ガンバライダーVAL Chronicles Episode.ZERO (ケニア&VAL)
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Episode.ZERO 「接触」
「そこのあなた、変身してみたくはありませんか?仮面ライダーに」
この一言から俺の人生は、おかしくなったのか?望んだ通りになったか?分からなくなってしまった。
2015年5月、仕事の休日を使って今ドハマりしているゲーム“ガンバライジング”で遊ぶ“俺”ことハンドルネーム「VAL(ヴァル)」はそのゲームのアバターキャラ“ガンバライダー”のレベルリングとアイテム取得に勤しんでいた。
2013年10月31日の稼働開始時から使い込んでいる相棒、分身、自身と言ってもいい存在で、そのゲームにハマって早一年半、様々なライダーを実装し必殺技演出も素晴らしい進化を遂げ、自身のガンバライダーも上位ランカーとも張り合えるぐらいに成長させた。
標準状態は全身緑だが、作ったばかりの頃はまだ成長の方向性が定まっていなかった為、戦って貰えたパーツを片っ端から付けていっただけだったが、ある程度パーツが集まった際に「そろそろ方向性を決めようか」と思いついた際に自分の好きなライダーに似せて作るというなんとも在り来たりな発想で進めて行き、BLACK RXが好きな俺は当時まだ未実装だったロボライダーに似せて作っていったのだが、そうして進めて行く内に気が変わって鎧武に似せて作る事にし、形状が近いパーツを手に入れてはそれを使い現在まで遊んできた。
そんなある日……白髪、初老一歩手前と言った感じの男性に声を掛けられた。
「すいませ~ん、ちょっとよろしいですか?」
「あ、は……はい?」
「今度立ち上げる仮面ライダー関連の企画の参加者を募集しているんですよ、如何です?」
いきなり見ず知らずの初老のオジサンにそんな事言われても即決でイエスなんて言えるわけが無い。
「その企画の内容は何なんです?」
「ええ、その……ガンバライダーになってほしいんです」
初老男性が懐から出したチラシにはカッコいいポージングのガンバライダーが描かれており、横には「ガンバライダー募集!」の文字が。
スーツアクターの事を言ってるんだろうか?なら生憎俺では務まらない、体躯に恵まれて無いし運動能力も無い。
「相談する人を間違えてないですか?俺に中の人とか無理だと思うんですけど?」
「いえいえ、私が探しているのは貴方が思ってる人じゃないんですよ。あ、失礼!私はこう言うものです」
首から下げていた札に【GRZ 企画担当:大武】と書かれており、「はぁ……」と気の無い返事をするしかない俺はポカンとした。
この人はゲームメーカーの社員なんだろうか?この手の人脈が一切無い俺は話で止まった手を動かしプレイ中の画面に視線を戻した。
「私は仮面ライダーに特別な感情を抱いている人を探していまして、データカードダスのゲームは仮面ライダー以外にもたくさんありますが貴方は仮面ライダーのゲームしかしてないですよね?」
大武の言う通り俺はデータカードダスのゲームは仮面ライダーしかやっていない。
他はやってないから分からないが他と比べてこのゲームの方がイベントなどたくさんやって盛り上がってると感じているのも理由の一つだ(某妖怪ゲームは省く)。
その大武の問い詰めに「それこそ俺以外もそこらにいるだろう」と言い返そうとするが大武は間髪居れずに話を続ける。
「ありがとうございます!そんな貴方に是非とも今度の企画で登場するガンバライダーになって欲しいのです!……如何でしょう?」
正直ライダーファンとしては願っても無い誘いである。
大武が喋り終えた丁度にゲームが終わり視点を再び大武にやった。
何故俺が仮面ライダーのDCDしかやってない事を知っているのかが気になるがこの話が気になった俺は大武の話を聞く事にした。
「ありがとうございます!では詳しいお話を……お時間は大丈夫ですか?」
「ええ、遅くならなければ大丈夫です」
「分かりました、ここで立ち話もなんですので我が社のオフィスへお願いいたします。そこでスーツの見本などもお見せしますので」
その話を了承した俺は大武が乗って来たであろうワゴン車に乗り込んだ。その中にはスーツ姿の若い女性と運転席に三十半ばと思われる男性がおり、彼らの言う話をする場所へと向かった。
そこはいつも通勤から見えるオフィス街のど真ん中にある高層ビルで、大武に案内されるがままに来た部屋にはいつか見たPVに出てきたあの部屋が目の前に広がっていた。
「ようこそ!我がGRZ社へ!」
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Episode.ZERO 「始動」
「ようこそ!我がGRZ社へ!」
ガンバライダーになってくれと言われた事にも困惑しているのに目にしている部屋の光景が現実の物であった驚きで思考が追いつかなくなってた。
「じゃあさっきの“企画”って嘘だったんですか?」
「いえいえ、ガンバライダーに変身して欲しいって企画は嘘じゃないんです、貴方にゲームイベントの出演者になるようにと勘違いするように話したのは謝ります」
頭を深々と下げながら謝罪した。
そこまで畏まれても困るのだがひとまず話を聞く事に。
「我々がガンバライダーに変身してくれる人間を探している理由はこれでして…」
大武が差し出した写真にはこの世界に居る筈の無い“マゼンタカラーの二眼レフカメラを首にぶら下げたあの男”が写っていた。
「こいつは……?!」
「ええこの男がこの世界に来てから世界はゆっくりと歪み始めた……それが丁度に6年前」
「こいつが何かしていったんですか?」
「いえ、世界の歪みの原因はこの男なんですが、直接は何もしていません……ですが、歪みは起きてしまいました。ライダーがいないこの世界でできることは我々独自でライダーを作り、歪みに対抗する事……」
「そしてガンバライダーを作った……」
「はい、当ゲームの前進“ガンバライド”を使って適正者を見つけ出し、ガンバライダーにスカウトするのがこのゲームの役割なんです」
イベントのアルバイトの話かと思いきや、本物のガンバライダーになってくれとの話に戸惑ってしまうが“写真のカメラの男”を見せられては疑う余地は無かった。
「話は分かりましたが俺自身はそんな腕っ節には自信が無いんですけど……」
「ご心配無く、それらを考慮した対策は練ってありますので、こちらへどうぞ」
大武に連れられて奥の部屋へと行くと部屋の中央にガンバライダーがあった。
「これが本物のガンバライダー……」
「の、素体ですね。これからこの素体に貴方の精神を入れてその上で変身して下さい。」
なるほど、そうすれば生身の身体能力の低さや万が一敵に負けた場合でも生身には影響はないってことか……
「勝手は分かりましたか?それではイニシャライズを始めましょう。そこの椅子“ガンバダイバー”にお掛け下さい」
SF映画などによく出てくるヘルメット付きのデカい椅子と言えば分かるだろうか?
ガンバダイバーに座り大武の合図で一瞬意識が飛んだ俺はガンバダイバーに座る自身を見る形となり意識はガンバライダーのボディにへと移っていた。
「これが……ガンバライダーの身体か……」
少し動いてみたのだが生身とは断然違う、どれだけ激しく動いても息切れがない。
「では貴方のICカードです、それを“ガンバドライバー”へと装填する事でイニシャライズは完了します」
自分のICカードを手渡され、いつもゲームの始めに見る“アレ”をした。
「いくぞ!変……身……!!!」
とうとうガンバライダーへと変身を遂げ、その姿はゲームで使っていたアーマーパーツそのものだった。
「これでイニシャライズは完了しました、如何です?ライダーになった感想は?」
「ああ、すごくいいね……!で、変身したら次はどうすればいい?」
「説明いたします、変身した状態でドライバーのボタンを押しますと仮面ライダーの世界へのゲートが開きます、そこへ飛び込むことで世界の跳躍が可能となります、以後のサポートは私では無くこちらのオペレーターにお任せ下さい」
そのオペレーターというのがさっきのワゴン女性だったのだ。
「これから貴方のオペレーターを担当する事になりました四ノ宮と申します、よろしくお願いします」
こちらも軽くお辞儀をして挨拶を交わしたところでまた大武に目を戻す。
「せっかくですからシミュレーションを受けてみてはどうでしょうか?こちらで用意した電脳空間がありますので」
「そうですね、これからの戦いに備えてやりましょう」
「分かりました、では四ノ宮君頼んだよ」
「了解です、では……貴方の事は何とお呼びしましょう?」
「ブイ・エー・エルって書いてVALだ」
「了解しました、ではVALさん今回のフィールドはヘルヘイム、敵はギルス、ビースト、オーズ プトティラです。あら?どうかなされました?」
「いや、自分から名乗っといてなんだけどさこの名前の響きがさ、どっかの殺虫剤見たいな響きだと思ってさ」
何の事かよく分かっていない四ノ宮をよそにVALはヘルヘイムのフィールドへと降り立つ。
「それではシミュレーションを開始します、今回のVALさんのチームはバロンとチェイサーです」
聞き覚えのある変身音とともに自分の横に現れたのはバロン リンゴアームズと仮面ライダーチェイサーだった。
「準備はできましたかVALさん?」
「いつでもどうぞ」
「それでは……シミュレーションスタート!」
「さて“害虫退治”といこうか……!」
ガンバドライバーのタッチし、大橙丸と無双セイバーを呼び出し、プトティラ達に斬りかかった。
こうして俺の戦いが始まった。
長きに渡るその戦いに世界存亡の一躍を担うことは誰も、自分さえも知る由は無かった。
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