東方新編録 -??????- (蒼猫(天音子))
しおりを挟む

序章『目を開けたら、晴れた空だった。』
0話「路上睡眠」


やあああぁぁぁっと一話書き終わった…
序盤にして一番過酷な局面を終えたのでこっからサクサク書けます(血涙)


「…んぁー」

()()()()()()()()()()()()()()()()()。生命の、所謂自然の風が体を包み込む。

こんな、こんなに気持ちの良い()()は何時ぶりだろうか?目には見えない精霊のような存在が心地良く身体を這うような、そんな感覚である。

それとは反対に、暑い感覚が目の前の体表目掛けて飛んでくる。真夏ほど暑さを感じるわけではないが、かといってあまり気分が良くなるわけではない。ぶっちゃけ痛すぎる。

 

「…というか」

今、この瞬間俺が寝ている此処…地面だ。路上だ。しかも、コンクリートやアスファルトの様な人工物ではない、()()()()()()()が背中から伝わる。

さてどうしようか、遂にこの歳で徘徊とか夢遊病に苛まれた疑いがありそうだ。今日は確か日曜日だからこんな姿見られたら笑い話では済まなくなるぞ。

 

「……」

目を開けたくても開けれない。心地良い心情と、遂には色々な意味で問題アリな状態になってしまったのではないかという心情が脳の高速道路を行き来している。

よく良く考えれば、こんなにまともな思考を持ってるんだから後者の可能性はマイナス方向にいる筈。なのにこれを気付かない辺り、手の施しようがないのかもしれない。

いやそんなことよりだ。まず目を開けて周りを見渡す事から始めるべきだった。

「陽射し強っ。オマケに背中も痛いなぁこれ…」

重い瞼を開けようとすると反射的に閉じてしまう。確かに暑さはないが、夏の陽射しに近いような刺激を覚える。

どうやら、本当に()()で寝ていたようだ。といっても田舎によくある、硬い土を敷き詰めただけの簡素で判り易い路だ。

左手には森。右手には平野が見える。本当に田舎のようだ。というより田舎以上に自然が多い、これは本当に田舎と言うべきかと問うべき位には自然が多い。

-------見れば見るほど幻想的なくらいに、それはとても美しい場所だった。今までこんなに綺麗な場所を見たことがあるのだろうか。いや、絵画とか写真でなら何度もあるかもしれない。しかし現実で、こんなにも美しいと底から言える場所があっただろうか…こんなに澄んだ土地日本にあるのか怪しいくらいだ。

 

 

…疑問が1つ。()()()()()()()ということ。

俺は普通の高校生だった。地元は別段都会と呼べるわけではないが、かと言って田舎ではなかった。そのような場所で人生を過ごしてきていても分かる位の田舎。しかし、記憶のどの部分に思考を回しても該当する所はない。そもそもこんなに茂った森が近くにあっただろうか?いやないな、仮にあっても平野がとても広すぎて傍目に見なくともほっつき歩いた結果ではないということが分かる。それに、仮に歩き回ったとしても時間や距離を考えて記憶を頼りにしてもそんな場所は見当たらない。

「……」

しかし…()()()()()()気がする。視覚や聴覚的な部分ではなく、脳のフラッシュバックする映像に違和感が多い。

一緒に遊んだ友達。学校の校舎。自宅の自室。近くの大きめなショッピングモール。家族。日々の生活。記憶。

どれをとってもどこかが必ず不鮮明だ。「あれっ?」という、ふとした確実のなさが張り付いて仕方ない。

間違うことなく覚えているのが、俺の名前が立川 ハルという名前であること。今の服は外出用によく使う服だということ。薄い薄黒の半袖ワイシャツとジーパン、髪は少し長めのセミロングで天然パーマ。特に手入れをしていない。それくらいの情報しかなかった。

「どうなってるんだ…」不透明な状況に、不鮮明な記憶。精神異常者にも見て取れるような状況に、加えて記憶にある違和感が体の底から不安をこみ上げてくる。

次第に、とても不快な何かが先ほどの()()()()と同じような感覚で不安に置き換わって這い上がる。

足がもつれて、今にも倒れてしまいそうな恐怖に体が耐えている。

「ぐっ…!?」締め付けられるような感覚に耐えながら悶えて、ふいに目が閉じた。

次に目を開けた瞬間。そこに見えるのは先ほどの穏やかな風景とは全く違った。全てを黒に塗りつぶした様な、確かに()()には色があるはずなのに、黒や赤黒、黒紫といった負の感情を駆り立てるような色になっていく。

次第に先ほどまで明るかった周りのすべてが、それに書き換えられていく。

「なんだよこれ…!?」意味が分からない。この場所と言い記憶と言い、今度は不可思議なことまで起き始めている。さすがに心も体も持たない。食中毒に遭ったみたいに、突然と投げつけられるばかりで抵抗も出来そうにない。

そうしてどうにかこうにか耐えてる内、

 

『すべて…忘れたのか?』「なっ…!?」

誰かも見分けられない声がして振り向く。そこには、なんと口に出せばよいのか、()()()()()()()()()。人の形はしている。しかし、それ以外に定まった何かがない。顔のパーツがない。目と思しき部分もまるで存在しない、それに近しい区域はあっても目と呼べたものではない。口もなく、肌も黒で塗りつぶされている。人間と呼ぶにも、そもそも生命体と呼ぶのかすら怪しいくらいだ。

そして、異常なくらいに殺意が満ちていた。()()()()()()、とか今にも殺しにかかってくる。そんなありきたりなモノとは違う、存在そのものがまるで殺意や憎しみといった負を超えた怨讐の感情で構成された機械にも近い。

だというのに、

そいつはどうして体格も、

服装も、

髪型も、

俺にそっくりそのままなんだ…!?

違う部分は、顔のパーツがハッキリせず口が見える程度の感覚。

しかし、どんなに否定しようにも俺にそっくりだ、違うのは顔やその姿や印象、心象くらいで全体のフォルムを見れば見間違うことのないだろう。シルエットにしても判別出来はしないだろう。

 

そいつは、何もせずただ立ち尽くしたまま続けた。

『思い出せないのか…?』「何がだ…!?」

『何故だ…?お前が忘れるはずはない。それなのにどうして俺に怯える必要ががるのだ…』

訳がわからない。言っていることが支離滅裂だし、怯えるという()()()()()()()()がある。

「怯えるも何も、お前みたいなやつは見たことなんか…」

『…成程。その記憶。その意思に相違があるということか…』

相違。同じではないということか…?

『その衣服も…どうやら、書き換えられたようだな…』

「はぁ…!?一体全体何をわけのわからないことを…」

『いや、今はいい。お前自身がその相違に気が付かぬ限り、俺を真に認知することは不可能だろう…』

妙な物言いだ。存在すらも知覚できるか怪しい奴を知っているわけがない。だというのに俺が元は知っていて、その記憶、情報は書き換えられているというのか…!?

在り得るはずがない。彼奴の言葉をすべて鵜呑みにすれば…、だとしてもそんなおかしなことがあるはずがない。

何が言いたい。何を俺に知らせたい。何がしたい。

声にならない嫌な感覚が、体の内外を這い回り嫌な冷や汗とともに精神をどんどん悪い方向へ追い込む。

そうして今にもかすり消えそうになる俺を、その何かは不意に近付いて顔を眺め始めた。

『嗚呼。だがお前は間違いない。その姿は憶えている。懐かしき姿だ。』

「懐かしいだ…?こっちはお前のことなんか一つも…」

『今はそれでいい。思い出せぬ理由も、俺が何者であるかも、そして、お前自身のすべても…

先に伝えておくとすれば…俺はお前が内側に持つ認知の体現、()()()()()()()()()()()()。』

意思として実体した存在…つまり、俺から生まれた存在なのか。

「だとして、どうやってそんな存在が生まれたというんだ。仮にそうだとしても、俺の目の前にこうして現れる理由も、そもそも負の意志や感情だけがこうして目の前に現れる意味が分からない。」

別に俺の中に、優しいとかそういう感情しかないという風には考えていない。だとしても、負の感情だけが先走って出てくることに違和感を覚える。

『それは違うな。負の感情が混じっているだけで、俺そのものはお前の感情そのものではない。細かくは言えないが、お前が思う()()は、あくまで俺を見たこと、感受したことによる見方をそのまま俺自身の構成物として捉えたというだけだ。』

「じゃあ。お前は俺の中にあるなにかではあって、負そのものではないんだな」

『そうだ。そしてお前はその認知の中身すべてを忘れて…

突如、不快感が少し取り除かれた感覚を覚える。それと同時に、目の前の彼奴は霧のように晴れてきた。

『来たか……すまないが、再開は何かの節にまたするとしよう。』

「ま、待て!少しはヒントの一つや二つ教えてくれないのか!?」

『すまないがそれは出来ない。私がこうして消える理由も、お前がすべてを忘れている理由も、言うなれば()()()に近い存在が見張っているからだ。正確にはそうさせようと自発的に起させる()…そういった修正力が俺を消させようとしている。』

徐々に、奴の姿は先ほどの風景に紛れて

『だが、お前はいつか俺を思い出す。いや…()()()()()()()()()()()()。』

そして…

「おっ、おい!」

 

 

「…消えた。」

そこには、先程まで彼奴がいたという痕跡も何もかもがなくなっていた。

そう、何もかも。最初に、起床してから見たすべてがそのままに残っていた。時間の経過こそ多少はあれど、それでも同じ光景がまだ残っていた。

「……」

これからどうしたものか…と、どうしようもないまま先のことを見るしかなかった。

見慣れない場所、欠陥のある記憶、自分に瓜二つの姿をした何か、その何かから聞かされた記憶の改変、自分の行く末。

どれをとっても不鮮明どころではなく、精神的要因も重なってハッキリしてこない。

記憶という、すぐに抜け落ちてしまいそうな薄い紙片が今にもなくしてしまいそうで、とにかく大変に良くない状況だった。

 

「…考えても仕方がないか。」

三巡ほどの、俗に言わない面倒な状況確認をして、とりあえずは次の行動を決めることにしよう。

一先ずは目の前の看板から対処していくことにする。

「←人里方面 ↑魔法の森 博麗神社→」と、三つの方向が示してある。

「…えぇ?」この流れでこんなにも不明な点が多いのに簡素な看板は初めてである。

まずだ。「魔法」と「神社」という、いかにもって感じの名前が一堂に会するというのが意味不明どころではなかった。

とはいえ、西洋と東洋がこんなにも直球的に混じっている光景があまりにも初めてすぎたもので多少の戸惑いのような感情こそ湧きはしたが、そんなことで曲げても何も良いことはない。

一つ一つ処理していくことしよう。

 

左の人里、これは読んで字のごとく…まぁ里という表現よりは村に近いところだろう。人がいるところであるのは間違いない。

ここに行って情報を集めてみるのが手っ取り早い。少なくとも人がいるところに行けば何かしらの情報は手に入れることができるはずだ。

ここは候補に入れておくとして…次だ。

 

真ん中、というより目の前に示されている魔法の森…森?家ならまだしも森?

はっきりいって選択肢としてまずありえない。魔女が住んでいる家とか、そういう記述であるのならばまだ納得のいくことだ。しかし、何も説明がないのに()と表記されているだけなら何とも行く気がなくなる。

まぁこんな場所があるんだと片隅に入れておきながら…最後か。

 

右にある博麗神社…人里と同じくらいには何かしらの情報を得るに等しい場所のように見て取れる。というのも、自論の段階でしか話せないことだが。

非常識な状況である今、少なくとも何か知るには人から得るのは一番の近道である。ならば人里がその最たる近道の一つではあるが、その()()()というのがどうにもその近道に疑問を持たせている。

例えば、悪魔だの妖怪だの魔女だの陰陽師だの神様だの幽霊だの、上げ連ねればきりがないそんな「神秘的かつ摩訶不思議」な存在が平気でいるような場所だとして

そんなのが平気でいるような世界に、無知丸出しの若男一人がとぼとぼ歩いていたとする。

…あまりにも情けないが、俺は特殊な能力だの異能だのそんなスピリチュアルな力を持ち合わせているわけでも、かといって何かしらの武道の心得も皆無である。

だというのにホイホイ行ったら軽く一ひねりされて天に召されるのがオチだろう。幸いなことに、ここにはそんな連中はいないが少しでもほかに行けばその確証はカケラもない。

そう考えると、博麗神社という場所の方が思いの外なにかしらの安全や対応策がある可能性が高い。仮にそういったのが得られなくとも、手掛かりとしては十分なモノが手に入るだろう。

 

そうこうして、看板の前にポツリと立ち考えを巡らせていると…

「…おや?初めて見る顔だね。」

 

銀色の髪にメガネをかけた和服の男性が人里の側から声をかけてきた。

 




ちなみに、主人公となる立川ハルの見た目は大体Fate/Extraのザビ男こと岸波白野かなぁ…とか妄想してるので皆さんも妄想してみてください。
あと、今回は言葉の使い方があまりにもぐだぐだになってしまい申し訳ありません。次回からはきっとよくなります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1話「外の世界と幻想郷」

はぁぁぁぁぁぁあ???
やっと終わりました…(意気消沈)
正直まえがきとして書くことがなさ過ぎるのでとりあえず本編楽しんでください。


------歩いて数刻の時間進み-----

 

小さな、かと言ってまぁまぁの幅に恵まれている道を進んでいいる今。

先程の看板にあった「博麗神社」に向かって俺と…隣の…

 

「おっと。名前を言い忘れていた。僕は森近霖之助、ここから逆方向に行って途中の分岐点を右に、そこに僕の店…『香霖堂』がある。まぁ、大した規模ではないけどちょっとした商いをしているんだ。」

 

「商い…ですか。なんだか、傍から聞くだけでも凄そうなお店に思えますけど。」

 

「いやいや。多分君の世界にもあるだろう質屋やそのような、多種多様に品を売ってる店と変わらないよ。規模にしたって、僕1人で抱え込んで仕事をしてる故に、貧相なお店だよ。」

 

そう、森近霖之助さん。最初に出会った人にして、運の良く男性。オマケに物知りな感じの人だ。

それは見た目を中心とした客観的な部分ではあるが、そうでなくても多くのこと知ってるには違いがなかった。

 

「そういえば…ハル君?だったね。まさか、外の世界から来たというのに案外慌てないようだね。主観的な物言いではあるけど、取り乱すこともなく動こうとすることが出来る。案内する身としては楽だけど、凄いね。」

 

「そんなことないですよ…俺も最初こそは、この目で見た景観が信じられませんでしたよ。こうして落ち着いて向かうことが出来るのも、森近さんのお陰です。」

 

「いやぁ、そう言われると…唯の物売りとしては過大な評価で嬉しい限りだよ。

あ、そうそう。僕の事は気兼ねなく霖之助さんって下の名前で良いよ。お互い、どこまで長い付き合いをするかは分からないけど、気楽な方が良いだろう?」

 

「それなら、気にせず霖之助さんって呼んでおきます。」

そう言うと、霖之助さんは「あぁ」と小さな感嘆の返答した。とは名ばかりで、なんだかんだの喜びを示した。どうしてかは分からないが…あっ、友達がいないとかそういうんじゃ…

「おっと。僕が名前で呼んでもらって喜んでいるのは、決して友達が居ないという理由からではないんだ。もちろん友達と呼べる人は居る。優劣や数を気にすることなんかがないくらいのがね。

ただまぁ、それはあくまで異性の。という付加価値を付けなければいけないけど。」

 

…異性の?いやまぁ、変なところは何一つない。単純に異性の友達ってだけだろうけど…もしや

「おぉっと。何やら君は僕が変態野郎なのではないかみたいな感情を抱いているかもしれないが、これは世の理というか、そういう運の悪さが付随した結果だ。まぁこの辺りは二日も過ぎれば気にならなくなると思うよ。」

「それより僕は、『向こう』が君のことどう思うか…というのがすごく気になるな。」

と、霖之助さんは少し頭を抱えるような趣きを含めて言ってきた。

「まぁ確かに…いきなりまるっきり違う世界から来た異邦人なんて気味悪がられます…よね。」

「あぁ……まぁ、そう思うかもね。けど、君が思うより案外受け入れられると思うよ。その点に関して言えばね。」

「その点?」

俺は自分の言った言葉と霖之助さんの言葉を照らしながら思い返す。

 

 

「…そういえば。さっき『外の世界』って言いましたよね。この手の状況は日常的にあるってことですか?」

今思うと、いきなり別世界の住人が来たとかそんな突飛な現象をあっさり『外の世界』と括るのは、いくらこんなに博識そうな人でもよほど手馴れていなければすんなり通るはずがない。

「そうか、さすがに説明不足だったね。博麗神社に着いてから諸々の話をしようと思っていたけど、先に済ませた方が善いかもね。」

 

 

 

 

「一先ず質問だけど、君はどこから来たんだい?」

「どこって…こことは全然違う、ありきたりな場所ですよ。」

「ありきたりね…まるで、此処は君がいる土地とは随分非常に違う異世界みたいな言い分だね。」

「でも…そうとしか言いようがないんですよ。『幻想的』過ぎて…」

「ほう。幻想的…か。」

それを聞いた霖之助さんは、含み笑いをしながらこう話す。

「それで合っているよ。そう、『幻想的』なんだ。」

「まずはこの世界の名前からだ。此処は『幻想郷』。読んで字の如く、幻想の郷だよ。」

 

「そして君の住んで居た筈の場所…それが『外の世界』。そして、此処ではどのようなことであっても、幻想郷の対義語は外の世界だ。」

「でも、それって変じゃないですか?その、幻想郷を一つの世界の枠に収めてその反対が丸ごと『外の世界』なんて大雑把すぎますよ。」

「確かにそう思うかもしれない。が、それが幻想郷の持つ本質なんだ。」

「幻想郷は外部のあらゆる世界とも対極に存在している。そして『互いに相反している』。例外は基本的にはない。その存在すら互いに認識することはできないんだ。」

「幻想郷にとって、外の世界は存在しないと同義なんだ。そして同様に、外の世界からも幻想郷は存在しない。そういう風に出来上がっている。」

「じゃあ、向こう側に行くことは…」

「出来ないね。そもそも、外部から『幻想郷があります』という事柄、事象すらない。勿論、視認だって不可能だ。」

「逆に言えば、こっちも外の世界を視認することはできない。僕だってまるで外の世界が分かる様に言っているけど、その実完全にわかっているわけではない。」

 

「じゃあ。それなら、俺は幻想郷には行けないはずなんじゃないんですか。俺は摩訶不思議な力とかそんなのありませんよ。」

「そうだね。今の理論の段階では互いを行き来する術はない。」

「そして、その術こそが幻想郷の本質だ。」

「本質…?」

「ああ。幻想郷が外の世界と対極である根源…それが本質であり、同時にそれによって君は幻想郷に連れてこられたんだ。」

「幻想郷と外の世界は…『非常識と常識』という隔たりを持っている。それによって成り立っている。」

「非常識と常識…。それって…」

「幻想郷は、外の世界におけるゴミ箱…そんな表現でも良いかもしれない。ハル君、君はさっき摩訶不思議と言っていたけど、それは君の世界において『常識』かい?」

「いや…非常識だと思います。」

「そうだ。『非常識なんだ』よ。その非常識が此処に集まっている。」

「妖怪や魔法使い、妖精や吸血鬼、鬼や仙人に…神だっている。」

その言葉を聞いたとき、在り得ないと心で思っていたが…その反面妙に確信に満ちた『在り得る』が自分を埋め尽くしていた。

「幻想郷に存在するものの大半は、『幻想』であり『非常識』なんだよ。正確には『外の世界にとって幻想とされた存在』は幻想郷に流れ着いていく。」

「…え?」

「『外の世界で消えた物、忘れ去られた物、存在を否定された物』…それらは逆に幻想郷で対極に存在することになるんだ。」

「それは…つまり」

 

 

 

「君もそうだって言えるんだ。」

 

 

 

「君も「幻想」なのかもしれない。」

 

 

 

その言葉を聞いたとき、全身が消えるような浮遊感と踊る。霖之助さんの言葉が本当だとして、俺は『幻想』になってしまったというのか…?

怖い。怖い。怖い。俺は否定されたのか?忘れ去られたのか?記憶が不鮮明なのも。あんな気味悪いもう一人の俺らしい何かも。俺が『幻想』だからこうなっているのか?

不安だ。恐ろしい。どうなっている。帰ってこれる以前の問題だ。助からないかもしれない。帰ってこれたとして。家族はいるのか。友達だって。クラスメイトだって。初めから存在しなかったのかもしれない。そもそも。どこで生まれてきたんだ。住んでた家の地名は。学校の名前は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の名前は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…どうやら、書き換えられたようだな…』

「ハッ……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうだい?面白かっただろう?(笑)」

「…へ?」

「いやまぁ、あんなに言ったけど…そんなわけないだろう?」

「えっと…?」

「あんなこと言った後にアレだけど、人がこうしてくるのは時々あるんだ。確かに幻想郷は確固として外の世界と隔たりを持っている。でも人が来るのは大抵それがちょっとした綻び出した時に起きるんだ。」

霖之助さんは、これでもかと大成功した自分の物言いに大興奮していた。

「つ、つまり俺もその類だと…?」

「当り前さ。さっき言ったようなことは人にはあり得ない。」

「は、はぁ…」

ホッとした様な、まだ不安がつっかえて抜け出せないような、微妙な気持ちだった。

正直、ただの手違い侵入とは思えていないというのが心に残り続けていた。幻想郷に来たせいで記憶も曖昧になったとか、その可能性も否定できないが…それだけで片付けられるのか。

「とまぁ。今言った隔たりというのは、綻びがあるんだ。」

「隔たり…別称というか、本来は『結界』と呼んでいるんだけど、それが綻んでしまう時があるんだ。まぁ…大方あの大迷惑妖怪の問題行為が原因なんだが。」

「結界は二種類あるけど、幻想郷の代表的な結界である『博麗大結界』がこの幻想郷の本質の大元なんだが、これを管理しているのがそのまんま『博麗の巫女』。博麗神社の巫女だ。」

「じゃあ、これから行く博麗神社が…」

そこまで言ったところで、さっと霖之助さんは立ち止まった。

「あぁ。今目の前に見えるあの先が…」

 

 

 

 

 

少しばかりの石段を超えて、先には一本威厳の高い鳥居が立っていた。

 

 

 

 

「「博麗神社…!」」




かなり幻想郷に関する説明が準拠かどうか怪しいのですが、そこは確認しながら直していこうと思います。
恐らく…後々にかかわるようなミスはないと思うので…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話:前編「『帰り道』につながる神社」

出来るだけ投稿スピード向上の為に、今回みたいに長い話は前中後と分けて作っていきます。
多分こうした方が見やすいよね…よね?


-----博麗神社:石段を歩く最中-----

 

 

 

 

 

石段を15,16段進んでる中で、すぅっと5分も前に浮かんだあの問いが巡り始める。俺はこのまま帰っていいのか。何も解決の出ないままに日常に戻って良いのだろうか。

自然と歩く速度が遅くなってきた、それを霖之助さんは見逃さず声をかけてきた。

 

「どうしたんだいハル君。」

「なんていうか…このまま帰るのは本当に良いのかって。」

 

褪めたように気持ちが沈みゆく自分は、行き場がないこの問題をまずは今一番の理解者である霖之助さんにぶつけていた。

 

「ふむ?もしかしてまだ観光をしていたいとか?」

「いや…なんて言えば良いのか。まだやり残した『何か』が有るって、心ではそんなことないように思えてるはずなんですけど…体がやけに引き戻されるようで…」

「ほう…それは些か、変わったことに憑りつかれているね。僕の目から見てそう難儀な問題が残されている様には思えないけれど。」

霖之助さんは、この問いに悩むような、答えを『敢えて』言わないようにしているのか分かりにくい仕草で考え込み始めた。

「僕の見立てでは、どの第三者的な視点があっても君が幻想郷に引き込まれる要因は……単なる『神隠し』の一種でしかないと思っている。勿論、僕はどこにでも居るような商いをしている人間だ。故に特殊な判別材料があるわけではない……いや、だからこそ。この場合においては特別な理由は当てはまらないと思っている。」

この言い方をされると、どうあっても納得したくなるような気がした。お互い関係が親友というほどまで良好というほど時間は経っていない。霖之助さんが特別な能力があるとか、その手の魔法的、もしくは神聖的な品を持ち合わせている…なんて思ってはいない。それでも納得できるような『必然性』がこの二言にはある気がした。

が、それを聞いても不思議とまだその逆であると思っている自分が居る。これには文句の一つも言いたくはなるだろうが、霖之助さんはその前に与えれる限りの目印を提示してくれた。

「ま、今は議論したとしても仕方がないさ。何しろ僕らには『何一つ証拠がない』。だから、その手の問題の専門家こと『博麗の巫女』に聞いてみるってわけさ。」

「ですよね…」

その通りだった。自分が答えを急ぎたいのは山々だ。でも何も知らないんだったらここで何を言っても意味がない。

それを再確認してからまた石段を上る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、

「言っておくけど。」

上から…幻想郷に来て初めての女性の声。

「私は慈善団体ではないんだから、もう少しご立派に言ってもらえないの?」

 

その声を元に上を見上げると…大きなリボンに黒の髪。服は、赤と白の巫女服に近いものだが…肩と腋が露出している何とも意味不明な恰好。

先程まで掃除をしていたのであろう竹箒を片手に、太陽を使って自分の尊さを説くような立ち姿をしている…

「お、女の子…?」

「おや、てっきり僕は…困った人には類を見ない手厚い救いをもたらす素晴らしき慈愛の人だと思っていたんだがな…『博麗の巫女』さん?」

「アンタ、それ褒め言葉にもなってないからね…」

「え…え?あそこに居るのが霖之助さんの言う博麗の巫女なんですか!?『あの身なり』で!?」

「ちょっと!私の格好はどう見ても普通に可憐な巫女でしょう!?そんな言い方する人はじめてよ!」

「あのだなぁ霊夢。仮に柄は巫女の服だとしても、普通は腋や肩ははみ出していないと思うよ?僕としては、少し露出を減らした方が美しいんだが。」

「アンタの意見は聞いてないっての!!」

 

…これは。厄介な出来事に巻き込まれたものだ…。

 

 

 

 

 

-----博麗神社-----

 

 

「…おおお。」

「…何驚いてるのよ。別に変ったところなんてない唯の神社だと思うけど。」

「まぁまぁ。誰しも神社というのは一時心を躍動してくれるものだろう?」

「霖之助さんこそ何言ってるのよ…調子狂うわ。」

 

確かに、これは普通の神社に見えてしまうかもしれない。しかし、先程から幻想郷の結界を維持する場所であることを思うと、これには感嘆の一つも言ってしまいたくなる。

「とにかく、話は中で聞くわ。こちらから上がって。」

「あっはい…失礼します。」

『博麗の巫女』に促されて、社の本殿正面から右側に回り、8畳程の部屋に通された。

ちょうど応接室にピッタリなテーブルと座布団4つが置いてある、現代ではまず見かけないんだろうな…という初々しさと懐かしさを含んだ部屋だった。

「今お茶用意するから。適当に座ってて。」

その言葉に沿うように座布団に腰かける。先程まで大変な出来事の連続だった俺にはこの座布団の心地一つで急速に癒されるような気がした。とは言っても、休もうにも心は落ち着けなかった。

「はは。少し気持ちが堅そうだね。」

「そりゃあ堅いですよ…。まだ完全に休めるわけではないですから。」

「でも、とりあえずは腰を落ち着けて良いと思うよ。事を急いでも良いことはない…だろう?」

「ですね…」

心持ちを切り替えて、これからの会話に備えることにしよう…

 

「はい。大した接客ではないけどそれは気にしないでね。」

そう言いながら、緑茶を差し出される。

「ありがとうございます…えぇっと。」

「『博麗霊夢』。さん付けとかなしで、気軽に霊夢で良いわよ。」

「分かりました…霊夢。」

「なんか、アレだね。新婚ホヤホヤの夫婦みたいだ。」

「いい加減にしないとその無駄なイケメン顔蹴飛ばすわよ。」

「ははは。雑談はさておき、本題に入ろう。」

 

「霊夢。事のあらましというか、全体像はわかるとは思うけど…」

「えぇ。『神隠し』でしょ?紫の奴、面倒くさい時期に限ってこういうことしてくれるんだから…代わりに金の一つでも貰わなきゃやってられないわよ。」

「やっぱり霊夢はこの手の問題の引受人…という感じなんですね。」

「まぁね。というより、結界の管理者が私だからどう転んでも最後は私の出番になる。アンタがこれから外の世界に出ようって言っても、まず私が許可しなければ通れないわ。」

「そうなんですか…でも、少なくとも帰ることはできるんですよね…良かった。」

「そうね…本来なら、ね。」

その言葉に。俺も、霖之助さんも顔を覗き込む。

「…つまり。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのつまり…『厄介』な出来事があったのよ。」

 

 

-----次回「『帰れない』。そして選択肢」へ… -----




今回は前篇ですので長い後書きはまた後編で
早く投稿できるようみなさん祈ってください(((


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話:後編「『帰れない』。そして選択肢」

今回は初めての戦闘描写。
あんまり白熱感はないけどその辺は優しく見て頂戴…!!


-----同刻:博麗神社内、居間 -----

 

 

 

「そのつまり…『厄介』な出来事があったのよ。」

 

その言葉を聞いて、すぐさま隣に居た霖之助さんを見た。

あの人も同じ心境なのだろう焦りと驚きを含んだ表情をしていた。

しかし、すぐに安心したいがために一言質問する。

「ま、待つんだ霊夢。それは…『紫』の仕業だろう?彼女の気まぐれで簡単には帰れなくなった。違うかい?」

が、残酷に返答は来てしまう。

「だったら外来人にも霖之助さんにも言ってないわよ…『アイツは確実に関わっていない』けど、どうにも結界が不安定すぎるのよ。人が紛れ込む程に弱くなったわけじゃない。嵐の前の前兆というのか分からないけど、微弱に変動している。」

「もちろん、あれやこれやと対策はしているわ。けど一向に普段通りの状態ではない。一体全体どうなっているのかほかの人が説明してほしいくらいね。」

と、絶望の中で呆れて踊るように霊夢は話している。

…というか、今の話。俺にしてみれば重大事件じゃないの?帰れないってことじゃないの?

「あ、で、でも。」

「俺を外の世界に返すことは可能なんじゃないんですか?」

「はぁ?」

「結界が不安定ってことはそれだけ抜け出しやすいってことかもしれませんし…」

「はぁ…」

「そ、それにその方が意外と安全だったり…」

「……」

「……」

 

 

「とりあえずお茶。改めて飲もうかみんな。」

「「冷静に言うな!!」」

「…これ。僕が怒られるパターンなのぉ…?」

 

 

 

「…つまり。」

「『管理者』ですら手が出せないほどに危険だから、安全に出れる可能性は万が一でも少ないかもしれない…と。」

「そうね。大雑把にいえばそれで大丈夫。」

お茶とせんべいにお互い手を伸ばしながら、霊夢から大体の経緯を聞いた。

と言っても

・ここ1ヶ月前から大結界が不安定

・外部からの制御ができない

・『スキマ妖怪』こと、八雲紫なる人物不在の為に彼女が原因なのかも判別できない

・これらの関係上、下手に外の世界に送り返せない

 

ということだけは…分かった?なんかあんまり情報としては良いような悪いような…

 

「あ、言っとくけどこの状態で出ようものなら体のパーツ失うか降りる場所がランダムになるかくらいしかないわよ。」

 

…前言撤回。やはり新天地に降りたのなら情報収集大事。大事大事。

 

 

 

 

 

 

 

「「はぁ…」」

「…溜息吐き出したいのはこっちなんだけど。なんで外来人はともかく霖之助さんまでしてんのよ。」

「いや。簡単に終わると思っていたこの問題が何一つ解決しない可能性ばかりに埋め尽くされていると分かったからなんとも言えなくてね…」

「俺にとってはそもそも帰れない時点で大問題ですよ…これからどうすれば良いんですか。」

「いやまぁ、アンタは霖之助さんの家でも入っときなさいよ。」

「そうなりますかね…あと俺ハルって名前。」

「あ、そういや聞いてなかったわね…まあいいわ。」

いいんかい…。

しかしこれは参った。仮に帰れないから霖之助さんの家に行くといっても、何もしないわけにはいかない。この世界について把握しておきたいのもあるし、なにより…

 

 

『俺を真に認知することは不可能だろう…』

 

 

(あの物言いで俺はどうしろと…)

あの意味不明な存在まで居るんじゃ、尚この世界から帰るのはバツの悪いような嫌な予感を秘めていた。

これでさ、仮にアレがこの状況に関与してたりしたらどうするのよ…もう一度あんなにヤバそうなのと対峙しなくちゃいけないし…

「兎も角さ。」

「ハルはこれからどうするのよ。」

早速霊夢にド突かれてしまった。この状況で言いにくいじゃん…今ここで

「実はさっき俺に似た変な化け物?に遭いました!」

こんなこと言ってみろ。もっとヤバいじゃないか…

とりあえず、『応え』にならない答えは言っておかないとまずい気がして答えておく。

「とりあえず、幻想郷を歩いてみたいと思います。少なくとも何日も生活することになるので、ある程度の情報は知りたいな…と。」

「まぁ、それでよいかもね。僕の家に暮らすとしても、幻想郷について多少は知っておかないと一人で歩かせるのも危ないしね。」

「ふぅん…まぁ良いんじゃない?なら、手助けらしい手助けはしておくわ。」

そう言うと、おもむろに霊夢は奥の部屋へ歩き出した。

 

「さて、僕らも身支度をしようか。君と話していて忘れてたんだけど、仕事がまだ残っているからね。それを終わらせてから君に会いに行くとしよう。」

「そうですよね。なんか引き留めてしまってすいません。」

「気にしないでくれ、僕も若い青年を一人で放っておくほど悪人じゃないからね。」

「兎も角、ありがとうございました。」

俺は霖之助さんと握手を交わしながら、一先ずの互いの無事を口には出さずとも祈った。

そしてタイミングの良く霊夢が部屋へ戻ってきて、

「ハイこれ。」

と、なにやら小さい布袋…中身はいくらかの小銭が入ってた。

そしてもうひとつ…2枚の紙?なんか色々書いてある紙切れを貰った。

「えぇっと…これは?」

「いきなり外出て勝手に野垂れ死んでもらったら困るもの。最低限何日かを乗り切れる金と、『切り札』だけは渡しておくわ。」

「へぇ?確かに万が一の危険な事態を乗り切る『切り札』ではあるけど…彼は少なくとも一般人だから使えないのでは?」

「えっと、そのぉ…」

「これね、前のごたごたで手に入れた変わり物。本来は『宣言用』だけど、こっちはどうやら能力までその場で出力するみたいよ。」

「あのぉ…」

「成程。その『カード』自体に能力が宿っている訳だ。ならば使用者が誰であっても使えるわけだ。」

「お二方俺を置いて話し進めないで…」

「あ。アンタには言ってなかったわね。」「そもそも勝手に会話進んでましたけど!?」

 

二枚の紙を手に持ちながら、同時に懐からも似た様な紙を持ち出す霊夢。

「『スペルカード』。平たく言えばこの世界の戦いでの決まり事みたいなものよ。」

「つまり、これを使えば特別な力が使える…?」

「いや。」

「これは確かに特異な技を出すための道具ではあるけど、決してこれ単体で能力を出せるわけではないんだ。」

「例えるなら、君に炎の能力が備わっているとしよう。出力も自由、範囲や制限もこれと言って存在しない極めて自由度の高い能力と仮定しよう。」

「君は、火の玉と表現できるある程度の『小さい球状の炎』を出し、これを『三発程度にして、3秒間隔で一発毎に撃つ技』としてみる。」

「しかし、幻想郷でこれを技として使うにはこれにある種の『命名』をしなければいけない。今の例で名をつけるなら…炎符『ファイアボール』なんてね。」

「てことは、このスペルカード単体では攻撃は出来ない…」

「そういうこと。私が今出している夢符『封魔陣』だとか霊符『夢想封印』だって、本来なら宣言する必要もないくらいの代物よ?」

「元々スペルカードっていうのは、こういう決まり事がないと、一晩でこんな場所すぐに灰だけになる様な連中が跋扈してる幻想郷において、『崩壊しない程度に争うため』に決めたことなの。」

「そして、このスペルカードを持って争うことを…というより決闘を僕らは『弾幕ごっこ』と呼んでいる。」

「とは言っても、僕は諸々の関係上スペルカードもそうだし弾幕ごっこにも参加はしてないけどね。」

苦笑いを含めながら霖之助さんは付け加えた。

 

「でも、その話の通りだと今貰った二枚は使えないんじゃ…」

「そう思うじゃない?でもこれはアンタみたいな一般人でも平気で使えるみたい。制約はいくつかあるみたいだけど。」

「制約?」

「私が試しに使って分かったのは、これは誰でも使えるけどその代償としていくらか生命力を使うことになる。だから何度も使えるわけじゃない。」

「せ、生命力…!?」

「まぁ、精々ちょっと体力使うだけよ。使ったら死ぬほど危ないわけじゃないわ。」

「今、試しに使ってみたら?」

そういわれて、先程の二枚が戻ってくる。

 

 

 

「えーっと…」

俺が持っているのは二つ。

一つは攻撃用と思われる、炎射符『ファイアブラスト』

もう一つは…防御用か。防御符『サークルシールド』

「まずは『ファイヤブラスト』を空に向けて撃ってみてー」

霊夢の声に促されて、俺はスペルカードを声に出す。

 

 

「炎射符『ファイヤブラスト』!!」

すると、スペルカードを出した手元5cm程の距離から5発の細長い炎が出てきた。

「う、うわぁ!?」

「そのまま撃ちだして!」

「い、いってまぇーー!」

すると、俺の思念を正確に読み取るように5本の炎が空に向かって飛んでった。

と、同時に体に脱力感が来る。倒れるほどではないが、かといって何もないほどに微弱な感じではなかった。

「こ、これが…」

「ほお、流石だね。」後ろではこの顛末を見て感嘆の声を上げる霖之助さん。

 

「…ん!?ハル、上見て!!」

「へぇ…?」

上を見上げると、

 

 

 

 

「誰だか知らないが、私に向かって攻撃とはいい度胸だ!」

「もしや、上に誰かいたのかい!?」

「へ?でもさっきまで人なんて…」

「アホなこと言ってないで早く逃げなさい!」

 

霊夢の叫びが聞こえるが時は遅し。

「魔符『スターダストレヴァリエ』!!!」

 

星形の小さな、とは言っても俺の身長のチョイ下くらいの球が何色かに分かれてこちらに連続的に飛んできた。

…いや待て!!この状況まずいのでは…!!??

「お、おい『魔理沙』!少しは落ち着くんだ!!」

「まったくあのバカは…!」

まずい、考える暇はあってももう5秒もすれば俺の目の前だぞ!?

「…ハッ!?」

俺はとっさに手元のもう一つのスペルカードを無我夢中の中で使った。

考えてれば間に合わない。逃げようにもこの位置ではすべては捌ききれない。

 

 

 

 

ならば、『防ぐしかない』!!

「…防御符『サークルシールド』!!」

そう唱えると、目の前に円形で俺よりも一回り大きい水色の盾が現れた。

「あれは…!?」

「グッ…!!」凄い重みだ。一つ一つ受け止めるだけでスペルカードを出している右腕が今にも吹っ飛びそうだ。

これで防ぐので精いっぱいだ。この次で何をしようにも体が動かない。いきなりで二つも使った弊害かもしれない、それかこんなの初回で防ごうとしてるからかもう体が動きそうにない。

「もうこれで耐えるしか…!」

「あのスペルカードひとつで防ぎきっているのか!」

「ほぉ~?なかなかやるもんだぜ…」

 

「が、そんな薄い盾ひとつでこの『魔理沙』様の猛攻を凌ごうなんて思うなよ!!」

「これで終わりだぜ!!恋符『マスタースパーク』!!」

 

 

 

 

 

…終わった?

急に攻撃が止み、シールドを閉じて上を見る。

 

「…光?」

「伏せてなさい!!!」

急に霊夢に首をつかまれ、地に叩きつけられる。

霊夢の後ろ姿と、七色の光がこの一嵐の争いで最後に見えた光だった。

 

 

 

 

 

 

 

「霊符『夢想封印』!!!」

 




ちなみに、今回使った二つのスペカの簡易的な説明
炎射符『ファイアブラスト』:使用者の体力消費に比例して、炎の矢の本数からサイズまで変更可能。
防御符『サークルシールド』:こちらも使用者の体力に比例して、サイズを変更可能。また、遠距離に生成することも出来る。

ぶっちゃけ危ないのが跋扈してる幻想郷でこれくらいのハンデないと初戦から勝てないやろ((((

あと、今作はまだヒロイン枠決まってないけど誰が良いですかね?
基本はヒロイン決まるまではハル君には色々な場所へ行って異変解決(壮大なネタバレ)してもらうんですけど、それまでにお勧めを皆さんから聞きたいですね。
twitterとか質問箱で待ってますのでもし見た人は是非是非


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話「相方参上」

新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
まさか新年1発目が元旦にいきなり出せるとかいう奇跡ね…((
とりあえず博麗神社は〆て次は人里に行こうと思います。
ではその流れを楽しんで見ていってくださいね。


-----時は同じく博麗神社-----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「……」

 

 

 

…俺は今、何をしているんだろうか。

姿勢は綺麗すぎる正座。隣には場の和風感には似つかわしくない、極端に言えば『魔女』とかそういう呼称が合う洋風の匂いがある女の子が一人。

リボンがトレードのように付いている三角帽子。白と黒の混じった風変わりな服装。髪は金髪の少し…ウェービー?な形をしている。

 

 

……で、俺は何故。

 

「アンタらねぇ…!少しは理性ってのがないのかしらねぇ…!!」

目の前で霊夢から多大な説教を食らっているんだ……。

 

 

「い、いや待て霊夢!元はと言えばそこの男が炎なんか打ってきたから」

「だからって出会い頭にスペルカードを使う脳筋野郎がどこに居るっていうの!?しかも一発目はともかく次にマスタースパークまで撃ち放つなんて正気を疑うわよ!」

「だけど結果的に神社は無事だったんだz」

「それは私の夢想封印で防げたからでしょ!普通だったら半壊で済む程じゃないわよ!」

「お、落ち着くべきだ霊夢!!状況が状況だったんだし喧嘩両成敗というか、ここは落ち着いて考え直すべき」

「アンタもアンタよ!よくもまぁあんなもの防ごうと思ったわね!これで万が一潰されていたらどうするつもりだったのよ!?」

「いや、それはだな…」

「「それは…?」」

 

 

「な、何とかなるかなっt」

「馬鹿かアンタはぁぁぁぁぁあ!!」

 

 

 

 

 

 

1時間経つか経たないかの説教がやっとの思いで終わってから、霊夢は冷静さを取り戻し始めた。

「……はぁ。もう怒るのも面倒になるわよ。」

「おぉ!やっぱり霊夢は優しいな!」

「魔理沙は少しくらい反省しろっての。」

「ま、まぁまぁそのくらいでさ…」

実際のところ説教というか、殆どは霊夢のキレ模様を俺と隣の『魔理沙』という子と二人で止めていた。

当の女の子はというと、この喧嘩の犯人であるのにまったく悪びれる様子はない。

「まぁ過ぎたことは水に流そうぜ!こんなので文句言ってたらキリないだろ?」

「まぁ……ったく。もういいわ。これ以上言っても意味ないだろうし。」

「さっすがだぜ!その優しさには感謝しないとな!」

……まぁ、仲が良い…良いんだよねこれ?

「それにしても…」

「ハル、アンタよくあの攻撃をあの『盾』だけで防いだわね。」

「盾…?あぁ、サークルシールドのことか。とは言っても防げただけ幸運な気がするけどな…」

「当り前よ。受け流すとか、掠めるとかならまだ驚きはしないけど。まさか正面から受け止めるなんてすごい度胸ね…」

度胸…か。確かにそういう『意志』に近いものがなければ防げなかっただろうな。

あの星形のスペルカードだって、見た目こそ可愛げというのが多少なりあったと思うがそれでも当たっていたら軽傷どころじゃなかったと思う。

そういう意味では、今こうして立っていることが不思議だ。

正直、疲労ですぐにでも倒れてしまいそうだよ。

「そうだぜ!名前は知らないけどお前!いきなり炎投げ飛ばすし私のスペルカードを防ぐしで…奴さん何処の馬の骨なんだぜ!?」

「馬の骨って人聞きの悪いことを言うなっての!」

「ま、まぁそう思われるのも無理がないって…えぇっと、名前はハル。立川 ハル。此処の人が言う外の世界の住人だよ。」

「へぇー……。でも、なんでスペルカードを思いっきり使えるんだぜ?何か能力を持っているとか?」

「いや、何も持ってないわよ。あのスペルカードは私が少し前に手に入れた変わり物よ。」

「前?」

「ほら、何ヶ月か前に変な遺跡がいきなり出てきた時があったでしょ。あの時に偶然手に入れたのよ。どうやら能力がなくても使えるように中にその能力そのものが備わっているみたいなのよ。」

「そんなものがあるのか!?なんて勿体ないことを…。ハル!今すぐにでもそのスペルカードをくれ!」

「えぇ!?こんな生命線の物を渡せるわけないって!」

「良く考え直してくれよぉ…!そのアイテムを最大限に有効活用できるのは私なんだぜ…?」

 

と……懇願している魔理沙の頭を、

 

 

 

霊夢は思いっきり殴る。

「まったくアンタは…ハルはこれからしばらく幻想郷で生活しなければいけないのよ?だから最低限の武器に近しい物が必要だってのにこの泥棒野郎は…」

「じょ、冗談だぜ霊夢ぅ…私だって人の大切なものを勝手に盗む程悪人じゃないんだぜ?」

「それならどこぞの『図書館』の書物を持ち出してるのはどう言い訳するってのよ。あきらかに盗人の類じゃないの。」

「あれは『借りている』からセーフだぜ!」

「どこがセーフだこの悪人野郎!」

 

 

 

 

「…というか。」

「霖之助さんは何処に…?」

「あぁ。霖之助さんは私たちが戦ってる最中に緊急の用事ってことで抜け出したわよ。」

「あの人意外と忙しいんだなぁ…」

「まぁ、アイツは私と違ってコソコソ何かしてるからなぁ…仕方ないんだぜ。」

「そういう魔理沙はどうしてこう誇らしげなのか…」

もうちょっとお礼のあいさつの一つや二つをしたかったけど…まぁ、また次の機会に言っておこうかな。

そう言いながら、外を見る。時間はもう昼を過ぎた程度の時間にはなっていた。正確な時間帯は分からないけれども、最初に目が覚めたのが10時くらいだと思うと意外と時間は過ぎていたんだなぁと感じる。

「そういや、私ら飯食ってないんじゃないか?」

「そりゃあ、あんなことしてた時が丁度昼時だったんだし無視するだろうと思っていたわよ…」

その話を聞く俺の腹もすっかり鳴りまくっていた。

幻想郷に来てから数時間とは言えども飲み食いしたのが強いて挙げると霊夢から出された緑茶、詰まる所ほぼ何も食べてはいない。

オマケにいきなり能力を二回も使ったのだから余計に体力を使ってしまっている。だから、何か食べないと流石に行動する気力も起きやしない。

「とは言っても私は少なくとも自分が食べる分しか今日はないわよ。」

「えぇ!?霊夢のことだからてっきり私の分まで用意してるのかと…」

「いつから魔理沙限定の食事処になってんのよ…!ハルに金を渡したのも『人里』で飯を食べるように促すためなのよ。その方が、今後の生活には良いかなぁってね。」

「人里って…そういえばあの看板に書いてあった場所か。」

「そういや、ハルはまだ幻想郷に来て1日も経ってないのか。それなら、私も同行して色々レクチャーしてやるぜ!」

魔理沙は、何故だかに誇らしげな出で立ちで俺と霊夢に言っていた。こっちとしてはさっきのも重なって不安になるんだが。

「アンタに勤まるの?なんか不安しかないんだけど…」

「大丈夫だぜ!私に任せれば明日から一人でも生活できるくらいにはなるぞ!」

「それ、隠さずに言えばサバイバル術のレクチャーとか…?」

…………数刻。

「……さぁハル!!迷っている時間はないぞ!!」

と、魔理沙は強引に俺の手をつかむと傍らに置いてあった箒に乗せ…て…

あれ、『浮いてないか』これ?

 

「あ、バカいきなりそんなもの乗せたら…!」

浮いた竹箒に俺と魔理沙は乗っている。

そして、何故だかこの竹箒がまるでジェットエンジンを搭載するがごとく熱を帯びているのが分かる。というかなんかもう今にでも飛び出しそうにしている。

 

「あ、アノマリササン…?」

「なに不思議そうに見てるんだぜ?人里行くんだから歩いてたら着く前に空腹で倒れるぞ?」

「イ、イヤアノデスネ?コンナコウソクデトビソウナモノイキナリデノレルワケ。」

「さぁ!!一気に飛ばすぞぉ!!」ゴォォォォっと風が舞いながら。

 

 

 

 

 

一直線に飛んでいた。そう、一直線にだ。

実の所、博麗神社側から石段を見ると下に小さな集落らしきものが見える。

これが恐らく『人里』なのだろう。

そして魔理沙はそこ目掛けて箒を飛ばしている。

このまま速度を落とさないのであればその集落に激突するが勢いで。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウワァァァァァァァァァァァトメテェェェェェェ!!!!」

「しっかり掴まってろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行ってしまったわ。」

博麗神社にはポツリと霊夢だけ。

「と、とりあえず私もご飯にしようかしら…」

と、博麗神社の台所に戻ろうとした。

 

 

が、ふと立ち止まる。

「……そういえば。」

「ハルの奴、最初は口調が丁寧だったけど。」

 

「魔理沙が来てから結構砕けてたような…気のせいか。」

小さな疑問を捨てて、そそくさと歩き出した。

 

 

-----次回「人の郷、妖怪の郷」…-----




次回はもうお分かりですね?人里で色々とやっていきます。
既存キャラはいっぱい出しますが、この間質問箱に出されたキャラももし出せる余地があるのなら出していこうかと思いますよ。
それでは次回楽しみにしていてください!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話「昼下がりの衝撃」

何年経ったか忘れました!!!()
どうもお久しぶりです、蒼猫さんです。

お話が全く思い浮かばなかったので右往左往してました(というかこの回をどうするか悩みすぎてこの日までズルズルと引き延ばしてしまいました…)




―――――昼過ぎの人里

 

 

家から数分、大通りを歩きながら目的地へ向かう。

今日は曇りという曇りのない晴天、自然とあの場所へと赴く足には陽気な足踏みの音が聞こえる。

行き交う人々の小さな波を抜けながら、『私』は歩いていた。

ふと、交友のある里の人が声をかけてくる。

「よぉ、今日もまた『鈴奈庵』にお出かけかい?」

「……はい!新しい『出会い』を探しに行ってきます。」

「ハハハ、面白いこと言うなぁ!」

「そんじゃ、気を付けていきな!」

「おじさんも気を付けて…!」

小さな会話を終えてまた駆け出していく。

 

そう、今日は出会いの日。

新しい『何か』を見つけに向かうのだ。

 

 

私の名前は、心花 祢々(このか ねね)。

人里でひっそりと、穏やかに暮らしている。

元々は山で生活をしていたのだが、少し前に『学び舎』の先生である上白沢慧音さんの協力の下で里で暮らすことになった。

今では、慧音さんの学び舎である寺子屋の手伝いをしながら読書を趣味にして生活している。

今日は特別何か仕事はない、というわけで本という『出会い』を心待ちにしながら貸本屋である『鈴奈庵』に向かうのだ。

 

 

 

少し大きな用水路を橋伝いに渡って、右の方向にあと少し進めばもうすぐだ。

今日は何を見つけようか?

最近は小説を読んでなかったから、今日は趣向を変えてそのあたりを行こうか。

外の世界から来る本は多種多様で、外のことについて書かれた物から、御伽話、小説と色とりどりだ。

ここ1.2週間は慧音さんの所に来る子供向けに童話を読んでいたのだが、外の小説について教えるのもそれはそれで悪くないのかもしれない。

そう思うと、心は濃く光る太陽に照らされて一層弾む。

あぁ、早く。

早く。

早く。

 

 

 

 

「早く止めろこの小山帽子ィィィィ!!」

「私は一度走り出すと止まれないんだよぉぉぉぉ!!」

「だったら安全運転してくれぇぇぇオェップ。」

「あっバカ!!」

 

 

「……ふぇ?」

大きい叫び声。

上から聞こえるその声に顔を向けると。

 

「アッハァァァァァァア」

「ハルー!?」

上には見たことのある白黒の魔法使いと

見たことない男の人が居た。

 

居た……というより、『落ちてきてる』?

 

「ま、まずい!!」

しかも直下で。

 

私の目の前に。

 

「ひぇ!?」

男は手からスペルカードらしきものを取り出した。

「頼むからこれで助かってくれよ……!!」

「『サークルシールド』!!君、こっちに来て!!」

ふいに、手を引っ張られて男の胸の辺りに寄せられる。

そして……暗転する。

 

 

 

「……このスペルカード、本当に何でも役に立つなぁ。」

「クッションみたいに衝撃を受け止めるように形を変えれるなんて……」

「うぅ……。」

身体が重い。急に姿勢が変わったことで体がその重圧に耐えきれず

少し立ち眩みのような刺激を受ける。

落ちてきた人の支えもあってか、怪我はなかったけど…

「だ、大丈夫……?」男の人は言う。

「大丈夫です……貴方のおかげで助かりました。」

「よ、良かった……こんなので怪我人出したら最悪だった。」

無事と分かったのか、安堵の表情をしている。

優しそうな人だ、私はふと見えたその顔に思わずにやけてしまう。

 

 

そして頭上から、

「おーい!大丈夫だったか!?」

見たことある白黒の人が降りてきた。

 

「君なぁ……もう少し危険なことになると思わなかったのか?」

「い、いやぁ……。私も出来うる限りは抑えたつもりなんだぜ?」

「怪我人ができるかもしれないレベルが『抑えた』の範疇に入るとでも?」

「うぅぅ…ハルまで霊夢みたいに責めるなよぉ……」

「まったく……。」

それから。

ハル、という名前の彼は白黒帽子の魔女、魔理沙さんに怒り文句を立てていた。

幸い怪我や被害こそなかった……けど、彼としてはその体験自体が頭に来たようで怒りの旗を掲げて魔理沙さんを見ていた。

「あ、あの……」

「「ん?」」

私が顔を伺いつつ声をかけると同着で振り向いた。

「私は何もなかったし、被害自体がなかったのでそのくらいで良いのでは……?」

そう言われてハルさんは少し反省のような顔をしながら、

「……そうだな。俺も少し言いすぎたか。」

「そうだぜ!詫びとしてお菓子の一つや二つ……」

「魔理沙さんはちゃんと反省してください。」

「ぐぅぅ……皆して責めるなよぉ……」

 

 

砂を払いながら、彼は立ち上がった。

「とりあえず、何処かでご飯食べないとな。」

「それなら、美味しい蕎麦屋さんを知ってますからそこへ案内しますよ?」

「お、ありがとう。えーと君は……」

「祢々です。心花 祢々。」

「祢々か……よろしくな。」

「はい……!」

 

 

こうして私と魔理沙さん、ハルさんの三人で鈴奈庵の近くにある蕎麦屋さんに行くことになった。私自身食事はとったけど、この二人の凸凹具合が危なっかしくて見てられないような、ついていくだけでも面白い場面が見れそうな好奇心に駆られて同行している。

どうやらハルさんは幻想郷の外から訪れたらしく、魔理沙さんに案内されていたそうだ……案内の割には随分と暴れ馬っぽい感じだったけど。ともかく一通り案内してもらってから、香霖堂で暫くお世話になるという。

「来てから1日も経過してないのに、散々な展開ですね。」

私は心中お察ししながら呆れ顔で魔理沙さんを見る。

「その何割かは隣の山帽子が原因だけどね。」

彼も呆れた顔で魔理沙さんを見る。

「いやいや、そんなに私の所為にするのは酷くないかぁ…?」

「所為というか、元凶そのもの感はあるな。」

「そっちのほうが酷いぜ!?」

「実際、ハルさんにスペルカードを使ったというのは事実なので充分アウトです。」

「あれはハルが私に攻撃してきたから反撃しただけで…」

「だからって間髪入れず攻撃してくるのはさすがになぁ…」

…ここまで来ると、安い意地の張り合いだ。

「…いい加減してください、お二人とも。」

「「お、おう…」」

「積もる話はご飯でも食べながらにしないと、たどり着くことすらできなさそうですし…」

「む……それは一理あるな。」

「わ、私はそこまで意固地じゃないから気にしないし…」

「貴女は気にしてください。」

「ふぇぇ……」

 

 

 

 

 




今回からはリア友兼、創作助手からいただいたアイデアキャラをお話に盛り込みました。
どんなキャラになるのか私も想像付きません。というかこの子出すのに何年かかったんやと……
月日も大分経ったので設定の粗がすごく、たぶん二日以内に修正されます()


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5話「学び舎に向かって」

連続投稿じゃあ!!
お話がどんどんまとまっているので更新ペースが一段と早くなれますねぇ…


——————————夕焼け前の人里、鈴奈庵隣の蕎麦屋

—————————————立川 ハル

 

 

 

「……それで、これからどうするんだ。」

俺は頼んだかけ蕎麦を食いながら聞いた。

「これからって……人里の案内に決まってるだろ?」

「その『案内』が嫌な予感にしかならないから俺は聞いてるんだよ…」

「私の案内が悪いはずがないんだがなぁ…」

「人を吹っ飛ばした奴が何を言うか……」

そう言うと、魔理沙は身を乗り出して

「おぉ!?ハル、そこまで言うとはなかなか度胸があるなぁ…!!」

「あーほら、まぁた二人で言い合いになってますよ?」

……さっきからこんなことの繰り返しだ。

 

昼過ぎのドタバタ劇から1時間と少し、偶然出会ったこの子「心花 祢々(このか ねね)」に宥めてもらいながらこの蕎麦屋に辿り着いて別世界?で初めての食事にありつけた。

この幻想郷に着いてから散々なことの連続からやっとひと段落したと思うと腰が落ち着く。例の幻影やら、魔理沙のゴタゴタやらで疲弊した俺にとっては有り難い。霊夢の話にしたって、五体満足で帰れないとなれば易々と「帰りたい」とは言えない。そう思うと今後に対する不安でいっぱいだ。それも込みで、今ここで食べれる蕎麦が「蜘蛛の糸」のように思える。

とはいえ、嘆いていてもどうにもならない。暫くこの世界で暮らすことが決まった以上前向きにこれからのことを考えるべきだろう。

 

 

「これからと言えば……」

「どうしたんだぜ?」

「いや、霖之助さんの家に暫くお世話になる予定だったが…あの人俺と魔理沙たちが騒いでる間に急用で居なくなったんだよな。」

「そういやそうだったな。でも泊まるって約束はしてるんだし気にしなくても良いんじゃないか?私が後でアイツの店に送れば良いだけだし。」

「と言ってもなぁ……忙しそうな人だったし、そんな迷惑かけてもなぁ…」

「霖之助が忙しそうな人ねぇ……絶対そんなことないと思うぜ?気にせず押しかけちまって良いだろ。」

「君みたいな横暴なことするわけにはいかないだろう…」

「むむぅ……!!」

まいったな……霖之助さんのことだし、しっかり泊まる用意が出来ているだろうけど今後のこともあるし、どうしたもんか……

そうして俺と魔理沙が悩んでいると、

 

「……それなら、」

「「?」」

「それなら、私が慧音先生に掛け合ってお部屋を貸しましょうか…?」

祢々が控えめに声をかけてきた。

「部屋を……」

「貸す……?」

俺も魔理沙も、鳩が豆鉄砲を食ったような面持ちで祢々を見る。

「はい。私の家に空いてる一室があるので、そこをハルさんのお部屋として使えばこれからの生活も安定するのではないでしょうか。」

「な、なるほど…」

魔理沙は首をかしげる。

「うーん……祢々が良しとするなら私は構わんと思うが、慧音がおいそれと許可するのか?」

「慧音先生のことですし、ちゃんと話をすれば分かってくれると思いますよ…?」

「どうだろう…アイツのことだから頑固に断ってきそうだし、ハルみたいなケダモノを祢々の隣に置くってのはなんだかなぁ…」

「話が見えてこないんだが……いや待て魔理沙今なんて言った。」

 

 

「じゃあ、これから私が霖之助に教えてくれば良いのか?」

「ああ、悪いけど頼む。」

そんなこんなで夕暮れ近くなった人里で俺は魔理沙にお使いを頼んでいた。

流れとしては、俺と祢々が『慧音先生』という人に家を住まわしてもらえるようにお願いをして、魔理沙はその間に霖之助さんにその旨を伝えるという形になった。

とはいえ、運が悪いとその場暮らしをする羽目にもなる。ぶっちゃけ提案に乗っかったのは良いが、イチかバチかの賭けみたいな雰囲気を醸し出している。確かに成功すれば居を構えたい身としては願ってもない幸運が降ってきたともいえる。しかし、その慧音先生が許可してくれるかどうかに委ねられている以上、俺にとっては不安しかない。

苦虫を噛むような微妙な顔持ちでいると、祢々は優しくフォローしてくれた。

「大丈夫ですよ。先生なら快く許可してもらえますよ。」

「本当かなぁ…」

「まぁ頑張るんだぜ、失敗したらしたで何とかなるはずだろ。」

「他人事だからって……」

一抹の不安を抱えながら、魔理沙を見送る。

「さて、私達も慧音先生の所に行きましょう。」

「そうだな…えーっと。」

「祢々で良いですよ、ハルさん。」

「わかった。よろしくな、祢々。」

 

二人で、人里の水路沿いを歩いて慧音先生の居る『学び舎』に行く。

人里。イメージは、『江戸時代にタイムスリップした現代人。』という感覚に陥る。街並みも、人の姿やその生活も現代社会とは似つかない様相だ。

もし帰って、友達に会えたら話題のタネに数日は使えるだろう。異世界と呼べる場所に来ることが出来たんだ。今はその手のお話が流行りだった気がするし、何人かの関心は買えるだろうな。

 

「……」

友達か……居たんだろうか、俺には。

来た時のことを今になって蒸し返す。自分の記憶を掘り起こそうにも、友達と呼べた奴の顔も、同級生の顔も思い出せない。

靄のような、見たくても見えない壁が俺を阻んでくるせいで浮かびようがない。

幻想郷に偶然『思い出せないように』なってしまったのか、それとも『本当に全て存在しない』のか。

 

『…成程。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…』

 

俺の前に現れたよく分からない奴。言葉を借りれば『意志として体現した存在』。

有り得ないことの連続で、とりあえずは受け入れてきたが…それでも、アイツのことを無視できるわけがないし、信じたくもない。

もしあの話が本当なら、今の俺は本当の俺じゃないって可能性もある。記憶や情報が書き換えられた。それを紐解いていくと、今ここにいる俺そのものが『俺の真の姿』とは言い切れなくなってくる。

そんな不安を抱えながら俺は生きていくのは嫌だ。どうであろうと、本当の俺が何者なのかとか、どんな記憶があるのかぐらい知っておきたい。

……でも、それを知れば今日知り合った皆と同じ顔で過ごせるか分からない。

どうすればいいのか……

 

「……大丈夫ですか?」

「えっ?」

ふと、祢々が俺に声をかけて心配そうに顔をのぞかせた。

余程しおらしい顔をしてたんだろう。流石に気になったみたいだ。

「いや、ちょっとだけ考え事してただけだよ。」

「そうですか…やはり、慧音先生のことで?」

「えーと…まぁそんな感じ。」

「そんなに気にしなくても、慧音先生は人に優しい()ですからすんなりと行きますよ。」

「そうかなぁ……魔理沙の口ぶりはともかくとしても、祢々は慧音先生に対して少し買い被りすぎじゃないかな。」

「そうでしょうか…でも、私にとって慧音先生は恩人ですから買い被りしたくなります。」

「蕎麦屋に行く時もちょこっと言ってたっけ。先生が住む場所や生活の仕方も授けたとかなんとか…」

「はい。私が人里で暮らすことが出来るのも、生きる意味…は言いすぎですけどそれに近いようなものを貰いました。」

「先生からは色々教えてもらったんだな。」

「読み書きや計算も出来なかったので、その辺りも先生から直々に教えてもらったんです。」

「学び舎を営んでるだけに、流石は先生って感じがするよ。」

開けた街並みの中で、少し強めに吹く風が不思議と慧音先生という人の温情のようなものを感じさせてくれた。

「ともあれ、先生のおかげでこうして暮らせているんだな。」

「本当にそうだと思います。先生が居なかったら、きっと私は……」

「……?」

そこで、祢々は口を止めた。

「祢々…?」

俺がさっきと同じように声を掛けると、

「……それより、早く行きましょう!」

少し急かすようにして返してきた。

 

 

妙に焦げるような篤い夕焼けを左の頬に受けながら、俺は狐につままれた感触を覚えていた。

 




次回は慧音先生回!!
果たしてハルくん無事に寝れる場所が取れるのでしょうか…()
路頭に迷わせたい気持ちもあるけど、たぶん大丈夫でしょう!!()


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6話「人の郷、『幻想』の郷」

とりあえずはこの辺りで連続投稿はストップします!
結構荒削りなので所々修正兼ねてお時間をくださいな……


—————————————夕暮れ時、『学び舎』の正門前

――――――――立川 ハル

 

 

「さて、着きましたよ。」

「お、おぉ…」

祢々と適当な雑談をしながら、ようやくと慧音先生の居る『学び舎』へ到着した。

そこまで大きいかとも図れないが、学び舎と名前が付くだけの立派な佇まいは感じられた。

驚くほどではないかもしれないけど、現代にはない独特の感じが俺にとっては不思議と高揚感を与えてくれた。

「では、夜になる前に早く慧音先生の居る部屋まで行きましょう。」

会釈のような会話もそこそこに、俺たちは正門の隣にあった入り口に向かっていく。

 

内装も、古めかしい雰囲気はあっても学びを教える場所というのがすぐに感じられた。廃校探索でもしてるんじゃないかって気もしてきたぐらいに、今風の学校には見えない。

「聞いてなかったけど、慧音先生は普段どこにいるんだ?」

「普段…というより、基本的に学び舎で先生は生活してます。」

「学び舎で?余程熱心な先生なんだな。」

「いえ、元々大きい建物だったのでその一部を自分の家としているんです。私の家も似たような配置になっているんですよ。」

「じゃあ、ある種住み込み先生って感じなのか。」

「そうですね。私も慧音先生のお手伝いとして家をお貸ししてもらっている次第です。」

「なるほどな…」

そうこうしてると、『上白沢慧音』と札のある部屋に着いた。

「では、私が先に慧音先生に声をかけて来ますので後から来てください。」

「分かった。」

すると、祢々は部屋の戸を三度叩く。

「慧音先生、祢々です。お話があって来ました。」

「祢々か?どうしたんだ。」

「外の世界から来た人を、暫く空き部屋で住まわせてほしいのですが…」

「外の世界の…?その人も隣に居るのか?」

「はい。」

「す、少し待っていてくれ。」

そう聞こえると、慌ただしく物音が数刻響いた後

「良いぞ、入ってくれ。」

と、戸が開いた。

 

 

「「失礼します…」」

挨拶をしながら、中へ入る。

ぱっと見、教授とか研究者と呼べるような本の山積みされた部屋。

そして、そんな部屋に似つかわしくないような綺麗な女の人が奥の椅子で座っていた。

……半日経った今も思うことだが、相変わらずこの世界の風習というか感覚ってどうなっているのか問いただしたくなる。

「とりあえず、その椅子に座りなさい。」

威圧感……とは少し違うが、何とも言えない空気感の中で椅子に腰かけた。

「祢々、この青年が外の世界から来た人か。」

「はい、ハルという名前のお方です。」

「えっと、立川ハルです。」

彼女の気に押されるように名前を出す。

「初めまして、私は上白沢慧音です。よろしくお願いします。」

「あ、こちらこそよろしくお願いします…」

身持ちが固くなっている俺に、慧音先生は優しく手を差し出し握手をした。

「そんなに固くならなくても大丈夫ですよ。」

「あはは…なんだか身構えてしまって…」

「外の世界から来てお疲れなのでしょう。今はゆっくりと腰を落ち着けてください。」

「ありがとうございます。」

気迫こそ凄いが、手厚く呼びかけてもらったお陰で落ち着いた雰囲気で話すことが出来そうだ。まぁ、色々あった手前疲れがあるのも嘘ではない。

挨拶も早々に、祢々が本題を切り出した。

「それで、先程お話した通りハルさんを学び舎の空き部屋で住まわせて欲しいのですが…」

「そうだったな。確か、隣に使われてない部屋があったか。」

「はい。そこを彼の生活部屋にしてもらえませんか。」

祢々が太鼓判を押すように慧音先生に聞くと、彼女は少し悩みながら

「…外の世界から来て、住む場所がないことを考えればすぐにでも承諾したいが…」

「……何かできない理由があるのですか?」

「……いや、特に問題はないよ。いきなり突飛なことを言い出したものだから少し悩んでしまっただけさ。」

「ということは…」

「ええ。小汚いところではありますが、住んでもらって構いませんよ。」

「よ、良かった…」

余計にホッとした……流石に許可してくれないかと思っていた分、尚のこと重荷が減るような感覚だ。

そんな話をしてると、慧音先生は立ち上がり書類を見ながら祢々に指示をする。

「とりあえず、祢々はあの部屋の掃除を先にしてきなさい。随分と使ってない部屋だから、そのまま使うのは良くないだろう。」

「はい、慧音先生!」

「ハルさんは少しお話があるので残ってください、いきなりの連続でお疲れだと思いますが幻想郷…人里で生活するのに必要なこと、これからのことについてお話しますので。一通り話し終えたら部屋まで案内します。」

「わ、分かりました。」

 

 

「では、ハルさん。先生もまた後で!」

一段落したのが余程良かったのか、祢々は足取り早く部屋を出ていった。

 

 

「……少し、話し方をくだけさせてもよろしいですか?」

重い雰囲気が部屋に漂う。先程まで俺や祢々に向けていた感じとは全く別だ。

「は、はい…」

「申し訳ない。私としてもあまり重苦しく話を進めたくはないのだが、君には少し用心してほしいことがある。あまり軽々しく言える話ではないし、あの子にも聞かれてほしくはない話だからね。」

「聞かれてほしくない話……ですか。」

「あぁ。あの子…祢々は少々複雑な環境に居た子だから、尚のこと口に出せないんだ。」

「……そんなに、危険な話題なんですか?」

彼女は、机のほうを見ながら小さく首を縦に振った。

 

 

 

「君は、妖怪や化物を見たことがあるか?」

「え……?」

「大小は問わない、人間とはかけ離れた異形の存在と邂逅したことは?」

「いえ……見たことも、遭ったこともないです。」

「だろうな。君の世界については全く知らないが、その様子じゃあないだろうな。」

「どうしてそんなこと聞くんですか?」

「どうして…か。」

 

「君は、異形を目の当たりにしても冷静に居られるか?」

「……え?」

ふと、小さな悪寒が駆け抜けた。

「聞いたかどうかは知らないが、幻想郷には『幻想』と認識されている存在が居る。多少の例外はあるかもしれないが…少なくとも何度かは目にするはずだ。」

「そして、君はそれらと相対しても平常さを保っていられるか?」

「い、いったい何を…」

「いいか。君が居る場所は今までの『常識』なんて通用しない。『非常識』の住処なんだ。それをちゃんとわきまえておくんだ。」

「きっと、これから先君は避けられない真実と向き合うことになる。」

「避けられない真実…?」

 

 

 

『君もそうだって言えるんだ。』

 

 

 

「君の言う『現実』が必ずしも通用するわけがないんだ。」

 

 

 

『記憶が不鮮明なのも。あんな気味悪いもう一人の俺らしい何かも。俺が『幻想』だからこうなっているのか?』

 

 

 

「仮にその『幻想』を目の当たりにしても。」

 

 

 

『君も『幻想』なのかもしれない。』

 

 

 

「君はに向き合えるか?」

 

 

 

『だが、お前はいつか俺を思い出す。いや…()()()()()()()()()()()()。』

 

 

 

「ッ!!!」

あの時の寒気が一気に加速する。逃げようとしていたもう一人の俺が迫る。

逃げられない、逃げようとしても俺を捉えようと何重もの糸が絡んでくる。

俺は、俺は……

 

 

 

「……大丈夫か?」

「ハッ!?」

そして一気に目の前の光景に引き戻される。

慧音先生は俺を覗き込むように見て心配そうにしていた。

「だ、大丈夫です……」

……気のせい、だったのか。それにしては酷く鮮明で嫌に纏わりつくような感触が残っている。

「……兎に角、これからは外出する時は気を付けてくれ。近頃は物騒ならしいし、どうあれ幻想郷に来たのに命を落とされてほしくはないからな。」

「それと、手が空いてたら祢々と一緒に学び舎の手伝いをしてくれ。あの子一人では忙しくて手が足りなかったし、折角なら教壇に立ってくれるのも悪くない。」

「前向きに検討しておきます。」

「そうしてくれると助かる。さて、あまり変に引き留めるのも良くない。部屋に案内しよう。」

「あ、お願いします。」

 

 

祢々の居る部屋まで歩く最中、一つ気になった事がある。

「慧音先生。」

「…?どうした。」

「さっきの話、どうしてあの子が居てはダメだったんですか?」

「……それは。」

足を止め、暗い面持ちで彼女は俺を見ていた。

 

 

「……人には、色々と隠しておかねばいけない事もあるんだ。」

 




次回の予定としては、一先ず自室を手に入れて安心&考察回でございます。
私もまとめとして一区切り作りたい&修正したいので()


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。