【ネタ】単発クロスオーバー集【続かない】 (十津川烏)
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魔王と天使
第三新東京市―――セカンドインパクトという未曽有の災害により壊滅した東京に変わり作られた明治維新以降の三つ目の日本の首都である。
しかしその実態は特務機関ネルフが「使徒」と呼ばれる人類の敵を迎撃をするための使徒迎撃専用要塞都市である。
無論この事実は市民たちは勿論の事、末端の関係者からも伏せられており、その事実を知るのは
一部上層部とネルフのさらに上に存在する「ゼーレ」と呼ばれる人類の支配者達など限られた人間達だけである。
そして使徒からこの要塞都市を守る人間がいた。
それは「汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン」と呼ばれる人型の巨大兵器を駆るパイロット達。
年齢が10代の半ばでしかない精神的な未熟であるがエヴァを動かせる存在は彼らを除いて他にいないため彼が主戦力となり人類は守られてきた。
「――――ふむ、この時代の人類の戦いもそろそろ終わりか」
都市部を離れた整備がされず手つかずになっている場所である男が一人いた。
その男は金髪にダークブルーのスーツを着たオッドアイの青年だった。
その呟きは誰かに向けてというわけでもないただの独り言のようであった。が、しかし、
「そうだね、人類はいま大きな選択肢を前にしている」
その呟きに返答があった。
それは少年の声だった。
その少年は白い髪、白い肌、そしてその白さを際立たせるかのように血のように赤い目をしていた。
年齢は十代半ばだろうか、学生が着る白いワイシャツが妙にマッチしていた。
少年の突然の声にも全く驚いた様子を見せず、むしろ待っていたかのように青年は口を開く。
「ふむ……君たちにとってこの戦いは意義のあるものだったのかな?」
「さぁ、それは彼らに聞かないとわからないけど……ボクは全くの無駄ではなかった信じたい」
「そうか。私個人はこの戦いには興味があったしなかなか面白い人間もいたが……まぁそれだけだね。役者は一流でも脚本家たちが二流、三流だったのが残念だよ。
結末はつまらなそうだ。私のシナリオにも関わらないしね」
「貴方のシナリオ……それは次の世界かい?」
「その通り……といいたいのだがそれはわからない。この世界の主人公は私達ではないのだから
違うかい?第17使徒タブリス?」
青年は口元を歪め白い少年に問いかける。辺りの空気は急に引き締められた。
少なくともタブリスと呼ばれた少年はそう思った。
そしてやれやれと言わんばかり首を振って答えを返す。
「今ここでは渚カヲルと名乗ってるんだけどな……あなたも今と違う名で呼ばれたら嫌だよね?……悪魔王ルシファーいやルイ・サイファー」
青年……ルイ・サイファーもしくはルシファーと呼ばれた男は笑いを噛みこらえ答えを返した。
「そうだな失礼した。今の君は特務機関ネルフに所属するフィフスチルドレン、渚カヲル。決してタブリスなどと呼ばれる受肉した天使ではない」
「そして今の貴方も大いなる闇と呼ばれる悪魔王ルシファーではなくルイ・サイファーと呼ばれる人間観察が好きな紳士だね」
悪魔、天使、科学全盛のこの時代ではありえない単語が出てきたが二人の間から漏れる空気は、なるほど確かに「ヒト」のものではなかった。
「フフフ…失礼した、少し興が乗ってしまったようだ」
悪魔と天使の会話とは思えない穏やかな会話は続く、しかし話は急に終わることになる。
小さな蠅がルイの肩に止まり
「閣下、お戯れはそこまでにしてください……お探しになりましたぞ」
喋り始めた。
喋る蠅にルイは驚いた様子は見せず、少し顔をしかめて言った。
「もうバレるとはね……ベルゼブブ」
「宰相殿の苦労もわかってほしいものです。いくら今、平静を保っているとはいえ貴方様の職務をお忘れになられては困る」
「上に立つ者は苦労するね」
「全くだよ……それでは渚カヲル、また会おう」
「そうだね、こことはまた違う場所で違う時代で会おう」
突如として空間に空いた黒い穴に向かい足を向かわせるルイ・サイファーだったが最後にこう言い残した。
「そうそうヒトとしての生はいかがなものかな?」
そんな言葉と共に悪魔は消えた。
一人残った天使は満天の星空に向けこう呟いた。
「ヒトの生と死は当価値なんだよ、少なくとも僕にとってはね」
その次の日、ネルフ基地施設の最深部で彼は命を落とすことになる。
人の皮をかぶった者同士の密談です。この二人って似てるところ多いんですよね。
人の名前と人の皮をかぶった悪魔と天使(ではないんですが)の対比です。
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