよ」

「はい、またおこしくだせぇ」

 

そう交わすと天馬は歩みを進める

 

それはそうと洩矢か、諏訪子のところだな

 

「さて、貢物か・・・・なにを貢げばいいんだ? ジャンプして中に入っちゃおうかね?

 

そう考えながら歩いていると王国らしきものが見えてくる

 

「うーーんなにを貢げばいいんだぁ?とりあえず金でも出しておくかね?」

 

そういうと金の延べ棒5本ほど創造し袋に包む

 

そして門の前にいくと

 

「止まれ、なにしにここに来た」

 

門番が話しかけてきた

 

「いやいや、洩矢の国がどれほど大きいのかと思いまして」

 

「商人か?」

 

「いやいやそんなものではございませんが手土産を持ってきまして」

 

金の延べ棒がはいっている袋を開けて見せる

 

「ふむ・・・通れ、手土産はそこにおいておけ後で諏訪子様に送り届ける」

「諏訪子・・・というとここの国の神ですかね?」

「そうだ、それがどうした」

「その諏訪子様一目見させていただきたいのですが」

「だめだ貴様みたいな怪しいものは合わせるわけにはいかん」

「まぁまぁそう言わずにこれでどうでしょう?」

 

門番にこっそり金の延べ棒二本を手渡す

 

「・・・・まぁいいだろう、とりあえずはもらっておこう」

 

現金な奴だ

 

「ありがとうございます、では送り届ける時に同伴させて貰っても宜しいですかね?」

「しょうがないな一回きりだぞ、もうそろそろ送り届ける時間だついて来い」

「分かりました。 」

 

門番の男についていくと厩についた

 

「この馬の後ろについている馬車に乗れ」

「分りました、あとはどうすればいいので?」

「乗っていればいい貢物を運ぶ時に俺も乗るからな」

「なるほどなるほど」

 

30分程たち言われたとおり馬車に乗っていると門番が乗り込んできた

 

「そろそろ出発するぞ 一時間ほどで着くはずだからな」

「わかりました」

 

40分程山に向かっているところでタバコが吸いたくなり取り出す

 

「ふぅー 」

 

鼻から煙を出しくつろいでいると門番の男から声をかけられる

 

「なんだそれは?」

「煙管みたいなものです煙管とは違って肺にいれるのですよ」

「ほう、一本頂いてもよろしいか?」

「どうぞどうぞ」

 

そういいながらタバコを手渡す

 

「すぅー・・・・はぁー なかなかだな喉がスースーするぞ」

「手製故吸いやすくなっております」

「ふーむいいなこれこの国で商いすれば売れるぞ」

 

お? それはいい考えだな

 

「そんなにいいですかね?すこし考えてみますね」

 

そんなことをしている間に目的地にたどり着いた でかい神社?がある

 

門番が馬車から降りこう告げる

 

「洩矢様本日の貢物を持ってきました故お納めください」

 

するとどこからともなく声がする

 

【よかろう、置いていけついでにその馬車の中にいる男も置いていけ】

 

「は!?でも此奴は貢物を見届けるために・・・・」

 

【いいから置いていけ】

 

「わかりました・・・ということだそこのお主降りろ」

「はい、お疲れ様でした良かったら帰りの道中吸ってらしてください」

 

そういいながらタバコ一箱を手渡す

 

感謝のことばを延べ門番の男は帰って行った

 

「ずっと見ていたんだろう?洩矢よ」

 

すると目の前に小さな女の子が現れる。個性的な帽子をかぶっている

 

「 貴様何者だ人間ではないな?」

「あぁそうだな、人間ではないな」

「妖怪か?はたまたこの国の信仰を奪い取ろうとする神か?」

「いやいやそういうものでもござらんよ」

「じゃぁなんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人外だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、洩矢の神と対峙する

諏訪子さん強すぎ


何だってんだ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洩矢の王国に入り諏訪子と対峙する

 

「人外?ふざけてるのか貴様?」

 

「いやいやふざけてなんかおりませんよ」

 

「貴様のここに来た理由はなんだ?」

 

「一目あんたを見たかっただけですよ」

 

「そんな理由かい?」

 

「そんな理由ですよ」

 

「即刻立ち去れ、お前は危害を及ぼさねかねない」

 

「来て早々帰れはないでしょうよ、少しくらいいいではないですか」

 

「駄目だ何者かわからんやつをこの国にいさせてたまるか」

 

「では、無理にでも観光させてもらいますよ」

 

「ほう、この洩矢神に楯突くというのか。」

 

「そういうことになりますねぇ」

 

 

 

天馬が構える

 

 

 

「この洩矢に楯突いたことを後悔しな!!」

 

「あんたのほうこそな!」

 

槍を創造しそれを思いっ切り諏訪子に投げつける

 

「遅いねぇ!簡単に避けれちゃうよ!」

 

「(肉弾戦で行くしかないようだな)」

 

天馬が諏訪子に200kmほどで近づく

 

「なっ!!!」

 

「これなら効くだろう!?」

 

動揺して隙のできた諏訪子の足を掴み地上に投げる

 

するとごう音と共に落ちた諏訪子の周りは砂埃でみえなくなる

 

「これで気絶していてくれればいいんだがね」

 

諏訪子落ちた方をずっと見ながらそうつぶやく

 

「いやぁ強いねぇ!びっくりしちゃったよ!じゃぁ次はこっちから行かせてもらうよ!」

 

開宴「二拝二拍一拝」

 

 

諏訪子がそう言うと水色の妖力弾と赤いレーザーがこちらに向かって当てようとしている

 

「あれじゃあんまり近づけねぇな、当たったら痛そうだ」

 

天馬は避けながら思考をする

 

「(肉弾戦に持ち込み妖力弾をうたせなければいいっぽいな近接苦手っぽいし)」

 

「ほらほら考えてる暇があるならちゃんと避けな!」

 

突如天馬に諏訪子の妖力弾が被弾する

 

「ッ!いててて いたいいたい、糞ったれめ!これでどうだ!」

 

諏訪子に埋まっていた木を引き抜きそれを投げる

 

諏訪子はあまりの馬鹿力に驚愕し大幅によける

 

天馬はその隙に諏訪子に物凄い早さで近づき 拳に精一杯力を込め諏訪子の腹をなぐる

 

「ぐっ!その馬鹿力伊達じゃないね!」

 

「そうかい!ありがとよ!」

 

諏訪子の腹を殴ったあとよろめいた諏訪子に踵落しを決める

 

「ぐあっ!痛いじゃないか!っ!?」

 

地面にまた落とされた諏訪子は天馬の方向を見たがそこにはいなかった

 

すると後ろから天馬の声がする

 

「生憎と弾幕は苦手なんでね、卑怯だが追い打ちさせてもらうよ」

 

「ッ!貴様!」

 

そういいながら諏訪子は振り返ろうとした直後横腹に蹴りが炸裂する

 

ミシ!という嫌な音を立てながら諏訪子はうずくまる

 

「ぐぅうう!」

 

「本当に済まんねこれくらいでしか戦えないんでさ」

 

さらに追い打ちをかけようと天馬は足をあげ蹴りをしようとすると白い蛇が突如襲いかかる

 

「なんだこいつら?」

 

「ゲホッ!ガハッ! その子達はね・・・ミシャグチっていうんだよ」

 

「なるほどこれじゃぁ追い打ちはできないね」

 

「貴様はこれに耐えられるかな!?」

 

 

祟り神「赤口(ミシャグチ)さま

 

 

突如辺りは暗闇になり何も見えなくなる

 

「見えなくなったところで奇襲ってなもんかい?」

 

「さぁどうだろうね!!」

 

身動きがとれない天馬は何か腕に痛みが走る

 

「ッッ!!」

 

「ほらほら逃げないと食べちゃうよ!」

 

天馬の腕は蛇によってくいちぎられていた

 

「(くそ!どうする!?どうすればいい!?敵が見えないと攻撃もできん!)」

 

「焦っているねぇ!神を冒涜したらどうなるか!わかったかい!?」

 

「(奴の声は上から聞こえる、だとすれば敵は上なのだが蛇共のせいでいけねぇ)」

 

「万策尽きたかい!?じゃぁ終わりにしてあげる!いけ!」

 

ミシャグチが一斉に襲いかかる

 

天馬は諦めたようにこう呟く

 

「はは、これはきついなぁ」

 

その瞬間グシャァ!という音と共に天馬は肉片となった

 

諏訪子はそれみながらミシャグチを解き

 

「あーぁ呆気なかったな、殴られたところが痛いや」

 

「そうか痛いか、ならもっと与えてやろうか?」

 

諏訪子は後ろから声がしたのでとっさに後ろを向く

 

「貴ッ貴様!なぜ生きている!」

 

「人外だからね、死なないさ」

 

天馬が肉片から再生しており右手には鉤爪のようになっている

 

「お、おのれ!」

 

諏訪子がまたミシャグチ様を召喚しようとするがその時天馬に頭を掴まれ余りの痛みに悶絶する

 

「ぐあぁ!はっはなせ!ぐっ!」

 

「降参するかい?」

 

「誰が貴様なんぞに! 」

 

「じゃぁもういいや」

 

諏訪子の腹に骨でできた鉤爪で抉る

 

「!!!ッガハ!分かった!分かったよ!降参だ!だから止めて!お願い!」

 

そう諏訪子は叫ぶが天馬はこう返す

 

「もう遅い」

 

その瞬間諏訪子の腹に鉤爪を突き刺しそのまま投げ捨てる

 

ドスンという音を鳴らしながら諏訪子は崩れ落ちた

 

「あ・・・う・・・うぐ・・・」

 

言葉にもならないような声をあげながら諏訪子は気絶した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

諏訪子が目を覚ます

 

「よう、やっと起きたか」

 

「貴ッ貴様! ぐぁ!」

 

「おいおいあまり大声あげるなよ傷に響くぞ」

 

「・・・・・貴様が治したのか」

 

「ま、そんなもんだね 傷を俺の細胞で覆って止血したんだよ」

 

諏訪子の腹には包帯が巻いてあった

 

「貴様「貴様っていうのをやめろ」わ・・・わかった」

 

「あんたはなんでここ、洩矢の国に来たんだ?」

 

「なんでって・・・諏訪子に会いにきたんだよ」

 

「(よ・・・呼び捨て)なんで私に?てかなんで私の名前しってんの?」

 

「いやぁ人から聞いてね。 興味が湧いたから来ただけだ」

 

「そんなんできたんだ・・・」

 

「いやぁ諏訪子、お前は強いなぁ」

 

「あんたもね、そもそも死なないっておかしいでしょ」

 

「人外だからね!!キリ!」

 

「そんなもんなんだね」

 

「そんなものさ」

 

「ぷっ、あっはははは うぐ!」

 

「傷に響くぞ、諏訪子」

 

「いやー痛かった じゃぁ治すとしましょうかね」

 

諏訪子のが包帯が巻いてある腹に手を置き白いオーラみたいな力で治した

 

「ほぉー不思議な力だねぇ」

 

「あんたのほうがよっぽど不思議だよ」

 

「違いない」

 

諏訪子とも良き仲になり洩矢の王国に定住することとなった

 

「天馬ぁ」

 

「どうしたんだいケロちゃん」

 

「そのあだ名やめてくんない?」

 

「いいじゃん可愛いし」

 

「か・・・可愛いって」

 

諏訪子が顔を赤らめる

 

「おやおや洩矢の神が照れてるよ」

 

「照れてないよ!!」

 

「いーや照れてたね!可愛いよケロちゃん!」

 

「か・・・可愛いっていうなぁぁ!」

 

本当に可愛いからしょうがない

 

「タバコでも吸おうかね」

 

「タバコ?あぁ天馬がよく吸っている変なやつか」

 

「吸ってみるかい?」

 

「んーじゃぁ一つだけもらおうかな!」

 

諏訪子もといケロちゃんに吸っていたタバコを渡す

 

「・・・(関節キスじゃないか)」

 

「どうした?吸わないのかい?」

 

「い・・・いや吸うよ」

 

そういうと諏訪子はタバコを吸う

 

「うぇ!なにこれ!喉が痛いよ!」

 

「慣れだよ慣れ」

 

「よくこんなのすえるね天馬」

 

「まぁな年を取るとなんでもできるようになるよ」

 

「・・・天馬って何歳?」

 

「ん?一億?二億?歳くらいかね」

 

「ちょ、長生き過ぎやしないかい!?」

 

「本当なんだからしょうがない」

 

「でも全然年とっているようにはみてないけどねぇ」

 

「能力で外見内見を整えてるからね」

 

「いいなぁそれ」

 

「諏訪子はもうちょっと成長したらもっと可愛いと思うけどな」

 

「い・・・いきなりだねぇ」

 

もじもじすんな可愛い

 

「きっと美人さんになるよ、うんうん。」

 

「あぁーうー・・・」

 

そういいながら諏訪子の頭を撫でる

 

「うぅー・・・」

 

「かわいいなぁ諏訪子は!」

 

「か・・・かわいいっていうなぁ・・・」

 

こんな毎日だ

 

諏訪子を抱っこしたりおんぶしたりお姫様だっこしたり

 

諏訪子は嫌々ながらもやらせてくれる

 

「いやー今日も楽しかったな諏訪子!」

 

「もうお嫁にいけない・・・」

 

たかが脇くすぐっただけじゃないか

 

「いざとなったら婿になってやるよ」

 

「・・・本当かい?」

 

「まぁ最終手段の時だけな」

 

心なしか諏訪子は喜んでいる

 

あれ?これフラグ立っちゃったんじゃねぇ?

 

 

 

「天馬ー 今日はなにする?」

 

「なにするかぁ」

 

諏訪子の神社にきたがなにもすることがない

 

 

「けろちゃーんなにしようかぁ」

 

そういいながら諏訪子の脇腹をくすぐる

 

「うひゃ!うはは!やめ!天馬やめ!」

 

「うりうりーどこが弱いんだぁ諏訪子はぁ」

 

「あひゃひゃひゃひゃ!天馬やめてぇー!」

 

ずっと続けているとビクビクしだしたのでやめてあげた

 

「大丈夫?ケロちゃん」

 

「はひぃーひぃーふへぇーケロちゃんいうなぁ・・・」

 

ん? 今なんかあっちの山から視線が・・・

 

「ケロちゃんちょっとでかけてくるね」

 

「え、ちょどこいくんだい天馬!」

 

「ちょっとね」

 

そういいながら視線があった山の方向へジャンプする

 

「なんだってんだいいきなり・・・」

 

諏訪子はそれを見ながら独り言を言う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山につき誰もいないが聞いてみる

 

「誰だい?」

 

 

すると注連縄を頭に着けた青い髪の女性が現れた

 

 

「八坂神奈子じゃないか・・・・」

 

「おや私の名前をしっているとは驚きだ」

 

「まぁな、でなにしにきたんだよ」

 

「いやぁちょっと視察にきたんだよ、ばれたけどね」

 

「・・・何の視察だい?」

 

「もうそろそろ洩矢の国の信仰をいただいちゃおうと思ってねぇ」

 

「ふむ、別に構わないが民を巻き込むなよ?」

 

「へぇ、それはどうしてだい?」

 

「どうしてもだ どうしても巻き込むというのならば俺が出るぞ」

 

天馬がそういうとただならぬ殺気を放つ

 

「じゃぁ洩矢の神だけならいいんだね?」

 

「それならいいだろう、だが一対一という約束をしろ」

 

「してもいいけど私に利益があるのかい?」

 

「あるぞ」

 

「ふむ?それはなんだい?」

 

「生かしといてやる」

 

天馬の右手は鉤爪になっておりそれを神奈子の首にかける

 

「おぉ、こわいねぇ・・・ま、いいよ最初からその気だったしねぇ」

 

「それならいいが」

 

「じゃぁ洩矢の神に言っておきな」

 

「そうするよ」

 

 

天馬は神奈子のいた山から守谷神社の山までジャンプした

 

 

「いやぁー怖かった 私じゃぁ勝てなかったねあれは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

守谷神社

 

 

「諏訪子」

 

「おかえり天馬どこいってたんだい?」

 

「諏訪子もうそろそろ八坂神がここに攻め込んでくるぞ」

 

「なんだって!?」

 

「だが安心しろ民には手を出さず一対一で戦うと言っている」

 

「そうか・・・ついにその時がきたのかい」

 

「相手がその条件を破れば俺が入る、それでいいな」

 

「あぁ、わかったよそのときは天馬 頼むよ」

 

「まかせろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついに鉤爪解放ですね。 テンポが早いと思いますがちょこちょこ直しながらやって行きたいと思います


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天馬、神神の戦いを観戦する

自分でもテンポが早いと思ってしまう


ほかの小説投稿者さんはなぜあんなにもテンポが一定なのだろうか
自分にわかったことは細かい描写や戦闘シーンが超絶にがてだということです



負けるしかない・・・・が・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社のある一室 諏訪子と天馬が対峙する

 

 

『さて諏訪子 八坂神と戦うにつれて注意することだが』

 

『ふむ?』

 

『八坂神は知的で力もある神だ近接ではまず無理だ』

 

『うぐぐ・・・でも弾幕は?』

 

『それなのだが、八坂神は御柱で攻撃してくるはずだ。勿論普通の妖力弾も出せる』

 

『その御柱とかいうやつは当たったら危ないのかい?』

 

『そうだな3発でも食らえばたぶん諏訪子は気絶するだろうよ』

 

『じゃぁどうすればいいんだい?』

 

『祟もあまり効かなさそうだからな~・・・』

 

『『うーん・・・・』』

 

二人で試行錯誤をする

 

『御柱は上からも横からも出せるからな避けるのはすこしきついぞ』

 

『そうなのかい?極力避けながら弾幕をしかけるっていうのはどうだい?』

 

『それじゃ諏訪子の体力切れになるぞ』

 

『そっかぁ・・・打つ手無しだねこりゃ』

 

『一番いい方法はあるんだけどね』

 

『一番いい方法?』

 

『八百長だよ、わざと負ければいいんだよ』

 

『それだと信仰がとられてしまうじゃないか!』

 

『諏訪子よく聞け、このまま勝負しても負けるのが落ちだ』

 

『ぐぬぬ・・・』

 

『でもこの国は祟り神を恐れている、民もおいそれと信仰する物はかわらんと思うぞ』

 

『それでも信仰がとられるのは一緒じゃないか』

 

『それもそうだが八坂神も信仰が変わらないから最後になにかしら条件をつけてくる』

 

『条件?』

 

『あぁ、信仰が取れないならば諏訪子が祭神にならなくてはならない。そこでだ』

 

『洩矢神社の名前を変えるんだよ。』

 

『名前を変える?』

 

『八坂神はどうしてもこの国の信仰がほしいからな半分でも十分だろう』

 

『なるほどぉ』

 

『でも諏訪子お前、確か鉄を武器にできるよな』

 

『できるよ』

 

『ならその鉄の武器で本気で倒しにかかれ』

 

『・・・?なんでだい負けることは確実なんだよね?』

 

『洩矢の神は弱かったなんて後々いわれたくないだろう?』

 

『まぁねそれはそうだけど』

 

『紙一重のところで負けたっていう状況の方が交渉もしやすいし箔がつく』

 

『なるほど~!天馬冴えてるね~!』

 

『どやぁ・・・・』

 

『じゃぁ本気で戦って負ければいいんだね!』

 

『そういうことだ、頑張れよ諏訪子ぉ?演技力が試されるぞ』

 

『頑張ってみるよ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ八坂神奈子は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『洩矢の神は鉄の武器を使う・・・か・・・』

 

『なかなかに強敵になりそうね』

 

『今のうちに作戦でも立てた方が得策ね』

 

神奈子は打倒諏訪子の為に試行錯誤をしていた

 

『しかし・・・あの男の子・・・敵じゃなくてよかったわぁ』

 

『あの子が敵だったら確実に負ける戦いになるわね』

 

 

そんなことを考えながら決戦の日はこくこくと近づいていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諏訪子と天馬が洩矢神社で対峙する

 

『わさび』

 

『んー・・・ひきにく!』

 

『首』

 

『ひ・・・ひ・・・火矢』

 

『野卑』

 

『ひ・・・ってひばっかじゃん!ずるい!』

 

諏訪子は手をぶんぶんふりながらそう言う

 

しりとりをしていた

 

『そういう遊びなんだよこれは』

 

『だからって ひ ばっかりはずるいよ!』

 

『じゃぁ諏訪子の負けでいいんだね?』

 

『負けてないよ!ひ・・・ひ・・・人!』

 

『頭皮』

 

『うー!!秘密!』

 

『鶴掛け火』

 

『あーうー!酷い!』

 

『池田朝日』

 

『そうじゃなくて!酷いよ天馬!ひばっかり!もう嫌い!』

 

そういうと諏訪子はそっぽを向いてしまった

 

『おいおい諏訪子それは本気で言っているのか』

 

『う・・・』

 

『あー俺諏訪子に嫌われちゃったなぁ旅にでようかなぁ』

 

『うぅ・・・』

 

諏訪子が涙目になる

 

『冗談だよ諏訪子』

 

そういいながら諏訪子の頭をなでる

 

『え・・・えへへ・・・』

 

『よし!じゃぁもうしりとりはやめようか、な!諏訪子』

 

『う、うん』

 

『しょげるなってほらホットケーキでも食おうぜ』

 

創造でホットケーキを出す

 

『うわぁーおいしそう!』

 

ホットケーキを切り分け諏訪子に差し出すと外から気配がする

 

『参拝者かな?』

 

『・・・いや違うな、諏訪子ホットケーキ食ってまってろ俺の客だ』

 

そういいながら諏訪子をおいて外にでる すると八坂神がそこにいた

 

『なんだ?俺に用か?』

 

『明日だ』

 

『何がだ』

 

『明日が決戦の日だ』

 

『おいおい唐突すぎるな』

 

『一刻も早く信仰が欲しいからな』

 

『あっそじゃぁあとで洩矢神に伝えとくよ』

 

『ふ、洩矢神か。あんな風に子供遊びをしておいてよくそう言えるなまだ子供じゃないか』

 

『いいじゃないか何をしていたって俺たちの自由だろ』

 

『そうだなお前たちの自由だ・・・だが、これなら信仰も簡単に取れるな』

 

『どういう意味だい?』

 

『あんな子供、私がいとも簡単につぶせるということだ』

 

『ほぉ』

 

『間違えて洩矢そのものを消滅させてしまいそうだな・・・ククッ』

 

『おい』

 

ただならぬ殺気を神奈子は直で浴びる

 

『ッッ!』

 

『あいつを殺したらお前はただじゃおかないぞ、殺しはしないが死んだ方がマシだと思わせるほど痛めつけてやる』

 

『はんっ!脅しかい!?』

 

『いいや、忠告だ』

 

辺りは静かになり二人は睨み合う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『すまんすまん、少し調子に乗りすぎたあのこは殺さないよ』

 

『それならいい』

 

『とりあえず明日だ・・・明日が決戦の日だ』

 

『わかった』

 

 

そう告げると八坂神は消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『諏訪子~』

 

『んー?なんだい?』

 

ホットケーキを頬張りながら天馬の呼びに応える

 

『八坂神との決戦は明日だ』

 

『・・・わかったよ』

 

そういうと諏訪子はフォークを置く

 

『ついに・・・明日なんだね』

 

『なにしょげてるんだ、諏訪子』

 

『・・・』

 

天馬は諏訪子の後ろに回り諏訪子抱く

 

『諏訪子、お前なら大丈夫だ・・・例え死にそうになっても必ず俺が助けてやる』

 

『・・・うん』

 

『しょげてないで笑おう、いつもみたいにな』

 

『そうだね!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦の日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

民に危害がでないように洩矢の国から少し離れた場所で決闘は行われる

 

『あんたが八坂神かい?』

 

『そうだ、私が八坂神だ』

 

『私に勝てると思っているのかい?』

 

『それはこっちの台詞だといわせてもらうよ』

 

『ふん!せいぜい醜態を晒すがいい!』

 

 

 

 

 

 

 

ついに始まったか諏訪大戦・・・

 

 

そう思いながら天馬は諏訪子と神奈子の戦いを傍観する

 

 

どっちが勝利するかなんてわかりきっている

 

だがそれでよかったのか?

 

諏訪子はあんなことをいいながらも勝ちたいはずだ

 

もし俺が加わっていれば勝てたかもしれないがそれだと原作通りにはならない

 

でも、それでいいのか?

 

諏訪子の気持ちよりも俺は原作が大事なのか?

 

そんなに俺は東方の世界を原作通りに事を進ませたいのか?

 

そんなことを思いながら天馬は思考の海に溺れる

 

 

 

俺が加わっても原作の通りに進んでいたとしたら俺は諏訪子に酷いことをしたことになる

 

わざと負けろだなんて言わなくても・・・たとえ諏訪子が勝っていたとしてもいいのでは?

 

くそ・・・!俺はつくづく糞なやつだな なんであんなことを言った?なんで負けろだなんて

 

今から加わっても遅くはないんじゃないのか?いやそれだと洩矢の国の民に危害が及ぶ

 

今俺が入っても場違いなだけだろう・・・

 

この諏訪大戦が終わったら諏訪子になんて声をかければいいんだ?

 

よく頑張ったな いやちがうな なにをいっても諏訪子を傷つける事になる

 

どうすればいい?どうすればいいんだ!? 大切な人を傷つけることはしたくない

 

だがそうさせたのは俺自身だ、でもそれだけはしたくない

 

・・・

 

諏訪大戦が終わった直後に旅をするか?

 

いや、それはただの逃げだ 俺が引き起こしたことは俺が真摯に受け止めなければいけない

 

自分のけつは自分で拭くもんだ 

 

だが結果的に諏訪子を傷つけるのは明確だ

 

 

そんなことを思っていると決着の時がきた

 

諏訪子がもろに御柱をくらい地上に落ちてくる

 

『諏訪子!!』

 

天馬は落ちてきた諏訪子を受け止め叫ぶ

 

『えへへ・・・負けちゃったよ、天馬・・・』

 

『諏訪子・・・・・』

 

そういうと諏訪子は気絶をした

 

『はぁ・・・はぁ・・・その子強いね、あともうちょっとで負けちゃいそうだったよ』

 

『・・・・』

 

そういいながら神奈子は降りてくる

 

『生きてるかい?その子は』

 

『・・・あぁ、気絶しているだけだ』

 

『そりゃよかった、殺したかとおもったよ・・・それくらい強かったからね』

 

『八坂神』

 

『ん?なんだい?』

 

『すまないが翌日洩矢神社に来てくれないかな、諏訪子の治療をしたいんだ』

 

『あぁ・・・わかったよ明日洩矢神社にいけばいいんだね?』

 

『そうしてくれるとありがたい』

 

『わかったではまた明日参るとするよ』

 

そういうとよろけながら神奈子は消えた

 

洩矢神社に戻り諏訪子をできる限りのことをして治療をし布団に寝かせた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『!!』

 

諏訪子が目を覚ます

 

『おはよう諏訪子』

 

『天馬・・・』

 

『諏訪子、よく頑張ったな』

 

最低だな俺は 結局こんな言葉しか思いつかないなんて

 

『・・・負けちゃったんだね』

 

『あぁ・・・』

 

すると諏訪子が天馬に抱きつき悔し涙を流しながら

 

『うぐ・・・私ね天馬・・ヒック!』

 

『うん』

 

『ほんとはね!ック! 勝ちたかったの!グスッ!』

 

『うん』

 

『天馬はね!グスッ!負けろっていったけど!』

 

『うん』

 

『私は勝ちたくて本気をだしたの!ヒック!』

 

『うん』

 

『でもね!まけちゃったの!』

 

『・・・うん』

 

『ぐやじいよ天馬!』

 

『ごめんな・・・諏訪子、ごめんなぁ・・・』

 

『うわぁああん』

 

 

二人は抱きつきながら泣き疲れて寝てしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

『というわけで信仰は奪えないと思うんだが』

 

『ふうむ・・・』

 

『・・・』

 

 

洩矢神社に3人 天馬と神奈子と諏訪子が集まっている

 

 

『そこで提案があるんだが、洩矢神社の名前に神奈子の名前の一つを入れて信仰を得てはどうだ』

『ふむふむ、なるほどそれならいいだろう』

 

『・・・』

 

『じゃぁ決まりだな、諏訪子もそれでいいかい?』

 

『・・・いいよ』

 

『・・・』

 

『どうした洩矢の神よ元気がないじゃないか!』

 

『・・・ほっといてよ』

 

『まぁまぁ!酒でものんで仲良くしようじゃぁないのさ!』

 

そういうと神奈子はどこからだしたのか酒をドン!と置き諏訪子と天馬に杯を渡す

 

『さぁ!飲んで笑って楽しんでいやなことはすべて水にながそう!』

 

 

 

 

 

 

 

 

3時間後

 

 

 

 

 

 

『てんまぁ!だっこぉ!』

 

『おい、諏訪子飲み過ぎだ少し横になれ』

 

『あっはっはっは洩矢の神は酔うと甘え上戸になるのかい!』

 

『てんまぁ!はやく!だっこぉ!』

 

『わかったわかった』

 

そういいながら諏訪子を抱く

 

諏訪子の頭をポンポンと撫でながらあやす

 

『えへへぇ』

 

『さて!いい感じに酔いがまわってきたね!』

 

『誰のせいだ誰の』

 

『少なくとも私のせいじゃないね!』

 

くそ 神奈子め

 

眠りに落ちた諏訪子を布団に移し神奈子のいる居間に戻り ドスンと座る

 

『洩矢の神は寝たかい?』

 

『あぁもうぐっすりだよ』

 

『そうかいそうかい、よし!じゃぁ二人で飲もうじゃないのさ』

 

『俺はそろそろ遠慮したいのだが』

 

『情けないねぇ!じゃぁ私一人で飲みながらあんたとお喋りでもしていようかね』

 

『別にかまわんよ』

 

『あんた、確か天馬っていったね』

 

『あぁ』

 

『天馬は能力持ちなんだろう?』

 

『あぁそうだな』

 

『どんな能力なんだい?』

 

『ありとあらゆるものを創造する程度の能力と人外になれる程度の能力だ』

 

『二つ持ちかい!?初めて聞いたよ、すごいんだね天馬は』

 

『そりゃどうも』

 

『齢はいくつだい?』

 

『一億か二億歳だ』

 

『ずいぶんと長生きじゃないか』

 

『まぁな』

 

『それだけ生きているのに若いねぇ』

 

『人外になれる程度の能力で不老不死だからな』

 

『へぇそりゃびっくりだ』

 

『そうかい』

 

『じゃぁもう一つ聞いていいかい?』

 

『なんだい?』

 

『天馬は洩矢の神が好きなのかい?少なくとも洩矢は天馬の事が気になっているようだが』

 

『ブッ!!ゴホ!ゲホ!いきなりなにを聞くんだい、諏訪子がそんなわけないだろう』

 

思わずむせてしまった

 

『いーやあれは絶対に天馬のことが好きだねぇ』

 

『たく・・・このセクハラ神様が・・・』

 

頭をかきながらそう応える

 

『それでどうなんだい?好きなのかい?』

 

『さぁな好きなのかもしれないしそれとも娘のように思ってるかもしれないね』

 

『ふーん・・・不器用なんだね天馬は・・・幼女趣味かい?』

 

『んあわきゃあないだろ、どちらかというと神奈子くらいのが好きだぞ』

 

『そ・・・そうなのかい?』

 

『そうだよ』

 

『ふーむ』

 

『・・・なんだよ?』

 

『私が天馬の伴侶になってあげようか?』

 

『なにをいいだすんだお前は』

 

『だって天馬強そうだしかっこいいじゃないか』

 

『それはありがたいが伴侶は今はいらん』

 

『そうなのかい?残念だねぇ』

 

積極的だなこの神は

 

『じゃぁ恋人でもいいぞ』

 

『だからいらんちゅうのにお前は』

 

『なーんだ』

 

めんどくせぇ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『という訳で俺は旅にでるぞ』

 

『どういう訳だい』

 

『ほんといきなりすぎ』

 

『世話になったな諏訪子 神奈子』

 

『いや訳を話せよ』

 

『んー・・・諏訪子も神奈子も守矢神社に一緒に住んで一件落着じゃん?』

 

『まぁね』

 

『そうだけどねぇ』

 

『元々おれは放浪してただけだしな』

 

『ふーん・・・寂しくなるねぇ』

 

『・・・』

 

『おいおい諏訪子しょげるなよ 一生の別れって訳じゃないんだぞ?』

 

『おやおやこの子は』

 

『天馬、約束覚えてる?』

 

首を傾げる

 

『ん・・・?約束?』

 

『うん、約束』

 

『もしかして婿になってやるってやつか?』

 

手をぽんとたたきそう応える

 

『そう』

 

『え!?そんな約束していたのかいあんたたち?』

 

神奈子が驚愕のせいかのけぞる

 

『でも諏訪子、あれは最終手段だろう?ほかにいい男が見つかるさ』

 

『いないよ・・・ほかにいい奴なんて・・・天馬が一番いい』

 

そういいながら諏訪子は天馬の腕の裾をつかみながら言う

 

『ふむ』

 

自分の顎に手をやりすこし考える

 

『どうするんだい?天馬』

 

『そうだな・・・じゃぁこうしよう諏訪子』

 

諏訪子の頭に手を置きわしゃわしゃと撫でたあとに

 

『?』

 

『俺はこれから色々と忙しくなる、全部の事を終わらしてそれでも諏訪子の気持ちが変わらないのなら   結婚しよう』

 

『うん・・・!待ってる!絶対だよ天馬!』

 

『こりゃめでたいねぇ』

 

『じゃぁいってくるよ諏訪子、神奈子』

 

『いってらっしゃいお土産待ってるよ』

 

『待ってるからね!天馬!』

 

 

天馬はそれに応えるように手を振った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まじですか!?まじなんですか!?天馬さん!!

フラグ成立しちゃったよ! 


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天馬、大妖怪の式になる

テンポを落とす・・・テンポをおとす・・・

呪文のように作者はつぶやく




さてさて・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅にでて500年余り立つ、今日も天馬は旅を続ける

 

 

 

 

『あふれる~予感を両手にぃ~始まる~僕だけの歌~♪』

 

『あ~いだとか~こーいだとか~そんなんじゃないんだ~♪』

 

歌を歌いながら森の道を歩いている

 

『歌っていいね、スッキリするよ』

 

『しかし、さっきから視線を感じるんだが』

 

『誰かわからんが、いるんだろう?出てきなさいな』

 

そう天馬が言うと空間が避けたように黒い線が宙に浮き くぱぁ と開く

 

開いたあとに頭にドアノブキャップをつけた金髪の少女が顔を出す

 

『あらあら・・・ばれてましたの・・・』

 

『紫か』

 

『え?何で私の名前を・・・』

 

『まぁいいだろ、んで・・・なんで見ていた』

 

『あなたのこと洩矢の時から見ていましたわよ?』

 

『ずっと見ていたのかい?気持ちが悪いな』

 

『ずっと見ているわけがないでしょう?時々よ』

 

『ふーん・・・・だからちょくちょく視線を感じたのか』

 

『そういうことになるわね』

 

『んでなんで俺を見ていたんだ?』

 

『私、貴方を式にしたいのよ』

 

『ほう?それはなぜなんだい?』

 

『貴方強いんでしょう?』

 

そういながら紫は頬杖をつきながら笑う

 

『ん~強くないよ多分』

 

『あらあら・・・そんな謙遜しなくてもいいんですのよ?』

 

『紫ほどでもないよ?でもそれだけが理由じゃないんだろう?』

 

『そうね、いきなりだけど質問をさせてもらってもいいかしら?』

 

『いいよ?暇だし』

 

天馬は木の切り株によっこらせと座り話をする

 

『貴方は妖怪と人間の共存はできると思うかしら?』

 

共存か、多分これから幻想郷を作るのだろう

 

ここはすこし意地悪をしてみるか

 

『ん~無理だねぇ』

 

『あら、それは何故?』

 

『妖怪というものは人間の恐怖で生きているようなもんだ、だが共存をするとなるとその概念が消えてしまう・・・それと同時に妖怪も消えてしまうか弱体化するだろうよ?』

 

『概念を消さずに共存するっていうのはどうかしら?』

 

『それだと妖怪と人間の殺し合いに発展するだろう、人間という種族は弱いものだ。危険を加えるかもしれない輩がいたら殺しにかかるだろう』

 

『だけど・・・』

 

『だけどもなにもないだろう?人間とは群れて生きるものだ、その中に異質な者がいれば当然除ける これは自然の摂理だよ』

 

『・・・』

 

『だけどそれでも紫は妖怪と人間の共存ができると思うかい?』

 

『そうね・・・貴方の言うことは正しいけど私はできると思うわ』

 

『そうかい・・・まぁ紫ができるというのであればできるんじゃないか?だけど難しいぞ』

 

『そんなの簡単に乗り越えてやるわよ』

 

『ふむ、話は分かったのだがその共存の話と式の話は関係があるのかい?』

 

『実はね、その共存の世界を作ろうとおもうの。』

 

『ほう』

 

『でも私だけじゃ実力不足みたいでね・・・手伝って欲しいのよ』

 

『手伝うだけなら式にならなくてもいいのでは?』

 

『形式としてだけでもお願いできないかしら?貴方を式にすれば威厳がでますし』

 

『俺にそんな価値があるとは思えないのだがなぁ、しかし式か・・・うーん』

 

『私の式になれば私のこのスキマ・・・使えるわよ?』

 

『ほう、見たところによると移動空間っぽいが・・・』

 

『私の境界を操る程度の能力で場所と場所の境界をくっつけれるのよ』

 

『便利だねぇ、てかそれ強すぎないか?』

 

俺という存在の境界をいじれば消せることもできるだろう

 

『でも、私だけじゃ無理なのよねぇだから式になってくれないかしら?』

 

『ふむ・・・ん、いいだろう式になろうじゃぁないか』

 

『そう、じゃぁこの札を服かなにかに張り付けてね それで契約完了だから』

 

『わかった、この札をはればいいんだな?』

 

天馬は服に張り付けると札はスゥッっと服に溶けるように消えた

 

『ふむ、不思議な札だな』

 

『これで貴方は私の式よ、よろしくね?天馬』

 

『あぁ、よろしくな・・・紫』

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして天馬は紫との式の契約終えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫は『じゃぁ私は家に戻るわ、必要な時に呼びなさい』とそう言ってさっさとスキマに戻りきえてしまった

 

 

『そっけない奴だなぁ・・・まぁ旅を進めますかね』

 

紫が消えた後タバコ取り出し吸い終わったところで天馬は足を進める

 

『いやぁしかし緊張したもんだ、幻想郷の賢者様にあえるたぁね』

 

『しかし式か、式になってなにをすればいいんだ?』

 

『まぁそれは後で紫にきけばいいか』

 

『さてさて次はなにが起こるのかね?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天馬は一週間ほど歩きある都につく

 

 

『ほほう、でかいな都といえば・・・』

 

あれ?輝夜じゃね・・・? 

 

そう思いながら都の中に入ると高貴な輩共が屋敷にぞろぞろと入っていく

 

『もし、そこの方』

 

すれ違った男に質問をする

 

『ん?なんだ?』

 

『今しがた見えた集団はあの建物に入っていったのですがなにか祭り事でも?』

 

『なんだお主知らぬのか、あの屋敷には絶世の美女がおってだな貴族共は求婚しに言っておるのだ』

 

『ほほう、そんなにもお美しい方なのですか?』

 

『自分は見たことはないが噂では想像を絶するものほどの美人らしいぞ』

 

『それはそれは、私も求婚してみましょうかねぇ』

 

『やめとけやめとけ、なんでも結婚するためには無理難題な宝を要求するらしいぞ』

 

『その無理難題な宝とは?』

 

『この前は五人の貴族に出した条件は二つだけならわかるがそれでもいいか?』

 

『えぇ、構いません』

 

そういうと男はよく聞けといわんばかりに胸をはる

 

『まず一人目は石作皇子様に仏の御石の鉢を、あとは大納言大伴御行様に龍の頸の玉を要求したそうだあとの三人もそうとうな物を要求されたそうだが』

 

なんだそれ・・・と思いながらも相槌を打ちながら聞く

 

『ふむふむ・・・それでその方達は条件を達成したのですか?』

 

『いや、未だにその宝を探すのに四苦八苦しているらしいぞ』

 

『なるほど・・・到底手に入らないものばかりですもんねぇ』

 

手にはいるか入らないかはわからないが知ったかぶってみる

 

『そういうことだ、だから求婚なぞとふざけたことを思わないほうがいいかもな』

 

男はそういうとがっはっはと大笑いした後に去って言った

 

天馬はそれにお礼をしながら屋敷へ向かう

 

『さてさてどうやって輝夜に会うかね』

 

『いまは人が多そうだし、姿を隠す能力なんてないしな』

 

『日が暗くなってから出直すとしようかね、とりあえずは宿を探そうとするか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『満室だと・・・?』

 

都には輝夜の噂を聞きつけ一目見てたい者や求婚をしようとする人でごった返しているため宿はほぼ全部満室だ 特に高級旅館など

 

『野宿はいやなんだよなぁ』

 

『もうちょっと探してみるか』

 

1時間ほど空いている宿を探しているとこじんまりとした綺麗とはいえない宿を見つける

 

『お、あそこなら空いてそうだな』

 

そういいながら宿に入る

 

『いらっしゃい』

 

無愛想な店主が答える

 

『部屋は空いているかい?』

 

『あぁ、空いてますよ』

 

『じゃぁお願いするよ』

 

『部屋は・・・階段あがって右ですので』

 

帳簿をみながら店主はそう答える

 

『わかった、じゃぁ上がらせてもらうよ』

 

そう断りを入れると入り口の右にある階段を上がる

 

ギシッ ギシッという音を立てながら登りすぐ右にある部屋のフスマを空ける

 

『・・・シンプルだな』

 

部屋には机と畳んである布団が置いてある それだけ

 

『まぁ雨風凌げればいいしな、贅沢はいってられん』

 

そういいながら背中を床にしタバコを取り出し一服する

 

『ハァー・・・疲れた・・・いや、疲れていないが疲れたな』

 

『だけどまぁようやく輝夜にあえるんだなぁ、あっちは覚えているのかね?』

 

『まぁ夜までまだ時間がある、少し寝るとしよう』

 

そう言うと天馬は吸いかけのタバコを携帯灰皿で消し布団もひかずに眠りに落ちる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『んんー・・・!よく寝た!』

 

外を見ると辺りは暗くなっている

 

『さて、そろそろ行きますかね輝夜ねてなけりゃいいんだが』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋敷の近くに来た天馬は辺りに人がいないか確認する

 

『さてさてどうやって入ろうかね』

 

『うーん・・・』

 

『あ、そういえば紫のスキマがあるじゃないか』

 

そういいながらスキマを想像する

 

すると空間からスキマが裂くように出てきた

 

『輝夜のとこにつながれー!』

 

そういいながらスキマに入る

 

『うおぁ!』

 

スキマに入った瞬間に足場が無くなり落ちる

 

その瞬間に畳に叩きつけられる

 

『ぐぇ!』

 

頭から落ちたせいか首を捻った

 

『な・・・なに!?』

 

声がした方向をみると懐かしい顔が見えた 輝夜だ

 

『よ・・・よう』

 

『・・・・貴方誰?』

 

『まじか・・・』

 

輝夜は俺のことを忘れていた

 

『輝夜、俺だ天馬だ。久しぶり』

 

『・・・あ!天馬か!久しぶりねぇ!』

 

『思い出したか』

 

『だってめちゃくちゃ前だもの忘れるわよ』

 

『そうだな、かれこれ一億?二億年くらいまえだからな』

 

『うんうん、それで天馬なんで私がここにいるってわかったの?』

 

『ん~勘だ』

 

『勘?あなたの勘ってすごいのね』

 

『まぁな!』

 

『本当はどうしてなの?』

 

『うーん・・・絶世の美女って聞いてなどんなもんかと見に来た』

 

『素直ねぇ』

 

『それはそうと輝夜、なぜここにいる』

 

『それはねぇ、月での生活がつまらないからよ』

 

『つまらない?』

 

『そうよ、つまらないからわざと禁を犯して地球に来たの』

 

『なんだ?その禁ってのは』

 

『私の能力で永淋に不老不死の薬を作らせて飲んだのよ』

 

『ほうほう、それで地球に追放されたって感じか』

 

『そうそう』

 

『いやーまさか絶世の美女が輝夜だとはなぁ』

 

『絶世の美女でしょう?』

 

『否定はしないな』

 

『天馬はあれからどうしてるの?』

 

『んー・・・旅をしているよ』

 

『へぇ~いいわねぇ』

 

『なんなら一緒にくるか?』

 

『それもいいわねぇ だけど無理ね』

 

『ん?それはなぜだい?』

 

『爺様と婆様がいるからね』

 

『爺様?』

 

『そ、私は禁を犯して地球に来たときに赤子にされて追放されたの、その時に竹林の森で拾ってくれたのが爺様』

 

『ほぉ』

 

『爺様と婆様は子宝に恵まれなかったのか私を拾ったとき大喜びだったのよ』

 

『じゃぁ命の恩人であり父親であり母親ってわけかい』

 

『そういうことになるわね』

 

『じゃぁ爺様と婆様が死ぬまでここに居るのか?』

 

『いや、そうとも限らないわね』

 

『へぇ?そりゃどうして』

 

『月人が迎えにくるらしいのよ』

 

『ん?追放されたのになんで迎えにくるんだ?』

 

『私の不老不死の体を調べたいらしくてね』

 

『ふむ?なんで輝夜はそのことを知ったんだい?』

 

『永淋から矢文で伝えてきてくれたのよ』

 

すごいな永淋、月から地球まで矢を飛ばしてくるとは

 

『なるほどねぇ』

 

『そういえば天馬 能力二つあるんだってね?永淋が言ってたわよ』

 

『んーあるけどねぇ永淋おこってた?』

 

『怒ってたわよ~そりゃもうかんかんに』

 

『おぉこわい』

 

『天馬のもう一つの能力ってなんなの?』

 

『人外になれる程度の能力だよ』

 

『どんなことができるの?』

 

『俺もあんまりわかんないんだよねぇ』

 

『不便ね』

 

『そうだねぇ』

 

『・・・輝夜は月に戻りたいかい?』

 

『なによ唐突に』

 

『どうしたい?』

 

『できれば戻りたくないわねぇ』

 

『そうか、大丈夫だよきっと輝夜は地球に留まれる』

 

『へぇ?それはなぜ?』

 

『そういう運命だからだよ』

 

『運命ねぇ・・・』

 

『ま、今日はこの辺でお暇するとしようかね』

 

『あら、もう帰るの?』

 

『あぁ、明日もくるからな』

 

『わかったわ、じゃぁ待ってるから』

 

『それじゃぁさいなら』

 

そういうと天馬はスキマにはいり消える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヘブュン!!』

 

頭から落ちる また打ち所が悪いのか頭を抑えうずくまる

 

『本当に天国(ヘブン)に行きかけたぜ・・・』

 

『てか使いかって悪すぎだろスキマ』

 

そういいながら頭を片手で抑える

 

 

さて、紫を呼ぶか

 

 

『ゆかり~』

 

 

その瞬間空間にスキマがあらわれ紫が顔をだす

 

 

『どうしたの?』

 

『実は相談があるんだが』

 

『へぇ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『二人ほど匿って貰いたい人がいる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




九時ごろ更新とか言いながら小説書きながら途中で寝てしまいました・・・
すいません


女の子がころころ恋愛感情芽生えすぎという指摘をしていただきました

確かに自分もそう思います・・・ 

感想 批評 どちらでもいいのでよかったらお願いしますね

指摘していただいたところを直し、面白くなるように小説を書きます!


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天馬、竹林を探す

二日ぶりの更新です、仕事の都合で書けませんでしたすいません


都の外れで一匹の妖怪と男が対峙する

 

 

「それで?匿って欲しいってどういうことかしら?」

 

紫はスキマの中から頬杖をついて質問をする

 

「俺の知り合いが追われる羽目になる、だから二人ほど少しだけ匿ってほしい」

 

「なるほどねぇ・・・匿うっていったってどこに匿えばいいって言うのよ?」

 

「匿う場所は自分で探す、紫は少しの間二人をスキマに入れてくれればいい」

 

「ふーん・・・まぁ、少しくらいなら良いわよ」

 

「ありがたい、いつ実行するかはまだ決まっていないからあとで話す」

 

「わかったわ、じゃぁそのときまた呼んでね」

 

「あぁ、それと紫」

 

紫がスキマを閉じようとした瞬間天馬は声をかける

 

「なにかしら?」

 

「俺は式になったはいいがなにをすればいいんだ?」

 

「そうねぇ・・・天馬の気に入った者を私の作る世界に隔離すればいいだけよ」

 

「それだけなのか?紫の作った世界はもうあるのか?」

 

「まだないわね・・・でも後少しで完成するからその時に隔離できるわよ」

 

「わかった、ただ俺の気に入った者を紫に報告すればいいんだな?」

 

「報告は必ずお願いね、そのあとは私の作る世界にほっぽっとけばいいわよ」

 

「なるほど、じゃぁ紫の作る世界が完成したら教えてくれ」

 

「はいはい、じゃぁまたね」

 

紫はそういうとスキマを閉じ消えた

 

「さて、永淋と輝夜を隠す場所を探そうとするかね、今は暗いから明日探しにいこう」

 

そう言うと、天馬は宿に戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿の店主に帰ったことを告げ、自分の泊まる部屋に戻る

 

天馬は部屋に入るやいなやタバコを取り出し胡座をかきながら思考する

 

 

 

 

 

二人を隠す場所はどこらへんがいいのかね?確か原作では永淋と輝夜は月人に見つからないように竹林で過ごしていたはずだ。

 

ということは竹林に隠して紫が作る幻想郷に竹林ごと持ってくか、早く作ってくれればいいんだが・・・

 

だが隠す場所はもう決まった、明日都から離れている丁度いいくらいに茂っている竹林をさがしにいこうとするかね

 

そう決意し明日に向けて眠る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「寝すぎたわ・・・」

 

天馬が起きたころには太陽は真上にあり昼時であることが伺える

 

「ッベー・・・やっべーわマジ寝すぎたわー」

 

いそいそと竹林に向けて支度をし洗面所で顔を洗い歯を磨く

 

「夜には輝夜の所にいかねーとならねーし、今日のうちに探さねぇとといつ月人がくるか分からんから早く見つけなきゃいけねぇのになんてこった」

 

「とりあえず早めにでて早めに探さねぇとな。」

 

宿を出て都を出、竹林を探す

 

「てかそもそも竹林って簡単にみつかるんかね?ちょいとジャンプして確認してみますか」

 

「そぉれっ!!」

 

足に力を入れ、真上に思いっきりジャンプする

 

「んー」

 

空中で辺りをみて結構離れたところに竹林を確認する

 

「おー!あそこいい感じだなデカいし!」

 

重力にそりながら落ちていく

 

「よっしゃ!竹林は見つけた!あとは確認するだけだ!」

 

地について次は確認したところに200kmほどの速度で走りジャンプし

 

ジャンプしたところで空中でムササビのように手と足を広げ滑空

 

速度200km+空中での滑空速度で尋常なほど早い移動をする

 

「うーん気持ちいいな、飛んでいないが飛んだ気分だ」

 

「しっかし遠いな!半分も進んでいない!」

 

この作業を5-6回ほどし、やっと竹林についた

 

「おっし!付いたな!下りるとしますかね」

 

下に向かうように天馬は体を傾けて滑空をする、その時下る途中に竹林の葉っぱに足を引っかけ盛大にバランスを崩す

 

「うお!」

 

地面に顔面着地をし速度にあわせてバウンドする

 

「ブッ!!」

 

「グエ!」

 

「グアッ!」

 

「ひでぶ!」

 

4回バウンドし最後は回転しながら岩にめり込む

 

「ぐ・・・おおおおおぉお!」

 

鼻血を吹き出しながらうずくまり痛さに我慢できず悶える

 

「ぐううぅうう・・・ふぅ・・・ふぅ・・・」

 

「ふぅー・・・あー鼻折れてんな・・・直すか・・・」

 

パキッ!

 

「ぐふ!!」

 

右に曲がった鼻を手でまっすぐに整える 

 

「よし・・・矯正はした、後は能力で補強だ・・・」

 

そう言うとどんどん鼻の折れたところが再生される

 

「はぁ・・・痛かったわぁ・・・」

 

後はかすり傷や切り傷を再生させていく

 

「もっとゆっくり着地する方法はないのかね・・・・」

 

そう言いながら辺りを見回し、小動物がいることを確認した。

 

「・・・兎か」

 

二-三匹こちらをみた後逃げていく

 

「さーて・・・探索しますかね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二時間ほど歩き探索をしていると頭にうさぎの耳を付けた女の子に出会う

 

 

「ん・・・?あれは因幡てゐか?」

 

そう思わしき人物は兎と戯れている、そしてこちらが近づくと兎は蜘蛛の子を散らすように逃げていく

 

「ん・・・?あんたは・・・だれだい?」

 

「こんにちは、俺は天馬って言うものだ以後よしなに。」

 

「あたしの名前は因幡てゐ、あんた見たとこによると人間だね?」

 

「ま、そんなもんだな」

 

「いつこの竹林に来たんだい?」

 

「今さっきだよ、少し用事でな」

 

「今さっき?あぁ兎達のいっていた空から落ちてきた間抜けな男はあんただったのかい」

 

クソ、兎共め鍋に放り込んだろか

 

てゐは岩の上に座り、笑いながらそう言う

 

天馬もその岩に座り右にてゐ 左に天馬という感じで並んでいる

 

「どっこいしょ・・・あぁそうだなぁ、それが俺だな」

 

「ふむ・・・んでこの竹林に何か用かい?」

 

「ん・・・何て言えばいいのかな」

 

「何がだい?」

 

「この竹林に新たな入居者が入るかもしれないっていう感じだ」

 

「なんだって?やだよ、ここはあたし達うさぎの竹林だ」

 

「そこをなんとかお願いできないかね?」

 

「無理だね、人間共があたしたちの元いた場所を開拓していって追いやられてここまで来たんだ。あんたらには渡せないね」

 

「うーん、じゃぁ交換条件というものはどうだ?」

 

「交換条件?」

 

「そうだな・・・同盟を組むというのはどうだ?」

 

「同盟?」

 

「ここに入る二人は外の人間に会うことを余り好きではないからな、その人達の能力で人間に入られることはまずあまりないだろうよ」

 

「ふむ、それならかまわないよ」

 

「本当かい、ありがたいね」

 

「あ、じゃぁ次はこっちの願いをかなえさせてもらってもいいかな?」

 

「願い?」

 

「そうだね、あたし達兎は知識がないそれ故に弱い」

 

「ふむ」

 

「だから、人並みじゃなくてもいい・・・子分の兎達に知恵を与えてもらいたい」

 

「そうか、まぁそれも多分できるだろう。」

 

「本当かい?それなら歓迎だよ」

 

「じゃぁてゐ、またくるからその時にはその二人に人間に見つからない場所を案内してやってくれ」

 

「わかった、任せな」

 

「話の分かる妖怪はすきだぞ」

 

そう言いながらてゐの頭を撫でる

 

てゐは恥ずかしそうにその手を退けそっぽを向く

 

「じゃぁまた会おう、てゐ」

 

「はいよ、お土産よろしく」

 

ちゃっかりな奴だ

 

「よし、じゃぁまたな」

 

天馬はそう言うと都の方を向き200kmくらいの速度で走りジャンプする

 

てゐはそれを見ながら一言

 

「本当に人間なのかい・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

都に着いた天馬は

 

「さて早めに竹林は見つかったしいい感じの時間だな、少し店を回りながら時間がたつのを待つか」

 

その時時間はすでに夕方四時頃 赤焼けに照らされた都はきれいな火の光を灯す

 

焼き鳥屋 酒屋 食料屋 居酒屋 立ち食い寿司屋 駄菓子屋 いろんな店がある

 

その中に一つ落ち着いた雰囲気の居酒屋にはいる

 

「良いかい?」

 

断りをいれつつ入ると実に愛想のいいオヤジが迎える

 

「いらっしゃいませ~!お好きな席におすわりくだせぇ!」

 

「はいよ」

 

そう言うと オヤジの目の前のカウンターに座りながら聞く

 

「オススメはなんだい?」

 

「そうだねぇ!焼き鳥なんかは酒に合いますぜ!」

 

「じゃぁつくねの塩二本とタレ二本 ねぎまも塩二本タレ二本、あとうずらもいただこうかな」

 

「あいよ!少しおまちくだせぇ!」

 

そう言うと店主は頼んだものを作る作業に移す

 

 

 

ふむ、人が余り居ないな。のんびりできるしいい感じだ

 

さてさて、これを頂いたら輝夜の所にいっててゐの事を話すか

 

そんなことを思っていると

 

「あいよ!つくねとねぎまどうぞ!」

 

とカウンターに置かれる

 

一口頬張り頬がとろけそうなほどうまい

 

「んん!店主よ、このタレは付け置きなのかい?」

 

「そうでさぁ!店初めてからずーーっと付け置きですぜ!」

 

なるほどだからこんなにもうまいのか

 

「創業は何年くらいだい?」

 

「60年くらいかねー」

 

「長いねぇ、だけどなんでこんなに客が少ないんだい?常連はいるんだろう?」

 

「あっしはのんびりゆっくりと食って味わってもらいたいもんでね、団体客や二人以上の客は拒否してるんでさぁ」

 

「なるほど、いいねそういうの好きだよ」

 

「気に入って貰えて光栄でさ、どうかご贔屓におねがいしますよ」

 

「はいよ、この店のタレは格別だ。またくるだろう」

 

「そういって貰えるとうれしいな!」

 

さてさて塩はどうだろう・・・

 

そう思いながらねぎまの塩を頬張る

 

うん、うまい このしつこくない塩加減が絶妙だ

 

団体客を拒否していなければ大儲けしているだろう

 

そういいながら食べていると

 

「うずらお待ち!」

 

店主が小さめの鶏の丸焼きをもってきた

 

「ほほぉ」

 

うずらは卵かとおもったがこの時代はうずらを丸焼きというらしい

 

少々グロテスクだが焼けたにおいとタレのにおいでそんなものは気にならなくなる

 

「うーん丸焼きは初めて食ったがこんなにもうまいとは」

 

「初めての丸焼きかい?うれしいねぇ!これからも頼んでってくだせぇ!」

 

「そうするよ」

 

店主と談笑しながら酒をのみつつ過ごしているともう夜中の11時だ

 

「じゃぁ店主よまたくる、これはお台ときもちだ」

 

多めにお金を渡すと店主は

 

「こんなにいいのかい?」

 

「あぁ、あんなにおいしいものは初めて食った、またくるよ」

 

「それじゃぁもらっておくよ、また来なよ兄ちゃん!」

 

「はいよー」

 

そう言いながら店を出る

 

さて腹も膨れたし酒が回って心地いいな、輝夜のところにいこう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキマを発動し輝夜のところに移動する

 

「よっと」

 

「あら、今日は落ちてこないのね」

 

輝夜がクスクス笑いながら見てくる

 

「俺だって勉強するさ」

 

「そうなの?」

 

「そりゃそうさ」

 

「へぇーそうはみえないけどねぇ」

 

輝夜が笑いながら質問を返してくる

 

「見えなくてもそうなんだよ」

 

「そう言うことにしておくわ」

 

「そう言うことにしておいてくれ」

 

そういいながら座る

 

「さて、輝夜」

 

「何かしら?」

 

「昨日の事だが、本当に地球に居たいんだな?」

 

「そうね、あんなやつらに実験されてあちこち弄くられるよりはマシね」

 

「そうか、なら俺の話を聞けよ?」

 

「いいわよ」

 

てゐに会ったことや俺の知り合いがその竹林に転移させてあげること、あとはてゐの出した条件を事細かく話す

 

「こういうことだ」

 

「なるほど、都から遠い竹林ねぇ・・・」

 

「どうだ?これならいけそうか?」

 

「いい話ね、それに乗らせてもらおうかしら」

 

「じゃぁ決まりだな、月人はいつ迎えにくるんだ?」

 

「満月の時にくるそうよ」

 

「満月・・・というと三日後くらいか」

 

「そういうことになるわね」

 

「なるほどね、その時は俺が奴らをくい止める、足止めにはなるだろうよ。それに乗じて輝夜と永淋は俺の知り合いに転移してもらえ」

 

「天馬はどうするの?」

 

「おれは奴らを食い止めた後に知り合いに転移場所を伝える、その後はやることがあるからな」

 

「そう、わかったわ永淋が来たら言っておくわ」

 

「よし、大事な話はこれでおしまいだ。後の話は過去の話でもしよう」

 

「そうね、そうしましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな怒るなよ、輝夜」

 

「怒るわよ!そもそも私はあのころ小さかったししょうがないじゃない!」

 

俺は輝夜の思いで話をしており輝夜がおねしょをした話などをしたら顔を真っ赤にして輝夜が叫ぶ

 

「でもなぁ、10歳になってからおねしょをするなんてなかなかないぞ」

 

「うるさいわね!子供だったのよ!あの時は!」

 

腕を振りポカポカと俺の足を殴る

 

「痛い痛い、もう言わんからやめてくれ」

 

「本当ね!?絶対にもういわないでよ?」

 

「わかったわかった」

 

 

そんなことを話ながら輝夜は思い出したような感じで笑いながら

 

「そうそう天馬、今日はおもしろいことがあったわ」

 

「面白いこと?」

 

「私と結婚したい貴族がね、戻ってきたのよ」

 

「ほぉ、あのあるかもわからない宝をもってきたのかい」

 

「いいえ、ほとんどは探せなかったみたいなのよ」

 

「ほぉじゃぁ結婚はなしになったのか」

 

「そうそう、それでね一人の貴族が蓬莱の玉の枝を持ってきてね」

 

「ほう」

 

「それが本物か確認しているときに男が入ってきてね」

 

「ふむ?」

 

「その貴族の依頼でその宝を作った、代金をまだもらっていないと言い出したのよ」

 

「そりゃかわいそうに」

 

「あの時の貴族の顔!顔を真っ赤にして俯いていたわ!思い出すだけでも面白いわよ!」

 

「皆の前で赤っ恥をかいたのか、そりゃ自殺もんだな」

 

「あの時は笑うのを我慢するのに必死でね」

 

輝夜はクスクスと笑いながらそう話す

 

「ふむ、時に輝夜よ俺はなんの宝を渡せば結婚できる?」

 

「・・・いきなりどうしたのよ」

 

「いや、気になっただけだ」

 

「そうねぇ・・・じゃぁ草薙の剣なんてどうかしら?」

 

「ほぉ・・・あの天叢雲剣といわれるやつか」

 

「そうとも呼ばれているわね」

 

「ふむ・・・実際あるかどうかのものを創造するのは初めてだが・・・」

 

そういいながら天馬は天叢雲剣を創造しようとする

 

すると 目の前に刀が現れザク!っと畳に突き刺さる

 

「どうやら成功したようだ、輝夜みてくれ」

 

刀を引き抜き輝夜に手渡す

 

輝夜はぽかんとしている様子だったが俺の問いかけによってハッ!となりまじまじと刀を見る

 

「・・・本物ね完璧に本物の草薙の剣だわ」

 

「そうか、本物だったかていうか見たことあるのか?」

 

「一回だけね 月で神の集まりがあってねそのときに」

 

「ほぉー・・・」

 

「天馬の能力は本当に何でも創造できるのね」

 

「まぁ・・・ありとあらゆるものを創造する能力だしな」

 

「びっくりしたわぁ出るわけないと思った物がいきなり出るんですもの」

 

「俺も初めてだが驚愕した、まさか見たことのないものを創造できるとはな」

 

「へぇ天馬も初めてだったのねぇ」

 

「ほとんどタバコとか食料だからな創造するものは」

 

「能力の無駄遣いね」

 

「ははっ違いない」

 

 

そんなことを話ながら今日は終わる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




天馬さんのありとあらゆる物を創造する能力・・・おそるべし・・・


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天馬、月人を強制送還させる

前に一日2-3回小説投稿と調子乗ってましたがどうやら僕の東方ストーリーを作るに当たって、想像力が足りないようで頭を捻りながら一回の投稿に5時間ほど費やしてしまいます
みなさまにには申し訳ありませんが一日1-2回の投稿にさせてもらいます
極力多めに書きますのでよろしくお願いします


三日後に月人が来ると輝夜から報告があり輝夜と分かれた後に宿に戻り

 

紫と一緒に輝夜、永淋脱出作戦を考える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

机を挟んで紫と天馬は対峙する

 

 

 

 

「紫よ、突然呼んですまない 三日後に決まった」

 

「へぇ?あの二人を匿うっていう話?」

 

「そうだ、匿うに当たって紫には少し頑張ってもらうぞ」

 

「あら、そうなの?面倒事は嫌いよ」

 

「まぁ、そう言わんでくれ何も一緒に戦ってくれと言うわけではない」

 

「ふーん?」

 

「紫には二人、混乱に乗じて二人をスキマに送ることとなった」

 

「あら?じゃぁもう隠す場所は見つかったのね?」

 

「そうだ、場所は都を出て東にずっと行くと竹林がある そこに二人を転送してくれ」

 

「善処するわ」

 

「そしてその混乱についてなのだが、俺が引き起こす」

 

「へぇ?天馬自らが動くの?」

 

「敵は月人だ、この世界よりもずっと技術が進んでいる。苦戦はするだろう」

 

「月人ねぇ・・・」

 

「そこで紫、俺が足止めしている間に二人をスキマでその竹林に転送させといてくれ」

 

「わかったわ」

 

「では、また三日後よろしく頼むぞ」

 

「えぇ、じゃあ三日後にね」

 

そういうと紫はスキマに入り手を振った後消えた

 

「さてさて・・・三日後ねぇ・・・」

 

紫が居なくなったことで殺風景になる部屋に天馬が呟く

 

「ま、どれほど強いのか分からんが大丈夫だろう死にはしないさ」

 

フッと笑いがこみ上げた後にタバコを取り出し一服

 

そうだ、紫には式になるのと交換にいずれ外のタバコの種類を持ってきてもらおうか

 

そんなことを考えながらタバコを消し眠る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日後

 

 

いつものように輝夜と話しているがそとでの空気がピリピリしている

 

都で編成された兵士だとは思うが皆ずっと月の方を見ている

 

首が痛くならないのかね?

 

「あの兵士たち意味なくね?」

 

「まぁねぇ、でも月人が迎えに来るって爺様にいったら帝に頼んで兵士を雇ったそうよ」

 

「ふーむ・・・こんなにいるとかえって被害が増えるぞ」

 

そんなことを言っているとドタドタと足音が聞こえる、その瞬間に天馬はスキマの中にはいる

 

「輝夜殿!とうとう来ましたぞ奴らが!」

 

「わかりました、行きましょう」

 

輝夜がそう言うと庭に出る

 

兵士達はフラッシュバンでも食らったのか気絶をしている者や目を押さえている者がいる

 

「さて・・・始めますか・・・」

 

天馬も庭に出て様子を伺う

 

「おぉ、デカい船だな・・・しかも空を飛んでやがる」

 

「敵は2-30人と言ったところか」

 

様子を伺っていると懐かしい顔を覗かす者がいる

 

「・・・永淋か、なつかしいな」

 

そんなことを思っていると輝夜と永淋は話終わったのか輝夜を連れ船を出る

 

永淋は矢を放ち百発百中で月人の頭に当てる

 

「おぉっともう戦闘か、では混ざるとしましょうかね」

 

永淋の所に着き大声で叫ぶ

 

「永淋!!久しぶりだなぁ!」

 

永淋はビックリしたような顔で

 

「天馬!?何故ここにいるの!?」

 

「覚えてくれててよかった!すぐに輝夜を連れて逃げろ!」

 

「逃げるっていったってどこに行けばいいのよ!」

 

「俺の知り合いがいる!紫!」

 

そういうとすぐ後ろから紫が登場

 

「はぁい、二人ともご案内~」

 

そういいながらスキマで永淋と輝夜を飲み込む

 

「じゃあ紫!また後でな!!」

 

月人の攻撃を避けつつ叫ぶ

 

「はいはい~」

 

すぐにサッとスキマに入り消える

 

「さぁて!ショータイムだ!」

 

月人の船に乗り込む

 

「な・・・なんだ貴様は!撃て!撃て!」

 

上官らしきものが月の兵士に命令する

 

「当たるかよ!!」

 

すぐに左腕を鋼鉄のように堅い細胞を広げシールドを展開する

 

月人とはいってもビーム砲のようなものは作れなかったのか、現代でいうマシンガンのようなものを一斉に天馬に浴びせる

 

「いずれは崩れる!皆一斉掃射だ!」

 

天馬のシールドに弾は当たり押され気味であるが持ちこたえる

 

弾が尽きたのか銃声は聞こえなくなりリロードをしているようだ

 

辺りはマシンガンの硝煙で見えなくなる

 

その時鞭のような物が兵士を切りさく

 

「なんだ!どうした!」

 

ギャァ!やらウワァー!などの悲鳴が聞こえ上官は戸惑い気味に天馬の方向をみる

 

天馬の左腕にシールド右腕に槍のような物がついている

 

「一気に二つ、開花か」

 

天馬がそう呟きニヤァっと笑う

 

「くそ!奴は化け物か!」

 

と叫ぶ上官に天馬は鞭を延ばし突き刺しながら引き寄せる

 

「ぐぁ!」

 

引き寄せたところで天馬は上官に答える

 

「化け物じゃない、人外だ」

 

そう言うと上官を床に叩きつけ体を半分にする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったな」

 

天馬が暴れた後辺りを見ると血の臭いやら硝煙の臭いやらでいっぱいになり月人の死体が転がる

 

 

「さて、人は初めて殺したが回収しますか」

 

そう言うと死体を集めて吸収する

 

「なんか力が沸いてくる気がするな」

 

すると一気に月人の記憶が頭になだれ込んでくる

 

「ぐ!?・・・ぁっ!」

 

天馬は頭を押さえ悶える

 

上官の記憶には輝夜を捕らえた後の実験内容などが入ってくる

 

「クッ!ウウ!ッアァ!!ッハァ・・・ハァ・・・」

 

「ハァッ・・・ハァッ・・・・殺しておいて正解だったな・・・」

 

全部の死体を回収して屋敷のほうをみてみると兵士達は全員気絶していた、その時小さな女の子が何かを叫んでいるが構わずスキマを広げ竹林に移動する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竹林に着き、周りをみるが誰もいない とりあえず紫を呼ぶとしよう

 

「ゆかっちゃん!」

 

そう言うとスキマが開かれ何時も紫が持っている扇子でペシッっと叩かれる

 

「あ痛!」

 

「ゆかっちゃんってなによゆかっちゃんて。」

 

「いいじゃないか別に」

 

「良くないわよ」

 

「そうかゆかっちゃんもう言わないよゆかっちゃん」

 

「・・・貴方ねぇ「そういえば二人は?」・・・はぁもういいわ」

 

すると ドスンと輝代が落ちてきた、その後にスタッっと永淋が華麗な着地をする

 

「あ痛ぁ!いったーい!」

 

輝夜が腰を押さえながら悶えて叫ぶ

 

「姫様、大丈夫ですか?」

 

永淋が心配しながら輝夜に聞く

 

「大丈夫じゃないわよ!」

 

「そうですか・・・」

 

というような感じで紫と天馬は笑いながらみている

 

「ブッは!輝夜、腰からダイレクトに落ちてきたな」

 

と言うと輝夜は腰をさすりながら天馬の方を見て叫ぶ

 

「見ていないで手ぇ貸しなさいよ!」

 

すると永淋が腕を胸に組みながら言う

 

おぉ、でかいでかい

 

「天馬、久しぶりね」

 

「そうだな永淋」

 

「無視かよ!ふざけんじゃないわよ!」

 

「っと言っているぞ永淋」

 

「まぁ、何時ものことなので」

 

「そうかそうか」

 

「そうかそうかじゃないわよ!」

 

「そんな怒るなよ輝夜、子供じゃないんだから」

 

そう言いながら手を差しだし輝夜を起きあがらせる

 

「ぐぬぬ・・・言うようになったわね」

 

「一人忘れていないかしら・・・?」

 

ゆかっちゃんもとい紫が言う

 

「あぁ・・・忘れてた、永淋こっちが俺の知り合い紫だ仲良くしてくれ」

 

「忘れてたのね・・・どうも、天馬の主人八雲紫ですわよろしく」

 

「よろしく、私は八意永淋って・・・主人?」

 

「えぇ、天馬を式にしたので」

 

「あら、そうなの?」

 

あら、二人とも笑っているけどバチバチと火花がでているよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、永淋と輝夜を隠す

時系列があってるといいんですが・・・・


喧嘩すんなって・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうことなのよ天馬」

 

天馬が式になってことを聞かされ永淋は天馬に質問する

 

「いやー・・・実は「嘘は駄目よ」・・・はい」

 

「実は紫が妖怪と人間の共存する世界を作りたいと言っていてな、それを手伝う為に式になったんですよ」

 

「そういうことですわ」

 

天馬の答えに対して紫が肯定をする

 

「だからって別に式にならなくても手伝えるじゃない?」

 

「うーん・・・式になるともれなくスキマが使えるっていうんでな」

 

「そんなことのために式になったの?貴方は・・・」

 

「ちょっと聞き捨てならないわね、そんなことってなによそんなことって」

 

「私はたった一つの能力の為に一生この主人に使えるつもりかって言ってんのよ」

 

「あら?私の能力はそれぐらいの価値があると思うのだけれど?」

 

「貴方の能力は関係ないわよ、便利でも不便でも能力の為になぜ自由を失わなきゃいけないのよ」

 

「それは天馬の意志であって貴方がどうこういえる事なのかしら?」

 

「言えるわよ、私は天馬をずっと前から知っているのよ。それくらいの権利があるわ」

 

「それは貴方がただ押しつけているだけでしょう?私はちゃんと天馬に拒否権は与えたわよ」

 

「まぁまぁ二人とも、喧嘩はよくないよ」

 

「「貴方は黙りなさい」」 

 

「はい・・・」

 

「天馬は貴方が作る世界を手伝っているだけに過ぎないのだから、その妖怪と人間が共存する世界を作ったら式を解きなさいよ。」

 

「あら、私は付け方はわかるけど解き方はわからないのよねぇ」

 

「なんですって?」

 

「解き方がわからないんですもの、だからしょうがないでしょう?」

 

「その事は天馬には伝えたのかしら?」

 

「ちゃんと伝えたわよ、ねぇ?天馬?」

 

そんな事は聞いていないのだが・・・紫を見ると目が合い肯定するようにという感じでこちらを見ている

 

「あ、あぁ・・・たしか~そんなことを言ってたっけな?」

 

すると紫はニヤァっと口角があがりそれを扇子で隠す

 

「ね?天馬はああいっているのだし別にいいじゃない?」

 

「怪しいわね・・・天馬!!本当に貴方はそれでいいの!?」

 

「え?え~と・・・その・・・」

 

「何で考えてるのよ!そうならそうといえばいいじゃない!」

 

「あらあら・・・永淋さん、天馬がかわいそうですわやめてあげなさいな」

 

「貴方は関係ないでしょ!私は天馬に聞いているのよ!天馬!どうなのよ!?」

 

「あー・・・それはだな~・・・そのぉ~・・・」

 

 

 

 

 

 

「おやおや・・・なんか騒がしいと思ったら・・・何かあったのかい?」

 

 

 

後ろから聞こえた声はてゐだった

 

 

 

てゐ!ナイスだ!この話を流してくれ!

 

 

 

 

 

「貴方は・・・誰?」

 

永淋がてゐにそう問いかけるとてゐは笑いながら答える

 

「あぁ、紹介が遅れたね。わたしゃこの竹林に住んでいるてゐってもんだ、あんたらはここに住む新しい住人だね?」

 

「そうだけど・・・」

 

「なら話は早い、ついて来な。案内するよ」

 

「てゐ、遅いじゃないか」

 

「ごめんごめん、少し野暮用があってね さ、善は急げださっさといこうじゃぁないか」

 

「天馬、私は帰るわよ」

 

「あぁ、すまんな紫。また用事があったら呼ぶよ」

 

そういうと紫がスキマにはいる消える

 

「ちょっと!待ちなさいよ!話はまだ終わってないわよ!」

 

「まぁまぁ永淋、喧嘩していてもしょうがない。とりあえずてゐについていこう」

 

「ふんっ!」

 

そういうと永淋と天馬はてゐについていく  

 

 

あれ?なんか忘れているような・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしかして・・・私ボッチ・・・?」

 

 

輝夜だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分ほど歩いていると

 

「さ、着いたよ ここが人間に見つかりにくい場所だ」

 

「ふむ、確かにわかりにくいね」

 

竹林の中でも一番といってもいいほど茂っている

 

「まぁあとは自分達でなんとかがんばるんだね」

 

「ありがとうてゐ、兎達に関しては準備が整い次第この女の人、永淋に言ってくれ」

 

「あぁ、わかったよ そいじゃぁ私は兎達がいるところに戻るよ。」

 

「あぁ、じゃぁまたな」

 

そういうとてゐは竹林の中に走っていった

 

「よし、輝夜ここら一帯に能力で見つからないようにしておけ」

 

「人使い荒くない!?」

 

「しょうがねぇだろ、輝夜ができるんだから」

 

「はぁ・・・わかったわよ・・・」

 

「永淋、紫のことは気にするな。何、俺は結構自由に暮らしているから心配はしなくていい」

 

「あなたがそういうならいいけどね、それで?あの兎が言っていた私に用ってなに?」

 

「あれはてゐっていってなここに住んでいた兎を束ねるリーダーだ」

 

「へぇ?」

 

「まぁあれだ、その兎にある程度の知識を与えられる薬を作ってあげてほしい」

 

「なんでよ?」

 

「ここは元から兎の場所だから業に従えということだ」

 

「それならしょうがないわね、がんばってみるわ」

 

「あぁ、よろしく頼むぞ永淋俺はそろそろ行くからな」

 

「あら、もう行っちゃうの?寂しいわねぇ」

 

「まぁそういうな、またあえるよすぐに」

 

「そう、わかったわまたあいましょうね?天馬」

 

「うん、また会おう。永淋」

 

 

スキマを出し都に戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




永淋編中盤終了!

次は妹紅編です!


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天馬、妹紅と対峙する

久しぶりの更新
みなさんお久しぶりです すこしばかり東方の新しい作品をやっておりました

シンキロウが面白すぎます


さて都に戻った天馬は?

 

 

 

「ふむ、さっきの叫んでいた少女、妹紅だと思うが・・・」

 

 

辺りを見回すがそれらしき少女はいない

 

天馬は輝夜に渡された蓬莱の薬を爺と婆に渡した後、帝が編隊した兵士にも渡して帝に渡しておくように伝える

 

 

「さてさて、妹紅を探しますか」

 

妹紅に伝えることがあるため、絶対に見つけなければならない

 

「どこいったんだ・・・?」

 

そういいつつ都をウロウロしていると屋敷のちょっと離れたところで見つける

 

「お、いたいた。」

 

見つけるとすぐに妹紅の所に行き話しかけてみる

 

「よう」

 

「・・・あんた誰」

 

妹紅は俯いたまま答える

 

「俺は天馬ってもんだ、お前は藤原の娘だろう?」

 

「! なんで知ってんの!?」

 

「知っているから知っているのだ」

 

「・・・で?私になんか用?」

 

「お前なんでここにいるんだ?」

 

「あんたには関係ないでしょ」

 

「ふむ・・・当ててみようか、察するに輝夜に辱めを受けた父親の敵って所だろう?」

 

「・・・何で知っているのかしらないけど、そう言うことだよ」

 

「そうか、輝夜をどうしたい?」

 

「殺したいね!、あいつのせいで父はあれからずっと酒浸りなんだ!、話しかけてもなにをしてもずっと酒を飲んで何もしなくなった・・・!」

 

「ふむ・・・殺すことはできないぞ?」

 

「え・・・?」

 

「輝夜は不死なんだ、蓬莱の薬というのを飲んでな」

 

「・・・じゃぁボコボコにして、父に謝らせてみせる!」

 

「おぉ、怖い怖い。でも輝夜は強いぞ?なんせ不死だからなお前ごときじゃぁなぐれないかもな」

 

「じゃぁどうすればいい!」

 

「・・・そうだな、お前も不死になればいいんじゃないか?」

 

「なれるならとっくになってるさ!」

 

「ほう、じゃぁいいことを教えてやろう。」

 

「いいこと?」

 

「輝夜は帝に蓬莱の薬を渡した、だが帝は危険を恐れて飲まないだろうよ、それならどうするか?捨てるしかあるまい」

 

「帝の所に行って薬を奪えと言いたいのか・・・?」

 

「いや、それも無理だろう、そこでだ・・・妹紅お前は富士の山に行け」

 

「なんでだ?」

 

「帝が編隊をして富士の山に捨てに行くからだ、そこでお前は薬を奪えばいい」

 

「無理だよ!私だけじゃ兵士なんか相手にできない!」

 

「だれが一人だといった、俺も行くさ」

 

「・・・あんた弱そうだけど大丈夫なの?」

 

「ふむ・・・そう見えるか、俺は大丈夫だよ強いから」

 

「そうは見えないけど一応頼りにしておくよ」

 

「おう、しとけしとけ、だが妹紅。お前は不死に本当になりたいのか?不死は辛いぞ?死ぬことができないからな」

 

「あいつをボコボコにできるなら化け物にでもなんでもなってやる」

 

「そうか、わかったじゃぁ最後に父親の顔でもみとけ、不死になったらもう会えないからな」

 

「なんでだ?」

 

「不死は禁忌だ都はお前を捕らえるかもしれんからな」

 

「・・・わかった、最後に会ってくるよ」

 

「おう、ここでまってるから早くいってきな」

 

 

そう言うと妹紅は走ってどっかいってしまった

 

多分家に戻るんだろう

 

 

 

「うーん、これからどうすっかね」

 

「一応輝夜姫の話は知っているからな、薬は多分捨てるだろう」

 

そんなことを思いながら煙草を吹かしていると妹紅が戻ってきた

 

「お?早いな逢ってきたか?」

 

「・・・いや逢わなかった」

 

「それはどうして?」

 

「蓬莱の薬が手に入っても未練が残りそうだったから・・・」

 

「そうか、それはそれでいいかもな」

 

「それで?これから私はどうすればいいんだ?」

 

「そうだな、これから富士の山の麓で待ち伏せするか」

 

「え・・・?いきなり?」

 

「善は急げ、だ そうと決まればいくぞ妹紅!」

 

天馬は妹紅の体をガシッ!と掴み富士の山に向かってジャンプする

 

 

「キャアアアア!降ろして!降ろせ!」

 

いきなり飛んだせいか妹紅は叫びながら服にしがみつく

 

「グエェ!首の所を掴むな!絞まる!」

 

「降ろせ!」

 

「すぐつくから首を掴むなってば!おい!」

 

そんなことをしながら富士の山に行く

 

 

 

30分後

 

 

「ハァッ!ハァッ!着いたぞ妹紅」

 

「やっと降ろしてくれたか・・・はぁー怖かった」

 

「首を掴むんじゃねぇよ、苦しいだろうが」

 

「あれは何にも説明しないあんたが悪い!」

 

「善は急げだろいつ兵士がくるのかわからんだろうよ」

 

「それでも説明くらいはしてよ!」

 

「あ~・・・はいはいわかったわかった」

 

さてと、即席テントを創造してあとは食べ物を創造しておく、うん完璧完璧

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妹紅よ、うまいか?」

 

「うん?あぁ美味しいよ、初めて食べたけど」

 

オムライスを頬張る妹紅、口にケチャップついてまっせ

 

「そうかそうか、それはオムライスというやつだ」

 

「おむらいす?」

 

「そうそう、オムライス」

 

そういいながらティッシュで妹紅の口の周りを拭く

 

「オムライスだけは作れるからな俺は」

 

「へぇ・・・」

 

そう、カップラーメンなんかは作れるが料理はできない、でもオムライスは好きだから作れる

オムライスしか作れないためいろいろ試行錯誤をしながら作っている、プロにも絶賛されるレベルだ。

 

「さて妹紅よ、明日は早い、飯くったらさっさと寝なさい」

 

「寝るったって・・・どこに?」

 

「そこにテントがあるだろう?そこで寝ればいい」

 

「あんたは寝ないのか?」

 

「ん・・・?俺はいいんだよ火見てなきゃならんし」

 

「そう・・・」

 

なんで寂しそうに言うんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃぁ・・・おやすみ」

 

「はいよ、お休み」

 

そういうとモゾモゾとテントの中に入りタオルケットをかぶって寝てしまった

 

俺は焚き火を見ながら煙草を吹かしている

 

蚊がうるさいため蚊取り線香も付けておこう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妹紅が不死になるのが楽しみでしょうがない

 




いやー!腹黒いですね最後

しかし何日ぶりの更新だろう?これからはもっと早く更新しよう


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天馬、妹紅と共に薬を奪う

PROTOTYPE2買いました、2での能力もこの小説に織り交ぜる予定です!


富士の山の麓に着いてから三日たった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天馬は創造した双眼鏡で辺りを見回してから呟く

 

「お、来たな。随分遅いじゃないか」

 

帝が編隊した兵はゆっくりと富士の山に二列で向かっている

 

「おい妹紅、そろそろ起きろ」

 

「クー・・・クー・・・うーん・・・」

 

現在 今の時間でいう朝5時くらいだ

 

「おいったら、起きろってんだよ寝坊助」

 

「んー・・・?」

 

「兵が来たから出発するぞ」

 

「あとちょっと寝かして・・・」

 

「・・・あー・・・なんか俺も眠くなってきたなー妹紅の所に入ることにしよう」

 

寝てる妹紅の横にもぞもぞと入り妹紅に抱きつく

 

「うひゃぁああ!?なにすんだよ!?」

 

「うん?もっと寝たいんだろう?寝ればいいじゃないか」

 

「わかった!起きる!起きるからはなせ!」

 

「しょうがないなぁ」

 

そういうと妹紅から離れ起きあがる

 

妹紅も一緒にもぞもぞと起きあがる、顔が真っ赤な状態で

 

「どうした?顔が赤いぞ、風邪でも引いたか?」

 

「誰のせいだよ誰の!」

 

「少なくとも俺のせいじゃねぇな」

 

「お前のせいだよ!」

 

「はっはっは」

 

「笑ってんな!」

 

「まぁまぁ、起きたことだし出発しようぜ」

 

「・・・わかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

兵士に見つからないように後ろから着いていくと、後ろから息が切れる音がする。

 

 

「なんだ妹紅、もうへばってんのか」

 

「ぜぇっ・・・ぜぇっ・・・あんたらが早いんだよ・・・」

 

「しょうがないなー、ほら乗れ」

 

そう言うと天馬はしゃがみ手を後ろに回す

 

「・・・?なに?」

 

「おんぶだ、これなら楽だろう?」

 

「え!?いいよ別に!」

 

「いいって遅いんだもん妹紅、いいから乗れよ」

 

「・・・じゃぁお言葉に甘えて」

 

天馬の肩に足を起き頭に手を乗せる、え?肩に足?

 

「おい、これ肩車じゃねぇか」

 

「こっちの方が楽なんだもんいいじゃん」

 

「こっちが楽じゃねぇんだよ」

 

「はいはい出発出発~!」

 

「話を聞けよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて今は昼時兵士達は昼飯を食らっている

 

俺たちも岩陰に隠れながら昼飯を食べる

 

「うまいなぁ、このすばらしい景色をみながら握り飯!うーん!最高!」

 

「ソーデスネ」

 

妹紅は棒読みで肯定する、そんな悪い子にはお仕置きをしなきゃね

 

 

「あ、妹紅あそこにデカい鳥が飛んでいるぞ」

 

「ん?どれどれ」

 

妹紅が横を向いたときに昆布おにぎりを創造で激辛七味おにぎりにかえておく 外見はなんにもないただの握り飯だが中身は七味だ

 

「気のせいだわ、すまんな」

 

「なんだよそれ」

 

そういいながら妹紅はアーンと口をあけ激辛七味おにぎりをパクリと食べる

 

すると、みるみる妹紅の顔が赤くなり目は涙目だ

 

「どうした妹紅、顔が真っ赤だぞ風邪でも引いたか」

 

「・・・・み、水をくれ!」

 

「んー?水?水が欲しいの?」

 

「そう・・・!早く!」

 

「はいよ」

 

創造で炭酸水を妹紅に渡す、妹紅はそれに気づかず炭酸水をとるやいなやゴクゴクと飲み始める

 

「~~~~~!!!!」

 

「はぁ~はっはっは!ひ~っひひい!腹が痛い!」

 

 

もだえる妹紅・笑う天馬

 

 

辛いものを食べた後に炭酸を飲むと舌が焼けるように痛いのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

富士の山を半分ほどのぼったころ

 

 

「妹紅~ごめんってばぁ、少しばかりの戯れなんだってぇ」

 

「・・・・」

 

「無視すんなよ~妹紅~」

 

「・・・・」

 

ガン無視である

 

「ほら、あめ玉あげるから機嫌直してよ」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「肩車しろ」

 

「え?」

 

「肩車しろ、それで許してやる」

 

「それで許してもらえるならお安いご用さ」

 

よっこいしょと妹紅を肩車してあめ玉をあげる

 

「さて、あともうちょっとだがんばるぞー」

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

富士の頂上まであと少しというところで岩陰に妹紅をおろす

 

「?・・・いかないのか?」

 

「いやぁ、妹紅はここで待ってな薬は俺が持ってきてやる」

 

「あぁ、うんわかった」

 

さてさて行きますかね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ、兵士共。蓬莱の薬は持ってきたか?」

 

「!!お主は帝に薬を持っていけと申した者ではないか、なぜここに?」

 

「いやぁ、この山の神様がここで燃やすのをやめて欲しいということでな、私が責任をもって処分をする、蓬莱の薬を渡してくれ」

 

嘘であるが無用に殺生はしたくないため、兵士達に告げる

 

 

「・・・ならぬ」

 

「へぇ?それは何故だい?」

 

「帝は蓬莱の薬をこの山に捨てよと命を下さった、だから私たちが捨てに行く」

 

「・・・渡さないとどうなるか教えてやろうか?」

 

「どうなろうがこの薬は必ず捨てに行く、帝直々の命だからな」

 

「そうかい、そりゃ残念だ」

 

 

 

 

 

「存分に後悔しな」

 

腕を鞭状態にして拡散するように力を入れ隊長の後ろにいる兵に狙いを定める

 

「皆の者!奴をころせ!」

 

「おせぇよ」

 

 

 

隊長らしきものが言い終わった頃には兵士全員鞭に絡み惨殺される

 

 

 

「!!化け物め!薬は絶対に渡さんぞ!」

 

 

隊長はそう言いながら妹紅の方角に逃げる

 

 

「妹紅!奴が薬を持っている!殺せ!」

 

岩陰から顔を覗かせている妹紅に叫ぶ

 

「え!?どうすればいいの!?」

 

「転ばせればいい!この坂は急だ!ひとたまりもない!」

 

「どけぇ!小娘!」

 

「っ!うらぁ!」

 

妹紅が隊長らしき者に足払いをする 妹紅も転びそうになったが天馬が腕を鞭状態にして足に絡んでいたので落ちなかった

 

「ぐあ!!!!」

 

 

隊長らしきものはものすごい勢いで下に落ち岩にぶつかる

 

 

 

妹紅の所に行きよくやったとほめてから岩にぶつかって血を流している隊長の所にいき薬を奪う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、妹紅、これが蓬莱の薬だ。遠慮せずに飲め!」

 

蓬莱の薬を妹紅に手渡す

 

「遠慮せずにって・・・」

 

「さぁ飲め!今飲め!すぐに飲め!今のうちに飲まないと戸惑いが生まれるぞ!」

 

「わかったわかった!」

 

妹紅はおそるおそる薬を口に入れてゆっくりと飲む

 

飲んだ瞬間妹紅はうずくまり胸を押さえている

 

「う・・・!ああぁあああ!」

 

「大丈夫か!?妹紅!」

 

「がぁああぁ!」

 

「!!」

 

妹紅の髪がどんどん白くなり目が充血したように赤くなっている

 

「はぁっ!はぁっ!」

 

「気分はどうだ?妹紅?」

 

「・・・最高に最悪だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もこたんINしたお! 隊長らしき者は岩笠と捉えてください


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天馬、風見幽香と対峙する

PROTOTYPE2のサブミッションがなかなか多すぎてはまります


不死となった妹紅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どれどれ、ちょっと痛いが我慢してくれよ妹紅」

 

「え?」

 

髪が白く目が赤くなった妹紅が本当に不死となったのか、確認するため妹紅の指を口に含みガリッ!と指の腹を歯で皮だけを少しはがす

 

「ッ!痛った!」

 

「妹紅、指を見て見ろ」

 

すると妹紅の指が血で滲んでいたのに、数秒すると皮が再生され血も止まった

 

妹紅が赤い目を見開いて自分の指をまじまじと見ている

 

 

「おぉ、これで妹紅も俺と輝夜の仲間だな!」

 

「え?あんた不死だったの?」

 

「おう、不死っぽい不死だ、蓬莱の薬は飲んでいないがな!」

 

「なんだよ不死っぽい不死って・・・」

 

「こまけぇこたぁ気にするな!妹紅!不死おめでとう!」

 

「なんかうれしくない・・・」

 

「そういうな、なりたくてもなれない人だっているんだからな」

 

「ふーん・・・」

 

妹紅が不死になったことで同族が増えたように思えて若干嬉しい

 

「さて妹紅よ」

 

「ん?」

 

「妹紅は不死になっただけであり強くはない、だからお前は鍛えろ!」

 

「どうやって?」

 

「そうだな、旅をして出会った妖怪に喧嘩を売ったり、妖怪退治屋になって日本を渡り歩くとかだな」

 

「ふーん」

 

「まぁ俺がいたら修行にもならんだろう、これから妹紅は一人で旅をしろ」

 

「え!?無理だよ!!何にも分からないし!」

 

「なんとかなるさ、人間気合いがあればなーんでもできる!」

 

「でも」

 

「でもじゃない、輝夜をボコボコにしなくていいのか?」

 

「う・・・」

 

「俺がいると鍛えられないから輝夜を倒せないぞ?」

 

「うぐぐ・・・」

 

「まぁ、そういうことだ。妹紅お前はこれから一人で生きて一人で修行をしろ」

 

「うーん・・・わかったよ・・・でもずっと一人なのか?」

 

「いや、不死を受け入れてくれる奴がいればそいつについていってもいいし一人で修行するのもよし、妹紅の頑張り次第だな」

 

「ふーん・・・じゃぁ天馬についていっていい?」

 

「は?話聞いていたか?俺がいると鍛えられないんだってば」

 

「なんでよ?別に修行すればいいじゃない」

 

「俺は旅をしているから修行する時間なんてないの、わかった?」

 

「少しずつ修行すればいいじゃん」

 

「いやいや、お前さん俺は寝るとき食べるとき用事があるときでしか時間はとれないから少しもなにもできないんだってば」

 

「でも一人だとなにすればいいのかわかんないし妖怪に対して助言がないとただやられるだけだよ?」

 

「うーん・・・・でもなぁ俺についてくると危険がいっぱいだぞ?」

 

「そんときはそんときでしょ、じゃぁ決まりね」

 

「お、おい」

 

「早くいこうよ?旅するんでしょ?」

 

「ふーむ・・・ま、いいだろう後悔はするなよ?」

 

「わかったわかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから70年ほど経ち、妹紅は背は伸びるわなんか火の妖術使えるようになるわ料理なんかもできてきている、俺が実の娘の用に甘やかしたりしたりするせいかワガママもすこし増えてきたり小言が多くなったり・・・、朝起きるのが遅いだ、早く飯を食べろだとか、耳掻きしてだとか、暇だからどこかつれていけだとか、 カップルか!リア充臭ぇ!

 

 

そんなこんなで旅をしていると大きな黄色い草原が目の前に現れた

 

「おぉ。向日葵じゃないかすごいな」

 

「?向日葵(ひまわり)?何それ?」

 

「花の名前だよ、いや、俺もここまですごいのは初めてみた」

 

ん?向日葵?なんか聞き覚えがあるような、とてつもなく嫌な予感がよぎる

 

「へぇ、綺麗だねぇちょっと見に行ってくるよ」

 

「あ!おい!」

 

そう言うと妹紅は向日葵畑に向かって走っていった、やはりまだ少女なのだなと思う

 

「・・・いっちまったか、もうちょっと落ち着いてくれないもんかね」

 

そう言うと気の木陰に入り木の幹を枕代わりにして寝っころがり煙草を吹かす

 

「・・・・雲一つない青空だな、寝るのには最適だ」

 

あたり一面向日葵 空は青空晴天 そして気温も暑くもなく寒くもないすこし暖かくてポカポカしているくらいだ

 

いやな予感などはとうに忘れてずっと空を眺め煙草を吹かし時折はしゃいでる妹紅をみて微笑み手を振られると俺も手を振り返す、そんな感じに時間を使っていく

 

なかなかにいい時間の費やしかたである、こんな時間がずっと続けばいいのにと思うほどに

 

煙草を吹終わり少し目を休ませる為にアイマスクを創造し付け、ゆったりしていると頭の方か女性の声が聞こえる

 

「こんにちは」

 

「ん?あぁこんにちは」

 

アイマスクはめんどくさいので取らない

 

大人びているようで可愛らしい女性の声だ、さぞかし美人なのであろう、だが自分はいまそんなことはどうでもよく思いこのゆったりとした時間を満喫するために早く行ってくれとばかりに少しそっけなく返答をする。

 

「綺麗でしょ?この花畑?」

 

「あぁ、こんなにすごいのは初めて見たよ、絶景だね」

 

「そう、でもこの花にはまだ名前がないのよ」

 

ん?あぁそうか向日葵はまだ外国の花だったはずだ、このころ日本にはまだなかったはず、故に日本名はまだないというわけか

 

「そうかい、そりゃ残念なこって」

 

「そうね、でもあなたさっき花の名前行ってたわよね?」

 

「ん?あぁ向日葵か、あれは俺がとっさに思いついた名前だ」

 

そう言い訳をしてそのことはなかったかのように言う

 

「へぇ?それにしては妙に知っていた風に言っていたわね?」

 

「そりゃお前さんの勘違いだ、俺はこの花の名前をしらないから適当ぶっこいただけだ、特に深い意味はない、自分の子供が生まれたら名前を付けるだろう?そんなもんだよ」

 

「ふーん?」

 

 

 

 

なんなんだこの俺のゆったり時間を邪魔する人は、眠気もさめてしまったじゃないか

 

そう思いながらアイマスクをとり女性の声がした方を見てみるとそこには赤いチェックのスカートを履き上着も赤いチェックで纏めた女性が立っていた

 

その瞬間俺はこの女性は風見幽香だということを悟る

 

やべぇ、困った

 

 

 

「お、おや、これはこれはお美しい女性ですね」

 

女性は外見を褒めたらなんとかなるという自分の考えを信じて言葉をだす

 

 

「あら、ありがとう、私の名前は風見幽香・・・あなたの名前は?」

 

「あ、あぁ俺の名前は天馬っていうんだ以後よろしく」

 

「よろしくね?天馬」

 

「あ、あぁ」

 

やばいやばいどもりまくってる、冷や汗もハンパなく吹き出ている

 

「あら?どうしたの?そんなに汗をかいて」

 

「いやぁ、暑くなってきたものだから汗が出ているのですよ」

 

「あら?そんなに暑いかしら?」

 

「ま、まぁそこは個人差があるので」

 

「そうね、ところで私の花畑で遊んでいる女の子は誰かしら?」

 

「私の連れですよ、あまりの絶景さに胸をおどらせているんでしょう」

 

「それはうれしいのだけれど、勝手に入られると困るのよねぇ」

 

「それはすいませんあとで言っておきますいまはご勘弁願いませんでしょうか?」

 

「だめよぉ、勝手に人の場所に入ってはいけないっていうことは教えてもらっているはずでしょう?お灸を据えないといけないわよ?」

 

「いや、それは私の不備です本当にすみません」

 

「あらあら・・・貴方が責任もってくれるっていうの?」

 

「そうしたいのは山々ですが、そろそろ行かなければならないので・・・」

 

そういいながら腰をあげ妹紅を呼ぼうとすると後ろからただならぬ殺気が漏れているのが分かる

 

「駄目よ、責任はちゃんと負わなきゃ」

 

幽香は持っていた日傘を俺に向け妖力を放つ

 

「!!」

 

間一髪避けて自分の居たところを見るとクレーターになっていた

 

「なにすんだ!」

 

「責任を負うんでしょ?だったら死んで償いなさいよ」

 

「むちゃくちゃなこと言うな、俺は死にたくない」

 

「あら、残念。じゃぁ私が殺してあげるわね」

 

すると幽香の腕が俺の顔にクリーンヒットをする、天馬は吹っ飛び地面に着地してゆっくりと起きあがる

 

「ッッ!いてぇじゃねぇか・・・殺すぞ手前!」

 

天馬は幽香に負けじと殺気を放つ

 

「あら、まだ生きてるの?虐めがいがありそうね」

 

「こちとら人間じゃないんでね、悪いが抵抗させてもらうぞ!」

 

とりあえず妹紅を巻き込みたくないのでジャンプで逃げる

 

「どこへ行こうというのかしら?」

 

「ぐあっ!!」

 

幽香は天馬に追いつき天馬の背中に蹴りを入れる

 

すると天馬は地面に急降下して木々を倒しながら着地をする

 

「クソ!これでも喰らいやがれ!」

 

「!!」

 

幽香のすぐ近くの地面に鞭を放ちささったところで距離を一気に縮め盾を使い当てる

 

幽香はギリギリガードをしたようだがダメージは喰らっている

 

「痛いじゃないの、許さないわよ」

 

「まだまだいくぞ!オラァア!」

 

天馬は幽香の両腕を掴み腹に膝を当て怯んだ隙に脇腹に蹴りを炸裂させる

 

「ッッ!なかなかやるじゃない!」

 

「そりゃどうも、俺は一応は強いほうなんでね!」

 

二人は距離を詰めつつ間合いをとる

 

先に繰り出したのは幽香だった

 

「死になさい!」

 

幽香は俺の首を掴もうとするが俺はそれを危なげに避ける、その隙に幽香にアッパーを決めようとした瞬間に目の前に幽香の手があり妖力を圧縮したように穿つ

 

「甘いわね!」

 

「クソ!」

 

なんとか必死に避けたが左胸を貫通させられた

 

「ガァア!ッハ!」

 

俺は後ろに仰け反り痛みを我慢して幽香との距離を取る

 

「痛いでしょう?苦しいでしょう?さっさと楽になっちゃいなさいよ?」

 

「ハァッ!ハァッ!生憎と俺は頑固なんでね!ハァッ!まだ抵抗させてもらうよ!」

 

左胸に手を当て空いた穴を埋めるように細胞を入れ再生させる

 

「・・・?再生能力持ちかしら?」

 

「ハァッ!ハァ~・・・よしこれでオッケイだ、始めようぜ?」

 

「キリがないわね!」

 

幽香はまた俺に妖力のレーザーを当てようとするが避ける、一度喰らったものはもう喰らわん

 

「次はこっちから行くぞ!」

 

「!?」

 

「オオオォラァア!」

 

思いっきりダッシュをして幽香に近づいた瞬間両足を掴み軽くジャンプをし地面に思いっきり全力を出して叩きつける

 

幽香はプアッっと鼻血を出し逃げようとする

 

「ック!」

 

「逃がすかよ!!」

 

逃げようとした幽香を鞭で絡め直ぐに距離を縮め細胞で極限まで堅くした肘を幽香の首に当てる

 

幽香は吹っ飛び服はボロボロ、満身創痍という言葉が一番似合うまでになっていた

 

「フザケンジャないわよぉおおおおおおおおおお!!!」

 

幽香が両腕を前に出し俺に向かって二つの巨大なレーザーを放つ

 

「なめんなああああああああああああああああ!!!!」

 

同じく天馬も腕に全細胞を固め腕を突きだし細胞を放出させる

 

 

ものすごい爆発音と衝撃波で周りの木々は倒れ二人に接地している地面はめり込む

 

そして最後に立っていたのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァー・・・!ハァー・・・!ハァー・・・!勝ったか・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

天馬だった




書いている途中二回全文章を削除してうなだれていました 

自動保存なんていう便利な機能があったんですね おかげで助かりました


さてさて幽香に勝った天馬はどうする?


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天馬、風見幽香に勝利する

僕は元気です。


幽香との戦いから数時間後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天馬は幽香を膝枕していた。

 

 

「はやく起きねぇかな・・・」

 

幽香が気絶してからもう三時間ほどたつ

 

「足がしびれてきたよ」

 

一向に起きない幽香を見ながら呟く

 

「こんにゃろ、早く起きやがれ」

 

幽香のほっぺをつねり引っ張ってみる   が起きない

 

「・・・ははは、こりゃおもしろい。」

 

こんどは逆にほっぺを両手で押してみる、たこみたいな口だ

 

「ブフッ!クソワロ!」

 

次はぐいんぐいんと押しながら回転させる

 

「やべぇ、面白い面白すぎるよ」

 

そんなことをしていると幽香がジト目でこちらを見ながらなにかを訴えている

 

「ちょ、ひょっと!ひゃめ!やめなひゃい!」

 

ぐいんぐいんと押しているせいか呂律がひどいことになっている

 

それでもニコニコしながら幽香のほっぺたで遊んでいると

 

「やめ!やめろっていってんでしょう!」

 

「ぐぇ!」

 

顔をグーパンされた

 

2mほどとばされ痛みに耐える

 

「いてぇな、なにすんでい」

 

「貴方がやめないからでしょう!」

 

「手前が起きないのが悪いだろうが」

 

「起きてから言ったわよ!」

 

「それもそうだな」

 

はっはっはと笑っていると幽香が立ち上がり髪をくしゃくしゃと掻き呆れ顔で見てくる

 

 

「なんだよ?」

 

「なんで貴方トドメを指さなかったの?」

 

「ん~?めんどくさいから」

 

「めんどくさいって・・・」

 

「だってめんどくさいもん」

 

また幽香が呆れ顔をして次はこちらをみてこない

 

「はぁ・・・こんな奴に負けたのね私は・・・」

 

呆れを通りこしてうなだれている

 

「そうだおまえの負けだ!はっはっは」

 

腕を腰にやり指をさして思いっきり笑い飛ばした

 

「凄く苛つくわね!」

 

「負けたら苛つくのは当たり前だろう?」

 

キョトンとした顔でさも当然のように言う

 

「・・・」

 

腕を強く握りプルプルと震えているのでそろそろ冗談はやめよう

 

「冗談だ、すまなかったな」

 

立ちながら斜め45度で謝罪

 

「え、あ? あ、うん」

 

「さて、僕は勝ったのでなにか一つ言うことを聞いてもらおうかな」

 

胡座をかき、よっこらせと座る

 

「え!?なにそれ聞いてないわよ!」

 

びっくりしたような顔で反論をする幽香

 

「いま決めたんだもん」

 

「ッ~~~!」

 

苦虫を噛んだように顔を歪める、怖いからやめて

 

「なに簡単なことだ、腕を組んでみてくれ」

 

そういうと幽香はハァ?っと言ってきた

 

「そんな簡単なことでいいの?追加は無しよ?」

 

「それだけで十分だ」

 

頭にクエスチョンマークをのっけている幽香は言われたとおりにしてみる

 

「・・・いい!」

 

グッジョブ!と親指をビシっとあげ爽やかにかつ最高の笑顔で叫ぶ

 

胸がすてきなんです、腕の上にドンっと乗っかっている二つの西瓜、最高です、立派な物です

 

そして座っているため下から見上げている状態でありこれもまた格別

 

「・・・?なんなのよ?」

 

まだ頭にクエスチョンを乗っけている幽香に気づかれるわけにもいかないので濁す

 

「っとまぁそれだけですわ、ありがとう」

 

「・・・?どういたしまして?」

 

そんなことをしていると辺りは少し暗くなり夕焼けが見えてくる

 

見ているとまずいことを思い出してきた

 

「あ、やべぇ!妹紅置きっぱだ!」

 

「え?あぁ、あの女の子?」

 

「そうそう、あの花畑にもどらねぇと!こうはいってられねぇ!行くぞ!」

 

幽香の手を握り向日葵畑に急いで戻る

 

「え!? キャァ!なんで私まで!?」

 

顔を真っ赤にして幽香は質問をするが

 

「なんとなくだ!」

 

「なによそれ!」

 

全速力でかつ幽香がおれについていけるようにに向日葵畑にむかってはしる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妹紅!」

 

向日葵を見るのに飽きたのか、少し離れたところで寝ころんでいた

 

「天馬!」

 

声に気づきすぐにこちらをみて走ってきた

 

「帰ってきたぞー!!」

 

そんな妹紅を受け止めるべく腕を大きくひろげさぁこいと言わんばかりに待っていると

 

「遅せぇえええんだよ!」

 

バキッという音とともに天馬は崩れスネを押さえて悶絶する

 

「グオオオオオォォォオォォ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

 

「おれは 妹紅がこちらに走ってきたので受け止めようと

思ったら いつのまにか弁慶の泣き所を蹴られていた!」

 

な… 何を言っているのか わからねーと思うが 

 

おれも 何をされたのか わからなかった…

 

頭がどうにかなりそうだった…(主に痛みで) グーパンとか腹蹴りだとか

 

そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ!

 

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに漫才みたいなことをしているのよ・・・」

 

妹紅と天馬のお馬鹿劇場を見ながら幽香は呟く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪かったな妹紅、待たせてしまったようで」

 

妹紅に謝罪をして頭をポンポンする

 

「いや、現に待ったんだよ、一体なにしてたんだよ、でこの女誰だよ?」

 

「ん?あぁこちら幽香さん、さっきまで決闘してた」

 

「どうも、初めまして風見幽香です宜しく」

 

「あ、宜しく。妹紅と申します」

 

礼儀が正しくてなによりだ、さながらサラリーマンの名刺交換のようだぞ二人とも

 

「それで?なんで決闘してたんだよ?」

 

天馬の方に向き聞きたいことを聞く

 

「いやぁー妹紅が勝手に向日葵畑はいるから怒られちゃったんだよ」

 

「え?そうなのか?すまなかったな」

 

テヘ★ってきこえそうなほど軽い謝り方だ

 

「ずいぶん軽いな妹紅、俺と幽香さんに謝りなさい」

 

「すまなかったね、あんたの場所だとは思わなかったんだ」

 

幽香の方に向き斜め45度の角度で頭をさげる、うむうむ、礼儀作法を教えておいてよかった

 

「いいわよ、許してあげるわ」

 

にこりと笑い幽香は許してあげた

 

「よし、えらいな妹紅、俺には?」

 

「えー・・・なんで天馬なんかにわ」

 

「俺には?」

 

謝罪が聞こえないのでもう一回言わせる

 

「いやーだからさ」

 

「俺には?」

 

もう一回

 

「・・・」

 

俯く妹紅 

 

「妹紅?」

 

答えなくなったので名前を呼ぶ

 

すると妹紅が何か言った

 

「・・・め・・・な・・・さい」

 

「うん?」

 

よく聞こえなかったのでもう一回聞いてみる

 

「・・・ごめんなさい」

 

今にも泣きそうな顔で妹紅は謝る

 

「うん、いいよ許す」

 

妹紅は俯いている、泣かれては困るので妹紅をこちらに引き寄せ頭を撫でてやる

 

「待たせてごめんな妹紅、腹減ったろ?飯でも食おう」

 

笑いながら撫でる

 

「うん・・・」

 

泣きそうな顔から嬉しそうな顔になったので撫でるのをやめる

 

「仲いいわねぇ」

 

幽香がニヤニヤしながらこちらを見てくる

 

「まぁな、親子みたいな物だし」

 

親子といったら妹紅が悔しそうな顔をしたがなにをそんなに悔しがってんだ

 

 

「あ、そだ、幽香も飯食わないか?夜桜ならぬ夜向日葵もいいかもしれんぞ?」

 

夕飯のことを考えているとふと思いついたので誘ってみる

 

「いいわねぇ、お邪魔しようかしら」

 

「お邪魔だなんてそんな、大歓迎だよ、飯は人がいれば居るだけうまいしな!」

 

はっはっはと笑いながら幽香に言うと幽香もクスクスと笑う

 

「じゃぁ、そうするわね」

 

そうと決まれば準備だ準備

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライト、バーベキューセット、肉、酒、ジュース、ご飯、刺身、テントを創造して準備完了

 

 

創造している途中幽香に 「便利ねぇ」なんて言われてドヤ顔になりつつもキリっとした顔で「違いない」と返す

 

妹紅にバーベキューセットの中にある炭を燃やしていただく、超便利

 

 

「さてさて!夜向日葵バーベキュー!はじまりはじまりー!」

 

イエーイと言いながら肉を焼いていく

 

女性方に肉を焼かせるのもあれなので俺が焼いていく

 

「はい焼けたから自由に食ってな!味付けはそこに塩胡椒醤油焼き肉のタレ塩ダレがあるから自由に使ってくれ。あと塩ネギも作っといたから一緒に食って見ろ」

 

お皿に焼けた肉を乗っけて机の上に置く、幽香にありがとうと言われ妹紅にはサンキューと言われる 嬉しい

 

全員椅子に座らせて ライトで向日葵を映しながら

 

「よし!じゃぁ手ェ合わせて!頂きます!」

 

「「頂きます」!」

 

妹紅にはジュースを俺はビールを幽香には梅酒を注ぐ

 

「どうぞ、」

 

「あら、ありがとう頂くわ」

 

幽香に手酌をしてから俺はキンッ!キンッ!に冷えたビールをコップに注ぐ

 

幽香はコクッコクッっと大人の女性らしい飲み方で俺はゴクッ!ゴクッ!っと男らしい飲み方で 

 

あ、妹紅はバヤ○ースオレンジな 

 

瓶の奴うまいよね、定食屋とかで置いてるよ

 

 

「プハァー!一仕事した後のビールは最高だな!」

 

一気飲みをして飲みきった瞬間に笑顔がほころぶ

 

「仕事してないけどな」

 

ご飯モグモグしてる妹紅の素早いツッコミだがそんなことは気にならない

 

「おいしいわねぇ、オカワリいただけるかしら?」

 

幽香は梅酒がお気に召したらしく俺に手酌を要求する

 

「はいはい、どうぞどうぞ」

 

並々と注ぎオットットっと・・・

 

俺もビールを自分のコップに注ぎシュワシュワと炭酸が弾ける音とともに泡がこぼれそうになり「おぉっと」っと言いながら泡を口で吸う

 

うん、泡も最高だ

 

妹紅はバ(ry

 

 

焼き肉に手を出して俺は焼肉のタレと塩ネギをたっぷりかけて食った瞬間にご飯をかき込む

 

ハフッ!ハフッ!ハムッ!ウマ!

 

幽香は主に刺身を妹紅は両方を好きな物ずつ食べる

 

 

「いやーうまいな!こうやって飯食うとなんか家族みたいだよな!」

 

幽香と妹紅を見ながらニッコリと聞く

 

「そうねぇ」

 

幽香は梅酒を入れたグラスをからからとならし肘をつきながら言う

 

なかなかに様になってます

 

 

「だなぁ」

 

妹紅は刺身を醤油につけながら言う

 

 

 

「俺が父親で妹紅が娘で幽香が母親みたいでいいね!」

 

 

一瞬で静まり返った

 

 

「え!?、あぁそうね!!」

 

なにを焦っているんだい幽香

 

「あぁ、そうだな・・・」

 

なにを怒っているんだい妹紅

 

 

 

二人のことが分からないよ

 

まぁ気にしないのでビールを口に含む

 

 

うーんうまい!

 

 

 

「そういえば幽香はずっと一人なのか?」

 

ふと気になり聞いてみる

 

「えぇ、そうね、生まれてからずっと一人よ」

 

こっちをみながらニコっと笑う

 

「寂しいなぁ」

 

「あら?寂しくなんかないわよ?」

 

「ほ?そりゃどうしてだい?」

 

不思議に思ったので聞いてみる

 

 

「私にはあの子達がいるから寂しくなんかないのよ」

 

幽香が向日葵畑をみたので、あぁそういうことかと思った

 

「なるほどそりゃ楽しそうだ。」

 

「えぇ、とってもね」

 

「そっちはどうなの?」

 

幽香が聞いてきた

 

「うん?俺は寂しくなんかないよ、妹紅がいるからね、な?妹紅」

 

妹紅に向き質問する

 

「あ、うん・・・」

 

少し顔を真っ赤にしながら答える

 

酒入れてないよな?

 

 

「まぁ、そういうことだよ」

 

ははは、と笑いながら幽香に視線を戻す

 

「なるほどねぇ」

 

「うんうん」

 

幽香のグラスの梅酒がなくなったので注ぎながら話す

 

「お互い楽しく過ごせてるようでなによりだ」

 

「そうね」

 

 

 

二時間ほどそんな話をしていると妹紅の瞼が閉じてしまった

 

「スー・・・スー・・・」

 

「おや、寝てしまったか」

 

「あらあら」

 

クスクスとハハハという笑い声が交ざる

 

「ちょうど言い頃合いだ、お開きにしようか」

 

酒もちょうどいい感じに回ってきた

 

「わかったわ、そういえば貴方達はどこで寝るの?」

 

「ん?テントの中だよ、あそこにあるだろう?」

 

「あら?そんなちっちゃい所で寝るの?」

 

「まぁ野宿よりはましだろう」

 

「ん~じゃぁ私の家に泊まっていけば?直ぐ近くだし」

 

幽香が向日葵畑のちょっと離れたところよを指さす、おぉ気づかなかった

 

「いいのかい?」

 

「いいわよ~」

 

そうと決まれば寝てる妹紅を抱き抱えよっこいしょとお姫様抱っこをする

 

「よし、じゃぁ行こうか」

 

「は~い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔します。」

 

ドアを開けてもらい中にはいってみると実にきれいな部屋である

 

「いらっしゃい、散らかってるけど」

 

幽香が少し恥ずかしそうにいう

 

「いや、ふつうにきれいだよ」

 

「そう?ありがと」

 

 

 

 

さてさて妹紅を布団に置いて毛布を被せてから幽香のいるリビングに当たるところに戻る

 

 

「ぐっすりだ」

 

笑いながら妹紅のことを伝える

 

「そう」

 

幽香もまたクスクスと笑いながら答える

 

 

 

 

 

さて晩酌の始まりだ

 

 

机にチャーシューと塩ネギを絡ませた物を肴に幽香と一緒に酒を飲む

 

「うん、我ながらふつうにうまい」

 

「おいしいわねぇ」

 

「うんうん」

 

 

 

 

-----------------------------------1時間後-----------------------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さすがに眠いので幽香に外でテントをはって寝るという種を伝える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃぁ幽香、俺は外でテント張って寝るよ、お休み」

 

「あら?ここでねればいいのに」

 

「いや、さすがにそれはできんよ妹紅と一緒に幽香は寝な」

 

そういうと幽香はこっちに近づき手を重ねてくる

 

「ちょ、幽香。どうした?」

 

「フフッここで寝・れ・ば いいのにと言ったのよ」

 

「・・・・?」

 

「据え膳食わねば男の恥・・・でしょう?」

 

「いやちょっと待て、幽香、おまえは飲み過ぎだ」

 

「いいじゃないそんなこと」

 

「いや、良くないだろ、酒に飲まれるな。一時の快楽は永遠の苦行だぞ」

 

「どうでもいいわよ・・・ね?」

 

更に手を重ねて俺の方に頭を乗っける

 

いや、やばい。俺のニューロサーキットがアウトバーンしそうだ

 

「幽香しっかりしろ、こんなんで身を重ねるな、まだ会ってまもないだろう?」

 

「一目惚れ・・・かしらね・・・?」

 

「違う、それは酒の影響だ、気をしっかり持て、ほら水だ飲め」

 

「フフフッ」

 

「うぉ!」

 

水を創造し幽香に手渡そうとすると体を押され俺が下幽香が上という形になる

 

手を動かそうにも捕まれていて動けない、もし無理矢理はがしたら腕が引きちぎれるだろう

 

「おい、幽香!腕を離せ!」

 

「嫌よ・・・」

 

腕を離そうとすると真ん中に開いてた空間が密着する

 

密着したせいで胸の感触足を絡まれているということそしてほんのり暖かいのが分かる

 

 

 

本格的にやばい、早くも俺のサーキットが開催されてしまう

 

 

 

腕を引き離そうとがんばるが無理っぽい

 

「ちょ、まじ幽香やめろ、一時の快楽に惑わされるな!」

 

「フフフッ逃げちゃダメよ、ん・・・」

 

「う・・・お・・・!」

 

幽香が俺の首筋をなめてくる、その刺激のせいで俺のアレが爆発してしまった

 

「あら・・・この私のお腹に当たってるのはなぁに?」

 

ニヤニヤと誘ってくる幽香に身を任せようとするが、ダメだという踏ん張りがつく

 

「あれだ!多分間違えたんだよきっと!な!?幽香!離せ!」

 

「なにを間違えたっていうのよ・・・観念なさいな・・・」

 

もうだめだ、と目をつぶったときに幽香が俺にもたれてきた、と思ったらなにもしない

 

 

あれ?

 

 

目を開けてみると幽香は気絶しており、後ろには妹紅が立っていた

 

 

 

「あ・・・・、妹紅、お早う」

 

妹紅が眠気眼でこちらを見てくる

 

「ん~~・・・喧嘩なら外でやってくれ・・・」

 

よっしゃ!これで死亡フラグは避けられた!

 

「おう、すまんかったな妹紅。お休み」

 

「はいよ・・・・じゃぁ次は静かになお休み・・・」

 

 

 

 

助かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




天馬さん童○ついに!?とおもったが妹紅フェーイント!


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天馬、玉藻前に恋をする

藍様大好き天馬くん さぁどうする?


朝である、小鳥がチュンチュンと鳴き太陽が顔を出す、いつもの朝である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んが・・・」

 

 

天馬は寝ていた。

 

昨夜の幽香のこともありなかなか寝付けられず、朝四時頃に就寝したため睡眠を取らなければいけない。

 

 

小さい三角の空間、テントの中で足を曲げ顔はアイマスクで隠している。

 

「・・・ま!」

 

「て・・・ま!!」

 

非常にウルサイ、俺はまだ寝ていたいのだノンレム睡眠状態なのだ、レム睡眠の時に起こしてくれたまえ

 

「天馬!!」

 

「ウギャ!!」

 

いきなりの妹紅のビンタである、非常に痛いし泣きたい位痛い、叩かれた頬はジンジンとしている

 

「な・・・なんだよ!俺は寝ているんだ!」

 

「もう朝10時だ!そろそろ起きろ!」

 

俺の布団をひっぺがした妹紅が大きな声で命令をする

 

「俺は寝たいんだ!寝るぞ!?寝ちゃうぞ!?おやすみ!!」

 

そう言って妹紅の持っている布団を強奪し、まるで職人のように布団をかぶる

 

「な・・・!?なんて動きなんだ・・・!!・・・じゃなくて!!もう太陽が真上に来そうなんだからいい加減起きろ!」

 

妹紅がまた布団を奪おうとしてきたので、必死に布団にしがみつき奪われないようにする。

 

「やだぁ!いやだい!ぼかぁ寝るんだ!寝ないといけないんだ!」

 

「もう十分寝ただろ!何時だと思ってるんだ!」

 

妹紅との激しい攻防を繰り広げる。

 

「妹紅!!よく聞け!人が寝ているときは誰にも邪魔されず自由でなんというか!救われてなきゃあダメなんだ。! 独りで静かで豊かで!」

 

あのグルメな人の名言を改竄して伝わるように叫ぶ

 

「なにいってんだ!お前はとっくに自由だよ!いいから起きやがれ!」

 

「嫌だね!俺は寝る!ノンレム睡眠の時に起こしてくれ!じゃぁお休み!さよなら!」

 

「なんだよノンレム睡眠って!いい加減にしろ!」

 

布団を腕強化でしがみついていると、諦めたのか引っ張らなくなる

 

妹紅が何かを閃いたように俺の布団の横に横になってくる

 

「ははーん・・・そういうことを言うと私も一緒に寝ちゃうもんね!」

 

俺の必殺技・お母さんも一緒に寝ちゃうぞ作戦を繰り出してくるとは、なかなかやりおる・・・が甘い!それは俺にはきかん!相手がお母さん相手でないと食らわないからな!

 

「寝ちゃうぞ~!起きないと寝ちゃうぞ~!」

 

「うおらぁ!」

 

「うわ!離せ!」

 

 

布団を開け妹紅を巻き込み必死に布団からでようとする妹紅を無理矢理中に引っ張り込む

 

「寝たいんだろ!?一緒に寝ようやぁ!」

 

「やめろー!」

 

布団の中で激戦を繰り広げていると妹紅が動かなくなった。

 

「ん?妹紅?どうした?」

 

妹紅はなにも言わず、ピクリとも動かなくなった

 

「あ!?やばい!!」

 

妹紅をすぐに布団からだし確認してみるとやはり妹紅は、     酸欠状態だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幽香の家で朝飯を食べる

 

 

「妹紅ごめんってば、怒るんじゃねぇよ」

 

「フンッ!」

 

ご飯をかきこみながら妹紅は首を思いっきり横に振る

 

「うーん・・・」

 

幽香はそんな俺たちを横目にみながら聞いてくる

 

「何があったの?」

 

「いやぁ、このじゃじゃ馬がさ」

 

「じゃじゃ馬ってなんだよ!アレは天馬が悪いだろ!」

 

妹紅が怒りながら俺にスプーンを投げつけてくる、危ないのでキャッチしておく

 

「危ないな、謝ったじゃん」

 

「謝るなら誠意を見せろよ誠意を!」

 

「じゃぁどうして欲しいんだよ!」

 

「土下座しろよ!」

 

そういってきたので席を立ち土下座をする

 

「どーもすいませんでした~」

 

そういうと妹紅も立ち上がり俺に掴みかかってきた

 

「この野郎!」

 

「何だよ!!」

 

ギャアギャアと掴みあいをしていると、いきなり幽香の方からものすごい音がした

 

見てみると、幽香が笑いながらこちらを見ており手には折れた傘を握っていた

 

 

「うるさいんだけど?静かにしてくれないかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、じゃぁ幽香、また会おう」

 

旅にでる準備終えて幽香に告げる

 

「えぇ、また会いましょう」

 

「あぁ、じゃぁな」

 

 

あの後俺と妹紅は小一時間説教をされた、それと気づかれぬように昨日の夜のことを聞いてみると「なんのことかしら?」と言われた 多分酒で覚えていないのだろう。

 

「さぁ行くか妹紅」

 

隣にいる妹紅に出発することを言う

 

「はいよ」

 

 

「うし、じゃぁな~幽香~」

 

手を大きく振ると幽香は小さく俺たちが見えなくなるまで手を振っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山道を歩いていると妹紅がいきなり声をかけてくる

 

「なぁ天馬」

 

「ん?なんだ?」

 

「これからどこへ行くんだ?」

 

「んん~適当~。」

 

「そうか。」

 

 

 

「なぁ天馬」

 

もう一回聞いてきたので面倒くさく返答する

 

「なんだよ?」

 

「幽香さん綺麗だったなぁ~」

 

「あぁ、そうだな」

 

こちらをチラチラと見てくる妹紅 正直うざったい

 

「なんなんだよ?」

 

「いや~なんでもないよ~?」

 

「???」

 

なんなんだこいつは本当にわけがわからん

 

「昨日の夜さ」

 

ボソっと妹紅が言ってきた

 

「あ?」

 

「昨日の夜さ幽香さんと何してた?」

 

「え?、あぁ~あれか、まぁ喧嘩みたいなものだ」

 

「そうか喧嘩か喧嘩にしては珍しいな」

 

意味深に妹紅は言う

 

「なにがだよ??」

 

「股間の物おったてながら喧嘩するのも珍しいなってことだよ」

 

バレてた

 

「・・・・・・いや~?勘違いじゃないかな?」

 

ポーカーフェイスを気取っているが内心めっちゃ焦ってます、妹紅さんを見れない!

 

「勘違いなもんかよ、私だって天馬の朝のやつみたことあるんだから」

 

「・・・・」

 

 

 

男の子なら誰しもあるだろう、あの尿意の刺激で朝は股間がパンパンになることを

 

妹紅に見られたときは騒がれたもんだ、変態 ゴミ虫 猥褻野郎 変態 など

 

おまけに股間にグーパンされたときは死にかけたぜ・・・

 

 

 

「あ~・・・あれだ、不可抗力なんだよ、うん」

 

「不可抗力ねぇ・・・」

 

「お、!村が見えたぞ!行くぞ妹紅!」

 

村が見えたので妹紅に逃げるように走る

 

「あ!ちょっと待て!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さな村について一息するとやっと妹紅がきた

 

 

 

「遅いぞ、妹紅」

 

息切れをしながら手を膝につき前かがみになっている妹紅

 

「お前が、早いんだよ!」

 

「そうかそりゃすまんかったな」

 

「・・・」

 

「おこんなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この村は小さいな本当に小さい」

 

「本当だな」

 

本当に小さいのである、500mほど歩けば村を出れるほどの

 

「あ~はずしたな、出店も見あたらないし農村っぽいしな」

 

「出鼻をくじかれたな」

 

からからと妹紅が笑う、こんにゃろう

 

出店もない当たりは民家のみ、すれ違う人はほとんど農作業の人達だ

 

「まぁ、さっさと行こうじゃないか妹紅」

 

「私疲れたんだけど・・・」

 

「不死なんだから我慢我慢」

 

さっさとこの村を出た二人はどんどん進み天馬が何かに気づく

 

 

「妹紅よ、少し先に行ってろ」

 

そういうと妹紅は不思議そうな顔をして

 

「あ?なんで?」

 

「いいから早く行け、俺もすぐ追いつくから」

 

「・・・?わかったよ、先にいってるから絶対後でこいよ」

 

「はいよ」

 

 

妹紅が見えなくなるまで何もせず、妹紅が見えなくなったとき天馬は後ろを向き何もない空間に問いかける

 

 

「いるんだろう?紫」

 

するとニュッと空間を裂いて出てきたのは、八雲紫であった

 

「あらあら・・・、またばれてたのね」

 

「妹紅にはばれないが俺には分かるぞ」

 

「そうなの?、不思議ねぇ」

 

そこらにあった石に座り面倒くさそうに紫に用を聞く

 

「よっこいしょっと、んで?、用件は?」

 

「せっかちねぇ・・・、ついにもう一つの世界が完成したのよ。」

 

「ほう、それはスゴいな」

 

「私の力があればちょちょいのちょいよ」

 

紫はでかい胸を張り、どうだと言わんばかりにドヤ顔をしている

 

「そうかそうか、すごいな紫は、・・・それだけか?」

 

ガクっと体制を崩しあきれている

 

「それだけって貴方ねぇ・・・これがどれだけ凄いことかわからないのね・・・」

 

「わからんよ、作ったことないし。でも俺の能力なら時間はかかるが作れると思うがね」

 

「・・・・は?」

 

目を見開き口をパクパクしながら紫は怒号を投げつける

 

「なんでそれを先に言わないのかしら!?」

 

「だって紫作ってる途中だったからかわいそうだなって思って」

 

「はぁ!?私のこれまでの努力が無駄じゃないの!!」

 

「いやぁ、作ったんだし無駄じゃないと思うよ?」

 

「はぁ・・・もういいわ・・・」

 

手を頭に当てガリガリとひっかく

 

「おいおい、頭に傷つくぞ、それでその世界を作ったことだけなのか?」

 

「・・・それだけじゃないけど」

 

「なんだ、じゃぁ早く言えよ、妹紅またせてんだから」

 

「あら?そんなこと言うの?教えないわよ?」

 

「そうですか、ではさようなら」

 

重い腰をあげ手を振りながら妹紅の行った道を歩くと

 

紫が俺にしがみついてくる

 

「待って!聞いて!いや、聞いてください!」

 

「うわ!、なんだよ紫、重いから離せ!」

 

「聞いてよぉ!」

 

涙目である

 

「わかったわかった!聞いてやるから!離せ!」

 

すると紫は俺にしがみつくのをやめて、コホンっと咳払いをする

 

「出たのよ」

 

それだけを意味深に言う

 

「何が?」

 

それだけじゃわからんのでもう一回聞く

 

「あれよ、白面金毛九尾の狐がって、キャァ!」

 

「白面金毛だって!?どこだ!?どこにいるんだ!?」

 

すぐに紫の肩を両手で掴みゆさゆさと揺らす 胸も揺れている

 

「ちょ、!落ち着いて!!とりあえず離して!」

 

「白面金毛はどこにいるんだ!?」

 

こんどは揺らさず紫の肩に手を置く

 

「この先の道をいくと都が見えるわ、そこの帝の妻が九尾よ」

 

「そうかそうか!ありがたい!じゃぁな紫!」

 

そういって都に走り出そうとすると、紫は俺の服の襟を掴む

 

「グエェ!!」

 

「待ちなさいな!」

 

「なんだよ!」

 

「もう一つ話があるの、簡単に言うと式にしてこいっていう事よ」

 

「わかったわかったじゃぁな」

 

もういっかい都に向かって行こうとするとまた襟を掴んでくる

 

「ゲェ!  なんなんだよ!」

 

「話を聞きなさい!」

 

「なんだよ?」

 

「この札をもって行きなさい」

 

ごそごそとスキマの中から札を出し式にするための札を渡してくる

 

「はいよ、これを張り付ければいいんだろう?」

 

「それじゃダメよ?同意の上ということと、あと自分から張らせれば完了よ。」

 

「わかった、俺の式にしてもいい?」

 

「ダメに決まってるじゃない、私の式よ」

 

「ガーンだな、じゃぁ紫が俺の式になってよ」

 

は?っという顔をする紫

 

「貴方なにいってんの?なにいってんの!?」

 

「ダメならしょうがないな、とりあえず九尾を式にしてくるよ」

 

「しっかりして頂戴・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、妹紅と合流してついた都である、ここの帝の妻が九尾であるらしい、帝め、藍といちゃいちゃしやがって・・!藍は俺が頂くぜ!(ル○ン風)

 

 

妹紅に金を多めに渡し民宿を見つけること、見つけて泊まれそうだったら都の広場に夕方に集合すること、俺は用事があると言うことを伝えておいた

 

 

さて白面金毛九尾の狐、のちの八雲藍に会えるということで胸を踊らせている。

 

実は俺の大好きな東方の人物が八雲藍であり、前の世界では藍をPCの壁紙にしたり、携帯の待ち受けを藍にしたり、ネトゲでは藍の素晴らしさをフレンドに広めたりするほどである

 

つまり大大大好きなのである、橙?どうでもいいよ

 

そんな訳でスキップをしながら帝のいる屋敷に行くのだ

 

 

『ついに藍に会えるとはまじで転生させてくれたあのおっさんには感謝感激雨霰だ』

 

あ、ついでに好感触になってもらうため油揚げとお稲荷さんを持っていこう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人づてに帝のすんでいる屋敷の場所きき遂に、遂に着いた俺。

 

「早く会いてえな、もうドキドキが止まらんよ」

 

そういい紫からもらったスキマを広げ一部屋一部屋のぞき藍らしき人物を見つける

 

藍は帝らしき人物と話しており嫉妬が生まれる

 

見せつけてくれるじゃねぇかこんちくしょう、あと藍様やっぱりかわいいめちゃかわいい

 

 

すぐに突撃したいところをぐっと押さえ藍が一人になるところを見計らう

 

一時間ほどすると部屋には藍が一人になり周りに人がいないことを確認すると部屋に降り立ち藍を驚かせる

 

「な、なんだお前は!」

 

驚いている藍は非常に可愛く抱きつきたいほどである

 

「よ!俺の名前は天馬、よろしくな!」

 

「即刻出ていけ!」

 

手を差し出すとパァンッと弾かれてしまった。つれない・・・

 

「そんなこというなよ、お土産もってきたんだぜ?」

 

「誰が知らない奴なんかの土産をもらう・・・と?」

 

ゴソゴソとスキマからお稲荷さんと油揚げを差し出す

 

「まぁまぁ味は確かなものだから食ってくれよ」

 

そういうと藍は俺が持ってきた土産をすぐに奪い匂いをクンクンと嗅いでいる

 

「ふむ・・・ふむふむ、まぁそうだな、話くらいはしてあげようじゃないか」

 

包みを無理矢理開けもきゅもきゅと頬を膨らましながら食べている、まるでハムスターのように 可愛い

 

「お、話が分かるやつで何よりだ。」

 

「うん、ふむ、それで?お前は何しにここにきた?」

 

食べていたお稲荷をゴクっと飲み込み聞いてくる

 

「いやぁ、白面金毛九尾の狐といやぁ美人で有名だからな、見に来たんだよ」

 

「それで?、どうだ?」

 

どうだ?ってことは美人かそうでないかということか、それはもちろん

 

「すっげぇ美人でめちゃくちゃ可愛い」

 

「そ、そうかそれはよかったな」

 

少し照れながら当たり前だろうと言うように

 

「おう、めちゃくちゃ可愛いぞ!!」

 

「何回もいうな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?お前の主の式になって欲しいと?」

 

紫の式になってほしいということを伝え俺も一緒にお稲荷さんを食べる

 

「そう、なってくれるか?いや是非なって欲しい」

 

「無理だな」

 

即答である

 

「なんで~?お願いだよ、なってくれよ」

 

「無理だと言っている」

 

「何で?」

 

「なぜ教える必要があるんだ」

 

「いいじゃん教えてくれよそしたら諦めるから」

 

「本当だな?」

 

「本当本当」

 

そういうと少し照れながら藍は口を開ける

 

「私には夫がいてな、夫を残してどこかに消えるというのは嫌なんだ」

 

ビシッと俺の心にヒビがはいる、いや分かってたよ、だって仲良くしゃべってたもん、夫婦のように。だけど本人からいわれるとなんか・・・さながら好きな女子に告白した男子高校生が

彼氏がいるから無理と言われたような心境である、非常に悲しい。

 

「あ~・・・そっか・・・」

 

いやいや待てよ?確か玉藻前は妖怪であることを安部晴明に見破られ、帝からも国からも追いかけられ最終的に殺生石になり数々の方面に散るという・・・

 

あれ?結局藍可哀想じゃね?

 

「なぁ玉藻よ」

 

真剣な表情で藍をみる

 

「・・・?なんだ?」

 

「玉藻は妖怪だ、いずれはばれるぞ?」

 

「・・・大丈夫だ、あの人なら必ず妖怪の私を受け入れてくれる」

 

「無理だろう、妖怪と人間は相入れぬ存在だ、仲良しこよしできるんだったらほかの妖怪がそうしてるさ」

 

「うるさい・・・」

 

藍がボソッと言うが追い打ちをする

 

「そもそも、帝はお前の外見を気に入ったわけで内面は見ていないだろう?自分の妻が美人だったら優越感や自信にあふれてくるからな、所詮は物でしかないんだよ」

 

「うるさいうるさいうるさい!!!!出てけ!!」

 

ものすごい酷い事を言ったが本当のことである、先ほどの藍と帝の会話で分かっていた俺も苛ついていた。

 

「玉藻よ「出ていけ!早く!!」わかった、またくるよ」

 

そうしてスキマを開き屋敷からでようとすると「もう来るな!」と聞こえた

 

残念だが藍、俺はしつこい男だぞ

 

 

 

 



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天馬、安部晴明と対峙する

陰陽師最強の安部晴明、さぁ天馬どうする?


玉藻前、もとい八雲藍に追い出された天馬は都の広場にて妹紅を待つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夫を残して式にはなれない・・・か」

 

藍の言った言葉を思い浮かべ、タバコを吸う

 

「帝自体藍の事を本気で好きではないような感じだったが・・・」

 

藍と帝が仲良く喋っているときに見ていたのだが、帝は確かに藍を好きではある・・・がそれは外見だけであって輝夜の時と同じように物として扱っている風にも見えた

 

「性格がクソだな、国を束ねている王がそんなんでいいもんなのか・・・」

 

いやしかし妹紅の親父さんの様に本気で愛されていたのかもしれないが・・・

 

「わからんもんだな、いっそ帝を殺すっていうのも手だが・・・」

 

殺しはなるべくしたくはない、いくら人を殺すことに躊躇はなくとも、ちゃんとした理由があってこそだと自分は思っている。藍が悲しむだろう

 

「どうすれば藍を紫の式にできるのかね、無理矢理も無理そうだし、そもそもそれは俺が嫌だし・・・」

 

どうすればいいのか分からない何をすればいいのかすらも

 

「・・・地道に仲良くなるしかできないようだな」

 

そうするしかない

 

「そういえば安部晴明はいつ頃に来るんだろうか、封印されるのはまじで勘弁して欲しいのだが・・・」

 

最強の陰陽師、安部晴明、一回も会ったことがないが噂では妖怪との戦いでは無敗だとか占いは絶対当たるだとか、人間じゃないだろ。

 

「いや~勝てるかな・・・最強っていうくらいだし勝てないだろうな~・・・」

 

考えごとをするとタバコを何本か吸い終わり、そしてまた吸い始める

 

考え事をするときは頭を回転させるために必要なタバコ、常人だったら癌になることだろう

 

 

「まぁ、流されながら頑張るしかないな。」

 

結果、適当である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベンチのようなものに座っていると後ろから妹紅の声が聞こえる

 

「お~い天馬~!」

 

お、妹紅がやっと来たか・・・?隣にいる若い男はだれだ?

 

「・・・?誰?」

 

ぱっと見細いが鍛えられていて顔はイケメン寄りで頬に傷がある、髪型は色は銀色で髪は肩まで掛からずショートっぽい慎重は180cmはあるだろう、悔しい・・・

 

白い服は陰陽師っぽく結構位の高い者だろう

 

「あぁ、道に迷ってねこの人に教えてもらったんだよ」

 

妹紅はそういっており隣の男に視線が移る

 

「そうかそうか、お礼は言ったか?」

 

「言ったよ~」

 

それならいいが、いつまでも助けてくれた男を放っておくことはできないので声をかける

 

 

「どうも、道に迷った妹紅を助けていただきありがとうございます。」

 

「いやいや、当然の事ですよ。」

 

男はニコニコしており行動もイケメンだ。

 

「俺の名前は小鳥遊天馬、天馬とよんでくれて構わない。」

 

そういうと男も自分の名前を言ってくる

 

「私の名前は安部晴明ともうします、しがない陰陽師です」

 

は?安部晴明? あの最強の陰陽師の?

 

「え?安部晴明と言えば最強という名を持つ・・・?」

 

男は、はははっと照れ笑いをし

 

「過大評価ですよ、気になさらないでください」

 

いやいや・・・妹紅、なんてものを連れてきたんだ・・・

 

あ、やばい、妹紅不死じゃん!退治されちまう!

 

「よし、妹紅、今日泊まるところに行くぞ、安部さん、ありがとうございました」

 

気づかれないように妹紅の手を引き、早々に安部から離れようとするが安部が声をかけてくる

 

「あ、そのお嬢さんは人間ではないですね?」

 

バレタ

 

「ちょっと何言ってんのかわかんないっすね」

 

何言ってんのお前?というように

 

「ハハハッ隠さずとも良いですよ、私は人間に危害を加えなければ退治はしませんから・・・」

 

 

「・・・そうですか、では」

 

今度こそ安部から離れようとするが

 

「貴方は危害を加えるほうですね・・・?」

 

と殺気まじりに言われる

 

「加えた事なんてないよ、そうしなければならない時以外は・・・」

 

「そうですか、いくら理由が合ったとしても殺しはいけませんよ?さもないと、私が 退 治 しないといけないのですか、ら!」

 

すると安部晴明は何かを投げつけてきた、札か封印する何かだろう

 

「クソ!」

 

すぐにスキマを展開させ妹紅を巻き込み逃げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げられた様ですね・・・、あの女の子の妖力を辿れば見つけることもできますが・・・難しいですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキマの中に妹紅と俺がいる

 

 

 

「あぶなかった、もう少しで退治されるところだったぞ妹紅」

 

あたふたしている妹紅に言って少し怒り混じりに

 

「ご・・・ごめん」

 

素直に謝る妹紅

 

「しかしもう来ていたのか・・・安部晴明・・・霊力が解放したときはんぱなかったな・・・」

 

通常の人の1000倍はあるだろう、それくらいやばかった、多分紫でも勝てない。

 

妹紅の妖力も多いが安部にかかれば10秒もしないうちに殺されていたはずだ。

 

「はぁ・・・面倒くさいことになったな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妹紅が見つけた宿に入り一夜を明かす

 

そして妹紅に、俺は用事があるからと言って玉藻前の場所に行く

 

 

「おやおや、今日は旦那さんと一緒じゃないのね」

 

藍は一人でいたので部屋に入る

 

「おっす、また来たぞ」

 

「・・・もう来るなと言ったはずだが」

 

「そんなこと言うなよ、ほらっお稲荷さん」

 

ホイっとお稲荷さんが入った包みを藍に投げる

 

「・・・いらん、帰れ」

 

あらま

 

「お?昨日はあんなに喜んで食べたのにどういうことだ?」

 

「喜んでなどいない、腹が減ったから食っただけだ」

 

「そうかい、そりゃ残念だ」

 

お稲荷さんの包みを開け食べる、俺が

 

「・・・」

 

藍がこっちをジト目で見てくる

 

「うーんうまいな最高だなおいしいな~」

 

もぐもぐと食べていると藍が物欲そうに見てくる

 

「食べるか?」

 

お稲荷さんを渡すが藍は食べない、だから渡したお稲荷さんを取り俺が食べる

 

「あ・・・」

 

「食べないんだろ?もったいないから俺が食うよ」

 

すると藍がプクーっと頬を膨らませる なにこれ可愛い

 

「なんだよ、食べたいなら素直に食べたいといえばいいのに」

 

ほいっと新しいお稲荷さんが入った包みを藍に渡す

 

「ふん、しょうがないから貰ってやる」

 

「はいはい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃぁまたな、玉藻よ」

 

「もう来んな」

 

 

さて、八雲藍との和解ができたがいまだに藍は来るなと言っている。ツンデレなんだね

 

スキマを広げ屋敷の外に出た瞬間 札がこちらに飛んでくる

 

「!?」

 

間一髪避けて札が投げられた方向を見ると安部晴明がそこに立っていた

 

「なんでテメェがココにいる」

 

「フフフッなんででしょうね?」

 

「・・・何が目的だ」

 

「はて?分かっていると思いましたが・・・」

 

「・・・・?」

 

「私がココに来た理由を教えましょうか?」

 

「・・・」

 

「都の帝がいきなり政治事をしなくなったと思えば一人の女性に惚れ、行事にも何にも参加をしなくなった、おかげで都はあんなにも栄えていたのに今は昔の都の面影もない・・・ということで帝の妻を観察してましたが、まさか貴方がいるとはね」

 

「誰からの依頼だ・・・?」

 

「帝ですよ」

 

「何だと・・・?」

 

あんなに外見だけとはいえベタ惚れといってもいい程だぞ?

 

「帝が一週間前ほどに女性に尻尾がついていたと言っていました、妖怪かどうかわからないがとりあえずは見てほしいという事でね」

 

「それで俺があいつに話しかけていたことで妖怪と特定したわけか」

 

「そういうことです、まぁそれだけではなく少々妖力が漏れていたこともありますがね」

 

「!?」

 

あんな極少量の妖力を見破るとは、普通の人間や腕の立つ陰陽師でさえもわからないと思っていたが・・・こいつは化け物か?

 

「フフッそんなに驚かないでくださいよ」

 

「・・・それであいつをどうするつもりだ・・・?」

 

「それはまぁ、退治か封印をさせて頂きますよ」

 

藍を保護しないとやばいことになりそうだな、スキマを展開するか・・・

 

スキマを開こうとするとなぜかスキマが出ない

 

「ッ!?」

 

「フフッ貴方、今術を発動させようとしたでしょう?残念でしたね、私の周りを妖怪の術を発動させないように細工させて頂きました、これで袋の鼠ですよ?」

 

やばいやばいやばい、こいつには勝てる気が一切しない。

 

「さぁ!封印されてください、っよ!」

 

今度は2-3枚ほど札を投げてくる

 

「当たらねぇよ!」

 

すぐに横に回避して反撃をしようとすると

 

「なっ!?」

 

放たれた札はさっきまでいたところになく、こちらに向かって来た

 

「追尾型か、クソ!!」

 

細胞の盾を展開させガードをしたが、当たった瞬間に爆発し展開させた盾が壊れてしまう

 

安部は意外そうに

 

「あら?、妖術は発動させないようにしたんですが・・・」

 

「生憎だが妖術じゃないんでね、俺自体はそもそも妖怪じゃないしな」

 

「なるほど・・・じゃぁ接近戦としましょうか、いきますよ!」

 

安部は霊力を体中にはりめぐらせ手と足が主に霊力が満ちている

 

「来いよ!安部晴明!!」

 

安部がこちらに素早く接近してきてまず最初に蹴りを入れてくる

 

「あめぇよ!」

 

蹴りを避けて顎を打ち砕こうとすると、蹴りを入れてたはずの安部がもう一つの足でソバットを決めてくる

 

「グゥ!!」

 

「フフッ甘いのは貴方ですよ」

 

よろけた俺に安部は顔を打ち抜いてくる

 

「ガハッ!」

 

「最後にもう一丁!!」

 

そして最後に顎に膝蹴りをして俺のガゴッメキャッ!という音と共に顎が砕ける

 

「・・・!!!」

 

俺は吹っ飛び地面に叩きつけられる

 

これは勝てない、俺は対術はからきしなのに対して安部は修行と実践で積んできた対術を駆使している。

 

「貴方、強いと思っていましたがそうでもないみたいですねぇ」

 

顎が砕けているのを再生で直したが蓄積されたダメージは消えない

 

「お前だけは許さねぇ、殺してやるよ。!」

 

「おやおや、口だけは達者なようですね」

 

すぐに立ち上がり安部に向かって鞭を伸ばすとバキッという音がした

 

これは確実に当たったと確信したのだが安部は倒れず立っている

 

「危ないじゃないですか」

 

倒れると思った安部はニコニコと平然としており

 

俺の伸ばした鞭を掴んでいた

 

「なん・・・だと・・・!?」

 

「よいっしょっと!!」

 

「!?」

 

伸ばした鞭を思いっきり引っ張られ俺はぐるんと空中に舞った後地面に叩きつけられる

 

 

「アグァッ!!」

 

「もの凄い力ですね、妖力でもないのになぜそんなことができるんです?」

 

叩きつけられた俺の首を掴みニコニコと質問をしてくる

 

「ッッ!教えるわけねぇだろ!!」

 

もう一つの腕を安部の顔に思いっきり振りあげるが避けられてしまう

 

「おっと危ない、まぁそうですよね」

 

クソ、もの凄い強い。俺の動きなどは手に取るように分かっていていくらこちらが攻撃をしかけようが避けられてしまう

 

ん?避けられる? 

 

「おい、安部」

 

「ん?なんですか?降参ですか?」

 

「もしもお前が俺の攻撃でよけれなかったらどうする?」

 

ニヤァっと笑うと力を思いっきり溜め、細胞すべてを爆発させようとする

 

「ッッ!?そうはさせん!!!」

 

安部はそういって俺に近づいて止めようとしてくるが時すでに遅し。

 

細胞を爆発させた瞬間体内にある無限の細胞が細かくなり辺りを突き刺し細胞だらけにする

 

 

「・・・・」

 

「ガハーッッ・・・ハッー・・・ハァッッ・・・」

 

安部は足 横腹 太股 肩 片腕を損傷しており地に伏している 誰がどうみても致命傷だ

 

なのに安部は息を荒くして俺を睨みまだまだ戦えるという様に足をズルズルと引きずってこちらに近寄ってくる

 

「もうやめろ、動くと死ぬぞ」

 

「ッッカハァー、ハァー・・・お前を、殺し、都を救って!ハァ・・・!、みせる!ハァー・・・」

 

 

「諦めろ、霊力で固めたのはいいが漏れているぞ、直になくなる」

 

霊力はすなわち人間の生命力でもありこれが無くなると死んでしまう

 

「私は、ハァッー・・・妖怪には屈しはしない!」

 

「・・・」

 

「私はまだ・・・使命があるんだ・・・!」

 

「・・・」

 

「この世の妖怪を倒し・・・!皆を平和に・・・!」

 

そういうとバタリ・・・と安部は倒れてしまった

 

安部に近寄り見てみると霊力は少し残っているが2-3時間程で死んでしまうくらいに

 

「・・・まだ生きているな」

 

安部を持ち上げ、少し遠くに離れスキマを展開できるかどうか確認し展開できることを確認すると見慣れた竹林に移動をする

 

竹林には少しでかい屋敷があり入ると兎耳の長い女の子が出迎えた

 

「誰ですか!?」

 

「怪我人だ、すぐに手当をして貰いたい」

 

血塗れになった安部晴明をみて女の子は焦りながらついてきてくださいと走る、その後を俺もついていくと、部屋に案内され入ってみると永淋がいた

 

「あら、天馬じゃないの・・・?・・・!?どうしたの!?」

 

永淋は地だらけの安部晴明をみて驚愕する

 

「怪我人だよ、こいつを助けて貰いたい」

 

「わ、わかったわそこのベッドに寝かせて!」

 

安部を寝かしたあとに永淋が安部の服をはぎ取り怪我の状態を見る

 

「酷い損傷ね・・・後少し遅かったら死んでいたわよ!」

 

「直せるか?」

 

「時間は掛かるけど直せると思うわ、感染症を防ぐために移動させるわよ」

 

「頼むぞ」

 

そういうと安部をタンカに乗せ手術室らしきに連れていく

 

俺は出る幕はないので目の前の椅子に座っておく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6時間ほどすると手術室から永淋が出てくる

 

 

「直ったか?」

 

「えぇ、完全回復までには時間が掛かるけど一応は一命は取り留めたわ」

 

「そうか、ありがとう」

 

すると永淋が俺の隣に座り

 

「一体なにがあったの?」

 

「俺と戦ってあれになった」

 

「・・・貴方ねぇ彼がどれだけ死をさまよったか・・・!」

 

永淋が途中で喋っているが立ち上がり屋敷をでようとする

 

「すまない永淋、一人にしてくれ・・・」

 

「・・・!わかったわ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋敷の外で一人で座っていると兎耳の長い女の子から安部が目を開けたということなので見に行ってみる

 

 

安部のいる部屋に入ると

 

「・・・・貴方ですか」

 

全身を包帯で巻かれた安部がベッドに横たわっていた

 

「具合はどうだ?」

 

「良くはないね、なぜ助けたんです?」

 

俺を睨みなぜ殺さなかったのかと聞いてくる

 

「なんとなくだ」

 

「なんとなく・・・ですか」

 

「あぁ」

 

「そうですか・・・」

 

安部は下を向き悔しいそうな顔をしてギリッと口を閉める

 

「私は・・・私は許しませんよ・・・貴方を・・・!」

 

「そうか」

 

「必ず貴方を殺す・・・殺す!」

 

「そうか」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・貴方は」

 

「うん?」

 

「貴方は・・・いや、なんでもないです」

 

「・・・?」

 

「そういえば安部よ」

 

「・・・?なんですか?」

 

「お前女だったんだな」

 

「!?見たんですか!?」

 

安部はこっちを向き驚愕している

 

「あぁ、少しな、男だと思っていたが胸にサラシを巻く男はいないだろう、顔も女寄りだし声もな」

 

「・・・」

 

カァーッと安部は顔を真っ赤にして下を向く

 

「まさかお前さんが女だとはなびっくりだ」

 

「どうでもいいでしょう!?」

 

「あぁ、どうでもいいな、どうでもいいが気になったんでな」

 

「ッッ!!」

 

「顔も可愛い方だし胸もあると思うからモテんじゃないか?」

 

「うるさいですね!」

 

そういうと安部が札をこちらに投げてくる、どこから出したし

 

「おっと、じゃぁ俺は都に戻るぞ、じゃぁな」

 

近くにいた永淋にも告げる

 

「ま、待て!」

 

安部が制止してたが動けないためか口だけである

 

 

スキマを展開し都に戻り妹紅のいる宿に戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまもこたん!!」

 

「遅せぇぇえええええんだよ!!」

 

「ぎゃぁああああああああああ!!」

 

すねを蹴られた

 

 

 

 

 




晴明が女であることにビックリ









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天馬、玉藻前を助ける

天馬さんのドチート振り


安部晴明を倒した天馬、その翌日、玉藻前のいる屋敷に参る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うい~っす。」

 

スキマを使いにゅっと玉藻前の目の前に出る。

 

「うわっ!何だお前か・・・。」

 

また来たのかっと玉藻前、もとい藍が言う。

 

「何度でもくるよ~暇だし。」

 

「言っておくが式になるつもりはないぞ。」

 

「わかってるよ、暇だから来たんだってば。」

 

ほいっと何時ものようにお稲荷さんの入った包みを投げ渡す。

 

「わっ!ととっ危ないじゃないか!」

 

お稲荷さんを死守した藍は怒り混じりに言ってくる。

ていうかお稲荷さん飽きないのかね?どんだけ好きなんだよお稲荷さん。

 

「まぁまぁ、気にするでない。」

 

「偉そうに言うなよ。」

 

「気にしないでくださいませお狐様!」

 

「気色が悪いからやめろ。」

 

酷い。

 

「そういや、旦那とどうなんだ?」

 

「ん?あぁ、何時も通りだ。」

 

「何時も通りってこたぁ良好ってことかい。」

 

「そういうことだ、だから来なくていいぞ。」

 

「ん~やだぁ~。」

 

「・・・」

 

「そういや、玉藻よぉ。」

 

「なんだ?」

 

「お前の旦那が陰陽師雇ったぜ。」

 

「何だって・・・?」

 

神妙な面でこちらを見てくる。

 

「いやだから、お前の隠している尻尾を見られたんだろうよ、それで雇ったんじゃね?」

 

「そうか、バレてしまったか。」

 

「そういうこった、幸いその陰陽師に見つかる前に俺が倒したけどよ。」

 

「お前が倒したのか?ククッどうせ雑魚だったのだろう?私の妖力を見破れるわけがない。」

 

藍が鼻で笑ってくる。

 

「うんにゃ、陰陽師は安部晴明だったよ、お前のことも当然バレてたがな。」

 

「安部だって!?良く退けれたな、お前はもしかして強いのか?」

 

「俺は強いぞ?多分。」

 

「多分って何だ・・・いや、安部を退けられたくらいだ、強いのだろう」

 

「じゃぁそういうことで。」

 

「しかしお前、強いっていう割には妖力が少しも無いな。」

 

「俺は妖怪じゃないもん、元は人間だし人外っていった方が良いのかね。」

 

「人間だったのか・・・。」

 

「曖昧なんだよ、俺にも余りわからん。」

 

「・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃぁまたくるよじゃぁな玉藻。」

 

「お土産よろしく。」

 

あら?今度は来るなって言わないのね、言っても無駄かそれとも・・・

ま、いいか、と スキマを広げ妹紅と泊まっている宿に戻る

 

 

「ただいま~。」

 

宿の一室に戻ると妹紅が部屋の隅で壁に凭れていた。

 

「お帰り、なにしてたんだよ?」

 

「用事だよ用事。」

 

「なんの用事なんだ?」

 

「それは教えられんな~。」

 

そういいどっこいしょ、と座る。

 

「なんだよ気になるな。」

 

「気にすんな~。」

 

そういって机の上に置いてあるタバコを吸おうとすると、あることに気づく。

灰皿の脇に置いといたタバコの本数が足りない、心なしか灰皿の中のシケモクが多いような・・・。

 

「妹紅、俺のタバコ吸ったか?」

 

「ん~・・・3-4本吸ったよ。」

 

「この野郎!」

 

「あ痛!?」

 

ゴチンっと妹紅に拳骨をくれてやる。

 

「何すんだ!?」

 

頭を押さえながらこっちを涙目で睨んでくる妹紅。

 

「お前にはまだ早い!」

 

「早いも遅いもあるかよ!もう七十歳以上だぞ!!」

 

「俺の中では早いんだ!お前はあと100年は待て!」

 

「なんだよそれ!」

 

「大体なんで吸ったんだ!」

 

勝手に吸われたから怒るのではない。

 

「天馬が吸ってるからだよ!」

 

「あぁ!?」

 

「憧れてる奴と一緒のことしちゃいないのかよ!」

 

「はぁ!?」

 

「天馬が吸ってる時格好いいって思ったから吸ったんだよ!」

 

格好いいのか・・・少し嬉しいような・・いかんいかん、それとこれとは話は別だ

 

「そうだとしてもお前は吸うんじゃない!」

 

「ッッ!!分かったよ!もう吸わねぇよ!」

 

そういうと妹紅はそっぽを向いて寝っころがってしまった。

 

元はといえば俺が机におきっぱだったのが悪いんだが・・・

 

「はぁ~・・・ほれ、やるよ。」

 

少し考え、頭を掻いた後電子タバコを創造し妹紅の近くに置く

味はイチゴメンソールだ。

 

「・・・なんだよこれ。」

 

「電子タバコだ、体に害の無い奴だからそれならいくら吸っても構わん。」

 

「・・・ありがと。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見ろ、天馬!煙で輪ができたぞ!」

 

妹紅が電子タバコの煙を吐き出しちっちゃい輪っかをポンッポンと見せつけてくる

 

「甘いな、妹紅俺のは連射型だぞ!」

 

タバコを思い切り吸い、スポポポポポポポポポっと輪っかを連続で出しドヤ顔をする。

 

「クッ!!やるじゃんか!私なんてでかいの作れるもんね!」

 

ボフンッと妹紅がデカイ輪っかを出してくる。

 

「ふん!俺なんて龍出せるもんね!」

 

フオアアアアっと龍を煙で出す

 

「ブッハハハ!!おいおいおいおい!おかしいだろソレ!どういう口の構造になってんだ!」

 

凄いを通り越し爆笑している妹紅。

 

「俺秘伝の煙術だ・・・。」

 

ドヤ顔である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、そろそろ寝るか、火消すぞ?」

 

「あぁ、お休み。」

 

部屋の蝋燭の火を消し、布団に入る。

 

 

 

 

 

翌朝、起きてみると外がやけにガヤガヤとしていて非常にうるさい。

 

 

「ん~・・・?うるせぇな・・・。」

 

ノソノソと寝ている妹紅を横目に起き上がり歯を磨いて顔を洗う。

 

「・・・なんだ??」

 

宿の外をで見ると人でいっぱいになっている。

 

「なんだなんだ?祭事か?」

 

すると隣でうるさく喋っている男達から会話が聞こえる。

 

男A 「なんだって!?」

 

男B 「なんでも帝の妻が妖怪だったらしい!今は逃亡中で東方面に行ったとのことだ!兵士達は追っているそうだぞ!」

 

男C 「そりゃ怖いな!帝様はご無事なのか!?」

 

男B 「何ともなければいいのだが・・・」

 

 

 

あ・・・!?

 

俺が寝ている時に大変な事になっているな、早く藍を見つけねぇと!

東方面に走り人がいないことを確認すると思いっきりジャンプする。

空に舞い、辺りを確認。

 

「能無し兵士共め、どこにいきやがった!?」

 

すると離れた東北方面で武装した兵士達を確認。

 

「そっちか!!」

 

滑空し急いでいるためエアーダッシュをしながら兵士達のいるところに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

兵士達の所に着いた時藍がいないかと確認してみると、追いつめられた藍がそこにいた。

藍には矢が数本刺さっており、武器の傷跡もあり血だらけだ。

 

藍は追いつめられており、兵士達がジリジリとトドメを刺そうとしている。

 

「クソッタレが!」

 

空から急降下をして、兵士達のいる場所に降りる。

ドンッ!という地面の音と共に着地すると兵士達がこちらを向いてくる

藍もこちらを見て驚いている。

 

「なんだこいつは!!」

 

「この狐の仲間だろう!殺せ!」

 

兵士達がこちらに武器を構えてくる

 

「てめぇら!そいつから離れろ!」

 

そういうと腕を鞭状態にして、八つ裂きにしようとした瞬間

「やめろ!!」と藍が叫んだ

 

「なにいってんだ!?玉藻!」

 

「やめろ・・・やめてくれ・・・殺さないでやってくれ・・・!」

 

「ッッ!」

 

白面金毛九尾の狐、妖獸最強とも言われる妖怪がなぜ人間にボロボロにされているのかと思ったがそういうことか・・・。

 

「玉藻!逃げるぞ!」

 

そういい藍の所にスキマを広げ、藍をスキマに取り込む

 

「逃げるぞ!追え!追ええ!」

 

兵士達がこちらに向かってきたのですぐにスキマに入り閉じる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキマの中に逃げた俺と藍。

 

藍を抱え様態よ聞く。 

 

 

「痛むか?玉藻。」

 

「大丈夫だ・・・ッウ゛ア゛!!」

 

「大丈夫なはずがないだろ!」

 

刀傷が酷く矢が奥深くまで刺さっている

 

「痛むぞ!我慢しろ玉藻!」

 

そういって藍に刺さった矢を掴み抜く

 

「ヅア゛ッ!」

 

「頑張れ玉藻、我慢しろ!あと二本だ!」

 

「ガァッ! ~~~~ッッ!!!」

 

最後の一本を抜いたところで藍は痛みで気を失ってしまった。

 

「玉藻!?しっかりしろ!!今直してやるから!」

 

細胞で傷を覆い肌を元通りにして、スキマから八意印の薬を飲ませようとするが気を失っている為思うように飲んでくれない。

 

「クソッ!どうすればいい!?どうすりゃいいんだ!?」

 

そのときふと、思いつく。

 

「しょうがねぇやるしかない!」

 

そういって自分の口に薬と水を含み藍の口の中に流し込む。

鼻に逆流しないように、上半身を抱き斜めにする。

 

すると、ゴクッゴクッと薬を飲み込む音がして全部飲み終えたあと口を離し、一安心する。

 

「あとは自然治癒するのを待つしかないな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




天馬さんの思いがけない女子との初接吻、


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天馬、玉藻前を大妖怪の式にする

天馬さんついに幻想郷に・・・・


玉藻前もとい藍を救出し、スキマの中で藍が目覚めるのを待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキマの中で天馬と藍は居た

 

 

 

「顔色が良くなってきたがまだ目は覚めないか・・・。」

 

一向に目を開けない藍を見つめ、替えの濡れタオルを藍の額に置く。

風邪でも熱でもないが、体温が高いため濡れタオルを置いているのだ。

 

「・・・。」

 

玉藻の言った人間を殺すな、あれが妙に引っかかる。

ある一説では玉藻前は人間に愛されたいがため、人間に近寄り人間と同じ行動をし、そして最後には都の頂点、帝の目についたという、なんの害もない妖怪。

ただ、妖怪であったために傷つけられ、封印され、人間に迫害をされる、種族が違うだけであるのに。

 

「・・・だから玉藻は兵士達に抵抗しなかったんだろうな。」

 

兵士達に抵抗せず追われ、帝に裏切られたのにも関わらず人間を嫌いにならずにむしろ庇った玉藻前、本当に人間を愛し、愛されたかったのだろう。

よく藍をみると目には涙の跡がある、これに懲りて人間に愛想を尽かすのだろうか、それともまだ人間が好きなのか俺には分からない。

 

そんな考え事をしていると、紫がニュっとスキマから出てきた

 

「はぁい天馬、久しぶりねぇ。」

 

扇子を口にやり、胡散臭い喋り方だ。

 

「・・・どうやってここに来た。」

 

「あら、元は私の能力なのよ?来れて当然じゃない?」

 

スキマの中にスキマで入るとは。

 

「その子が九尾の狐?」

 

寝ている藍に目配せをしてくる。

 

「そうだが今はあんま動かさないでやってくれ、手追いだからな。」

 

「あら、そうなの?スグにでも新しい世界に隔離したいのだけれど。」

 

藍に近寄り、しゃがみこんで藍をじろじろと見る紫

 

「新しい世界ねぇ・・・。」

 

「そういえば天馬は新しい世界に来たことが無いわね?この際だから来てみなさいな。」

 

「ふむ・・・。」

 

「ほらほら考えまない、そうと決まればさっさと行くわよ。」

 

紫が立ち上がり少し離れスキマを開く。

 

「しょうがねぇ、我慢してくれよ玉藻。」

 

藍をお姫様抱っこをして紫と一緒にスキマのその先に進む。

するとどこかの屋敷の一室に着く。

 

「どこだここ?」

 

「私の家よ、その子を布団に寝かせなさい。」

 

藍をゆっくりと布団に降ろし、布団に寝かせる

 

「この子は私が見ているわ、貴方は人間の里に行きなさい、場所はここよ」

 

紫から道がかかれた紙を渡される。

 

「分かった、玉藻の事頼むぞ。」

 

「はいはい行ってらっしゃい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道が書かれた場所へ着いた。文字通り人間が多い里である。

里の入り口っぽいところに着き周りを見渡す、すると頭に奇妙な帽子が乗っており髪が少し青く長い女性を見つける。

 

上白沢慧音だ。

 

「もし、そこのお方。」

 

慧音に話しかけてみる。

 

「ん?私の事か?」

 

慧音はいろんな食材が入ったバッグを持っており多分買い物の途中なのだろう。

 

「貴方は上白沢慧音とお見受けしますがいかがで?」

 

「何処かで会ったかな?私が上白沢慧音だが・・・。」

 

「いえいえ一方的に知っていたものでつい、声を掛けてしまいました。」

 

「なるほど、だから私が知らないわけだ、新しくこの世界に入ったのかい?」

 

「まぁ、そういう事になりますね、挨拶代わりといっちゃぁなんですが宜しくお願いします。」

 

「宜しく、私はこの先で寺子屋の教師をしている、暇があったら見に来てくれ。」

 

「分かりました、時間がある時に行かせて頂きますね。」

 

「あぁ、では私はまだ用事があるので失礼するよ。」

 

そういって慧音は行ってしまった、買い物だろう。

 

 

「さてさて、人間の里の守護者にも会ったことだし、後はなにがあるかな?」

 

めぼしいものは無いので地点を移動する。

里から離れ適当に歩いていると妙に湿気が多く感じる森を見つける。

 

「魔法の森かな?魔理沙はこの時代にはまだいなさそうだな。」

 

森の入り口らへんに着くと、香霖堂という古びた看板を携えている家を見つける。

 

「お、香霖堂といや森近霖之助か、この時代にはもういたんだな。」

 

香霖堂のドアを開け入ってみると、銀色の髪、メガネ、優しそうな顔、奇抜な服を来た森近霖之助が椅子に座っていた。

 

「おや、お客さんかい?見ない顔だね?」

 

椅子に座りながらコチラを見てくる。

 

「どうも、新しく移住する予定で名前は小鳥遊天馬ってんだ、天馬って呼んでくれ。」

 

「そうなのかい、僕の名前は森近霖之助、香霖と呼んでくれて構わないよ。」

 

酷く殺風景であり商品と呼べるものはちまちまとしか見あたらない

 

「・・・あんまり物が無いなー。」

 

「すまないね、まだ店を開いて間もないんだ、物は無いが鑑定はできるよ。」

 

「ほほぅ、じゃぁしてもらおうかな。」

 

腕試しでとりあえずタバコを創造して香霖に渡す。

このころの喫煙はパイポやキセルが主流であり、紙巻きタバコは流通していない。

 

「ふむ・・・?これは喫煙するやつかい?キセルやパイポとはまた違うやつだね?名前は紙巻きタバコかな?」

 

おぉ、さすが香霖、すごいな。

 

「正解、すまないが少し試させてもらったよ。」

 

「そうか、僕の能力があれば名前と用途くらいは分かるよ。」

 

「ほほぅ、そりゃまた凄いな。」

 

「僕の能力、道具の名前と用途が判る程度の能力だけど、使い方とかはわからないんだよね。」

 

「あんまり便利では無さそうだね。」

 

ハァっと溜息を香霖はつく。

 

「名前と用途が判ってもあとは自分で使い方をしらべないといけないのが辛いところだよ、所で君も能力持ちなんだろう?どんな能力をもっているんだい?」

 

「俺か?俺は、ありとあらゆる物を創造する程度の能力と人外になれる程度の能力だよ。」

 

「二つ持ちかい?凄いね、初めて聞いたよ、それで創造できる能力は非常に便利だね。」

 

香霖は目を丸くして驚いた。

 

「まぁ便利っちゃぁ便利だけどね。」

 

「それで、人外ってのはどういう奴なんだい?」

 

「こういう事だよ。」

 

腕を鞭状態にして香霖に見せる。

 

「これまた驚きだ、人外というより妖怪に近いんじゃないのかい?」

 

「いや、妖怪は妖力を持っているが俺は少しも持ってないんだ、だから人外。」

 

「なるほど、人外っていうことは元は人間なんだね?」

 

「まぁ、そういうことになるね。」

 

香霖はメガネをクイっと持ち上げる

 

「非常に興味深いね・・・、君の創造する能力と僕の能力、結構相性がいいんじゃないかな?」

 

「ふむ、俺は何でも創造できるが用途が判らない時があるからね、そのときは香霖の能力が役に立つかもね。」

 

「いいね、天馬君、君に一つ提案しようじゃないか。」

 

香霖は人差し指を立て俺に提案してくる。

 

「君に用途を教える代わりに僕の店、香霖堂を君の能力で僕と切り盛りしてみないかい?」

 

ほう、そう来るとはなかなか面白そうだ、人里までそう遠くないし、てかスキマ使えるし、話しあいてにもなるし、面白そうだし。

 

結果   面白い。

 

 

「面白そうだから協力するよ、これから宜しく、香霖。」

 

手を出し握手を香霖に求める、すると香霖も手をガシッと掴んで来た。

 

「宜しく、天馬君、君とは長い付き合いになりそうだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香霖との契約も終えて人を待たせているので、香霖に種を告げ一旦紫の居る屋敷に戻る。

 

 

 

「ただいま。」

 

スキマを広げ紫の屋敷の中に入ると目を覚ました藍と紫がそこにいた。

 

「あら、早いのね、お帰りなさいな。」

 

「・・・。」

 

藍は黙っており紫は笑っている。

 

「お、玉藻よ、目を覚ましたか。」

 

布団に上半身だけを出しコチラを見ている藍に話す。

 

「おかげ様でな、お前の処置が適切だったんだろう。」

 

「よかったよかった、しょうがないとはいえ接吻をした価値もあると言うもんだ。」

 

「は?」

 

紫と藍が何言ってんの?という風に見てくる

 

「いやぁ、薬を飲ますためとはいえ済まないことをしたな、玉藻よ。」

 

それを聞くと藍はみるみる内に顔を真っ赤にする。

 

「お前と私が接吻・・・だと・・・?」

 

「嫌だった?なら謝るよ。」

 

「い・・・いや・・・薬を飲ます為だろう・・・?ならしょうがない・・・」

 

藍はそれだけ言って顔を真っ赤にしながら下を向いて黙ってしまった。

 

「ちょっと天馬!どういうことよ!」

 

すると次は紫が話しかけてきた。

 

「さっき聞いただろう?深手を負った玉藻を助けるためにしたことなんだ、それだけだ。」

 

「だからってほかにも方法があったでしょう!?せ・・・接吻だなんて汚らわしい!」

 

紫もまた顔を真っ赤にしている、紫は以外と純真だった。

 

「方法はあっただろうけど焦っていたんだよこっちも。」

 

「だからって貴方ねぇ!接吻とは愛している人にだけしかしちゃいけないのよ!」

 

なかなかに純真すぎて困る。

 

「いいんじゃない?俺玉藻好きだし。」

 

「何ですって!?」

 

紫が目を開いて藍を見る。

そして藍がブツブツと何かを喋っている。

 

「こいつが私を好きだと・・・?いや・・・何かの聞き間違いだ、そうに違いない・・・私もこいつの事を好きなわけがない、ただの恩人であるだけだ・・・そうだ、私がこいつを好きになるわけがない・・・。」

 

「丸聞こえだぞ。」

 

「ちょっと天馬!好きってどういうことよ!」

 

「ん?いやだから、単純に好きってことだよ。」

 

紫は少し考え、手をポンッと叩いて言ってくる。

 

「なるほどね、友達として好きってことね!」

 

「いや?異性として好きだぞ?」

 

「はぁ・・・!?」

 

顔を真っ赤にしている紫、少し涙目だ。

 

「まぁまぁこの話しは無しにしようよ、どうせ玉藻も俺の事好きじゃないんだし言っててもしょうがないしな。」

 

「そ・・・そうね!」

 

「あ、紫一つ頼みごとしていいかい?」

 

「え?なに?」

 

「俺の連れ、妹紅とこの前竹林で会った二人をあの竹林事この世界に取り込んでくれ。」

 

「あぁ、いいわよ?ただし、竹林は少し規模がでかいから里とは少し離れた所に取り込んでおくわね。」

 

「ありがたい、じゃぁ紫、妹紅だけここに一回呼んでくれないか?」

 

「忙しいわねぇ・・・ちょっと待ってなさい。」

 

すると紫をニュっとスキマに入っていった

 

少し待つ、藍は相変わらずブツブツ言っている、5分ほどすると。

 

「あ痛ぁ!!!???」

 

妹紅がスキマから落ちてきた、尻餅をついて。

 

「妹紅たんINしたよ」

 

「いたたた・・・、何すんだこの野郎!」

 

妹紅が紫に詰め寄ろうとしたので仲介に入る

 

「おいやめろ、妹紅。」

 

「あ!天馬どこいってたんだ!朝っぱらから居なくなりやがって!」

 

「用事だよ用事、それと妹紅これからはお前はこの世界の人里に行け、わかったな?」

 

「いきなりすぎて判らんわ!どういうことだよ!?」

 

「これからは俺との旅を終えて人里で暮らしていけってことだよ、暇があったら見に行ってやるからさ。」

 

「ってことは天馬と一緒にもう旅ができないのか?」

 

「そういうことだ、そもそもお前が強くなるまでの約束だしな。」

 

「・・・私はまだ弱いぞ?」

 

「いいや、妹紅は俺ほどでもないがそこらへんの妖怪よりは強いさ、今度は俺に守られる側じゃなく里を守る側になるんだ。」

 

「里を・・・守る?」

 

「そうだ、そういうことだから妹紅は里に行け、判ったな?」

 

「とりあえず天馬の言うことは判った、里にいけばいいんだな?」

 

「おう、頑張って来いよ。じゃぁ紫、妹紅を里に送ってやってくれ」

 

「はいはい、じゃぁ行くわよ?」

 

紫は妹紅をスキマで転送させようとすると妹紅が一言言ってきた

 

「天馬!なんだかんだ楽しかったぞ!また会おうな!」

 

それは泣きそうで笑っていて、悲しいような嬉しいような顔をしていた。

 

「よし、じゃぁ玉藻よ、俺もそろそろ行くからな、じゃぁな」

 

「え?あ、あぁ」

 

スキマを広げ香霖堂に戻る。

 

「やぁ、戻ったよ。」

 

椅子に座りながら本を読んでいる店主、香霖に帰ったことを伝える。

 

「随分と遅かったね。」

 

「こっちだっていろいろあるんだよ。」

 

もう一つの椅子に腰掛け腕を後ろにやり頭に交差させる。

 

「あ~疲れた、悪いが香霖俺は寝させてもらうぞ。」

 

「ご自由にどうぞ。」

 

香霖に承諾を貰ったのでアイマスクを創造して、椅子に座りながら寝る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・んご、ふあ~あ~・・・首が痛ぇ・・・。」

 

アイマスクを外してみると、寝る前は明るかったはずなのにもう暗い。

 

「よく寝たぁ~。」

 

辺りを見回しまだ椅子に座りながら本を読んでいる香霖、蝋燭の火がゆらゆらと映している。

 

「お、やっとお目覚めかい?お早う。」

 

「お早う香霖、目ぇ悪くなるぞ。」

 

電池式スタンドライトを創造して香霖の近くに置いてスイッチを入れる

すると蝋燭の火の光以上に香霖堂を照らしてくれる。

 

「明るいね、本も読みやすいよ。」

 

「不便な時は俺に頼るといい、長い付き合いになるんだからな。」

 

「済まないね、ありがたく使わせて貰うよ。」

 

「ういうい。」

 

自分の椅子に戻り、俺は眠気眼を開きながら煙草を吸う。

 

「あぁ~ニコチン接種きたぁ~。」

 

「フフッ随分と爺臭いね。」

 

「これがないと頭回転しないんだよ。」

 

「そうかいそうかい・・・さて、そろそろ夕飯にしようじゃないか。」

 

香霖は本をパタンッと閉じ立ち上がる。

 

「お、いいね腹ぺこだ。」

 

「食料は君が調達してくれよ?」

 

「わーったわーった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、家がないので香霖堂に泊まらせてもらった俺は朝早くに起きる。

 

 

「フアァ~、香霖はもう起きてんのか。」

 

香霖がいない所をみると、もう商売し始めてるのかね。

階段を降り、香霖堂のメインの部屋に行くことにする。

 

 

「お、香霖起きるの早いな、お早う。」

 

「君が遅すぎるんだよ。」

 

時計を見てみると10時半、俺にとってはこれでも早いくらいだ。

 

「まだ10時半か、もうちょい寝ようかな。」

 

「やれやれ・・・。」

 

冗談だ、と言いもはや俺専用の椅子となっているチェアに座り一服する。

 

「客がこねぇなぁ・・・」

 

「いや?今日は珍しい人が来るはずだよ。」

 

「ん?定期購入でもされてるのか?」

 

「まぁそんなもんだね。」

 

「ふむふむ珍しい、こんな店といっちゃなんだが風変わりした店を定期でくるなんて、一体誰なんだ?」

 

「こんな店でわるかったね、お客さんはこの世界の一番偉い人だよ。」

 

「ほぉ、気になるな。」

 

偉い人・・・ねぇ・・・。

 

そうして香霖と40分ほどくっちゃべっているとカランコロンっと軽快な音がしてそれと同時にドアが開かれる。

 

 

「お、来たようだ。」

 

「どれどれ。」

 

「今日は、霖之助さん・・・って天馬じゃない。」

 

この世界で一番偉い人、それは・・・紫だった。

 

「なんだお前さんか、期待して損した。」

 

「知っているのかい?」

 

香霖が聞いてくる。

 

「知ってるもなにも俺はこいつの式だぞ。」

 

「損したって何よ、損したって。」

 

紫は口を膨らませ、プンプンと怒っている。

 

「君はこの人の式だったのかい?吃驚(びっくり)だよ。」

 

香霖が目を丸くして、紫はプンプン怒っている。

 

「腐れ縁みたいなもんだよ。」

 

「式は式らしくしなさい、天馬はどうしてここにいるの?」

 

「俺がどこにいようと自由だろが、・・・玉藻はどうした?」

 

「あの子は今仕事中よ、ついさっき式になったばかりなのよ、それと名前も変えたわ、今は 藍 よ」

 

「職務放棄たぁ、この世界の一番偉い奴がやることじゃないな、それと名前はいいと思うぞ」

 

「あら?私は仕事してるわよ、見回りとか♪」

 

ニコっと笑い手を頬に当てる紫。

 

「な?こんなのが主だっていうのが嫌なんだよ。」

 

驚いている香霖に言うと、なるほどねっと返してくる。

 

「まぁいいわ、ところで霖之助さん、例の物はできているかしら?」

 

「あぁ、出来ているよ、そこに置いといたから持っていってくれて構わない。」

 

「ありがと、じゃぁ報酬はここに置いておくわね。」

 

紫はそう言うとスキマからいろんな食材、米、酒などを大量に出し、置いてあった包みを持つ。

 

「おいおい、その中身はなんだ??」

 

紫に聞いてみると

 

「内緒♪」

 

とだけ返ってきてさっさと帰ってしまった。

 

「香霖、あの中身はなんなんだ?」

 

「それは僕にも言えないなぁ・・・。」

 

「長い付き合いになるだろ、隠し事はやめようぜ。」

 

「君もあの人の式だって言うことを隠していたじゃないか、おあいこだよ、まぁそのうち分かるさ。」

 

「へいへい、そりゃ悪うございました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香霖と共に時代を過ごして早500年、え?飛びすぎって?何もすることが無かったんだもの・・・強いて言うなら紫がデカイ山をこの世界に持ち込んで鬼も連れてきて一騒動おき、この世界の名前が決まったことくらいだな・・・、まぁ名前は知っての通り幻想郷。

 

 

今日も香霖堂は変わらず客が見えない、ていうか香霖自体店のことは気にしない。

 

「王手。」

 

「・・・参りました~」

 

王手をしたのは香霖、負けたのは俺、将棋をしているのだ、頭脳戦はめちゃくちゃ苦手だ・・・・。

 

「あ~やってらんねー一回も勝てないとかマジクソゲー」

 

「いやいや、君が突っ込みすぎるのが悪いだろう。」

 

「くそ、もうやらんぞ俺は。」

 

「フフフッ。」

 

するとカランコロンっとドアを開けると鳴る奴が響く

ドアの方向を向くと小さい金髪の女の子を連れた男が立っていた。

この男は半年に一回ほど来る、どうやら香霖の知り合いらしい。

 

「おや、霧雨さんではないですか。」

 

「やぁ、繁盛しているかね?」

 

「相変わらずの閑古鳥ですよ、さぁ立ち話もなんですし上がってください。」

 

「邪魔するよ。」

 

俺に目もくれず香霖と奥の部屋に入ってしまった。

小さい女の子香霖に着いていかず、コチラを見ている。

俺は椅子に座りいつものように煙草を吸っているとずーっと見てくる。

 

「なんだよ魔理沙、文句あんのか?」

 

「・・・こわ、」

 

「怖いってなんだ怖いって俺は至って優しい男だぞ。」

 

「私みたいな子供にそんな言葉を掛けること自体怖いよ。」

 

「なんだとこのガキ、お前がこっちを見なければいい話しだろ。」

 

「一人で寂しそうだから見ていただけだよ。」

 

「べ、別に寂しくなんかないわ!」

 

「へぇ~」

 

この小さい女の子魔理沙は非常に感情豊かで俺みたいな奴でもこうやって話してくる。

香霖に魔法を教わっているらしく時々星形の魔法を俺にお見舞いしてくる憎いやつ。

 

「よいしょ。」

 

俺の椅子に足を掛け、膝に座ってくる。

 

「おい、なんで俺の上に座る、お前は地べたにでも座ってろ。」

 

「別にいいじゃん、減るもんじゃないし。」

 

「減らねぇけど疲れるんだよ、俺の足が。」

 

「そうかそうか、頑張れ。」

 

相変わらず人を苛つかせる天才だなこいつは、いや俺限定にしてくるのか。

 

「はぁ~・・・お前はいいよなぁ子供だから自由で。」

 

「子供サイコー。」

 

魔理沙は今年で10歳、まだまだ子供である。

 

「はぁ~・・・」

 

煙草を取り出し吸おうとすると魔理沙が俺の手から煙草を奪ってきた。

 

「おい、なにすんだこの野郎、返しやがれ。」

 

「やだ、臭いもん。」

 

「じゃぁどっかいってろよ、俺はソイツが吸いてぇんだ。」

 

「やだ、臭いし、天馬臭い。」

 

「なんだとこの野郎、いいからそいつを返っせ!」

 

魔理沙が持っている煙草を奪おうとすると取られないように回避してくる。

 

「いやだよ、吸いたければ外で吸って。」

 

「めんどくせぇだろ、早く返せって痛て!」

 

煙草を奪おうとする、と魔理沙が星型の魔法を投げつけて俺の頭にクリーンヒットする。

 

「へへ~んだ!」

 

「チッ、もういいや」

 

創造で煙草をだし、何事も無かったかのように煙草を吸うと魔理沙がうるさくなる。

 

「あー!卑怯だ!卑怯!」

 

「卑怯もクソもあるか、俺の能力なんだから別にいいだろ。」

 

「卑っ怯!卑っ怯!」

 

「うるせぇ、静かにしろ。」

 

「卑怯~~!」

 

「うるせぇ!」

 

「うわ!」

 

魔理沙の立っている地にスキマを広げ魔理沙を取り込む。

 

「・・・ふう、やっと静かになったか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後10分ほどすると香霖と霧雨のおっさん奥の部屋から出てくる。

 

「じゃぁまた来るよ。」

 

「はい、奥さんによろしく伝えてといてください。」

 

「分かった、妻も喜ぶだろう、おい魔理沙どこにいるんだ、そろそろ帰るぞ。」

 

「魔理沙~?」

 

香霖とおっさんが魔理沙を呼んでいるのでスキマからッペ!っと魔理沙を出す。

 

「うわぁああん。」

 

「おや、魔理沙何処にいたんだ、なんで泣いている?」

 

「でんまがぁああテンマがあああ」

 

まぁ、あんな目ん玉いっぱいあるスキマに放置されたら泣くだろうな。

そして魔理沙をみた霧雨のおっさんが俺に初めて話しかけてくる。

 

「天馬君だったね?魔理沙に何をしたんだ?」

 

「ちょいとうるさいんで躾をしたところだよ。」

 

「それは済まなかったね、これからも仲良くしてやってくれ。」

 

これは意外だ、てっきり怒られるのかとおもったぜ。

 

「あ、あぁ分かったよ。」

 

「では私はこれで失礼するよ、ほら魔理沙行くぞ。」

 

「おぼえてろおおぉぉてんまぁああ」

 

魔理沙は泣きながら捨て台詞を吐き、帰ってしまった。

 

「ふぅ、嵐が去ったな。」

 

「君は魔理沙に厳しいね。」

 

「香霖が甘やかしすぎるんだっつの。」

 

「フフフッ違いない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会わせたい人がいるの。

 

紫がいきなり現れて俺に会わせたい奴がいるんだと、そのため俺は香霖堂の休みを取る。

 

「さ、着いたわよ。」

 

「神社か・・・?」

 

紫がちょっと前に大きな山を転送させて、その頂上にいる。

まぁ神社といえば博麗神社だろう。

 

「ちょっと待ってなさい。」

 

神社の前に着き、紫は中に入って行く。

 

「霊夢~?霊夢~?ちょっといらっしゃーい。」

 

すると紫と一緒に出てきたのは小さい霊夢。

しかしあれだな、無愛想だな、笑いもしなければ怒りもしない。

 

俺の目の前に連れてきて挨拶をする。

 

「ういっす、俺の名前は天馬だ宜しくな。」

 

「・・・。」

 

「霊夢?何しているの?挨拶をしなさい?」

 

「博麗霊夢・・・。」

 

まったくこの子は・・・と紫があきれている。

 

「いいよいいよ、霊夢か、良い名前だな、これは挨拶代わりだ。」

 

飴玉を創造して霊夢に渡す。

 

「・・・ありがとう。」

 

霊夢と目線を合わせる為俺はしゃがんで霊夢と目を合わせる。

 

「霊夢よ、今から俺はお前さんの家族のようなものだ、困ったときは香霖堂に来なさい、出来る限りの支援はする。」

 

「・・・わかった。」

 

霊夢の頭を撫で、ポンポンと軽く叩く。

 

「よっし、挨拶はこれまでにしてなにすっか?」

 

「霊夢、天馬はと~っても強いのよ?、一回戦ってみたら?」

 

おい紫、なにいってんだてめぇ。

 

「おい、何言ってんだ紫、ぶちのめすぞ。」

 

「あら?やってみる?」

 

「お、やるか?」

 

なんだかんだいって紫とは一戦もしていない、いい機会だやったろうじゃねぇか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社の前で紫と対峙する。

 

「じゃぁ、勝負の勝敗を決めるわね、天馬は弾幕を一度でも食らったら負け、私は天馬の攻撃が当たれば私の負けね。」

 

「うっし、いいだろう、手加減するなよ?」

 

手を左手はパーにして右手をグーでパンパンッっと鳴らし、肩を小回りにぐるぐる回す。

 

「はなからする気もないわ。」

 

紫は扇子で口を隠し、見下したような目でみてくる。

 

霊夢はお賽銭箱の上で座っており俺と紫の戦いを観戦する。

 

「じゃぁ始めは俺の持っているこいつが落ちた瞬間にしよう。」

 

吸いかけの煙草である。

 

「いいわよ、いつでも始めなさいな。」

 

「よし・・・いくぞ!」

 

煙草を上になげ落ちた瞬間戦いの火蓋は幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




VS紫 天馬の能力も上がっていまっせ!


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天馬、幻想郷の賢者と戦う。

一体なにが起こるんです?


煙草が落ちた時、戦いの火蓋は切られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァ!!!」

 

煙草が落ちた瞬間紫に急接近して、裏蹴りを当てようとする

 

「遅いわねぇ。」

 

当然紫は避ける。

 

「なら、これならどうだ?」

 

紫との距離を縮め、今なら拳でも蹴りでも当たる距離なので、裏蹴りをしたあとに腕を突き出し、疑似波動をする、腕を極限まで早く押すことによって巨大なソニックブームが生まれる。

 

 

放った腕の周りの空気は歪み木々をざわめつかせる。

 

「危ないわね。」

 

当たりそうなところで紫はスキマに隠れ、俺の後ろに出現する、そして後ろから雨のような弾幕を0距離で放ってくる。

 

「うおっ!」

 

弾幕を危なげなく横回転で避け、バクテンで距離を取る。

 

「俺妖力ないから弾幕できないんだよね。」

 

「貴方は力があるじゃない。」

 

「近距離だけだよ!」

 

足で地面を蹴り石と砂が混じっているものを紫にぶつけようとするが、またスキマに隠れられ、避けられてしまう

 

「小賢しいな、ちょろちょろと逃げ回りやがって。」

 

「あら、あなたもスキマがあるじゃない。」

 

「お前俺が開けないようになんか細工しただろ。」

 

「よくわかったわねぇ。」

 

紫はスキマで距離をとり、妖力弾の弾幕をしてくる。

 

避けられないほどの弾幕を撒いた紫は上から眺めている。

 

「クソ!卑怯くせぇな!」

 

体の関節をはずし出来るだけ細くなり弾幕のスキマを縫う。

 

「あら、気持ち悪いわぁ。」

 

「自分でもわかっているよ。」

 

「じゃぁこれならどうかしら?」

 

 

 

 

空餌「中毒性のあるエサ」

 

 

 

 

 

突如回りに変な飛行物体がでてきてこちらに向かって高速飛行をしてくる。

 

「あぶねぇ!!」

 

「あらあら、避けるのが精一杯かしら?」

 

「そうかもしれんね!」

 

鞭を展開させ、周りを凪払う。

すると飛行物体に当たり消滅する。

 

「つぎはこっちから行かせて貰うぞ!」

 

 

 

名剣の舞

 

 

 

 

様々な伝説の武器を創造して腕いっぱいに持った後先ほどした疑似波動でランダムに飛ばす。

中には生太刀なんかもあり当たると生命力が爆発するというものもある。

 

「神力!?」

 

紫は驚いて避ける。

 

「まだまだぁ!」

 

創造し続けている名剣を今度は両手に持ち狙いを定めアーム強化をして避けている紫に投合する。

 

アーム強化で投げた剣は音速を越えて紫に向かう。

 

「クッ、スキマを開く時間が無いわね!」

 

スキマ展開をするのに0,2秒程、それを上回る早さで連続で紫に剣や刀、斧、ハルバードなどが飛び交う。

 

「終わりだな!」

 

投げた剣の速度と同時に紫の目の前いっぱいに名剣 神剣 妖刀 を投げつけ掠らせる。

 

 

「はい俺の勝ち、紫の負け~」

 

「やられちゃったわぁ・・・」

 

紫の頬に少しだけかすり傷があるのを確認して創造したものを消す。

 

「ま、こういうことだ俺の方が格上だったっていうことだ。」

 

「悔しい~~!」

 

地団太を踏む紫、地面が抉れとる・・・。

 

さてさて霊夢のところにいき感想を聞いてみる。

 

 

「どうよ霊夢?俺強かっただろ?」

 

「あー、うん・・・」

 

「なんだよ、そんだけか。」

 

「この子は興味ない物にはとことん無いからねぇ。」

 

「なんでも創造できるのは非常に便利・・・」

 

「だろうだろう!」

 

「能力二つ持ちなんて卑怯よねぇ・・・」

 

「神が与えたくれたのだ。」

 

「はいはい。」

 

さりげなく本当の事を言ったが信じてはくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社の中に入り紫と霊夢と俺で話している。

 

「霊夢ちゃんは今何歳なの?」

 

「・・・10歳、ちゃん付けしないで。」

 

「10歳かぁ~霊夢ちゃんはおませだねぇ。」

 

「ちゃん付けしないで。」

 

「いや~しかし霊夢ちゃんはかわいいねぇ。」

 

「・・・。」

 

「・・・霊夢ちゃ「ちゃん付けしないで。」イテッ!」

 

紫に扇子で額を叩かれた。

 

「なにすんでい、紫。」

 

「あなたもしつこいわねぇ、やめろって言われたらやめるのよ。」

 

「やめろって言われる程やりたくなる性なんだよ。」

 

「最悪な人格・・・」

 

「おい霊夢ちゃん今なんつった。」

 

「私もそう思うわ。」

 

「・・・。」

 

二人が俺を見てくる。

 

「そうかいそうかいじゃぁもういいや、帰る。」

 

「拗ねないでよ。」

 

「拗ねるもなにもあるかい、こんなに人格否定されたのは初めてだ。」

 

「意外ねぇ・・・。」

 

「意外・・・。」

 

「・・・。」

 

スキマを展開させ八雲邸に移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「らぁあああああん!皆がいじめるんだよぅ!」

 

「うわ!抱きついてくんな!うっとうしい!」

 

「もうこうなったら尻尾モフモフしかないよぉぉぉ!」

 

「やめろー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たっぷり藍の尻尾をモフモフしてテンションが戻った俺はもうお嫁にいけないと嘆く藍を横目に香霖堂に戻る。

 

「はぁ・・・ただいま。」

 

「おや、随分と長い溜息だねぇ。」

 

「吐きたくもなるさ・・・」

 

「不幸が逃げていくぞ?」

 

「なんでお前がいんだよ」

 

ひょこっと香霖の机から顔を出す魔理沙。

 

「天馬には関係ないよ。」

 

「へーへーそうですか。」

 

「親に勘当されたんだよ。」

 

香霖がそう言うとそれは言うなと魔理沙が叫ぶ。

 

「勘当?そりゃまた可哀想に。」

 

「魔法使いになるのがだめらしくてね。」

 

「あらら・・・お前も大変だなぁ魔理沙。」

 

「天馬の顔よりは大丈夫だ。」

 

このクソガキめ。

 

「俺はイケメン寄りだぞ?女の子によくもてんだぞ?魔理沙は見る目ないなぁ~。」

 

「私はそうは思えないんだけどね。」

 

「へん、お前は一生香霖と仲良くしてろ。」

 

「なにいってんだぜ!?」

 

おうおう顔を真っ赤にしやがって。

 

「ははぁ・・・魔理沙は香霖が好きなんだな?香霖はどう思うよ?」

 

「フフッ僕なんかにはもったいないよ。」

 

「な・・・違う!」

 

「なーにが違うってんだ?顔真っ赤にしたくせに。」

 

「違う違うちがーーう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり、魔理沙は既に就寝、俺は椅子に座り煙草を吸い、香霖はいつも通り本を読んでいる。

 

 

するとカランコロン・・・ドアが開いたその先に魔理沙の父親、霧雨のおっさんがいた。

 

「ん・・・?魔理沙を引き取りに来たのか?」

 

「いや、実はそうじゃないんだ、頼み事があってね。」

 

「どうぞ中にお入りください。」

 

「邪魔するよ。」

 

霧雨のおっさんにお茶を出して椅子に座らせる。

 

「・・・あの子はどうかね?」

 

「まぁいつも通りだな、今日は俺の顔を貶して来やがった。」

 

「ハハハハッ随分失礼なことをしたようで・・・。」

 

「まったくだ。」

 

「それで頼みごとというのは?」

 

「その事だが、君たちに魔理沙を任せたい。」

 

「は?」

 

「え?」

 

俺と香霖が同時に言う

 

「あの子はとても自分の決めたことには頑固だ・・・、私達が何を言おうとあの子は魔法使いになるつもりだ、そこで君たちに魔理沙のことを任せたい・・・。」

 

「なるほどね、俺は別にいいが選択権は香霖にあるから、香霖に聞いて貰わんとなぁ。」

 

「そうか・・・では霖之助君、魔理沙を君達に任せたいのだがいいかね?」

 

「・・・いいですよ、私は別に一人や二人増えても気にしませんしね。」

 

「ありがとう・・・、そうだこれを魔理沙に渡してはくれないかね?」

 

霧雨のおっさんはゴソゴソと胸のポケットから八角形の物を取り出し香霖に渡す。

 

「これは・・・八卦路ですか?」

 

「そうだ、これを魔理沙に渡してほしい、だが私が渡したことにはせず、霖之助君が作ったことにしてくれ。」

 

「ですが・・・。」

 

「これは私が渡すと甘やかしているようでね・・・、是非君が作ったことにして置いてくれ頼む。」

 

「・・・貴方がそう言うのであればそうさせていただきますね。」

 

「ありがとう、では魔理沙を頼む、たまに見に来るがそのときは娘の成長を見るただの一般人だと思ってくれ、で失礼する。」

 

霧雨のおっさんはそれだけを言って帰ってしまった。

 

「やっかいごとに巻き込まれたな香霖。」

 

「・・・いや、そうでもないさ。」

 

八卦路を見つめながら香霖はただそれだけしか言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて、俺にはもう一つ便利な事を身につけた。創造の能力だが、俺の体内に霊力を創造する、と霊力が俺の体内に循環する、妖力、神力もできた。

 

つまり、俺が霊夢の夢想封印をするためには霊力を創造して体に循環させてから夢想封印を創造すると霊夢と同様夢想封印が使えるというわけだ。我ながら最強の中の最強だと思っている。

 

 

 

なぜコレに気づいたかというと香霖のある一言がきっかけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーんふんふん♪」

 

「随分機嫌がいいじゃないか。」

 

「あぁ、暇だから創造する能力で遊んでいたらなかなかにいい煙草を創造できたんでな。」

 

俺の好みを最大限にまで引き出した煙草、名付けてイーグル・スカイ、俺の名字と名前を組み合わせただけだ。

 

「本当にすごいね君の能力は、なんでも創造できるのかい?」

 

「あぁ、ありとあらゆるものだからな、俺の想像力しだいでなんでも創造できる。」

 

「へぇ、それは物じゃなくてもできるのかい?」

 

「それは試したことがないな、そうだ、香霖なにかあるか?」

 

「ふむ・・・」

 

香霖は顎に手を当て考える。

 

「あ、とりあえず霊力なんてどうかな?物じゃないしそう簡単には創造出来ないはずだけど・・・。」

 

「霊力か・・・、やってみる価値ありだな。」

 

霊力を想像し、創造してみる。

 

「うわ、霊力そのものが出て来ちゃった。」

 

ポンッと出てきたのは青い光を放つ火の玉みたいなやつだ。

 

「・・・君は本当に人間なのかい?」

 

「そうだと思いたいがな・・・」

 

出てきた霊力を消す。

 

「ふ~む・・・言い方次第なんじゃないか?例えば創造だけど今目の前に出したのは霊力そのものだ、なら自分の体内に霊力を生まれさせる、とか?」

 

「なるほど、じゃぁ自分の体内に霊力を創造する、でいいか。」

 

 

香霖にいわれたとおりに霊力を自分の体内に想像してみる、するとどんどん体の奥から霊力を感じ、自分の霊力にすることができた。

 

 

「みろ香霖!俺は人間になったぞ!」

 

「・・・人間みたいな化け物だね。」

 

俺の能力は本当にチートを越えたチートであった。言い方さえ変えればこんなにも用途が違くなるとは。

 

だけど出来ないことが一つだけある、それは対象の弱点を突いた武器や存在その物を消す代物、簡単に例えるが、紫の弱点を突いた武器を創造するとする、するとなにも出てこない。

不思議な物である

 

一回触れるだけで命を落とす武器なんかは創造できるが一回触れるだけで紫の命を断つ武器なんかは創造できない、敵対象個人に関わるものは創造できないのだ。

 

だが一回触れるだけで命を落とす武器を創造しても、触れた俺が死ぬのだから困ったものだ。

だから俺が触れても大丈夫で触れるだけで命を落とす武器を創造する、これならできるだろうと思ったら出来なかった・・・非常に不思議なものである。

 

どういう事かというと俺にも分からない。

 

 

結局はこの世界や自分のいた世界にある物や作れる物は創造できるがその二つに該当しないものは結局はつかえないということだけ。

草薙の剣やその他の伝説の武器は実際にあるということだ。草薙の剣は実際に輝夜が見ているしな。

 

あらら?ありとあらゆるものを創造する、に初の欠点が見つかってしまったぞ困ったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、俺は霊力、妖力、神力、を使えるようになった。

今の最大の力の創造は安部晴明の5倍程の力である。

 

あ、安部といえばまだあの永淋の所にいるらしい、俺を探し回っているとかなんとか。

 

 

「幻想郷最強になってしまったかもな俺は。」

 

香霖に笑いながら話すと。

 

「最強で間違いないだろう。」

 

と肯定してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




俺は人間をやめるぞ!俺は妖怪をやめるぞ!俺は神をやめるぞー!とできるようになりました。

いやまじでチートだと思います 


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天馬、安部晴明と久しぶりに話す。

天馬さんの能力が増えたので僕の話のボキャブラリーも増え・・・てないね。


自称幻想郷最強は人間の里から離れた湿気が多くて、薄暗い店で店主と会話する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーむ・・・。」

 

パチッ

 

「ふむ・・・。」

 

パチリッ

 

「う・・・。」

 

パチッ・・・

 

「フフフッ」

 

パチッ

 

「うおあ・・・!」

 

パチッ!

 

「王手。」

 

パチ・・・・

 

香霖と将棋である。

 

「ああぁぁああああ!まじこのクソゲー!!」

 

将棋台を横に殴り、香霖堂の窓を突き破りガラスの割れた音がした。

 

「ちょ・・・なにしてんの!?」

 

「あ、すまん・・・。」

 

創造で窓を直し将棋台を消す。

 

「何回やっても香霖をたおせねぇや・・・」

 

「君が突っ込みすぎるんだって、少しは考えなよ。」

 

「考えてこの結果なんだよ、もうやらんぞ!」

 

「とかいってまた将棋台だしてやろうとか言い出すのは君じゃないか。」

 

「暇なんだもの、しょうがないね。」

 

「まぁ、確かにそうだけどさ。」

 

「ったくやることが無さすぎるんだよな。」

 

「だからって窓を突き破らないでくれよ。」

 

「創造でなおしたからオッケー。」

 

「君にはほとほと呆れるよ。」

 

一回も香霖に勝てたことがないし、勝てるところまで追い込んだことすらない。

でも面白いよね、本当は麻雀がしたいけど面子が足りないしなぁ・・・。

 

「そういえば君があの人のことで休みを取ったとき、背の高い女性が君の事を探していたよ。」

背の高い女性・・・うーん・・・あ!安部晴明か!。

 

「それで香霖は何ていった?」

 

「今はいないからまた今度来てくれって伝えておいたよ。」

 

「ふむ・・・。」

 

安部晴明めどこで俺がここにいることを掴んだ。

ん?今は永淋の所にいるんだよな?暇だし行ってみるのも手だろう。

 

「よし、香霖 俺は今日休みを取らせてもらうぞ。」

 

「ん?あぁ構わないよ。」

 

ずいぶんとあっさりした奴である。

そうと決まればすぐ行こうじゃないか。

 

椅子から立ち上がり、香霖に行ってくるといって永淋の竹林にスキマを展開する。

 

「よっと。」

 

着いたのは永淋のいる屋敷、安部はここで居候をしているらしい。

 

「おるか~?」

 

屋敷の戸をコンコンと叩き相手の反応を待ち、すこしたつ

すると奥から声が聞こえる。

 

「はーい!いま開けますんで!」

 

ガラッと開けたのはあの兎耳の長い女の子。

 

「君は・・・。」

 

「あ、天馬さんですね?師匠からお話は聞いております!前に来ていただいた時は焦っていたものですから名前を言い忘れてしまいました、私 鈴仙・優雲華院・イナバ、と申します。」

 

「そうか鈴仙、俺は聞いてると思うけど小鳥遊天馬、永淋の旧友だよ。」

 

「はい!それで今日はどんなご用時で?」

 

「安部と永淋はいるかい?」

 

「あ、はい!居ますよ、どうぞお入りください。」

 

鈴仙が戸を閉め、奥に入っていき俺はその後をついていく。

しかしこの屋敷はでかいな、貴族の家なんかよりも。そんなことを思っていると鈴仙が一つの部屋の前で止まる。

 

「師匠、天馬さんがお見えになりました、開けますね?」

 

「良いわよ。」

 

鈴仙が襖を開け永淋を確認すると、ごゆっくりっと行ってしまった。

 

「ういーっす永淋。」

 

「天馬、久しぶりね。」

 

机を向いていた椅子をギギッとこちらに回転する。

 

「元気だったか?輝夜はどうしてる?」

 

部屋の中に入り、適当に座る。

 

「元気よ、輝夜はいつも通りってとこかしらね。」

 

「そうかそうか、それならいいんだ。」

 

タバコを創造して火をつける

 

「それで?今日は何の用事で来たのかしら?」

 

永淋が俺専用の灰皿を俺の横に置いてくれた。永淋の部屋に常備して置いた奴だ。

 

「いやな、安部が俺の働いている所に来たらしいんだわ。」

 

「なるほどね、そこで貴方がここに来たと。」

 

「そういうことだ。」

 

「晴明さんなら今さっき外で何かやってたわよ。」

 

「彼奴はいったいここでなにをしているんだ?居候か?」

 

「元の世界に戻れないらしいから私が引き取ってあげたのよ。」

 

「ほう、優しいな。」

 

「まぁ、ある意味では役立っているわ、たまに輝夜と遊んでくれているし。」

 

「はっはっは、晴明はそこまで墜ちたか。」

 

「まぁ居てくれた方がありがたいわね。」

 

「そうかそうか、まぁそれならいいんだ。」

 

よし、じゃぁそろそろ晴明に会いに行こうかね。

 

「じゃぁ永淋、またくるよ、俺は安部のとこにいくからな。」

 

「わかったわ、じゃぁまたね。」

 

永淋の部屋を出て外に出ようとすると見慣れた人とすれ違う。

 

「あら?天馬じゃない?久しぶりねぇ!」

 

「お、輝夜じゃないか、久しぶりだな。」

 

「これから何処に行くの?」

 

「安部の所だよ、俺に用事があるらしくてね。」

 

「そうなの?じゃぁ私もついて行こうかしら?」

 

「好きにするといいよ。」

 

「じゃぁそうするわぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永淋の屋敷の中の廊下を歩きながら輝夜と話す。

 

「天馬はあれからどうしてたの?」

 

あれから、ということは永淋と輝夜を竹林に隠したときからか。

 

「んー、花妖怪と戦ったり酒飲んだり、白面金毛九尾を式にしてたりしてたよ。」

 

「壮大ねぇ。」

 

「輝夜はどうなんだ?」

 

「私?私はいつもと変わらないわよ、永淋と遊んだりてゐを虐めたり。」

 

「あんまり世話焼かせるなよ?てゐと永淋だって忙しいんだから。」

 

「わかってるわよ。」

 

「ところで安部は何処にいるんだ?外に居るとは聞いたが。」

 

「この先を行くと庭に出るわ、そこでいつも修行?をしているの。」

 

「彼奴も暇なんだなぁ。」

 

1分ほどすると庭に出たが安部はいない。

 

「いないじゃないか。」

 

「おかしいわねぇ、何時もはいるんだけど・・・」

 

すると後ろから殺気を察知し莫大な霊力をまとった拳が俺の顔に来る。

 

「あぶねぇじゃねぇか安部。」

 

とっさに霊力を創造してその拳を掴み霊力を相殺する。

 

「出たな化物が!」

 

「お前が俺を捜していたんだろう?なんの用だ?」

 

「貴様を!殺す!」

 

霊力を纏った足が俺の腹にめがけ、向かってくるがそれをもう一つの手で相殺。

 

「おいおい、いきなりかよ。」

 

「化物め、前までは無かった霊力をどこで手に入れた。」

 

「俺の能力で創造できるんだよ。」

 

「ハッ!おかしな事をいうな、どうやってやったか分からないが前よりは強くなっているようだな。」

 

「そりゃどうも、これでも日々鍛錬はしていないが成長はしているんでね。」

 

「そうか!それは戦りがいがあるということだ!」

 

安部が俺が掴んでいる手を無理矢理離し俺の心臓めがけ掌低を放ってくる。

 

「遅いな。」

 

放ってきた掌低を俺につく前に前に素早く押しだし疑似波動を撃つ。

 

「ぐあっ!?」

 

安部は竹林を薙倒し結構な早さで吹っ飛ぶ。

 

「諦めろ、俺は昔よりは格段に力が上がっているぞ。」

 

立ち上がった安部にそう言いうが安部はまだ俺に向かってくる。

 

「貴様に受けた屈辱を今ここではらす!」

 

安部は俺に向かって陰陽札を投げつけてくる。

 

「だから無駄なんだって。」

 

向かってきた札を俺は盾で防ぐと当たった直後爆発する。

 

「なにが無駄だって!?」

 

「!」

 

札で気を取られた俺に安部は接近して次は霊力全てを手に集め両方の腕で突いてきた。

 

「う、お!」

 

一応は両腕でガードしたが霊力が創造し足りなかったのか腕がメキッと音を立て折れて、今度は俺が竹林に投げ出される。

 

「痛ぇなぁ。」

 

腕を再生して元に戻しバキバキと折れた竹林の上に立つ。

 

「私の全霊力をもってしてもそれか、貴様は本当に化物だな。」

 

安部は降参したというように両腕を上げひらひらと無抵抗の意味を出す。

 

「いいや、人外さ、分かればいいんだよ分かれば。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

庭の縁側に座り安部と俺、そして輝夜と一緒に話す。

 

「お前さんも変わったなぁ。」

 

安部は前の様に胸にサラシをつけてなく豊満で、髪は女性らしく長くなっていた。

 

「前の世界では女だと舐められないようにしていたからな、ここに来てからはそれが意味を無くした、取り繕う意味などない。」

 

「はぁ~なるほど。」

 

「ちなみに晴明の胸はDよ。」

 

安部の胸のカップ数を輝夜は言ってくる。

 

「ほう・・・。」

 

「何を言うんですか輝夜様!」

 

安部は慌てて輝夜を止めようとするがなんなく輝夜はかわす。

 

「Dとか永淋となかなかにいい勝負しているぞ。」

 

「永淋はDよりちょっとでかいわね。」

 

「いったいなんでこんな話しになった・・・。」

 

「輝夜のカップは?」

 

「それは教えられないわねぇ。」

 

「それは残念だな。」

 

俺が思うにBかCの間だ。

 

「まぁあれだな、あの鈴仙とか言う奴はいい乳をしていそうだな。」

 

「あれは美乳よねぇ。」

 

「えぇい!乳の話はもうやめろ!」

 

 

 

 

 

 

「そういえば安部よ」

 

「何だ?」

 

「おまえがここにきてから300年以上たったが何で生きてんだ?」

 

「それはあれだ、私の母親は妖怪だったからな。」

 

「なぁるほど、じゃぁ半妖ってことだったのかい。」

 

「そういうことだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ良い時間になってきたので帰るとする。

 

「じゃぁな輝夜、安部、永淋によろしくいっといてくれ。」

 

「次は必ずひれ伏してみせるからな。」

 

「じゃぁね~天馬。」

 

香霖堂にスキマを広げる。

 

「おう、帰ったぞ~。」

 

「お帰り、ちょうどよかった、天馬、君にお客さんだ。」

 

「ん?」

 

香霖の方をむくと、黒いスカート、白い服、頭に赤いのを乗せている黒髪の少女が座っていた。

 

「どうも!清く正しい射命丸です!」

 

「うわぁ。」

 

「うわぁとはなんですか!うわぁ!とは!」

 

こいつは射命丸文、文々。新聞を発行している張本人。

香霖は文々。新聞を時々みて、よくこんなに大げさに話しを大きくできるな、と言っているのを聞いた。

 

「済まないがお帰りいただこう。」

 

射命丸の背中を押し出口に案内する。

 

「あややややや!ちょっと待ってください!少し取材を!取材をさせて下さい!」

 

「面倒くさいし何を書かれるか分かったもんじゃないので拒否します。」

 

「そんなことを言わずに少しだけでも!」

 

「え~、やだぁ。」

 

「少しくらい話をしてあげたらどうだい?」

 

香霖がこちらを見て本を読みながら言ってくる。

 

「ほら!香霖さんもそう言ってますし!お願いしますよ!」

 

「はぁ・・・しょうがねぇなぁ、少しだけだぞ?」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と射命丸が座り俺はタバコを吸いながら射命丸の質問に答えていく。

 

「では!貴方のお名前は?」

 

「小鳥遊天馬だ、天馬でいい。」

 

「では天馬さん、ご趣味は?」

 

「趣味は喫煙だ。」

 

「キセルやパイポではなさそうですね?」

 

「あぁ、そんなのとは違って直接肺に入れる奴だ。」

 

「ほほぅ、苦しくはないのですか?」

 

「全然、むしろ吸ってた方がいい。」

 

「なるほどなるほど、ではでは、貴方はあの幻想郷の賢者、八雲紫と接点があるそうですがどんなご関係で?」

 

「ただの式だ、まぁ式といってもあんまり意味はないがね。」

 

「なんと!式だったんですね!」

 

「まぁ腐れ縁でもあるがな。」

 

「式とは言いますが天馬さんは八雲紫を倒していますね?」

 

「なんでしっているかわからんが、そうだな、ただのお遊びだ。」

 

「ちなみにどんな能力をお持ちで?」

 

「ありとあらゆるものを創造する程度の能力と人外になれる程度の能力だ。」

 

「二つ持ちなんですか!?初めて聞きました。」

 

「まぁ俺以外に二つも持ってたらびっくりだろうな。」

 

「ふむふむ、現在手に入れたい者、ほしいものなんかは?」

 

「そうだなぁ~お嫁さんが欲しいかな。」

 

冗談混じりで笑いながら話す。

 

「お嫁さん!伴侶が欲しいんですね!」

 

「まぁ可愛くて面倒見がよくて支えてくれて俺のことを思ってくれる人がいいかな。」

 

「なるほどなるほど」

 

射命丸は俺が言ったこと全てを持っているメモ帳に書く。

 

「創造する能力ですがなんでも創造できるんですか?」

 

「そうだな、金、ダイヤ、プラチナ、鉄、この世の全てと言っていいほど創造できるよ。」

 

「それはすごいですね!是非私にも何か欲しいくらいです!」

 

「ふーむ・・・」

 

射命丸にはなにがいいかな・・・。

そうだ、こいつにはカメラをあげよう。

 

「ほい、やるよ。」

 

「いいんですか!?」

 

一眼レフデジタルカメラ、バッテリー無限、容量無限、防水、防塵、のおまけ付きだ。

射命丸は目をキラキラして俺が渡したカメラを受け取る。

 

「わぁ、すごく嬉しいです!ありがとうございます!!」

 

「まぁ俺の気まぐれのようなもんだ、とっとけ。」

 

「以外と優しいんですね!」

 

「以外は余計だが俺は基本的に優しいぞ。」

 

「なるほどなるほど!何かお礼をしたいのですが。」

 

「ん~そうだなぁ、面白そうな事があったらすぐに知らせるくらいでいいよ。」

 

「わかりました!私射命丸は必ず面白い事が起きたら天馬さんにお知らせしますね!」

 

「はいよ。」

 

「ちなみに!その、お嫁さんのことですが・・・私なんかも含まれますかね?」

 

射命丸は気立てが良いし、常識は弁えている、その上頭が切れ、性格は明るい。

可愛いか?と言われたら可愛い方だし、一途そうだ。

 

「含まれるんじゃないかな?」

 

「それは嬉しいですね!では質問はここまでにして早速カメラを使わせていただきますね!」

 

「写真も撮るのか?」

 

「勿論です!天馬さんの立ち絵を一ついただきます!」

 

ふむ、じゃぁ適当にポーズしとけばいいかな?

なんだかんだいってノリノリである。

 

「では!撮りますよ!」

 

射命丸は俺の笑って頭に手をかけている所を撮った、実はもっと格好よく撮ってもらいたかった。

 

「じゃぁ次は私も入りますね!」

 

射命丸はセルフタイマーを使い俺の横に来てピースを突き出し笑顔、そしてカシャリと一枚。

 

「ってなんでお前も入るんだよ。」

 

「記念です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では天馬さん!取材とカメラ、ありがとうございました!」

 

「いい感じの記事にしてくれよ。」

 

「はい!それは任せて下さい!」

 

すると射命丸から羽が出て「さようなら!」と言い残して飛んでいった。

 

俺は香霖堂に戻り、一服する。

 

「君も甘いね、どんな風に書かれるのかが楽しみだよ。」

 

香霖がそう言って本を読むのをやめる

 

「あ、やべ・・・なんかやばいこと言ったような気がする。」

 

 

 

そして翌日、文々。新聞には俺が射命丸に告白したとか、お嫁さん募集中だとかがメインで書いてあった。あと意外にも写真がきまっていたため、香霖堂は翌日、女性客が一杯となった。

香霖は困り果てていたが俺はそこまで悪い気はしないのであった・・・。

 

 

 

 




毎回コメントしてくれている方やコメントしてくれる人には感謝!

毎日ハーメルンに来る度確認して、その話のコメントしてくれた方には嬉しすぎてニヤニヤしながら見ています、おかしいところを指摘してくれている方や見づらいなどの感想には勉強になります、そして面白いと書かれれば舞ってしまいます、いつも本当にありがとうございます。


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天馬、魔理沙を見届ける。

天馬の絵を誰か描いてくれないかな!?(チラッ)




今日も天馬は香霖堂で暇つぶし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暇だ、この上なく暇だ。」

「だったら手伝って欲しいんだけどね。」

 

朝、起きたら香霖が部屋を掃除していた。

俺は面倒臭いことは嫌いなので、香霖堂の俺専用の椅子に座り煙草を吸う。

 

「面倒くさいので却下で。」

「はぁ・・・」

 

見ているだけで面倒臭そうだ、ゴミを集めて、捨てて、集めて、捨てて。

 

「じゃぁ魔理沙を起こしてやってくれよ、まだ寝ているから。」

「え~。」

 

魔理沙と絡むのは非常に面倒くさい、何が面倒くさいっていうと会う度毒舌を吐いてくるからだ。

親に勘当された魔理沙はあれ以来香霖堂に住み着いている、俺と一緒の部屋は嫌だってんで香霖の部屋で寝ているのだ。

 

 

「や~だよ、あいつ俺には悪口ばっかいうもん。」

 

魔理沙の寝起きは非常に質が悪い、なにが悪いっていうと俺が起こすと必ず怒る。

 

「そんなことを言わずにさ、頼むよ。」

「え~。」

「・・・。」

 

そんな目で見るなよ、分かったよ、行けばいいんだろ行けば。

 

「はぁ・・・分かったよ。」

 

よっこらせ、と重い腰をあげ香霖の部屋で寝ている魔理沙を起こすとする。

 

「おい、起きろ。」

 

この娘、本当に気持ちよさそうに寝やがる、てか同じ布団で寝てるのかよ・・・。

布団が一枚しかないということは一緒に香霖と寝てるってことだ。

 

「・・・。」

 

俺がおはようコールをしても起きない。

 

「起きろっつってんだろ。」

「・・・。」

 

人が起こしにきてやっているのに起きないとか、本当にこいつは面倒臭い。

 

「はぁ・・・。」

 

そうと来れば、実力行使しかないよな。

魔理沙に近づいて耳元で。

 

「起きろ!!」

「ふぎゃ!!」

 

魔理沙の耳元で大きな声でおはようコール。

魔理沙は驚いて起きたようだ。

 

「な、天馬かよ、朝っぱらからうるさいな。」

 

フアアーと伸びをしている魔理沙。

 

「おめぇが起きないからだろうが!香霖が呼んでるから着替えて早くいけよ!」

「はいはい、わかったわかった。」

 

どうやら完璧に目を覚ましたようなので俺は俺専用の椅子に座るとしよう。

 

「起きたかい?」

「あぁ。」

「そりゃよかった、天馬、君には今日いろいろと手伝ってもらうからね。」

 

香霖は掃き掃除をしながら変なことを言ってきた。

 

「はぁ?何を手伝うってんだよ?」

「色々さ。」

「はぁ・・・俺は香霖の考えてることがわかんねぇよ。」

「フフフッ」

 

本当によく分からない、何を手伝うのか、なんのために手伝うのか。

まぁそん時はそん時だ、手伝うったって創造とかだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙が着替え終わり、香霖もちょうど掃除が終わったので飯にする。

 

「さ、飯だ飯。今日はベーコンエッグだ。」

「いい匂いだな、早く食べようぜ。」

「ふむ、じゃぁ頂こうか。」

 

机に三人座り、いただきますをする。

 

「天馬は本当に料理だけはうまいな。」

 

モグモグとベーコンを食いながら魔理沙が言う。

 

「料理だけってなんだよ、お前なんか料理もできないくせに。」

「それはそれ、これはこれ。」

「・・・。」

 

魔理沙を引き取って2年、こいつの毒舌ぶりは日に日に酷くなってくる。

しかし香霖はなんにもしゃべらないな、あんまり食事にも手だしてないし。

 

「おい、香霖冷めるぞ。」

 

俺が香霖に料理が冷めるとまずいので声をかけると。

 

「ん?あぁ済まない、考えごとをしていた。」

「珍しいな、だが考えごとは料理を食ってからにしろ。」

「済まないね。」

 

食事を再開して、全員の皿を回収。能力で消しておく。

 

「よいしょっと、それで?考えごとってのはなんなんだ?」

 

三人は料理の無い机を囲む

 

「魔理沙がここに着てからもう二年立つね?」

「そうだな。」

 

当の魔理沙は目を丸くする。

 

「もうそんなに経ったのか。」

「経ったんだよ。」

「日が流れるのは早いぜ。」

「んで?魔理沙が二年ココにいるからなんだよ?」

 

香霖はメガネをくいっと上げて

 

「魔理沙には一人立ちをしてもらう。」

「はぁ?」

「いきなりだな。」

 

魔理沙は香霖は何を言ってんだろう。というような顔をして俺は唐突なのでビックリする。

 

「何時までもココには居てはいけないよ、自分の家を持ってこれからは生きるんだ、幸い魔法の森はすぐ近くだ、あそこに済めば魔力は上がるだろう。」

「家ったって誰が建てるんだぜ?」

「一人しかいないだろう?」

 

香霖はこっちを見てくる、手伝いとはそういうことか。

 

「・・・面倒くせぇな~。」

「魔理沙は天馬に家を創造してもらいな、荷物とかも天馬の能力で何とかなるだろうから。」

「天馬に頼るのは癪に触るぜ。」

 

何だとこのクソガキ。

 

「こら、そういうことを言わない、天馬?よろしく頼むよ。」

「・・・わかった。香霖が言うならしょうがねぇな。」

 

 

 

飯も食い終わり香霖との話が終わって、俺と魔理沙は魔法の森でいい敷地を探す。

 

「もうここでいいだろ面倒くせぇ。」

「駄目だぜ、日当たりがよくない。」

「・・・。」

 

もう一時間ほどこんな感じだ、正直歩くのが面倒臭い。

 

「お、ここならいいんじゃないか?」

 

日当たりが良いところを見つけ、魔理沙に教える。

 

「ここも良くないな、周りに水がない。」

「・・・オラァアアア!!!!!!」

「!?」

地面を思いっきり殴り、でかいクレーターができる。

 

「面倒なんだよ、だからここにでかい湖を作ります。」

「ちょ・・・。」

水を大量に創造して、クレーターに流し込む、はいこれで完成。

 

「はい終わり、これでいい感じになったな。」

「お、おう。」

 

後は家を建てるだけ。

簡単なプレハブ小屋を創造する。

 

「はい、じゃぁ魔理沙元気でね。」

「おい待て、なんだこれは。」

 

魔理沙が創造したプレハブ小屋を指さす。

 

「家だけど?」

「こんな酷い家があるか!もうちょっとマシなの出せ!」

「しょうがねぇな~。」

 

プレハブを消して、ちょっとオシャレな木の家を創造する。

 

「よし、これでいいだろ。」

「あぁ、さっきよりは全然マシだな。」

「じゃぁ俺は帰るぞ、じゃぁな」

「ちょっと待つんだぜ。」

 

魔理沙は帰ろうとする俺の着物の襟を掴む。

 

「なんだよ?家は建てただろ?」

「中は何も無いだろ?せめてベッドと机くらいは置いて欲しいぜ。」

「あ~?そんなの自分で調達しろや。」

「めんどくさい。」

「はぁ・・・わかったわかった・・・。」

 

早速作った家に入る。

 

「お~意外と広いな。」

「魔理沙どいてろ、いま出すから。」

 

家の窓際にベッドを創造して、机をその向かいに置いてついでに、香霖から預かったミニ八卦路と魔理沙の荷物をどさどさと、するとスキマから出てきた中には袋に包まれた物が落ちてきた。

 

「ん?なんだこれ?」

 

俺がスキマから落ちてきた包みを開け見ようとしたら魔理沙が奪ってきた。

 

「なにしてんだ!?」

「いや・・・なんかあったから、なんだそれ?」

「教えられないぜ。」

「な~んだよ見せて見ろよ~。」

 

魔理沙から包みを奪い見てみる、途中「やめろ!」とか「見るな!」とか言ってたが気にしない。

 

「・・・下着じゃねぇか・・・ブホッ!!」

 

魔理沙に顔面をグーで殴られた。

 

「なんで見んだよ!」

「いや・・・その・・・スマン。」

「・・・。」

「じゃ、じゃぁな。」

 

鼻を押さえながら家を出て香霖堂にスキマを展開する。

 

「お帰り、ん?どうしたんだい?鼻なんか押さえて。」

「・・・なんでもない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫の式、八雲藍が新たに式を手に入れた、多分橙ということなので見に行ってみる。

 

 

「ういっす、いるかー?」

「あら、天馬じゃない、いらっしゃい。」

 

八雲家の家をスキマで行くと紫が茶を飲んでいた。

 

「藍は居るか?」

「藍なら今は居ないわよ、すぐ帰ってくるから待ってたら?」

「そうかそうか、じゃぁ待たせてもらおう。」

 

紫の隣に座り髪を弄くる、紫のを。

 

「・・・何しているの?」

「ん~~・・・三つ編み。」

「じゃなくて、なぜ私の髪でするのかしら?」

「なんとなく。」

 

永淋の様に三つ編みがしたくなったのだ。

 

「よっし完成、可愛いぞ紫。」

「そ・・・そう?」

「うむ、それと紫の髪、いい匂いがするな。」

 

クンクンと匂いを嗅ぐ、石鹸のいい匂いだ。

 

「ちょ・・・嗅がないでよ。」

「ああん、いけずぅ。」

 

紫は顔赤らめて髪を離してしまった。

 

「何やってんだ・・・。」

「お?」

 

後ろから声がしたので振り返ってみると、藍がいた。

 

「よう藍、あたらしい式見つけたんだって?」

「ん?あぁ」

「こいつがそうか?」

 

隣に藍の服を掴みながらこっちをみている少女に指を指す。

 

「そうだ、名前は橙だ。ほら橙、挨拶しなさい。」

 

藍に挨拶と言われ少女がコチラを見る。

 

「橙です、藍様の式をしてます。」

「うん、俺は天馬だ、紫の式をしているよ。」

 

橙は驚く。

 

「そうなんですか?」

「うん、宜しくな橙。」

「宜しくお願いします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて、藍の式が増えたことだし俺はそろそろ・・・。

 

「紫、俺式やめるよ。」

「はぁ?いきなりどうしたのよ?」

「そうだぞ、理由を言え。」

 

紫と藍が俺を責めてくる。

 

「式は四人もいらんだろう?」

「いざとなったとき必要じゃない。」

「それでも3人で十分だ、ていうことで俺は紫の式をやめます。」

「理由が無いので却下ね。」

「ですね。」

「えっ。」

 

式をやめさせてくれない・・・だと・・・。

元から俺は橙が式になったらやめようと思っていたのに調子がくるわされる。

 

「でも残念、俺は無理にでやめさせてもらうぜ!」

 

式を解除する札 を創造

それを俺の服にペターン!!

式を解除する札は俺の着物に溶けるように張り付いた。

その瞬間紫のスキマを使えなくなることを確認。

 

「じゃぁそういうことだから。」

「ちょ・・・待ちなさい!」

 

紫は俺を捕まえようとしてくる。

 

「じゃぁ藍、橙、紫、またねぇ~。」

 

創造で妖力を創造してさらにスキマを創造させる。

俺は地面に創造したスキマを広げ落下しながら紫と藍がコチラを見ているところを閉じた。

 

 

そしていつもの様に香霖堂へ。

 

「ただいま。」

 

椅子に座りながら本を読んでいる香霖にいつもの挨拶。

 

「おかえり、遅かったじゃないか。」

「ちょっと野暮用でね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、紅魔館に行く。

紅魔郷異変の前のお話


毎度お馴染み香霖堂で俺は椅子に座りながら煙草を吸う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふあ~ぁ。」

 

今は昼11時、俺は今さっき起きたばかりなのである。

 

「君は寝すぎだ。」

 

毎回10時-1時に起きる俺に香霖は呆れて言う。

なぜこんなに寝るのかというと、俺にもわからない。だけど非常に眠い。

 

「別に夜更かししているわけじゃないんだけどねぇ・・・」

 

俺は夜寝るときは規則正しく寝ているつもりだ、夜10時には寝る体制に入り、10時半にはももう寝ている。

 

「もしかして君は貧血気味なんじゃないか?」

 

貧血・・・貧血ねぇ・・。

 

「うーん、体は俺の能力で管理しているから異常は無いと思うんだがなぁ。」

 

人外の能力で体のありとあらゆるところを操作している、血管・筋肉・血液・脳・細胞、操作をする事によって傷を速攻に回復できたりする。

 

「不思議なもんだね、外見には何の変哲も無いが、内面はストレスやらなんやらでボロボロとか・・・、煙草が原因なんじゃないか?」

 

能力で体を管理しているため肺には異常は無い、むしろ吸っていないと頭が回らないのだ。

 

「それはないな、まぁ体は至って健康だ。」

「それなら何も言うことはないね。」

 

香霖が途中で読んでいた本を再開する。

するといきなり、外から風が舞うようにゴウゴウ唸っている。

 

「なんだ?」

 

窓の外には砂やら、葉っぱやらが舞っている。

 

「季節はずれの台風かな?」

 

香霖も窓を見て不思議そうに眺める。

すると風は止み、カランカランと香霖堂のドアを開ける音がする。

 

「どうも!清く正しい毎度お馴染み射命丸です!」

 

風の正体はこいつだったのか・・・。

 

「なんだ、お前か。何の用で来たんだ?」

 

射命丸はフフンっと鼻を鳴らし、よく聞けと言わんばかりに胸を張る。

 

「新しくこの幻想郷に突如やって来た、まか不思議な洋館のことを天馬さんに伝えにきました!」

 

ふむ・・・洋館・・・あ、紅魔館のことか。

 

「そうか、教えてくれて有り難う、それじゃぁね。」

 

教えてくれた射命丸に感謝の言葉を投げる。

 

「・・・それだけですか?」

 

きょとん、とした顔で射命丸はこちらを見る。

 

「なにがだ?」

「いや、一緒に行こうとか言わないんですか?」

 

何をいっているんだ、今すぐ行く訳がないだろう。

 

「いや、面倒だしまた今度行くよ。」

 

すると射命丸がこちらにズイッと顔を近づける。

 

「駄目ですよ!情報は新鮮な時に食らいつかないと腐ってしまいますよ!」

「俺はおまえとは違って新聞記者じゃないんでな。」

 

すぐに行かなくても、俺は別に皆に伝えるわけではないので一行に構いやしない。

 

「ほら、そんな事を言わずに!一緒に行きましょうよ!」

 

射命丸は俺の腕を掴み引っ張ってくる。

 

「イテテテ、俺は香霖堂っていう仕事場があるからいけんのよ。」

 

俺は面倒くさいので滅多に客が来ない香霖堂を理由にする。

 

「今日は別段用事があるわけでないし行ってきてもいいよ。」

 

香霖が本を読みながらこちらを向かずに言ってくる。

おい香霖、余計なことを言うな。

 

「ほら、香霖さんもそう言ってますし!行きましょう!」

「わかったわかった、だから腕を引っ張るな。」

 

腕を引っ張ってくる射命丸に行くからやめろと言う。

 

「じゃあ、行きましょうか!」

「はいはい・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、紅魔館に向かう。俺は滑空、射命丸は普通に飛んでいる

 

「天馬さん遅いですよ!」

「お前が早いんだよ。」

 

射命丸が俺を追い越し、後ろ向きながら言う。

おぉ、スカートの中から白い神秘が・・・。

 

「なんかこう言うのってデートみたいですよね!」

「そうかぁ?」

「そうですよ!!」

 

こう言うのはデートと言えるのか?

俺にはデートがしたことないのでわからないが射命丸が言うのならそうなんだろう。

 

「あ!見えましたよ!」

「え?」

 

射命丸のスカートの中の神秘に気を取られ、思いっきり体制を崩す。

 

「うお!?」

「天馬さん!?」

 

体制を崩したせいで、滑空していた俺は急降下、そのまま地面に叩きつけられる。

 

「ッッ!痛ぇ・・・」

 

毎度のことながら地面に不時着するときは顔からである。

 

「・・・あ~頭がクラクラする。」

 

頭を思いっきり地面にぶつかったせいか、頭が脳震盪したようにグラグラする。

すると、後ろから声が聞こえた。

 

「貴方は食べてもいい人間?」

「ん?」

 

後ろを振り返ると金髪で赤いリボンをしており、黒い服と黒いスカート、ルーミアだ。

聞こえた声は良くわからなかったのでもう一度きいてみる。

 

「なんだ?」

「貴方は食べてもいい人間?」

 

なるほど、そういうことか。

 

「うん?腹が減ってるのか?」

「うん、お腹ぺこぺこ。」

「そうか。」

 

俺は腕をブチッと引きちぎり、ルーミアに差し出す。

 

「え、痛くないの?」

「痛いよ?でも能力があるから気にしない。」

 

ルーミアは俺の差し出した腕を受け取り、ありがとうと一言

 

「じゃぁ!いただきまーす!」

 

指から食べていき、骨をペッ!っと吐き出しながら肉を食べていく。

なかなかに自分の腕を食べられるというのは今更ながら気持ち悪い。

とりあえず再生で腕を生やす。

 

「うまいか?」

「うん!」

 

どうやら美味いらしい、俺は食いたくないが。

別段俺は腕くらいならあげてもいいと思った、戦いたくないしな。

だがその思いはルーミアの一言によって消え去る。

 

「ふう!ごちそうさま!じゃぁ次は食後のデザートだね!」

「あ?」

 

ルーミアがそう言った後俺に飛びかかってきた。

でも所詮は雑魚妖怪、赤子の手を捻る様に飛びかかってきたルーミアの顔を掴み持ち上げる。

 

「!?・・・グ・・・!ギ・・・!」

「腕を差し出したんだからそれで我慢くらいしろよ。」

 

ルーミアはいきなり顔を掴まれてビックリして、引き離そうと俺の掴んでいる腕に手をかけながら足でジタバタと暴れる。

 

「ガ・・・!ハ・・・!」

「人の好意を無碍にするなんざぁお前さん、ちょっとは痛い目にあった方がいいんじゃないか?」

「!?・・・ガアァアア!!」

 

顔が潰れない程度に力をいれる、非常に痛そうだ。ルーミアは力が強くなったせいで余計に暴れて、何とかしてでも離そうとする。

 

「もうこれから人間を食わないと誓うか?」

「ち・・・ちかう!!誓うから離してええええ!!」

 

ルーミアの目からは涙が出ており、パッと顔を掴んでいる腕を離す。

するとドサッとルーミアは崩れ落ち座りながらグズグズと泣いている。

 

「おい。」

「ひぃ・・・!」

 

ルーミアに目線を会わせるためにしゃがんで目を会わせるとルーミアが悲鳴をあげる。

 

「すまなかったな、もう一本腕やるから、許してくれ。」

「・・・え?」

 

ブチッともう一回腕を引きちぎりルーミアに渡す。

 

「え・・・」

「お前はもう少し我慢をしろ、わかったな?」

「わ・・・分かった・・・」

 

ルーミアは泣き止み俺の目をずっと見てくる。

 

「どうしても我慢できない、て言うなら月に一回、香霖堂という店に来い、そこで今日は腕だけだが俺の能力で丸々一体人間をやるよ。」

「香霖堂・・・?」

「あぁ、俺の居る場所だ、魔法の森は分かるな?」

 

ここからは30分程で着いたのでわかるだろう。

 

「うん・・・。」

「そこに俺が居るから月に一回だけなら食わせてやる、俺の名前は天馬だ。お前の名前は?」

 

ルーミアの頭を撫でて自己紹介をする。

 

「私の名前はルーミア・・・。」

「そうか、ルーミア、お前は人間に会っても食うなよ?絶対だ。」

「分かった・・・」

 

俺はしゃがんでいる腰をあげルーミアと別れる。

 

「じゃぁな、またあおう。」

「うん・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、紅魔館に侵入する。

今日(9日)、フィギュア専門店で八雲藍を買って帰りの時うきうきリンリンしていたら足を挫きました。

おかげで車が運転しづらいです・・・。


さて、ルーミアと別れたがどうすればいいかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーミアと別れたあと森の中でウロウロしていると射命丸の声が聞こえる。

 

「天馬さーん!!」

 

どうやら俺を探しているらしく上を見ると飛びながら右往左往している。

 

「よし、とりあえず射命丸のところに飛ぶか。」

 

射命丸の居るところに飛んだその瞬間射命丸がこちらに気づかず向かってきた。

 

「おい、止まれ!ぶつかる!」

「え?キャァ!」

 

俺は上に飛ぶ最中だったため射命丸に頭があたり、またしても急降下し、地面に激突。

どうやら射命丸も頭を打ったようだ。

 

「グオオオオオ!あいつどんだけ石頭なんだよ!」

 

俺が頭を押さえながら悶えていると、射命丸が降りてきた。

 

「駄目じゃないですか天馬さん、いきなり飛んだら。」

 

射命丸は頭をさすりながら話しかけてくる。

 

「なんでお前はそんなに丈夫なんだ・・・。」

「天狗ですので。」

 

天狗だから大丈夫、てか。どこぞの海賊漫画の主人公だよ・・・。

 

「さ、今度は私が天馬さんを掴みながら行きますから早くしてください。」

「お、おう・・・」

 

射命丸に腰を掴まれバサバサッと上がっていく。

 

「あれが突如表した洋館です!」

「ほほう、あれがねぇ・・・。」

 

500mくらい先にあるのは結構でかい洋館、紅魔館だ。

 

「でかいな、洋館っていうより城っぽいな。」

「ですねぇ。」

 

遠くからでもデカイと感じる程なのに、近づいたらもっとデカくなってくる。

 

「あ、あれは門番のようですね!」

 

射命丸がどこかを見ながら言う。

 

「どれ?」

 

全くなにも見えない。

 

「あれです!」

 

射命丸が指を指す。

あれ?指を指すっておかしくね?だって今射命丸に掴まれて飛んでるんだぜ・・・?

 

「うお!?」

「あっ」

 

射命丸が手を離し、指を指したせいで俺は落ちる、本日三回目である。

 

「射命丸手前ぇえええ!」

 

俺は落ちていく時に射命丸を見た、なんか やっちまったって顔をしていた。

ドーン!!と今度は足で着地する俺、小さいクレーターができた。

 

「ふぇ?誰ですか貴方!?」

 

髪が腰まで長く、服は緑を主流としている女性、紅美鈴だ。

 

「お前今寝てただろ。」

「え!?」

 

目は眠気眼、口にはよだれの跡どうみても寝ていましたね。

 

「いや!?寝ていませんよ!?」

「嘘をつくな、よだれの跡が酷いぞ。」

「え!?」

 

美鈴が口を腕で拭く。

 

「門番が寝てていいのか?」

「だから寝ていませんってば!!何のご用時ですか!?」

 

美鈴は話を変えるように言ってくる。

 

「ん?いや単純に暇だったから来てみた、入っていいかい?」

 

本当に暇だから来ただけである。

 

「だめですよ、貴方が誰だか分からないのに入らせる訳にはいけません!」

 

まぁそうくるだろうな。

 

「俺の名前は小鳥遊天馬、はい誰だか分かったんだから入らせてもらうね。」

 

美鈴が両腕をばっ!と広げる

 

「駄目ですってば!」

 

面倒臭いな、無理矢理にでも入ろうかな。

てか最初はこっそり入る予定だったんだが・・・。

 

「どけ、俺は入るぞ!」

 

門に近寄り飛ぼうとした瞬間、後ろから殺気がする。

とっさに片腕でガードしたその先には美鈴の腕があった。

 

「ここには何人たりとも入れさせません!!」

「ほう、俺とやるつもりか。」

「誰だか分かりませんが、帰っていただきます!」

 

接近戦か、俺の得意分野だ。

だが美鈴の実力はそこまで強くない、達人より上といったところだ。

安部晴明のほうが強い。

 

「はぁ!!」

 

まずは美鈴、俺に向かって拳を突き出す。

 

「ふむ?」

 

突き出した腕を軽く掴む。

 

「な!!」

「はっはぁ!弱いな!」

 

腕を掴まれ身動きがあまりできなくなった美鈴。

 

「クッ!これなら!」

 

今度は美鈴の足蹴り、おぉ美脚だ。

 

「遅いっ!」

 

掴んだ腕を離し、崩れたところを心臓部分に一発掌低を食らわす。

 

「ッッ!?」

 

その瞬間美鈴は倒れ気絶する。

 

実はこれ非常に危ない、通常の人間だったら死んでいた。

心臓部分を思いっきり殴ると心臓の血が多く流出する、良ければ気絶、最悪死ぬ。

 

崩れ落ちた美鈴を支え門の脇に座らせる。

 

「あややや・・・天馬さん強いですねぇ・・・。」

 

後ろから射命丸の声がする。

 

「お前わざと落としたか?」

「そんなわけないじゃないですか!」

「・・・まぁいい、来るか?」

 

紅魔館に行くので、射命丸も来るのか?と言う。

 

「いえ、私はこの門番さんに騒がれないよう見張ってますよ!帰ったらどうなっていたか教えてくださいね!」

「わかったわかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門を抜け入り口である大きなドアをゆっくり開ける。

 

「天馬、入りまーす・・・」

 

辺りは静かで誰もいない。

 

「なんだ、誰も居ねぇのか。」

 

紅魔館の中は赤を基調とした感じだ。

名前の通り赤かった。

 

「じゃ、適当に散策しますかね。」

 

適当にてきと~に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はある一室の前にいる、ほかの普通の部屋より二倍ほどデカイドアの前に。

 

「でけぇドアだなぁ、中はどうなってんだ?」

 

ドアは少し重たく、ギギッっと音をならしながら開く。

 

「うへぇ埃っぽい、ここは・・・図書館か・・・。」

 

図書館といえばパチュリー・ノーレッジである。

しかし辺りを見回すがパチュリーの姿がない。

 

「ふむ?外出中かな?」

 

適当にデカイ図書館を歩く、すると図書館の真ん中辺りに机がある。

よく見るとそこにはパチュリーがいた。

 

「お?」

 

どうやら本を読んでいるらしい、俺に気づかずに静かに。

 

「・・・。」

 

俺が後数歩というところまで近ずいているのにここまで気づかないとは。

 

「ま、いいや。」

 

本を読む邪魔をしたくはないし、そもそも俺と魔法相性悪いし。

俺はこの図書館からでるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図書館を出て、適当に歩いていると視線を察知する。

 

「ん?」

 

おかしいな、後ろから視線を感じたんだが・・・。

 

「お?」

 

今度は前から視線を感じたので前を向く、すると銀のナイフが俺の首に突きつけてあった。

 

「うお!驚いたな。」

 

ナイフを突きつけた人、それは十六夜咲夜だった。

 

「貴方は誰かしら?誰の許可をへてここに来たのかしら?」

「俺の名前は天馬、許可などへていない。」

 

咲夜は「そう」とだけ言って俺の喉にナイフを刺す。

 

「・・・!?」

「残念だが・・・これじゃ俺は利かんよ?」

 

首に刺さったナイフ、普通の人なら死んでいるだろう。

首を突き刺しているナイフを持つ咲夜の腕を掴み、顔を近づける。

 

「すぐに人を殺せるとは、お前には感情がないのか?」

「・・・侵入者を殺して何が悪いと?」

 

ふむ、一理あるな。

 

「だからってすぐ殺すんじゃねぇよ。」

 

俺もサバイバルナイフを手に創造して咲夜の首に突きつける。

 

「ッッ!」

「これで・・・おあいこだろ?」

 

咲夜に突きつけたサバイバルナイフを首に刺・・・さらなかった。

俺が掴んでいる咲夜の手、ナイフが一瞬で消えて手の拘束をはずした咲夜が目の前でナイフを構える。

 

「・・・なぁるほど、能力か。」

「そうよ、死になさい!」

 

今度は俺の周りに複数ナイフが囲むように現れ、俺の体にすべて突き刺さる。

 

「お・・・。」

 

すべて刺さったナイフだが俺の能力の前では妖力弾ほど利かない。

 

「いてぇじゃねぇか・・・。」

「!?」

 

突き刺さった複数のナイフを手で一本一本抜いていき、再生で直していく。

咲夜が構えて能力を使用。

 

「捕まえた♪」

「な・・・!?」

 

 

実は複数のナイフが刺さったときに咲夜の能力を創造した。

そして咲夜が時を操ろうとしたときに俺も操り相殺。

気づかない咲夜は俺が動いていないことを確認して近寄ってきた。

そのときに咲夜の腕を掴む。

 

「さて?どうする?まだ戦うか?降参するか?」

「・・・降参するわ。」

 

どうやら降参ということなので掴んでいる腕を離す。

 

「・・・貴方、異常なまでの強さね。」

「そりゃどうも。」

 

咲夜が俺に掴まれた腕をさすりながら言ってくる。

 

「それで、なんの用かしら?」

「ん?暇だから来ただけだ。」

「・・・はぁ?」

 

俺の言葉を聞いた咲夜は目を丸くする。

 

「そんな事のために来たの?」

「そんなことのためにきたのよ。」

「・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、カリスマパワァアアアアア!!


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天馬、紅魔館の主に会う。

さて紅魔館のメイド、咲夜を屈服させ紅魔館の主、レミリア・スカーレットの居場所を聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、メイドがいるってことは勿論それを従えているやつも居るわけだ。」

 

初めて咲夜に会うのにいきなり、レミリアはどこだ?って聞くのもおかしいだろう。

 

「そういうことになるわね。」

 

ふむ、あっさりだな。

 

「会わせてもらえるか?」

 

まぁ、無理だといわれても無理矢理会うけどな。

 

「拒否しても無理矢理会わせるでしょう?」

 

ばれてた。

 

咲夜と俺は長い廊下を歩き、紅魔館の当主、レミリアに会おうとする。

その途中地下に続く階段を見つけるが咲夜には「気にしないでください。」と言われた。

あんなにドアが頑丈でいかにも何かを閉じこめていますよっていう雰囲気なのに気にしないでだなんてな。多分中に入っているのはフランドール・スカーレットだろう。

気が狂っているなどと言われているが俺はそうではないと思う、情緒不安定なだけだ。

あれは誰にでもある、いわゆる反抗期に近いものだと推測する。だがまぁ、俺が何したって意味はないのだが。

 

さて、そんなことを考えていると咲夜がある一室の前で止まる。

この先にレミリアが居るのだろう。咲夜がドアに向かって喋る。

 

「お嬢様、お客様をお連れしました。」

 

ドアに向かって咲夜が喋るとドアの先から可愛らしくて、どこか威厳のある声がする。

 

「咲夜が客をつれてくるとは珍しい、入れ。」

 

咲夜の能力で敵はなんとでもなるんだろう、ふつうは門前払いか殺されるか、そのどちらかであるはずなのに連れてくるとはよっぽど強い奴か、気に入ったやつだ。

という感じかな?

 

咲夜がドアをゆっくり開け、中が見える。

見えたものは大量の椅子、長いテーブルに白いテーブルクロスがのっている。

その向こうの椅子に紅魔館の当主、レミリアは椅子に座っており足を舐めなさいという格好をしている、つまり足を引っかけているということだ。

 

「では、ごゆっくり。」

 

と咲夜は消えてしまった、後ドアも閉められた・・・ご丁寧に鍵もな。

 

「・・・。」

「どうした?入れ、人間よ。」

 

いつまでもドアの前でたっている俺に苛ついているのか、早く中に入れと言ってくる。

 

「どうも、適当に座らせていただきますよ。」

 

大量にある椅子の中からちょっと遠いがレミリアの前に座る。

 

「なんの用事できた?私に会うということはよっぽどの用事があるのだろう?」

 

なんだ、レミリアに会う時は理由が無いといけないのか、それもまたおかしい話だな。

 

「いや、なんの用事もないよ、ただ暇だから来たのとこの世界幻想郷に新たに入り込んだ者が居るってきいたからな。」

「・・・それだけの事で来たのか?」

 

レミリアは足を次は逆に引っかけ、さらに目を細める。

おうおう、苛ついてらっしゃる。

 

「それだけの事だよ?むしろ何か理由がないといけないのか?」

「・・・人間風情が、吸血鬼に随分と失礼じゃないか、舐めてるのか?」

 

怒ってしまった、あまり煽ってはいないのだが。

 

「・・・お前等吸血鬼がどれだけ高貴で優秀かなんてしったこっちゃないね、そりゃぁお前の中の考えでは俺たち人間は弱く、群れることでしか生きれない生き物かもしれないがお前等とは違って人間には知恵があり、団結力があり、感情があり、とても強い生き物だ、俺にとったら吸血鬼は日に当たったら皮膚が焼ける、煎った豆をさわったら火傷する、そんなデメリットがあるじゃないか、そもそもお前等を生み出したのは人間であることを忘れるな、力が例え上だろうと人間には絶対には勝てると思うなよ?吸血鬼風情が。」

 

一回も噛まずによく言えたもんだ、でもこれは決して間違ってはいない。

妖怪は人間の恐れで生まれるものだ、その後人間が煎った豆にさわると火傷する、日に当たったら皮膚が焼けると思うだけでこうも吸血鬼に弱点が増えるわけだ。

 

レミリアは反論ができないのかプルプルと震えたあと椅子を立ち上がり、怒り散らす。

 

「貴様!よくそんな口を聞けたものだ!殺してやる!」

 

赤い槍を出現させ俺に投げてくる。

グングニルか、神の武器を使うとはなかなかにビックリだ。

 

「よっと!」

「な・・・!?」

 

飛ばされてこちらに向かってきたグングニルを片手で掴む

 

「俺は人間でもあり、妖怪でもあり、神でもある、俺に楯突いた事を後悔するんだな。」

 

掴んだグングニルをレミリアに力一杯投合する。

 

「きゃあ!」

 

レミリアは向かってきたグングニルを間一髪で避ける。 あと少し避けるのを遅れていたら完全に貫いていたな。

 

「さて、これはなんでしょうか?」

「!?」

 

グングニルを創造で量産し、俺の周りに刺す。合計200本。

 

「ここに200本のグングニルがあります、これをお前に投げていくよ?まずは一本目!」

 

床に刺さっているグングニルを引き抜きレミリアに投合。

 

「きゃあああ!」

 

次々に音速を越えたグングニルを避けるのに必死なレミリアは飛び回っている。

 

「何本まで耐えれるかなぁ?26本目!」

「もうやめてぇ!!」

 

やめる訳がないだろう?わざと外しているんだから。

 

「89本目!」

「う・・・!うぅ・・・!やめてよぉ・・・!」

 

泣きながらも当たらないように避け続けているレミリア、可愛い。

 

「140本目!」

「うぅぅぅぅぅう!なんでやめ゛でぐれないのお゛お゛!」

 

もはや号泣といっても良いだろう。疲れと怖さと残りの本数の絶望に。

 

「180本目!」

「ざくや゛あ゛ぁあ゛あ゛!だずけてぇええ!」

 

紅魔館の主がメイドに助けを求める、なんともおもしろい絵面である。

そろそろやめてあげようか。

 

グングニルを消す、レミリアは無くなったグングニルに安心したのか飛ぶのをやめて、頭を両手で押さえながらしゃがみこんでいる。

 

「これで分かったろう?人間の怖さが。」

「うっ・・・うぅっ・・ひっくっ・・・うわぁああん」

 

カリスマがブレイクしてしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリアの泣き声を聞いた咲夜は泣いているレミリアをなんとかなだめたようだ

 

「それで?暇だから来たのね?」

 

未だにグスグスと鼻を啜るレミリアは俺と会話する。

 

「おう、単純に暇だったからな。」

 

椅子に座り、レミリアの問いに答える。

 

「私がこんな人間に屈するなんて・・・。」

 

レミリアは悔しがっているようだ。

まぁそれもしょうがないことなのだろう。

 

「まぁまぁそういいなさんな、自称だが幻想郷最強と戦ったんだ、いい経験だろう。」

 

香霖もそういっていることだし、最強で間違いないのだろう。

 

「経験もなにも怖い思いをしただけだわ!」

「はっはっは。」

 

レミリアにとってあれは最高に怖かったらしい。

 

「ま、それだけで来ただけだ、後気になっているのはあの地下に居る何かを見るだけだな。」

「え・・・?」

 

あからさま動揺するレミリア。

 

「あの地下にはまだ何か居るんだろう?それを見たら帰るよ。」

「・・・駄目よ!あそこをみても何もおもしろいことなんかないわ!」

 

そんなに行かせたくないのか・・・。

 

「それは俺が判断することだ、いくらお前が止めようと俺は見させてもらうよ。」

 

腰をあげこのデカすぎる部屋をでるとしよう。

地下に向かうときレミリアが「待ちなさい!」とか言ってたが待たない。

さーてさーて、レミリアの妹フランドールを見に行こうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下の階段を降りて、分厚いドアの前にいる。

 

「おぉ、なかなかに頑丈そうだな、そうまでして出したくないのかね。」

 

ギギギギィーっと鳴るドアを開ける。

中は真っ赤な部屋でなんとも目に悪い。

ぬいぐるみなどもおいてありほぼ全てが綿がはみ出していたり、爆発したようになってたり。

とりあえず中に入り、フランを見るため確認する。

 

「・・・居ないな。」

 

辺りを見回したがフランと思わしきものはいなかった。

 

「・・・隠れているのか?」

「お兄さん誰?」

「うおわ!!びっくりした!」

 

後ろからいきなり声を掛けられ部屋の雰囲気に押され吃驚する。

声をかけられた後ろをみるとぬいぐるみを抱えた女の子がいた。

外見は金髪で、サイドテール?で羽はいろいろな色をしたイヤリング?に付けるあれみたいだ。

 

「おっす俺は小鳥遊天馬だ、天馬と呼んでくれ!」

 

とりあえず自己紹介。

 

「私フラン、フランドールスカーレット。」

 

フランも自己紹介をする。

 

「フランはここで何しているんだい?」

「何もしてないよ、ただ遊んでいるだけ。」

 

ふむ?遊んでいるだけ・・・ぬいぐるみでか?

 

「そうかそうか、ここから出ようと思わないのか?」

「思わないよ?出ようと思ったこともないし出ても外に行かせてくれないし。」

「それじゃつまんないだろう?俺と遊ぶか?」

 

勿論お飯事とか女の子らしい遊びである。

 

「うん!遊ぼう!」

「よし、それじゃぁ何するか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「壊しあいだよ」

 

 

 

 

 




Frandre・・・


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天馬、紅魔館の主の妹に殺される。

きゅっとしてドカーン


壊し合い、それは死を意味する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランドールと遊ぶことになったがまさか壊し合いだとはな・・・

 

「壊し合い?どういうことだ?」

 

フランの言う壊し合いとは殺し合いのことなのか?それとも単にただの段幕ごっこなのか?

 

「こういうこと!」

「?」

 

フランが俺に向かって腕を出しパーにする、そのあとぎゅっと拳を閉じる

 

「!?」

 

その瞬間俺の上半身が飛び散る。

 

「・・・あーあもう壊れちゃった、つまんない。」

 

俺が飛び散るのを確認して、また壊れちゃったっと。

 

「なるほど、壊し合い。つまりはそういうことか」

「え?」

 

今度はフランの足が飛び散る。

 

「アグァッ!」

 

足が無くなったことでバランスを崩しフランは倒れてしまった。

 

「ど・・・どうして・・・」

「どうして壊したのにってか?」

 

足が無くなり腕で上体をあげ、なぜ壊したのに生きているのかと聞いてくるフラン。

 

「俺は細胞の1mgでも残っていれば再生できるんだよ。」

「え・・・?」

 

俺のいった言葉が理解できない様子だが俺はまだ続ける。

 

「能力を真似できることもできる、だがなぜフラン、お前は生きていると思う?すぐにでも体をドカンと行けたはずなのに。」

「・・・どうして?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お遊びだからだよ、すぐに殺したらつまらないじゃないか。」

 

そう遊びと称してすぐに殺すのは遊びではない、一方的にやっているだけだ。

フランの足も再生されていってるな、吸血鬼だからか。

 

「さてフラン、これでも俺と壊し合いをするか?」

「・・・。」

 

完全に足が再生し、悠々と立っているフラン。

フランはニヤァっと口角を上げる。

 

「いいよ、初めてだよここまでされたのは。」

「よっし、じゃぁしようか。」

 

フランはまた俺に手を向け木っ端微塵にしようとするがさすがに二回もやられるのは気分が悪い。

 

「はいドーン。」

「ッッ!!」

 

俺に向けた手を俺がフランの能力で逆に木っ端微塵にする。

 

「おいおいフラン、そんなことばっかしてたらつまらないだろう?」

「・・・わかった。」

 

どこから出したのかフランは灰色の洒落た時計の秒針の様なものを持ち、凪払う。

すると凪払った所から巨大な炎がこちらに向かってくる

 

「うお!?」

 

あんなのに当たったら火傷所じゃ済まない下手したら丸焦げだ。

巨大な炎に驚きつつも避けているとフランが目の前にいた。

 

「!?」

「終わりだよ!!」

 

回避が追いつかない、このあとどう避けても細切れだ。

 

「クッッ!ソッ!ガァアアア!」

「え!?」

 

熱く燃えたぎる巨大な時計の秒針、レーヴァテインを掴む。

 

「熱っつッッ!!」

「えっ何・・・!?」

 

レーヴァテインを掴んだ腕は炎を纏いジュウジュウと俺の腕を焼いている。

 

「あつつつつ!ファイアーパンチ!」

「!?」

 

掴んだことで一瞬の隙ができたフランを炎をまとった俺の腕でフランの腹を殴る。

フランは吹っ飛び壁にぶつかる、ぶつかった瞬間壁に亀裂が入る。

 

「アグッ!!」

 

壁にぶつかり悲痛をあげるフラン。

 

「熱っちぃ!なんで消えねえんだよこれ!!」

 

未だに俺の腕にまとわりつく炎を消そうとブンブン腕を降るが全くと言っていいほど消えない。

 

「駄目だこれ!さよなら俺の腕!」

 

消えないと確信した腕をブチッと引き抜く。

 

「・・・お兄さん強いね、まるで化物だよ。」

「そりゃどうも、だが俺は人間だぞ。」

 

フランは壁から脱出して、口から少し血を垂らしながらこちらを見ている。

腕を切り離して、ズルリと腕を生やす。

 

「ふう、よし壊し合い再開といこうか。」

「そうだね!行くよ!お兄さん!!」

 

フランがこちらに向かった瞬間屋内なのに雨が降ってきた。

 

「あ・・・なんだこの雨?」

 

するとフランが膝から崩れて見る見る内に弱っていくのがわかる。

 

「私は・・・遊びたかっただけなのに・・・。」

 

いきなり弱っていくフランをただ見ることしかできなかった俺はフランの部屋の入り口に気配があることを察知する。

そこにはパチュリーとレミリア、咲夜もいた。

 

「まったく、レミィったらいきなりフランのいる所に雨を降らせろだなんて。」

「しょうがないじゃない!これ以上暴れられたら紅魔館が壊れるわ!。」

 

なぁるほど・・・こいつらが止めたのか。

 

「おい、この雨を止めろ。」

 

パチュリーに向かって言う。

 

「別に死にはしないわよ、行動が疎かになるだけ。」

 

フランと遊んでいただけで弱らせるとは、しかも紅魔館を護るだけに妹を危うくさせる姉、クズ共だと確信。

 

「止めろと言っているんだ。」

 

入り口にスキマ展開し、パチュリーの首を掴み上に浮かべる。

 

「グッッ!」

「ちょっと!パチェを離しなさい!」

 

レミリアは何とかパチュリーを掴んでいる俺の腕を離そうとする。

 

「止めるか止めないか、どっちだ。」

「ヒュゥー・・・ヒュゥー・・・わか・・・たわ・・・止める・・・から・・・離し・・・て・・・」

 

腕を離し床に降りたパチュリーは座り込み喉を押さえながらせき込む。

 

「ゲホッ!ゲホッ!」

「早く止めろよ。」

 

せき込むだけで座りっぱなしのパチュリーを立たせる。

 

「パチェに何すんのよ!!」

 

横からからギャアギャアと喚くレミリア。

 

「うるさい。」

「!?」

 

レミリアに蹴りを入れ、レミリアはフランの部屋の中の壁に突っ込む、どうやら気絶したらしい。

 

「お嬢様!!貴様!なんて事を!!」

「黙れ。」

 

そこに咲夜が仲介に入り俺を止めようと能力を使用するが、同じ能力で相殺して咲夜の首に腕を回し力を入れて落とす。

 

「よし、うるさいのは消えたな、さっさとこの雨を消せ。」

「レ・・・レミィ!!あ・・・貴方・・・覚えてなさい・・・!」

 

知ったことか、俺はお前等が妹に対してそんな風に思っているのなら俺は許す訳にいかない。

フランが受けた仕打ちはこれ以上のはずだ。

パチュリーが雨をやっと消し、弱っているフランを抱える。

レミリアと咲夜、泣き崩れているパチュリーを放置して一言。

 

「・・・クズの集まりだったか。」

 

スキマを展開してこの屋敷から出させてもらうとしよう。

フランはこの屋敷に居させてはならない。

 

紅魔館の門にスキマを展開して、驚いている射命丸に帰る事を伝える。

 

 

 

「お帰り・・・その子は誰だい?」

「不幸な子だよ、これからはこの子が俺たちの妹だ。」

「・・・?あまり詮索はしないが面倒事はおこさないでくれよ。」

 

 

香霖堂に戻ると香霖が不思議そうに見てくる、フランを抱え俺の布団に置く。

 

「今日は疲れたな、寝るとしよう。」

 

フランに布団を被せ、その横にどすんと横たわる。

 

「似たもの同士だな、俺もお前も・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、目が覚めるとフランが俺の顔を凝視している。

 

「お、起きたかおはようフラン。」

「・・・ここどこ?」

 

まぁふつうはそう思うだろう、起きたら知らない天井だ。

 

「ここは香霖堂だ、俺の家でもある。」

「こうりんどー?」

「うむ。」

 

フランは思い出したかのように何かに恐れている。

 

「あ!早く家に戻らないとお姉さまに怒られちゃう!」

 

あんなことまでされたのにまだ姉のことを思うのか。

 

「いいんだフラン、お前の家は今日からここなんだから。」

「え・・・?」

 

きょとんとするフラン。

 

「俺の言うことを聞けば外にも出してやるし、遊んでやるぞ。」

「ほんと?」

「ほんとほんと。」

 

これがフランと香霖堂で過ごすこととなったきっかけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、まずは教育だ。香霖堂の机に俺とフランは座り、勉強をする。

香霖は相変わらず窓際で座りながら本を読んでいる。

 

「さてフラン、これは何だ?」

 

絵が付いているカードを見せる。

 

「人間?」

「正解。」

 

次にこの絵の存在意義を教える

 

「フラン、人間は壊していいものか?」

「うーん・・・いい!」

 

ガクーンと首を落とす、まずここから教えないといけないのか。

 

「フラン、人間は壊したら駄目だ、分かったか?」

「え?何で?」

「人間はこの世界にとってとても大切なものだ、だから例え脆くても壊しちゃいけないよ。」

「でも食べ物に使うし・・・。」

 

おい、紅魔館の料理作ってる奴は誰だ。

 

「これからは人間は食べないんだ、豚、牛、鳥さんを食べるんだよ、もちろん命を俺達に与えてくれている、感謝しながら頂くんだ、分かったか?」

「ん~・・・分かった!!」

 

分かったならいいとしよう。

 

「よし、次はこれだ。」

 

もう一つ絵の付いたカードを見せる。

 

「・・・?わかんない。」

「これは妖怪スキマ女だ。」

「妖怪スキマ女?」

「そう、胡散臭くて頭が良いように見えるが実は悪いようk」

「こら!!」

「あ痛ぁ!!」

 

ベシンと後ろから扇子でおもいっきり叩かれた、扇子は折れている。

 

「あ!妖怪スキマ女!」

 

フランが俺の後ろに指を指しているので後ろに振り返ると紫がいた。

 

「なんてことを教えているのかしら!?」

「いや、この幻想郷の有名人をだな。」

「もっとましな紹介の仕方がないの!?」

 

いやでもそんなこと言われたって本当の事だし・・・。

 

「・・・お二人は何をしているんだ。」

 

藍もついてきたか、大変そうだな。

 

「あ!才色兼備八雲藍だ!」

「お・・・、なかなかに言うじゃないか、どれ飴玉をやろう。」

 

 

藍はフランに才色兼備と言われ喜んでいる。

フランも藍にもらった飴玉をコロコロと口の中に転がして満面の笑みだ。

 

「なぜ藍は誉められているのかしら!?」

 

紫が不服だと訴える。

 

「いいじゃねぇかよ別に。」

「良くないわよ!!」

 

なにしにきたんだこいつらは。

 

「なんの用で来たんだよ?」

 

いまだにプンプン怒っている紫に言う。

 

「あ、そうそう。この前幻想入りした吸血鬼共が貴方を探しているわよ。」

「はぁ?」

 

なぜ俺を探しているんだ?フランを探すにしちゃ遅すぎなような気がするが。

 

「はぁ・・・こっちから行くか・・・。」

「面倒な事になりたくなかったらそうすることね。」

「はぁ・・・」

 

めんどくせぇ・・・。

 

 

 

 

 

 

藍とフランはもの凄い仲良くなったようだ、このカップル以外と好きだ。

紫をそれだけを伝えると藍を連れて帰ってしまった。

 

 

「・・・嫌になるな。」

「それはこっちのセリフだよ。」

 

香霖が言ってきたので向いてみるとフランに顔を引っ張られていた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館に行くためにフランを香霖堂に残す。

 

「さてフラン、今日はお留守番だ、いいこしていたらご褒美をやろう。」

「ほんと!?」

「ほんとほんと。」

 

目をキラキラさせているフラン。

 

「じゃぁ行ってくるよ。」

 

香霖堂を出てフランに手を振る。

 

「いってらっしゃーい!」

 

フランは腕がちぎれんばかりに手を振り返していた。

 

 

さて、スキマを開くとしよう紅魔館に。

 

 

紅魔館の門にスキマを展開させ降りる。

 

「よっと。」

「あ、天馬さん!」

 

声を掛けてきたのは美鈴だった。

 

「おっす美鈴、元気か?」

「挨拶はいいんで早く中に入ってください!」

 

ん?一体何が起こってるんです?

 

とりあえず中に入り前に案内されたレミリアの部屋に行く。

 

「あーマジ廊下長すぎて老化しちまってどうかしちまうよ。」

 

ダジャレを言いながら歩いているといつの間にか横に咲夜がいた。

 

「よう」

「・・・。」

「挨拶くらいしようぜ。」

「・・・妹様をどこへやったんですか?」

 

教えるわけがないだろう、あんな風に物みたいに扱いやがって。

 

「・・・なんで教えなきゃいけないわけ?あとさ、もうお前等の妹じゃねぇから。」

「・・・なんですって?」

「言葉の通りだよ。」

「・・・。」

 

レミリアの部屋につき咲夜と分かれる。

 

 

「さて何の用事かきこうかね」

 

無駄にでかいドアを開けて中に入ると、パチュリーとレミリアがいた。

 

「ういっす。俺を探してるってきいたんで来たよ、んで何の用だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




天馬も親から見放されていたのでフランの事はよく分かるようです。

似たもの同士ですね


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天馬、紅魔館全員を服従させる。

紅魔館の連中が俺を探しているらしいので直接こちらから出向く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで?俺を探しているのは何故だ。」

 

適当に大量にある椅子に座り二人に言う。

するとレミリアが先に口を開く。

 

 

「単刀直入に言うわ、私の妹、フランドールを返してちょうだい。」

 

分かってはいたがこいつらは本当に何を言っているんだろう。

 

「返す?お前等はフランを邪魔者扱いしていたじゃないか、なら別にいいだろう?邪魔者が消えただけなんだから。」

 

実の妹フランより、紅魔館の損壊を心配する時点で察しがつく。

 

「そうわ行かないわ、あれでも血のつながった実の妹なの、返して貰わないと困るわ。」

 

やはり紅魔館の連中は俺を怒らせるのが好きらしい。

 

「・・・、断る。交渉は決裂だ、フランは返さないしお前等の条件も飲めない。」

 

来る意味など無かったが、話だけはできた、いっさいこいつらとは関わりたくないものだ。

 

「待ちなさい!!」

 

俺がレミリアの部屋を出ようとすると大きな声でレミリアが叫んでくる。

 

「・・・フランはここにいては悪影響だ、お前等と一緒に居たって何も変わりやしない、じゃぁな俺の目の前に一生現れるんじゃねぇ、次にフランを返せなどとフザケた事を抜かしたらお前等を速攻殺す、いいな。」

 

次こそ部屋を出ようとすると俺の腕に何か絡みついて身動きができなくなる。

 

「あ・・・?」

 

何だ・・・?何が起こった?

 

「ふう・・・、かなり時間が掛かったけどなんとか捕まえる事ができたわ。」

 

黙っていたパチュリーが喋り、汗をすこし流している。

何かで絡まれた所を見ると、両腕、腰、足、首、あらゆる所を鎖の様な何かで抑えられている。

 

「・・・何の真似だ?」

 

レミリアの方に首を動かす。

 

「例え貴方でも身動きができなければ危害を加えられないでしょう?フランは私達が探すわ、貴方はそこで捕まっていなさい。」

「・・・・。」

 

糞、ハメられた。なんだこの絡んでいるやつは?力を入れてもピクリとも動きやしない。

 

「パチェ、あなたはコイツを見ていて、私と咲夜はフランを探しに行くわ。」

「おい!コレを解け!!ぶっ殺すぞ!!」

「わかったわ・・・、行ってらっしゃい。」

 

レミリアが俺の横をスゥっと通り抜け、部屋を出ていく。

 

「テメェ!コレが解けたら存在事消してやるからな!」

「怖いわね、そうならないようにするわ。」

 

捨て台詞を吐き、咲夜と共に外に行ってしまったようだ。

なんとしてでもフランを先に匿わなければ、だがこの絡みついてる奴をどうしようか。

 

「いくら考えても無駄よ、私の最高傑作だからいくら力を加えようと壊れないわ。」

「・・・覚えていろ、テメェを木っ端微塵にして歩けなくしてやる。」

「言うじゃない。」

 

パチュリーが俺の方に近づき、手を俺の腕に近づける。

 

「・・・何だ?」

 

その瞬間腕が燃える。

 

「ッッ!?」

「再生しながら燃えていくのは痛い所じゃないわよね。」

 

熱さと痛みが急激に襲う。

 

「グアアァアア!!!!」

 

フランの時に見られていたのが迂闊だった、再生や切り取ることは簡単にできるが手足が使えなくなるとそうは行かない。

 

「貴方は強いわ・・・だけどこうなったらただの人間そのものね。」

「クッッ!テメェ!!」

 

パチェリーを掴もうと全力を出す、少し動かせたのだがあとちょっとで掴めなかった。

 

「なんて力なの!?危なかったわ・・・。」

「クッッソッッ!!」

 

パチェリーは少し俺から離れ、警戒を強めてしまった。

 

「紫!!紫ィ!」

 

一人では何も出来ないと確信したので紫を呼ぶ。

すると空間を裂いてスキマが出てきて、紫がにゅっと出てくる

 

 

「はぁい?」

「!!」

「助けろ!早く!!」

 

一刻も早くこの状況を打開せねば。

すると紫から予想外の言葉が出てくる。

 

「あら?なんで貴方を助けないといけないのかしら?」

「・・・!!なんだと!?冗談は良いから早くしろ!!」

「仲間・・・割れ?」

 

クソ!どうして俺を助けない!?

 

「貴方は私の式でもない、これは私が起こした問題でもない、貴方がただの暇つぶしに起こした問題よ?自分の尻は自分で拭きなさいな。」

 

そして紫はニュッとスキマに入り消えてしまった。

 

「ユカリイイイイイイイ!!!!テメェエエエエ!!!」

 

消えていく紫に叫ぶ。

 

「・・・何が起こったのか分からないけど打つ手無しね。」

「クソガアアアアアアア!!!」

「え!?」

 

最大の怒りで腕の痛みなど当に無くし、絡んでいる鎖を引きちぎる。

そして自由になった手でパチェリーの顔を思い切り殴り気絶させる。

 

「カ・・・!ハ・・・!レミィ・・・逃げて・・・!」

 

まずは一人目だ・・・!紫!テメェだけは信じていたが・・・最後に遊んでやるよ!!

 

スキマを展開し香霖堂に戻る。

 

 

 

 

 

「フラン!!!!」

 

バン!とドアを開け、フランが居ることを確認。

 

「お帰りー!ってその手と血どうしたの?」

「話は後だ!フラン!俺のスキマに入れ!」

「え・・・?なんで「いいから早くしろ!!!!」わかった・・・」

 

スキマを開きフランを入らせる。

 

「少しの辛抱だ!すぐに終わるから待ってろよ!!」

「うん・・・。」

 

これでフランはOKだ、あとはここに来るレミリア達を・・・!!

 

「・・・一体何が起きているんだい?少しは落ち着きなよ。」

「済まない香霖、少しばかりうるさいが多めに見てくれ。」

「面倒事は嫌なんだけどね。」

 

香霖堂のドアを閉め、外にでるとレミリアと咲夜がいた。

今は太陽が出ているからか咲夜が刺している日傘の陰に入っている。

 

「貴方!?どうしてここに!?」

「お嬢様!お下がり下さい!!」

 

俺を見た瞬間、咲夜がレミリアを下がらせる。

そしてナイフを取りだそうとした瞬間に咲夜の腕をつかむ。

 

「ッッ!ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

「咲夜!!!」

 

強く掴んだためか咲夜は捕まれた手を押さえながら膝から崩れる。

 

「存在事消すって言ったよなぁ!?」

「グッ!?」

 

レミリアに蹴りを入れる。

吸血鬼の弱点は太陽だ、太陽を浴びると灰になる。

するとレミリアの飛んだ方向にスキマが出てきてレミリアを飲み込む。

 

「少しお痛がすぎるんじゃなくて?天馬?」

「あぁ!?紫ィ!!!どの面下げて来やがった!!」

 

ニュッと紫が降りてきた、藍も橙も。

橙はコチラに怯えており、藍にしがみついている。

藍は驚いてはいるがコチラをずっと見ている。

 

「・・・怒りにすべてを任せるのは愚者のやることよ天馬?貴方は違うでしょう?」

「こんなに怒の感情が出たのは初めてだよ紫ィ!!こっちから行く手間が省けたなぁ!!ついでにお前と遊んでやるよォ!!」

 

痛みで気絶した咲夜を投げ捨て、紫に全速力で向かい殺しにかかる。

 

「やめろ!天馬!!落ち着け!!」

「!!」

 

紫の前に藍が出てくる。

 

「どけ!!藍!!お前も止めるならただじゃおかねぇぞ!!」

「落ち着け!!落ちついてくれ!!」

 

紫の前で手を広げ、紫に攻撃できないようにしている藍。

 

「・・・!!クソッ!紫!何故俺を裏切った!!」

「・・・幻想郷の秩序を乱すものは平等に裁かれなきゃいけないからよ。」

「ッッ!それは俺たちの長い付き合いを捨ててもか!!それだけの関係だったのか!?」

「確かに貴方との関係は長いわ、でも幻想郷には幻想郷のルールがあるの、守って貰わないと幻想郷が簡単に崩れるわ、特に天馬、貴方はね。」

「・・・そうか。」

「分かってもらえたかしら?」

「じゃぁ全員死ね!!」

 

腕を紫の方に向ける。

 

「あら?いいのかしら?貴方の愛する藍が死ぬわよ?」

「!!」

 

藍を見てみると蔑むような哀れんでいるような目をしており涙がこぼれている。

それが酷く胸に突き刺さる。

 

「・・・もういい、やる気が失せた。」

「そ、ならこの吸血鬼共は私の好きにさせて貰うわね。」

「あぁ・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ストーリーが思い浮かびません、そして天馬さんのマジギレ。



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天馬、魔法の森の魔女に出会う。

人気投票藍さまほぼ何時も通りでしたね、是非一位になってほしいっす


紅霧異変が始まっている、あれから色々あり、フランは吸血鬼共と紫に強制に奪われた。

俺の中にで変わったことは、吸血鬼とその従者、紫に嫌悪感が出てきただけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・。」

 

何時もの椅子に座り、煙草を吹かす。

 

フランを奪われてから、もうなにもかもどうでもいいと思うようになり人付き合いが極端に減ってしまった。紫とは顔を合わすことはあるが挨拶程度だ、というかそもそも喋りたくない。唯一挨拶以外の言葉を交わす者は香霖堂の店主、霖之助位だ。

 

「君はあれ以来ほとんど喋らなくなったね、何があったんだい?」

 

朝からずっと言葉を発していない俺を不思議に思ったのか香霖が問う。

 

「・・・色々だよ。」

 

仲間に裏切られ、心を許しているフランを奪われ、愛するものには蔑む目で見られる。

これほどの苦痛があるのだろうか。

 

「色々ねぇ、まぁ君は僕より何百倍も生きているんだ、多分だけど君の中の何かが一気に爆発したんだろう。」

 

香霖は本をパタンっと閉じコチラを見据える。

 

「・・・ちょっと外に出てくる。」

 

椅子から立ち上がり、香霖堂のドアに手を掛ける。

 

「行ってらっしゃい、気分転換になるといいね。」

 

ドアを閉め魔法の森に行くとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すぐ近くの魔法の森に入り、辺りを確認する。

相変わらずジメジメしていて気分を落とす雰囲気だ。

異様な雰囲気を放つキノコと植物、気持ちが悪い。

 

「外に出たのはいいが何もする事がないな、適当に散歩してるか。」

 

道がない道を歩き魔法の森を探索する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いけどもいけどもキノコ植物キノコ植物、何か魅力的なものがあるかと思ったら無い。

それが魔法の森、魔法使いや魔女なんかはこの森の異様な雰囲気が好きでかつメリットもあると聞くが・・・。

 

「まぁ、俺は万能バランス型だしどっちを特化するとか考えられないよなぁ。」

 

魔法使い 武術使い 妖術使い 剣術使い 神力使い 色々あるが、自分はすべてのステータスをカンストしているみたいな物なので別に魔法使いみたいに本を読みあさり、知識を増やすことなんてしない、武術なんかも体を鍛え相手の動きを見てソコを突くなんてのもしない。

剣術も神力もそうだ。

 

武術は剣術に弱く、剣術は魔法に弱く、魔法は妖術に弱く、妖術は神力に弱い。

なんてのは俺の考えである。

万能バランス型ならばその弱点を補えばいい、相手の弱点に合わせればいい。

そんなことを考えていると、小さな石など気にもしなかったので躓いてしまった。

 

「アデッ」

 

受け身をとれず湿気の多い土、泥に近い土に着物を汚してしまった。

ついでに顔も鼻だけ泥だらけだ。

 

「あいたたた。」

 

この紅い霧のせいで辺りがほとんど見えないのも原因の一つだ。

腕で体を持ち上げ足に力を入れて立ち上がり泥だらけの着物をパンパンと手で叩いていると

 

「大丈夫?」

 

と女性の声が聞こえ目の前にはハンカチが出される。

 

「ありがたい、借りさせてもらおう。」

 

ハンカチを受け取り、顔を拭う。

 

「酷い格好ね、私の家すぐ近くだから洗っていったらどう?」

 

顔を拭い終わりハンカチ貸してくれた声の主を見る。

金髪 モデル体型 スレンダー お淑やかそう そしてカラフルな服。

アリス・マーガドロイドだ。

しかし今は人付き合いができる状態ではないので拒否しておこう。

 

「いや、遠慮しとくよ。ハンカチは洗っておくからまた今度会ったときに渡すよ。」

 

何時会えるか分からないがそうしておこう。

 

「あら?人の好意は受け取っておくのは礼儀じゃなくて?それとも迷惑かしら?」

 

面倒臭いな、今は人と関わること事態きついのに。

 

「いや、そういう訳じゃないが・・・。」

「ならいいじゃない行きましょ。」

 

あぁ、なぜこうなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おじゃまします。」

 

アリスの家について家の中に入る。

中の構造は窓際に机と椅子が二つ、そして部屋の端にベッドが一つ。

そして一番気になったものは部屋のありとあらゆるところにおかれた人形。

 

「じゃぁ服を洗っておくから服を脱いでちょうだい。」

 

え?何を言っているんだこの人は、人の目の前で脱げと申すのか。

 

「・・・今ここで脱げと?」

 

とりあえず確認をしておこう、もしも違うのなら嬉しい。

 

「そうよ?どうせ見られるんだから今脱いだって変わらないでしょう?」

 

全然違くなかった、ならしょうがないここで脱ごうとしよう。

いそいそと着物を脱ぎパンツ一丁になる、着物をアリスに渡す。

ちなみにパンツは紺色のボクサーだ あそこのラインが見えるパンツでなくて本当によかったと思うよ。

 

「鍛えてるわねぇ・・・。」

 

何を見ているんだこの人は、俺の腹筋か?俺の腹筋なのか?

 

「あんまり見られるとさすがに恥ずかしいのだが。」

「え?あ、ごめんなさい。」

 

アリスは俺の着物を持って別室に行ってしまったようだ。

さてパンツ一丁の俺はどうすればいいのだろうか?

1 このままパンツ一丁で待つ。

2 服を創造して服を着て待つ。

3 パンツ一丁のままアリスを襲う。

 

3はないありえない 2は好意を受け取らなかったみたいでなんか嫌だ。じゃぁ1しか無いな。

ということなのでパンツ一丁で俺は窓際の椅子に腰掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから30分は待った、まだ俺の服を洗っているのだろうか?

パンツ一丁で窓際に座っているのも飽きた、それ以前に少し寒い。

そもそもここはアリスの家であり俺の代わりの服は用意できるのか?

まぁそれは無かったら創造すればいいしあれば着るだけだ。

図々しいとは思うがこれ以上は考えられない。

 

さてそんなことを考えているとアリスが戻ってきた、パンツ一丁の俺を見て焦りながらまた別室に戻ってしまった。

完全に忘れられていたようである。

 

「ご・・・ごめんなさいね?」

 

アリスが戻ってきて持ってきたものはなんと予想の斜め上をいく女性の着物。

 

「・・・これを着れと?」

 

いやいや多分間違いだろう、もう一回焦って男性の着物を持ってきてくれるだろう。

 

「・・・これしかなかったの、代わりといったらなんだけど・・・着るかしら?」

 

そんな顔で見ないで欲しい、泣きそうだ。

 

「・・・着るよ、寒いから早くその着物を貸してくれ。」

 

俺の言葉に若干救われたのかアリスは顔が少し笑っている。

貸してくれた女性の着物を受け取り見様見真似で着る、たぶんこれで合っているだろう。

 

「あ、帯がちょっと違うわよ、やってあげるわね。」

 

俺の後ろに回って再度帯を締めなおしてくれるアリス。

なんだか気恥ずかしい。

 

「よし、これでいいわよ。」

 

締め終わったのか俺の肩をポンっと叩いてきた。

 

「ふむ・・・女性の着物は始めて着たが、なかなかにきついな。」

 

アリスの方向を向くとなんかアリスが驚いている。

 

「・・・どうした?」

「え?あ、ごめんなさい、ちょっと似合ってるから・・・。」

 

似合ってるか・・・確かに前の世界では学校の文化祭で喫茶店をすることになったときなぜか女性だけの店員の中で俺がいた、男共からの推薦でなってしまったとは聞いたが・・・。

 

「そんなに似合っているのか・・・?」

「普通に女性に見えるくらいはね。」

「・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず椅子に座り、着物が乾くまで待つとする。

 

「・・・。」

「・・・。」

 

俺は片腕で頬杖を突いて窓の外を見、アリスは人形を作っている。

なぜ一言も喋らないんだろうか、この沈黙がきつい。

 

暇なのでそこらへんにあった人形を適当に取り一人人形劇をする。

 

「こんにちは、私パセリ(裏声)」

 

机の上に載せ、アリスを客とする。

 

「ちょっと何勝手に人形で遊んでんのよ。」

 

ジト目でこちらを見るが少し笑っている。

 

「独りぼっちの貴方の友達パセリよ(裏声)」

「ひ、一人ぼっちじゃないわよ!返しなさい!」

 

人形を奪おうとするが回避する。

 

「パセリはぼっちの妖精なの、ぼっちにしか見えないのよ(裏声)」

「ぼっちじゃないわよ!いい加減に返しなさい!!そもそもパセリって何なのよ!!植物じゃない!!」

 

ついにアリスが怒った、そして人形を奪われてしまった。

 

「ぼっちでもいいじゃん、俺もぼっちだぞ。」

「え?」

「ぼっち同士仲良くしようぜ?」

「あ、うん。」

 

とりあえず握手。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてそろそろ服は乾いたろう。

「俺の着物そろそろ乾いていると思うんだが?」

「この湿気の多い所と太陽が出ていないせいでまだまだ濡れてると思うけれど?」

 

そういえば吸血鬼共のせいで紅い霧が蔓延してるせいで太陽が出ていない、そしてここは湿気が異常に多い森。

 

「・・・もうこのままでいいから帰るわ。」

「そう・・・じゃあ着物はちゃんと返してきてね。」

 

何でそんな悲しそうな顔をする止めろ。

 

「あぁ、今日はありがとうな、じゃぁ着物借りるよ。明日返しに行くよ。」

「待ってるわね。」

 

ドアの前で分かれる、なにこれ通い夫?

まぁいいや、ドアを閉めてスキマを展開して香霖堂に戻るとしよう、今日は色々と面白かった。

そしてなんか紅い霧が消えている、終わったのか?

 

 

香霖堂に戻る。服は創造で着替えた。

 

「ただいま。」

 

香霖堂に入り、まずは帰ったことを告げる。

 

「お帰り、君にお客さんだ。」

「・・・?」

 

すると奥から出てきたのは藍と紫だった。

 

「・・・なんの用だ?」

 

藍はどうでもいい、なぜ紫がいる。

 

「あら?何か用がないといけないのかしら?」

 

なにをいけしゃあしゃあと言いやがるこの女。

 

「無いなら俺の客ではないな、じゃぁさっさと消えてくれ。」

 

もう喋るのすら嫌になってくる、多分一番嫌いだ。

 

「おい!何をふてくされているんだお前は!」

 

適当にあしらっていると次は藍が突っかかってくる。

 

「ふてくされてなんかいないよ、今日は疲れてんだ、さっさと用件を言えよ面倒くせぇんだよお前の主は。だいたいそっちからきといて隠しているってわけわかんないから、本当になんなのお前等?俺をおちょくりにきたの?だったらまじで止めてくれよ。」

 

「ッッ!いつまでそんな態度でいるんだ!?」

 

面倒くさい、非常に面倒くさい、前の俺なら普通にできただろうが今は関係が違う。

 

「で?用がないならさっさと帰ってくれるか?」

 

紫に向かって言うと笑いながら扇子を開いて口を隠す。

だが手が震えているのが分かる。

 

「用件ならあるわよ?」

「じゃぁさっさと言えよ、要領を得ねーな。こっちは忙しいんだ、お前みたいに暇じゃねぇんだよ。」

 

辛く当たっていると思うが俺はこれ以上の屈辱を受けた、こんなのは軽いはずだ。

 

「・・・霊夢が初めて異変を解決したのよ、宴会をするんだけど貴方も来るかしら?」

 

宴会ねぇ、いや、無理だな騒ぐのは好きだがお前は嫌いだ。

 

「無理だな、ていうか異変を解決したってお前が裏で工作していたんじゃねぇのか?」

「おい!!それは余りに酷すぎないか!?」

 

藍が非常にうるさい。

 

「・・・なぜそんなに私を嫌うのかしら?前の事だったら貴方も認めたじゃない。」

 

手が震えて、喋り方もすこしどもっている紫。

なんだ?泣くのか?

 

「認めたがそれは表面上だ、はっきり言うけど紫、俺はお前が嫌いだ、もう目の前に現れないでくれ、あの吸血鬼共と一緒でもうお前を見たくはない、眼中に入るのが嫌な位だ。」

「ッッ!」

「貴様!!紫様になんてことを!!」

 

藍が俺に向かって胸ぐらをつかんでくる。

ついに紫がしゃがみこんで泣いてしまった

 

「本当のことをいってなぜ悪い?このままこの泥沼の関係を保ちたいっていうならそれでいいだろうよ?でも俺はそんなのは嫌だね。」

 

胸ぐらを掴みギリリと口を閉める藍、だが身長差があるせいか俺は藍を見下している形だ。

 

「だからといって言ってはいけないこと位は分かるだろう!?」

「言っちゃいけない事ってなんだよ?じゃぁお前がいつまでも俺を蔑むように見てくるのは良いのか?目も合わせなくなったしな、顔を合わせるのが辛いだろう?嫌なら関わるなよ俺に。」

「ち・・・違う!!」

「違うって何がだよ?顔を合わせるたび目を背けてるのはお前だろう?」

「そ・・・それは。」

 

俺をここまでにしたのはお前等二人だ。

 

「はぁ・・・もういいよ、宴会には行かない、そんだけだ。」

 

何時までもここにいられちゃ迷惑だ。

 

「わかっ・・・たわ、天馬が・・・そう言うのなら・・・、じゃぁまた・・・ね」

「次までにはその態度直しておけよ!」

 

紫が立ち上がり泣きながらそんな言葉を残し、スキマで帰ってしまった。

少々心に突き刺さったな。

 

「君も酷い人だね、もうちょっと優しくしてあげればいいじゃないか。」

 

本を窓際で呼んでいる男香霖に言われる。

 

「酷くなんかねぇよ、むしろ酷いのはあっち側だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




javasprict offのまんまで書いてフリーズ 

自動保存されてなくて発狂してしまいそうでした


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天馬、博霊の巫女と戦う。

翌日、朝である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふあぁーあ・・・よく寝たよく寝た。」

 

珍しく午前中に目が覚めた、さてさて今日の天気はっと。

 

「文々。新聞でーす!!」

「グボェッ!!」

 

文の声が聞こえその瞬間窓が割れ俺の顔に文々。新聞が大当たり。

 

「クソッ!文め、目に物を見せてやろう。」

 

スキマ展開 移動先指定 射命丸の上

 

「うおっしぃ!」

「あややや!」

 

射命丸の腰の上にスキマ展開して、飛んでる最中に飛び乗る。

 

「おい射命丸、お前香霖堂の窓よく割ってくれたな。」

「いやいや、何時もは香霖さんが開けてくれるんですよ!」

「しらんがな、はい一回降りようね。」

「あっ,,,,羽は触らないでください!!」

 

射命丸の羽を両腕で掴み落下する。

 

「あやややややぁああ!!」

「フゥーハハハハァ!」

 

次は落下していく途中に射命丸の体を羽交い締めにして回転を加える。

 

「フィニッシュだ!」

「天馬さん!放してください!でないと頭が割れてしまいます!!」

 

 

 

 

 

 

「大丈夫、お前の頭俺より固いから。」

 

 

ドーン!と地上に落下してクレーターができる。

さて、俺は地上にぶつかる瞬間ジャンプして脱出したが射命丸はどうかな?

 

 

「あや・・・や・・・や。」

 

気絶していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、早く窓直せよ。」

 

気絶した射命丸を香霖堂に連れていき、割れた窓を射命丸に修復させる。

 

「天馬さんの能力で直せるじゃないですか~。」

「その前に反省しろよ。」

 

俺に朝の一発をお見舞いしてくれたんだ、無理にでも直させる。

 

「一応余った新聞で補強はしましたが・・・。」

「じゃぁ後はガラスだな、直しておくからガラス代を出せ3文な。」

「高いですよ!!一文!」

「二文。」

「うぅ~二文でいいですよぉ・・・。」

 

交渉成立だ、射命丸はまだ新聞を配る所があるというので今度金を持ってこさせるようにした。

射命丸がどっかいったあと香霖堂に戻り新聞を読む。

 

「なになに・・・博霊の巫女が異変を解決、か。」

 

あとはどうでもいいことばかり書いてあるので割愛。

 

「異変解決ねぇ、まぁ俺には関係ねぇな。」

 

今日はアリスの家に行くんだったな、ついでにお土産も持っていこう。

お土産はお菓子辺りを持っていけばいいね、人里で買うことにしよう。

 

 

 

 

人里にスキマを展開して、アリスが気に入りそうな菓子を探すとしよう。

 

 

「お~お~朝だってのに賑わってんね。」

 

人の喧騒が異常にうるさい、とりあえず人里の中央らへんに行けば菓子屋はいっぱいあるだろう。

 

 

人里中央にきたが・・・。

 

「団子、和菓子、切細工、飴、 日本っぽいものしかないな。」

 

ケーキとか西洋風の物が欲しかったが・・・。

 

「ん・・・?向かいから来るのは・・・藍か。」

 

どうやら買い物途中らしく手提げ鞄をもっている、だがまぁ関わる必要もないので放っとこう。

あらら・・・彼方もこっちに気づいた様子、だがいつもの様に目を合わせないな、まぁあっちも俺のことを放っておくだろう。

藍の横を通り過ぎようとした瞬間。

 

「お、おい。」

 

呼び止められたが気にしないことにしよう。

聞いてないことにして、足を進めようとすると今度は俺の着物を掴んで来る。

 

「おい!」

「何だよ?」

「なんで無視するんだ!」

「面倒くさいから。」

 

俺の腕を逃がさんという様に掴んでくる藍。

 

「ここじゃ話しにくい、ちょっと来い!」

「なんなんだよ。」

 

大通りから小さい路地裏に入り藍と俺だけの空間になる。

 

「んで?何?」

「何でお前はそんな態度を取るんだ!」

「ん?別に?今日は約束があるから急いでいただけだけど?」

「なら挨拶位はしろ!知り合いなんだから!」

 

どうやらまだ他人ではないらしい。

 

「じゃぁこんにちは、これでいいか?」

「これでいいかとはなんだ!嫌々言うんじゃない!」

「あのさ、俺急いでんだけど、離してくんない?」

「・・・。」

 

ようやく俺の腕を離してくれた藍。

 

「そんじゃ、じゃぁね。」

「ちょっと待て!まだ話は終わっていない!」

 

大通りに戻ろうとすると、呼び止めてくる。

 

「なに?」

「紫様のことについてだ。」

「それで?」

「グッッ!それでとは何だ!昨日の件以来紫様は落ち込んでいるのだぞ!!」

「いや知らねえし、興味無いし。そんだけ?」

「どうすれば紫様を許してくれるんだ!?」

 

いや、許すも何も許す気無いし。

 

「そうだなぁ、じゃぁ紫が俺の目の前でさんべんまわってワンと鳴いて、お座りすればいいんじゃないか?」

「な・・・んだと?」

「言ったとおりだよ、まぁできるわけ無いか、紫は無駄にプライド高いからね。」

「貴ッ様!」

「・・・。」

 

藍は俺を睨み、完全にキレている。

だが睨むのを止めた後俺に向かって予想外の言葉を放つ。

 

「・・・紫様は今は居ない・・・、だから私が・・・私がその役目をしよう。」

「は?」

 

すると俺の目の前で藍がくるくると回る。

 

「おい、止めろ。」

「・・・ワン。」

「おい!!」

 

藍は回った後座り込み俺に土下座をする形になる。

 

「頼む・・・!紫様を許してやってくれ!お願いだ!」

「おい!分かったから止めろ!!」

 

藍がゆっくりと顔を上げる。

目には涙が流れていてじっと俺の目を見据える。

 

「わかった、わかったから藍、やめてくれ。」

 

藍の肩を持ち上げ立たせる。

 

「・・・天馬、数々の非礼本当に済まなかった、私たちは前と同じ関係に戻りたい。」

「分かったから涙を拭け、な?」

 

ハンカチを創造して藍に渡す。

俺のハンカチを藍受け取り涙を拭いた後に

 

「今日・・・博麗神社で宴会をするんだ・・・、天馬は来てくれるか?」

「宴会か、分かった用事が終わったら行くよ。」

 

藍は目の周りを赤くしながら俺の言葉を聞いたあと笑う。

非常に心に突き刺さる。

それをまぎわらすように藍を抱く。

 

「わっ!な・・・何だ?」

 

突然の事で焦っている藍。

 

「ごめんな、俺もまだ子供だったようだ。」

「・・・分かればいいんだ。」

 

やっぱり俺は藍を嫌いになれないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後藍は顔を真っ赤にしながら「紫様に伝えてくる、絶対に宴会には来いよ?」とだけ残してスキマに入ってしまった。

 

「・・・さて、アリスの所に行くか。」

 

スキマを展開してアリスの家の前に降りる。

 

「よっと・・・アリスいるかー?」

 

アリスの家の前に着き、いるかどうか確認する。

因みに菓子はケーキだ、人里になかったから創造した。

すると、ドアが開かれる。

 

「いらっしゃい、入って良いわよ。」

「いや、アリス、今日は着物を返しに来ただけじゃない。」

「え?」

「とりあえず借りた着物とお土産はここに置いておくぞ。」

 

持ってきた荷物を机の上に置き、アリスの手を引く。

 

「ちょっと?どこ行こうって言うのよ?」

「ぼっち脱出の為に宴会に行くぞ。」

「はぁ?」

 

スキマを開きアリスと俺を飲み込み、博麗神社に降りる。

 

「よっと。」

「きゃぁっ!」

 

アリスをお姫様抱っこしながら妖怪の山にある博麗神社に降りる。

 

「誰もいないな、ちょっと早すぎたか。」

「降ろして欲しいんだけど・・・」

辺りを確認するが誰もいない。

とりあえずアリスを降ろす。

さてさて宴会は何時始まるんだろうか。

 

博麗神社の境内の中に入る、居間には霊夢がいた。

 

「よう霊夢、久しぶりだな。」

「・・・あんた誰?」

「なんだ、忘れたのか天馬だよ天馬。」

「あぁ・・・聞いたことあるわね。」

 

ズズーッとお茶を飲む霊夢。

 

「今日は宴会やるんじゃないのか?」

「やるわよ、午後からね。」

 

現在午前10時半、まだまだじゃないか。

 

「まぁ来ちまったもんはしょうがない どうだ?霊夢、修行してるか?」

「面倒くさいし、なんとかなるからしてないわよ。」

「あらら、じゃぁあの時のまんまか、霊力だけは増えてるみたいだけど。」

「少なくともあんたよりは強いわよ。」

 

なかなかにいうようになったなこの娘。

 

「それはないな、俺より強い奴は見たことがないしな。」

「井の中の蛙って知ってる?」

 

ほぉ~・・・言うじゃないか。

 

「よし、じゃぁ外でて確かめて見ようぜ。」

「面倒臭い。」

「・・・、もし俺に勝ったらなんでも創造してやるよ。」

「本当ね?男に二言は無いわよ?」

「あぁいいだろう、そのかわり俺が勝ったらなんでも俺の言うこと一つ聞けよ?」

「いいわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博霊の巫女VS幻想郷最強

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ぶっちゃけ眠いっす


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天馬、宴会に交ざる。

仲直りしたといったな?


博麗神社の目の前で霊夢と天馬は対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢の実力はどれくらいかな?

 

「さぁーて、すこしハンデをやろうじゃないか。」

 

流石に本気を出すと簡単に勝ってしまうからな。

 

「いらないわよ。」

 

準備運動をしている霊夢。

 

「まぁハンデっつっても専門分野の事だ。」

「専門分野?」

 

俺は万能オールマイティだ。

 

「そ、妖術魔術武術霊術剣術神術、どれか二つだけ選ばせてやろう。」

「うおーい。」

 

すると上から陽気な声が聞こえ、振り向いてみると、魔理沙が箒に乗ってきた。

 

「なにやってんだ?天馬、久しぶりだな。」

 

下着事件以来顔を一回も合わせていなかった魔理沙。

 

「ん?ちょっとな、博麗の巫女の実力を調べる所だ。」

「なるほどな、私は霊夢が負ける方に1文だな。」

 

まぁ魔理沙は俺の実力をほぼ知っているだろうし当然だな。

すると不満気な声が博麗の巫女から聞こえた。

 

「はぁ?魔理沙は私がこんな奴に負けると思ってんの?」

「そうだな、多分私達が二人で掛かってもキツイと思うぜ。」

 

魔理沙の言葉を聞いた霊夢はうんうんと唸り始める

 

「貴方ってそんな強いの?」

 

隣から聞こえた声はアリスだ。

 

「自称だけど幻想郷で最強だよ。」

「へぇ~、初めて知ったわ、まぁ私は観戦してるわね。」

 

アリスは俺から少し離れ俺たちの様子を伺っている。

そんな感じで待っているとようやく霊夢と魔理沙の結論が出たようだ。

 

「決めたわ、そのハンデ使わせてもらうわね。」

「どれにするんだ?」

「そうねぇ、一番楽そうな武術と魔理沙が見たがっている魔術にするわ。」

「同じ魔法は気になるからな!」

 

武術と魔術、魔法剣士ならわかるが武術と魔術か・・・なかなかに難しそうだ。

 

「武術と魔術だな、勝敗を決めるが俺は霊夢を気絶させたら勝ち、霊夢はそうだな・・・俺に3発なんでもいいから食らわせたら勝ちで。」

「ずいぶんとハンデをくれるじゃない、まぁ楽だからいいけど。」

「じゃぁ二人とも頑張ってな。」

 

魔理沙もアリスの所に行き観戦するようだ。

 

「んじゃ、俺が持っているこの煙草が地面に着いた瞬間から開始な。」

 

内ポケットから煙草を取り出し上に投げる。

 

「絶対に勝ってやるわ。」

「望む所だ。」

 

 

 

空中に舞った煙草が地上に着く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それ!!」

 

まずは霊夢から、いきなり近づくのは危険だと思ったのか針を投げつけてくる。

 

「遅いな、蠅も止まりそうだ。」

 

当然ホイッと避ける。

今のうちに魔力を俺の体内に創造して循環させておこう。

 

「んじゃ次はこっちな、行くぞー?」

 

少しジャンプして1mほど浮いたあと重力にしたがって落ちるがその前に思いっきり足を地面に叩きつける。そして豪快な音がした後大きなクレーターができる

 

「え・・・?地震?」

 

グラグラと地面が揺れて霊夢のバランスは崩れる。

 

「光の矢。」

「!?」

 

魔力が循環してきたので指先に光を集め圧縮して細いレーザーとなって射出される。

突然のことで驚いたのか霊夢は大幅に避ける。

 

「なんなのよそれ!!」

「魔法の応用だよ。」

 

さて、魔法を使うのはいいが初歩的だな、やはり魔法陣か八卦路がないと強力な魔法ができないな。

しかし創造すると違反だしなぁ・・・、やはり時間は掛かるが魔法陣にしようか。

 

「余裕かましくれるじゃない!」

 

今度は誘導式の札か。

 

「面倒くさいんだよなぁこれ。」

 

避けても着いてくると言うのはナカナカに面倒である。

避けながら地面に足で魔法陣を少しずつ書いていく。

 

「霊夢!あれは魔法陣だ!消すか止めないとやばいぞ!」

 

おい魔理沙てめぇ、ネタバレすんな。

 

「魔法陣!?小賢しいわね!」

 

札を投げるのをやめて霊夢は接近に持ち込み、祈祷棒で殴り掛かってきた。

 

「おっと、邪魔しないでいただきたいな。」

 

横に避けて途中書きした魔法陣に新たに足で途中の魔法陣を上書きする。

魔法陣自体は魔理沙に見せてもらったことがあるのでよく覚えている。

 

「書くのをやめなさい!」

 

魔法陣を書いている俺にイラついたのかカードを取り出す。

 

「珠符「明珠暗投!」

 

霊夢が叫んだ後カードが光り、陰陽玉が三つ俺にむかって飛んでくる。

 

「いきなりスペルカードか。」

 

霊夢にとってこの戦いは当てるだけの戦いなので技が早くでるスペルカードにしたんだろう、その分威力は落ちるが。

 

向かってくる三つの玉を当たらない様に避けるがいかんせん大きすぎて結構大幅に避けなければならない。

 

「その魔法陣を消させてもらうわね!」

「かかったな!」

「!?」

 

俺の魔法陣に向かって走り出す霊夢にまず心臓部分に掌低を放つ

 

「カッハッ!」

「さらにもう一回!」

 

吹っ飛ばすほどでは無い勢いなので霊夢は行動が一時的に制限されるだけになる、次は肺の部分を下から押し上げる。空気が一気に抜けるので目眩が起きる筈だ。

そして最後に顔を掴み力任せに吹っ飛ばす。

 

もとから殺す為ではないので全部軽くやったが常人ならとっくに気絶しているはずだ。

なのに霊夢はボロクソになりながらも立ち上がろうとしている。

今のうちに陣を加えて完成させておこう。

 

「やるじゃない・・・。」

「お前もな、なんでそんな簡単に立ち上がれるかな。」

 

博麗の巫女、おそるべし。

 

「降参するか~?」

「冗談、なんでも創造してもらうんだから!」

「強欲だなぁ、でももう終わりだけど。」

「え?」

 

魔法陣が完成した。

完成した魔法陣に手を当てて魔力を流し込む。

 

「さぁて、問題、俺はこれからなにをするでしょうか?」

 

魔法陣に手を当てたまま霊夢を見る。

 

「そうはさせないわ、宝具「陰陽鬼神玉」!」

 

霊夢は俺に向かって巨大な霊力弾を放つ。

そして辺りは衝撃で砂埃を舞い視界が消える。

 

 

 

 

砂埃が風でどんどん消えていき視界が明らかになる。

 

 

「・・・なによそれ。」

 

霊夢が分かったことは、俺の手に持っている長い刀の事だろう。

 

「水だよ、水。大気中の水を圧縮して自由自在に使えるんだよ、今は武器の形だけどな。」

 

全長1.8m 外見は青白く刃先は凍っているのが分かる。

 

「たとえばだけどこう言うこともできるよ。」

 

俺の腕から水の刀が消えて、霊夢の周りに2-3本現れる、その瞬間霊夢に向かう。

 

「ッッ!危ないわね!!」

 

霊夢は辛うじて避けた、刀は地面に刺さっている。

 

「水関係だったら雪でも降らせれるよ、幻想郷の1/5の大気の水を圧縮したからね。」

「・・・。」

 

刺さった刀を消し、俺の手元に戻らせる。

 

「1/5だって!?魔力をどんだけ使ったんだ天馬は!?」

「同じ魔法使いでも私にはできないわね魔力全部使っても。」

「そもそも水を圧縮させることができないよな。」

 

アリスと魔理沙がめちゃくちゃ驚いている ドヤァ・・・

 

「じゃぁ頑張って避けろ~?行くぞー。」

「ちょ・・・待っt」

 

水の刀を横になぎ払うと大量に氷の刀が出現しすべて霊夢に向かわせる。

 

「あぶな!!」

 

当たる直前に霊夢は飛ぶ。

よく見ると向かわせた刀が壁やら地面に突き刺さった後割れてきれいだ。

 

「そーれそれ。」

 

空中に飛んだ霊夢の真下に氷の刀を出現させ避けれないようにすべて回転させて向かわせる。

 

「攻撃できないじゃない!卑怯よ!!」

 

なんか言い出したぞ博麗の巫女が。

 

「戦いに卑怯もクソもあるか、勝った方が正義、これ常識。」

 

「最悪だな。」

「最悪ね。」

 

「うるさいぞお前等!」

「うわ!」

「きゃぁ!」

 

アリスと魔理沙がうるさいのでアリスと魔理沙の近くに出現させたら逃げて行った。

 

「隙あり!!」

「うお!?」

 

いつの間にか接近してきた霊夢が下から来ており。

二回連続のサマーソルトを食らってしまった。

 

「あと一回!」

「このっ!そりゃ!」

「あ!!」

 

ガードして仰け反った俺はサマーソルトで接近して宙に浮いている霊夢の足を掴みジャイアントスイングをする

 

「おらおらぁ!」

「きゃああああ!」

 

手を離して思いっきり吹っ飛ぶ霊夢、当たってしまったのは空の賽銭箱、霊夢はぶつかって起き上がろうとしたがついに倒れてしまった、そして賽銭箱が砕けた。

 

「きゅうううう・・・。」

 

目をクルクル回しながらアニメ風に気絶する霊夢を確認

 

「はい俺の勝ち~。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

境内の中で気絶から覚めた霊夢は頭を押さえながらブーイングをする。

 

「なにが武術よ、あんなの力任せじゃない。」

「いやいやちゃんとした技名があってだな。」

「天馬今度魔法教えてくれよー。」

「私もお願いしたいわね。」

 

魔法少女達からモテモテである。

 

「ん~良いけど、俺の魔法は四大元素をあまり使わねえぞ?」

 

魔法の基本 火 土 水 風 これは魔法を使うものにとっては重要である。

変わりに 光 雷 などはその人のセンス次第だ、因みに俺は光。

まぁ魔法っつったって、アリスみたいに人形を操るだとかいろいろあって千差万別だ。

 

「あの水を圧縮ってどうやるんだ?」

「あれはだなーなんというか魔力で水を集めてからそれをすべて集合させるような感じ。」

「わかんないな~。」

「私も。」

 

霊夢は魔法なんて興味ないのか机に突っ伏している。

 

「魔理沙は例のお師匠さんに教えてもらえ、アリスは・・・俺が暇だったら教えてやろう。」

「何だ?魅魔の事知ってたのか?」

「いや知らん、見たこともないが聞いたことはある。」

「まぁ師匠放任主義っぽいからあまり教えてくれないんだよな~。」

「知るか、いっぱしの魔法使いなら人に教わらず自分で考えるもんだ。」

「私は楽して強くなりたいんだよ~。」

 

今度は魔理沙が突っ伏した。

 

「まぁアリスもあんまり俺に聞かずに自分ができたらいいなって思ったことを実行すればいい。オーケー?」

 

アリスに向かって親指をグッと出す。

 

「お・・・おーけー。」

 

アリスも恥ずかしながら親指を出す。

 

「よし、じゃぁ霊夢にはお願い事を聞いてもらおうかな。」

 

俺の言葉を聞いてピクッと動きだし顔をあげる

 

「チッ、忘れていると思ったのにぃ。」

「まぁまぁ難しいことじゃない、むしろ簡単な事だからな。」

「何よ?」

「あれだ、ここにいる女の子はアリス・マーガトロイドって言うんだ。」

「へぇ?それで?」

「是非とも友達になってやってくれ、まだあんま居ないらしいんだ。」

「ちょ!なんで言うのよ!!」

「ふぅん・・・。」

 

顔を真っ赤にするアリス。

すると霊夢がアリスに向かって手を差し出す。

 

「初めまして、博麗霊夢っていうの、よろしく。」

「え?あ・・・、アリスよ、宜しくね。」

「霧雨魔理沙だ~。」

 

魔理沙は未だに机に突っ伏しながら片腕を上げてヒラヒラとしている。

 

うんうん、仲良きことは美しきかな。

 

さて、そんなことをしていると外が騒がしくなっていることに気づく。

 

「お?外がうるさいな、そろそろ宴会じゃないのか?」

 

魔理沙が気づいて起き上がり霊夢に言う。

 

「もうそんな時間?せっかちねぇ。」

 

霊夢と魔理沙が外に行きアリスは俺を見る。

 

「いってきな、ぼっち脱出おめでとう。」

「ぼっちいうな!貴方は行かないの?」

「俺はここで少しゆっくりしていくよ。」

「じゃぁ待ってるわね。」

 

アリスも霊夢と魔理沙の後をついていってしまった。

 

「・・・。」

 

正直紫に会うのが苦痛でしかたない。

どんな言葉をかければいいんだ。

 

すると、神社の境内の襖が開かれ紫と藍が立っていた。後ろには橙も。

紫が俺の隣に座る。

 

「天馬、話は藍からきいたわ、ごめんなさい。」

 

紫の顔には目が赤くなっており涙の後もあるが笑っていた。

そして俺に頭を下げてくる

 

やばい、何かが押し寄せてくる。吐きそうだ。

 

「お、おう。すまんかったな紫。」

「どうした天馬?顔色が悪いぞ?」

 

俺の様子がおかしかったのか、藍が心配してくる。

 

 

 

 

もうだめだ。

 

 

 

 

「ウプッ!ウゲェエエエエエ!」

 

胃から逆流してきた物をスキマをすぐに展開して吐き出す

止まらない、ついには出すものもなくなって胃酸が出てきてしまった。

 

「おい!?天馬どうした!?」

「天馬!?」

 

藍が俺の背中をさすり、紫が心配してきた。

 

何だ?、俺に一体なにが起こった?

喉が胃酸のせいで焼ける様に痛い。

 

「だ・・・大丈夫だ、少し調子が悪いだけだ。」

「本当か!?なんかの病気なんじゃないのか!?」

「大丈夫なの天馬!?」

 

吐いたせいか、それとも何かのせいか、涙もこみ上げてくる。

 

「大丈夫・・・大丈夫だから放っといてくれ・・・。」

「大丈夫なわけがないだろう!?」

「いいから!!放っといてくれ!!!」

 

心配する藍をふりほどく。

 

「わ、わかった・・・でも一応は心配だから外で待っているからな?紫様、行きましょう。」

「そ、そうね。」

 

藍と紫が境内から出ていく。

 

「な・・・なにが起こったんだ、俺はまだ紫が・・・?」

 

まだ気配があるので横をみると橙が立っていた。

 

「だ・・・大丈夫ですか・・・?」

「・・・大丈夫だ、橙は藍と一緒に外で待ってな、すぐ行くから。」

「・・・わかりました。」

 

 

 

 

 

 

 

俺に何が起こってやがる・・・!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あれは嘘かもだ。


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天馬、秘密兵器を開発して、廃棄する。

僕の想像力が最近乏しいせいか、ストーリーがまーーーったく思い浮かばないんだぜ。


宴会が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は吐き気が和らいだのでとりあえず交ざるとしよう。

 

「・・・。」

 

外を出てみるとやはり居たのは紅魔館の吸血鬼と従者、まぁいいだろう今日は宴会だ。変な空気にしては胸糞悪いので遠くから見てることにしよう。

ちなみに今は神社の縁側にいる、隣には粉砕した賽銭箱。

宴会でわいのわいのしてる連中は博麗神社の前で占領している。

俺は創造したたこわさびをちょいちょい食いながら酒をのんでると、隣に紫が来た。

 

「天馬?大丈夫?」

「あぁ・・・大丈夫だよ。」

 

よし、普通に会話はできるな、一体さっきのはなんだったんだ。

すると藍も来た。

 

「大丈夫なのか?天馬。」

「大丈夫だっつの二人して同じ質問すんな。」

 

美女二人に挟まれる、両手に華とはこのことであろうか。

 

「天馬は皆の所には行かないの?」

 

いつまでも皆が集まっている俺を不思議に思ったのか紫が話しかけてくる。

 

「吸血鬼は苦手なんだよ。」

「そう・・・。」

 

俺の答えを聞いて紫は黙ってしまった。

 

「・・・。」

 

俺も黙ると紫が口を開く。

 

「・・・天馬、本当に貴方には酷いことをしたと思ってるわ、許してちょうだい。」

「あ、あぁ・・・。」

 

その瞬間あのことがフラッシュバックしてくる。

 

「うぐ・・・!」

「・・・天馬?」

「大丈夫か天馬?」

 

なるほど、俺はあの事を思い出して吐いたのか。

 

「紫、その話はやめよう、その話は解決したんだ。」

「ええ、そうね・・・。」

 

それ以上あの事を話されるとまた吐いてしまいそうだ。

 

そして、黙ったまま時が過ぎる。

 

「何やってんのよ三人共?」

 

縁側で静かにしていると霊夢が話しかけてきた。

 

「宴会だよ、宴会。」

「辛気くさいわね、こっちに来なさいよ。」

 

そういわれて霊夢に手を引かれる。

 

「お・・・おい。」

「天馬連れてきたわよ~。」

 

アリスや魔理沙が集まっている所に連れてかれる。

連れてかれた後魔理沙に話しかけられる。

 

「お、来たな、なんか創造してくれよ」

「なんだよなんかって・・・。」

「酒とか食いもんとか。」

「やだよ、面倒くさい。」

「何だよ~」

 

隣にいる吸血鬼の視線がハンパない。

 

「ねぇ、天馬・・・。」

 

適当に会話しているとアリスが話しかけてきた。

 

「ん?どうした?」

「あの人達・・・ずっと天馬の事見てるわよ。」

 

あの人達とは吸血鬼のことだろう、痛いほど見てくるのは分かっていたが無視していた。

 

「・・・放っとけ。」

「・・・知り合いじゃないの?」

「知らんな。」

「そう?」

 

知らないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会も無事に終わり霊夢の後片づけを見ながら縁側で酒を飲む。

 

「ったく片づけくらいして欲しいわ。」

「頑張れ~。」

「手伝いなさいよ!」

「やだ~。」

 

面倒くさいので却下。

俺は未だに両手に華状態で縁側にいる。

魔理沙アリス俺紫藍橙 という形だ。

 

「はぁ~、なんだか今日は疲れたな、アリス~膝枕してよ。」

「え?」

 

アリスの膝に頭を置く。

すると紫が冷やかしてくる。

 

「あらあらお熱いわね、二人共。」

「おう、ラブラブだ。」

 

俺の言葉を聞いたアリスは顔を真っ赤にしながら、頭をどかしてくる。

 

「何言ってんのよ!」

「うお、酷いな。」

 

頭を上げられ膝枕が終わってしまった。

 

「天馬、私の膝なら空いてるわよ?」

「ん?じゃぁ遠慮なく。」

 

次は紫の膝に頭を乗せる、おぉ、下から見ると実に壮観だ。

今にも大きい小玉スイカが顔に触れそうだ。

 

「それ♪」

「うわ。」

 

いきなり紫が俺の頭を掴んで前かがみをしてきた。

小玉スイカが俺の口を塞いできて息ができない。

 

「~~~~!」

 

息ができないので足掻く。

 

「・・・なにやってんだ?」

 

魔理沙、なにやってんだじゃない、助けてくれ。

 

「ぶはぁ~!!死ぬかと思った。」

「あら、天馬は死なないじゃない。」

 

紫が笑う。

 

「おい藍、この主どうにかしろ。」

「無理だな。」

 

無理ならしょうがない。

そんな下らないことをしていると、目の前に吸血鬼とその従者が現れる。

 

「・・・何だよ?」

「・・・貴方、フランに何をしたの?あれ以来フランは落ち着いて外に出れるようになったわ。」

「さぁね?おまえ達が気が触れているって思ってるだけで実はそうでなかっただけじゃない?」

「そう・・・、フランが貴方に会いたがってるわよ。」

「そっすか、それで?」

「それだけよ。」

 

それだけ言うと吸血鬼と従者は帰っていった。

フランに今度会いに行こうかな。

 

「んじゃ、俺はもう帰るわ、アリスはどうする?」

「え?あと少しいようかな・・・。」

「そうか、じゃぁ紫、じゃぁな。」

「ええ、さようなら天馬。」

 

スキマを開こうとすると、魔理沙が声をかけてくる。

 

「あ、天馬今度魔法教えてな。」

「しらんがな、じゃぁ藍、またな。」

 

スキマに入る瞬間に「なんだとー!」と聞こえたが気にしない。

 

香霖堂に戻りそのまま入らず、すぐそばの茂みに入る。

 

「ウゲエエ・・・。」

 

あれ以上居たら吐いていたな。

一応そんな素振りは見せないようにしたが・・・。

わかったことがあった。

紫との会話はできるが触れる、目を会わせると必ずあの記憶がフラッシュバックしてしまう。

俺はこんなにも脆かったのだろうか。

嫌悪感は無い筈なのだが体が反応してしまう。

 

「・・・永淋に精神安定剤でももらいに行くか。」

 

全てを吐き終えた後、独り言をいいながら香霖堂に入る。

 

「まだ香霖は帰ってないか。」

 

何故か香霖が朝からいない、まぁ人のプライベートはあまり詮索しないのが俺なので放っておこう。

俺専用の椅子に座る。

 

「はぁ・・・どうなっちまったんだ俺は・・・。」

 

これから紫に会うのは控えよう、そうしないと俺が俺でなくなるような、何かが駄目になるような気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日昼頃。

 

あの後すぐに就寝して、起きたばっかだ。

香霖は何事もなかったかのように椅子に座って本を読んでいた。

 

「おう香霖、昨日どこいってたんだ?」

「ん?野暮用だよ。」

「ふーん。」

 

怪しい奴だな、何か隠してんじゃないのか?

 

「調べようとしたら僕は君を幻滅するよ。」

「なんでバレたし。」

 

ふーむ・・・。

まぁ香霖のやることはいつも謎だからいいか。

 

さぁて、暇になったな。香霖の事を調べようとも思ったがバレてたしなぁ。

創造の修行でもしておくかな。

 

 

 

 

「だからってなんで私の家でやるかなぁ。」

 

現在アリスの家で創造の修行である。

まぁ修行といっても想像力を上げるだけだけど。

 

「いや、なんかアリスの家落ちくんだもん。」

 

昨日置いといたケーキを頬張る。

うん、うまい。甘さ控えめで飲み物は午○の紅茶のストレートティー。

最高の組み合わせだ。

 

「そういえばいつ魔法教えてくれるんだ?」

 

ちゃっかり魔理沙もいた、なんだかんだ昨日打ち解けて家に遊びにきたらしい。

 

「なんで俺が教えねえといけないのよ。」

「教えてくれる魔法は派手で火力があるといいな。」

「話を聞けよ。」

 

自分で考えて欲しいものである。

 

「ちなみに私が使う魔法は光と熱だ。」

「しらんがな、光を圧縮して打ち出せばいいじゃないか。」

「その圧縮ができないんだよ~。」

 

まったくもってしらんがな。

 

「アリスはどうだ?あれからなんか魔法に関して思いついたことはあるか?」

「んー・・・人形を操るくらいしか・・・基礎魔法はできるんだけど・・・。」

 

なるほど基礎魔法が完璧であれば使い方次第だな。

 

「人形操れるんなら人形と一緒に戦ったらどうだ?人形を散らばせて弾幕を張るとか。」

「いいわねそれ。」

 

よっし、俺の助言はこれくらいでいいだろう。

俺は創造の修行を続けよう。

 

「さっきから天馬は何をしているんだ?手から物だしたり消したり。」

「これか?チタンだよ、今はあれだ。絶対に避けれなくて命中率は95%の確率で当たり、辺りを焼け野原にする程度の兵器を想像している。」

 

出したり消したりしているチタンはただの遊び道具だ。

 

「なんか私たちの魔法より質が悪そうだな。」

「まぁな、たぶん使うことはないだろうが一応作っておこうとおもってな。」

 

いつ何が起こるかわからない、それが幻想郷。

自分が格上に当たることはまずないだろうが防衛としてだな。

よしよし、想像力が冴えてきたぞ。

 

「魔理沙、俺の作る兵器みてみたいか?」

「見れるんなら見せて欲しいな、魔法の参考になりそうだ。」

「そうか、じゃぁ一旦外にいこうじゃないか。」

「私も行くわ。」

 

アリスも来るのか、まぁいいけど。

 

 

 

 

俺たちはアリスの家を出て俺の考えたサイキョーヘイキを創造する。

すると目の前には巨大な鉄の塊が出てきた、なんだか宇宙を巡回してそうな面だ。

 

「よっし、これを持ち上げてっと。」

 

両腕で鉄の固まりを持ち上げる。

 

「相変わらず天馬の筋力には吃驚するな。」

「あんなに細いのになんであんなのがもてるのかしら?」

 

外野がうるさい。

 

「これを思いっきり空に投げつける。」

 

アーム強化したため鉄の塊が真上に飛んでいく。

 

「よし、魔理沙お前が狙うとしたらどこらへんにする。」

「私か?そうだなぁアソコの小さい山かな。」

 

ふむ、少し近いがまぁ大丈夫だろう、実験だから物も小さくしたしな。

 

「んじゃぁ狙いはあそこの山の少し大きい木だな。」

「それでいいぜ。」

 

ここから1kmと言ったところか、とりあえず投げ飛ばした鉄の塊に信号をおくって・・・っと。

 

「アリス、魔理沙、しっかり捕まった方がいいぞ。」

「「え?」」

 

すると上から目にも見えないほどの早さで鉄の塊が落ちた。

落ちた瞬間大きな爆発音がして爆発した辺りの木がなぎ倒されていく。

 

「くるぞ!!」

「うわぁ!」

「きゃぁ!」

 

こちらに巨大な暴風が襲いかかってくる。

 

魔理沙は何とか木に捕まったらしいがアリスは4mほどとんでった。

そして爆発した所をみてみると。

 

 

 

山が半分ほどなくなっていた。

 

 

 

「あーらら、やっちまったな。」

「やっちまったじゃないだろ!!」

 

魔理沙が木に捕まりながら叫んでくる。

アリスは、とりあえずI Can Fly したので捕まえといた。

 

 

 

「いやーまさかあんな風になるとはおもわなんだ。」

 

アリスの家に戻りシュークリームを頬張る。中身はカスタード一択。

生クリームは無理だけどカスタードは大好きな俺。

 

「なんの魔法の勉強にもならなかったぜ。」

「そうね。」

 

魔理沙もシュークリームを食べて口にカスタードがついている。

アリスは普通。

 

「まぁいいか、やっぱ俺には科学は合わねぇんだな。」

 

やはり魔法が一番・・・?ん?科学だと?

すっかり銃の事を忘れていた、便利であるのに。

 

「ん~・・・銃か魔法か・・・どちらにしようかな。」

「銃ってなんだ?」

 

俺のつぶやいた言葉に魔理沙が反応する。

 

「銃か?これだよ。」

 

とりあえずマグナム銃を創造して渡す。

 

「ん~?なんだ~これ?」

 

無造作にいじくる魔理沙。

 

「あ、おい!それ弾はいってr。」

 

魔理沙に注意した瞬間 バーン!! と鳴った

 

「あは・・・ははは。」

 

床にパサリと魔理沙の帽子が落ち、みてみると風穴が空いていた。

魔理沙は椅子から転げ落ちて腰が抜けている。

 

 

 

 

「・・・銃はやめとこ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




執筆時間が午後8時から午前2時合計6時間・・・、でも楽しいです


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天馬、霖之助と共に外界に行く。

外の世界に行きたいそうです。


香霖堂にて、最新のあれが流れ込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふあぁ~あ・・・よく寝てないや。」

 

夜8時に就寝して朝10時に起床した。

香霖堂二階から一階に降りる、すると香霖はいつものように本を読まずに何かの箱を眺めている。

 

「なにやってんだ香霖?」

「ん?やぁお早う。」

「おう。」

 

白い箱をずーっと眺めてる香霖。

 

「なんだなんだ?今度は何のゴミを拾ってきた。」

「ゴミじゃないよ。」

 

香霖の隣に行き、白い箱がなんなのかをみる。

 

「お?パソコンじゃねぇか。」

「知っているのかい?」

 

知っているも何も前の世界では作ったりしてましたし。

 

「知ってるっちゃぁ知ってるが、このパソコンどこで拾った?」

「無縁塚だよ。」

 

あぁ・・・あの外の物がよく流れ着いている・・・。

 

「実はこのパソコンという物をイジっているんだがうんともすんとも言わなくてね。」

「そりゃそうだろ、電源コード刺さってないし、そもそも電気がないからな。」

「ふむ・・・じゃぁこれは君に任せようじゃないか。」

 

そうくるか、まぁ良いだろう、手伝ってやるとしよう。

 

「じゃぁまず電気だな、そのあとにコードとマウスとキーボード、モニターも必要だな。」

「僕のしらない言葉がどんどん出てくるね。」

「まぁな。」

 

電気・・・電気、電気は発電機でいいか。

 

「よし香霖、電気を作るために一旦外に出るぞ。」

「わかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは発電機だな。」

 

コンセントが挿せる発電機を創造してそれ専用の混合油を入れる。

 

「よっし、あとはこれを思いっきり回すと。」

 

発電機に付いている取ってを引くとワイヤーが延びてたちまちエンジンが付く。

 

「これで電気とやらが作れるのかい?」

「多分な。」

 

あとは延長コードを差してっと・・・。

 

「よし、次はコレをあれに指すだけだ、中にはいるぞ。

「ふむ・・・。」

 

 

香霖堂に入りパソコン本体に指す。するとパソコンのスタンバイ状態の光が点く。

 

「あとはモニターとマウスとキーボードを出してっと。」

 

ほいほいほいっと創造していくと香霖に声をかけられる。

 

「天馬、君は外の世界に詳しいね、もしかして外の時代の事を知ってるんじゃないか?」

「ん?いや、一回だけ行ったことがあるだけだ。」

 

嘘だがな、前の世界から転生してきました、なんて言えないしな。

 

パソコンにモニターをマウス、必要な物を差し終える。

そして電源ボタンを押すと、ウィィィィン、っと起動する。

 

「よしよし、起動はするみたいだな。」

 

起動できたことに少し驚いて、モニターにマザーボードのアレが映し出される。

 

「このパソコンという物は何をするためにあるんだい?」

 

椅子に座りながらモニターを眺めていると、香霖が椅子を持ってきて横に座る。

 

「基本は計算機だ、後は言葉では言えないくらいだな。」

「なるほど・・・外は随分と発達しているね・・・。」

 

まぁ幻想郷は江戸時代と明治時代が混じったような感じだしな。

 

「さてさて、スペックを見てみようじゃないか、今だとPentium4くらいか?」

 

現代でいう1999年位だと思うが・・・、しかしこのパソコンの外見、なんだか近代的だな。

 

「まじか・・・。」

 

core i 10だと・・・。

随分と時間が立っているな、なんてこった。それとも外の世界が前の世界より進んでいるのか?

 

「どうしたんだい?」

 

時間の流れに驚いて絶句した俺を見て香霖は心配してくる。

 

「いや、外は随分進んでいるようだ、良いひろいものをしたな香霖。」

「そうかいそうかい。」

 

うれしいのか香霖。

いつもよりニコニコとしている。

 

そういえば幻想郷に入ってからあれ以来外の世界には行っていない、なんだかオラワクワクしてきたぞ。

 

「香霖は外の世界に行ってみたいか?」

 

パソコンに興味津々な香霖に聞いてみる。

 

「え?行ってみたいけれど・・・。」

「そうか、じゃぁ行くか?」

 

一人で行くのはなんか寂しいからな。香霖も行くなら行ってみるか。

 

「外の世界に行ってみたいとは思ってたけど・・・行けるのかい?。」

「俺の能力で行けるはずだ、そうと決まれば服装だな。」

 

未だに幻想郷では着物がメインである。

幻想郷と外の世界は季節が一緒のはずだから・・・今は春ころか。

 

俺はシンプルでいいか、黒い長いジーンズに、赤いTシャツ、そしてパーカーがついている黒い上着に俺の着物と一緒で横に孫子の兵法っと・・・。赤い文字が中ニ病でいいね。

 

香霖は・・・。

 

「香霖はわかんないから俺が創造した服を適当に着ろ。」

「僕のセンスを試しているのかい。」

 

そういうわけではないが・・・。

 

創造した服をホイホイとだして、香霖が選ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20分後、香霖の服が決まったようだ。

 

「ってスーツかよ。」

 

少しオシャンティーなスーツを着ている香霖、香霖は俺より身長が高いので似合うっちゃぁ似合うが・・・。

 

「一式だからね、何かおかしいかい?」

 

似合うんだがなぁ・・・銀髪が・・・。

 

「香霖、コレを着けろ。」

 

スーツに似合うように帽子を創造する、そして香霖に投げる。

 

「おっと。」

 

投げた帽子をキャッチして着ける香霖、うん我ながらデザイナーのセンスがあるな。

 

「あ、あとめがね貸してみろ。」

「めがねかい?」

 

香霖に茶色い縁のメガネを受け取り同じ度数の黒い縁に横の耳かけの所に一本赤い線が入ったメガネを創造して手渡す。

 

「その茶縁メガネは外には合わないと思うからそれを着けとけ。」

「君の能力は本当に便利だね。」

 

メガネを着ける香霖、俺の服と少し似ている。

 

「よし、準備おっけーだな。」

 

服よし、髪型よし、あとは・・・。」

 

「おぉ忘れていた、財布と身分証明書だ。」

「身分証明書?」

「おう、あそこはそれがないと面倒くさいことになるからな。」

 

俺はとりあえず・・・学生証でも持ってるか。

香霖は運転免許証でいいか。

 

「ほいよ、なくすなよ。」

「ふむ・・・これが身分証明書か・・・。」

 

俺の渡した運転免許書をまじまじと見つめる香霖。

 

「よし、金はとりあえず二万円で良いか。」

 

準備はOKだ。

 

「じゃぁいくぞ香霖。」

「了解。」

 

香霖をスキマで飲み込み、場所を指定する。

うーんどこが良いかな・・・、とりあえず適当でいいか。

 

「待ちなさい。」

 

スキマに指定した場所を開こうとすると後ろから声をかけられる。

 

「ん?紫か。」

 

振り向いた先には紫がいた。

 

「何をしているのかしら天馬?」

「暇だから外の世界にちょこっと遊びにいくだけだよ。」

「話は聞いていたから大体は分かるわ。」

「じゃぁいいじゃないか。」

 

すると紫がため息を吐く。

 

「天馬、何をいっても無駄だからこれだけは忠告しておくわ・・・この世界の事は他言無用よ?」

「おう、はたから言う気なんてないから心配するな、じゃぁ行ってくるな。」

 

俺の言葉を聞いた紫はスキマから消えた。

 

「本当に大丈夫なのかい?」

「大丈夫大丈夫。」

 

心配している香霖を連れてスキマを開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、見慣れた風景とすいなれた排気ガスの空気があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




短いですが・・・とりあえず続きます


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天馬、霖之助と共に外界で遊ぶこと。

適当に開いたら長野県にきてしまったようです。


ビルの路地裏にて、天馬と霖之助は降り立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ふむ、懐かしいな。」

 

高層ビルの群、現代特有の空気。

 

「空気が吸いにくいね。」

 

俺の隣にいるのは香霖こと霖之助はこの空気が苦手なようだ。

 

「ま、そのうち慣れるさ・・・さて、どこに行こうか。」

 

路地裏へ抜けて、大通りにでる、辺りは有名な店、コンビニや何でもそろっている雑貨店など。あと人の数がハンパない。

 

「天馬、あの道を走っている機械はなんだい?」

 

車のことだろう、香霖にとってはすべて初めて見る物だ。

 

「あれは自動車だ、外界の人間の移動手段だな。」

「へぇ・・・。」

 

辺りをキョロキョロする香霖。

 

「ま、適当に行くか。」

 

 

適当に道なりに進むと大きなショッピングモールを見つけたので入るとする。

一階は食料店か、興味ないな。上に上がるとしよう。

 

「この動く階段は少し怖いね・・・。」

 

エスカレーターの前で立ち往生する香霖、この先に行かなければならないと言うのに。

 

「はいはい、さっさと進む。」

「うわ、押さないでくれよ。」

 

ぐいぐいっと香霖を押し、無理矢理エスカレーターに香霖を乗せる。

 

「いろんな物があるね、霊夢達が喜びそうだ。」

 

商品を物色する香霖。

おもちゃ 衣料品 ゲーム その他etc

時代は進歩してもな~んにも変わってないな。

 

「香霖、ここはダメだ。」

「え?なぜだい?」

「なんか物足りない。」

 

何かが違う、この世界の進歩を見たい。

疑問符を浮かべる香霖を連れ、違う店にいくとする。

 

何かないか何かないか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終的に着いたのはゲーセンであった。

 

「非常に騒がしいね、耳が壊れそうだ。」

 

いろんなゲーム機の音が鳴り響いている。

あぁ、心地良い。ゲーム特有の音や人が操作するときのガチャ音。

 

「最近のはタッチとスティック操作ができるゲームも増えているんだな。」

 

新感覚だな、だけど少々メンドクサいな。

音ゲーなんかも新しいな、人間の進歩ってすごい。

 

「・・・僕は君が何を言っているのかさっぱり分からないよ。」

 

目をキラキラさせている俺に、香霖は呆れる。

 

「ふむ・・・データ読みとりはカードじゃなくて指紋やID系か・・・。」

 

すごいな本当に、一生遊べそうだ。

 

「僕は少し休憩しているよ、天馬は自由にするといい。」

 

そう言うと香霖はすぐそばにあったベンチに座り込む。

 

「休憩するのが早いな、まぁいいだろう。適当に回ってくるよ。」

 

香霖を置いて少しやりやすそうなゲームでも見るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・初心者お断りの雰囲気が多いゲームばかりだな。」

 

そこらへんは元いた世界とはなんも変わらない。

基本上級者ばかりだった、初心者はやりにくいだろうに。

レースゲームなんかは初心者でもオーケーな感じだったな、だけど中高生が多すぎる。

あとオンラインネームが可愛らしいので見てみるとおっさんだった、あれには吹いた。

 

「うーん新感覚!って思うのはあるが面白い!って言うのはないな。」

 

まぁ自分基本FPSかアクションRPGしかしないしな。

でも自分はFPSはマウス操作が好きだし・・・アクションRPGなんかは一人でやるのが好きだし・・・。

某死にゲーで有名なあのソウルを集めるゲームなんかはめちゃくちゃハマったな。

 

「ま、ないならしょうがないな、香霖の所に戻るか。」

 

香霖と別れたベンチに行くとしよう。

 

 

------------2分後---------------

 

 

ベンチに戻ると誰も座っていなかった。

 

「・・・いないじゃねぇか。」

 

なにやってんだよ香霖・・・。

あいつどこに行ったんだ?能力で探せるが使ったらまずいことになりそうだしなぁ・・・。

現実世界で俺TUEEEするのもいいがやっぱりここはこの世界に合わせておこう。

あぁ、香霖はいずこへ。

 

香霖を探しにうろちょろうろちょろしていると端っこらへんでスーツ姿で銀髪の香霖を発見。

ん?香霖の周りがなんか不良っぽいのばっかだぞ?

 

周りのことを気にせず香霖に近づいて話しかける。

 

「おい香霖探したぞ、なにやってんだ?」

 

俺の声に気づいた香霖の顔は困り果てていた。

 

「天馬かい、丁度良かった、この人達がこの女の子にしつこくちょっかい掛けてたから注意したら囲まれてしまったよ。」

「あ~?女の子ぉ?」

 

確かに香霖の隣には俺より少し小さい位の緑色の髪をした女子高生がいた。

・・・この世界は髪を染めていても学校に通えるのか・・・。

ん?緑・・・?

 

「どれどれ?」

「あ・・・。」

 

ズイっと乗りだし俯いている女の子の顎に手を当て、顔を上げる。

ワオ、東風谷早苗さんではないじゃないですか。なにやってんすか。

・・・俺に怯えているな。

手を離す。

 

「あのさぁ、さっきからなんなの?お前ら邪魔だから消えてくんない?」

 

俺と香霖と早苗を囲んでいる少年達の中のリーダー格に言われる。

身長たけぇな、170後半くらいか?

 

「俺の知り合いだ、悪いが帰らせてもらうぞ。」

「あ・・・。」

 

早苗の手を握り香霖と目を合わせて店から出ようとする。

すると俺を囲んでいる少年達をかき分けようとすると一向に退いてくれない。てか押し退けられる。

 

「そんな見え見えの嘘やめろよおチビちゃん、正義気取ってんのか?」

 

おチビちゃんと言われてしまった、俺の身長は少し増えてやっと170になったというのに・・・。

 

「退いてくれないか?香水臭くて頭が痛くなる。」

「・・・なんだとこのガキ、喧嘩売ってんのか?」

「売ってないよ、お前らに売っても見返りなさそうだし。」

「このガキャァ!調子こくんじゃねぇぞ!!」

「うお・・・。」

「危ない!!」

 

俺をドンと押して殴りかかってくるリーダー格。

そして俺に拳を当てようとしてくるが片手で受け止める。

殴られる寸前に、手を握っていた早苗を香霖に渡す。

 

「あ・・・?」

 

捕まれたことに吃驚しているリーダー。

 

「さて、俺と筋力勝負しようじゃないか、さんはい。」

「イデ!イデデデェ!!この野郎!」

 

リーダーは掴まれていない腕で反撃しようとするが、その腕も掴まえる。

そして力を少し加える。

 

「イッデェエエ!おいお前ら!助けてくれ!!」

「お、おう!」

「この野郎!!」

「離しやがれ!!」

 

仲間に助けを求め、リーダーを助けようと蹴りや殴りをかましてくるが痛くもないのでよけずにリーダーの腕をずっとつかんでいる。

 

「おい!!なにやってんだよ!!早くこいつを引き離してくれよ!」

「そんなこと言ってもこいつ殴っても蹴っても動じねぇんだよ!!」

 

俺に腕を掴まれているリーダーは膝をついて助けを懇願している。

 

「さて?俺らを帰らさせてもらってもいいか?」

 

腕を掴んでいるリーダーに聞く。

 

「わかった!分かったから!俺が悪かった!!」

 

どうやら良いようなので離すとしよう。

腕を離すとリーダーは完全にうずくまって腕を押さえている。

 

「よし、じゃぁ行こうか香霖。」

「あぁ、ほら君も行くよ?」

「え・・・?あ、はい。」

 

放心している早苗に声を掛ける香霖。

次こそ怯えている不良共をかき分けて帰らせていただく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店を出て、近くの公園のベンチに座り、早苗と香霖で話す。

 

「あの・・・助けていただいてありがとうございました。」

 

自販機で買ったジュースを飲んでいると早苗に声を掛けられた。

 

「ん?あぁ、礼には及ばんよ、ほらっ飲むか?」

「ありがとうございます。」

「ありがとう。」

 

香霖と早苗の分も買ってあったオレンジジュースとお茶を二人に渡す。

 

「てかあそこで何やってたの?女の子一人であそこにいたら危ないっしょ?」

 

この時間にゲーセンなんてものは不良の溜まり場になりやすい。

 

「ちょっとした事情がありまして・・・。」

 

ふむ・・・早苗がここにいるってことは諏訪子や加奈子もいるってことだ。

信仰集めかな?

 

「まぁ次からは気をつけた方がいいよ、それと香霖。」

「なんだい?」

「お前トラブルに巻き込まれたら俺を呼べよ、結構探したんだからな。」

「あぁ、済まない。」

 

笑いながら謝罪してくる香霖、いや反省しろよ・・・。

 

「そういえば君の名前はなんていうんだい?」

 

香霖が早苗に名前を聞く。

 

「あ、申し遅れました。東風谷早苗っていいます。」

 

俺はもうしっているのでスルー。

 

「へぇ、珍しい名前だね。僕は森近霖之助って言うんだ。」

「俺は小鳥遊天馬だ、天馬でいい。」

「霖之助さんも珍しいじゃないですか。」

 

ハハハと笑う霖之助と早苗。

俺は煙草でも吸おうとしよう、ポケットから煙草を取り出し火をつけようとすると早苗に怒られた。

 

「駄目ですよ!未成年は吸っちゃいけないんですよ!」

「あぁ大丈夫、俺20歳過ぎてるし。」

「えっ!?」

 

慌てて早苗が謝罪をしてくる。

 

「すいません・・・天馬さん随分お若い様に見えたんで・・・。」

 

まぁあれから全然成長してないしな・・・顔は若いから良いけど。

 

「いいよいいよ別に、気にしてないから。」

 

シュボっと煙草に火をつけ吸う。

 

「はぁ~今日は疲れたな香霖。」

「そうだね、でもいろいろと勉強になったしいいと思うよ。」

 

そうかそうか香霖がそういうならそれでいいか。

すると早苗から声を掛けられた。

 

「お二人は兄弟なんですか?随分仲がいいようですけど。」

「うんにゃ、違うよ、だけど家族みたいなものだよな?香霖。」

「そうだねぇ。」

 

そんなことを話していると午後五時の鐘がなった。

 

「うお、もう五時か。そろそろ帰るか香霖?」

「そうだね。」

「もう帰られるんですか?」

 

早苗は少し寂しそうに言ってくる。

 

「あぁ、早苗ももう帰りな。」

「そうすることにしますね。」

 

重い腰を上げ、スキマを開く。

その瞬間早苗は驚愕する。

 

「えっ?妖怪!?」

「ちょ、天馬なにやってるんだい!?」

「早苗、諏訪子に俺は幻想郷にいるって伝えといてくれ。俺の名前を出せば諏訪子も分かるだろうから、さぁ帰るぞ香霖。」

「あ、あぁ・・・。」

 

香霖をスキマの中に引き込む。

するとまた早苗が驚いている。

 

「な、なんで諏訪子様の名前を知っているんですか!?子

「知り合いだからだよ、じゃぁな早苗。」

「ちょっとまっt」

 

早苗の制止を振り切りスキマを閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ねむいですうううう

間違えて行き先を東京にしていました。変更しました。


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天馬、魔法使い二人に・・・。

橙のフィギュア買いました、これで八雲家が完成。


香霖堂にて、天馬は試行錯誤する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーんやはり自動装填はしてくれないか。」

 

外界から帰ってきて三日ほど経つ、帰ってきた時には紫にコッピドク怒られてしまった。

怒られた原因は外界の者に手を出すなということだったが、不可抗力なのでしょうがない。

そして帰ってきた俺はゲーセンに合った銃のゲームを真似て神銃妖銃を作ろうとしている。

 

「弾に妖力を詰めることはできるんだけど何故か妖力自体装填すると発射できないんだなぁ。」

 

妖力だけを込めたマグナムの引き金を引いても カチッ としか鳴らない。

 

「自動で装填してくれないとマジだりぃよ。」

 

いちいちリロードするなんてやってられない、某悪魔の2丁拳銃ゲームはリロードしているが人間には到底不可能なリロードの仕方するしな、投げてそれをうまく入れるなんてできるかッ。

 

「マグナムっつうのがいけねぇのかなぁ~。」

 

種類別に作るほうがいいのかもしれないな、用途に合わせて。

近接だったらハンドショットガン、遠距離だったらスナイパー、中距離だったら普通でいいか。

マシンガン?なにを言っている、単発撃ちだから面白いじゃないか。

 

「ここは格好良く2丁拳銃にしようかな~妖銃と神銃で。」

 

そうとなるとマグナム二丁はさすがにきついな。

考えれば考えるほど駄目になってくる。

 

「あぁ~!!もう駄目だ!やめだやめ!やってられるか!!」

 

手に持っていた妖銃のマグナムを放り投げる。

 

「じゃぁこれ商品として売って良いかい?」

 

それを拾い上げたのは香霖だった。

 

「勝手に持っていけ、二束三文にもならんけどな。」

 

そもそも買ったとしてもそんなの撃てる人間がいるわけがない、反動は強いわ装填は面倒くさい。妖精が撃ったら即自滅するだろうな。ピチューン。

 

「ゴミも拾えば宝ってね。」

 

いやゴミじゃねぇし、むしろ宝だし、ゴミだけど宝だし。

 

「あぁ~なんか画期的な物を発明したいな~。」

 

煙草を取り出し火をつける。

 

「君がしてるのは発明じゃなくて創造だけどね。」

「創造と発明は似てるからいいの、発明家は創造できればなんでもできるんだから。」

 

全く持ってその通りである。

そんなことをしていると外から俺を呼ぶ声が聞こえる。

 

「ん?誰か俺を呼んだか?」

「確かに、僕も聞こえたよ。」

 

香霖も聞こえたのなら聞き間違えではなさそうだ。

 

「誰だー?」

 

香霖堂のドアを開けると金髪幼女が立っていた。えーと誰だっけ。

 

「・・・おうルーミア、久しぶりだな。」

「なんだその間、忘れていたのかー?」

「そんなことはないぞ。」

 

香霖堂のドアを閉めて外に出る。

 

「そういえばあれから一ヶ月だな、我慢できなくなったか?」

 

確かに一ヶ月に一回だけといったが我慢できなければという筈だ。

 

「今にも人間を襲いそうなところを我慢してるよ。」

「そうか、まぁいいだろう約束だ、食え。」

 

適当に人間を創造してボトンっと落とす。

 

「・・・。」

「どうした?食わんのか?」

 

落とした魂のない人間を見つめるルーミア。

 

「天馬のが食べたいな~。」

「何故だし、そこにあるじゃないか丸々一体。」

「天馬のがうまそうなんだよ~。」

 

どういうこっちゃ。

 

「別にいいが腕しかあげれんぞ?」

「それでいいよ。」

「不思議なやっちゃなぁ。」

 

片腕をブチッと切りルーミアに渡す。

 

「やっぱ今まで食べてきた人間で天馬が一番うまいなぁ。」

 

ガツガツと指から食べるルーミア。正直キモイ。

ルーミアがキモイんじゃなくて、俺の腕がじょじょになくなっていくのが。

 

「わからんが俺はそんなにうまいのか?」

「うん、ジューシーっていうかなんというか、うまいよ。」

 

なんじゃそりゃ。

 

「よ~天馬~魔法教えてくれってうわぁ!」

「どうしたのよ魔理沙・・・キャァ!!」

「ん?」

「んあ?」

 

魔法の森方面から声が聞こえたので振り向いてみるとアリスと魔理沙だった。

なぜ叫んでいるんだろう?ルーミアも不思議がっている。

 

「て・・・天馬・・・腕が・・・。」

「え?」

 

あっやべ、切ったまんまだ、おかげで血だらけだ。

アリスは魔理沙に掴まって見ないようにしている。カワイイ。

 

「あぁすまんすまん腕切ったまんまだった。」

 

ズルリと腕を生やして、血だらけになった服を創造で新品にする。

 

「腕切ったって・・・なんで?」

「こいつにあげた。」

 

ムシャムシャと俺の腕を食っているルーミアに指をさす。

 

「こいつじゃない、ルーミアだー。」

 

ゴクンっと最後に俺の腕の肉片を食べ終えたルーミア。

 

「じゃぁ天馬またくるぞー。」

「おう、じゃぁな。」

 

ふわふわと飛んでいくルーミアを見送る。

 

「アリス、魔理沙、入るか?」

 

香霖堂のドアを開ける。

 

「お、おう。お邪魔するぜ。」

「お邪魔します・・・。」

「はいよ~。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリスと魔理沙に魔法を教える。

 

「んで魔法っていうのはだな~要するに魔力を自分の力に変えるように想像するのが大事だ。」

「ふむふむ。」

「へぇ~。」

 

魔理沙とアリスを椅子に座らせて魔法の勉強だ。

 

「俺の場合は想像して創造する、俺のやり方だと魔力が結構消費されるがそれなりに威力は出るぞ。」

「想像してできなかったらどうするんだ?」

 

魔理沙が手を上げ質問してくる。

 

「それはどうやったら出るか想像力次第だな。例えば光なんかは光だけを想像すればいい、他の物が混じったら出なくなるぞ。」

「さっぱりわかんないぜ。」

 

俺の教え方が悪いのかそれとも魔法のやり方がそもそも違うのか伝わらない。

 

「あれだ、魔理沙だったら光をなにに例えている?」

「そうだなぁ~私だったら星から出る光だな。」

「だろ?想像するにしてもなにかしら混じっているもんだ、純粋な光だけを想像するんだ。」

「なるほど~。」

「勉強になるわね。」

 

煙草を吸いながら教えている俺、八卦路を構えながら目をつむっている魔理沙、俺の話を良く聞いているアリス。

 

「おい魔理沙、下手して魔法でたら危ないからそれしまっとけ。」

「わるいわるい、これ持ってるとなんか上手くいくんだよ。」

 

ミニ八卦路をしまいながら笑う魔理沙、笑顔がまぶしいね。

 

「そろそろ休憩するかぁ。」

「待ってました~。」

 

休憩するために紅茶とアップルパイを創造で出す。

 

「魔理沙まさかこのために来たんじゃねぇだろうな?」

「そんなことはないぜ~。」

「頂きまーす。」

 

アップルパイを食べる二人、俺は紅茶のみ頂く。

 

「天馬の出す菓子は本当に美味いなー。」

 

サクサクと音をたてながら食べる魔理沙。

 

「店でも出したらどう?」

 

アリスが提案してくる。

 

「ふむ・・・材料タダ手間無し、早い美味い安いができるが・・・趣味になるかな?」

 

正直作らなければつまらないだろう。

 

「残念ねぇ。こんなに美味しいのに。」

「ありがとうよ。」

 

アリスの頭を撫でる、アリスは目を瞑りながら撫でられている。猫のようでカワイイ。

 

「随分仲良しだな、いっそ付き合ったらどうだ?」

「ちょ・・・何言ってんのよ魔理沙!」

 

魔理沙が俺たちを見てちゃかしてアリスが何故か焦っている。

 

「いやいや、俺には勿体ねぇよ。そもそもアリスは俺のこと好きじゃないだろうし。」

「え?」

「え?」

「ん?」

 

二人が同時に疑問符を投げたので俺も投げる。

 

「鈍感だなー天馬は~。」

「何がだ?」

「はぁ・・・。」

「何をため息ついてんだアリス?」

 

なんなんだこの二人は?

さっぱり分かんないぜ。

 

「実はわざと分かってないようにしてるんじゃないか??」

「だから何がだよ?」

「アリスが天馬のこと好きっていうこと。」

「あ・・・?」

「ちょっと魔理沙!!!」

 

魔理沙は真剣な顔をして話す、アリスは顔を真っ赤にしている。

ちょっとまて、アリスが俺のことを好きだと・・・?

 

「おいおい魔理沙冗談がすぎるぜ~。」

「冗談なんかじゃないぞ。」

「・・・。」

 

魔理沙に笑って返すとアップルパイを食い終えた魔理沙が真面目な話だと目で語っている。

アリスは顔を真っ赤にして俯いている。

 

「・・・まじで?」

「あぁ、まじだ。私が言わなければ天馬気づいていなかっただろ?」

「・・・。」

 

あまりに突然のことで黙ってしまった俺、どうすればいいんだろうこういうときは。

少し沈黙していると顔を真っ赤にしながらアリスが叫ぶ。

 

「ま、魔理沙だって天馬のこと好きなんじゃないの!?」

「!?」

「な、何を言ってんだぜアリス!?そんなわけがないだろう!?」

「天馬のこと話すときやけに嬉しそうだし!ずっと天馬のことばっかりじゃない!話す事!」

 

魔理沙も顔を真っ赤にしながらアリスと口論する。

 

「そ・・・それは友達としてだな!」

「友達としてとかじゃないわよ絶対!」

「なんでそんなことアリスが分かるんだよ!!」

「勘よ!!魔理沙だって私が天馬の事好きだって分かるのよ!!」

「勘だ!!」

「お・・・おい二人とも喧嘩h」

「「天馬は黙ってて(ろ)!」」

「・・・はい。」

 

怒られてしまったなんなんだこの二人は、話がおかしい方向に行き過ぎだろ。

 

「大体なんで魔理沙が天馬に言うのよ!」

「アリスが言わないからだろ!!」

「それは魔理沙が天馬の好きだから言わなかっただけよ!」

「よく言うぜ!大事な時に何時も黙るからこっちが言ってあげたのによ!」

「それはこっちの台詞よ!大事な時になると笑って誤魔化してその後何時も悲しい顔する癖に!」

 

アリスと魔理沙が言い合いしてる中俺はそれをただ見ている。

話をまとめてみるとアリスが俺の事を好きで魔理沙も俺の事が好きで・・・いやいやちがうなアリスが俺のことを・・・。

こんがらがってしまった。

 

「大体魔理沙はお節介なのよ!今のままでいいと思ったから黙ってたのに!」

「何だと!?私が気を使ってしてあげたのにお節介なんて言えたもんだ!」

「じゃぁ私が魔理沙が天馬のこと好きっていったら怒るでしょ!それと一緒よ!!」

「わ・・・私は別に天馬の事好きじゃないから別にどうってことないぜ!」

「嘘つかないでよ!前にここに来たときだって天馬がいないからってテンション落ちてた癖に!」

「な・・・あー!うるさいうるさいうるさーい!!」

 

もはや問答できなくなった魔理沙。

 

「ほら!やっぱ天馬の事好きなんじゃない!」

「そうだよ!それがどうした!!」

「えっ。」

「じゃぁなんで私が天馬の事好きって言うのよ!!」

「それは友達としての幸せをだな!!」

「なんでそんな風に思うのよ!!」

「それは・・・!あー!!もうやってらんない!!もう天馬に聞こうぜ!!」

「えっ。」

 

何故俺に聞くんだ。

 

「天馬は私のことが好きか!?それともアリスか!?」

「どうなのよ天馬!!」

 

俺の目を見ながら顔を真っ赤にする魔理沙。

アリスも同じだ。

 

「え・・・あ・・・分からない・・・。」

 

どちらかを選べだなんて俺にはできない、この場合どうすればいいんだ。

 

「・・・それは好きじゃないって事か?」

 

俺の答えに対して魔理沙が問う。

 

「いや、何というか二人とも好きだよ?」

「それは友達としてか?」

「そんな感じ・・・なのかな・・・。」

「・・・そうか。」

「ごめんな二人とも、気持ちはすごく嬉しい。」

 

魔理沙とアリスはため息を吐きながら椅子に座る。

 

「いや・・・いいんだ、絶対アリスより天馬を振り向かせてやるぜ。」

「こっちの台詞よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリスと魔理沙は仲良く二人で帰っていった。

 

「はぁ~・・・どうしてこうなった・・・。」

 

椅子に座りながら煙草を吸う。

 

「君の人生は波瀾万丈だね。」

 

奥の部屋から香霖が出てくる。

 

「うお!いたのかよ。」

「すこし休憩してたら出れなくなっちゃったからね。」

「はぁ・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




小鳥遊さんの覇道恋愛。


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天馬、魔法使い二人に疲れる。

モテモテなんすよ天馬さん。


お昼にて香霖堂で飯を作る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は手軽にインスタント焼きそばだな。」

 

インスタント焼きそばといえばあれ、あれを創造してお湯を入れてソースをとって3分待つ。

 

「香霖はどうする?」

 

本を読んでいる香霖に今日のお昼はどうするかと聞く。

 

「適当でいいよ。」

「あっそ。」

 

香霖は適当にインスタントラーメンでいいか。

 

香霖の分のらーめんにお湯を入れて3分。

この三分が勝負、どこまで腹を空かせて3分を待つか。

煙草を吸うのもいい、適当に本を読むのもいい、俺が取った選択肢それは・・・。

 

「とりあえずスクワットでもしておこう。」

 

湯を入れて1分20秒たった、後1分40秒!!

 

「えっほえっほ!!」

「何をやっているんだい・・・。」

 

香霖を無視してスクワット、今日は以上におなかが空いているのだ。

焼きそばなんかは超大盛りのやつにした、この1分20秒が非常に長く感じる!!

精神が加速する!!

 

「残り30秒!ラストスパートだ!!」

 

疲れて空きっ腹にはガツガツ食うのが一番。

残り30秒の時にスクワットを二倍ほど早くする。

 

「残り10!9!8!7!6!5!4!3!2!1!よっしゃ!!時は立った!!」

 

焼きそばが非常に食いたくてしょうがない!!

お湯を華麗な流れで捨てて後はソースとマヨを混ぜるのみ!!

 

「さぁ!出てこい!ゆであがった麺よ!!」

 

パカっと焼きそばの蓋をあけいざソースを入れようとすると颯爽と乾燥きゃべつの袋とふりかけが飛び出す。

 

 

 

 

 

「ああああああぁぁあああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いきなりスクワットをしてテンションが上がったと思ったらいきなり叫んで焼きそばをブン投げる、何があったのかわからないし、考えても分からない。」

 

香霖堂の店主、森近霖之助はそう証言でそう答えている。

 

そんな東方の物語が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、くそ・・・気づかなかったぜ、かやくとふりかけを取っていなかったなんて。」

 

ブン投げて飛び散った焼きそばを雑巾で片づけながらつぶやく。

 

「君が全て悪いね。」

 

インスタントラーメンをずるずると食べる香霖。

 

「腹が空っていたせいか、テンションが変になってたんだようん、そうに違いない。」

 

雑巾で床を拭きながら自分の行為を正当化する。

そして自分にしょうがないと言い聞かす。

 

「まぁ、君がどうなろうと知らないけどちゃんと掃除してくれよ。」

 

ラーメンをズルルと食べている香霖。

 

「くそ、くそ、食べる気がなくなってしまった・・・。」

 

何故こんなにテンションが変なのかというと昨日のことである。

女の子とは接点0だった天馬がいきなり女子二人から告白をされるという奇想天外な事が起きたからである。

 

襲われた事は一回だけあったが告白は初めてだ・・・。

 

「やっべーよまじやっべぇ・・・今日もアリスと魔理沙が来るんだよな・・・。」

 

昨日また明日来ると言い残した二人を思い出す。

 

「どうすんべまじ・・・どんな風に話しかければいいんだ・・・。」

 

二人が俺の事を好きって分かったらなんか変な感情も出てくる。

 

「うおおおおおおおお!!!!!」

 

頭を押さえてのたうち回っていると、チリンチリンと香霖堂のドアが開かれる。

 

「おーっす天馬!!今日も魔法おしえてくれよ~!」

「お邪魔します」

「うお!?」

 

アリスと魔理沙だ。

 

「なにやってんだ天馬?頭押さえてうずくまって。」

「頭が痛いの?風邪かしら?」

「い、いやなんでもないぞってうわ。」

 

二人が心配して近寄ってくる、アリスに至っては俺の額に自分の額にピトっと付け温度を確かめている。

 

「うん?少し熱いわね、熱かしら?」

「いぃやぁ大丈夫なんで!」

 

アリスに額を付けられ顔が熱くなる。

 

「天馬、顔が赤いぞ?大丈夫なのか?」

「大丈夫だ!なんともない!至って元気だ!」

 

すくっと立ち上がり元気のポーズをする、まるでサタデーナイトの様に。

 

「そ、そう?ならいいけど。」

「元気そうでなによりだぜ。」

 

香霖はまた奥の部屋にいるらしい、香霖頼むから出てきてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日の様に魔法の勉強会をして、アリスと魔理沙が俺を挟んでくる。

この二人、表面上仲良しだが目が語っている!!私たちは敵同士であると!!

スキンシップも昨日よりも増えているし・・・。今日はやけにアリスが積極的だ・・・。

 

「つ・・・つまりだなぁ、魔法の基礎が完璧であればあるほど想像した魔法が創造しやすくてだなぁ・・・。アリスなんかは基礎ができているから簡単だと思うぞ?」

「本当に?嬉しいわ。」

「はいぃ!」

 

俺の言葉に対してめちゃくちゃ喜んでいるアリス。おい、俺の腕に腕を絡めるんじゃない。

それをみた魔理沙はむっとして俺のもう一方の腕を絡めてくる。

 

「な~な~天馬~、昨日さぁ魔法の練習したらやっと光を圧縮できたんだぜ~!」

「そ、そうかぁやればできるじゃないか魔理沙も。」

 

魔理沙もニコニコと笑っている。

 

「それでだなぁ天馬に名前を考えて欲しいんだが何にしたらいいと思う?」

「え!?そ、そうだなぁ・・・マスタースパークとかどうだ?」

 

魔理沙の光を圧縮して放つ魔法だ、たぶんそれでいいだろう。

って腕を絡めるんじゃない!!

 

「マスタースパーク!天馬にしては良いこと言うじゃないか、その名前貰った!」

「お、おう。」

 

すると次はアリスが俺に質問してくる。

 

「ねぇ天馬、今日は私がお菓子作ったの、よかったら食べて♪」

 

絡めた腕を離し、アリスが持ってきたバスケットからクッキーを取り出す。

 

「あーん。」

 

そして俺の口に近づける。

 

「え!?あ、あーん・・・。」

 

口をあけアリスのクッキーを口に入れる。

少しほんのり甘くて俺好みのクッキーだ。

 

「どう?美味しい?」

「あ、あぁ。美味いよ、俺好みだ、俺が甘さ控えめが好きってよく分かったな。」

「天馬の事なら誰よりも分かっているわ。」

「そ・・・そうか、嬉しいなぁ。」

 

アリスがニコニコと笑いながら喜ぶ。

それに対して魔理沙はムムム!っとした顔をする。

 

「天馬~実は私も作ってきたんだぜ~」

 

魔理沙も持ってきた皿に水筒に入れておいた暖かくて美味しそうなスープが出される。

 

「魔理沙特性キノコスープだ!健康にいいぞ!味は私が保証するぜ!」

「おぉ~美味そうだな、いただくとしよう。」

 

出されたスープに手を着けようとすると魔理沙からストップされる。

 

「待った!熱いから冷ましてやるよ。」

「えっ!?」

 

魔理沙がスプーンでスープを掬い、フーフーと息をかけてスープをちょうどいい温度にしてくれる。

 

「あーん。」

「あ・・・あーん。」

 

うん美味い、いい塩加減とでかつ胡椒の香ばしさとピリっと辛い旨さ、それと魔法の森に生える食用キノコの美味しさを生かしている。

 

「お、うまいなこれ、今度作り方教えてくれよ。」

「天馬なら大歓迎だぜ、いつでも教えてやるよ!」

 

ドヤァっと魔理沙はアリスに顔を向ける、アリスもまたムムムムっとしている。

 

・・・なんなんだこれは、これがハーレムという物なのか、俺には刺激がやばすぎる。

昨日以来二人が積極的すぎて逃げたくなってくる。

 

「あ、あのさ魔法の勉強しにきたんじゃなのか?」

「魔法の勉強と遊びにきたんだぜ?」

「そうそう。」

 

あ、そこは一緒なのね。

むむむむ、どうしよう、今すぐ逃げたい気分だ。

 

「じゃぁ二人とも俺にくっつかずに勉強しよう?な?」

 

二人から離れようと提案すると、二人は悲しい目で見てくる。

 

「・・・くっつかれると嫌なのか?」

「・・・嫌なの?」

 

うぅ・・・そんな目で見るなよ・・・。

 

「・・・わかったよ、嫌じゃないからとりあえず勉強しよう。」

 

そう言うと、二人はすぐに俺の腕に腕を絡めてくる。

 

「そうだな!!」

「そうね!!」

 

切り替え早!!!

 

「じゃぁ・・・魔力の~・・・。」

 

腕を絡まれながら魔法の授業を再開する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~・・・腕がいてぇ・・・。」

魔理沙とアリスは帰っていった。

あれから二時間程腕を絡ませられ今の状態である。

あれを毎日させられたら腕が吹き飛ぶ・・・。

 

「二人は帰ったかい?」

 

奥から香霖が出てくる。

 

「おい香霖、なんで助けてくれないんだ。」

「フフフッ人の恋路を邪魔すると殺されるからね・・・。」

 

あぁ、くそ。

 

「明日も来るって言うしどうすればいいんだろうなぁ・・・。」

 

なんとか腕を絡まらせないようにしなければいけないな・・・。

 

「人の好意には答えるって言うものが紳士と呼ぶものだよ天馬君。」

 

メガネをクイッとあげ決め台詞の様に言ってくる香霖。

 

「残念ながら俺は紳士じゃないんでね。」

「そりゃ残念。」

 

あ~・・・まじどうすっべかな・・・。

明日はマジできつそうだ。

 

「なぁ香霖どうs。」

「分からないなぁ。」

 

まだ何も言ってないのに言われてしまった。

自分で答えを出せって事か香霖、鬼畜だな。

 

「そうだ、明日は霊夢のところにいこう、そうすればあんまりくっつかなくなるだろう。」

 

そうだ、それがいいそれがいい。

 

「果たしてそんなことで解決するかな?」

 

意味深にいってくる香霖。

 

「どういうことだ?」

 

意味深にいってくる香霖に疑問を投げる。

 

「この幻想郷に常識は通じないと思った方がいいよ、フフフッ。」

 

不敵に笑う香霖、こいつはいろいろとやばいな、放っておこう。

 

「まぁそうとなれば一応だが霊夢にアポを取っておこう。」

 

スキマを展開し移動先を博麗神社に開く。

 

「よっとっ」

 

博麗神社の前に降り立ち、霊夢がいるか確認する。

 

「居ねぇな・・・。」

 

しかしよく見ると粉砕したお賽銭箱が直っている・・・。しかも新品に・・・。

 

「・・・。」

 

お賽銭箱の前に行きこの世界でやく500円を懐から取り出し、なげ入れる。

するとチャリーンっと軽快な音が鳴る。

 

「おさいせーーーん!!!」

「うお!?」

 

いないと思っていた霊夢が叫びながら一瞬でお賽銭箱のところに来た。

 

「天馬じゃない!!いくらいれたの!?」

「500円だ。」

 

俺の言葉を聞いた霊夢はぴょんぴょんと飛び跳ね嬉しがっている。

よほど嬉しいのかそれとも食うに困っているのか・・・すこしホロリと涙がでてくる。

 

「・・・なんで泣いてんのよ?」

「・・・。」

 

こんなに小さい女の子が金に苦しんでいると思うと悲しくなり、つい霊夢を抱いてしまった。

 

「キャッ何すんのよ・・・。」

 

抱かれた霊夢は少し困ったような怒ったような顔で見てくる。

 

「霊夢・・・苦しくなったら遠慮せずに俺を頼っていいんだぞ?」

 

もういちどぎゅっと霊夢を抱きながら撫でる。

 

「わぶっ撫でるなぁ。」

「よーしよし。」

「ちょっ離して。」

 

腕で俺を押し退けて少し怒っている霊夢。

 

「悪い悪い。」

 

笑いながら謝罪をすると霊夢が用件を聞いてきた。

 

「それで?今日はなんの用できたのよ?」

「あ、そうそう。明日魔理沙とアリスがここに来るからよろしく。」

「え~・・・。」

 

うわ、困ってやがるこの巫女。

 

「そんなこと言わずにさ、菓子でも持っていってやるからさ。」

「うーん・・・わかったわよ、そんだけ?」

「そんだけ。」

「あっそ。」

 

素っ気ないなぁこの巫女。

 

「霊夢。」

「何よ?」

「なんで腋出してるの??そういう趣味?」

 

はぁ?っとした顔を浮かべる巫女。

 

「趣味じゃないわよ、これが私のファッションなの、わかった?」

「お、おう?」

「なんで疑問系なのよ。」

「わかったわかった。」

 

さて伝えることは伝えたし戻るとしよう。

 

「じゃぁ霊夢、またな。困ったことがあったら相談しろよ~。」

「はいはい、じゃぁね。」

 

むぅ・・・素っ気ない・・・。

 

スキマを展開し香霖堂にもどるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ・・・明日がくるのが憂鬱だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




博麗の巫女はデレナイ


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天馬、博麗神社に3人で遊びに行く。

霊夢にアポを取った翌日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙とアリスが来るという話だ。

そのころ天馬はどうしているかというと・・・。

 

「ガァ~・・・。」

 

爆睡していた。

 

現在午前11時頃。

天馬の朝はいつも遅い。

 

「グア~・・・。」

 

なぜこんなにイビキが酷いのかというと、よく鼻づまりが起こるからである、鼻呼吸だと苦しいので必然的に口呼吸で睡眠をとる。

 

「ゴォ~・・・、ゴフッ!!ガハッ!!」

 

そして起きるときは毎回むせる。

これが天馬の起き方、絶対にむせてから起きるのだ。

 

「ふぅあぁあ~・・・。」

 

脳が働きだしたと同時に目を開け伸びをする、そして今日はなんだかやけに枕が高いような気がする。

人並の温度を持っているかの様に暖かい枕だ。

左に置いてある時計を見ると現在11時10分。

 

「・・・もう少し寝よう。」

 

もう一度目を瞑り。

仰向けの状態から右に体を回転させ、枕をちょうどいい位置に引き寄せる・・・が、枕が動かない。

 

「・・・?」

 

なんだ?枕が動かないぞ・・・?目を瞑っている為今枕がどうなっているかなんて知らない。

そもそも寝起きの目はなぜかしょぼしょぼするので開けるのが億劫だ。

 

「んぁ~・・・?」

 

 

目を瞑りながら枕をもぞもぞと腕で動かそうとするが柔らかい感触があるだけで、動こうとしてくれない。

 

「なんだ?枕がなんか・・・。」

 

目を開け確認しようとすると目の前には服の様な物があり、誰かのお腹のラインも見えるような・・・。

ん・・・?お腹?

疑問に思ったので首だけを天井に向けるとそこには、アリスがこちらを見つめていた・・・。

アリスは顔を真っ赤にしておりモジモジとしている、状態の事を言うと枕は枕でも膝枕?

てかなんで真っ赤にしてんだ?そもそもなんで俺の部屋にいるんだ?

そして柔らかい感触の正体、それは・・・アリスのお尻を鷲掴みしていたからであった。

 

「・・・おはよう。」

「・・・おはよう。」

 

すぐに掴んでいる手を離し、起きあがる。

起きあがった後アリスの目を見つめ、俺の行為がわざとでないことを伝える。

 

「アリスよく聞いてくれ、わざとじゃぁないんだ、これは事故なんだ事故。」

「・・・。」

 

それでもなお顔を真っ赤にするアリス。

なぜここにアリスがいる、そしてなぜ膝枕をしていた。

 

「アリス、なぜ君がココにいる。」

「・・・20分前位にここにきて、香霖さんに二階に天馬がいるって聞いたから・・・。」

 

OKOK状況は把握した、香霖よなぜ俺が起きるまで待たせなかった、待たせるのは失礼だがなぜ俺を起こさなかった。

 

「・・・済まんな、わざとじゃないんだ。」

「・・・えぇ、わかってるわ。」

 

顔が真っ赤になりながらも俺の行為を許してくれるアリス。

あの感触、非常に気持ちがよかった。

あ、やばい俺のマイサンが浴衣越しでとんでもないことになっている。

 

「・・・。」

「・・・。」

 

朝によくある男子の不可抗力のあれをまじまじと見るアリス、顔がさらに赤くなっている。

 

「・・・。」

 

これはどう言い訳すればいいのか起きたばかりの俺の脳では検討もつかない。

そもそも毎回思うがなぜ朝になると不可抗力になるのか、いや・・・分かってはいるんだ、朝は勿論皆はトイレに行くよな?んで用を足すだろ?でもその前に腹に体から生成される水が溜まっているは分かるだろ?その刺激でなるのは十分に理解しているんだ、だけど・・・だからってそんな不都合な刺激でなるのはいらんだろう?なんで人間はこんないらない現象が起こるのかさっぱりわからない。

 

「・・・い、いやぁ~・・・違うんだよこれは、違うんだよ。」

「・・・。」

 

なにが違うというのか分からないがとりあえず違うと言っておく。

本当になにが違うんだよ俺は・・・。

消えてなくなりたい衝動に駆られてしまう。

 

「・・・あっははは、とりあえず・・・トイレに行くよ・・・。」

「・・・。」

 

股間を隠しながら立ち上がりアリスの有無も聞かずにトイレに早足で向かう。

・・・これで朝のマイサンを見られたのは二人目だな、最悪だ。

 

 

 

あぁ、なんでだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香霖堂一階のメインの部屋に移動した俺とアリス。

後は魔理沙を待つだけなのだが・・・。

 

「なぁアリス?さっき見たことは忘れようぜ?聞いてるか?」

 

ボケーっと放心しているアリスに向かってさっきのことは無かったことにしようと提案する。

 

「えっ!?そ・・・そうね!!天馬だって男の子だもの!あれくらいはあるわよね!!」

 

俺の話から大きく脱線するアリス。

忘れようとしているのになぜそんなことを言うんだアリス。

あぁアリスよあなたはなぜアリスなの・・・。

 

「そうだが・・・その話は無しにしようか。」

 

もう一度大事なことなので二回言う、アリスだってバカじゃない、寧ろ頭がいいほうなんだ。

俺の言うことを理解してもうあの話は無しにしてくれる、そうに違いない。

 

「初めて男性のあれを見てしまった・・・いえ、あれはきっと何かの間違いなのよ、そうに違いないわ。」

「・・・。」

 

なぜだ、なぜ君はその話を止めてくれない。なぜなんだアリス。

お願いだからその話を止めてほしい、俺だって非常に恥ずかしい。寧ろ俺が一番焦っている筈なのに俺は無理矢理冷静になり、この話を止めようと提案しているんだ。

何故なんだアリス!!もしかしてこのトークがしたいのか!?

 

「アリス、お前が見たものは尿意で刺激された物があんな風になってしまったんだ、決して君に欲情したわけじゃないんだ、だからその話は止めてくれお願いだ。」

 

提案ではなく次は懇願する、ていうか俺も焦って変なことを言ってしまった。

火に油を注ぐこと山の如しじゃねぇか、どうしてくれるんだ俺。

 

「そ、そうね。天馬のあそこをみたなんて話h」

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「!!」

 

小鳥遊天馬は恐怖している!! 

い、いやそうじゃなくてだな。

落ち着け俺、COOLに・・・COOLになるんだ。

ふう・・・、だんだん落ち着いてきた・・・。

 

「・・・魔理沙はいつくるんだ?」

「え・・と・・・あともう少し経ったら来るはずよ。」

 

よし、ふつうの会話になったな。

最初からこうすればよかったんだ。

 

「そうすか・・・。」

 

朝っぱら疲れてしまった、多分一生の中で一番つかれたと思う。

こんな調子で本当に博麗神社までいけるのだろうか・・・。

この先が思いやられる・・・あぁ・・・ゆっくり過ごしたい・・・。

あ、博麗神社といえばアリスと魔理沙にまだ行くこと言ってないや。

 

「あ、今日は魔法の授業はやらんから。」

「え?どういうこと?」

「今日は三人で博麗神社に行くことにする、いいよな?」

「天馬がそういうなら良いけど・・・。」

 

よしアリスからも許可は貰った、後は魔理沙だけだな。

魔理沙はまぁ・・・簡単に許可してくれるだろう。

 

すると、バーン!と香霖堂のドアが開かれる。

 

「おーっす!!悪いな!遅れちまったぜ!!」

 

噂をすればなんとやら、魔理沙がすごいスマイルでドアを開けた。

 

「ドアが壊れるからやめろっつの。」

「わるいわるい、さぁ魔法の勉強しよう!!」

「あ、そのことなんだけどな。」

「ん?」

 

今日は香霖堂で魔法の勉強ではなく博麗神社に三人でいこうと言う趣を魔理沙に伝える。

予想通り魔理沙からは「いいぞ!外で勉強するってのもいいな!」と承諾を得る。

いや、勉強じゃないし・・・。まぁいいか。

 

「じゃぁそういうことだから、そろそろ博麗神社に行きますか。」

「そうだな!この時間なら霊夢はいるだろうしな!」

「そうね、お昼近いし皆でご飯食べるっていうのもいいわね。」

 

おっと危ない忘れていた。

霊夢と約束していた土産だ、とりあえずチョコ饅頭でいいだろう。

和と洋が混ざってるからアリスと魔理沙にも合うだろうし。

 

よし、荷物オッケー 服装オッケー 身だしなみオッケー。

 

「じゃぁいくぞー。」

 

スキマを展開して、博麗神社に移動する。

 

「うぅ、相変わらずココは気味が悪いな。」

「あの目玉はなんなのかしら?」

 

スキマの中にはあのロリコン共め!!に有名なあの目玉ににているものがギョロギョロとしている。

そういえば魔理沙は一回ここに閉じこめられたんだっけっかな、俺に。

まぁそこは俺の話を遡っていけば分かることだ。

 

「じゃぁ、開くぞー。」

 

博麗神社に行き先を設定して移動、そしてスキマを開く。

 

「え!?」

「あ!?」

「うお!?」

 

いつもの様に降り立とうとしたらアリスがバランスを崩しその次に魔理沙その次に俺にがドミノ倒しの様に落ちる。

 

「うわぁ!」

「きゃぁ!」

「ぐえぇええ!」

 

2m程落ちて俺が二人の下敷きになってしまった。

なんとか饅頭は死守したが俺が瀕死である。

そして気になるのは俺の腰に二人がのしかかったせいか パキッと軽快な音が腰からした。

 

「ぐああぁあ!腰!腰があぁああああ!」

「大丈夫!?天馬!?」

「大丈夫か!?」

 

着地して俺が下敷きになったことに気づいた二人は心配してくる。

そして腰が非常に痛い、多分折れたかヒビが入った。

とりあえず再生再生!!

 

「はぁ・・・はぁ・・・腰が壊れるところだった・・・、とりあえず大丈夫だ。」

「本当?大丈夫なの?」

「ごめんなぁ天馬。」

 

腰をさすさすとさすりながら起きあがると俺たちの目の前には不思議な顔をした博麗の巫女が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにやってんの・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




手動0時きっかりに投稿してみた。


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天馬、博麗神社を守る。

博麗神社の縁側にて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢に見られているっていうこともあって今日はアリスと魔理沙がくっついてこない。

それ故に俺の疲労度は格段に下がっていくから最高だ。

 

「それにしても何であんたさっきから腰をさすっているわけ?」

 

ココに来た時にアリスと魔理沙にドッスンと乗られ、パキッと嫌な音がした腰をを未だにサスっている俺に疑問を投げる霊夢。

一応再生でなおして痛みは無いのだが未だにあの感触が残っているせいで気持ちが悪い。

 

「大丈夫大丈夫気にすんな。」

 

心配しているのか?と思うがそれは違う、ここで魔理沙とアリスにやられたなどと言ったら必ず霊夢がバカにしてきて、魔理沙とアリスが自分が悪いと責めてしまうので気にしない方向に進める。

 

「あ、ほら土産だ、皆で食え。」

 

持ってきたチョコ饅頭を霊夢に渡し、アリスと霊夢と魔理沙で食う様に言う。

 

「饅頭?古くさいわね~、ちょっとお茶持ってくるわ。」

 

チョコ饅頭を開くと一見ただの饅頭に見える土産に愚痴りながら台所へ向かう霊夢。

もうちょっと豪華なやつが良かったかな?シュークリームとかケーキとか。

 

「まぁ食ってみれば分かるさ、アリスと魔理沙も遠慮せずに食えよ?」

 

自分の能力でおかわりなどいくらでも出るんだから遠慮する必要など。

 

「おう、言われなくても頂くぜー。」

「美味しそうね~。」

 

封を開けられた饅頭を見ながら魔理沙とアリスは霊夢がお茶を持ってくるのを待つ。

なんだかんだこの二人、先に食べないところを見ると礼儀作法くらいは弁えているみたいだ。

俺はチョコは苦手なのでお茶だけ貰っておこう。

 

「はいお茶、さぁ食べましょ。」

 

お盆に乗せたお茶をアリスと魔理沙に配る霊夢。

俺も貰ったが・・・。

 

「・・・ん?」

 

霊夢から受け取ったお茶に緑の色など全くない、ただの水を沸かせたような。

匂いを嗅ぐがやはりただのお湯。

魔理沙とアリスをのお茶をちらっと見てるとちゃんとお茶の色をした、いやお茶じゃんあれ。

 

「霊夢?俺の貰ったのお茶じゃないっぽいんだけど?」

 

なぜ俺だけお湯なのか、それとも霊夢が間違えたのか?うっかりやさんだな、いれてもらおう。

 

「当然よ、ただのお湯だもの。」

 

確信犯かよ、なんで俺だけこんな仕打ちを受けなければならないのか、なぜなんだ。

 

「・・・なんで?」

「丁度切れたのよ。」

 

ちゃっかり自分のを確保しているところを見るとやはり俺だけ省かれているんだなと実感。

前に負けたのが悔しいのかな?それとも賽銭箱を壊したことによって好感度が下がってこの仕打ちなのかな?

 

そんなことを考えてうんうんと唸っていると横からスッと緑色の美味しそうなお茶は出される。

出されたお茶をの方向を見ると霊夢が俺にお茶を出してくれた。

 

「ん?」

「そんなにお茶が飲みたいなら私のを飲めば?半分しか残ってないけど。」

 

おぉ、優しいな霊夢、しかしそれは数少ないお茶の葉からだしたものだろう。

しかしここで断るのも・・・気が引いてくるな。

 

「んじゃ遠慮なく頂くよ。」

 

霊夢に出されたお茶を受け取りズズーッと飲む。

うん、美味しい香りもいい感じだな。

お茶を入れるのが上手いんだな霊夢は、初めて知った。

すると横から大きな声で魔理沙が叫ぶ。

 

「あ~!間接キスだ!!」

 

ブホッとお茶を吹き出す俺、そして食べているチョコ饅頭を吹き出す霊夢。

 

「な、なにを言ってんのよ魔理沙。」

 

むせながら魔理沙に言う霊夢。

そういえば間接キスになるなこれ・・・。

 

「いきなり変なことをいうな魔理沙、お茶が無駄になっちまったじゃねぇか。」

「えぇ~だってよぉ~本当の事じゃないか。」

 

お前は小学生かっと突っ込みながら残ったお茶少し飲む。

だいたい間接キスくらいで動揺するようなもんじゃないだろうに。

そんなものは小学生が喜ぶもんだ、と不意に霊夢の方を見ると顔を真っ赤にしている。

何故だ霊夢、お前はそんなことで動揺する輩じゃないだろう。

 

「か、返しなさい!!」

「え?」

 

心の中でつっこんでいると霊夢からもらった俺のお茶が残っている湯呑みを奪ってきた。

そして一気に湯呑みに残ったお茶を飲む霊夢。

 

「あ・・・。」

 

俺の美味しいお茶が霊夢によって無くなってしまった・・・。

本当に美味しいから残念すぎる。

 

「だ、大体ねぇ魔理沙!間接キスなんて気にしないものなのよ!!」

「だけど顔が真っ赤だぞ霊夢。」

「お茶が熱かったのよ!!」

 

もう静かにしていろよ魔理沙。

そしてなぜ俺の茶を飲んだ霊夢。

無くなったお茶は少々残念だが皆が饅頭を美味しそうにくっているせいか俺も何か食いたくなってきたな、チョコ饅頭はいいや。

ここはカスタードの詰まったシュークリームでも食おうかな。

 

「うん、んまい。」

 

創造したカスタードだけが詰まったシュークリームを食べていると、「隙あり!」と魔理沙が俺の手に持っているシュークリームを半分程口で奪っていった。

 

「なにしてんの!?」

 

俺のシュークリームをモキュモキュと食べる魔理沙。

 

「うーん天馬、これは生クリームも入れた方が美味しいと思うぞ。」

「そんなことは聞いてねぇ!ていうか勝手に俺のを食うなよ!」

「美味しそうだったからな!」

 

ほっぺにカスタードが付いている魔理沙。

はぁ・・・もういいや。

半分程なくなったシュークリームを魔理沙にあげてもう一個創造して食べていると霊夢とアリスから私もちょうだい、私も私もと催促されたのであげる。

 

「甘いわねぇ、饅頭も美味しかったけどこれも美味しいわね。」

「やっぱ天馬のお菓子は美味しいわぁ。」

 

ニコニコと霊夢が頬を綻ばせ、アリスはやーん美味しい~と言うばかりに手を頬に当てている。

 

「天馬もう一つくれよ。」

 

まだほっぺにカスタードを付けている魔理沙、俺に腕を延ばし催促してくる。

 

「はいはい。」

 

魔理沙の手の上にシュークリームを乗せて渡す。

 

「サンキュー。」

「あ、ちょっと待て。」

「何だ?」

「魔理沙、ちょっと目閉じて口開け。」

「・・・?わかった。」

 

目を閉じて口をあーんと開く魔理沙。

魔理沙のほっぺに付いているカスタードを指で取りそれを・・・魔理沙の口に入れる。指ごと

「ん~?なんだこれ~?甘いな。」

 

指を入れられた魔理沙は口を閉じてもにゅもにゅと入れられたものを確認する。

目を閉じているせいか指というのはわからないようだ。

なんか可愛い。

 

「いいぞ、目開けてみ。」

「ん~?」

 

魔理沙が目を開けて一瞬だけ不思議な顔をするが、俺に指を入れられていることにすぐに気づく。

 

「プハッ!なにやってんだよ!?」

「はっはっはっは。」

 

俺の指を吐き出し顔を真っ赤にして怒ってくる。

非常に反応がおもしろい。ぽかぽかと軽く殴ってくる魔理沙とじゃれ合っているとあることに気づく。

っは!?右から熱視線を感じる!?

 

「・・・。」

 

右を向くと霊夢とアリスがジト目でこちらをずっと見てくる。

 

「・・・ははは。」

 

とりあえず笑いで誤魔化そう、そうしましょったらそうしましょう。

 

「・・・。」

「・・・すいません。」

 

怖いので謝る。

 

「たく、昼間っからイチャイチャしてんじゃないわよ。」

「いいなぁ・・・。」

 

霊夢は俺と魔理沙のじゃれあいを見て呆れ、アリスはなにがいいのか分からないので割愛。

 

「さて、饅頭も食い終わったし何する?」

 

食べるものが無くなり暇になったので何かしようと提案する。

 

「そうだなぁ・・・。」

「うーん。」

「何でも良いわよ。」

 

霊夢だけやけに淡泊だ、アリスと魔理沙は何をしようか考えてくれている。

しかしこの4人で何をしようというのだろうか。

鬼ごっこ?却下かくれんぼ?却下けいどろ?却下 疲れるのは全部却下したい。

ボードゲームとかカードゲームならまだわかるんだが・・・。

幻想郷にボードゲームは浸透してなさそうだしなぁ・・・教えるのがめんどくさい。

 

「あ、弾幕ごっk。」

「却下。」

「なんだよ~。」

 

魔理沙が変なことを言ったので却下する。

疲れないのが極力いいんだよ。

 

「まぁ天馬が絶対勝っちゃうからねぇ。」

 

アリスが俺を持ち上げてくる、ドヤァ。

まぁ幻想郷にきてからは全勝無敗だしな。

あ、フランに一回殺されたか。

 

「能力が二つもあるなんて本当に卑怯よね。」

 

あれ?俺霊夢に能力の話なんてしたっけ?

いや、してない筈だ。

 

「それ誰から聞いた?」

 

俺の能力を知ってる奴なんて香霖と紫と藍くらいの筈なので霊夢に聞いてみる。

 

「紫よ、紫。」

「なるほど。」

 

まぁ予想はしてたがやはり紫だったか。

 

「紫と言えばなんで天馬はスキマを使えるのよ、紫の能力でしょあれ?」

「俺の能力は技も創造できるんだよ、霊夢の技なんかもできるぞ。」

「へぇ~。」

 

まぁ同じ技といっても一回繰り出されなきゃいけないけどね。

見たことがない技は俺にもできないしな。

挙動 威力 その技を使うのに必要な霊力 妖力 神力 を確認しないと出したいものもだせないしな。

 

「まぁ自称だが幻想郷最強だ、香霖もいってたしな。」

「はぁ~・・・。」

 

何故か霊夢がため息を吐く、よくわからない子だな本当に。

 

「まさか幻想郷最強に魔法を教えてもらうなんてね~。」

「だよな~。」

 

むむ、魔法使い二人め、少し俺をバカにしているな。

 

「まぁ魔法なんて簡単だしね~。」

「うぐっ。」

「むむむっ。」

 

挑発されたので俺も挑発する。

まぁ本気で言っているわけではないので大丈夫だろう。

ていうか魔法はふつうに難しいしな。

 

「すぐに天馬の様になってやるぜ。」

「そうよそうよ。」

「期待しているよ。」

 

俺みたいになられても困るけどな。

第一魔力が違うのだよ魔力が。

 

そんなことをずーっとしゃべり時間を潰す。

でも飽きないなこの三人、ずーっと喋っていたくなる。

それほど心地いい。

 

ぐだぐだと喋り、辺りをみると幻想郷が夕焼けに染まっている。

もう夕方だということを確認する。

 

「さて、そろそろ帰るとするか。」

「お、そうだなもうそろそろ暗くなってくるしな。」

 

俺の言葉に魔理沙が辺りを見回し、じょじょに太陽が沈み暗くなっていく。

 

「んじゃ霊夢邪魔したな、また明日くるよ。」

「はいはいって・・・え?明日もくるの?」

 

重い腰を持ち上げ霊夢に明日も来ることを伝えると嫌そうにいってくる。

霊夢は俺と同じで面倒くさがり屋なのは知っているがそこまで酷くはないぞ俺・・・。

 

「まぁ嫌と言われても行くけどね。」

「はぁ・・・。」

 

どこまで面倒臭いんだよこの巫女は・・・。

でもまぁそれでも嫌と言わない霊夢は優しいんだろうなぁ。

 

「よし、そういうことだから帰るぞお前等。」

 

アリスと魔理沙に向かっていうと二人とも俺の側に寄ってくる。

夕焼けに染まったアリスはそれは美しく、魔理沙は笑顔がきれいだ。

 

「次は落ちないのがいいな。」

「それは同意ね。」

 

スキマから落ちたことをまだ根に持っているのかこの二人は・・・。

 

「じゃあな霊夢、また明日。」

「またな~。」

「明日もよろしく。」

 

俺たち三人が霊夢に向かって別れの挨拶をすると霊夢はまたため息を付きながら小さく手を振ってくる。

 

「はいはい・・・また明日ね。」

 

面倒くさいというのと明日もまた会いましょうというのが顔にでていた。

だって少し笑っていたんだもの。

 

霊夢に別れの挨拶をした後スキマで二人を飲み込み、香霖堂の前で次は落ちないようにゆっくり降ろす。

 

「ふぃ~今度は落ちなくてよかったぜ。」

「うるさいな、俺が一番被害被ってんだぞ。」

 

あのときの腰はやばかったな、全身の筋肉がつったように痛かった。

 

「じゃぁ天馬、また明日ね。」

「じゃあな~。」

「おう、気をつけて帰れよ。」

 

魔理沙とアリスは家がほぼ一緒なので毎回一緒に帰っている。

そして毎回見えなくなるまで見送る俺。

 

「よし、帰るか。」

 

目の前の香霖堂のドアを開けると香霖はやっぱり本を読んでいた。

 

「おかえり、どうだった?」

 

どうだった?というのはやはり魔理沙とアリスにべたべたくっつかれたかという事なのだろう。

 

「別段普通だったよ、結構楽しかった。」

 

まぁ昨日よりはぜんぜんマシかなと思えてくる程にね。

 

「そうかい、今日は君が料理当番だ、おなかが減ったよ。」

 

一日づつ料理を作っている俺たち、香霖は和食が多いな、俺は洋食かな。

 

「はいはい、今から作るから我慢して待っててくれ。」

 

ドアを閉めて、香霖堂の台所に向かいながらタオルを頭に巻き付ける。

 

「フフッ今日はなんの料理が作られるかな?」

「さぁな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、魔理沙と共に春を探す

香霖堂にて、春である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グオ~・・・グァ~・・・。」

 

鼾をかいて寝ているのは天馬である。

 

「グォォオ~・・・ズビ・・・寒!!」

 

布団の中にこもった熱を外に拡散させようと布団を足で挟み、抱き枕状態にすると異様に足が寒い、寝てる間に冬になったかと思うほど・・・。

 

「うおぉぉぉお・・・さみぃ・・・。」

 

創造で服を着物から黒を基調とした赤い線が入っている運動用ジャージをきる、フード付きだ。

 

「そしてまた眠りにつくと・・・。」

 

ジャージに着替え終わりすぐに布団の中に入る。

この微妙に暖かいのが冬の時に起こる まだ布団に入っていたい状態。

非常に暖かいため瞼がまた重くなる、なぜ冬の時に寝ると心地よく寝れるのだろうか。

てか毎年冬でいいよ。

そんなことを考えながら意識が遠くなる感覚に気持ちが良くなっていると俺の部屋の襖がスパーン!!と開かれる音がした。

 

「おーっす!!天馬!!起きてるかぁ~!!」

 

どうして魔法使いはこうも俺の部屋に勝手にはいるのだろうか。

いやアリスはこんな入り方はしなかったな、もっとお淑やかに静かで・・・そして豊かだったはずだ・・・アリス、ごめんよ。

 

目を閉じながら考えていると魔理沙が俺の顔をつんつんと指でつついてくる。

 

「おーい天馬、起きろ~。」

 

起きてるがな、目を開けるのが面倒くさいんだよ。

なんで魔理沙は俺を起こそうとするのかよくわからない。

もう下で待ってて欲しい、二時間くらい。

 

「うお~い。」

 

まだつんつんしてくる魔理沙、いい加減にしろ。

俺はまだ眠いんだよ、しずかにしててくれ。

次一回でも俺をつついてきたらどうなるかわからんぞ。

 

「起きろ~。」

 

仏の顔も三度までだ、もうどうなるかそろそろ教えてやろう。

 

パクッ

「うお~・・・い!?」

 

何をしたのかというと俺の顔つついてくる魔理沙の指をパクッとくわえただけだ。

吸ってはいないので大丈夫だろう、なにが大丈夫かっていうと俺もわからない。

 

「うぎゃぁぁぁぁぁぁあ!」

「ぐお!?」

 

指をくわえた瞬間俺の顔ど真ん中に飛んできたグーパン

鼻血を出して悶える俺と指先を突き立てながら暴れ回っている魔理沙。

 

「ぐあぁあ・・・いってぇ・・・。」

「いきなり何すんだよ!?汚いな!!」

 

汚い・・・だと!?そんなわけがない、毎日四回は歯磨きしているんだそれと口の中が爆発してきれいになるやつ、歯医者さんの所のトイレによくあるよね。

 

「いきなりはこっちの台詞だぁ・・・、部屋に勝手に入ってくんなよ・・・。」

 

鼻血が吹き出ている鼻をぐるぐる巻きにしたティッシュを詰めながら言う。

 

「いやまぁそれは・・・天馬だからいいんだぜ。」

「わけわかんねぇから、出禁にするぞコラ。」

 

もうやだこの魔法使い、睡眠は邪魔されるし殴られるし汚いって言うし。

もう香霖堂から離れて隠居でもしようかと本気で考えてしまうよ、紫みたいに。

 

「俺、香霖堂離れて家でもたてようかな、誰にも見つからない所に・・・。」

「それは駄目だぜ、天馬にあえないと寂しいじゃないか。」

 

少し恥ずかしがりながら言う魔理沙、突然すぎて反応に困る。

むぅ・・・いきなりデレんなし・・・。

二人きりの時だけ真面目に言うんだから困ったもんだ。

 

「んで?なんの用だよ魔理沙?俺を起こすってことはよほど重大なことなんだろうなぁ?」

 

布団を下半身に被せながら魔理沙の方に向いて用件を聞く。

てかマフラーしてんのか魔理沙、似合うな。

 

「あ、そうそう・・・春が無くなったんだよ天馬!博麗神社の桜だって咲きそうだったのに枯れてるんだぜ!これは異変だぜ!!」

「・・・そうですか、じゃぁ異変解決を早々に宜しくお願いしますね、僕は寝るんで。」

「うおおおい。」

 

こんな寒いってのになぜ外に出なければいけないんだ、異変なんか起こしてるやつをぶっ飛ばせばいいだけの話だろう。あー・・・なんかすげぇイライラしてきた、異変起こした奴をこれからぶんなぐりに行きたいレベルだ。

 

「・・・。」

「て・・・天馬?」

 

無言でスクっと立ち上がった俺に少しおびえているのか魔理沙がびびっている。

春がない・・・春がないねぇ・・・、白玉楼で幽々子が起こしているんだろう、一度も見たこと無いけど・・・。なんか紫絡みだろうなぁ・・・いやだなぁ・・・。

でも俺の安眠ライフがなぁ・・・よし、ボコす。

 

「いまから異変起こした奴をボコしにいく魔理沙、一緒にいくぞ。」

「お、おう!霊夢より強いって事を見せてやるぜ!」

 

誰にだよ。

あ、皆にか・・・。

ここで話がずれるが魔理沙はただの人間だ、程度の能力もただ魔法が使えるだけだからついているようなもんだしな。

ただの人間が勉強して魔法を使えるようになってやっと能力がつくという不思議な世界。

魔理沙は魔法が使えなければただの人間だしな、霊夢なんかは空を飛ぶという能力で平凡だと思うが言葉遊びみたいに能力が使えるからなおさらだ。

 

さて例えばここに 魔法の用に強い札かなんかがあるとする。そして魔法使いの杖もあるぞ。

どちらが強い?なんていうのは愚問だが正解は両方だな。

ではもともと天性の素質があった人間が札をもちただの人間が杖を持つとする、どちらが強いか、それは前者だ。別に天性の素質など努力があればそんなのは越えることが可能だが、霊夢と魔理沙はそうは行かない。

まぁ、努力家で魔法を上手く使えるようになった人間と天性の素質を持ち札を持つ人間。

これなら対等と言えば対等なのだが霊夢の能力はそれを多いに越してしまうと言うことだ。

なんと悲しいことかな、結局は天性の素質を異常に持ってしまった人間にただの人間が勝てるわけがない。

 

そこでだ、霊夢よりも異変を早く解決すればもちろん回りから見られる目が違う。

魔理沙は多分そこを気にしているんだろう、周りからすればただの足手まといだしな。

勿論おれは違うと思っているぞ、魔理沙ほどの努力家ならあるいは・・・と思う節もあるしな。

それに霊夢は修行が苦手で絶対自ら進んでやらないだろう、今の時がチャンスだということだ。

 

「あ、そういえば飛べねぇや。魔理沙の箒にけつな。」

「まじかよ、落ちてもしらないぞ。」

 

さてさて幽々子さんをボコしにいきますか。

首を長くして待っておいた方がいいぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外にでて魔理沙の箒の後ろに乗る。

 

「ぐおぉ・・・寒い・・・寒すぎる・・・。」

 

気温が寒い上に風まで冷たいのだから困る。

辺りは真っ白でなにがそこにあったかなんてわからないほどだ。

雪化粧を施した幻想郷は美しいが寒すぎるのが難点だな。

 

「なんだ天馬、こんなんで寒がってどうすんだよ。」

 

なんでおまえはスカートをはけるんだ、めちゃくちゃ寒いのに。

そしていつもの服にマフラーだけっておま・・・おま・・・。

 

「・・・やっぱ霊夢より強いのかな~。」

「なんかいったか?」

 

何も言ってないです、ここで褒めると堕落するからなぁ。

そして前になんかうざそうなのが仁王立ちで立っている。

 

「なんだあれ・・・。」

「氷精っぽいな。」

 

なんだかすっげぇ馬鹿そう、しかもドヤ顔うぜぇ・・・。

ここを通らなければいけないというのにどうしよう。

そんなことを考えているとついに仁王立ちしている奴の目の前に来てしまった。

 

「待ちな!ここを通りたければ私を倒してみろ!!」

「(うわ、馬鹿だこいつ)」

「チルノじゃないか、何してんだ?」

 

よくぞ聞いてくれたとばかりにない胸をはるチルノ。

 

「あたいは最強だから腕試しをしてんのよ!」

「そうかお疲れ、がんばってね。」

「じゃぁなチルノ。」

 

スゥーッとチルノの横をすり抜けようとすると大きな声で止められた。

 

「待ちなってば!あたいに勝ったらここを通してやるよ!!」

 

手を大きく広げているせいで突破できないので簡単な勝負をしてやろう。

 

「しょうがねぇな、じゃぁじゃんけんな。」

「お、おう。」

「いいわよ!じゃぁじゃーんけーん・・・。」

「ちょっと待った!!」

 

チルノのじゃんけんを制止して少しばかりじゃんけんの優位を計る。

負けたら面倒くさいし。

 

「このじゃんけん、チョキが最強な!チョキ強いからチョキが最強でいいだろう?」

「いいわよ!チョキが最強なのね!」

「おう!!」

 

さぁうまく引っかかってくれるかな?

 

「「じゃーんけんぽん!」」

 

勝敗は俺がグーでチルノがチョキ、こいつ本当に馬鹿だろ。

 

「俺の勝ち!じゃぁなチルノ、魔理沙いけ!!!」

「お、おう!」

 

ずーっと負けたことに疑問を抱いて自分の手を見続けるチルノにチャンスだと言わんばかりに魔理沙にGOサインをする。

チルノって本当に馬鹿だな、まさかあんなのに引っかかるなんて思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チルノに勝利した俺と魔理沙は異変を探して空中で下を見ている。

すると雪の上に黄色い髪色の人物、アリスがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、白玉楼に行く。

魔理沙と空飛ぶ箒で二人乗りをしながらさまよっているとアリスに出会す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおーいアリス~。」

 

地上で何かをしているアリスに手を振りながら声を掛けると俺達に気づいたようだ。

 

「ここからじゃ声がよく聞こえないから一回降りよう。」

「はいよ~。」

 

魔理沙にゆっくり降りてもらい、アリスに近づきながら降りてゆく。

 

「ういーっすお早う、何してんだ?」

 

アリスの目の前に降り、いつもの三人組が集まる。

 

「お早う天馬、今は散歩中よ。」

「こんな寒いのにか?」

「変な奴だなぁ。」

 

アリスは物好きだなぁ、俺だったらゆっくり炬燵にはいりながらみかんを食っているだろうな。ていうか魔理沙、変なのはおまえもだ。

 

「あ、そういえばアリスは何で幻想郷がこんなに寒いのか分かるか?」

「全て分かっている訳ではないけれど少し位なら知っているわよ。」

 

幽々子が黒幕と言うのはわかるがいかんせん東方は人物だけ知っている位なのでどこに行けば異変を止めれるかなんていうのはわかんねぇな。

もっと知っとくべきだったぜ。

 

「その少しの情報を教えて欲しいんだがいいかな?」

「うーん・・・そうねぇ。」

 

そう簡単には教えてくれない感じだなぁ、何を交換条件にだされるのか・・・。

 

「って・・・なんで私に抱きつくのよ。」

「え?寒いから。」

 

アリスの背中に重くならないように覆い被さりながらアリスの出す交換条件を待っていると突っ込まれる。

人肌恋しいってやつだね★

 

「じゃぁこういうのはどうかしら?天馬が私の家の手伝いをするっていうのは。」

「今は無理だが明後日くらいならいいぞ~。」

「私も手伝うぜ。」

 

交換条件が楽なものでよかった、まぁアリスのことだから難しいことは言わないと思っていたが。こんなに簡単な条件とはね、魔理沙も付いてくるから手伝いは早く終わるな。

 

「あ、勿論だけど二人きりでね。」

「え。」

「はぁ?」

 

二人きりってことは魔理沙は駄目ってことか簡単な問題が難題になってしまった。

ていうか何故に二人きりだし。

 

「なんで二人きりじゃなきゃいけないんだよ?手伝いなら掃除とかだろ?」

「魔理沙には関係ないわね、天馬?それでいいかしら?」

「俺は別にいいが・・・魔理沙は来ちゃ駄目なのか?」

 

手伝いだけなら人数が多ければ多い程早く終わるしなぁ、そもそも魔理沙が怒るだろうし。

 

「駄目よ、二人じゃなきゃ私は教えられないわ。」

「さいですか・・・そういうことだから魔理沙、明日か明後日はあえないから宜しく。」

「はぁ~・・・?」

 

おぉ、苛ついているな魔理沙。

怖い怖い。

 

「じゃぁこの寒さのことだけど、長い刀を持った女の子が春度っていうのを集めてたそうよ。」

「春度ぉ?なんじゃそりゃ。」

 

長い刀を持った女の子・・・魂魄妖夢か?刀を持っている女の子と言えば妖夢以外あり得ないだろう・・・多分。

 

「春度っていうのは陽気な気分の時に出る物や春そのものらしいわよ。」

「春っぽいものも集められるのか・・・ってことは幻想郷に春度というものが無くなったから春がいきなり消えて冬みたいになったってことか。」

 

春なんて集めてどうするつもりなんだろうか・・・さっぱり分からないが花見が出来ないのはつらいな、止めさせてもらおう。

 

「その集められた春度っていうのはいまはどこにあるんだ?」

 

俺の質問を聞いたアリスは人差し指をピンと立て、空の方向に指している。

 

「なぁるほど・・・それな邪魔はされないし探しても見つからなかったわけだ。」

「そういうこと、まぁこれは貴方達に任せるわ、私は家にそろそろ帰りたいから離れてもらってもいいかしら?」

 

おっと、まだアリスの背中に抱きついたままだったな。

鬱陶しがってるからそろそろ離れるとしよう。

 

「散歩中悪かったな、じゃぁ明後日辺りにアリスの家に行けばいいんだな?」

「別に気にしてないわよ、それでいいわよ、じゃぁまた明後日ね。」

 

アリスは俺に手を振り家に向かって歩きだしたので俺達もそろそろ上に向かおうとしようか。

上っつったって雲しか見えないんだがなぁ・・・・。

 

 

「よし、魔理沙、とりあえず上に向かおうぜ。アリスの言うことが正しいなら上に向かうのが賢明だからな。」

「よほどアリスのことを信頼しているんだな。」

 

なんだよこいつ、いきなり素っ気なくなりやがって。

しかもなんか怒ってるし・・・。

 

「何を怒ってるんだよ?アリスの言ったことなら気にするなよ。」

「はいはい、勝手にどこにでも行っちまえ。」

「はぁ?」

 

なんか魔理沙が悪態付くからすげぇ苛つく。

 

 

「わかったわかった魔理沙がそう言うなら勝手に行くよ、もうしらん。」

「あ・・・。」

 

意味が分からない魔理沙を放っといて空に向かって足に思いっきり力を入れてジャンプする。

脚力強化したせいかものすごい寒い、風が直に当たる。

 

「寒!!めっちゃ寒!!」

 

まだ魔理沙の箒に乗った方が楽だったがまぁいいだろう。

雲を突き抜け、その先に行こうとするといきなり重力が逆になる。

 

「うお!?なんだ!?」

 

なぜか俺が上に向かって落ちていく、そして落ちた先には石で出来た地面があり激突する。

 

「ぶはぁ!!!」

 

なぜ予想外の落ち方をしたときは大半は顔なのか、わけがわからない。

 

「いててててて!」

 

顔を両手で押さえ悶える、なんとか鼻血は出なかったようだ。

 

「いてて・・・ん・・・?」

 

顔をあげて目の前をみるとものすごい長い石の階段だ・・・。

階段の端に所々灯籠みたいなのが立っており、誘っているようにも思える。

 

「めちゃくちゃ長いな・・・面倒臭いが上がっていくことにするか・・・。」

 

飛べないというのは心底面倒臭いな、今度飛ぶ練習でもしようかな・・・。

スキマだって一回来た所じゃないとワープできないし・・・駄目能力だな・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の一段を上りきり、休憩する。ここまで来るのに30分以上はかかったな。

 

「はぁ・・・はぁ・・・あー!疲れたー!」

 

運動にはいいと思うが膝がぶっこわれること間違いなしの階段だ。

最後の一段を上りきったときの達成感はあのファイト一発のあれににているだろう。

ゴソゴソと運動用ジャージのポケットからタバコを取り出し一服。

 

「スハ~・・・まじ運動したあとのこれにはたまらんね。」

 

普通に吸っているより美味しいと思うから不思議!!ちなみに今日のタバコはメンソールじゃなくごくごく普通のタバコ。

 

「ここで何をしているんですか?」

 

最後の一段の所に座り上ってきた方向に向いてタバコを吸っていると後ろから声を掛けられる。

しかし疲れているせいで後ろをむくのが非常に面倒くさいし誰が声を掛けたなんて気にもしなかった。

 

「春度ってやつを集めているって聞いたからきたんだよ~ ッッ!?」

 

後ろ向き声を掛けた者を見ようとしたらいきなり長い刀を横ぶりに振るわれたのでジャンプして避ける。

 

「あぶねぇな!!死ぬじゃねぇか!!」

 

刀を振った白髪の少女に向かって叫ぶと少女からは無慈悲な言葉が掛けられる。

 

「あの方の邪魔をするなら・・・斬る!!」

 

俺の落ちる所で刀を構えて俺が落ちてきたところで斬ろうとしている、避けるのがほぼ無理だ。

 

「ッッだらぁ!!!」

「!!」

 

少女に向かって創造した草薙の剣を投げつける、すると少女がそれに気づいて後ろに避ける。

その隙に着地して地面に刺さった草薙の剣を引き抜く。

 

「・・・さっきまで武器というのは見受けられませんでしたが・・・異様な能力ですね。」

「よくわかったな、んでいきなり斬りつけるったぁどういう了見だコラ。」

「ただの物好きでしたら追い返しただけでしたが、邪魔をするというなら斬るだけです。」

 

あぶねぇ女だな、刀を持ってるってことはこいつが春度を集めていた奴だな、名前は魂魄妖夢で合っているだろう。

 

「いっとくが、俺は強いぞ?」

「強いかどうかは斬れば分かることです!」

 

俺に向かって近づき、長い刀を振りかぶる妖夢、すかさず俺はアーム強化して受け止める。

 

「何!?」

「おらぁ!!」

 

受け止めたあとに草薙の剣の柄で妖夢の鳩尾に一発お見舞いする。

 

 

「クッ!!手で受け止めた!?」

 

鳩尾に一発食らった妖夢は痛みを我慢してなんとか俺から間合いを取る。

 

「今ので分かったろう?いい加減諦めろ。」

「では・・・これならどうですか!!」

 

刀を鞘に戻した妖夢、そして足を前に突きだし構える。

この構えは居合い斬りににているな、だが少し距離があるから届きはしないだろう・・・。

 

刀をすぐに抜けるよう柄を持ち、その場から動かない。

 

「・・・?なんの芸だ?」

「今だ!!」

「うお!?」

 

距離があるので当たらないと思い、草薙の剣を構えから外す、すると妖夢が踏み込んでくる。

踏み込んできた妖夢は一瞬で俺の目の前に現れ刀を突き出してくる。

しかし妖夢の初動が見えたおかげで草薙の剣を素早く構えに戻すことが出来たので何とか向かってくる刀の軌道を逸らすことができた。

 

「早いな、お前さんの師は偉く強かっただろう。」

 

これが自己流ならまじでやばいと思う。

しかも動きはまだ不慣れだが、成り立っているのも伺える。

 

「貴方には関係ないですね!!」

「おっ・・・!」

 

妖夢の刀でガードしていた草薙の剣を大きく退けて、ザクッと俺のわき腹に妖夢の刀が刺さる。

非常に痛い、命に別状はないのだが。

刺さった刀を妖夢が引き抜こうとしたため素手で刀を掴み抜けないようにする。

ていうか貫通してんじゃんこれ。

 

「クッ!離せ!!」

 

グッグッ!と引き抜こうとする妖夢、だが俺の素手で思い切り掴んでいるので抜けない。

 

「痛ぇじゃねぇか、血まで出ちまったよ。」

「!?」

 

引き抜こうと必死な妖夢の頭を掴み、壁に思いっきり強く投げて叩きつける。

 

「カッ,,,,,!ハッ,,,,,」

 

叩きつけられた妖夢は口から血を吐き出して地面にひれ伏す。

 

「化物め・・・!!」

 

ひれ伏しながら俺に向かって叫ぶ妖夢。

わき腹に刀が刺さったままの俺は笑いながら妖夢の言葉を訂正する。

 

「化物じゃねぇよ、人外だよ。」

 

刺さった刀の柄を持ち、ズブズブと引き抜き最後に血振りをする。

血振りをした刀の先にビシャァッと血が地面に付く。

 

「う・・ふぅ・・・、なかなかに痛かったな。」

「なにを・・・!?」

 

抜いた刀を両手に持ち上に上げてから思いっきり下にやり膝に当てる。

するとバキィン!と真っ二つ割れる刀、それを見た妖夢は発狂する。

 

「ああああぁぁぁああああ!?」

「ん?これ大事なもんだったか?」

 

すまんすまんと割れた刀を妖夢にほいっと投げ渡す。

妖夢の目のまえにガシャンと落ちた真っ二つの刀は無惨に欠けたり真ん中からおれていた。

 

「そ・・・そんな・・・私の楼観剣が・・・うわぁああ!」

 

割れた刀を抱きながら泣いている妖夢、すこしでも顔に触れたら切れるぞ。

それでもそんなことを気にせずに抱きながら大泣きしている妖夢。

 

「おいおい、たかが刀だろうが、そんなんで泣くなよ。」

 

俺の言葉を聞いた妖夢はピクっと肩を振るわせて、俺の方に向く。

 

「たかが刀だと・・・!?これが私にとってどれだけ大事な物か分かっているのか!?」

 

俺の方に向いた妖夢のかおは涙が出て、悲しいような怒っているような顔だ。

 

「お前がどれだけ大事にしてようが俺にはわかんねぇな。」

「これは私の師匠が私に授けてくれたものだ!!それを貴様は・・・!!」

 

知ったことか、だからなんなんだと。

 

「知らねえよ、お前が力量差を見なかったのが悪いだろうが、全ての責任はお前にある。」

 

冷たくも妖夢に投げられた言葉は的確なので反論できないのを知ってか、その場で泣き崩れる。

なんか・・・もういいや、さっさと進んじまおう。

 

「あ・・・?」

 

フラァっとバランスを崩し、地面に手を付く俺、何があった・・・?

あ、やべ・・・刺さったわき腹再生してなかった・・・おかげで失血のせいで力が出ない。

再生・・・再生・・・しないと・・・あれ・・・?再生ってどうやるんだっけ・・・?

何も考えられなくなった・・・そうだ・・・再生は・・・能力で・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで天馬の目が閉じられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、幽々子を顧客にする。

白玉楼にて、目を覚ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐおお・・・頭がいてぇ・・・。」

 

多量な失血で死にはしなかったがフラフラする。

再生能力は万能といっても再生自体を忘れていたら普通の人間の様なものだしなぁ。

死なないけど失血したら気を失いますよってあんまり便利じゃないな。

血液は自然回復だからなぁ・・・。

気絶していた時間は大体10分くらいか?

 

起きあがったあとに辺りを見ると妖夢が壁に凭れて気を失っていた。

 

「・・・楼観剣とやらが壊れたショックで気を失っていたのか・・・。」

 

止めを刺されていなくて本当によかったな、まぁ死なないけど。

 

「ちょっとふらつくが前に進むとしますか。」

 

妖夢を放置して白玉楼の門をくぐると目の前にはもの凄いでかい屋敷が見える。

そしてどんどん自分が死にたくなるような自殺をしたくなるようなそんな衝動に刈られる。

 

「おっと、死に誘われるところだったな、死なないけど。」

 

一瞬だけ自分の頭を吹き飛ばそうとした自分の腕、無意識だがまじであぶねぇな。

あれだ、なんか絶望したようなこの世を拒否したような感覚だった。

 

「何が起こったのかわからねぇが・・・嫌な予感がするな。」

 

屋敷に近づくたびにただならぬ何かが押し寄せてくる。

この何かに近づけば多分幽々子がいるのだろう。

辺りはなんか魂みたいなのがうようよしているし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただならぬ何かに最大まで近づくと、幽々子ではなく立派な桜がそびえたっていた。

 

「なんだ・・・?妖気の固まりの様なものが桜の中にあるな・・・。」

 

桜の根本のところに莫大な妖気が溜まっているのがわかる、そして異常なほどに咲いている桜、満開の桜のその上を行くといってもいいだろう。

 

「なぁるほど、春度を集めてこの桜に全て流し込んだってことか、つまりは何かを解放させようとしているな。」

 

根本の何かを解放させようとしているのか?

あれが解放されたらたまらねぇな。

 

「あらあら・・・?お客さんかしら?」

 

桜を眺めていると後ろから艶のある可愛らしい声を掛けられる。

 

「ん・・・?あんたは・・・噂の幽々子じゃないか。」

 

桜の色に似ている髪、綺麗なフリルが付いている着物、その周りを漂う魂のようなもの。

間違いなく西行寺幽々子で合っているだろう。

 

「あら?私の名前を知っているの?」

「知っているも何も幻想郷の春が無くなったのはお前のせいだろう?」

 

まだ犯人と決まった訳じゃないが確定したといってもいいだろう。

 

「えぇそうね、幻想郷の春がなくなったのは私があつめ「そぉい!」...きゃん!!」

 

バチーン!といい音を鳴らす。

犯人と確定したので幽々子の額に結構強めのデコピンを食らわす。

犬みたいな叫び声をした後に額を押さえてうずくまる幽々子。

 

「何するのよぅ~。」

「何するのよぅじゃねぇや、早く春を返してくれよこちとら寒すぎて安眠できないんだよ。」

「えぇ~・・・。」

 

えぇ~じゃないよえぇ~じゃ・・・全く、あんなのを解放させたら何が起こるかわかったもんじゃないっていうのに・・・。

 

「あんなのを解放してなにになるんだよ、お前さんにはデメリットしかないじゃないか。」

「う~ん・・・興味が沸いたからかしら~。」

「沸いてるのはお前さんの頭だよ。」

「酷いわねぇ~。」

 

興味が沸いたからって人に迷惑をかけるんじゃないよ全く。

 

「んで、早く春を返してくれよ、寒すぎて参ってるんだから。」

「少しくらいいいじゃない、別に解放する気なんてないんだからぁ。」

「する気がないならいいじゃねぇか、大体何が目的でこんなことをしとるんだ。」

 

幽々子が少し考えた後、言ってもいいのかなぁとか言い出す。

考えが纏まったのか、まぁいいやぁっという一言で

 

「あれよ、紫に頼まれたのよぅ。」

「紫ぃ?やはり紫が発端か、面倒臭いことをしてくれるな。」

 

桜から少し離れている屋敷の縁側に幽々子が座り、立ち話もなんだから貴方も座りなさいと言われたので隣に座るとする。

 

「紫に頼まれたってことは博麗の巫女絡みだろう?最近霊夢が怠慢だから働かせようとか。」

「よく分かるわねぇ。」

 

俺の推理は合っていたらしい、博麗の巫女が最近何もしないからって大規模な異変を起こすとかどんだけ過保護なんだよ紫は。

紫に呆れて桜を眺めながらタバコを取り出し、一服。

 

「フゥ~、まじで今日は疲れることばっかで嫌になっちまうよ。」

「それは何かしら?」

 

俺の吸っているタバコに興味津々な幽々子。

 

「これか?これはだなぁ、パイポとかキセルの一種に似ているようなものだ、喫煙だな。」

「私も貰っていいかしら?」

 

どうせむせるだろうに・・・タバコに興味を惹いた俺の知っている女はほぼむせたような・・・。

 

あ、妹紅が俺のを吸っていたなそういえば。

 

「別にいいが、肺に入れるからきついぞ?」

「いいわよぅ。」

 

いいなら別にいいが・・・。

幽々子に持っているタバコを一本手渡して口にくわえたのを確認して火をつける。

 

「スゥ~・・・。」

「お!?」

 

おいおいどんだけ吸ってんだ、もう半分無くなっているぞ!?てゆうかなんでむせないんだ!?

 

「ハァ~」

「!!」

 

幽々子が吐き出した煙はボフゥと俺達を飲み込む位すごかった、どこぞのグラップラーの親父だよ・・・・。

 

「ゴホッゴホッ!!」

 

吐き出された煙を吸ってしまったために逆に俺がむせてしまった。

 

「なかなかいいわねこれ、癖になりそうだわぁ。」

「すごいなお前さん、普通ならむせるんだが・・・ていうかもっと少しずつ吸おうな。」

 

幽々子が吸ったタバコはもう三分の一ほど無くなっており非常にもったいない。

一回吸っただけでこれってなかなかにやばいぞ。

 

「あら、もう無くなってしまったわ、もう一本くださるかしら?」

 

タバコが無くなりそうなのを確認して、俺にもう一つ催促してくる。

 

「そんなんじゃすぐに無くなるわ、全部やるよ。」

 

ポケットから一箱取り出し、幽々子に渡す。

するとすぐにタバコを取り出し火を付け今度は少しずつ吸う幽々子。

 

「ハァ~・・・これってどこで入手できるのかしら?」

「人里じゃぁ売ってないだろうな、俺特製だからな。」

「あら残念・・・。」

 

気に入ったようでどこで買うのか聞いてくる幽々子。

だが売ってないことを知るとすこしショックなようでガックシしている。

 

「そうだわ、そうしましょう。」

「ん?」

 

いきなり手をパンと叩いてニコニコしながら俺に向く。

 

「貴方・・・白玉楼に住まない?」

「どんだけ気に入ったかわからないが、それはないな。」

「えぇ~・・・。」

 

正直美人の所に住ませて貰うのは嬉しいのだが地上に降りるときが面倒くさい。

いちいち落ちて、いちいちジャンプして階段を登るとかすごいやだ。

 

「じゃぁ、妖夢をあげるわよ?」

「ぶふぉっ!何を言い出すんだお前は・・・。」

 

妖夢をあげるって物みたいに言うなよ・・・かわいそうだろうが。

 

「いいじゃない?妖夢は可愛いのだし料理もできるしお買い物も上手いわよ?」

「ほう・・・。」

 

確かに可愛い、料理もできて買い物も上手い、才色兼備だな妖夢。

 

「すごい欲しいけど無理だな、俺妖夢の刀折っちゃったもん。」

「酷いことするわねぇ。」

「あれは俺悪くないしな。」

 

いきなり襲ってきたのはあっちだし、別に俺は悪くないよな。

 

「まぁ俺はそろそろ帰るわ、これ妖夢に渡しといて。」

 

そろそろいい時間だしな、霊夢がなんとかしてくれるだろう。

創造した楼観剣を幽々子に渡しておく。

 

「あら?折ったんじゃないの?」

「あれは偽物だからな、妖夢にそういっとけ。」

 

嘘だけど気休めくらいにはなるだろう。

俺も少し悪いと思ってるしな。

 

「あぁ、あれは?」

 

手を俺にのばして何かを催促する幽々子。

タバコのことだろうか。

 

「強欲だねぇ、とりあえず一箱ね。」

「少ないわねぇ。」

「香霖堂って所にくれば10箱2文で売ってやるよ。」

「強欲ねぇ。」

 

金なんて創造できるので興味ないがとりあえず商売商売。

 

「んじゃぁまたな、機会があればまたあおう。」

「じゃあねぇ~。」

 

俺に手を振る幽々子。

さてさて妖夢に会いにいってみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

門の所に戻ると妖夢は壁に凭れながらぶつぶつと独り言をつぶやいている。

 

「おいおい、まだうなだれてんのか。」

「楼観剣・・・私の楼観剣・・・。」

 

楼観剣楼観剣うるせぇな。

 

「幽々子に会いに行ってみろ、その折った刀は偽物だ。本物を幽々子に返しといたから。」

「え!?本当!?」

 

俺の言葉を聞いた妖夢はスクっと立ち上がり幽々子の方に走っていった。

さて、これでひとまずOKだ、あとは香霖堂でゆっくりしよう。

スキマを展開して香霖堂に戻ろうとすると霊夢と魔理沙と咲夜にばったり会う。

てかなんで紅魔館の従者がいるんだよ。

 

「・・・。」

「あ、天馬・・・。」

 

魔理沙が俺に気づいてなにかを言おうとするがもうどうでもいい。

スキマの中に入って帰ろう。

 

「おい、天馬!」

 

どこにでも行ってしまえって言ったのは魔理沙だ、俺がどこに行こうが関係ない。

とりあえず放置。

 

スキマの中に入り閉じようとすると、魔理沙が俺に向かって大声で叫んでいる。

そして閉じ掛けた瞬間紅魔館の従者が俺を苛つかせる言葉を吐く。

 

「逃げるのかしら?」

「あ?」

 

スキマをもう一度開き、咲夜の言葉をもう一回聞く。

 

「お前今なんて言った?」

「別に?何でもないわよ。」

「あぁ!?」

 

スキマから出て、咲夜の方に向かって行こうとすると魔理沙と霊夢に止められる。

 

「ちょ・・・ちょっと、何怒ってんのよ天馬?」

「落ち着け天馬!」

 

咲夜の前に二人して出て、咲夜に手を出させないようにする二人。

 

「おい、お前さっき何て言った?」

「だから何でもないわよ、耳が遠いのかしら?」

「・・・。」

 

紅魔館の連中はどうしてこうも俺を苛つかせるのが好きなのか、今度こそつぶしてやろうか?

 

「何て言ったって聞いてんだよ!!」

「グッ!?」

 

霊夢と魔理沙を押して咲夜に前蹴りを当てて、咲夜を壁に叩きつける。

衝撃で咲夜に当たった壁は少しめりこんでいる。

 

「おい天馬!!」

「やめなさい!」

 

咲夜が蹴られた瞬間に霊夢は祈祷棒を持ち構える、魔理沙は俺にひっつき止めようとしている。

 

「もう一度聞くが・・・なんて言った?」

 

地面に座りながら俺の目を見ている咲夜にもう一度聞く。

仏の顔も三度までだ、いい加減にブチ切れそうだ。

 

「・・・何て言ったか忘れたわね。」

「ほう・・・?いい根性じゃねぇか、お前を殺した後に紅魔館の連中を皆殺しにしてもいいんだぞ?」

「お嬢様は関係ないでしょう!?」

 

レミリア達の名前を出した途端咲夜は俺に噛みついてくる。

 

「じゃぁ最後に聞くが、何て言ったんだ?」

「・・・逃げるのかと。」

「何でそんな事を言ったんだ?」

「謝ろうとしている魔理沙をわざと無視して逃げる様に消えようとしたからよ・・・。」

 

咲夜の言葉を聞いた魔理沙が俺から離れて顔を俯かせる。

 

「お前には関係無いだろう?俺と魔理沙の問題に首突っ込んでくるじゃねぇ。」

「そう・・・ね・・。」

 

言いたいことは言った、香霖堂に帰らせて貰おう。

 

「次、俺を挑発したらどうなるか覚えておけ。」

 

スキマを開いて今度こそ香霖堂に帰らせて貰う。

折角客が出来たっていうのに紅魔館の連中はいらつかせてくれるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、久しぶりの休日を取る。

仕事が忙しいです^q^ やめたい位です^q^


妖々夢異変解決の翌日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐがぁ~・・・ぐぉ~・・・。」

 

白玉楼から直帰してすぐに自分の部屋で寝た俺、現在時刻昼1時である。

アリスの手伝いは明日だし、今日はゆっくり休むことを昨日決めているため今日の起床予定時間は夕方五時位にしているためまだまだ寝る。

 

「ぐ・・・ビュッヘ!!!」

 

予定とは狂わすものである。

口呼吸のせいか口の中がものすごくしょっぱい、そのしょっぱさのせいで起床してしまった。

 

「ズビ・・・今何時だ?」

 

相変わらず俺の鼻の中は絶賛鼻づまりパレードである。

ティッシュを手に取り鼻をかんで時計の方向を向き、現在の時刻は何時か確認。

まだ1時10分・・・、二度寝をしようと思ったが今日にかぎって目が冴えてやがる。

 

「・・・とりあえず下に行くか。」

 

香霖堂の二階はもはやもう俺の部屋と化している、居候の身分でこの生活は良くないと思うのだが香霖曰く「話相手がいるのは楽しいし君の能力は非常に便利だから居てくれて構わない」らしい、まぁ一生ここに居るのはさすがに良くないと思うのでそろそろ新居を構えようかと思っている。

 

自分の部屋の襖を開けて下に続く階段をゆっくり降りる。

香霖堂は結構古くギシギシと音を立てている、いずれリフォームでもしてやるつもりだ。

 

「お早う、今日も遅い起床時間だね。」

 

階段を下りてきた俺に対して本を読みながら窓際に座っている香霖が俺に話しかけてくる。

 

「おう、だが今日は珍しいことに目が冴えているぞ。」

 

何時もなら起きてから二時間くらいはアクビを垂れ流しているのに全然出ない。

珍しいこともあるもんだ。

 

「そうかい、じゃぁ目が覚めている間に顔を洗うと良いよ。」

「そうするよ。」

 

 

洗面台に向い、蛇口から出る水を手のひらに集めて顔を洗う。

今の時代幻想郷では井戸が主流だが面倒臭いので香霖堂には俺の創造した水道を使っている。

 

「ぶはぁ~冷てぇ~・・・。」

 

顔を洗ったあと洗面台に置いてあるカップの中から俺の歯ブラシを手に取りシャカシャカと歯を綺麗にする。

歯磨きをし終わったあと鏡で自分の歯を見て磨き残しが無いかを確認。

 

「うん、虫歯無し歯垢無し今日もいい感じだ。」

 

身だしなみだけはキッチリとね、健全な男の子なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぅ・・・。」

 

香霖堂の自分の椅子でタバコを吹かして口で固定しながら創造したルービックキューブを試行錯誤しながら弄り回す。

全然色が揃う気がしない。

 

「うーん・・・全然分かんね。」

 

色が一色も揃わないルービックキューブを投げ捨て、諦めてコーヒーでも飲もうと席を立つ瞬間、香霖堂のドアに付けてあるドアチャイムがチリンチリンと鳴り開かれる。

 

「おや・・・、初めてのお客さんだ。」

 

香霖がドアの方向を向き初めて香霖堂に着た客を見ながら本をパタンと閉じる。

俺も手にとったカップを持ちながらドアの方向を見るとそこには昨日であった人物がそこにいた。

 

「来たわよぉ~。」

 

綺麗なピンク色の髪、水色を基調としたドレスっぽい服装、そしてこの喋り方。

 

「幽々子じゃねぇか、煙草でも買いに来たのか?」

 

昨日獲得した多分お得意様になるであろう俺の客。

そして後ろには楼観剣楼観剣と煩かった妖夢。

てかもう煙草吸い終わったのか?

 

「そうそう、50個程頂こうかなぁって。」

 

50個だと・・・なんたるヘビースモーカー・・・。

麻薬並の中毒だなもう、死んでもしらんぞ・・・いや、もう死んでるか。

 

 

「多いな、まぁ入れよ。」

「悪いわねぇ。」

 

ドアにつっ立っている二人を香霖堂の中に招いて椅子に座らせる。

戸棚にあるカップを人数分持ちコーヒーを入れて、机の上に置いて座っている二人に差し出し香霖の机の上にも置いて幽々子の座っている近くの椅子に座り少しコーヒーを飲む。

 

まぁ所詮はインスタントだなって感じの味、不味くもなく美味しくもなく。

 

「んで、50個ってことはそれなりの金を持ってきているんだろうな?」

 

差し出されたコーヒーを幽々子も飲み、妖夢も飲んだが苦いためか少しずつ飲んでいる。

 

「そうねぇ、7文くらいならあるわよ。」

「7文って、あと3文たりねぇぞ。」

 

10箱2文と言ったはずだが・・・まさか忘れているのか?

まぁ値段は適当だから安いのか高いのかよくわからねぇけど。

 

「お金がないのよぉ~、ほとんど食費だしねぇ。」

 

おいおい隣に座っている妖夢が頭を抱えているぞ、大変だな。

ほぼ食費・・・どんだけ食うんだ幽々子は、月いくら使ってるのかわからないがほぼ食費ってことは結構食うんだろう。

 

「ん~じゃぁ40箱位だな、一銭もまけんぞ。」

「ケチねぇ、どうせ能力で作っているんでしょう?それくらいいいじゃない。」

 

どこで俺の能力を聞いたのか知らねぇけどこっちも商売だからそうはいかないのが幻想郷。

まけたりでもしたら次来るときもまけなければ行かないしな、金はきちんと払ってもらいたいもんだ。

 

「駄目だ駄目、それが嫌ってんなら他の所に当たってくれ。」

「何処にも売っていことを知っている癖にぃ。」

 

煙草は俺しか売ってないし、その技術もないだろうしな、そもそも煙草の葉をどこで入手するかも難しいだろうし。

 

「まぁそう言うなよ、種類は豊富だ、吸見してみるか?」

「あら、気がきくじゃない。」

 

机にポンポンと俺の知る限りの煙草を置いていく、メンソールがきついもの、メンソールと煙草の味が平等なもの、普通なもの、外国製のもの。

あとはバニラとかいちご味なんかも。

 

「色々あるわねぇ、迷うわぁ。」

「ゆっくり自分に合ったものを見つけるといい、決まったらそれにしてやる。」

 

幽々子が一本一本手に取り、吸味をしているなか妖夢はつまらなそうにしている。

ずっと座りながらコーヒーをちょびちょびと飲んでいて可愛らしい。

 

「お前は吸わないのか?」

 

妖夢に煙草を吸うか聞いてみると少し考えたあと俺の言葉に返答する。

 

「興味はあるんですけど・・・」

「ほう、じゃぁ吸ってみるか?」

 

興味があるなら吸ってもいいと思うぞ、半霊ってことは未成年じゃなさそうだし。

何事にもチャレンジするといい。

 

「ん~・・・じゃぁこれなんかどうだ?チョコのやつだ。」

 

黒いパッケージのタバコを取り出し妖夢の前にトンッと置く。

吸ったことないけど匂いからもうチョコの匂いがはんぱない。

 

「随分甘い匂いですね・・・。」

「まぁまぁ試してから選ぶといいよ。」

 

妖夢はぎこちない手で煙草のパッケージを開けて口に含んだ後火を点けて吸う。

ゆっくり吸っているためかむせることはないようだ、少し吸ったあとハァ~・・・っと吐き出す妖夢。

 

「・・・いいですね、これ。」

「気に入ったようだな、それはサービスだ・・・やるよ。」

 

早くも顧客を二人ゲット、商売はこうでなきゃぁな。

妖夢とだらだらとしゃべっているとようやく幽々子が気に入った煙草が見つかったようだ。

 

「これにするわぁ。」

 

気に入ったものはなんとタール30のメンソール煙草、30っておま・・・。

俺でさえ8か11で満足だというのにこの女、ヘビー所じゃねぇ・・・。

 

「おおう・・・じゃぁそれを40個な、ついでにライターも入れておくよ。」

「ありがと♪じゃぁまた来るわねぇ。」

 

40個の煙草を袋のなかに入れて、妖夢の気に入った煙草を1個入れておく。

さてさて、この二人でこの煙草、何日持つかな。

月一くらいだと予想するが、一週間で来そうな予感もする。

 

幽々子と妖夢を見送って、香霖堂に戻り、香霖の机の上に代金を置いておく。

 

「君もなかなか商売が上手いね、見習うべきかな?」

「上手いかどうか知らないが見習うなら見習えばいいさ。」

 

香霖と会話したあとに自分の椅子に座りドカッと座る。

繁盛しそうでこれから大変になるな。

レジなんかも創造しといたほうがいいのかな・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙草を創造して戸棚に煙草を置いてひと段落、こんなかんじで香霖堂を発展させていくのも面白いもんだ、コスト0で儲かるんだからいいもんだ。

自分のいた世界には商売するになんか色々と免許とか必要とか聞いたがここは幻想郷、売るのも買うのも自由だ。

 

「のちのちオリジナルの煙草も置いてみたいもんだな。」

 

前の世界で市販されていた煙草ばっかりおいてもなんか味気ないしな、自分の煙草が有名になったらそれはそれで嬉しいし。

 

椅子に座りふと思いついたことを香霖に聞く。

 

「そういえば香霖、聞いてなかったが勝手にここで商売していいのか?」

 

何を今更という顔で香霖は俺を見て、笑いながら俺に答える。

 

「別に大丈夫だよ、君の商品を見た後に僕の商品もみてくれるかもしれないしね」

 

なるほど、香霖の言うことにも一理ある、コンビニのコピー機みたいな感じだな。

例えるとこうだ、コピー一枚5円だとして利益はあるか?ときかれたら無いだろう。

重大なのはコピー機を使ったあとに ついで で他の商品を買ってくれる客みたいな。 

持ちつ持たれつって感じだなぁ。

 

久しぶりに香霖に関心してしまった。

商売上手なのは香霖の方だろう。

 

「そうかそうか、それならいいんだ。」

 

 

今日は色々と面白かったな、妖夢とも以外に会話できたり、煙草仲間が増えたりしてな。 今日の客はこれ以上来なさそうだし、見せじまいなのかね?

明日の予定はアリスの家の手伝いだな、一体何を手伝うんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うーん手伝いねぇ・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様お久しぶりです。


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天馬、アリスの家の手伝いをする?

さて、今日はアリスの家の手伝いをする日だ。

何時に会う約束はしてないので、昼すぎに香霖堂を出た次第だ。

アリスの家に行く時は必ず手土産を持っていくのが恒例となっているので菓子を創造して包に入れて出発。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキマを創造して展開し、アリスの家の前に降りてドアにノックをする。

 

「うおーい、きたぞー。」

 

コンコンと音を鳴らすドア、数秒位したあとにギィ・・・っとドアが開かれ、目の前にはアリスがいた。

「待ってたわよ」というアリスに軽くお邪魔しますと言ってから中に入る。

相変わらず部屋の中は人形だらけだ、すこし可愛くしてあるからいいものの少しリアルに作ってある人形は非常に苦手である、夜とか動きそうだし。

 

事前に持ってきた手土産を机に置いて、アリスの手伝いの内容を聞く。

 

「んで?手伝いとは言ったが何を手伝えばいいんだ?」

 

机の下にしまってある椅子を引いて、座りながら紅茶を入れているアリスに聞くと

紅茶を入れ終えたカップを俺の目の前に置いて一息ついたあと意外な返答が返ってくる。

 

「実はもう終らせたのよね。」

「はぁ?」

 

一日で俺の手も無しに終わらせたようだ、俺来た意味あんのかこれ。

まぁそのぶん俺が楽できるからいいんだけど、なんか釈然としないなぁ。

 

「終わらせたって・・・俺来た意味ないだろうよ。」

 

アリスに手伝ってと言われたから来たのであって遊びに来てなんて言われていない

ので俺のここに来た俺の存在意義が全くの皆無である。

 

「いいじゃない、ゆっくりくつろぎましょ。」

 

まぁアリスがそういうのなら別にいいが・・・。

本当に分からない女の子だな・・・。

じゃぁ菓子でも食べながら紅茶でも嗜んでるか。

 

 

今日の手土産は俺の大好きな焼きプリンだ。

甘い物は苦手だが唯一プリンの中ではこれが一番好きである。

机の上のもってきた手土産の包を丁寧に開けて、箱を開けてから6個入りのプリンを二つ手に持ち、アリスの前に置いて、手にとったもう一つのプリンのラベルを剥がしてスプーンを創造して食べる。

うーんとろける、頬が溶けそうなほど美味い。

アリスも俺のラベルを開ける動作を見たあとにラベルを剥がしあらかじめ置いておいたスプーンでプリンを掬い上品に食べている。

 

「あら、美味しいわねこれ。普通のプリンと違って口当たりが滑らかね。」

 

普通のプリンを食べたことがあることに驚きだがやはりアリスにもこの焼きプリンの美味しさが分かるらしい、

 

「だろ?この滑らかさ、上に少しだけ焼いたプリンの表面、すべてが絶妙にマッチしているんだよ。」

 

スプーンをフリフリ振ってと美味しさを表現しながら喋る。

それ見たアリスは「まるで子供みたいね。」と笑いながらゆっくりとプリンを食べる。

 

「そういえば天馬。」

「ん?」

 

プリン食べる手を止めて俺に顔を向けたアリス。

 

「魔理沙が昨日来て、天馬が来たら「ごめんなさい」って謝っといてって言われたけど、何かあったのかしら?」

「・・・知らんね。」

 

この話を早々に切り上げたいため知らないと言ったがアリスには見抜かれている。

 

「ねぇ天馬?貴方の悪い癖よ?いつまでも拗ねて相手の謝罪を受け入れないのは。」

「・・・。」

 

俺の悪い癖・・・ねぇ。まぁ自分でもわかってはいたが言われると辛いな。

前の世界でもこの性格のせいで親からも知り合いからも見捨てられたもんだし。

唯一俺の性格でも当たり障りなく接してくれたのはネットの世界の奴らだ。

 

「分かった、直ぐには変えれないかもしれないがこの悪い癖を直しておこう。」

「そう、賢明ね。」

 

俺の言葉を聞いたアリスはまたプリンを食べる。

ふむ・・・悪い癖か、第一歩としては魔理沙に謝ることかな。

ん?待てよ?あれ俺悪くなくね?魔理沙がどこにでも行ってしまえって言ったから従ったら謝るとかよくわかんないな・・・。

 

俺がうんうん唸って考え耽っているとアリスから助言を貰う。

 

「いい?天馬?例え貴方が悪くなくても謝ることが大事よ?相手が女の子場合はもっとそう。怒られても絶対に反抗をしちゃ駄目、肯定して謝り続けることがいいのよ。」

 

なるほどね、女尊男卑は好きではないのだがアリスの言うことは間違いないので助言通りにしてみようじゃないか。

反論できないっていうのがまた面倒くさいが・・・。

 

「わかった、アリスの言うと通りにしてみよう。」

「頑張ってね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな感じでアリスの家の手伝いをせずに時間は過ぎた。

 

「んぅ・・・?」

 

やべぇ、どうやら寝ちまったようだ、菓子食って寝るとかガキかよ俺は・・・。

イビキとかしてないだろうな俺。

なんだか膝の部分が暖かいなと思ったら膝掛が掛けてある、熟睡しているのもしょうがないね。

 

「あら、起きたの?お早う。」

 

目をゴシゴシと手で拭い、伸びをして骨をパキパキと鳴らしていると後ろからアリスの声が聞こえた。

 

「すまんな、寝ちまったようだ。」

 

膝掛を畳んで置いて後ろを向くとアリスがスープのようなものを二つお盆に乗せて持っている。

 

「丁度いいわ、晩御飯にどうかしら?」

 

晩御飯?あぁ・・なるほど、窓を見ると一瞬で分かった、来るときはまだ日差しが指して暖かかったのに今ではもう真っ暗だ。

推測すると今の時間は7時位か。

 

「美味そうだな、頂くよ。」

 

中々にうまそうなスープだ、コンソメスープかな?

アリスが机の上にスープの入った皿を置いて台所に残っているパンが入った入れ物を持ってこようとしているので手伝う。

 

「いいよ、座ってな。」

 

台所に向かおうとするアリスを椅子に座らせ、台所に向かってパンの入れ物を持ってくる。

 

「あ・・・ありがと。」

 

アリスはお礼をしてスプーンを俺と自分の皿の横に置いて「いただきます」と言ったので俺も「いただきまーす。」と言ってからスープとパンに手を付ける。

おおう、このスープすっごい美味い、どうやって作ってるんだろう。

料理の教養がない俺はこの美味しさをどう表現するのか分からないがめちゃくちゃうまい、のこったスープを水筒に入れて温め直して飲みたいくらいだ。

 

「これ凄い美味いな、また今度作ってくれよ。」

 

癖になりそうな程美味い、懐かしいようなそうでないような。

「それ、魔理沙の作ったスープを改良したのよ、魔理沙がいないと難しいわね。」

あぁ成程・・・だから懐かしい味だと思ったのか・・・。

 

「改良ねぇ・・・おかわりあるか?」

 

飲み終えたスープを持ち上げてアリスにおかわりの意図を表現。

「悪いけどもう無いわよ。」

がーんだな・・・出鼻を挫かれた。

持ち上げた皿を机に置いてパンを食べるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お腹いっぱいだ。」

 

スープとパンを食ったおかげでカラッポになった胃はパンパンだ・・・パンだけに。

なかなかに上手いダジャレだろう・・・?芸能人になれるレベルだ。

 

「何を考えているのか分からないけどそれは無いと思うわよ。」

 

頭の中を読んでいるのかアリスは・・・。

まぁいいだろう腹も膨れたしそろそろ帰るとしようじゃぁないか。

腕時計を見てみると時間が経つのは早いようでもう夜の九時。

 

「んじゃそろそろ帰ろうかね。」

「ん・・・。」

 

アリスに帰る事を告げて家の外に出ると玄関の前でアリスが俺の手を掴む。

いきなり掴まれたのでびっくりして後ろを向くとアリスが顔を俯かせながら無言でなにも言わない。

 

「ん?どうした?」

「・・・。」

ずっと黙っているアリスはなぜか俺の手を離そうとしてくれない。

なんだ・・・?忘れ物でもしたのか?いや、忘れ物なら忘れ物って言ってくれるはずなんだが・・・。

 

「・・・おい?」

「・・・。」

 

なんなんだ?言ってくれなきゃわからねぇよアリス。

お前は俺に何を求めているんだ?なんで俺の手を離さないんだ?

離さない手を見ているとアリスがゆっくりと手を離して別れの挨拶をしてくる。

 

「ん・・・じゃぁね。」

「お・・・おう?」

 

俺がポカーンとしている間にアリスはさっさと自分の家に入ってしまったようで俺だけがアホみたいに一人でいる。

 

「・・・帰るか。」

 

今日はよくわからないことだらけだったな、まぁこんな日もあるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、死神に襲われる。

小鳥遊天馬様、人里の外れにてお待ちしております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼起床して香霖が俺に一通の封筒を渡してくる。

差出人の名前は書いておらず表と裏を確認してみたがやはり書いていない。

書いてあったのは小鳥遊天馬様、とだけ。

香霖堂の玄関の前に置いてあった封筒を香霖が見つけたようで中身は見ていないらしい。

 

「あ~・・・?人里の外れだぁ??」

 

封筒の中の手紙には小鳥遊天馬様、人里の外れにてお待ちしておりますの文字だけ。差出人が書かれていないので誰が送ったのかすらわからない。

文字は筆で書いたようで達筆っていうのかな?綺麗な文字だ。

 

「ん~・・・面倒臭いからいいや。」

 

手紙をポイッとゴミ箱に投げ捨て眠気眼を覚ますために顔を洗いに洗面台に向かう。大体非常識なんだよ、呼び出しておいて自分の名前を書かないなんてな。

そんな奴には待ち人来きたらずだ。

 

「ぐあぁ~眠い。」

 

顔を洗い歯を磨き終わって椅子に座り、伸びをしてから吐いた言葉。

椅子の近くに置いてある机の上に常備されている煙草を一本取り出し火をつける。

これがないと頭が回らない、多分これが無かったら発狂しているところだろう。

 

「手紙にはなんて書いてあったんだい?」

 

今日は珍しく本を読んでいない香霖、絶賛日向ぼっこ中である。

香霖の定位置である窓の横は日差しがよく、春秋冬の晴れの時は最高に気持ちいい、一回だけ座ったことがあるが香霖に怒られたのでもう座らない。

 

「ん~人里の外れで待ってるってよ、差出人が書いてない時点で怪しさ満点だし面倒くさいからいかないけどな。」

 

面倒臭い9非常識1って感じで主に面倒臭いから行かない、俺の体の90%は面倒臭いでできている、ん?その割にはよく動いてるって?それは気分だ。

 

「君のファンとかじゃないのかい?」

 

ニヤニヤと笑う香霖、射命丸の事件以来新聞を見た人里の女子が香霖堂に沢山来たのはビビった、お帰り願ったが。今でも人里に行くとちょくちょく声を掛けられるし、男共からは妬みや恨みが詰まった目で見られる。何故か子供からは俺みたいになるために日々修行がなんたらこうたら、わけがわかんね。

 

「うるせーやい、俺だってあんなふうになるとは思わなかったんだ。」

 

あれは恐ろしかった、皆獲物を狙う様な目をしていた。

初めて恐ろしさで泣きそうになったほどだ。

 

「そういえば香霖、手紙は何時頃に拾ったんだ?」

「そうだなぁ、朝7時頃かなぁ。」

 

現在昼1時、まだ待っているのだとしたら6時間も待っていることになる、ご愁傷様だな。次は目を引く文章と興味の湧くような感じで書いてもらいたいもんだ、あと差出人の名前もな。

 

「はぁ~なんか面白いことないかねぇ。」

 

客がくればそれはそれで暇が潰せる、だけどここは香霖堂。

まともな客なんて滅多に来ない、拝借という名の泥棒臭いことするやつもいるし。

何も買わずに世間話するだけのやつだっているし。

そもそも香霖堂にまともな客なんてこないだろう、いるとしたら幽々子位だし。

 

「凄い失礼なこと考えてないか?」

 

もう博麗神社に行こうかなぁ、霊夢のお茶が飲みたい。

よし、そうしよう。

 

「香霖、博麗神社に行ってくるよ。煙草を買う客が来たら1箱2銭10箱2文な。」

「わかった、外に行くついでに人里のいま人気の緑茶を買ってきてほしいね。」

「はいはいわぁ~ったわぁ~った。」

 

椅子から立ち上がり机の上の煙草をポケットに入れて香霖堂から出る。

えーっと博麗神社に行き先設定して、スキマを展開っと・・・。

すると目の前にスゥ~っと線が出てきてパカァっと開かれるスキマ。

最近調子わりぃな、前はスット出てサット開いたもんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと。」

 

博麗神社の境内に降り立つ俺。

そしてポッケから1銭とりだし大きく振りかぶり賽銭箱に向かって思い切り投げる。投げた1銭は賽銭箱に向い、ズドォンとめり込む。

 

「また失敗か。」

 

これで通算三回目のめり込み、俺としては突き破って中に入れたいのだが。

力の調整が難しいな、しかも投げるたびに賽銭箱もただの木から鉄になってやがる、金がないのにこういうことだけには働く巫女さんだこと。

 

「ちょっとぉ!?また天馬か!?」

 

さっきの轟音を聞いたであろう、霊夢が神社の中から飛び出てくる。

賽銭箱に素早く近づきめり込んだ一銭を見て激昂する。

 

「天馬!何回も言うけどお金を入れるときは賽銭箱に傷つけないでくれるかしら!?」

「ははは、まだ三回目だよ霊夢。」

「そういう問題じゃないでしょ!!」

 

霊夢はめり込んだ一銭を取ろうと引っ張っているが鉄にしたせいで取れない。

対策も無駄になり金は手に入らないしなかなかに可哀想だが、いつみてもめり込んだ金を取ろうとする格好は非常に笑える。

 

「くっ!とれないわね!!」

「ブッ!!!」

 

必死に一銭を取ろうと頑張っている霊夢を見て吹いてしまった。

何度も見ているが中毒性のある面白さだ、参拝の人がきたら笑い転げるか変な目で見られること間違い無し。

 

「はぁ・・・もういいわ。」

「諦めんなよもっと熱くなれよ!!」

 

どこぞのテニスプレーヤーの立派な台詞だ、これで霊夢も俄然やる気が出てくるだろうよ。

 

「元はといえば誰のせいでこうなったと思ってんのよ!!」

「知らんね。」

 

俺のせいじゃない、霊夢が面白いから悪いんだ。

次はもっとやる気が起きるように1文にしておこう。

 

「はぁ・・・もういいわ・・・で?何しに来たのよあんた?」

「霊夢の作るお茶を飲みに来ました!!」

 

超絶スマイルで片腕を上げて、今日博麗神社に来た理由を高らかに叫ぶ。

 

「面倒臭いから却下。」

「えぇ~せっかく茶菓子もってきたのにぃ~。」

「上がりなさい。」

 

スキマから茶菓子を出して見せると霊夢は前言撤回して神社の中に入っていく。

素直な女の子でいいのか悪いのか・・・・。

 

「おっ邪魔しまーす」

 

境内の中に入り裏の縁側に直行、あそこは暖かくていいんだよな。

霊夢はどうやら台所に行ってお茶を作っているようだ、奥から火を付ける音が聞こえるし。

 

「どっこらせ」

 

縁側に着いて日向のいいところに座る、やっぱりここが暖かいな。

ポケットから煙草を取り出し灰皿を創造してと。

外で吸う煙草もまた格別、空気にも味があるっていうことがわかるな。

香霖堂の空気はなんか湿気てるような感じ、魔法の森が近くだからかな?

博麗神社の空気はスッキリしていて煙草の味も変わる。

 

さてさて、霊夢がお茶を持ってくる間に茶菓子を開けようじゃないか。

 

「ジャジャジャジャーン、小鳥遊印の生八つ橋!(コーヒー)」

 

スキマから茶菓子を取り出し上に上げて一言。

八つ橋にコーヒーって合わないだろ!!って思う人もいるだろうがめちゃくちゃ美味しいぞ、程よい甘さとコーヒーの苦味、あと香り。

 

あと霊夢が好きそうでないのでちゃんとした八つ橋もあるぞ!

俺ってなかなか気配りがあるだろ?

 

「れーむさんや、お茶はまだかね?」

 

博麗神社の台所に向かって呼んでみるが反応無し、無視されてんのかな。

 

「なんでいなんでい、少し位賽銭箱で遊んだくらいでそこまで怒ることないじゃんか。」

 

スッと立ち上がり霊夢のいる台所に向かう、その途中あることに気づく。

なんだ?布団が散らかりっぱなしじゃないか、畳んどいてやるか。

 

「寝巻きもそのままじゃん・・・、片付けくらいしろよ駄目巫女。」

 

ついでに寝巻きも畳んで置いた、てか霊夢、ヤカンがさっきからピーピーなってるぞ、それ以上熱くしたら俺の口が火傷しちゃうじゃないか。

 

たたみ終わった布団と寝巻きを端に寄せて、台所に向かう。

 

「お~い、火止めねぇと火事になるぞ~。」

 

台所の入口のドアのノブに手をかけ、開いてみると異常な光景がそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢が倒れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!おい!どうした霊夢!!」

「あ・・・、天馬・・・。」

 

すぐに火を止めて霊夢に駆け寄り顔を覗き込むと汗だくで過呼吸っぽい息遣いで顔が真っ赤だ。

 

「熱か!?」

 

霊夢の額に手を当ててみると誰しもが熱いとわかるほどに熱を持っている。

 

「悪いが布団に寝かせるぞ!」

 

霊夢を仰向けにして肩の後ろと膝の裏に手をかけ、運ぼうとすると払いのけられる。

 

「大・・・丈夫よ、これくらい・・・。」

「大丈夫なわけねぇだろ!」

 

払いのけられた手をどけて次は布団に運ぶ、たたんである布団の横に一旦霊夢を置いてすぐに布団を広げて霊夢を乗せ、掛け布団を弾く。

 

「なんですぐに俺に言わなかったんだ・・・?」

「悪いわね・・・、少し・・・怠かっただけなんだけど・・・。」

 

少し怠いわけがない、さっき手で額の熱を測ってみたが38度位はあったはずだ。

意識が朦朧として頭も痛かったはずだろうに。

 

「・・・まぁ落ち着くまで寝ていろ。」

「ん・・・。」

 

霊夢の部屋から出て襖を閉めて後ろを向くと目の前にはでかい鎌を持った奴らが庭にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だお前ら?」

 

いきなり現れた奴らに少し驚いたがすぐに落ち着きを取り戻し質問をする。

 

「小鳥遊天馬さんですね・・・?お迎えに上がりました。」

 

鎌 迎え このキーワードから当てはめるに奴らは死神かなにかだろう。

しかし一人じゃないのは何故なんだ?ていうか俺死ぬの??

 

「迎えだぁ?俺はパーティーにも宴会にも招待されていないはずだが?」

「あなたが招待されたのは宴会でもパーティーでもなく・・・地獄ですよ。」

 

鎌の奴ら一斉に戦闘体制に入ったようだ、これって仙人と一緒で死神を倒して生き延びるってやつなのか・・・?しかし五人とは・・・。

てか俺って死ねるのか??能力が使えないっていうことはなさそうだし。

 

「残念だけど俺はその地獄には行きたくないから拒否させてもらうぜ。」

 

まず俺は血液意外なら回復はできる、これを利用させてもらうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと。」

「しぶといですね。」

 

五人同時に襲い来る鎌を避けながら霊夢からじわじわと離れていく。

巻き込んだら何が起こるかわかったもんじゃないしな。

 

丁度いい場所にも着いたみたいだし。

 

広くて何もなくてなおかつ戦闘ができる場所・・・それは博麗神社の境内だ。

誘導されていることになにも気づかない馬鹿共は必死に俺に攻撃しているが掠りもしない。

 

 

「さて、そろそろやらせて貰おうか。」

「何!?」

 

襲ってきた五人の一人の顔を掴み地面に叩きつけ、そこを力いっぱい踏む。

踏まれた死神は地面と共に陥没していき、下半身だけが残り音も無く消えていく。

 

「ほほう、さてはお前ら・・・どっかで復活しているな?」

 

妖怪は殺したらその場で残るし神なんかは神力垂れ流しで死んでいくしな。

妖精は殺しても自分の定位置に戻ると聞いていたのでそんな感じなのだろう。

 

「おい!!囲め!!」

「分かってるよ!!」

 

死神共は一人いなくなった五人で俺を囲み逃げられないようにしている。

逃げる気などさらさらないがやられる気もないんだなぁこれが。

次は囲んで最初に鎌を振ってきたやつを足払い。

 

「実戦経験がないのか?」

 

足払いされた死神は一瞬だけ宙に浮いて間抜けな声を出す。

 

「え・・・?」

 

その瞬間、宙を舞った間抜けな死神は体を半分に分断させられる。

分断させられた上半身と下半身はボトリと地面に落ちて、また音も無く消えていく。

 

「おいおい、お前ら本当に死神か?弱すぎだろ?」

 

手を鋭利な鉤爪状態にして死神共に言い放つ。

死神の強さがわからないのだが本当に弱い、霊夢でも勝てるレベル。

 

「いくら仕事場に復活出来るからってごめんだ!!」

「俺らじゃ勝てねえよ!!どうすんだよ!!」

「五月蝿い!!いいから黙ってこいつを殺せ!!」

 

言い合いをしている死神共、こいつらにはチームワークってもんがないのか。

二人は怖気づいてるしもう一人は威勢は良くても俺に近づかなくなったし・・・。

 

「はぁ・・・もういいや、お前ら一回一からやりなおしてこいよ。」

「「「!?」」」

 

バッ!と手を広げて体内にある無限の細胞をブチまける、勢いよくぶちまけた細胞の先には鋭い棘があり、また伸びているところは釣り針のように抜けないようにする。

 

「ぐああぁ!痛ぇ!!痛ぇよぉお!」

「グッ・・・ガハッ・・・。」

「・・・。」

 

どうやらブチまけた細胞の一つは死神の頭に刺さったようで即死、そして消える。

もう一人は腰や太もも、腕に刺さっているが致命傷ではない。

そしてもう一人は喉に刺さり口や鼻からドボドボと血を流す。

さて、この状態でもう二人を完全に消滅させるか、それは簡単なことだ、釣り針は刺さるが抜けない、だが引っ張るとどうなるか。

 

「こうなる。」

 

ブチまけた細胞を再び早い速度で自分の体内に戻すと辺りは血の雨が降る。

肉片やら眼球やらで非常にグロテスクだがどうせ消えるからいいだろう。

少し経てば・・・ほらね。

 

「やっぱり消えたな。」

 

死神共は全員消えてしまった、一体やつらは何しに来たんだろうか。

俺にやられにわざわざ来たのだろうか。

 

「いやぁ~つよいねぇ~。」

「お?」

 

後ろから女性の声が聞こえたので振り返ってみると赤い髪、豊満な胸、短いツインテール。 小野塚小町だ。

 

「3億年以上も生きている人間を地獄に送るなんて聞いたから来てみたが、無駄足だったようだねぇ。」

 

小町もまたでかい鎌を持ちながらケラケラと笑っている、なんだこいつは。

 

「なんだぁ?お前も俺にやられに来たのかぁ?」

「冗談、あたいはあいつらみたいに挽肉になりたくないからお断りしておくよ。」

 

ま、それが賢明だわな、格上の相手に勝負を挑んでも負けるのが落ちだ。

 

「ま、このことは映姫様に報告するしかないようだねぇ。」

「映姫・・・。」

 

四季映姫・ヤマザナドゥか、説教がすっげぇ面倒くさそうだ。

これは早めに止めねぇと!!

 

「ちょっ待てy。」

「それじゃぁね。」

 

小町は俺の静止を聞かずに消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁあああああああ面倒くせぇええええ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、地獄行き。

霊夢の調子が良くなってきたのですぐ退散、お茶が飲めなかったのは悔しいが今は霊夢の体調の事を考えて会わないほうがいいのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社から香霖堂に帰ってきた俺は椅子に座るなりどっと疲れが押し寄せてきたのでそのまま椅子に座りながら熟睡したようで、目が覚めると鳥の鳴き声と朝を報せる太陽の日差しが降りかかる。

 

「ん、んんんぅぅううん!」

 

椅子の座りながら寝ると肩が痛くなる、その痛みを和らげるために首を横に揺らして骨をパキパキと鳴らす、そして足と腕を伸ばし固まった体を解す。

 

「香霖はまだ起きてないか。」

 

香霖がいないという事は朝6時位だろうか、こんなに朝早くに起きるのも珍しいが昨日は夕方前には寝たからなぁ、さすがに寝すぎか。

死神共を地獄とやらに戻した後、霊夢の様子を見ていたが意識はあるようで水を飲みたがっていた、水を飲ませた後はスヤスヤと眠りに入った霊夢を後に香霖堂に帰ってきたってわけだ、そして爆睡。

 

「とりあえず新聞でも取っておくか。」

 

よっと椅子から立ち上がり、香霖堂の入口の前に設置してあるポストに向かう。

ポストが無いと射命丸がアホなのでそのアホが新聞を投げて窓を突き破る事件が発生した、それ以降香霖堂の前には簡易ポストを設置してある。

射命丸には新聞をここに入れるように言っておいたからポストの中にあるはずだ。

 

「ふあぁ~・・・新聞読んだら二度寝を決め込もう。」

 

まだ取れない眠気と戦いながら香霖堂のドアを開けポストに向い中を確認する。

入っていたのは新聞と手紙、手紙を保護する封筒に差出人は書いていない、表と裏を確認するが当然書いていない、書いてあったのは小鳥遊天馬様、とだけ。

 

「昨日は玄関、今日はポストか、礼儀が言いのやら悪いのやら。」

 

その場でピリピリと封筒の上を手で切っていくと寝起きのせいかあらぬ方向へ切れてしまった・・・中身を確認すると鳥遊天馬様、時に迎えに来ます。

とだけ、破れた部分は面倒臭いので見ない。

 

「迎えに来るってことは待ってたほうがいいみたいね、んじゃ寝ますか。」

 

香霖堂の中に戻るついでに手紙はゴミ箱に投げ捨てておいた、そして香霖堂の二階に行き、二度寝を決め込ませて頂く、こちとら得体のしれない奴をわざわざ起きて待つほど暇ではないし新聞も読む気も失せてしまった、まぁ射命丸の新聞なんて小さな出来事を大きく書いてるだけだし別に読まなくてもいいけどね。

 

「うーん・・・朝にする二度寝は最高だな。」

 

布団を抱き状態にして少しずつ遠くなっていく意識に身を委ねようとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?どこだここ?」

 

香霖堂の二階で寝ていたはずの俺がなぜか彼岸花が生い茂っているところで棒立ちしていた、んでなんか目の前には水平線が見えるほどの湖、俺の立っている横では子供達が石を必死に積み上げているし・・・。

 

「なぁるほど、賽の河原の河原か。」

 

賽の河原っちゅうのはあれだ、親より先に死んだり、悪行を積んで死んだ餓鬼共が来る場所だ。石の塔を完成させることで成仏できるとどっかで聞いたことがあるな。

 

「しっかし皆死んだ様な目してんな。」

 

いや死んでるんだけどね、なんというか生きてる人の目の輝きがないってゆう?絶望しかないって感じ。

石を積んでる餓鬼達は結構多いな、何十人いるんだ?ちょこちょこと積み上げるのを諦めているやつもいるが、あともうっちょっとで自分の身長位積み上げてるやつもいる。

 

「おぉ?なんかデケェ男が現れたぞ?」

 

頭には二本ちょこっと角が生えている、鬼かな?

塔が完成しそうになると鬼が現れその石の塔を崩してもういっかい最初から。

無限ループって怖いね、俺だったらボコボコにするレベル。

 

「あーらら壊されちゃった、また最初からか。」

 

すると思いもよらぬ事態が発生。

石の塔を壊した後、なぜか鬼が石の塔を完成させようとした男の子を殴ったり蹴ったりしている、当然男の子は泣きながらやめてくれと哀願しているが気にせずのし掛かり次は顔を重点的に殴っている。

周りの餓鬼共は怯えて鬼から離れようとするがまた別の鬼が突如現れて逃げ惑う餓鬼共を追いかけて捕まえて殴る。

 

「なんだこれ?」

 

石の塔を崩すだけじゃないのか?賽の河原って。

やることないし助けてやろうと思い男の子を殴っている鬼に近づくとそれに鬼が気づく。

 

「誰だお前?」

 

一人の鬼が気づくと他の鬼も気づいたようで、逃げる子供を追いかけるのをやめてゆっくり此方に近づき囲まれてしまった、4人位か。

 

「お前達に選択肢をやろう、餓鬼共にやったようにお前らが俺にボコボコにされるか、俺の出すゲームにクリアするか。」

 

 

鬼達は一瞬目を丸くした後、一斉に笑い始める。

ひとしきり笑った後、まだヒィヒィと笑う鬼が俺に向かって挑発してくる。

 

「おい小僧!誰が俺達をボコボコにするって?威勢がいいじゃねぇか!!」

 

 

挑発した後に俺をドンっと手で前に押して来た、さすがにイラついたので仰け反った反動で頭突きをお見舞いしてやる。

 

「痛ってぇ!!何しやがる!!」

「おい小僧!いい加減にしねえとやっちまうぞ!!・・・うお!?」

 

頭突きした鬼は痛みで蹲り、もう一人の鬼がそれに反応して俺の胸倉を掴んで威勢を張る。

すぐに胸倉を掴んできた鬼の頭と蹲っている鬼の頭を掴み両腕に力を入れたあとに両方の頭をぶつけて粉砕する。

粉砕したため返り血を浴びてしまった、洗濯が大変そうだ。

てか鬼は復活しないんだな、消えないし。

 

「ひ・・・ひぃ!!化物だ!!」

「おい!!待ってくれよ!!」

 

残り二人の鬼が俺から逃げようとしているためジャンプで先回りする。

ジャンプで先回りをして目の前に現れた俺に鬼達は尻餅をつく。

 

「どこ行くんだ?」

 

「すいませんでした!!何でもしますのでお許しください!!」

「俺もすいませんでした!!」

 

とりあえず二人の鬼を餓鬼共のところに連れて行き正座させる、そして鬼たちが生き残るために一つのゲームを提案してみせる。

 

「お前達には60秒以内にこの石を使って・・・そうだな、俺の腰位までに積み上げたら生き残らせてやろう。」

 

鬼達は俺の腰の位置を見て一瞬だけ不敵に笑い直ぐに石を持ち準備完了と言ったところだ、そして俺の「はい、スタート」とという声と共に二人が必死に石をかき集めながら俺の腰の位置まで塔を作っていく。

 

石の塔にを作ることに熱中している鬼達を見ながらさっきまで殴られていた餓鬼達をここに呼んで待機。

 

「45・46・47・48・49・50」

 

50秒経ったときに餓鬼達に目を合わせ鬼達が必死に作りあげたあと少しで完成の石の塔を蹴り崩させる。

 

「このガキ!!何しやがる!!!」

「殺すぞこのやろう!」

 

「59・60 終わりだ。」

 

餓鬼共に襲いかかろうとする鬼達に告げて腕を鉤爪状態にして二人の首の後ろから頭の方向に向かって突き刺し空中に投げ捨てる。

 

投げ捨てられた鬼の顔は目鼻口がぽっかりと首の方向に開いて血がダラダラと垂らしている。

 

「よし、お前ら今のうちに石を積み上げろー。」

 

パンパンと手を鳴らして合図をすると餓鬼共が一斉に石を積みあげていき、10分程すると早い奴らはもう成仏していく、成仏するときの餓鬼共は笑顔で俺にお礼を言いながら光に包まれて消えていった。

そんな中、餓鬼共が成仏していく中一人だけが石を積みあげずに俺のことをずっと見ている子供がいた。

 

「おい、お前は成仏しなくてもいいのか?」

 

声を掛けると近づいてくる男の子、俺の目の前に来て俺の目を五秒程見つめた後に俺の腹に手を当ててきたので不思議な顔をしていると俺が吹っ飛ばされる。

 

「グッオ!?」

 

いきなりの事なので受身を取れずに着地したせいで彼岸花を潰しながらバウンドする、吹っ飛ぶ速度が衰えてきてやっと起き上がれたと思ったら餓鬼にまたがられていた、そして俺の顔に向かって手を当てようとする。

 

「!ッくそ!!」

 

反撃しようと俺は餓鬼の腕事吹っ飛ばそうと手に触れた瞬間に俺が地面にめり込み巨大なクレーターができる。

 

「く・・・この野郎!!」

 

クレーターから脱出して餓鬼と間合いを取り隙が出てきたら攻撃しようと待ち構えていると地面から黒い腕が生えて俺の足を掴み地面に引き込まれてしまう。

 

「うおぉ!?」

 

そして顔だけ地面に残され餓鬼が俺に近づき出ている顔をサッカーボールキック。

その衝撃で地面に埋まった体は蹴られた方向に土事持ってかれた。

 

「ゲホッ!ガハッ!!」

 

首を蹴られたせいか上手く呼吸ができない、骨が折れて食道に突き刺さったのだろう、口から少し血が垂れる。

 

「なんだテメェは・・・。」

 

餓鬼に向かって質問をしてみるが答えは返ってこない、こいつは何者なんだ。

そして俺の攻撃が効かない、一回しか反撃していないが全ての衝撃をさらなる力を加えて射出したような・・・。

 

「・・・。」

 

俺の目を見据えながら近づいてくる餓鬼、次はこっちから行かせて貰う。

 

餓鬼に向かって全速力で走り、その速度を維持しながら蹴りをかまそうとすると餓鬼もまた俺に向かって走りだし同じ動作をしてくる。

速度は俺のほうが早いはずなのに的確に俺の繰り出す足蹴りに合わせられ、また俺が吹っ飛んでしまう。

 

やばい。

 

敵と対峙してやばいと思ったのは風見幽香以来だろうか、いや・・・それ以上にやばいと思えてしまう程この餓鬼は強い。

とりあえず起き上がりスキマを展開させて奇襲作戦に出ようと餓鬼の後ろにスキマの行先を設定。 地面にスキマを広げ餓鬼の後ろに出る。

 

 

 

そして餓鬼を後ろから羽交い絞め。

 

「はっはぁ!!これなら動けないだろ!?」

「!?」

 

一瞬驚愕した顔をした餓鬼は羽交い絞めしている俺の脇腹に肘打ち。

 

「ぐっ!!」

 

肘打ちされた脇腹の痛みを我慢してそのまま羽交い絞めから首に腕を回し力を入れる。

 

「・・・・!!・・・!!!」

「がぁっ!!はぁっ!!」

 

脇腹を肘打ち連打の必死の抵抗で腕を離しそうになるが、なんとか意識を落とせたようだ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・。」

 

完全に意識を落とした餓鬼を見て、腕の力を抜き地面に降ろす。

なんなんだこいつは、いきなり襲いやがって・・・。

 

餓鬼の顔を見ながら俺はあることに気づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで俺は賽の河原にいるんだ・・・?

 

 



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天馬、閻魔を侮辱する。

賽の河原にて。

 

 

 

 

 

「なんで俺は賽の河原なんかにいるんだ・・・」

 

基本俺は死なない体のはずなんだがなぁ、しかも賽の河原ってことは俺はまだ子供に分類されているのか?死神の一件もあるんだし地獄には間違い無いだろう・・・てか死んだら俺も成仏するまで石積み上げなきゃいけないの?嫌だなぁ、怖いなぁ。

 

 

「なーんてな、俺が死ぬわけなかろうに」

 

俺に恐怖なんて概念は・・・ちょこっとあるけどあんまり無い!!そう自負しているよ俺は、しかし人間と妖怪は死ぬときに地獄にくるもんなのかね、妖怪は鬼しかいなかったし・・・、まぁ誰しも死んだら輪廻転生をするんだ、妖怪もそうなのかもしれないな、一億年前に殺したことのある妖怪が人間に生まれ変わったりするのかもしれないしな。

 

「お、やっと見つけた」

「ん?」

 

後ろから声が聞こえたので振り向くとそこには小町がいた、見つけたということは俺になにかしら用があるのは頷けられる、てか小町が俺をここに来させたのか??

そう思うとなんか腹がたってくるが我慢してやろうじゃないか、今の俺は寛容なのだよ。

 

「いやー映姫様が転送場所を少し間違えちゃったらしくてね、すまないね」

「ん?」

 

なるほど、俺がいきなりここに来たのは映姫が転送したからなのか、どうやって俺を転送させたのかわからないがまだ俺は生きているということだな、勝手に転送させたことは後にしておこう。

 

「んじゃ、さっそく映姫様の所に行こうじゃないか」

「は?」

 

俺が疑問符を頭の中で浮かべていると小町が三途の川にどこからだしたのか分からないが船を出し、目で乗れと合図してくる、見た目は木で作ったような船だなおい、沈んだらどうしてくれんだ、と思いつつも乗る。

 

「そいじゃ行きますか」

「ヴォ!?」

 

小町が発言した瞬間船が超高速で動き出し落ちそうになるが必死に船に掴みなんとか堪える、二分ほどすると岸部が見えてその中にデカい建物がそびえ立っていた。

 

 

 

「はい、着いたよーってどうしたんだい?」

「どうしたんだいじゃないだろ糞ったれ!ゲホッこの状況を見てもわからねぇのかアバズレが!オェ!!」

 

頭が物凄い気持ち悪いそれ故に嘔吐感が半端ない、三途の川で胃の中に入ってたものをぶちまけている、船酔いなのかもしれないがあんな早く移動できる船なんてありえないので小町のせい。

 

「酷い言い様だねぇ、あれくらい我慢するのが男さね」

「んじゃお前、俺がお前を掴んで回してしてやろうか!?」

「お断りするよ、あんたに触られただけで吐き気がしそうだからね」

「この糞ビッチ野郎が!!」

「おっと!」

 

小町に掴みかかろうとすると一気に距離が離されてしまった、あと少しで掴めていたのにすごく惜しい。

 

「危ないじゃないか?」

「あぁ?」

 

目の前の光景に驚いていると後ろから小町の声が聞こえ俺の首元には小町の持っているデカい鎌を突き付けられていた、そういえばこいつぁ確か距離を操る能力だったな・・・面白い。

 

「あぁ~・・・面倒くせぇな~・・・」

「降参かい?」

 

後ろに倒れこみ、隙を見せつける、小町も俺を殺せないのは分かっているようで鎌を刺そうとすらしない、知っているか?降参しろと言ったほうが負けなんだぜ、どこぞのグラップラーにも書いてあっただろう。

 

「降参を乞うとは随分余裕じゃないか、俺はこんなこともできんだぜ?」

「何を言っているんだい・・・!?」

 

地面にズブズブと入り込む俺に驚いて鎌を振ろうとしてくるが振りかぶった鎌は地面に刺さるだけで俺には何のダメージも通らない、地面の中にいるんだからな、嘘だけど・・・、実はスキマが見えないようにこっそり地面に開けていただけだ、小町から見る光景は地面にめりこんでいるように見えるのだろう。

 

「っふ!!」

「ギャッ!!」

 

小町が地面を見ている隙に上から小町の頭を肘に当てると女とは思えないほどの悲鳴が聞こえた、そして逃げられないように上に跨り首に腕乗せて押さえつける。

 

「謝れよ」

「だ・・・誰があんた何かに・・・」

 

睨みながら俺に絶対謝らないという意思を俺にぶつけてくる小町、そっちがその気なら俺も止める気はないな。

 

「そうかよ、じゃぁ一回死んでこい」

 

片腕を振りかぶって小町の顔面を掴みそのまま地面にめり込ませる、地面にめり込んだ小町はまだ生きているのか弱弱しく俺の顔に拳を当て抵抗しようとする、だが赤子が殴ったようなもはや常人の力すらない力で殴られたので痛みは無い、むしろ闘争心を沸かせてくる。

 

「まだ生きてんのか?もう死ねよ」

 

小町の顔とめり込んだ腕を引き抜き見てみると血塗れだった、地面の中の小町の顔はどうなっているのだろうか、それを確認する術は無い。

 

「さようなら、そんでもう一回生まれてこい」

 

次は拳を強く固め埋まっている小町の顔一直線に振りかぶると更に小町が地面の奥までに行ったかと思うとすぐに止まってしまった、多分首と顔がバイバイしたのか、それとも顔を拳が突き抜けてしまったのだろうか、もはや見る気も起きない。

さて、どうしたものかと思っていると小町は陥没した地面だけを残して消えてしまった、多分復活するんだろう。

 

「酔も覚めてきた、そろそろ行くか」

 

目の前にあるデカい建物の前に着き、立派な門を通って中に入る、すると中は広く、中央に机が一つ・・・そしてその横に待合席によくあるような長椅子、受付みたいな物なのか?机の所には一人キセルを吸っている奴が座っていた。

 

「・・・」

「ん?何の用で?」

 

机の前に立ちキセルを吸っている死神?を見ていると俺に気づいたようで用件を聞いてくる、仕事中にキセルたぁなめてんのかこいつは、まぁ我慢我慢。

 

「四季映姫に呼ばれて会いに来たのだが・・・」

「四季映姫?あぁ裁判長か、ならそこの紙に用件と名前、あと罪状を書いてくれ、そしたらここに提出してくれればいいから」

 

キセルで ここ という場所を示して面倒くさそうに言う、業務内容を言った受付はすぐにキセルを吸い始めそっぽを向き本を読み始める、こいつは仕事を舐めてんのか。

 

「おい」

「はい・・・!?」

 

受付が俺の方向を向いた瞬間にどでかい机を横に蹴ると壁に当たり机が砕ける。

 

「今すぐこの紙に俺の言うことを書き写せ・・・早くしろ!!」

「は・・・はい!」

 

 

「名前は小鳥遊天馬、用件は無し、罪状は・・・四季映姫の罪状なら知っていると書いておけ、書いたら走って届けやがれ!!殺すぞ!!」

「は、はい!」

 

地べたを下敷きにして俺の言葉をそのまま紙に書く受付、書き終えたようで奥の部屋にすっ飛んでいった。

 

「たく、死神は揃いも揃って無能なのかね」

 

ドカっと長椅子に座り灰皿と煙草を創造して一服する、5分程経つと受付が急いで戻ってきた、四季映姫様は今は裁判中ですので無理ということらしい、とりあえず場所を聞いて無理やり行こうとすると必死に止められるがそんなことは知らない、あっちが先に呼び出したんだ、そっちの用事なんて知るかよ。

 

四季映姫の裁判の所に行く途中死神達がジロジロと見てくるが気にせず歩いていると一つ気になるものを発見、喫煙所だ・・・、煙草を吸っているとなぜか知らない場所の喫煙所に入ってみたくなるのはスモーカーの運命なのだろうか。

 

しかし中には4-5人程死神がおり他愛もない話をしている、その中で一人が胸糞悪い言葉を放つ。

 

「あいつらも本当に大変だよな、必死に仕事なんてしちゃってまぁ・・・」

「ほんとほんと、俺らはただキセル吸って適当に受け答えしてれば金が入るんだから楽な仕事だよな」

「あいつらの親が普通の死神だからな、その点俺らは親の力で上層部に入れてんだ、言いたくないが親には感謝感謝」

 

なんとまぁ前の世界の役所の連中によく似ているものだ、ここの世界も変わらないもんなんだな、やはりこういうクズが美味い飯を食ってろくに働かず金を貰えるだなんてな。

 

「まぁいいや、俺には関係無いな」

 

俺がここで働いていたら関係はあるが今は客人としてきているんだからな、関係ない関係ない。

 

 

 

「やっと着いたな」

 

喫煙所から5分程歩き受付に教えられた場所に着く、このドアを開ければ四季映姫が居る・・・なんとか映姫のペースに持ってこさせずに・・・ってか持ってかせねぇし。

 

「邪魔するぞ」

 

ドアを開けると素っ気ないがデカい部屋だ、あるのは机と椅子、机の前に椅子があり禍々しい、机の所にある椅子の上には映姫が座っており、机の前には誰かが座っていた、多分裁判中なのだろう。

 

「今は裁判中です!速やかにここから出て行ってください!」

 

映姫が俺を見たあとに立ち上がり叫んでくる、出て行ってくださいってなんだ、こっちは呼ばれた身なんだぞ、そもそもそっちが呼んどいて少し待てってのは筋が通らない。

 

「悪いが出る気はない、四季映姫・・・お前の用件を聞きに来た、そして即刻俺をここから出せ」

「後にしてください!!」

 

 

バンッと机を叩いて俺を部屋から出そうとするがそれを無視して映姫の目の前に来る。

 

「おいよく聞け、こっちはお前の勝手な事情で呼ばれたんだ、お前の事情など知ったものか、客が来たなら精一杯の持て成しをする、そうだろ?その常識すら知らないお前に人を裁けるものか、お前の能力など知ったこっちゃないが俺がここを管理している者ならお前なんぞ裁判長などさせるか、受付で十分だ!」

 

「小鳥遊天馬!貴方は客人ではありません!ですから貴方は私の言うことを聞きなさい!そして貴方が発言した私に対する侮辱を謝罪してください!!」

 

「だからどうした?自分がこの世界のお上だと思ってんのか?巫山戯るなよ四季映姫、お前は俺の前にいる限りその概念をとっぱらうべきだな、俺はただお前に呼ばれただけであり俺を裁く権利なんてものは存在しない、むしろお前が俺に裁かれるべきだ、お前が俺を黒だと主張するのなら俺は白を主張する、お前の力が全てだと思うな?それをねじ伏せる程の力を持っているやつなんざごまんといる、その思い上がった根性、いま叩き直してやろうか!!」

 

「くっ・・・!貴方はどうやら本当に地獄に落ちたい様ですね!!いいでしょう今直ぐに貴方を裁いてあげましょう!黒です!貴方は地獄行きです!!早くこの部屋から出て地獄の門を・・・!?」

「黙れよ」

 

映姫を机に押し付け抵抗されないように両腕を片腕で掴み映姫の顔に手を当てて黙らせる、そして耳元に口を近づけ映姫を脅す。

 

「俺が地獄行きと決まったのなら抗う必要などない、今ここでお前を殺すか精神を壊すかお前を犯してやってもいいんだぞ・・・?」

「!?・・・くだらない脅しですね、それで地獄行きを免れると思っているのですか!?残念ですね、私は何者にも屈しはしない!私を殺そうが犯そうが自由にすればいい!それだけ貴方の悪行が積まれていくだけです!!」

「そうかよ・・・」

 

映姫の着ている服のボタンに手を移し一つずつプチプチと開けていく、最初はただ睨むだけだった映姫も半分ほどボタンを開けると少し焦りだしてきた、そして上着の下に着ている白い服のボタンにも手をかけようとすると少し腕に力を入れて抵抗しようとしてきたので押さえつけて更に抵抗できないようにする。

 

「あの・・・私の裁判は・・・」

「あぁ!?知らねぇよ!!どっかいきやがれ!!」

「ひゃあああ!」

 

邪魔が入ったな、さてさて・・・気にせず続行させてもらおう。

 

映姫着ている下の服のボタンを外していきどんどんさらけ出してくる映姫の素肌、てか脅しのためにやっているんですが映姫よ、早く諦めてくれないと本当にどうしようもないじゃないか。

 

「ん~・・・降参しろよ映姫よ」

「・・・」

 

そっぽを向いてずっと黙っている映姫に降参を乞うがそれでも無視をする映姫、成程・・・これではまだ駄目らしい、しかしこの先をどうすればいいのか本当にわからない、何せ経験ないんだからな。

おっとそんなことを考えている間にボタンを全て外し終えてしまった。

 

「取り敢えず胸・・・」

「ッツ・・・」

 

胸の所に手をやり少し躊躇しながらまさぐると映姫が少し震え始め体を左右に動き手から逃れようとする、どうやら映姫みたいに体格が小さくてもブラジャーはしており直接触ることに躊躇する、そして恥かしい。

 

「(わかんねぇ、どうすればいいんだ・・・)」

「ん・・・ぁ・・・」

ブラジャーの上から胸をなでるよう触り時々親指でゆっくり押して見ると非常に柔らかくて驚愕する、これが胸の柔らかさなのかと、まるでプリンのように柔らかく餅のような弾力。

 

そういえば幽香が俺の首筋を舐めていたな、あれを試してみよう。

 

「映姫・・・ッ」

「ひぃ・・・ぁ・・・!」

 

映姫の首筋をゆっくり舐めると映姫がビクンッと体を仰け反らせる、首筋を舐めている間もない胸を揉み続けるこれならば映姫もすぐに諦めてくれるだろう、いや諦めてくれないと困る。

 

「どうだ・・・?今すぐ俺を元の場所に返すか・・・?」

「言ったはずです・・・んぅ、貴方には屈服しなぅぁ・・・いと・・・!」

「強情だな・・・」

 

しょうがない、ここまでしたくは無かったのだが次は下半身にいかせてもらおう。

 

映姫のスカートを脱がそうと手を掛けた瞬間、映姫が俺に言葉を投げる。

 

「貴方は絶対に地獄行きですからね・・・、これは変えられない事実です・・・ッ

「そりゃ残念だ、それならば四季映姫、俺は最初で最後のまぐわいということだ、しっかりその身に焼き付けておけ・・・!」

 

やってやる、元の場所に戻れず、永遠に地獄に行くというのなら最後まで行ってやる、俺は元の場所に戻る方法なんてわからないから映姫を頼らなければならない、それを映姫が拒否したとなると一生香霖堂には戻れないということ、それならばここで好き勝手にやらせてもらう。

 

一生地上に戻れないと覚悟をして映姫のスカートを脱がそうとするとどこからともなく大きな声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小鳥遊天馬、お前を元の場所に戻してやろう」

 

 

 

 

 



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天馬、閻魔王になる。

お前を元の場所に戻してやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ?ってお前は賽の河原にいたガキじゃねぇか」

 

裁判所入口の方から聞こえた声の方向を向いてみるとそこには賽の河原で絞め落とした餓鬼がそこに立っていた、てかよくこの短時間で意識が戻ったな。

後ろに死神を引き連れて。

 

「や、久しぶりだね天馬くん!君の力を知るために少し戦闘になってしまったが許しておくれ、僕の名前は秤(はかり)だ、この裁判所のものすごくえらーい人なんだよ。」

 

なんだ閻魔にも地位というものがあるのか、その中で一番偉いということは四季映姫よりも上ということになるな、しかしそのお偉いさんが俺を元の場所に戻すたぁどういう事なんだ?危うく映姫が犯される所まで行ったのにその輩を許すとは。

 

「遅すぎますよ!あと少し遅かったらどうなったと思ってるんですか!!」

 

秤というガキに着替えながらプンスカプンスカ怒っている映姫、成程・・・こうなることは想定済みというわけか、ハメられたな俺。

 

「まぁまぁそんな怒らないでくれよ映姫ちゃん、君も少しくらい興奮しただろう??」

「何を言っているんですか!?そんなわけ無いでしょう!!」

 

なんなんだこの糞みたいな茶番は、閻魔でも神でぶっ殺したい気分だ。

しかしここで暴れると分が悪い、映姫は何するかわからんし秤とかいうやつにはもうスキマの能力がバレてるかもしれない、もしここで暴れても五分五分か俺が殺られるかもしれん。

 

「・・・んで何がしたい、こんなくだらん芝居までして俺に何をして欲しい?」

 

演技だということはわかるが相手の底が見えない、俺に何を要求してるのか、それとも俺を本当に地獄に落としたいのか、後者なら全力で抗うが。

 

「ん~・・・特に何をして欲しいっていうのは無いんだけどねぇ、言うなれば映姫ちゃんの試験みたいな?」

「試験??」

 

閻魔に試験なんてあるのか?それともこいつの気分かでやったことか?

 

「そそ、いくら閻魔でも映姫ちゃんの能力でも僕たちには裁けない物って必ずあるんだよね稀に、でも本当に稀だから君をここに連れてきたってわけさ、転移させたのは勿論僕だよ」

「面倒くせぇことに付き合わせんなよ、危うく俺の貞操が危ないところだったじゃねぇか」

 

それはこちらのセリフです、と怒っている映姫を無視していると秤はケラケラ笑いながら謝罪をしてきた。

 

「君には申し訳ないけど映姫ちゃんのためなんだよね、最近閻魔の地位を上げたばっかりだったからさ~、ってことだけど君はもう元の場所に戻すってことでいいのかな?」

「そうしてくれ、んで最後に一言言わせてもらっていいか?」

「ん?なんだい?」

「お前はここの最高地位なんだろ?んじゃ言うが一度ここで働いている奴の仕事量を見直せ、特に喫煙所にたむろっている奴をな」

「うーん?」

 

秤はうーんと唸り頭に電球がポンっと出た感じがした後予想外の言葉を放ってくる。

 

「君の言いたいことは分かった、今直ぐに検討しようじゃないか・・・と言いたい所だけどそれは無理かなぁ」

「は?」

「君が言いたいのは多分親のコネ入社のことだろう?駄目だよ~勝手にここの社会を変えようとしちゃ、ここにはここのルール、君の場所には君のルールがあるだろう・・・何するんだい?危ないじゃないか」

 

あ、超ムカついたせいで我を忘れて蹴りを入れてしまった、止められたが。

 

「あのねぇ、さっきも言ったけど君の言うことには無理があるんだよ、一から皆の仕事量を見直さないと行けないし時間もかかる、それをわかって言っているのかい?」

 

「じゃぁ俺がお前の地位を貰ってやろう、俺が見直してやるよ・・・あ、お前は勿論ヒラからな?」

「本気で言っているのかい?僕の地位を奪うなんて・・・殺すぞお前?」

 

いきなり口調が変わったと思ったら奴が容姿がガキから大人に変身?なんていうんだあれ?いきなり変わったぞ、こういう時は変身!っていうのがセオリーなのに分かっていないな。

 

「よし、力も君に合わせたことだしやるんならやるけどどうする?特別に俺に勝ったら地位をあげてもいいと思うんだけど?」

「やるしかないな」

 

群がっている死神達はガヤガヤと五月蝿くなり誹謗中傷が俺にブツケラレル、殺してしまえ、やっちまえ、等。

映姫はテンションの上がった死神達に揉まれ見えなくなってしまった。

 

「ぐっ!?」

 

10秒程睨み合っていると相手が動き出す、早すぎる動きについていけずに顎を蹴りで打ち抜かれて尻餅をついてしまった情けない、っていうか相手の動きが早すぎてなーんにも反応できないんだよね、相手の力もめっちゃ上がってるし。

 

「ッペ!!」

 

顎を打ち抜かれたためか口の中が盛大に切れてしまい血がジワジワと出てくる、その感覚が気持ち悪いため溜まった血を吐き出す。

 

「君にこの動きはついていけないだろう?さっきの姿よりも遥かに差があるからね」

「そうかそうか、そりゃめでてーな・・・」

 

ポケットから一つ、とっておきのタバコを取り出す、実はこの煙草・・・あるものを施してある、それ故に二回も吸えば自分が動けなくなる。

 

「・・・随分余裕じゃないか?君には緊張感がないのか?」

「おまじないみたいなもんだ、気にするな」

 

煙草のフィルターについているカプセルをカチッと割って火を点けて一吸、あぁあ~やばいなこれ、さぁすが小鳥遊印。

脳みそが蕩けちまいそうだ。

 

「済まないがお前死ぬかもしれぇえええぇぇぇえ・・・・」

「はぁ?何言ってんだ・・・!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふう、終わったみたいだな、てか辺り一掃しちまったのか、あんなに騒いでた死神達が死体みたいにゴロゴロころがってやがる、俺が生き残っているってことは秤ってやつも・・・、いたいた。

 

「ぐっ・・・」

「・・・まだ生きてたか、しぶといなぁお前も」

 

倒れ込んでいる秤に蹴りを入れると反応があった、大抵これして生きていたやつなんて居ないんだがなぁ、あの煙草の正体はアレだ、神力霊力妖力を無理やり俺の体に収まらない位に詰めただけだ、直接口に中に入れると頭が爆発するんで試行錯誤した後煙草のメンソールをヒントにしただけだ、体内に取り込み易いし美味いし。

 

でもま、一吸しただけで意識が飛んでしまうからな、最後まで吸えないのが傷。

爆発的に能力をアップして無意識に戦うってなぁ、いいのか悪いのか・・・でもこれには一つだけ欠点がある。

 

「ぐっ!?うげぇぇぇ」

 

これが嫌なんだよな、能力が滅茶苦茶に上がった反動で吐き気と頭痛それにどっとくる疲労、だからあんまり吸いたくないんだよ、下手したら植物状態になる、しかもこれ使って倒せなかったらもうね、絶望ですよ。

 

「うぐぇええ、オェ!」

 

びちゃびちゃと胃液を口から出る、やばい食道が痛い、めっちゃ痛い。

 

「うっああぁあ・・・」

 

すぐにこの頭痛と吐き気を抑えるために永琳に作ってもらった薬をスキマからとり出して水と一緒に飲む、即効性だから1-2分程すれば収まってくるはずだ。

 

 

 

 

「はぁ・・・ふぅ・・・ふぅ・・・」

 

あー死ぬかと思った、まじで 頭痛なんてレベルじゃないよほんと、脳みそを焼いたカッターで切られる位痛かったわ、切られたことなんてないけどな。

 

「やっと落ち着いたわ、おーい起きてるか?」

 

倒れ込んでいる奴に蹴りを数発お見舞い、うめき声を上げるが返事がないので続行。

 

「うっ・・・ぐっ・・・」

「うおーい?返事しねーとずっと続けるぞ~?」

 

ちゃんとした言葉を喋らない限り蹴り続ける、てか無意識だからって俺ちょっとやりすぎか?死神達も瀕死だし中には死んで復活するため消える奴もいるし、やっぱこれ多用しちゃいかんよな、うん。

 

「おーい?いい加減にしないと潰すぞ??」

「うぐっ!!こ・・・降参だ・・・」

 

少し力を加えて蹴っていると自力で蹴りの射程から外れて屈服。

弱いなぁどいつもこいつも、いや、俺が強すぎるだけか?

 

「んじゃお前の地位は貰うけどいいよな??」

「勝手にしろ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、これからここのルールを決めまーす ふぅ~パフパフドンドン」

 

皆怪我は回復したようで死神全員を集めて報告をする、ちなみに秤とか言う奴はヒラにするのももったいないので俺の秘書みたいな?立ち位置になってもらった、初めは嫌がってたがな。

 

「はい、ではこちらが閻魔さん達の仕事でのルールです」

 

1 私情で裁判を勝手に進めないこと。

 

2 裁判する者の弁解を素直に聞くこと。

 

3 勝手に裁判をしないこと、最後には俺に報告すること。

 

4 閻魔という仕事に誇りを持つこと。

 

「そしてこちらが死神達の最低限のルールな」

 

1 仕事中にパイポ・キセルを吸わないこと、休憩の時は有り。

 

2 サボらないこと、仕事をきっちりこなすこと。

 

3 報告・連絡・相談はすること。

 

4 昇給は俺が決めること。

 

えー!やふざけんな!など聞こえるが取り敢えず忠告しておこう。

 

「え~・・・昇給についてですが頑張ったものにはそれ相応の報酬を与える、金・煙草・キセル・パイポ・なんでもいいぞ、これが嫌っつうならさっさとこの仕事をやめちまえ、後隠れてサボるだなんて思うなよ?見つけたら速攻クビだからな」

 

すると辺りはシーンとなり誰も反論してこない。

 

「よし!死神上層部以外の仕事の奴だけさっさと仕事場に戻れ~頑張った成果は紙に書いていいから俺に届けろよ~、はい!いったいった!」

 

蜘蛛の子を散らすように仕事場に戻る死神達。

 

「んで死神上層部や俺を含めて10人の閻魔王は直ぐに集まってくれ、閻魔さん達は仕事場に戻っていいけど報告はしろよ~」

 

 

 

 

さて、集まったのはこれだけか、全体の4割位しか居ないな。

 

「はい、ではお前らを集めたのはあれだ、お前らの仕事の話だ、今現在お前らの仕事は最低だ!やる気あんのかてめぇら!!お前らの業務内容を見たがおかしいだろ!!なんだよこの休憩や息抜きの項目の多さは!お前らいい加減にしろよ!?」

「いて!」

「あ、すまん」

 

上層部の業務内容が書いてある紙をぶん投げるとほぼ全て秤に当たってしまった。

 

「それでこの業務内容を見直すことにした、休憩と息抜きは一日3回に限定する、時間は一回1時間、休憩時間は無いから息抜きしたいときにしてもいいことにする。」

 

あとのルールや業務内容などを伝え上層部を仕事場に戻す、そして残ったのは閻魔王10人だ、こいつらは仕事しているのかしていないのかわからないが取り敢えずは話を聞いてみようと思う。

 

「んで、お前達の仕事の内容は何なんだ?そこの右から四番目言ってみろ」

 

「は、はい!我々の仕事は死神達の仕事の管理や経理などを確認する業務でございます!!」

 

「では聞くが、コネ入社の一部上層部の業務内容を確認をしていながら見過ごしていた、知っていたが何もしなかったんだな?」

 

すると右から四番目の閻魔王が「それその・・・」や「え~っと・・・」と言えなくなったので閻魔王10人・・・あ、秤がいないから9人か・・・その9人に喝を入れる。

 

「お前らクビになりてぇのか!なりたくねぇだろ!?ならきっちり仕事しろや!!わかったか!?」

 

「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」

 

「では解散!!仕事場に戻れ!」と言って俺と秤は閻魔王一番の大きい部屋に戻るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たくっどいつもこいつも使えねぇな、いい加減すぎるだろお前」

「ははは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、仙人に手を焼く。

「仙人ねぇ・・・」

 

俺が閻魔王に就任してから一ヶ月経つ、閻魔王の仕事というのは辛いもので書類を見て確認してまた書類を見て、これの無限ループに近い、その書類の中で一際目をひく内容が書いてあったので確認しているところだ。

 

「この仙人はよく人里で菓子を買う所が目撃され、住処と思わしき場所は妖怪の山のその奥・・・か」

 

容姿は桃色の髪、右腕には包帯、頭には二つの髪飾り・・・

そして最後の文面には 撃退されました。 と やはり仙人ってものは強いもんだなぁ、一番手を焼いているのは仙人では無く天人(てんにん)だと言うのに。

 

「おい秤、今のダジャレどうよ」

「めっちゃ詰まらないですね」

 

おいおい、めっちゃ面白かっただろ今のダジャレ、即興で作ったとは思えない程の神がかり的センスだった筈だろ、これだから秤はつまらないんだ、だから死神の女の娘達に冗句を言ってドン引きされるんだよ。

 

「どうでもいいんで早く仕事してください」

「はいはい」

 

えーと・・・なになに?その仙人は数多くの動物を従え協力するとな、中には伝説級の雷獣を従えたり妖獣みたいな獣も従えるときには野生の大鷲等、死神総勢5人でかかったがあえなく撃退された・・・と。

 

「弱いねぇ、仙人なんぞに負けるたぁ死神の名前が廃るってもんだ」

「君が強すぎるだけだよ」

「俺が強かったか~」

 

あちゃー俺強いわぁと笑ったら秤が舌打ちしてきた、なにこの秘書怖い。

 

「でもま、これは由々しき問題だよなぁ、この仙人とやらがいずれ何かをしてこっちに飛び火して すいませんでしたー で済む話じゃないしなぁ」

 

しかしこの仙人討伐に向かわせた死神・・・死神達の中では結構強いはずだったんだがなぁ、ふむ・・・俺が直接向かうか・・・?

 

 

いいじゃんそれ。

 

 

「ということで秤君、一時代理閻魔王お願いします」

「は?ちょっと意味がよくわかんないんですが?」

 

いやお前そこは理解しろよ、部下の尻拭いをしにゃならんというのにお前は・・・。

 

「いやこの仙人をだな、ぶっ殺しに行こうかと思ってな・・・お前が行くか?」

「面倒くさいんで閻魔王代理でいいです」

 

秤と俺の性格はよく似ているようで面倒臭いと行動をしないという・・・、違う部分は秤の場合気が乗ったら乗ったではっちゃける所・・・だという。

 

「んじゃちょっとぶっ殺しに行ってきま~す、仕事ちゃんとやれよ」

「わかっていますよ」

 

さて・・・転移をしようかね。

地獄にいるときはスキマで幻想郷にもどれないからなぁ、転移を使っているんだが細かな場所設定ができないのがだめだよな・・・うん。

 

転移場所は・・・人里辺りでいいか、よく菓子を買いに来ると書いてあったしな。

とりあえずそこらへんブラブラしてれば来るだろ多分来なかったら来なかったでそこらへんの茶屋に入り暇を潰せばいいだけのこと、さ、報告書に書いてあった仙人を見つけ出そう。

 

 

 

 

 

 

「いねぇなぁ・・・」

 

人里をブラブラしては見たがそれらしき人物には合わなかった、たまに茶屋に入り店主から話を聞いたがよく来るらしいが来ない時は本当に来ないらしくいまは 来ない時 なのではないのかと、運が悪いなぁ俺。

 

そんなわけで人里の色んな店がある大通りでブラブラしているわけ。

 

「ちっくしょ~久しぶりに面白い話が来たと思ったのにつまらんなぁ」

 

不貞腐れちまうよまったく、妖怪の山の奥に行けば会えるんだろうがあそこは面倒臭い奴らばっかりだし行く気すら起きないわ。

と物思いに耽っていると通行人に肩が当たってしまった。

 

「お、悪いな」

「気にするな」

 

ふむ、一回地獄に戻り態勢を立て直してから出直すとす・・・る?

 

「ん?」

 

なんだ?今一瞬だけ膨大な妖力が出ていたような・・・。

 

「んぅ・・・?」

 

さっき肩がぶつかった奴を見てみると・・・やはりな、こいつぁすげえや、大妖怪クラスの妖力じゃぁないか、隠してるが俺にはわかるんだぜぇ。

こいつが仙人かぁ?

 

「おい」

「なんじゃ・・・っぐ・・・・!」

 

奴の肩を掴み、振り向いたところを一発、顔をぶん殴る。

相手は俺のストレートで3メートル程吹っ飛び態勢を立て直して構えた。

周りの人間共はなんだなんだと騒ぎ出し俺と奴の周りを取り囲む。

 

「いきなりなんじゃお主、人の顔を殴るとは」

「いやお前人間じゃないだろ・・・仙人か?」

「んなわけないじゃろ」

 

妖怪は口の周りに付いている血を拭い構えて警戒している。

 

「お前、妖怪だろ?しかも結構強いとくらぁ・・・人里になんの用があって来たんだ?」

「お主には関係ないことじゃ、人間を脅かそうなどと言うことはせんから見逃してもらえないかのう?」

「何を抜かしているんだ?妖怪の基本を忘れているわけじゃないだろう?本来妖怪は人間と馴れ合わない、むしろ殺伐とするべきという事を・・・」

「はん、そんなことは心配せんでもいいわい」

 

妖怪は殴られた際に割れたメガネを拾いスチャっと掛ける、片方だけヒビがはいっているな。

 

「ふむ?そこまで言うなら見逃してやってもいいが一つ条件がある」

「なんじゃ?」

「妖怪の山の奥に住んでいるという仙人を知っているか?知っているなら今すぐ場所を教えろ」

 

妖怪はうーん?と唸り始め結局最後までわからないと言われたので忠告だけして見逃してやった。

 

「ん?てか仙人って食事をとるのか?確か霞を食べて暮らすんじゃなかったっけ?」

 

おかしいな・・・仙人だったら菓子なんかを食わずに霞だけを食べて暮らしているはずなんだが・・・なにかあるなこれは・・・・とんでもない何かがな・・・・。

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

妖怪の山の奥まで一応来てみたがなんなんだここは、辺りにあるのは木 木 木ばかりじゃないか、仙人てなぁここまでの道なりを歩きでいっているのか?だとしたらキチガイ以上のなにものでもない。

 

「ん・・・?」

 

ふと上を見てみるとでっかい鳥が飛んでいる。

 

「・・・ふひひ」

 

でっかい鳥にむかってジャーンプ、そして鳥の首根っこを掴む、当然鳥は暴れるわけだが暴れただけで落ちる俺ではないので上に跨らせてもらう。

 

「よぉ、お前の飼い主はどこにいるんだ?」

 

鳥と口が聞けるわけがない、だがコイツに至っては別物だ。

多分コイツは妖怪に近い鳥なのだろう、報告書に書いてあった大鷲と思っていい、

俺は鳥と口は聞けないが鳥は俺の言葉が分かるだろう。

 

「おいおい、暴れんなよ、殺されてぇのか?」

 

未だに暴れている鳥に向かって殺気を与えると鳥の動きがだんだんと静かになっていき、ゆっくりと東方面に向かって飛んでいく。

 

「ふぅ~疲れた疲れた、おい・・・早く飛ばねぇと首チョンパすんぞ」

 

あまりにもゆっくりすぎるのでもう一度殺気を与えるとさっきとは大違いの飛行速度で東に向かう、少し一服しながらこいつの飼い主のところにつくまで跨っていよう。

 

 

 

それからどうした!

 

 

 

「ようやっと着いたか、お疲れさん」

 

大鷲はゼェゼェと息切れをしている、大鷲の止まった目の前には結構大きな建物が立っており威厳を放っていた。

 

 

 

 

「竿打!?この人は誰です!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、秘書を新たに追加する。

仙人を見つけた。

 

 

 

 

「誰なんですか貴方は!?」

 

桃色の髪 二つの髪飾り 右腕に包帯・・・報告書通りの人相だな、やっと見ぃつけた。

 

「どうも、閻魔王です、貴女をお迎えにあがりました~って事で抵抗するなら抵抗してくれ」

「閻魔王!?」

 

さぁ、仕事の時間だ・・・楽しませてくれよ?あっけなくお迎えできたら秤をぶっころさにゃぁ気にすまん、てか仙人・・・?どうみてもただの女の娘にしかみえんがなぁ、もっとムキムキのマッチョかと思ったんだが。

 

「お前の寿命はとうになくなって・・・いない?」

 

ん?あれ?おかしいな?仙人の寿命ってこんなに多いのか?いやでももっとおかしいのはまだ寿命が来ていないという所だな、こいつ・・・・妖怪か?

 

「ちょっとタンマ、お前本当に仙人なのか?」

「え~っと・・・」

 

なるほど仙人では無いらしい、このままはいそうですかで帰るわけにもいかないしなぁ・・・とりあえず話でも聞いてみるか、そうすれば何故死神がこいつを仙人だと思ったこともわかるかも知れないしな。

 

「ふむ、仙人でないならお前は何者だ?妖怪か?妖怪なんだろ、えぇおい?」

「ちょ、近い近い」

 

おっと、あまりにも驚きすぎて迫りすぎてしまった。

 

「済まない、んで実際の所なんの妖怪なんだ?そんでなんで仙人だなんて偽ってんだ?閻魔からするとめっちゃ迷惑だから仙人名乗るのやめてほしいんだが」

「えっと・・・それはその・・・あぁ~うるさい人ですね!」

 

突き放されてしまった、なんでや。

 

「まず貴方の名前は?人にあれこれ聞く前に自分の名前を出す!常識でしょ!!」

「いや幻想郷に常識通じませんし」

「・・・マナーでしょ!?」

「妖怪にマナーって必要なの?では聞きますがいきなり襲ってくるのはマナーに反しないんですか?あ、勿論貴方のことを言ってるわけじゃないよ、幻想郷のマナーの話だよ」

 

屁理屈を言うなー!っと大声で叫ぶ自称仙人・・・お前は反論されて怒る親か・・・あ、親って大体こっちが正論いっても屁理屈言うなとか、じゃあ家を出て行けって言われるよね。

 

 

 

 

「で?貴方の名前は結局なんなの?」

「煙草妖怪小鳥遊天馬です★」

「はぁ??」

 

まぁいいわ、と言ったあとに自分の名前を出す自称仙人。

名前は茨歌仙(いばらかせん)だそうだ仙人は仮の姿で本当の姿は教えてくれなかった、あとから聞いた話だが死神なんか迎えに来ていないし戦ってもいない、一人だけ知り合いの死神がいるが教えられないと教えてくれた。

 

「ふ~ん、そうかそうか、あまり変なことすんなよ?こっちが迷惑だからな、それと仙人っていうのやめたほうがいいよ」

「は・・・?」

「いや、あんたよく見ると普通に妖力出てるし・・・大妖怪クラスの」

「え?嘘!?」

 

まぁ霊夢でも感知できないように隠しているけどやっぱり完璧に妖力を隠すなんてことはできないようで微妙にもれてるんだよねこれが。

 

「そんじゃ僕は地獄に戻るんでまた会えたらその右腕に隠してあるもの見せてくれよ、後竿打とかいう大鷲に謝っといて」

「地獄・・・あ、わかったわ伝えておく・・・」

 

バイビーっと決めポーズをしたあとに転移、さて・・・地獄に戻ったら報告書を書いた奴を問い詰めないとな、閻魔王をここまで動かしたんだから仕事の階級を下げるか、それとも仕事量を大幅に増やすか・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ?書いてないだって??巫山戯るのもいい加減にしろよお前」

「本当ですって!!」

 

報告書を書いてないと言い張る死神、じゃぁ誰がこんな嘘を書いたんだよ。

 

「いいか?この報告書にはお前の名前が書いてある、だがそれが違うとなるとじゃぁ誰が?ってなるだろうが、別の誰かがやったとしてもメリットがねぇじゃねぇか!」

「本当に知らないんですって!!信じてくださいよ!!」

「・・・・本当に書いてないんだな?」

「はい!」

「わかった、お前はもう仕事に戻れ・・・悪かったな呼び出して、これでも吸って仕事に励んでくれ」

「・・・ありがとうございます!」

 

あげたのはただの煙草ひと箱だ、俺が喫煙所で吸っていると他の死神が気になりだしたようで最近仕事の報酬に煙草が欲しいと言ってくる奴がいるのでそれに士気が上がるならいいかなぁと思いあげたり渡したりしている。

 

「そういえば秤?お前嫁さんがいるんだってな?子供も生まれるんだって?」

「・・・なんで知っているんですか気持ち悪い」

「いや気持ち悪いって・・・噂で聞いたんだよ、んで嫁さん可愛い?」

「めっちゃ可愛いですよ」

 

ほーん・・・めっちゃ可愛いのかぁ~いいなぁ~嫁さんがいるっていいなぁ~いいなぁ・・・。

 

「しかしお前のどこを好きになったんだろうな、嫁さんは変わり者だな」

「どういう意味ですか、あんたよりもいいと思いますがね」

 

ほぉ~そんなこといっちゃう・・・もっとこう・・・有能な秘書が欲しいです、反抗しない可愛い有能可愛い可愛い可愛い秘書か部下が欲しい秤は仕事は普通だが会話が酷い、もっと盛り上げてくれる部下が・・・・。

 

「・・・・あ、そういえば秤の身内に確か可愛くて面白い女のk」

「駄目です」

 

あぁ~やっぱだめかぁ・・・

 

「・・・」

「・・・」

「いってきま!!」

「ちょ・・・待て!!」

 

すぐにその女の娘の部署にダッシュしたら後ろから物凄い形相で秤が追いかけてくる、めっちゃ怖い、般若なんていうもんじゃない、あれは悪魔だよ悪魔。

おっと!やべぇ!前に女死神が!! ぶつかったが秤に追いつかせないためすぐに謝り逃げる

 

「あっ・・・」

「あ、済まんね!」

「おいこら待ちやがれ糞天馬!!」

「クソっていう方がクソなんだよ!バーカ!!」

 

やばい今のでめっちゃ差を縮められた!俺の足もっと早く動け!てか60km位で走っているのになんで追いつくんだよふざけんな!

 

 

 

 

一方ぶつかった女死神は逃げる天馬を見つめながら呟く。

 

「アイツのせいで私の地位は・・・・覚えときなさい・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、やっと秤の親戚の部署についたわけだが・・・いたいた。

 

「おっす!計(はかる)ちゃん!ちょっとカモン!」

「あ、天馬さん・・・どうしました?」

「ちょっと俺の秘書にならない?秤だけじゃつまんないし怖いんだよね」

「えっ」

 

計ちゃんとは何度かお話したことがある、非常に落ち着いていて美人で秤の妹らしい、この子がいれば秤も悪態をつかずに落ち着いてくれるはずだ・・・落ち着いてくれるよきっと。

 

「天馬ぁああああああ!!」

 

やばい、もうきやがった秤の野郎!!なんで妹のことになると秤は五月蝿くなるんだ!?

 

「どう!?計ちゃん!いいよね!?」

「私でよければ・・・・」

「おっけい!決まり!!ちょっ秤!今すぐその変身解け!!」

「おい計!この糞野郎の話を聞くな!なにも無かったと思え!!」

 

ぐぇぇぇ、ちょ、首しめんな秤!死ぬ死ぬ!死なないけど死ぬ!!

 

「え・・・っと・・・兄さんそろそろやめないと天馬さん死ぬよ?」

「こいつが死ぬかよ!いいか計!?こいつの秘書になろうだなんて思うなよ!?絶対面倒臭いことになるぞ!!」

「でも・・・もう決めちゃったし・・・」

「はぁ!?」

「うぐぐぐぐ!(あ・・・やばい・・・血の気が引いていく・・・気絶しちゃうよお兄さん!やめて!お願いだから!苦しいよ!気絶しちゃうよ!勘弁してよ!)」

 

ギブギブと秤の肩を叩くが無視される。

 

「兄さん!!もうやめなよ!!可哀想じゃない天馬さんが!!」

「あっはい」

「ゲホッ!ゲホッ!」

 

どうやら秤は妹に頭が上がらないらしく毎回こういうことになると計ちゃんが止めてくれるんだよなぁ、この子がいればいい感じに面白くなるよ・・・うん。

 

 

 

閻魔大王の部屋兼俺の部屋にて。

 

「ゴホンッ!では音無計!君を俺の第二の秘書になることを決定する!ってことで早速だがちょっと髪の毛の匂い嗅がせてくれ!」

「え!?あの・・・えっ!?」

「何を言ってんだこの糞閻魔!」

 

皆に言い忘れていたが秤の苗字は音無(おとなし)だなかなか洒落ているだろう?

小鳥遊と音無・・・いいと思うよ、なんか運命感じちゃう。

 

「計ちゃん、実は俺・・・計ちゃんの髪の毛匂い嗅がないと死んじゃう病なんだ!」

「そうなんですか!?それなら・・・いいですよ!!」

「んなわけあるか!!」

 

計ちゃんの天然ボケは最高だな、もうこの子俺の妹にしてやりたいぐらい純粋なんだよね、可愛いし。

 

「ま、冗談はさておき「冗談じゃねぇだろ!!」、計ちゃんの仕事の内容を伝えましょう、まず俺と一緒に死神達から集める報告書確認の作業・・・そして俺とお話したりしてくれればいい」

「おい無視すんな!」

「それだけなんですか?お安い御用ですよ!」

「はぁ・・・駄目だこいつら・・・なんとかしないと・・・」

 

うるさいぞ秤、お前を平社員に格下げしてやろうかこの野郎、てかお前さっきまでずっと無言だったのになんで妹のこととなると本当にこんなおしゃべりになるんだ??

 

「それじゃぁ仕事しようか、計ちゃんはそっちに分けてある書類を頼むよ、はい秤・・・これお前な」

「は!?明らかに僕の方の書類、君達の三倍はあるんだけど!?」

「いや~計ちゃんも幸せだねぇ、仕事を一杯してくれるお兄ちゃんがいるなんて」

「自慢の兄ですから★」

「・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回!登場人物紹介になります!一回してあるけどオリキャラ二人も増えたからね!


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東方人外録、登場人物を紹介するの巻

 

 

【小鳥遊天馬(たかなしてんま)】

 

東方人外録主人公、最低最低言われる天馬ではありますが実は優しい、少し自分の力に過信しているせいか自己中気味、良い風に言うと自分の道を行く。

 

【能力】

 

ありとあらゆる物を創造する程度の能力+人外になれる程度の能力

 

幻想郷史上初めての能力二つ持ち。

 

ありとあらゆる物を創造する程度の能力ですが本当になんでもっていうわけではないんですね、実際にあったものorあるもの、無いけど作れるよっていうものは創造できる程度、人の能力をそのまま創造し、自分が使えたりできる、まぁこれでだけでも最強なんですけどね。

 

人外になれる程度の能力。

 

文字通り人外な事をできる能力、戦闘では大半この能力だけで戦っている、体内に無限の細胞を作り出せたり頭が取れても自動で復活できる。

ただし血液は再生されないようで失血で気絶することがある、天馬が朝弱いのは血液に関係しているのかもしれない。

 

【容姿】

 

この世界に来た当時短髪黒髪でしたが今は少し変わり髪は肩にかかる程度になっただけです、色などはまったく変わりません。

 

顔立ちは初期から少しお兄さんに成長したかなぁ?っていう程度ですね。

 

服装は黒い和服に横に紅い文字の刺繍がしてある、初期となんら変わりません。

 

【身長・体重】

 

少し成長して170cmジャスト、体重も鍛えたためか46kgから50kgになった。

 

 

【趣味・好きなもの】

 

煙草を吸うのが大好きなようで時々自己紹介のときに煙草妖怪と言う。

 

好きなもの・・・人は八雲藍、だが藍からは嫌われていると天馬は思っている。

藍自体は天馬のことは大事な人物だと思われているようだがそれが恋愛感情なのかはまだ伏せておく、オムライスが好きなようだ。

 

 

 

以上 人外録主人公 小鳥遊天馬の紹介を終了する。

 

 

 

【音無秤(おとなしはかり)】

 

天馬の部下になった可哀想な人。

懐妊したお嫁さんと可愛い妹を持つ人生完璧ですよっていう人

そしてレミリア以上にカリスマを持つ人、ブレイクはあまりしない。

 

【能力】

 

力量を合わせられる程度の能力

過去自分に関わってきた弱い者、強い者の力量に合わせることができる、秤オリジナルの技もあるが関わってきた相手の行動を自分も合わせることができるためいろんな技を多種多様に持つ。

力量を合わせるとき、変身みたいなことをする、実は変身ではなく力量を合わせたい人物の身長に合わせているだけである。力量を合わせないときは本来の姿に戻る。

 

【容姿】

 

ツリ目、髪は白髪で全体的に肩に掛かる程度、前髪などはピンセットなどで止めている。

 

 

【実際の身長・体重】

 

身長175cm 体重48kg

 

【趣味・好きなもの】

 

同期で入った仕事仲間と会話したり、たまに職場の女死神を弄るのが好きなようだ。部下や同期との関係は良好なようでもちつ持たれつつというような感じだ。

 

好きな人+物 名前はまだ出せないが秤は妻をものすごく大事にしており妻が懐妊した事を知った瞬間妹や同期・部下に泣き笑いしながら嬉しがっていた、当然妹や仕事仲間からは沢山の声援が送られた。

 

 

 

 

 

【音無計(おとなしはかる)】

 

秤の実の妹、天然ボケが入っている。

職場では癒しマスコット的な存在で死神達の疲れ和らげている。

それが能力か?というとそうではないのが凄いところ。

死神達の間では計伝説というのがあり、計にお茶を入れてもらうと余裕に三徹できる、計に頑張ってと労いを言われると疲労がなくなるどころかむしろ元気がでてくる・・・などなど。これによって計のいた職場は上位に食い込めている。

 

【能力】

 

あらゆる衝撃を返せる程度の能力

 

秤が天馬との戦闘に使った技でもある計の能力、これがあるせいか秤は妹に頭があがらないらしい。

 

斬撃、衝撃、打撃を相手に返せることができる、これを工夫すると自分の放った衝撃が物凄い強さで返せる。

 

例えば相手を叩く衝撃が自分に少しでも跳ね返るとねずみ算式に衝撃を返し最後には相手に跳ね返す、すると相手が物凄い衝撃を受ける。

 

 

【容姿】

 

髪は綺麗な白髪でショートカット、前髪はオデコらへんで整えている、顔は美人というよりは可愛らしい。ものすごく可愛らしく幼さを残している、そのため計に結婚を申し出る男が絶えない、勿論断っているらしいが。

 

【身長・体重】

 

天馬より20cm程低いので150cm程、体重は※※。別に重いわけではない。

 

 

【趣味】

 

縫い物や料理などが好きなようだ、運もいいようでお茶を作ると必ず茶柱が立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




改めて天馬のプロフィールと新オリキャラのプロフィールです!
音無兄弟・・・ううむ・・・強いなぁ


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天馬、閻魔王を挫折する!?

「ふぅ~終わった、秤と計ちゃん、お疲れ~んじゃ俺は帰って寝るわ」

「あ、天馬さん」

 

就業時間朝10時から夜8時までの仕事を終え、香霖堂に帰るための準備をしていると、後ろから計ちゃんに声を掛けられた。

 

「どした計ちゃん?ハグでもしたいのかい?カモン!」

「えっ・・・じゃ・・・じゃぁ・・・」

「えっ!?」

「えっ!!?」

 

冗談で腕を大きく広げてさぁこい!っとしていると、予想外なことが起きてしまった、なんと驚いたことに計ちゃんが俺の胸の中に飛びこんできた、これには俺と秤も素っ頓狂な声を上げた。

 

「えっ」

「天馬さんって結構筋肉質なんですね・・・」

「お、おう」

「ちょ、計?お前何してんの?」

 

「え?ハグですけど・・・・」

 

あ、めちゃくちゃ良い匂い・・・やばいこれ、麻薬のような中毒になりそう、癖になる。

 

「計ちゃあぁぁん!!」

「あっちょ・・・くすぐったいです・・・」

「おい糞閻魔!!何人様の妹の胸に顔を埋めてんだ!!」

「はっ!?無意識に計ちゃんの胸に顔を埋めてしまった!!」

 

驚異の計中毒恐るべし、しかしなんとまぁ女の娘の香りはどうしてこう良い匂いなんだろうか、男の匂いは臭いというか汗臭いというか・・・、香霖はシャンプーの匂いがしてたなそういえば、一概に男=臭いというわけでもなさそうだ。

 

「ん、まぁそんなことはどうでもいい、んでどうした計ちゃん、俺になんか用かい?」

「えっと・・・今日ご一緒に御飯食べに行きませんか?」

「ふむ・・・、別段俺は別に用は無いから別にいいんだけど・・・よし!じゃぁ行こうk」

 

「駄目だぁ!!」

 

突然秤が声を上げた。

 

「こんな典型的送り狼みたいな奴と一緒に御飯を食べに行くなんて断じてならん!!」

「送り狼って・・・」

「まぁ間違いではないが・・・・」

 

送り狼ねぇ・・・むしろ送られる兎なんだがなぁ、襲ったことはないし襲われることばっかだし・・・・あ、映姫の事は勿論ノーカンだノーカンノーカン!!

だってあれは俺も嫌々だったし?

 

「兄さんには関係ないですね!行きましょう天馬さん!!」

「お、おう?」

「待て待て待て待て!!じゃぁこうしよう!!俺の家で食わないか!?」

「えっ?」

「へっ?」

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった」

 

現在秤の家に居る、秤の嫁さん困ってたぞ・・・しかし美人だった。

てかなんで秤の家に来たかというと秤が俺と計の飯を止めたからだ、そしてこうなったと・・・。

計と秤の嫁さんで飯を作っているらしく、台所からは女の人達の笑い声が絶えない。

そしてこの空気にも耐えられない、今現在リビングで秤に睨まれている。

 

「おい天馬、ありえない事だが妹はお前を気に入っている、だが間違えるなよ?それは恋愛感情じゃないからな、もしも計に何かがあったらお前を殺すぞ」

「安心しろ、計ちゃんに手を出すつもりはないし、俺は好きな人がいるからな」

 

30分程ずーっとこんな感じだ、グチグチグチと五月蝿いお兄さんだ、本当に面倒臭い。

 

「大体お前が計を秘書にするだなんて言わなければこんなことにはならなかった、あの時俺は全てを捨ててでもとめれば良かったと後悔している」

「ソーッスネ」

 

あぁ、なんて面倒臭いんだろうか、すぐにでも香霖堂に戻りたい位だ。

 

「帰っていいすか?」

「駄目だ!それだと計が悲しむだろ!何考えてんだ!!」

 

どっちだよクソ。

 

「大体、天馬は仕事はしない、よく遅刻をする、女死神をよく口説く、なんでお前がいまでも閻魔王になれるのかが不思議なくらいだ」

「・・・強いからじゃね?女ってやつぁ~強い奴が好きになる、これは野生の動物でも一緒だ、だって俺強いもん、男だってそうだ、力のない奴よりある奴の方につくことは明白だからな」

「・・・言ってくれるじゃねぇか、だがな覚えておけ、俺はお前を上司だなんて認めていないからな、嫌々付き合ってあげてるだけだからな、計のこともあるしな」

「おっと!!飯が来たようだ!!」

 

台所から計と秤の奥さんが豪勢な御飯を持ってきた、おおぅうまそうだ。

これで秤の愚痴を聞かなくてすむ、もし秤が愚痴を言っても計ちゃんが止めてくれるしな。

 

「お待たせ~!」

 

元気な声で計ちゃんが置いた御飯、それは炊き込み御飯だった。

う~んこの香り・・・絶対美味いだろうな。

 

「おほ!これ計ちゃん作ったの?美味しそうだねぇ!」

「そうですよ~私が御飯と味噌汁でおかずを作ったのが琴音(ことね)さんが作ったんですよ~」

 

秤の嫁さんの名前は琴音という、綺麗系美人で生粋の死神らしいが今は子供が生まれるもんだから休業しているそうだ、秤としては働いて欲しくないそうだが琴音さんは早く復帰したいとボヤいている。

 

「おかずはだし巻き卵と天ぷらかぁ、美味しそうですねぇ」

「美味しいかどうかは食べないとわからないですよ」

 

ウフフっと綺麗に笑う琴音さん、うーん・・・秤にはもったいないな。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~食った食った・・・ご馳走様」

 

お腹いっぱい腹持ちいっぱい夢いっぱいってなぁ感じでお腹も膨れた。

 

「お粗末様でした」

「いやぁ、琴音さんは料理もできて美人だなんて秤にはもったいないですよ」

「どういう意味だ」

 

おい秤、箸を投げようとするな、行儀が悪いぞ。

 

「いいえ、勿体無いだなんてそんなことはありませんよ、私は秤さんの全てが好きなので勿体無いなんて思う事はないですし寧ろ逆だと思います」

「ほぅ・・・成程成程羨ましい限りですなぁ」

 

よくできたお嫁さんだこと、旦那を立てるとはさすがだなぁ・・・。

秤はなんか泣いているし計ちゃんはそれを暖かく見守っているし、いい家族なんじゃぁないか?場違いすぎて帰りてぇ。

 

「というわけで・・・そろそろお暇しますかね」

「おう、帰れ帰れ」

「兄さん!!」

「貴方!!」

 

秤の言葉で少し切れそうになったが我慢我慢、この幸せな家庭を崩壊するわけには行かないからな、秤の罰は明日の仕事量だな、何時もより多めに仕事をやろう。

 

「いいですよ気にしなくても、では俺はもう帰りますんで」

「あの人が失礼な事を・・・すいません」

「兄さんは後で締めておきます、天馬さん今日は付き合っていただきありがとうございました!」

「はいよ~じゃぁまた明日ね~」

 

玄関を出て転移、まぁ・・・何時も通り香霖堂の前に着いたわけだが、中からなんか聞きなれた声が聞こえるんだがなぁ・・・なんか入りたくねぇなぁ。

 

「ただいま・・・」

 

そんなことを言っていられないのが俺な訳ですよ、第一入らなければ寝床だってねぇしなぁ・・・・。

 

「ん、仕事お疲れさま」

「おう」

 

まぁた蝋燭の明かりで本を読んでるよこの人は・・・上げた電気スタンドはどうしたんだ。

 

「ほいよ、新しい電気スタンドだ、てか前の奴はどうした」

「どうしても欲しいっていう人がいたから売ってあげたよ」

 

お前は必要じゃないのかい!まぁ別段怒る気もしないからいいんだけどね、てかめっちゃ横から視線を感じる。

 

「・・・ん?」

「・・・」

 

うわ、びっくりした・・・横を向いたら魔理沙が椅子に座って俺を見つめていた、てかいたのかお前、あぁ成程・・・声の主は魔理沙だったんだな。

あ、そういえば魔理沙と会話全然していなかったな、二ヶ月位か??

 

「ん・・・久しぶりだな魔理沙」

「天馬・・・」

 

あ、やばい魔理沙が絶対泣く顔をしている、いやてかむしろ泣いている。

この状況を打破するにはどうすればいいのか俺にはわからない。

 

「あ~魔理沙、この前は悪かったな、ちょっと意地を張っちまった・・・ごめんな?」

「えっ?あ、あぁ・・・」

 

取り敢えずアリスに言われた通りに謝ってみるとなんとかこうをなしたようで魔理沙が泣き顔から徐々に普通の顔にもどってくる。

 

「さて、俺は明日も仕事だ、魔理沙も夜中になる前に帰れよ?夜道は危ないからな、妖怪に襲われて死んでも知らねぇぞ?」

「何言ってんだ天馬、私が魔理沙の魔の字もしらない妖怪に負けるわけがない!」

「そうかいそうかい、んじゃ俺は明日の為に寝ようとするかね、んじゃお休み~」

 

はぁ、疲れた・・・女の扱いってもんはこうも大事にしなきゃならんのか、今更だが秤はすごいなと思うわ、あんなに女に囲まれていて普通にしているんだからな。

しかし・・・こういうのがいけないのか?別段好きでもでも嫌いでもない女の子に対してこんなに優しくしていると変に勘違いというかなんというか・・・そういうことにならないためにはどうすればいいんだろうか、しかし秤と琴音さんを見ているとやっぱ結婚っていいなぁって思うよ。

結婚してぇなぁ・・・。

 

その日の夜は結婚したいとずっと頭の中でもんもんとしていたが朝起きてみるとそんなことはもうどうでもいいやと思ってしまった。

 

 

 

 

「うぅ・・・また遅刻か・・・秤に怒られちまうよぉ・・・」

 

歯磨きしながら頭の中でどう言い訳しようか考えていた

就業時間朝10時から夜8時までなんだが今現在の時間10時25分、起きた瞬間やっちまったとおもったよ、だって秤怖いんだもん。

 

 

案の定閻魔王の部屋に入ったら秤が睨んでいましたよ、現在時刻10時35分。

 

「よう天馬、昨日あれほど言ったのに遅れてくるとはやるじゃねぇか、えわざとだろ?わざとなんだろお前?」

「サーセン」

「俺は10時前には出勤しているのにお前はなんでこんな遅くに出勤できるんだ?えぇおい?いい加減にしろよ?」

「サーセン」

「それしか言えねぇのかよ、情けない男だ」

「あ~・・・計ちゃんおはよう」

「お、おはようございます・・・」

 

無視するんじゃねぇ!とそのあと言われたが俺のスルースキルでなんとかスルーできたようだ、計ちゃんが最終的に止めてくれたし、よかったよかった。

 

 

 

「はいお昼休憩でーす!みんな御飯食べに行っていいよ!」

「んじゃ俺は食堂にいくわ、計はどうする?」

「あ、じゃぁ私も行ってきますね~」

「はいはい」

 

 

閻魔王の部屋から出て行った秤と計はうきうき気分で食堂に向かったようだ・・・、さぁ朝の遅れ分をやろうかね・・・。

 

「はぁ~喫煙所にいきたいところだがやっぱり遅れたぶんは取り戻さねぇとなぁ・・・閻魔王降格されちまうよ」

 

全死神の部下にあんなことまでいっておいて当の本人は仕事してないってなるとクーデターが起こりかねないからな、今のうちに仕事をして朝遅れた分をやるしかないしな、さぁ頑張ろ。

 

「お?こいつ中々頑張ってんじゃーん、あともう少しで昇格だぞ~頑張れい」

 

 

 

 

 

「やっぱり食堂の飯はカキフライ定食が一番旨いと思うんだよ」

「兄さんは目の付け所が悪いですね、あそこはオムレツ定食ですよ」

 

ふう、やっと終わったか・・・、さて残り休憩時間10分、喫煙所で一本吸っていくか・・・。

 

「お?飯美味かった?俺ちょっと喫煙所行ってくるわ」

「おう、あと10分位しかないけどな」

「いってらっしゃ~い」

 

喫煙所に行く途中、秤と計にすれ違った、あいつらやっぱ仲がいいな、誰もが微笑む兄弟って感じでな、うんうん、仲良きことは美しきことかな。

 

 

「兄さん、気づきました?」

「おう、あきらかに確認作業の書類が減っているな」

 

 

 

 

現在喫煙所に居る。

 

「はぁ~・・・午後も頑張るか・・・」

 

喫煙所には先客がいたが俺の顔を見るたび出て行ってしまった、楽しい談笑でもしたかったのだが・・・俺って閻魔王していていいのかな?っと少ししょぼくれてしまう。

 

「はぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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秤と天馬、鬼を退治する。

閻魔王室にて

 

 

「あぁ?鬼が暴れてるだぁ?それは死神の仕事だろうが」

「僕達じゃなんとかできないから言ってるんじゃないですか!」

 

鬼が暴れているせいで死者は出ていないが出てくる可能性もあるので止めたところ返り討ちにされたと、そんで閻魔王である俺を頼ってきたわけか・・・・。

いま気分が乗らないんだよなぁ。

 

「ん~秤ぃお前行けよ、たかが鬼だし」

「はぁ?なんで俺が行かなきゃ行けないんだよ、お前が行け」

「閻魔王命令」

「グッ・・・!」

 

権力には逆えんだろう、鬼っつったってあの鬼だろ?元閻魔には敵わんだろうて、俺はちょっと忙しいからな、秤に行ってもらうとしよう。

 

「まぁまぁ報酬は弾むよ、そうだなぁ・・・秤の月給1.5割増でいいよ」

 

家族を養うってもんは面倒くさいようで金が必要になるな、どこの世界でも金金金・・・困ったもんだよまったく、まぁ金という概念がない世界はカオスなことが起きているんだろう、金という抑制がなくなると何をするかわかったもんじゃないな、想像がつかない。

 

「・・・本当だな?」

「あぁ」

 

うむうむ、金で動く部下もいいもんだ、ある意味従順なんだからな、さらに力がある奴ということもあって安心する、一応秤の実力は俺も認めているからな任務完了することを願うよ。

 

あ、ちなみに計ちゃんは前の職場に一旦もどってもらっている、計ちゃんの居た元職場の成績が下がってしまったからな、少しではあるが計ちゃんを入れて士気を上げてもらおう。

 

 

 

 

 

全く天馬には困ったもんだ、第一何故閻魔秘書の俺がこんなことをしなければならないんだ、本当に怒りを覚える・・・、月給1.5割増しをあいつが提案しなければ断っていた所だ、くそっ。

 

大体人里に来るのだって久しぶりだと言うのにいきなり鬼を退治してこいとか巫山戯ている、その鬼の場所さえ把握していないというのに。

 

「しかし・・・その噂の鬼はどこにいるんだ?」

 

人里で暴れているってわけでもなさそうだ、店なんかは普通に開いているからここでは出現していないのだろう。

 

「面倒臭いが場所を移動するか・・・」

 

鬼が出現しそうな場所・・・妖怪の山か・・・?

 

 

「来てみたはいいがやはり白狼天狗が見回りをしているな」

 

あの駄目天狗共はすぐに追い返そうとするから嫌いなんだ、理由も何も聞かずにな。

 

「ん?」

 

見つかると面倒くさいのでコソコソと妖怪の山に侵入してみるといきなり辺りの木々が騒がしくなったかと思えば目の前に初めて見る女が突如現れた。

 

「ふむふむ・・・成程・・・」

「お前誰だよ?」

 

いきなり俺に近づいたと思ったらマジマジと見だして一人で納得している女、なんだこいつは・・・手に葉団扇を持っているという事は天狗なんだろうと推測、しかし天狗が俺を見て何を納得したんだ?

 

「どうも申し遅れました、清く正しい射命丸文です!」

「はぁ・・・」

 

なんか面倒くさそうな奴に絡まれたな・・・。

 

「音無秤さんで合っていますね?地獄の元閻魔・・・天馬さんに閻魔の座を奪われたと聞きましたがどんな心象で?」

「どこで俺の名前を聞いたのか分からないが答える気はない、失せろ」

「成程成程・・・悔しいと」

「おい勝手に推測すんじゃねぇ」

 

嫌な女だな、面倒臭いことこの上ない、勝手に推測されて俺が弱いみたいな言い方しやがって・・・。

 

「悪いが俺は探しもんがあるんだ!ちょっかいなら他の奴にしろ!」

「探し物・・・それは・・・鬼のことですか?」

「は?」

 

取材させてくれるならと鬼の居場所を教えるという条件で鬼の場所を教えてもらった、博麗神社とかいう所で現在巫女と戦っているらしい。

 

「そうか、じゃぁ今鬼は博麗神社とかいう所にいるんだな?案内してくれ」

「いいですけど・・・空飛べます?」

「ん?一応飛べるがそれがどうした?」

「いやぁ、天馬さんが飛べなかったもので」

 

あいつ飛べなかったのかよ!通りで飛んでる所を見たこと無いと思った。

飛べない・・・ふむ・・・これはいい天馬の弱点だな、飛べないということは空中戦が苦手ってことだ・・・フフフッこれで勝てるな。

 

「では博麗神社に向かいますのでついてきてください!」

「おう、できれば早めにな」

「わかりました!」

 

するといきなり射命丸が飛び見えなくなってしまった。

おいおい早すぎるだろあいつ、早めにとはいったが早すぎる、ついていけるわけがない。

 

「えーっと確かあいつ・・・あっちの方向だったよな・・・?」

 

とりあえずあいつの飛んだ方向を目指すか・・・。

 

 

 

「お~お~・・・やってらっしゃる」

 

絶賛巫女と小さい鬼と思わしき物が戦っていた、っていうか鬼の方は霧みたいなのにちょくちょくなって巫女の攻撃を躱している・・・勝負にならないんじゃないのかこれ?巫女はなんか負けそうになっているし息切れも激しい、鬼の方は余裕の顔をしているし・・・。

 

「霧になって躱すか・・・どうやって攻撃を当てればいいんだ?」

 

相手が霧になり攻撃すら当たらないとなると勝負にはならない、それ故に勝利なんてものは勝ち取れない、じゃぁどうするか・・・諦めるしかないな、天馬なら突っ込むだろうが俺はそんな負けをわかっている勝負には突っ込む気すら起きない。

 

「癪だが天馬には無理だって言っておくか・・・」

「さっきからコソコソとしているうっとおしい羽虫がいるねぇ」

 

あ、バレちまった・・・博麗の巫女はもう倒れてしまったか、俺が転移する間だけはもっと長く戦って欲しかったな。

 

「まぁやる気なんて起きないんだけどな・・・転・・・移!」

「逃げる気かい?そうはさせないよ!」

 

地獄に転移しようと思ったら邪魔されてしまった、幸い掠っただけでよかった・・・いや、掠っただけなのに殴られたところが青痣になってやがる・・・あれを一発でも直で受けたらすぐに降参できる自信がある、やれやれ・・・元閻魔王だと言うのに俺はこんなにも弱かったのか・・・・。

 

 

「ふぁぁ・・・そろそろ秤が倒されているか倒している頃だな」

 

秤が鬼退治に行ってから3時間・・・まぁ秤の事だ、倒しているに違いない。

しかし相手は誰だろうか、星熊か?あいつは力馬鹿だから簡単に倒せる・・・こんなにも時間がかかるということはまさかとは思うが・・・伊吹萃香か?

そうなったら面倒臭いな、密と疎を操る・・・だっけかな?簡単に言うといろんな物質を集めたり拡散できるということだ、勿論自分の体も拡散という形で霧になることなんて容易いだろう。

 

「ふーむ・・・少し様子を見に行ってみる・・・・か?」

 

そう思い立ち上がった瞬間閻魔王室のドアがゆっくりと開いた、開けた奴は秤だった。

 

「よう、任務遂行できたか?」

「いや、逃げてきたわ」

 

おぅふ、やはりか・・・まぁ相性が悪すぎたな、なんせ秤の能力は力量を合わせる程度だからな、相手の力量を合わせたって相手の方が自分を熟知しているはずだから負けるはずだ、そして力量を他人のに合わせようとしても萃香以上の力量を持ったやつに合わなかったってことか・・・・。

 

「はぁ・・・わかった俺が行こう、場所はどこだ?」

「確か博麗神社だっけか?巫女が倒されていたぜ」

 

おい霊夢・・・なぜ負けた。

 

「ほう、秤お前は休憩していろ、報酬は1.5割増しでいいから心配するな」

「はん!一応は働いたんだ・・・もらって当然だろ?心配する必要なんかない」

 

 

 

博麗神社にて。

 

「ん・・・?危ねぇ!?」

「運がいいね!!」

 

辺りを見回しながら伊吹を探していると奴が後ろから不意打ちしてきやがった、霧で隠れていやがったか。

 

「なんだいなんだい、今日に限って強そうな奴が私に喧嘩売ってくるじゃぁないか、これは買わなくちゃ損だねぇ」

「うわ、酒くさ!近づくなよアル中女が!」

 

伊吹は一瞬キョトンとした顔を見せたあと、アッハッハと笑い キッ!と俺を睨みつける。

 

「口が悪いねぇ、私が一から口の聞き方を教えてやろうか?」

「だから近づくなってば、臭いんだって!お前俺の半径3m以内に入ったらぶん殴るぞ!」

 

まじで酒臭いこいつ、5mも近づいたら匂いで酔っちまいそうだ、てか頭痛い。

 

「・・・ッ!どうやら私に殺されたいようだねぇ・・・!」

「吠えんなって・・・弱く見えるぞ・・・うぉ!?」

 

秤が負けた理由はこの酒の匂いのせいかという位酒臭い・・・と思っていると伊吹が俺に向かって勢いをつけて殴りかかってきた。

 

「危ないじゃないか、少しは加減してくれよ」

 

ほいほいほいっと伊吹の攻撃から避けていく、体術は心得ていないようで力任せに殴ってくる伊吹を赤子の手を捻るように避けていると伊吹はそれに苛立ちを覚えたようだ。

 

「避けるばっかじゃないか!少しは立ち向かってきなよ!」

「ん~・・・・じゃぁ当ててみ、当たったらその気にもなるだろうよ」

 

さらに苛立ちを覚えた様で霧に拡散する伊吹、うーん・・・霧になってもなぁ。

 

「はぁ~・・・」

「ふぎゃっ!!」

 

密と疎を操る程度の能力を創造して伊吹の霧を集めてすぐに解除、霧になった伊吹はすぐに霧の状態から素の状態に戻り地面に落ちておかしな声を上げる。

 

「な、何をしたんだい?」

「内緒だよ~」

 

ニコニコと笑いながら伊吹を見つめると怒りに満ちた顔から恐怖に染まっていく顔になった、鬼も恐怖心なんてものがあるのか、初めての発見だ。

 

「何をしたのか分からないがまぐれだ!偶然だ!」

「はっはっは」

 

また霧状態になる伊吹、勉強をしないようで面白い。

伊吹の恐怖に染まった顔、実にそそるね、完全に相手を舐めきっている顔から恐怖に苛まれた顔に染まる顔は本当に燻られる。

 

「うぎゃっ!!」

「んっふっふ・・・」

 

相変わらず霧の状態を解かれ地面に落ちる伊吹、やはり面白い。

ほら、また伊吹の顔が恐怖の顔に染まっていく・・・。

 

「さぁて、お仕置きの時間だ」

「何!?」

 

伊吹の居る地面にスキマを展開し、俺だけのスキマ空間に吸い込む、叫びながら落ちていった伊吹は泣きそうな顔で興奮を覚えてしまった。

 

「さて・・・俺も行くか」

 

伊吹だけの居るスキマに入るとしよう。

 

 

 

 

「さぁて伊吹萃香、お前の罪は非常に重罪だ・・・俺を動かしたんだからな」

 

立ち尽くしている伊吹は俺に気づき戦闘態勢に戻る。

 

「ッ!!」

 

スキマの仲にバァンと出てくるは中世ヨーロッパで使われたとか使われなかったとかで有名な拷問器具、それはアイアンメイデン、恐怖心を煽る鉄製の女性をモチーフとした人形、中は針がびっしりと張り巡らされている。

 

「さぁ、お前は今からこの中に入りこの針に刺されて痛みに悶絶しながらゆっくりと死んでいけ」

「うっ・・・あぁ・・・やだ・・・嫌だぁあああ!」

 

逃げる場所など無いと言うのに逃げる伊吹、やっと勉強したようで霧状態にはならずに自分の足で全速力で逃げる伊吹。

 

「ふんふふ~ん」

「あっ!?離せ!!嫌だぁあああ!」

 

萃香の能力は便利だな、逃げる相手を引き寄せることが出来る。

引き寄せた伊吹の腕つかみゆっくりとアイアンメイデンに連れて行く。

 

「さぁ、悔い改めろ・・・大丈夫だ、お前は死んでも地獄でなんとかできるさ」

「ああああぁぁ!ごめんなさいごめんなさい!お願いだから許してえええ!」

 

暴れながら泣き喚く伊吹の腕をアイアンメイデンに固定してっと・・・おっと霧にならないためにアイアンメイデンに少し工夫をしておこう・・・これでよし。

 

「よし、じゃぁ今から断罪をする、伊吹萃香・・・お前は人間を攫い、殺し、勝てる訳もない相手と無理やり勝負に持ち込み負けた相手を殺す・・・どれ程重大な罪犯したかわかるか?」

「悪かった!反省する!だから・・・だからお願いします!勘弁してくれ!」

「自分が窮地に追い込まれると泣いて許しを請おうとする、まさに愚者のする事だ、どれだけの人間がお前の様に泣きながら死にたくないと言った?今はお前の番だ」

「あぁぁぁぁぁ!お願い!やめてぇぇぇ!」

 

ギィィ・・・っとゆっくりと閉まるアイアンメイデン、最後の最後まで伊吹は泣き喚きなく。

 

「あぁああああ!」

【ガタァァアアン】

 

完全にアイアンメイデンが閉まった、アイアンメイデンの中身はどうなっているのだろうか、もはや叫び声すら上げない伊吹。

 

「なんてね★うっそーん!」

 

実は伊吹にアイアンメイデンの針が刺さりそうになったとき消すようにしていたんだよね、殺す気なんてさらさらないしね★

 

「さぁ!中身はどうなっているかなぁ!・・・おうふ」

「ゥッ・・・ァッ・・・」

 

アイアンメイデンの中身を開いた瞬間前に倒れこむ伊吹、泡を吹いて少し小便を漏らして気絶していた。

 

「やり過ぎちまったかなぁ・・・」

 

いや、完璧やりすぎた、少し恐怖心を植え付けてやろうとしただけなのにこんな惨状になるとは思わなかった・・・。

 

 

「ほいっと」

 

博麗神社の境内に伊吹萃香を戻す、うわぁ・・・。

 

「ちょっと天馬!?萃香に何したのよ!?」

「いやちょっと恐怖心を植え付けてやろうかなと」

 

丁度境内にいた霊夢が萃香の惨状をみて驚いている。

 

「恐怖心!?あの萃香が!?」

「うむ・・・俺も少しやりすぎた」

「やりすぎよ!!」

 

萃香は霊夢に任せるとしよう、俺は少し疲れてしまったよ。

でも萃香のあの表情・・・最高に興奮した、動いた甲斐もあったという事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ドSな天馬さん


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天馬、忘却する。

「天馬、そこ右」

 

あぁ、暑い・・・まだ六月というのになぜこんなに暑いんだろうか。

蝉もちょこちょこと出てきて五月蝿くなったな、奴らはメスを求めて長い時を地面の下で過ごし一週間程地面から出て死んでいく、そんなのはまっさらごめんだ。

 

「ちょっと!なんで右に曲がらないのよ!これじゃ遠回りになっちゃうでしょ!」

 

しかし蝉のいない夏なんて考えもつかないわけで、しかし考えてみると蝉自体が夏の風流物なんだということを知ると感慨深いもんだ。

 

「はいそこ右!あぁ~!ちょっと天馬?!人の話聞いてる!?」

「うるせ~な・・・」

 

右に曲がればいいんだっけな、よっこいしょっと。

 

「あとは突き当たり左で着くはずよ」

「はいはい」

 

しかし大学に行くというのも面倒臭い、生徒ってわけで行くわけじゃないんだがな、しかしあてのない俺を拾ってくれた岡崎夢見って奴は本当に大学の教授だったのか、まだ俺と変わらない外見、いや・・・少し年上といった感じなのに教授だったとはな。

 

「はい到着、岡崎教授は入口はいって右に行って奥の教室に居るから後は頑張ってね、午後の授業が終わったら私も行くから」

「・・・あぁわかった」

 

正直大学に来たのはいいんだが車の中から出たくない、このまま時が過ぎるのを待っていたい位だ・・・あまり人と関わりたくない。

 

「・・・」

 

どうしてこうなったかというと俺にもわからない、どこかの市街地のど真ん中で突っ立っていただけだ、所謂記憶消失に近い、気づいたら知らない場所に立っていた・・・という事。

そのままつっ立っている訳も行かないわけで取り敢えずはブラブラして少し休憩してまたブラブラしていた。

 

「そこのお兄さん、こんな平日に若者が何をやっているんだい?」

「・・・?」

 

誰だこいつは、真っ赤な髪に三つ編みのポニーテール。

 

「あ、申し遅れたね、私はこういうもんだ」

 

ごそごそと財布のような入れ物に手を突っ込んで出してきたのは小さい四角形の紙、名刺だ。

 

「岡崎・・・夢美?」

 

・・・そんな何をすればいいのかも分からない状態で休憩をしていた、そんな俺に声を掛けたのは岡崎夢美だった。

 

「君は何歳?私よりは年下っぽいけど」

「いや、実をいうと分からない」

 

夢美はキョトンとした後、あぁそうか!っと手をポンッと叩き俺の今の状況を推測する。

 

「成程成程、君は記憶消失かな?名前は覚えてる?」

「全くといっていい程覚えていないな、いま自分がなぜここに居るのかすら分からない、とりあえずそこら辺歩いて・・・休憩していただけだ」

 

ふーむ・・・と少し考えた後夢美は俺に一つ提案をしてくる。

 

「うんうん、面白いね!君、私の助手兼お手伝いにならない?いま人が居なくて困ってるんだよね~」

「いいのか?こっちとしては何をすればいいか分からないから有難いんだが・・・」

 

手に職を持てばとりあえず住居確保位はできるだろう・・・まぁ夢美さんが出す給料次第だが。

 

「OKOK!じゃあ明日朝9時に京都※※大学に来てもらえる?善は急げって感じで」

「明日か・・・野宿すれば行けると思うが・・・」

「あ、そういえば君行く宛ないんだったね!それじゃあちょっと待ってね」

 

ゴソゴソと鞄から携帯を取り出し誰かと通話している夢見、少しばかり口論をしているが1分程すると口論が止まりだした。

そしてちょっと話した後携帯を閉じる。

 

「じゃあちょっとここで待っててね、私の助手が来ると思うから後はその子に聞いて頂戴、私はちょっと行くところがあるからまた明日!」

「あ・・・あぁ、また明日な」

 

 

 

30分程この場所で待っただろうか、一向に夢美の助手というのが現れない。

待ったところで何をすればいいんだろうか、まぁ待てと言われたからには待つが・・・・。

 

「お待たせ~君が記憶消失君か?」

 

目の前に車が止まり何だ?と見ているとウインドウが開き女の子が運転をしていた、これは予想外だ、まさか車でくるとは・・・しかし俺の居る世界はなぜ女の人じゃなく女の子が運転しているんだろうか、どうみても金髪の15歳以下の女の子にしかみえない。

 

「早く乗ってよ、君運転してね」

「俺?」

 

おいおい待て待て、なんで俺が運転するんだ。

警察にバレたらどうなるんだよ、捕まっちまうじゃねーか。

 

「身分証明証位ないのか?財布位持っているだろ?」

「うん・・・?」

 

自分のズボンのポケットを探ってみる・・・あった。

 

「えーっと煙草と・・・現金3万と・・・運転免許証?」

 

なになに・・・?名前は小鳥遊天馬・・・?俺の名前はこんな名前だったのか。

 

「あるならいいじゃないか、運転変わってくれ、待ちくたびれたぜ」

「あ・・・あぁ・・・」

 

女の子が運転席から助手席に移り、俺が運転席に座る。

えーっと・・・記憶が曖昧だがシートベルトをしてサイドブレーキを下ろして・・・なんだ?最近の車のサイドブレーキは足元にあるのか、そんでブレーキを押しながらギアをドライブに入れてと・・・いや、ちょっと待て、どこに向かうのかわからないのに運転しようとしているのか俺は・・・あぶないあぶない。

 

「とりあえずどこに迎えばいいんだ?」

「あぁ、忘れていた・・・そうだな、取り敢えず私の家に向かおう、その前に自己紹介をしておこうか、私は北白河(きたしらかわ)ちゆりだ、あんたは?」

「小鳥遊天馬・・・だ、名前はここに書いてあった」

 

運転免許証っぽいのを差し出して見せる。

 

「ふんふん、18か・・・私よりも随分年上だな、まぁよろしく」

「あぁ・・・」

 

 

 

 

 

車を動かし1時間程経つとどうやらやっと北白河の家についたようだ。

なんとまぁ・・・ボロっいや、生活感あふれる家なんだろうか、家というよりアパートに近いような気もしなくもないが雨風凌ぐだけには丁度いい。

 

「よし、君はちょっとここで待っていてくれよ、絶対に中に入るなよ」

「・・・?わかった」

 

外の階段を上がって北白河の家のドアの目の前で立ち往生。

家の中からはドタバタと聞こえる、部屋の掃除でもしているんだろうか。

 

「よし、入れ」

「あぁ、邪魔す・・・る・・・?」

 

10分程経ちドアが開かれ北白河の家の中に招かれる。

 

うわぁ・・・なんてこった、家の中よりも車の中にいたほうが幾分かマシなように思えてくる程ゴチャゴチャだ、汚くはないのだが衣服やいろいろな物が散乱している、まだ足の踏み場があるだけマシということか。

 

「それじゃ宿泊費1万5千円で」

「は・・・?」

 

俺の財布の全財産の半分を要求する北白河、ううむ・・・まぁしょうがないか。

 

「冗談だ、適当にくつろいで居てくれ、私はテレビでも見ているから」

「あぁ・・・分かった」

 

そういいながらテレビをつけて雑魚寝をする北白河、ううむ・・・女というのはこういう生活をしているのか・・・少し幻滅してしまうな。

 

 

というような感じで今現在こうしている。

 

 

「とりあえず中に入るか・・・」

 

北白河の車の鍵を取りドアを閉めて鍵をするっと。

 

しかしこの大学というかこの世界の大学は18歳未満でも大学に入れるもんなんだな、大人の人が全くと言っていいほどいない、すごいもんだ・・・算数なんかは小学一年生くらいで全て終わらせているんじゃないか?

 

「えーっと・・・入口入って右だったよな?」

 

周りの視線が辛いな、周りは中学三年生位の子達だから俺みたいな奴は気になるのだろうか・・・。

 

 

「ここか・・・邪魔するぞ」

「お、来たね~」

 

目的地に着き目の前のドアを開けると岡崎夢美が椅子に座っていた、教室の中にいたのは岡崎だけでは無く白と黒を基調とした衣服に黒い帽子をかぶっているショートカットの女の子、それと ん?どっかで見たことがあるな? 変な帽子をかぶっている紫色のドレスを着た金髪のお淑やかそうな女の子・・・うーむ・・・どっかでみたことがあるような・・・。

 

「私の教え子みたいなものだ、仲良くやってくれよ~?長い付き合いになるのかもしれないんだからな?」

「ふむ、わかった」

 

うーん・・・やはり初めて会う人の目を合わせられないな、自分がコミュニケーション障害だということを酷く痛感する、しかしショートカットの女の子がずっとこちらを見ているのはなぜなんだろうか。

 

「岡崎教授~この人は誰?新しいサークル仲間?」

「いや、ただの手伝いだ、当てがないらしくてな、ちゆりの家に住ませてやっている」

 

へぇ~!っと笑うショートカットの女の子、ドレスの女の子は優雅にお茶を飲んでいた、アウトオブ眼中って感じだ、俺的にはそっちのほうが楽っちゃぁ楽なんだがな。

 

「ねね!貴方名前は?私は宇佐見蓮子、気軽に蓮子でいいよ!」

「あ、俺の名前は小鳥遊天馬・・・らしい」

「らしい?」

「あら?貴方自分の名前がわかったの?」

「いや実はカクカクシカジカシカクイムー※で」

 

 

天馬説明中....

 

 

「なるほど、記憶消失かぁ~ご愁傷様だねぇ・・・」

「しかしポケットに運転免許証ねぇ、意外と私と年変わらないのね」

 

なんとまぁ夢美と俺の年はほぼ一緒のようだ、共通点があるとすれば目が赤いことだけだろうか。

 

「それで?貴方はどんな能力を持っているの?岡崎教授が声を掛けたって事はそういうことでしょ?」

「・・・能力??なんだそれ?」

 

能力とは一体なんのことなんだろうか、もしかしてこの世界は魔法少女だったり魔法少年がいる世界なのだろうか・・・選ばれた者だけが持つ・・・みたいな?

 

「例えば私は結界を見る能力・・・蓮子だったら月を見ただけで今居る場所が分かる程度の能力・・・そういうことよ」

「いや、能力とか全くわからないんだが・・・どうやって持ってるかどうか確認できるんだ?」

「目を閉じて自分の能力を自分に問いなさい、そうすると見えるはずよ」

 

見える?何が見えるんだろうか?

まぁとりあえず従ってみることにしよう、えーっと目を閉じて・・・おい俺・・・俺はどんな能力を持っているんだ?

 

「ん?」

 

人外※なれる※度の能力・・・となんだ?ところどころ文字化けしているぞ?あともう一つ出てきたが全部化けていてよくわからないな・・・。

 

「えーっと人外?なれる能力だそうだ、ところどころ読めないところがあった」

「人外?なにそれ」

「人外・・・」

「あともう一つあったけどそれは完全に読めなかったな」

「「能力が二つ!?」」

 

なんだ?能力が二つあるっていうのは珍しいものなのか?

 

「おぉ~ただの当てのない少年だと思ったらなんとまぁ驚きの能力二つ持ち!いや~私の見る目も中々だろう?人外ということは化物になれるかもしれないな!それはまぁ後々実験してもらうけど今はゆっくり打ち解けようじゃないか!」

 

と最後に締めくくる岡崎夢美。

ふぅむ・・・この世界は不思議なことばっかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なぜ天馬が幻想郷を忘れたのか・・・能力を忘れたのか・・・一体何があったんだろうか、それは後々分かるはず。

秘封倶楽部が出てきましたね岡崎教授が可愛すぎて辛いです。


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天馬、実験される。

岡崎教授のもとで働きだしてから一ヶ月、いまでは蓮子と口喧嘩するほど仲良くなりマエリベリー・ハーンとも会話できるようなってきた、マエリベリーハーンというのは紫色のドレスをよく着ている女の子のことだ。

 

 

「はぁ!?旅行するから運転しろ!?」

「うわ、大きな声だすんじゃないよ天馬」

「そうよ、五月蝿いわよ」

 

この大学のオカルトサークルだか何かに旅費が降りるとは思わない、笑える話だ、ろくにサークルとしての活動もせずに結界だ~怪しいだぁ~幽霊だぁ~騒霊だぁ~な~んて言っている連中に大学から旅費が降りるだなんて到底思えないし思わない。夢見は何を考えているんだ?

 

「大体どこに旅行に行くつもりだ?勿論ここから近い所だろうな?」

「ん~・・・北海道・・・沖縄なんていいわねぇ~」

「それなら飛行機を使えばいいだろ!?なんでわざわざ車で北海道やら沖縄にいかなきゃならねぇんだ?」

「飛行機は高いのよ、車なら寝れるしトイレも行ける、お金はあまりかからないしドライブ感覚で行けるじゃない?」

 

ふざけるんじゃない、京都から沖縄・北海道まで車でいくなんて物凄い時間がかかるし運転手が発狂するぞ!てかちゆりだってあいつ免許持っていると思ったのに無免許だったんだぞ!?じゃあ誰が運転するんだって言ったら俺しかいない!

 

「ちょ・・・金はどうすんだ?北海道か沖縄に行くまでの金は!?俺ら全員合わせても40万はかかるぞ!?」

「余裕でしょ!まぁ少し貴方に手伝ってもらうけどね」

「へ?」

 

というわけで今現在、人外の能力を研究している、拒否すれば俺は文無し、承諾しても地獄・・・。

 

「はーいじゃぁ天馬、力んで~はいこれ殴って~」

「ふん!!」

 

変な機械を殴ると数値が出るらしいが・・・これを調べてなにがあるんだ?

ちゆりはなんかビデオカメラでとってるし・・・。

 

「うっわ・・・やっぱり異常な数値だわ・・・常人の1000倍程あるわ、よく機械が壊れないのかと毎回思うわぁ」

「いや、完璧壊れてんですけど!?」

 

機械はプスプスと煙を上げて殴った箇所はへこみ、所々にヒビが入っている。

 

「はいはい、後は骨髄穿刺(こつずいせんし)と細胞採取ね、そこに寝て」

「あれ痛いから嫌なんだが・・・」

 

診療台みたいなものの上に横たわる、あぁ後ろからもの凄い嫌な音が聞こえる。

たく、なんで俺が実験されなきゃならないんだ、世の中まちがっている・・・!!

 

「いくわよ~ちゆり!!天馬を抑えなさい!」

「あいあいさー」

「は!?」

 

 

ガッっと俺の体に横長の紐を巻き押さえつけるちゆりその瞬間、ブスッとデカい針が尻の方から痛みが伝わり、じわじわと

 

「いっだぁああああ!?おい!?なんでいきなり麻酔もしないで骨髄穿刺するんだよ!?」

「ちゆり!!もっときつく巻き付けなさい!ちぎれるじゃない!」

「もっとですか!?」

 

ぐあぁああ!痛ってぇええええ!麻酔をしなければただでっけぇ針が尻の上から骨までぶっ刺さってるもんだぞこれぇ!!

 

「いぎぃぃぃぃ!まだ終わんねぇのかぁぁああ!?」

「あとちょっとだから我慢しなさい!!はい終了!!」

「ちょ、天馬!暴れんなって!」

 

 

それからどうした!

 

 

「んで、俺の細胞と骨髄を取ってどうするんだ?」

「これを上の教授達に渡して小遣いを稼ごうってわけよ、天馬の自己再生の能力で病気が治るかもしれないからな、まぁ天馬・・・発表されるかされないかは君次第だ・・・」

「あぁ・・・成程な、って納得できねぇよ!!お前が俺に言いたいことは小遣いもらった後に細胞と骨髄を消してこいってことか!?」

「そんな事は言ってないよ~まぁそれができたら君の細胞が世に出まわることもないし研究もされないけどね~!」

 

あぁ!くそ、なんてやつだ岡崎教授は!小遣い稼ぎの為に俺を使ったって事か!!

とことん駄目な方に頭が動く奴だ、まぁ俺の細胞とビデオカメラを消せば大丈夫だろうが少し労力を使うな面倒臭い!

 

「はぁ・・・分かった分かった・・・」

 

 

大学の屋上にて、岡崎教授がさらに偉い教授と取引をするそうだ、ちなみに俺は屋上の貯水タンクの所に隠れている。

 

お~・・・やってるやってる・・・裏取引の場面を見てしまったようだ。

うわぁ、でっけぇ紙袋だな・・・え?てかあの中に金が入ってんの?50万どころか下手したら5000万じゃね?あ、岡崎教授なんか焦っているな・・・巨額出されてビビったか。

 

「うわービビって札束一個しかもらってねぇ・・・」

 

それほど俺の細胞には価値があるもんなのかある意味吃驚だ、もういっそ内蔵売っちゃおうかなって思うくらい、だけどまぁ岡崎教授以外の研究対象にはなりたくないわけなのでここはサクっとビデオカメラと細胞を抹消しちゃいましょうかね。

 

「変身っと・・・」

 

実は岡崎教授の下について一ヶ月、人外についてありとあらゆる研究をした。

わかったことはあらゆる力量を半端なく増大させるとか・・・例えば殴り・蹴り・掴み・あらゆる力量を俺の能力は増大できるらしい・・・。

後は変身だが・・・擬態能力だ、木なり地面なり土なりなんでも変身できるようになった、かくれんぼに最適だね。

 

ってことで大学にいるときはあまり変身はしないのだがバレないようにするためには他人の顔やそこら辺に擬態できるようなのを使っている。

服装も細胞で変えれるようになったから楽だな。

 

「よし、やるか」

 

岡崎の言われた通り軽く襲えばいいんだっけな、そのまま盗んで消したら岡崎達に迷惑がかかるしな。

 

 

 

 

「よう、そこのおっさん・・・その女が渡した物をこっちに渡せよ」

「だ、誰だね君は!?」

「教授!お下がりください!!」

 

ちなみに岡崎も演技だ、シナリオ通りだな。

 

「おっと!」

「きゃあ!」

 

岡崎は俺に軽く殴る振りをして俺に掴まれる、そのあとに教授を脅す、細胞とビデオカメラを奪う、逃げる→成功。

 

「おいおっさん、この女がどうなってもいいのか?今すぐこの女に渡された物をこっちに投げろ」

「く・・・これでいいだろう!?」

 

俺に細胞とビデオカメラが入っている紙袋を投げる教授、それを拾ってと・・・。

 

「おい女、金を出せ!」

「なっ!?これは教授のお金で・・・!」

「拒否するのか?今すぐにでも殺してもいいんだぞ!?」

「くッ!」

 

俺に金を渡す岡崎・・・俺演技うまくね?俳優になれそう。

 

「よし、じゃぁさらばだ!」

「ま、待て!」

 

屋上のフェンスを乗り上げそこから落ちる、これで岡崎達は追っては来れまい。

いや~久々に疲れた、まぁ100万もあれば飛行機に乗れるだろう。

 

 

 

 

岡崎教授の教室にて、なぜか蓮子とメリーもいたよ。

 

「よくやったわ天馬!これで旅行に行けるわね!」

「イエーイ!」

「行けるのはいいが勿論飛行機使うんだろうな?」

「しょうがないわねぇ・・・いいわよそれで」

 

これで運転は回避できたようだ、よかったよかった。

あの後、教授達はいざこざがあったようだが口外はできないため噂が流れたり岡崎が責任を負う、なんてことはなかったらしい。l

 

「んで?結局どこに行くんだ?」

「そうねぇ、夏だし沖縄でバカンスっていうのがいいと思うのよ」

「おぉ~沖縄かぁ~」

「海が綺麗だからそれもありね、北海道の美味しい空気も吸ってみたかったけどね」

 

俺は正直どっちでもいいわ。

 

「それじゃいつ行くんだ?」

「そうねぇ・・・あと三日経てばが夏休みだから~・・・じゃぁ三日後でいいんじゃない?」

「随分早いな」

 

この決断力と行動力、なぜ他のことに注がないんだろうか。

しかし三日後か・・・荷物持ちとかするんだろうなぁ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、バカンスできない・前編

「おい、起きろ」

「うぅーん・・・」

 

だれだこんな真夜中に俺を起こそうとするのは・・・どうせちゆりだろう、いい加減にして欲しいものだ、今は爆睡中だ。

 

「起きろってば」

 

昨日はあまり寝れなかったな、酒の飲み過ぎか・・・?頭が重い故に起きる気力がない、別に頭が痛いわけではないんだが異常にダルイ、起きたら無気力になれるほどダルイ、だから起こさないで欲しい。

 

「おい天馬!皆待ってんだから早く起きろ!!」

「んぁ??」

 

待ってる・・・?あぁ、もう伊豆に行くのか・・・、日にちが経つのは早いものでもうあれから三日も経ってしまったのか、沖縄北海道と討論していた岡崎達だが、間を取って温泉に行こうということになったので結局静岡まで車で向かう、俺としては別に行きたくもないんだがなぁ、なぜ女というものこうも行動的なのだろう、よっこらせ。

 

「うー・・・ん・・・」

「よし、起きたな、早く車に乗り込むぜ」

 

乾いた目をゴシゴシと擦り頭を覚醒させる、歯磨き位させて欲しいものだ。

ちなみにちゆりと俺の着替えは車の中に詰め込んである、わざわざ持っていくのが面倒臭いので前日から用意していた、用意している最中のちゆりはめっちゃにやけてた、たぶん楽しみなんだろう。

 

「・・・ちゆり、そこのガム取って」

「これか?」

「おう」

 

実はこうなることを想定してコンビニで買ってきた激辛ガムを買っておいた、まだ試していないのだがどれほどのもんなのか、正直辛いのは苦手だ、嫌いでもある。

一個ガムを手に取り口の中に入れ、味見する。

 

「うぅぅぅぅ・・・辛い!もうひとつぶ!」

「そんなに辛いもんなのか」

 

めっちゃ辛いです、目が覚める覚める・・・しかし辛いなぁ!舌べろがひりひりする、これさえあれば眠気なんておさらばだぜ!あばよ睡眠!さよなら睡魔!

 

「さ、行くべか、シートベルトしろよ」

「あいあいさー」

 

 

えーっと・・・まずちゆりの家に近いのはっと・・・岡崎か・・・後10分程で着けるな。

 

「おいちゆり、勝手にそこらへんのもん弄んなよ、俺の車じゃねぇんだぞ」

「いや、音楽でも聞こうと思ってね、無かったらラジオでもいい」

 

実はこの車、岡崎教授の物である、どうやら18になったら運転免許証を持つのが当たり前のようで持ってないと恥ずかしいらしい、だけど運転するのは怖い・・・ということでほぼ譲り受けたこの車、見た目は結構かっこかわいい、後ろが広い・・・というかなんていうんだ?ハッチバック型っていうのか?まぁそんな感じで4人位は普通に入れる、なんとナビまで付いていた、岡崎教授にはなんともったいない、宝の持ち腐れだ・・・。

 

「って・・・うおーい・・・なんか目の前にでけぇ荷物持った女が手を振っているんだが・・・幻覚か?」

「いや、これが現実なんだよね」

 

なにあのデカいバックを背負っている女は、岡崎か?岡崎教授なのか?だとしたら乗せねぇ!いや、載せられない!あのバックを入れたら蓮子とメリーが乗れねぇぞ・・・。

とか思いつつでかいバックを持った女の横に車を止める。

 

「いや~ちょっと荷物多いかなぁ?」

「・・・10分やるから衣服と必要なもんだけもってこい、さもないと置いていくぞ」

 

「えぇ~!」と叫びながら自分の家に戻る岡崎教授、少しは自分で考えて欲しいものだ、5世紀先を行っている科学と呼ばれているのになんでこういうことにはアホなのか、まったく悩ましい。

 

「・・・はぁ~」

 

岡崎を待つ間に煙草を吸わせてもらおう、ちゃんと窓を開けて吸っているから煙が車の中に入ることはないだろう、女の子達にはちゃんと配備ってね。

 

 

 

「お待たせー!さぁ行くわよ!」

 

そういいながら後ろに乗り込む岡崎教授、おい荷物はどうした。

 

「え?荷物?服なんてどうせあっちに行けば浴衣だし水着なんかは着てれば大丈夫よ!」

 

ということだ、っておい岡崎、いまちらっと肩の方が見えたがなんでお前はスクール水着何だ?もう少し大人っぽい水着があっただろう。

 

「ないわよそんなの、私別に水着とか気にしないし」

「皆が気にするんだよ、後で服屋に寄ってやるから金貸すからそこで買ってこい」

「・・・天馬」

「あ?」

 

岡崎教授にほとほと呆れているとちゆりが申し訳なさそうにこちらを見ている。

 

いまの時期なら水着位売っているだろう・・・って・・・うおぉまじかよちゆり・・・お前もスク水・・・って意外と似合うな、だけどまぁ俺としてはめちゃくちゃ恥ずかしい。

 

「わかったわかった、金は貸してやるからお前ら後で水着買ってこい・・・」

「「はーい」」

 

あぁ、俺の数少ないお金が減っていく・・・

 

それからは蓮子とメリーを迎えに行くために車を発進させた。

 

 

「おっは~!」

「お早う」

 

というわけで蓮子とメリーを車に乗せる、蓮子はメリーの家に泊まってたのかよ・・・仲がいいもんだ、まぁ俺としてはメリーの家が近かったから良かったけどな。

 

「さぁ全員集合だ、目的地を伊豆にしてと、おい岡崎・・・勿論だがお前ちゃんと旅館は予約しておいたんだろうな?」

「え?天馬がしたんじゃないの?」

「は!?何を考えてんだお前は!?」

「え~私は天馬が予約したと思ったんだけどぉ」

 

なにを考えているんだこいつは、今旅館に予約を取ったって二三日後位に部屋がとれることだろう、この馬鹿は本当に何を考えているんだよクソ。

 

「はぁ~・・・今の時間は朝の4時、電話受付はまだだろ・・・9時位に手あたり次第予約できるか確認するか・・・ほんとこの馬鹿は何を思って生きているんだ・・・」

「酷くない!?」

 

 

 

っとまぁこんな感じで車を動かしながら朝を迎えたわけだが、腹が減ってしょうがない、どっかコンビニでも寄ろうか悩むが時間が惜しいしな・・・早めに旅館の予約も取らなきゃいけない。

 

「しかし腹減ったな・・・ドライブスルーにでも寄るか?」

「そういうことなら蓮子ちゃんにお任せよ、お弁当もってきたんだからね!」

「おぉ~やるじゃないか蓮子、手作りか?」

「あったりまえじゃないですか教授!私をあんまり舐めない方がいいですよ!」

 

車の中でデカい弁当を開ける蓮子、あぁ、おにぎりの匂いが充満する・・・。

 

「ほらよ」

「ん?おう?」

 

ちゆりが蓮子から受け取ったおにぎりを俺に・・・渡してはくれなかった、なにがしたいんだこいつは、大体渡されても運転しているから食えねえよ。

 

「ほら、食えよ」

「んご!!」

 

おいちゆり!俺の口におにぎりを突っ込むんじゃない、危うく事故る所だったぞ!普通にくれよ普通に!本当にこいつらの行動は何がしたいのかがよくわからない、突発的に行動しすぎるんだよ。

 

 

先が思いやられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




眠いので今日はここまで!


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天馬、バカンスできない・中編

昼1時、やっと静岡に着いた、ここまでの道のりは過酷だった。

蓮子が車酔で吐きそうになるわ岡崎教授が爆睡して場所取るわ、ちゆりが意味不明な行動するわ・・・。

 

「おい蓮子、あともうちょいだから我慢しろ、水でも飲んどけ」

「あぁ~・・・いぃ~・・・」

 

屍のようにぐったりしている蓮子、辛そうだ。

蓮子が車酔ということで助手席のちゆりと交代した蓮子だがいまだに酔っている、しかし俺が運転しているのに岡崎はなんで寝るの?イラつくかせたいの?なんでちゆりも寝ようとするの?

 

「おいちゆり、岡崎起こしとけもうちょいで着くから」

「あいよ、おいご主人様起きろ」

「んぁ?」

 

よだれが垂れてるぞ岡崎、てか寝るなら場所を取るな、隅っこで静かに寝てろ。

真ん中で足広げて寝てるとかお前には遠慮っていうもんがないのか、親しき仲にも礼儀ありっていうことばすら知らなさそうだな。

 

「おい岡崎、あと10分程で着くから降りる準備しておけ」

「あ~・・・はいはい」

「メリー大丈夫か?顔色悪いぞ?」

「大丈夫・・・」

 

メリーがちょっと顔色わるいな、早めに旅館につかねぇとなにか起こるかもしれない。

 

旅館はほぼ満室だったがなんとか粘り予約キャンセルがあったらいいですよって言われたんで車を走らせながら一時間ほど待つとキャンセルが出たのでOKって言われた、あれほど嬉しいことはなかったね、ただ一室しかとれなかったもんだから三日間ほどの俺の寝泊りは車だ、トホホ・・・まぁ気を使って皆には言ってないんだけどね、寝るときはなんとか理由をつけてねればいいさ。

 

「さ、ついたぞお前ら~早く荷物下ろせ」

「やっとかぁ~」

「ん~!筋肉が固まっちゃたわぁ」

「「・・・」」

 

おうおう蓮子とメリーはダウンか、早く中に入って休憩しないとさらにダウンしそうだな、荷物位は持ってやるか。

 

「よっこいしょ、さぁいくべいくべ」

「天馬、私のも持って欲しいぜ」

「我慢しろ」

 

 

受付を終えて宿泊する部屋に向かう、宿っていうかホテルだな、ちょっと前に建てられたのか結構綺麗だ、エレベーターもあるし、なにより部屋の庭に露天風呂があるっていうのがいいな。

 

「あぁ~!疲れた!悪いけど私は寝るわね、昨日寝てなかったのよ」

「あれだけ寝たのにまだ寝るか」

 

なんで車ん中で爆睡しておいてすぐ寝れるのか不思議だ、過眠症なんじゃないのか?岡崎教授は。

 

「私はお風呂入ってくるわ!景色は海が見えるらしいし!」

「それじゃ私も行こうかしら」

「そんじゃ私も」

 

蓮子とメリーに続いてちゆりも温泉に入りにいってしまった、すぐに入りたくなるのも気持ちはわかるが少しくらい休憩しろよお前ら。

 

「はぁ~・・・俺はテレビでも見ながら休憩するかね」

 

なぜかテレビを付けないと寝れないんだよな最近、ちゆりがテレビつけっぱで寝るからか?ちゆりの癖が俺に染み付いてしまったようだな。

 

テレビを付けると今はバラエティーの時間な様でニュースがあまり流れない、まぁ別にいいんだけどね?音聞くだけだし。

 

「よっこいしょっと、疲れた疲れた」

「クカー・・・」

 

岡崎はもう布団を引いて寝てしまった、てか上着くらい脱げよ。

相変わらず長い髪だな、三つ編みポニーテールって毎回自分でセットしているのか?しかもこいつ何から何まで赤が好きなんだな。

 

「・・・俺も寝るか」

 

とりあえず枕を用意してっと・・・枕がない。

岡崎の方を見てみると全ての枕が使われていた、なんでこいつ枕4個も使ってんの・・・?

二個は頭の方、もう二個は足に挟んで一個、抱いて一個。

 

「はぁ~・・・」

 

しょうがない、枕を使うのは諦めよう、代わりに座布団を代用させていただこう。

まぁ三枚くらいあれば丁度いい高さにはなるか、今日はもうずっと寝ていたい気分だ、あぁ帰りも運転するんだろうなぁ面倒臭い。

 

「まぁいいか、帰りは絶対岡崎に運転してもらおう、そうしよう」

 

 

 

 

 

「おい、起きろよ」

「ん?誰だ?」

 

目を開けてみると真っ白~い空間にいた、何もない空間っていったほうがいいのか?

 

「俺だよ、俺俺」

「うわ、誰だあんた」

 

後ろから声を掛けられたので振り向いてみると白い羽の生えた初老のおじさん?おっさんがいた。

 

「お前もキチガイだなぁ、折角東方の世界に転移させてやったってのに自ら記憶を消すとはな」

「ん??」

 

何を言っているんだこいつは?記憶を消す??東方の世界って何なんだ?確かに俺は名前も自分の素性もなんでここにいたのすらわからなかったが・・・。

 

「あ~・・・記憶を消したってことは俺と会ったことも忘れてんのか・・・面倒くせぇな」

 

ガリガリと頭を掻いて唸るおっさん、俺の記憶喪失の前から知り合っていたのか?

 

「んじゃまぁ選択肢をやろう、無理強いは良くないしな」

「・・・?」

 

なんの選択肢だろうか。

 

「そうだな、1 お前の記憶を元通りにする 2 このまま記憶は消したままにしておく」

「まてまて、なんでそんな願ったり叶ったりの選択肢なんだ?おっさんにメリットあるのか?」

 

見ず知らずのおっさんがお前の記憶を元通りにしてあげよう、なんて言われたら疑わざるおえないだろう、需要と供給ってやつだよ、利害が一致しなければ交換条件なんてないに等しい。

 

「俺はお前が東方の事を知った上でどんな行動をするのかを予想するのが好きでな、お前の行動は尽く俺の予想に反していたよ、だが今はどうだ?俺の予想所か何をするか位簡単に分かる、俺はな・・・楽しみたいんだよ、数少ない俺の娯楽のようなもんをお前が全て消し去った・・・わかるか?」

「・・・なるほど、簡単に言うと俺の行動を傍観して楽しみたい訳だ、だが記憶が戻ったからって楽しめるかどうか何て分からないぞ?実際あんたが俺の行動を見てるってわかってる時点で楽しめないしな」

「安心しろ、そんな事くらいはわかっているさ・・・俺という概念をお前の頭から消せば俺がお前を見ているかどうかなんて考えもつかねぇだろ?それでいいんだよ」

 

なんだこいつは、神か何かなのか?俺の記憶を簡単に戻したり消したりできる・・・ってことは神に近いのだろう、まぁ神なんて信じていないがな。

 

「うーん・・・なんで俺が自分の記憶を消したか位は教えてくれないか?そしたら考えてもいい」

「俺が教えなくても直にあのスキマ妖怪がお前を見つけて教えてくれるだろうよ、だけどな?俺は今楽しみたいんだよ、お前を傍観できるのもあと少しだしな」

 

スキマ・・・?スキマってなんだ?そいつが俺の記憶が消えた事を教えてくれるのか?それで俺の記憶が戻るのなら万々歳だが・・・戻らないなら・・・いやでもいま現状別に不満はないしな・・・悩むな・・・。

 

「・・・」

「悩め悩め、お前が悩む事自体が俺の楽しみでもあるんだからな、記憶が戻ってもお前に取ったら面白くないと思うが俺はめちゃくちゃ面白いんだからな」

 

ん・・・?このおっさん・・・なんか引っかかるな・・・まるで記憶を戻さないようにしているような・・・。

 

「ふっわかった・・・わかったよ、決まった」

「ん~?んじゃどうするんだ?戻すか?戻さないか?」

 

俺は記憶を・・・。

 

「戻さない、」

「・・・残念だ、非常に残念だよ天馬、まぁそれもいいだろう・・・お前のこれからどうなるか見ていてやろう、それじゃぁな」

 

おっさんは後ろを向いてどっかに消えてしまった、後ろを向いた瞬間、顔が笑っていたのはなぜなんだろうか、わからないが別に嫌じゃないな。

 

「うっ・・・お!?」

 

おっさんが消えたあと、白くて何も無い空間はゆっくりと崩れてゆき、最後の一個の白い四タイルの踏み場がなくなり、俺は落ちていった。

 

 

 

 

 

 

「うわっ!?」

「「「!?」」」

 

なんだ?なんか変な夢を見たような・・・うーん・・・思い出せねぇ・・・。

そんで俺の目の前は奇妙な光景があった。

 

「うわ、なんでお前ら下着だけn」

「「「出てけ!!」」」

「いて!危な!」

 

俺蓮子達のクシやらドライヤーやらお風呂セットなどが飛んでくる、すぐに部屋のドアに手を掛けて出ようとしたら誰かの液体がはいったペットボトルがあたってしまった、たんこぶができそうだ。

 

 

 

「はぁ~・・・生き返るわ・・・」

 

ということで第二の疲れを癒す場所、大浴場とは別の露天風呂に入っている。

ん~真っ暗な空には半月が映し出されていていいね、目の前の海の波の音も風流だ、一気に疲れが吹っ飛んでいくなぁ、温泉というのもいいかもしれんな。

 

「お、月が綺麗じゃないか」

「だなぁ・・・は?」

 

おい岡崎!なんでお前がここにいるんだよ!ここは男風呂だぞ!!!

 

「おい!!なんでお前がいるんだ!?」

「なんだ?知らないのか?この露天風呂は11時から混浴になるんだぞ?今は11時半、混浴の時間だ」

「そうなの!?いやでも他の人が入ってくるじゃん!!」

「安心しろ、貸切の看板を置いておいた、ていうか置かなきゃいけないんだけどな」

 

そうなのか・・・知らんかったぜってそういうわけにもいかんだろう、名残惜しいが退散させて貰おう。

 

「おい天馬、何で出ようとするんだ?一緒に入ろうじゃないか」

「ふざけんな、俺にも羞恥心ってもんがあるんだよ!」

「ほぉう?」

 

ニヤニヤとした表情をする岡崎、おいなんで体に巻いてあるバスタオルを脱ごうとする!やめろ!

 

「おいおい・・・手で顔隠しても目が手の隙間から見えてるよ」

「うるせーうるせー!俺だって健全な男子なんだよ!そういうことだから俺は出るぞ!」

 

股間を頭に乗せていたタオルで隠しながら出ようとすると物凄い力で腕を引っ張られる、おい!取れる!主にタオルが取れてさらけ出しでしまう!やめて!

 

「うっぐぐぐぐぐ!離せ!」

「うぬぬぬぬ!一緒に入ろうっていってるじゃん!」

「うおおお!お断りだぁ!」

「ぐおおお!入れこの野郎!!あっ!」

「あっ!?」

 

いきなり岡崎が腕を離したせいで思いっきり吹っ飛ぶ俺、あぁ!?タオルがない!

 

「おい天馬、これを返して欲しければ一緒に入れ!」

「なんの交換条件だよ!?」

 

 

 

 

それからどうした!!

 

 

 

 

 

岡崎と 嫌 々 だが一緒に風呂を入り疲れをとった、岡崎が着替えている途中ちらっと見えたが18にもなって苺パンツってなんなんだろうか、赤か?赤いから好きなのか?

 

「って・・・メリー以外全員寝てんのかよ・・・」

「寝溜めしたから全然眠くないわ、どうする?この後一緒にご飯でも食べる?下にあるみたいよ」

「なんだお前、今日に限って積極的だな」

「まぁな、一人で食べるより三人で食べたほうがいいだろ?」

 

おいおいなんでメリーが来ること前提なんだよ、別にいいけど絶対乗らないだろ。

 

「メリーはどうする?来る?」

「もう食べたからいらないわ、二人で行ってらっしゃい」

「あらそぉ?じゃぁ行くわよ天馬!」

「はいはい・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、バカンスできない・後編

風呂に入り終わった後、岡崎教授と飯を食ったが最悪だった、飲めもしない酒をかっくらい最終的には机にうなだれて寝てしまう始末、帰りは勿論岡崎教授をおぶさり俺が金を払い部屋に戻ったわけだ、すごい酒臭かった。

 

というわけで岡崎教授を布団に寝かせ窓際に置いてあった椅子に腰掛けメリーと向かい合う、向かい合うと言ってもメリーは本を読んでるし俺は窓を開けて煙草を吸っている、何も喋らずに、だからと言って別に話すことは無いし何かアクションを起こそうという気も起きない。

 

「ねぇ・・・」

「ん?」

 

パタンっと本を閉じるメリー。

これは驚いた、まさかメリーから話しかけられるとは思わなかった、メリーと会話する時なんて大体は蓮子を挟むか俺から話かける、非常に珍しい。

 

「天馬は・・・岡崎教授と付き合ってるの?」

「は?」

 

何を言い出すんだこの女は、何時もミステリアスだなぁと思っていたがそれを超越するほどに不思議な女だなメリーは。

 

「いや、一緒にお風呂入ったり一緒にご飯食べたりしてるじゃない?時々二人でドライブ行くみたいだし、これって普通の男女の関係じゃないわよね?」

「風呂はあいつが無理やり入ってきただけだ、飯だってそうだ・・・ドライブはまぁ・・・そうだなぁ、誘われるから行くだけだ」

 

別にドライブ位どうってことないだろうよ?岡崎は自分の家が暑いからって車ん中がんがんにクーラー掛けて寝るだけだしな。

 

「じゃぁ天馬からしたらどうなの?岡崎教授のことが好き?」

「まぁ嫌いじゃないな、好きかと言われたら難しいけどな」

 

友達として好き?みたいな?それ位には好きだが異性として好きっていわれるとうーん・・・って感じだな。

 

「へぇ・・・まぁ本当に嫌だったら風呂だって能力使えばいいだけの話だしねぇ?」

「ん・・・俺だって男なの、少し位はいいじゃん」

 

痛いところをついてくるなメリー。

 

「んで?それを聞いて何になるんだ?」

「別に?今のうちに身を構えないと大変なことになるわよ」

「は?」

 

そう言いながら笑い出すメリー。

大変な事ってなんなんだろうか、何が起こるのかわからないがとりあえず岡崎教授を選ぶことはないだろう、多分。

 

「あーうん、とりあえず忠告ありがとうよ、それじゃぁな」

「あら?温泉でも入るの?」

「そんな感じだ」

「いってらっしゃい」

 

寝させていただこう、車のなかで。

さすがに女が4人も集まっている中で寝るわけにもいかないからな・・・ていうか寝れない、車なら寝れるし落ち着くし熱くなったらクーラー付ければいいしな。

 

「ふぁ~あ・・・」

 

車は落ち着くが寝にくいな、狭い暑い寝返れないの三拍子だ。

まぁクーラー付けるのはいいんだがその分ガソリンを食うのがまた痛い、まぁ後2日位の辛抱だ、戻ったらちゆりの家で爆睡させてもらおう。

 

 

 

車の中が暑いせいか目が覚める、そしてあることに気づいた。

 

「うーん・・・?なんか車が何時もより狭いような・・・」

 

寝返りができない、それ位の狭さ、しかもなんか暑いし・・・クーラーはついているのに何故なんだろうか、暑いというより暖かいような気がする、人並の暖かさ、うーん心地よい。

 

「ってなんでこいつがいるんだよ」

 

助手席にはなぜか岡崎が寝ていた、涎を垂らしながら・・・お前は何故ここにいる、宿に泊まっているはずであったのに、え?てかなんでこいついんのガチで、何しに来たんだよ。

 

「おい、岡崎!起きろ!」

「ふあぁ?」

 

ふあぁ?じゃねぇよふあぁ?じゃ、なんでお前ここにいるんだよ。

 

「おま、なんでここにいんの?」

「え?わかんない・・・・」

 

なんで自分できたはずなのにわかんないんだよ、とうとう頭がおかしくなったのか?5世紀先を行っている頭は皆こういう感じなのか?

 

「・・・まぁいいか、朝飯行くぞ・・・」

「あーい」

 

ここのホテルの朝飯は朝九時からでっかい食堂でバイキングが開かれるだそうだ、夜の場合刺身や寿司などが置いてあると書いてあったが朝はどうなんだろうか、パンとかかな?

 

 

 

 

「予想通り、パンやらご飯やら味噌汁やら・・・朝ご飯に最適だな」

 

食堂の前で岡崎と一緒にメリー達を待っていると浴衣を着ている3人がやっと来たようだ、いまチラッと中を見たがおかずにオムレツがあることだけは嬉しいね、卵料理全般大好きだ。

 

「おっはよ~あんたら一体どこでなにしてたの?」

「そりゃ蓮子、大人の男女がどこで何をしているかだなんて想像すればわかるぜ」

「お熱いわねぇ」

 

朝っぱらから茶化されているな、怒る気にもなれないな・・・。

 

 

「やっぱ日本人なら味噌汁と白米っしょ!」

「私はパンだなぁ」

「私も」

「パンに同感ね」

「俺はご飯かな、パンはボソボソする」

「分かってるじゃない天馬!」

 

朝からハイテンションで少しウザイ蓮子、なぜ朝っぱらからそんなに元気なんだろうか、俺は寝疲れているというのに、羨ましいもんだ。

というかメリーに聞きたいことがあるので耳打ち。

 

『おいメリー』

『何よ?』

 

素直に耳を此方に向けるメリー、うんうん素直な子は扱い易い。

 

『朝起きたら岡崎が隣で寝てたんだがどうやって来たんだあいつは?』

『夜中目開けるなり天馬がいないって大騒ぎして車で寝てるあんたを見つけたら中に入ってったわよ、まぁ教授は酔ってて覚えていないでしょうけど』

 

なるほど、いやなるほどじゃねぇよ、こっちが気使ってわざわざ車で寝てるのに何でくるんだよ岡崎は。

 

「何がしたいんだろうな岡崎は」

「さぁねぇ・・・」

 

む、メリーめ答えを分かってやがるな?俺にも教えてくれよその答えを。

 

「ヒント位くれよメリー」

「嫌よ、天馬自身で考えなさい」

 

ヒントすらくれないとは酷いぞ、もう考えることすら面倒臭くなってきた、とりあえず俺が今専念することはこの後食べるデザートを何にしようかというところだ、うーんパイナップル・ブドウ・プリン・パフェ・・・色々あるがもうお腹には一品しか入らん、悩むな・・・。

 

 

ということで食べないことにした、人間腹八分目に医者いらずってね。

 

「はぁ~食った食った」

「さ、朝の温泉行くわよ!」

「そうねぇ、折角温泉に来たんだし入らないと損だものねぇ」

「だな」

 

もう入るのかよ、風呂なんて夜で十分だろうに・・・。

でもまぁ分からないでもないんだよな、金払って入りに来てるわけだし入らないともったいないっていうのはわかるよ、うん。

 

「んじゃ俺は部屋に戻ってテレビでも見てるわ、何かあったら携帯で呼んでくれ」

「私も温泉はパス、頭が痛いから少し横になるわ・・・」

 

おお、なんだ珍しい・・・岡崎が二日酔いか?久しぶりに見たな・・・。

前の時は缶ビール15本ほど飲んで潰れてたなそういえば。

てか15本も飲んだら普通は次の朝は頭痛くなるだろう。

 

「って事で俺らは部屋にいるからお前らは自由に行動しろ、風呂に入るも良し、買物をしても良し、ただ夕方までには帰ってこいよ、飯だからな」

「「「はーい」」」

 

今日に限って物分りがいい奴らだ、メリーなんかは終始ニタニタしている、正直気持ちが悪い気持ちになってくる。

 

「・・・まぁいいや、岡崎俺は先に行ってるからな」

「え?ちょっ待ってよ!」

 

よく頭が痛いのに大声出せるもんだ、5世紀先を行っている頭脳だからかね。

 

 

 

「はぁ~どっこいしょ」

 

えーっと・・・煙草はどこにやったかな?車か?いや、車には持って行ってないはずだが・・・。

 

「お、あったあった」

 

机に置きっぱだったか、結構気付かかないもんなのね。

まぁ吸うか・・・。

 

「う~・・・」

 

この唸り声はいま隣で横になっている岡崎の声だ、昨日はしこたま飲んでいたからな、気持ちわるいのもしょうがないな。

 

「おい大丈夫か?水持ってきてやるから待ってろ」

「あ~うん・・・」

 

喉も乾いているだろうし何か持ってきてやるか、とりあえず頭痛止めもあったかな?

 

そんなことを考えて洗面台にいると突如ガラスが割れるような音がした。

 

「ん?コップでも割れたか?それにしてはでかい音だな」

 

すぐに岡崎のいる場所に戻ると岡崎は居なく、でかい窓ガラスが割れていた、まさか寄りかかって落ちたのか?

 

「おい、岡崎!・・・ん?」

 

割れている窓を覗いて下を見てみると岡崎は落ちておらずテトラポットや静かな海の音が鳴っていた、不思議に思い下を見ていると銃声の音と共に俺の首に何かが突き破るような感覚が体中を巡る。

 

「カハッ!?」

 

なんだ??撃たれたような気がしたが・・・まぁそこは勝手に治癒するからどうでもいいんだが・・・どこから撃たれたんだ?

 

「ん!?」

 

上を見てみるとなにか顔のようなものが引っ込んだものが見えた、狙撃でもされたのか俺は?

 

「なんだってんだ・・・っよ!!」

 

窓から飛び降りすぐ横にあるパイプを掴み上へと登る、階段やエレベーターをつかうより早い。

 

「なんだこりゃぁ・・・」

 

屋上に上ってみると軍隊が着ているような服と銃を携えて俺を狙っている奴ら、それとヘリコプター・・・、どっから持ってきやがったんだ、てか銃って持ってていいのかよ、明らかに人体に当てるようなものではないデカさのライフルや最新式と思われるフルオート銃・・・やけに物騒だな。

 

「やれ」

「は!?」

 

ヘリに乗っている男が指示すると奴らは一斉に俺に銃を向け放ってくる、なんの躊躇無しに撃ってきたため避ける動作や逃げることができない。

 

 

「ぐぁっ!?」

 

 

何十発も弾丸が俺の体に当たり皮膚を突き破る物や体内に残って腸や肺や心臓をぐちゃぐちゃにする感覚が体中を巡り痛覚なんかは麻痺しだしている、その間にも修復しようとする俺の体、修復しては壊され直しては壊される感覚は非常に気持ちが悪い。

 

「ヒュー・・・ヒュー・・・」

 

首や肺に当たったためか息が非常にしづらい、口から出てくるのは二酸化炭素よりも血が出てくる、多分肺と喉をやられたな。

 

「ふん、あの人の話通り、『死ねない体』か・・・なんとも哀れな物だ、退くぞ!」

「ま・・・待ちやがれ・・・!」

 

ヘリの中にいた男が指示をするとヘリが起動しここから離陸しようとする、ヘリの中には岡崎がおり、気を失っているのだろうか男に掴まれたままだ。

銃を向けた奴らは未だに俺に銃を向けている、なんとか岡崎を奪い返さなければ・・・!

 

「どけっ!!お前ら!!」

 

離陸するヘリに向かって力いっぱいジャンプしてヘリのランディングギアを掴む、そうしている最中にも銃を撃ってくる、何発か当たり痛みで力が抜けそうになるがなんとかこらえた。

 

「岡崎ぃ!!」

 

あとちょっとで岡崎の手を掴みそうになったが男に手を踏まれ邪魔をされる、なんとか掴んだものは岡崎が何時も付けている十字架のイヤリングだ、ダメだ、これじゃない、俺が掴みたいものは岡崎自身。

 

「その足をどけやがれ!」

「ふぅむ、どうやらお前はこの女にご執心みたいだな?」

「質問の意図がわかんねぇな!何の為に岡崎を攫う!?」

「そうだな・・・科学の進歩と発展のため・・・とでも言っておこうか、5世紀先程の科学力を持つこの女が必要不可欠なのだよ」

「勝手抜かしてんじゃねぇよクソジジイ!そういうことならアポを取ってからにしやがれ!」

「残念だがそれは無理だ、交渉は決裂のようだな、さらばだ少年よ」

「!?」

 

腰のホルスターから銃を手に取り俺に向かって銃を向け、抗う時間などコンマ一秒もない内に撃つ男、発射された弾丸は俺の脳に向かい貫通した、そこで体の力が一気に無くなりライディングギアを離してしまった。

 

「ク・・・ソ・・・!」

 

 

そこでぷっつり意識が途切れた。

 

 

 

 

「はっ!?」

「お、起きたな」

「大丈夫天馬!?」

「大丈夫?」

 

ここは何処だ?病院か・・・?なんか腕に違和感があるな・・・。

なんで俺はここに・・・その瞬間先ほど起きたことを思い出す。

 

「岡崎!!岡崎はどうした!?」

「ご主人の行方は不明だ、その事について話すから蓮子とメリー・・・少し席を外してくれないか?」

「え!?なんでよ!?何か隠し事でもあるの!?」

「行くわよ蓮子」

「ちょっとメリー!?」

 

蓮子はメリーに引きずられ病室から出て行った、ちゆりの話す岡崎行方不明の件の話とは一体何なんだろうか。

 

「ふぅ・・・一体どこから話せばいいんだろうな?まぁまとめて話すからよく聞いておけ、岡崎を攫った連中は十中八九日本政府の者だろう」

「日本政府・・・?」

「あぁ、科学が進歩すると共にどこもかしこも戦争だ、唯一アメリカに守られている日本に戦争なんて起きるわけがないんだがな、だがそれも絶対という訳ではない、限りなく少ない可能性だが戦争になるかもしれないからな、奴らもそれに怯えて岡崎に国丸ごと一掃できるような兵器を作って欲しいと頼んできたことがある、勿論私もその話合いに立ち会ったことがある、当然ご主人は拒否していたがな」

「兵器だと・・・!?そんなことの為に岡崎をさらったのか!?」

「たかが兵器・・・されど兵器・・・国丸ごと一掃する兵器なんて規格外だがご主人なら作れるだろう、そんな兵器を持っていたら戦争なんかは負け知らず・・・持っているだけでものすごい力を持つだろうよ、だがそんなものを持った日本は今現状で満足できるわけがない・・・他の国を乗っ取ることも考えられる、ということでご主人は拒否をしていたんだ」

「・・・」

「しかし奴らもそれに痺れを切らしたんだろう、ついには強行突破してきた、大学ならご主人が作った防衛装置が作動するから私達が旅行に出かけたこの時を待っていたんだろうな、ご主人も何時も持っていた大学に転移する機械を持ってこなかったしな」

「・・・!」

 

旅行に行く前に岡崎に言った言葉を思い出す。

 

【いや~ちょっと荷物多いかなぁ?】

【10分やるから衣服と必要なもんだけもってこい、さもないと置いていくぞ】

 

「俺のせいか・・・!」

「まぁ天馬のせいでもあるしご主人のせいでもあるな、多分だが天馬がいることによって岡崎は安心して機械を持って行かなかったんだろう」

「それを俺は・・・裏切った形にしてしまったのか・・・」

「まぁ気に病むな、ご主人も最近は色々と病んできているからな、心の拠り所が天馬だったんだろう、天馬がいることによってご主人も笑顔が増えたしな」

「っ・・・」

 

なんていうことをしたんだ俺は・・・つくづく自分が嫌いになる。

 

「うっ・・・あっ・・・」

「おい、気に病むなって言ってるじゃないか」

「五月蝿い・・・!分かったような事をいうんじゃねぇ!!」

「・・・甘えたこと言ってんじゃねえぞ」

「なんだとこの野郎!一体俺がどんな気持ちでそんなことを言ってやがる!?」

「知ったこっちゃねぇな!」

「なんだと・・・・ガッ!?」

 

気づけばちゆりは座っていたパイプ椅子で俺を殴りつけていた。

 

「こうでもしないとわからないのか!?今天馬がやることは気に病むよりやることがあるんじゃないのか!?怪我だって完治しているんだろう!?」

「やることっつったって岡崎が今どこにいるか分かんねぇじゃねか!!」

「そう・・・そうだ・・・ご主人が今どこにいるかは分からない、しかし奴らは日本政府の者だということを私と天馬は知っている・・・言いたいことは分かるな?」

「つまり・・・この国を敵にするってことか・・・!?無理に決まっている!!奴らは武装しているんだぞ!?死んだら終わりだ!!」

「そういうことはやってから言いやがれ!できるかできないかなんて誰にもわからねぇんだ!つべこべ抜かす前に行動しやがれ!愚痴なら墓場でいいやがれ!お前の骨は意地でも拾ってやる!」

「ッ・・・!!」

 

日本政府相手にするったって手も足もでないだろ・・・!どうすればいいってんだ・・・?政治家達を一人ずつ殺していくか・・・?

 

「蓮子達も攫われかねないから当分蓮子達は大学で衣食住だな、そこは適当に言っといてやる、バックアップは私に任せろ、サポートに回る」

「あぁ・・・わかった・・・とりあえず俺は何をすればいいんだ?」

「そうだな・・・天馬は東京にいくといいだろう、国会議事堂にでも行って奴らから話を聞き出せばなにか手がかりはあるはずだ、だが天馬、奴らの警備は前よりも数倍・・・いや数十倍ほど固くなっているはずだ、奴らはお前が来ることをわかっているかも知れないからな」

「聞き出すったってどこで聞き出せばいいんだ?その場でか?」

「いや、最も重要な情報をもっているやつだけ大学に連れてこい、ご主人の残した可能性空間移動船があれば場所を気にせず拷問かなにかで聞き出せるだろうぜ」

「可能性空間移動船・・・わかった・・・とりあえず今から車だすけどお前らはどうやって大学に戻るんだ?」

 

ちゆりはニヤっと笑いだした後ポケットからごそごそと何かを取り出す。

 

「なんだそれは?」

「定位置空間移動装置さ、一回きりだがご主人が私に持たせてくれたものだ、これを使って蓮子とメリーを大学に連れ帰る、いいな?

「わかった、蓮子達はちゆりに任せる、岡崎は・・・俺に任せろ」

「期待してるぜ、あとこれを持っとけ」

「ん?」

 

ポイっとなにかを俺に投げるちゆり。

 

「ん・・・?携帯か?それにしてはボタンがないな?」

「スマートフォンだ、既存の携帯を改造してある、連絡先はもうあるから自由に使え、充電器はこれだ」

 

携帯のあとに黒いコードを渡すちゆり、おぉ・・・車のシガーソケットに対応しているのか、使い勝手がいいな。

 

「じゃぁ任せたぞ天馬、ご主人がどうなるかは天馬次第だ」

「任せろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




日本を敵にする天馬、どちらが正義なのかわからないな・・・


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天馬、岡崎教授を奪還する・鉄

東京・千代田区

 

 

国会議事堂近くに車を止め辺を伺いながら携帯でちゆりに報告。

 

『どうだ?』

「まずいな、明らかに警備の数が多くなっている、ざっと見て50から60は居るな、中に入るのはかなりキツそうだ」

『侵入できるよう頑張ってくれ、天馬の変装能力なんかはどうだ?』

「誰に変装すれば情報を見つけられるのかが分からないからな安易に変装するとばれる可能性が高い」

『だな、だがいつまでもそこにいたって何も始まらない、なにか行動を起こすんだ、いいな』

「あぁ・・・やってみる」

 

通話終了を押し、携帯をポッケにしまいながら考える、警備が手薄ならまだ可能性はあったかもしれないがここまで固くされると入るに入れない、政治家に変装しようにも中に二人もいるとバレルので安易に変装もできない。

 

「・・・なにかいい案がねぇかな」

 

・・・無いな、夜を待ってこっそり入っていくのがいいのだろうか、いつもなら人の出入りが激しいハズなのに今日に至っては人っ子一人入れやしない。

 

「いま頃岡崎は何をしているんだろう・・・」

 

監禁でもされているのか・・・?それとも無理やり岡崎を動かしているのか・・・?わからんな、第一兵器を開発するったってかなりでかい私有地がないと無理に等しいだろう、国の所有地を全部当たるにしても時間がかかる、その間に岡崎が殺されでもしてみろ、最悪だ。

 

「あー!クソっ!わかんねぇ!」

 

答えが出るわけでもないのに車のハンドルに八つ当たりしてみるが意味も無し、時間が惜しい、早くしねぇと・・・。

 

「どうすりゃいいんだよまったく・・・」

 

今度はハンドルに顔押し付けてみたが案はでない。

すると車の窓を叩くような音がしたので振り向いてみると見知らぬ男達が覗きこんで此方を見ていた。

 

「ゲッ・・・警察か・・・」

 

車のウィンドウを下げ要件を聞くとしよう。

 

「こんにちは~、いまよろしいですか?」

「宜しくないですね、さようなら」

 

ウインドウを上げると警官は「ちょちょちょ!」とか言いながら制止してきた、更にもう一人の警官は車を発進できないように車の前に移動した。

うざったいので退くようにジェスチャーを掛けると窓を開けろというジェスチャーをしてきたので開ける。

 

「なんですか?」

「いや~お兄さん、窓閉めたら困るよ~、所でいま何をしているんですか?」

「いや、なんもしてないけど、ただ止まって友達待ってるだけです」

「では免許証提示してもらってもいいですかね?」

 

まずいな、ここで俺の名前がバレると警戒されるか最悪捕まる、日本政府の者だってちゆりは言っていたから警察くらい丸め込む事くらいは楽だろう。

 

「拒否します、任意ですよね?」

「いやいや、こっちとしてもはいそうですか、で済む訳にもいかないんですよねー」

「拒否します、貴方に身分を証明するものを見せる権利はありません、それと任意であれば自由に移動できるのですから前の警察官退けてください」

「・・・あ、この車の所有者は誰の物となっております?」

「答える義務はありません、早く前の人を退けてください」

 

すると警察官は無線で何かを話した後不敵な笑みをしてもう一度話しかけられた。

 

「いやーお兄さん、この車・・・盗難届け出ていますよ?窃盗の疑いがあるので拘束しますね」

「はっ・・・?」

 

まずい、ついに日本政府の圧がかかったようだ、この車は盗んだものでもないしましてや岡崎が買った物だ、それを盗難届が出ているという疑いで拘束して時間を稼ごうって魂胆か。

 

「ふっざけんな!」

 

一旦車のギアをバックにして素早く逃げるとしよう、時間稼ぎが目的ってことは中に岡崎の情報をしっているやつがいるってことだ、ここは一旦逃げて岡崎を救出した後に疑いを晴らすとしよう。

 

「おいコラ待て!止まれ!!公務執行妨害で逮捕するぞ!」

「あばよ間抜けな犬共!!」

 

 

 

 

 

なんとか逃げ切れたようだ、ちなみにそのまま走行していると捕まる可能性があるのでどっかのホテルの地下駐車場に止めさせていただいた、なぁに駐車場代くらいは払えるさ、とりあえず地上いるのは危険だ、ラッキーな事にこの場所はビルやマンションが密集している、屋上を伝っていかせてもらうとしよう。

 

 

 

 

「・・・高いな」

 

高度100Mはあるだろうか、ここから落ちたら俺は死ぬかもしれねぇな、死なないかもしれないが・・・まぁ失敗はできない、余裕を持っていこう。

 

「スーハー・・・スー・・・ハー・・・よっしゃ!!」

 

あまりの高さに怯えている心臓を落ち着かせ、国会議事堂方面のビルに向かって助走を付けて飛ぶ。

 

「うっ・・・おっ・・・!!」

 

飛んでる最中ってこんな気分なのか、気持ちいいと同時に物凄く怖い、飛んだ瞬間心臓が跳ね上がりそうなほどだ、そして走馬灯のようにスローモーションに見えてくる。

 

「やべっ・・・!距離が足りねぇ!!」

 

助走をつけたのにも関わらず後数M程足りない事に気づいた、なんとか力を振り絞り腕を思いっきり空をかくと少し前に進み屋上の手すりに掴めたようだ。

 

「っは・・・!っは・・・!あぶねぇ・・・よし・・・」

 

グズグズしている時間はないんだ・・・こんな所で時間を食っている暇なんて無い、さっさと議事堂に入る方法を探しながら移動するんだ。

 

 

 

 

「・・・」

 

うーん、着いたには着いたが少し距離が遠いな、上から飛んで行ったらバレるだろうしなぁ・・・、てかその前にジャンプしてあそこに着くかすら怪しいしな・・・

困ったな、そんな時はちゆりがいるさ、なにかしらアドバイスくれるだろう。

 

『・・・どうした?』

「いや、上から行こうと思うんだがどうにも距離が足りなくてな、何かいい方法ないか?」

『ふむ、天馬はムササビって知ってるか?』

「ムササビ?あのリスみたいな奴か?」

『まぁそうだな、種類は一緒だ』

「知ってるがそれがどうした?」

『ムササビっちゅうのは飛膜ってのがあってな、前足から後ろ足に、それと足の間をグライダーの様に膜が張ってんだ、だからムササビは滑空の様な曲芸ができるんだ、天馬の細胞を使って膜を張ってみたらどうだ?飛ぶっていうよりは滑空で距離を伸ばすような形だが』

「なるほど、ありがとよ」

『あいよ』

 

なる程な、飛ぶっていうより滑空か・・・よし、やってみるか。

自分の両腕の細胞を伸ばし、後ろ足に接着させる、そして両足の細胞も薄く伸ばし接着。

 

「ふむ・・・これで飛距離が伸びるだなんてにわかには信じられんが・・・ちゆりを信じてみるか」

 

滑空ってことは結構上に飛ぶんだな、それと飛行速度を伸ばすために助走を付けて・・・っと。

 

「せぇの!!」

 

10M程助走をつけ、速度に乗ったベストタイミングの時にジャンプ、んで膜を広げると・・・。

 

「お・・・!?不安定だがなんとかいけそうだな、とりあえず見つからない為に屋上に着地しておくか」

 

しかし異常に警備が多いな・・・そこらじゅうにいやがる・・・屋上にはいない事を願おう。

 

 

「よっと・・・」

 

なんとかバレずに着いたようだ、さて・・・屋上から中に入るとするか・・・。

 

「ん!?なんだ?」

「どうした?」

「!?」

 

まずい、屋上にもいやがったか、後ろに逃げ場がないな・・・どうするか・・・。

そうこうしている間にも足音がどんどんと近づいてくる、ん・・・?

 

「いや、なんかこっちから音がしたような・・・」

「音?鳥すらいないじゃないか、勘違いじゃないのか?」

「うーん・・・?確かに聞いたような気がしたんだがなぁ」

「勘違いだっつの、とりあえず位置につこうぜ、上司に見られたらサボりだと思われちまう」

「それもそうだな」

 

「・・・」

 

行ったか・・・?足音は遠ざかって消えた様だが・・・。

 

「ふ~・・・バレル所だったな」

 

どうやって凌いだかというと簡単だ、屋上から少し下の窓枠を掴んでその場から消えただけだ、窓枠がなかったらどうしようもなかったな。

 

「よっ・・・こらっ・・・せっと・・・」

 

 

さてと・・・警備は居ないようなので入らせて頂きますか・・・。

えーっと・・・ドアは何処だ・・・?あぁあったあった、裏側にあったんだな。

 

「・・・」

 

ゆっくりとドアを開け、人が居ないか確認、よし・・・居ないようだ、さぁ行くか・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、岡崎教授を奪還する・拳

「ちゆり、なんとか議事堂に侵入できたが、一体誰を探せばいい?」

『わからん、私がよく覚えているのは銀縁眼鏡に金の腕時計を付けているやつだな、奴さん随分岡崎の技術を自分の成果にしたいらしいしな、年は随分若かったが・・・』

「銀縁眼鏡なんざごまんといるな、金の腕時計だな・・・わかった」

 

議事堂に侵入できたはいいが誰を攫い岡崎の場所を吐かせるのかわからなかったのでちゆりに聞いてみたが・・・金の時計か・・・かなり羽振りのいい奴なのかね?

 

「おっと・・・議事堂の中にも結構警備員が多いな・・・まぁ屋上にもいたし当たり前か・・・」

 

人に見つかったら一発アウトだからな、騒がれでもしたら即座に岡崎の居場所も聞けなくなるだろう、最悪取り囲まれて捕まる。

 

「しかし政治家共がいねぇな・・・いるのは警備員ばっかだ・・・」

 

おかしいな、さっき車の中に居た時は結構な数のお偉いさん方達が入っていくのを見たというのに、なぜだ・・・?

しかしどこにも居ないということはどこかで集まっているのか・・・しかし議場にもいなかったしな・・・何処かに隠し部屋があるとかか・・・?なーんてんなことがあるわけが・・・ん・・・?

 

「すいません!遅れてしまいました!皆さんはもうお集まりでしょうか!?」

「あ、そうですね・・・貴方以外はほぼ全員出席なさっていますよ、お入りになられますか?」

「本当ですか!困ったな・・・ではお願いします!」

 

他の所を探そうとすると息を荒くした男が警備員に案内されている・・・しかも全員ってことは・・・他の奴らもいるってことか?一体どこにいるんだ?

 

「ん!?」

 

いつの間にか警備員と男が消えていた、ほんの一瞬考え込んだだけなのにどうやって消えたんだ?足音も聞こえなかったし何処かに本当に隠し部屋でもあるんじゃないのか・・・?

 

「たしかここらへんだよな・・・」

 

男と警備員が居た所に着いたがどこも異変はない、スイッチがあるわけでもないしな・・・どうすんだよこれ、やっと見つけたヒントが分からなくなってしまった。

 

「・・・ぐぇ!?」

 

壁を触って何かないか探っていると突然目の前の壁が自動ドアの様に開き、目の前に、真っ暗な廊下があり、体を押しながら探っていたせいで盛大に転ぶ。

 

「いてて・・・隠し通路か・・・?本当にあったんだな」

 

この先に行けば奴らがいるのかね、隠し通路は地下につながっているようだが真っ暗で何にも見えねぇ。

 

「ん!?やべ!!」

 

前から足音と所々光っているのが見えるががどうやって隠れるか・・・とりあえず壁に擬態しておこう。

 

「ん・・・?こんなところにライター・・・?」

 

まずい、転んだ拍子に落としたのか?しかも俺の目の前に落ちていたとは迂闊だった・・・。

 

「・・・まぁいいか、丁度持ってないし拝借しよう」

 

人のもん盗むなよ警備員、まぁ別に安もんだからいいけどな、特別思い入れがあるわけでもないしな。

 

「ふぅ・・・行ったか」

 

警備員が廊下から出、ドアがしまったことを確認して擬態を終了。

とりあえずちゆりに連絡するか。

 

『ど・・・・・・て・・・?』

「ん・・・?何言ってるか分かんねぇぞ」

 

電波が悪いのか?ノイズが走っていて何を言っているのかまったく分からない、電波妨害装置でも置いているのか?

 

「まぁいい、進むか」

 

この先に何があるのか分からないが行ってみないと何も始まらない。

しかし明かりが一つもない所を見ると本当に政治家共がいるのかすらも怪しく思えてくる。

 

「・・・」

 

地下に続いている通路を降りていくとかなりデカイドアに直面する、幸い暗証番号を入力するような鍵付きドアじゃなかったのが良かった、少しだけ音を立てずにドアを開けて中を伺ってみよう。

 

「なんだこりゃ・・・」

 

少し見ただけなのだが中にはお偉いさんが何十人と見える、かなりデカイ空間、そして何かを演説している一人のおっさん。

 

【というわけでこのシステムを掌握さえすればアメリカなど目じゃない、いずれは日本が世界一となり、かなりの経済大国になる、そうすれば日本は一生安泰だ!】

【ちょっと待って欲しい、そんなものを持ったら日本は全ての国の敵になるんだぞ!いつかそのシステムを奪われたりでもすれば真っ先に崩壊するのは日本だ!私は反対する!】

【では奪われなければいいのですね?ご安心を!このシステムは厳重に管理される予定だ、何せあのお方が協力してくださるのだからな!】

【あのお方とはまさか・・・・】

【そうです、噂は聞いているでしょう?有能な部下を従える、日本の裏を統括するあの方を・・・】

【・・・ですが何故にあの方が協力していただいたのですか?そんなものに興味は無さそうなのですが・・・】

【それは私にもさっぱりわかりません、ですが!あの方が管理することになれば蠅一匹・・・いや、蟻一匹すらも!】

 

その瞬間歓声が上がる、システムというのは多分岡崎の作る兵器のことだろうか、そしてあの方とは一体誰なのだろうか日本の裏を統括・・・うーん・・・わからん。

 

【続報です、皆さんよく聞いてください】

 

演説していたおっさんに近づいて何かを耳打ちした後、おっさんが歓声を制止させ、何か大事が起きたように焦っている。

 

【議事堂周辺にて奴が出現したらしい、恐らくだが中に侵入している可能性が高い!】

【なんだって!?】

 

チッ、もうばれたか・・・さてどうするか、あの演説している奴を攫うとするか。

しかし今攫ったとしてもおおごとになるのは間違いない。

 

「おっ・・・やべ!?」

【!?】

 

ドアに寄りかかっていたせいかいきなりドアが開き凭れていた体事投げ出され一斉に視線を浴びるのが分かる。

 

「・・・」

【・・・】

「・・・やぁ」

【うわあああ!】

【奴だ!!逃げろ!!】

「逃がすかよ!」

 

演説していたおっさんが真っ先に逃げ出そうとしたので羽交い締めにして拘束、その間にも他の連中は出口から出ていく。

 

「な、何のために私を・・・!」

「岡崎は何処だ?何処にいる?」

「知らん!もう殺されたんじゃないのか!?」

「冗談でもそんな事を言ったら次はないぞ?」

「・・・知らん」

「そうか」

「ぐっ!?」

 

らちがあかないので思い切り後頭部を殴り気絶させる、さて、京都に戻るとしよう、大学の中に岡崎の残したへんてこ機械があるらしいしな。

 

「よっこらせ・・・以外に重ぇなこいつ・・・」

 

さて、出るか。

 

 

 

 

 

「やっぱりこうなっちゃうのか・・・」

 

どうなったかと言うと国会議事堂を警察や自衛隊に囲まれ身動き出来ない状態だ、完全に包囲されている、逃げ場はないみたいだ・・・。

 

【犯人に告ぐ、直ちに人質を開放せよ】

「うるせぇな・・・」

 

ざっと見警察と自衛隊は500人位か、よくこの短時間で集まったもんだ、空には結構な数のヘリも飛んでるし、追いかけられたら面倒くさいだろうな。

とりあえず出るか。

 

【犯人が出てきました、人質と思わしき人物も確認できます】

【了解、射殺してもいいとの命令だ、人質を回収後、射殺せよ】

【了解】

 

なんとういうことだ、射殺命令だなんて聞いてないぞ。

しかも自衛隊と警察だけかと思ったらテレビ局のレポーターとか来てやがる、全国に俺の顔が発信されるのは中々に最悪といってもいい。

 

【犯人に告ぐ、直ちに人質を開放せよ】

「やーだね、開放したら撃たれるのが落ちだろうに」

 

どうしようか、とりあえず逃げるか・・・?逃げたとしてもヘリに追いかけられて見つかるしなぁ、ヘリをぶっ壊したほうがいいのかもしれんな。

とりあえず議事堂から出るとしよう、全速力で。

 

「よいしょっと・・・よーい・・・どん!」

【!?犯人がありえない速度で走っています!逃亡されてしまいます!】

 

そりゃまぁ人間が速度100km程で走るだなんて思わないだろう、奴らめちゃくちゃビビってやがる。

 

「おっとあぶねぇ!」

「うわ!カメラさん!写して!犯人が人質を抱えて異常な速度でこちらに向かってきます!」

 

レポーター共がそこらじゅうにいるせいで自由に動けねぇな、とりあえずビルの屋上に登って逃げるか。

 

「どけ!!」

「え!?」

 

出口に差し掛かってきた所で目の前にあるビルに向かって飛ぶ、丁度いい具合にでこぼこしてるから手で掴んで登れるな。

 

「しゃっ・・・!?」

 

もう少しで屋上に届くと思い、手をかけた瞬間、目の前にコートを着た男が何かを此方に向けて構え、発射された。

その時胸に激痛が走り、確認すると矢のようなものが刺さっていた

 

「な・・・!?」

 

手に抱えた重要人物を落とさないため屋上に投げて自分が地面と衝突する。

 

「ぐぇ!」

 

くっそ痛ぇ・・・おっさんを上に投げたからそれと同時に加速したのか・・・その前に矢を抜かねえと・・・!

 

「痛ってぇ・・・・!」

 

矢に少しだけ触れただけで激痛が走る・・・畜生、誰だよ・・・あのコートの野郎・・・!

抜いたらボコボコにしてやる・・・!

 

【見つけたぞ!総員!構え!】

「やっべ!?」

 

いつの間にか野次馬と自衛隊と警察やらに囲まれている、ってお前ら一般人いんのに銃出すなよ!野次馬共がめっちゃ大声あげて逃げてるじゃねぇか!

 

「くそっ!」

【上に行ったぞ!!上を狙え!!】

 

あんな重火器と戦ってられるかよ、蜂の巣になるのがオチだ、早く屋上についておっさんを回収しねぇと水の泡だ。

 

「痛ってぇ・・・誰だお前?」

 

屋上に逃げたその先の目の前にはコートとなにかのペストマスクを被っている奴がいた、ペストマスクのせいか不穏な雰囲気と禍々しさが奴から滲み出ている。

 

「・・・?」

「・・・」

 

無口な野郎だな、何がしたいのかよく分からない。

 

「・・・」

「ちょ・・・!待て!」

「・・・?」

 

いきなりククリナイフを取り出し倒れ込んでいるおっさんに刃を向けたので制止。

殺されでもすれば情報が聞き出せなくなる恐れがある。

 

「なんでそいつに刃を向ける?殺したところでお前に何か得があるのか?」

「・・・とのことですが如何致しますか?」

「・・・?」

「・・・了解」

「うおおおお!!」

「!?」

 

無線か何かで答えを聞いた後またもおっさんに刃を落とそうとしたので、勢いに任せて回収、こいつがどうなっても知らねえが情報を聞き出してから死んで欲しいもんだ。

 

「あぶねぇなお前、もしかしてあの方とかいう奴の手下か?」

「・・・今すぐにそいつを引き渡してほしい」

「やーなこった」

「・・・貴方を排除する」

「嫌だね、俺は逃げるよ」

「・・・そうはさせない」

「じゃぁ追いかけてみろよ!」

 

おっさんを抱えて隣のビルをジャンプして移動、パルクールっていうのか?常に動きながら移動すると早い事を実感、後は停めてある車に向かい時間が経ったら京都に行くとしよう、ちゆりが待っているしな。

 

「流石にこの速さにはついてこれねぇ・・・がっ!?」

「貴方を排除する」

「この野郎!」

 

チラッと後ろを見た瞬間、奴はまたボーガンのようなものを取り出し俺に向けて発射、気付いたら横っ腹を撃たれていた、しかもただの矢じゃなく紐みたいなのが付いている、その紐の先には奴の腰に繋がっていた。

 

「抜けねぇ・・・まさか返しがついているのか?」

 

釣り針の様になっているから肉を引きちぎらない限り離れないわけかよ、そこまでして追いかけるか。

 

「排除ォォオオ!!!」

「うおっ!?」

 

違うビルに乗ったと思ったら何故か後ろに力が引きずられ、顔の横をナイフが掠める、もう少しで顔が削がれる所だった。

 

「なんなんだよおめぇは・・・」

「排除排除排除排除排除排除排除排除」

「あ~・・・わかったわかった、俺が倒れるまでついてくるってんなら今ここでお前をやっちまってもいいわけだ?」

「貴方が死ねば万事解決なんだよぉおおお!」

 

 

京都に行く前にこのマスク野郎をやるとするか、時間が少々惜しいがしょうがない、三分でケリをつけてやる。

 

 

「行くぞ、おらぁああああ!」

「排除ォオオオオ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろSAOの方も更新しようと思う。
しかし初期の頃と違って更新頻度がひどいことになっておる。


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天馬、岡崎教授を奪還する・制

「排除ォォオオ!」

「おらぁあああ!」

 

てなわけで戦闘に入るわけなんだが正直このマスク野郎の力量が分からないため迂闊に近づけない、遠距離武器も持っているしな、しかもこっちは素手で相手はナイフだ。

 

「あぶね!?」

「避けるな!!」

 

間合いを取りながら移動すると目の前にククリナイフが横切る。避けるなとか無理言うな。

あのナイフリーチあり過ぎだろ、40cm以上か?ククリナイフなんてものは久しぶりに見たもんだがあれ程デカイものもあるもんだな。

 

「ァァァアアアア!!」

「おっ!?」

 

いきなり大声を上げてコートからもう一つククリナイフを取り出して襲いかかってくる、こいつのコートの中にはいくつ凶器が入ってるんだよ。

 

 

「そんなあぶねぇもん振り回すんじゃねぇよ!」

「ゲッ!?」

 

下半身に隙が出来た所に蹴りを当てると勢いよく転がるマスク野郎、どうやら戦闘は余り得意ではない感じか?それとも薬かなにかにやられて判断ができなくなっているのか・・・どちらにせよ好都合だ。

 

「ほら、さっきの威勢はどうしたよ!?かかってこいよ!!」

「ウッ・・・ゲェ・・・殺す・・・殺す・・・!」

 

怒りと興奮によって更に判断力が失えば楽になるんだが・・・

 

「ウギアァアア!」

「来い!」

 

無我夢中で俺に刃を当てようとするがかなりの隙が出来ているので太腿を蹴る。

するとマスク野郎は膝を地に着け、太腿を押さえ蹲る。

 

「ギィィィィ!!」

「痛がってる暇は無えぞ!!」

「ア!?ウギャッ!?」

 

ペストマスクの先っぽを掴み、顔に膝蹴りを当てる、するとマスクが外れ、奴が転びながら屋上のフェンスに当たり折れ曲がる。

 

「お前・・・女だったのか・・・」

「見るな・・・!見るな・・・!見ないで!」

 

顔を上げた奴の顔は酷く半分がケロイド状態だった、しかしもう半分は誰が見ても二度見や振り返るような整った顔立ち、ケロイドの跡さえ無ければただの綺麗な女性。

 

「その傷はどうした?誰にやられた?」

「見るな!見るんじゃない!!」

 

マスクがないことを確認した奴は手で顔を隠しながら大声で見るなと言ってくる。

 

「返して!それを返して!!」

「交換条件だ、岡崎はどこにいる?あの方の場所も教えろ!そうすれば返してやるよ!」

「返せよぉおおお!!」

「あがっ!?」

 

くそ、奴め、俺に刺さっている矢を繋いでる紐を思い切り引いて肉ごと持って行きやがった・・・・!痛ぇ・・・!

 

「がはっ・・・!くっそいてぇ・・・・!」

「返してよ!!返してよ!!」

「ぐっ・・・!」

 

早く再生しろ・・・!痛すぎる・・・!

 

「岡崎は何処だ・・・!?そうすれば返してやる・・・・!」

「知らない・・・!!知らない!!」

「ならさっき話してたのは誰だ・・・!正直に言わねぇと壊すぞ・・・!」

「知らないわよぉぉ・・・!知らない・・・!」

「・・・無線機を渡せ、そうしたら返してやる」

「・・・」

 

無線機を投げ渡す女、岡崎の場所やあの方の場所がわからないとなれば本当にどうしようもないがこいつに指示をしている場所位はわかるかもしれん。

 

「おい、今から俺の言ったことを言え、わかったか?」

「・・・わかった?」

 

 

 

 

 

「任務達成、私は・・・こいつをどうすればいい?」

「うん、偉い偉い・・・サンプルを指定の場所に届けてくれ、場所は・・・」

「(サンプル・・・?俺のDNAとかか?)」

「了解・・・戻ります・・・」

 

無線機から無機質な声で場所を告げられた、おっさんをとりあえず何処に置いておくか・・・。

 

「ねぇ・・・私はどうすればいいの・・・?裏切り者はゴミの様に捨てられるだけだ・・・殺されるのは嫌・・・・!」

「・・・はぁ~しょうがねぇな、いい案がある」

「何・・・?」

「このおっさんを一時的にお前に預けておく、そんで俺の財布も預けておく、いいか?どこか見つからないところに潜め、そうだな・・・****ホテルに監禁でもしておいてくれ、できるか?」

「できる・・・けど・・・貴方は・・・?」

「俺はさっき言われた場所にいって情報を聞き出す、なぁに顔のことだったらいい医者を紹介してやる、だがそのいい医者は岡崎を見つけてからだ・・・いいか?」

「・・・」

「お前の顔の状態はよくわからんが元の顔には戻せなくても今よりは全然良くなるだろうさ、それまでは俺が戻るまでは移動するな・・・わかったか?」

「分かった・・・」

 

以外と物分りいいなこいつ、とりあえず指定された場所にいくとしよう、そうここまでは遠くない場所だったからな、車を使わなくてもいいだろう。

 

「あ、そうだ」

「・・・?」

「これでよしっと・・・・」

「これは・・・?」

「それは俺の細胞から作り出した覆面のようなもんだ、そのマスクだとばれるかもしれないだろ?嫌だと思うが我慢してくれ」

 

とりあえずおっさんの顔にも被せておいてと・・・まるで別人だな。

これも岡崎の研究結果だ、自分の顔を隠せるんならできるんじゃない?って言われて出来た代物だからな、便利っちゃ便利だな、少し息がしにくいが。

 

「いい・・・それ(ペストマスク)より全然・・・」

「そうか、いいか?もう一度言うがホテルに着いたらそのまま場所を移動するなよ?」

「分かった・・・」

 

 

 

 

 

「ここだな・・・」

 

無線から聞こえてきた場所についてみたが東京の外れ辺にこんなデカイ工場?建物があるとわな、一見ただのなにかの工場にしか思えないけどな。

 

 

「ちゆりか?」

『どうした?』

「岡崎の居場所が分かりそうな場所に来た、何かの工場っぽいんだが中に入る方法はオートロックっぽいんだが侵入できる方法はないか?」

『・・・そうだな、強行手段だが近くに送電線はないか?』

「ん~あるな、すぐ近くに」

『その侵入する建物がオートロックとかならその電気塔を壊せば一時的に電気が通らなくなるはずだ、だが自家発電機をもっているだろうからもって30秒から一分だな』

『わかった、俺は送電線の事はさっぱりだからなにをすればいいのか教えてくれないか?』

『OK、じゃぁビデオ通話ボタンを押してくれ』

『はいよ、これでいいか?』

『いいぞ、それじゃぁ送電線に登ってみてくれ』

『あいよ』

 

ふーむ・・・一応最上の所まで登ってはみたが何がなんなのかわからんちんだな、ここはちゆりに任せるとしよう。

 

『よし、天馬、一応携帯を固定できる所においてくれ、勿論見えるところな』

「ふむ・・・これでいいか?」

 

とりあえず固定できる器具がないから自分の細胞を携帯にくっつけ送電線に固定する。

 

『簡単に言うと電線を切ればいい、だが電線に触れると脳が蕩けるぞ』

「本当に簡単にいってくれるじゃねぇか・・・どうすればいいんだ?」

『まず根元に付いてるボルトを外して電線に触れないように電線を外すんだ』

「やってみる」

 

よいしょっと、自分を固定していないから危ねぇな、しかしここはボルトを外しつつ電線に触れないことを重点的に考えよう。

 

「よっし、あともう一個で最後だ」

『気をつけろよ』

「まぁまぁ、大丈夫だよ、要は電線に触れなきゃいいんだろ?」

『そうだが』

「よっし最後のボルトをっと・・・うおっ!?あぶね!?」

 

最後のボルトを外すとダラーンと電線が垂れてきた、あとすこし反応が遅かったら蕩けるところだった。

 

『いわんこっちゃないな、だから気をつけろと言ったんだ』

「まぁまぁ最終的に外せたんだからいいじゃねぇか、ほら見てみろ、どうやらこの案は大成功らしい」

 

工場を見てみると明かりが一つもないただの真っ暗な建物になっていた。

 

「よっしゃ、とりあえず成功したから切るぞ」

『はいよ』

 

送電線からいちいち足場を使って降りるのは時間がかかる、じゃぁどうする?

そのまま落ちて着地するのが一番だ。

 

「よっと!!行くか!」

 

まず門を掻い潜り、工場員共が入口にしてそうな場所を探す、するとカードキーか何かを入れて開けるタイプのドアを見つけた。

 

「うっぉおおお・・・」

 

硬ぇなこのどあ、結構力を入れているんだが少しずつしか動かねぇ。

 

「よし、まだ電気は復旧していないみたいだな・・・」

 

さぁてこの工場・・・この先には何が待ち構えているんだろうな。

 

「しかし長い廊下だな、他のところに入るためのドアが一つもないとは不思議な構造だ」

 

しかも工場は明るくなぜか人っ子一人気配がしない、音も異様に静かすぎる。

 

「・・・」

 

嫌な予感がするな、こんな時岡崎がいれば「天馬の嫌な予感なんて当たらないわよ」とか言ってその場の雰囲気を明るくしてくれるんだが・・・その岡崎もいないっと・・・。

 

「ん?」

 

嫌な予感が当たったようだ、まず目の前にあるでかい室内と思わしき物が見える、最初からおかしいと思った、なぜか廊下が一本道なんだからな。

 

「・・・うお!?眩し!」

 

屋内に入った瞬間暗かった場所がいきなり明るくなり目が痛くなる。

奥には椅子に頬擦り座りをする男と脇には女二人が立っていた・・・似ているなこの二人・・・双子か?

 

「やぁ、待っていたよ天馬君」

「誰だ・・・お前?」

「7はどこにいるんだい?」

「あ~?知らねぇな」

「そうかい、あの子は任務遂行するときは何事にも流されないよう調教したんだがね・・・」

「それはそうと岡崎は何処にいるんだ?」

「岡崎?あぁ、知らないねぇ」

 

まるで知っているけど隠しているような口振りだな、正直に答えてくれれば何事もなく済むのだが・・・。

 

「ふむ・・・五十鈴、海鈴・・・行きなさい」

「「了解」」

 

男が俺に指を指し命令すると脇に立っていた女共が此方に走り出す。

 

「美女二人を相手にするとは有難いねぇ」

「その減らず口が何処まで続くか楽しみだよ」

 

椅子に座り傍観する男はただ笑って俺を見る。

胸糞悪いな、イライラするわこういう奴を見るとな。

 

「海鈴、準備はいいですか?」

「五十鈴、いつでも大丈夫です」

「「では」」

「うおっ!?」

 

俺を挟んで二人は会話した後、一人は有り得ないデカさのスナイパーライフルを持ちもう一人は何かの二丁拳銃を俺に向けて発砲した。

前に転がりよけれたが如何せん二人相手はきつい。

 

「海鈴、左3M」

「了解」

「あっぶねぇ!?」

 

左に避けようとすると一人が的確な情報を出し、もう一人が撃って来た。

 

「相手は異常な速さで避けてますね、現在速度推定60キロ程です」

「もはや人間ですらありませんね」

「五月蝿ぇな!」

 

近づこうにも近づけねぇな、一人を狙ってたらもう一人が狩りにくるだろうし・・・どうすればいいんだ。

 

「海鈴、狙撃よろしくお願いします」

「了解」

 

おぉ、やべぇやべぇ、あんな大口径ライフルで人体に撃たれたら木っ端微塵だ、しかもめっちゃ狙ってるじゃねぇか!

 

「捕捉完了、どこを狙いますか?」

「足」

「了解」

「せいっ!!」

「・・・」

「大丈夫ですか海鈴?」

 

俺にも何か遠隔武器が必要だと思ったからな、横っ腹に刺さったボウガンの矢を何かに使えると思って隠し持っていてよかった。

俺の投げた矢はどうやら海鈴とかいう女の足に刺さったようだな、あれなら銃を撃てまい。

 

「足を負傷したようです、戦闘には何ら問題ないので気にしないでください」

「そうですか、では戦闘を続行します」

「えぇ~・・・」

 

まじかよ、腕に矢刺さってんのに何であんなデカイの持てるんだよ、おかしいだろこれ、てかあいつらには痛覚がないのか?

 

「だが自由には動けねぇよなぁ!?」

「五十鈴、敵が此方に向かっています、迎撃をお願いします」

「了解です」

 

海鈴とやらを先にやったほうがいいな、痛覚がなくたって動けないだろう。

 

「うっぎ・・・!」

 

五十鈴とかいう奴の二丁拳銃からちょくちょく腰やら腹に当たるがこの速度なら海鈴に届くだろう。

 

「捕まえ・・・た・・・!?」

「ナイスです海鈴」

「余裕です」

 

おいおい嘘だろ、ライフルの反動で避けるとかあり得るの。

 

「至近距離なら銃も撃てねぇだろ!?」

 

遠距離がダメなら至近距離で格闘に持ち込むしかないと俺の脳が瞬時に判断した。

五十鈴に接近し、手を掴む。

 

「ぐぇ!?」

 

五十鈴の手を掴んだ瞬間体が宙に浮き背中を地面に強打する、野郎格闘術もできるのか。

 

「海鈴」

「はい」

「うおっと!?」

 

すぐ傍には海鈴が銃をこちらに構えていた、すぐに体を動かし避けると銃声が鳴り自分が倒れ込んだ所は地面が抉れていた、ライフルの威力が高すぎる。

 

「・・・・?」

「チャンス!」

「海鈴」

「ぐっ・・・!」

 

ようやく足の怪我が動けなくなる位になった様で海鈴が足が動かない事に気づいた瞬間助走をつけて殴る。

ガードされたがあれほどの威力なら意味は無いだろう。

 

「・・・利き腕と肋骨が折れたようです、戦闘不能」

「了解」

「はっはぁ!!一人になればこっちのもんだ!?」

 

やっと一体一に持ち込んで五十鈴に接近しようとすると爆音が響いた後、体がかなり速度が出ている物体に当たり壁に激突する。

 

「あっがぁああ・・・!」

 

壁に激突し、気づいてみれば上半身右半分がなくなっていた、一体何に当たったのかと前を見てみると戦車と思わしき物が壊れた建物の一部から見えている、ということは砲弾に当たったということか。

 

「お待たせ致しました、全部隊配置完了です」

「やーっと来たね、もう少しでやられる所だったじゃない」

「「・・・?」」

 

椅子に座っていた男がよっこいしょと起き上がると戦車のハッチが開き無線で話している、どうやら海鈴と五十鈴の反応を見るにこの二人には知らされていなかったようだ。

 

「さて、僕は天馬君に勝てるわけじゃないからね、わざわざこんなことをしたんだけど忙しい身だからね」

「てめぇぇ・・・!!」

「「あの・・・」」

 

五十鈴と海鈴がこの状況を把握できずに男に質問をしようとすると予想外な答えが帰ってくる。

 

「五十鈴ちゃん、海鈴ちゃん、今までありがとうね、君達には悪いけど君達二人はここで死ぬことになるよ」

「え?」

「大体ね、この化物じみたこいつに君達が勝てると思う?いくら薬で強化できたって君達は生身の人間、化物にはなれないんだよ」

「あの・・・?」

「まぁそういう事だからさ、やられた君達二人をわざわざ治療するお金は無い、だからここで処分する事に決めたんだよ、変わりはいくらでも雇えるしね?それじゃぁ二人共さようなら・・・やれ」

 

男が合図すると戦車が建物の中に入り辺りを壊しながら侵入して来た、そして一斉に主砲が海鈴と五十鈴に向く。

 

「あ・・・あ・・・?」

 

未だに戸惑いを隠せない二人は棒立ちでただただ戦車が砲弾を撃つのを待っている、ついに発射されてしまった。

 

 

「ぐぅおおおおおおおおおお!!!」

「「!?」」

 

 

ふぅ、危機一髪だ、俺がこいつらを抱えて逃げてなければ木っ端微塵だったな。

 

「ハァ・・・ハァ・・・ガハッ!ゴホッ!何やってんだよお前ら、逃げろよ・・・!」

「貴方・・・」

「あ、そうそう天馬君・・・岡崎ちゃんの事だけどね?」

「・・・・!!」

「何回もお願いしてるのに騒いで話を聞かないから少しいたぶってあげたよ、これがその証拠、それじゃぁね」

 

俺に何かの入れ物を俺に投げつけ、すぐそばに止まっているヘリに乗り込みどこかに離陸していった。

 

入れ物は指輪の入れ物のような形をしておりかなり小さい。

 

「は・・・?」

 

手に拾い中を開けてみると白い玉とそれに何か繋がってる赤い紐・・・?

 

「・・・!!うげぇぇえ!!おぇっ!!」

 

混乱していた脳が判断し、中身の正体が分かると嘔吐が止まらない。

 

 

「何・・・?これ・・・目・・・?」

「酷い・・・!」

 

海鈴と五十鈴も俺の手に持っていた物を見て口を閉じる。

 

「なんだよこれ・・・!なんだよこれ・・・!うげ・・・!」

 

混乱している間にも奴らは待たずに俺に主砲を向けてくる、海鈴達は何かを俺に向けて言ってくるが何を言ってるのかすら理解できない。

 

「・・・・!!」

 

五十鈴は海鈴を抱えて俺に何かを叫びながら離れていく、遂に主砲から砲弾が撃たれ、一斉に俺に向かって無数砲弾を浴びせられる。

撃たれたあと、コンクリートや鉄が散らばり煙幕が張られていく。

 

「全部隊撃ち方止め!仕留めたか!」

「煙幕でまだ視認できません、もう少しで視認・・・・!?」

 

煙幕が晴れて出るは何かの装甲に守られている俺、何があったのか分からないが力が漲ってくる、状態変化か。

 

 

「なんだあれは!?全部隊撃て!撃て!」

「・・・」

 

砲弾が二発三発と当たるがどうやらこの装甲のおかげで喰らうことがなくなった。

 

「ウォォォォオォオオオ!!」

「来るぞ!撤退!撤退!!」

 

直ぐに戦車を旋回させて逃げようとする、そんなことはさせん。

戦車の履帯を掴み移動出来なくさせて、引っ張るがさすがに重い。

 

「グァアアアアアア!!」

「掴まれました!移動できません・・・!?持ち上げられました!」

「なんだっ!?」

 

腕に力を集中させて戦車を壁の方向に引っ張ると巨大な車体は浮き、10m程飛んだ後、ひっくり返りながら爆発した。

 

「化物だ!引け引け!!」

「逃がすかぁああ!!」

 

その後はよく覚えていない、思い出せない、唯一思い出せることといえば海鈴を抱えてナイフ女のいるホテルに戻ったくらいだ。

 

俺はホテルに戻るなりベッドに横たわり寝てしまった、次の日の朝、起きてすぐ見た光景と言えばおっさんが椅子に縛り付けられていた、最悪の朝だよまったく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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天馬、岡崎教授を奪還する・裁

「さておっさん・・・岡崎は何処にいる?」

「・・・」

 

ベットから起きて少し休憩した後、椅子に縛り付けているおっさんに尋問する。

京都に行くのもいいんだがいかんせん遠すぎる、休憩中にちゆりが岡崎の居場所の特定を頑張ってもらうよう電話をして了承してもらった。

 

「もう一度聞くぞ?岡崎は何処にいる?」

「・・・」

 

だんまりか、こっちは時間が無いというのに面倒くさい。

 

「さて、ここにフォークがある、もう一回聞くぞ?岡崎は何処だ?」

「・・・知ら・・・!ぎぃぃぃ!!」

 

知らないと言おうとした所でおっさんの右腕の手の甲にフォークを突き刺す、どうやら貫通したようでそのまま刺さったまんまだ。

 

「おいおっさん、次はここにナイフがあるぞ?岡崎は何処にいるんだ?」

「ぐぐぐ・・・!私は知ら・・・!あがぁぁぁ!」

 

次は左腕の手の甲にナイフを刺し、抜けないよう抉っておく。

 

「どうだ?言う気になったか?」

「私は知らないんだ!本当だ!信じてくれ!」

「そうか、ならしょうがないな」

 

縛り付けてるおっさんと一緒に椅子を持ち上げ窓の近くまで行くといきなり焦りだすおっさん。

 

「待て!?何をするつもりだ!?」

「待てって・・・落とすんだよ、面倒くさいから」

「待て!待ってくれ!!お願いだ!!」

「お願いするなら岡崎の居場所を教えてくれよ」

「本当に知らないんだ!!本当だよ!!」

 

そいじゃ、落とすとしようか、ここは地上から13階か・・・落ちたら普通なら死ぬな、まぁ情報を教えてくれないというのであればしょうがない、天国で悔やむがいいさ。

 

「よっこらせ、そいじゃさようなら」

「待て!分かった!分かったから戻してくれ!お願いだ!」

「なんだよ?思い出した?」

「あぁ!!いま思い出した!」

 

思い出したならしょうがないな、誰だって忘れることくらいはあるだろうしな、だが次は無いと思ったほうがいい。

 

「よいしょっと、んで?何を思い出したの?」

「居場所はわからないが・・・!待って!待ってくれ!持ち上げようとしないでくれ!」

「え?」

 

居場所がわからないなら捨てるしかないだろうに何を言ってるんだろうかこの人は、俺が知りたいのは居場所だってんのに。

 

「じ・・・実はあの方はよく出向く場所があるんだ!そこに行ってるのかもしれない!」

「へぇ?そこは何処だ?」

「静岡だ!静岡の伊豆の海の見える温泉ホテルによく出向いてる!」

「伊豆か・・遠いな、てか伊豆だけじゃ分からねぇんだけど?」

「熱川だ!熱川のホテルだ!」

「ふーん・・・ちょっと待て、電話だ。」

 

携帯を鳴らした表示を見てみるとちゆりだった、なんだ?もう見つけたのか?

 

「おう、どうした?」

「奴さんの居場所が分かったか?」

「あぁ、伊豆の熱川って所にいるかもしれねぇっていうのをやっと吐いた」

「奇遇だな、天馬が昨日戦闘した後、奴が静岡の方向に向かったらしい」

「東京から静岡か・・・早くても3時間はかかるぞ」

「そういうと思ってな、手配しておいたぞ」

「ん?」

 

窓の方を向くといつの間にかヘリが水平飛行をしていた、だからやけにうるさかったのか。

 

「おいちゆり!!免許はどうした!!」

「あー!?なんだってー!?音が五月蝿くて聞こえねーよ!!」

 

こいつ絶対持ってないだろ、まぁいい、車で伊豆にくるより全然早いだろう。

 

「おいお前ら起きろー!」

「「ん~・・・」」

「・・・」

 

よくこんな爆音なのに寝れるなこいつら・・・とりあえず起こすか。

 

「おい、起きろ!」

「ッー!痛いわね!何すんのよ!」

「いきなり蹴るとはどSですね・・・」

「・・・」

 

五十鈴が俺に蹴られて怒り、海鈴がむくりと起き出して変なことを言い、マスク女がなぜかペストマスクを抱いたまま起きてこない。

 

「ヘリに乗り込むぞ!お前ら早く乗れ!!」

「あーはいはい・・・海鈴、手貸すわよ」

「はい」

「・・・」

 

何時まで経っても起きないマスク女、しょうがない担ぐか・・・。

 

「よいしょっとぉ!!よし、お前ら乗ったな!」

 

こいつらすげぇな、普通の人体なのに2m位離れてるヘリに飛び乗ったぞ、しかも一人は傷を負っているってのに。

 

「仲がいいわね、お姫様抱っこだなんて」

「・・・カップル?」

「うるせぇ!!よし!準備OKだちゆり!!」

「はいよ~」

 

最後にみた風景は、おっさんが何かを叫んでいるところだった。

 

 

 

 

 

1時間30分後、静岡につく。

 

「天馬は何故か女を引き寄せるんだよな」

「おい、その言い方やめろ」

「殺されかけたけどね」

「足が痛みます」

「嘘つけ、痛くないくせに」

 

この一時間ちゆりの説教ばっかりで耐えられん、連絡をよこせだ、手順が悪いだなんだかんだ、気づいたのだが海鈴は無口で五十鈴は気楽気質なんだな、戦闘時はほぼ無口だったんだが。

 

「そろそろ熱川付近だ」

「うん・・・?ちゆり、双眼鏡あるか?」

「ほいよ」

 

ちゆりの言葉を聞いて辺りを伺ってみると遠いが黒い物がポツッと見えている。

あれは・・・うん・・・うん、やっぱりそうだ、そうに違いない、あの野郎が乗り込んだヘリに酷似している、野郎は乗ってないのか?

 

「ちゆり、あれが見えるか?」

「ん?あぁ、あのヘリか?」

「見えんのか、まぁいいそうだ、あのヘリに近づいて見てくれ」

「ほいよ」

 

岡崎の場所を吐いてもらおうか糞野郎、吐いた後は何も言わせず殺してやる。

 

「奴さん気付いてないっぽいな」

「もうちょっと横に付けられるかちゆり?バレない範囲で」

「やってみる」

「ちょ・・・ちょっとあんた何しようと・・・」

「うるせえゴチャゴチャ言ってっとここから落とすぞ」

「・・・」

「ちゆり、俺が飛んだら直ぐにどっかいけ、巻き添え喰らうかもだぞ」

「はいはい」

 

ドアを開いてチャンスを伺う。

いい位置に付いたな、行くか。

 

「フッ!!」

 

よし、ライディングギアを掴めたようだ。

ちゆりの乗っているヘリは逆の方向に転回していったようだ、中を覗いてみるか・・・。

 

「・・・見っけたぜ」

 

中を見ると糞野郎はそこにいた、おぉっとあのクソジジイもいるじゃねぇか、こりゃなんかのプレゼントか?ありがたいね。

 

「オラァア!」

「ん?」

 

ドアを掴み思い切り力を入れて横に振ると簡単にヘリのドアが外れる。

 

「よぉ、お二人さん久しぶりだな、岡崎は何処だ?」

「ふむ、遂に来てしまった様だな」

「あぁ・・・?」

「娘が笑った場所で死ぬのもいいもんだ、まぁここを寄った後、海外に逃げるつもりだったがね」

「なにを言ってんだお前?」

 

いきなり喋りだすクソ野郎、一体何を言ってるんだこいつは。

 

「では、私は先に逝くとしよう、それじゃぁね」

「おい・・・!?」

 

ポケットからゴソゴソと取り出した銃を口に当て、引き金を引いた男は脳をぶちまけながら崩れていった。

 

「・・・」

「少し、昔話をしようか」

「・・・?」

 

頭から血を流している男を膝に抱えながら話すジジィ。

 

「昔、ある男は運命の出会いを経て良い奥さんを貰った、だがその奥さんは交通事故で亡くなった、子供を腹に抱えてな・・・男は悲嘆に暮れ、なんとか生きながらえた子供を育てることを決意した・・・」

「何の話をしてやがる?」

「男はこれまでの経験と知識が培ってきた頭脳で日本の裏の頂点に立った、これで我が子も困らず幸せな人生を送れる、男は幸せだった、だがある日その我が子が奇病に侵された、少しずつ肉体が腐り落ちる奇病だ」

「・・・」

「男はまた悲嘆に暮れた、何故、何故我が身ではなく我が子なのだと、日本の医者はお手上げ、海外にも頼み込んだがこれまた解決法は見つからない、あるとすれば苦しむ代わりに侵食を遅めるだけの物だった、男はそれを使うかどうか悩んだ、悩んで悩んで悩んだ末、使うことにした、それから半年・・・国から男に話を持ちかけられる、ある女を攫い情報を聞き出せば治す方法を教えてやるとな、男は疑いもせず二つ返事で承諾した、男は女を攫い情報を聞き出した、国が出した解決方法は死ねない体をDNAに組み込めばいい、そう君だ」

「俺が・・・?」

「男は君のサンプルを持ち帰りDNAに組み込もうとしたがもう遅かった、なんたる偶然だろうか、持ってきた頃にはもう我が子の侵食は遂には脳に達し最早生きてはいなかった、男は泣いて泣いて泣きまくった、涙などとうに枯れてしまった男は最後に我が子が笑顔を漏らした場所、海の見えるホテル、ここで最後を過ごし全ての海外に逃げてから贖罪をしようとしたわけだ」

「・・・」

「そしてそれを見守ってきた私も役目を終える、きっと雲の上では男と子供が無邪気に笑い合っているだろう、私は長くこの職種を全うしてきた、交ざる位いいだろう」

「まさか・・・」

「・・・天馬君、君には酷いことをした、言い訳かもしれないが奴はこんな人生を送ってきたためにこんな風になってしまった、非常に申し訳ない」

「お・・・おい、ちょっと待て!」

「・・・岡崎君と言ったね?あの子はホテルにいるよ、応急治療はしておいたが目はもう回復しないだろう、あの子には本当に酷い事をした、死んで償うとしよう」

 

ジジイが野郎の落とした銃を拾い、頭の横に当てる。

 

「待て!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・岡崎、迎えに来たぞ」

「・・・??その声は天馬ね、遅かったじゃない」

「・・・色々あってな、済まんな」

「いいわよ、生きてるだけで万々歳、よく頑張ったわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全て無かったことにしたいか?と聞かれたら勿論したいと言いたい、奴の娘が生きて、岡崎の目が元通りになって、全てを無かったことにな、なぜそんな夢物語を語るのか?そんな夢物語を叶えてくれる奴が目の前に現れたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










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天馬、不思議な神社に行く。

「ん?どうした?」

「トイレ・・・」

 

あの事件以来岡崎の様子は変わりない、いや、無理して変わらないように見せている、視覚が失った岡崎は24時間誰かが側にいないと行動するのも難しい、だからあれから毎日一緒に過ごす事になった。

 

「おし、俺の手掴め、誘導してやる」

「自分の家のトイレの場所位覚えてるわよ」

 

たどたどしい動きで壁に寄りかかりながら立ち、トイレに向かう岡崎は見ていて痛々しい。

 

「無理すんなって、ほら」

「・・・」

 

うぅむ・・・恥ずかしいんだろうが我慢して頂きたい、万が一転んだりでもすれば大変なことになる、それだけは回避したい。

 

「よし、ついたぞ、ちゃんとできるか?」

「子供じゃないんだから分かるわよ、入らないでよ」

「そうか」

 

まぁ狭い空間なら転ぶことも難しいだろう、ここはドアの横で待ってるとするか。

 

「・・・」

「ちょ・・・何黙ってんの、まさか聞いてないわよね?」

「聞いてねーよー」

 

うーん少し聞こえる位かな、別に興奮しないけど。

やはり岡崎も女の子なんだな、可愛い一面もあるようだ。

 

「・・・」

「よし、出たな、手洗ったか?」

「洗ったわよ」

 

トイレからでた岡崎をリビングに誘導、ソファが定位置になりつつもある。

視覚を失うと何もすることがないから音楽を二人で聞いている、俺は別に暇でも岡崎の相手になれれば別にいいからな。

 

「ふ~んふ~ん♪」

「・・・」

 

音楽を聞いている岡崎はやけに幸せそうだ。

俺?俺は岡崎の隣で煙草を吸っているだけ、ただそれだけ、それでも幸せ。

 

「よいしょっと・・・ん?コラ天馬、足組みしないでよ、膝枕ができないじゃない」

「ん?あぁすまん・・・ってなんで膝枕?」

「人肌に暖かい枕が最高なのよ、文句を言わずに奉仕しなさい」

「ふむ・・・」

 

そんな風に言われてしまうと何も言えなくなってしまう、まぁ我儘位付き合ってやるか、別に嫌じゃないしな、少し膝が重いがな。

 

「・・・」

「ふふ~んふ~ん♪」

 

静かな部屋に響く岡崎の鼻歌、なんだか眠くなってきた。

 

「うーん・・・」

「ん?何?眠いの?」

「いや?全然?」

「嘘つけ~」

「こら、人の顔を啄くんじゃない」

 

なぜわかったし、だがしかし寝たら岡崎が動けなくなるしなぁ、やはり起きておこう、顔を洗って目を覚ましたいが膝の上には岡崎がいるから動けない、あ・・・詰んだなこれ。

 

「・・・」

「何よ~天馬、寝たいなら寝たいって言えばいいじゃない」

「俺が寝たら岡崎動けねぇじゃねぇか」

 

以下押し問答が一時間ほど続く。

 

「わかったわかった寝ればいいんだろう」

「やっと素直になったわね、明日は仕事なんだから疲労を溜めちゃいけないわよ」

 

岡崎の代わりの目となった俺は岡崎の代わりに大学教授みたいな事をしている、分からないことは岡崎から聞けばいいらしい。

指名手配的な事をされていた俺だが事件が済んだ時、国が交渉に来た、内容は内部の事を漏らさない、あの事件の事を喋らない代わりにこちらが間違いだったことをテレビで伝え、指名手配も失くす、今後一切岡崎に近づかないことを約束してくれたので二つ返事で承諾した。いくらか生活支援をしてくれるという事なのでこのことは無かったことにして欲しい、と謝罪を貰った。

しかし一度テレビに顔が出てしまい、人とは思えない程の動きをしたせいかかなりの有名人になってしまった、インターネットの中の住人はあのテレビ内容を動画で流したせいもあり消せば増えるを繰り返している、現在国が躍起になって動画を消す作業に入っているらしい。

 

「んじゃ寝るか、岡崎はどうすんだ?」

「そうねぇ・・・私も寝るわ」

 

まぁもう夜の11時だしな、眠気が来てしょうがない。

 

「それじゃぁ布団敷いてくるわ、ちょっと待ってろ」

「はいはい」

 

よっこらせ、うーん腰が痛い。明日は朝8時に大学につけばいいんだったな、だから7時に起きて、準備をして30分に家を出るとしよう。

 

「うん、これで良し」

 

明日の予定も考え終わったし岡崎を寝かせるとするか。

 

「岡崎、敷き終わったから誘導するぞ~」

「はいはい~」

 

岡崎の手を掴んで布団のところまで誘導。

 

「そんじゃお休み、音楽聞きながら寝るか?」

「そうしとく」

「うい、充電器持ってくるな?」

「わかった~」

 

えーっと充電器充電器・・・あったあった。

 

「んじゃ充電器さしたから、そんじゃお休み」

「お休み~」

 

俺はリビングのソファを寝床としている、何故かって?テレビがあるからだ。

ちゆりのせいで何かしら光と音が無いと寝れない、前までは暗闇の中で寝れたのに全てちゆりのせいだ、あいつがテレビを付けっぱなしにしてるのが悪い。

まぁ夜中のテレビなんてくだらないバラエティーか定点カメラだからな、ほぼ定点カメラのテレビで寝させていただいている。

 

 

 

 

目覚ましが鳴り朝だと知らせてくれる、鳥が五月蝿い。

 

「・・・」

 

起きて五分位はボーッとしている、意識がハッキリしていかないと起きれないからだ。

 

「よし、飯作るか・・・」

 

飯といってもサンドイッチだがな、サンドウィッチ?まぁいいや。

昼飯の分も作らなきゃいけねぇな。

 

「え~っと無難にタマゴとツナサンドでいいか、購買もあるしな」

 

弁当はNG、なぜかというと箸を使わなければならないからだ。岡崎も面倒臭いだろう?少なからずだが色々と考えなければいけないな、こういう事から一個一個手をつけなければな。

 

「よし、岡崎を起こしにいくか」

 

ちなみに俺が大学に言って教授みたいな事をしていると言ったが実は岡崎の言われた言葉を耳につけている小型トランシーバーで岡崎がする講義の内容をそのまま伝えているだけだ、自分が頭がよければそのまましたいのだが如何せん良くはないので迷惑を掛けてしまっている。

 

「岡崎、朝だ。起きれるか?」

「ん~・・・お早う天馬」

 

頭をポンポンと叩いてみると起き出す岡崎。ふぅむ、よく起きれるな。俺なら絶対起きれない、どうやったらこんな簡単に起きれるのかね。

 

「飯は食えるか?一応サンドイッチ作ったんだが・・・」

「あ~・・・私朝余り食べれないのよ、ごめんね」

「分かった、昼に食べよう」

「それじゃ着替えるわね」

「うい、着替えここに置いておくからな」

 

布団の横に洗濯しておいた岡崎の着替えを置いておく、一人で着替えられるか?まぁ岡崎なら大丈夫だろ。

 

 

 

 

 

「面倒臭いわね・・・!このっ!」

 

襖の向こう側からドタバタと悪戦苦闘を繰り出している音が鳴り響いている、着替えを手伝ってやりたいのだがさすがにそれは恥ずかしいらしく岡崎は首をぶんぶん横に振りながら拒否したため手伝えない。

 

「手伝ってやろうか~?」

「いいわよ!部屋入ってこないでよ!」

 

ふうむ、拒否られてしまった。しょうがないな、とりあえず俺も着替えるか。

俺が着替えている間も後ろの部屋からは未だに悪戦苦闘をしている岡崎の声、大変だな。

 

「よし、やっぱりスーツは気慣れないな、ネクタイを緩めておこう」

 

ネクタイを緩める頃には岡崎も着替え終わったようで、息切れしながら襖を開けた。あら、ボタンがずれているぞ岡崎

 

「おい岡崎、ボタンがずれているぞ」

「ひゃっ!?」

「アウチ!」

 

岡崎のボタンを治そうと手をかけた瞬間強烈な平手打ちを食らった、いきなり触ったのはまずったな、それくらいは考えておこう。

 

「あ、ごめんね!?わざとじゃないのよ、とりあえずボタンは自分で治すわね・・・?」

「あ~気にすんな」

 

おぉ、頬がヒリヒリする。まぁ俺が悪いしなしょうがない。

 

「良し、準備は済んだな?大学行くぞ?」

「あ、あの天馬・・・ごめんね?」

「わかったわかった」

 

岡崎の手引き、車に誘導する。とりあえず助手席に乗せてと・・・。

 

「よっしゃ、シートベルトは付けたな?発進するぞ」

「うん・・・」

 

なんだ?平手打ちしたことをまだ引きずっているのか?あれは俺が悪いんだから気にすることはないというのに。

 

「そのまま教室に向かうか?」

「そうねぇ・・・」

「サングラスつけるか?」

「そうさせて貰うわ」

 

まぁ人目が少し気になるっぽいしな、さぁて教室に行くとしますか

 

「ういーっす」

「おぉ~天馬じゃん」

「二日振りねぇ天馬」

「ご主人との同居は慣れたか?」

「まぁぼちぼちな」

 

教室に行くとちゆりとメリー&蓮子が居た、いつものメンツだ。

講義まで時間があるからか暇があるといつもここにいる、憩いの場みたいなものだな。

 

「んじゃ俺は教授共に挨拶行ってくるからお前らは適当に喋っていてくれ」

「うい」

「いってらっしゃーい」

 

正直教授達と顔合わすの嫌なんだよなぁ・・・人間じゃないものを見るような目だしなぁ・・・。

 

「おはようございま~す」

 

ガラッとドアを開けて挨拶すると教授達が一瞬だけこちらを見るが無視、まぁ別に気にしないがね。

 

「そいじゃ必要な物だけ持つか」

 

講義に必要な物&その他もろもろ。

必要なものだけを岡崎の机から取り出してすぐに出て行く。

 

「さて、講義まで後10分か・・・いくべか」

 

 

 

 

 

 

さて、講義も始まったが俺は延々と岡崎から出される言葉を簡単にまとめてそれを言葉に出すだけの作業、聞いている奴は多いがあまり俺の言葉に耳を傾けず、真面目に聞いている奴なんて7-8人程だろうか。

 

「んでだ、重力っちゅうのはこうなるわけだな、以上で講義を終了する」

 

重力の事なんざ分からないがこれであってはいるだろう。

さて、岡崎のいる教室に戻るとするか、この後の講義はないっぽいしな。

 

 

 

昼時だ、蓮子とメリーは中庭で一緒に飯を食うのが好きなようで教室で昼飯を食っている所を見たことがない、たまに購買に行く時に中庭で軽い挨拶をする、そんで放課後ここに集まるという。

 

「ほいよ岡崎、弁当だ」

「ありがと~」

 

弁当の中身は朝作っておいたサンドイッチだ、購買で買っておいたご飯系も一応は買っておいた。

 

「飯とパンどっちがいい?」

「悩むわねぇ・・・ご飯がいいわ」

「ほいほい」

 

ご飯がいいという事なので購買で買った弁当を岡崎に手渡す。

それじゃぁ俺はサンドイッチを頂くとしよう。

 

「一人で食えるか?」

「ん~・・・」

 

包を開けない岡崎、さすがに食いにくいか・・・。

 

「ほれ、口を開けろ」

「んぁー?」

 

岡崎の口の中にエビフライを突っ込む、最初は驚いていたが食べ物だということが分かると咀嚼し始める。

 

「美味いか?」

「ん~・・・あんまり美味しくないわね」

 

まぁコンビニ弁当と然程変わらんしな、美味しくないのは分かっていた。

 

「俺のと交換するか?パンだけど」

「うーん・・・そうしようかな」

「ほい」

 

弁当とサンドイッチをトレード、俺は別に食わなくても過ごしていけるんだがな。とりあえずは食べるみたいな感じ。

やっぱり箸を使うより楽なようでパクパクと食い始める岡崎。

 

「うーむ確かに美味しくはないな」

「でしょ?」

 

美味しくはない、不味くもないが。

いろいろとおかずは豪華なんだが・・・ハンバーグやらエビフライやらポテトサラダやら、一口食べるともういいやってなりそう。

 

「ま、俺は食えりゃぁいいんだよ食えりゃぁごっそさん」

「そういうものなのね」

 

そういう物なのだ。

 

「チャーッス暇だから来たぞ」

「私も居ますよ」

「なぜか昼飯食ってたら連れてこられたんだが」

 

ドアを開けるは海鈴と五十鈴、ちゆりも首根っこを掴まれて入ってきた。

 

「いい加減離してくれないか?少しウザったいぞ」

「まぁまぁいいじゃない、細かいことは気にするな!」

「飲み物頂けます?」

「帰れ」

 

頭痛が痛い、なんで海鈴と五十鈴がいるんだ。

 

「いや~行く宛がなくてね!二人でブラブラしてたらこの子の家に厄介になってるのよ!」

「いや、それお前が無理矢モゴモゴ」

「そういうこと」

 

大変そうだなちゆり、俺はお前と違ってそんな嫌な生活は送りたくないからな。巻き込むのだけは勘弁してくれよ、楽しそうでいいじゃないか。

 

「足の怪我は治ったぽいな海鈴」

「お陰さまで」

「お茶しかないが」

「どうも」

 

自分の為に買っておいたペットボトルのお茶を海鈴に渡すと蓋を開けて飲み干す海鈴、どんだけ水分飲みたかったんだよ。

 

「不味い、もう一杯」

「いや、それ違う商品な」

 

 

放課後、何時ものようにメリーと蓮子が集まり+2人でやけに騒がしい。

これはこれで楽しいっちゃ楽しいのだがすこし五月蝿い。

 

「そういえばメリー、知ってる?東の方の山奥に廃れた神社があるそうよ!これは何か面白いことがあるかもしれないわ!」

「山奥?またそんな面倒臭い所をよく見つけるわね」

「携帯弄ってたらいきなり地図が表示されて見つけたのよ!これは来いってことよ絶対!」

「へぇ~?」

 

蓮子とメリーは秘封倶楽部なるものを結成している、ただあまりにもオカルトすぎてまともな活動をしないせいか風評は悪い、故に二人だけ。

 

「廃れた神社、意味不明の現象・・・面白そうじゃない!!」

「あまりにも暇だから何にでも面白く感じるんですね」

「五月蝿い!」

 

海鈴と五十鈴の口喧嘩も今に始まったことではない、喧嘩するほど仲が良いという文字をそのまま貼り付けたような二人。

 

「勿論!天馬も来るわよね?」

「は?行かねぇよ」

「何で!?」

 

何でって岡崎がいるからだろうがすこしは考えて欲しい物だ。

 

「あ、岡崎教授のことなら心配ないわよ!天馬がおぶされば全て解決じゃない!」

「なにを言っとるんだお前は」

「岡崎教授!!いいですよね!?一緒に行ってくれますよね!!お願いします~!」

「ふーむ・・・天馬がいいなら行ってやっても・・・いいかな?」

「ほら!!」

 

ほらじゃねぇよ、大体岡崎。お前は蓮子に甘すぎだ。

 

「待て待て少しは岡崎の事も考えろ、岡崎はどうだ?行きたいのか?」

「うーん・・・興味はあるかなぁ、携帯の事もあるし」

「決定ね!!そうねぇ・・・あ、土曜日!土曜日なら祝日だし休みよね!」

「土曜・・・って明日じゃねぇか」

「それ以外に日程が合わないのよ、いいじゃない!」

 

 

ということで明日行くことになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、不思議な世界で不思議な妖怪に出会う。

うーむ・・・、京都にこんな山があるとは・・・って・・・京都じゃねぇじゃねぇか

 

 

「蓮子アホなの?GPS通りに走ったけど長野なんだけど?頭おかしいの?」

「いやーっはっはっは」

「笑ってる場合じゃなくて、お前マジで何を考えてるの?ガソリン代払えよ」

「えぇ~・・・」

 

3時間程車を走らせて着いた所が京都ではなく長野だった、巫山戯るな。

大体おかしいと思ったんだよ、GPSで記された場所が長すぎだし半分くらいまで来て気づいたがもう遅い、戻るくらいなら行くしかないとおもったのが運のつき。

 

「しかも俺の煙草どうすんの?近場だから一箱しかもってこなかったんだが?もう終わりそうだよこんちくしょう」

「未成年が煙草吸うのがおかしいじゃない、ガソリン代も浮いたでしょ?だから天馬が払ってよ~」

「黙れ、俺は払わんぞ。満タンにして返してもらうからな、総額1万位で許してやる」

「・・・」

 

 

助手席にいる蓮子以外は寝てしまっている、蓮子も寝ようとしたが無理矢理起こしてやった、コイツだけは許せねぇ。

 

「まぁまぁ、もうすぐ着くしいいじゃない!ほら皆!起きて~!」

「あ、この野郎!話を逸らすんじゃねぇ!」

 

帰ったら蓮子から一万円貰うとしよう。

 

 

 

「な、長い・・・」

「ちょっと・・・蓮子これ遠すぎない?山の頂上に着きそうなんだけど」

「二人共体力が無いな!」

「ですね」

「「ですねじゃない」」

「岡崎、気分はどうだ?」

「森っていうのも中々良いわね、気分は良いわよ」

 

マイナスイオンだっけかね、そんなものが放出されているのか清々しい。

しかし歩いてもう1時間は掛かっているぞ、俺とか海鈴姉妹なんかは体力があるから別にいいんだがメリー達は早くもばててきている。

 

「しかし何だ?さっきから何か嫌な予感みたいなのがする様な・・・」

「天馬の嫌な予感は当たったことがないからな~」

「ですね」

「きっとアレね、私にガソリン代を出させるなんて可哀想っていう思いが・・・」

「「「「ねーよ」」」」

「うぐぐ・・・」

 

どうしても金を出したくないのか、そうかそうか。それならば倍プッシュでさらに一万上乗せだ。

 

「さぁ~帰ったら蓮子の奢りで飯でも行こうぜ~ちゃっちゃと神社行ってよぉ」

「えっ?」

「良いわね~!」

「ご馳走になります」

「蓮子ありがとう♪」

「生徒の奢りで食べるご飯は美味しいのかなぁ」

「えっ?えっ?」

 

終わりだ蓮子、お前のターンは永遠に終了した。ごちそうになります!

 

 

 

 

 

という蓮子虐めをしながら頂上に着いたわけだが、うぅむ。一見なんの変哲もない神社・・・というより廃墟。 鳥居っぽいのはあるんだが石床(いわとこ)でできた地面なんかは所々雑草が生えているし・・・廃墟だな。

しかしなんか見たことあるようなないような・・・。

 

「・・・で?」

「・・・つまんな」

「はぁ~・・・」

「蓮子・・・」

「えっ?えっ・・・?いやでもなんかありそうな雰囲気じゃない!?」

「皆の反応からするにただの廃墟か普通の神社だったの?」

「まぁ、前者だな」

「ふーむ・・・」

 

期待外れ・・・とでも言おうか、本当にただの廃墟。デカイ神社であれば面白そうなことが発見できそうだったんだがこの神社・・・小さい、ものすごく小さく平屋みたいな感じ。

 

「でも蓮子・・・境内の前に小さいけど境界の裂け目が見えるわ」

「え?本当?」

 

境界ねぇ・・・メリーは境界が見えるらしいがどんな風に見えるのだろうかさっぱりわからん、境界が見えるのか?知らんけど。

 

「境界があると何かあるのか?」

「え?そうねぇ・・・希に怪奇現象が起こるわよ」

「ほ~ん・・・」

 

希に怪奇現象が起きるらしい、なにが起こるかはランダムなのかね?

 

「じゃぁ手分けして探索するわよ~教授と海鈴達はここに待機!私とメリーは境内の中!天馬はこの神社の裏をお願いね~」

「俺一人かよ」

 

手伝いをさせられる事は予想はしてたからいいが、まぁ岡崎は海鈴達がいるし大丈夫だろ。さっさと探索して終了しよう。

 

「はぁ~あ、また面倒臭い事に巻き込まれたな」

 

まぁ岡崎が楽しければそれでいいんだがせっかくの休日を使ってまでこんなことをせにゃならんとは、帰ったら即蓮子の奢りで飯食って寝てやる。

 

「おっと、裏は結構急な坂になってるんだな。気を付けねぇといかんね。」

 

しかし裏を見ろと言われてもなぁ、なんの変哲もない雑木林や廃墟と化した神社・・・見る必要性がなさ過ぎてつまらなくなってくる。

 

「ん・・・?何だあれ・・・?」

 

嫌々言いながらも探索をしていると変な形の社を見つける。社は一般的な小さい神社みたいな奴なのだが扉の所に見慣れない御札みたいなのが貼ってあった。

 

「社の中には何かしら大事な物が祀ってあるとは聞くが・・・この廃墟に何を祀っているんだ・・・?」

 

うーむ・・・気になる・・・気になるが・・・やめておこう。

大体、神物を好奇心で見るもんじゃァない。罰当たりな気がする・・・。

 

「おっとぉ!!手が滑ってしまったァ!!!」

 

手が滑った拍子に御札が剥がれてしまい御札で止められていた扉がゆっくりと開く。

 

「あぁ!何という事だ!手が滑った拍子に扉が開いてしまった!偶然だから神様がいたら見逃してくれよ!!」

 

よし、前置きは済んだ。これで神がいたら許してくれるはずだ、いや・・・許すしかない。

 

「中身はなんなんだぁ?」

 

まぁ開いてしまったものはしょうがない、人間の性というものは見たらいけないものを見てしまう生き物なのだ。

 

「・・・札?」

 

なんとまぁ社の中に見えてしまった物は御札だった。珍しい事もあるもんだ。

御札で封印?された社の中にさらに御札があるとは。

 

「・・・うぉっ!?」

 

御札に触れて持ち上げようとした瞬間、まるでスタングレネードでも食らったかのような光が炸裂、目を守ろうと腕で庇って目を開ける。

 

「え!?」

 

手に持っていた御札が無くなり辺りを見回すと廃墟寸前だった神社は無く、あったのはあの廃墟寸前の神社が綺麗になった状態だった。

 

「・・・なんだこれ」

 

なにが起こったのかさっぱり分からない、回りの雑木林も整理されているかのように綺麗だ、違う場所に来たかの様に。

 

「とりあえず戻るか・・・」

 

蓮子達が居れば安心できるんだが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「いないな・・・」

 

戻ってみると蓮子所かメリーや岡崎すら居なかった、あんなに雑草が生い茂っていた石床も無く、綺麗に並べられた石床にすり替わっている。

 

「(落ち着け・・・落ち着け俺・・・とりあえず一服するんだ・・・)」

 

COOLになれ俺、COOLになるんだ。

 

「ちょっとぉ、そこに誰かいるの?」

「不味ッ・・・!」

 

境内の横に生い茂っている草むらの中に隠れて様子を伺うと神社の中から出てきたのはなぜか脇を強調させている巫女が面倒臭そうに出てきた。

 

「・・・?なんなの?」

 

ふぅ、隠れる必要はあるのかこれ・・・。まぁ何が起こるかわからんしとりあえずは隠密行動をするか・・・。

 

「うお~い霊夢~」

「なっ・・・!?」

「あら、魔理沙じゃない」

 

なんて事だ、メイド服の女が箒に跨って空を飛んでやがる。

どうなってやがるんだここは、信じられないが魔法か何かの類か・・・?

巫女は脇出してるし箒に乗って飛んでる女もいるしどういうことなんだこれは。

 

「岡崎が居たら歓喜するだろうな・・・」

 

主に実験材料のな。

しかしこの世界は魔法的なものが使えるらしい、どうやって使うのかが分からないが・・・やべぇな・・・。何がやばいって・・・やばいよ結構。

 

「ふむ・・・」

 

とりあえず境内はメイド服の白黒と脇巫女が喋っていて手がかりが掴めそうにない、バレないように移動するか・・・。

 

「ん?霊夢、私たち以外にも誰かいるのか?」

「え?いないわよ?」

「・・・」

 

あの金髪メイド服・・・勘が鋭いな・・・少ししか物音を立ててないはずなんだが、地獄耳か・・・。

 

「そこに誰かいるだろ?何かのサプライズか?」

「しつこいわねぇ、いないって言ってるでしょ」

「ふ~ん・・・確かめてみれば分かるぜ!」

「!」

 

やばいやばいやばいこっち向かってくるどうしよう、逃げ場なんて茂み位しかねぇよどうしよ。

 

「誰かいるんだろ~?」

 

うぐぐ・・・あんまり得意じゃないが試してみるか・・・!

さぁ俺、メタモルフォーゼ(擬態)だ、それ!

 

「うーん?お?」

「にゃ・・・にゃ~ん」

「「・・・」」

 

あ、くそ!適当に擬態したら猫になっちまった!!鳥とかにすればよかった!そうしたら飛べるかどうかわからないが逃げれたはずなのに!

 

「・・・おぉ~!」

「フギャ!?」

「霊夢~!猫だ!猫がいたぜ!しかも黒猫だ!」

「猫ぉ?」

 

くそっ、このアマ!離しやがれ!

駄目だ、猫並みの力しかでねぇ・・・、どうやって逃げよう・・・。

 

「魔女と言ったら猫!黒猫だよな~!私の相棒にしてやる!」

「あら、本当に猫じゃない・・・なんだか目つきが怖い猫ねぇ」

「・・・」

 

余計なお世話だっつの脇巫女、なんとか離してくれねぇかな・・・。

 

「そこがかわいいんじゃないか~!」

「こら魔理沙、そんなに抱きしめてると苦しいと思うわよ」

「・・・」

 

あ、猫ってのもいいな。

抱きしめられてるせいか背中に小さな二つの膨らみが・・・。

・・・・イカンイカン!とっと脱出しなければ!

 

「にゃおん」

「お?なんだ?降ろして欲しいのか?」

「にゃん」

「しょうがないな~・・・って人間の言葉が分かるのか?もしかして妖怪かお前?」

 

ふうむ・・・気づかれてしまいそうだ・・・妖怪ってなんだ?あの妖怪か?

 

「にゃ・・・にゃ~ん」

「こら、猫・・・お前は妖怪なのか?それとも猫なのか?」

「にゃ~ん」

「猫が人間の言葉がわかるわけないでしょ、そもそもその猫妖力とかないし」

「そ~だよな~」

「だけどその猫、霊力も無いわよ?」

「そうなのか?」

 

霊力?妖力?なんだそれ?わけがわからん、俺は一体どこの世界に着いちまったんだ?岡崎のいる世界じゃなくなったのか?

 

「ってことは妖怪になりかけるかもしれないな!尚更いい相棒になりそうだぜ!」

「ポジティブねぇ・・・妖怪ったってあの紫の式の式みたいになるかも知れないのよ?食費とか面倒くさいじゃない」

「チッチッチ、甘いな霊夢、あれは狐が甘やかしてるから悪いんだぜ。私の相棒だったら自分で自分の飯くらい探せるさ!」

「もう相棒ってのは決まってるのね」

「猫よ!お前もそれでいいよな!」

「・・・」

 

どうすればいいのだろうか、ここで適当に相槌でも打てば連れてかれるかもしれん・・・。

 

「ほら、嫌だって言ってるじゃない。素直に逃がしてあげなさいよ」

「え~・・・そうなのか猫?」

「・・・にゃ」

 

まぁちょっと寂しいが脇巫女がフォローしてくれたおかげで逃げれそうだ。

ここは逃がしてもらうとしよう。

 

「待ちなさい魔理沙」

「ん?何だ?」

「あら、紫じゃない」

「・・・」

 

逃げれるチャンスが無くなってしまった、しかし誰だこの金髪ドレス女は。

いきなり現れたな、どっから出てきやがったんだ?

 

「どうしたのよ紫、あんたが来る何て珍しいじゃない」

「ちょっと用事があってね、魔理沙・・・その猫を渡しなさい」

「え?何で?」

「何でもよ、早くしなさい」

「何だ~紫も猫が好きなのか?しょうがないな~ちょっとだけだぞ!」

「ありがと」

 

・・・今だっ!

金髪メイド女が俺を金髪ドレス女に渡そうとした瞬間力が緩んだ所を脱出、ハハハ~ァ!猫は力は弱いが逃げ足はぇ~ぜ!じゃぁな!

 

「あ!紫が早く掴まないから逃げられたぞ!」

「・・・」

 

ハッハッハ、甘かったな金髪コンビ共。

あまり猫を舐めない方がいい、人間にだって勝つことだってあるんだぜ。

次からは安易に猫に近寄らない方が・・・!?

 

「おぉ~さすが紫、スキマを使っての逃げた猫の目の前に開いて回収!」

「・・・それじゃ、あの猫ちょっと借りるわね」

「返してくれるのか?」

「返せたらね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(うぅ、気持ち悪い所に来たもんだ・・・)」

 

走って逃げれたと思ったら目の前になんか目がギョロギョロしている空間があって止まれ無かったのが運の尽き。

ずっと動きまわってるが出口が見つからないので脱出も不可能になってしまった、このままずっとここに居て殺されるのか俺?

 

「んにゃ!?」

「おっと」

 

いきなりあの気持ち悪い空間から吐き出されたと思ったらものすっごい美人の人が俺を受け止めたんだが・・・!

 

「(んぎぉおお!離せェ!)」

「こら!暴れるな天馬!あっ!」

「にゃぁ!?(なにぃ!?)」

 

少しの隙を突いて脱出だ!くそぉ、猫になると力が出なさすぎてかなり体力を消費する!てか今さっき俺の名前呼んでいたよな!?

なぜだ、何故この美人なお姉さんが俺の名前を知っている!てかなんで正体わかってるんだ!?

 

「・・・大人しくなれ!」

「フーッ!!(近寄るな!)」

「な!?私の事が分からないのか!?」

 

お宅のことなんか知らんがな!!

特に狐の尻尾がいっぱい付いている女なら尚更だ!なんだ!?ここはコスプレ天国なのか!?脇を露出している巫女だったり黒いメイド服の魔女だったり金髪ドレスお姉さんだったり!

 

「落ち着くのは貴方よ藍、天馬は記憶が無いのよ」

「そ、そうでしたね・・・」

「!?」

 

な!?金髪ドレスお姉さんがいきなりニュっとあの目玉ギョロギョロ空間から出てきたぞ!?どうなってるんだ本当に!?

 

「・・・」

「とりあえずどうします?捕まえますか?」

「そうねぇ・・・いきなり此処に来て混乱しているみたいだし・・・話しても分からなさそうよねぇ・・・」

 

ジリジリと間合いを詰めてくる狐の人。

ちょ、後ろに壁があって逃げられん。窮鼠ということかそういう事なのか!

 

「さぁ大人しく捕まれ天馬!」

「ちょ、ちょっと待てお前ら!」

「・・・何時もの姿に戻ったわねぇ、藍・・・もういいわよ」

「あ、はい」

「えっ?」

 

え、擬態解除したらあっけなく終わったんですけど。

 

「色々と聞きたい事があるが三つだけ質問する、お前ら一体何者だ?それと一体此処は何処だ?それと何故俺を此処に連れてきた?」

「しょうがないわねぇ・・・まず一つ目、私達は妖怪。二つ目、ここは幻想郷よ、貴方のさっきまでいた世界は常識の世界・・・ここは隔離された非常識の世界。三つ目、常識の世界が貴方を拒否したために隔離しに連れてきた・・・分かったかしら?」

「はぁ?あんたらの都合で俺をこっちに連れてくるんじゃない!第一、俺は戻らないといけないんだ。だから俺を常識とやらの世界に戻してくれ」

「あら?貴方は元々はここの住人だったのだから戻る必要は無いと思うのだけれど?」

「はい?」

 

俺が元からここに居た? ・・・まさか記憶が無くなる前の俺か?

 

「あぁ・・・ここにいた時の俺ってどんな感じだったんだ?」

「ん~・・・自己中心的で我が儘ですぐに女の子誑かして無気力で面倒臭がり屋で自分が強いと思っててちょっとナルシス」

「分かった分かった!!もういい!!そんなに悪い言葉が出るなら俺を戻してくれればいいだろ!」

「でも、一緒に居ると楽しいし。優しい所があったり、困ったことがあると助けてくれたりしたわよねぇ・・・ねぇ藍?」

「そうですね、たまに面倒臭い時がありますが・・・居なくてはならない存在だと思います」

「うっお・・・」

 

なんだこのツンデレ・・・反応しずらい。

なんだよ照れるじゃねぇかよって言いそうになったのはご愛嬌。

 

「そ、そんなことはどうでもいいじゃねぇか・・・とりあえず俺を常識の世界に戻してくれよ・・・頼む!」

「て、天馬が土下座するだなんて・・・」

「初めて見ましたね、外の世界に思い人でもいるんじゃ?」

「お、思い人なんかいねぇよ・・・ただ俺のせいで傷ついた奴がいるんだ・・・罪滅ぼししたいだけだ」

 

現に俺のせいで岡崎の視力は奪われたしな・・・自分のケツは自分で拭くぐらいはしたい。

 

「じゃあ、罪滅ぼしが出来たらいいのね?」

「え?どういうことだ?」

「その罪滅ぼし・・・手伝ってあげるわよ」

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、岡崎と決断する。

「え?手伝うってどうやって・・・」

 

岡崎の罪滅ぼしに手伝ってくれるというこの金髪ドレスの女。

いや、無理だろ。視力を完全に失った眼球をどうやって回復させるというものか。

 

「そうねぇ・・・それじゃぁ聞くけど貴方の言う罪滅ぼしって何?」

「え?できれば岡崎の視力を戻せればいいんだが・・・無理だから支えになるくらいだな、自己満足かもしれんが・・・」

「へぇ・・・」

 

金髪ドレスの女がコスプレ尻尾女に耳打ちした後、真剣な表情で此方を見つめてくる。

 

「その罪滅ぼし・・・できるけれど条件があるわ」

「本当か!?・・・条件?」

「いい?罪滅ぼしをした後、貴方は幻想郷に住む事。それと常識の世界の貴方を知っている人物の記憶を無くす事・・・貴方もね」

「ちょ、ちょっと待て!」

 

ここに住むのは別にいいんだが・・・記憶を無くす・・・?

もしかして俺の存在自体を忘れさせるとか俺が岡崎達を忘れるって事か?

 

「あ~・・・」

「どう?」

 

・・・正直辛いな、蓮子とか岡崎の楽しかった記憶全てが消えるっていうのは・・・しかしそれで岡崎の視力が治るならいいが・・・胡散臭いな・・・

 

「それじゃあ俺も一つだけ条件を付けていいか?」

「え?良いわよ」

「俺の記憶を失くすのは罪滅ぼしが終わってからでいいか?」

 

俺の記憶を無くして罪滅ぼしが終わらないままだと後悔しきれない。

信用していないわけではないんだがあまりにも美味しい話すぎるだろ、メリットしか無いなんてな。

 

「それくらいなら良いわよ?それじゃあ話は決まりね?」

「あぁ・・・」

「藍?竹林の薬氏の所までこの事を伝えておいてくれるかしら?視力ってことは・・・目が見えないって事でいいのよね?」

「分かりました」

「あぁ、そうだが・・・両目とも抉り取られているんだが治るのか?」

「うーん・・・難しいと思うけど・・・あの薬氏なら治ると思うわよ」

 

すごいな非常識、常識の現代医学でさえも匙を投げるレベルだったのに・・・ここに来て正解かもしれんな、蓮子に一応だが感謝をしておこう。

 

「じゃぁ天馬、その岡崎っていう人と貴方を知っていそうな人の名前をこれに書いてくれるかしら?」

「その紙にか?分かった」

 

えーっと・・・岡崎夢美、宇佐美蓮子、マエリベリーハーン、北白河ちゆり。

あ、国の連中はどうするかな・・・まぁいいか・・・よく知っている連中はこれくらいだな・・・。

 

「これでいいか?」

「うんうん・・・良いわよ、この連中は今どこにいるの?」

「え?多分常識の世界のさっきの神社だと思うが・・・」

「分かったわ、貴方は少しここで待ってなさい」

「え?はい」

 

そう言い残して金髪ドレス女があの気持ち悪い空間に入っていった。

そしてポツンと一人になる俺。

 

「藍様~居ますか~?」

「ん・・・?」

 

一人になったと思ったら庭からいきなり出てきた猫娘、おぉめんこいめんこい。

しかし本当に非常識な世界っぽいな、この猫尻尾が二本付いてるぜ。

 

「あ、天馬様じゃないですか~!体調は如何ですか?」

「すまん、記憶が無いみたいでな・・・知らんのだわ」

「そうなんですか~藍様達はどこにいるんですか?」

「わからん、待ってろって言われたから戻ってくるみたいだが・・・」

「分かりました!じゃぁ私もここで待っていますね!」

「お、おう?」

「とりあえず座りましょう!」

「あぁ」

 

なんやかんやで座布団に座らさせてしまったが・・・しかしこの猫娘、笑顔が絶えないな。

 

「あ~・・・そこの猫よ、お前から見て俺はどんな奴だったんだ?」

「え?そうですね~、楽しいし優しいけど怖いところがありましたね!」

「怖い?」

「はい!私も天馬様とあまりお話した事ないので分かりませんがとにかく怖かったことだけは覚えています!」

「まじか・・・」

 

記憶が無くなる前の俺、一体何したんだよ・・・。

しかしまぁ怖かったということだけはわかったな、何が怖かったのかよく分からないがな。

そうこうしている内に金髪ドレスさんが帰ってきたようだ。

 

「戻ったわよ、あら・・・橙、来てたの?」

「おかえりなさい紫様~」

「藍なら居ないわよ、あの薬氏の所に行ったからね」

「そうなんですか~」

「岡崎達はどうしたんだ?」

「記憶を消して今は薬氏が目の治療をしている所よ、かなり渋ってたわね」

「ん?」

 

渋ってたって薬氏がか?それとも岡崎がか?

 

「渋ってたって?」

「貴方の言う視力を失った彼女がって事よ、いきなり連れてくるのもあれだし一応説明はしたけど一番彼女が拒否していたわね・・・かなりの怒号だったわよ」

「怒号って・・・怒ってたって事か?」

 

何故だ岡崎、喜ぶ事はあっても怒ることは無いだろう。

何に対して怒ってたんだろうか、よく分からん。

 

「んで?岡崎の目は治るのか?」

「あの薬氏の反応だと治ると思うわねぇ・・・時間は掛かるそうだけど」

「ほぇ~・・・」

 

すごいな、本当に凄い。

 

「多分一日位掛かるんじゃないかしら?後の5人とあの・・・自動車だっけ?あれは元の場所に戻しておいたわ、京都?だっけね」

「曖昧すぎるだろ・・・そういやあの狐さんは何者だ?かなりの美人だが」

「狐・・・あぁ、藍の事?」

「あぁ!そうそう藍だっけか?」

 

このドレスの女も美人だが何か胡散臭いんだよなぁ、そんでなんか頭が痛くなってくるし・・・良くわからん。

 

「あの子は私と一緒で妖怪よ、私の式だけどね」

「式?式っていうと従者みたいなやつか?」

「そうね、そう思ってくれた方が楽だわ」

「はぁ~・・・」

 

ここは平安時代か?紫式部とかで有名だよな。妖怪かぁ、本当に居たんだなってつくづく実感するわ。

 

「ま、とりあえず貴方はあの子の目が治るまで待機していなさいな。外に出ちゃ駄目よ?」

「え?あんたどっか行くのか?」

「藍の所に行こうと思うけど・・・貴方が今外に出るとちょっと困るのよ」

「そうなのか?」

「そうよ」

 

ふむ・・・別に出ようと思ったわけではないのだが出るなと言うなら出ないようにしておこう。

 

「分かった、じゃあここで待ってるよ」

「・・・ちょっと怪しいわね。橙、見張っておきなさい」

「橙?あの猫ならどっかいったぞ?」

「はぁ・・・駄目な式だわ・・・まぁいいわ、貴方はここで待機。わかった?」

「はいはい」

 

怪しいと言われてもな、別に出ようとも思わないが・・・。

 

「ん?」

 

金髪さんがいなくなって寝っ転がっていると庭に黒いスーツを着ている人物が庭に生えている木の上に座りながら此方を見つめている。

しかし此方が気づいた瞬間どっかにいってしまった。

 

「・・・何なんだ?」

 

監視されているみたいで嫌だな、しかしずっと寝っ転がっているのもだるい。

なにか動いていないと落ち着かないな。

 

「煙草でも吸うか・・・」

 

あ、ストックしてあるのが切れそうだわ。

後二三本しか無いじゃないか・・・萎える。

 

「そういえばライターも無い・・・火無いかね」

 

見たところかなり古い時代に来たような感じがするが電気も無いしライター自体あるのか?コンロも無さそうだな。

 

「諦めるか、寝よう」

 

ずっと車を運転していたせいか疲れが溜まっているのが分かる。

しかし枕が無いしテレビもない、これでどうやって寝ればいいんだ。

 

「もういいや、自分の手を枕にして寝るか」

 

岡崎が治るのを待つとしよう、あの藍とかいう女の人と金髪の人がいずれ来るだろ、それまで寝ていよう。

 

「・・・岡崎は大丈夫なのかね」

 

無事に回復していることを祈るとしよう、やっとこさ睡魔も来たしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「天・・・天馬・・・天馬!起きなさい」

「んお・・・?」

 

うーん頭が重い、限りなくだるい。

 

「なんだぁ・・・?岡崎が治ったのか・・・?」

「長かったけどね、一応完全に治ったらしいわよ・・・だけど」

「だけど?んでなんで髪の毛ボサボサなんだ?」

「かなり怒っているわよあの子、だから天馬。大人しくさせなさい」

「えあ!?」

 

くそう、また気味の悪い空間に入れられたもんだ。

って・・・大人しくさせろってどういう事だ。

 

「おっと・・・何処だここ?」

 

空間を過ぎると辺り一面竹林竹林竹林。

そんな事よりさっきから聞こえる轟音はなんだ?

 

「oh...」

 

轟音が鳴り響いてる先を見てみると岡崎が暴れていた。

今までにないキレっぷりに言葉が出ないぜ、見る限り視力が回復しているようで良かった良かった。

 

「お~い岡崎、何やってんブエッフ!!」

「こら天馬ぁ!」

 

岡崎が投げた筍が俺の顔に直撃する。

 

「何すんだよ、痛ぇじゃねーか」

「あの紫とか言う女に聞いたわよ!何勝手に話進めてるのよ!」

「いや~万々歳じゃねーか、目は治るし俺との関わりがなくなるんだからもうちょっかい出されないじゃん、一石二鳥じゃん?おめでとう!」

「そういう事を言ってるんじゃないわよ!」

「何怒ってんだよ・・・まぁまぁ落ち着けよ」

「落ち着いてる!」

「さいですか」

 

あーあー轟音の正体は岡崎が抜きまくってる筍の音だったか・・・。

めっちゃ散らばってるし。

 

「てかなんで筍抜いてんの?」

「なんとなくよ」

 

哀れ筍、立派に育つことを夢見たはずであったのに。

 

「とりあえず落ち着け?な?」

「うるっさいわね!落ち着いてるわよ!」

「わかったわかった、まぁあの女の言う通りで岡崎の目が治って良かった良かった!はっはっは」

「ねぇ、天馬・・・」

「うぬ?」

「天馬はそれでいいの?」

「それでいいのって?俺はこれでいいと思ってるよ?」

「そう・・・」

「・・・」

 

3分程無言が続きやっと岡崎が口を開いたと思ったら変なことを言い出した。

 

「あ、そうだわ。何も元の世界に戻る必要なんてないじゃない!私もここに住むわよ!」

「へ・・・?」

「それじゃこれからよろしく天馬!」

「駄目だ!!!」

「うわ!?なに怒ってんのよ・・・」

「お前には両親もいるし何より蓮子とメリーはどうなる!?」

「それは・・・」

「あの金髪の女が岡崎達を戻すってことはここに居ていいのは存在を忘れさられた人か元の世界に居てはいけない、居ちゃいけない存在だけなんだ多分・・・俺は岡崎の世界には居てはいけないんだよ」

「でも・・・」

「でももストもない!岡崎は戻れ!いいな!?」

「・・・嫌!!」

「岡崎!!」

「離して!」

「話をきけってあんぎゃぁああ!?」

 

逃げる岡崎の腕を捕まえると逆の方向の手でおよそ人間とは思えない威力の平手打ちをされ竹を薙倒しながら吹っ飛ぶ俺。そして頬の痛みが尋常じゃないほど痛い故にのたうち回る俺。

 

「い、いだだだだ!!」

「天馬なんか知らない!!」

「までっで!!顎の骨ずれた!これズレちゃってるよ!」

「ふんっ!」

 

とそっぽを向いて岡崎はどっかにいってしまった。

というわけで。

 

 

「無理だった、俺はあの時思ったね・・・神様なんていなかった・・・ってね」

「・・・いいかげんに顎直してくれる?」

「え?まだズレてた?」

 

のたうち回る俺を見つけた金髪さんは回収するなり俺の顎の惨状を見て腹を抱えて爆笑していた。狐のお姉さんはなんか呆れてた。

 

「よいしょっと・・・よし、これでがっちりはまった」

「えぇ・・・そうね・・・・」

「・・・??なんか俺の顔についてるか?」

「ううん・・・なんでもブフォ・・・ないわよ・・・!」

「うーん?」

 

なんでずっと含み笑いをしているんだこの金髪さん。

俺の顔を見てずっと笑っているようだが何か可笑しなところでもあるのか?

 

「なぁ狐さん、俺の顔になんか付いているか?」

「・・・別に」

「なんで顔を逸らすんだ?」

「そうだな、強いて言えば君の顔に真赤な大きな紅葉が一つ付いているぞ?」

「なるほど・・・」

 

ぐぬぬ、頬がジンジンする。

 

「岡崎逃がしちまったけどどうするんだ?この世界に住むとか言ってるんだが・・・」

「そうねぇ・・・もう住ませていいんじゃないからしら?」

「「は?」」

 

おや狐さんと一緒に喋っちまったぜ。

いやこの金髪さん何を考えているんだ・・・。

 

「ちょ、紫様。さすがにそれはいけないのでは・・・」

「そ~お?面白いと思うんだけどねぇ」

「ダメですよ!何考えてんですか!!」

「そうだぞ!何考えてんだ!」

「なんで貴方も言うのよ!」

「ノリで言ったほうがいいかなと」

「うーん・・・」

 

手を顔に添えて考える金髪さん。もとい紫さん?

 

「貴方はどうなの?あの娘がここに住むっていうのは」

「俺か?俺は反対だな、俺と違って常識の世界にいなきゃいけんからな」

「以外ねぇ・・・それとも隠してるのかしら?」

「おっとそれ以上詮索したら俺と言えども怒っちまうぜ」

「あら怖い」

 

人には知られたくない事だってあるしな。いけないよそういうの。

 

「はいはい分かったわ。とりあえずあの娘はどこにいったのかしら、藍?」

「人里に来ているならなにかしら情報は入ってくるので人里には居ないかと」

「そうよねぇ・・・そもそもあの竹林は迷うしねぇ・・・」

「ふーむ」

 

いったいどこに行っちまったんだ岡崎よ。

 

 

 

 

 

その頃の岡崎。

 

「あぁもう!天馬の奴!私の気持ちも知らないで勝手に話進ませちゃって!!」

 

と言いながら迷う岡崎であった

 

 

 

 

 



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岡崎、元の世界に戻る・・・?。

ったく、どこに居るんだ岡崎は。

もう一度竹林にて岡崎を探すがまったく見つからん、さらに探し回るとポツンと立っている小屋があった。

 

 

「ごめん、赤い髪の女の子を探してるんだ・・・が」

「ほら!早く服脱ぎなさいよ!観念なさい!」

「やめろぉ!離せ!」

 

小屋の戸にノックをして中に入り岡崎を探している伝えようとすると白髪の少女と岡崎が取っ組み合いをしていると発見したと思っていたら岡崎がなぜか変態めいた言葉を発しながら白髪の少女服を脱がせようとしていた。

 

「・・・おい」

「あ!?天馬!!」

「おぉ、天馬じゃないか久しぶり!助けてくれ!」

 

呆れながら声を掛けるとなぜか白髪の少女まで俺を知っていた・・・。

 

「あ~・・・岡崎・・・そういう趣味があったのか?」

「ち・・・違うのよ!これには訳があって!」

「あぁそう・・・まぁいいか。んで白髪さんよ、俺はちょっと理由があって記憶がないんだ、できればまた今度話させてくれないか?」

「はぁ?そうなのか?よいしょっと・・・まったく・・・」

 

なぜ岡崎がこの白髪少女を脱がそうとしているには意味があったのだ、岡崎が言うには決して性的な意味で脱がしていたわけでは無いらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「困った・・・迷ってしまった・・・歩けど歩けど竹林ばっかり・・・もう嫌」

 

その場の感情で天馬に張り手を食らわして逃げたはいいけど迷ってしまった、適当に歩いていれば何れ出られると思っていたけど何回も同じ場所に来ている・・・。

 

「なんでずっと違う場所を歩いているのにまた同じ場所に戻るのよ・・・」

 

二回目位で気づいて一応竹に傷を付けて目印にしていたけれど五回も同じ印をつけた竹を見るとは思わなかった、非常に辛い。

 

「もう!なんでまた戻るのよ!巫山戯るんじゃないわよ!」

 

別の目印に筍を引っこい抜いて置いていってるのになぜか全部なくなってるしもうなんなんだろうこの虚無感。

 

「おっと?」

「ん?」

 

後ろから声がしたので振り向いて確認してみると白髪の女の子が後ろで竹籠を背負って不思議な顔をしていた。

 

「・・・あ!もしかして迷ったのか?」

 

掌にポンッと何かを理解した女の子。

 

「え?え?」

「ほらちゃんと付いてこいよ、どうせ人里に行くんだろ?さっさとしないと置いていくぞ?」

「え?ちょっと!」

 

あぁ、なんなの本当に。

 

「一旦そこで待っててくれ、荷物下ろしてくる」

「え?えぇ・・・」

 

そう言って竹林の中にある小屋の中に少女が入りドサッと筍の入った竹籠を置いてバケツに水をいれてあく抜きをしようとしていた、ていうかあの筍全部私が抜いたものじゃ・・・?

 

「はぁ~よっこいせ、あぁ迷子さんよ・・・とりあえず中に入って休憩しないか?」

「え?そうね・・・」

 

 

それからどうした!

 

 

「ってことなのよ」

「なるほどねぇ、つまりは外来人ってことか。まぁその男の言う事もその通りだと思うがねぇ」

「何よ、あいつ(天馬)に肩を持つ気なの?」

「いやいや・・・客観的思考で言ってしまっただけだ、気にしないでおくれ」

「ふん!」

 

少女はカラカラと笑いながら謝っているが天馬の肩を持つことが気に食わないからかイライラしてしまう。

 

「ん~・・・じゃあ何で怒ってるんだ?利があっても損はないじゃないか、目も治ったし何よりその男を忘れて元の記憶は戻るんだろ?別に嫌がることでも・・・はは~ん?もしやあんたはその男が好きなんじゃないか?」

「なっ!?何言ってんのよ!私とあいつ(天馬)はそんな関係じゃないわよ!」

「いやいや~・・・私には分かるぞ、あんたはその男の事を忘れるのが嫌だから拒んでいるんだろ?」

「違うわよ!あいつ(天馬)が勝手に話を進めるのが!腹立つのよ!」

「ふ~ん・・・もっと素直になったらどうなんだ?それともまだ恋と言う感情に戸惑っているんじゃないか?一度簡単に終わらせてしまうのが一番なんだよ。あんたはその男が好きか?嫌いか?どっちだ?」

「・・・好き・・・かもしれないけどそれは友達として好きって事よ!」

「違うな」

「へっ?」

 

少女が再度足を組み直し座るとズイッと顔を近づけてきた。

 

「言わせてもらおう!私は男と女の間に友情はあり得ないとかそんな風には思ってはいないがあんたの言うその友達として好きってやつは恋として好きなんだよ、これは絶対だね」

「貴方に何が分かるのよ!」

「そうか?あんたはその男と一緒にいると安心しないか?ずっと一緒にいたいって思ったことがないか?全てを知りたいとか思ったことがないのか??」

「ぐっ・・・」

 

何なのよ。私の思ってた事と合致してしまうじゃない。

 

「まぁ恋ってもんは難しくてねぇ、時には友情か恋情か分からなくなる時がある、いつの間にか好きになってて、でも言えなくそのまま時が過ぎて取り返しのつかなくなる時もある、まぁこれは私の経験でも言えるがね」

「貴方も?相手はどんな人だった?」

「ん?まあな!私も女だしな!そうだな・・・自由奔放で意地悪で意味不明って言葉が似合うかな」

「あぁ・・・」

 

誰かさんと似ている気がするが気にしないでおこう。

 

「ま、素直になってみれば良いんじゃないか?そのままの関係よりはいいと思うよ」

「・・・」

「そうだ!次その男に会った時・・・告白してみたらどうだ?一日までに告白できなかったらしない!諦めがいいかもだぞ?」

「え・・・!?無理よ!無理無理!恥ずかしいじゃない!」

「そのままの関係でいいのか~?あんたはずっとそれでいいのか~?」

「うぐぐっ・・・!」

「ま、後は頑張るんだな吉報になることを願うばかりだ」

「ふーむ・・・」

 

勝手に決められてしまった、いや・・・告白するってどうするの!?経験したことないから分からない。恋愛感情なんて自分には無いと思ってたし・・・。

いざ告白するってなると・・・わかんない。

 

「おっと、少し手切っちまった」

「大丈夫?すぐ止血した方がいいわよ」

「大丈夫大丈夫」

 

筍のアク抜きをするために包丁で切れ目を入れようとした少女は誤って自分の指に包丁を掠めてしまい少し血が流れている。

 

「え!?」

 

切れた皮膚はまるで再生したかのように、いや・・・切れたことなど無かったかの様にスゥッと元通りになっていく。

 

「え!?・・・え?!」

「不死だからな、勝手に治るから心配しなくていいよ」

「ちょっ・・・!よく見せて!」

「おいおい」

 

気にするなという顔をする少女の手を取り、さらによく見てみる。

切れ目や傷が全く無い、跡位は残ると思ったのだがやはりよく見ても跡など全くない・・・天馬もそうだが天馬は少し跡が残る・・・少し経つと治るが・・・世紀の発見かもしれない。

そう思うと自分の研究心がボコボコと沸いて出てくる。

手以外にも傷は治るのか、重症を負っても治るのか。存在そのものが消えても再生されるのか、興味が沸いてくる。

 

「・・・」

「おい?どうしたんだ?」

「・・・」

「おい!なぜ服を脱がそうとする!」

「黙って脱ぎなさい!」

「は!?どうしたんだ!?色情魔かお前!?」

「いいから!」

「やめろー!」

 

と言う時に天馬が来た、後半は話せるが前半の事など以ての外、話せるわけがない。うまく天馬と顔を合わせる事ができない、急に羞恥心や色々な思いが天馬と目を合わせることを拒否している。

 

天馬に少し外で話そうと手を引かれ成すがままについて行った、手を触れることですら恥ずかしい。

歩いて20分程だろうか、天馬は一言も発しない、私も発せない。

 

 

「・・・」

「あ~・・・岡崎、常識の世界に戻ろう?蓮子やメリーが待ってんぞ?」

「・・・嫌よ」

「はぁ・・・意固地になるのも分からなくもないが俺と岡崎は住む場所・・・次元が違うんだ、俺の事は忘れることが一番だと思うんだよ、俺もその方がいい」

「・・・その方が良いって?」

「よく考えてみれば俺が現実世界にいる方が可笑しい、この世界なら俺みたいなのでも普通に過ごせる場所って事だ、つまり俺もこの世界にいた方がいいと思う」

「な・・・んで?」

「なんでも何もないだろ?その方がいいっていう結論だよ、こうなる事なら岡崎と出会うんじゃ無かったって思ってる」

「ッ・・・!!」

「岡崎もそう思ってるんじゃないか?俺なんかと出会わなければ非日常になんかならないし重症を負うことも無かったってな本当はそう思ってるんだろ?だけどプライドか何かが邪魔してるんじゃ?」

「・・・最ッ低!!」

「最低でもなんでも岡崎は常識の世界に戻す、何とでも呼ぶがいい・・・だがこれが俺の望む結果だ」

「このッッ!」

 

天馬の言葉が、表情が、怒りを湧き立たせ遂に自分の手が勝手に動き天馬の頬に命中させようとしたが赤子の手を捻るように天馬に掴まれた。

 

「岡崎、俺はいくらでも殴られても暴言吐かれてもいいが俺は絶対に岡崎を元の世界に戻す、いいな・・・さぁやれ、本気で殴れ、本気で俺に罵声しろ」

「・・・」

 

 

 

 

 

ま、こんなもんか。岡崎を無理矢理にでも戻らせようとか思っていたが抵抗されるし逃げられるのは確実だ。そうなるなら岡崎の鬱憤を晴らせ、元の世界に戻ってもらおうっていう算段よ・・・恨まれるだろうがしょうがない。

 

「天馬・・・」

「お・・・?岡崎?・・・うおっと!?」

 

岡崎がいきなり俺にのしかかってきたせいで尻餅をついてしまい岡崎が俺を馬乗りをするような形になった。

 

「お、岡崎?」

「天馬、貴方の言う通り、元の世界に戻ってあげる」

「本当か?」

「ええ、本当よ最後に貴方の言う通りにするわ」

「それは嬉し・・・!?」

 

岡崎が右手を振り上げ空を浮いた手は拳の形に変わり、それが俺の顔に向かう。

 

「ぶはっ!?」

「天馬は!!」

 

俺の顔を殴った岡崎はすぐに振り下ろした拳を空に上げまた顔に向かわせる。

 

「がっ!?」

「何時も!」

「ちょ、待っ!ぐっ!?」

「何時も!!」

「あがっ!」

「私の!!」

「うっ!」

「気持ちを!!」

「ぐっ・・・!」

「踏みにじって!!」

「待つんだ岡崎!」

「私の気持ちを知ってる癖に!!」

「岡崎の気持っ・・・!」

「何時も逃げる!!」

「岡崎・・・」

「何でよ・・・」

「岡崎・・・?」

 

徐々に岡崎の拳の力が弱まり最終的には軽く小突く程度になった。

 

「何なのよ・・・」

「なぁ岡崎・・・手ぇ痛いだろ?もういいだろ?」

「・・・」

「・・・泣くなよ」

 

岡崎の赤く真紅の瞳から大粒の涙が頬を伝って流れていく、それを俺の手で拭おうとした瞬間、俺の手を掴んだ岡崎は前のめりになり顔を近づけてきたと思ったら岡崎の唇が俺の唇に触れた。

 

「なっ・・・」

「天馬・・・好き・・・好きなのよ・・・分かってよ・・・」

「・・・岡崎、俺は・・・」

「よいしょっと・・・もういいわ・・・言いたい事も言えたし・・・早く元の世界に戻してよ」

「・・・」

「あ~すっきりした、なんだか疲れちゃったわ」

 

馬乗りしていた岡崎は俺から離れ、少し笑顔を漏らしたあと顔を背け一切顔を合わせてくれなくなった。

 

「なぁ・・・」

「貴方の返答は要らないわ、早く世界に戻してよ」

「岡崎」

「五月蝿い・・・もう構わないで」

「岡崎!!」

「あっ・・・」

 

いつまでも後ろを向き、顔を背け続ける岡崎の手を引き此方に顔を向かわせると、先程の笑顔など失くし、止め処なく溢れてくる透明の涙を必死に隠す岡崎。

 

「岡崎・・・いや、夢美」

「・・・」

「何時か俺が夢美の世界に行くことを約束する、それまでは離れ離れになるが絶対に会える・・・本当だぞ?」

「天馬・・・」

「俺も夢美が好きだ、一生離れたくない・・・だけど一旦離れて落ち着かせよう?」

「でも・・・記憶が・・・」

「人間の記憶は木の枝の様な物って前に夢美は言っていたよな?一つの枝がざわめけば他の記憶もそれに釣られてざわめつかせるって、大丈夫だ問題ない」

「そう・・・ね・・・」

「だから一旦お別れだ、いいな?」

「うん・・・ねぇ天馬・・・」

「何だ?」

 

安心したと言う様な顔をした岡崎はモジモジと体を揺らせ顔を真っ赤にし出した。

何か言いたげな目を此方に向け、少しずつ言葉を出していく。

 

「あの・・・もう一回・・・その・・・」

「ん?」

「好きって・・・言って欲しい・・・」

「しょうがないな」

 

見つめる岡崎に顔を近づけるとそれに気づいた夢美は背筋をピンと伸ばし目を瞑り顔を向けて待ち構える。

そんな夢美を見て心臓が跳ね上がるが唇にキスをすると思わせておいて額にキスをした。

 

「・・・好きだよ」

「意地悪・・・」

「はは、元からだ・・・んぅ!?」

「んっ!・・・ふっ・・・」

 

先程のキスより全然長く、夢美がいきなりしてきたせいで前歯と前歯がぶつかり少しジンジンとするがそれでも夢美は続けてき、十秒位経つと離れた。

 

「キスって血の味がするのね・・・」

「それは夢美が俺を殴ったからだ、口ん中切れてるんだい」

「そうね、ふふっ」

 

 

 




遅れてしまいましたすいません。


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天馬幻想郷に帰り、見知らぬ人物と対峙する。

さて、夢美を常識の世界に戻すまでの話をしよう。

晴れて二人は恋人という様な関係になり相思相愛に近いようなそうでもないような気がするが、そこは置いておいて。

 

 

 

 

「おーい金髪ドレスさん」

「きん・・・?」

「はぁい」

 

過程は少し違ったが夢美が現実世界に戻る時、金髪ドレスさんにはこう言われていた。

 

「いい?あの子が戻るっていう意思を出したら私を呼びなさい」

「ああ・・・わかった」

 

金髪ドレスさんがどうやって出てくるか、何故俺が呼んだら来るかなんて想像したくない、出てくるかに関しては分からないが呼んだら来るってのには俺の思考の十中八九当たっているだろう。

第一胡散臭い。

 

「久しぶりねぇ貴女、さっきはよくも暴れてくれたわね?」

「天馬・・・どういうこと?」

「この人が居ないと夢美は常識の世界に戻れない、手伝ってくれるらしい」

「あっそう・・・」

 

俺の発言に対して俯く夢美、そんな顔はして欲しくないな。

 

「大丈夫だ夢美、常識の世界に戻っても条件としてまだ俺と行動できるように言っといてある。心配すんな」

「・・・うん、分かった」

 

「な?」っと肩をポンッと叩くと落ち着いたようで少しずつ笑顔に戻っていく、その表情の中に笑顔以外の物も垣間見えた様な気がしたが気のせいであろう。

 

「んで金髪ドレスさん、常識の世界に戻るってどうやるんだ?」

「私の名前は紫よ、二人にはある方法を使って戻ってもらうわ」

「ある方法?」

「そ、天馬と貴女はここに来る前に妙な札に触らなかったかしら?貴女には私が渡したけど」

「・・・あ、そういえば触ったな」

 

成る程、あの札が原因だったのか・・・。

 

「そう、それに触るだけよ」

 

そう言って目の前に気持ちの悪い空間が出たあとハラリと一枚の札が落ちてきた。

 

「触れたら戻るから気をつけなさい」

「よし、夢美・・・一緒に触るか」

「そ、そうね!」

 

いまいち信じられないが実際に俺がコレを触った瞬間この世界に来たんだから信じずにはいられないな。

 

「「せーのーっで!」」

 

落ちている札に軽く触れるとまた眩い光が発光し、視界を真っ白に染め上げた。

そして目を開けてみると俺と夢美は夢美の家のリビングで突ったっていた。

 

「なんかさっきまでの出来事が信じらんねぇな」

「ほんとよねー・・・」

 

俺と夢美の記憶は消されておらず、非常識の世界の事も覚えていた。

 

「と・・・とりあえず蓮子とメリーに電話しないと・・・」

「待て、多分もう蓮子とメリーは俺の事は覚えていないはずだ、戻ったことを言っても変に思われる。今さっきの出来事は言わないほうがいい、かえって混乱するはずだ」

「そうね・・・」

「・・・夢美、ちょっと出ないか?」

「え?」

「久しぶりに海の見える場所にでも行くか」

「・・・なんで急に?」

「何となくだ」

 

海の見える場所は夢美との関係が深い場所、語り合った場所だ。

一番思い出深く、忘れてはいけない場所でもある。

 

 

 

 

「うお~本当に久しぶりだなー!すこし暑かったから海風もいい感じだ」

「夏もそろそろ終わるわね~」

「だなぁ」

 

堤防で海と夜の街が見える所で座り、生暖かい風を感じ缶コーヒーを飲みながらホッと一息着く。

 

「天馬、私は常識だとか非常識だとか分からないし天馬が非常識の世界の住人だなんて思いもしなかったわ、この世界なんでもありだもの」

「・・・ふむ」

「世界に隔たりなんて物があるなんて想像出来るわけがないじゃない?」

「あぁ」

「どうして天馬は非常識の世界に残ろうと思ったの?」

「・・・そうだな、強いて言えば夢美を守るためだ」

「言いたいことは分かるわ、だけど納得行かないじゃない・・・」

「夢美に危害が及ぶ可能性は低ければ低い程いい、俺が居なかったらーなんてのもあるしな」

「だけど記憶を消して非常識の世界に残るっていう事は私も天馬も一生思い出せないかもしれないじゃない・・・そんなの嫌よ」

「大丈夫だ、絶対に思い出せるはずだ・・・絶対にな・・・それに拒否していたら無理矢理にでもあの金髪さんが消すと思う」

 

夢美は俺に寄り添い、繋いでる手は次第に力強くなっていき目の前の海をひたすら眺めていた。

 

「私が先に記憶を取り戻したらこっちから行ってやるから安心しなさい」

「・・・出来るのか?」

「私に科学で出来ない事などない!」

「そこは信頼してるぞ」

「そこって何よぉー」

「でもそうだな・・・そうなった時は任せるよ」

「任せなさい!」

 

 

それから蓮子やメリーの今後の話をしたり大学での講義の内容を話して受け継ぎをお願いした。まぁ十回程の講義だったが生徒も増えてきたのにそれもパーということが惜しい、相乗の気持ちも有りどんどんネガティブ思考になっていく。

 

 

「夢美、来い」

「え?ちょっきゃあ!ちょっと!?」

「こういう事するの初めてだったな!」

 

スッと立ち上がり夢美の手を引き

夢美を横抱きし、軽快に建物の屋根を駆け巡り最終的には高層ビルの屋上に着いた、最初の驚きとは打って変わり辺り一面星を散らばめたように光る夜景に夢美は目を奪われたようで拍子抜けしたような顔をしていた。

 

「あの時から時々一人でこうやって見渡すんだ、上から見てるとどんな悩みでもぶっ飛ぶぜ?ほら来いよ」

「え?来いって・・・どこに?」

 

柵を乗り越え手を差し伸べると不思議そうに見る夢美、

 

 

「こっちだよ」

「ちょっ!?えっ!?キャアアア!!?」

 

夢美の手をとり後ろに体重を掛けるとズルリと一緒に高層ビルから落ちる俺と夢美、この状況に恐怖と焦りを感じた夢美は必死に俺にしがみついてくる。

 

「ちゃんと掴まってろよ」

「何言ってんのよ!?落ちてるのよ!?」

 

空中で夢美を横抱きし、背中に力を入れる。

するとバサァッと出てくるのは細胞で作られたまがい物の翼。

黒く不気味な翼は上下に動き出しゆっくりと上に登っていく、その光景に夢美は目を丸くし、それでも落ないようにと必死にしがみついてくる。

 

「もう大丈夫だぞ?」

「・・・何よそれ?」

「ん?これはアレだ、ちゆりが教えてくれたんだよ」

 

夢美を救出するときムササビのようにビルから飛んだ事を思い出す。

それにインスピレーションを受けてこれが出来上がったんだよなぁ、まぁ隠してたけど。

それにしても夢美が怯えすぎて目をぎゅっと瞑っている。

 

「気晴らしに車まで飛んでいくか」

「ちょっと!手離さないでよ!?」

「ほら落ち着けって、下見てみ?」

「・・・綺麗」

「だろ?さっきよりも全然いいだろ」

「素敵ねぇ~」

 

 

 

 

 

 

その後夢美と遊覧飛行を終えて、京都に戻る途中車の中で夢美が寝てしまい家に運んだのだがいつまで経っても手を離してくれない。

 

「はぁい」

「おわっ」

 

夢美をソファーに寝かせ、片方の手で煙草を吸っていると行き成り出てくるのは金髪ドレスさん、もとい紫さん。

行き成りすぎて煙草を落としそうになった。

 

「心臓に悪いじゃねぇか・・・もう行くのか?」

「そうねぇ、他の人達の記憶も改変できたしあとはこの子だけなのよ・・・いいかしら?」

「そうか・・・始めていいぞ・・・」

「それじゃ遠慮なく」

 

夢美の頭にそっと手を添える紫さん、不敵な笑みの表情から一変真剣な顔で目を細ばめ夢美に向き直す。

 

「これは・・・」

「・・・」

 

添えた手から溢れ出てくる紫色のオーラの様なもの、言葉では言い表せない何かが紫さんの手に纏っている。

色々な気持ちが込み上げて自然と俺の手が紫さんの手をガッと掴んでしまう。

 

「ッ・・・!」

「・・・分かるわよその気持ち、だけど貴方が決めたのだからしっかりなさい」

「あぁ、分かってるさ・・・分かってるが・・・」

 

それでも紫さんの手を掴み抗おうとする本能、夢美に忘れられたくないという気持ちが手を離すなと信号を送る。

だんだんと俺の手を握る夢美の力が無くなっていくのが分かる。

 

「・・・終わったわよ」

「あぁ、その様だな・・・」

「じゃあ天馬、貴方の記憶も改変するからこの中に入りなさい」

「あぁ」

 

紫さんが扇子を縦に振るとグワッと開く異質な空間、あぁ俺はもうこの世界には戻ってこれないんだな。

 

「・・・」

 

ソファーで寝ている夢美を横目に異質な空間に入ろうと足を踏み入れる。

 

「天・・・馬・・・」

 

夢美が俺の名前を呟きハッとして見ると寝ているのか起きているのか分からないが目から流れ落ちる雫。

横になりながらゆっくりと蹲る夢美。

 

「記憶は・・・改変されたんじゃないのか?」

「直に改変されるわよ、彼女の最後の記憶が抵抗しているのかもしれないわね」

「・・・」

 

済まない夢美、俺はお前を思い出せるか分からない。

夢美が思い出したとしても俺を探さないで欲しい、俺が辛い。

そんな時は俺を許さないで欲しい。

 

「じゃあな夢美、好きだったよ」

 

最後にそう言い残して、俺は異質な空間に歩を進めた。

 

 

 

 

 

「さぁ・・・準備は出来ているわね、藍?」

「はい、とこどおりなく出来ております」

「・・・」

 

あれからすぐに俺の記憶が改変されるかと思いきや。

「貴方の記憶は多すぎるから一旦全部の記憶を思い出させる必要がある、その後必要のない記憶を消していくわ」

と言われそのために必要な儀式?とやらをするらしい。

 

「さぁ天馬、これを腕と足にはめるぞ」

「なんだこれ?」

「それは万が一・・いいえ、貴方が記憶を戻した時の反動で暴れる可能性が大なのよ、そのための拘束具だと思ってくれるといいわ」

 

びっしりと御札が貼ってある鎖と枷一見すると禍々しい。

 

「準備は整ったわね、それじゃあ始めるわよ」

「はい」

「・・・あぁ」

 

今すぐ逃げ出したい気持ちで一杯一杯だ、恐怖心を煽る拘束具。

禍々しい雰囲気の部屋、いったいどうなるんだろうか。

藍さんと紫さんは二人、俺から少し離れ二人で横に並び三角形の陣になっている。

そんなことを思っている内に紫さんと藍さんがブツブツと何かを唱えだした。

 

「グッ・・・!」

 

断片的に夢美を思い出せなくなってきている、あれ・・・?

夢美って誰だっけ、あぁ・・・あの赤色が好きな女か・・・。

 

「ウオオオオオオオアアァアアアッ!!!」

「来るわよ藍!しっかり抑えなさい!!」

「抑えてます!ですが天馬の力が強すぎて・・・!」

 

頭が割れるように痛い、まるで無理矢理頭をひっぺがして脳味噌を抉るようだ。

熱く痛く殴られ鋭利な刃物で刺されるかの様な刺激、あらゆる痛みが一気に押し寄せて来たかのように。

 

「ウゥウウウオオオァッ!」

 

ガシャンと片腕が楽になる、必死に頭を抑えるが痛みがまだ続く。

何でもいいからこの痛みを和らげて欲しい、物に八つ当たりをしたい。

 

「片方の手枷が外れ・・・!」

「記憶が完全に消え去るまであと少しよ!」

「ウグッ・・・・・・・」

「天馬が気絶しました!」

「今がチャンスよ・・・藍!避けなさい!」

「えっ!?」

 

紫が藍を庇った瞬間けたたましい音と光が差し込む。

 

 

 

 

 

儀式のために作られた部屋が爆発音と共に木っ端微塵になり辺りは焼け野原同然。

 

「うっ・・・」

「大丈・・・夫ですか・・・紫・・・様」

「天馬は・・・?」

「分か・・・りません・・・」

 

立ち上る煙と火の粉、その先に見える一人の人物・・・何かを構えた人物が此方に近寄ってくるのが分かるy、妖力は持っていないみたいなので妖怪ではない・・・霊力が少しあるのが分かるため人間だと断定してもいいだろう。

 

 

「おっ・・・?まさかだけどまだ生きてる系?くっはー・・・!まじかぁ!」

「だ・・・誰・・・?」

「誰だぁ?あんたは知らなくても俺がよく知っていると言っておこうか?紫さんよぉ・・・」

 

視界が良くなり段々とその人物が出てくるのが分かる。

 

「貴・・・方は・・・?」

「んぅー・・・何回も言わないと分からんのか?まぁいい作業に取り掛かるとするか」

「何を・・・あぅ!」

「うるせーな!黙ってろ!死ぬ前にその綺麗な顔潰してやろうか?」

 

髪を思い切り引っ張って目を合わせてくる男。

怒号を投げて付けてくるのに顔が笑っている人物は幻想郷の服装ではないことから常識の世界の人物と思われる。

 

「大丈夫だ、一瞬の痛みで楽にしてやるよ・・・俺も痛いのは嫌いだからな!」

「うっ・・・」

 

力が出ないというよりも、負傷が激しくて妖力が使えない・・・。

動くのもままならない体をどうにかこの人物から離れようと賢明にもがくが自由が効かない。

 

「んじゃ、さようなら!」

「やめろ・・・・!紫様に何をする・・・!」

「・・・あぁ?」

 

男が何かを私の首に振りかぶる瞬間、藍がそれに気づき止めてくる。

鋭利な爪で男を切り裂こうとしたが赤子の手を捻る様に掴まれていた。

 

「何だお前・・・?・・・あぁ!分かった!あいつの母親か!いいねぇ!ここで一族根絶やしにするのも一石二鳥って事か!今日は運がついてるぜ!」

「何を言って・・・!?ぐっ・・・!離・・・せ!」

 

男が藍の首を掴み上に持ち上げる、手には相当な力が出ているのかギリギリと音を立てている。

 

「あんたには恨みは無いがあいつにはあるんだよなぁ・・・このままポキッと!ポキッといっちゃう?別の意味で逝っちゃう!?」

「やめなさ・・・い」

「あんたは後で殺ってやるから我慢しろよ・・・」

 

自分の声が男に届かない、何を言っても無駄なのだろう。

藍は首を掴んでいる男の腕を必死に離そうと力を入れてるがビクともしないのか藍の抵抗の力が無くなっていくのが手に取るように分かる。

 

「いいねぇ・・・その生存本能・・・興奮するよ・・・うおっと!」

「てめぇ・・・!何してんだ・・・!」

 

男の手を掴み藍を離させたのは天馬だった、男は後ろに下がり自分の手をじっと見た後安堵していた。

 

「天・・・馬・・・」

「ごめんな紫、遅くなった」

「あぶねーあぶねー!おい!危うく折れるとこじゃねー!ガッ?!」

「うるせえ」

 

後ろで騒ぐ男に天馬がいつ出したか分からない裏蹴りをしたあと鈍い音と共に男は木々を薙ぎ払いがら地面を滑っていった。

 

「天馬・・・」

「いいよ紫、何が起こってんのか分からないが後は任せろ・・・藍と休憩していろ」

「えぇ・・・」

 

視界が段々ボヤけてき、暗転した。

 

 

 

 

なんなんだこの状況、目覚めてみたら行き成り変な男に藍が殺されそうになってたし・・・どういう状況だ?

 

「いててて・・・やるじゃねぇか・・・ハハッハ!危うく怪我しそうだったよ」

「お前誰だよ?」

「俺か?俺の名前を聞いてんのか?俺の正体を聞いてるのか?」

「両方だよ」

「いいよ、教えてやるよ・・・俺は蓮って言うんだ、正体はそうだなぁ・・・あんたを死ぬほど恨んでる人物・・・とでも言えばいいかな?」

 

からからと笑いながら縦長の機械を片手に持つ男。

・・・年齢的に二十代前半か十歳代後半といった所か・・・。

白いワイシャツに黒いスーツベスト・・・赤いネクタイ・・・現代のやつかこいつ。

一番目立つのは髪色か・・・赤に黒を少し足したような・・・薔薇のように赤いな・・・。

 

「何見てんだよ、照れるじゃねぇか・・・」

「俺にそんな趣味は無ぇ」

「ハハハッハ!残念だが俺も無い!!」

「わざと笑ってんのか?気持ちわりい」

「・・・癖なんだよ、馬鹿にしてんのか?」

「あぁ」

「言いやがったな・・・お前死刑な、いや・・・元から死刑確定だが死刑方法を変更してやるよ・・・!」

「変な所で怒るなよ」

「ハハッ俺の癖を馬鹿にする奴は一人で十分だ・・・!」

「俺がその一人のリストに入る事は?」

「・・・話は終わりだ」

 

笑いながら少しずつ近寄ってくる蓮、隙がある動きだな。

 

「フッ・・・ン!」

 

近寄ってくる蓮に対し素早く後ろに回り勢いをつけて上半身に打撃を与える瞬間、蓮の手が俺の手に合わせ掴んでくる。

 

「片腕だけで俺の掌底が・・・!」

「お返しだ」

「なッ!?」

 

ゆっくりと俺の体目掛け打ち込まれる突きを両腕で防いだと思ったら紙くずのようにクシャッと俺の両腕がひしゃげ、完全に折れたのを確認した後蓮に裏蹴りをした様に音を立てながら吹っ飛ぶ俺、なぜか俺の裏蹴りよりも飛んでいく俺の体。

 

「ほら、立てよ」

「うぐッ・・・うげぇええ!」

「うっは!汚ぇな!」

 

鳩尾にも入ったのか嘔吐感が激しく堪えられなくなり口から出てくる胃液とその他。

 

「お前のその力・・・なんなんだ・・・」

「あ?教える訳ねーだろ?いいから立てよ」

 

 

まだまだお前を虐め足りないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、蓮と対立する。

「オラァッ!?まだやれんだろ!?何とか言ってみろよ!!!」

「うッ・・・!ぐはッ・・・!」

 

蓮に顔を殴られ続け口が切れ、歯が折れ、鼻が折れ曲がっている。

何度立ち向かい、何度骨が折れただろうか、立っているのもままならない。

蓮に攻撃を仕掛けても全て避けられ軽く手が触れただけでも腕が折れる程の大怪我を負う。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・!」

「いい加減こっちも疲れるんだよ、そう何度も立たれると」

「一体・・・お前は何なんだ・・・!」

「答えるつもりもないし答える必要もないって何回も言ってるだろ?お前もしかして脳味噌詰まってねぇのか?考えられねぇ?三歩進んだら忘れる感じ?鶏かお前は?フハッ!」

「うるせぇ・・・気持ちわりぃんだよ笑い方が・・・!」

「・・・はっ?お前一度ならず二度までもそれ言っちゃうの?あ~・・・オーケーオーケー・・・死ねよ!」

「あぐッ!」

 

額に手を触れられ視界が逆転する。

どうやら体ごと回転したようだ、頭をハンマーで殴られたかのように鈍い音が頭の中で響く。

 

「は~・・・ッハハハ、イラつくなぁお前!」

「うッ!!」

「自分の立場ってのがわからねぇのか!?」

「ぐッ!!」

「もうその頭ごと潰しちゃおうか!?」

 

蹲り防御している俺に対して蹴りを何発も入れてくる蓮。

次はジャンプし空中から下へと繰り出されるであろう踏みつけ。

 

「今・・・だ!」

「うお!?」

 

咄嗟に手で足を掴み横に振り投げ木々を薙倒していく蓮。

物理じゃ絶対に勝てないことが分かった、距離を取りながら闘う事に専念するしかない。

 

「氷の・・・槍・・・!」

「くっそー・・・おっ?」

 

蓮に狙いを定めて魔力を創造し、放つ。

空中に浮かんだ三つの鋭利な槍が浮かび、蓮に高速で向かっていく。

 

「何だぁ?舐めてんのか?」

「嘘・・・だろ・・・」

 

蓮に当たったと確信した時、体を突き抜けるはずの氷がパラパラと崩れ跡形も無く消え去っていった。

 

「魔法・・・ってやつか?ハハハッ!そんなら俺もそれに似たような事できるぜ?」

「何・・・?」

 

拳大の石を蓮が拾い上げポンポンッと上に上げ、此方に向かって石を投げた瞬間粉々に砕けてまるでショットガンの様に範囲がデカくかつ人間が投げるような速度でない速さで俺の体に当たる。

 

「かッ・・・はッ・・・・!?」

 

石が当たった程度の痛さではなく体を切り刻まれたように鋭い痛みが走る。

服の上からでも分かる血の滲み方、前だけでなく後ろも滲んでいるのが分かった時すぐに体を突き破ったというのが分かる。

いくら速度が速くても粉々になった石が体を突き破ることはないはずなのに。

 

「石だからって舐めちゃいけないよね、石も立派な凶器なんだ。遥か昔は石で物を切ったり叩いたりできる万能な得物だったんだよねー分かる?」

「ッ・・・」

「さて・・・もう十分殴ったし疲れたわ、そろそろ終わりにするか」

 

背中に携えてある縦長の機械を取り出す蓮。

まるで曲がっていない刀の様な形をしている所々何かのギミックが仕掛けてあるのだろう引き金みたいな物やボタンらしきものが付いている。

 

「さぁ、逝こうぜ?」

「・・・!」

 

ゾクッ。

ニタァッと笑う蓮はもはや人間が出来る笑顔ではない、その表情に恐怖心が煽られる。今まで味わったのことのない恐怖心と焦燥感が嘔吐のように々襲ってくる。

ゆっくりと歩寄ってくる蓮から、逃げろ、と脳内信号が送られるが膝が動かない事が分かる。

 

「・・・!?くそっ・・・!」

「それが本来の生存本能だ!逃げれると分かったら逃げるし逃げられないと分かったら潔く死ぬのが一番良い」

「俺は死なねぇぞ・・・!」

「・・・?あぁ再生するって事?大丈夫大丈夫、このブレードは特殊な細工をしてあってね。君達の言葉でいう次元を切れるんだよ」

「次元・・・それがお前の能力か・・・?」

「はっ?ウッハハハ!!んなわけねぇだろ!ヒーッヒヒッ!アヒャヒャ!はー・・・笑わせんじゃねぇよ疲れるだろ」

「・・・」

「切られた対象は即座に別の次元に移動し、なんにもなーい、ただの空間が飲み込むだけだから再生しても無駄な訳!我ながら凄いと思わないか!?まぁ・・・ネックな所は切られた小さい方しか飲み込まないけどな・・・だから首を切ろうって訳だ」

「首?」

「そ、首の上・・・頭だよ。詰まり五感の内の四つ・・・視覚、聴覚、味覚、嗅覚だけが別の空間って事さ・・・死ぬより辛いだろ?寧ろあんたは死ねないんだしずっと永久永遠になんにもない空間に頭だけがあるって地獄・・・?いや、地獄よりもさらに苦しいだろうなぁ・・・どうすれば死ねるか・・・なんて考える事もあるだろうし最終的に考えることをやめた・・・とかにもなりそうだな!」

 

何故こんなに恐ろしい事を喋っておいて笑っていられるのだろうか。

 

「ん・・・まぁ一応理解しただろ?よし!じゃぁ死ね!!」

「あっ・・・」

 

蓮が俺の首目掛けブレードを横薙ぎした時、頭の中が真っ白になり 終わった と思った瞬間だった。

 

「まだ終わらねぇぞ!」

「うぉあっ!?」

 

あと数センチで首に届く所で蓮の脇腹を蹴る人物、身長は低くなってるが確かに分かる、音無秤であった。

 

「計!天馬を後退させろ!」

「は・・・はい!天馬さん!大丈夫ですか!?」

「計ちゃん・・・何で・・・?」

「話は後です!一旦下がりましょう!」

 

計の肩に掴まり、少し蓮から離れると「ここで待っていてくださいね!」と言い残し秤に加勢しに行こうとする。

 

「駄目だ計ちゃん・・・・!奴から逃げろ・・・!!」

「大丈夫です!いいからここで休憩していてください!」

 

急ぎ足で計ちゃんが俺から離れ加勢に加わったところが視認できる。

死ぬぞ・・・!音無兄弟・・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソォオオオ!!毎回毎回吹っ飛ばされる思いにもなってみろォ!!あぁ~!イイラツクゥゥゥゥ!」

 

奴は武器と思われるものを八つ当たりで振り回している。

木に当たると根っこの方が消えていく光景、地面を切ればその場が抉れる、成る程・・・あれにだけは当たってはいけないな。

 

「計!あれに気を付けろ!何か分からんが危険だ!」

「了解です兄さん!」

「うぉぉぉおおッ・・・ふぅ・・・ハハッハ・・・!」

 

奴は深呼吸をして呼吸を整えている、不意打ちするには絶好のチャンスかもしれんがそれも奴の作戦かと思うと攻撃するに攻撃できない。

 

「・・・何だよお前等・・・いい所で邪魔すんなよまじで・・・ハハッ・・・」

「計、奴と距離を取りながら二人でやるぞ!」

「分かりました!」

 

手を首に当て関節を鳴らしジリジリと近寄る男。

その行動に合わせ俺と計は挟み撃ちをするような陣形を取る。

 

「あ~・・・おいそこの女」

「・・・何ですか?」

「お前・・・処女か?」

「えっ!?」

「逃げろ!計!」

 

計が戸惑いを見せた瞬間奴の口角が上がりそれまで歩いていた男が一気に計に詰め寄る、コンマ秒数動きが遅れた計は簡単に手を掴まれてしまった。

 

 

「至近距離からのボディーブローは痛いぜ?」

「・・・ッ!」

 

手を掴み、引き寄せた計の体に食い込もうとする拳。

計もそれに反応して能力を使用したと思われたがありえないことが目の前で起きた。

 

「そ・・・んなッ・・・」

「おっと!一発で気絶しちゃったよこの子!弱いねぇ!」

「馬鹿な!?計の能力が・・・!」

 

計はあらゆる衝撃を跳ね返す程度の能力だ。

今のは物理的に殴ったはずだ!跳ね返される筈なのに何故計が倒れている!?

 

「そんじゃま、計ちゃんだっけ?お首頂戴致しますよっと」

「させるかッ!」

「ぐぅぇッ!?」

 

計の襟を掴み持ち上げる男。

手に持っている武器を突き刺そうとした時、男の後ろから異質な空間が開く。

その中から天馬が出てきて勢いをつけて奴の体の下に入り込み強力な打ち上げをする。

 

「秤!奴を下に叩きつけろ!」

「あぁ!」

 

 

打ち上げられた男に追従するように、高く飛び軌道に合わせ全力を出しながら踵落としをする。

 

「ギヒッぐぅッ・・・!」

 

踵落としを喰らい、両腕でガードをする男。

それでも笑いながら下に叩きつけられる様は不気味で恐ろしい。

地面に叩きつけられた男は衝撃で少しバウンドのような形で浮く。

 

「良くやった・・・!これで御終いにしてやる・・・!」

「なッ!?」

 

バウンドした男は空中で天馬の異質な空間で四肢を固定され磔の形になる。

 

「甘ぇんだよ!」

「何!?」

 

異質な空間から固定された片腕に力を入れると片腕が外れると共に固定した空間も消えてしまった。

 

「まだだ・・・!いくぞ!!」

 

磔にされた男の五メートル程手前に巨大な異質な空間が開く。

空間の中から風を切るような音がした瞬間、機械で作られた巨大な腕が男に向かっていく。

 

「ゲイボルグパンチ・・・!」

「くっそぉぉおぉおおおおッ!!!!」

 

片腕を前に突き出し、衝突音が鳴った。

耳を裂くような衝撃音が奴に当たったと確信させてくれる。

衝撃で拘束も外れたのだろう、森林であった木々が土埃を舞ながら真っ直ぐ道を作っていた。地面は抉られ相当な破壊力を生み出したのが伺える。

 

「死んだか・・・!?」

「多分な・・・!計は大丈夫か!?」

「大丈夫だ!気絶しているだけだ!」

 

計の安否確認をする天馬。

それまで視界を塞いでいた土埃も風で流されようやく見える様になった時、俺と天馬は絶望の淵に立たされた。

 

「ハァー・・・ッ!ハァー・・・ッ!やってくれるぜ・・・ッ!やってくれるじゃねぇか・・・ッ!左腕の骨がむき出しじゃねぇか・・・・ッ!あまりの衝撃に下げ切れなかったか・・・ッ!」

「馬鹿なッ!?何で生きてる!?」

「片腕だけで守れんのかよ・・・ッ!?化物かッ・・・!?」

 

木々の間にできた一本の道の奥から左腕からはボトボトと血を流しながら出てくる男、腰に下げているバッグの中から手探りで何かを探している。

警戒をしながらバッグの中身を確認すると、奴は何か注射器の様な物を手に取りそれを自分の首に刺した、そして注射器の中身が減っていくのが分かる。

 

「お前等・・・俺にこれを出させた事を後悔しろよ・・・」

「何をするつもりだ・・・!」

「分からん・・・分からんが何かをしてくることだけは確かだ!」

「俺らで抑えれるのか!?」

「やってみなきゃ・・・!?秤ィ!避けろォ!!」

「あ・・・ッ!?」

「死ねぇッ!!!」

 

先ほどいた立ち位置から百メートル程あったのにも関わらず秤の後ろに現れた男は次元を切り裂くブレードで秤の首目掛け一直線に横薙ぎをした。

 

「うッ・・・おッ・・・!!」

「天馬・・・!腕が・・・!」

「喋ってる暇はねぇぞ!!」

「ぶッ!!」

 

切れた天馬の腕を掴みそのまま引き寄せ顔を膝蹴りする男。

 

「これは痛ぇぞ!」

「ぐあッ!」

「天馬!!」

 

顔を蹴られた天馬は倒れ込んだのをいい事にボールを蹴るように顔をなんの躊躇もなく蹴る。

血を撒き散らしながら飛ぶ天馬の意識はもはや無意識に近い状態なのか生まれたての小鹿の様に足を震わせながら立とうとしている。

 

「まだ・・・まだだ・・・!」

「天馬!もう駄目だ!一旦引くぞ!」

「駄目だ・・・ッ!逃げたら蓮は必ず追ってくる・・・!背中を見せたら死ぬ・・・!」

「だがこれじゃ攻防一体だぞ!どうする!?」

「どうするって・・・分からねぇよ・・・」

「分からないってどうす・・・うぉ!?」

「チィッ・・・!」

「そうだ!これしかない・・・!」

 

蓮とか言う男の武器の攻撃をギリギリ避けた時、天馬が一気に攻め込む。

俺に気を取られていた蓮は天馬の羽交い締めをよけられなかった様だ。

 

「・・・」

「どうだ!手も足も出ねぇだろ・・・!」

「幼稚な考えだな!俺がそんな考えで止められるとでも?」

「何ッ!?」

 

羽交い締めされた蓮は天馬の首を掴んだまま前のめりになった、勢いよく前のめりになった蓮は天馬の首を掴みながら頭を地面に向かわせた。

 

「うッおぉお!!」

「一旦死んどけや!」

「くそッ!天馬!!」

 

受身を取れずに地面に衝突した天馬は頭を地面に叩きつけられた。

頭蓋骨の折れる嫌な音がした後、骨が耐え切れなくなったのか中身が飛び出る。

 

「ふぅ~・・・ようやく落ち着けるな、ハハァ!」

「くそッ!」

「大丈夫大丈夫、まだ死んじゃいない・・・こいつの再生する能力はバケモンと同じだ、直に再生される、その前にお前を殺す」

「・・・ッ!」

 

天馬の惨状を見つめていた男は此方に向き直り武器を構え出す。

それに同じて隙を無くすように自分も構える。

 

「(直接的な攻撃じゃ奴は効かねぇ・・・しかし俺も魔法や能力はそこまで優秀じゃない・・・!)」

「どうした?動かねぇのか?」

「(奴の弱点は何なんだ、時々激しい動きをしない様にしているのは分かるが・・・それと弱点が関係している節が見つからない・・・)」

「・・・いい事思いついた」

「何!?」

「う・・・ッ!」

「計!」

 

俺の事など眼中に無いかのように一直線に計に向かって何かを投げて突き刺さる。

 

 

「何をッ・・・!」

「三十分だ」

「は・・・?」

「三十分の間に俺から解毒剤を奪え、さもないとあの女はもがき苦しみながら死ぬぞ?」

「解毒剤・・・?」

「うぅ・・・」

「あーぁ、本当はお前に使う予定だったんだけどなぁ?」

 

ニヒルに笑う蓮の後ろで再生された天馬に語りかけた。

 

「この糞野郎がッ・・・!」

「それは最高の褒め言葉ってやつだぜ?俺の腕も治ったし仕切り直しと行こうか?」

「殺す!」

 

再び戦闘の幕が開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、敗北する。

「つくづくクソ野郎だなお前・・・!」

「フフ、アンタが言えることじゃないさ」

「秤ィ!アレは持ってんのか!?常備しておけっていったよな!?」

「アレか!?アレは一応持ってるが・・・アレは外じゃ使っちゃいけないだろ!?」

「五月蝿ぇ!早く渡せ!」

「どうなっても知らねぇからな!俺は退避する!」

 

秤が計を抱えた後、ポケットから出した物を天馬に投げつけて後ろに飛び退いた。

 

「今更何をしようったって無駄なんだがなぁ・・・諦めた方が楽なんじゃねぇ?」

 

ニヒルな笑いを浮かべ終始ニタニタと余裕をかましている蓮。

 

「いや、俺は抗うぜ・・・!」

 

秤から受け取った代物の封を開け、口に持っていき火をつける簡易装置が無い為魔法で一気に燃やす。

 

「ウオェ!!」

 

脳から危険信号を感じた天馬は燃やした物を即座に手から離す。

 

「煙草?吸っておいて吐き気催すなんざぁ意味不明だな、気分転換って奴か?」

「ゲホッ・・・!生憎とこれを吸うと気分転換できる状態にはならねぇんだ・・・」

「ふーん・・・じゃぁ何だ、それ吸ってどうすんだ?」

「逆転の一手って所だろうな・・・!」

「何・・・・?なっ!?」

 

一気に体の気だるさ、疲労、精神的疲労、痛みが無くなり何処からともなく力が湧いて出てきた天馬はコンマ秒数の速さで蓮の目の前に現れ、余りの速さに反応できなかった蓮は数秒遅れて触れようと試みる。

 

「うぉぉおおおおおお!」

「ぐッ!下がり切らな・・・!」

 

今まで片手で触れられれば砕けた腕が蓮の両腕に触れてもミシミシと嫌な音を立てつつも蓮を押しのける事が出来ると確信した天馬はそのまま腕に力を入れて蓮の顎を打ち抜いた。

 

「何故だ!?俺の能力がぁ・・・!ぶッ!」

「お前の能力が何だろうが俺にはもう通じん・・・!」

 

よろめいた蓮に更に追い打ちをかけるかの様に足蹴りし、宙に浮き横向きで受身を取ろうとした蓮の腹に靴底の面積を借りた蹴りを放った。

 

「ぐっ!おっ!?がぁッ!?」

「固ぇ・・・!」

 

宙で蹴られた蓮は横向きのまま滑るように地面を抉っていった。

足全体で蹴ることを選択しなかった天馬の脛は蓮を足払いした時骨が砕けていた、

そのまま足で蹴ったとしても威力はでなかっただろう。

 

 

「何で急に奴は力を増大しやがった・・・!」

「終わりだ蓮!」

「終わりだと・・・冗談抜かしてんじゃねぇよこのクソがァ・・・!」

「氷天泣!!」

「ヒョウ・・・?氷か・・・!」

 

文字通り天が泣いたように空を覆い尽くす氷の矢が散りばめ一気に蓮に目掛け落とす。何千もの氷の矢が蓮を突き刺さんと向かう氷は蓮の体に触れた途端パラパラと砕け落ちる。

 

「分かんねぇなお前の能力・・・」

「俺には魔法は効かねぇ・・・何度言ったら分かるんだ?」

「(物理攻撃は効くが魔法が効かない・・・近づいてもこっちも重い反撃を食らうのは何故だ・・・)」

「はぁ~・・・やめにしねぇか?」

「何・・・!?」

 

突然の蓮の提案に面を食らったような顔をする天馬。

罠か、それともこの戦いを本当にやめにしようとしているのか分からない状況で隙を出すことができずにいる天馬は間合いを取りながら耳を傾ける。

 

「これじゃぁ埓が明かねぇ・・・どっちも再生するんだ、死ぬことは不可能に近いだろ?俺は八雲紫を殺せれば満足なんだよ・・・八雲紫さえ殺せればお前らには一切関わらねぇ・・・分かるか?」

「断る・・・!」

「くくッ・・・まぁそうだろうなぁ、信じちゃくんねーか・・・俺の言葉よりもこれの方が信じてくれるかもなぁ・・・?」

「何を・・・」

 

カバンの中から一つの注射器を取り出し、それを天馬の目の前にポンッと投げる。

 

「さっきの女の解毒剤だ、ちなみに予備はねェぞ?」

「本気で言ってんのか?紫は殺させねぇぞ・・・!」

「それは後でいいさ、今は手傷も酷いからな、一時休戦ってとこだな」

「・・・分かった」

 

蓮を警戒しながらもゆっくり解毒剤に向かう天馬。

連はそれをただずっと見ているだけ、しかし天馬にはそれが不思議でたまらない。

なぜ休戦を求めたのか、なぜこうもきっぱりと戦いを止められるのか、考えても仕方ないと判断した天馬は解毒剤を手に取った。

 

その瞬間、耳を劈くような音と目の前が真っ白になるほどの光線が溢れた。

 

「しまっ・・・!」

 

天馬のいた場所から回り百メートル以上の爆風と熱気、あらゆる衝撃が辺りを無にするように木々を燃やし、地面を抉った。

それなのにも関わらず蓮はその場に立ち、何もなかったかのように悠々と天馬を持ち上げる。

 

「まだ姿形を保っていることには驚愕だ、永遠に次元に留まらせるなんて面倒な事をはもうしねぇ、確実な死をお前にくれてやるよ・・・」

 

顔が爛れても、腕が無くても、抵抗ができずじわじわと再生していく天馬に対して慈悲の心を持ち合わせない蓮。

 

「寿命を極限にまで・・・、出来るはずだ」

 

殴る蹴る等しなくなった蓮はただただ天馬の首を持ち上げ一寸たりとも動かない。

 

「・・・あ?」

 

それまで死人のように動かなかった天馬は手を震わせながら蓮の頭に拳を当てた、見るからに弱々しく、他人から見れば軽く小突いた程度。

再生してきて意識が少しずつ戻ってきた天馬の僅かな抵抗。

 

「・・・この野郎」

 

蓮は天馬の行動に怒りが湧いた。

煽り、挑発、誘導、ここまで無残な姿にされたのにも関わらず死を受け入れずかといって逃げをせずに非力な力で殴る事はそうとしか思えない。

 

「うぉおおおおお!」

 

天馬を地面に叩きつけた蓮は首を掴んだままマウントの体制を取り、少しずつ生を感じさせた天馬の顔面に何度も拳を打ち付けた。

天馬の頭部にあった土は抉れ、殴られるたびに頭部が沈んでいく。

殴られ続けている天馬は呻き声すらも上げず抵抗もせず、生きているとは言い難い程に弱々しく息をしていた。

 

 

「ハァ・・・!ハァ・・・!うっ・・・・くそっ・・・!ぐぅうう!」

 

遂には首から下だけが地面に出ている天馬を見た蓮は怒りが無くなった、突如心臓部分を手で押さえ内ポケットから薬を二三錠飲んだ。

 

「ハッ・・・・!ハッ・・・!ハァー・・・・!・・・・そうだ、八雲紫を殺しに行かねぇと・・・」

 

目的を半ば達成したような顔をした蓮は天馬の事等見向きもせず歩き出し、八雲紫を探しに天馬から遠ざかった。

 

 

蓮が居なくなった後、男が天馬見て一言呟いた。

 

 

「うん・・・生きてるね」

 

その言葉を残した後、天馬の頭を掘り出し運びだした男は天馬と共に何処かに消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!!」

 

天馬が気絶から目を覚ました時、知らない天井の部屋に居た。

自分が倒れている所にはベッドが有り、その他の医療器具と思うものが機械から自分の手首、胸、足にチューブのような物が刺さり液体が自分の体の中に入ってくのが分かった。

 

「(ここは・・・永琳の所か?)」

 

辺りを見回してみるが永琳の姿所か誰一人居ない。

 

 

「・・・紫!」

 

自分の体に繋がったチューブなど無視して出口と思しきドアに手を掛けた。

ところが自分の体から力が抜けた様に足から崩れ、大きな音を立てて倒れる。

 

「おい!誰か居ないのか!?」

 

人に手伝ってもらわないと動けないほど弱っていることを確信した天馬は大きな声で確認すると、ドアの向こうから軽快な足音が天馬の部屋の前で止まり、ドアが開かれた。

 

「あ・・・ら?お目覚めかしら?」

「永琳・・・!」

 

永琳でなかったらどうしよう、と不安を抱いた天馬はホッと安堵する、

 

「体が思う様に動かねぇ・・・!何故だ!?」

「ちょっ・・・落ち着きなさい!」

 

永琳に補助をしてもらいベッドに座る。

「いま飲み物持ってくるから待ってなさい」と言い残し部屋から出ていった。

 

「何が起きてんだ・・・!何で体が回復していない・・・!」

「(気絶してから何時間たったのか分からんが[手製煙草]を吸った筈。

あれを吸えば体力は回復する筈なのに何故か体がうごかねぇ・・・・!・・・いや、効果が切れただけだ、もう一度・・・!)」

 

もう一度天馬が辺りを見回すと部屋の端の机の上に置かれている小さな掌サイズの空き箱を見つけた。

 

「届・・・け!」

 

上半身をジャンプの要領で上げ、前屈みになりながらも必死に手を伸ばすと机と共に転がる。

 

「ひああいのは(火は無いのか)!?魔法・・・・・!?」

 

火を点ける程度の魔法を試してみたが何も起こらなかった。

 

「ふ・・・・ん!」

 

今度は力強く魔法を出そうとするが先ほどの様に何も起こらない。

 

「(どうなってやがる!?魔法も体力も何時も通りに出来ねぇ・・・・!)」

「ちょっと!?何してるの!?」

「は・・・離せ永琳!此れを吸えば一発で治るんだ!!」

 

飲み物を持ってきた永琳が部屋に入った時、現状を把握できた永琳は天馬を羽交い締めにしながら煙草を遠くに投げ捨てた。

 

「いい!?天馬!!貴方はもう普通の人間以下なのよ!あんなの吸えば力の許容容量が爆発して体が吹き飛ぶわよ!!」

「何言ってんだ・・・?」

「そこからは僕が話そう」

 

永琳に羽交い締めされながらもみ合っているともう一人ドアの向こうにいる人物。

 

「血が・・・」

「止血剤と痛み止め・・・あと消毒と包帯をくれ」

「すぐ持ってくるわ」

 

顔や体に所々重い傷が見える男は永琳に指示をした後、近くにある椅子を引き摺り気怠いのか重い音を鳴らしながら座る。

 

「やぁ」

「・・・」

「うん、元気そうだ・・・さっき永琳さんが言った言葉の意味を教えてあげるよ」

「・・・」

「つまりは君の細胞・・・いわゆる能力が使えないことは分かるね?再生なんかが当て嵌る、それが無いと言うことはただの人間になってしまったって事だね」

「・・・だが俺には創造の能力が」

「あと一つ言っておこう、君に伝えるのも酷だけど言っておかないとね・・・人間だれしも寿命ってものがあるね?」

「・・・そりゃそうだろ」

「しかし君は人間だったのにも関わらず寿命という概念がなかった・・・しかしその概念を保持した能力が無くなった・・・ここまで言えば分かるだろう?」

「俺はいつまで生きれるんだ・・・?」

「そうだね・・・長く見積もって・・・二年・・・いや、一年半って所だろうね」

「何故分かる?」

「蓮の能力だよ」

「あいつの能力は一体なんなんだよ・・・」

 

未だ蓮の能力が分からない為いくら考えても納得できない天馬は男に質問をする。

自分がこの男に運ばれたことは微かに覚えているが戦っていた場面も見ていない。

 

「奴の能力は上げ下げできる程度の能力だよ」

「成る程・・・それなら納得がいくな・・・俺の寿命を下げたってわけだ・・・やられたな畜生・・・」

「どこへ行くんだい?」

「何処って紫ん所だよ」

「絶対安静だよ、動けるのは状態が良好って事だから良いけどさ・・・」

「うるせぇ、どけ!」

 

立ちはだかる男に拳を振り上げた時心臓に大きな衝撃を受けそのまま前のめりに勢いよく気絶した。

 

「金剛・・・、あんたが教えてくれた技だよ・・・」

 

気絶した天馬を担ぎ、呟くと部屋から出ていった。

 

 

「・・・」

 

白い天井を見ながら何もせず、寝てるだけの毎日。

永琳からは外出禁止と言われているし無理矢理出ようとすると直ぐにレイセンやていがどこからか駆けつけ捕まえるというイタチごっこが開始される。

 

「寿命・・・か・・・」

 

あと一年半の命だと言うことを知ると一日がとてつもなく大事に思えてくる。

無駄な一日を消費する度に体が蝕んで来るのが分かる。

ここに来てから十日目辺りから異変を感じていた、まず最初に咳が止まらない、頭痛が激しい、血を吐く、ここまで症状が出ると奴の言葉の意味を実感する。

「長く見積もって一年半」

最高で一年半と言う事、詰まり今日死んでも可笑しくはないのかもしれないのだと。

そんなことを考え耽っているとドアからノックの音が聞こえた。

 

「・・・入っていいぞ」

 

ドアが開かれ来客人を見てみると見慣れた顔ぶれが結構な数を揃えて立っていた。

 

「おう、久しぶりだな」

「おっす天馬!本当に久しぶりだぜ」

「心配したわよ、まったくもう」

「天馬さん、体調はいかがですか?」

「久しぶりねぇ・・・天馬」

「果物を持ってきてやったぞ」

 

霊夢、魔理沙、秤、計、紫、藍。

懐かしい顔ぶれだ、見るだけで涙が出てくる。

 

「お前ら・・・何で・・・いや、久しぶりだな」

 

何で来た、と言おうとしたが来てしまったのにはしょうがない、追い返す必要もないと感じた天馬は一瞬顔を背けた後、もう一度霊夢達に顔を向ける。

 

「この一年、何をしていたんだ?幻想郷中探したんだが居なかったぞ?」

「ちょっと野暮用でな」

「天馬がいないせいでお菓子が無いのよ」

「知らんがな」

「両手に華だなぁおい、いや?豚に真珠ってやつか?」

「余計なお世話だこの野郎、計ちゃんは元気だったか?」

「はい!あるお方が処方してくれた薬のお陰で元気モリモリです!」

「そりゃ良かった」

「今林檎を剥くからな?楽しみにしておけ」

「あぁ、悪いな」

 

一瞬自分の寿命の事など忘れてしまう程に心地がいいと思う天馬。

しかし一年半、そもそも霊夢達が俺の命が一年半って事は知ってるのか?表情には出ていないが気を使って隠している可能性もある、天馬は言おうか言わないか迷ったが言わない事にした。

 

「んじゃまた来るぜ」

「閻魔復帰楽しみにしているぞ、皆お前を待ってるからな」

「勿論私も楽しみにしてますよ!」

「あぁ」

「治ったらちゃんと神社に来るのよ?お菓子持ってきてよちゃんと」

「わかったわかった」

 

「じゃーなー」と元気に手を振って出ていった後、二人に向かって話かける。

 

「んで、お前らは帰らねぇのか?もういい時間だぞ?」

「・・・天馬、全部聞いたぞ」

「何の事だ?」

「恍けるな、余命の事だ!」

「あぁ・・・、林檎美味いぞ中々」

「なあ天馬、私達に位心を開いてくれてもいいだろう・・・?お前は紫様を救ってくれたんだ、感謝してるよ」

「そうか・・・じゃぁお願いがあるんだがいいか?」

「何だ?」

「今すぐ後ろ向いてここから出て行ってくれ、もう二度と来るな・・・!」

「なっ・・・」

「行くわよ、藍」

「ですが紫様!」

「・・・」

「わ、分かりました・・・おい天馬!明日も来るからな!」

「もう来るんじゃねぇ!」

 

紫がスキマで消えた後、それに次いで藍も複雑な表情をしながらスキマの中に入っていった。

 

「もう来んじゃねぇよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




文法変えてみました。
なんかしっくりきませんね。


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天馬、死が近づいてくる。

二十日め、寝たきりの状態は良くないからと永琳から永遠亭の近くなら彷徨いてもOKという命令が出た、レイセンの付き添いありならという事で渋々承諾した天馬はまず最初は外の空気を吸おうと出口に手を掛けた時、濡れた布を強く叩いた音が外から聞こえてくる。

 

「・・・ん?やぁ!貴方か!外出禁止令は終わったのかい?」

「まぁな」

 

音の正体はこの男、霄(しょう)が鍛錬をしている時の音だ。

空を切るように弾き出された腕は音速を超え、音が出る。

長時間やっていたのか上半身裸で汗だくのまま鍛錬を終えた。

 

「ふぅ・・・飲む?」

「なんだそれ」

「生卵さ、タンパク質たっぷりだよ」

「遠慮しておく」

「そう、残念」

 

大きなコップの中に入ったいくつもの生卵をゴクゴクと飲み始める。

 

「うん、朝飯はこれに限るね!」

「お前本当に一体何者なんだよ・・・」

「ん?」

「普通の常人じゃあんなきつい鍛え方はしないだろ、能力は何だ?」

「気になるかい?」

「そりゃぁな」

「うーん・・・運だよ運」

「運?」

「そっ、運を操るのさ」

「どうやって?」

「例えばそこにレイセンがいるね?」

「あぁ・・・」

「え?私ですか?」

「そそ、まぁ見ててよ」

 

霄がレイセンを見た後、ニヤリと笑う。

その瞬間。

 

「きゃぁ!!」

「白と水色の縞パン、かなりのフェチズムを感じるね」

 

どこから出たのか突風がレイセンのスカート捲った。

ほら見たか、と言わんばかりにドヤ顔をする霄は大笑いしながらレイセンに謝り続けた。

 

「ま、こんなもんだよ」

「なるほど・・・」

「よし、悩みは無くなったね?」

「まぁな・・・」

 

最初の頃は霄に会った途端ピリピリとした空気が蔓延したがいまはどうでも良くなってきたのか会話も普通にできる状態だ。

一息着いて縁側に座り一服をする天馬。

 

「フゥー・・・」

「また煙草かい?」

「これがないとイライラするんだよ」

「別に止めはしないけどね?この後キツくなるよ?」

「じゃかぁしい、俺は今を満喫すんだ」

「ま、それもいい手だね」

「吸う度いちいち言ってくんな・・・うっ・・・ゴホッ!ゲホッ!」

「大丈夫ですか!?天馬さん!!」

「言わんこっちゃないな・・・」

 

バッグから薬を二三錠取り出し手渡してくる霄。

それを飲み数分経つと肺の痛みが和らいでくるのを感じた天馬はまた、煙草を吸う作業に入る。

 

「うーん・・・喀血(かっけつ)だね、痛みを和らげる事は出来るけど治すのは難しいね」

「くそったれ・・・!何とかならねぇのか?」

「ならないね、蓮が寿命を元に戻すしか方法は無い、だけど僕が蓮を元の世界に戻しちゃったからどうしようも無いよ」

「厄介な能力だ、このまま死を待つしかないってのがな」

「一応僕もそれなりに動いてはいるんだけどね」

「動くだ?藍達に寿命の事を伝えたのはお前だろ?余計な動きはすんじゃねぇ」

 

永琳に詰め寄りなぜ藍達にあの事を言ったのかと問い詰めた後永琳からは以外な答えが出たのを思い出す、永琳にそう言えと言ってきたのは何を隠そう霄なのだから。

 

「いや~・・・良かれと思ってね・・・ごめんね」

「はぁ・・・まぁいい、あれ以降毎日藍が来るんだぞ、どうしてくれんだ・・・」

「あ~・・・その藍さんが今目の前に来てるんだよねこれが・・・」

「え?」

「私に知られたくない事でもあるのか天馬?」

「はぁ・・・」

 

入口から入ってくる藍を見た天馬は溜息を着く。

藍だけには知られたく無かったと思ったのだがむしろ藍と紫しか知らない事になるとは思わなかった。

 

「あのさぁ・・・結界の巡回はいいのか?」

「それは一昨日も言っただろう?休暇を貰っていると、巫女には悪いが紫様から良いと言われてるんでな」

「飽きねぇな・・・」

「それより寝ていなくていいのか?」

「永琳が良いってさ、むしろ動かないと体が衰えるってな」

「そうか、とりあえず今日は葡萄を持ってきてやったぞ、食べるか?」

「しゃぁねぇ頂くよ」

「僕はいらないよ、食べたばかりだからね」

「そうか、そこの兎は?」

「私も遠慮しますね、いまはお腹が空いていないので」

「っというわけだ、二人で食べよう」

「この量をか?」

 

藍の持っているバスケットの中には7房程葡萄が詰め込んであった。

到底二人では食いきれないだろう。

 

「なぁに残ったらここの薬氏にでも渡すさ」

「そうかい、そんじゃ頂くよ」

 

霄は鍛錬を開始し、レイセンはそれを見て、天馬と藍が二人で飯を食べる。

ここの所、そんな感じで過ごしている皆。

 

「藍、一つ聞いていいか?」

「何だ?」

 

葡萄を頬張る藍は質問に答えようと一気に口の中に入っている葡萄を食べ、天馬に向き直す。

 

「藍は俺が死ぬまで毎日来るつもりか?」

「そのつもりだ、私がいなければお前は何も出来ないだろう?」

「それは有難いんだが、もっと他の大切なことに時間を使ったらどうだ?俺何かに構わず自分のしたい事をすれば」

「他の大切な事って何だ・・・?私のしたい事は今この現状なんだが?」

「いやだが・・・」

「お前は強情すぎる、もっと私を頼ってくれても構わない。私からすればもっと自分を大切にしたらどうだ?っと言いたい位だ」

「・・・」

「塞ぎ込むのはいいとしても私にだけは素直になってくれよ、それじゃ私はもう帰る、また明日な?」

「おう・・・」

 

笑いを浮かべた藍は、そのままスキマに入り帰っていった。

誰にも見られず、誰にも知られずに死んで行きたかったと今更ながらに後悔する天馬は紅く染まった夕焼けを見つめ、永遠亭の中に戻っていった。

 

 

「うっ!?くそッ!心臓が・・・ァ!」

 

寝静まった夜、突然心臓に激痛が走る。

すぐにベッドに備え付けられているコールを鳴らし永琳を待つ。

 

「ゼェ・・・ゼェ・・・・!呼吸ができ・・・ねぇ・・・!」

 

心臓と呼吸が出来ない辛さで一瞬意識が飛びそうになる、大きく深呼吸をして呼吸をしやすくしようと大きく息を吸い込むと逆に心臓が痛くなる。

 

「どうした?」

 

ドアを開く音を立てて逸早く来たのは霄だった。

 

「心臓と・・・呼吸が辛い・・・!」

「上半身起こすよ」

「ハッ・・・ハッ・・・ハァ・・・だいぶ呼吸がしやすくなったが心臓がまだいてぇ・・・ゴホッ!ガハッ!」

「おい、しっかりしなよ」

「どうしたの天馬!?」

「呼吸困難と激しい心臓痛だね、咳・・・汗・・・血色・・・心臓喘息・・・考えられるのは急性心不全だ、早く酸素吸入の準備しといて」

 

永琳も霄の的確な指示で永琳も素早く動く。

担架に乗せられ、永琳と霄が一緒に手術室に入りそこで天馬の意識が途絶える。

 

「なぜ急に心不全何かになったのかしら・・・?」

「体全体の免疫が劣ってきているんだろうね、今なら何の病気で死ぬか分からん、余命一年半とは言ったがここまで進行が酷いと一年以内かもしれないね」

「そんな・・・」

 

目は閉じていても意識が戻ってきた天馬は目を閉じながらも、霄と永琳の会話を聞いていた。

一年半から一年以内、一気に短くなったもんだと絶望に近い何かを感じる。

 

「え?香霖堂に行く?」

「そうだ、あとついでに地獄に行かせてもらいたい」

「どうやって?」

「・・・分からん」

「え~・・・」

 

目が覚めた時、丁度霄が窓際で椅子に座りながら寝ているのを見つけ思い立ったことを伝える。

 

「ん、まぁいいよ!永琳さんには上手く言っておくさ、因みに僕同伴じゃないと外には行けないけどそれでいいかい?」

「・・・あぁ、気にしないからいいぞ」

 

霄も着いてくると言言い出し少し考える天馬。

まぁついてくるだろうなとは思っていたから別にいいが、という結果になり久々に永遠亭の外に行ける。

 

「よし、それじゃぁ行こうか」

「あぁ」

 

出発する時、霄が「少し待ってて」と良い一度永遠亭の中に戻って10分、どうやら着替えと荷物を持って来たようだ。永遠亭にいるときは永琳から借りたのか、白衣の姿が多いので少し新鮮に思えてくる。

 

 

「ふふ~んふ~ん♪」

「随分機嫌がいいなお前」

「ん?そうかい?僕は何時も通りだよ」

「そのデカイバッグの中身は何だ?」

「万が一の時があると困るからね、永琳さんから借りた医療道具だよ」

「ふーん・・・」

 

なぜか医療関係に詳しい霄。

しかし霄が付き添いで大丈夫なのだろうか、今更ながら自分に反感持ってる奴が襲ってくることも無いことも無いだろうし・・・と永琳か違う奴に来てもらえば良かったと後悔する。

いやしかし事実、俺の寿命を減らした蓮を撃退できる位だ、信頼できるだろう。

 

「お!?」

「ん?」

「どうも!」

 

森の小道を歩いていると突然木に逆さまでぶら下がりながら登場する鴉天狗、射命丸文である。

 

「お久しぶりです天馬さん!幻想郷から居なくなって早一年!どこをほっつき歩いていたんですか?」

「俺もあんまりわからんのよ、てか一年も経ってんのか?」

「ほほう・・・天馬さんもあまり分からないと・・・あの、隣のお方、その手に持とうとしている武器を離してはくれませんかね?」

「ん?」

 

射命丸に言われ霄を見ると、腰に下げているナイフを手に取ろうとしていた。

霄の表情は笑っているのに殺気を放っている。緊迫した空気が張り詰めた。

 

「俺の知り合いだ、やめろ」

「何だ、射命丸さんか・・・これは失礼」

「いえいえ、いきなり現れた私も悪いので!ちなみにそのお方は?」

「まぁ俺の知り合いだ」

「うんうん」

「これから何処に行かれるのですか?」

「香霖堂だ、ちょっと忙しいからまた今度な文」

「はいは~い!ではまた後で!」

 

手を振りながら素早く飛び立つ文、後で と言った言葉が少し気になる。

 

「お前もいきなり戦闘しようとすんな、勘違いされるだろ」

「ごめんごめん、いきなりだったからさ」

「ったく・・・」

 

あとは何事もなく歩いて一時間程すると香霖堂の入口に着いた二人。

 

「懐かしいな」

 

香霖堂のドアに手を掛け、そっと軋む音を鳴らしながら開けるとそこには見慣れた人物が窓際で本を読んでいた。

 

「おや、おかえり」

「おう、ただいま」

「失礼します」

 

その人物は共に屋根の下で飯を食い、共に生活をしている森近霖之助だ。

簡単な言葉ではあるがこれだけで十分といったような感じで天馬は自分の定位置の椅子に座る。

 

「・・・ストックの煙草は?」

「ん?幽々子さんが全部持っていったよ」

「何ぃ!?」

 

あれほどショーウインドウにあった煙草が全てなくなっていることに驚愕する。

予想はしていたがまさか全て無くなっていたとは、幽々子のヘビースモーカーの度合いは悪化しているようである。

 

「そちらは?」

「ん?こいつか?霄って奴だ」

「どうも」

「やぁ、初めまして。森近霖之助だ、この店・・・香霖堂の店主だよ」

「霄と申します、今日は天馬さんの付き添いでやってきました」

「付き添い?」

「あぁ、まぁ色々あるんだよ・・・」

 

ショーウインドウに煙草を創造して、置きながら会話する天馬。

霄は香霖堂のガラクタを興味深そうに眺めている。

 

「よしっと、霄・・・少し出てくれるか?香霖と二人で話したい」

「ん?分かったよ」

 

頷いて香霖堂から出ていった霄を確認して香霖の近くに椅子を持っていき座る。

真剣な表情で香霖に顔を向けるとそれに答えてくれるかのように本を閉じた。

 

「香霖、俺はもう少しで死ぬ」

「いきなりだね、理由はなんだい?」

「蓮ってやつがいきなり襲ってきた、そんで奴の能力で寿命を下げられちまったよ」

「ふむ・・・大体は理解したが、魔理沙には言ったのかい?」

「いや、魔理沙には言わねぇよ・・・死んでも顔を見せないつもりだ」

「そうかい、まぁ君らしいっちゃ君らしいね」

「ま、そんなわけで多分だが永久にもうここに来ることは無い・・・と思う」

「悲しいね、君がいなくなると寂しくなるよ」

「すまない、俺の勝手な事に付き合ってもらってな」

「気にしないでくれ、僕達は家族同然じゃないか」

「家族・・・」

「そうだよ」

 

天馬に向かって手を突き出す霖之助、その表情は和やかでどこか悲しい顔をしていた。霖之助を手を掴み最後の別れの握手を交わす。

 

 

「あぁ、最後まで・・・あり・・・ありがとうな」

「おいおい、泣くなよ」

 

感極まりボロボロと涙が出てくる、顔を歪めながら、子供のように大声で泣きたくなったがその代わりに霖之助の手を両手で掴み感情を押し殺す。

 

「香霖、お前は俺の親友だ・・・最後まで忘れねぇよ」

「僕もだ天馬、君がいなくなっても、死んでも、僕の心の中に生き続けるよ」

「あぁ・・・」

 

「そんじゃぁな」と言い残し天馬は霄と香霖堂を出ていった。

 

「泣きたくなってくるね」

 

香霖堂の店主は顔を本で隠しながらそう呟いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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東方人外録、新登場人物。

ここまで来てなんだが新しいというか新人物合わせて常識の世界の人物も紹介しておこう。

 

 

 

名前    

 

岡崎夢美。

 

能力or特殊 

 

5世紀先を行っている科学力を持つ。

 

小話

 

大学では物理学専攻の授業を行っており、物理なのになぜか魔法の事を論じる事が多い。しかし常識の世界では重力・電磁気力・原子間力など、あらゆる力は統一できると証明されており学会で「統一原理に当てはまらない魔力という力が存在する『非統一魔法世界論』」を発表したところ、思い切り笑われ相手にされなかった。

 

外見

 

整った顔立ちに赤い髪・赤い瞳。

赤い服装を好み、苺が好物。

腰の長さまで髪を結っており時々可愛らしいサイドテールをしている。

 

年齢

 

19歳。

 

 

名前

 

北白河ちゆり。

 

能力or特殊

 

無し。

 

小話

 

岡崎夢美のアシスタントプロフェッサー、所謂助教授である。

口調が変な女の子、当然岡崎夢美の助教授なので頭はかなりいい方。

ちゆりも比較物理学を専攻している。

なんだかんだ言いながらも夢美の行動に付き合うのは楽しいからか?

色々と車の運転の仕方やヘリの乗り方も知っているのは何故だろうか。

 

外見

 

水兵のセーラー服を良く着ているが普段着はヘソそ少し出したりとカジュアルである。

金髪でツインテール、かなり奇抜な格好をしているので目を引く人物だったりする。

 

年齢17歳

 

 

 

名前

 

宇佐見蓮子。

 

能力

 

星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる程度の能力。

 

小話

 

大学でメリーと共に秘封倶楽部を立ち上げ日々この世の不思議な現象を研究する日々。

大体蓮子によって秘封倶楽部の活動が決定される、蓮子もまた、物理学を専攻しており岡崎夢美の講義を聴いてたり。

時間が分かる能力なのにメリーと待ち合わせの時は遅れることが多い。

 

外見

 

黒い帽子に白いリボンをつけている。

茶色のショートカットでボーイッシュな服装だったりはたまた少し乙女チックな服装をしたり、黒と白が基本。

 

年齢15歳。

 

 

名前

 

マエリベリー・ハーン。

 

能力。

 

結界の境目が見える程度の能力。

 

小話

 

蓮子がマエリベリー・ハーンの名前が読みづらいとメリーと呼ばれている。

かなりの毒舌を吐くときもあり、蓮子の能力を使いづらい、だとかとろいとか言い合うが至って仲良しである。

八雲紫と能力も外見も少し似ている。

それもあってか何度か幻想郷に来たことがあるらしい。

 

外見

 

八雲紫を小さくした感じで違うところは明るく素直な所。

髪色は金髪で蓮子の地元は東京と分かるがメリーの出身地、出身国はどこなのか未だ不明。

勉学では相対性精神学を専攻している。

 

名前

 

五十鈴。海鈴。

 

能力

 

二人共無し。

 

小話

 

五十鈴は海鈴の妹である、お淑やかな性格もあるが少し図々しい所がある。

海鈴とは違って几帳面で姉の海鈴の事を大雑把女と呼ぶことがある。

変わって海鈴は五十鈴の真逆で素直でガサツな女、フレンドリーで五十鈴の事を腹黒女と呼んでいる。

 

二人共体を研究され戦闘強化をされており天馬を苦戦させる程。

今はその薬を抜く為に療養しているそうだ。

 

外見

 

五十鈴の髪は腰までの長さで黒い。

着物美人であり、胡散臭い空気をまとっている。

身長は天馬と同等か少し低い位。

海鈴はこれまた天馬より少し高い位で少し大柄。

真っ黒なショートカットに笑顔が似合う活発。

黄色と黒のジャージを愛用している。

 

名前。

 

7(ナナ)

 

能力。

 

無し

 

小話。

 

どうして天馬を襲ったのか未だ謎だが顔をペストマスクで隠していた。

ペストマスクの中は顔が半分程大火傷でケロイドになっている。

彼女は海鈴達とは違って研究はされていないがかなりの戦闘力があるが所詮は人間、天馬にやられてしまう。

常時天馬からもらった細胞マスクを持っている。

 

外見。

 

天馬に医者を紹介してもらい火傷をほぼ完全に元に直せたようで、かなりの美人。

髪は肩より下まで伸ばしており、ブロンド色だ。

元は外国人かハーフだったのか色っぽい所もある。

身長は天馬とほぼ同等。

 

次は常識の世界から非常識の世界での新人物。

 

 

名前。

 

???蓮。

 

能力。

 

上げ下げできる程度の能力。

 

小話。

 

なぜ紫を殺そうとしたのか、なぜ天馬の事を知っていたのかは不明。

服装から外来人というのは分かるがそれ以上の情報は不明。

上げ下げできる能力はその名の通りあらゆる物を上げたり下げたりできる。

寿命、衝撃、身体能力、等。

 

外見。

 

赤い瞳、赤黒い髪色、三白眼。

身長は天馬よりも高く、体格は少し痩せている。

登場時は白いワイシャツに黒いベストスーツ、赤いネクタイをしている。

すぐに笑う癖があり、非道と思わしき行動が激しい。

 

 

名前。

 

???霄(しょう)

 

能力。

 

運を操る程度の能力。

 

小話。

 

瀕死の天馬を完璧な応急処置をした男。

霄もまた外来人の服装をしている。

医術の心得や、戦闘の仕方等熟知している。

 

外見。

 

金色と黒を混ぜた様な髪色。

頭を帽子で常に隠しており顔もあまりよく見えない。

常時ニコニコと笑っている、癖なのかはよくわからないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




SAOでのバックアップが消されたのでしょげて人外録を更新しています。


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天馬、怪力乱神に出会う。

なぜこうなった?

 

「勇儀!こいつだよ!前に私に恥をかかせてくれた奴は!」

「へぇ・・・あんたがかい?」

 

地獄に行く道で妖怪の山に入り進んでいるとばったり鬼の二人に出くわした。

一人は萃香、かなり前に懲らしめてやったはずなんだが反省が見えていない。

もう一人は体長180cm程あるガタイのいい鬼、あの豪傑と名高い怪力乱神、星熊勇儀であった。

 

「あいつに能力使えないんだよ!!何やっても無しにされる!」

「ふ~ん?」

 

非常に不味い、天馬は能力は創造だけで人外の力が使えない故に動きが鈍る。

誰がどう見ても天馬の負け確定であろうこの状況、どうすれば切り抜けられるか。

 

「萃香を倒した相手か・・・興味が沸くねぇ」

「二人であいつをケチョンケチョンにしてやろうよ!」

「二人でか?私は一人の方がいいんだが・・・」

「じゃあ勇儀が危なくなったら加わるよ!」

「ほう・・・萃香がそこまで言うとは珍しい、一つおてなみ拝見させてもらおうか?」

 

なぜか戦うことが決定されているこの状況、逃げるにしても追ってくるのは確実、その前に背中を見せた途端やられる事もあるかもしれない、この状況を打破するのは誰か。

 

「あー・・・少しいいかい?」

「何だお前は?」

「引っ込め!」

「いやいや、少し話そうじゃないか?天馬さんと戦う事はもう決まってるのかい?」

「当然じゃないか、今更嫌ですなんて言われた瞬間・・・容赦しないよ」

「そうだそうだ!」

「悪いんだけどいま天馬さんは戦えない状態なんだよね、また今度にしてくれないか?」

「何を言ってるんだ?戦いに状態も糞もないだろう?」

 

霄が天馬の前に数歩前に歩き二人を制止する。

 

「分かった、天馬の変りとなんだが僕で代用できないか?」

「あんたが?強いのかい?」

「強いかどうかは自分じゃ分からんね、試してみるかい?」

「そうさなぁ・・・」

 

星熊が拳に力を入れてそれを見た後、不敵な笑いを漏らし。霄に向き直る。

 

「いいよ、やろう・・・それでいいね萃香?」

「あんたがやられたらそいつもぶん殴ってやるからな!」

「お、おい」

「大丈夫、なんとかなるさ・・・」

 

妖怪の山の山中に思い切り暴れられる場所がある、と勇儀は言う。

ついてこいと言わんばかりに背中を向け歩く勇儀は余裕さえも感じられる。

最もやってはいけないことは敵前に背中を向ける事、それをいとも簡単にする勇儀はよっぽど自分に自信があるか、霄を信用しているか。ほぼ前者だと思うが。

 

「準備はいいか?」

「うん、一ついいかい?」

「何だ?」

「あんたとは素手喧嘩(ステゴロ)で戦いたい、最初に挑んで来たんだ。それくらい良いだろう?」

「ふ~ん・・・あんた気に入ったよ、私に素手喧嘩(ステゴロ)で挑もうなんてね。あの魔法使いや巫女も弾幕だったから最近つまんなかったんだよ」

「後は目潰し、金的、骨折り・・・何でもありの喧嘩でいいね?」

「ほぉー・・・そこまで行くかい!良いじゃないか!萃香!!あんたは入ってくるんじゃないよ!!」

「わ・・・分かったよ・・・」

「おい霄!それは何でも危険すぎる!」

「アンタもだ!!男と鬼の言った言葉に二言はない!!」

「くそっ・・・!」

 

自ら自滅に行こうとしているのか、霄は手も震えている・・・汗も尋常じゃない、勝目なんてあるのか。

それでもニコニコと笑い、天馬に目で大丈夫、安心しろと伝えているのは分かる。しかし本当に大丈夫なのだろうか。

 

「そんじゃ、始めようとするかい」

「あぁ」

 

勇儀が手を出して握手を求める、それに答えるように霄も握手をした時事態が変わる。

 

「ッッ・・・」

「へぇ・・・耐えるかい」

「うぐ・・・ッ」

 

勇儀の握力に叶わず、遂に膝をついて勇儀から離れようともがくが逃れられない。

ペキペキと音を鳴らし手が折れそうな音が鳴る。

 

「掴んでろよッ」

「おッ!?」

 

膝をついている状態ですぐに立ち上がった霄は勇儀に向かって接近で裏蹴りを繰り出し、勇儀の顎に踵を当てた。

その隙を突いた霄は手を離す事に成功、そのまま勇儀に接近し、鉤爪の様な形をした手で更に勇儀の顎に掌底。

 

「今のは効いたね、なかなか楽しませてくれる」

「効いてる素振りがないけどね・・・」

 

勇儀は間合いから逃れた霄を見た後、顎に触れて首を左右に振って骨を鳴らす。

そして地を蹴り、急な速度で霄に大振りに腕を振る、そんな簡単な素振りだが腕を振っただけの速度で風を重い音を鳴らすのはさすが怪力乱神と言った所。

 

「遅いね」

「ッが!?」

 

勇儀の大振りを避けたあと、手に力を入れ、顔に放つと思わせておいて放ったのは喉に手刀。

下手をしたら死んでしまう技を冷静に放つ霄をみた天馬は驚愕と同時に恐ろしさを感じる。

 

「ここでッ」

「なッ!?」

 

首を痛みで両手で押さえた勇儀を見逃さなかった霄は前足を出し、その勢いで勇儀の左胸に向かって拳を真っ直ぐ穿つ。

天馬も最初、霄に食らったことがあるこの技は運がよければ失神、悪ければ死。

心臓に多大な負担がかかり勇儀はそのまま後ろに仰向けで倒れる。

 

「やったか!?」

「まだ失神には程遠い、三センチ左にズレたからな」

 

仰向けになった勇儀に次は足を上げ、またも勇儀の心臓部分を踏みつけた。

普通人間が生き物を殺すのには躊躇という制限(リミッター)があるものだがそんなものは霄には無いのか躊躇なく力いっぱい踏みつけた。

腕よりも数倍力を入れられる足で心臓を踏みつけられた勇儀は血反吐を吐いた後、ぐったりと横たわっていた。

 

 

「勇儀!!」

「おい!?やりすぎだろ!?」

「うるさいよ、鬼だから大丈夫でしょ?多分・・・ほらね」

「ここまでやられたのは初めてだよ・・・」

 

先程まで横たわっていた勇儀が立ち上がっていた。

口から出る血を拭い、構える。

 

「自己流かい?」

「あぁ、私はいつでも自己流だ!」

 

 

両腕を前に構えながらジリジリと近づいてくる勇儀に対して霄も両腕を前に構え歩み寄る。

 

「暑いな、手拭いとっていいかい?」

「あぁ、待ってやるよ」

 

霄がカバンから手拭いを取り出そうとした、その時

 

「かかったなッ」

「なッ!?」

 

突然霄が勇儀には届くはずのない間合いから蹴りを繰り出した。

その届くはずのない蹴りに勇儀は顔を歪めた、何故なら勇儀の顔には霄の靴が当たっていたからだ。

さらに勇儀の一瞬の隙をついて、接近した霄はそれを察した勇儀の暴れを避け、勇儀の一本角を掴みそのまま顔を膝蹴り。

 

「くあぁ・・・ッ!」

「今からあんたには気絶してもらうッ」

「ぐッ!?」

 

勇儀の空いた脇腹を殴り、痛みで脇腹を庇う。

次に右側頭部に肘を当て、両手で顔面と腹を突く(両手突き)。さらによろめいた勇儀の首に伸ばした手を首に衝突させ(手刀)首に当てた逆の手で鳩尾を抉る(貫手)

そして、また逆の形で左側頭部に肘を当て、両手突き、手刀、二度同じ動作を繰り返したあと右足で勇儀の左膝関節を蹴る。

続き脇腹、膝、を蹴り、後ろに倒れようとした勇儀を押さえるかのように足の甲を踏み、顎に足刀を入れる。さらに左足で右ヒザを前蹴りし、右足で金的に蹴り上げ、そのまま下腹に前蹴り、左足膝で鳩尾を打ち、右膝で顔面を捉える、次は前に倒れた勇儀に対して右肘で顎を打ち、手刀で右側頭部を当て、頭を割るかのように拳を固く力入れて脳天に当て中段膝蹴りで鳩尾を入れ、鳩尾を当てるためにあげた足を前に出し金的。

 

霄の攻撃から逃れようと勇儀はガードをするとガードした違う方向に殴られ、右に倒れようとすると倒れる方向の脇腹を殴られ、左に倒れようとすると左太腿を蹴られ、反撃をしようとすると霄の攻撃に当たる。

後ろに倒れれば背中を蹴られ、逃げる場所の無い勇儀は立ちながら気絶をしていた。

ようやく霄の攻撃が止まり、勇儀は地に伏そうと前に倒れた時。

 

「ふっんッッ」

 

止めと言わんばかりに3回目の勇儀の心臓に拳を押し当てた。

長い時間が過ぎた気がしたが、この間1分半程度。

攻撃を当てた数は最後の金剛を含めると161回。

 

「ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・!ふぅー・・・・!」

 

息切れが激しい霄は腹に力を入れ、そのまま肺の中にある空気を全部押し出すことで息を整えた。

 

「鬼を相手に一方的にやるとは・・・!」

「勇儀!!勇儀!!」

「疲れた・・・」

 

勇儀に駆け寄る萃香を見た霄は天馬の方向に歩き出し笑って見せた。

 

「何だあの技は・・・?」

「ん・・・あれかい・・・?ちょっと待て」

 

カバンから水を取り出し、一気に飲み干すと一息つく。

何処から持ってきたのか煙草に火を点け、吸うと意外な言葉を吐き出した。

 

「内緒」

 

霄のその言葉に拍子抜けをさせられた。

 

 

 

 

「いやーあんた強いね!萃香!!これは私の負けだよ」

「卑怯な手を使ったんだぞ!?それでいいの!?勇儀!!」

勝負(けんか)に卑怯も何もあるかい、倒れた方が負けなんだよ、潔く諦めな」

「くっ!」

「さすがの鬼だね、あれを食らって10分以内に気絶から覚めるなんてね」

「そうだろう?」

「あんたがいい考えを持っていて良かった、あれ以上続けるとなれば面倒臭いんでね」

「負けを負けとして認めないなんて女々しいことができるかい、あれは正真正銘私の負けだよ。また手合わせをしたいもんだ!」

 

はっはっは、と大きく笑う勇儀は萃香を摘み、どこかに行ってしまった。

 

「それじゃ、行こうじゃないか天馬さん」

「あ、あぁ・・・」

 

霄が味方で良かったのと同時に恐怖心も芽生えてくるのは先程の光景を見たからだろうか。

あんな戦い方は見たことがない、まさに何でもアリの喧嘩と言うことだろう。

 

 

 

 




ルビって面白いですね、初めて使いましたw
霄と怪力乱神の戦いは如何でしたでしょうか?
伝わりにくいと思いますが上手く伝わってると幸いです。


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天馬、旧地獄にて地獄の門を叩く。

「そういえば地獄ってどうやって歩いて行くんだい?」

「ん?俺の行く所は旧地獄を通って、覚妖怪に道を開けてもらうしかないな」

「へぇ?覚妖怪と知り合いだったんだ?」

「いや?初対面だ」

「へっ?」

 

拍子抜けした霄は目を丸くしガックリと項垂れた。

 

「なんだよ?」

「いや・・・うん、そんな事だろうと思ったけど・・・」

「初対面だろうが初対面じゃなかろうが関係ねぇだろこの際、俺もワープして行きたかったけどなんか使えねぇんだから」

「そうだけどさぁ・・・」

 

計画性無さすぎるよと言いたげな霄を無視し、妖怪の山の裏には旧地獄の入口があるのを一応は知っているので入るとする。

 

「ちょちょちょ!そこの者!止まりなさーい!」

「何だ?」

 

どこからか聞こえる声、多分番犬妖のアホの一人だろう。

ここまで侵入して気づかれないのも珍しいと思っていた矢先だよ、と思う天馬。

 

「そこの人間!今すぐここから去れ!去らないと言うのであれば強制的に出てかせますよ!」

「お・・・おぉ・・・!」

 

番犬妖は数が多い筈なのになぜか一発で犬走椛だと確信する天馬。

見たことあるような顔、見たことあるような尻尾。

 

「椛ぃいいいい!!!会いたかったぞぉおお!!」

「ふえぇえええ!?なんですかこの人は!?離してください!!」

 

椛を強く抱き、普通の犬を愛でるかの様に撫で回し、臭いを嗅いだりする天馬の行動に驚く椛は必死に突き離そうとするが、手に持っている武器が邪魔をして思うように動けていない。

 

「よっし堪能した、いくぞ霄!」

「いきなりテンションあがりましたね」

「な・・・な・・・なんなんですか・・・」

「あ、椛。お前ちょっと犬臭いぞ、俺は好きだけどな!」

「何言ってんですかこの人は・・・!コホン・・・!いいですか!?ここは人間が来ていいような場所ではないんですよ!?」

「いやぁ?俺閻魔だし」

「私も閻魔助手ですし」

「えっ・・・!?あっ・・・!」

 

椛は何かに気付いたのか、どこからか取り出した手帳をペラペラと捲る。

そして手の動きが止まったと思いきや、天馬の顔と手帳を交互に見つめるその行動は非常に愛らしい。

 

「す・・・すいません・・・」

「いいよいいよ、今度マーキングさせてよ。椛に」

「嫌です!!」

「はっはっは、冗談に決まってんだろ!」

「冗談にしてはかなりのセクハラですよそれ」

 

椛は一歩後ずさりしたあと、敬礼のような形で見送ってくれた。

天馬も初めてあった椛に上機嫌で敬礼を返し、先程の深刻の顔が嘘のように笑顔になっていた。

 

「あ、そういやこの先橋姫がいるから今のうちに作戦を立てておこう、穏便に行きたいからな」

「そうですね」

 

旧地獄の入口付近で座り込む天馬と霄。

色々な橋姫対策を考えているのだが結局は戦闘になってしまうのでイチかバチか考えた作戦でいこうと天馬が言い出す。

 

「それはどんな作戦なんですか?」

「そうだな、作戦名・・・パルパル作戦でいこう」

「パルパル作戦?」

「うむ」

 

簡単に天馬がパルパル作戦というものを説明すると、霄はこいつついにイっちゃったな。と思わしき顔をした。

 

「俺を信じろ!これで絶対通れるから!」

「はぁ・・・分かりましたよ・・・それでいきましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤマメもそうやっていつも巫山戯てるからおかしな奴が付いてくるのよ、類は友を呼ぶってやつね、妬ましい」

「いや~・・・私は別に巫山戯てる訳ではないんだけどね~・・・・」

「ヤマメ、お客さんよ・・・入口から何か聞こえるわ」

「誰だい?」

 

旧地獄入口から何かブツブツと聞こえる声に橋姫は直ぐに気づいた。

どんどんと橋に近づくにつれて何が聞こえるのかをよく聞いてみる。

 

「「パルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパル・・・・」」

 

下を向き、霄と天馬は同じ言葉をつぶやく。まるでお坊さんの念仏のように唱える霄と天馬を見た水橋と土蜘蛛は最初、警戒をしていたが目の前を通りすぎた時に何か恐ろしいものを見たといったような感じで関わらないでおこうと無視をした。

 

 

 

「ほらな・・・通れただろ・・・パルパルパルパル」

「成る程・・・さすがは閻魔王・・・・パルパルパルパル」

 

 

パルパル言いながら進み、旧都と言われる地底の商店街に差し掛かった時、上から何かが落ちてくるのを霄が確認。

 

「天馬さん!危ない!」

「うお!?」

「ひぎぃ!!」

 

天馬を押しのけ、上から落ちてくる物に合わせ、霄がドロップキックを当てた。

一瞬だけ見えた物は桶であった、ただの桶。

 

「ん?桶?」

「なんか手応えが桶だけじゃなかったですよ、なんかヒギィッって言ってましたし・・・」

 

恐る恐る桶に近づき中身を覗いてみると・・・釣瓶落としであった。

緑色の髪、白い浴衣。紛れもなくキスメである。

 

「うん、落ちてきたこいつが悪いから放っておこう」

「そうですね」

 

鼻血を出しながら気絶をするキスメを放置し、商店街を抜け。

2km程進むと旧地獄の風景に相応しくない建物が一軒立っていた。

 

「邪魔するぞ」

「お邪魔します」

「誰だいあんた達は?」

「覚妖怪に会いたいのだが・・・」

「お客さんってことね、あたしについてきておいでよ」

 

中に入ると猫耳な女が迎え出てきた。

名前は火焔猫燐、火車である。

 

「で?わざわざ閻魔王さんがここに来た理由はなんなのさ?」

「俺の事を知っているのか?」

「いんや、あんまり知らないけど顔は見たことあるよ」

「ふむ?っておい霄!何やってんだよ!」

 

さっきから気になっていたが霄がおかしな行動をしている。

ダンスをしているかの様な動きで先程から右往左往している霄は何かに引っ張られているかの様に服を引っ張っていた。

 

「いや・・・この子が引っ張ってくるんだよ・・・」

「何言ってんだお前?俺とお前と燐しかいないじゃないか」

「へっ?」

「あ、もしかしてこいし様がいるんですか?」

「こいしぃ?」

「分かんないけど、なんかどっかに連れてかれそうになるんだよね。いい加減離してくれよ」

「こいし様が見えるだなんて・・・」

「こいし・・・こいし・・・あっ」

「「?」」

「(思い出した、たしかさとりには妹が居たな・・・確か無意識を操るだかなんだか)」

「どうかしたのかい?」

「いや、何でもない・・・霄、お前はこいしとやらの相手をしていろ、俺は覚妖怪に会って話してくる」

「了解ぃ~・・・」

 

心を読む覚、能力の使えない天馬。

果たしてどう対処するか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、旧地獄の門を開かせる。

「さとり様?お客様です」

 

燐がドアをノックして用件を伝えると、部屋の中からすこし音がした。

 

「いいわよ」

 

音の正体は机に置いたコップであった、無表情なのか笑顔なのか分からない顔をした妖怪は、もう一つの方の椅子に手を差し伸べてその椅子に座るよう促した。

燐は部屋に着くなり「失礼します」と一言残して去っていった。紅魔館のメイドを思い出す。

 

「どっこいしょ、簡潔に言う。地獄の門を開いて欲しい」

「あら?わざわざ私の所に来なくともあなたは行けるんじゃなくて?」

「諸事情でちょっと行けなくなったんだ、初めましてで悪いが是非開けて頂きたい」

「ふむ・・・?」

 

さとりは天馬の顔を眺め、心を見透かすかの様に。いや、実際に心を見透かせているが一つ腑に落ちない事でもあったのか首を傾げた。

 

「今、貴方の心を見ているのだけれどまるで万華鏡の様に思考が散らばっていて良く分からないわね・・・能力かしら?」

「いんや?わざとそうしているだけだ」

「へぇ・・・?」

 

さとりは一息吐いた後、コップを持ち上げ口元に持っていく。

優雅、その言葉がピッタリだろう。一つ一つの仕草が麗しい、紫とは違って胡散臭い所が無い。

 

「そ、いいわよ。好きにしなさい」

「そりゃ助かる」

 

暫く沈黙が続いたが、大きな衝撃音でその沈黙は破られた。

ドアではなく壁を突き破り、ごろごろと取っ組みあいをしながら出てくる二人。

 

「何・・・?」

「何だ!?」

 

カラスの様な漆黒の羽を持つ少女が霄に乗り、今にも右腕につけてある武器から熱を帯びた物を発射させようとしていた。

 

「何て馬鹿力だいっ」

「ぐぐぐっ!」

「お空!何をしているの!?やめなさい!」

「霄!何してんだお前!?」

「分からんよ、いきなりこいつが襲ってきたんだ」

「どういう事ださとり!」

「私にも分からないわよ・・・!」

 

どうやら館の主も分からないらしい。

霄も、のし掛かりをされているが余裕の表情で制止させていた。

お空と呼ばれる人物が遂に霄の顔面目掛け右腕の武器から発射させた

お空と言えば核融合を操ると聞いたことがある。確か名前は・・・霊烏路空(れいうじうつほ)だ。

「おっと」

「っ!」

「危ないじゃないか」

 

顔を左に逸らし、熱射を避けた霄はそのまま足でお空の腹を蹴りマウント状態を逃れた。

 

「殺る気だね」

「こいし様の・・・!命令だから・・・!」

「こいし・・・!?」

「こいしってアンタの妹だろ!?なんとか出来ないのか!?」

「あの子は今暴走状態だから何言っても無駄なのよ!」

「お取り込み中悪いが、自分も死にたくないんで抵抗するよ。こいつが死んでも責任は負えないからな、さすがに二人も相手は出来ん」

「二人・・・?こいしが居るのか?」

「まさか・・・こいし!居るなら返事してちょうだい!」

 

腰に下げたナイフを手に持ちお空と上手く間合いを取りながら牽制をする霄。

しかし路空の熱射の有効射程内、路空は腕を構え熱射を貯めようとしている。

 

「させないよ」

「あうっ!」

 

ナイフを逆に持ち投げた、顔に柄が当たったのを確認した霄は一気に攻めようと足を一歩踏み出した時、霄が何かに掴まれたように宙を浮いた。

 

「そのもう一つの目はそういうことも出来るのかい、こりゃ困った」

「喰らえ!」

 

 

宙に浮かんだ霄は無防備のまま路空の熱射が胸を貫通する。

それを待っていたかの様に霄を包み込んでいた何かが狭くなり、もはや人間が曲がるはずのない骨やら筋肉が折れる音や断裂する嫌な音が響き渡った

 

「やった!こいし様!」

「し・・・霄・・・!」

 

地べたに転がる霄の死体。

胸に穴が空き、瞳孔が完全に開いている。

 

「ありがとお空!これで死体が手に入るよ~!」

「なっ!?いきなり現れた・・・!」

 

スゥっと目の前に現れたのは古明地こいし、いきなり現れたというよりも気づかなかったという感覚に近い。

このこいしの異常な行動は霄の死体が欲しいだけの行いだった。

 

「さっ早く持って帰ろ~!お空、持ってきて~」

「分かりました」

 

ぴょんぴょんと飛び跳ね歓喜しているこいしはスキップしながら部屋を出ていく

路空が霄を抱き抱え、歩き出したとき。霄がピクリと動いたが路空は気づかない。肩に抱えているせいもあってか背中にもたれ掛かっている霄の胸ががじわじわと再生していくのがわかる。

 

「これでも喰らいな」

「はっ・・・!?」

 

完全に胸が再生した霄は肘で背中の心臓部分を強打する。

路空は気づくのが遅く、モロに食らった背中に打ち込まれた金剛で気を失った。

 

「お空~!なにやってんのも~!・・・えっ?」

「やられる痛みを味わって見たらどうだ?」

 

霄はこいしに急接近したのち、両足首に手を回した。

 

「せーの」

「ふぇ?あわわ!!離せー!」

 

そのまま垂直にこいしを持ち上げた霄は背中で担ぐ。

抵抗しようともがくこいしだがしっかりと掴まれているため身動きができずにただただ霄の背中を殴り逃げようとする。

 

「さとりさん、悪いね」

「えっ・・・」

 

ニコッと笑う霄をみたさとりは恐怖で一歩後ずさった。

天馬も霄の発言や行動が意味不明であった為にただただ見ているだけで何も動けずに居た。

 

「あわっ!?」

 

こいしを両手で掴んだ足を見えない速度で前に振った。

ボロ雑巾を叩きつけるが如く地面の大理石の様なものが抉れる程の速度で叩きつけられたこいしはボールが跳ねるように、川に薄い石を投げ水切りをしたかのように跳ね、壁に激突する。

 

「あ・・・あ・・・こっ・・・こいし・・・」

「おい!・・・霄っどうした!?」

「何でもない、何時ものことだ」

「いや何でもないわけないだろ!?」

 

激しい息切れと手の震え、汗も尋常じゃないほど吹き出ている霄は異常は無いと頑なに否定する。

 

 

「・・・」

 

カバンから注射器を取り出しそれを首に刺し始める。

だんだんと汗は引いてはいないが手の震えが無くなり始めてきた。

一瞬頭を押さえ体がグラリと揺れたが自分の足で倒れるのを阻止した。

 

「一体何を打ったんだ!?」

「別に、ただの鎮静剤だよ。それよりも早く処置をしよう」

 

多分こいしの事だろう

ぐったりと倒れているこいしに寄り添うさとりは涙ぐみながら霄を睨んでいた。

 

「そっちが先に襲ってきたのに睨まれるとはね」

「そ、そういう訳じゃ・・・!」

「ま、いいやその子を渡してくれるかい?全身打撲に脳挫傷によるくも膜下出血の可能性が高い」

「い、嫌!近づかないで!」

「さぁ、早く」

「来ないで・・・!あっ・・・!あっ・・・!」

 

突如、さとりの第三の目がぎょろりと霄を睨む。

能力発動したと思われるさとりは恐怖のどん底に叩きつけられたような顔をした後気絶した。

 

「何が起こったのか分からないけど都合がいい、天馬さん運んでくれ」

「あ、あぁ」

 

さとりを抱え、こいしをおぶさる。さとりの元居た部屋から移動し、騒ぎを聞きつけた燐に説明をしてできるだけ清潔な部屋を案内してもらった。

 

「いいかい?入っちゃダメだよ」

「大丈夫なのか?少し位なら手伝うが・・・」

「・・・医術に関しては無闇に手伝うと足でまといになる」

「そ、そうか」

「こっちはこっちでやるから天馬さんはさとりさんを介抱してあげて」

 

足でまといと言われ少しショックだが霄の言う通りだろう、なんせ命の問題だ。

下手に素人が手を出して死んだ、なんて事になれば大惨事だろうと考えた天馬は潔く霄の指示に従った。

 

「分かった、こっちは任せろ」

「はい、此方もお任せ下さい」

「おう」

 

 

 

 

霄がこいしの手術を始めて一時間が経った。

椅子を二つ並べさとりを寝かせて待っているとゆっくりと起き上がった。

 

「えっ・・・?あっ・・・?」

「お早う、一体どうしたんだ?」

「嫌ぁ!!」

「お、おい・・・落ち着け、な?」

 

椅子から転げ落ち暴れるさとり。

 

「んぐっ!?」

「落ち着け!いいか!この手を離したらゆっくり息を吸って吐くんだぞ?」

「っ!・・・!」

 

パニック症状を引き起こしたさとりの口を手で塞ぎ、壁に押し寄せる。

さとりは一瞬また暴れるような仕草をしたが段々と落ち着きを取り戻し天馬に向かって頷いた。

 

「よしっ・・・よしっ・・・吸って・・・吐いて・・・」

「スゥ・・・ハァ・・・スゥ・・・ハァ・・・」

「落ち着いたか?」

「こ、こんなの初めてよ・・・」

「軽い錯乱症状だ、何があった?」

「・・・」

 

先程能力使用をしたさとりは何かに怯えたように膝を抱え座り込み黙ってしまった。

 

「・・・ありえないわ」

「何?」

「私はさっき第三の目で・・・あの人心の奥底の恐怖が私のこれまで見てきた恐怖を遥かに凌駕している・・・!」

 

ポツポツとさとりは独り言を言うように小声で力無く喋る。

霄の心をまた思い出し時々また怯えるように震えていた。

 

「どんな恐怖だったんだ?」

「・・・言えない、言葉では言い表せないわよ・・・そういえばこいしは?」

「ん?今は霄が手術をしているが・・・」

「なんですって!?止めないと!!」

「おい!」

 

天馬の制止を聞かずに霄が手術をしているドアに手をかけ開くさとり。

その先では机の上に横たわっているこいしと血だらけになた白衣を着た霄。

 

「何をしている?勝手に入ってくるんじゃない」

「今すぐそれをやめなさい!」

「巫山戯るんじゃない、今すぐ出て行け」

「っ・・・!」

「聞いてるのか?出て行けと言ってるんだ」

「わ、わかったわよ・・・」

 

霄の威圧に耐え切れなかったのかすごすごと部屋から出ていくさとり。

そしてなぜか睨まれる天馬。

 

「なんなのよまったく・・・」

「いや、まぁ・・・うん・・・霄を信用しろよ、腕は確かだから」

「今日は散々だわ・・・なんで閻魔王がここに・・・」

 

ブツブツと独り言を呟いたさとりは危ない足取りでよろよろと何処かに消えてしまった、介抱しろと言われた手前目を離すことに躊躇したがさとりの顔を見た天馬は声を掛けるのをやめた。

 

「わけがわかんねぇ・・・ゴホッ!ゴホッ!」

 

タバコを手に取り慣れた手つきで携帯灰皿とライターを取り出し一服しようとした時、喉に強烈な痛みを感じ手で口を押さえた。

 

「・・・畜生っ!!」

 

手に付いた喀血(かっけつ)を服で拭い、タバコを壁に叩きつけた。

 

「なんでこうなった・・・くそっ!」

 

これまで死という概念が程遠かった存在がここまで近くなってきている。

能力は使えない、創造の力も使用不可、時間が経つにつれて体が劣化してきているのを実感する、死が近づいている事を実感するのが恐怖に変わっていく。

 

「覚悟を決めなければならんな・・・・!」

 

薄々まだ助かるのではないか、そんな希望を持っていたがここまで来るとさすがに希望は捨てて置くべき、もし他人がそんな状況だったら尚更だ。

 

「やってくれるぜ・・・!寿命を減らすなんてな・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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霄、こいしを治療する。

 

 

「・・・。」

 

 

 

 

 

霄が手術をしている部屋の前で長時間座っていたためかウツラウツラと睡魔がやって来ていた。

 

腕組みをしながら座ること4時間、さとりも霄に威圧されてから少し項垂れていたが一時間もすると少し立ち直ったのか俺の隣に座ってきた。

 

 

 

「そういえば、こいしのあの第三の目は何故閉じているんだ?」

 

「・・・私とこいしは貴方の知っているとおり覚妖怪、否応なく人や妖怪・・・心がある生き物の全ての思想がサードアイによって見えるのよ。」

 

「あぁ。」

 

「当然心を見られるのは嫌悪感しか無い、表柄笑っていても心の中では憎悪が見えてしまう。」

 

「うむ。」

 

「私は燐や空の様に見られても嫌悪しない、寧ろ逆に喜びを浮かべてくる子達を置いて逃げていたのよ・・・。」

 

「逃げる?憎悪や嫌悪とかいう心からか?」

 

「そう、だけどこいしは昔から私とは対照的に明るい子だった。最初は地底の妖怪達とも仲が良かったのよ。」

 

 

 

ここまで喋った後、何か嫌なことを思い出すかのように俯くさとりは2秒ほど黙った後、俯いたまま喋る。

 

 

 

「最初は私もこいしも、覚妖怪という事を隠していたから地底の妖怪達とも交流がしていました。」

 

「ですがある時、一人の妖怪が私達の種族を聞いてきました。ここで私は覚妖怪とは全く別の種族を言おうとした時、一緒にいたこいしが自分達は覚妖怪という事を言ってしまったのです。」

 

「その瞬間、それまで仲良くしていた妖怪達も皆一斉に目の色を変え、よそよそしくなった後・・・嫌悪や憎悪が一気に見えてしまったのです。」

 

「ふむ・・・。」

 

「私は一度や二度の事では無かったのであまり気にはしていなかったのですが、初めて体験したこいしは信じられないかの様な顔をしていました。」

 

「成る程・・・。」

 

「最初はなぁなぁで終わったのですが、こいしはまだ信じきれておらず次の日に何時もの様に地底の妖怪達に会ったようです。」

 

「会ったよう?」

 

「えぇ、私もこの関係は崩壊したと思っていたので次の日には会おうと思っていませんでした。」

 

「そして、こいしは妖怪達に会い確証を得た・・・自分が嫌われている事に。」

 

「覚妖怪の宿命だな・・・。」

 

「大人の妖怪達は感情を抑制させる事を出来ているのでそこまで酷くは無かったのですが・・・この後の出来事でこいしは目を無理やり閉じてしまったのです。」

 

「この後?」

 

「こいしは大人の妖怪達以外にも深く交流していました、毎日の遊び相手となっていたその子供達です。」

 

 

 

それまで俯いていたさとりは顔を上げ、悔しそうな顔をした後、怒りに燃えるかのように言葉が強くなっていく。

 

 

 

「妖怪と言えど子供は子供、心の抑制や感情は大雑把です。噂を聞いた子供達は嫌悪や憎悪の感情、思ったことを口でこいしを罵倒したようです。気持ちが悪い、裏切り者、果てには暴言等・・・こいしにとっては衝撃的でしたのでしょう、最初に心が見えその後に口で罵られる、心に叩きつけられた攻撃を再度耳によって多重に傷を深く抉る。それまで信じていたこいしも泣きはらした後、一人目を閉じてしまいました。」

 

「ひでぇな・・・。」

 

「こいしは目を閉じた後、何も信じられず、何を信じていいのか分からずそれならばと一人で行動することが多くなりました。今ではこいしは思ったことよりも先に動いてしまう事、抑制ができません。いつもはあんな調子ですが希に普通に喋ることもあれば、丁寧な言葉になる事もあります。」

 

「まるで多重人格だな・・・。」

 

「えぇ、貴方の言う通りだと思います。こいしは多分、あらゆる危害から逃れる為にいくつもの人格を保有しているのでしょう。」

 

「そういう話は聞いたことはあるが・・・。」

 

 

 

うーむ、現実世界の時にテレビでそういう話を見たが実在していたとは・・・。

 

なんとも不思議に思えてくる、こいしの境遇には心底同情するが・・・。

 

しかし死体を集めるのが趣味だなんて珍しい。

 

 

 

「ふぅ・・・何してんだい?終わったよ。」

 

 

 

ドアを開けてまだ居たのかという顔をした霄は結果報告をしてきた。

 

 

 

「治ったのか?」

 

「まあね、傷は浅かったけど中の損傷が酷かったからね。とりあえずはって感じかな。」

 

「・・・。」

 

「なんだい?」

 

 

 

霄をずっと見ているさとりに怪訝そうに質問をするが、そのまま立ち上がりこいしの所に向かっていった。

 

 

 

「こりゃ嫌われたね、とりあえずは切開も小さくできたし外見は綺麗のままだよ。この後にすこしこいしちゃんを借りたいんだけどね?」

 

「借りる?どうするんだ?」

 

「まぁちょっとね、僕は完全に治療したいからね。」

 

「ふむ・・・」

 

 

 

まだこいしの傷を治す所があるかの様にいう霄は色々な器具の入っているバッグを手にした後、椅子に手をかけそのまま寝そべってしまう。

 

 

 

「一旦休憩という事で自分は寝るとするよ、あのカラスもその内自我を取り戻すと思うし。」

 

「お、おう。」

 

 

 

一言二言交わし、すぐに寝息の聞こえる霄を起こさぬようこいしの寝ている部屋に向かう。

 

傷は一つもなく、霄の言ったとおり綺麗だ。

 

何事も無かったかのようにすやすやと眠るこいしに対してまじまじと観察するかの様にあちらこちらを見るさとりに霄の言っていた事を伝える。

 

 

 

「なぁ、霄がこの後もこいしを治療したいらしい。多分まだ完全に治ってないのかもしれん。」

 

「そう・・・。」

 

 

 

うーむ、一見なんにも無いように見えるが・・・。

 

それ程までに霄の医療技術は凄いのかもしれない、永琳も基本は薬専門だから助手とかに欲しがるかもしれん。

 

確定事項はねじ曲げられないのが少し惜しいけどな、俺の寿命も治してもらいたいもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん・・・おはよう。」

 

 

 

伸びをしながらあくびをする霄、自分も霄の隣で腕組みをしながら寝ていたので同じく腕を前に伸ばす。

 

 

 

「おう、よく寝れたか?」

 

「あれから何時間たった?」

 

「そうだな・・・ざっと三時間くらいか?」

 

「いいね、そろそろ起きるか・・・もう起きてるかな?」

 

 

 

こいしの寝ている場所に移動しながら首を回しゴキゴキと音を鳴らしながらベッドに近づいていく。

 

 

 

「うん、おはよう。起きてるかい?」

 

「・・・なんで体が動かないの・・・?」

 

「動かないんじゃなくて動けないんだよ、薬で動けなくしているからね。」

 

 

 

霄の後ろ付いてこいしを見てみると目は開いていた。

 

しかし、目や口以外は動かせず動揺するこいしの髪を一撫でした霄はニコリと笑っているが目が笑っていない。というか霄が笑っているときは何時も目が笑っていない。

 

 

 

「君は、もう一度この目を開かないのかい?」

 

「・・・無理だよ、一度閉じちゃったら開かなくなっちゃったもん」

 

「じゃあ一度開こうとした意思はあったんだね?」

 

「・・・分からない・・・馬鹿にされるのも嫌だし・・・嫌われるのも嫌。」

 

「では何故開こうと?」

 

「それは・・・えっと・・・。」

 

「妖怪差別の時代はもう無いと自覚してきているんじゃないか?口では嫌われることや馬鹿にされるのが嫌だと喋っていても、もう目を閉じた自分のアイデンティティが崩れるのを君は恐れているんじゃない?」

 

「ち・・・!違うよ!!」

 

「では・・・何故?」

 

「もういいでしょ!早く解いてよ!」

 

 

 

だいぶ薬の効果が薄れてきたのか、首が動かせるようになったこいしは必死にこの場から逃げようとするが体が動かせないため無駄な足掻きにしか見えない。

 

 

 

「ふうん・・・僕なら治せると思うけど・・・どうだい?」

 

「えっ?」

 

「君がもう一度、目を開かせたいという意識があるなら。僕は手を貸してもいいよ、だけど手助けはしないよ。最終的に開かせるのは君なんだから。」

 

「ほ・・・?ほんとに?」

 

「本当だ。」

 

 

 

少し目を閉じ、考えるこいしに対して霄は口だけがニコニコとしており非常に不気味だ。しかしこいしはそれが好きなのかどうかは分からないが霄が笑うたびにこいしも顔が綻ぶ。

 

 

 

「分かった・・・・お兄さんに任せるよ。」

 

「随分信用してくれるじゃないか、嬉しいね。」

 

 

 

こいしを抱き上げ、椅子に座らせると「目を閉じて。」と顔に手をやる。

 

素直に従ったこいしは途端に力が抜け、生気を抜かれたかのように体が無気力状態になりだらんした。

 

 

 

「天馬さん、離れてて。後、何があっても僕に触らないでね。」

 

「あ、あぁ。」

 

 

 

目を閉じた霄はこいしの胸に手を当てた、直後霄の顔から大量の汗が流れ出し息切れが激しくなる。

 

 

 

「ああ、構わない。やれ。」

 

「何が・・・うおっ!?」

 

「ッッ・・・」

 

 

 

霄の口から意味不明な言葉が発せられた瞬間とき何か爆発したかの様な音がした後、霄の足が太ももから下にかけて吹っ飛んだ。

 

血の飛沫を舞わせた足は跡形もなく散らばり、骨や皮膚の残骸が床を汚していった。

 

 

 

「・・・」

 

「おい!?大丈夫か!?」

 

 

 

未だに足から血を大量に流している霄は、足がなくなったのにも関わらずこいしの胸から手を離さず、片足で膝をつき体制を動かさずにいた。

 

足から異常な程血を流している霄を見て、応急処置でもしておこうと止血のために縛ろうとしたが霄の「何があっても僕に触らないで」という言葉が駆け巡り、触れずにいた。

 

 

 

「やばい・・・!大体人間の血は4ℓ・・・しかし半分近く失血したら死ぬ・・・!この血の量だと十分か二十分しか持たん・・・!」

 

 

 

自分の細胞を貼り付けようとしたが、既に能力が失っていることに再度気づき何も出来ないまま、ただ見ていることしかできなかった。

 

それがあまりにも不甲斐ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わった・・・」

 

「本当か!?じゃあ早く足を直せ!」

 

 

 

20分後、そろそろ危ないと思った頃に目を開けた霄は「ふぅ・・・」と一息ついてから医療道具まで這いずり、中の道具を取り出す。

 

思っていた器具とは違い、霄の取り出した器具は細い糸と鋭利な針であった。

 

 

 

「はぁ、まったく。嫌になるね。」

 

「何をしているんだ・・?再生すればいいじゃねぇか!」

 

「・・・?何を言っている?僕は君とは違って再生できんよ」

 

「は・・・!?いや・・・!空の時は・・・!」

 

「あぁあれね、あれは僕の身代わり人形。術式を用いて一回切りだ。」

 

「なら何故その身代わり人形ってやつを使わねぇんだ!?」

 

「あれは攻撃を受ける時だけの式神みたいなもんだ、自我を持つわけじゃない。あの子に使った術式は自我が無いとできない。」

 

 

 

っと、何事も無かったかのように麻酔もしていないのに痛くないかの様に自分の皮膚と皮膚を細かく繋ぎ合わせていく。

 

ブツリブツリと皮膚の下の肉を裂く音がものすごく気持ち悪い。

 

 

 

「僕もあの子も一緒みたいなもんだよ、あの子は自ら偏執病パラノイアになった。僕はパラノイアを押し付けられた。それだけ」

 

「パ・・・偏執病パラノイア・・・?」

 

「そっパラノイア。いわゆる昔の君と一緒だね。自己中心。それも偏執病パラノイアに当てはまる。」

 

「なっ・・・!」

 

「僕は失感情症アレキシサイミアに近いパラノイア、精神的を、感情を、感覚を、全て悪魔が持っていった。」

 

「何を言っている・・・?」

 

 

 

一切感情を顔に出さず、自分の体を縫っている霄は諦めるかの様に呟く。

 

 

 

「今の自分の感情は自分が自ら考え、表情に出しているだけ。人間の様に怒る表情をしたとしても、本心は怒りの感情は無い。嫉妬、妬み、不快、そういう感情がない。」

 

「どこぞの学園コメディの宇宙人みたいな事を言うな!」

 

「・・・?まあ、喜怒哀楽という感情が無いって事だ。」

 

「それを悪魔とやらに・・・?」

 

「そうだ。」

 

 

 

それ以上何も聞くなという仕草をした後、縫い終わった糸をバチンとメスで大きな音を立てて切った。

 

 

 

「おっとっと?」

 

「おっおい、大丈夫なのか?」

 

 

 

さらに取り出した医療器具の中に、用意していたとばかりに伸縮できる杖を伸ばし、立ち上がる。

 

するとよろよろと壁にもたりかかるが杖で体のバランスを取り戻す。

 

 

 

「血を流しすぎた、貧血だねこりゃ。」

 

「動けるのか・・・?」

 

「その内慣れるさ、利き足じゃないだけマシだね。」

 

「足が無くなったってのに悠長だなおい・・・。」

 

「あ?何言ってんだ?感情が無いからなんとも思えないんだよ、それくらい理解しろよ。」

 

「はっ・・・?」

 

 

 

目をキツク、此方を睨んだ霄は感情が無いことが嘘みたいに怒りの感情をぶつけてくる。さらには煽る様な口調で。

 

 

 

「なーんてね、そこまでは思わないけど感情ってのがないからね。悲しくても悲しまないんだねこれが。」

 

「そ、そうか・・・。」

 

 

 

何かいけないこと聞いた様な気がしたのは何故だろう。

「・・・。」

 

 

 

 

 

霄が手術をしている部屋の前で長時間座っていたためかウツラウツラと睡魔がやって来ていた。

 

腕組みをしながら座ること4時間、さとりも霄に威圧されてから少し項垂れていたが一時間もすると少し立ち直ったのか俺の隣に座ってきた。

 

 

 

「そういえば、こいしのあの第三の目は何故閉じているんだ?」

 

「・・・私とこいしは貴方の知っているとおり覚妖怪、否応なく人や妖怪・・・心がある生き物の全ての思想がサードアイによって見えるのよ。」

 

「あぁ。」

 

「当然心を見られるのは嫌悪感しか無い、表柄笑っていても心の中では憎悪が見えてしまう。」

 

「うむ。」

 

「私は燐や空の様に見られても嫌悪しない、寧ろ逆に喜びを浮かべてくる子達を置いて逃げていたのよ・・・。」

 

「逃げる?憎悪や嫌悪とかいう心からか?」

 

「そう、だけどこいしは昔から私とは対照的に明るい子だった。最初は地底の妖怪達とも仲が良かったのよ。」

 

 

 

ここまで喋った後、何か嫌なことを思い出すかのように俯くさとりは2秒ほど黙った後、俯いたまま喋る。

 

 

 

「最初は私もこいしも、覚妖怪という事を隠していたから地底の妖怪達とも交流がしていました。」

 

「ですがある時、一人の妖怪が私達の種族を聞いてきました。ここで私は覚妖怪とは全く別の種族を言おうとした時、一緒にいたこいしが自分達は覚妖怪という事を言ってしまったのです。」

 

「その瞬間、それまで仲良くしていた妖怪達も皆一斉に目の色を変え、よそよそしくなった後・・・嫌悪や憎悪が一気に見えてしまったのです。」

 

「ふむ・・・。」

 

「私は一度や二度の事では無かったのであまり気にはしていなかったのですが、初めて体験したこいしは信じられないかの様な顔をしていました。」

 

「成る程・・・。」

 

「最初はなぁなぁで終わったのですが、こいしはまだ信じきれておらず次の日に何時もの様に地底の妖怪達に会ったようです。」

 

「会ったよう?」

 

「えぇ、私もこの関係は崩壊したと思っていたので次の日には会おうと思っていませんでした。」

 

「そして、こいしは妖怪達に会い確証を得た・・・自分が嫌われている事に。」

 

「覚妖怪の宿命だな・・・。」

 

「大人の妖怪達は感情を抑制させる事を出来ているのでそこまで酷くは無かったのですが・・・この後の出来事でこいしは目を無理やり閉じてしまったのです。」

 

「この後?」

 

「こいしは大人の妖怪達以外にも深く交流していました、毎日の遊び相手となっていたその子供達です。」

 

 

 

それまで俯いていたさとりは顔を上げ、悔しそうな顔をした後、怒りに燃えるかのように言葉が強くなっていく。

 

 

 

「妖怪と言えど子供は子供、心の抑制や感情は大雑把です。噂を聞いた子供達は嫌悪や憎悪の感情、思ったことを口でこいしを罵倒したようです。気持ちが悪い、裏切り者、果てには暴言等・・・こいしにとっては衝撃的でしたのでしょう、最初に心が見えその後に口で罵られる、心に叩きつけられた攻撃を再度耳によって多重に傷を深く抉る。それまで信じていたこいしも泣きはらした後、一人目を閉じてしまいました。」

 

「ひでぇな・・・。」

 

「こいしは目を閉じた後、何も信じられず、何を信じていいのか分からずそれならばと一人で行動することが多くなりました。今ではこいしは思ったことよりも先に動いてしまう事、抑制ができません。いつもはあんな調子ですが希に普通に喋ることもあれば、丁寧な言葉になる事もあります。」

 

「まるで多重人格だな・・・。」

 

「えぇ、貴方の言う通りだと思います。こいしは多分、あらゆる危害から逃れる為にいくつもの人格を保有しているのでしょう。」

 

「そういう話は聞いたことはあるが・・・。」

 

 

 

うーむ、現実世界の時にテレビでそういう話を見たが実在していたとは・・・。

 

なんとも不思議に思えてくる、こいしの境遇には心底同情するが・・・。

 

しかし死体を集めるのが趣味だなんて珍しい。

 

 

 

「ふぅ・・・何してんだい?終わったよ。」

 

 

 

ドアを開けてまだ居たのかという顔をした霄は結果報告をしてきた。

 

 

 

「治ったのか?」

 

「まあね、傷は浅かったけど中の損傷が酷かったからね。とりあえずはって感じかな。」

 

「・・・。」

 

「なんだい?」

 

 

 

霄をずっと見ているさとりに怪訝そうに質問をするが、そのまま立ち上がりこいしの所に向かっていった。

 

 

 

「こりゃ嫌われたね、とりあえずは切開も小さくできたし外見は綺麗のままだよ。この後にすこしこいしちゃんを借りたいんだけどね?」

 

「借りる?どうするんだ?」

 

「まぁちょっとね、僕は完全に治療したいからね。」

 

「ふむ・・・」

 

 

 

まだこいしの傷を治す所があるかの様にいう霄は色々な器具の入っているバッグを手にした後、椅子に手をかけそのまま寝そべってしまう。

 

 

 

「一旦休憩という事で自分は寝るとするよ、あのカラスもその内自我を取り戻すと思うし。」

 

「お、おう。」

 

 

 

一言二言交わし、すぐに寝息の聞こえる霄を起こさぬようこいしの寝ている部屋に向かう。

 

傷は一つもなく、霄の言ったとおり綺麗だ。

 

何事も無かったかのようにすやすやと眠るこいしに対してまじまじと観察するかの様にあちらこちらを見るさとりに霄の言っていた事を伝える。

 

 

 

「なぁ、霄がこの後もこいしを治療したいらしい。多分まだ完全に治ってないのかもしれん。」

 

「そう・・・。」

 

 

 

うーむ、一見なんにも無いように見えるが・・・。

 

それ程までに霄の医療技術は凄いのかもしれない、永琳も基本は薬専門だから助手とかに欲しがるかもしれん。

 

確定事項はねじ曲げられないのが少し惜しいけどな、俺の寿命も治してもらいたいもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん・・・おはよう。」

 

 

 

伸びをしながらあくびをする霄、自分も霄の隣で腕組みをしながら寝ていたので同じく腕を前に伸ばす。

 

 

 

「おう、よく寝れたか?」

 

「あれから何時間たった?」

 

「そうだな・・・ざっと三時間くらいか?」

 

「いいね、そろそろ起きるか・・・もう起きてるかな?」

 

 

 

こいしの寝ている場所に移動しながら首を回しゴキゴキと音を鳴らしながらベッドに近づいていく。

 

 

 

「うん、おはよう。起きてるかい?」

 

「・・・なんで体が動かないの・・・?」

 

「動かないんじゃなくて動けないんだよ、薬で動けなくしているからね。」

 

 

 

霄の後ろ付いてこいしを見てみると目は開いていた。

 

しかし、目や口以外は動かせず動揺するこいしの髪を一撫でした霄はニコリと笑っているが目が笑っていない。というか霄が笑っているときは何時も目が笑っていない。

 

 

 

「君は、もう一度この目を開かないのかい?」

 

「・・・無理だよ、一度閉じちゃったら開かなくなっちゃったもん」

 

「じゃあ一度開こうとした意思はあったんだね?」

 

「・・・分からない・・・馬鹿にされるのも嫌だし・・・嫌われるのも嫌。」

 

「では何故開こうと?」

 

「それは・・・えっと・・・。」

 

「妖怪差別の時代はもう無いと自覚してきているんじゃないか?口では嫌われることや馬鹿にされるのが嫌だと喋っていても、もう目を閉じた自分のアイデンティティが崩れるのを君は恐れているんじゃない?」

 

「ち・・・!違うよ!!」

 

「では・・・何故?」

 

「もういいでしょ!早く解いてよ!」

 

 

 

だいぶ薬の効果が薄れてきたのか、首が動かせるようになったこいしは必死にこの場から逃げようとするが体が動かせないため無駄な足掻きにしか見えない。

 

 

 

「ふうん・・・僕なら治せると思うけど・・・どうだい?」

 

「えっ?」

 

「君がもう一度、目を開かせたいという意識があるなら。僕は手を貸してもいいよ、だけど手助けはしないよ。最終的に開かせるのは君なんだから。」

 

「ほ・・・?ほんとに?」

 

「本当だ。」

 

 

 

少し目を閉じ、考えるこいしに対して霄は口だけがニコニコとしており非常に不気味だ。しかしこいしはそれが好きなのかどうかは分からないが霄が笑うたびにこいしも顔が綻ぶ。

 

 

 

「分かった・・・・お兄さんに任せるよ。」

 

「随分信用してくれるじゃないか、嬉しいね。」

 

 

 

こいしを抱き上げ、椅子に座らせると「目を閉じて。」と顔に手をやる。

 

素直に従ったこいしは途端に力が抜け、生気を抜かれたかのように体が無気力状態になりだらんした。

 

 

 

「天馬さん、離れてて。後、何があっても僕に触らないでね。」

 

「あ、あぁ。」

 

 

 

目を閉じた霄はこいしの胸に手を当てた、直後霄の顔から大量の汗が流れ出し息切れが激しくなる。

 

 

 

「ああ、構わない。やれ。」

 

「何が・・・うおっ!?」

 

「ッッ・・・」

 

 

 

霄の口から意味不明な言葉が発せられた瞬間とき何か爆発したかの様な音がした後、霄の足が太ももから下にかけて吹っ飛んだ。

 

血の飛沫を舞わせた足は跡形もなく散らばり、骨や皮膚の残骸が床を汚していった。

 

 

 

「・・・」

 

「おい!?大丈夫か!?」

 

 

 

未だに足から血を大量に流している霄は、足がなくなったのにも関わらずこいしの胸から手を離さず、片足で膝をつき体制を動かさずにいた。

 

足から異常な程血を流している霄を見て、応急処置でもしておこうと止血のために縛ろうとしたが霄の「何があっても僕に触らないで」という言葉が駆け巡り、触れずにいた。

 

 

 

「やばい・・・!大体人間の血は4ℓ・・・しかし半分近く失血したら死ぬ・・・!この血の量だと十分か二十分しか持たん・・・!」

 

 

 

自分の細胞を貼り付けようとしたが、既に能力が失っていることに再度気づき何も出来ないまま、ただ見ていることしかできなかった。

 

それがあまりにも不甲斐ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わった・・・」

 

「本当か!?じゃあ早く足を直せ!」

 

 

 

20分後、そろそろ危ないと思った頃に目を開けた霄は「ふぅ・・・」と一息ついてから医療道具まで這いずり、中の道具を取り出す。

 

思っていた器具とは違い、霄の取り出した器具は細い糸と鋭利な針であった。

 

 

 

「はぁ、まったく。嫌になるね。」

 

「何をしているんだ・・?再生すればいいじゃねぇか!」

 

「・・・?何を言っている?僕は君とは違って再生できんよ」

 

「は・・・!?いや・・・!空の時は・・・!」

 

「あぁあれね、あれは僕の身代わり人形。術式を用いて一回切りだ。」

 

「なら何故その身代わり人形ってやつを使わねぇんだ!?」

 

「あれは攻撃を受ける時だけの式神みたいなもんだ、自我を持つわけじゃない。あの子に使った術式は自我が無いとできない。」

 

 

 

っと、何事も無かったかのように麻酔もしていないのに痛くないかの様に自分の皮膚と皮膚を細かく繋ぎ合わせていく。

 

ブツリブツリと皮膚の下の肉を裂く音がものすごく気持ち悪い。

 

 

 

「僕もあの子も一緒みたいなもんだよ、あの子は自ら偏執病パラノイアになった。僕はパラノイアを押し付けられた。それだけ」

 

「パ・・・偏執病パラノイア・・・?」

 

「そっパラノイア。いわゆる昔の君と一緒だね。自己中心。それも偏執病パラノイアに当てはまる。」

 

「なっ・・・!」

 

「僕は失感情症アレキシサイミアに近いパラノイア、精神的を、感情を、感覚を、全て悪魔が持っていった。」

 

「何を言っている・・・?」

 

 

 

一切感情を顔に出さず、自分の体を縫っている霄は諦めるかの様に呟く。

 

 

 

「今の自分の感情は自分が自ら考え、表情に出しているだけ。人間の様に怒る表情をしたとしても、本心は怒りの感情は無い。嫉妬、妬み、不快、そういう感情がない。」

 

「どこぞの学園コメディの宇宙人みたいな事を言うな!」

 

「・・・?まあ、喜怒哀楽という感情が無いって事だ。」

 

「それを悪魔とやらに・・・?」

 

「そうだ。」

 

 

 

それ以上何も聞くなという仕草をした後、縫い終わった糸をバチンとメスで大きな音を立てて切った。

 

 

 

「おっとっと?」

 

「おっおい、大丈夫なのか?」

 

 

 

さらに取り出した医療器具の中に、用意していたとばかりに伸縮できる杖を伸ばし、立ち上がる。

 

するとよろよろと壁にもたりかかるが杖で体のバランスを取り戻す。

 

 

 

「血を流しすぎた、貧血だねこりゃ。」

 

「動けるのか・・・?」

 

「その内慣れるさ、利き足じゃないだけマシだね。」

 

「足が無くなったってのに悠長だなおい・・・。」

 

「あ?何言ってんだ?感情が無いからなんとも思えないんだよ、それくらい理解しろよ。」

 

「はっ・・・?」

 

 

 

目をキツク、此方を睨んだ霄は感情が無いことが嘘みたいに怒りの感情をぶつけてくる。さらには煽る様な口調で。

 

 

 

「なーんてね、そこまでは思わないけど感情ってのがないからね。悲しくても悲しまないんだねこれが。」

 

「そ、そうか・・・。」

 

 

 

何かいけないこと聞いた様な気がしたのは何故だろう。

 

この胸のとっつきがどうも取れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霄、お前は本当になんなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、閻魔王再起する

「んで・・・?これが目を開いた結果か?」

 

「うむ、いい傾向だ。」

 

「ちょっと!これはどういうことよ・・・!」

 

 

 

にこにこと猫の様にじゃれあうこいしはさとりに抱きついてはお姉ちゃんお姉ちゃんとしきりに言う。

 

 

 

「心を開き久しぶりの感情に高ぶっている証拠だ、直に冷静を取り戻す。」

 

「ほ~・・・。」

 

 

 

確かにこいしの第三の目は開いてはいるが・・・。

 

 

 

「・・・これでいいのか?」

 

 

 

こいしにとって、異常こそが健常。

 

目を開かせるということはこいしそのものを崩すという事かもしれない。

 

そう思うと口が勝手に呟いていた。

 

 

 

「・・・これでいいんですよ。」

 

 

 

目が笑っていない笑顔で、霄はこう返した。

 

 

 

「彼女は、目を開くことを多少なりとも望んでいた。僕はそれを手伝い、彼女が自分で目を開いた。彼女が望んだことです。」

 

「そうだな、お前の言う通りだ。んじゃ行くか。」

 

「ええ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても霄、杖を上手く使えてるな。

 

普通に歩いてるのに同じ速度でついてくるとは・・・。

 

 

 

「歩き辛くないのか?」

 

「ん?それは辛いだろうけど・・・別に?」

 

「そうか。」

 

 

 

それ以上は何も言うなというジェスチャーをした後、目の前を見ろと目で説明してくる。

 

 

 

「三途の川だな、えーっと・・・ここら辺に・・・あっ。」

 

「んっ?」

 

 

 

いたいた、相変わらず目に見えないところでさぼって居やがる。

 

その正体は赤髪でナイスバディな女死神、小野塚小町だ。

 

 

 

「おい、おーい・・・。」

 

「くか~・・・。」

 

 

 

木に凭れ、腕組みをしながらウツラウツラと機嫌良く寝ている。

 

木の枝で少しつついてみたが手でそれを払いのける。

 

 

 

「おーい、起きないと映姫様が怒るぞ~・・・。」

 

「ん・・・ぅ・・・?・・・はっ!映姫様!これはですねー!決して寝ていたわけではなく!そう!少しばかり疲れたので休憩を・・・っと?」

 

「よう、おはよう。」

 

「お・・・おはようございます・・・。」

 

 

 

俺を映姫と勘違いして必死に言い訳をするが俺だと気づくと顔を真っ青にしながら

 

ニヘラと笑い挨拶を返す。ちなみに自分の顔は天使の様な笑顔である。

 

 

 

「『休憩』している時に悪いんだけど、裁判所まで送ってくれるかい?」

 

「は・・・はい・・・。」

 

 

 

休憩という言葉を強くし、川を渡して欲しいとお願いすると快く承諾してくれた。

 

しかも素早い動きで。

 

 

 

「ど、どうぞ・・・。」

 

「いや~すまんね本当、『休憩』してるとは思わなくてなぁ・・・なぁ霄君?」

 

「えぇ、本当に『休憩』している所なので心苦しいですがお願いします。」

 

「うんうん、自分もそこまで鬼じゃないから『休憩』するなとは言わんがね~。」

 

「『休憩』ですから、仕事中に睡眠等言語道断ですもんね。」

 

「・・・。」

 

 

 

もうやめてくれ、言わないでくれとばかりに少し泣きそうな小町はゆっくりと船を動かして俺達の顔色を伺いながら進んでいく。

 

小町がチラッとこちらの顔を見れば、それに答えるように笑顔の顔をつくると直ぐに前を向く。

 

そんなこんなでいつもよりは数倍はやく裁判所に着いた。多分早めてくれたのであろう。

 

 

 

「着きました・・・です・・・。」

 

「あぁ、ありがとう。それじゃあな。」

 

「ありがとうございます、それでは。」

 

 

 

船を降りるとほっとしたような顔で小町は元の場所に戻ろうとするがここで一度呼び止めた。

 

 

 

「あぁ、小町さん。」

 

「あ、はい・・・。」

 

 

 

小町が船に乗り、出そうとした時に声をかけると肩をビクンと飛び跳ねさせ、首をゆっくりこちらに回し真っ青な顔をする。

 

 

 

「減給ね。」

 

「そっそんなぁー・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色々あったが遂に裁判所の中に入れた。

 

受付も何時も通り小町と違ってキチンと対応をしていて安心する。

 

 

 

「おはよう、通るぞ~。」

 

「おはようございます、どうぞ。」

 

 

 

受付を過ぎ、廊下に入り幾多もある部屋を覗きながらゆっくりと閻魔王室に向かう。うむ、どうやら秤が頑張ってくれているお陰で前となんら変わっていない。

 

怠慢になっていると少し予想はしたがそうでもなく小町だけのようだ。

 

 

 

 

 

「しかしなんで喪服・・・?」

 

 

 

おかしい、俺がいない間になぜか死神達が喪服姿になっている。

 

ここで言うのもおかしい話だが誰か死んだのか?

 

 

 

「天馬さーん!」

 

 

 

すると、後ろから聞いたことのある声が近くなってくる。

 

それに気づき後ろに振り返ると実に喪服が似合っている女性が小走りしながらこちらに向かってくるのを見て取れる。

 

 

 

「天馬さん!お久しぶりです!!」

 

「おう計ちゃん、おひさ。」

 

「お身体はもう大丈夫なんですか~?・・・?そちらの方は?」

 

「あぁ、こいつは霄っていうんだ。・・・?」

 

「・・・どうも。」

 

 

 

計を目で捉えた瞬間、霄は顔を見せないように後ろに向きそのまま挨拶を交わした。顔を見せない様にっていうのは自分の推測だが・・・。

 

 

 

「そういや俺がいない間になんで皆喪服なの?」

 

「あ、そうなんですよそれ!本部からの御達しで新しい制服が支給されたんです!基本黒で統一していたのですが何故かいきなり喪服に変わったんですよ!天馬さんの制服も閻魔王室に用意されているのでそれを着てくださいだそうです!」

 

「ふ~ん・・・分かったよ、またねぇ。」

 

「はい!お疲れさまです~!」

 

 

 

うーん天使かこの死神は。

 

笑顔を振りまく天使は手を振りながら元の場所に戻っていってしまった。

 

 

 

「んで?なんでお前は顔を隠してるんだ?」

 

「なんの事でしょう?」

 

「あ~・・・はいはい、もういいわ。」

 

 

 

何がしたいのか良く分からない、本当に謎だらけだ。

 

 

 

「うーむしかし喪服か・・・なんの意味があるんだ?」

 

「時代は進歩しているってことですね、現実でもこの世界でも。」

 

「現実・・・?博麗結界の外に行ったことあるのか?」

 

「ん・・・?いや・・・?無いよ?」

 

「・・・。」

 

 

 

霄は何かを隠している、これは確実だ。

 

しかし俺はさとりでもないから霄の考えている事は読めない。

 

いずれ暴きたい所だ。

 

 

 

「うむ、まぁいい。開けるぞ?」

 

「あぁ。」

 

 

 

閻魔王室前にやっと着き、ドアに手を掛ける。

 

この質感、懐かしい。重厚な重みがある。

 

 

 

「ういっす、おはよう!」

 

 

 

閻魔王室には三つの椅子がある。二つは閻魔王の秘書のための椅子である。

 

そしてその前には机があり、高級感のある木の素材でできた机だ。

 

正面の机は俺、その横に二つの机で挟むような形だ。

 

右は秤、左は計と決められている。

 

 

 

「おう・・・・お早う。」

 

「おう。」

 

 

 

右の椅子が自分の方向に向き、座っている秤が立ち上がる。

 

 

 

「悪かったな、お前が閻魔王代理してくれたんだろ?」

 

「いや、元はとはいえば俺のせいだからな。一つ言わせてもらっていいか?」

 

「お前のせい・・・?何だ?」

 

「済まなかった!」

 

「へっ?」

 

 

 

突然秤が土下座をしはじめ、それに動揺して素っ頓狂な声を出してしまう。

 

いきなりの行動に霄も少し動揺したのか閻魔王室から出て行ってしまった。

 

 

 

「俺が天音の体が弱い事に甘えてお前に八つ当たりをしてしまった、そのせいでお前は・・・幻想郷の外に出てしまったと聞いた。済まなかった!」

 

「ちょっとまて、お前のせいで幻想郷の外にでたってどういう事だ?詳しくおしえてくれ。」

 

 

 

秤を立たせ、事情を聞いてみると秤の嫁さん、天音さんが陣痛で気を失い、一度入院する事になったらしい。それで居ても立ってもいられなくなった秤は天音さんに付き添ったが意識を一旦取り戻した天音さんによって仕事復帰をさせられた。

 

しかし気が動転したまま仕事に復帰したせいで混乱している秤に俺も焦り、俺が記憶削除機とやらを創造し、それを手渡したのだがそれを払い除けた拍子に俺がそれを使用してしまったせいで俺の記憶が消えたらしい。後の事は八雲紫が俺を連れて行き後は何も知らせられず、俺に近い力が察知出来た事から連の所に着いた・・・という事らしい。

 

 

 

「なるほど・・・紫ィ!!!出てきやがれ!!」

 

 

 

絶対に見ているだろうと確信した俺は、紫に出てくるように大声で叫ぶとすこし自重気味にゆっくりとスキマが目の前に開きだした。

 

 

 

「は・・・はぁい天馬、何か用かしら・・・?」

 

「おい、こっちを向けババア。」

 

「バ・・・ババアですって!?」

 

 

 

目をそらしながら扇子で口を隠す紫は私のせいじゃないと言いたげな顔をするがそんな事はどうでもいい。少しイラつきが出て暴言が出てしまい紫が前のめりになりながら俺の目を見てくる。

 

 

 

「天馬!もう一回言ってみなさい!」

 

「うるせー、お前俺が記憶喪失になった後何をしたんだ?」

 

「そ、それは・・・まぁそれはまたね?また今度お話しましょ?ね?」

 

「霄ァ!捕まえろ!!」

 

「・・・はい。」

 

「ちょっ・・・!賢者の大妖怪に敵うとで思うの!?」

 

 

 

紫がスキマの中に逃げ込もうとしたので霄を呼ぶとすぐに縁に追いつく。

 

スキマが閉まる直前に霄が何かの札と腕をスキマの中にめり込ませた。

 

 

 

「う・・・!ぁ・・・!な・・・!何をしたのよ・・・!」

 

「うん、まぁ大妖怪クラスでも効く痺れ札ってやつだね、妖力根こそぎ取っちゃうからいまは人間と同等か、それ以下の力しかだせないよ。」

 

 

 

腕をめりこませた瞬間異様な光を放った札はスキマのなかで花火のように光り、スキマが紫を強制的に追い出した。紫も痺れたように寝そべってあまり動けないように見える。

 

 

 

「こんな術式の札なんて・・・!先代巫女でも作れなかったのに・・・!」

 

「いやまぁ、すこしこういった関係の術式は御法度だからね。」

 

「くっ・・・・!貴方を侮っていたわ・・・!」

 

「さぁて紫ィ、真相を教えてもらおうじゃねぇか・・・・。」

 

「・・・・嫌よ。」

 

「なにぃ・・・?おい霄、拘束しろ。」

 

「はい。」

 

「えっ?っちょ!?キャァッ!?何するのよ?!」

 

 

 

霄がもう一枚札を取り出し、紫の傍の床に貼り付けると魔法陣のような物を展開し辺り一面赤い布が紫の腕と足を縛り上げる。まるでキリストのように手を大きく広げていた。

 

 

 

「さぁ、最後の忠告だ。もう一度言うぞ・・・真相を教えろ。」

 

「い・・・嫌よ・・・。」

 

「ならば死ねい!」

 

 

 

獲物を閻魔王の机から取り出すと紫はゾッとしたような顔をする。

 

霄はその獲物を見ると死んだような顔で此方を見てくる、秤も同じ。

 

 

 

「な・・・なんてものを持ってるのよ・・・!まさかそれで私を・・・!?」

 

「観がいいなぁ、紫ィ。これでお前を傷めつけて吐かせてやるよ。」 

 

 

 

俺の手に持っているのは鋭利なものでも鈍器でも無い、細い棒の先に付いたけむくじゃら、これだけ。

 

 

 

「さあ、アンラッキータイムの時間だ紫ィ。」

 

「いやあああああああああっはははは!!!」

 

 

 

次の朝になるまで、紫の笑い声がこだました。

 

 

 

 

 

 



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マヨヒガで、天馬は。

「言う気になったか紫?」

 

 

 

朝方、拘束されながら痙攣している紫に問う。

 

 

 

「えぇ、い、言うわよ、言うからもう、やめて・・・。」

 

 

 

脇、足の裏、腰、膝。あらゆる所を攻めやっと心が折れた紫は息を切らしながら真相を吐く。

 

何故、記憶を亡くした俺を外の世界にやったのか。何故今更この世界に戻れたのか。

 

 

 

「博麗結界が・・・貴方を拒絶し始めたのよ・・・あまりにも勝手な行動を・・・してるから・・・。だから・・・やむ無く一旦外の世界に出させたのよ・・そしたら貴方どっかいっちゃって・・・数時間で終わる作業が貴方を探しだし戻す作業に転向した訳・・・だけど・・・貴方が外の世界に繋がっている博麗神社の何かを起動したお陰で戻ってこれたってわけ・・・。」

 

 

 

全てを言った後、紫は攻められるのをやめた反動か、それともくすぐられて大笑いした疲労のためか拘束されながら痙攣をしている。

 

 

 

「なんともくだらん事を・・・。」

 

 

 

正直呆れる、ここまで大事になった理由がこれだけとは・・・なんとも悲しくなってくる。

 

怒り等そんなのは通り越して呆れて物も言えなくなってくる。

 

 

 

「ところで・・・何故療養中のお前が此処に来たんだ?」

 

「ん・・・?あぁ、ちょっとな。野暮用だ。秤、悪いが一旦部屋から出てくれるか?」

 

「うん?まぁいいが・・・。」

 

 

 

不思議な顔で閻魔王室から出る秤を見た後、閻魔王の机に向かう。

 

 

 

「ふう・・・この机と椅子とも最後だな。」

 

 

 

一分程椅子に座り、閻魔王室を眺める。

 

 

 

「所詮、俺はただの人間さ。妖怪でも、ましてや神ですらない。」

 

 

 

机の物を全部出し、要らないものと要るものを分けた後ゴミ箱に捨てた。

 

そして予め部屋の隅に置いてある雑巾を手に取り机の上や埃、隅々まで拭った後紙を広げる。

 

 

 

「う~む・・・どう書いたもんか・・・一身上の都合とでも書いておけばいいか。」

 

「何をしようと?」

 

「ん?立つ鳥跡を濁さずとも言うだろ?」

 

「・・・。」

 

 

 

辞表と書いた封筒の中に入れてっと、机の真ん中にでも置いておけば秤も気づくだろ。

 

一時の仕事であったが楽しかった、また生き帰り輪廻転生したらまたここで働くのも乙なものだ。

 

 

 

「さ、そろそろ移動するか?紫、これに座標を書いておいたから此処にスキマで転送してくれ。」

 

「わ・・・分かったわ・・・」

 

「僕も付いていきますよ。」

 

「あぁ。」

 

 

 

さらば地獄、さらば閻魔王。俺が死んだらまた世話になると思うぜ。それまではお楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天馬さん、この空間の先に尋常ではない程の殺気が感じられますが。」

 

「え?分からん・・・なんも感じられん。」

 

「・・・それは人間が本能として逃げようとしている証、この殺意ですと一人だけ。」

 

 

 

気絶した紫を抱えていた霄がスキマの出口に向き、降り立つ。

 

指定していた場所はマヨヒガ近くの桜並木の場所、前からここが気に入っていた。

 

最後はやっぱりここにいたいと思うほどに桜が舞、散っていく。これの輪廻。

 

 

 

「ふむ、やはり貴方でしたか。一度現実世界に強制送還させたはずなんですがね。」

 

「くクっ・・・残念だったな、お前に戻される前に一枚。お前から札を盗んでおいた。」

 

「あらら・・・随分手癖が悪いですね、これは予想外。」

 

 

 

片手で頭を押さえたははと笑う霄の目の前には、俺の寿命を減らした張本人、蓮がいた。

 

 

 

「てめぇこのクズ野郎!出やがったな!」

 

「ぁん?何だ、まだ生きてたのか。とっくに死んでると思ってたがな。」

 

 

 

霄とはまた違う不気味な笑い方をする蓮に向かって殴りかかろうとすると霄が杖で行く手を阻んでくる。

 

 

 

「天馬さん、貴方じゃあ無理だよ。」

 

「何だと!?霄!!てめぇ邪魔する気か!?」

 

「落ち着きなさい、興奮するのも分かりますが冷静になるのも大事だよ。ねぇ?蓮さん?」

 

「ふ~ん・・・俺も一緒だって言いたげな顔してるじゃねぇか?」

 

「そうでしょう?一時の感情に任せ、自分の存在すら危ういと言うのに、何故ここまで殺そうと思うのでしょう?損得なんて無いんじゃないんですか?」

 

「一つお前に言っておこう、感情ってのは損得無しに動かせる動力にもなるんだよ、感情の無いお前には分からんだろうがな!!!」

 

 

 

腹を抱えながら爆笑する蓮に対して霄の表情は酷く冷めたような顔する、対照的な二人。

 

 

 

「おい!!聞いてんのか!」

 

「落ち着いてくださいってば天馬さんはあの人を連れて端で見ていてくださいよ。」

 

「・・・勝てんのか・・?」

 

「さぁ?分からんですね、運でしょうねこの勝負。」

 

「おぉ、あの女連れてきてくれたのか?ありがてぇ、早速だがお前を殺してあの女も苦痛を味あわせて死なせてやるよ。」

 

 

 

持っていたタバコをヘシ折り地面に叩きつけた後、近くの桜の木を片手で掴んだと思えばまるで地面に刺さった木の棒を抜くかの様に木を持ち上げる。

 

 

 

「いやぁ、馬鹿力ですね。その力、非常に興味深い。」

 

「うりぃあ!!」

 

 

 

バットを振るように桜の木を横薙ぎした蓮、それに乗じてその下を掻い潜る霄。

 

 

 

「小細工しかしねぇのか?」

 

 

 

それに気づいた蓮は地面を蹴り弾丸の様に早い砂利と土を飛ばす。

 

 

 

「残念。」

 

「あ?」

 

 

 

途中、動きを止めた霄は迫り来る砂利に逃げもせず手を地面に置き、何かを唱える。

 

 

 

「土龍壁。」

 

 

 

置いた手の地面の前から素早い速度で出てくる土の壁、土の壁と言っても柔らかそうな物でもなく固く、鉄よりも硬そうな壁が出てきた。

 

 

 

「邪魔だ!!」

 

 

 

そんな硬そうな土の壁を一蹴で崩れさせた蓮は霄に急接近し片手に力を込めたあと霄の顔へめりこませようと進む。

 

 

 

「霊撃札。」

 

「何ッ!?」

 

 

 

蓮の攻撃を避け、逆にさらに前に前進した霄は蓮の胸に自分の手の平と札を押し付け起動させる。

 

一瞬の青白い閃光が走った直後、蓮の体が後ろに突き飛ばされたかのように吹き飛ばされ霄の位置から遠くなる。

 

 

 

「本当にうぜぇな!」

 

 

 

後ろに飛ばされた蓮は着地と同時に地面を蹴り霄に急接近し、腕を掴む。

 

 

 

「離せ。」

 

「お前の戦法にはもう飽き飽きだ。」

 

 

 

霄の腰に下げてあるナイフを手に取りそのまま思い切りナイフを振りかぶる。

 

それに気づいた霄は体を下にして避けようとしたが蓮の予想できない行動が霄に衝撃を与える。

 

 

 

「ッッ」

 

「これで離れられねぇだろ?」

 

 

 

霄の体めがけ襲いかかってくると予想したナイフは一直線に蓮の掌を貫通し霄の腕にも貫通した。

 

返しが付いているナイフ故に抜こうにも抜けられない。抜こうとすれば腕の肉が持ってかれるからだ。

 

 

 

「こっちだ。」

 

 

 

霄の視線が腕に行ったのを見た蓮は足で霄の杖を横に弾く。

 

バランスを崩した霄は腕を捕まられながら一瞬だけ宙に浮きそのまま地面に横たわる。

 

 

 

「おらぁッ!!」

 

「くッ。」

 

 

 

地面に横たわった霄の頭に拳を当てようとするが頭を横に逸らし避けた霄。

 

そして隙ができた蓮の腹に蹴りを当てるが微動だにせずそのまま逆の腕で霄の首を掴み持ち上げた。

 

 

 

「離せッ。」

 

「ぁん?」

 

 

 

霄が取り出した札がそのまま蓮の顔に押し付け張り付く。

 

すると、貼り付けられた札は目を刺さんばかりに光が炸裂し、耳を抉るように甲高い音が鳴り響いた。

 

 

 

「おおおおぉ・・・・!!フラッシュバンか・・・!?」

 

「金剛ッ。」

 

 

 

突然の閃光に平衡感覚を失い目を手で押さえている蓮。

 

そこに腕に力を入れ、心臓目掛け金剛を打ち込もうとする霄。

 

 

 

「何ッ?」

 

「ぐおぉ・・・ッ残念だったな・・・・。」

 

 

 

一時的に失明している筈の蓮が打ち込まれた霄の腕を掴んでいた。

 

振りほどこうと腕を即座に引くが固定されたかのように微動しない。

 

 

 

「両腕も使えなくなったお前に何が出来る?」

 

「ッ!?」

 

 

 

蓮が霄の腕を引き、その反動で霄の顔に肘を当てた。

 

 

 

「ぐッ・・・!」

 

「顎が砕けたな?」

 

 

 

口を開いたまま血をだらりと流す霄。

 

余り力強く当たった様な感じでは無かった筈であるのに。

 

さらに追撃する蓮に霄は何とか避けようとするが両腕が使えずかつ捕まられているせいで蓮の前蹴りが鳩尾に当たりその場で失神してしまう。

 

 

 

「霄っ!!しっかりしろ!!」

 

「無駄だ、諦めろ。その女を渡せ。」

 

「このッ・・・!紫!起きろ!!」

 

 

 

腕に刺さるナイフを抜き、霄を放置し此方に近寄ってくる蓮。

 

紫を抱え起こそうとするが一向に起きない紫に絶望する。

 

 

 

「くそっ!」

 

「終わりだ。」

 

 

 

紫を抱き抱え逃げようとするが後ろから地面を飛んで掴みかかられる寸前、霄が蓮の顔に掌底を当てた。

 

 

 

「ガッ・・・!?何だッ!?」

 

 

 

掌底を当てられた蓮は軽く横に吹き飛び地面に叩きつけられながら着地する。

 

天馬の目の前には顔が血だらけの霄が無表情で立っていた。

 

 

 

「てめぇ!!何で・・・ッ!!どうやって俺に当てた!!!」

 

「・・・・、魔法・・・かな。」

 

「ふざけんな!!魔法ってもんはこの世の質量を操ってるだけだろうが!なんで俺が食らってんだ!!くそッ!」

 

 

 

激昂した蓮は起き上がり霄に向かい拳を大振りに振った。

 

重く風を切る音を鳴らした拳は霄は当てられず、屈んだ霄の肘が蓮の脇腹に衝突する。

 

 

 

「ぐぁあッ!痛ぇ!なんだこれ!?なんだよこれ!?」

 

 

 

天馬は霄の体を纏っている正体を理解した。

 

紫と、青色と、白色が混じっている様な色をした何か。

 

 

 

「あれは・・・、は・・・!?どうなってんだ!?」

 

 

 

幻想郷や妖怪、神を一度見ているものなら理解する力。

 

そして本来、人間にも存在する確かな力。

 

妖力、霊力、神力が霄の体を纏っていた。特に腕、足に力が滲み出るほどだ。

 

 

 

本来神力や妖力や霊力は目に見えない。しかし力が膨大であるとそれもまた例外。

 

妖怪の賢者とも言われている紫も、少し見える程度なのだ。

 

しかし霄を見るとどうだろう、はっきりと見える力だ。

 

最強の陰陽師、安倍晴明と似たようにはっきりと見える。

 

だが安倍は霊力だけの青白い力を纏っていたが霄の体にはコバルトブルーの色の力が見える。

 

 

 

神力と、妖力と、霊力を混ぜたかのような色。そして濃すぎる程に色が。

 

 

 

「おめぇ・・・・!このッ・・・!物量で当ててねぇ・・・な!」

 

「この世界に常識は無い。」

 

「そんな事はねぇ・・・!非統一・・・!魔法世界はありえねぇ!統一理論は確かに存在するんだよ・・・!」

 

 

 

蓮は腹を押さえながら霄に突進し、その勢いと共に腕を伸ばすが霄はいとも容易く躱す。

 

 

 

「ッッ!?」

 

 

 

その隙に蓮の膝を蹴り痛みに未だ驚きを隠せずにいる蓮を追撃するように地面を蹴り横に回転する勢いで蓮の首の後ろを的確に蹴りで座り押さえた。

 

 

 

「ッ・・・クソッ!!・・・・ッ!?」

 

 

 

首に乗る霄の足を腕で払うとさらに逆に回転した霄の膝が顔を捉えた。

 

後ろによろめく蓮の横脇腹を蹴る。これは霄の勇儀に対して行われた技の初動である事が天馬は気づく。

 

 

 

「あれは・・・!」

 

「あぁあッ・・・!!」

 

 

 

痛みで脇腹を庇った蓮。

 

右側頭部に肘、両手で顔面と腹を突く両手突き。さらによろめく蓮の首に遠慮無しの手刀、首に当てた逆の腕で鳩尾を抉った貫手。

 

そして、また逆の形で左側頭部に肘を当て、両手突き、手刀、二回同じ技を繰り返した後、右足で蓮の左膝関節を蹴る。

 

脇腹、膝、を蹴り、後ろに倒れる蓮を阻止する為足の甲を踏み、顎に足刀。さらに左足で右ヒザを前蹴りし、右足で金的に蹴り上げ、そのまま下腹に前蹴り、左足膝で鳩尾を打ち、右膝で顔面を捉える、次は前に倒れた蓮に対して右肘で顎を打ち、手刀で右側頭部を当て、拳を固く力入れて脳天に当て中段膝蹴りで鳩尾を入れた後鳩尾を当てるために上げた足を前に出し前蹴りで金的。

 

 

 

連続で技を受けている蓮は「何で・・・何でだよ・・・。」とほぼ無抵抗で霄の攻撃を受けながら呟いていた。

 

そして最後の金的を受け後ろに倒れた蓮はピクリともせず動かずにいた。

 

 

 

「フッ・・・フッ・・・ハァ、ハァ・・・終わりだ。」

 

「やった!やりやがった!!」

 

 

 

霄も手応えを感じたのか構えを止め、コバルトブルーの力が段々と薄くなっていく。

 

 

 

「やったな霄!さっさと止めを刺すぞ!」

 

「・・・。」

 

 

 

蓮が抜いたナイフを拾い、近づこうとした時。霄が何かに気づく。

 

 

 

「これは・・・。」

 

「・・・?なんだそれ?・・・何かの筒か?」

 

 

 

手のひらサイズの銀でできた小さな縦長の物を拾い上げた霄。

 

チェーンがある事から蓮が首から下げていたものだろう。ネックレスにしては少々でかすぎる気がする。

 

 

 

「・・・?」

 

 

 

上の金属部分を回転し、中から出てきたものは小さい写真だった。

 

赤い長い髪をした女と金髪の女。仲が良いのか挟まれるようにして奴が写っていた。

 

赤い女は堂々と笑っており金髪の女は少し照れているように見える。

 

 

 

「胸糞わるいもんを見たな、さっさとやるぞ。」

 

「・・・・ッ」

 

 

 

その時、霄が何かに気づいたかのように後ろに向く。

 

天馬もそれに気づき、後ろを向くと口や目から血を流している蓮が立っていた。

 

目から血が尋常じゃない程出ている蓮はただ、空を見つめながら立っていた。

 

 

 

「・・・。」

 

「な・・・なんで立ってられんだあいつ・・・!」

 

「蓮、手前二回あれを打ったな。」

 

 

 

 

 

蓮の手には注射器が。

 

“あれ”というものが何なのか分からないのか一度天馬の目の前でも打ったあの薬の事だろう。

 

 

 

「俺が・・・。」

 

「・・・!?」

 

「俺が・・・いなきゃアイツは・・・。」

 

 

 

空を見てる蓮は誰に言ってるのか分からないが、何かを発する。

 

 

 

「違う、深く考えすぎだ。お前が原因ではない。」

 

 

 

霄も蓮を見て告げるが天馬にとっては何の話かまったくわからない。

 

 

 

「そうか・・・俺が悪いんじゃないのか・・・」

 

「あぁ。」

 

「・・・・。」

 

「蓮、止めろ。落ち着くんだ。」

 

「非統一・・・魔法世界論は・・・ここで・・・」

 

「蓮。その手を止めるんだ。」

 

 

 

腰に巻いてある物に手を伸ばす蓮。

 

それを言葉で制止する霄。

 

 

 

「ち・・ゆ・・・、す・・・ま・・・な・・・かっ・・・た。」

 

「蓮、ダメだ。」

 

「うぉッ!!??」

 

 

 

腰に巻いた物に蓮が触れようとした時、霄が何かの札を取り出し蓮に向かって一直線に走る。

 

蓮が腰に巻いたものを触れた時、大きな爆風が襲ったが吹き飛ぶ程の物ではなかったためなんとか天馬は立っていた。

 

そして目の前に居た蓮と霄が突如、消えた。

 

 

 

 

 

「なっ・・・!消えた・・・・っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、最愛の人物に守られる。

「今日で五日目か・・・。」

 

 

 

桜が散り、舞う空間にて。

 

霄と蓮が消えて五日目、戻ってくるかと思ったがここまで日数が経つと諦めがつく。

 

 

 

「ふんふふ~ん。」

 

 

 

桜を見ながらMP3プレーヤーで音楽を聴く。優雅じゃぁないか。

 

ロッキングチェアでゆったりと座り、横には痛み止め兼、不安な気持ちをぬぐい去るために酒を常備。

 

 

 

いやぁ、こういう為に取っておいた訳じゃないが自分の家が欲しかった時期に家を建てて置いてあったからな。

 

 

 

「あれ?酒が・・・。あぁ、こっちじゃないか。」

 

 

 

と、右に常備してある酒を取る。

 

最近記憶が曖昧になってきた、右にある酒を左と勘違いして取ろうとすることがしばしば。

 

 

 

「うんうん、死期が近づいてきてるな。」

 

 

 

色々なことを少しずつ忘れていく感覚が分かる。

 

軽い物忘れみたいな物だが徐々にひどくなってくるから酷いもんだ。

 

 

 

「・・・ゴホッ・・・ゴホッ・・・・ガハッ!」

 

 

 

喉や肺から強烈な痛みを感じ。咳き込むとダバダバと血を垂れ流す。

 

そのために洗面器を置いているのだが急激に来るためほとんど間に合わずに床に垂れ流し、服も血だらけだ。

 

 

 

「ゲホッ・・・あーっ・・・またか。もう駄目かも分からんな。」

 

 

 

最初は紫が見舞いに来てくれていたがさすがにこの状態を見せることは出来ない。

 

紫にもう来るなと伝えたので来ないとは思うが・・・。

 

どこかでスキマを使って見ているかもしれないな。干渉しないだけありがたいが。

 

ロッキングチェアに座りながら遠くなっていく意識。それと同時に、あぁ、死ぬのかという気持ち。

 

 

 

「またこの感覚か・・・次は死なせてくれよ・・・。」

 

 

 

累計三回目。

 

いい加減にコロッと死なせてもらいたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何・・・?天馬らしき人物を見たのか、橙?」

 

「はい、藍様。」

 

 

 

幻想郷のどこかにある屋敷の中。

 

割烹着を脱ぎ、出かける支度をしようとした時、私の式、橙が私が探していた人物を見つけたと言う。

 

 

 

「何処で見たんだ天馬を?幻想郷中探したというのに見つからなかったんだぞ・・・?」

 

「それがですね藍様。私がよく行く場所にいたんです・・・。」

 

「橙がよく行く場所・・・マヨヒガか!マヨヒガの何処だ?」

 

「桜の木がいっぱい生えているところです・・・。」

 

「成程・・・橙、今日の買い物は中止だ。すまないな。」

 

「はい。」

 

 

 

橙と解散し、天馬の所に向かうための用意を済ます。

 

しかし一つ疑問が浮かぶ。紫様から受け継いだ能力、スキマを展開しようとするが開かない。

 

もう一度スキマを展開しようと試みるが一向に開く気配がしない。

 

 

 

「あらあら・・・藍?どうしたのかしら?焦った顔をして・・・珍しいじゃない?」

 

 

 

突然上からぬるりとスキマを広げて出てくる主人、紫様が私の顔を舐め回すように見てくる。

 

私の焦る表情が出ていたのかすぐに冷静な顔を取り戻す。

 

 

 

「紫様、天馬の居場所が分かりました。すぐに向かいま」

 

「その必要は無いわ。」

 

 

 

皆まで言わせず、私の言葉を遮り予想外な言葉を聞かせられる。

 

 

 

「何故ですか!?天馬の居場所が分かっているのですよ!それにあの薬師によると余命が短いそうじゃないですか!今すぐに向かうべきです!!」

 

「その必要は無いと言ったはずよ・・・藍?」

 

「・・・。」

 

 

 

扇子で口を隠し、何かを隠す様に言う紫様。

 

そして私にこれ以上天馬と関わるなという様に私の名前を呼ぶ。

 

 

 

「何故ですか・・・何故・・・何故天馬の所に向かいに行く必要がないなどと・・・!」

 

「あら・・・?珍しく反抗的な目をするじゃない・・・。貴方を式にした時を思い出すわね?」

 

 

 

話のすり替えをする紫様。正直苛立ちを隠せずにいる。

 

 

 

「・・・天馬は私の命の恩人です。私は天馬の所に向かいます、ご勝手をお許しください。」

 

 

 

クスクスと笑う紫の後ろを向き、スキマを紫が制御したのだと理解した藍はマヨヒガまで飛んでいこうと縁側に向かう。

 

 

 

「主人の言うことが聞けないのかしら・・・藍?」

 

 

 

突如、藍の後ろから屋敷全体を包み込むほどの殺気が襲う。

 

それに少し驚きを隠せずにいながらも藍は後ろにいる紫と目を合わせる。

 

 

 

「天馬は私にとって大事な人間です。ご勝手が許されないと言うのでしたら、罰をなんなりとお申し付けください。」

 

「・・・言う様になったわね・・・主人を逆らうという事が・・・どういう事か再教育してあげましょうか?」

 

 

 

紫のスキマから放たれる妖力弾が一斉に藍を襲った。

 

 

 

「!?・・・ッッ!?」

 

 

 

突然の攻撃を危なげに避けた藍。

 

さらに襲いかかってくる弾幕に藍も妖力弾を当て相殺させる。

 

 

 

「罰を受けると言った割に・・・抵抗するのねぇ?」

 

「天馬の元に行けるのならば罰は受けますが・・・!行かせないとなると話は別です!」

 

 

 

戦力差を見極めていた藍は紫には勝てないと察し、縁側を抜け外に飛ぶ。

 

 

 

「待ちなさい。」

 

「くッ・・・!」

 

 

 

目の前にスキマを駆使して現れる紫。

 

そして目と鼻の先に向けられる傘、その傘の先端には莫大な妖力が張り巡らされ今にも強大な妖力が力となりそうだ。

 

 

 

「ッ・・・!!狐狗狸さんの契約!」

 

「ふふっ・・・そんな目晦ましの技何かで私を欺こうって訳?」

 

 

 

スゥ・・・ッと消えた藍。そして無数に帯びた妖力のレーザーが紫を貫かんばかりに一斉に襲う。

 

しかし紫は驚く表情一つせず、不敵な笑いを浮かべながら空を見つめる。

 

 

 

「そこね・・・。」

 

 

 

紫は空を見つめ、何かを捉え、扇子を向ける。

 

するとスキマから標識やら鉄の棒が無数に発射され誰もいない所に向かわせた。

 

突如、何もない空間から大きな衝突音が聞こえたと思いきや藍が腕を庇いながら現れた。

 

 

 

「痛ッ・・・!何故・・・!」

 

「仮にも貴方の主人よ?分からないわけが無いでしょう?」

 

 

 

標識をなぎ払い腕が負傷した藍は逃げるように紫から離れ勝機を伺う。

 

しかし天才と謳われた藍の頭脳を駆使しても紫には勝てないと判断を下す。

 

 

 

「さぁ、諦めなさい?」

 

「・・・・お断りします。」

 

「そう・・・貴方のその覚悟だけは褒めて上げましょう・・・妖獣風情がいきがりなさらないでほしいわね。」

 

 

 

 

 

魔眼「ラプラスの魔眼」

 

 

 

紫が手を横に振ると辺り一面に異型の眼が大量に現れる。

 

 

 

「さぁ、藍。覚悟はいいかしら?」

 

「覚悟はとうに出来ています、紫様。」

 

 

 

現れた異形の目がギョロリと一斉に藍を見る。

 

 

 

「行くわよ。」

 

 

 

扇子をスキマに放り投げ、代わりに出てくるは長い標識。

 

藍は弾幕戦かと思い策略を練っていたのだが紫の意外すぎる獲物にコンマ一秒動きが遅れてしまう。

 

それを狙ったのか紫は藍に思い切り近づき藍に標識を当てようとするが藍も弱くない。

 

妖力を張った尻尾でガードする。

 

 

 

「面白い戦い方ねぇ?」

 

「褒めているのか貶しているのか分かりませんね・・・!」

 

 

 

標識を軽々振り回し的確に隙が空いた部分に打ってくる紫。

 

しかし避けている時や攻撃を防いでいる時、後ろを襲おうとする眼。

 

藍は当然、後ろも警戒している為当たることは無いが紫に集中できなくなってくる。

 

 

 

「前も後ろも警戒しているようだけど、少し注意不足よ?」

 

「ッッ!」

 

 

 

紫の標識を防いでいると藍に囁いてくる言葉。

 

一瞬でその意味を理解し上を見ると頭上にスキマが三つ開き標識が突き刺さってくる。

 

 

 

「くッ!?手加減無しですね・・・!」

 

「貴方相手だもの、手加減なんてできっこないじゃない?」

 

 

 

後ろに避け標識を避けるとそれに伴い追撃してくる紫。

 

一瞬の隙が無いというのはこういう事かと理解させられる。

 

 

 

「甘いわね藍、貴方の眼に映る私はそんなに弱々しかったかしら?」

 

 

 

後ろに避ける際一瞬見せた動きを紫は見抜き標識を突いてくる。

 

突いた標識は藍の脇腹に当たり貫通はしなかったものの抉れていた。

 

 

 

「ア゛ッ・・・・!?」

 

「諦めなさい。」

 

 

 

そして藍の後ろにスキマから高速で出てきた墓石を藍に当て反動で前に吹っ飛ぶ藍の顔に妖力で包んだ手で押し込む。

 

力の理に逆らえず吹き飛ぶ藍。

 

そして今か今かと待ち侘びていた無数の異形の目から妖力のレーザーが藍を襲った。

 

 

 

「そろそろ本性を出したらどうかしら?ここなら貴方の気にする他人の目が無いのだし・・・?」

 

「・・・ユルシマセンヨ・・・ユ゛ガリ゛サ゛マ゛ァア゛アアア!!!」

 

「主に許さないだなんて・・・少々付け上がりすぎてはなくて?」

 

 

 

ユラリと立ち上がる藍、そして体全体からそれまで隠していた・・・否、封印していた妖力を全て出し、真紅の妖力が藍を纏う。

 

藍の目は獣そのものの目をしており光のあった人間そのものの目は無い。そして一頻り吠えると獣の様に前屈みになり紫を襲う。

 

 

 

「ウガァア゛ア゛ア゛ア゛!!」

 

「くっ・・・!流石は幼獣最強ッ!貴方を式にしたのは正解だったわね!!」

 

 

 

ズルズルと後ろに押されながらも全開に力を放出させている藍と掴みあいをする紫。

 

紫も力を放出させているがそれでも後ろに押されてしまう程の力。

 

 

 

「ギギッ・・・ギィッ・・・!!」

 

「くくッ・・・ッ!?」

 

 

 

藍は紫を掴んでいる手を無理矢理引き剥がしそのまま外側に半回転し、その勢いと共に紫に手を当て吹き飛ばす。先程の紫と形勢が逆転した紫は予想外と言う顔をする。

 

 

 

「まさか貴方がこんなにも力があるとは思わなかったわね・・・。」

 

「ガァ゛ッ!?」

 

 

 

スキマで藍の四肢を固定し、藍の下に窓が幾つも割れ、廃れたビルをスキマで召喚。

 

さらに上にも同じような高層ビルが藍をプレスするように大きな音を立てながら挟んだ。

 

接触したところから崩れるように崩壊する二つのビル。さらに追い打ちをかけるようにいくつものビルや電柱を藍を固定した部分に追突させる。

 

 

 

「・・・流石にやりすぎたかしらね、死んでいたら困るけど。」

 

 

 

大きな物音を立てながら崩壊していくビルを遠目に自分が勝利が勝利したと確信した紫は背を向ける。だが崩れ落ちていく音とは別に何か爆発をしたかの様な音を紫は聞き逃さなかった。

 

 

 

「ッな・・・ッ!?」

 

「ウギィァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」

 

 

 

後ろを振り向くとすぐ目と鼻の先に藍は爪を立てて襲いかかっていた。

 

余りにも予想外だが紫は何とか体勢を一瞬で整え襲いかかってくる爪をその場でもっていた扇子で防いだ。

 

 

 

しかし完全には防ぎきれず、首や腕、胸等切り傷が露出する。

 

 

 

「これは・・・想定外ね。」

 

「グッ!?ガァ゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 

 

 

頭や体から血を流している藍は逃がさんとばかりに更に追撃の手をやめようとはしない。

 

しかしラプラスの魔眼が藍を後ろから襲い、数々のレーザーが藍を貫かんばかりに当たるが正気を失っている藍はそれを気にせず紫に一点集中していた。

 

紫は避けもせず、只々藍の攻撃を受け止めた。

 

 

 

「藍、いい加減にやめなさい。分かったから。」

 

「グルァ゛!?」

 

 

 

再度、藍の腕を掴み、異形の目を消し、藍を抱き寄せた紫。

 

正気を失い抵抗する藍、何とか腕を振りほどこうと藻掻く。

 

 

 

「グア゛ァ゛!!」

 

「藍、落ち着きなさッ・・・ッ・・・。」

 

 

 

抱き寄せられた藍は紫の肩を自身の持つ鋭利な歯で噛みつく。

 

そして尻尾に妖力を張り、紫の首目掛け刺そうとした時、紫に異変が訪れる。

 

 

 

「分かった、分かったから・・・ね?」

 

「・・・ユカリサマ・・・・?」

 

 

 

突き刺さる歯を紫の肩から抜き、目に光を取り戻し正気にもどりつつある藍に、母親のように宥める紫。

 

紫は目を閉じ、上を向いて隠していたが藍の顔に滴る水滴で涙だと藍は理解する。

 

 

 

「ごめんなさいね、こうでもしないと天馬の所に行かせる理由が思いつかなかったのよ・・・。」

 

「・・・私は何て事を・・・!」

 

 

 

藍は紫の肩を見て、自己嫌悪に陥り、紫に嫌われるならいっそ此方が拒否しようと紫から離れようとするが紫は離してはくれなかった。

 

逆に、紫は藍を離さぬまま藍の頭を撫でた。

 

 

 

「馬鹿ね・・・貴方みたいな有能で大事な式を手放すもんですか・・・。」

 

「うぅっ・・・うっ・・・紫様・・・!」

 

 

 

紫の涙に釣られ、藍も共に涙が頬を伝う。

 

 

 

「藍、一つだけ言っておくわよ・・・天馬はもう死んでいるかもしれない、私は天馬の監視をやめているからそこまでは把握できていないわ・・・それでも天馬に会うのかしら・・・?貴方に天馬の亡骸を見る覚悟はあるかしら・・・?」

 

「・・・あります・・・私にとって天馬は命の恩人であり大事な人間です・・・覚悟は十分にございます・・・!」

 

「そう・・・分かったわ、貴方の覚悟・・・・しかと受け止めました。いってらっしゃい。」

 

「・・・はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ここに来るのも久しぶりだ・・・。)」

 

 

 

桜が輪廻するように咲、散っていく場所。

 

紫との決着も終え、未だ傷は癒えておらず万全ではないが藍はここに来た。

 

 

 

「(・・・ここに天馬が本当に・・・いや、紫様もここに天馬が居ると言っていた、間違いないだろう・・・。)」

 

 

 

20分程歩きまわり、それらしき人物を探していると小さな小屋が見えてくる。

 

小屋の裏しか見えないが天馬はここに十中八九居るだろう。

 

 

 

「(ちゃんと天馬は静養しているだろうか・・・まさか死んでなんて・・・馬鹿な事考えるんじゃない私。)」

 

「むっ・・・!?この匂いは・・・!?」

 

 

 

小屋を回り、正面に入る時、錆びた鉄の鼻を刺す匂い。これは血の匂いだと気づかせる。

 

むせるような血の臭いに思わず口元を塞ぎ、藍の脳裏には最悪な事を想像させる。

 

しかし確認してみないと分からないと藍は見ないのを我慢し、覚悟をして入口を見るとそこには。

 

 

 

椅子に座りながら口から血を大量に流した跡のある天馬が居た。

 

 

 

 

 

「ッッッ!?おい天馬!?おい!?しっかりしろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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霄、全ては未来のために。

「天馬!しっかりしろ!今治してやる!」

 

 

 

はっきりしない意識の中、聴き慣れた声がする。

 

この、幼く艶のある声。聞いていて心地いい声、あぁ藍か。

 

 

 

「無駄だ・・・やめてくれ・・・。」

 

「五月蝿い!黙れ!」

 

 

 

俺の体に手を当て妖力を注ぎ込み、なんとかこの病魔の侵食を止めようとするが現実とは残酷だ。

 

痛みが取れない、意識もハッキリしない、通常妖力を注ぎ込まれれば痛み位は取れる筈だが・・・。

 

藍の腕を掴み首を横に振るとそれでも諦めないという意思が藍の目が物語っている。

 

 

 

「藍・・・寿命はなんともならん、やめるんだ・・・。」

 

「その口もう一度動かせば私自ら殺してやる!今は黙るんだ!」

 

「・・・・それもいいかも知れんな・・・いっそ殺してくれ・・・。」

 

「何言ってるんだ馬鹿者!!馬鹿者が・・・!」

 

 

 

この苦痛から藍が開放してくれるならそれもまた本望。

 

八つ裂きでもなんでもいい、藍に殺されてしまいたい。

 

 

 

それでも妖力を注ぐ事をやめない藍。

 

重い瞼を開けると藍は泣いていた、あぁだから最後は一人で居たかった。

 

紫よ、恨むぜ。

 

 

 

「悪ぃな藍・・・泣くな。泣かないでくれよ・・・。」

 

 

 

藍の目から流れる幾粒の涙を指で拭う。

 

そして藍を見るたびに藍の記憶が蘇る、そして大事なことに気づかされる。

 

 

 

 

 

「あぁ・・・悔しいなぁ・・・・いま気づいたよ藍・・・。」

 

「・・・・なにが悔しい・・・?何に気づいたんだ・・・・」

 

 

 

片手で妖力を注ぎ、もう一つの手で俺の腕を大事そうに抱える藍。

 

俺の言葉に涙を流しながら疑問を問いてくる藍。

 

 

 

「気づくのに遅すぎた・・・藍・・・俺はお前が好きだ・・・前からずっと・・・。お前を・・・。」

 

「・・・・。」

 

 

 

藍を見ることさえ出来なくなった、首を動かせない。

 

衰弱しているな、そして気づくのに遅すぎた。

 

藍という人物自体絵空事の様に思っていた、だが今目の前には俺の為に涙を流してくれているのは事実。

 

 

 

この世界に来て、観測するかのように恋愛という干渉をしていなかった為に気づかなかった。

 

これが異性に対する好意なのだと。全て夢物語だと、そう思っていた。

 

 

 

「言うのが遅すぎだ馬鹿者・・・!」

 

「・・・そうだな・・・済まなかった・・・。」

 

 

 

あの野郎が気づかせてくれたのがまた悔しい所。

 

自分では気付かなかった、惜しいことをした。

 

 

 

「・・・私も、天馬が好きだ。お前には感謝している・・・。感謝しきれない・・・!だから・・・生きてくれ・・・!頼む・・・!」

 

「そうか・・・ありがとう・・・。」

 

 

 

もう思い残す事は無い、良かった。俺だけが好いていた訳ではなかったんだな。

 

願いが叶うなら、生きていたい。だけどそれは過ぎた願いだな。

 

 

 

「ありがとうな・・・藍・・・・。」

 

「くっ・・・!ありがとう何て言うんじゃない・・・!生きてからその言葉を私に言え・・・!そしてもう一度同じ言葉を言ってくれ・・・!」

 

 

 

そうだな、藍。悪かった、お前の言うことが正しい。

 

生きたい、生きてもう一度、お前に言いたい。好きだと。

 

 

 

「・・・藍・・・じゃあな・・・また・・・。」

 

 

 

意識が遠くなっていく、それと同時に腕の力が無くなっていく。

 

目頭が熱くなり、言い知れぬこの悲しい感情。

 

また生まれ変われるならもう一度お前が好きになるだろう。

 

じゃあな藍。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・藍・・・じゃあな・・・また・・・。」

 

 

 

天馬の顔がら流れる一つの涙。

 

そして力が完全に無くなっていく天馬の腕。

 

 

 

「天・・・馬・・・。・・・!」

 

 

 

天馬の腕を掴んでいると一つ気づく。

 

まだ天馬の脈が弱々しく打っている事に。まだ死んでいないことに安堵するがどうする事もできない自分が悔しい。

 

 

 

「もう・・・駄目なのか・・・。」

 

 

 

目を閉じ、何も言わない天馬を見つめて呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「藍様、今日は如何なさいますか?」

 

「橙、済まないな。私はここに居るよ。」

 

「では一緒にお供します!」

 

「そうか・・・。」

 

 

 

天馬の意識がなくなってから三日。

 

紫様から休みを貰い、私は天馬の最後を見届ける事に決めた。

 

紫様も一緒に見届けましょうと言ったが、暗い顔をされた後、「それは私の役目じゃないから」と言い、通常作業に戻って行ってしまわれた。

 

 

 

私には分かる、紫様もまた、天馬に思いを寄せていた事を。

 

天馬の意識が無くなる時、スキマで見ていたことも知っていた。あの時微弱だが見知った妖力を感じたからだ、動揺するように妖力が揺れていたのも知っていた上での私のあの発言は紫様を悲しませただろう。後悔はない。

 

橙は相変わらず元気で笑顔を絶やさない。

 

私の気持ちを和らげようとしているのだろう、深くは知らないだろうが天馬が死ぬ時を見届ける私の気持ちは理解している筈だ。

 

 

 

「今日も桜が綺麗ですね藍様。」

 

「うん、そうだな。」

 

 

 

天馬が死に場所をここにしたのも頷ける。

 

天馬が居なくなった時、何時ものように薬師の所に行った時、薬師は少し口を噤んだ後、笑いながら「私はもう天馬には会えない。だけど、貴女は違うかもしれないわね。」と言っていた。

 

 

 

何もかも知っているような口振りだったがそこに怒りの感情は無く、すこし希望を感じたのは内緒だ。

 

 

 

私が好きになった男は全員碌でなしだ、天馬も一緒だ。だが他の男とは違い天馬はそのままの私の事を好きだと言ってくれた。地位や名誉に関係無く好きだと昔言ってくれていた。

 

 

 

「天馬・・・。」

 

 

 

天馬の黒く、長い前髪をかき分けるとそこには何も知らぬ純粋な少年のように眠る顔。

 

私が最も愛している男の顔、しかし、二度と目を開けてはくれないのだろう。

 

 

 

「・・・。」

 

「藍様・・・。」

 

 

 

私の悲観している表情を汲み取ったのだろう、橙も悲しい顔をしながら私の顔を見る。

 

 

 

「む・・・?」

 

「どうかしましたか藍様?」

 

「いや・・・。」

 

 

 

何か音がしたような気がする。

 

葉の揺れた音とか、そういう自然が作った音ではない。

 

 

 

「上・・・?」

 

「??」

 

「空気を切る音が近くなってくる・・・。」

 

 

 

ごく僅かな微弱な音だが確かに聞こえる。

 

この音から推測するに空気を切る音の正体は2メートル弱か・・・?

 

私達にどんどんと近づく音。

 

 

 

「ウオラァアアア!!」

 

「なっ・・・!?」

 

「にゃっ!?」

 

 

 

天井を突き破りながら落ちてくる二人の男。

 

一人は馬乗りにされながら落ちてきた。

 

もう一人は馬乗りしながら相手の首を掴んでいる。

 

そしてこの二人、見知った相手だ。

 

 

 

「な・・・っ・・・お前は!」

 

「おぅ!?良く見た事がある面だなぁおい!見てみろよ!」

 

「うっ・・・」

 

 

 

馬乗りにされている男の髪を掴み私に見せてくる。

 

そして掴まれている方も私に気づき若干微笑みを見せた。

 

 

 

「お前は!この前私達を襲った奴じゃ・・・!」

 

「そんなこたぁどうでもいい!取り敢えずやればいいんだろ?なぁ?」

 

「あぁっ・・・。」

 

 

 

微笑む男の髪を離すと立ち上がる赤い男。

 

そして腕を天馬に近づけようとする。

 

 

 

「貴様!天馬に何を!!」

 

「うるせぇ!!!」

 

「かッ・・・!?」

 

「藍様!!」

 

 

 

天馬に近づける腕を掴もうと近づくと赤い男はその腕を横に振り私の首筋へと一直線に走らせた。

 

私は大声で叫ぶ橙を見ながら意識を落としていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい・・・!らん・・・!おい・・・!おい!しっかりしろ!藍!!」

 

「て・・・天馬・・・?」

 

 

 

体を揺すぶられ、私の名を呼ぶ声に反応し、目を開けると天馬がそこに居た。

 

 

 

「良かった、その調子だと橙もお前も気絶させられ・・・!」

 

「天馬!!」

 

 

 

私の中の熱い思いが溢れ、天馬の言葉を遮り抱き寄せる。

 

天馬ほ私の行動に驚愕したが理解をしたようで私を強く抱きしめ頭を撫でてくれている。

 

 

 

「この・・・馬鹿者っ・・・!もう駄目だと思ったんだぞ・・・!」

 

「済まなかった藍・・・心配かけたな、もう大丈夫だ。」

 

 

 

嗚咽の激しい私を強く抱きしめてくれている天馬。

 

 

 

「しかし・・・何でお前が生きているのだ・・・?」

 

「俺にも分からん・・・だが、力も戻って能力も使えているから治った・・・と思う。」

 

 

 

手を開く動作をしながら答える天馬。

 

しかし、ここで天馬が一つ何かに気づく。

 

 

 

「ん・・・血か・・・?」

 

 

 

所々滴っている乾いた血を指で触れた天馬。

 

 

 

「乾いてるって事は・・・三十分以上前か・・・?」

 

 

 

点々と続く血に沿って歩き出す天馬。

 

その表情は何か最悪な事を思いついたかの様な表情。

 

 

 

「まさかこの血は・・・!」

 

「何なんだ・・・?」

 

 

 

点々と続く血は天馬の建てた小屋の裏に続いていた。

 

小屋の裏に近付くほど血は多く地面を湿らせている。

 

人間であれば大量出血で死ぬ程の血の多さ。

 

朦朧としながらも天馬の後を付いていくと先に小屋の裏を確認した天馬は口を押さえて絶句する。

 

 

 

「・・・・・・!・・・!」

 

「なぁ天馬!この血は一体・・・!」

 

 

 

天馬の見ている先を私も確認しようと顔を覗かせた時、天馬の絶句している意味が分かった。

 

私が気絶する前に微笑みを見せた男が無残に腕や片方の足が逆に折れ、肋は皮膚を突き破り、上半身と下半身は皮一枚で繋がれ、顔が半分、消滅していた男が桜の木に凭れかかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達が垂れていた血を沿って行くとそこには無残な姿になった霄がそこにいた。

 

 

 

「そ・・・霄ァアアアアアアアア!!!!」

 

「うっ・・・酷い・・・。」

 

 

 

天馬は霄を抱え横に寝かせると少し指をピクリと動かしていた。

 

ほんの少し安堵するがこの状態だと長くは持たないと素人の天馬からしてもそう思う程。

 

 

 

「や・・・やぁ・・・・君達か・・・。」

 

「霄・・・!」

 

 

 

虚ろな目をしている霄。

 

俺達に気づくと何時もの無表情から口元をゆっくり上げ無理矢理笑顔を作る。

 

 

 

「蓮の仕業か!?なぁおい!?しっかりしろ!!」

 

「・・・一つ・・・頼み事がある・・・。」

 

「何だ!?言ってみろ!!」

 

「・・・蓮を・・・蓮を恨まないでやって欲しい・・・。」

 

「何故!?お前や俺を殺そうとした奴を恨まないでいろだなんて無理だ!!奴は害悪でしかないだろ!?正義は俺達の筈だろ!?」

 

 

 

力無く首を横に振る霄は天馬の口に指を当て静かに言葉を吐く。

 

 

 

「違う・・・正義の反対は・・・悪ではなく、また別の正義なんだ・・・。」

 

「・・・そ、そんな訳・・・!」

 

「僕は・・・こうなるべくしてなった存在・・・全て・・・知っていた・・・。」

 

「どういう事だ・・・?」

 

「済まなかった・・・しかし・・・黙っていなければここまで上手くは行っていなかった・・・。」

 

 

 

目を閉じ、弱々しく息を吐き、もう一度天馬の方に目を向ける霄。

 

 

 

「禁忌を破り・・僕は・・・過去の存在・・・つまりはここに来た・・・。そして、僕が死ぬことで・・・未来は確立される・・・僕がした事は許されることじゃないが・・・決して無駄じゃないと思いたいよ・・・。」

 

「一体お前は何者なんだ霄!?過去とか未来とか訳が分からねぇよ!!」

 

「分からなくていい・・・そうだ、ここに一人の妖怪の女の子が来る・・・もう二つ・・・頼んでもいいかな・・・・?」

 

「あぁ・・・。」

 

 

 

霄は目を閉じると、作ったような笑顔ではなく、霄が本来持つような笑顔で話す。

 

それまで弱々しかった霄は最後の力を振り絞るかのようにハッキリと天馬に刻むように喋る。

 

 

 

「君との約束は守れなかった、恨んでくれても構わない。ありがとう、その言葉しか見つからないと・・・。そして、治せなくて済まないと・・・。」

 

「・・・霄、まさかお前感情が・・・。」

 

 

 

最後までそう言うと霄の閉じていた目から涙が零れ、天馬もその事実に驚愕する。

 

 

 

「これが一つ目の頼みだ・・・最後の頼みは・・・そうだな・・・君の持っている煙草を吸わせて欲しい・・・。」

 

「これか・・・?」

 

「あぁ・・・それで構わない・・・。」

 

 

 

天馬は何時も創造している煙草を持ち、霄の口へと運び咥えさせる。

 

ライターで煙草を炙るとそれと同時に火種が赤く光り、霄の口から煙が吐き出された。

 

 

 

「成程ね・・・君が中毒になるのも頷ける・・・。」

 

「だろ・・・?葉は全部俺が厳選してるからな、味わって吸ってくれ・・・。」

 

「ああ・・・天へと登る気持ちだ・・・。」

 

「・・・。」

 

 

 

霄が呟くと、咥えられていた煙草は地面へと落ち、それを見た天馬は霄の顔に視線へ移すとまるで笑っているかのような顔で目を閉じたまま逝った。

 

 

 

「霄・・・俺はお前の事を忘れねぇよ・・・。」

 

 

 

 

 

桜の木が散る場所にて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、こんなもんでいいか。あいつは余り目立たない方が好きそうだからな。」

 

 

 

霄が死んだ場所から少し離れ、景色が良く見渡せる場所で一つの墓を作り終えた後の休息。

 

簡素な墓だが名前はしっかり刻んでおいた。

 

線香を焚き、手を合わせ、しっかりと霄を見送った。

 

 

 

「あの恩人は・・・どこに行き着くんだ?」

 

「さぁな、死神の所へ行くと思うが未来から来たみたいに言ってたからな。禁忌を破るって事は地獄行きって可能性もある。未来の閻魔が決めることだ。」

 

「そうか・・・。悲しいものだな。」

 

「しょうがねぇよ、どんな大義名分があってもあっちじゃ関係ねぇからな。平等に裁かれる・・・来たな。」

 

「むっ・・・?」

 

 

 

霄の墓の前で藍と天馬が霄の弔いをしていると一度も感じたことが無い妖気を感知する。

 

その妖気の方を振り向くと、そこにはピンク色の長い髪をした奇妙な女がそこにはいた。

 

 

 

「・・・その墓は?」

 

「これか?霄の墓だ、お前の知り合いだろう?」

 

「しょう・・・?・・・成程、把握した。」

 

 

 

女は無表情、と言うのが一番的確である、口角や目に感情が籠っていない。

 

さらに女の回りには色々なお面が飛び回っており頭に悲しい表情をした面を付けている。

 

 

 

「貴方が殺したのか?」

 

「いや、天馬が殺したんじゃ・・・。」

 

「藍、ここからは俺が話す。」

 

 

 

面の妖怪が悲しい表情の面から怒を表すような面に切り替わり殺気が此方に向けられる。

 

藍はそれを察知し、止めに入ろうとするが天馬によってそれは遮られた。

 

 

 

「霄は・・・俺が殺した。」

 

「!」

 

「おい天馬・・・!」

 

「藍、いいから。」

 

「貴方が殺したとなればそれを見過ごすわけにはいかない!貴方を殺す!!」

 

 

 

無表情で大きな声を上げながら薙刀を構える妖怪。

 

殺すという宣言をした瞬間、妖怪は地を力強く踏み込み天馬の体に突き刺そうと薙刀を突く。

 

 

 

「ッッ・・・!!!」

 

「・・・何故避けない?馬鹿にしているのか!?」

 

「天馬!!」

 

「待て!藍ッ!!いいんだ!!」

 

 

 

突っ込んでくる薙刀を避けず、天馬の脇腹に深く刺さる。

 

妖怪は驚く面に一瞬切り替わるがすぐに怒りの面に切り替わり。刺さった薙刀を引き抜いた。

 

藍は天馬に駆け寄ろうとするが天馬は手で来るなと制止させた。

 

 

 

「避けないのであれば好都合!!」

 

「ぐッ・・・あッ・・・!」

 

 

 

更に薙刀を横に振り、天馬の脚を切り裂く。

 

地面にその身に残った片腕をつき、血反吐を吐きながら天馬は妖怪の目をまっすぐ捉える。

 

 

 

「・・・~~~ッ!貴様ッ!どれだけ私を馬鹿にすれば気が済むんだ・・・!」

 

「ハッ・・・!ハッ・・・!ハッ・・・!まだ足りねぇよ・・・ッ!」

 

「このッ!!」

 

「うぐッ・・・!!」

 

 

 

地面に手を着く天馬に薙刀を縦に振り、さらに天馬を地面に這い蹲らせる妖怪。

 

 

 

「死ね!!!死ね!!!!」

 

「うあッ・・・!ぐあぁッ・・・!!」

 

 

 

天馬を切り刻むように追撃を止めない妖怪。

 

地面に這い蹲り切り刻まれる天馬、しかし天馬は妖怪の目を見る。

 

 

 

「死に・・・っ!?」

 

 

 

さらに追撃をしようと薙刀をしたに振りかぶると妖怪は何かに気づく。

 

 

 

「何故・・・泣いている・・・?」

 

「ぐッ・・・!うぐ・・・!分からねぇ・・・分からねぇけど止まんねぇ・・・・。」

 

「・・・・。」

 

「霄は俺が殺したも同然・・・こんな痛み霄に比べりゃ屁にもならねぇ・・・・。」

 

「そうか・・・その覚悟、しかと受け止めた!!!」

 

「もうやめてくれ!お願いだ!」

 

「ッ!?」

 

「藍ッ・・・!」

 

 

 

妖怪は最後に渾身の力を腕に込め薙刀を思い切り縦に振ると、今まで傍観していた藍が止めに入ってきた。

 

藍は自分の命を顧みず、薙刀を止めるように割り込んだが寸でのところで妖怪は薙刀を制止させた。

 

 

 

「この男に二度も死んで貰っては困る・・・!お願いだ・・・!天馬を許してやってくれ!お願いだ・・・!」

 

「・・・。」

 

「藍・・・。」

 

「・・・良いだろう、私は諦める。彼も望んではいないだろうし。」

 

 

 

妖怪は天馬と藍の後ろを向き、歩き出す。

 

妖怪の手は強く握られ、爪が食い込み血が滴っていた。

 

 

 

「・・・霄からの遺言がある・・・!」

 

「何・・・?」

 

「霄はお前に向けてこう言っていた・・・!君との約束は守れなかった・・・恨んでくれても構わない。ありがとう、その言葉しか見つからないと・・・!そして、治せなくて済まないと・・・!」

 

「・・・そう。」

 

「・・・。」

 

 

 

妖怪の顔は霄の遺言を聞き、淡白に応えた。

 

表情は無表情、しかしお面は悲しい表情をしたお面を付けていた。

 

 

 

「・・・じゃ、さようなら。」

 

「あぁ・・・ッ!」

 

 

 

彼女が後ろを向くとき、天馬は少し見えた。

 

それまで無表情だった妖怪が酷く悲しい顔になっていたことに。

 

そして彼女は光に包まれ消えていった。

 

 

 

「霄・・・お前は多分・・・彼女を治したと思うぞ・・・!」

 

 

 

今は亡き命の恩人に天馬はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、面倒臭がりに拍車をかける。

「ふんッ!ふんッ!!」

 

 

 

霄の事柄から幾分か日にちが経ち、これまで怠ってきた鍛錬を取り戻そうと、汗を体中から流し、今日も一日体を動かす。

 

 

 

「はぁッ・・・!!はぁッ・・・!うぐっ!!ぐぉお!」

 

 

 

重さ500kgはある鉄の塊を交互に片手で持ち上げては下ろし、持ち上げては下ろす。

 

 

 

「天馬、そろそろ休憩して置いたほうが・・・・」

 

「まだだ、まだ限界じゃないッ」

 

 

 

血反吐吐こうが腕が上がらなかろうが鍛錬をやめない天馬に気にかけるがそれでも止めない天馬を見て何も言えず、ただただ天馬の限界を待つ。

 

 

 

「ふんぬぬぬぬ・・・!!!」

 

 

 

ついぞ腕に限界が来た天馬は次の鍛錬に移行する。

 

能力を使用しない己の体力で、次なる鍛錬は足を使用する物へ。

 

 

 

「ふんッ!ふんッ!」

 

 

 

地面に深く刺した鋼鉄の太い棒を蹴り始める天馬。

 

何度も同じ所を蹴られた棒は蹴った箇所だけ押しつぶされおり、辺りには重く、耳が裂ける程の音を鳴らす。

 

足に限界が来れば今度は腕、腕に限界が来れば今度は足と、交互に鍛錬する事6時間。

 

ついに天馬の体力切れが訪れた。

 

 

 

「も、もう無理だぁ」

 

 

 

そのまま地面に後ろへ倒れ何時もの様に気絶した天馬を抱え家へと運ぶ。

 

汗だくになって気絶している天馬の体を風呂場で綺麗にした後、布団へと。

 

 

 

「今晩は、藍。一緒に夕飯でも・・・ってまた天馬は修行してたのね」

 

 

 

夕飯を作り終え、天馬の分を保存するため天馬の創造した冷蔵庫と言う物に詰め込んでいると、後ろから声が聞こえ振り返ってみるとそこにはスキマから出た紫様が死んだように眠る天馬を見下ろしていた。

 

 

 

「・・・紫様、私は何れ天馬が過剰な鍛錬のしずぎで壊れてしまうかと思うと心配になってしまいます。あの鍛錬の量は正直、異常ですよ・・・」

 

「天馬が言い出したんだもの、しょうがないわよ。やめろって言ってもやめないしね」

 

 

 

自分の弱さが身に染みたと、そして護る者もいては今の自分では到底護りきれぬといいだした天馬は翌日からこの異常な量の鍛錬を毎日続けている。最初の方は紫様や霊夢、魔理沙や勿論私も止めたが一向に止めない天馬を見て何も言えずにいる。

 

 

 

「まったく・・・こっちは藍がいなくて困っているっていうのに清々しいほどの寝顔だわ」

 

「申し訳ございません・・・」

 

 

 

倒れた天馬を世話するため、長期休暇を紫から貰っている。

 

天馬は仕事に行ってもいいと私に言ってはいたが、気絶した後の天馬を世話する者等いない為必然的に私が世話をしなくてはならないため当分の間仕事復帰の目処は立ちそうにもない。

 

 

 

「ぐぉっ・・・!げほっ!!ら・・・藍・・・らーん・・・」

 

「むっ珍しいなこんな時間に」

 

 

 

天馬が起き始める時間は早朝に近いが、今は未だ夕飯時であり非常に珍しい。

 

うつ伏せに倒れながら藍に手を伸ばす天馬、紫には気づいておらず力無く藍を呼ぶ。

 

 

 

「どうした?」

 

「み・・・水・・・」

 

 

 

天馬に近寄り用を聞くと喉が渇いていたのか水を要求するとパタパタと台所へ行きコップに水を注ぐとすぐに天馬の方へ向かう。

 

 

 

「ほら、動けるか?」

 

「無理ぃ・・・・」

 

 

 

這い蹲る事はできるが立つことが未だ出来ない天馬。仕方なしに藍が上半身を抱き抱え口元に水が入ったコップを傾け注いでいき天馬はゴクゴクと喉を鳴らして飲み続ける。

 

 

 

「ありがとー・・・・」

 

 

 

水を飲み終え藍に感謝の言葉を投げるとすぐさま藍に抱き抱えられたままぐったりと死んだように眠ってしまった。

 

 

 

「これは重症ね・・・」

 

「ですね・・・」

 

 

 

紫様も私も呆れてしまい言葉が出なくなる。

 

だがしかし、鍛錬の成果が出てきているのか天馬の体は筋肉質になり体重も少し重くなっている。脂肪が筋肉へと変換されてきているのだろう。

 

さらに天馬の力の限界も少しずつではあるが増えている。

 

これで何も実りがなかったのであれば早急にやめさせられるのだが如何せん結果が出てしまっているので止めようにも止められない。

 

 

 

「はぁ~・・・とりあえず紫様、夕御飯に致しましょう」

 

「そうね、ついでと言ってはなんだけど貴女の式も連れてきているわよ」

 

「え?橙を?今はどこに?」

 

「そこに」

 

 

 

紫様の指を指した方向を見るとなんと天馬の足元で丸まって寝ていた。

 

なぜ先程気づかなかったのか驚きを隠せずにいたが平静を取り戻し天馬を起こさぬように音を立てずに橙に近寄り耳元に口を近づける。

 

 

 

「橙、起きるんだ。ご飯の時間だよ」

 

「にゃっ・・・」

 

 

 

耳をピクリと動かしもそもそと起き出す橙。

 

そして体を伸ばして脳と身体を覚醒させていく。

 

 

 

「よし、とりあえずこっちにおいで」

 

「はい~」

 

 

 

天馬の部屋から橙を出し、ゆっくりと音を立てずに襖を閉める。

 

閉まる間天馬を見たがピクリとも動かない所を思うと完全に睡眠に入ったらしく安心する。

 

 

 

 

 

しばし卓袱台を紫様と橙で食卓を囲み談笑していると玄関から大きくドアを打ち付ける音が聞こえた。こんな夜に誰だろうと藍は想い向かう。

 

 

 

「誰です?」

 

「俺だ、秤だ。その声は天馬の嫁さんか?」

 

「秤さんでしたか、今開けますので」

 

 

 

ガラリと玄関を開けると少し急いでいる雰囲気を醸し出している秤さんが目の前に立っていた。相変わらず髪が真っ白で肌も綺麗な白色に近い肌色だ。

 

 

 

「どうしたんですか?こんな夜に」

 

「本部の奴らが来てな、緊急会議をしなくてはならなくなったんだが早く連れてこいと五月蝿いんで来たんだが天馬はいるか?」

 

「いるにはいるが・・・動けないと思うのだが・・・」

 

「いるならいいんだ、早速で悪いが連れて行ってもいいか?」

 

「私は何も言えないのであれですが、とりあえず上がってください」

 

「すまないな、邪魔するぞ」

 

 

 

秤さんを家に上げ、天馬の寝ている部屋の襖を開けると秤さんは天馬を見ると近づいていく。

 

 

 

「おい、天馬。おい」

 

 

 

ペチペチと天馬を呼びながら軽く平手打ちをする秤さん。

 

正直起こしてあげたくはないが仕事に関しては何も言えないので黙って見ていると少し不機嫌になりつつも天馬が起きだした。

 

 

 

「んおぉおぉ・・・??何だよ~・・・」

 

「本部の奴らが来た、緊急会議だとよ」

 

「また今度って言ってくれぇ・・・」

 

「お前前もそれ言って延期にさせただろ、これ以上延期すると奴ら怒って俺達の給料下げるぞ。それは俺も困る」

 

「分かったよぉ・・・」

 

 

 

もぞもぞと起き、着替える天馬。

 

秤さんは部屋から出て玄関で待っている。

 

 

 

「天馬・・・」

 

「ん・・・?」

 

 

 

いそいそと着替える天馬の背中を抱き、顔を背中に預けると天馬は驚いている。

 

着替える手を止め腰に回す私の手を掴みながら微笑みをかける。

 

 

 

「大丈夫だ、俺の心配はしなくていい。これは俺が決めたことだからな。それよりも藍、仕事も休んで付き合ってくれてありがとうな」

 

「・・・」

 

 

 

体を回転させ私の目を見ながら頭を撫でてくる、これ以上の幸せは無い。

 

 

 

「な?」

 

「分かった・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体力の減りが半端無いのになぜこうもタイミング悪く本部の奴らがくるんだか。

 

また業務指摘でもしてくると思うと胃は痛くなってくる、おまけにここ最近ぽっと出の奴が閻魔王になったということを知ったのか舐めた態度だし。

 

しかし本部には逆らえん、下手すりゃ減給、最悪閻魔の仕事もなくなってしまう。

 

 

 

「はぁ~あ、本部の奴はいつ来たんだ?」

 

「ざっと一時間前だな、一応計が時間を繋いでくれているからまだ大丈夫だと思うが」

 

「だりぃな、長期休暇貰ってることは言ってあるんだろ?」

 

「アホか、閻魔王に長期休暇なんて存在しねぇんだよ。一応は大事な事がありやむなく休暇をもらっている体にしているんだから余計な事いうんじゃねぇぞ」

 

「へーい」

 

 

 

裁判所前に移動し閻魔王室に向かう間、ネクタイの位置やら寝癖やらなんやら整えていると周りの部下達が一斉に視線を向け会釈してくる。

 

 

 

「夜勤の顔も随分新しくなったな、人員調整したのか?」

 

「そうだな、繁忙期に近いし時代が時代だからな、日中じゃ魂も捌ききれん」

 

「ほ~ん」

 

 

 

しかしなぜ喪服なのであろう、わけがわからない。

 

これまで黒に近い服であれば良しとして貰っていたはずだが。まぁいいか。

 

と考えているとやっと長い廊下を歩いて閻魔王室にたどり着く。

 

 

 

「いいか、余計な事いうんじゃないぞ。まじで面倒臭くなるからな」

 

「わかったわかった」

 

 

 

 

 

さぁて初めての対面、どうなるやら。

 

本当に面倒くさい事が起きなければ万々歳なんだがなぁ。

 

と思考に耽りつつ閻魔王室の重厚なドアを秤が開くと何故か閻魔王が座る椅子にメガネを掛けた黒髪の女が机に両肘を付き手で口元を隠しながらそこにいた。

 

 

 

「お待たせしました、此方が現閻魔王、小鳥遊天馬です」

 

 

 

秤がその女に四十五度の角度で挨拶をする。

 

 

 

「待っていましたよ、天馬さん」

 

「そりゃどうも、お待たせして申し訳ない」

 

 

 

椅子・・・椅子はっと、いいや、秤のを借りよう。

 

秤の机から椅子を運びだし女の目の前に起き腰を落ち着ける。

 

 

 

「そいで、貴女をなんとお呼びすれば?」

 

「私の名前は鬼島七童きしましちどうという者だ」

 

 

 

中々に威厳のある名前である。

 

しかしなぜこう、美人なのに顰めっ面をしているのやら。

 

眉間に皺が寄っている。

 

 

 

「それじゃ七童さん、本部の人がなぜこんな小さい所へ来るので?」

 

「幻想郷裁判所の業務視察、それと貴方自身の視察も兼ねている」

 

「ふむ。あ、秤と計ちゃん。帰っていいよ、悪かったね」

 

「はい、それでは失礼します」

 

 

 

計ちゃんが帰り、秤もそれに釣られるようにコチラを睨みながら帰っていった。

 

あの視線の内容は多分、【余計なことは絶対に言うな】の視線である。

 

 

 

「・・・随分部下と仲睦まじい様で」

 

「いんや、金で動く部下も居れば秤や計の様に信頼で動いてくれている部下もいる。部下は使いようって奴だな本部ではこんな部下は居ないのか?」

 

「・・・本部は本部であるが私の所属している所を理解していない様だな。私の所属している部は十六小地獄だ」

 

「なぁるほど、それじゃぁ仲の良い部下なんて出来るわけないわな。所謂拷問部ってやつだ?」

 

「そうだ、その【拷問部】の主任である私がこちらの裁判所と貴方の視察の命令を受けた」

 

「そりゃご苦労様、あそこじゃ気が張り詰めてゆったりできんだろうからゆっくりしていくといい。甘い物は好きか?」

 

「・・・これは遊びではないのだぞ、そもそも貴方の言葉遣いからして評価を下げなければならないと私は思っている」

 

「甘い物は好きか?」

 

「・・・ですから、即急に態度を改めて・・・」

 

「甘い物は好きか?」

 

「・・・」

 

 

 

同じ事を何度も言わせるお上だ事、正直面倒くささがMAXになったので適当に言ってるだけなのだが。

 

 

 

 

 

「甘い物は好きか?」

 

「・・・嫌いではないとだけ言っておこう」

 

「ほう、それなら丁度いい。今自分のなかで流行っている代物があってな」

 

 

 

手に小包を創造し封を開けるとそこには冷えた洋菓子がそこにあった。

 

 

 

「なんだこれは?」

 

「これはだな!!!」

 

「!?」

 

 

 

大声を上げると七童は酷く驚きびくりと体を震わせた。

 

 

 

「餅の様な食感!そしてくどくない甘さのパンケーキ!そして中身にカスタードクリームが入った!!代物である!!」

 

 

 

そう言いながら小皿を創造し七童の方に二つ程寄せ、序でに紅茶も出しておいた。

 

 

 

「食べてみんさい・・・」

 

 

 

自分の分も創造し、口にそれを持っていき食べる。

 

う~ん、新触感。そして非常に美味し。

 

自分があまりの美味さに感動していると七童もそれをみて手を伸ばす。

 

 

 

「まて、まずは食材を頂く前には何か一言いうべきであろう!」

 

「・・・私は十六小地獄の主任だぞ、なにをもって」

 

「だからと言って何も言わなくていい等という理由にはなっていない!」

 

「・・・頂きます」

 

「どうぞどうぞ」

 

 

 

もうどうにでもなれ、やっぱ自然体が一番だと思うのよね。

 

お上なんざ関係ねぇ、この勝負、口に合うか合わないかで勝負が決まる。

 

 

 

 

 

「・・・っ!」

 

 

 

七童が口に含み、まずは食感を確かめ、咀嚼する。

 

すると何かに驚いたのか吃驚したような顔を見せた。

 

 

 

「・・・」

 

 

 

続いて咀嚼し終わった物を喉に入れ食道にながし、さらに甘ったるくなった口の中を甘さ控えめの紅茶で相殺させて一息つく。

 

 

 

「美味いな・・・」

 

 

 

勝敗がきまった様で先程の顰めっ面の七童の顔が少し笑顔になっていた。

 

顰めっ面のせいで威圧感溢れた七童の素面は童の様な面であった。

 

 

 

 

 

 

 

それから色々あり、業務の指摘を受けながら改善命令を貰う。

 

さらに不審な経費の使用なども発覚したのでそれも指摘されてしまった。

 

と、まぁまぁに時間が経っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「今回の視察は以上だ、結果は特に不備は無かった事にしておく、だがその言葉使いは直しておけ。」

 

「あいあいさ~」

 

 

 

裁判所の外にて三途の川手配した部下の船に乗り、別れる。

 

話してみると意外に面白かった、が疲れたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん??え?今回??また来るつもりか奴さんは・・・まぁいいか。」

 

 

 

今日も疲れたと想いながら天馬は家に転送する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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約束

「静かだ・・・」

 

 

 

本部の小言も躱して鍛錬も一通り終え、自分の建てた屋敷の縁側にてのんびりと茶を啜る。

 

貯まっていた大量の業務も三日程寝ずに全て終わらせようやく休息が取れた休日。

 

仕事さえ終わらせれば文句は言われない為、今更ながら閻魔王という役職になれて良かったと思う。

 

 

 

「んぅ・・・」

 

 

 

自分の膝の上に頭を乗せて瞳を瞑る無防備な女性の頭を撫でると獣耳をピクリと震わせ瞑られていた瞳が微笑みを浮かべて此方を見る。

 

 

 

「すまん、起きたか」

 

「まったくだ、折角寝ていたのに」

 

 

 

少し不貞腐れ目を背ける、しかし表情からは怒りの感情は読み取れず逆に喜びの表情を浮かべている様に見える。

 

 

 

「いや、その透き通った髪を見てるとな。つい撫でたくなるんだよ」

 

「褒めても何も出んぞ」

 

「居てくれるだけで俺に取ったら褒美だよ」

 

「・・・馬鹿者」

 

 

 

頭を自分の服に擦りつけ顔を隠す。

 

耳も先程より垂れており非常に愛おしい事この上ない。

 

さらに撫で続け時折耳も揉むように撫でるとピクピクと動き飽きない。

 

天日を跳ね返すような金色の髪色に目を奪われてしまう事もしばしば。

 

 

 

「なぁ」

 

「ん?」

 

 

 

声を発しこちらに顔を向ける。

 

此方も顔を向けると目を閉じたまま此方を向いておりほんのりと耳まで顔が紅潮している。

 

それを察した自分もそれ以上に赤面し戸惑ってしまう。

 

 

 

「・・・い、いいのか?」

 

 

 

恥ずかしさの余り少し壁を作る。

 

 

 

「いちいち聞くんじゃない馬鹿者」

 

 

 

少し怒り混じりに瞳を閉じたまま答える。

 

それが非常に可愛らしく、さらに顔を赤面させてしまう。

 

少し深呼吸をし、意を決しそのまま覆いかぶさるように唇を近づける。

 

 

 

「ん・・・」

 

 

 

そのまま唇を重ねると彼女はそのまま舌でこちらの唇を押し分け口内に侵入してくる。

 

それを受け入れるまま舌を絡ませる事数秒。

 

 

 

「んぅ・・・はぁ・・・」

 

 

 

重なった唇が離れお互いに目が合う。

 

彼女は先程よりも顔が紅潮し自分に至っては紅を塗ったかのように真っ赤になっており意識さえもクラクラとしている。

 

そしてまた、自分の服に顔を埋め顔を隠す。

 

 

 

「鍾愛しているぞ・・・馬鹿者」

 

「俺もだよ」

 

 

 

髪を撫で、動揺を隠す。

 

未だに手を繋ぐことですら恥ずかしい自分にとって先程の行動は非常に勇気を持った行動だと自負する。

 

そして少し時間が経つとまた、寝息が聞こえてくる。

 

幸福と言うのはこういう事なのだと思える。

 

 

 

しかし束の間、目の前に気配を察知し目を向けると空間が裂かれ裂かれた空間から見知った顔を覗かせた。

 

 

 

「ご機嫌よう天馬、随分とお熱いわね」

 

「・・・見ていたのか」

 

「何の事かしら?」

 

 

 

紫は扇子で口元を隠すがニヤニヤと笑っている。

 

これは確実に見ていた反応だ、しかも見つからないように妖力を限界まで抑えて遠くから眺めていた事を予想する。

 

 

 

「はぁ・・・で、何の用だ?」

 

 

 

顔を手で隠し恥ずかしさを抑える。

 

紫が此処に来ることは珍しくないが基本的に藍に用事がある時のみ。

 

俺に話掛けてくるということは多分大事な話なのだろう。

 

 

 

「守矢神社の巫女が貴方に会いたいらしくてね、なんでも話があるとか」

 

「話?俺は特に用事はないぞ、話たいって言うなら直接来てくれって伝えておいてくれ」

 

 

 

膝の上で寝ているお姫様を起こす程重要な話ではない気がする。

 

さらに久しぶりの休暇でもある故また次の機会にとは思う。

 

 

 

「そういうと思って連れてきたわよ」

 

「え?」

 

 

 

さらに等身大に空間が開きそこから少し飛んで降り立つ守矢早苗。

 

地面に着きスカートに付いた砂を払う動作を見るとやはりいい育ちをした女子だとは思う。

 

 

 

「こんにちは、天馬さん」

 

「よう、久しぶりだな早苗」

 

 

 

香霖と外に出かけた時以来だろうか、本当に久しい。

 

あの時のおどおどとした態度は無く、お淑やかな女性に変わっている。

 

 

 

「今日はどうした?俺に話があるとかないとか」

 

「えぇ、少し小耳に挟んだことがありまして。お隣よろしいです?」

 

「おう、いいぞ」

 

 

 

失礼しますと寝ている藍を通り過ぎ、真横にゆっくりと座る。

 

紫は無言でこちらに手を振ると消えていってしまった。

 

帰りは送れと言うことか。

 

 

 

「それで、俺に何の用だ?」

 

「藍さんとご結婚なされるとお聞きしました。私からはおめでとうございますとお伝えしますね」

 

「おう」

 

「しかし天馬さん、少しお忘れになっておりませんか?」

 

「・・・何がだ?」

 

 

 

意味深に質問を投げつける早苗、最初の笑っていた表情から一気に真面目な顔になり少しだけ怒っている。

 

しかし忘れている事等思い当たる事が無いので質問を返す。

 

 

 

「諏訪子様とのお約束、お忘れになっているのですか?」

 

「諏訪子・・・」

 

 

 

諏訪子か、懐かしい名前を聞いた。

 

そういえば幻想郷に居住を移したとは知っていたが会ってないな。

 

俺が旅立ってからだから・・・偉い時間が立っていて忘れちまったな。

 

しかし約束か、約束。そんな事してたっけっかな。

 

うーんと考える。目を閉じて顎に手をやり過去の記憶の糸を手繰っていく。

 

 

 

 

 

 

 

『天馬、約束覚えてる?』

 

「ん・・・?約束?」

 

『うん、約束』

 

 

 

 

 

過去の記憶の糸を手繰り諏訪子の言葉を思い出す。

 

その瞬間、汗が頬を伝い早苗の方を見ると早苗は此方に微笑みを向けてくる。

 

 

 

「まさか・・・」

 

「どうやら思い出した様ですね。あともう一つお伝えしたい事がございます」

 

「な・・・何だ?」

 

「私は貴方の娘です」

 

 

 

さらに耳を疑うような事を言う早苗。

 

此方も驚きで声が出せなくなりさらにどっと汗が吹き出てくる。

 

 

 

「まぁ・・・娘の娘の・・・さらに娘の娘って感じですけど」

 

「どういう事だ?」

 

「ご存知ないですか?諏訪子様は一度、神の依代が宿った・・・所謂神の代理人なるものを作る為に子供を宿したのです。神の力で」

 

「へぇ・・・」

 

「諏訪子様が子供を宿す時、同時に天馬さんの遺伝子をも神の力で創造し組み込んだ。その娘の娘・・・それが私なんです」

 

「ちょっと待て、聞き捨てならん事を聞いた様な気がするが。つまりは早苗は俺の遠い祖先の娘という事でいいのか?」

 

「そういう事です」

 

 

 

言葉を失くすという事はこういう事なのだろう。

 

諏訪子め、何故俺の子供を宿したし。

 

 

 

「ちょ、ちょっと待て。確かに俺は諏訪子の婿になるっていう約束はしたとは思うがそれは最終手段の話だろ?俺以外に男なんざごまんといるじゃないか」

 

「その【最終手段】というのが今なんじゃないですか?天馬さんが旅立って以来、諏訪子様に色恋等の事柄は無いと仰ってました。今でも天馬さんが思い人なんですよ?」

 

「・・・」

 

「結婚なさるのはおめでたいお話ではありますが筋が通っていないと私は思います、今一度諏訪子様とお話なさってみては如何でしょう?」

 

「そうだな・・・確かにそれは早苗の言う通りだ。一度諏訪子に会って話すのが筋だな・・・藍」

 

 

 

ポンポンっと藍の頭を軽く撫でる。

 

それに気づきまたも少し不機嫌そうに目を開くが隣に早苗が居ることに気づくと咄嗟に飛び起きる。

 

寝癖を整え目をぐしぐしと擦り早苗と対峙する。

 

 

 

「何だ天馬、客人がきてるなら来てると言え。恥ずかしいだろうが」

 

「藍、ちょっと大事な話がある。いいか?」

 

 

 

ピクリと耳を動かし不思議そうな顔をする。

 

早苗の方に視点を移し、早苗もまた真面目な顔をしているのでおおごとな話だと察知した。

 

 

 

「なんだ藪から棒に、構わないぞ」

 

 

 

早苗を家に上げ、和室の一室にて藍に先程の事を細かく伝える。

 

すると藍は少し呆れたような顔をして溜息をつく。

 

 

 

「なんだ、あの土着神はそんな子供の口約束の様な物に本気になっていたのか」

 

「口約束だなんてそんな!諏訪子様はずっと天馬さんの事を・・・!」

 

「そんな事は分かっている。天馬、私との婚約も口約束なのか?」

 

「・・・違う、俺は本気で・・・!」

 

「なら土着神と話をつけてこい、私が一緒についてきても気分を害するだろう。いいか?絶対に話をつけてくるんだ。わかったな?」

 

「あぁ・・・悪い。藍は家で待っててくれ、諏訪子と話をつけてくる」

 

「待ってるぞ」

 

 

 

早苗の肩に手を乗せスキマを開く。

 

行き先は勿論妖怪の山頂上、守矢神社。

 

諏訪子の元へ歩みを進める事にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社とは比較にならぬ程巨大な神社を目の前にし、立ち尽くす。

 

諏訪子にどんな風に伝えればと頭を回転させる、しかしどれが正解なのかが一向に思いつかない。

 

 

 

「天馬さん、行きましょう」

 

「あぁ・・・うおっ!?」

 

 

 

鳥居をくぐり、覚悟を決める。

 

早苗の後に続き歩みを進めるがこの先に諏訪子がいると思うと足取りが非常に重くなる。

 

しかしそんな緊張も束の間、背中に大きい衝撃が伝わり腰を見るとか細い腕がいつの間にか回されていた。

 

 

 

「やっぱり天馬だ!懐かしい匂い!久しぶり!!」

 

「諏訪子・・・久しぶりだな」

 

 

 

後ろを振り返ると懐かしい顔を覗かせる。

 

諏訪子は昔から変わらずあどけない少女の顔のままだ。

 

 

 

「何で会いに来てくれなかったの?私待ってたんだよ?」

 

「色々忙しくてな・・・」

 

 

 

ぷっくりと頬を膨らまし怒った顔をする諏訪子。

 

 

 

「あれからどうしてたのさ?早苗もあの博麗の巫女の所いったきり戻らなかったと思えば天馬に会いに行ってたのかい?」

 

「はい、天馬さんが諏訪子様とお話があるようでお呼ばれしたんです」

 

「話・・・?分かった!あれでしょ天馬、約束覚えててくれてたんだよね?」

 

「え・・・?」

 

「・・・」

 

 

 

どうやら諏訪子は俺と藍が結婚する事を知らないらしい。

 

早苗に目を合わせると蔑んだ目で此方を見ており背筋が凍りつく。

 

諏訪子の目の前に膝をつき、諏訪子の手を掴むとワクワクとした表情で俺の目を見る。

 

 

 

「悪い・・・俺、結婚するんだ。藍と」

 

「え・・・?」

 

 

 

ワクワクとした表情から一変、絶望の淵に立たされたような顔をする諏訪子。

 

表情が固まる諏訪子は俺の言葉で言葉を失くす。

 

 

 

「え、結婚?え・・・?だって天馬は私と約束したよね?」

 

「すまない諏訪子、本当に申し訳ない」

 

「謝りはいらないよ!!」

 

 

 

手を掴んだ俺の手を払いのける諏訪子。

 

 

 

「何で!?藍ってあの八雲紫の式の事!?あんな妖獣風情に私の約束が破られたって言うの!?」

 

「・・・すまない」

 

「納得できるわけないじゃん!だってこっちは約束してるんだよ!?謝られたって許せる訳ないじゃん!何!?忘れてたって言うの!?」

 

「諏訪子にはもっといい奴がいると思って鵜呑みにしていた、そこまで本気だったとは思わなかっつぅ・・・」

 

 

 

諏訪子から本気の平手が頬に当たり大きな音を鳴らす。

 

口内の内側の皮膚が裂け口からは血が滴り落ちる。

 

 

 

「あれから何千年待ってたと思ってるの!?待ってた結果がこれ!?ふざけないでよ!?そうやって私の心弄んで楽しかった!?天馬にとっては些細でただの口約束だったかもしれないけど私に取ってみたら数千年も待つ程大事な約束だったんだよ!!」

 

「すまない、これ以上の言葉は見つからない。」

 

「馬鹿!もういい!!もう知らない!!」

 

「諏訪子!」

 

「触らないで!!」

 

 

 

走る諏訪子の腕を掴み制止させようとはたかれる。

 

そのまま制止できないまま神社へ消えていく。

 

呆然と立ち尽くしていると後ろから酷く冷めた声で早苗が話す。

 

 

 

「分かりましたか?天馬さん、諏訪子様はずっと貴方を待ち続けていました。だけど貴方はそんな事も忘れて他の女性と婚約した。私は諏訪子様が可哀想でなりません。一度貴方が常識の世界で私を助けてくれた時、貴方は諏訪子様に非常識の世界、幻想郷で待っていると仰っていました。その時あの約束の事は忘れていましたか?その事を諏訪子様にお伝えした時、凄く喜んでいたんですよ?約束を覚えててくれたんだぁって。」

 

「・・・」

 

「貴方はそれを踏み躙る行為を行いました。例え諏訪子様や神奈子様が許しても私は貴方を許せません。私の血に貴方の血が微量でも引き継いでいる事に嫌悪すら感じます」

 

「俺は・・・」

 

「貴方がどうお思いだろうが関係ありません。これ以上屑で下衆な塵芥に時間を割くのも勿体無いと思いますのでこれで失礼させて頂きます」

 

 

 

そう言い捨てると立ち尽くす天馬を無視し、早苗も神社に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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軍神が話し合い。

呆然と立ち尽くした後、踵を返し守矢神社正面の階段に座り蹲る。

 

諏訪子との約束を忘れていた自分への怒り。

 

何故今も諏訪子が俺に好意を抱いてくれていたのかという疑問。

 

そして早苗のあの誹謗中傷への悲壮感。

 

頭の中がごちゃごちゃになる。

 

訳が分からないと身悶えそうになっている時、聞いた事のある声が天馬に掛けられた。

 

 

 

「やっ少年、久しいねぇ。そんな所で何しているんだい?」

 

「神奈子か・・・。久し振りだな・・・。」

 

 

 

守矢神奈子、この人物は諏訪大戦の時に諏訪子と戦い勝利した神。

 

酒飲みで五月蝿く、大柄で人が良い。

 

 

 

「なんだいなんだい、白けた顔しちまって。久し振りだってのに辛気臭いねぇ。」

 

 

 

隣にどかりと座り不思議そうに天馬の様子を伺う。

 

 

 

「俺、結婚するんだよ・・・。」

 

「ほぅ?目出度いじゃないか、相手は?」

 

「八雲藍っていう紫の式だ。」

 

「ふーん・・・結婚ねぇ・・・そんな目出度い事があって何でそんなに辛気臭い顔してるんだい?」

 

「・・・」

 

 

 

驚いた顔で神奈子を見る天馬、神奈子はそれを不思議な顔で返していく。

 

 

 

「何?いきなり変な顔して、私の顔に何かついてるのか?」

 

「いや、てっきり神奈子も俺と諏訪子が結婚すると思ってたのかと思ってな。」

 

「・・・あぁ、あの約束?の事を言ってるのかい?あれを本気にしてんのは子供位さね。」

 

 

 

大きく笑い天馬の背中をバンバンと叩く。

 

 

 

「それで?大方予想するに諏訪子にその結婚する事を伝えたら怒っちまったってなもんかい」

 

「ついでに早苗にもキレられちまったよ、屑で下衆な塵芥ってな。返す言葉もねぇ。」

 

 

 

神奈子が目を丸くし、驚いた顔で天馬を見直す。

 

 

 

「早苗はそんな暴言吐いたのかい、珍しい。まぁあの子は諏訪子の娘みたいなもんだからなぁ。小さい頃から諏訪子にべったりでさ、母親というより親友みたいな関係だからねぇ。」

 

 

 

そのまま立ち上がり大きく腕を伸ばし固まった体を引き伸ばす。

 

そして天馬に向かい直し肩にぽんっと手を置く。

 

 

 

「昔からの知り合いだ、私で良ければ力になるよ。」

 

「本当か?」

 

「あぁ、この一件私が取り持ってあげてやろうじゃないか。成功するかどうかは分からんがね。」

 

「悪いな、頼まれてくれるか?」

 

「いいともさ。それじゃ天馬、歯ぁ食いしばりな」

 

「え?」

 

 

 

意図が分からず神奈子の方へ顔を上げた時、既に神奈子の拳は天馬の眼前まで迫っており反応する事が出来ず鼻を押しつぶされ口内を切られ地面を転がっていく。

 

 

 

「ぐぉぉお・・・・!」

 

 

 

突然の事で理解出来ずにいる天馬は口や鼻から血液を止めど無く出しながら痛みに悶える。 それを見た神奈子はやれやれと笑いながら天馬の首根っこを掴み引きずりながら守矢神社の中へと歩みを進めていく。

 

 

 

「早苗~帰ったぞ~」

 

「おかえりなさい!今お昼ご飯作っていますので待っててくださいね~」

 

 

 

天馬を引きずりながら陽気な声で扉を開け進んでいく。

 

早苗は昼飯を作るのに忙しいのか別室の扉越しにまな板を包丁で叩く音を鳴らしながら神奈子に返事をする。

 

 

 

「少し用が有るから後で私の部屋に諏訪子と一緒に来るんだよ、いいね」

 

「え?あ、はい。分かりました。」

 

 

 

この間天馬は神奈子に首根っこ持たれ引きずられている。

 

意識が朦朧とする中守矢神社の中に居る事に気づく。

 

引きずられてきた後の廊下は天馬の血で所々血痕を残していった。

 

 

 

「よっこいせっと。ほら、何やってんだいこんな事で倒れる玉かい。」

 

「うぐっ・・・」

 

「治すんじゃないよ、そのまま正座で座ってな。」

 

 

 

神奈子の部屋に放り投げ出され這い蹲る。

 

口内や鼻の痛みが酷く、衝撃のせいもあってか頭痛が激しい。

 

とりあえずと痛みを無くすために再生させようとすると神奈子がそれを阻止した。

 

 

 

「・・・ッ」

 

 

 

顔を下に向け神奈子を正面に正座をする。

 

痛みで顔を歪め意識も朦朧としているからかフラフラと体が揺れる。

 

しかし神奈子は鋭い目つきで天馬を見ており正座を崩させず再生もさせなかった。

 

 

 

 

 

「きゃあ!?何これ・・・!?血・・・?神奈子様!?」

 

「早苗!諏訪子を呼んできな、話をそれからだ」

 

 

 

それから15分程経ち廊下からは早苗の声が聞こえてくる。

 

どうやら廊下の天馬の垂らしていった血痕に気づき神奈子の部屋へ足を運ばせようとするが神奈子はその前に早苗に諏訪子を呼ぶようにと言う。

 

 

 

「わ・・・分かりました・・・。諏訪子様ー!いらっしゃいますかー!?」

 

 

 

パタパタと急ぎ足で神奈子の部屋から離れていった。

 

天馬はただ下を向いて黙る。

 

正座をしたまま動かず、動けずにいた。

 

 

 

「なんだよ早苗、急ぎの用事って・・・しかもなんなのさこの血は・・・」

 

 

 

少しして諏訪子の声も交じり諏訪子もまた廊下に垂れている血に気づく。

 

 

 

「私も分かりませんよ!とりあえず神奈子様がお呼びになっているので・・・」

 

「分かった分かった、分かったから押すんじゃないよまったく」

 

 

 

どんどんと声が近づき足音も神奈子の部屋の前まで来る。

 

 

 

「神奈子様、諏訪子様をお呼びいたしましたが・・・。」

 

「よし、入れ。」

 

「失礼します・・・。」

 

 

 

ガラリと襖を開けると早苗と諏訪子の目の前には口や鼻に血をびっしりと付けた天馬が俯きながら正座しておりさらに奥には神奈子があぐらをかいて座っていた。

 

 

 

「なっ・・・。」

 

「これは・・・。」

 

「早苗、諏訪子、こっちにこい。」

 

 

 

促されるまま襖を閉め、天馬の横を通りながら神奈子の方へと向かう。

 

 

 

「座りなさい。」

 

 

 

神奈子に促され早苗と諏訪子は神奈子の横へ座り全員で天馬を見る。

 

 

 

「「「・・・」」」

 

「・・・あのさ、一体なんなのこれは・・・?」

 

 

 

最初に口を開いたのは諏訪子、心配そうに天馬に視線を移す。

 

神奈子は広角を上げ諏訪子の質問に対し答えていく。

 

 

 

「いや、ここに帰ってくる途中でこいつを見つけたもんでな。あんたに謝りたいってんだがどう思う?」

 

「どう思うって・・・もう別にどうでもいいし・・・その前になんで怪我してんの・・・?」

 

「私がやった、やっとかなくちゃいかないと思ってね。」

 

「どうして・・・」

 

「あんたじゃ殴れないだろうと思ってね、勝手にやった事だがこれで少しは気が晴れただろう?」

 

「・・・」

 

 

 

黙って俯く諏訪子、今度は早苗の方に顔を向ける。

 

 

 

「早苗、お前が怒るのもしょうがない事だがこれは諏訪子と天馬の話だ。腑に落ちないとは思うがこの件はもう終わったことにしな。わかったかい?」

 

「は・・・。いえ・・・。私は終わったことには出来ないです。私と天馬さんは遺伝子上とはいえ血の繋がりがあるんです。ほんの少しでも天馬さんの血が流れている以上やっぱり許せませんよ・・・。」

 

「ふむ。諏訪子は天馬の・・・まぁ形だけとはいえ子供を産んだが天馬だってそれを知ったのは初めてだろう?もしも天馬が誰とも結ばれず一人者だったしてもこの所業は許されないとは思うんだけどね?まぁそこは天馬なら許してくれるだろうと甘えた結果がこれさね。」

 

「・・・。」

 

 

 

早苗もまた顔を曇らせ俯く。

 

泣きそうな顔で、血がついたまま、曇らせたまま三人が俯く異様な空間。

 

 

 

「私から言わせれば早苗除いてあんたら二人共悪いよ。天馬は女の心を弄んでるし諏訪子は諏訪子で天馬の自由を奪ってるんだ、どっちもどっちだよ。分かったかい?」

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

「ま、という訳で天馬に対する制裁はこれで終了でいいね?」

 

「・・・分かりました、神奈子様がそう言うのであれば。」

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「なんだいあんたら、まだ何かあるのかい。何か言いたいことがあるのなら言えばいいじゃないか。」

 

 

 

天馬が顔を上げ諏訪子に向き直ると諏訪子は少し脅えている様な様子で目を背ける。

 

腰を落とし額を畳に擦りつけ諏訪子に土下座をする。

 

 

 

「諏訪子、すまなかった。俺はあの時俺は諏訪子に不相応だと勝手に思っていた。約束から逃げるように長年連絡もせず顔も合わさずに居た。月日が流れるに連れその事は頭からすっぽ抜けてた。諏訪子の事も考えず自分勝手に伴侶を作ってしまい本当に申し訳ない。諏訪子が望むのならば俺は二度と諏訪子の目の前には現れない。だけど俺としては友を超えた関係を迎え入れてくれると嬉しい。自分勝手だとは思うだろうが許してくれないか

 

・・・。」

 

「・・・天馬、顔を上げてよ。」

 

 

 

諏訪子に面を上げると悲しい様な怒ってるような複雑な表情をしていた。

 

 

 

「早苗、救急箱とぬるま湯で濡らした手拭い持ってきて。」

 

「え・・・?は、はい。」

 

「諏訪子・・・?」

 

 

 

天馬に歩み寄り両手で顔を押さえ見つめる諏訪子。

 

突然の行動に天馬はたじろぐ。

 

神奈子は邪魔者は消えると言わんばかりにニヤニヤ笑いながら早苗と共に部屋を出て行った。

 

 

 

「あ~・・・鼻折れちゃってるし・・・口も傷だらけ・・・ほら口開けて。」

 

「え・・・。」

 

「ほら早く、口の中も切れてるでしょ?見して。」

 

「あ~・・・。」

 

 

 

口を開けるとどれどれと見始める諏訪子。

 

想像以上に切れていたのか焦り始める。

 

 

 

「うわー・・・これは酷いね・・・。そういえば細胞で治せるんでしょ?鼻は私が処置してあげるからそこは自分でやってね。」

 

「あ、あぁ。」

 

 

 

全て自分で治せるだなんて今更言えず諏訪子の世話になる天馬。

 

早苗の持ってきた手拭いで顔を優しく拭いてもらい血を落とす。

 

鼻の穴に付いた乾燥した血も濡れたガーゼで落とし新たにガーゼを入れ、外側に鼻の形を矯正するために軽く添え木を付け包帯を巻いた。

 

 

 

真中横一閃に包帯が巻かれた天馬。

 

処置を終えた後縁側にて早苗の淹れてくれたお茶を飲みながら諏訪子と横並びになる。

 

少しの間沈黙が続いたが少しずつ諏訪子が言葉を漏らす。

 

 

 

「実はさ・・・天馬には悪いんだけどこの事は予想できてたんだよね、天馬が居なくなってから500年位した時にさ。もう天馬には別の人がいるんじゃないかって。その時から覚悟はしてたんだけどね・・・いざ直面すると結構辛かったよ。」

 

「・・・。」

 

「まぁもう吹っ切れたしどうでもよくなっちゃったけどね。そういえば聞けずにいたけけど・・・右手どうしたの?隠してるようだけど。」

 

 

 

懐に隠していた右手首を気にする諏訪子。

 

蓮の持っていた機械式の長物に切られてから感覚はあるものの何処かに消えた手首の先。

 

一度自分で腕事消滅させたが復活させても治らず永琳に頼んでみたが治す事が出来ずそのままでいた。

 

 

 

「これか?ちょっと怪我してな・・・まだ治らないんだ。」

 

「え?ちょっと見せて。」

 

 

 

手を差し伸べる諏訪子、余計な心配はさせたくないと少し戸惑う。

 

 

 

「いや、見ても面白いことはないぞ。酷いから気持ちが悪いし。」

 

「いいから、神力で治るかも知れないし、ほら。」

 

 

 

強情な諏訪子に負け恐る恐る懐から腕を抜き手首から先の無い腕を見せると絶句する。

 

血が出ていない切断面からは肉や骨が鮮明に見えるため非常に不気味だ。

 

しかし長年の経験からか諏訪子は少し固まっただけでまじまじと腕を見始める。

 

 

 

「何これ・・・血は流れてるし筋も動いているのに・・・。」

 

「俺も良く分からない、手首から先だけ何処かにある感じだ。指の感覚はあるんだけどな。」

 

「どうしたらこうなるの、誰かにやられたの?」

 

「あぁ、ちょっと前に常識の世界からきた奴がな、殺されかけたがなんとか助かった。」

 

「・・・命あってのものだよ、これだけで済んで良かったね。」

 

「本当にな。」

 

 

 

 

 

 

 

それから旅の話をして、紫や藍との出会いや今現在はマヨヒガに住居を構えている事を話した。

 

藍との婚礼の儀をする予定等を話し招待する事も。

 

 

 

「幸せな奴だね、紫の式も。少しだけ妬けちゃうね。」

 

「酒飲んで暴れて潰れるのだけはやめてくれな。」

 

「失礼な!!」

 

 

 

べしべしと頭を叩く。

 

そんな事をしていると空はもう茜色に染まりそろそろと腰を上げる事にする。

 

 

 

「また何時でも来な、また酒でも飲もうじゃないか。」

 

「お洒落しないといけなくなったね、楽しみにしてるよ。」

 

「時間が空き次第書信を送る。神奈子、今日はすまなかったな。早苗にもよろしく伝えておいてくれ。」

 

「あぁ、伝えとくよ。今はどっかいっちまって居ないけど直に帰ってくるだろうからね。」

 

 

 

守矢神社から出る前に神奈子に礼を言い手を軽く振ると二人共笑いながら振り返してくる。帰りに人里にでもよって油揚げでも買って帰ることする。

 

鳥居をくぐり長い階段を降りるとその先に早苗が大きな石の上に座っていた。

 

 

 

「帰るよ、今日は騒がしくしてすまなかったな。」

 

「分かりました。今日はお時間取らせて頂きありがとうございました。」

 

 

 

石から降りて背を向け守矢神社に向かおうとする時、天馬は早苗に声を掛ける。

 

 

 

「早苗は許してはくれないのか?」

 

 

 

立ち止まり少し黙ると天馬に踵を返す。

 

向き直り夕日に照らされた早苗は笑っているが少し寂しく感じた。

 

 

 

「諏訪子様が許すというのであれば私は許しますよ。」

 

「そうか・・・。そういえば早苗、両親は外に置いてきたのか?」

 

「・・・私が物心つく前からもういませんよ。親の顔は写真でしか見たことありませんし特に思うことはありません。」

 

「ん・・・それは悪いことを聞いたな。」

 

「いえ、慣れてるんで別に大丈夫です。それじゃ私は諏訪子様が心配してると思いますので帰りますね。」

 

「おう、気ぃつけてな・・・っていってもすぐそこか。」

 

「・・・それじゃさようならずっと昔のお父さん。」

 

「え?」

 

 

 

素っ頓狂な声が出るが早苗はそれを無視して階段を登っていった。

 

理解出来ずにその場に立ち止まるが深く考えるのをやめ天馬もまた、森を抜ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、生き方の分岐点。

「ふごッ・・・」

 

 

 

休日は寝て過ごすのが一番良いと思う男、天馬。

 

 

 

「今何時だ・・・?」

 

 

 

枕元に置いてある時計に目を移すと短針はもう12の数字を過ぎていた。

 

ある者は休日に一日の半分を寝て過ごすだなんて勿体無いと喚いて居る者も居るが。不老長寿もとい不老永寿であるため寝ていても特に何が減るとかではないのである。故に。

 

 

 

「二度寝決め込むのが最善の選択・・・か。」

 

「おい。」

 

「あいてッ」

 

 

 

布団を整えもう一度睡眠の態勢に入ろうとするとペシンッと金色の尻尾が頭に軽く当たる。

 

視線を移すと少し怒った様な表情で藍が立っていた。

 

 

 

「あ~・・・藍も寝るか?」

 

「私はお前と違って休日なんてないんだ、忙しいのが分からないのか?さっさと飯を食え。」

 

 

 

溜息一つ吐き呆れた顔で見る。

 

次に此方を見据え何か言いたそうな顔で訴えるが意図を汲み取れていない。

 

 

 

「ん~・・・ほれほれ」

 

「私は忙しいといってるだろう?」

 

 

 

布団に人一人分のスペースを開け洞窟のように掛け布団を寝転んだまま上げる。

 

一瞬般若の様な顔をした藍だが諦めたのかモソモソと布団に誘われる様に中に入る。

 

 

 

「なぁ藍、お前の休みがない事だって頭の悪い俺でも分かってるさ。だから今日はゆっくり休め。」

 

「いや、お前がただ寝たいだけの口実だろうが。」

 

「あっばれた?」

 

「ばればれだ。」

 

 

 

拗ねた顔をした後もぞもぞと自分の胸に寄り付かせ目を閉じた。

 

 

 

「まぁ・・・お前が言うんだったら休んでやる事も無い。」

 

「藍はもっと欲求に忠実に生きたほうがいいぞ。人間みたいに短命じゃねぇんだから。」

 

「生きた結果が過去の私だ。だから、自重をする事にしている。」

 

「ここじゃ誰も藍を責めねぇよ、俺が食い殺されるかもしれんがな。」

 

「するか!」

 

 

 

顔を真っ赤にし軽く小突き可愛らしく怒る。

 

しかし何かを思い出したのか少し黙った後顔を埋めていく。

 

 

 

「失う事が多すぎた、正直本来の姿を出せばいずれ紫様からもお前からも見放されそうで怖い。」

 

「見放さねぇよ、逆に俺を見放さないでくれよな。周りから見たら俺は最低な人格らしいからな」

 

「・・・善処する。」

 

 

 

藍の頭を撫で落ち着かせていると再度眠気が訪れる。

 

藍も既に寝息を立てて寝静まっていた。

 

ふわふわと暖かい尻尾がさらに眠気を増幅させた後、目を閉じさせていく。

 

 

 

「ここは・・・?」

 

 

 

真っ白な空間に地面の無い感覚。どこかで体験したような覚えもないようでもないような気がしてならない。

 

 

 

「よっ」

 

「うぉっ!?」

 

 

 

突然後ろから声を掛けられ同時に肩に手を乗せられる。

 

驚きながら後ろを振り向くとそこには人を馬鹿にしている様に笑う男が反対の腕を上げながら挨拶をしてくる。

 

 

 

「久しぶりだな、って言ってもお前からすればもう記憶に残っていないかもだが。」

 

「・・・憶えているようで憶えていないような感じだ。」

 

「はっはっは、まぁそうだろうな。」

 

 

 

からからと笑う男からは敵意は感じられないがかと言って味方とも言え難い雰囲気を放っていた。

 

 

 

「まぁとりあえず座れや、立っているのも疲れるからな。」

 

 

 

どっこいせと胡座をかき膝に肘を乗せ、顎を支えてニヤニヤと笑う男に対し少し距離をとり座る。

 

 

 

「お前の望んだ結果だ。」

 

「何?」

 

 

 

向かい合い、少しの沈黙を止めたのは男の一言であった。

 

 

 

「俺は一度救済という好機をお前に与えようとしたが、お前が拒否をした。お前がな。」

 

「・・・」

 

 

 

何の話をしているのかまったくと言っていいほど理解が出来ないが男の真剣な表情からして真意を話しているのだろうと耳を傾ける。

 

 

 

「一人の男を代償にして、お前はこの結果になった。まぁ・・・案外とお前は無理矢理に納得しているようだが。全てはお前が所為であると同時に・・・それもまた代償になった男の望んだ結果だな。」

 

 

 

おそらく霄のことだろう、少し気分が悪くなる話だが霄の事を詳しく聞きたい為黙って聴くことにした。

 

 

 

「白面金毛九尾の狐を嫁にして、これまで程遠かった幸という物を手に入れようとしている。だが、それを手に入れるにはお前はまた苦痛を味わい続けることになる。」

 

「起こった結果は俺には戻せないがその運命という過酷な道のレールをほんの少し訂正してやろうと思い立った訳だが・・・今回はどうする?受けるか?俺の救済を。」

 

 

 

おそらく前の自分はこの救済を拒否し、霄を死なせてしまったのだろうか。

 

リスクの無いメリットを差し出されているのにも関わらず何故自分は拒否をしたのだろう、いや答えは分かっている。全て自分の欲求を満たしたかったのだろう。刺激、プライド、天邪鬼、それが答えなんだろう。

 

 

 

「受ける。」

 

「さすがに二度目は馬鹿を見るのをやめるか。ならいいだろう俺の言葉を聞いておけよ?この言葉だけがお前の記憶の片隅に残るんだからな。」

 

 

 

男は突然ゆっくりと立ち上がり背を向け言い放つ。

 

 

 

「医者という職業を避けさせろ。」

 

「誰にだ!?俺か!?」

 

「答えは言わない方が俺にとっては面白い、あとはお前がどうするかだ。」

 

「面白いだと!?無責任すぎるぞ!!」

 

 

 

天馬も立ち上がり大声で男に問うが男は笑顔を浮かべたまま白い羽を撒き散らしながらその場から消えて言った。

 

 

 

「うぉ!?」

 

 

 

それまで地面に着いていたタイルと思わしき足場がパタパタと崩れて行く事に驚き後ずさるが遂に自分の立つ足場に到達し落ちていった。

 

 

 

 

 

「うっ!?」

 

 

 

目を開けると同時にがばりと起き上がる。

 

先程まで夢で見ていた事を思い出そうとするが情報量がどんどんと断片の様になり男に受けた言葉だけが最終的に残った。

 

 

 

「医者・・・だと・・・!?」

 

 

 

医者と言えば永琳であるが永琳を避けろという事か・・・?

 

いや、職業と言う事はとどのつまり・・・?

 

 

 

「分からん・・・。」

 

「何が分からないんだ?」

 

 

 

掛けられた声の方向を向くと藍が寝そべり微笑みを浮かべながら優しく問いてくる。

 

その優しさでそれまでの焦燥感や不安定な思考がゆっくりと穏やかに消えて行く。

 

 

 

「あ~・・・大丈夫だ。少し疲れているみたいだ、いま何時だ?」

 

「そうか。」

 

 

 

縁側の外をみると少し夕映になっていた。

 

朝と昼の食事を抜いたからか腹が減っていた。

 

腹から情けない音を出すと藍がゆっくりと立ち上がりエプロンをいそいそ着始めた。

 

 

 

「今日はカレーがいいなぁじゃがいもごろごろの。」

 

「しょうがないな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいぞ、今日も頑張ってこい。」

 

「あいよ。」

 

 

 

ネクタイを締めてもらい身なりを整え玄関を出ようとすると背中をポンッと叩かれる。

 

別に玄関をでなくとも転移は出来るのだが仕事を始める儀式としている。

 

 

 

 

 

「おはようさん。」

 

「おはようございます閻魔王。」

 

 

 

受付を通り挨拶をしていくと皆笑顔で挨拶を返していく。

 

最近は若い男女が入社してきたせいか雰囲気も変わり生き生きとしている。

 

これまでを牛耳る老いた者達は名ばかりの役員をさせている。

 

 

 

「おはよっす閻魔王」

 

 

 

髪はボサボサ、服はヨレヨレな新人が気軽に挨拶をしてくれる。

 

少し前までは全員からは顔を合わせれば避けられ挨拶もしてはくれなかったが馴染んできたおかげか声を掛けられるようになった。

 

 

 

「おう、ちゃんとやってっか。」

 

「仕事は仕事ですからね、今度飲み連れてってくださいよ!」

 

「時間ができたらな、あとお前ネクタイ曲がってんぞ。」

 

 

 

ネクタイを解きもう一度締めてやると少し照れたような顔で笑う。

 

 

 

 

 

「あっすいません、徹夜だったもんで。」

 

「残業代馬鹿にならねぇんだから気張るのもいいが程々にしろよ、無理そうだったら他の奴に頼め。」

 

 

 

言葉使いに関しては自分も上手く無いため気にはならない。

 

老害共を追いやったが未だにしわ寄せが若いのに来てるのを見るともう少し改善せねばと考える。

 

奥の重厚な扉に手を掛け軽く押すと同時に重みのある音が響き開かれる。

 

開かれた先の正面には閻魔王が使用する机と両脇に秘書が使用する机があるが片方にしか人は座っていなかった。

 

 

 

「お早う計ちゃん、秤はまだこれないか。」

 

「おはようございます天馬さん、天音さんの体調が優れないらしくて・・・。」

 

 

 

深刻な顔をする計、秤の妻である天音さんの腹には女の子を身篭っている。

 

しかし天音さん自身の体力も少なく精神的にも体力的にも厳しい所である。

 

一度永琳の所へ連れて行ったが永琳の診断では生むのは厳しいとのこと、例え体力を上げる薬を投与したとしても天音さんの体がどうなるか未知数である事。産めば死の可能性があり生きるには堕胎せねばならないが天音さんは自分自身はどうなっても良いという考えであった。

 

しかし秤はそれに猛反対した。

 

それならばと天音さんは自然分娩を選んだ。

 

 

 

「天音さん体力厳しいからなぁ・・・この前も倒れたしなぁ、前は目の前に布団があったからクッションになったがこれっからが本番だからな、秤にはつきっきりで休むよう言っといてくれ。」

 

「え?でもそれだとお仕事が・・・。」

 

 

 

たじろぐ計、しかし新しい秘書を使おうとは思わないし起用もする気が起きない。

 

秤より優秀な人物が思いつかない。良く働き、文句はいいながらもしっかりとやる事をやる。

 

それ故にもう一人増やす意味がない。だったら秤が戻るまで少しの辛抱だと思い切る。

 

 

 

「いい、俺がその分働く。計ちゃんも仕事内容はそのままでいい。」

 

「でも・・・夜勤の管理する人がいなくなっちゃいます。天馬さんも藍さんがいますし・・・。」

 

「いいんだよ、死なねぇ体だ、有効活用しなくちゃな。俺が管理するよ。」

 

「・・・。」

 

 

 

うな垂れ嗚咽を鳴らす計。困惑する天馬。

 

あたふたとする天馬に計は衝撃的な言葉を述べた。

 

 

 

「天音さん・・・もうダメかも知れないんです・・・。」

 

「何故だ?前に会った時は寝たきりだったが元気そうだったじゃないか?」

 

「永琳さんから聞いたんです、天音さんは死神の一族の一人として生まれましたが両親共に早くに亡くなっているんです。」

 

「あ・・・?」

 

「寿命の可能性が高い・・・と・・・言われました・・・。」

 

 

 

空いた口が塞がらない。寿命はどうやっても逆らえない事は天馬も身に染みて理解している。

 

故に次の言葉が出ない。

 

朝から非常に気負いするような話である。

 

 

 

「寿命・・・って天音さんはまだ320歳位だろう?人間でいったら22歳位な筈だが・・・?」

 

「はい・・・。」

 

 

 

死神の寿命にしては短すぎる。

 

人間からすれば長いが自分はもう2億歳以上である。妖怪や神の類は弱小であっても500年はゆうに生きる生物だ、しかし320歳で寿命とは少なすぎる。

 

 

 

「まだ兄さんには伝えていませんが・・・天音さんは理解している筈です・・・。」

 

「そうか・・・秤には金の事とか仕事の事は気にしなくていいから休んでくれと伝えてくれ、天音さんに集中してくれってな。」

 

「わかりました・・・。」

 

 

 

計を落ち着かせ業務に付かせる。

 

通常通り仕事を始めるが色々な事を考えながら作業に進むが落ち着かない。

 

とりあえず今日からは夜勤の管理もしなくてはならない為一旦家に帰り藍に説明する事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って事があったんだが長い間家を空ける事になる。」

 

「そうか・・・お前がそうしようと思うならそうするがいい。家の事は心配するな、任せておけ。」

 

「わりぃな、申し訳ねぇが頼むぜ!・・・うぉ!?」

 

 

 

再度喪服の上着を羽織り玄関に向かおうとすると金色の尾が目の前に現れ体を包み持ち上げた。

 

もふもふとした感触に落ち着く匂い包まれるに時は幸せになれる。

 

尾を翻し尾に包まれながら藍の正面に立たされる。

 

藍の顔は少し怒っている様に見えた。

 

 

 

「お前は私に気張るなというがお前は一体どうなんだ?」

 

「俺はいいんだよ、死なねぇ体だ。疲労が溜まっても怪我をしても次の日にゃある程度治る。」

 

「はぁ・・・まぁいいだろう。秤さんには恩もある。恩返しって言ったらあれだがお前の事だからいいだろう。」

 

 

 

包まれている尾からゆっくりと床に下ろされる。

 

藍は呆れているが諦め天馬にもう一度笑顔を向けた。

 

天馬もそれに釣られて笑いあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、秤に会いにいく。

「ぐぉ・・・一瞬意識が飛びかけたぜ・・・。」

 

 

 

夜勤の管理を任され三日目、家にも帰れず裁判所に併設されてある風呂と洗濯機をフルに使い寝泊りをしている。

 

眠気覚ましにコーヒーを飲んだり、超辛口ガムを頬張ってみるが効果は皆無。

 

さらに睡眠大好きな自分からしてみれば眠れる時間が少ないというのは拷問に近い。

 

 

 

「夜勤の管理ってこんなに暇だとは思わなかったなぁ。」

 

 

 

裁判を行える時間が朝から夕方までと決まっているので面倒臭い書類整理等は無いが夜勤勤務の社員共の行動を管理するというのは少々気が引ける。

 

自分は机の上で監視カメラを眺めるだけで社員はせかせかと経理やら魂の管理等で忙しそうに働いてくれていた。

 

 

 

「信書でも書くかぁ・・・。」

 

 

 

ある程度決まっている藍との婚約の儀の招待状を書く事にする。

 

招待したい人物はある程度決まっている為すらすらと書け暇つぶしにはもってこいである。

 

 

 

「え~・・・紫に橙に霊夢に魔理沙・・・。アリスに香霖に・・・諏訪子と神奈子・・・。永琳と輝夜と安倍晴明・・・てゐだろ。」

 

 

 

これまで関わってきて尚且つ幻想郷に移住してきている人物を思い出す。

 

ひさかた会っていないない人物も含めるべきかどうか、悩み所ではあるが後が怖い。

 

 

 

「幽香に・・・妹紅に・・・あっ幽々子と妖夢もか。全然会ってねぇな。」

 

 

 

思い出すだけでこんなにも居る事に驚く。

 

全員参加してくれるだろうか少しドキドキしてくるゾ。

 

しかし少しどころか大いに不安が拭えない。

 

アリスと魔理沙だ、前の一件がある。

 

 

 

「とりあえず参加有無のご返事お願い申し上げますっと書いておこう。」

 

 

 

今一度信書を開き、誤字等が無いかを見るが一見したところそんなミスは無さそうなのでスキマを開き見知った知人の家のポストに投入した。

 

ポストが無い家は机の上に置いておけば気づくだろう多分。

 

 

 

「しっかし、最近トレーニングしてねぇな。肉体よりも頭の回転を早くするべきだろうが・・・。」

 

 

 

脳筋故にどうすれば、どうやれば戦闘の時優位になれるだろうか。

 

怪力は幻想郷にとってはデフォみたいな物だし能力は地味だしなぁ。

 

 

 

「創造か・・・。」

 

 

 

創造、にしては魔法に応用してたらそれ意味なくない?

 

いや、意味無くはないが絶対的力にならなくない?じゃあ兵器でも作るか?何のだよ。

 

 

 

「簡単そうに見えて難しい、それが創造の力か。もうちょっと武器の扱い方でも勉強するかな~。体術も・・・ん?体術?」

 

 

 

体術で思い出したのはあの霄が使っていた金剛、心臓を殴り相手を気絶させる技。

 

あれを会得すればどれほど楽だろうか。

 

 

 

「ゆ~てあれも簡単に見えて難しいんだろうなぁ・・・・前に霊夢に心臓掌底しても痛がるだけだったし・・・。」

 

 

 

それに相手を倒れさせないあの連続技の事も脳裏に焼き付いている。

 

あの星熊の鬼が立ったまま気絶したあの技はもう神業だ。

 

 

 

「ぐあぁあ~!考えれば考えるほどやり方が分からねぇ!実践しかねぇのか!?」

 

 

 

練習相手が居ないと話にならない、美鈴は妖怪と言えど人間に近いから間違って殺してしまうかもしれんしかといって霊夢は意味不明に避けてきそうだ。

 

そもそもが女の子相手にするって事が問題なのだけれども、幻想郷の男で強い奴を見たことが無い。香霖は強い・・・かどうかは分からんが戦闘向きではなさそうだ。

 

 

 

そんな事を考えていたら裁判所の外は少し明るくなりつつあった。

 

ぐだりと机に突っ伏して窓を見ていると眠気も大きく襲ってくる、堪えようと目に力を入れても逆効果であった。

 

 

 

 

 

「おはようございま・・・す?」

 

 

 

計が出勤した時にもう既に天馬は机の上で爆睡していた。

 

腕を枕にし涎を垂らし、眉間に皺寄せ口を開きながら寝る絵面は面白く、計は口に手を当て笑いを声に出さぬ様ひざ掛けを天馬の肩に乗せ業務を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

「ゲホェッ!!ゴホッ!!う~ん・・・・。うん?」

 

 

 

顔を上げ辺りを見回すと計が笑いかけながら見ていた。

 

プライベートは裸眼で仕事の時は赤い眼鏡を着用する計に久しぶりに 萌え という感情を抱きつつ謝罪する。

 

 

 

「・・・寝てたか、すまん。」

 

「無理も無いですよ、一日中起きてるなんて普通無理な話ですから。天馬さんは少し頑張りすぎなんですよ。」

 

 

 

微笑みながら業務をこなす計に少し涙腺が緩くなりそうだ。

 

この子は何故こんなにもいい娘なのだろうか、是非いい貰い手がいないか探してみたいものだ。この娘に相応する男なんて果たしているのだろうか。

 

 

 

「・・・何か欲しい物あるか?おじさんが用意してあげよう。」

 

「・・・?じゃあ天馬さんの創造したシュークリームが食べたいですかね~?」

 

 

 

いい娘だ。

 

朝になったことだし今日の仕事は終わった。

 

計にはある程度の実力を持った補佐がいるから後は任せても大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

「よし、上がるわ。天音さんに久しぶりに会いに行ってくる。様子見だな。」

 

「お疲れ様です、天音さんも喜ぶと思いますよ。兄さんも・・・。」

 

「うん、じゃあ後は頼むわ。」

 

 

 

計の机にシュークリームを三個程置きネクタイを緩める。

 

天音さんが今どんな様態か気になってしょうがない。秤の事も心配だ。

 

土産も用意しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上着を脱ぎネクタイを外しスキマから秤の家の前に到着する。

 

土産は果物を持ってきたが果たして喉を通るだろうか・・・?

 

家の呼び鈴を鳴らしたが一向に出てこないのも少し心配だ。

 

 

 

「・・・?」

 

 

 

もう一度呼び鈴を鳴らし待つ。

 

すると家の中からパタリパタリと足音が聞こえドアの鍵が開錠されゆっくりと開かれた。

 

 

 

「・・・よぉ。」

 

「おう、久しぶりだな。元気だったか?」

 

 

 

髪は手入れされてなく、目の下には隈が出来ており少しやつれている様に見えた。

 

寝ていないのか足元はフラフラで飯も録に食えてなさそうだ。

 

 

 

「まぁ・・・入れや・・・。」

 

「おう。」

 

 

 

気にしないように振舞うが久しぶりに秤を見て豹変した姿で動揺するが無理矢理平常心を作る。

 

リビングに通され机を挟んで秤と対峙する。

 

家の中も荒れており天音さんの事で手一杯なのだと見て取れた。

 

 

 

「なぁ秤、計ちゃんから聞いていると思うが・・・。」

 

「あぁ・・・出来るだけ早く復帰するようにする、悪いな。」

 

「あぁ・・・いや、そういう事じゃなくてだな。しばらくお前は休職する様に言おうと思ってる。」

 

「・・・。」

 

「別にお前が使えないとか仕事にこないからって訳じゃねぇ、俺も悪魔じゃねぇからな。天音さんの調子が良くなるまではお前がつきっきりでいろって事だ。」

 

「すまねぇな・・・。」

 

 

 

相当に疲れている様だ、秤特有の覇気が今では嘘の様に思えてくる。

 

少し位は俺に頼ってくれてもいいんじゃないだろうか。何が出来るかは分からないが出来る事はしてあげたいと思うのは可笑しい事だろうか?

 

 

 

「そういえば天音さんは?居ないようだが?」

 

「今は様態が安定して寝ている。だがいつ急変するかも分からん。」

 

「なる程な、元気そうで良かったなんて嘘でも言えんが安定しているなら良かった。」

 

 

 

土産袋から秤が好きそうな紅茶の葉をパック状にした物を取り出し創造でマグカップとお湯を出し秤の前に出す。

 

 

 

「悪い、今はそんな気分じゃねぇんだ」

 

「いいから飲め、気分が落ち着く。お前は少し焦りすぎだ。」

 

「・・・」

 

 

 

渋々カップを手に取り香りに触れる。

 

少しだけ安堵した様な顔をした秤は茶を啜り一息吐く。

 

 

 

「美味いな・・・。」

 

「だろう?」

 

「・・・悪い・・・眠気が・・・」

 

 

 

突然秤は手を目にやる。

 

 

 

「秤?」

 

 

 

すると秤は疲れ切った目をしてその場で眠りこけてしまった。

 

しまったと言っても茶葉には少し即効性の永琳からもらった睡眠剤を混ぜているので当然だ。

 

 

 

「よし、悪いな秤。少し眠っててくれ。後は任せろ。」

 

 

 

スキマに入り一旦自宅まで転移すると掃除機を掛けながら鼻歌を歌っている藍の目の前に降りる。

 

 

 

「おっ・・・!?いきなり目の前に現れるな!驚くだろうが!」

 

 

 

耳をピンと立て尻尾は逆立っている藍。

 

 

 

「悪い、ちょっと来てくれるか?」

 

「何だ騒々しい。ちょっと待ってろ。」

 

「いや、今は一刻を争う。来てくれ。」

 

「おっ・・・おい?」

 

 

 

藍の手を取り引き寄せスキマの中に入れる。

 

すぐに秤の眠っているリビングに降り事情を話す。

 

 

 

「藍は天音さんを見ててくれ、俺は家を片付ける。」

 

「・・・そういう事か。」

 

 

 

やつれて眠っている秤と荒れている家の中を見て頭のいい藍はすぐに把握してくれた。本当に藍がいてくれて助かったと心の中で思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う・・・ん・・・っ!?天音!!」

 

 

 

あれから6時間程経った時秤が目を覚ます。

 

布団に寝かせられていたのか体の上には掛け布団があった。

 

 

 

「あの野郎!騙しやがったな!!」

 

 

 

突然の強い眠気に襲われ意識が失った事までは覚えていた。

 

天馬に殺意を持ち寝室から急いでリビングに戻る時、廊下のドアノブに手を掛け急いであける。

 

 

 

「天馬ァ!てめぇなにしやが・・・!?」

 

 

 

リビングには天馬と藍と天音が居た。

 

天音は藍から粥を頂いているのか少し上気した顔で藍にスプーンで食べさせてもらっていた。

 

 

 

「おう、良く眠れたか?」

 

「てめぇ一体何の意図で・・・!」

 

 

 

ニコニコと笑う天馬の胸ぐらを掴み怒鳴り上げる。

 

寝起きで頭が回転していないのか悪い方向に考えてしまっている秤に天音が止めた。

 

 

 

「貴方・・・止めて・・・。」

 

「天音・・・。」

 

 

 

 

 

少し咳こみながら藍からの手を止めた。

 

だいぶ顔色が良くなった天音は少しむくりと怒ったような表情で秤に説明してくれた。

 

 

 

「天馬さん達が貴方の事を心配して来てくれたのよ?大事な時間を割いてまで。」

 

「・・・あぁ。」

 

 

 

すぐに天音の言葉で皆を理解した秤。

 

へなへなと腰を落とし座り込む。

 

 

 

「悪かったな秤、こうでもしねぇとお前が見てられなくてよ。お前は自分だけで全てやる奴だからな。少し位は頼ってくれや。」

 

「・・・。」

 

「そうだぞ秤さん、私達は秤さんに恩があるんだ。これ位させて欲しい。」

 

 

 

藍も秤に声を掛ける。

 

秤は正気を取り戻し安堵した表情になった。

 

 

 

「ほら、秤さんも飯を食え。精気が足りないぞ。」

 

「悪いな・・・何から何まで。」

 

 

 

部屋は片付き溜まっていた洗濯物は干され床は綺麗に掃除されていた。

 

藍が用意した飯を目の前に出され頂きますの一言の後、食らいついていく。

 

 

 

「うめぇよ・・・藍さん・・・。」

 

 

 

泣きながら食べている秤に藍も少し貰い泣きをしてしまったのか目を指で拭っていた。

 

天馬は納得したような顔をして藍の作った飯に手を付けていく。

 

天音さんは女神の様に微笑み藍の手を借りて粥を消化していく。

 

 

 

「兄さんいますか~?」

 

「お、計ちゃんのお帰りだ。出迎えるぜ~。」

 

 

 

玄関のドアが開く音がしたと思えば陽気な声が家中に響き渡った。

 

すぐに計の声だと分かり天馬が玄関に向かっていく。

 

 

 

「おう計ちゃんおかえり。」

 

「天馬さんいらっしゃったんですかぁ~一言言ってくれれば良かったのに~。」

 

「サプライズって奴だな。ほら、全員待ってるぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はありがとうございました天馬さん。何から何まで申し訳ございません。」

 

「いやいや、天音さんの容態を見に来たついでよ。天音さんも早く元気になってな。」

 

 

 

飯を食べ終わり台所で計と秤が皿洗いをしている時、秤に聞こえない様頭を下げてくる天音。

 

よく出来た旦那を立てる嫁だと実感させられる。

 

 

 

「お腹の子は元気そうかい?」

 

「ええ、おかげさまで順調です。元気すぎてたまに蹴ってくるんですよ。」

 

 

 

ニコニコと笑いお腹に手を添える天音。

 

本当にお腹の子が出てくるのを楽しみにしている様だ。

 

 

 

「妊娠何ヶ月なんだ?その大きさじゃ六ヶ月以上だろう?」

 

 

 

藍もニコニコと天音に問いていく。

 

この二人初対面な筈なのだが気が合う様で仲が良い。

 

 

 

「もう八ヶ月めですね、たまにつわりが来るので大変です。」

 

「あと少しじゃないか、二人の子供なら可愛い子が生まれるだろう。」

 

「えぇ、お父さん似だと私は嬉しいですね。」

 

「ふふふ、どれ、私も触っていいか?」

 

「どうぞ~。」

 

 

 

藍は天音にお腹に手を当てゆっくりと撫でていく。

 

しかし少し藍の顔が一瞬曇るが天音に悟られないようすぐに笑顔になる。

 

 

 

「可愛いものだな、想像するだけで気が緩んでしまう。」

 

「分かります、私も凄く楽しみでしょうがないです。」

 

「母となるという事は大変だがそれを一掃させる幸せがあるという物だ、私も早くその幸せを掴みたいものだな?」

 

「おいおい・・・。」

 

「あらあら~。」

 

 

 

天馬を見る藍。

 

酷く天馬の顔が赤くなっていく、天音も茶化すように笑いあげた。

 

 

 

 

 

それから夜十時を過ぎいい時間になった時

 

天音を寝し起こさぬ様玄関前で解散する事にした。

 

 

 

「今日はありがとうございました天馬さん、また仕事場でお会いしましょっ!」

 

「あぁ、明日もよろしく頼むよ。秤も無理しねぇで俺に連絡しろ。俺が無理な時は藍が出てくれるはずだ。」

 

「悪いな・・・。」

 

「私は構わないぞ、天音さんの事が気になるしな。何時でも頼ってくれ。」

 

「それじゃ~またな。いい夢みろよ~。」

 

 

 

今日は計が秤の家に泊まる様で天音さんへの心配は少なく安堵する。

 

藍と一緒にスキマに入り閉じるまで計は手を振ってくれていた。

 

 

 

 

 

家に戻り、風呂に入った後藍と共に布団の中に入ると藍が口を開く。

 

 

 

「なぁ天馬、天音さんのことだが・・・。」

 

「ん?」

 

 

 

少し言い出しにくいのか口をつぐむが不穏な事を言い出した。

 

 

 

「天音さんの赤ん坊だが少し・・・脈が小さい。見張っていたほうがいいかもしれんな。」

 

「・・・分かった。これからは藍も忙しくなるが天音さんに気にかける様にしておこう。」

 

「あぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天馬、花妖怪と再開する。

「・・・。」

 

回収した婚礼の招待状を苦悶の表情で見続ける。

それもその筈帰ってきた回答が欠席が多いのである、魔理沙にアリス。霊夢や妹紅。

さらに幽香もだ、理由は分かっているが分かっている故に悩み続けている。

 

「くっそめんどくせぇ・・・。」

 

ついポロリと口に出してしまう、自分の行いが悪い自業自得だとは理解しているがどうにか説得しなければならないと思うと胃が痛くなってくる、さらに悩みすぎて頭痛も出てきた。

下手をすると熱まで出てきてるかもしれない、それ程までにこの問題は大きすぎる。

 

「くっそぉ・・・予想はしてたがこうも目の前で見ると信じたくねぇ・・・。」

 

両手で頭を覆い机に突っ伏する。主要人物がほぼほぼ無参加はきつい。世間的にも精神的にも。かれこれ頭をフルに回転させるのにもう煙草を二箱も消費した、しかしどう説得すればいいものか答えが見つからない。

 

朝から閻魔王の仕事をしながら今の今まで考え込んでいる、そろそろ夕刻であるのに。

なんという顔をしたものか、笑って?切れられる。真面目な顔で?門前払いだ。泣いて?情け無さ過ぎる。どうやっても詰み、GAMEOVERだ。

 

「取り敢えずは直接会わないと話にならねぇ・・・このまま悩んでたってしょうがねぇいくしかねぇんだ。」

 

直接理由と説得をする、その言葉を何度吐いた事か。いざ立とうとすると決心がゆらぎまた椅子に座るを繰り返している。

悪い事をして親に怒られる前に謝ろうとする時に近い。足が動かないのだ。

 

「深呼吸だ深呼吸。精神を整えて・・・まず誰から向かうかを決めるんだ。」

 

魔理沙やアリスは後のほうがいい。むしろ後じゃないと精神が持たん。

霊夢に関しては理由がわからん、あいつの事だから面倒くさいとかそういう理由だとは思うが・・・。

 

「そうだ、久しぶりだし幽香にしよう。幽香はある程度話が出来そうだ。理由も明確じゃねぇ。そうしよう。その後は自動的に妹紅だ。うん。」

 

幻想郷では会っていない人物にする事にした。

仕事も夜勤は無い、時間は少しだけある。計ちゃんに早めに上がらせてもらう事にしよう。

 

 

ある程度整理を終え計の席に目を移すと書類を整理しながら判を押している作業をしている計に声をかけた。

 

 

「わりぃ計ちゃん、ちょっと用事があるもんで少し早く上がらせてもらうわ。」

「あ、はい!お疲れ様です!あとのお仕事は任せてくださいっ!」

 

付けていた眼鏡を置いて席を立ちコートハンガーから上着を取りニコリと笑いながら手渡してくる。

 

あぁ、とてもいい娘だ。気遣いや気品がありとても癒される。

 

「悪いね、それじゃお疲れ様。計ちゃんも早く帰るんだよ。」

「はいっお気をつけて!」

 

いい娘だ。

 

 

 

さて、仕事場から出たはいいが幽香に会うに手持ち無沙汰じゃすこしなんだな。

菓子でも持って行って初手は機嫌を良くしてもらおうそうしよう。

 

創造で適当な茶菓子を出し袋に詰め込み幽香の家の近くにスキマを創造し降り立った。

降り立った先は辺り一面夕日に照らされた黄色い花畑が眩しく目に焼き付く。

 

「あの頃と変わんねぇな、この向日葵畑も。変わっちまったのは俺だけか。」

 

向日葵畑の中に見慣れた洋風の家が建ち向日葵畑に足を進めると草木が家までの道を開いた。多分幽香は俺が来ることは分かっているのだろう。でなければこんな簡単に道を開いてくれる筈はないのだから。

 

「・・・。」

 

一歩一歩足を進める事に記憶が蘇る。遥か昔妹紅を連れてきたことを、初めて幽香と会った事を。初めて戦ったことを、酒盛りをした事を。記憶の片隅に置いておいたものが鮮明に。

とても懐かしく匂いだ。

 

玄関にたどり着きいざドアをノックしようとすると固まる。

体がここに来て拒絶している、最悪な事を想像して。思いとどまってしまう、ノックする事を。

 

固まっていると家の中から軽い足音が聞こえてくる。いずれドアを開けるのだろう。その間に少しでも深呼吸をする事にした。

そして遂にドアが開くと緑色の髪の少女があの頃と変わらず顔をのぞかせた。

 

「よう・・・。」

「久しぶりね天馬、入りなさいな。」

「あぁ。」

 

幽香に誘われ家の中に入ると家の中は何も変わっていない事に気づく。

見回すとやはりあの頃のままだ、窓の位置、椅子や机の配置、小物等もあの頃から時が止まっているかの様だ。

 

「あ~・・・幽香、おみやげだ。受け取ってくれ。」

「あら、気が利くわね。それじゃ遠慮なくいただくわ。座っていいわよ。」

 

菓子の入った袋を手渡し促された椅子に手を掛け腰を落とす。

何から話したものか、機嫌は悪くはないらしい。

 

「どうぞ。」

「あ、あぁ。ありがとう。」

 

机の上にカップが置かれ中には薄い茶色の液体が入っている。匂いから察するに紅茶だろう。カップを手に取り口元に持っていき少し啜ると芳香な香りでとても美味しい。

 

「元気にしてたか?」

「えぇ、変わらずね。そっちは?」

 

幽香も椅子に腰を落とし外を見つめていた。

表情はとても穏やかで喜んでいるかのようにも見えた。

 

「色々あってな、元気にしてたが体はボロボロだ。」

「そう、大変だったわね。」

 

この会話だけでとても長く話した気になる。

お互い時が空き長すぎた、いや、長くしたのは俺か。

沈黙が続きお互い目を合わさず会話を再開させたのは幽香だった。

 

「天馬、私に言いたいこと、聞きたい事があるんでしょう?」

「あぁ、招待状の事だ。」

 

やっぱりね、と言いたげな顔をして此方を見据える。

呆れてるような怒っているようなとてもポジティブな顔には見えない複雑な顔をしていた。

 

「貴方ね、まずしばらく会ってないとはいえ会おうと思えば会えるのだから直接渡そうって思わなかったの??」

「済まない、事を急ぎ過ぎた。直接渡すべきだったな。」

「当然、あまりにも失礼極まり無い話よ。」

「悪かった。」

 

頭を深々と下げ許しを請う。

しばらくの沈黙の後深い溜息と共に思わぬ言葉が発せられた。

 

「駄目ね。出席はしないわ。」

「・・・なぜだ?」

 

駄々をこねる子供の様に答えのわからぬ理由に少し苛立ちすら出てくるが抑える。

長らくあっていないだけでなぜこうも拒否してくるのだろうか、とても不思議でしょうがない

 

「何故?何故でしょうね?自分で考えてみなさい。」

「分からんから聞いてるんだ、教えてくれないか?」

「駄目よ、それじゃあ意味がないわ。」

「・・・。」

 

深く考えてみる、まず幽香が出席を断る理由ではなく、俺が幽香に何をしたか何をやったかを。

まず幽香とはよく知る仲だとは言っても一日そこらの関係だ、追っていく事、そこにヒントが有る筈だ。

初めて会った時は戦闘から始まった。理由は妹紅が向日葵畑に侵入した、それか?

いや、違うだろう。あの後和解し共に酒を交わした故それが原因とは思えにくい。

では、妹紅か?妹紅と幽香はそこで繋がりが出来た。つまりは私よりも先に向かうべき人物は妹紅という事か?

 

「も・・・妹紅の事か?」

「妹紅?あぁ・・・あの天馬が連れていた女の子ね。まだ生きてるの?」

「あぁ、不死だからな。妹紅も幻想郷に住んでいるが・・・。」

「あらそう、今度会ってみようかしら。」

「・・・。」

 

答えでは無さそうだ。しかしそれ以外に理由が見つからない。数打てば当たる戦法は察しのいい幽香には無駄だろう。次で分からなければ下手をすれば会話が終了する。

もう一度考えてみる、幽香の家に泊まり起きて早々妹紅と騒いだのが原因・・・とは思えない。

さて幽香の怒りそうなポイントは全て考えついたがどうだろう。全て不正解そうだ。

そして思い出した、夜酒盛りをしている時幽香がべろべろに酔い俺を性的に襲いそうになった事を。

幽香は一目惚れともいっていたようないってないような気もするがそういう事は非常に鈍感故アリスと魔理沙を怒らせる要因になった事は憶えていた。

 

「あ~・・・もしかしてなんだけどさ幽香。」

「ん?」

 

遂に答えを見つけたかと幽香は期待の表情を向けてくる。

当たればハッピー外れれば本当にガメオベラ。ある意味ギャンブルだ。

 

「勘違いだったら本当に申し訳無いとは思うんだけどさ、うん。本当に心の底からね、悪いって思うんだけどもね。」

「早く言いなさいよ。」

「・・・・・もしかして俺の事好きだったりする?」

「あら意外、以前の天馬だったら外してたわね。その時は本気のビンタでも食らわせてあげようと思ったのだけれど。」

「あ~・・・まぁ・・・色々あってな。」

「ふふっ・・・まぁでも。正解したからとは言っても出席はしないけどね。」

「えぇ・・・?」

 

これもある程度は予想はしていた、ハズレだったら欠席、当たりでも欠席の回答が来るだろうとは。

しかしこうなると更に面倒臭くなってきた、とてもじゃないが出席してくれとは言いづらいところ。

頭を抱え唸っていると幽香は笑って口を開く。

 

「そんなに私に出席してもらいたいならやる事は一つしかないじゃない、貴方なら分かるでしょう天馬?」

「いや、しかし俺は・・・。」

「嫌なら帰りなさい、出てもらいたいなら・・・力ずくでも出席させてみなさいよ。」

 

不敵で自信満々に言い放つ幽香を見てこの性格は昔から変わっていないことが分かった。

自信のある者ほど笑顔になりやすい、幽香はそれを体現している。

しかしそう言う者ほど芯が強く自らが発した言葉には重みがある。

彼女は本気だ、その本気には答えなければならないだろう。

 

「わかった、久方振りだがやらせてもらおう。手加減はできないぞ。昔と違って姑息だからな。」

「元からその心配はいらないわ、こっちも本気でやらせて貰うもの。」

 

その言葉を皮切りに漂うどす黒い空気が流れていく。

じりじりと燃えるように幽香からは妖気と殺気が溢れて今にも行動を起こしそうだ。

 

「まぁ、このうまい茶を飲んでからな。」

「ふんっ。」

 

不敵に笑っていた幽香はその言葉を聞いてそっぽを向いた。

戦いは嫌だな面倒くさいなと思う、正直戦闘スタイルを変えて変えてからは卑怯になって来てる事もあるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、ここでやるのか?」

「そうよ」

 

向日葵畑が俺達を囲う様に開き戦うには丁度いい程の広さが出来ていた。

しかし幽香は花をとても大事にする人物だ、ここで戦うというのは気が引けてしまう。

万が一戦闘で向日葵が焼けたり折れたり切れたりするという事もありえる。

そうなってしまえば幽香は悲しむだろう。

 

「・・・場所を移さないか?ここは少しやりづらい。」

「駄目よ、移動はしないわ。」

「そうか。」

 

胸ポケットから煙草を取り出し口に咥え火を付けようとした時、幽香の傘から光線が出現し顔面めがけ発射された。

警戒はしていた為逸らして避け火を点け幽香の方に向き直ると少しばかり怒りの表情が見える。

 

「こんな時にそんな事をするなんて余裕があるのね、私はそんなに弱く見えるかしら?」

「いやいや、これは俺の薬みたいなもんだ。頭の回転が良くなるんだよ。」

「ふーん、舐めてるわね。」

 

更に次の攻撃を幽香がして来る瞬間、口を開き大量の煙を吐き出すと辺り一面煙に塗れていく。

 

「っ・・・!なによこれ・・・ゲホっ!。これが貴方のやり方!?」

「昔と違って姑息と言っただろう。それを受けたのはあんた自身だ。」

「なっ!?いった・・・!」

 

幽香の背後にスキマを覗かし上半身だけを出して幽香の頭に武器を突きつけると超反応で後ろに飛び退く。

しかしその事は予想がついていた、煙で目の前が見えない中幽香が飛び退いたと予想した場所に発砲すると苦痛の声が聞こえ息切れの声もしてくる。

 

「飛び道具とは貴方らしくないじゃない・・・っ昔の貴方だったら拳できてたわよ!」

「仕事柄、姑息で卑怯じゃないと周りに迷惑が掛かるからな。絶対に勝ちにいく戦いになったんだよ。」

「くっ!!」

 

腕を細胞で鞭状にし、横降りをすると幽香の体に当たり更に拘束しようと細胞を体に絡めようすると一瞬で腕を切られてしまう。この痛みから察するに光線か妖弾の何かで切られたのだろう。焼ける様な痛みだ。

 

「ゴホっ!!ゴホッ!あぁっ・・・!」

 

煙草の煙で目や息がしづらくなって来たのか咳をしだす。音で探知しすぐさま腕を戻しスキマから拳銃を落とし空中で捉え三発発砲すると一発は何処かに当たったようだ。

 

「降参しろ幽香。その方が俺は助かる。こんなのは俺も望んじゃいねぇ。」

「ふざけんな!!」

「うおっ!?」

 

突然巨大な光線が辺りを包み込んだ。巻き込まれない様咄嗟にスキマに潜り込み回避したがどうやら右上半身が焼かれたようで凄まじい痛みが現れる。必死に再生させなんとか動かせる様になりスキマから出ると息切れが激しい幽香が笑って此方を見ていた。

 

「さすがの威力だ、死ぬかと思ったね。」

「はぁ・・・はぁ・・・煙も晴れたし今度はこっちの番!!!」

「おっ・・・!!」

 

地面を蹴り刹那、幽香が目の前に現れ驚いてガードをする前に鳩尾を思い切り強打する。

意識が飛びそうになりながら地面を転がりながらスキマを展開し中に入りもう一度開くとさらに目の前に幽香の傘が目の前に現れ光線を発射する前に呟かれた。

 

「ここからが本番よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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