『守る』って何だっけ? (リハビリ中)
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第1話 全ての始まり

 


○月×日

 

 俺は今日から日記を付けようと思う。というのも、弟が生まれたからだ。

 

 いや~、両親に弟か妹が生まれるよって聞かされてから約半年。長かった。

 毎日毎日、早く産まれて来いとwktkしつつ近所の社に安産祈願をしてきた。長かった。

 その間、図書館で育児関連の本を読み漁って色々と予習してきたんだよ。長かった。

 長かったけどそれも昨日までの話! 今日から俺はお兄ちゃんだ!

 

 ま、実を言うと昨日までは妹が欲しいなって思ってたんだけどね。だって10歳も年が離れた弟じゃあ、思いっきり遊べないじゃん。だからいっそ、思いっきり可愛がれる妹が良いなって、口には出さなかったけど考えてた。

 

 でも違った。俺ってば赤子を舐めてたわ。

 

 何だアレ何だアレ!! 

 生まれたばっかで猿みてぇなのにそれでも分かるぷくぷくほっぺとか!

 ちみっちゃい紅葉お手てとか!

 むにゃむにゃ言ってるたどたどしい様子とか!

 天使か! 天使だな!!(確信) 将来どうなるかは解んねぇけど、少なくとも現状では天使以外の何者でもねーわ。

 

 ま、そういうわけで。そんな弟の成長記録も兼ねて、これから日記を付けていくことにしたのだ。

 

 でもそんなホクホク状態の俺にも、1つだけ気がかりがある。どうやら今回の出産の負担が大きかったらしく、母が体調を崩してしまったのだ。

 だからだろうか。母はベッドの上で弱弱しい笑みを浮かべながら俺に言った。俺はお兄ちゃんなんだから、弟の事をしっかり守ってやれって。速攻で頷いた。

 

 あぁ、当然だとも! 心配するな母よ、俺は何が何でも弟を守るぞ! 手始めっていうか、目下の敵は……父だな。

 

 

 

 

 

○月△日

 

 母の体調の悪さはガチらしい。産後の肥立ちが悪いと言う奴だ。父も昨日から母に付きっきりである。このまま行くと、母は入院したまま弟だけ退院になるだろう。そうなったら俺が弟の面倒を見なければ。俺も先日忍になったが、まだまだ雑用ばかりの新米下忍。時間はある。

 心配するな父母よ。確かに俺は世界的にも稀に見るレベルのぶきっちょに生まれ付いたが、この約半年の間、生まれてくる妹or弟のために色々なスキルを寝る間も惜しんで習得したのだ。そんな俺に死角は無い(ドヤァ)。

 

 とはいえその母も今すぐどうこうという程差し迫ってるわけでも無いようで、父も別の事を考える余裕はあるらしい。

 

 別の事……そう、弟の名前である。大事だ。めっちゃ大事だ。そしてこれこそが、俺が父を敵視する理由である。

 何故なら父の名付けというか、ネーミングセンスは最悪の部類に入るからである。ソースは俺自身。俺の名前こそが父のソレのアレさを雄弁に物語っているのだ。

 

 なので俺は考え込む父に滔々と語った。要約すると、名前とは親から与えられる最初の贈り物であり、それによっては後々学校で苛められたりグレてしまったりする場合もあるのだから極めて慎重に考えなければならない、そのせいで俺もさんざん苦労したんだ的な感じで。

 アカデミーで苛められてたのかい!? と父は驚いていたが、何故そこで驚くのか解らん。俺の名前なんて苛めてくれっていうか、からかってくれって言わんばかりの代物じゃないか。しかし心配するな、そんなクソガキどもはキッチリと血祭りに上げて来た、と返すともの凄く項垂れていた……おい、本気で気付いてなかったのか?

 めっちゃいたぞ、そういうのを突っついてくる奴ら。似たような状況に置かれることが多かったハバネロと結託して暴れ回ったわ。

 

 ま、あれだけ言えば少しは慎重になってくれるだろう。俺も明日は任務があるし、今日の日記はここまでにして早目に寝よう……昨日は興奮して中々寝られなかったし。

 

 

 

 

○月□日

 

 マジか……マジか………………

 

 

 

 

 うん落ち着こう落ち着こうビークールビークール忍は慌てない……フゥ。

 

 全然落ち着けてないけど、自分を無理矢理落ち着けるために日記帳を開いた。混乱した頭を纏めるには客観的視点を持つのが1番だ。日記はそのためのツールである。

 

 まず現在地。ここは木ノ葉病院の一室、そして清潔なベッドの上。

 目覚めたらここにいた。頭に軽く包帯が巻いてあるし、最後の記憶が任務中にうっかり足を踏み外して木から落ちたことだから、そのせいで頭を打ってここに運ばれたんだろう。

 

 いや本当、うっかりしてた。結局昨日も中々寝られなかったからな……でもそんな言い訳は通用しない。次からは気を付けよう。

 ちなみに寝不足な俺の事を、チームメイト×2及び先生は生暖かい目で見てた。あの人たちはここ最近の俺の浮かれっぷりを見てたからなぁ。実際に兄弟が生まれたら有頂天になるだろうとは予測してたらしい。祝福の言葉もくれた。

 任務開始前の待ち時間にチームメイトの1人に弟の名前が気がかりだって愚痴ったら、一緒に考えようかって言ってくれたし。その善意100%の申し出はとっても嬉しかった。そして勿論、速攻で断った。うん、めでたいって思ってくれてるんならお前は……お前だけは絶対に名付けに関わるんじゃねぇ。絶対に父さんが考えたやつよりもおぞましいのが出来上がるわ。

 

 おっと、話が逸れた。いかんな、やっぱり混乱が収まってないらしい。

 

 任務自体は上手く行ったんだよね。今日の任務は迷いネコの捜索。ターゲットはしっかり見付けて捕獲した。そしてその直後に俺は落下。ワラエナイ。

 

 そしてもっとワラエナイのはこの先。

 

 頭を打ったせいか、俺は前世の記憶を思い出してしまいましたとさ。まる。

 

 ……つまりどういうことだってばよ!? その通りの意味だってばよ!?

 

 いや本当、こうとしか言いようが無いわ。幸いなのはあくまでも『記憶を思い出しただけ』なのであって、『人格を乗っ取られたわけじゃない』ってことだろうか。

 

 前世の俺は、日本という平和な国に住む人間だったらしい。日本には様々なサブカルが溢れていて、その中には『NARUTO』という全く忍ばない忍を題材とした人気漫画があった。

 忍。そう、忍である。

 遠回しに言ってもどうにもならないから、単刀直入に本題に入ることにする。

 

 どうやら俺は『NARUTO』の世界に転生していたらしい。

 

 マジか……マジか……。

 

 いや、正確には『NARUTO』の世界ではなく、『NARUTO』に酷似した世界なんだろうけど。だって『NARUTO』(一々書くのが面倒なので、以下は『原作』と記す)じゃ俺、いなかったもん。

 

 けどそんな事実は慰めにもなりゃしない。ちなみに今、俺は右手で日記を書きながら左手で頭を抱えている。頭痛が酷い。そして俺を取り巻く環境も酷い。というか、俺の周囲にいる人間の未来が酷い。

 

 改めて原作に置いて我が家族・友人・恩師の辿った未来を1つずつ思い起こしてみる。うん、酷い。(確信)

 

 あの、ちょっと泣いてもいいですかね?

 

 ……って、いかん!! 泣いてる場合じゃ無い!! もしも原作通りに物事が進むとしたら……ヤバい!! 日記書いてる場合じゃ無ぇ!! 止めなければ!!!

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 俺は日記帳を閉じた。必ず、かの邪知暴虐の男を除かねばならぬと決意した。俺には由来など解らぬ。俺は、ただの無知な子どもである。けれどもコレに関しては、人一倍に敏感であった。

 

 ……って、メロスごっこしててもどうにもならないな。早く行かねば。

 

 白い病院衣から着替えることも無く、俺はまず母の病室へと向かった。母が入院しているのもこの木の葉病院なのだ。

 そしてそこには入院中の母と弟がいた。弟は平和そうな顔ですやすやと眠っていたが、母は起きていた。俺の怪我に少しばかり目を見開いたが、俺とて一応は忍の端くれである。大したことが無いなら、とそこまで気には留めていなかった。

 しかしそう、病室にいたのは母と弟のみなのである。あの男はいない。母にその行方を尋ねると、どうやら役所へと向かったらしい。さらに突っ込んで聞くと、肝心の『ソレ』は既に決まったとのこと。どうやら原作と同じようだ……遅かったか。

 盛大な舌打ちを溢したい所だったが、衰弱した母にあまり心労を賭けたくは無いのでこの場は堪える。

 

 ふと、弟の手を突く。小さな手だ。まだ何も知らぬ無垢な手である。俺が守らねばならない存在だというのに、まず一歩目から躓いてしまったというのか?

 

 ……いいやまだだ。まだ終わらぬよ。

 

 ぎゅっと俺の指を握った小さな手の意外な力強さに目を細めつつ、俺は諦めかけた己を恥じた。

 そう、役所にアレが提出される前に捻じ曲げてしまえばいいのだ。諦めてはそこで試合終了なのである。俺が諦めるのを諦めろ!!

 

 決意を新たに、俺は母に一言掛けてから病室を出る。そしてそのまま走り出した。目的地は役所。

 そう、今の俺の気分はまさにメロス!

 

「待てやこのクソ親父ッ!! テメェ、んな名前を付けられるガキの気持ちも考えろやこの野郎がァァァァァァァ!!!」

 

 道中そんな思いの丈を吐き出してしまったけれど、それもご愛嬌である。きっと俺は悪くない。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

○月☆日

 

 間に合わなかった。

 

 昨日、俺は全力で駆けたが既に事は成った後だった。俺が役所に辿り着いた時、あの男……父はとうに弟の出生届けを出してしまっていた。それにより弟の名前は決定した。

 そんなに気に入らないかい? って聞かれたけど、当然だろうが。俺がそれでどれだけ苦労したことか……! ま、弟の方が俺より少しはマシな代物な気はするけどさ。

 折角忠告したのにこんなことになってしまい、俺の怒りは諸悪の根源たる父へと向かった。なので昨日から口を利いてない。結構しょげてたけど知るもんか。

 

 そもそも、俺は俺にこんな名前を付けた時点で父に一定の恨みを抱いてるし。絶許だし。何だよコヤシって。はたけのコヤシって。ある意味素晴らしいセンスだわ! 勿論悪い意味でな!!

 

 すまん弟よ、非力な兄を許してくれ……本当、もう少し早く気付いてりゃあな……。

 

 しかし業腹ではあるが、決まってしまった以上は仕方が無い。よくよく考えたら、我が弟を待ち受ける運命は名前の1つや2つなんて気にしちゃいられない程苛酷になる可能性高いし。

 

 いやうん……本当……もうね……なにこれぇ?(棒)な感じだよ。

 

 母よ。弟を守るというあなたとの誓い、俺はどうしたらいいんですかね?

 

 

[日記は続いている。この日の日記はやたら長い]

 




この作品を書いた理由

①リハビリ

②日記形式を書いてみたかった


ちなみに次話は丸々状況把握に費やされます。

需要はあるのだろうか……?



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第2話 迷いに迷う

[日記の続き]

 

 昨日は中断してしまったので、今日こそ己の現状を整理してみよう。昨日頭を打ってぶっ倒れたせいか任務が休みになって、入院中の母と弟に父が付き添っているために俺は家で1人っきり。おかげで時間はたっぷりあるっていうか、暇してるし。

 

 あ、ちなみに今この日記、俺が急遽作成したオリジナル文字で書かれてるから。暗号みたいなもんだよ。

 オリジナル文字(笑)、厨二乙(笑)www とか言うなよ。これ結構大事なんだからな。だってこれからは絶対に原作の事とか色々書いてくことになるんだ。もし万一この日記を人に読まれてみろ。惨事にしかならん。

 

 さて、まずは結論から箇条書きで延べよう。

 

 ①俺は『NARUTO』に酷似した世界に転生していた。ちな、御年10歳。

 ②現在地は火の国、木ノ葉隠れの里。当代の火影は3代目。

 ③原作開始よりも凡そ四半世紀ほど昔の時間軸だと思われる。世界情勢は第二次忍界大戦が終了し、平和の小康状態にある。

 ④つい最近下忍となり、今は下忍3人に担当上忍1人のフォーマンセルを組んで主にDランク任務に勤しんでいる。尚、担当上忍の名は自来也、チームメイトの名は波風ミナトとうちはミコトである。

 ⑤非常に認めたくないが、俺の名前ははたけコヤシ。そして昨日、父・サクモによって弟はカカシと命名された。

 

 ………………我が事ながら色々と盛大にツッコみたい。特に④と⑤。

 

 何でや!? 何で俺の担当上忍自来也先生なん!? 今まで特に疑問持ってなかったけど、原作知ってしまったからかポカーンとしてまったわ!! 

 しかもミナト! お前、後の4代目じゃねーか! そうだな前々から火影になりてぇっつってたもんな! おめでとうよ! この野郎!!

 っていうかミコトもアレだ、原作にチラッと出てたよな!? イタチとサスケの母親じゃん! え、お前同じ班なん!? 原作でもそうだったん!? それとも俺というイレギュラーのせいで差異が出た!? 

 

 ……うん、マンセルについては取りあえずツッコんだな。やっぱり溜め込まずに吐き出すのって大事だわ。ちょっとスッとした。まだまだツッコみたいことは残ってるけど、ま、取りあえずは。

 よし、次行こうか。

 

 コヤシって何だよ! 物心ついた時から気に食わなかったけど、日本の記憶を思い出したら余計に嫌になったわ! はたけのコヤシって……イジメか? 嫌がらせか? おい、そうなんだろ? 『うずまきナルト』とかもちょっとアレだけど、その上を行くアレさだわ!

 しかもあれだけ忠告したのに、あの親父め今度はカカシとか付けやがった! はたけのカカシって、それも大概じゃねーか! 聞けよ! 人の話を! 聞けよ!!

 つーか、はたけサクモにはたけカカシって、それもあったぞ原作で! 何でこんなことになってんだよ!!

 

 ……うん、家族についても取りあえずツッコめたな。これも本当に、取りあえずだけど。

 よし、ツッコむのはこれぐらいにして1つずつ真面目に考えていこうか。

 

①転生について

 これはそのまんまだな。そうとしか言いようが無い。

 日本の記憶を思い出したとは言っても、それも完全じゃないしなぁ。むしろ曖昧な部分の方が圧倒的に多い。転生している以上1度は死んだんだと思うけど、それも覚えてない。

 何て言ったらいいのかな? こう、知識はあるんだよ。昔読んだ本とか、見たテレビとか、そういったので得た知識。だから原作知識もある。

 でも、それに経験が伴ってない感じなんだよね。以前の俺がどんな人間で、どういった人生を歩んでいたのか……そういった部分がとても曖昧。多分、男だったとは思うけど、それぐらいかな?

 ま、その方が良いんだろうけど。下手に昔の自分を思い出したりしたら、人格変わってたかもしれないんだし。

 

 結論。特に考えることは無い……っていうか、多分考えても解らないから保留。でも一応気には留めておこう。

 

 

②木ノ葉の里について

 これに関しても、ただの下忍の1人に過ぎない俺が何か考えても意味無いよな……。でも一応、これまでの歴史はすり合わせておこうかな。

 

 木ノ葉の里はかつて、千手柱間率いる千手一族とうちはマダラ率いるうちは一族が何やかんやで同盟を組んだ事から始まった集落である。今では他にも様々な忍一族やその生活を支える一般人たちなんかが住まう忍里。

 しかし里創設の立役者でもあったうちはマダラは後に離反、九尾の狐を引き連れて里を強襲。初代火影・千手柱間が迎え撃ち、2人は三日三晩に渡って地図を大幅に書き換える必要が出るレベルの戦いを繰り広げたが、最終的に千手柱間がうちはマダラを討ち取った。

 その後も里は続き、第一次忍界大戦・第二次忍界大戦を潜り抜ける。里長たる火影も千手柱間から2代目・千手扉間、3代目猿飛ヒルゼンへと移り変わっていき、今に至る。

 

 ちなみにこれ、アカデミーで習った歴史を大分アバウトに簡略化した説明である。

 原作を思い返してみても……多分、大差は無いだろう。実はマダラは生きてるけど、それを今言ってもどうにもならないし。

 

 

③時間軸について

 これな……先の長さにちょっと眩暈起こしそうだよ。だってこの先、大惨事……じゃない、第三次忍界大戦と第四次忍界大戦が起こる可能性が極めて高いだろ? いくら最終的に大団円を迎えるって言ってもさぁ……その頃には俺、不惑じゃん。っていうか、その頃までちゃんと生き残ってられるかな……。

 

 けど時の流れなんてそれこそ俺にはどうしようもない。つまりは死ぬ気で生きなきゃならないのか……ハァ。

 

 

④フォーマンセルについて

 さて、ここからが本題と言っていい。というのも、転生した理由だとか現在地が何所かとか時間軸が何時かとか、そんなことは最低限把握したら後は特に手出しのしようが無いからだ。

 転生しちゃったもんは仕方が無いし、木の葉を嫌がった所で既に忍になっちまってる以上は他所に行ったら抜け忍認定されちまうし、時間は弄れないし。

 

 つまり今考えなきゃならないのは人間関係なのだ。

 

 マンセル仲間は上にも既に書いた通りなんだけど……うん、良い人たちなんだよ。落ちこぼれの俺にも優しいし。

 

 あぁ、これも考えなきゃいけなかったな。

 そう、今初めて書いたけど、俺ってば落ちこぼれなんだわ。アカデミーの成績でも優秀だったのは喧嘩で鍛えに鍛えた体術ぐらいで、後は見事に最下位付近を低空飛行してた。しかしこれには理由がある。

 その理由とはつまり、何日か前の日記にも書いたが、俺が世界的に見ても稀に見るレベルのぶきっちょに生まれ付いているということだ。

 具体例を挙げるとだ……料理をすればダークマターが出来上がる、掃除をすれば三下の空き巣が荒らしたかのように家中がぐっちゃぐちゃになる、洗濯(洗濯機ではなく洗濯板仕様)をすれば服はビリビリに敗れる、裁縫をしようと思い立ったけど針に糸を通すのに1日掛かって頓挫する、絶対音感張りに音程を聞き取れるのにいざ歌うとジャイアンレベルの音痴、etc.etc……他にも枚挙に暇ない。ぐすん。

 

 言い訳に聞こえるかもしれないけど、俺だって努力はしたんだよ? 実際、マシになってるんだよ? 料理しても爆発しなくなったし、掃除しても床が抜けなくなったしさ。

 いや、ま……キャロライナ・リーパーがブート・ジョロキアになった程度の違いしか無いかもしれないけど。どっちもヤバいのに変わりは無いけど。

 

 ゴホン、話が逸れた。

 

 とにかくそんなぶきっちょな俺は、チャクラ操作もド下手くそなのである。なので忍術と幻術が上手くできない。ただし潜在的なチャクラ量は相当多いようで、それで誤魔化しつつ無理矢理忍術や幻術を捻りだして……って、おいこれまんま初期のナルトじゃね?

 そういやこの間、自来也先生にも「チャクラ量が多いお前は小手先よりパワーだ……印も結べんことだしのぉ」とか可哀そうなモノを見る目で言われたっけ。おい、これまんまナルトじゃね?

 言っとくけど俺が印を結べないのは物覚えが悪いからじゃないからな! 印はちゃんと覚えてるぞ! ただ、指が絡まったり突き指したりするせいで速度が出ないだけで! ……結構ガチで泣けてきた。いいもん、練習すれば何とかなるもん、きっと。事実、分身の術や変わり身の術の印の速度も昔と比べれば早くなってるし。

 そう考えるとやっぱスゲーわ、ナルトって。俺と事情は違えどスタートはよく似たもんなのに、諦めないド根性であそこまで行ったんだもんな。もう上から目線で偉そうにナルトとか言えねーや。これからは原作ナルトの事は敬意を表してナルトさんと言わせてもらおう。

 

 しかし俺の事に話を戻すが、問題なのはあくまでも『ド下手くそ』なのであって『出来ない』わけじゃないってことだろう。なまじ発動は出来るもんだから、余計に落ちこぼれな印象が強く残る。いっそ適性が全く無ければ、そのように修行を積むことになっただろうに。原作におけるロック・リーみたいに。

 更に言うなら、俺の父が何だかんだで有名な忍であることもそれに拍車を掛けたと思う。当初は周囲の期待値高かったもん。その分、後の反動もデカかったけど。原作思い出して改めて思ったけど、やっぱ木ノ葉って掌返しの里だわ。卑の意思は脈々と受け継がれるものらしい。ケッ。

 

 マンセル仲間に話を戻す。

 

 自来也先生はスケベだけどいい人なんだよ。ミナトもさ、ネーミングセンスはアレだけど俺が名前で呼ばないでくれって言ったら頷いてくれたし。ミコトも普通にいい子だ。

 

 なのに原作を思い返すと、彼らも結構悲惨な末路を辿るのな。原作自来也先生は……一々こう書くの面倒だな。よし、いっそナルトさんのように原作での彼らの相性も定めておこう。うむ……よし、こうしよう。

 

(例)・名前→俺が普段使う呼称/原作におけるその人物を指す際に使う呼称

 

・自来也→自来也先生/エロ仙人

・波風ミナト→ミナト/厨二

・うちはミコト→ミコト/命

 

 よし、決定。ミコトがちょっと思いつかなかったから、単に訓読みにしただけだけどいいでしょ、この日記の中だけのことだし。

 んで、書き出してみると……。

 

・エロ仙人

 ・かつての仲間がマッドサイエンティストなカマになって里抜け。後にそいつに師を殺される。

 ・目を賭けていた弟子が九尾事件で早世。

 ・闇堕ちした弟子を止めようとして殺される。

 

・厨二

 ・九尾事件で九尾と闇堕ちした弟子に妻共々殺される。息子と過ごせた時間は精々数十分(ただし後にエドテンされて会える)。

 

・命

 ・九尾事件をきっかけに一族ごと監視される。

 ・色々と事情があるとはいえ、最終的に息子に殺される。

 

 …………酷い(確信)。殺し殺されるのも忍の世の常とはいえ、こうも軒並み殺されるって。しかも下手人は元々親しかった人達ばっか。なぁにこれぇ?

 

 これは、うん。後でまたゆっくり考えよう。最後の議題も残ってるし。

 

⑤家族について

 まずはマンセル仲間たちと同じように呼称を付けようかな。

 

・はたけサクモ→父/焚火

・はたけカカシ→カカシ/だら先

 

 コレで行こう。もうフィーリングで適当に決めてる。母はそのまま母でいいよね、原作では出てなかったから。

 で、お馴染み原作での彼らの末路纏め。

 

・焚火

 ・里中から誹謗中傷されて自害。

 

 自害。自害である。忍なのだから、殺されるのは良くは無いが解らないでも無い。けれど自害。

 そりゃあさ、確かにちょっとキツイこと言ったりしたらしょげるし、微妙にメンタルの柔らかそうな人だとは思ってたけど、でも忍だよ? なのに自害。どんだけ酷かったんだ掌返しの里め。

 俺は、この名前を付けられたってことに関しては父を恨んでる。これに関しては一点の曇りもなく断言できる。しかし裏を返せば、それ以外では恨んでいないってことでもあるんだ。むしろ少なからず尊敬はしてる。一応。だってのに……おのれ木ノ葉。いや、こちらではまだ起こってないことだし、気を付けてよう。

 

 さて、ここまで纏めた4人は皆、最終的に死んでいる。しかしその一方でだら先は最後まで生き残った。1度死にはしたけど生き返ったし、命は助かったと言えるだろう。そう、命だけは。

 

・だら先

 ・幼少期に父が里にイジメ殺される。

 ・やっと解り合えた親友が自分を庇って死ぬ。

 ・親友に託された&自分にとっても仲間である女の子を自分の技で死なせる。

 ・恩師が九尾事件で死亡。

 ・かつての後輩に幻術世界で72時間ぶすぶすされる。

 ・自分のオリジナル忍術まで伝授した弟子が里抜け&闇堕ち。

 ・愛読書は作者が死亡して永遠の未完。

 ・里を守るために戦い死亡。(ただし後に蘇生される)

 ・死んだはずの親友が実は生きてたと思ったら闇堕ちしてて罵詈雑言の嵐。

 ・親友と和解出来たと思ったらまたすぐに死なれる。

 

 ……だら先、何で闇堕ちしぃひんかったん? ((;゚Д゚)

 

 最終的に生き残ったし、6代目火影にまで上り詰めはしたけど、それまでの過程が酷い。酷過ぎる。忍とは耐え忍ぶ者だとかそういうレベルの話じゃないぞこれ。

 そしてこれが、我が弟が辿る可能性がある未来なのだ…………どないせいと!?

 

 いや待て、ちょっと待て。

 俺は弟を守りたい。これは間違いない。しかしこれ、『守る』ってどうすればいいんだ?

 

 そもそも俺は落ちこぼれなんだから現時点では色々考えても意味無いんじゃね? 実力不足で何も出来ないんじゃね? という疑問は置いとこう。これから修行すりゃいいんだよ! 今までだってしてたけど! だから今は置いとこう。

 

 原作を念頭に置くなら、その流れから外れないようにすれば弟の命だけは助かりそうだ。うん、本当に命だけはね。

 ただしその場合は原作の流れから外れないように、それ以外は見捨てなければならなくなる。即ち、父の自害や自来也先生やミナトやミコトの死をスルーするということだ。

 それに、そう。クシナのこともある。実は俺とクシナはアカデミー時代からの盟友なのだ。

 

 当時、俺は呼び出されて名前をネタに揶揄されることが日常茶飯事だった。勿論、相手はその都度血祭りに上げて来たが。

 ある日、例によって例の如く俺はその日常を消化して帰ろうとしたのだが、その時付近で争うような物音が聞こえた。興味を惹かれて見に行ってみると、そこには髪振り乱してクソガキ共をボッコボコにするハバネロの姿が……!

 とにかく、名前をネタにされる俺と体型をトマトとバカにされるクシナは互いに愚痴り合い、解り合い、そして固い握手を交わした。それまでただのクラスメート程度の認識だった俺たちの間に友情以上のナニカが芽生え、瞬時に成長した瞬間だった。

 

 とにかく、そんなクシナは原作ではミナトと共に死亡している……あ。

 

・うずまきクシナ→クシナ/ハバネロ

 

 うん、こういう風にしとこう。

 

 んで、原作通りになるようにするってことはそれらを総スルーするってことなんだ。ちょっと心苦し過ぎるんですけど……。

 

 弟の命に加えてメンタルまで守ろうと思ったら……もうどっから手を付けて良いのか解んねーよ。

 取りあえず、弟とは関係無しにして父の自害は起こって欲しくない。俺の父でもあるし。

 でもそれ以外はな……オビトがマダラの手に渡んなきゃいいのかっていうと、そうでも無いんだよな。マダラは駒を必要としてるわけだし、いずれ誰かが引き込まれていきそうだ。ま、誰が引き込まれたとしてもオビト……というか神威以上に厄介な相手なんてそうそう現れないだろうけど。

 万一マダラが上手く手駒を手に入れられなかったとしても、黒ゼツが長門辺りを駒にして動くんだろうなぁ。くそっ、忍界の闇が深い。

 1番の問題は、下手に手を出して原作の流れからズレまくれば、カグヤ完全復活とかもあり得るって点か。ぶっちゃけ、神威無しでカグヤ攻略って無謀だと思うんだ。だってカグヤの時空間に取り込まれてしまったりしたら、サスケの輪廻眼でも帰還出来なかったんだぞ?

 しかし神威発現のためにはオビト、若しくは移植されていた場合はカカシの絶望が必須という……酷い。万華鏡写輪眼の瞳力は開眼するまで解らないから、他の誰かを見繕って神威を手に入れるってのも無理だし。

 そしてそんなことになったら忍界の未来が羽ばたいて行ってしまう。つまりは弟の未来も羽ばたいて行ってしまうのだ。

 

 え、ちょ、待って、本当に待って。考えれば考える程わけ解んねぇ。何だこれ。原作ってこんな奇跡の綱渡りの上に成り立ってんのな。

 どうしてだよ、現状を整理しようと思って日記書いてるのに、書けば書くほどドツボに嵌る感じしかしない。

 

 本当、マジでどうしよう……『守る』って何だっけ? こんなに色々と考えなきゃいけないような事だっけ?

 

 ふっざけんなよ、コンチクショウ!!

 

[日記は殴り書きで〆られている]




 今回は苦悩の話。次回からはもうはっちゃけます。ぷっつんするとも言う。


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