神サマ転生1パーセント! (放仮ごdz)
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神サマ転生1パーセント!

どうも、放仮ごです。久々のオリジナルで、短編です。
金アサシン手に入れるために全力を費やしたFGOのガチャで大爆死して、神様を全力で貶めようと思って考えた話。ついでに「神様転生」を本当の意味でやってみた。

神って案外ろくでもない奴多いよねって話。


これは、しがない高校生である俺が妙な幼女と出会った事で非日常に巻き込まれる、それだけの話だ。

 

 

例えば、不思議な力に目覚めるとか、人智を超えた殺し合いを目撃するとか、借金で親に売られたとか、異世界から侵略者が攻めて来るとか、空から女の子が降って来るとか、普通信じられない事が起きて日常は非日常に変わる。

 

でもそれは、アニメとかラノベとか創作の中の話だ。現実は、もっと質素でつまらなく酷い物らしい。

 

 

「少年!さっそくで悪いが、私を信じろ!」

 

 

住宅街の空地。学校からの帰り道だったそこで、何か目の前で気絶していた幼女が起きるなりそう言ってきた。その格好は質素な物で、今時の子供とは思えないが、それとこれとは話は別だろう。尊大な態度は、頭に来る物だ。

 

 

「・・・は?」

 

「もう一度、分かりやすく言うぞ!私は神サマだから、私を信じろ!何も言わずに敬うといい!」

 

「ふざけんな」

 

 

日本に伝わる、森羅万象に宿る八百万の神々。または海外では主流であり我が日本の過去に存在した武将の一人も崇めていたイエス・キリスト。または仏陀。またはYHVH。その一人だと幼女は言う。子供の戯言だろうか。

 

 

「信じられぬか?なら、この名前ぐらいは知っているだろう!私の名は大日孁貴神(オホヒルメノムチ)だ!」

 

「知らん」

 

「なにぃ!?日ノ本で一番有名な神だぞ!?」

 

「知らんもんは知らん。じゃあな、子供は母親の所に行け」

 

「ま、待て!」

 

 

スタスタと歩いて去ろうとすれば、後ろから俺の上着の裾を掴み縋りついてくる幼女・・・えーっと、ヒルメノ?涙目でこちらを見て来ても無駄だ。その口元に笑みを浮かべているぞ。どうせ、こうすれば簡単に話を聞いてくれるとか思っているのだろう。だが俺は気にしない。俺は人を平気で騙して利用しようとする奴が大嫌いだからな。

 

 

「待てと言うのに!幼女の涙で心揺るがないと言うのか!」

 

「そんな下心丸見えな涙で騙されるか。あと自分で幼女だと自覚している奴は関わらないのが吉だ」

 

「待ってって!信じてくれれば何でもできるぞ!信じてくれれば!」

 

「信用できるか」

 

「信用ではなく、信仰してくれと言う話だ!」

 

「猶更胡散臭いわ」

 

 

ずりずりと幼女を引き摺りながら俺は我が家であるボロアパートを目指す。しかしヒルメノは決して手を外そうとはしなかった。

 

 

「どうしてそこまで人を信用できない!いや私は神だけど!お願いだから信じて!100万円上げるから!」

 

「・・・金で人の信用を買うとか俺は一番嫌いだ」

 

「金に何の恨みがある!?」

 

「全てだ」

 

 

この幼女に分かる筈もないが、俺の実家は金持ちだ。その次男である俺に取り入ろうとした大人達がいた。・・・中には、許嫁まで用意して俺に取り入ろうとした奴もいた。その子に恋してしまった俺は、快く受け入れた後、数か月後に聞いてしまったのだ。

 

彼女が、望んで俺と一緒にいる訳ではないと、親に言われて俺と付き合っていると、俺の兄貴に告白していた所を。

 

俺の存在に気付いた彼女は弁明しようとしていたが、俺は何も聞かずに逃走、それ以降自室に引き籠った。親が恥だ何だと言っても俺はずっと引き籠っていた。そんな俺を見捨てずに食事やらを置いてくれた兄貴に感謝したが、俺なんかに関わるなと言う両親の言葉を兄貴が受けていたのはどうしようもなく嫌だった。

 

そんな生活を中学まで送り、このままではいけないと言い出した兄貴の提案で、実家から離れて必要最低限の仕送りをもらいながら知人が誰も居ないこの地で、この春からアパート暮らしを始めたのだ。

 

それでも俺は、友人はできたが自分の事は話さなかった。また、金目当てで態度を変えるかもしれないと言う恐怖が俺の心を蝕んでいたのだ。結局、俺は誰も、何も信じる事は出来なくなった。兄貴でさえも、内心何を思っているのかと言う恐怖で信じることができない。

 

 

そんな俺に神を信じろ?無理だな。それにしても、この餓鬼を置いて行かないとアパート近隣の人間に見られたら面倒だ。どこか適当な所に言って、適当に「信じるよ」とでも嘘を吐いて離れてもらうか。うん、そうしよう。これから勉強しないと行けないんだ。一人で生きていくために、少しでも知識を得ないといけないから。

 

 

 

「全てだと言われても納得できるか!私を信じろ!信じてくれ!そしたらお前は救われる!」

 

「・・・目上の物にお前とか言うもんじゃないぞ。俺じゃなきゃ殴られても可笑しくない」

 

「私はお前なんか目じゃないほど年上なんだからいいんだ!」

 

 

とりあえず目的地をアパートの裏山に選び、ズルズルと自称神サマを引き摺りながら歩き、その言葉に改めて見やる。・・・年上要素は皆無だった。

 

 

「・・・いや、どう見ても小学校にも行っていない餓鬼だろ」

 

「これには深い事情があるんだー!私が今信仰者を捜している理由でもあるが!」

 

「へえ、じゃあ言ってみろよ。納得したらお前を神様だって信じてやるよ」

 

 

にやにやと笑いながらそう言う俺に、ヒルメノはむっと頬を膨らませながらじろりと睨んだ。そんな顔をしても無駄だ。俺はさっさとお前を解放したいんだ、この際お前の話を聞いた上で全否定して心を折ってでも離れてもらうぞ。

 

 

「いいだろう、話してやるからちょっと止まれ」

 

「話すぐらいなら問題ないだろ。俺は止まる気はないぞ、急いでるからな」

 

「じゃあちゃんと聞けよ!?」

 

 

涙目でそう言ってくるヒルメノの必死さに、思わず歩く速度を下げてしまう。・・・聞いたら速度上げるからな。

 

 

「私はな、神々のいる天界では割と名が通った超絶偉い神サマなのだ!」

 

「へえ、お前みたいなチビが超絶偉いとか世も末だな。総理大臣に五歳児がなるレベルだ。日本オワタ」

 

「フハハハ!私の本来の姿はスーパーウルトラゴージャスナイスバディな女神オブ女神だから問題ないのだ!・・・・・・今はこうして力を奪われ、こんなに縮んでしまったが・・・あいつらマジ殺す」

 

「それで、何でその女神オブ女神サマが縮んでこんなところにいるんですかね?」

 

「いや、それが・・・よくできた弟と弟っぽい妹の二人にキレられてしまって・・・」

 

「・・・一応聞くが、なんで?」

 

「・・・・・・・・・ここ30年ぐらい人間界のアニメやらゲームやらにハマって神の職務を怠慢していたから・・・特に最近は24時間毎日」

 

「クソな理由だな」

 

 

信じる訳ではないが、そりゃキレる。キレて当然だ、神サマがアニメとゲームで職務怠慢とか・・・世も末にも程があるぞ。

 

 

「それで、最初は抵抗したのだが同レベルが二人がかりとか勝てるはずもなく・・・拘束され、私への信仰を全て奪い取られて神の権能を失った上でこの幼子の身に転生されてしまったのだ。人の身で真っ当に生きて反省して来いとな。

 

しかし、私は諦めん。今の私は現人神に当たる。信仰心さえあれば力を取り戻すことができる!・・・元々の私に向けられた信仰心はアウト、奴等に横取りされてしまう。だからこの身で、目覚めた孤児院の教会から飛び出して町でわざわざ私が出向いて布教して頑張っていたのだが・・・」

 

「誰も信じてくれなかったと。そりゃそうだろうな」

 

 

むしろ信じる奴は危ないだろ。こんなチビだと、信仰した振りをして不祥事を起こそうとする不審者が出かねない。・・・俺に取り入ろうとした大人共と同じクズだな、間違いない。

 

 

「そう言えばお前、どうして倒れてたんだ?」

 

「ただの行き倒れだ・・・そこの空地に居た猫と死闘を繰り広げて何とか焼き魚を調達したのだが・・・転生してから私はまだ一睡もしてなくてな。食した直後に、こんな惨めになったのかと言うショックも相まって気絶してしまったのだ。・・・あ、焼き魚は美味かったぞ」

 

「お前、孤児院に居たんだろ?そこに帰ればいいじゃないか」

 

「馬鹿言うな!他教徒に養われるなど、神として受け入れる訳に行くか!・・・出て行きますって書置きを置いたからな。二度と戻る気はない。でも生きていくためには信仰者が必要だ、だから私を起こしてくれたお前にこうして頼んでいるのだ。頼む、私を信じてくれ!」

 

 

そう懇願してくるヒルメノを見て、俺は一瞬その言葉に肯定しそうになった。同情してしまったのだ、嘘かもしれないその言葉に。それを慌てて押しとどめ、俺は口を開く。

 

 

「・・・納得はした。でも、俺は誰も信じない。どうせお前も俺を利用するだけだろ?何度でも言う、俺はお前を信じない。このまま警察に突き出してもいいくらいだ」

 

「それは困る!お願いだ、私を助けると思って!」

 

「嫌だね。別の奴に頼め、俺はお前を助ける気なんてこれっぽっちもない」

 

「では、何で私を助けてくれたのだ?関係ないなら見捨ててもいいだろうに」

 

「・・・そんなの、子供が倒れているなら助けるだろ、普通」

 

「悪い奴は簡単に見捨てるぞ。私は神だからな、お前がいい奴なのは分かる。だから頼んでいるのだ」

 

「・・・」

 

 

何で助けたか。それは、何となくとしか言いようがない。俺はお人好しだと、それはお前のいい所だと兄貴に言われていた。でもそれは、誰も信じなくなった以前の俺の話だ。・・・ああ、出鱈目を言うな。俺を騙す気だろう、そうだろう。俺は絶対騙されない。もう誰も信用しないって決めたんだ。

 

 

 

 

 

 

その時だった。突如、俺達の前にワゴン車が止まり、俺を足に掴まっているヒルメノごと引き摺りこんで走り出したのだ。それが誘拐だと気付くのは、10秒ほどかかった。

 

何で、今の俺は、実家とはただ仕送りされる関係で何の価値も無いはず。なのに何で、俺を誘拐する・・・?

 

 

 

スタンガンで気絶させられ、目隠しと猿轡を付けられた俺とヒルメノはどこかの埠頭の廃倉庫に降ろされた。そこで説明されたのは、胸糞悪くなる理由だった。

 

誘拐犯は全部で20人。実行犯でスタンガンなどを装備した5人と、銃やらで武装している15人と言った構成。そしてその正体は、俺の許嫁だった少女の父親が雇った雷御会とか言うヤクザらしい。

その理由は手に入らなかった俺の実家の金を搾り取る為。元々、俺と彼女が結婚したら俺達一家を殺害して大金を得る計画だったようだ。それを俺が解消した事で失敗に終わったとの事。しかも、俺が引き籠りになったと攻められて下手に出るしかなかったようだ。

 

そのため、実家のメイドに金を渡して俺の情報を売らせ、誘拐して身代金を得た所で俺を殺すつもりだったらしい。・・・ちなみに、ヒルメノは剥がすのもめんどくさかったから一緒に連れて来たんだと。そう睨むな、自業自得だぞ。

 

そのメイドは多分、以前俺が引き籠りだった時に身の世話をしてくれた人だ。うんざりした顔を覚えている。人を疑う事を知らない善人な兄貴の事だ、彼女が俺の事を心配しているとでも思って居場所を言ったんだろう。

 

・・・ああ、ほら。人は信用できない、他人では猶更、身内でさえこの様だ。もういい、もういいさ。俺はこのまま殺されてやる。それで兄貴達が不幸になったところで知るもんか。どうせ、俺なんかのためにあの両親が金を払うはずがない。兄貴は払おうとするだろうが、あの両親が許さない。「無駄金」だとそう言うだろう。

 

 

 

蒸気パイプに縛られた俺は項垂れる。もう何も考えなくていい、人と関わらなくていい。死んで、それで終わり。ああ、最悪な人生だった。

 

 

そして、最悪なのは俺の思考だ。

 

 

この期に及んでまだ、助かるかもしれないと思ってる。

 

まだ、彼女が俺を本当に好きだったかもしれないとか思っている。

 

まだ、あの両親が俺を見捨てないかもしれないと思ってる。

 

まだ、子供の俺を殺すはずがないと思っている。

 

まだ、兄貴が俺を助けてくれるかもしれないと思っている。

 

 

 

ああ、分かった。俺はまだ誰かを信じていたいんだ。信じられるものを探していたんだ。ヒルメノを助けたのは、お人好しなんだからじゃない。

 

 

何かに縋りたい、信じたい。そんな感情を、あの幼女は引き出していたんだ。ああ、それが神サマの力か・・・

 

 

 

「おい、お主!まだ名前も聞いていないお主!おい、奴等は私達を殺す気だぞ!関係ない私までもな!今は神じゃないから死んじゃう!」

 

 

無言で項垂れる俺に、ゲシゲシと蹴りを入れて来る隣の五月蠅い神サマ。それが癪に触ったのか、奴等が拳銃を手に近付いてくる。・・・ああ、もう俺は人質として用は済んだから殺すのか。やっぱり、悪人は信じちゃ駄目だな。

 

 

「おい!私が死にたくないから、いや・・・お主が死にたくないなら、私を信じろ!大至急!」

 

「・・・信じて何かいい事でも?」

 

「信じる者は救われる、だ。私を信じてくれたなら、私は責任を持ってお主を守ると誓おう。私は神ぞ!この言葉一つ一つに、嘘偽りなど欠片もないわ!だから、信じてくれ!私を!」

 

 

訳が分からない事を言っているとは思う。それでも、俺は。

 

 

「ああ、神サマ・・・信じるよ。アンタが本物だって言うなら、俺を助けてくれ」

 

 

俺は、彼女を信じる事にした。彼女の、「神の力を取り戻したい」と言う思いを、馬鹿だとは思うが信じる事にしたんだ。

 

 

「任せよ!」

 

 

その瞬間、彼女の胸にかけられた宝珠に「壱」と紋様が浮かぶと同時。俺達に近付いていたヤクザ数名が、吹き飛んだ。

 

 

「なっ!?」

 

 

驚く他のヤクザ達の前で、ヤクザ三人はビシバシドゴッと天井、壁、地面、ドラム缶、ガラス窓やらに叩き付けられて気を失い、駄目押しとばかりに他の連中に叩き付けられる。そして、シュルシュルと俺とヒルメノを捉えていたロープが解け、それはヒルメノの頭上でグルングルンと周り始める。

 

 

「ふん、1パーセントではこの程度か・・・まあ、この程度の連中なら問題ないな」

 

「何だあの餓鬼・・・やれ!ターゲットごと殺せ!」

 

 

気絶した三人を押し退けたリーダー格であろう男の号令と共に弾丸が俺達に向かって放たれる。俺は思わず我が身を庇うが、その必要は無かった。ビシッと指を差したヒルメノと共に、グルングルン回っていたロープが高速で動き、全ての弾丸を絡め取ったのだ。

 

 

「なあ・・・っ!?」

 

「遅いぞ。私に当てるつもりならマシンガンでも持ってくるんだなぁ!」

 

 

そう笑い、全ての弾丸を掌に乗せたヒルメノは、何とそれらを口に含んだ。計17発の弾丸が小さな口の中に放り込まれ、もごもごと動く。な、なんだ・・・?

 

 

「何だ、安物の弾丸か。質が分かると言う物よ。返すぞ、そら!」

 

「うわぁああああっ!?」

 

 

瞬間、ププププッと弾丸が銃以上の速度で吐き出され、前衛の五人に炸裂。鮮血が舞い、その後ろに居た五人も撃ち抜かれ倒れた。残った七人は恐れ戦き、逃げようとする。しかしそれを神サマは許さない。

 

 

「逃がすか、下郎共。神の怒りを知るといい!」

 

 

再び放たれたロープが高速で七人の足に巻き付き、こちらに引き寄せる。恐怖に慄く彼らの眼前で、両手の間に小規模の風の渦を形成、それを大きく広げて行くヒルメノ。いい笑顔だった。

 

 

「や、やめ・・・」

 

「吹っ飛べー!」

 

 

リーダー格の静止の声も聞かず、放たれた竜巻はドラム缶やらも巻き込み、ヤクザ達全員を飲み込んで倉庫の屋根を弾き飛ばし、空の上でぶつかり合う音が聞こえ、満足気に唸ったヒルメノがぱちんと指を鳴らすと、打ち上げられていた物が全部落ちて来た。

 

爆発するドラム缶。死屍累々に積み上げられるヤクザの山。そして、その光景をバックにこちらにドヤ顔を向ける幼女。

 

 

「どうだ(ヌシ)よ。これで私を神だと信じたか?」

 

「あ、ああ・・・凄いよ、ヒルメノ。・・・生きているのか、あいつ等?」

 

「様を付けろ馬鹿者め。安心せい、理由もなく人を殺すのは荒神のやる事だ。そんな事はせん。奴等の傷は治して置いた、何も問題はあるまい」

 

「す、凄いな・・・」

 

 

まあ、トラウマは残ったんだろうがな。これを機に、更生してくれることを俺は信じたい。

 

 

「ところで主よ、信仰するついでに私を住まわせてもよいのだぞ?」

 

「は?」

 

「だから!お主の家に、私を住まわせてやってもよいと言っているのだ!」

 

「・・・つまり、居候させてくれと?」

 

「私が!お主の家に!住んでやるのだ!」

 

「・・・お前、本当に神か?」

 

 

敬い始めた心が、しゅぼっとしぼんだ気がした。正直、ちょっと信じた俺が馬鹿だと思った。すると。

 

 

「あれ?私の権能が失われて・・・お主!まさか今、本気で私への信仰が揺らいだんじゃなかろうな!?」

 

「すまん、さすがに揺らいだ」

 

「そんな!?1パーセントでもあればこれからの布教にも役立つと言うのに・・・こうなれば、何があっても私を信仰する様に四六時中共にいてやる!ありがたく思え!」

 

「誰が思うか。・・・まあ、助けてもらったんだしな。居候ぐらいは許すよ」

 

「許すのは!私だー!」

 

「はいはい」

 

 

ああ、何故だろう。また彼女を、信じる事が出来る気がする。四六時中とは行かないだろうけど。

 

 

 

「それでお主、名は何と言う?」

 

「ああ、俺か?俺は空閑新太(くが あらた)だ。よろしくな、俺の神サマ」

 

「うむ、良い名だ。こちらこそよろしく頼むぞ、アラタよ!」

 

 

 

 

 

その後、ネットで調べてヒルメノがマジで偉いどころの騒ぎじゃない凄い神様だと知って驚いたが、まあ気にしないことにした。絶対調子に乗るだろうからな。

 

 

 

これは、人を信じられなくなっていた俺に文字通り光を与えてくれた小さな神サマの新たな神話だ。




いかがだったでしょうか?人気が出たら連載しようかなと思ってます。正直、九十九のキョー面相より単純なキャラ設定だから書きやすいです。

よくできた弟と弟っぽい妹がいる幼女な神サマ、ヒルメノの正体とは・・・?一言で言えば、何でもできる凄い神様です。

ちなみにこの世界の神様のシステムは、他作品のとはちょっと違います。
一人分の信仰=1%。それが100%を超えれば、やっと「神」として存在できる。ただヒルメノの場合は100%どころか1000%以上も信仰を集めていたので元の力を取り戻すのには何年かかるか・・・そう言う時は宗教団体が一番ですよね!(某ともだちレベルじゃないと無理ですが)

主人公、空閑新太の名前は「信託が」を並べ替えただけの物。善人兄貴とか親父糞な許嫁とかはちゃんと設定考えてます。明かすのは連載されてからになると思いますが。

よければ評価や感想などをいただけたら嬉しいです。


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俺と神サマと宗教団体1

何故か続きました。


神サマってなんなんだろう。自然から生まれた超常の存在?いや、イエス・キリストの様に人間が崇められて神になる物もある。元々悪霊だった神だっているだろう。

 

だから結論は。信仰され、畏怖される概念。それが神なんだと思う。信じる物は救われる、そう人間が信じてやまないモノだ。・・・まあ、俺は存在自体は認めるが神サマを信仰する気は全くないがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうしたんだ新太?いきなり電話をかけて来かたかと思えばそっちは脅されたりしなかったかって・・・もしかして、何かあったのか?』

 

「いいや。何でも無い。兄貴が無事ならそれでな。糞親父共によろしく言っといてくれ」

 

『ああ、分かった・・・辛くなったらいつでも電話するんだぞ、いいな?』

 

 

そう言って電話を切り、俺はスマホをポケットに戻して伸びをする。ここは件の空地だ。さすがにこのまま部屋に連れ込む訳には行かないため、少し連絡するからと神サマに断りを入れてここで休んでいる。・・・やっぱり兄貴は何も知らなかったみたいだな。両親は無視を決め込んでいたんだろう。そうじゃないと、あの正義感の塊、根っからの善人である兄貴があんな落ち着いて居られる訳がない。

 

 

「よい兄者ではないか。ますます気に入ったぞアラタよ」

 

「うるせえ。お世辞を言ってまた信仰してもらおうとかそんな手に乗るか」

 

「いや、本心だが?(ヌシ)はもう少し人の言葉を素直に受けよ。ま、私は神だがな!」

 

「・・・ちっ」

 

 

俺が寄りかかっている土管の上からニカッと笑顔を見せて来る神サマに、どうも気が削がれてしまう。・・・そう言えば気になっている事があった。

 

 

「なあ、大日孁貴神(オホヒルメノムチ)サマよ・・・誰かと思ったが、まさか天下の天照大御神(アマテラスオオミカミ)サマだったとはな。何でそっちを名乗らない?わざわざ調べないと出て来なかったぞ」

 

「馬鹿かお前は。言ったであろう、本来の私への信仰は全て弟と妹に横取りされるとな。人の身に落とされ本体から切り離された私が力を取り戻すには別の名で信仰を集めないといかないんだ。そのおかげでお前は、私を「アマテラス」ではなく「ヒルメノ」と言う存在として認識しておるだろう?」

 

 

まあ、アマテラスと言うならテレビやらにハマったのも納得だ。彼女の神話に「天岩戸伝説」と言うのがある。洞窟に引き籠り、この世から光が失われたという奴だ。そう、神話の時点で「引き籠り」なんだ。何か納得が行ってしまうぞ。まあ、コイツは「アマテラス」ではなく「ヒルメノ」と認識して欲しい様だが・・・コイツの印象はひたすら「チビな神サマ」だからアマテラスと思う事は無いはずだ。

 

 

「卵が先か鶏が先かって話か?」

 

「全然違うな。要するに、早い者勝ちと言う奴だ」

 

「弱肉強食か、難儀だな。それで?これからどうするんだヒルメノ」

 

「だからまずはアラタの家に・・・」

 

 

ああ、泊めるって話か。・・・勢いで言ってしまったが、よく考えれば高校生が幼女を一人暮らしの部屋に連れ込むってだけで警察案件なんだよな・・・俺は犯罪者になる気はない。だから申し訳ないが。

 

 

「これからどうするんだヒルメノ」

 

「お、おう」

 

 

白を切る。断固として拒否させてもらう。高校生がボロアパートに幼女を連れ込んだりしたら警察沙汰、下手したら誘拐犯として連行される事は目に見えてる。

 

 

「まず説明しよう。神が得られる信仰と言う物には主に二種類存在する」

 

「二種類?」

 

「文字通り、我等神を信じれば救われる、と言う正の思い「信仰」と、畏れ慄く恐怖の象徴・・・負の感情「畏怖」だな、その二つだ。後はまあ、派生というかなんというか・・・とにかく、その二つを覚えておいてくれればよい」

 

「だから俺に信仰してもらって、1パーセントの力で悪さを起こして畏怖を集めるのか?」

 

「違うわ阿呆!それに、例え私がまた引き籠って光を消したとしてもそれは「アマテラス」への畏怖として奴等に力を与えるだけだから誰がするか!」

 

 

激昂し憤怒の表情を浮かべるヒルメノに俺はたじろぐ。・・・畏怖で集めた信仰に嫌な思い出もあるのか?

 

 

「だったらどうするんだよ」

 

「簡単だ。人助けで信仰を集めるのだ」

 

「馬鹿か。今にも死にそうな俺だったからよかったんだ。上手くいくはずがない」

 

「最初から信仰をもらえるとは思ってないわ。実績が信頼を生む。まずは神とは名乗らず無償で人を助ける、と言う訳だ」

 

「都市伝説にでもなろうってか?でも餓鬼だから常人は真面に相手しないぞ」

 

「馬鹿め。正義の味方とは、17歳以降の男か、若干中学生の少女達と決まっている。常識に則れば簡単に納得させれる」

 

 

ああ、世間と言うのは常識で物を考えるからな。バイオハザードとか起こっても、その元凶が街を牛耳っている大企業だとは実際に目にした者達しか夢にも思わない。善玉企業だと常識として根付いているからだ。・・・例えはともかく、この神サマは意外と考えているのか。しかしその常識は特撮とアニメなところはツッコまない方がいいか。

 

 

「・・・せめて顔は隠せよ。現実にご都合主義は無いぞ」

 

「心配してくれてありがとうな!」

 

「嫌味か。文句の一つでも言う所だろう」

 

「普通に礼だ。少しは信じろ。神のお告げだ、ありがたく授かるがいいぞアラタよ」

 

 

ふんぞり返るヒルメノにイラッと来た。殴りたいが悪態吐くだけに(とど)めてやろう。俺を助けてくれたコイツの事を、少しは信じてやる、本当に少しだけどな。

 

 

「いらねーよ。礼がお告げって馬鹿じゃないのか?」

 

「いや、お告げで礼を言ったことがいくらかある。主に我が神社の巫女たちに何時もゲームを買って来てくれてありがとうと」

 

「よくそれで信仰心失わなかったな?」

 

「何でも、邪な欲望を自ら浄化してくれるとはさすが天照様とか何とか」

 

「・・・信仰され過ぎなのも考え物だな」

 

「正直、私もそう思う。滅茶苦茶申し訳なかった」

 

 

信じれない俺が言うのも何だが、信じすぎてる奴等も駄目だな。神サマが青ざめるレベルか。・・・っと、話している場合じゃないな。

 

 

「もういいか?」

 

「へ?なにがだ?」

 

「今日はバイトが無いからいいが、俺には時間が無いんだ。お前に付き合っている暇はない」

 

「そんな殺生な!本当に、泊めてくれるだけでいいんだ!信仰も無ければ私はただの雑魚だ!いや、雑魚以下の幼児だ!食べ物一つ得るだけでも猫と喧嘩してやっとの有様だ!頼む!後生だ、私を居候させてくれ!」

 

 

俺の態度から本気だと感づいたのか、尊大な態度もプライドもかなぐり捨てて土下座してくるヒルメノ。だがな、土管の上から土下座しているから地味に上から目線だぞお前。分かってないんだろうがただただムカつくぞ。

 

 

「俺に餓鬼なんて養う余裕はない。必要最低限の仕送りとバイトで何とか食い繋いでいるんだ。・・・俺の兄貴を紹介するからそっちでやってくれ。兄貴は俺が知る限りお人好しないい奴だ。お前の言葉だって信じてくれるはずだ」

 

 

不本意だが、このままだと押し入ってくるかもしれないため最終手段だ。うちの兄貴は本気で底が無いくらいいい奴なので、問題は無いだろう。むしろ率先して手助けしてくれるはずだ。

 

 

「嫌だ。私はお前の元がいい」

 

 

そう思ったのに、あろうことかこの神サマはそれを拒否してきやがった。

 

 

「なんでだ?何で俺にこだわる!?」

 

「お前が私の信者第一号だからに決まっておろう!一度でも信仰した奴から信仰を失ったとなれば信頼ガタ落ちだ!」

 

「テメエの不始末を無かったことにしたいって事か!?」

 

「だからどうしてそんな考えになるんだ!まあそれもあるが・・・何より!・・・巫女以外で真面に話せる人間はお前だけだからだ!」

 

「・・・は?」

 

「私、意見の相違で自分の天使をクビにしたことあるし・・・あの子、怒ってるんだろうなあ・・・」

 

 

この神サマ、コミュ症かよ。しかも重度の。

 

 

「って待て。お前、日本の神だろ。何で天使がいるんだ?」

 

「一神に一人はいるに決まっておろう。呼び方とかは違うがな。私の場合、アニメやらの影響で天使と呼ぶのがしっくりくる。もう何千年も昔にクビにして生憎私の部下はもう巫女ぐらいしか居ないが」

 

「影響されてるんじゃねえよ・・・」

 

 

げんなりする。・・・その天使、コイツから離れられて幸運だったと思うぞ・・・意見の相違って事は割とその天使の方が正しいだろうし。さすがにもうこんな神様を慕ってはいないだろ。

 

 

「とにかく!養う金はねえ!俺一人で精一杯なんだ!」

 

「バイトを増やせばいいではないか!」

 

「何でお前の為にそこまで体を張る必要がある!?」

 

「私はお前の神だからだ」

 

「本気でそう思ってるなら殴るぞ」

 

「罰当りめ」

 

 

たまらず軽くポカリと殴った俺は悪くない。・・・このままじゃ埒が明かないな。

 

 

「・・・飯はもやしでいいか?」

 

「いや、タンパク質は欲しいな」

 

「図々しい奴だな。それは自分で何とかしろ。・・・とにかく、住まわせてやるだけだ。それだけなら、妥協してやる・・・」

 

「本当か!それでもありがたいぞ、ありがとうアラタ!」

 

「・・・だから何でそう素直に礼が言えるんだ」

 

「本心だからな!いやほんと、心細かったんだ。約束する、お前が信じてくれる限り、私はお前の力になろう」

 

 

頭を下げてそう言ってくるヒルメノに言葉が詰まる。・・・本当に、めんどくさくて図々しい餓鬼の癖にこういうところは、信じられると思える・・・ってちょっと待て。

 

 

「つまりそれは、常にお前を信仰しろと言う事か」

 

「・・・・・・・・・まあ、それはそれで助かるが本当に、信じてくれるだけでいいんだぞ?」

 

「だったら目を泳がせるな」

 

 

あの信じられる感は気のせいだな、間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず、その後話し合ってヒルメノは「親から預かった」と言う設定で済ませる事になり、俺の1Kボロアパートに神が住みついて一週間。俺は問題なく学生生活を送っていた。

 

どうせあの糞両親は気にもしないだろうからな。寝床は俺が某猫型ロボットの様に押入れなのに対し、ヒルメノはリビングで堂々とちゃぶ台に潜ってタオルを枕と布団にしてグースカ寝てる。

神なのだから尊重しろだとか。朝起きて台所に行こうとして踏みそうになったら怒鳴られた。ボロアパートに住ませる訳にはいかないと尊重して追い出してやろうかてめえ。

 

 

「なあアラタ~」

 

「なんだ。こっちはお前の昼飯にもやし炒めを作っていて忙しいんだが」

 

「どうやったら信仰集まると思う?」

 

 

早朝、俺のTシャツを勝手に着て、服を着替えても常に身に着けている宝珠をボケーッと眺めていたヒルメノの言葉に、俺は一瞬考える。・・・答えは簡単だな。

 

 

「・・・まず、悪事が起こっても警察がいるからな」

 

「警察の手に負えない事件とは起きないかなー!」

 

「不吉な事を神のお前が言うのか」

 

 

この町は、関東にあるためそこそこ大きく、犯罪は割と毎日起こる。それでも小さな事件ばかりなためすぐ解決するのだ。探偵とか物好きがいるらしいが、そんな大事件はまるで起きない平和な町である。少なくとも、テロとか立てこもりとか起きた事は無い。誘拐は・・・俺がされたのだけだろう、多分。町はずれに金持ちの屋敷があると友人から聞いてはいるが関わりたくないため興味はない。

 

まあつまりは、ヒルメノの「人助けして信頼を集める」作戦は始まらずに終わっていた。

 

 

「一日中歩いてパトロールしたのに徒労に終わりグータラ生活をせざるを得ない私の気持ちが分かるか、アラタよ」

 

「そのグータラのせいで余分な食費が出る生活に早くも困っている哀れな信仰者の気持ちなら分かるぞヒルメノ」

 

「それより私は肉が食いたいんだが?」

 

「何時も焼き魚喰っている奴が贅沢言うな。そんなにいい飯が食いたいならキリシタンの教会の孤児院にでも戻れ、そっちの方が俺は助かる」

 

「それは断る!・・・またネコでも捜すkってちょっと待て。何故私が野良猫から焼き魚を命がけで奪い取って得ている事を知っている?」

 

「匂いが付いているからな。クリーニングが大変だからやめてくれ。あといい加減、服とかどうにかしろ」

 

「金があれば買うわ!こんなぶかぶかで我慢してやってるんだからありがたく思え!」

 

 

・・・お前がツルペタ幼女でなければ特に問題ではないんだがな。こんな光景を見られた日には俺は終わる。どうにかせねば。

 

 

「・・・ったく。兄貴に言って俺の昔の子供服でも持って来てもらうか・・・?古着屋に売るとでも言えば納得するだろうし・・・」

 

「お前、金持ちだから某小さくなった名探偵みたいな感じか?だったら嫌だぞ」

 

「贅沢言うな。てか俺もあそこまでセンス悪くねえよ。ほれ、できたぞ。昨日のスーパーで豚の細切れが安売りされていた事をありがたく思え!」

 

「うむ!アラタからの貢物だ、ありがたく頂こう!」

 

「・・・・・・」

 

 

貢物・・・なのか?餌付けにしかみえないんだが。まあ神サマに「助けてもらう」って条件で面倒見てるんだもんな、貢物でもいいか。何か変わる事も無いだろう。そんな事を考えながらエプロンを脱ぎ、学ランの上着を羽織り鞄を持って外に出る。今日も学校だ。

 

 

「じゃあ、行ってくる。・・・お願いだから警察にお世話になる事だけは起こすなよ?」

 

「おうとも。いってらっしゃいだ」

 

 

・・・なんだかんだで弁えているから、そう簡単に口出しできないんだよなぁ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後。夕焼けに照らされた帰り道で。

 

 

「アラタ、一緒に帰ろうぜ」

 

「あ、わりぃ。今日は昨日とは別の店で特売日だ」

 

 

親友である七星礼斗(ななせ らいと)の誘いを断るのは気が引けるが、厄介なのを住まわせているせいで二人分作らないと行けないからこれは必要事項だ。バイトを増やさずに何とかするにはこれしかない。

 

 

「毎日大変ね。実家から仕送りとかないのアラタ君?」

 

「いやいや生徒会長。必要最低限の仕送りで俺は十分なんです」

 

 

模範生らしく俺の心配をしてくれる礼斗の姉、二年生で生徒会長もしている七星霧依(ななせ きりえ)先輩の言葉に素っ気なく答える俺。心配されるのはいつもの事だ、それはいい。

しかし悟られる訳にはいかない、俺の実家がそこそこ有名な金持ちだと言う事も、うちで居候しているチビ神の事も。特に霧依先輩は嘘を見透かしているような気がして油断ならない。この人も何か秘密を抱えていると見た。

 

 

「困ったことが在ったら何時でも言えよ親友?あ、勉強以外でな!」

 

「おう。だったら今度昼飯奢ってもらうわ。頼んだぞ親友」

 

「頼まれた。近くて美味い飯屋を探しといてやるよ」

 

「勉強時間を削って探していたら怒りますからね?」

 

「へい、重々承知しております」

 

「よろしい」

 

 

ギロッと、光る瞳に睨まれ、竦み上がって敬礼する礼斗。…時々本当に人間なのかと疑うよなぁこの人…趣味もピアノとチェーンソーアートっていうどこか噛み合わない物だし。…まあ変人なのはうちの兄貴もか。余計な詮索はしないでおこう。

 

 

「じゃあ俺はこれで」

 

「おう。また明日な」

 

「バイトも程々に勉強も頑張ってくださいね」

 

 

時間を無駄にする訳にもいかないので、曲がり角を曲がり二人と別れて特売をやっている店まで全力疾走し始めた、直後の事だった。目の前に、奴が現れたのは。

 

 

「うん?見付けたぞ、アラタ!」

 

「ヒルメノ!?」

 

 

慌てて急ブレーキ。何故か空から落ちて来たヒルメノをキャッチし、地面に下ろす。と同時に怒りが込み上げてきた。

 

 

「一体何の用だ?俺はこれからお前のために特売に向かう所なんだが?」

 

「最近、この町で妙な勧誘が増えていると聞いてな。その噂の根を捜し回って怪しい集会所を見付けたのだ。急ぐぞ、こうしちゃいられない」

 

「いや待て。何を見付けたのかは知らんが俺は特売に行くぞ。第一、お前一人で十分だろう」

 

「……子供は駄目だと言うのだ」

 

「はあ?」

 

 

突然真っ赤になって涙を溜めた目でこちらを睨みつけるヒルメノ。

 

 

「高校生以下の子供は!入っちゃ駄目だと言われたのだ!」

 

「…もしかして胡散臭い宗教か何かか?」

 

「そうだ!子供は一人で入っちゃ駄目だって…私だってお前なんかに頼りたくないわこの不信信者!」

 

「その不信信者に頼っているのはどこのどいつだ。………特売の予定時刻まであと一時間足らずか」

 

 

携帯の時計を見て、考える。…ごねられても困るしここはさっさと解決した方が早いな。

 

 

「さっさと終わらせるぞ。案内しろ」

 

「うむ!」

 

 

俺の返事を聞いた途端、パアアッと顔を輝かせ、笑みを浮かべて塀によじ登り、ピョンッと跳躍するヒルメノ。おい、ちょっと待て。

 

 

「では着いて来い!」

 

「屋根以外のルートを教えろ馬鹿神!」

 

「馬鹿とは何だ!最短ルートだぞ!」

 

「身体能力だけは無駄に高いのは欠点だなお前!?」

 

 

何とか屋根の上を諦めてもらい、路地裏を進んで行くヒルメノに着いて行く。前途多難ではあるが特売時刻まで時間が無い。急ぐとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…天照様?」

 

「どうした姉ちゃん?」

 

「…いいえ、何でもないわ。早く帰りましょう」

 

 

完全無欠の完璧超人と称される生徒会長、親友の姉の正体を知る事になるまで、あと十数分。




ヒルメノは日本の代表的な最高神、アマテラス様でした。知っている人は少なかった様で。

ヒルメノの、声だけを聞いて天照だと看破した謎の生徒会長にして主人公、アラタの親友の実姉、七星霧依。正体は…あまりに作り込み過ぎてもったいなくなったので登場する事になった過去作に登場したオリキャラです。

読んで下さる方がいるのであればまた続きます。


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