落第騎士に挑むもの (淡麗)
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プロローグ

初投稿ですが、頑張ります。落第騎士の英雄譚面白いですよね!
アニメ2期いつまでも待ってます。


俺はあの男に憧れている。

 

魔導騎士としての才能がなくとも、どれだけ虐げられようと諦めず、闘い強くなり続けるあの男に。

 

あの男…黒鉄一輝に正々堂々挑戦し勝つこと。

それが生まれてから16年という俺の…御笠川月読(みかさがわつくよみ)の短い人生の中でも最大の目標であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

破軍学園に入学して二回目の春、学園内は新しく就任する新宮寺理事長や、新学期より入学してくるヴァーミリオン皇国の第二皇女のことで春休みにも関わらず、騒がしい雰囲気がだよっていた。

 

(そんなことより、俺としては黒鉄が留年したということの方が驚きなんだがな。)

 

そんな学園の雰囲気の中、月読は一人訓練場のなかでトレーニングをしながらそんなことを考えていた。

 

一般家庭で生まれた月読は両親から度重なる虐待を受け、孤児院で育ったため、春休みも学園寮で寝泊まりし、授業のない時は一人鍛練を続けていた。

 

(黒鉄と俺立場は真逆だが境遇は似ている。そんな中で諦めた俺と諦めなかったアイツどれだけの差があるのだろう。)

 

月読はため息をつくと、休憩のために近くのベンチに腰掛け、そこに置いていたカバンからスポーツドリンクを取りだしタオルで汗をぬぐった。

 

「君は二年の御笠川か?」

 

気を抜いていたところに、突然かけられた声を聞き月読はベンチから慌てて立ち上がると声のした方に振り返った。

 

「すまない、驚かせるつもりはなかったんだが…私は新宮寺黒乃と言う者なんだが、偶然君がトレーニングをしているのが目に入ったので、声をかけたんだ。」

 

声をかけてきたのは話題の理事長だった。

 

「俺のような若輩者が話題の理事長先生に覚えていただいているとは、光栄です。」

 

月読は頭を下げると、自らの幸運に声を上げそうになるのを必死で押さえた。

 

新宮寺黒乃は能力こそ月読とは違うものの、同じ様なデバイスを使う伐刀者であり、元世界ランク3位の実力者だ。

 

そんな彼女がわざわざ声をかけてきたのだ、何か手解きを受けられるのではと月読は期待していた。

 

「君はこの学園では有名人だからな。印象深く覚えていただけさ。

Bランク騎士でありながら、去年の七星剣武祭への出場を落ちこぼれのFランク騎士が出られないなら、というふざけた理由で断った愚か者としてな。」

 

「理事長もそうお考えですか?」

 

月読はイラついた様に顔を反らすと、早口で聞いた。

 

(この人も同じか。今年もつまらない一年になりそうだ。)

 

「いや私は今の所はそう思わんがね。今年からは実力主義の選考方法に変更しようと考えている。お前の言う騎士が選考から落ちる様なことがあれば同じ様に考えるだろうな。」

 

「それだけはありませんよ、あの最弱の騎士が…黒鉄一輝がこの学園内程度の相手に遅れをとるはずがありませんから。」

 

(ほう、周りの評価に流されずに、黒鉄の強さをとらえるか。なかなか面白い男じゃないか御笠川月読。)

 

新宮寺黒乃は内心月読への評価を上昇させてこう言った。

 

「成る程君の考えはわかった。そんな君に一つ伝えておこう、30分後にその黒鉄と入ってきたばかりのAランク騎士、ステラ・ヴァーミリオンの模擬戦があるのだが見に来ないか?」

 

「観戦させてください‼」

 

月読は大きく返事をすると、すぐにカバンを持ち、黒乃に場所を聞くと、演習場に向けて走り出した。

 

今だ、1度も戦ったことのないライバルの闘いを見ることで頭が一杯になった月読は、自らがトレーニング中であり、服に大量の汗や汚れが付いていることなどすっかり忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

黒鉄一輝side

 

模擬戦の会場に一足早くついた黒鉄一輝は、念入りにストレッチをしながら対戦相手のステラが現れるのを待っていた。

 

一輝にとっては、不本意な成り行きでおこなうことになった模擬戦だったが、去年ほとんどまともな試合が出来なかっため、内心飛び上がりたくなるほど、喜んでいた。

 

久しぶりの試合で、しかも相手は世界一の魔力を持つと言われる強者である。強くなるためならどんな努力も惜しまない一輝にとっては、願ってもない試合だった。

 

 

(かなり理由はひどいけど、それでも楽しみだ。今の僕がAランクの騎士に対して、どこまでやれるか試すにはいい機会だ。)

 

そんなことを考えていた一輝は、何者かの視線を感じ、冷水をかけられたかの様にブルリ、と身体を震わせた。

 

(ステラさんが来たのか?。いや違う、この刺す様な闘気は観客席方から向けられている!)

 

一輝は警戒するように闘気の発せられている方に目を向けると、観客席の通路に、汗をダラダラと流し荒い息をしているジャージの男が立って、彼の方を観察するように見ていた。

(へ、変態だ…。)

 

男の様子を見て混乱していると、一輝の視線に気付いたのか、男はニンマリと獰猛な獣の様な笑みを浮かべ、さらに強く闘気をぶつけてきた。

 

(あれは…。 確か去年同じクラスだった御笠川君だっけ。落ち着いて良く見たら、ジャージに土がついてる。トレーニング中に模擬戦を見にきたのか…。変態なのかと思ったよ。

でも、去年七星剣武祭への出場を辞退するぐらいだから、闘いに興味なんてないと思ってたんだけどここに来るなんて。彼も、流石にAランク騎士のステラさんが気になるのか、いやでもそれならなんで僕に…)

 

まさか、自分が理由で月読が、七星剣武祭を辞退していたなどとは思い付かず、一輝は何故自分が見られているのかと考え込んでいた。

 

そんな一輝の思考はやって来た黒乃によって中断させられ、ステラとの模擬戦へと意識が切り替わっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一輝の勝利で模擬戦は終わり、その後、一輝は一刀修羅の反動もあり寝込んでいたり、ステラとの寮生活についても、思いをはせていた。

 

そのため彼は、その日自分に闘気をぶつけてきた月読のことを思い出すことはなかった。

 

 




御笠川のデバイスや能力な次回以降明かしていこうと思います。基本僕の好きアニメキャラの能力を混ぜ込んだ様な感じにしようと思います。


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第1話

月読は目の前の模擬戦を見ながら驚愕していた。本来であればその質量から受けることの許されないステラの剣技を一輝は受け流し続けていたのだ。

更にしばらくすると今度は一輝がステラと同じ剣技を使い始めた。表面上同じに見えるその剣技はその実、一輝の持つ日本刀で同じ成果が得られる様に改変されたものだった。

(化け物だなアイツは…)

試合が始まって5分も経たない内にそれをやってのける思考力、観察力もさることながらその間黒鉄は常にステラの斬撃を受け流し続けていたのだ。少しでもズレたら潰れる様なそれを完璧に受けつつ、相手の剣技を改変するなど人間の成せる技ではなかった。

「一刀修羅!」

ステラの魔力防御を超えることの出来なかった一輝はついに、自分の切り札を切ることになっていた。一輝から突然魔力が溢れ、視認できるまでになっていた。

ステラはそんな一輝を迎撃するためカルサリティオ・サラマンドラを使い降り下ろした。

(皇女様も充分化け物だが、魔力量が多いだけでやっていることは普通の伐刀者と変わらない、だが黒鉄は…)

ステラは一輝のことを捉えることが出来ないまま、一輝の接近を許してしまい一刀のもと切り捨てられてしまった。

「勝者黒鉄一輝!」

審判をしていた理事長から声が発せられ試合は終わった。

(今だ俺は黒鉄のいる領域には立てていない、どれ程の差なのだろうか…)

「おんや~、こんな所に怠け者のお前さんがいるなんて、明日は雪かねぇ」

「俺が演習場にいるだけで雪が降るなら日本はもう雪で覆われてますよ。」

「西京先生そちらの生徒は?」

「えっ妖怪ロリババア…がぁっ!!」

月読は言い終わる前に吹き飛ばされていた。

「いいかい刀華、ここには誰もいなかった、

くそ生意気なガキなんかいなかったよね。」

「い、いや居ましたよ!先生!」

「はぁ、仕方あるないねえ、ガキ今日の夜うちの部屋に来なそれで許してやるよ。」

寧々は呆れた様に月読が飛んでいった方に声を掛けた。

「それはお断りします!そんなことより先生ってどういうことですか?」

「おやおや、つまらないガキだね。今年から非常勤で講師をすることになったのさ。」

月読は自分の上にあった椅子をどけながら寧々の言葉に答えた。

「マジでか、大丈夫かよ。…初めまして藤堂生徒会長、俺は二年の御笠川月読と言います。」

彼は寧々が講師と言う事実に愕然としつつ、横に立っていた刀華に自己紹介をした。

「こちらこそ初めまして、生徒会長藤堂刀華です。」

「さて、お互いに自己紹介も終わったみたいだねぇ、ガキ、うちがあんたに話し掛けたのは一つ聞きたいことがあったからなのさ。」

「今年は参加しますよ七星剣武祭に。あの舞台で俺は黒鉄一輝を超える。」

「質問する前に答えるなよ、でもまあ、成る程ねぇ、今年の選抜戦は本当に楽しそうだねぇ」

「すみません、西京さん生徒会長俺はこの辺で失礼します。」

「待ってください!御笠川君!」

「なんです?生徒会長。」

「お手合わせ願います、去年同じランクでありながら1試合もしなかったあなたの力を見てみたいのです。」

「それはいいのですが、場所はどうします?許可もいるでしょうし。」

「それなら、うちにまかせなよ。オーイ!くーちゃん!」

寧々は黒乃を呼ぶと刀華と月読の模擬戦について伝えそのまま一輝とステラの戦った演習場を使うことになった。

 

 

藤堂刀華side

 

刀華は柄にもなくワクワクしていた。去年同じBランク騎士が入学してきたのは聞いていたが本人が理由はわからないが一度として戦おうとせずその力を見ることはできなかった。

しかし、今日噂のAランク騎士が戦うと言うのでたまたま見にきたらその相手の落第騎士の素晴らしい武術に魅せられ、去年から気になっていた同じランクの騎士と戦えることになったのだ。

(なんて運が良い日なんでしょう。)

「二人とも幻想形態でデバイスを展開したまえ。」

演習場に黒乃の声が響く。今はもう観客も帰りいるのは寧々と黒乃、そして月読と刀華だけだ。

「轟け、鳴神!」

刀華の言葉に呼応する様に雷が落ちその中から一振りの刀が現れた。雷を纏ったそれを鞘に入れると刀華は眼鏡を外し月読を見た。

「蹴散らせ、群狼(ぐんろう)

突然月読の右手には赤黒い光が左手には青白い光が集まりだし武器の形を取り始めた。光が収まると右手には赤黒く銃口から30㎝程の刃を付けたリボルバーが、左手には青白く右と同じく刃を付けた自動拳銃が握られていた。

(遠距離タイプ?いや、刃が付いているといるといつことは近距離もこなすってことかな)

刀華は月読のデバイスから戦い方を推測していると黒乃が声を掛けた。

「準備はできたな。それでは始め!」

その言葉とほぼ同時に刀華は雷を月読に打ち込んだ。

(どちらにせよ、遠距離に弾幕を張って近距離戦に持ち込めれば私は勝つ!雷切で決める!)

月読は双銃を雷の方に向けると引き金を引いた。すると、青白い閃光と赤黒い閃光が刀華の放った雷を打ち破った。

月読は雷が霧散したのを確認すると刀華に銃口を向けながら横に飛び引き金を引いた。刀華は閃光をかわしつつ新たに雷を放った。

二人はお互いにに1歩も近づかないままに遠距離攻撃の撃ち合いを続けていた。

(どうしよう、いくら遠距離攻撃を仕掛けてもあの攻撃に阻まれて届かない、かといって近付こうとするとこちらを撃ってきて近付けない。

少し距離はあるけど抜き足を使うかな。)

そう判断した刀華は大量の雷を月読に向けて放ち抜き足を使い一気に距離を詰めた。

 

「雷切!」

 

放たれたのは神速の居合い抜き。月読は一刀のもとに切り伏せられる。

 

確かな手応えを感じ刀華は己の勝利を確信した。

しかし、そんな刀華の目に写ったのは倒れて行く月読の後ろから銃口をこちらに向け引き金を引こうとしているもう一人の月読だった。

(!!!!なんで!)

刹那、刀華は閃光に飲まれた。爆発がおき轟音とともに刀華が切った月読が消えていった。

 

 

(ギリギリだった、雷が間に合わなければ私は負けていた。)

直前で雷を放ち何とか直撃を避けた刀華だったが無傷とはいかず左手が動かなくなっていた。

「生徒会長、俺の群狼の能力を教えておきますね。生徒会長の雷切は余りに有名でこの勝負フェアじゃないので」

そう月読は言うと刀華に笑いかけた。




御笠川君のデバイスは双銃でした!
戦闘難しいですね書くの次回は能力が判明します。次回の後書きで何のキャラ能力を混ぜたか書きます!
感想評価よろしくお願いします。


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第2話

月読は左手をかばう刀華を見ながら思う。

(なんて素晴らしい騎士なんだ。逃げてばかりの俺とは違う、気高い騎士だ。)

月読は自分の能力が嫌いだった。他者から見れば強力な能力だと羨ましがられるかもしれない。だが、月読は自身の能力を嫌う、逃げてばかりの自分自身を良く表しているからだ。

(黒鉄もこの人も真っ正面から相手に向かい打倒しようとする勇気がある。俺はそれが羨ましい。)

「生徒会長、僕の能力は自分自身の魂の分解と再生ですよ。まぁ副次的な効果として触れたものの分解と再生もあるのですが。」

その言葉を聞いた刀華は驚愕したような理解出来ない様な表情を浮かべ彼を見ていた。

「喰い殺せ! 餓狼群(がろうぐん)!」

月読の言葉に呼応する様に何処からともなく黒や白い炎でできた狼が現れた。狼達は皆刀華のことを赤色の眼で睨み低い声で唸っていた。

「それがあなたの能力と言うことですか?」

「ええ、この狼達な皆僕の魂を分解したものに魔力で形を付けたんです。要するに彼らもまた御笠川月読なんですよ。」

狼を従えた月読はゆっくりと銃口を刀華に向けた。

「再開しましょうか生徒会長さん!」

そう言うと彼は引き金を引き狼達な一斉に刀華に襲いかかった。彼女は左手を庇いながら閃光をかわし一番近くにいた狼を切り裂いた。

「なっ!」

しかし、彼女は再度驚くことになる。切り伏せたはずの狼が揺らめきながらも形を取り戻し襲いかかって来たのだ。すぐ様刀を振るうも他の狼達も襲いかかって来ていて数秒で 彼女は狼に覆われてしまった。

「終わりです。生徒会長…爆ぜろ!」

月読の声に合わせる様に群がっていた狼たちは爆発し刀華は炎に包まれた。月読はそれを悲しそうに見ていた。

(会長は正面から正々堂々と戦ってくれていただが俺は自分は傷つかない方法で戦ってそんな会長を倒したのだなんて醜い、汚い戦いなのだろうな。)

炎が収まるとそこには幻想形態での戦いであったため外傷は無いが気絶している刀華がいた。

「勝者、御笠川月読!」

黒乃の勝利宣言を受けた月読は悲しそうにデバイスを消すと何も言わずその場を去っていった。

 

 

 

 

新宮寺黒乃side

月読が去るのを見送った黒乃は横でニヤニヤと笑っている悪友に声を掛けた。

「寧々、お前はアイツの能力を知ってたんだよな。何故私に何も言わなかった?私が七星剣王に届きうる騎士を探しているのを知ってただろう。」

「ん~、くーちゃんには悪いとは思ってたけどさ、あのガキ自分能力を人に言いたがらないのさ、よっぽど強い相手じゃないと使いたがらないしね。」

「あそこまで強い能力を何故隠そうとする?物理攻撃でははじけない誘導弾など対処できる者などそうはいまい。」

「それはそうなんだけどさ、別に手の内がバレるからとかじゃないんだよアイツの場合。くーちゃんもアイツが孤児院出なのは知ってるだろ」

「それは知っているがそれと何の関係がある?」

「アイツさ、孤児院に入るまで親に虐待を受けてたんよ、でそんな自分を守るために自分の中にもう一つ人格を作って逃げた訳よ。なんだっけ防衛本能だっけ?そんな感じでさ、自分自身を分割してツラい境遇から傷つかない様に逃げたって訳。」

「それは別に恥じることではないだろう、むしろ其れが普通だ。なんで気にやむことがある?」

「そんな時に黒坊を知っちまったのさアイツは、自分よりも更にツラい境遇にいながら前を向いて戦い続ける黒坊の姿を見て、逃げてしまった自分やその象徴みたいな能力が恥ずかしく思えたんだろうね、だからこそ黒坊が去年の七星剣武祭に出れないと聞いて自分も出る資格がないと考えたんだよアイツ。」

「そうか…」

「まっそう言う訳だからアイツのことも頼むぜくーちゃん!うちも黒坊並みには気に入ってんだ。」

そう言うと寧々は演習場を出ていった。黒乃は刀華を介抱しながら一輝と月読のことを考えていた。

 

 

 

 

黒鉄一輝side

 

ステラとの一戦から数日後一輝はステラと共にトレーニングをするのが日課となっていた。もうすぐ学園にやってくる妹のことを考えながらステラを待っていると前から一人の男が走って来ていた。

(あれは御笠川君?彼もトレーニングかな?)

月読とは中学からの付き合いだがあまり話したことがなく去年同じクラスではあったのだが話し掛けて来る様なこともない一輝にとっては印象に薄いクラスメイトだった。

「おはよう!御笠川君。君もトレーニングかい?」

月読は驚いた様な顔をすると走るのをやめ汗を拭きながら近付いてきた。

「おはよう黒鉄、俺のことは月読でいい。」

「なら、僕のことも一輝って呼んでくれないかな。そう言えばこの前の模擬戦見にきてたみたいだけど月読君ってそういうの興味あったんだね」

「それはまぁ選抜戦には俺も参加するつもりだったし、Aランク騎士の試合なんて生では見られないからね興味も沸くさ」

「それもそっか、選抜戦もしあたることがあればよろしくね。僕も全力でやるからさ。」

月読はそれに手を挙げて答えるとその場から走り去っていった。

(結局なんで僕に闘気をぶつけたのかは分からずじまいか、Bランクの彼がステラに勝つ前の僕を気にする理由が分からないけれど)

「イッキ~!何ボーとしてるのよ!」

いつの間にかランニングを終えたステラが一輝の顔を覗き込んでいた。

「す、ステラさんち、近いよ!」

「ステラよ!それで何か考えごと?」

「ごめんステラ、ちょっと気になる人がいてね。」

「そっ、それって女の人!?」

慌てた様に言うステラに一輝な少し笑いながら答えた。

「いや、男だよ。御笠川月読君、ステラしってる?」

「名前だけは知ってるわよ?なんかすごい怠け者だって聞いたわ」

「そっか、さてとステラ、トレーニングの続きをしようか。」

一輝はステラにそう促しトレーニングを再開した。御笠川月読はたぶん怠け者なんて甘い騎士ではないと思いながら。




という訳で御笠川の能力はブリーチなスタークとさすおにとナルトのデイダラの能力を混ぜました。そのまま使うとチート過ぎるんである程度押さえて混ぜたつもりです。


さすおにがチートすぎてかなり押さえないと全部こいつで良いんじゃないかってなるので困りました。
さて、次回ぐらいヒロインを出せればいいなって考えてます。オリヒロの予定です

感想評価よろしくお願いします!


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第3話

黒鉄と少し言葉を交わした月読は自分の部屋に向かっていた。

(全力でやるからか、俺にはそんな真っ直ぐ戦う資格はまだない…)

一輝の言う全力でぶつかり合うことは月読には出来ないと考えていた。月読の能力上全力になればなるほど自分自身は動かずに切り離した魂に任せる様な戦いになる。

月読にとっては許されることのない戦いだと考えている。一輝はそんなことを気にはしないだろうし、自身の魂を切り離し、戦うことも自身能力なのだから正々堂々と考える男だが月読はそのことに考えが至らなかった。

そうこうしているうちに自室の前に付いた月読は深呼吸をした。つい最近ルームメイトになった同級生はかなりの曲者でありいつも心労を抱えさせるのだ。

(覚悟を決めろ月読!玄関の前で立ち尽くしている方が恥ずかしいぞ!)

月読は意を決して扉を開いた。

「お帰りなさいませ。月読様、今日も修行お疲れ様でした。」

玄関には着物を着た黒髪の少女がにこやかに月読を出迎えた。

夏川(なつかわ)さん、それやめてってお願いしなかったっけ?」

「以前もお答えしたと思いますが私の趣味であり癖なのです。諦めていただけませんか?」

夏川(いろり)は今年から月読のルームメイトになった伐刀者で女中のような態度で月読に接してくる少女である。Cランクの騎士であり、去年の七星剣武祭の参加者である。

「それよりお昼ご飯ができてますが、先にお風呂にしますか?」

「それはまぁ風呂にするけどなんで新婚みたいなんだよ…」

「わ・た・し?も選択肢にいれた方がよろしかったですか?」

「いらねーよ!とにかく風呂に入ってくるから。」

そう言うと月読は逃げる様に風呂場に向かって行った。

 

 

 

 

夏川爐side

 

月読が風呂場に向かうのを見送った爐はため息を付いた。

(やはり、まだ思い出していただけませんか…)

月読は覚えていないのだろうが爐は幼少の頃月読そして黒鉄一輝にあったことがあるのだ。

月読自身は破軍学園に入ってから爐とあったと思っているが幼少の頃のことを覚えている爐からすると複雑な心境だった。

(仕方がありませんか、あの頃はあの男が月読さんを最も虐げていた頃です。実父からあんなことをされていれば、同学年の人のことなど覚えていられないでしょうし。)

早く思い出して欲しいがツラいことも思い出してしまうのではと思うと忘れたままでいて欲しい。矛盾した思いが彼女の頭の中をぐるぐると巡っていた。

 

 

 

新学期が始まってしばらくして平和に過ごしていた。部屋で料理をしていた月読の元に爐がニコニコしながらやって来た。

「明日の土曜日黒鉄さん達とショッピングに行きませんか?」

「えっ、夏川さん黒鉄と知り合いなの?」

「正確には妹さんと知り合いなのですが、昔から仲がいいんですよ雫ちゃんと。」

「ああ、あのおかしな妹か、入学早々にステラと謹慎してた。意外だな夏川さんとあの妹話合うのか?」

「それはもう、恋する乙女ですから話題はいくらでもありますよ。」

「ふ~んそうなんだ。悪いけど俺はやめておくよ。」

「どうしてです?黒鉄さんと交流を持つチャンスですよ?」

「あの妹どうも苦手なんだよ」

そう言うと月読は料理を再開した。月読としては修行をしていたかったし何より只でさえ黒鉄が苦手なのにその上その妹も含めて外出なぞ、月読にとっては地獄のような光景だった。

「会ってもいないのにそんな風に毛嫌いしてはいけませんよ。」

「いやでもな、ろくに話したことのないやつがいきなりいっても迷惑だろ…」

「何事も初めてはそういったものです!少しは他人と関わった方がいいですよ。」

その後も月読は抵抗を続けるも最終的には爐に押されショッピングに行くことになった。

(憂鬱だ…)

月読の心の声に答えるものは誰もいなかった。

 

 

 

 

???side

血溜まりの中に一人の男が立っていた。喪服を着て顔には狐のお面を被り黒いコウモリ傘をさして立っている男はくっくっと低い声でわらうと近くにあった死体を蹴り飛ばしふらふらと歩き出した。

「おーい!狐さんそろそろ次に行こうよ!」

男の目の前の血溜まりが当然吹き上がりその中から10歳くらいの少女が現れ狐面の男に声を掛けた。

「くっくっ、次は貴様の兄の所に遊びに行くぞ。」

「おにいに会えるの!?嬉しいなぁ、ねえねえ、おにいは面白い?」

「面白いとも、貴様の兄は失敗作だがなかなかな能力を持っているからな」

「そうなんだ!楽しみにしてるねパパ!」

狐面の男は答えずまた、くっくっ笑い歩みを進めはじめ、少女もついて歩き始めた。




更新が遅くなり申し訳ありません。

ヒロイン能力は適当に考えてますがそもそも、落第騎士の能力によるランクがよく分からないので強すぎるかもしれません。

とりあえずオリジナルの敵です。ある作品の敵がモデルですがやることはそのキャラよりえぐくなるかも。

感想評価よろしくお願いします。


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第4話

土曜日の朝月読は集まったメンバーを見て来なければよかったと改めて思っていた。

「やぁ、月読君、今日はよろしくね!」

そう爽やかに話掛けてくる一輝を見ながら月読はその横を見ない様にしていた。

(お前は俺に挨拶する前に横の火の粉を散らしてるお姫様とにらみあってるゴスロリを何とかしろよ…)

「初めまして、せんぱい♪、ワタシは有栖院凪よろしくね。」

(お前はお前で濃いんだよ!)

「あ、ああ御笠川月読だ。よ、よろしく…」

「よろしくね、有栖院さん私は夏川爐と言います。」

そうにこやかにかえす爐は波と桜のあしらわれた着物を着ていた。

(そしてなんでお前は着物なんだよ!似合えば飯ってもんじゃないぞ!ショッピングモールにそんなん着て来るなよ周りの目が痛い。)

「それじゃあみんな揃ったし行こうか。」

一輝が声を掛けるとステラと雫が競って横に並びその後ろをニコニコと笑う爐と凪とうなだれた月読が続いて付いていった。

 

 

黒鉄一輝side

 

映画館の前に来た一輝達は見たい映画までの時間をレストランでつぶすことにした。

「でも、月読君が来るなんて意外だったな。」

「夏川に無理矢理連れてこられたんだ…そうじゃなきゃ来ないよ。」

「そう言えばせんぱい、生徒会長と模擬戦をして勝ったって聞いたけど本当かしら?」

「有栖院誰から聞いた?」

「それはひみつよ♪で、どうなのかしら?」

「ねぇ、一輝。生徒会長って強いの?」

ステラは隣りにいた一輝にと聞くと彼が答える前に雫がバカにしたように笑うとステラに向けてステラに食って掛かった。

「これだから、雌ブタ姫と呼ばれるんですよ、。自分の学校で一番強い人のことも知らないなんて。頭の中はいやらしいことで一杯なんじゃないですか?」

「そんなわけないでしょ!雫こそ頭の中は人のことをバカにすることで一杯なんじゃないの!」

いがみ合う二人にため息を付きながら月読は目をそらした。

「そんな話私も聞いておりませんわね?」

月読の顔を覗き込みながら冷たい声で爐が問い掛けてきた。

「いちいち言うことじゃないだろ、だいたい試合したのはお前に会う前なんだから。」

「じゃあ本当に月読君は藤堂さんに勝ったのかい!」

「まぁそうなるな、クロスレンジで戦わなかったから勝てただけさ、雷切自体は不敗のままだ。」

「それでも充分凄いよ!藤堂さんは去年の七星剣武祭でベスト4の実力者なんだから!」

一輝は興奮して話し掛けるが対する月読は難しい顔をしていた。

「そんなんじゃないんだよ、生徒会長の本質はクロスレンジの雷切、あれを破らないと本当に勝ったとは言えないだろ。ロングレンジからチクチク攻撃して勝ったとしてもそんなもの意味がない。」

(戦いで相手の弱点をつくことは悪いことじゃない。でないと僕みたいな才能のない人間は勝てないのだから。)

一輝は口には出さなかったが自分の戦いを否定されているような気分になっていた。

「それに黒鉄はAランク騎士を倒してるんだ、同格の相手を倒した俺なんかよりずっと凄いさ。」

月読はぼそぼそと言葉を発するとコップを手に取り飲み始めた。一輝はそんな月読を見て肩をすくめると今だ言い合っているステラと雫を止めに入った。

 

 

 

 

 

御笠川月読side

 

 

映画前にトイレに行って来ると一輝と有栖院が二人離れて行ったところで女子は三人で話始め月読は肩身の狭い思いをしていた。

「あ~、おにい見つけた!」

その声が聞こえた瞬間月読は横からとてつもない衝撃を受け、更に何かに吸い込まれる様な感覚が全身を襲った。

(くそっ!いきなりなんだよ!)

吸い込まれる様な感覚がなくなるとすぐさま周囲の確認を行い月読は愕然とした。

(ここは…ショッピングモールの屋上か!こんなことができるってことは空間操作系の能力を持った伐刀者か。)

「初めておにい!妹の御笠川陽向(ひなた)です!いっしょに遊ぼ。」

「私も初めてましてかな?キミの姉の御笠川水那母(みなも)だよ。姉弟同士仲良くしようじゃないか。」

月読が声のした方を向くと10歳くらいの黄色ワンピースを着たハーフの少女と20歳くらいのスーツを着た女が立っていた。陽向と名乗った少女はその小さな身体には不似合いな大きさのハンマーを持っていた。

「あいにく、俺は一人っ子だからあんたらの勘違いだ。」

(しかし、こいつら何のために俺をここに連れて着た?そもそもこいつらは何がしたいんだ。)

「勘違いではないさ、キミだって分かっているんだろう。」

月読がなにも言わずに黙っていると水那母はどこか暗い笑顔で言葉を続けた。

「いいのかい、そんなんで。今日は私達の父…御笠川鏡月(きょうげつ)も来てるんだけどね。キミの殺したくて仕方がない男がさ。」

「言え…あのクソ野郎はどこにいる。」

月読は急に低い声で水那母に問い掛けた。その両手にはデバイスである二丁の拳銃が握られ銃口を真っ直ぐ彼女に向けていた。

「父ならキミの友達のところさ、血縁としては姉弟の中でも最高傑作なのに失敗作となったキミのことを調べるためにね。」

「だったら!「もぉ~!さっきからおにいとおねえだけで難しい話ばっかりしないでよ!」

月読の言葉をさえぎって陽向が文句を言い始めた。

「ごめんごめん、じゃあお姉ちゃんはパパの所に行くから陽向はお兄ちゃんに遊んでもらいなさい。」

「お、おい!まだ話は終わってないぞ!」

「それはまた、後で父を交えて話そうじゃないか。まずは陽向と相手をしてあげてくれ。キミに会うのを楽しみにしていたかわいい妹だよ。」

そう言うと水那母は鏡を取りだしその場から消えていった。

「じゃあおにい、遊ぼ!」

「すぐに終わらせてやるよ…」

陽向は楽しそうに、月読は低く感情の読めない声で言うと戦いに入っていった。

 




すみません!年度末飲み会が多くて更新が遅れました!この時期は本当に忙しいですね。
次回は一輝達がはのお話の予定です。もしかしたら、内容的に受け付けない人もいるかもです。

感想、評価よろしくお願いします


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第5話

お気に入りが10件になりました!
本当にありがとうございます!ひどい駄文ですが今後ともよろしくお願いします。





ステラside

 

 

ステラ 達はテロリストによって、ショッピングモールの室内広場に集められていた。

 

彼女達は、 いきなりいなくなった月読を探していると突然銃持った男達に囲まれ、周りの一般人を巻き込まないために抵抗せず捕まったのだ。

 

「ちょっと雫!どうするのよ、このまま捕まってても先には進まないわよ!」

 

だんだん何もせずに捕まっていることに焦れたステラは、となりで何かをしている雫に小声で話掛けた。

 

「少し黙っていられないんですか、あなたは。今、ここにいる人を守るための術を仕込んでますから待ってください。」

 

雫はステラの方を見ることなく答えると、術に集中するために黙りこんだ。

 

「そうですよ、ステラさん。今は雫さんにまかせて、私達は 他の人に被害が及ばないように気をつけましょ。」

 

今だ不満そうなステラに、爐もなだめる様にそう言った。

 

(確かに私だけが出ていっても、他の人を全員助けられないけど…、だからってじっとしているのも性に合わないのよね。)

 

「どうか!この子だけは助けてください!

「うるせぇ!助かりたきゃ大人しくしてろ!」キャッ‼」

 

若い母親がテロリストに息子だけでも助けてとすがりつくも、テロリストはそんな母親を蹴飛ばし怒鳴り付けた。

 

ステラは飛び出しそうになる気持ちを必死で押さえ、こぶしを強く握った。

 

しかし、息子の方はそうはいなかったようで、蹴られた母親を守るためか、テロリストの頭にアイスを投げ付けると、足飛び付き殴り始めた。テロリストは一瞬ポカンとしていたが、顔を真っ赤にすると、怒りにまかせ力一杯に子どもを蹴り飛ばすと、銃口を向けた。

 

「大人しくしてろ!って言ったろクソガキ!」

 

それを見ていたステラは、我慢の限界に達し、魔力を高めると飛び出した。

 

(ごめん、雫、爐センパイ、もう我慢できない!)

 

「そんなに死にたきゃ殺してやるよガキ!」

 

テロリストは男の子に向け、銃を乱射したが、炎の龍が弾丸を飲み込み、男の子に当たることはなかった。

 

「私の炎は弾丸ごときじゃ貫けないわよ。」

ステラはテロリストと男の子の間に立つと飛んでくる銃弾をすべて炎の龍を操り溶かし消した。

 

「ヤキン君、何をしているのかな?」

 

そんな広場に現れてたのは、真っ黒い洋傘をさし、喪服を着て、狐の面をした男とスーツを着た若い女だった。

 

「ヤキン君、私は君に人質は大人しくさせておけと言っただけで、殺せとは言っていないはずだがね?」

 

喪服の男はヤキンに優しく語り掛けた。だが、ヤキンの方は、今にも倒れそうになりながら、突然敬語を使い始めた。

「す、す、すみません! あ、あのがきが、お、俺に、あ、アイスをぶつけて来たんです。」

 

それを聞いたスーツの女はヤキンを鼻で笑うと、冷たく言いはなった。

 

「まるで子どもの喧嘩だね、くだらない。そんなツマラナイ理由で父の命令を無視するなんて。」

 

女は鏡を取りだしヤキンに殺気を当てた。

ヤキンは遂に崩れ落ち、涙を流して、許してください!、と叫び始めた。

 

「水那母、落ち着きなさい。ヤキンだって大人さ、自分のしたことの責任くらい自分でとる。」

 

狐面の男は、水那母の肩に手を置きそうささやく様に言った。その声には相変わらず優しさがふくまれていた。

 

「そう言うわけだ、ヤキン君。大人の君は、自らの手で責任をとるべきだ。自殺したまえ。」

 

その優しい声のままに喪服の男は言いはなった。すると、ヤキンは絶望したような顔をして、腰のベルトに付いていたサバイバルナイフを取ると自らの首に当てた。

 

「た、頼む!許してくれ!。いっいや許してください!」

 

自らの首をナイフで切りながら命ごいをする光景に、人質もテロリストもみんなガクガクと震え、恐怖によって顔を強張らせた。

 

ヤキンは首から血を大量に流しながら、ビクビクと痙攣し絶命した。

 

「あんた自分の仲間を!」

 

ステラは目の前の伐刀者が、何らかの能力を使っていると考え、鏡月を怒鳴り付けた。

「ああ、あなたはステラ殿下ではないですか!。今日はとても運が良いようだ。何せ世界一の魔力を持つ腹を私は手に入れられるのだから!」

 

そう言うと鏡月は、少しずつステラに近付いて来た。ステラは言い知れぬ恐怖に駆られレーヴァテインを取り出すと鏡月に斬りかかった。

 

「ビショウ君、出番だ。」

 

狐面の男の声に合わせるかのように一人の男がステラの前に躍り出ると、左手を斬撃に向け付きだし、それを受け止めた。

そのまま、その男はステラの腹を右手で殴り吹き飛ばした。

 

「彼はビショウ君と言ってね。私が来るまで彼らのリーダーだった男さ。」

 

鏡月は笑いながらビショウのことを説明した。

ステラはビショウを見て愕然としていた。何故なら、ビショウは右目を潰され、顔中に痣があり、左手の皮膚は焼かれて指が全てくっついており、右手の指は全て第1間接で切り落とされていた。

 

「彼は最初は反抗的な男だったのだがね。少し話し合ったら私に協力してくれることになったんですよ、ステラ殿下。」

 

そんなステラの視線に気付いたのか鏡月はステラを見下ろしながら話した。

 

「さてさて、やっと自己紹介ができますね。私の名前は御笠川鏡月。隣にいるのが娘の水那母です。皆さん、どうぞよろしく!」

 

鏡月はそう高らかに宣言すると、ヤキンに飛び掛かった少年を見た。

 

「では、先程の続きをしましょ「あなたが月読君の父親ですか?」…話をさえぎるのは関心しませんが、まぁ、息子の友人であるようですし、それに免じて許しますよ、お嬢さん。」

 

言葉を続けた鏡月をさえぎり、爐が声をあげた。

 

(爐センパイはこの男をしっているの?しかも、こいつが月読センパイの父親ってどうゆうこと?イッキはたしか、月読センパイは一般家庭出身だって言ってたのに。)

ステラはビショウに殴られたお腹をかばいながら、立ち上がり急に声をあげた爐に疑問の眼差しを向けた。

 

「あなたはまだ生きていたのですね、鏡月さん。あなたのことは、10年前に月読君が殺したはずなのに。」

 

鋭い殺気を鏡月に向けながら、無感情な声で爐は話を続けた。

鏡月は面白そうにそれを見るとふむ、と考える様な仕草をし先程の母親に目を向けた。

 

「なるほど、君が息子を失敗作にした子かい?なるほど、なるほど。しかも、優秀な伐刀者のようじゃないか、ステラ殿下同様腹を借りるとしよう。しかし、君の相手はまた後でゆっくりとするとして、 まずは、先程の罰を子どもに与えないとね。ここにいる伐刀者を全員取り押さえろ!」

 

鏡月が大きな声でそう言うと、ステラ、爐、雫に人質とテロリストが襲い掛かり、3人を押さえ込んだ。

 

「おや、3人もいたのか、本当に私は運が良い!黒鉄の娘も手に入れられるのだから!

さて、なんで人質が君達を取り押さえたのか不思議だろう?私のデバイス、幻影妖狐(げんえいようこ)の能力でね。私は伐刀者以外の人間ならどんな者でも支配することができる。身体だけでなく精神も自由自在に操り支配する。一対一で伐刀者の相手をするには最弱の能力だが、こんな状況であれば、君達の様に正義感の強い者にはとても、有効だ。」

 

「本当に人間のクズですね。」

 

爐は押さえつけられながらも鏡月を睨み付けるのだけは止めようとしなかった。

 

「まぁ、君達3人の相手は先程も言ったが後にしよう。まずは君だ、子どもを罰するのは親の役目だよ。」

 

そう言うと鏡月は3人から目を反らし、近くにいた母親に語り掛け、ナイフを投げて母親の近くに落とした。

そしてヤキンの死体を指差しながら言った。

 

「見たまえ、君の息子と喧嘩をしたヤキン君は、自らを罰するために自殺した。しかし、子どもが一人であれを行うのは難しいだろう。だからこそ、母親である君が罰を与えなければならない。さぁ!ナイフを取り息子を罰したまえ!私も手伝おう!大丈夫だ…精神は支配しないとも、キチンと息子を罰する感覚を感じたまえ!」

 

「お、お願いです!私はどうなってもいいですから!息子だけは!」

 

母親は鏡月に懇願しながらナイフを拾い、立ち上がると少しずつ気絶している息子に近付いて行った。

 

「観客は静かにしていてくれたまえ。」

 

声を上げようとしたステラ達の口を人質が塞ぎ、人質達も口を閉じひたすらその光景を眺めていた。

 

遂に母親が息子にたどり着きナイフを振り上げた。

 

「さぁ、ナイフを降り下ろし自分の息子に罰を与えたまえ!」

 

「いやぁああああ!」

 

母親は叫びながらナイフを自らの息子に降り下ろす。ステラは目をきつく閉じその光景を見ないようにした。

 

ガキンッ!

 

金属同士が勢いよくぶつかった様な音がした。ステラは恐る恐る目を開けるとそこには、デバイスを手にした一輝と気絶した母親がいた。

 

(イッキ!来てくれたのね!)

 

一輝はゆっくりと鏡月に向けて、デバイスを構えながら 言いはなった。

 

「御笠川鏡月、僕の最弱をもって、あなたの最悪を食い止める!」

 

ショッピングモールでの戦いは新たな局面へと突入した。

 




普段より長くなりました。
さて、鏡月はモデルは戯言シリーズの西東天です。中身は全然違いますが少し意識はしてます。次回はかっこ良く登場した一輝回にするか、一話丸々いなかった月読回ににするか未定です。

それではまた次回もよろしくお願いします!感想評価よろしくお願いします!


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第6話

御笠川月読side

 

「キャハッ!おにい!楽しいね!」

 

手に持ったハンマーを振り回しながら、月読に近付こうとする陽向を月読が閃光を使って牽制し、それをヒラリ、ヒラリと陽向がかわす。先程からその繰返しを続けていた二人は疲れを見せることなく動き回っていた。

 

「俺は楽しくないな!」

 

月読は陽向のハンマーを横に回転して避けながら、怒鳴った。

 

「それじゃあ、おにいのためにもっと楽しくしてあげる!」

 

そう言うと陽向は、ハンマーをその場でふった。

 

(空振りだと? 。こいつは相手との距離感が分からないほど素人ではなかったはずだが?)

 

明らかにハンマーのリーチの外にいた月読はその行動を訝しく思っていると、強烈な危機感を覚え体勢を低くした。

 

ドコンッ‼。

 

突然月読の背後の柵がひしゃげ、吹き飛んだ。柵が、くの字に折れ曲がり屋上から落ちていくのを月読は冷静に見ていた。

 

「なるほどな、お前の能力はハンマーの射程を伸ばす能力か。目に見えないのは厄介だがいくらでも対応は可能だ。」

 

月読はクスクスと笑う陽向に向かって低い声でそう言うとゆっくりと銃口を向けた。

 

「おにい、クイズの答え合わせは後でね。まだまだ遊んで?おにいが死ぬ時に答え合わせしてあげる!」

 

楽しそうに笑う陽向はハンマーを構えなおすと、ぶんぶん音を立てながら振り回し、それに合わせて屋上の床や柵が吹き飛んだ。

 

月読はそれを交わし、何発か閃光を放ち陽向を牽制した。

 

「食い尽くせ、餓狼群!」

 

(あまり、時間を掛けるとあの男が逃げちまう、悪いがこれで終わりだ!)

 

月読の周りに沢山の炎の狼が現れて、一斉に陽向に向かって駆け出した。

 

「これがおにいの能力なんだ!かわいいね!」

 

陽向は年相応の笑顔を浮かべると向かって来る狼を眺めていた。

 

(なんだと!何故なにもしない?相手の能力を取り合えず受けるなんざ、ただの馬鹿のすることだぞ!)

 

「おいで狼さん!陽向と遊ぼ!」

 

遂にはハンマーを放り出し、自身にたどり着き噛みつく狼をなで始めた。

 

月読は混乱しながらもトドメを刺すべく、口を開いた。

 

「はぜろ!」

 

その言葉に反応し、狼達は次々に爆発し陽向を爆炎が包み込んだ。

(あっけなく終わったな、あいつのところまでいかないと!)

 

月読はここで大きなミスを犯した。普段であれば絶対にしないミスを。自身の父のこともあり焦っていた月読は敵の生死の確認を怠ってしまったのだ。

 

突然、月読は右の脇腹に強い衝撃を受け地面に倒れた。状況を掴めずに困惑していると、今度は背中に衝撃を受け、口から大量の血が吹き出した。

 

「おにい!まったく!陽向をおいてどこに行くの!?おにいは陽向と遊べばいいの!」

 

その声を聞き月読なゆっくりと陽向の方に顔をあげた。そこには服を少し焦がしただけの陽向が腰に手をあてて、頬を膨らましながら立っていた。

 

「今度は陽向の番ね♪」

 

そう言うと彼女はハンマーを振り上げた。

 

黒鉄一輝side

 

黒鉄は周りの様子を確認しつつ、目の前の狐面の男を警戒し続けていた。

 

「これはこれは、まさか息子より先に黒鉄の息子が来るとは…、あいつなら陽向など簡単に殺して来ると思ったんだがね。」

 

(この人が理事長の言っていた人類最悪。御笠川君の父親か。)

 

一輝は鏡月を睨むと隕鉄の切っ先を向け、ゆっくりと問い掛けた。

 

「取り合えず、ここにいる人を解放してくれませんか?この距離なら僕の方が速いですよ。」

 

それを聞いた鏡月は呆れた様に首を振ると一輝の方に歩いて近付いてきた。

 

「黒鉄の息子よ、くだらない…本当にくだらないね。何故ゴミの心配をする?君がゴミの心配をせず私を切っていれば全て終わっていただろう?何故ゴミの親子を助けた?」

 

(何を言ってるんだこの人は!まるで、人を人として扱っていない!)

 

一輝は怒りに身をまかせたくなったが、それを押さえ鏡月に答えを返した。

 

「人が人を助けるのは当たり前でしょう。親に子供を殺させるなんてこと見過ごせる訳がない!」

 

一輝の答えを聞いた鏡月は立ち止まり少し考える様な仕草をすると突然笑いだした。

 

「クックッ!こいつは傑作だ!教えてあげよう!何故こいつらがゴミなのかという理由をね、黒鉄の息子よ、伐刀者の魔力量は何に比例する?」

 

「その人間の持つ運命の大きさに比例するでしょう。それがなんです?」

 

一輝は鏡月の笑い声になんとも言えぬ嫌悪感を抱きつつ答えた。

 

「正解だよ!さて、ではまったく魔力を持たない一般人には、運命とやらは存在するのかね?いてもいなくても、この世界の運命になんの影響をもたらさない、そんなゴミの様な存在を何故大切にする?くだらない、どうせ何もない、なにも世界に対して影響のない連中を助けることになんの」

 

ザシュ!

 

「第七秘剣 雷光。」

 

鏡月が言葉を終える前に一輝の最速の剣技が鏡月の首を切り落とした。

 

「あなたは狂ってる、ここで何としてでも仕留めなくてはいけない人だ。」

 

一輝は隕鉄を振り刃の血を落とすとビショウと水那母の方を向いた。

 

「一輝!(お兄様!)」

 

鏡月の死によって解放されたステラ、雫、爐が一輝の元に集まった。

 

「4対2です。大人しく投降してください!」

 

水那母とビショウに一輝が声を掛けるとビショウは悲鳴をあげその場を逃げようとした。

 

「無駄よ、あなた達の影を縫い止めたわ。」

 

しかし、それは背後に現れた有栖院によって食い止められた。

 

「ミナモさんだったかしら?もう終わりよ!早く捕まりなさい!」

 

ステラもレーヴァテインを水那母に向けると叫んだ。

 

「フフッ、ねぇ黒鉄さん父を殺したの?」

 

水那母は投降する素振りを見せず笑いながら一輝に問い掛けた。

 

(この人は何を言っている?目の前で僕が首を切り落としたのを見ていたはずだ!)

「ええ、間違えなく首を切りましたから。」

 

それを聞いた水那母は可笑しくてたまらないといった表情になり一輝に問い掛けた。

 

「じゃあ、なんであなたは今ゴミ共に捕まっているのかしら?」

 

「!!!」

 

その瞬間一輝の見ていた景色が激変した。自身もステラ達も一般人に押さえ付けられ、水那母の横には殺したはずの鏡月が立っていた。

 

「よお、黒鉄の息子よ。さっきぶりだな。」

 




更新遅くなってすみませんでした!
今週は本当に忙しくて全然書けなかった。
次回は早目に更新できると思います。

感想評価よろしくお願いします!


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