半妖の少女 (飴傘)
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美人さんと会う。

初投稿です!生暖かい目でみてもらえれば幸いです。作者はリアルで学生(学年が下の方)で、テストとかなんやらあるので、不定期投稿になりそうです。
ではでは。どうぞ!



 

あったかい、夢を見た。

 

白い、ふわふわした気持ち。

 

目の前には、お母さんの顔。

 

ポカポカしたお日様。

 

ほわほわした風に、そよぐカーテン。

 

頭を撫でられる感覚。

 

もう、忘れてしまった、「しあわせ」がそこにあった。

 

***

 

 

「あなた、ねぇ、貴方よ」

 

「ほえぇ」

 

わお、起きたばっかりで変なこえを出してしまった。

時は、昼下がり。

静かな森の、ぽっかり出来た広場で、わたしはお昼寝中だった。

寝起きの、とろとろした気持ちで少し考える。

あれぇ、何で私起きたんだっけ?

......そうだっ、誰かに呼ばれたような気がしたんだ。

気持ちいい昼寝の時間を邪魔してくれたのは、誰だぁっ!

そこまで考えがようやく至って、耳がぴぃんと伸びて、くわぁっと牙を剥く。

 

「あなた、こんなところで寝てたらダメじゃない」

 

木の上からの気配と声に、少しびくっ、とする。

上をみると、木の枝に腰かけて、足をぶらぶらさせていた、綺麗な、女の人がいた。

灰色がかかった茶髪のロングヘアー、特徴的な、セーラー服姿の女の人。

まるで、お日様の光が全部女の人を照らしているみたいな、きらきらした美人さんだった。

 

「美人さん、だぁ......」

 

だから、見とれて、耳と牙を隠すのを忘れた私は悪くない。と思いたい。

 

「......(あやかし)、なのね」

 

美人さんは、すうっと目を細めて、小さく呟いた。

 

(あやかし)ーー妖怪と言われるものの類い。お化けともいう。人は、(私たち)を祓ったり、忌み嫌ったりする。

 

ばれた。やばい。祓われちゃう。

それを聞いて、慌てて耳を引っ込めて、牙を戻す。

でも、そんなことで美人さんは誤魔化せなかった。すとん、と木から降りて、歩いてくる、美人さん。こつ、こつ、とローファーが音をたてる。さらさらと、髪が揺れる。

 

 

一気に、周りの温度が下がったような気がした。

美人さんの目は、綺麗だったけど、寂しさと、冷たさを持っていた。

 

 

 

 

それをみて、わたしは不覚なことに、震えてしまった。

体を手で押さえても、止まんない、止まってくれない。

カチカチと歯が鳴る。どうしようもないほど怯えてしまう。今まで人間の近くで生活していたのに、急にどうしたんだろう。

 

 

雨と、血の臭いと共に、あの日のことが思い出された。

 

 

 

 

 

 

おかあ、さん......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、あぁ」

 

自然に声が漏れてしまう。

 

わたしも、あの日のお母さんみたいに、なっちゃうのかなあ。

 

こわい。

こわいこわい。

こわいこわいこわい。

 

 

 

 

頭をぎゅっと抱えて、うずくまってしまう。

震えが、止まってくれない。

せめて、震えが止まってくれれば、やれることはいっぱいあるのに。

 

人は、近づかないで。

 

お願いだから、傷つけないで。

 

こわいよ。こわいよ、お母さんーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぽふっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭の上に、優しい感触があった。

ゆっくり、目を開けてみる。

 

 

美人さんが、頭を撫でてくれていた。

 

「うそ、なんで」

 

こわさから、少しひきつった声で、問いかける。

 

美人さんは、何も言わない。

でも、小さい子をあやすのが、はじめてだという風に、ただ、ただ頭を撫でてくれた。

それが、どことなくお母さんに似ていて。

なんだか、安心できるような気がした。

 

 

***

 

 

しばらく時間がたった。

夕焼けが見える。

木々の葉っぱが、薄くオレンジに染まっていく時間。

 

わたしは、美人さんの撫でてくれていた手を、そおっと触った。

でも、やっぱりこわくて、すぐにびくっ、と手を離してしまう。

宙ぶらりんになった美人さんの手は、少し迷うような素振りを見せてから、また、わたしの頭の上に収まった。

 

撫でられながら、言う。

 

「美人さんは、私が怖くないの?」

 

まだ声がひきつってる。

 

「怖かったら、こんなことしないわよ」

 

わたしの頭をくしゃくしゃにしながら、美人さんはいう。

確かに。となっとくしてしまうわたしの単純さに、少しいやになる。

こんな風に、騙されやすいのは、わたしの悪い癖だ。

 

「騙そうとして、ないよね」

「私はどう見えるかしら」

 

すみません、正直、わかりません。

昔々のトラウマで、人間は、全員怪しく見える。

 

 

わたしが落ち着いたと思ったのか、美人さんは、わたしを撫でるのをやめて、近くの切り株に腰かけた。

足を組んで、頬杖をついて、何だろう......一つ一つの動作が、すごくきまっている。

周りの草が、風に揺れてそよぐ。

綺麗な二つの光景に、少し寂しさを感じた。

 

*

 

冷たい風が、吹いてきた。

この時間は、いつも、寂しくなる。

 

 

 

「私の事、怖いって思ってるでしょ」

 

うなずく。

 

 

「私も人間が嫌いなんだ」

 

 

その言葉に、えっ、と反応してしまう。

思わず美人さんの顔を見た。

美人さんの瞳の中に、夕焼けが寂しく写っていた。

そんな姿も、まるで絵の一場面のようで。

 

 

 

「美人さんは、祓い屋じゃないの?」

 

わたしが見える人なんて、祓い屋位だ。

よくよくみれば、美人さんも相当な妖力を持っている。

これだけあれば、苦労しなさそうだ。

でも、私は知ってる。

人間の世界では、妖力はすごく要らないんだって。

ま、そうだよね。妖見えるひとなんて不気味だよね。

 

美人さんは、少し考えて答えた。

 

「私は、祓おうとかは思ってないかな」

 

安心した?と聞いてくる美人さんに、内心びっくびくでうなずいた。

だって、祓おうとかは思ってないって、その気になれば祓えるってことだよね......。美人さん強そうだし。

ま、いっか。わたしも、祓われそうになったら、なにか対抗してみよう。

それはともかく。

 

「わたしも、人間は嫌いかな」

 

ずぅっとまえの、苦しみとか、痛さを思い出すと、人間って嫌な奴だなって思っちゃう。

そう考えると、妖の方が楽かな。

 

「なんで?君は、妖でしょう?人間なんて、どうとでもなるんじゃない?」

 

美人さんは、訪ねてくる。

そりゃあ、今のわたしだったら、人間なんてどうとでもなると思うよ。

でもね。

 

「こわいの、人間も」

 

美人さんは、ただ黙って聞いてくれる。

もし、人質をとられたら、いくら妖でも、勝てないときがある。わたしのお母さんみたいにね。

どう考えても、人間が悪いときだって、ただ異形だから、とか、変だから、で襲われる時もある。

けれどね。

 

「妖も、こわいの」

 

半分妖怪のわたしは、人間からは妖といわれて嫌われるけど、妖からは人間といわれて嫌われる。

妖のなかにも、神さま系の方はよくしてくださるけど、ただ私の事を嫌ってる奴もいる。

 

「こわいって思っちゃうわたしも、こわいんだ。」

 

わたしは、自分がこわい。

この前、お母さんの事を罵倒されて、頭に血が上ったあとに、ちょっとこらしめようと「力」を使ったら、森が吹っ飛んだからね。

自分でも制御できない自分が恐ろしい。

でも、普段はひた隠しにしている。

そうすれば、少しは穏やかに暮らせるから。

 

でもね。

わたしは、お母さんが妖で、お父さんが人間だ。

わたしは、妖であると同時に、人間でもある。

すると、わたしが人間がこわいっていうと、自分もこわいって認めてることになっちゃう。

 

「どれがほんとだか、わかんないの」

 

もう、本当にぐるぐるぐるぐる思考が回って、何を考えてるのか、そもそも何が本当にいいことなのか、わからなくなってくる。

 

「もう、こんなのはいやなの」

 

 

ふと、体があったかいものに包まれているのに気づいた。

それは、美人さんだった。美人さんが、わざわざ背の低いわたしに合わせて、膝を折って、ぎゅっ、と抱き締めてくれてた。

そんな動作も、どことなくお母さんににていて、目から雫が、ぽたりと落ちた。

これは、なみだ、だったっけ。

お母さんが、教えてくれた。

なみだ、は、止まらなくって。

わたしは、始めて人間の前で、声をあげて泣いた。

 

 

美人さんが、抱き締めてくれている。

あったかい。

 

わかってる。

わかってるよ、自分が特異な存在だって。

 

でも、少しだけ、穏やかな生活を夢見てもいいでしょう、か?

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

やっぱり長い時間がたった。

気づいたら、満月が東に出ていた。

森も眠っているんじゃないか、というくらい、静かな時間。

泣いたあとが残った目を、少しだけこすって、美人さんを見る。

「美人さんは、帰らないといけないところがあるんじゃないの?ごめんね、だいじょうぶ?」

「あ、いけない、門限が......」

美人さんは、少し青くなって、帰り支度を始めた。

「ほんとに、だいじょうぶ?」

さすがにわたしも、自分が迷惑かけた相手にお礼をしないほど、世間知らずじゃない。

 

「美人さん、もしかして怒られるの?」

鞄を肩にかけた美人さんが、びくっと反応する。

図星、かな?

「じゃあ、ちょっと待ってて」

わたしは、美人さんの近くに走っていく。

弥羽様に、力を借りようかな。

 

そして、手を、ぱんっと合わせる。

 

(あやかし)は恩を返す。

 (あやかし)は恩を忘れず。

 弥羽(みはね)様の名の元に。

 星は満点、羽は揺れる。

 蒼い光に幸あれよ。

 君に幸あれ」

 

唱え終わると、美人さんの回りを、蒼い光の粒がくるくる回った。

 

「わぁ、綺麗ね」

 

美人さんが、感嘆したようにいう。それが、はじめて美人さんに認められたみたいで嬉しくて、わたしは、得意気な満面の笑みで返した。

 

「これはね、幸せの呪文だよ。幸あれよ、ね!」

 

この呪文で、美人さんが怒られる確率はすごく低くなるだろう。でも、わたしが疲れるから、あんまり連発はできない。

美人さんは、ふむ、とうなずくと、また明日ね、といって去っていった。

わたしも、くぁー、と伸びをする。

今日は疲れた。

とことこ、と今の家である、おんぼろマンションの方に向かう。

途中で声をかけられた人間にも、今日はきちんと(キョドらないで)対応できた。

ちょこっと嬉しくて、ぴょんぴょん跳ねながら歩く。

明日も美人さんと会えるかなぁ。

でも、

明日はゆっくりしたいなぁ。

 

 




なんかぐだぐだになってしまいましたが、どうでしたか?誤字脱字よろしくお願いします⤵
美人さんは、誰でしょーねー(すっとぼけ)
夏目友人帳、アニメやるそうです。それをきっかけに、たくさんの人が見てくれると、いいな~


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美人さんとさよならの話。

わー、わー、遅くなってすみません。いのりです。
活動報告の方を読んでいただけるとわかるのですが、常院寺にどやされて、これ頑張って十五分でかきました。
やばい!ということで、どうぞ!


...... このあと、かなり編集しました。
すみません!
あと、さーちさん、感想ありがとうございました!
書く勇気がわいてきました‼


そのあと、一回だけ美人さんはわたしに会いに来た。

ぽかぽかした日差しの下、ひとりで草原で大の字に寝転んで、お昼寝しているときだった。

 

急に、ふわっ、と変な風が吹いたな、と思って目を開けたら、美人さんがいた。

 

美人さんは、さらさらと綺麗な茶髪をなびかせて、優しく笑う。

「ごめんね。私、またここから居なくならないといけないの」

うとうとしそうな、あたたかい陽気と、美人さんの言葉が、やけに不釣り合いで。

おっそろしいほど綺麗な笑顔は、なんとなく、無理して笑っているように見えて。

わたしは、なんにも考えずに美人さんに抱きついた。

 

「また」いなくならないといけないってことは、これまでもたくさん、いなくならないといけない時があったってことだと思う。

 

このまえ、アパートに帰ったあと、御先祖(みおや)様の力で、いろいろと調べてしまった。

美人さんが、孤児だってことも、家族がいないってことも、親戚の方にお世話になってるってことも、その親戚の方が、意地悪だってことも、知ってる。

 

わたしのせいで、わたしが昨日美人さんを引き留めちゃったから、親戚の方にキレられて、ここにいられなくなっちゃったことも知ってる。

 

美人さんが、これまでも、妖力のせいで、たくさん悲しんでいるのを知ってる。

美人さんが、妖力のせいで、ここから離れないといけないことを知ってる。

 

他のひとのことを勝手に調べるのは、いけないってことは知ってるんだ。

でも、なんとなく、美人さんのことを調べてしまった。

美人さんのことを、守りたかったから。

恩返しがしたかったから、かな。

 

穏やかな風が、吹きすぎていく。

抱きついたわたしと、美人さんのことを、お日様がキラキラと照らしている。

 

美人さんは、一瞬びっくりした顔をしたけれど、今度はふわっと笑って、「ありがとう」って呟いた。

太陽の光を浴びた美人さんは、スポットライトを浴びた女優さんのようで、天性のカリスマ性? っていうのがあるのかな?って、そんな気がした。

 

 

なんとなく気恥ずかしくなって、「美人さんは狐目だから、きっと私たちの仲間になれるよ!!」と言ったら、「ほんとにそうだといいんだけどね」と、くしゃっと頭を撫でられた。

 

ふわふわと髪の毛が揺れる。

なんとなく、なにか美人さんにしてあげたい、って思った。

 

美人さんが、人間は怖くないかもしれない、妖も実は全員がひどいやつではないのかもしれない、って気付くきっかけをくれたことを、感謝しているから、ね。

 

 

わたしにできることは?

 

 

わたしは、一回美人さんから離れると、目をつぶって、ぱんっと両手を会わせる。

草原にあったぽかぽかした空気が、すうっと冷たくなる。

すぅっ、はぁっ、と数回深呼吸したあと、唱え出した。

 

「妖は恩を返す。

 妖は恩を忘れず。

 月乃(つきの)様の名の元に。

 仲間が窮地に陥るならば。

 仲間の命が危ないならば。

 (おの)が名を呼べ。

 友人の証。」

 

唱え終わると、何処からか、紙がひらひらと落ちてくる。それに、持っていた筆で自分の名前を書いた。

 

そして、「プレゼントだよ♪」といって、美人さんに差し出した。

美人さんはかなりびっくりして、紙をしげしげと眺め回した。

これは、ちょっと古くて厚いかな?ってかんじの、どこにでもある普通の紙に、わたしの名前を書いただけのしろもの。

だけど、月乃様の力を借りたから、すごいものになってるんだよ、ね。

 

「これ、なぁに?」と、可愛らしく子首をかしげて聞く美人さんに、わたしは、にっこり笑って言った。

 

「お守り。ここに、わたしの名前が書いてあるんだよ。名前を呼んだらすぐ、かけつけるからね!」

最後の方がしたったらずになってしまったけれど、得意満面で話すわたしを見て、美人さんは、「へえ、凄いもの作るのね」とほめてくれた。

美人さんは、またしげしげと紙を見つめる。

その動作ひとつひとつが、いちいち綺麗で、やっぱり美人さんは美人さんだなぁと思った。(意味がわからなくなってきたー)

 

「これって、どうやって作ったのかしら?」と聞く美人さんに、うーんと、といいながら説明する。

 

「わたしは、というよりわたしのおかあさんの妖の一族は、ご先祖様の力を借りて、術を使っているんだって。あ、でも、知っているご先祖様からしか力を借りられないんだけどね」

ふむふむ、と頷く美人さんは、目がきらきらしていて、あ、これを教えたらやばいかな。という気持ちにさせる。

「そして、自分の得意なことを見つけて、それを突き詰めていく、っていう感じで強くなっていくんだけど」

話の途中だけど、美人さんに、「君の得意なものってなに?」と聞かれる。

「わたし? わたし、は、ねぇ。守る系の術が得意かな。木の実取るときに、落ちちゃって、条件反射でバリア張っちゃったりとか。なにもないところでこけて、とっさにバリアはって、バリアにダイブしたりとか。わたしは、バリアって呼んでるけど、おかあさんは、盾って呼んでたよ」

「優しいんだね、君は」と返した美人さんは、また、憂いを帯びたような表情をしていて、わたしは慌てて話題を変える。

「そ、そうそうこれはね。封印術が得意だったおかあさん、月乃様からの力を借りて、ついでにわたしの妖力をちょっとつめて、紙を特別な紙にしているんだ。その紙に名前を書くことで、そのかいてある名前の声に反応して、わたしを呼び出せるようにしてあるんだ。」

最後の方まで言ったときには、凄い勢いで美人さんの目がきらきらしていて、おおぅ、って思った。

「それって、人間でも作れるの?」と、聞かれて、「たぶんね」と答える。

「わたしは、おかあさん、じゃなくて月乃様の力を借りてるけど、人間でも頑張ればできるんじゃないかな。でも、これを作るには、契約?の間の二人の、思い出が必要なんだ」

 

おもいで。と美人さんの口が動く。

なんとなく悲しそうな美人さんを見て、そんな難しいものじゃないよ、とフォローする。

「たのしいな、とか、かなしいな、とかでもいいし、あのときはすごく腹が立ったな、とか、あのときはものすごく恋をしたな、とか、あのとき勝負したな、とかでもいいんだよ。とりあえず、二人が「友達」みたいになることが必要なんだ」

 

友達。

美人さんは、どこか憧れたように反復した。

 

「私ね、友達、いないんだ」

 

茶髪をさらさらといじりながら、たんたんと言う美人さんに、どこか物悲しさを感じる。

長く話していたのか、辺りはすっかり日が落ちて、みんなみんな、オレンジ色に染まっていた。

美人さんは、セーラー服を着ている。どこかの高校の学生なんじゃないかな。それなのに、友達が一人もいない、っていうのは、寂しくて、哀しいことなのだろうか。

 

 

なんとなく、こんなのは嫌だ、っていう気持ちになった。

 

「美人さん。」

 

美人さんは、なに? っという感じで、こちらに視線を向ける。

 

「何で、妖が、人間を嫌うか知ってる?」

 

なかには、人間を憎んでいない妖だっているし、おかあさんみたいに優しい妖もいそうな気もするのにね。と続ける。

 

美人さんは、少し考えたあと、「人間は、妖を見つけると祓う人が多いから?」と回答した。

 

わたしは、「おしい!」という。

そして、「これはおかあさんから聞いた話なんだけどね」と前置きしてから、話す。

 

 

妖は、人間を嫌う。

それは、人間に祓われるからじゃない。

もし、普通の人間に遭遇しても、みんな逃げられるだけの力は持っているから。

祓い屋なんて、滅多にいないしね。

 

 

妖怪が人間を嫌う本当の理由。

それは、すぐ死んじゃうから。

せっかく仲良くなっても、死んじゃうから。

傷つくのが、怖いから。

 

 

なんだってさ、と美人さんに言う。

美人さんは、上を仰いで、静かに聞いている。

 

「美人さんに、人間の友達がいないかもしれない。でも、美人さんの友達は、すぐ死んじゃったりはしないでしょ? それなら、美人さんには、友達が死ぬ悲しみは

、若いうちならあんまりない、よね?」

 

もちろん、病気や事故で死んじゃったり、寿命で死んじゃったりはするけれど、妖みたいに、知っている人間が自分を残してばたばた死んでいくっていうのはないわけだ、と話す。

 

「だったら。美人さんにはまだまだチャンスがあるよ‼ 諦めないで、ね。人間にだって、妖の力とかを、受け入れてくれるひとは、きっといるから」

 

願わくば。美人さんに、親しい友達ができますように。

 

 

 

「それにね、わたし、もう美人さんと友達でいるつもりだよ?」

 

 

それを聞いたとたん、上を向いていた美人さんの目から、小さな水滴がひとつ、落ちていった。

 

静かな時間が過ぎる。

日はだんだん暮れていって、空は濃い赤色と青色のグラデーションに染まる。

 

「ありがとう」

 

小さく呟いた美人さんの声は、空に吸い込まれて消えた。

 

 

***

 

 

しばらく二人でぼおっとしていたけれど、わたしが、そうだ美人さん、門限門限! と騒ぎだして、青くなった美人さんと二人で、「今のところ」の美人さんの家に走る。

 

「そういえば」と美人さんが問う。これだけ走っていても息が切れない美人さんに、そのほっそいからだのどこにそんなスタミナがあるのぉ? と思いながら、「な、に、」と返す。

「もしわたしが、あの紙を作れたら、どんな風になるかな?」

「あの、紙、友人の、紙って、名前、」

「へぇ、じゃあ、たくさん集めたら「友人帳」だね。もし、私が一枚一枚の紙に、たくさん妖力を込めたらどうなるかな?」

「美人、さんは、妖力、強いから、たとえば、紙を、破ると、その紙に、名前を書いた妖の、体も、破れるとか、起こるんじゃないかな、はぁ」

「ほぉ、面白そうね。じゃあ、作ってみようかな?」

「えええー」

ききぃっ、と音が聞こえてきそうな感じで、美人さんがある家の門の前で止まる。

ここがお世話になっている家の門らしい。随分と立派で、なんか相続争いが酷そうだな、と思った。

 

 

「じゃ、またね、**。」

 

最後の最後で、名前を呼んでくれた美人さんに、若干嬉しくなりながら、返す。

 

「またね、まだ、全然恩返し出来てないからね。どこかにいっちゃっても、見つけ出すよ‼ 美人さん」

 

にっこり笑って手を振るわたしに、美人さんは一回微笑んだあと、門の中に入っていった。

 

 

......あ、美人さんの名前、なんだっけ。




がくがくぐだぐだですが、すみません。
あとで手直ししまーす 
8月11日、手直ししました。
大幅に変わりました。すみません。
他の二次創作の方が本当に凄いと思います。
伏線とか、伏線とか、キャラの動かしかたとか。


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