この素晴らしい悪魔に鉄の華を (ドゥー・ドゥル・ドゥー)
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第1話 悪魔となった少女
誤字や、世界観の崩壊等があるかもしれないので注意してください。
「
水色の髪の美女に突然そんな事を告げられた。
いきなりの出来事に思考が追いつかない。
こんな時はこうなった経緯を順に思い出せば何かわかるかもしれない。
名前は
性別は女
アニメオタクな兄を3人持つ幸せな家庭に生まれた。
4人兄妹の末っ子。
近所に女友達がいなく、兄に囲まれて育った影響でボーイッシュな性格になった。また、兄の真似をして育ったので一人称も『オレ』。
小柄だったけど足が速く、中学生で陸上部に入部。
将来有望な選手だったが、全国大会出場前に交通事故で右半身不随になる。
その後リハビリ施設内の階段から転げ落ち死亡した。
そして気が付いたらよくわからない空間にいると言う事だ。
ちなみに、今椅子に座っているが、右半身は当然のように動かない。
「初めまして。私の名前はアクア。日本において若くして死んだ人間を導く女神よ。望月 桜花さん、あなたには二つ…いえ、三つの選択肢があります」
要約すると、一つめは記憶をなくし再び人間として生まれ変わること。二つ目は天国へ行き文字通り何もない空間で何もせず暮らすこと。そして、三つ目の選択肢は
ファンタジーな世界へ転生し魔王を倒せ
と言うものだった。
女神アクアはファンタジーゲームみたいな生活が出来るとか言っていたが、正直オレはゲームよりアニメの方が好きだ。特にロボアニメ。
1番のお気に入りは『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』
主人公の名前や境遇がオレと似てるし、世界観や迫力のある戦闘シーンがとても気に入っていたからだ。
「ねえ、その異世界とやらに持っていける特典ってなんでもいいんだよね?」
「そうよ、チート級の武器や超能力、特別な才能等々。なんでも一つだけ異世界に持っていけるわよ」
『なんでも一つ』その言葉を聞いた瞬間からオレの考えは決まっていた。
「だったら、オレの好きなアニメに、オレと同じ半身不随のキャラがいるんだ。彼は誰よりも強く、クールで、カッコよかった。だからオレは、彼の……
『三日月・オーガス』のような強さが欲しい‼︎」
「……………誰?」
知らないのかよ。主人公なのに…ガンダム超有名なのに……
軽くショックを受けつつ目の前の女神に説明する。
「まあ、いいわ適当にやるから。魔法陣から出ないでね」
「こっちにとっては超重要イベントなのに適当ってなんだよ!真面目にやってよ!」
オレの足元に青く光る魔法陣が現れた。
…え?嘘。もう転生⁉︎異世界の状況とか魔王軍の規模とかほとんど聞かされてないんだけど⁉︎さっきからいい加減過ぎだろこの駄女神‼︎
「大丈夫よ。私は日本担当の超エリートのアクア様よ!大船に乗ったつもりで任せなさい‼︎」
もう、フラグにしか聞こえなかった。
「さあ、勇者よ!願わくば………ええと…なんだっけ?まあいいわ。とにかく頑張ってねー!」
「最後くらいちゃんと言えぇぇぇぇぇ‼︎」
叫び声が虚しく響く中、オレは明るい光の中に包まれた。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
目を覚ますと辺り一面に草原が広がっていた。どうやら無事に異世界に着いたらしい。
すぐさまオレは体が動くか確認する。…うん。五体満足な辺り、あの駄女神はその辺はちゃんとやってくれたみたいだ。
しかし、なんだか腕が妙に大きい様な?
すぐさまオレは両腕を見る。白い籠手、巨大な掌、黄色い爪。
……いや、まさか…
ちょうど付近に川があったので鏡がわりに覗き込む。すると、そこに映り込んでいた姿は
『ガンダムバルバトス』を擬人化した姿だった
いやいやいや!確かにオレはミカみたいな強さが欲しい、なんて言ったけど、言ったけども‼︎
今のオレはバルバトスを模した白い鎧に身を包んでいた。しかもこの姿、『バルバトスルプスレクス』じゃん。
……うわぁ、ちゃんと背中に尻尾も付いてる。
試しに兜を取ってみると、頭部に大きな犬耳が付いていた。
…あぁ、ルプス要素はそこなのね、納得。
とにかく動いてみることにした。結果から言うと異常なまでに身体能力が上昇していた。足は陸上やっている時よりも速く、ジャンプ力も助走を付けずに10m以上跳べた。腕力はまだ試していないが、容易に想像ができた。
ただ、尻尾だけは上手く操ることが出来なかった。伸ばしたり縮めたりは出来たが、アニメの様な変態起動は出来なかった。
しかし、良く考えると今のこの姿は化け物でしかない。モンスターとして討伐されかねない。
それに、周りには建物どころか道も無い。当然食べ物も持って無い。寝袋も無ければ、野宿の経験も知識も無い。
……あれ?詰んでね⁉︎
軽くパニックになっていたところに、
「うわああああああぁぁぁ‼︎た、助けてくれぇぇぇ‼︎」
近くで悲鳴が聞こえた。
悲鳴の元に向かうと、行商人らしき馬車が巨大なカエルに襲われていた。
よし!彼らを助ければ近くの町まで案内してくれるかもしれない。あわよくば食料と寝床もゲット出来る!
すぐさま巨大なカエルに飛び掛かり殴りつけた。しかし、ほとんどダメージを与えられなかったらしく、カエルは大きな口を広げこちらに襲いかかって来た。素早く回避し、さらに2、3発殴る。だが、怯みすらしない。
……もしかして打撃が効かないのかな?……だったら!
拳を貫手に変え、カエルの横っ腹を思い切り突く。思った以上に深々と突き刺り、妙に生暖かい内臓の感触に怯みながらも引き抜く。すると巨大なカエルはその場に倒れ込み動かなくなった。
周りには他にモンスターは居なく、行商人の方を振り向くと、
「ば、化け物⁉︎こ、こっちに来るなあああ‼︎」
いきなり馬車を走らせ何処かへ行ってしまった。
…まあ、気持ちは分からんでもない。
しかし、チャンスは一転、危機的状況に陥ってしまった。
腕部200ミリ砲、サブアーム、ヒールバンカーはオミットしている設定です。
描写出来る自信が無いからです。
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第2話 この素晴らしい出会いに飴と鞭を
申し訳ありません。
次回あたりにめぐみんとダクネスは登場させたいですね。
行商人に逃げられた後にはいくつかの荷物が散乱していた。
中身は干し肉やパンの様な食べ物がほとんどだった。
持ち主は逃げたわけだしこのまま放っておいてもモンスターに食べられるか、腐るしかないわけだから貰ってしまおう。このまま街が見つからなかったら最悪餓死するからね。それだけは避けたい。
しかし、どこに保管しようか?
…しばらく付近を散策すると、手頃な洞窟を発見した。自然に出来たものか、モンスターの巣かわからないが、たとえモンスターの巣だとしても今のオレなら問題はない。容易に退治出来る。
……出来てしまう。今のオレはヒトでは無く、悪魔でしかないのだから……。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
この世界に来て2週間経った……。
2週間もの間、街を探し、ついでに食べられそうな物を探し、モンスターに襲われたら返り討ちにする。そんな生活を続けていた。おかげで、モンスターとの戦闘には慣れたし、最初は抵抗もあった野宿にも慣れた。
……思春期真っ只中の女の子がそんな物に慣れてはダメな気がするけど、生きるためだから仕方がない。
しかし、未だに街が見つからない……。
あれ?オレって方向音痴だったっけ?2週間も街を探して手がかり一つなしっておかしくないかな?
2週間も独りで生きてこれたのは単純に『死にたくなかった』からだ。
日本にいた頃のオレは右半身が動かない状況で、意味なく生きてきて、そして、意味なく死んだ。だからこそ、こっちの世界で何か『生きる意味』が欲しかった。
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今日も今日とて街探しだ。ついでに食べ物も底を尽きそうなので、行商人の落し物でもないか探してみよう。
1時間もせずに横転した荷車を発見した。荷車の中には野菜がたくさん入っていた。
これは幸先のいいスタートだ。だけど、都合が良すぎるような?
「よし、モンスターが餌に食いついた。かかるぞ!」
4人組の男女に見つかった。男が3人、女が1人。女は杖を持っていて、男達はそれぞれ剣、斧、槍で武装していた。どうやらこの荷車は
モンスターをおびき寄せるための餌らしい。
「獣人の子供か⁉︎」
「でも、腕が妙に大きいし、背中から尻尾が生えているなんておかしいわ」
「この姿…まるで悪魔だ……」
「悪魔だと⁉︎アクシズ教徒として、悪魔を見逃すわけにはいかん‼︎」
「「「「悪魔殺すべし!魔王しばくべし!」」」」
なんだか面倒な奴らに見つかった。とにかく誤解を解かないと…。
「まってよ。オレは敵じゃない。ここに来たのもお腹が空いてただけなんだ」
「問答無用‼︎女神アクアの名の下に、滅びよ悪魔ぁ‼︎」
「悪魔殺すべし!魔王しばくべし!」
剣持の男が突撃して来た。
ああもう面倒臭い‼︎適当に反撃して追い払ってしまおう。
振り下ろされた剣を避け、男の胸ぐらを掴み投げ飛ばす。
続いて斧持ちの男に飛び蹴りをかまし、最後に槍持ちの男にタックルを決めた。
「なんだあのパワーは⁉︎」
「…くそっ!ガキだからって容赦しねぇぞ!」
今度は3人が連携して襲いかかって来たが、全ての攻撃を回避し、蹴散らした。
流石はバルバトス。この程度の敵は余裕か……。けど、もう諦めてくれないかなぁ。殺さないようにするの難しいんだけど……。
「くっ……強すぎる……。まるで歯が立たないぞ」
「じゃあ、さっさと帰ってよ。オレは敵じゃないって言ってるんだしさ」
ようやく諦めてくれるか…。あ、そうだ。逃げるこいつらを尾行すれば街が見つかるかなーーー
「アイスブラスト!」
「ぐぅぅっ⁉︎」
突如、死角から放たれた氷塊がオレの脇腹に直撃し、荷台に叩きつけられた。
「今だ!撤退するぞ!」
ドジった。女の事をすっかり忘れていた。けどまあ、帰ってくれるのはありがたいや。
…って、あれ?脇腹の痛みが引かないな…それどころか、痛すぎて一歩も動けないんだけど…。もしかして内臓とかやられちゃったかな……。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
4人組が去った後、オレは荷台のそばでうずくまっていた。
痛みのあまり動けないし、意識も朦朧としていた。
今、モンスターが来ればオレは殺される。来なくても動けないからいずれ飢えて死ぬ。絶体絶命なんてもんじゃない。今のオレは死んでいるようなものだった。
諦めと痛みで気を失いそうになったその時、
「おい、君大丈夫か⁉︎……って、大怪我じゃないか⁉︎お、おいアクア、泣いてないで早く来い‼︎」
あれ…?おかしいな……。今まで出会った人はみんな怯えて逃げるか、モンスターと勘違いして襲いかかって来る奴しかいなかったのに……。
「待ってろ。今、街に連れてってやるからな!」
この人はオレを……、化物みたいな、悪魔みたいなオレを助けてくれた……。
ああでも、この感じお兄ちゃんみたいにあったかいや……。
そう思いながらオレは意識を失った。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
気がつくと小屋の中にいた。家具とかは一切なく、藁の上に布を敷いただけの簡素なベッド(?)の上で眠っていたようだった。
「……お⁉︎気がついたみたいだな」
「………………誰?」
「俺の名前は佐藤 和真。このアクセルの街で冒険者をやってるんだ。…で、君は?」
「望月 桜花……。佐藤…さんはもしかして日本人?……です、か?」
「無理に敬語使わなくていいし、カズマでいいよ。そうだな…、何から説明しようか」
話を要約すると、カズマは2週間くらい前からこの世界にやって来た日本人で、クエスト帰りにオレを発見し救助してくれたらしい。そして、今オレ達がいる場所はアクセルの街にある馬小屋で、カズマが宿屋がわりに寝泊まりしてるらしい。
「ねえ、カズマ。これは何?なんてある書いてるの?」
「ああ、これはギルドカードで、スキルとかステータスとかが書いてあるんだけど……、読めないのか?」
全く読めない。当然文字も書けない。カズマが言うにはこの世界に転生した人は最初から読み書きができるとのことだった。一部の例外を除いて……。でも、読み書きができないところは『鉄血のオルフェンズ』の世界観にあってていいかも。いや、良くない。全然良くない。
「じゃあ街の外に転生したのもアクアのせいかもしれないな」
「ただまー。あ、この子目を覚ましたんだ。…ねえカズマ、ギルドにパーティ募集の貼り紙貼るついでに興味深い話を聞いてね。私のかわいいアクシズ教徒のパーティが変わった人型のモンスターに手こずってるらしいの。だから、明日そのパーティと協力してモンスターを退治してやるわ」
……4人組ってオレを襲った奴だよな?じゃあアクシズ教ってもしかしてアクアを信仰する宗教か?
「もしかしてアクアって本物の女神……?」
「そうよ!(元)日本担当にして、水を司るアクシズ教の女神アクアとは、私のことよ!」
……ってことは、オレが街から離れたところに転生したのも、化物扱いされたのも、あの4人組も、読み書きができないのも全部コイツのせい?
……コイツが適当な仕事をしたせいでオレは死にかけたってわけ?
それなのにコイツは詫びも無し…?
「……望月 桜花を覚えていますか?」
「覚えてないわ。……と言うかーーー」
怒りに身を任せ殴りかかった。……がギリギリのところで躱わされた。
「えぇ⁉︎…なっ……何⁉︎…何⁉︎⁉︎」
「…………女神アクア、オレはお前を許さない。オレはお前を逃がしはしない。」
アクアは脇目も振らず一目散に逃げ出した。
この女は殺すって決めたんだ。
「……逃がすわけないだろ」
その命を持って落とし前をつけさせてやる‼︎
お願い死なないでアクア!あんたが今ここで倒れたら、カズマやみんなとの約束はどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、オーカに許してもらえるんだから!
次回「アクア死す」。デュエルスタンバイ!
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