美醜反転ISでオリ主ワンサマー(ブサイク) (ゴージェーさんです)
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第1話中学3年のバレンタインと相川清香

小説を上手く書きたーい……とりあえず書きまくれば上手くなるのでは?という浅い考えで始まります。3日以内更新を誓いまーす。


「…ず、ずっと前から大好きでした、付き合ってくださいっ!」

 

教室の前方にて、教室中に聞こえるであろう大声で告白をした少女を目の前にしている俺は、たぶん、なんとも言えない複雑な表情をしているはずだ。

 

俺は心の中でやれやれだぜと息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

俺の名前は織斑一夏。

 

世界最強の姉を持つ普通の男子中学生である。

 

…なんてのは勿論冗談で本当は前世にトラックに轢かれてなんやかんや生まれ変わって、昔に大好きだったアニメ【インフィニット・ストラトス】の世界に転生して、そのアニメの主人公、織斑一夏に転生したスーパーラッキーボーイだ。

 

といっても、今流行りの神様転生みたいに、神様にすごいチートを貰ったりはしていない。それどころか容姿すら前世の超絶ブサイクな俺の顔を引き継ぐというマゾ仕様である。

 

絶望した!

 

せっかく織斑一夏に転生したのに顔面が【鳥取一のブサイク】や【鳥取砂丘の擬人化】などと言われた前世フェイスだったのだ。

 

アイエスの可愛いヒロイン達に出会っても、こんな顔面じゃあ話しかけても貰えないっ!

 

織斑一夏といえば爽やか系のイケメン主人公で、そんなワンサマー先輩のカッコイイセリフにヒロインはメロメロ(死語)だったのだ。

 

逆に言えばキモメンとかした織斑一夏がどんなカッコイイセリフを言っても、

 

「プークスクス!きゃーカッコイイ(嘲笑)」

 

「キモーい、カッコイイセリフを言って良いのはイケメンだけだよねー」

 

「ブサイクがお前なのは確定的に明らか(侮蔑)」

 

などと言われて虐められるのではと、子供の頃から未来への不安で胃に穴が空きそうになるほど胃痛に悩まされていたが、生まれ変わってから数年経つとある事実に気づいた。

 

俺の容姿を馬鹿にする人間がいないのだ。

 

そんな馬鹿なと思わず叫んでしまったのはいい思い出だ。

 

なんせ俺の顔は前世にて生まれてから一度もポジティブな言葉を言われたことのない悍ましい顔なのだ。

 

「……絶対母さん浮気してるよねこれ、俺の遺伝子を受け継いでいたらこんな愉快なアートみたいな顔にならないだろう。つーかどんな遺伝子があればこんな冗談みたいなブサイクになるんだ?母さんもしかしてエイリアンとでもセックスしたのかい?」

 

「……浮気をした記憶はないけれど、この顔は絶対に私とあなた以外の遺伝子が存在しているわね、しかも間違いなく地球外産の遺伝子よ、たぶん、プレデターと一夜の過ちがあったはずよ」

 

などと地球外産の顔面と前世の親に言われたほどのキモい顔なのだ。

 

そんな俺が容姿を馬鹿にされない、それどころか周囲の人間からはむしろ、可愛い、カッコイイなどと言われたのだ。

 

それでも俺はそんな言葉を信じなかった。きっと周りの人間は子供の俺に気を使ってそんな言葉を言うのだろうと思っていた。

 

しかしそれは過ちであったと気づいた、彼らは心の底から本気で俺の容姿を褒め称えていたのだ。

 

その過ちに気がつく事が出来たのは俺の姉、即ち織斑千冬の世間の扱いによってだった。

 

織斑千冬は世界最強のISパイロットであり、【ブリュンヒルデ】の二つ名を持つ強さと美しさを兼ね備えた才女である。

 

それが彼女、織斑千冬の原作におけるプロフィールである。

 

そう、原作では。

 

この世界において彼女の二つ名は【ブリュンヒルデ】(美しき戦女神)ではない。

 

彼女の二つ名は【ヘル】(醜い女神)である。

 

 

 

 

 

……マジかよ勘弁してくれよ、そう思わず口にしそうになり急いで口を閉じて愚痴を零すのを防ぐ。

 

俺の前では学園一の美少女と言われている女の子、佐々木希さんが教室で告白した恥ずかしさと俺の返事への期待で顔を真っ赤にして俯いていた。

 

今日は2月14日、つまりバレンタインであり受験シーズンでピリピリしている中学三年生の教室もどこか浮ついた空気が流れており、そんなピンクの空気に当てられたのかウチのクラスのマドンナの佐々木希も教室でクラスメイトに見守られながら告白をするという大胆な行動を取っていた。

 

ワッ!とクラスメイトが沸いた。

 

まさかの青春ラブコメに彼らは思い思いの言葉を吐いている。

 

「きゃあぁぁぁぁ、告白したぁぁ!」

 

「チッ!織斑くんはアタイが狙ってたのになー……けどあんたになら譲ってやんよ、幸せになりな希」

 

「すごーい、貴方はいつでも発情出来るフレンズなんだね」

 

と騒ぐ女子たち。

 

「クソッ!俺たちのアイドル、佐々木希さんがっ!」

 

「別に羨ましくないわー、けどなんかチョコ食べたいなー、チラッと!(◎_◎;)」

 

「……お前は俺の物だぞ………………織斑一夏」

 

と騒ぐ男子たち。

 

馬鹿騒ぎである。

 

しかしその喧騒もだんだんと静かになっていきクラスのみんなが俺の言葉を待っていた。

 

重い口を開く。

 

みんなが期待の目を注いでいた。

 

彼女を見る。

 

真っ直ぐに見つめ返す彼女と目があった。

 

その容姿は両津勘吉のような太い眉毛にブツブツのニキビだらけの頬、前歯はビーバーを想起させるほど尖り、顔のパーツは崩れたジクソーパズルを思わせた。

 

うん、まあなんだ。

 

すいません、好みじゃないです。(五月蝿えブサイクが話しかけんな)

 

先ほどとは違う意味で阿鼻叫喚が生まれた。

 

そう、この世界は美醜の価値観が反転している。

 

 

 

 

あれから数時間が経ち俺は放課後の屋上でクラスメイトと会話を楽しんでいた。

 

「……ねぇ本当に良かったの?佐々木さんみたいな超絶美少女の告白を断って」

 

「うーん、だって好みじゃ無いしなー」

 

我ながら何様だよと言いたくなる台詞だが此方にだって選ぶ権利はある。

 

学園一の美少女である佐々木希は前世の価値観からすると、とんでもねえブサイクである。

 

お前もブサイクだろうと言われるかもしれないが俺は理想が高いのだ。

 

「えーなんでー?美男美女でお似合いのカップルじゃん」

 

心の底から不思議そうな表情を浮かべるクラスメイトの相川清香は不意に少し意地悪そうな顔をすると、

 

「……まぁ、織斑くんといえばブサイクな女の子が好きだしね〜」

 

と俺に顔を近づけて囁いた。

 

本人としては不本意なのだが俺は地元でも有名なイケメンであると同時にブサイクな顔を愛する変人と言われている。

 

その原因はセカンド幼馴染でありファースト彼女の存在があるのだが今は置いておこう。

 

「やっぱりあれかな、俺はブサイクしか愛せねぇっ!みたいな性癖なのかなぁ?」

 

「いやいや別にそんな事ないよ」

 

「えーそういいながら……も、もしかして私もチャンスがあったり……みたいな?」

 

冗談混じりに言っているようで実際は勇気を振り絞り本気で問いかけているのだろう、よく見れば耳が赤くなっており、どこか口調も早口だった。

 

彼女は原作に登場するキャラクターの1人である。

 

とはいえメインヒロインなどでは無くあくまでモブキャラの1人だ。だがやはりラノベのモブキャラだからなのかレベルの高い容姿をしている。

 

先ほど俺に告白してきた佐々木希がマドンナならば彼女は学校一のブサイク、通称【ミス・エルフ】と呼ばれる女子なのだ。

 

エルフなら褒め言葉じゃないかと感じるがこの世界ではエルフは容姿端麗な生物では無く醜い姿のケダモノというイメージが一般的である。

 

逆にオークやトロールなどが美しい高貴な生き物として扱われるのだ。

 

世間ではくっ殺せといえばオークが悍ましいエルフにエロい事をされるのが定番らしい……正直ないわーと思う。

 

そんなミス・エルフこと相川清香が期待に胸を膨らませながらこちらを見ている。

 

いやーやっぱり可愛いなぁ。紫色のショートヘアーに出るとか出てるスタイルは前世だったらトップアイドルになれるほど美しい。

 

正直かなり好みです。

 

ファースト彼女は胸が大貧民状態だったので相川清香の胸部は巨乳スキーの我輩としては大変宜しいですハイ。

 

なので……

 

「……なあ相川……いや、清香ちゃん」

 

「は、はいっ!」

 

俺の方から顔を近づけると清香ちゃんは林檎みたいに顔を真っ赤にして硬直している。

 

もしかしてという期待が頬を赤らめさせている。

 

前世で地球外産のキモメンだった俺も今では人とは思えないほど美しいイケメンワンサマーなのだ。

 

今まで浮いた話など一度も無いモンスターヴァージンである清香ちゃんはされるがままになっているのだ!

 

「……俺の彼女になって欲しい」

 

「えっ、本気なのっ?だって私ブスだし……織斑くんみたいなカッコイイ男の人と付き合うなんて……冗談、でしょ?」

 

こちらこそ冗談だろうと言いたくなるほど自己評価の低い清香ちゃんの卑屈な言葉に俺は顔がにやけるのを必死に抑えていた。

 

前世の自分では到底関わる事の出来ないような美少女が自分のようなブサイクに羨望の眼差しを向けられるのは麻薬にも似た禁断の快楽を俺に与えた。

 

「……清香ちゃん、俺は人は外見じゃ無いと思ってる」

 

「えっ!」

 

嘘です、人間なんて外見が全てだと思う。

 

「人の価値は心の在り方で変わる。俺は清香ちゃんのその真っ直ぐな心に惹かれてんだ」

 

「織…斑くん……」

 

嘘です、単に容姿が好みなだけです。

 

「……清香ちゃん、俺の目を見て」

 

「織斑くんの目?」

 

「ああ、俺の目には何が映ってる?」

 

「な、何って、私よ……醜い私が映っているわ。本当なら織斑みたいな人の目になんか映っちゃいけない私が映ってる」

 

「それは違うっ!」

 

「っ!!」

 

何この青春ラブコメみたいなの……自分でやっといてなんだけど恥ずかしいな。

 

なんか説得するの面倒になってきたな、さっさとキスしてハッピーエンドじゃ駄目かな。

 

「俺が好きな相川清香を馬鹿にするな……例えそれが本人だとしても俺は許さないぞ……なあ清香ちゃん、俺は君が今までどんな扱いをされてきたのか、どんな心の傷を負ったのか分からない」

 

「そ、そうよ今まで他人から羨望の眼差しを向けられ続けてきた織斑くんなんかに私の気持ちなんか分かるわけないっ!」

 

「辛かったのか?」

 

「辛かったわよっ!こんな顔に生まれたせいでどんなに勉強を頑張ってもスポーツで優秀な成績を残しても誰も私を褒めてくれないっ!……みんな私を馬鹿にしてる……ブサイクが必死に頑張ってるってクスクス嗤っているのよ」

「そう、か」

 

………………やっベー。なんか予想以上の闇を抱えてるんだけどっ。

 

適当に告白したら1発ぐらいヤラせてくれねーかなーとか軽い気持ちでしたのが間違いだったのか。

 

怖いよぉ〜なんか清香の目がレイプ目なんですけど、思わず「そう、か」としか言えなかった。

 

まあ実際、清香ちゃんはうちの学校での扱いは結構酷い。

 

漫画のような「オメェの席ネェェカラァァ」などは無いがそれでも陰口や本人への直接的な悪口などは存在した。

 

相川清香は優秀な存在である。

 

もともと原作では超難関校のIS学園に入学出来るほどの知性と身体能力を持ち合わせているエリートだ。

 

この世界が美醜反転していなければさぞチヤホヤされただろうが、残念な事にその魅力も顔がブサイクという圧倒的なマイナス要素によって打ち消されている。

 

あんなブサイクの癖にみんなより頭が良くて運動神経も抜群だ、巫山戯るな。

 

それがきっとみんなの本当の気持ちなのだろう。

 

心がまだ未成熟な中学生である彼等はその嫉妬を抑えるすべを知らない。

 

そんな周囲の悪意に心を痛めていた相川清香にとって織斑一夏は希望の光だったのだろう。

 

織斑一夏だけは自分を馬鹿にしないで1人の人間として扱ってくれた。

 

トップカーストの人間が底辺の人間である自分に微笑んでくれる。

 

それは夢のような幸福感なのだろう。

 

前世が最底辺だった俺だからこそ、その感情は共感できた。

 

 

 

さて話を戻そう。

 

どんなに現実逃避をしてもレイプ目清香ちゃんは目の前から消えたりはしないのだ。

 

あっ、よく見ると清香ちゃん唇を噛んで血が出てる。

 

怖っ、唇を噛んで血が出るとか小説の話だと思ってた。

 

あ、この世界ラノベか。

 

……いけないまた現実逃避してた。

 

とにかくそれっぽい事を言おう。

 

「清香ちゃん。君はみんなが私を馬鹿にしてるって言ったな」

 

「そ、そうよ。みんな、クラスの人達も先生も家族だってっ!誰もが私を馬鹿にしているっ!」

 

「なぁ、そのみんなには俺も入っているのか?」

 

「お、織斑くんは……入っていないと…思う。初めて織斑くんに会った時から織斑くんは私に酷い事は言わなかった。逆に私なんかと話してくれたり誕生日にプレゼントを貰ったり……本当に嬉しかった」

 

「そうか」

 

「ねぇ、なんで織斑くんはなんで私なんかに、優しくしてくれるの?私分からないよ。……どうせ心の中で私を馬鹿にしてるんでしょ?……ブサイクが勘違いしてるって思ってるんでしょっ!」

 

「違うよ。それはあり得ない」

 

「……本当は気がついているの、織斑くんは優しいって事を。悪意なんて無くて。私を1人の人間としてみてくれるんだって……けどね私は顔と同じくらい心が汚いの。それでも私は人の善意を信じられ無いっ!」

 

「……全くここまで言ってもまだ信用出来ないか」

 

「……ごめんなさい織斑くん」

 

「……なら行動で示そうか」

 

「えっ、何を?」

 

触れるだけの優しいキスをする。

 

清香ちゃんとのキスは血の味がした。

 

「なぁ、なななななななななななななななななな」

 

「チッス、ごちになりましタァ」

 

「き、キスしちゃったぁぁぁぁ。お、織斑くんとキスを」

 

瞬間沸騰した清香ちゃんの顔を抑えてもう一度キスをする。

 

今度は長く。

 

唇を離す。

 

「……ねぇ織斑くんの事を一夏くんって呼んでいい?」

 

「あぁ、いいよ」

 

「一夏くん、私は臆病だからさ、やっぱり一夏くんの言葉を鵜呑みには出来ない」

 

「うん」

 

「けどさ、今みたいな行動で示されたらきっと信じられると思う」

 

「そうか、それは良かった」

 

「うん、だからさ……これからもいっぱい私を信じさせてね一夏くん」

 

言葉はいらなかった。

 

ただひたすらにこの想いを行動で示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え、セックス?薄い本じゃないんだから付き合っていきなりしないよ。

 

 

 

次の日。

 

 

「私、織斑一夏とォォォォ」

 

「相川清香はぁぁぁ」

 

「「付き合うことになりましたぁぁぁぁ」」

 

「「「「「「ハァァァァァァ⁉︎」」」」」」

 

教室に再び阿鼻叫喚が生まれた。

 

 

 




オラァ地雷要素の塊ダァ。

自分の事を卑下しまくる美少女って良いよなぁ。


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第2話千冬姉は甘えん坊

なんとか間に合ったぁぁぁぁ。

それでは総員キャラ崩壊に備えろ!


コトコトの鍋の蓋が震える音が静かな部屋の中に響いているのを耳に入れながら椅子に座って携帯をいじる。

 

携帯に示された時間は18時24分で今は飯時である。

 

キッチンでシチューが煮込むのを待ちながら俺はメールを打っていた。

 

 

『さぁシチューが煮込み終えるまで私の暇潰しに付き合うのだ清香よぉぁぁ』

 

『彼氏が私の事を便利な女扱いする件』

 

『そう言いながらもメールが来てにやけてるのを俺は知っている』

 

『バ、バカにゃ何故知っているっ!』

 

『だって今日教室でクラスのみんなに「マジで付き合ってるの?」って聞かれた時に物凄いニヤニヤしてたもん』

 

『えっ?淡々と無表情で受け答えしてたつもりだったのに』

 

『カーワーイーイー』

 

『ば、馬鹿にしてぇ……ちょっと彼女への愛を示すために出来立てのシチューを私の家にデリバリーしたまえー』

 

『お腹を空かせて帰ってくる可愛い姉がいるから無理っす』

 

『なんだとぉ。愛は行動で示すんじゃないのかぁぁ』

 

『彼女より姉を優先するワンサワーとは俺のことダァーイ』

 

『失望しました。千冬様のファン辞めます』

 

『清香ちゃんってうちの姉のファンだったのか……』

 

清香ちゃんと特に意味もないメールをしているといつの間にかシチューは出来上がっていた。

 

一口味見をすると濃厚な味が口に広がる。

 

「美味っ!」

 

前世から得意だったシチューの味はそこいらの店に負けない美味しさを誇っている。これなら姉も満足するだろう……まあ我が姉は例えゲロのように不味い料理でも弟の手料理というだけで美味しそうに平らげる姿が想像できる。

 

 

さていきなりだが人間の性格について話そうと思う。

 

人格を形成するのに最も重要な要素はなんだろうか?

 

それは環境だ。

 

人間の性格は環境によって育まれていく。

 

常に正道を歩み勝者として君臨している人間が一度のミスで心が折れるほど脆いメンタルだったり、いつも他人に侮蔑されてきた人間は良く周囲の人間の顔色を伺って怯えているように。

 

だからこそ、その変化は当然だった。

 

本来自分にも他人にも厳しくあり鋼のような心の強さと女神のような優しさを持った【織斑千冬】は存在しない。

 

そんな強い心など世界一のブサイクと呼ばれる彼女には存在しない。

 

彼女を取り囲んでいた悪意はそれを許さなかった。

 

もしかしたらその心が悪意に飲まれて自死を選んでもおかしく無かった。

 

しかし幸運なことに彼女は生きている。織斑一夏という心の拠り所を見つけたからこそ。

 

決して幸せばかりの人生では無かった。しかし彼女は言うだろう。

 

自分は幸せだと。弟に出会うことが出来た、それだけでもう幸せだと。

 

 

 

……つまり何が言いたいかだって?

 

それは………

 

 

ドタドタと人の走る音が聞こえる。

 

よほど急いでいるのか我が家の廊下を一瞬で走り終えた存在Xこと織斑さんちの千冬ちゃんがキッチンのドアが外れるんじゃないかと思うほど力強く開く。

 

そんないつもの事を無視して俺は立ち上がり両手を広げる。

 

「ただいまぁぁぁぁ今帰ったぞぉ一夏ぁぁぁぁ!」

 

織斑千冬ちゃん(27歳児)が帰ってきた。

 

ひしっ!

 

コアラのように引っ付いてくる千冬姉を広げた両手でキャッチして抱きしめる。

 

「うぅん一夏ぁぁ」

 

すりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすりすり。

 

この世界の千冬姉は甘えん坊である。

 

 

 

「それでなぁ、今日は朝に通勤する時にすれ違った男が私の顔を見て物凄い顔でギョッとしていたんだ。きっと気持ちが悪い顔だなと思ったんだろうなぁ。辛いぞ一夏ぁ!」

 

「うん、うん。大変だったね。今はゆっくり休んでね」

 

俺に膝枕をされた千冬姉は1日で溜まったストレスを発散するために今日の不満をシャウトしながら頭を撫でられている。

 

クール系美人の女性が若い男に甘える姿は社会的地位の高い人間が赤ちゃんプレイをしているような、こう見てはいけない光景だと感じてしまう。

 

無論普段の千冬姉はこんな醜態を世間の皆様を披露したりはしない。原作のような外見通りのクールな性格である。

 

しかし昔から多大な悪意にさらされてきた千冬姉はある一定のストレスが溜まると俺に子供のように甘えてくる癖があった。

 

俺のしても千冬姉のような美女に擦寄られるのは役得なので思う存分甘えさせている。

 

「やっぱり一夏は優しいな。一夏だけだ私に優しい男は」

 

「そりゃあこんなかわゆい姉なら優しくしちゃうよ」

 

「うぅ!あぁ、ありがとう一夏。私は幸せだ。お前のおかげで私は仕事を頑張れるんだ」

 

「お仕事はやっぱり大変?」

 

「うーむ。まあな。そもそも私は教職などは柄ではないからな。本来は学年主任など荷が重い」

 

「まあ千冬姉はもともと教員免許を持ってないしね。それなのに学年主任って割と不味いよね」

 

「ぶっちゃけあらゆる法の外にあるIS学園だからこそ出来るグレーゾーンの荒技だからなぁ」

 

「それだけIS学園としても世界一のIS操縦者の千冬姉が欲しかったんだ」

 

「自分で言うと傲慢に聞こえるかも知れないがIS操縦者を育成するという一点に掛けて私は優秀だと自負している。だがまぁ、IS学園で教えるのはISの操縦だけではない。何よりも相手はまだ心の未熟な高校生だ、当然そんな彼女達を導くのは容易ではない」

 

「IS学園に入学出来る生徒なんてみんなエリートの優等生じゃないの?」

 

「いや……うん。優秀ではあるんだがこう、そのスペックを無駄なことに使う面倒なバイタリティの持ち主が多いからなぁ。例えば更識とか更識とか更識とか更識とか」

 

「うん、更識っていう人がトンデモナイ問題児って事が分かった」

 

「まあけど楽しい職場だぞ。男が1人しかいないから嫌悪の目を向けられる回数が少ないし教員もみな優秀な元IS操縦者だから私のようなブサイクしか居なくて居心地が良い」

 

「へぇー」

 

IS操縦者はIS適性が高いほどブサイクになる、つまり俺にとっては美人が多いのだ。原作でモブがみんな可愛いのも多分これが理由だろう。

 

「特に私の後輩に真耶って奴がいるんだか、あいつに一夏の事を自慢するのが楽しくてなー。私と一夏は仲が良いと言うと発狂して嫉妬するんだ」

 

「後輩を発狂させるのが楽しいってどうなのよ」

 

もはやパワハラである。

 

「一夏は美少年で料理も美味しくて私に優しいって言うと真耶は一夏を紹介してくれというのだ」

 

「ほー」

 

「まあ身の程を知れ顔面崩壊ホルスタイン!と罵ると泣くんだけどな」

 

ブーメランじゃねえか

 

「後輩が!泣いても!罵るのを!!やめないっ!!!」

 

「やめたげてよぉ!」

 

「だってなぁ一夏の彼女に相応しいのはこう、美人でスタイルの良い稼ぎの多い女じゃないと」

 

「結構理想高いね」

 

「ま、まあ、確かに理想が高いなじゃあ美人じゃなくても良いからスタイルが良くて大金を稼ぐ……こう私みたいな女はどうだ」

 

「いや…千冬姉は俺的にかなり好みだけど血が繋がってるし」

 

「なっ!い、良いじゃないか血なんて繋がっているぐらい大した問題じゃないって春日部兄妹も言っていたぞ」

 

「リアルにヨスガるのは流石に不味いでしょ」

 

「なんでだ!……言っとくが私は脱いだらすごいぞ。昔同級生の男に「織斑の顔は見るのもキツイけど身体はエロいよな……なぁ、いっぺん顔にビニール袋被ってヤらせてくれね?割とイケる気がする」って口説かれた事もあるんだ」

 

「多分それは口説いてるとは言わない」

 

全世界のラブコメに失礼だ。

 

「ま、まあ良い。とにかく何処の馬の骨とも知らん女を彼女にするなよ。まあまだ一夏に彼女は早い気がするがな」

 

「あっ、言い忘れてたけど俺昨日彼女出来たから」

 

「……………………」

 

「…………?」

 

「……………………」

 

「千冬姉?」

 

「……………………………」

 

「気絶してる……」

 

 

 




おいやめろ石を投げるな、キャラ崩壊のタグはあっただろう。

全裸の女にビニール袋を被せるのってエロいよな。


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第3話ブサイクエンカウント

私は確かに3日以内に更新するといって結果的に反故にしてしまった!

だが私は読者に謝らない!

何故だかわかるか?

それはこの更新する詐欺のおかげで読者は擬似的な放置プレイを味わうことが出来たからだ!

作者の俺は執筆をサボりビニール袋のエロ動画を探して幸せ。

読者は擬似的放置プレイを味わい幸せ。

これがウィンウィンの関係だ!


私、相川清香はとある一軒家の玄関前でインターホンを押すのを躊躇ってから数分の時間が経っていた。

 

別にその家が自分に縁のないような豪邸だったりヤのつく自由業の人間が徘徊している訳ではない。

 

しかし彼氏の家である。

 

彼氏。

 

そう彼氏だ。

 

その彼氏は私なんかが付き合うなんて宝くじの一等が当たるより有り得ないような美少年で、しかもただのイケメンでは無いのだ。

 

彼は容姿に恵まれているだけでは無くその内面、性格も素晴らしい人格者で顔が醜くいじめに近い扱いを受けていた私にさえ優しく接してくれていた人なのだ。

 

昔彼に質問をした事がある。何故私に優しくするのかと。

 

質問された彼はキョトンと不思議そうな表情を浮かべた後にこう言ったのだ。

 

「だって相川さん可愛いし」

 

嘘だろうと思った。私をぬか喜びさせて馬鹿にしてるとも思った。

 

けれどそれ以上に嬉しくて泣きそうになったのを覚えている。

 

私は生まれてきてから褒められた事が少ない。

 

別に小さな時から悪事をしてきた訳では無い。

 

むしろ自分で言ってしまうと傲慢に聞こえるだろうが私はかなり優秀な人間だと自負している。

 

昔から運動でも勉強でも苦労をした記憶はない。勿論ある程度の努力は必要としたがそれだって凡人と呼ばれる人種に比べれば殆ど無いのと当然だった。

 

だからこそ歯痒かった。そんな私のプラス(才能)すら消してしまうほどのマイナス(醜い顔)が。

 

 

 

小学生の頃に漢字のテストで百点満点を取ったことを覚えている。

 

自分以外のクラスメイトは全員90点以下で自分だけが百点満点を取った事は自分がもっとも優れた人間なのだという自負を持ち後ろ向きな暗い喜びを私に与えた。

 

学校から自宅までを全力で疾走した。

 

両親にいち早くこの回答用紙を見せてただ褒めて欲しかった。

 

例え顔が醜くても関係ないのだと、自分は優秀な存在なのだと、そう言って欲しかったのだ。

 

だから、だからこそ辛かった。

 

「そう……良かったわね」

 

そう言った母親の顔を私は忘れられない。

 

例え口から出た言葉が私を肯定してもその顔が、その目が物語っていた。

 

あぁ、勉強が出来るのに、運動も出来る、なのに、なのに、なんで貴方はそんなに醜いのかしらと。

 

 

 

「はぁぁぁ、緊張するぅ」

 

漏れ出たため息を隠す事をしないで緊張に身を震わせる。

 

そもそも此処に来たのは一夏くんからの一通のメールが原因だった。

 

『清香ちゃん今ヒマ?ちょっと今日俺の家に来れない?』

 

か、彼氏がウチに来ないかと誘う、こ、これはつまりそういう事だよね。

 

ホワァァァ。遂に初体験を済ませてしまうのか私ぃぃぃ。

 

いや、まあ嫌じゃないんだけど。むしろこっちからお願いしたいぐらいなんだけど。

 

……かー仕方がないなぁ、しょうがないから一夏くんのお誘いを受けちゃうかー。

 

かー仕方がないなぁ私の処女を特別にあげちゃうかー。

 

かー仕方がないなぁこんな時の為に買っていためっちゃエロい下着を着て来ちゃったしなー。

 

いやぁ、気が乗らないなぁ(棒読み)

 

けどやっぱり3日前まで恋愛なんて無縁だった私に彼氏の家のインターホンを押すのはプレッシャーだ。

 

「こ、こうなったらチャット仲間のみんなからアドバイスを貰おう」

 

例え処女1人ではどうしよう無い問題もみんなの知恵を合わせれば良い。

 

ネットで知り合い一度もリアルではあった事はないが顔などは写真などで把握している友達で私達は全員がブサイクという共通点を持つ熱い絆で結ばれている。

 

携帯を取り出して手早く文章を打つ。

 

ハンドボール娘『ちょっと今彼氏の家の前にいるんだけどインターホンを押すのが緊張するぅぅどうしよう助けて』

 

よし簡潔に私の状況を説明できている。さあ絆パワーを今こそ発揮する時。

 

武士娘『嘘乙』

 

ドリル娘『そもそも彼氏なんてハンドボール娘さんの脳内妄想であるのは確定的に明らかですわ』

 

のほほん娘『ハンちゃん今日はエイプリルフールじゃないよー』

 

くっこいつら。友達を疑うなんて最低だな。まあ私もこいつらに恋人ができたと言われても信じられないけど。だって私達はみんなブサイクですしね、けれど残念ながら私に彼氏が出来たのは本当である。

 

クックックッ、はっはっはー……畏れおののけブサイク共、奴らの言いそうなことはとっくに予想済みである。

 

こんな時の為に証拠の写真は用意してある。一夏くんと私が体を密着して撮ったラブラブ(死語)の思い出だ。

 

早速証拠の写真をアップロードする。

 

ハンドボール娘『ほら証拠の写真』

 

武士娘『ハイハイコラ画像スゴイねー……あれこのイケメンって?……』

 

ドリル娘『あらあら態々こんなコラ画像を作ったんですのね、正直に言ってヒマなんですの?』

 

のほほん娘『……………………』

 

ドリル娘『あらどうしましたののほほん娘さん?確かのほほん娘さんはこういった編集などは詳しいですのよね?やっぱり上級者からみたらハンドボール娘さんの小細工なんて簡単に見破る事が出来るんですの?』

 

武士娘『……………………』

 

のほほん娘『…………………』

 

ドリル娘『本当にどうしましたの、そんなに皆さん黙り込んで』

 

のほほん娘『…そだ、う、嘘だ、嘘だ、嘘だぁぁぁぁ』

 

ドリル娘『のほほん娘さん⁉︎』

 

のほほん娘『…マジで本物なんだけど……この写真、マジで本物』

 

ドリル娘『…は、いやいやそんな有り得ませんわ。だってハンドボール娘さんのような醜い容姿の方が写真を見ただけでもわかるほどの素敵な殿方にこんな恋人のような距離感は有り得ませんわ、それこそ明日人類が滅ぶ確率の方が高いですわ!』

 

ハンドボール娘『とりあえず容姿に関してはブーメランだからね』

 

のほほん娘『…えーとハンちゃん本当にこの人と付き合ってるの?…………いや、ありえねぇーつーのー!テメェどんな方法使いやがった!』

 

ドリル娘『キマシタワー!のほほん娘さんの腹黒い本性が!……って事はやっぱり本当にその殿方とお付き合いしていますのねぇぇぇ!』

 

ハンドボール娘『ドヤァァァァ』

 

のほほん娘『ブッコロ』

 

ドリル娘『流石はのほほん娘さん殺意高めですわね……いや私も結構キレてますけど』

 

ハンドボール娘『安心してこの世界に男は何人いると思っているの…………35億っ(๑˃̵ᴗ˂̵)』

 

ドリル娘『キマシタワー、ブルゾン娘さんがキマシタワー。けどやっぱり腹が立ちますわ』

 

武士娘『オェェェェェェェェェェェェ』

 

ドリル娘『武士娘さん⁉︎』

 

武士娘『この写真の男……初恋の人なんだが_(┐「ε:)_』

 

ドリル娘『ファッ!』

 

ハンドボール娘『超ウケるwww……え、マジかよ』

 

のほほん娘『すごーい、ハンドボール娘は友達の好きな男を寝とるのが得意なフレンズなんだね』

 

ハンドボール娘『ちょっ!それは洒落にならないから!あと、武士娘はなんか、ごめん』

 

武士娘『…良いんだどうせ私はずっと背後からこっそり一夏をつけ回すことしか出来なかった哀れな女だ』

 

ドリル娘『武士娘さん…理解のある女を装っていますけどそれってストーカーなのでわ』

 

のほほん娘『ブシちゃんはメンヘラだからねー』

 

「う〜ん、まさか一夏くんと武士娘が知り合いだったとは……世間は案外狭いな」

 

友達の好きな男を恋人にする。

 

これが愉悦なのか……なんだか今まで体験した事のない快感が私を襲った。

 

「フフフ、フフフフフフフフフフフフフフフフフフ」

 

「何を人の家の前でやっている」

 

「え?」

 

後ろからの呼び声に思わず振り向く。

 

そこに居たのは元ISの世界王者でヘルの二つ名を持つ女だった。

 

頭の先から爪先まで見る。

 

その感想を述べるのならば、ほー私よりブサイクな人間は初めて見るなー……だろうか。

 

地元屈指のブサイクを自負している私だがこの世界最悪クラスのブサイクには流石に負ける……いや、この場合は勝るか。

 

女。織斑千冬はニヤリと人を食ったような醜い笑みを浮かべてこう言いやがった。

 

「初めまして。君が一夏の恋人か。話は聞いている。私は織斑千冬、一夏にとっての最愛の姉でもある」

 

ああ、この女は私の敵だ。

 

私はこの瞬間に悟った。

 

 




アビゲイル・ジョンソンはイイぞ。

なんか間違って二回も3話を投稿してた。

そしてアビゲイルはAV女優だ。


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第4話 性の喜びを知りやがって!

性の喜びおじさんは今どうなっているのやら。

そして日間ルーキーで15位だったヤッター!

……15位って喜んで良いのか?


例えばの話をしよう。

 

あるところに吸血鬼がいたとしよう。

 

そう吸血鬼、あの産まれながらのニート生物だ。

 

いや、別に吸血鬼である必要はないのだ。

 

ゾンビでもフランケンシュタインでもこの際チュパカブラでも良い。

 

ようは陽の光の浴びる事のない民衆に嫌悪される生き物を想像すれば良い。

 

その吸血鬼は産まれながらに他人の嫌悪を誘う存在だった。吸血鬼には常人にはあり得ないような力を宿していたし、その知能は賢者の如く高かった。

 

しかし民衆は残酷だ。

 

例え英雄と持て囃すような能力を持っていてもその力の持ち主が醜ければ民衆はすぐに手のひらを返す。

 

民衆に石を投げられ唾を吐かれても、それでも吸血鬼は陽だまりを求めた。

 

愛が欲しいと、こんな醜い怪物にでも許されるなら幸せが欲しいと吸血鬼は叫ぶ。

 

その吸血鬼の慟哭を民衆は侮蔑の視線と共に斬り捨てる。

 

嗚呼この世界は残酷だと吸血鬼は嘆く。

 

しかし、もしだ。

 

そんな吸血鬼に微笑む存在が居たとしたら。

 

ただのか弱い蝋燭の光ではない。雄大でしかし温かい陽光、太陽の光が吸血鬼の冷たい心と身体を解したならどうなるか?

 

縋るに決まっている。依存するだろう。産まれて初めて見たものを親と慕う雛鳥のように手を伸ばしてその太陽の抱擁を求めるだろう。

 

吸血鬼はもう太陽からは逃げられない。

 

蜘蛛の糸を見つけた罪人は我武者羅に手を伸ばすように吸血鬼は太陽を見上げる首を下ろすことはない。

 

さて、もう一つ例えばの話をしよう。

 

そんな哀れな吸血鬼が1人ではなかったら。

 

吸血鬼が沢山いて太陽の微笑みは自分1人の物ではないと気づいてしまったら。

 

果たして吸血鬼達は太陽に魅入られた同士として手を取り合うだろうか。

 

そんな事は絶対に無理だ。

 

拳を握り自分以外の吸血鬼を殴りつけて首を締めて唾を吐き、きっと彼女達はこう言うのだ。

 

太陽(織斑一夏)は私の物だと。

 

 

 

沈黙がリビングを支配していた。

 

そのリビングに居たのは3人。

 

のほほんとした笑顔を浮かべながらなんで2人とも黙り込んでいるのかと首を傾げる織斑一夏(太陽)

 

そしてその織斑一夏の自称最愛の姉こと織斑千冬(1人目の吸血鬼)と織斑一夏の恋人の相川清香(2人目の吸血鬼)

 

この沈黙の原因である女達は互いに恋敵のリサーチを行い心の中で執拗にこき下ろしていた。

 

(ふん。ただの小娘だな。顔も醜いしさっきから不快な視線を私に向けてきているな、きっと育ちが悪いんだろう。一夏の恋人らしいがそれも一夏の優しさに漬け込んで無理矢理迫ったのだろう。顔が意地汚そうだし間違いない)

 

(なーにが最愛の姉よ、ブラコン拗らせてんじゃないわよこのババア。きっと優しい一夏くんに甘えている喪女なんだわ。もし私と一夏くんが結婚してもシレッとした顔で私達のマイホームに住み着こうとするはずっ!絶対にそんなの許さない。私と一夏くんの愛の巣にババアは入国禁止よ!あんたは六畳一間で一人暮らししていなさい)

 

なんというか、例え顔が汚くても心は清らかというのは幻想らしい。どこまでいってもブサイクはブサイクのままだった。

 

お互いに出会ってまだ数十分なのに何故ここまで反発し合うのか。

 

多分前世はゾロとサンジなのだろう。

 

我等が麦わら船長こと織斑一夏もこのままでは不味いと判断したのか、沈黙を打ち消すように千冬に問いかけた。

 

「それで千冬姉の要望通り清香ちゃんを呼んだけど、どうようちの彼女は?」

 

どうやら今日の会合を開いたのは千冬の要望らしい。

 

自分の彼女を少し誇らしげに紹介する一夏の姿に暗い嫉妬を内心に抱きながらもなんとか引き攣った笑みを浮かべて千冬は口を開いた。

 

「あぁ、可愛らしいお嬢さんだな。ウチの一夏とは釣り合わないなぁ。」

 

(なんとも悍ましい貌だな。私だけの一夏にお前如きがお似合いとでも?)

 

「ッ!あ、ありがとう、ごさいます」

 

「やったじゃん清香ちゃん、ベタ褒めだよ」

 

呑気に一夏は額面通りに言葉を受け入れて微笑んだが清香はその言葉の裏に隠された嫉妬にまみれた悪意を正確に読んだが故に顔を引きつらせた

 

長年のいじめられっ子人生が悪意への敏感な反応を可能としていたのだ。

 

「私、お義姉さんとは仲良くできそうです」

 

(わたし〜お前を絶対に一夏くんから引き離すから〜〜)

 

「私もそう思っていたところだ。これからよろしく」

 

(ブチ殺すぞヒューマン。お前なんか一夏にヤリ捨てられろ)

 

不気味な笑みを浮かべて嗤いあう女達。

 

2人の人間関係に修復不可能な亀裂が走ったのは言うまででもないだろう。

 

 

 

 

「私をもっと構え一夏ぅぅ」

 

あれから清香ちゃんが帰るのを見送った後、リビングに戻った俺は構ってちゃん状態になった姉を見て、いつの間にストレスを溜め込んだんだと首を傾げた。

 

いつの間に取り出したのか片手にビール缶を持ちながらもう片方の手で自分の頭をポンポンと叩く千冬姉を見てこれは頭を撫でろということかと理解する。

 

千冬姉の頭部を円を描くように撫でる。

 

サラサラとした黒髪が絹のような手触りで心地良い。

 

「く、くふぅ」

 

甘い吐息が微かに千冬姉の桃色の唇から漏れる。

 

普段は狼のように凛々しい表情の千冬姉も今は目を細めて飼い慣らされた犬を彷彿とさせる姿を晒している。

 

「んぅーはぁ。極楽極楽。ビールが美味い」

 

「おつまみ欲しい?」

 

「いや、もう十分と特上のおつまみを貰っているからな。ビールだけで構わん」

 

そう言って微笑んだ千冬姉を見て思わず俺も微笑んでしまった。

 

「……………………」

 

「…どうしたのいきなり黙って?」

 

「なあ、一夏はあの小娘……じゃなくて相川くんと付き合っているんだな?」

 

「うん?そうだけど」

 

分かりやすく苦味の走った表情を浮かべる千冬姉。

 

「あの、なんだ、あれだ」

 

言葉に迷い視線をあっちこっちに彷徨わせる姿は反抗期の娘と頑張って話そうとする父親のようだった。

 

「……もうヤッたのか」

 

「何を?」

 

「何って、まあ。ナニだ」

 

ああそう言うことかと千冬姉の言いたい事を理解する。

 

つまり千冬姉は俺の下半身事情に興味があるらしい。

 

「( ´∀`)」

 

「なんだその微笑ましそうな顔は!」

 

「えー、だってそんなに俺の下半身事情を知りたいなんてえろーい!」

 

「姉をからかうなっ!」

 

「ほほーう。その澄ました顔にどんな厭らしい獣を飼ってんねん?ほらおっちゃんに言ってみ?」

 

「何故いきなりセクハラ親父口調なんだ」

 

「おっちゃんの下半身事情が知りたいならあんさんもワイに下半身事情教えてーや」

 

「なっ!」

 

「ほらほら言ってみ、週に何回モナピーするん?」

 

「な、あ、その……月一回、ぐらいだな……」

 

目が泳いで頬を赤らめる千冬姉の姿に飲み会でおっさんがセクハラする理由が分かった気がした。

 

「ほーん。月に一回ねぇ。ホンマかー?どれ本当か調べる為におっちゃんが一肌脱ぐかいな」

 

「な、なにをするつもりだ」

 

「クンクンクンクン。ほほーう」

 

「おいやめんか!」

 

ぐいっと、顔を千冬姉の首筋に近づけ犬のように鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ。

 

香水の匂いだろうか、花のような甘い匂いが鼻腔をくすぐり少し興奮を掻き立てた。

 

「これが嘘の匂いやでー!お嬢さん嘘をついたな。ほんまはもっとモナピーしとるやろ?うん?」

 

勿論嘘の匂いなどせず花の香りだったが素直な千冬姉はその言葉を信じてか細い声で、

 

「……その、毎日…3回はしている、な」

 

「えっ!」

 

「か、勘違いするなよ!決して一夏以外の男はオカズにしていないぞっ!」

 

「お、おう」

 

うちの姉が毎日3回もモナピーしていて、しかもそのオカズが俺だという2つの衝撃のサンドウィッチ状態に思わず吃る。

 

「……あっ!いや、違うんだぞ一夏!こう一夏をオカズにすると言うのは言葉の綾で、その、なんだ」

 

自分がとんでも無いこと言ったのだと自覚したのか顔面を一気に真っ赤にさせて言い訳になってない言葉を羅列する。

 

「……す、すまないな一夏。やっぱり気持ち悪いよな」

 

「どうしたのいきなり」

 

パニックから抜け出した千冬姉は顔色を暗くさせてボソボソと謝り出した。

 

「いや、な。一夏、お前は優しい子だ。それこそ私なんかに優しくしてくれるぐらいだ」

 

「そんなことないけど」

 

「……一夏。酒に酔った今だからこそ言えるが私はお前に感謝しているんだ。お前が居たから私は世界に絶望をしないでいられた」

 

「千冬姉……」

 

「……だからこの感情はあっては駄目な筈なんだ。一夏の姉である私はお前の幸せを考えてやるべきなんだ……けどな…女としての私はもっと幸せを求めてしまうんだ。一夏の笑顔に喜んで一夏が自分以外の女に微笑むのを怒って一夏が他の女を番にするのを哀しんで……そんな一喜一憂する一夏への恋を楽しんで。それだけで満足する事を出来ないんだ」

 

目の前に居たのはただの恋する乙女だった。

 

初めて見る千冬姉のその姿に男としての本能が刺激された。

 

「なあ、頼む一夏。一度だけで良いんだ。私にキスをしてくれ。触れるだけのキスで良いから…な」

 

「……千冬、目を閉じて」

 

「……あぁ」

 

乙女の蕾にキスを落とす。

 

処女雪にそっと足を伸ばすような優しいキスを。

 

一筋の雫が千冬の眼から零れた。

 

それが歓喜の涙なのか惜別の涙なのかは分からない。

 

しかしその姿はとても美しいと思った。

 

「……ありがとう一夏。これで私は女としてではなく姉としていられる」

 

そう言った千冬の顔がとても儚げで俺はそんな千冬の言葉を無視してさらにキスをした。

 

先ほどまでの優しいキスではない。舌を千冬の口内に這わせてねっとりと俺の唾液を千冬に飲ませる。

 

「ふぅぅん!や、あ、なにを」

 

目を見開いた千冬の反応を無視してさらに舌で蹂躙していく。

 

「うぅん!あっ!らめだぁ‼︎」

 

そんな抵抗の言葉も20秒もしたら言わなくなり30秒後には自分から舌を絡めてきた。

 

1分経っただろうか。そろそろ酸欠で頭がクラクラしてきたので名残惜しいがキスを止める。

 

「くふぅ!はぁぁ、うん」

 

千冬もまた俺と一緒で名残惜しそうな顔をしていたのが少し嬉しかった。

 

「……一夏、おまえ」

 

「……まあ、なんだ。女として千冬が欲しくなった」

 

その言葉に千冬は涙を溢れる姿を見せないように顔を背けながら、

 

「……好きにしろ」

 

と囁いた。

 

俺はその言葉に従い、取り敢えず邪魔臭い服を脱がした。

 

夜は長い。男と女が交わるには時間がたっぷりあった。

 

 

 




ゴージェーさんが姉を3人貰えるなら。

クール系姉として千冬を。

優しい系姉として、姉なるものという漫画の千夜ちゃん。

不真面目系姉として、真剣で私に恋しなさいの川神百代。

最高やんけ。

読者のみんなは3人選ぶとしたら誰だろうか?


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第5話 誠死ねって叫びたい


ヒェェいつの間にかお気に入りが500人超えてるやんけ。

つまりこれはゴージェーさんの肉奴隷が500人いるって事ですね(違う、そうじゃない

晩鐘は読者の名を指し示した……尻を出せ!

あと日間ランキング6位だったね、ヤッタ!


なんだか嫌な予感がする。

 

ふと過ぎった不吉な感覚に身を震わせながら私は受験勉強を一旦止める。

 

「フゥゥ、なんだかなー。すっごい嫌な感じ」

 

論理的なものではないが私の女の勘というヤツがサイレンを鳴らしている。

 

「なんだろう。今すぐ一夏くんに会わなきゃいけない気がする」

 

今から駆け出したい気持ちはあるが、いきなり「私の女の勘が囁いたの!」と言って一夏くんの家に突撃するのは流石に躊躇われた。意味のわからない女と一夏くんに思われるのは嫌だったのだ。

 

「もしかしてあの女と何かあったんじゃ……まさか、ね」

 

あの女。

 

一夏くんの姉である織斑千冬は私、相川清香の歩む幸せロード(予定)に彗星の如く現れた障害なのだ。

 

思い出す。彼奴が一夏くんへと向けるあのねっちょりとした視線を。

 

自称最愛の姉と言いながらも一夏くんへ肢体を擦り寄らせ吐息を吹きかける娼婦じみた姿は私の敵意を煽った。

 

今まで沢山の悪意を向けられる事はあっても自分が他人に悪意を持つ事は殆ど無かった。

 

しかしこの心の底から溢れ出す感情はなんだ。

 

脳梁を黒く染める感情は。

 

「ああ、分かったわ。この感情の名前は」

 

きっと憎悪だ。

 

それは恐らく自分と良く似た存在への同族嫌悪なのだろう。

 

敵の存在は強大だ。

 

血の繋がりとその身近さに世界最強という肩書き。そして癪だか首から下は極上の女体。

 

或いはそれは私の人生における初めての壁だった。

 

顔を嘲笑される事はあってもその身に秘めた能力は誰も自分に敵うものなど居なかった自分。それは私の誇りであった。

 

故に全身全霊を賭してなお勝利する事が出来ない人間に私は半分の恐怖ともう半分の高揚を与えた。

 

織斑一夏の隣に座る女は極上の女で無ければいけない。

 

なんの間違いか彼は私を選んでくれた。それはとても嬉しい事だけど、だからってその幸せに浸って溺れている事は出来ない。

 

そんな無様は私のちっぽけな女のプライドが許さない。

 

もう一度言おう。敵は強大だ。

 

今はまだ出来る事は少ない。しかし歩みを止める事は出来ない。まずは、

 

「よし!まずは勉強を頑張りますか!」

 

夜は短い。自分を磨く時間はまるで足りないのだ。

 

私は机へと向かった。

 

 

 

 

 

 

もしかして自分はやらかしてしまったのでは無いか。

 

そう気付いたのは体液に塗れた身体を洗い流すべくシャワーを浴びているときだった。

 

その身体についた体液は自分以外の人間の物も付着している事が分かる。

 

つまりそういう事だった。

 

しかもその体液の持ち主と自分が同じ血を流しているという事実が己の過ちの罪深さの重量を増していた。

 

何をしたかなどは言わないが、

 

「ゴムなど無粋!真の漢は生で出す!」といった蛮行を犯したのだ。

 

ナニをしたかなどは言わないが。

 

生憎と織斑一夏はそんなに大胆不敵な人間では無い。

 

「心配無いさぁぁぁぁぁぁぁぁ!」と叫ぶライオンのような逞しい心の持ち主では無く、むしろ草食動物レベルである。

 

「もしも妊娠していたら……堕ろさせようか…」

 

清々しいほどの屑発言かもしれないが人間一皮剥けばこんなものである。

 

基本的に俺の優しさは自分に余裕がある時にその余力で善行をするのだ。

 

勿論千冬姉には幸せになって欲しいのだ。だがそれはあくまで自分が幸せであるという第一条件を満たしていて初めて思いやれる事が出来る。

 

今俺は幸せだ。だから他人に優しく出来る。けれどいつかはその幸せも崩れる事はあり得るのだ。

 

だからという訳では無いが俺が他人に優しくするのは保険も含まれているのかも知れない。

 

自分がドン底に堕ちた時に他人に優しくして貰うために。

 

それを偽善と呼ぶのだろう。けれどそれに救われる人がいる。

 

だから明日も俺は他人に優しい男である。

 

 

 

 

 

「ねぇ一夏くん」

 

「うん?」

 

まだ肌寒い気温の早朝、中学校への通学を共に歩んでいた清香ちゃんは神妙な顔で俺に口を開いた。

 

もしかして浮気(リアルアッネ)がバレたかと平静を装いながらも背中に流れる冷や汗は荒れ狂っていた。びっしょりである。

 

「その……さ、私って、あの、何番目?」

 

「ハイ?」

 

何の意味か計りかねる言葉に思わず呆けた顔を見せてしまう。何番目、それはもしかして千冬姉と私はどっちが大切なのだ、勿論私が一番のオンナだよな?という遠回しな浮気への詰問なのだろうか。

 

しかし清香ちゃんの顔を見てもその表情からは緊張などは読み取れても此方への怒りは見えない。

 

「えっと」

 

「あっ!いきなり何番目かなんて言われても分からないよね、ごめんごめん。あのね、一夏くんってモテるじゃない?」

 

「まあ、そうだね」

 

実際俺はモテる。それこそアイドルすら越えるレベルで。

 

「それでそんなモテモテ一夏くんはやっぱり過去に沢山の女の人を取っ替え引っ替えにしてきたと思うの。一夏くんが誰かと付き合っているって噂は聞いた事が無いけどそれはみんなに秘密にしていたんでしょ?」

 

そんな取っ替え引っ替えになんてしていないっ!と叫びそうになったが昨日彼女持ちなのに他のおんな(アッネ)に手を出しているので流石に口を閉じた。

 

そしてファースト彼女と付き合っていた時にその交際を彼女の願いにより秘密にしていたのは本当だ。

 

だが清香ちゃんの言いたい事は分かった。

 

つまり自分は何番目の彼女なのかと言っているのだろう。

 

「ああ、そういう事ね。清香ちゃんは二番目の彼女だよ」

 

「本当っ!」

 

驚く清香ちゃんの顔からはやっぱり過去に彼女がいたのかという少しの悲しみとそれ以上のまだ二番目なのかという歓喜があった。

 

あと喜んでいる清香ちゃんには悪いが昨日の夜に三番目(アッネ)が出来たんだ。まあ言わないけどさ。

 

「あのさっ!一夏くん!」

 

「お、おう、どしたの」

 

「浮気オッケーだからっ!」

 

「え、なんだって?」

 

なんて言った今。思わず難聴主人公になってしまったぞ。

 

「だーかーら、浮気オッケーなんだって」

 

「あの、意味を分かって言っているの?」

 

暗に正気かと問いかける。多分正気では無い、なんか目が据わっている。

 

「一夏くんは男の子じゃない?それでやっぱり男の子は色んな女の子に手を出したくなると思うのよ、こうつまみ食い感覚で」

 

「まあそういった衝動が無いといえば嘘になるね」

 

昨日その衝動が爆発しましたし、ハイ。

 

「だからその欲求が来た時はガンガンいって良いと思うの。勿論本気になっちゃ嫌よ?あくまで身体だけの付き合いね」

 

かつてここまで魅力的な『ガンガンいこうぜ』があっただろうか、いや無い(反語)。

 

「私思ったのよね。一夏の隣に立つ女としてやっぱりそういうのは寛容になるべきなのよ。私が読むラノベのヒロインはそういった事に寛容だったわ」

 

なにがやっぱりなのかそれこそさっぱりだが彼女の方からそう言ってくれたのでこのビッグウェーブには乗るしかない。

 

「清香ちゃん嬉しいよっ!」

 

「一夏くんっ!」

 

清香ちゃんを抱きしめる。

 

「俺は清香ちゃんが彼女で良かった」

 

「良いの、私は一夏くんの彼女であれば」

 

「清香ちゃんが俺にとって一番(都合の良い女)だよ!」

 

「嬉しい!」

 

さーて。じゃあ昨日の業務報告(アッネ)をしますか。

 

「それで清香ちゃん」

 

「…どうしたの」

 

「昨日千冬姉に手を出しちゃった」

 

「…………………」

 

「清香ちゃん?」

 

「それは無理っっっ!!」

 

全身全霊の叫びだった。そんなに千冬姉が嫌いなのか。

 

「エェ手を出して良いって言ったのに」

 

「あれだけは絶対に無理、むり、カタツムリ」

 

軟体動物になるほどイヤなのか。

 

「まあ、まあ、まあ、まあ、まあ」

 

「いやぁぁぁぁぁ」

 

「なんやねん君はさっきから文句ばかり」

 

「えぇ⁉︎まさかの逆ギレっ⁉︎」

 

「なら言いますけどね!苦しんでいる血の繋がった姉がいるなら助けるのは当たり前でしょ!」

 

「まあ、それはそうだけど」

 

「そしてその解決方法がセックスならヤルのも当然でしょ!」

 

「それは確かに……イヤイヤイヤ!どんな理由があっても実の姉に手を出すのは不味いから!」

 

「じゃあ聞くけどね。もしも大統領が娘に手を出したら問題になりますか?ならないでしょう!」

 

「なるよっ!例え大統領でも王様でも娘に手を出したら大問題だよ!」

 

「この分からず屋っ!」

 

「なんで私が責められてるの⁉︎」

 

ゼーハーゼーハーと互いに息を切らしながらも喧嘩をしていると視界に中学校が見えてくる。

 

「………取り敢えずこの事は放課後話そう」

 

「………そうね。徹底的に話しましょうね」

 

取り敢えず、本当に取り敢えずだけど俺達は停戦して教室へと向かった。




割と屑な主人公が好き。

そしてなんかこんな作品を評価してくれてありがとう。

読者へお礼にエロ小説書こうとしたけど童貞だからやらないっす。

誰か、一夏がIS学園に入学しない世界線で箒が政府の偉い汚っさんの妻になる寝取りを書いておくれ。

何でもしますから。


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第6話 進撃の美少女

3日更新の誓い?

そんなもんはしらーん。

ゴージェーさん「ゴールデンウィークって何日に休み貰えますのん?」

上司「(休みとか)ないです」

ゴージェーさん「ん?」

上司「(1日も)ないです」

ゴージェーさん「なん…だと」

上司「(希望なんて)ないです」

ゴージェー「(なら小説の更新も)ないです」

ご覧の有様だよ。


「ねーえ相川さーん。ちょっと良いかしら?」

 

どこか爬虫類を思わせるネットリとした声が相川清香へと掛けられる。

 

その声の持ち主は先日、織斑一夏に告白して鎧袖一触の醜態を晒しその次の日にまさかの学校一のブサイクに意中の男を奪われたマドンナの佐々木希であった。

 

泥棒猫に等しい清香に希がどんな反応をするのか誰もが興味を誘われていたが今まで互いに無反応で徹する冷戦状態であった。

 

そんな冷戦が終わりを迎え大戦争の幕開けかとその場に居合わせたクラスメイトは緊張に身を震わせた。

 

清香は希の顔を見て激しい劣等感に苛まれた。

 

学生は社会の縮図である、とは誰の言葉だったか。学生とは現代の社会が謳う平等な社会などはあり得ない魔窟である。

 

それは人間が生まれながらに宿した業なのか、彼らは常に他人と己を比べ自分達の地位を不平等にしたがった。

 

学生においてヒエラルキーはおおよそ3つ存在する。

 

まずは織斑一夏や佐々木希などが所属するトップカーストである。彼らは容姿、頭脳、運動、コミニュケーションなどに優れた生き物でよくアンダーカーストの羨望と嫉妬の対象となる。

 

次に明確に何処かアンダーカーストの人間よりも秀でているがあくまで話題の中心にはなり得ない存在であるノーマルカーストの人間だ。トップカーストが王様でアンダーカーストが奴隷なら彼らは民衆だ。王様の命令に背く事は出来ないがそれでも人権を脅かすような事はされないし自分達より下の人間がいるというのは彼らの自尊心を満たしている。

 

そしてアンダーカースト。

 

彼らは先ほども言ったが奴隷である。

 

王様であるトップカーストに人とは思われておらず、まるで遊具のように使い潰されて泣かされ、ノーマルカーストの人間からは、俺達と君は違いますよ、と言わんばかりの態度を示され江戸時代の穢多・非人のようにノーマルカーストの「殿様であるトップカーストから偶に酷い扱いもされるけど、彼奴らの扱いに比べれば大分ましだよね」と反乱防止の為に使われる生き物たちだ。

 

その哀れさは何処かピクミンの生き様を彷彿とさせる。

 

無理矢理引っこ抜かれて食べられるのだ、なんか、こう、社会の闇みたいなものに。

 

そして相川清香。彼女はその3つのカーストには所属しない特異な生き物である。

 

彼女はおおよそトップカーストに成り得るスペックを宿した存在だ。

 

頭脳と運動はぶっちゃけ学校一だ、そしてコミニュケーション能力もそこまで低い訳では無い。

 

しかし不可思議な事に彼女はアンダーカーストの奴隷達よりなお低い地位の存在である。

 

もはやその扱いは人類の天敵扱いだ。

 

謎そこまで蔑視されるのかと言うと簡単だ。

 

気持ちが悪いのだ。

 

あんまりな言葉だとは思うが一番簡潔に彼らの言葉を要約するとそれだ。気持ちが悪いので近づきたく無いというレベルですら無い、もっと酷い視界に入っただけで吐き気を催す。

 

もはや神話生物の類である、彼女はクトゥルフの娘か何かなのか。

 

きっとその顔を見た人間のSAN値をピンチにしているのだろう。

 

さて話を戻そう。

 

そんな旧支配者フェイスの相川清香は佐々木希の圧倒的な美貌を見て深い嫉妬に身を焦がしていた。

 

これでもか!と言わんばかりの極太眉に綺羅星の如く輝く眩いニキビ。愛嬌あるビーバーを思わせるトンガリ前歯はキュートさを演出している。

 

こんなに可愛らしく美しい生き物を前に清香はこれが同じ人間なのかと慄いた。

 

それに引きかえ自分の容姿に諦観を表す清香。

 

か細くみすぼらしい眉にニキビやシミひとつない無駄に白い肌。薄い唇に歯並びの良過ぎる歯並び。

 

なんとも不快な生物だなと清香は己の醜悪さを自覚した。

 

清香の容姿がボロボロの錆だらけなロングソードなら希はエクスカリバーだろうか。

 

圧倒的な戦力差である。

 

しかしそんな中でも清香の心は折れない。

 

彼氏持ち。しかも目の前の女が告白して振られた男の。

 

それは清香の自尊心と女としてのプライドを高める効果があった。

 

だからこそある程度の余裕があった清香は違和感に苛まれた。

 

佐々木希にとって相川清香はあってはならない汚点で仇敵の筈だ。

 

少なくても笑みを浮かべて接触する相手ではない。

 

しかしそんな予想は外れて希は明らかに好意的な笑顔で清香に話しかけてくる。

 

「な、何かな佐々木さん」

 

なんのつもりなのかと声を強張らせ警戒する清香。

 

しかしそんな清香の態度に気がつかないのか…あるいは気づいてなお無視しているのか、希はニタリと何処か意地悪そうな表情を一瞬浮かべたあと、もう一度笑みを作りこう囁いた。

 

「あのねぇ、私相川さんとお友達になりたいのぉ。ずぅっと前からお友達になりたかったんだけどぉ、なかなか言えなかったのぉ。ねぇお願いお友達になりましょうぅ」

 

「ええっと」

 

ぐいぐいと顔を近づけながらそうお願いする希の姿には何処か鬼気迫るものがある。

 

思わずドン引きしてしまい一歩下がる清香だか、逃がさんとばかりもう一歩近づく希。

 

このタイミングでのお友達になりましょう発言。その真意は余りに容易に分かる。

 

(この女っ!私をダシにして一夏くんに近づく気だっ!)

 

あからさまに人の男を寝とろうとする欲望でギラついた希の顔に思わずビンタをしてしまいたい衝動が清香を襲ったがそれは流石に出来ないので自重する。

 

(お断りよ!この女狐!…って言いたいけど)

 

清香を取り巻く現状がその言葉を口に出す事を許さない。

 

現在清香はクラス中、いや、学校中のヘイトを集めていた。

 

比喩表現では無く本当にアイドルのような扱いを受けていた織斑一夏の彼女に選ばれた、シンデレラもびっくりの幸運ガールである清香は、しかし、学校の主に女子生徒にきっと卑怯な手段で織斑一夏を脅して彼女の地位を得たのだと、そんな根も葉もない噂をされていた。

 

だからこそ清香は希のあからさまな招待を無視することは出来ない。それをしてしまったら最後、学校のマドンナに対して調子に乗っているとみなされ溜まり続けた清香への不満が爆発してしまう事が予想できた。

 

「ワーウレシイナー。ワタシタチズットモダネー」

 

それゆえに相川清香は全面降伏を強いられた。

 

 

 

 

時間は昼時。

 

ポカポカと暖かい陽気を浴びながら学校の屋上で織斑一夏は相川清香を待っていた。

 

一夏と清香が交際を始めてから彼等は基本的にこの屋上で昼食を取るようにしていた。

 

まだ一夏と清香のカップル誕生による狂乱は学校中を席巻しており、周囲の視線の檻からせめてご飯を食べている時ぐらいは抜け出したいと2人は思い自然と人があまり訪れない屋上で密会するようになった。

 

ギィと重い鉄の扉がゆっくりと開く音が聞こえる。

 

清香がやって来たのかと一夏は視線を扉へ向ける。

 

訪れたのは予想通りの人物だった。

 

そこで一夏は清香の表情に違和感を覚えた。

 

顔を強張らせどうすれば良いのかと挙動不審な態度であった。

 

「どうしたの清香ちゃん」

 

「あっ、あら一夏さん御機嫌よう」

 

「何故お嬢様口調?」

 

「いや、うん、そのね」

 

余りにも不自然な清香が何故か自分の後ろを気にしながら言い淀む。

 

そんな清香を背後から1人の人間が現れる。

 

「あらぁー。奇遇ね織斑くぅんー。私ぃ、し・ん・ゆ・う・のぉ清香ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べよぅうと思っててぇー。どうせだからぁー織斑くぅんも一緒にお昼ご飯を食べましょうぅ」

 

我等がアイドルこと佐々木希であった。

 

織斑一夏は悟る。

 

あ、やばい捕食される。

 

 




信じられるか、もう6話なのにIS学園に入学もして無いんだぜ。

文字数少なくてごめんな。来週は三連休だからいっぱい書けるかも。

なおゴージェーさんはダクソにハマっている模様。

フリーデェェ!ゴージェーさんにパリィさせろよ!


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