フラン「魔法が何か失敗して娘出来ちゃった。テヘッ☆」紅魔館一同「ファッ!?」 (鋭利な刃)
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始まり
続く可能性は低いと思ってください。
2017/7/4
レナちゃんの容姿をちょい変更。
運命とかいうものを、あまり信じたくはない。だってその言葉を信じるなら、自分は誰かの手のひらで転がされているってことになる。
自分の考えが、答えが、退屈が、狂喜が、幸せが、楽しみが、笑顔が、不幸が、喜びが、悲しみが、憎しみが、涙が、感情が、自分と自分の回りの全部が、誰かに勝手に決められたものになってしまう。
そんなの、嫌だ。
やっぱり自分は、自分の意思で悩んで、迷って、答えを出して、歩んで行きたい。格好つけているわけじゃないし、これが格好いいとも思ってない。それでもやっぱり、自分が選んだ道を真っ直ぐに、歩んで行きたい。
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私には、姉が一人いる。
意地っ張りで、ワガママで、ポンコツで、カリスマなんてどこにもなくて、でも私や、紅魔館の仲間に優しくて、沢山変なことをやらかすけど、その分だけ笑顔を沢山くれる。
私のたった一人の血の繋がった、大切な、大切な……
腕の中で、それが、モゾモゾと動く。
私はほんの少し苦笑を浮かべ、腕の中のそれを……いや、腕の中で私に抱き抱えられている私の“娘”を、ずり落ちていかないように、上に抱き抱え直す。
その娘は、私、フランドール・スカーレットの“娘”であるこの娘「レナ・スカーレット」は、私の腕の中でスヤスヤとあどけない寝顔を浮かべていた。
時折、ニヘッと笑みをこぼすのはきっと、幸せな夢でも見ているのだろう。
私のお姉様……紅魔館の現当主である、レミリア・スカーレットの水色の髪とは違い、私の金色の髪に似た色に覆われたこの娘の……いえ、レナの頭にそっと手を伸ばし、サラサラとした髪の感触を楽しみながら、ゆっくりと撫でる。
笑みが、こぼれる。
ふと、私はレナが生まれたきっかけを思い出した。
生まれたと言っても、人間みたいにお腹を痛めて生んだ訳じゃないが。
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そもそもの、レナが生まれた切っ掛けは、はっきり言って偶然だった。
私は495年程地下室に閉じ籠って居たのだが、流石に地下室で出来る暇潰しにも飽きが来て、暇潰しの暇潰しにと、紅魔館の地下にある大図書でひたすらに本を読み続けてる「動かない大図書館」と呼ばれているらしい、“パチュリー・ノーレッジ”に頼み込んで、魔法を教えてもらい始めたのだ。
そして、自他共に中々の腕前になってきた時、私はふと、「人間って作れるのかな?」と思い、試してみた。
そして何か失敗して爆発し、その衝撃で紅魔館は半分は崩壊して吹っ飛び、私はその爆発で怪我をした。
そして、そのときの血が材料にかかり、何か光って、レナが生まれた。
……何を言ってるか分からないかも知れない。実際、わたしにも分からない。
当然、紅魔館はパニックになった。
お姉様は、なんか慌ててるのかはしゃいでるのかよく分からなかった。メイド長の“十六夜 咲夜”は、お姉様が暴れすぎて屋敷を汚さないようになだめながら、チラチラと私が抱いているこの娘と私を見て、時折鼻を押さえていた。パチュリーは何時ものように本を読んでた。ぶれない。パチュリーが使役している“小悪魔”は、咲夜よりもじっとこっちを見て、なんか笑顔を浮かべてた。……可愛いよね、うん。
それでまぁこの娘をどうするべきか……って話になった。
そしてパチュリーが
「フランの血も流れてるし、吸血鬼だし、フランの娘じゃないの?」
と言い、私の娘となった。
それからまぁ、なんやかんやがあって、この娘を“レナ・スカーレット”と名付けて、(ちなみに名付け親はお姉様)私の娘として育てることになった。
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「んん……まー…………」
私が昔を懐かしんでいると、レナが目を開けた。
……どうやら、お腹が空いたみたいだ。
ちなみにレナは、生まれてまだ1年くらいしか経っていない。つまりまだ、上手く喋れないのだ。
加えてさらに、レナはお腹が空いても、人間のように授乳などはしない……と言うか、紅魔館にそれを出来る存在はいない。よって却下。
なら血はどうかと試したのだが、少食でよく口の回りを血でベタベタにしてしまうお姉様よりもさらに少食だった。具体的には、コップ1/4以下。掃除も大変だし、なによりレナがとても嫌がる。よって却下。
そして、紅魔館一同一丸となって色々試した結果、とりあえずは「フランの魔法から生まれたのだからフランの魔力で大丈夫じゃない?」というパチュリーの言葉を試してみて、実際にそれでなんとかなったので、そうしている。
ただ、一回に取られる魔力の量が尋常じゃないから、しんどいと言えばしんどいけど。
だけど……
「…………♪」
この顔を見れば、疲れも吹っ飛ぶというもの。
ああ、これが母親になるって事なんだなぁと思いつつ、満足した様子のレナを再び抱き抱え直し、地下室から出た。
まだまだ今日は、始まったばかりだ。
さて、今日は何をしよう?
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人間で言う誕生日(上)
口調の違和感は……これくらいが自分の限界です。
〇月〇日。
ほんの2年前までは大したことのない平凡な日だった。
いつものように部屋に引きこもり、既に飽きてしまってはいるが、まぁ多分適当に絵とか、積み木とか、熊のお人形弄りとか、そこら辺で暇を潰していたであろう日。
だが! 今日は! というか去年の今日からは! そんな必死になって暇を潰すような日ではなくなった!!
何を隠そう今日は……
今日は! 人間の言葉を借りると! レナの誕生日なのだから!!!
「うぉぉぉぉ!!! レナちゃんの誕生日ぃぃぃぃ、キタぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「はい!! 来ましたぁぁぁ!!」
「いやっほうぅぅぅ! 祝うぞ! 酒だ! 酒を持ってこい!!」
「「「おぉぉぉぉ!!」」」
「……はぁ、うるさいわね。本に集中出来ないじゃない」
「ははは、まぁ仕方ありませんよ」
……ちなみに今いる場所は私とレナの地下室で、さっきの叫びは、上からお姉様、咲夜、普段(主に太陽の出てる時間)紅魔館の門番をしている“紅美鈴”、殆どいる意味のない妖精メイドたち、パチュリー、小悪魔だ。
……この騒ぎのある意味原因のレナは、皆の声(主に美鈴の叫び)にビックリしたのか、私の背中に隠れて頭をすりすり擦り付けている。可愛い。
……いや、そうじゃなくて。
「お姉様、そっちで叫ぶだけじゃなくて早く飾り付けを手伝ってよ……。私一人じゃ全然進まないじゃない!」
「……ええ、分かったわ。早くしないと日が明けるものね」
「その間は何よ……」
「……コホン。さて、じゃあいちよう役割を決めましょうか。そうね、咲夜と美鈴は高い所の飾り付けをお願い。私とフランはテーブルとかの飾り付けをしましょう。そしてパチュリーはそのまま本を読んでいて、小悪魔は万が一発作が来たときの為の見張り。後はこの邪魔な大量の妖精たちだけど……レナちゃん。飾り付けが終わるまで、この妖精たちの相手をしてあげて」
お姉様のその言葉に、レナは少し戸惑った様子で私を見上げてくる。飾り付け、手伝いたかったのかな?
私は、そんなレナの頭を軽く撫でる。
「レナをお祝いしようとしているのに、その本人がお祝いの準備を手伝ったら、あまり意味がないでしょ。だからレナ。飾り付けは私たちがやるから、レナは私たちが妖精たちに邪魔されないように、あいつらを引き付けておいて」
それを聞くと、レナは納得したのか、パタパタと妖精軍団へと突っ込んで行き、期待度通りに引き連れて行ってくれた。それを確認すると、私たちは目線を合わせ、頷き会う。
実は今回の誕生日パーティーには、一つの目的がある。それは、『レナに私の魔力から卒業してもらおう』というものだ。
とは言うものの、これを言い出したのは私ではない。パチュリーだ。
なんでも、「レナはフランの魔力だけでなく、もっと他の大事なものを食べているから」らしい。
なぜそう言い出したのか。その理由は、2~3ヶ月程前に遡る。
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事の発端は、紅魔館の大図書館に、普通の魔法使いとか呼ばれている“霧雨魔理沙”が、本を盗み……コホン、死ぬまでの間借りる為に訪れ、ついでに私と弾幕ごっこ(幻想郷で流行っている、霊力とか魔力とかで弾を作って相手にぶつけるという、今や揉め事はこれで解決しろとまで言われるようになった“遊び”)をして、私が負けたことだった。
「ううー、負けたぁ……」
「んー、なぁフラン。お前今日調子悪いのか?」
「え? ううん、普通だけど……」
「んーおっかしいなぁ。なんかいつもよりフランが弱く感じたんだけど」
「弱く? 本と「その話、詳しく聞かせてもらえるかしら?」……どうしたの? パチュリー」
見ると、珍しくパチュリーが本から顔を上げ、こちらの話に興味があるようだ。
「詳しくって言われてもなぁ……。なんとなくなんだが、フランの弾幕が少なかったり遅かったりな気がしただけだが」
「……そう。分かったわ」
そういうと、パチュリーはまた、本へ顔を戻してしまった。
「……何だったんだ?」
「さぁ……」
魔理沙が珍しく本を盗らずに帰り、私もレナの所へ戻ろうとした(まだレナと魔理沙は顔を逢わせていない)時だった。
「ねぇフラン。ちょっといいかしら?」
「何? パチュリー」
「さっき魔理沙が話していたことなんだけれど、ちょっと気になることがあるのよ。だからちょっと、フランを調べたいのだけど」
「調べる?んー、うん。いいよ。でもレナが寂しがってるかもしれないから早くね」
そう忠告しておき、私はパチュリーに調べられた。そうしたら……
「やっぱりね。フラン。あなた生命力が著しく減ってるわよ。これじゃあ魔理沙にあんなにあっさり負けるわけだわ」
「生命力って? ……そんなにあっさり負けてた?」
「ええ、普段の勢いはどこへ行ったのか、ってぐらいにはね」
ガビーン、ショックだ。
「ねぇパチュリー。生命力って?」
「そのままの意味よ。生命が健康に生きる為に必要になる力。これが少ないと、病気にかかりやすかったり、体調が悪くなったりするわ。そしてフラン。今のあなたにはこれが不足している。……それも、普段の貴女からは考えられないくらいにね」
「そんなに? うーん、心当たりは……ないなぁ」
何が原因何だろう?体調が悪くなるような事なんて1つも……1つも……
「……1つ、あったなぁ」
「何? 心当たりでもあるの?」
「それが原因なのかは分からないけど、レナに私の魔力をあげたあと、変に体がダルいなぁっていう感じがする……かな」
「体が、ダルい? ねぇフラン。貴女、今までそれ以外でダルさを感じたことはある?」
「え? うーんと、初めて魔理沙と弾幕ごっこをしたときぐらいかな」
「……間違いないわね。フラン。貴女の生命力不足の原因は、レナへの魔力の譲渡よ。恐らく、貴女は魔力と一緒に無意識のうちに生命力まで与えてしまっているんだわ」
「無意識のうちにって……というか、そんなに簡単に分けられるものなの? 生命力って」
「いいえ。だから気になっているのよ。もしも自由自在に生命力を分け与える魔法なんてものが開発できたら……いい、いいわね、フフフ……」
……あ、ダメだこれ。パチュリー自分の世界にいっちゃった。
思わずため息を吐いてしまった。……まぁいいや、レナの所に行こう。
そして、その後何回かパチュリーと話し合い、実際にレナへ生命力を与えてしまっているのを確認し、当面の目標が『レナに私の魔力から卒業してもらおう』になり、その一貫として、そして単純にめでたいから、レナの誕生日パーティーを大々的に開くことになったのだ。
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「………ン。…ラン。ちょっとフランったら! ぼぉッとしてないで飾り付けしなさい!」
「あ、ごめんなさいお姉様」
まぁ、そんな私たちの考えはともかく、レナには名一杯楽しんでほしい。
私の……私たちの、考えだった。
この小説内での紅魔館勢の性格というか、何と言うか。
レミリア お子様。どっから見てもカリスマなんて無い……と思っていたのか?
咲夜 レミリアのストッパー兼火付け役。ある意味一番面倒。
美鈴 トラブルメーカー。それ以外にない。
パチュリー もう本の妖怪でいいんじゃないかな……。とりあえずパチュリーに聞けばなんとかなる。
小悪魔 実質パチュリーの保護者。
妖精メイド軍団 邪魔なやつら。
フラン 紅魔館勢でもしかしなくても一番マトモ。レナへの愛情のおかげか、狂気は押さえられている。連載することに決めたら、全体的な主人公。
レナ フランの娘で紅魔館勢全員の守るべき存在。もしこの小説を連載することに決めたら、後半辺りから主人公。
続くということはぁ~、少なくとも後1話は投稿するのが確定ということ!!
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人間で言う誕生日(下)
なお意味は分かってなく、ノリで使ってる模様。
そしてやっとレナちゃんが喋る。
2017/6/27
後書きを修正。
2017/7/4
レナの容姿に関する事を削除。
ーー紅魔館の主であるレミリア・スカーレットは、妹&その娘キチである。
ーー文々。新聞一面より。
もともと私は、人間の言う『時間の価値』なるものの意味が理解できなかった。何故なら私は吸血鬼で、人間で言うと9~10歳辺りの見た目だが、実際は既に500年程生きていて、只でさえ退屈な日々をどうにか潰せないかと、幻想郷に来る前は必死になっていたからだ。
だからまぁ、私が時間の価値……それも、10年とか100年とかではなく、1年とか、1ヶ月とか、1日とかの価値が分からなかったのは、ほぼほぼ確定演出と言える……らしい。
だがまぁ、こんな変なことを言って悪いが、あくまでも今のは過去の話だ。
今では1日どころか、1分、いや、1秒出すら大事にしたい。というかする。
何故か? 大体もう分かるでしょ? そう……
「さぁお前ら! 宴の準備は出来ているか! 酒の準備は出来ているか! 今日1日MAX大テンションで、騒ぎ続ける準備はできているかぁぁぁ!!!」
「「「何時だって、ハイパー大テンションだぁぁ!」」」
私の妹であるフランと、その娘であるレナちゃんを愛でるのには、1分1秒。いや、1fですら惜しいからだ!!
「さぁ準備は良いな? 覚悟は決めたな? それではいくぞ!!」
「「「Start your engine!!!」」」
「我が最愛の!! レナちゃんの3歳の誕生日を祝って!!」
「「「我らが女神の!! レナちゃんの3歳の誕生日を祝って!!」」」
「「「「乾杯だぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」
「……凄いことになっちゃってるなぁ……」
「……お腹空いた。まー」
ーー悪魔の妹こと、フランドール・スカーレットには、魔法の暴走により生まれた娘がいるらしい。
ーー文々。新聞二面より。
「レナ。あーん」
「……あーん」
……レナの誕生日パーティーの本当の目的の『レナに私の魔力から卒業させる』と言うことを、お姉様と咲夜たちは忘れてはしゃぎまくってしまっているようだった。
しかもMAX大テンションって……あれって外の神社の緑の人が、よく変なポーズをとって叫んでるやつじゃん。
……大丈夫かな? 理由は分からないけど。
……まぁ、そんなことは置いておいて。
「どう? 美味しい?」
「……ふしぎなかんじ……。でも、たべれる……」
そう言って口を開けて、次の一口を催促してくる。……うん。ちょっととは言え、成長したなぁ……。
「どう? フラン。レナの様子は」
「大丈夫、かな。結構美味しそうに食べてるよ。……レナ? そろそろ私以外とお話出来るようにならないとダメよ?」
「……」
レナは、パチュリーが近くに来た途端に私の背中に隠れ、癖なのか頭をスリスリ擦り付けてくる。……まったく。
「ごめんなさいパチュリー。……ほらレナ。せめて目を合わせるぐらいはしなさいって」
そう言ってレナを持ち上げ、私の膝の上に乗せることで、レナの逃げ場を無くす。……だけど。
「……やーぁ!」
ジタバタと暴れられ、危うくテーブルをひっくり返されそうになり、慌ててレナを放す。
すると、すぐさま私の背中に隠れ、頭をスリスリスリスリスリスリスリスリ……。
はぁ……。一体誰に似て…………私、だよねぇ……。
スリスリスリスリスリスリ……
「分かった! 分かったから! だから頭スリスリはやめて? ちょうど翼のところに当たってくすぐったい……」
私がそういうと、ようやくスリスリをやめてくれた。……って。
「もう、帽子を被ってないから髪がクシャクシャになっちゃってるじゃない……。ほら、治してあげるからここにおいで」
そう言い、私は膝をポンポンと叩き、レナを膝に座らせ、クシャクシャになった銀の頭をゆっくりと撫で、少しずつ、丁寧に治していく。ゆっくり、ゆっくりと。
「……ねぇ、まー」
「どうしたの?」
「……あのね。……えっと……」
そう言い、私の膝に座ったまま首だけを私の方に向け、
「えっと……ね。…………わ、私を……ね? う、生み出してくれて……」
……なんとなく、レナの口をそっと手で塞ぐ。
別に何か気になった訳じゃない。ただ……ねぇ?
「フフッ。なら、レナを生み出したお礼は、お姉様たちと早くお話が出来るようになる……が良いかな?」
「……うん。頑張る……」
頷くレナ。あぁ、可愛い。
……まぁ、そんなこんなで、レナの誕生日パーティーは終わった。
もう少ししたら、魔理沙に会わせたい……かな。
「お姉様……。それ、何本目?」
「ひぁはひゃひゃひゃひゃぁ~。ま~だ39ぐらい~」
「……お片付け、ちゃんと寝る前にやってよ?」
レナちゃんの生まれて初めてのご飯。
どうやら、案外大丈夫だったようで、問題も割りとアッサリ解決。
まぁ、長引かせるわけにもねぇ。
レナ・スカーレット
現在3歳。フランの魔法が暴走したことにより生まれた。
四割ほどは外の世界から紅魔館に迷い混んだ女の子の、残りの六割はフランの血が流れている。
母親であるフラン以外にはまだ警戒心を消せず、故にフラン無しでは地下室から出てこようとしない。
容姿
【挿絵表示】
レミリア・スカーレット
本当はレナちゃんを抱き締めて一日中撫で回したいのだが、まだレナちゃんがレミリアに警戒心を解けてないのでぐっと我慢。代わりにレナよりかは遅く寝るフランを、ちょこちょこと愛でてる。
フランドール・スカーレット
レナの母親。最近幻想郷の新聞記者と取引して、カメラを手に入れた。ちょくちょく家族の写真を撮っているらしい。
ちなみに、レナ:紅魔館一同:魔理沙=5:4:1
パチュリー
最近、魔理沙を本気で叩きのめしてから、自分が看病すれば好感度荒稼ぎ出来ていいんじゃないかという危険な思想が生まれてきた。
イマスグトマーレ!
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紅魔館一同の唐突すぎる行動集(上)
……なんだこれ。
2017/07/06
レナはクッキー作りたいと言うより、食べたいと言うほうが自然なので変更。
「フラン! 私今から寺子屋に通うことにしたわ!!」
「……はい?」
レナの誕生日パーティーから4日程たった。
あの日以来、レナは物を食べるという行為にも慣れ、私の膝の上に乗っているという条件を付ければ、お姉様たちと一緒に食事を摂るようになってきた。
そして、ちょこちょことレナにおやつの素晴らしさを語っていたのが功をさしたのか、レナがクッキーを食べてみたいと言ってくれた。咲夜は前々から、自分が作ったおやつをレナに食べてほしいと言っており、ついでに私も作り方を覚えたかったので、その準備のために咲夜を探して紅魔館をウロウロしていた。
そして、ちょうどお姉様を見つけ、咲夜の居場所を聞こうとしたその時、お姉様がその一言を私に言ったのだ。
「フラン! 私今からちょっと人里の寺子屋で、勉強教わりに行ってくるわ!」
……寺子屋? 勉強?
「えっと……ゴメン。ちょっと意味がよく分からない」
「だから! 私は今日から人里で開かれる、妖怪とか専門の授業をする寺子屋に通うことにしたのよ!」
……お姉様が、寺子屋?
……何でだろう。想像してみると、まったく違和感が思い付かない。
「……ちなみに、お姉様が通ってる間の当主としての仕事は誰がするの?」
「え? 美鈴だけど、それがどうし「やめて! 美鈴にだけはやめて!!」……と言われてもねぇ、咲夜もしばらくはメイドの仕事できないのよねぇ……」
「咲夜が? なんで?」
「何かねぇ、昨日突然私に「私が寺子屋で、レナちゃん様へ勉強を教えている夢を見ました。と言うわけで、寺子屋へ勉強を教える為の技を伝授してもらいに行ってきます」って言って、今日の早朝から人里に泊まり込みで教わりに行ってるのよねぇ」
「……道理でいくら探しても見つからない訳だよ……」
「まぁそれは置いておいて、とにかく咲夜は今いないのよ。そしてフランはレナちゃんを見ていないといけないし、パチェは本を読んでないと禁断症状で喘息の発作が起きちゃうし。そうなると、もう美鈴にしか頼めないじゃない? 後が怖いけど」
「……そもそも、お姉様が行かないという選択肢は無いの?」
「無いわよ?」
「……お姉様。もし寺子屋へ行かないで、美鈴に仕事を押し付けずにちゃんとしてくれるなら……今日から1週間、お姉様が前言ってたあれ、してあげても良いわよ? さらにレナちゃんと私特製のクッキーも付けるわ」
「!?」
私のこの発言に、驚愕したような表情を浮かべ、プルプル体が震え始めた。
「フランの、フランのメイド姿! レナちゃんとフラン製のクッキー! ……でも、でも! 私もレナちゃんに勉強教えてあげたい!! どっちを、どっちをとるべきなの!? 私は!!」
「……レナと一緒に咲夜と勉強するという選択肢は無いの?」
すると、( ゚д゚)ハッ!と顔を上げ、「それだぁぁぁ!!!」と叫んだ。……ウルサイ!
「そうよね! その手があったわよね! よし、今から仕事してくるわ! 30分も掛からずに一週間分の仕事片づけてくるわ! だからフラン! このカメラに、レナちゃんとフランのクッキー製作中の動画を撮りなさい! 良いわね? それじゃぁ!」
そう言うと、天井を突き破って、3階にあるお姉様の仕事部屋へと向かって行った。……そこは横着しないでよ。
「……まぁいいか。仕事するって言ったんだし。咲夜もいないし、勝手に厨房使っちゃおう」
……一週間分ってことは、今日行ってたら、明日も続けて行くつもりだったのかしら?
オマケ
その頃の美鈴
「テンテンテンテンテンテンテンテン、テッテレ、テレレ、テッテレ、テレレ、テレレテレレテレレテレレ、テテテテテ! 上手に焼けましたぁ~」
……どうやら門番の仕事をサボって人里にお肉を買いに行って、門の前でこんがり肉パーティーをしているようです。
え、仕事代わってって言われてから何も言われて無いんだよねぇ?
……ダメだこいつ。
オマケ2
その頃の咲夜
「いいか? つまりこのxの式は、120÷20x=1ということになって、x=6となるんだ」
「なるほど……」
人里の子供たちと一緒に、真面目に勉強を教わっていたようです。
美鈴と咲夜の問題点集らしきもの
1、ニンニクが嫌いなレミリアの夕食に、二人してニンニクを大量に使用した料理を出した。(勿論仕返しされて、枕元に大量のニンニクを置かれた)
2、美鈴の場合、何も言わずに門番の仕事をサボって色々するが、咲夜の場合、ちょっとやってからレミリアに押し付けて色々しに行く。余計たちが悪い。(勿論後でフランのお説教タイムが待っております。当然のように5時間ぐらい正座+お説教。ついでに非公式のレナちゃんグッズ(写真とか)を全て回収)
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吸血鬼だって夏は暑い
それにより、レナちゃんの容姿に関わる内容をちょい削除したり訂正したり。
前話と今話の間に起こったちょっとした出来事。
・レミリア
あの後本当に一週間分の仕事を片付け、週二で寺子屋に通い始める。
・咲夜
寺子屋で教われることを2日で全てマスターしやがった。今度は教える為の力をつけるため、週二で教師として通っている。
その間の仕事? 咲夜さんは時を操れますから!
・フラン
週二で当主代理兼メイド長代理になる。代理の仕事を始めてから、レミリアの仕事処理能力の高さを知った。後家事スキルが上がった。
・レナ
咲夜のクッキーに若干はまりかけるが、フランの作った方が良いと言ってしまい、こっそり聞いていた咲夜が若干涙目でレミリアに励まされてた。
・美鈴
またもや門番をサボって、今度は太陽の畑の主『風見 幽香』と、植物談義に花を咲かせた。
勿論お説教コースまっしぐら。
・妖精軍団
美鈴がサボったときの門番代理に就任。
「暑い……暑すぎるぅぅぅ~。あぁぁぁ!!」
唐突に、紅魔館にお姉様の叫び声が響く。
「お姉様うるさい!」
季節は夏。ミンミンミンミンと蝉はうるさく鳴き叫び、太陽はジリジリと照り付け、かき氷は五分と経たずに溶けきってしまう夏。
私とお姉様は、バルコニーに美鈴が貰ってきたビーチパラソルとか言うものをセットし、真っ白な椅子に座り、これまた真っ白な机に、グダァーと体を預けていた。
理由? 暑いから。紅魔館って窓が少ないから夏は空気がこもって蒸し暑い。いくら吸血鬼が人間より丈夫でも夏は無理。と言うか夏は太陽の力が強まるので、今の私たちはバテやすさだけなら人間と変わらない。
そんな状態のなか、耳元で叫ばれたらたまったもんじゃない。と言うわけで、お姉様の頭をぺシーン。
「いたっ。ちょっと、なんで頭を叩くのよ」
「イライラするんだよ……」
「ええっ!? ま、まさか! OH☆邪モード!?」
「ファイナルベント」
もう一度、頭をぺシーン。……良い音鳴るなぁ。
勿論、あまり力は込めてない。ただのおふざけだ。
でも、そんなおふざけも直ぐに面倒になり、結局二人してだらぁ~っと庭の方を見る。
「あ、美鈴がお肉とスイカ抱えて飛んでった」
「またサボったな……」
後で熱湯風呂にでも押し込んでやろうかな。
…………お風呂?
「そうだ、お風呂だ。水風呂に入ろう」
うん、ナイスアイデア。
吸血鬼は流水に弱いというが、別に死ぬ訳じゃない。後、お風呂の水は流れるというよりも、貯まる、だ。
「あ~水風呂かぁ。確かに良いわね。一緒に入りましょうか」
と言うわけで、浴場へとお姉様と一緒に向かうのだった。
「マー。暑い……」
その途中、珍しくレナが部屋から一人で出ていた。
……パジャマ姿で目を擦っているところを見るに、暑さで目が覚めちゃったのだろう。
ちなみに、今の時刻は午後2時くらい。私やお姉様はあまり睡眠を必要としていないから平気だが、レナのような生まれて間もない吸血鬼には睡眠は必須だ。
それに加え、レナには四割程、過去に紅魔館に迷い混んだ人間の女の子の血が流れている。(ちなみに、その女の子が死んだから、私は人間を作れないか試してみた) つまり、私たちより体が脆いし、力は弱いし、更に暑さの耐性が低い。つまり人間に四割ほど私とお姉様より近い。
私たちでもこの暑さに軽くへばってしまったのだ。むしろここまでよく耐えれたねと、誉めて上げるべきだろう。
というわけで、汗でびっしょりなレナの頭を撫でて上げる。
いつもはさらさらとしている髪が、汗でべったりと張り付いている。
別に汚いとか、そんなことは一切思わない。
それよりも、あれだろうか。ちょっと前にお姉様が言っていたが、これが『目に入れたら癒される』とかいうヤツなんだろうか?
……なんとなく、名言な気がする。
「レナちゃん。こんにちわ」
「……こんにちわ」
おや、珍しい。レナが私以外にちゃんと挨拶を返した。
いやまぁ、すごい早さで私の後ろに隠れてはいるが。
「ねぇマー。レーさんと何処に行こうとしてるの? お部屋はこっちだよ?」
「暑いからちょっと水風呂に入ろうとしてるのよ。レナちゃんも一緒に入る?」
お姉様が答える。
……それにしても、レナはいつの間にお姉様に気を許したんだろう。何だかんだ、今まであまり接点は無かったはず……いや、誕生日パーティーとか色々あったか。
「水風呂? ……マー。涼しい?」
「ええ。涼むために入るのだから、涼しいわよ」
「……レナも、入る」
よしっ! と、お姉様が途端にガッツポーズ。しかもどや顔……まぁ、いいか。さっさと入ろう。
まぁ、なんやかんやあって、私たちは結構涼しむことが出来た。
お風呂の中での出来事? 色々よ、色々。
お姉様がレナに飛び付いたり、それからレナが必死に逃げてたり、私にも飛び付いてきたり、それを受け止めてくすぐったり、レナが私にもたれ掛かってきたり、なんやかんや仲良くなれたのか、お姉様にももたれ掛かってたり、咲夜が乱入してきたり、レナが咲夜に直ぐなついたことにお姉様がショックを受けていたり、そんな感じ。
ともかく、良かったねお姉様、咲夜。やっとレナの警戒心が解けて。
そんな感じで水風呂で涼しみ、さっきのビーチパラソルの真っ白な椅子に座って、美鈴が抱えていったのとは別のスイカを皆で食べて、のーんびりと談笑。
レナはまた眠くなったのか、お姉様の膝の上で寝てしまって、それにお姉様のテンションがフルスロットルになっちゃったのをレナが起きないように皆で押さえて、最後には皆で寝室まで運んで、ベットの上に寝かせる。
「おやすみ」
最後に頭を軽く撫でて、私たちは地下室をあとにした。
オマケ
その頃の美鈴
「いやー。それにしても、やっぱり暑い夏はあっつい焼き肉ですよねぇ~。ねぇ? 霊夢さん」
「……フンフン」←無言で頷く様子。
どうやら、博麗神社の巫女『博麗 霊夢』と、このあっつい中また焼き肉パーティーしているようです。
「あ、スイカもありますよ?」
「……ブンブンブンブン」←無言で連続で大きく頷く様子。
……餌付けのような、なにかを見た気がする。
オマケ2
その頃のパチュリー
「こあ。暑いから一緒に水風呂入りましょう」
「はぁ。まぁ良いですけど」
考えることは同じである。
今回のまとめ
レミリアと咲夜。レナちゃんと仲良くなる。
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なんだこれ……(作者目線
それは、夏だと言うのに雨が多く降り、暑さでバテぎみの紅魔館一同にとってはとてつもない程ありがたい、涼しげな日が続いている日の事。
私、フランドール・スカーレットは、レナの子守りを、「門番をサボるぐらいならレナ様のお世話をします!」とほざいていた美鈴と、「カメラの準備は24時間365日、常に万端です!」と言う咲夜に任せ、お姉様であるレミリア・スカーレットに連れられ、お姉様の部屋のベッドに座って、お姉様に抱きつかれたり、頭撫でられたり、レナが生まれる前までの感じで、お姉様の言葉を借りると、“愛でられて”いた。
まぁ、それは別に良い。なんだかんだ、私もお姉様にこうされるのは嫌いではない……と言うかむしろ好きな方だし、このところレナの母親として過ごしていたので、たまには私も甘えたりしたいし、単純にお姉様LOVE勢だし。
……ただまぁ、ずーっと耳元で「フラン可愛いフラン可愛いフラン可愛いフラン可愛いフラry……」と言い続けるとか、突然私を押し倒して、ハァハァ言いながらよだれを垂らして私を見つめて更に服を脱がそうとしたり羽を触ろうとしたりするのはやめて欲しい。
何て言うか本当に、身の危険を感じるんだよねぇ……
でも、ふざけて一度、「私はどうなってもいいから、レナは……レナだけは!」とか言ってみたい。……その後どうなるのか、かなり、非常に、とてつもなく不安だけれども。
「……( ゚д゚)ハッ!」
「どうしたの? お姉様」
「なんか今、近いうちにフランが「私はどうなってもいいから、レナは……レナだけは!」って私に向かって言う運命が見えた気がしたのよねぇ……」
「……それで?」
「まぁ、私が見たって事はきっといずれそうなる運命よね! と言うわけでフラン! はい、ばんざ~い」
「……ばんざ~い」
両手を上げた。そうしたら、私が上げた両手をお姉様は左手で掴み、残った右手で器用に私の服のボタンを、一つ一つ、ゆっくりと外してゆく。
……別に抵抗する気はない。理由? さっきも言ったじゃない。私はお姉様LOVE勢だって。
ただまぁ、私だけが一方的にやられるって言うのも、今度は私が我慢できなくなりそうなので、隙をみつけしだい反撃していこうと思う。
それまではまぁ、このまま受け身になっていようかな……
とか思っていたら、それがフラグだったのか
「マー。レーさん。見つけた~」
「「失礼しま……キタコレ!щ(゜▽゜щ)!」」
ああ、面倒な二人が来てしまった。
「咲夜さんカメラカメラ! お嬢様のフラン様愛でモードとフラン様の甘えモードの共演ですよヤバいヤバすぎる鼻血が止まらん堪らんキタコレ!щ(゜▽゜щ)!」
「ええ分かっているわこの部屋に入る2時間前から既にカメラは回っているしかしお嬢様が愛らしすぎて生きてるのが辛いフラン様の此方をチラチラと確認しながらもお嬢様にしっかりと甘えているお姿が愛らしい生きてるのが辛いそしてそんな光景に無垢な笑顔を浮かべながら抱きつきに行くレナちゃん様愛らしい生きてるのが辛いああダメだ鼻から忠誠心が止まらんぜキタコレ!щ(゜▽゜щ)!」
……まぁ、いいか。開き直ってこのままお姉様に甘えてよう。
でもあれね、流石ねお姉様。咲夜達があんなにキタコレしてるのにも関わらず一切動じず私を愛で続けてるのね……
いや、さすがに素肌をなで回すのは……
オマケ
その頃の大図書館
「さて、それじゃ写真の選別を始めましょうか」
「はい、パチュリー様」
そう言ってアルバムを広げると、そこにはフランに抱きついているレミリアに対してちょっと赤くなりながらも抱き返しているフランに更にその二人に満面の笑みで抱きついているレナを撮った写真がこれでもか言うほどにあった。
しかも、一秒に5~6レベルで増え続けている。
……どうやら、咲夜の持っているカメラで撮られた写真は、ここに送られてくるらしい。
あ、小悪魔の鼻から忠誠心が……
……どうやらこの紅魔館の従者達、どいつもこいつも同じらしい。
久々の投稿のため、短め+はっちゃけました。
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それはきっと、彼女の真実(上)
その日、フランは不機嫌だった。
別に、レミリアの奇行に嫌気を通り越して怒りを覚えたとか、そういうわけではない。むしろ、その日のレミリアは比較的大人しく、久々に見せる良いお姉様だった。
フランの不機嫌の理由は、彼女ではない。
咲夜と美鈴にイラついている訳でもない。
確かに、今日もあの二人は色々はっちゃけていた。
咲夜は、お茶の時間にレミリアに時間を止めて目隠しをし、右のお茶か左のお茶どちらかを選ばせ、どちらを選んだとしてもエスプレッソを更に濃縮させたコーヒーを飲むように仕向けていたし、美鈴も美鈴で、門番の仕事を今日もサボり、グータ寝したり湖に釣りに行ったりと、一日を満喫していた。
だが、咲夜の方は、むしろレミリアの方がイタズラを仕掛けてくるのをワクワクしながら待っていたし、何だかんだ楽しそうだった。
美鈴も、今日はちゃんとじぶんの気を実体化させて門の前に配置していたし、帰ってきてからは釣った魚でBBQしながらも、ちゃんと門番をやっていた。
フランの不機嫌の理由は、彼女たちでもない。
なら、パチュリーや小悪魔はどうだろうか?
結論から言おう。彼女たちでもない。
パチュリーは、今日も本を読みふけっていたが、話しかけてもちゃんと反応を返してくれた。というか、いつもよりも反応がよかったぐらいだ。
小悪魔は、フランのことを一目見るやいなや、なにかを察したのか、ちゃんとパチュリーの許可を取ってから司書の仕事を中断し、フランに構ってくれた。
フランの不機嫌な理由は、彼女たちでもない。
……つまり、紅魔館一同のせいでフランは不機嫌なのではない。
……もしかしたら、誰に対しても、何に対しても、怒っているわけではないのかもしれない。
何かを為せなかった自分自身、それか、もっと他のくそったれた者に、物に、自分でもよく分からないまま、イラついているのかもしれない。
多分、おそらく、きっと、それが答えなのだろう。
「ねぇマー。絵本読んで」
ミンミンミンミンとうるさく鳴く蝉や、ジリジリと照りつけてくるあっつい太陽の季節の終わりを告げる季節、秋。
実りの秋だとか、スポーツの秋だとか、食欲、勉強、読書、怠け、怠惰、特撮、運命、エトセトラ……
まぁとりあえず○○の秋っていっときゃ、何とかなるだろう。という考えがはびこるらしい秋。
そんな秋の、とある一日の、間もなく夜更け。まだ幼いレナにとっては、もうおねむな時間。
既にレナはパジャマに身を包み少し目をトロンとさせている。だけどまだ寝たくないらしく、隣で同じくパジャマに身を包んだフランに絵本を読んでほしいとねだる。
ああ、この瞬間こそ、自分の娘を見ていて一番微笑ましい瞬間じゃなかろうか。
少なくとも私は……この子の母娘としての自分の中では、トップクラスに微笑ましい瞬間だ。
「んー、どの絵本を読んでほしいの?」
「えっとね、これ!」
そういって、レナが差し出してきた絵本を受けとるフラン。その顔は、ほんの少しだが驚いているようだ。
「……マー。ダメ?」
ハッとする。見ると、レナが少し不安そうだった。慌てて笑顔を浮かべる。ほんの少しひきつった気がするのは、気のせいだと願いたい。
「ダメじゃないわよ。……でももう遅いから、眠くなったら直ぐに寝ること。いい?」
「うん!」
「むかーしむかし、あるところに、一人の女の子がいました。女の子は、お母さんと、お姉ちゃんと一緒に仲良く暮らしていました。
ある日の事です。
女の子は、お母さんたちとはぐれ、迷子になってしまいました。途方にくれる女の子でしたが、ふと気がつくと、吸血鬼の少女と出会いました。女の子と吸血鬼の少女は女の子のお母さんたちが見つかるまで、二人で遊ぶことにしました。
二人は、直ぐに仲良くなりました。朝になりました。夜になりました。まだ、女の子のお母さんたちは見つかりません。
女の子は泣いてしまいました。いっぱい泣いてしまいました。
吸血鬼の少女は困りましたが、直ぐにあることを決め、女の子に囁きました。
『わたしが、あなたのお母さんになってあげる』……と。
そうして女の子は吸血鬼になり、少女の娘として生きることになりました。
女の子は、もうお母さんがいないと泣くことはありませんでした」
ふとレナを見ると、もう目が開いてなかった。
「……おやすみなさい。レナ」
目を細め、少し微笑んだ。今度は、ひきつっていないはずだ。
頭に手を置き、ゆっくり撫でる。いとおしい。そんな気持ちを込めて。
「また、明日」
そして、フランも目を瞑った。寝られるかどうかは疑問だったが、案外直ぐに眠気は来てくれた。
せめて明日は、こんな不機嫌じゃありませんように。
そう願いを込めて、フランは眠りに落ちた。
絵本には、まだまだ続きがあるようだった。
誰もいないのに、絵本のページが一ページ、また一ページと捲られていく。
ゆっくりと、ペラペラと、捲られていく。
ーー女の子は、幸せだった。
ーー少女も幸せだった。
ーーじゃあ、お母さんとお姉ちゃんは?
ーー多分きっと、幸せじゃない。
「見~つけた♪」
このフランとレナは、果たして前話までのフランとレナなのでしょうか?
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そうだ、スキーしよう
今年ものんびり自重せずに行こうと思います。
「マー。メーリンねてるー」
「またね。……そろそろお仕置きの時期かな」
ズブッ
「ああぁぁーー!!」
季節は冬。幻想郷にも、勿論冬は訪れていた。
雪は幻想郷中に降り積もり、人間も妖怪も関係なく、雪かきに徹しなければならなかった。
そんな雪は、勿論紅魔館のエントランス前も中庭も裏庭もどっさりと降り積もっていた。
さて、冬の遊びといえばなんだろうか。冬のみに出来る遊びで、現代日本の一部の地域では、それが無いことを子供たちが嘆き、大人達は安堵する。冬の風物詩とも言えるもの。
そう、雪だ。雪である。
真っ白な雪。冷たい雪。
やはり冬は、雪がないと冬らしくない。
話は変わるが、幻想郷には妖怪の山、と呼ばれる山がある。
その名の通り、多数の妖怪が数多く生息している山で、天狗と呼ばれる妖怪達の本拠地だ。そんな妖怪の山には、外の世界からやってきた神社、守屋神社がある。
……あー! 説明が面倒くさい! ここから箇条書き!
・外の世界からやってきた守屋神社組が、スキーをやりたいと思いつく。
・いい感じに妖怪の山に雪が積もっていたので、スキーができるように神様パワー発動! スキーができる環境に!
・せっかくなので一般にも解放して、金&信仰もゲット!
・スキーがなかなかに面白いという話を聞き、紅魔館一同もLets go!←今ココ。
そんな訳である。では、天の声でしたー。
「マー。今の声誰ー?」
「……気にしたら負けだと思う」
「さぁ! やって来ました守屋スキー場! て訳で私は幽香さんとかと滑ってきますねー」
「あ! こら美鈴! 待ちなさい! ……行っちゃった」
「まったく、最初は皆で滑ろうって言ったのに……とりあえず私達はスキー板とか借りに行きましょうか。……レナちゃんサイズのってちゃんとあるのかしら?」
「無ければ私がレナちゃん様を肩車しながら滑ります」
「それは咲夜。あなたが危ないでしょうに」
「レナちゃん様パワーがあれば私は無敵です。ネブュラガスだろうと私は止まりません」
「その時不思議な事でも起こったのかしら」
「必然です」
「ハイハイ」
「マー。さむい…」
「だからもっと防寒着着なさいって言ったのに…咲夜。レナの防寒着、取ってきてあげて」
「1秒で戻ります。……お待たせしました。懐で温めておきました」
「それはしなくてもいいわよ……ほらレナ。お礼は?」
「ありがとう。サーさん」
「!?…( *˙ω˙*)و グッ!」
「なんて顔してるのよ…」
そんな感じに話しながら、私達はスキー用具の貸し出し所
へとやって来た。幸いな事にレナサイズのもちゃんとあるようで、そこに関しての問題はなかった。……そこに関しては。
「えっと、レナが滑るときはこの紐を付けて後ろで支えてあげなきゃいけないの?」
「はい。身長100cm以下の方はそうしていただくのがルールとなっております」
「分かったわ」
「あと、この紐を付けている方は中級以上のコースで滑るのはなるべくやめた方がよいかと」
「ええ」
さて、準備ができた私たちは、早速リフトへ乗って上に行く。……飛んだ方が早いのだが、そこは気分だ。
リフトに乗る時に、お姉様が転けてリフトに頭ぶつけて少しリフトが止まったり、途中でレナがはしゃいでリフトから落ちかけ、それを助けようとしたお姉様が滑ってリフトから落ちたり、上で待っててもなかなかお姉様が来ないから咲夜を向かわせてみたら、リフトにうまく乗れずにまたもやリフトを止めて立ち往生していたし、やっと上に来たと思ったら、降りるのに失敗してもう一周してきたりとか、まぁそんなこんながあったものの、無事に全員初心者コースへとたどり着いた。
……ここまででどっと疲れたのだが、これでまだリフトに乗っただけというのが疲労ポイントだ。でも、お姉様はまだまだ元気な模様。勿論レナと咲夜も。
「「「((o(。>ω<。)o))」」」
みたいな感じで、早く滑りたくてうずうずしていた。
「さて、誰がレナちゃんの紐を持つ?」
「とりあえずお姉様は無しね」
「何故!?」
何故って……ねぇ?
「リフトの時、あんなにドジってたから?」
「そんな!? あれは不可抗力で!」
「あ、お嬢様にも紐を付けてくださいってさっき係の方が」
「なんで!? 私100cm以上有るわよ!」
(さっきのリフトでしょうね)
「さっきのリフトです」
はっきり言ったよこの従者。
あ、お姉様がちょっと拗ねてる。可愛い。
「それじゃあ咲夜。お姉様をよろしく」
「……|)彡 サッ」
「……はいはい」
撮っておけばいいんでしょ。分かったわよ。
そんなこんなで、お姉様と分かれてスキーを楽しんでた。
レナはとてもはしゃいでてグングン前に進むので、後ろの私がバランスを取るのは大変だったが、 楽しんでいたからいいと思う。
お姉様は……まぁうん。楽しかったらしい。ただ、後日に『文々。新聞』にて『守屋スキー場に吸血鬼襲来! 溢れ出るカリスマ(笑)』って書かれてたけど。
まぁでも、楽しかったしいいと思う。
イライラは、一切感じなかったし。
オマケ
その頃の美鈴
「大丈夫ですか? 幽香さん。頭から思いっきり行ってましたけど」
「……ええ、大丈夫よ。大丈夫。ええ……」
……どうやら、こっちはこっちで楽しんでいたらしい。
幽鈴……ありかも。
オマケ2
その頃のパチュリーたち
「パチュリー様ぁ!! お願いですから止まってくださいぃぃぃーー!」
「……ダメね、死んだわこれ」
……どうやらパチュリーたちもスキー場へとやって来ていたようです。
……いや、流石に本を詠みながら滑るのはちょっと……
後に、全身を雪で真っ白にしたパチュリーと小悪魔が係員に保護されました。
スキー行きたいなぁ。
あ、レミリアの下りは紐以外実体験です。
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