八幡英雄伝 (理の反逆者)
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ロックマンエグゼ

 技術の進歩によりネットワーク社会は発展した。しかし発達し過ぎたネットワークでは様々な問題が発生するようになった。

 

 その最もたるものがインターネット上で行われるネット犯罪である。インターネットを介した犯罪のために現行犯でしか逮捕できず、ネット警察も日々苦戦しているのが現状だ。

 

 そこで導入されたのが優秀なウイルスバスティングの技術を持つネットバトラーやオペレーターを臨時の捜査官として採用するネットセイバー制度であった。この制度はかつてオフィシャルと呼ばれた公認ネットバトラーの制度から発展したものであり、ネットセイバーは皆、卓越した技能や能力を保有している。

 

 そして現在、ネオWWWやアステロイドにより実体化したナビによる被害が多発していた。

 

「だからってここにまで攻めてくるとかどんだけしつこいんだよ」

 

 俺、比企谷八幡がいるのは群馬県にある千葉村のバーベキュー用の施設だ。といってもバーベキューをしているのではなく

 

『八幡、次の攻撃が来ます』

 

「アイスキューブ!」

 

 襲ってくるアステロイドから逃げるためである。

 

 2日目の自由時間中、突然出現したアステロイドは目的不明のままこの千葉村を襲い始めた。始めに氷の壁をつくるアイスウォールによって千葉村の周囲が凍らされ、そして今は視界に入った人間を無差別に襲っている。

 

 俺は小学生を襲おうとするアステロイドに対し、注意を引き付けることで囮となったのだが

 

『進行方向に人がいます!回避はできません!』

 

 俺のナビ、トゥルースが言った通り俺の移動先のバーベキュー場にはまだ人がいた。

 

「なんでまだ避難してないんだ!」

 

 バーベキュー場には雪ノ下たち奉仕部組と葉山たち総武組、そしてイジメを受けているという鶴見留美たち小学生がいた。彼らがバーベキュー用の道具を持ち、状況を理解していないことからアステロイドの出現を知らなかったことがわかってしまった。

 

「おまえら!早く逃げろ!」

 

 俺が声をかけるが

 

「ふん、もう遅いわ」

 

 このバーベキュー場を囲むようにアイスキューブがばらまかれる。

 

「ようやくターゲットを見つけられたよ。ユキノシタユキノ」

 

「私?いったい何の用かしら?それにあなただけ私の名前を知っているというのは不公平ね」

 

 雪ノ下はアステロイドの問いかけに反応するが

 

「それはすまなかった。私はインフェルノマン、アステロイドだ。用というのは簡単だよ、ユキノシタユキノ。私のオペレーターは君の会社が原因で建築業界から追放されたんだ。その復讐の第一号に君が選ばれたというわけさ」

 

 あっさりとした言い口に雪ノ下は呆然としている。

 

「たったそれだけなの?」

 

「君にとってはそれだけでも私のオペレーターにとっては文字通り人生を奪われたようなものなのだよ」

 

 インフェルノマンは右手を前に出すと青白い炎が生まれる。

 

「地獄の業火の中には冷たい炎というのがあるらしい。さてと凍えながら死んで貰おうか」

 

 炎が槍のような形になった所で

 

「ん?君はさっき私から逃げ回っていた人間じゃないか。私は罪を犯していない者はできるだけ殺したくはないのだが……退いてくれないかね」

 

 俺が雪ノ下の前に立つとインフェルノマンは槍を一度消して俺に退くように言ってきた。

 

「残念だが退くわけにはいかないな。トゥルース、いけるか?」

 

『科学省には連絡済、いつでもいけます』

 

 その瞬間、上空で光が弾けこの辺り一帯にディメンショナルエリアが展開された。

 

「これは……ディメンショナルエリアか。まさか貴様は……」

 

「ネットセイバー、比企谷八幡だ。お前を倒させてもらうぜ」

 

 俺はPETとこの状況を打開するための切り札を取り出す。

 

「シンクロチップ、スロットイン

 クロスフュージョン‼」

 

 シンクロチップの挿入により俺の身体に変化が起きる。

 両腕を覆う大型ガントレット、鋭利な形状のブーツ、尖った形の肩アーマー、側頭部から後ろに二本突き出た角のついたバイザーヘルメット、そして全身を覆うように展開されたボディスーツ。俺のネットナビであるトゥルースを彷彿とさせる姿だ。

 

 その姿を見て雪ノ下は

 

「比企谷くん、あなた……」

 

「説明は後でする。今は下がっていてくれ」

 

「わかったわ」

 

 雪ノ下は素直に後ろに下がってくれた。

 

「じゃあやろうか。インフェルノマン」

 

「先に君から始末しよう」

 

 お互いににらみ合い

 

「バトルチップ《メガキャノン》スロットイン!」

 

「アイスキャノン!」

 

 同時に放った砲撃が相殺される。

 

「バトルチップ《エレキブレード》スロットイン!」

 

 恐らく奴の属性と思われる水属性に対し効果的な電気属性のチップを使い

 

「バトルチップ《エリアスチール》スロットイン!」

 

 相手の懐まで一気に潜り込む。そして斬りあげる形で剣を振り

 

 ガキンッ

 

「なっ!」

 

「ふふっ、効きませんよ!」

 

 その身体で受け止められた挙げ句、反撃として拳で雪ノ下たちとは逆の場所に吹き飛ばされてしまった。

 

「アイスウォール!」

 

「しまった!」

 

 更に俺と雪ノ下たちとの間に氷の壁ができたことですぐに戻ることができなくなってしまった。

 

「これで邪魔者は入ら「それにはまだ早いよ」まだ邪魔者かいたのですか」

 

 雪ノ下の前に立ったのは今彼らの解決しようとしているイジメ問題の渦中にある少女鶴見留美だった。

 

「できたら八幡以外には誰にも話したくはなかったんだけど……」

 

 そう言って彼女が取り出したPETから浮き出たホログラムエンブレムは

 

「ネットセイバー、鶴見留美。とりあえず貴方は倒させてもらう」

 

 そして留美は先ほどの八幡と同じように一枚のチップを取りだし

 

「シンクロチップ、スロットイン

 クロスフュージョン」

 

 両腕は袖口の広いひらひらとした布の様なものになり手はグローブで覆われる。両脚はブーツとなり腰回りの長いサイドスカートにより隠される。胴回りはへそ出しの形で胸回りを覆うチューブトップ型のスーツの上に羽衣を重ねる。ヘッドギアにティアラの様なパーツが加えられたヘルメットを被り

 

「クロスフュージョンアイリス。できることなら知り合いの前で変身したくなかった」

 

 留美はそう言うと

 

「バトルチップ《メテオ》スロットイン」

 

 隕石を落とすバトルチップを使用する。

 

「くうっ!」

 

 流石に大規模破壊系のチップの威力は厳しかったのかインフェルノマンは大きく吹き飛ばされる。

 

「バトルチップ《メテオ18》スロット……

 

「おいこら!これ以上大規模破壊系は使うな!」

 

 ……ちぇっ」

 

 更に大規模破壊を行おうとした留美を八幡が止める。

 

「今のメテオだけでもバーベキュー場が半分消し飛んだんだぞ。追加すれば今度は千葉村自体が消し飛びかねん」

 

「その時はその程度で壊れる施設の方が悪い」

 

「そんなわけあるか、このバカ娘。この前任務で千葉マリンスタジアム半壊させたの忘れたのか?」

 

「あれの原因の半分はアステロイドだから私は悪くない」

 

 呑気に会話している二人だがその会話の中身は物騒だった。

 

「まさか二人目がいるとは予想外でしたよ」

 

 砂ぼこりで泥々になりながらもインフェルノマンがこちらに戻ってきた。

 

「まだ残ってたんだ。素直にデリートしてればよかったのに」

 

「残念ですがオペレーターの復讐をやり遂げるまで消えるわけにはいきませんから」

 

「じゃあそれを遂げる前に倒すとするか」

 

 八幡が一歩前に立ち

 

「留美、後ろの奴等の守りは任せた」

 

「……わかった。代わりにあとでネットバトルして」

 

「一戦だけだぞ」

 

「始まって即降参とか無しだから」

 

 そう言い残して留美は後ろに後退する。

 

「私としては二対一でも構わなかったのですが……」

 

「乱戦でも容赦なくメテオ放ってくるぞ、留美は」

 

「……一対一の方が良さそうですね」

 

 インフェルノマンからも苦労してるんだなという顔をされた。

 

 アステロイドからも同情されるって……

 

 とはいえ先ほどエレキブレードが効かなかったということはこいつの属性は電気属性ではないということ。アイスキューブなんかを使ってきたということは無属性ナビでは無さそうだし、電気属性に耐性を持つ木属性を持っている様子もない。

 

「(ん?ちょっとまて。インフェルノだと)」

 

 こいつの名前は確かインフェルノマン。インフェルノっていうのは確かキリスト教の地獄だったはず。ってことは

 

「まさか闇属性のナビか!」

 

「おや、もう気付かれてしまいましたか」

 

「シェードマン以外にはいるとは思わなかったよ」

 

「そうですね。闇属性だったのはダークロイドでは私とシェードマンだけでしたから」

 

 闇属性となると少々打つ手が変わってくる。

 

「バトルチップ《スーパーバルカン》スロットイン」

 

 右手にスーパーバルカンを展開し、掃射する。

 

「ふふふっ温いですよ」

 

 しかしインフェルノマンは大したダメージを負っていない。

 

 だが足止めにはなった。

 

「バトルチップ《サンクチュアリ》スロットイン」

 

 俺たちのいる周辺の地面全てが光に覆われていく。

 

「なっ、力が抑えられていく!」

 

「ダークチップ対策として作られたワクチンチップを応用した闇属性弱体化チップだ。まさか使うことになるとは思わなかったよ」

 

 本来は防御強化エリアのチップなのだが闇属性に対しては逆に弱体化を招くのがこのチップだ。

 

「これで終わらせるぞ。バトルチップ《バルカン》トリプルスロットイン。プログラムアドバンス《ムゲンバルカン》!」

 

「私もここまでですか。目的を全て達成出来なかったのは残念ですね。ですが……」

 

 ムゲンバルカンの攻撃でインフェルノマンはデリートされた。しかし最期に何か言おうとしていたようだっだが……

 

「まあいいか。でもあいつらへの説明どうしよう……」

 

 そんなことよりも雪ノ下たちへの説明の方が面倒なのであった。

 

 



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学戦都市アスタリスク

 星脈世代(ジェネステラ)、かつて起きた落星雨(インベルティア)の後に生まれた常人よりも高い身体能力を持つ者達だ。

 

 俺、比企谷八幡もそんな星脈世代の1人である。といってもそれに気付いたというか知ったのは高校の入学式に遡る。

 

 入学式の日に少し家を早く出たのだがその道中、車に轢かれそうな犬を庇って代わりに俺が車に跳ねられたのだ。そして入院した病院で検査した結果星脈世代ということがわかった。それも珍しい回復系の能力持ちだったらしく親父によって俺の知らぬ間にアルルカント・アカデミーに特待生として転入することになっていたのだ。

 

 そうした理由でアルルカントに来てから一年がたった。

 

 

 

 

 

 

 

「これで全員分の朝食の準備は終わりか。あとは全員食堂まで引っ張ってくるだけだな」

 

 大きな鍋の前でそう言うのは1年前勝手に編入させられた比企谷八幡であった。

 

 アルルカント・アカデミーでは食堂があるもののあまり利用されてるとは言い難かった。それは研究者という側面を持つアルルカントの学生の生活リズムは常人たちに比べ大きく乱れているために食事時間がバラバラすぎたのだ。そのため各々が自分で携帯食で済ませたり食べなかったりするメンバーもいるほどだ。

 

 実践クラスと呼ばれる者たちは研究者の都合に左右されるために割と自炊派が多かったりする。なので食堂利用率は低いのが現状だ。

 

 そこを改善させたのが八幡である。

 

「お前ら、飯の時間だぞ!」

 

 研究室に向かい中にいる生徒たちを引っ張って食堂まで連れていく。

 

「カミラ、エルネスタを頼むぞ」

 

「ああ、いつもすまないな八幡。ほらエルネスタ、自分で歩け」

 

「はーい」

 

 寝起きで眠いのかエルネスタはフラフラとしながら食堂に向かう。

 

 全研究室から引っ張ってきて全員で朝食を食べる。

 

「うんうん、1日の始まりはやっぱりハチくんのご飯だよね」

 

「1年も続くと逆に朝食を食べないときがあると違和感があるからな」

 

「そんなもんか?」

 

「そうだよ!春休みハチくんが帰省してるときみんな無意識に食堂に集まったぐらいなんだよ!」

 

「事前に作っておいてくれたやつがなかったら何人か空腹で倒れていただろうな」

 

 二人とも話しながらではあるが食事の手は一切止まらない。それは他の生徒たちも同じで一部はお代わりをしているほどだったりする。

 

 専業主婦志望だった八幡はアルルカントで研究クラスの生徒たちの面倒を見ているのであった。

 

「さすがアルルカントのお母さんだな」

 

「その2つ名はやめてくれ」

 

 八幡の学内での非公式2つ名はアルルカントのお母さんである。まあ研究クラスのメンバーの世話をしているのだから対して間違ってはいないだろう。

 

「そういえばヒルダは来てないのか?先程から姿が見えないが……」

 

「ヒルダなら昨日の夜から外に出てるぞ。なんか外部の研究所で問題が起きたみたいでその後始末に駆り出されたっぽいな」

 

 《大博士》ヒルダ・ジェーン・ローランズ、アルルカント創設以来の屈指の天才なのだがその倫理観は常人から離れており人体実験なども平気で行うマッドサイエンティストだ。とはいえその能力に疑う余地はなく、六花の研究室以外にも世界各地の研究所に専用の研究室が用意されているほどだ。

 

 ちなみにこいつの勝手な検査のせいで俺の能力が回復系ではなく全く別の能力であったということが判明するなど俺としては扱いに困る部分もある。

 

「そうか……あと今日なんだが放課後に時間をとれるか?」

 

「なんかあるのか?まああるけど」

 

「新型の煌式武装のテストだ。星導館と共同開発したのだがフルスペックで動かせるものがいなくてな」

 

「わかった。放課後お前の研究室に向かうよ」

 

「助かる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

 カミラの研究室を訪れた八幡は早速新型煌式武装のテストを始めていた。

 

「うーん、少し動作にタイムラグがあるのが気になるな」

 

煌式遠隔誘導武装(レクトルクス)はまだ完成品ではないからな。それに誘導という一手間が加わるのだからこれ以上の伝達速度の上昇は反応が過敏になりすぎて使いにくいと思うのだが」

 

「まあそんなものか」

 

 八幡は展開していた256本の煌式遠隔誘導武装を回収する。

 

「……そもそもそんな数のコントロールは想定してないからな。星導館の序列5位でも6本だぞ」

 

「星導館の序列5位っていうとあのお姫様か。確かにお姫様とは相性がよさそうだな」

 

 星振力の伝達可能なこいつなら魔術師や魔女の相性はいいだろう。

 

「それをさらっと使える八幡も相当だぞ」

 

「まあこれぐらいできないとアルルカント最強は名乗れねーよ」

 

 アルルカント・アカデミー序列1位《万手武芸(アーツマスター)》比企谷八幡

 

 アルルカント最強は再び煌式遠隔誘導武装を振るうのであった。

 



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戦姫絶唱シンフォギアG

久しぶりの更新です


 人が人を殺戮するために造られた兵器《ノイズ》

 

 それを制御するための完全聖遺物ソロモンの杖

 

 そしてソロモンの杖を保有し、世界に宣戦布告したテロリスト《フィーネ》

 

 世界は様々な問題で溢れていた。

 

 

 

 総武高校文化祭、委員長である相模の無能っぷりや雪ノ下姉妹の暴走により一時は開催も危ぶまれたが俺とそのバックの組織の影ながらの献身により何とか開催に漕ぎ着けることができた。

 

「なのになんでこんな日に限って問題発生するんだか」

 

 つい先ほどあった職場先の連絡で俺は文化祭の最中にも関わらず、屋上に登って来場者の監視をしていた。

 

『どうだ?見つかりそうか?』

 

「人が多すぎますね。弦十郎さんぐらい目立つならともかく白衣しか手掛かりがないんじゃどうしようもないです」

 

 俺の職場━━━特異災害対策機動部二課の司令である風鳴弦十郎さんと連絡を取り合いながら監視を続ける。

 

 1時間前になるのだが付近の防犯カメラにソロモンの杖を持った逃亡中のジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス、通称ウェル博士が確認されたのが事の始まりだ。

 

 ノイズのコントロールが可能なソロモンの杖を保有しているという危険性からすぐさま捜索にあたっているのだがその姿を未だに確認できていない。そして今日文化祭を行っている総武高校にいる俺には高校内にウェル博士の姿がないか、ノイズが出現していないかの確認が任務となっている。

 もしここでノイズが大量に出現すればその被害は計り知れないものになるだろう。

 

「弦十郎さん、ここ最近この周辺でノイズ被害って出てましたっけ?」

 

『最近は起きていないな。フィーネの決起以降はノイズがコントロールできているということから夜間の外出は控えて貰っているし、行方不明や捜索願いも出ていないはずだ。何か気づいたのか?』

 

「ちょっと嫌な予感がするんですよ。ウェル博士は俺たちに見付かりたくないからなるべく目立たないように行動する。でも空腹には耐えられないし、店に行くことも出来ないから調理済の食べ物が欲しい。だとすればタガの外れたウェル博士が行うのは……」

 

『……まさか』

 

「ファーストフードを持った一般市民が可能性としては高いですね」

 

『すぐに手配する!八幡くんは……』

 

 ドオオオォォォォォン

 

『何があった!?』

 

「近くで車が爆発したっぽいです。それに予想が当たってたみたいですね」

 

 爆発は文化祭の入場門近くで起きたらしくその周囲は騒然とし始めた。

 

 爆発の方から歩いてくるのは薄汚れた白衣を身に纏った薄汚れた銀髪の男性、ウェル博士だった。

 

 ウェル博士はソロモンの杖と何らかの包みを抱えていて……って

 

「あのバカなにやってるんだ!」

 

『どうした!』

 

「一般生徒がウェル博士に近づいているんです!」

 

 俺の視線の先にあったのは爆発を聞き付けてやって来たらしい雪ノ下と相模の姿だった。おそらく集計作業で一緒にいたところにこの爆発が起きたのだろう。

 

「急いでこっちに戦力を回してください!」

 

『分かっている!だが翼くんたちの到着には少なくとも30分はかかるぞ!』

 

「それまでは俺が時間を稼ぎます」

 

 俺がそう言った瞬間、状況が動いた。何を二人が言ったのか分からないがウェル博士はいきなり錯乱したかと思うと無尽蔵にノイズを生み出し始めたのだ。

 

 人類の天敵であるノイズがいきなり出現して落ち着いていられるはずがない。周囲は一気に混乱し、逃げ場を求めて校内へと殺到していく。

 

「こうなると校内は使えねーか」

 

 八幡はそう考え、屋上から飛び降りた。

 

「聖遺物封印解除」

 

 そして普段から自らにかけている封印を解き、屋上から飛び降りたとは思えない軽やかな着地を行った。

 

 校内に入ってきたウェル博士は外の屋台に残っていたたこ焼きやフライドポテト、フランクフルトなどをガツガツと食べつつノイズを量産し続けていた。そして次の屋台へ視線を向けようとして俺と視線が合う。

 

「な、なんで貴様がここにいる!?」

 

「そりゃここが俺の通ってる学校だからだよ」

 

「奏者は全員リディアンにいるんじゃなかったのか!?」

 

「よく調べとけよ。リディアンは女子高だぞ。俺が入れるわけないじゃないか」

 

 まあ学校名がリディアン音楽院だから共学と勘違いしそうなのも悪いんだけどな。

 

「ちぃっ、死ねぇぇぇぇぇ」

 

 ウェル博士がソロモンの杖でノイズに命じ俺に一斉攻撃を仕掛けてくる。

 

 俺のいる場所に何百というノイズが殺到し、校舎の方から悲鳴が聞こえてくる。

 

「はははっ、やったぞ。これでようやく1人が死んだ「この数になると斬るのも面倒だな」なっ、なぜ生きている!」

 

 襲いかかってきた全てのノイズが消滅した後に立っていたのは白銀の騎士鎧に身を包み、両手に意匠の異なる黄金の長剣を携えた八幡の姿があった。

 

「ひいっ」

 

 ウェル博士は八幡のその姿を見て怯え、再び大量のノイズを生み出し始めた。それも先程までの地上型の小型種だけでなく空中型、大型まで多種多様にだ。

 

「大人しく投降してはくれないみたいだな」

 

「投降なんてしてたまるか!僕はネフィリムを使って英雄になるんだ!」

 

「……そうか」

 

 再び襲いかかってくるノイズを両手の長剣で切り裂く。

 

「これならどうかな」

 

 ウェル博士はそう言うと空中型のノイズを攻撃形態にして校舎へと突撃させるのと同時に大型が踏み潰すように俺に向かって攻撃してくる。

 

「……ちっ」

 

 俺は体内にある聖遺物を用いて大量のフォニックゲインを精製し両手の長剣へと流し込む。それにより両手の地上は眩いばかりの黄金の光を放つようになり

 

「カリバーーーーン!」

 

 左手の長剣《カリバーン》により放たれた斬撃が空中型のノイズを一撃で消し去り

 

「エクス……カリバーーーーー!」

 

 右手の長剣《エクスカリバー》を振り向きながら振り下ろすことによってウェル博士との間にいた全てのノイズを消滅させた。

 

「これで終わりだ」

 

 これ以上ノイズを精製されないようにソロモンの杖を持つ右腕を切断しようとしたところで

 

「ちっ」

 

 俺に向かって飛んできた攻撃の迎撃に変更する。

 

「なんとか間にあったデース」

 

「……ほんとギリギリだったね、きりちゃん」

 

 そう言ってウェル博士の前に立つのはイガリマの奏者暁切歌とシュルシャガナの奏者月読調の二人であった。

 

「フィーネが出てくるとはな……三対一でも負ける気はしないが」

 

「でもあなたの後ろにいる人たちを守りながらは厳しいはず」

 

 切歌はイガリマの刃を飛ばす体勢に、調はシュルシャガナを展開して小さな円盤を撃ち出せる体勢に入る。

 

「……何が望みだ」

 

「私たちのここからの離脱を邪魔しないこと」

 

「……わかった。ただし1つだけ聞きたいことがある」

 

「……何?」

 

「お前たちのステルス能力はタルンカッペか神獣鏡、ハデスの兜のうちどれだ?」

 

 俺が知る限りの隠蔽系の聖遺物はこれぐらいだ。もし予測が外れてなければ……

 

「……私が使ってるのは神獣鏡。これでいい?」

 

 やはりな……予測は当たりか

 

「じゃあ答えたから行くよ。行こ、きりちゃん」

 

「了解デース」

 

 切歌と調は二人でウェル博士をかかえ後ろに大きくジャンプする。そして空中に突如出現したヘリに乗り込んだかと思うと再び姿を消したのだった。

 

「英雄に神獣鏡、そして米国のF.I.S……なんとなく目的は掴めてきたな」

 

 俺は装備を解除し、集合した二課のスタッフの方に向かいながら

 

「事後処理がめんどくさそうだな」

 

 後ろからの大量の視線の中にある知り合いの姿やそれに関しての説明やら機密保持の処理を思い出すのであった。



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