赤い瞳と赤い弓兵 (夢泉)
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プロローグ
~出会い~


 どうもはじめまして。pixivにて連載中の「赤い瞳と赤い弓兵」シリーズをハーメルンでも投稿させて頂きます。ちなみに、pixivでは8888という名前で活動しています。
 ブラック・ブレットは世界観のみといった感じです。本来のブラック・ブレットの登場人物は全然出さないつもりです。七星の遺産の謎やガストレア自体の謎には全く触れません。
 ブラック・ブレットもFateもアニメ知識のみですし、矛盾点やおかしなところも多々あると思いますが、よくにた平行世界だと思って許してください。
 文才はありませんし、読みにくいかもしれませんがご了承ください。もし変なところがあればどんどんご指摘ください。
 ここまで読んで「それでもいいよ❗」という心の広い人のみ読んでください。



 

 壊滅した街。赤黒い炎が舞い、どす黒い煙がそこかしこから揚がっている。ほんの半日前まであった人々の営みは見る影もない。先ほどまで人々の悲鳴や断末魔の叫びが街を包んでいたが、今は恐ろしく静かだ。時々思い出したように瓦礫の崩れる音が響く。小さなうめき声が聞こえることもあるから生きているものもいるようだ。まぁ、その人たちもそう遠くないうちに"ガストレア化"するか"ガストレア"の腹の中に収まるかするのだろう。

 

 「あぁ……落ち着くなぁ。」

 

 こんなことを言ったら不謹慎だよね。でも本当に落ち着く。こんなに心安らぐのは生まれてはじめてかもしれない。

 みんな私を怖がった。誰も私に優しくなんてしてくれなかった。

 "呪われた子供たち"ーみんなは私たちをそう呼んだ。大人も子供も男の人も女の人もみんなみんな私を否定して、石を投げてきた。お菓子をくれた優しそうなお爺さんも私が離れたら「穢らわしい。」って呟いてた。私の中にはウサギさんがいるらしくてみんなみんな聞こえちゃった。いつも町外れで耳をふさいでひとりぼっちで泣いてた。

 

 でも今は私へ向けられた言葉の刃はひとつもないし、石も飛んでこない。私はこんなことで幸せを感じている。美味しいものを食べたり、暖かい布団でお昼寝したり、学校に行って勉強したり、友だちと遊んだり…恋をしたり、そういう"普通"のことで"普通の幸せ"に笑っていたかった。

 

 「どう…し、て?」

 

 どうして私ばかりが、私が何をしたというの?

 

 気づけば目の前には"ガストレア"がいる。モード・マンティス、だろうか鋭利な鎌が大きく振りかぶられる。

 

 そこからはすべてがゆっくりだった。時が止まったような感覚に陥る。私の体も"ガストレア"もとてもゆっくり動いている。

 思考だけがはっきりしていて色々なことが頭に浮かぶ。これが走馬灯だろうか。私を"悪魔"といったおじさん、私が"呪われた子供たち"だとわかって「近づかないで!」って叫んだ仲のよかった女の子、私に汚い水をかけたおばさん、みんなの怖い顔が浮かんでは消えていった。

 

 

 迫り来る鎌は周囲の炎を写して朱く緋く輝いている。まるで何千何万もの人々を刈った死神の鎌のようだ。

 

 「い、や…だ」

 

 怖い。恐い。こわい。コワイ。

 死にたくない。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない

 

 「たす…け、て」

 

 頭に浮かぶのはこっそり覗き見たテレビに出ていた"正義の味方"。

 誰かのピンチに颯爽と駆けつけて悪いやつらをやっつける。そんなものいないってことはわかってる。そもそもいたとしても、私みたいな化け物はたすけてもらえない。

 それでも、テレビで見た"正義の味方"はかっこよかった。時々"正義の味方"が私を助けに来てくれることを考えてた。そんなこと絶対にないってことは分かってても、胸がドキドキワクワクして幸せな気持ちになった。

  

 最後くらいあの幸せな夢を信じていよう。

 

 鎌が目前に迫る。

 少女は恐怖で目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「同調、開始(トレースオン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………?」

 痛みは襲ってこない。恐る恐る目を開けると目の前には赤い大きな背中があった。

 

 

「やれやれ……。召喚早々これとは、とんでもないところに召喚されたな。」

 

 

 

 赤い外套を繕った浅黒い肌に白髪の男性は振り向いて言った。

 

  「問おう、君が私のマスターか?」

 

 



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一章~旅立ち~
一章一話~最悪の出会い~


 体が引き寄せられるような感覚。またどこかに召喚されるらしい。どこに召喚されようともやることは変わらない。大勢を救うために少数を切り捨てる。ただ、それだけだ。

 

 

 

 

 視界が明るくなる。

 「!」

 「投影、開始(トレースオン)

 とっさに白と黒の夫婦剣、干将・莫耶を投影し迫り来る鎌の内側に右手にもった陰剣莫耶の腹を当て滑らせるようにして受け流す。同時に左手を正面へ、陽剣干将で相手の心臓を貫く。続けて右手を円を描くように後ろから前へ。鎌の付いた細腕を切り落とす。

 巨大カマキリは後ろに跳躍。距離を取る。しかし、心臓を貫いたためそうは動けまい。

 現状を把握しようと干将・莫耶を構えたまま眼だけで左右を見渡す。

 

「!」

 

 なんだこれは。この景色はまるで幼き頃のあの地獄ではないか。

 

 ふと、後ろに人がいることに気づく。この感覚。魔力のパスの繋がり。ということはこいつはマスター。聖杯戦争、なのか?

 

 知りたいことは山ほどあるが、取り敢えず後ろにマスターがいるのは間違いない。しかし、

 

「やれやれ……。召喚早々これとはとんでもないところに召喚されたな。」

 

 全く、化け物に殺されかけているマスターとはな。古今東西どこにもこんなマスターはおるまい。……おっと、そういえば私も……。

 磨耗した記憶の中でも変わらない輝きを放つあの満月の夜。運命の出会い。

 あのとき私は青タイツに殺されかけていたことを思い出し、苦笑する。

 

 カマキリは動く気配がない、取り敢えずこれだけは聞いておかなければいけない。

 後ろに警戒しつつ振り替える。

 

 「問おう、君が私のマスターか?」

 「えっとえっと………マス、ター?」

 

 混乱しているのか?まさか私のように偶然の召喚をしたのだろうか?

 

 しかし、このマスターは幼すぎる。齢10にも届いていないだろう。煤や痣だろうか、それらでひどい見た目になっているが、それらがあってもわかる西洋人特有の美しい白い肌。何より特徴的なのはルビーのような赤い瞳だろう。白い肌と赤い瞳は小さき姉を彷彿とさせる。唯一異なるのは髪が金髪である点だろうか。

 

 さて、どうしたものか。何から話そうかと思案していると後ろで何かが動く気配がしたため振り返りながら干将・莫耶を構える。

 

「馬鹿な、 」

 

動いていたのは先程のカマキリだった。しかし、確実に心臓を貫いたのだが。見ると胸には傷が一切無く、鎌も左右揃っている。周りに別の個体がないことから考えられるのは、

 

「再生か、」

 

ならば、

 

同調、開始(トレースオン)

 

投影するは彼の英雄王の庫に納められし、女怪殺しの剣。ギリシャ神話の英雄ペルセウスが所有した神剣。その名を

 

蘇生封じの剣(ハルペー)!!!!」

 

肩口から斜めに切り下ろす一閃。上下二つに別れたカマキリの体は二度と再生することはなく、数秒の後にカマキリは動かなくなった。

 

 振り替えるとマスターがなにかをこらえるように小刻みに肩を震わせている。

 

「おい、だいじょ「わあぁぁぁうわあぁぁぁ!」う、ぶか」

 

 盛大に泣き始めてしまった。

 

「うわあぁぁあぁぁ、うっ、くっ…ひくっ、っわあぁぁぁ」

 

 泣きながらよちよちと近づいて来たマスターは今、私の足にしがみついて泣き叫んでいる。

 

「こわ…かっ、た。こわかったよぉ。」

 

マスターが落ち着くまでこのままにしておくことにした。手は自然とマスターの頭を撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どれくらいそうしていただろうか。とても長かったようにも短かったようにも感じる。

マスターは泣きつかれたのか私の足にもたれ掛かって眠ってしまった。

 

「やれやれ、世話のかかるマスターだ。」

 

マスターを起こさないように優しく足から離して抱き抱えた。

 

「さて、マスターの安眠を妨げるものたちにはご退場願おうか。」

 

 数は50といったところか。今や周りは様々な形の化け物に囲まれている。不死とも言える再生能力を持った化け物が50体。絶望的だ。しかし……不可能を可能にしてこそ弓の英霊!

 

「ーーーー投影、開始(トレースオン)

 

 投影するのはどれも不死殺しの概念を持つ剣。

 

「ーーーー憑依経験、共感終了」

 

工程完了(ロールアウト)全投影、待機(バレット クリア)

 

 剣の切っ先を怪物どもに向ける。

 

「っーーー停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)………!!!」

 

 

 直後、剣の雨が降った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったか」

 剣の雨がやむと静寂のみがそこにあった。

 

 

 

 ここにいるとまた奴らが来るかもしれない。

 私はマスターを抱えて走り出した。

 

 

 走りながら使えそうなものを集めていく。そして、途中で見つけた、比較的原型の残っている家屋に入った。

 改めてみるとマスターはひどい格好だ。美しい顔は殴られたような痣だらけ。服はほとんど服の役割を果たしていないぼろ切れのようなもので、開いた穴から覗く肌は痣や傷だらけだ。とても美しい金色であろう髪は、ボサボサで好き勝手にのび放題。最低限の手入れしかされていないようである。

 

同調、開始(トレースオン)

毛布を投影しマスターにかけて、そのままマスターを床に寝かせる。所々出血も見られたため布を投影し応急処置のみ済ませた。

 

 さて、マスターが快適に暮らせる環境を整えねばな。

 

 マスターの体を綺麗にするために風呂を沸かす必要もあるし、家屋も綺麗にせねばならん。食事も用意しなければ。ああ、忙しい、忙しい。しかし、

 

「私を満足させたくば、この3倍はもってくるがいい!!」

 

 やはりこの男、どこにいってもオカンなのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

「起きたかマスター」

 

「ううぅぅーーん。あれ?ここは…?」

 

「空き家だ。マスター、風呂でも入るか?」

 

…………あれ?この人誰?……知らない男の人と二人きり。……私の服はボロボロで、それで今空き家にいる?それで、お風呂にはいるって?………………………………………まさか、

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「ど、どうした!?」

 

「やめて、来ないでっ、変態!ロリコン!」

 

「なんでさっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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一章二話~少女の願い、弓兵の誓い~

 さて、盛大な勘違いによる最悪な出会いは弓兵の必死な説明と、少女が思い出したことにより、誤解が解けてなんとかなった。

 

 

「ありがとうございました!そして、ごめんなさい!!」

 

 少女が深々と頭を下げつつ言う。

 

「だから、もういいと言っているだろう。」

 

「でも、」

 

「私は気にしていない。」

 

「「…………………」」

 

 謝ってお礼がしたい少女と、お礼をされることなどしていないと言い張る弓兵。二人は暫し睨み合う。結局少女はお礼を諦めて、せめて名前を聞くことにした。

 

「……お名前、を教えてください。」

 

「名乗るほどの者ではな……」

 

「教えて、グスッ……くれ、ません、か?」

 

(うぐっ。涙目での上目遣い………。ええい!なんという威力だ!くっ、そんなつぶらな瞳で見るのはよすんだマスター!

 しかし、先程から神経を研ぎ澄ませているが、サーヴァントの気配は一切無く、聖杯からの情報提供もない、おそらく聖杯戦争ではないと考えられる………ならば、真名を隠すこともないか。)

「エミヤだ。」

 

「エミヤさん、、です、か。

 私は………………………………イーヴォ、です。」

 

("evil"、意味は"悪")

「それは本名か?」

 

「いいえ、私は名前がありません。ただ、みんなが私をこう読んだので、」

 

「そう、か」

 

 少女はその後、弓兵特製の五右衛門風呂に入り、出てきたら弓兵特製の純白のワンピースに着替え、弓兵に傷の手当てをしてもらい、さらに髪の手入れをしてもらっている。弓兵は髪の手入れだけではなく、カットも短時間で完璧にこなしてしまった。

 今少女は赤い瞳ではなく、力を使っていないときの青い瞳。髪は元来の美しい金色の髪をショートカットにして、白い肌に純白のワンピースを着ている。

 

「これ、私?」

 少女は鏡を見て呆然としている。それもそうだろう。彼女はずっと薄汚れていたし、回りからは「醜い」、「気持ち悪い」と言われてきた身だ。刷り込みのように自分はゴミのような存在と信じてきた少女にとってその姿はあまりにも衝撃的だったのだ。

 

「さて、そろそろ本題に入ろうか、」

 弓兵がそう言って椅子に座り、少女に正面の椅子へ座るよう促した。

 

 弓兵は、少女が椅子に座るのを待って話を始めようとした、が、

「まずは、「ぐうぅぅぅぅぅ」」

 盛大に誰かのお腹が鳴った。誰かは言うまでもあるまい。

 

「ふっ。まずは食事をとろうか。」

 弓兵は苦笑しつつ、キッチンへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっちゃたぁぁ!恥ずかしい。頬が熱い。そう言えば、もう何日もろくに食べていなかった。

 ・・・どうやら、あの男の人がご馳走してくれるみたいだ。どうして初対面の、しかも呪われた子供たちである私にここまでしてくれるのか。不思議だけど、何故か怖い感じはしなかった。

 

 しばらくして、なんとも美味しそうな食事が運ばれてきた。

 

「召し上がれ。」

 

「いいの…です、か?」

 

「当たり前だ。君のために作ったのだからな、マスター。」

 

「これは?」

 薄茶色いスープを見て言う

 

「味噌汁、という。私の故郷の料理だ。」

 

 恐る恐るミソシルを口に運ぶ。

 

「美味しい………」

 

 そこからは、夢中で食べた。どの料理も最高に美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味しかった、です。」

 

「それは良かった。」

 エミヤは食器をキッチンに運びつつ思う、

(やっと、笑うようになったな……)

 

 

 

 

 

 

 エミヤは、椅子に座り直して言う、

「まずはこの世界のことを教えてくれないか?」

 

「?」

 イーヴォはエミヤがなぜそんなことを聞くのかわからなかったが、エミヤの真剣な顔を見て、少しずつ話始めた。

 

 8年前の西暦2021年、突如出現した寄生生物"ガストレア"との二度に渡る戦いに人類は敗北した。生き残った人類は金属"バラニウム"が"ガストレア"を退けることを発見。"バラニウム"により巨大な壁"モノリス"を建築して"モノリス"に囲まれた"エリア"の中で暮らしているらしい。この辺りも昨日までは多くの人がすむイギリスの1つの"エリア"だったらしい。

 この"ガストレア"。話を聞くとなんとも恐ろしい存在だ。"ガストレア"はガストレアウイルスに感染し、遺伝子を書き換えられた生物の総称で非常に強い再生能力を持つ。感染して間もないステージⅠから完成形であるステージⅣまで四段階に分けられ、ステージの進行段階で様々な生物のDNAを取り込むためステージⅡ以降の"ガストレア"はそれぞれに異なる異形の形と特徴を持ち、"オリジナル"とも呼ばれるらしい。そして、"ゾディアック"と言われる通常は発生しないステージⅤは12体存在し、それぞれに黄道十二星座の名前がつけられており、"ゾディアック"には"モノリス"は効果を発揮しない。

 そしてガストレアウイルスは人間にも感染するという。感染すれば人間も他の生物同様に"ガストレア化"するらしい。だが、8年前の戦いの後"呪われた子供たち"と呼ばれる、ガストレアウイルス抑制因子を持ち、ウイルスの宿主となっている人間が生まれるようになった。妊婦がガストレアウイルスに接触すると胎児がそのようになることがあるという。特徴として瞳が赤く、超人的な治癒力や運動能力など、さまざまな恩恵を受けている。8年前のガストレア大戦時に第一世代が生まれているので、彼女達は8歳以下だという。

 力の開放や治癒に伴って体内浸食率が上昇し、ガストレア化する危険性を持っているが、日常生活だけを送ってさえいれば通常の人類と変わらぬ寿命で天命を全うできるらしい。ガストレアウイルスを保菌していることや人間離れしたその能力から差別かつ迫害されている。特にガストレア大戦で家族や知人を殺された"奪われた世代"の彼女達に対する憎悪は根深いものであり・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここまで話してイーヴォはふぅ、と小さく深呼吸をした。ここまで話されれば、彼女が次に言おうとしていることは解る。

 

「わた、しは、」

 

 彼女が何者であるのか、

 

「わたしはッ」

 

 彼女が傷だらけだった理由、その答えは、

 

「呪われた子供たちの一人、です」

 

 そこまでいって彼女は泣き出してしまった。

 

「うぅっ、くっ、ひくっ、きもち、わるいですよね。ひくっ、醜いです、よね。うぅ、憎いです、よね」

 

「そんなことはない。」

 手は自然と彼女の頭を撫でていた。

 

「え…?」

 彼女は驚いたように顔をあげる。

 

「そもそもわたしは奪われた世代ではないし、ガストレアには何の恨みもない。そして、君は人間だ。化け物(ガストレア)等ではない。」

 

「…‼」

 

「何より、君のようなかわいらしい人の子を醜い等と思うわけあるまい」

 

「あり、がと、う、ござい、ます…」

 

「やれやれ、泣き虫なマスターだ。」

 また泣き出してしまったマスターが落ち着くまで私は彼女の頭を撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 落ち着いた彼女は彼女の境遇を語り始めた。ずっと一人で耐えてきて、誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。

 彼女は自らが受けてきた差別を、暴力を語ってくれた。しかし、それらはごく一部の語れる範囲のものでしかなく、言いたくないこと、言葉で表現できないこと、思い出したくもないこと、記憶から抹消して思い出せなくなったもの等、他にもあるのだろう。しかし、断片だけでも、彼女がとてつもない地獄を歩んできたことがわかる。

 彼女の話はこの街の最後の日の話となった。突然のことだったようだ。突如、海より出現した"ゾディアック"、キャンサー。モノリスは意図も容易く破壊され、街はガストレアで溢れた。多くの民間警備会社のものたちや軍人はキャンサーの対処に当たっており、街の人々はなすすべもなく蹂躙された。街には元人間(ガストレア)が大量に発生し、文明はわずか半日で跡形もなくなったという。

 彼女は、その時の心情も語ってくれた。

 

 普通の生活をして、当たり前のことで当たり前に笑っていたかった

 

 なんと欲が無く、健気な願いだろう。

 

「私は、最後の時、正義の味方に助けを求めたんです」

「正義の味方なんていないとわかっていても、私なんて救ってくれないとわかっていても、正義の味方を思うと幸せなきもちになれたから。そしたら、」

 

 そこまで言うと、彼女は急に顔を輝かせて、飛びっきりの笑顔でこう言った。

 

「来てくれて、助けてくれてありがとう。私の正義の味方さん」

 

 普段の私なら、私は正義の味方等ではないと否定するのだろう。それが私だ。しかし、私はこの時柄にもなくこんなことを思ってしまった。

 

(私はこの子の前では正義の味方でいよう。この子を守る正義の味方であろう)

 

私はこの時誓った。

 私は貴女の剣となり、盾となろう。貴女に降りかかる災厄を退け、貴女に"普通"の幸せを届けよう。

 

私はこの時決意した。

 貴女が笑っているためならば、私は正義の味方を張り続けよう。貴女が幸せだと笑えるその時まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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一章三話~新しき名~

「マスター、」

 

「その、マスター、とは何ですか?」

 

 ふむ、次は私のことを語らねばなるまい。

 

「できれば、他の呼び名で……」

 

「しかし、君の名は…」

 

「いいのです。これが私の名前ですから」

 

 evil、悪を意味する名。だが、この名は彼女には似合わない。ならば、

 

「live」

 

「?」

 

「どうだろう、君の新しい名前に、」

 

「ッ、」

 

「君にevilは似合わない」

 

「っぁ、」

 

「普通の暮らしをしてほしい、そんな願いを込めたのだが、」

 

「っ、うぅぅ」

 

 少女は肩を震わせ、今にも泣き出してしまいそうだ。

 

「い、いや、嫌なら別に構わないのだが、センスがなかっただろうか?」

 

「そんなことありません!!!!

 本当に……ありがとう、ござい、ます」

 そう言って、彼女は涙を流しながら、本当に幸せそうに笑った・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「名前をつけるなんて、お父さんみたいですね。」

 

「ぶっ!?!?」

 飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。

「ゴホッ、ゴホッ、な、何をいって、」

 

 彼女は私の言葉など無視して

「お父さん、って読んでもいいですか?」

 そう言って、いたずらっぽく笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、お父さん、お父さんはどこから来たの?」

 

「はぁ、なんでさ……」

 

「ねぇ、お父さんってば、聞いてる?」

 

「なぁ、本当にそう呼ぶのか?」

 

「うん!」

 

 許可した覚えはないのだが、ライブは私のことを「お父さん」と読んでいる。そう呼ばれると、なにやらむずむずするから止めてほしいのだが……そんな私の心情を知ってか知らずか、やたらと「お父さん」呼びを連呼するライブ。もう好きにしてくれ。

 

「私がどこから来たかか、ふむ、どう説明したものか。」

 この子はそれなりに地獄を見てきてやたら大人びているとはいえ、実際は8歳の女の子だ。異世界やら、平行世界やら、英霊、聖杯戦争等と説明しても難しいだろう。

 

「私は、………?どうした?ライブ、、ライブ!」

 私はマスターが顔を青くして小さく震えているのを見て声をかけるが反応がない。

 

「ライブ!!」

 

「おとう、さん?」

 

 再び声を張り上げると、ライブは震えた声で応えた。

 

「どうしたんだ、大丈夫か!?」

 

「あいつが!あいつが……戻ってくる。」

 

 彼女に宿るのはウサギの力。力を発揮していなくとも、かなり遠くの音が聞こえるということだった。ということは、何かを聞いたのか?

 先程の話と今のライブの「戻ってくる」という言葉から考えられるのは……

 

ドオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!

 

 すさまじい音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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一章四話~誰かを護るために~

『オオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!』

 

 大地を揺るがす、すさまじい音が鳴り響いた。私は蹴破るようにドアを開け、急いで家の外に出る。

 

「っ!」

 

 水平線上に不自然な黒い物体が見える。鷹の目を凝らせばその全貌を理解する事が出来た。

 

「あれがゾディアック、キャンサーか、」

 

 体長は1㎞はあろうか。元は亀だったと思われ、巨大な漆黒の甲羅を繕っている。甲羅には大きめのビルほどの営利な棘がいくつも生え、棘と棘の間には赤く大きな目玉が敷き詰められている。前足は巨大な、それこそ体長の半分はあるだろう蟹のハサミとなり、尾は異様に太く長い。

 キャンサーは凄まじい勢いで迫ってくる。未だ距離はあれど、この分なら、1、2分ほどで上陸するだろう。  

 私はあの青タイツやアサシンのような戦闘狂ではない。英霊とはいえ、恐怖はある。普段の私なら早々に撤退の選択をするだろう。

 しかし、私の後ろには守ると決めた少女がいる。彼女の前では格好良い正義の味方でいようと決めたのだ。

 ならば、逃げることは許されない。

 

「耳を塞いでおけ、ライブ」

「ーーーーI am the bone of my sword.」

 

 体は剣で出来ている。使いなれた詠唱。私の人生を象徴する詠唱。私の理想の行き着いたところであり、私の間違いの証明。されど、

 

 弓と剣を投影する。

 

 この言葉は、正義の味方の体現。

 

 構えるは黒き弓。つがえるは捻れた剣。放つは空間を削り取る一撃。その真名はーーーー

 

 子供の頃憧れた、正義の味方にはなれなかった。全てを救う正義の味方にはなれなかった。

 されどッ!

 私は彼女のための正義の味方となる!

 

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!!!!」

 

 紅き閃光が海上を突き進む。一瞬で、キャンサーに到達した閃光は、

 

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)!!!!」

 

 着弾と同時の爆発ーーーー

 

 

 

 

『オオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォン』

 閃光が飛び散り、数秒遅れて凄まじい轟音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 閃光が晴れる。

 

「!」

 

 キャンサーは右半身が抉れ、右前足のハサミがとれているがそれだけだ。もとより、一撃で沈められるとは思っていなかったが、多少足止めをすることくらいできると思っていた。しかし、全くスピードは衰えていない。

 上陸されてしまえば勝ち目はない。破壊面積が大きく、再生が間に合っていないのが唯一の救いか。「偽・螺旋剣」を何度も投影するのはきついだろうが、連発して跡形もなく消し去るしか勝ち目はない。

 

「I am the bone of my sword. 」

 

 一切の無駄なく打ち続ける。流れるように。決められた動作だけを繰り返す。

 

 二撃目、三撃目、四撃目、五、六、七・・・

 

 視界が赤く紅く染まる。未だ奴は消滅していない。姿こそ赤い光に包まれて見えないが気配でわかる。

 

 だが、姿が見えないだけだ。そんな障害、造作もない。私は英霊。アーチャーのクラスを与えられし、弓の英雄。この程度の障害、生前に幾度も乗り越えた。

 

 

 

 

 

 

 

「I am the bone of my sword. 」

 幾度目かの投影。体が悲鳴をあげている。魔術回路が焼き切れそうだ。しかし、やめるわけにはいかない。おそらく、これで最後だ。

 

 限界まで魔力を振り絞り、放つ!

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父さん!!」

 

 キャンサーは消滅したようだ。それだけ確認して私の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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一章五話~護るということ~

「それで、お父さん。お父さんはどこから来たの?」

 私はエミヤさんを「お父さん」と呼ぶことにした。お父さんは一体何者なのだろう?「呪われた子供たち」ではないのにすごく強い。民警?そんなよくわからない人を「お父さん」と呼ぶなんておかしいよね。でも、このひとからはいつもみんなが私に向けていた憎悪とか、嘲りとか、嫌悪感といった嫌な感情が感じられない。お父さんといるととっても落ち着く。あの時、壊滅した街で感じた罪悪感にまみれた落ち着きなんかよりも何倍も何十倍も何百倍も暖かくて気持ちの良い落ち着き。何より、お父さんは私の「正義の味方」だもの。それだけで十分。

 

「はぁ、なんでさ、、、」

 

「ねぇ、お父さんってば、聞いてる?」

 

「なぁ、本当にそう呼ぶのか?」

 

「うん!」

 お父さんは恥ずかしいのか赤くなっている。でも、やめるつもりはない。やっと手に入れた「家族の繋がり」。手放したくない。「お父さん」と呼んでいれば、その繋がりを感じていられるような気がしたから。

 

「私は、、、」

 何かを考え込むお父さん。どうしたのかな?

 

『ドオォォォォ』

 

 えっ?

 

 

 

 すごくすごく小さな音、でも、聞き間違いようがない。この音は、あいつの・・・

 

 

 恐い。

 

 

 恐い、怖い、こわい、コワイ、コワイコワイコワイコワイコワイコワイ・・・・・

 

「ライブ!!」

 

 顔をあげれば、心配したように私の顔を覗きこむお父さんの顔があった。

 

「おとう、さん?」

 

「どうした、大丈夫か!?」

 

「あいつが!あいつが、、、」

 伝えなくちゃ。逃げなくちゃ。

「、、戻ってくる。」

『ドオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォン』

 「逃げよう」という声は轟音で消された。

 お父さんは止める間もなく家の外に行ってしまった。まさか、戦うつもり?無茶だ。止めなくちゃ。頭ではそう思うのに体が動かない。

 ー一ーーーー嫌だ。やっと手に入れた「家族の繋がり」。掴みかけた「普通」の幸せ。手放したくない。

 

 

「っ、」

 私は勇気を振り絞って駆け出した。

 

 

 

 

 海上に黒い何かがいる。……間違いようがない、ゾディアック、キャンサー。

 目の前には赤い大きな頼れる背中。その背中を見るだけでさっきまでの恐怖がうそみたいに霧散した。

 

「耳を塞いでおけ、ライブ。」

 真剣なお父さんの声音に従い咄嗟に耳を塞ぐ。

 

 どこから出したのかお父さんは黒い弓と捻れた……剣だろうか、鋭利なものを持っている。そして、お父さんは流れるように弓を構え、剣をつがえて、弦をひく。その一連の動きには一切の無駄がなく、あたかも一つの芸術のようだと思った。

 

 赤い閃光が迸る。キャンサーとお父さんの間に赤い繋がりが生まれた次の瞬間……

 

   

 

   海上に赤い花が咲き乱れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綺麗………」

 

 

 

 

 

 

 それからいくつも赤い光が走った。その間私はお父さんの姿の美しさに、放たれる赤い閃光の美しさに心を奪われていた。

 

 

 特大の紅の花がキャンサーを包み込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程までキャンサーのいたところには、ただ青い海が広がっているだけだった。

 

 

 

 

 

「お父さん!!!!」

 目の前で、膝をつき、頭から倒れていく弓兵。

 私はお父さんに駆け寄った。右手が彼の体に触れる。

「っ、」

 熱い。お父さんの体が火のように熱い。

「お父さん!!お父さん!!」

 何度も呼びかけるが反応がない。視界がぼやける。涙が溢れてくる。

「いや、だ、、、」

 失いたくない。やっと見つけた温もりを。もう二度とあんな孤独は味わいたくない。

 動揺してぐちゃぐちゃしてる思考を無理やり落ち着ける。運ぶことはできない。ならばどうする?

 

 私は家に向かって走り、毛布と濡れたタオルを持って戻ってくる。毛布を地面に敷き、お父さんを転がしてのせる。お父さんの外套と鎧を外して服を脱がす。

「!」

 浅黒い肌は銃創や切り傷でズタズタだった。この人は一体何者?そんな疑問が浮かぶ。だけど、頭をふってその考えを振り払った。

 

(この人が何者であろうと構わない。この人が私の正義の味方で、私の優しいお父さんであることは紛れもない事実なのだから。)

 

 私は水で濡らしたタオルでお父さんの身体中を拭いた。お父さんの身体が異様に熱かったからだ。あっという間にタオルは熱くなってしまう。何度も家とお父さんの間を往復しては同じことを続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………お月様。」

 

 いつのまにか夜になっていたらしい、お父さんがキャンサーと戦ったときから、かなりの時間がたったようだ。

 お父さんの体の熱はやっと下がった。服を着せて、お父さんの体を毛布でくるむ。私は、もう一度タオルを濡らしてくるために立ち上がろうとした。が、

 

「あ、あれ?」

 

 足に力が入らずにふらついてしまった。頭がぐらぐらして視界がぼやける。私は、お父さんの上に覆い被さるように倒れ、そこで気を失った。

 

 

 

______________________________________________

 

 

 

 安らかな寝息が聞こえる。目前には漆黒の空と美しい満月が見える。

 満月の夜か、あの美しく気高い騎士王との出会いを思い出す。寝息のする方へ顔を向けると幼きマスターが私に寄り添って眠っている。彼女を守ることができたようだな………

 状況を把握する。どうやら、マスターが看病してくれたようだ。深刻な魔力切れを起こして気を失っていたと推測される。僅かながら魔力の込められた毛布と身体接触によるマスターからの魔力供給がよかったらしい。ふと、マスターの顔を見ると涙のあとがある。

 何が守った、だ。私はまたこのマスターを泣かしてしまったようだ。正義の味方失格だな…………。

 

「んっ、、、、おと、うさん、起きたの?」

 

「あぁ、心配かけたようですまなかったな。もう、大丈夫だ。」

 

「っ、、よがっっだぁぁぁ!!よがっだよおぉぉぉぉぉ!!」

 ライブはエミヤに抱きついて泣いた。

 

「そんなにみっともなく泣くな。綺麗な顔が台無しだぞ。」

 

「バカっ!すごく心配したんだよ!?……お父さんが死んじゃうかもって、また一人ぼっちになっちゃうんじゃないかって、、それでそれで、わたし、、わたし、、、うぅぅ、ヒクッ、うっ」

「・・・ねぇお父さん。わたしのこと護ってくれるのは嬉しい。大切にしてくれるのも嬉しい。でも、私もお父さんが大切なの。お父さんがいなくなったらとっても悲しいの。」

 

「ライブ…………。」

 

「だからお願いがあるの。………絶対に無理はしないで。私ね、お父さんが戦ってるとき思ったの。護った誰かのところに帰って、その人が"ありがとう"って言うまでが本当の意味で"護る"ってことなんじゃないかなって。そうじゃなきゃ、守られた誰かはきっと悲しんじゃう。」

 

「っ!」

 

「だから、約束して。絶対に帰ってくるって。」

 

「あぁ。約束しよう。」

 

「本当に?」

 

「あぁ、誓って本当だ。」

 

「んっ、」

 ライブは小指をたてて右手をつき出した。

 

「どうした?」

 

「んっ。」

 

 ふっ、なるほど。小さきマスターはゆびきりをご所望らしい。

 私も小指をたてて右手をつき出し、私の小指をマスターのそれに重ねた。

 

「ゆ~びき~りげ~んまん、うっそつぅいた~らはりせ~んぼんの~ますっ!」

「ゆ~びきったっ!」

 

「約束したからね!破ったら、針千本のますんだからねっ!」

 

「ふっ、、なら、破ることはできないな。」

 

「むうぅ~。破るつもりだったの?」

 そう言って、ジト目で見てくるライブ。

 

「い、いや、そんなことは、ない、ぞ?」

 

「しんようできないぃぃ!」

 

「絶対に破らない!信じてくれ!」

 私は手を合わせ、頭を下げて必死で訴える。

 

「…………わかった。信用してあげるっ!」

 

「ふっ」

 

「くすっ」

 

「「ハハハ!アハハッ!アッハッハッハッハッハッハ・・・・・」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰ろうか。」

 

「うん。」

 

「どうした?」

 

「手、、つなごう?」

 

「ふっ、ほら、」

 

「お父さん、」

 

「なんだ?」

 

「護ってくれてありがとう。」

 

「どういたしまして。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 赤い瞳と赤い弓兵をお読みいただき誠にありがとうございます。今回はどうでしたか?面白かったですか?後半はイリヤと切嗣のクルミの芽探しのような温かい雰囲気が出るように努めたのですが、出ていましたか?
 設定を投稿しますので、見てみてください。


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設定

○ライブ(live)

 8才の少女。呪われた子供たちとよばれる子供で差別や暴力を受けてきたが、それでも人を憎めず、とてもやさしい少女。人の醜い部分を見続けたため、嘘を見抜くことや心理戦等、感情が関わることには大人顔負けの能力を発揮する。

 地獄で生きてきたためか基本敬語で話すなど、変に大人びているが、心から信頼した人(現在は英霊エミヤのみ)といるとき等は年相応の反応をする。

 捨て子で名前がなく、live(ライブ)という名前は英霊エミヤが彼女のあだ名evil(イーヴォ)のスペルを逆さにしたもので普通の生活を送ってほしいという願いが込められている。

 名付け親の英霊エミヤをお父さんと読んでいる。これは、また孤独になるのが嫌で、初めててにいれた繋がりを身近に感じていたいから。

 令呪は左の瞳にあり、原因不明だが能力使用時の赤い瞳の時のみ令呪が表れ、ルビーのように透き通った赤色の瞳の上に赤黒い令呪が浮かび上がる。

 

 

○英霊エミヤ

 言わずと知れた赤い弓兵。マスターはライブ。今のところ語られていないが、何かしらの理由で特殊な召喚をされたようで、守護者の任からは解放されている。すでに衛宮士郎との対決は果たしており、召喚前は答えを得た状態で守護者の仕事をしていた。家事能力が高い。ライブにはお父さんとよばれる。

 

 

~解説~

 ここから書くことは私の記憶がもとであり、間違いもあるかもしれません。

 ライブの眼ですが、赤い瞳の時には左目に令呪が出てきます。キリスト教において「悪魔が宿る」とされる左目。僕個人の考えですが右優位の考え方って結構ありますよね?右は英語でright(正しい)ですし。これに右利きが多いのって無関係ではないと思うんです。でも、キリスト教以外をみてみると左を司る善い神様って結構います。よくフリーメイソンとかで出てくる、アメリカ紙幣に描かれたピラミッドの上にある眼は左目で、ウアジェトと呼ばれる神様の眼。ウアジェトはアヌビスの娘ともいわれ、コブラの頭をもつエジプトの()()女神。守護者(エミヤ)守護神(ウアジェト)コブラの頭の女神(ウアジェト)怪物の血をもつ少女(ライブ)。日本神話でも太陽の女神アマテラスがイザナギの左目から誕生しています。地獄のなかでも優しさを持ち続けたライブは暗黒の宇宙で輝く太陽のようだとも思います。誰よりも優しいのに、怪物と言われたライブと誰かのためにあろうとして恐れられたエミヤの姿はどことなく多くの国では「悪魔」と言われている左を司る神様に重なるような気がするのです。

 

長文失礼しました。これからも「赤い瞳と赤い弓兵」をよろしくお願いいたします。

 

P.S.

 評価、コメントお待ちしております。



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一章六話~英霊~

「話の途中だったよね。」

 

「あぁ、私が何者かという話しか。」

 

「傷だらけだった。お父さんの体。」

 

「見てしまったのか。」

 

「ごめんなさい。勝手に見て。」

 

「いや、別に構わんよ。それに、私を看病してくれていたのだろう?」

 

「うん、」

 

「ならば、不可抗力だ。怒りなどしない。」

 

「話してくれる?」

 

「仕方あるまい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は一度死んでいるんだ。」

 

「ほえっ???

 

 じゃあ、、、、お化け?」

 

「お化け、とはまた違うのだが、、、。」

 ふむ、どう説明するべきか。やはり、この話は難しいだろうしな。

 はじめは適当にこの世界における"エミヤ シロウ"なる架空の人物を創ろうかと思ったが………………。

 いずれ嘘はばれるだろう。この子は聡明だ。さらに彼女はその境遇から偽りの優しさには敏感だろうし、毛嫌いするだろう。どんなに演技をしてもいずれ気づく。彼女が私との関係に偽りを見出だしたとき、彼女はまた孤独に苦しむ。それだけはあってはならない。

 ……それに、私自身、彼女に嫌われたくはない。ふっ、私も随分と丸くなったものだ。

 加えて、これから聖杯戦争がらみで何か起こる可能性もある。せめて、英霊とマスターについてぐらいは知っておいても損はないだろう。

 

「英雄、という言葉を知っているか?」

 

「…………知らないです。」

 

 駄目か。それも仕方があるまい。彼女は8歳でしかないし、学校にも行けていない。どうしたものか。

 そういえばここは英国。だめもとで彼女の知名度に頼ってみよう。

 

「アーサー王を知っているか?」

 

「知っています!」

 

 いや流石だ。やはり彼女は凄い。

「どこで知ったのだ?」

 

「紙芝居でやってるのとか、劇場でやってるのとかを聞いてたの。」

 

「なるほど。知っているなら話ははやい。

 アーサー王は英雄だ。…………アーサー王の物語を聞いてどう思った?」

 

「凄いなって、カッコいいなって思いました。」

 

「実に的を射ている。英雄とは他の誰にもできない凄いことをした者たちのことだ。

 英霊とはその死後の姿を言う。」

 

「死んじゃったらそれで終わりじゃないの?」

 

「もちろん死んだら普通は終わりだ。普通は、な、、、。」

 

「どういうこと?」

 

「英雄はカッコいいといったな。そう、カッコいい。だから死後も彼らは語り継がれる。英雄譚や神話の登場人物として。人は、彼等のカッコいい姿、生き方、功績に憧れるのだ。

 そして、その憧れが、思いが形となって英雄を再現したもの。それが英霊だ。

 お化けとは全く違うのだが、……もしその認識がしっくり来るならそれでも構わんよ。」

(こんなこといったら他の英霊に怒られるだろうか?しかし仕方があるまい。彼女は幼いのだから。)

 

「お化け、英霊……。」

 

「恐いか?」

 

「全っ、然!!」

 

 ぶつぶつと呟くライブに尋ねると、ライブはとても大きな声で、力強く否定した。そして、捲し立てるように続けた。

 

「お父さんが半分怪物(呪われた子供たち)である私を人間って言ってくれたように、英霊だろうがお化けだろうがあなたは私の頼れる正義の味方で私の優しいお父さんなんだから!!」

 

「っ!、そうか。」

 

「うん!」

 

「………話を戻そう。ライブはマスターと呼ばれる存在なのだ。マスターとは英霊を召喚して使役するものの事だ。マスターには魔術師がなる。」

 

「魔術師?………私もそうなの?」

 

「あぁそうだ。ライブは全くの偶然だったが、通常マスター達は聖杯を手に入れるために英霊を呼ぶ。」

 

「聖杯?」

 

「聖杯とは、万能の願望機といってどんな願いでも叶える道具だ・・・・」

 

 それからお父さんは聖杯戦争について語り始めた。七人のマスターが英霊(サーヴァント)を用いて戦う聖杯戦争。正直8歳の私にはちんぷんかんぷんだった。でも、それが夢に満ちたものではなくて、恐ろしいものであることだけはわかった。

 

「これからそれが始まるの?」

 

「わからない。しかし、今のところは始まりそうもないと言っておこう。」

 

「よかったぁ。」

 そんな恐ろしいものには絶対巻き込まれたくない。それに、私の願い(ふつうのくらし)はこれから私が叶えていくものだから。

 

 

 

 

 

 

 

「お父さんも英霊なんだよね?一体どんな凄いことをしたの?」

 

「………私は彼らとは少し違うのだ。私は正当な英霊ではない。彼らとは比べるのもおこがましい存在だよ……………。」

 

 お父さんは窓の外を見つめてそういった。その姿はとても弱々しくて、どこか悲しげであった。そこに先程までの頼もしさは無く、触れれば壊れてしまいそうだ、とライブは思った。

「嫌ならいいよ!はなさくても!」

 

「すまない、話したくないわけではないのだが…………………。この話はまだライブにははやい。君がもう少し大人になったら話そう。」

 

「本当?」

 

「あぁ。」

 

「約束だよ!」

 

「約束だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁあぁぁ」

 

 大きく欠伸をするライブ。

 

「ふっ、さて、もう遅いから寝ろ。」

 

「うん、、ふわぁあぁぁ、、、おやすみ、なさい。」

 布団に入って目をつむる。沈み行く意識のなかで私はある一つの決意をした………。

 

 

 

 

 

 




 英語で「英雄」は"Hero"だから、「正義の味方」をテレビで見て、憧れていたライブは、Heroの単語を知っていたとは思いますが、どうしてもセイバーの話を出したかったので、この話のイギリスでは、「英雄」と「ヒーロー」は別の言葉としました。ご都合主義です。すみませんでした。


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一章七話~動きだす世界~

8月7日 20:30 "Noah"

 私はSophia(ソフィー)、29歳。この"Noah"で働いている。"Noah"は世界中の各エリアからの情報を集積したり、監視衛星や偵察機を用いてガストレアの行動を監視している機関である。ガストレアの襲撃があれば周辺エリアに知らせ、必要であれば応援要請をする。突如として現れ、文明を破壊しつくしたガストレアを旧約聖書の大洪水に重ね、そこからの「救済」、「生き残り」を願って"Noah"は造られた。

 私はこの仕事に誇りを持っている。持っている、持ってはいるのだが……………。

「ほんっっとにもう!嫌になっちゃう!」

 今日は合コンがあったというのに、急なシフト変更で明日の朝まで警戒を続けなければいけなくなった。

「まぁまぁ、人類のためだと思って………」

 そういったのは同僚のLily(リリー)。28歳。金髪の綺麗なかわいらしい女性だ。

「そうなんだけどねぇ。もう適齢期だってのに未だに良い出会いも無いのよ!?」

 いつものごとく愚痴りあいが始まる。

 

「そうねぇ。最近民警の活躍で私たちの仕事はめっきり減ったというのに夜勤、残業当たり前だものねぇ。」

 

 民警。民間警備会社の略称。ガストレアが絡む案件は原則として民警が処理を行うよう法律が制定されている。主な仕事はガストレアの駆除。現場には、プロモーターとイニシエーターが1人ずつペアを組んで派遣される。イニシエーターとは、ガストレアと闘う「呪われた子供たち」のことだ。

 

「そうそう、エリアにも独自に対処できるとか言って私たちに情報を送らないところもあるし、」

 

「ゾディアックも全く動かないしね。」

 まぁ、とても良いことなんだけど、そう言ってリリーは笑った。

 

「でも、逆に怖いわよね。」

 

「そうね…………。」

 

 そうなのだ。ゾディアックは先の大戦で猛威をふるってから8年、不自然なほど何の動きもないのだ。"Noah"が監視しているのは現在10体。現在というのはキャンサーとピスカス、アクエリアスは海底深くに潜ってしまうと追跡できず、現在キャンサーとピスカスがその状態なのだ。

 

「さて、今日も人類のために頑張りますか!!」

 

「了解!!」

 

8月7日 22:57 "Noah"

 

『ビービービービービー!』

「緊急回線!?」

 

『こちら"Noah"。』

 

『こ、こちらイギリスCエリア!っ、たっ、大変だ!ゾ、ゾディアックが襲撃してきた!!』

 

『!』

 私は咄嗟に緊急警報ボタンを押す。

『ウゥゥゥゥゥゥ!!ウゥゥゥゥゥゥ!!ウゥゥゥゥゥゥ!!・・・・・』

 けたたましい警報が鳴り響く。

 私は気が動転しそうになるが努めて冷静に

『個体名は!?』

 

『キャンサー!キャンサーです!海から突然!!応援求む!!!』

 

「リリー!周辺エリアへ回線を繋いで!!!…………リリー?リリー!!!!」

 

「!、は、はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

8月7日 23:10 "Noah"

 私とリリーは専門チームに引き継ぎ、今休憩室にいる。

 

「お疲れさま。」

 

「……………お疲れ。」

 青ざめた顔でリリーが答える。

 

「どうしたの?あなたさっきから少し変よ。私が声かけたときボーッとしてたじゃない。いつもなら言う前に動き出してるあなたがさぁ。」

 

「…………何でもないわ。」

 

「何でもないってことはないでしょう。話したくないなら話さなくても良いわ。でも、一人で抱え込むのはよくないと思うの。」

 

「……………。」

 

「頼りないかもしれないけど、私でよければ相談に乗るわよ。」

 

「…………聞いたら私の事嫌いになるかもよ?」

 

「どんな話でも嫌いになんかならないわよ。私たち友達でしょう?」

 

「…………ありがとう。聞いてくれる?」

 

「もっちろん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私がイギリス出身だってことは言ったわよね?」

 

「えぇ。…………まさかエリアCは?」

 

「私の生まれ育った町。」

 

「そんな!」

 

「でも、それは別に構わないの。」

 

「えっ?」

 

「私は故郷自体には未練はないの。」

 

「未練はない?………故郷なんでしょう?」

 

「ガストレア大戦。」

 

「っ!」

 

「あれで、父、母、兄、肉親はみんな死んでしまったわ。

 友達もたくさんいなくなってしまった。………でも、」

 

「でも?」

 

「私には夫がいたの。」

 

「結婚していたのね………。」

 

「嘘ついていてごねんなさいね。夫とは高校時代から付き合っていてね、20歳になって結婚したの。」

 

「幸せだったわ。………あの日まではね。」

 

「大戦の日ね。」

 

「えぇ、あの日から全てが変わってしまった。多くの大切な人がいなくなってしまったけど、夫は生きていた。夫も夫の両親も優しくしてくれた。

 ………そのうち妊娠していることがわかったの。

皆喜んでくれたわ。私も嬉しかった。この子は希望だと、絶望のなかで輝く星だと思った。でも、」

 

「まさか、その子は、」

 

「えぇ、呪われた子供だった。

 私は別に呪われた子供でも私の子供には違わないと思った。でも、」

 

「周りはそれを許さなかった。」

 

「えぇ。でもこれはただの言い訳だわ。私も結局あの子を捨てたことに変わりはないから。」

 

「…………………。」

 

「それから、夫とも、夫の両親ともうまくいかなくなった。その後子供はなかなかできなくてね。そのうち夫は私に暴力を振るうようになった。夫の両親はそれを知っていても止めないで私を罵倒した。お前が悪いんだ。呪われた子供なんて生みやがって。穢らわしい。気持ち悪い。そんなことを毎日言われてね。さすがに耐えられなくなって逃げるようにしてここに入ったの。」

 

「………………。」

 私は黙って彼女を抱きしめた。

「!、ッ、ウッ、ウッ、わ、わたし、、わたし、ウウゥッ、ヒクッ、ウッ、」

 

「辛かったね。」

 

「ウッ、ぅわあぁぁぁぁぁ!!」

 大きな声をあげて泣きはじめてしまった。そして、ずっと溜め込んでいた苦しみを、まるでダムが決壊したかのように一気に語りはじめた。

「わたし、私ね、あの子に申し訳なくって。毎日毎日夢にあの子が出てきて何で私を捨てたの?って、ひどい!って、お前は悪魔だ。って言ってくるの。もう、どうしたら良いのかわからなくって、ウッ、クッ、ウッ、ヒグッ。」

「ぅわあぁぁぁぁあぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いた?」

 

「………えぇ。…………ありがとう。」

 

「あのさ、子供を捨てたって言うけどどうしたの?」

 

「教会の前に捨てたの。でも、呪われた子供が育ててもらえているかどうか。ましてや、大戦後で経済も混乱していたし、食料もなかった。孤児もたくさんいたなかでどうなったのか………………。」

 

「何かその子だとわかる事ってないの?」

 

「……?せめて、神のご加護があるようにって十字架のアクセサリーを握らせたわ。………私の気休めだけどね。」

 

「よしっ!」

 

「どうしたの?」

 

「今度有給とってエリアCに行こう!」

 

「えっ?」

 

「その子を探しましょう?」

 

「でもっ……………」

 

「気になるんでしょう?」

 

「……………えぇ。」

 

「じゃあ、決まり!」

 

「ちょっと、」

 

「さぁ、戻るわよ!」

 

 抗議しようとするリリーの声を完全に無視して、ソフィーは歩いていってしまった。その後ろ姿を見つつ、リリーは一人呟いた。

 

「……………………ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月8日 2:24 イギリス、エリアC

 

「モノリスが!モノリスが破壊された!!」

 

「もう、ダメだ!」

 

「「うわあああああああ!」」

「「いやああああああああ!」」

 

「最終防衛ラインを越えて多くのガストレアが街に侵入しています!」

 

「民警は!?」

 

「皆キャンサーの対処に当たっています!」

 

「軍は!」

 

「同じです!」

 

「くそっ!」

 

「近隣エリアからの応援はまだか!」

 

「各エリア応援を拒否!」

 

「何だと!?」

 

「くっそおおおおおおお!!!」

 

 

 

 

同時刻 "Noah"

「エリアA、応援を拒否!」

 

「同じくエリアB、応援拒否!」

 

「糞が!」

 

「5番モノリス倒壊!」

 

「なんだと!」

 

「エリアEから救援をするとの連絡!」

 

「エリアDも救援するとの事!」

 

「「おぉ!!!!」」

 

「だが間に合わん!!」

 

「核の使用許可は!?」

 

「近隣各国の了承がまだ………。」

 

「くそっ!」

 

 

 

8月8日 4:35 "Noah"

 

 

「キャンサー市街地へ侵入!」

 

「!、もはや核は使えん!」

 

「くそったれ!」

 

 

8月8日 6:53 "Noah"

 

「………………。エリアC、連絡途絶えました。」

 

「「「……………………。」」」

 

「そんなっ、うそ、………。」

 

「リリー……………。」

 

8月8日 7:02  "Noah"

 

「エリアC………壊滅。」

 

「くそっ!」

 

「そんな、、、」

 

「リリー!?リリーしっかりして!」

 

 

8月8日 7:30 "Noah"

 

 

「キャンサー、移動を始めました。」

 

「っ!どこに向かっている!?」

 

「海です!」

 

「キャンサー潜水!反応消失!」

 

「………引き続き警戒を、」

 

「はい。」

 

 

8月8日 8:02 "Noah"

 

「救出部隊整いました!」

 

「だがまだ出せん!待機だ!」

 

「なぜです!」

 

「わかっているだろう!未だに市街地にはガストレアがはびこっている!自殺行為だ!」

 

「しかし!」

 

「これ以上犠牲者を増やすわけにはいかん!」

 

「……………。」

 

「わかってくれ。私だって悔しい!」

 

「……………わかりました。」

 

 

 

 

 

8月8日 8:10 "Noah"

 

「リリー大丈夫?」

 

「…………えぇ、ありがとう。」

 

「あのさリリー、」

 

「探しに行けなくなっちゃったね。」

 

「…………。」

 

「もう生きてる見込みなんかない。」

 

「それは違うわ。」

 

「?」

 

「生き残りがいて、その子も生きているかもしれない。」

 

「慰めてくれてありがとう。でも、そんな奇跡みたいなこと起こるわけ………」

 

「可能性は0ではないわ。」

 

「っ!」

 

「まだ希望はある。」

 

「………。」

 

「諦めちゃ駄目よ。」

 

 

 

 

 

8月8日 11:00 "Noah"

 

「エリアC付近の各エリアに伝達!救出作戦を開始する!!」

 

「「「了解!!」」」

 

 

「っ、待ってください!この反応は!」

 

「どうした!」

 

「……ゾディアック級、キャンサーです。」

 

「なっ………」

 

「キャンサー再び出現!エリアCに向かっています!」

 

「くそっ!各エリアに様子を見るように伝えろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャンサー、エリアC到達まで後2分!」

 

「何も、できない、のか。」

 

 

 

 

 

「街中に高エネルギー反応!!」

 

「「「「「?」」」」」

 

「………赤い?光?」

 モニターが赤く染まる。

 

「何事!?」

 

「わかりません!」

 

 突如画面を染めた赤い光が晴れると

 

「なっ!」

 

「キャ、キャンサー右半身ロスト!」

 

「生き残りがいたの?」

 

「だがあの威力はなんだ!!核の使用は許可されておらんぞ!!」

 

「核では、ありません。」

 

「じゃあ何だ!!」

 

「不明です…………。」

 

「再び高エネルギー反応!!」

 

「!、連発だと!?」

 

 再びモニターが赤く染まる。その後エネルギー反応が立て続けにあり、再び視界が復活したときには、

 

「「「「!!?!!?」」」」

 

「っ、キャ、キャンサー、消、失。」

 

「「「「………………。」」」」

 

「………何が起きたの?」

 

 

 

 

8月8日 14:02 "Noah"

 

「今回観測された高エネルギー反応とゾディアックキャンサーの消滅を受けて元々の調査隊に加えて特別調査チームが組まれることとなった。多くのエリアから各方面の研究者、民警、軍が参加するが、我々もそこに参加することとなった。」

「参加者は追って連絡する!」

 

「以上!解散!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

8月8日 16:17 "Noah"

 

「リリー、ソフィー、特別調査チームに参加してみないか?」

 そういってきたのは同期のマイク。彼は俗に言うエリートで若くしてかなりの出世をしている。

 

「「えっ、」」

 

「ソフィーは確か大学でエネルギーについて研究していたね。」

 

「まぁ、そうですが。」

 

「何より君は………その、男より強いからね。ハハハハハハ………。いや、ごめんごめん、そんなに睨まないでくれ。」

 

「あの、私はなぜ?」

 

「君はエリアC出身者だよね?」

 

「………えぇ。」

 

「見る影もないとはいえ土地勘のある者がいたほうがなにかといいのでね。辛いだろうが、やってはくれないだろうか?」

 

「………わかりました。」

 

「では頼むよ二人とも。」

 

「ちょっと!私に許可はとらないの!?」

 

「必要あるか?」

 

「えっ?」

 

「リリーを支えてやってくれ。」

 

「えっ!?」

 

「リリー。見つかるといいな。」

 

「ちょっと、あんたどこまで知って、」

 

「悪い!もういかなきゃ、ごめんな!」

 

「……………行っちゃった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、全く……。決まっていた選考のメンバーを変えるの大変だったんだからな。絶対見つけてこいよ。」

 マイクは一人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

8月8日 18:00 "Noah"

 

「まだ出発できないんですか!」

 

「異常な数のガストレアがいるのだ!相当な兵力がいる!まだ無理だ!」

 

「くっ……………。」

 

8月8日 19:09 "Noah"

 

「完全に日が落ちた………。」

 

「これでは今日中の捜索は無理ではないか!」

 

「くっそおおおおおおお!」

 

 

8月9日 0:24 "Noah"

 

「リリー、ソフィー。君たちはBグループの5班に配属だ!」

 

「「はいっ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よろしく!僕はBグループ5班の班長である民警のササキ・コウスケだ!ip序列は468位。こいつはイニシエーターのササキ・カオリだ!よろしくな!」

 

「リリーです。よろしくお願いいたします。」

 

「ソフィーです。よろしく頼む。

失礼ですが、お二人は兄妹ですか?」

 

「えぇ………。全く不本意ながら。」

 

「えっ?」

 

「さて行きましょう!皆さん待ってますよ!」

 

 

 

 

8月9日 2:00 "Noah"

 

「もう一度作戦を説明する!」

「各ポイントにバラニウムを散布。周辺のガストレアを少なくし、ip序列1000位以上の民警が複数人で降下。周辺のガストレアを倒してくれ。続いてバラニウム製の盾をもった各国軍隊が降下し円形になり、円形の安全区域を作る!そのエリアを徐々に広げつつ救出と調査にあたる!作戦は日の出とともに開始する!以上だ!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

 

 

 

8月9日 5:00 "Noah"

 

 

 

「各国も準備が整った。」

「作戦開始!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月9日 7:10 エリアC

 

「ライブ、その十字架は?」

 

「捨てられていた私が持っていたそうです。」

 

「そうか。もしかしたら君の親が持たせたのかもな。」

 

「そうかもしれませんね。」

 

「憎いか?」

 

「憎くないと言ったら嘘になる。でもしょうがなかったと思うの。」

 

「会いたいか?」

 

「う~ん。少し前までは会って嫌みの一つでも言ってやろうと思ってたけど、今は全然。だって私には優しいお父さんがいるもの。」

 

「そうか。」

 

「うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の話はおしまい。それより、お願いがあるの。」

 

「何だ?」

 

「私に魔術を教えて。」

 

「別に私は魔術師ではない。教えられなどしない。」

 

「嘘。あの弓と剣。魔術でしょ?」

 

「……………。」

 

「この前魔術が危ないものだってことも魔術師が目的のために手段を選ばないとても危険な人達だってこともわかった。」

 

「わかったのならなぜ?」

 

「強くなりたいの。………弱いままは嫌なの。守られてばっかは嫌なの。」

 

「…………………。」

 

「いつまでもお父さんに守られているわけにはいかない。こんな世界だもの。自分の事は自分で守れるようになりたい。それに、化け物(ガストレア)の力は使いたくないの。」

 

「………。」

 確かに自衛の術はあった方がいい。いつなんどきガストレアに襲われるかわからない。しかも彼女の力は使えば使うほど彼女の体を蝕むようだ。ならば彼女が呪われた力を使わないで済むように別の力があった方がいいかもしれない。

「わかった。私は基礎しか教えられんがそれでもいいか?」

 

「うんっ!」

 

「私の指導は厳しいぞ?」

 

「構いません!師匠!!」

 

 




登場人物紹介

□マイク
 エリートであり、"Noah"では若くして重要な役職につく。切れ者。ソフィーとは同期で長い付き合い。
□ササキ・コウスケ
 ip序列468位の民警。妹でもあるイニシエーターを道具としか思っていない。妹の力を使って自身の名声を高めようとしている。
  三本の刀を持っており、そのうちニ本はバラニウムでできていてガストレアを一刀両断する。基本、一刀流でニ本あるのは予備として。最後の一本は普通の鉄でできている長刀。彼いわく、「人を切るにはこっちの方が便利。」だそうだ。この長刀、鉄さえ切ると言われる業物。かつてある剣豪が愛用したようであるが、その人物の名前は伝わっていない。
 彼は自身を、「佐々木小次郎」の子孫としているが、詳細は不明。しかし、架空の存在である佐々木小次郎の子孫であるとは考えにくい。
 彼の実家は「佐々木道場」という道場。
□ササキ・カオリ
 ササキ・コウスケの妹でイニシエーター。誰からも愛情を受けずに育つ。剣に優れ、刀で戦う。一刀流。
 自身が道具として使われていることに気づいているが、もはや諦めており、ただ命令を遂行している。しかし、心の奥底では「愛情」や「絆」を求めている。

また、ゾディアックの特性や、"Noah"は完全にオリジナルです。


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一章最終話~旅立ち~

 

 

 

「やはりダメだったよ。」

 

「そうですか………。」

 

 赤い弓兵は仕方がないとわりきった様子で、少女は納得できない様子で言う。

 二人は生き残りの捜索をしていたのだ。すでに弓兵は少女が泣きつかれて眠ってしまったときに一度軽く捜索はしていたのだが、彼のマスターの要求で再び探している。

 

 しかし、結果は変わらない。

 

   ーーーーー生存者無し。

 

 ライブの耳にも何も聞こえてはこない。何度かライブの耳が拾った声のもとに行ってみたが、もう手遅れであったり、ほとんどガストレアと成り果てていたりした。

 

 ガストレア襲撃時には瓦礫の下等で生きていた人々も皆、あの火災によって死に絶えていた。

 

 全く、何から何まであの時と同じだ。私のみが生き延び救われたあの日に・・・・。

 今私は泣いているマスターを抱き締めている。願わくば彼女が私のように、その身は誰かのためにあらねばならない等という考えにとらわれる事がないようにと思う。

 否、それはありえない。彼女は私とは違う。この子はこの子だけの道を歩むはずだ。

 だがもしも、彼女が地獄への道を歩みそうになれば私が止めればいい。私は爺さんとは違い、彼女のそばにいて見守っていくことができるのだから。

 

 今私達は一つの亡骸の前にいる。先程、ライブの耳が拾った音をもとにここを捜してみると、少女がいた。呪われた子供たちの一人であろう赤い瞳の少女は生きていた。最後まで戦っていたのだろう。力の過剰行使によってか、体の大半がガストレアとなっていた。

 その赤い瞳は同じ力をもった少女に向けられていた。もはや思考さえまともに定まらないであろう状態でありながら、彼女の瞳はその意思を雄弁に伝えていた。

 ーー死なせてほしい。人間として。同じ呪い(さだめ)をもったあなたに。

 少女の瞳はそう語っていた。

 

 その瞳を向けられた少女、ライブはその意思を一瞬の内に理解した。理解してしまった。聡明な彼女は自分がどうするべきかすぐにわかったのだろう。小さな拳を握りしめ、歯を食い縛りながら、震えた、それでいて決意に満ちた声で言った。

 

「剣を貸して。」

 

 私は彼女たちの意思を尊重した。彼女に干将を渡す。彼女はそれを受け取り、そしてーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「うん。もう………平気。」

 

「後悔しているのか?」

 わかりきっていることをあえて聞く。彼女は首を左右に振って、

「ううん。後悔はしてない。そんなことしていたらあの子に失礼だよ。」

 

「…………そうだな。」

 

「ただ、誓っていたの。」

 

「何を?」

 

「精一杯生きていくって。ここでなくなった皆の分も精一杯生きていくって。」

 

「そうか………。」

 やはり彼女は私とは違う。彼女が自分の命を軽んじ、無謀な自己犠牲をすることはないだろう。私はそう確信した。

 

 

 

 

 

 

「あ!」

 

「どうした?」

 

「なにかこっちに来る。」

 

「ガストレアか?」

 

「ヘリコプター、かな?」

 

「成る程。他のエリアの者たちだろう。救助、いや救助とは名ばかりで、大方、キャンサーの消滅に関しての調査にでも来たのかもな。」

 

「お父さんは見つかったら不味いんじゃない?」

 

「確かにな。」

 今この街には私たちしかいない。自ずとキャンサーを始末したのは私たちとなる。受肉しているとはいえ、私は英霊。神秘の塊である私が調べられ、その存在が世間に知られるのはまずい。また、英霊の力を悪用しようとする輩もいるかもしれない。

 

「それに、いつまでもこの街にいるわけにもいかないよね。」

 

「ならばどうするのだ?」

 

「旅にでない?」

 

「旅?」

 

「そう。いろんなエリアにいって、いろんな人と会って、いろんなものを見るの。きっとすごく楽しい!」

 

「こことたいして変わらないかもしれないぞ?」

 

「それでもいいよ。お父さんがいれば、きっとどこにいっても楽しいから。」

 

「!っ、そ、そうか。」

 

「赤くなってる~♪」

 

「う、うるさい!だが、エリアの外はガストレアの巣窟なのだろう?危険ではないか?」

 

「守ってくれるんでしょ?」

 

「………君は守られてばかりは嫌なのではなかったか?」

 

「いつまでも守られてばっかは嫌っていったでしょ?今はまだお父さんに守られていてあげる!」

 

「「………………。」」

 

「…………ふっ、」

「…………くすっ、」

 

「「ハハ!ハハハハハハ!」」

 私たちは腹を抱えて笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備できたな。」

 

「うん。」

 

 私たちは瓦礫の中から集めてあった缶詰などの食糧や日常用品を投影した風呂敷に包み、ライブの提案で真っ黒い布を羽織っている。というのも、荷物をまとめているときに調査が本格的に始まってしまったからだ。

 

「出発だ!」

 

 

 

 

 

 

 

ー ー ー ー

 

 

「映像を見ていたとはいえ、これはひどいわね………。」

 

「そうね………。」

 

「「………………。」」

 

「さぁ!探しましょう、リリー!」

 

「…………えぇ、ソフィー。」

 

 

ー ー ー ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達は調査隊に見つからないようにしながら建物の影から影へ移動している。ここまでは順調だ。

 

 しかし、何度目かの移動の時に

「きゃっ!」

 ライブがこけた。それも盛大に。このままでは見つかってしまう。私は急いで駆け寄り声をかけようとしたが、

 

 

 

 

 

「あの………大丈夫?」 

 一人の金髪・・の女性が私たちに声をかけてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー ー ー ー

 

 

「あれ?」

 

「リリー、どうしたの?」

 

「あんな人たち班にいたかしら?」

 

「さぁ?どうだったかしら?つれてるのはイニシエーターかしら?だとすると民警?何で黒ずくめなのかしら?」

 

「!」

 子供が転ぶ。

 

「ソフィー、ちょっと待ってて!」

 

「ちょっと!私もいくわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの………大丈夫?」

 私は倒れている少女に手を差しだし、立ち上がらせつつたずねた。

 

「…………うん、平気です。………ありがとうございます。………行こう?お父さん。」

 そう言ってそのまま子供はお父さん?とどこかにいってしまおうとする。そして………

 

「!、それは………」

 私は見た。彼女の首もとから除く十字架のアクセサリーを。見覚えのあるアクセサリーを。

 

「す、すみません!!」

 

「なんですか?」

 黒い布をまとっていてもわかる筋肉をつけた男が振り替える。

 私は怯みそうになるが、これだけは聞いていかなければと勇気を振り絞って子供の方を向いて言う。

「あなたは今、幸せ?」

 

 すると、子供は振り向いて、一瞬の躊躇いもなく、

「うん!!」

 布から覗いた金髪の少女の顔はとても幸せそうに笑っていた。

 

「そう。よかった………。」

 

「その子をよろしくお願いします。」

 その一言で怪訝そうにしていた男は何かを悟ったようで、布から覗く鷹のように鋭い目に強い決意を滲ませて言った。

「任せろ。案ずるな、この子は絶対に守りきって見せる。」

 そう言うと、男は子供をつれて歩いていった。

「…………ありがとうございます。」

 私はその後ろ姿に向かって深々と頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もういいの?」

 一部始終を見ていた友人、ソフィーは私に尋ねた。

 

「えぇ。もう大丈夫。」

 

「そう。よかったわね。」

 

「ありがとう。」

 

「どういたしまして。」

 

 

 

ー ー ー ー

 

 

 

 

 

 

 

 

「ライブ。改めて誓おう。」

 

「?」

 

「君を必ず護り抜く。」

 

「ありがとう!私の"正義の味方"さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて一章終了です!読んでくださった方、ありがとうございました!よろしければ、これからも、赤い瞳と赤い弓兵シリーズをよろしくお願いいたします!

P.S.
評価、コメントお待ちしております(誹謗中傷はやめてください)。


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二章~旅~
二章第一話


新章です!(*ノ゚Д゚)八(*゚Д゚*)八(゚Д゚*)ノィェーィ!
お待たせしました!m(._.)m
え、………待ってない?=(;゚;Д;゚;;)⇒グサッ!!




 

 

 俺はライブ!放浪の旅をしている!風の吹くまま気の向くまま、あてもなくさすらう孤独な一人旅。俺の歩みは誰にも止められねぇ!

 ………はい。すみません。ふざけました。改めまして、私はライブ。8才です。旅をしているのは本当だけど、決して一人旅なんかじゃないです。私の前には赤い外套を繕った男の人の、頼もしい大きな背中がある。この人はエミヤ シロウ。そう、この人こそ私の旅の同伴者であり、正義の味方であり、そして私のお父さんです!

 

「ライブ、疲れてはいないか?」

 お父さんが振り返って聞いてきた。今は8月。この時期はとても暑い。カラッとしているからとても喉が渇く。確かに疲れてきたけど、まだ出発してから全然進んでいない。強くなるって決めたの。だから、

「平気。まだ、歩けるよ…………。」

 しかし、こんな嘘が通じるお父さんではない。

「無理をすることはない。休憩にしよう。」

「でも、まだ全然進んでない。」

「いいじゃないか。別に何か目的があるわけではないだろう?急ぐ必要などない。………実を言うとな、私はもう限界でね。情けない話だが休みたい。どうだ?休んではくれないか?」

 嘘。英雄とも呼ばれたあなたがこの程度で疲れるわけないじゃない。………本当にこの人は優しいな。

「もう………しょうがないなぁ。」

「ふっ、そうだな。しょうがない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達は今、横たわっていた枯木に並んで座っている。崩壊した家屋が瓦礫となってそこかしこにあり、この辺にもたくさんの人が住んでいたのだろうことがわかった。だが今は辺り一面が草花でおおわれている。主を失った古ぼけた人形が一体転がって、その翠の瞳を雲一つ無い蒼い空に向けていた。

「紅茶でも飲むか?」

「うん。」

 お父さんは何時も持ち歩いているという茶葉をだし、水筒を出す。続いて何もない所からティーセットを出した。

 これがお父さんの魔法「投影」らしい。剣であれば見ただけで複製し、自身の世界「固有結界」に貯蔵する魔法で、その応用でその他のものも、ある程度は投影できる。この話を聞いたとき、単純に凄いと思った。だけど、彼の魔法は少々異質で、他の人がやっても投影品はすぐ消えてしまうそうだ。

 ーー私はどんな魔法が使えるのだろう?どんな魔法が使いたいのだろう?

 

「出来たぞ。」

 考え事をしている間に紅茶は完成したようだ。すごく美味しそうな香りがする。紅茶の香りの差異なんて私にはわからないし、上手く表現できないけど、美味しそうであることは間違いない。

 カップを受け取り一口飲む。

 

 ーーーーやっぱり美味しい。

 

 他の紅茶を飲んだことはないけど、これがとっても美味しいことはわかった。これ以上の飲み物なんて想像できない。

 

 

 

「これからどこへいくの?」

 

「全く、旅に出たは良いが、ここまで無計画とはな。先が思いやられる。」

 

「しょうがないじゃない。エリアの外になんか出たこと無いんだもの……………。」

 

「ふっ、心配することはない。私は以前、この国で暮らしていたことがあってね。そのときと大分変わっているとはいえ、土地勘はあるつもりだ。」

 

「なら安心だね!」

 

「はぁ、全く……世話のかかるマスターだ。」

 

「それで結局どこにいくの?」

 

「ロンドンに行こうと思っている。」

 

「ロンドン?」

 

「あぁ。あれほどの大都市だ。滅んではおるまい。私も君も今の世界を知らなすぎる。ロンドンに行って情報を集めることにしようと思う。」

 

「わかった。でも、遠いんじゃないの?」

 

「直線距離でも700㎞はあるからな………このペースで行けば……半年以上はかかるな。」

 

「そっかぁ、半年………半年!!?」

 

「徒歩だからな。」

 

「ど、どうしよう………。」

 

「なに、心配することはない。………そろそろいくぞ。」

 そう言いながらお父さんは私を抱き抱えた。

「へ?」

 

「私は英霊だ。この程度の距離、どうということはない。」

 

「ダメ!おろして!私は強くなるって決めたの!自分で歩かなきゃ!」

 私はじたばたと手足を動かすが、お父さんはびくともしない。

 

「別に脚力や体力だけが強さではないだろう?そんなものは後からどうとでもなる。君はまだ幼く、時間はたくさんある。無理をするな。今出来る事をすれば良い。」

 

「今出来る事?」

 

「魔法や知識、その他にもいろいろ。強くなるために出来る事はたくさんあるだろう。……それに、」

 

「それに?」

 

「幼いうちは甘えておけ。今からそれでは"普通"の幸せとやらは掴めんぞ?……それに、、何より、その、…そのだな…」

 お父さんが言いにくそうにしてる。なんだろう?

「……君は私の、……む、娘だ!」

 

「っ!」

 

「だから、遠慮せず甘えておけ!!!」

 

「………う、ん。ウッウッ…ウクッ…ヒクッ」

 

「お、おい。ど、どうした。泣くな。」

 

「ごめん。嬉しく、て。」

 

「そうか………」

 

「ありがとう……」

 

「それじゃあ行こうか。」

 

「うん。お願い、お父さん。」

 

「了解した。いくぞライブ。」

 

 

~続く~





~あとがき~
 ついに新章突入しました。一章は全体を通してシリーズのプロローグ。二章は"成長"がテーマで、旅を通していろいろな出会いや別れ、楽しいことや危険なこと、様々な経験を通して成長していくライブとそれを見守るエミヤを書いていきます。
 また、この作品を書くに当たってイギリスの広さや気候にも配慮しましたが、変なところがあったらいってください。


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二章二話~ロンドンへの旅路その1~

遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。


「わあぁぁ!気持ちいい!」

 私は今()()()()()()()

 頭上には蒼が、蒼い空が高く、どこまでも高く広がっている。

 眼下には碧が、青々とした若草色が広がっている。地平線まで続くその様はさながら海のようだ。

 

 

 そしてもう一色、若草色の絨毯と水色の天井の間を駆けている緋がある。

 

「はっっやあぁぁぁぁい!!!」

 

 緋に包まれた少女、ライブはその美しい金色の髪を揺らしながら大声で叫ぶ。

 

「はぁ、気持ちいいのは分かるが、もう少し声を押さえてくれないか?」

 

 そしてライブを抱える赤い弓兵、エミヤはため息を吐きつつ言う。

 

「はぁーい………。こんなに気持ちいいのになぁ………。ねぇ!あと何日ぐらいでロンドンにつくの?」

 

「ふむ、そうだな。この調子なら一週間かからないで行けるだろうな」

 

「一週間!?私は半年もかかるのに、、、、、」

 

「君はまだ8才だろう?歩幅的にも体力的にも、時間がかかって当たり前だ。それに私は、」

 

「英霊、でしょ!もう!いつかお父さんよりも強くなってやるんだから!」

 

 そう言ってライブは頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。

 

「お、おい。なにを怒っているんだ」

 

「知らない!」

 

「はぁ、何でさ、、、、」

 

 ため息を吐きつつ少女を抱えて弓兵は駆ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 刻はすぎて夜

 空には美しく大きな月が輝いているためか、漆黒の空からは恐怖感は感じない。

「さて、レッスン開始といこうか」

 

「はい先生!」

 

 エミヤの授業が始まった。

 ロンドンへの旅の途中、エミヤは夜の間はライブに魔術を教えることとなった。魔術だけではなく、言語や文字を初め、歴史や科学、数学等、さらには家事や戦闘方法に至るまで様々なことを教えることになっている。

 

「じゃあ、早速炎を出したり、空を飛んだりするのを「戯け!!」・・・・。」

 

「魔法とはそういうものではない!いいか、魔法というのは・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・というものなのだ。わかったか?」

 

「うぅぅ、魔術、魔法、回路、神秘、根源、………………」

 ライブは頭を抱えて唸っている。気のせいだろうか、エミヤにはライブの頭から湯気があがっているように見える。少し詰め込みすぎた。そう思った弓兵は優しげな笑みを浮かべて言った。

 

「今日はそろそろ終わりにしようか」

 

「えっ、そんなぁ………。」

 

「君はもう限界だろう?無理することはない。時間はたっぷりとある」

 

「でも、、、、」

 

「だが………そうだな。回路の切り替えだけでもできるようにしておくか。」

 

「本当に!?ありがとう!……………回路の切り替えって?」

 

「回路の切り替えというのはな、・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・なんだ。」

 

「………?」

 

 ライブは首をかしげる。

 

「はぁ、やはり難しいか………。要するにスイッチのオンとオフだ」

 

「なるほど」

 

「人によって違うが、何かをイメージしたり、何かの行為を通してスイッチの切り替えをするんだ。」

 

「私のスイッチ………。お父さんのスイッチはあのトレース・オンってやつ?」

 

「あれは少し違うんだ。…………じいさ、私の父親が………」

 

 エミヤは何かを懐かしむような、それでいてひどく悲しげな目をして漆黒の空を見つめながら、呟くようにいった。

 

「お父さんのお父さん?」

 

「………いや、この話はやめておこう。」

 

 ライブに話しかけられ、我に帰ったようにはっとしたエミヤだったが、それも一瞬のことですぐに頭を降ってその表情を隠した。

 

「………それもいつか話してくれるの?」

 

「あぁ。また、いつかな」

 

「………わかった」

 

「さて、私は少し遠くにいっていよう。寝る時間になったらまた来る」

 

「へ?」

 

「さっきもいった通り、ライブの回路の切り替えはライブだけのものだ。私がいても役にはたてないし、かえって邪魔になる。君だけのイメージを掴むんだ」

 

「そっかぁ………わかった」

 

「頑張れよ」

 

「うん!」

 

 エミヤはライブの返事を見届けると背中を向けて去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イメージはすぐに見つかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはライブがガストレアの力を使うときの感覚に似ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ、!」

 

 スイッチの切り替えを行おうとしたライブをすさまじい激痛が襲う。それは、物理的な体の痛みであり、心の痛みでもあった。

 

(苦しい。痛い。これが命さえ代償とする魔術?)

 

 イメージがガストレアのイメージだったためか、いままで受けてきた暴力が次々と頭に浮かぶ。

 

「や、め、て、、、」

 

 助けを求めるも回りには誰もいない。正義の味方はいない。

 

「だ、、め」

 

 だめだ。ここで挫けたら。強くなるって決めたんだ。皆のぶんも幸せになるって、強く生きるって決めたんだ。そして私もいつか、お父さんのように、()()()()()を守れるように………。

 

「くぅ、くっ、ぐぅぅ、、」

 静かに痛みに耐えるライブ。地獄のような時間はいつまでも続くように感じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どれくらいそうしていただろうか。いつしか痛みはなくなっていた。

 

「………終わっ、った?」

 

 気づけば身体中に力が溢れているような気がする。

 

「!」

 

 そこでライブは信じられない光景を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、それを不思議に思う間もなく、ライブの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライブが最後に見たのは、倒れる自分を支える彼女の父の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………魔眼とは、な。」

 

 少女を寝かせた弓兵は呟くように言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「大切な誰か」という言葉がありますが、そこでは、エミヤの生き方との違いを出しています。すべてを救うのではない。大切な人を最後まで守り抜く。そんな感じでしょうか。

評価・コメントお待ちしております。


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二章三話~ロンドンへの旅路②~

 


 東の空が明るくなり始めた。まもなく夜が明けるのだろう。

 

「さて、どうしたものか…」

 

 弓兵は悩んでいた。一晩中悩み続けた弓兵は、未だ答えを出せずにいた。

 

 彼が悩んでいたのは、彼の義娘、ライブのことだ。彼女は数時間前、魔術回路を開いた。そこまでは良い。だが、その事が引き金となったのだろう。彼女に生まれつき備わっていたと思われる「魔眼」が目覚めてしまったのだ。それは生前、世界中を旅し、様々な魔術を見聞きした弓兵の知識にも無いものであった。だが、時計塔の基準に照らし合わせるのであれば、「黄金」に属する可能性もあるのではないだろうか、と弓兵は考える。

 魔術は代償を必要とする。強すぎる魔術は身を滅ぼしかねない。「魔眼」というものは、独立した魔術回路でありながら、されどその身の一部でもある。それがライブにどんな影響を与えるかわかったものではない。

 強すぎる力は忌避され排斥される。人々の「平穏」を壊しかねないからだ。「黄金」に属するほどの魔眼保持者は最悪の場合、「封印指定」されてしまうこともある。

 

 この世界に時計塔が存在するかどうかは不明だ。存在したとして、それが私の世界線と同じ仕組みかどうかもわからない。しかし、もしも時計塔が存在した場合、彼女は危険な立場になってしまう可能性もある。仮に存在しなかったとしても、彼女が魔眼(特異な力)を持っていることは変わらない。その力を狙う者もいるかもしれないし、力が彼女を飲み込んでしまうかもしれない。

 

 未だ少女は目覚めない。弓兵は少女の顔を覗き、溜め息をつく。数時間前より遥かに良くなった顔色に安堵すると共に、答えを出せずにいるなかで、もうじき目覚める少女に何と説明すればよいのかわからず、そんな自分に心底呆れていたからだ。

 

 ふと、義父(じいさん)のことが頭に浮かぶ。彼もこのように悩んだのだろうか。私に魔術回路があるとわかったとき、私が魔術を教えてくれと言ったとき、彼はどのように悩み、どのように答えを出したのだろうか。

 

「藤ねぇ…か、」

 

 しばらく考えて、ふと頭に浮かんだのは、自分にとって姉のような存在だった女性。じいさんが相談するとしたら彼女ではないだろうか。

 

 もしも「衛宮士郎」なら誰に相談するのだろうか。藤ねぇ、一成、慎二、遠坂、桜、美綴、ルヴィア、セイバー、イリヤ………。ここまで考えて、改めて自分は、素晴らしい人達に囲まれていたのだな、と思う。理想を求め続け、立ち止まらずに闇雲に走り続けたが、それでも彼らは「家族」や「友」でいてくれた。だが私は、彼らを少しも頼らなかった。私の理想は、私一人が背負って行くものだと思っていたから……いや違う。ただ怖かったのだ。私の理想が、私自身が否定されるのが。彼らの手を振り払い、突き放し、ただただ走り続けた。

 

 気づくと、弓兵は泣いていた。

 

「涙など、とうに枯れたと思っていたが…」

 

 涙は止まらない。弓兵は自分の感情がわからなかった。わかっている。自分の進んできた道は間違いなどではなかったとわかっている。後悔はあれど、「正義の味方」を目指して駆け抜けた日々は間違いではなかった。では、何故私は泣いている?わからない。わからないが、涙は止まらない。

 

 月の美しい闇夜に、「正義」を体現した男の、静かな嗚咽が鳴り響いた。

 

 

 




 しばらくして、落ち着きを取り戻した弓兵は、あることを思い立ち、一人呟いた。

「セイバー、か…」


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閑話

 

アーサー王

 

 

 

彼の騎士王についてここに記す。

 

ブリテン王、ユーサー・ペンドラゴンは、

 

敵国の王妃と恋に落ち、

 

彼女との間に子を授かる。

 

その子は魔術師マーリンの元へ預けられた。

 

名を、アーサー。

 

やがて、父王ユーサーが没し、

 

次期王の座を巡る争いが始まった。

 

混乱を極めた情勢の中、

 

カンタベリー大聖堂に現れたのは、

 

岩に刺さった一振りの剣。

 

曰く、選定の剣。

 

剣を抜いたものが正当な王となる。

 

王の証とされたその剣は、

 

されど

 

何者も抜くこと叶わなかった…

 

しかしそれは、ただ一人を除いて、であるが。

 

ただ一人、剣を抜けた者がいた。

 

王の器たる者がいた。

 

その者こそが、アーサー。

 

アーサー王である。

 

アーサーは王となり、

 

数多の戦を超え、

 

数多の怪物を打ち倒した。

 

騎士道が廃れ、花と散りゆく時代、

 

ブリテンに一時の平和と、

 

最後の繁栄をもたらした。

 

常に、ブリテンの民のために、

 

力なき者たちのためにあろうとし、

 

私欲を捨てた王だった。

 

弱きを助け強きをくじく、

 

そんな己の正義を貫いた王だった。

 

その正しさに騎士たちは、焦がれ、

 

民たちは希望を見た。

 

アーサーはまさしく、

 

「王」だった。

 

だが、アーサーは「王」であるために、

 

弱き者達のための「王」であるために、

 

「自分」を捨てた。

 

そんな「王」の姿に

 

人々は、恐怖を抱き、

 

やがて人心は離れていくこととなる。

 

孤独の中、それでもアーサーは、

 

国のために、

 

国の民のために戦い続ける。

 

しかし、

 

神秘を失いゆくブリテンの、

 

滅びの運命を変えることは叶わず、

 

ブリテンは滅びの道を進み続けていく。

 

やがて、叛逆により、国は二分される。

 

戦いの後、

 

アーサーは、カムランの丘にて内乱を鎮める。

 

しかし、周りを見渡せばただの一つも、

 

守ろうとしたものは残っていなかった。

 

周りにあるのは、守ろうとした数多の民の骸。

 

アーサー自身、戦いで深手を負い、

 

民の骸の上で膝を折った。

 

 

 

 

 

アーサーは死後、

 

ある地に運ばれる。

 

何者も侵すことの出来ない聖域。

 

名をアヴァロン。

 

次元のずれた位相に存在する、

 

遠き遠き、理想郷。

 

その遥か遠き地にて、

 

アーサーは傷を癒している。

 

だが、

 

やがて、ブリテンが危機に瀕したとき、

 

彼の騎士王は再び現れ、

 

ブリテンを救うという。

 

"Hīc iacet Arthūrus,

rex quondam,

rexque futūrus."

「かつての王にして未来の王、     

          アーサーここに眠る」

 

 

~名も無き歴史家の手帳より




「シロウ…貴方は今、どうしているのでしょうか…」

黄金の大地で、少女は一人呟いた。


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二章四話~騎士王の眠る地~

お待たせしました!評価・コメントお待ちしております!
わたくし、「心は豆腐」なので誹謗中傷はやめてください。


「あのね、目の前がこう、グワーってなってワワワーってなって…あれが魔術?」

 言動が少々幼い、年相応のものとなっている。余程驚いたのであろう。

「魔術の話は当分するなと言っただろう?」

「なんでなの‼」

 私の答えを聞くとライブは頬を膨らませて拗ねてしまう。

「……すまない。詳しいことは今の私に言うことはできないんだ」

 これは嘘偽りのない真実だ。今の迷いを抱えた私では何も言うことはできない。

「私に才能が無いからなの?」

 ライブは不安そうに私を見てくる。その捨てられた子猫のような目線には弱い……ここは私の柄ではないがこう言うべきか…

「断じてそうでは無い。私を召喚した者が、才能ない者であると思うか?」

「………思わない」

「私にもよくわからないことなんだ。だから、その解決のヒントを探しに行こうと思っている」

「……そうだったんだ。…ごめんなさい」

 素直に頭を下げるライブ。この子のこういうところは素晴らしい美徳だ。

「謝ることはない。君の不安は当然のものだ」

「何処に向かうの?」

「グラストンベリー、アーサー王の眠る地だ」

 

 

__________________________________

 

 

 

「アーサー王のお墓……?」

「そうだ」

「お父さんはアーサー王に会ったことがあるの?」

「あぁ」

「じゃあお父さんは円卓の騎士、なの……?」

「まさか。私はただのしがない弓兵だよ」

「じゃあお父さんにとってアーサー王は…?」

「彼の王は、私の…そうだな……」

 彼女は私にとってのなんだったのだろう。サーヴァント、ではない。そんな浅い関係ではない。戦友、とするには俺は余りに釣り合わない。師匠ではあった。憧れだった。死した今でも、かつての記憶をほとんど失った今でも、彼女は私が手を伸ばし続ける綺羅星だ。けど、なにより私は、彼女が「俺」に言ってくれたように彼女を……

「私の……」

 ここで私は、瞳を輝かせて私の応えを待っているライブの顔に気付き我に返る。危なく恥ずかしい台詞を口走るところであった。残念だったなライブ。

「秘密だ」

「・・・え?」

 ライブは鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしている。こういうときは理性的になる前に話題を変えてしまうに限る。

「さて、この話はもういいだろう。別に急ぎの旅でもない。別に寄り道をしても構わんのだろう?」

「…いいけど…ねぇどんな関係なの!」

「秘密だと言ったはずだが?」

「納得できない!」

 

 

_______________________________________

 

 

 

 それから何日か旅は続いた。その間、エミヤは魔術以外の、様々な技能をライブに教えていった。

 そして、遂にグラストンベリーが見えてきたのであった。

「墓参りか……一度来たことはあるが……」

 あの時は凜と一緒だった。彼女と共にイギリスに渡り、時計搭を訪れた。あの時、私、いや、「俺」には、全うな魔術師として生きていくという選択肢もあった。だが、その選択を前にして、「(アイツ)」の結末、理想の果てを見て、それでも俺は自分の生き方を変えられなかった。その事を後悔はしていない。確かに私もまた、「(アイツ)」と同じ道を歩んだ。磨耗に磨耗を重ね、結果として生前抱いた多くの思いすら見失った。

 「(アイツ)」と同じように「(まちがい)」を消し去ろうともした。

 だが、今は違う。私は答えを得た。私は、私の理想(正義の味方)が間違ってなどいなかったと理解できた。

 そして……

「お父さん、どうしたの?ボーッとして」

「ふっ…随分と思考に没頭してしまった。どうもこの国はなにかと縁があって敵わない」

「……?」

「昔を懐かしんでいただけさ……」

 

 

 

___________________________________

 

「着いたな…グラストンベリー修道院…騎士の王が埋葬されているとされる場所。明らかに以前と違うのは、私が既に死者である、ということだな。…死者が死者の墓参りとは…いや全く可笑しな話だ」

 一体私は何をしたいのだろうな。セイバーは既にいない。しかもこの世界の彼女はおそらく私の知っている彼女ではない。彼女に会いに来たところで声が聞けるわけでもない。ましてや悩みの相談などできるわけがない。だというのになぜ私は……

「お父さん、いってらっしゃい」

「は…?何を言っている?」

「お父さんはアーサー王となにか特別な関係だったんでしょ?私はそこに割ってはいるほど野暮じゃないよ」

「君本当に8才か…?しかし、この辺りはガストレアが少ないとは言え、いないとも言えない。君をおいていく訳には……」

「嫌だ!絶対に行かない!……それに、もしもの時はすぐに駆けつけてくれるでしょ?」

「まぁ…それはそうだが……」

「さあ行った行った!」

 そう言ってライブはグイグイと私を押す。

「わかった!わかった!行く!だがその前に準備をさせてくれ!」

 

 私は出来うる限りの対策をした。

 簡易的な結界を重ねてかけ、ライブを中心に半径200メートルに展開した。一定以上の大きさの生物が来ればわかる。この距離なら、たとえあの聖杯戦争最速の青い狗だとしてもライブに迫る前に私が立ちはだかれる。

 その他にもたっぷりとやったが、その説明は省こう。多すぎて語れない。

 

 

 

_____________________________

 

「まずは、久しぶり、とでもいっておくべきかな?セイバー」

 赤い弓兵は皮肉気に笑いながら言う。しかし、急に決まりが悪そうに顔を反らし、落ち着きがない様子になって……

「……久しぶりセイバー」

 と言った。そこにはいつもの皮肉気な笑みも、眉間の皺もなく、落ち着いた、けどちょっぴり恥ずかしげな笑顔があった。

「俺さ、英霊になったよ。やっぱり俺は俺のあり方を変えられなかった」

 

「でも、それでいいと思ってる。俺の理想、正義の味方。それが借り物の偽善であったとしても、それは絶対に間違いじゃないって気づけたから」

 

「今さ、聖杯戦争のサーヴァントも抑止の守護者も関係なく、全く知らない異世界に召喚されてるんだよ。意味わかんねぇよな?

 

「それで今はマスターである少女、ライブの……ち、父親、ということになっている……爺さん…切嗣と同じようになったんだ……」

 

「それでさ、セイバー…ライブは使えば使うほど体が蝕まれる力を持っている。その力は人々に忌み嫌われる物で、彼女はずっと虐げられてきた。今この世界には多くの怪物が溢れ、どこも安心とは言えない。そしてライブは人々からも攻撃されてしまう」

 

「勿論俺が守りきってみせるが…受肉しているとはいえ俺の現界がいつまで続くものなのかもわからない」

 

「彼女に護身の術として魔術を教えようとしたが…彼女は魔術においても、類いまれなる力を持っていた、持ちすぎていた……」

 

「彼女がその身を魔術によって滅ぼしてしまわないか、それがとても不安なんだ……」

 

「……答えなんか返ってくるわけがないよな……ありがとうセイバー、愚痴みたいなの聞いてくれて」

 「彼」は礼を言いつつ立ち上がる。

「じゃあなセイバー。また来れたら来るよ」

 そして別れの言葉を口にして、王の墓から離れていく。しかし、2、3歩進んだところで立ち止まり・・・

「……素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する

――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ………」

 それは英霊召喚の呪文。しかし彼は英霊で、しかもアーチャーだ。キャスターのクラスで現界しているわけではないし、英霊が英霊を召喚するなど、それこそ神代の魔女程のキャスターでなければ無理だ。

 そんなこと彼はわかっているのだが……

「一体私は何を期待しているのだ……」

 そう、彼は僅かに期待していた。彼の王と再び会えることを。しかしそんなことはない。

 彼は見るからにがっかりした、けれどどこか吹っ切れたような様子で、もう一度だけ王の墓へ振り返る。そして、

「俺もセイバーのこと、…!」

 なにかを言おうとした弓兵はとっさに口を閉じ顔をしかめた。

「…!この気配ッ…‼ライブ‼」

 弓兵はとてつもない速さでライブのところに向かった。

 弓兵が先程までいたところに、奇妙な紋様が浮かびはじめていることに、弓兵は気づくことができなかった。

 

 

 

 

 




fgoでマーリン召喚できたよ‼エミヤも貰えたよ‼わーい‼


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二章五話~FATE~

お待たせしました!
テスト終わったんで投稿します!



「ライブッ‼」

 

「お父さん?どうしたの?」

 

「私の後ろに隠れていろ、ライブ」

 

 ライブを私の後ろに下がらせ辺りを見渡せば、そこには、

 

「ガストレア……」

 

 ステージⅣと思われるガストレアが1体。ステージⅢと思われるガストレアが5体。

 ガストレアは前後両方からやって来る。前方からは巨大なステージⅣガストレアが一体。後方からはステージⅢガストレア五体が向かってくる。

 

「まずいな……」

 

 片方を始末しているうちにもう片方の奴らがやって来る。近づかれては弓を用いた戦法は使えない。今まで戦ってきてわかったことだが、奴らはステージⅢの時点で種類によっては並みの英霊と同等の力を持つものもいる。勿論単純な筋力においてだけであるから、技術を始めその他多くのもので圧倒的な差があり、英霊が負けることなどありえない。だが、奴らには数の優位性がある。複数のガストレアに攻められたら分が悪い。

 加えてあれは・・・

「あれは何だ……?」

 ステージⅣガストレアの体の構造。とても生物体とは思えない異形の姿。特に異質なのは肩口から伸びる二つの筒。それは細く長く伸びてガストレアの後方から生えるようについている。昆虫は腹の部分に気門と呼ばれる呼吸のための穴が空いているが、おそらくそれに近い器官から伸びているのであろう。

 では、なぜそんな器官がついているのか?考えるまでもない。細く長く伸び、中心を貫くように空洞が空いた棒状のもの。そんなもの、一つしか考えられない。

「砲台かッ‼」

 ここまで来る間に多くのガストレアと戦った。中にはガストレアを産み出し射出するようなタイプもいた。あれもそのように何か……ガストレアか、それとももっと別の何かを射出するのだろう。

 そのようなものがいることはわかっていた。だが、あの長さはなんだ?

 銃火器、に限らず何かを飛ばす装置というのは、その砲身が長ければ長い程、力を受け加速する距離が長くなり、結果としてより強く、遠くへ射出できる。

 何を打ち出すのか、どれ程の力を加えて射出するのか。そういったことは不明だが、あの長さの砲身であればここまで余裕で届くだろう。

 考えられる手段としては、三つ。

 一つ目は、ライブを抱えて最大の速度で逃げ出すというもの。だが、これは、ガストレアに狙撃、撃墜される危険性がある。

 二つ目は、ステージⅣガストレアの方に向けて宝具を射出、奴の打ち出すものと相殺しつつ、奴を討伐、直ぐ様ステージⅢガストレア5体の処理に回るというもの。これは、私がステージⅣに手こずった場合、ステージⅢに高速で移動できるものがいたら背後から襲われることになる。

 三つ目は、私本来の宝具、固有結界"無限の剣製"の展開。私の心象風景を具現化し、現実を侵食。私とライブがそこに逃げ込み、奴等がいなくなったのを見計らって戻ってくる、というもの。安全ではあるが、しかしこれは長時間固有結界を展開していなければならず、ライブの負担が大きすぎる。彼女は素質は十分だが、如何せん修行を積んでいない。彼女ではおそらく耐えられない。

 

 結果として、とれる手段は一つだけ。二つ目の方法だ。可及的速やかに前方のステージⅣを沈めて、後方の相手をする。

 ステージⅣともなればその再生力は凄まじいものであるから、最悪、ステージⅣは砲身二つを潰すだけでいい。そしてそれが再生する前に後方を一掃すればよいのだ………なんて楽観的に考えてみることはできない。

 

 

 失敗は許されない。少しのミスが命取りだ。はっきりいって絶体絶命。

 

 

 あと一人、自分と同等に戦えるものがいて、やっと解決できる程難しい局面だ。しかし、そんなものはいない。

 

 

 しかし‼私はッ‼ライブを守り抜くと誓ったのだ‼無茶でも無謀でもやり遂げるより他はない‼

 

「I am the bone……」

 

 私が詠唱を始めると……

 

「お困りのようですね。助太刀いたします」

 

 私のすぐそばで声がした。凛とした声音。可愛らしく、それでいてどことなく威厳のあるその声音。

 

「な!?君は‼」

 

 知っている。私は知っている!その声を知っているッ!!

 

「細かいことはあとです‼今は敵に集中してください‼私が前方の敵をやります‼あなたは後方を‼」

 

「…ッ‼あぁ、了解したッ‼」

 

 色々な言葉が溢れてきて、ぐちゃぐちゃになった思考を直ぐ様落ち着けて戦闘に切り替える。心強い助っ人が来てくれたとはいえ、絶体絶命には違いない。

 しかし、不思議と焦りは感じられなかった。()()とならなんでも乗り越えられる、そんな気がした。

 

 

「いくぞ()()()()!」

 

「はいッ‼」

 

 

 

 

 




いやぁ~Heaven's Feelよかったなぁ~
戦闘シーンがもう最高ッ!あの大音量!大迫力で引き込まれる戦闘シーン!最高だった!そして桜かわいすぎ!

そんでもって、アイツは外道だったなぁ~fgoとのギャップがねぇ~(知ってたけどね)

あとやっぱり麻婆は麻婆ですね。

後編も早くみたいなぁ~

評価、コメントお待ちしております!

そう言えば、fgoでアルトリア(剣)召喚できました!



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NGシーン・二章五話~FATE(偽)~

連投。没ネタです。本編とは関係ありません。


 ライブを私の後ろに下がらせ辺りを見渡せば、そこにはステージⅣと思われるガストレアが1体、ステージⅢと思われるガストレアが5体。

 ガストレアは前後両方からやって来る。前方からは巨大なステージⅣガストレアが一体。後方からはステージⅢガストレア五体が向かってくる。

 ステージⅣはこちらまで余裕で届くであろう遠距離攻撃用の砲身が二つ持っていた。

 可及的速やかに前方のステージⅣを沈めて、後方の相手をするより他にこの危機を脱する方法はない。

 ステージⅣともなればその再生力は凄まじいものであるから、最悪、ステージⅣは砲身二つを潰すだけでいい。そしてそれが再生する前に後方を一掃すればよいのだ………なんて楽観的に考えてみたりはできない。

 失敗は許されない。少しのミスが命取りだ。はっきりいって絶体絶命。

 あと一人、自分と同等に戦えるものがいて、やっと解決できる程難しい局面だ。しかし、そんなものはいない。

 しかし‼私はッ‼ライブを守り抜くと誓ったのだ‼無茶でも無謀でもやり遂げるより他はない‼

 

「I am the bone……」

 

 私が詠唱を始めると……

 

「お困りのようだね。力を貸すよ」

 

 どこからともなく声がした。

 

「まさか…セイ」

 

 弓兵が何かに期待して振り替えるとそこには、

 

「……?」

 

 振り替えるとそこには男がいた。

 

「えっと……?」

 

 髪、肌、ローブ全部白色。全身真っ白の杖持った怪しげな青年だ。

 

「どうも~花の魔術師マー…」

 

 青年の自己紹介の言葉が終わる前に……

 

人の恋路の邪魔をするなぁぁぁぁッッッッ(エクスカリバー)‼」

 

 ドオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォン

 

 凄まじい威力の光線がとんでもない轟音とともに放たれた。大地は揺れ、空気が一気に温度を上げる。そして、ガストレアたちはその光線に触れて、叫び声をあげる間もなく、一瞬にして跡形もなく蒸発し消滅していった。

 

「( ゚Д゚)」←エミヤ

「( ゚Д゚)」←ライブ

 

 エミヤとライブはひたすら呆然とするしかない。

 

「ハァハァ…お困りのようですね。…助太刀いたします」

 

 息を整えつつ、キリッとキメ顔で何事もなかったように喋り始める少女。

 

「……ア、アルトリア……」

 

 彼女の足元にはボロボロになった魔術師が倒れていた。

 

 生前色々なものを見てきた。自分の始まりのあの炎に包まれた街。多くの命が無惨に散っていく戦場。たくさんの地獄を見た。

 そんな弓兵でさえ、いや、そんな弓兵だからこそ思った。

                                                    

 

 

ここが地獄か、と。

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 



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二章六話~少女の力~

遅くなってしまい申し訳ございませんでした!


 私と彼女にそれ以外の言葉等不要だった。私は私の為すべき事など理解できたし、それは彼女もそうだったようだ。

 彼女は真っ直ぐステージⅣの方へ向かい、私は五体のステージⅢの方へと向かう。

 それは私も彼女も多くの戦場を駆け抜けて来たから、というのもあるが、何より……

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!」

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!」

 

 彼女が放った黄金の輝きが一瞬にしてステージⅣを消し去り、私の五発の偽・螺旋剣が五体のステージⅢを消し飛ばす。

 

 勝負は一瞬にしてついてしまった。

 

 

 

 

 

__________________________________

 

 

 

「なるほどそんなことになっていたんですね」

 

 エミヤとライブは、この世界の現状と、今の彼等の状況を彼女、アルトリア・ペンドラゴンに話した。

 彼女こそが彼のアーサー王だとわかったときのライブの反応は凄まじいものだったが、それを語るのはまた今度としよう。

 因みに、あまりにも恥ずかし……もとい、可愛らしい反応だったために、エミヤは、彼女が大人になって、酒を酌み交わせる時が来たのならば、このネタで弄ってみようと考えるのだった。

 

「フム…概ね君の状況も理解した」

 

 彼女、アルトリア・ペンドラゴンにも、解る限りのことを話してもらった。

 と言っても、召喚されたばかりの彼女に解ることなど無いに等しい。解った事は、彼女が戦闘中に気づいた事だけだ。最も、あの短い戦闘の中で、解ることがあったことだけでも、十分驚くべきことだが。

 解った事は、三つ。

 一つ。彼女は私をマスターとして召喚されたということ。

 この地の知名度補正と、彼女の墓自体が持つ魔力に支えられているため、この地では普段通り戦える。しかし、この地を離れた場合、キャスタークラスでもない私では、十分な魔力を供給できないために、完全な力での戦闘、即ち聖剣の完全解放はできない、ということらしい。あの赤い悪魔にも勝るとも劣らないポテンシャルを秘めたライブの魔力と、私自身の魔力回路が生み出す魔力。この二つにより、なんとかサーヴァントとサーヴァントの契約という馬鹿げた事が成り立っているらしい。

 一つ。やはり彼女にも聖杯からの知識の供給は無いということだ。だがしかし、二体もサーヴァントが召喚された事実は、聖杯戦争の可能性を考えるには十分な事である。

 そしてもう一つ。これが一番厄介である。彼女はあの聖杯戦争を覚えている、というのだ。

 本来、召喚された後、座に帰れば、召喚時の経験は記録となり、英霊はそこに実感を持つことはできない。

 だが、彼女は事細かにそれを覚えている、というのだ。

 原因は彼女にも不明であるらしいが、彼女曰く、彼女は死して座に記録された後に召喚されたのではなく、生前召喚であったというのは何か影響しているのではないか、ということだ。

 そしてまた、聖杯戦争が終わっても尚、赤い悪魔によって現世に留められたことも原因かもしれない、ということだ。

 それを聞いた時に、私には()()()()()()(というよりは確信)もあったのだが、急すぎる展開に目をグルグルさせているライブの手前、それを言うことはやめておいた。

 

「最後に、アーチャー。彼女の目について話してもいいのではないですか?」

 

 セイバーが口を開く。余談ではあるが、私のことはクラス名で呼ぶように釘を刺しておいた。聖杯戦争が始まるかもしれないから、というのは建前で、単純に私にはその()()()()()()()()()()なのだが。

 

「……君はそう思うのかね」

 

「えぇ。確かに強すぎる力は身を滅ぼしかねません。しかし、知らないでいることは、やがてもっと恐ろしい事態を招くこともある」

 

「それは、そうだが……」

 

「そして何より。貴方が側についているのでしょう?貴方ならば、彼女を正しい道へと導けるはずだ」

 

 人として正しい道なんてものからかけ離れている私には、彼女を正しい道へと導くなど無理な話では無いだろうかと思う。だが、無理でもやるしかない。「養父」(お父さん)を名乗った以上、私にはその責任があると思った。

 

「買い被りすぎだよセイバー。……だが、了解した。ライブ、今から君の力について話す。よく聞いておくんだ」

 

 ライブが肩に力をいれたのがわかった。その目は真剣そのもので、しかし少しの期待と憧れ、そして深い尊敬のこもった目であった。

 有り体に言えば、輝いていた。

 もしかしたら、私もこんな目をしていたのかもしれないな。

 

「簡単に言えば、ライブの眼は、複数の世界の観測を可能にする。魔眼と呼ばれる物の一種だ」

 

「複数の世界の観測…?」

 

「そうだ。人の見ている世界は人によって違う、という考え方がある。この図を見てほしい。」

 

 私は手近の枝で地面に目の断面図を描きつつ説明していく。

 

「ここが、網膜。ここが水晶体。ここが角膜だ。ライブには難しいだろうが、人の眼はこうなっていると理解してほしい。人の網膜、水晶体の厚み、角膜の傷などは誰もが完璧に同じということはなく、人によって僅かに異なる。そして、その違いは、見るものを僅かに変えてしまう。

 つまり、同じものを見ていても、人によって少しずつ違う風に見えているんだ。そして、それを見ているものから、見ている世界に広げてみると……」

 

「たくさんの世界がある…?」

 

「そうだ。もっと身近な例で言えば、後ろ向きと前向き。背の高い人と低い人。あるいは、片方の目だけで見たときと、両方の目で見たときでも、見える物は少し異なるだろう。そして、一人の人間にも多くの見方があるのだ。それが人の数だけあれば、より多くの世界があることになる。まして、この世界には人間以外の生物もいる」

 

 最も、そういう考えも出来るという程度に過ぎないが、それが真実かどうかはあまり意味の無いことだ。「ひょっとしたらあるかも」という考えは、無意識のどこかにある。そういった「疑念」的なものも、信仰心には含まれる。そして、信仰があるなら、魔術は意味をなすのだから。

 

「ライブは、その全ての世界を観測できる」

 

 ライブの目が見開かれたのがわかった。私は気にせず続ける。

 

「要するに、遠く離れた人や動物の見ている物も見えるし、それをいくつも見ることも可能なのだ。何処までも先が見えるという、千里眼にも似ているかもしれない」

 

 最も、そんな簡単なことでは無い。多くの視界を操れるということは、幻影、幻覚はお手のものであるだろうし、例えば相対した相手が魔眼を持っていて、ライブに魔眼の効果を与えようとしても、ライブと相手の視界を入れ換えれば、その魔眼の効果は、ライブではなく相手に発現する。

 時計塔のロード、あるいはそれに匹敵する魔術師の多くは魔眼を使うものが多くいる。そういったものに対してライブは圧倒的に有利に戦える。

 それだけではない。根源に繋がっているという根元接続者。その眼の視界を自らの視界にしたとき、根元にさえ到達できるかもしれない。

 或いは、根元が真に全ての始まりであり、全ての事象がそこから流れ出ているとするならば、世界の全ての景色を彼女自身に集約することで根元に至ることも可能かもしれない。最も、そのような手段に人間の脳が耐えられるはずもない。瞬時にオーバーヒートして、根元に至る前に絶命してしまうだろう。

 

「使い方はこれから順次教えていくが……ライブ、ある程度は理解できたか?」

 

「全然」

 

 即答であった。

 

「だろうなぁ……」

 

 わかってはいた。私が八歳の時に切嗣がこんな話をしてきても理解不能だっただろう。

 

「けど大丈夫。お父さんが一から、手取り足取り教えてくれるんでしょ?」

 

「……あぁ、そうだな。私が君を立派な使い手にして見せよう」

 

 すると、暫く黙って聞いていたセイバーが口を開いた。

 

「………卑猥な感じがしますね」

 

「いや、なんでさセイバー!」

 

「………確認ですが、貴方はロリコンでは無い、ですよね?」

 

 声が怖い。抑揚が全く感じられない。意味のわからない謎のプレッシャーがある。咄嗟に私は反論しようとして、

 

「いやホントになんでさ‼私にそのような趣味は……」

 

 待てよ、と弓兵は思い、言いかけていた言葉を飲み込んで少し思案する。彼はこれまでの経験から、このような話題に関して、軽率な発言は身を滅ぼすと知っているからだ。

 

(今の私は肉体年齢で言えば30歳程度。そのような男が、故郷での聖杯戦争時のマスターや、月の聖杯戦争時のマスターや、人理修復の時のマスター、そして目の前のセイバーを異性として魅力的だと思うのはどうなんだ……?)

 

 しかし、今回に関しては、その冷静な判断による暫しの熟考は彼の立場を悪くするだけだ。

 この男は、なぜ軽率な発言をすると身近な女性に攻撃されるのか、という根本的な理由を理解していないために、このようなこととなるのである。

 

(うん、高校生はセーフだろう。日本では女性は16歳から結婚できるんだし)

 

 やっと私は自分のなかで答えを得ると、彼女、セイバーの目を見て私の結論を言う。

 

「……そのような趣味は無いと言いきれる」

 

「ほほー?さっきの妙な沈黙は一体なんだったのでしょうね?」

 

 あれ?なんか失敗したっぽい。これはあれかな?タイガー道場行きかな?

 

「いや、冷静に自分の過去を省みて、やはり私はギリギリセーフだったという確認をだな……」

 

「ギリギリ?」

 

「あはは……私はもう寝るね?お父さん、死なないでね?」

 

 するとライブが冷や汗を流しつつ、恐る恐るといった様子で離れていく。

 

「おやすみなさいライブ。………さて、ここからは大人の時間ですよアーチャー?」

 

「な、なぜ武装をしているのかね?落ち着いて話し合おう。な?最も偉大で平和的な争いの解決策は話し合いだろう?そして、話し合いに武器はいらないと私は思うのだが!」

 

「問答無用です♪」

 

「なんでさぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 




エミヤ「はぁ…。この駄作者は。筆が遅いったら無いな」

ライブ「まぁまぁお父さん。作者さんも頑張ってるんだから」

セイバー「コメントでもして応援してあげましょう」

エミヤ「そうだな。読者の皆様はこの駄作者を励ましてやってくれ。スランプで困っているようだからな」



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番外編
一章終了記念番外編~第二次エミヤ戦争①~




「はぁ、、、、なんでさ。」
 弓兵は本日何度目かわからないため息をつき、お決まりの言葉を呟いた。

「シロウ!おかわりです!」
「贋作者!我にもだ!」
「おいおい、まだ食うのかよ。」
「すさまじいですね…………。」

 今私の目の前には、かつて聖杯戦争で戦ったセイバー、青タイツ、金ぴか、ライダーがいて、朝食を食べている。どうしてこうなったんだっけ?思い出してよく考えてみよう。

 
・・・・・・・・・・・


「できた!」
 私の義理の娘ライブが元気な声で叫んだ。
「手際がよくなったな。見た目も美味しそうだ。」
 私は今、ライブと台所で朝食を作っている。しばらく前ににライブから料理を教えてほしいといわれてから休みの日はこうして一緒に料理をしている。ライブは最近、かなり腕をあげてきた。
「ありがとう!」
「さて、採点といこうか。」
 


「「いただきます!」」













「!」
「……どう?」
「…………美味い。」
 皮肉の一つでも言おうと思っていたのだがな…………
「やったぁ!」
「………100点満点とはいかないが、合格点だ。」
「ほんと!?」
「あぁ。だがまぁ、まだ厨房にはあがらせないぞ?」
「わかってる。100点とったらだよね。私頑張るよ!」
「ふっ。せいぜい頑張るんだな。」
 私はそれだけ言って味噌汁をすする。…………やはり、美味いな。









「今日は学校無いし、お父さんの店も休みだよね?久しぶりにどこかいかない?」
 ライブは不安げにこちらを見てくる。うぐ、涙目と上目使い。どこでこんな技を覚えたのだ………。この子がお願いをするなんてな。何かあったのだろうか。………ここは、
「そうだな、それもいいな。」
「ほんと!?」
「あぁ。どこにいきたい?」
「そうだなぁ………じゃあ『ピンポーーーン』………誰か来たみたい。」
「………そうだな。出てこよう。」









「全く、こんな時間に誰が………」
 扉を開ける。後で私は扉を開けなければ良かったと後悔することも知らずに。



「よぉ、弓兵。あがらせてもらうぞ。」
「おはようございます。シロウ。」
「雑種!我をもてなすことを許す。ありがたく思え!」
「すみませんアーチャー。止められませんでした。」

「……………………。」
 固まること数秒。何が起きた?今目の前にはふんぞり返っている英雄王と挨拶をする騎士王、そして当然のように家に入ってくる青タイツと申し訳なさそうにしているライダーがいる。

「おい、弓兵。案内しろや。」
「シロウ。お腹がすきました。」
「雑種!我直々に来てやったのだ何か申せ!」

「なんでさあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「おぉ、やっぱり坊主だ。」
「シロウ。お腹がすきました。」
「泣き叫ぶほど嬉しいか。よいぞ、贋作者。もっと泣け。貴様の泣き顔は実に愉悦だ。」
 セイバー、君にはその言葉しか無いのか。ギルガメッシュ、それはどういう意味だ。

 ーーーーーー少し状況を整理しよう。朝起きて、ライブを起こして、ライブと朝食を作って、朝食をとりながら今日はライブの学校は無いし、私も定食屋の仕事がなく、久しぶりにどこか行ってみようか等と話していた。平穏な日常となるはずだった。……………何がどうしてこうなった? 













「お父さん。朝から何叫んでるの?お客さん案内しなくていいの?」
 ライブが騒ぎを聞きつけて玄関に来た。

「「「「お父さん!?」」」」

「………あ、あぁ。そ、そうだなライブ。彼らを居間に案内してやってくれ。」

「おい、ちょい待て弓兵。」
「シロウ、どういうことですか?」
「説明しろ。贋作者。」
「………………(やりましたね桜。)」

「何をだ?」

「その子は誰ですか?今シロウのことを、お父さんと言っていたように聞こえましたが。」

「あぁ、ライブは私の娘だ。」

「おはようございます。初めまして。エミヤ ライブです。」

「「「……………。」」」

「シロウ!!私というものがありながら!凜ですか!?桜ですか!?」

「何の話だ!凛と桜がどうしたって?」

「だから、その、あ、あなたが、こ、子作りをした相手です!」

「…………は?お、おい、ちょっと待て!誤解だ!」

「どういうことです!?桜ではないんですか!?」

「凛でも桜でもないとなると一体?……………そういえばこの子の見た目何処かで………」

「なあ、そいつアインツベルンの嬢ちゃんに似てねえか?」

「はっ!まさか!シロウ!貴方イリヤスフィールに手を出したのですか!」

「おいおい、アーチャーそれは無いわ。」

「姉に手を出すとはな、見下げ果てたぞ雑種。」

「いや、なんでさあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」









 

 

「・・・・・・とまぁ、こんな感じだ。」

 私はこの世界のことを説明し、ライブが自分のことや私との出会い。そしてそれからのことを話した。改めて聞くと私はずいぶん恥ずかしい言動をしている。何度もライブの話を止めようとしたが、英霊たちに睨まれて断念した。……彼らにこれからいじられ続けるだろうな。はぁ、なんでさ。

 

「「「「………………………。」」」」

 

「よく頑張りましたね。………一つだけ聞かせてほしい。ライブ、貴女は今幸せですか?」

 

「うん!」

 

「それなら良い。まだ幼いというのに貴女はなんて気高く強いのでしょう。

 ………シロウ、彼女を悲しませるようなことがあれば許しませんよ。」

 

「ああ。彼女の幸せは私が必ず護ってみせる。」

 もちろんだ。彼女だけの正義の味方になると決めたあの日から、その覚悟は何があろうと変わらない。

 

「気に食わぬ。………余はちょっとガストレアとやらとふざけた人間共を一掃してくる。」

 

「おい待て、ギルガメッシュ。気持ちはわかるが落ち着け、そして乖離剣をしまえ。」

 

「ええい!話さぬか狗!」

 

「おい待て、螺旋剣出すな!洒落にならねえ!」

 

「………?どうしたのですかライブ?」

 ライブが肩を震わせているのを見て声をかけるライダー。

 

「ウゥ、、ヒクッ、、」

 

「どうした嬢ちゃん!おい金ぴか!てめぇが物騒なもん出すから泣いちまったじゃねえか!」

「何だと!?貴様がキャンキャン吠えるからだろう狗が!」

「あぁ?上等だ。てめぇ表出ろや。」

 

「どうしたんだライブ?」

「ウゥ、ヒクッ、わかんない。ウゥ、わかんないけど、グス、心がすごく、、ポカポカして、グス、暖かくて、でも、グス、涙が出てくるの。」

 

「それが普通の幸せの暖かさというものなのかもしれませんね。」

 アーチャーに背をさすられながら、幸せそうに泣くライブにライダーが言った。

 

「グス、うん。そうだね。グス、私、今、すっごく幸せ。すごく、、、あったかい。」

 

 そう答えるライブを今なお語り継がれる古の英雄達は優しげな眼差しで見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さんも英霊なんですか!?」

 

「あぁ。彼女はアーサー王、アルトリア・ペンドラゴン。」

「アルトリア・ペンドラゴンです。」

 

「えっ!あのアーサー王なんですか!?女性だったんですか!?すごいです!かっこいいです!感激です!」

 

「アルトリアとでも呼んでください。」

 

「そんな馴れ馴れしくなんてとんでもありません!アーサー王様とかではダメですか?」

 

「そういう風に呼ばれるのは距離があって嫌です。私と貴女は対等です。是非、アルトリアと呼んでください。私も貴女をライブと呼びます。」

 

「でも………」

 

「何なら、お母さんと呼んでもいいですよ?」

 

「ブフッッッ!な、何を言うんだセイバー!」

 

「セイバー、抜け駆けとは卑怯だぞ。」

 

「おうセイバー、第一次の続きをするか?」

 

「第一次?……何の話だ?」

 

「お前には関係ねぇ。今は、な。そんなことより、俺はクー・フーリンだ。よろしくな!クーとでも呼んでくれ。」

 

「あのクー・フーリンなんですか!?すごいです!よろしくお願いします、クーさん!」

 

「我は英雄王ギルガメッシュ!お主は雑種の中でも見ごたえがある。よって我をギルと呼ばせてやる!ありがたく思え!」

 

「こいつはこういうやつだ。悪気はねぇんだ。気を悪くしないでやってくれ。」

 

「ギルさんはあの英雄王なんですね!かっこいいです!よろしくお願いします!」

 

「私はメドゥーサです。以後お見知りおきを。ライダーとでもお呼びください。」

 

「わかりました。よろしくお願いします、ライダーさん。」

 

 紹介が一通り終わった。皆、自分から真名を言うとはな。どうやら皆、ライブのことを気に入ってくれたらしい。

 

 

 

 

 

 

「それで君たちはどうやってこの世界に?」

 これだけがわからない。聖杯戦争が始まるとでも言うのか?

 

「座に戻ってからあったことは覚えてるだろ?」

 何故座の話になる?戻ってから、とは恐らくあの聖杯戦争からだろう。その後のことなら嫌というほど覚えている。

 

「あぁ。」

 

「なぜか俺たちにはあの4日間の記憶が残っていた。そして、その後ギルガメッシュがアラヤやガイアを脅して座の行き来ができるようにした。」

 

「あれはギルガメッシュの仕業だったのか!?常に誰か訪ねてきて大変だったんだぞ!」

 第五次聖杯戦争メンバーを筆頭になぜか第四次の英霊達や、その他の英霊達も来た。常に誰かいて正直疲れていた。まぁ、退屈ではなかったが………。

 

「フハハハハハ!良かったではないか!我に感謝せよ!」

 

「話聞いてたか!?大変だったと言ってるだろう!」

 

 エミヤが知らないが、その後第一次エミヤ戦争があり、エミヤの所有権をめぐって英霊達は争っていた。しかし、その最中に景品のエミヤがいなくなり、一時休戦。守護者の仕事かと思われていたが、その後アラヤがエミヤをどこへやったと訪ねてきて捜索が開始されたのだ。

 

「まぁ、急にいなくなった守護者を見つけ出してくれってアラヤに頼まれてな。」

 

「だがどうやってここへ?」

 

「キャスターだ。」

 

「あぁ………。」

 なるほど、なんとなくわかった。キャスターのほくそ笑む顔が目に浮かぶ。

 

「神代の魔女ってのはすげえな。お前の居場所を見つけてこの世界まで俺らを飛ばしたんだ。」

 

「何故君たちが?」

 

「適当だとよ。」

 本当は4人しか送れないとわかり、第一次エミヤ戦争が再開され、その勝者3人とストッパーの常識人ならぬ常識英霊のメドゥーサがきたのだ。

 

「なるほどな。さて、君たちはこれから『ぐうぅぅぅ!』どうする。」

 誰かの腹が盛大に鳴る。誰かは、………。聞くまでもあるまい。

 

「シロウ、朝食を。お腹がすきました。」

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

 こんなことがあって冒頭に至る。はぁ、なんでさ。

 

「すまないライブ。今日はどこにも行けそうにない。」

 

「………そっか………。」

 

「本当にすまない。」

 

「いいよ!気にしないで!私もすごく楽しいから!」

 

「アーチャー、どこかに行くつもりだったんですか?」

 

「ライブと久しぶりにどこかに遊びにいこうとしていたんだが、、、。」

 

「いいんですよ!気にしないでください!皆さんと話しているだけでとっても楽しいので!」

 

「「「……………………。」」」

 3体の英霊は無言でうなずきあい、

「嬢ちゃん、みんなで遊びに行かねぇか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わかっているな。」

「ああ。」

「ええ。」

 

「ライブを最も楽しませたものが贋作者をおのがものとできる。」

 

 

 

 

 

   第ニ次エミヤ戦争が勃発した。

 

 

 

 

~続く?~

 

 




 一章終了記念です!エミヤとライブが一緒に暮らしています。
 この続きは、また二章が終わったときにでも投稿します。では、これにて。


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プリズマ☆イリヤ「雪下の誓い」公開記念~赤い瞳と衛宮一家①~

キャラクター紹介 
・エミヤ ライブ 
本編主人公。女の子。ファザコン。この話では9歳くらい?小学校に通ってます。産まれながらに怪物の力を宿し、「呪われた子供達」とよばれている。産まれてすぐ捨てられ、ずっとひどい差別や暴力をうけてきた。誰も彼もが死んでいく地獄の中で、アーチャー(エミヤ)の召喚を偶然する。能力使用時には瞳が赤くなる。普段は青色の瞳。容姿は白い肌に金髪。とても優しく、人の感情を読むのに長けている。
・エミヤ シロウ
言わずと知れた赤い弓兵。ライブの義父。親バカ。


「はぁ、なんでさ………。」

 

 傷だらけの弓兵は床の上で一人呟いた。

 

「今日はこれくらいにしといてあげる♪」

 

 今彼の目の前には腕を組んでふんぞり返っている彼の姉、そしてその従者である屈強な大男の二人がいる。

 

 どうしてこうなったんだっけ?思い出してみよう。

 

 

__________________________________________

 

 私は今、娘のライブの作ってくれた昼食を食べている。今日の昼食は全てライブの手作りだ。と言うのも、エミヤは今日は家に隣接した定食屋でかなり忙しく働いていて、自分のぶんを作る暇がなかった。昼時の混雑がなくなった今、ライブが作ってくれた昼食を食べているのだ。

 

「…………どう?」

 

 おそるおそるといった様子で感想をたずねるライブ。

 

「…フム…」

 

 弓兵はおもむろに箸をおき、呟き、暫しの沈黙のあと、一言、

 

「………旨い。」

 

「っ!本当に!?」

 

 さっきとはうってかわって、とても嬉しそうな表情をするライブ。

 

「あぁ。本当に美味しい。どんどん上達しているな。」

 

「よかったあぁぁ………。」

 

 どうやら相当気を張っていたらしい。ライブは一気に脱力して、椅子にもたれかかる。

 

「ふっ…だが、まだ厨房には上がらせられないぞ?」

 

「ぶ~。まだダメなのぉ?」

 

「まだ厨房(せいいき)は君には早い。」

 

「む~。わかった。もっともっとがんばる!」

 

「ふっ、、、。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした。」

 

「お粗末様でした。」

 

「では私は厨房に戻ろうかな。」

『ピン、ポーン!』

「誰か来たようだな………私が出よう。」

 

 

 

 

 

 

「どちら様でしょうか?」

 弓兵は扉を開けつつ尋ねた。そう、開けた。否、開けてしまった。

 

「おっじゃまっしまーす!!」

 元気な声でそう言いながら家に入ってくる白い肌に白い髪、そして赤い瞳を持つ少女。

 

「なっ、イ、イリヤ!?」

 

「もう!お姉ちゃんって呼んでって言ったでしょ!」

 

 訪ねてきたのは死んでしまったはずの少女だった。

 

 

 

「どう、して…?」

 

「それは私がここにどうやって来たかってこと?………それとも、どうして私が生きているのかってこと?」

 

「私は君を守れなかった。君を、私は、私は、」

 

「シロウ。」

 

「………?」

 

「屈みなさい。」

 

 意味がわからなかったが、シロウは姉の真剣な声音に黙って従い、屈んで彼女に目線をあわせた。すると、

 

「っ!…………な、、、に、、を?」

 

 イリヤはシロウを抱き寄せ、頭を撫で始めた。彼女は、そのまま言葉を紡ぐ。優しく、慈愛に満ちた声音で。

 

「シロウ。私が何で生きているのかなんてどうだっていいじゃない。今私はここにいる。ここにいてシロウを抱き締めている。それで十分じゃない。」

 

 真っ白い手が弓兵の目尻を撫でた。知らず、彼の目からは涙が流れていた。とっくに枯れたと思っていた涙が。

 

「泣いてもいいのよ。私はあなたのお姉ちゃんなんだから。」

 

「泣く?私が?何故だ?そんなこと、、、そんな、こと、、、、」

 

 そんなことあるわけない。そう言いたかったが、それが言葉になることはなかった。

 

「シロウ、よく頑張ったわね。」

 

「っ!…………くっ、ふッ」

 

 彼が守れなかった、その手から取りこぼしてしまった命。血は繋がっていなくとも、確かに繋がっていた家族からの、なんの変鉄もない、ただの言葉。ありふれた言葉。されどそれは、弓兵の硝子の心を、ひび割れ、ボロボロになった彼の(せかい)を揺るがし、かつての少年へと戻してしまうには十分すぎる言葉だった。

 弓兵は泣いた。静かに、静かに…。

 

 

_____________________________________

 

 

「で?この子は誰との子なの?シロウ?この金髪。もしかしてセイバー?」

 

「いや、だから違うんだ。」

 

「違う?……まさか、こんな小さい子に手をだしたの!?」

 

「いや、なんでさ!だから彼女は・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・というわけだ。」

 私は軽くライブとの出会いを話した。

 

「…………なるほどねぇ。」

 

 イリヤがライブの方を見やる。すると、今まで話についていけずに呆然としていたライブは、恐る恐る、といった様子で声をかけた。

 

「あ、あのぉ、、、、、」

 

「あっ!ライブ、よね!私はシロウの姉のイリヤ!イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ。よろしくね!」

 

 そういって手を差し出すイリヤ。ライブも手を出して応える。

 

「…………は、はい。よろしくお願いします。イ、イリヤさん。……………あれ?お父さんのお姉ちゃん?」

 

「そうよ。」

 

「えっ!お姉ちゃん!?妹じゃなくてですか!?」

 

「えぇ。」

 

「そう、、ですか。じゃあ、私の、お、おばさん?」

 

「・・・・。」

 

「ク、ク、ク、お、おば、おばさん、、ハハ!」

 

「………天使の詩(エルゲンリート)。」

 

「すみませんでした。お姉さま。優しい優しいお姉さま。どうか、コウノトリの騎士(シュトルヒリッター)をおしまいください。」

 

 英霊の誇り?そんなもの知らない。とっくに青い犬に食べさせました。

 弓兵は綺麗な、それはそれは綺麗で、お手本になるような土下座をした。

 

「ライブ、私のことは()()()()()って呼んでね♪」

 

「は、はいぃぃ!」

 

 すごい。何がすごいって、あれほど可愛らしい姿で、あれほど綺麗な笑顔なのに、有無を言わせぬ圧倒的な力を感じることだ。

 

「よろしい。」

 やはりイリヤは鬼畜ロリ(イリヤ)である。

 

 

「では私は店にいく。」

 イリヤとライブを二人で残すのは少し、いや、物凄く、物凄く不安である(防犯的な意味ではない。むしろ私の姉なら最強の防犯システムだ)が、生憎私は仕事に行かなければならない。

 

「いってらっしゃーい!」

 元気に言うイリヤの横でライブが懇願するように私を見ている。くっ、そんなつぶらな瞳で見るのはよすんだライブ…!

 ライブに心の中で謝りつつ、私は急いで厨房へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いったわね………。それじゃあ、ライブ。お姉ちゃんと遊びましょ♪」

 

「助けて、おとーーさーーーーーーーーーーーん!!」

 

 ライブの叫びは虚しく響いた。

 

「そんなびくびくしないで、とって喰おうってわけじゃないんだから。」

 

「うん……。」

 

「ねぇ、先ずはあなたのことを教えて。」

 

「え?」

 

「シロウは簡単に説明しすぎなのよ。あれじゃあよくわからないわ。あなたの言葉で聞きたいの。」

 

「………わかりました。私は・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・というわけです。」

 

 話ながらだんだん声が小さくなっていく。目の前の彼女に軽蔑されるのではないか。怒鳴られるのではないか。今が幸せでも、この呪われた血がなくなるわけじゃない。話しているうちに、彼女の心の内にある恐怖が溢れ出そうとしていた。すなわち、いつまでこの幸せな生活が生活が続いてくれるのか、という潜在的な恐怖だ。

 そんな感情の激流に呑まれ、今にも泣き出しそうになっている少女の姿を見つつ、イリヤは、

 

「ふーん……。そうなの。」

 

 驚くほど素っ気なく、普通の会話のように応えた。

 

「え?」

 

 イリヤの反応はライブには意外だった。この話を聞いた人は、お父さんや同じ境遇の子供等ごく一部の人は「頑張ったね。」とかいってくれるが、大抵の人は私を嫌った。しかし、イリヤの反応はそのどちらでもなかった。

 

 イリヤは、面倒くさそうに、ふぅ、と一息着いたあと、少女に質問をする。

 

「だって今幸せなんでしょ?」

 

「うん!」

 

 即答した少女を、少女の顔を見て、イリヤ微かに笑みを浮かべて続けた。

 

「ふふ、ならいいじゃない。もうそれでおしまい。ね?」

 

 嫌うでもなく、同情するでもない。このいっそ冷たく感じる対応だが、ライブはこの方がやりやすいなと思った。ライブは人の感情に敏感だ。故に、イリヤの冷たい反応の中に、たしかな優しさを感じれた。

 

「うん!ありがとう!お姉ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずい。天使(ライブ)小悪魔(イリヤ)に毒された気がする。」

 弓兵はチャーハンを炒めながら一人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________________________________________

 

 

「ライブ、その服装は?」

 

「お父さんが選んでくれたの。」

 

「シロウってばセンスないわねぇ。」

 

「私は着られれば何でも・・・・。」

 

「だめよ!あなたこんなに可愛いんだから!もったいないわ!」

 

「そ、そうですか?」

 

「私がコーディネートしてあげる♪」

 

 こうしてイリヤの、イリヤによる、イリヤのためのライブの着せ替え(おあそび)が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________________________________

 

 

 

「ライブは大丈夫だろうか?」

 今エミヤは店を一旦閉めて家に向かっている。エミヤはずっと気がかりだったため、人がいなくなった隙をついて様子を見に来たのだ。

 

 

「ライブ、イリヤ、入るぞ。

 

「「「・・・・・・。」」」

 

 エミヤが扉を開けると、そこには絶賛お着替え中のライブとイリヤが・・・・。

 

「す、すまなかった!」

 

 しばし硬直していたエミヤだが、誰よりもはやく復活すると、すぐさま扉を閉めた。

 

「「きゃああああああああああああ!」」

 

 遅れて響く悲鳴。

 

「本当にすまなかった!」

 

 エミヤは扉越しに謝罪する。

 

「フフフ、いいわシロウ。」

 

 イリヤの明るい(?)声が聞こえる。

 

「許して、くれる、のか?」

 

「フフフ、やっちゃえ、バーサーカー♪」

 

「は?」

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛ーーーー!!!!!!」

 

 どこからともなく大男が現れた!

 

「へ?」

 

 エミヤに99999999ダメージ!

 

「いや、なんでさぁぁ!!!」

 

 エミヤは倒れた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_________________________________________

 

 

 ここで冒頭に戻るのである。

 

 エミヤはお仕置きを受けたあと、よろよろと店に戻ってきた。

 

「はぁ、なんでさ。」

 

 溜め息をつきながら扉を開けると・・・・

 

「ひさ、、し、ぶり、、士、郎。」

 

 床で悶える全身黒ずくめの養父、衛宮切嗣がいた。

 

「じ、爺さん!?どうしたんだ!」

 

「じ、、つ、は」

 

 死ぬ間際の様に掠れた声で言う養父。そこに正反対の物凄く明るい声が響く。

 

「あらあら、あなたが士郎ね!切嗣から話は聞いてるわ!」

 

 厨房を見るとイリヤに似た白い肌に白髪、赤い瞳の女性がいた。

 

「私はアイリ。アイリスフィール・フォン・アインツベルンよ!お母さんって呼んでもいいのよ!切嗣の子供なら私の子供ですもの!」

 

「あ、あの・・・・。」

 

「ねぇ!せっかくだし、私の料理食べてみない?切嗣に今作ったんだけど作りすぎちゃって。」

 

「は、はぁ、それじゃあ、」

 

 矢継ぎ早に紡がれる言葉に、状況が飲み込めないまま流されていく。が…

 

「駄目、だ。士郎、それを、、たべちゃ、いけ、ない。」

 いただきます。そう言おうとしていたエミヤは、養父の小さな小さな言葉で何故こんな状況になってるのか理解し、とっさに、

 

「今さっき食べたばかりなので大丈夫です!」

 

「そうなの?残念だわ。切嗣が一口でひっくり返るほど美味しいのに・・・・。」

 

「そうですか。残念だなぁ。」

 ハハハ、と苦笑いを浮かべるエミヤ。なんとか危機を脱したようで胸を撫で下ろす。

 

 

 ・・・まぁ、後で食べることになるのだが。母の手料理(ダークマター)を。

 

 何はともあれ、衛宮一家大集合である。

 

 

 

 

 

 

 

~続く?~

 

 

 

 

 

 

 

 




はい。ということで、劇場番プリズマ☆イリヤ公開記念として投稿しました。すごく見たい!けど時間がない!

ところで、fgo始めました。無課金でひっそりとやってます。まだ始めて1ヶ月たってませんが、ガチャ運にだけは恵まれており、☆5鯖はオジマンディアスと、エルキドゥ、獅子王が出ました。ちょっとSNのとは違うけどアルトリア出た!やったね!
☆4は水着ノッブと水着ニトクリス、水着イシュタル、タマモキャット。
リミゼロも出たし、概念礼装も充実してる。最近は、イシュタルに概念礼装の言峰つけてますw

エミヤ来て!イリヤ来て!お願い!

評価・コメントお待ちしております!


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