閃乱カグラ外伝 ヒーローは動く (智昭)
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プロローグ

初投稿です。正直、国語力はあまりなくて少々読みづらい所もあるかもしれませんが、一生懸命書きました。閃乱カグラを知っているひとをはじめ、知らない人にも読んでいただけるよう頑張ります。


 国立半蔵学園。

浅草のマンモス学園という呼び名の高い名門校だ。

そんな半蔵学園には、特殊機密諜報員の育成を目的とする特別学科、「忍クラス」こと忍学科が存在する。

そんな忍クラスでは、教師の霧夜のもと五人の若き忍達が今日も修行に励んでいた。

 

 ここは、忍クラスの為に設けられた地下の訓練室である。

 そんな訓練室に、一人の男の声が鳴り響いていた。

「始め!」

声の主は忍クラスの教師、霧夜だった。

何やら、バッティングマシーンを使い、生徒の修行を行っていた。

相手は、伝説の忍・半蔵の孫の飛鳥であった。

バッティングマシーンから発射される球を、自身の二刀流で軽やかに斬り捌いていた。

 

 「飛鳥、動きに無駄がある。余計な事を考えず、相手の行動を探るのだ」

「はい!霧夜先生」

 霧夜のスパルタな指導に対し、飛鳥はヘコまず真面目に指導を受け止めた。

なぜなら彼女には、いつか祖父(半蔵)のような立派な忍になるという大きな夢があるからだ。

自慢の元気をバネにし、飛鳥は真っ直ぐな志で修行に臨むのであった。

 

 一方その隣の稽古場では、二人の少女がこれまた大きな胸を揺らしながら激戦を繰り広げていた。

 

 一人は、黒髪ロングが特徴的のクラス委員長、斑鳩だ。

秘刀『飛燕』で、軽やかな剣捌きをみせている様子。

 そんな斑鳩に対し、相手の少女は対等な闘いぶりをみせていた。そう、その相手とは同級生の葛城であった。金髪ロングの髪型に、今にも(胸が)見えそうなボタン全開の制服、足には重量感のある足甲を装着し組み手に臨んでいた。

一般的に考えると、とても無防備のように思われるが、彼女(葛城)にとっては関係なかった。

斑鳩の素早い攻撃を次々と足甲で防いでいた。

しかし葛城は、なぜか守ってばかりで攻撃しません。

それに対し斑鳩は。

 

 「葛城さん、守ってばかりでは修業になりません。もっと真剣に取り組んでください」

「アタイは、いつでも真剣さ。それに、アタイがお前の攻撃を守れば守るほど、鮮やかに揺れるお前のオッパイが見放題だ」

葛城は冗談でセクハラ発言を放ったが、真面目な斑鳩にとっては火に油を注ぐ発言へと変わる。

「か〰つ〰ら〰ぎ〰さん。その煩悩、私がジキジキに断ち切って差し上げますわ」

「うひょ~、これまた(胸が)大きく揺れてる。これだから組み手はサイコー」

こんな感じで、2人の組み手は常に接戦となるのだ。

 

 そして、その稽古場の隅っこでは、体操着を着た2人の少女が柔軟体操を行っていた。

 

 1人はツインテールの髪型、右眼には眼帯、さらに口にはスルメをくわえたクールな1年生の柳生。

もう1人は、桃色の髪と花の形をした瞳が特徴、同じ1年生の雲雀。

2人はペアで前屈を行っており、柳生は雲雀を押していた。

 

 「イタタタタ…柳生ちゃん、痛いってば」

「雲雀、この間よりも(体が)固くなってるぞ。パフェの食べ過ぎだぞ」

「だってあそこの大盛りパフェは、絶品なんだもん」

 

 雲雀は、クラス1の食いしん坊なのである。

よく、商店街の行きつけのスイーツ店で大盛りパフェを、これでもかと思うほど食べているらしい。

「柳生ちゃんだって、スルメの食べ過ぎでお腹がポッコリしてるよ」

負けじと雲雀も、柳生の体型をいじりだすも。

「俺のポッコリお腹は、チャームポイントだ。俺は俺、雲雀は雲雀だ」

っと、柳生はあっさり言葉を返した。

「もぉ、柳生ちゃんのいじわる~」

2人はいつも一緒に、行動を共にしている。

 

 柳生には、交通事故で亡くなった一人の妹がいる。

雲雀はその妹に似ていることから2人は今のように仲良くなり、共に忍の道を歩んでいるのだ。

2人仲は、まるでダイヤよりも硬い信頼感で結ばれている様だ。

 

 そして、時間もあっという間に過ぎ、修業終了時間を知らせる鐘が室内に鳴り響いた。

霧夜は、生徒を集めて挨拶を始める。

 

 「本日の修業は、ここまで。今回の修行で見られた反省点は、各自で復習しとくように。ただ、くれぐれも無理はしないようにな。では、解散!!」

「お疲れさまでした」(一同)

少女達は一礼し、本日の修行は終了した。

 

 ここまでは、いつもと変わらない半蔵学園・忍クラス。

少女達は己の忍道を信じ、立派な忍になるため常日頃努力を惜しまず、汗水たらし修行に励んでいるのだ。

 ただ、転機というのは知らない内に訪れる。それは、その日の夜のこと。




 プロローグは、以上です。次から展開が変わっていきます。
 正直、こんな感じで良かったか心配です…。でも僕はこれからもイケるだけ投稿します。そのために、もっと閃乱カグラについて勉強し、話の範囲を広げられるようにします。
 それでは、次もよろしくお願いします。


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憧れのヒーロー!
第1話 セクハラーメンマン、出る!!


 ここは、忍達が身を休める忍寮だ。

寮では暗転時間が過ぎ、少女達は修業での疲れを癒すため、安らかな睡眠をとっていた。

 

 その一方、ある一つの部屋から少女とは思えない大きな鼾が聞こえていた。その主は、葛城であった。

よほど修業で疲れたのか、ハンモックに揺られながら気持ち良さそうに眠っていた。

「んん…ト、トイレ…」

尿意で目が覚めた葛城。

睡魔に襲われながらも、体をふらつかせながら部屋を出てトイレへと向かった。

 

 そして、トイレでの用事を済まし葛城は部屋へと戻ろうとした。

「ハァ~スッキリした。

それにしても、修業の時に張り切りすぎたかな。

なんだか足が痛むんだよな」

そう言って、葛城は近く壁に手を掛けた。

 

 すると。

『カチッ』

壁の一部が、突然スイッチの様に凹みだした。

「ん…って、なんなんだコレ!壁に…スイッチ?」

あまりにも突然な事だったので、葛城は若干戸惑っていた。

さらに。

『ゴゴゴゴゴ』

なんと壁の面が自動扉の様に横開きになり、中から謎の扉が出現した。

「な…と、扉だと…。」

見たこともない扉の出現に、葛城は驚きを隠せませんでした。

 

 さっきまで睡魔に襲われていたのが嘘かのように、眠気は完全に吹っ飛んでいた。

葛城は、恐る恐る警戒しながらもその扉に手を伸ばしてみることに。

扉を開けてみると、真っ暗で何も見えません。

「寮にこんな隠し部屋が…。一体中はどうなってるんだ」

葛城は非常用にと胸の谷間にしまっていた小型懐中電灯を取り出し、光を照らしてみると。

「こ、この部屋…し、資料室?」

なんと中には、大量の本や辞書、巻物が収納されている棚がいくつもありました。

まるで、小さな図書室のようだ。

 

 「何だか、見たこともない巻物や本ばかりだな。これは、斑鳩のヤツが見たらさぞかし喜ぶだろうなぁ」

斑鳩の事をボソッとつぶやきながら、部屋の中を見て回る葛城。

見て回っていると、足に何かが当たりました。

気づいて灯りを照らしてみると、葛城は、ある一つ本を踏んでいました。

「うわっ、しまった。どこも汚れていないよな。もし汚れてたら弁償し…あれ?この本は…‘ヒーロー図鑑’」

 

 葛城が踏んでいたのは、ヒーローの図鑑であった。

特撮からアニメ、アメコミ、魔法少女など、様々なヒーローの事が綴られている。

「へぇ~こんなモノまで置いてあるなんてなぁ。しかし、一体誰がこんな所に隠し部屋を⋯他の4人は知ってるのか?」

確かに、もし隠し部屋が見つかったとなるとそれなり報告があってもおかしくないが、他の4人(斑鳩・飛鳥・柳生・雲雀)は勿論、教師の霧夜からもこの部屋の事を教えてもらった覚えがない。

 

 葛城は、『もしかするとこの事を知っているのは、自分だけなのでは』と考えた。

「そうだ!この部屋をアタイだけのプライベートルームにするか。ここにテレビを持ち込んでプロレス鑑賞したり、テレビゲームやったり、それから…」

葛城は、新しい自分専用の部屋が出来たので凄く盛り上がっていた。

 

 「ふあぁ~(あくび)、トイレ、トイレ」

すると、廊下から一人の少女の声が聞こえた。

声の主は飛鳥だ。どうやら葛城同様、尿意で目が覚めてトイレへと向かっている様子だ。

「げ、あの声は飛鳥。この部屋の事がバレたらまずい」

葛城は、隠し部屋の扉を急いで閉め、飛鳥に見つからないよう近くの物陰に隠れた。

「せっかく気持ちよく寝てたのに。水を飲みすぎたかな」

「ふぅ…間一髪だったぜ」

なんとか、飛鳥に隠し部屋の事を知られず、その場を凌ぐことが出来た。

 

 葛城は、こっそり部屋へと戻った。

「危ない、危ない。あと何秒も遅かったら、隠し部屋の事がバレる、所だった。あと、こんなお宝にも出会えたし」

葛城が胸元から取り出したのは、先程の隠し部屋に置いてあったヒーロー図鑑であった。

「こんなお宝、あそこに置いておくなんて勿体ないなぁ。では、早速」

葛城はヒーロー図鑑を開いき、読み始めた。

「おお、懐かしいな。こんなヒーローいたなぁ。おぉ、こんな裏設定まで」

 

 ヒーロー図鑑には、葛城も知らない裏情報がたくさん詰まっていました。葛城の興奮は、していた。

「そうだ、あのヒーローは載ってるかな。アタイが子供の頃、1番ハマっていたヒーロー…『美少女戦士 ラーメンガールズ』」

 

 葛城は、自分が子供の頃に1番ハマっていたヒーローの情報を探し始めた。

「ラーメンガールズ、ラーメンガールズ。ラーメン大好きな美少女が変身するラーメンガールズ。悪の組織『カムクラ次郎』に立ち向かうラーメンガールズ。どこだ~、どこだ~」

葛城は、次々とページをめくり、ラーメンガールズの情報を探した。

しかし、ページをめくればめくるほど表情は暗くなり、とうとう全てのページをめくりきっていた。

その時の葛城は、先程の興奮が嘘のように冷めきっていた。

 

 「ラーメンガールズが…載ってない。何でだよ…あんなに人気だったのに…何でだよ。ヒーロー図鑑なんだろう…コレ」

子供の頃の憧れであったヒーロー、ラーメンガールズは図鑑に載っていなかった。

「何でだよ、嘘だ!これは何かの間違えだ」

葛城が再びページをめくろうとしたその時、本のタイトルを見ると。

「な!お、‘王道 ヒーロー図鑑’…」

なんと葛城は、タイトルに書かれてた‘王道’という文字を見逃していたのです。

この2文字を見た途端、葛城の感情は、怒りへと変わった。

「王道ってなんだよ。ラーメンガールズは、王道じゃないっていうのかよ…何でだよ…一体どうなっているんだよ」

 葛城は、悔しがっていた。

「何が王道ヒーロー図鑑だよ…ヒーローは、王道じゃなきゃいけないのかよ!」

葛城は怒り、ヒーロー図鑑をゴミ箱に投げ捨てた。

「なんなんだよ。あんなのヒーロー図鑑でもなんでもねーよ!」

 

 葛城は、再びハンモックに横になり考えた。

「王道って、なんだよ…ヒーローは王道じゃなきゃいけないのか。いや、そんなこと無いさ。ラーメンガールズだって、世界平和を守るヒーローなんだ」

 

 ラーメンガールズは、葛城の子供の頃の憧れなのであった。

大きくなったら、自分もラーメンガールズになりたいと親に何度も話した事を、葛城は今も覚えています。

 

 「ハァ~(ため息)、ラーメンガールズは邪道って事か。何で世の中は王道だとか邪道だとか決めるんだ。邪道のヒーローでも、頑張っているんだけどな…まぁ、頑張ってのはわかってるけど、なんか納得出来ないんだよな」

 葛城は横になり、そして悩んだ。

もし、王道ヒーローと邪道ヒーローというジャンルがあるとすれば、皆はどちらを信用するのか、どちらに未来を託すのか…っと。

「アタイがヒーローだったら、どうなっていたかな…」

小言をつぶやく葛城。

 

 すると、彼女は閃いた。

「ん!?アタイが…ヒーロー…ヒーロー…ヒーローに…なる。…そうだ、それだ!!」

何を思いついたのか、葛城はハンモックから起き上がり机に向かいました。

そして、紙とペンを用意して、あるモノを描き出した。何かのコスチュームのようだ。

「王道ヒーローがなんだよ。

もし、ヒーローに王道や邪道があるなら、アタイがその邪道ヒーローになってやろうじゃないか」

 

 なんと葛城は、自分がヒーローになると言いだした。しかも、王道とは逆の邪道ヒーローにと。

「たとえ周りが反対しても、アタイは止まらない。邪道ヒーローだって、世界の為に闘っているんだ。それを知ってもらう。邪道ヒーローだって未来を守れる」

葛城は熱く語りながら筆を進め、気がつけば夜明けの時刻に達していた。

そして、ついに…。

「ハァ、ハァ、ハァ…で、出来た」

葛城の目元には隈が出来ており、息遣いも荒く、今にも眠りそうな状態でした。

 

 「邪道ヒーローの頂点に立ってみせる。アタイが…いやっ『セクハラーメンマン』が…」

 葛城は、コスチュームを描き終えると、そのままぐっすりと眠り始めました。

 

 この時彼女(葛城)は、これから先に様々な試練が襲い掛かってくる事をまだ知らなかった。

これはヒーロー達の、作品の枠を越えた闘いの始まりでもあった。




 第一話は、ここまで。さて、葛城を待ち構える試練とは、一体どんなモノなのか。そして葛城は、邪道ヒーローとしてのトップに立てるのか。
 第二話も、是非よろしくお願い(_ _)


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第2話 同級生は、生徒会探偵!?

 2話目が完成!今回も一生懸命書きました。でも、プレッシャーのせいか、話が上手く伝わるかが正直心配です。
 今回のお話は、早速セクハラーメンこと葛城に、試練が訪れます。どんな試練かは、読んでからのお楽しみにです。


時刻は、朝。忍クラスでは、朝礼が始まろうとしてた。飛鳥・斑鳩・柳生・雲雀の4人が集まっている中、そこに葛城の姿はありません。

 

 「もうすぐ朝礼なのに、葛姉はまだ来ませんね。起こしに行ったけど、部屋の鍵は閉まってたし」

後輩である飛鳥は、葛城のことを心配していた。

その一方で、真面目な斑鳩は。

「どうせまた、深夜にプロレス鑑賞でもしていたんですよ。葛城さんも葛城さん!自業自得です」

「うん、葛城は葛城だ!」

当たり前かの様に、厳しい意見を言う斑鳩。

柳生も同情する。

「2人とも、葛姉に冷たすぎるよ」

「そうだよ、雲雀もずっと葛姉の事が心配だもん」

逆に、葛城を心配する飛鳥と雲雀。

 4人の思いをよそに、葛城はどうしているのか。

 

 そんな中、1つの煙玉が少女達の前に転がり、破裂する。

「ケホケホ(咳き込み)…。今日もまた、すごい(煙の)量…」

少女達が煙たがる中、教師の霧夜が姿を見せる。

「おはよう、お前達」

「おはようございます、先生」(一同)

少女達が挨拶すると、霧夜は早速異変に気づく。

 

 「おいお前ら、葛城はどうした?」

「それが、今朝起こしに行きましたが、返事がなくて」

「もしかすると、早めにここへきていると思いまして。でも、ご覧の通りまだで…」

 葛城の遅刻を知った霧夜は、もううんざりしていた。

「はぁ(ため息)、アイツの事だ、たぶんまた夜遅くまでプロレス番組でも見てたんだろ」

偶然にも、斑鳩・柳生と同じ予想をする霧夜。それほど葛城の遅刻パターンは想定されているようだ。

 

 「まぁいい。それでは早速授業を始めるぞ」

霧夜はチョークを手にし、早速授業を始めようとする。すると廊下から、いかに急いでいる事がまるわかりな足音が聞こえた。

その音はどんどん近くなり、そしてようやく教室の中へ。

「おっぱよう!」

「葛姉!」

葛城は、遅刻したにも関わらず、いつもの明るさで挨拶し、何事も無かったかのように教室へ入った。

「セーフ!」

「セーフではありません 」

葛城の発言に、斑鳩は冷静にツッコミを入れた。

 

 もちろん、霧夜も黙っていなかった。

「葛城、今まで何をやっていた 」

霧夜は、葛城になぜ遅刻したのかと、理由を問い詰めた。

「へっへっへー…いや何つうか…その…ついプロレスが面白すぎて…」

「ハァ(ため息)、やはりか…」

葛城の遅刻理由を聞いて、ガッカリした感情を抑えきれず、霧夜はため息をついた。

「もう、いい。廊下で反省してこい」

「は…はい」

葛城は、そのまま廊下へと向かった。そんな葛城を見た雲雀は、ある事に気づく。

「葛姉の顔に、大きな隈が出来ていたね」

「よっぽど長い試合だったのかな?」

「おいお前達、気にせず授業を始めるぞ!」

 

 葛城の目の隈を見て心配する少女達。

廊下でバケツを持ちながら宙吊りになり、葛城は反省したと思われたが、途中から睡魔に負けて教室まで聞こえる鼾をかいて爆睡していた。

その結果、霧夜から愛のムチ(拳骨)と反省文提出の宿題を受け取ったらしい。

 

 時間は経ち、その日の授業は終わった。

少女達は、寮へと帰宅した。

葛城だけは、忍クラスの掃除と反省文提出の為、居残りを受けていた。

 

 そして、何やら斑鳩がリビングの椅子に座り込み、考え事をしてた。

「う~ん…やっぱり変ですね」

そんな斑鳩を見つけて、飛鳥は声を掛けてみた。

「どうしたの、斑鳩さん?」

「何かあったのか?」

「雲雀達でよければ、力になるよ」

柳生と雲雀も飛鳥につられて斑鳩を心配する。

斑鳩は、そんな3人に自身が考えていた事を打ち明けた。

 

 「別に対した事ではありませんが、今日の葛城の様子が変に思って」

「葛姉が?」

どうやら、斑鳩は葛城の事に疑問を抱いていた様子。

そして、斑鳩の口が再び動き出した。

「葛城さんがプロレスを見て夜更かしした事は、過去に何度かありましたが、今日はいつもと違っていて…」

「そうかな?雲雀はいつもと同じだと思うけど」

「いいえ、雲雀さん。私がまず変に思ったのは、葛城さんの言動です」

「言動?」

斑鳩は、話を続けた。

 

 「いつもの葛城さんでしたら、遅刻理由を自分から口にしません。霧夜先生の誘導尋問により、ようやく話しておられます」

「言われてみれば、そうだったかも」

葛城とは、3年間忍クラスを共に過ごしてきた斑鳩。

付き合いが長い分、彼女の行動パターンを把握している様子であった。

飛鳥達も思わず頷く。

「雲雀は多分、先生に怒られるのがイヤだから、覚えていたんだと思う。

雲雀は、逆に葛城の事をポジティブにフォローした。

 

 しかし、斑鳩の推理は止まらない。

「あと、葛城さんの手もおかしくて」

「葛姉の手?」

斑鳩の発言に困惑する3人。

斑鳩は、あの短時間で葛城の手にも注目してたらしい。 

 

 「葛城さんの右手の、小指から手首にかけて黒い跡の、様なものが付いていました」

「黒い跡?」

「はい!おそらく鉛筆か、ペンの跡なんではないかと…」

「アイツの事だ。プロレスを見ながら、選手の情報でもメモってたんだろ」

斑鳩の疑問を冷静な答えで予想する柳生。

確かに、プロレス好きの葛城なら、試合を鑑賞しながらデータを取っててもおかしくはない。

しかし斑鳩は、納得している様子ではなかった。

「それは、違う思います。実は前にこんな事があって…」

 

 斑鳩は、3人にある出来事の記憶を話し始めた。

話は、今から2年前に遡る。

 

 ある日の夜、葛城が自身の部屋でプロレス鑑賞をしている事に気づき、斑鳩は文句を言いに行ったらしい。

 

「よし、イケイケ!そこだ~」

「ちょっと葛城さん、今何時だと思っているのですか」

葛城の後ろには、斑鳩の姿があった。

「何だ、斑鳩か。人の部屋に入る時ぐらいノックしろよ」 

「ノックならしました!それも何回も!」

葛城は、小型テレビにイヤホンをさしていた為、斑鳩のノックが聞こえていなかった様子。

「今、いいところなんだよ。お説教なら後にしてくれ」斑鳩の発言に動じることもなく、プロレス鑑賞を続行する葛城。

それでも、真面目な斑鳩は諦めません。

「いい加減にしてください!忍とあろう者が、夜更かしなんてイケま…あれ?」

何かに気づいた斑鳩。

 

 「この試合って、確か前にも見えませんでしたっけ?」

なんと葛城は、一度見た試合を見直していた様子。

「ああ、そうだ。アタイは、選手のデータをまとめたり、メモったりすることが嫌いでな。だから、こうやって目に焼きつくまで同じ試合を何度も見るのさ。お、そこだーイケイケ!」

 

 葛城の美学を聞いた斑鳩は、バカバカしくなってきました。

「ハァ(ため息)…。そういうところを学業で活かすべきかと…」

その後、葛城は寝坊し、霧夜から初めての愛のムチ(拳骨)を受け取ったのは、また別の話である。

 

 という出来事があったことを、斑鳩は3人に話した。話を聞いた3人は、斑鳩の観察力に驚きを隠せません。

「凄いよ、斑鳩さん」

「まるで、名探偵みたい…」

「これが、クラス委員の力か…」

推理を終えた斑鳩は、結論を出す。

「結果、葛城さんが遅刻しのには、何かに別の理由があるのではないかと、私は思います」

 

 斑鳩の推理に全員の意見が一致した。

「じゃあ葛姉は、私達に何か隠し事をしているって事ですか?」

「はい、おそらく…」

「でも、雲雀達に一体何を隠しているの?」

葛城が隠し事をしているのを知った4人は、若干心配になってきました。

 

 しかし、柳生からこんな一言が。

「迷っているより、調べた方が早いんじゃないか」

この発言に、一同は耳を疑った。

「柳生さん、今何と?」

斑鳩は、聞き返した。

「迷っているより、葛城の部屋に入って謎を探ればいいんじゃないか」

なんと柳生は、葛城の部屋入って謎を解く作戦を提案したのだ。飛鳥と雲雀は、止めた。

「ちょ、柳生ちゃん。それはいくらなんでも、やり過ぎなんじゃ…」

「そうだよ、柳生ちゃん!」

そんな中、斑鳩の口から。

「行きましょう!皆さん」

「え!?」(飛鳥・雲雀)

 

 斑鳩の思わぬ発言に、2人は驚きを隠せません。

しかし、斑鳩には同級生である葛城の事を誰より心配していた。

「確かに、私がやろうとしていることは、クラス委員としていけない事です。でも、葛城さんに聞いたとしても素直に話すとは限りません」

斑鳩の思いを語り出した。

「勝手な妄想かもしれませんが、葛城さんに何かあってからだと手遅れです。私達は、チームとして仲間(葛城)の抱えている事を、共に分かち合うべきだと思います」

その思いは葛城だけでなく、チーム全体の絆を確かめる意味での熱い思いであった。

その思いを知った飛鳥と雲雀は。

「斑鳩さん…そうだね!葛姉は私達の仲間だもんね」

「うん。雲雀だって葛姉を助けたい。そして、チームの絆を守りたい」

 

 斑鳩がいかに葛城を心配している事を知り、飛鳥と雲雀は、自分達も葛城の抱えている物を分かち合う決意をした。

「行こう、みんな」

「はい、行きましょう」

「葛姉の部屋へ!」

「部屋に入るだけで、大冒険に出かのようなセリフだな 」

 何がともあれ、少女達は葛城の謎を探るために、部屋へと向かった。

 

 「ヘックシッ(くしゃみ)。誰かアタイの噂でもしているのか?」

その事を知らない葛城は、半蔵学園で居残り中。

これぞ葛城…いやっ、セクハラーメンマンに訪れた最初の試練でもありました。

そう、セクハラーメンの計画がバレるかバレないか…

 果たして、葛城の部屋にはどんな秘密がかくされているのか。

そして、セクハラーメンの邪道ヒーローへの道は、どうなってしまうのか…。




2話目終了。こちらでいろいろトラブルはありましたが、なんとか書き終えました。閃乱カグラに関しては、まだまだ足りたい事だらけですが閃乱カグラへの愛は負けません。
 これからも、もっと勉強して次も盛り上げていきたいと思います。よろしくお願いします(_ _)


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第3話 出動!!斑鳩捜査団?

 葛城の遅刻で、いろいろと気になる点を発見した少女達。もしかしたら、自分達に内緒で何かを抱え込んでいると思い、少女達は葛城の部屋の捜索を試みる。
 果たして、葛城の秘密とは!?


 いろいろと相談した結果、4人は葛城の部屋の前へとやって来ました。

なぜやって来たかというと、葛城が自分達に内緒で、何かを行っている事が本当なのかを探る為であります。

 

 「本当にやる気なの斑鳩さん?」 

「雲雀、ちょっと怖い…」

決断したの良かったものの、やはり抵抗を感じている飛鳥と雲雀。

「何を今さら言っておられるのですか。これはあくまで、葛城さんの為であり、私達チームの問題でもあります。この葛城さんの部屋から、遅刻の原因となったモノを探すのです」

斑鳩は、ただ葛城の秘密を知ろうとしている訳ではない。

自分達に何も話さず、1人で何かを抱え込む葛城に対し、もっとチームを信じてほしいといった思いが彼女の心にありました。

だからこそ、葛城をチームの仲間・家族として助けたいと考えているのです。

 

 「アイツ(葛城)に聞いても、絶対隠すからな。こうした方がいい」

柳生も照れ臭そうに言い回すが、斑鳩と同じで葛城を助けたいという気持がある。

「そ…そうだよね!チームの為にも、私達が頑張らなきゃだめだよね!」

「うん。雲雀…怖いけど頑張ります」

 

 そして4人は、葛城の部屋へと入った。すると、飛鳥が思わず一言。

「意外と普通の部屋だね」

葛城の部屋は、そんなに散らかってる訳でも無く、意外片付いているようだ。

それはさておき、4人は部屋を調べ始めた。

「では早速、手分けして探しましょう」

 

 4人は、部屋の捜索を始めた。

クローゼットから押し入れ、骨董品の裏側、屋根裏など、とにかく小まめに探していた。

すると、クローゼットを捜索していた飛鳥が、何かを発見した様子。

「あっ!これは」

一同は、手を止めて、飛鳥の元へと向かった。

「何か見つけましたか、飛鳥さん!」

「これっ、私が葛姉に貸してた手ぬぐい。こんな所にあったんだ」

 飛鳥が見つけた手ぬぐいは、葛城の遅刻とは関係なかった。

「飛鳥さん!真面目に探してください!」

「あっ!ごめんなさい」

 

 再び、部屋の捜索を始める4人。

すると、今度は雲雀が何かを見つけた。

「あ~!これは!!」

「雲雀!」

「何か見つけましたか?」

今度こそ、目的のモノをみつけたか!

「月刊コミック乳々(にゅうにゅう)の抽選で、10人にしか当たらないプレミアムキーホルダーだ。雲雀、100枚ハガキを送ったけど全部はずれだったんだ。まさか、葛姉が当たってたなんて…」

「オホン(咳払い)」

「は!ご、ごめんなさい…」

雲雀が見つけたキーホルダーも、葛城の遅刻とは関係なかった。

 

 その後も4人は、部屋の中を隅から隅まで調査を行ったが、どこを探してもこれといった証拠が1つも見つかりません。

ある所を除いては。

 

 「あとは、この引き出しだけだな」

「いかにも何かが隠されていそうだね」

4人が最後に目を向けたのは、葛城の勉強机の鍵付きの引き出しである。

確かに鍵付きのとなると、よっぽど見られたくないモノが中に入っている可能性が高い。

「でも斑鳩さん、これをどうやって開けるの?鍵はたぶん葛姉が持っているし…」

「問題ない!俺が開ける」

飛鳥の心配をよそに、柳生は胸元から一本の針金を取り出した。

なんと、ピッキングで開ける作戦に出た。

 

 柳生は、針金を鍵穴にさし、手慣れた手つきで鍵を開けていく。

「こ、これはあくまで葛城さん為でもあり、私達チームの為です。プライバシーの侵害ではありません」

斑鳩は、急に抵抗を感じたのか、慌てて一言添えた。

「いや、プライバシーの侵害っぽいけど」

思わず、斑鳩の一言にツッコミを入れる飛鳥。

 

 そうこう話している間に、鍵は開いた様子。

「よし、これで開くはずだ」

鍵が開いたことを知り、一同に緊張感が奔る。

そして斑鳩は、引き出しの取っ手に手を当てた。

「ここまで来たら、後には引けません。皆さん、心の準備は出来ましたか?」

「う、うん」

「雲雀…やっぱり怖いなぁ…」

「安心しろ雲雀!俺が付いている」

4人は、冷や汗をかきながらも、引き出しを開ける事を決意した様子。

「では…参ります!」

斑鳩が取っ手を引こうとしたその時であった。

 

「こら〰!」

背後から一人の少女の声がした。

4人が振り返った途端、少女は目に止まらぬスピードで近づき、斑鳩の爆乳を鷲掴みする。

「きゃあ!!」

「アタイの部屋を荒らすなんて10年早いっつーの」

「か、葛姉!!」

なんと、葛城が居残りを終えて寮へと帰ってきていた。

「ちょっと、葛城さん…そ、そこは…きゃあ!」

自分の部屋に侵入し、勝手に秘密を探ろうとした罰として、葛城はいつもより激しくセクハラ(乳揉み)攻撃を斑鳩へ行っていた。

 

 「アタイの部屋を荒らし代償は、大きいぞ~」

「きゃあ!こ、これはその…きゃあ!プライバシーの侵入では…あん!」

「ほれほれ、真面目委員長にはいつもより激しく…これが終わったらお前らもな!」

「ギクッ!!」(飛鳥・柳生・雲雀)

 残りの3人は、こっそりと逃げようとしたが、手遅れであった。

「ま、待って葛姉!これには事情が…。私達は葛姉の為に…」

「言い訳は、無しだぞ。さーて、今日は揉めるだけ揉んじゃうぜ~」

「うわ~!」

葛城は、目を光らせながら3人に向ってセクハラ攻撃をいつも以上に炸裂させた。

 

 柳生と雲雀は何とか回避したものの、飛鳥と斑鳩に関しては『もう絶対に、葛城の部屋は入りたくない』と心に焼き付くまで、揉まれ続けたらしい。

 

 その後、斑鳩は葛城に全てを話しました。

「あ~そういうことか…。でも、だからといって勝手に人の部屋を捜索することないだろ」

斑鳩の意見に対し、葛城は正論を返した。

「いいえ、葛城さんに話しても絶対隠します!」

「グサッ!」

正論を返したつもりが、逆にキツい言葉で返された。

「葛城さんは、1人で何事も抱えすぎなんです。こういう時こそ、私達を信用してください」

「そーだよ葛姉。私達仲間なんだから」

「雲雀、心配したんだから」

 

 3人は、葛城に思っている事をぶつけました。

「お、お前ら…」

「葛城さん、お願いです。私達に隠している事を、打ち明けてください、お願いします」

「私からもお願い葛姉!」

「雲雀も、お願いします」

3人は、葛城に深く土下座し、自分達にも秘密を打ち明けるようお願いした。

「お、おい、そんな土下座なんて大袈裟だろ。べ、別にそんな土下座してまでお願いすることじゃ…」

これには、さすがの葛城も焦りだした。

 

 3人がの土下座を見て葛城は、動揺を隠せない。

もしかして、『自分が隠している物を見せない限り、この時間はずっと続いてしまう』と、心の中で思っていた。

そんな中、4人はあることに気づく。

「あれ、柳生のヤツがいないな」

「え、柳生さんが?」

なんと、いつの間にか柳生姿がなかった。

「さっきまで一緒にいたんだけど…」

一同が心配する中、ある物音が聞こえてくる。

それは、何かの鍵を開けている様な音です。

 

 「この音…まさか…」

葛城は、恐る恐る後ろをふりかえった。

「よし、開いた」

「あ〰〰〰〰〰〰〰〰〰!」

なんと柳生が、話の間にスキを突き、引き出しの鍵を開けていました。

これには葛城も、予想外です。

「柳生さん、いつの間に!」

「まっ、待て!その引き出しの中身は…」

葛城は柳生を止めようとした。

しかし柳生は、引き出しの中身をさっと取り出し、葛城を避けて3人の元へと戻った。

「あ〰柳生〰 」

「柳生ちゃんナイス!」

葛城の動揺レベルは、もうMAXに達していた。

3人は、柳生が引き出しの中から持ってきた物を、早速拝見した。

「これが葛姉の遅刻の原因…」

 

 それは、何かが書いてある書類のような物でした。

「こ、これは…ぷ…プロレスの情報資料!?」

「エーーーー!!」

「やはり、俺の予想どおりだ…」

葛城が隠していた物の正体は、プロレスの選手や試合のデータが書かれてある手作り資料でした。

 

 「あははは…とうとう見つかっちまったか」

葛城は、この場を誤魔化そうとしました。

「葛姉、これは一体何なの?」

「そうだよ。雲雀達、斑鳩さんから聞いたよ。葛姉は同じ試合を何度も見て、頭の中に情報を入れ込んでるって」

葛城は、動揺しながらもいつもの調子で質問に答えようとる。

「何つーか…その…最近いろんなレスラーが増えてきて…頭の中だけでは覚えきれなくなっちまって…その…」

「要するに、その行動をバラさないようにする為だけに、コソコソやっていたんだな」

柳生は、確信を突いた一言を添える。 

 

 「だ、だってよ~…最近選手の情報は複雑すぎるっつーか、それにバレると何かかっこ悪いじゃん。ほら、趣味の秘密を他人にバレたらやけに恥ずかしいというか…なんていうか」

葛城が言い訳を話している中、斑鳩が彼女の目の前へと向かっていた。

 

 そして、近くに来ると斑鳩は、葛城の頬めがけて強いビンタを放った。

「痛っ!!」

「馬鹿!!人がどれだけ心配したと思っているのですか!」

 

 斑鳩の顔を見ると、その瞳から大粒の涙がこぼれていた。飛鳥・柳生・雲雀の3人は、思わず黙り込んだ。

「…い…斑鳩…」

葛城は、斑鳩の涙をみて心配する。

 

「確かに私は、真面目で大袈裟ですが…仲間として仲間を心配する義務があります!」

「斑鳩…」

これまでの彼女達は、様々な試練を乗り越えてきた。

しかし、それは1人ではなく仲間の支えがあったからこそのりこえられたのである。

斑鳩の言葉には、そういう意味が込められていた。

 

「そうだよ葛姉!前に言ったよね。“1人で抱えず、先輩や後輩に頼れ”って」

飛鳥は、過去に葛城が自分に掛けてくれた言葉を思い出す。

「私はプロレスの事は、正直あまり興味はないけど…その…情報収集くらいなら手伝えるかな」

「雲雀も、手伝える事があったら協力する」

「お前の趣味は、理解できん。でも、雲雀が手伝うなら俺も少しくらいは…」

 

 3人は、それぞれの思いを葛城へ伝えた。

「お前ら…」

葛城が感心する中、斑鳩が肩に手を当てた。

「これでわかりましたね、葛城さん。私達は、チームです。どんな事であっても、共に分かち合いましょう」

 

 斑鳩は、葛城に1番伝えたかったことを伝え、葛城に手を差し伸べた。

「葛姉、これからもよろしく」

「よろしくね」

「感謝するんだな…」

飛鳥・柳生・雲雀もそれぞれの思いと共に、手を差し伸べた。

「飛鳥、柳生・雲雀・斑鳩……これからも宜しくな!」

 

 葛城は、仲間の思いを知り、四人の差し伸べた手にそれぞれ握手した。

握手すると、先ほどの斑鳩のビンタが嘘だったかのように自然と少女達に笑顔が見られた。

まさに、「雨降って地固まる」である。

しかし、葛城の笑顔は4人と比べて冷めるのが一番早かった。

 

 「あれ、葛姉どうしたの?」

「え!?い、いや何でもない…アハ、アハハハハッ」

何やら一瞬気まずそうな雰囲気をみせた葛城であった。

「葛城さん、これを機にしばらくプロレスは控えてくださいね」

斑鳩は、同じ事が無いように葛城に念を押した。

「え~、なんだよそれ」

「当たり前です。今回の事はしっかり反省していただきます」

「自業自得だな」

 

 斑鳩達は、葛城がしまっていたプロレスの資料や録画したDVDを没収した。

ついでに、隠していたプレミアムキーホルダーは、雲雀の手に渡った。

 

 趣味を制限されて、落ち込んでいるように見えた葛城であったが、仲間が自分の事をこれほど考えていると知り胸がいっぱいでした。

しかし、彼女の胸の中にはもう一つの感情がありました。

それは、「複雑」というものでありました。

なぜなら、葛城が隠していた物はプロレスの情報なんかではないからだ…。

 

 それから数日が経過。葛城は、自主練の為、ある山道を1人走っていた。

「ハァハァ…まだまだ…ハァハァ」

この間の遅刻が嘘のように、葛城はひたすら汗水流し、急な山道を走っていた。

そして、目標の場所へ到達する。

 

 「ご…ゴール…ハァハァ」

息を切らした葛城は、近くの岩に座り込み一休みした。

「あら、お見事ね。さすが半蔵学園の忍ね」

何やら、1人の少女の声が拍手と共に後ろから聞こえてきた。

しかし、葛城は動揺もせずに堂々としていた。

 

 「ハァハァ…1番乗りかと思ったら、来てたのか…春花」

少女の正体は、頭の上の大きなリボンがトレードマークが特徴的な、元・秘立蛇女子学院3年の春花であった。

 

 蛇女子学院は、かつて半蔵学園と死闘を繰り広げた悪忍育成の学院だ。

闘いに敗れ抜忍となった春花とその4人は、現在リーダー焔のもと「焔紅蓮隊」として今でも忍として道を歩んでいるのである。

  

 「別にトレーニング中に会わなくても、他の時間とかでもイケたんじゃないの?」

「仕方ねぇだろ。こういう時しか余裕がなくてよ」

何やら葛城は、春花に用事がある様子。春花は、深刻な顔をして葛城聞いた。

「本当にやる気なの?葛城」

春花の質問に対し、葛城は返す。

「あぁ、アタイはやるって決めたんだ!」

 

 葛城は、キリッとした表情で春花を見つめた。そして、葛城は春花に聞いた。

「春花!例のモノは、出来たのか?」

「まぁ、一応ね…急に夜遅くに電話が掛かってきてビックリしたわよ。それも…“変身ベルト”を造ってだなんて」

 春花は、胸の谷間から謎のベルトを取り出し、葛城に差し出した。

 

 葛城は、ベルトを受け取ると何やら深刻な表情を見せていた。

「葛城…アナタは何故こんな事を…」

春花は、そんな彼女を見て心配する。

「さぁな…。でも、アタイの体っていうか…心っていうか…何かがそうさせているのさ…この闘いだけは、4人を巻き込む訳にはいかないんだ…」

葛城は、決意していた。

自分を信じてくれる仲間の為にも、この闘いをやり切ってみせると。

その闘いこそ…今回の葛城の物語でもあった。

 

 「ごめんな…飛鳥・柳生・雲雀…そして…斑鳩」

目から一滴の涙を流す葛城。

涙をふき取り、葛城は山に向かって叫んだ。

「立ってやるぜ!アタイが…邪道ヒーローの頂点に!!」

「葛城…」

 

 こうして、葛城のヒーロー伝説が始まった。

信頼してくれる仲間の為に果たして葛城は無事ヒーローになる事が出来るのか?

さらに、ヒーローを目指す葛城に、一体どんな試練がこの先待ち受けているのか? 

これは、本編では語りきれなかったヒーロー達の物語である…。




 3話目を描き終えました。ご愛読ありがとうございます。
 展開がいろいろと複雑になっていきましたが、少しでもこの後の展開を良くできるように、これからもがんばります。
 最近、閃乱カグラSVとEVを買ってプレイしたおかげで、カグラの知識が少しずつ広がりつつあります。まだ偏りはありますが、今後ともよろしくお願いします。


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第4話 変身!新生セクハラーメンマン

今回は、特に描きたかった戦闘シーンがあります。センスはダサいかもしれませんが、よろしくお願いしますm(_ _)m


 自主練の為、裏山に来た葛城。

そこで、かつて共に激戦を繰り広げた焔紅蓮隊の春花が待ち侘びていた。

彼女の目的は、葛城に頼まれて造った変身ベルトを渡す為でありました。

ベルトを受け取った葛城は、決意した…自分を心配してくれる斑鳩や飛鳥、柳生、雲雀の4人を巻き込まないよう戦うことを…。

 

 「…いよいよかぁ…」

春花からベルトを受け取り、葛城はそれを見つめながら、山を下りていた。

葛城は、若干複雑な表情を浮かべていた。

「仲間を信じてください!」(回想)

「共に分かち合いましょう!」(〃)

そう、この間の斑鳩が言ってた言葉を思い出していたのです。

 

 しかし葛城は…。

「ごめんな…斑鳩。アタイは、やらなきゃいけないんだ。邪道ヒーローとして闘うって、アタイは決めたんだ」

そう、葛城は4人を巻き込まないように戦う事を、決断していました。

「あの4人を巻き込まないように、アタイは闘う!」

 

 葛城は、自信の大きな胸の谷間にベルトをしまいこんだ。

考えるのを辞めた葛城は、再び走り山を下降する。

 

 「さてと、ヒーローの必須アイテムは完成したものの、どういった場面で試そうか…」

葛城は、どういった場面でベルトを試そうか悩んでいた。

「ん~、強盗に出会った時とか…いや、それだと後にバレてしまう。なんなら、悪忍と闘う時とか…いや、任務以外で悪忍と闘う訳にもいかねぇし…」

 忍の存在は希少であり、世間ではその存在はあまり知られていないのだ。

いくら忍といえど、任務以外で力を発揮すれば、抜け忍として除外されるリスクも高い。

 

 「はぁ…何かねーかな。この力を試すきっかけは…怪人が出てきたりとか、悪の組織が動くとか…」

「ニッシシシシー。大量、大量」

「んっ?」

葛城が呟いていると、近くの木の陰から一人の男の声がした。

葛城は、こっそりと近くへと向かった。

「何だ?あのオッサンは?」

「これだけ儲ければ、あと数ヶ月もしない内に俺は大金持ちさ…。アノ男の言う事は、正しかった」

 なんと、一人の中年男性が笑みを浮かべながら札束を数えていたのです。

そして、札束を片手にもう片方の手には、謎の白い粉が入った袋を持っていた。

 

 「このまま、この薬を売って売って売りまくり、妻や息子に復讐してやる。ニッシシシシー」

「それは、犯罪だぞ。オッサン」

「ヒィッ!…き、貴様…いつの間に…」

葛城は、男の背後に回っていた。

「話は、大体聞かせてもらったぞ。悪いことは言わない、復讐なんて辞めた方がいい」

「う、うるさい!早く俺の前から離れろ!さもなければ撃つぞ!」

男は、服のポケットから拳銃を取り出し、葛城に向けた。

「風穴開けられたくないなら、今すぐに…って、あれ?」

なんと、男が持っていた拳銃がいつの間にか消えていました。

葛城が、一瞬のスキも見せない早さで拳銃を奪い取ったのです。

「ったく。こんなの持ってたら危ないじゃんか。銃刀法違反だそ」

「お、俺の拳銃を…いつの間に…」

 男は、葛城の素早さに驚いたのか、足が小刻みに震えていた。

 

「まだ間に合うぜ。自首するのなら今のうちだぜ、オッサン」

そう言った葛城は、手を差し伸べ男に近づこうとした。

「シノビ…コ・ロ・ス」

「はぁ?」

突然、男のしゃべり方が変わった。

「くわっ!」

男の手には謎のオーラが纏っており、それを地面に当てた途端、辺り一面は謎の結界に包まれた。

「なっ!これは…忍結界!」

忍結界とは、忍同士の決戦などに用いられる特殊な結界術の事である。

 

 「まさかこのオッサン、忍なのか?」

葛城が振り向くと、男はカバンの中から妖しげな白い粉が入った袋を取り出していた。

「おまえの力を…いただく。くわっ!」

男は、その粉を飲み始めた。

「お、オイ 何飲んでるんだよ!そもそも何だよその粉は」

葛城は止めようとしたが、常に遅かった。粉を飲んだ男は、体がみるみる化け物の様な形へと姿を変えていた。その姿は、もう人間ではなかった。

 

 「はぁ…はぁ…ぐっ!う、う、うゎ〰〰〰!!!」

「い、一体どうなってるんだよ…オッサンの体が化け物に…」

「はぁ…はぁ…シノビ…コロス…キエ〰!」

そのしゃべり方も、人間ではなかった。

不気味な発言を発した男は、葛城に向けて口を開いた。すると、長くて鋭い舌が、勢いよく葛城めがけて伸び、襲ってきた。

葛城は、察知して攻撃を避けた。

 

「舌が伸びた。あんなのまともに喰らったら、気絶どころじゃすまねぇ」

伸びきった舌は、背後に生えていた木を大砲で撃たれたかの様に貫いていた。

「オマエノ…チカラ…モラウ…シャッシャー!」

「おっと!」

「ニヤッ…ウォ〰〰〰!!!」

再び男は、舌を伸ばした。葛城は、また攻撃を避けようとしたが、男の狙いは葛城ではなかった。舌は、葛城の背後にあった蜘蛛の巣に目を付け、そこにいた蜘を舌で捕まえ飲み込んだ。

 

 すると、男は頭には角、口には鋭いキバが生えてきた。足の数は増え、不気味な縞模様の尻尾を出すなど、完全にその体は蜘蛛の化け物となっていた。

「なんだ?蜘蛛を取り込んだのか?」

葛城は、その姿に驚きを隠せません。

男は姿を変えただけでなく、先程とは違った謎の力を体中に纏っていました。

 

 男は、その不気味な目つきで葛城を見つめていた。

そして、うっすらにやけた次の瞬間、尻尾から糸が飛び出し、葛城を襲った。

「なっ!痛っ。この糸…なんて粘着力だ…」

糸は葛城の体を縛り付けた。

葛城は自慢の力で抜け出そうとしますが、中々ぬけだせません。

手足の自由が奪われ、忍転身も出来ません。

「捕マエタ…」

 

 その頃、半蔵学園でもこの異変に4人は気付いていました。

「「「「「!!!!!」」」」」

「この感覚は…忍結界!」

「間違いありません。これは忍結界です」

少女達が話していると、霧夜がすっと教室へと入り、少女達に言った。

「お前達、もうわかっているかもしれんが、急遽出動してもらう」

「霧夜先生、この忍結界は一体?」

「詳しい原因は、まだわからない。しかし、我々以外の別の忍が忍結界を張って事に変わりはない」

「雲雀以外の忍…」

「安心しろ、雲雀。誰が相手であろうと、俺が守る」

霧夜は、少女達に任務を言い渡す。

「今から行う任務は、今回の忍結界の原因を調査してほしい。もしかしたら、悪忍が絡んでいる危険性もあるから、しっかり用心するように」

「「「「はい!!!!」」」」

霧夜の指令に、少女達は合わせて返事をした。

 

 すると、霧夜はあの事に気づいた。

「ところで、葛城はどうした?」

「実は、数分前に自主トレでいつもの裏山に向かっていて」

「なっ!」

葛城の居場所を知った霧夜は、驚いた。

「霧夜先生?」

「まずいぞ…忍結界の場所は、その裏山だ…」

「「「「えっ!!!!!」」」」

 

 その頃、裏山では葛城が蜘蛛の糸に苦しめられていた。

「ぐっ…」

「ハハハ…忍ノ力…イタダク」

「オッサン、まさかアンタは悪忍か?」

「悪忍?フン、ソンナ事俺ハ知ラン。俺ハ、復讐ノ為ニ動イテイルダケサ…」

どうやら男は、悪忍ではないようだ。男の口からは、『復讐』という言葉が飛び出しました。

「復讐?」

「アア。数日前マデ、俺ハ普通ニ暮ラシテイタ」

 

 男は、自分に起こった出来事を葛城に話し始めた。

「アル日俺は、リストラサレタ。ソレカラトイウモノ、妻ヤ息子カラ酷イ虐待ヲ受ケル日々がツヅイタ…」

その真実は、苦しく痛いものでありました。

「トウトウ妻ト息子ハ、俺ヲ捨テテ家ヲ出タ。残ッタノハ、何モナイ家ト多額ノ借金ノミ…。ソノ時、俺ハ決メタ…俺ヲ捨テタ彼奴ラ二復讐スルト…」 

 

 男の話は終わった。

この話を聞いた葛城は、なにやら浮かない表情をしていた。

「…それだけか…」

「ん?」

「オッサンは復讐の為に、自分の人生を捨てるのかよ」

「何ガ言イタイ小娘!」

「復讐して、アンタ以外に誰が歓ぶ。駄目なときは、またやり直せばいいじゃねーかよ!」

葛城の言うとおり、復讐は自分自身だけではなく周りまで犠牲にしてしまいます。

犠牲になった人は、自身を含め誰一人得をしません。

「ナッ!!ウルサイ、オ前ニ俺ノ何ガワカル!」

「わかんねーよ。でも、アタイもアンタも同じなんだよ…」

 

 葛城は、自分が経験した出来事を話し始めた。

「アタイも今まで、負けて負けて負けまくっていた。でも、アタイはいつか勝つ事ができた。それは、その後の改善を惜しまなかったからさ…アンタだって、いつかは報われる!」

葛城は、熱く語っていたのに対し、男は馬鹿馬鹿しく思っていた。

「ウルサイ!モウ話ハ終ワリダ!死ネ~」

「ぐっ!」

男は、糸の締め付けをさらに強くした。

それでも葛城は、男を何とかして救おうと考えていました。

 

 「助けて…」

「あっ!?」

すると、突然謎の声が葛城へと聞こえてきました。その声は、葛城の心の中へ呼びかけている様な感覚でした。

「助けて…」

「何だ…この声は…」

葛城は、ゆっくりと目を閉じ声を改めて聞き直す。

「体が痛い…まだ死にたくはない…助…けて…」

「はっ!なんだ…そういう事か。アイツ、オッサンの体を乗っ取っているな」

 

 男は、姿形は化け物でも、心の中で葛城に助けを求めていたのです。

まるで男は、化け物に体を乗っ取られ操られてるかの様です。それを知った葛城は、目を開き決意した。

「言われなくても助けるぜ、オッサン。この…アタイがな!うぉぉぉぉ〰〰〰〰」

葛城は、体中のチャクラを解放し自身の力で蜘蛛の糸から抜け出した。

「ナニ!?俺ノ糸ヲ、力尽クデ!!」

「からの~どりゃ〰」

葛城は、胸の谷間から煙玉を取り出し、男へと投げつけた。

「ヌッ!!コ、コレハ目クラマシカ…前ガ見エナイ」

 

煙が充満している間、葛城は再び胸元に手を突っ込み、あるモノを取り出した。春花に造ってもらった、ラーメンどんぶりの形をした変身ベルトです。

「さ~てと。思っていたより早いけど、この力を使う時が来たみたいだな…」

葛城は、ベルトを装着した。そして、3つあるボタンの中から一番上のボタンを押した。

『オーダー通シマース』(ベルト音声)

音声とともに、ベルトが縦2つに開いた。

「邪道ヒーローとしての…第1戦目の幕開けだ!」

葛城は、忍転身の巻物を手に取った。

 

 「忍…変・身!!」

『オーダー入リマース!忍転身…セクハラーメンマン一丁(いっちょ)!!』(ベルト音声)

ベルトに巻物を挿入し、開いていたベルトを閉じると、葛城の服装が変化した。

頭にはラーメンどんぶりと白いヘルメットの様な仮面、すらっとしたグローブ(手袋)や武装、セクシーなアーマー、足にはいつもの足甲を装備。

その姿は、いつもの忍転身とは別物であった。変身の終了とともに、煙も晴れた。

 

「グッ…ハッ!小娘…ノ姿ガ変ワッタ!?」

男が、気付くと葛城はこう言った。

「小さき山(貧乳)が危機の時!大きい山(爆乳)の危機の時!!いやっ、地球(おっぱい)の危機はアタイが守る!!!セクハラーメンマン舞忍びます!!!!」

決めゼリフとともに、ポーズを決めた。

 

 「セクハラーメンマン…ダトッ。コンナノ、アノ男の情報ニハナカッタゾ」

「さーて、デビュー戦のスタートだ」

「くっ!姿ガ変ワロウガ関係ナイ。死ネ〰」

男は、葛城に再び糸を飛ばした。しかし、葛城は素早いスピードで避け、そのまま男へと向かった。

「どりゃー」

葛城は、その勢いを活かた強烈パンチを男に喰らわせた。

「グッ、グワ〰」

「うひょー、すげーパワーだな。忍転身の数倍はあるな」

そのパワーは、忍転身の時大違いでありました。

 

「ナメル小娘が〰」

突然、男は口の中に土を大量に含んだ。そして、マシンガンの様に葛城めがけて飛ばし始めた。

「甘い!おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ〰」

葛城は、自慢の足技で次々と土を弾き返す。

土は丸で銃弾の様な硬さで、周りの木々は傷と穴だらけになっていた。

男は、中々攻撃を辞めません。

「これは、やばいかもなぁ」

葛城はベルトの一番下のボタンを長押した。

『速サ…マシマシ(増し増し)』(ベルト音声)

すると、葛城の攻撃が先程と比べて(動きに)無駄がなくなり、スピーディーになった。

「おらおら〰!」

 

「小娘め〰。こうなったら、再び糸で…」

「そうは、させるか!」

葛城は、胸の谷間から透明色USBメモリを取り出し、ベルトにさした。。

『トッピングオーダー入リマース…コラーゲンボール!』(ベルト音声)

すると、腕の装備から透明の球体が出現した。葛城は、それを、男の尻尾めがけて投げつけた。

「ナッ!?糸ガ出ナイ」

なんと、コラーゲンが糸の入り口を包んでしまいました。

男は、糸を出そうとしましたが、いくら力んでもでません。

 

「くそ〰、こんな子供騙しが…」

「さーて、ちょっと物足りないけど、そろそろトドメといくか。ヒーローの一番の見せどころだ!」

葛城は、ベルトに挿入していた巻物を取り出した。そして、新しい巻物を挿入した。

その巻物には、『秘伝忍法』という文字が刻まれていた。

『オーダー通シマース…オーダー入リマース 秘伝忍法!』(ベルト音声)

「オッサン、アタイが必ず救ってみせるぜ…どりゃー!」

葛城は、空中に高く飛び上がった。

「くらえ!英雄忍法 ヘヴィードラグナー!いっけー!!」

体をドリルの様に回転させて、落下の勢いに載せた強烈キックを男にお見舞いした。

 

 「ぐわ〰〰〰〰〰!!忍…ツ・ヨ・イ…」

攻撃をくらった男は、人間の体と化け物の体へと分裂し、化け物の体は爆発し消えてなくなった。

葛城は、戦いが終わったのを察知し、元の姿へと戻った。

「よっしゃー決まった!おっと、オッサンは大丈夫か?オッサーン」

「ここはどこ?俺は、一体何を…」

男には大きな怪我はありませんでした。

でも、疲れ切ったのか、そのまま気を失って倒れてしまった。

「オッサン!?」

 

 一方その頃、飛鳥達も裏山の忍結界付近に向かっていた。

「皆さん、急ぎましょう」

「葛姉、大丈夫かな?」

「大丈夫だよ、葛姉は簡単にはやられたりしないよ」

「うん、アイツは頑丈だからな…」

それぞれ、4人はそれぞれ葛城の事を心配している様子。

すると、さっきまで見えていた忍結界がいつの間に消えている事に4人は気付いた。

「あれ?忍結界が」

「これは一体…」

突然の出来事に、4人は首をかしげました。

 

 「おーい、みんな!」

すると、山の奥から葛城が男を負ぶって下りてきた。

「葛姉!!」

 

 今回の件は、他の四人に気づかれる事なく、解決した。

しかし、男が話していた『アノ男』や白い粉など、今回の件は謎が多い。

少女達は、男を半蔵学園に連れ帰り、様子を見る事にした。

「霧夜先生、オッサンの体は…」

「心配はいらん、命に別状はない」

「よかった~…」

 

 「しかし葛城、今回の件はお見事だったな」

「へへーん、アタイにとってこのくらい当然」

葛城は、得意気に返した。

「しかし、忍でもない人物が忍結界を…」

「やっぱり、あのオッサンは忍じゃないのか?」

「詳しい事はまだわからん。あの男性には、まだまだ聞かねばならないことが沢山アリそうだな」

霧夜は、深刻そうな感じで話を進めていた。

「つまり、今回の任務は今後も続行という訳ですね」

斑鳩は、霧夜に聞いた。

「ああ、そうだな。だが、どんな任務であろうと心して掛かる様に!いいな」

「「「「「はい」」」」」

 

 霧夜は男の方へ向かい、少女達は寮へと帰った。

その帰り道、葛城は男の発言を思い出していた。

「アノ男の言う事は、正しかった…コンナノ、アノ男の情報ニハナカッタゾ」(回想)

「アノ男…一体誰の事だ?」

「どうしたの?葛姉?」

雲雀は、考え込む葛城を見て心配していた。

「えっ!いや、何でもない」

続けて飛鳥も、葛城に聞いた。

「そういえば葛姉、私達が来る間に戦ってたみたいだけど、一人で倒したんだよね?」

「え!?ま、まぁな…アタイの蹴りでビシバシとな!」

ヒーローに変身して戦っただなんて言えません。

なぜなら、4人を巻き込まないとを決意したからである。

 

 「まぁ、俺はオマエがやられるなんて、これっぽっち思わなかったけどな…」

柳生は遠回しに言ってても、葛城を心配しているようだ。

「何がともあれ、無事でよかったです」

「へへーん、アタイは無敵さ!ガハハハハー」

斑鳩の事はを聞いて調子に乗る葛城だが…心のみならず中は。

「あのオッサンといい、白い粉といい、一体何がどーなっているんだ?まあ、誰が相手だろうとアタイは勝つ!そして邪道ヒーローの上に立ってみせる!」

「葛姉、何してるの?早くしないと置いていくよ!」

「おっ!悪い悪い」

 

 こうして、セクハラーメンマンこと葛城の初めてのヒーローとしての戦いを終えた。

だが、この先にまだまだ強い敵や試練、真実が待ち受けている事を彼女はまだ知らなかった。

果たして、セクハラーメンマンの運命はいかに…。




クロス作品ですが、モウしばらくはカグラのキャラクターだけでがんばる予定です。ご愛読ありがとうございます。あと、今後もよろしくお願いしますm(_ _)m


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第5話 電信柱に御用心!

 急遽予定を変更しました。なんだか、特撮よりになってきましたが、閃乱カグラと特撮を両立できるように頑張ります。


 突如、葛城の前に現れた謎の男。男は、謎の白い粉により姿形を化け物へと変えて葛城を襲った。男は強い力を纏っており、その力に葛城も苦戦していた。

 

 しかし、葛城は春花により発明された変身ベルトを使って『セクハラーメンマン』へと変身した。その圧倒的な力により、葛城は男の中の化け物の魂を除去する事に成功し、勝利を掴んだ。

 

 それから翌日、半蔵学園の教室にて霧夜が5人の生徒に話しかけていた。

「男の名前は、渡辺出雲42才。一ヶ月前まで雲隠れ商事に勤めていた会社員だ」

霧夜が話していたのは、葛城が戦った化け物が取り憑いていた男のことである。どうやら霧夜は、男の意識が戻った後にいろいろと聞き込んだ様子であった。

「そして、この間葛城が話していたように、リストラと家族の夜逃げにより彼は孤独身になった」

 

 「霧夜先生、あのオッサンはアタイと会ったときに『アノ男』って言ってたけど、その男の情報は?」

葛城は、霧夜に1番気になっていたことを聞いた。

「残念だが、渡辺さんはそれ以降の記憶が無いと話していた…」

葛城は、悔しいという感情を抑えながら視線をそらす。

 

 「そうなってくると、いつ騒ぎが起こるかわからないですね」

斑鳩は、心配した。

「人間じゃなくなる白い粉かぁ…」

「雲雀、なんだか怖いよぉ…」

「安心しろ、どんな相手だろうと雲雀は俺が守る」

「ありがとう柳生ちゃん」

謎の白い粉に怯えていた雲雀だが、柳生の助言を聞いて安心した。

 

 そんな中、霧夜は再びしゃべり出した。

「お前達、安心しろ。情報は、完全に途絶えた訳ではない」

「どういう事ですか」

霧夜の報告を知ろうと、5人は耳を傾けた。

 

 「実はあの後、こちらで情報を基に調査を進めておいた」

「調査!」

「ああ。その結果、数日前に謎の薬品を売り歩いている男の情報が確認された」

「それってもしかして…」

「おそらく、あの白い粉なのではないかと…」

霧夜の情報に、5人は驚愕した。

 

「そうなってくると、ここ数日で何人かにアノ粉が手に渡っていると…」

斑鳩は、冷静に分析した。その発言に、霧夜は頷いた。

「おいおい、それって大丈夫なのかよ!?このままだと、またアタイの時みたいに…」

慌て出す葛城。すると、飛鳥はある事に気付いた。

「ちょっとまって、この数日の間に薬が渡されたんだよね…。それにしては、テレビのニュースとかに取り上げられていないよね」

 

 飛鳥の言うとおりだ。アノ白い粉の力を使えば多くの犯罪を発生させる事が可能となる。しかし、使うことで怪人化してしまう為、世間も黙っていないはずだ。

 

 「確かに…」

「飛鳥ちゃんすごい!」

飛鳥の発言に、柳生と雲雀は感心した。霧夜は、再びしゃべり始めた。

「そこで、今回の任務なんだが、お前達にはこの男性を探してもらいたい」

霧夜は、後ろの黒板にある男の情報を貼り付けて5人に見せた。

 

 「雷田誠28才。今から3日前、この男が路地裏で謎の人物と取引きしている事が確認された」

「つまり、騒ぎが起こる前にこの男を捕まえるって事か!」

葛城は、誰よりも先に任務内容を察知した。

「その通りだ!だが今回は、ペアを組んで動いてもらう」

「「「「「ペアを?」」」」」

 

 霧夜の独断と偏見で任務のペアが決められた。飛鳥は葛城と、柳生は雲雀と、斑鳩は学園に残り霧夜と情報収集を行う事となった。

 

 まずは、柳生と雲雀の仲良しペアは街中を捜査していた。

「え~と…霧夜先生の情報だと、雷田さんはよくここのコンビニに立ち寄ってるみたいだね」

「う~ん、他に役に立つ情報があればいいが…んっ、どうした雲雀」

柳生が悩んでいる隣で、雲雀は緊張していた。

「あ、ごめん柳生ちゃん。いつ事件が起こるかわからないから緊張しちゃって…エヘヘ」

雲雀は、笑って誤魔化そうとする。そんな雲雀に対し、柳生は心の中では…

『あぁ~、大好きな雲雀と一緒に捜査が出来るなんて…俺は幸せ者だ…』と思っいる様子。

 

「柳生ちゃん?」

「へ…あぁすまん、何でもない。雲雀は俺が守る。命にかえてもな!」

雲雀の前でかっこよく決める柳生。

「ありがとう柳生ちゃん。でも雲雀だって子供じゃないから、柳生ちゃんにあまり頼らずに頑張る」

「そ、そうか…」

雲雀の言葉に、若干落ち込む柳生であった。

 

 その頃、街外れを捜査している飛鳥と葛城は。

「情報によると、ここの路地裏で取引きをしてたみたい」

「いかにも、あまり通らなさそう路地裏だな」

霧夜からの情報をもとに、雷田誠が目撃された路地裏で捜査を行っていた。飛鳥は、葛城に聞いた。

「葛姉、この間戦った渡辺さんに憑いてた怪人って、かなりつよかったんでしょ?」

「えっ!?まあ、確かに強かったけど以外と大したことなかったなぁ」

「本当?」

「本当だって、アタイが言うから間違いないねーよ。それとも飛鳥、お前怖いのか?」

「ち、違うってば葛姉。私はただ、敵が気になっていたからその…別に怖いわけじゃ 」

 

 葛城の発言に、飛鳥は動揺しながら、慌てて否定する。そんな飛鳥を見て、葛城はニヤけていた。

「はは~ん、それにしてはえらく動揺しているじゃねーか。正直に言わない子は、お仕置きタ~イム」

そう言って、葛城は飛鳥の大きな胸を鷲摑みし、揉み始めた。

「きゃあ!葛姉、任務中のセクハラは禁止!」

「いいじゃないか、減るもんじゃないし」

 

 葛城は、相変わらず任務中にも関わらずセクハラをする。

「ちょっと、辞めてよ葛姉」

「ニシシシー…あっ!」

「あれ?本当に辞めた」

 

 急に葛城が手の動きを止めた。何かの雰囲気を察知した様子だ。

「飛鳥、隠れろ!」

「えっ?う、うん」

2人は近くの物影に隠れた。すると、黒のパーカーとサングラス、白いマスクを身につけ1人の男が2人の近くを通りかかった。

 

 2人は、その男を見て何かを感じていた。

「葛姉、あの人なんだか怪しくない?」

「ああ、いかにも怪しい男って感じだな。飛鳥、後を追ってみよう」

 

 とりあえず2人は、男の後をつける事にした。男は、周りをキョロキョロさせながら、コソコソとしていた。

飛鳥と葛城は、隠れながら後を追う。

「葛姉、あの人ってもしかして…」

「いや、そう判断するのはまだ早い。何かコレといった証拠が見つかったら捕まえた方がいい」

男はどんどん奥へと進んでいった。そして、人影の少ない街外れの広場へとやってきた。

 

 男は、近くの物影に隠れて何かをコソコソとしていた。

「へぇ~こんな広場があったとわな」

初めて来る場所に、葛城は興味を示す。一方の飛鳥は、男の行動に興味を示す。

「あ、葛姉!あの人を見て!」

2人が男の方向に視点を合わせた。すると、男は服のポケットから小さい袋を出していた。その袋を見て、葛城は咄嗟に判断した。

 

 「飛鳥、その男を抑えるぞ!」

「了解」

葛城は前方、飛鳥は後方へと回り込んだ。男が気付いた頃には遅かった。男は、2人によって取り抑えられた。

 

 「やったね、葛姉」

「ああ、思っていたより簡単だったな」

見事に男を捕まえることに成功した2人。しかし、なぜだか男は、何の抵抗もみせません。そんな男のマスクとサングラスを飛鳥は外して素顔を見てみた。すると…。

「「!!」」

「この人…探していた人と違う!!」

男の素顔は、霧夜に渡された資料とは別の人物であった。しかし、彼の手には謎の白い粉が。これは、一体どういうことなんだろうか。

 

 「飛鳥!避けろ!!」

突然葛城が、ある雰囲気を察知し、飛鳥に向かって叫んだ。すると、飛鳥の顔めがけて一つの銃弾が飛んできた。

「!!」

銃弾は、ほんの少し飛鳥の顔を擦ったが、完全に命中する前に見事に避けきった。

「葛姉、今の銃弾って」

「ああ。どうやらアタイらは、ヤツの罠にはまったみたいだな」

 

 2人は、銃弾が飛んでいた方向を振り向いた。すると、1人の男が2人に向かって歩いてきた。その男は、2人が捕まえた男同様、パーカーを着てマスクとサングラスを身につけており、片手にはピストンを持っていた。

「ふん、相手は手強いって聞いていたが、まさかこんな簡単にハマるとわな…電線に止まる烏の様にな」

 

 男は、パーカーのフードをとって顔を見せた。なんとその正体は、探していた『雷田誠』本人であった。

「雷田誠!」

「なるほど。アタイ達が捕まえたのは、ヤツの影武者って事か。…一本獲られたな」

雷田は、2人をの近くへと来た。一体何を仕掛けてくるのかと、2人は様子を伺った。すると、雷田は手にしていた銃を突然捨てた。謎の行動に、2人は不審に思う。

 

 「姉ちゃん達が探してた物は…コレのことかな?」

男は、パーカーのポケットから小さい袋を取り出し2人に見せた。

「し、白い粉!」

「じゃあ、アレが本物ってこと」

雷田が持っていた袋には、白い粉が入っていた。コレを雷田が飲む事で、渡部の時みたいに化け物になってしまうという心配が、2人の中にあった。

 

 「こんなのがほしいのか?ほしいなら…くれてやるよ!」

そう言って、雷田は粉が入った袋を上に高く投げつけた。

「葛姉!」

「任せろ!とうっ」

葛城は、高くジャンプして袋を見事にキャッチしたのだが。

「馬鹿め!引っかかりあがったな!」

すると、雷田の口が裂け始め、その口から長い舌が飛び出した。舌は、影武者が持っていたもう一つの粉を奪い取り、そのまま袋ごと飲み込んだ。

 

 「あっ!しまった!!」

「ということは…アレが本物!」

葛城がキャッチした袋の中身は、ただの小麦粉であった。しかし、気付いたときには、もう手遅れでした。粉を飲み込んだ雷田は、人間から怪人へと姿を変えた。

 

 「ごめん、葛姉…私のせいで…」

飛鳥は、偽物の粉を本物だと思ってしまった事に責任を感じていた。

「気にするな。取りに行ったアタイもアタイだ。それに今は……コイツを仕留めないとな」

 

 「オ前ラノ力…イタダク」

雷田は、近くの電信柱に手を当てた。すると、雷田の体がどんどん電信柱に吸収されていった。

 「来るぞ。飛鳥!」

「うん」

「「忍転身!!」」

2人は、胸の谷間から巻物を取り出し、戦闘コスチュームへと転身した。一方、雷田を吸収した電信柱は、地面から出て足を出し、電線をぶち抜き凶暴な化け物へと姿を変えていた。

 

 「ヴオ〰〰〰!!!」

電信柱の化け物と化した雷田は、威嚇し叫んだ。飛鳥は二刀流を構え、葛城は軽めのストレッチを終わらせ、準備万端。

「飛鳥、舞忍びます!」

「葛城、舞忍びます!」

「忍…コロス…キエ〰!!」

怪人は、忍結界を発動させて、2人を襲いかかった。

 

 一方、別を捜索していた柳生と雲雀も、忍結界に気付き現地へと向かっていた。

「急ぐぞ、雲雀!」

「うん、飛鳥ちゃん…葛姉……どうか無事でお願い」




次回は、戦闘回です。お楽しみに。


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第6話 兎と烏賊(イカ)

今回は、バトル回です。展開とキャラクター間のやりとりにご注目!今回も一生懸命書きましたので、よろしくお願いしますm(_ _)m


 ここは、街外れの某広場。あたりを見渡しても、人が通る気配すらありません。そんな広場に謎の黒い壁が。そう、忍結界です。中では、電信柱の化け物へと姿を変えた雷田誠と、半蔵学園の飛鳥と葛城が接戦を繰り広げていた。

 

 「忍コロス!…ヴォ〰〰!!」

雷田は、太い金棒のような腕で飛鳥と葛城を襲いかかる。しかし、2人は攻撃を忍特有の素早さで次々にかわしていました。道路は雷田の攻撃で穴だらけです。

 

 「“秘伝忍法 二刀僚斬!!”」

飛鳥は二刀流をサヤにおさめ、×(バツ)の字に居合い切りを喰らわせた。

「無駄無駄~。ソンナ攻撃ガ通ルカ」

しかし、相手の体は岩以上に硬く、斬撃が通りません。

 

 次に葛城が、後方に回り込んだ。そして高く飛び、蹴り掛かろうとした。

「剣が駄目なら、打撃はどうだ!」

「フン、考エテイナイトデモ思ッタカ!」

雷田は、頭部から紐のよう物を伸ばし、それを使って葛城を捕まえようとした。

「ヤバっ!おっと」

葛城は、危険を察知して紐をかわした。紐は、そのまま近く木に当たった。すると、とてつもない電撃が流れ、木を黒こげにした。紐の正体は、電線だったようです。

 

 「危ねーな。あんなのまともに喰らったら、ひとたまりもないな」

「ケッケッケ-。マダマダコレカラダ〰」

雷田は、さらに電線の数を増やし、2人に襲いかかった。

「葛姉、任せて。“秘伝忍法 半蔵流乱れ咲き”」

飛鳥は、素早い刀さばきで、次々と電線を斬り刻んだ。しかし、雷田も負けてはいません。斬られた電線は、何度も生えかわり、いくら斬ってもキリがありません。

「くっ、なんて生命力なの…」

「ハッハッハ-。サァ、オ前ハドコマデ耐エキレルカナ」

「前ばかりで…後ろがガラ空きなんだよ!」

「何!!」

葛城は、雷田が飛鳥に攻撃を集中している事を逆手に、後ろに回り込んでいた。そして、高く跳び上がり雷田の顔に、強烈な蹴りを喰らわせようとした。

「もらった〰」

 

 葛城の足が、雷田の顔に近付いた時だった。

「助けて…」

「ハッ!」

「助けて…くれ…」

「この声は……オッサン(渡辺出雲)の時の…」

突然、葛城の心の中に助けを呼び声が聞こえた。渡辺と戦った時もそうであった。その声はまるで、怪人と化した人間のもう一つの人格が呼びかけている様でした。葛城は声に反応し、相手に当たる前に攻撃を中断してしまった。雷田は、そんな葛城のスキをつき、電線を葛城に向かって伸ばた。

「葛姉!危ない」

「なっ!」

「クラエ〰」

 葛城は、成す術もなく黙り込んでしまった。この時葛城は、油断した自分が悪かったので、どうにでもなれと思っていた。電線は葛城を直撃しようとしたが、次の瞬間、白いツインテールをなびかせた一人の少女が、和傘を盾に葛城を守った。

「や⋯柳生⋯」

少女の正体は、一年の柳生でした。

 

 「何を油断している。いつものお前はどこに行った」

柳生は、毒の効いた言い回しで、葛城に言った。冴えない葛城を見た柳生は、若干ピリピリとした感情をみせていた。そんな柳生に続いて雲雀も駆け付けた。

「飛鳥ちゃん・葛姉、助けに来たよ」

「雲雀ちゃん、柳生ちゃん」

「チッ!奴ラノ仲間カ。⋯⋯ナラ、マトメ殺ロシテヤルー」

雷田は、柳生に攻撃を防がれたのがよほど悔しかったのか、頭の電線をさらに多く生やした。そして、その電線を束のようにまとめ、太い電気の光線を四人めがけて放った。

「あ、また来た!」

「大丈夫、電気なら雲雀に任せて。お願い、忍兎」

雲雀が印を称えると、雲の様なものに体を潜めた兎が召喚された。

 

 忍には、自分の個性に合わせた「口寄せ動物」が奥底に眠っている。そんな忍兎は、雲雀の口寄せ動物なのである。

 

 忍兎は、雷田の放った電撃をその雲の様な体で吸収し始めた。

「ナンダ、アノ兎。⋯⋯俺ノ電撃を吸収シテイル」

電気を蓄えれば蓄えるほど、忍兎はどんどん大きくなっていき、初めはぬいぐるみの様な可愛らしいサイズの忍兎が、なんと大型トラックの様な大きさへと変わった。

「よし、いけー忍兎‼」

電気を全て吸収した忍兎は、雲雀の合図と同時に溜め込んだ電気を一気に雷田へと放出した。その量(電撃の)は、雷田の攻撃をはるかに上回るものであった。

「ぐわぁぁぁぁー。凄イ量ダ⋯キュ⋯吸収シキレナイ⋯」

自身の電撃を倍返しで喰らったら雷田は、電線は燃えて、固い体の表面も剥がれそうになっていた。

 

 「凄いよ雲雀ちゃん」

「いいぞ、雲雀」

「よっしゃー、そのままあいつをぶっ倒して⋯」

四人はこの時、勝利を確信していた。そう思った次の瞬間…。

「痛い⋯」

「なっ!」

「痛い⋯今すぐ⋯やめてくれ。⋯た⋯助けて」

葛城の心の中で、再び謎の声が聞こえた。『痛い…助けてと』苦しそうに藻掻いているような苦痛の声です。そ声は、不思議なことに雷田の方向から聞こえてきます。葛城は、もしかしたら化け物と取り憑かれた人物は痛みを共有しているのではないかと思い焦りだした。

「‼雲雀、やめろ!」

葛城は、雲雀を取り押さえ攻撃を強制終了させた。これには飛鳥と柳生、雲雀は驚きを隠せません。

「えっ」

「ちょっと……どうしたの葛姉!」

「ダメなんだよ!アイツが⋯⋯アイツが痛がってるんだよ⋯雷田のヤツが」

「何を言ってるんだ葛城!⋯さっきから様子がおかしいぞ」

 

 大好きな雲雀取り押さられるを見て、柳生は怒りを抑えられず、葛城の胸ぐらを掴んだ。

「違うんだ聞いてくれ⋯アイツが⋯」

「柳生ちゃんと葛姉、喧嘩は良くないよ…」

 

 そんな中、ほったらかしにされた雷田下を向いて、不気味な笑みを浮かべた。そして、頭部からまた新しい電線を1本伸ばしたが、4人は気付いていませんでした。

「余所見シテルンジャネーゾー」

「「「「!!!!」」」」

電線は、勢いよく伸びて葛城に向かって突っ込んだ。それにいち早く気付いた柳生は、葛城をかばい自分が電線に捕らわれた。

「しまった!!」

「ケッケッケ-、忍1人捕獲!」

「「柳生ちゃん!」」(飛鳥・雲雀)

柳生は、雷田の電線に体を縛られ、宙吊りにされてしまった。藻掻いて抜け出そうとするも、動くたびに電線から電気が流れ、思うように動けません。

 

 飛鳥は、再び二刀流を構えて雷田の元へ走りだした。

「待ってて柳生ちゃん。今、私が助けて……あ、あれ?な、何だか眠気が……何コレ……」

「おい、どうした飛鳥!」

「飛鳥ちゃん」

突然、先ほどまで元気だった飛鳥の動きが鈍り始めました。体は重く、眠気はさし、体の力は抜けて手にしてた二刀流も地面に落としその場で倒れ込んでしまいました。

「一体…なん…で……」

飛鳥は力を振り絞ってしゃべりましたが、力尽きてその場で寝込んでしまいました。

 

 葛城と雲雀は、何が何だかわかりませんでした。

「飛鳥ちゃん、しっかり。飛鳥ちゃん、死んじゃやだ」

雲雀は、涙を浮かべて飛鳥の体を揺すりましたが、全然起きません。葛城は、飛鳥の口元に耳を近づけて呼吸の有無をかくにんした。

「大丈夫だ雲雀。飛鳥は死んじゃいないよ」

「本当……よかった」

 

 突然倒れた飛鳥ですが、命に別状はなかった。

「オイ電柱男!お前……飛鳥に何をした!」

葛城は、雷田に向かって怒鳴りつけた。雷田は、余裕の笑みを浮かべて葛城の質問に答えた。

「ケッケッケ。ソロソロ薬ガ効イタカ」

「薬!?」

「アア、俺ガソノ女に何ヲシタカ思イ出シテミナ…」

葛城は、雷田と出会ってからの出来事を頭の中で振り返ってみた。雷田は、『薬』と言っていましたが、闘っているときに薬を使う事は至難の業ですが、そういう素振りはありませんでした。葛城は、闘っている時以外の場面も振り返ってみた。

 

すると、葛城は思い出した。

「ハッ!まさか、あの銃弾に!」

「流石ハ忍。ソノ通リサ!」

それは、飛鳥と葛城が雷田の影武者を尾行していた時のことであった。影武者を本物の雷田と勘違いし、2人は影武者を取り抑えました。しかし、その男が影武者と気付いた瞬間、飛鳥の顔に一発の銃弾が擦ったのです。その銃弾には、喰らった相手に凄まじい眠気を与える睡眠薬が入っていた様子。

 

「安心シロ、命ニ負担ハ無イ。タダ…俺様ガオ前ラヲ殺スケドナ!!ハハハハハー」

挑発するかのように、高笑いする雷田。

 

 葛城は、自分のせいで柳生は捕まり、飛鳥は罠にハマってしまったと、責任を感じていた。先ほどと比べて息も荒くなり、顔に汗がにじんでいた。

「ちくしょーめ〰 」

葛城は、やけくそになり雷田へ突っ込んだ。

「駄目だよ葛姉!変に突っ込んだら…」

雲雀は、止めようとしたが遅かった。

「ヌルイワ〰!」

「ぐわっ!」

「葛姉!」

葛城は、雷田の金棒のような腕に叩きとばされた。

「サッキマデノ勢イハドーシタ!忍トイウノハ、チョロイ者ダ。捨テ駒2人が失ッタダケデ、コンナニ落チブレルトハナ…ハーハッハッハー」

再び高笑いで挑発する雷田。

 

 葛城は、悔しさと責任感で頭がいっぱいになっていた。

「ちくしょー…ちくしょー」

葛城は、目には大粒の涙がこぼれようとしていた。

「何をやってるだ、葛城!!」

突如響いた怒鳴り声。声の主は、捕まっていた柳生であった。

「や……ぎゅう…」

「……柳生ちゃん」

いつもクールで、控えめな柳生なのだが、今回の葛城を見て珍しく大きな声で怒りを訴えた。

「それが、いつものお前か!お前の得意な戦いが全然出来ていないぞ!!」

「柳生……わかってるぜ。でも……アタイのせいで…オマエと飛鳥が…」

柳生は一旦黙り込み、今度はいつのものクールな感じしゃべり始めた。

「お前は、勘違いしている」

「なっ!?」

 

 「俺はお前のせいで捕まった訳じゃない。俺は自分の意思で捕まったまでさ……仲間を守るうえで当然の事をしたまでだ」

「仲間…」

そして柳生は、慣れない声の大きさで再び葛城に怒鳴る。

「オレが知ってるお前は、どんな事でも動じない無責任なお前だ!!!」

「ハッ!」

柳生の言葉を聞いた葛城は、気づいた。今の自分はいつもの自分じゃない事に。柳生は遠回しに言っているが、間違ったことは言っていない。

 

 しかし、すっかりほったらかしにされた雷田も、黙ってはいません。

「貴様、俺ヲホッタラカシニシテシャベルトハ、良イ度胸ダナ。……悪イガ…捨テ駒ハ、引ッ込ンデロ〰!」

「ぐわ〰!!」

雷田は、柳生の電線に強めの電撃を流し始めた。

 

「柳生〰!」

葛城は、電撃に苦しむ柳生を助けようと、雷田の元に走りだした。そして、服の裏に隠していた変身ベルトをすかさず装着した。

「葛姉、そのベルトは、一体?」

謎のベルトに、雲雀は疑問を問いた。しかし、葛城は止まることなくベルトのボタンを押し、縦二つに開いたベルトに忍転身の巻物を挿入した。

『オーダー通シマース! 忍転身一丁』(ベルト音声)

「忍…変・身!」 

『オーダー入リマース! セクハラーメンマン一丁!!』(ベルト音声)

開いたベルトを閉じると、葛城はセクハラーメンマンのバトルアーマー姿へと変身した。

 

 「くらえ〰!」

「早イ!!ぐっ…ぐわ〰〰」

 葛城は、勢いよく突っ込み、雷田の体に跳び蹴りを食らわせた。それはただの蹴りではなく、仲間を捨て駒だと馬鹿にした雷田への怒りの鉄槌でもありました。しかし、攻撃は終わってません。

『速サ…マシマシ(増し増し)!』(ベルト音声)

葛城は、ベルトを2回開け閉めした。すると、蹴りのスピードが早くなり、まるでマシンガンの乱れ打ちかの様に葛城は雷田の体に蹴りまくった。

「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ〰〰!!」

「ぐわ〰!!!」

雷田は、葛城の蹴りを受けて離れている所にあったゴミ捨て場までぶっ飛ばされた。そのひょうしに、捕らわれていた柳生は解放され、葛城によって救出された。

 

 葛城は、気を失った柳生を抱えて、雲雀の元へともどった。雲雀は、突如変身した葛城に対し、頭が追いついていませんでした。

「雲雀、柳生と飛鳥を頼む」

葛城は、抱えてた柳生を雲雀の元へ優しく下ろした。

「葛姉……その姿って…」

「悪い、説明してる暇は無いんだ。……あの電柱野郎は、アタイが倒す!」

 

 飛鳥と柳生を雲雀に預けると、葛城は雷田が飛ばされたゴミ捨て場へと向かった。

「俺ノ…自慢ノ体ニ……ひびが…オマエハ一体」

雷田が問うと、葛城は答えた。

「小さき山(貧乳)が危機の時!大きい山(爆乳)の危機の時!!いやっ、地球(おっぱい)の危機はアタイが守る!!!セクハラーメンマン舞忍びます!!!!」

 

 葛城は、決めゼリフと共にポーズを決めた。しかし、それをみた雷田は、自分をなめているのかの様に感じた為、怒り出した。

「ぐぐぐ…俺ヲナメヤガッテ〰忍……絶対コロス〰!!」

雷田は、再び頭から大量の電線を生やし、葛城に襲い掛かった。

「いっ!またアレかよ 」

葛城は、再びベルトを開け閉めした。

『速さマシマシ(増し増し)』(ベルト音声)

葛城のスピードは、また一段と上がり、雷田の電線攻撃を次々と避けていった。

 

 「これじゃキリが無いな。なら、コイツで…」

葛城は、すかさずベルトのボタンを押し、胸元から透明色のUSBメモリを取り出しベルトに挿した。

『トッピングオーダー入リマース……コラーゲンボール』(ベルト音声)

グローブから、コラーゲンで出来たボールが出現した。前回の渡辺出雲との戦いでは、このコラーゲンボールで攻撃を防いでいるのだ。そんなボールを葛城は、電線の根元に投げつけた。

「よし、これでヤツの動きは止まって…」

「コンナ攻撃が効クカ〰 」

雷田は、あっさりとコラーゲンボールを電撃で跡形も無く消した。これには、葛城も唖然。

 

 「ま、マジかよ やっぱり、オッチャン(渡辺出雲)の時みたいにはいかねーか…それなら」

葛城は、胸元から別のチップを取り出そうとするも、雷田はそれをいち早く察知した。

「何ヲコソコソヤッテルンダ、小娘〰」

「おっと、危ねぇ 」

雷田による電撃で、うまく攻められない葛城。葛城は、何か一瞬でもスキが出来ないかと、チャンスをうかがうも、なかなか思うように動けません。

 

 遠くから看ていた雲雀も、葛城を心配しながらも、自分にも何か出来ないかを考えていた。本当ならば自分も戦いたいものの、今の自分には飛鳥と柳生のそばにいるという指名がありました。

「葛姉!」

「雲雀!アタイは、大丈夫さ。ちくしょー、思っていたより手強いな…何か他に手段は……ハッ!そういえば…」

 

(回想シーンスタート)

 葛城は、思い出した。それは、遡ること数日前、春花から変身ベルトを渡された時のことでした。

「この変身ベルトは、使い方によっていろんな能力を発揮するのよ」

「どういうことだ春花?」

春花は、ベルトを使って葛城に仕組みを説明した。

「このベルトは、アナタの巻物は勿論、他の子の巻物や巻物以外も挿入可能になってるの。ただ、どういう能力を発揮するかは私でもわからないけどね」

 

(回想シーン終了)

 そして、話は現在にもどる。春花が言った事を思い出した葛城は、あることを思いついた。

 「よし…い一か八かでやってみるか。雲雀!」

「な、何、葛姉…」

「お前達3人の巻物を、ちょっとだけ貸してくれ!」

葛城は、遠くで見ていた雲雀に、自分達の巻物を貸りたいと言い出した。突然のお願いに、雲雀は若干困惑気味です。

「え、雲雀達の巻物……一体何で」

「いいから早く渡してくれ」

「何ヲ企ンデイルカハ知ランガ、サセテタマルカ〰!」

葛城と雲雀のやりとりに気付いた雷田は、金棒の様な拳で殴り掛かろうとした。

 

 「葛姉!」 

『このままだと葛城がやられちゃう』そう思った雲雀は、自身の胸元に仕込んでいた巻物を葛城のに向かっても投げつけた。

葛城は、雷田の攻撃を軽やかに避けきり、雲雀の巻物を見事にキャッチした。そしてつかさず、ベルトのボタンを押した。

『足甲オーダー通しマース』(ベルト音声)

葛城はベルトを開き、挿入していた自分の巻物と雲雀の巻物を取り替えた。

『足甲オーダー入リマース…忍(しのび)…雲雀!』(ベルト音声)

 

 すると葛城の足甲が、雲のようにモコモコとしたピンクのブーツへと早変わりした。

「おいおい、何だよこの足甲は。こんなにモフモフしてて闘えるのか?」

普段の足甲と比べて小さく、さわり心地の良さそうなふわふわとした柔らかさ、まるで綿を素足で履いているかの様な感覚でした。葛城は、みるみる心配になってきた。それとは逆に、雲雀は目を輝かせて足甲を見ていた。

「葛姉、可愛い~。雲雀もそんなブーツが欲しいなー」

「おい!今、そんな事を言ってる場合じゃ…」

「余所見ヲスルナト言ッタダロ〰 」

雷田は、頭の電線で葛城を襲おうとした。

「ヤバっ!また来やがった」

その時、葛城が思った訳でもないのに、足甲がピクピク動き出した。それはまるで、足甲が葛城に、何かを教えているかの様に見えた。さらに足甲は、雷田の電気に喰い気味で反応している様にも見えた。

「!!なるほど…よし、試してみるか!コレでもくらえ〰」

葛城は、足甲にチャクラを溜め込み、1つの雲の様な塊を生み出した。そしてそれを、雷田の頭元に向かって蹴り飛ばした。

 

 雲は見事に、雷田の頭に命中した。まるで、アフロヘアーのカツラを被っているようにも見ます。

「よっしゃー。命中!」

「コンナ子供騙シナンゾ、俺ノ電気デ跡形モ無ク……」

雷田は、自信の電気を集中させて雲を消そうとした。しかし、電気を流せば流すほど、雲は消えるどころか、どんどん大きくなっていきます。

「クッ…何ダコレハ…」

 

 葛城は、何かを狙っているのか、余裕の表情を浮かべていた。

「さ~てと。そろそろ……一丁やりますか!」

葛城は突然、指をならしました。すると、雷田の頭の雲が、鉄のように一気に固まり、重量を増した。

「グワ〰〰〰!ナ…ンダコレは…タ……立テナイ……」

葛城は、雷田の目の前で技の解説を始めた。

「雲雀の使う属性は“電気”。忍兎がアンタの電気を吸収して巨大化したのと同じさ。その雲は、電気を吸収すればするほど大きくなって、やがて相手の動きを鈍らす錘へと変わる……まぁ、アタイも勘で使ってみたけどな!」

 

 葛城は、何だかいつもの調子が戻ってきた様子。まさに、柳生が話していた『どんな事でも動じない無責任な葛城』のであった。そんな葛城に、雷田は恐怖を感じ始めた。

「マッ…待ッテクレ……金ハ出ス……ダカラ……タスケ…」

最初は、傲慢な態度を見せていた雷田も往生際が悪くなり、負け犬の遠吠えを吐くようになっていた。しかし、もう手遅れです。 

「もう遅いぜ!アンタには、アタイらの仲間を傷つけた罰があるからな!」

 

 葛城は、ベルトの巻物を取り出し、新しい巻物と交換した。その巻物には『柳生』という文字が刻まれていた。そう、柳生の巻物です。

『足甲オーダー入りマース…忍(しのび)…柳生!!』(ベルト音声)

足甲は、モフモフしたブーツからイカの形をした足甲へと姿を変えた。 

 

 「待テ!マッテクレ 命だけは…命だけは…」

懲りずに、媚び続ける雷田。葛城は、一歩一歩雷田の元に近づいた。

「アタイは、雷田誠の命は狙っていない…」

「ホッ!(ホッとする)」

「ただ…アタイが許せないのは、仲間の事を捨て駒扱いした電柱野郎だ!ハッ!」

「ナッ!」

葛城は、高く跳び上がった。すると、イカの形をした足甲が、凍りはじめた。

 

 柳生の属性は“氷”。足甲は葛城と柳生の思いに答え、氷のドリルの様な形へと変化した。葛城は、狙いを定めると、素早く回転した。その姿は『氷のドリル』そのものであった。

「柳生のためにも、アタイはアンタを許さねー!」

「待テ……ヤメロ〰」

「英雄忍法 “龍陣氷河撃”〰!!」

葛城は、落下の勢いにのせて更に回転を効かせ、氷のドリルキックを雷田にお見舞いした。キックを喰らった雷田は、体がみるみる凍っていました。

「グォ〰〰〰〰!サッ…寒イ!息が出来ない…ギャア〰!」

雷田は、化け物の体と人間の体に分裂しました。人間の方体は、何事も無かったかのように無傷な状態。逆に化け物の方は、体中が氷で覆われ粉々に割れてなくなりたした。更に、雷田を吸収していた電信柱も元通りになっていた。

「よっしゃー!今回も、一丁あがりー!!」

「葛姉……すごくカッコイイよかった」

葛城は、拳を突き上げる勝利を喜んだ。雲雀も、初めは何が起こったのかさっぱりでしたが、今では葛城に目を輝かせて一緒に喜びました。

 

 数分後、飛鳥は雷田による睡眠薬入りの弾丸の呪縛が解け、目を覚ました。

「あ、葛姉!飛鳥ちゃんが目を覚ましたみたい」

「ひっ…雲雀…ちゃん?これは一体……ハッ!そうだ、雷田誠は!?」

「心配はいらねーよ、飛鳥。雷田誠は、この通り」

目にした光景は雷田を背負った葛城と手当てをする雲雀の姿であった。雷田は、葛城との戦いであれほどのダメージを受けたのにもかかわらず、無傷のまま気を失っていた。さらにもう一つ、葛城だけに謎の声が聞こえてきたのも、一体何を意味しているのか。謎は深まるばかりだ。

 

 「う…ひ、雲雀は…」

飛鳥に続いて、柳生も目を覚ました。

「あ、柳生ちゃん。良かった-、雲雀すごく心配したんだよ」

「雲雀…無事だったか…。ハッ!アイツは…あの電柱男は!?」

「大丈夫だよ柳生ちゃん。電柱のお化けは、葛姉がやっつけたよ」

「なっ!」

「葛姉が!」

 自分達では手も足も出なかった強敵を一人で倒したことを知り驚く飛鳥と柳生。柳生に関しては、驚いてすぐに表情が曇った。

「へへーん、アタイにかかればアンナ野郎なんてコテンパンさ!ニッシシシシシー……あっ」

いつものテンションで話していた葛城だが。

「皆……ゴメンよ!」

葛城は、大きく頭をさげて謝罪した。これを見た飛鳥と雲雀は、タジタジ。

「葛姉!?」

「どおしたの?」

 

 葛城は、顔を上げた。

「急にアタイが、自分勝手な判断で戦いのペースを乱してしまった。……そのせいで…あんな…」

いつもは、セクハラ大好きでお調子者の葛城だが今回は、自分の行動で仲間に負傷を追わせてしまったことを強く反省している様子。

「本当に……すまなかった」

「柳生ちゃん!?」

すると柳生は、浮かない表情で葛城の近くへと向かった。

「柳生……あの時はごめん…アタイはただ…その…ぐぉ!」

柳生は、強く握りしめた拳で葛城に強めのボディーブローを食らわせた。

「柳生ちゃん!!」

「葛姉!!」

ボディーブローを喰らった葛城は、よろめいて地面に膝をつけて座り込んだ。シカシ、このボディーブローには、柳生なりの思いが込められているのです。

 

 「勘違いするなら葛城。俺は、オマエの変な考えに怒ったわけではない」

「えっ!」

「俺は、この半蔵学園のチームでこれまでオマエと戦ってきたが、戦いでのオマエは一度も間違いないを起こしてなんかいない」

柳生は、遠回しに葛城への思いを話した。今まで一緒に戦ってきた仲間だからこそ、どんな時でも信じ合い、助け合うことが大事なのです。

「そういえば柳生ちゃん、葛姉が電線に捕まりそうになってた所を助けてたよね」

「うん、柳生ちゃんは葛城の事を仲間として守ろうとしてたんだね」

飛鳥も雲雀も、葛城の事を怒るどころか柳生と同じで葛城を信じていました。

それを知った葛城は、柳生の思いを聞いて自然と笑みがこぼれた。

 

 「は…は…ハッハッハッハッハー!アタイってカッコ悪いな-。後輩に忘れてた事を教えられるなんてな」

さっきまで落ち込んでいた葛城でしたが、3人の思いを知り、いつもの調子に戻りました。そんな葛城を見て、柳生は手を差し伸べた。

「オマエはそれでいいんだ……ほら」

「ああ!」

葛城は、柳生の手をとってたちあがった。

「だが、次に雲雀を取り抑えたらこの程度じゃ済まないぞ 」

「にっ 」

とどめに、鬼の形相も浮かべられた。

 

 

 4人は、さっそく学園に戻り、白い粉の事だけでなく、葛城だけに聞こえた謎の声のことなどといった情報を斑鳩と霧夜へ報告した。その中で特に気になっていたのは、『謎の声』の情報でした。霧夜は、首をかしげて考え込む。

「助けてかぁ…本当にその声は、葛城だけに聞こえた声なのか?」

「はい、私と雲雀ちゃん、柳生も一緒に戦っていました……でも、全然聞き覚えが無くて」

「本当なんですか、葛城さん」

「本当何だ!それに、声が聞こえたのは今日だけじゃないんだ。オッサン(渡辺出雲)と戦ったときも…」

葛城も、なぜ自分だけに謎の声が聞こえるのかさっぱりです。他の5人も、浮かない様子。しかし、本当に声が聞こえたのは葛城だけなのだろうか?本当に怪人に取り憑かれていた人間が呼びかけていたのか?謎は一層に深まるばかりだ。

 

 霧夜は咳き込み、話を切り替えた。

「今回の任務は、ご苦労だったな。引き続き、この件は我々で捜査を行っていく。ただ、相手はまたいつ攻めてくるかわからない。少なくとも、我々(忍)を狙っていることは確かだ」

霧夜の言葉に緊張感が奔る一同。しかし、それはほんの一瞬だけだ。なぜなら彼女達は、これまでもいくつもの試練を乗り越えてきたからだ。

「いいか、くれぐれも無理をしないように……以上!解散!!」

「「「「「お疲れさまでした!!!!!」」」」」

少女達は、挨拶と同時に綺麗に頭を下げた。

 

 霧夜の話が終わった後、雲雀は葛城の耳元で呟いた。

「今日の事、皆には内緒にすればいいんだよね」

「ああ、なんかすまないな雲雀 」

どうやら戦いの後、葛城は雲雀に『皆に、内緒でヒーローを目指している事は内緒にしてほしい』とお願いしていた様子。雲雀が快くOKしたのには訳があります。

「うんうん、いいよ。だって葛姉は、ヒーローになっても雲雀達が知ってるいつもの葛姉なんだもん」

「なんだよそれ!」

嬉しそうに笑う葛城に、雲雀も安心した。

「2人とも、何を話しているの?」

 2人の会話が気になり、間に入る飛鳥。

「え?いや、別に 」

「えー気になるってば!私にも教えてよ」

「何もないって言ってるだろう。なぁ、雲雀!」

「えぇっ!そ、そうだよ…何でもーないよ」

焦って、片言っぽく喋る雲雀。

「あぁ~雲雀ちゃんも何か隠してる」

 

 一方、遠目からその様子みていた斑鳩と柳生は。

「何を話しているのでしょうか?」

「ほっとけ。いつもの事だろう」

興味がなさそうに、振る舞う柳生。だが彼女は、ほんの一瞬だけ嬉しそうに微笑んでいた。そして、斑鳩に聞こえないくらいの小声でこう呟いた。

「ありがとな……セクハラーメンマン」




 バトルシーンとキャラクターのやり取りを考えるのに、凄く苦労しました。でも、僕がここまで来れたのも
読者の皆様のおかげです。これからも、「座右の銘」でもある『一生懸命』を忘れずに頑張ります。
次回から、クロスオーバーらしき展開になります。


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第7話 キングオブハジケリスト登場

 謎の白い粉により電信柱の化け物と化した、青年・雷田誠。彼の凄まじい力により、4人の忍(飛鳥・葛城・柳生・雲雀)は圧倒されていた。
 
仲間のピンチに、動揺する葛城。しかし、仲間(柳生)による助言によって正気を取り戻した葛城は、ついに仲間の前でセクハラーメンマンへと変身。雲雀と柳生の巻物で新たな力を発揮した葛城は、見事に雷田に取り憑いていた化け物を倒す事に成功した。雲雀と柳生に正体はバレたが、改めて仲間の大切さを知った葛城であった。果たして今回は、何が起こるのか。
※飛鳥は、睡眠薬で眠らされていた。
※斑鳩は、霧夜と学園で情報収集をしていた。


 雷田との激戦から二日後、忍達は日頃の任務での力を癒すため休息をとっていた。趣味を楽しむ者から休日での復習を欠かせない者など、それぞれにあった休日を過ごしていた。

 

 一方の葛城は、これまたセクシーな私服を着飾り、大きな胸を揺らしながらある場所へと向かっていた。

「やべー、寝坊してしまった。あの人、時間に厳しいからなぁ…」

どうやら葛城は、ある人物と待ち合わせしている様子。葛城の言う『あの人』とは、一体誰なのか?

 

 走る事数分、葛城は待ち合わせ場所へとやってきた。そこは、今でも主人の帰りを待つ犬の像が建っており、待ち合わせ場所として有名な『渋谷 ハチ公前』です。葛城は、像の前で手を合わせて一礼した。そして、周りを見回した。

「え~と。着いたのはいいけど、あの人はどこにいるんだ……もしかして、あの人も遅刻か…」

 

 葛城が待ち合わせている人物を探ししていると、人ごみに紛れて、あるおかしな呼びかけが聞こえてきた。

「チクワいかがっすか……チクワいかがっすか…」

その声に反応した葛城は、呆れながら声が聞こえた場所へと向かった。すると人ごみの中で、金平糖の様な体でオレンジ色をしたの生き物が、『マッチいかがですか』のトーンでチクワを売り込んでいた。周りを歩く人達も、相手にしないように、ただただスルーするのみであった。

 

 「チクワ……いかがっすか。おかしいなぁ…渋谷だっていうのに1本も売れない…」

「渋谷じゃなくてもいっしょっすよ 」

葛城は、その生き物に慣れた感じで話し掛けた。すると生き物も、葛城の方を振り向いた。

「おっ、葛城!遅ーよ、今まで何してたんだよ」

「『何をしてる』」は、こっちの台詞っすよ……首領パッチさん…」

 

 なんと、葛城が待ち合わせていた人物は、この『首領パッチ』という男のようだ。首領パッチは、ギャグ漫画『ボボボーボ・ボーボボ』という作品の登場キャラクターで、元『ハジケ組』の親分。さらに、『伝説のキングオブハジケリスト』という異名を持つ、ハジケリスト(バカ)なのだ。改めて言おう……バカなのだ。

 

 葛城と首領パッチは、普段から仲が良く、プライベートでは一緒にプロレス観戦するほどの仲良しなのだ。周りは白い目で見るが、2人には関係ない。

 

 話は戻り、首領パッチは葛城の質問に答えた。

「オマエが遅いから、渋谷のオシャレ野郎共にチクワを売りつけていたんだよ。チクワブームの再来だ!」

首領パッチは、根拠のないバカ回答をした。葛城は慣れているため、呆れながらも冷静にツッコむ。

「チクワにブームも何もないでしょ ……何でそうなるんですか」

「米騒動なんだよ!」

「はい!?」

突然の意味不明の発言に、葛城はただ驚く。

「オレんちが米騒動なんだよ!おい、渋谷のファッションモンスター野郎!服を着飾ってる暇があるならチクワ買え!そして食え!オレんちが米騒動なんだよ」

首領パッチの発言には、特に何の意味も含まれてない。葛城は、心の中で『意味わからねー』とつぶやくしかなかった。もう一度言おう…首領パッチは、バカなのだ。

 

 それを見ていた周りの人も、2人の事を避け始め、ただただ無視していた。それでも首領パッチは、恥を知らないのか、ずっと『チクワ買え!チクワ食え』と連呼する。やがて仲のいい葛城も、見てられなくなり止めに入った。

「首領パッチさん、辞めましょうよ 周りがアタイ達を避けてますって」

「うるせーな、爆乳!!オレんちは、今モーレツに…………………燃え尽きた…ガクッ」

突然黙り込んだと思いきや、首領パッチの体がオレンジから白へと変わった。さらに体つきは萎れて元気がなくなり、その場に倒れ込んだ。

「ちょっと、首領パッチさん!急にどうしたんっすか 首領パッチさん!」

「こ……コーラ………コーラが切れた……」

「コーラ?」

 

 首領パッチの口から「コーラ」という単語が。葛城はとりあえず、首領パッチを背負い近くのファミレスへと向かった。葛城は、ドリンクバーでコーラの入ったグラスを『これでもか…』と思うほど用意し、ストローを首領パッチの口や鼻に突っ込んだ。すると、グラスのコーラはみるみる減っていき、さっきまで萎れていた体が元の元気な体へと戻った。

「プハーー!コーラ美味ー!」

首領パッチは、ハジケすぎる(バカな事をやり続ける)と元気がなくなるのである。コーラは、そんな首領パッチの力の源でもあるのだ。

 

 葛城は、首領パッチが元に戻るとひとまず安心した。

しかし、いくら仲が良くても彼の予測不可能の行動には、葛城もよく悩まされているのだ。

「元に戻ったのは良かったっすけど、変な事ばかりされてもアタイも疲れるんすよ… 」

「わりーわりー!オレ、注文するけど、オマエも何か食うか?」

葛城が心配しているのに対し、マイペースに注文しようとする。しかし葛城も付き合いが長いのか、やれやれと首を横に振る。

「オイ店員!マルゲリータピザ、マルゲリータ抜きで」

「それ、何も無いただのピザじゃねーかよ」

 

 このような感じで、いつもはお調子者の葛城も首領パッチの前ではツッコミ役にまわるのだ。葛城は、注文を終えると話を切り出した。

「首領パッチさん、今日アナタを呼んだのは、あるお願いがあって……」

「なんだ?俺に出来ることなら協力するぞ」

首領パッチは、コーラを飲みながら話に耳を傾ける。

「実は……首領パッチさん……アタイとヒーローやってください!」

「………ヒーロー……」

 

 さっきまでふざけていた首領パッチが、急に真面目なりました。首領パッチは、コーラを飲みかけのコーラが入ったグラスをテーブルへと置いた。

「一体どうしたんだよ葛城?突然、ヒーローになりたいだとか……何をオマエをそうさせたんだ?」

首領パッチは、疑問を問う。葛城は、全て話した。謎の怪人や白い粉の事。本来は秘密事項の為、話してはならない情報なのだが、葛城の目は真剣そのものでした。話を聞いた首領パッチは、しばらく考え、そして話を切り出した。

 

 「オマエ……本気でヒーローになりたいのか」

いつもならふざけている首領パッチだが、葛城の話を聞いた途端、似合わない真面目な雰囲気で葛城に聞いた。

「首領パッチさん………もちろん!アタイは、今回の事件で本気でヒーローになりたいと思ったんです。大事な仲間を守る為、化け物の呪縛に苦しんでる人達を守る為……もし、このまま他の人まで苦しめられたらそれがどんどん広がってしまう…。」

葛城も、自分の思いを首領パッチへとぶつけた。

 

 葛城は、ヒーロー活動を始める前にも、様々な思いを経験した。抜け忍となった両親と離ればなれになった『悲しみ』や大切な仲間やライバルが出来た『喜び』、本当の自分とは何なのかという『迷い』、他にも葛城は様々な経験を重ね、いろんな事を思い続けてきた。今回のヒーロー活動は、無謀だとわかっていても葛城の一度やろうと思った事は、ゴールまで突っ走るという彼女なりの美学があったのです。葛城の眼差しは、真っ直ぐです。そんな葛城の話を聞いた首領パッチは、再び口を動かした。

「なるほどな……………よし、引き受けた!」

「え!………………よっしゃーーーーー!」

 

 首領パッチの答えを聞いた葛城は、自分がファミレスにいるこ事を忘れたかのように、大きな声で喜んだ。周りからお客も思わず振り向き、気づいた葛城はゆっくりと腰を下ろした。

 

 「ありがとうございます、首領パッチさん。これからも、よろし…」

「ただし条件がある!」

「へ?」

了解したように見えた首領パッチだが、共にヒーロー活動をするにあたって、何か条件を加えるそうだ。葛城の安心感は、一気に静まり再び緊張へと変わった。

「……首領パッチさん……その条件って……一体」

「…………ハジケろ」

「………はい!?」

 

 首領パッチの口から飛び出したのは「ハジケろ」というなぞの命令形の言語であった。

「ど…首領パッチさん……ハジケろ……というのは?」

「ハジケろっつったら、ハジケるんだよ」

首領パッチは、当たり前のように話すが葛城には全然理解できていなかった。

「いやいや、わからないっすよ。そもそも何なんですか『ハジケろ』って 」

「俺が納得するハジケが出来たら、オマエのヒーロー活動に付き合うぞ」

「いや、だから……そもそも『ハジケ』が何なのかもわからなくて…」

「あれ?もうコーラなくなっちまったか。俺がドリンクバーから帰ってくるまで、何か考えとけよ」

「あ!おい、待てって……」

首領パッチは、葛城の事はお構いなしに、ドリンクバーへと向かった。

 

 葛城は、考えた。首領パッチの言う「ハジケ」とは、一体何なのか。

「何なんだよ!いくら(二次元での)先輩だからって、言ってることがらむちゃくちゃだろ 何なんだよ『ハジケろ』って」

突然の無茶ぶりにご機嫌斜めの葛城。しかし、イライラしながらも、指でテーブルを叩きながら『ハジケとは何なのか?』と考えていた。

「ハジケろ………かぁ」

 

 「おい この店はどうなってるんだよ 」

「ん、何なんだ?」

奥の席から謎の怒鳴り声が聞こえてきた。するとそこには、黒服を着たヤクザ風の男が4人ほど座っており、その1人が店員に何かを訴えていた。

「オタクんとこのグラタンに、髪の毛が入っていたぞ!兄貴が腹でも壊したらどうするんだよ 」

「申し訳ございません 今すぐ新しいモノを…」

「ごめんですんだら警察いらねーだろが アァ!!」

どうやら、注文した食べ物に髪の毛が入っていた事でもめている様子。店員は、今にも泣きそうに、足ばかり小刻みにふるえていた。遠くの席から見ていた葛城は、眉間にしわを寄せて話を聞いていた。

「おいおい…いくらなんでも、髪の毛であそこまで怒鳴らなくても……あれ?」

 

 葛城は、何かに気づいた。

「本当に申し訳ございません」

「ふざけるんじゃねーよテメー!」

「さっきも言っただろう、謝って済むなら警察はいらねーんだよ」

「そうだそうだ!髪の毛入れるくらいならチクワ食って俺んちを米騒動から解放しろよアホが 」

「………なんか首領パッチさん混ざってる〰!」(葛城)

ヤクザの中から聞き覚えのある声と発言が…そう、首領パッチだ。ドリンクバーに行くと言って席を離れた首領パッチだが、なんとヤクザに紛れて店員にクレームを言っていた。葛城だけでなく、店員もヤクザも『誰だこの人』と心の中で思っていた。

 

 ヤクザ風の男は、再びしゃべり出した。

「と、とにかく責任とってもらおうか 」

「俺んちが火事なんだよ、だからチクワ食えごら 」(首領パッチ)

「アニキが腹の腹が壊れてもいいのか、あぁ 」

「米騒動、米騒動、米・米・米・米騒動!」(首領パッチ)

「黙ってないで、何とか言えよ 」

「そんな事いいから、チクワ食え〰〰〰!!!」(首領パッチ)

「さっきから、何やってるんだよトゲ野郎 」

 

 ヤクザ風の男の兄貴は、ついに首領パッチの行動をツッコんだ。周りも正直、首領パッチの奇想天外な行動にこまっており、心の中で「ツッコんでくれてありがとう」と思っていた。

 

 首領パッチは、お構いなしにしゃべり続ける。

「火事と米騒動なんだよ!だからチクワ食え-!」

「さっき、から訳のわからない事言ってるんじゃねーよ お前達、そのトゲ野郎を取り抑えろ」

「「「うっす!!!」」」

ヤクザ風の男腹、3人がかりで首領パッチを取り抑えようとした。葛城は、とうとう見てられなくなり、奥の席へと向かった。

「おい、ヤメロ!」

「あん、誰だよ姉ちゃん」

「さっきから見ていれば、細かい事でキレすぎだろ…そのくらいにしたらどうだ」

葛城は、思っていた事を口に出した。しかし、ヤクザ風の男達は、葛城の体をジロジロ見つめていました。

「何に見てるんだよ」

「それにしても姉ちゃん、いい体してるな…そうだ、店員の事を許してあげる代わりに、姉ちゃんの体で代償してもらうか」

「はぁ、何を訳のわからない事を…」

「いいじゃないか、減るもんじゃねーしよ」

 

 男達の狙いは、首領パッチから葛城へと移った。葛城は、忍の立場上一般人に変に暴力を振ることは出来ません。葛城は、男の手を払い後を去ろうとする。

「おい、やめろって!」

「いいじゃねーかよ、姉ちゃん。いっそのこと今夜…」

「忍……発見……」

「「!!」」

ヤクザ風の男の子分の1人が、急に片言のようにしゃべり出した。男は、葛城を見て『忍(しのび)』という単語を発していた。それを聞いた葛城は、ある確信がついた。

「おい、ノブヒコ(子分の名前)!何を急に訳のわからない事言ってるんだよ。今日はやけに物静かだと思っていたら、急にどうし…」

兄貴分が喋っているスキに、ノブヒコという子分は、懐からナイフを取り出し兄貴分へと刺そうとした。

それにいち早く気づいた葛城は、刺さるギリギリの所で受け止めた。

「チッ…邪魔ガ入ッタカ…」

 

 異変に気づいた兄貴分をはじめ、ファミレス中がざわざわし始めました。

「ヒッ!の…ノブヒコ……これは一体……」

ヤクザ風の兄貴分は、ノブヒコのいつもとは違うことに気付くと、顔から汗がにじみ出てきました。一方、ノブヒコは葛城を不気味な眼差しでみていた。

「忍………コロス…フン!」

ノブヒコは、懐から拳銃を取り出し、天井へ銃弾を撃ちつけ威嚇した。

「キャーーーーー」「逃げろーーーーー!」「ママ怖いよー」

銃声でファミレス内は、大騒ぎ。やがて葛城達を除く客・店員は、全員外へと逃げた。

 

 「ホラホラ、逃ゲロ逃ゲロ人間風情…ゼーニゼニゼニゼニー!」

可笑しな笑い方で、銃弾を撃ち続けるノブヒコ。すると、体がいつの間にか化け物の姿へと変わっていた。その姿を見た兄貴分含め、ヤクザ風の男達はびっくり仰天。

「ぎゃーーー!化け物だ〰〰〰逃げろ…逃げるしかねー 」

「オット!逃ガシハシナイデゼニ……シャァ!」

ノブヒコは、刃物の様に鋭い舌を兄貴分に向けて伸ばしました。

「ギャー!か…だ…ずげ…………て…」

舌は、兄貴分の体を貫通し、それと同時に体だんだん細くなり干物の様にカラカラになってしまいました。

「プハー!食ッタ、食ッタ。人間風情ノエネルギーハ辞メラレナイゼ…ゼニゼニゼニ」

 

葛城、怒りに怒った。こんな「残酷なやり方があるのか」「人間を何だとおもっているんだ」と、怒りの感情が沸き上がっていた。そして、化け物に向かって走りだした。

「この野郎めが〰 」

葛城は、変身ベルトを装着し巻物を挿入した。

「忍!変身!!」

『オーダー入リマース セクハラーメンマン一丁!!』(ベルト音声)

葛城は、セクハラーメンマンの姿に変身しながら、勢いよくノブヒコへと突進した。

「何ダゼニ!?ブワッハ!!暴レ牛並の威力ゼニ……アベブっ(レジカウンターに衝突する)」

ノブヒコはそのまま、レジカウンターまで突き飛ばされた。

 

 「お…オマエ、本当に葛城なのか……」

セクハラーメンマンへと変身した葛城に、首領パッチも驚きを隠せません。そして、葛城はお約束のセリフを…。

「小さき山(貧乳)が危機の時!大きい山(爆乳)の危機の時!!いやっ、地球(おっぱい)の危機はアタイが守る!!!セクハラーメンマン舞忍びます!!!!」 

葛城は、セリフとともに格好良くポーズを決めた。

「ぐぬぬぬ…俺ヲナメルナゼニ 」

ノブヒコは、口から剣を取り出し葛城に襲いかかった。

「剣か…よし、こちらも新兵器を使ってみるか!」

葛城は、自身の胸の谷間から緑色のUSBメモリを取り出し、ベルトに挿入した。さらに、ベルトを開け閉めした。

『オーダー入リマース キザミ!!』

すると、葛城の左右隣に小さい謎の空間が出現し、そこから棒のような物が出てきた。葛城が手に取ると、棒は段々と姿をみせた。手にした物は、麺切りカッターの様な形をした双剣でした。

「さーて、一丁やりますか!」

葛城は、敵に向かって突撃した。

 

 ノブヒコの剣捌きに、葛城も双剣で対抗した。慣れない武器に戸惑うかと思いきや、葛城は順調に使いこなしていき、いつの間にかノブヒコも圧倒されていた。

「おら、おら、どりゃ〰!」

「コノ女、剣ノ扱ハ雑ニ見エルガ……五分モ経タナイ内ニ、オレより上手(うわて)ニ行ッテヤガル」

「そこだ〰!」

葛城は、ノブヒコのスキを突いて、腹部に斬りかかった。

「ギャワ〰!……ナンノ…コレシキ……ゼニ」

ノブヒコは、腹部に大きめの傷がありました。それでも、ノブヒコは立ち上がり攻撃態勢に再びはいった。

「なんてヤツだ…だけど、この間と比べたら大したことねーな……よし、次で決めて……」

 

 葛城は、ベルトを操作しようとした。しかし、次の瞬間であった。

「ヒップホップ、パチ美!!」

「どわっ!何だ何だ!?」

突撃、側方から女装した首領パッチがヒップアタックで葛城の態勢を崩した。さすがの葛城も、これは怒リだした。

「ちょっと、首領パッチさん!急に何をするんすか 」

「ヒロインの座は、私のモノよ!」

「はい!?」

首領パッチの返答に、葛城はきょとんとした。首領パッチは、本来のキャラクター(個性)から急に別のキャラクター(個性)に急変する予測不能の人格者でもある。けして多重人格でもなければ、病気の発作でもない。ただ、かまってほしいだけなのかもしれない…。

「今は、戦いの最中なんですよ アンタの小芝居に付き合っている暇は…」

「ねえねえ葛城の姉ちゃん、アハハハ」

「ナッ!またキャラクター(個性)が変わってる!」

首領パッチは、女キャラから今度は無邪気な子供キャラへと個性を変えた。きらきらとした瞳と、鼻からは鼻水を垂らしたりと、葛城には何が何だかさっぱりです。

「ちょっと、首領パッチさん……いい加減に…」

「ねえねえ、連れて行ってよ遊園地!遊園地!」

首領パッチが『遊園地』と指を指して言っていたのは、ノブヒコでした。ノブヒコも、なぜ自分が『遊園地』と言われているのか、訳がわからなかった。

 

 駄駄を捏ねる首領パッチを、葛城は無理に話そうとしましたが、首領パッチはクッツキ虫以上に離れません。

「遊園地!ゆ~えんち!」

「ちょっと首領パッチさん、勘弁してくださいよ 今日のアンタはいつも以上におかしいっすよ」

そんな2人をよそに、ノブヒコはコソコソ何かしようとしていた。葛城は、首領パッチに目がいっていたものの、忍特有の勘で察した。

「あ、アイツ…何を…」

コソコソしていたノブヒコは、懐から小さい袋を取り出した。葛城は、ソレを見て反応した。

「コレが有レバ無敵ゼニ!」

「白い粉!」

ノブヒコが取り出したのは、今まで倒した怪人達が使用していた、謎の白い粉でありました。コレを飲む事で、怪人は強大な力を手に入れる事が出来るのだ。

 

 ノブヒコは、その粉を袋ごと飲み込みました。

「へっへっへー、力が漲ッテクルゼニ…」

白い粉を飲み込んだノブヒコは、黒いオーラがで体を覆われていた。

「見て見て!お化けさんが黒いのに包まれてるよ」

「首領パッチさん、いい加減に元のキャラに戻ってください」

状況が悪化したにもかかわらず、首領パッチは子供キャラのままでした。一方の葛城は、2つの厄介事に挟まれて困惑気味だ。

 

 ノブヒコは、レジカウンターに置いてあったレジスターを見て不気味ナ笑みを浮かべていた。

「金ガ………俺ノ源ニ……ハァ!」

ノブヒコは、レジスターを強引に持ち上げた。すると、腹部に謎の口が出現し、レジスターをそのまま自分の体内へと吸収した。

「アイツ…レジを!」

「力が…力が漲ルゼニーーーーーーー!」

レジスターを吸収したノブヒコは、レジスターの化け物へと姿を変えました。ディスプレイの顔、胸元はキーボード、右手はレシートプリンターで左手はバーコードスキャナ、さらに腹部には小銭入れの様な引き出しが着いていた。

 

 「サーテト…マズハ小手調ベニ、ソノ刺野郎カラ始末スルデゼニ」

ノブヒコは、ディスプレイのドットを上手く活かし、不気味な目つきを再現していた。狙いを首領パッチに定め、攻撃態勢にはいった。

「うわーかっこいい!ロボットだ、ロボットだー」

「首領パッチさん!そいつは、敵で……」

首領パッチは、ノブヒコをロボットと勘違いし、無邪気に近づいた。

「モウ遅イ!クラエ!! 釣銭流星!!!」

ノブヒコは、腹部にあった小銭入れらしき引き出しから、小銭型の核爆弾を首領パッチへと放った。

「まずい!首領パッチさん、危ない!」

葛城は、体を張って前に立ち、核爆弾から首領パッチの身を守りました。

「ぐわーーー!!!」

核爆弾は、葛城の体を直撃した。アーマーのおかげで、傷は浅かったものの、葛城の変身は解けてしまいました。それでも葛城は、首領パッチを守りきりました。

 

「チッ!余計ナ邪魔ガ入ッタゼニ。トドメ……ト言イタイトコロダガ…ソウハ、イカナイ様デゼニ」

外からパトカーのサイレンが鳴り響いていた。入口付近では、複数の警察官と突撃隊が様子をうかがっていた。

「今回ハ、コノ辺デ見逃シテヤルゼニ。次会ッタ時ハ、オマエラヲ確実ニ殺スゼニ。……デハ…サラバ!」

ノブヒコは、その場から姿を消した。

 

「待て……オマエは……アタイ…が…」

傷は浅いものの、ダメージは大きかった葛城は、その場で気を失いました。そんな葛城を、首領パッチはいつもの個性に戻り、真剣な表情で葛城をみつめていた。

「葛城……」

 

 一方入口付近では、警察官と突撃隊が警戒していた。しかし、いくら時間が経っても化け物のノブヒコどころか、葛城と首領パッチも出て来ません。

「前隊、突撃せよ!」

突撃隊は、ファミレスの中へと突入した。しかし、中には誰もいません…。

 

 「葛城…」

「……誰かが…アタイを……呼んでる」

「葛城……葛城…葛城さん…葛城さん、葛城さん!」

「はっ!こ…ここは」

葛城は目が開けると、半蔵学園学生寮のリビングのソファーに横になっていた。近くには、飛鳥・斑鳩・柳生・雲雀・霧夜の5人が心配そうに見守っていた。

 

 「葛城、目が覚めた様だな」(霧夜)

「ここは…寮…ハッ!そういえば、アタイ」

「落ち着いてください葛城さん。状況は理解していますので…」

 

 葛城がリビングを見回すとテレビが付けてあった。そこでは、先ほど遭遇したファミレスでの出来事が示されていた。幸い、葛城が忍ということはバレていない様子。しかし、レジスターの化け物と化したノブヒコは、今現在も渋谷で暴れている様子。

「申し訳ありません葛城さん。私達が早く気付いていれば…こんな事に…」

「いいよ、気にするなって斑鳩!アタイは、この通りピンピンしているぜ!それに……怪人が現れたのに連絡し忘れたアタイもアタイだけど…」

 

 葛城は、心配をかけない様にいつもの調子で話すが、内心はすごい責任感をかんじている。そんな葛城を見た飛鳥は、言った。

「大丈夫だよ葛姉。別に私達は怒っていないよう 悪いのは、怪人さんなんだから」

「へへへ、ありがとよ飛鳥」

飛鳥の言葉に葛城は、若干元気を取り戻した。

 

 っとここで、葛城はあることに気付いた。

「そういえばアタイ、どうやってここへ?あの時アタイは、気を失って…」

葛城は、ノブヒコの核爆弾をまともに喰らい気を失っていたので、その後の記憶がありません。すると、斑鳩が答えた。

「首領パッチさんです」

「えっ…」

「首領パッチさんが、葛城さんをここまで運んでくださったんです」

「葛姉の事を心配してたよ」(飛鳥)

「俺は、アイツの事は嫌いだ」(柳生)

「もう、柳生ちゃん」(雲雀)

 

 葛城を寮まで運んでくれたのは、首領パッチでした。斑鳩の話によると、首領パッチは気を失った葛城を汗だくになりながらも、お姫様抱っこでここまで運んでいたようだ。葛城は、疑問に思った。いくらバカな首領パッチでも、なぜ戦いの“邪魔”をしていたのか?なぜ自分を寮まで運んだのか?葛城は、訳がわからず髪をかきむしった。

「あー訳がわかんねー!あの人は、何を考えているんだよ。あの人の“邪魔”がなかったら……なかったら」

いくら仲が良くても、今回の事は特に訳がわからない。考えれば考えるほど、葛城の感情はおかしくなる。

「ちくしょー!!」

「葛姉…………」

「何が正しかったんだ…あの人は……あの人は…」

 

 葛城は、自分を責め始めた。しかし、すぐさま斑鳩が言った。

「葛城さん、何があったかは知りませんが……まずは、こちらを読んでからお決めになっては」

斑鳩は、胸の谷間にしまっていた手紙の様な物を取り出し、葛城へと渡した。

「なんだよコレ?」

「首領パッチさんが、葛城さんに渡す様にと置いていかれた手紙です」

「手紙…」

葛城は、手紙を黙読し始めた。葛城は、軽く頷きながら手紙を読み込んだ。

「これは!」

「何が書いてあったの、葛姉?」

「そういう事……バカなのはアタイの方って事か」

 

 手紙を読み終わった葛城は、片目から涙をこぼした。葛城は、手紙を胸元にしまい、走り出した。

「葛姉!どこに行くの!?」(飛鳥)

「決まってるだろ!バカな先輩(首領パッチ)を助けにいくのさ!」

「霧夜先生!追いかけた方が……」(斑鳩)

「いや、アイツに行かせてやってくれ」(霧夜)

霧夜は、珍しく葛城の独断行動を許可した。それも、まるで何かを悟っているような様子でした。

「しかし…先生」(斑鳩)

「確かにアイツは、自分勝手なヤツだが、やるときにはやるヤツだ。今回は、アイツの行動を許してあげてくれ、斑鳩」(霧夜)

「先生……わかりました」(斑鳩)

「葛姉……大丈夫かな…」(飛鳥)

「心配ないよ飛鳥ちゃん。葛姉なら大丈夫だよ」(雲雀)

「アイツは、頑丈だから簡単にはやられない…」(柳生)

 

 一方その頃。葛城は、屋根に飛び移りながら大急ぎで渋谷へと向かっていた。

「待っていて首領パッチさん!アンタは、あの時“邪魔”なんてしていなかった。……アンタのいう“ハジケ”の意味がわかったぜ!」




 今回から、クロスオーバー的な展開へと発展します。関連タグの方にも新たに「ボボボーボ・ボーボボ」を追加します。
 次回も、頑張って投稿していきます。ご愛読ありがとうございますm(_ _)m


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第8話 恋泥棒!? LOVEハンターY

 セクハラーメンマン(葛城)vsレジスター怪人の続きです。
 今回は、首領パッチの自由奔放なボケをどう言葉で表現するかに非常に悩まされました。多少わかりにくい部分もありますが、今回も一生懸命書きましま。
 それでは、第8話のスタートです(*ゝω・*)ノ


 葛城が半蔵学園に戻っている頃、レジスターの怪人と化したノブヒコは、渋谷で大暴れしていた。腕のバーコードスキャナから強力な光線が発射され、建物は次々と破壊されていく。あまりの恐怖に、人々も逃げるばかりでした。

「きゃぁーーーーー!」「殺される!逃げろー」「ママ怖いよーー(涙)」

 

 さらに、ノブヒコは壊した建物にあったレジスターのお金を、手当たり次第奪っていました。

「アッター、金ダ金ダ!」

ノブヒコは、お金を腹部の引き出しに貯え、力を強化していた。

「ハァー、大量!大量!!サーテト、次ノ店ニ向カウデゼニ」

「見つけたぞ!」

するとそこへ、ノブヒコの後をつけてきた警官と突撃部隊が大人数で駆け付けてきた。距離を於き、大きな盾を構えて身を守り、様子をみていた。その中から、一人の警官が、先頭へと立つ。片手に持っていたメガホンで、ノブヒコに言った。

「おい、そこの怪人!お前はこの通り、包囲されている。無駄な抵抗は辞めて、大人しく…」

「フン!誰ガ人間風情の言ウ事ナンテ聞クカゼニ。くらえ!釣銭流星群!!」

ノブヒコが腹部の引き出しを開くと、そこから硬貨型の核爆弾が乱射された。核爆弾は、一度上空に上がると一気に下降し、流星群の様に突撃部隊の元へと降り注がれた。

「ぐわーーーー!」

 

 突撃部隊は、鉄道の盾を使って核爆弾を防ごうとしました。しかし、核爆弾の下降速度は予想をはるかに超え、盾を向ける前に隊員の体を直撃した。この攻撃により、一気に過半数の隊員が戦闘不能となった。

「お前達。くそ〰化け物め〰。うて〰」

突撃部隊の隊長が、放射命令をくだした。隊員は、拳銃を構えるやいなや、ノブヒコへと撃ちこんだ。

「ヘン!痒イ痒イ。体に小動物でも乗っているのか」

撃った銃弾は、風穴どころか傷1つ付きません。ノブヒコは、余裕の表情で全部の銃弾を受けきった。

「弾が…」

「ン、モウ終リカ?デハ、次ハ俺ノ番でゼニ!」

そう言って、ノブヒコは腹部の引き出しから1枚の硬貨を取り出した。

「くらえ!硬貨円斬」

ノブヒコは、1枚の硬貨をフリスビーの様にしぶん投げた。すると、硬貨はどんどん大きくなり巨大な円盤みたいになりました。それもただ、大きくなって飛んできたのではなく、回転する丸ノコギリの様に、突撃部隊が持っていた鉄の盾をいとも簡単にブッタ斬りました。

「ギャ〰〰〰!」

 

 警官も突撃部隊も、ノブヒコの攻撃により全滅。死に至ることはなかったものの、全員戦闘不能状態となりその場で気を失いました。

「ば…化け物め……ガクっ」

とうとう、最後に残っていた警官も気を失った。

「ゼーニゼニゼニゼニ(笑い声)!オ前ラガ束ニナッタトコロデ、俺様ニ敵ウ訳ガナイゼニ!サーテト、コノ調子デ次ノ店へ…」

ノブヒコは、そのまま次の店へと行こうとした。すると、ノブヒコの後方からある音がした。その音は『カチカチッ、カチカチッ』っと、金庫のドライバーを回している様な音でした。つかさず、ノブヒコは振り向いた。

「ナンダ?コノ音ハ……ナァ!?」

ノブヒコが振り向くと、そこには謎の人影があった。その正体は、金平糖の様なトゲトゲとしたオレンジ色の一頭身姿の生物でした。緑色の手ぬぐいを顔に巻き、緑の丸眼鏡風のサングラス掛けていた。生物は、さっきまで無かった謎の金庫を一言も言葉発すること無く、ドライバーを回し調整していた。

 

 ノブヒコは、心の中で『コイツ、ヤバイヤツだな…』

と確信した。しかし、このまま触れずに帰るのは気まずいと思ったのか、ノブヒコはその生物に話し掛けた。

「貴様…イツカラソコニイタ!……アト…何者ゼニ!!」

質問を聞いた生物は、軽くこう答えた。

「あっ!愛泥棒でーす」

「あ…愛泥棒だ…!?」

謎の返答に、ノブヒコも思わず首をかしげた。

 

 そんなやりとりをしていると、金庫から『カチッ』

という音が聞こえた。どうやら、開いた様子。

「さ~て、お宝をいただきますか」

そう言って、金庫を開けました。すると、中から謎の光が差す。そして、光はやんだ。

「……ん?……………キャー何見てるのよ!」

金庫の中では、なんと身長10㎝ほどの超小柄の女性が、下着に着替えていた。そもそも、『なんでこんな所で着替えていたのか?』『こんな小さい人間が存在するのか?』『二次元の世界は何でもあり?』っと、ツッコミたい事は山ほどある。

「う~~~ん…愛だね」

「何が愛よ このスケベ!変態!!薄情者!!!」

小さい女は下着の中から拳銃を取り出し、愛泥棒の額にガンガン撃ち続けた。

「う~~~ん………これも愛だね~」

額から血が流れているにもかかわらず、『愛だね~』っと訳のわからない発言を愛泥棒は繰り返した。

 

 こんな感じで謎のやり取りが10分ほど続いた。気がつけば愛泥棒は、大きな十字架にて手足を縛られ、捕らわれていた。10分間に起こった出来事は、言葉で表すには理解不能で難し過ぎた為、大幅カットされた。

※その辺は、本当に申し訳ありませんでしたm(_ _)m

「う~~~ん、愛は俺を見放したぜ」

『ラブハンターY!次会うときは、お前の愛もいただくぜ THE END』(謎のナレーション)

「チョットマテ〰〰〰オドリャ〰〰〰〰!!!」

 

 10分間のやり取りを見ていたノブヒコは、とうとう堪忍袋の緒が切れたのか、全力でツッコミを入れた。愛泥棒だとか、小さい女とか、色々ありすぎてツッコまざる終えません。

「サッキカラオマエ、訳がワカラナイゼニ!オレはコノ10分何ヲ見セラレテイタゼニか!」

ノブヒコは、心の中に思っていた事をとにかく吐き出した。そして、1番気になってたことを単刀直入に聞いた。

「テイウカ、オマエ…ファミレスにいたトゲ野郎ジャナイカゼニ 」 

 

 そう、先程から『愛泥棒』と名乗っていた男の正体は、首領パッチだったのです。首領パッチは、ノブヒコを見つめながら言った。

「No,No!オレは愛を追い求める救世主………そう、ラブハンターY!!!」

首領パッチは、サングラスと手ぬぐいを整えて、ポーズを決めた。首領パッチは、一体何がしたいのか?変装にしてはバレバレだし、攻撃態勢も見せない。ただ、自分事を『ラブハンターY』として貫き通しているだけである。

「グヌヌヌヌ…ナメヤガッテ…。オマエみたいなヤツはオレが切リ刻ンデヤル 喰らえゼニ!硬貨円斬」

ノブヒコは、大きな硬貨を首領パッチへと投げつけた。一方の首領パッチは、そんなこともお構いなしに、ずっとポーズを決めていた。硬貨はチェーンソーの様に回転を増しながら、みるみる首領パッチへと接近していた。

「死ヌゼニ〰〰〰!!!」

 

 「足りないなぁ…」

すると首領パッチは、余所見した状態で手を伸ばし、硬貨を掴み取った。それだけでなく、そのまま握力を頼りに回転を止めました。

「ナニーー!俺ノ硬貨円斬を止メタヤガッタ。シカモ素手デ!!!」

「お前に愛…………足りないなぁ」 

そう言って首領パッチは、硬貨を握力で粉々に砕いてしまいました。手に着いた破片を払い、ノブヒコを見つめた。

 

 「Y………参る!」

そう言って、首領パッチはノブヒコに向かって走りだしました。

「ヒィッ!来タ。クソ〰一度攻撃ヲ止メタからって、調子に乗るなゼニ!釣銭流星群!!」

ノブヒコの引き出しから、硬貨の核爆弾が打ち上げられた。核爆弾は、首領パッチ目がけて下降しました。辺りは、爆発時の煙により包まれた。

「ハッハッハー、何ガ愛泥棒でゼニ!愛どかろかオマエが先二吹キ飛ンデ……………何ッ!!」

ノブヒコは突然驚いた。目線の先には、鎮火した核爆弾を素手いっぱいに握りしめた首領パッチが歩いていました。首領パッチは、手に持ってた核爆弾をジャラジャラ落としながら、ゆっくりとノブヒコの元へと向かった。ノブヒコは、いつの間にか体が震えていました。

「な…ナンダコイツは…。オマエ…本当に何者ナンダゼニ…」

首領パッチは、ノブヒコの約1メートル付近で歩くのをやめた。

「俺は……ラブハンタ~~~~Y!!」

「グワシッ!!!」

 

 首領パッチは、ノブヒコの腹部に強くて正確な右ストレートを喰らわせた。攻撃を受けたノブヒコは、ぶっ飛ばされた勢いで、後方にあった壁へ思いっきり衝突した。 

「愛………注入!」

「痛た…………ナンテ威力ノ拳……ぶは……もうアイツが何者カハドウデモイイ。オマエをぶっ殺すでゼニ 」

そう言ってノブヒコは、左腕のレシートプリンターを首領パッチへと向けた。

「必殺!レシート縛りでゼニ!」

レシートプリンターから、それはそれは長いレシートがプリントされ、首領パッチへ襲いかかった。

「ん、何だコレ?」

レシートは、首領の体をぐるぐる巻きにし、身動きがとれないよう縛り上げた。首領パッチは、抜け出そうとしましたが、レシートは鉄の様に固くなっており、いくら藻掻いても抜け出せません。

「何だよコレ?紙なのに……動けない」

「オット、その紙は特殊でな…ソウ簡単ニハ抜ケ出セナイゼニ!」

 首領パッチは、動きを封じられて為す術がありません。いつもふざけてばかりの首領パッチでも、若干焦り始めたのか体から汗が滲んできた。

 

 「こ…これは……マジでヤバイかも」

「さ~て、さっきのお返シゼニ!オマエほどデハナイガ、俺もパンチには自信ガアッテナ」

「ふん、そんな腕じゃまともに打てないだろ」

体が拘束されても、いつもの調子でノブヒコを挑発する首領パッチ。

「フン、生意気なヤツでゼニ まぁ、ドノ道死ヌケドナ

レシートプリンターだったノブヒコの左腕は、謎の光に包まれ、人間と同じ形の腕に変化しました。そして、睨みを効かせながら拳を大きく振りかぶりました。

「トゲトゲ野郎……くたばれゼニ!」

 

 ノブヒコの拳が首領パッチの顔に当たりかけた時であった。風のようなスピードで、一人の少女がノブヒコに向かって突っ込んできました。そう、葛城です。葛城は軽く跳びあがり、勢いを効かせた鋭いキックを繰り出した。その足には、竜巻の様なものが纏っていた。

「秘伝忍法 クロスパンツァー!!」

「ン?ギョワ〰〰〰〰〰〰〰!!!」 

葛城の蹴りを喰らったノブヒコは、再び後方の壁に激突した。

 

 葛城は、首領パッチを見つけると、すぐさまレシートをほどいた。

「首領パッチさん、大丈夫っすか!?」

「葛城!………おせーよ!」

「へへへ、ここ探すのに苦労して」

葛城により、首領パッチはノブヒコの束縛から解放された。すると突然、首領パッチは葛城に聞いた。

「ここに来たって事は……あの手紙は読んだんだな」

「はい。………ファミレスの時の首領パッチさんの行動の意味も……わかりました」

 

 それは、今から数分前に遡る。ノブヒコに敗れた葛城は、首領パッチにより半蔵学園へと戻っていた。闘っている時に首領パッチの行動が目立ち、葛城はあの時何をやれば正解だったのかを悩んでいた。そんな葛城を見た斑鳩は、葛城に渡すよ頼まれていた首領パッチの手紙を渡したのです。

「葛城さん、何があったかは知りませんが……まずは、こちらを読んでからお決めになっては」(斑鳩)

「なんだよコレ?」(葛城)

「首領パッチさんが、葛城さんに渡す様にと置いていかれた手紙です」(斑鳩)

「手紙…」(葛城)

葛城は、手紙を黙読し始めた。葛城は、軽く頷きながら手紙を読みんでいた。

「これは!」

 

 手紙には、こう書かれていた。

『葛城へ 

この手紙を読んでいるということは、お前が目を覚ましたってことだな。お前が“ヒーローになりたい”って言った時は、正直驚いたぜ。初めは冗談かと思ってたけど、変身するわ怪人が本当に出てくるわで、驚いたぜ。戦いを少し見せてもらったが………お前の戦い方には“迷い”が感じられる。人を守る事は良いことだが、オマエはそれに縛られている。俺もいろんなヤベー奴と戦ってきたが、戦う際に必ず心掛けている事がある。

それは、“遊び心”さ。

戦う事は命懸けだが、ヒーローになるって決めたのはオマエだからな。決めた本人が楽しくなかったら意味ないだろ!自分で決めた事は、もっと楽しめ!そしてハジケろ。今度弱音を吐いたら、鼻にピスタチオ詰めて盆踊りだからな!            首領パッチより』

 

 そして、時間は今に至る。そして首領パッチは、葛城に聞いた。

「わかったのか?俺の言いたい事は?」

「はい!あの時の首領パッチさんがとった行動は、アタイにもっと“戦いを楽しめ”と…アタイはもっと、“馬鹿をやれ”って事っすよね」

葛城は、真っ直ぐな気持ちで首領パッチに言った。答えを聞いた首領パッチは、何だかいつもと違って照れくさそうに答えた。

「さぁな……。あと、まだ終わっていないからな。ドリンクバーに戻るまでが課題だよ」

「首領パッチさん………オッス!」

そんな2人を余所に、ノブヒコはゆっくりと近づいていました。

「痛タタ………オノレ〰ナメヤガッテ。コウナッタラ2人マトメテ消してやるゼニ!」

 

 葛城は、変身ベルトと忍転身の巻物を取り出した。

「それじゃ、行きますか!」

「ハジケまくって行くぜ!」

葛城はベルトを装着し、巻物を(ベルトに)挿し込んだ。

『オーダー 通しマース!』(ベルト音声)

「忍~~~変・身!!」(葛城)

『オーダー入りマース! セクハラーメンマン一丁!!』(ベルト音声)

葛城は、セクハラーメンマンの姿へと変身した。首領パッチは、再び手ぬぐいとサングラスを身につけた。

「セクハラーメンマン  舞忍びます!」

「ラブハンターY  愛を求めて再び降臨!」

 

 変身を終えた2人は、一斉にノブヒコへと突っ込みました。

「ふん!何人デ掛かってこようが、同じでゼニ。吹っ飛ばすゼニ!!吹き飛べ!!!」

そう言ってノブヒコは、腹部の引き出しを開きました。

ノブヒコの腹部から、大量の硬貨核爆弾が発射され、2人に目がけて飛んできました。しかし、2人は止まりません、むしろ走り続けた。2人の周辺では、核爆弾による爆発で荒れていましたが、それでも2人は走り続け、大きく跳び上がりました。

「いっけ〰!」(葛城&首領パッチ)

2人は、落下の勢いを活かしてノブヒコへ渾身のキックを繰り出した。

「ナニ!?ギョワ〰〰!」

「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ-!!」(葛城&首領パッチ)

蹴りは、一発だけでは終わりません。2人は、ひたすらノブヒコの顔や体に、有りっ丈の連続キックを食らわせた。首領パッチに関しては、蹴りながら呑気にお茶を啜るという余裕ぶりを見せていた。

「どりゃ〰!」

「ゼニ〰〰ブハッ!」

 

 2人の強烈な蹴りに、ノブヒコもかなりのダメージを負ったみたいです。それでも、ノブヒコは懲りずに立ち上がりました。

「マダマダ……お前ら…絶対ニ許さんゼニ!」

「許さないは、こっちのセリフだぜ!」

葛城は、胸元から緑のUSBメモリを取り出した、ベルトに挿し込んだ。

『オーダー入りマース  キ・ザ・ミ!』

葛城は、側方から出現した異空間から、麺切りカッターの様な双剣を取り出し、構えた。

「おおっ、武器か。それなら、俺も負けてられない」

葛城の双剣に嫉妬したのか、首領パッチも負けじと自分の武器を取り出した。ただその武器を見た葛城は、ツッコまざる終えません。

「ドンパッチソード!!」

「ネギ〰!?」

「よし、オマエのハジケた戦いを見せてみろ葛城!」

「お…オッス。さ~かかって来やがれレジ野郎!」

 

 「ふん!そう調子ノッテルノモ今ノウチでゼニ!」

ノブヒコは、バーコードスキャナの左腕を2人に向けた。すると、赤い光の様なものが左腕に集まっていた。

「燃え尽きろ!スキャナレーザー!!」

左腕に集まった光は一本の光線へと変わり、2人めがけて発射された。

「なんの!」

2人はすぐさまジャンプし、光線を避けた。ノブヒコも、負けじと光線を連射しました。それでも2人は次々とかわしていった。

 

 次にノブヒコは、腹部の引き出しから数枚の硬貨を取り出し2人と投げつけた。

「コレでどうだ!硬貨円斬」

ノブヒコが投げた硬貨はみるみる大きくなり、回転ノコギリの様に回転しながら襲いかかった。

「ふん!そんなのは効かないっつーの」

葛城は、ベルトを2回開け閉めした。

『斬れ味 マシマシ(増し増し)』(ベルト音声)

すると、葛城の持っていた双剣が一段と鋭い刃へと変化した。葛城は、その双剣で次々と巨大硬貨に斬りかかりました。まるで、レーザーで金属を斬ってるかのように、硬貨はいとも簡単に斬られていきました。

 

 一方の首領パッチは、巨大硬貨に向かって走っていました。そして、走りながら謎の構えたを決めて跳びあがった。

「ん~~~…Y・Y・Y・Y・ワーーーイ!!」

なんと首領パッチ、手刀で次々と硬貨を斬り始めた。『Y』という一文字を描きながら、無駄のないスピードで軽やかに斬り続けていた。ただ、疑問に思うことが一つあった。なぜ『Y』なのか?それは私にもわからない。

 

「畜生!コウナッタラ動きヲ止めてやるゼニ!レシート縛り」

「んっ!またコレかよ」

首領パッチは、再びノブヒコのレシートにより拘束された。

「首領パッチさん!今助けに…」

「おっと!ソウハサセルカ!!」

葛城は、首領パッチを助けようと近付きますが、ノブヒコが光線でなかなか近づけません。葛城は、避けるのに必死でした。

「ハッハッハー、避ケテバカリでは、何も出来ナイゼニ!」

「くそー。何とかしてヤツに対抗できれば……首領パッチさんは、“遊び心”を忘れるなって手紙に書いてたけど……一体どすれば。ハァ!たしか、春花が前に…」

 

 葛城は、変身ベルトをに春花が言ってた言葉を思い出した。

『このベルトは、アナタの巻物は勿論、他の子の巻物や“巻物以外”も挿入可能になってるのよ…』

「巻物以外…アッ!アレは………よし、一か八かでやってみるか」

葛城は、ノブヒコの攻撃を避けながら、つかさず落ちていた1本のドンパッチソード(ネギ)を拾い上げた。

「首領パッチさん!このネギ…いや、ドンパッチソードをちょっと借りるぜ!」

「おい葛城、オレのドンパッチソードをどうするつもりだ!」

「見ててください首領パッチさん!アタイの“ハジケ”を!!」

 

 葛城は、ベルトに挿入されていた巻物を外した。そして、なんとドンパッチソード(ネギ)をベルトへ挿入し、ボタンを押した。

『足甲オーダー入りマース ドンパッチソーード!!』(ベルト音声)

葛城の足甲は、姿を変えた。その見た目は、緑のつま先と白銀に輝く胴体をしたネギ型の足甲でした。この足甲を見たノブヒコは、笑い始めた。

「ハー、ハッハッハ!なんだそのダサい靴は。そんなのでコノ俺ヲ倒ソウッテ…ハー、ハッハッハ…」

ノブヒコが笑っていますが、けして葛城はブレていません。むしろ、堂々としていた。

「アタイのハジケは…これからだ!」

そう言って葛城は、ノブヒコへと突っ込んだ。葛城は、助走を活かしてノブヒコに蹴りかかった。

「なんのコレシキ!」

ノブヒコはすぐさま気づき、腕を盾に攻撃を防いだ。しかし、葛城の攻撃は終わっていません。

「チェストー-!!」

「何!ぐわ〰〰〰!」

葛城は、蹴りを防いだノブヒコの腕を踏み台のようにして、軽く後ろに跳んだ。そして、着地した瞬時にノブヒコの腹部に鋭い蹴りを喰らわせた。

「ナメヤガッテ……小娘!今度は、コッチガ…」

「おっと!そうはさせないぜ」

葛城は、ちゃかした感じで喋りながら、指を1回パチンと鳴らした。

「くらえ!釣銭流星群………あれ?…つ、釣銭流星群…流星群…流星群!!何だ!?硬貨が出テコナイゼニ!」

すると、腹部の引き出しが勝手に小刻みに動き始めた。

「な、ナンダ!何ガ起こったゼニ!?」

すると、引き出しの中から複数の棒状の物体が伸び、ノブヒコの顔面を襲った。

「のわ〰〰!何だコレは………ね、ネギ!?」

 

 飛び出したものの正体は、大量のネギでした。なんと、引き出しの硬貨がいつの間にかネギに変わっていた。

「何ガドウイウ事だ!硬貨ガいつの間にかネギに……ギャア!ネギ臭っ」 

「アタイのハジケはこれからだ!」

そう言って葛城は、ベルトを2回ほど開け閉めした。

『オーダー通シマース ドンパッチソード…秘伝忍法!!』(ベルト音声)

葛城は、ネギ型の足甲に自身のチャクラを集中させた。さらに足を上げて、足甲の外底をノブヒコの方へ向けた。すると、外底から謎の光が輝いていた。

「いくぜ!英雄ハジケ忍法 グリーンジェノサイド!!」

すると、足甲から光と共に長い棒状のモノがノブヒコ目がけて発射された。

「どわ〰!痛、タタタタタタ〰!こ…これは……ネギ!?」

 

 足甲から出てきた物の正体は、大量の長ネギでした。一般的に考えても、ネギはそれほど痛くないと思うかもしれないが、このネギは普通ではない。葛城のチャクラと首領パッチのハジケをエネルギーとしてまとったこのネギは、マシンガンの弾丸の様に硬く、ノブヒコの体に次々と傷を付けていた。

「クソ〰〰…俺がこんな子供騙しに…ギャア!」

最後に放たれたネギによる攻撃をくらい、体勢が崩れお尻から倒れた。ノブヒコは、何か他の手段は無いかを考えていた。

「ナメルナよ〰金髪乳娘!オマエなんか俺が本気ヲ出せば簡単ニ……ん?何だコノ音」

突如、ノブヒコの背後から『ムシャムシャ』と音が聞こえてきた。気になって振り返ってみた。

「ん~…………………メ~メ~」

「ヤーーーギーーー!!」(ノブヒコ)

「メ~メ~…」

「あのトゲ野郎ガ…ヤギにナッテル!?」

なんと、ノブヒコによって後ろで拘束されていた首領パッチが、いつの間にか体中から毛が生えたヤギの姿へと変身し、体を縛っていたレシートをムシャムシャ食べていた。首には『ヤギ吉』とかかれた名札をぶら下げていた。

 

 首領パッチは、レシートを食べ終わると、ノブヒコの目をジロジロと見つめていた。

「な…何ジロジロ見ているぜに!本当オマエは、何者でゼニ!!」

「………………………………………………………メ~」

しばらく黙り込んだと思いきや、何も答えず首領パッチは『ヤギ吉』として、キャラを貫いていた。しかし、ソレを見ていたノブヒコは、馬鹿馬鹿しすぎて激怒していた。

「貴様〰〰モウ許さん!!スキャナレーザー乱れ打ち!!!」

ノブヒコは、怒りながら腕のバーコードスキャナから光線を続けて発射させた。

「メ~(ハジケ流奥義 ヤギ吉ディフェンス っと言ってます)」

しかし首領パッチは、ヤギとは思えない軽やかなディフェンスで、光線を次々と避けていきました。避けている時に一瞬だけ見せるドヤ顔は………なんかウザい。

 

 「メ~、メ~、メ~~~~」

「メーメーウルサいゼニ!ちょこまかシヤガッテ!!」

「メリャ〰!」(首領パッチ)

光線を避けた首領パッチは、高く跳び上がり華麗に宙を舞い始めた。これを見たノブヒコは思わずにやけた。

「バカめ!そんな高く跳ンダところで、着地したところを打ち抜いて…………なにっ!」

 

 ノブヒコは、あることに気づいた。

「バカは…どっちの方だよ!」(葛城)

「メ~」(首領パッチ)

なんと、葛城が首領パッチがノブヒコと絡んでいる間に、自身のチャクラとハジケの力を使って、巨大なネギのような槍を作っていた。宙を舞っていた首領パッチは、ニヤッと笑みを浮かべながらそのネギへと着地し、またがった。そんな首領パッチの頭を、葛城は笑顔で撫でていた。

「サンキューヤギ吉。おかげで助かったぜ」

「まさかオマエラ、この為に時間を稼イデイタゼニ!」

「いや、別に」(葛城)

「ハイ!?」

「アタイは、始めっからこんな事は予定に入れてないぜ。アタイは基本、戦いの時はNoプランだからな。ただ、アタイと首領パッチさんは、オマエには無い物を持っているからな…」

「俺に無い物!?」

「ああ、“ハジケ”さ!!」

「ハ?」

 

 ノブヒコは、葛城がって言っている事がわかりませンでした。

「“ハジケ”っていうのは、アタイにもわからねー。でも…唯一言える事は、もっと“馬鹿やれ”って事なんだよ。首領パッチさんは、何を考えているかはわからねぇ。でも、この人は馬鹿だから今もこうしてアタイとたたかっている。馬鹿は、仲間を救う希望となるのさ!」(葛城)

「おい!もっと他に言葉なかったのかよ」(首領パッチ)

首領パッチは、いつの間にか元のキャラにもどっていた。

「ま、簡単に言うとしたら、お前ももっと馬鹿やろうぜ!悪い事はやっててよくないぜ。頭丸めて気楽にいこうぜ」

 

 数分間の葛城は、『ハジケとは何なのか?』と想像も付いていませんでした。でも、今は違います。葛城は確かに何も考えず、自身の戦い方や美学を貫いていたいました。ヒーローになりたいという純粋な思いも、そんな彼女にとっては『ハジケ』というモノなのである。そう、葛城は今も今までも『バカやってる』のである。葛城にとっての『ハジケ』は、いつも通りの自分の事だったのです。

 

 「貴様ラ〰〰〰何ガ馬鹿やろうだ!ふざけた事言ってるんじゃないでゼニ〰〰〰!!」

ノブヒコは、葛城の話を聞き終わるいなや反省するどころか、かえって怒り出した。そして、最初の時と比べてかなり野太い光線を2人に向けて発射させた。

「どうやら、何を言ってもダメみたいっすね。……首領パッチさん、トドメ行きましょう!」

「アア!見せてやるか…ハジケの力を!!」

葛城は、ベルトを2回開け閉めした。

『オーダー通シマース ドンパッチソード……秘伝忍法』(ベルト音声)

 

 首領パッチは、巨大ネギの上に立ち体勢をつくった。それはまるで、サーフィンで波に乗ってる様な体勢でありました。一方の葛城は、大きく足を振りかぶった。

『いくぜ〰! 英雄協力忍法 ハジケグリーンサーフィン!!』

葛城は、大きく振りかぶった足で巨大ネギを強く蹴り飛ばした。ネギは、ミサイルの様に勢いよくノブヒコ目がけて飛んでいった。首領パッチは、方向がズレないようにバランスを調整していた。

 

 まず、ネギはノブヒコによって放たれた光線と激突した。ネギは、あっという間に光線をかき消してそのまま直行した。

「馬鹿な!!コンナ子供騙シニ俺が!?」

「いっけ〰〰〰!!」(葛城)

「コレが関西伝統のネギ神輿じゃ〰〰〰!!!」(首領パッチ)

「そんな神輿無(ねぇ)〰〰〰」(ノブヒコ)

 

 巨大ネギは、(ノブヒコを)直撃し大爆発をおこした。一方、爆風により吹っ飛ばされた首領パッチだが、難なく着地してカッコよくヒーロー風のポーズを決めた。

「コレが………主人公の力よ」(首領パッチ)

「アンタ、主人公じゃないでしょ」(葛城)

葛城と首領パッチは、いつも通りのテンションに戻ると、軽くハイタッチした。

 

 一方のノブヒコは、人間の姿と怪人の姿に分裂していた。人間(ノブヒコ)の方には、怪我はありません。ただ、その場で気を失って倒れていた。そして、取り憑いていた化け物は、体に重傷を負っているにもかかわらず、ふらふらになりながらも立ち上がっていた。

「貴様ら……こ…これで終わったと……思うなゼニ」

「もう辞めとけ、レジ野郎。これ以上やっても、アンタがダメになるだけだぞ」

葛城は、怪人を説得しようとした。しかし、ノブヒコは何かを企んでいるのか、うっすらと笑みを浮かべていた。

「なんかアイツ笑っているぞ葛城。パクチーの旨さでもわかったのか?」

「こんな時にふざけないでくださいよ!」

相変わらず首領パッチは、こんな重たい状況でもマイペースを崩さない。

 

 怪人は、2人に言った。

「おい!お前ら、これで終わったと思うなよ。“俺たち”は、お前ら忍がいる限り何度でも復活する。次に会うときは、この程度ではやられないでゼニ!」

葛城は、怪人の発言にあった“俺たち”という言葉が気になった。

「オイ、俺達ってどういう事だ!まさか、他に仲間が…」

「おっと、口がすべってしまったでゼニ。ここは、ひとまず撤退でゼニ……さらば!」

化け物は、手に仕込んでいた硬貨弾を地面に叩きつけた。叩きつけられた硬貨は爆発し、出てきた煙が周りを充満した。

「ケホケホ(咳払い)…しまった、逃げられちまったか」

「安心しろ葛城。こんな事もあろうかと、それなりの手はうってある」

「本当っすか、首領パッチさん」なんと首領パッチは、戦いの時に何か秘策をとっていたと言う。珍しく、気の利く行動をとったことに葛城も驚き、関心した。

「あぁ……アイツ背中に…」

「背中に……」

「背中に………俺の鼻くそを擦り付けてやったぜ」

「………期待して損したぜ…」(葛城の心の声)

堂々としている割りに、やっていたことは小学生並みのくだらない秘策であった。葛城は、関心してた自分が恥ずかしくなり、一時的に沈黙した。

 

 今回の戦いは、こうして終わった。怪人に取り憑かれていた、ノブヒコという男性は、某悪徳集団の一員と言うことが後に判明し、彼を含む団員は逮捕された。しかし、後から駆けつけた霧夜の説得により、ノブヒコのみ情報を聞き出すために、半蔵学院系列の諜報部一課へと預ける形となった。ちなみに、セクハラーメンマンとラブハンターYの活躍は、誰も知らない。

 

 その帰り道、葛城と首領パッチはボヤキながら、歩いていた。

「は~。忍とはいえ、アタイらの活躍を世間に公開出来ないなんて、どうも憂鬱だぜ」

「オマエも大変だな葛城。俺がオマエなら、世間にビシッと訴えているぜ」

すると、突然葛城は足を止めた。

「どうした、葛城?」

「…」

葛城は黙り込んだと思いきや、すぐ話した。

「首領パッチさん………お願いします!アタイとこれからも戦ってくださいよ!」

 

 葛城は、真面目な表情を浮かべていて、誠意のこもった大きなお辞儀をした。それを見た首領パッチも、真剣な表情で黙り込み葛城を見つめた。

「今回勝てたのも、首領パッチさんがアタイに足りなかった所を教えてくれたおかげっす。アタイは、ヒーローに変身して戦えていた事だけに満足していて、大丈夫な“遊び心”を忘れていた……でも、今回の首領パッチさんのおかげで、アタイが忘れていた事を教えていただいた…」

葛城は、頭を上げることなく自分の思いを首領パッチへと伝えた。一方の首領パッチは、ふざけるどころかただただ真剣に話を聞いていた。

「首領パッチさんには、教えて貰いたいことがまだまだある…アタイが体験したことない事を教えてほしい…そして……一緒に戦いたい!」

葛城は、頭を上げるともう一度大きくお辞儀した。

「だから首領パッチさん……アタイとヒーローやってください…お願いします!!」

 

 葛城は、自分の思いを全て伝えた。首領パッチは、腕を組みただただ沈黙した。葛城は、顔に汗をかきながらも、首領パッチの返答が来るまで頭をさげた。

「はぁ~」

首領パッチは、ため息をつくと一人歩き出した。葛城の顔の汗は、思わず止まる。

「足甲からドンパッチソード………悪くねぇな」

「え?」

葛城は、思わず頭を上げた。そして首領パッチは、振り返って言った。

「ヒーローチームのリーダーは、俺だからな……セクハラーメンマン!」

「…………ど…首領パッチさん…」

首領パッチの答えを聞いた葛城は、あまりの嬉しさに一滴の涙がこぼれた。涙を拭いた葛城は、再び首領パッチにお辞儀をして言った。

「ありがとうございます。あと……これからもよろしくお願いします」

首領パッチは、葛城の言葉にニコッと笑つまていました。

「よし、今からファミレスへ戻ってドリンクバーで乾杯だ!」

「ったく…首領パッチさんも懲りないなぁ」

 

 こうして、葛城は首領パッチとともにヒーローとして戦っていくことを決意した。なんだかクセの強く2人に見えるが、これでいい。ヒーローに大丈夫なことは、とにかく馬鹿やってほんのわずかの遊び心を忘れないことなのだから。そう、2人はこれからも馬鹿やり続け戦っていくのである。

 

 その頃、ある路地裏ではある悲鳴が響いていた。

「ぎゃ〰〰〰〰〰!あのトゲ野郎、俺の背中に鼻くそ付けてやがる。オエェ、汚ないゼニ…」

そこにいたのは、2人に敗れた怪人でありました。人気のない路地裏で体を休めていたところ、背中に擦り付けてあった首領パッチの鼻くそに気付いた様子。怪人は、手を伸ばして鼻くそを取ろうとしましたが、なかなか届きません。

「くそー、届きにくい所に付けやがって。ぐぬぬぬぬぬぬ…と、取れないゼニ」

「何をしているのです……試作品3号」

「見ればわかるだろ…鼻くそをとって…………ぎょわ〰〰!あ……姉様!?」

 

 突然背後から謎の声が。振り返るとそこには、川獺(カワウソ)の仮面で顔を覆い、紫のウェーブのかかった長い髪をした人物が一人立っていた。黒いマントで体に羽織っているが、胸の膨らみからして女性であることは確かであった。

 

 女は怪人を『試作品3号』と呼んび、それに対し怪人は小刻みに体を震えさせていた。

「あ…姉様…なぜこんな所に…」

女は、ゆっくり近づき言った。

「あなたは、“わが軍”の秘密を漏らしました……もう、用済みです」

「ヒィッ!待ってくれ姉様…アレは…その……つ、次こそは…ヤツらを…」

しかし、もう手遅れでした。女は手から謎の紫色の炎を出し、それを使って怪人の体を包み込んだ。

「あ……姉様……お許しを…」

「試作品…………消去」

「ゼニ〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰!!!」

女が拳を握った途端、怪人を包んでいた炎が一気に燃え上がり、大きな火柱となった。怪人は、完全燃焼してしまい、気がつけば体は無くなり、吸収したレジスターだけが残されていた。

 

「安心してください試作品3号。あなたは、私がもっと強くさせてみせますので…」

女は、何やらゴソゴソしていた。そして、自身の胸の谷間から一つのタブレットを取り出し、操作した。

「……半蔵学院三年……葛城。………キングオブ・ハジケリスト……首領パッチ」

そして女は、不気味な笑みを浮かべてこう言った。

「滅まします………計画の為に」




 かなりのギリギリでしたが、なんとか書きおわりました。
今回の話で新たにラブハンターY(首領パッチ)がセクハラーメンマン(葛城)の仲間に加わりました。果たして、今後2人はどんなするのか…。さらに、新たに登場した『謎の女』にも目が離せません!
 次回も、この調子で頑張ります。ご愛読ありがとうございますm(_ _)m


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第9話 ハジケマシーンでGOGOGO 前編

 レジスター怪人・ノブヒコとの戦いから翌日。渋谷の各所では、ノブヒコの暴走により壊された建物の復刻作業が行われていた。その復刻作業には、半蔵学院忍クラス生徒の姿もあった。そう、このように一般人に紛れて活動を行うことも、善忍の任務でもあり、修行の一環でもある。



 午前五時過ぎ、渋谷の某被害現場。朝早くから、建物の復刻作業に専念する作業員達。そんな作業員の中に、見覚えのある顔が5人。

「ふわぁ~(あくび)……眠い…」(葛城)

破壊されたコンクリートの破片を一輪車で運んでいたのは、葛城であります。朝は、相当早かったのか呑気にあくびをしながら大量のコンクリートを詰め込んだ一輪車をダラけた感じで押し運んでいた。疲れた葛城は、足を止めて座り込んだ。

「朝早くから起こされるやいなや、破壊された建物の復刻活動か……ちょっとだけ一休み」(葛城)

「葛城さん!サボりは行けません!!」(斑鳩)

「ギクッ!い……斑鳩」(葛城)

 

 後方から注意の声を掛けたのは、斑鳩です。クラス委員ならではの勘だろうか、葛城のサボりを察知して注意しました。

「これも任務の一環です。サボりなんて許しませんよ」(斑鳩) 

「いいじゃないかよ…ちょっとぐらいさ…なっ」(葛城)

「ダメだよ葛姉!任務なんだからしっかり働かないと」(飛鳥)

斑鳩に続いて、後輩である飛鳥も束ねた鉄パイプを両腕運び歩きながら注意する。そんな2人に対し葛城は、言った。

「わかってるけどよ……じゃあせめて、その大きく実った果実(おっぱい)をもみもみ…もみもみさせてくれれば…」

葛城は、セクハラするき満々であった。小指から親指にかけて器用に指を動かし、口には涎を垂らしてニタニタする。しかし、葛城の頭にすぐさま落ちた1つの衝撃がその行動を辞めさせる。そう、斑鳩のゲンコツであった。葛城の頭からは、くっきりとした形のタンコブが出来た。

 

 「ああ……ぼ…暴力…だろ…」(葛城)

「これは、愛のムチです!しばらくそこで反省しててください。行きましょう、飛鳥さん!」(斑鳩)

「あ、待ってよ斑鳩さん」(飛鳥)

2人は、葛城をほっといて作業へと戻った。

 

 目まいがするほどのゲンコツを喰らった葛城は、ふらふらになりながらも起き上がった。

「ったく、斑鳩もやり過ぎるだろ。いくら何でもあそこまでしなくても」

葛城がブツブツ呟いていると、頭のタンコブから謎の冷感を感じた。

「ひやっ!冷たっ」(葛城)

「葛姉、お疲れさま。これ、現場監督のおじさんからの差し入れだよ」(雲雀)

「な…なんだ、雲雀か。ビックリさせるなよ」

謎の冷感の正体は、雲雀が持っていたキンキンに冷えた水の入ったペットボトルであった。葛城を驚かそうとし、後ろからこっそりと近づいてペットボトルをタンコブにちょこんと付けた様子。雲雀は、葛城のリアクションに、思わず笑いがこぼれる。

 

 「痛っ!くう〰しみる〰。ゴクゴク………プハー!キンキンに冷えてて旨(うめ)ー。やっぱり、コレとセクハラの為に生きているようなもんだぜ!」(葛城)

「もー、葛姉ったら……うふふ」(雲雀)

ペットボトルを受け取った葛城は、まずは水を頭にかけてタンコブを冷やし、残りの水は豪快に飲み干した。

「アタイに優しいのはオマエだけだぜ、雲雀」(葛城)

「葛姉ったら、調子いいんだから」(雲雀)

「あれ?柳生は、どうした?」(葛城)

「ああ、柳生ちゃんなら霧夜先生に呼ばれてお話しているよ」(柳生) 

葛城は、さっきのゲンコツからのテンションが嘘だったかのように機嫌を取り戻した。雲雀も安心して、クスクスと笑っていた。

 

 ここで雲雀は、辺りをキョロキョロした。誰も見ていないことを確認すると、葛城の耳元でコソコソと話しかけた。

「葛姉すごいね。この間の怪人さんを首領パッチさんと倒したんだよね」(雲雀)

「まぁな…なかなか手強かったけどな。しかし、倒したと思ったらコレだぜ…アイツ(レジスター怪人)め〰」

雲雀が持ち込んだ話題は、昨日のレジスター怪人との戦いの件であった。雲雀は、セクハラーメンマンが葛城だということを知っている。ただ、葛城は首領パッチと協力して戦ったことをまだ雲雀に話していないが何故わかったのか。それは、仲間とさての付き合いが長いからだ。

 

 「昨日は、首領パッチさんにいろいろ教えられたぜ…あの人には感謝しねーとな」

昨日の戦いで葛城は、首領パッチから『ハジケ』というのを学んだのだ。どんなときでも遊び心を忘れず、たまには馬鹿やることも正義の味方の役割だと。首領パッチは『ハジケ』の意味を答えてはいないが、葛城はそれを理解したからこそ、敵を倒すことができたのだ。

 

 「困ったときには、雲雀にも相談してね。大したことはできないけど、いざとなったら力になるから」(雲雀)

雲雀は、葛城を励ました。葛城がセクハラーメンマンとして戦っている事を知った限り、自分も出来ることをやって彼女(葛城)を助けたいと雲雀は思っています。

「本当か雲雀!それじゃ早速助けてほしいんだが…」(葛城)

葛城は、早速雲雀に相談を持ちかけた。

「え!?一体どうしたの?」(雲雀)

雲雀は、心配しながら葛城の話に耳を傾けた。

「それがさ……あの姿で戦うにはかなりのパワーを消費するんだ」(葛城)

「え!?そうなの!!」(雲雀)

「そこでな…なんつーかその…アタイを満足させるモノっつーか…幸福を満たすっつーか…そのたわわと実った果実を…」(葛城)

「たわわに実った果実?」(雲雀)

雲雀は、葛城の言っている事の意味がわからなかった。さらに、葛城のテンションは話せば話すほどおかしくなり、いつの間にか違うテンションへと変わっていた。

「そう、たわわと実った果実。その丸みを帯びた果実はプルンとした触り心地。一掴みではダメだ、触った直後に親指から小指にかけて波を立て…もみもみ~もみもみ~…まさに禁断の果じ……アベシッ!」(葛城)

欲望丸出しの葛城の頭に、再び1つの衝撃が降りかかる。

 

「雲雀、コイツの話を素直に聞かない方がいい」(柳生)

「あっ、柳生ちゃん!おかえり」(雲雀)

衝撃の正体は、柳生が振り下ろした傘による打撃であった。霧夜との話を終えて現場に戻ってきた様子だが、葛城が雲雀に何かいけないことをさせようとしているのを見つけて、すぐさま鉄拳制裁…いやっ「和傘制裁」をくらわせたのだ。

「いててて…や…柳生…おまえなー」(葛城)

葛城は、二段重ねになったタンコブを抑えながら、物申す。

「雲雀と何を話してたかは知らんが、変な事をふき込んだら……オマエであろうと許さんぞ」(柳生)

「あ……は…はい…」(葛城)

睨みを効かせて正論を言う柳生。これには、さすがの葛城は何も言い返せなかった。

 

 そして時間は経過し、作業は一段落を終えた。現場監督は、作業を終えた忍達を呼び集めた。

「皆さんのおかげで、無事に一段落作業を終えることができました。本当にありがとうございます」(現場監督)

「いえいえ、お役に立てて光栄です」(斑鳩)

「まぁ、アタイらに掛かればこのくらいどーってことないけどな」(葛城)

「葛城さん!!」(斑鳩)

さっき勝手に休もうとした葛城に、斑鳩はすぐさまツッコむ。そんなやりとりを見た現場監督は、クスクス笑いながら言った。

「ハッハッハ…面白いお友達がいて幸せそうですね」(現場監督)

「えっ…その…友達といいますか…その」(斑鳩)

「何を照れてるんだよ、アタイらは友達以上に家族みてーなもんだろ」(葛城)

「そうだね。私達は、家族だね」(飛鳥)

「うん、家族だね」(雲雀)

「雲雀と俺が………家族」(柳生)

「ハッハッハ、家族ですか。素晴らしいですね」(現場監督)

家族という言葉でそれぞれ盛り上がる一同。

 

 「た、大変です現場監督!」(作業員)

突然1人の作業員が、汗だくになりながら慌てて駆けつけた。

「ん?どうかしましたか」(現場監督)

「何かあったんですか?」(飛鳥)

現場監督と忍達は、作業員の話に耳を傾けた。作業員は、息を整えてしゃべり始めた。

「と…隣の現場で、突如謎の怪人が現れて…今も大暴れしています」(作業員)

「なっ!」(現場監督)

「「「「「え!!!!!」」」」」(半蔵学園の5人)

話の中に“怪人”という言葉ガ出てきた途端、忍達は一斉に興味を示した。その中でも葛城は、誰よりも早く鋭い反応をした。しかし、作業員の話はまだ終わっていません。

「その怪人は、暴れながら『忍出て来い!忍出て来い!』と言っています」(作業員)

「コレってまさか…葛姉!」(飛鳥)

「ああ。おそらくアタイらが目的だな…」(葛城)

 

 場所は、隣の現場へと移る。

「おらおら〰忍出て来い!忍び出て来い!!忍を出せ!!!」(怪人)

1人の怪人が、ガトリングガンを片手に『忍出て来い』と連呼しながら、現場を廃墟と化してた。そして忍5人と現場監督は、現場へとたどり着いた。

「これは!?」(現場監督)

「な…なんてひどい」(斑鳩)

周りを見渡すと、そこには廃墟となった現場と、怪人の攻撃を受けて倒れた作業員が数名いた。その光景を見た現場監督は、膝から崩れた。

「な…皆さんが…そんな」(現場監督)

「ひどい…」(雲雀)

「何もここまでやらなくても…」(飛鳥)

「ちっ!あんにゃろ〰。どこまで卑劣な連中なんだ…」(葛城)

 

 それぞれの思いは、同じであった。忍達は、怪人を許さないことを決意した。

「おっと!獲物のお出ましか」(怪人)

ここで怪人は、忍達に気がついた。片腕がガトリングガンで、もう片方はなんだか見覚えのある変わった形をしていた。それは、忍問わず一般の人も日常的に目にしている様なモノでした。

「アナタがやられたのですか」(斑鳩)

「その通りさ!こいつらは、忍をおびき寄せる為の捨て駒みてーなものさ」(怪人)

「てめ〰よくも〰」(葛城)

すると、葛城は葛城を見て言った。

「おぉ!もうこんな早くに会えるとはな…金髪娘」(怪人)

「はぁ?何言ってるんだよオマエ」(葛城)

「おっと!オレを忘れたとは言わせないでゼニ!」(怪人)

「ゼニ?」(葛城)

葛城に馴れ馴れしい感じで絡んでくる怪人。若干戸惑っていた葛城だが、彼の『ゼニ』という語尾と片腕の“バーコードリーダー”が、葛城の脳内から記憶を呼び起こした。

「お…オマエまさか……あの時のレジ野郎!」(葛城)

 

 怪人の正体は、前回セクハラーメンマン(葛城)とラブハンターY(首領パッチ)が戦ったレジスター怪人だったのです。語尾に『ゼニ』を付けるしゃべり方と、片腕のバーコードリーダーがその証拠です。

「葛姉、あの怪人知ってるの?」(飛鳥)

「ああ、ちょと姿が変わっているが間違いない」(葛城)

「ふん、せっかく会えたんだ。前回の恨みを果たさせてもらうでゼニ」(怪人)

レジスター怪人は、葛城に勝負を申し込んできた。

 

 しかし、個人での戦いはを避けようと斑鳩が割って入ってくる。

「ちょっとまってください!葛城に恨みがあることは知りませんが、ここは私達全員が相手です」(斑鳩)

「そーだよ!私達だけ黙って見てる訳にもいかないしね」(飛鳥)

「うん、葛姉は雲雀達で守る!」(雲雀)

「それとも…集団を相手にするのが怖いのか?……おたんこなす」(柳生)

斑鳩だけでなく飛鳥・雲雀・柳生の3人も葛城を守ろうと怪人に訴えかける。これを聞いた怪人も、黙っていません。 

 

 「誰がおたんこなすでゼニ!まぁ、いい。どのみちそこの金髪娘は、俺の相手ゼニ。お前ら(飛鳥・斑鳩・柳生・雲雀)の相手はこいつらで十分でゼニ」(怪人)

怪人は、バーコードリーダーだった腕を元の五本指の腕へと戻し、腹部の引き出しから何かを取り出した。

「皆さん、気をつけてください!何か気来ます」(斑鳩)

怪人の行動に、忍達は一斉に警戒し戦闘態勢にはいった。その間に怪人は、謎の呪符を取り出し回りに投げつけた。風でヒラヒラと舞う呪符は、一斉に地面へと落ちた。まるで自我があるかの様に。

「へっへっへー、凄いの見せてやるゼニ!」

パチッ(指パッチンの音)

怪人が指をパチンと鳴らすと、呪符は真っ直ぐ立ち上がり、謎の光を体に纏はじめた。呪符は、手足と2本の尻尾を生やし、猫の様な顔をした怪人へと姿を変えた。大きな布を体に羽織り、腰には日本刀や槍、鎌といった武器を下げていた。

 

「斑鳩さん、あれは一体!?」(飛鳥)

「確かですが、前に本で読んだ事があります。2本の尻尾と羽織っている布……おそらく『猫又』です!」

「猫又?」(葛城)

「はい。大昔に出現したと言われていて、山に足を運んだ人々を襲っては食い殺したという妖怪です」(斑鳩)

「妖怪だと!?」(柳生)

「雲雀達…食べられちゃうの(涙)」(雲雀)

一方の猫又軍団は、鋭い歯と爪をむき出しにして5人の忍を威嚇する。その姿は、まるで猫又というよりは悪魔であります。

 

 「さぁ下部達よ、金髪娘は俺が倒す。お前らは残りの忍をズタボロに叩きのめすでゼニ!」(怪人)

「ニャ〰〰〰〰〰!!」(猫又軍団)

2、30匹近くの猫又軍団は、それぞれ武器を構えて一斉に5人に襲いかかった。その中の一匹が、5人と一緒にいた現場監督に襲いかかろうとした。

「うわぁぁぁぁぁ」(現場監督)

「危ない!」(斑鳩)

斑鳩は、飛燕を盾にし現場監督を猫又から守り、そのまま(猫又)斬りかかった。

「ここは、私達が引き止めます。現場監督さんは、皆さんの避難を!」(斑鳩) 

「え…は、はい!」(現場監督)

現場監督は、その場にいた係員達と共に現場を離れた。

 

 一方、飛鳥達も忍転身にて戦闘コスチュームを纏い、武器を構えて猫又軍団と接戦を繰り広げていた。猫又軍団も、噛みつこうとするわ、鋭い爪でひっかいてくるわでなかなか手強い。

「秘伝忍法 二刀僚斬!」(飛鳥)

「薙ぎ払う足」(柳生)

ニャ〰〰〰!!

しかし、猫又軍団は倒しても倒しても、ゾンビの様にすぐに起き上がり、襲いかかってきます。

「何この猫さん、倒してもすぐ起き上がる…」(雲雀)

「雲雀!俺から離れるな……お前は俺が守る」(柳生)

「たとえ相手が何度も立ちはだかろうと、私は諦めない!はぁぁぁぁ〰」(飛鳥)

飛鳥は、そう言って再び双剣を構えて猫又軍団へと突っ込んだ。負けじと、斑鳩・柳生・雲雀の3人も一斉に立ち向かった。

 

 「よし下僕共、そいつらは任せたでゼニ」(怪人)

怪人は、その場を猫又軍団に任せてその場から逃げ出した。

「って…おい!待ちやがれ」(葛城)

「葛城さん」(斑鳩)

怪人が逃げた事を察知した葛城は、真っ先に追いかけた。続いて斑鳩も、怪人を追いかけようとしますが、猫又軍団が道を通せんぼするため思うように動けません。

「そこを通してください!」(斑鳩)

ニャ〰〰〰!

すると猫又軍団の一匹が、地面に手のひらを当てた途端、辺り一面に謎の結界が覆わせた。

「これって…忍結界!?」(飛鳥)

「まさか、このような技まで使えるとは…」(斑鳩)

忍結界は、一度張られた限り戦いが終わるまで抜け出せまんせん。本来なら、忍が周りに迷惑を掛けないよう戦うために使われる術だが、まるで閉じこめられたような感覚でありました。

「どうやら、コイツらを倒さない限り俺達は出られないみたいだな」(柳生)

「怖い…でも、早く行かないと葛姉が…」(雲雀)

「皆さん、焦りは禁物です。葛城さんを信じて、私達は私達の出来る事をやりましょう」(斑鳩)

斑鳩は、3人の気を落ち着かせようと声を掛けた。その言葉を聞いた3人は、再び構えた。

「そうだね斑鳩さん。葛城だって、あんな怪人になんか負けたりしないんだから!ハァー」(飛鳥)

 

 場面は変わり、葛城は逃げる怪人を追いかけていた。一方の怪人は捕まらないように、逃げながら腕のガトリングガンを乱射していた。

「オラオラオラ〰!どうした、逃げてばかりじゃ捕まえられないゼニよ!」(怪人)

「逃げてるのはどっちの方だよ」(葛城)

葛城は、怪人の打った弾丸を次々と避けながら、どんどん近づいていった。怪人も、ひたすら銃弾を撃ち続けていたが、ガトリングに異変が現れた。

「しまった!弾切れでゼニ」(怪人)

「もらったー!!」(葛城)

葛城は、スキを突いて怪人に蹴り掛かろうとした。しかし、怪人もしつこく葛城の蹴りをヒヤヒヤしながら避け続けた。その避けてる間に、怪人はもう片方の腕をバーコードリーダーへと変えて、葛城へと向けた。

「コレでどうだ。スキャナレーザー」(怪人)

「おっと!」

バーコードリーダーから、赤い1本の光線が発射された。葛城は、上手い具合に体を後ろへ反らし、光線をかわした。さらにその勢いを利用し、バク転てながら相手との距離を置いた。

 

 「しぶとい怪人め……正々堂々と戦いやがれ!」(葛城)

「やなこった。戦い方は人…いやっ、怪人それぞれだゼニ。ガハハハハー」(怪人)

怪人は、弾を交換すると再びガトリングガンとレーザーの乱射を始めた。次々と襲いかかる銃弾とレーザーに、葛城は思うように攻められません。貫通はしませんが、いつの間にか葛城の体には、何カ所ものかすり傷が出来ていた。

「ちっ………何か一瞬だけでもスキが出来れば…」

「オラオラオラ〰泣き…叫べ、泣き叫べゼニ〰」

 

 完全に勝てると思い、余裕を見せる怪人。しかしその時、その余裕が一気に打ち消される。

「ヒップ!ポップ!!パチー美!!!」

ン!?どわ〰〰〰痛っ!

突如、怪人めがけて謎のヒップアタックが繰り出された。怪人は、バランスを崩してその場に倒れた。

「痛たた…誰ゼニか、オレを邪魔したのは………あ〰貴様は!」(怪人)

怪人は、自身に攻撃した相手を見て、驚きと怒りを合わせたリアクションを見せた。何故ならその相手とは…。

「んっ?誰だオマエ?」(首領パッチ)

「この間のトゲ野郎!!」(怪人)

 

 ヒップアタックを繰り出した犯人は、前回の戦いで葛城といいコンビネーションを見せた、ギャグ漫画『ボボボーボ・ボーボボ』の首領パッチであった。しかし、首領パッチは自身の目の前にいる怪人が、前回自分が戦ったレジスター怪人だと気付いていない。首領パッチは、怪人に再び尋ねた。

「オマエ一体誰なんだよ?オレ、お前のような知り合いいないぞ」

「とぼけても無駄でゼニ!オレの背中によくも鼻クソを擦り付けやがったな!!」

「ゼニ?………鼻クソ………あー、オマエこの前のレジ男か!?」(首領パッチ)

首領パッチは、怪人の正体に気づいた。

 

 「ようやく気づいたか。だったら…オマエもまとめて消え…」(怪人)

「あらま~アンタったら見ない内に大きくなったわね~」(首領パッチ)

「え!?」(怪人)

急に、首領パッチの反応が変わりだした。それはまるで、お盆や正月に実家に集まった時に、大きくなった子供を見てテンションが上がる親戚のオバちゃんみたいだ。しかし、首領パッチの暴走はまだまだ止まらない。

「こんなに大きくなって、ホンマに何食うたらこんなんなれるん?オバちゃんなんかナンボ食べても縦(身長)どころか横(体脂肪)がボーンやさかいに…」(首領パッチ)

首領パッチは、完全にテンションがオバちゃん。というよりは、オバちゃん目線で会話を続けている。しかし、それを聞いてる怪人にとっては、かなりどうでもよかった。

「若いうちに何でも食うときや!オバちゃんは、縦(身長)がガクーッ、横(体脂肪)がドーン!」(首領パッチ)

「さっきから何いってるゼニ〰!(怒)」(怪人) 

怪人は、とうとう激怒した。

「何が、横からドーンだよ!そもそも、オレはオマエの親戚か?親戚じゃね〰よ!!」

 

怪人は、溜まっていた事・不満を次々とはき出していった。しかし、それでも首領パッチは…

「あらやだアンタ、またすぐ怒り出して…牛乳飲んでカルシウム摂りなさい。牛乳駄目なら、オバちゃんのおっぱいでも吸わせたろうか!」(首領)

「だ〰〰〰、うるさい、うるさい、うるさい、うるさいうるさ〰い!もう、我慢の限界でゼニ!お前から先に消えろ〰」(怪人)

怪人は、首領パッチにバーコードリーダーを向けて光を溜め始めた。そして、光線が発射されようとした次の瞬間。

「オバちゃんもいいけど…ピチピチJKは、無視されっぱなしだぜ!」(葛城) 

「え!?」(怪人)

「秘伝忍法 クロスパンツァー!!」(葛城)

「何!?ぎゃあぁ〰〰〰〰!」(怪人)

 

 怪人が首領パッチに気をとられているスキに、竜巻を纏った足甲で葛城が怪人の顔面を横から強く蹴り上げた。

「ぐぬぬぬ…き…貴様、この為に俺を騙したのか」(怪人)

「ハッハッハー!馬鹿め、全部作戦通りだぜ」(首領パッチ)

「いやっアンタ、絶対Noプランでやってただろ…」(葛城)

葛城は、冷静にツッコんだ。首領パッチは基本、戦い方を決めずに勝負に挑むタイプなのだ。特に作戦があるわけでも無く、常に自分のやり方を貫いている。改めて言おう…首領パッチは、馬鹿なのだ。しかし葛城は、前回の戦いでもそんな首領パッチの美学に救われたのだ。

「へん!またアンタのマイペースに救われましたな」(葛城)

「おいおい、オレは先輩だぞ。敬語敬語」(首領パッチ)

「ヘヘヘッ。さーてと首領パッチさん、今回もよろしくお願いします」(葛城)

「足引っ張るじゃねーぞ葛!」(首領パッチ)

 

 葛城と首領パッチは、戦闘態勢に入り怪人へと近づいていった。一方の怪人は、また同じ2人と戦うとなると若干怯えていた。そして、小声で呟いた。

「ひぃっ…またこの2人ゼニ……まずい…こうなったら“アノ手段”を使うしかないでゼニ」(怪人)

すると怪人は、急に走って逃げ始めた。

「あ!あいつ逃げやがった!」(首領パッチ)

「首領パッチさん、追いかけましょう」(葛城)

2人は、怪人を追いかけた。

 

 「待ちやがれ〰!」(葛城)

「MCハ●ー通りま~す」(首領パッチ)

走る葛城と、昔懐かしい独特な走り方をみせる首領パッチ…何がともあれ怪人を追いかける2人。一方の怪人は、ただ逃げているのではなくキョロキョロと何かを探している様子であった。

「まずい!このままじゃ追いつかれるゼニ!何かないかな…何か…何か…あっ、アレは!」(怪人)

怪人は、何かを見つけた。それは、たまたま駐車したまま置きっぱなしにされていたアメリカンバイクであった。怪人は、それを見つけて不気味な笑みを浮かべた。

「よし、アレにするとしよう…」(怪人)

怪人は、懐からゴソゴソと小さな袋を取り出した。

「アレは、白い粉!?…まさか、アイツ」(葛城)

 

 正体不明の謎の白い粉。これを口に含んだ怪人は、普段数十倍の力を得ることが出きりるのだ。葛城は、止めようとしましたが遅かった。

「薬物投入~ゴクリッ……か・ら・の~タッチ」(怪人)

白い粉を飲んだ怪人は、全身に謎のオーラを纏いだした。さらに、近くに置いてあったバイクに手を伸ばし触れると、バイクがだんだん怪人の体へと吸収された。

「キタ、キタ、キター……力が漲るでゼニ!」(怪人)

「しまった!遅かったか」(葛城)

「バイクが消えたぞ葛。新しい大道芸か?」(首領パッチ)

「今、ふざけてる場合じゃないでしよ」(葛城)

「もう、遅い!変身!!」(怪人)

 

 怪人は、自身の体を変形させていき、なんとバイクの形へと姿を変えた。それもまた、かなり怖く趣味の悪そうなモンスターカーのようなデザインのバイクでり、吸収したアメリカンバイクの原形がほとんどありません。

「バイクに変身しやがった!」(葛城)

「ブハハハハ〰!この力があればオレは無敵でゼニ!さらば!!」(怪人)

怪人は、アクセスを全開にさせてその場から猛スピードで後ずさった。

「お…おい待て!逃げるなんて卑怯だぞ」(葛城)

「ふん、悔しかったらオレに追いついてみろ…バーカバーカ」(怪人)

 

 最初の頃と比べてスピードが速くなった怪人。葛城と首領パッチは、一旦足を止めた。

「くそー逃げられた…このままじゃまた被害が出ちまう…何か策はないのか…」(葛城)

葛城が考えていると、首領パッチが何かを閃いた。

「任せろ、葛!」(首領パッチ)

「首領パッチさん!?」(葛城)

「相手がバイクなら…バイクで対抗するぜ!トランスフォーム」(首領パッチ)

首領パッチは突然、某ロボットアニメで聞き覚えのあるフレーズを叫び出した。すると首領パッチの体がどんどん形を変えていき、カッコイイオレンジ色のバイクへと姿を変えていった。

「パッチバイク!!」(首領パッチ)

「パッチ……バイク」(葛城)

「おい葛城、時間がないぞ。速く俺に乗れ!アイツを追いかけるぞ」(首領パッチ)

「バイク…」(葛城)

バイクへと姿を変えた首領パッチに、葛城は何やらキョトンとしていた。それも、驚きというよりは何か別の感情が表れていた。

「葛城?…おい葛城!葛!!」(首領パッチ)

「す…す…スゲ-(☆。☆)!」(葛城)

「か…葛?」(首領パッチ)

葛城は、バイク姿の首領パッチを見て目を輝かせていた。

「スゲ-!バイクだ、バイクだ!ヒーローのロマン!ヒーローの醍醐味!こんなことも出来るんっか首領パッチさん。何で、もっと早く言わなかったんですか、むしろ知ってたらもっと早くアンタを誘っていたのに〰」(葛城)

葛城は、相当バイクに乗りたかったのか、テンションがいつも以上に上がり出しおかしくなっていた。さすがの首領パッチも、葛城の思わぬ温度差に若干引いていた。

 

 しかし、敵がどんどん離れているのに気づき、首領パッチは話を切り込んだ。

「おい葛城、今はそれどころじゃないぞ!アイツに逃げられてしまうぞ」(首領パッチ)

首領パッチがそう言うと、葛城は正気に戻り状況を把握した。

「おっと、イケねーイケねー!……よし、首領パッチさん、被害が出る前に早くアイツを追いかけましょう」(葛城)

「おう!おら、早く乗れ」(首領パッチ)

葛城は、パッチバイクへとまたがった。エンジンをかけミラーを合わせて、アクセルを数回ひねり音で威嚇する。

「ところで葛!おまえ免許は持ってるのか?」(首領パッチ)

「持ってません!でも、いざとなったら首領パッチさんが先輩としてどうにかしてくれれば問題ないでしょ」(葛城)

「おいおい、都合のいいときに先輩便りかよ…オマエやっぱりハジケてるなぁ…」(首領パッチ)

 

 そんなこんなでやりとりを終えると、2人は覚悟を決めた。

「行きますよ!首領パッチさん」(葛城)

「おう!ハジケアクセル全開ダゼ」(首領パッチ)

葛城は、前に重心をかけてアクセルを全開に回した。すると、パッチバイクは猛スピードで前進した。葛城は、初めてとは思えない乗りこなしで、パッチバイクの向きを変えながら巧みに乗りこなしていった。さらに、そのまま片手でハンドルを操作し、もう片方の手で変身ベルトを装着した。

「忍・変身!」(葛城)

『オーダー入り…セクハラーメンマン一丁』(ベルト音声)

バイクを操縦しながら、セクハラーメンマンに変身した葛城。ハンドルを握り直し、さらにバイクを加速させた。

「オラオラオラ〰ヒーロー魂をなめるなよ〰!」(葛城)

 

 葛城達は、どんどん怪人との距離を縮めてく。果たして2人は無事に怪人を倒すことが出来るのだろうか。そして、首領パッチとどのようなコンビネーションを見せてくれるのか。2人の運命はいかに…。

 

 そして、ふんな2人の様子を1人の少女が高い位置から様子を伺っていた。

「半蔵学園…葛城………私が消します」




 なんとか、今回も無事に書き終えました。お気に入り登録者数が目標を達成しました。これからも、精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
 ご愛読ありがとうございますm(_ _)m


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第10話 ハジケマシーンでGOGOGO 後編

 渋谷の廃墟にて復刻作業を行っていた半蔵学園の生徒5人(飛鳥・斑鳩・葛城・柳生・雲雀)。
しかし突如、前回の戦いで倒したはずのレジスター怪人が力を増して再び出現する。
5人がかりで戦いを挑もうとするも、怪人が召喚した猫又軍団によって、飛鳥・斑鳩・柳生・雲雀の4人が足止めされてしまう。
 残った葛城は、駆け付けてきた首領パッチとともに怪人を追い詰めるものの、怪人は白い粉の効果でアメリカンバイクと融合し、逃げられてしまう。
そこで葛城も、首領パッチが変形した姿「パッチバイク」で、怪人の後を追った。
果たして、怪人を無事に倒すことができるのか…。


 午前5時30分、渋谷の某廃墟。

ひとつの大きな結界(忍結界)が、その一カ所を囲んでいた。

その結界の中では、4人の忍と2、30近くの猫又軍団が火花を散らしていた。

勝負はそろそろ、終盤を迎えていた。

 

 「秘伝忍法 飛燕鳳閃 壱式」(斑鳩)

「超秘伝忍法 半蔵流乱れ咲き」(飛鳥)

ニャ〰〰〰〰!

ゾンビの様に何度も起き上がる猫又軍団に、一時は苦戦してた4人。

なんとか周りに被害を与えずに、全部の猫又を倒すことに成功した。

「ハァ、ハァ、ハァ…なんとか全部倒したね」(飛鳥)

「しかし、結構多めにチャクラを消費してしまいました……でも、周りに被害が出なくて何よりです」(斑鳩)

「見ろ!忍結界が晴れ上がっていくぞ」(柳生)

 

 猫又軍団が倒された事によって、張られていた忍結界が晴れ上がり、4人は解放された。

しかし、戦いで4人は多くのチャクラを消費してしまった。

秘伝忍法を多く使用した飛鳥・斑鳩・柳生の3人は、特に消費が激しかった。

「葛姉大丈夫かな…今すぐ追いかけなきゃ…痛っ」(飛鳥)

飛鳥は、葛城の様子を見に行こうとしましたが、いつの間にか足に傷を負っており、思うように動けません。

しかし、それでも飛鳥は少しずつ足を動かしながら前へ前へと進んでいきます。

「飛鳥さん、そのまま向かっても逆に傷が広がるだけです。ここは、一旦安静に…」(斑鳩)

斑鳩は、飛鳥を心配した。

「で、でも…ハッ!」(飛鳥)

「斑鳩の言うとおりだ!オマエは安静にするべきだ…飛鳥」(柳生)

斑鳩の助言を無視してまでも葛城を助けに行こうとする飛鳥だが、柳生が傘で行き場を防ぐ。

「でも…葛姉が…」(飛鳥)

 

 その近くでは、斑鳩が携帯を通じて誰かと連絡をとっていた。

相手は、教師の霧夜だ。

斑鳩は、現場の状況を報告し、適切な判断をいただくと携帯をきって胸元にしまった。

「斑鳩さん、どうだった」(雲雀)

「はい、霧夜先生が今からこちらへ向かってくる様子です。多少の時間はかかりますが、皆さんはその間に一般の方に逃げ遅れた人がいかいかの確認を!」(斑鳩)

「でも斑鳩さん、葛姉はどうするの?」(飛鳥)

「先生の指示では、私達の中で一番戦闘可能な方が後を追うようにとのことです」(斑鳩)

 

 4人は、現在の状況を確認した。

斑鳩と柳生は大量のチャクラを消耗。

飛鳥に関しては、チャクラの消耗だけでなく、猫又の攻撃による負傷が原因で思うように走れない。

葛城を助けに行きたい気持は一致しているが、助けに行くにも不完全な状態であった。

そう、1人を除いては…。

「それなら、雲雀が行くよ!」(雲雀)

え!?―

 

自ら立候補したのは、なんと雲雀であった。

雲雀は、戦いの最中に柳生と共に猫又へと立ち向かっていた。

ただ、雲雀を戦わせないようにするために、柳生がとことん身を削り守っていたのである。

そのため今の雲雀は、3人と比べてチャクラの残量が多く、負傷も少ないのだ。

「待て雲雀!それなら俺も…痛っ」(柳生)

柳生は、再び過保護な部分をむき出しにし、自分も同行を試みる。

しかし、猫又との戦いで付けられた負傷が原因で体から痛みが生じる。

「柳生ちゃん大丈夫!?」(飛鳥)

「柳生さん、無理をするのは危険です」(斑鳩)

「しかし…雲雀1人では…」(柳生)

心配した飛鳥と斑鳩は、柳生に肩を貸した。

それでも柳生は、自分も同行すると言うことを聞かない。

そして、それを見ていた雲雀が言った。

「も~柳生ちゃんは心配症なんだから。大丈夫!!正直怖いけど…雲雀はもう子供じゃないよ」(雲雀)

雲雀は葛城の向かった方へと走りだした。

 

柳生は、なんだか寂しそうに雲雀の後ろ姿を見つめていた。

「雲雀…」(柳生)

「心配ないよ柳生ちゃん。雲雀ちゃんを信じるのも仲間としての務めだよ」(飛鳥)

つかさず、飛鳥が柳生を前向きにフォローする。さらに、斑鳩も言った。

「その通りです。雲雀さんを信じて、私達は私達の出来る事をやりましょう」(斑鳩)

「斑鳩……飛鳥………あぁ」(柳生)

2人の助言を聞いて、柳生はコクリと頷いた。2人の肩を借りながら、ゆっくりと歩いた。さらに、心の中でこう思ったのだ。

『葛城……いやっ、セクハラーメンマン…雲雀を頼むぞ』(柳生の心の中)

 

 一方その頃。

一台のモンスターバイクが渋谷の街を猛スピードで暴走していた。

その正体は、白い粉の効果でバイクを吸収して姿形をバイクへと変えたレジスター怪人である。

いやっ、今の現状ではレジスター怪人というよりは、『バイク怪人』である。

「ハッハッハ〰、この体も悪くないでゼニ!さーて、慣れてきたしそろそろ思いっ切り暴れてやるか…」(怪人)

「待ちやがれ〰!」(葛城)

「何!!アイツら…もう追って来やがった」(怪人)

怪人は、後ろから目ん玉を出して後方を確認した。

すると、一台のバイクが自分を追いかけて来るのに気づいた。

それは、セクハラーメンマンに変身した葛城が、バイクに変形した首領パッチにまたがっり、猛スピードで接近していた。

 

 予想外の展開に、怪人は焦りを感じた。

特に、首領パッチがバイクに変形していることは、想像もつかなかった。

「だが、俺の力を見くびるなゼニ!これでもくらえ!!」(怪人)

怪人は、後ろの目ん玉を引っ込めると、そこから一つのガトリングを出した。

そして、波線を描くように走りながら、銃弾を乱射した。

「どわっ!またコレかよ」(葛城)

 

 葛姉は、初めてとは思えない見事なハンドル操作で、銃弾を次々と避けていった。

しかし、避けてばかりでは怪人を倒せない。

そこで葛城は、バイク(首領パッチ)に問いかけた。

「首領パッチさん、何か武器とかないのか?」(葛城)

「それなら、いいのがある。アクセルの所に青いボタンがあるだろ。それを、押すんだ」(首領パッチ)

「ボタン?……コレか!」(葛城)

首領パッチの言うとおり、アクセルには青いボタンが。葛城は、早速押してみると…。

「おお!これは…煙幕か……ん!?うわっ、何だこのニオイ!!」(葛城)

葛城がボタンを押すと、バイクから謎の煙が放出された。

その煙は、臭くもなければ、いい香りでもない謎のニオイがする煙である。

葛城は、首領パッチに聞いた。

「首領パッチさん…なんですかこのニオイ…」(葛城)

「それか?そのボタンは“山田”のニオイを放出するボタンだ!」(首領パッチ)

「山田?………誰?」(葛城)

「鈴木んちの従兄弟の山田知らないのか?オマエ」(首領パッチ)

「鈴木?………山田?………ふざけてる場合かぁ〰!!!」(葛城)

 

 葛城は、全力のトーンでツッコんだ。

ニオイは何の意味もない、ただの首領パッチのおふざけであった。

戦いの最中に、こんなにふざけることが出来る首領パッチも首領パッチであった。

「レアなのに…後で嗅がせてほしいって言っても、もう嗅がせないぞ…ひっ!」(首領パッチ)

「アンタ……次にふざけたらタダじゃおかないからな」(葛城)

葛城は、鬼の形相でアクセルを握り、いつもより低めのトーンで怒りを表す。

こんな感じで怒った葛城も、ある意味貴重である。

「痛だだだだだ、アクセルが潰れる!引きちぎれる!!爆乳忍者に殺される〰!!!」(首領パッチ)

アクセルをすさまじい力で握られた首領パッチは、あまりの痛さで右往左往。

自業自得である。

 

 一方、いつの間にか忘れられている怪人も、黙っている訳にもいかない。

「こらぁ〰、俺を無視するとはいい度胸でゼニ!」

怪人は、再びガトリングを連射した。

葛城も避けながら対策を考える。

「くそ-、ヤツの動きさえ止められれば…といっても雲雀の巻物はないし…何かいい手は……んっ!」(葛城)

葛城は、何かに気づいた様子。

何やらバトルスーツに付いていた、ナルトの飾り物を見て何かを思い付いた。

「よし、一か八かでやってみるか!」(葛城)

そう言って、葛城はナルトの飾り物を一つ外した。

「葛、オマエ何をする気だ」(首領パッチ)

「まぁ見ててください!手裏剣投げで鍛えたアタイの腕前を。……どりゃあ〰!」(葛城)

次の瞬間、葛城は手裏剣を投げるかのごとく、手首のスナップを効かせながらナルトの飾り物を投げつけた。

ナルトは、物凄いスピードで回転しながら怪人の足下に向かい、そのままタイヤへと突き刺さった。

 

 それによりタイヤが破裂し、怪人は思うように舵がとれなくなってきた。

「うわっ!!貴様、なんてことを!バイクの命であるタイヤを……アァ〰舵が…舵がとれない…」(怪人)

アクセルを元に戻しましたが、スピードを出しすぎて思うように止まれず、怪人はそのままスリップした。

 

 葛城は怪人に追いつくと、バイクを停めて、バイクから降りた。

首領パッチも、バイクの姿から元の体へと戻った。

「やっと追い着いたぜ!ゼニ野郎」

 

 スリップした怪人は、全身傷だらけ。

しかし、それでも立ち上がり闘おうとしていた。

「ちくしょー、やってくれたな!……だが、タイヤがパンクしたからといって、闘えないと思うなよ!変形」(怪人)

怪人が叫ぶと、バイクの姿からだんだんトラ●スフ●ーマーのような戦闘ロボットの様な姿へと変形した。

「アイツ…変形した!」(葛城)

「あれじゃまるっきりトラ●スフ●ーマーだな」(首領パッチ)

相手が変形し強化しようと、首領パッチはいつでもマイペースだ。

 

 「呑気な事を言っているのも今のうちでゼニ!」(怪人)

怪人は、何やら肩の辺りに付いてあるパイプ(マフラー)から、茶色の液体放出した。

液体は、2人の体にべったりとかかった。

「うわっ、しまった。何だよコレ?ベタベタしてて気持ち悪い…」(葛城)

「あらやだ!これ以上お肌がスベスベになったら、パチ美困っちゃう」(葛城)

首領パッチはさておき、葛城はこの液体の正体をなんとなく察知したのか、イヤな予感がしてきた。

「へっへっへー、燃え尽きろ!火炎放射」(怪人)

怪人は、もう一つのパイプ(マフラー)から、今度は炎を吹き出した。

その炎は、道にかかった茶色い液体を伝っていき、2人の元へと向かってきた。

「やっぱり!これはガソリンじゃねーか!!」(葛城)

 

 葛城は、炎を避けようとしましたが、常にガソリンがバトルスーツにべっとりと付いていた為、燃え移ってきた。

「うわ〰〰〰〰〰」(葛城)

葛城は、炎を直接くらってしまい、体が炎に包まれていた。

いくらバトルスーツを着ているとはいえ、防御力にも限界がある。

「このままじゃマズイ……大丈夫っすか、首領パッチさ……ん?」

葛城は、心配して首領パッチのいる方向を見てみたが、常に手遅れであった。

『上手に焼けました!』

とある狩りゲームで聞き覚えのあるBGMとナレーションが流れ、首領パッチはこんがりと焼き上がっていた。

「モン●ンの肉みたいになってる〰!何やってるんだよこの人」(葛城)

 

 「おっと、仲間の心配をしてていいのか?このまま燃え尽きろゼニ!」(怪人)

そういえば、葛城の体の炎はまだ消えていない。

このままでは、防御力に限界が来てしまい、葛城自身も燃え尽きてしまう。

「意外と呆気なかったな!このまま燃えて消えて亡くなれ!!そして、消し炭にでもなるゼニ!!!ゼーニ、ゼニゼニゼニ(笑い声)」(怪人)

「誰が燃え尽きるって?」(葛城)

―!?―

 

 葛城は、体中を炎で包まれているにもかかわらず、余裕の表情を浮かべながらその場に仁王立ちしていた。

怪人も、この展開は予想外の様子。

「おい貴様…あまりにも追い詰められたからおかしくなったのか!?このままだと、オマエは消し炭にされちまうぞ!」

「消し炭?…消し炭もなにも、こんな炎で……アタイはやられねーよ。ハァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 葛城は、急に叫びだした。

いいえ、体内のチャクラを溜め始めたのである。

すると、チャクラは葛城の体を包み込み体には纏わり付いた。

「どりゃァァァァァァァァァァァァァ!!!」

「なっ、何!俺の炎を……ば、馬鹿な」

葛城は、なんと自身のチャクラを一気に放出し、体の炎をかき消した。

「信じられない…あんなに燃えていたのに…信じられない」(怪人)

葛城の炎は、見事に全部消えた。

バトルスーツの防御力のおかげで多少の焼けた跡は残っているが、体に大きな致命傷はありません。

葛城は、堂々と胸を張っていた。

「オマエの炎なんて、ウチのクラス委員長の炎に比べたら対したことないんだよ!」(葛城)

 

「嘘だろ!!体どころか髪も燃えていないぞ…忍って、こんなに人間離れしているのか…」

怪人の体は、恐怖で小刻みに震えだしていた。

力を増して戦いに挑んだつもりだが、葛城が自分の予想よりも上をいった行動をとるので、本当に自分が強くなったのか疑心暗鬼になり始めてきた。

「人間離れしているのはどっちの方だよ!さ~て、ここから反撃スタートだ」(葛城)

『オーダー通しマース…キザミ!』(ベルト音声)

葛城は、そう言って双剣を構えた。

「チッ!だが、俺を見くびるなでゼニ!!」(怪人)

怪人は、ダイヤを2つ抜き外し、ハンマーのような形に組み立てた。

 

「忍…殺す…シャー!!」(怪人)

「望むところだ!オリャー!!」(葛城)

葛城と怪人による攻防戦が始まった。

怪人は、ハンマーをとにかく葛城に当たるまで振り回している。

タイヤで作ったハンマーとはいえ、地面に叩きつけるとヒビが出来るほどの威力を持っている。

そんな攻撃に対し、アクロバティックに攻撃をかわす葛城。

 

 怪人の大振りのハンマー攻撃を双剣で受け流しつつ、パターンをどんどん把握している様子であった。

「よし、オマエの攻撃パターンは大体わかった。ここから反撃開始だ!」(葛城)

『切れ味…マシマシ(増し増し)』(ベルト音声)

葛城がベルトを2回開け閉めすると、双剣にチャクラが集まり、ビームサーベルの様な光の双剣へと姿を変えた。

「どんな店のラーメンも…仕込みからの調理スタートだ!ハァァァァァァァ!」

 

 葛城は、正面から怪人へと突っ込み出した。

「そんなにやられたいなら、お望み通りに…」(怪人)

怪人は、ハンマーを大きく縦に振りかざし、葛城を叩きつけようとした。

「アンタの攻撃パターン。…まず一撃目は必ず縦に振りかぶる。だから、腹がガラ空きになる!」(葛城)

葛城は、スピードを上げて接近し、スキの出来た怪人の腹部を斬りかかった。

「何!ぐわぁ〰」(怪人)

 

 葛城の攻撃は、まだ終わりません。

「そして、ハンマーは地面に食い込む程の力で叩きつけている。攻撃の後は、背中がガラ空きだ!」(葛城)

葛城は、そのまま背中にも斬撃をくらわせた。

「ぎゃぁ〰!な、何!?」(怪人)

「そして最後に、攻撃中はヤケにマフラーをキョロキョロ動かしていた。おそらく、スキを付いてガソリンをぶっかける作戦だな。それなら、コイツは邪魔だな!」(葛城)

そのまま双剣を振り回し、マフラーを斬り落とした。

「ぐわ〰〰〰!……ま、マフラーが…ハァ…ハァ…この俺が……こんなヤツに」

「オマエとの戦いは、もうちょっと刺激が欲しかったかな。さ~て、トドメは必殺技で決まりだ!」

 

 そう言って葛城は、ベルトに挿入されていた忍転身の巻物を取り外した。

そして、“秘伝忍法”と書かれた巻物を変わりに挿入し、ベルトを1回開け閉めした。

『オーダー通シマース…オーダー入りマース…秘伝忍法!!』(ベルト音声)

すると、右足の足甲にチャクラが集まりだした。

葛城は、ゆっくりと体の半分をしゃがみ込ませ、怪人へと狙いを定めた。

そして、勢いよく空中へと高く跳び上がった。

「英雄忍法 ヘヴィ〰ドラグナ〰!」(葛城)

空中で体をドリルの様に回転させた葛城は、落下の勢いに乗せて怪人へ右足を向けた。

「ぎゃああああ〰!」(怪人)

攻撃を決めた葛城は、そのまま怪人を踏み台にしながら後ろへ跳びあがり、着地した。

「真夜中のバイクでの暴走は…近所迷惑だから辞めとこうでゼニよ………さらば!」(怪人)

最後に教訓みたいな言葉を残すと、怪人はその場で爆発した。

 

 「ヨッシャー!セクハラーメンマン、今日も格好良く大勝利」

勝利を喜んだ葛城は、巻物を外し変身を解除した。

「あっ、見つけた!葛姉」(雲雀)

後ろから、聞き覚えのある声が聞こえた。

振り返ると、加戦しようと葛城を追いかけてきた雲雀の姿があった。

「お、雲雀!来てくれたのか。あれ、1人か?他の皆は?」(葛城)

「うん。皆は、霧夜先生と逃げ遅れた人がいないか確認している。それより、怪人さんは!」

雲雀は、構えながら辺りをキョロキョロした。しかし、いくら見回しても怪人の姿がありません。

「心配するな、アタイがチョチョイのチョイとやっつけてやったぜ!」

葛城は、ドンと胸を張った。

 

 「えっ!もうやっつけちゃったの!?雲雀も戦おうと、急いできたのに…」(雲雀)

葛城を助けに追いかけてきたのはよかったものの、怪人は倒されたと聞いて雲雀は若干残念そうにする。

葛城もなんだか申し訳なさそうにするが、仲間がこれほど自分の事を心配していることを知って、一瞬笑みがこぼれた。

「ごめんな…でも、心配してくれてありがとな雲雀」(葛城)

 

 そして、忘れてはいけないアノ男も近づいてきた

「今回も、ハジケた戦いになったぜ!」(首領パッチ)

「きゃぁぁぁー、漫画肉のお化け!こっちに来ないで!」(雲雀)

怪人のガソリンと炎によって、モン●ンの肉の様になった首領パッチが、雲雀の後ろに立っていた。

それを知らない雲雀は、もう一体怪人が現れたと勘違いし、怖がりながらポカポカと殴りかかった。

「痛だだだだ!俺は怪人じゃ…痛!ねーから…落ち着け…痛っ!」(首領パッチ)

「おい雲雀、辞めろって!その人は、首領パッチさんだぞ……痛ッ!」(葛城)

 

 葛城は、突然体に痛みを感じ、地面に膝をつけた。

「葛!」(首領パッチ)

「葛姉!!」(雲雀)

これを見た首領パッチと雲雀は、彼女の近くへと寄り添った。

雲雀が、原因はなんなんだろうと思い葛城を見てみると、体の何カ所に火傷の跡を発見した。

「葛姉……凄い火傷。…一体何があったの…」(雲雀)

「オマエ、大丈夫とか言っておいて、めちゃくちゃ無理してるじゃんかよ!」(首領パッチ)

「へへへ…ちょーっと無理しすぎたかな。…でも、怪人も倒したし一件落着だな」(葛城)

終わりよければ全て良し。

葛城は、いつものテンションに戻り、ニッコリと笑ったろ。 

「もー、葛姉は無理しすぎだよ。…フフフ」

雲雀は、頬を膨らませて葛城を怒った。

だが、怪人を倒した安心感もあったからか、笑顔につられて一緒に笑った。

「やっぱりオマエは、かなりハジケているぜ!ハハハハ」(首領パッチ)

 

 勝利を喜び、その場で笑う3人。

負傷はあったものの、犠牲者をだしたり街に被害を与えることもなく、今回の事件も解決した。

ーチャリン!ー

突然の小さい金属の音。

3人は、すぐさま振り返る。

すると、空中にピカッと輝く硬貨が1枚。

その硬貨は、だんだん3人の元へ落ちてくるようにも見えた。

そして、3人から十何メートル近くに来た途端、硬貨は鋭い光を放った。

「葛姉、首領パッチさん、危ない!忍兎!!」(雲雀)

いち早く気づいた雲雀は、口寄せ動物の兎「忍兎」召喚した。

忍兎は、召喚されるやいなや3人の体を、雲の様な体で大きく包み込んだ。

ドカーーーーーーン!!!

その直後、硬貨は物凄い爆発を起こした。

 

 辺りの建物は若干傷つき、ガラスにもヒビが入っていた。3人は、ダメージを受けることもなく無事に爆発を免れた。

「助かったぜ雲雀。…あと1秒でも遅かったら、今頃バラバラだったな」(葛姉)

「それより、今のコインはまさか!」(首領パッチ)

辺りは、爆発時の煙が立っており、前が上手く見えない。

次第に煙は晴れていき、この先にいた犯人の姿が明らかになる。

「ハー、ハー、忍……殺す…ゼニ!」(怪人)

そこにいたのは、ボロボロになりながらも3人に殺意を剥き出しにしていた怪人の姿であった。しかし、バイク怪人ではなく変身前のレジスター怪人の姿へと戻っていた。

「アイツ!まだ生きていやがる」(首領パッチ)

「アノ攻撃をくらっても立ち上がるなんて……なんて執念なんだ」(葛姉)

怪人は、体から血をボトボトと垂らしながらも3人へとゆっくり向かっていた。

「たとえ…この身が朽ち果てようと……忍を殺すことが……俺の指名なん……ゼニ!」(怪人)

 

 怪人と3人の距離は、徐々に近くなる。戦えればいいものの、葛城は先ほどの戦いによる火傷で、思うように動けない。

「痛っ…火傷さえしていなければ…。なっ、雲雀!?」(葛城)

葛城が顔を上げると、正面に雲雀が立っていた。

「葛姉、ここは雲雀に任せて。雲雀だって覚悟を決めて来たから、戦わずに帰る訳にもいかないもん」(雲雀)

雲雀の言うとおりだ。

本来は自分が行きたいのだが、今の葛城は、火傷によって思うように戦えません。

もしも、このまま行ったとしても自分だけでなく、首領パッチや他の仲間も傷つけてしまう危険性が考えられる。

「雲雀……わかった!けして無理はするなよ!」(葛城)

葛城は雲雀を信じ、戦う事を許可することにした。

「うん!」(雲雀)

 

 雲雀は、2つの拳を構えた。

顔には一滴の汗が流れ、表情もぎこちない感じで緊張感が伝わってくる。

でも、葛城や首領パッチ、他の仲間を守るために雲雀は戦うと決めたのである。

「フン!小娘か…オマエを倒して……その2人も後で殺す…ゼニ」(怪人)

怪人の方にも、緊張が走る。

ボロボロになった体は、ゆっくりと揺れていて、いつ攻めればよいかを伺っていた。

 

 静かな間が続くなか、時は来たかの様に近くにいた1羽の鳥が飛びだった途端、2人は動き出した。

先に動いたのは、怪人であった。

「くらえ〰釣銭…」(怪人)

怪人が、攻撃を繰り出そうとした時であった。

「もうそこまでです。試作品3号」(???)

ー!!!!ー

突如、謎の声が。

一同が声のした方を振り返ると、そこには1人の少女の姿があった。黒尽くめの衣装に、紫色の髪にダウン。

顔には、不気味なカワウソの顔のお面を装備している。あと、服でわかりにくいが、葛城に負けないくらいの爆乳でもある。

 

 「あ……姐様……なんで…こちらに」(怪人)

怪人は、その少女を『姐様(あねさま)』と呼んでいた。

さらに、その少女をみて体が先ほどの以上に震えていた。

「なんなんだアイツ」(葛城)

「フラッシュモブの前触れか?」(首領パッチ)

首領パッチはさておき、謎の少女の登場に葛城も動揺を隠せません。

 

 少女は、ゆっくりと怪人へと近づいていった。怪人は、少女が近くに来れば来るほど緊張感が強くなっていく。

「待ってくださひ…姐しゃま……俺は、まだ戦えますでゼニ!」(謎の少女)

緊張のせいで、怪人のしゃべり方もおかしくなっていた。

それほど、この少女は怪人達の間では凄い権力の持ち主であることが伝わってくる。

「そんなボロボロな体で戦っても、アナタは確実に負けます。ここは、一旦退くのが確実でしょう」(謎の少女)

「じょ…冗談じゃありません!俺は、この通り力を上げました。今のまま俺ならコイツらに…」(怪人)

「そうですか。…言うことを聞かない試作品には、お仕置きが必要ですね」(謎の少女)

 

 そう言って謎の少女は、服の中をゴソゴソとし、謎の御札が貼られた壺を取り出した。

「あ……姐様。…い…いやだ…」(怪人)

「永遠に……眠りなさい!」(謎の少女)

少女が壺の蓋を開けると、壺はブラックホールの様な凄まじい吸引力を発揮した。

「ギャァァァァァァ、オレは…オレは…ウわぁぁぁぁぁぁ!」(怪人)

怪人の体は壺の中へと入り、封印された。

壺は蓋を閉めると吸引が止まった。

今のを見て、3人は驚きが隠せません。

 

 「なんだよ…あの壺」(葛城)

「なんだか怖い」(雲雀)

「うひょー、あれが魔封波か!」(首領パッチ)

それぞれが反応を見せる中、謎の女は3人のいる方向をゆっくりと振り向いた。

「半蔵学園三年…葛城さん。1年の雲雀さん。……キングオブハジケリストの首領パッチさん」(謎の少女)

「なっ!なんで、アタイらの名前を知っているんだ!それに何だよ、オマエはあのゼニ野郎の仲間じゃないのかよ!!」(葛城)

葛城は、思っている事を少女に聞いた。

しかし、少女は黙り込んでいた。

「おい!何とか言えよ!!」(葛城)

「今は、アナタ方に答える言葉はありません。まぁ、いずれまた会えますので、答えはその時に……では失礼!」(謎の少女)

「オイ!待て」(葛城)

 

 少女は、紫の煙に包まれてその場から姿を消した。

「消えちゃった!」(雲雀)

「一体何者なんだよ、アイツ!変でダサいお面付けやがってよ…全然ハジけてねーな。なぁ、葛城!……葛城?」(首領パッチ)

葛城は、少女がいた場所をただただ見つめていた。

「…とんでもないことが起こりそうだ…」(葛城)

「葛姉…」(雲雀)

 

 今回の事件は、とりあえず解決した。

しかし、謎の少女の出現により新たな事件のにおいが。果たして、あの謎の少女の正体、そして怪人達との関係は。

そして、少女はの目的は何なのか!

 

 場所は変わり、某路地裏。謎の少女は、怪人を吸収した壺を抱えながら歩いていた。

「安心してください、試作品3号。アナタは、良い働きをしてくざさいました」(謎の少女)

そして、少女はお面を外し、不気味な笑みを浮かべて一言。

「アナタの夢は、夢は私達が潰して差し上げましょう。忍は敵…排除します。ウフフ」(謎の少女)




 今回もなんとか書き終える事が出来ました。皆さんのおかげですm(_ _)m
 新キャラも出てきてますます目が離せない展開となってきました。果たして葛城&首領パッチに次はどんな試練が待ち受けているのか…。
 これからも、よろしくお願いします。ご愛読ありがとうございますm(_ _)m


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第11話 背水の少女

 半蔵学園3年の葛城は、春花により開発された丼型の変身ベルトで『セクハラーメンマン』へと変身できるのだ。
 前回、力を上げて再び姿を現したレジスター怪人。謎の御札で猫又を召喚するだけでなく、バイクと融合し街中を暴走し始めるなどやりたい放題。しかし、そんなレジスター怪人もセクハラーメンマンの活躍により、見事に、食い止められた。
 謎のイタチの面をかぶった爆乳少女も姿を現し、物語はますます目が離せない展開に…。果たして、セクハラーメンマン(葛城)とラブハンターY(首領パッチ)に、今後どのような試練が巻き起こるのか。そして、謎の少女の企みとは何なのか!


 ここは、東京にある某公園。

清々しい広場の真ん中には、広々とした池がある。

デートスポットとしてもよくカップルが足を運ぶことで有名だ。

本日は、休日。

そのためか、多くのカップルや家族が足を運び、その公園にて休日を楽しんでいた。

 

 そんな中、一人の作業員がゴミトングを片手に公園のゴミを、これでもかと思うほど拾い込んでいた。

その作業員は、肌が綺麗に焼けていた。

腕まくりした時に見える黒い肌と白い肌の境目は、思わず二度見してしまうほどである。

でも、そんな肌より気になるのは、ファスナーが開いて時に露わになる、なんとも言えない爆乳であった。

「お、こんな所にも。あー、よくこんな所思い付くなぁ…」(?)

 

 彼女の名前は、焔。

忍である。

数多くの悪忍を輩出した悪の名門、秘立蛇女子学園選抜メンバーの元リーダーなのだ。

かつて、国立半蔵学院の5人(飛鳥・斑鳩・葛城・柳生・雲雀)とは接戦を繰り広げたほどのライバルでもある。

戦いに敗れた焔達は、選抜メンバーからはずされ『抜忍』となってしまうも、『焔紅蓮隊』のリーダーとして今も忍道を歩んでいるのだ。

 

 さて、そんな彼女が何故ココで働いているのか。

抜忍となった焔を含め4人の仲間達(詠・日影・未来・春花)は、人里離れたある山の洞窟を基地として、共に暮らしている。

山で食べれる雑草や残りわずかな食料を分け合っており、食生活は蛇女にいた時と比べて傾きが生じている。

そのため、修業の合間を縫って5人はそれぞれバイトを掛け持ちしているのである。

 

 ゴミを拾う手を一旦止めると、焔は近くのベンチに座り込んだ。

「春花からいいバイトがあるって聞いて来たけど、公園のゴミ拾いも案外楽じゃないなぁ……んっ?このにおいは…」(焔)

突然、奥の方からいい臭いが。

振り返ってみると、後方の少し離れた場所にあった小さな屋台で、美味しそうにフランクフルトが焼かれていた。

においを嗅いだ焔は、自然とお腹の音とともに、涎をジュルリと流れた。

 

「あー…上手そうなフランクフルト…はっ!いかんいか。今はバイト中だ!集中集中!!」(焔)

食べたい気持は山々だが、バイト中でもあり、手持ちも少ない。

ここで食べてしまっても、給料は帳消しにされてしまう。

焔は、涎と涙をこらえて我慢した。

 

 焔は、ベンチから立ち上がり再びゴミを拾い始めた。でも、何だか浮かない表情で溜め息をつく。

「はぁ~…抜け忍になってもうどのくらい経つかな。修業とバイトを両立させながら生活してきたが、何だかコレといった刺激がないというか……正直退屈だ」(焔)

修業にバイト、バイトに修業と毎日同じことの繰り返し。

『たまには、自分と対等に戦える強敵と闘いたい』と焔は思っていたのだ。

 

「まっ、変なこと考えずに仕事仕事!アタシは、飛鳥をいつか超えてやるんだ」(焔)

焔にとって、飛鳥は最高の戦友(ライバル)である。

今度はいつ闘えるかはわからないが、いつか飛鳥を超えて忍の頂点に立ちたいという目標が焔にはあった。

変な事は考えるのをやめて、焔はバイトへと戻った。

 

 今日は休日。

公園には家族連れやカップルなど、多くの人が足をはこんでいた。

そんな中、母親と5歳くらいの男の子が、池の周りを散歩していた。

すると子供は、池で泳ぐアヒルを見つけ喜ぶ。

「ママ、見て見てアヒルさんが泳いでる」(子供)

「可愛いわね」(母親)

母親と子供が池が、楽しそうに池で泳ぐアヒルを見つめている。

「あっ!ねぇねぇ、アレはなーに?」(子供)

ここで、子供は何かに気づいた様子。

「えっ、どれどれ……ヒッ!……きゃぁぁぁぁ〰」(母親)

母親は、突然叫びだした。

目の前に見えたのは、羽を引きちぎられ、体の肉を食いちぎられて骨と化してたアヒルの姿であった。

それを見た母親は、膝から崩れ落ち言葉を失った。

 

 すると、水面からブクブクと空気が放出され、それと同時に2つの目玉が出現する。

目玉は、キョロキョロと動き、辺りを見回した。

「プハー食った食った。ここの池の飯も悪くねえなぁ。さーてと、食後の運動がてら……ひと暴れするか」(?)

水面の泡は数を増し、池から謎の巨漢らしきモノが跳び上がってきた。

その巨漢は、ガッチリとした手足をはじめ、固く引き締まった大胸筋の持ち主。

しかし、別の意味で普通ではなかった。

両手は、太くて鋭いハサミ。

大きな体を守る赤くてトゲの付いた甲羅。

そう、巨漢の正体は、ザリガニの様な姿の怪人であった。

 

 近くにいた母親と子供は、驚きをかくせません。

「いや〰!!」(母親)

「うわ!ザリガニのお化けだ-!」(子供)

怪人は、体の筋肉をほぐして動きを整えていた。

「さーてと、この体はどれほどの力があるか試してみるとするか」(ザリガニ怪人)

そう言って、怪人は辺りをキョロキョロすると、近くにあった一方の木に目を向けた。

そして、腕のハサミで木を挟み、そのとてつもない力で木を豪快に切り落とした。

「いや〰〰〰!!!」(母親)

「怖いよ-」(子供)

その様子を見た親子は、泣きながらその場を去った。

 

 怪人は、自身の力に満足している様子だ。

「ニッシシシシシー、凄い力だ。コレさえ有れば忍び何ぞ敵ではない!ニッシシシシシ。…ンッ?」(ザリガニ怪人)

怪人が何かに気づき、周りを見渡した。

すると、周りには公園に来ていた人達が怪人の姿を見て、様子を伺っていた。

驚いて逃げる人、行動を観察するひと、写メを撮ってツイートするなど、それぞれが反応が分かれる。

 

 しかし、一方の怪人は、そんな反応に対し不満を感じていた。

「テメーら……ジロジロ見てるんじゃね〰ぞ〰!!」(ザリガニ怪人)

怪人が両腕のハサミを開くと、中からマシンガンの弾丸の様に、エネルギー弾が乱射された。

うわぁぁぁぁぁぁぁぁ(人々)

周りの木々には、多くの傷と風穴が。

逃げ遅れてエネルギー弾に当たる人々も数知れない。

もはや、公園は地獄絵図の様な状況であった。

 

 怪人が攻撃を辞めると、周りには多くの人々が傷つき倒れていた。

いくら、気分が変わったからといっても、さすがにやり過ぎである。

「ふー、スッキリした。んっ?イイ物落ちてるじゃねーか。もーらい」(ザリガニ怪人)

怪人は、逃げた人が落としていったサングラスを見つけて、掛け始めた。

そして、水鏡で自分の姿を確認する。

「う~ん…オレってイカしてるぜ~」(ザリガニ怪人)

自分の顔を満足そうに見ていた。

ガサッ!

突然後ろから物音がした。

「ん?」

振り向くと、そこには先程逃げ遅れて物影に隠れていた母親と5歳くらいの男の子の姿があった。

「ヒッ!」(母親)

「ほほー、こんなところにまだいたか」(怪人)

「ど…どうか命だけは……お助けを…」(母親)

「ママ、怖いよ-、怖いよ-(涙)」(子供)

母親は、わが子を抱きしめながら必死に守ろうとする。

対する子供は、怪人の怖さに泣き崩れていた。

 

 「助けてくださいだ……ま、オレもそこまで鬼じゃない。いいだろう、命だけは助けてやるよ。…じゃーな」(怪人)

怪人は、振り返りその場から立ち去ろうとした。

「ホッ…」(母親)

母親も子供も一安心。

怪人は、5メートルも歩かずにその場に止まった。

「……な〰んて、言うと思ったか〰!!」(ザリガニ怪人)

怪人は、物凄い速さで振り返り、その大きく分厚いハサミで母親の顔面めがけて殴りかかろうとした。

「きゃぁぁぁぁぁぁ」(母親)

この時母親は、もう自分と息子は殺されてしまうとばかり思っていた。

 

 その時、遠くから猛スピードで何かが怪人の頭めがけて飛んできた。

それは、怪人の体と甲羅の丁度境目の部分へと、見事に刺さった。

「ん?イダ!!…いててて……ん?誰だ!オレのイカした顔に、汚いゴミトングを投げつけたのは!!」(ザリガニ怪人)

「アタシだよ!どりゃあ」(焔)

勢いよく走ってきた焔は、その勢いのまま跳びあがった。

さらに空中で1回転し、落下の勢いを活かしたキックを繰り出した。 

「何っ!ぐわ〰っ」(ザリガニ怪人)

「お姉ちゃんすごーい」(子供)

「た…助かりました。ありがとうございます」(母親)

「礼はいらねーから、子供と一緒に早く逃げろ!」(焔)

「あ、はい!行くよ」(母親)

母親は、子供を連れてその場を去った。

 

 公園には、緊張感が漂っていた。

怪人と焔は、お互いに睨み合っていた。

ここで、怪人が、あることに気付いた。

「痛ててて…痛いなぁね姉ちゃん。体からチャクラの気配を感じるなぁ……姉ちゃん、もしかして忍かい?」(ザリガニ怪人)

「へぇー、アタシを忍と見抜くなんて……アンタ、一体何が目的だ!!」(焔)

「目的………そんなの簡単さ……忍を…殺すのみ!」(ザリガニ怪人)

すると怪人は、急にハサミを地面に叩きつけた。

すると、辺り一面が大きな壁に包まれた。

そう、忍結界を発動させたのだ。

「忍結界……ふん!わざわざステージを設けてくれるなんて気が利くじゃないか。ちょうど、戦いたくてウズウズしてたところさ…忍・転身」(焔)

焔が印を称えると、作業服姿から龍手のついた制服へと変わり、背中に7本の鞘に収められた刀が出現した。

 

 焔は、7本中6本の刀を抜いて、片方にそれぞれ3本ずつ持ち、戦闘態勢へと入った。

「焔!悪の誇りに舞い殉じる!!はぁぁぁ〰」(焔)

焔は、自慢のスピードで怪人へと突っ込んだ。

すると怪人は、謎の御札を大量に取り出した。

「面白い!まずは、小手調べだ…それ!」(ザリガニ怪人)

怪人は、御札をばらまいた。

すると御札は、次々と猫又の姿へと変わり、一斉に焔へと襲ってきた。

ニャ〰〰〰〰〰!

「へー、まずは猫ちゃんとお遊びか!上等じゃねーか!!」(焔)

 

 焔は、猫又の攻撃を次々と見切りながら、自慢の6刀流を豪快に振りまくった。

猫又軍団も、負けじと襲いかかる。

爪で攻撃するモノ、剣術で対抗するモノ、肉球の様な先端をした棒で攻撃するなど、様々な猫又が焔を襲う。

何度斬られてもまた起きる、そして襲う。

それでも焔は、難なく次々と倒していき、5分も経たない内に相手も残り1匹となっていた。

「これで終わりだ〰」(焔)

ギニャ〰〰〰〰!

左右に3本ずつ持った刀に炎を纏い、最後の一匹へと振り斬った。

倒された猫又軍団は、元の御札の姿へと戻り消えてなくなった。

 

 焔の戦いぶりを見た怪人は、感心しながら腕を…いやっ、ハサミをチョキチョキさせていた。

両腕のハサミを擦り合わせて、切れ味抜群の刃になるまで磨いでいた。

「姉ちゃん、なかなかやるねぇ」(ザリガニ怪人)

「当たり前だろう!このくらい、修業で相手になる傀儡と比べたら大したことないね。さーて……次は、アンタが相手かザリガニのオッサン」(焔)

「そのようだな。ただ…オッサンはちょっと余計だな……死ね〰!!」(ザリガニ怪人)

怪人はハサミを開き、エネルギー弾を焔へと放った。

「何の!」(焔)

焔は、高く跳りエネルギー弾をよけた。

さらに、落下の勢いを活かして、そのまま3本の刀を振りかざした。

しかし、一方の怪人は腕のハサミを使って剣を防いだ。焔は、続けて斬りかかるも、怪人の硬いハサミや甲羅によって剣がなかなか通らない。

 

 焔は、一旦怪人と距離をとった。

「チッ、なんて硬い体なんだ。剣が全然通らねーじゃんか」(焔)

「ガハハハハ、オレの鉄壁(甲羅)はそう簡単には壊せない。悔しかったら、ヒビ1つ入れてみろ!」(ザリガニ怪人)

怪人の挑発に、焔は機嫌を悪くすると。

しかし、変に突っ走っても返り討ちをくらってしまう為、冷静にならなくてはならない。

「あのオッサン、動きは遅いが体の甲羅が硬すぎる。まさに鉄壁の守り。……それなら…」(焔)

 

 焔は、何か秘策を思い出し怪人へとまっすぐ突っ込んだ。

「ふん!勝ち目が無いから怖じ気づいたのか?ならば、死ね〰」(ザリガニ怪人)

怪人は、再びエネルギー弾を発射させた。焔は、刀を使ってエネルギー弾に斬り掛かりながら前進した。

「秘伝忍法 暁」

焔は、刀に炎を纏わせながら剣を振った。

すると、炎を纏った斬撃は怪人へと突っ込んだ。

「炎だと!?うわっ、あちちちちちちちち」(ザリガニ怪人)

斬撃は、怪人の体で燃え上がった。

「どうだ、アタシの炎の味は」(焔)

「やるなぁ姉ちゃん。だが、“俺達”もそう簡単にやられる訳にはいかなくてよ…」(ザリガニ怪人)

「“俺達”!?」(焔)

 

 焔は、怪人の発言に耳を疑った。

まさか『他に仲間がいるかもしれない』と、次の出来事で確信がついた。

池の中からから再び、ブクブクと空気が放出していた。空気は量を増して、やがて大きな爆発がおこった。

バシャーーーーーン!!

「なんだ!?」(焔)

爆発というよりは、池の中から勢いよくなにかが飛び出してきたような感覚であった。

「ふー、イカしたシャワーだぜ」(ザリガニ怪人)

水しぶきが雨のように降り注ぎ、怪人の体を包んでいた炎が鎮火された。

「しまった!……はっ、何だ!?」(焔)

水しぶきで隠れていた黒い影が、姿を現した。

「ニョホホホホ-、コレでもくらえ―」(???)

突如現れたもう一体の怪人は、口から謎の透明の粘液を大量に吐き出した。

焔は、すぐさま剣を構え直す。

「ち、秘伝忍法 暁!」(焔)

謎の液体は、焔の炎によって蒸発された。

しかし、粘液のほんの一部が、服についてしまう。

 

 現れたもう一体の怪人は、全身真っ黒で触手のように細長くヌルヌルとした手足、背中にはヒラヒラとさせた背びれ。

口の中には細かい無数の牙。

まるで、ウナギの様な姿をした怪人であった。

 

 ウナギの怪人は、ザリガニの怪人へと寄り添った。

「大丈夫でありますか、ブラザー」(ウナギ怪人)

「遅ーよ。いくら飯食ってたからって、時間掛けすぎだろブラザー」(ザリガニ怪人)

どうやらウナギの怪人は、河の中でエネルギーを蓄えながら待機していた様子。

その証拠に池を見てみると、そこには食いあさられたアヒルや魚の骨や死骸が浮き出ていた。

 

 間一髪、相手の攻撃を回避した焔だが、新たな敵の出現に額に汗が。

だが、これは恐怖の汗ではなく戦いを楽しめられるという喜びの汗である。

つまり、戦う時を制限された焔にとって敵が増えることは、自身の実力を試すチャンスでもあった。

「なんだなんだ…ザリガニの次は鰻か…ちょうど食料に困ってたところでな。今夜は、鰻の蒲焼きとザリガニの甲羅焼きに決まりだな」(焔)

力試しの他に別の感情も混ざっているが、何がともあれ焔はやる気満々の様子。

 

「いくぜブラザー。俺とオマエが組めば百人力だぜ!」(怪人)

「ニョホホホホ-、いざ……参る!」(ウナギ怪人)

ウナギの怪人は、足元から先程の透明の液体を放出し、地面になじませた。

液体をはどんどん広がり、気がつけば焔の足下にも液体が充満していた。

「行くであります、ブラザー」(ウナギ怪人)

「OKブラザー!」(ザリガニ怪人)

2体は、アイススケートの様に地面を滑り始めた。速さは増して、2体は焔の元へと向かった。

「ふん!確かに速いが、アタシら忍のスピードに比べたら遅い!!」(焔)

焔は、その場で高く跳び上がり攻撃をかわした。

「考えが甘かったな」(焔)

 

 そう言って焔は、地面へと着地するも。

「どわ!な、なんだコノ液体。ヌルヌルして足が……うわっ、おっと……す、滑る…」(焔)

着地したと思いきや、ウナギの怪人が放出させた謎の液体により、足下がヌルヌル滑って上手く体勢が直せません。

そう、その液体の正体こそ鰻の粘液だったのである。

これにより、鰻は皮膚呼吸を行うことができ、陸でも活動が可能になる。

さらにこの粘液は、水のない場所からある場所へと移動する際にも使われるらしいのだ。

 

 粘液のせいで、焔は右往左往。

「うわ!おぉぉぉぉぉ…体が…思うように…動け…ない」(焔)

気がつくと、焔は叉を大きく開き地面に付いてお尻もついていた。

そのスキを狙って、2体は再び向かってきた。

「チャーンスだ、ブラザー」(ウナギ怪人)

「OKブラザー」(ザリガニ怪人)

粘液を上手く活かしながら、スムーズに焔へと接近する。

『このままではまずい…』そう思った焔は、片手にもってる3本の刀を地面に刺し始めた。

さらに、その刺した刀を支点とし立ち上がり、刀を踏み台の様にして近くの木へと跳び上がった。

さらに、木へ移ると今度はその木を踏み台にし、高く跳び上がった。

「ふん、そうはさせないぜ~」(ザリガニ怪人)

ザリガニの怪人は、片方の挟みからエネルギー弾を、焔の止まった木へと放った。

焔は再び高く跳び上がり、攻撃をかわす。しかし、足場の悪い地面へと戻るハメに。

「おっと……へー、見た目の割にはなかなか手強いじゃんか…」(焔)

「見た目の割にはは、余計だぜ!」(ウナギ怪人)

 

 鰻怪人は、大きなヒレで焔を殴りかかる。

それに対し焔は、刀を再び手に取り攻撃をうまく受け流す。

しかし、追い打ちをかけるようにザリガニ怪人の大きなハサミが襲いかかる。

「クラブラリアット」(ザリガニ怪人)

「ぐっ…、ぐわぁぁぁぁぁぁぁ」(焔)

すぐさま攻撃を防ぐ焔だったが、ザリガニ怪人による強烈なパワーによって、吹っ飛ばされ木々に衝突した。

 

 地面には、ウナギ怪人による粘液でヌルヌルと滑りやすくなっているため、思い通りに攻められない。

公園の木やベンチなども壊され、足場は制限されている。

「ハッハッハ-。思っていたよりもイケそうだなブラザー」(ザリガニ怪人)

「このまま一気に追い打ちを掛けるでありますぞ、ブラザー」(ウナギ怪人)

「チクショー、なめやがって…こんなヤツに負けてたら、飛鳥に合わせる顔がねーよ」(焔)

焔は、策を考えた。

足場さえ正常なら、2体の怪人を倒すことが出来る。

どうにかして、足場を元に戻すことは出来ないのかと焔は心の中で考えながら辺りを見回していた。

―!!―

すると焔は、何かに気付き閃いた。    

 

 「なんだ、意外と単純な手があるじゃんか。……さーて、反撃といくか」(焔)

そう言って焔は、再び地面に刺した刀を踏み台にし、高く跳び上がった。

さらに、もう片方の手に握っていた3本の刀へと、炎のチャクラを注ぎ込んだ。

刀は、まさに炎を纏った爪の様になっていた。

「秘伝忍法 暁!!」(焔)

炎を纏った刀を焔が強く振りかぶると、炎は半月の様な刀の斬撃と変わり、2体の怪人へと襲いかかった。

「ふん、馬鹿め。同じ手が二度も通じるかよ!」(ザリガニ怪人)

「以下同文であります、ブラザー」(ウナギ怪人)

2体は、粘液が染みこんだ地面をアイススケートの様に地面を滑り、攻撃をよけた。

「まだ、終わらないぞ!暁!!」(焔)

焔は、着地するやいなやすぐさま跳び上がり、炎の斬撃をもう一度放った。

「おっと!」(ザリガニ怪人)

「暁!!」(焔)

「ホイであります!」(ウナギ怪人)

「暁、暁、暁、暁、暁!!!!」(焔)

 

 着地しては、ひたすら炎の斬撃を放つ焔。

しかし、2体の怪人は粘液を上手く滑りこなし次々とかわしていく。

このままでは、大量のチャクラの消費により焔自身が戦闘不能になるのも時間の問題であった。

しかし、その一方で怪人達にも異変が起こり始めていた。

「まだ、まだ〰!」(焔)

「ハァ、ハァ…おかしいぞブラザー。あの姉ちゃん、エネルギーを消耗するどころか、なんだか動きが戻ってきてやがる…」(ザリガニ怪人)

「そんな馬鹿な……吾輩の粘液がある限り、思い通りに動くことはまず……アチッ!」(ウナギ怪人)

突然、ウナギ怪人が何かにビックリし動きが乱れ始めた。

「うぉぉぁ…おっ、ととととお…のわー」(ザリガニ怪人)

「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」(ウナギ怪人)

 

 ウナギ怪人の動きが乱れたことによって、後ろにいたザリガニ怪人もバランスを崩してしまい、前にいたウナギ怪人を下敷きにしてしまった。

「あ!?大丈夫か、ブラザー」(ザリガニ怪人)

下敷きになったウナギ怪人は、ザリガニ怪人の体の硬い甲羅と棘によって、全身が傷だらけに。

「ブラザ〰!チクショー、どうなってやがる…」(ザリガニ怪人)

「教えてやろうか…」(焔)

前を見ると、そこには凛々しく安定した歩行を見せながら接近する焔の姿があった。

「馬鹿な…歩いてやがる!?粘液は、地面に……ハッ!」(ザリガニ怪人)

ザリガニ怪人は、あることに気付いた。

「まさか…貴様、“乾き”を利用しやがったな…」(ザリガニ怪人)

 

 ザリガニ怪人の口から出た“乾き”という言葉。

それは、地面に答が示されているようなものでした。

そう、焔が空中から下へと斬撃を放っていたのは、攻撃目的ではなく、自身の行動範囲を広げる為であったのだ。

つまり、焔が放った炎の斬撃により、地面に染みこまれていた粘液が蒸発したのだ。結果、元の地面へと戻したのである。

「まっ…そんなところだな。周りを見回していたら、あんたらの攻撃で燃えた木を見つけてな。そしたら、その炎で地面の粘液は蒸発してたものだから、燃やしたってわけさ」(焔)

 

 焔はすっかり得意気だ。

そして、再び戦闘態勢を整え始めた。

「これで、あんたらとようやく対等に戦えるってことよ!」(焔)

焔の発言を聞いたザリガニ怪人は、馬鹿にされている気分になり怒り始めた。

「俺達と対等だ……ふざけるな!忍の分際で生意気なこと言ってるんじゃねーよ!!お前なんか、俺一人で十分だ!!!」(ザリガニ怪人)

そう言い、ザリガニ怪人は焔へと一人で突っ込んだ。

「ハッ、待て…ブラザー!」(ウナギ怪人)

意識を取り戻したウナギ怪人は、一人で突っ込むザリガニ怪人を止めようとした。

 

 しかし、もう遅かった。

焔は、六本の刀を鞘へと収めた。

そして、まだ抜いていなかった1本の長刀を手に取った。

すると、先程まで黒かった焔の髪が紅蓮の炎の様な赤髪へと姿を変えた。

「どうやら相手を間違えたのは、お前達みたいだな」(焔)

焔が長刀を構えると、長刀の刃に炎が注がれて炎の刀へと変わった。

「超・秘伝忍法 紅!! いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

勢いよく突っ込んだ焔は、炎が纏った長刀を大きく振りかぶり、ザリガニ怪人の大きな体を斬りつけた。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…熱い、熱い!」(ザリガニ怪人)

攻撃をくらったザリガニ怪人の体は、炎によって全身を包まれていた。

体中の皮膚は焼けて膨張し、鉄壁であった自身の甲羅は次々と剥がれていく。

「俺の甲羅が…俺の……鉄壁の体が…」(ザリガニ怪人)

「どうやら、勝負ありだな」(焔)

焔が長刀を鞘に収めると、ザリガニ怪人の体に複数の斬れ跡が刻まれた。

「ぎゃぁぁぁぁ……ザリガニは…意外とバイ菌多いから…触った後は…手を洗おう…ぜ!」(ザリガニ怪人)

ボカーーーーーーン

 

 ザリガニ怪人は、最後に教訓の様な言葉を残しながら爆発し、消えて無くなった。

「ぶ…ブラザーーーー!」(ウナギ怪人)

ザリガニ怪人がいなくなったことで、ウナギ怪人に鋭い緊張感が奔った。

「残るは、オマエだけのようだな…」(焔)

―!!―

目の前を見ると、焔が長刀を構えて立っていた。

「ひぃぃ!このまま死んでたまりますか…逃げるが勝ち!……あれ?粘液が出ない…」

粘液を使って逃げようとするが、いくら力んでも粘液が出て来ません。

さらに、ウナギ怪人の体も若干乾いた様子であった。

「しまった!粘液を使い過ぎたでありますか……ナッ!」(ウナギ怪人)

「悪く思うなよ。ハァァァァァ!」(焔)

焔は、長刀を大きく振りかぶり、ウナギ怪人を斬りかかろうとした。

この時焔は、自身の勝利を確信していた。

そう、この瞬間は…。

 

「ハッ…」(焔)

焔は突然、怪人の額ギリギリのところで攻撃をやめた。さらに、さっきまで赤く染まっていた髪も元の黒髪へともどっていた。

さらに、焔の起こった変化はまだ終わらない。

「なんだ……急に目まいが……一体どうなってる」(焔)

 

 焔の様子に気付いたウナギ怪人は、笑みを浮かべていた。

「スキあり〰」(ウナギ怪人)

「なっ、しまった!」(焔)

スキを見せてしまった焔に対して、怪人は力を振り絞って、右腕へと噛みついた。

「ぎゃぁぁぁぁぁ…き…さま…」(焔)

ウナギ怪人の歯は、それほど大きくはないが、鋭い歯が口の中で無数に生えており、焔の腕を噛んだまま離れない。

「くっ、離せ……ウナギ男め……ああ〰」(焔)

「ニョホホホホ…パワーはそれほど残ってはいないが…オマエの血を吸い取って……回復さえ出来れば…」(怪人2)

「ちぃ、そうはさせるか!ハァァァァァ!」(焔)

焔は、体内のチャクラを集中させ、一気に解放し始めた。

「のわ!……この忍……まだこれほどの力が……か、体が引き離される…」(ウナギ怪人)

チャクラの圧で、ウナギ怪人は焔から離されそうになっていた。

「うぉぉぉぉぉ、アタシはここで…やられるわけには……いかないんだよ〰!」(焔)

 

 焔は、体内のチャクラをさらに放出させた。ウナギ怪人も、やがて圧に耐えられなくなり、噛む力もそろそろ限界を迎えていた。

「ぐ……ぐごごごご…まずい…」(怪人2)

「アタシから…離れやがれ〰!」(焔)

「ありがとよ、姉ちゃん」(???)

―!!!―

突如、聞こえてきた謎の声。そして、忍は沈黙する。

「!!!…………ぐは…」(焔)

少女に忍び寄るもう一つの影。そして背後に、深手の切り傷。

「なん……だと」(焔)

そう、この時紅蓮の少女は、策に溺れた…。




驚きの展開ですが、今日の話はここまで。果たして、焔を襲った魔の手の正体は!?
そして、焔は無事なのか…。
次回もよろしくお願いします。ご愛読ありがとうございますm(_ _)m


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第12話 試作品何号?

ふと目を開けると、誰もいない。
辺りは真っ黒で物音1つもしない。
そんな静な空間に、1人さ迷う少女の姿が…。



 少女の名前は焔。

「ここは……どこだ?確かアタシは…公園でバイトしてて…その後……あれ?その後……何があったんだ?」(焔)

 

 焔は、自身に起きた出来事を思い出そうとするが、中々思い出せない。

公園でゴミ拾いのバイトをしていたはずの自分が、なぜ人気の無い暗い場所にいるのか?そして、迷い込んでいるのか?焔は、自然と頭を抱え込む。

「なぜだ…なぜ思い出せない……あと、ここはどこなんだ……」(焔)

「……ちゃん」(??)

―!!―

突如、ほんの微かな声が聞こえてきた。

「…ちゃん……らちゃん……むらちゃん…」(??)

その声は徐々に大きくなり、言葉もはっきりとしていく。さらに、不思議とその声は焔にとって聞き覚えのある声へと変わっていく。

「………ほむらちゃん」(??)

「誰かが……アタシを…呼んでる」(焔)

「焔ちゃん…焔ちゃん……焔ちゃん!!」(??)

ハッ!

焔は、もう一度目が覚めた。

いや、正確には今ようやく目が覚めたのだ。

 

 「………ここは…病院?……いや、保健室か?…」(焔)

目を開けると、焔は見知らぬ部屋のベットに横向きで寝かされていた。

上半身は、服を脱がされており、包帯で背中全体をぐるぐる巻きにされている。自慢の大きな胸も、見事に包帯で隠されていた。

右腕も、包帯で応急処置されており、輸血もされていた。

キョロキョロする焔に、1人の少女は、声を掛けた。

「よかった……焔ちゃん」(??)

声がした方向に首を向けると、焔は自身が今いる場所の確信がついた。

「飛鳥!?…なぜお前がここに…ハァ!……まさか、ここは…」(焔)

「半蔵学園の保健室だよ」(飛鳥)

飛鳥は、口元をニコッとさせて答えた。

 

 どうやら焔は、戦いで気を失ったところを飛鳥達に、助けられたみたいだ。

「よかった-、焔ちゃんが無事で。呼吸も荒くなっていたし、もうどうなるかと…」(飛鳥)

「大きなお世話だ!!」(焔)

感情は高まり、突然焔は激怒し始めた。

両手は、小刻みに震えている。

そう、いくら戦友(ライバル)とはいえ、悪忍が善忍に助けられることは、彼女のプライドが許さないのだ。

焔はベットから起き上がり、立ち上った。

「アタシは、助けてろなんて一言も言ってないぞ…痛っ」(焔)

「駄目だよ焔ちゃん。その体で闘うなんて、無茶しすぎだよ」(飛鳥)

「うるさい!善忍のオマエ救われるくらいなら…痛っ」(焔)

「焔ちゃん……」(飛鳥)

 

 焔は、痛みのあまり膝から崩れる。

それでも、手足を無理やり動かしながらも、保健室から出ようとしていた。

「ぐぐぐぐ…アタシは…アタシは、善忍なんかに…」(焔)

痛みを訴えながらも、焔は体を休めようとしない。

背中は、傷跡が開いたのか、再び赤く染まりかけていた。

そんな彼女を、飛鳥は見捨てるわけにもいかなかった。

「飛鳥!?離せ、アタシは…」(焔)

飛鳥は、焔の手を握りって言った。

「焔ちゃんがなんと言おうと、私はこの手を離さない。だって、ここで焔ちゃんがやられちゃったら、私達は友達…いや、共にカグラの道を突き進むライバルを失ってしまうんだから!」(飛鳥)

「なっ!」(焔)

飛鳥言葉に焔は立ち止まった。

 

 飛鳥は、目から大粒の涙を一滴流し、焔の目を見つめていた。

そして、口を再び開き始めた。

「悪忍の都合は、私にはわからない。……でも、だからって忍1人を救えなくていいの?1人亡くしてもいいの?………私は離さない、絶対に!!」(飛鳥)

「……飛鳥」(焔)

飛鳥の目は真っ直ぐ、そして友を絶対に行かせたら駄目だという思いがちハッキリと顔に浮かんでいた。

焔は、そんな飛鳥に過去に何回も助けられてきたのだ。その時に、飛鳥は今と同じ目をしていたことは、焔にとっては忘れもしないものなのだ。

そして焔は、微かだが一瞬口元をニヤつかせた。

 

 そして、飛鳥の握っていた手を振り払いった。

「アタシはまだまだ闘える…」(焔)

「焔ちゃ…」

「でも、さすがにこの体では、ヤツを思いっ切り倒すことが出来ない……わかったよ!善忍の助けは借りないってプライドは、今日はチャラだ」(焔)

「焔ちゃん……ありがとう」(飛鳥)

飛鳥は再び、焔の手を取って喜んだ。

焔も顔を赤くしては、照れいる様子を見せる。

ツンデレな対応の焔だが、飛鳥の強い気持に掛かれば、どの忍も自然と今の自分の様になるのではないかと、心の中で思っていた。

 

 そんな喜びムードの中、2人に忍び寄る影がいた。

その影は、目をキラリと光らせて、両手を構えて指先で滑らかな波を描いていた。

そして、影は2人へこっそり近づいた。

「おやおや、友情が元に戻ったってか!」(葛城)

むにゅッ!

「きゃぁ!か…葛姉…ちょっ…ちょっと、きゃぁ」(飛鳥)

影の正体は、葛城であった。

葛城はいきなり現れると、飛鳥の大きな胸を鷲掴みし、さざ波のように滑らかな指捌きで揉み始めた。

せっかくのムードが台無しになってしまい、さすがの焔も黙っていられる訳もなく…。

「おい、葛城!お前も少しは空気を読んだらどうだ」(焔)

「いいじゃん、いいじゃん、減るモンじゃねーんだから。スキありッ!」(葛城)

葛城は、視線を焔のいる方へ向けた。

さらに、飛鳥の胸を揉んでいた両手の片方を離し、その手で焔の胸も掴んでは揉み始めた。

「きゃぁ!やめろ……アンッ!乳が…乳がもげる…」(焔)

「良いでわないか、良いでわないか…もみもみ~もみもみ……アベシッ!」(葛城)

突如、葛城の頭部に厳つい衝撃がはしった。

それは、『拳骨』という名の鉄拳制裁である。

 

 「怪我人にセクハラとは、何事ですか!」(斑鳩) 後ろには、握り拳を構えた斑鳩が立っていた。

どうやら、焔を心配してお見舞いに来た様子。

その証拠に、片手には果物の入ったカゴをぶら下げていた。

「あっ!焔さん目が覚めてよかった」(雲雀)

「無事で何よりだ」(柳生)

斑鳩だけでなく、つづけて柳生と雲雀も、焔を心配しお見舞いに来てくれた様子。

「まったく…油断も隙もありませんね。少しはその活発性を、学習面で活かしてみてはどうなんですか!」(斑鳩)

「痛テテテ…今日のも一段と痛てぇ…」(葛城)

葛城は、頭に出来た大きなタンコブを抑えて痛がる。そんな様子を見て、飛鳥は愛想笑いを浮かべる。

 

 一方の焔は、ただただ呆れると思いきや、自然と愛想笑いを浮かべていた。

「お前らも相変わらずだな。しかし、葛城のセクハラは、ある意味凄いよな。まるで、気配を感じないように…」(焔)

“気配を感じない”。

この言葉を言った途端に、焔は思い出した。そう、怪人との戦いでいつの間にか背後から不意を突かれた事を。

「ナッ!……オイ!ヤツらはどうした!」(焔)

自身に何が起こったのかを思い出した様子。

焔は、近くにいた飛鳥の胸倉を掴み、問いだした。

「アタシをやったアイツは、一体どうなったんだ!今どこにいる!!一体何を目的に……痛っ」(焔)

興奮のあまり、焔の背中に再び痛みがはしる。

「焔ちゃん落ち着いて」(飛鳥)

飛鳥がそう言うと、焔は我に返りベットに戻り腰掛けた。

そして、一旦落ちつくと、聞いた。

「教えてくれ…アタイが気を失ってる間に何が起こったんだ…」(焔)

すると、斑鳩が焔のいるベットに近づき、焔に寄って話し始めた。

「…わかりました。教える代わりに、もう無理はしないと約束できますか?」(斑鳩)

斑鳩の言うことに、無言で焔は頷く。

そして、斑鳩は口を開き今から1時間ほど前の出来事を話し始めた。

 

 あれは遡ること、1時間前。

ウナギ怪人の悪あがきにより、焔は右腕の血液を吸い取られそうになっていた。

血液を吸われる前に、体から早く引き離さないといけないが、無理に引っ張っも傷口を広げてしまう危険性がある。

そこで焔がとった行動は、体中のチャクラを一気に放出させて、その圧を利用して引き離す作戦であったのだが…。

「ありがとよ、姉ちゃん」(???)

―!!!―

突如、焔の耳から謎の声が聞こえる。

さらに、それと同時に背中には大きな切り傷が刻まれたのであった。

「!!!…………ぐは……なん…だと」(焔)

焔は、そのまま力尽きて気を失った。

 

 ウナギ怪人は、危険を察知して焔から一旦離れる。

「ぶはっ!ふー、危ないところでありました。あとほんの数秒遅かったら、本当に蒲焼きにされていたであります」(ウナギ怪人)

謎の切り傷により、ウナギ怪人は消滅を免れた様子。

ウナギ怪人は、倒れた焔に近づくと、焔の背中から流れる血を長い舌でベロッと1回舐めた。

すると、先程まで乾いていた体が、ほんの数秒で元の潤った体へと戻る。

「さーて、わずかだが元気も戻ったことですし、トドメと行きますか」(ウナギ怪人)

ウナギ怪人は、腕から鋭い爪を剥き出した。

「では……死ね〰」(ウナギ怪人)

 

 ウナギ怪人の鋭い爪が、焔を襲おうとした時であった。

「そうは、させないよ。とりゃぁぁぁ!!」(??)

奥の方から、1人の少女が、目にも止まらない速さでウナギ怪人へと接近。

そして少女は、腰に下げてた2本の刀を抜刀し、斬りかかろうとした。

「何!おっと…」(ウナギ男)

しかし、いち早く気づいたウナギ怪人は、体から粘液を放出させて、うまく攻撃を受け流した。

 

 少女は、危険を察知すると怪人から距離をとる。刀に付いた粘液を振り払い鞘へと収めると、少女は名乗りだした。

「飛鳥、正義のために舞い忍びます!」(飛鳥)

さらに、遅れて4人の少女も到着。

そして、4人とも名乗り出す。

「同じく、斑鳩」(斑鳩)

「おっと、葛城」(葛城)

「……柳生」(柳生)

「え、えーと…雲雀」(雲雀)

半蔵学園の5人の忍、ここに見参。

 

 「おお、これはなんというサプライズでありますか!忍が5人も…」(ウナギ怪人)

5人の忍の登場に、ウナギ怪人は嬉しそうに喜び、不気味な笑みを浮かべる。

「焔ちゃん、しっかり!焔ちゃん!!」(飛鳥)

飛鳥は、すぐさま焔の元へと寄り添った。

斑鳩も続けて寄り添うと、呼吸の有無や脈の変化、血流の変化を確認した。

「大丈夫です。息はまだあります。手当をすれば良くなります」(斑鳩)

どうやら焔の体は、命に別状はない様子だ。

斑鳩は、懐から包帯を取り出すと、焔の出血を抑えた。

飛鳥は、自身の大事な戦友(ライバル)を傷つけたウナギ怪人を許せなかった。

 

 「やい、怪人!アタイらのダチを傷付けようとはいい度胸しているじゃねーか」(葛城)

「は?ダチだと!?ニョホホホホー笑わせてくれますな。忍が友情ごっことは…」(ウナギ怪人)

「くっ…私達の友達を傷つけたうえに、友情を馬鹿にするなんて……あなたは、絶対に許さない」(飛鳥)

ウナギ怪人の挑発に飛鳥は、カチンとくる。

「飛鳥さん、油断は禁物です」(斑鳩)

斑鳩は、焔の手当てを行いながら、飛鳥が油断しないように助言を掛ける。

「飛鳥!アタイも手を貸すぜ。忍の友情を馬鹿にしたアイツには、お仕置きが必要そうだな」(葛城)

葛城は、腕を鳴らしながらウナギ怪人を見つめる。

「俺も、同感だ……手を貸す」(柳生)

「ひ…雲雀だって」(雲雀)

雲雀と柳生も、気持ちは同じのようだ。

 

 4人は横並びになり、それぞれ戦闘態勢に入っていた。

ウナギ怪人は、そんな4人を見て、そわそわしていた。

「ニョホ-、4人がかりとはいい度胸していますね…」(ウナギ怪人)

4人とウナギ怪人は、どちらともなかなか攻めず、様子を伺っている。

自然と額には汗が流れ、緊張がはしる。

そして、その流れた汗の一滴が地面にポトンと落ちた。

「では、まい…」(ウナギ怪人)

 先に反応したのは、ウナギ怪人。

4人は、それぞれの武器や拳を構えて、守りの態勢に入る。

そして今、4人の忍と怪人の戦いが始まると、この時誰もが思っていた。

「試作品6号、お待ちなさい」(謎の少女)

―!!―

 

 突如聞こえた謎の声に、一同の足は止められた。

葛城と雲雀、そしてウナギ怪人は、特に声に対する聞き覚えがあった為、足を止める反応が特に早かった。

「アイツは!?」(葛城)

「…あの人は!?この間の…」(雲雀)

「あ、姐様!!何故ココに…」(ウナギ怪人)

声がした方向には、カワウソの仮面を装備した黒尽くめの衣装の少女が立っていた。

「葛姉、あの人って…もしかして前話していた…」(飛鳥)

「ああ、アイツが怪人達を操っているかもしれないヤツでな……まさか、こんなすぐに会えるとはな…」(葛城)

 

 前回の戦いの時に葛城と雲雀は、この謎の少女と対面しているのである。

正体は謎に包まれているが、その圧倒的な力を使って怪人を操り、忍の抹殺を企んでいるのである。

少女は、ウナギ怪人へと近づき言った。

「…試作品6号、一旦ここは退きなさい」(謎の少女)

「えっ!何ででありますか姐様。今からいいところだというのに…」(ウナギ怪人)

謎の女は、突然飛鳥に向かって指を指し言った。

「そこにいらっしゃる方は、伝説の忍である半蔵のお孫さんの飛鳥さんです。今のあなたでは、とても敵う相手ではありません」(謎の女)

「えっ、あの人……今、私の名前を」(飛鳥)

少女は、なぜか飛鳥の名前を知っていた。

前回の戦いでも、葛城や雲雀、さらには忍ではない首領パッチの情報も把握している様子であった。

 

 「い…いや~しかし、スタミナも回復しつつありますので、こんなヤツらは吾輩が…」(ウナギ怪人)

「私に逆らうのですか?試作品6号」(謎の少女)

ウナギ怪人の発言に対し、少女は不気味な眼差しで睨み付けた。

「ヒィッ!……か、かしこまりました姐様」(ウナギ怪人)

体から凄い量の汗を流し、ウナギ怪人は剥き出しになっていた爪を元の状態へと戻した。

「ゆっくり休んでてください」(謎の少女)

そう言って、少女はウナギ怪人と共にその場を去ろうとした。

「おい、待て!」(葛城)

それを見た葛城は、少女へと言った。

「現れてそれだけかよ!オマエは一体何者なんだ!何が目的で忍びを殺すんだよ!!」(葛城)

「………それだけですか?……アナタ達に話す必要はありません。ただ……いづれわかることですので。……では」(謎の少女)

そう言って少女は、ウナギ怪人と共に紫色の煙に包まれて、その場から姿を消した。

 

 葛城は、悔しかった。

忍の友情を馬鹿にされただけでなく、二度も敵(謎の少女)を逃がしてしまうなど、葛城の心の中は2つの感情により、ぐちゃぐちゃにされていた。

そんな葛城の肩に、斑鳩は手を掛ける。

「葛城さん、その気持を今は抑えましょう。焔さんを半蔵学園の保健室へ運んで、治療を行うことが先決です」(斑鳩)

斑鳩の言う通りだ。

このまま敵のことばかり考えていても、焔は喜ばない。今は、焔のことを1番に考えるのが、忍・ヒーローの指名である。

「ちっ……覚えてやがれよカワウソ女!!」(葛城)

 

 こうして、焔は半蔵学園に運ばれて、今に至るのである。

「話すことは以上です。あの怪人やイタチの仮面を被った方の正体や目的は、私達もまだハッキリしていなくて…」(斑鳩)

「そうか…」(焔)

話を聞き終わると、焔は黙り込んだ。

そして、腕を組みながら何かを考え込んでいる。

「どうしたの焔ちゃん?」(飛鳥)

飛鳥は気になり、焔へ声を掛けた。

「いや、ちょっと引っかかる箇所があってな…」(焔)

「引っかかる箇所?」(飛鳥)

「怪人は、本当に2体だけだったのか?」(焔)

―!!―

 

 焔のこの発言に、一同は固まった。一体どういうことだろうか。

「アタシは、確かに2体の怪人と戦っていたが、その際中に聞いたことのない声が聞こえたんだ」(焔)

「聞いたことのない声だと?」(柳生)

「あぁ。怪人の一匹が、最後の悪あがきでアタシの右腕に噛みついてきた。そこでアタシは、チャクラを一気に放出させてヤツを引き離そうとした。すると、その声は再び聞こえてきて、気がつけば不意を突かれていた」(焔)

 焔の証言に、5人はザワつき始める。

 

 怪人は、2体しかいないはずなのに、突然謎の声が聞こえるなんて、一体どういう事だろうか。

「で、でも…雲雀達が来たときはウナギの怪人さんだけだったよ。地面に蟹さんの甲羅が落ちているのは見えたけど…」(雲雀)

「いや。焔の言ってることは、間違えとは言い切れない」(葛城)

「葛姉、どういうこと?」(飛鳥) 

葛城は、5人の中で1番怪人との戦闘経験を持つ。

ここから、葛城は自身の見解を話し始めた。

 

 「あのカワウソ女は、怪人の事を試作品何号だの怪人を必ずそう呼んでいる。アタイが今まで倒したのは、3体。2体いるにしても、6号はなんだか引っかかるんだよな」(葛城)

葛城は今まで、土蜘蛛怪人と電信柱怪人、レジスター怪人の3体と戦ってきた。バイク怪人の場合、レジスター怪人が新たに融合した姿の為、カウントはされない。それに、前回の戦いで謎の少女が姿を現した際にも、少女はレジスター怪人を『試作品3号』と呼んでいた。

「確かに…この間以来、怪人の目撃のニュースや情報もなかったし」(雲雀)

「可能性は、0ではなさそうですね」(斑鳩)

 

 一同は、葛城の見解を元に、他のヒントを探り始める。

っとここで、柳生が他に聞いた。

「焔……オマエは謎の声が聞こえると言ってたが、その敵の気配やチャクラは感じなかったのか?」(柳生)

「感じていたら、不意討ちされねーよ。まったく気配を感じる間もなく、アタイの背後はこの様だ…痛っ」(焔)

焔の情報からすると、敵はチャクラを感知する余裕も与えずに、焔へと接近した可能性も考えられる。

 

 ヒントもかなり集まり、ここで斑鳩が話をまとめ始めた。

「とにかく、カワウソの方を除くと怪人は3体。その中の一匹は正体不明と言うこと……と考えてもよろしいですね」(斑鳩)

全員の考えは一致し、一同は頷いた。

 

 すると、保健室の真ん中に何やら球の様な物が転がり、爆発する。

球からは、大量の煙を放たれ、その煙に紛れて1人の男が姿を現した。

「どうやら、話がまとまったみたいだな」(霧夜)

「霧夜先生!!」(半蔵学園の5人)

現れたのは、半蔵学園の教師の霧夜だ。

でも、突然どうしたのだろうか。

「早速だが、明日から新たな作戦を実行する」(霧夜)

「新たな作戦……ですか?」(斑鳩)

「ああ。聞いた話によると、今回の敵はかなりの強敵のようだな。そこで、我々半蔵学園と焔紅蓮隊で作戦を行おうと思っている」(霧夜)

「なんだと!!」(焔)

「最後まで聞け。これはあくまで相手の情報探しが目的だ」(霧夜)

 

 霧夜は、懐から何かを取り出した。

それは、今までの戦いで怪人が使っていた、正体不明の白い粉であった。

「この白い粉は、今までの戦いからすると、ヤツらにとてつもない力を与えている事は確かだ」(霧夜)

「アタイが倒してきた敵は、ほとんどその粉を飲んでた。ただ……この間レジ野郎は、なんだか様子がおかしかった」(葛城)

そう、葛城は思い出していた。

その白い粉は、怪人にとてつもない力を与える効果があるようだが、前回の戦いで引っかかる事がある。

 

 怪人を倒すと、その怪人に取り憑かれていた人間と、怪人の体が分裂する仕組みになっている。

しかし、前回の戦いではレジスター怪人は人間に取り憑いない。

融合する際も、融合体の姿のままで融合するなど、もう訳がわからない。

「この粉の成分は、まだハッキリしておらず、正体も不明のままだ。しかし、一つだけこの粉の正体を見破る方法がある」(霧夜)

「先生、その方法って…」(斑鳩)

「ああ、ヤツら(怪人)の体のデータを分析することだ」(霧夜)

「体のデータ!!!」(一同)

 

 動物の体毛や、唾液、角質など、ほんのわずかな体の一部にでも多くの細胞が詰まっている。その細胞を分析することで、多くの情報が見られるのだ。

 

※うろ覚えな情報なので、正確な答とは限りませんm(_ _)m

 

「この薬の成分と、ヤツらDNAの関係を分析出来れば、今後ヤツらと戦うときに有利になる。そこで、今回お前らは紅蓮隊とともにヤツらの体の一部を回収してほしい」(霧夜)

「なるほど…つまり、今回の任務は敵の排除より情報を優先しろというわけですね」(斑鳩)

「それなら話が早い。ウチにも科学が得意な春花もいるし、分析なら得意中の得意さ」(焔)

「うん、コレで決まりだね!焔ちゃんは休んでて。今回は、私達と紅蓮隊のみんなで焔ちゃんの分も頑張るよ」(飛鳥)

「相変わらずオマエはお気楽だな……まっ、今回は仕方がない。そのかわり、あのウナギ男は私が殺る……先に倒すんじゃねーぞ」(焔)

 

 こうして、次の作戦は決定された。

敵の情報を掛けて、半蔵学園と焔紅蓮隊のチームがここに結成される。

焔の為にも、今回の任務は失敗できない。

果たして、どんなチーム作戦が展開されるのか!!

 

 っとここで、葛城がゆっくりと片手を上げた。

「ん、どうした葛城?」(霧夜)

「……」(葛城)

葛城は、いつものお気楽さとは裏腹に珍しく黙り込む。

そして、何かに決意したのか、口を開いてしゃべり出した。

「みんな聞いてくれ、アタイからみんなに頼みたいことがあるんだ」(葛城)

葛城の頼みとは、一体!!

 

 一方その頃。

ここは、ドコなのか…。真っ暗で、人気もなければ機械音も聞こえない。

ただ聞こえるのは、中に住みつくトカゲやネズミの足音くらいだ。

そんな、見知らぬ不気味な場所に人影が…。

そう、カワウソの面を装備した謎の少女であった。

その隣には、負傷を負ったウナギ怪人も一緒であった。

 

 少女は懐から、何やら蟹の甲羅の様な物を取り出し地面へと置いた。

その甲羅に手を当てると、何やら煙の様なモノが放たれて、甲羅を包み込む。

すると甲羅は、たちまち姿を変えて、やがて1つの体へと姿を変えた。

そう、ザリガニ怪人だ。

「うぅ……ん?おお!体が元に戻ってる。……おお、イカしたサングラスも無事だ」(ザリガニ怪人)

「ご復活されてなによりです、試作品4号」(謎の少女)

「あ…姐様!それにブラザー」(ザリガニ怪人)

2人の姿を確認したザリガニ怪人は、自分がどうなっていたかを思い出した。

ザリガニ怪人は、嬉しさのあまり、サングラス越しに涙を浮かべる。

さらには、深く土下座をしながら少女へ言った。

「ありがとうございます姐様!このご恩はきっと…」(ザリガニ怪人)

「いいえ、すぐに返していただきます」(謎の少女)

「え?……と言いますと…」(ザリガニ怪人)

 

 喜びムードが一気に冷めるザリガニ怪人。

そんなことはお構いなしに、少女は話を続ける。

「はい、半蔵学園と焔紅蓮隊が我々の探索を行っているようです」(謎の少女)

「ニョホホホー、炎の女は吾輩が倒しました。なので、怖い物など…」(ウナギ怪人)

「何を言ってる6号」(???)

近くの岩影から、謎の声が聞こえる。

その声の正体こそ、試作品5号であった。

「消滅しかけていたお前が偉そうな口を聞くな。…俺がいたからあの場は逃れたのだ」(試作品5号)

「ご…5号」(ウナギ怪人)

5号の正論に、ウナギ怪人は若干腰が引けてる。

 

 しかし、愛想のない感じで少女は言った。

「とはいえ5号、アナタも油断は禁物です。先ほどの戦いで、アナタの存在もバレたも同然です。アナタも口の聞き方に気をつけなさい」(謎の少女)

少女の発言にかしこまったのか、5号は岩影へと再び姿を隠した。

 

 ここで少女は、黒づくめの衣装から胸元をさらけ出し、けしからんと言うばかりの爆乳から、タブレットの様な物を取り出した。

電源をつけて、画面をスライドさせる。

そして、あの人物の情報のところで指を止めた。

「では、次のアナタ達にターゲットを言いましょう。この方は、早めに始末しておかなくては………葛城さんを」(謎の少女)




 本日は、ここまで。新たな敵の存在が発覚。正体不明の怪人は、どんな能力の持ち主なのか?果たして葛城、そんな敵にどう立ち向かっていくのか!そして、焔のリベンジは果たせられるのか!!
ご愛読ありがとうございます。次回も、よろしくお願いしますm(_ _)m


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第13話 捜し物は何ですか?

半蔵学園3年の葛城は、春花により開発された丼型の変身ベルトで『セクハラーメンマン』へと変身できるのだ。
 前回、新たな怪人「ウナギ怪人」「ザリガニ怪人」が出現し、公園を地獄絵図へと変える。たまたまバイトに来ていた焔が応戦するも、謎の不意打ちによって背中に大きな負傷を与えられ戦闘不能に…。
 しかし、焔はなんと戦いの際に敵は2体ではなく3体であったことを発見することに成功する。この情報を元に、半蔵学園と焔紅蓮隊は一時手を組む事となり、怪人の探索を行うことが決まった。
 一方、忍達の情報を知った敵側も、動き始めようとしていた。



 怪人の情報を探る為に、結成された半蔵学園と焔紅蓮隊による捜索チーム。

一同は、4つのチームに分かれて、それぞれの場所を探索する。

 

 まずは1組目。

飛鳥と日影によるチーム。

2人は、前に電信柱怪人が出現した街外れを捜索していた。

「この電信柱と雷田誠さんって言う人が融合して、電信柱の怪人に姿を変えたんだよ」(飛鳥)

「へぇ……なるほどな…」(日影)

飛鳥は、その時の情報を日影に教えながら、周りを見回す。

日影は、いつも通りのクールな無表情で言葉を返し、そして頷く。

日影のあまりの口数の少なさに、飛鳥の若干戸惑いを見せる。

だが、相談で決まったチーム編成なので、仕方がない。

ここで日影は、飛鳥に聞いた。

「その電信柱の怪人……たしか葛城さんが倒したんやっけ?」(日影)

「え!……まぁ、そうだけど」(飛鳥)

「……そうか」(日影)

突然の日影の質問に、飛鳥は不思議に思う。

確かにザリガニ怪人を除くと、今までの怪人は全て葛城が倒してきた。

飛鳥は、葛城の口からはそう聞いているが、どうやって倒したかはハッキリと聞いた事が無い。

「それがどうかしたの?」(飛鳥)

「いや、聞いただけや…」(日影)

日影は、質問を終えると再び捜索を実行する。

一体日影は、なぜこのこのとを聞きたかったんだろうと、飛鳥は首をかしげていた。

その後、日影はただただ黙り込んでいた。

 

 その頃、もう一つのチームも捜索を行っていた。

前回、レジスター怪人が出現した渋谷周辺の探索を、眼帯がトレードマークの忍2人が行っていた。

そう、柳生と未来の2人だ。

「さーて、怪人はどこにいるのかしら。この未来様が蜂の巣にしてあげるんだから」(未来)

未来は、なんだかやる気満々で、傘をブンブン振り回す。

久しぶりに、強敵と戦えるかもしれないと知ってうずうずしているのが丸わかりだ。

「あんまりはしゃぎすぎると、焔の時みたいに早めに地雷を踏むハメになるぞ……」(柳生)

「う…わ、わかってるわよ」(未来)

そんな未来に、柳生は冷静に答えた。

 

 若干毒の効いた発言に思えるが、クールな柳生にとっては、コレが彼女なりのコミュニケーションなのである。

未来も、そんな柳生によく振り回されており、無視する訳にもいなかいのだ。

「別に……俺だけで十分の気がするが…」(柳生)

柳生が重ねてきた毒に、未来は黙っているわけもなかった。

「むきー!今のは、聞き捨てならないわね。いい、アタシだって本気を出せば、アンタなんかここでメッタメタのボッコボコに…」(未来)

「……俺は先に行くぞ」(柳生)

「って!アンタを無視するな〰」(未来)

相変わらず、振り回される未来であった。

 

 そんなやり取りをしている2人をよそに…。

ここは、普段半蔵学園の忍達が訓練の時に使われる裏山。

かつてこの山では、初めて出現した怪人『土蜘蛛怪人』と葛城による激戦が繰り広げられた。

その証拠に、一部の木々には多くの風穴や傷跡がつけられている。

ここの探索を行っていたのは、長い黒髪ロングと金髪ロングがトレードマークの、上品な2人。

斑鳩(黒髪ロング)と詠(金髪ロング)である。

 

 最初に怪人が出現した場所だからこそ、手がかりが残されている可能性が高い。

真面目な2人は、まわりの木々や草むらを入念に探索する。

っとここで、斑鳩が何かを発見した様子。

「コレは…」(斑鳩)

「斑鳩さん、どうなさいましたの?」(詠)

詠が尋ねると、斑鳩は見つけたモノを手に取り、詠へと見せた。

「コレなんですが、木に刺さっていて」(斑鳩)

斑鳩が見つけたモノは、全体が茶色で先の尖った太い棘の様なモノであった。

周りを見回してみると、似たような棘がいくつか別の木にも数本刺さっている。

 

 「見た感じだと、何かの棘みたいですわね」(詠)

「同じものが他の木にも刺さっているみたいですが……果たしてコレが、ただの棘なのでしょうか…」(斑鳩)

斑鳩は、お腰につけたケースから1本のクナイを取り出すと、その茶色い棘を突っつき出した。

すると、棘はパキッと崩れサラサラとした砂の様な形へと変わった。

「コレは…もしかして…土!?」(詠)

「信じられません。土を棘の様な形にして、木へ突き刺すとは……」(斑鳩)

「もしかするとコレは、敵の情報を知るヒントかもしれませんでわね」(詠)

「おそらく、その可能性は0ではなさそうですね。まだ手がかりが残っているかもしれませんので、引き続き探索を続けましょう」(斑鳩)

そう言って斑鳩は、土で出来た棘を一つの袋へとしまい、探索を続けた。

果たして、棘は敵と関係あるモノなのか…。

 

 この様に、過去に怪人が出現した場所をそれぞれのチームが探索をおこなっている。

現れた場所だからこそ、その時に出現した怪人の手がかりが残っている可能性が高い。

今回霧夜は、敵との戦いなるべく避けるため、主に探索を中心に動くようにと少女達に伝えている。

もし、敵に遭遇したときにも忍結界が張られる前に撤退するようにとも伝えてあるのだ。

 

 そんな探索チームは、もう1組いた。

怪人の事を最もよく知る3人だ。

怪人と戦闘経験の豊富な葛城。

情報分析の為に、葛城と同行する事となった焔紅蓮隊の春花。

「本当にこんな所に、手がかりがあるのかよ」(首領パッチ)

そして、なぜかキングオブハジケリストの首領パッチも、今回の任務に同行している。

「付き合わせてすいません、首領パッチさん」(葛城)

 

 そもそも、なぜ首領パッチが任務に同行しているのか。

それは、遡ること数分前の半蔵学園にて…。

作戦がまとまり、少女達が話を終えようとすると、葛城はゆっくりと片手を上げた。

「ん、どうした葛城?」(霧夜)

「みんな聞いてくれ、アタイからみんなに頼みたいことがあるんだ」(葛城)

いつも豪快かつお気楽な葛城が自分から手を挙げて意見を述べようとするのがよっぽど珍しいのか、一同は彼女へと視線を集中させた。

「葛城さん……頼みとは一体」(斑鳩)

斑鳩が聞くと、葛城は顔を上げて話を始めた。

「今回の作戦に、首領パッチさんも同行させてほしいんだ」

「首領パッチさんを!!」(一同)

葛城を除く少女達は、一斉に驚きを見せた。

いくら葛城と仲がいいとはいい、行動が常に予測不能の首領パッチを任務に同行させることは、皆心配するのも無理もない。

「オレは反対だ…アイツといると馬鹿がうつる」(柳生)

柳生は、すぐさま反対意見を述べる。

よっぽど首領パッチが苦手だということが、一同にも伝わってくる。

 

 しかし葛城は、けしてふざけている訳でもない。

葛城はまっすぐとした目で、理由を述べた。

「首領パッチさんは、コレまでアタイと一緒に怪人と戦ってきた。それに、怪人は一番戦闘経験があるアタイを襲ってくるかもしれない」(葛城)

「ですが葛城さん、いくら仲の良い先輩方でも、任務に巻き込むのはいけません!」(斑鳩)

「で…でもよ…」(葛城)

斑鳩の正論に、葛城はタジタジになる。

一同も葛城の意見を、若干疑問に思い始める。

斑鳩・柳生・焔の3人は、冷たい視線で葛城を見つめている。

自身が内緒でヒーロー活動を行っている事を言う訳にもいかないが、このままでは仲間に不審感を与えてしまうことに、葛城は危機感を感じていた。

顔から冷や汗を流しながら、葛城は考えた。

「俺はいいと思うが」(霧夜)

「え?」(斑鳩)

 

 葛城の意見に賛成したのは、意外にも一番任務に関して厳しそうな、教師の霧夜であった。

霧夜の意外な言葉に、一同は驚きを隠せず、全員の目線が彼へと向けられた。

「し、しかし霧夜先生…」(斑鳩)

「葛城の言い分も一理ある。情報のある者が同行することで任務はより有効となる。それに、敵がどのように攻めてくるかはわからない。もしもの時に備えて、それなりの実力者も必要となりゆるだろう…」(霧夜)

「霧夜先生…」(斑鳩)

霧夜の冷静な判断は、一同の不穏な空気を一気に浄化させた。

「あくまで今回の任務は、情報収集が優先だ。変に戦闘に持ち込まなければ、それでいい…俺は、葛城の意見を賛成するがお前達はどうする?」(霧夜)

霧夜が問いかけると、一同はそれぞれ答えを出した。

「アタシは別に、あのウナギ野郎にリベンジ出来ればそれでいい」(焔)

「焔ちゃんがそう言うなら…私も!」(飛鳥)

「雲雀も賛成する。首領パッチさん、いい人だもん」(雲雀)

「アイツ(首領パッチ)と行動するのはイヤだが、任務は任務だからな…やむを得ん」(柳生)

4人は、それぞれ意見は分かれているが、首領パッチを同行させることに賛成した。

残るは斑鳩だけであった。

「皆さん……」(斑鳩)

「斑鳩、どうするかはお前次第だ。誰も攻めたりはしない」(霧夜)

「……わかりました。でも改めて言いますが、今回の任務はあくまで情報収集です。戦闘になった場合は、すぐさま撤退をお願いします。敵もどういう手段で攻めてくるかはわかりませんが、くれぐれも戦闘は避けてください」(斑鳩)

「うん」(飛鳥)

「あぁ」(柳生)

「うん、わかった」(雲雀)

「ふん、お前らって本当にいいチームだな」(焔)

斑鳩の言葉に一同は、笑みをこぼしながら了承する。

こうして斑鳩の賛成により、首領パッチの任務同行が決定された。

 

 その後、半蔵学園と焔紅蓮隊、首領パッチによる任務の作戦会議が行われた。

その結果、過去に怪人が出現した場所を4つのチームに分けて、手がかりとなる物を探す事に。

さらに、半蔵学園に残った雲雀と霧夜は、焔の治療に専念することとなった。

 

 そして、今に至るのだ。

葛城と春花、首領パッチの3人は、焔と怪人が激戦を繰り広げた大きな池のある公園を捜索していた。

公園には、立ち入り禁止と書かれた張り紙が貼られているが、作戦執行の前に霧夜が公園の地主から許可を得て、特別に捜索を行っているのだ。

一般人を巻き込まないために、公園全体にも大きな忍結界を張っており、十分捜索に専念できる状況である。

 

 葛城は、公園の草むらをかき分けながら、手がかりを探す。

「手がかりは、どこかにあるはずだ…そっちはどうだ春花!」(葛城)

「う~ん…さっきから探しているんだけど、カニの甲羅一つも落ちていないわよ」(春花)

春花も、背中に腕の生えたリュックような形をした探知機を背負い、周りに赤外線の光を当てながら探している。

しかし、コレといった手がかりが1つも見当たらない。

 

 そこで葛城は、池の近くの通路を探してみることに。

「焔が戦ったのは、この辺りか……ん?」(葛城)

葛城は、何かを発見した様子。

すると、池の柵に何やらネバネバした粘液の様なモノが付いていた。

葛城は、粘液を親指と人差し指でつまんで触ってみた。

「これは…何だかべとべとしてて気持ちわりーな…」(葛城)

「おーい、葛」(首領パッチ)

するとそこに、つづけて春花と首領パッチもやってきた。

「ちょうど良いところに来たな。コレを見てくれ」(葛城)

葛城は、2人にも粘液を見せた。

「なんだコレ?」(首領パッチ)

「ちょっと失礼。ベトベトしてて、若干サラサラした感じもあるし…まるでスライムね…」(春花)

「でも、何でこんな所にこんな粘液が…はっ!まさか…」(首領パッチ)

首領パッチが何かに気付いた様子。

「何かわかったんっすか?」(葛城)

「この公園で…この公園で…カップが公園×××して、〇〇したんじゃ……アベシッ!」(首領パッチ)

不健全な発言、大変申し訳ありませんでした。

 

 そんな発言を放った首領パッチに、春花の鋭いボティーブローがくらわされた。

「首領パッチさんはほっといて…この粘液は一体何かしら?」(春花)

ボティーブローを放ったときと比べて温度差は激しいが、春花は話を戻した。

葛城もいろいろツッコミたいのは山々だが、今は粘液の正体の方が優先だ。

葛城は再度、指に付けた粘液を見つめた。

「確かウナギの怪人がいたような?そいつが放出した粘液かもな…でもそれにしてはあまりヌルヌルしてねーし…」(葛城)

焔の情報では、ウナギ怪人の粘液はローションのようにヌルヌルとしており、サラサラとした液体の様なモノである様子。

葛城が見つけた粘液は、何だかスライムのようにべっとりとしてて、肌触りも何だかベトベトしてて気持ち悪い物であった。

 

 春花は、この粘液を大変興味深そうに見つめている。

そして、背中に背負っていた探知機の赤外線を、粘液に当てて分析を始めた。

すると、何だか表情がだんだんと険しくなってきた。

「これは……なるほどね。大体の謎がハッキリとしてきたわ」(春花)

「本当か春花!それで、その粘液には一体どんな秘密が…」(葛城)

「落ち着いて葛城。まだ、完全に謎が明らかになったわけじゃないけど、この粘液は思ってたより使いようがありそうね…」(春花)

そう言うと、春花は胸の谷間に手を突っ込むと、何やらゴソゴソとして何かを取り出した。

取り出したのは、1つの試験管である。

春花は、試験管で粘液をすくうと、蓋を閉めた。

「あとは、この粘液と白い粉の関係性を分析して答えを挙げるだけね」(春花)

「なんだよ、もう終わりかよ。怪人と戦いたかったなぁ…」(葛城)

 

 葛城は、任務といえど怪人と遭遇出来なかったことに、若干ガッカリしていた。

しかし、コレはあくまで情報収集を目的とした任務である為、むしろ敵に遭遇しなかったのは好都合だ。

「何を馬鹿なことを言ってるのよ。任務はあくまで情報収集でしょ。ずっとこの公園にいるわけにもいかないし、早く帰るわよ」(春花)

「ちぇ、わかってるよ。首領パッチさーん、起きてくださいよ!」(葛城)

しぶしぶと了解した葛城は、気絶していた首領パッチの体を揺らして起こし始める。

 

 首領パッチは、目を開けると早速春花に目線がいく。

「春花テメー、いきなりグーパンチはないだろ!オレを殺すきか!!」(首領パッチ)

「いやいや、あれは首領パッチさんが悪いでしょう。いくらこの物語がオリジナルストーリーだからと言っても、言って良い事と悪い事があるだろ…」(葛城)

「何を言っているの葛城?」(春花)

 

 首領パッチの発言はともかく、今後のヒントになりそうな情報を見つけることに成功した3人。

3人は、公園を後にしてその場から立ち去ろうとする。

 

「ちぇっ!もっとハジケたかった…ん?」(首領パッチ)

首領パッチは、何かに気づいた様子。

目の前に、何かが落ちている。

首領パッチは、その場に近づいて落ちている物を拾い上げた。

「コレは…カニの…甲羅か?」(首領パッチ)

拾った物は、真っ赤な色味で薄いワリに鉄の様にガッチリとした硬さの、1枚の甲羅の様なモノであった。

「おーい2人とも、コレを見てくれ」(首領パッチ)

 

 首領パッチは、早速2人を呼んで甲羅を見せた。

ここで、春花は甲羅を見てある事に気づいた。

「コレは…もしかして、焔ちゃんが倒したザリガニの怪人の甲羅じゃないかしら」(春花)

そう、焔はこの公園でウナギ怪人の他にザリガニ怪人とも戦っている。

ザリガニ怪人は、焔の炎の斬撃で、肉体は焼けてボロボロになり、甲羅だけとなったのだ。

「でも…アタイらが来たときに見た甲羅となんか違うような…やけに薄いし、色もなんだか赤すぎるし…」(葛城)

甲羅を見た葛城は、何やら疑問に思う。

甲羅をまじまじと見つめ、自身の記憶のモノと今のモノを比べる。

「でも、コレもイイ手がかりになるじゃんか。俺達ってラッキー…」(首領パッチ)

「ちょっとまって!」(春花)

 春花は、突然何かを察知し、2人に呼びかけた。

「どうしたんだよ春花」(葛城)

「シッ!静に。ちょっと耳を澄ましてみて」(春花)

「え、耳を?」(葛城)

「いいから早く!」(春花)

春花の言うとおり、2人は耳を澄ました。

周りは忍結界で覆われているため、結界の外の音はほとんど聞こえず、結界内の物音しか聞こえない状況だ。

ただ、風が吹いてなければ、鳥が羽ばたく音がしているわけでもない。

そんな中、ほんのわずかな音量で『チッチッチ…』という音が聞こえてくる。

 

 その音に気づいたのか、葛城の顔から自然と大粒の汗が一滴流れた。

「おい、嘘だろ…」(葛城)

 目線は、首領パッチの持っている甲羅へと向けられ、そして葛城は叫んだ。

「首領パッチさん、今すぐその甲羅を…なっ!?」(葛城)

「ん!?どうした葛?」(首領)

首領パッチの方を見ると、持っていた甲羅から怪しげな光が放たれていた。

さらに、音も光の増大とともに早くなっている事にも気付いた。

「まずい、忍転身!どりゃ〰〰〰〰!!2人とも、伏せろ」(葛城)

すると葛城は、すぐさま忍装束姿へ転身するやいなや、足甲で甲羅を上へ高く蹴り上げた。

近くにいた2人は、葛城の言うとおりに体を伏せて身を小さくさせる。

蹴られた甲羅は、空高く上がると…。

ボカァァァァン!!!

「ぐっ…。こ、甲羅が…爆発しやがった」(首領パッチ)

なんと、空高く蹴り上げられた甲羅は、大きな光を放ちながらそのまま大爆発を起こした。

しかし、一体なぜ甲羅がいきなり大爆発を起こしたのか。

「一体何がどうなっているんだ!?」(首領パッチ)

「わからないっす。ただ、唯一わかる事といったら…」(葛城)

ニャ〰、ニャ〰、カァ〰〰!

「アタイらは、ヤツらの罠にはまったって事だな」(葛城)

辺りを見回すと、草むらや木の陰、水遁の術で水の中に隠れていたりと、何十匹もの猫又が姿を現す。

 

「へっへっへ…こりゃ…どうなることやら…」(葛城)




 情報収集に成功した葛城一行。しかし、待ち受けていたのは敵による罠!!
果たして葛城達は、無事に情報を持ち帰る事が出来るのだろうか。
 忍達の運命はいかに!そして、首領パッチも…。


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第14話 傀儡使い春花

 半蔵学園3年の葛城は、春花により開発された丼型の変身ベルトで『セクハラーメンマン』へと変身できるのだ。この力を使って葛城は『ラブハンターY』(首領パッチ)と共に、突如現れた謎の怪人軍団と日々戦っているのだ。
 前回、怪人情報を探る為に半蔵学園と焔紅蓮隊は、チームを結成することに。葛城は首領パッチと春花といったメンバーで、焔と怪人が闘った公園を捜索することに。しかし、一同の前には猫又軍団が。
一体どうなるセクハラーメンマン!


一方その頃、それぞれのチームにも共通する動きが見られていた。

 

 街外れを捜索している、飛鳥・日影チーム。

ニャ〰、ニャ〰、カァ〰〰!

「この猫は、この間の…」(飛鳥)

見覚えのある猫又軍団に、飛鳥は警戒心を向ける。

一方の日影は、すぐさま状況を把握したのか、一本のナイフを懐から取り出す。

左右の手から手へと交互に持ち替えるといった余裕も見せていた。

「なんやと思ったら、猫か。…まっ、あっし感情ないから驚かへんけど…やられる前に帰った方が得やで…」(日影)

日影の挑発に、猫又は歯を軋ませながら悔しそうに見る。

「にゃにゃにゃ〰、にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ〰(なめやがって〰、お前達ヤツらにかかれ〰)」(リーダーの猫又)

リーダーの合図と共に、猫又軍団は一斉に2人へと襲いかかった。

そして、2人もそれぞれ武器を構えた。

「飛鳥、正義の為に舞忍びます!」(飛鳥)

「日影…悪の誇りに掛けて舞殉じるで…」(日影)

2人は、猫又軍団へと突っ込んでいった。

 

 渋谷辺りを捜索していた柳生・未来チームでも、似たような動きがみられていた。

「どりゃぁぁぁぁ、蜂の巣になりなさーい!」(未来)

人気の無い路地裏には、1つの忍結果。

そこでは、柳生と未来が猫又軍団と激戦を繰り広げていた。

未来は、傘のマシンガンで弾丸を乱射させて、次々と猫又を撃退していた。

「ふん、思っていたより大したことなさそうね」(未来)

ニャ〰!

「はっ!」(未来)

余裕を見せていた未来の背後から、一匹の猫又が爪を立てて襲いかかる。

「あまい!」(柳生)

ギニャァァァァァァ!

突然横切る1つの影。

猫又は、柳生の和傘による突撃により消失した。

あと数秒遅ければ、未来は不意を突かれていたかもしれない。

「へー、やるじゃないの。さすが、アタシが見込んだライバルってところか…」

「油断するな。次が来る!」(柳生)

「って、相変わらず無視かよ!」(未来)

柳生は、ペアとはいえ未来に相変わらず冷たい対応。

心配に思われるペアだが、このやり取りはもはや当たり前のようになってきている。

なんだかんだで連携している2人は、次々と敵を倒していく。

 

 さらに、斑鳩・詠チームが捜索している裏山にも忍結界が。

ニャ〰、ニャ〰、カァ〰〰!

「どうやら私達の作戦は、見通しみたいですね」(斑鳩)

「戦闘は避けるよう言われましたが、そうもいかないようですわね…」(詠)

「にゃにゃにゃ〰(掛かれ〰)」(猫又リーダー)

リーダーの合図とともに、猫又は一気に2人へと襲いかかった。

そして2人も、胸の谷間から1つの巻物を取り出した。

「忍・転身!!」(斑鳩・詠)

2人は、それぞれ忍装束へと転身すると、武器を手に取った。

猫又の鋭く立てた爪を、斑鳩は秘刀『飛燕』で受け止めた。

そのスキに、詠は自身の持つ大剣で相手を突いた。

「斑鳩、正義の為に舞忍びます!」(斑鳩)

「詠、悪の定めに舞殉じます!」

2人は名乗り、猫又軍団へと立ち向かっていった。

 

 それぞれが猫又軍団と接戦を繰り広げており、もはや戦闘を避けるはずの任務ではなくなっていた。

 

 そして、場所は再び葛城と春花・首領パッチのいる公園へと戻る。

猫又は、爪を立てて牙も剥き出しにして、3人へとゆっくり迫ってくる。

「葛城、わかっているわよね。今回の任務は、あくまで情報収集で戦闘は出来るだけ避けるのよ!」(春花)

春花は、葛城が興奮して戦闘態勢に入らないように、あらかじめ釘を刺す。

葛城も変身して戦いたい所だが、とっさに歯を食いしばり我慢する。

「チッ!仕方ないな…。でも、出口が猫又軍団が通せんぼしてやがる」(葛城)

「なんとかしてスキを付ければいいんだけど…」(春花)

「仕方ねーな…俺がやる!!」(首領パッチ)

―!!―

なんと、前へ出たのは首領パッチであった。

「首領パッチさん、一体何を…」(葛城)

「俺がスキをつくる。オマエらは、その間にここから逃げろ」(首領パッチ)

「首領パッチさん…」(葛城)

首領パッチは、いつもの何も考えないバカな一面とは裏腹に、クールな立ち振る舞いでゆっくりと猫又のいる方へと歩いて行く。

 

 スキを作ると言っていたが、首領パッチには何か作戦があるとでも言うのか。

そんな真剣な首領パッチに、葛城と春花は釘付けであった。

猫又軍団と約2メートル付近の所で首領パッチは、歩くのをやめた。

そして、何やらゴソゴソとして何かを取り出すと…。

「さぁ~可愛いネコちゃーん、ご飯の時間でちゅよ~さぁ、オバチャンがせっかく持ってきたんやから、た~んとお食べ…」(首領パッチ)

「………」(一同)

首領パッチは、パーマのカツラをかぶったオバチャンメイクで、ツナ缶と猫じゃらしを片手に猫又をおびき寄せ始めた。

思っていたよりも単純な作戦であった為、一同は唖然とした反応に。

「………よし!」(首領パッチ)

決まったかのように、首領パッチは2人に向けてガッツポーズを送るも…。

「ニャァァァァ〰(やっちまえ!)」(猫又リーダー)

「イヤァァァァァァァァァ」(首領)

「そりゃそうでしょう…」(葛城&春花)

 

 猫又軍団は、一斉に首領パッチへと襲い掛かった。

葛城と春花も、思わず心の声が漏れる。

首領パッチは、猫又軍団に引っ掻かれては噛みつかれ、武器でひたすら殴られるなどやられ放題に。

「今だ2人とも作戦は成功だ!今のうち逃げ……っていない!!」(首領パッチ)

首領パッチが目線を変えると、2人はとっくにその場を離れていた。

「イヤァァァァァァァァァ」(首領パッチ)

再び、首領パッチは叫び出すのであった。

 

 猫又軍団が首領パッチに集中している内に、2人は走りって、その場から離れる。

「ほっといて大丈夫なの?首領パッチさんを…」(春花)

「平気平気。首領パッチさん、丈夫だから問題ないって」(葛城)

「あなたって、まあまあな悪い子よね…」(春花)

ツッコミたいことは多いが、変にツッコまずに控えめに返答を返す春花。

 

 バカ(首領パッチ)の行動がとりあえず功を奏し、とりあえず2人は出口付近へと着いた。

「よし、ここまで来れば大丈夫………なわけないよな」(葛城)

ニャ〰、ニャ〰、カァ〰〰!

出口に着いたのは良かったものの、出口にも無数の猫又が待ち受けており、出口を通せんぼしていた。

「どうやら、コイツらをどうにかしない限り、ここから出られないみたいだか…」(葛城)

「まっ、この子(猫又)達が怪人の下部だとすると、(怪人と)同じ情報が手に入りそうね…」(春花)

 

 葛城は、春花の言葉に引っかかった。

あれほど戦闘を避けるよう釘を打っていたのに、急に“情報が入りそう”だと言い出したのだから。

相手を攻撃しない限り、手掛かりを作る事は出来ない。

つまり…。

 

「……ってことは春花……戦っていいって事か…」(葛城)

そう、状況にて戦闘を避けられないと判断した春花は、いっそのこと戦って、より多くの情報を獲得する事に決めたのであった。

「はぁ~。私と一緒だったからよかったけど、どうせ止めてもアナタは言うこと聞かなそうだしね……いいわよ。そのかわり、くれぐれもスキを突かれないようにね!」(春花)

なんと春花は、溜息をつきながらも戦いを許可したのだ。

「へん!そんなの、とっくに承知の上だ!!」(葛城)

 

 セクハラーメンマンの変身ベルトを発明したのは、春花である。

つまり春花は、セクハラーメンマンの正体を知る数少ない人物の1人であるのだ。

今回の任務で、葛城と春花がペアを組んでいたのは、セクハラーメンマンの事をバレないようにする為でもある。

『オーダー通シマース』(ベルト音声)

葛城は、懐に隠していた変身ベルトを装着した。

「忍・変身!!」(葛城)

『オーダー入リマース…セクハラーメンマン一丁!!』(ベルト音声)

ベルトに巻物を装着した葛城は、セクハラーメンマンへと変身した。

「忍・転身!」(春花)

続けて春花も、忍装束である白衣へと早き替え。

 

 2人は、戦う準備は万全と整えた。

葛城は早速、胸元から取り出した緑色のUSBメモリをベルトに挿し込んだ。

『トッピングオーダー…“キザミ”』(ベルト音声)

異空間から出現した二刀の麺切りカッター(双剣)を手に取り、葛城は格好良く構えた。

「さーて、一丁行くか!」(葛城)

「まって葛城、私が相手(猫又)の動きを鈍らせるから、その間にアナタは攻撃して」(春花)

「おっ、すまないな春花」(葛城)

「ニャーニャンニャン、ニャンニャンー(お前達、やれ〰)」(猫又のリーダー)

ニャァァァァァ!!

 

 群れの先頭に立っていたリーダー的猫又は、仲間へ合図する。

その合図とともに、猫又達は一斉に2人へと襲い掛かった。

「あらあら、元気な猫ちゃんね。でも、そんなに怒らずにリラックスでもしてなさい」(春花)

春花は、自身の着てた白衣の裏に仕込んであった試験管を数本取り出す。

そして、中に入ってあった薬をあたり一面にまき散らした。

 

「秘伝忍法 Scatters Love」(春花)

「ニャァァァ〰!ニャ?ニャァァ~ン(おらぁぁぁ〰!あん?何だか、気持ちいい~)」(猫又)

まき散らしされた薬は、地面触れた途端に謎の煙へと変わる。

それを吸った猫又達は、体の力が抜けるやいなや、表情が和やかになっていった。

「それは、特製のマタタビ剤よ。いくら猫又でも、中身は猫そのまんまね」(春花)

「サンキュー春花!よーし、こっちも負けてられねーぞ」(葛城)

 

葛城は、変身ベルトのボタンを押した。

『足甲オーダー……“キザミ”』(ベルト音声)

すると右足の足甲は、形を変えた。

葛城は、足甲に2本の双剣を装着させた。

そして、ムエタイの様に片足(右足)を上げて、もう片方の足(左足)は後に重心をかけながらつま先立ちになる。

さらに両拳はこめかみの高さに上げ、脇を軽く締めた構えをみせていた。

「へへへ、麺の硬さはバリ硬だ!!どりゃぁぁぁぁ!!!」(葛城)

葛城は、脚力を活かしジャンプで、まっすぐ勢いよく猫又へと突っ込んでいった。

「麺は縦に真っ直ぐ!」(葛城)

ニャ〰!

葛城の鋭い真空蹴りは、猫又の顎に思いっきり当る。

しかし、その背後斜めから別の猫又が襲いかかろうとする。

だが、葛城は止まらない。

「野菜は斜めに!!」(葛城)

ギニャ〰!

葛城は、すぐさま体勢を直し、斜め上に鋭へ鋭い回転蹴りをくらわせた。

「そして、何より重要なのは…下ごしらえだ〰!!!」

ニャァァァァ〰!

そしてトドメは、まるでマシンガンの様に目にも止まらぬ速さで、無数の連打キックを炸裂させる。

猫又達は、次々と吹き飛ばされては、札の姿へと戻る。

「やるじゃない葛城。その姿も、だいぶ慣れてきているみたいね」

ベルトを製作した側としては、難なく使いこなしている葛城に春花も満足である。

「へへへ、楽勝楽勝」(葛城)

「全く、調子がいいんだから。あんまりいい気になっていると、敵がまた…」(春花)

ニャ〰〰!

「油断も何も…問題ないぜ!」(葛城)

ギニャァァァ!!

後方から不意を突こうとした一匹の猫又は、呆気なく葛城に返り討ちにされてしまう。

 

勝負は、葛城が一方的にリードしているようだが、相手も一筋縄ではいかなかった。

御札は、すぐ猫又の姿へと戻り、またすぐ2人へと襲いかかる。

いくら変身している葛城でも、パワーやスタミナに限界がある。

「話には聞いていたけど、猫又というよりゾンビってところね…」(春花)

「猫又なのにゾンビ並みの生命力ねぇ…だったら、御札をどうにかするまでだっ!」(葛城)

葛城はそう言うと、胸元から新たなUSBメモリを取り出した。

そのUSBは、全体的に炎のように真っ赤な色をしている。

ベルトに挿していたキザミのUSBを抜き取り、その赤い方をベルトに挿し込んだ。

『オーダー入りマース!……炙り!!』(ベルト音声)

赤いUSBをベルトに挿し込むと、葛城の足甲は燃え盛る炎に包まれた。

炎は、旨い感じに形を変えて炎のスパイクへと変わった。

燃え盛る炎に、さっきまで威勢の良かった猫又達も怯えて後ずさりしていた。

「セクハラーメンマン!炎のごとく舞忍びます!!」(葛城)

葛城は、猫又達の共へと走り出した。

猫又達も、怖がりながらも負けじと突っ込んでいった。

「炎の足甲の味を食らえぇぇぇ!」(葛城)

葛城は、炎を纏った足甲で先頭にいた猫又に飛び蹴りを炸裂させた。

ニャパハァァァァ

やられた猫又は、元の御札の姿へと戻った。

それを見た葛城は、何かを確信したかのように笑みをうっすら浮かべる。

「コレをまってたぜ!…からの~ありがとうございました!」

葛城は跳びあがり、御札を足甲の炎で燃やし灰へと変えた。

 

「考えたわね。あれじゃあ敵も再生するにも出来ないってことね」(春花)

「まだまだ終わらないぜ!」(葛城)

そう、葛城は猫又が御札の姿に戻ったのを見計り、それを燃やす作戦に出たのです。 

いくら何度も立ちはだかる猫又も、灰になるまで燃やされてしまえば再生するにも出来ない。

葛城は、アクロバティックな動きで攻撃をよけては、立ちふさがる猫又達を次々と蹴り上げて倒していく。

遠くに離れた敵も、本底から火炎放射機のように炎を発射させて撃退する。

一段落倒し終わると、葛城はベルトを2回開け閉めした。

『炙り!…マシマシ(増し増し)!!』(ベルト音声)

足甲の炎は、一段と大きくなり右足に集中した。

そして、その右足を葛城は高く上げた。

「英雄忍法 サラマンダー」(葛城)

ギニャハァァァァァァ!!!

葛城が地面に強く踵を落とすと、炎は衝撃波のように地面を伝って広がり、猫又達を一気に燃やした。

 

 猫又は、再生する間もなく炎に滅された。

「どんなもんだ!アタイの力、思い知ったか!」(葛城)

葛城は、USBを胸の谷間へしまうと調子良さげに胸を張った。

調子が良いのは何よりだが、ベルト製作者の春花は黙っていられない。

あきれ顔で、春花は葛城の隣へと近づいてゆく。

「そのベルト造ったのアタシよ。使うからには、ちゃんと製造代を払って…」(春花)

春花が話し終わろうとした次の瞬間、2人に目がけて透明色の何かが発射された。

それは、消防車のポンプのように勢いよく放水された大量の粘液であった。

―!!―

それに気づくと、2人は直ぐさまかわした。

しかし、葛城はタイミングがズレたのか、バトルスーツの背中の辺りに少量の粘液がべっとりと付着した。

「にょわっ!チッ…避けきったと思ったら、カッコいい鎧に粘液が…オイ卑怯者!隠れてないで、出て来やがれ!」(葛城)

怒った葛城は、近くの草むら目がけてナルト型の手裏剣を投げた。

投げた先から、“グサッ”と何かに刺さったかのような音がした。

「にゅや〰!痛テテテ…紳士に向かってナルトを投げるとは、なんと無礼な忍でありますか…」(ウナギ怪人)

「また会ったな、ウナギ野郎!」(葛城)

草むらから飛び上がるように出てきたのは、以前焔と激戦を繰り広げたウナギ怪人であった。

彼のお尻を見ると、先ほど葛城が投げたナルト型手裏剣が見事に刺さっていた。

 

 春花は、キリッとした表情でウナギ怪人を見つめ始めた。

仲間である焔を傷つけた分、春花はウナギ怪人を許すわけにはいかないからだ。

「あなたが焔をやったヤツね!ウチのリーダーをやった代償は、大きいから…覚悟しなさいね!」(春花)

春花は、自身の指をポキポキと鳴らしながらウナギ怪人怪人へとゆっくりと近づいてゆく。

そんな春花に対し、ウナギ怪人は何やら余裕の笑みを浮かべている様子だ。

 

 ザバァァァァァァァァァン!!!

―!!―

突如、池から巨大な水飛沫が発生した。

まるで、巨大な爆弾でも爆発したかのように大量の水は一気に上へと噴射される。

しかしこの様子は、巨大な忍結界の効果により、公園の外にいる一般の人々に見られる事はなかった。

「何だ!一体何が!?」(葛城)

噴射された水は、だんだん下の池へと戻る中、水によって姿を隠していたヤツの正体が露わになる。

筋肉質で、体でガッチリとしたトゲ付の甲羅で覆われており、両腕は切れ味の良さそうな野太いハサミとなっている怪人だ。 

そして、その怪人は3人の元へとゆっくり着地した。

そんな、怪人の姿を見た葛城は驚いた。

「お…オマエは…まさか」(葛城)

「ん?誰だオメーさんは?」(ザリガニ怪人)

「ザリガニの怪人!?」(春花)

 

 目の前にいたのは、焔によって倒されたはずのザリガニ怪人であった。

しかも、焔と戦った時と比べてほんの少し体が大きくなっており、赤かった甲羅は鉄のような銀色へとかわっていた。

まるで、改造されて体の半分が機械となっているかの様であった。

「どうなっていやがる。焔が倒したんじゃねーのか!?」(葛城)

「焔?誰だか覚えていないが、俺様は何度でも蘇るさ。忍がこの世から消えるまでなぁ!!」(ザリガニ怪人)

ー!!ー

ザリガニ怪人は、物凄いスピードで春花へ向かい始めた。

春花は、驚きのあまり警戒が遅れてしまう。

「もらった〰!」(ザリガニ怪人)

「ちッ…」(葛城)

『速さマシマシ(増し増し)…キザミ!』(ベルト音声)

「何!」(ザリガニ怪人)

勢いよく振り込まれたハサミ攻撃はであったが、葛城はスピードを加速さて、双剣を使って攻撃を防いだ。

 

 受け止めたのは良かったものの、ザリガニ怪人の凄まじい怪力に、葛城の両腕は小刻みに震えていた。

双剣の刃にも、若干ひびが入っている。

相手は、焔と戦ったときよりも数倍以上の力を増して挑んでいた。

今攻撃を防げたのも、むしろ奇跡中の奇跡である。

「ほほ~、ヤルじゃないか姉ちゃん」(ザリガニ怪人)

「ぐ……なんて…怪力だ…」(葛城)

 

 「葛城!!」(春花)

春花の体には、怪我一つもありません。

しかし、仲間のピンチに黙っている訳にもいかない。

春花は白衣から新たな試験管を取り出し、加戦しようとする。

「葛城、今助け…ハッ!?」(春花)

「ニョホホ~、アナタの相手は我ですぞ!我のスピードに着いてこられるかな」(ウナギ怪人)

春花の前に、ウナギ怪人が立ちはだかる。

ウナギ怪人は、自身の粘液で軽やかに地面を滑りながら、立てた爪を春花へと向け、そして襲いかかろうとる。

しかし、先ほどと比べて警戒心が上がった春花は、軽やかなバク転で怪人の攻撃を避けた。

「おっと!ちょっと、不意打ちなんて反則じゃない!」(春花)

「ふん!卑怯も何もないでありますなぁ。対策のない忍は、早めに始末するまでだぁぁぁ!!」(ウナギ怪人)

 

 ウナギ怪人は、再び粘液を使って春花へと向かう。

ウナギ怪人は、春花に“対策のない忍”と言っていたが、春花に限って対策を用意していないことは、まず無いのだ。

春花は、ウナギ怪人に向かってニコリと微笑み、奥深くに眠っていたドSオーラを放ち威嚇する。

「あら、アタシが対策を考えてないとでも思った?」(春花)

そう言うと、春花は指をパチンと鳴らした。

すると、すぐさまウナギ怪人の背後に謎の影が忍び寄る。

「ん?にょわっ!?な…何ですか…」(ウナギ怪人)

突如、ウナギ怪人は何者かに背後から体を抑えつけられた。

ウナギ怪人が振り向くと、そこには丸い顔に2本の腕が生えた一体の傀儡が、背後にて(ウナギ怪人の)両腕を抑えていた。

 

 そう、焔紅蓮隊きって天才頭脳の持ち主である春花は、傀儡使いでもある。

見た目は、傀儡というよりはロボットに近いが、動きはロボットよりも断然優れている。

春花の為であれば忠実に尽くす下部の様な存在である。

 

 傀儡によって拘束されたウナギ怪人に、春花は近づいた。

そして、顔を近づけて言った。

「さてと、ウチのリーダーの件は…体で払っていただこうかしら」(春花)

ウナギ怪人の顎を、指で撫でながら挑発する。

「ふん、なんの!」(ウナギ怪人)

ウナギ怪人は、体中から大量の粘液を流し始めた。

そして、そのヌルヌルを活かし傀儡の拘束から抜け出した。

「何ですって!?」(春花)

「ニョ~ホホホホ、考えがあまかったみたいですな。では…今度こそ覚悟!!」(ウナギ怪人)

ウナギ怪人は、爪を立てて再び春花へと襲いかかった。

「一筋縄ではいかないみたいね。それなら…これでどう!」(春花)

春花がもう一度指を鳴らすと、羽織っていた白衣だけが空中に浮かびあがった。

いいえ、白衣が上がったというよりは、白衣に隠れていたもう一体の傀儡が上がったのだ。

傀儡は勢いよく落下し、ウナギ怪人へと襲いかかる。

「ちッ、傀儡使いでありますか。だが…数を増やしたところで、我に勝てると思うなでありますよ!」(ウナギ怪人)

ウナギ怪人は、粘液を匠のごとく操り、アイススケートの様に滑って動きだす。

「さ~て、たっぷりと可愛がってあげる!」(春花)

春花は、片手の人差し指を唇に近づけ、滑らかな舌でペロッと舐めた。

2体の傀儡を操るドSな忍と、ヌルッとした怪人の戦いがここに始まった。

 




つづく


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第15話 プライドvsプライド

 前回、突如現れた猫又軍団の襲撃に対し、葛城と春花は見事なチームプレイで相手を見事に撃破した。しかし、それに続いてやって来たのは、焔との闘いからさらに力を増した2体の怪人であった。
 春花は、2体の傀儡を用いて『ウナギ怪人』に勝負を挑む。その一方、葛城はもう一体怪人『ザリガニ怪人』との闘いに挑んでいた。ハサミ攻撃に対し、葛城は双剣で身を守るも、相手の怪力もあって苦戦中だ。
 果たして、今回はどうなるセクハラーメンマン!


 双剣でザリガニ怪人のハサミ攻撃を受け止めていた葛城。

攻撃を防いだところまでは良かったものの、相手の怪力によって思うように動けない。

変身したとはいえ、これではさすがの葛城も力尽きるのも時間の問題であった。

「さーて、どうする?このまま、お前の体ごとブッダ切る事だってできるんだぞ」(ザリガニ怪人)

余裕の表情で挑発するザリガニ怪人。

ほんの少しハサミを動かすと、葛城の双剣のヒビが少しまた広がっいく。

 

 しかし、葛城も負けじと馬鹿力で対抗する。

「へっ!冗談じゃねーよ。この程度でやられたら、ヒーローという肩書きを怪我してしまうから…な!」(葛城)

「ぐわっ!」(ザリガニ怪人)

葛城は片足を上げると、ザリガニ怪人の腹部に一発の蹴りを繰り出した。

両腕に集中してた分、ザリガニ怪人の腹部はガラ空きになっていたのだ。

 

 そして、ザリガニ怪人が離れたところ、葛城に攻撃のチャンスが来た。

「どりゃあああああああああ!」

葛城は、ザリガニ怪人の腹部に、これでもかと思うほどの連続蹴りをお見舞いする。

蹴りにより、ザリガニ怪人の体は前へ前へと押されていく。

「無駄無駄!今の俺の体の甲羅は、以前の数倍硬度を上げている」(ザリガニ怪人)

葛城が一歩リードしているかのように思われたが、攻撃は芯まで届いていなかった。

それでも葛城は攻撃を辞めません。

甲羅にヒビ一つは入れたいところだが、葛城の蹴りでも甲羅はびくともしない。このままでは、ただ体力だけが消費してしまうだけだ。

「チッ、それなら…」(ベルト音声)

『トッピングオーダー入リマース…コラーゲン』

胸の谷間から、透明色のUSBメモリを取り出し、変身ベルトに挿入した。

右の手のひらを開くと、透明色でプルンプルンな球体が一つ作られた。

「コラーゲンボール!!」(葛城)

 

 その正体は、過去に土蜘蛛怪人と戦った際に使用したコラーゲンボールである。

これを使って、土蜘蛛怪人の糸攻撃をうまく防いだこともある。

葛城は、その球体をザリガニ怪人の顔目がけて投げつけた。

「ぬわっ!め、目が…」(ザリガニ怪人)

コラーゲンボールは、ザリガニ怪人の目に入り、視界を妨げた。

 

 ザリガニ怪人は、やむを得ず目に入ったコラーゲンボールを洗い落とそうと、急いで池の方に向かって走り出した。

「これは、単なる時間稼ぎ…次で決める!」(葛城)

そのスキに、葛城は胸元から“秘伝忍法”と記された巻物を取り出した。

さらに、もう片方の手には赤のUSBメモリを手にしていた。

「いくら外が硬くても、中はプリプリの甲殻類だ!」(葛城)

『オーダー入リマース…秘伝忍法』(ベルト音声)

「からの~」(葛城)

『トッピングオーダー入リマース…炙り!』(ベルト音声)

葛城は、変身ベルトを縦に開くと、巻物を挿入口へと挿し込んだ。

さらに、もう片方の手に持っていたUSBメモリも挿入すると、開いていた変身ベルトを強く閉めた。

 

 すると、足甲から再び炎が着火されると、葛城は走り出した。

「うぉぉぉぉ、これならどーだ…とぉ!」

葛城は、その勢いと脚力を活かし、高く跳び上がる。

「英雄忍法 ヘヴィーサラマンドラァァァァ!」(葛城)

落下の勢いに乗せて、炎の飛び蹴りが放たれた。

足甲の炎は落下による向かい風により、さらに大きくなってザリガニ怪人へと迫っていく。

 

 ザリガニ怪人は、池の水で目を洗っており、背中は今ガラ空きの状態であった。

「もらったぁぁぁぁ!」(葛城)

だが、相手も一筋縄ではいかない。

「フン、馬鹿め!俺の背後を簡単に狙えるなんて思うなよ!」(ザリガニ怪人)

後ろの気配に気付いたザリガニ怪人は、振り返り両腕の野太いハサミを盾にして、葛城の攻撃から身を守った。

 

 攻撃は防がれたものの、まだ終わらない。

それでも葛城は、攻撃を継続する。

落下勢いは、直撃後に比べて落ちているが、葛城は攻撃が完全に直撃するまで足を地面に付ける訳にはいかなかった。

 

 この攻撃(蹴り)には、焔の思いも詰まっている。

いくら悪忍であろうと、友情や絆を熱く大切に思う葛城には、それを侮辱した怪人達を許すわけにはいかない。

それは、共に傷だらけになるまで闘い、同じ“カグラ”の道を目指すと決めた忍だからこそ生まれた絆でもあるのだから。

「まだまだ、諦める訳にはいかねーんだよ」(葛城)

『火加減…マシマシ!』(ベルト音声)

 

 葛城は、手を伸ばしベルトの巻物挿入口を2回ほど開け閉めした。

すると、足甲の炎が大きく燃え始めた。

それにより、炎の飛び蹴りはさらに勢いを増し、力さらに増幅した。

 

 だが、それでもザリガニ怪人は怯まない。

先ほどから、燃え上がる足甲を受け止めているにも関わらず、ハサミにはヒビどころか、焼け跡1つも入っていません。

葛城の攻撃も、相当な威力を誇っている思われるが、相手の防御力も焔に一度敗北したぶん改善されていてもおかしくはない。

「なんだコレは?お灸か?その程度の炎じゃ、俺の甲羅は破れないぞ!」(ザリガニ怪人)

「ヘン!言ってくれるじゃねーかオッサン。だが、アタイはまだまだ諦めない!!」(葛城)

 

 相手に挑発されたままでは、葛城のヒーロー魂も黙っていられない。

負けじと葛城は、ベルトの巻物挿入口をさらに2回開け閉めする。

『火加減!マシマシマシマシ〰!!!!』(ベルト音声)

すると、足甲の炎は熱を増し、さらに大きな炎へと姿を変えた。

それだけでなく、先ほどまで赤かった炎が、温度を上げて青い炎へと変わった。

「うぉぉぉぉぉ!」(葛城)

「ぐっ!この女…まさかここまでやるとは…ハッ!」(ザリガニ怪人)

ザリガニ怪人は、自身の異変に気づいた。

先程までビクともしなかったハサミに、足甲の炎による焼け跡が刻まれていた。

それだけでなく、炎の影響で甲羅が脆くなり始めたのか、“ピキッ”という音も聞こえてきた。

「うぉぉぉぉぉ!行っけぇぇぇぇぇぇぇ!!」(葛城)

「ぐっ…なっ!」(ザリガニ怪人)

ボカァァァァァァン!

 

 プライド(炎の足甲)とプライド(ハサミ)の衝突により、大きな爆発は起こった。

その煙の中からは、そんなプライドをぶつけ合った2人が姿を現した。

「うわぁぁぁぁぁ、おっと!ふぅ」(葛城)

「ぬわぁぁぁぁぁ!」(ザリガニ怪人)

ザリガニ怪人は、衝突により吹っ飛ばされ、そのまま後ろの池へと落っこちた。

一方の葛城も吹き飛んだものの、なんとか体勢を整え着地に成功した。

そして…。

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

葛城は、叫んだ。

 

 ぶつかり合いに、自身のヒーローとしてのプライドが勝利したことに、喜びの叫びが思わず飛び出す。

「へへーん、どんなもんだい!正義は勝つ!ブイブイ…痛てっ!」

喜ぶ葛城であったが、戦いでの痛みが時間差で効いてきた。

敵にダメージを与えたとはいえ、渾身の一撃に相当なチャクラを消費してしまい、葛城の体はフラフラであった。

先程の着地も、奇跡である。

「痛ててて…ちょっと無理しすぎたぜ。それにしても、なんて硬い甲羅なんだ…アタイの蹴りでもビクともしないなんて、チタン合金でも入ってんのか?」(葛城)

 

 まだまだ気になる事は多いが、葛城の目的はこれからであった。

そもそも今回の任務は敵に関する情報収集。

白い粉と怪人の情報を見比べる為に、怪人の体の一部を回収しないといけない。

葛城は、ザリガニ怪人が落ちたく池へと向かった。

 

 池の近くに着くと、警戒しながら辺りをキョロキョロとして、ザリガニ怪人を探し始めた。

「たしか落ちたのは、この辺だっけか?甲羅の破片でもいいから落ちてないかな」(葛城)

ブクブクブクブク…。

―!!―

葛城は、異変に気付いた。

突然、池の水面からブクブクと空気による泡が発生した。

それを見た途端、何かを勘づいた。

 

 そして…。

「おりゃぁぁぁぁぁ!」(ザリガニ怪人)

「ナッ!まずい…」(葛城)

水面から飛び出してきたのはザリガニ怪人のハサミだ。

いち早く気付いた葛城は、体を後進させて攻撃を回避した。

あと一秒遅れていたら、体は切り裂かれていてもおかしくはなかった。

その証拠に、バトルアーマーには一筋の斬り傷が刻まれていた。

 

 そんなことよりも一番の衝撃は、あれほどの攻撃を受けてもまだ生きている怪人の頑丈さであった。

ブクブク…。

「ぶはぁー。ふぅ…痛ってーな」(ザリガニ怪人)

水面から、ザリガニ怪人は顔をだし、陸へと上がった。

「お…オッサン、何でだ…アタイの攻撃は確かに…」(葛城)

「攻撃?コレでか?」(ザリガニ怪人)

―!!―

ザリガニ怪人は、自身のハサミを葛城へと見せた。

ハサミには、葛城の足甲と思われる跡が深く残されていた。

熱の影響で、初めの薄い赤色から濃い赤色へと甲羅自体も変色している。

さらに、その跡をよく見ると、真ん中に1、2㎝ほどのヒビが入っている。

なのにも関わらず、ザリガニ怪人は何も無かったかの様な余裕の表情をうかべていた。

「俺の甲羅にヒビを入れたのは褒めてやる。しかし、パワーが足りなかったみたいだな」(ザリガニ怪人)

「う…嘘だろう!」(葛城)

「さーて、今度はこっちの反撃といきますか」(ザリガニ怪人) 

「ちぃ、そうはさせ…うっ!やべぇ、さっきの攻撃の影響で…足が」

葛城は、動こうとするも足にとてつもない重量感を感じており、思うように動けなかった。

 

 それもそのはず。

先程の攻撃でかなり無理しすぎてしまい、チャクラや体力の消費はもちろん、足にもそれなりの負担が掛かっていてもおかしくない。

びっこを引きながらでも、葛城は相手から距離を離そうと歯を食いしばりながら後ろへ下がろうとした。

「させるかよ!」(ザリガニ怪人)

そうはさせまいと、ザリガニ怪人は葛城へと走り出す。

そして、右腕のハサミを大きく振りかぶると、ついに。

「言っただろ!何をやっても…無駄だっつってるだろうが〰!」(ザリガニ怪人)

「ぐふっ!ぐわぁぁぁ」(葛城)

「葛城!!」(春花)

ザリガニ怪人の野太いハサミによる強烈な右ストレートが、葛城の左頬に直撃した。

葛城はそのまま、後ろの木へと吹っ飛ぶ。

 

「痛ってててて…ぺっ!やるじゃねーかオッサン。…今のは…正直かなり効いたぜ…」(葛城)

 

葛城は、攻撃を食らってもいつもの様な感じで振る舞っているものの、体はかなりフラついている。

左頬は、腫れ上がり痣が出来ただけでなく、ヘルメットも半分ボロボロであった。

「へへへへ、アタイはまだやれる!アタイは“正義の味方(ヒーロー)”に鳴るって決めたんだ…」(葛城)

葛城は、手を震わせながらと胸元に手を入れてUSBメモリを取り出そうとする。

しかし、そんな葛城に怪人も黙っていない。

「させるか、シザーラッシュ!!」(ザリガニ怪人)

 

 ザリガニ怪人は、左腕のハサミを高速に動かして、レイピアのように突きながら葛城の方へ前進する。

葛城は、歯を食いしばりながら攻撃を避け始めた。

攻撃はそれほど早くはなく、いつもの葛城であれば避けるのは容易いことである。

しかし、今の葛城は左眼の視界が歪んでいるせいか、攻撃を完璧に避けれず、バトルスーツに次々と斬り傷を付けられていた。

「ちぃッ、今のアタイのスキルでは勝つには難しいぜ」(葛城)

何か秘策はないかと模索する葛城だが、ついに足が互いに当たってしまい、バランスを崩してしまった。

「しまっ…」(葛城)

「もらったぁぁぁぁぁ!」(ザリガニ怪人)

「はっ!ぐわぁぁぁぁぁ!!」(葛城)

 

 ザリガニ怪人の繰り出した攻撃により、のセクハラーメンマンの変身が解除されてしまった。

葛城の体は傷だらけで、あらゆる箇所からの出血が目立っていた。

幸いバトルスーツのおかげもあって、傷はそこまで深くはなかったものの、次に攻撃を喰らってしまえば、立てるかどうかわからない状態に追い詰められていた。

 

 「もう終わりか?もうちょっと楽しませてくれると期待していたが…残念」(ザリガニ怪人)

「やべぇ…何か秘策さえあれば…」(葛城)

葛城は、再び胸の谷間に震えた手を突っ込み、もっているUSBメモリを確認した。

入っていたUSBメモリは、『コラーゲン』『キザミ』『炙り』の3つ。

コレだけでは、相手に勝てるかどうか非常に危うかった。

「ちぃ…秘伝忍法を使うにもチャクラが足りねぇ…」(葛城)

 

 もはや葛城は、絶対絶滅であった。

「こ…このままじゃ……ハッ!そういえば」(葛城)

ベルトの裏側が、何やらゴソッとした。

 葛城は、変身ベルトを裏返してみた。

すると…。

「やっぱり…あの時の…」(葛城)

そこにあったのは、セロハンテープでくっつけていた、一つのUSBメモリであった。

そのUSBメモリには、“二郎”という2文字が達筆で書かれており、今までのUSBメモリとは比べものにならない様な何かを感じる。

 

 今から数ヶ月前に遡る。そのUSBメモリは、葛城が春花から変身ベルトを受け取った日に、一緒に渡されたものであった。

渡されたのは、透明色(コラーゲン)・緑色(キザミ)・赤色(炙り)・そして“二郎”という文字が書かれたものの、計4種類。

 

 その時春花は、葛城にこんな忠告をしていた。

「いい!この3つはまだいいけど、間違っても“二郎”は使い方を間違えないでね!」(春花)

「どういうことだよ?」(葛城)

「二郎は、他の3つと比べて凄まじいパワーを秘めているもので、むやみに使うと自身に害を与えてしまう恐れがあるの…そして、この力はある思いで変わるの!」(春花)

「思い!?」(葛城)

突然重たい空気となり、葛城にも緊張が奔る。

春花もいつものドSキャラを忘れ、冷静で真面目な顔で、口を開いた。

春花の口から出た答えは、葛城がヒーローとして動くことにあたっての、課題の一つでもあるのだ。

「それはね…!!」(春花)

 

 こうして、変身ベルトと4つのUSBメモリは、葛城に託された。

葛城は、“二郎”と書かれたUSBを手に取った。

「今は何でもいい。この状況をどうにかしないと、みんなが危ない」(葛城)

『オーダー通シマース…オーダー入リマース…』(ベルト音声)

葛城は、もう一度変身しようと、変身ベルトに再び巻物を挿し込んだ。

「何をするかは知らんが、そうはさせんぞぉぉぉぉ」(ザリガニ怪人)

葛城の様子に気づいたザリガニ怪人は、そうはさせまいと葛城のいる方へ突進した。

その間に、葛城は二郎メモリをもった右手を高く上げた。

そして…。

「超…忍・変・身!!」(葛城)

上げた右手を勢いよく下ろし、そのまま変身ベルトに

二郎メモリを強く挿し込んだ。

『トッピングオーダー…じろ※☆#@○×…』(ベルト音声)

―!?―

 

 二郎メモリを挿入したその時であった。

故障したのか、ベルト音声が急にバグったかの様に、音が乱れ始めたのだ。

それだけではなく、ベルトから謎の電流が葛城の体へ放電された。

「な、なんだ!?ぐ…ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」(葛城)

「なんだアレは?」(ザリガニ怪人怪人)

 

 葛城は、自分が思うように様に身動きがとれず、頭を抑えて苦しんでいた。

「ぐぁぁぁぁ、か…体が…体が言うことを…聞かねぇ…」(葛城)

この様子を見てたザリガニ怪人は、両腕のハサミをお互い擦り合わせ、刃をさらに鋭く磨いでいた。

「フン!切り札だと思ったら、まさかの自滅アイテムかよ。安心しな、お前はそのアイテムでは死なせねぇ…何故なら、俺が殺すからよ!」(ザリガニ怪人)

ザリガニ怪人は、鋭く磨いだハサミを構え、葛城に向かって突っ込み始めた。

 

 しかし、そんな葛城の様子にも変化が現れていた。

「まずい…ヤツが来る…ぐっ!体が…体が、せめてアイツをぶん殴る力…だけでも…」(葛城)

「死ねぇぇぇぇ!!」(ザリガニ怪人)

ザリガニ怪人のハサミは、葛城の顔面に目がけて繰り出され。

 

 しかし、次の瞬間。

「うぉぉぉぉ」(葛城)

「なんだ!?」(ザリガニ怪人)

葛城は、急に雄叫びを上げると、ザリガニ怪人のハサミ攻撃をわずか数センチ辺りのところで避けきった。

「うぉぉぉぉぉ!」(葛城)

「ぐぁぁぁぁぁ!!」(ザリガニ怪人)

その瞬時に打たれた鉄拳は、ザリガニ怪人の腹部へと直撃した。

変身していなければ、忍転身もしていない状態の拳は、ザリガニ怪人を大きく吹き飛ばす。

その拳は、もはや葛城の意志とは裏腹に、別の何かによって操られたかのような感覚であった。

威力も桁外れで、いくら蹴ってもビクともしなかった相手の甲羅は貫かれていたのだ。

「うぉぉぉぉぉ!ぐぁぁぁぁぁ!!」(葛城)

攻撃を終えても、葛城は叫び、再び苦しむ。

放出されている力は、治まる気配も見せず、みるみる葛城の体を取り込んでいるように見えた。

 

 一方その頃、ウナギ怪人と闘っていた春花も、葛城の異変に気付いていた。

「あれは!?まさか葛城、二郎メモリを…」(春花)

特大チャクラに春花は反応し、その方向を振り向いた。

視線の先には、チャクラによって形成された柱のような物が姿を現していた。

それを見た春花は、黙っているわけにもいかず、葛城を救いに走り出した。

「マズいわね。このままじゃ、力に支配されかねないわね…」(春花)

ウナギ怪人と戦闘中の春花であったが、葛城の様子に気づき闘うにも闘いにくい状況に。

二郎メモリを造った張本人としても、この状況をほっとくわけにもいかないのだ。

「おい、逃げるな…」(ウナギ怪人)

春花を逃がさないよう追いかけようとするウナギ怪人

であったが、2体の傀儡が行かせまいと通せんぼする。

「ちっ、なんて傀儡なんだ…」(ウナギ怪人)

 

 力は瞬く間に上昇していき、葛城への負担もさらに大きくなっていく。

「誰か…誰かアタイを……うぉぉぉぉぉ」(葛城)

腕から赤い光線を乱射させ、公園のベンチや時計台を次々と破壊していく。

葛城も止めるにも停められず、力の暴走に抗えない状態にいた。

「葛城!」(春花)

「うぉぉぉぉぉ」(葛城)

「きゃっ!」(春花)

春花が止めに掛かろうとするも、放たれる赤い光線により、うまく近づなかった。

 

 まるで、自身の領土を荒らされた猛獣が、復讐の為に相手を無我夢中で探しているかの様に、彼女は心の中の一筋しかない道を突き進んでいた。

止めたい、しかし思うように体が動かない。

このままでは、敵だけでなく見方までも傷つけてしまう。

自分のせいで仲間が…自分のせいで親友が…みんな殺される…。

「アタイせい…違う…違うんだ…アタイはみんなを守りたくて、正義の味方(ヒーロー)に…」(葛城)




つづく


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第16話 ヒーロー失格!?

東京のとある街。
人々は今日も、自身の目的の為にと、1日を過ごしていた。
知識を向上させたいと、勉学に励む者。
家族を養うために、労働に励む者。
純粋に今を生きる者など、それぞれの目的を果たすために日々励んでいた。

 しかし、中にはそんな人々の暮らしを脅かす者も存在する。


 「ハーイ、雨雨降れ降れ土の雨♪そして死ぬ死ぬ人間風情♪プププププ〰!」(怪人1)

 「デフレの恐怖は時代遅れでゼニ!ソレソレソレ〰!!」(怪人2)

「電信柱は~稲妻を呼ぶ〰」(怪人3)

街は、突如現れた三体の怪人の手により荒らされていた。

 

 怪人は、高いビルの屋上にて、雨を降らしているかのようにそれぞれの攻撃を連発させていた。

 まず一体目の怪人は、口からトゲの様なモノを連射させて、下の建物を次々と穴だらけにしていた。怪人は、顔に黒真珠のような眼が6つと、鎌のような鋏角が付いた口。

 4本の腕が特徴の土蜘蛛怪人『土グモン』であった。 土グモンは、お尻から糸を出すのはもちろん、土を

口の中にふくむことで鋭い刺へと形を変える事が可能。出来た刺は、マシンガンの弾丸のように撃ち込まれ、硬い岩でも蜂の巣に変えてしまうほどの威力を持つ。被害は、建物にとどまらず、街の人達も軽症では済まされなかった。

 

 そんな土グモンの隣には、機械じみた怪人の姿があった。

左胸には数字や記号を記されたボタン、右には表示モニター。腹部は大きな引き出しで、中には大量の札束と小銭。右手はバーコードリーダー、左手はレシートプリンター。

 そして顔は、横長の表示モニターで表情の役割を果たしている。

 それが、レジスター怪人の『レジキラー』なのだ。

 レジキラーが引き出しを開けると、中から小銭の形をした核ミサイルが連続発射されるのだ。

 ことわざに『一円を笑うものは一円に泣く』というものがあるが、レジキラーにとって一円をはじめとする小銭は愚か、札までも人を苦しませる武器でしかないのだ。『一円に泣く』は、レジキラーにとって『恐怖で泣く』という意味合いなのだ。

 

 そして、そのレジキラーの隣には3人体目の怪人がいた。

 ゴツゴツした岩の体と、1メートル近くの長い首。

頭の先端には、ぶらんぶらんと揺れる4本の切れた電線。

 電信柱怪人の『デンチューヌ』であった。

 デンチューヌは、頭の電線から電気を放電させていた。その影響で、電灯や携帯電話、街中の家電製品が次々と感電するといった事故が多発中だ。

 

 そもそも『なぜ怪人は誕生したのか?』『どうやって怪人は造られたのか?』謎が謎を呼ぶ。

 これは、地獄の秘密結社『ハルッカー』の仕業である。

 

 『ハルッカー』とは、天才科学者Dr.春花を筆頭に作られた、地球侵略を目的とした悪の軍団なのだ。欲しいものは、全て自分のものにする為なら手段を選ばないのが、Dr.春花のやり方。

怪人を開発しては、あの手この手で人々を苦しめ、気づけば東京のほとんどはハルッカーによって侵略されていた。

 反撃を試みるも、数多い兵器をもっても怪人達を撃退する事は不可能であった。

手段の尽きた人類は、このまま平和な暮らしを奪われてしまうのではないかと思われていた。

 しかし、諦めたわけではない。

 なぜなら、唯一怪人を倒せる一人のヒーローの存在しているからだ。

 この物語は、一人の勇敢なヒーローが怪人達による呪縛から人類を解放する為の奮闘記なのだ。

 

 一通り街を荒らした3体の怪人。

 ここで、土グモンが言い出した。

「よし、この辺は大体壊したし、次の街に行こうぜ」(土グモン)

「賛成でゼニ!」(レジキラー)

「オイ、アレを見ろよ」(デンチューヌ)

 ここで、デンチューヌが何かに気づいた様子。

「「ん?」」(土グモン&レジキラー)

 指した方向を見ると、そこには逃げ遅れた一人の男の姿があった。怪人達の恐怖で腰を抜かしまい、思うように動けなくなっていた。男を見つけるやいなや、土グモンは顔をニヤつかせた。

「ほほぉ、いいオモチャ見~つけた!キエ〰」(土グモン)

 土グモンは、突然体を背後に向けたと思いきや、(お尻の)出糸突起から太めの糸を男目がけて放出した。

「ひゃあ!なんだコレ!?身動きが…」(男性)

 糸は、意思を持っているかのように男の体をグルグル巻きに縛り上げた。男を縛り終わると、糸はエレベーターのワイヤーの様にどんどん上へと上がっていく。

 そして、怪人達の目の前にて止まった。

「ひぃぃ、命だけは…どうか命だけはお助けを…」(男)

 男は涙を流し、怯えながら命乞いをする。

「助けてくださいだと?なんなら、まず持ち金を全部よこしな!」(土グモン)

「うわぁぁぁぁ!」(男)

 土グモンは、男を逆さまにすると、体を上下に揺らし始めた。

 すると、男の服のポケットから財布やカード、食べかけのガムなどの私物が次々と出てきた。突然の行動に、男は恐怖で気を失っていた。

「何だ…たったこれっぽっちか~」(デンチューヌ)

「おいおい、捨てるんじゃないぞ。小銭は、オレが貰うゼニよ!」(レジキラー)

 そのスキに、デンチューヌは男の財布の中から数枚の千円札を抜き取っていた。

小銭は、レジキラーの引き出しの中へ。

「ん?コイツ気絶してやがる。ったく、仕方ねーな…それじゃあ、適当に死んでろぉぉぉぉ」

 土グモンは、男を力強く放り投げた。男性が飛ばされた先には、大きなビルの姿が。このまま激突すると、体中の骨は折れ、意識が完全に消滅してもおかしくはない。

「ハッハッハ-!これで体はバラバラに…」(土グモン)

 この時、怪人達は男の死を確信していただろう。

 しかし、その確信は今から予想を外し、彼らにプレッシャーを与える事となる。

 そう、ヒーローが参上することで。

 

 突然聞こえてくるバイクのエンジン音。

それは、“彼女”の相棒『パッチバイク』の嘶き。彼女はアクセルを全開になるまでひねり、まるで光の様な速さまで加速していく。

 そして、急な片輪走行に切り替えたと思いきや、勢いよく男目がけて跳び上がる。

「ん?おい、アレを見ろよ」(デンチューヌ)

「「ん?……あぁ〰」」(土グモン&デンチューヌ)

 目の前の異変に気づいた3体。目線の先には、ビル激突したと思われていた男をバイクに跨がる少女に救助されている光景があった。

少女は、片腕で男性を担ぎ、もう片方でバイクを操る。

 そして、近くの建物へ着地すると、男をゆっくりと売却から降ろした。

「大丈夫だったか?ここで休んでおきな」(??)

 彼女は、その場にパッチバイクを駐めると、3体のいる建物の屋上を見つめた。

そして、3体に向かって指を指して言った。

「今からそこに行く!アタイが着くまでソコを動くなよ」(??)

 

 少女は、宣言を終えるとその場から姿を消した。

「き…消えた!」(土グモン)

「でも、バイクは駐めたままだぞ。アイツ、駐車違反だな…」(デンチューヌ)

「馬鹿野郎、そんな事言ってる場合か!このスキに、逃げるぞ…」(土グモン)

「逃げるって、ドコにだ?」(??)

「「「ハッ!」」」(怪人達)

 3体が後ろを振り返ると、そこには彼女の姿があった。100メートルほど離れていた建物から、ほんの数秒でココまで移動したとでもいうのか。

 いくらなんでも、人間離れにも程がある身体能力だ。

「アンタらも懲りないなぁ…土グモン、デンチューヌ、レジキラーさんよ!」(??)

「こ…懲りないのはどこの裏切り者だ!……か、葛城め!!」(土グモン)

 

 少女の名前は『葛城』。

彼女こそ、この物語のヒーローなのだ。

 1年ほど前まで彼女は、ハルッカーによって改造された秘密兵器であった。その力は、人類は愚か全ての生物を超越するほどのもの。

 しかし、人間の心を持つ彼女は、悪事を働くハルッカーを許せなかった。軍団を抜け出した葛城は、ハルッカーによって奪われた世界平和を取り戻す為に、正義の味方として日々戦っているのだ。

「裏切り者とは、言ってくれるじゃねーか。アタイは、アンタらが悪さをしてる限り止めに来るだけさ」(葛城)

「ぐぬぬぬ…そう言っているのも今のうちでゼニ」(レジキラー)

「強くなっているの、オマエだけじゃない」(デンチューヌ)

「オマエら、一気に攻めて返り討ちにするぞ。いけー」(土グモン)

「「「うぉぉぉぉぉー」」」(土グモン、デンチューヌ、レジキラー)

 土グモンの合図と共に、3体は一斉に葛城の元へと突っ込んだ。そんな状況でも、葛城は堂々としていた。

ヒーローたるもの、敵を恐れていては勤まらない職なのだ。

「さ~て、早く終わらせて昼飯とするか」(葛城)

 そう言うと、葛城は懐から何かを取り出した。

 それは、ラーメン丼のような形をいている。葛城が丼を腹部に当てると、端からベルトの様なモノが伸びて巻き付いた。

 さらに葛城は、もう片方の手を胸の谷間に突っ込み、ソコから何かを取り出した。

 その正体は、“忍転身”と達筆で書かれた巻物であった。

「一丁いきますか!」(葛城)

『オーダー通シマース』(ベルト音声)

 ボタンを押すと、丼は縦に開いた。

「忍(しのび)~、変・身!!」(葛城)

『オーダー入りマース…セクハラーメンマン一丁!』(ベルト音声)

 葛城は、カッコよくポーズを決めながら巻物を挿入し、ベルトを閉じた。

 すると、ベルトから白い光が溢れだし、葛城を包み込んだ。服の上からは、白いプロテクターが装着。

手には、厚手のグローブ。

ヒラヒラさせた青いスカート。足には、重量感あふれる足甲。頭上には、ラーメン丼が被され、シールド付のヘルメットへと変わった。

 そして、変身完了と同時に光が晴れた。葛城は、光のごとく一瞬に迫り、そして悪を討つ。

「「「へ?」」」(怪人達)

「ぎゃわぁぁぁぁ」(土グモン)

「嘘でゼニぃぃぃ」(レジキラー)

「ポメラニアァァァン」(デンチューヌ)

 いつの間にか三体は、吹っ飛ばされてビルの下へ落下。

 そして、その目の前には葛城の姿もあった。

「小さき山(貧乳)が危機の時!大きい山(爆乳)の危機の時!!いやっ、地球(おっぱい)の危機はアタイが守る!!!セクハラーメンマン舞忍びます!!」(葛城)

 葛城は、決めゼリフと共に格好良くポーズを決めた。

 このセクハラーメンマンこそ、葛城のヒーローとしての姿でもある。人間を超越した力を手に入れたことで、想像した物質を作り出し、それを鎧にて装着したのだ。なぜ『セクハラ』と『ラーメン』なのかは、察しを願いたい。

 

 しかし怪人達は、屋上から落ちた程度では死なない。ハルッカーの技術は、もはや科学の次元を越えているようなものなのだからだ。

「痛ててて…怯むな兄弟!俺達は、泣く子も黙るハルッカーだぜ!」(土グモン)

「ハルッカー万歳でゼニ」(レジキラー)

「と~つ~げ~き…」(デンチューヌ)

三体は、再び葛城に襲いかかる。

今こそ、ヒーローとしての本領が発揮される時である。

「正義の為に…舞忍ぶぜ!ハァァァ」(葛城)

 葛城は、三体に向かって走りだした。

 土グモンは、4本腕攻撃を活かした連続攻撃を繰り出す。葛城は、一つ一つの攻撃を見抜いては、次々と後ろへ受け流していく。

 そして、敵が自分の後ろに立つと、跳び上がりながら後ろ蹴りを繰り出した。

「うわ、痛っ!コイツ…」(土グモン)

「遅いんだよ、オマエの攻撃は」(葛城)

「スキあり!スキャナーレーザー」(レジキラー)

 スキを見つけたレジキラーは、葛城目がけて右手のバーコードリーダーから、赤い光線を発射させた。

「よっと!」(葛城)

 葛城は、光線の気配を感じると、体を後ろに反らしながら避けた。

「あっ!」(レジキラー)

「ん?いぎゃぁぁぁ」(土グモン)

 避けた光線は、葛城の後ろにいた土グモンの体へと直撃した。

「ひぃっ、土グモン!!おのれ、よくも〰」(レジキラー)

 仲間との信頼を取り戻そうと、レジキラーは再び光線を葛城に向けて発射させた。今度は、短めの光線を次々と連射した。それに対して葛城は、変わらず余裕の表情を見せていた。

「よっ、ハッ、どりゃあ。へん、攻撃が遅いぜ。その程度でこのセクハラーメンは、倒せないぞ」(葛城)

 体の柔軟性を活かしながら、アクロバティックに光線をかわし続けていた。

「スキあり…」(デンチューヌ)

「うわっ!」(葛城)

 前の敵に集中していたため、葛城は後ろがガラ空きであった。

両足にデンチューヌの電線が巻き付き、葛城はそのまま宙吊りにされてしまった。スカートは、すっかり下へとめくれており、パンツは丸見えだ。

「おお、今日は水色のシマパンかぁ。このまま、眺めておきたいが、今からオマエさんはオレの電撃で」(デンチューヌ)

 デンチューヌは、残りの電線に電気を溜め始めた。電気が集まると、電線の先端から黄色く光り始めた。どうやら、集めた電気を一気に放電させて、葛城を感電死させるつもりだ。

 しかしデンチューヌは、この時自身が犯したミスに気付いていなかった。それに葛城は、いち早く気づいた。

「悪いが、そうはいかないぜ!電気を溜める際は、待ち時間に注意しなよ」(葛城)

『オーダー入りマース…キザミ!!』(ベルト音声)

 葛城は、胸元から緑色のUSBメモリを取り出すと、そのままベルトへと挿入した。

「どりゃぁぁ!」(葛城)

「あっ!しまった」(デンチューヌ)

 なんとデンチューヌの電線は、ほんの一瞬にして切り刻まれていた。

 葛城を見ると、いつの間にか両手に麺包丁のような双剣を手にしていた。

「ほ~ら、鬼さんこっちだ!手の鳴る方へ♪」(葛城)

「ぐぬぬぬ…キサマ〰」(デンチューヌ)

 葛城は、挑発的な態度をとりながら逃げ回った。

 デンチューヌは、残った電線を伸ばして葛城を捕まえようとする。電線は、みるみると伸びていき、獲物を狙う蛇の様に葛城を追尾する。

 だが葛城は、電線との一定の距離を保ちながら走っている様子。電線の速度を上げても、葛城は全然捕まる気配がありません。

「ほらほら、こっちだよこっち!」(葛城)

「この!こしゃくな…ん!?なにっ!」(デンチューヌ)

 デンチューヌに、何やら異変が起こった。

「か…体に電線が…」(デンチューヌ)

 なんと、電線が自分の体に巻き付いていた。

 そう、葛城は初めから動きを止めるために、敵の周辺をグルグルと逃げ回っていたのだ。気づいた頃にはもう遅く、電線は上手く絡まり、ほどくにもほどけなかった。

「オマエ…俺をハメたな」(デンチューヌ)

「へへへ、今さら気づいても遅いぜ!」(葛城)

 再び胸元に手を突っ込むと、今度は赤いUSBメモリを取り出すと、片手に持っていた剣へと挿入した。

『トッピングオーダー入りマース…炙り』(ベルト音声)

「ハァァァァ!」(葛城)

 葛城がチャクラを集中させると同時に、双剣の刃に炎が集中した。炎は刃を包み込むと、双剣は炎剣へと姿を変えた。

「英雄忍法 サラマンダースラッシュ-!!」(葛城)

 葛城が両腕を交差させて剣を振ると、炎の斬撃がデンチューヌへと放たれた。

「ぎゃぁぁぁ、あじぃぃぃ」(デンチューヌ)

デンチューヌの体は、炎によって包まれた。

 

 完全にセクハラーメンマンのペースに乗せられている3体の怪人。ナメられてるばかりで、3体は苛立っている様子であった。

「おのれセクハラーメンマン〰こうなれば3人一気に攻撃するぞ、兄弟!!」(土グモン)

「了解ゼニ!」(レジキラー)

「電信柱は、稲妻を呼ぶ~」(デンチューヌ)

3体の怪物は、一斉攻撃で一気に追い詰める作戦に出よくと攻撃体勢に入る。

「さ~て、トドメは超必殺技で決まりだ!」(葛城)

『オーダー入りマース…秘伝忍法』(ベルト音声)

 USBメモリをベルトから抜き取ると、今度は“秘伝忍法”と書かれた巻物を挿入した。ベルトを閉じると、葛城の体から大量のチャクラが湧き上がってきた。チャクラは、両足の足甲に集まり包み込んだ。

「ハァァァァ!」(葛城)

「ヤバい、大技がくるでゼニ!」(レジキラー)

「発動させてたまるか〰」(デンチューヌ)

「見せ場だ。とう!」(葛城)

  怪物達の方へ走りだすと、その勢いにのせて高く跳び上がった。

 そして…。

「英雄忍法……ヘヴィードラグナー!いっけぇぇぇぇ!」(葛城)

 体をドリルの様に回転させて、落下の勢いに乗せてながら両足を3体突っ込んだ。回転を増すごとに、足甲のチャクラはドンドン大きくなっていく。あまりの勢いに、3体は技を出す間もなく怯むしかなかった。

「「「ぐわぁぁぁぁぁ!Dr.春花様ぁぁぁぁ!!」」」(怪人達)

 攻撃を受けた怪物達は、跡形も無く爆発し、粉々に吹き飛んだ。

 

 葛城は、爆風を上手くかわしながら格好良く着地した。ベルトに挿さっていた巻物を外すと、葛城の服装は元へ戻る。

「ヨッシャ-!一丁あがり。さーて、倒したし早めの昼食に……ん?」(葛城)

神出鬼没な地獄の組織、ハルッカー。

 そして、虫の知らせの間もなくヤツは訪れた。

「ハッ!」(葛城)

 葛城は、謎の雰囲気に気づいた。

 後ろを振り返ると、数百メートル離れた場所から全身を大きな布で羽織られた一人の人物の姿が目に映る。その人物は、男なのか女なのかわからない。

 しかし、近づくたびに葛城に向けられるオーラの様なモノが段々と大きくなっている事は確かであった。葛城は、1分も考える事も無く、正体を確信した。

「これはこれは、早くもラスボス登場か……Dr.春花!!」(葛城)

 葛城が名前を口にすると、その者は歩みをやめた。男か女か分からない人物は、本当にDr.春花なのか。二人は、それぞれ相手を見つめ合い様子を伺う。

 すると、葛城は懐から何かを取り出そうとゴソゴソさせながら言った。

「この時を待っていたぜ。アンタには、アタイの“とっておき”でけりを付けてやる!」(葛城)

 葛城は、先程の物と比べて大きめのUSBメモリを握っていた。そのUSBメモリには、達筆で“二郎”と書かれていた。

 そして、そのままゆっくりと右手を上げ…。

「し~の~び~大・変身!!」(葛城)

勢いよく、ベルトにUSBメモリを挿し込んだ時であった。

バチッ!ビリビリビリビリ〰!!

「な…なんだ!?」(葛城)

 ベルトから突然の電流。

 それは、ベルトの故障にしては様子がおかしかった。放電された電気は、まるで生きているかの様に、どんどん葛城の身体を飲み込み、苦しめていた。

「うわぁぁぁぁ!」(葛城)

 

 突如電流は、おさまりだした。

「痛ててて…ん?ここは、どこだ?」(葛城)

目を開けると、そこは先程いた街中ではない真っ暗で何も無い空間に、葛城は立っていた。

「アタイは、たしか街にいたはずじゃ」(葛城)

「お目覚めかしら」(Dr.春花?)

 後方から、一人の女性の声がした。

 そこにいたのは、Dr.春花だと思われる人物の姿であった。葛城との距離は、わずか十何センチであった。

「Dr.春花!!アタイが倒…」(葛城)

「あら、それでいいの?」(Dr.春花?)

 Dr.春花は、後ろに向かって指を差すしていた。

 すると、先程まで聞こえていなかった音が聞こえ始めた。その音は、炎が物を燃やす時の音のように聞こえる。

「これは…一体何がどうなっていやがるんだ」(葛城)

炎の海にて燃えさかる建物。それに対して、苦しみを訴える人々。後方は、世界平和とは真逆の地獄絵図が広がっていた。

 そして、トドメを刺すかのようにDr.春花は言った。

「コレ…アナタがやったのよ」(Dr.春花?)

  !!

 心の中に放り込まれたモノは、ズッシリと重かった。震える体、顔から滲み出る汗。

「おい…どういう意味だ。おい、説明しやがれ!アタイがやったってどういう…」(葛城)

「もう一度言うわね。アナタがやったんだ!」(Dr.春花?)

 すると、Dr.春花の声が女性声から男性へと切り替わりだした。

 さらに、体を羽織っていた大きな布を一気に開き、正体を表した。

「お…お前は!」(葛城)

なんとその正体は、Dr.春花ではない筋肉質のザリガニ怪人であった。

「クックック、お前がヒーローになった理由なんて、所詮は自分の欲を叶えるためにすぎない」(ザリガニ怪人)

「ち、違う。アタイは…遊びでヒーローをやってる訳じゃない」(葛城)

「ホホー。それなら…」(ザリガニ怪人)

「ぐっ!何しやがる」(葛城)

「ヒーローなら…コイツらの思いも背負えるのかよ!」(ザリガニ怪人)

「うわぁぁぁぁ」(葛城)

ザリガニ怪人は、葛城を持ち上げると、力強く放り投げた。

「痛ってー、あのザリガニ野郎〰。ハッ!」(葛城)

「お姉ちゃん、どうして助けてくれなかったの」(女の子)

 誰かが、葛城のススカートを引っ張っていた。5歳くらいの女の子だ。

 その隣には、2人目の人影がいた。

「私達は、死にたくなかった。それなのに、アナタは…」(一般女性)

同じく葛城に訴えるもう1人は、目から血の涙を流し悲しみに飢えていた。

 これは、幻しなのか現実なのか。人間を超越した力を持つ葛城でも訳がわからなかった。

「ち、違う!アタイは、みんなを助けようと…」(葛城)

「嘘だ嘘だ!」(一般男性1)

「力に溺れたヒーローオタクめ」(一般男性2)

「趣味感覚でヒーローやってるんじゃねーぞ!」(一般男性3)

 次々と増える人影に飛び交う反論。葛城に対する訴えは、鳴り止まない。

「違う…違う…アタイは、みんなを…助けようとして…」(葛城)

 

「これでわかったか?オマエは、ヒーロー失格なんだよ!」(ザリガニ怪人)

「アタイは…アタイは…」(葛城)

 言葉を探そうと、心の中を探りに探ろうとするも、精神状態は限界に達していた。あまりの絶望に、心の中はすっかり現実から逃げだそうとしているのが丸わかりであった。

 そして…。

「いい加減…現実を認めやがれ〰」(ザリガニ怪人)

「うわぁぁぁぁ!!」(葛城)

 

 葛城は、ザリガニ怪人のハサミにより切断された…。

 そして、少女の目はやがて覚め始めたのであった。

「うわぁぁぁぁ!!」(葛城)

「葛城!?」(春花)

「うわぁぁぁぁ、あぁぁぁ〰」(葛城)

「落ち着いて葛城!正気をもって、葛城!!」(春花)

「ハァハァハァ……春…花?」(春花)

 一体、何がどうなっているのだろうか。先程まで暗闇の中にいた葛城だが、いつの間にかベッドで横になっており、体には手当も施されていた。

 さらに、目の前には焔紅蓮隊の春花がベッド前の丸椅子に座っている。

 葛城は、顔から滲み出ていた汗を拭き、状況を整理する。

「ココは…半蔵学園の保健室?」(葛城)

「そうよ。あれから約3日も寝てたから心配したのよ」(春花)

「3日間…寝てた?今までのは全部夢だったのか?」(葛城)

 そう、今まで葛城が見ていたのは、全て夢であった。人間を超越した力を手に入れていなければ、悪の組織ハルッカーも葛城の想像上にて造られたものであった。

 それを知って葛城は、少し安心した。

 だが、それと同時に自身の状況を振り返り始める。

「そうだ!!なぁ春花、あの後アタイの体に何が起こったんだ?ザリガニ野郎は倒したのか?教えてくれ、春花!!」(葛城)

「…」(春花)

春花は、真顔で黙り込む。

そして、覚悟を決めると椅子から立ち上がった。

「全てを話す前に葛城、アナタに言いたい事があるわ」(春花)

 そう言うと春花は、急に指を鳴らした。

 すると、目の前に春花の傀儡の一体が入ってきた。葛城が傀儡を見ると、あることに気づいた。

「それは!アタイの変身ベルト」(葛城)

「葛城。これは、アナタの為を思ってやることよ!」(春花)

 春花は、再び指をならした。

 すると。

 ガシャァァァァン!!

「ハッ!」(葛城)

 葛城は、目を疑った。

春花の傀儡の腕力により、変身ベルトはボロボロになるまで壊されてしまった。

 そして、トドメを差すかの様に、春花の口から思わぬ一言が飛び出す。

「ヒーローを…辞めなさい!」(春花)

 




                     つづく!


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第17話 何を言っても無駄

 半蔵学園保健室。
 そこには、ザリガニ怪人との激闘で怪我を負った葛城と、彼女の安静を見守る春花の姿があった。
体の安静より、今は心に心配がみらている。その理由の一つとして、葛城の変身ベルトは、春花の傀儡のてによって粉々に砕かれた。そしてもう一つ、そんな出来事を受けて頭の整理をする間もなく、春花の口から葛城の今後を左右する発言が言い放たれたのだ。


 「ヒーローを…辞める。おい!どういう事だよ春花!説明しろ」(葛城)

 春花の目は、真剣だ。

「簡単な事よ。“次郎メモリ”を使いこなせなかったからよ」(春花)

「え?」(葛城)

 次郎メモリは、3日前に葛城が戦闘の際に使用したUSBメモリの事である。戦闘で追い込まれた結果、春花から事前に渡されていたメモリを使用。

 しかし、葛城はそれから後の記憶が全くない。

「え?い…いや~アレは、ベルトの故障か何かだろ。たまたま、ベルトの状態が悪かっただけで…」(葛城)

「ベルトは、壊れていなかったわよ。アナタは、安易な気持ちで“次郎メモリ”を使って理性を失いかけていたわ」(春花)

「え!り…理性をだと」(葛城)

 春花は、近くの椅子に座り込むと、事の重大さを話し始めた。

「あのメモリは、あくまで体の奥に眠っているチャクラを強制的に発動させる為のアイテム。むやみに使ってしまうと、意識や理性に異常を起こす危険性があるのよ」(春花)

「意識と理性に…」(葛城)

 チャクラは、忍が忍術を使う際に必要とするエネルギー源のことをいう。

 それは忍だけでなく、一般の人間の体内にも流れていると言われている。人は、それを『肉体面』と『精神面』に使い分けながら日頃生きているのだ。

 ここで春花は、保健所に設置されたホワイトボードに目をつけると、なにやら天秤の絵を描き始めた。

「簡単に説明するとしたら…アナタは自身は天秤で、その錘となっているのが『肉体面』と『精神面』のチャクラだとするわよ。ザリガニ怪人と戦って、アナタはかなりのチャクラを消費して精神面も肉体面にも偏りがみられたわ」

 ザリガニ怪人の戦いで、葛城はチャクラを多く消費する攻撃を連発するも、それでもザリガニ怪人を倒すどころか、甲羅にヒビ一つも入れなかったのだ。

 追い詰められて為す術も無くなってしまった葛城だったが、春花から預かっていた『次郎メモリ』の存在に気づいたのだ。

「次郎メモリを使ったアナタは、無理やり錘の数を増やそうとした」(春花)

天秤の『肉体面』と『精神面』の皿に、それぞれ錘を描き足した。

「こんな感じで、両サイドに錘を乗せられた本体は、(天秤)どうなると思うと?」(春花)

「天秤が……壊れちまうって事か?」(葛城)

「そう!本体が壊れたことで、行き場を失ったチャクラは、制御出来ずに体内で暴走した…ということよ」(春花)

 

 葛城は、事の重大さを理解した。『次郎メモリ』を使った事で、体内から無理やりチャクラを引き出してしまい、やがてそれを制御する天秤までも破壊。その結果、肉体面と精神面を制御出来なり、敵も味方もいない獣のごとく暴走したのである。

 春花の話によると、体を纏っていた電流が、光線の様に放たれ、その場の草木や建物は次々と焼け散った。その際に、春花は危険を顧みずボロボロになりながらも近づき、傀儡が足止めしている間に睡眠薬を使って眠らせたのだ。そして、暴走が治まった頃には、怪人もその場から姿を消したとの事だ。

 

 忍結界の効果により、表沙汰にならなかったものの、ボロボロになった2人を見た忍達は黙る事もなかった。春花の傷は半日で完治したものの、葛城は3日間寝たきりだったとの事だ。 

 

 ここで春花は、話を切り替えた。

「でも、今回の作戦で得られた物もあったわ。私達が見つけた粘液の様に、他の3チームもそれぞれ手がかりを見つけたわ」(春花)

「本当か春花!?」(葛城)

「ええ。なんせ、アナタが寝込んでからもう3日経ったのよ。今頃、みんなで怪人を探索しているか…追い詰めているかの二択ね」(春花)

 

 そう、葛城達を含む4チームは、それぞれ過去に怪人が出現した『半蔵学園裏山』『街中』『街外れ』、そして焔が怪人と遭遇した『公園』をそれぞれ探索していたのだ。

 裏山を探索した斑鳩と詠は、土蜘蛛怪人が攻撃の際に口から放出した土のトゲ。街外れを担当した飛鳥と日影は、電信柱怪人の切れた電線。街中の柳生と未来は、レジスター怪人の不発したと思われる硬貨爆弾をそれぞれ発見したのだ。そして葛城達が見つけた粘液と怪人達が使用してた謎の粉。

 これを基に情報分析を行った結果、春花は怪人の位置を探知出来る特殊な装置の開発に成功したのだ。それに伴い、忍達は作戦会議の結果新たなチーム編成を行い怪人探索を始めたのだ。そして、一番近くで葛城の闘いを目の当たりにした春花が治療係に抜擢されたのだ。

 

 「……なんだか、手をかけさせちまったな。すまない春花」(葛城)

 話を聞いた葛城は、若干照れながら春花に感謝した。そんな葛城に対し、表情は浮かず…。

「何がすまないよ!私と一緒だからよかったけど、あのままだとアナタは、結界の外で暴れていたかもしれないのよ!!」(春花)

 春花は、心の中に溜まっていた思いを吐き出した。その熱量からいかに彼女を心配していたのかが伝わってくる。それほど、次郎メモリは危険なアイテムなのだということを改めて心に染みた。

 ここで春花は、再び話を切り替え始めた。

「あと…もう一つ気になっているんだけど。あなた、首領パッチさんを本当に仲間だと思っているの?」(春花)

 作戦に同行していたのは、忍達だけではない。葛城の提案で、過去に一緒に怪人を倒したキングオブハジケリストの首領パッチも同行した。しかし、途中で敵側から送り込まれた猫又軍団の手により足止めをくらい、首領パッチは意を決して己のノリで猫又を引き付けたのだ。その際に葛城は、本人の相談もナシに、首領パッチを置き去りにしてその場から逃げたのだった。

 どうやら春花は、この行動に対し戦闘中も気にかけていたそうだ。

「お前まだ気にしていたのかよ。言っただろ、首領パッチさんは頑丈だから大丈夫…」(葛城)

「死んだ時は、どうするつもりだったの?」(春花)

葛城の体は、一瞬にして硬直した。春花の目は、いつものドSキャラとは訳が違っう。

「お…お前、案外心配症だな。首領パッチさんは、そう簡単に…」(葛城)

バチン!!

「無責任な気持ちで、ヒーローやってんじゃないわよ!!」(春花)

 

 まるで、夢で見た出来事が仕打ちとして実現するかのように、葛城の頬に赤い痣ができた。

春花の真剣な一言とそのビンタは、葛城を黙らせた。

「いい、葛城。アナタと首領パッチさんの関係は知らないけど、あんな事を斑鳩達にも出来るの?」(春花)

「それは……ほら、仲間を信じているからころその場を任せたっつーか……アレだよアレ、阿吽の呼吸ってやつかな。アハハハハ」(葛城)

 責められた葛城は、何とかいつものテンションを保ちつつ、笑ってその場を誤魔化そうとした。

 しかし今の春花には、葛城がふざけている様にしか見えない。そんな彼女を見た春花は、馬鹿馬鹿しくため息をついた。

「ハァ~。今のアナタを見ていると、ウチの母親を思い出すわね」(春花)

「お前のお母さんを?」(葛城)

 春花の家系は、複雑であった。忍の母親と医者の父親の間に生まれた彼女の幼少期は、親によって左右されていた。

 喧嘩の絶えなかった、夫婦仲はやがて母親の精神に次々とストレスという名の錘を重ねすぎた結果、母親の中の何かが壊れた。終いには、実の娘である春花を着せ替え人形の様に扱う様になったという。

 

 「お母さんの笑顔を取り戻せるって思うと、初め耐えられた。でも…その時の私は、一人の娘ではなく一体の着せ替え人形として見られていた。その証拠に……お母さんの目は、もう私の知ってるお母さんじゃなかったから」(春花)

 自分の事を娘として見なくなった母親に対し、春花の心の中も壊れ始めた。

 ある日の夜、生きがいを失った春花は、いっそのこと家ごと燃やして自分も死んでやろうとした。

「親って本当に自分勝手よね。娘の気持ちも考えないで…人をオモチャにするなんて」(春花)

「春花…」(葛城)

「でもね、そんな私にも生きがいが出来たの。…紅蓮隊の皆に出会えた事よ」(春花)

春花の放火事件を阻止した人物こそ、秘立蛇女子学園の教師、鈴音こと鈴なのである。

 鈴は、そんな春花に対して光と希望を与えてくれた。親の言う通りにしか動けなかった当時の彼女に『自分も1人の人間である事』『自分は自分であるべき事』『仲間の存在』など様々な事を教えてくれたのだ。

「当時あまり友達のいなかった私に、焔ちゃん達は寄り添ってくれた。詠ちゃんや未来、日影も私のことを一人の仲間……いやっ、家族として出迎えてくれた」(春花)

たとえ悪忍でも、同じ忍として分かち合うべきものは変わらないのだ。

「悪忍でも、家族を失うなんて私には耐えきれないわ。アナタが首領パッチさんにやった事は、まさにそれと同じよ!」(春花)

 首領パッチと葛城の関係が特殊でも、見捨てていった行為は春花にとって見逃すわけには行かなかったのだ。

 春花の話を聞いた葛城は、自然と額から汗が滲み出ていた。考えてみれば、自分の行動は、ヒーローとは思えない非道とも思われるやり方だ。仲間を信頼するのは良いことだが、葛城のやった事はまるで首領パッチへの裏切りの様だ。

 いや、裏切ったのは首領パッチだけではない。自身を信じて変身ベルトを提供してくれた春花の心も、無意識に揺さぶっていたのであった。

「なぁ春花……首領パッチさんは…今どこにいるんだ…」(葛城)

「……ハァ。アナタに何を言っても無駄みたいね。いいわ、アナタはここで休んでいて。私は今から皆を手伝ってくるわ」(春花)

「待ってくれ!アタイも加戦しに…痛っ!」(葛城)

 話に食いつく葛城は、ベットから起き上がろうとするも、傷口が痛む。

「だから、今のアナタが言っても足を引っ張るだけよ!そこで休んでいなさい!!」(春花)

 そう言うと、春花は立ち上がった。

 そして、トドメを刺すかの様に一言置いていく。

「アナタは、何を言っても無駄なのよ!」(春花)

 春花は、強めに扉を閉めると保健室から出て行った。

 何を言っても無駄。葛城の心には、言葉の矢が一体何本刺さっただろうか。何も返す言葉がなくなり、葛城は体を小刻みに震わる。

「だぁぁぁぁ、ちくしょう!」(葛城)

 あまりの悔しさに布団に潜り込むと、枕に顔を押し付けながら叫んだ。

「あぁぁぁ、考えるのはやめだ!それならお言葉に甘えて寝てやるよ!!」(葛城)

急に開き直った葛城は、そのままベットに横になる。いっそのこと、春花の言うとおり寝てやろうと目を閉じた。

「あの怪人の強さを体で思い知れ!アタイはアタイで…」(葛城)

『お姉ちゃん、どうして助けてくれなかったの?』

「なっ!」(葛城)

 心の中から、夢に出てきた少女の言葉が蘇る。

『私達は、死にたくなかった。それなのに、アナタは…』

『趣味感覚でヒーローやってるんじゃねーぞ!』

 少女だけでなく、大勢の人々が葛城の心の中に鬱憤を次から次へと埋め込もうとする。

「離れろ!アタイの頭から離れろ!!」(葛城)

 余計な事を考えては負けだと、葛城は自分に言い聞かせようとした。

 だが、考えれば考えるほど心の中はモヤモヤが溜まる一方だ。

「だぁぁぁぁぁ!アタイは…どうすればいいんだよ……ハァ」(葛城)

 ため息を付くと、葛城は再びベッドへ横になった。

 

 

 

 すると、何やら足音が聞こえてくる。その足音は、どんどん保健室へと近づきついに…。

「かつかつかつかつかつかつかつかつ…かぁぁぁぁぁつぅぅぅぅぅ!」(首領パッチ)

極上のバカは、豪快に扉を開けるやいなやハイテンションで登場した。

「ふえっ!ど…首領パッチさん!?」(葛城)

 突然の出来事に、葛城も驚かずにいられない。

 なぜなら足音を鳴らしていた者の正体は、つい先程まで話の話題になっていた首領パッチであったからだ。葛城の心の中は、『嬉しい』と困惑で、ごっちゃになっていた。首領パッチが生きていた嬉しいさと、突然ハイテンションで入室したことの困惑で…。

「ハージケハジケ、ハージケハジケ、それが男のハジケ道!!………どう思う?」(首領パッチ)

「はい?」(葛城)

「………どう思う?」(首領パッチ)

「……」(葛城)

「どぉぉぉぉぉぉぉ思うぅぅぅぅぅぅ!」(首領パッチ)

「……………」(葛城)

 急に話しかけたと思いきや、『どう思う?』の一点張りで、いつも以上に絡みづらい首領パッチ。対応が面倒くさく感じた葛城は、無視してそのままベットへ横になった。

「おい、葛城!寝てないで何とか言えよ!俺、生きてたんだぞ。キングオブハジケリストの首領パッチ様が生きてたんだぞ!感動の瞬間再来ウェェェイ」(首領パッチ)

 黙り込む葛城。首領パッチがテンションを上げて絡もうとするも、掛け布団に顔を潜めて中々首領パッチの顔を見ようとしない。

 しかし、首領パッチも負けじと更に話を進める。

「聞いてくれよ葛!あの後俺っち、猫又に囲まれて集中攻撃を受けてただろ。その後かくかくしかじかあって…スクールアイドルデビュー!!でも、規則では猫は参加出来ないって理由でわずか一日でラ●ライブ出演の夢が水の泡に……それをお前はどう思う!!」(首領パッチ)

「なぁ…首領パッチさん」(葛城)

 ツッコミどころの多い独特な首領パッチトークガラ展開される中、ようやく葛城の口が開く。

 なんだか、暗くて重たい雰囲気だ。

「おっ!それでどう思う?やっぱり猫だってラ●ライブに参加出来るって規則を…」(首領パッチ)

「アタイとヒーローやって、よかったんですか?」(葛城)

「は?」(首領パッチ)

 心の中に抱えていたモヤモヤを、とうとう首領パッチに直接聞き始めた。

 

 「アタイは、無計画で無責任で、抜けてるところが多い。今までのアタイは、自分なりのやり方を貫いてきた。でも、それで周りはどう思っているかなんて深く考えたことなかった」(葛城)

 葛城は、深刻な顔で話を続ける。

「今回のヒーロー活動も、言うならばアタイのわがままで始まった様なモノだし…そんなアタイのわがままに、首領パッチさんは付き合ってくれた。その時、アタイは嬉しかった。仲がいい先輩とヒーロー活動が出来るなんて、夢の様だった」 (葛城)

 ラーメンを食べに行くときも、プロレス観戦に行った際も、葛城はいろんな場面で首領パッチに世話になっている。チームを組む前も、自身が欠けていた『楽しむ』事の大切さも教えてくれた。

 そんな仲のいい首領パッチだからこそ、葛城は一緒にチームが組める、共に戦えると思ったのだ。

「…でも、それなのにアタイは……首領パッチさんを見捨てただけじゃなくて……力に溺れてしまった。アタイは……ヒーロー失格だ…」(葛城)

 春花の話がよっぽど心に響いたのか、今話しているのは、まるでいつもの天真爛漫な葛城とは別人であった。『ヒーロー失格』という言葉は、もはや辞める事を宣告している様にも感じられた。

 葛城は、首領パッチに向かってゆっくり頭を下げようする。

「……チェストー!」(首領パッチ)

「ふがっ!?」(葛城)

 何を思いついたのか、首領パッチは葛城の鼻の穴に、何かを詰め込んだ。

「は…鼻にピスタチオ!?」(葛城)

 続いて首領パッチは、どこから持ってきたかわからないラジカセをテーブルへ置いた。

 そして、数枚のCDを取り出すと、葛城に問い始める。

「さーて、曲はどうする?東京音頭か?白浜音頭?」(首領パッチ)

「フン!急に何するんっすか首領パッチさん。人の鼻にピスタチオ詰めて…」(葛城)

「お前こそ、忘れたとは言わせねーぞ!次に弱音を吐いたら、鼻にピスタチオ詰めて盆踊りだってよ」(首領パッチ)

「えっ?」(葛城)

 葛城は、思い出した。以前レジスター怪人に負けた際に、首領パッチが手紙に『次に弱音を吐いたら、ピスタチオ鼻に詰めて盆踊り』と書いていた事を。

「葛、お前はちょっと勘違いしているみたいだな。オレは、お前とヒーローをやって後悔した事はねーよ。まぁ…後悔した事を挙げるとするなら…今お前が、ヒーローになったのを後悔していることだな」(首領パッチ)

「ハッ!」(葛城)

 首領パッチの言う通りだ。葛城の判断は、間違っていたかもしれない。だが、それをいつまでも悔やんでいるのは、ヒーローとして情けないことである。

 首領パッチは、置き去りにした事ではなく、そんな葛城の現状に後悔していたのだ。

「葛、お前はお前のままでいいじゃねーかよ。お前が始めた事なんだから、お前自身が乗り気じゃねーとやっていけないだろ」(首領パッチ)

「…で…でも」(葛城)

「あああ、じれったいな。お前はお前だ!考えてみろ、お前は確かに無責任で自分勝手で豪快…でも、そんなお前のおかげで変わる事が出来たヤツだっているだろ!」(首領パッチ)

 葛城は、頭の中で自身の事を振り返り始めた。

 蛇女子学園での決戦では、感情のない日影に感情の良さを教えた。

 死塾女学館の夜桜とは、それぞれの過去を通じて和解する事だって出来た。

 ヒーロー活動を始めたときにも、怪人にから体を乗っ取られた人達だって救うことが出来た。

 振り返ってみると、葛城の頭の中には、ヒーローとして素晴らしい宝物(思い出)の数々が眠っていたのだ。

「お前は抜けているところも多いが、そんなお前に助けられているヤツだっていたんじゃねーのか。助けられた数の方が多いなら、オマエはオマエのままでいいじゃねーかよ葛!」(首領パッチ)

 首領パッチは、忍ではない。しかし、葛城よりも先に正義の為に戦うヒーローの先輩だ。教える事は、まだまだある。

「あれ?なんでだ……目から……涙が…」(葛城)

 気が付くと、葛城の瞳から一滴の涙がこぼれていた。

「ほほぉ、いつも豪快なセクハラ忍者の目にも涙ってか」(首領パッチ)

「な…泣いてねーよ。……グスッ…ただ、目にゴミが」(葛城)

 茶化す首領パッチだが、その反面嬉しそうだ。

 葛城は、涙を見られてはいかんと、手で拭き取る。自然と涙をは、先程よりも量を増していた。

 そして、そのまま泣いていた。嬉し涙か情け涙なのか。

 この時、もう首領パッチの前では涙をみせないと心から誓ったのだ。

「ほらよ!これで涙を拭け」(首領パッチ)

 そんな葛城を見計らい、白い布を手渡す。素直に受け取るのが恥ずかしかったのが、若干素っ気ない態度で布を受け取る。

 そして、咄嗟に涙を拭く。

「ぐっ…まったく、どんばっぢざんば…ん!?」(葛城)

 突撃、葛城は何かに気づいた。

 受け取った布を広げてみると、その正体は誰が履いたのかわからない真っ白なパンティーであった。

 そして、首領パッチは葛城へ一言。

「スケベ!」(首領パッチ)

「おい、パチ公ごらぁぁぁぁ!!」(葛城)

 涙で潤っていた瞳は、一気に乾く。その熱は、葛城の顔を赤く染めた。

 ハンカチかと思っていた布がまさかのパンティーだと知った葛城は、首領パッチへ激怒し、捕まえようとした。

 しかし、相手は首領パッチ。予想も就かない独特な動きで葛城の手法を次々とかわす。

「ほら、ようやくいつもの葛に戻ったじゃん」(首領パッチ)

「え?」(葛城)

 気が付くと、首領パッチの目の前には、彼が知る普段の葛城の姿があった。

 つい先程まで、春花の話で落ち込んでいたのに、いっその事寝て過ごそうとしたのに。

 首領パッチやった事は、まるで小学生がふざけた様なノリと変わらないが、彼なりに葛城を励ましたのだ。

「オマエは、それでいい。そうじゃなきゃ、オレも絡んでて楽しくないからさ」(首領パッチ)

「フフフッ、やっぱり首領パッチさんには敵わないっすね」(葛城)

 たとえ失敗したとしても、もう一度やり直せる。

 『仲間を守るため』『仲間の前では涙を見せない』といった新たな目標を胸に、葛城はもう一度ヒーローになることをその時決意した。

 そして、葛城は首領パッチに向かって頭を下げた。

「首領パッチさん、これからもよろしく頼むぜ!」(葛城)

「よし!そーと決まれば早速行くぞ」(首領パッチ)

「行くってどこっすか?」(葛城)

「アソコだよ。ア・ソ・コ」(首領パッチ)

「だから、ドコなんっすか」(葛城)

「行けばわかるよ、ついてこい」(首領パッチ)

「ちょっ、首領パッチさん」(葛城)

 強引に葛城の手を引くと、2人はそのまま保健室後にした。

 

 

「世話が焼ける生徒を持ったものだ」(??)

 




つづく


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