ヒナテンッ!~落ちこぼれ脱却で原作ブレイク~ (ココスケ)
しおりを挟む

幼少期編
日向ヒナタに変わる日


あぁ、つかれた…。

 

20歳になったばかりで仕事仕事で社畜になりつつある陽菜ではあるが、そこまで仕事に絶望を抱いている理由でもなく、それなりに充実した日々を過ごしていた。

 

だが、充実しすぎたのだろうか?

 

止まることを知らない血に、どこかへ消えた左腕。

足は体操選手も真っ青な曲がり具合である。

 

(あぁ、救急車は間に合わないかも…。)

 

遠くから救急車のサイレンが聞こえる。

野次馬のざわめきも遠くなってきた。

これは…もうそろそろかもしれない。

 

お母さん、ごめんね。お母さんより先に逝く不出来な娘でごめんなさい。

もう一度…お母さんのきんぴらごぼう食べたいな…。

レシピが同じなのにお母さんの作るやつの方が美味しかった。

…いつか負けましたって言わせたかったなぁ…。

 

走馬灯のように、これまでの人生の映像が流れていく。

 

 

交通事故で、陽菜の20年という短い人生は幕を閉じた。

 

 

--------------------------------------------------

 

「…幕、閉じた…よね?」

 

「あぁ、間違いなく閉じたわい。」

 

「…だれ?」

 

「ワシ、六道仙人。神(笑)じゃ。」

 

「…神(笑)ってなんだよ。神だけでいいでしょ。」

 

「どうせ神だとか名乗っても(笑)がついて帰ってくるんじゃもん。それならワシからそう名乗った方が(心の)ダメージが少ない。」

 

「神って意外とメンタル弱っちいのね。んで、六道仙人ってNARUTOに出てきたアレ?何の用?」

 

「おっと、本題を忘れよった。実はの、そのNARUTOの世界で遊んで来て欲しいんじゃ。」

 

「は?」

 

「や、やめてっ!そんな冷たい目で見ないで!」

 

「だって…ねぇ?ボケ老人は…ね?」

 

「ご、ごめんなさい。遊んで来て欲しいと言うのはもちろん揶揄じゃよ。

NARUTOのパラレルワールドに近い世界で、無視出来ない程の綻びが確認された。どこからか魂を引っ張ってきて、転生させることで世界に介入しやすくなる。

だから、転生してもらうだけでいい。チートも付けよう。頼む。木ノ葉を、世界を救うために協力してくれっ!」

 

「…分かった。まだ20歳までしか生きることが出来なかったし…その分向こうで長生きする。」

 

「ありがとう。早速だが、説明を始めよう。

転生する体は、日向ヒナタ。もちろん、落ちこぼれと言われていた彼女の体だけでなく、チートスキルを付けておこう。

人より多いチャクラ、経験値100倍、記憶力20倍。」

 

「チートてんこ盛りだね…。」

 

「こちらの都合で死亡率が高い世界へ転生してもらうのでな。すぐに死んでしまうと目覚めが悪すぎる。…そろそろ産まれる頃じゃの。頑張ってこい。」

 

「そっか…。うん、頑張ってくるよ。」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヒナタの体へ!

「…この子はヒナタ。日向ヒナタと名付けよう。」

 

「可愛いですわね…。」

 

「あぁ、良く頑張ってくれたな…。

ヒナタは次期当主候補だ。修行を見てやりたいものだ。」

 

「でも、子供は子供らしく、ですよ?」

 

「そうだな…当主になるまでは…。」

 

あぁ、やっぱり…転生したのか。

上から聞こえる話し声に、今更ながら自覚が出てきた。

もちろん、原作のヒナタのようにモジモジはしないし落ちこぼれで終わる予定もない。

やるならばとことんすべきだろう。

 

命の軽いこの世界では、身を守る術は多ければ多いほどいいのだから。

 

とりあえず早く大きくなって、回天や柔歩双獅拳や八卦六十四掌を使いたい。

 

ひとまずは…チャクラコントロールか。

あとは白眼に慣れて、点穴を見ることが出来るようにすべきかな。

 

(チートはチャクラ多めと経験値100倍だったっけ?)

 

チャクラは…あぁ、これか。

身体の中に暖かい物を感じた。

そもそも前世にはチャクラは存在せず、前世との違いを探せば簡単であった。

 

成長するまではチャクラコントロールの修行を行うしかない。

 

だが、大きくなればヒナタ誘拐事件やうちは事件などの大きな事件が多いため、忙しくなるだろう。

 

ついでに呪印制度も無くし、恨まれる要因を潰すか…。

 

----------------------------------------

 

「だぁ~っマッ~」

 

1歳の誕生日。

日向家は、それはそれは大盛り上がりだった。

分家も宗家も揃って宴会をしている。

 

母上も、父上も、私の事を可愛がってくれている。

原作ではヒナタを冷遇し、「要らない」とまで言ってのけたヒアシも、ただ単に不器用さが災いして勘違いやすれ違いが多かっただけでヒナタを愛していた。

 

そんな不器用で意地っ張りな父上にベッタリ張り付いて甘えると、子煩悩な父上に大変身だった。

そんな変わりように周りはプチパニックになった。

 

宴会騒ぎも落ち着いた頃、いつもの様に父上の膝の上で船を漕いでいると、上から話し声が聞こえてきた。

 

「兄上、ヒナタ様の1歳のお誕生日おめでとうございます。」

 

「あぁ、ありがとう。ヒザシ。」

 

…!!ヒザシ…だと…!

 

ネジの父で誘拐事件で父上の影武者として連れていかれて死んだヒザシか…。

 

「兄上は…昔よりも、こう…柔らかくなられましたね。」

 

「ヒナタが産まれて、父としての自覚が芽生えただけだ。」

 

「ヒナタ様とネジ、仲良く出来るといいですね。」

 

「そうだな。支えあって生きていって欲しいものだ。」

 

ショタネジか…可愛いんだろうな…。

 

目標が増えた。

ヒアシとネジの死亡フラグをへし折る。

それが私の身の安全にも繋がりそうだ。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

同志発見!?

なんだかんだでヒナタは3歳になり、影分身を出せるようになった私は、影分身を死の森でこっそり修行させるようになった。

 

経験値も入るが疲れも入ってくるため、お昼寝の時間が30分程伸びたが、怪しまれてはいないようだ。

 

「ヒナタ様、お召し物は桃色と黄色、どちらに致しましょう?」

 

「ん~桃色!」

 

「かしこまりました。お召し物に合うような帯を探させます。」

 

原作でも付き人として出てきていた、日向コウ。

ここら辺は変わらないらしい。

 

今日は3歳の誕生日。

…ショタネジとの出会いと誘拐事件、二つのイベントがある日だ。

桃色の着物を選んだあと、父上のいる部屋を白眼で探す。

 

…便利よね、白眼。

探し物、探し人、探敵など色々使える。

 

秘密の修行で白眼を(影分身が)使う内に、点穴も見えるようになり、見える範囲も広がっている。

 

「父上見つけた!」

 

「あ、お待ちください、ヒナタ様!」

 

叱られないよう、音を立てないで走らずに早歩きで移動する。

 

(ヒナタ様…どんどん早くなっていらっしゃる。追いつけなくなるのも時間の問題か…。)

 

付き人が焦りを感じている事などつゆ知らず、父のいる部屋の前に座り、声を掛ける。

 

「父上、ヒナタです。」

 

「うむ。入れ。」

 

「失礼します。」

 

「どうしたのだ?もうすぐ着替えの時間だろう?」

 

「緊張してしまって…父上といれば落ち着けるかと思いまして…ご迷惑でしたか?」

 

「いいや。何よりも優先するべき事はヒナタの事だ。迷惑など思うはずはない。」

 

「私、父上大好きです。」

 

「私も、ヒナタが大切だ。」

 

「お父様、お願いがあります。」

 

「なんだ?」

 

「今日は一緒のお部屋で眠っても宜しいですか?」

 

「構わんが…どうしたのだ?」

 

「今日、分家も宗家もみんな一緒にお食事をするでしょう?その後に1人で眠ると、寂しくなりそうで…。」

 

「そうか、なら一緒に寝よう。」

 

(今は私にベッタリでも…将来、この子にも恋人が出来、結婚とする日が来るだろう…ヒナタを守る事が出来るか手合わせして確認せねばな。)

 

----------------------------------------

 

「久しぶりだな、ヒザシ。」

 

「ヒアシ様、お久しぶりでございます。ヒナタ様も、お久しぶりです。」

 

「お久しぶりです。ヒザシ叔父様。」

 

「ネジ、挨拶なさい。」

 

「え、えぇ。ヒザシの息子のネジです。宜しくお願いします、ヒナタ様。」

 

「ヒナタです。宜しくお願いします。」

 

(なんか…ネジ、驚いた顔してない?

あれ?知ってるのと違う…見たいな。…!まさか…!)

 

「父上、叔父様、宴の時間までネジ兄さんと一緒にお散歩してきてもいいですか?」

 

「あぁ、構わん。」

 

「ネジ、行っておいで。」

 

「えぇ。…行こうか。」

 

 

「仲が…いいな。」

 

「そうですね…。それにしても、〝呪印〟を変えるって…。」

 

「その話は分家を集めてからにしよう。」

 

「…。分かりました。」

 

----------------------------------------

 

「ネジ兄さん、私、ネジ兄さんに聞きたいことがあります。」

 

「奇遇ですね。僕もです、ヒナタ様。」

 

もし…私の推測通りで、ネジが協力者になってくれるなら、力強い味方だ。

 

「ネジ兄さんって…どこの国の人?日本?」

 

「…フランスだ。ヒナタ様は日本?」

 

「うん。日本生まれ日本育ちの日本人。」

 

「なんて妬ま…ゴホンッ…羨ましい。」

 

「…中身出てたよ?」

 

「気の所為デスヨ。」

 

「…。」

 

「ごめんなさい。」

 

「まぁ、いいや。」

 

「僕からも質問があります。

今日施される呪印の変更は…ヒナタ様が進言した物ですか?」

 

「そうよ。縛り付ける物から身を守る物へ。

死後白眼を封じるのはそのままに、宗家が分家を縛る機能が無い、「古い」呪印が「たまたま見つかった」のよ。」

 

「たまたま見つかった…ね。」

 

「私が本に興味を持った際に、「たまたま」巻物が落ちたの。片付ける際に、中身が見えた私は父上に読んでもらったわ。」

 

「それが、新しい呪印…ですか。」

 

「そうよ。ねぇ、ネジ兄さん。協力しない?」

 

「協力?」

 

「ネジ兄さんも内緒で修行、してるんでしょ?

ヒナタの誘拐事件、うちは事件、我愛羅やナルトの迫害…原作で起こった悲劇を回避するには、記憶の抜けは許されない。」

 

「二人いれば抜けが無くなる…と言うことか。

こちらとしても協力は願ったり叶ったりだが。」

 

「とりあえず…他に転生者が居るかもしれないから原作と違う動きを見せた人物を見かけたら報告…かな?」

 

「そうだな。」

 

「ヒナタ様、ネジ君、そろそろ時間です。」

 

「はい。分かりました。」

 

 

 




ヒナタは宗家の当主をハナビに押し付けるつもりです。

???「日向の当主なんてめんどくさい…」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

宴会騒ぎと、誘拐未遂

ココスケは今までサブタイ忘れていた事に気付いた!

こうかはばつぐんだ!


「では、呪印の変更の旨を説明する。」

 

会場となっている大広間では宗家、分家共にかなりの人数がひしめき合っているが、当主のヒアシの声は威厳があり、会場内に響いていた。

 

「変更になる新しい呪印は、従来のように宗家が分家を縛る物ではなく、ただ単に死した後に白眼を守るものだ。

これから産まれてくる若い者達は勿論新しい物に切り替えるのは勿論、旧来の呪印からの変更も可能だ。

新しい呪印は、娘のヒナタが蔵書室にて偶然発見したものだ。

呪印の詳細を知りたい者は巻物の写しを渡す。

最後になったが、ヒナタの3歳の誕生日の宴を楽しんで行ってくれ。

…これにて、話を終わる。」

 

パチパチパチ…。

 

----------------------------------------

 

(めんどくせー…。)

 

呪印イベントも終わり、宴会がスタートした。

勿論3歳でお酒は飲めないので酔っ払いの話を聞くだけだ。

 

シラフで酔っ払いの相手をする。これ以上めんどくさいことはない。

主役が逃げる訳には行かず、ネジ兄さんと共に宴会が終わるまで適当にあしらい、終わった後には目が死んでいる2人の子供がそこにはいた。

 

(…ハッ!今夜は誘拐事件がある日だ。まだ死ぬ訳には…。)

 

「ネジ兄さん、起きて下さい。」

 

「…ハッ!ヒナタ様、大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫だよ。〝まだ〟何も起きてないよ?」

 

「ホッ…。」

 

「父上がね、泊まって行ったらどうかって言ってたよ。

今日私はお父様と寝るつもりなんだけど…。ネジ兄さんも父上と一緒に寝よう?」

 

「えぇ、そうですね。そうさせていただきます。」

 

----------------------------------------

 

父ヒアシと、母ユキノと共に寝るのは久しぶりかもしれない。

 

ネジ兄さんも居るし、警備的に最高なのではないかと思う。

 

宴会騒ぎが嘘の様に屋敷が静まりかえっていて、日向の皆が眠っている。

…誘拐事件が起こると分かっている子供2人は別だが。

 

そんな静かな屋敷に、少なくとも日向の者ではない足音。

皆さんご存知、雲隠れの忍び頭だ。

 

(チッ…。今日に限って日向ヒアシと一緒にいやがる…。少し分が悪いか。でもやるしか…。)

 

そ〜とヒナタに伸ばした腕を横から伸びたネジの手に掴まれ、そのまま床に勢いよく転がされた。

その音で両親は起きて、忍び頭を発見。

 

簡単に束縛に至った。

 

----------------------------------------

 

「…とこれが全てだ。」

 

「ヒアシ様、ご協力ありがとうございました。」

 

「いや、実際に娘が攫われてしまえば私は…我を忘れ、殺してしまって外交問題に発展しただろう。

イタチ殿、日向の屋敷まで調査ご苦労だったな。」

 

「私にもヒナタさんと同じ年の弟が同じ目にあうと、冷静で居られるかは分かりません。」

 

「確か、サスケ君…だったな?」

 

「はい。恐らく、アカデミーではヒナタさんと同学年かと。」

 

「仲良く…出来ればいいのだがな。」

 

「できますよ、きっと。」




イタチは8歳。

中忍…かな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

違和感の理由

ヒナタの中で、違和感は拭えない物になって来ていた。

 

原作で書かれていた程、宗家と分家での対立が見られない。

子供の前ではギスギスした物を見せないようにしている、と最初は思っていたが、3歳の誕生日での宴会で分かった。

宗家のヒアシは尊敬され、宗家を分家が命を懸けて守ると言うより、宗家が分家をまとめ上げて背中を預け合うと言った感じだ。

 

呪印の件も、アッサリ受け入れられた。

呪印の縛り付ける機能は、あくまでも形だけのような…。

 

(これは…初代からの当主の手記を調べた方がいいかも。)

 

これだけ日向を変えるのは、少なくとも10年単位…いや、もっとかかる。

日向の様な名家は、旧くなればなるほど既存のルールを変えるのは難しい。

初代当主から、初代火影の時代の当主までで、〝内政チート〟を行った人物。

 

 

「と、いうことで手伝って?」

 

「うわ、めんどくさい…。なんでまた…。」

 

「手記で何かを記しているのなら、英語の可能性が高いからよ。

こちらの世界では暗号としか読めないし、向こうの世界の共通語よ?

私も簡単になら読めるけど、元が日本人なんだから遅くなるの。だから、ね?」

 

「…分かりましたよ。」

 

----------------------------------------

 

暗号(英語)は簡単に見つかった。

 

初代火影の時代の日向家当主、日向ヒバナ

 

ヒバナの手記には、ネジとヒナタに向けての言葉が簡素に書かれていた。

 

--------------------

ネジ、ヒナタへ。

勝手な想像ではあるが、我が子孫である2人は恐らく転生者として産まれてくるだろう。

 

今ならば…こちらの世界へ送り込まれた意味が何となく分かった気がする。

とりあえず、出来るだけ2人が過ごしやすいよう整えておいた。

日向家の事も、うちはの事も、全部…。

願わくば、2人がこの手記に辿り着く事が出来ますように。

 

日向ヒバナ

--------------------

 

「なんだと…見越して…いたのか…?」

 

「…この調子で行くと、各里に1人は転生者が…?」

 

「俺らの時代だけではなく、過去も合わせると…可能性は高いな。」

 

「ネジ兄さん、明日…里を散策しよっか…。」

 

「…構わんが、まずはヒアシ様を説得すべきだな。」

 

----------------------------------------

 

「父上、明日、里の中でネジ兄さんと一緒に遊んできてもいいですか?」

 

「…大丈夫なのか?」

 

「僕も一緒に行くので大丈夫ですよ。危ない所に近づかないようにします。」

 

「では、頼んだ。

門限の5時までに帰ってくるように。」

 

----------------------------------------

 

日向家の屋敷から出て、まずすべき事は…。

 

「ナルトの迫害を少なくする事と、うちはは…大丈夫なの…か?」

 

「ヒバナが2代目火影によるうちはへの迫害を止めたからな。

それでも、もし虐殺事件が起きた場合のサスケの心のケアと、真実へ辿り着けるように仕向ける方がいいかもな。」

 

 

 

「この化け物め…!」

 

 

 

「聞こえたか?」

 

「あぁ、急ごう!」

 

 

----------------------------------------

 

うわぁ…これは酷い。

 

小さな子供に、大の大人が寄ってたかって暴行を加えている。日本ではお縄になるだろう。

金のツンツンの髪にはドロが付き、頬のヒゲのようなアザも確認できる。

空色の瞳は腫れた瞼に隠されつつあるが、虚ろで焦点が合っていない。

 

そんな痛々しい姿に、ヒナタは思わず声を掛けていた。

 

「何をしている!?」

 

「子供は黙ってろ!化け物が彷徨いていたから駆除をして…!!日向…!」

 

「寄ってたかって大の大人が小さな子供を暴行して楽しい?」

 

「だからこいつは化け物で…!」

 

「違う!この子は私達と同じ年頃の子供だ!

見てわからんのか!?目が死んでいるんじゃないのか?」

 

「な…」

 

「そもそも、ここは隠れ里だ。お前らでは太刀打ちできぬ化け物なんかいくらでもいる。

オレら日向一族然り、うちは一族然り…。

忍者は化け物揃いでなければやっていけない。大人なのにそんな簡単な事もわからんのか?

それとも、なんだ。忍者は迫害されるべきだとでも?

うちは一族、日向一族、猿飛一族、油女一族…。

忍者の名門を化け物だと暴行するのか?」

 

「しかしっ!こいつは…」

 

「黙れ!!」

 

「ヒッ…!」

 

軽く殺気を向けると、男達は散っていった。

 

「な、なんでだってば…」

 

「気を失ったか。」

 

「ネジ兄さん、日向家の屋敷に連れていこう。」

 

「そうですね。」




化け物ってだけで迫害してたら、忍者はやっていけない気がするの。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

柔拳の修行開始

「うぅ…。…?ここ、どこだってばよ…。」

 

バカ広い和室に、高そうな掛け軸。

自分の家では無いことだけはわかるけど…。

 

(布団がいつものよりフカフカだってばよ)

 

自分がボーッと部屋の中を見ていると、襖の外から声が掛かる。

 

「ナルト君、入るぞ。

…気分はどうだ?傷はもう無いようだが…。」

 

「もう問題ないってばよ!痛いところも無いし…。

ところで、ここはどこだってばよ?」

 

「…ここは日向家の屋敷だ。娘と甥が君を運んできてな。怪我の治療を行い、ここで寝かせていた。」

 

部屋に入ってきた2人のおっちゃんは、顔がそっくりだけど、後ろにいる方のおっちゃんは包帯で額を隠している。

目は意識を失う直前に見た同じ年頃の子達と同じ、白っぽい薄紫色。

 

「ありがとうだってばよ。その子達にも、お礼、言っといてくれってば。」

 

「あぁ、伝えておこう。

…もうそろそろ、昼食の時間だ。食べていくか?」

 

「いや、オレがいたら迷惑かかるしこれ以上ここに居る訳にはいかないってばよ。

出口に連れて行ってくれってば。」

 

「あぁ、案内させよう。

ヒザシ、()()()()。頼んだぞ。」

 

ほごしんせー?ってなんだってばよ?

頭ん中に?がいっぱいになったけど、聞く暇もなくヒザシ?のおっちゃんに案内される。

 

「はい。…ナルト君、行こうか。」

 

「じゃあ、またな。おっちゃん、本当に助かったってばよ。」

 

 

----------------------------------------

 

ナルト救出大作戦から10日。

 

ヒナタは、父から柔拳の修行を付けてもらい始めた。

ヒナタが今まで行ってきた修行は、原作知識からの我流修行だ。

柔拳は手付かずな為、スポンジが水を吸う様に技術を取り込んでいった。

 

「ハァ…ハァ…もう一度、お願いします…。」

 

「ヒナタ、これ以上は怪我をする。今日はここまでだ。」

 

「…はい。ありがとうございました。」

 

(驚いたな…ネジと負けず劣らずの天才だ。

スタミナや根性も、この歳にしてはかなりある。点穴もすぐに見えるようになるだろう。…気を抜くとすぐに抜かれるかもしれぬな。)

 

今日は組手のみだったけど…実力者である、ヒアシとの組手は参考になる。

早く柔拳の技を改良したい物だ。

 

今考えているのは、柔步双獅拳に水遁を組み合わせて経路系を破壊し、水を体内に入れて破裂させる技や、回天に雷遁を合わせて吹き飛ばすついでに立ち上がれない様に痺れさせる…などだ。

 

柔拳は、相手の体を内側から破壊する。

だが、忍術と組み合わせる事を今まで誰も行っていない。

 

前例が無かったのは、ただ単に難しいからだろう。

だけど…絶対に成功させたいな。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

当主回避宣言

「ハナビ…可愛いなぁ…。」

 

妹のハナビが産まれて早1週間。

 

修行以外の殆どの時間をハナビの下で過ごしている。

だが、そんなハナビ漬けの日々もそろそろ終わるだろう。

 

何故なら…1週間後、「ハナビ…可愛いなぁ…。」

 

妹のハナビが産まれて早1週間。

 

修行以外の殆どの時間をハナビの下で過ごしている。

だが、そんなハナビ漬けの日々もそろそろ終わるだろう。

 

何故なら…1週間後、台風少年(ナルト)が日向家で保護される事になったからだ。

保護されるならば次いでにナルトを魔改造(強化)しようとの意見でネジ兄さんとの会議は終了した。

 

----------------------------------------

 

「あ、あんときのっ…!あん時はありがとうだってばよ!

オレ、うずまきナルト、宜しくな!」

 

顔を合わせてコンマ3秒。

うずまきナルトの印象…思った以上に明るすぎてウザい。

太陽は空高く手の届かない場所にあるから恩恵を受けられるのだ。地球のすぐ横にあっても熱い害悪でしかない。

 

…性格も整えるか。うん、そうしよう。

そんな事を心に刻み、私も自己紹介をする。

 

「私は日向ヒナタ。こっちの仏頂面が日向ネジ。宜しくね。」

 

「…誰が仏頂面だ。」

 

「ごめん、間違えた。仏頂面じゃなくて鉄仮面だったわ。」

 

「この野郎…!喰らえ!八卦空拳!!」

 

「ふんっ!八卦空拳!!」

 

「チッ!」

 

「舌打ちした!この人舌打ちした、信じられないっ!ふぇえぇん…」

 

「…出来もしない泣き真似をするな。かなり悲惨だから。」

 

「俺を置いて行くなってばよ~…。」

 

「「ごめんなさい。」」

 

--------------------------------------------------

 

ナルトを保護してから早一ヶ月。

電光石火の勢いで日向でのナルト信者が増えている。

 

「これが…主人公補正か…。」

 

「なん…だと…?」

 

「茶番は兎も角、ネジ兄さんにお願いがあります。」

 

「断る!」

 

「ココにカボチャプリンがあります。」

 

「だ、だか、だからなんだっ!」

 

「はい、アーン♡」

 

「ヒィッ…!受けます、受けますからそれを視界の範囲外へ…。」

 

「…私達の視界の範囲外なんて木の葉の里内には無いよね?」

 

「…そうだった…それで、頼みとは?」

 

「多重影分身のコツを教えなさい。今すぐに。」

 

「はいはい…。」

 

 

----------

〈多重影分身の術!〉ボフンッ

 

「で、でけたー!」

 

本体以外に私が3人、ハイタッチをしている。

 

「で、一応禁術の多重影分身を何に使うつもりですか?」

 

「1人はナルトの修行に付けて、1人はハナビのお守り、1人は自主練。

本体が父上との修行を行っている間に強くなるべく出来ることを全てやります。」

 

「…本音は?」

 

「本体はハナビのそばでいいだろおぉぉおおお!!」

 

-----------------------------------

 

〈八卦掌回天!〉

 

回天が成功したのはいいのだが…思ったよりも目が回る。

私が日向の長老と父上、ヒザシ叔父様の前で回天を披露すると、満足そうな顔をして「次期当主に相応しい実力」とのお墨付きを貰った。

 

(あ、あれ?当主とか…いらない…。どうしよう…。)

 

今更落ちこぼれを演じるのは…無理だ。

回天を披露してしまっているし、修行を付けてもらえないのは嫌だ。

何よりめんどくさい。

 

とりあえず…父上に直談判かな?

 

 

「父上、相談がございます。」

 

「なんだ?」

 

「私を…アカデミーに入れて下さい。」

 

「…それが意味することは分かっているのか?」

 

「はい。

次期当主の座はハナビに譲ります。あの子ならきっと、やってくれます。」

 

「通常通り、アカデミーから下忍になれば死の危険もあるだろう。それでも…か?」

 

「はい。」

 

「…6歳での入学準備を進めよう。」

 

「ありがとうございます!」

 

よっしゃぁああぁあ!!!

 

当主回避できた…!

 

父上はため息をついてはいるが、クソ頑固な私を柔らかくする事が不可能に近い事が分かっているため、何も言わない。

これで原作通り?アカデミーに通えることになった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アカデミー~下忍編
いざ!アカデミーへ!


遂に迎えた、忍者学校(アカデミー)への入学初日の日。

忍者学校(アカデミー)のくノ一クラス。

 

普通ならば女の子が集まればワイワイガヤガヤするのだろう。

現に、初日にも関わらず教室内は騒がしい。

 

これが当たり前(普通)だと言わんばかりの空気感に耐えきれず、ヒナタはトイレに行く為に廊下へと出た。

 

 

「よう、ヒナタ!朝振りってばよ!」

 

「声でかいしなんかウザい。20点。」

 

「ひでぇってばよ!せめて50点は欲しいってば。」

 

「ハイハイガンバッテネー。」

 

 

5歳の時にナルトを保護し、引き取ってからと言うもの、私達は一緒に遊び一緒に出掛け一緒に忍者学校(アカデミー)に通う仲になった。

日向家の者達もナルトを受け入れて修行を付けたり、お菓子での餌付けをしたり可愛がっている。

素直に感情を態度に出すナルトを弟の様に見ている者も多いため、外で暴行されそうになったとしても、日向家の誰かが白眼で確認しているため駆けつけて助け出している。

 

 

ナルトにとっても、ご飯と寝る場所と安全を確保してくれて、可愛がってくれて修行まで付けてくれる日向家は、暖かい家族のような存在である。

 

原作の様に分身も使えない…訳でもなく、九尾チャクラのコントロールを教えて基礎から教え込んだ。

体術も、白眼が無くともつかえる技術を教えて、身を守る術をとことん仕込んだ。

恐らく、体術だけで言えば中忍クラスだろう。

 

そんな生活も忍者学校(アカデミー)卒業後…下忍になるまでなのだが。

 

そんな生活を続け、ネジとヒナタ、ナルトは仲良くなった。

兄弟だと言ってもいい。

 

…そんなナルト()の性格矯正はあまり上手くいってはいないのだが。

 

そんな手のかかる(ナルト)と雑談後、チャイムがなる前に教室に戻っていった。

 

----------------------------------------

 

「くノ一クラスの担任の夕日紅よ。

宜しくね。」

 

(紅先生ってくノ一クラスの担任なのか…。)

 

現在、原作知識は英語で書き留めて保存している。

全て原作通りに行く訳でも無いし、そもそもヒバナの時代から着々と原作破壊は始まっている。

勿論、私やネジ兄さんも原作通りには行かせない。…特に、ネジ死亡フラグはへし折るし、次いでにサスケの里抜けも阻止だ。

 

 

「次の人、前へ。」

 

って、次の人って私か。

自己紹介か…何言おう。

 

「日向ヒナタ、好きな物は修行です。宜しくお願いします。」

 

 

 

----------------------------------------

 

「ヒナタ様、忍者学校(アカデミー)は楽しいですか?」

 

「うん、とっても楽しいわ。

コウ、私…友達が出来たの。サクラちゃんっていう子。」

 

「ヒナタ様…良かったですね。

ナルト君やネジ以外の同世代の子達とは余り知り合いは居ませんでしたから。」

 

「うん。」

 

入学から1週間。

 

いじめられていたサクラを助け出してリボンイベントを起こしたり、男女共同の授業である体術の授業で調子に乗ってるサスケをボコボコのコテンパンにしたり、新技の修行をしたりなどかなり濃い1週間だった。

 

その後、コウには下がってもらい、疲れもあった事からスグに寝付くのであった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

友達(人間)と友達(尾獣)。

「サクラちゃん、大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ。

ヒナタちゃん、今日は修行に付き合ってくれてありがとう。」

 

「ううん。私達、友達だもの。

これ位当たり前だよ。」

 

アカデミーに入学して早くも半年。

サクラの体術や忍術の修行に付き合い、サクラは原作で使っていた桜花衝を物にし始めていた。

白眼があってチャクラを見る事が出来る私は、サクラのチャクラを使っていた強力パンチ(桜花衝)をサクラに教え込んでいた。

 

代わりにサクラから勉強を教えてもらえるので、双方共に成績が上がっている。

 

「サクラちゃん、また明日~!」

 

「ヒナタちゃん、またね!」

 

サクラの親友ポジションに入り、家族との関係も良好、うちはシスイも暗殺されていなければうちは事件も起こる気配がない。

アカデミーでの成績もトップクラスだ。

 

ただ…新技の開発は上手くいっていないのは確かだが。

 

ネジ兄さんと私の多重影分身達は変化させて世界にばらまいている。

 

原作では出てこなかった情報、時系列が不明な事──何故暁に捕らえられた三尾はその時点では人柱力では無かったのか、何故最後の人柱力、ヤグラはどうなったのかなど──を集めている。

 

「…!ネジ兄さんに伝えないとっ!」

 

 

三尾、磯撫が火の国~水の国間(火の国寄り)の海辺に居て、私の影分身と仲良くなり私と一緒にいたい─つまり、人柱力─と言っている。

 

そんな情報が影分身から入ってきた。

 

----------------------------------------

 

「それは…誠…か?」

 

「はい…。

影分身でもいいので海が見たいと思い、ネジ兄さんと一緒に影分身を海に向かわせると、尾が三つある大きな亀が居て…磯撫くんって言う子が私と一緒にいて守りたいって…。

勝手だとは分かっています…。

でも、私も友達の磯撫と一緒にいたい。」

 

「それは、人柱力になってもいい…と言うことかの?」

 

「はい。」

 

「…ヒアシ殿はどう思う?」

 

「信頼関係が築けているのであれば、尾獣ほど心強い味方はいないので構わないかと。

どちらにせよ、国境の海…しかも火の国寄りの所へ三尾をそのまま…という訳には行きませんから。」

 

「そう、じゃの。

ヒナタ、アカデミーは明日から1週間休むと連絡しておく。

現場への護衛と封印が得意な者が手配出来次第出発する為、日向家でも用意するように。」

 

「はっ。」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 

「三尾と友達…か。

ナルトも…そうなれるといいのう…。」

 

----------------------------------------

 

「ヒナタ、気をつけるのだぞ。」

 

「はい!父上、行ってまいります。」

 

話し合いの次の日。

 

(いや~私の幸運値高くない?バグ起きてんじゃないの?)

 

三尾との友情を結び、人柱力となる。

これを幸運と言わず何というのか。

 




ご、ご都合主義とか言わないで…ご都合主義が無ければ話を進める事が出来ぬ阿呆な私を許せ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

水の絶対防御

磯撫の戦闘シーン、又は磯撫の人柱力「ヤグラ」の戦闘シーンがゼロに等しいため、作者のオリジナルです。


「磯撫~ヤッホー!」

 

『ヒナタちゃん、こんにちは。

それから木の葉のみんなも!』

 

「…三尾…。」

 

「デカイ…な。」

 

トゲトゲの甲羅に赤い鯨のような模様の装甲、隻眼の赤い瞳。

後ろ足は確認出来ないものの、恐らく平たく硬い三つの尾がその役割を果たすのだろう。

 

戦闘スタイルはドン〇ァンのような「転がる」攻撃や、幻術効果のある霧、水遁の術などだ。

また、その装甲は尾獣一の硬さだろう。

 

ゴツい見た目とは裏腹に、内気ではあるものの心優しい性格だ。

だが、今まで磯撫を見た人間は殆ど怖がって逃げ出してしまって友達にはなれなかったとの事だった。

 

 

人柱力になれば、我愛羅の砂の絶対防御ならぬヒナタの水の絶対防御(磯撫並の硬さ)がオートで発動するし、私自身が攻撃に対して磯撫並に硬くなるなど、「防御」に関していえば我愛羅以上では無いだろうか。

 

それ以外にも、水を「生み出す」事も出来てしまう。

 

水の無いところでも大規模な水遁を使えるし、砂隠れで水を売ればノーコストでかなりぼろ儲け出来るのでは無いだろうか。

 

影分身から入ってきたそれらの情報は、全て大人に伝えてある。

 

(…あれ?水の絶対防御って…)

 

 

もしかして:組手不可能

 

 

磯撫の装甲並の防御を抜ける事は不可能に近い。

組手をしようにも水に阻まれるし、私自身も攻撃に対しては磯撫並の硬さとなる。

水の絶対鎧だ。

 

つまり、第一防衛壁を抜けるにはリーやガイ先生並の早さが必要で、抜けたとしても私自身が見た目通りの硬さでは無いのだ。

 

絶対防御を抜ける速さで私に攻撃すれば、殴った方が骨折では済まないレベルだ。

 

柔拳も然り。

日向家にリー以上の速さを出せる人は居ないだろうし、いたとしても、柔拳は通用しない。

つまり…

 

(白眼の持ち腐れェ…)

 

感知も水を使えば白眼より広範囲に行えるし、戦闘で柔拳を使わなければ勝てないレベルの相手であれば、逃げるが勝ちだろう。

近接戦闘をすることになると言うことは、水が通用しないのと同義だからだ。

 

…1人での修行を行わなければ無駄な怪我人、もしくは死人が増える。

タダでさえ、木の葉崩しが起きたら人手不足になる事は分かっているのだ。

組手で人が死ぬなど無駄な事はしていられないのだ。

 

----------------------------------------

 

「それでネジ兄さんが怒っちゃってさー」

 

『そうなんだ~』

 

セミロングの紫紺の髪をハーフアップにしているヒナタと、ヒナタの封印の中から口寄せされている磯撫(膝乗りサイズ)。

 

封印から2日ほどは様子を見る為、護衛や封印術の忍と共に野営をする事になっている。

 

里へ帰ってから人柱力となったヒナタが暴走すると、大変なことになるのだ。

抑えることが出来ないとは言わないが、九尾の二の舞になるのは里としてもゴメンだし、宿主のヒナタは日向宗家の娘だ。

死んでしまえば後々問題になる為、下手に手を出せない。

 

そこは2人とも分かっている。

だから、大人しく待っている。

 

まぁ、何もしない訳でもないが。

 

水の絶対防御の精度や水を生み出す能力などのテストを行う。

 

そして、1番大切なことは「尾獣化しても本当に自我を保てるか」だろう。

 

そもそも人柱力とは、里の最大戦力─核兵器に近い─だ。

三尾はヒナタと仲がいいとは言え、人柱力としての相性の問題もある。

自我を保てるかは「兵器」としても「仲間」としても無視出来ない事だ。

 

現在、ヒナタは1部尾獣化─3本の尻尾─を成功させている。

 

「では…行きます…磯撫!」

 

『うん!』

 

合図と同時に、尾獣化が始まる。

 

チャクラの衣を纏い、1本、2本と尻尾が増えると同時に磯撫の亀に似た体を形作っていく。

3本目、完全尾獣化。

護衛の人が身構えているのが分かる。

 

「大丈夫みたいですね。」

 

私がそう言うと、みんなホッとしたように警戒を解いた。

 

人間では到底たどり着かない程の高い視線からは、木の葉の里が小さいながらも見ることが出来る。

 

尾獣化を解いた私は、テストの中で仲良くなった護衛の人の方へと足を向ける。

 

「ヒナタ様、テストはこれで終了ですね。」

 

「はい。」

 

「では、帰還の準備をお願いします。」

 

 




※作者の妄想です。
我愛羅のパクリじゃねーかなどの苦情は受け付けます。
この作品うんこすぎwwとかは受け付けません。泣きます(作者が)。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

事情聴取とドーナツ

人柱力となった私と磯撫は、木の葉に戻り火影様による事情聴取を受けていた。

何故磯撫が霧隠れではなく木の葉…火の国にいたのか、霧隠れは尾獣を逃して木の葉が手に入れる事で難癖を付けて来ないかなど、火影直々に事情を聞いている。

 

「先の戦での野原リンを人柱力にし、木の葉で暴走させる事で痛手を負わせる、「トロイの木馬」作戦が実行したが、宿主である野原リンが自殺して、作戦も失敗し、磯撫も1度は死んだ。

インターバルの後、復活した際にはあの岸辺にいた…ということじゃな。」

 

「うん。リンちゃんが死んだ後、復活した時はどうすればいいか分からなくて…迷ってた時にヒナタちゃんと友達になれたの。」

 

「ヒナタさん、間違いないかな?」

 

「はい。」

 

「そうか…事情は分かった。

ヒナタさんが三尾…磯撫の人柱力だという事も水の絶対防御がオートで発動し、水を自由自在に生み出して操る限りは遅かれ早かれバレるだろう…。対策を練らねばな…。」

 

「大丈夫だよ、火影さま。

僕は水蒸気での感知も出来るから。防御面に関してはピカイチだし、ヒナタちゃんに対して悪さはさせないよ。

その為にヒナタちゃんの中に入るって決めたんだ。」

 

「…心強い味方じゃな。まぁ、人柱力に何か出来る人物であれば、普通の忍では刃が立たんじゃろ。護衛も必要ないか…。」

 

 

--------------------------------------------------

 

今日は人柱力となり、初の忍者学校(アカデミー)登校だ。

 

「ヒナタ~ネジ~!待てって、置いてくなってばよ!」

 

「置いていかれたく無ければ、もっと早く起きたらどうだ?」

 

「だって、2人とも起こしてくれなかったし…。」

 

「お前…忍になれば、俺らに起こしてもらえなくなるんだぞ?」

 

「そうよ。任務には遅刻厳禁。

まだ遅刻しても叱られるだけで済むアカデミーの間に自分で起きられるようにしないと…。」

 

「ヒナタはイルカ先生から殴られた事ねぇから知らないだろうけど、先生のゲンコツってめっちゃ痛いんだってばよ…」

 

「そりゃ怒られるような事はしてないからね。

イルカ先生に殴られるのが嫌なら、私が直々に点穴を付くけど?」

 

「嫌だってばよ!まだイルカ先生のゲンコツの方がマシ!」

 

平和な日常も人柱力になってもなにも変わらなかった。

危惧していた人柱力への隠避は、最小限に抑えられている。

 

なぜなら、水を自由に生み出すヒナタの水は、かなり美味しいらしいと評判になっているからだ。

タダで貰えるものは貰っておく。

それは、全世界の主婦の共通点だ。

 

--------------------------------------------------

 

「そういえば、水の絶対防御って…ぶっちゃけ防御力が強いイメージがないというか…火遁には強そうなのですが…。」

 

自主練を1人で行っていると、ネジ兄さんが話し掛けてきた。

ネジ兄さんは、水の絶対防御?ナニソレヨワソウと言いたいらしい。

 

「私も最初はそう思ったけど…硬さなら我愛羅より強いかも。

硬さは磯撫の甲羅並だし…。」

 

その言葉を証明するように、私はクナイを取り出して腕に突きつけた。

クナイが水の盾に当たり、ガキンッという音と共に少しの火花が飛び散ってクナイは先が欠けてしまった。

 

明らかに水が出す音ではない。

水の皮を被った何か…敢えて言うなら水でできた甲羅だ。

これと同じくらい、私自身の硬さも攻撃に対して強いのだろう。

…確かめる術が無いから(仮)ではあるのだが。

 

「ネジ兄さん、納得しました?」

 

「あぁ…ミズコワイ。コウゲキ、ダメ、ぜったい。

柔拳が通る気がしない。」

 

「…だ、大丈夫だ…よ?

ほら、緑スーツの人の部下になれば、強くなれるし…。」

 

「緑スーツなら2重防御を突破…は無理か。

人間ではヒナタ様に勝てんな。」

 

「防御全振りだからね。

自分でも人外一歩手前なのは分かってるけど…。」

 

「一歩手前か?

むしろ一歩向こうにいるんじゃないか?人間寄りの人外なんじゃ…これ、暁は勝てんの?」

 

「…スーパーサイコホモ軍団の事か。

三尾だからな…割と前半に来るわね。対策はしてるけど…暁が諦めるビジョンが白眼でも見えない。」

 

「俺も見えないな。…ま、ガンバレ。」

 

「他人事ェ…。

まぁ、我愛羅が殺られたのも里を守って隙が出来たからだし、砂の鎧より硬いオートの鎧があるから大丈夫だよ。

暁メンバー全員で遠足に来たら分からないけどね。」

 

「フラグ!それフラグだから、ヤメロ!」

 

『ヒナタちゃん、お腹空いた~。

…ミツタードーナツのポン・チ・リングが食べたいな。』

 

「…尾獣ってドーナツ食うのか?

そもそもお腹空くのか?てか、マイペース過ぎだろ。」

 

『食べなくても問題ないけど気分で食べるよ。今はお腹空いた気分なの。』

 

「という事で、買ってくる。」

 

「お、俺も!」

 

--------------------------------------------------

 

ミツタードーナツがある商店街。

この世界での食事事情が現代日本並にカオスなのは突っ込んではいけないNARUTO七不思議の内の一つだ。

 

「ポン・チ・リングのチョコを10個、黒糖を15個下さい。」

 

「はい、かしこまりました。」

 

「ポン・チ・リングゲットだぜ!」

 

「はい、ご利用ありがとうございました。」

 

渾身のボケがスルーされた時の何ともいえない、「触れては行けぬ…」みたいな空気。

 

どうすればいいんでしょう?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

霧隠れがアップを始めました

調べていく内に4代目水影のやぐらにどハマりした件。


アカデミーから下校してから、真っ先に向かうのは日向家所有の森だ。

 

人柱力になってからと言うもの、組手をしようにも出来ない私は、修行は人的被害が少なくて済む森で行うことにしていた。

 

 

(4代目水影やぐらの水鏡の術が使えれば幅が広がるのにな…。)

 

水を無制限に生み出す事が出来る上に、チャクラ量も余るほどある。

 

水鏡の術は、 接近してくる敵に向かって水でできた鏡を展開し、さらに同じ姿をした分身を発生させ、衝突させる術である。

対象が術や武器などを使用していたとしても、そのまま再現することができる。

 

こんな便利な術を、彼以外に使う人物を見たことが無いのだ。

 

前世の知識では、やぐらの出番…戦闘シーンがあまり書かれていない。

水鏡の術も、彼自身の能力なのか、磯撫の人柱力だったから使えたのかは分からないのだ。

 

 

血霧の里と呼ばれた時代の、やぐらによる恐怖政治。

それは、写輪眼による洗脳で起こったものだった。(原作知識より)

 

現実の霧隠れは、恐怖政治の〝き〟の文字も見当たらず、善政と言っていい。

秘密主義でもなく、彼が水影となって以来発展していると噂だ。

 

…つまり、彼は洗脳はされていない。

ただの爽やかかつかわいい系男子の水影である。

 

(ねぇ、磯撫は水影様の事知ってる?)

 

『彼が2~3歳の時に見たことはあるけど、詳しくは知らないな…。

僕が霧隠れに居た時も余り接点はなかったしね。

あれも、霧忍が操られてやった事だし…。』

 

(そっか…。)

 

個人的にはやぐらの年齢が気になっている。

 

身長143cm、体重38kg。

ナルトが彼と会った際には「ガキでガキで弱そう」と言われ、ムキになっていた。

だが、詳細は不明のまま。

 

 

…今さっきの磯撫とのやり取りで分かった事は、リンの中に入れられる前には既に2~3歳だと言うこと。

九尾事件が起こったのはその数年…3、4年程だろう。

つまり…私より5~7歳程年上。

私が7歳だから…12~14歳?

 

水影はその時最強だった者がなるらしいから、若くとも問題ないのだろう。

 

 

 

水の絶対防御、水の攻撃。

木の葉には、大規模な水遁を使う忍はあまりいない。

水遁使いは、水辺にて最も真価を発揮する。

 

再不斬も白も鬼鮫も、ついでにウタカタも霧隠れの抜け忍だ。

 

師匠不足ではあるけれど、砂隠れで尾獣なしの水遁使いよりは大分マシなのかもしれないが。

 

----------------------------------------

 

「…はい?父上、もう1度…お願いします。」

 

「磯撫の事が霧隠れに知られ、水影やぐらとの見合いをする事になった。

心の準備をするように。

出発は1週間後。ヒナタの水の移動に頼る事になっている。

頼んだぞ。」

 

 

なんということでしょう…the・ご都合主義である。

 

これは…三尾はうちのだ!私ごと返せ!ってこと…かな?




あまりのやぐら情報の少なさに泣きたくなる件。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

試合開始っ!

見合いの話が来てから、父上が見るからに気を落としている。

 

もしも、本当に霧隠れに行くことになれば、なかなか会えないのだ。

里の中ならまだしも…。

 

相手が水影でこちらからは断りにくく、中の磯撫だけ…なんて事は人柱力になった後の今、不可能。

 

里の外に白眼が流出しようとも、水影からの見合いの打診(?)を受けた方が賢明。

 

当然、呪印を刻むことになるが。

 

そもそも…やぐらも私もまだ結婚という年ではない。

…つまり、婚約者と言うことで霧隠れの忍としてご厄介になるのだろう。

 

本当に決まればの話だが。

 

----------------------------------------

 

「ネジ兄さん…木の葉を頼みました…」

 

「どうした…あぁ、見合いの件か。

まぁ、そちらでも転生者がいるかもしれんしな。影分身ネットワークで知らせてくれればいい。

…忍界大戦の際に穢土転生体で出てきたら怒るからな。」

 

「が、頑張ります。」

 

「ヒナタ~!!霧隠れに見合いしに行くって本当だってば!?」

 

「…そうだね。」

 

「…木の葉の忍にはなれねぇって事だよな。」

 

「…決まればね。」

 

「なんで…何でだってばよ!」

 

そう叫んでナルトは走りさって行った。

…もし本当に婚約が決まれば、霧隠れで忍になり、霧隠れで暮らす。

 

そうなれば…皆とも…滅多に会えない。

 

----------------------------------------

 

「で、では忘れ物は無いな?」

 

「はい。」

 

水の空飛ぶ自動車モドキに、いつもより豪華な着物を着た私達が乗っている。

霧隠れには、今日中…3、4時間で付く。

 

全力スピードでの移動になるが。

 

本当に重要な物…向こうで暮らす事になれば必要な物は、あらかじめ荷物にある。

 

向こうから断る事はほとんど無いだろうとの事だかららしい。

 

----------------------------------------

 

「ここが…霧隠れ…。」

 

「えぇ、木の葉よりも霧の日が多いのが特徴ですね。まぁ、白眼があれば視界の悪さなどどうってことは無いでしょうが…。」

 

そう答えてくれたのは、青。

原作でも水影の側近として登場している。

今回、霧隠れの案内をしている。

 

隣を歩く父は、表面上は堂々としている。

 

だが、その目には…悔しさや寂しさを滲ませていた。

 

(あぁ、お前に娘はやれん!みたいなのは出来ないな…。)

 

そんな事をすれば国際問題だ。

ヒザシ叔父様の死亡フラグ再びである。

 

そんな事を考えていると、青は一つの部屋の前で立ち止まり、中に声を掛けた。

 

「やぐら様、失礼致します。」

 

 

(原作のままでかわいい系男子だ…。)

 

成長期が来たのか疑わしいような容姿だ。

 

童顔も143cmの背丈も…。

原作では若くして亡くなったと言うのもあるだろうが。

身長はこのままでは第一部の間に追いついてしまうだろう。

 

「霧隠れの里へようこそ。

どうぞ掛けてくれ。…水影のやぐらという者だ。」

 

「…木の葉隠れ日向家当主、日向ヒアシだ。」

 

「ヒアシの娘、ヒナタでございます。」

 

緊張しすぎて心臓が壊れそうだ。

少し伏し目がちに、やぐらと父上の会話を拾うことに集中する。

 

直接見続けると、イケメンオーラで心臓が止まりそうだ。

…最期の映像がイケメンの顔なのは良いかもとは思うが、享年7歳で穢土転生とかシャレにならない。

 

どんどん、婚約に向けて話が進んでいる。

…婚約となるならば、慣れておかなければ生活出来ないだろう。

そう思って少し伏せていた目線をやぐらの方へやると…

 

目 が 合 っ た 。

 

じっと見つめられ、目を離せない。

離したら負けな気がする。

 

「ヒアシ殿、ヒナタさんと共に庭を歩いても構わないだろうか?」

 

「…えぇ。構いません。」

 

「では、行こう。」

 

「は、はい。」

 

あ、あら…?若いおふたりで…的なやつ?

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

水影の告白、変態の登場

下ネタ注意


手を取られて連れてこられた庭は、日向宗家の庭に引けを取らないほど美しいものだった。

 

美しい庭に見とれている私に、やぐらが話しかける。

 

「ヒナタ、僕は…初めて会った時からヒナタが好きだ。」

 

…?その言い方ではまるで…あった事があるような感じだ。

 

「初めて…会った時…?」

 

「あぁ、会ったと言っても、言葉を交わしたわけではない。

九尾の人柱力であるナルトをヒナタが助けた日、水影に就任した直後で火影殿との会談があって、僕は木の葉にいた。

…一目惚れだった。

小さいのに、周りに流されずに意見を言える姿が美しいと思った。

でも、ヒナタは日向宗家の長子だから…耐えるしかなかった。…初恋は実らないって。

僕は、ヒナタを手に入れる為にヒナタが三尾の人柱力となった事を利用した。

ヒナタ…そんな僕の事を軽蔑してもいい。

だが、いつか絶対に振り向かせて見せる。」

 

あぁ…だめだ。

タダでさえ、心臓が破裂しそうだったのに…イケメンにそんな事を言われるとは…。

 

今の私は、元来のヒナタと同じように赤面しているのだろう。

体が熱いのがわかる。

 

私は…前世から、人からの好意や褒められることには慣れていない。

それがlikeではなくloveであるなら尚更。

 

自分の価値を見い出せなかったから。

でも、本心で言っているかどうかぐらいはわかる。

やぐらの紫色の目は、本気だと物語っていた。

 

「やぐら様…私……。」

 

「結論は急がなくてもいい。時間はたっぷりあるのだから。」

 

「はい…。」

 

--------------------------------------------------

 

「ヒナタ、ここが新しい住居だ。

一通り家具は揃えてあるが、必要な物があれば従者に言ってくれ。」

 

「はい、これから…よろしくお願いします。」

 

「宜しくな、ヒナタ。

時々顔を出すから、ヒナタも寂しくなれば会いに来てくれ。」

 

「は、はい。」

 

新しい住居は、日向家程ではないが一般的に見れば豪邸である。

里のなかでも中心街に近く、立地がいいし鍛錬所もある。

 

これでも結婚までの〝仮〟住居だ。

逆に言えば結婚する年ー結婚出来るのは16からーまでは住み続ける。

従者も警備も女性が多い。

アカデミー編入手続きも完了しているとのこと。

 

細やかな気遣いが出来る男(外堀を埋める男)、やぐら様だ。

 

 

--------------------------------------------------

 

「日向ヒナタです。よろしくお願いします。」

 

自己紹介をすると、教室はざわつき始めた。

教室内の空気を一言で表すと…

 

〝日向の人間が何故霧隠れに…〟

 

日向家は木の葉の名門だ。

白眼の機密を守る為、白眼を持つ者は里内で暮らす。

 

そんな日向家の娘が木の葉ではなく、霧隠れのアカデミーに通うことは噂になる事は間違いない。

 

私に関する情報ー婚約の事や人柱力の事ーは極秘扱いだ。

人柱力だと言うことは…すぐにバレる。

それまで好奇の目に耐えるしか無いだろう。

 

--------------------------------------------------

 

「グレンさん!お待たせしました!」

 

「ヒナタ様、何もされていませんか?アカデミーには虫がいっぱいいるので…私、心配で胸が張り裂けそうになって…門に来るのが0.40秒も遅れていたのでアカデミーに突撃しようか迷っていた所でした。」

 

「だ、大丈夫だよ…?」

 

「でも…天使様であるヒナタ様にあんなことやこんなことをしようとする輩がいないとも限りません。

あぁ…私にも白眼が使えたらいいのに。

そうすればあんなことやこんなことをするようなゴミ虫に天罰を与え…」

 

「グレンさんストップ、分かったから!」

 

ヒートアップしたグレンさんに、周りの目が注がれていたのに耐えられず、途中で止める。

 

グレンさん(変態さん)は、私に付けられた従者兼護衛である。

変態な事に目を瞑れば、元暗部大隊長であった実力者であり、護衛として優秀だ。

 

私との顔合わせの際「天使が降りてきた…」と泣き始め、跪く始末だった。

それからお風呂まで着いてきて必要以上に体に触られている。

 

その時の目が怖かったのはヒミツだ。

 

また、「やぐら様と床を共にする練習」と称して何処からともなく男性の〝アレ〟のリアル模型を渡された時はグレンさんの休止の点穴を着いてしまった。

 

その後、私に会いに来たやぐら様に報告がいっていたらしく、少し顔を赤くしながら謝られた。

…リアル模型はそのまま置いてあるのだが。

 

 

一悶着があったものの、変態を上手くあしらうスキルが上がったのは言うまでもない。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アカデミー卒業

ヒナタが霧隠れに来て5年が経とうとしていた。

 

12歳でアカデミー卒業を迎え、真新しい霧隠れの額宛を付ける。

貰った時は木の葉の額宛では無いことに違和感があったが、着けたら実感が湧いてきた。

 

そういえば、原作での8班はどうなったのだろうか…ヒナタが霧隠れにいる以上、感知系で揃えるのは難しいだろうが。

 

「次、第2班日向ヒナタ、ウタカタ、白!

担当上忍は桃地再不斬だ。付いていくように。」

 

「お前ら、こい!」

 

「「「はい!」」」

 

そう、再不斬も白もウタカタも抜けてない上にウタカタと白は同じ歳なのだ。

2人とも余り話した事は無かったが…。

 

…あれ、そういえば波の国編はどうなるんだ?

7班の成長は大丈夫…だよね?

 

----------------------------------------

 

「まず演習の前に自己紹介だ。俺の名は桃地再不斬だ。

お前ら、右から順に自己紹介をして行け。」

 

再不斬が言うと、1番右にいた白から自己紹介をしていく。

 

「僕の名前は、白です。得意忍術は氷遁です。」

 

「俺はウタカタ。泡を使った水遁が得意だ。」

 

「私の名前は日向ヒナタ。柔拳と水遁が得意。」

 

「よし、これから行う事を説明する。俺から1人ずつ巻物を殺す気で奪って見せろ。

その巻物の暗号を時間内に読み解いた者が下忍になることができる。以上だ。

んじゃあ、自己紹介順に始めるぞ。最初は白。」

 

「はい。」

 

再不斬は首切り包丁を、白は千本を構える。

 

最初に動いたのは白。

千本をノーモーションで5本同時に投げるが、5本共首切り包丁で弾かれてしまう。

だが、その間にかなりのスピードで印を結び終えた。

 

「[氷遁・魔鏡氷晶!]」

 

あ、原作で見たやつ…!

 

感動している隙に氷鏡が再不斬を取り囲んだ。

思わず白眼を発動し、白の攻撃に見入ってしまう。

 

白は鏡と鏡を高速で移動し、再不斬に氷の千本を投げていく。

だが、再不斬も上忍だ。

急所に当たりそうな千本は首切り包丁で弾き、体に千本が刺さらぬ様に体の向きを変えているが、かすり傷は増えている。

 

「ふんっ!ずっと鏡に閉じこもっていようと巻物は取れねぇぞ!」

 

「そうでしょうか?」

 

「なっ…!」

 

それまで後ろにまで目があるのではと思うほど、攻撃をものともしなかった再不斬。

だが、後ろの鏡から手だけを(・・・)伸ばし、隙をついて懐の巻物だけを取ってしまった。

 

「はぁ…。白、終わりだ。」

 

「はい。」

 

「次、ウタカタ。…2人に言っておくが、尾獣化は無しだ。自分の力で来い。」

 

「あぁ…。」

 

返事をしたウタカタは、管から自分が乗れるサイズの泡を出した。

上から降ってきた泡で草が溶けていくのを確認した再不斬は、首切り包丁で受けるのを諦めてひたすら回避していく。

 

それが少し続くと突然ウタカタの乗った泡が猛スピードで再不斬に向かっていった。

それも再不斬は避けようとし…バランスを崩してしまい、その一瞬で巻物は取られてしまった。

 

「腐敗の泡と油分入りの泡を混ぜていたか。」

 

「…秘密だ。」

 

「はぁ…。次はヒナタ。」

 

「はーい。」

 

白眼を発動し、柔拳の構えを取る。

 

「八卦空掌!」

 

狙うのは首切り包丁を持つ手。

八卦空掌で首切り包丁を落とす事は無かったが、首切り包丁に八卦空掌が首切り包丁に当たり、動きが一瞬止まった。

その隙に水を勢いよく首切り包丁に当てると、完全に落としてしまう。

 

「柔拳法・八卦六十四掌!

八卦二掌、四掌、八掌、十六掌、三十二掌、六十四掌!」

 

点穴を付かれ動けない再不斬の懐から巻物を頂戴し、2人の元へ向かう。

 

「ま、待て!動けねぇ!治してから行け!」

 

「…点穴は軽くしか付いていないので5分程で治りますよ。…多分。」

 

「はっ?多分?いや、まて!」

 

後ろから何か言っている再不斬を放置し、私達は巻物を開いた。

 




白=綺麗系
ウタカタ=クール系
再不斬=ワイルド系
やぐら=プリチー系


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

親睦を深める=大惨事

「何も…書かれていませんね。」

 

「どういうことだ…?」

 

巻物には何も書かれておらず、真っ白だ。

 

「<白眼>!

…幻術が掛けられてる。」

 

「ならば…」

 

「「「解!」」」

 

〝親睦を深めよ〟

 

「は?」

 

「仲良くしろって事かな?」

 

「そうですね、仲がいいのはいい事ですし。」

 

仲良く出来るのは…食べ物だろう。

私はアニメのヒナタと同じくかなり普段から食べている。

と言うより、日向家は全体的に大食いな人が多かった。

 

「再不斬せんせー!お菓子奢って?」

 

「再不斬さん、僕はあんみつが食べたいです!」

 

「俺は…大福。」

 

こういう時の為の連携プレーだ。

 

「お前ら…今日1番の笑顔で集ってんじゃねぇっ!」

(コイツら…無駄に顔面偏差値が高けぇからやりづらいな。)

 

「だめ…?」

 

「あんみつ…食べたかった…。」

 

「…。」

 

「分かった、奢ってやるから連携して泣きそうな顔するのは辞めろ。特にヒナタ。水影にどやされる…。」

 

精神攻撃(?)にあっさり屈した再不斬。

だが、彼は地獄を見るハメになる。

 

----------------------------------------

 

「なぁ、ヒナタ。まだ食うのか?」

 

「まだお団子125本ですよ?」

 

「いや…帰ってから、その…合格祝に豪華な食事を食べさせて貰えるだろ?」

 

「えぇ。それの前座です。」

 

「「「うわぁ…。」」」

 

「え?何でドン引きするんですか?

日向ではこれが普通…」

 

「んなわけあるか!これで終わりだ!」

 

「はーい…。」

 

「ねぇ、ヒナタさん…ご飯食べれるの?」

 

「俺も思った。」

 

「…?いつもより少ない位だよ?流石にお団子ばかりじゃ無いけどね。」

 

「「…。」」

 

「お前、太r…痛ってぇ!」

 

再不斬がすべて言い終える前に、ヒナタの拳が腹筋に突き刺さる。

コンマ単位の動きに、2人は視認出来なかったが。

 

「せんせー女の子にソレは禁句だと思いまーす!

それに私は全部胸に行くから大丈夫なんですー。」

 

「胸より身長に回した方がいいと思うぞ、チビ。」

 

「チビ!?」

 

「まぁまぁ…ヒナタさんは体術タイプですから…消費カロリーが僕らとは違うんですよ。」

 

「…そういう問題か?」

 

「ヒナタさんの体型が答えだと思いますよ?」

 

「それもそうか。」

 

「お前ら…誰が金払うと思ってんだ…?」

 

--------------------------------------------------

 

おやつも食べ終わり、げっそりした再不斬は演習場へ移動してから話し始めた。

 

「明日から任務を行う。

っても新人下忍であるお前らはDランク任務が殆どだがな。明日、8時にここの演習場だ。では、解散!」

 

 




日本円に換算して150450円也。

※第一部ヒナタの身長148cm
やぐらの身長は143cm

oh......


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

水影様のお祝い

尾獣チャクラのチカラってスゲー!


 

「やぐらさん?何でここに…」

 

「婚約者の下忍祝に来てはだめ、か?」

 

帰宅した私を待っていたのは、婚約者であるやぐらさんだった。

 

「そんな事無いですよ。…そういえばグレンさん(変態さん)は…?」

 

「俺が居るからと帰って貰ったよ。ヒナタと2人きりでいれるから。」

 

その言葉にぽかんとなった私にやぐらさんは苦笑し、言葉を続けた。

 

「ヒナタ、手を洗って着替えておいで。…ご飯作って待ってる。」

 

「はい。」

 

女子力高いなぁ…ご飯作って待ってるって…。

 

そう思いながら手を洗ってから自室で部屋着の和服に着替える。

2部ヒナタ並に伸びた髪をクシで解き、乱れが無いか鏡で確認してダイニングの方へ向かう。

 

この5年で変わった事も多い。

原作の現時点より大きくなっている胸(推定Eカップ)に、原作より長い髪。

身長も、磯撫に相談すれば成長期の間に尾獣チャクラで止めるとこれ以上伸びないとの事。

 

相談したのは身長が原作通りに148cmに届いた時だ。

何でやぐらさんを追い抜く前に相談しなかったと悔やまれる。

 

尾獣チャクラの便利さに感謝しながら、キッチンにいるやぐらさんに声を掛けた。

 

「やぐらさん…お手伝いし…んっ。」

 

お手伝いを申し出る前にキスをされ、声に出そうと思っていた言葉は不発に終わった。

 

「今日はヒナタの下忍祝いだよ。

いい子にして待っているように。」

 

「は、はい…」

 

何か…恋人っぽいな…。

 

時々泊まりに来るため、歯ブラシも2本だしやぐらさん用の着替えもある。

 

それほど、出会った頃よりも仲は深まっていた。

 

--------------------------------------------------

 

「人柱力会談?」

 

ご飯を食べ終わり、やぐらさんが話し始めたのは「人柱力会談」と言う聞き慣れない事だった。

 

(あぁ…そうか。色々な時代、様々な国で転生者が居たから…少しづつズレが生じてるんだ。)

 

「下忍以上の人柱力が参加する、人柱力同士の仲を深める為のお茶会みたいな物だ。

人柱力同士模擬戦を行うこともある。それを五影達も観戦しながら仲を深める。

2、3年に1度…湯隠れで行われている。

今から1ヵ月後に行われるからウタカタと共に湯隠れに一緒に来てくれ。」

 

「はい。」

 

「そして、これが会談の際着る衣装だ。」

 

そう言って渡されたのは、水影衣装…によく似た、本来〝水〟と書かれている場所に〝三〟と書かれた笠に、〝四代目水影〟と書かれているはずの場所に〝三尾・磯撫人柱力 日向ヒナタ〟と書かれているマントだ。

それから〝三〟と書かれた額宛もある。

 

色は水影衣装と同じ青色。

 

「これ…着るんですか?」

 

「みんなお揃いだからね。」

 

とてもいい笑顔で言っているので、反論しづらい。

…それまで計算に入れているのだろうか?

 

もしそうならば、プリチー系男子やぐらではなく腹黒プリチー系男子やぐらだ。

 

それでも、私に頷く以外の選択肢がないのは「惚れた弱み」と言うやつかもしれない。




あれ…いつから恋愛小説を書き始めたんだ…?
まさか…幻術か…!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

任務は総ナメするもの。

下忍になって3週間。

 

私達再不斬班は、お互いに打ち解けて修行も自分の得意分野を教え合って、任務でもチームワークを思う存分発揮している。

 

私以外の班員は、原作では全員抜け忍だった。

その元凶であるやぐらが操られるという事件が起きなかった為、現在抜け忍になる可能性は限りなく少ないが…。

 

気をつけてコミニケーションを取ることが必須である。

 

「再不斬先生…これで任務受けるの5つ目ですよ?まだやるんですか…?」

 

「…何処かの人柱力がよく食うからな。

財布の中身がピンチなんだよ。」

 

「それは私達もこんなに任務を受ける理由にはなりませーん。」

 

「だれのせいだ!だ・れ・の!」

 

「わ・た・し?」

 

「ダァー!分かってんなら自重しろっての!」

 

「だって先生上忍でしょ?」

 

「…毎回財布の中身が15万ほど飛んでいく俺の身にもなってくれ。」

 

「はーい…頑張ります。」

 

--------------------------------------------------

 

「Cランク任務…?」

 

そう呟いたのは、私だけでは無い。

ウタカタと白も頭の上にハテナマークが浮かんでいる。

 

普通、下忍になって1ヶ月も経っていないペーペーにCランク任務は任されない。

 

「普通なら有り得ない事なんだが…お前らは普通の下忍では無いからな。

全員実力的に非常識の塊だ。」

 

「ぼ、僕も一緒に入れないで下さい!人柱力である2人なら兎も角…」

 

「その人柱力に血継限界の氷遁があるとはいえ、苦もなく付いてってんのに何言ってやがる。」

 

「それで…どんな任務なんだ?人柱力会談があるから長期任務では無いのだろう?」

 

「大名の姫さんがストーカー被害を受けている。今日1日護衛し、とことん調査せよとの事だ。

お前らは白眼、水、泡、氷…色々と調査方法があるからな。

30分後、北門前に集合。散っ!」

 

------------------------------------------------------------

 

梅雨久 美雨(ツユヒサ ミウ)でございます。

本日はよろしくお願いいたします。」

 

挨拶をしたのは、黒髪美人の20代の女性だ。

人を引きつける何かがあり、男性が〝守りたい〟と思える様な女の人。

 

私達の自己紹介が終わり、白眼を発動させる。

 

磯撫の中に住んでいる磯撫分隊を100体程外に放ち、異常があれば私達が向かう事ができる様にする。

 

「…?」

 

何かめちゃくちゃ視線を感じる。

 

ガン見している美雨さんをちらりと見やると、話しかけられた。

 

「ヒナタさんは…日向宗家の方?」

 

「え、えぇ。そうですが…」

 

「日向分家の方は白眼の秘密を守る為に、額に呪印を刻まれると聞いた事があります。

血継限界…それも、三大瞳術の一つである白眼を持つ一族と言うのも大変なのね…。」

 

「はぁ…。」

 

なんか同情されたらしい。

 

 

 

--------------------------------------------------

 

「皆様、本当にありがとうございました。

犯人確保までして頂きまして…おかげで安心して眠れそうです。」

 

その言葉に、外行き用の猫を10匹ほど被った再不斬が答える。

 

「お役に立てて良かった。では、私達はこれで。」

 

犯人はあっさり捕まった。

…磯撫隊によって。

 

まさかの戦闘ゼロである。

 

初のCランク任務は、呆気ない程簡単に終わった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人柱力会談編
人柱力会談、開始…!


「これは…中々動きづらいものだな。」

 

そう口にしたのは、いつもの着流しの上からの〝六〟の衣装を着用したウタカタだ。

 

人柱力会談が行われる湯隠れには、私の水で向かうためそこまで移動時間はかからない。

 

「そうだろうっ!

ほら、青!ウタカタも動きづらいと申しているぞ!」

 

「だからと言って水影であるやぐら様が普段から水影衣装を着ないのは威厳が…」

 

「やぐらさん、私…やぐらさんが水影衣装着てる所…好きですよ?」

 

なんか可愛いから。

その言葉は心の中に留めておく。

 

「そ、そうか?ならば毎日でも着よう、うん。可愛い婚約者の意見ならば聞かない訳には行かぬな、うん。」

 

〝好き〟と言う言葉に動揺しすぎてどこかのデイダラの様になってしまっているやぐらさんを見た青は、ため息をついた。

 

「ハァ…いいですか、他の影達の前ではそんな事ではいけませんよ?タダでさえ最年少で水影となったやぐら様は威厳が足りないのです。

婚約者にデレデレしすぎてドン引きされないように。」

 

「デ、デレデレはしていない!」

 

「いや…してるな。水影様がヒナタといる時は、こう…ハチミツと砂糖とメープルシロップを一気に食べている気分だ。

ナチュラルにヒナタを口説くものだから余計にな。」

 

「当然だろう?ヒナタは可愛い上に優しい婚約者なのだから。」

 

((こういう事を公衆の場で平気で言うのはなぁ…))

 

「や、やぐらさん…恥ずかしい…」

 

「ほら!照れている姿も可愛いだろう!?」

 

「アァ、ソウダナ。」

 

「…ヒナタはやらんぞ?」

 

死んだ魚の目で同意したウタカタにピンポイントで殺気を向けるという器用な事をやってのけるやぐらさん。

 

「…そろそろ湯隠れに着きます。くれぐれも気をつけて下さい、やぐら様。」

 

「分かってるよ…。」

 

私が操縦する水船は、目的地に向けての短い旅を終えようとしていた。

 

------------------------------------------------------------

 

「えーでは、第…何回かは分からんが、とりあえず人柱力会談を開始する。」

 

「あ、このチョコ美味しいっす!」

 

「お団子無くなっちゃった…」

 

気の引き締まらない司会進行をし始めた五尾の人柱力、ハン。

マイペースにお菓子を食べる七尾の人柱力フウと、お団子が無くなりしょげている三尾の人柱力、ヒナタ。

 

「…まだ団子が運ばれてから5分しか経っていないぞ?

明らか20本はあったのを5分で食ったのか?」

 

「いや、まて!そんなに小さい体に団子が20本も入るような余裕があるのか?

…普段からこんなに食べてないよな?」

 

「…チビじゃない。でも…もうちょっと食べたい。」

 

恐る恐ると言った感じで聞いたのは二尾の人柱力、二位ユギトと四尾の人柱力、老紫だ。

 

「コイツは普段から団子を100本単位で食ってるぞ。…それで飯も多めに食ってる。」

 

「「「「…。」」」」

 

そして、班員であるウタカタの報告により後方にいる五影達も含め、ポカーンという効果音が付きそうなほど絶句している。

 

会談とは名ばかりの、のほほんとしたお茶会。

 

そして、この場にいないのは九尾の人柱力、うずまきナルトのみだが…。

だが、廊下の方からバタバタッと足音がした後、バタンッと開いたドアによってナルトの来訪がイヤでも分かってしまう。

 

「うずまきナルト、遅れて参上だってばよ!」

 

「ナルト、うるさい。」

 

「ヒナタ、久しぶりだってばよっ!」

 

「…なんかウザイ。」

 

「ひでぇ…幼なじみだろ…?可愛くかっこいいナルト様だってばよ!」

 

「…それはやぐらさんのこ…っ!

とにかく、ナルトにその言葉は不釣り合いよ。」

 

「初っ端からノロケは辞めろってば!」

 

「…とりあえず座ったらどうなんだ?」

 

何回行おうと、メンバーが入れ替わろうと、変わらないカオスな雰囲気。

それが人柱力クオリティなのだと後ろから聞いていた五影たちは似たような顔を浮かべていた。

 

そして、ヒナタの滅多に聞けぬノロケに顔がだらけきっている水影がいたとかいなかったとか。

 

------------------------------------------------------------

 

会談開始30分。

机の上にあれだけ並べられていた食べ物は、粗方食べ終わっていた。

それが某三尾人柱力の仕業だと1回で分かる人はどれほどいるだろうか。

 

「にしても…よく食うだで…胃袋に時空間忍術でも掛けてどこかへ飛ばしてるんじゃなかろうか…」

 

「磯撫にでも食べさせているのでは…」

 

「いや、いつも磯撫は分体で別のもん食べているぞ?」

 

「ハァ…2日は甘いもん要らねぇってば…」

 

「…要らないなら貰うよ?」

 

「チョウジみたいなこと言ってんじゃねぇってば!」

 

「チョウジ?」

 

聞き慣れない名前に、何故かスレていない我愛羅が聞き返した。

余りに性格の原作乖離が激しかったため、まさかと思い風影を見やると〝何も言うでない〟と言わんばかりに目を逸らしたため大体把握してしまった。

 

「あ、あぁ、秋道一族のデb…ポッチャリ系だ。

そういえば、ヒナタの妹のハナビも割とよく食うってばよ。

何で同じように食ってんのに太んねぇんだ…。遺伝か?」

 

「…日向の七不思議ね。」

 

「ふぅ…ごちそうさま。」

 

(((やっと終わったのか…)))

 

 

雑談をしていると、後ろから何か視線を感じて視線の先を辿ると、雷影が不穏な視線を私に向けていた。

 

雲隠れは、3歳の時に誘拐が未遂に終わっている。

それで諦めるとは思えないのも事実であったが、ハナビはネジ兄さんが守っている。

だが、私は日向宗家とは程遠い霧隠れにいる。

 

 

…私の方が難易度高い気がするのは気のせいだろうか。

 

磯撫の分体が警護にあたり、空気の中の水分から色々と感知可能だ。

更に白眼を持ち、水影の婚約者。

 

それに、人柱力会談では他国の影と人柱力の目もあるからさらに厳しい。

 

例え持ち帰る事が出来ようと、管理出来るかというと別問題だろう。

 

それでもどうやって謎の視線から逃れようかと考えていると、思わぬ所から援護射撃が来た。

 

「雷影殿。さっきからヒナタ殿を見つめておりますが…どうかされたのか?」

 

赤い傘を被った…火影その人だった。




テッテレー!4代目風影 が 憑依 転生者 だと 判明 したぞ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヒナタの怒り

※雷影の扱いが酷いです。本来の雷影様とは違います。


「雷影殿。さっきからヒナタ殿を見つめておりますが…どうかされたのか?」

 

火影である、猿飛ヒルゼンは雷影を睨みつけながら言った。

…いや、火影だけでは無い。

 

他国の影達も同じく厳しい目を向けており、特に水影であるやぐらは、視線と殺気だけで人を殺せるレベルに達している。

 

「いや、日向の姫さんにどう交渉を持ちかけようか悩んでいてね…丁度いい。…うちの所(雲隠れの里)に来ないか?

色々と優遇してやれるぞ?霧隠れでは手に入らない物も、見た目が麗しい男も、何人でも紹介できる。」

 

「お断りします。」

 

「しかし、」

 

「お断りします。」

 

「だから」

 

「お断りします。」

 

「話を…」

 

「お断りします。」

 

「しょうがない…日向宗家には5歳下の妹、ハナビがいたな。アイツに切り替え…」

 

ドッカァン!!!

 

自分の中で何かが切れる音がしたと思ったら、いつの間にか机を殴りつけていた。

机に深く大きなヒビが入ったが、気にしていられるほどの余裕は無かった。

 

「しつこいんだよ…ロリコンクソジジイ。

去勢されてぇのか。自分が強く言えば女子供は従うとでも思ってんのか?気持ち悪い。

小さい子供しか狙わないのはそう言う事か。気持ち悪い。

だからか、誘拐未遂の時も私は3歳だったもんな。

ロリコンに取っては絶好の餌食だよね、気持ち悪い。

日向家の小さな女の子(......)を狙えば、自分の好みの範囲(年齢)が過ぎれば白眼の秘密も手に入る。ロリコンにしてはよく考えたな。

…日向は簡単には屈しないぞ。

可愛い妹に手出してみろ…殺すのも生温い程の目に合わせてやる。

去勢したもん貴様に食わせてやる。」

 

いえば言うほど頭は冷静になっていき、周りを見る余裕が出てきた。

いつの間にか怒りで白眼を発動させていた。

 

五影…いや、雷影以外の4人、特に水影は雷影に厳しい目を向けているのは変わらない。

 

雲隠れのユギトは微かに軽蔑の色を目に浮かべていた。…主にロリコンのレッテルのせいだろう。

ビーは…驚いてるな。何に対してとは言わないけれど。

雷影の護衛、ダルイは思案顔だ。

…こちらのほうが雷影に向いている気がするのは気のせいだろうか。

 

雷影本人は、かなり動揺しているのが見て取れる。…ロリコンだと言った事が当たっていたのか?

 

そして、思案顔であったダルイがこちらに向けて地に頭を擦り付けた。

俗に言うスライディング土下座だ。

 

「雷影様が大変失礼な事を言ってしまい、本当に申し訳ございませんでした!」

 

「貴方には聞いてません。そこのロリコンの問題です。」

 

だが、ダルイは食い下がる。

 

「いえ、うちの里の長の失態です。…俺のことは焼くなり煮るなり好きにして構いません。ですが、雷影様は、アニキだけは…」

 

「私をそこのロリコンと一緒にしないで下さい。気持ち悪い。」

 

「……申し訳…ございません…。」

 

殺気を強めた私に、何か言えば墓穴を掘ると思ったのだろう。

それしか言えなくなっている。

 

(あぁ、雷影のオッサンヒナタの1番でかい地雷を思いっきり踏んじまったってばよ…。)

 

「…妹君をダシにした事は謝ろう。だが…君ほどの人材にウチの里へ来て欲しい事は確かだ。」

 

「ダシにしたこと()

まだ諦めてねぇのかロリコンクソジジイ。」

 

「…そのことも含め、謝罪する。

だが、君を霧隠れよりも好待遇で迎えることが出来る。貴重な品、実力者の護衛、何より見た目麗しい男性…君も年頃…興味あるだろう?」

 

「無いに決まってるでしょう。」

 

「…な、」

 

「水影様の顔を見なさい。トップの顔からして月とスッポンでしょ。

こっちはやぐらさんの顔を見るだけで幸せになれるのに…雲隠れに行っても利益が無いどころかやぐらさんがいない分マイナスにしかならない。

私は…100人の見た目麗しい男性より、やぐらさん一人のほうがいい。」

 

「…。」

 

「ヒナタ…。」

 

婚約者にかっこいい、幸せだと言外に言われてやぐらさんが心底嬉しそうな顔をしている。

 

逆に、〝テメェみたいなキモメン要らねぇ〟とノロケのついでに言われた雷影は顔を引き攣らせている。

 

「分かった…諦めよう。霧隠れがイヤになれば、いつでも来い。歓迎しよう。」

 

このロリコン…あれほど殺気とノロケをぶつけても屈しないだと…クレイジーロリコンジジイか。

 

「ヒナタ…疲れたろ?

ウタカタも一緒に、部屋に戻ろう。」

 

「はい。」

 

「…ハァ。」

 




雷影様 は ヒナタ の 逆鱗 に 触れた !

テッテレー ! 雷影様 は クレイジーロリコンジジイ に 進化した !

本当に申し訳ごさいませんっしたー!(スライディング土下座)

4回気持ち悪いとなじられ、9回もロリコンだとレッテルを貼られ、雷影様の(社会的な)ライフはゼロよ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

なんか…浮いて来ちゃって…

ヒナタがお風呂に入ると言えばこれでしょっ!


2日目の今日は湯隠れでの会談らしく、混浴会談となっている。(バスタオル着用)

 

脱衣場は男女で別かれているものの、入るのは同じところ。

女性の人柱力が3人しかいないため、こうするしか無かったのだが…

 

「うぅ…」

 

「ヒナタちゃん…何唸ってるのよ。」

 

脱衣場で話しかけて来たのは、素晴らしいメロンをお持ちのユギト姉様だ。

 

「その…お風呂にはやぐらさんがいると思うと…恥ずかしくて…。」

 

「…嫌味?ねえ、この歳で恋人さえいない私に対する嫌味なの?爆発すればいいのに…」

 

「二人共〜先に行ってるっすよ〜!」

 

脱衣場で立ち止まっている私達を尻目に

、フウちゃんは羽根を出して低空飛行のまま会談会場の方へ向かっていってしまった。

…あの羽根は何処から生えているのか、今日中に確かめたい衝動に駆られてしまう。

 

「速いですね…」

 

「落ち着きが無いわね…」

 

「…行きましょうか。」

 

「…そうね。」

 

--------------------------------------------------

 

扉を開けると、そこには私達2人以外の人柱力、五影と護衛達が浸かっていた。

 

やぐらさん、細く見えるけど…意外と筋肉付いてるな…。

まぁ、あの大きい棍棒?を振り回す力があるから当然か。

 

「皆、待たせたわね。

ヒナタ…いつまで隠れてるの?」

 

「いや、でも…」

 

「…背中に大きなマシュマロが当たってるのよっ!それは恋人にするべき事よっ!」

 

「ふにゃっ!?」

 

今にも尾獣化しそうな剣幕のユギトさんの圧に負け、ユギトさんの隣に立つ。

 

「…早く入ったらどうだ?寒いだろ?」

 

老紫さんの言葉に甘え、私達は温泉に入ったのだが…。

 

「ヒナタちゃん?肩まで浸からないの?」

 

お風呂に入れば視覚的にアレな胸を原作と同じ様に抑えながら入っていたのだが…これはフリ?

原作と同じ回答をせよっていう試験なの?

 

「なんか…浮いて来ちゃって…」

 

「グフォッウッ!」

 

「や、やぐらさんっ!?」

 

私がフリに返すと、やぐらさんが突然鼻血を出しながらむせてしまった。

タオルで抑えてはいるが、顔が赤い。

 

どうせなら女湯での試練にして欲しかったと思いつつ、やぐらさんの近くへ移動する。

 

「やぐらさん…大丈夫?」

 

「待って、ヒナタちゃん!トドメを刺すな!」

 

「ヒナタ…可愛い…可愛すぎて…俺の息子が…やばい…」

 

「…手遅れか。青、脱衣場へ連れて行ってやれ。」

 

「ダメだ!俺がヒナタの裸を見られないだろ!?それなのに…他の男に見せられるか!」

 

「あーハイハイ、脱衣場はコチラです。」

 

「ダメだぁ〜!ヒナタ〜!」

 

色々と壊れて頭のネジがぶっ飛んだやぐらさんは、対応が雑になっている青に強制連行されていく。

 

一時騒然となったものの、引き締まらない会談は水影抜きで続けられた。

 




罪悪感はあるが、反省も後悔もしていない。
(鼻血を垂らしながら)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無駄なノロケは毒となる

「それにしても…俺たちと同じ歳頃の奴が水影か〜こんなに小せぇのに…」

 

お風呂から上がり、昨日の部屋と同じ所へ全員が着席すれば、ナルトがそんな事を言い始める。

 

「ナルト、一応言っとくけど…年上だよ?」

 

「えっ!?オレよりチビなのに!?」

 

「…チビで悪かったな。俺は17歳だぞ。お前より5歳()年上だ。

まぁ、俺はお前より大人だからな。そんな事では怒らないから安心しろ。…バーカ。

 

「最後の小声の一言で台無しだってばよ!…鼻血ブー野郎の癖に。火影の爺ちゃんとか水影とか〝影〟になる奴ってムッツリスケベ多すぎだってばよ…。」

 

「お、俺は鼻血ブー野郎でもムッツリでも無いって!お前みたいなエロガキと一緒にすんなっ!」

 

「…水影殿、目が泳いで…。」

 

「ヒナタ〜…水影ってムッツリだけど、大丈夫か?変な事されてねぇか?

ヒナタに何かあればネジとかヒアシのおっちゃんとかハナビとかから俺が(・・)どやされるってばよ…。

全員から点穴突かれるのはイヤだってばよ。」

 

「私は幸せだよ?

やぐらさんは可愛いし、優しいし、かっこいいし、可愛いし、強いし…。

とにかく変な事なんてされてないし大丈夫だよ。」

 

「ヒナタ、褒めてくれるのは嬉しいけど…可愛いが最初に出てきた上に2回も言われると男として不安になるんだが。

それに、可愛いのはヒナタだ。俺じゃない。」

 

…そんなに顔を赤くしながら言うから可愛いんだよ…。

これを自覚無しにやってるからさすがやぐらさんだ。

 

「…他でやってくんね?」

 

「…ブラックコーヒーが飲みたい。」

 

「…この菓子、砂糖が多くないか?」

 

「…聞いたオレが間違いだったってばよ。」

 

「水影さまとヒナタちゃんってやっぱり仲いいっすね!…あれ?皆沈んじゃったッスけど…どうしたんっすか?」

 

「…フウ、お前はそのままでな。」

 

「?」

 

沈む独身者達、純粋で何も分かっていないフウ。

時として、知らない事は幸せな事である。

 

--------------------------------------------------

 

楽しい時間も、必ず終わりがやって来る。人柱力会談も終幕し、各自自分達の故郷へと戻っていく。

 

人柱力会談の本来の目的は、国や里がどうなろうと人柱力達は助け合わなければならないという、初代五影と人柱力達の意思を継ぐ為のモノ。

 

人柱力同士、助け合うためには多少会談が緩くなろうとも、心を繋げる事が大事というのが当時の人柱力達の教え…らしい。

 

…会談の緩さが〝多少〟で済んでいるかは別として。

 

しかし、その緩さで人柱力達が仲良くなれたのは事実だ。

 

私は目標に人柱力を1人でも多く救う事を追加し、水船で水の国・霧隠れ(第2の故郷)へと帰っていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

中忍試験編
中忍試験は突然に


※雷影に続き、白と再不斬さんまでキャラ崩壊の被害にあっています。


「お前ら、中忍試験に出るぞ。

出立は明日、8時に出発だ。各自準備するように、解散!」

 

「…は?」

 

「…ん?」

 

「…な…」

 

「だから、木の葉で行われる合同中忍試験に出る。

お前らが下忍のままだと上忍に推薦出来んからな。」

 

「いや、待って、上忍推薦!?暑さで頭溶けたの?」

 

「なにピクニックに行く様にサラッと言ってくれてんだ、クソ上司。」

 

「2人とも落ち着いて…再不斬先生にもゴミクズ以下の脳みそを精一杯働かせた考えがあるかもしれないし…」

 

「…お前が一番ひでぇな、白。

優しそうな顔して…白から黒に名前変えたらどうだ?」

 

「…面白いとでも思ってんのか虫けら野郎。

いますぐ氷像にしてやろうか。」

 

「すまんかった、まじですまんかった。

ただ、書類は出した。これは決定事項だ。」

 

「「「………。」」」

 

この日、夜の第二演習場で戦死した上忍のうめき声が聞こえるという新しき怪談が生まれた。

 

--------------------------------------------------

 

「本当に便利だな、この水。」

 

「結局これで行くのか…私は乗り物か?それとも便利屋か?」

 

木の葉から霧隠れに来た時の様に、水で移動する事になった一行。

 

…そういえば、それももう何年も前の事か…。

 

ネジ兄さんとハナビは元気だろうか。

結局、うちは事件が起きた気配も無く…やぐらさんが写輪眼により操られる事も起きなかった。

…仮に操られる事があれば私が解くからあまり心配はしていないのだが。

 

「そういえば、向こうでの宿はどうするんですか?」

 

私はふと気になり、先生に聞いてみた。

だが…この反応は…もしや…。

 

「…ん?」

 

「いや、その日の内に収まりませんよね?確実に数日間はかかりますよね?」

 

「え…宿…取ってねぇ…」

 

「「「…。」」」

 

「よく今まで上忍として生きてこれましたね。」

 

「…一緒に中忍試験でるか?」

 

「まぁ、最悪日向家に全員泊まればいいと思うけど。」

 

寧ろ、泊まりたい。

どうせ本戦は1ヶ月後なのだ。…ハナビといちゃいちゃしたいというのは当然の欲求である。

 

「良いのか…?」

 

「忘れかけているかも知れませんが、一応名門なんですよ…?」

 

「そういや宗家の姫さんだったな。

そんな設定忘れかけてたわ…」

 

「…お前が水影といちゃいちゃしすぎて忘れかけてた。砂糖製造機かと…」

 

そんな事をほざく輩(再不斬とウタカタ)には…こうだ。

 

「白、2人で(・・・)日向に泊まろうね!

色々案内する。」

 

「楽しみです。木の葉は色々と豊かだと聞いていますから。」

 

若干2名、スライディング土下座野郎の出来上がりである。

 

------------------------------------------------------------

 

「うわっ…でかい…」

 

「名門の権力ってスゲー!」

 

「先生、ツッコまれすぎて壊れた…もう…手遅れか。」

 

四人が見上げる先には、[日向]の文字。

日向邸前に着いた私は、チャイムを鳴らす。

 

「ヒィナ〜ァタ様ぁあ〜っ!ぬおっ!?」

 

「コ、コウ…?すごい音したけど、大丈夫?」

 

弾丸の如く飛び出して来たのは、日向に居た頃の世話役、コウであった。

当然、水に弾かれ…鼻血を垂らしながら立ち上がる。

 

「ヒナタ様の為ならば…例え火の中水の中海の底…どこへでも行けます…!この程度、障害にもなりませぬ…!」

 

「あ、大丈夫そうね。私達、中忍試験を受けに来たんだけど…先生が宿を取って無かった見たいで…突然で悪いけれど、案内できる?」

 

「当然でございます!さぁ、コチラへどうぞっ!」

 

コウのテンションに引き気味の3人を連れて、久しぶりに日向の敷地を跨ぐ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

日向の姉妹

「姉様〜お久しぶりです!」

 

昔使っていた部屋へ通されてスグにぴょんっと胸に飛び込んで来たのは、ハナビだった。

 

「久しぶりね、ハナビちゃん。

大きくなったわね。」

 

成長に喜びを感じつつも、その過程を見れなかった事に寂しさを感じる。

 

「ハナビちゃん、お父様はどこにいらっしゃるの?ご挨拶をしないと…。」

 

「お父様なら縁側で寛いでいます。」

 

「俺らも一緒に挨拶に行くか。

世話になるからな。」

 

「なら、行きましょうか…。ハナビちゃん、また後でね?」

 

「はい、お姉様!」

 

--------------------------------------------------

 

綺麗に整えられた庭がよく見える縁側に座っているのは、日向家当主、日向ヒアシだ。

 

「父上、中忍試験を受けるため、一時戻って参りました。

突然の事で申し訳ございません…。」

 

「構わん。例えどこへ行こうとも、ヒナタは私の娘だ。折角実家に一時帰郷したのだから、ゆっくりしていきなさい。」

 

「はい。」

 

私達の会話が終わり、外行きモードとなった再不斬が話しかける。

 

「ヒアシ様、ヒナタさん達の担当上忍をしております、桃地再不斬と申します。

前触れの無い、突然の滞在になって申し訳ございませんでした。」

 

「いや、大丈夫だ。

…ヒナタは上手くやっておるか?」

 

「えぇ。ヒナタさんも優秀な生徒です。」

 

「父上、ハナビとお話をする約束をしているので、失礼致します。」

 

--------------------------------------------------

 

「そっか…良かった…姉様の事大事にしてくれてたんだ…ま、冷遇してたら一族全員でやぐら様の点穴突きに行くから安心してね。」

 

「う、うん…」

 

一族全員で点穴を突きに来る事が安心出来る事がは置いといて…話になったのは、霧隠れの事や婚約者であるやぐらさんの事であった。

 

「あ、そうだ!姉様、今から修行付けて貰えませんか!?」

 

「私は別に良いけど…お父様にも付けて貰っているでしょう?」

 

「でも、回天も六十四掌も上手く行かなくて…ネジ兄様や姉様が私と同じ年頃の時にはもう出来てたのに…。」

 

「分かったわ、試験まで時間もあるし…。」

 

------------------------------------------------------------

 

「八卦掌・回天!」

 

回天が発動したのはいいが、全体的にチャクラ量にムラがあり、ハナビ自身は後ろに投げ飛ばされてしまった。

 

…勿論、水で受け止めたが。

 

「姉様、ありがとう。」

 

「…やっぱり…ハナビちゃんは焦っているのね。焦りで上手く出来る物も出来なくなることは良くあるわ。

ハナビちゃんは技術的には完璧よ?私よりも才能があるもの。」

 

これは本当だ。

転生特典で経験値100倍を貰って、影分身で修行を重ねた私と、正真正銘生身で行っているハナビとは違う。

純粋な才能ではハナビが上だ。

 

「でも…姉様が私と同じ歳の頃にはもう…」

 

「ハナビ、私ね、誰にも言ってないんだけど…ズルをしているの。」

 

「…ズル?」

 

「そう。隠れて影分身でいっぱい修行して…だから、私が影分身をしないで1人でしてたら…ハナビちゃんみたいにはなれなかった。

ハナビちゃんはいい子だから…父上の期待に応える為に努力をするけれど、忘れないで。

例えハナビちゃんが回天や六十四掌を使えなくとも、私も父上もネジ兄さんも…ハナビちゃんの事が大好きよ。だから、今すぐやらないとって焦らないで。」

 

「姉…様…う、うわあぁあん!!姉様ぁっ…!!」

 

それから1時間後、泣き疲れたハナビをおんぶするヒナタを使用人が目撃している。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

受験者大集合っ!

日向邸の庭の片隅でベンチに座って話す男女2人がいた。

ネジとヒナタ、従兄妹の2人だ。

 

「ヒナタ様、霧隠れはどうですか?」

 

「毎日楽しいわよ?やぐらさんは可愛いし…」

 

「…そうですか。俺的に白が可愛すぎて…男とはとても…。」

 

「そう言えば…波の国編ってどうなったの?血霧の里とは呼ばれて無いし、二人共里抜けして無いし…」

 

「あぁ、波の国には行った見たいですよ?エンカウントしたのは雲隠れの抜け忍でしたが。

…所で、他の転生者って見つかりましたか?」

 

「…風影が転生者だった。

前に人柱力会談があって我愛羅とも会ったんだけど…トゲトゲしてなかったの。」

 

「トゲトゲ我愛羅が居ない…だと…!」

 

「ん、素直な子になってた。」

 

「てことは…木ノ葉崩しは…?」

 

「うーん…音だけで来るかも知れないし、砂が参加しない分他の里から…って事もあるかも。

原作と違って五大国全てから出るみたいだし…。」

 

------------------------------------------------------------

 

木ノ葉隠れの里忍者学校(アカデミー)3-1と札が下げられた教室内で、ヒナタは困惑していた。

 

「ヒナタちゃんヒナタちゃんヒナタちゃんヒナタちゃんヒナタちゃんヒナタちゃんヒナタちゃんヒナタちゃんヒナタちゃんヒナタちゃんヒナタちゃんヒナタちゃんヒナタちゃんヒナタちゃんヒナタちゃん」

 

「サクラちゃん…あの…落ち着いて?」

 

「だって…ヒナタちゃんが…ヒナタちゃんがいる…会いたかった…!」

 

「う、うん…私もだよ…?」

 

教室内に入ると、サクラ色の毛玉が飛び込んできた。

サクラ色の頭には、今でも私がプレゼントした赤いリボンが掛けられていた。

 

「お〜人がいっぱいいるっす!

…あれ、ヒナタちゃん!やっぱりヒナタちゃんも参加してたっすね!」

 

「やはり、お前らも来ていたか。」

 

この騒がしい声と石田さんボイスの該当者は…1人しかいない。

 

「フウちゃん、我愛羅!久しぶり…でもないけど、こんにちは。」

 

「こんにちはっす、ヒナタちゃん、ウタカタ、ナルト!」

 

「我愛羅、フウ!お久だってばよ〜!」

 

「あぁ。…これで参加者は1、3、6、7、9か。」

 

「そうね。…9人中5人が参加するって凄いわね…。」

 

「ヒナタちゃん…この人、誰?」

 

ごごご…と効果音が付きそうな剣幕で私に聞くサクラちゃん。あれ、サクラちゃんの後ろに黒いオーラが…。

オーラにビビったナルトやウタカタや白、我愛羅まで後ろに下がる。

 

「と、友達…だよ?」

 

「滝隠れのラッキーセブン、フウっす!」

 

「ヒナタちゃんのアカデミーからの(・・・・・・・)親友(・・)の春野サクラよ。」

 

…対抗心バリバリじゃ無いっすかー…しかも肝心のフウはなにも分かってないし。

人柱力やその班員達でワイワイしていると、私達に話しかける声がした。

 

「君たち…もう少し静かにしたらどうだい。」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ご都合忍術と強盗

「君たち…静かにしたらどうだい?」

「あ、ごめんなさい。じゃあ、後でね!」

 

銀髪の青年─カブトが接触を図ってきたので、解散させる。

あ、なんか悔しそう…音が木ノ葉崩しをする事は確定、と。

 

椅子に座っていたネジ兄さんにアイコンタクトをする。一緒にいたナルトも違和感に気付いたらしい。

 

確かに、うるさければ周りは殺気立つ。

それは試験前でナーバスになっているから当たり前である。

だが、そこで私達を注意するのは不自然過ぎる。

そのまま放置しておけば、ヘイトを集めて的になってくれるのだからライバルが減るのに。

試験とは言っても命懸けの物だ。的を拡散させるなんて勿体ない事はしない。

 

 

ナルトもそこに気づく程頭が回るとは、ネジ兄さんの調教も上手く行っているらしい。

------------------------------------------------------------

 

第一試験も白眼で写し、ナルトも隣に座った私の答案を見ることで難を逃れた。

 

第二試験に受かったのは12班、36名だ。

原作よりかなり少ない。

自分の言葉は曲げねぇ!が無ければこんなものである。

 

紅班、アスマ班、ガイ班、カカシ班、我愛羅の班、フウの班、私達の班、合計7班。

ここで半分に減らされると言うことは…この中から一班は落ちる。

 

ここは関わりの無い、アスマ班と紅班を狙う。

人柱力を狙うなんてめんどくさいし、油女シノは個人戦で当たりたくない。

両方から巻物を奪い、知り合いと共有出来ればいい。

 

作戦会議を行い、試験説明の間に情報共有を行う。

 

〝と言うことで、さっき言った秘伝技に気を付けよう。〟

〝了解〟

〝ああ。〟

 

水伝心(みずでんしん)の術

磯撫チャクラでゴニョゴニョして水で心を伝える術

半径30mまでの距離なら伝える事が可能

 

ご都合主義の説明も終わり、試験開始の合図がなる。

白眼を発動し、アスマ班と紅班双方共に視界に入る。

 

「2時の方向、アスマ班が近い。」

 

2人に伝え、水で向かう。

 

2人で上空で尾獣化(バージョン2)し、3人の目の前に降りる。

ドカンと音がして3人が驚いている間にウタカタが尾獣玉の準備をする。

 

『尾獣玉を打って欲しく無ければ巻物を渡しなさい。』

 

あ、イノとチョウジが腰抜かした。

シカマルも震えて立っているのがやっとだ。…これが尾獣を見た時の通常の反応だ。

 

「あ…わた、渡すから…こいつら…に手を出すな…!」

『えぇ。妙な真似をしなければ危害は加えない。』

 

あっという間に巻物が手に入った。

水で逃げよう。

手口がコンビニ強盗と同じであるが、凶悪性、トラウマ度はこちらの方が悪質だ。

 

同じ手で紅班からも巻物を貰い、天・天・地の巻物が手に入った。

 

「お、いたいた…ネジ兄さんっ!」

「…!ヒナタ様!」

「ネジ兄さんの巻物ってどっち?」

「地ですけど?」

「ならあげる。」

「…もう集まったんですか?」

「ん、強盗してきたの。打つぞって。」

「あ、大体分かりました。」

「ネジ、こちらの可愛い女の子は親戚ですか!?」

 

眉毛濃い…全身タイツェ…ネジ兄さんよく毎日見てられるな。私、今の段階で腹筋壊れそうなんだけど。

ある意味修行になりそうだ。

 

「あぁ、宗家のヒナタ様だ。」

「…なんで霧隠れの額宛なの?」

「霧隠れに花嫁修業しに行ってるんです」

「ヒナタ様は水影に外堀を埋められ、婚約者に…。」

 

「「水影!?」」

 

「ヒナタ様は7歳の時に婚約決まって霧隠れに…」

「…大変ね、名家のお嬢様って。」

「?幸せですよ?やぐらさん可愛いしカッコイイし優しいし…」

 

「毎日惚気を聞かされるこちらの身になってくれ。糖尿病になりそうだ。」

「…どんまい。水影様ってかなり年上なの?」

「やぐらさんは5歳上の17歳です。」

 

「婚約した5年前に12って…僕より年下で水影って事ですか!?」

「水影は完全に実力で選ぶからな。指名とかは無い。どんなに若くとも勝てれば水影だ。

…史上最年少ではあったが。」

 

「へぇ…イケメンで強くて霧隠れで一番偉い人か〜さすが日向のお嬢様ね。」

「さっきと言ってる事が反転したな…。」

「いいの!乙女心は移り変わりやすいんだから!」

「こいつはずっといちゃいちゃしているが…?」

 

修行をするのには塔の中へ入るより外で待っていた方がいいとの緑タイツの少年からの申し出により、塔の前で結界を貼り、喋る6人。

因みに1日の間に人柱力達の班も集まり、皆で時間いっぱい修行をすることとなる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

予選突破&婚約者との再会

18人中5人が人柱力。

 

予選ではこの5名は出場せず本戦へ行ける事になった。

確率的に人柱力同士で戦う率も高く、室内では危険だと判断されたのだ。

 

人柱力以外で本戦に行けるのは、日向ネジ、うちはサスケ、カンクロウ、テマリ、春野サクラ、白、ロック・リーの7名だ。

 

予選通過した12名はくじをひいて本戦の組み合わせを決めた。

第一試合

日向ヒナタVSうちはサスケ

第二試合

カンクロウVS白

第三試合

ロック・リーVS日向ネジ

第四試合

テマリVS春野サクラ

第五試合

ウタカタVSうずまきナルト

第六試合

フウVS我愛羅

 

第一試合…日向VSうちは…これは人が来そうだ。

日向の者、うちはの者…

それに名門血継限界同士の戦い。

 

磯撫の絶対防御を調節出来るようになってて良かった…。

 

ある程度磯撫が組手が行えるように調節出来るようになった。柔拳を使って勝負しなければブーイングの嵐だろう。

 

今から胃が痛い…。

やぐらさんと会えるのは、あと一週間先だ。…無様な試合は見せられない。

 

------------------------------------------------------------

 

『ヒナタちゃん、今日の修行は終わりだよ。』

「…?何時もはもっとしてるじゃない。」

『やぐらが…』

「よし、終わりね。」

 

やぐらさんという単語を聞くと、磯撫の水でシャワーを浴び、風遁で髪を乾かす。

 

『…早かったね。シャワーと髪を整えるの。』

「き、気のせいよ。磯撫の水が優秀なの。」

『ふふん、でしょ!』

 

ドヤ顔で自慢げなミニ磯撫。

こうして見ると可愛い。タダの亀にしか見えない。

 

------------------------------------------------------------

 

「ヒナタ、久しぶりだね。」

「やぐらさん!久しぶりです。…会いたかった。

「可愛い事を言ってくれる…俺も、ヒナタに会いたかったよ。」

 

抱き締めてくれるやぐらさんは、太陽の匂いがした。

頭を胸板に埋め、癒される。

 

「やぐらさんの事…好き…大好きです…。」

「ヒナタ…!俺もヒナタの事を愛している。」

 

「うぉっほん!」

 

わざとらしい咳に、パッと離れる私達。

少し名残惜しいが父が現れたのでしょうがない。

 

「…ヒナタの事を大切にしてくれているようだな。」

「はい。ヒナタさんは俺の大切な婚約者です。

俺には勿体ないくらい素敵な人です。」

「これからも、よろしく頼む。」

「はい。」

 

それだけ言い残し、父は立ち去った。

 

手を繋ぎ、一緒に屋敷へ戻った私達。

冷やかしを受け、一族揃ってじと〜とした目でやぐらさんを見るのは数分後の事だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

尾獣との対話、友への1歩

「よっ!イチャラブのお二人さん!」

 

屋敷に戻ってスグにナルトとハナビに見つかった。

恐らくハナビの白眼で見つけて飛んできたのだろう。

 

「やぁ、ナルト。相変わらずクソガキっぽさが抜けないね。

ハナビちゃん、初めまして。ヒナタさんの婚約者のやぐらです。」

「ジー…。」

「…。」

「ジー…。」

「…。」

 

ナルトがクソガキと言われた事でムキーッと怒る中、見つめ合う2人。

 

「…姉様の事泣かせたら全ての点穴付くから。」

「勿論、幸せにするよ。」

「なぁ、ハナビ…怖ぇよ…全ての点穴とか苦しみの中で死ぬってばよ…。」

「いいの。姉様を泣かせるような奴、苦しんで苦しんで苦しんで死ねばいいのよ。」

「お前ら姉妹、良く似てるってばよ…。」

「ホント!?姉様の事も私の事も知ってるナルトに言われた…!

姉さん、私着替えて来るからまた後でね!」

 

------------------------------------------------------------

 

「尾獣との対話のコツ?」

「おう。ヒナタってさ、磯撫とめちゃくちゃ仲いいからさ、九尾と対話のコツ?見たいなの教えてくれってばよ。

九尾に毎日話しかけてるけどずっと殺すぞとか乗っ取ってやるとか物騒何だってばよ。」

「うーん…ねぇ、九尾の名前って知ってる?」

「な、名前?あるのか?」

「ほら、九尾とか三尾って種族名って言うか…私達にずっと金髪野郎とか白眼の女って話しかけてるのと同じでしょ?」

「な、なるほど…」

 

『後、どうしてそんなに嫌がっているのかを考えるといいよ。

僕達尾獣は、力を怖がられ狙われて利用されて閉じ込められて苦しんで来たんだ。僕も今でこそヒナタちゃんと友達だけど…外で初めて出会った時は警戒して海に潜ってた。そんな僕をヒナタちゃんは海の外で待っててくれたんだ。

自分の何倍も体が大きな僕を、怖がらずに内面を見てくれた。九尾も…意地っ張りで人間嫌いだから…誤解されやすいんだ。』

「そうね…懐かしいな…磯撫と出会ったのももう何年も前なのね…。

あまり焦らずに、話を聞いてあげる事も大切よ。」

 

「ありがとう、ヒナタ!磯撫!

なんか上手く行きそうだってばよ!」

 

そのままダッシュで立ち去っていったナルト。

その落ち着きの無い背を見ながら、磯撫に話しかける。

 

「やっぱり…磯撫は一番の友達ね。」

 

前世の記憶を読み取って尚、変わらずに友達だと言ってくれた。

力を悪用されないよう一緒に頑張ろうと言ってくれた。

ヒナタちゃんは守ると、言ってくれた。

 

『当たり前だよ。僕はヒナタちゃんの一番近くにいるからね。』

 

------------------------------------------------------------

 

ザワザワと騒がしい会場。

第一試合から日向VSうちは、白眼VS写輪眼の試合が観れるとあって、大混雑だ。

 

試合前、水影席に座るやぐらさんに微笑むと、微笑み返してくれた。

日向家総出で作られた横断幕には〝ヒナタ様ガンバ!白眼の底力を見せる時だ!〟と書かれ、プレッシャーを煽る。

 

「第一試合を開始致します。日向ヒナタ、うちはサスケ、両者前へ出てきて下さい!」

 

わあぁああぁ!!と歓声が鳴り響く。

 

そして、試合開始の合図が響いた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

白眼VS写輪眼!

ヒナタが白眼を発動し、サスケが写輪眼を発動して動き出す。

 

「火遁・豪火球の術!」

 

サスケは下忍レベルではない早さで印を結んで豪火球を吹き出す。

 

「八卦空壁掌!」

 

手から出された八卦空璧掌で豪火球は打ち消され、空璧掌はそのままサスケに当たり、サスケは吹き飛ばされる。

 

立ち上がったサスケにヒナタが近づくと印を結ばせない様、柔拳での猛攻が始まる。

 

一見体術でサスケとヒナタは対等に渡り合っているように見える。

 

だが、サスケの表情には焦りが見えていた。

素早い動きや正確な突きによって体力を消耗し、ついていくのもやっとと言った所だ。

 

それ以上に、写輪眼を発動したサスケにはチャクラが止められている所が見えていた。

どうやって、などと考えをまとめる時間をくれるほど楽な相手ではない。

だが、白眼と柔拳の特性を一つ一つ思い出す。

 

(点穴が…見えている?)

 

点穴は写輪眼でも見えない。

だが、白眼の練度が上がれば見えると聞く。

 

そう考えた瞬間、腹に柔拳の一撃を食らい、血を大量に吐き出す。

物理的な打撃力はそんなに無いはずだ。

だが、柔拳は経絡経から内蔵にダメージを与える事が出来る。

血を吐いた時に離れていたヒナタを見ても、白眼を発動させたまま構えて油断一つ無い。

 

そのまま意識を失ったサスケは倒れ、審判はヒナタの勝ちを宣言した。

 

------------------------------------------------------------

 

「最後の突きってそんなに力入ってたっすかね?なんであんなに血が…」

 

七尾の人柱力、フウの疑問に俺は答える。

 

「日向一族の白眼は視野がほぼ360℃見え、視界も何百m遠くまで見ることが出来る。

白眼では経絡経というチャクラの通り道が見え、柔拳で攻撃する事で体の内側からボロボロに破壊する。

内蔵は鍛えようが無いからね。

ヒナタの白眼は点穴まで見えているし、徐々に点穴を突いて相手の体をボロボロにしてから最後にトドメを刺したんだ。」

 

説明をすると、近くにいた五影たちや人柱力達はドン引きした様子だ。

 

「え、えげつないっすね…」

 

「そんなに遠くまで見れるなら下手に浮気は出来ないわね、水影様。」

二尾の人柱力、ユギトはニヤニヤしながら言った。

 

「俺はヒナタを愛していますからしませんよ。

やる気も無いですしヒナタ以上の女性は見つからないだろうからやる必要がない。」

「はぁ…何かあってもなくてもいちゃいちゃしすぎでしょ…」

「うざい程のバカップルだってばよ…」

「酷い言い様だね、ナルト。

ヒナタとハナビちゃんにも是非伝えておこう。」

「や、辞めろってば!すまねぇ、済まなかったってば、点穴は…点穴だけはやめ…」

 

「点穴がどうしたの、ナルト?」

 

騒ぐナルトに話しかけたのは試合を終えたヒナタだ。

 

「な、何でもないってば…」

「そう?ならいいけど。

やぐらさん…私、勝ちました!」

 

可愛い笑顔で俺に話しかけるヒナタの頭を撫でる。

頭を撫でると幸せそうな笑顔になり、可愛い。

 

「ヒナタ、良く頑張ったね。」

 

ヒナタの嬉しそうな笑顔に幸せな気持ちになれたのだが、突然悪寒に襲われる。

 

どこから…と見渡すと、観客席から日向一族が全員白眼を発動させて俺をガン見していた。

特にヒナタの父、当主であるヒアシ殿や妹君のハナビちゃん、幼い頃ヒナタの世話役であったコウ殿の眼力はすごい。

 

思わず手をヒナタから離す。

ヒナタは不思議そうな顔をしているが、あれは怖い。具体的に言えば一族全員で点穴を突いてきそうだ。

 

周りにいる五影や人柱力達も固まっている。

それ位迫力があった。

 

木ノ葉にいる間は下手な事は出来ないと気を引き締める。

肝を冷やしている間にいつの間にか第二試合も終わっていた。

第三試合はヒナタの従兄妹であるネジ殿の試合だ。

気を引き締めて見よう。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

白眼VS白眼 従兄妹対決!

一回戦を終え、勝ち進んだのは日向ヒナタ、白、日向ネジ、春野サクラ、ウタカタ、我愛羅だ。

 

ここからまたくじを引き、次の対戦相手が決まる。

 

日向ヒナタVS日向ネジ

ウタカタVS我愛羅

白VS春野サクラ

 

掲示板に文字が出ると、観客席が盛り上がりを見せる。

白眼VS写輪眼に続いて白眼VS白眼の瞳術対決となった。

 

------------------------------------------------------------

 

「ネジ兄さん、勝負です。」

 

私は柔拳の構えをとりネジ兄さんに言う。

 

「負けませんよ、ヒナタ様。」

 

動き始めたのはほぼ同時。

お互いに点穴を突こうとするが、打点をずらして阻止するなど一進一退の状態だ。

 

お互いに一旦離れて距離を置くと、両手を突き出す。

 

「「八卦空壁掌!」」

 

真空砲同士がぶつかり合い、激しい音と共に会場中に暴風が吹き荒れる。

 

「八卦・双破山撃!」

「八卦掌・回天!」

 

ネジ兄さんが放った空壁掌の強化版である双破山撃を回天で防御するが、迫ってきていたネジ兄さんの攻撃を食らい…はせず、水が防ぐ。

 

バキッとネジ兄さんの拳から嫌な音がしてネジ兄さんは顔を歪めた。

 

鉄のクナイでも欠ける防御に思い切り攻撃すればどうなるかは、血を見るより明らかだろう。

現に、ネジ兄さんの右腕は赤く腫れ曲がっている。

 

「絶対防御…忘れてた…。

審判…棄権します。」

 

「日向ネジ棄権の為、日向ヒナタの勝利!」

 

めちゃくちゃざわざわしてる…日向の人間が水の絶対防御を発動させてたら驚くよね、うん。

しかも殴った手が折れる硬さだ。

 

水で一族の方へ向かい、勝ちの報告をすると、やぐらさんの方へと向かった。

 

------------------------------------------------------------------------------------------

 

「日向一族やべえ…敵に回したくねぇってば…」

 

ぶつかった八卦空壁掌の威力に、俺たち五影や人柱力も驚きを隠せない。

真空砲のぶつかり合いにより会場に吹き荒れる風は、会場にあった木を何本か折っていた。

 

八卦・双破山撃という術を、宗家に伝わる回天で防ぐヒナタ。ヒナタの周りにはクレーターが出来ており、練度の高さが伺える。

回天の隙を付いたネジの突きも水が防ぎ失敗に終わり、ネジの棄権という形でヒナタの勝利が確定した。

 

棄権という形にはなったが、日向に伝わる体術…柔拳同士の見応えのある戦いであった。

 

 

俺の婚約者として霧隠れに来ても柔拳の鍛錬を怠らなかった努力家のヒナタ。

磯撫に頼り切りにはならず、正々堂々と従兄妹であるネジとの勝負に挑んだ。

 

強く美しい婚約者(ヒナタ)がこちらに来るので笑顔で出迎えた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

霧隠れVS霧隠れ! チームメイトの1位争奪戦…!

やぐらさんの方へ向かうと、頭を撫でられた。

手が暖かく、思わず顔がにやけてしまう。

 

幸せな気持ちになっている間に、ウタカタの試合が始まった。

 

泡のウタカタと、砂の我愛羅。

一瞬で決着が付いてしまう。

 

砂の絶対防御に頼り切りになっていた我愛羅は、無限に生み出される泡の威力を見誤っていた。

泡が時間差で爆発し、砂を突破して我愛羅にダメージを与える。

 

気を失った我愛羅は医務室に運ばれ、ウタカタの勝利で幕を閉じた。

 

「…勝った。」

 

ドヤァと自慢げな顔をしているウタカタ。

 

「これでもし白が勝ったら上位3名は全員霧隠れか…」

「なんかヤベェってばよ…」

 

その場には霧隠れは敵にまわすな的な雰囲気が漂っている。

だが、私達が規格外なだけで他の人は…やぐらさん以外は普通なハズ…だ。

 

やぐらさんは素で尾獣と殴り合えるのではないかと思えるほど強い。

 

…未だに手合わせはした事は無いが。

やぐらさん曰く「ヒナタを傷付ける訳にはいかない」らしい。

私を壊れ物の様に扱うやぐらさんは、例え手合わせしようとも抵抗せずに私に殴られっぱなしとなるだろう。

 

やぐらさんの修行風景を白眼でこっそり見学する事は多々あるが、大抵は私が白眼を発動したと勘づかれてしまう。

私の事は何でも分かる…らしい。

 

 

白VS春野サクラも白の勝利という形で決着し、勝者は私達チームメイトのみとなった。

…そういえば、木の葉崩しはどうなったのだろう。

徹底的に計画を潰されているから中止になったのか…?

サスケェにも呪印を施された気配は無かった。

 

観客席の日向一族の方へ視線を向け、ネジ兄さんをチラリと見ると、ネジ兄さんは〝異常なし〟と視線で訴える。

警戒をするに越した事はないが、原作通りには起こらないため、静観するしかないだろう。

 

 

私達は前に出て試合の為のくじを引き、結果を待つ事になった。

 

----------------------------------------------------------------------

 

白とウタカタが戦って勝った方が私と戦う事になり、私は二人の試合を上から見物することになった。

 

チームメイトの戦いは、白VSウタカタで幕を開けた。

氷遁で作った氷の鏡を光速で移動する白に、泡やガスで対処するウタカタ。

 

氷を一瞬で溶かすが、また次の氷が現れる。

何故か原作よりも白のチャクラ量が多く、チャクラ切れを起こす気配はない。

 

当たる気配が無かった千本だったが、1本の千本が死角に入り、ウタカタの首を貫いた。

 

原作でも出てきた仮死の秘孔だ。

ウタカタが倒れ、勝者は白となった。

 

「あの子…人柱力を倒すなんて…。」

「血継限界の氷遁か…昔の霧隠れは血継限界を持つ者は呪われた血族だと言われて迫害されてきたらしいが…。」

「昔の話ですよ。先代の努力によって偏見や差別は無くなりました。

現にヒナタも迫害はされていませんしね。」

 

そう言って頭を撫でてくれたやぐらさん。

周りは呆れた表情ではあるが、撫でてくれる手が気持ちよく、目を細める。

 

次は、私と白の試合だ。

…絶対防御を全開にしておこう。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大蛇丸の退場と中忍試験最後の戦い

白と共に試合の舞台に降り立つ。

 

向かい合って試合開始の合図を待つ中、水分感知で攻撃を仕掛ける存在を確認し、反射的に後ろへと飛ぶ。

 

飛んだ瞬間地面に何かが当たる衝撃音がし、私のいた所には大きなクレーターが出来ていた。

 

何らかの風遁の術だろう。

 

白眼を発動し、それらしき人物の警戒を始めた。

試験官や白も同じく警戒を露わにし、観客席を見つめる。

五影席の…主に、水影の席からは先程の攻撃の際に感じた殺気よりも遥かに濃い殺気が漏れている。

 

「いた…!」

 

水蒸気での感知も並行し、先程の攻撃の犯人─大蛇丸を水で拘束して化けの皮を剥がす。

 

病的な程白い肌に、蛇の様な目が不気味さを煽るS級犯罪者だ。

 

水の拘束に対して抵抗を見せたため、戦闘になっても良いように下に降ろし、3人掛りで警戒をする。

 

「よく気付いたわね…流石、白眼といったところかしら。

この水は三尾由来の物…興味深いわ。」

 

「何が目的だ、大蛇丸!」

 

降りてきた五影と人柱力達。

特に火影とやぐらさんは大蛇丸に厳しい目線を向ける。

 

と言うより、こんな豪華メンツの前でよく行動を起こす気になったな…。

 

「日向ヒナタをうちの里(音隠れ)にスカウ…」

「断ります」

「せっかちね、もう少し考えてくれてもいいのよ?」

 

「巫山戯るのも大概にしろ、大蛇丸…!」

 

火影がかつての弟子(大蛇丸)に、感情を剥き出しにする。

私は火影達が大蛇丸の対応を行っている間に、もう一人の捜索を行っていた。

 

「ねぇ、この人…貴方のペットでしょ?」

 

私が大蛇丸に突き出したのは白い髪でメガネを掛けた男─カブトであった。

大蛇丸と同じく水で拘束し、大蛇丸を助け出す事が出来ぬようにしている。

 

「あら、よく分かったわね。」

「この人、大蛇丸様って口に出してたよ。

躾はしっかりしないとダメじゃない。」

「くっ…殺せ…!」

 

男のくっ殺とか誰得だよ…。

そう思いつつ暗部に2人を引渡し、未だに怒りを顕にしていたやぐらさんに近づき、頭を撫でる。

 

やぐらさんは嬉しそうな顔をしている。

ご機嫌はなおったらしい。

 

----------------------------------------------------------------------

 

ゴタゴタがあったが、今度こそ白との試合が始まった。

 

先に動いたのは白だ。

素早く印を結んで行く。

 

「氷遁秘術・魔鏡氷晶!」

 

私の周りに沢山の氷の鏡が現れる。

周りの温度が下がり、真冬のような寒さだ。

 

鏡に入った白は、光速で移動し私に千本を投げるが…全て鋭い音をたてながら水に弾かれて地面に落ちる。

 

水での防御に徹していた私だが、スタミナ切れで白の攻撃の止んだスキを突き、行動に移る。

 

「八卦空壁掌!」

 

ネジ兄さんとの戦いの中で、周りの木を折ってしまうほどの威力の八卦空壁掌。

それはいとも簡単に氷を一気に割り、衝撃で白は吹き飛ばされる。

 

トドメと言わんばかりに、柔拳の特徴的な構えをとる。

 

「柔拳法・八卦六十四掌…八卦二掌!四掌!八掌!十六掌!三十二掌!六十四掌!」

 

立ち上がった瞬間に点穴を突かれ、血を吐いて倒れた白。

 

その瞬間、私の勝ちが決定した。

----------------------------------------------------------------------

 

ヒナタの対戦相手である白は医療班により医務室へ運ばれていった。

 

本気で八卦六十四掌を放てば、内臓まで破壊されている事だろう。

だが、ヒナタは試合でそこまでしない事は分かっているため、白の怪我の心配はしていない。

 

「…ダメですね、見て覚えようとしましたが…日向一族の出身ではない私が柔拳を使うことは困難です。」

「直接言えば良いのに…柔拳を教えてくれって。

俺のヒナタは優しいから教えてくれるさ。」

「しかし…柔拳は…」

 

なんでも難しく考えてしまう癖のある青は、柔拳を教えてくれと口に出すのに6年近くの月日を費やしていた。

 

戦争中に戦利品で片目だけ入手出来たらしい白眼。

だが、青は柔拳を納めていないため、ただの千里眼としてしか利用できていないのだ。

 

「やぐらさん、勝ちました!」

「ヒナタ、おかえり。

よく頑張ったね。」

 

戻ってきたヒナタの頭をポンポンと撫でると、ヒナタは花が咲くような笑顔を見せる。

腰あたりに千切れそうな程振られた尻尾が見えてしまう程嬉しそうだ。

 

可愛いのでつい頭を撫でる時間が長くなる。

 

「やぐら様、顔が溶けております。」

「…む。」

 

〝溶けている〟と評される程緩んだ頬を引き締め、ヒナタの頭から手を離す。

…途端に、ある方角からの重圧が薄れていく。

 

ヒナタをちらりと見ると、もうナデナデは終わりかとしょんぼりしている。…可愛い。

撫で回したい衝動に駆られてしまうが、木ノ葉にいる限り白眼の視界からは逃れられないため耐える。

 

…霧隠れに帰ったら思い切り撫で回そう。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

木ノ葉からの帰還、ヒナタ不足の補充

「姉様、上忍昇格おめでとうございます!

今日の試合、とってもかっこよかったです!」

「ありがとう。」

 

眩しい程にキラキラした目を向けるハナビは、試合終了後からべったりと引っ付いて離れなくなっていた。

中忍試験も終わり、霧隠れに帰る日が刻一刻と近づいているため寂しいのだろう。

 

周りも微笑ましい物を見る目だ。

 

明日のお昼頃に水に乗って帰る予定になっているため、午前中はハナビの稽古を付ける事が決まった。

 

----------------------------------------

 

「八卦掌・回天!」

 

私の物より一回り小さな回天が成功し、ハナビが吹き飛ぶ事も無かった。

 

「ハナビ、おめでとう。」

「姉様、ありがとう!大好きっ!」

 

抱き着いてきた天使(ハナビ)を抱き締め、頭を撫でる。

 

「ヒナタ、ハナビちゃん、お疲れ様。」

「あ、やぐらさん!」

「む〜…私の(・・)姉様との至福の時を邪魔しないでよ〜。」

「済まないね、ヒナタは俺の婚約者(・・・)だから…話しかけるのは当然だろう?

それに…俺の(・・)ヒナタは、そろそろ霧隠れに帰る時間だ。」

 

ひ、火花が散ってやがる…!

 

私がどちらの物かの不毛な争いは私が戦慄している間にも行われており、平行線を辿っている。

 

『ヒナタちゃん、止めなくていいの?』

「磯撫、あれに割って入る事が出来る?」

『む〜…。』

 

それから10分後、迎えに来た青にやぐらさんが頭を叩かれる事で勝負は終え、木ノ葉を後にした。

 

----------------------------------------

 

「ヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタヒナタ…」

 

やぐらさんは私を抱き締めて、ゲシュタルト崩壊する程名前を呼び続ける。

 

ヒナタ不足だと言われ、水の上に乗って30分は経つのにこの調子だ。

 

周りは呆れ、遠い目をしている。

 

「やぐらさん」

「ヒナタ…ん?どうした?」

 

左頬にそっとキスをしてやぐらさんの顔を見る。

 

「やぐらさん、大好き。」

「…っ!ヒナタ〜、可愛いっ…可愛い…!

俺もヒナタが大好き…いや、愛している!」

「私もだよ、やぐらさん。」

 

やぐらさんもやっと落ち着いたのか、名残惜しそうに体を離して隣に座る。

 

木ノ葉を離れてからやぐらさんと二人で読むように、と預かった手紙を出して封を開く。

 

〝ヒナタ、やぐら殿へ

ヒナタ、元気にしているようで何よりだ。

環境の違う霧隠れで体調を崩していないか、やぐら殿と上手くやれているか、私達家族は勿論、一族全員心配していたが…幸せそうな顔をするヒナタを見て、あの時の決断が間違っていなかったと安心した。

もし、霧隠れで辛い思いをしているようならどんな事をしてでも木ノ葉に…と思ったが、杞憂だったようだ。

やぐら殿と、幸せになりなさい。

辛い事があればいつでも帰ってきても構わない。

例えどこへ行こうとヒナタは私の娘だ。

 

やぐら殿、ヒナタは大人びていて周りに気を使っているが、内面は甘えん坊で寂しがりやだ。

大切にしてやってくれ。

 

追伸

ヒナタを泣かすようならば、日向一族総出でヒナタを木ノ葉へと連れて帰る。

心するように。

 

日向ヒアシ〟

 

「ヒナタを甘やかすのは当然の事だろう…ヒナタ、愛している。

一生、手放さないから。」

 

かっこいい笑顔でそんなことを言われると…心臓が爆発するっ…いや、全身が爆発する。

 

「私も…やぐらさんの事、愛してるよ。私、やぐらさんの婚約者になれて幸せだよ。」

「ヒナタ…」

 

「やぐら様、そろそろ霧隠れに到着致します。

だらしない顔を何とかしてください。」

「だ、だらしない!?

青、最近遠慮無くなってきたな…」

「事実です。」

「だが…」

「事実です。」

「いや、あの…」

「事実です。」

「あ、はい。ごめんなさい。」

 

霧隠れって実質青が一番上な気がする。

 

ま、まぁ、木ノ葉で言うシカクとかシカマルとかだよね、うん。

頭脳で影を支えているためそう見えるだけだ。

 

でもやっぱり可愛いな…。

青に頭が上がらないやぐらさんだが、かなりの強さだ。一応。

 

「あ、」

「どうした?」

「裏に…柔拳のコツと、詳細は私に聞くようにって。

青さん、これ…。」

 

私が手渡した手紙を穴が開くほど見つめる青に、私は声を掛ける。

 

「…柔拳、教えるよ?」

「いいのか!?」

「お父様もコツを書いてるしね。

私が教えられるのは柔拳の基本と八卦空掌くらいかな。

後は見て覚えてもらうしか…」

「十分だ、ありがとう。」

 

霧隠れにつく頃には、柔拳の稽古を楽しみにしている青と、私と手を繋いでニコニコしているやぐらさん、砂糖の過剰摂取で死んだ魚の目になっている再不斬、ウタカタ、白という構図になっており、出迎えの忍達は再不斬達に憐れみの目を向けていた。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2年後、餌付けと成長

「ヒナタ、あーん」

「あーん…」

 

口を開けると、ひと口サイズにカットされたリンゴが入ってきた。

口の中で甘さが広がり、目の前ではやぐらさんが蕩けるような笑顔を見せている。

 

「可愛い…餌付けしてる気分になるな。ヒナタ、もう1個食べるか?」

「うん」

 

順調に餌付けされ、やぐらさんが持ってきたリンゴが全て無くなる頃には私もやぐらさんも満足気な表情を浮かべていた。

 

1週間に1度のお泊まりの日、やぐらさんがリンゴ(20個入)を持ってきてくれ、一緒に(私:19個、やぐらさん:1個)食べた。

 

あの中忍試験から2年。

上忍として任務をこなす一方、やぐらさんとも上手くやれていた。

 

やたらと私を甘やかしたがるやぐらさんと、父様公認の甘えん坊である私。

…上手くいかないはずないよね。

 

「やぐらさん、好き…」

「くっ…可愛い…!ヒナタは俺をどうしたいんだ…!」

 

やぐらさんにそっと抱き締められ、やぐらさんの胸板へと顔を埋める。

やぐらさんのいい匂いが広がり、思わずスリスリと頰擦りしてしまう。

 

「俺を…萌え殺す気か、ヒナタ…。」

 

やぐらさんは何かに耐えるかのように声を絞り出している。

 

最近、そういう事が増えた。

何か(・・)に耐えるような仕草…主に2人でいる時になる事が多いが、時折外でもなる事がある。

 

顔を赤くして前かがみになり、胸を凝視する…何に耐えているかは分かる。

まぁ、巨乳だから抱き着いた時に当たるのだろう。

 

婚約者となって7年。

原作では1部と2部の間に当たる、ナルトが修行の旅に出ているハズの時期である。

旅には出ておらず、九尾─九喇嘛とも相棒となったナルト。

今の所人柱力狩りも起きていない。

 

私も身長…は伸びずに、胸が更に成長した。

やぐらさんは巨乳好きだったのか、大きくなるにつれて前かがみになる頻度が増えた。

 

…1週間に1度は泊まっているのに実行に移さないやぐらさんの紳士具合がかっこよすぎて辛い。

 

まぁ、求められたら応えるだろう。

いくら可愛いとはいえやぐらさんだって男だし、いつかはそういう事をする事になるのだから。

 

 

「ヒナタ…俺がヒナタの事襲いそうになったら全力で止めてくれ…。」

 

息が荒く、目を瞑りながら呟いたやぐらさんは苦しそうだ。…可哀想になって来たから、こっちから行くべきなのだろうか?

 

『…ヒナタちゃんから誘わないと結婚するまでこのままだと思うな。』

 

という磯撫先生によるアドバイスも貰った私はやぐらさんにそっとキスをした。

 

「…私の身体も心は全部やぐらさんの物だから…やぐらさんになら、エッチな事されても嫌じゃないよ?」

「ヒナタ…今夜は寝かさないから。」

「へ…あっ、やぐらさんっ…んんっ!」

 

ベッドへと連行され、押し倒された後は…お察し下さい。

 

----------------------------------------

 

何のとは言わないが初体験を終え、宣言通りに夜通しやっていたお陰で腰が痛い。

 

やぐらさんが名残惜しそうに水影の仕事へ行き─ヒナタを残して行きたくないとかなりぐずった─汚れたシーツの洗濯をグレン(変態)さんに頼む。

 

汚れた箇所を愛おしそうに見つめるグレンさんをチョップで正気に戻し、白眼でやぐらさんが水影として頑張っている姿を見る。

 

…可愛い。

成人男性が女性よりも可愛いってどういう事だ。ってか出会った時から見た目が変わってないぞ、あの人…。

 

やぐらさん七不思議だ。

その内の一つに、こうして白眼で覗いている事が簡単にバレるというのも私の中で連ねられている。

…白眼の持ち味は対象にバレずに視覚情報を入手可能だということが挙げられるハズなのだが。

 

やぐらさんの察知能力は人外レベルだというのが良くわかる。尾獣化しても勝てる気がしない。

 

「…磯撫、やぐらさんの弱点って何?」

『強いて言うならヒナタちゃんだね。』

「ア、ハイ。」




次回からはサラっと書かれたナルトと九喇嘛の和解編です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。