SOUL EATER ~八幡cross~ (ハッチー)
しおりを挟む

第1話 [八幡の能力?]

-----健全なる“魂”は

 

健全なる“精神”と健全なる“肉体”に宿る-------。

 

ならばノットの時代から一人で行動したからこそ身に付いた健全なる鋼のような精神を持ち。誰にも頼らなくても生きていけるように日々鍛えて精進して身に付けた肉体を持っている俺は健全なる魂と言えるのではないだろうか?

 

パートナーとウキウキアハハなリア充野郎共は不健全な精神を持っている。と言えるのではないだろうか?

 

つまり何が言いたいのかといえば悪人の魂(鬼神の卵)を回収し鬼神復活の阻止にかこつけてるリア充共砕け散れ!

 

「何故呼び出されたか分かるか?」

 

「.......」

 

俺の目の前には死神武器職人専門学校、通称死武専の講師をしているシド先生が俺を睨んでいる。

 

「どうした?無視をするなら仕方がない、貴様には後でシュタイン先生と一騎討ちで居残りをしてもらおう」

 

なん....だと?死武専広しと言えどシュタイン先生の名前が上がれば皆俺と同じ反応を示すこと間違いないだろう。ただシュタイン先生の存在は一部の先生と俺しか知らない。と思う。もしかしたら死神であるキッドは知ってるかもしれないが。キッドと言うのは死神様の実の子供らしい。

 

あの人はやばい、何がヤバイって人間を普通に人体実験の道具にする時点でやばい。

 

先生がそんなことするはずないって?あの人に会ってから言ってもらいたいものだ。

 

「まっ。俺は一度のミスは許す男だからな」

 

「すいません、直ぐに書き直すのでそれだけは勘弁してください」

 

誠心誠意を込めて頭を下げる。

 

ん?プライド?プライドより命の方が大事だ。

 

「良い答えだ。ところでだが比企谷、お前は誰かパートナーを見つける気はないのか?」

 

「ないです」

 

「何故だ?お前の成績なら誰か良いパートナーが見つかると思うが」

 

シド先生は腕組をしながら俺に聞いてくる。親身になってくれるのはありがたいがそもそも俺が死武専に入った理由は別にデスサイズになりたいからではない。

 

「シド先生。俺は別にこの学校にデスサイズになりたくて入ったわけではありません。単純に俺が武器だったのと将来の夢の為です」

 

「将来の夢?それこそ武器ならデスサイズになるじゃないのか?」

 

普通死武専に入学した奴の大半はそうなのだろう。だが俺はその大半になるつもりはない。

 

「俺の夢は専業主夫ですから」

 

「ぶっ!」

 

盛大に吹かれてしまった。ちょっと傷つくがこの程度でめげる俺ではない。

 

俺は無言の圧力をかけながらシド先生を睨む。

 

「わ、悪かった。だからその目で睨むな」

 

散々腐ってると言われてきたがそこまで酷いのだろうか.....。

 

「それではそろそろ教室に戻っても良いですか?」

 

「ああ、明日までに書き直して提出するんだぞ」

 

シド先生に言われなければ期限を言われなかったのでと言ってはぐらかそうと思っていたが俺の思惑は見破られてしまった。

 

「.....分かりました」

 

「あ、比企谷」

 

出ようと扉に手をかけた所でシド先生に呼び止められる。

 

「なんですか?」

 

「ソウル=イーターとブラック☆スターを呼んできてくれ」

 

「俺と同じ内容ですか?」

 

「いや。テストで赤点を取って補習をサボったからだ」

 

またか、と思いながら俺は教室に戻った。

 

 

教室の扉を開けると件のブラック☆スターが凄い勢いで俺の目の前まで走ってきた。

 

「よう、八幡!お前なに呼び出しされてたんだ?この俺様より目立ってんじゃねーよ!!今から勝負だ!表に出ろー!!」

 

そう言いながら指を外に向けるブラック☆スター、相変わらずせわしない。

 

「別に。ただこの間の授業の時に提出した感想文あっただろ?あれの再提出を言われたんだよ」

 

「へえー。八幡君て頭良いのに意外だね、どんな感想文書いたの?」

 

俺に話しかけてきたのはマカ=アルバーンでこのクラスで2番目に成績が良い優等生だ。俺?俺は3番目だ。

 

「頭良いって自分より頭良い奴に普通使わないか?」

 

「別に良いでしょそんなこと。頭良いのは変わらないんだし」

 

そう言って笑顔を見せてくるマカとはノット時代からの付き合いだ。

 

「私から見たらマカちゃんもハチ君も頭良いと思うけどね」

 

「椿ちゃんだってクラスで4番目なんだから変わらないと思うよ?」

 

「毎回思うがハチ君ておかしくない?」

 

今話しかけてきたのはブラック☆スターのパートナーの中務椿。武器として非常に優秀な多変型高性能魔武器だ。なんと一人で5種類もの武器になれる。非常に優秀なのだがブラック☆スターの性格のせいで鬼神の卵と化した魂の回収が未だに一つも出来ていない可哀想な子なのである。

 

「おかしくないと思うけど....マカちゃん変かな?」

 

「え?別に変じゃないと思うけど」

 

「まぁいいよ....」

 

何故ハチ君と呼ばれてるのかは少し前に起きた事件のせいなのだがいまはいいだろう。

 

「よっと。八幡、ブラック☆スターとやる前にこの前の決着を俺と着けようぜ」

 

マカのパートナーのソウル=イーターが話しかけてきた。

 

ソウルとは何故か初めて合ったときから同じ武器同士だからか折り合いが良く俺の初めての友達と呼べる人物だ。

 

因みに勝負は全て俺が勝っている。

 

「このあと家に帰って飯作って録画しておいたプリキュア見るから無理。それよりシド先生が呼んでたぞ」

 

「げっ」

 

ブラック☆スターは忍び足でこの場を去ろうとする。だが残念ながらその方角は詰んでるぞ。

 

ブラック☆スターは少しずつ下がっていき誰かにぶつかり後ろを振り返る。

 

「ブラック☆スターどこにいく気だ?」

 

「ひぃぃぃいい!!つ、椿!アルカポネ討伐に行くぞー!」

 

「駄目よブラック☆スター。呼び出しの用件が済むまで待っててあげるから行ってきなさい」

 

「そ、そんな.....」

 

「よーしマカ!俺達は鬼神の卵と化した99個目の魂を取りに行こうぜ!」

 

「ソウルも駄目。早く補習なんて終わらせてきなさい」

 

「補習なんてCOOLな男がやるような事じゃねーんだよ」

 

「COOLな男なら逃げないでちゃんと受けないと」

 

「うっ.....分かったよ」

 

「それじゃあ、ソウル=イーターとブラック☆スターはしっかりと後で来るように」

 

ソウル達は既に98個も魂を取っていたのか....うっ椿さんが死んだ魚のような目に....。

 

「マカちゃんとソウル君はもう98個の魂を集めてたんだね.....」

 

止めて!そんな目で俺を見ないで!なんのフォローも出来ないから!

 

「あ、うん。でもそんなに大したことじゃ....」

 

おい馬鹿か!そんなとこで謙遜したって嫌味にしか聞こえないわ!

 

「そんなに凄い事じゃ....は、はは.....」

 

ほら見ろ!どこか遠いとこに行っちゃったじゃねーか!

 

「まあまあ椿気にすんなよ!俺様が直ぐにお前をデスサイズにしてやるからよ!」

 

「.....うん、知ってる」

 

椿さんは優しく微笑みながらブラック☆スターに頷く。やはり良いパートナーなのかもしれない。

 

「まっ!八幡も同じ0だしなっ!」

 

馬鹿!お前!俺の成績知ってる椿がそれ言われたら.....。

 

「.....ブラック☆スター」

 

「ん?どうしたよ椿」

 

「ブラック☆スター知らないのか?八幡は俺達より魂集めてるぞ?全部死神様に渡してるけどな」

 

「なぁーにー!?本当か八幡!!」

 

「......ああ」

 

デスサイズに興味が無い俺にとって退学にならないために一応鬼神の卵と化した魂を集めて死神様に渡している。魔女の魂だけは一度も狩れていない。

 

「たくっデスサイズにならねえとか。何しに此処に来たんだって話だよな」

 

先程シド先生にも言われた質問をソウルにも言われてしまったが俺の答えは変わらない。

 

「そんなの専業主夫になるために決まってるだろ?」

 

「え?八幡君て専業主夫になるために此処に来たの?」

 

「ああ」

 

だって後々便利だし、死武専卒業ってだけで良いとこに就職出来るし給料も良い。最初働きあとはのんびり暮らすつもりだ。

 

「なんだそれ全然COOLじゃねえな」

 

「COOLな男は補習するのか?」

 

「うるせーよ!くそっ!おいブラック☆スター早く補習すませちまおうぜ」

 

「ああそうだな」

 

ソウルとブラック☆スターは教室を出ていき俺とマカと椿さんが残った。

 

「それにしても武器だけで不便は無いの?」

 

「んー....無いな」

 

実際今のところ皆無である。ブラック☆スター程ではないが職人と同程度動けるしあとは俺の能力にも関係あるが。

 

「まあ八幡君の能力ってチートだもんね」

 

「チートってなんだよ....」

 

「マカちゃんは、ハチ君の武器の姿を見たことあるの?」

 

「あるというかなんというか....うーん....」

 

顎に手を当てて考え込むマカ。確かに俺の能力は説明しずらいわな。因みに何故マカが俺の能力を知っているかと言えばノットの時の授業で一度組んだことがあったからだ。あの時のマカは本当に男を毛嫌いしており俺に触れることすら嫌がったが余ってしまったのだから仕方がない。

 

「どう言えば伝わるのか分からないけど....八幡君の武器の姿って統一性がないんだよ」

 

「どういう意味?」

 

「んー例えばだけどね、椿ちゃんも色々な武器に変身できるよね?」

 

「うん」

 

「でもそれは暗鬼武器のはず。でも八幡君はそのくくりがないって言えば良いのかな?」

 

「それってどういう....」

 

「うーん....ものは試しかな。八幡君久し振りに良いかな?」

 

久し振りにと言われてもソウルと組んでからは初めてのような気がするが....。

 

「まあいいけど....」

 

そう言って俺は姿を大鎌の形に変えてマカの手におさまる。

 

色は上から下まで混沌とした黒色で他の色は一切ない。  

 

「ハチ君って大鎌だったの?それに普通に持ち上げてるってことは魂の波長も合ってるって事だよね?」

 

まあ当然の反応だよな。

 

「まず一つ目だけどね、八幡君は他の武器にもなれるよ」

 

「......はいはい」

 

俺は大鎌の次に刀、鎖鎌、ナイフ、ハンマー、盾等に変身して元の姿に戻る。

 

「俺はどんな武器の姿にもなれる」

 

「そう、それが八幡君の凄いところだけど本当に凄いのは別にある」

 

「今以上に凄いことがあるの?」

 

「うん。八幡君はどんな人とも魂の波長を合わせることが出来るの」

 

そう俺はどんな相手にも自分から魂の波長を合わせることで例え初めての相手でも俺を使うことが出来る。それは俺が魂感知能力に優れていることと単純に人の顔色を常に伺ってきた負け犬根性の賜物だろう。

魂の共鳴だけは誰一人として出来たことはないんだけどな...そんなに深く信用できる相手はいないし。そもそも俺のは信頼ではなくただ単純に相手に合わせているだけだ。こんな状況で魂の共鳴なんて出来るはずがない。

 

「も、もしかして....ブラック☆スターとも魂の波長を合わせられるの?」

 

凄い心配しながら聞いてくる椿さん....ああ、これが青春って言うのかな。べ、別に羨ましいとか思ってないし!

 

「合わせられるがあれの面倒を見れるのは椿さんだけだろ。俺には無理だしやる気もない。なんならマカの方がマシなまである」

 

「そ、そっか....」

 

安心してるんだよな....うん凄く分かりやすい。そして隣で私の方がまだマシってどういう意味!って若干怒りながらマカが言っているが無視だな、無視。

 

「無視すんなぁあああ!!マーカーチョップ!!」

 

「痛っ!!それチョップじゃねえだろ....」

 

俺はマカがどこから取り出したのか分厚い本で脳天を直撃されて床に崩れ落ちるのだった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 [⚪ーミン?いや違う、これはモドキだ]

現在俺はある洞窟の前まできている。

 

理由だがマカとソウルは魂集めにブラック☆スターと椿さんはアルカポネの魂の回収に行っていていないため若干教室にいずらいのだ。

 

他に話し相手がいない俺に原因があるのだがそこは良いとしよう。そこで図書室に籠っていると『EXCALIBUR』という本を見つけ気になったため今この場所にいる。間違っても教室にいずらいから伝説の聖剣を見つけるという理由にかこつけて来ているわけではない。

 

洞窟の中を見渡すと一面水で浸かっているのが見えて右手だけをグローブに変身させた。

 

「氷弾丸(アイスブリット!)」

 

俺は右手を勢いよく水に向けて降り下ろす。

 

チャプンという音の後にカチ....カチコチというテンプレ音よろしく水は氷っていき足場が出来たのでグローブの変身を解いて氷の上を歩いて奥に進む。

 

途中で妖精の攻撃にあったが無視だ、無視。

 

それにEXCALIBURについて聞こうとすると青筋を浮かべてどっか飛んでったし。そんなに大切な物なのか?

 

まあ伝説の聖剣なんて選ばれた奴しか抜けないらしいし俺じゃ無理だろ。俺自身武器だしな。

 

暫く歩き続けると大きく開けた場所に着き真ん中には剣が1本地面に刺さっていた。

 

間違いなくあれが本に載っていた聖剣だろうことは一目見て理解できた。俺は聖剣の前までいきそして剣の柄を掴み一気に引き抜いた。

 

............引き抜けてしまった。

 

 

「は?え?こんなに簡単に?」

 

自分の手に握られた聖剣を見ながら呟くと聖剣が光だした。

 

俺は目を閉じて再び開けると目の前には.....⚪ーミンがいた。

 

何を言っているのか分からないと思うが大丈夫だ。俺も分かってない。

 

「良く来たな。若者よ」

 

「.......」

 

一瞬の静寂を破ったのは⚪ーミンだった。

 

「挨拶が遅れたな。私の名前がエクスカリバーである」

 

「....いや⚪ーミンだろ?」

 

「ヴァカめ!!私の名前はそのような可愛らしい存在の名前ではない!エクスカリバーである!」

 

杖を此方に向けながら言ってくる⚪ーミン、モドキ。

 

「....それじゃあお前が噂の「ヴァカめ!!」....」

 

「私の伝説は12世紀から始まった」

 

だからなんなんだ......。

 

「あ、すいません。俺用事あるのでそろそろ「ヴァカめ!!」」

 

「私が話しているときは静かに願おう。私の伝説は12世紀から始まった」

 

「............」

 

「ヴァカめ!!人が話しているのだ、しっかりと相槌を打たないか」

 

「お前が黙ってろって「ヴァカめ!!」」

 

「なになに?私の歌が聞きたいか?」

 

誰もそんなことは一言も言っていない......。⚪ーミン、モドキ....いや長いな。もう、モドキでいいや。モドキは杖をクルクル回しながら歌い始めた。

 

「EXCALIBUR~ EXCALIBUR ~

From United Kingdom 

I'm looking for heaven 

I'm going to California 

EXCALIBUR EXCALIBUR 

From United Kingdom 

I'm looking for heaven 

I'm going to California 」

 

無駄に発音が良いところにムカついてくる。

 

この良く分からない歌を1時間散々繰り返しで歌い続けたモドキは剣に戻った。

 

「さあ!栄光が欲しければ私を使い共に進もうぞ!」

 

そして良く分からない戯言を延べたモドキを俺は地面深く突き刺すのだった。

 

帰りに妖精にあったが御互い顔に青筋を浮かべていた。

 

数日過ぎるとマカとソウルは死武専に戻ってきていた。噂では99個目の魂を回収してそのまま魔女の魂を回収しに行ったと聞いたが。

 

「ソウル、久し振りだな」

 

「あ、ああ....八幡か」

 

何処か元気が無く何時ものソウルとは違っていた。まさか魔女に負けたのか?

 

「まさか魔女に負けたのか?」

 

「あははは......勝ったよ。魔女じゃ無かったんだけどね.....」

 

「あー......」

 

隣のマカが言った一言で全てわかった。99個の魂の回収をした後に魔女の魂を食べると武器はデスサイズになることが出来る。だが99個の魂と魔女以外の魂を食べてしまうと99個集めた魂は死神様に全て没収されてしまうのだ。

 

つまり今この二人は1個も魂回収が出来ていないことになる。

 

二人は溜め息を吐きながら教室に入っていく。

俺も教室に入ろうとすると後ろから椿さんがやってきた。

 

「あ、ハチ君。おはよう」

 

「ああ.....何かあったか?」

 

椿さんは、マカとソウル程ではないが落ち込んでいた。恐らくまたブラック☆スターが原因で魂回収に失敗したのだろう。ブラック☆スターは一ツ星職人の中でもかなり上位に入る身体能力を持っている。武器を使わずに戦ったら死神である、キッドには劣るかも知れないが他の奴ではまず勝てないだろう。だがあいつの性格と武器があまりにもミスマッチだ。暗鬼職人であるブラック☆スターの本来の戦闘スタイルは相手に気付かれずに暗殺すること。だが目立ちたがりやのブラック☆スターは堂々と相手の前に出てしまうため気付かれずに暗殺なんてことは本来向いていない。

 

「はぁ.....また失敗しちゃってね。私がもう少し上手く出来れば良いんだけど」

 

それでも健気に自分を責める椿さん。今度マッカンでも奢ってあげよう。

 

「椿さんのせいじゃないと思うけどな。暗殺職人なのに先走り目立ちリスクを考えないブラック☆スターに俺は問題があると思う」

 

「で、でもそれは!」

 

椿さんは必死に俺に弁明してこようとしているのが分かる。

 

「分かってる。ブラック☆スターは強くなるためには努力を惜しまない。口だけの奴じゃない」

 

そう、ブラック☆スターは一度口にしたことは絶対に曲げない。だからこその今の高い身体能力を持っているとも言える。

 

「だからこそだが。椿さんも努力は惜しんでいないと思うし自分を責める必要は無いと俺は思うぞ?パートナーがいない俺に言われても説得力皆無だと思うけどな」

 

「ふふ、ありがとう。ハチ君のお陰で少し気が楽になった」

 

「俺は何もしてないと思うけどな.......まっブラック☆スターに暗殺は向いていない。ならだけどさブラック☆スターが望んでいる暗殺の仕方っていうのもあると思うんだよ」

 

「ブラック☆スターが望んでる暗殺?」

 

「ああ。それが暗殺と呼べるかどうかは知らないけどな」

 

「そんな方法があるの?」

 

「分からん。けどそれを見つけるのもパートナーじゃねえの?知らんけど」

 

「そっか.....」

 

椿さんは何かを考え込むようにして下を向く。

 

「それに重要なのは魂だろ?ブラック☆スターの魂がどうなるかは椿さん次第だ」

 

「私....次第」

 

椿さんはゆっくりと顔を上げて目には何処か決心したような固いものが見てとれた。

 

「ハチ君ありがとう。私少しブラック☆スターを探してきます!またサボってると思うから!」

 

そう言って廊下を走らないように早歩きで外に向かう椿さんを俺は後5分で授業始まるが間に合うかなと疑問を抱きながら教室に入るのだった。




評価、感想ありがとうございますm(._.)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話[大ピンチ!?補習授業は解剖実験!?]

俺の予想通りというかあの後ブラック☆スターを連れてきた椿さんは10分ほど遅れてきた。だが椿さんは怒られることは無かった。そう椿さんは。

 

その理由は10分ほど前に遡る。

 

何故か俺達の担当の先生のシド先生は死んだらしくデスサイズである人物が目の前にいた。

 

大鎌のデスサイズでありマカの実の父親。そして死武専にいる唯一のデスサイズ。他のデスサイズは各地にいて色々としているらしい。

 

マカに視線を合わせるとなんか非常に怒っていた。うん目が怖い。んでソウルに目を合わせると俺に聞いても分かんないぜ?ただシドにそっくりなゾンビに生徒が襲われるという事件が起こっているらしいと言われた。

 

と、言うわけで。最初に戻り椿さんは怒られることはなかった。

 

何故ならこのデスサイズ度が付くほどの女たらしだからだ。それが原因でマカの母親とも別れたらしいし。

 

ブラック☆スターと椿さんが教室に入るとマカとソウル。そしてブラック☆スターと椿さんは死神様が呼んでいるらしく授業を受けずにそのまま死神様の部屋。デスルームに行くらしい。

 

マカ達が行った後は普通に授業が始まった。授業内容は魂についてだった。

 

誰しもが持っている魂。それは良い人と悪人の魂の二種類がある。

 

鬼神の卵と化していない魂を武器が食べると大きな力が手に入るらしい。だが当然デメリットもある。人間の魂を武器が食べ続ければ狂気に支配されていずれは鬼神になってしまう。というものだ。

 

用は楽して強くなれるなんて思うなよって事だな。

 

授業が終わってもマカ達が戻ってこないことに違和感を覚えた俺は魂感知能力を使い何処にいるのか探ろうとした。が何処にも反応は無かった。俺の魂感知能力は死武専の中くらいなら何処にいても感じ取れるくらいには広いのだがそれが無いということは....。

 

「死武専内にはいないって事か.....」

 

俺はトイレに向かい鏡に息をはぁーと吹き掛け42-42-564と数字を書いた。

 

すると鏡はまるで画面のようになりデスルームにいる死神様を写し出した。

 

「お久し振りです。死神様」

 

「はろはろ~グットモーニーング♪どうしたの?何か用事?」

 

体を左右に揺らしながら問いかけてくる死神様。正直このテンションにはついていけない。

 

「マカとソウル。ブラック☆スターと椿さんが死武専にいないのですが知りませんか?」

 

「おやおや~?どうしてそんなこと気になるのかなぁ~?」

 

顔はドクロの仮面で見えない(本当に顔があるのかすら分からないが)が何処と無く馬鹿にされている気がする。

 

「授業途中で抜けたんで気になっただけですよ」

 

「ふふーん。彼らの居場所なら知ってるよー?でもー君に教えるつもりはないんだよね」

 

「っ!...それは何故ですか?」

 

「だってこれは彼らの補習だから。きっと君が知ったら助けに行っちゃうと思うし。ね」

 

俺が知ったら助けにいく?それほどにヤバイ相手が補習の相手?魔女か?いや流石にそれはないだろう。マカもソウルもブラック☆スターも椿さんも優秀だし、そんな無茶をさせるような人ではないな。死神様ではないことは俺も知っている。なら誰なのか....逆の立場になって考えてみればどうだ?

 

「ねえねえ?ちょっと聞いてる~?もーしもーし?」

 

「..............」

 

殺される心配は無い。ならこの死武専内にいる先生の誰か。シド先生は殺されたとデスサイズが言っていた。ん?何か引っ掛かるな....何故そんなに軽いんだ?確かに死とは常に隣り合わせだ。だがもう少し労いの言葉があっても良いだろう。それに色々と噂も聞いた。ゾンビが生徒を襲っている。

 

仮にそのゾンビがシド先生なら?

 

「ゾンビとなったシド先生の討伐?」

 

俺はボソッと呟いた。考えながら思い付いた答えを。

 

「......あららー誰かから聞いていたのかーなー?」

 

何処か半分諦めた用な声が鏡越しに聞こえてきた。

 

「当たりですか?」

 

「どうかなー。まだ半分ってところだねー」

 

まだ半分って事は本来の目的があるってことか。まずシド先生がゾンビになっているということは否定しなかったところを見ると本当なのだろう。それなら人をゾンビにすることが可能な人物が犯人ということか......それって。

 

「シュタイン先生ですか....」

 

「当たり。こんなにも的確に答えに辿り着くなんてね.....もう、ビックリー!!」

 

最初の真剣な表情は何処にいったのか一瞬でいつも通りに戻る死神様。

 

シュタイン先生の居場所なら知っている。出来れば行きたくはないが行かねばならないだろう。下手をすれば4人が死んでしまう。

 

「それでは死神様。俺は用事が出来たので」

 

「だから駄目だって言ってるでしょー!?」

 

「相手がシュタイン先生では信用できません。悪いですけど行かせてもらいます」

 

「罰は受けてもらうことになるかもよー?」

 

「構いません」

 

俺はそれだけ言い残しシュタイン先生がいる墓地近くのツギハギ研究所に向かって走った。

 

4人の無事を祈りながら。

 

 

 

さて急いで走ってきたのは良いのだが問題が起きた。あの変態博士はマカのお腹に何やらカキカキしているタイミングだった。俺は仕方なく視線を反らす。いやだって見るわけにもいかないだろ.....。

 

「眼鏡カチ割んぞてめぇー!!俺様の存在を忘れんなよ!」

 

とブラック☆スターが物凄いスピードで変態博士の後ろから直接魂の波長を流し込んだ。

 

正直この才能は凄いと言わざる得ない魂の波長を相手に流すなんて離れ業出来るやつそこにいる変態博士かブラック☆スターくらいしか俺は知らない。もしかしたら他にもいるのかもしれないが俺の友達の友達までの関係までには存在しない。

 

ブラック☆スターの波長を流されても変態博士は悠然とその場に立ち尽くしていた。

 

俺は心の中で舌打ちをする。ブラック☆スターの魂の波長の威力は一級品だ。才能だけなら変態博士をも凌ぐかもしれない。だが圧倒的に経験が足りていなかった。

 

変態博士は両手をブラック☆スターの頭に近付けて魂の波長を流し込む。

そんなことをされれば頭は電子レンジでチンされているようなものだ。最悪使い物にならなくなる。

 

俺は自分自身を手裏剣に変身させて変身した勢いを使いシュタイン先生の喉元目掛けて飛んだ。

 

「くっ.....」

 

突然の事で一瞬対応が遅れたシュタイン先生だが流石と言うべきか瞬時にブラック☆スターから意識を手裏剣に変えて魂の波長を込めたまま素手で俺を弾いた。

 

割られるかと思うほどの痛みが襲ってきたが変身を解き少し離れる。

 

この時ソウルがマカに何か言っているが聞いている余裕が無いほどに俺は戦慄していた。

 

「やあ。誰かと思えば比企谷君じゃないですか。どうしたんですか?解体されに来たんですか?」

 

そう言いながら魂が大きく膨れ上がっていくシュタイン先生から少し後ずさってしまう。希に見る、というか久し振りに見るシュタイン先生は怒っていた。

 

「しゅ、シュタイン落ち着け。そいつは死武専の生徒の「関係ないですよね?今回の補習には含まれていませんから。それに」」

 

シュタイン先生は煙草を捨てながら言い放ってきた。

 

「容赦なく僕の喉元目掛けて飛んできましたし」

 

あ、というかシド先生いたんですね。なんかゾンビだけど、そして縛られてるけど。

 

あーこれ久し振りにピンチのやつだ。

 

「でもシュタイン先生。武器も無しに俺と戦う気ですか?そのままでは魂糸拡散縫合はおろか魂糸縫合ですら使えないでしょう?精々魂の波長を打ち込むだけだ」

 

「確かにそうだがそれでも武器であり一ツ星の君に負けるつもりはない」

 

そうなんだよなぁ....。

 

はぁ....家に帰りたい。

 

ブラック☆スターは未だに伸びていて椿さんが膝枕してるし、マカはシュタイン先生の魂が見えたからなのか震えてるし、ソウルが何とかしようとしてるが.....さてどうするか。

 

「よし決まった」

 

俺は右手と左手を銃の形に変えてシュタイン先生を見据える。以前キッドの戦い方を見て真似しようとして銃を逆さまに変身したが上手くいかなかったため今は普通に変身させている。

 

「ほほう。距離をとって僕に魂の波長を打たせない気ですか」

 

勿論その通りだ。てかあれ痛いし。

 

「あんたと戦うんだ。これくらいのハンデは良いだろう」

 

因みにこの銃だが只の銃ではない。俺は魂の波長をコントロールして銃弾として相手にとばすのだ。ハッキリいって疲れるが当たったところは氷るのだ。この能力はまだ誰にも言っていない秘密である。

 

俺は軽く距離をとりながら右手の銃から銃弾を打ち出す。シュタイン先生はそれを避けながら俺に迫ってくる。正直笑いながら迫ってくるのは止めてもらいたい。

 

俺はある程度近付いて来たシュタイン先生の足元に魂の波長をコントロールした銃弾を打ち込む。

 

シュタイン先生は普通に横に飛び避けたが地面が氷ったことに驚愕している。

 

「これは....」

 

「驚きましたか?」

 

「まさかここまで魂の波長をコントロール出来るとは....」

 

この氷らす能力は友達の友達がカンテラという武器で炎をだして攻撃していたことをヒントにして習得した業だ。ある意味形に捕らわれていない俺だから出来たのかもしれない。

 

そしてシュタイン先生と会話している間も地面は氷続けてシュタイン先生の足元を氷らした。

 

「っ!これは」

 

シュタイン先生は気付いたようだが既に遅い。なんたって。

 

「八幡君ごめん。迷惑かけた」

 

「俺は自分がやりたいと思ったからしただけだ。お礼を言われるような事はしてねーよ」

 

「ははは、ありがとう。すぅ.....はぁ....。ソウル行くよ」

 

大鎌の状態では此方にはソウルの返事は聞こえないがおう!と言っている。そんな気がした。

 

「(魂の共鳴!!)」

 

「っ!!」

 

シュタイン先生もマカとソウルの共鳴率に驚いている。本来魂の共鳴は職人が武器に魂を流し込み、それを何倍にもして武器が職人に返すことを繰り返すことで大技を使ったりすることが出来るのである。

 

分かりやすく言えばギターが職人でアンプが武器と言うことだ。

 

「はぁああああ!!」

 

「驚いたな....この年で魔女狩りが打てるのか」

 

シュタインはさらに驚愕に目を開いている。あ、でもこのままだとシュタインよけれないし死んじゃうかな?まぁそれならそれでいいか。

 

マカー!ソウルー!頑張ってくれー!

 

「鎌職人伝統の大技魔女狩りぃぃいいい!!!」

 

大鎌の形が三日月になりシュタイン先生目掛けて降り下ろされる。

 

気のせいだろうか....シュタイン先生が何処と無く笑っているように見えるのは....。

 

降り下ろされた魔女狩りはシュタイン先生の真剣白羽取りよろしく、綺麗に捕まり砕かれた。

 

本当にシュタイン先生は人間なのだろうか.....。

 

砕かれた余波で吹き飛ぶマカに覆い被さるようにするソウル。

 

そのソウルに少しずつ近付きそして........。

 

 

ポフンという音が似合いそうな間抜けな音がしたかと思うと合格と言われて撫でられるソウル。

 

ここにいる全員が?マークだろう。

 

そしてシド先生も補習の為に演技をしていた事を皆に伝えていた。シド先生と何があったのか分からない俺は何が何だか分からんが。

 

「それで比企谷君ですが、僕と居残りをしましょう」

 

そう言いながらヘラヘラと笑って追いかけてくるシュタイン先生から必死になって逃げる1日となった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話[注目の転校生?八幡とデス・ザ・キッド]

感想や評価ありがとうございます。やはり付けてくれるのは嬉しいですね。

今回は少し長いです。


シュタイン先生から無事に逃げ切り家に帰った俺はベットに倒れるようにして眠った。そして次の日の朝である。時計を見て俺は手を震わせている。

 

現在の時刻は既に授業が始まってから3時間ほど遅れていた。つまりは寝坊したのだ。

俺は慌てて着替え家を出て死武専に向かった。まぁ向かうと行ってもそこまで距離は離れておらず最大の難関である階段さえ上りきれば直ぐである。

 

死武専の階段前まで着くまでに5分。階段を上りきるのに15分かかった。どれ程長い階段なのかが伺えるだろう。

 

走って来たこともあり汗を拭うと俺目掛けてソウルとブラック☆スターが吹っ飛んできた。

 

咄嗟の事で交わすことが出来ず二人のクッションになるような形でぶつかり後頭部を強打する。

 

「くっそー!俺様達の力見せてやろうぜ相棒!」

 

「おうよ!」

 

そして人の上で腕を組みだす二人に俺は本気で右ストレートをぶつけた。

 

「ぐはっ」

 

「な、なんだ?」

 

二人はよろつきながらも殴った張本人である俺を見る。

 

「八幡じゃねーか!何でいきなり殴るんだよ」

 

「俺様の舞台に横やり入れるとか覚悟は出来てるのか?」

 

「先に俺に向かって吹っ飛んできたのは誰だ?」

 

「あ、悪い巻き込んでたのか」

 

ソウルは素直に謝るがブラック☆スターは俺に人差し指びを向けながら挑発を続けてくる。

 

「おい。余所見をしていても良いのか?」

 

そう言いながら魂の波長が銃弾のように何発もとんできた。こんなことが出来るやつを俺は一人しか知らない。

 

「キッドが何でこんなとこにいるんだ?」

 

キッドは死神様の実の息子であり死神なのだ。生徒ではなく死神であるキッドは死武専には通っていない。ただ鬼神の卵と化した魂集めはしている。よく掲示板に難易度が高い物がいっせいにキッドにより消えたものだ。最近でも難易度の高い魂回収をしたらしいと噂では聞いていた。

 

「あいつ今日から死武専生になるらしんだ」

 

ソウルのお陰でブラック☆スターとソウルがキッドに喧嘩を売った理由が分かった。注目の転校生が気になるソウルと自分より注目されている転校生に僻んでいるブラック☆スターという理由か。

 

「ん?そこにいるのは比企谷か?」

 

キッドが俺に気付いたようで聞いてくる。正直言ってこいつに見付かって良いことがあった試しがない。

 

「いや人違いだ」

 

「ふむそうか....だが比企谷じゃないとしてもだ。その頭のアホ毛はなんだ!」

 

会うと毎回言われるがアホ毛とはなんだと言いたい。俺のアイディンティティーであり俺自身気に入っているのだ。

 

「おい八幡。なんか叫んでるぞ?」

 

ソウルそこは無視で良いんだよ無視で。

 

「貴様の髪型をキッチリカッチリ撃ち抜きシンメトリーにしてやる。リズ、パティ!」

 

意味が分からない事を叫んでくるキッドを見ながら俺は思う。うん俺帰っていいかな?

 

「((魂の共鳴!!))」

 

キッドが叫ぶとキッドの魂は膨れ上がり銃の形も変化していく。

 

俺はキッドがやろうとしていることを理解してなんとか逃げる算段を考えるが目の前の馬鹿二人は何故か今のキッドを挑発している。恐らく魂が見えていないのだろう。そんな幸せな奴等を尻目に俺は逃げようとするがいつからいたのか離れたところで此方を見ているシュタイン先生と目があった。隣にはマカと椿さんもいるようだ....何故だ?

 

「比企谷君遅刻ですよ。後で補習をと言いたいところですがキッド君に勝てたら補習を見逃してあげましょう」

 

この言葉で全て決まった。キッドに勝つしかないと。

 

充填が後少しで完了するようで死刑執行モードに入っている。キッドの得意とする共鳴技のデスキャノンは威力が高いがスピードはそこまで早くない。精々普通の銃弾と同じか少し速いか程度だ。

 

此方に銃口を向けた時の重圧を感じ取ったようでソウルは若干慌てだしたがブラック☆スターは相変わらず挑発している。俺が武器になりブラック☆スターに使って貰えば勝てるような気もするが椿さんの前であまりブラック☆スターと一緒に闘いたくはない。それもキッドレベルの相手を倒してしまえば落ち込む気がする。そして悪ければヤンデレぽくなりそうで怖い。てことでソウルを俺が使うという手しか無くなった。

 

「ソウル!急いで武器に変身しろ!」

 

「はぁ?今はそれどこじゃねーだろ!?」

 

今の状態で武器が武器にならなくてどうするんだと言いたいが今はそんな事を言っている余裕はない。俺はソウルの右腕を引っ張り左側に全速力で逃げる。

 

後ろから聞こえてきたのは爆音とブラック☆スターの悲鳴だけ。

ソウルはその状況を見て少し顔を青くしている。

 

「ソウル、変身してくれ」

 

「分かったよ」

 

頭が冷えたのか素直に大鎌になってくれたソウルを掴む。ソウルの魂の波長を見て自分の魂の波長を合わせる。深呼吸をしながら大鎌を手元で回転させてキッドを睨む。

 

「キッド久し振りだな」

 

「誰かは知らんがそのアホ毛だけはキッチリカッチリ撃ち抜かせてもらうぞ」

 

再装填をしながら銃口を此方に向けてくるキッド。これで会うのは2桁を越えているはずだが、と思ったが自分で先程言った言葉を思い出した。

 

「俺は比企谷だ」

 

「ふん知っていたわ。この戯けが!」

 

知ってたのかよ、と心の中で一応突っ込んでおく。

 

「だいたいお前は何でもキッチリとかシンメトリーとか細かすぎるんだよ」

 

「なんだと.....貴様っ!デスキャノン!!」

 

いつの間に装填が終わっていたのか此方に向けてデスキャノンを撃ってくるキッド。避けるには少し遅すぎたので大鎌を両手で持ち目を閉じる。

 

(おい!どうしたんだよ!このままだと吹っ飛ばされちまうぞ!)

 

ソウルの声が聞こえてくる。俺はその声に信じろ。とだけで返して意識を集中する。キッドの魂とリズとパティの魂。そして此方に向かってくる魂の波長による砲撃。

 

「ふぅ.....」

 

俺は少し息を吐き大鎌を振り上げて魂の波長の砲撃にかすらせるようにしながら斜めに降り下ろした。

 

砲撃は軌道がズレ俺の右斜め後ろで地面にクレーターをつくった。

 

「なにっ!?」

 

キッドは驚いているが俺はただ単純に軌道をズラしただけだ。銃撃、砲撃の類いは魂の波長をとばしていたとしても所詮着弾しなければ意味をなさない。なら簡単だ、着弾しない程度にかすらせて軌道をズラしてやればいい。

 

(おい!今のどうやったんだよ!!)

 

ソウルも叫んでくるがいちいち説明している余裕はない。そもそも魂感知能力が得意な為に目を閉じてより強く魂の波長の軌道等を確かめたから出来ただけで普通の銃弾を撃たれればこんなことは出来ないのだ。まぁ普通の銃弾なら全て弾き落とすが。

 

「やはり一筋縄ではいかんようだな」

 

キッドは死刑執行モードを解き銃も普段の大きさに戻っていく。

 

「死神体術、罪の構え」

 

「あ、出た。チート技」

 

思わず口に出してしまった。右手を上に上げ左手を下に腰はくねらせて足は交差させているこの構えは遠距離にも近距離にも対応出来るチート技だ。ただこの間鏡みながら真似できるかやってみたらおもいっきり腰つって俺では無理でしたマル。

 

「行くぞっ!」

 

キッドはジャンプで跳躍しながら俺に向けて銃を乱射してくる。正直デスキャノンの方が数倍ましだ。あれは簡単に避けれるし隙もでかいがこれは避けるのに精一杯だしそもそも隙が無い。近付いても駄目。むしろ近付いてくるし、離れても撃たれる。しかもこっちは鎌だ。遠距離武器ではない。なら選択肢は一つしかない。

 

「ソウル、突っ込むぞ」

 

(おうよ!)

 

キッドは相手が近距離に来ると何故か万能な罪の構えから防御重視の罰の構えに切り替える事が多い。恐らくだが自分が傷付いてシンメトリーを壊されたくないのだろう。そこがチャンスだ。

 

「まさか武器である比企谷が接近戦をしてくるとはな」

 

全くもってその通りだ。俺ではキッドはおろかブラック☆スターすら接近戦では勝てない自信がある。だからこれは賭けだ。俺の能力も含めた大きな賭け。

 

キッドの銃撃を鎌で弾きながら近付きキッドとの距離は20メートルをきるところだった。

 

俺は鎌を右手だけで持ち左手を大きめの盾に変身させた。

 

「ふんっ!そのような盾くらい.....」

 

キッドの攻撃が突如として止み此方を見ながら震えている。俺の左手が変身したのは盾だ。それもシンメトリー(左右対称)の盾だ。罪の構えから罰の構えに切り替えはしなかったが大きな隙を作ることはできた。

 

俺はキッドが怯んだ一瞬?の隙に鎌で峰打ちだが鎌を振り上げて力強く腹に叩き付けた。

 

「ガハッ!」

 

キッドは唾液を吐き出しながら後ろに吹き飛ぶ。だが死神であるキッドの体は常人より頑丈で今程度の攻撃では気を失ってはいないだろう。

 

砂埃を巻き上げながらキッドは立ち上がってくる。今だ罪の構えのままだ。

 

「くそ...なんて事だ。あそこまで左右対称な盾が今まで存在したか?いやしない。俺は見たことがない....駄目だ俺ではあれを攻撃することが出来ん..」

 

キッドはその場で項垂れる。毎度思うがこの性格本当に直した方がいいと思う。実践でもこんな感じだしよく今まで生き残ったものだ。

 

リズとパティが見かねたのか変身を解きリズがキッドに近付き此方に指を指して何かを言っている。そしてキッドはそれに頷くと立ち上がりリズとパティは再度武器に戻った。

 

「ふん...そのシンメトリーな盾に騙されたが右手には鎌で左手には盾ではないか!」

 

つまりは。

 

「全然シンメトリーではないではないか!!虫酸が走るわ!」

 

また此方に銃を乱射してくるキッド。それを全て盾で防ぐ。キッドは何故かなかなか近付いて来なくなった。まさか武器である俺に対して接近戦が怖くなったとかそういう理由ではないだろう。

 

では何故か......。

 

「キッド。どうして接近戦に持ち込まないでさっきから無駄に銃を乱射してるんだ?」

 

「別に深い意味はない。だが先程話している時に時間を貰ったのでな作戦の時間くらいは待とうと思っただけだ」

 

「それじゃあ撃つのを止めて待ってもらえないですかね?」

 

現在も撃つ事だけは止めないキッドに俺は悪態をつく。実際うっとおしくて集中して作戦考えるとか無理である。

 

「ふむ、それもそうだな」

 

そう言うとキッドは撃つのを素直に止めてくれる。

 

さてどうするか禁じ手を使ってしまおうか.....うん疲れたし使ってしまおう。

 

「キッド」

 

「ん?どうした」

 

「前から気になってたんだが。お前は左右対称でシンメトリーが好きだったな」

 

「それがどうかしたか?」

 

「ならお前の右側前髪にある白い三本線ってシンメトリーじゃ無くないか?」

 

「は?..............え?.........」

 

キッドは自分のポケットから手鏡(常に持ち歩いているらしい)を取りだし鏡を見ながら震えだして血を吐き出しながらその場に倒れた。

 

「お、おい!キッド大丈夫か!?」

 

「おーい。キッドくーん。あははー。つーん、つーん」

 

リズの声にもパティがつんつんしても反応無し、よし俺の勝利である。

 

「よし。ソウルありがとな」

 

俺が鎌から手を離すとソウルは鎌から姿を戻した。

 

「たくっ......最後の勝ちかた。全然COOLじゃねぇ....」

 

「勝てば良いんだよ、勝てば」

 

そう勝者こそ正義である。

 

「いやー凄いですね。本当にキッド君を倒してしまうとは。最後のは、まぁおまけにしておきましょう」

 

シュタイン先生の事だから何か言ってくると思ったが意外にも称賛の声をかけられた。

 

「マカ....」

 

「あんまダセーことしてんなよな。八幡君来なかったらあのままブラック☆スターと一緒に吹っ飛ばされてた」

 

「ああ、全くだな。全然COOLじゃねぇ」

 

「ぷっはははは」

 

「はははは」

 

うん、仲がよろしいようで良いんじゃない?ただね?俺の近くで止めてもらいたい、非常にいずらいから。

 

「さてと。このまま教室に戻りますよ」

 

そう言えば....。

 

「ブラック☆スターは?」

 

「ああ。ブラック☆スターなら椿ちゃんが保健室に連れていったよ」

 

いつの間に.....。

 

「あたしらもキッドを保健室に運んでから行くわ」

 

「えへへへ。お姉ちゃん頑張れ~」

 

「パティも手伝ってよ!」

 

「えー疲れたからやだ」

 

バッサリである。流石姉を尻に敷くパティである。

 

「あ、そうだ。比企谷」

 

「な、なんでひょうか?」

 

怖くてつい噛んでしまった....リズさんは怖いんだよなぁ....昔カツアゲされたことあるし。

 

「次キッドの前髪の事言ったら全部お前に任せるからな?」

 

「すいません....」

 

もうキッドと戦うことなんて無いと思うし大丈夫だろう。それに他にも弱点はあるしな。キッドも保健室に連れていかれて俺とシュタイン先生とマカとソウルが残った。

 

「あ、そうだった。比企谷君」

 

なんだろう...凄く嫌な予感がする。

 

「.....なんですか?」

 

「死神様が呼んでましたよ。直ぐにデスルームに向かってください」

 

「それって....補習無しになった意味ないのでは....」

 

「死神様からの呼び出しなので断れませんよ」

 

ふぅーと煙草を吸いはじめて何時もの笑みを浮かべるシュタイン先生を見て俺は思う。

 

やはりこの先生を信じるのは間違っている。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話[死神様からの罰?八幡デスサイズを目指す]

感想お気に入り本当にありがとうございましたm(._.)m毎度励みになっております。


※今回の話でタグを増やしました。詳しくは小説情報に記載してあります。


現在デスルームにて。

 

俺は絶賛土下座なうである。

 

「あのー...ちょっとまだ話何もしてないんだけど?」

 

呼び出された原因は恐らく以前のマカ達の補習の件であろう。あの時何かしらの罰があることは分かっていたからな。ならば、だ。何か言われる前に土下座だ、土下座。ん?プライド?俺にプライドなんてあるわけない。この状況がなんとかなるなら靴なめだってなんだって出来る男だぞ俺は。

 

なんの反応も示さずに土下座を続ける俺に呆れたのか死神様は溜め息を吐いてデスルームに誰かは分からないが入って来るように促した。

 

「はぁー。まあ言いっか。えーと~なんか話にならないから取り合えず入っちゃって~」

 

何時もの陽気な声で死神様が呼ぶとコツコツと誰かが近付いてくる音が聞こえて顔だけ上にあげた。

 

「こんにちわ~♪て、どうして土下座してるんですか?.....」

 

半分呆れた、というよりは引いている少女が目の前にいた。

 

「君の罰はね~。デスサイズを目指して貰うことなんだよね~」

 

「なん.....だ、と?」

 

一瞬耳を疑った。いや幻聴であってほしいと今でも思っている。

 

「よろしくお願いします~。わたしーノットなんですけど~本当に良いんですか?」

 

「ああ、良いのー良いの~。気にしないでね~彼パートナーが出来ない可哀想な子だから」

 

俺を他所になんて事を暴露しやがるこの駄死神は....。

 

「あーそうなんですか~?」

 

「あーでも腕だけは確かだから組んで後悔はするかもだけどー損はしないと思うよ!」

 

「んーまぁわたしとしてはー良いお話であると思いますし~良いんですけど一ツ星の先輩はわたしなんかで良いんですか?」

 

上目遣いに瞳に涙まで溜めて現在土下座なうの俺に聞いてくる。なんていうか....あざとい。

 

「いまいち状況が読めないんですが.....」

 

「んー君は確かに強いけど。魔女と戦うとなったら絶対にーパートナーは必要だと思うんだよねー」

 

死神様の言う事は確かに最もだ、と思う。武器一人で魔女を倒すなんて自殺行為この上無い。それに俺の実力なんてたかが知れている。なら何故今までパートナー無しでもなんとかなっていたのか。それは魔女には挑まずに鬼神の卵と化した魂だけを狩っていたからだ。ぶっちゃけ魔女以外なら余程狂気に呑まれていない限りは弱い。ブラック☆スターが未だに一つも魂回収出来ていない理由が分からないレベルで弱い。

 

俺は土下座を止めてその場に座り頭をかきながら死神様に聞く。

 

「魔女を倒すためにパートナーが必要になる。それは分かりました。パートナーが出来そうもないから用意してくれた、納得はしたくありませんが、いらん世話ですがこれも分かりました。ですが何故俺がデスサイズを目指さないといけないんですか?」

 

いくら考えてもこれだけは分からない。デスサイズ志望はあくまで自主的な筈だ。てかなれる人材なんて実際一割未満だろう。皆魔女の魂だけが回収出来ない。ましてや命を落とす職人や魔女との戦闘の恐怖により挫折してしまう者まで現れるくらいだ。

 

「んーとね~。僕が君を使ってみたいって理由もあるんだけどね~。実は他にもあるのよ」

 

死神様が俺を使うとか勘弁してもらいたい。死神様はデスサイズしか使うことはない。その理由は噂だが死神様の魂の波長が強すぎて耐えれる武器がデスサイズしか無くデスサイズになっていない武器を死神様が使うと武器が砕けるらしい。あくまで噂だが恐ろしい限りだ。

 

「それで他の理由とは?」

 

「んーこの頃不穏な気配があちこちで見受けられてるのよねー。それを調査してほしいんだけど頼めないかな?」

 

「嫌です」

 

「即答!?しかも断るんですか?」

 

少女は驚いているがそんな危なそうな話、好きで乗るやつなんて.....結構思い付くから困る。が、俺は嫌だ。めんどくさい。

 

「はぁーー。断られると思ってたよ~。だから罰なんだよね~」

 

「まさか....」

 

「そう!悪いけどそこにいる一色ちゃんと一緒に偵察よろしくねっ!」

 

HEYヨーみたいな擬音が出てきそうな感じで此方に手なのか曖昧な白いハリセンを向けてくる。

 

「はぁ......分かりました。罰はデスサイズを目指す事。偵察をする事。それでいいですね?」

 

「そうそう。物分かりが良いじゃない~」

 

「あのーわたしと組むのは良いんでしょうか?」

 

少女は心配になったのか手を上げながら不安げに俺を見つめてくる。

 

「俺と組んでも良いことないぞ.....」

 

「へ?それって....」

 

「素直に良いって言えないのは相変わらずだね~。じゃっパートナーも決まった事だし。行ってみよっ!」

 

某有名なOPなんかかけさせないぞ俺は。

 

「あ、わたし。一色いろはって言います。ノットで、一応職人です♪」

 

片手を俺に差し出していると言うことは握手を求めているのだろうか......。後ろで笑っている死神様は後で殴ろう。

 

「ああ....よろしくな」

 

俺は握手に答えてからこれからの事を話し合うことにした。なんせ死武専では何故か知らんが武器と職人は同じ家で住むことが多い。マカとソウルもそうだし、ブラック☆スターと椿さんもそうだ。それにキッドにリズさんにパティも一緒の家に暮らしているらしい。武器と職人は常に一緒に行動を共にすることで魂の波長を普段から合わせる練習をするらしい。だが考えて見てほしい。俺は相手に魂の波長を合わせることが出来るのだ。態々一緒にいる必要は無いし一緒にいて微妙な空気になってみろ、それこそ支障しかきたさないわ。

 

てことで、だ。まず最初に話し合うことは。

 

「一色....さん。て言ったか?」

 

「ぷっ....一色で良いですよ。先輩なんですから」

 

軽く笑われてしまった....もう無理だ、死のう。キッドの口癖が移ってしまったようだ。落ち着け俺。

 

「えーと...それじゃあ一色は何処に住むんだ?ある程度近い方が依頼を受けたときに助かるんだが」

 

「わたし、先輩の家に引っ越しますよ?」

 

「は?」

 

この子は何言ってるの?当たり前でしょ?みたいな顔して首を傾げるのは止めなさい、勘違いしちゃうから。

 

「は?ではなくてですね。武器と職人は二人で一つ。常に行動は共にすること。じゃないですか~」

 

ないですか~じゃないんだよ!くそう....どうしてこんな目に....。

 

「あ、あのな一色。武器と職人である前に俺は男で一色は女だ。この意味が分かるだろ?」

 

そう、男女が一つ屋根の下なんて俺には無理だ。

 

「は?何ですか先輩誘ってるんですか?ちょっと上の実力で死神様からも一目置かれてるからってちょっと責めればいけると思ってるんですか?そんな甘い考えではわたしは落ちませんのですいません。ごめんなさい」

 

「.......」

 

なんだ....物凄い早口で罵倒されつつフラれた気がする。

 

「まぁ~先輩と暮らしても何も起きませんよ♪」

 

「嫌だ......一緒に暮らすのは断固拒否する」

 

「どうしてですかっ!?こんなに可愛い後輩と何もないとは分かつていても一つ屋根の下なんですよ?喜ぶべきところであり拒否するところじゃないじゃないですかー!」

 

ぷくーと頬を膨らませながら言ってくる一色を見て少し心が揺らぐがここで了承するわけにはいかない。

 

「いや別に喜ばねーし。てか女子寮あるだろ?」

 

俺の女子寮という言葉を聞いた瞬間、一色の顔色は真っ青になり震えだした。

 

「女子寮....ですか。もう.....あそこだけは..........」

 

なんかぶつぶつと頭を抱えてしまった一色に若干の罪悪感を持つが俺はまだ折れる気はない。

 

「分かりました.....」

 

ひとしきり言い終わると何かを納得したように顔をあげる。

 

「そうかそれじゃあ「先輩の家の玄関の前で寝ることにします」.......」

 

もう言葉すら出なくなりました。この時の俺の顔はさぞ驚愕に染まっていたことだろう。

 

「.......分かった。良いから一緒で良いから玄関とか止めてくれ....」

 

下手しなくても俺が捕まる。

 

「はい♪では先輩これからよろしくでーす♪」

 

ウインクしてくる後輩と一緒に家に帰る道のりは普段より足が重く感じた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話[死神様の策略?八幡の何もない1日]

今回は特に話は進みません。すいません....次から少し進んでいきます。クロナまでいけるといいなぁ...。



布団の上で目が覚めて時計を見る。良かった今日は遅刻ではないようだ。そしていつも通りの俺の生活が。

 

「おはようございます♪先輩」

 

音もなく崩れ去った。

 

昨日一色という少女がうちに来たのは夢では無かったようだ。こんな思春期真っ最中のような夢を見るだけで悶えてしまうが現実だと疲労感しか襲ってこない。

 

「おう...」

 

「おうってそれだけですか?」

 

他に何があるの?

 

「はぁ...まあー良いですけどね。朝御飯出来てるので早く食べましょう」

 

は?朝御飯?

リビングの机の上には一般的な朝食で出てきそうなご飯とベーコンエッグ、味噌汁が並べられていて空腹感を刺激する匂いがしていた。

 

「どうして朝御飯を?」

 

「何もしないで住まわせて貰うのは流石に気が引けますし。なら朝御飯くらいは作ろうかと思いまして。あっ先輩朝はパン派でしたか?」

 

少し落ち込んだような何処か哀愁を漂わせながら聞いてくる一色にパン派等と言えるはずもなく俺は首を横にふる。

 

「いや驚いただけだ。その.....なんだ。ありがとな」

 

「.......」

 

一色は呆けながら俺の顔を見てくる。俺の顔に何かついてるのだろうか?

 

「なんだよ」

 

「驚きました。先輩、お礼なんて言えるんですね」

 

俺はこいつにとってどんな奴に見られているんでしょうね....。うん、聞くのはよそう。朝からテンション下げたくないし。

 

俺は椅子に座り箸を使ってベーコンエッグを口にいれる。

 

「うまい.....」

 

「え?何か言いましたか?」

 

一色には聞こえなかったみたいだが一色が作ってくれたベーコンエッグはとても美味しかった。

 

「別に....」

 

俺の目の前で割り箸を使用して食べている一色を見て箸でも買ってあげようかなと我ながららしくないことを考えている俺がいた。

 

 

 

朝食も終わり死武専に向かうために仕度をして扉を開けると何故か一色がいた。

 

「やっぱり先輩は一人で先に行こうとしてましたね」

 

「やっぱりってなんだよ。てか普通別々に行くだろ?」

 

一緒に登校なんてしたらブラック☆スターやソウルに何を言われるか分かったものではない。

 

「えー普通一緒に行きませんかね?」

 

「いや行かないから。てか一色だって嫌だろ?俺みたいな目の腐った奴と登校とかしてみろ。変な誤解されるかもしれないぞ?」

 

実際されることは多い。なんせパートナー同士で付き合ったり、結婚したりする奴は多いのだ。パートナーになっただけでも男女なら誤解されることもあるくらいだ。それが朝から一緒に登校してみろ、絶対に誤解される。

 

 

「わたしは別に構いませんよ?周りの意見なんて気にしませんし。そこまで仲が良い友達もいませんから」

 

昨日今日知り合ったばかりだが一色は時折この表情を見せる。それがむじかくなのかはまだ分からないが俺としてはこの表情はあまり見ていたくなかった。

 

「なら好きにしてくれ.....」

 

「はい♪」

 

俺は諦めて歩きだし隣を一色が歩きだした。

普段から俺の隣を歩く奴がいなかっただけにどこかこそばゆいというか.....この感情が何なのかは分からないが、歩くペースを何時もより遅くした。

 

 

さて死武専に着いてノットである一色とは別れ俺は教室に来ていた。

 

「よう、八幡。遂にお前にもパートナーが出来たんだってな」

 

第一声はソウルに話しかけられた。何故その事を知っていると聞きたかったが恐らく死神様が話したのだろう。

 

「ああ....まあな」

 

「八幡君、おはよう。なんか何時もより疲れてる?」

 

ソウルと一緒にマカも来て俺の様子を見て心配になったのか体調の心配をしてくれる。

 

「ああ、おはよ。色々あってな....」

 

自身の言葉で思い浮かべるのは、昨日知り合ってパートナーになった一人のあざとい後輩の顔。

 

「ふーんそうなんだ。でも驚いたよ、八幡君がデスサイズを目指すなんて」

 

死神様は何処まで話したのだろうか....全て筒抜けの気がしてきた。

 

「目指したくて目指すんじゃないんだけどな....」

 

俺は溜め息を吐きながらマカに言葉を返す。マカはどうやら俺が自主的にデスサイズを目指すと思っていたらしく死神様は伝えるべき場所をしっかりと伝えていないようだ。

 

「よう!八幡!お前デスサイズを目指すんだってな!!」

 

教室に入ってくるなり俺の机の上にジャンプしてきたブラック☆スターが何やら叫んでいる。

 

「ご、ごめんねハチ君。ブラック☆スター!机の上に上っちゃいけません!」

 

ああ...なんていうか。椿さんの気苦労が伺えるなぁ。ストレスで死なない事を祈ってるよ。

 

「ああ?椿!俺様のステージを邪魔するんじゃねぇ!!俺は今八幡に言いたい事があってここに立っているんだ!!」

 

「........何のようだ。ブラック☆スター」

 

話を聞いて早く立ち去ってもらおう。

 

「おう!俺と勝負しやがれ!!前まではパートナーがいねえってんで本気でやれる時はなかったからな!!」

 

「お、良いなそれ!俺も混ぜてくれよ」

 

ブラック☆スターとソウルの予想以上の絡みに若干イラつきマカと椿さんに視線を移すとマカはソウルにマカチョップを椿さんはブラック☆スターの耳を引っ張りながら苦笑いで俺に謝りながら席に戻っていく。心の中であの二人に感謝をして授業開始までまだ少し時間があるので寝ようとしたが次の来訪者で寝ることは出来なくなった。

 

その人物が教室に入ると若干クラスがざわついた。俺は見てみぬフリをして頭を下に下げた。

 

「やあ比企谷。相変わらずシンメトリーが取れていない髪型だな」

 

「ほっとけ」

 

下に下げた頭を上にあげれば目の前にはキッドが立っておりその後ろにはリズさんとパティも立っていた。

 

「よう比企谷。あの後大変だったんだぞ?」

 

「ぐふふふふ。あのあとキッド君ね」

 

リズさんは完全に俺に対して怒ってるのか怖くて視線を合わせられないが....パティはよく分からないし話を聞いたら巻き込まれるのでキッドに視線を移す。

 

「キッドは席につかないのか?正直目の前に立たれるのは気が散るんだが」

 

「それはすまなかったな」

 

そう言いながら俺の隣に座ってくるキッド。大体分かってると思うが死武専の机は横一列繋がっており一人一つの机のタイプではない。ある程度間をあけて座り複数座るタイプだ。

 

「何故隣に座る?」

 

「少し話があってな。父上から話は聞いた」

 

どうやら息子であるキッドにも話は届いているらしい。ほんと俺にプライバシーがあるのか疑いたくなるレベルで話してるな。

 

「それで?」

 

「俺の知りうる情報を渡しておこうと思ってな」

 

キッドにしては以外とまともな内容だった。てかシンメトリー、左右対称を抜きにすればこいつはまともなのかもしれない。

 

「実は最近。魔剣が現れたという情報が届いている」

 

魔剣?

 

「魔剣ってなんだ?」

 

「あくまで情報の範囲内なのでなこれといって情報がない」

 

つまりはこれ以上は分からない、ということか。

 

「分かった。ありがとなキッド」

 

「なに構わないさ。父上が無理矢理何か君に頼んだのは知っているからね」

 

「因みに死神様からはどこまで聞いたんだ?」

 

実際気になっていたことをキッドに聞いてみた。マカからも一応聞いてはみたが遠慮して話さないところもあるかもしれないからな。

 

「ああそうだな....比企谷がデスサイズになると決意したこと。それと」

 

ふむふむそこまでは一緒だな。

 

「ノットの後輩をたぶらかしパートナーにし「ちょっと待て....」どうした?」

 

いやどうした?じゃねーだろ。あきらかに聞き逃せない単語が含まれていたんですが?

 

「俺が後輩をどうしたって?」

 

「なんだ聞いていなかったのか。だからたぶらかして」

 

「あの糞駄死神がぁぁあああああ!!!」

 

その日俺の叫び声はノットの教室まで届いたという。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話[死神様の策略?八幡の何も無い1日 弐]

題名何も思いつかなったので単純に弐にしました。

クロナまでいきませんでした.....次から登場すると思います。たぶん....。


死神様の流した洒落にならないデマを信じてるマカ達にどうやって真実を伝えれば理解してくれるか1日悩んでいるとあっという間に授業は終わってしまっていた。

 

授業が終わるとシュタイン先生から、マカとソウルと俺は職員室に来るように言われ仕方なく三人で職員室に行くことになった。

 

失礼します。と真面目なマカだけは挨拶を言いながら職員室に入りそのあとにソウルと俺は続いてはいる。

 

「来ましたか、それじゃシド先生。あとはよろしくお願いしますね」

 

「了解した。俺は任された仕事は最後まできちんとやる。そういう男だった。安心して任せてくれ」

 

俺達の前には先程俺達を呼び出したシュタイン先生とゾンビとなったシド先生がいた。話の流れからシュタイン先生はシド先生に任せて帰るようだ。シュタイン先生が帰るという事実に胸を撫で下ろす。

 

にしても死武専の教員はまともな人がいないのか?天才サディスト変態博士に人体実験された元人間のゾンビである、シド先生。んーなんともカオスな職員室である。

 

シュタイン先生が扉を閉めるとシド先生にソファに腰かけるようにと促されて俺は素直に座る。マカとソウルは何か警戒しているようだが何かあったのか?

 

「警戒しなくても大丈夫だ。今回はただ話をするために呼び出したんだからな」

 

「はっどうだかな...」

 

「ソファの下に仕掛けとかは....無いか」

 

余程信用を無くすような事をしたのだろう。マカでさえソファに座るときに何か仕掛けが無いか確認しながら座っている。

 

「まぁ警戒するなと言う方が無理な話か。あと少しで来ると思うから取り合えず待っててくれ」

 

歯切れが悪く話す内容を言わないシド先生は向かい側のソファに座りくつろいでいる。因みに此方は現在三人で座っているが左から俺、ソウル、マカである。何が言いたいか分かるだろ?つまりそういうことだ....。

 

俺達が来てから数分が経過すると流石に何も無いと判断したのかマカとソウルの警戒心は少しずつ無くなっていく。だが何故か俺の警戒心は不思議と上がっていた。丁度俺の警戒心が上がり始めた頃職員室に誰かが入ってきた。誰かというよりは俺の知っている人物が入ってきた。

 

「す、すいませーん。おそくなりました~」

 

間延びしたようなトーンで息切れさせて頑張ってここまで走ってきましたアピールしている。だが汗ひとつかいていない時点で演技だということはバレバレである。

 

「誰だ?マカの知り合いか?」

 

ソウルはマカの知り合いだと思ったようでマカに視線を合わせながら聞いている。だがマカは首を横にふり、私の知り合いじゃないよ。と答える。

 

「ふぅー。皆さん初めまして。わたしの名前は一色いろはって言います♪そこにいる先輩のパートナーです♪」

 

俺の方に笑顔を向けてくる一色。俺はソウルとマカから何か言われると思い視線を誰もいない外に移した。

 

「先輩って....まさか八幡の知り合いだったのか?」

 

「え?でもパートナーってことは噂は本当だったの?」

 

ソウルは意外そうな声をマカは気のせいか声が震えている。一色は俺とソウルの間に割ってソファに座ってきた。ソファの大きさは大人4人が座れるほど大きいので座れないことはないが右肩が一色の左肩とぶつかり俺の鼓動が早くなる。近付いた事で女の子特有の良い匂いが俺の鼻孔をくすぐり顔が暑くなっていく。

 

「よいしょっと。あれー?先輩どうして目をそらしてるんですか?」

 

わざとやっているのだろう。少しずつ一色が近付いて来てるのが分かる。俺は耐えきれなくなりその場に立ち上がりシド先生の隣に座る。

 

「比企谷ではなく一色が此方に来る手筈だったんだが....」

 

一応今までの経緯を見ていたシド先生は、俺の行動をハッキリ否定しようとはしない。それならばこのままいさせてもらおう。

 

「ぶー。先輩つれないですね」

 

一色は頬を膨らませて此方を睨んでくるが俺はマカとソウルに視線を移しマカとソウルにこれは何かの間違いだ。と念を込めた。だが二人から微かに聞こえてくる、たぶらかしたというワードを聞いて俺は必死に涙が出るのを我慢した。

 

「んっ、んん!えーと、全員集まった事だし今回集まってもらった理由を話すぞ。まず最初に比企谷には、死神様からの罰でデスサイズを目指す事になった。これは本人も了承していることだと聞いている」

 

「八幡君は死神様からの罰でデスサイズを目指すんですか?私は八幡君が自分からデスサイズになると決意したと死神様から聞いていたのですが....」

 

マカは話が噛み合っていないことに違和感を覚えたのか視線を一度俺に移し直ぐにシド先生に視線を戻した。

 

「ではその.....八幡君がパートナーをたぶらかしたと言うのは....」

 

「ん?比企谷がか?一色を?それは無いだろう。そもそも比企谷がお前たち以外と話しているところ事態見たことが無いしな」

 

「そうですか...」

 

マカは申し訳無さそうに俺を見てくる。俺は顔を横にふることで気にしていない事を伝える。分かってくれればそれで良いのだ。

 

「さて双方納得したようだし話を切り出すが良いか?」

 

シド先生の問いに俺達は頷く事で答えると話は始まった。

 

「比企谷がデスサイズを目指すために一色と組んだ。それは分かってくれたと思う。だが何故呼ばれたのか理解していないと思う」

 

シド先生の言葉は最もだろう。俺と一色の話ならマカとソウルには関係ない筈だし。まぁ誤解が解けたから結果としては良いんだが。

 

「率直に理由を述べるとだな。一色と比企谷は未だに一度も二人で戦闘を経験していないからマカとソウルには悪いが今度の魂回収はお前たち二人二組で行ってきてもらうことにする」

 

「は?」

 

ここにいる全員が頭の上にはてなマークを浮かべただろう、俺なんか我慢できずに声に出ちゃってるしな。

 

「この頃不穏な噂は聞いているだろう。魔剣・・・今の比企谷達では戦って勝つことはおろか逃げることも厳しいかもしれない」

 

え?予想はしてたけど魔剣ってそんなに強いの?

 

「シド先生」

 

マカがシド先生に意見があるらしく右手をあげながら発言の許可を求める。ここで発言の許可を求める辺りマカがどれ程真面目なのかがわかるだろう。

 

「どうした?何か言いたいことでもあるのか?」

 

「はい。何故私達なのでしょうか?ブラック☆スターやキッド君でも良かったのでは?」

 

俺はこの問いに関しては無言を貫こう。そう決意した。何故かって?あの二人とは色々と相性が悪すぎるからだ。

 

「あーなんだー。比企谷お前が説明しろ」

 

シド先生は頭をかきながらあろうことか俺に説明しろと言ってきた。俺は無言で親の仇を見るような目で睨むが涼しい顔をしながら催促してきた。どうやらゾンビになったことで何かが外れているようだ。

 

「はぁ....ブラック☆スターと組んでも目立ちたがりやなあいつが大人しくしてるわけないし、そもそも今回の目的は俺と一色の実戦訓練みたいなものだ。でもブラック☆スターなら良くてあいつが一人で倒す。悪くて多人数の前に堂々と現れて逃げることになるからだと思う」

 

言ってて思ったがブラック☆スターと組んだら楽できるんじゃね?あれ俺ブラック☆スターと組もうかな....いやもう遅いか。

 

「次にキッドとだが。...........戦闘に行くまでの準備の時間で数週間かかりそうだからじゃないか?」

 

あいつなら俺のアイデンティティーである髪を直すまでいかんとか言い出しそうだし。任せたら任せたで設計図書き始めそうだし、どっちにしろめんどくさい。

 

「まあそんなとこだ」

 

おい説明したの、俺なのに何で分かったか?みたいな顔してんの?一発殴ってもいいかな?良いよな?

 

「そういうことなんですね~。えーとーマカ先輩にソウル先輩でしたっけ?御迷惑おかけすると思いますがよろしくお願いします♪」

 

「うん、こっちこそよろしくね。えーといろはちゃんで良いのかな?」

 

「はい~どうぞどうぞ好きに呼んでください」

 

「なんだ思ったより良いやつそうじゃねーか。少しの間だがよろしくな」

 

二人とも馴染んでるなぁ~。俺空気じゃね?

 

「えーそうなんですか~?」

 

「うんうん、いろはちゃんって職人だよね?武器はなに使うの?」

 

「んーそうですね~。秘密です♪」

 

 

.................うん、帰ろ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話[イタリアで初任務?パートナーと職人]

悪評覚悟で今回の内容を書きました。ここは譲れない所だったので.....てかクロナ出せなかった....そこだけは本当にすいません。次回は必ず出てきます。


現在俺は、マカとソウルと一色と共にイタリアに来ている。今回のターゲットの名前はソンソン・J。課外授業という名目で来ている。決して遊びに来ているわけではない。

 

 

「いやー良いなぁ。イタリア!やっぱりCOOLだよなぁ~。なあなあ皆でなんか食いに行かね?ここまでの道中長くて腹へったしよ!イカ飯、パスタ食い放題だぜ!」

 

「もう!馬鹿!私達は遊びに来たんじゃないのよ!分かってるの?」

 

ソウルの提案には俺も賛成なのだがマカから否定されたためご飯は食べられなさそうだ。

 

「わたしは~お腹空いたので行っても良いかなって思いますけど」

 

「駄目よいろはちゃん。夜までに少しでも情報を集めておかないといけないんだから」

 

今回のターゲットである、ソンソン・Jは夜にしか現れないという情報しかない。だが逆に夜に現れるという情報はあるのだ。マカと俺は魂関知能力が得意だから恐らく現れれば気付くし大丈夫だと俺は思うがここでマカに逆らっても良いことはないのであえて黙っておく。

 

「そ、そうなんですかー」

 

「うん。この情報を集めるか集めないかで大きく戦況が変わったりするんだからね」

 

んーためになる話なんだろうなー....一色がこういった話を真面目に聞いているかは置いておくとしても。マカは真面目だから一色に色々と教えてくれて実際助かっている。このまま任せて俺は帰りたいくらいだ。

 

「へえーそうなんですね~。あっ!じゃあ一つ提案なんですけどー先輩とわたし。マカ先輩とソウル先輩で情報を集めませんか?夜までターゲットは現れないみたいですし。その方が沢山情報も集まってお得だと思うんですよ~。それと午後5時くらいにここから見える時計塔の前に集合すれば良いと思いますしどうでしょうか?」

 

一色は人指し指ですぐ近くの時計塔を指差しながらマカに言っている。

 

「うーん.....うん、それもそうだね。それじゃあ私達は南側を見に行くから北側をお願いしていいかな?」

 

「はい~♪」

 

一色とパートナーを組んで時間はあまり経過してないがこの笑顔だけは何か企んでいる事くらいは分かるようになっていた。

 

マカとソウルは南側に行き俺と一色は反対の南側の方に向かう。

 

「では先輩ご飯でも食べに行きましょうか♪」

 

屈託のない自然な笑顔で言ってきた一色を見ながら一応聞く。

 

「情報集めは?」

 

「勿論“後で”するに決まってるじゃないですか~」

 

やだなーと言いながら俺の肩を押してくる一色。その仕草で何人の男が勘違いしたんだろうなと思いながらも情報集めする気がない事は伝わった。

 

 

 

 

その後だが簡単に言うとイタリアをすっごいエンジョイしてた。ご飯を食べ終えた一色は、俺の手を掴みおみやげ屋さんに駆け込んだ。このおみやげ屋さんでは俺も買いたいものを買えたので良かったのだが一応ここでも情報集めないのか?と聞くと後でやりますよ~。と軽く流されてしまった。

 

そこからは諦めである。端からイタリアを満喫した俺と一色は時間になるまで遊びつくし時間の5分前に時計塔の前に着き、マカとソウルを待っていると時間丁度に二人は現れた。メモ用紙にペンを走らせているマカと疲れきっているソウルを見て俺は若干罪悪感に襲われた。

 

「それで何か情報あった?」

 

マカから発せられた第一声がこれである。本当にどうしようか、一日中遊んでました。と素直に言ったら許してくれるだろうか?いやそれは無いな、と何か言い訳を考えようとしたが俺より先に一色が口を開いた。

 

「えーとですね。南側では結構殺されている人が多いみたいですねー。夜家の外に出るのは論外ですけど窓を割られて殺された人もいるみたいです」

 

何時調べたのか分からないが一色はちゃんと情報集めをしていたようだった。

 

「そっかぁ。此方ではそんなに多くないって言ってたよ。それじゃ南側でソンソン・Jが現れるのを待って現れたら魂回収しよっか。それで今回はどうしよっか?相手は一人だし八幡君といろはちゃんだけでやってみる?」

 

正直ソウル達もいてくれた方が楽だと思う。だがこれはあくまで俺と一色の実戦経験を積ませる為の二人二組。

 

「俺と一色で倒すか」

 

「八幡にしてはやる気じゃねーか。珍しいな」

 

俺の性格を理解しているソウルが俺の言葉に突っ込みをいれてくる。俺だって楽が出来るものならしたいが今回の目的はあくまで俺と一色の戦闘経験の向上だ。それならまずは戦うしかないだろう。

 

「やる気はねーよ。やばくなったら助けてくれ」

 

「はは、八幡君らしいね。それじゃ現在地より南側に移動しよっか」

 

南側に歩きながら向かう時にソウルが一日中情報集めで疲れた、とかなんか不良に絡まれたとか物騒な事を言っていたが俺は気にせずリズムよく鼻歌を歌っている一色を見て戦闘経験が浅い割に余裕そうだなと少し一色に対して不信感を抱いたが単純に一色の性格なら気にしてないだけかと考え直してマカに置いていかれないように歩くスピードを少し上げた。

 

 

 

そして午後6時を回った所で現れました、ソンソン・J。ちゃんと現れてくれたソンソン・Jを見て俺は喉まで出た言葉を押し込んだ。目の前のソンソン・Jは何故かゴミ袋らしきものを被っているのだ。何がしたいのか不明である。

 

 

「先輩、なんで今回のターゲット頭にゴミ袋被っているんですか.....?」

 

一色が遠慮なく嫌悪感全開で俺に聞いてくる。そんな理由俺が知るはずないし興味もないし知りたくもない。

 

「気にすんな....大事なのは見た目じゃなくて魂だから」

 

一色は一瞬真面目な顔になったと思ったら吹き出しながら「先輩その言葉、先輩には似合いません~」と言ってきやがった。後ろで笑ってるソウルは後で殴るとして笑いを必死に堪えてるマカが俺の心を削っていく。俺ターゲットと戦う前にHP0にされそうだ。

 

突如襲いかかってきた、ソンソン・Jにより全員真面目な顔に戻り臨戦態勢をとる。ソウルが変身しないところをみるに俺達が戦うのを見ていてくれるのだろう。

 

先程突っ込んできたソンソン・Jは素手で屋根をぶち抜いていたが手が挟まって抜けないのか必死に引っ張っている。相当今回のターゲットはアホなのだろう。

 

「一色、そう言えば聞いてなかったがお前はどんな武器を使うんだ?」

 

全くもって今更だが俺は未だに一色がどんな武器を使うのか知らないし武器を使っている所を見たことすらない。後ろでソウルとマカが何故か転んでいるが俺のせいではないだろう。足でも滑らしたのかな?

 

「あーそうでしたね~。わたし武器を使うのは初めてなのでお任せします♪」

 

「は?」

 

俺の質問に一色からの答えはあまりにも悲惨なものだった。俺は一応ソウルとマカに倒さない程度に足止めをお願いして一色に向き直る。

 

「.......武器を使ったことがないって職人って言わなくないか?」

 

「あ、勘違いさせたなら謝りますけど。武器はある程度使いこなせますよ。ただパートナーがいなかったので先輩達みたいな武器は使ったことがないってだけですよ」

 

それもそれでどうなの?って思ったけどいくらノットでも武器と一時的に組んで訓練をする授業があるので武器を使ったことがないってのはおかしな事だった。

 

「武器を使ったことがないって授業中はどうしてたんだ?」

 

「勿論パートナーは作りました。一時的にですが。でも誰と組んでも熱かったり重かったりで持つことが出来なかったんです」

 

それはあきらかに二人の息が合っていない時に起きる拒絶反応だった。

 

「武器の子全員にお願いして試したんですけど一人も持つことが出来なかったんです」

 

それは妙な事。だと思った。少なからず初めて同士なら嫌悪感や拒絶の意志がなかったり相性が最悪でなければ持つことくらいは出来る筈だ。酷くても5人に一人くらいは持てるやつがいないとおかしいと俺は思う。なら何故誰一人として持てないのか?それは..........。

 

「一色.....もしかして武器に対して嫌悪感があったりしないか?」 

 

理由は一つしか思い付かなかった。人間とは違う。武器自身に嫌悪感を抱いているのなら全員持てなくても不思議じゃない。

 

「それは.....」

 

思い当たる節があるのか顔を俯かせてしまう一色。まあ武器も考えようによっては化け物だ。人間ではない。その自分とは違う対象に嫌悪感を抱いてしまうのは自然な事なのかもしれない。

 

「一色が嫌なら--------------」

 

俺の口からそれ以上の言葉は出てこなかった。いや出すことは出来なかった。目の前では俺に抱き付きながら涙を流す一色の姿があったからだ。

 

「すいません.....先輩。でも違うんです。先輩が嫌とかそういう理由じゃないです.....」

 

「........」

 

俺は泣きながら抱き付いている一色の言葉を聞いているしか出来ない。頭を撫でてやるのが正解なのか?先程の言葉を無かったことにすれば正解なのか?俺には分からない。でも今この話から目を背けてもいずれ同じ事でつまづくと思ったから俺はなにもせずに話を聞くことにした。

 

「先輩.....わたしは昔。昔と言っても7年前ですけど....実の両親に捨てられました。お前は悪魔の血を継いでいる。化け物だって言われて...」

 

「悪魔の血.....?」

 

情けないが今はこの言葉を聞き返してしまった。

 

「わたしは人間じゃありません......本来なら死武専にいてはいけないんです」

 

「それはどういう....」

 

「すいません.....これ以上は帰ってからじゃ駄目....ですか?」

 

一色はここまで話すと俺から離れて顔を俯かせながら言ってくる。髪の間から垣間見える瞳にはハイライトは消えておりいつもの明るい一色はそこにはいなかった。

 

「もし駄目なら.....パートナーの件は無しで大丈夫です....」

 

一色の手は強く握りしめられてプルプルと震えている。声にも嗚咽が混じり正直かなり居たたまれない雰囲気だ。

 

「重要なのは....魂だろ?」

 

俺が呟くと一色は間抜けな声をあげながら顔をあげてきた。

 

「重要なのは魂だ。姿形なんてどうでも良い。一色が化け物だってなら武器の俺だって化け物だ。お互い化け物なら良いと思わないか?片方が人間だったら気を使わなきゃいけないんだぜ?そんなの疲れるし正直めんどくさい。それに比べてお互い気兼ねなく接することが出来てお互いをカバーしあえる関係なんてwinwinだと思わないか?」

 

一色の頭の上にははてなマークが現在浮かんでいるのだろう。呆けている顔を見れば一発で分かる。

 

「まあお前の正体がなんなのかは知らねーけど。俺の知ってるお前は一色いろはって名前で俺のパートナーだって事だ。他にはなんにもねーよ」

 

一色は涙を溢して泣いている。でも本人も気付いていないのか拭おうとはせず真っ直ぐ俺を見つめながら「そうですか......」と短く言って足止めをしているマカ達の方に振り返った。

 

「槍に変身してください。一番武器で練習を積んだのは槍なので」

 

そう言ってる一色の頬はほんのりと紅くなっているような気がした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話[イタリアで初任務?パートナーと武器]

少し遅くなってしまいすいませんでした。何回か書き直していたらこんなに日が経っているとは....。


感想や評価を下さった人ありがとうございます。好評価で焦りと喜びと感謝の日々です。これからも楽しんで頂けるように頑張ります。


「槍に変身してください」そう言った一色に対して俺は遠くで現在起こっている出来事が気になり変身せずにその場で後ろを振り返る。

 

「せ、先輩?」

 

魂感知の出来ない一色は俺が何をしているのか理解出来ないのだろう。心配そうに此方を見てくるが魂感知に優れた俺でもノイズが邪魔をしていて集中しないと感知しきれそうになかった。

 

「教会?のような建物の中に職人と武器.....そしてそれを取り囲んでいる大勢の魂....」

 

俺は独り言のようにボソボソと呟くように言うと一色が反応してきた。

 

「先輩どういう事ですか?」

 

「ん?ああ....1㎞くらい先に教会みたいな建物が見えるだろ?」

 

「んー....あ!見えました」

 

一色は俺の肩に手をおき覗き込むようにして俺が言った方向を確認した。

 

「別に肩に手をおく必要はないだろ?」

 

「えーこの方が見えやすいですし~良いじゃないですか♪」

 

何が良いんでしょうね.....俺の挙動がおかしくなる前に止めてほしいんだが。

 

「ちょっと八幡君!まだなの!?」

 

マカがバックステップの要領でソンソン・Jの攻撃をかわして俺のとなりに移動してきた。

 

「後ろに見える教会が気になってな.....悪いけどソンソン・J倒してくれ。俺と一色で見てくるから」

 

「え!?ちょっと八幡君!?」

 

マカの呼ぶ声が聞こえるなか俺は胸騒ぎがする教会に向かって一色と共に走った。

 

一緒に走っていて思ったのは一色はかなり足が早い。俺と並走しながらなぜ走っているのか聞いてきたし、俺は全力で走ってるから質問に返す余裕は無かったが。

 

「先輩無視しないで下さいよ~」と全力で走ってる状態で舌も噛まずに何時も通り話せる一色に驚きながらも5分かからずに教会の前についた。

俺は肩で息をしているが一色に疲れた様子は無く一色自身の身体能力の高さをこの時初めて俺は知った。

教会の中では相変わらず武器と職人の周りを大勢の魂が囲んでいる。絡まれてるにしても妙な状況だ。仮に50人くらいの一般人に俺が絡まれたとしよう。だが武器である俺の身体能力程度でも簡単に気絶させることくらいは簡単だ。

 

だが中の武器と職人はまるで動いていない。

 

「先輩本当にどうしたんですか?」

 

扉の前で開けようか開けないか悩んでいる俺に一色は聞いてくる。確かに中を確認すれば済むことだ。だが何故か手が動かなかった。まるでこの扉は開けてはいけないと誰かに言われているみたいに。

 

「........っ!」

 

急に武器と職人以外の魂反応が消えた。今の状況を考えると職人と武器が一瞬で殺し食べた事になる。だが死武専ではどんな理由があっても絶対に鬼神の卵と化していない人間の魂は食べてはいけない事になっている。

 

それにあの量を一度に食べたと言うことは.....。考えられるのは、キッドから聞いていた話の魔剣だった。魔剣が現れたらしい。それだけの情報だったが間違いなく中にいるのが魔剣だと断言できた。

 

これだけ人間の魂を食べれば狂気に飲み込まれていて正気ではないだろうし、かなり強いだろう。

 

俺は一色を見る。今回初めてタッグとして本格的に戦うが相手が悪すぎる。だけどこのまま放って置くわけにもいかないだろう。ならいっそのこと一色は逃がして俺だけで対処するか?

 

「..........」

 

一色に目線を移すと一色は何処か不機嫌そうに此方を見ており目が合った。俺は気まずくなり目線を反らそうとしたが一色の両手に顔を捕まれて顔を固定される。

 

「先輩がなに考えているか分かりませんけど。この中に危ない敵がいるのは分かりました。そして先輩がわたしを逃がして自分だけで戦おうとしていることも」

 

俺はなにも言い返せずに目線だけを下に反らす。一色は溜め息混じりに言ってくる。

 

「先輩。武器と職人は二人で一人です。何でも危ないことは自分一人でやろうとしないでください」

 

「だが.....」

 

「先輩がわたしを気づかってくれていることは分かります。嬉しいですけどパートナーとして、職人として信用されていないのは悲しいです」

 

一色は寂しそうに顔をうつ向かせながら言ってくる。

 

「確かにわたし達はパートナーを組んで日も浅いですし、初めて戦う相手です。でも....少なくとも先輩と過ごした短い日々はわたしにとって先輩を信用に値する人だと思わせてくれるだけの日々でした」

 

「一色......」

 

「先輩は....わたしを信じてはくれませんか?」

 

俺は本当はどう思っているのだろうか。死神様に言われたから一色と組んでいるだけなのだろうか。それとも一緒に過ごしていくうちに一色となら...と思えているのだろうか。今の俺にはまだ答えは出せない。

 

 

でも。

 

悪くないと思えている。と思う。

 

 

「なあ....一色」

 

「はい」

 

「俺は今まで人を心の底から信じた事がない。信じて、裏切られるのが怖かったから自分自身を守るために相手と知らない間に距離をおいているのかもしれない」

 

「だから俺が一色の事を信じているか?と聞かれて、素直に信じてる。なんて言うことは出来ない」

 

「そう....ですか」

 

一色の顔色は悪くなっていき唇を歯で噛み締めているのが分かる。申し訳ない気持ちと罪悪感で胸が張り裂けそうになるが最後まで言うために続ける。

 

「でも」

 

一色の顔が少し上がる。一色の瞳は真っ直ぐ俺を見据える。

 

「一緒にいた時間は、短いが.....悪くは無かったと思ってる」

 

「先輩.....」

 

一色は顔をあげてもう唇を噛み締めてはいない。その事にホッと安堵する。

 

「先輩ってめんどくさいですよね.....」

 

めんどくさい、か。うん、自覚はあるけど久し振りに言われたな....。

 

「まっそんなめんどくさい所、わたしは嫌いじゃないですけどね♪」

 

「.......あざといあざとい」

 

一瞬本気で一色の笑顔に見惚れそうになったが慌てて誤魔化す。

 

「なんですかーそれ~。まぁいいですけど、それじゃあ先輩。槍に変身してください、話はそれからです!」

 

「そうだな.....」

 

俺は2m程の長さの槍に変身した。

 

「これが先輩の武器の姿なんですね~」

 

一色は俺(武器)を見ながら「うえっ真っ黒ですね」と言ってくる。だが普通に持っている事から特に嫌悪感等は抱いていない....と思う。

 

「さて、と。それじゃあ扉開けますね」

 

扉は押すと簡単に開き教会の中央にやせ形の一人の......多分男?が剣を持って立っていた。

 

「また知らない人だよ...はぁ~僕もうやだよ」

 

男?は心底嫌なのか上体を仰け反らせながら言ってくる。一色があきらかに引いているが俺は別の事が気になっていた。

 

 

「あれ?そう言えば先輩。武器はどこですか?」

 

そう、目の前の男?だが魂の関知をするが職人と武器の魂は移動していない。

 

と、言うことは。

 

「職人の体内に武器がいる......」




少し短いですがここまでにしておきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話[信用する力?クロナを倒す唯一の手段]

感想と意見もお待ちしております。


「職人の体内に武器がいる......」

 

一色は俺の発した言葉の意味が分からないのか聞いてくるが俺だって分からない。職人の体内の中に武器がいるなんて.....。

 

急に男?の中にいる武器の魂が膨らみ始めた。まるで職人を突き破りながら出てくるみたいに。

 

「うう....うわぁああああ!!」

 

急に叫び出した男?の背中を突き破って武器だろうか黒い人形のナニカが出てきた。それを見て一色は恐怖に一歩引いているが仕方がないだろう。職人の中から武器が出てくるなんて聞いたことがない。

 

「おいこらクロナ!モジモジしてねーでさっさとやっちまえよ!」

 

「え、ええーそんなぁ....僕には無理だよぉ。女の子とどう接したら良いのか分からないよぉ」

 

「何言ってんだ!この!この!」

 

背中を突き破って出てきたナニカはクロナというらしい人物を叩いている。人間の魂を食べた事と背中から突き破って出てきた事を除けば普通に微笑ましい光景にも見える。

 

「わわ、痛い....痛い止めてよラグナロク.....痛いって言ってんだろ、こら!!ぶっ殺すぞ!」

 

俺と一色は茅の外で会話始まってて一色も先程までの恐怖は無いみたいだ。

 

「おお、タイムタイム。キレたクロナは怖えーなぁ~。それよりもそこにいる奴等旨そうだぁ」

 

先程までの空気はどこにいったのか一瞬でクロナから殺気が此方に向けられた。一色は槍を改めて構えて相手の動きに反応できるように集中している。

 

背中にいたラグナロクという武器は一見して片手剣に変身した。魔剣と言われるだけあってなのか柄の少し上の部分に何故か口がついている。本当に何故だと思うが一色には余裕が無さそうに見えた。槍を握る手の力は強くなり額から冷や汗が流れ落ちている。

 

(一色怖いかもしれないが落ち着いていけ。あいつは殆ど狂気に飲み込まれている。それなら単調な攻撃しか出来ない筈だ。いくら強くても単調な攻撃しか出来ない奴は強くない。俺と一色なら勝てる)

 

(クスッ。先輩がそんな事言ってくれるなんて思ってもみませんでした)

 

「すぅーはあー.....」

 

(先輩ありがとうございます)

 

(おう)

 

クロナは、右手に剣を持ち振りかぶらずに無防備のまま突っ込んでくる。

 

隙だらけ....誰から見てもそう思うだろう。ブラック☆スターの様に速いわけではない。キッドの様に技術があるようにも思えない。だが何故か嫌な予感がしていた。

 

クロナは目の前までくると剣をあげて腰を捻りながら単調に降り下ろしてきた。一色はその攻撃を紙一重でかわし槍でクロナの心臓に突き刺した。

 

だが。

 

「嘘......」

 

「駄目だよぉ。そんな攻撃じゃ僕を倒す事なんて出来ないよ?」

 

一色は慌ててバックステップでクロナと距離をとってもう一度槍を構える。

 

確かに何もない皮膚を刺した筈だった。だけど刺した感覚はとても皮膚を刺した感覚ではなかった。まるで岩でも突き刺したように硬った。

 

「ねえ知ってる?その扉は内側に開くんだよ?」

 

クロナはそれだけ呟くと剣を両手に持ちかえた。

 

「ラグナロク.....悲鳴共鳴」

 

悲鳴共鳴......?頭にはてなマークが浮かんだ瞬間クロナの武器から物凄い叫び声が木霊した。教会の中に響きガラスは割れ耳に響いてくるその音になんとか耐える。

 

クロナとラグナロクの魂の大きさが膨れ上がり先程までのスピードが嘘のように真っ直ぐ走ってくる。

 

「スクリーチα!」

 

黒い斬撃が教会の床もろとも破壊しながら一色に向かってくる。一色は腰を低く落とし体の体勢を下げて斬撃を利用して死角から今度は突くのではなく、槍を回転させる遠心力を使いクロナの後頭部を殴った。

 

クロナはダメージを食らった様子は無く急に殴られたことの驚きで一歩後ろに下がった。一色はバク宙を2回して距離を取った。

 

ブラック☆スターやシュタイン先生のように魂の波長を撃ち込めればダメージを与えられると思うが槍による打撃と突きでは相性が悪い。だが一つだけ方法があるにはある。俺は自身の波長をコントロールして氷らす事が出来る。

 

だが今回の相手に俺一人で挑んで勝てるか?と問われれば勝てる。とは言えなかった。魂の波長のコントロールは相手の隙を突かなければならないし何より氷らしても効果があるのかどうかも分からない。

 

それに今は一色の魂の波長に俺の魂の波長を合わせているが波長のコントロールをしたら一色の魂の波長に合わせる余裕は無くなる。事実上相性が良くなければ持つことさえ出来なくなってしまうだろう。

 

「先輩。やりましょう」

 

(一色?)

 

「先輩の考えていること聞こえたわけではないですが魂を通じて伝わって来ました。大丈夫です!わたしと先輩なら出来ますよ♪」

 

こんな状況でも笑顔を見せてくれる一色に感謝して深呼吸をする。

 

(だな.....それじゃあやるぞ。一色)

 

「はい!」

 

俺は一色の魂の波長ではなく自分の魂に意識を集中させる。時間にすれば1分程かクロナとラグナロクが喧嘩しているうちに集中していく。

 

槍からは冷気が溢れ床に触れると触れた床が氷っていく。

 

「凄い....これが先輩の本当の力なんですね」

 

一色は目を閉じて俺との波長を強く感じ取ろうとしてくる。魂の共鳴程ではないが武器と職人が本来持っている波長の共鳴率までは上がっている。共鳴率が上がった、ということは本来の俺の武器としての性能も上がるということだ。

 

一色は足に力をいれ、教会の床を強く踏み込み体勢を低くしたまま槍をクロナに突き刺した。クロナは避ける行動はせずにそのまま立ち尽くしている。

 

「だから僕にそんな攻撃は効かないんだっ.....て、あ、あれ?ら、ラグナロクこれってどうゆうこと!?」

 

槍はクロナの皮までは刺さっているがそれ以上は硬くて先程と同じくそれ以上は刺さらない。だがいくら刺さらなくても氷らすことは出来る。

 

「くっこいつは不味い!おい早く離れろ!クロナ!」

 

「う、うんっ!?」

 

クロナは慌てて離れようとするが徐々に氷はじめていてお腹の辺りは氷っていた。

 

「つ、冷たいよ、ラグナロク!」

 

「くー早く脱げ出しやがれ!!」

 

こんな状況なのに剣からにょきっと黒い人形のような形をしたラグナロクが出てきてクロナを叩いている。好機だと思った俺と一色はそのまま氷らしてしまおうと力を込めるが背筋が凍る気がしてクロナに刺していた槍を抜き半ば転がるようにして右側に転ぶ。

 

一色が転んだ瞬間、矢印のようなものが教会の床に突き刺さっていた。先程まで立っていた所に突き刺さっているのを見て一色の顔が青くなる。

 

「......この攻撃は.......そんな....どうして」

 

(一色?おい!一色!?)

 

俺が何度叫んでも一色は反応せずに何故か縮こまって動かなくなってしまった。体は震え、何かに怯えている様だった。

 

「おい!クロナ!今がチャンスだ!さっさとやっちまえよ!」

 

「僕氷ったお腹とどう接したら良いのか分からないよぉ.....」

 

「あー今はそんなこと良いだろうが!そんなことより目の前のこいつ殺さねーと、たぶん後であの人に怒られんぞ?」

 

俺は剣が言った“あの人”について気になった。一色がこうなる前にこの攻撃をしたやつを知っているような感じだった。でも何故一色が?だが今はそんな事を考えている余裕は無かった。一色は震えていてとても戦闘が出来る状態ではない。それに.....。

 

「分かったよ....怒られるの嫌だから殺してから考えるよ」

 

逃げる時間も無いみたいだ。

 

ツカツカとゆっくり一色の前まで歩いてきてクロナはゆっくりと剣を振り上げる。

 

降り下ろしてくる瞬間に俺は武器の姿から人の姿に戻り一色とクロナの間に入り鮮血が舞った。

 

「......せん....ぱ、い?」

 

一色の顔は俺の血で赤く染められ俺は一色に倒れこんだ。

 

意識が薄れていくなか、教会の扉を突き破るようにして入ってきた、マカとソウルを見て俺の意識は完全に落ちていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話[鬼の夢?一色いろはの失踪]

夢を見た。

 

 

 

暗い、暗い部屋の中にポツンと幼い頃の自分が泣いている。俺は幼かった時の自分に話しかける。すると何故か景色は一変して明るいが何もない空間に移動する。そして急に後ろから俺の名前を呼ばれる。

 

「比企谷八幡」

 

俺は慌てて後ろを振り返るとそこには幼い頃の自分が立っている。そして口々に言ってくるんだ。

 

「お前は本当は誰も信用なんてしていないんだろ?」

 

「違う....」

 

俺は否定した。一色とパートナーを組み今回の戦いで少なくとも信用出来たと思えたから。

 

「何が違うんだい?人に裏切られるのが怖くて怖くて人との接触を避けてきた癖にさ」

 

「.....昔とは違う」

 

「昔?昔とはいつの事だ?」

 

その言葉を幼い自分が言った瞬間。目の前の幼かった自分はまるで鏡でも見ているように現在の俺が立っていた。

 

「お前は昔と言ったがそれは今も変わらんさ」

 

「そんなこと分からないだろ....」

 

「分かるさ」

 

俺はこの時憤慨していた。あまり怒りを露にしない性格なのは自分でも思っていたし怒ったら怒っただけ無駄なエネルギー使うからめんどくさいと考えるくらいには怒ることは無かった。

 

だが今は違った。腹の中で何かがいるみたいに落ち着かず直ぐにでも殴りかかりそうだった。

だが殴ったら奴の言っていることの肯定になってしまう。だから俺はこんな言葉を言うしかなかった。

 

「何でお前なんかが分かるんだよ」

 

言い返される言葉が分かっていたのに。

 

「そりゃ分かるだろ」

 

我慢できなくて。

 

「だって」

 

止めてくれ......。

 

「そりゃ」

 

言わないでくれ。

 

「俺は」

 

止めてくれ!

 

「お前自身なんだから」

 

「......」

 

俺は何も言い返せなくなってしまった。心の何処かで僅かでも思っていたことだったのだろうかそれを誰でもない。自分自身に言われてしまったのだ、何も言い返すことが出来なかった。

 

「お前は一人だ。孤独だ。今までそうだったように。誰かと関われば弱くなるぞ?今回負けたように、また負けるぞ?」

 

目の前の俺の語尾はどんどん変わっていく。少しずつ強く、そして声のトーンも下がっていく。

 

「なあ?だがお前は誰も失いたく無いんだよな?優しいからなぁ」

 

「......お前は誰だ?」

 

目の前には俺ではなく。まるで姿形は鬼が立っていた。

 

「俺様かぁ?ハッ俺様のことなんてどうでもいいのよ。俺様と組めや八幡よー。俺様と組むなら力を与えてやるぞ?大いなる力を」

 

にやっと口角を吊り上げながら笑う鬼に俺は惹かれそうになった。強くなれれば誰も気付つかずにすむのだろうか?

 

だがそんな時に俺の頭を廻ったのは一色の笑顔だった。

 

「一色......」

 

「ちっ。まだあの女の事が忘れられねーのか?けっなら今はまだだな。ほらさっさと出ていけよ。俺様は暇じゃねーんだ」

 

いつ現れたのか鬼が指した方向には扉があった。

 

俺は鬼の言っている意味が分からなかったが扉のドアノブに手をかけて扉を開けた。

 

扉を開けると水の中に落ちた。そしてどんどん底に沈んでしまう。息は出来るが力が入らずにどんどん深く、深く沈んでいく。それがとても怖くて泣き叫びたくなるが指一本動かせない。どのくらい深く沈んでいっても一向に底には着かない。頭がボーッとし始めた所で視界が暗転し重たい瞼を開けると電気の光を久し振りに受けたのか目が慣れておらず慌てて塞いでしまうがゆっくりと目を開けていく。

 

「ここは?.....」

 

「あ!八幡君!目が覚めたんだね!良かったぁ」

 

俺の視認できる範囲に現れたのはマカだった。そしてそのすぐあとに隣からソウルの声も聞こえた。

 

二人の声を聞いてここが安全な場所なのだと理解する。だがマカの顔は見えるがソウルの顔は見えない。それに何故か少し離れたところからソウルは俺に話しかけているようだった。俺は首だけを動かすと傷口の痛みで片目を瞑ってしまうがあまりの事に驚き目を見開いた。

 

どうやらここは死武専の保健室らしくソウルも俺と同様にベットで寝ていた。

 

「ソウルもやられた...のか?」

 

「ち、違うの!私の...あたしのせいでソウルは!!」

 

「いや、マカのせいじゃねーよ。ただ俺が不甲斐なかっただけだ」

 

マカの反応からソウルは相当な深手を負ったのだろう。そしてその原因は俺にある。そもそも教会が怪しいからと見に行かなければ誰も傷つかずにすんだし今回の目標はソンソン・Jだったのだ。完全に俺の落ち度である。

 

「マカ、ソウル...その悪かったな。俺が教会なんて行かなければそもそもこんな事態にはなってなかったんだ」

 

「なんで八幡が謝んだよ。八幡はなんも悪いことしてねーだろうが。つーか魔剣見付けて放置の方が俺としては全然COOLじゃねーと思うぜ?」

 

「ソウル...」

 

ソウルは笑いながら俺に言ってくれる。申し訳ない気持ちは無くならないし胸の締め付けられるような気分もあるがそれ以上にソウルの優しさが胸に染みていた。

 

「そうだよ。ソウルの言う通りだよ。私だってあの場にいたら死武専生として放っておけなかったと思うし、もし八幡君が放っておくような人なら許さないんだから」

 

「そう言ってくれると助かる......」

 

俺は気になっていたが聞けなかったことを聞くことにした。本当は目が覚めて一番最初に呼びたかった名前。

 

「一色はどうなった?」

 

「「........」」

 

二人の無言に俺は最悪の事態も覚悟し始めた。

 

「あ、えーとね。一応誤解が無いように言っておくと無事だよ。八幡君が盾になってくれたお陰でいろはちゃんは無傷。だけどね.....」

 

マカが言い淀む。何かがあったのだろうか。いや合ったのだろう。もうマカの顔は見ていないが声のトーンだけでも伝わってくる。

 

「八幡君が負けて私達が来たあとにね。私達も負けちゃってやられるって思ったときにシュタイン先生が来てくれたの」

 

成る程。シュタイン先生なら魂の波長を直接体内に打ち込めるからクロナを退けたのも納得だ。

 

関和休題

 

色々と俺が倒れてからの話を聞いたが纏めると俺は4日程眠っていたらしい。一色は2日間ずっと側に付き添っていたらしいが2日を堺に保健室に来なくなってしまったようだ。

 

マカは気になり先生に聞いたりノットの教室に行ったりノットの知り合いに聞いたりしたらしいが2日以降に一色の姿を見た者は誰もいなかったらしい。

 

「.......」

 

あまりの内容に言葉が出てこなかった。一色の安否が気になっていた俺は無事に帰ってきたという言葉に安心したが失踪したと言われたのだ。これでは落ち着いて寝てもいられない。

 

俺は今だ痛むお腹を押さえながらバッシもまだすんでいないのだろう針で綺麗に縫われていた。痛々しいな....と思いながらも布団に手をついて少しずつ起き上がる。

 

「ちょ!まだ寝てなくちゃ駄目だよ!」

 

マカに寝るように言われるが半ば無理矢理体に鞭打って起き上がらせる。俺はベットから立ち上がると長い間寝ていたせいなのか足に力が入らずにその場に倒れこんでしまう。

 

「八幡君!」

 

マカが慌てて俺を立ち上がらせる為に近付いて来て肩を貸してくれる。起き上がろうと足に力をいれたところで保健室の扉が開いた。

 

「あら?比企谷君駄目じゃない。まだ寝てないと、酷い怪我なんだから」

 

保健室に入ってきたのは死武専、保健室の保険医メデューサ先生だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話[八幡の夢。一色いろはの正体?]

やっとこさ書けましたです。書いてて楽しいですがそう言うときは決まって読みにくいと思いますです。なので質問等意見、感想などお待ちしております。修正は出来る限り速めに修正します。


 

「あら?比企谷君駄目じゃない。まだ寝てないと、酷い怪我なんだから」

 

起き上がろうとしている俺にメデューサ先生は少し困ったような表情を浮かべながら俺の前まで来てベットに座るように言われ首からかけていた聴診器を俺の胸に当ててくる。

 

聴診器を当てられた事で体がビクッと反応してしまうがメデューサ先生は俺の反応が面白いのかくすくすと笑っている。その光景を見ていたであろう、マカとソウルも笑っている事で今の俺は羞恥により顔を真っ赤にしているだろう。

 

 

「あらごめんなさい。あまりに反応がウブだったものだからつい」

 

この一言でソウルは声をあげて笑いだした。あまりに大声を出して笑いすぎたためか傷口に響いたらしく傷口を押さえている。心の中でざまぁみろとだけ言っておこう。

 

「おい八幡.....誰がざまぁみろだ!」

 

「あれ?」

 

「くす。あなた声に出てたわよ?」

 

メデューサ先生は聴診器を首にかけ直して俺に言ってきた。どうやら口に出してしまっていたようだ。

 

「まあまあ、二人ともまだ怪我が治ってないんだから落ち着いて」

 

「マカが言うなら仕方ねえか...八幡、怪我が治ったら覚えとけよ!」

 

「あー覚えてるまで、覚えておくわ」

 

こんな何気無い談笑が堪らなく嬉しくて懐かしくて暖かいと感じていた。でも何かが足りないと、何かがぽっかりと抜け落ちてしまっているようなそんな感じがして今この場に俺がいるの間違っているんじゃないかと思ってくる。二人の会話を聞きながら愛想笑いを浮かべて段々と二人の声が小さくなっていく。周りは少しずつ暗くなっていき、まるで此処にいるのは俺一人のような...........。

 

「....谷........大...?」

 

「お.....八......!!」

 

ぼふっと何かが顔に当たったことで顔を上げるとマカとソウルとメデューサ先生が心配そうに俺を見ていた。顔に当たったものは枕だった。ソウルが俺に向かって投げたのだろう。

 

「比企谷君どうしたの?やっぱりまだ体調が優れないかしら?問題はなさそうだったけど」

 

「八幡君大丈夫?」

 

「八幡何一人で考えてんだよ。気になることがあるなら俺達にも言えよ」

 

そうか....俺は一人じゃないんだ。

 

このもどかしい気持ちは分かっている。ぽっかりと空いてしまった穴は既に答えが出ている。それなら行動に移せば良いだけじゃないか。俺には頼れる友達がいるんだから。

 

「マカとソウル。それにメデューサ先生に頼みがある」

 

皆真剣な表情で俺の言葉の続きを待ってくれている。正直言えば少しだがまだ怖い。俺の頼みを聞いて拒絶されるんじゃないか、とか。でも俺一人じゃ見付けられない気がした。人は一人では生きていけないように。俺だけじゃ一色を見つけることはできないと思うから。

 

「一色を......俺のパートナーを探すのを手伝って欲しい」

 

深々と頭を下げながら俺は頼んだ。俺は頭を上げずにずっと下げたままだ。マカ達がどのような顔をしているのかが分からない。それになかなか返事も返ってこない。その事に緊張と不安で涙が溢れだしそうになる。俺は半ば諦めながらずっと下ろしていた頭を上げた。

 

「やっと頭を上げてくれたね」

 

「たくっ親友に何、何時までも頭下げてんだよ」

 

頭を上げた俺は優しい笑みを浮かべてくれるマカ達三人の顔があり思ってもみなかった言葉が返ってきた。

 

「「そんなの当たり前でしょ(だろ)!!」」

 

「お前ら.....」

 

「良いわね。久し振りに感動してしまったわ。勿論私も協力するわよ。一色さん、絶対に見つけましょうね」

 

「はい...」

 

 

 

「それじゃあ私は用事があるから帰るけど。マカちゃん、後はよろしくね」

 

「はい、メデューサ先生」

 

メデューサ先生が、そのあと帰ると言った後マカも時間があまり遅くならないように帰れとソウルに言われ半ば喧嘩しながら帰っていった。喧嘩するほど仲が良いというのは本当らしい。

 

ふと一色との日々を思い返すと俺が一色を最初避けていただけで喧嘩なんてしたことなかった事を思い出してどこか寂しい気持ちになる。

 

「喧嘩するのも悪くないのかもな...」

 

「いや良くねーだろ?マカなんて見てみろよ。怒ったときとか遠慮なしに殴ってくるからな。まったく...こっちは怪我人だっての」

 

先程マカチョップをくらった頭を擦りながら言っているソウルだがその顔はどこか嬉しそうだった。

 

「なあ八幡。一つ聞いても良いか?」

 

唐突にソウルから聞かれ驚いたが首を縦にふることで肯定する。

 

「お前起きる前に魘されてたけど変な夢見なかったか?」

 

変な夢......。思い当たる節はあった。

 

自分と“鬼”が出てきた夢のことだろう。だがソウルの聞き方は少しおかしいと感じた。普通なら魘されてたけど変な夢でも見たのか?だよな。でも見なかったか?てことはソウルも見たってことか?

 

「ああ、鬼が出てきた」

 

「っ!八幡の夢にも出てきたのか!!うっ....」

 

ベットから落ちるんじゃないかってくらいの勢いで聞いてきたソウルは傷口を抑えながら息を荒くしている。

 

「落ち着けって...まだ治ってないのに動いたら傷口が開くぞ」

 

「ああ、そうだな...。それでどんな夢だった?」

 

ソウルの表情は何時ものふざけた様子が一切感じられず真剣そのものだった。

 

「意識が無くなって最初に自分自身にあった」

 

「自分に?」

 

思っていた答えと違ったのか少しがっかりしたような表情になりながらもふざけた様子はなく続きを聞く事は伝わったので話していく。

 

幼い日の自分。現在の自分。そして鬼。この一連の話をして何処かの水に落ちて深く深く沈んでいく事を話した。

 

鬼が出た辺りからソウルからお前もか、とか。やっぱり扉が急に現れたんだなとか言われたが意味が分からないのでソウルの話も聞くとその内容は驚愕のものだった。

 

マカの中からソウルが突き破って出てくるなんて....それじゃあまるで魔剣みたいじゃないか。俺はこの言葉を言いそうになるが必死に噛み締めた。

 

そのあとは雑談になりマカ達がいた時には聞いていなかったがシュタイン先生とデスサイズが来てくれた後、あと少しで魔剣を倒せそうな所で魔女が現れた事を聞いた。

 

俺と一色を襲った矢印は魔女の攻撃によるもの?だけどあの時一色はあの攻撃の仕掛けた人物を知っていそうだった。何よりあの攻撃をされた後に一色はおかしくなってしまった。

 

一色は魔女を知っている?

 

----------------何故?

 

一色の言っていた、呪われたという言葉が最悪なピースとなってパズルに嵌まっていく。

 

いくら否定しても一色の姿が、存在が一致してしまう。

 

でも何故一色はこの場にいないのか?

 

[捨てられた]ふとこの言葉が脳裏をよぎり決定付けてしまう。

 

一色は魔女でありながら魔女から終われている?それで魔女に見付かり現在は誰も姿を見ていない?

 

確証は無いが辻褄は合ってしまう。俺の心音は荒くなる。

 

死武専は魔女を狩り、鬼神の復活を阻止する学校だ。

 

一色いろはが魔女なら俺は..........。

 

ふと甦るのは一色との日々。最初は鬱陶しかった。女子に近くにいられても迷惑なだけだった。でもいつの間にか隣にいて信じようって思えるようになって...そして。

 

[先輩。わたしを信じて下さい]

 

......一色は職人で俺は武器。武器と職人は二人で一つ。重要なのは魂...だったな。

 

魔女よりも先に見付けて急に俺の前から消えたことを説教しないとな。

 

「ん?どうしたんだよ八幡。珍しくにやにやしてて気持ち悪いぞ?」

 

「ほっとけ.....でもパートナーって良いもんだと思ってな」

 

「....お前本当に八幡か?きっと腹切られる前に頭もぶつけたんだな。ちょっと待ってろ今メデューサ先生呼んでくるから」

 

引きながら言ってくるソウルに心を削られながらもベットに体を預けて目を閉じた。

 

 

ゆっくり休み睡眠をとって体を回復させて、次目を覚ますときには一色を探しに行こうと決めて。

 

 

..........

..............

..................。

 

「おーーーっす!!八幡!俺様が来てやったぜ!!」

 

そう言って入ってきたブラック☆スターに抱き付かれ体が悲鳴を、いや口から叫び声を上げて気絶という睡眠で目を閉じることになった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話[眠っていた二日間?妖刀と裏切り]

目が覚めると保健室には俺以外にシュタイン先生がいた。

 

シュタイン先生に話を聞くとブラック☆スターに抱き付かれた俺は傷口が開き丸二日眠りこけていたらしい。その間にソウルは治り自宅に帰り現在は保健室に俺一人らしい。

ブラック☆スターはその後様子を見に来たシュタイン先生により窓から投げ捨てられブラック☆スターに続いて来た椿さんがシュタイン先生から事情を聞くと気絶している俺に凄い勢いで謝って窓から外を覗いて飛び降りたらしい。それから暫くの間は保健室にまでブラック☆スターの悲鳴は響いていたとか。

 

やっぱり椿さんは怖いと再確認した俺は視線をシュタイン先生に移して少し真面目な顔になる。シュタイン先生が態々待っているのにこれだけの筈がないと思ったからだ。

 

シュタイン先生はその後、ここ二日で起きた事を話してくれた。キッドとブラック☆スターがエクスカリバーに会いに行ったこと。そして現在、ブラック☆スターが妖刀の魂の回収に行っているという事だった。

 

鬼神の卵と化した魂の中でも魔剣と妖刀は別格だ。狂気を浴びすぎており人の魂を喰らっている分強い。魔剣に関しては実際に戦って分かったが妖怪は書籍に書いてあることしか知らない。死武専の図書館はかなり広くノット時代は授業が終われば図書館にずっといた俺はある程度を読破している。

 

「確か妖刀は人の不安や恐怖、そして怒り等といった感情の隙間に入り込み操り少しずつ魂を吸収していくんでしたっけ?」

 

「驚いたな。よく勉強しているじゃないか」

 

煙草に火をつけながら言ってくるシュタイン先生。一応ここ保健室ですよね?

 

「いえ、たまたま図書館で読んだものですから」

 

俺の答えにシュタイン先生は何も返さずに窓の近くまで歩いて外を見ている。

 

「.....ブラック☆スターと椿さんだけで行ったんですか?」

 

「そうだ」

 

勝てるのか?とは聞けなかった。俺と一色。それにマカとソウルで挑んでも魔剣は倒せなかったのだ。そんな魔剣クラスの相手に万年魂回収0のブラック☆スターが勝てるとは思えなかったからだ。

 

「ブラック☆スターは勝てると思うかい?」

 

「...正直厳しいと思います」

 

「そうか。俺もそう思うよ」

 

煙草を吸いながらシュタイン先生が返してくる。だがブラック☆スターが負けるところなんて何度も見たことがある俺だが二対二でブラック☆スターが負けているところを俺は見たことがなかった。

 

妖刀は群れるのを嫌う。故に誰かの魂の隙間に入り込んだとしても武器と職人という関係で二体二になる。

 

「ですけどブラック☆スターが負けるところも想像できません」

 

そう。この状況ならブラック☆スターが負けているところを想像できないのだ。勝つところも想像できないが負けるところも想像できない。周りから見れば結局どっちなんだ?と聞かれそうな意見だがブラック☆スターだから仕方がないと言わざる得ない。これがマカとソウルなら悪いが負けると言っていた事だろう。

 

「そうか。今からデスルームに向かうぞ。もう動けるだろ?」

 

そう言われて体を起こしてみると、まだ痛みはあるがバッシも済んでおり痛みも我慢できる範囲内だった。

俺はシュタイン先生から松葉杖を渡されたが断りゆっくりだがデスルームに向けて歩き始めた。

 

デスルームに着くと死神様とマカとソウル、それにキッドとリズさんとパティがいた。

 

「おっ八幡やっと目が覚めたみたいだな」

 

「ああ、ブラック☆スターはどうなってる?」

 

俺が聞くと皆下を向いてしまった。まさか?と一瞬頭の中で最悪な光景が浮かんだが死神様の前に映し出されている映像を見てその考えは杞憂で終わった。

 

ブラック☆スターは、なんか村の人数名にボコられていた。頭から血が出ようが気にせずに真っ直ぐ妖刀を抱えた椿さんを見ながら。

 

状況が予想外すぎて反応に困っているとシュタイン先生が映像を見ながら間の抜けたような声を出した。

 

「あれー?これはどういうことですかね?」

 

頭に付いているネジを回しながら言った一言にマカが詳しく事情を説明してくれた。

 

要約するとブラック☆スターは星一族の生き残りらしい。まぁ肩に星一族の印あったから俺は知ってたけど。星一族に恨みがある村らしくブラック☆スターに対して暴行。一時的に避難して待ってると妖刀登場。村人の魂の隙間に入り込み操る。妖刀と勝負して村人の手から妖刀を離すまで成功。椿さんが現在妖刀の魂の中で戦闘中らしい。椿さんの意志が妖刀に負ければ椿さんは妖刀に魂を吸いとられてしまう。椿さんの勝利をブラック☆スターは信じて待っている。それで村人は何も抵抗しないブラック☆スターに暴行....か。

 

それにしても......先程からやけに雰囲気がおかしい。暗いというか重いというのか。特にマカがおかしい。先程から目を合わせようとしないのに仕切りに俺の方を見てくる。

 

何かあったのか?と俺が疑惑を持ち始めた時椿さんが妖刀に吸い込まれた。

 

マカは今にも泣きそうになりながら椿さんの名前を呼んでいる。キッドは静かにしているが拳に力が入って何も出来ない事を悔やんでいるのだろう。俺だって同じだった。

 

そんな中でブラック☆スターとソウルだけは違っていた。

 

「あいつらなら大丈夫だ」

 

皆ソウルの方を向きブラック☆スターは妖刀に木の棒でつつきながらアンコールと連呼している。ソウルは信じてブラック☆スターはまだ諦めていなかった。

 

誰の目に見ても妖刀に吸収されてしまったと映るこの光景に。ブラック☆スターで言うところの妖刀のステージで不利な椿さんが勝つなんて、と誰もが思っていた。だけどソウルとブラック☆スターの声を聞いて負ける筈がないと思えるようになった。

 

今皆の中には絶望ではなく希望があった。ブラック☆スターと椿さんが負けるわけがないという信頼という言葉の希望が。

 

妖刀は突如煙をあげ煙がはれると椿さんが立っていた。俺はホッと胸を撫で下ろして拳を握っていた力を弱める。

 

「ただいま、ブラック☆スター」

 

と言った椿さんに心配そうに問いかけるブラック☆スター。椿さんは俺から見ても無理をして笑顔を作っているのが分かるのだ。ブラック☆スターは俺以上に椿さんの事を分かっている筈だ。

 

その後両手を拡げながら「来な!ブラック☆スターが抱っこしてやるよ」と言い出して椿さんは泣きながらブラック☆スターに抱きついた。俺は見ていられなくなり目線を反らしたが周りからあーっと言う声が聞こえ振り返ると村人の子供が一人空高く吹っ飛んでいた。

 

うん.....なんかスッキリしたと思ったのは俺だけじゃないだろう。

 

 

デスルームに戻ってきたブラック☆スターを俺達は迎え入れ劣等生の汚名返上だな等久し振りの会話を楽しんだ後、椿さんの変身できる武器のモードが増えたことをブラック☆スターは言い出した。

 

今でも相当な種類に変身できる椿さんが更に強力な武器に変身できるようになったと聞いて皆興味深々にブラック☆スターに注目する。

 

「いくぞ!椿」

 

「はい!」

 

椿さんは姿を妖刀に変えてブラック☆スターはひと振りすると余波で砂塵が巻き起こりが襲ってくる。かなりの威力があるということは分かる。

 

だが......ブラック☆スターは妖刀をひと振りしただけで魂の波長を持っていかれたようで真っ青になり倒れた。ブラック☆スターを介抱する椿さんはいつも通りだったが以前よりも良いパートナーになったと思った。

 

マカとソウルとキッドとリズさんとパティは、フラフラしているブラック☆スターと椿さんと共にデスルームを出ていき俺と死神様とシュタイン先生だけが残った。

 

「いや~それにしてもブラック☆スターには驚いちゃったね!」

 

死神様はいつも通り陽気に話してくるが俺はそんなことよりも気になることがあった。先程のマカの態度。あれはどう考えてもおかしかった。

 

「そうですね。僕も過小評価しすぎていたみたいです」

 

シュタイン先生もいつも通りだ。だが何かおかしい。いつもと同じだけど何かが違う.....。

 

「死神様、シュタイン先生。俺が寝ている間に何かありましたか?」

 

「君が寝ている間のことは保健室で話した筈だが?」

 

確かに聞いた。でもそれだけじゃない気がする。

 

「一色の事。何か分かったんじゃないですか?」

 

確証はない。俺がただ知りたいからこじつけているだけかもしれない。でも嫌な胸騒ぎがする。

 

「ふーむー....そうだね~あると言えばあったかな~」

 

「っ!」

 

「死神様」

 

「隠しててもいずれはバレる事でしょ~?それなら先に話しておくのも比企谷君の為でしょ?」

 

シュタイン先生の慌てようから良い知らせではないことは分かった。

 

「分かりました。あーと比企谷君。一色いろはは死武専を裏切った」

 

「は?」

 

暫くの静寂と俺の頭の機能の停止。シュタイン先生の言葉の意味を理解するまでかなりの時間が必要だった。

 

「一色が裏切った?......」

 

「ああそうだ。一色いろはの正体は魔女。君がブラック☆スターに抱きつかれて気絶した夜の事だよ。メデューサ先生が一色いろはを見つけた。が一色いろははソウルプロテクトを解除しメデューサ先生を襲撃。メデューサ先生は運良く軽傷で済んだが今日は安静をとって休んで家で休養をとって貰っている」

 

一色が魔女と聞いても俺はそこまで驚かない。確証はなかったが一色が魔女だということは病室で気付いていたからだ。だがメデューサ先生を襲撃したことの方が驚いていた。俺の知っている一色がそんなことをするなんて思えなかったからだ。

 

「一色はどこで見かけられたんですか?」

 

「それを聞いてどうするんだい?」

 

俺はどうしたいんだ?そんな問い既に保健室で終わっている。

 

「一色と直接話します」

 

「駄目だ。許可できない」

 

シュタイン先生は真面目な顔をしながら言ってくる。語尾が強くなっていることから譲る気はないのだろう。

 

「それは何故ですか?」

 

でも譲れないのは俺も同じだ。

 

「危険すぎるからだ」

 

「一色は俺のパートナーであり職人です。そして俺は武器です。俺には一色と直接話す権利くらいあると思います」

 

シュタイン先生が本気で心配してくれるのは伝わるが今回の事だけは俺も譲る気がない。

 

「何故そこまでするんだ?」

 

シュタイン先生からの質問に俺は一瞬考える。何故そこまでするんだ?そんなの自分のパートナーだからと答えるのがベストなのだろう。さっきも言ったが一色は俺のパートナーなんだから。でもそれだけじゃない。パートナーだからって理由だけじゃない。

 

「俺は...またあいつの笑顔が見たいんすよ...ただそれだけです」

 

「そうか...」

 

シュタイン先生は一瞬驚いた顔をしているが俺も心では驚いている。こんな感情は一色と出会う前の俺なら絶対に持ち得なかった感情だ。

 

「シュタイン先生。どうやら比企谷君を止めるのは無理みたいだね~。ただ場所を教えてもまだそこにいるという保証はないよ?むしろいない可能性の方が高いと僕は思うけどね~」

 

死神様の言っていることは尤もだ。逃げているのなら見つかった場所には長くは居座らないだろう。だけど今はただ止まっていたくなかった。可能性があるのなら前に進んでいたかった。

 

「それでも俺は知りたいです」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話[残された日記帳?一色いろはを探す者達]

「それでも俺は知りたいです」と言った俺の言葉に返ってきた言葉は翌日にメデューサ先生が休養を終えて来る筈だから直接聞きなさいという事だった。

 

俺は焦る気持ちをなんとか抑え込みデスルームから出て自分の家に向けて歩き出す。家に着くと当たり前だが部屋の中は真っ暗で明かりはついておらず誰かがいる気配もない。

 

頭にフラッシュバックするように飛び込んでくるのは「お帰りでーす、先輩♪」と言うあざとい後輩の笑顔。

俺は部屋の明かりも付けずに部屋のすみに腰を下ろす。部屋を見渡せば月明かりに照らされて見える一色の荷物。

 

俺は立ち上がり一色の荷物の前までいき旅行鞄の前までいく。一色の手掛かりがあるかもしれないと思うと自然と手は一色の荷物のジッパーを引っ張っていた。

 

一色の匂いが鞄の中から溢れだし鼻腔を擽るが鞄の中に日記帳が見え日記帳を慌てて手に取り部屋の電気を付けた。

 

俺は椅子に座り日記帳を捲っていく。

 

 

ー○月×(晴)ー

 

今日は特別な日です!なんとわたしにパートナーが出来るかもしれない日らしいですっ!しかもノットのわたしが組むことになるのは一ツ星の先輩らしいです!聞いた話では男性みたいなので少し楽しみです♪

 

 

ー○月××日(晴)ー

 

紹介された先輩は目が腐っていました、少し残念です.....。しかもわたしの事をあざといとか言ってくるとかどんな目してるんですかね?あー腐った目でしたね....。でも実力はあるみたいなのでギリギリ合格点あげましょうかね?なんかチョロそうですし♪

 

ー○月A日(くもり)ー

 

昨日の夜納得いかない事がありました。武器と職人は一緒の家で暮らすのが基本です。なのでわたしも先輩と住むことに決めたのです。なのに先輩からは猛反対です!かなり傷付きましたよ!ていうか普通は喜ぶ所じゃないですか!?まぁ多々音 めめさんが同じ寮にいるので戻るわけにもいかないのですが.....。はぁー....どうしてシャウラさんと偶々会ったときに一緒にいた職人の子がいるんですかっ!操られていたようでしっかり覚えている事はないと思いますが危険な事にはかわりありませんし....魔女として追放されたわたしを利用していたようでしたがなんとも...ノットに倒されるとは魔女として情けない限りです。

 

 

なんか凄い事書いてあるんだけどこんな証拠みたいなの残してほんと抜けてるんだよな.....。

 

 

ー○月B日(晴)ー

 

今日はビックニュースです!なんといよいよ明日、わたしと先輩の初デビューが決定しましたっ!先輩はめんどくさそうでしたがわたしは何処か楽しみです♪あーイタリアなんて先輩とデートみたいで照れますね...でもやっぱり楽しみです!初めての戦闘でマカ先輩とソウル先輩も来るみたいですが上手く別行動になれれば良いなーなーんて。こんなこと考えるなんておかしいですかね....わたしは正体を先輩に隠しているのに。

 

ー○月D日(.......)ー

 

わたしのせいで先輩は.....わたしがボーッとさえしていなければ....いえ。それだけじゃないですね。わたしが魔女であることを先輩に隠してさえいなければ先輩がこんな大怪我を負うことも無かったんですもんね....はは....流石じゃないですか。魔女からも意味嫌われる[災悪の魔女]と言われるだけはあるじゃないですか....“あの人”にも言われました。わたしが一緒にいるだけで不幸や災いになるって....なら離れるしか無いじゃないですか....。先輩と離れるしか.....嫌....嫌だよぉ........誰か助けて....先輩助けて下さい......。

 

 

...........。

 

 

「一色......」

 

「あーあー....何かってに人の私物見てるんですか?先輩」

 

俺は今一番聞きたい声が聞こえ振り返ると玄関に一色が立っていた。

 

「何泣いてるんですか?先輩」

 

「え?.......あ」

 

俺は涙を流していた。自分でも知らないうちに日記帳を閉じて目をこすり一色を見る。俺が最後に見た一色と全く同じだった。変な言い方かもしれないが実感が湧かないのだ。これ程までに会いたかった相手が急に目の前に現れると。

 

「はー....それじゃあ荷物返してください」

 

「あ、ああ。悪かったな勝手に見て」

 

「いえ良いですよ...これで最後ですし」

 

「は?.....一色?」

 

俺は一色のその言葉を最後に何者かに首を強打され意識を手離した。

 

 

 

 

 

目を覚ますと太陽は既に上がっており既に授業が始まっている時間だった。

 

「一色!!」

 

俺は急いで立ち上がる。その時胸の傷口が傷むが歯を食いしばり手で抑えることで我慢して外に飛び出した。

 

走って走って兎に角走った。

 

デスタウンを隅から隅まで走った。

 

だが一色の姿はどこにも見当たらなかった。

 

「一色何処にいるんだ....」

 

俺が呟くと後ろから声をかけられた。振り返ると黒髪のツインテールの女の子と茶髪で短髪にリボンを付けているある一部分がやたらと主張している女の子と金髪碧眼のTHEお嬢様みたいな女の子がいた。

 

知り合いでもなく話しかけられる覚えがない俺は一瞬俺が話しかけられたのではなく俺の近くにいる相手に話しかけたと思ったがお嬢様みたいな女の子に「そこの目の腐った貴方に言ってるんですよ!無視しないでくれますか?」と言われ俺だと分かった。

 

「あーと....俺全く君達のこと知らないんだけど知り合いだったっけ?」

 

「あ、いえ。その....あまりに思い悩んだ顔をしていたので」

 

「そうか...」

 

どうやら初対面の女の子にすら心配されるほど俺の顔は今酷いらしい。

 

「何なんですかその態度は!折角つぐみさんが心配してくれているというのに!」

 

「あ、アーニャさん、私は気にしてないから。それにこんなに思い悩んだ顔してるんだもん。きっと何かあったんだよ」

 

「つぐみさんは優しいね~」

 

そして何故か俺の前で抱き合う二人。正直かかわり合いになりたくなかったが目の前の女の子達はノットであることが分かったので聞いてみることにした。

 

「なあ一色いろはって知らないか?」

 

「え?いろはちゃん?」

 

「知ってるのか?」

 

ツインテールの女の子、恐らくつぐみさんと呼ばれているのでつぐみさんと言うのだろう。知っているようだった。

 

「一色さんならノットでの有名人ですわ。知らない人の方が少ないんじゃないかしら」

 

こっちのお嬢様みたいな子はアーニャさんでしたっけ?どうやらノットなら知っているらしい。

 

「一色さん?...誰?」

 

どうやら全員は知らないようだ。

 

「えー!メメちゃん知らないの!?」

 

「メメさん...貴女は普段の授業中寝てるから知らないんですのよ。もう少し起きて授業を聞くように心がけてください」

 

話が脱線しそうなので要件だけ聞くことにする。

 

「それでなんだが一色いろはが何処にいるか知らないか?」

 

「え?いろはちゃんの居場所?うーん...最近学校休んでて寮も出ていっちゃったから何処にいるかは...」

 

「そうか...」

 

やはりそう簡単には分からないか。

 

「貴方は何故一色さんを探しているんですの?」

 

アーニャさんに聞かれた俺は理由を言ってしまおうと思ったが目の前の3人の女の子を巻き込む事は違うと思い俺は適当に礼を言ってから帰ろうとするが何故かつぐみさんに回り込まれていた。てかアーニャさんとメメさんにより囲まれていた。

 

え?何この状況。

 

「質問に答えてください!何故一色さんを探しているんですか?」

 

俺はこの時しまったと思った。俺が寝ている間にメデューサ先生は一色に攻撃されて魔女だと言うことが分かった。それならノットである目の前の女の子達も一色の正体を知っているのかもしれない。

 

それなら魔女を探している俺は不自然に映っても仕方ないと自分の考えなしの行動を悔やんだ。

 

「あの!私達もいろはちゃんを探しているんです!」

 

つぐみさんは両手を拡げながら俺に言ってくる。つぐみさんの目を見て俺は分かってしまった。この目は心配している目だ。

 

「あいつとはどういう関係なんだ?」

 

「友達です!」

 

俺の質問に即答で答えたつぐみさんは両手を拡げたまま俺の言葉を待っている。

 

本当に一色の事を心配していると分かったが尚更巻き込むわけにはいかないと思った。

 

「そうか...でも悪いな。俺からは何も話せない」

 

「そんな....」

 

「つぐみさん待ってください。貴方のその言い方、何かを知っているんじゃないですか?」

 

「....」

 

「やっぱり....話なさい!」

 

アーニャさんの声からはハッキリと怒気が混じっている。その程度で俺は話したりしないけどな。

 

「どうしても話さないつもりですか?」

 

「ああ」

 

「分かりました。つぐみさん....武器に変身してください」

 

「え!?アーニャさん?」

 

「話してくれないなら仕方ありません。無理矢理聞き出します」

 

「俺が一ツ星の武器だと知ってて言ってるのか?」

 

「そんなこと関係ありません!!つぐみさん!ネネさんもやりますよ!」

 

「え、あ..う、うん!」

 

「つぐみちゃんがやるなら頑張る」

 

つぐみさんはハルバートタイプの武器らしく変身してアーニャさんとネネさん二人で構えている。

 

武器一人に職人二人とは珍しいな。それにしても....ハルバートに刃が無いが舐めてるのか?

 

「そんな刃が無い武器でやるつもりか?」

 

「そんなことありません!つぐみさん!ネネさん!」

 

「はい!」

 

「「「魂の共鳴!!!」」」

 

「なっ!」

 

ノットで魂の共鳴が出来るものなのか?一ツ星でも出来ない奴はいるのに....それに武器一人に職人二人でなんてかなり難しい筈だ。そう言えば一色の日記帳に書いてあった魔女がノットに負けたと言うのはこの三人のことか....それにメメさんって....こいつが操られていたやつか...。

 

なら余計に教えるわけにはいかないな。

 

俺は右手と左手を銃に変身させて距離を取る。

 

さあ...久し振りのリアルファイトだ。魔女を倒したなら相手がノットでも全力でいくべきだろう。




ノットも登場。あまり違和感ないように書ければと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話[魔女を倒したノット生?説教は短めに]

 

魔女は一ツ星職人でも倒した経験があるやつはいない。そもそも魔女を倒せればデスサイズになったようなものだ。俺でも勝てる気がしないし他の一ツ星でも魔女を倒せるのは...今は無理だが成長すればキッドかブラック☆スター。それにマカくらいだろう。

 

そんな魔女を倒したと言うのだ。本気で行くべきだろう。腕を銃に変身させた俺はジャンプをして距離をとる。

 

「銃ですか....トンプソン姉妹と戦った時を思い出しますね....」

 

「そんなことありましたっけ?」

 

どうやらアーニャさんは、リズさんとパティと戦った事があるようだ。にしても二人をトンプソン姉妹と呼ぶって事は、キッドとパートナーを組む前の事か?

 

「何を言っているんですか!ネネさん!貴女もあの場にいたじゃないですか!」

 

「んーそうでしたっけ?」

 

「もう良いですっ!それよりも今は目の前の相手に集中しましょう!ネネさん、つぐみさん以前の私達とは違うところを証明するチャンスですっ!」

 

「な、なんだか分かりませんが頑張ります!」

 

二人の女の子は左右別れるようにして走り俺に向かってくる。現在ハルバートを持っているのはアーニャさんでネネさんは持っていない事から、アーニャさんに意識を集中する。

 

「ロイヤル槍術!!」

 

アーニャさんはハルバートを匠に操り鋭い攻撃を仕掛けてくる。何処かの流派なのだろうかロイヤル槍術というのは聞いたことがないが....だがいくら鋭くてもスピードが遅すぎるし、攻撃の間に隙も多い。これで本当に魔女を倒したのかと不思議に思うほどだ。銃でハルバートの攻撃を受けてみたが威力もさほど高くはなく、ノットにしてはのレベルである。

 

「はぁあああ!!」

 

ネネさんとやらが拳を開き掌底を放ってくる。ハルバートの一撃を避けた場所に掌底を撃ち込まれたがその場でバク宙の要領で避けながら銃を乱射した。威力を抑えて撃ったので当たったとしても痛いくらいで済むだろう。

 

アーニャさんはバックステップで全て避けてネネさんは、アーニャさんから投げて渡されたハルバートを回転させて全て打ち落とした。ネネさんが持っているハルバートは、先程アーニャさんが持っていたハルバートと形状が異なっていた。

 

「職人によって形状が変わるのか」

 

独り言のつもりで呟いた言葉は意外にもアーニャさんから「はい」という言葉で返ってきた。

 

ネネさんはジャンプをして俺めがけてハルバートを降り下ろす。その動作にアーニャさんほどの鋭さは皆無だったが念のためバックステップで交わすとハルバートは地面に深くめり込んでおり俺が先程いた場所は土煙が舞っていた。

 

成る程、どうやらアーニャさんはテクニックでネネさんはパワータイプらしい。自分の短所を補える良いチームみたいだ。これから経験を積めば強くなるかもしれない。

 

 

だけど....今はその経験が足りていない。それは彼女達の動きを見ていれば容易に分かってしまう。あまりに危なっかしくて動きにムラがあり勘が悪い。勘は関係なさそうに思えるだろうが実は違う。戦闘の勘の良さというのは戦闘を経験していけば自然と身に付いていく。それは絶対的な危機の時に自分を助けてくれる武器になる。

 

俺がこの三人に評価を付けるとしたら悪いがノットだ。まだまだって事だ。

 

俺は銃に変身させた両手を元に戻す。アーニャさんは俺の行動が気に入らないのか明らかに目くじらを立てて怒っているような顔をしている。

 

「どういうつもりですか?」

 

「何が?」

 

どういうつもり、か。逆に俺は聞きたいね。勝てると思って俺に勝負を挑んだのかと。

 

「何がじゃありません!勝負中に武器を元に戻すなんてどういうつもりですか?勝負を捨てたようには見えませんが?」

 

アーニャさんの声は震えている。怯えているではなく怒っているから。

 

「武器を使う必要が無いと分かったんだ。武器(俺)でも素手で充分だ」

 

俺は拳を握りファインティングポーズをとり激昂しているアーニャさんとの距離を一瞬で詰めて腹部に肘鉄をいれる。鳩尾に肘鉄をいれた事でアーニャさんの口から大きく息が吐き出される。一瞬怯んだが体を捻り裏拳を俺に向かって繰り出してくるが俺は膝を下げることでかわし、沈んだ膝の力をそのままいかしてオーバーヘッドキックのようにアーニャさんの顔面めがけて蹴る。

 

女の子の顔に蹴りとか酷いんじゃないかって?そもそも刃をついた武器で戦うことが多いのが死武専なのだ。たかが顔を蹴られるくらいどうってことないだろう。

 

俺の足がアーニャさんの顔面をとらえる寸前に俺の蹴りは横から入ってきた者に止められた。

 

「ちょっと八幡君何やってるの!?」

 

急に現れて俺の蹴りを受け止めたのはマカだった。正確には武器に変身したソウルだが。

 

「マカ.....」

 

俺は蹴りあげた足をゆっくりと下ろしてマカの顔を見る。心配している事が伝わってくる。ソウルも武器から元の姿に戻りマカと同じことを聞いてくる。

 

「俺に喧嘩を売ってきたのはそいつらだ。俺は悪くない」

 

そう。今回に限っては俺は悪くないと思う...。やり過ぎた気はするが。

 

つぐみさんも武器から戻っておりマカに駆け寄ってお礼を言っている。どうやらつぐみさんはマカの知り合いらしい。

 

何故このような事になったのかつぐみさんが説明し終わるとマカから殴られた。何故だ?殴られた場所を擦りながらマカを見ると有無を言わせぬ鬼の様な表情で俺を睨んでいた。俺は寒気を感じ取り後ろに下がろうとするがソウルに後ろから肩を掴まれ「諦めろ」と言われ暫くマカから説教を受けた。

 

 

何分経っただろうか.....最初は当然ですわと言わんばかりにアーニャさんは怒られている俺を見ていたが今ではそろそろ許してあげては....なんて言ってるくらいには俺は怒られ続けていた。怒られている内容はノットに..それも女の子の顔面を蹴るなんて最低!!という内容だった。どうやら女の子の顔面を蹴りあげるのは駄目らしい。

 

「ちょっと八幡君聞いてるの!?私怒ってるんだよ?」

 

あーうん。聞いてる、聞いてる。そりゃもう耳にタコが出来そうなくらい聞いてますとも....。

 

「な、なあマカ。そろそろ許してやっても良いんじゃねーか?」

 

ここでソウルからも助け船が出される。

 

「んー....ちゃんと反省してるなら良いけど」

 

「八幡ならしてるって。なあ八幡?」

 

「してます...」

 

もはや敬語である。

 

やはりマカは怖い....。と再確認したところで長い説教は終わりを告げた。

 

「それよりもマカ。八幡に言うことがあるんだろ?」

 

ソウルが言うとマカは思い出した!という顔をして何故今日は授業に来なかったのか?とか先程許してもらえた筈のノットの女の子に足で蹴りあげるなんて!という説教が再び復活し。挙げ句の果てにはブラック☆スターは妖刀を使いこなす為にシュタイン先生から修行の道具を貸してもらったらしい。その時にブラック☆スターは筋トレとか走り込みだけで強くなってくなんてズルい!とか言い始めたので流石に我慢できなくなった俺はマカの言葉を一旦止めた。

 

「なあマカ」

 

「な、何よ」

 

俺のあまりの変わりように一瞬たじろくマカ。

 

「ブラック☆スターが筋トレや走り込みだけで強くなってるなんてズルい!って今言ったよな?」

 

「だってそうじゃない!」

 

ブラック☆スターは基本的に努力している所を人には見せない。そして嘘もつかない。なので筋トレや走り込みだけをやっているのは事実なのだろう。本来筋トレや走り込みなんて誰でもやっている。

 

だがブラック☆スターのやっている筋トレや走り込みは普通ではないのだ。

 

「ブラック☆スターがどれ程の筋トレや走り込みを毎日しているか知ってるのか?」

 

いや俺も詳しくは知らんけどさ。

 

「知らない...けど」

 

「言っておくぞ。マカもブラック☆スターと同じメニューを毎日出来るなら必ず強くなる」

 

「....八幡君は知ってるの?」

 

「一部だがな...」

 

俺は以前成長が伸び悩んだ時期があった。それはノットから一ツ星に上がったときだ。本来一ツ星にまで上がればパートナーがいるのだが俺やヒーローもだがパートナーがいないのだ。俺はずっとボッチを貫いてきたからそれなりに鍛えてきたから体術に関しては自信があった。それこそ職人にだって勝てると思っていた。

 

だが俺はブラック☆スターに授業中の体術だけの戦いで負けた。それも一撃もかすることもできずにだ。攻撃が当たらず姿すらも見えなかった。

 

その日を境にもっと鍛えるようにした。重点的にスピードを鍛えて反射神経も鍛えたがそれでも勝てなかった。

 

そして何も負けるのはブラック☆スターにだけではなかった。俺は相手がパートナーがいる場合絶対に勝つことが出来なかった。これはパートナーがいない限界とも言われていた。例外も二人ほどいたらしいが。一人はシュタイン先生で後一人はデスサイズらしい。世界を拠点としているデスサイズで名前も分からないが。

 

いくら自分を鍛えても結果は変わらなかった。だから俺はブラック☆スターを監視することにした。ブラック☆スターの訓練を見て自分の訓練に抜けている場所が無いか確かめたかったからだ。

 

俺は1週間の長い休みを利用してブラック☆スターの特訓の方法を見ることにした。ブラック☆スターにバレないように隠れながらブラック☆スターの特訓を見ていた。そこで一つ思ったことは、とてもじゃないが人間が出来る特訓の許容をオーバーしている。ということだった。

 

月曜日

 

AM5時

 

ブラック☆スターの家に張り込む。

 

AM6時

 

椿さん起床。

 

AM7時

 

椿さん朝食を作る。

 

俺は買っておいたあんぱんを食べながら牛乳を飲む。

 

AM8時

 

椿さんがブラック☆スターを起こす。

 

ブラック☆スターは寝惚けながら片手で逆立ちしながら器用に朝御飯を食べている。

 

AM9時

 

ブラック☆スター腹筋を始める。

 

5000回と言っているが窓の外からだし聞き間違いだよな?

 

AM10時

 

ブラック☆スター腹筋を4958で断念。

 

椿さんはうちわで扇いでいる。

 

直ぐに立ち上がりスクワットを始める。

 

600回と言っているが....いや止めておこう。

 

AM12時

 

ブラック☆スター、スクワット600回やりきる。

 

床は汗で水溜まりが出来ている。

 

椿さんが昼御飯を持ってきた。いつの間に作ったのだろうか。

 

俺は買っておいた二つ目のあんぱんを食べる。残しておいた牛乳で流し込む。

 

AM13時

 

ブラック☆スターが椿さんと模擬戦を始める。

 

御互いに短刀を使っているがブラック☆スターの動きは圧倒的だった。だが椿さんは動きが圧倒的なブラック☆スターの動きを先読みしてブラック☆スターを圧倒していた。

 

俺はその光景に唾液を飲み込む。

 

 

AM16時

 

かれこれ3時間も模擬戦をやっていた二人。だが二人の顔に疲れの色は無かった。

 

ブラック☆スター部屋に戻り腕立て伏せを始める。1000回らしい。

 

AM17時

 

椿さん夜ご飯を作り始める。

 

AM18時

 

ブラック☆スター腕立て伏せ1000回達成。

 

夜ご飯を食べる。

 

AM19時

 

椿さんはお風呂にブラック☆スターは腹筋を始める。

 

AM20時

 

椿さんが出てきてブラック☆スターがお風呂に入る。

 

AM21時

 

お風呂から出た後に何故か走り込みに。

 

椿さんに怒られる。

 

AM22時

 

就寝。

 

寝るの速くねっ!?

 

 

殆どこれの繰り返しで走り込みがあるかないかだ。ブラック☆スターは一日の大半を特訓に費やしている事がわかった。

 

1週間の最終日。

 

朝からブラック☆スターの特訓を見ていた俺の背後から足音が聞こえて俺は慌てて後ろを振り向く。

 

そこには椿さんが立っていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話[八幡の心?マカとソウルのズレいく魂の波長]

遅れてしまいすいません。そして今回はかなり自信ないです。途中経過なのでそこまで大事な回ではないです。


勝手に覗いていた事を怒られると思っていた俺だが椿さんからは全く別の言葉を言われた。

 

「こんにちは比企谷さんでしたよね?前から一度お話をしてみたかったんですよ」

 

椿さんはどうやらノットの時からパートナーを拒否している俺の事が気になっていたらしい。同じ武器である椿さんは武器だけでは限界があると思い職人と組んでいる。俺が一人で職人に勝っている姿を見たりすると驚いていたそうだ。

 

「でもブラック☆スターには負けましたよ。それも手も足も出せずに」

 

そう俺はブラック☆スターに手も足も出せずに負けている。それは俺がブラック☆スター並の体術を身に付けている相手には勝てないことを意味する。本来ならパートナーがいるので勝敗は分からないと言われるがパートナーがいない俺ではその可能性すらない。

 

1×1では1にしかならない。だがパートナーがいれば1は2にもなるし10にもなるのだ。実戦においては特に変わってくる。だからこそ俺は自分を鍛えぬいた筈だった。どんな相手にも負けないように。

 

「くす。ブラック☆スターは強いですからね」

 

椿さんは少し微笑み訓練しているブラック☆スターを見ながら言ってくる。正直惚けているようにしか見えない。

 

「はぁ...ま、あんな訓練してるとは思いませんでしたよ」

 

「やっぱり昨日から見てたのは比企谷さんだったんですね」

 

どうやら昨日からバレていたようだ。数日は誤魔化せたらしい。

 

「まあ...」

 

「ブラック☆スターはいつか神を越えます」

 

唐突に呟く椿さんに俺は疑問符を浮かべる。

 

「神を?」

 

「はい。ブラック☆スターは神を越えると言って限界を越えた訓練をしています。凄いって思いました。私の力は殆ど才能によって培われたものです。でもブラック☆スターは努力で培われたものだと思ってます。勿論センスが良いというのもあると思いますけどね」

 

嬉しそうに語る椿さんの顔を見てられず俺はその場に立ち上がり腰を伸ばす。

 

「そうですか....。そうですね。ブラック☆スターならいつか越えれるかもしれないですね」

 

俺はそれだけ言ってその場を後にしようと歩き始めたが後ろから声がかかる。

 

「あれ?なんだよ八幡じゃんか!!俺様の家の庭まで来てどうしたんだよ!」

 

先程まで逆立ちで庭を歩いていたブラック☆スターが俺を見付けたのか逆立ちしたまま叫んでくる。てか俺の名前知ってたんだな...。

 

「えーと。なんで俺の名前知ってるんだよ」

 

「ああ?何言ってんだよ!俺様との体術勝負で一番良い勝負したのお前じゃねーか!!しかもやる回数に比べて強くなるしよ!ほら八幡こっち来い!!勝負だ!」

 

逆立ちから腕の力だけで飛び上がりファインティングポーズをするブラック☆スター。だがそんなことよりも俺の心境は複雑で前をよく見れなかった。

 

「くす。ブラック☆スターは貴方には負けられないってずっと言ってるんですよ。ほんとに楽しそうに」

 

強さとはなんなのか。俺の求めていた強さとは。ブラック☆スターが強い理由が少しわかった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁかいつまんで話すとこんな感じだな。朝から晩まで特訓。それをブラック☆スターと1ヶ月俺は続けた。だから今の俺があると思ってるし。あいつから多くを学べた」

 

ブラック☆スターはただ強いだけじゃない。相手の強さを認める強さを持っているからこそ頑張って特訓するし自分を追い込める。

 

マカにはそれが足りないってだけだ。相手の強さを認められない。だから才能のせいにして逃げ道を作る。それじゃあブラック☆スターを越えるどころか追い付くことすら出来ない。

 

「そんな事が...」

 

ちょっと言い過ぎたかな?でもソウルがなんとかしてくれるだろ。

 

「なあマカ。八幡の言ってることは尤もだぜ。あいつの努力はお前も知ってるだろ?ここまでとは知らなかったかもしれないけどさ」

 

「うん.....」

 

「たくっ何時までもメソメソしてんじゃねーよ。全然クールじゃねえな」

 

半泣きになっているマカに手を差し出して起こすソウル。パートナーと職人。俺もこんな風になりたかったのかもしれないな...。

 

「あの....私達の事忘れてはいませんか?」

 

頬を膨らませながらアーニャさんが聞いてきた。普通に忘れてたので俺は黙っておく。マカはあきらかに挙動不審になってるしバレバレだろう。

 

「はぁ....別に良いですわ。それよりも比企谷さんでしたか?」

 

「ああ」

 

「一色いろはさんを探していると言っていましたがそれは何故なのか答えてくれますよね?」

 

「.....」

 

アーニャさんは最悪なタイミングで聞いてきた。勿論一色が魔女だという事実はソウルやマカは知っているだろう。マカとソウルは俺を見てくる。そりゃ元パートナーと言っても魔女探してたら怪しまれるよな。でも....。

 

「悪い。それだけは言えない」

 

「なっ!それなら言えない理由を教えてください!」

 

「あ、アーニャさん何か理由があるんだよ...ここは諦めよ?ね?」

 

「つぐみさんは甘過ぎます!」

 

「いろはちゃん?て...八幡君もしかして」

 

マカが一色の名前を聞いて俺に視線を向けてくる。だがそれ以上は何も言わずにうつ向いている。マカが視線を向けてきたとき俺はどんな表情をしていたのだろうか....酷い顔をしていたのだろうかそれとも....いや今はマカに甘えることにしよう。

 

俺自身、どうしたいのか分かっていないのだから。

 

俺とマカの雰囲気を察してくれたつぐみさんがアーニャさんを半ば無理矢理連れていってくれた。

 

残ったのは居たたまれない静けさと罪悪感と何も喋らないソウルとマカと俺だけがいる空間。

 

「なあ八幡」

 

そんな空気を壊してくれたのはソウルだった。

 

「八幡はこれからどうするつもりなんだ?」

 

俺は....俺がどうしたいのか。それは俺が一番知りたい事であり俺が考えないようにしている事だ。

 

「分からない....」

 

だから俺は答えを出すのを先伸ばしにする。正解があるのかないのか分からないそんな答えをいつかは出さなくてはいけないと分かっていても俺は....。

 

「そっか....行くぞマカ」

 

「え?そ、ソウル!?」

 

気になっている筈だ、ソウルだって一色が魔女だってことは知っている筈なのだから。でも「またな」とだけ言って歩いていくソウルの背中を見て俺はただその場に立ち尽くす事しか出来なかった。

 

 

それからの事はよく覚えていない。気付いた時には家に帰っておりいつの間にか翌日の朝になっていて服装を整えて死武専に向かう。マカやソウル、椿さんやブラック☆スター、キッドやリズさんやパティから挨拶をされて授業を受ける。だが頭には何も入ってこない、気付けば授業は終わっている。

 

はぁ...とため息が零れ家に帰ろうと席から立ち上がると教室の端でブラック☆スターが変な壺に手を入れて干物になっていた。シュタイン先生も一緒におり一瞬目が合うが直ぐに目線を外して家に向けて歩を進める。

 

二、三日そんな日常を過ごしているとある変化が訪れた。それは誰から見ても明白だった。ソウルとマカの魂が少しずつズレてきていた。2日前までは完璧とも言えるほど合っていた二人の魂はみる影もなく二人とも相手を見ようとしていない。

 

喧嘩でもしたのかと思ったがどうにもそういうレベルではない気がした。恐らく関われば面倒事に巻き込まれるだろう。だが数日前のソウルの背中を思い出す。何も聞かずにいてくれたソウルの背中を思い出した俺はソウルに話しかけようとしたがソウルとマカとブラック☆スターと椿さんがシュタイン先生に呼ばれ教室が出ていってしまい話が出来ずに家に帰ることに。

 

翌日。死武専に来ると何故かマカとソウルの魂反応は落ち着いており魔眼と戦ったのだと言う。強者と戦って上手くいくって何処の戦闘狂だよと思ったが黙っておくことにした。

 

授業が終わり今日も家に帰る。家に入ると何処か期待してしまう。一色がいるのではないか。戻ってきているのではないか。だが扉を開けても一色はいない。その度に心が締め付けられるように痛くなり俺自身どうしたいのか考える。いやもうとっくに答えなんて出ているのだ。死武専生は鬼神の卵と化した魂の回収及び魔女の魂の回収をする。魔女である一色は敵。だけど俺は...。

 

「一色を...一色を殺したくない」

 

ふと呟いていた。自分の部屋のベットの上で月明かりに照らされるなかこの言葉を聞いたものはいないだろう。空には笑う月が浮かんでいるだけ。きっとこの月を一色も見ているだろう。そう思い手を月に伸ばす一色に少しでも近付けると思って、だが近付ける筈もなく掠れた笑いが自分の口から漏れる。笑いは少しずつ嗚咽が混じり笑う月がボヤけて見えてくる。誰もいない、誰も聞いていない部屋で俺はまだ一色の事を探し続けている。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話[前夜祭?最強の敵には魂の共鳴!!]

今日は前夜祭、今まで死武専を休みながら一色を探していた俺もこの行事には出席せざる得ない。

 

溜め息を吐きながら着なれないスーツに腕を通す。もう一色がいなくなってから一ヶ月が経過していた。

 

「何処にいるんだよ...」

 

俺は家に鍵を閉めて死武専に向かう。此方を伺う視線に気付かぬフリをしながら。

 

死武専に付くと、既にマカとソウルがいた。マカは赤を主体とした少し子供っぽいドレス。マカは14歳だから年相応なのかもしれない。反対的にソウルは黒を主体としたスーツでネクタイも黒と大人びた印象を受ける。

 

「よお」

 

「お!八幡久し振りだな!」

 

「八幡君授業にはしっかり出ないと...まだいろはちゃんを探してるの?」

 

「....ああ」

 

「そっか....」

 

「よぉー!!八幡にソウル達じゃねーか!!」

 

マカとソウルと話しているところにブラック☆スターと椿さんが歩いてきた。ブラック☆スターもスーツを着ているが、着させられている?という感じがする。幼く見えてあまり似合っていない。椿さんは、流石というか谷間が大きく見えているドレスは男の視線を掴むことだろう。

 

「ソウル~俺飯たくさん食うぜ!」 

 

「はぁ..だらしない」

 

椿さんの心労が伺えるが今の格好であまり下を見ない方が...うん、一部が強調されて中の水色の紐がチラリズム、御馳走様です。

 

「なんだ、既に皆来ているではないか」

 

「ぶーキット君が着替えに時間かけすぎるからだよー」

 

「ほんとにな...はぁ」

 

あちらはあちらで苦労しているようだ。つか何故にリズさんとパティーはジャージのような格好に?キットの全身白も面白いが。いや祝いの場なのに俺やソウルみたいに黒一色で来る方が変わってるのか?まるで葬式みたいだし。

 

会場に入ると豪華な食事とダンスパーティーが始まった。ソウルはマカと踊っているし、ブラック☆スターは椿さんとキットもリズさんとパティと踊ってるし余った俺はどうしろと?もう帰っていい?そんなことを考えていると紫を基準としたドレスを着こなしたメデューサ先生がシュタイン先生と踊っているのが見えた。シュタイン先生が白衣なのは良いとして、なんだろうか、雰囲気がヤバイ。凝らして見ないと分からないがシュタイン先生の魂が時々波打っている。

 

これは殺意を向けているときにシュタイン先生が取る行動でどんな状態でも動けるようにしておくためらしい。分からないのが何故メデューサ先生にその殺意を向けているのか、ということだ。

 

何かを喋っている?俺はバレないように近付きシュタイン先生の白衣にヘアピンに変身して掴まる。多分、シュタイン先生にはバレただろう。この人こういうのには敏感だし。なにも言わないということは聞けと言うことなのだろう。

 

「あなたは鬼神に興味をお持ちでは? あなたは知っているのでしょう? 死武専の地下に鬼神が眠っていることを」

 

鬼神?興味?....どういう意味だ?どうしてこんな話をメデューサ先生が?メデューサ先生の問いに適当に返すシュタイン先生。あれはどう考えても相手をバカにしている。というより挑発している?

 

「・・・・若造が。ここに死神がいなきゃ、殺してるわ」

 

....メデューサ先生、怖っ!なにこれ、これが俗に言う裏の顔?だがそんな半分冗談だった俺の意思は次のシュタイン先生の言葉で裏返った。

 

「解体するぞ。遠慮はいらない、プロテクトを解いたらどうです?」

 

プロテクト?...てことはメデューサ先生は魔女?その瞬間、一色が消えた日のことを鮮明に思い出した。

 

一つだけ納得いかないことがあったのだ。

 

一色がメデューサ先生を襲ったこと。今の言葉を聞いて、一色の日記を思い出して、全てのピースが嵌まった。

 

「っ!?」

 

「おやおや比企谷君。駄目じゃないですか。折角気付かれていなかったと言うのに」

 

ヘアピンになっていた俺は人の姿に戻り殺意丸出しでメデューサ先生を睨んでいた。

 

「お前が一色を....」

 

俺が攻撃をする瞬間、会場にシド先生が慌てて入ってきた。そのことで一瞬怯んでしまい、メデューサは窓を突き破って会場から外に出ていった。

 

空間が歪んでいくのを感じる。捻れているのか良く分からないがなにかしらの攻撃を受けているのが分かった。

 

「魂の共鳴!おまえらだけでも!・・・・間に合ってくれ!」

 

「空間が歪んでゆく!? まずい!閉じこめられるぞ!!」

 

「強制土葬!!」

 

「床から棺桶が!?」

 

「シド!!」

 

「頼んだぜ・・・・死武専を守ってくれ・・・・・」

 

 

 

 

伝わりにくいと思うが現在の状況を纏めるか。恐らくだがメデューサはシド先生が入るタイミングを計っていた。そして、どうやったのかは不明だがあの空間からは出られないのだろう。そこで強制土葬というわけか。やりきった感あったけど原因シド先生がきたからじゃね?と思わなくもない。てか送るなら死神様最優先だろうに...何故に一ツ星ばかりを?シュタイン先生いるけどさ...武器いないし。

 

「ここが地下への入り口です。相手は強力。生半可な覚悟では命を落とすでしょう。恐怖と闘う準備があるか、俺と来るか来ないか。君たちの魂が決めろ」

 

シュタイン先生が珍しくまともなことを言っている。だけどこいつらにそれ聞いても無駄だろう。マカとソウル、ブラック☆スターと椿さん、キットにリズさんとパティ。何故か早着替えみたいになってるけどどうやってるのん?なんでドレスやらスーツを脱いだら何時もの格好なの?下に着てたの?俺替えの服すらないよ?

 

「「「行きます!!」」」

 

「そう」

 

嬉しそうに答えるシュタイン先生。あ、因みに俺は挨拶してません。

 

「比企谷君には強制で着いてきてもらいます。武器が無いのは困りますからね」

 

ですよねー。だと思いました。まあ俺も久し振りにイライラしてるし良いけど。

 

「分かりました」

 

暫く地下を走り続けるとマカから制止の声がかかる。俺とシュタイン先生は気付いているが他は気づいてないだろう。

 

「この魂・・・間違いない。卑猥で最低なこの感じ」

 

卑猥で最低な感じって....シュタイン先生笑っちゃってるし。まー安心したわ。これで俺は

 

「ぱぱ...」

 

シュタイン先生の武器しなくてすむ。

 

「卑猥で最低な感じって...マカァー折角ぱぱが駆けつけたんだぞ!?」

 

マカの父親はこう見えて数少ない変態じゃない、数少ないデスサイズだ。それにシュタイン先生の元武器でもある。なんだかんだ言って相性良いと思うし。

 

「でも先輩が来てくれて助かりました。流石に比企谷君だけでは厳しそうでしたから」

 

安易に魔女の相手はまだ速いと言われた気がするが俺もその通りだとは思う。感情を抜きにすれば、な。

 

「強いのか」

 

「はい。相当強いですね、あれは。魔女の中でも秀でてますよ。」

 

「そうか」

 

「それより先輩どうやって抜け出して来たんですか?」

 

それは俺も気になっていた事だ。強制土葬のような緊急脱出の技を使えるのはシド先生がくらいだし死神様でも出れない場所からどうやってでたんだ?

 

「女のケツを追うのは、誰よりも早い」

 

キメ顔でそう言った。マカが恥ずかしそうに真っ赤になってるし、ソウル達は、そんなマカを見ながら哀れみの目で見ている。なんというか頑張れマカ。

 

っ!!突如溢れんばかりの魔女の魂が現れた。目前では主犯のメデューサがいる。戦闘の態勢を維持しつつシュタイン先生が作戦を話始める。

 

作戦の内容は、シュタイン先生がメデューサを引き付けている間に幅10メートル程のこの空間で俺達はメデューサを出し抜かなきゃいけないらしい。メデューサを越えると魔剣、クロナが待ち構えているらしい。それを越えると魔眼らしい。その情報はどこから得たの?ってくらいシュタイン先生は詳しかった。

 

「先生詳しくないですか?」

 

「あくまで憶測だ。現れたやつは全員倒せ。クロナはブラック☆スターに任せる。あいつには魂を直接体内にぶつけないと勝ち目がない」

 

頷くブラック☆スターを見たシュタイン先生は最後に一言

 

「命だけは落とさないこと、分かったな?」

 

「敵の前で作戦会議?物凄く筒抜けよ」

 

「あなた保険医でしょ?」

 

御互いに相手を挑発するように言う。二人の魂が少しずつ膨れ上がる。

 

「あ、そうそう。いいことを教えてあげるわ。先程シュタイン先生が言っていたこと。殆どが当たりよ」

 

殆ど?

 

「クロナを抜けた先には一色がいるわ」

 

「一色....」

 

「ああ、そうだったわね。貴方の元パートナーだったわね。でも面白かったわ、まさか魔女をパートナーにするだなんて。それにいなくなった原因を作った私に探してほしいだなんて、あはははおかしくて、おかしくて、翌日学校休んじゃったじゃないの」

 

「一色がいなくなった原因?...」

 

「そう。良いわ教えてあげる、[災悪の魔女]と呼ばれた彼女の事を。彼女は魔女と人間の男から産まれた子よ。魔法も使えないし、パット見は人間。だけど、魔力はあるし魂は魔女」

 

魔法を使えない魔女...。

 

「彼女は忌み嫌われたわ、当然よね。人間でもない魔女でも無いのだから。ふふふ、でもそんな彼女にも力はあった。それは魂の吸収」

 

「魂の吸収?」

 

「ええ。触れているだけで望めば相手の魂を吸収してしまうのよ」

 

『誰と組んでも熱かったり重かったりで持つことが出来なかったんです』

 

そうかあの時の一色のあの言葉は....武器が使えないんじゃなくて自身の力が万が一にも暴走したときを恐れたことで起きた無意識の拒絶反応だったのか。....なんだよ、やっぱりお前は優しい奴じゃねーか。

 

「私達魔女はその力を知って恐れたわ。強さなんて関係なく吸いとられてしまうんですもの。それで殺されそうな所を逃げ出したのよ」

 

一色.....。

 

「無様なものよね。それであの時に彼女を見つけて怪我をしている比企谷君を殺すと言ったら何て言ったと思う?土下座したのよ?私に命も要らないから彼だけには手を出さないでって。笑ったわ、ほんとに「黙れよ」....何かしら?」

 

「シュタイン先生アレを一度だけお願いします」

 

「はあ...まあ良いでしょう、先輩も良いですよね?」

 

(ん?ああ構わないぞ。一発でかいのを決めてやれ!)

 

「先輩も良いみたいです」

 

それじゃあ久し振りにやりますか。

 

「さてと、それでは皆さんは後ろに下がっていてください」

 

「ですがメデューサを出し抜くのでは?」

 

「ああ、必要無くなりました。彼がやる気みたいなので」

 

一様に俺を見る。現在シュタイン先生は右手にマカの父親であるデスサイズを構えており左手には俺を構えている。デスサイズと全く同じ形の武器に変わっているので違和感は無いだろう。

 

「ふふふ、何をする気か分からないけどそう簡単に通れると思ってるのかしら?」

 

メデューサから矢印の形の影が二つこちらに向かってくる。シュタイン先生はその攻撃を軽くかわしてメデューサに向かって一気につめる為に走る。

 

メデューサは少しずつ離れながら数本の矢印の影を飛ばしてくる。予想より速く当たればかなりのダメージになるほど強力だと分かる。地面に深々と刺さる状況が物語っている。

 

俺の秘策。

 

シュタイン先生と一度だけ成功したあの技。リスクは二つ。1分しか時間がないこと。もう一つは、シュタイン先生が使ったあとに物凄く疲弊するって事くらい。

 

俺は職人に魂の波長を合わせていたがこれを使うと合わせられなくなる。その余裕がなくなるという感じだが。リスクの理由はシュタイン先生がいくら魂の波長を合わせようとしても完璧じゃないからリスクが生じるだけだ。他のやつなら武器を持つことすら出来なくなるが。魂の波長が合わなくなり恐らく職人が一瞬で氷の彫像と化す。

 

「それではいきますよ」

 

「魂の共鳴!!」

 

シュタイン先生と俺とデスサイズであるスピリットさんの魂が共鳴する。シュタイン先生の魂は膨れ上がり髪は逆立っている。立っている場所は凍っていき、周囲の温度も下がり長めのマフラーが首に巻かれ、ゆらゆらと揺れている。

 

「先に言っておくぞ魔女。この技を使ったんだ目を離したら死ぬぞ?」

 

「少し姿が変わったくらいで大きく出たわね若僧が」

 

「皆さんは今のうちに端を通って抜けてください。慌てなくても抜けられるはずです。皆さんの方に意識を向ける余裕すら与えませんから。憑依-----氷魂威」

 

シュタイン先生は一瞬でメデューサとの距離を詰めて自身の魂の波長を直接流し込んだ。魂威とは、相手に魂の波長を流し込む技だが八幡との魂の共鳴をしている状態では少し異なる。

 

「ぐっ...速い。っ!これは」

 

魂威で攻撃した腹の場所が氷っていることにメデューサは驚いている訳ではない。憑依した状態で相手に攻撃すると相手の魂の波長を乱すことが出来る。分かりやすく言えば目眩や頭痛に襲われる。ジャンプをしてメデューサとの距離を取り武器を構える。

 

「さて、時間も無いのでこれで決めます」

 

「魂の共鳴!!」

 

再び魂の共鳴をしたことにより八幡とスピリットの武器が一つになり形を変える。その姿は全てを喰らいそうなほど真っ黒な大鎌。マカとソウルが一度見せた魔女狩りよりも一回りほど大きな鎌。

 

「行きますよ、二人とも」

 

シュタイン先生の声に合わせて一層強く集中する。シュタイン先生は、大きくなった鎌を一回転させて

 

「流石にそれを受けるのは不味いわね、逃げさせてもらうわ.....!これは」

 

「縫合....逃がしませんよ」

 

「くっ!」

 

魂の波長を直接体内に打ち込む事で、現在メデューサの体内には、シュタイン先生の波長も微量ながら混ざっている。シュタイン先生は、その波長を操り、地面にまるで縫ったようにメデューサを縛り付けた。

 

「鬼狩り!!」

 

大きくなった鎌を振り上げると、冷気は凝縮され、空気すらも氷だす。鬼狩りを放った場所は地面が抉られており、メデューサの血が凍っている床を少しずつ赤く、塗りつぶしていく。

 

「やれやれ参りましたね」

 

「はあはあ...小僧が....よくも」

 

メデューサは生きていた。左腕を無くし両足を失っていたが黒い蛇に乗って空中に浮いていた。

 

憑依も最後の攻撃でシュタイン先生の限界が来て解けており正直かなり不味い状況だ。

 

(あれを交わすなんてなんて魔女だよ)

 

「いや先輩。足を切り離すところまでは見えてました。だから方向を変えようとしたんですけどね、上手く方向を変えれる力も残ってなくて仕留め損ねました」

 

魂の波長の使いすぎで憑依を維持できなくなった俺は人の姿に戻りシュタイン先生はスピリットさんを支えにしてなんとか立っている。

 

「どうやら今の攻撃で仕留められなかったのは貴方たちにとってかなり痛いようね....まあ此方も殆どの魔力が空になってしまったからおあいこかしらね。まあでも左腕と両足を失ってしまったのは大きいわね。そうね、今の貴方たちならこの子達だけでも効果があるかしらね」

 

メデューサが右腕を前に出すと黒い蛇が無数に飛びかかってくる。

 

不味い、今の状況ではシュタイン先生は動けないだろうし捌くにしても数が多すぎる。

 

「比企谷君、私の後ろまで移動してください。まあ、なんとかしますから」

 

そう言うとシュタイン先生は白衣の中からカプセルを取り出して丸薬を一つ取り出し口にいれた。

 

「シュタイン先生、それは?」

 

「これですか?研究の成果ですよ。これを食べれば一時的に魂が回復し、体力も回復します。ただし、効力が切れると一週間は、武器と共に動けなくなるんですがね」

 

何故武器も?

 

「どうして武器も?という顔をしていますね。その説明の前に、先輩行きますよ!魂の共鳴!!」

 

「実験霊体」

 

出た、大きい赤ん坊。これってほんとに厄介だよな。防御力は高いし、無駄に範囲でかいし。何より見た目がエグい。

 

「今まで体力も魂も底をついていましたが無理矢理魂を繋いでいます。それにより先輩にかかる負担は、普段の数十倍になり動けなくなる、ということです。それよりも、君は皆の所に行ってください。先程から嫌な気配がします」

 

嫌な予感というのは、恐らくマカの魂が著しく乱れた事だろう。この魂は何処か魔剣に似ている。それにしても、マカとソウルは、魔剣の相手では無かった筈だが...。

 

魂感知で探ってみると、マカと対峙しているのは、魔剣である。クロナだった。

 

優等生である、マカが先生から言われたことを破るなんて想像できないがブラック☆スターもいない事から、マカが我が儘を言ったのだろう。

 

走りながら考えていると、鎌に乗りながらニヒヒと笑っているマカと怖がっている魔剣である、クロナを見付けてしまった。マカは「超COOL、ニヒヒ」とか言いながら笑っているが見なかったことにして先に進んだ。別にあまりの惨状で言葉もでなかったとか、どっちが魔剣なのか分からんとか思ってない。その先から一色の魂を感知したので優先しているだけだ。うん、八幡ウソツカナイ。




遅すぎて待ってくれている方はいないと思いますが投稿を再開します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話[一色の体内に潜むもの?打ち破れ!二人の魂の共鳴!]

マカと魔剣を素通りして地下走っているとブラック☆スターの後ろ姿が見えてきた。粉塵により良く見えないが明らかにブラック☆スターが劣性だった。粉塵が晴れると肩で息をし、額から血を流しているブラック☆スターが立っていた。傷は深くなさそうだが魂の波長を使いすぎたのか疲労が見てとれる程、ブラック☆スターは疲弊していた。

 

「ブラック☆スター」

 

「っ、八幡か。へっなんだよ速かったじゃねーか。お前が来る前に強引にでも連れて帰ろうと思ってたんだけどな」

 

「先輩....無駄です。貴方たちでは、わたしには勝てません。諦めてください」

 

「一色....」

 

「来ないで下さい!!」

 

一色の魔女の魂が膨れ上がり余波で数歩後ろにたじろいでしまう。でも、メデューサから受けたときとは違い、一色の波長は嫌な感じが全くしなかった。

 

「...一色。探してたんだぞ?ほらもう帰るぞ」

 

「止めてください....止めてください!わたしに近付かないで下さい!!」

 

一色は掴んでいた槍をこちらに向かって降り下ろす、まるで鎌鼬のように頬は切れ、服は裂かれた。軽傷だが至るところから血が流れている。死にはしないが、そのうち出血で動けなくなるだろう。

 

「なあブラック☆スター」

 

「どうした八幡」

 

「俺に譲ってくれないか?」

 

ブラック☆スターから無言で鎖鎌を首に当てられる。冷たく、幾度となく鬼神の卵と化した魂を狩ってきたブラック☆スターの相棒。当てられている筈なのに全くと言って良いほど恐怖心は無かった。

 

「一色を助けたい。頼むブラック☆スター。一色は....俺のパートナーなんだ!」

 

張り上げた声と共にブラック☆スターが笑うのが聞こえる、首に当てられていた鎖鎌を下ろしながら。

 

「まっ仕方ねーな。椿も譲れって怒ってるし。マカといい八幡といい、真面目ちゃんは反抗期でも起こしてんのか?」

 

「サンキューな、ブラック☆スター」

 

「別に。ただ後悔だけはすんなよな」

 

「ああ」

 

「...誰もここからは通しませんよ」

 

「いんや、通してもらうぜ!椿!モード妖刀!」

 

鎖鎌から漆黒に覆われた刀に変わる。一度だけ死神様の部屋で見たがあの時は、一瞬で波長を流し込みブラック☆スターは、倒れていた。だが、もしも一瞬でも垣間見た圧倒的とも言える力を使いこなしていたら、ブラック☆スターは、かなり強くなっている筈だ。

 

ブラック☆スターの顔に模様が浮かび上がり凄い量の魂がブラック☆スターを中心に膨れ上がる。これを魂の共鳴無しでしているのだから驚きだ。恐らくシュタイン先生だって無理だろう。

 

「俺様のステージに向かって突き進むぜ!!」

 

「逃がしません!」

 

一色は、ブラック☆スターに対して槍を降り下ろす。先程俺に対して攻撃したような甘い攻撃ではなく鎌鼬の量も威力も上がっている。当たれば致命傷は避けられないだろう。

 

ブラック☆スターは、ただ真っ直ぐ走り抜ける。人目では霞む位のスピードで、一瞬影から黒い人形の何かが現れて鎌鼬を全て弾きおとした。あれは?と思った頃には既にブラック☆スターの後ろ姿は、見えなくなる程遠くにいっていた。

 

「...逃げられちゃいましたか」

 

「さ、一色。一対一だな」

 

「武器でしかない先輩では、わたしを倒せませんよ?」

 

「別にいいさ、倒しにきたわけじゃないからな」

 

少しずつ一色に近付く。コツコツと軽快な足音で、目の前にいるのは魔女。だが俺のパートナーの一色いろはだ。怖がる事はない、怖がる理由もない。今一番怖いことは、ここで一色を連れ戻せず、一生一色に会えなくなることだ。

 

「止まってください。それ以上近付けば殺します」

 

槍を此方に向ける一色に俺は止まることなく少しずつ近付いていく。

 

「来ないで下さい!!」

 

一閃。凄まじい風圧と衝撃に足が止まってしまったが直ぐに歩を進める。一色とのズレた距離を戻すために。

 

「...どうして....」

 

一色が構える槍の切っ先が俺の首筋を捉える。ひんやりとした武器は、あと少し、ほんの少し前に出すだけで俺の喉を貫くだろう。

 

「なあ一色覚えてるか?」

 

「何が、ですか..」

 

「お前と初めて会った日の事を」

 

一色からの返事はない。ただ微かに唇が震えている、そんな気がした。

 

「最初は、どうせ直ぐにお前も離れていくって思ったんだ。俺にはパートナーなんていなかったし、必要とも思ってなかったからな。別に自分が強いからって理由でパートナーがいらないって思ってわけじゃない。死武専で習う範囲ならパートナー無しでもこなせるだけの力をつけたからだ。俺は別にデスサイズになりたいとか、そう言った感情は無かったから卒業さえ出来れば良いと思ったんだ」

 

「....」

 

「そんな奴とパートナーになったってつまらないだろ?だから最初、やたらと近付いてくるお前に嫌悪感すら抱いていた。ボッチの独自フィールド勝手に侵すなっての。どう反応すれば良いのかとか、分かんないだろうが。でもさ....一色と、暫く一緒にいて悪くなかったんだ。....楽しかったんだ。こいつとならパートナーとしてやっていけるかもしれないって...初めて思えたんだ」

 

「....先輩。わたしは魔女です」

 

「知ってる」

 

槍から一色が震えているのが伝わってくる。少し首筋が切れたのか槍に俺の血液が流れていく。

 

「先輩は、武器です。死武専生です。魔女を倒すのが仕事なんですよ?」

 

クルッと槍を一回転させて地面に突き刺した一色は、涙を流しながら笑顔で言ってきた。

 

「わたしを....殺してください」

 

両手を広げながらそう言った一色の瞳からは、後悔も恐怖も感じられなかった。

 

そんな一色を俺は抱き締めた。

 

「せん....ぱい?」

 

「一色、お前を殺さなくちゃいけないなら俺は死武専を辞める。お前と一緒にいられるのなら魔女だからとか関係ない。だってお前は、俺のパートナーなんだから」

 

「せ、ひくっ....先輩....」

 

俺は、胸の中で泣く一色の頭を優しく撫でる。

 

「先、輩....嬉しいです。でも、もう遅いんです...」

 

「一色?」

 

「わたしの体内には、蛇がいます。メデューサがわたしが裏切った時に殺せるようにって仕掛けていったんです。わたしの力も体内では届きません....ごめんなさい先輩。ですからせめて先輩の手で...先輩..?」

 

一色の話を聞いていて、メデューサが許せずかなり強めに抱き締めてしまった。一色を操り、殺そうとしたメデューサが俺は許せなかった。

 

ドクンッと胸の中の何かがざわついている。憎しみや殺意が見え始めると必ずくるこのざわつき。正体は分かっている。何時もは自制心でなんとか抑えていたが今回は、抑えることが出来ないかもしれない。

 

「なあ一色....武器()を使ってくれないか?」

 

「先輩...聞いていなかったんですか?わたしの中には蛇がいるんですよ?何をしたところで遅いですよ」

 

「魂の共鳴だ」

 

魂の共鳴...本来、武器と職人の二人以上の絆の証しでもある奥義。

 

「魂の共鳴って....わたしは魔女ですよ?人間である、先輩と魂の共鳴なんてうまく行く筈が無いじゃないですか...」

 

「大丈夫だ。一色、俺を信じてくれないか?」

 

真っ直ぐ一色を見る俺に一色は、真っ直ぐに見つめ返してくる。打算ややけになって言っているわけじゃない。

 

「分かりました...最後ですし先輩を信じてみます」

 

「サンキューな、一色」

 

俺は武器に変身する。一色の手には漆黒に染められた槍が握られている。

 

(一色)

 

「なんですか....」

 

(これは最後じゃない。始まりだ)

 

「(魂の共鳴!!)」

 

 

 

--------------------------。

 

キィーと甲高い音を立てながら開く真っ赤な扉。その扉、自制心という扉を俺は自らから開けた。

 

「よお~待ってたぜ?くはは、絶対にこの場所にお前は戻ってくると思ってたぜ。八幡」

 

扉を開けた部屋の中には、赤色の鬼が立っていた。

 

「久し振りだな....」

 

「あーここに来るのは二度目か?よく今まで我慢してきたもんだ。大したもんだよ、あんな大きな扉まで作って。俺様に何が望みだ?」

 

「力を寄越せ」

 

ここに来た理由は至極簡単。黒血を使うため。クロナみたいに魔剣になる可能性もあるだろう。狂気に呑み込まれれば俺だって...だから扉を作った。一人なら既に堕ちていたかもしれない。でも今なら、一色と一緒なら。

 

「良いぜぇ。さっさと俺様にお前の体をあけ渡しちまえよ~八幡。そうすれば全てを破壊してやるぜ?お前が望む全てをな。くはは」

 

気味悪く笑いながら述べる鬼に対して俺は、冷静なまま続ける。

 

「体はやらない。力だけを寄越せ」

 

「おいおい、力には対価が必要だ?そんな事も知らねーのか?」

 

「対価か、それなら契約だ。俺は力を使う。その間にお前は、俺を狂気に呑み込んでみろ。呑み込めたらこの体はお前のもんだ」

 

「キシ...キシシシシ。良いだろう。それじゃあ、そこのピアノの前に座ってくれ」

 

いつの間に現れたピアノ。弾きかたなんて分からない筈なのに旋律やメロディーが勝手に頭に思い浮かぶ。ピアノの椅子に座り深呼吸をして指を這わせる。不思議と落ち着く感覚に戸惑いを覚えながらメロディーを奏でる。

 

「キシシシシ。いつまで耐えられるかな?」

 

--------------------------。

 

 

「(はぁあああああ!!!)」

 

魂が膨れ上がる。一色の足元は凍っていき、頭にはニット帽が首には地面につきそうなほど程に長い赤色のマフラー。瞳の色もブルーに変わっており温度が急激に下がっていく。

 

シュタイン先生としたときとは、比べられないくらい安定した魂の共鳴に正直驚いていた。微塵も揺れない魂の波長。

 

憑依...シュタイン先生とメデューサとの戦闘で見せた技。この技の利点は幾つかある。

 

一つ目は、単純に力が上昇する。スピードも上がる。

 

二つ目は、一色の周りの気温が下がっているが、何も周りだけじゃない。自分自身の体温も著しく下がるのだ。そんな極寒の冷気に異物である蛇が耐えられるはずもなく、凍り砕け散る。

 

憑依-----氷神。

シュタイン先生とは、完璧に出来ず中途半端になってしまったこの技だが一色との魂の共鳴で完成した。あれほど著しく減っていた魂の波長は、まるで普段と同じように呼吸をするような感覚で出来ている。これなら一分どころか一時間でも戦えるだろう。大技を出したら流石にそこまでは出来なくとも三十分は、持つだろう。

 

「...どうして魂の共鳴が?」

 

(魔剣との戦いでクロナの血が少しだが俺の体内にも入っていたみたいでな、黒血は分かるだろ?それを利用させてもらった)

 

「り、利用って....駄目ですよ先輩!黒血を甘く見てはいけません!こんな無茶な使いかたしていたら何時か...何時か先輩が...」

 

(狂気になんて呑まれねーよ。俺は一人じゃないからな。そうだろ?パートナー(一色))

 

「っ!...うう、先輩。どれだけわたしを泣かせたら気がすむんですか...」

 

(いやここは笑うとこだろ?それに...一色、おかえり)

 

「先輩...ただいまです!!」




投稿遅れているのに感想で待っていてくれたと言っていただき本当にありがとうございます!凄い励みになっております!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。