ケロちゃんのヒーローアカデミア! (諏訪子大好き)
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修正

 

 

 皆、こんばんは。私は蛙吹梅雨の妹に転生したの。つまり、ケロちゃんだよ。ケロケロ。死んだ内容は不明で記憶も曖昧。取り敢えず、男だったか女だったかもわからないし、名前もわからない。でも代わりにオタクだったのか、ゲームとかの知識はある。

 さて、この世界は僕のヒーローアカデミアはとんでもない超能力が多い。"個性"が全てを決めるとても危険な世界なんだよね。私に個性があるのかはわからない。でも、私の名前が諏訪子だった。諏訪子は諏訪湖から取ったみたい。私が産まれたのが祖母が住んでいた長野だったから。諏訪子といえばケロちゃん。東方プロジェクトにでてくる土地神様だ。という訳で、四歳になった。

 

「ごめんね。諏訪子に"個性"を持って産んであげられなくて……」

 

 お母さんが泣きながら、私を抱きしめてくれる。でも、お姉ちゃんはちゃんと蛙の"個性"を持っていた。お祝いムードだった突き付けられた現実は、私の中で全てが変わった。前世の知識があり、言葉も知識もあった私はもてはやされていた。でも、この日からは違った。

 

「こいつ"無個性"の癖に生意気なんだよ!」

「せっかくだから、"個性"の実験台にしようぜ」

「いいな、それ」

「じゃあ……」

 

 小学校に上がると、"個性"はなくても勉強はできた。歴史以外は高得点をキープしていたけれど、それがいけなかったのか、学校で殴られたり、ノートや道具を捨てられたりしていた。

しまいには"個性"の実験台にされて火達磨にされた。幸い、駆け付けてくれた人に火は消火され、治癒の"個性"を持つ人によってある程度は治してもらった。

それでも、顔の半分が火傷で覆われ、瞳もなくなって片目が見えなくなった。私にこんなことをした人達はどうなったのかは知らない。それでも、私はそれ以来、幻痛に襲われるようになった。

 

 

 退院した後は人が怖くなって、長野にいるおばあちゃんの所へと引っ越しさせられた。前のところじゃ怖くて外にもでれなかった。お母さん達も一緒に来てくれることになっていたけれど、私が断った。お姉ちゃんの為にも私が一緒にいない方がいい。だから、頑張って説得しておばあちゃんのところで二人っきりで住むことになった。

 

「諏訪子、お散歩に出かけましょうか」

「……うん……」

 

 おばあちゃんに連れられていったのは四つの諏訪大社で、そこでお参りをするのが日課らしい。私もそれに付き合ってお参りするようになった。どうせすることもないし、毎日諏訪大社にいったり、湖にいったりしていたら、諏訪子の"個性"が目覚めるかも知れない。

 

 日課として山や湖で過ごす。小学校も行かずにただ、ひたすら神事の真似事や昔読んだ漫画やアニメの修行を繰り返す。

 

「あ~う~諏訪子って名前だけじゃやっぱりだめかな~」

 

 服装も諏訪子にしているのだけど、やっぱり駄目みたい。髪の毛も染めたんだけど……そもそも東方projectの諏訪子は火傷なんてしていないし。やっぱり、無理かな……もう中学3年生だし、二度目の受験だ。このままだと関係ないけれど。

 お姉ちゃんは蛙の"個性"を使って、私のような弱い人を助けるヒーローになるって決めたみたい。それで、国立名門校雄英高校を志望したらしい。

 本当に"個性"の有る無しがこの世の全てだよね。あるとないとじゃ、就職率も全然違う。この世は"無個性"にとって夢も希望もない。

 

「ケロケロ……決めた……」

 

 神事を行う。お母さんやお父さん、お姉ちゃんとさつき、おばあちゃんには悪いけれどやってしまおう。どうせ、これは私にとって二度目でもう詰んでいるから構わない。信仰することでどうにか生きてこられたけれど、やっぱりもう嫌だ。薬を飲んでも碌に寝れないし、幻痛で飛び起きてしまう。

 手紙を書いてから柳の木を削って串を作る。作ってから貯めていたお小遣いで狩猟目的で買っておいたクロスボウに仕掛けるそれから夜を待って、諏訪大社四社の中心。諏訪湖にボートに乗って移動する。ボートは勝手に拝借して、お金はおいておいた。

 中心に移動してから、冷たい水の中に飛び込んで自分に向けて放つ。串は私の身体に突き刺さって水に血が溢れて、口の中の空気と共に気泡がでていく。

 諏訪子になりたかったな……

 そんなことを思っていると、苦しくなってくる。呼吸ができずにどんどん水が入ってくるし、胸から血が大量に流れでてくる。幸い、痛みには慣れているから大丈夫。ただ、やっぱり呼吸できないのはしんどく、もがき苦しみ意識が暗くなっていく。

 

『ケロケロ』

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ、退屈なんだよー」

「では、なにか面白いことが起きるように願いましょう」

「そんなことがおこればいいけどねーって、本当に起こったよ。流石は私の巫女だね。ちょっと遊びに行ってくるね」

「はい。いってらっしゃいませ」

 

 

 

 

 

 ケロケロという言葉が聞こえ、目を開けるとそこは真っ暗な世界だった。目の前には白い壁があった。

 

「こんばんは。この時代に珍しい愚かな我が信徒よ」

 

 白い壁の上から神々しい声が聞こえる。上を向くと白い壁……白い石のような大蛇の頭に乗った小さな女の子。私と同じ格好をしていた。でも、顔は少し違う。なにより神々しい。

 

「しかし、軽く見たけれど面白いね」

「っ!?」

 

 いつの間にか、背後にいて私の肩に頭を乗せていた。

 

「洩矢神の中でも私に直接、魂を捧げてくれたんだ。お願いごとを聞いてあげてもいいよ。言ってみなよ」

 

 声をだそうとするけれど、でない。存在としての格が違いすぎる。弱体化していても、これなんだから諏訪子様は凄い。

 

「ねぇ、ねぇ、どうしたの? 叶えて欲しくないの?」

 

 ニコリと笑いながら、あえて感じる重圧があがってくる。叶える気なんてないのかも知れない。でも、そんなのいやだ。会えただけで幸せかも知れないけれど、どうせなら、叶えて欲しい。

 

「……わ……は……」

「ふふふ、返答には気を付けるんだよ? 祟っちゃうからね」

「……なり……たい……」

「ん?」

 

 全部の力を込めて、魂の底から発生する。

 

「あなたになりたい!」

「私っ!? えっ、ええええ!?」

 

 おどろいた諏訪子様はあわててキョロキョロしている。それから、自分を指さす。私は必死に頷く。

 

「あーうー……まって、力が欲しいとかじゃなくて?」

 

必死に頷く。

 

「いやいや、こういう時って普通は力を貰うものだよね? 私になりたいとか、それって自分は消えるってことだよ? 神様と人間の魂じゃ、その格が違いすぎるし」

 

 同一化するってことは、私が諏訪子様になれるのだから問題ないよね。うん、なんの問題もない。

 

「ちょっとタンマ! 流石にそれは考えさせてね」

 

 3分で考えて支度してね

 

「なんで天空の城っ!? えっと、えっと……接続場所は異世界か。あれ、でも案外いいかも……」

 

 頭の帽子を掴んで目深にかぶって必死に考えている。

 

「よし、願いを叶えてあげるって言ったし、叶えてあげる。でも、普通の方法じゃ駄目だから、覚悟はいい?」

 

 もちろんです。諏訪子様になれるのなら、なんだってする。

 

「よし。じゃあ、その死んだ身体じゃ無理だからまずは作り直そうか。私を取り込んでもらおう。痛いけど耐えるんだよ」

 

 私の身体の中に無数のミシャグジさまが入ってくる。内側から突き破られるような感覚が何度もして、激痛が走る。

 

「姿はほぼ私と同じだけど髪の毛もかえておこうか。"個性"だったけ。そっちは坤を創造する程度の能力をあげよう」

 

 

 

 

 

 数時間にも及ぶ激痛が終わり、私は改めて両目で回りをみた。目の前にはニコニコしている諏訪子様。

 

「諏訪子でいいよ。力を使うと君もどんどん私になる訳だしね。さて、その身体だけど身体のほとんどはまだ人間だから、鍛えないといけないよ。私の力に身体がついてこれないだろうし」

「了解だよ。それで、どうするの?」

「丁度いい見本が目の前にいるんだよ? だったら、やることは一つだよー。格言を一つあげよう、ケロちゃん風雨に負けず、だからね」

「はい!」

「では、戦おうか」

 

 いつの間にか諏訪子が懐に現れて吹き飛ばされる。果てがないのか、とても長い距離を吹き飛ばされた。更にどんどん追撃がとんでくる。東方ゲームで一般的な弾幕だ。とても綺麗でつい見惚れてしまう。

 

「動かないと死ぬほど痛いからね」

「わわっ」

 

 慌て弾幕を避けるけれど、回避が間に合わずに片腕が吹き飛んだ。本来は弾幕ゲームなら、ここまでダメージを受けない。でも、今回は殺傷出来る威力の弾幕を使っているみたいだね。

 腕がなくなっても、あまり痛くない。それに腕をみると傷口からミシャグジさまが生えてきて、腕の形になって固定化される。次の瞬間には腕が元に戻っていた。

 

「さあ、どんどんいくよ。最低限、力を使えるようになって貰わないと信仰を集められないからね」

「信仰って集めないと力が出ないんだよね」

「そうだよ。まあ、その身体はまだ人間だから大丈夫だよ。それで、ヒーローとヴィランだっけ。どっちも信仰を集めるのに有用そうだから、頑張ってね。頑張れば頑張るほど、私に近付いて、私がそっちの世界を楽しめるようになるから」

「任せてー」

「じゃあ、次は弾幕を撃てるようにしようか。捕獲にも便利そうだし」

 

 これから始まる地獄の特訓。頑張って動けるようにならないとね。

 

 

 

 

 一年後、睡眠時間が基本的に一分な地獄の特訓がいったん終わって私は現実世界に戻ってきた。水面から浮上して回りをみると、ここはどうやら諏訪湖みたい。私は水面の上に立っている。

 

「さて、どうしようかな? 取り敢えず、かっえろ」

 

 水面をスキップしておばあちゃんの家へと戻っていく。岸に到着すると貸しボート屋が見えた。そこには貼り紙がしてあって、"蛙吹諏訪子を探しています"とあった……。そりゃ、探してるよね。もう一年だもん。

 

「か~えろ、かえろ、おうちへかえろっと」

 

 歌いながら走る。運動能力も高くなっているこの身体なら、車並みの速度だって簡単にだせるんだよね。

 

 

 

 山にある家の前に戻り、こっそりと塀の外から家の中をみてみる。すると、扉が開いておばあちゃんとお母さん、お姉ちゃんがでてきた。

 

「梅雨ちゃん、受験なのに大丈夫なの?」

「大丈夫よ。諏訪子を探すことの方が大事だから。おばあちゃんは休んでいたら?」

「そうですよ。後は私達がやっておきますから」

 

 その手には沢山のプリントを持っている。なんだか、三人の姿をみると涙が流れてきたよ。どうやら、思っていたよりも充実していたのかも。

 

「あ」

 

 帽子を目深に被っていると、いつの間にかお姉ちゃんがこちら気付いていた。

 

「えっと、えっと」

 

 お姉ちゃんの舌が私に巻き付いていた。直に引き寄せられて、抱きしめられる。

 

「やっと見つけたわ。心配させて、もう逃がさないから」

「あーうー」

 

 そのまま、お姉ちゃんに連れられてお母さん達の所へと連れていかれて一杯泣かれて、抱きしめられた。

 

「ああ、ありがとうございます。洩矢様」

「おばあちゃん、毎日お祈りしてたのよ」

「境内でプリントを配ったりね」

「ありがとう」

 

 取り敢えず、家に入ってからこの一年のことを話す。といっても、修行を行って"個性"を発現したことを伝える。その"個性"を使って身体を治したこと、それに副作用で髪の毛が金色の地毛になったことも伝えた。

 

「つまり、"個性"を得るために一年間もいなくなっていたのね」

「この馬鹿娘。どれだけ心配したと……」

「ごめんなさい」

「それで、"個性"はどんなの?」

「えっとね~これ!」

 

 手を叩いてミシャグジさまを呼び出す。白い石のような蛇。

 

「呼び出す"個性"なの?」

「違うよ? えっとね坤を創造する程度の"個性"だよ。内容は大地を創造し、操ることができるの」

「なにそれ、すごい」

「まだそんな大規模にはできないんだけどねー。一応、生命の創造もできるよ。まだこの子達限定だよ~」

「私的には怖いけれど、いい"個性"ね」

「ありがとう、お姉ちゃん」

 

 お姉ちゃん達はミシャグジさまを撫でていく。

 

「この子達の名前は?」

「ミシャグジさまだよ」

「す、諏訪子? その名前は……」

「大丈夫、大丈夫。祟りも標準装備だから」

「危険ね。凄く危険よ」

「そう……諏訪子は神隠しにあっていたのね……」

 

 おばあちゃんの呟きがある意味では一番正しいと思うよ。この身も魂も全てミシャグジさまのものであり、それは同一存在である諏訪子様のもの。そして、私でもある。お祈りしないとね。

 

「そうだ。お姉ちゃん、私もヒーローになってみたい。別にヴィランでもいいけど」

「「「やめなさい」」」

 

 お願いだからヴィランは止めてと言われちゃったよ。祟りの能力も考えたら……やっぱり、ヴィランも似合うんだよね。でも、ヒーローでもヴィランでもいいって諏訪子様も言ってたけれど、私としてはお母さん達に迷惑をかけたくないからヒーローになろうと思う。

 

「梅雨ちゃん。諏訪子を頼むわね」

「ケロケロ。絶対にヒーローにしてみせるわ」

「わっふ~」

「という訳でこれから試験勉強よ。大丈夫、間に合わせるわ」

「徹夜は慣れてるから多分平気だよ」

 

 頑張って試験合格しないとね。でも、その前に警察とかにいかないといけないらしい。面倒だけど仕方ないよね。私としての残された時間は少ないけれど、この暖かな家族は大切にしないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 名前:蛙吹諏訪子

 種族:半人半神(侵蝕度2%)

 容姿:東方の洩矢諏訪子

 個性:坤を創造する程度の"個性"(大地を創造し、操る)

 使用可能スペルカード。

 開宴「二拝二拍一拝」

 土着神「手長足長さま」

 神具「洩矢の鉄の輪」

 弱点:炎

 備考:身体の半分はミシャグジさまでできているため、神力を打ち出す弾幕や飛行も可能。

 

 

 

 



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修正

 

 

 警察署などでのやっかいごとを終え、試験勉強をすることになったよ。これでまた睡眠時間がなくなるけど、大丈夫。毎日ノルマとして10冊以上の参考書をこなして、禊とお祈りをこなしていく。

 学校にいっておらず、睡眠時間が短くても問題ないからこそできる手段。といっても、流石に冬眠みたいに一気に寝る必要はあるのだけど。

 そんな生活を半年間行って、まるでパチュリーのように本を読んで勉強した。もともと高校生卒業程度の知識はあるので、法律や社会などを覚えるだけでよかった。

 という訳で、諏訪大社で御守りを買ってお祈りしてから雄英へと向かう。校門の前でお姉ちゃんを待っていると、大勢の受験者が門を潜って入っていく。その中で緑色の髪の男の子、主人公の緑谷出久がこけそうになって、女の子麗日お茶子に助けられていた。

 

「諏訪子、待たせちゃったようね」

「そんなことないよ。それより調子はどうなの?」

「問題ないわ。諏訪子は?」

「私も大丈夫だと思うよ」

「そう。お互い、頑張りましょう」

「うん。受かってるといいね~」

「ええ」

 

 二人で手を繋いで一緒に歩いていく。会場に入り、席についていると変な髪形のボイスヒーロー、プレゼント・マイクさん。

 

「受験生のリスナー。今日は俺のライブにようこそ!」

「けろけろ、誰もライブになんかきてないよねー」

「しっ。いっちゃ駄目よ」

「こいつはしびぃー。なら、受験生のリスナーにさくっと実技試験についてプレゼンするぜ。アーユレディー!」

「ゴーッ!」

 

 私が叫ぶと、一斉に皆がこちらをみた。それをケラケラと笑いながら、お腹を押さえる。

 

「諏訪子、真面目にしなさい」

「だって、可愛そうなんだもん」

「ああ、そっちなのね」

「だって滑稽で哀れだよ?」

「そうね。時と場所を考えなさいとは思うわ」

 

 なんか、マイクが微妙な表情をしたけど諏訪子ちゃんは気にしない。諏訪子様に面白い映像をみせないといけないし。

 

「こほん。各自、プレゼン後は渡されている受験票に書かれている実技試験の会場に向かってくれよな。OK?」

 

 受験票をみると、お姉ちゃんと番号は違うし会場も違った。

 

「どうやら、兄妹も離したようね。おそらく、同じ学校も離したのでしょうね」

「完全な個人戦だね。楽しみだね~」

「私はあまり、戦闘が得意じゃないのだけれど」

「そう? なんならミシャグジさまをつけてあげようか?」

「いらないわ。それは私の力じゃないから」

「そっかー残念~」

「会場には仮想ヴィランを配置してある。それぞれ1ポイントから3ポイントまでのヴィランで、倒すごとに得点が入る仕組みだ」

 

 簡単にいえば、この試験は仮想ヴィランを倒せばいいんだね。後は他人への攻撃は原点なんだ。残念だね。さて眼鏡君が質問しているけど、正直どうでもいいかな。0ポイントなら相手をする必要もないかも。

 

「諏訪子、気付いている?」

「なにが~?」

「この試験の意味よ。これ、ポイントだけじゃないわね。おそらく、人助けもポイントになるわよ」

「ああ、レスキューヒーローがいるんだから、当然だよね。そういう人もいるんだから」

「ええ、そうよ。私はそっちをメインに目指すわ。諏訪子はどうするの?」

「じゃあ、私は気分次第かな?」

「そう。くれぐれも油断しないようにね。あなたの"個性"は……」

「わかってるよー」

「ならいいわ。お互いに頑張りましょう」

「うん。またねー」

 

 お姉ちゃんと別れてバスで移動する。私の参加場所はA会場。という訳で、扉の前で皆が集まっている。誰がいるかを確認すると、嫌いな人がいた。

 ツンツン頭の嫌な奴。爆轟ってやつ。こいつの"個性"ってハンターハンターのリトルフラワーの人を思い出すし、性格もやだー。

 とりあえず、試験の前にお祈りをしようかな。両手を重ねて諏訪子様にお祈りをしていく。

 お祈りをしていると、扉が開いていく。だから、私は速攻で走って大きな門の上に飛び乗る。

 

「うぉ!? 抜け駆けか!」

「やろう!」

 

 門の上には監視のヒーローがいる。そこには宇宙服を着た13号先生がいた。

 

「実戦にスタートの合図はありませんよ」

 

 私は先生の横に座って、見学する。

 

「おや、いかないのですか? 時間はあまりありませんよ」

「うん。だって、呼び出すのに時間がかかるからね~。それに他の人を巻き込んだら駄目なんだよね」

「ええ、そうですね」

「それより、ブラックホールの"個性"をみせてほしいな~なんて」

「駄目です。今は試験中です」

「残念だね~」

 

 街中の至るところで爆発がおき、爆弾魔君が暴れている。

 

「ところで、残り時間は?」

「残り六分ですね」

「じゃあ、もういいかな」

 

 門の上から立ち上がって、くるりと両手をひろげて回る。

 

「今からでは間に合いませんよ?」

「一人ならね。おいで、ミシャグジさま。攻撃されていないヴィランを祟り、負傷者を救助して」

 

 複数のビルを分解して大量のミシャグジさまを呼び出す代償にしていく。

 

「白い石の蛇ですか……演習場全体に出現とは……ためていた理由はこれですか」

「そう。纏めて一掃だよ」

 

 この子達は私の分体でもあるけれど、一応"個性"で生み出しているので違反はないよね?

 

「他の受験生に時間を与えていたのは他の人にもポイントをあげる為ですか」

「否定はしないよ。っと、私もいくね。じゃあね、先生」

「ええ、いってらっしゃい」

 

 門から飛び降りてビルからビルへと飛び移って移動する。奥の方にいくとミシャグジさま達が機械ヴィランに絡みついたり、噛み付いて倒している。私はギミックである巨大なヴィランを探す。

 

「てめぇっ!? その蛇の親玉か! よくも俺様の獲物をとりやがったな!」

「え~知らないよ~。攻撃しているのは除外しているから、早く倒さないほうがわるいんだよ~ケロケロ~」

「ふざけんな餓鬼が!」

「餓鬼って、同い年なんだけど」

「ちんちくりんがなにを言ってやがる!」

「決めた。天罰を下してあげる」

「はっ、やれるもんなら……」

「と、思ったけど後まわしでいいかな。雑魚の相手はしてられないし」

「なんだと!?」

 

 目的ははなっから、0ポイントのヴィランだしこんなことで天罰なんて流石に諏訪子様としては駄目だよね。ミシャグジさまから連絡がきたので、そちらへ急行する。巨大ヴィランに襲われている人の間に入って、ヴィランの腕を作った鉄の輪で受け止める。

 

「神具・洩矢の鉄の輪」

 

 無数の赤く高速回転する輪が生成されて、巨大ヴィランの腕を輪投げやフラフープみたいに投げて輪切りにしていく。

 

「お兄さん達、大丈夫かな?」

「ありがとう」

「助かったよ、お嬢ちゃん」

「試験頑張ってね~」

 

 0ポイントは倒したので、後は災害救助でもして時間を潰そう。どうせ敵は全滅だろうしね。

 

 

 

 

 



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修正

かなり修正しています。具体的に最初から参加しています。


 

 

 根津

 

 

 

「さて、会場の評価を行おう。まず、気になった生徒を13号君に報告してもらおう」

「はい。ボクが気になったのは2233番ですね」

「2233は爆豪少年か」

「彼の"個性"は爆破だね。ヴィランポイントのみで54点をだしている」

「レスキューポイントがゼロなのは頂けないぜ」

「それはこれからだろう」

「まあ、彼は合格でいいだろう」

「はい。ぼくもそれでいいかと」

 

 他の先生達も納得してくれたので、彼は合格とする。

 

「で、次だね。あの子……受験番号3042番だ」

「3042番。名前は蛙吹諏訪子。14歳にしては身長はかなり低いようね」

「彼女の提出されている"個性"は坤を創造する程度と記載されている」

「坤ってなんだ?」

「八卦で地を表す言葉だよ。そして、この読み方からして地を創造する程度の"個性"ということになるね。程度かはわからないけれど」

「今回入学する八百万百君と同じ系統の能力だね」

 

 八百万百は分子構造まで把握した生物以外の物ならなんでも生成できる強力な"個性"創造を持っている。頭も運動能力もいいから、特待生として入学させたんだ。そんな彼女と同系統の能力を持っているのが、この蛙吹諏訪子という少女だ。

 

「しかし、彼女よりもレベルは高いようですよ。何せ、生命を創造しています」

「この石でできた白い蛇達か」

「はい。彼女はそれをミシャグジさまと呼んで使役していました」

「ミシャグジさまってなんだ? 蛇の名前か?」

「神だ。一部地方で信仰されている災神の名前だ」

「おいおい、神ってオカルトかよ」

「そうともいえないんだよね。これをみてくれ」

 

 ミシャグジさまと呼ばれる蛇達に壊された仮想ヴィランの映像をみせる。その身体の一部は崩れ去って崩壊している。少し巻き戻せば噛みつかれた瞬間から崩壊が始まっているのがわかる。

 

「噛まれれば終わりか」

「少なくともろくなことにはならないだろうね。また、この蛇が通ったあとだけど……何故か植物の成長が異常な速度で行われている」

「それについても調べておいたよ。ここ半年間で長野県の農業や林業などが豊作になっている。例年と比べて約三倍の量が半年間で収穫されている」

 

 居るだけで回りに祝福を与え、敵対者には災いを与える。これが彼女が"個性"で生み出したミシャグジさまと呼ばれる蛇の力だね。

 

「ってことは、だ。こいつはひょっとしたら人間も作れるのか?」

「生命の創造が可能ということだから、おそらく可能なのでしょうね」

「現時点で可能かはわかりませんが、少なくとも彼女がこのミシャグジさまと呼ばれる蛇を数百匹単位で生み出していることはわかっています。また、同時に彼女が移動してきたルートを調べたらいいかも知れませんね」

「調べさせよう。おそらく、花咲じいさんみたいなことになっているだろうが……」

「育て方を間違えたら危ない餓鬼の一人だな」

「そうだね。この赤色で高速回転する鉄の輪だって、かなり強力な武器だ。これも"個性"で作りだしているんだろうが……相手をするのは大変そうだ」

「オールマイトだったら倒せますか?」

「私なら、相澤君と組んで即座に制圧するのが一番かな。まあ、これだけレスキューをしているのだから、性格は問題ないかも知れないが……」

「いえ、それがそうともいえません」

「13号?」

 

 彼女の性格に問題があるのはいただけない。

 

「力に奢っているのか、傲慢です。まず、彼女は最初っから力をだしていませんでした。ハンデとして他の受験生に時間を与えています」

「別にいいんじゃないか?」

「優しさとも受け取れるしな」

「彼女はレスキューポイントのことを知っていたようです。蛇達に救助も命令していました。そのことから、わざと最初に全てを倒すのではなく、傷を負って受験生が疲弊するのを待っていた可能性もあります」

「だからこそ、このポイントか」

 

 蛙吹諏訪子のポイントは235ポイント。会場には仮想ヴィランが全体で250ポイント。レスキューポイントが250ポイント。合計で500ポイント分、用意されていた。一人で全体の半分近くも稼ぐのは凄いことだよね。

 

「それにビルを倒壊させて偽装こそしてありますが、映像を解析させた結果。あの蛇達は既に作り出されていたものを自分の身体や地面の中に潜ませていたことがわかっています」

 

 13号君から提出されたデータを見る限り、地中に無数の特殊な存在が彼女と共に移動していることがわかる。

 

「今回の試験は持ち込みオッケーだから問題ないだろ」

「そうだね。でも、これは別の問題も含んでいる。まあ、いまはいいだろう。それよりも、彼女の合否だよ。もっとも、彼女を不合格にはしないけれど」

 

 もし、彼女を不合格にしてしまえば……恐ろしいことになる可能性がある。彼女がヴィランになるという可能性だ。そうなれば我々ヒーローは窮地に陥ることになるだろう。

彼女の可能性、それは大地に蛇を仕込ませることができるということ。雄英の地下だからこそ、観測できたけれどこれが町中ならこうはいかない。

予算を湯水のように使えば観測装置をとりつけることもできるだろうけれど、そんなことはできないだろう。そうなれば……彼女はほぼ自由となり、日本中の食料を腐らせたりしてしまうかもしれない。そうはならないようにボク達が導かなければならない。

 

「では合格ですね。筆記の方は……まあ、かなり点数が低いですがギリギリ合格でしょう。彼女の姉である蛙吹梅雨は筆記はほぼ満点。ヴィランポイント33ポイント。レスキューポイントが64ポイントです」

「うん。彼女もレスキューポイントがあることをわかっていたようだ。こちらから流れたのかも知れないね。まあ、彼女も合格だ」

「では、次に緑谷出久君だね」

 

 今回は色々と面白い子達が多そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん、雄英から合格通知が届いたよ~」

「そう。一緒にみましょう。どうせ諏訪子は合格でしょうけれど」

「お姉ちゃんもだよ。お姉ちゃんが不合格なら、祟ってやるんだから」

「やめなさい」

 

 手紙を開けると投影装置が入っていて、宇宙服を着た13号先生が映し出された。

 

『こんばんは。雄英高校の先生である13号です。今日は蛙吹姉妹のお二人に合否をお伝えします』

「待ってましたー!」

「それで、結果はどうなの?」

『お二人は合格です。おめでとうございます』

「やったね、お姉ちゃん! おめでとう!」

「ええ、おめでとう諏訪子」

「お母さんに伝えてくるねー」

 

 私はすぐに出て行く。後はお姉ちゃんに任せておけばいいしね。

 

「おかーさん、おかーさん、二人共受かったよ」

「あら、じゃあ今日はお祝いね。おばあちゃんもこっちに来るらしいし、皆でお祝いしましょう」

「飾り付けをするね」

「お願いね」

 

 頑張って楽しもう。私としての残された時間を頑張って生きないと。大切に思える家族と一緒の時間をね。

 

 

 

 

 



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修正

 

 

 

 今、私が住んでいるのは愛知県。お母さんの家で、ここから学校に通うことになっている。雄英高校に無事に合格した私は午前中にお祈りしてからお姉ちゃんと一緒に勉強して、昼からは身体を鍛えるためにランニング。どうせならと、静岡の方に走って探検している。

 だって、主人公君にあえるかもしれないし? もっとも、ここ数日は会えなかったんだけど、合格発表から二日後くらいに夜にあっていたから、そろそろだと思う。そんなわけで今日も頑張っていこ~。

 数時間かけて多古場海浜公園に到着したころには流石にへとへとだよ。でも、ここがあの場所かと思うと凄いよね。今は綺麗だけれど、前は大量のごみに埋め尽くされていたんだよ。

 さて、時刻はお昼の三時。帰りは遅くなるけれど問題ない。お母さん達には連絡をいれてあるし。

 砂浜に降りて周りを見渡すと、デートしている人が多い。どうせだから海の中で訓練をしていこうと思う。服のまま海に入って、洩矢の鉄の輪を呼び出して身体に装着。海の中で首だけをだしてフラフープみたいに腰で回しながら正拳突きを放つ。

 

「抵抗がひどっ、わぷっ!」

 

 波が酷い。というか、海水が重い。鉄の輪も重い。思い付いたからやってみたけれど、これ負荷が半端ない。そのまま波に飲まれて海に沈んでいく。

 

 お~綺麗綺麗。水中から差し込む光が幻想的でなおよしだね。このまま漂うのもいいかもしれない。そんなことを思っていたら、誰かが飛び込んできた。顔を向けると必死にこちらへと泳いでくる緑の髪の毛をした少年。

 

 けろけろ

 

 すぐにこちらに寄ってきて、私の腕を掴んで引っ張り上げようとする。けれど、全然あがらない。まあ、洩矢の鉄の輪が重いよね。

 

「ごほぉっ⁉」

 

 流石は主人公。この状態でも諦めていない。というか、なにスマッシュを放とうとしているのかな? そんなことをしたら大変なことになるんだよ? 緑谷君がスマッシュを放ち、海水を吹き飛ばした。

 

「はぁっ、はぁっ……いっ、今のうちに……」

 

 右腕が折れて腫れ上がっている。それでも、私を抱き上げて沖へと走っていく。カッコイイね。でもさ、ここは海なんだよ。

 

「あーうー海水がくるよ~」

「っ!? くそっ! こうなったら……」

 

 足に力を入れようとするけれど、足元にあったなまこに滑ってこけてしまった。そのまま押し寄せるように戻ってきた波に飲まれる。すぐに次のスマッシュを打とうとするけれど、激しい渦に巻き込まれて無茶苦茶にかき回される。それによって、痛みによって呼吸がまともにできなかったみたいで、口から大量の泡をだしてもがき出した。

 様子をみていたけれど、これはまずい。なんの問題もなかったのだけど、助けないと色々とまずい。取り敢えず、彼を抱き寄せる。

 

「!?!?!?!?!?」

 

 顔を真っ赤にして動かなくなっちゃった。仕方ないから、ミシャグジさまを呼び出して海中から押し上げてもらう。その後、砂浜へと飛んで緑谷君を寝かせる。彼は気絶したようなので一度人工呼吸が必要かな? 取り敢えず、ミシャグジさまは帰ってもらう。

 

「げふぉっ、げふぉっ!?」

 

 頭を持ち上げて、人工呼吸をしようと口を近付けると彼が目覚めた。

 

「ケロケロ~大丈夫?」

「はっ、はいっ! 僕は大丈夫です!」

 

 ずざざざと顔を真っ赤にして私から距離を取りながら、手を無茶苦茶に振り回す緑谷君。

 

「けろけろ。落ち着きなよ。ただの人命救助だよ?」

「で、でもっ、女の子ときっ、キスなんて……僕には……なんていいますか、あれといいますか……」

「私のファーストキスだよ。責任とってね~」

「!? わっ、わかりました!」

「じゃあ、500万でいいよ~」

「お金!? お金なの!? というか、そんな大金持ってないから!」

「知ってるよ」

 

 けらけらと笑いながら、彼に近付いて手を差し出す。というか、彼はこちらをしっかりとみない。まあ、仕方ないかもしれないね。

 

「あ、ありがとう……」

 

 起き上がらせてあげてから、本題を告げる。

 

「君の"個性"を教えてくれるだけでいいよ?」

「!? そ、それは……」

「これも駄目?」

「ごめん。そっ、それよりも、君は大丈夫なの? 溺れていたみたいだけど」

「溺れてないよ~。君を助けた時みたいに何時でも出れたし」

「あははは、ボクの勘違いか……良かった。でも、じゃあ何をしていたの?」

「修行だよ。私、雄英に入学したから力をつけないとね」

「そうなんだ! 僕もだよ。今年入学なんだ」

「そっか、そっか。じゃあ、私と同学年だね」

「え?」

「おい。その疑問はなんなのか、詳しく教えてよ」

「そ、その、小さいから……」

「胸! 胸なの!?」

「違うよ! というか、はしたないよ!」

「え?」

 

 自分の恰好を改めてみると、海水でびしょびしょになり、服が透けていた。

 

「あーうー!!」

 

 慌てて身体を隠して、しゃがみ込む。貧相な身体だけど、恥かしいものは恥かしい。元々の性別はあやふやだけど、14年も女の子として生きてきたのだから、羞恥心はちゃんとあるからね。

 

「みっ、みた……よね?」

「ごっ、ごめんっ! これはその、不可抗力で……」

「……もういいよ。私を助けようとしてくれたわけだし……うん。さっきの責任は友達になってくれることにしよう」

「僕なんかでいいの!?」

「いいよ~。私は蛙吹諏訪子。よろしくね。それとキスもしていないんだけね~」

 

 改めて片手を差し出して、彼を起こしてあげる。もちろん、片方の手で服は隠している。

 

「し、してなかったんだ……あっ、僕は緑谷出久。こちらこそよろしく」

 

 どこか残念そうにしながら腕を掴んで立ち上がった彼と自己紹介をする。

 

「あの状態から無事に出られるなんて、蛙吹さんはすごいんだね」

「諏訪子でいいよ。学校にはお姉ちゃんもいるしね」

「おっ、女の子を名前でよっ、呼ぶなんて」

「私も名前で呼ぶから、よろしくね」

 

 それから色々と話し合っていく。互いに少し前まで“無個性”だったことに驚き、意気投合していく。もっとも、私は知っていたのだけれどね。ちなみに私は自分から"個性"を貰ったと言ったら、彼も誰からかは言わないけれど教えてくれた。

 

「僕ももっと強くならないと。少なくとも使いこなせるようにならないと」

 

 折れた腕をみながら、そう語る出久君。

 

「確かに貰い物だから使いこなせないんだよ~。もっとすごいこととかできるはずなのに~。そうだ、一緒に修行する? 厳しいだろうけど」

「いいの?」

「うん。でも基本的に水中でやろうかと思っているんだよね」

「水中で?」

「水中は身体中の筋力を使うから」

「なるほど……」

「まずはその腕を治さないとね」

「病院にいかなきゃ……」

「治療しないとね」

 

 綺麗な夕日を砂浜に座って二人で、見ながら話をしていく。波の音とかもいい感じだよ。って、まるでこれは……

 

「おや、青春をしているね」

「オールマイト!?」

「沖で凄い爆発がしたと通報があったから、急いできてみたんだが……」

 

 私達に後ろから声をかけてきたのは、オールマイトだった。筋肉ムキムキのアメリカンなヒーローさん。ナンバーワンヒーローにして平和の象徴と呼ばれる有名人。私達が越えるべき壁。

 

「どうやら無事に解決したみたいだね。それで、緑谷少年。その腕は……」

「実は……」

 

 出久君がことのあらましを話していく。

 

「はやく病院にいきなさい。それと君は危険なことはしないように」

「別に危険じゃないよ?」

「他人が危険だと思うことをしないように」

「修行ができないよ~」

「海の中での修行はやめなさい! せめてプールにするように!」

「いや、プールだと波がない上にお金がかかるんだよ~」

「むぅ。それは確かに大事だね。だけど、危険は……君の場合はどうにかできてしまうか。ううむ……だが、やはり許可はだせん……といいたいが、条件付きでいいだろう。私が紹介する大人が一緒の時だけは許可する。それ以外は大人しく地上で修行するんだ」

「は~い」

「うむ。では、私は緑谷少年を病院まで送っていこう。それではな、蛙吹君」

「またね」

「またね~多分、明日もここにいるからくるといいよ」

「わかった!」

 

 オールマイトに出久君が連れていかれた。残された私はお土産を買ってから自宅へと戻るためのランニングを開始する。

 

 

 次の日も頑張って臨海公園にやってきた。すると、出久君がすでにいた。彼の腕は無事に治っていた。"個性"持ちに治してもらったみたいだね。

 

「やっほー」

「こっ、こんにちは!」

 

 顔を真っ赤にしながら、おどおどしつつ返事をしてくれる。

 

「じゃあ、修行をしようか。取り敢えず、正拳突きを一万回ね」

「え!?」

「"個性"をくれた人達に感謝してやるんだよ。それで強くなれるから」

 

 同じジャンプ時空なのだから、間違いないよね、うん。

 

「が、頑張ってみる」

「ただ打つだけじゃなくて、身体全体を使って放つんだよ」

「はい!」

 

 主人公魔改造計画の発動だよ。といっても、最初はできるはずもなくて諏訪子様への感謝の正拳突きは一日で7000回が限界だった。緑谷君も倒れるまでやってくれた。彼を抱えて教えてもらった家に送り届ける。

 そのあと、帰ってお姉ちゃんとバトルする。毎日繰り返すと二人共強くなっていっている。もちろん、私も。もっとも、私の本番は眠ってからだけれど。

 

「さぁ、今日も弾幕ゲームを始めようか」

「鉄の輪っ!」

 

 無数に放たれてくるビームや丸い形の弾幕を必死に回避する。ほぼ毎日、夢の中で訓練してもらっている。ミシャグジさまや全能力を使って対峙するけれど負けてしまう。でも、私にとっての理想の姿がそこにあるので、真似するだけでどんどん実力があがっていっていると思う。

 

 

 

 

 

 こんな感じで月日がすぎ、四月の入学式の日となった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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修正

 

 

 オールマイトに連れられて病院に向かう途中、僕は色々な話をする。今日出会ったのは僕と同じ無個性だった彼女のことも話した。

 

「蛙吹諏訪子君だね。知っているよ。彼女の資料は何度もみたからね」

「そうなんだ。オールマイトがそれだけ注目しているなら、やっぱりすごい子なんだね」

「ああ、そうだね。彼女はおそらく緑谷少年と同じ存在だ」

「僕と同じ?」

「ああ、そうだ。彼女は一年前まで確かに"個性"がなかった。だが、()()()()()()()"個性"を得た」

 

 僕と同じということは、彼女も発現したのではなく、誰かから受け取ったということになる。

 

「彼女は一年前に失踪し、生存を絶望視されていた」

「どういうことですか?」

「自殺だと思われていたのだ。自宅には両親や家族にあてた手紙や購入したとされるクロスボウもみつかった。それも血塗れの串と共に諏訪湖でね。ボート屋にも彼女の指紋があり、使われたボートにも血痕があった」

「そんな……あの子が……自殺?」

「無理もない。彼女は"個性"の実験台にされ、女の子に大事な顔も含めて全身大やけどをおった。あの事件は彼女の心に深い傷を残し、治ってからも幻痛で苦しんでいた。そのせいか、宗教にどはまりしたらしい。毎日休まずに諏訪大社に参拝していたとのことだ。そのあたりも捜査されたんだが、いっさいわからなかった」

 

 神社に参拝って神頼みだよね。まさか、神様から"個性"をもらったとか?

 

「ああ、その顔は神様からもらったとか、思っているみたいだね。本人も神様からもらったと言っていたらしいよ」

「やっぱり……」

「だが、そんな彼女の言葉は認められなかった。だが、現実に"個性"を手に入れ、更には彼女は"個性"で神様に似た力を持つ生命を作り出している」

「それって……」

「諏訪大社が祭る災神ミシャグジ。彼女は神話にうたわれているその力とよく似た"個性"を得たのだ」

「だったら、真似する人は多そうですね」

「信憑性がなくても、そうだろう。しかし、数年間、雨の時も、嵐の時も、ずっと参拝し続けたうえに最後には自らの命を儀式として差し出す。そんなことを普通の人ができると思うかね?」

「無理ですよっ! 無茶苦茶じゃないですかっ! "個性"を得るために死ぬなんて!」

「そうだ。本末転倒もいいところだ。普通は成功することなんてない。だが、実際に彼女はそれに成功している。そして、医師の話では胸に白い石みたいなもので塞がれている穴があるそうだ」

「それってクロスボウの?」

「ああ、そうだ。見つかった串と穴の大きさは一致した。そして、彼女の身体の中には大量の白い石の蛇がいたそうだ。彼女の身体を詳しく調べようとすると、その蛇に襲われる。無理矢理にでも解明しようとしたものは蛇に噛まれて身体の一部を砂のように崩壊させたと記録されていた」

 

 オールマイトの話だと、その蛇が神様で彼女の心臓の代わりをしているってこと?

 

「神様本人から"個性"を貰ったのか、それとも神を名乗る誰かは知らないが、彼女は"個性"を得た。これは事実であり、問題がある」

「問題? "個性"を得たのならいいことじゃないんですか?」

「確かに彼女自身にとってはいいことだろう。だが、彼女は力を得たことで復讐に走る可能性もある。緑谷少年。君だって無個性でつらい思いをしただろう。憎しみや恨み、妬みがなかったなんていわせないよ」

「確かに思ったことはあります。何度もなんで僕には"個性"がないんだって……」

 

 それに彼女の場合は実験台にされて、瀕死の重症を負わされている。その恨みは僕なんかじゃ想像できない。

 

「狂信者が巨大な力を得た。そういう場合、大抵は悲劇を招く。歴史で習った毒ガス事件とかね」

「確かに……」

「彼女もそうなる可能性がある。本来はこんなことを教えないのだが……まだ同じ境遇だった君なら彼女も心を開いてくれるかもしれない。すくなくとも、二人で夕日をみている姿は楽しそうだった」

「そっ、それは……」

 

 色々と思い出して顔が赤くなる。

 

「あっ、僕……"個性"を貰った事を伝えてしまいました……」

 

 もちろん、肝心な部分はなにも言っていない。僕が無個性で、個性をある人から受け取ったということくらいだ。

 

「ああ、いいよ。優先するのは彼女と仲良くなって、支えになることだからね」

「え?」

「友達として、そしてヒーローを目指すライバルとして互いに切磋琢磨し合うといいってことだよ」

「もしかして、オールマイトは彼女が……」

(ヴィラン)になる可能性は高いと思っている。これは彼女の家族からも学校に伝えられた。姉と一緒のクラスにして欲しいという要望とともにね。実際、先生方で話し合ったが、不安定な彼女を教え導き、正道を歩ませるためにご家族と協力し合うことになっている」

「でも、僕なんかじゃ……」

「少年はヒーローになりたいんだ?」

「はい……」

「だったら、迷える少女の一人ぐらい救ってみせろってことだよ。少女一人を助けられないで何がヒーローかってね」

「はい!」

 

 確かにそうだ。ヒーローを目指すなら、これぐらい朝飯前にこなさないと。だけど、救うためだからって友達になるのは不誠実だよね。

 

「オールマイトに言われたからじゃなく、友達として困った時はお互いに助けようと思います」

「それでいい。私の話をそのまま聞いて友達になろうとしたら拳骨を叩きんでいるところだったよ。友人関係に上も下もないからね。ちゃんと対等に、真摯に接するように。特に女の子には」

「はい!」

「まあ、これは受け売りなんだけどね!」

「お~るまいと~!」

「HAHAHAHAHAHA」

 

 病院で治療を受け、折れた腕を治してもらった。家まで送ってもらってから、トレーニングを頑張る。

 次の日、海浜公園に朝6時に行くと諏訪子ちゃんはいなかった。まあ、当然だよね。このまま掃除してからトレーニングを開始しよう。

 言われた通りに一万回を目指してみる。やっていると三時くらいに彼女はきた。

 

「やっふぉー」

「こんにちは」

「ごめんね。やっぱ家が遠いからね~」

「どこからきているの?」

「愛知県から走ってだよ」

「愛知!? 車でも一時間はかかるのに!」

「へいきへっちゃらだよ~。それよりもだいぶ良くなってるね。でも、まだまだ甘いよ」

「うわっ!?」

 

 後ろから諏訪子ちゃんが抱きついてきて、僕の身体を動かしていく。

 

「うん。これでいいよ。ちゃんと全身を使うんだよ」

「わかったよ」

「じゃあ、私も隣でするね」

 

 諏訪子ちゃんが砂浜に手をつくと、砂が集まって鉄の輪へと作られていく。それを腕や腰で回していく。良く見れば身体中に小さな鉄の輪をつけている。

 

「諏訪子ちゃん、それは?」

「これは重りだよ。あと、私の武器でもあるんだよね~」

「そうなんだ。ねえ、それ僕ももらえる?」

「重いよ?」

「御願い。強くなりたいんだ」

「けろけろ。ハードトレーニングになるけど、覚悟するように~」

「もちろんだよ」

 

 僕の身体に無数の鉄の輪が装着された。それはものすごく重くて、オールマイトが乗った冷蔵庫なんかと比べ物にならない。これなら、もっと効率良く身体を鍛えられるかもしれない。よし、この状態で一万回を目指そう。

 その日は夜の10時までかかって6000回だった。諏訪子ちゃんは途中で帰ったけれど仕方ない。家にはなんと這って帰った。

 翌日。朝の4時に来て始める。夜の10時まで8000回までいけた。次の日は9000回。その次の日は10時30分までで10000回に到達できた。そのまま倒れたけれど、探しにきたお母さんと様子を見にきたオールマイトに助けてもらった。

 翌日、またやっていたら、オールマイトに止められた。でも、どうにか説得して夜の9時には帰るようにと約束させれた。

 諏訪子ちゃんは毎日3時くらいにきて、5時くらいには帰る。最初は無理だったけれど、お互いに話ながらの修行は楽しい。

 

「あーうー……ありえない~ありえないよ~なにこの主人公補正……ずるいよ~」

「どうしたの?」

「なんでもない。でも、もう一万回までいけたんだね」

「そうだよ。でも、朝の4時から夜9時までかかるけどね」

「夕日が沈む前が目標だよ」

「わかった。どれだけ早くできるかだね」

「そーそー」

 

 基本的に修行のことや僕が好きなヒーローのことを話していく。諏訪子ちゃんはヒーローにあまり興味はないみたいだけど、こちらの話を聞いてくれる。

 それに彼女は理想の女性として神様のことを教えてくれる。聞けば聞くほど諏訪子ちゃんと姿は同じ人のようなんだけど。後は彼女のお姉ちゃんのことなんかも教えてくれる。

 家族や神様のことを話す諏訪子ちゃんはとても楽しそうだ。逆に近くで焼肉をやっていた人達がいた時はかなり取り乱していた。慌てて抱きしめて押さえつけないと暴れてやばいことになったと思う。

 落ち着いてから話しを聞くと、どうやら火が駄目らしい。見るだけで身体がすくんで動けなくなって、パニックになるとのこと。実際、砂浜の一部に彼女の"個性"で巨石が出現した。どうにかして彼女を火に近付けないようにしようと思う。

 次の日、諏訪子ちゃんと話し合った結果。この巨石を殴って壊すことにした。最初は微かにあたる程度で、次第に威力を上げていく。というのも皮膚を鍛えるためらしい。それと、砂浜では裸足でやるほうがいいとのことだ。そのアドバイスに従って頑張ってみようと思う。

 

 

 

 

 

 

 



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修正

 

 

 

 入学式当日。冷水を使った禊とお祈りをしてから私は、お絵かきをする。お姉ちゃんは隣で死んだように眠っている。今日まで厳しい訓練をしてきたらか、ある意味では当然かも知れない。

 

「できたー」

 

 作ったのは私の力で作り上げた特殊なカード。材質は厚手の紙でも力はたっぷりと入っている。絵には私の姿と色とりどりの弾幕が描かれている。

 そう、作ったのは東方でお馴染みのスペルカード。開宴・二拝二拍一拝と土着神・手長足長さま、神具・洩矢の鉄の輪。確か、うろ覚えだけど雄英に入ると対人戦がある。

 だから、殺さないために出力制限をかけるのだ。あとイメージが固まりやすいから能力で作りだすのも簡単になる。このカード自体には力はなく、材質が特殊なだけ。

 

「おはよう、諏訪子。朝から元気ね」

「おはよう、お姉ちゃん。冬眠は終わったの?」

「ええ。諏訪子が訓練を手伝ってくれたおかげで、強力な毒が使えるようになったわ」

「えへへ~」

 

 お姉ちゃんが覚えたのは麻痺毒と神経毒。それに運動能力もあがっている。私と組手とかも結構やっているしね。

 

「今日は入学式よね。朝食を食べてさっさといきましょう」

「そうだね」

 

 着替えてから下に降りると、お母さんが料理を作ってくれていた。

 

「おはよう二人共。入学式、楽しみね。お母さん達もいくわよ」

「わ~い」

「梅雨ちゃんは小学校と中学校の入学式はいったけれど、諏訪子はいけなかったから……母さんは嬉しいわ」

「私も~」

 

 前の時も入学式なんてまともに受けただろうか? もう覚えていないよ。というか、前世の記憶なんてもうほぼないんだよね。駄目押しがこの身を生贄にして、身体を変化させたことだし。後悔はないし、諏訪子様の記憶も少し流れてきている。

 

「取り敢えず、お母さん達は後からくるのよね」

「ええ。さつきちゃん達も連れていくからね。それと晩御飯はお祝いだから」

「おー」

「けろけろ。楽しみね」

「だね~」

「ほら、早くお食べなさい」

 

 朝食を食べたら急いで雄英に向かう。高校生デビュー初日として頑張らないと。

 

「そういえば、諏訪子が出会った友達も一緒なのよね?」

「そうだよー」

「そう。今度紹介してちょうだい」

「いいよー。それでね……」

 

 お姉ちゃんと楽しくおしゃべりしながら通学する。ちなみに蛙の帽子だけはつけている。これがないと落ち着かないし。むしろ、制服なんて着たくない。そんな状態で歌まで歌いながら気分よく進んでいく。

 

「ご機嫌ね」

「うん。だって……」

 

 次の瞬間。私達の前にトラックが飛んできた。違う。私にだ。

 

「諏訪子、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

 

 トラックと私の間にはミシャグジさまが現れていて、トラックを受け止めてくれたのだ。ミシャグジさまはトラックを締め付けて小さくして、食べてしまったけれど気にしない。とんできた方をみると巨大化した人が車を投げたり、電柱を持って暴れてだしていた。

 

「ヒーローは?」

「まだみたいね。諏訪子、危険だわ。って、何をする気?」

「助けに入るんだよ」

 

 私はさっさと現場へと向かっていく。

 

「遅刻するわよ」

「別にいいよ~人助けして、怒られるヒーロー科なんて、こっちから願い下げだよ」

「それもそうね」

「それに私の楽しい時間を台無しにしてくれたんだから……祟らないとね。あはっ♪」

「諏訪子、殺さないように。私は人命救助をしているわ」

「まっかせてー」

 

 お姉ちゃんがすぐに人助けに入る。私は現場に歩きながら懐に手を入れる。

 

「さて、そろそろ充分に暴れたよね? 次は恐怖のどん底に突き落とされる番だよ」

「あ? 餓鬼が、何を言って……って、その制服は雄英のじゃねえか。はっ、未来のエリート様が何の用だよ……」

「ヒーロー志望なんだから、人助けにきまってるじゃない。あっ、馬鹿にはわからないか。それにやられたらやり返す。というわけで、天地開闢の調べ。ここに神遊びを始めようか。開宴・二拝二拍一拝」

 

 左右の地面に呼び出したミシャグジさまの口から色の違うレーザーを交互に発射させる。その後、風や水、石を圧縮した粒を作って弾けさせて飛ばし、直後にミシャグジさまの口からまたレーザーを左右同時に放つ。ちなみに天地開闢とかいっているけれど、私に天の属性はないからね。

 

「あがぁあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 手足を破壊され、身体中を散弾でボコボコに殴られたヴィランはそのまま地面に倒れた。

 

「あれあれ、どうしたの? まだ始まったばかりだよ? ほらほら、頑張ってよ。次だよ、来い、がんだぁぁぁぁむっ!」

 

 別のスペルカードを取り出して、能力を発動させる。土を創り出し、巨大な私の動く石像へと変化させる。がんだぁぁぁぁむっていったのはただのネタ。別にビック・オーショータイムでもよかったんだけどね。ちなみに私の場所は石像の肩だよ。あ、これだとジャイアントロボのほうかも。

 

「ほら、私を楽しませてよ、ヴィランさん」

「ひっ!?」

 

 足を大きく上げて、踏み下ろそうとしたら、大きな女の人が飛び込んできて足を掴んでくれた。

 

「は~い学生のお嬢ちゃん。そこまでよ。私はジャイアントレディ。ヒーローよ。後は任せてくれるかしら?」

「……」

 

 さあ、どうしようか。任せてと言われても獲物を横取りされるのは嫌なんだよね。でも、まだヒーローじゃないし、仕方ないよね。石像を戻してついでに壊れた道を土で直しておく。

 

「それと警察の調書を受けるようにね」

「せっ、正当防衛だよ~」

「市街地で"個性"使ってるからね」

「は~い」

 

 お姉ちゃんを探すと、救助をしていた。傷口を舐めて治療している。毒だけじゃなくて回復系も覚えたんだ。凄いね。といっても、傷口を固めて止血しているだけみたい。

 

「お姉ちゃん、後はプロの人に任せて警察の調書を受けろって」

「そう? "個性"を使ったから仕方ないわね。」

「時間かかりそうだね~」

「仕方ないわ」

 

 救助活動を普通に手伝っていると、パンダさんがやってきた。パンダさんから警察の人が降りて来たので、私達はそちらにいって事情を説明する。

 

「というわけで、"個性"を使っちゃた」

「怪我人はそちらに」

「わかった。お前達は聞き取りと現場確認を頼む」

「「はっ」」

「さて、お嬢ちゃん達。ちょっとパトカーの中で話しを聞こうか」

 

 パンダさんに乗ってお話をしだすと、パンダさんが動いていく。

 

「トラックの激突を防いで、回りを見渡してヒーローがいないから被害を押えるために押さえ込んでいたと」

「警部。確認が取れました。確かにそちらの彼女達は人命救助のために"個性"を使っていますね。ジャイアントレディが来てからは緊急以外"個性"を使わないで救助しています」

「ただ、彼女の場合は過剰防衛になるか微妙なところですね」

「ふむ……まあ、今回は正当防衛ということで片付けておこう。だが、気を付けるように」

「やだ」

「なに?」

「人助けをして後悔することなんてないよ。それがヒーローってものだしね」

「確かにそうね。人が死ぬような状況になったら、"個性"を使ってでも助けるわ」

「まあ、それならそれでいいさ。それよりも今日は入学式だろうから、送って行ってあげよう。あと少しで着くと思うからね」

「お願いします。入学初日から遅刻はまずいわ」

 

 パトカーで送ってもらった。そのおかげではやく到着できました。

 

 

 

 

 

 ゲートを通り、そのまま下駄箱へと入る。クラスを確認すると1-Aだった。案内図を見てみつけた教室に入る。すると、マフラーを巻いた先生が体操服を出しているところだった。

 

「遅くなりました」

「遅い。初日から遅刻とはたるんでいる。除籍にするぞ」

「あ~う~人命救助とヴィランを教育していたんだよ~」

「けろけろ。警察の人と一緒にきたから、連絡がきていると思います」

「そうか。緊急時における人命救助や人助けをするな、とは言わん。自分達がひよっこだと弁えればだ。だが、次からは連絡を入れろ」

「わかりました。次から余裕が有ればそうします」

「けろけろ」

 

 返事をしてから教室を見渡すと、出久君もちゃんといた。あと、何故かツンツン頭君が私を睨み付けている。なんでだろ~? 取り敢えず、空いている席に座る。

 

「では、席に着け。これから、着替えてグラウンドに出てもらう」

「せんせー」

「なんだ?」

 

 手を上げてせんせーに質問してみる。

 

「入学式は?」

「そんなもんにヒーロー科はでない。時間が勿体ないからな」

「そっ、そんな……」

 

 私は机にべたっとくっつく。凄く楽しみだったのに……というか、忘れていた。確か、そんなのがあったよね。もう、無視して受けに行こうかな?

 

「あーうー……やる気がなくなったよ……」

「諏訪子……」

「いっそ教育委員会に訴えてやろうか……」

 

 そんなことを言っている間に、私はお姉ちゃんに更衣室へと連れていかれた。帽子はちゃんともっている。そのまま着替えさせてもらったあと、グラウンドへと連れていかれた。

 

「すっ、諏訪子ちゃん」

「あ~出久君だ」

 

 顔を赤くしながら、挙動不審な姿でこちらへやってきた。

 

「だるそうだね」

「やる気がなくなっただけだよ。あ、こっちはお姉ちゃん」

「蛙吹梅雨よ。妹がお世話になったようで、申し訳ないわ」

「いえいえ、こちらこそ面倒をみてもらって……」

 

 お姉ちゃんと出久君の挨拶が終ると、他にも女の子が寄って来た。彼女は麗日お茶子。ヒロインの一人で、ゲロイン。でも、とてもいい子。

 

「こんにちは。私は麗日お茶子。よろしくね~!」

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんって呼んで」

「私は妹の蛙吹諏訪子。よろしく」

 

 挨拶をしている間に相澤先生が説明していく。どうやら、最下位は除籍みたい。でも、やる気がおきない~。

 

「実技試験でトップは蛙吹諏訪子だったな。"個性"を使っていいから、このボールを投げてみろ」

「ボールを?」

「そうだ」

「えっと、じゃあ……」

 

 貰ったボールを上に投げて、作った石のバットで適当に打つ。すると、100メートルくらい飛んだ。

 

「おーとんだとんだ」

「お前、やる気ないだろ」

「ないよ~」

「そうか。では次だ。爆豪、手本を見せてやれ」

「おうよ!」

 

 それから、彼は700メートル越えという結果をだした。そのあと、私にドヤ顔をみせてくる。けど、私は地面にのの字を書いている。

 

「諏訪子ちゃん……」

「あ、出久君。そういえば鉄の輪をつけたままだったよね」

「そういえば、忘れていたよ」

「じゃあ、外してあげる」

 

 彼の身体につけていた10個の鉄の輪を消滅させてあげる。

 

「うわ、身体が凄く軽い!」

「それなら大丈夫だと思うよ。頑張ってー」

「うん! やってみるよ!」

 

 それから、出久君は頑張った。相変わらず、私は最下位を独走中。これで除籍されるなら、それはそれで……いいかも知れない。

 うん、私、諏訪子様ってどっちかっていうと異変を起こしたりする暗躍側だし。そんなことを考えていると、出久君が能力を使って投げようとする。だけど、それを相澤先生が邪魔をしようとしたので、私が彼の前に立って視界を封じてあげた。

 

「お前っ!」

 

 能力をちゃんと発動させた出久君は1090mという数字を叩き出して、腕が折れなかった。小指は痛めたようだけど。

 

「あれ、成功したのか?」

「四六時中、私の鉄の輪をつけていたんだから、当然の結果だよ」

「……お前、なんで邪魔をした」

「なんのことかな? 私は応援していただけよー」

 

 そっぽを向いて、そんなことをいうと……

 

「あ、れ?」

 

 身体に力が入らなくなって、寒くなって、そのまま地面に倒れる。苦しくて、胸を押さえる。

 

「諏訪子っ!?」

「おい、どうした!? っ!? 心臓が……」

「ちょっ!?」

「ど、どうすれば……」

「……ゴーグル? そっ、そうか! せっ、先生っ! 直に"個性"を解除してください!」

「なに? どういうことだ」

「彼女は常に"個性"を使っているんです」

「ちっ、報告書にあったアレか。まさか、体内のまで消えるとは……」

 

 苦しくて、苦しくて、でも、とても暖かいものが中から浮かび上がってくる。

 

 

 

 

 緑谷出久

 

 

 

 まずい。諏訪子ちゃんが動かない。先生は"個性"を解除してくれたみたいだけど……これってかなり、まずい。

 

「っ!? 目覚めたか!」

 

 目を開けた諏訪子ちゃんはニヤリと笑いながら、先生の首に掴みかかった。先生はなんとかそれを避ける。すぐに立ち上がると、二人は対峙する。でも、なんだかいつもの雰囲気とは違う気がする。

 

「ふ~ん、これがこっちか」

 

 両手を握ったり開いたりして、まるで身体が動くことを確かめるように。

 

「全員、下がれ。いや、今すぐに逃げろ」

「先生?」

「いいから早くしろ! こいつは……」

「ああ、名乗らないと駄目だよね。でも、名乗ってあげる理由もないか。どうせ消えるんだから」

 

 彼女は空に浮かび、両手を広げる。すると、地面が振動して無数の白い蛇達が現れていく。

 

「諏訪子、何をする気なの?」

「ああ、君が梅雨ちゃんなんだね~」

「……」

「何をするかって言われたら、簡単だよ。治療? でも、その前に危険分子は消えて貰わないとね」

「諏訪子ちゃんの身体で何をする気だ!」

「あははは、面白いことをいうね。この身体は私のものだよ。彼女からもらい受けたものだから」

「多重人格。という訳ではないな。完全に別人か?」

「違うよ。もう、どちらも私だからね。まあ、今回は警告だけにしてあげるよ。おいで」

 

 無数の蛇が諏訪子ちゃんの身体に襲い掛かって、取り込まれていく。傷口が治っていく。

 

「さて、私はもどるけど……いや、そうだ。体力テストだっけ。アレを私がやろう。どちらも私だから問題ないしね。うん、どうせ退屈だったんだから問題ないよね」

「まて、彼女は無事なのか?」

「見ての通り、無事だよ。あの子も私の一部なんだから、死ぬことはありえないよ~」

「戻るの?」

「今は眠ってるだけだから、時間があれば今はまだ目覚めるよ。それより、せっかく出たんだから、遊ばせてもらうんだからね」

「詳しく聞きたいが、身体は本人に変わりなければいいだろう。続きを行うか」

 

 その後、諏訪子ちゃんはとんでもない記録を連発していく。何もせずにオールマイトクラスの力を発揮し、多種多様にみえる"個性"を使いこなす。しまいには空を飛び、色とりどりの綺麗なエネルギー弾を放ってくる。

 楽しそうに遊んでいる彼女は僕の知る彼女に似ている。でも、やはり別人だと思う。

 

「ああ、最後に忠告してあげる。帽子を離させないでね。あと、"個性"を消すなんてしないこと。さもないとどんどん私達は一つになっていくから。私は彼女がどう足掻き、最後にはどうなって私の完全な一部になるのか、とても楽しみにしているんだからね」

 

 そう言って消えていった。恐ろしい気配が消え、残ったのは元の彼女だけだった。ちなみに他の生徒には多重人格ということが伝えられた。

 実際、似たようなものかも知れない。そして、今。元に戻った諏訪子ちゃんは入学式をやっている。というのも、校長先生が気を利かせてくれた。

 参加したい人だけ残ってやる入学式はそれはそれで楽しかった。それに僕のお母さんも泣いて喜んでいた。しかし、オールマイトが警戒していたことが現実になるかもしれない。

 彼女がヴィランになる可能性があるというのは僕でもはっきりとわかった。あのもう一人の諏訪子ちゃんはやばい。しっかりと支えないといけないだろう。

 

 

 

 



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修正

 

 根津

 

 

 さて、今日は事件がたくさん起きた。もっとも、関わっているのは一人なんだけどね。そんなわけで、生徒が帰ってから夜に残って職員会議さ。

 

「で、今朝警察の人がやってきて蛙吹姉妹の"個性"使用について色々と言われたけれど、まあ人命救助と正当防衛で決着がついた。お小言はもらったけれど、そっちはいい。それよりも、諏訪子君のことだ。相澤先生、どうだったかな?」

「ありゃ、完全な化け物ですね」

「おいおい、生徒をそういうふうに言うのは感心しないな。まあ、正直言ってあれはやばかったけどね」

 

 オールマイト君をもってしても、そう言わしめるのか。

 

「というか、私は彼女の心臓のことを聞いていないんですが……」

「あれ、オールマイト君に資料を渡してお願いしたはずなんだけど」

「オールマイト先生?」

「えっと、確か相澤君の机の上に置いておいたはずなんだが……」

「あ~もしかして、積み重ねてあった資料の上に置きましたか?」

「うん」

「はぁ……やめてください。後、おいたらおいたで連絡をください」

「ごめん。ちょっと立て込んでてさ」

「危うく()()()()()()()()()

 

 殺しかけたじゃなく、殺されかけたね。

 

「あれは運が良かったね。もう少し避けるのが遅かったら……」

「確実に死んでましたね」

「"個性"を消せばよかったんじゃね?」

「馬鹿を言うな。話はそんな簡単じゃない。襲われて彼女が離れた時、何度も消そうとしたが、そのまま宙に浮かんで蛇を呼び寄せていた」

「つまり、相澤君が化け物だといった理由は彼女の力が"個性"ではない、ということかな?」

「そうです。最初の、蛙吹諏訪子の場合は"個性"だと思います。通りにくい感じはしましたが、まだ消せました。ですが、別の人格。後から出て来た方には一切の力が通じなかった。そもそも生徒に逃げるように指示をだしましたが、彼女がその気なら一瞬で殺されていたでしょう。それぐらいの力の差を感じました」

「ふむ……」

 

 僕は蛙吹諏訪子君の第二人格が叩き出したデータをみる。

 

 

 蛙吹諏訪子

 ボール投げ:測定不能。摩擦でボールが消滅した模様。

 立ち幅跳び:測定不能。空を飛ぶので意味なし。

 50m走:0.001秒

 握力:機械が粉砕

 反復横跳び:一秒間に最低70回。これ以上は計測不能。

 持久走:持久力に限界がみられず、本人が飽きたために計測終了。記憶284周。

 上体起こし:支えられる存在がおらず、計測不能。オールマイトが押さえれば可能性がある。

 長座体前屈:本人が拒否したためにデータなし。

 

「なにかな、このデータは」

「体力テストですよ。ね、化け物でしょう」

「確かにこれはそうだな」

「それと第二人格本人から名前を聞きました」

「ほう、それは初耳だね」

「なんて言っていたんだい?」

「洩矢諏訪子と、漢字まで教えてくれましたよ」

 

 洩矢諏訪子ね。彼女の蛇、ミシャグジから考えて洩矢神のことだろう。洩矢神はミシャグジ神と同一視されることもあるからね。

 

「神様ってことか」

「内側に神様がいるってか! とんでもない嬢ちゃんだぜ!」

「こんなオカルトのことがあるとは……」

「ポルターガイストの"個性"を持つ者もいるんだから、神の"個性"を持っていたとしても不思議ではないが……いや、それはやばすぎるか」

「そうだね。どちらにしろ、相澤君の報告からその神様を名乗る存在が、蛙吹諏訪子君の中から出てくるのは時間の問題のようだね」

「そうですね。ですが、問題は彼女の性格です。今回は引いてくれましたが、あれはどちらかといえばヴィラン側です。扱いをしくじった時点で、最恐最悪のヴィランになるでしょう」

「何、このままヒーローになってくれるさ」

「楽観はできませんよ。もし、彼女がヴィランになれば……」

「だいじょーぶ! 何故って? すでに手は打っておいたからさ!」

 

 ふむ。オールマイト君がそういうなら、大丈夫かもしれないね。

 

「しかし、止められますか?」

「今なら、まだ止めることは可能だろう。蛙吹君ならね。ただし、もう一人の方が相手なら、正直に言うと無理だ。打った手は時間がかかるからね。でも、私見だけど彼女はそこまで悪い子じゃないね」

「こちらが誠意をもって接すれば問題ないかもしれない。彼女が洩矢神かそれをもして作られた存在だというのなら、だけど」

「神話ですか」

「そうだよ。まあ、オカルト染みてはいるが、創造系の"個性"って要は本人の妄想とかで全てが決まるからね」

「だが、それは神話に語られる彼女が神に近い力を持っているということになる」

「そう、どう考えても"個性"の限界を超えているんだよね。まるで、オールマイト君みたいに」

「私の"個性"も特別ですからね。おそらく、彼女と同質の可能性があります。もっとも、私の"個性"は願いですが」

 

 紡がれてきた願いだね。人々の力の結晶が神様に届くかもしれない。

 

「よし、じゃあ取り敢えずどちらの諏訪子君にしても、現状は生徒に変わりない。だから、よろしく頼むよ」

「「「はい」」」

「それと、相澤君」

「なんですか?」

「入学式は出ようよ!」

「いや、合理的じゃないです。時間の無駄でしょう」

「君はそう思うかもしれないけれど、親御さんや生徒、教育委員会から不満の声がでているんだよね」

「どうにかしてください」

「無理だから。ここ、教育機関だし。これからはしっかりと学校行事にも出るように。これは校長命令だよ。それに思い出作りは大事だよ。特に……」

「蛙吹諏訪子の場合は、ですか」

「うん。リカバリーガールからも、彼女が持つ可能性は一年程度という報告があがっている。オールマイト君の対策はそれで間に合うかな?」

「微妙ですが、やってみせましょう。それに彼女がしっかりと成長し、思い出を作っていればひょっとしたら助かるかもしれない。人の力は偉大だからね」

「確かにそうだよ。並行して、彼女を助ける手段も探してみよう」

「わかりましたよ。今回は私が悪かったようです」

 

 ふう。これでどうにかなるかな。やれやれ、相澤君は生徒思いなんだろうけれど、色々と駄目な部分がある。説明不足だったりもするしね。

 

 

 

 

 

蛙吹諏訪子

 

 

 

 

 ここはどこ? 私はだれ? 

 

「ここ夢の世界で、君と私は諏訪子だよ」

「あれ? おかしいな。夢の世界なのに私達以外の人がいるよー」

「そうだね~」

「というか、なんで私達は正座させられているのかな~」

「それはと~ても怖い人のせいだよ」

「誰が怖い人ですか、誰が!」

 

 はい、私達は現在森に囲まれた湖にある河原で正座させられているの。私達に正座を強要している人物は蛇と蛙をあしらった2つの髪飾りをした緑色の長髪に、白と青を基調にした巫女服を着ている女子高生巫女さん。そう、その名は祀られる風の人間、東風谷早苗。現人神にして奇跡を操る程度の能力を持つチーターである。

 

「誰がチーターですか!」

「いや、どう考えてもチーターだよね?」

「だね~、認めたほうがいいよ。この頃、なんでも奇跡で解決しているし」

「……こほん。私のことはいいんです。それよりもお二人がしでかした危険行為です!」

「危険なことってした?」

「あなたは死にかけましたよね!?」

「アッハッハッハ、私達にその程度のことで反省するとでも思っているのかな~」

「片腹痛いね~」

「こ・い・つ・ら! なんでしょうか……手のかかる子供が一人増えた?」

「失礼な。母親は私の方だよ」

「じゃあ、私は妹? あ、でもどっちかというとお姉ちゃんかも」

「こんな姉は嫌です!」

「あっ、それはお姉ちゃんに失礼だぞー」

「それもそうですね。ですが、それなら妹ですね。妹弟子という可能性がありますし」

「いや、ないから……」

「奇跡」

「いま、ぼそってなんかいった!?」

「はい、私はなんですか?」

「それはさ、早苗お姉ちゃん!」

「はい、よくできました」

 

 やっぱりチーターには勝てなかったよ……。まあ、現人神としても私が妹というのは納得できるんだけどね。

 

「ああ、妹が欲しかったんですよね~」

 

 抱きしめられて無茶苦茶に撫でまわされる。そして、胸で窒息死しそう。

 

「やれやれ……」

 

 いつの間にか諏訪子様があぐらをかいてお酒を飲んでいた。いいな~。

 

「飲む?」

「飲む? じゃありません! 未成年ですよ!」

「早苗もだよね」

「うっ……って、違いますよ! 二人の危険行為についてです!」

「まだ続いてたんだ」

「続いています。だって、私が紫さんにぐちぐちと文句を言われたんですよ! 幻想郷を変なところに繋ぐなって」

「あーうー」

「それは仕方ないね。でも、早苗と霊夢でどうにかできるだろ」

「ええ、それはもう二人で、いえほぼ私一人でやりましたよ。うちの神様が迷惑をかけたわけですし。それで霊夢さんにもぐちぐちと言われて……奢らされる約束をさせられたんですよ」

「よし。じゃあ、宴会にしようか」

「いいな~私もいきた~い」

「呼んでやろうか」

「だ・め・で・す! というか、呼んだら戻れなくなるじゃないですか。道がなくなるじゃないですか」

「そのために早苗がいるじゃないか」

「奇跡でどうにかしてよ~。ほら、奇跡、奇跡」

「天誅!」

 

 空から雷がふってきた。痛い。

 

「けろけろ」

「簡単にいいますけど、それ数ヶ月単位で詠唱がいるんですから、いやですよ!」

「ということで、諦めてよ」

「ふ~んだ。いいもん、いいもん。こっちでも宴会するんだから」

「まあ、それはいいですけれど……本当にいいんですか?」

「なにが?」

「このままだと早いうちに確実に死ぬことになりますよ」

「死が終わりなら、嫌だけど……これ四度目だからね~。それに今度は神様になれるから別にいいよ~」

 

 一度目は普通に死んで転生し、二度目は火傷によって私は死んだ。あれはもう死んだといっていい。三度目は自分で胸を貫いた。四度目は諏訪子様と一緒になる。

 

「私という存在は消えても、諏訪子様の中で溶け合ってずーと生き続けるんだから別にいいんだよねー」

「そうですか。では、私も可愛い妹に祝福をあげましょう。どうか、あなたに幸せがありますように」

「ありがとう。でも、別にいいのに。もういっぱい貰ってるし」

「貰えるものはもらっといたらいいんだよ」

「それもそっか。それよりもお酒ちょうだい」

「いいよー」

 

 三人で一緒になってお酒を飲む。美味しい。

 

「というか、何か忘れているような? まあ、いいでしょう」

「よーし、今日はここで宴会だー!」

「神奈子様も呼びましょうか」

「別にいいよー。三人だけで」

「怒りますよ?」

「こないだ、私の酒をこっそり飲んでたからいいんだよ!」

「まったく、あの人は……って、その前に神奈子様のお酒を飲んだのは諏訪子様じゃありませんでしたか?」

「さてさて、なんのことやら~」

 

 ぐびぐびとお酒を飲んでいく。宴会はそのまま続いていく。そして、しばらくしてから私は帰った。

 

 

 

 

 

 



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修正

 

 

 

 朝、目覚めると何故か家にいた。隣にはお姉ちゃんが一緒になって眠っている。ん~昨日は確か体力テストを受けて、気を失って、入学式を受けてそれから家族と宴会……お酒は飲んでないからパーティーして眠ったんだ。それで、諏訪子様達とあって……宴会をした。うん、問題ないね。

 

「ケロちゃん、冬眠からの目覚め~」

 

 お姉ちゃんの横から抜け出して、蛙の着ぐるみから着替える。着ぐるみを脱いで下着から身に着けていく。着ぐるみの中には何も着ていないの。

 

「ん?」

 

 私とお姉ちゃんの勉強机の上に何かの袋があった。一つはお母さんとおばあちゃんからの入学祝いで筆記用具や携帯電話などがあった。お姉ちゃんのものちゃんとある。でも、私の机の上にはもう一つ大きな包みがあった。

 

「?」

 

 とりあえず、包みをあけてみるとそこには……巫女服と私の普段着である諏訪子様と同じ服が入っていた。それに手紙もあった。読んでみる。

 

『この手紙を読んでいるということは無事に届いたようですね。流石は紫さんです。その服は私と諏訪子様で作りました。ヒーローコスチュームとして使ってください。たっぷりと加護が与えられているので、耐人耐寒耐熱までなんでもござれです。着ているだけで幸運も舞い込みますので是非着てくださいね。とくに巫女服を。あなたのお姉ちゃんより』

 

 すごいのってことはわかった。神具だろうしね。でも、一つわからないのは()()? 人に対する耐性ってことだよね? もしかして、人型から受けるダメージが減るとか? そんなわけないか。

 

「どっち着よ?」

 

 早苗からしたら巫女服を着ろってことなんだよね。でも、巫女服よりやっぱりこっちだよね。というわけで、ケロちゃんの装備を着ることにする。今日はヒーロー基礎学の授業があるから、コスチュームは多分いるだろうから持っていく。あ、でも今からやるには巫女服の方がいいし、そっちに着替えて下に降りる。

 

 

 朝の3時では誰も起きていない。なので、起こさないように足音や気配を消して行動する。外に出て冷水を浴びながら祈って禊を行う。

 禊が終わったら着替えてから冷蔵庫を開けて中身を確認。卵やベーコン、野菜を取り出して料理を始める。今日の朝食は煮物と鮭の塩焼き、目玉焼きとベーコン。それにサラダ。あとはお味噌汁と海苔、野菜ジュースだよ。ちなみ野菜は足りなかったので、増やした。後はお弁当も作る。家族みんなの分も。

 

「よし、完成」

 

 作り終えたのは朝の4時。洩矢のお米も炊き上がっている。神棚にお供えしてお祈りしてから料理を並べていると、お母さんが起きてきた。お母さんはいつも早くに起きてきてくれる。

 

「おはよう、諏訪子。今日も早いのね。お母さんも早く起きようとしたんだけど……」

「お母さんは寝ていていいよ? 私に合わせなくても……」

「駄目よ! 絶対に駄目!」

 

 お母さんが私を抱きしめてくれる。

 

「何もできなかったお母さんだけど、せめてできるかぎりは一緒に居たいの」

「あーうー……わかったよ~一緒に食べよ」

「ええ」

 

 お母さんと食事を終えたら、見送ってもらいながら出かける。お姉ちゃんは5時か6時に起きるので一人だ。といっても、寝る前にしっかりと私と訓練しているので仕方ない。そもそも身体が根本的に違うのだから、仕方ない。私はほとんど睡眠を必要としていないしね。

 

 

 

 

 さて、今日もやってきました多古場海浜公園。日に日にここに来るまでにかかる時間が短くなっている。もちろん、"個性"を使わずにね。だんだんと身体が馴染んできているから、身体能力が上がってきている。

 

「おはよう」

「早いね。まだ六時だよ」

「出久君もね」

 

 ジャージ姿の彼は既に修行を始めていた。

 

「あ、鉄の輪を頼める? いい重りがなくて……」

「いいよー。それとそろそろ海の中でやってみようか。肩が浸かるくらいで」

「オールマイトに怒られないかな?」

「大丈夫、大丈夫。いざとなれば私が助けてあげるから」

「それ、大丈夫とはいわない……でも、強くなるためにはしかたないか」

「そうそう」

 

 というわけで、一時間ちょっと海に入って修行する。正拳突きや蹴りを頑張る。それが終れば組手を行う。二人で互いに殴ったり蹴ったりするのが理想だけど、出久君は私に攻撃してこないので私が一方的に攻撃して捌く訓練になっている。

 

「相手が女の子や子供だからって、攻撃しないのは駄目だよ」

「そっ、それはわかっているんだけど……」

「それに私の身体は特別製だから壊れたり、怪我をしたりしないよ」

「で、でも……昨日は……」

「あれは私の"個性"が消されたせいだよ。だから、大丈夫だよ~」

「でも、ボクの"個性"が発動したら……」

「平気平気。だいたい、神様であるこの身体に何かできると思うとか、おこがましいよ」

「そっ、それは……」

「さあ、来い」

「でも~」

「ヘタレ」

「ぐっ」

「チキン」

「あがっ!?」

「そんなんでヒーローになれると思っているの!」

「あっ、ああ……ボクは、僕は……」

「ほら、頑張ってよ。オールマイトの後継者になるんでしょ!」

「そうだ……オールマイトの後継者に僕がなる! って、なんで知ってるの!?」

「かっ、神様だからだよ」

 

 そっぽを向いて口笛を吹く。

 

「あっ、そうだ。出久君が私に有効打を入れたら、黙っててあげてもいいよ。でも、無理だろうし……あ、なんならご褒美をあげてもいいよ。そうだね~なんでも一つだけ言う事をきいてあげる。エッチなことでも」

 

 耳元で囁いてあげると、顔を真っ赤にして鼻血をだした。何を想像したのかな~?

 

「ななななな」

「あはははは、冗談だよ。諏訪子ちゃんはそんな安い女の子じゃないよ~。むしろ、超高級品だよ。なにせ、この身は神様への供物であり、依代であるんだから~」

「そっ、それは……」

 

 くるくるとまわりながら、言ってあげる。

 

「って、オールマイトの秘密を知ってるの!?」

「うん、知ってるよー。それが何かは教えてあげない。私に一撃を入れるまでは……」

「わかった。やってみるよ」

「おいで」

 

 やっとやる気になった出久君相手に組手を行う。素早い突きをはたき落とし、カウンターをいれようとすると蹴りが飛んでくる。腕でガードして、身体を回転させて蹴りを放つ。

 

「あっ」

「?」

 

 何故か意識をそらした出久君はそのまま吹き飛んだ。

 

「どうしたの?」

「そっ、それはその……スカートで蹴りはどうかと……」

「っ!?」

 

 言われた言葉を理解した瞬間。顔が赤くなる。帽子を深く被って顔を隠して見えなくしてしまう。

 

「あーうー。これは私が悪いね。時間もあれだし、今日はここまでにしよう」

「そ、そうだね。そろそろ学校に行かないといけない時間だし!」

「それと、その……忘れてね」

「う、うん」

 

 絶対に忘れてないと思う。おのれ、祟ってやろうか。

 

「っ!? 悪寒が……」

 

 まあ、私のせいだからそんなことはしないけど。

 

 

 

 

 

 二人で雄英に途中まで向かう。駅の近くでお姉ちゃんと合流して一緒に向かう。そのまま三人でたわいない会話をしながら、教室に入ると一気に視線が集まってきた。

 それもほとんどが恐怖や畏怖といった感情。なかにはあからさまに机の下に隠れている変な髪形のチビッ子もいる。でも、これは仕方ないよね。祟り神にあったんだから。

 

「諏訪子、大丈夫?」

「へいきへっちゃらだよ~だって、有象無象なんて神の依代であるこの私が気にするはずもないし」

「「なっ!?」」

「私が気にするのは家族と神様達と、出久君。後はとくにいないかな。それ以外はどうでもいいんだよ」

 

 オールマイトは出久君を育ててくれないと困るけれど、他の有象無象は気にしない。信仰してくれるなら別だけどね。

 

「なんという傲慢さだ! 君はそれでもヒーローを目指しているのか!」

「ん~ヒーローか。そうだね。オールマイトみたいなのは目指しているかな。他のその他大勢はぶっちゃけてどうでもいいよ」

「なっ!? 偉大な先輩方を……」

「んなことはどうでもいい! なんで出久が有象無象じゃなくて俺が有象無象なんだ!」

「? だって、出久君は私と同じで、"無個性"だったもん。彼は"個性"の発現が遅かっただけかもしれないけど、それまでは私とおんなじで"個性"を持つ人たちにひどい目にあわされてた。だから、特別。わかった?」

「てめぇっ」

「待って諏訪子ちゃんも"個性"は後から発現したの?」

「違うよ? 私は今も"無個性"のままだし」

 

 どちらかというと、私は今も"無個性″。だって、これは借り物の力だしね。

 

「君は強力な"個性"を持っているじゃないか!」

「私の力は神様から借りている力だよ。だから、私自身の力じゃない」

「神様なんているはずが……」

「それに……」

「いるよ。昨日、あったよね。あの人が私の神様。私が信仰し、生贄として身体を捧げたの。気まぐれで神様は私の願いを叶えてくれるといった。私は神様と同化することを願って、力を手に入れた。もっとも、私が私でいられる時間制限はあるから、皆は気にしなくていいよ。多分、来年には私は消えて神様がでてくるだろうし」

「諏訪子、そこまで聞いてないわよ」

「ん~だって、お姉ちゃんには悪いけれどこれは私が選んだことだから、仕方のないことなんだよ」

 

 笑いながら、くるくると回る。皆が恐怖に震えたり、理解できないといった表情をしている。

 

「私が……普通にドアから来た! って、なんだい、この空気は?」

「ケロケロ。私が冗談半分の事実をいっただけだよ」

「あいた!?」

 

 でも、お姉ちゃんに頭を叩かれた。お姉ちゃんはお冠のようです。

 

「なんだ、冗談か」

「だよね……でも、できそうな気がしたのが怖い」

「いや、冗談半分って半分は事実なんじゃ……」

「さて、何処からが本当で何処からが冗談だろうね! 正解は一年後! 乞うご期待ってね!」

「はい、席についてね。授業時間がおしているからね。まず、今日は戦闘訓練を行う。だから、訓練所に移動してもらう。だが、その前にこれに着替えて貰おう。そう、ヒーローにとって大事なコスチュームだ!」

 

 壁の一部が出てきて、コスチュームが入ったケースが沢山置かれている。私の番号もある。中をみると、空っぽ。まあ、事前に雄英と契約しているサポート会社に送っておかないといけないしね。だから、出していない私のはない。自前で持ってきているし。

 

 

 

 東方の諏訪子様と同じ格好になった私。それ以外の人はなんていうかコスプレ集団? ちょっと凄い格好になっている。そんな私達はオールマイトの説明を聞いていく。

 

「ヒーローとヴィランに別れて、ヴィランが所持している核兵器を奪取してもらう。核兵器はビルの中にあるから、それに触れたらヒーローの勝ちだ。他にも捕獲テープを巻けばオッケー。これはヴィランも同じだ。ヴィランの勝利条件は他には一定時間核兵器を守ることだ」

 

 皆が色々と質問していくので、オールマイトがカンペを使いながら説明していく。

 

「せんせー19人なんで、わりきれないよー私は別に一人でもいいけど」

「そうだね。19人だから、何処かで1人チームになってもらう。そうだね、お望み通り諏訪子君が一人でやってみようか」

「やった」

「必要ないかもしれないけど、頑張ってね」

「うん。妹に任せてよ!」

 

 ここはうろ覚えの原作通り。私が外れただけ。

 

「まずはAチームとDチームだ」

「出久君、一緒に頑張ろう!」

「う、うん。こちらこそ……」

 

 さて、二人の戦いは……原作通りになった。何故って? それは鉄の輪を取り忘れたからだよ! ハンディキャップ戦だよ、ケロケロ! まあ、"個性"を使ったけど、腕は壊れずに指だけ壊れた。成長しているね。

 そんなこんなで私の番がやってきた。私はヴィラン側で、ヒーローが二人。うん、ナイスシチュエーション。

 

 

 ビルに移った諏訪子ちゃんは派手にいっちゃうよ。だって、ヴィランだし遊んでもいいよね。

 

『では、スタートだ』

「けろけろけろ。神遊びのはじまりはじまり~」

 

 まずやることは急いで窓によって外をみる。するとヒーローさん、Bチームが中に入ってこようとしている。

 

「開宴するよ~二拝二拍一拝」

「「!?」」

 

 二人は慌てて上をみる。私は窓から身を乗り出しながら宣言する。ビルの四方を囲むようにレーザーを発射し、ついでに大玉を落として爆発させて礫を放つ。二人は慌てて下がって逃げる。ビルの周りはクレーターだらけとなっちゃった。

 

『諏訪子君、やりすぎだ!』

「大丈夫、大丈夫、あたっても痛いだけで死なないから。それにこれは時間稼ぎ」

「しまった! 乗り込め!」

「遅いよ~。天地開闢の調べをここに」

 

 ビルが土の壁に覆われ、その土から無数の植物が生えてくる。内部構造を徹底的に改造してダンジョンを作る。配置するモンスターはミシャグジさま大中小。あと、植物の達。準備が完成したので、入口に鳥居を設置する。

 

「さあさあ、ヒーローさん達。私が作った諏訪迷宮にようこそ。歓迎するよ! でも、ここは私の領域だから、気を付けてね。さもないと、祟られるよ」

「ふん、いくぞ」

「ああ」

 

 二人が中に入ってきたので、テーブルを作ってその上に茶葉と木のコップを作って緑茶を入れつつ、木の実をかじる。

 

『諏訪子君、授業中なんだけどね』

「えー私がやることは終わったよ」

 

 少しすると冷気が漂ってきた。氷をメインに使っているようなので、氷に強いものを用意する。トレント相手に頑張って倒してきている。けど……って、肝心なことを忘れていたよ。

 

「テステス。轟君、聞こえる? 火は絶対に使わないでね。私、それにトラウマがあって、パニックちゃって本気で殺しにいっちゃうかも知れないから。後、酸素濃度をあげておくから、使ったら死ぬから気を付けるように~」

 

 これでよし。酸素濃度をあげおけば使うことはないよね。

 

『諏訪子君、まじかい?』

「まじだよ。だから、小さな火は大丈夫だけど、5センチを超えると無理。それ以上だと完全に大暴れだよ」

『了解した。それまでに止めるとしよう』

「お願いします」

 

 お腹も膨れたので、土を作ってコネコネして諏訪子ちゃん像を作っていっぱい放つ。あと、回りの温度も全体的にあげておいた。ゆっくりと待っていると、終了2分前で轟君がやってきた。とても疲れている。

 

「ふふふ、ヒーローさんよく来たね。ここが玉座の間であり、神様が御座す場所だよ」

「核はどこだ」

「核? 核なら目の前にあるよ」

 

 多きな木が動いて、その身体の中をみせる。そこにはハリボテの核が置いてある。

 

「さあ、欲しければ私を倒してみせるがいい」

「望むところだ」

 

 駆け寄ってくる轟君に鉄の輪を大量に呼び出してプレゼントする。さらにたくさんの花を作って、種をマシンガンのように発射させる。轟君は忠告通りに氷だけで戦ってくれる。

 

「ははは、楽しいね」

「そうでもない」

 

 無数の氷をステップで避ける。諏訪子様の弾幕と比べたら児戯に等しいからね。逆にこちらが弾幕をプレゼントするとそれの処理にいっぱいいっぱいになる。

 

「これでタイムアップ……」

「いや、俺達の勝ちだ」

「んにゃ?」

 

 窓ガラスが割られて中に障子君が入ってきて、核に手を触れる。

 

「これで俺達の勝ちだ」

「外から登るのは苦労したぞ」

「いいや、まだだよ」

「なに?」

「こういうこともヴィランならするよ!」

 

 私は懐から取り出したスイッチを押す。すると核が破裂して無数の弦が障子君を拘束して首をしめる。

 

「馬鹿な……」

「私が言ったのは核なら目の前にあるといっただけで、これが核なんて一言もいってないよ」

「くっ……」

「さて、これで人質は手に入れた。大人しく降伏してくれる?」

「それは……」

「私に構うな」

「そう。じゃあ、食べちゃえ」

「「え!?」」

 

 核に擬態していた巨大な花が口をあけて、彼を飲み込んでいく。

 

「人質に価値がないのなら、処分するのは当然だよ。あと、こういうのもある。自爆スイッチ~このビルを倒壊させます。てなわけで、アデュー!」

「まっ!」

 

 私は壁を崩して窓から飛び出すと同時に空を飛んで屋上の上へと到着する。そこには更に大きな大樹があり、核の実がなっている。核の実をもぎるとあら不思議。地震だよ!

 

『諏訪子君、本当に倒壊させたりしないよね?』

「ビルは倒壊するけど安全は保証しているよ。それにヴィランが脱出方法を考えていないはずないじゃん。ということで、核を持って私は逃げる!」

『あ、そこから逃げるのはなしだよ』

「ぶーぶー」

 

 しかたないので崩壊するビルを屋上でみている。

 

『タイムアップだ。勝利はKチーム……いや、諏訪子君だ。轟君達は無事かね?』

「無事だよ」

 

 倒壊したビルから花が出て来て、蕾が開いて二人がでてくる。

 

「だいじょ~ぶ?」

「ああ、なんとかな」

「勉強になった」

「相手の言葉を信じたら駄目だよ。フェイクなんていっぱい作れるし、ヴィランなら自爆特攻くらいはしてくるよ。後はそうだね……相手の思惑通りに進ませたら駄目ってことかな。ちなみになんの障害物もなく、一直線で核までいける楽ちんルートも用意してあったんだよ」

「なんだと」

「本当かよ」

「うん。言ったよね。神様の領域だって。開演・二拝二拍一拝だって。それに鳥居もちゃんと用意してあるし。つまり、ちゃんと礼節に則っていたら、苦労せずに勝利できました~」

 

 あっ、二人が項垂れた。どれが真実で、どれが嘘か。しっかりと判断しないと痛い目をみるってことだよね。

 っと、空を飛んで沢山の木の実を収穫。轟君達にも配って皆のところに戻る。

 

「諏訪子、やりすぎよ」

 

 皆がかなり引いている。でも、気にしないよ。だって、気にする必要もないから。

 

「え~そうかな~? 祟ってないだけまだ甘々だよ? 本気の諏訪子ちゃんなら、中にすら入らせないもん」

「さて諏訪子君はやりすぎだが、彼女が言っていたことは事実だ。自爆はともかく、フェイクや逃げる用意をしているなど基本中の基本。しっかりと覚えておくように。情報の選択によっては今回のようなことが起こるからね。では、次、行ってみよう!」

 

 お姉ちゃんの相手は透明の人と空手っぽい人。でも、二人共相手になっていなかった。お姉ちゃんが狭い中を高速移動して、気化させた麻痺毒をばら撒いてさっさと捕まえてしまった。

 

 

 

 

「けっろ、けろけろ、蛙の子。諏訪の国からやあてきた~」

「やめなさい」

「は~い」

「でも、ご機嫌ね」

「うん。だって、久しぶりに"個性"を思いっきり使って遊べたからね」

「そうね。私も思ったより、強くなっていたわ」

「弾幕ゲーム、一緒にやってるからね」

「確かにそれで回避技術と高速移動、それに命中精度もあがっているわ」

「今日もやろうね」

「ええ。でも、緑谷君だったかしら。あの子の"個性"、オールマイトに似ているわね」

「だよね。これからが楽しみだよ」

「ねえ、どこまでが事実なの?」

「少なくとも、私に残された時間が少ないというのは事実だよ」

「そう……」

「でも、大丈夫。私が私になるだけだからね」

「……そう、ね……」

 

 

 

 

 

 



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修正

 

 

 蛙吹梅雨

 

 

 

 私が私になるだけ。そう諏訪子はいうけれど、本当にそうなのかしら? 諏訪子の話が本当なら、相手は数百年を軽く超えて生きている存在。そんなのと融合して人の意識が残るの?

 そんなことはありえない。でも、これは私の責任。あの時、私が諏訪子から離れたのがいけなかった。

 

 小さいころ、諏訪子と私の立場は私が妹だったの。諏訪子は2歳で言葉を話し、四足演算までできていた。漢字の読み書きもすぐに覚えて完璧だった。

 それはもう天才や神童とうたわれて将来を期待視されていたわ。でも、逆に私は落ちこぼれや妹の絞り粕とか言われたこともあったのよね。

 

 だから、私は四歳の時に"個性"が発現し、諏訪子に"個性"がなかったことに少しほっとしてしまった。それからの評価は逆転した。どんなに諏訪子が賢くても、"個性"がなければ評価されない。それからの私は少し調子にのってしまった。

 友達もできて、楽しい日々が始まった。でも、逆に諏訪子からは友達が離れていったのよね。

 

 そして、あの日。諏訪子が私と一緒に帰ろうと手を差し出してきた。今思えば、何かを感じていたのかもしれない。それでも、私はたいした用事もないのに諏訪子の手を取らなかった。

 家の外をふらふらしてから、帰ると家にいるはずのお母さんも誰もいなくて不思議に思っていると、電話がして諏訪子のことを知らされた。急いで病院に向かうと、全身火傷で集中治療室に寝かされている諏訪子をみた。

 

 治療が終わり、退院してから諏訪子は毎日、夜中に悲鳴をあげて目覚めている。昼間でも激痛で悲鳴をあげている。傷は完治していても、心の傷が治っていないらしい。

 それでも、諏訪子の悲鳴で近隣住民から苦情がでて、諏訪子は人里離れたところに住んでいるおばあちゃんのところに引っ越すことになった。私達はついていこうとしたけれど、それは諏訪子が拒否した。1歳になる幼い弟の五月雨がいたからもある。

 諏訪子がおばあちゃんに引き取られてからしばらくして、諏訪子は宗教に嵌っていた。それにおばあちゃんの家にいった時は幼い弟の五月雨や妹のさつきの面倒をみてくれていたので、順調に回復しているように私達は思っていた。でも、それは間違いだったのよね。

 

 中学二年生の時、諏訪子が行方不明になって回復しているなんて、間違っていたことをはじめて知ったの。ただ、私達に心配をかけないためにやせ我慢をしているだけだった。

 

 行方不明になった諏訪子の手掛かりを一生懸命に探し、諏訪湖へと潜って手掛かりをみつけたけれど、それは諏訪子が死んでいることを裏付けていた。それでも身体が見つかるまで諦めきれずに必死に探していった。

 そしたら、半年後に諏訪子は帰ってきた。ただ、帰ってきた諏訪子をみた時には理解してしまった。諏訪子は前の諏訪子じゃない。

 抱きしめた身体は異様に冷たくて、不気味な雰囲気を身に纏っていた。けれどすぐに私達のしっている諏訪子になった。

 それから話していても、やっぱりどこかおかしい。それでも諏訪子は諏訪子に違いなかった。何処か行ってしまわないように、抱きしめて眠ることにしている。

 

 

 

 

 翌日。ホームルームの時間となって相澤先生が話していく。

 

「爆豪はこれでいいとして。緑谷はまた手を壊したのか。さっさと"個性"のコントロールをするように」

「はい」

「で、一番の問題は……蛙吹妹」

「ふえ?」

「お前、火がだめなのか?」

「そうだよー。パニックになってどうしていいかわからなくなって、この子達が私を守るためにコントロールを外れて近づいてくる人を全部襲っちゃうの。言い聞かせている人は大丈夫だけど」

「しゃれにならねえな、おい」

 

 諏訪子の周りに沢山でてきた白い石の蛇達。一体一体が強力な"個性"を持つ神獣として生み出されているのよね。噛まれたら呪われて腐っていくから、本当に危険。ミシャグジさまだけらしいけれど、"個性"を持つ生物を生み出せるとか、本当に神様の領域の力よね。

 

「というか、さっさと治せ。そうじゃなきゃヒーローになんてなれないぞ。レスキュー訓練もあるからな。何より危険すぎる。救助にいったはずが、ヴィランよりも被害だしてちゃ話にならん」

「あーうー」

「というわけで、お前は授業のあとに特別授業だ。詳しい内容はオールマイト先生に任せてあるから、そっちで話してくれ」

「はーい」

 

 諏訪子のことを治せるならぜひ協力してほしいわね。

 

 

 

 

 



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修正

 

 

 

「さて、突然だが……委員長を決めてもらう」

「「「くそ学校っぽいのきたぁ!!」」」

 

 委員長を決める。それはヒーローを目指す上でリーダーシップを磨くために有効な手段らしい。内申点もあがるしね。というわけで、私以外の人が手をあげて希望する。私はぶっちゃけ、どうでもいいんだよね。

だって、委員長って感じじゃないもん。諏訪子ちゃんが委員長とか、学級崩壊まったなしだよ! しかし、関わらないのは()()()()()。諏訪子様には私を通して見てもらっているんだから、面白くしないといけない。これは私の()()だよね。

 

「はいは~い! 注目だよ!」

「ん?」

「なんだ?」

 

 私がミシャグジさまを呼び出して、頭に乗って誰よりも高い位置になる。

 

「私以外のみんなが希望している委員長だけど、ヒーローは人気商売でもあるのは知ってるよね。だから、ここは多数決にしようよ。客観的にどう思われているかわかるしね」

「それは確かにその通りですね」

「俺も賛成」

「ぐっ、私が言おうとしたことを……」

「それで、諏訪子のことだから普通にやるつもりはないよね?」

「うん。まず、委員長に相応しいと思う人を書いてもらうの。た・だ・し、自薦は無し。自分以外の名前を必ずかくこと。投票者の名前も書いてもらうからね。私は参加しないから、誰が誰に投票したかもちゃんと黙ってるよ~」

「なんでだよ」

「ふざけんな!」

「いや、これは当たり前のことだよ。他者をちゃんと評価できない人に委員長が務まると思うの? 委員長なんだから、公平にやってもらわないとね。でも、これだけじゃ面白くない。今から10分間の時間を設け、自由に考えて行動することにするの。つまり、説得や賄賂、取引を行って票を集めるんだよ」

「「「黒い!」」」

「つまり、選挙活動ということね」

「その通り! じゃあ、頑張ってね。私は投票用紙を作ってるから」

 

 ノートをハサミで切って用紙を作っていく。

 

「おい、出久! 俺に入れろ!」

「ええ!?」

「是非私に!」

 

 思いのほか、面白いことになっている。しかし、ヒーローを目指すだけあって、賄賂とかはないようだよ。残念だね。

 

「諏訪子」

「お姉ちゃん、どうしたの?」

「誰にいれるの?」

「私? 私はお姉ちゃんか出久君かな。でも、たぶんお姉ちゃんだね」

「そう。説得するまでもなかったのね」

「うん」

 

 さてさて、結果はどうなるかな? 書いてもらった用紙を受け取り、集計していく。くっくっく、誰も気づいていない。この私がイカサマをしないなんて言っていないということを。けろけろ。

 

「じゃあ、結果発表~! 一位は緑谷出久君四票だね! 二位はお姉ちゃん、蛙吹梅雨ちゃんだよ!」

 

 結果を発表したあと、紙はさっさとミシャグジさまにパックンちょしてもらう。証拠隠滅完了。

 

「ではでは、お二人さん挨拶をどうぞ!」

「えっと、緑谷出久です。僕なんかでいいのかはわからないけれど、頑張ります」

「蛙吹梅雨よ。せいいっぱい務めさせてもらうわ」

 

 さてさて、これでお姉ちゃんと出久君にアシストをしてあげた。いい仕事したよね。

 

 

 

 そう思っていたのだけれど、お昼に騒ぎがあって……出久君が委員長を辞退して、飯田君になっちゃった。って、この展開って原作通りじゃん! やばい、忘れてた。えっと、えっと、この後は確か襲われるんだっけ? ん~ちゃんと覚えてないけど……まあ、どうにかなるよね。

 

「さて、ホームルームは以上だ。ああ、蛙吹妹は生活指導室にくるように。そこでオールマイトが待っている」

「は~い。お姉ちゃんはどうする?」

「一緒にいくわ」

 

 私はホームルームが終ってから、お姉ちゃんと一緒に生活指導室へと向かう。扉の前に到着して、ノックする。

 

「開いてるよ!」

「「失礼します」」

 

お姉ちゃんと一緒に部屋の中に入るとオールマイトが待っていた。

 

「来たね。とりあえず座ってくれ」

「「はい」」

「さて、来てもらったのは蛙吹少女の火についてだ。火が駄目だというのはヒーローにとって致命的になる。トラウマの克服をしてもらうことになるが、いいかね?」

 

私は身体がビクッとして震えだすけれど、お姉ちゃんが手を握ってくれて少し落ち着けた。

 

「はい」

「では、まずお願いするのは相澤君が言っていた例外に私も例登録してほしい。もし、君が暴れた時に押さえる役割になるからね」

「確かに必要よね」

「うん」

「ありがとう。それで訓練の仕方なんだが、これは簡単にこれを使おうと思う」

 

そう言ってオールマイト先生が取り出したのはロウソクとマッチだった。

 

「まずは火に慣れるということかしら?」

「そうだよ。それとどこまで耐えられるかを調べる意味もある」

「頑張る」

「じゃあ、火をつけるのはお姉ちゃんの方に頼めるかな?」

「落としたら危険だものね」

「お願い」

 

お姉ちゃんがマッチの火をつけてくれる。これぐらいならまだ大丈夫。それをロウソクにしてくれる。これも大丈夫。すごく怖いけれど……でも、ここからどうするの?

 

「では、火に近づいてくれ」

「……あっ」

 

私はあまり近付くことができなくて、何度も訓練を繰り返した。

 

 

 

 



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修正

 

 

 次に気付いた時、周りはとても大きな建物で影になっている場所だった。私はすぐにそこがどこだかわかった。小学校にあった校舎と体育館の裏で、焼却炉があるくらいしかない。手をみれば、小さくなっている。

 

「よぉ、みつけたぞ」

「へへへ」

「こんなところに隠れてやがったか」

 

 こいつらから、私は逃げてこんなところまできたんだった。三人は私を囲むように移動してきて、逃げ道を防がれる。これからの展開も前は何回も見てきた。でも、彼等の名前は思い出せない。

 

「こいつ"無個性"の癖に生意気なんだよ!」

「せっかくだから、"個性"の実験台にしようぜ」

「いいな、それ」

「じゃあ……」

 

 炎人間の"個性"をもつ子が、身体中から炎をだして近づいてくる。私は恐怖で動けなくなり、しゃがみ込みこむ。

 

「おい、動けないように縛れ」

「おっけー」

 

 地面から植物の蔦が生えてきて、私の手足を縛って焼却炉に貼り付けにしてくる。だんだんと近づいてくる熱さに悲鳴をあげながら、逃げようと暴れ回る。それでも逃げられずに炎の手が私の顔に近付いてくる。

 

「やめてっ、やめてっ! 熱いっ、熱いのっ! 死ぬっ、死んじゃうからっ!」

「この程度で死ぬかよ。そういや、○○のは面白い"個性"だったよな」

「ああ、俺の"個性"はペインだ。対象の痛覚を何倍にも引き上げて、持続性を持たせるって聞いたぜ」

「使ってみようぜ」

「そうだな」

「やっ、やめてっ! あやまるからっ、なんでもするからっ!」

 

 どんなに泣き叫んでも、許して貰えずに顔に触れられる。すると、身体中が痛くなってくる。

 

「よし、どんな感じか試すぜ!」

「おうよ」

「ひっ!? あっ、あぁ……ぎぃゃあああああああああああああああぁあああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ‼‼‼ あづいぃいいいいいいっ‼‼ 痛いぃいいいいぃぃぃぃっ!?」

 

 身体を焼かれる激痛で意識を失っても、直ぐに痛みで覚醒して、また痛みで気絶していく。そんな私を楽しそうに笑いながら見詰めてくる男の子達。

 

「おい、ちょっとやりすぎたかも……」

「焼却炉に入れちまおうぜ」

「そうだな……燃やしちまえばいいだろ」

 

 焼却炉に投げ込まれ、炎を放たれて私は燃えていく。

 

「何をしているのっ!」

「やべっ!」

「逃げろっ!」

「今はそれどころではないわね。大丈夫、私がきたから」

 

 焼却炉ごと吹き飛ばされ、私は炎の中から救助されてそのヒーローの人に助けられた。

 

 

 

 次に気が付いた時、進路指導室のソファーに寝かされていた。周りには私を守るかのように沢山のミシャグジさまが集まっている。

 

「大丈夫かい?」

「う、うん……」

「そうか。それはよかった。しかし、よもやあのようなことがあったとは……しかし、彼女は……」

「本当に諏訪子が助かっていたのは奇跡よ」

 

 お姉ちゃんが震えている私を抱きしめてくれる。それでちょっとは落ち着いてきた。私も詳しく覚えていない内容だった。詳しく聞くと、お姉ちゃんがオールマイト先生に事件のことを私が気絶している間に話したみたい。

 

「原因はわかった。解決方法は火に慣れることしかない。大丈夫かい?」

「やる。お願いします」

「諏訪子、大丈夫なの?」

「うん。何時までも克服できないのは嫌だしね」

「やる場所は指定させてもらうよ。人がいるところだと危険だからね。それと先生の言うことには必ず従うように」

「はい」

 

 それから、何度か訓練してから家に戻るけどやっぱりうまくいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 その日、家に帰って眠ると諏訪子様と早苗お姉ちゃんが向かえてくれた。

 

「悩んでいるみたいですね。どうしたのですか?」

「実は……」

「トラウマの克服だよ。全身焼かれたからね~」

「酷いですね……克服ですか。任せてください。妹のためにお姉ちゃんが人肌脱いであげましょう」

「え?」

「がんばれー」

 

 気が付くとそこは校舎裏みたいな場所へと戻っていた。じきにあの三人がくると思う。でも、その前にやらないといけない。

 

「諏訪子様、力を貸してください……」

 

 お祈りをしてから、頬っぺたを叩いて気合を入れる。

 

「いいよ、任せて」

「っ!?」

 

 後ろから抱きしめられているような感じがして、振り向くとそこには私と同じ顔をした諏訪子様が不敵な笑みを浮かべていた。

 

「ほらほら、がんばれがんばれ」

 

 諏訪子様に励まされながら、身体の中にいるミシャグジさまを意識して、力を引き出していくイメージをしていく。でも、上手くいかない。もたもたしているうちに三人が来て、同じ展開になった。

 

「もう一回!」

「ええ、わかりました。何度でもやってあげますよ」

「頑張って」

 

 何度もチャレンジして抵抗していくと、次第に力を出せるようになってきた。肝心だったのはイメージ。自分が弱い"無個性"の蛙吹諏訪子じゃなく、"土地神の頂点"である洩矢諏訪子であるとイメージすること。つまり、未来の英雄さんがいっていた最強の自分をイメージする。それが大事だったんだね。

 

「よぉ、みつけたぞ」

「へへへ」

「こんなところに隠れてやがったか」

 

 やってきた三人を睨み付け……いや、諏訪子様ならきっと笑う。実際、私の後ろから抱き着いている諏訪子様も笑っている。だから、私も笑いながら()()()()()()()

 

「逆らう気か?」

「いいぜ、そのほう面白い」

「そうだな。まずは捕まえるか」

 

 地面から蔓が伸びて、私を拘束しようとしてくる。それを地面を踏みつけて空へと飛び上がって避ける。

 

「なに?」

「呪って、祟って、殺し尽せっ!」

 

 私の言葉に地面から無数のミシャグジさまが津波のように現れて、彼等を飲み込んでいく。

 

「……前の私とはこれでおさらばだよ。だから、殺してあげる」

 

 両手を合わせて力を発動する。背後に光り輝く二つの輪を呼び出し、重ね合わせる。そこから光り輝く水色の弾と米粒弾を無数にくねらせながら散布する。後ろから抱き着いてくれていた諏訪子様が私の中に入ってくる。一緒にするのは決めている。

 

「『土着神・ケロちゃん風雨(トラウマ)に負けず』」

 

 ゲームでは気合避けを要求されるほど難易度が高い弾幕だけれど、見た目の美しさはかなりある。散布された弾幕で地面に弾き飛ばされ、衝撃で浮き上がってきたところをまた地面に弾かれる。以下、エンドレス。私が味わった苦しみを少しは思い知るといいよ。

 少したら、動かなくなったので踏みつけて地面に埋没させながら、回りを溶岩へと変えて燃やし尽くしてあげる。もう一人は木の中に取り込んで、不細工なオブジェへと変える。最後の一人はミシャグジさまにかじられてゆっくりと食べさせて恐怖と苦しみを味わってもらう。なんだか、気分もスッキリして、とっても楽しくなってくるよ。

 

「はい、克服おめでとうございます。まあ、これで耐えるくらいはできるでしょう。これからも努力してくださいね」

「うん。早苗お姉ちゃんも諏訪子様もありがとう」

「けろけろ。楽しめたからぜんぜんおっけーだよ」

 

 その後はゆっくりまったりとして起きるまで、膝枕をしてもらった。

 

 

「おっはよー」

 

 元気よく、飛び起きるとお姉ちゃんがベッドで眠っていた。周りをみると、既に夜になっているのか、暗くなっている。

 

「あれ?」

 

 日付をみると数日が経っていた。下に降りてみるとお母さんとおばあちゃんもいて、抱き着かれて事情を知った。どうやら数日間眠りっぱなしだったみたい。

 それから、精密検査を受けて退院してから火を体験する。結果は大丈夫だったよ。ちょっと身体が震えて、ミシャグジさまが周りに出てくるだけで、大人しくしてくれてるし、大丈夫。

 

 

 

 

 

 

 



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修正

 

 

「あーうー」

 

 縁側に座り、足をブラブラさせながら色々と考える。問題が発生した。それも大きな問題なんだよね。

 

「まっ、どうでもいっか! 楽しければいいんだしね!」

 

 よっと、縁側から飛び降りて両手をぐーぱーぐーぱーして、確かめる。あちらの()から流れ込んでくる力も充分に溜まっている。移動するときにミシャグジ達が土壌を改造したから、それに対する感謝の気持ちとかが流れてきているんだよね。

 

「よし、決めた! めいいっぱい遊ぼう!」

「随分と楽しそうじゃないか。何をして遊ぶの?」

「あ、萃香じゃない。どうしたの?」

「久しぶりにアンタと戦おうと思っただけ。天界も飽きてきたしね」

「じゃあ、久しぶりに遊ぼうか」

「お、乗り気だね」

 

 両手に鉄の輪を呼び出すと、萃香が構える。互いに神気と妖気を解放して対峙する。

 

「前よりも元気いっぱいじゃないか」

「いいの、()()()いるからね」

「そうかそうか。じゃあ、いっちょやるか」

「スペルカード? それとも、ガチの殴り合い~?」

「もちろん、殴り合いで……」

「やめてください。洩矢神社を崩壊させるつもりですか!」

 

 私達の間に早苗が入ってきて、とめてきた。あ~普通なら止まるんだけど、萃香が相手だと逆効果だよ?

 

「人間風情が鬼の喧嘩に割り込むとは、いい度胸じゃないか」

「駄目なものは駄目です。やるなら別のところでやってください。まあ、その場合は用意したとっておきのお酒を料理に使いますが」

「駄目~! 萃香っ、とりあえず遊びは後回し!」

「くっ、喧嘩は止めだ。まずは酒!」

「では、二名様ご案内です」

 

 神社の中で早苗が用意したお酒を飲みつつ、萃香と色々と話していく。

 

「そういえば、力が増えているようだけど、どうしたの?」

「ん~信仰を集めているだけだよ」

「ほほう。まあ、飲め飲め。鬼の酒だ。極上だよ」

「おっとと」

 

 杯に酒を注いでもらい、それを飲んでいく。相変わらず美味いね。

 

「で、面白いことをなんかやってんだろ? 私も混ぜてよ」

「え~」

「退屈そうにしていた諏訪子が、楽しそうにしているんだ。どうせ奇跡でも使ってなんかやってんだろ?」

 

今、萃香まで入ってくると非常に困るんだよね。今は見逃してもらっているけれど、覗き見賢者が境界を弄って繋がりを消してきたらまだ、私との融合は完全じゃないあの子が死んじゃう。

もう少し、時間を稼がないといけない。せめて、あちらの私が洩矢神として活動できるくらいまでは安定させないと。契約不履行なんて、神様として認められないよ。そうなると、力をもっと使わせるのがいい。

でも、相手になるのはオールマイトとかいうのくらい? 彼は弱ってる。治してあげてもいいけど、またそこまでの力はだせない。

 

「諏訪子?」

「ふふふ、いいのがいるじゃない。ねえ、暇なんだよね? 退屈なんだよね? 刺激を求めているんだよね?」

「そうだけど」

「混ぜろっていったよね。いいよ、混ぜてあげる♪」

 

 笑いながら、萃香の手をとる。獅子は我が子を谷に突き落とすというし、神様である私は我が子や人に試練を与えよう。人類が超えるべき難敵や災厄()をね。一度は超えてきたんだ。また見せてよ。人の輝きを。

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 嫌な予感がして、飛び起きる。

 

「あら、起きた?」

「ん~お姉ちゃん~」

 

 周りをみると、バスの中でお姉ちゃんにもたれかかって寝ていたみたい。そういえば、今はレスキュー訓練を受ける為にバスで移動中だったね。周りでは爆豪君が騒いでる。

 

「もうすぐ着くぞ。いい加減にしとけ」

「「「は~い」」」

 

 ドームの前には13号先生が待っていた。私達は先生の案内に従って中に入る。そこはまるでUSJで、テーマパークみたい。まあ、名前もUSJなんだけどね。というか、ここが私が知っている原作の終わりなんだよね。

まあ、知らない事件も報道されているんだけど。近くの街でヒーロー事務所が襲われて、ヒーローが倒されたりする事件とか物騒なものが多い。

 

「さて、始める前にお小言を一つ二つ三つ……」

 

 13号先生の先生の話が始まると、麗日さんが物凄く頷いている。

 

「私の力はブラックホール。なんでも吸い込んで塵にする力です」

「それで災害救助をしているんだ……ですよね」

「はい。ですが、この力は使い方を間違えれば簡単に人を殺せる力です。それは皆さんも変わりません。超人社会ではそれぞれが強い力を持っています。資格制度にして"個性"を制限していますが、それも完全ではありません。ここで皆には自分の"個性"が人を守る力になるということを学んでいただきます」

 

 13号先生の話の間、私はストレッチを行う。やってくるのはわかっている。なら、叩き潰すだけ。

 

「よし」

「どうしたの?」

「お姉ちゃん、気を付けてね」

「?」

 

 電球が壊れて光が消えていく瞬間、中心部に向かって私は走る。

 

「おい……ちっ、そういうことか! 13号、生徒を守れ!」

「先輩っ」

 

 到着した私は先制攻撃として丁度、出て来た手をいっぱいつけた人をぶん殴る。

 

「こんにちは、そしてさようならだよ!」

「え?」

 

 あたれば死ぬ拳が顔に命中する直前、何かが現れて私を蹴ってくる。その蹴りの威力はすさまじく、腕が折れて山のほうへと吹き飛ばされた。

 

「痛いな~」

 

 立ち上がると山の斜面には大きなクレーターができていた。数百メートルは蹴り飛ばされたみたい。まったく、私の計画が台無しだよ。指揮官を潰して、脳無を動けなくしようとしたのに。あれも脳無なのかな? まあ、お姉ちゃんを助けにいくとしよう。そう思ったのだけれど、立ちくらみがして一瞬だけ視目の前が真っ暗になる。

 

「しかし、別世界というのも面白いもんだね。そうだろ、もう一人の諏訪子」

「っ!?」

 

 視界が戻って声がした瞬間に腕をクロスさせて、飛んできた女の子の蹴りをガードする。今度は地面に引きずられた足の跡を残しながらだけれど、止まれた。

 

「そっちこそ、なんでここにいるのかな? 鬼がこんなところに来ていいと思っているの?」

 

 相手の少女は薄い茶色のロングヘアーを先っぽのほうで一つにまとめている。真紅の瞳を持ち、その頭の左右から身長と不釣り合いに長くねじれた角が二本生えている。服装は白のノースリーブに紫のロングスカートで、頭に赤の大きなリボンをつけ、左の角にも青のリボンを巻いている。紫の瓢箪を持ち、三角錐、球、立方体の分銅を腰などから鎖で吊るしている。

 

「思ってるさ。土地神がいるんだから、私がここに居ても問題ないでしょ。さあ、やろうじゃないか、諏訪子。こっちなら暴れても結界が壊れる心配もない。だから、思う存分、暴れられるってもんだ」

 

 一瞬で姿が消えたと思うと、目の前で拳を放ってきた。私は後ろに飛びながら、下からミシャグジさまを呼び出して襲わせる。でも、軽く殴られるだけでミシャグジさまは消滅させられる。それでも時間が稼げた。

 

「天地開闢っ!」

 

 大量の弾幕を生み出して放つ。同時に鉄の輪を呼び出して、拳を防ぐ。鬼なだけあって力が強い。それに格闘経験値も相手のほうが高いから、どうしようもない。

私も私から教わっているけれど、まだまだ鬼にはかなわない。防いだり、避けたりするほど、クレーターが発生して、山が崩れていく。

 

「流石にこの程度は持つか」

「これでも、諏訪子だからね。伊吹萃香」

 

 地面から大量の槍を出現させ、串刺しにするも、相手は霧になって抜けてくる。彼女の力は密と疎を操る程度の能力。あらゆるものの密度を自在に操る。物質は密度を高めれば高熱を帯び、逆に密度を下げれば物質は霧状になる性質がある。この特性を使い彼女は霧になることが出来る。この時でも体当たりなど物理的な干渉は可能なはずなんだけど、まるで効いていない。

 

「なら、もう少し力をだそうか」

 

 瓢箪に口をつけて中身のお酒を飲んでいく。

 

「というか、なんで敵対するの!?」

「決まってるじゃないか。そっちのほうが面白いからだよ」

「うわ~納得できる理由だよ!」

「じゃあ、いっちょいきますか。ミッシングパワー!」

 

 両手を天に突き出しながら、密と疎を操る程度の能力を利用して巨大化していく。巨大な姿となった彼女は天井を破壊し、容赦なくふみつぶしにかかってくる。

 

「ええ、巨大化には巨大化っ! 土地神・手長足長さま!」

 

 私も巨大化して殴り合う。何度も吹き飛ばされて、回りの施設をお尻で叩き潰したり、手でぺちゃんこにしたりするけど、気にしている場合じゃない。怪獣大決戦、再びだね。

 

「手伝って、ミシャグジさま!」

「いくら集まろうと、無駄無駄無駄無駄っ!」

 

 まとわりついてくる巨大化なミシャグジさまを鬱陶しそうに殴り飛ばしていく。

 

「アンタはこれでもくらいなっ」

「っ!?」

 

 口から炎を吐き、私が炎に包まれる。

 

「いやぁあああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 全力で火を振り払うけれど、それもできずに力も解除されていく。

 

「ちっ、この程度か。期待外れだ。また今度遊んでやる」

 

 私は全力で走って水に飛び込んでなんとか火を消す。それから外にでると相澤先生が手足を折られ、脳無に押さえつけられていた。近くにお姉ちゃんもいて、殺されそうになっている。

 

「っ!?」

 

 横合いから殴られ、頭を掴まれた状態で地面を引きずられる。

 

「さっきはよくもやってくれたよ。お蔭で脳無がいなきゃ死にかけたじゃないか」

 

 髪の毛を掴まれて持ち上げられて、姿がみえる。隣には脳無がいつの間にかいた。やっぱり、私じゃ駄目みたい。胃から湧き上がってくる血を吐きながら、先生をみる。

 

「こふっ。せんせー」

「蛙吹……」

「……消して……」

「お前……」

「……私は、超える……プルスウルトラだよ……皆、助ける……」

「何を言っている。まあいいや。お前は危険だから、ここで死ね」

「ちっ、恨んでくれて構わんからなっ!」

「ん?」

 

 私の"個性"が先生によって消される。停止した心臓から、作られていた血液が流れでて、どんどん冷たくなってくる。

 

「ん? こいつ、死にかけじゃないか」

「……けろけろ……開け、天地開闢の扉……日本を祟れる神様の、降臨……」

「ああ? 狂ったか?」

 

 私は停止し、もう一人の私が動き出す。もう一人の私は脳無の腕を掴むと、彼の身体が、回りが発生した溶岩に飲み込まれて溶けていく。

 

「なんだ?」

 

 脳無を風の刃で斬り刻み、溶岩に溶かしてそれをミシャグジさまに飲ませていく。現れた私は首を鳴らしながら帽子を掴んで目深にかぶる。

 

「さあ、者共。祟られる覚悟はできたかな? ここからは……神話の世界だよ」

 

 数万数億のミシャグジさまが現れる。そのタイミングで扉が破壊され、オールマイト先生が入ってきた。

 

「もう大丈夫。私が来た」

「ちっ、このタイミングでか。黒霧、撤退だ」

「はい」

 

 オールマイト先生がやってきて、相手は逃げようとしてくる。私は……

 

 

 



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修正

 

 

 

 

「オールマイトの登場のところすいませんが、ヒーローと生徒の皆様。動かないでください」

「けろ~」

「ご、ごめん」

 

 見ると、そこには黒霧と呼ばれる奴が梅雨と緑谷、あとブドウっぽいのを霧で拘束していた。

 

「このままゲートを閉じればお三方は死ぬことになります。そうはなりたくないでしょう?」

「くっ、卑怯な……」

「卑怯は俺達の専売特許だからな」

 

 梅雨と緑谷は殺す訳にはいかない。他のなら別にいいんだけどね。

 

「ちっ」

「黒霧、オールマイトを殺せ」

「そうですね。動かないでくださいよ」

「ああ。アンタが動くよりも俺がこの女を殺す方が速い」

「けろっ」

 

 梅雨の頭にヴィランの手が置かれている。確かにこれなら私達が動く前に殺されるだろう。

 

「くっ、わかった。だから、生徒には……」

「いいだろう。だが、そっちのお前もだ。お前は危険だからな」

 

 オールマイトと私の身体が黒い霧へと沈んでいく。途中で止まって、いよいよゲートを閉じようとしてくる。

 

「ひぃぃぃっ!? く、苦しいっ」

「なっ、なにっ、縮んで……」

「くっ……」

「皆仲良く締め殺してやるよ。約束なんて守るわけないじゃん」

「やっぱりかっ!」

 

 やれやれ、どうやら本気で死にたいみたい。こっちの私が死ぬのはまずいから、皆纏めて殺すか……って、身体が勝手に動いてる? 私の身体が勝手に動いて閉じていく黒い霧を無理矢理押し開いていく。両手が切れて血がでてくる。再生が間に合わない。

 

「……プル……ス……ウル……トラ……」

 

 この子……ああ、そうか。"祟り神の私"はお呼びじゃないってことだね。あくまでもまだ人間ってことか。足掻き続け、妖怪を超え、神を必要としなくなった人間と同じ。そして、それは一人じゃない。

 

「そうだ。こんなところで、終ってたまるか!」

「何を無駄なことを……」

「黒霧っ、避けろっ!」

「何?」

「プルスウルトラぁああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 緑色が掴んだ土を思いっきり投げつける。それは散弾となって黒い霧を襲う。しかし、黒い霧で防がれてしまう。

 

「あぶないあぶない。なっ!?」

 

 背後から現れた爆豪が黒い霧の鉄の部分を殴りつけ、轟が凍らせて動きを止めた。

 

「やっと油断しやがったな」

「爆豪君っ、逃げろっ!」

「何っ⁉」

 

 梅雨を捨てたヴィランが爆轟に触れようとしていた。そこを轟が氷の壁を作って防ごうとする。でも、間に合わないから、身体が勝手にミシャグジを送り込んで盾にする。ミシャグジが崩壊させられていくけれど、これで問題ない。

 

「ゲームオーバーだ。撤退する」

「了解しました」

 

 逃がすか。大量のミシャグジをけしかける。しかし、ゲートを潜って逃げられた。少しは祟れただろうけど……無念。それよりも、梅雨の無事を確認しようか。身体を完全に返すと、辛いだろうに姉に抱きついて無事を確認して泣きわめいていた。まったく、神様から肉体の制御権を微かとはいえ奪い返したくせに……これだから本当に人間は面白いね。

 

 

 

 

 



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修正

(ヴィラン)

 

 

「くそっ、くそっ、なんなんだよっ、あの化け物はっ! オールマイトどころじゃねえ! むしろ、ヒーローよりヴィランだろうがっ!」

 

 なんとか逃げ帰れた。もう少し、あそこに居たら俺も脳無のように殺されていた。ヒーローを目指しているくせにガチで殺しにくるなんて、想定外だ。

 

『お帰り。その様子だと失敗したようだね』

『脳無はどうしたんだ?』

「脳無なら殺された! クソガキにな!」

『何?』

「本当です。それもオールマイトではなく、生徒の少女にです」

『生徒が脳無を殺すなど、にわかには信じられないが……』

「あれは風か? なんかよくわからんもので斬り刻まれて、溶岩みたいなので溶かされて最後には大きな白い石でできた蛇に喰われた」

『それって、もしかしてそいつか?』

「え?」

 

 振り向くと、そこには白い蛇の頭が迫っていた。慌てて両手で首を掴んで粉々にしてやる。すると土くれみたいになりやがった。

 

『興味深いサンプルだ。是非回収するんじゃ』

『いや、その前にそこを捨てるんだ。来るぞ』

「畏まりました」

「ちっ!」

 

 土くれから慌てて飛び退くと、そこに無数の目が現れていた。いや、部屋中に現れている。

 

「お早く」

「ああ……なっ!?」

 

 黒霧の下へと走ると、途中で足が絡まって転んでしまう。転んだ先に割れた瓶があって、顔を切り裂く。急いで向かうが、足の小指をぶつけて悶える。

 

「何を遊んで……」

「違うっ!」

『……白い石の蛇……祖奴を操っていたのは蛙の帽子を被った奴ではなかったか?』

「そうですが……」

『かっかっか。なるほど、なるほど。それは祟りじゃ』

「祟りだと?」

『うむ。祖奴はミシャグジ。祟り神じゃよ。むろん、本来の神ではなかろうが、それと同じ力を持つように生み出された存在じゃろうて』

『報告にあった死人の少女か。彼女のカルテは興味があって取り寄せていたが……』

「とりあえず、飛びます」

 

 黒霧が俺を抱えて逃げてくれる。しかし、逃げる先々で現れて襲い掛かってくる。俺の身にも不幸がどんどん降りかかってくる。なんでタライが落ちてくるんだよ!

 

『無駄じゃろう。ミシャグジならば日本に居る限り、追ってくるじゃろう。一旦、国外に逃亡するのじゃ』

「了解しました」

 

 イギリスに飛ぶと、確かに蛇は居なくなって俺の不幸も止まった。

 

『日本限定のようじゃな』

『もっと正確なデータを集めれば日本でも問題ないかもしれない。休んでから一旦戻ってくれ』

「了解しました」

「ちっ、仕方ない。ああ、そういえば……オールマイトみたいな"個性"を使う奴もいた」

『それは興味深いのお』

『興味深い連中が多いようだ』

 

 ちっ、本当なら今頃、うまくいっていたのに。いや、そもそもあのガキがいなければ……絶対にぶっ殺してやる。まずは家族構成を調べて、人質を取るか。

だが、脳無を殺したアイツは性格がかわったように感じた。後の方なら、人質なんて一切気にしないかもしれない。俺自身が手をだすより、使い捨ての奴で試した方が良いな。

 

 

 

 

オールマイト

 

 

 

 

 連中の襲撃から数日。あれから諏訪子君はすぐに倒れた。今も入院しており、意識不明なそうだ。何時死んでも……いや、彼女の場合は……違うな。彼女はしっかりと今も生きている。それに呼吸もしっかりとしているようだし、きっと大丈夫だろう。

 

「ふう……さて、会議を始めよう。お願いするよ」

 

 校長先生の言葉で、会議室に集まった私達は話始める。

 

「はい。ヴィラン連合と名乗る連中を警察の方で洗ってみましたが、死柄木という名前。触れた名前を粉々にする"個性"。また、ワープゲートの黒霧という者は該当する人物はありませんでした」

「つまり、裏の人間か」

「そうなります」

「しかし、戦いはプロとは言えないな。報告を聞く限り、わざわざ"個性"を相澤に教えたんだろ」

「そうだね。ヒーロー戦で"個性"を教えるのはアドバンテージがなくなる」

「死柄木達のデータは不足しているので、引き続き調査します」

 

 確かに私でもできるが……しかし、これはひょっとするとそこまで悪い子じゃないのか? いや、確か私よりも年上とのことだったな。

 

「それだけかい?」

「蛙吹諏訪子についてです。今回、彼女がまるで襲撃を予想していたかの動きから、確保して尋問してその身体を解明しろと、政府から指令がでたようですが……」

「即刻解除すべきだな」

「そうだろうね」

「ええ、解除されました。命令した者が()()不幸にあって全滅しました。また、彼女を確保しようとした者達も本人や身内に不幸がおきて動ける状態じゃなくなりました」

「まさに祟り神だな」

「ああ、彼等は毎晩、白い蛇に食い殺される夢をみてうなされているようです。あと、地味に足の小指を角にぶつけたり、よく転んだりするそうですよ。特に植物が多いところでは被害が多いそうです」

 

 自己防衛は完璧か。下手に突いたら藪から蛇がでたってところだろうが……本当に祟られるからたちが悪い。もうここまで()()が続けば必然になるからな。

 

「現状、私達にはどうすることもできないか」

「諏訪子少女はヒーローとして成長していっている。このままいけば、人類平和の良き守り手になるだろう」

「平和の象徴が言うと、説得力があるな」

「まあ、それに彼女が協力してくれれば色々とな問題も解決できるだろうしね。食料問題とか、自然環境とか」

「確かにそうですね」

 

 教え導くのが大切だな。それに兆しは見えている。最後のもう一人の諏訪子君の表情は驚きに満ちていた。まるで身体が勝手に動いたかのように。

その後はまるで子供の成長を喜ぶかのような歓喜の表情になっていた。

つまり、もう一人の諏訪子君はどちらかといえば母親といえなくもない。娘にしか興味のない厳しい母親だろうが。しかし、このことから少なくとも関係は良好であり、彼女を消そうとはしていないことが伺える。しかし、一年後にどうなるかもわからない。二人には頑張ってもらわねばならない。

 

 

 

 

 



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修正

 

 

 

 やばい。やばいやばいやばいやばい。やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。なにがやばいって? 目の前に激おこぷんぷんの妖怪の賢者さんがいるのだ。

 ここはあちらの世界とこちらの世界、幻想郷の狭間。そして、今はあちらの私の精神体をこちらで寝かせている。何故かって? 分体にもなっていない半端者が主神である神様に逆らってただで済むはずがない。ちょっと色々と治療しないと不味いのだ。

 

「萃香まで巻き込んで遊びすぎよ」

「でも、萃香も暇だっていってたしね~それに結界に影響ないし、いいじゃない」

「ええ、奇跡的にね!」

「で、萃香はこの空間で一戦やったのよね」

「おうともさ!」

 

 萃香が一瞬で現れた。まあ、最初からここにいるしね。脳無に吹き飛ばされて朦朧とした瞬間にあっちの私の精神をこっちに引きずり込んで、萃香と戦わせてみた。結果は不合格だったみたいだけどね。

 

「異世界への干渉は今すぐにやめなさい」

「「だが、断る!」」

「本気?」

「全面戦争も辞さないよ! 神様としての矜持があるからね! ぶっちゃけ、私をこの子と一緒に向こうに送ってくれるなら、その後は閉じてもいいけどね」

 

 私としては別に消えてもいいんだよね。そもそも、こっちに来たのだって神奈子に誘われてだし。それがなければ消えていたから。

 

「できないわよっ! そんなことをしたら結界に影響があるわよ! まあ、結界に影響がでないうちは黙認してあげる。流石に全面戦争は面倒よ。私が勝つでしょうけど」

「いうね~。今の私は全盛期とは言わずとも、結構強いよ?」

「そうでしょうね。でも、それは一対一ならでしょ?」

「ごもっとも。結界がやばくなったら……いや、そうか。紫、一つお願いがあるんだ」

「改まってなによ」

「力、貸して」

「へぇ……いいの?」

「この子の願いは私になること。私はそれを神様として了承した。だから、お願い。私達の境界を弄ってよ」

「よろしい。不確定要素がなくなるのは歓迎できるわ。それとこの狭間の管理も私が……藍に任せましょう。危なくなったら問答無用で強制的に消去するわ」

 

 藍に丸投げだね。流石に覗き見賢者。式神使いが厳しい!

 

「質問! それって私もこの子で遊んでいいの?」

「ここでならそれぐらいは許可します。さて、後は藍に任せて私は寝るわ。くれぐれも……あ、霊夢に食材を買って渡しておいて。後、修行させておいて」

「ちょっ!? あのぐうたら巫女に修行とか無理難題を言ってくれるね!」

「うるさいわよ。貴女のせいで私の睡眠時間が削られて、霊夢のところにも行けなかったの。責任とりなさい」

「あーうー。了解だよ。萃香と私であっちの私と霊夢を鍛えるよ。食事で釣れば大丈夫だろうし」

「私が諏訪子と霊夢を鍛えるのか?」

「あっちの私だけでも頼むよ。暇つぶしには丁度いいでしょ。なんせ、身体は私と同じだから頑丈だよ。つまり、育成ゲームで遊ぼう」

「そいつはいいな。のってやるよ」

 

 萃香ものってきたし、霊夢も鍛えるから、早苗もいれちゃえ。

 

「ついでだから早苗も鍛えよう。うん、それでいいや」

 

 さて、さてやることをやっておこうか。私達が一つになる日も近い。

 

 

 

 

 

 夢を見た。楽しい夢を。お姉ちゃんと一緒にヒーローになった人助けをしている夢。そして、もう一つはお姉ちゃんが殺されて暴走した私が無数の()()()()()を放ち、人々を食い殺して、祟り殺している私。そちらの私はそのまま日本を黒い大地に変え、おびただしい死体を作り上げた。

 そして、しばらくすると目の前には緑谷出久君が居て、私と戦っている。彼の隣には轟君やクラスメイトの姿が見える。

 でも、私の横には誰も居ない。居るのは私達だけ。ミシャグジと私達諏訪子だけ。そして、最後に出久君とオールマイトに同時に前後から拳を叩き込まれて消し飛んだ。

 

 目を開けると知らない天井がある。視線を横にやると集中治療室のような場所に私はいた。身体には血が滲んだ包帯が巻かれていて、口には酸素マスク。視線をさらにさげるとベッドの横にはお見舞いの品が沢山おいてある。それにお姉ちゃんが椅子に座って眠っていた。

 

「夢か……良かった……」

 

 お姉ちゃんの手を握るとちゃんと脈があり、温かい。酸素マスクを取って、起き上がる。身体を伸ばすと節々が痛いなんてことはなく……むしろ、絶好調だね。元気が有り余ってる。自分でも力が湧き上がってくるのがわかる。今なら島だって作れそう。

 

「まあ、今はこっちだよね」

 

 ベッドから起き上がって、お姉ちゃんを抱き上げてベッドに寝させる。後はお姉ちゃんを抱き枕にしてそのまま一緒に寝ちゃおうと思ったけど、ノックされた。

 

「どうぞ~」

「お邪魔しま~す。って、なっ、なにをしているの!?」

「あ、出久君。女の子の寝込みを襲いに来たの?」

「違うからねっ!?」

 

 どうやらお見舞いにきてくれたようだ。彼の後ろからは麗日さんやオールマイト先生も来ていた。というか、クラスメイトがいっぱい来た。

 

「ん、あら? これは……」

「あ、おはようお姉ちゃん。可愛い寝顔だね」

「……起きたのね。よかった。心配したのよ」

「あははは、ごめんね」

 

 抱き着いて泣いてくるお姉ちゃんを慰めていると、一部の男子の声が聞こえてきた。

 

「うひょー! 手術着がはだけて胸がみえて……」

「ミシャグジ!」

「ぎゃあああああぁぁぁぁぁっ!!」

「けろけろ」

 

 締め付けてがじがじしてやる。でも呪いはしない。

 

「まったく。ほら、男子はさっさと出る。諏訪子さん、着替えましょう」

「そうだね。そっちの方がいいよ。服はある?」

「そこに置いてあるわ」

「オールマイト先生、医者と看護師さんを呼んできてください」

「任せてくれたまえ」

「じゃあ、またあとで」

「はいはい~」

 

 手術着を脱ぐと、お姉ちゃんがタオルで汗を拭いてくれる。

 

「私も手伝うよ」

「ありがと~」

 

 緑と白の寝間着を着てようやく落ち着くころには先生がやってきて、検査を受けていく。お姉ちゃん以外の人は帰り、代わりにお母さん達がやってきた。検査が終わり、色々と教えてもらった。それでわかったけれど、驚いたことに結構な日数を寝ていたようだね。

 

「失礼します。私は警察の塚内という者です。少し話をいいですか? 不味ければ出直しますが」

「大丈夫?」

 

 お母さんが聞いてくる。別に身体に異常は無いし、問題ないよね。

 

「平気だよ」

「わかったわ。どうぞ」

 

 お姉ちゃんは私の横に座って、手を握ってくれる。

 

「まずは意識が回復してよかった」

「ありがとうございます。それで、警察の人がなぜ?」

「襲撃事件のことだけど、君は覚えているかな? 脳が剥き出しになったヴィランのことを……」

「脳が向き出しのヴィラン……?」

 

 ん~と、多分、あっちの私だよね。襲撃ってことはヴィランの……あ、思い出してきた。

 

「確か、ミシャグジに飲ませたんだった」

 

 あれ? 普段はミシャグジさまって言っているのに今は普通に呼び捨てにしちゃう。これはいよいよ、融合が進んできたのかな?

 

「思い出したようだね。君は二重人格ということはわかっている。だが、記憶があるなら……」

「ミシャグジ」

「何をっ!?」

 

 大きなミシャグジを呼び出すと、刑事の人が驚くけれど気にしない。

 

「ぺっ、して」

 

 ミシャグジがペッとすると口の中から大きな人がでてくる。溶岩を溶かすと身体がどんどん再生していく。

 

「おいおい……生きているぞ……」

 

 警察の人が脈を取っていく。慌てて人を呼んで確認していくけれど、多分生きてるよ。その後、脳無の生存が確認され、精神も精神系の"個性"を持つ人が調べて元から色々とされていることが判明したみたいで、私は厳重注意ということになった。ヒーローはヴィランを殺したら駄目ということだね。気を付けないと。私の"力"は強すぎるから。

 

 

 

 

 

 



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修正

 

 

 

 病院を退院した私はお姉ちゃんとお母さんとお父さん。妹のさつきと弟の五月雨、おばあちゃんと合流して家で数日を過ごした。もっとも、皆は学校や仕事があるので基本的におばあちゃんと一緒にいる。

 自宅療養中の私は学校にいけない。なんとか、雄英体育祭には復帰できる予定。身体は問題ないけど気分の問題がある。この頃、長い、長い夢をみるので、睡眠時間が多いのだ。だから、基本的に落ち着く諏訪大社や諏訪湖にいってで過ごしたりしている。

 

 それはおいておいて諏訪湖でぷかぷか浮かびながら雄英体育祭のことを考える。体躯祭は"個性"出現後、画一的ルールを適用するオリンピックは衰退し、形骸化してしまった。現在はこの雄英体育祭が日本においてオリンピック級の注目度を誇る一大イベント。

 全国ネットテレビ中継はむろんのこと、プロヒーローも将来のサイドキック候補を探すため注目している大きな大会。他にもヒーロー育成校の体育祭はあれど、セメントス先生やリカバリーガールなどがいる雄英が一番有名。

 ステージは学年ごと3つに分かれており、例年の注目はもちろん経験豊富な3年生ステージなんだけ、今回は私がとっても目一杯楽しんで面白くしてあげる。とても楽しみだよね。ケロケロ。そのために準備しないといけない。

 水中で身体の調整をする。意識と身体を擦り合わせていくと、融合はかなり進んでいることがわかる。私の身体は調子が良く、どこまでも潜っていける。なにより、帽子と離れても普通に活動できるようになった。

 周りが真っ暗になって水圧で身体が押さえつけられる中でも行動が普通にできる。肺活量も増えているみたいで、まだ余裕がある。適当にお魚を捕まえてお土産を持って諏訪湖からでる。

 次の日は森で森林浴。大地と一体になるような感じで力を集めては放出していく。

 

「け~ろけろけろ、蛙の子。諏訪の国からや~てきた~」

 

 歌いながら山の山頂にある原っぱで寝転んで、ぼーと空をみる。手をあげてみると、小さな手がみえる。この小さな手にとてつもない力が宿っているなんて信じられない。もう思い出せない前世。"個性"を得て……諏訪子になることで私の前の記憶はどんどん消えていって、今はもう完全に消えた。その代わり、あるのは今の私の記憶と幻想郷の中にいる私の記憶。

 

 生誕、農作、軍事、様々な事柄の祟り神であるミシャグジ様を統括していた私は洩矢の王国を作り出した。

 ミシャグジ様は少しでも蔑にするとたちどころに神罰を与える恐ろしい神様であり、コントロール出来るのは諏訪子()だけ。だから、私への信仰は圧倒的で、ヤマトの神々の国譲りが起こる前までは神であると同時に一国の王として王国を支配していた。

 しかし、そんな私の元に、大和の神々の魔の手が迫った。古事記にも謳われる国譲り。

 破竹の勢いで勢力を拡大する大和の神々は、単一の神話を持って全ての国々を統一するという大望のため、私の地をも併呑しようとした。この侵略行動に対し、私は国の王として天津神の先兵である神奈子を迎え撃った。

 私は当時としては最先端の兵器であった鉄製の武器を持って抵抗したものの、結局は神奈子の圧倒的な力の前に敗北。潔く王国を明け渡し、隠居生活に入った。

 しかし事態はそうもスムーズに行かなかった。嫉妬深く執念深い祟り神であるミシャグジの恐怖を忘れることが出来ない王国の人間達は、新しくやってきた見知らぬ神を受け入れようとしなかった。

 結局、ミシャグジの影響力を越えることが出来なかった天津神達は、この王国を手中に収めることを諦めた。そのかわり、元々の支配者であった私と交渉し、自分が表向き実務を取り仕切り、実際は諏訪子がミシャグジの恐怖を持って国を治める体制を提案してきた。私はその提案に乗った。これで表向きの為政は神奈子が、実際に政を執り仕切るのは私が、という、世にも珍妙な二巨頭体制が実現された。

 しかし科学万能の時代がやってくると、信仰の正当性以前に、神に対する信仰そのものがどんどん失われていくようになった。すでに隠居の身である私はこれをさほど気にしていなかったが、これに焦った神奈子は、事前の相談もなく、勝手に神社を湖ごと幻想郷に持って行くという荒業を実行した。あちらの私も第二の人生を楽しむことのようにした。

 

「んにゅ」

 

 気が付けば眠っていた。私は同じ夢を起きてから毎日見ている。夢として追体験を行っているのだと思う。夢を見る毎にどんどん夢はリアルになり、現実へと近付いていく。融合が進むと、これが私の本当の記憶となるのだろう。

 

「ん~~」

 

 身体を起こして猫の様に背中を伸ばす。帽子を被りなおして周りをみると、草木が生い茂り、木々が存在していた。松とかもできていて、根本をみると松茸が生えていた。今日は山菜を取って帰る。

 

 

 

 数日後、私は無事に学校に復帰して雄英体育祭でられることになった。残念ながら、挨拶は別の人に取られてしまった。これは私が参加できるかわからなかったせいだ。残念だ。本当なら、ヒーローなのに他者を蹴落とし勝利するとはいかに、とか凄く言ってみたかったのに。

 

「諏訪子、あくどい事を考えているでしょ」

「けろけろ」

「二人共、しっかりと見ているから頑張ってね」

「姉ちゃん達がんばれ」

「諏訪子ねえちゃ、派手にやって~」

「任せて! 派手に楽しんで来るよさつきっ! だから、帽子を預かっていてね」

「うん」

 

 さつきに大事な帽子を渡してから二人でゲートを通り、半袖半ズボンの体操服に着替えて1-Aの控室で待機する。

 

「諏訪子ちゃん、もう身体は大丈夫なの?」

「無理はしないでくださいね」

「平気だよ~。もともと、怪我とかはちゃんと治ってたけど、念の為に休んでただけだから」

 

 女の子達で楽しくお話していると、轟君が出久君に喧嘩を売っていた。

 

「実力は俺の方が上だが、お前はオールマイトに目を賭けられているよな」

 

 面白そうなので聞いてみる。

 

「だが、俺が勝つ。それだけだ」

「僕も本気で優勝を取りに行く」

「面白そうだね」

「うわっ!?」

 

 後ろから出久君に飛び乗って頭の上に顎を乗せる。

 

「ちょっ、諏訪子ちゃん!?」

「けろけろ」

「なんだ?」

「二人が楽しそうにしているから言ってあげるよ。勝つのは()だよ」

「おいおい」

「言ってくれるじゃねえか」

 

 出久君の肩を利用して、逆立ちの要領で二人を飛び越えて着地する。

 

「だから、みんな。私を楽しませてね。例年通りのぬるい遊びにはさせないよ。死ぬ気で挑まないと最初でリタイアで、決着がつくよ」

 

 皆の視線が私を貫いていく。私は楽しくなってきて、くるくると回っていく。

 

「ああ、お姉ちゃん。どうする? お姉ちゃんが望むなら、お姉ちゃんだけは例外にしてあげるけど」

「いらないわ。私は自分の実力で諏訪子を超えるわ」

「それでこそ、だね。じゃあ、皆。私のステージ、楽しんでね」

 

 訝しんでいるみんなを置いて、私は控え室からでていく。そして、そのまま入場していく。その後は並んで主審であるミッドナイト先生に従っていく。代表に爆豪君が呼ばれる。

 

「宣誓。俺が一位になる」

 

 物議を醸し出すけど、私はただ笑うだけ。これからのことに都合がいいから。

 

「第一種目は障害物競走。このドームを出て役四キロのコースを走って戻ってくる。我が校は自由差が売り。コースを守ればなにをしてもいいわ。さあ、位置に着きなさい!」

 

 私は真ん中でゆっくりと待つ。ゲートの上にあるランプが点灯していく。

 

「さあ、神遊戯を始めようか」

「スタート!」

 

 皆が一斉に走り出す瞬間、私はスタートという言葉と同時に地面を踏みつける。

 

「なっ、なにぃいいいいいいいいぃぃぃぃっ!!」

「「「「おおおおおおおおおおいい!」」」」

「ちぃっ!?」

 

 ドームの外周全てに大きな大きな天上を超える土の壁を作った。これで誰もここからでることはできない。壁を壊さない限り。でも、この壁は生半可じゃ壊れない。

 

『どうなってんだこれええええええええええええぇぇぇぇっ!?』

『早速仕掛けやがったか』

 

 なにより、ガーディアンも設置するから。

 

「だいだらぼっち、適当に遊んであげて」

 

 土人形を沢山生み出して、襲わせる。同時に私は地面を蹴って、観客席に移動。そこから更に蹴ってミシャグジを呼び出して足場にし、そのまま上から抜ける。同時にドームの天井を閉じるように植物を操作して土に絡めて天井も封鎖する。

 

「よっと」

『1-A、蛙吹諏訪子! 他の連中を閉じ込めて抜け出したぁぁっ!』

「あっと、言い忘れてたよ。この壁は中に居る参加者が残り四名になると自動的に崩壊するから、潰しあってね」

『悪辣だな、おい! どういう教育してんだよ』

『勝つために手段を選んでいないんだろう』

「けろけろ」

 

 飛び降りて土の柱を作って、階段にする。地上に降りたらコースを走っていく。すると機械のロボットがいっぱいでてきた。全部、最低限の回避だけで壊さずに抜ける。

 

『さあ、早速の妨害だ! って、倒さないのかよ!』

『残しておいたほうが妨害にちょうどいいと思ったんだろう』

 

 そのまま走っていると後ろから爆発音が聞こえてくるけど、無駄。とっても硬いからね。コスチュームがあれば別なんだろうけど。

 

『このまま終わるのか!』

 

 協力すれば抜け出せるだろうけど、他者を出し抜こうとする心理が協力を阻む。四名だけは抜け出せて、合格することができるんだから。

 

『おおと、速い速い! もう第二ステージだ! ロープを伝って移動しろ! 落ちたら奈落へ一直線! それが嫌なら這いずりな!』

『流石にとまったか』

 

 一杯ある岩山。ここがベストだね。

 

「ほいっと」

 

 数分間、止まって力を溜めてから解放する。すると岩山の高低差が激しくなって、ロープが引きちぎられていくので代わりに蔦を設置。一部には切り目を入れておく。そして、ミシャグジを複数放つ。隠れながら通るといいよ。

 

『この野郎っ、難易度を跳ね上げやがった!』

『どうやら、難易度を徹底的にあげるつもりのようだな』

『だが、本人も進めてないぞ!』

 

 岩の柱に飛び乗ってすぐに飛んで蔦を足場にジャンプ。切れる前に飛んだり、蔦をわざと切ってターザンごっこのようにして先を進んでいく。同時に私もミシャグジに遭遇して、見つからないように隠れて進む。駄目なところは修正しないとね。

 

『ちゃんと攻略できるかどうかも試しているようだな』

『それってステージ作ってるってことじゃねえか!』

『ぬるいってことだろう』

『いやいや、難易度HELとかルナティックじゃねえか!』

 

 そのまま突き進んで地雷原に到着。

 

『ここは地雷原だが……どのようにコーディネートするのかもちょっと楽しみになってきたぞ! というか、蛙吹諏訪子の"個性"ってなんだ?』

『大地に関すること全般だな。今までのを見た限り、土の操作と植物の操作だ。蛇も石でできているからな』

『なるほど……って、動いたな』

『今度は植物の迷路か。地雷原ありの』

 

 地雷原に植物の迷路を作って、迷わせて正解以外の道だと戻るように仕上げた。正解の道? 上からいくしかないけど、なにか? ちゃんと地雷以外のトラップも仕掛ける。落とし穴とか滑り台とか。

 

『上から攻略するのか』

『固定概念を持つと迷う仕掛けだな』

 

 地雷原を抜けた私はそのままゴールへと到着する。同時に上の蔦が焼き払われた。すぐあとに氷の道が出来て外にでてくる。

 

「よくもやってくれたな!」

「このクソガキが!」

「あ、抜け出せたんだね。おめでとう、ヒーロー諸君。(ヴィラン)じゃないんだから、協力すればちゃんと抜けられるようにもしておいたよ。あと、すでにステージの改造は終了したから、どうぞみんなで楽しんでね」

「ぶっ殺す」

「あーうー。ちょっとしたお茶目じゃない~。あははは、皆殺気立ってるね。いいよ、やろうか。私は皆を抜けてゴールする。皆は私を防ぐ。じゃあ、始めようか」

「嫌よ。時間の無駄ね。だいたい、諏訪子の考えていることなんてお見通しよ」

「ああ、そうだな」

「後でだ。覚えてろ」

「あーうー! カッコつけたのに! カッコつけたのに!」

 

 皆、私を放置していく。ラスボスが最初にでてくるってやりたかったのに! くっ、さすがはお姉ちゃん! 仕方ないから大人しくゴールして皆を見学することにする。

 

『一位は1-A蛙吹諏訪子! ヘイトを大分稼いでいるが、これから大丈夫か!』

『気にしていないだろうな』

 

 ゴールすれば拍手で皆が迎え入れてくれた。私も手を振って答える。その瞬間、こふっっと血を吐いた。力の使い過ぎみたい。まあ、ゆっくり休んでおこう。まずはリカバリーガールのところかな。

 

 

 

 



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修正

 

緑谷出久

 

 

 

 大変なことになった。スタートと同時に駆け抜けようとした。でも、入口に向かった瞬間、出口が土の壁で封鎖された。僕はこれをやらかした犯人をみる。彼女はスタート地点から動いていない。嫌な予感がしてすぐに引き返して取り押さえにかかる。

 でも、押し寄せてきた人に防がれた。その間に楽しそうに笑った諏訪子ちゃんは大量のゴーレムを作り出した。そのゴーレムが参加者を襲いだして周りが混沌としていく。その中を諏訪子ちゃんはゴーレムや観客席の縁などを足場にして飛び出していく。まるで、猿のように飛び上がっていった彼女は観客席のひさしに飛び乗る。

 やばいやばいやばいやばい! 天井すら封鎖する気だ!

 そう思ってワン・フォー・オールを発動させながら飛び上がる。しかし、ひさしから伸びた蔦が無情にも封鎖していく。

 

『1-A、蛙吹諏訪子! 他の連中を閉じ込めて抜け出したぁぁっ!』

「あっと、言い忘れてたよ。この壁は中に居る参加者が残り四名になると自動的に崩壊するから、潰しあってね」

『悪辣だな、おい! どういう教育してんだよ』

『勝つために手段を選んでいないんだろう』

「けろけろ」

 

 封鎖されていく視界の中、僕はなんとか受け身をとって着地する。足は問題ない。諏訪子ちゃんと訓練したお陰でコントロールできるようになってきている。地面に着地した僕はすぐに横に転がる。すぐ側にゴーレムの手が掴もうとしていた。起き上がりながら、ゴーレムに触れて一割の力で吹き飛ばす。

 

「出久君、大丈夫?」

「うん。それよりも……」

 

 爆音が轟き、こちらに衝撃がやってくる。

 

「あ~ぜんぜんダメですね~」

「ちっ」

 

 ゴーグルをかけたピンク髪の女の子とかっちゃんがやってきた。どうやら、爆発させて破壊できるか試したみたいだ。残念ながら、そうもいかない。とりあえず、先にゴーレムを破壊して安全圏を確保する。幸い、ゴーレムは弱いようだったので皆もすぐに倒せた。

 しかし、問題は諏訪子ちゃんの発言。それを真に受けた人達が互いに潰し合いを始めようとしている。解決策を提示しないと本当に目も当てられない状態になる。

 

「厚さ10メートル。材質は土ですが、鉄以上の硬さです。これはまずいですね」

 

 女の人がこちらにやってきて教えてくれる。確か、諏訪子ちゃんは鉄製の武器を使っていた。なら、確かに鉄を作ることもできるのだろう。

 

「なら、脱出方法は……」

「そんなもの、全員ぶったおせばいいだろ。っと、言いたいが、本当に出れるかどうかわからねえからな。俺なら、絶対に出さないしな」

「爆豪ちゃんならそうでしょうね。諏訪子なら出したうえでねじ伏せそうだけど」

「そうなんだよね。まあ、脱出方法だけどやっぱり上じゃないかな」

「そうね。なにせ本人もそこから出たのだし。植物なら、燃やせばいいのだし」

「つまり、協力すれば出られるってことね」

「ああ、そうだろうな。俺が足場を作ってやる」

 

 轟君もやってきた。彼のおかげで足場は大丈夫だろう。後は……

 

「かっちゃん」

「言われなくてもわかってる。ぶっ壊してやるよ」

 

 すぐに計画を発動して爆発させる。しかし、天井の蔦が邪魔をしてくる。僕達は守りながら進む。かっちゃんが爆破し、轟君が凍らせたお陰道が開けた。外にでると諏訪子ちゃんが戻って来ていた。

 

「よくもやってくれたな!」

「このクソガキが!」

 

 轟君とかっちゃんが諏訪子ちゃんに文句を言っていく。

 

「あ、抜け出せたんだね。おめでとう、ヒーロー諸君。(ヴィラン)じゃないんだから、協力すればちゃんと抜けられるようにしておいたよ。あと、すでにステージの改造は終了したから、どうぞみんなで楽しんでね」

 

 笑いながら人差し指を唇にあてる諏訪子ちゃん。

 

「ぶっ殺す」

「あーうー。ちょっとしたお茶目じゃない~。あははは、皆殺気立ってるね。いいよ、やろうか。私は皆を抜けてゴールする。皆は私を防ぐ。じゃあ、始めようか」

 

 そんな時間はないので、僕はさっさと進んでいく。

 

「嫌よ。時間の無駄ね。だいたい、諏訪子の考えていることなんてお見通しよ」

「ああ、そうだね」

 

 僕もいいながら、呆然としている諏訪子ちゃんの横を通り過ぎる。

 

「後でだ。覚えてろ」

「あーうー! カッコつけたのに! カッコつけたのに!」

 

 地団駄を踏んでいる諏訪子ちゃんの姿が想像できた。そのまま進んでみたのはとてつもなく広く、物凄い高低差で構成された石柱。石柱と石柱の間に蔦がある。そして、何かが這いずる音が複数聞こえてくる。

 

 

 



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修正

 

 

 

 

 諏訪子ちゃんによって魔改造されたエリアは大変みたいだ。石柱と石柱の間をロープで進むのだけど、途中にある鳥居から先のエリアに進んでいると大きな石でできた大蛇が襲い掛かってくる。まるで龍のように移動している。

 かっちゃんは喧嘩をうったようだけど、大暴れした蛇に谷底に落とされた。巻き込まれた人もかなりいていい迷惑になっている。それにおそらくここの攻略法はすでに判明している。

 隠れながらこっそりと進む。この蛇は石でできているせいか、音で判断しているようだ。大人しくひっそりと息をひそめていたら通りすぎてくれたから。つまり、スニーキングミッションを行うべきだ。

 壁に捕まりながら石柱に作られた狭い足場を進んでいくと大蛇がいた。大蛇は梅雨ちゃんと睨み合っていた。助けるべきだ。蛇と蛙では相性が悪すぎる。大蛇は舌を出して何時でも丸飲みできるように口を開けている。

 

「ふふ、これが正解よね」

 

 梅雨ちゃんが拝二拍手一拝(にはい、にはくしゅ、いっぱい)を行うと舌で梅雨ちゃんをペロリと舐めてから彼女を掴んだ。助けにでるが、頭に乗せるだけだったようだ。

 

「あら、緑谷ちゃん」

「梅雨ちゃん……」

「あ、早くしたほうがいいわよ。食べられちゃうわ」

「そ、そうだね」

 

 ボクも拝二拍手一拝(にはい、にはくしゅ、いっぱい)を行うと乗せてくれた。

 

「よくわかったね」

「襲い掛かってきたの、鳥居の先だったからよ。諏訪子と一緒によくお参りにいっていたから、わかったの」

「神社を参拝する作法ってことだね。てことはここは神威ととらえられているのか」

「みたいね。同時に最短ルートでもあるみたいよ」

「本当だ」

 

 出口ちへと案内してくれたようで、頭部が反対側の鳥居のある石畳の場所へ到着した。僕は先に降りて降りてくる梅雨ちゃんに手をかす。

 

「あら、紳士ね」

「これぐらいはしないとね。助けてもらったし」

「便乗してきたもんね」

「うん、ごめんね」

「いいわよ」

「それでこれからどうしたらいいのかな? 神社の作法とかしらないんだけど」

「そうね。お供え物をするのがベストだけど、そんな物なんて持ち込んでいないわ。だからお礼いって最初と同じように拝二拍手一拝(にはい、にはくしゅ、いっぱい)をすればいいわ。これが帰る挨拶だから」

「わかった」

 

 二人でちゃんとすると大蛇は帰っていった。

 

「このまま進みましょう」

「そうだね」

 

 二人で向かうとデンジャーゾーンと書かれた場所に到着した。見た感じ地雷原の標識があるけど、どうみても植物でできた迷路だ。

 

「これって」

「諏訪子ね」

「この看板からみて地雷原ってことだよね」

「地雷原の迷路とか進みたくないわ」

「確かに」

 

 石を持って進みながら適当に投げてみる。爆発した。競技用のようで威力は高くない。しかし、みた感じ距離はそこまで長くない。

 

「梅雨ちゃん、ちょっとジャンプして先を覗いてみてくれない?」

「いいわよ。ケロっ!」

 

 10メートルくらいジャンプしてくれた。下から見上げるけど随分と……って、まずい。視界を外して降りてくるのを待つ。

 

「距離はどうだった?」

「そう長くはないわね。2,300メートルくらいよ」

「それならどうにかなりそうだ。飛んでみない?」

「それがいいわね。轟ちゃんが先に進んでいるし。でも、私は途中までしかいけなさそう」

「迷路の壁の上を進んだらいいんじゃないかな。それかボクが抱えていこうか? さっき助けてもらったし」

「抱えてもらうのはいいわ。このまま壁の上を進むわ」

「わかった。それじゃあ」

「また後で会いましょう」

「うん」

 

 力を使って一気に飛び上がる。空中で体勢を整えてスマッシュを空気の壁に撃つイメージで放って加速する。先頭をいく轟君においついてそのまま足に連続で発動して突き抜ける。

 

「ちぃっ!」

 

 足が少し痛むけど問題ない。このまま突っ切る!

 

 

 

 ゴールした瞬間、拍手で迎え入れられた。周りをみると諏訪子ちゃんが退屈そうに足をぷらぷらとさせながら土で作った椅子に座ってまっていた。

 

「お疲れさま~」

「うん疲れたよ」

「楽しかったでしょ~」

「大変だったよ!」

 

 他の人達がゴールしてくる中、しばらく話していると梅雨ちゃんもやってきた。

 

「お姉ちゃん~」

「諏訪子、後でお仕置きよ」

「なんで!?」

「これだけやらかしているからじゃないかな?」

 

 さて、ゆっくりと待っていると本戦の内容が発表された。

 

「次は騎馬戦よ。ポイントは先の順位によって変動する。下位から五ポイントずつ上がっていくわ。そして! 一位は一千万! つまり下克上が可能よ!」

 皆が一斉に諏訪子ちゃんをみる。諏訪子はびっくりとして身体を抱いて震わせる。

「襲われるっ! 犯されるっ!」

「「「違うわっ!」」」

 

 梅雨ちゃんの背中に隠れながらそういってくる。確かに一人の小さな女の子をみんなして襲うのだから。

 

「今からチームを組むように」

「お姉ちゃん組もう! というか、組んで! ものすごく怖い!(やっちゃいそうで」

 

 なんか不吉な言葉はうしろにあった気がする。

 

「仕方ないわね」

 

 諏訪子ちゃんはお姉さんの梅雨ちゃんと組むみたいだ。僕はどうしようか。

 

 

 



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修正?

 

 

 

 騎馬戦。私はお姉ちゃんと一緒にチームを組む。別に二人でもいいらしいし、もうこれでいい気がしてきた。私が馬になればどうとでもなりそうなんだよね。例えば土で覆ったり、ミシャクジに隠れるとか。

 

「でも、それって神様らしくないよね……」

「諏訪子?」

「上位キープじゃなくて別に全滅させてもいいんだよね?」

「けろっ!? やるきなの?」

「うん。というわけで、仲間をさがすよ!」

「俺達と組まねえか?」

「俺が騎馬になってお前達を覆う。攻撃は三人に任せる。どうだ?」

 

 峯田くんと障子くんの考えは正しい。私も入れば攻守ともに問題ない。よし、それでいいかな。

 

「おっと、ごめんよ。これ、そこに落ちてたけど君のかい?」

「違うよ~」

「そうか。誰の物かわるかるひと~」

 

 B組の人に私にぶつかってきた。でも、落とし物を拾ったせいみたいだし、別にどうでもいいか。

 

「それじゃあ、チーム組もうか」

「ひゃっほう!」

 

 チームが決まったので、申請して少ししたらみなも決まったようで、騎馬戦が始まったよ~。

 

「じゃあ、真ん中にごお~」

「けろっ!」

「ああ」

「おっしゃあ!」

 

 真ん中に移動した瞬間、皆が襲ってくる。なので障子くんに回転してもらいつつ、峯田くんにおもいっきり投げてもらう。そうするとあら不思議、みんなくっついて動けなくなる。そこを私が風を起こしてお姉ちゃんが舌でハチマキを回収していく。

 

「轟達がきた」

「飛んで。諏訪子」

「了解した」

「けろっ!」

 

 障子くんがジャンプした瞬間に風を起こして空に舞い上がる。空は基本的に私の領域じゃないけれど、遊ぶためなら努力をおしまない。

 

「というわけで、皆、これをみろ~」

 

 私は一千万のハチマキをくっつきボールをたっぷりつけて空高くに投げてもらう。後はそれを風で上げ続ければいいだけの簡単なお仕事。

 

「ふふふ、取れるものならとってみろってね!」

「けろけろ」

「えげつねー。やっぱりえげつねー」

「うむ。しかし、他の奴等も諦めていないぞ」

「あ~う~」

 

 轟君が氷の橋を作り、爆轟くんと出久くんが空を飛んで取りに行っている。

 

「妨害!」

「心得た」

「おうよ!」

「ねえ、諏訪子……あれってあなたがだしたの?……」

「んにゃ?」

 

 下をみると巨大なミシャグジさまがでていた。私は出してない。

 

「あ~う~っ!? だしてないよ~っ!」

「大暴れしてる」

 

 ミシャグジ、結構怒ってる。

 

『おおっと、これはどういうことだ! "個性"の暴走か?』

『ある意味ではそうだな。馬鹿なことをした奴がいたもんだと、いいたいが……止めないとやばいぞ。蛙吹諏訪子、最優先で止めろ』

 

 相澤先生の指令を受けたら仕方ない。

 

「ちょっといってくるね~」

「足は付かないようにね」

「うん」

 

 飛び出した私は風を使って空を飛びながらミシャグジの頭にのる。ミシャクジは騎馬をまるっと飲み込もうとしている。

 

「ストップだよ。いったいどうしたのかな~?」

「なっ、なんでいうことを聞かないんだ……"個性"なんだろ!」

「ふ~ん」

 

 目の前にいたのはぶつかってきたB組の人。この人がミシャクジを呼び出したようだ。私の"個性"を使ってじゃなくて、ミシャクジが自らでてきた感じだけどね。

 

『物間の"個性"はコピーだ。蛙吹諏訪子のをコピーしていたんだろうが、あいつのは色々おかしいからな』

『あーコピーしたところでコントロールなんてできないってか』

『あれは本人曰く、意識を持っているそうだ。自分の契約者以外が自分を使おうとしたのだから怒っているんだろう』

 

 ふふふ、私達を勝手に真似てミシャクジを使おうだなんて、怒っちゃっていいよね。

 

「けろけろ」

「ひっ!?」

 

 私はまわる。くるくるとまわる。まわるまわるまわる。体操服は何時もの服へと代わり、周りには赤い蛙さんがでてくる。

 

「獄熱の間欠泉。お前達はマグマの中でもいきられるかな?」

 

 床が割れて地割れが発生する。そこから大量の湯気がでてくる。

 

「赤い蛙は噴火の神託。それすなわち、獄熱の間欠泉。さあ、不遜なる人間よ。神の怒りを思い知れ。ケロケロケロケロ」

「「「ケロケロケロ」」」

 

 このまま溶岩に飲まれて消えるか、それともミシャクジに食べられるか。もしくはこの私を、洩矢神である洩矢諏訪子を倒すか、選ばせてあげよう。

 

「はい、そこまでだ。蛙吹少女よ」

「ん?」

 

 気付けば連中がいなかった。代わりにオールマイトが彼等を持っていた。

 

「相澤先生は止めろといったんだがね?」

「止めるために相応の罰を与え……」

「これは"個性"を使った試合であり、殺し合いじゃないんだよ。やりすぎだ」

「だって、どうする~?」

 

 ミシャクジは少し考えたようで消えていった。

 

「良かったね。軽い呪いだけで許してもらえたようだよ。でも、次はないからね。もし、今回みたいなことをしたら、末代まで一族郎党呪われるから気を付けてね。さ~て、騎馬戦にもどって~」

「蛙吹諏訪子、失格!」

「え!?」

「あんな大規模攻撃したら、レッドカードに決まってるじゃない」

「でもでも」

「でももくそもない!」

「あ~う~っ!?」

 

 これはまずい。なにがまずいって、お姉ちゃん達まで失格になっちゃうこと。

 

「わっ、私だけだよね?」

「いいえ、騎馬全てよ」

「まあ、そうなるよね。ペナルティは大きい」

 

 三人が降りて来た。

 

「ごめんなさいっ」

「後悔は?」

「してない!」

「そう。まあ、諏訪子にも譲れないことがあるのはしかたないわ。でも、それは家族である私だからわかること。しっかりと二人には埋め合わせをしないといけないわよ」

「まあ、この後のことを考えればここで次は勝てないのはわかっていた。そうだな……俺は訓練に付き合ってくれればそれでいい」

「ありがとう~」

「ふっふっふ、俺はもちろん! ヌードだ! ヌードを撮らせろ! 本当はもっとエッチなことをしたいが、殺されそうだしなっ!」

「それも十分にやばそうよ」

「しってるよぉっ! だって、おいらの身体に巻き付いてるからな!」

 

 ミシャクジが絡みついて口を開けてスタンバってる。

 

「ヌードとか身体を触るのはだめだよ。この身体、私だけのものじゃないし」

「なにそれ、エロい。詳しく」

「だ~め」

「じゃあ、おいらの"個性"も強くしてくれ」

「いいよ」

「いいのかよ!」

「任せて! 私がとっておきに強化してあげるよ」

「あれ、おいらみすったかもしれない」

「ちなみに強化方法は?」

「そのブドウみたいなのを爆発させられるようにするのと、毒性をもたせるの。毒をいっぱい飲んで、耐性と生成ができるようになれば木なんだからちゃんと麻痺毒とかいけると思うよ。ほら、ヒーローとして捕まえるのに便利になる」

「狂気の沙汰だよな!? それぜってぇ、狂気の沙汰だから!」

「あ~諏訪子はその狂気の沙汰で"個性"を手に入れたのよ。その諏訪子にお願いしたら、こうなるのは当然ね。頑張ってね、峯田ちゃん」

「俺はどうすればいい?」

「腕や触手だけじゃなく、まずは全身から手をだせるようになろうか。後は……これ。こんな感じになればベストだね」

「ワンピース、だと!?」

 

 強化計画練らないとね。あと、毒も作って頑張らないと。お姉ちゃんにもなにかしてあげないと。格闘技とかはすでに教えているし、ミシャクジマフラーとかどうかな! 護衛もできてばっちりだよ!

 

「遠慮したいわ」

「え~可愛いのに~」

「食べられそうで怖いもの」

「そっか。じゃあ、この子達でいいかな」

 

 赤い蛙をあげる。

 

「この子達と一緒にいて、観察してたらマグマを操れたりするかもね!」

「蛙だけに?」

「そう、ケロちゃんだけに!」

「それはいいわね。そうしましょう」

 

 これでなんとかなった。よかったよかった。

 

 

 

 

 

「やはり彼女は明らかにこちら側ではないかね?」

「そうじゃろうな。例の計画の時にスカウトするのはどうじゃ?」

「それもそうだな。しかし、彼女の"個性"は奪えるか……」

「無理じゃろう。あんなものは"個性"ですらないわ」

「神の力。"個性"とはまったく別次元の力か」

「"個性"の上だと考えるべきじゃな。それは"個性"のさらなる上があるということでもある」

「そうだね。研究すれば素晴らしい成果が期待できるだろう。ところで、私の身体はまだかね?」

「まだ無理じゃ」

「そうか。ではもう少し見学するとしよう」

 

 

 

 

 

 

 




次回は全身強化が使える緑谷vs轟。の予定。

諏訪子ちゃん達はリタイア。これは仕方ないのだ。どう考えてもトラウマ製造しかしない上に勝ちが見えない。それに諏訪子の"個性"をみてたら、試合まえにコピーすると思います。

ちなみにものま君が呪われた内容。一日一回、タンスの角に小指をぶつける程度の災いがふりかかる。

なお、一ヶ月後くらいに土下座して謝って許してもらったもよう。これが試合じゃなければPITYUNNでした。少しマイルドな諏訪子ちゃんです。
ちなみに性格は諏訪子混じり>現在地>神話時代>東方時代へと体験して移り変わり中。梅雨ちゃんと緑谷君が頑張らない限り、神話時代をちゃんと越えられるかな!

あと、轟君のお母さん綺麗でいいね。あの人の少女姿がみたい。娘がもう一人くらいいたらいいのに。美少女で氷の"個性"。轟君の妹辺りに。もちろん、髪の毛が長い状態で。



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20話

東方関連は修正しました。



 

 

 

 雄英体育祭は騎馬戦が終わり、個人戦になった。残念なが私はでれなかったし、出久君が頑張って上位に食い込んだくらい。優勝は爆発さんだった。

 体躯祭が終わった私達を待っていたのは職場体験学習。これは雄英体育祭での活躍をみたヒーローの人達が自分の事務所に呼んでくるのだ。

 

「諏訪子、指名があった?」

「一軒だけあったよ」

「どこなの?」

「諏訪ヒーロー事務所?」

「なにそれ?」

「さあ?」

 

 諏訪にある事務所らしいから、そこにしてみた。多分、これって私を諏訪子様達が呼んでいるってことだろうし。

 

「お姉ちゃんはどこにするの?」

「私は水難救助のところね」

「じゃあ、お互い頑張ろうね」

「ええ、頑張りましょう」

 

 

 

 少ししてから私達はそれぞれの事務所に向かうことになったのだけれど、何故か服装が指定だったよ。

 

「諏訪子、巫女服なんてもってたのね」

「うん」

「随分と肩と脇が露出しているわね」

「ケロケロ~」

 

 着るのは早苗お姉ちゃんと同じ服装の巫女服。それにカエルの帽子。

 

「まあ、互いに頑張りましょう」

「またね~」

 

 お姉ちゃんと手を振って別れてから目的地に向かう。私は指定された場所にいったら、諏訪大社いくように貼り紙がされていた。巫女服姿の上に地元でも行方不明で有名になったし、テレビにも出たので人がいっぱいみてくる。そんな中でこんな改造巫女服を着ていたら視線がいっぱいやってくる。

 諏訪大社に到着して系内を歩いていくと、箒でお掃除している巫女さんがいた。

 

「なんでいるの?」

「それは奇跡でちょちょいっと」

「嘘だよね」

「本当は手伝ってもらいました。まあ、それは置いておいてこちらにどうぞ」

 

 早苗お姉ちゃんに手を握られて奥に移動していくと、奥にいた巫女さん達が頭を下げてくる。中には祈ってくる人達もいる。さらに最奥にある場所に入ると、御神体まで置かれている。

 

「さて、御神体に触れてください。それであなたは幻想郷にいけます。そちらで鍛えてもらってください」

「講師は誰なの?」

「とりあえず、萃香さんとさとりさんは確定ですね。修行場所は地獄にある地霊殿です」

 

 地獄で修行とか大変そうだけど、こないだ萃香にボロ負けしたし鍛えてもらおう。御神体に触れると身体から力が抜けてくる。そんな私を早苗お姉ちゃんが支えてくれる。

 

「いってらっしゃいませ。そして、お帰りなさいませ」

 

 私は向こうに行って、諏訪子様が私の身体に入ってきた。

 

「うん。こっちは任せておいてあっちで修行してきなよ」

 

 

 

 気が付いたら神殿みたいな場所に居た。周りをみると九本の尻尾を持つ狐さんがいたので思わず飛びついてもふもふしてみる。

 

「おい、何をしている」

「ついもふもふと……」

「やはり姿は似ていても性格は違うか」

「当たり前です。その子は私の妹ですからね」

「といっても……いや、これはいいか。それよりも約束は守れ。諏訪子があちらにいる間、こちらに居ていい」

「わかっています」

「ならばいい。私は帰る」

「はい。ありがとうございました」

 

 狐さんが帰っていったので私は早苗お姉ちゃんと一緒に歩いていく。

 

「まずはここの主に挨拶をしますよ」

「場所を貸してくれたから当然だよね」

「はい。それと一緒に修行する霊夢さんと他の人にも協力してもらえるかもしれませんので期待していてくださ」

「うん。よろしく」

 

 移動していくと、不機嫌そうな霊夢さんとさとりさんが居た。でも、さとりさんは忙しそうだった。

 

「ああ、よくきてくださいました。歓迎しますよ。衣食住は保証しますので、好きに修行していってください。ただ、私は少し立て込んでいるので案内は早苗達に任せます」

「わかりました。それではこちらにきてください。ほら、霊夢さんも」

「なんで私が修行なんて……」

「衣食住に加えて給料まででるんですから……あ、それとも給料はいりませんか?」

「いる。仕方ないわね。しかし、まったく同じなのに別人なのね」

「そうですよ。というわけで、諏訪子様とは別人として扱ってくださいね」

「わかったわよ」

 

 それから離しつつ、部屋を案内してもらってから外にでると萃香が待っていた。そこからは地獄だったといえる。まず鬼とひたすらの模擬戦。人間チーム対鬼とのガチンコ勝負。なんとか生き残れた。

 次の日は全身筋肉痛なのでお札の作り方など巫女としての修行だった。交互にやっていくことで徹底的に鍛えられていく。

 

 

 



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21話

 

 

 

 萃香の訓練は直ぐに場所を移動した。連れていかれたのは地底にある荒野だった。

 

「ねえ、ここで何をするのよ?」

「サバイバルだ」

「何にもないですよ」

「草木一本もないわね。というか、衣食住は保証しているんじゃないの?」

「それはそいつにいいな」

「けろ?」

「つまり、この何も無いところに作れっていうことですね」

 

 私の能力で食べ物からなにからなにまで作れと。大地を創造する能力だからできそうだけどね。

 

「では、協力して作りましょうか」

「了解だよ」

「任せるわ」

 

 地面に力を発動する。まずは死の大地のようなこの場所の土地を回復させる。ミシャグジ達を放って耕して栄養たっぷりの腐葉土を作り出して土壌を仕上げていく。

 

「土壌ができたら植物ですね」

「植物か~」

「食べられる奴がいいわ。ここでサバイバルするんだから」

「食べられるのは木の実とかかな?」

「そうですね。他には何がいいですか?」

「米よ米」

「了解だよ」

 

 米は水田だから、先ずは泉と川を作って……って、水脈からじゃない。流石にそれは今の私では無理だ。

 

「早苗お姉ちゃん」

「はいはい、お姉ちゃんに任せてください。奇跡的に水脈がみつかりますよ。ほら、あのあたりに」

「あっ、あった」

 

 か細い枯渇仕掛けの水脈にテコ入れして大量の水を生み出して、湖と川を作る。それから水田を作って、他にも果樹園とかを作っていく。

 

「はいはい、普通のも作って森にしろよ。能力を鍛えるには使い続けないといけないからな」

「うん。ん~ぱっ」

 

 ジブリのととろみたいにやって森を作っていく。どんどん私は諏訪子様になっていく。森が完成するころには侵食率が跳ね上がったと思う。

 

 

 森ができたら三人でサバイバルだけど、霊夢さんが働かない。でも、そんな霊夢さんだけどイライラしている。なぜなら四六時中、容赦なく萃香さんや星熊勇儀さんも一緒に襲ってくる。

 眠っている間も容赦ない。一日で長くて10分も眠れたらいいほうで、短くて3分しか寝れない。

 常に戦っていて、食事も睡眠も戦いながら取るという生活をしている。お姉ちゃん達も同じで容赦なく攻められる。

 霊夢さんは結界を張るけれど即座に勇儀さんに叩き壊される。ミシャグジを禁止された私は必死に弾幕を放つしかない。

 

「しかし、厄介ですね」

「あいつら、完全に殺しにきてるじゃない」

「あ~う~」

「いいえ、半殺し程度ですよ」

 

 振り向くと、そこにはさとりさんがいた。そのそばには八咫烏の空と永琳さん。あとこいしさんもいた。

 

「治療役として永琳さんをお呼びしました」

「ちょっと、ガチじゃない」

「あははは、これ絶対霊夢さんが修行をサボってたからですよ!」

「んなわけないわよ!」

「いえ、それが正解ですよ。賢者さんから徹底的にやるように言われています。ですから、ここからは私も参加します。後半にはこいしのお友達の吸血鬼さんもくるそうですよ」

「つんだ!」

 

 地獄の特訓が始まった。本当に地獄だった。最後の方なんとキュッとしてどっかーんだよ。永琳さんがいなかったら本当に何度も死んでた。ただ永琳さんに医学を学ばせてもらったのはよかった。それとトラウマの克服を手伝ってもらった。といってもお空によって火の海にされたせいだけど。

 

 

 

 



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