遊戯王5D's2 (仮) (ナハト)
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電子の海
デュエルには大きく分けて二つ存在する。古き良きルールであり手軽なスタンディングデュエルと、Dホイールを駆って行うライディングデュエルだ。
しかしその人気はWRGP以降、ライディングデュエルに大きく傾いた。世界中を熱狂の渦に叩き込んだ名勝負の数々、そしてそれに並行して起こったある世界的な事件がその大きな要因と言える。
しかし有ることをキッカケにスタンディングデュエルが大きな勢いを取り戻す。その要因となったのが『ディメンジョンターミナル』――通称をDTとする――という機械の発明である。
そもそも、デュエルモンスターズは対戦相手が居なきゃ成立しない対戦ゲームだ。そしてその対戦相手はそれこそデュエルを行うことで金を儲けられるようなプロデュエリストでもない限り身近な相手に限られてしまう。
そんな当たり前を粉々に打ち砕いたのがDTである。この機械はデュエルディスクをつなぐことで起動し、付随したヘルメットのような機械を装着することで使用者の脳波を読み取り、電子の世界へと意識を旅立たせる。そして同じくDTを装着した誰かと対戦を行うことができるという代物だ。
そこはまさしく
使用者全員にアカウントが配布され、そのアカウントを持ってライバルと競い合う『レーティング』のシステムが採用されてからは、もはやライディングにも負けないかつてのスタンディングの人気が戻っていた。特に高レート帯にいるものには定期的に賞金が支払われその額は世界最高峰の大会のそれに何ら劣らないものであることから、上位レートでは常に激しい決闘が繰り広げられている。
また一部高レートのプレイヤー――基本的に現実でも名の通ったプロデュエリストだが――は自らのアカウントを公開しており、彼らの闘いを観戦する為にこの電子の世界に訪れるものも多い。DTで行われる決闘は使用者であれば無料で観戦することができる。息を呑むようなプロの決闘をタダで見れるというのだから、コレも当然といえるだろう。
さて、そんなDTを使用するユーザー達の間で近日話題になっているアカウントが有る。
そのアカウントはある日彗星のようにレーティングに現れると破竹の勢いで連勝を重ね、プロの跳梁跋扈している領域にまで進んでもその足を止めず、ついには世界ランカーとまで対戦できる程の超高レート帯にまで上り詰めた。恐るべき強さと華麗なデュエルタクティクスを誇るそのアカウントはしかし、勝敗以外の何の情報も公開していなかった。
人々は当然そのアカウントの正体を探りはじめる。名の通ったプロの誰かだろう、いやKCの作り出した決闘用の人工知能ではなかろうか、いやいやきっともっとオカルトじみたものに違いない。
――今や世界中の人々から注目を集めるそのアカウントの名は『Atemu』。
その名の意味を知るものは、この世には既に1人も居ない。
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