超絶ラッキーボーイも問題児たちと一緒に異世界から来るそうですよ? (Ray_)
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プロローグ

僕は世界に飽きていた。

 

平和で甘ったれたこの世界に。

 

 

彼は今まで不自由なく暮らしてきた。

 

平和な世界で平和な時代で優しい人達に囲まれて。

 

そんな日常だったからこそ飽きてしまった。

 

そして、非日常に憧れた。

 

いつかは命懸けの闘いがしたい、と。

 

生と死が隣り合ったことがしたい、と。

 

そう思うようになっていた。

 

 

昔から運だけはとてつもなく良かった。

 

じゃんけんでは勝とうと思えば勝てたし負けようと思えば負けれた。

宝くじを買えば一等が当たり、ビンゴゲームをすれば一番にビンゴになり、人生ゲームをすれば得をするところにしか止まらず一番にゴールする。

 

それが彼の当たり前で、それが彼の世界だった。

 

だからこそ体験してみたかった。

 

この世界とは全く別の血に塗れた世界を。

 

そして、彼にはもう1つ他人よりも優れたものがあった。

 

それは勘。

 

危険をいち早く感じ取り避ける力、わからない問題の回答を適当に言っても当たる、など。

 

もっとも、平和な世界を生きてきた彼には危険を察知する能力など必要もなかったが。

 

勘と運に味方された彼は普通の人間が過ごしても少々つまらないと感じる世界で尚更、暇を持て余していた。

 

暇つぶしでやるゲームでも運が味方するのだから彼がつまらないと言うのも無理はない。

 

だからこそ彼は学んだ。

 

自分が関わらず見ておくだけなら楽しめるのだと。

 

傍観者であれば楽しいのだと。

 

それでも、自分だって楽しみたいと少年は願った。

 

血に塗れた戦場で運に味方されても敵わないような強敵と闘ってみたい、と。

 

まぁ、そんなことを思う、柊 瑞樹(ひいらぎ みずき)という男は運と勘という彼の優れた特徴を除けばただの男子高生なのだが。

 

それでも、彼は望み続けた。

 

ただの男子高生には不相応の、とてつもない壮絶な未来を。

 

彼の周りにいた人間の誰一人として彼の思惑に気づけた者はきっといないだろう。

 

平凡に男子高生として生き、弓道部という特別珍しくもない部活でほのぼのと生きてきた柊 瑞樹という男が

この日常に、この世界に、不満を持っている、なんて。

 

少年は知っていた、自分は相当恵まれた人材だと。

 

それでも彼は自分にはないものを望んでしまった。

 

自分の過ごしている平和な世界とは一味も二味も違う世界を。

 

そんな世界で一生を過ごしたい、一生を終えたい、と。

 

財産も上々、優しい家族もいて、仲良くしてくれる友達もいて

平和な世界で平和な時代の中でただ一人、誰に言うでもなく心の底で

 

戦場を、血に塗れる姿を、望んでいた少年の元に

 

一通の手紙が届くのはそう遠くない話。



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超絶ラッキーボーイにも手紙が届いたようですよ?

あーあ、つまらないなぁ…

 

おつかいで頼まれたものは、っと卵と牛乳とあとなんだっけ…

あ、チーズか

 

「いつもありがとね〜!」

 

「いえいえ、こちらこそいつもありがとうございます」

 

「あ、今福引やってるからこれあげるわ〜!」

 

「福引券…ありがとうございます!」

 

おつかいに頼まれたので買い物をして支払いを済ませると店員さんに福引券をもらった。

どうやら近くでやっているらしい。

せっかくもらったんだし、やろうか。

福引券…か

懐かしい、ずっとこういうものは避けていた。

 

「よう兄ちゃん!一回か、回していいぞ」

 

「はい」カラカラ

 

結果なんて解っているから。

 

「ん!?金か!一等だ!!」カランカラン

 

やっぱり。

運次第のものの結果はいつだってこうだった。

運に左右されるものは例え遊びでも僕を優勢にしてしまう。

福引だって宝くじだって結果はいつだって解っていた。

 

「一等は天然石のアンクレットだ!大事にしろよー!!」

 

「ありがとうございます、失礼します」

 

天然石のアンクレット、か

さて、家に帰ろう

帰って、この天然石のアンクレットに僕の力でできるかわからないけど…

 

()()()()()()()

 

天然石には元から力があると言われているけど、僕の力を与えられれば増幅したりするのかな?

 

そんなことを考えていたらあっという間に家に着いた。

 

楽しいことなんて早々起きない、それがこの平和な世界では当たり前だ。

 

今更、楽しいことが起きる…なんて期待はしていないんだけどさ。

 

おつかいで頼まれたものをゆっくりと冷蔵庫に収納していく。

 

そして、自室に戻りアンクレットに力を込めていく。

 

僕の力が入ったと思われるアンクレットを丁寧に左足につける。

 

何の力が加わったのかわからないなぁ

 

まぁいいか…

 

『坊ちゃん』

 

「ん?」

 

『坊ちゃん!?私の声が聞こえているのですか?』

 

「うん、聞こえるよー」

 

『ということは、坊ちゃんが先ほど力を込められたアンクレットには人外の者と会話することができる力がこもったのですね』

 

「あ、そういうことになるね」

 

『これからは坊ちゃんとお話しすることが可能なのですね、とても嬉しく思います』

 

「うん、僕も嬉しいよ。長年の相棒であるインコと話しができるなんて」

 

『はい!』

 

ん?この手紙は何だろう?

 

 

『柊 瑞樹様へ』

 

あ、僕宛てだ

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能(ギフト)を試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を世界の全てを捨て、我らの“箱庭”に来られたし』

 

その手紙を読んだ瞬間、僕は知らない場所に飛ばされていた。

 



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