何やら四魂の玉に憑依してしまったんだが誰か助けてクレメンス (nenenene)
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四魂の玉に憑依
やれやれ、何が起こっているのやら。
え? そんなことを急に言われても意味が分からないって?
大丈夫だ。俺にも良く分かってない。
どうも俺は犬夜叉に出てくるあのレアアイテム、四魂の玉に憑依してしまったらしい。
なぜそんなことになってしまったのかって? いい質問だ。だけど俺にも分からん。
俺の意識の中では、ついさっきまでいつものように、高校から自宅に帰る途中だったはずだ。それが次の瞬間気が付いたら、化け物の顔が近づいてきて、俺を丸呑みにした。いや、あれにはさすがの俺もビビった。どれぐらいびびったのかというと、思わずションベンちびりそうになったくらいにビビった。
いやまあ、現在の俺は、四魂の玉に憑依している。したがって、ションベンその他の生理現象からは解放されてはいるんだが……何だかなぁ。
そのおかげで高校生にもなって小便を漏らすという、恥ずかしいイベントは回避されたわけだが、素直に喜べない。
そもそも、なんで四魂の玉に憑依してるんだ、俺は?
少なくとも、定番ネタとして神様に遭遇した訳でもなければ、トラックに衝突した訳でもない。本当に、そう、本当に、気が付いたら次の瞬間には四魂の玉になっていたんだ。
意味が分からないよ。
いや、まあ、そんな冗談は置いておいて、今は俺の話である。俺は今、犬夜叉のヒロインである、かごめのセーラー服のポケットに入れられている。
さっきの化け物は犬夜叉が無茶苦茶に引き裂た結果、バラバラになって死んだ。というか、バラバラになった後も俺から妖力を供給されて、復活しようとしていた。だが、原作通りにかごめが俺(四魂の玉)の場所を見つけ、化け物の死体から引き離したおかげで、それは阻止された。
その後、かごめとばあさん(名前は忘れた。BBAに興味はない! キリッ!)、それに封印から覚めた犬夜叉の三人は、俺と一緒に、集落に移動。ばあさんの家で、現状の説明を受けている。
正直、俺は眠い。なんで四魂の玉という変なものに憑依してしまったのに、眠くなったりしているのかは完全に謎だが、眠いものは眠い。マンガ好きであるところの俺は創作上のキャラが実際に動いて話しているのを見て、感動はする。でも、眠いものは眠くてどうしようもない。
それに俺は、この後の展開をすべて知っているし、別に起きている必要も無いだろう。むろん、四魂の玉という物語上重要なアイテムに、俺というイレギュラーが入り込んでいる以上、多少はブレがあるだろう。それに、そもそも原作とアニメとでは多少設定が異なるから、すべてを把握できているわけではないけど、大雑把な展開は変わらないだろう。
え~と。この後どうなるんだっけ?
俺はまどろみながらも、物語を軽く思い出す。確かこの後、四魂の玉は四散して、それをかごめと犬夜叉と愉快な仲間たちが集めるんだっけ? めでたし、めでたし。
ん? なんか変だぞ?
何だか違和感がある。何かを見落としているような気が……。
『げえええええええっ!!』
そうだった! なんで忘れてんだよ! 俺!
眠気が一気に引っ込み、身体がガタガタ震える。
『まずいじゃん!!』
四魂の玉が四散するって、そのとき俺はどうなるんだ? どう考えても生き残る自信がない。もしかしたら四散した欠片の一つに乗り移って生きられるかもしれないけど、そんな幸運があり得るとは思えん。
『まずい! これはまずいぞ! どうすんだ!? 俺!』
どうしよう? いや、マジで!
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一夜明けた朝、死舞烏襲来!
ヤッホー!
なぜだか四魂の玉に憑依することになった普通の高校生、峰雪勇人です。
意味不明な状況に遭遇して自分の命の危機ともなると、人間ってハイテンションになるんですね。初めて知りました。いや、まあ、こんなヘンテコな状況に遭遇すること自体初めてなので、普遍的な法則があるのかは知らないけどね。
結局、昨晩は一睡もできなかった。眠気? そんなもの、一瞬で吹き飛んだわ!!
ガクガク震えながら、一晩かけてどうすれば四魂の玉の四散を回避できるのかを考えたのだが、全く上手い考えが浮かばない。
マジでどうすればいいんだ? 平和な日本で高校生をやってた俺には、ハードルが高すぎるぞ! 神様助けて!
……神なんて信じてないけどね(汗)。
などと馬鹿なことを考えていると、犬夜叉とかごめが喧嘩を始めた。
「もう、あんたなんか知らない!!」
かごめはそう怒鳴ると、足音高くばあさんの家から出て行く。それも、俺をポケットに入れたまま。
『ちょっ!? おまっ!!』
俺は焦る。めちゃくちゃ焦る。心臓のバクバク具合から言って、間違いなく人生で最大の焦り具合だと断言できる! (いや、まあ、あくまで比喩的な表現なんだけど。……心臓なんてないから)
このまま行くと、かごめは盗賊に拉致される。そして、その盗賊の親玉は妖怪に寄生されていて、その妖怪を倒す過程で四魂の玉は四散するのだ!!
それは、俺の生命が危ない的な意味で、何としても阻止しないといけない!!
『何かないか!! 何か!!』
何もありません。というか、今の俺は単なる玉なので、身動きが全く取れません。つまり、どうしようもない。
ははははは。オワタ。
『無理ゲーすぎる!!』
魂の底からの俺の叫び。
そこに、光明が降る。
「えっ?!今のは誰?!」
かごめが俺の声に反応する。四魂の玉になって拡張された俺の感覚によると、どうやら俺の心の中の叫び声が、妖気として外部に放出されたっぽい。
『俺が誰かだって?! そんなことはどうでもいい!! そんなことより早く村に戻れ!! 盗賊に狙われてるぞ!! お前!!』
そうなのである。このバカ女は、ばあさんの家を出た後にズンズン村はずれに進んでいて、今では森の中にいるのだ!
このままでは、原作通りに俺が四散してしまう!
そういった焦りのせいで、俺の口調は知らず強いものとなる。
それが悪かったのだろう。いきなり知らない場所に飛ばされて、変な化け物に狙われるなどという、普通の女子中学生が経験するはずのない出来事に、かごめは巻き込まれていたのだ。その上かごめは、自分が生まれかわりに巫女であり、自分の体から出てきた変な球のことを妖怪どもが付け狙っているから、生まれ変わりの巫女としてそれを守らければならない。などという勝手な話を一方的に聞かされて、かなり気が立っているのだ。
そこにこんな強い調子で命令すれば結果は明らか。つまり、より一層頭に血が昇って意固地になり、先ほどよりも早足で骨喰の井戸に向かっていく!
「知らないわよ!!そんなのっ!!妖怪だか盗賊だかなっ」
急にかごめが足を止める。
それもそうだろう。かごめが向かう先には、複数の人影。その全員が刀や槍、弓といった武器で武装していて、衣服の上にはくたびれた防具まで着込んでいる。
彼らはどう見ても堅気には見えない。というか、今話題の盗賊の皆さまです。ありがとうございました。
どうすんの?これ?
「げへへへ。上玉じゃないか。女。」
盗賊の一人。恐ろしく体格のいい男がかごめに声をかける。
バカな!
その男からは生気が感じられない。代わりに、男の腹の中には、大して強そうではないものの、妖怪の気配がある。
何を隠そうこの統領、妖怪に憑りつかれて死んでしまっているのである。原作では、この盗賊の統領はお寺か何かの中で、部下の戦利品を待っていたはずなのだが。なぜか、そいつが直接かごめを捕えに出てきている。
俺は原作との微妙な乖離に軽くパニックになりかける。
だが、
「なっ?!盗賊?!教えなさいよっ!!知ってたんなら!!」
かごめの怒鳴り声が俺を現実に引き戻す。
さすがにこれには、俺もイラッとする。
『うるせえ!手前が俺の忠告を聞かねえからだろうが、バカ女!』
「バカ女ですって!!誰がバカよ!!誰が!!」
「手前だよ!」
そう答えたのは俺ではない。盗賊の一人だ。
その盗賊は背後からかごめを羽交い絞めにする。そして、背後から近付いていたもう一人の盗賊が、身動きの取れないかごめのセーラー服を乱暴にひん剥く!
「きゃああああああああああああ!!!」
上半身をブラジャー姿にされたかごめが悲鳴を上げる。
「なんだ、女。変なもんを胸に巻いて」
ブラジャーを見た盗賊の一人が、不思議そうな顔で呟く。
『変なもんって……。確かに下着は、昔はなかったらしいけど』
その俺のつぶやきは無視された。
まあ当然だ。盗賊どもには俺のつぶやきなんかわからないし、かごめはそれどころではなくなっている。というか、盗賊に拘束されて、服を剥がされた女子中学生が、冷静に反応できたらそっちのほうが怖い。
ん?
俺だって昨夜までは単なるどこにでもいる男子高校生だったはず。別に、小さいころから鍛えられていたわけでもなければ、妖怪を見知っていたわけではない。現にさっきまでは死ぬかもしれないと思って、ガクガクだったはずだ。それがなぜ、こんなに冷静になっているんだ。明らかに異常。
なのに、違和感はそれほどでもない。四魂の玉という体(?)に、精神がひきずられているのか? マンガやアニメではよくある設定だけど、自分が経験するとなると微妙な感じだ。
「これも取っとくか」
さっきの盗賊が、かごめのブラジャーを引き裂くべく再びかごめに腕を伸ばす。
「いやああああああああああああああああ!!! 助けて!!!」
かごめが恐怖に染まった悲鳴を上げる。
助けてと言われても、俺にどうしろと。今の俺はタダの玉。俺にはどうしようもないし、犬夜叉の気配は依然として、ここから離れた村の中にある。動きから言って、たぶん昼寝でもしているのだろう。
『哀れ、かごめ。ここで純潔を失うか。』
まあ、純潔と言っても、現代ではほとんど死語みたいなものだし。どうせかごめだって、結婚までヴァージンを守るという気はなさそうだし、問題なかろう。
俺はあっさりとかごめを見捨てる。
「ぎゃああああああ!!!」
だが、天はかごめを見捨てていないようだ。かごめの胸に手を伸ばしていた盗賊は、背後から袈裟懸けに斬られ、絶叫を上げながら倒れる。
え? どうなってんの?
盗賊を背後から斬りつけたものの正体。それは盗賊達のお頭だ。
どゆこと? こいつ敵やないんか?
精神の動揺から、思わずエセ方言が出てくる。
「へ? お頭?」
盗賊の方も混乱している模様。まあ、当然だろう。自分の仲間だと思っていたモノが突然他の仲間を攻撃し始めたんだから。かごめを羽交い絞めにしていた盗賊が呆然としてお頭を見上げ、拘束の力を弱める。
そして、そのような隙を原作ヒロインが見逃すはずはない。だって、そうでもしないと話が進まないから。
かごめはするりと盗賊の拘束を抜けて、一目散に逃走する。
「待て!!」
そう言って、盗賊は再度かごめを拘束しようとするが、
「うぎゃああああ!!!」
お頭がまたも大鉈を振るい、その盗賊を頭から真っ二つにする。
「ふしゅうううう。またはずした。おがしい。」
お頭はそう言って、頭を振る。
その様子に俺はドン引きだが、それ以上に、周りの盗賊たちは動揺している。
「お、お頭!!一体何を!!」
だが、そのような手下の問いかけには答えず、お頭は三度大鉈を振るう。
「へぎゃあああ!!!」
その攻撃もかごめには命中せず、別の盗賊に命中する。
「ひええええええ!!!!!」
自分たちのお頭が狂い、三人も自分の仲間が殺されたのを見た残りの手下二人は、一目散にその場から逃れようとする。
だが、
「にげるね!!」
「「ほげえええええ!!!!」」
お頭は素早く手下達に近づき大鉈を振ると、呆気なく手下たちは全滅した。
『いやいやいや! おかしいだろ! なんで正確なんだよ!! 自分の手下を攻撃するときだけ!!』
俺の渾身の突込みは当然のごとく無視された。
……俺、泣いていいよね?
まあ、冗談はともかくとして、現在の状況は非常によろしくない。何せ、犬夜叉の奴は以前村で昼寝中だし、俺には何もできん。かごめは物語が始まったばかりで近接戦闘能力が皆無。というか、物語終盤でも、接近戦はほとんど無理だったはず。
そして、目の前には敵の妖怪が操る大男(大鉈装備)。
俺はそれらの要素を総合的に分析する。
ふっ! 無理だな。こいつ死んだわ。
俺の明晰な頭脳(笑)が出した結論に、間違いはない。俺はかごめに憐みの視線を向ける。
まあ、目はないけど。
『お願い。助けて。』
かごめが両手で俺を包み込んで、祈りを捧げてくる。
一歩一歩、ゆっくりと、ふらつきながら、近づく、お頭。
「いやあああああ!!! 死にたくない!! 死にたくない!!! お願いよ!! 何でもする!! 何でもするから!! 」
かごめは死への恐怖から、失禁しながら必死に命乞いをする。だが、そんなものが妖怪に通用するはずもない。
一歩一歩、お頭が近づく。
「助けてよ!! 命だけは!!! お願いします!! 助けてください!!」
かごめが、無茶苦茶に泣き叫ぶ。
「いや!!! いや!!! 死にたくない!!!! お願いします!!! 助けて下さい!!!! 何でもするから!!!! そ、そうだ!! 服脱ぎます!! 裸になります!! 赤ちゃんだって!! たくさん産むから!! だから助けて!!」
かごめは最早、半狂乱。自分が何を言っているのかもわからなくなっているらしい。
だが、そんなかごめへと、お頭が一歩一歩近づいていく。
その表情はだらしなく弛み、口からは涎。
「ぐへ、ぐへへへへ」
と、奇怪な声を上げる。まあ、死んでるから当たり前なんだけど。
「いやあああああああああああああああああああああああ!!」
死への恐怖から、かごめは股間から黄金水を垂れ流し始める。チョロチョロチョロ。ぶざまな音が股間から漏れ出て、地面に水たまりを作っていく。
「誰かあああああああああああああああああ!! 助けてええええええええええええええ!!」
かごめの絶叫! そこに、救い主が現れた。
ヒュン。という風切り音。次の瞬間。
ザシュ。コロコロ。お頭の頭部が切断され、生首が地面を転がる。
ザアアアアアアア!!
お頭の胴体から、鮮血が噴出。まるで噴水のよう。周囲を血で濡らしていく。
『ん? なんだ?』
なんで急にお頭の首がチョンパされたのか? なんか今、鋭利な糸のようなものが、高速で飛来したような気がするが? 気のせいだろうか?
俺はそう疑問に思うも、すぐに打ち消す。いや、気のせいのはずはない。現にお頭の首は見事に両断されているのだ。“何か”がそれを切ったのは間違いない。
などと俺が疑問に思っていると、「ギャギャギャ」という不快な鳴き声が聞こえる。鳴き声の発生源は、お頭。その心臓のあたりだ。
ああそうかと、俺は思う。このお頭はカラス妖怪に寄生されてるんだったな。そんな俺の目の前で、お頭の胴体がふくらむ。ついで、カラスの化物が姿を現す。
「ギャギャギャ」
カラスの鳴き声。そいつはお頭の胴体から出てきたあと、かごめへと向かう。
「なに?! 何なの!!? どういうことよ!!」
かごめが半狂乱に騒ぎ出す。どうやら、状況の変化について行けないようだ。まあ、むりもない。というか、俺も良く分からん。一体だれがお頭を殺したのか? いや、殺したというか、何と言うか……お頭は既に死んでいたんだが。
などということを俺が考えていたところ、またも糸のようなものが光る。高速で飛来するそれは、カラス妖怪の頭部へと正確に命中。「ギャ」という、カラスの悲鳴。一瞬後には、烏の頭部が両断される。
『なんだこれ? 何でいきなりカラスが死ぬんだ?』
この妖怪は、犬夜叉に登場するすべての妖怪の中でも五本の指に入る重要キャラだったはず。なにせ、こいつを倒すために、かごめの放った破魔の矢が四魂の玉を砕いてしまう訳であるからして……むしろ作中で最も重要であると表現しても過言ではない(断言!)。
そのはずなんだがなぁ?
なんで急に死ぬのか? いや、まあ、現状で四魂の玉に憑依している俺としては、死亡フラグがへし折れて万々歳なんだが……どうにも納得がいかない。
などと俺が沈思黙考していると、声が駆けられた。
「ねえ、あんた。持ってるんでしょ? 四魂の玉」
それは、少女の声だった。
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逆髪の結羅
「ねえ、あんた。持ってるんでしょ? 四魂の玉」
それは、少女の声だった。
しまった。思考に没頭しすぎた。今の俺は、四魂の玉。世界中でねらわれてるんだった。慌てて周囲の気配を探る。
いた! 木の陰で姿を隠しているようだが、感覚が鋭敏化した俺にはすぐに分かる。かなり強力な妖怪が潜んでいるようだ。
「だれ! どこにいるの!?」
かごめが、声の主へとすいかする。きょろきょろと周囲を見回している。どうやら、相手がどこにいるのか分からないなしい。
そんなかごめへと、答えが返ってくる。
「逆髪の結羅。それがあたしの名前」
そう言ってその妖怪が、木の陰から姿を現す。
妖怪は人間の少女の格好をしていた。
『は?』
その少女を目にした瞬間。俺は我が目をうたがった。
その少女が、あまりに破廉恥な格好をしていたからだ。
少女の着ているのは、黒革の着物の様なモノ。戦国時代に来てからというもの、普通に目にしていた、ザ・和風な服装だ。
ただし、その着物。異常に、露出がおおい。胸元をがっつりと開け、オッパイの谷間を強調。袖無しのノーズリーフで、脇下も大胆にカットしているため、横乳もしっかり見えてしまっている。貧乳な子がそんな格好をしたらイタイだけだが、少女は巨乳。非常によく似合っていた。
さらに、その着物。スカート丈が短い。股下数センチしかない。深く抉れたスリットが入っているせいで、太ももが露出。白く伸びる生足が、目に眩しい。
さて、そんな少女の髪は、黒色。おかっぱ頭にしている。釣り目がちな瞳は紅色。じっとりと獲物を狙っている狩人の目をしている。
少女が見つめている獲物、それは間違いなくかごめだ。
「うふふふ。早く寄越しなさい。四魂の玉を」
少女がそう言って、艶やかに微笑む。
「な、何に使うのよ!?」
緊張した様子のかごめは、両手でしっかりと俺――四魂の玉――を掴む。どうやら、妖怪には渡したくないようだ。
「四魂の玉を何に使うか? くすくすくす。馬鹿な女ね。そんなの決まってるじゃない。それを使って、永遠の若さと美しさを手に入れるのよ」
そう言うや、少女が右手を振るう。
ヒュン!
という風切り音。少女の指から糸が飛び出し、かごめへと急接近。一瞬で間合いを詰める。
「?!」
突然のことに反応できないかごめ。そんなかごめに接近した糸は、かごめの手の中に進入。握りしめられていた俺の身体にグルグルと巻き付く。
再び、ヒュンという風切り音。今度は、かごめの元から結羅の元へ。俺を掴んだまま、少女の元へ運んで行く。
「うふふふ。なんて綺麗……」
逆髪の結羅と名乗った妖怪は、手に入れた俺を見て、ウットリとした表情を浮かべる。間近で見てみると、この少女妖怪はすこし化粧が濃い。でも、可愛い。何歳ぐらいなんだろう? 彼氏はいるのかな? もう経験者なんだろうか?
そんな疑問が俺の頭をよぎる。
「か、返してよ!」
かごめの叫び。
「何? まだいたの?」
結羅が不思議そうな顔をする。
「まだいたの、じゃないわよ!! 早くか返してよ!!」
自分が無視されたことに、激怒するかごめ。
「四魂の玉は手に入ったし、あんた、もう死んで良いよ」
対する結羅は、冷酷なことを平然と口にする。
「なっ?!」
一方のかごめ。こちらは、結羅の台詞に衝撃を受ける。そして、自分が現代日本の非力な女子中学生であるということを思い出したらしい。
途端に、その表情は青ざめ、恐怖に凍り付く。
「ほら? なにしてるの? 早く逃げないと、こうよ?」
そう言って結羅は、さいど指を振る。
ヒュン。という風切り音。一瞬後には、かごめの背後にあった大木が両断。轟音とともに倒れてしまう。
「ひ、ひいいいいいいいい!! だ、誰かああああああああああああ!!」
余りにもたやすく切断された大木を見たかごめは、一目散に逃げだす。
「うふふふ」
そんなかごめを見て、少女妖怪は傲然と冷笑する。
「10秒だけ待ってあげる。すぐに殺しちゃ、狩りの楽しみがなくなっちゃうから」
そう言って結羅は、視線を俺、つまりは四魂の玉へと向け直す。
「ふふふふ」
妖艶な笑みを浮かべる少女妖怪。俺を口元へと近づけると、ペロリ。ひと舐め。
『な、なんですとおおおおおお!! ちょ、おまっ! 初めは文通から!』
いきなり初対面の美少女(巨乳)に身体を舐められた俺は、ろうばい。うろたえて、意味不名な叫び声を上げてしまう。ついでに、チンポが立ってくる(いや、チンポなんてないけど。玉だけに)。
だが、これに、
「え?」
少女が反応。目を丸くした。
「今の声、ひょっとしてあなた?」
そう言って、俺を見つめてくる。ちょっ!? 聞かれてるんですけど!! 焦る俺!!
『どうする俺!! なんて返せばいい!!』
狼狽する俺は、思わず心の中の思考をそのまま叫んでしまう。
「ひょっとして四魂の玉って、童貞なの?」
少女の問い。おいいいいいいいいい!!! 完全に気付かれたぞ! どうすればいい! どうすれば良いんだアアアアアアアアアアアアアア!!
だが、童貞な男子高校生の俺に、こんな場合での対処法は手に余る。全く上手い考えが浮かばない。
そこで取り敢えずは、会話を進めることにした。
『あ、はい。そうです』
答えてから、自分で自分に突っ込みを入れる。おいいいいいい!!! 何バカ正直に答えてんの!! バカなの!! 死ぬの!!
「やっぱりね。ふふふふふ。じゃあ、あたしが今日、あなたの童貞を卒業させてあげるわ」
そう言って少女は、俺をミニスカの中へと誘う。
『えっ!? えええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!』
俺の叫び。
「うふふふふ。大丈夫よ。あたしがリードしてあげるから」
『そう言う問題じゃないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!』
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村への襲撃
拝啓
お父様 お母様
お元気ですか?
不詳、峰雪勇人は今、マンガの世界にいます。理由は知りません。気が付いたらこっち世界に来てました。
あ、でも、元気にはしてます。今日の朝なんて、美少女に捕まったとおもったら、イキナリ童貞を失ってしまいました。
何とか帰れるよう努力したいと思いますが、帰れる見込みは全くないし、もしかしたらこっちで結婚して子供をもうけたりとかもあるかもしれません。
って、何の手紙だ、これ?
いや、まあ、手紙というのは嘘だ。なにせ、今の俺は、四魂の玉。単ある玉であるからして、手も無ければ足もない。つまりはペンなんて持てない訳でして……要するに脳内妄想によって手紙を書いているフリをしている訳でございやんす。
閑話休題。
昨日、四魂の玉に憑依したばかりの普通の男子高校生であるはずの俺は今、結羅のオッパイに挟まれてまさに天国状態。
いやー。良いよね。巨乳。
柔らかくて、弾力があって、あたたかい。
欠点があるとすれば、性的刺激が強すぎることぐらい。
おかげで噴射してしまいます。え? なにをかって? はっはははは! 野暮なことは聞かないでほしいな! そんなことは聞かないでほしいな!
閑話休題。
それはそうと、今、結羅は木の上に座っている。その木のすぐ近くには、粗末な木材で作られた人間の集落がある。
何を隠そうその集落。犬夜叉とか、謎のBBAが住んでいる村だ。
では、結羅が何をしているのかというと、答えは簡単。村を襲撃するつもりなのだ。
でもなあ、正直言って俺はこの襲撃に反対だ。なにせ、原作では、犬夜叉たちを攻撃した結羅は、返り討ちに会って殺されてしまうのだ。
結羅(巨乳)が気に入っている俺といては、オッパイちゃんが死亡するようなリスクは出来るだけ避けたい
『なあ、オッパイちゃん。ホントに犬夜叉を襲うのか?』
俺はそう言って翻意を促す。
「そうよ。だって、犬夜叉はシコン様を守ってたんでしょ? そのうち、シコン様のことを取り返しに来るわ。だから、こっちから先手を打って殺しておくの」
あ、この台詞から分かる通り、俺と結羅は「オッパイちゃん」「シコン様」と呼び合う仲になりました。
朝の交流の成果です(キリ)。
『でもなぁ。俺はオッパイちゃんを危険な目に合わせたくないんだよ』
「ふふふふ。シコン様は心配性なのね? でも大丈夫。出来損ないの半妖なんかにあたしは負けないわ」
自信満々に宣言する結羅。いや、原作でもそう言って、あっさり殺されたんですが……とは言えない。
マンガの話を登場人物相手にしても、しょうがないからだ。
『でもなぁ……』
全く乗り気にならない俺。そんな俺に、結羅は業を煮やしたらしい。
「なにの? このあたしが半妖程度に後れを取るとでも言いたいの?」
どうやら、プライドを傷つけてしまったようだ。結羅の頬が膨らむ。
「見せつけてあげるわ。このあたしが、どれだけ強い妖怪なのかを!」
そう言うと結羅は、木の上から一気に飛び降りると、村へと堂々と歩いて行く。
『え?! ちょっ!? どういうこと!! 遠距離から髪を使って襲撃するんじゃなかったの!?』
俺は焦る。これじゃあ、話が違う!
「計画変更よ。シコン様にあたしの力を見せつけてあげる!」
あ、やぶ蛇った。これじゃあ、更に翻意を促しても、ますます逆上させるだけに終わりそうだ。俺は、自分を失敗を悟った。
「ふんだ! シコン様はそこで見てて! 人間の村の一つや二つ、あたしの敵じゃないんだから!」
胸を張った結羅は、逃げ隠れもせず堂々と村へと近づいて行く。
何だかなぁ。どうしたものか? 俺は頭を抱える。しかし、全く妙案は思い浮かばない。そうこうしている内に、村に到着。
当然だが、村人たちにはすぐに見つかった。村人たちは、鐘を鳴らして警報を発する。すぐにワラワラと集まってくる人間達。手に手に農具や薙刀など。武器になりそうなものを持っている。
あっという間に結羅は、人間達に包囲された。
と、包囲の一角がくずれ、一人の老婆が進み出る。昨日会った、桔梗の妹だ。
「なんじゃ!? おぬし!? 何しに来た!!?」
そう言って、結羅へと詰問する。
「犬夜叉って知らない?」
結羅のほうは老婆を無視、自分の要件を一方的に伝える。
「なに? おぬし、犬夜叉の知り合いか?」
老婆の的外れな質問。これに結羅はムカついたようだ。
「あたしが半妖と知り合いなわけないでしょ! そいつを殺しに来ただけよ! 早く案内しなさい! さもないと」
そう言って結羅は、すっと目を細める。
「こうなるわよ!」
結羅の右腕が振るわれる。すると、腕に巻きついた糸が高速で飛翔。村人の一人、その首をちょん切ってしまう。
「な!?」
「三太!!」
「おんな!!」
「許さねえぞ!」
仲間を殺され、激昂する村人たち。
だが、
「静まれ!!」
老婆が一喝。このBBAは余程指導力があるらしい。一同はすぐに冷静さを取り戻す。
「この妖怪は、おぬしたちでは勝てん」
老婆の宣告。これに結羅は気を良くしたらしい。
「当然でしょ。あたしは結羅、逆髪の結羅。人間風情に敵う相手じゃないわ。身の程をわきまえるのね」
そう言って傲然と胸を張る。
だが、馬鹿にされた方の村人たちは黙っていない。
「なんだと!」
「きさま!!」
口々に騒ぎだす。そんな村人たちは、
「静まれと言ったはずじゃ」
老婆の一言で再び大人しくなった。まるで、飼い主に怒られた子犬みたいな様子。
「おぬしもじゃ、結羅とやら。むやみに村人を挑発するのは止めてもらいたい。村人の相手など、おぬしにとっても時間の無駄じゃろう? 犬夜叉のところに案内するから、付いて来るのじゃ」
「そうね。たしかに無駄だわ。案内役は一人いれば、それで十分なんだし」
結羅の冷酷な宣言。
「なに?!」
老婆はろうばいするが、何もできなかった。
次の瞬間、何百本という糸が宙をまう。ポン、ポン、ポンという残虐な音。あまりにも手軽に、村人たちの首が撥ねられていく。
「そんな! やめてくれ! 犬夜叉は明け渡す! だから村人たちは!」
老婆の懇願。皺だらけの顔をグチャグチャにして、結羅へと命乞いを始める。
だが、
「いーや」
それが結羅の回答だった。
「うふふふふ。人間って、なんて弱いのかしら」
結羅の冷酷な台詞。ポン、ポン、ポン。数分とかからずに、村人たちは全滅した。案内役の老婆、ただ一人を除いて。
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犬夜叉との戦闘
「ここじゃ。この中に犬夜叉はおる」
老婆はそう言って、一つの古井戸を指さす。場所は、村はずれの森のなか。鬱蒼としげる木々の中に、ポツンと不自然で作られた井戸だ。
要するに、骨喰いの井戸。現代と戦国時代を行き来できる、タイムマシンだ。
それを老婆は指さしている。
「この井戸のなか?」
ひょいと結羅は身軽な動作で、井戸の縁に飛び乗る。両足を大きくひらき井戸をまたぐと、上半身を屈めて中を覗き込む。
そのときだった。
「今じゃ!」
老婆の叫び。助走をつけた老婆は、不安定な姿勢で井戸の縁に立つ結羅に、タックルを決める。
「きゃ!」
結羅はバランスを崩す。可愛らしい悲鳴を上げ、井戸へと落ちて行く。
そして、地面に激突。
グチャり。
肉の潰れる音。
結羅は、茫然とした表情で、自分の右腕を見つめる。
「あたしの腕……」
結羅の右腕は、落下の衝撃であらぬ方向へとねじ曲がっていた。
「あの老婆、よくも」
怒りに顔を歪ませた結羅が跳躍。井戸の縁へと降り立つ。
「え?」
だが、そこは先ほどまでの場所ではない。何かの建物の中のようだった。
「これは一体?」
どうやら結羅には、状況の変化が理解できないようだ。そこで俺は口を挟むことにした。
『オッパイちゃん。あの井戸は、骨喰いの井戸という。数百年後の未来と繋がっているんだ』
「数百年後……ここに犬夜叉がいるの?」
『ウム。そのようだ。犬夜叉の妖気を感じるから間違いない』
「そう……それじゃあ、まずは犬夜叉を殺して。その後にあの老婆ね。あたしの腕を潰したこと、あの世で後悔させてやるわ」
結羅はそう言って、凄絶な笑みを浮かべる。
******
井戸の祠を出ると、そこには無個性な現代日本の家が建っていた。
「この家……半妖の妖気が漏れてる。ふふふ。犬夜叉、今すぐ殺して、ア・ゲ・ル」
そう言って結羅は糸を操り、家のドアを破壊。犬夜叉、そしてかごめのいる家へと侵入していく。
「なんだー。女妖怪? 何しに来た?」
侵入後すぐ、犬夜叉に遭遇。犬夜叉は結羅をすいかする。
「あたしは結羅、逆髪の結羅。あんたを殺しに来たの」
そう答えながら結羅は艶やかに微笑む。
「俺を殺すだと……へっ。この俺にそんな舐めた口を利いて、生きてる奴は一人もいないんだよ!」
舐め腐った結羅の態度に、犬夜叉は激昂する。
「あら? そうなの? 半妖に殺されるなんて、マヌケな奴もいたものね?」
「けっ! そのマヌケな奴に、テメエも入るんだよ! 結羅!」
犬夜叉の叫び。同時に、結羅へと掴みかかる。
だが、結羅は余裕綽々だ。数本の糸を二人の間に張って、防壁とする。
「ふふふふ。その程度の攻撃……」
簡単に防げる。そう言葉をつづけようとして、結羅は我が目を疑った。犬夜叉はいともたやすく糸を引き千切って、そのまま攻撃してきたからだ。
「散骨鉄爪!」
犬夜叉の強力な一撃。
慌てて結羅は、攻撃を避けようとする。だが、そこは室内、狭い狭い日本家屋のなか。回避するスペースなどはなから存在しない。
ブシュ!
結羅の左腕が、ひざ元から切断される。
バシャアアアアアアア!
噴出する鮮血。部屋の中が、少女の血で染まった。
「あんた! 女にはもっと優しくするもんよ!」
結羅が、自分の扱いに抗議する。
「俺を殺しに来ておいて、手加減しろだぁ! うっせーよ! 頭に蛆でも湧いてんじゃねーか!! この痴女!!」
当然のように犬夜叉は、そう反論する。
「なっ!? 痴女ですって!」
激昂する結羅。
「痴女だろーがよ! オッパイ丸出しにして!」
叫び返す犬夜叉。
「え?」
『え?』
思わず、俺と結羅の声がハモル。慌てて結羅は自分のオッパイを確認。するとそこでは、服がずれてオッパイが出てしまっていた。
ちなみに、俺もこのときはじめて気づいた。どうして気づかなかったかというと、俺は結羅の谷間に挟まれていたからだ。灯台下暗し。全然気づかなかった。谷間の中からでは、結羅の服がどうなっているのかを確認できないのだった。
くっ!
俺のバカ! 痛恨のミスだ。
「この変態!」
涙目になりながらも結羅は、慌てて服を直す。
だが、そのせいで結羅は隙だらけになる。そんな結羅へと、犬夜叉が急接近。再度の一撃を放つ。
「どりゃああ!!」
裂ぱくの一撃。犬夜叉の右腕が、結羅の心臓を貫通。反対側へと突き抜ける。その衝撃で、俺は谷間から零れ落ち、コロコロと床を転がる。
「けっ! ざまー見やがれ!」
心臓をぶち抜かれ、茫然と目を見開く結羅を、犬夜叉が侮辱する。
だが、結羅はまだ生きている。
「図々しいわね。会ったばかりの女の懐に、腕を突っ込むなんて」
そう言って犬夜叉を睨むと、器用に糸を操作。腰の刀を抜いて、構える。
「死にな!」
振るわれる刀。犬夜叉の腹に直撃。
だが、全く利かない。犬夜叉は火鼠の皮で作った服を着ているからだ。この服は下手な鎧よりも頑丈。大抵の攻撃なら防げるのだ。
「けっ! 今度はこっちの番だ!」
犬夜叉の跳躍。空中に浮かぶ刀をもぎ取ると、結羅へと飛び掛かる。そして刀が振るわれる。
ザシュウウ!
強烈な一撃。中心線をぶった斬られて、結羅の身体は左右に両断。傷口から、脳味噌や内臓がはみ出ている。
「くっ!」
結羅の苦しげな悶え声。流石に、不死身の結羅といえども、身体を両断されればただでは済まないようだ。周囲に浮かぶ糸が、ポタポタと床に落ちて行く。怪我の程度が酷すぎて、糸を支えられなくなっているのだ。
今や、結羅が制御可能なのは数本の糸のみ。たったのそれだけではどうしようもない。
『オッパイちゃん!』
俺は思わず、結羅へと声を掛ける。
だが、結羅は俺の言葉を聞いていない。
「馬鹿な半妖! あたしは不死身なのよ!」
結羅はどうやら意固地になっているようだ。何が何でも一人で犬夜叉を倒そうとする。両腕を失い、両断された少女。
そんな結羅にも、犬夜叉は手加減しない。
「おんな!! お前だれと話してる!!」
裂ぱくの叫びとともに、更なる一撃。右半身の頭を爪で引き裂き、バラバラにする。
「くっ!」
残った左半身の口から、苦し気なうめき声が漏れる。数本の糸を操作。犬夜叉を斬りつけるも、全て無駄。犬夜叉の頑丈過ぎる体には、手も足も出ないで弾かれる。
「これで終わりだー!」
犬夜叉の一撃が、今度は左半身の頭部へと向かい、
そこで動きを止めた。
ん? なんだ? なぜ犬夜叉が棒立ちに? 何が起こったんだ?
意味が分からない。
俺は犬夜叉の様子を注意深く観察してみる。
そして気付く。
『あ! 精神操作だ!』
一本の糸が、犬夜叉の頭部に接続されている。原作でもあった、糸を使った精神操作だ。それを使ったんだ。
今や犬夜叉は、結羅の操り人形と化していた。
「馬鹿な半妖。あたしに勝てるはずないでしょ」
そう言って結羅は、刀に糸を巻き付ける。ヒュルヒュルと宙に浮く刀が犬夜叉に向かい、犬夜叉の首を跳ねる。
……はずが、途中で刀がとまる。
「やっぱ、やめ。こいつ頑丈だし。操り人形にした方が何かと便利そう」
結羅はそう呟いて、家の端の方へと視線を向ける。
「ふふふふ。さあ、犬夜叉、あんたの初仕事よ。この家の住民を皆殺しにして、生首をここに並べなさい」
残忍な笑みをうかべた結羅による、非道な命令。
「キャアアアア!!」
「ぐああ」
「ヒイイイイイイイイ!!」
住民の悲鳴が聞こえてくる。犬夜叉が命令を完遂するのに、数分しかかからなかった。
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