水の如く生きる (大葉景華)
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第1話

ガヤガヤと下から聞こえる喧騒で目を覚ました。ここは酒場権宿屋で宿代が安いからこの街ではずっとここを使っているが、いかんせんボロいから下の音が筒抜けだ。まあいいかと思い二度寝しようとするが一度気になってしまっては煩くてしょうがない。少し散歩してこよう。

シュウェは部屋を出てポケットから煙草を取り出し火をつけ、ゆらゆらと紫煙を燻らしながら、深夜の街にアテもなく繰り出した。

ここは王都の中でも比較的小さな街で守りの剣も1本だけ。この近くの蛮族はほとんど剣のかけらを持っておらずそのせいで守りの儀式も半年に1回あるかどうからしい。それでも煩すぎでもなく、静かすぎでもない街の雰囲気が好きでシュウェはこの街に長く留まっていた。

「ふぅ・・・」

シュウェは煙を吐きながら夜空を見上げた。

(この街からももうすぐお別れか・・・)

シュウェは昔に戦い方、野外での活動の仕方などの生きる術から、酒の飲み方やナンパの仕方などのくだらない事まで教えてもらった師匠の教えで放浪の旅では同じ街にはどんなに長くても3ヶ月以上留まらないと決めていた。

アテもなく放浪の旅を続けながら、途中の街に短期間滞在しながらその街の冒険者の店で依頼をこなしながら路銀を稼ぐ。そんな暮らしを続けてもう、3年になる。師匠の下で学んだのが2年ほどだから冒険者になってもう5年にもなる。

誰とも交じらず、独りで生きてきた。シュウェは孤独が辛くなり、妖精でも慰みになるかと思いフェアリーテイマーになったが、妖精は魔法を使う時くらいしか顔を出してくれない。その事に気づいた時は思わず苦笑いを漏らしてしまったものだ。

そんな事を思い出しながら街を歩いていたら、いつの間にか街はずれのスラム近くまで来てしまった。

(まずいな・・・早く戻ろう)

そう考えた時にはもう遅かった。

いつの間にかシュウェは顔を覆面で隠した3人の男に囲まれてしまった。3人ともナイフや短剣を持っており、目は欲望でくすんでいた。

シュウェは無言で腰から下げている愛刀を抜き中段で構えた。そしてその構えのまま突進し、前にいた暴漢に剣を突き立てた。

「ぐぁ!」

暴漢達は酒に酔っているらしく酔いの勢いで強気になっているらしい、だが相手は独りでこの世界で3年生き続けた冒険者。適うはずもない。そのままシュウェの突進を右肩にまともにくらい、悲鳴を上げながら剣を取り落とした。シュウェはそのまま、ハイキックをかまし、暴漢を蹴り倒し、次の暴漢に剣を向けた。

暴漢は仲間が一撃で倒されたことに動揺したが、まだ酔いの勢いが勝っているらしい。すぐに取り直し、シュウェに斬りかかった。シュウェはサイドステップでよけ、回し蹴りの要領で暴漢を蹴飛ばした。無様に飛んでいった暴漢は壁に叩きつけられ、そのまま気絶した。

流石に酔いも覚め恐怖に捕らわれた3人目は剣を投げ捨て、仲間2人を見捨てて脇目も振らずに逃げだした。

シュウェは剣をしまい、気絶してる2人を縛り上げ騒ぎを聞いて駆けつけた衛兵に引き渡した。

「あー、疲れた。」

たいして疲れを見せずに煙草をふかしながら独りごちた。

もう空も白んで来た。宿に戻ってこの街を出よう。そう決めてのんびりと歩きだし、宿に戻っていった。

 



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第2話

「お兄さん、もうすぐつくよ。」

「ああ、ありがとう。」

「なに、いいってことよ!ここまで護衛もしてくれたんだしよ!」

あの街から出て3日後。隣町までの道を行商人の荷馬車にのってタバコをふかしながらシュウェは気だるそうに答えた。

護衛の任務ができたのはラッキーだった。荷馬車に乗せてもらうため自分で歩く必要もなく、護衛費も出してもらえる。気前の良い商人だと食事を出してもらったり、中には天幕を貸してくれた者までいる。

「こっちとしても、流浪の冒険者さんを雇えたのはラッキーだったよ。」

「なに、持ちつ持たれつだ。」

「次の街は港町だからね、魚料理が有名だよ。」

「それはいい。」

「後2日といったところだろうね。」

「ああ、何も無いことを祈ろう。」

「そうだねぇ、神のお導きがあらんことを。」

と言って商人は神に短い祈りを捧げた。

商人、特に街から街への旅をする行商人は神を信仰するものが多い。旅には危険が付き物だ。道中にはどんな危険が潜んでいるか分からない。災害、野犬や狼。盗賊やゴロツキの傭兵たちに襲われないとも限らない。さらに運良く無事にたどり着いたとしても行った先の街で商品が大暴落してる可能性もある。そんな事が日常茶飯事の世界では神にも祈りたくなるだろう。

シュウェは神官ではないから熱心な信者ではないが、行商人と同じ旅を続けるから神に祈りを捧げることも少なくない。

「おおぅ。」

「どうしたんだ?」

「雨の匂いがきつくなっている、こりゃあ一雨くるな」

「ふむ。それなら今日は早めに野営の準備をしよう。」

「了解でさぁ!」

そう言って行商人は荷馬車を止め、2人は野営の準備を始めた。

「妖精達よ、力を貸してくれ。」

そう言って、フェアリーウィッシュを唱え、当たりを見渡してみるも、特に何も感じない。

「この辺りは特に何も無いようだ。」

「そいつぁ良かった。これで今日は安心だな!」

「絶対とは限らない。日が暮れる前に焚き火の準備をしてしまおう。」

「そうだな。」

 

 

「兄さんはなぜ流浪の旅なんかをしているんだい?」

「そっちこそ、俺と同じ様な生き方じゃないか。」

「ははっ!違いねぇや!」

「明日も早い。今日はもう休んでくれ。」

「兄さんは?」

「夜の見張りだ。馬に寄り添って寝な。動物の方が危険に敏感だ」

 

 

深夜・・・シュウェは煙草を吸いながら考え込んでいた。

(何故・・・か・・・。考えたこともなかったな。)

シュウェの父は衛兵だ。幼少期から剣技を教えて貰っていた。

母はそこそこ名のある魔法使いだ。よく魔法で作った色とりどりの炎を見せてもらった。

それが理由からか、シュウェは幼少期から戦いに興味を持ち、父の友人が経営している冒険者の店に入り浸り、その店の冒険者によく、冒険譚をねだった。

16の時に冒険者になることを決心し、両親にその事を相談した時は、2人とも少し悲しそうな顔をしたが笑いながら応援してくれた。

18までの2年間、今まで以上に剣技を父から教わり、冒険者の店の冒険者達に模擬試合を申し込み、腕を磨いていた。

そんな時、シュウェの師匠が現れた。

一目見ただけでも強いと誰もが分かる雰囲気。シュウェは一目見ると

「俺と試合してくれ!」

と叫んだ。

「・・・は?」

と困惑する師匠に店の常連達が事情を説明すると

「・・・ふん、分かった。かかってこい小僧。」

 

 

結果は完敗といっても足りないくらいだった。

 

 

一太刀浴びせるどころか、相手に剣を抜かせることすら出来なかった。

「小僧、その年でここまで出来るのはなかなかやるな。後10年すれば国に名を馳せる戦士になるぞ。」

「・・・・・・はい・・・」

「そう落ち込むな。俺は暫くこの街にいる。暇が有りゃあ稽古してやるよ。」

「本当ですか!?」

「ああ、ちょっとばかし興味が湧いた。」

その日からシュウェは師匠と行動を共にし、街を出て近隣の蛮族を倒し、暇な時は師匠と稽古をすると言った生活を3ヶ月した。

 

 

「・・・え?師匠、今なんて?」

「後数日もすれば俺はこの街を出る。俺の流儀でな、同じ街には3ヶ月以上留まらないと決めているんだ。それ以上は情が残る。」

「そんな!俺、まだ師匠に教わりたいことがあります!」

「何お別れみたいな事言ってんだよ?お前も来るんだよ。」

「・・・え?」

「お前のご両親からな、うちの息子は外に行きたがっているが、自分達ではそれは出来ない。どうか家の息子を連れていってください。って言われたんだよ。」

「父さん・・・母さん・・・!」

「だから後はお前の気持ち次第ってとこだな。で?どうする?一緒に来るか?」

「勿論です!」

その日、シュウェは故郷を出、師匠と共に流浪の旅に出た。




長くなったのでここで一旦切ります。


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第3話

行商人に言われ、過去を振り返り、感傷に浸っていた。

(父さんと母さん、元気かな?師匠は・・・・・・まぁ、殺しても死なないし大丈夫か。)

と考え、煙草を焚き火の中に捨て、もう1本と思っていたら

(・・・・・・・・・!殺気!)

次の瞬間馬が嘶き、行商人もそれに釣られて起きだした。

「兄さん、どうした!?」

「敵だ!多分、蛮族!隠れてろ!」

シュウェは腰の愛刀を抜き妖精達を呼び出した。

(・・・来る!)

シュウェは敵の気配に向かって妖精魔法を打ち込んだ。

「グギャァ!」

明らかに人の声ではない。汚れた種族、蛮族だ。

(ボガードか、束になっても怖くはないが・・・依頼主の方が心配だ。)

と思ってはいたが。

「こっちは大丈夫でさぁ!兄さん!頼むぞ!」

と言い、馬を使いこなし蛮族を寄せ付けない。

「安心してくれ!3分もかからん!」

と叫びつつ目の前のボガードを切り捨てた。

(あと4匹!)

ボガード達は行商人を諦め、先にシュウェを、倒そうとするらしい。4匹でシュウェを取り囲んで逃がそうとはしない。

しかし、シュウェも一角の冒険者。ボガード4匹など敵ではない。

「はぁっ!」

強く踏み込んでボガードに袈裟斬りを食らわす。

「グギャァァ!」

と叫び声を上げ、ボガードの一体が自身の流した血の中に沈む。

(あと3体!)

シュウェは飛びかかってきたボガードを蹴りとばし、水平切りで真っ二つに切り裂いた。

「妖精達!力を貸してくれ!」

と、シュウェは妖精達との契約の証である宝石が着いた指輪に魔力を注ぎ込み、妖精魔法でボガードを狙い打った。

「ガァッ!?」

魔法などろくに見たことすらないのだろう。抵抗もできずにボガードは地に伏して動くことは無かった。

(最後!)

シュウェは飛びかかっくるボガードの攻撃をよけ後ろから首筋を切り捨てた。

「・・・ふぅ。」

「やれやれ、大丈夫かい?兄さん?」

「護衛対象に心配されちゃあ形無しだよ。」

「そりゃそうだ、見事な戦いだったよ。」

「どうも、それより早く出発しよう。」

「何故だい?」

「あれは多分様子見の斥候っといったかんじだろう。すぐにより上位の蛮族がやってくる。」

と言いながら焚き火を消し、手早く準備をした。

翌日、昨日までとは打って変わって緊張した様子で2人は道を行く。

「兄さん、このまま無事に着くと思うかい?」

「有り得ないね、まず間違いなく戦闘になる。」

「大丈夫なんだろうね?」

「当たり前だ。昨日は奇襲だったからあんなことになった。アンタの言うことが正しいならここから先は背の高い草木のない平原。見晴らしがよく奇襲はできない。」

「昨日言ってた蛮族の親玉には勝てるのかい?」

「何が出るかは予測つかんが余程のやつじゃない限り大丈夫だ。」

ぽつ・・・ぽつ・・・

「雨か・・・」

「この雨が吉と出るか凶と出るか、だな。」

雨が降れば2人の匂いが薄れる。しかし、荷馬車が通りづらい。

「とにかく急ごう。」

「ああ、そうだな。」

 

しかし、二人の祈りが届くことは無かった。

 

「・・・!やばい!」

「ブルルル!」

シュウェと荷馬が同時に気づいた。

「見えた!検問だ!」

行商人が叫ぶ。

シュウェは抜刀しながら

「ここは俺に任せろ!あんたは検問で衛兵を連れてきてくれ!」

と叫びつつ妖精魔法で後ろに氷の壁を作り蛮族語で

「ここを通りたければ俺を倒してからにしな!」

と叫んだ。

「おいおい、こいつはやっすいセリフだなぁ!」

「お前らの下賎な言葉だと人間様の高貴な言葉は使えないからな!」

「き、貴様ぁ!殺す!」

「上等!かかって来い!」




多分次には街にたどり着きます。


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第4話

「だぁっ!」

という叫びとともにボガードを横一文字で切り払った。

(くそ!キリがない!)

「グガァッ!」

「くっ!」

一体一体は所詮ボガード、取るに足らないものではあるが、如何せん数が多すぎる。長期戦になればなるほど集中力が途切れ不利になっていく。さらに雨で視界が悪く、余計に戦いづらい。

(魔力もさっき使い切ってしまった。魔晶石はあるが、何処まで持つか・・・)

と、思っていたら

「ぐはっ!」

一瞬の隙をつかれ、ボガードの攻撃を受けてしまった。

(まずい!)

いくら数が集まろうと所詮ボガード。シュウェにダメージはない。しかし、攻撃を受けシュウェが体勢を崩した隙に何匹かのボガードか横をすり抜け、氷の壁に攻撃を始めた。

(くそ!出し惜しみできない!)

そう思いながら懐から魔晶石を取り出しその魔力を使って壁に攻撃しているボガードに妖精魔法を叩きつけた。

「はぁ・・・はぁ・・・これで、大部分は片付いた。」

『それはどうかな?』

「誰だ!?」

シュウェが声の方へ振り向くとそこには他のボガードより二回りほど大きいボガードがいた。

『ボガードトルーパーか、あんたがこの群れのボスだな?』

『いかにも、これ以上無用に部下を死にに生かせるのは心苦しい。一体一で決着をつけよう。』

『よく言うぜ、俺が疲れるまでこそこそ隠れていたんだろ?』

そう言って剣を構えなおした。

(さて、おそらくもう雑魚は襲ってこない。だが、魔力はなくなって魔晶石も使い切った。相手も魔法は使えないはずだから、純粋に剣技のみでの勝負。)

「ふふっ、ははははははっ!」

『何を笑っている?』

「いいねぇ!この感じ!ゾクゾクする・・・さあ!やろうぜ!」

『殺す!』

両者共に得物を担いで切りかかる。お互いに円を描くように動きながら休むことなく剣戟を浴びせる。

「はあっ!」

『うぉらぁ!』

激しい戦いの中シュウェは

(力任せの勝負は体格的に劣っている俺の方が不利・・・ならば!)

と、さらに激しく動き相手に的を絞らせない。

トルーパーはシュウェの動きが捕えられず戸惑っている。

『ぬぅ、小癪なぁ!』

スピードに翻弄され、次第に決着が見えてくる。

だが、

「しまった!?」

『はっ!足を滑らすとは不運だったな!人間の戦士!』

「クソがっ!」

トルーパーが止めの一撃を刺そうとしたが、シュウェがとっさに投げた剣を弾いた隙にシュウェは起き上がり、ぬかるみから脱出した。

『往生際の悪い。だが、武器も持たずに何が出来る?』

『やってみないと分からないぜ?』

『ほざけ!』

トルーパーはシュウェに猛然と襲いかかる。シュウェはなんとか避けているが、攻撃する暇もないからいつか捕まる。

(どうする?いや!考えるな!集中・・・集中するんだ・・・)

シュウェはどんどん集中していき、周りの音が消え、トルーパー以外見えなくほど集中していく。

⦅なぜだ?なぜ剣を持たぬ戦士にここまで苦戦する?なぜ当たらん!?⦆

集中し、さらにスピードを上げていく。

「いいねぇ!もっと速く!もっともっとだ!」

『グゥ!クソォ!』

次第にシュウェも攻撃に転じる。トルーパーの攻撃を避けざまに拳打を加えていく。

そしてついに。

『くそ・・・まさか人間の戦士に・・・剣なしで負けるとはな・・・』

と言い、力尽きた。

「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ。」

と、シュウェもその場にへたり込む。ボガード達はボスが倒されたことに意気消沈してその場から動けないでいる。時期に衛兵が来るだろう。




「」←普通の言葉(共通交易語)
『』←その他の言語、今回は汎用蛮族語です。


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第5話

無事、残党も衛兵に引き渡されシュウェと行商人は街の中にたどり着いた。行商人が言った通りになかなか賑わっており、市場も活気に溢れている。

「兄さん、ホントに無事でよかったよ。」

「ああ、生きているおかげでこんなに美味い料理が食べられる。」

「俺もアンタのおかげで無事に街までたどり着いたんだよ。いや、本当にありがとう!」

「いや、いいよ。俺も今あんたの金で飯を食わしてもらってるしな、おあいこだ。」

「さて、そろそろ行くよ。」

「そうだな。俺も酒場に行くよ。」

「お互いに神のお導きがあらんことを。」

「ああ、神のお導きがあらんことを。」

 

 

 

シュウェは冒険者の店にたどり着きまずは料理を頼み周りの様子を伺ってみる。

「お客さん。この街じゃ見ないね、旅の冒険者かい?」

「ああ、一人でも出来る依頼はないか?」

「悪いね、今の時期は大体が船の護衛なんだよ。向こうの大陸から来る船を護衛して、帰る時にも護衛する。」

「? 報酬はどうするんだ?」

「こっちと向こうの店は繋がっているのさ、誰々が行くからよろしくと言えば向こうで報酬を払ってくれるのさ、勿論、その逆も然り、よ。」

「ふぅん。便利なシステムだな。いちいち戻らなくていい。」

 

船着場に着き、店の主人の名前を出して船に乗せてもらった。

「アンタが旦那の言っていた旅の冒険者かい?話は聞いているよ。ささ!乗った乗った」

「船に乗るのは初めてだ。楽しみだな」

と、この時は思っていた・・・

 

 

 

「・・・あー、暇だ。暇で暇で死んでしまいそうだ。」

船が港から出て3日。初めの1日は初めて乗る船の感触や景色を楽しんでいたがどこまで見渡しても代わりのない景色というものは案外すぐに飽きるものだ。武器の手入れや荷物の整理などを何度もして、それすら飽きてシュウェは甲板で煙草を吹かしてぼんやりしていた。その様子を周りの船員や、おそらく船に乗りなれている商人や冒険者達は懐かしそうにシュウェを見て笑っていた。

そしたら、

「やあ、少しいいかい?」

「ん?誰だ?お前?」

「君と同じ旅の冒険者だよ。僕も船は初めてでね、こんなに暇だとは思わなかった。船が港に着くまで話し相手になってくれないか?」

「ああ、そういう事なら願ったり叶ったりだぜ。こっちも暇で死にそうなんだ。」

「それは良かった。僕はフィオーレ。よろしく。」

「シュウェだ。こっちこそよろしく。」

と、お互いに話し相手を欲していたのか、話の種は尽きることなく航海予定の最終日まで延々と話し続けた。

 

「このままだったら金だけ貰って船に乗せてもらったみたいだな。」

「まぁ確かにそうだね。でもそれでも儲けの出るくらいの積荷を積んでいるんだろうよ。僕としては中身がちょっと気になるね。」

「そういう頭を使うのは苦手だ。」

「ははっ!僕もあまり頭は使わないよ。冒険者ってのはそういうのが多いのかもね。」

「かもなー。俺の師匠も頭の中まで筋肉って感じの人だったぜ。」

「へえ、お師匠様がいるんだ。」

「ああ」

などと話していると、

「海賊だー!海賊船がこっちに来ているぞー!」

と、見張りの男が叫びをあげた。その声を聞くやいなや商人達が自分で雇った傭兵や冒険者達がそれぞれ戦闘準備を始めた。

「海賊船か・・・」

「おそらく待ち伏せられていたな。」

「どう戦う?」

「俺が前衛。お前は後衛に回ってくれ。支援を頼む。」

「分かった。」

と言って、シュウェは腰の剣を抜き、フィオーレは弓を取り出し矢を構えた。




行進が遅れた上に尻切れとんぼで申し訳ないです。
会話のテンポ悪いですね。間のとり方も悪い。まだまだ練習が足りないです。


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第6話

海賊との戦闘での危惧はシュウェとフィオーレは初めての共闘であるから上手く連携が取れない事であったが、それは杞憂に終わった。

フィオーレはシュウェの動きに合わせシュウェが相手の体制を崩した所に的確に弓を放つ。そしてシュウェの後ろから来る敵に向かってやで怯ませ、その隙にシュウェが相手を切り捨てる。他の冒険者や雇われの傭兵も手練であったために海賊達は見る見るうちに捕縛されていく。

「ふぅ・・・そろそろ終わりか。」

「そうだね。」

と、2人が俺は話していたら

「ぐわぁぁ!」

「ぎゃぁぁ!」

と悲鳴が聞こえた。

「どうした!」

と2人が声のした方に武器を構えると、刀身が背丈ほどある大剣を振り回している男がいた。海賊船の船長らしき男が得意げに叫んでいる。

「はっはっはっはっはっ!凄い!凄いぞ!先生!やっちゃつてくだせえ!」

「うるせぇよ、俺はただ暴れたいからお前らの作戦に乗っただけだ。お前らの味方じゃねぇよ。」

「はいはい、分かってますって。」

「ちっ、狸ジジイが。まぁいい。俺は思うように暴れさせてもらうだけだぜ。」

 

「まずいぜアイツ。」

「はい。相当の手練ですね。」

「おそらく雇われのゴロツキだろうな。」

「どうする?」

「もちろん!俺がやる!手出すなよ。1体1だ。」

「やれやれ、そう言うと思ったよ。」

そうして、シュウェは武器を構え

「おい!そこの大剣使い!強いやつと戦いたいんだろ?俺が相手だ!」

と叫んだ。

「うん?ほーう?お前、なかなか強そうだな。楽しめそうだ!」と相手も剣を構えた。

(この前のボガートトルーパーと同じ。パワーは負けているが、スピードはこっちの方が上。ただし、トルーパーなんかより断然強い!最初っから全開だ!)

シュウェの集中力がどんどん増してゆき、トルーパーと戦った時のように周りの景色が見えなくなり、音も自分とあの青年の出す音しか聞こえなくなった。

「俺の名前はシュウェだ!名前を聞こう!」

「俺の名前はヴィズ!」

「さあ!行くぜ!」

「おう!」

と両者ともに剣を構えて突進する。丁度甲板の真ん中でお互いの武器が交わる。

ガキィィン!と激しい金属音をならし打ち勝ったのはやはり重量のある武器を使うヴィズ。たたらを踏んでシュウェは後ろに下がった。

(やっぱり正面からは不利か・・・いやあの時みたいに考えずに感覚に任せた方がいい!)とさらに集中を深める。

「ウォラァ!」とヴィズが大きく踏み込み水平切りを放つ。シュウェはそれを後ろに飛んでよけ、振り切った方とは逆の方に走り込む。そして、ガラ空きとなった部分に剣を打ち込むが、

「遅いぜ!ウラァ!」

と、ヴィズが片手で剣を持ち直し再び水平切りを放った。

しかし、シュウェは今度は下がらずにスライディングで水平切りを、避ける。

「何!?」

(これなら届く!)

シュウェはスライディングの勢いを利用して、ヴィズの足を切り裂いた。

「ぐっ!」

大分深く切り裂いたが、ヴィズは膝を付かず再び剣を肩に担いで構えた。

「おい、その足では満足に踏ん張れないから剣のスピードも落ちる。決着はついただろう。もうやめよう。」

「うるせぇ!こっからが楽しいんだろうが!」

と、構えるが、やはり足にきているのだろう。先程のように豪快な攻撃は出来そうにない。

「・・・こっちとしても楽しい戦いに水を差すのは心苦しいが、任務なんでな。悪く思うなよ。」

と言って妖精魔法を打ち込んだ。

「ぐっ!?魔法?クソ・・・がっ・・・!」

と言って倒れた。

「フィオーレ、こいつを縛って手当してやってくれ。」

「構わないが、君は何をするつもりだ?」

「後始末が残っている。」

と言って、海賊船の船長に剣を向ける。

「ひっ!クソ!殺ってやる!」と剣を振り回すも、シュウェは軽くいなし手首を切り裂きそのまま船長を真っ二つに切り捨てた。

「ふぅ・・・これで終わりだな。あとは全員縛って港で衛兵に引き渡すだけだな。」

疲れた、と言いながら煙草を吹かしながらシュウェはもうすぐ見えるであろう港を見つめていた。



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