忍者活劇~月下の闇に影は舞う~ (高造 )
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序章 戦乱の予兆

東の島国・大和

 

そこは争いの絶えない小さな島国だ。

『侍』と呼ばれる者たちがそれぞれの野望や目的のために武器を取り、鎧兜をその身に纏い、血で血を洗う戦を続けていた。

ある者は天下を統べるため、またある者は家族を守るため。

そんな混迷の時代の中、影で生きる者たちが今宵も戦場を駆け抜ける。

その者たちを人々はこう呼んだ。

 

 

 

 

 

 

闇に潜む者たち、『忍』と・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東の国大和、そこは争いの絶えない小さな国だ。

多くの血が流れ、その大地を血に染める。

これは、そんな時代を生き抜いた、『忍』たちのお話。

それを、俺、『雲の龍丸』が語るとしよう。

 

 

 

儚く、悲しい物語を。

 

 

 

 

 

宇高多、中津国と呼ばれる大和中央の国に存在する小国である。

辺りは山が多く、土地としても裕福ではないその地にその場所はある。

 

忍の隠れ里・『葉隠れ』

その地に住む者は皆忍の道に身を置き、忍として死んでゆく。

かく言う俺も、そんな里に住む一人なんだが・・・。

あっそうだ。ここで自己紹介をしておこう。

俺の名は、龍丸。雲の龍丸だ。

葉隠れの里に住む中忍の一人で、今回、長い任務を終わらせ、やっと里に帰るのである。

中津国にある国の一つ、幸田の国の戦力調査というそこそこ困難な任務だ。戦力の情報を依頼主に報告をして、里へと帰るところなのだ。

 

「ん?金属音?どこからだ?」

こんな山の中に好き好んで入る奴なんて、葉隠れの忍か、麓の村の人間か、はたまた敵対いている里の忍かどちらしかない。だからあるとしたら修行している奴らの組み手だろうと思い、音のする方向へ歩を進める。

「どーせ千代女と廉造あたりが修行してんだろうな。ついでに見に行ってみるか」

 

音が近くにつれ、俺は違和感を持った。

葉隠れは組み手には苦難か忍刀を使う。だが、この匂いは・・・・・・。

 

火薬。それも匂いからして、癇癪玉ぐらいの。ということは・・・・・・。

「葉隠れの忍と、他里の忍が戦っているのか!?」

 

俺は急ぎ火薬の爆発音と金属音がする方向に、全力で走りだした。

 

 

 

千代女 Side

 

 

「(こいつ強い!?)」

 

葉隠れのくの一・千代女は驚愕していた。

戦闘や任務成功数に置いても、常に上位の実績がある自分が防戦一方であるからだ。

そりゃ他者の追随を許さない同期の青年と競っているわけではないが、それなりに強いという自信はあった。それなのに自分は防戦一方になっているのだ。

 

「なんなのよもうっ!」

「もう諦めよ。貴様が拙者に勝つという未来は無い」

 

「だからってはい、そーですかってなるわけないでしょ!」

 

そう言って千代女は印を結ぶ。

 

忍法・木の葉隠れの術

 

忍術・・・それは忍が扱う特殊な業で鍛え抜かれた肉体とそのなかに秘められたちから、『呪力』を用いた超常的な力で、自然の力を使って風を起こしたり、幻を見せることを可能する。

千代女が使った木の葉隠れの術は風を起こし、宙に舞った大量の木の葉によって身を隠し逃走を図る基本的な忍術である。

 

「そのような術で拙者から逃げ仰せると思うておるのか」

 

黒装束の忍は鼻で笑いながら一瞬で大量の印を結んだ

 

火遁・焔風の術

 

体内で練り上げた呪力を媒体にして、風に炎を乗せる術である。

これにより千代女の木の葉隠れの術は燃えて灰となった。

「くっ!」

 

千代女はなお諦めずに印を組もうとするが・・・。

 

「無駄だ」

一瞬で距離を詰めて印を止められてしまう。

黒装束の忍は苦難を構え、千代女に降り下ろす。

 

「(殺られる!!)」

 

千代女はこれから自分に起こる未来を予想し、涙を流しながら目を閉じた。

 

―ガキィィン―

 

金属と金属のぶつかる音がした。

驚き目を開けると、驚愕の声をあげる黒装束の忍と、忍刀を逆手に持ち、相手の攻撃を防いだ上半身を鎖帷子で包んだ赤髪の青年、龍丸がそこにいた。

 

Side Out

 

 

 

「き、貴様は!?」

 

「龍丸!!」

 

「何とか間に合ったみてぇだな」

 

俺はそう言って黒装束の忍に蹴りをいれる。

黒いのはそれを避け一気に距離を取った。

「・・・雲の龍丸殿とお見受け致す」

 

「ああそうだ。俺が葉隠れの里の龍丸だ」

 

「なんたる想定外、貴殿は長期任務に着いているという情報だったが?」

 

「ああ。それを終わらせて戻って来たのさ」

 

「・・・ここで会ったのも何かの縁、その命頂戴致す!」

 

「やれるもんならやってみやがれ!」

 

俺と黒いのは同時に印を結び術を放つ。

 

火遁・焔風の術

 

忍法・秘針の術

 

焔の風と六条の紫電の矢が互いに放たれる。

双方それを避け、次の術を放つ。

忍法・石化の術

 

忍法・風切り羽の術

 

黒い霧と青い羽根がぶつかり、羽根が石となる。

 

「相手を石にする術か・・・」

 

「いかにも。我が里秘伝の術に御座る」

 

「良いのか?そんな簡単に秘伝の術出して?」

 

「それぐらい出さねば勝てぬ相手なのでな」

 

「そうかい。なら、そろそろ決めるぜ!」

 

「望むところ!」

 

どちらも同時に駆け出し、苦難と忍刀を振るう。

 

千代女 Side

 

「すごい・・・」

 

千代女は二人の戦いを見て防戦と呟く。

二人の戦いは上級忍術と卓越した体術を駆使したハイレベルな戦いだった。

相手の術を自分の術で相殺し、相手の隙を狙って得物を振るう。自分に同じことをやれと言われても決して出来ない戦いが目の前に広がっていた。

 

幾度も斬り結び、何度も術を相殺した二人には疲労なんて見られない。

それどころか、戦いを楽しんでいるようにも見える。

 

そんな終わりの見えない戦いにも、遂に終わりの時が来た。

 

「そこだ!!」

 

龍丸が術を放った直後の隙を突いて、相手の脇腹を切り裂いた。

 

Side Out

 

 

危なかった。

あの一瞬の隙がなければ負けていたのは俺の方だった。

 

「み・・・、見事だ」

 

「お前もな。だが、俺の勝ちだ」

 

「そうさな。貴殿の勝ちだ。だが、これから起こる争乱の中で、貴殿は生き残ることが出来るかな?」

 

「何?」

 

ボフンっ!と煙がたなびいて黒装束の忍のすがたは消えた。

 

 

『覚えておくがいい。我が名は草薙。草隠れの里の草薙だ!』

 

 

周囲に黒装束の忍―草薙の声が響く。

「草隠れの草薙・・・」

 

俺はこの時確信した。

 

『あの男とは必ずまたまみえることになる』

 

実際に俺は、この一月後に勃発する戦で幾度となく戦うことになる。

だが、その時の俺はあの男・・・草薙に勝てるかどうか…。

 

「龍丸?どうしたの?大丈夫?」

 

「え?ああ大丈夫だ。それより、すぐ里に戻り、長に報告する必要があるな」

 

「そうね。急いで帰りましょ」

 

「ああそうしよう」

 

そうして俺たちは本拠地・葉隠れの里に向け走り出した。

 

これから起こる戦に備えるために・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあこれがまず最初のお話。

これから俺達は戦に巻き込まれ、様々な出会いと別れを繰り返すことになるんだが、それはまたの機会に話すとしようか。

 

そんなこんなで始まりますは、戦乱によって翻弄される若き忍たちの奮闘記。

 

題して、『忍者活劇~月下の闇に影は舞う~』の始まり始まり。




英雄教室の方が早くも行き詰まったので、息抜きもかねて投稿します。
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