Justice外伝:ENPLEOS (斬刄)
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バトロワ開始前
始まり
人の死により異世界転生や過去の世界にない新しい物事が取り入れられた世界などに転生するという…大抵はそういったお決まりな展開である。が、問題として転生者が作品に転生して主要キャラが盛大にキャラが崩壊していたり、ひどく貶したり、憑依系で主人公や他のキャラに乗り移ったり、俺TUEEEのようなぶっ壊れ性能を取り入れてやりたい放題していることが多い。そのせいか、こんなキャラじゃないと否定したり、ふざけるなと報復しようとする輩が続出し、その世界のキャラを侮蔑したりする行為に過激的な行動をとる原作厨などの他の転生者アンチも続出している。それは言うまでもなく力量バランスが完全にぶっ壊れ、憎しみあい殺し合い潰し合いの状態でイタチごっことなり事態は悪い方向へと進んでいった。
これ以上酷い惨状にさせまいということから新ルールとして転生者システムというものが新たに搭載された。
正義側
秩序側
混沌側
以上の3つに大きく分けられることとなった。そこから木の枝のように次から次へと枝分かれし、様々な分野へと区分される。
秩序側と混沌側に関して転生者に含まれるものの、それは稀であるため選ばれるということについては分からない。神と関与しているということもあるが、それも不明である。
正義側はある程度の条件が課せられることによりそうでないものと分けることとなる。
正義側にクリアしたものは他の転生者よりも優遇され、褒美として正義側システムを手に入れることができる。
このシステムには様々な便利機能が搭載されており、必要最低限なものは用意されている。
家電製品や、水などの生命ラインに必要な普及は勿論、世界に移動するための船も提供することができる。
そう、正義側に選ばれなかった転生者達は正義側の管理下において正義側に属したものと共に戦うこととなる。
能力の提供は、転生前にあった自身の能力を手にし、能力がなければ必要最低限の能力を譲渡することとなる。
必要な力を欲しているのならその世界に介入して得る必要がある。
【WELLCOME TO THE JUSTICE MENBERS‼︎】
(ようこそ正義側メンバーに!)
*これらの組織はメンバーの安心を考慮し、神の指示に関する内容は安全を第一にして心がける上で正義側は神の支えと名の下に行動します。そのため、仕事の際の危険性は一切ございません。明るく楽しい、アットホームのような環境を用意しております。
正義側になる人もなれなかった人も自らの志を信じ、誰かを憎む事は一切せず、みんなが笑顔になって精一杯力を合わせて共存していきましょう!
ーーーーーーーーーー
二人の少女がボロボロになって海から陸へと上陸した。
身体中に殴られた跡と赤い髪をした子が傷口を抑えており、月型の髪留めをした紫色の髪の子が周囲を警戒している。彼女らは艦娘といい、市民を守る為に敵である深海棲艦と戦っている。
なぜ彼女ら二人だけが海に放り出されたのかというと元々二人は鎮守府に来た新米なのだ。彼女らが鎮守府に来だ時には、異様な感じ空気が漂っていた。
提督の最初の指示は二人に対しての捨て艦戦法だった。既に彼女らと同じ艦娘は手に入れており、また手に入れた二人を犠牲にし、どうにかルートを攻略するという作戦が開始された。
二人はその壁役を任されてしまった。
先輩達は苦い顔をし、作戦中に大破している二人に帰投命令を頼むものの
『駄目だ。作戦が成功するまで絶対に返さん』
大混戦の最中、他の艦娘とはぐれ、奇跡的に無事に生き残ることができた。二人はようやく無人の島に上陸はしたものの深海棲艦ではなく見たことのない化け物が大勢出現し、こうして襲われている。
(もうほとんど動けないのにっ…‼︎)
「卯月っ、私が囮になるから逃げて!」
艤装に装填されてある弾薬は残り僅か、また海に逃げようと思っても大破した状態で深海棲艦とまた当たれば確実に轟沈する。二人は逃げ場のない状況に身を置かれてしまったのだ。
そんな中、森に身を潜めて二人を眺めている彼は携帯を確認し、依頼内容を見ている。
「発見…依頼は襲われている二人の救出に迎え。か…よし!行くぞっ‼︎」
彼はバリアが展開されている盾と大剣を用意し、その島に転移してやってきた。
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救出
明日のシンフォギアXDが楽しみです。
逃げていった艦娘の名前は卯月、弥生。二人は持っている艤装で砲撃しており、食らっている方の化け物はビクともしない。蟹の姿をした化け物の行動力自体は遅かったのが幸運であるものの、数がかなり多い。逃げ場のない状況で、二人は囲まれていた。
「つっ⁉︎こんな時にっ‼︎」
艤装が壊れ、鋭い爪先が二人に向かって刺そうとして来た時に、バリアが卯月の目の前に突然出現して彼女達を守る。
「君達は下がっていてくれっ!はぁぁぁっ‼︎」
横からバリアを展開している盾を前に構え、化け物の群れに青年が突撃して片手剣を持って突進する。剣は甲羅ごと蟹の身体を貫き、貫いた剣を抜くために蹴り落とす。他の蟹達は二人の艦娘ではなく横から入ってきた彼を襲ってくるものの、張ったバリアが行く手を阻む。
「…これじゃダメか」
彼は右手に持っている剣をしまうと腰にある片手斧を取り出して、バリアが崩れる前に何匹かいる蟹の甲羅を砕いた。砕かれた甲羅は破片となって散らばり、血が噴水のように溢れ出る。
大勢いた蟹はまるで恐れているかのように、散らばって逃げて行く。
「逃すかっ‼︎」
逃げて行った蟹の一匹を、投げた斧で倒し、真っ二つとなって裂かれた。
斧は彼の元へと戻り、それを腰にしまう。
*****
「任務、完了」
「…何者なの」
二人は彼に救われたものの、恐怖した顔をしている。提督に捨て駒扱いされ、人間不信になっている。助けてもらったからといって、化け物を殺して人間に恐怖している。
「…もう心配はいらないよ。僕の名前は北郷紡木。大丈夫かい?」
そんな二人の様子を見ている彼は両手にある武器を納め、手を差し伸ばしながら笑って自分のことを紹介した。それでも二人は警戒しており、手負いでも必死に逃げていくが、彼が張った結界によって逃げ道を塞がれる。
「って言っても、僕のこと怪しく思われて当然か。こんな物騒なものを持ってるんだから」
「…」
自分の持っている武器を見ている。手を差し伸ばそうとしても二人の艦娘は逃げ出そうとするが、見えない壁が道を塞いでいた。
「無駄だよ。仮にこっちが結界を解いたとして、行くあてがあるのかい?」
「そんなの、貴方には関係ない」
卯月を守るために弥生が前に出る。
彼は武器をしまい、自分が手を出さないことを示すために両手をあげる。
「ま、まま待ってよ⁉︎…無理に連れて行こうってわけじゃないから。僕はここで調査しないといけないことがあるからその間待ってもらっていいかな?」
「どういうつもりなの…」
「こっちはやるべきことがあるんだ。詳しい話はとりあえず落ち着いた場所に移動してからにしよう…君達の衣服も血だらけになっているから、そこで綺麗にすると良い。それに疲れているだろ?僕のことはまた後から説明するよ」
*****
彼が携帯を取り出してこの地域に蟹のような敵がいないかを確認し、彼女達に待ち合わせの場所を教えていた。暑さをしのぐために二人は洞窟の入り口へと移動し、彼が指示したところに待って一時間経つ。
「何者なの…?あの人」
二人はそのままのんびりと疲労を回復し、彼をずっと待っていた。こんな暑い中、彼はさっき出てきた化け物の調査をしているのか二人に気になっていたもののそもそも彼の存在自体が謎であるため深く考えても無駄だった。
「お待たせ。時間がかかってしまって」
砂場に長居しているせいで、彼の皮膚が少し黒くなっている。
さっき襲ってきた怪物の甲羅を回収し、網に入れている。
「何者なのですか…なんで私達のことを」
「神から貰った依頼で君達のことを教えてもらったからって言っても分からないか…僕のことを知るには、僕の船に是非来て欲しいんだけど?いいかな?」
「「…船?」」
彼は携帯を取り出して、二人と一緒に彼の言っている船へと移動させた。
*****
「これが、僕の言う船だよ。詳しく言えばただ単に海で移動するとかじゃなくてあらゆる世界に介入する船みたいなものかな?僕らは正義側という存在と呼ばれているんだ。
詳しい話はかなり長くなると思うから、まず君達はこの船内を好きに見学してもらっていいよ」
船内には白い壁はあるが窓は無く、内部は全体的に狭い。部屋はホテルのような宿泊室みたいになっており、外に出られないための洗濯物を干すための乾燥機室。生活に欠かせないものが機能し、充実している。家電には分かるように、その隣にラベルと取扱説明書が貼り付けられていた。
二人は船の中を見て驚いていたものの、気になっていたことがある。彼以外人がいないことだった。
「あの貴方以外誰かいますか?」
「実は、その…活動人数がほぼ僕だけで、一人…なんだ。だから二人にはもしも良かったら入ってもらいんだけど…ダメかな?」
(…えっ?)
その言葉で空気が沈んでいく。二人からしたら一人だけで機能しているこの組織って本当に大丈夫なのかと一瞬思ってしまった。
「で、でもね!神の依頼に応じてちゃんとした報酬だってあるんだよ‼︎それにこの船には生きる為の必要最低限のものが保証されてるんだ‼︎
電気家電とか、水とか、医療機器とか…食料の方は世界に介入して調達しないといけないけど、それでも君達のいたブラック鎮守府よりは幾分もマシだと…思う!」
食料は世界に介入して手に入れればいいから、生活には不便はない。
前の鎮守府のように深海棲艦と戦ったり、捨て艦のような酷い扱いを受けることはない。しかも、彼はクズ提督のような二人に欲情して襲って来る様子も見当たらなかった。
「必要なら他の艦娘も連れて行くことができるよ。でも僕はこの船に入りたいかどうかという君達の意思を尊重したいからね。実際僕一人だけでも依頼は上手くやってるし、何か質問はあるかい?」
「あの、質問があるぴょん。貴方は依頼って言ってるけどどんな仕事をするんだぴょん?」
「そうだね。あらゆる世界に住んでいる人達を守ることや、さっきのような君達のいる世界とは違う別の世界から来た化け物をきちんと退治すること。
他にも、別世界で大事故が起きている際に密かに住民を助けたり…そういう誰かを助ける為の仕事をしているんだ。そしてその仕事の報酬として神から高い報奨金をもらえる。僕らの組織のことを正義側っていうんだ。でも、正義側といってもそれぞれ枝分かれしているものがあるんだ。今分かったのが6つのグループに分けられてるんだけど。
過激派、穏健派、強硬派、中立派、信仰派、隠密派の六つだね…ちなみに僕がいるのは中立派だよ。やり方は違ってどんななのかは残念ながら機密事項になっているから教えれないんだ。
彼らの情報が分からないからね」
返答に長々と説明すると卯月の次は弥生が紡木に対して、質問が飛んで来る。
「仕事内容については分かったけど、さっきから言っている神って?」
「えーと、それは『どうしたんだ、ぼっち』誰がボッチだよっ⁉︎」
大きいテレビの電源がオンになっており、その画面には白と黒の勾玉の形が映った。
『神に失礼なことを言うな』
「え、えっ…えええっ⁉︎まさかあれが」
「うん、認めたくないけど僕らの言う神様だよ」
白黒の勾玉のようなのが、テレビ越しに自分のことを神様だと言っている。
「これについても紹介が遅れたね。
まぁ、あれについては要するになんでもアリな浮いてるオブジェクト、または石像だと覚えてくれ。いちいち癪に触るようなことばかり言うけど生活を支えているのはこれのおかげなんだ」
『オブジェクトとか石像とかこれ扱いとか神に失礼だな。ちゃんと神様と呼ぶべきだ』
「お前のような神様がいるか‼︎とにかく、パンフレットを二人に渡しておくからそれも目を通しておいてね」
今度は、画面を通り抜けてテレビを通過して出て来る。パンフレットを渡された弥生と卯月は唖然としていた。
『それにしても二人にこんな親切に教えなくても良いだろう。行くあてがないんだから、勧誘しても良いと思うぞ。あんな小島に生きている生物なんてごくわずかだろう。
行くあてもないのなら、素直に俺と共に来いってカリスマ性ある言葉で二人を勧誘すれば良いだろ。あと報酬は携帯に送ってるから確認してね』
「分かったよ。それと、僕にカリスマ性なんて微塵もないよ。どんな手段を使ってでも二人を強引に船に連れ込もうとしても、彼女らに強い意志がないのなら一緒に仕事するなら支障をきたすし」
『そんなんだから童貞で、かつ一人ぼっちなんだよ。小娘相手に内心ドキドキしてばっかりだろ』
「よ、余計なこと言うなぁ!あと童貞は関係ないだろっ‼︎」
紡木が大袈裟に言っているところ、脅していた時に彼の喋りがガチガチになったことがあったなと思い返している。
「僕はね…今後も君達のようなどこにも行くあてのない人たちに見せて、さし伸ばそうと考えてるんだ。僕一人じゃどうにもできないこともあるかもしれないからさ…まぁ、10人以上は今の所必要ないけど」
「で、でも…それって宗教の勧誘とかじゃないぴょん?だって、神様だとかまるで信仰みたいな感じだし、まさか教えを説がせるために洗脳するわけじゃ‼︎」
だとしても神様に支えられていると言っているためにまるで宗教勧誘のようなものだと言ったが、紡木はそんな組織じゃないと否定する。
「えっ、いやいやいやいや⁉︎何か二人とも勘違いしているけど、そんなお経唱えたりとか、教えは絶対だから背いたら罰を下されるなんてことやらないよ!そもそもそんな信仰的なことないし、非人道的なことは絶対にしないから!確かに神様はいるのはいるけど、基本勝手だし。教えとか関係なしに自分の意思を尊重しているから無理矢理船に連行しようとは全く考えてないよ‼︎宗教とか全然関係ないからねっ‼︎」
盛大な勘違いをしている二人の誤解を解くために彼はまたもう一度この組織について説明した。宗教団体ならば、神様を崇むための儀式だのしきたりだのお経だの制約だのに縛られるがそんなことはない。
「とりあえず、君達二人はまだ入るって言う気持ちにはなってなさそうだからね。考える時間が必要だそうだからとりあえず1週間か衣食住は保証するけど…もし入る気になったら、僕に声をかけてくれ。二人の部屋も用意するよ。
僕の方はさっきの怪物を調べなくちゃいけないから、自室に戻るね。君達が持っていた壊れかけの艤装も神様に相談して治してもらうように聞いてみるよ。何かあったらドアにインターホンがあるから言ってくれ」
紡木は二人の部屋を用意するためにネームプレートと鍵を作成して、差し出した。神様はいつの間にかいなくなっており紡木は部屋に帰って現れた怪物のことを調べてようとした。
「どうしよっか…入るのは部屋で一緒に考える?」
「…うん。そうしようよ」
卯月は頷き、紡木が用意した部屋へと歩いていった。
せっかく衣食住を用意してくれたものを二人が断るわけにもいかなかった。
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はぐれ正義側転生者の討伐依頼(前)
卯月と弥生の二人が紡木に勧誘されて一日が経った。
ホテルの一室みたいな部屋に住ませてはもらっているものの、二人はあまり落ち着けなかった。助けてもらったことで嬉しい気持ちもあるが、その反面2人とも彼の事が疑心にもなっていた。
「ねぇ…あいつのことどう思う?」
「どう思うって?」
彼の様子を見ても、鼻歌を歌って料理したりしていた。過去の鎮守府で理不尽な指示を言われるよりも、彼はそんなことを考えてはいなかった。
「…私達の食事に何も盛ったりとかもしてない。だからと言って何かされたってわけでもないし、本当に来てくれた私達を歓迎しているような感じだったかな?」
弥生は部屋の辺りを見渡すと監視カメラが設置されている。
「この部屋にあるカメラとかで邪に見たりとか?」
待遇が良く、紡木の説明を聞いたとしても二人は彼を信用して良いのだろうかと疑問に思いながらも一週間の間はずっとここにいられる。
「二人とも、朝食だよ」
*****
既に紡木がオムライスを用意し、食卓に置いてある。二人にとって心の中では疑問に思うことが多々あるが、どちらかが口を開かなければ紡木や正義側のことを詳しく知ることはできない。
「あの、私達にどうしてここまでしてくれるんですか?仲間に勧誘するためですか?
弥生はから先に質問した。紡木は食べるのをやめて、スプーンを置く。
「…話してくれる相手が欲しかったんだ。神様も話してはくれるんだけど…それでも普段はずっと独り身だったのと、僕が身元の知らないのにわざわざ二人とも信じてくれるとは思っていなかったからさ」
今まで話し相手が神様だけとはいえ、紡木も人でない艦娘であったとしても誰でもいいから話してくれる人がいるだけで彼の気が楽になっている。
「あの怪物は彼女達の世界には本来存在していないものだ…だから、別の誰かが異世界から無理矢理連れて来たか人工的に作った化け物か。
一体どこの誰があんな怪物を放棄させたんだろうね…少なくとも転生者だっていうのは確定なんだけど。さっきのように血が結構出てたな…まるで噴水みたいに…」
蟹の化け物を駆逐した後の残骸は非常に生々しく、とても気味が悪かった。そのまま残ったまま、大量の血を飛ばして死んでいる。
「あの部屋は前までは牢屋用の部屋ってことにしたんだけど、転生者の捕獲または更生って依頼が全くないから全然使わなかったんだよ。しかも、その部屋の監視カメラは壊れてるんだ。こんな風に見ようとしても、砂嵐で全く見れない」
リモコンを持って、監視カメラ用のスイッチを押すと紡木の言った通りに砂嵐になっている。
「じゃあ何でそんな使えないものを置いたの?」
「僕もそれを問いただしたんだけど神からはこう言われたんだ。じゃあ置物って事でってさ…わけ分かんないよね」
「「えぇ…」」
監視カメラが既に壊れており、さっきの化け物を調べていたから二人のことを邪な考えを持ってはいなかった。
「正直怖いし、誰だって死ぬのも嫌だと思う。身を引いたら、こっちが殺されてしまうかもしれないのに」
3人とも食事を終えると、彼は手招きするように二人を呼ぶ。
「ちょっと一緒に来るかい?船にいたいなら僕一人で行くけど」
「それじゃあ一緒に行きます」
紡木と卯月、弥生の三人はアカメが斬るの世界へと転移して向かった。
*****
セリュー・ユビキタス
彼女がまだ幼い頃、都内の犯罪者に連れていかれ、人質交換ときて多額のお金を要求していた。その時にたった一人であった彼が全員を相手し、助けてくれた。彼女の父親は娘を助けてくれてありがとうと感謝し、娘も彼のことを忘れない。
「ありがとうございますっ…本当にありがとうございます!」
セリューにとって紡木は命の恩人であり、憧れの象徴でもあった。彼は背を向けて、品物等の褒美も貰わずに去っていった。
『私、ツムギお兄さんみたいに強くなるからね!』
彼女はこの帝都を守る為に、絶対に悪を許さないということを心に決めていたのだ。そして、
「あれって…ツムギさんっ⁉︎」
「セリュー!随分と大きくなったね‼︎」
2人はこうしてまた出会った。セリューは驚き、紡木は成長した彼女に喜で声を上げた。
「君の評判は聞いたよ!活躍してるみたいだって‼︎」
「お、お久しぶりです。お会いできたのは嬉しいんですけど、私は警備をまだしているので後からでも良いですがよろしいですか?」
「あ、うん…ごめんね。会うにしても君の事情もわからなかったし、いきなり過ぎてたから。それじゃあどの時間が空いてる?」
紡木はセリューとの久しぶりの再会で話したい事が沢山あったが、彼女はまだ警備の仕事中であった為に、積もる話は休憩の時にするのだった。
*****
こうして彼女の空いてる時間となり、ようやっと話すこととなる。
「それじゃあ、お邪魔します」
紡木はセリューの家に入ろうとしたが、前まで家族がいたはずなのに誰もいない。
「…そういえば、君の父親は見当たらないけど」
「父は…その、凶賊に殺されました」
娘は犯罪者に連れていかれそうなところを紡木が助けたのに、今度は父親が殺されてしまった。
(セリューの父親も助けたかったけど、そう言った連絡はしてないから…襲われたなんて分からなかった)
父親を助けることが出来なかったことに、紡木は落ち込んでいる。そんな連絡を神から受け取ったわけでもないため、知らなかった。
「そっか…本当にごめんね。なんか、失礼なことを聞いて」
「大丈夫です…父は最期まで立派でした」
「うん。良い人だったからね、君の父親は。最初に会ったのはかなり小さい頃だったよね。君がこの帝都で警備部隊に所属しているというのは聞いていたんだけど、こっちは仕事が沢山あって忙しかったんだ。
すぐに行けなくてごめんね?
一人で大丈夫だった?」
「貴方みたいに強くなるために、オーガ隊長に鍛えてもらってますし、それにコロもいるから私は大丈夫です!」
彼女の健気な表情を見て、紡木はほっとすると早速話を本題に変えた。
呑気にこれまでのことを話したい気持ちもあったが、彼女にも時間が限られてるためにすぐに話す。
「ねぇ、その腕を見込んで…もし良かったら僕らの仕事を手伝ってもらって良いかな?勿論報酬もあげるし、その報酬には君の力を上げれるものも含まれているかもしれないからね?
勿論まだこっちの正義側に入るとかってわけじゃないんだ」
その話をするとセリューは目を輝かせながら、紡木の話に食いついてきた。
「まさか!私も貴方と同じように出来るんですかっ⁉︎だったら私はあなたのいる方に所属してもらいたいですっ‼︎」
「ちちち、ちょっとおとととっうわぁ⁉︎」
セリューがいきなり頼もうと顔を近づけてきたので、紡木は椅子に座ったまま後ろに転んでしまった。彼はセリューに期待の眼差しを向けられ、狼狽えている。そのまま神に依頼された要項のコピー用紙を見せる。
「今回は僕一人じゃ難しいかもしれない。だから、僕はセリューに頼みに来たんだ。
君が戦えなかったら僕一人だけでも行くつもりだったんだけど…」
彼女にはヘカトンケイルという帝具を持っている。生物型の兵器であり、戦闘態勢に入ったら核を壊されない限りどんな怪我をしてもすぐ元どおりになる。
「よ、よろしく」
手を繋ごうとすると、横からコロが紡木の手を噛み付く。
「アイデデデテッ⁉︎は、放していだぁぃ!」
「こら、コロ。私の恩人に噛み付いたりしないの」
セリューは協力的だったが、一緒についていった卯月と弥生の艦娘は何もしなくても良いのかと困っていた。
「あの…私達もその仕事に加わるの?」
「まだ所属すらもしてないのに君達二人を危険に晒させるわけにはいかない。二人はまだ客人なんだ。話は聞いたとしても協力なんて無理だよ。
それに、仕事仲間じゃないんだよ」
「あの、そこの二人は?」
「紹介するよ。彼女らは卯月と弥生なんだけど僕の初めての客人なんだ。
僕は独り身だからね」
セリューに紹介するために二人を連れて行ったが、仕事面は仲間として勧誘しなければ彼は頷かない。
「なら助けて貰った恩返しってことでいい?あの時助けてもらったから…貰うだけ貰ってもこっちだって気味が悪いし」
「それでも絶対駄目‼︎君達の持っていると艤装とかの武器だってまだ直してないんだから‼︎」
『艤装?んならちゃちゃっと無償で直してやろうか?』
携帯画面から勾玉の形をした神が出現した。突然のことにコロは戦闘態勢に入り、セリューは距離をとりつつ驚いている。
「あの紡木さん…こ、これって一体…」
「また君か。唐突に出てくるのはやめてくれないか」
そこから先は神の説明が始まった。セリューには神自身のこと、紡木には無償で与えられるだけ与えて二人だが、それでは余計に紡木に対して友好よりも疑惑の方が高くなってしまうということを。
もし艤装を直れるならギブアンドテイクという形で二人を加えても問題ないかという話に持ち込まれていく。
「なんでそんな勝手なことを。二人を加えるかどうかは僕が決めるこ『セリューも連れて行けなかったら、お前一人で未解決のまま事が悪くなったらどうすんだボケ』で、でもっ…」
紡木一人だけではどうにもならずに、その転生者のせいで事態が悪化すればどうにもならなくなる。それならば最低でも連れていった艦娘だけでも討伐に協力してくれるのならばマシだという事になった。
セリューの方は
「私もあまりに興奮し過ぎて、所属って言っちゃったけど。やっぱり取り下げてください。
あ、でも!協力についてはやりたいと思ってます!」
『だそうだ。これで四人だな』
「ありがとう…でも」
協力者が増えたとはいえ神が横から入ってきたせいで、釈然としなかった。もともと艦娘については戦闘をさせるつもりではなかったが、このまま甘やかしても疑いの目を向けられるという言葉も納得はしたが、それでも気に入らなかった。
*****
はぐれ正義側の転生者の討伐
その転生者は魔法つかいプリキュアの世界で暴れており、その者の逮捕及び討伐を義務付けられた。
経過時間も、セリューがいる世界ではそのまま静止状態になっているため時が経つことはないと神は言っている。はぐれ正義側の転生者は世界に介入したまま、やりたいようにやろうとしている。
「あと、これを身につけておいてくれ。戦闘になったら君がいつも着ていた戦闘服に切り替わるから。君の服だと目立つし、この世界だとその格好は不審に思われてしまうんだ。僕も世界に介入する際は服や能力とかは細かく事前に準備しておかないと、無闇にこの世界にいる無関係な人や他の人に怪しまれるからね?」
「そうですか…あの…討伐ということは、殺しても構わないということでしょうか?」
「うん、そうなるね…討伐対象にされている転生者には船を利用し、あらゆる世界に介入して迷惑をかけているからね。こちらだけじゃなく他の世界のルールを汚し、罪人といっても良いくらいの卑劣なことをやっている。
捕縛じゃなくて討伐って書いてある以上、殺す他ない」
その転生者の声といった人体的な部分の特徴や少女の誘拐、殺人、性的暴行などの罪状が記されている。その罪状には彼が彼女達に具体的にどんなことをしていたというのも綿密に記されていたが、紡木にはそんなものを無垢な3人に到底言えるわけがなかった。
(こんなこと言えるわけがない…)
「兎に角、君達は襲われてもいつでも戦えるように準備すること。
どこから狙ってくるか分からないからね。二人ともたとえ恩返しとはいえ、見えないところから狙ってくる危険性があるから絶対に僕やセリューのどっちか離れないようにね?」
「大丈夫です!何があっても私も二人を守りますよ!」
セリューは得意げに言っているが、紡木はこんな女子に戦わせる事にも罪悪感はあった。
それだけではない。その凶悪犯罪者が狙おうとする人物は犯罪歴からして少女であることがわかる。よって、
朝日奈みらい
十六夜リコ
以上の二人にも接触してしまう可能性にも考慮しなくてはならない。警戒の理由は、その転生者をプリキュアの二人が成敗してくれるなんて都合の良いことは起こるわけがないからだ。
邪魔をしようとすれば、死者が大勢出るだろう。
もしもそんなことが起きているのなら、彼は既にプリキュアの誰か一人を攫うために正面で戦うよりも影から襲ってきている。
仮に彼女達二人と接触して、彼女らは対抗はできても、彼を
気絶させたところで復活すれば、またプリキュアの二人か、或いは無関係な他の誰かを襲うか捕まえて人質にするかだろう。最悪、プリキュアに敵対している敵側にヨクバールの魔法にかけられて魔改造にされても後々倒すのに面倒な事になる。
「つまり、プリキュアとその敵が関わってしまう前にこいつを討伐する…それが最善かな。見つけ次第正義側結界を張って、こっちから討てればいいけど…」
依頼されたものの事態が悪化する前に4人でそのはぐれ転生者を始末しなくてはならない。しかも、彼自身化け物と悪党の討伐退治はやったことはあるが
(転生者との戦いなんてしたことないよ…でもやるしかないよな)
転生者同士による対人戦はまだ未経験であり、罪状は知っても能力が分からない以上先の不安はあった。
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