夏の夜に昔語りでも (アクセンティア)
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夏の夜に昔語りでも1

初めて投稿するので、内心ドキドキしてます。


夏ももう盆に入り、人々がつかの間の休息に浸っている今日この頃、その例に漏れず絶賛盆休み中の俺こと|比企谷[ひきがや]|八幡[はちまん]と嫁である旧姓雪ノ下、現性|比企谷[ひきがや]雪乃と我が家のかわいい娘と夕飯のあとの一家団欒をしている。

 俺はソファーに腰かけながらノートパソコンを開き、仕事を確認している。

雪乃は床に女の子座りをしながら、先日購入した文庫本を俺の足に寄りかかりながら読んでいた。

娘はその隣で寝転がりながら、某美少女戦士の塗り絵をしているのがなんともほほえましい、こんな会話はないが心安らかな団欒が続くこと一時間弱、おれの仕事も一区切りつき雪乃の小説も半分辺りに差し迫ってきた頃、先ほどまで塗り絵をしていた娘がおもむろに身体を起こした。

 

 

 

 「お父さんとお母さんって、どうやって付き合ったの?」

 

 

 

 そんな事を突然聞いてきた、隣で文庫本を開いていた雪乃が目を丸くして 、聞き返した。

 

 

 

 「どうして、そんな事聞くの?」

 

 

 

 実際、俺もなぜそんな事を聞いてきたのか不思議に思ったが、娘の口から出た言葉にため息をついてしまった。

 

 

 

 「あのね、陽乃おばさんが聞けって言ったの」 

 

 

 

 雪乃は"困ったわ、あの人は"というふうにこめかみを手で押さえ,ため息をついた。すると娘が心配そうな顔をして雪乃を見つめていた。

 

 

 

 「お母さん,聞かないほうがよかった?」

 

 

 

 雪乃は苦笑いをしながら、娘の頭を撫で、柔らかい声で話始めた。

 

 

 

 「そうではないの、ただ陽乃おばさんに今度お仕置きしなきゃと思っただけよ、さてどこから話しましょうか。」

 

 

 

 俺は手元で開いていたノートパソコンの電源を落とし、雪乃に苦笑いを浮かべながら、話しかけた。

 

 

 

 「まじで教えるのかよ、はずいからあんまり言わないでほしいんだけど」

 

 

 

 雪乃はとてもきれいな笑顔で 、おれの言葉を封じる言霊を放った。

 

 

 

 「あら八幡、この前あなたのおねg「すいませんでした、どうぞお話しください」よろしい♪、それで、お父さんとつきあいはじめたのが………」

 

 

 

 おれは遠い目でうちの姫様二人の声を聞きながら、あのときのことを思い出していた。

 

 

 

 〜〜〜1〜〜〜

 「比企谷君、明日暇かしら?」

 「は?」

 「明日、暇かと聞いているのよ」

 

 

 

雪ノ下が突然こんなことを聞いてきた。

今日、いつもの奉仕部の教室には俺と雪ノ下だけがいた。

アホのこ由比ヶ浜はサブレの定期検診のため休みである。

俺と雪ノ下はいつものように誰も依頼しに来ない この暇な時間を雪ノ下の紅茶と供に読書に精を出していた。

そのいつもと何ら変わらない平和な時間、突然雪ノ下が今まで読んでいた文庫本を閉じたと思えば、いきなりの質問である。

俺は読みかけのラノベをしおりをはさんで閉じ、自分の予定を簡潔に伝えるべく、口を開いた。

 

 

 

 「悪いな、明日は予定g「無いわよね、分かったわ」おい、まだ俺いってねえぞ」

 

 

 

 雪ノ下の横暴な口振りにため息をつきつつ、もう一度説明しようと言葉を紡ぐ。

 

 

 

 「だから、明日はたいせつな「どうせ、休日は休む日だから家でごろごろするとか言うつもりでしょう?」ぐっ…」

 

 

 

 雪ノ下の的確な指摘に言葉を詰まらせると私のターンと言わんばかりに俺への口撃を開始する。

 

 

 

 「あなたの言う用事は一般的な人からすると暇に相当するのよ、あなたは目だけではなく脳まで腐ってしまったかしら。私の言葉、理解できてる?」

 

 

 

 俺は雪ノ下の不要な頭の回転に辟易とするも、雪ノ下の口撃は勢いの衰えを知らず、おれのガラスのメンタルをすり減らしにかかる。

 

 

 

 「まあ、あなたのその腐った脳では理解できないのが当然よね、ごめんなさい。」

 

 

 

 雪ノ下の口撃に耐えかねた俺はとりあえず罵倒に割り込むことで口撃を止めることにした。

 

 

 

 「俺は目は腐ってても、脳までは腐ってねえよ。逆に正常な状態だ、これがデフォルトなんだよ。何で俺の予定聞くの?、ってああ、明日のあれか」

 

 

 

 

その言葉に反応して雪ノ下がピクッと体を揺らす。どうやら図星だったようだ。

明日のあれというのは幕張メッセで開催されるニャンニャンフェスティバルのことである。

世界中の猫が集まるという事で俺と小町もいくつもりだったのだが、小町は外せない用事が急遽決まり泣く泣くというか、ガチ泣きしていたのだ。

猫中の雪ノ下のことだからいくとは思っていたのだがやはり予想が当たった。

こいつのことだから、あなたのその目で猫が怖がるから来ないでねとかそういうことを言うと思ったのだが、帰って来た答は予想外だった。

 

 

 

「その、明日一緒に行ってくれないかしら。」

「なんでまた?」

「最近、一人で歩いていると知らない男に話しかけられるようになったのよ。」

「それ、ナンパじゃねえか」

 

 

何でまたこいつにとも思ったが、最近の雪ノ下は前のような近づきがたい雪女の冷気のようなオーラは鳴りを潜めているため、話しかけられ始めたのもわかるような気がする。

しかし、超絶頭脳フル回転の罵倒が消えたわけではないのでナンパ男たちの末路が見えるような気がして、心のなかで手を合わせて冥福を祈ることにした。

 

 

「それって、俺じゃなくても良くないか?、葉山とかいるじゃねえか。」

「あなた、あの噂のこと忘れたの?」

「あ、悪い、忘れてた」

 

 

雪ノ下に言われるまで、あのときのことを忘れていた。

あのときは噂の当事者も周りのやつらも嫌な思いをしたんだった。

流石に悪いことをしたとおもい、謝罪するが雪ノ下はそこまで気にとめるわけでもなく、話を続ける。

 

 

「それで、誠に誠に不本意なのだけどあなたにお願いしようと思って。」

 

 

 

とても、雪ノ下らしい頼み方に内心苦笑していると雪ノ下がジト目でこちらを見ていた。

 

 

 

「何か心のなかで笑われているような気がするのだけれど」

「笑ってない、笑ってない。」

「釈然としないわね」

 

 

 

雪ノ下の勘の良さに内心ヒヤッとした、もう失言はしないと心に決めた。

いや、失言というより失念

 

 

「わかったよ、明日な。」

「じゃあ、明日の10時にマンションのエントランスに来て。もし遅れたら、わかってるわよね?」

「りょ、了解です!!」

「もういい時間だし、部活終わりにしましょうか。」

「そうだな」

 

 

雪ノ下との会話で時間がたっているのに、まったく気づかなかった。

雪ノ下は直ぐに帰りの支度をして、俺のことを待っていた。

 

 

「比企谷君?、どうしたの?」

「いや、何でもない」

「そう、早くしてね、鍵閉めるの私なんだから。」

「おう、分かった」

 

 

雪ノ下に急かされて、あわてて自分の帰りの支度をした。

 

 

「じゃあ、また明日。」

「おう、また明日。」

 

 

雪ノ下に別れの挨拶をして、特別棟の入り口で別れる。

そのまま玄関に向かい、玄関前の自販機でマックスコーヒーを買うのがいつもの流れだ。

しかし、今日はマックスコーヒーの気分ではなく、ブラックコーヒーのボタンを押す。

ごとんっ!、と音をたててブラックコーヒーが落ちる。

それを手に取り、運動部の喧騒を耳にしながら、プルタブに手をかける。

ぷしゅっ!っと、音をたててプルタブが開け、そのまま口に運ぶ。

 

 

「苦っ」

 

 

しかし、そのブラックコーヒーにはあるはずのない甘味も感じた気がした。

 

 

 

 



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夏の夜に昔語りでも2

感想がくるって、とても嬉しいですね


翌日、俺は雪ノ下の住んでいるマンションに向かっていた。

普段の俺なら待ち合わせの時間、ギリギリに着くように家を出るのだが、雪ノ下とでかけることを知った小町に家を追い出され、いつもの俺なら考えられないくらいの時間に家をでた。

まあ、普段の俺は誰かと待ち合わせてでかけることなどないので、待ち合わせ時間に遅れることなどないのだが………、あれ?目から水が………

そんなこんなで雪ノ下のマンションに予定の時間よりとても早く到着した。

エントランスを見ると雪ノ下が既にいるのが見えた。

 

 

「おはよう雪ノ下、待ったか?」

「いえ、待っていないわ、私が待ち合わせより早くいただけだから気にしないで。」

 

 

 

 

雪ノ下は顔を上げてそう言ったが俺の服を見て、クスッと笑った。

 

 

 

 

「あなたのその服ワンニャンショーの時と同じね」

「そういうお前も同じ服だし、ツインテールだな」

「変なところでシンクロするわね、私たち」

「全くだな」

「それでは行きましょうか」

 

 

 

 

雪ノ下はそう言うと、歩き始めた。

 

 

 

 

「そうだな」

 

 

 

俺はそう言って、雪ノ下の後ろを追いかけた。

…………って、おい

 

 

 

 

「雪ノ下そっちじゃない、そっちは駅とは逆だ」

「言われなくてもわかっているわよ」

「お前、普段どうやって学校きてんだよ」

 

 

 

 

俺は不安になり、雪ノ下に尋ねた。

 

 

 

「普段は大丈夫なのよ」

「何で今日は駄目なんだよ」

「それは………あなたがいるから」

「ん?なんか言ったか?」

「何でもないわ、行きましょう?」

 

 

 

 

雪ノ下が何か言った気がしたのだが、空耳だったようだ。

その後、無事に駅に着き電車に数分揺られてニャンニャンフェスティバルの会場である幕張メッセにと到着した。

やはり、一年に一度の祭りと言うことあって、周りは人混みで埋め尽くされていた。

雪ノ下が心配になり、一応確認をする。

 

 

 

 

「雪ノ下、大丈夫か?」

「ええ、飲み物も持っているから大丈夫」

 

 

 

なら、大丈夫だな…………大丈夫だよな?

すると雪ノ下が俺の隣に立ち、俺の手を握ってきた。

 

 

 

「あの雪ノ下さん、この手は何ですか?」

「この人だかりでは、離れてしまった時にみつけるのが大変だから仕方なくよ、仕方なく」

 

 

 

 

雪ノ下が顔を赤くして差し出してきた手をとり、そのまま会場へと歩を進める。

しかし雪ノ下は繋がれた手を見て、少し思案顔をした後もぞもぞと手を動かし、手と手を絡めるように繋ぐいわゆる恋人つなぎをしてきた。

俺は思わず雪ノ下のほうを見るが雪ノ下は顔を赤くしてうつむいていた。

 

 

 

 

「えっと、雪ノ下サン?なにされているんでしょうか。」

「見て、分からない?あなたはそこまで脳が腐っているのかしら?」

「いや、俺が腐ってるのは目だから、脳までは腐ってないから」

「今日はあなたに恋人役を頼んだのだし、これぐらい世の中恋人なら、普通にできるわ」

「そういう、もんか?」

「そういうものよ」

 

 

 

雪ノ下の虚言を吐かないのキャッチコピーで有名なので、雪ノ下の言葉を信じて、そういうことにしておく。

 

 

 

 

「どこから見るんだ?」

 

 

 

雪ノ下にパンフレットを渡しながら聞く、 雪ノ下はパンフレットを手に取り、入り口から一番近い日本の猫のエリアを指差した。

 

 

 

「ここから、時計回りに行った方が効率がいいわ」

「ん、了解」

 

 

 

 

そういうやいなや、雪ノ下はめを輝かせながら、日本の猫エリアに足を踏み入れた。

 

 

 

 

「にゃ〜〜〜」

「にゃ〜〜〜、ふふふ」

 

 

 

 

なんか、猫がもう一匹いるんだけど………

雪ノ下は日本の猫エリアにはいった途端、近くにいた三毛猫を撫でたと思ったら抱き上げて、抱き締めた。

雪ノ下は後ろでただ立っている俺を見つけると抱き上げていた三毛猫を俺の前に差し出してきた。

 

 

 

 

「あなたも触ればいいじゃない、ほら。」

「おう、わかった」

 

 

 

俺は雪ノ下が差し出してきた三毛猫を撫でると三毛猫は満足したのかゴロゴロと喉をならしはじめた。

 

 

 

 

「さすが、家で猫を飼っているだけあるわね」

「それって、関係あるか?」

「多分、あるんじゃない?」

 

 

 

雪ノ下は抱き上げていた三毛猫を下ろすと三毛猫はにゃ〜〜となきながら、その場から離れていった。

 

 

「次に行きましょ」

「もういいのか?」

「ええ、他の猫も見たいから」

 

 

 

次のエリアは外国の珍しい猫のエリアだった。テレビでしか見ないような珍しい種類の猫達が数多くいた。

すると、雪ノ下が入ってきたとたんにその猫達が我先にと近寄ってきた。

雪ノ下は感動したのかハンカチをだし、目元をぬぐい始めた。

 

 

 

「比企谷君、猫達が………」

「すごい寄ってきたな、ちょっとした雪崩だぞ。」

 

 

雪ノ下は嬉しそうに寄ってきた猫達と戯れ始めた。

俺は雪ノ下の一歩後ろから、その様子を見ていた。

普段の彼女から感じられる冷気のようなオーラは感じず、ただ自分の好きなものを楽しんでいる一人の少女がそこにはいた。

彼女のこんな姿を見て、惚れない男はいないだろう。

実際俺は一寸前から既に彼女に心奪われている。

しかし、俺は自分のこの心を勘違いという牢獄に閉じ込めた。

自分自身に、そしてなによりも雪ノ下の為に

 

 

「比企谷君、そんなところで何してるの?疲れた?」

「ん?いや、どいつから撫でようかなと思ってただけだ」

「それならいいのだけど」

 

 

嘘をついて、誰も傷つかないように淡いこの思いを俺は牢獄に封じ込めた。

 



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夏の夜に昔語りでも3

今回でとりあえず終わりです


あれから、俺たちはイベントの終了時間より早めに会場を出て家路についていた。

理由は電車が混むからだ。

現在の時間は一時三十分、イベントの終了時間が2時のためまだ駅にいる人もまばらだ。

イベント終了まで俺の腐っている目のお陰なのか雪ノ下に話しかけてくる輩はいなかった。

帰りの電車でも特に会話もせず、無言だったが不思議と居心地の悪さは感じず、ある意味安心感も感じられた。

繋いでいた手はそのままのため、電車でも嫉妬のような目線が数多く感じられた。

そんなこんなで目的の駅に到着した。駅を出て雪ノ下のマンションを目指して、俺が一歩ほど前を歩いている。

俺の位置では雪ノ下が今どんな表情をしているのか分からない。

いつものような凛とした表情なのか、もしかしたら今日のことを思い出して笑っているのかもしれない。

少したって、雪ノ下のマンションに到着した。これで俺の今回の勤めも終了だ。

 

 

「じゃあな雪ノ下、また月曜日部活で」

 

 

別れの挨拶をして、踵を返して帰路ににつこうとする。

すると、後ろから引っ張られた。

 

 

「おっと」

 

 

突然引っ張られて、ブレーキがかかる。

後ろを振り向くと、雪ノ下が顔をうつむかせて俺の服の裾をつかんでるのが見えた。

 

 

「その、まだお昼食べていないでしょう?だから、良かったら食べていかない?」

 

顔は髪に隠れて見えないが、僅かに見える耳が真っ赤に染まっているのが見えた。

もちろん彼女の誘いを断る理由もなく。

 

 

「お、おう、じゃあ頂こうかな」

 

 

雪ノ下は顔を上げていつも見ることのないような柔らかい微笑みを残しながら、エントランスに歩を進めた。

…………あんな微笑み反則だと思います。

そのあと、雪ノ下の昼食をいただいた。

いつも、家で食べている物を軽く越えておいしかった。

ガツガツ食べている俺を見て、雪ノ下は満足なのか微笑みながら自分も食べ始めた。

そのあと、雪ノ下と一緒にソファーに座りながら、紅茶をご馳走になっていた。

………雪ノ下サン、ちょっと近いような気がするんだけど、いろいろ当たってるんだけど

 

 

「雪ノ下、ちょっと近くないか」

「今日一日は私の恋人役なのだから、当然だと思うのだけど。」

「誰も見ていないからいいだろ」

 

 

なに、別に監視カメラもあるわけもないよね。

 

 

「貴重な休日を使ってしまったのだから、その対価よ」

「いや別に気にしてねえから」

「それでもよ、私が気にするわ」

「わかったよ」

 

 

そこから、他愛のない話をしながら雪ノ下の紅茶とお茶請けのクッキーをご馳走になった。

 

 

「今日のイベントどうだった、雪ノ下?」

「とても楽しかったわ、普段見れない猫も見れたし、そして何より………」

「なにより?」

 

 

雪ノ下は一旦口を閉じ俺をちらっと見て、微笑みながらこう続けた

 

 

「あなたと一緒にいれたから」

「お、おおそうか」

「そうよ」

 

 

雪ノ下の言葉を聞いて、自分の顔が暑くなっているのを感じた。

雪ノ下はそんな俺を見て、クスクスと笑っていた。

 

 

「ねぇ、比企谷君」

「なんだよ」

「外国の猫のところで何を考えていたの?」

 

 

どうやら、考えていたことが顔に出ていたようで雪ノ下はそんなとこを聞いてきた。

しかし、お前に対する思いを諦めた何て言える訳がないので誤魔化すことにした。

 

 

「他の猫はよってくるのにカマクラは寄ってこないのかと思っただけだ。」

「嘘ね、あなたって嘘ついてるとき右の小指が動くのよ」

「えっ、嘘だろ」

 

 

まさか、そんなところに落とし穴があるなんて思っていなかった。

おいこら小指、ばれちゃっただろうが!!

 

 

「嘘よ」

「へっ?」

「カマをかけてみたの、反応から見て嘘ね」

 

 

雪ノ下の策略にまんまと引っ掛かってしまった。

さすが学年一位、いや関係ないか

 

 

「あなた、私の顔を見て悲しそうな顔していたから、私の隣に入られないなんて思ったんじゃないでしょうね」

「んぐぁぁ」

 

 

思わず変な声が出てしまった。

何、学年一位ってエスパーなの?

女子ってエスパーなの?

 

 

「全く、こんなに鈍感だと困るわね…………いい?」

「なんで、あなたに頼んだのか分かる?あなたと二人で出掛けたいから。恋人つなぎしたのもあなたとしたかったから。今こうやってくっついているのも貴方と触れあいたいから。」

「雪ノ下………」

「いくら鈍感でもわかるわよね」

 

 

………俺は本当にばか野郎だ。

何が隣にいられないだ、何が勘違いだ。

現に雪ノ下は俺に近づこうとしてくれている。

ここから、俺が言わなきゃいけないな。

 

 

「雪ノ下」

「何かしら」

「伝えたいことがあるんだ」

「私もよ」

 

 

彼女の伝えたい言葉と一緒であることを祈って、言葉を紡ぐ。

 

 

「雪ノ下」

「比企谷君」

「大好きだ」

「大好きよ」

 

 

二人で顔を見合わせて、微笑む。

いま、俺はとてつもなく幸せだ。

これから、俺と雪ノ下には色々な壁が待っているだろう。

でも俺と雪ノ下ならのりこれられる。

 

 

〜〜〜

 

 

「……と、こんな感じでお父さんとお母さんは付き合い始めたのよ。」

「やっぱり、お父さんヘタレなんだ。」

「おいこら、それだれから聞いた。」

「小町伯母さん」

「あいつ、今度あったら覚えてろよ」

「じゃあ、そろそろ寝ましょうか」

「そうだな、明日はディステニーランドだしな。」

「やったー!楽しみだね、お母さん」

「ええ」

「じゃあ、おやすみなさい、お母さん、お父さん」

「おう、おやすみ」

「ええ、おやすみ」

 

 

娘はあくびをしながら、自分の部屋に続く廊下を歩いていった。

俺と雪乃も自分たちの寝室へと迎いながら、ふと思ったことを雪乃に聞こうと口を開いた。

 

 

「雪乃、今幸せか?」

「どうしたの突然?」

「昔の話を聞いてたら、聞きたくなってな」

「幸せよ、幸せ過ぎて夢じゃないかと疑うくらい」

「そっか、でもまだまだだよな」

「ええ、二人目もできるし」

「ああ、明日張り切りすぎるなよ。」

「わかってるわよ、………八幡、愛してるわ」

「俺も愛してる、雪乃」

 

 

おれたちはまだまだ未熟だ、まだ三十路と呼ばれる年に今年なったばかり。

それに子供だって、二人目もできる。

でも、俺と雪乃と娘ともう一人の家族と一緒ならどんなことでも乗り越えられる。そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 




これからも短編をちょこちょこ上げます。


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