変態兵器たちでIS (アメンドーズ)
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プロローグ

今日は、アメンドーズと言います。
変態兵器への愛が溢れ出して書いてしまいました。
読んでくれた方には啓蒙を差し上げます、


「ああああっ!! 素晴らしいんよ! パンジャンドラム、ポンポン砲、対空火炎放射器!! エイコクメーン!!」

 

「うるせえ!」

 

二階の自室様々な変態兵器の設計図を書いている僕に、父から怒号が飛んだ。

確かに、自室で大声を出すのは煩いだろう。

しかしだ。 これだけ素晴らしい兵器たちを見て平気でいられるか?(シャレにあらず)

 

「否! 断じて否なんよ!」

 

「だぁぁかぁぁるぁぁぁ!! うるせえっつってんだろうがぁ!!」

 

僕の部屋の扉をバタンと開けながら父親が入ってきた。

少し後退した生え際の黒髪に筋肉質な体をした、40程の男性。

名前は百目木(どうめき) 厳路(げんじ)

大手の企業の副社長をしている。

 

「俺の会社で雇うの決定してんだからそんなゲテモノばっかじゃなくてマトモな武器を書け! 設計図が普通にめちゃくちゃうまくできてんのがなお腹立つ!」

 

僕の机の上の設計図達を拾い上げながら父が言う。

そう、僕は設計の腕を買われて父の会社にスカウトされているのだ。

だからさ中3の受験シーズンである今も、一つも勉強をせずひたすらに設計図を書いている。

 

「ふっふっふ、これだから君はダメなんよ。 珍妙な見た目! 変態的な発想! そこにこそ兵器の本質があるんよ!」

 

「ねえよ! そもそもISの武器は兵器じゃねえから、競技用だから!!」

 

I(インフィニット)S(・ストラトス)、無限の成層圏を意味するそれは、2013年に篠ノ之博士が単独で製作した宇宙空間での活動を前提としたマルチフォーム・スーツである。

しかし、そのISが有名になった原因である事件のために、本来のISによる宇宙開発は凍結しており現在は競技用に落ち着いている。

 

「なら競技用に使えばいいんよ! 相手もきっと意表を突かれるんよ!」

 

「確かに意表を突かれて呆れるだろうよ。」

 

父は溜息をつきながら呆れた。

その後に気を取り直し、飯ができたから早く下に来いと言って階段を下って行った。

この家は僕と父の二人暮らしで、父が料理をしている。

僕が一回作ったら紛争地域の飯のような味になったからね。

もうあんな味は沢山なんだ。

 

「おっと、下へ行かんと。」

 

早くせねば冷めてしまう。 父の料理を食べるために一階へ向かう僕の耳に、何か硬いものが床に落ちる音と、ガラスの割れるような音がした。

 

「どうしたんよ?」

 

扉を開けながら父に聞く。 本人は固まったままテレビを見ていた。

 

「ぎ、銀。 このニュースを見てくれ。」

 

父に促されるままにテレビを覗き込むと、なるほど確かに、父がこれほど驚く意味がわかった。

 

「男が… ISに!?」

 

テレビに映る中3の男子生徒。 そして画面には『男性IS操縦者』と書かれている。

なぜ僕らがこんなに驚いてるのかって?

あ、そうだね。 言ってなかった。

 

ISの説明に一つ付け加えるとしたら、このISというのは女性にしか動かずことができない。

ISが世界に広まってからただ一度の例外もなくISに男が乗ることはありえなかった。

 

目の前のテレビに映る男は、世界初の男性IS操縦者なのだ。



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#1

「ま、まじかよ…?」

 

学校の体育館で、僕はISに乗って周りを見下ろしていた--

 

〜数時間前〜

 

「へ? 男性IS適正検査?」

 

「ああ、そうだ。 うちのクラスは1、2時間目に体育館に行って検査をすることになる。 検査官の女性の指示にキッチリ従うこと。」

 

例のニュースから数日後、学校のHRで担任の先生が言った。

男性IS操縦者の出現のおかげで、ISに自分も乗れるのでは? 通っている男子諸君が騒ぎ出す。

一方僕は、この寒い季節に体育館で検査をすることに怒りを覚えていた。

 

1時間目の授業中に僕たちのクラスは2組で、1組から検査をしていたのですぐに体育館に呼ばれた。

このシーズンのアホみたいに寒い体育館は騒つく男子の声に満ちている。

 

「なあ、銀。 もしもISに乗れたらどうするよ?」

 

寒さを考えないために、ボーッとしていた僕に出席番号が一つ前の蓮が話しかけてくる。

 

「別にどうもしないんよ。 ただ、僕の書いた兵器たちを自分で使えるかもしれない、ってうことは嬉しいんよ。」

 

「そういやお前はお父さんの企業に就職だっけ? 羨ましいな… 受験無しの中卒で大手IS企業に就職って… 何者だお前。」

 

将来はISの整備士を目指し、さらに志望する就職先がうちの企業である蓮からしてみれば、やはり羨ましいのだろう。

 

「ただのコネなんよ。 それとこの頭脳。」

 

「ったく、天才殿は羨ましいねぇ… 俺も就職の時はお前のコネに頼むよ。 おっと、次は俺の番だわ。」

 

「ま、君が使える人員ならばその時はコネを使ってあげるんよ。 乗れるといいね。」

 

ジト目でこちらを見た後、名前を呼ばれた蓮はひらひらと手を振りながら先にISがあるであろう仕切りの中に入っていった。

 

「駄目だったわ。 でも貴重な体験にはなったぜ。」

 

仕切りの向こうから出てきた蓮はやれやれと首を振って、教室に帰って行った。

最初から動かせるとは思っていなかったのだろう。

さて、次は僕の番だ。

 

「次、えっと… ひゃく…もくぎ…さん?」

 

「あ、百目木(どうめき)っていうんよ。」

 

検査官の女性との初対面の恒例行事をすまし、ISに近づく。

 

「じゃあ、そのISに触って。」

 

「はい。」

 

検査官の女性に従い、ISに手を伸ばす。

なんでも、起動できる場合脳内に情報が流れ込んでくるらしい。

 

「へ?」

 

脳内に大量の情報が流れ込んでくる。

わかる、こいつの動かし方が。

 

「まさか… もう1人の男性IS操縦者が…」

 

そして、冒頭に続く…

 

♢♦︎♢

 

その後、本当に2人目の男性IS操縦者が現れることなどありえないと思っていたのかはわからないが、あまり迅速ではない対応の末に僕は黒い車とモノレールでIS学園まで連れて行かれた。

 

「まさか… 本当に動かしちまうとはな…」

 

この発言をしたのは父だ。 父は僕がISを動かしたと聞き、会社をほっぽり出して飛んできた。

いや、きちんと許可は取ったらしいが。

現在は2人で来賓室に通されている。

 

「まあ、乗るしかないんよ。 正直男性IS操縦者として1番安全なのがこの学園だしね。」

 

「入学の説明は受けたんだよな?」

 

「うん、さっき受けたんよ。」

 

先ほど、理事長室に通されて理事長から直々に入学の説明を受けたところだ。

その証拠に僕の手元には幾つかのパンフレットがある。

 

「それにしてももう1人の男子以外は全員女子か… 羨ましいぞこの野郎。」

 

「いや、息が詰まるに決まってるんよ… でも! 僕の兵器たちを自分で使うことができるんよ!」

 

「やっぱりお前はそれか!? ってか絶対作らせねえからな!?」

 

ふふ… そんな忠告を僕が聞くとでも?

操縦者権限でたくさん作ってやるんよ。

 

「つっても聞かねえよなぁ… 頼むからうちの若いのを使いすぎんなよ?」

 

「問題ないんよ。 僕の設計図は控えめに言って完璧、作業は一度だけで十分なんよ。」

 

「それとうちの企業を変態的な企業として宣伝するのはやめてくれ…」

 

「当たり前なんよ! あの変態兵器の数々を父さんらの企業の物にしてたまるかってんよ!」

 

「OK、それでいい。」

 

溜息をつきながら了承する父さんが気を取り直して、目線を上げて僕に言った。

 

「卒業式が終わったらすぐに寮に入るんだろ?」

 

「うん。 一年の寮はまだ先輩方が使ってるけど、空き部屋が一つあるらしいからそこに入るんよ。」

 

「にしてもお前が一人暮らしか…」

 

「うん? 9歳までは一人暮らしだったんよ?」

 

「あれは一人暮らしじゃねえ、一人旅だ。」

 

確かに、思い返せばあれは旅立ったなぁ…

 

「さて、帰るか。」

 

「うん。」

 

懐かしい記憶に思いを馳せていると、父さんが立ち上がって言った。

確かに、そろそろ夕飯時だ。

 

「晩御飯何にするんよ?」

 

「うーむ… 寿司行くか!」

 

「わーい! カウンターの方?」

 

「回転に決まってんだろタコ。」

 

来賓室の扉を開けて、廊下に出る。

近くの理事長室にいる理事長に帰る旨を伝えて、並んで廊下を歩く。

 

「それにしても馬鹿にでけえ学園だよな。」

 

「そりゃあ、世界中からIS乗りになりたい子たちが集まってくるから当たり前なんよ。」

 

このIS学園世界で唯一のIS操縦者育成高校である。

よって、世界中からIS操縦者を志望する女子たちが集まってくるのだ。

 

「にしても… 春からIS学園かぁ…」

 

予想していなかった高校生活、嫌なわけではないしどちらかというと楽しみだ。

なんてったって自分の兵器を自分で使えるんよ!!



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#2

時間が経つのは早いもので、僕は月辺りにISを動かしてから、既に卒業式を迎えていた。

ちなみにその間にISを作ったり、武器を作ったり、マスゴミの取材を全力で断ったりしていた。

今は卒業証書の授与で、番号順に名前を呼ばれるのを待っていた。

 

「手室蓮!」

 

「はい!」

 

僕の一つ前の番号である蓮が名前を呼ばれて、登壇する。

校長に一礼をして卒業証書を受け取り、そしてそのまま制服のポケットから自撮り棒とスマホを取りd…!?

 

予想外の蓮の行動に、体育館が一瞬ポカンとした後ドッ笑いが溢れた。

そのまま蓮は眉ひとつ動かすことなく校長と自撮りをし、ステージから降りてきて、僕の隣の席を目指す。

 

「百目木蓮!」

 

「あっ、はい。」

 

あまりにも驚いていたもので、一瞬遅れて返事をして立ち上がり歩き出す。

その途中、蓮とすれ違う時にそいつは渾身のドヤ顔とともにスマホの装着された自撮り棒を僕に渡した。

 

「ふんっ!」

 

「グッ!?」

 

自撮り棒を渡され、すれ違う瞬間蓮の脇腹に肘を入れる。

そのまま表情を崩さず登壇。

一礼して校長から卒業証書を受け取り… 溜息をつきながら自撮り棒を使って校長と自撮りをする。

 

そのまま周りの空気を気にせずにステージを降り、自分の椅子へ向かう。

すると僕の隣の席には先ほどのドヤ顔を保ったままの蓮がいた。

僕は脛に蹴りを入れながら自撮り棒を手渡し、椅子に腰を下ろす。

 

全くもってこのアホは…

いや、僕もアホなのか。

 

☆★☆

 

「いや〜、良かったぜ銀!」

 

「うるせえんよ。 てめえはなんでああいう事を普通にやるんよ。」

 

「だって… ウケが狙えるだろ?」

 

「死んじまえ。」

 

卒業記念品を受け取り、僕は蓮と一緒に帰路についていた。

ふざけた会話をしていたのに、蓮がいきなり真面目な顔になっていう。

 

「だが… この道をお前と歩くのも最後か…」

 

「何いきなりシリアス始めてるんよ。 キャラに全く似合ってないんよ。」

 

「うるせえ! 俺だってシリアスになる時ぐらいあるわ!」

 

口ではこう言ったが、実は結構寂しかったりする。

こいつはアホだが僕が日本に来て1番最初に出来た友達なのだ。

 

「まあ、今生の別れってわけでもないんよ。」

 

「だがIS学園は全寮制だろ? 会う機会も少なくなるなぁ…」

 

「まあ、休みにでも会いにくるんよ。」

 

「おう、いつでも来いや。 …じゃあな。」

 

「うん、また。」

 

僕の家の前で、蓮に手を振って別れる。

さて、僕はこれからIS学園の寮に行くのだ。

ちょっとは休ませて欲しいものだ。

 

「おかえり。」

 

家の扉を開けると、父の声が聞こえてきた。

僕の卒業式を見に来るために有給を取ってきたらしい。

そのまま靴を脱いで家に上がると、父さんがソファーでお酒を飲んでいた。

 

「ただいま。 こんな時間からお酒?」

 

「ああ、今日は息子の晴れ舞台だったからな。 それにしても今日からIS学園に行くのか…」

 

「うん、今までありがとうなんよ。 まあ、全寮制でも休みには帰ってこれるんよ。」

 

「もう荷物は業者の人たちが来て運んでいったぞ。」

 

「じゃあ後はIS学園に行くだけなんよ。」

 

「気をつけてな。」

 

「わかってる。 もう子供じゃないんよ。」

 

「行ってらっしゃい。」

 

「…行ってきます。」

 

財布を持って、もう一度靴を履き、外に出る。

少し歩いて振り返って自分の家を見る。

 

二人暮らしには少し大きい家。

僕が8歳の頃に日本に来てからずっと住んでいた家だ。

 

「まあ、こう言うのはキャラじゃないんよ。 それに何度でもこれるんよ。」

 

そう独り言を言い、もう一度回れ右をして歩き出す。

今日からIS学園の寮に行くのだ。

 

IS学園は本州からほんの少し離れた人口の島にあり、そこに行く経路はモノレール以外ない。

まずモノレールの乗り場に行くために電車に乗る。

だがその前に、昼食だ。 それなりに長い時間電車に揺られるので先に昼食を食べておかなければお腹が空く。

 

「ムックでいいんよ。」

 

たまたま目に映ったムクドナルド、通称ムックに入って注文の列に並ぶ。

平日の正午ということもあって結構空いている。

何を頼むから考えながら列に並んでいると、ヒソヒソと話し声が聞こえた。

 

「あれ、2人目のIS操縦者の子じゃない?」

 

「本当だ〜。」

 

「男がISに乗るなんて生意気な…」

 

女性の僕らへの認識は大きく二つに別れる。

ISに乗ることができる選ばれたやつか、男なのにISに乗る生意気なやつ。

そもそも現代はISの存在により、女尊男卑の風潮が広がっている。

その中で、女尊男卑の思想に染まったような人が後者の認識をとるわけだ。

 

まあ、報道されてから何度もあったことだし今更気にも留めない。

注文したハンバーガーとポテトを急いで食べて、店の外に出る。

まだ注目を集めすぎるのは慣れていないのだ。

早くIS学園に行こう、と駅までの道を歩いていると、見知った顔が見えた。

 

「や、篠ノ之さん。」

 

「む、百目木か。」

 

同じクラスの女子の篠ノ之箒、中3の時に転向してきた子で、剣道で全国優勝を果たす猛者だ。

そして幼馴染… もう1人のIS操縦者である織斑君に恋をしているらしい。

 

「そういえば百目木は今日からIS学園寮に行くのだったな。」

 

「うん、そうなんよ。 篠ノ之さんもIS学園でしょ? 幼馴染君との仲が縮まると良いね。」

 

「な、何を言っている!? 私はあいつのことなど…」

 

幼馴染君の名前が出たらすぐこの反応だ。

バレバレだよ。

 

「じゃあ僕はこれで、早く行かないと電車に間に合わないんよ。」

 

「そうか。 じゃあまたIS学園で会おう。」

 

「うん、またね。」

 

篠ノ之さんに別れを告げて、駅まで歩く。

駅はかなり空いていて、僕の他には数人ほどしか人がいなかった。

やってきた列車にもほとんど人は乗っていないので、席に座ることができた。

 

「ふう。」

 

一息つき、鞄の中から本を取り出して読み始める。

幸運なことにここからIS学園のモノレール乗り場までは乗り換えなしで行けるのだ。

 

『次の駅はIS学園行きモノレール乗り場、次の駅はIS学園行きモノレール乗り場。』

 

ボーッと読書に熱中していたら、到着を告げるアナウンスが聞こえてきた。

本を鞄の中にしまい、首をコキコキと鳴らして電車の外に出る。

モノレールが来るまで10分ほど時間があるので、また本を読んでいることにしよう。



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