【未完】とある原石の闇影の支配者《ブラックマスター》 (スキート)
しおりを挟む

第一章
序章 闇影の支配者の少年のお話


「ここはですねー…」

 

とある教室にとある教師の声が響く。

 

「はちやん、はちやん、何ボーっとしてるんや」

 

この横から話しかけてくるのは青髪ピアス。本当の名前は知らん。

 

「いや、何も」

 

今の素っ気なく答えたのが俺、比企谷八幡だ。

 

「はちやんはいつもだるそうやもんな」

 

「そうか?」

 

「うるさい」

 

この注意してきたのが吹寄制理だ。何か名前が制理って、ねぇ、何かなぁ。

 

「貴様今失礼なこと考えたでしょ」

 

はっ!エスパーだ!」

 

「声に出てるわ!」

 

そう言われ一発殴られる。鍛えてるから痛くないけど。

 

まぁそんなことは置いておこう。

中学時代ずっとぼっちで居心地のいい生活をして来たはずの俺がいつの間にか友達と呼べる存在が出来る。

 

名前は上条当麻。

とある事件をきっかけに出会ったのだがそれはまたの機会にする。

 

この後、ぼーっとしてたら小萌先生が泣き出して慰めるのが大変だったのは置いておこう。

 

泣き顔超可愛いって言ったら怒られたのは別の話。

 

 

 

───────────────────────────────

 

 

 

「比企谷くん、そっち終わった?」

 

「はい、終わりました」

 

暗い暗い路地の裏、俺はある仕事をしている。

 

暗部組織「ノーマル」

 

俺が勤めてる暗部組織の名であり、俺がリーダーだ。

 

これで俺が何しているかとわかったと思うが俺は裏の世界、暗部の住人だ。

 

この暗部組織「ノーマル」は主に暗部組織の解体、及び暗部の存在を消すための組織。なのだが多分俺たちが組まされた理由は統括理事会しか知らないだろう。

 

さっき話しかけて来たのは雪ノ下陽乃さんだ。

暗部組織の同僚である。

 

もちろん他にもいるが今日はいない。

残りの二人は城廻めぐりさんと材木座義輝だ。

 

今日の仕事内容は研究所の護衛だった。

 

そんな俺の能力は何だ?と思った人もいると思う。

 

俺の能力は《闇の支配者(ダークマスター)》・《影の支配者(シャドウマスター)》だ。

通称《闇影の支配者(ブラックマスター)》である。

 

俺が一向に能力に名前をつけないせいで上層部の人間に勝手につけられた結果がこれだ。

厨二病だよね?これ。

 

まぁ、能力は大体こんな感じの名前だけど。

 

俺は原石と呼ばれる種類の能力者だ。

通常の能力者たちは時間割り(カリキュラム)を受け、自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を確立するが、原石は時間割り(カリキュラム)を受けている環境と似た環境で自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を確立する。

そのため、原石の持つ能力は絶対に強いというわけではなく、珍しい能力が発現する。

 

俺の能力のレベルは超能力者(レベル5)であり、学園都市に存在する最高レベルだ。

ちなみに俺は多才能力(マルチスキル)の使い手である。

普通の人間なら脳への負担が大きすぎて出来ないらしい。上層部曰く、「君は例外中の例外」と言われるまでである。

 

そして俺は仕事が終わり帰宅した。

 

 

 

───────────────────────────────

 

 

 

帰宅しようとしていた俺は現在、風紀委員(ジャッジメント)第177支部にいる。

最初は疲れたから帰るつもりだったが、風紀委員の白井に見つかり、来ることになった。

皆さんお気づきかとは思うが、俺は風紀委員である。

 

すると白井が話しかけて来る。

 

「お兄様、こないだやった能力開発でレベル0のままでしたの?」

 

こいつはお兄様と呼んでいるが本当のお兄さんではない。

俺は親しみというか以前白井を助けて以来、この呼ばれ方になった。

 

「あ、ああ、お前はレベル4だろ?」

 

「そうですの」

 

この会話の通り、俺の能力の事は魔術サイドのやつか、暗部の連中しか知らない。

 

何事もなく風紀委員の仕事が終わり、最終下校時刻になったので、俺は本当に帰宅することに成功した。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

俺は今、神裂火織という名の少女?と電話している。

 

彼女は魔術サイドの人間であり、俺の元仲間であり、現在は同僚の間柄だ。

 

『八幡、お久しぶりです』

 

「堅苦しいのやめてくださいよ」

 

『い、いえ、今は私はあなた方の仲間ではなく、同僚ですので』

 

「戻ってきてくださいよ」

 

『今更そんな事は出来ません』

 

俺の説得に彼女は応じない。

皆というのは俺が現在所属し、過去に神裂火織が所属していた組織

「天草式十字淒教」のメンバーのことである。

 

「それで…何のようだ?」

 

『今回は禁書目録(インデックス)の捕縛についてです』

 

「また、逃げたか…」

 

『私とステイルは八幡の家を拠点として行動しろと言われましたので』

 

『少しの間、お世話になります』

 

まじかよ…なんてことは言わない。

もう慣れたわー、べっわー、何か戸部みたい。

あれ?戸部って誰?

 

 

 

この時の俺はまだ知らない。

この短期間の間に二つの面倒な時件に巻き込まれることを。

この短期間の間に俺の秘密が色んな人にバレることを。

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字報告お願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一章 裏の仕事

禁書3期来るか!?

4/19 編集しました。


「はぁはぁ…」

 

「愉快に尻振って、誘ってンのかァ?」

 

とある路地裏に息を荒げる少女と気味の悪い声を出す少年がいる。

少年の名は『一方通行(アクセラレータ)』。

超能力者(レベル5)であり学園都市最強の能力者という肩書きを持つ。

そして少女の名は一つでは言い表せない。

妹達(シスターズ)欠陥電気(レディオノイズ)などあるが彼女はクローンである。

 

この路地裏で起きていることは事故、とか喧嘩ではない。

実験と言われるものだ。

この場に白井などの風紀委員(ジャッジメント)が来ても一方通行(アクセラレータ)の事を彼女は裁くことが出来ない。

 

ちなみに何故俺がいるかというとこの実験の参加者だからだ。

この実験の正式名称は『絶対能力進化(レベル6シフト)』実験というものだ。

俺のこの実験での仕事は介入者の対応、または人目に見えないようにしながら周りを注意深く観察すること。まぁ一方通行(アクセラレータ)が変なことしないようにすることが本当の目的だ。

 

この実験の内容、それは────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2万人の軍用クローン、『妹達(シスターズ)』の殺害により、一方通行(アクセラレータ)絶対能力者(レベル6)になることである。

 

学園都市が何故、絶対能力者進化実験(こんなこと)をするのかはわからない。

だが、一度暗部に堕ちた以上、俺も一方通行(アクセラレータ)も上の命令には逆らえない。

 

「おい、比企谷ァ、この個体の番号はなンだァ?」

 

「えーと、確か、9984号のはずだ」

 

「そうかァ」

 

何故、妹達(シスターズ)に聞かないのか?と思い妹達(シスターズ)を見てみると、少女の顎が砕かれていた。

酷いことすんな…、何てことはもう思わなくなっていた。

この実験も始まって約一年、最初は見るにも耐えなかったが、人の慣れというものは怖い。

そして実験の終了も少しずつ近づいていく。

残り約一万人の妹達(シスターズ)を殺すことでこの実験は終わる。

一年程待てばこんなくだらない実験は終わり、俺も有意義な時間を過ごせる。

 

そして今回の実験が終わり、俺は呼び出しのくらった場所に向かった。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

俺が訪れた場所、それは『窓のないビル』と呼ばれる場所。

名前の通り窓が無く、おまけに扉などもない。

この場所に入るためには空間移動(テレポート)系の能力者がいないと入れない場所だ。一応、このビルには『座標移動(ムーブポイント)』という能力を使える少女の案内人がいるため出入りが可能な仕組みになっている。

 

この中にいるのは男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える『人間』、学園都市の最高権力者、学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリー。

世界最高の科学者であり、世界最強の魔術師だった『人間』だ。

生命維持装置、というものに逆さまに浮かんでいる。

 

俺は今日、何でこいつに呼び出されたのかは知らない。

 

「何のようだ?アレイスター=クロウリー」

 

「そんな固くなるな」

 

「今日呼んだ用件は────────────────

 

 

 

君の『木原』という名前についてだ」

 

聞いて来たのは案外、間抜けなことだった。

あまりにも予想外の用件に俺は「はぁ?」とつい言ってしまう。

 

「君の本名、木原偶数てついて、君は必ず『木原』の誰かしらと関係があるのは知っている」

 

「それがどうした?」

 

「正直言って君は科学者になるべきだ」

 

「あの木原一族(クソ共)と一緒にすんな。俺はあんなに狂ってねぇよ」

 

「本当にそう思っているか?」

 

「当たり前だろ。で、お前の事だからこの件だけじゃないんだろ?」

 

「ああ、理由は言えないがお前にしてもらわないとプランに影響が出る」

 

「早く言え」

 

俺はアレイスターを急かす。

 

一方通行(アクセラレータ)と交友関係を結べ」

 

「無理だ」

 

「それでいい。君は勝手に行動しているはずだ」

 

「はいはい…」

 

俺はアレイスターの言う言葉がやけに頭に残り一方通行(アクセラレータ)のことを考えながら帰って行った。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

最初は家に帰れると考えていた。

とあるファミレスを通った時だった。

知り合いの少女たちにバレ、ファミレスに連れ込まれた。

 

「で、何の用だ?麦野」

 

「あんたに用がなきゃいけないわけ?」

 

「えー」

 

用がないならいいじゃん、俺は疲れているんだよ。

 

「くそっ、何で一方通行(アクセラレータ)の実験に付き合った後、アレイスターに呼び出され、変な事を言われ、こいつらに捕まるなんて…」

 

「そんなの関係ないわ」

 

俺の言った愚痴が聞こえたのか麦野が強めに反論。

怖いよぉ。

 

「で、比企谷、結局、アレイスターが言ってたことは何ってわけよ?」

 

「なんか一方通行(アクセラレータ)と交友関係結べだってよ」

 

「「「「ぷっ」」」」

 

「ろくに友達がいないあんたが!ww」

 

「アレイスターは何考えてるってわけよ!ww」

 

「私は、そんなバカにされているひきがやを応援する」

 

「てめぇら…」

 

俺はこんなバカなことをしながらドリンクバー係にめでたく任命(涙目)されたのであった。

 

 

 

俺はこの裏の世界を生きている。

もう表には戻れない。俺はもう闇に沈んでしまった。

一方通行(アクセラレータ)の実験もアレイスターの事も俺が『木原』と言う事も、俺の知らない内に勝手に物語が進んでいく──────。

 

その後、俺はダラダラ駄弁ってからファミレスを出てようやく家に帰れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字報告お願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二章 表の住人

「不幸だー!」

 

隣の部屋からそんな声が聞こえる。

俺は住んでいるとある高校の学生寮の自分の部屋にいるのだが、この部屋の隣は上条当麻。中学からの付き合いで親友と呼べる間柄である。

あらかたパンか何かを踏んだか洗濯ものが飛んでいったとかだろう。

 

この学生寮には変なやつばっかいる。

不幸、不幸と連呼している不幸少年、上条当麻。

義妹(ぎまい)に手を出した変態魔術師、土御門元春。

守備範囲が広いもう一人の変態、青髪ピアス。

などなど…。

こいつら三人はクラスでクラスの三バカ(デルタフォース)と呼ばれる三人組だ。

 

まぁ今日は平日だから学校行かなきゃいけないけど。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

とある高校

 

「なぁ、ひきやん」

 

「何だ?土御門」

 

俺が寝たふりをしていると土御門が話しかけて来る。

 

「知ってるかにゃー?あの噂」

 

「あぁ、あれか」

 

俺はよく聞き耳をたてているので噂などはよく耳に入って来る。

 

あの噂というのは霧ヶ丘女学院という名門から大能力者(レベル4)の能力者が転校して来るという噂だ。

別名『絶対零度(アブソリュートゼロ)』の雪ノ下雪乃という少女だった筈だ。

 

「雪ノ下雪乃だろ?」

 

「流石に知ってかにゃー」

 

「お二人さん、何の話?」

 

すると当麻と青髪が会話に入ってきた。

 

「転校生の話だ」

 

青髪の質問に俺が答える。

 

「それなら僕も知っとるでー」

 

「何だ、それ?」

 

青髪は知っていたが当麻は知らないようだった。

 

 

 

よく考えたら俺って何かこいつらと一緒にいるのが多い気がする。

そのうちクラスの四バカとか言われないかと思ったが俺はバカではないのでそれについては大丈夫だろう。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

学校が終わり、学校を出ると「お兄様ー‼︎」と言い飛び込んで来る少女がいる。

白井黒子。風紀委員(ジャッジメント)の後輩だ。

 

そうして俺は白井と支部に向かった。

 

 

 

「「こんにちは」」

 

「二人ともこんにちは」

 

この人は固法美偉先輩だ。

 

「こんにちは」

 

「こんにちはー」

 

上から初春飾利、佐天涙子である。

初春は風紀委員(ジャッジメント)だが佐天は違く、ただの出入りがしている中学生だ。

てか、ダメだろ…部外者入んの…

 

「固法先輩、何かありましたか?」

 

俺が固法先輩に聞く。

仕事があったら嫌だからな。

 

「今日は何もないわ。ていっても比企谷くんはもともと仕事する気ないでしょ?」

 

「わかります?」

 

「「「「うん」」」」

 

ここにいる全員が一斉に答える。俺ってそんなに仕事したくないような顔してるかな…。

 

「まぁ、仕事ないのも何だし、見回りいってきてちょうだい」

 

「え?」

 

俺は聞こえないふりをする。

 

「比企谷くん?」

 

「ひゃ、ひゃい…」

 

固法先輩に気圧され結局俺は見回りにいくことになった。

俺社畜じゃん…

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

「あれ?比企谷くん?」

 

「あ、めぐり先輩」

 

俺は見回り中、暗部の仲間、城廻めぐり先輩と会う。

 

風紀委員(ジャッジメント)の見回り?」

 

「はい、そうです」

 

「あの比企谷くんがねー」

 

「そんな珍しいっすか?」

 

「うん。風紀委員(ジャッジメント)になる前の比企谷くんは仕事嫌だー、ってずっといってたじゃん」

 

「いや、今もなんですけど…」

 

「そうかなー?」

 

「そうです」

 

「あっ!私用事があったんだ!比企谷くんまたねー」

 

「はい、また今度」

 

俺はめぐり先輩と別れ見回りを再開する。

俺が路地裏を通ると襲われている女の子がいた。

 

「やっ!やめてください」

 

「こいつ中々上玉だぜ」

 

「ヤっちまおうぜ」

 

抵抗している女の子一人に男が五人。

仕事は仕事なので俺は路地裏に回る。

 

風紀委員(ジャッジメント)だ。拘束する」

 

「あん?てめぇ一人でどうにかなると思ってんのかぁ?」

 

「思ってるからきてんだろ」

 

「舐めやがって!」

 

するとナイフを持った不良が襲ってくる。

俺は不良のナイフを持っている手を掴み捻る。

 

「ぐぁっ!?」

 

「てめぇ‼︎」

 

すると残りの四人が俺の元に向かって来る。

俺はその四人を適当に捌き地面にひれ伏せさせる。

 

風紀委員(ジャッジメント)に連れていくと始末書書かせられるから連れて行かん!

 

そして俺が見回りの続きをしようと路地を出ようとすると助けた女の子が話掛けてきた。

 

「あ、あの!助けてくれてありがとうございました!」

 

「どういたしまして」

 

そういい路地裏を出ようとするとまたもや引き止められる。

 

「あ、あの、お礼がしたいんですけど!」

 

「結構です」

 

「だったら、貴方に襲われたって叫びますよ?」

 

「お礼、ありがたく受けさせていただきます!」

 

この女…恩を仇で返しやがって…

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

「あたしの名前は由比ヶ浜結衣っていいます!」

 

「比企谷八幡…」

 

「じゃあヒッキーだね!」

 

「はぁ?」

 

なんかそれじゃ俺が引きこもりみたいじゃん。

てかさりげなく俺ディスられた?

 

「もういいか?風紀委員(ジャッジメント)の見回りがあるんだけど」

 

「じゃあメールアドレス教えて!」

 

「ほい」

 

俺はめんどくさいので携帯を由比ヶ浜に渡す。

 

「登録終わったよー。ていうか人によく渡せるね」

 

「見られて困るもんないからな」

 

「じゃあ俺いくから」

 

「うん、たまに連絡するね」

 

 

 

俺はこの場から去った。

俺と由比ヶ浜はこの後一年も経たずに再会するのだが、俺たちはまだそのことを知らない。

 

 

 

 

 




誤字脱字報告お願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三章 為すべきこと、果たすべき正義

「お兄様!行きますわよ!」

 

「ああ、わかってるよ」

 

俺と白井は走る。攫われた少女を助けに。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

遡ること2時間前───────。

 

 

 

俺がぴったり風紀委員(ジャッジメント)の支部に着いた頃に俺は少女が攫われたことを知る。

 

「比企谷くん、白井さん。行ける?」

 

来たばかりの俺と正義感の強い白井に指名がくる。

 

「はぁ、やりますよ……」

 

「もちろん、やらせていただきますわ。しかもお兄様と一緒だなんて……ぐふふふ……」

 

俺はこんな白井を無視し、一番最新の情報を頼りに現場に向かう。

後ろから「ああん!無視するお兄様も……!」とか言っていたが、気にしたら負けだろう。うん、気にしない。八幡嘘つかない。

 

そんなこんなで俺たち二人は少女が攫われた現場に向かった。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

現場の路地裏に着く。

そこには、少女が持っていたとされる鞄があった。

 

「こっからどうすっか……」

 

俺がそう呟くと、白井は固法先輩に電話をかける。

 

「固法先輩。新しい情報とかはありますか?」

 

『んーと、一つだけならあるわ。確か比企谷くんの学生寮の近くなんだけどね。近くの廃墟に抵抗する女の子連れて入っていく男たち(・・)を見たって情報がさっき来たわ。二人はそこに向かってちょうだい』

 

「ありがとうございます。固法先輩」

 

そう言い白井は携帯をしまう。かなり有力な情報が手に入った。

 

「固法先輩が男たち(・・)と言ったので、複数犯ですわね……」

 

武装無能力者集団(スキルアウト)、か……」

 

武装無能力者集団というのは、いわゆる無能力者(レベル0)の集団である。要するに、能力が手に入らず、不良の道を進んだ者たちのことだ。

 

 

 

そして、冒頭に戻る───────。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

第七学区にある廃墟

 

「…聞こえるか?白井」

 

「ええ、バッチリと」

 

廃墟の中からは複数の男の声と叫び続ける少女。

 

「…行くぞ。白井」

 

「わかりましたわ。お兄様」

 

そして、俺たちは廃墟の中に入る。風紀委員として、果たすべきことをする為に───。

 

 

 

「風紀委員だ。拘束する」

 

「風紀委員ですの‼︎」

 

「な、何だ!?」

 

「風紀委員かよ!」

 

「風紀委員さん……。助かった……」

 

そういい、攫われた少女は安心したのか、意識を落としてしまう。はぁ、面倒いけど直ぐに終わらせるか…。

 

「行くぞ、俺は左、お前は右のやつらを頼む」

 

「了解ですの!」

 

俺の合図とともに俺と白井は走り出す。

 

白井は空間転移(テレポート)の力を駆使し戦い、俺は能力を見せるわけにもいかないので、素手でぼこしていた。

 

「お、お前ら‼︎あれを用意しろ‼︎」

 

武装無能力者集団のリーダーと思わしき男は叫ぶ。

何を出すのかは知らないが早いうちに片付けなければ。

 

だが、大きな機械から音が鳴り始める。それと同時に白井が膝をついてしまう。

 

「お、おい!白井!大丈夫か!?」

 

俺はつい反射的に白井に近づく。くると白井が、「演算が出来ないんですの……」と言う。

 

「わかったか?ガキィ‼︎これはキャパシティダウンっつってなぁ、能力者の演算を妨げる装置なんだよ‼︎」

 

ほうっ!それは厄介だな。何て思うわけないだろうくだらない。

 

「お前はたった一人でこれだけの人数を相手にしなくちゃいけないんだぞ!」

 

男たちは俺と白井を囲むように立つ。人数は12人。最初にいたのが18人なので6人しか倒せていない。

 

だが、俺はこう言う。

 

「……雑魚が何人で来ても……、雑魚は雑魚だろうが……」

 

「お、お兄様?」

 

「白井、安心しろ。お前が起きた時には全部終わってるから……すまん…」

 

俺はそう言うと、白井の首をトンッと叩き、気絶させる。

 

「…さぁ、かかってこい。雑魚ども」

 

「て、てめぇ…!ぶっ殺す!行くぞてめぇら!」

 

「「「「「おお!」」」」」

 

俺は能力を発動する。えっ?何故キャパシティダウンが効かないって?答えは簡単だ。

 

俺が演算をしないで能力を発動しているから、だ。

 

そんなことはどうでもいい。

俺は能力《闇の支配者(ダークマスター)》を発動させる。

なんか垣根の《未元物質(ダークマター)》みたいだな……。

 

一応説明しておくと、闇の支配者と影の支配者(シャドウマスター)には違いがある。

闇の支配者は闇を自発的に出せるが、影の支配者は物体の影などを操る能力だ。

 

俺は発動した闇の支配者の力であたり一体全てを闇で包み込む。

廃墟からは溢れんばかりの闇があり、この状態で視覚が上手く使えるのは俺だけだ。

 

俺は闇を手の形に変形させる。その手で白井と同じように首を叩く。

全員を気絶させた俺は闇を消す。

 

俺以外、闇の中で何が起きたのはわからない。

わかるのは俺だけでいい。何が起きようが何があろうが、俺は闇の中から出られない。どんなところでも闇に捕らわれた俺は………………俺は─────────────。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

Sirai Kuroko side

 

(わたくし)が起きた時にはもう、すでに、全てが終わっていた。

倒れている犯人たち。縄を解かれ、気絶している少女。そして、足りないのは──────この事件を終幕させたと思われる彼の姿。比企谷八幡の姿。

 

『…俺のことは深く詮索するな』

 

『…俺はお前の兄貴じゃないぞ。白井』

 

昔のことを思い出す。私にとっては苦くて、思い出したくないもない昔の話。お兄様とは和解が出来た。でも、お兄様は何か隠しているのだけはわかる。

 

「お兄様は一体………」

 

私はボソッと呟く。誰を聞いてなどいない私の独り言は私の胸の中で何回もリピートされていた。

 

でも、仕事がめんどくさいからって、仕事をサボるのは感心しませんわね……。私の命の恩人さん。……そして、私の初恋の相手。

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字報告お願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四章 心理掌握の思うこと

俺は風紀委員(ジャッジメント)の仕事を終え、帰路につく。

 

俺は学生寮に戻り、俺の部屋のドアノブに手をかける。いつもはドアノブを回しても鍵がかかって開かないはずなのに、ドアノブはするりと回り扉が開く。

 

開いていた場合は必ずと言っていいほど、この少女がいる。

心理掌握(メンタルアウト)・食蜂操折。

学園都市、最高レベルの超能力者(レベル5)の1人であり、第5位に位置する少女だ。

 

「おかえり。八幡」

 

「…うす。てか、勝手に入るなよ…」

 

「じゃあ、何のために鍵を渡してるのよぉ」

 

「お前がとったんだろうが……」

 

容姿は金髪、誰もが見てしまいそうな大きすぎる胸。目に十字の星。だが、性格は少し腹黒い。

 

「晩御飯できてるわよぉ」

 

「おお、いつも、すまん」

 

こいつはたまに、俺の部屋に入り込み、晩飯や何やらしてくれる。てか、食蜂財閥の方の相手しとけよ……。

 

「気にしなくていいのよぉ。私は将来のお・よ・め・さ・ん何だからぁ」

 

「誰が決めた。誰が」

 

「私だけどぉ?」

 

「言うと思った…」

 

「あ!そういえば八幡。さっき、タンスの裏にねぇ」

 

タ、タンスの裏…だと!?

 

「こんなものが見つかったんだケドぉ」

 

操折が手に持っていたのは──いわゆるエロ本だ。

 

「八幡ってぇ。こういう女の子が好みなのかなぁ?」

 

その本の表紙になっているのは、ツインテールの貧乳少女だ。

 

「……い、いや、別に……、そういうわけではなく……」

 

「はっきり言わないと聞こえないわよぉ?」

 

「…あ、あの、いや、だから…、す、すみませんでした………」

 

「何で謝るのかしらぁ?」

 

ひっ!嘘だろ!?こいつ……ドSだっ‼︎超ドSだっ‼︎

 

「男性はこういうものを持っているのは当たり前じゃないかしらぁ?」

 

「……い、いや…、あの……、マジで……」

 

こんな感じのが3時間続くという地獄が待っていたのをこの時の俺は知らない。しかも、晩飯冷めちゃったしね!

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

「……行ってきまーす」

 

「行ってらっしぁい」

 

ん?何でこいつが家にいるかって?それはね、こいつがよく泊まるからだよっ!あいつは俺が男だっていうことに危機感がないらしい。それはなんか男してショックだな………。

 

 

 

とある高校

 

 

 

「……なんか、はちやんから女の匂いがする気がするんやけど……」

 

「…確かにぜよ」

 

いや、何でわかるんだよ。こえーよ。普通に当たってるからこえーよ。

 

「な、なに言ってんだよ……。俺の周りに女なんかいるわけにゃいだりょ」

 

「あっ、噛んだ」

 

「噛んだな…」

 

「「この……」」

 

「え、いや、ちょっと待って────」

 

「「裏切り者がーーー‼︎」」

 

2人のパンチを素手で受け止める。

 

「甘いな!」

 

「くっ!強いぜよ」

 

「僕らの負けや……」

 

「「というと思ったかーー‼︎」」

 

「ぐはっ!」

 

あっさり食らっちゃいました……。とほほ……。

 

「静かにしろ!このバカ共!」

 

「「「はい……」」」

 

吹寄の言葉に俺たち三人は黙る。俺ら女に弱くね?てか、当麻どこだよ。

 

 

 

昼休み

 

 

 

あれっ?弁当がない。そう気付いたのは昼休みが始まる前だった。ということは家にあると見る。直ぐに取りに行くことは可能だが、クラスの奴らに早すぎね?と思われるのも嫌なので、購買でパンを買うことにしようと思った時だった。

 

食蜂操折がこの高校に来てしまったのは─────。

 

「…あ、八幡。お弁当忘れてるわよぉ」

 

「……す、すまん。操折。それより、ほら。周りが見てるから……」

 

「そ、それよりってなによぉ!折角私が作ってあげたのにぃ!」

 

ひぃ!周りの視線が痛いよ!

 

「………はちやん。どういうことか説明してもらおうか…」

 

「お、おい。青髪…。関西弁が抜けてるぞ……?」

 

「はちやん……。お前は俺らを裏切った……」

 

「おい、まて、土御門。お前にだけは言われたくない。義妹(ぎまい)に手を出したお前にだけは言われたくないぞ。土御門」

 

「にゃ、にゃー!?何でそのことを!?」

 

「部屋が隣だからギシギシウルセェんだよ!」

 

「ん?八幡。この人が隣の部屋のうるさい人ぉ?」

 

「そうだ…」

 

俺は悟ように言う。ついに俺は悟りを開いたぞ!

 

「で、はちやん。この()は?」

 

そういい、青髪は操折に指を指す。

 

「…操折。自己紹介しろ」

 

「えぇとぉ。私はぁ、八幡の将来のお嫁さんになる食蜂操折でぇす」

 

「お、おい……、操折…」

 

「じゃ、八幡。そういうことでぇ☆」

 

「おい、まて。ちょ、まじでお願いします」

 

俺の制止を聞かず操折は教室を去る。何であいつは俺に修羅場を残して消えて行くの?ほら、やばいんだよこのクラス。もう後ろにはお怒りのオーラを放った女子と土御門たちがいるし……。

 

こんな時にいうことは一つだけしかない。

 

「……不幸だ…」

 

当麻のよくいう言葉をいい、俺はその場から走り出す。捕まるのは時間の問題だけど………。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

Syokuhou Misaki side

 

まぁ、こんなもんでいいかしらねぇ。と私は内心呟く。あれくらいしないと八幡のことが好きな子は諦めないかもしれないしねぇ。

 

八幡はモテるから困る。私を落とした時のように、毎日とフラグを立てていることだろう。しかも、そのフラグを一度は折ることがあっても、直ぐに戻ってしまうのが現実。

 

私は負けないわよぉ。八幡の奪い合いに───。

あのクラスに私と八幡の中を見せつけるために、わざと八幡の鞄から弁当を抜き出したんだからぁ。

 

八幡は私のことを腹黒いというけれど、こんなものじゃないわよぉ。女の子の本気は。ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字報告お願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

終章 魔術師は学園都市に訪れる

UA1万突破!お気に入り150件突破!
ありがとうございます!これからも頑張ります。


「ふぁ〜」

 

俺は目を覚まし、あくびをする。

今日は《必要悪の教会(ネセサリウス)》の同僚である、神裂火織とスタイル=マグヌスが俺の部屋に来る日だ。どうやら、禁書目録(インデックス)は学園都市に逃げ込んだらしい。

まぁ、2人が来るので、部屋の片付けをするために、いつもより早く目を覚ました。見られたくないものとかあるからね…。

エロ本はともかく、土御門の野郎に堕天使メイドを俺の部屋に二着渡されているため、神裂にバレたら大変である。

 

そして、俺は片付けを始めた。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

とある高校 屋上

 

「はちやん…。ちょっと大変でかもしれないニャー」

 

「何がだ?」

 

俺は今、土御門と話をしている。話というのは多分禁書目録関係のことだと思う。

 

「……俺の部屋にある堕天使メイドが危ない」

 

「真面目な口調で言うことじゃねぇよ……」

 

インデックスのことかと思いきや、くだらない話だった。

 

「で、何が危ないって?」

 

「…ねーちんにバレた」

 

「お、おい…、まだお前堕天使メイド持ってたのかよ…」

 

俺に渡した二着の他にも堕天使メイドがあるらしい。三着買うとかどんな勇気の持ち主だよ………。

 

「……てか、朝に神裂来たか?俺は知らないんだが」

 

「ああ、来てたぜよ。ステイルはインデックス探しに出かけたけど、ねーちんは出かけずにいたぜよ」

 

「何で俺の部屋に来なかったんだ?」

 

「……恥ずかしいとか何とか言ってたにゃー」

 

何が恥ずかしいんだ?と思ったが、口には出さないようにした。

 

「まぁ、インデックスの件は深く考えることはないですたい」

 

「あの2人ならどうにかするからな…」

 

「……ああ」

 

おい、なんか間が空いたぞ。

 

「…まぁ、はちやん。そういうことですたい」

 

「いや、何が」

 

そう言い土御門は屋上から去っていった。

 

……結局、何だったんだろうな…?

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

「ただいまー」

 

ドアノブを回すと玄関が開く。ということはもう、あの2人がいるということだろう。

 

「おかえりなさい、比企谷」

 

「やぁ、お邪魔しているよ。比企谷」

 

「うす」

 

長身の黒髪ポニーテールの神裂火織と長身赤髪のステイル=マグヌス。

実はこの二人、かんざきさんじゅうはっさいとすているさんじゅうよんさいなのである。

俺よりも身長がでかい二人だが、年上の神裂はいいとしても、ステイルに抜かされているのは正直悔しい。

 

「…インデックスは?」

 

「…まだです。居場所が点々と素早く動くので私たちも行方がつかめずにいます」

 

「あの早さには恐れ入るよ…まったく…」

 

神崎は少しだけ、顔をうつむかせて暗めに言葉を発し、ステイルは呆れたように言葉を発する。

 

「…まぁ、確かに大変だよな……、その仕事……」

 

俺は一昨年、その仕事を経験している。とにかく大変だったのを覚えてる。その時の相棒は土御門の野郎だったし、何よりインデックスの抵抗が大変だった記憶だ。

 

「でも、あの時は直ぐに仕事終わったじゃないですか……」

 

「そういえば、あの時何の魔術を使ったんだ?」

 

「ばっかお前。能力者の俺が魔術使うと血へど吐くんだぞ?魔術はつかってねぇよ。まじキッツイからな」

 

「でも、血管の周りに闇を張ってるから、血管切れても闇が代わりになるからその分いいじゃないですか」

 

「……あの状態で戦えるの3分だけだぞ?体への負担が重すぎる。学園都市(ここ)の医者にはいつ死ぬかわからないとか言われたし……」

 

そう、俺は学園都市にいる医者、要するにカエル顔の医者。別名は冥土返し(ヘブンキャンセラー)と呼ばれる医者からそう言われているため、一応、魔術はそんなに使うなと言われている。因みにカエル顔の医者は魔術のことも知っている稀な存在だ。

 

「…フッ」

 

「おい。笑っただろ。ステイル。笑ったよね?」

 

「…笑うわけないだろ……」

 

そういいつつ、肩がピクピク動くのはやめてもらえませんかなぇ。完全に笑ってるようにしか見えないから。

 

「…それじゃあ、僕は探しに行くとするよ」

 

「ああ」

 

そういい、ステイルは俺の部屋を出て、インデックス探しに出かける。

 

「神裂は?」

 

「私はまだ」

 

「そうか…」

 

「………」

 

「………」

 

会話が続かない!俺らの関係といったら天草式の時の女教皇(プリエステス)とただの魔術師だし、必要悪の教会でも、ただの仕事仲間だし……。

 

その時、ガチャリと扉が開く。ステイルかと一瞬思ったが、探しにいったばかりなのでそれはないと思った。

 

俺の部屋に訪れたのは、大きい胸と長い金髪を揺らし、常盤台中学の制服を着ている少女、食蜂操折がそこにいた。

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

三人とも沈黙。神裂と操折は少し驚いた表情、俺は戸惑った表情をしていることだろう。

 

「「比企谷(八幡)この女の子(女)は?」」

 

「……まぁ、そんなこと気にするほどでも…」

 

「「あります(ある)」」

 

「……はい……」

 

俺はこの後、修羅場に遭遇してしまうのだが、それはまた、別の話。

 

だが、こんな科学と魔術の衝突なんて、小さいものだろう。

 

俺はどんどん巻き込まれていく。魔術サイドと科学サイドのいざこざに。そして、ついに、魔術と科学が交差し始める─────。

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字報告お願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

次章予告 幻想御手《レベルアッパー》編&禁書目録《インデックス》編

今更だけど八幡って働きすぎたよね、これ。
風紀委員、魔術師、暗部とか。


動き出した二つの事件───────『幻想御手(レベルアッパー)』事件と『禁書目録(インデックス)』捕縛任務。

 

使うだけで能力(レベル)が上がるといわれている代物────────『幻想御手』。

 

「…幻想御手?」

 

「そうです!比企谷先輩!」

 

風紀委員(ジャッジメント)として動きだす、比企谷八幡、白井黒子、初春飾利、固法美偉。そして、御坂美琴、佐天涙子。

 

最初は都市伝説だったのだが──────。

 

明確化していく事件の数々。

 

書庫(バンク)に記されている情報と違う能力者たちのレベルの力。

 

続々出てくる被害。

 

傷だけが増えていく。

 

 

 

そして、もう一つの都市伝説────『脱ぎ女』。

 

謎の研究者、木山春生(はるみ)

 

研究者の彼女と接点のあった比企谷八幡は木山春生に接触を試みる。

 

だが、そこで語られた言葉は他人を巻き込み、救おうとしている置き去り(チャイルドエラー)の存在だった。

 

「…救うために、人を犠牲にしていいわけじゃない…」

 

「…なら、君に何が出来る?」

 

黒幕に迫ったものの、あと一歩で逃げられてしまう────。

 

 

 

そして、幻想御手を使用したものたちが続々と倒れていく。

 

その中には佐天涙子も混ざっていた。

 

倒れた佐天。初春は事件の真相を追うために、木山春生のもとに向かうも、彼女に捕まってしまう。

 

 

 

『幻想御手』事件の終幕のために、比企谷八幡と御坂美琴は初春飾利の救出しに、木山春生のもとに向かう。

 

幻想御手の闇───────。

 

木山春生の多才能力者(マルチスキル)────────。

 

そして、木山春生の中から生まれたAIM拡散力場の怪物、幻想怪獣(AIMバースト)が生まれる。

 

 

 

「な、何なのよ!この怪物‼︎」

 

「AIM拡散力場の思念の塊、か…」

 

予想外の二人の共闘。

 

「アンタっ!協力しなさいっ‼︎」

 

「一応先輩なんだがな…」

 

 

 

無敵の怪物────。

 

 

 

「なっ!?話と違うじゃない!」

 

 

 

AIM拡散力場から生まれた怪物を倒すために戦う───!

 

 

 

「…幻想(げんそう)は壊してなんぼだろうが」

 

 

 

彼は力の一片を開放する────。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

『幻想御手』事件の傍ら、彼はもう一つの仕事をこなす。

 

「うん?僕たち『魔術師』だけど?」

 

「───うるっせんだよ、ド素人が‼︎」

 

神裂火織。ステイル=マグヌス。そして、上条当麻。

 

「……やめとけ、神裂」

 

「………八……幡……?」

 

禁書目録捕縛の件に関わってしまった不幸な少年、上条当麻。

 

彼はインデックスのために戦いを選ぶ。

 

「…神裂‼︎やり過ぎだ‼︎」

 

「で、でも…」

 

「力が全てじゃない」

 

───禁書目録に隠された真相。

 

少年は気づく。

 

そして、ついに対峙する。10万3000冊の魔道書と。

 

 

 

「くそ、何をやっている‼︎ この期に及んでまだ悪あがきを─────‼︎」

 

「……ど、『竜王の殺息(ドラゴン・ブレス)』って、そんな。そもそも何であの子が魔術なんて使えるんですか!」

 

戸惑いながらも、戦いを選んだ魔術師。

 

「…聞いてねぇぞ。こんなの…」

 

驚き、冷や汗をかく比企谷八幡。

 

「───手を伸ばせば届くんだ(・・・・・・・・・・)いい加減に始めようぜ(・・・・・・・・・・)魔術師(・・・)!」

 

覚悟を決めた上条当麻。

 

それに相対する禁書目録の力。

 

 

 

戦いは激しさを増して───。

 

 

 

(────まずは、その幻想をぶち殺す‼︎)

 

 

 

第二章 幻想御手編&禁書目録編

 

5月20日、連載開始予定───!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




予告、頑張ってみました……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二章 幻想御手《レベルアッパー》編&禁書目録《インデックス》編
序章 幻想御手事件と禁書目録捕縛任務の幕は開かれる


1日早く投稿できました。

今回はちょっと、無理矢理かもです。


7月19日

 

ここは、風紀委員(ジャッジメント)の支部。

 

現在ここには、俺、初春、佐天がいる。

 

佐天が何故ここにいるかとは俺もずっと思っていた。

風紀委員(ジャッジメント)ではない彼女は、わざわざ来るの無駄じゃない?と思ったことがある。

 

だが、答えは簡単だった。

 

ここは、初春と佐天が通う、柵川中学校だからだ。

 

この支部は、柵川中学校の一室に位置するため、俺は毎日、とある高校→柵川中学校と移動しなければならないのだ。

 

超めんどい。その分、初春と佐天は距離が近いので、すごく羨ましい限りである。

 

そして、俺は、今佐天と話している。

 

「…幻想御手(レベルアッパー)?」

 

「そうです!比企谷先輩!」

 

「…都市伝説だろ?」

 

すると、初春が会話に入って来る。

 

「佐天さんは、都市伝説好きですからねー」

 

「どんなのなんだ?」

 

俺は普通に気になり、佐天に尋ねてみる。

 

「使った使用者の能力(レベル)が上がるんですよ!」

 

「…まじか?」

 

「まじです!」

 

本当にあったら、すごくいい代物なんだけどなぁ。まぁ、俺は一応超能力者(レベル5)だから、これ以上は上がらないだろうけど。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

7月20日

 

俺の部屋の外からドンッ!という音がした気がした。そして、複数の掃除ロボットがぶつかる音。

 

通常ならありえないことだ。

 

掃除ロボットが一点に集まることは、大きなゴミや汚れがない限り、同じ場所にいることはない。

 

俺は、ついつい気になりドアを開けてしまう。

 

見なければよかった。俺は最初そう思った。

 

倒れている禁書目録(インデックス)────。その周りには、それなりの血の量。

 

掃除ロボットがゴミと判断したのか、血を汚れと判断して、ここにいるのは確かだったが、これだけは変わらない。

 

おそらく、神裂火織か、ステイル=マグヌスがやったのだろう。

 

だが、インデックスの着ている修道服、『歩く教会』は、包丁などでは傷つかず、これにダメージを与えられるのは『竜王の殺息(ドラゴン・ブレス)』ぐらいしか存在しない。

 

例え、神裂に斬られても、ステイルの魔術が当たっても、彼女は傷一つ着くはずがないのだ。

 

なのに、彼女は傷ついている。

 

この『歩く教会(異能の力)』を破壊出来るとしたら、ただ、一人。

俺の親友、上条当麻。あいつの右手には、異能の力をなんでも打ち消すというチート気味の能力を所有している。

 

この状況から察するに、インデックスは今朝、当麻に接触。再び逃げている中、もう一度当麻の部屋に逃げるというところに、『歩く教会』が壊れていると知らない神裂がステイルが攻撃した、とみるべきだった。

 

神裂のモットーは『救われぬ者に救いの手を』、ステイルはインデックスを傷つけるなんて行為をするはずはない。ステイルだったら、世界を敵に回しても、インデックスの味方に着くことだろう。きっと、予想外の出来事で、神裂もステイルも戸惑っていることだろう。

 

そして、ステイルはそろそろ、インデックスを回収しに来る。

 

足音が聞こえる。だが、足音の主はステイルではなく、おそらく補習帰りであろう、当麻の姿だった。

 

俺はそっと身をかがめ、ドアを少し外の様子が見える程度までしめる。

 

「おい! こんな所でナニやってんだよ?」

 

当麻がインデックスに近づく。

 

「……、あ……?」

 

「や、 ……めろ。 やめろっ! くそ‼︎」

 

当麻はインデックスの血を吸いとる掃除ロボットを乱暴にどかす。

 

「くそ、くそっ‼︎」

 

「何だよ、一体何なんだよこれは⁉︎ふざけやがって、一体どこのどいつにやられたんだ、お前‼︎」

 

混乱する当麻の後ろから、足音が聞こえる。それは、俺が先ほど予想していた足音の主、ステイル=マグヌスがそこにいた。当麻は混乱していたきずかないようだ。

 

すると、ステイルはゆっくりと口を開き、当麻にいう。

 

 

「うん? 僕達『魔術師』だけど?」

 

 

いや、俺と土御門も魔術師なんだけどなぁ。

 

そういうと、ステイルはインデックスに近づく。

 

「うん? うんうんうん、これはまた随分と派手にやっちゃって」

 

「神裂が斬ったって

話は聞いたけど……、 まぁ。血の跡がついてないから安心安心とは思ってたんだけどねぇ」

 

ステイルは淡々と独り言を呟く。

……ステイルは嘘つきだ。インデックスが斬られたのに、彼が平然としているのはおかしい。あいつだって、心の中では結構傷ついているはずだ。

 

いや、それは、ステイルだけじゃない。当麻も、神裂も。そして……俺も。

 

ガチャ

 

俺は扉を開く。

 

「は、八幡…?」

 

「……何故、君が?」

 

「いや、ここ、俺の部屋の前だから……」

 

俺は話す。

 

「それより、早くインデックスを治すぞ。争ってても意味ねぇから」

 

「お、おい!何で八幡が…!?」

 

当麻に聞かれた俺はステイルを指指し、こういう。

 

「俺も、こいつと同じ、『魔術師』だからだ」

 

「⁉︎ ……、な、何でお前も」

 

だが、そんな様子を見た、ステイルは冷たく言い放つ。

 

「…はぁ、比企谷。治療は頼むよ。神裂にこのことを伝えに行くから」

 

「…あぁ…」

 

戸惑っている当麻をよそに、俺たちは話を続ける。

 

「……行くぞ。当麻、小萌先生の家に」

 

「……あ、あぁ」

 

状況がよくわかっていない当麻までも、『やばい』ということはわかる。

そして、俺はインデックスを背負い、走り出す。俺たちの担任の先生の家に。

 

俺の部屋では、魔術を発動するパーツが足りない。多分、当麻の部屋を同様だろう。そして、土御門の部屋も、妹がいたら困るので、今回は頼らない。

 

やってやる。もう、血反吐吐いてもいいから、

 

やってやる。

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字報告お願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一章 闇影の支配者は、必死に禁書目録を救おうとする

Kamijyo touma side

 

わからない。

 

何もかもがわからない。

 

何故、俺の住んでいる学生寮にインデックスが倒れていたんだろう?

 

『魔術師』とは何なのだろう?

 

そして、何故、八幡は『魔術師』と名乗ったのだろう。

 

俺は、タダでさせバカだ。

 

何もわからない。

 

今日だって、補習帰りだった。

 

そして、帰ってきたら、朝会った女の子が倒れていた。

 

『魔術師』、『魔術』。

 

この二つとも、朝、インデックスに聞いたことだった。

 

けど、俺はそんなものないと思っていた。

 

担任の小萌先生の家に向かう中、ずっと思っていた。

 

お前は何者なんだ?

 

八幡。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

Hikigaya hachiman side

 

「はぁ、着いた……」

 

俺は今、担任の先生、小萌先生の家の前にいる。

 

背中には、修道服を着た血まみれの少女。横には、ウニ頭の親友。

 

路地裏を出て、十五分ほどの前に場所に、小萌先生の家があった。

 

小萌先生が住んでいるのは、まぁまぁ、ボロい二階建てのアパート。俺はその中から、『月詠』と書かれている、プレートを探す。

 

「ここ、か…」

 

小萌先生の部屋を見つける。

 

「当麻、部屋を開けてくれ」

 

「あ、あぁ」

 

当麻は戸惑いまじりに返事をする。……そりゃ、当たり前か。こいつには、今何が起こっているのかもわかってはいないのだから。

 

すると、当麻が、部屋のドアを蹴破ろうとする。だが、やはり『不幸』な彼は、ドアを蹴破ることは叶わず、「〜〜〜ッ‼︎」、と悶える。

 

「はいはいはーい、対新聞屋さん用にドアだけ頑丈なんですー。 今開けますよー?」

 

部屋の中から、小萌先生の声が聞こえてくる。素直に待ってりゃ良かった、とか当麻思ってるだろうな。と、俺が呆れ顔で思っていると、ドアががちゃりと開いて緑のぶかぶかパジャマを着た小萌先生が顔を出した。 のんびりしている表情なので、インデックスの傷は見えていないようだった。

 

「ん、なんで比企谷ちゃんと上条ちゃんが?新聞屋さんのアルバイトを二人で始めたんですか?」

 

「二人で同じところいるわけないでしょ…」俺はめんどくさそうに 「入りますよ先生。はいごめんよー」当麻は不機嫌そうに、小萌先生の家の中にズカズカと入って行く。

 

「ちょ、ちょちょちょちょっとーっ!」

 

ぐいぐい横に押される小萌先生は慌てて当麻の前に立ち塞がる。

 

「せ、先生困ります、いきなり部屋に上がられるというのは。いえそのっ、部屋がすごい事になっているとか、ビールの空き缶が床に散らばってるとか灰皿の煙草(たばこ)が山盛りになってるとか、そういう事ではなくてでくね!」

 

いや、見られたくないだけじゃねぇか………。

 

すると、当麻が「先生」と呼びかける。

 

「はいー?」

 

「……八幡が今背中に抱えるモノを見て同じギャグが言えるかどうか試してみろ」

 

「ぎゃ、ギャグではないんですー……って、ぎゃああ⁉︎」

 

「今気づいたんかよ!」

 

「比企谷ちゃんの背中が大っきくて怪我してるって所まで見えなかったんです!」

 

俺の背中にいるインデックスの大量の血を見てわたわたしている小萌先生を押し込み、俺と当麻は小萌先生の部屋に入る。

 

「………」

 

つい黙ってしまった。

部屋の中には、ビールの空き缶が床に散らばり、煙草(たばこ)が灰皿に山盛りに入っている。

 

「おっさんの部屋かよ……」

 

「比企谷ちゃん‼︎そんな事より、き、救急車は呼ばなくて良いんですか?で、電話そこにあるですよ?」

 

小萌先生は震える手で、部屋の片隅に置いてあるダイヤル式の黒い電話を指差す。

 

すると、唐突に、インデックスの口が開かれる。

 

「────出血に伴い、血液中にある生命力(マナ)が流出しつつあります」

 

俺と当麻と小萌は反射的にインデックスの方を見る。

 

インデックスは畳に寝っ転がったまま動いていない。

 

だが、インデックスの様子は明らかにおかしかった。

 

いつもの光っている瞳は、静かな、『冷静』な瞳だった。

 

「──『自動書記(ヨハネのペン)』、かよ………」

 

俺は唐突に禁書目録(インデックス)が持っている能力名を口に出す。

 

「──警告、第二章第六節。出血による生命力の流出が一定量を超えたため、強制的に『自動書記(ヨハネのペン)』で覚醒(めざ)めます。……現状を維持すれば、ロンドンの時計塔が示す国際標準時間に換算して、およそ十五分後に私の身体(からだ)は必要最低限の生命力を失い、絶命します。これから私の行う指示に従って、適切な処置を施していただけば幸いです」

 

動揺を隠せない。俺も、当麻も、小萌先生も。俺はこの姿を、一昨年の任務の時に一度見ている。だが、やはり、『気持ち悪い』。

 

「な、なんだよ⁉︎インデックスはどうしたんだ⁉︎八幡‼︎」

 

「な、何なのですか⁉︎比企谷ちゃん‼︎」

 

「…黙って見てろ。すぐに終わらせる」

 

俺は迷わずに、治療魔術に必要な物を小萌先生の部屋から探し、集める。

 

ゲームのメモリーカード。ちゃぶ台。シャーペンの芯のケース。チョコの空き箱。文庫本を二冊。食玩の小さいフィギュアを二つ。

 

俺は、昔発動した、治療魔術のやり方を思い出す。そして、探して集めたものを記憶通りに並べる。

 

「…出来る方がいるのは私にとっては幸いです」

 

禁書目録(インデックス)は口を開く。

 

「〜〜♪」

 

俺は、鼻歌感覚で、『音色』を奏でる。

 

そして、ちゃぶ台に置いてある、フィギュアが『歌った』。

ちゃぶ台と、神殿がリンクしたことを確認した俺は、金色のの天使、体格は子供、二枚の羽を持つ美しい天使の姿を思い浮かべる。

 

それを思い浮かべたのと同時に、体中の血管が何本を切れる感覚がした。

現在は血管を闇の支配者(ブラックマスター)で塞いでいるため、血を吐くことはない。

 

天使の姿をイメージして、一分が経った。

 

おそらく、血を吐くまで、残り二分。

 

まだ、出ない。治療魔術は苦手だ。手順が長い挙句、発動が難しい。

 

残り一分ぐらいか……。と思った時だった。

 

「…ぐふっ⁉︎」

 

口から血が溢れる。突然、闇の支配者(ブラックマスター)で作り出した、闇は消えた(・・・)

 

だが、その瞬間に、天使の固定化を完了した俺は思わず寝っ転がる。

 

 

 

「───生命力(マナ)の補充に伴い、生命の危機の回避を確認。『自動書記(ヨハネのペン)』を休眠します」

 

 

 

そして、彼女の目は、いつも通り、暖かく、優しい瞳に戻っていた。

 

俺はそんな彼女の顔を見ると、安心したかのように、止まらない血を吐き出し、意識を手放した。

 

っていうか、超能力開発してない小萌先生に魔術を発動させればよかったんじゃ……とか思った俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字報告お願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二章 闇影の支配者はいつだって忙しい

本日二話目です。

オリジナルシーンって、難しいですね………。


「……ちまん‼︎は……ん‼︎」

 

ん?声が聞こえる。俺を呼ぶ声が。

 

「…と、うま…か?」

 

「八幡‼︎」

 

俺は体を起こす。俺の横には、寝ているインデックスの姿があった。

 

だが、俺はかんじんなことを忘れていた。

 

血管切れてるんだった。

 

「…ごはっ!ぐふっ!」

 

血を吐く。周りを見渡すと、ゴミが散らばってないため、俺の部屋にいるようだ。俺の部屋に、神裂とステイルの姿はない。帰ってきていないようだ。

 

俺はすぐさま、闇の支配者(ブラックマスター)を発動し、闇で血管を覆う。

 

血管が治るまで、極力魔術は使わないようにしなければならない。

 

そして、気づかなかったが、部屋には、小萌先生もいた。

 

「だ、大丈夫ですか?比企谷ちゃん」

 

「はい…。大丈夫です……」

 

「で、八幡。一体どういうことなんだ?」

 

当麻が質問をしてくる。俺は話さなければならない。ここまで巻き込んでしまった二人には、話さなければならない義務があるから。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

「──────って、感じだ」

 

俺は二人に、全てを話す。

 

俺が超能力者(レベル5)だということ、『魔術師』に関して、そして、禁書目録(インデックス)捕縛任務のことも。

 

「そ、そんな、滅茶苦茶じゃねぇか!そんなの‼︎」

 

「信じ難いことですけど、私は比企谷ちゃんを信じます。ここまで見させられたら嘘だとは思いませんよ」

 

良かった。二人は、信じてくれた。普通の人なら「魔術?馬鹿じゃねぇの?お前」とか、言われそうな話なのに、信じてくれた。

 

「でも、比企谷ちゃん。少し不自然なところがあるのですよ」

 

「なんですか?」

 

「比企谷ちゃんはインデックスちゃんの脳内は魔道書で85%埋まっていて、15%記憶したら、記憶を消さないといけないと言いましたよね?」

 

「はい」

 

「そんなことはあり得ないのですよ。もともとなんで、人の脳内の記憶を%で表せるんですか?」

 

「──────⁉︎」

 

俺は、不思議と体が震えた。確かにそうだ。脳内の記憶を%で表せられる方がおかしい。

 

「完全記憶能力者といっても、人の脳内の記憶は司るものによって、記憶が埋まる場所が違うのですよ」小萌先生は説明を続ける。「言葉や知識を司る「意味記憶」、運動の慣れなんかを司る「手続記憶」、そして思い出を司る「エピソード記憶」って、分かれてるんですよ〜」

 

「なので、「意味記憶」がどんなに圧迫されても、「手続記憶」と「エピソード記憶」が圧迫されるなんて事は、脳医学上絶体にありえないのです(・・・・・・・・・・・・・・・)!」

 

 

 

 

 

 

やられた。何年も何年も消して来た、インデックスの記憶はなんだったのか。大切な思い出を壊してまで、記憶を消す必要はどこにあるのか。

 

あるいは、記憶を消さなければいけない理由があるのか。

 

「ありがとうございます。小萌先生。ちょっと俺出てきます」

 

そういい、俺は部屋から飛び出し、真っ暗な外に出る。

 

インデックスを大切に思っている、神裂火織とステイル=マグヌスを探すために。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

「…いない…」

 

街灯が激しく主張している夜の学園都市で、ここにいてはならない場違いな二人の魔術師を探して2時間。ポケットに入っていた携帯を見てみると、時刻は夜中の2時を回っていた。

 

「帰るか……」

 

何回も電話をかけても出ない。

 

俺は家に帰るため、帰路に着く。

 

インデックスのこと、どうするかね………。俺はそんなことを思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

部屋に帰ると、ベッドで寝ている小萌先生とインデックス、そして、床に寝ている当麻の姿があった。

 

家に居たまんまだったらしい。そりゃあ、俺があんなに慌てて家を飛び出したから心配になるか。と思い、俺は、当麻の横に寝そべり、そっと瞼を下に下ろした。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

眼を覚ます。

 

部屋には、まだ寝ている三人の姿があった。

 

俺はそっと「出掛ける」と書いた置き手紙を置き、風紀委員(ジャッジメント)第一七七支部に向かった。

 

「まだ、終わってねぇぞ………。幻想御手(レベルアッパー)禁書目録(インデックス)も………」

 

誰にも届かない言葉を口にし、気合を入れなおす。

 

はぁ、仕事したくねぇなぁ。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

路地裏から爆発音が聞こえる。

 

いや、正確には、路地裏からじゃない。建物の中から爆発音が聞こえた。

そこは、廃墟のような場所で、いかにも、武装無能力者集団(スキルアウト)がいそうな場所。

 

俺は廃墟の中に向かう。

 

「ひ、ひひひひひひ!」

 

「ついに、ついに手に入れたぞ!幻想御手(レベルアッパー)‼︎」

 

「ひひひひひひひひ‼︎」

 

男の顔には、冷や汗なのか、興奮してるからなのか、大量の汗をかいていた。というか、笑い方気持ち悪いな…。

 

そして、左手には音楽プレーヤーを持っている。おそらく、幻想御手(レベルアッパー)は音楽プレーヤーの形をしているのだろう。

 

風紀委員(ジャッジメント)だ。拘束する」

 

「なっ⁉︎」

 

やるなら早く倒さなければならない。こいつはさっき「手に入れた」と言った。それなら、こいつはまだ、幻想御手(レベルアッパー)を使用していないと見るべきだろう。

 

「ま、待てよ⁉︎俺はまだ、手に入れただけだぜ⁉︎拘束される義理がない‼︎」

 

「だったら、幻想御手(それ)寄越せ」

 

「は、はぁ⁉︎ふざけんなっ‼︎」

 

こいつ何言ってんのか意味わかんなぇよ……。

 

「使ったら拘束するぞ?」

 

「くっ!くそがっ!」

 

すると、男は幻想御手(レベルアッパー)を耳に当てる。

 

まずいことになったぞ。だけど、これの方がやりやすい(・・・・・)

 

「ふっ!」

 

俺は素早く男の元に向かう。

 

「な、舐めんな!」

 

すると男は、電気を俺に向かって発動する。

 

電撃使い(エレクトロマスター)だったようだ。

 

だが、俺はそれを闇の支配者(ブラックマスター)を発動して、防ぐ。

 

「な、なんだよ⁉︎その能力⁉︎」

 

そこからは、簡単だった。動揺した男の首元に闇を近づけ、闇を手の形にして、首を軽く叩く。そうして、男は気絶した。

 

 

 

だが、俺は油断していた。

 

その瞬間、背中に激痛が走った。

 

そう。俺は気づいていなかった。なんで、男が幻想御手(レベルアッパー)を使っていないのに、この建物から、爆発音が聞こえたのかを。

 

 




誤字脱字報告お願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三章 紐解かれていく幻想御手事件

今回は少し長いです。


「ぐっ⁉︎」

 

背中から激痛が走る。服が破れる。

 

俺の脳内は何が起きたのか理解するのに数秒かかってしまう。

あの能力者の他に、もう一人能力者が、潜んでいた。そう考えるべきだった。

 

「くそっ⁉︎」

 

俺は即座に周りを見回すが、誰もいない。

 

多分だが、いなくなったというわけではない。

 

遠距離攻撃か、なんならかの能力か。

 

「……がっ………は…………」

 

もう一度、背中に激痛が走る。油断しているというわけではない。むしろ、集中力を張り巡らさせてる。

 

それなりの実力者とみるべきだろう。多く見積もって大能力者(レベル4)程度だろう。

 

「で、出てこい!」

 

俺は反射的に叫ぶ。

 

「ぐふっ」

 

口から血が垂れてくる。

 

「くそっ!」

 

俺はすぐさま建物から出る。

 

このままだと、怪我をするだけ無駄になる。

 

一番楽な方法は建物ごと破壊すること。だが、周りには、多少なりとも人はいるため、風紀委員(ジャッジメント)の立場としては、一般人は巻き込まない。

 

幻想御手(レベルアッパー)は手に入れることに成功したが、先ほど俺を攻撃してきた能力者を野放しにするのは危ないため、戦わなければならない。

 

本気を出すのはいいが、血反吐を吐く可能性が高い。ただでさえ、ついさっき魔術を使い血管が切れてばかりとなると、まだ完全には治っていないはずだ。

 

「いや、やるか…」

 

俺は覚悟を決める。持って2分、時間内に終わるのは楽勝だろう。

この力(・・・)なら。

 

俺は、全力で地面を蹴り、建物の屋上に登る。そして、屋上の床を蹴り破壊して、中に入る。

 

この三階建の建物のどこかに能力者はいるはずだ。

 

三階にいないことを確認し、二階に下がる。

 

先ほどとは違い、気配を感じる。さっきは、もう一人いて能力で何かをしていたのかもしれない。それよりも、俺は攻撃してきた能力者と思われる気配の元に向かい、一気に蹴り飛ばす。

 

「…ぐがっ‼︎⁉︎」

 

当たりだったようで、能力者は、建物の壁をぶち破り、路地裏に、出て、隣にあった建物にぶつかる。これほどの攻撃を受ければ、すぐに意識を戻すということはないだろう。

 

すると、柱の陰から新たな人影が見えてくる。

 

「……こ、降参です!」

 

「許すわけねぇだろ」

 

俺は、この、能力者と思われる奴も蹴り飛ばす。

 

そして、もう一人の能力者は、先程の能力者と同様に、吹っ飛んでいった。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

なんだかんだで支部についた俺は、どうにか包帯を巻いて治療をしていた。

 

現在、背中あわせで反対にいるのが白井黒子。彼女も幻想御手(レベルアッパー)使用者との戦闘で傷ついたらしい。

 

て、いうか、俺あの後ずっと幻想御手(レベルアッパー)使用者と四戦以上してきた。最近は幻想御手(レベルアッパー)使用者が着々増え始め、俺ら風紀委員(ジャッジメント)は、それを見逃すことはできないので、戦うという方法しか、取ることができないのだ。

 

「比企谷先輩も白井さんも日に日に生傷が増えていきますねー」

 

今、俺と白井に話しかけてきたのは初春飾利。白井の治療をやっている。

 

「仕方ないですわ。幻想御手(レベルアッパー)の使用者が増えてるんですもの」

 

「どれくらい広まっているのか、想像もつきませんねー」

 

「泣き言を言っても始まりませんわよ。とにかく!私たちが為すべきことは3つ」

 

幻想御手(レベルアッパー)拡散の阻止と、昏睡した使用者の回復」

 

「──そして、幻想御手(レベルアッパー)開発者の検挙。これを開発し、ネットに広めた何者かを必ず見つけ出して、必ず目論見を吐かせてやりますわ」

 

白井が堂々と宣言する。いやほんとにこの子、四ヶ月前まで小学生だったのか疑わしいレベルでちゃんとしていらっしゃる。

 

「さぁ、先に手当てしちゃいましょう!」

 

よく考えたら白井って、上は包帯しか巻いていないと思うと後ろ絶対にうけねぇじゃん。

 

「ほんとは御坂さんに巻いて欲しいんじゃないですか?」

 

「お姉様に私のこんな姿見せるわけにはいきませんわ」

 

「大丈夫ですよ。誰も見たくないですから」

 

………。一瞬だけ初春が怖いと思った俺がいる。てか、初春って結構いきなり辛辣になることが多々あるので、俺は何もしないようにしている。

 

「白井さんのより、比企谷先輩の方がいい身体(からだ)してますよー」

 

最初の初春の一言で、白井は初春に胸ぐらをつかもうとしたが、いきなり矛先がこちらに向いてくる。

 

「お、お兄様……、ぐへへへ」

 

「お、おい……ちょっ、初春止めろ」

 

「し、白井さん!包帯取れちゃいますよ!」

 

初春の制止は少し遅く、白井が俺に飛び込んでくると同時に、胸の部分を巻いてあったはだけて、上半身裸の中学生が飛び込んでくるというとんでもなくやばい絵面になってしまっていた。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

「さ、最低ですの!///」

 

「いや、お前が飛び込んできたんだろうが……」

 

俺の頰には、真っ赤な紅葉が咲いていた。超ヒリヒリして痛ぇ……。

 

「……で、私のか、身体(からだ)をさ、触った感想は…?///」

 

「……い、いわねぇぞ…」

 

これで、中学生相手に柔らかいとか言ったら、只のロリコンになっちゃうのは勘弁して欲しい。

 

………まぁ、感想言うとしたら、柔らかかったけれど」

 

「⁉︎///」

 

「ひ、比企谷先輩のせいで白井さんが……」

 

「あれ?声に出てた?」

 

「は、はい。思いっきり……」

 

「お、お兄様///ぶつぶつぶつぶつ」

 

「ひ!白井さんが壊れてます」

 

「いや、なんかごめん……」

 

すると、支部の扉の前から声が聞こえる。

 

「おっすー!私も何か手伝うことあ、っつ」

 

御坂の声を聞いて正気に戻った白井が、即座に空間転移(テレポート)の力を使い、初春を御坂の頭上に転移させる。まぁ、結果はいうまでもないだろう。

 

 

 

─────────────────────────────────

 

 

 

「で、進んでるの?捜査の方」

 

「それが……」

 

御坂の言葉に初春はどもる。

そして、白井が口を開く。

 

「木山先生の話では、短期間に大量の電気的な情報を脳に入力するための、“学習装置(テスタメント)”という特殊な装置があるそうですの。でも、それは、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感全てに働きかけるもので……」

 

幻想御手(レベルアッパー)は只の音楽ソフト。聴覚作用だけね」

 

「植物状態になった被害者の部屋を捜索しても、あの曲のデータ以外何も見つからないんです」

 

初春がそういうと、給湯室から、お湯が沸いた音が響く。

 

そんなことより、俺は一つの疑問を抱く。

 

“木山先生”

 

本名、木山春生。それなりに有名な研究者で、俺とも面識がある女性。

 

彼女は脳についての研究をしているはずだ。それは知っている。

 

でも、何故風紀委員(ジャッジメント)に協力する目的はなんなのか。

 

昔、彼女から、救いたい存在がいると聞いていた。誰を救いたいのか、昔何があったのか、深くは聞くことはしなかった。

 

そりゃあ、興味本位で協力していると言われたら終わりなのかもしれない。だけど、犯人が彼女だとしたら?よくよく考えたら、幻想御手(レベルアッパー)ほどの開発をしたとなると、実力の高い研究者が開発したと思われる。

 

最初に頭に浮かぶのは、木原一族。だが、木原一族がここまで回りくどいやりかたをするとは思えない。

 

だとしたら────木山春生だとしたら────。

 

正直、もう幻想御手(レベルアッパー)事件には勘弁している。只でさえ、禁書目録(インデックス)の事があるので、忙しくはなりたくない。

 

ただ聞くだけでわかる。ただ、それだけのこと。

 

「……すまん。俺出てくる」

 

「お、お兄様?」

 

「へ?」

 

そして、俺は木山春生の元に向かった。

 

 

 

 

 

 




誤字脱字報告お願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。