白猫プロジェクト ─メビウスの悪魔─ (はまーん)
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メインストーリー 第一部
序章 ─悪魔の目覚め─


最近白猫つまんねーなと思ってる方、それは僕も同じです(笑)
ただそれでも白猫をやり続けているのは愛があるからです!ドヤァ

そんなこんなで始まりなので、何卒宜しくお願いします。


そこは直前まで激しいと言うには生易しい戦場だった場所、その跡地だ。平原だったその地は草木の一本も生えておらず、完全に地面の岩が露出しきっていた。

 

そしてそこには多くの死体やそれに伴う大量の血痕、使用していたであろう様々な武器が転がり落ちていた。なかには魔法の力で灼かれたであろう焼死体や凍結の痕が残るもの、身体の約半分が綺麗に消えてしまうような禁忌の魔術によって死んだ者もそこにはたくさんあった。

 

もし仮に人がそこに立ち寄れば吐き気を起こし脳にトラウマとして鮮明に焼き付くことは必定である。

だか、そこは先程まで大規模な戦闘が開かれていた場所。この地に歩み寄ろうとする者、ましてや民間人などが訪れるはずもない所なので人っ子一人いないのは当然だった。

 

 

しかし…、そこに「生存者」がいたとすれば話は別である。

 

 

 

ガラッ…

 

 

ふと、小さな岩が転がっていった。それに続くようにゴロゴロと岩が流れていく。

そこは、他の場所とは異なり少し地面が盛り上がっている。そこから戦闘で積み重なったであろう岩石が崩れていく。

 

まるでそこから、「なにか」が這い出ようとするように…

 

ガラッゴゴロッ

 

「ハァッ…ハァッ…」

 

やがて岩は崩れ切り、そこには血塗れの青年が出てきた。その身体は傷だらけで頭部から血がポタポタと垂れている。手には赤黒い剣がにぎられている。刀身が折れて刃こぼれも酷いが、それでも使い続けたとされるその剣だけは離すまいと青年は力強く握っている。

青年は荒かった息を整えると周囲を見渡した。

 

「……ッ……」

 

 

辺りは死体、血痕、腐敗臭、武器だけがあり、誰もいない。平和とはかけ離れた戦場跡である。

 

 

「……ウゥッ……クッ…うぁぁァァァあああ!!!!あああァァァアアァ!!!!」

 

青年はただ慟哭した。もう自分にはなにもないと悟り、行き場のない怒りと悲しみ、そして絶望をその涙と叫びでしか表すことが出来なかった。

 

その青年は平和のために戦っていた。この世の忌むべき存在である《闇》と対峙し、再びみんなが幸せにする世界を創るために。想いを同じくする仲間とともに。

 

 

青年はそのためなら努力は惜しまなかった。ひたすら戦闘訓練に励んだ。特殊な敵が相手になっても大丈夫なように勉強だってたくさんした。仲間たちと一緒に協力しあい、特別な力だって手に入れた。それが呪われた力だと分かった上で手にした。卑劣で邪悪である《闇》を滅する力、平和を築き人々が幸せに暮らせる世界を創るための力を。

 

 

 

だか、《闇》は想像以上の力を持っていた。決して侮っていたわけではない。ただ《闇》が膨大すぎる力をもって、平和を築くために集まった青年達を蹂躙していったのだ。

 

 

誰もが勇敢に立ち向かった。「平和のために我々は戦わなくてはならない、立ち止まるわけにはいかないのだ」。それは青年も同じであった。だかそんな気持ちを踏み躙るかのように《闇》は戦士達をを虐殺した。

 

 

青年が最後に覚えているのは、自分を風圧で吹き飛ばした不気味な《道化》とその者が高笑いをする声と顔であった。

 

 

程なくして慟哭は止み、青年は絶望と言うには黒すぎる想いを抱えたまま戦場を後にした。

 

 

それは実におよそ300年前もの話である──

 

 

 

 




初投稿且つ駄文ですが暇つぶしにでも読んでいただけたら幸いです。
何卒宜しくお願いします。

ちなみに自分の推しキャラはティナです(笑)
トライドルの当てたかったよーー、クリスマスのは持ってるんですけど(^^;


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第一話 ─悪魔との遭遇─

白猫プロジェクトは個人的には面白いゲームだと思っています。
ただ、2017年になって路線が変更したのか上半期はそこまで「冒険」してる感じがしません。
王道RPGとは一体…^^;

ちなみに現在開催されているアイドルイベントではエクセリアが推しです。ガチャは見事に爆死でしたけどw
ただガトリンは当てることは出来たので良しとします。良いですね、あの個性的なキャラw

今回の話で飛行島一行が登場しますが、設定とか諸々いじっているし、主人公のことを「赤髪」と呼称しているのでそこの辺りはご了承くださいませ。

そんなわけで始まります!ぞばばばばばばばばばッ


その日、飛行島で冒険をしている赤髪、アイリス、キャトラはギルドの依頼を受けてとある森へと来ていた。

依頼書には「最近まで大人しかった森の魔物が急に活発化していて、周辺の村や集落で被害が出ている。今はまだ作物や畑が荒らされたり家屋に傷を付けるといったものだがこのままではいつ人が襲われるか分からない。なので、魔物の討伐あわよくば原因の解明をしてほしい。」という内容が書かれていた。

 

これまで数多くのギルドの依頼を受け冒険家としての腕を着実につけてきた赤髪達はもちろんその依頼を受け飛行艇で森周辺の集落を訪ねた。

 

だが、今回の依頼はこれまでのものとは一線を画していた。依頼書からは想像出来ないほど集落には被害があった。始めは依頼書の内容通りだと考えていたが、実際に来てみれば集落の各地は魔物の足跡でいっぱいであり、あらゆる建物には傷があり中には穴まで開けられる被害を受けたものもあった。集落は完全に荒み切った状態であった。

 

なによりも、問題の森には異様なまでの雰囲気が漂っていた。1番最初に気付いたのはアイリスだ。

 

 

 

この森には濃い《闇》を感じる…

 

 

流石に今回は一筋縄ではいかないと踏んだ二人はキャトラだけ先に飛行島に戻るよう伝えたのだが…、

 

「ここまできて引き下がるなんて猫の風上にも置けないじゃないの!」

 

そういって森の調査の同行を訴えた。こうなってしまったらキャトラはテコでも動かないと感じた二人は仕方なく同行を許した。

 

しかし…、

 

「全くもう!どうなっているのよこの森は!」

 

「キャトラ、あれほど戻ってもいいって言ったのに…」

 

「;」

 

 

いざ森に入ればすればこのざまである。調査開始から約30分、未だにキャトラは文句や愚痴を垂れ流す口の動きを止めようとしない。これには流石の赤髪とアイリスも呆れてしまう。

 

「さっきから進みっぱなしだけど、魔物の一匹も出くわしてないじゃない!どういうことなの!イライラしてなんか気分が悪くなってきたわ!」

 

「キャトラ、少しは…いや、そろそろ静かにしてよね。」

 

「;;」

 

「でも、キャトラの言う通りでもあるわ。さっきから魔物の気配を感じない。《闇》の気配はするのだけれど、それは奥の方に感じるわ。」

 

「それじゃあ、森の深いところに行けばなにかわかるってことね!」

 

「そう、だからこそ今は慎重に進みましょう。」

 

「…」

 

赤髪もそれに同意をした。

だが変だ。なんで集落に被害をもたらした魔物達が一匹もいないんだ…。集落の様子から襲撃を受けてまだ間もないはずなの…。

それに、奥の方から感じる気配の正体も気になる。《闇》ではあるはずなのだが、今まで感じたことのないタイプだ。そもそもなんでそこから動かないんだろう…。

まるで俺達を待ち構えているような…

 

「!!!」

 

まずい!一度集落に戻ろう!!

 

その事をアイリスに伝えようとした、その時…

 

「?赤髪、どうしたの……、!?!!」

 

 

 

目の前から突如強大な《闇》の気配を感じた。それと同時に大きな足音と地震と勘違いしそうな程の揺れがこちらに近づいてくる。

 

 

「なに!!なんなの!?」

 

「こ、これはッ!」

 

「!!」

 

 

赤髪の予感は不覚にも的中した。目の前にナイトメアドラゴンが現れ出たのである。

ただ、《それ》を「ただの」ドラゴンというには間違いであった。鱗や口、歩いた後の足跡からは溢れんばかりの《闇》と《瘴気》が煙となって湧き出ている。そのドラゴンにどれほどの《闇》が抑え込められているのだろうと疑問に感じるのに時間はかからなかった。

 

「ぎにゃーーー!」

 

「キャトラ、逃げて!!」

 

「!!!」

 

 

先頭になって進んでいたキャトラに逃げるよう全力で呼び掛けたアイリス。それほどまでに目の前のドラゴンは危険だということでもあった。

赤髪は臨戦態勢に入ろうとするがそのドラゴンは赤髪より先にドス黒いブレスを出す態勢に入っている。

 

 

「!!!」

 

 

アイリスはキャトラに気が向いてドラゴンの行動に気付いていない!!

キャトラも固まっていて回避する余裕が無い!!

そう考えた赤髪は二人の盾になろうと身を乗り出した。

 

 

「!!赤髪、だめぇ!!」

 

目の前の状況に気付いたアイリスは悲痛な叫びをあげるがもう遅い。誰もがそう思った。

 

そしてドラゴンはブレス攻撃を出そうとした…

 

 

ドガシャァァアアア!!!

 

 

が、出せなかった。

 

 

「えっ!?」

 

「!?」

 

 

目の前のドラゴンは突如頭部に打ち込まれた剣によって絶命していた。ブレスは吐き出す前にドラゴンが絶命したので自然消滅をしていった。

 

そして、ドラゴンに剣を振るったのは灰色のコートを身に纏い、赤髪やアイリスと年の差は変わらないであろう見た目の青年であった。

 

 

「コイツで、最後だなッ…」




夜中に書いたから眠いよぉー
エクセリアも当たらねえしよー
チクショー

次の投稿はいつなるか分かんないですけど、書き始めた以上頑張っていく次第にございます。
それでは、おやすみなさい。(-_-)zzz
(☆`・ω・´)⊃ィィ夢ミロョビーム!・・━━☆


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第二話 ━悪魔との対話─

もうそろそろキングスクラウンの情報が出る頃合ですね。
ツイッターの方で解析の話をみたのですが、魔道士のシャルってイメージ湧かないですね。
「復活して?1回100ジュエルでよろしくー」
とか言いそう、シャルはw

ちなみに狙いは3人ともです!我慢は身体に良くないと言いますからねw

今回の話でオリキャラが出てきます。設定がゆるゆるにならないように気を付けながら執筆頑張ります!
つーわけでよろしくー(訳:そういうわけでよろしくお願いします)



「あの…、先程は助けていただいてどうもありがとうございました。」

 

「♪」

 

「いいッて、別にアンタらを助けるためにアレを殺したんじゃないんだし…。」

 

一度状況を整えるために赤髪達は休息をとっていた。と言っても、それは赤髪達を禍々しいドラゴンから救った(本人にその気は無い)青年がそうしたいと言ったためである。

 

それで今は焚き火を起こして、近くにあった木の実や食べられる植物をかき集め食べながら青年と話をしていた。

 

 

「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はアイリスって言います。こっちは赤髪です」

 

「♪」

 

「アタシはキャトラよ、よろしく!さっきは助けてくれてありがとね!」

 

 

「ん…、よろしく…」

 

青年は木の実を食べながらそう言った。その姿からは先程のドラゴンを仕留めた者とは到底思えない、ごく普通の子どもである。

 

 

「それで、あなたのお名前は?」

 

「……………。」

 

 

アイリスが名前を聞いた。しかし、青年は口の中へ入れた木の実をもぐもぐと咀嚼しながら斜め上を向いている。

今度はアイリスの質問が聞こえていないように思ったキャトラが尋ねた。

 

「ちょっと、話を聞いてるの?アンタの名前教えてよ。なんて呼べばいい?」

 

「……名前思い出せないからユウキッて呼んでくれる?」

 

「質問に質問で返されちゃった…」

 

「;」

 

「あの、ユウキさん、名前が思い出せないっていったい……。」

 

 

またもアイリスが尋ねた。それもそのはず。普通は名前を思い出せないなんてことはまずない。どういうことなのだろう。もしかしたら記憶障害なのではないのかとも考えたが、ユウキと名乗る青年がその答えを出した。

 

 

「俺ッて、昔からずッと戦い続けてたからさ、本当の名前なんて忘れちゃッた」

 

「へぇ、でも昔って言ってもアンタ全然若いじゃない。まだ10代くらいに見えるわよ。」

 

「…ふーん、そう。実際は違うけどね。」

 

「えっ、本当はいくつなんですか?」

 

「んーーーーー…、300くらいだッたかな?多分そんくらい。」

 

 

「「「!!!?!?」」」

 

 

赤髪達はユウキの衝撃の答えに心底驚いた。目の前にいる物静かな青年がそんなにも年を重ねていたとは思わなかったし、あまりにもあっさりと答えているためである。

 

 

「…アンタもしかしてエルフ族?」

 

「うんん、違うよ。至ッて普通の人間。」

 

「普通の人間は300も年をとらんわ!」

 

「;」

 

キャトラの予想を簡単にユウキは打ち砕き、冷静に答えているユウキにキャトラがツッコミを入れる。

まるでコントでもしているような光景だが話のスケールがあまりにもデカイ。

 

 

「…なんで、そうなってしまったんですか?」

 

深く聞いてはいけない事なのかもしれない。でも、知りたいという欲求が勝ってしまったアイリスはユウキに尋ねた。

それでもユウキは表情を変えずに質問に答える。

 

 

「…自分からなッたんだよ、戦うために…」

 

「戦う…、いったいっ……!!!?」

 

 

何と?と言いかけたアイリスだったが、その時森の奥の方から再び禍々しい気配を一同は感じた。

赤髪達は先程のような奇襲を受けないように立ち上がり、気配のする方角を見つめると同時に警戒を強めた。

 

 

「また、同じ気配が…!」

 

「もうやだー!!」

 

「!」

 

 

しかし、ユウキは視線の先こそ同じだが、未だ表情を変えずに座って楽な姿勢のままでいる。赤髪達との反応とは全く異なっていた。

そして、少しするとすくっと立ち上がり赤髪達に話しかけた。

 

 

「…あれは多分奥の遺跡の所にいるから安心しなよ。」

 

「えっ、なんで分かるのよ?」

 

「長年戦いしかしてこなかッたからかな?大抵の気配なら距離とかが分かるようになッてた。」

 

「…それ理由になってる?」

 

「;」

 

少し無愛想ながらもキャトラの質問に答えるユウキ。しかし、その綺麗な蒼い眼は気配のする方から決して離そうとはしない。その姿はまるで獲物を見つめる猛獣のようであった。

 

 

「…今までで1番濃いオーラだ。これまでここで仕留めたモンスターとは別物だな。」

 

「はい、さっきのドラゴンでもここまで黒く感じることはありませんでした。アレをあのまま放っておくわけにはいきません。そんな気がします。」

 

「ていうか、ここら辺のモンスターはユウキが倒してたのね。だから全然現れなかったのか」

 

「ん?ああ、そうだ。全滅させるのに今日含めて3日もかかったけど。」

 

「!」

 

相変わらず冷静にスケールの大きい話をぶち込むユウキにたじろぐ一同だった。だが、今はそんな話をしているのではない状況だった。赤髪が目で訴えかける。

 

 

「赤髪…、そうね、今はアレを調査しましょう!」

 

「♪」

 

「…ユウキさん、お話はまた今度にして、一緒に遺跡の調査をしませんか?」

 

「別にいいけど、アレは俺が仕留めるからね…。」

 

アイリスの突然の提案にもユウキは表情と目線を一つも変えずに冷静に応じる。

 

「いよーし、キャトラ遺跡探検隊の出発よー!!」

 

「もうキャトラったら…。」

 

「;」

 

斯くして、赤髪達はユウキと名乗る青年と共に森の遺跡の調査へと向かう。その先になにが待ち受けているとも知らずに──

 

 

 

 

 

 

 

「──んン〜、白の巫女に彼モ来てくレるとハ、コレはある意味好都合かもデすネェ〜。」




すっげー駄文で申し訳ありません。
ネムネムになりながら執筆してたんでもう何が何だかw


本家の方では、明星会コヨミを当てました!本命はエスメラルダだったんですけどw
欲しいキャラは手に入らなくて別のキャラが当たるという絶妙な呪われ具合を呪う今日このごろです…。
キングスクラウンの方でも…、いや、考えるのはヤメヨウ(-_-)zzz


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第三話 ─悪魔との協力─

おせニャン見て思ったんですけど、3周年だからって気合いの入れすぎでしょw
やる気の高低差が激しすぎて笑ってしまいました(´Д`)ハァ…

キングスクラウンのガチャではユキムラをお迎えしました!剣士の方は持ってなかったから地味に嬉しかったです!杉山ァ!
今はオスクロル欲しさに残ってるジュエルを投下しようかと検討してます。オスクロルが好きすぎて辛い、あの素晴らしいおっ〇いに抱きつきたいですw
ただ、3周年は「ヤバイ」と浅井Pがはっきり明言してるんで、貯めておこっかな…
えっ、シャル?太ももはいいよねぇ←

今回の話でオリキャラの持つ武器について触れますけど、詳しいことはメインストーリーが終わってからの設定で解説していきたいと思います。相変わらずの駄文ですいませんが、何卒よろしくお願いしまーす!


赤髪達は先程休息をとった地点から30分程度かけて、目的の場所である遺跡のその入口付近へと到着した。森にいた魔物をユウキが全滅させていたおかげでスムーズに進むことができた。

 

 

「思ったんだけど、ここら辺の魔物を全部やっつけるってユウキって結構強いのね。」

 

 

キャトラが遺跡に着くまでに考えていたことを投げかけた。森を進んでいた時は鼻歌を歌うほど能天気だったのに、意外な所で核心をついてくる。それがこの喋る白猫の良いところでもあるのだが。

 

 

「全滅させることが目的じゃなかッたんだけど、まあ結果はそうなッちゃッたな。」

 

「…でも、そのたった一つの剣で3日間も戦い抜くなんて並大抵の人ではできません。」

 

 

そう思うのも無理ではなかった。ユウキが魔物と戦うための武器として確認できるのは、片手で扱えてしまえるほどの小さな剣だけである。これだけでこの広い森の魔物をこの青年が全てを片付けるなんてとても人間離れしているとアイリスは感じた。

そう不信に思うとユウキは相変わらず冷静な態度で応える。

 

 

「…まあ俺の場合はできたんだけど、それとこの剣は色んな武器になれるから戦い飽きないしね。」

 

「?」

 

「どういう事ですか?」

 

「この剣には<変化のルーン>ッてのが組み込まれてるんだ。今はただの小さい剣だけど、俺の気持ちにこのルーンが反応して、色んな武器になッてくれるんだ。」

 

「へぇ、文字通り変化する武器か!凄いわね!」

 

 

キャトラが目をキラキラ輝かせてユウキが持つ剣を見つめている。対してユウキは何が凄いんだか…とやや呆れ顔で剣を見ていた。

 

 

「そんなに凄くもないさ。使いづらい武器になッたら面倒だし、むやみやたらに変化できないし、欠点の方が目立つ。」

 

 

「…案外酷評だわね。」

 

「;」

 

「所詮これも武器だもん。……ていうか、そこで盗み聞きしてるの誰?」

 

「「「!?」」」

 

 

ユウキが急に睨み出した方角に赤髪達は一斉に視線を向けた。そこは遺跡とは反対方向のただの大木であった。しかし、少しすると鎧と槍を装備した30代ほどの男が現れる。

 

 

「…いやいや、すまん。盗み聞きなんてする気はなかったが、どうにも出るタイミングを見失ってしまってな。」

 

「あの、あなたは?」

 

「俺の名はガガ。この遺跡の調査に来た冒険家だ。」

 

 

………………

 

 

…………

 

 

……

 

 

一行は遺跡の中へと入り、歩みを進めていた。遺跡の調査と言っても古代の人が残した壁画や使用されていた土器類なども見当たらないので、今のところ魔物の凶暴化の原因は見つけられずにいる。

 

 

「…この気配の出処はやはり下にあるようです。」

 

「下っていうとこの遺跡の地下ってことかい、嬢ちゃん?」

 

 

アイリスが精神を研ぎ澄ましオーラの出現位置を探った結果、遺跡の地下にそれがあることが判明する。

 

 

「はい。しかも、《闇》や《瘴気》の他になにか心に突き刺さるようなものも感じ取れます。早く進んだ方が良さそうです。」

 

「なによ、それ、アタシなんか怖いわ…」

 

「だったらさっさと行って確かめようぜ。そのために俺はギルドの依頼でここに来たんだからな。」

 

「♪」

 

遺跡の入口付近で知りあったガガも目的が同じということで一緒に行動することになった。初対面なのし少し馴れ馴れしい感じではあったが、冒険家としての実力もそこそこあるようなので、赤髪達は協力をしていた。

 

 

「………………。」

 

「なあ僕ちゃん、いい加減話をしようぜぇ?」

 

「;」

 

ただ、ユウキだけは出会って以降、一切話をしなくなっていた。軽薄そうな雰囲気を持つガガが苦手なのか、目線すら合わせようともしない。完全に聞く耳を持たず、ガガのことを無視して歩みを止めずにいる。

 

「なあなあ僕ちゃん、<変化のルーン>を持ってるってことは、僕ちゃんは<メビウスの悪魔>の一人なんだろ?ねえ?」

 

「………………。」

 

「あの、ガガさん、その<メビウスの悪魔>とはなんですか?」

 

「ああ、<メビウスの悪魔>ってのはとある呪いをかけられた人達のことでな。300年程前の《闇》との大戦で敗れてしまったんだよ。まさかその生き残りがこんな子どもだとは思わなかったけどな。」

 

「アンタ、意外と博識なところがあるのね。」

 

「褒めるなよ、照れちまうだろ?」

 

 

30代の鎧を纏ったおっさんが照れ隠しに笑顔で後ろ髪をかきだしはじめた。何分シュールな光景である。

 

「;」

 

「それで、その呪いとはどんなものなんですか?」

 

「たしか、<変化のルーン>が埋め込まれた武器が扱えるようになるのと身体能力が飛躍的に向上する。その代わりに、不完全な不老不死になってしまう……だったか?」

 

「…不完全な不老不死ってなにそれ?矛盾してない?」

 

「流石に首を切られたりしたらおしまいなんだろ?超速回復みたいなもんじゃね?」

 

「…そのおッさんの言う通りだよ。」

 

「?」

 

頑なに口を閉ざしていたユウキがついに口を開いた。そこから発せられる声にはとてつもなく強い覚悟とほんの少しの悲しさが込められている。

 

「俺は中途半端には死ねない。戦ッて、戦い続けてから死ぬしか方法はないんだ…。」

 

「……そんな…」

 

「同情なんか要らないよキャトラ、んじゃ、このドアの向こうに敵がいるから、話は後でね。」

 

 

ユウキが話に無理やり区切りをつけると同時に、一行は大きな扉の前についた。ガガは指をポキポキと鳴らし扉を開けようとする。

 

 

「この先に目標がいるってわけか。どれっ………んぐっ…………うがぁ………はぁ……はぁ……びくともしないぞ?」

 

 

ガガの剛腕そうな両腕を持ってしても扉は1ミリも動く気配がしない。そこでアイリスはその扉にそっと触れてみることにした。すると、あることを感じ取った。

 

「このドア、呪いがかかっているのかも…。」

 

「;」

 

「マジか……、どうすりゃいいんだいったい……。」

 

「ちょっと待っててください。カリダ・ルークス・プーラン・ルーチェンム…………。」

 

 

アイリスが例の呪文を唱える。すると、扉はかかった呪いが解けたのか青白く光出し、ゆっくりと開いていった。

 

 

「やったわね、ってユウキ早っ!?」

 

「!」

 

 

ユウキは扉が開いたと同時に歩き出し、無謀にもそそくさと扉の奥の部屋に入る。赤髪達はその後を足早と追いかけた。

 

 

「ちょっと、ユウキさん!迂闊に進んでは…………っ!!?」

 

「なぬっ?!」

 

「!?」

 

「ちょっと、なによあれ!?」

 

「…………アレはッ……。」

 

身の前にある光景を赤髪達は信じられないという眼差しで、ユウキは多少の驚愕と観察するような目で対象物を見つめていた。

その対象物とは──

 

 

 

 

「……ゥ…………ウゥ………………。」

 

 

 

空中に取り付けられた黒の十字架にかけられた10代ほどの少女が大きな鎖で四肢を縛り付けられた光景であった。その鎖からは一定の間隔で《闇》と《瘴気》が混ぜられた黒いオーラが少女に向かって進んでいき、注入されていく。

そして、少女に黒いオーラが入り込むと同時に胸に付けられたある物体が妖しく光り輝きだす。その物体は……、

 

 

「……変化の…ルーンッ…」

 




珍しく長めに書いちゃいました☆
読みにくかったらごめんなさい、ちょくちょく修正していく予定です。だったらはじめからしろよなんて指摘はごもっともm(_ _)m
タイトル詐欺?協力してねえじゃん?アレで協力してるつもりなんです、彼らはw(見苦しい言い訳乙)

修正といえば、今の白猫は詫びジュエルの数もだいぶ絞ってますよね…。
出るキャラ出るキャラ色んな不具合が出てますけど、あっても最高15個でしょ?一年前は50個がちらほらあったのに、何をケチっているんだ今年の白猫は!
なんて愚痴はこのくらいにして……w

7月2日現在の楽しみは、平日神気解放と凱旋ガチャです。僕はログイン日数は500ちょいくらいなので、無料で33連出来ます。何に費やして結果はどうだったのかは次回にでも書いておきます。(誰が見たいのって?僕ちんが書きたいだけw)
神気解放はトライドルが化けそうですね。僕はファルファラを持ってるので非常に楽しみです!

それでは、今夜も遅いのでおやすみなさい(-_-)゜zzz…
(☆`・ω・´)⊃ィィ夢ミロョビーム!・・━━☆


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第四話 ─メビウスの悪魔─ 前編

どんだけ頑張ってもオスクロル&シャルロット当たらないよーーー!泣
「ねぇねぇ、どんな気持ち!?〇万円課金したのに新フォースターすら当たらないってどんな気持ち!?」
「やめろっ!!」
「お〇ぱいが超絶好大きなのに女性キャラがお迎えされないってどんな気持ち!?」
「やめてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」←



※ヤケクソになって書いている(良い子はマネしないでね)ので、いつも以上に駄文になってる可能性がありますので予めご了承くださいませ〜。


「ルーンが……身体に埋め込まれている……!」

 

アイリス達は自分の目を疑い、眼前の光景が幻であってほしいという気持ちでいっぱいだった。それほどにアレが非人道的なものであるという認識は確実にできた。

黒の十字架にかけられている少女は身体の恥部をやっと隠せる程度の必要最低限の布キレしか身につけておらず、しかもその身体はあまりにも痩せ細っていた。栄養をほとんど摂取されていないのか、脂肪は極端に少なく皮膚のすぐ下には骨の形がくっきり出ている。少女の表情からは生気が全く感じられず、眼の下にはハッキリと隈が出来ている。

何よりもインパクトがあったのは、胸に埋め込まれた<ルーン>であった。手足を縛る鎖から流れる《闇》と《瘴気》のオーラが少女に入っていく。その度に少女は苦しみの声を小さくあげると同時に<ルーン>が不気味に光って主張をしている。

 

 

「早く助けましょう!」

 

「言わずもがなよ!」

 

「ったりめぇよ!こんな酷い状況、流石に見過ごせねぇ!」

 

「!」

 

 

目の前の惨劇を見かねたアイリスが囚われている少女の救出を提案した。赤髪とキャトラ、ガガはそれに賛成をする。

しかし……、

 

 

「………………。」

 

 

ユウキだけは返事もせずに、鎖に繋がれた少女をただじっと見つめていた。

そして……、

 

 

「……<ナナ>!おい、返事をしろ!<ナナ>!」

 

「「「!!?」」」

 

 

それまでは冷静に赤髪達とコミュニケーションをしていたユウキが、大声で少女に声をかけた。だが、その呼びかけにも少女は反応を示さない。

 

 

「……やッぱり意識がないか。」

 

「<ナナ>ってあの子の……?ユウキの知り合いなの?」

 

「うん、さッきおッさんが話してた戦いあッただろ?その時に一緒に戦ッた仲間だ。」

 

「だったら、早く鎖から解放した方が…………」

 

「いや、止めておこう。むしろその方が危険かもしれない。」

 

「?」

 

 

ガガは救出を催促するが、ユウキはそれをバッサリと拒否した。

 

 

「どういう事よ!?今にも死にそうなのよ!?」

 

「…ナナの胸には<変化のルーン>が付けられてる。あれは本当は武器に埋め込むものであッて、身体に埋め込むような代物じゃない。しかも、鎖から《闇》のオーラを供給され続けてる。」

 

「はい、確かに。それにあの様子だと、ナナさんは長い間ずっとオーラを注がれ続けたままいると思われます。」

 

「うん。だから今鎖を切ッたら<変化のルーン>にどんなことが起きるか分かんないし、こッちにも被害が来るかもしれない。」

 

「でも、このままという訳にもいかないわ!」

 

「だから助ける方法を考えてるところなんだよ。」

 

「;」

 

 

一行はナナを救出するため話し合いを進めていた。こうしている間にもナナの身体は《闇》に蝕まれている。一刻も早くあの状態から助け出さなくてはならないという気持ちから焦っていた。

 

そう考えたその時…………!

 

 

 

 

 

「…………クククククッ、いやぁ、流石のキミにも焦りが見え始めましたネェ……。」

 

 

「「!!!」」

 

 

聞いたことがある、脳裏に刻まれた不気味で甲高い声……。

その声のする方向を見ると、ガガはナナの十字架の隣にいた。十字架自体が浮いているので、ガガも同じく空中に浮いている。

 

 

「ガガさ…………、いいえ、あなたは……!」

 

 

ガガの周囲に黒い霧が発生し、ガガの全身を覆い隠した。

 

 

 

「お察しのとおり、白の巫女……。」

 

 

そして霧が晴れると、そこにいたのはガガではなく……

 

 

 

 

「ギャハハハハハハハハ!!!」

 

 

 

不気味な高笑いと共に《闇の道化エピタフ》が姿を現した!

 

 

 

「エピタフ!」

 

「!」

 

「ア、アンタだったのね!」

 

「そうでした〜!いやぁ、わざわざバレずにここまで案内するの大変でしたヨ〜。」

 

 

エピタフはいつもの調子で赤髪達に話しかける。

それをよそに赤髪達は臨戦態勢に入る……、より前に先に先制攻撃を仕掛けたのは……、

 

 

 

 

「…………ッ!」

 

「ユウキさん!」

 

 

 

 

ユウキだった。不意打ちのつもりだったのだろうか、一切声を上げずに神速の如き速さでエピタフに斬り掛かる。

同時に、ユウキの気持ちに<変化のルーン>が反応したのか、いつの間にか短剣から太刀に武器が変化していた。

 

 

「オットぉ〜」

 

「…………ぐぁッ!」

 

 

 

 

その斬撃はエピタフに届かなかった。太刀が命中する直前でエピタフが手をかざした。そこから出てくる強烈な風圧でユウキは吹き飛ばされた。

 

 

「ユウキさん!」

 

「うーん、キミは昔からそうですよネェ〜。いつも良いところまでいくのに惜しいんですカラ〜。」

 

「………………お前を、殺すッ……」

 

「!」

 

 

ユウキは吹き飛ばされたが、すぐに体勢を立て直し真っ直ぐエピタフを見ていた。

赤髪は森で見た時は綺麗で印象的だった海のように蒼い瞳は、今は血のように紅い瞳へと変貌している。それは見つめている対象物への明確な殺意が込められているようだった。

 

 

「クククククッ、キミのその目はいつになっても怖ぁいですネェ〜。いつまで続けるんですカ〜?」

 

「……お前を殺すまで。」

 

「おぉ、怖い怖い。300年前もそんな感じでしたネェ。そんなに変わらず私に殺意を向けてくれるご褒美に、感動の再会をプレゼントしまショ〜。」

 

 

そう言ってエピタフは指を鳴らした。あの狡猾で卑劣な道化の事だ、何をするか分からない。一同は警戒を強めた。

すると……、

 

 

「…………んん……、……アレっ……?」

 

「「「!!?」」」

 

 

なんと、それまで死にかけていたナナが目を覚ました。ナナを力弱く辺りを見渡し、そしてかつての仲間を見つけた。

 

 

「………ああ、<スタイン>だぁ……」

 

「!」

 

 

ユウキはナナに意識があったことに安堵し、<スタイン>という自分の本当の名前を呼ばれ、思い出したことに少し感動をした。

 

 

「ナナ、おれが分かる?スタインだ!」

 

「……分かるよ、スタイン……えへへっ、ホントに来てくれたぁ……。」

 

 

しかしその直後、ナナの異変に気がつく。

 

 

「……ナナねぇ、ここでずぅっと待ってたんだぁ、スタインが来てくれるの、ここでねぇ……。」

 

「……ナナ?」

 

「……あの戦い、辛かったねぇ、……死ぬはずの無いみんながどんどん死んでぇ、次はナナの番かなって思うと怖くてぇ…。…それでもぉ、スタインだけは平和のためぇって、たっくさん敵を殺してぇ、最後までぇ、戦ってぇ……」

 

 

ナナの胸に埋め込まれた<変化のルーン>が鎖からのオーラの供給を受けていないのにもかかわらず、少しずつ妖しく光輝く。

すると、ナナの四肢を繋いできた鎖がボロボロと腐敗したかのように崩れ落ち、ナナは解放された。しかし、ナナはそんなことを気に止めず、痩せ細った身体で空中からスタッと着地をし、呂律が回らずフラフラした状態のままユウキに語りかけ続ける。

 

 

「…………でもねぇ、もおいいんだよぉ……。戦わなくてネェ…、だいじょおぶなんだよぉ……幸せになっていいんだよぉ……。」

 

「……俺は戦い続けるよ、最後まで、《闇》を滅ぼすまで。」

 

「……ねぇ、幸せってぇ、ナンだろうねぇ?……」

 

「……さあ……」

 

「……ナナはねぇ、きット一緒にいるコトだと思うンだァ、だかラねぇスタイィン、幸セニナロォ?……」

 

「「「!!?」」」

 

 

突然<変化のルーン>と胸の隙間から黒い霧が溢れ出し、ナナを包みこんでいく。それが何であるかはアイリスにはハッキリと理解出来た。

 

(あれは、今まで溜め込んだ…………ッ!!)

 

それと同時にアイリスは自分で自分を抱き抱えるようにして、座り込んだ。

 

 

「!」

 

「アイリス!」

 

「ナナさん……!あなたはもう……!」

 

 

「……ナナ、お前……」

 

 

時間が経つにつれて霧は大きくなり、元のナナの体格からおよそ4倍にまで膨れ上がっていく。あまりにも濃すぎる《闇》と《瘴気》の塊に一同は驚愕を、エピタフはニヤニヤと笑いを堪えていた。

 

 

「クククククッ、ここまでですネェ?」

 

 

そして、勢いよく黒い霧が晴れてナナが姿を現した。

いや、もうそれはナナではなかった……。

 

 

「ナナト一ツニナッテ、幸セ二ナロォォォヨォォォォォォォォォ!!!!!!!」

 

 

そこから現れたのは、真っ黒の《アルラウネ》であった。




「ねぇねぇ、どんな気持ち!?明日の予定も考慮しないで深夜にこんなss書くってどんな気持ち!?」
「やめてぇぇぇ!!!」
「おっぱ〇がめっちゃ大好きなくせに推しキャラがティナってどんな気持t」
「ティナを馬鹿にするなぁァァ!!!」
(#っ・д・)≡⊃)3゚)∵ドコォ

※はまーんはロリコンではありません。たまたまティナがドツボにハマっただけです。他のキャラももちろん大好きですよ☆


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第五話 ─メビウスの悪魔─ 中編

もうすぐ白猫プロジェクト3周年!それなりに期待は持っているけどジュエルが全然足りません!まあ、ソウルオブナイツがジュエルリセットされると本気で信じてた自分が悪いんですけどね☆(現在の204個)
ここで申し上げるのもなんですが、コロプラさん!もっと配布してください!準無課金勢はしんどいです!

ちなみに凱旋ガチャでは絶海2を引きまくりました。結果……フローリア、ルビィ、サフィラ、そしてシンが来てくれました!!
マナ1点狙いだったんですけど、爆死ではない結果となったのでまあ良しとします!
まあ後は単発で運試し程度に頑張って行きます!


──およそ300年前……、

 

 

とある少女は犯罪の絶えないスラム街で生まれ育った。

力が全てを決める。欲しいものは力で奪い取れ。

スラム街の生活ではそれが唯一のルールとして存在し、少女もそれに従い、己の力を行使して生きてきた。才能があったのか、または生きていくための努力からか、少女は喧嘩では負け無しで逃げ足も段違いに早かった。本人は気にしていなかったが、いつの間にか少女はスラムで名高い喧嘩娘として有名になっていた。

 

 

だが、所詮は年端もいかないただの少女。

夜中、スラムのボロ屋を拠点として寝ていた少女は人攫いの男達の襲撃を受けた。いきなり真夜中に襲われた少女は抵抗もままならず、手足を拘束された。そして男達はまだ未成熟の少女の身体に手を伸ばした。

 

 

もう助からないと諦め目を閉じたその時、男達は悲鳴を上げた。暴行音と斬撃の音、水らしきものが吹き出る音が聞こえた。そして誰かに抱き抱えられる感触を感じ、少女は目を開けた。

そこには男の何人かが倒れ、残りの男が狼狽えながらこちらを見つめている光景だった。そしてふと視線を隣に移すと、自分を抱き抱える青年が真っ直ぐこちらを見ていた。

 

 

「……大丈夫?」

 

 

 

そこから先は少女は覚えていない。

ただ、その一言で自分は安心しきって気を失い、そして心は<恋>に落ちていたことだけはハッキリと分かった。

聞けばその青年は<スタイン>という名前で、力試しがてらに悪者を駆逐するためスラムに来たらしいが、少女はこれを運命だと確信していた。

 

 

それまで一人で生きてきた少女は、スタインと一緒にいたいという気持ちで心がいっぱいになり、そしてスタインらと同じ呪われし力を授かり<メビウスの悪魔>となった。

 

 

戦闘訓練などでスタインと生活を共にした少女は、誰よりも強く、純粋で優しいスタインをより好きになっていった。

 

 

いつか、《闇》を倒して、スタインと二人で生きたい。

 

 

そんな夢を抱いた少女は実現のため、<闇>との戦いに向け訓練を重ねた。

 

 

そして起こった闇との大戦、少女も懸命に戦ったが、重大な問題が発生した。本来呪われた力で<メビウスの悪魔>となった者は不老不死となるとされていた。その力を持てば<闇>でさえ恐れることはないと。

しかし、同じ力を持った仲間が次々と倒れ死んでいく光景を目の当たりにした。聞いていた話と違う、次は自分が死ぬんだと少女は恐怖し絶望した。

 

 

だが、それでもスタインは戦っていた。<変化のルーン>の力で自身の背丈の倍もの刀身がある大剣を振り回し、敵を倒し続けていく。

少女は、そんな勇敢に戦うスタインの後ろ姿を見て奮い立った。スタインと一緒に生きる。その夢が少女に戦う気力を与え、少女は加勢へと向かった。

 

 

その時、空から魔法の炎弾が少女に降り掛かってきた。それに気付いた少女は避けられないと判断し武器でガードをした。しかし、炎弾の威力は凄まじく少女を吹き飛ばした。

その衝撃で少女は致死レベルの重症を負ったが、スタインはそれに気付くことはなく敵を倒していった。薄れゆく意識の中で少女はそのスタインの姿を見つめ、自身が負った傷の痛みよりも彼のことを改めて大好きだという気持ちで溢れていた。

しかし、そんな思いが伝わるはずもなく、少女の意識は深い暗闇へと沈んでいった。

 

 

死ぬってこういう事なのかと考えながら暗い穴に沈んでいくのを少女はただ感じていた。

しかしその時、どこからか声が聞こえてきた。

 

 

「……後悔はありませんか?……」

 

 

 

少女はこの暗闇のどこから聞こえるのか少し疑問に思ったが、あまり深く考えず質問に答えた。

 

 

「後悔……か、あるよ。たっくさん。」

 

 

「……。」

 

 

「……スタインに好きって伝えたかった!スタインと一緒に遊びたかった!スタインとデートしたかった!スタインと結婚したかった!スタインとキスしたかった!スタインと子どもを作りたかった!………スタインと一緒に……いたかっ……ひくっ………スタインと、っうっ…………幸せになりたかったよぉ……うぅ……。」

 

 

少女は内に秘めた気持ちを口にし続けた。それらは少女がスタインに出会ってからずっと抱き続けてきた願望、夢であった。

しかし、もうそれは叶わないと思った少女は泣き、後悔の念でいっぱいになった。

そして、謎の声が少女に語りかける。

 

 

「……では、ここで待ちましょう。彼を……。」

 

「……ふぇっ?」

 

「彼と一緒にいるために、彼と幸せになるために、ここで彼を待ち続けるのです。彼を愛するあなたならそれが出来るはずです。」

 

「……スタインを……待つ?」

 

 

「……彼を、愛しているのデショウ?」

 

 

その言葉が少女の決断を後押しする決定的な言葉だった。

 

 

 

「……うん、待つよ。ここで、スタインが来るのを!何年経っても、何十年経っても、何百年経っても、スタインと幸せになるために!」

 

 

 

 

「……その意気デスよ、ヒヒッ」

 

 

 

 

もうここがどこで誰が語りかけているのかは少女には関係なかった。スタインと幸せになる、その夢だけが待つだけの少女を支える柱となって、《闇》と《瘴気》を蓄積していく胸に埋め込まれた<変化のルーン>に抗う精神をも力にした。無論、少女はそれに気付くことはなく、ただ彼を待つだけの<変化のルーン>の器となっていった。

 

 

 

そして現在──

 

 

スタインとの再会は果たされた……。

 

 

 

最悪の形で……。

 

 

 

 

「スタイィィィィィィン!!!!」

 

 

アルラウネと化したナナの身体から触手が何本も生え、かつてスタインと呼ばれたユウキに襲い掛かった。

それはとてつもなく早く人間では到底反応出来ない速度であったが、ユウキは人を超え、人を捨てた<メビウスの悪魔>。いとも簡単に全ての触手を太刀で切り落としていった。

それでも触手は一瞬で再生し、再度ユウキに襲い掛かる。迎撃しても拉致があかないと判断したユウキは回避動作も混ぜて、ナナの様子を伺う。

 

 

「ユウキ!大丈夫!?」

 

 

「……大丈夫、今のッ、ところは。」

 

 

赤髪とキャトラの心配をいつも通りの冷静な言葉で返すユウキであったが、触手の連続攻撃で徐々に疲弊しつつあった。

 

 

「エピタフの奴もいつの間にかいないし、どうすればいいのよ!?このままじゃユウキが!」

 

 

「うぅ……」

 

 

「!」

 

 

周囲を確認すると、エピタフが姿を消していた。あの道化をどうにかすればと考えていたが、いないのなら話にならない。それとは別に、アイリスが胸を抑え苦しんでいるのを赤髪は心配した。

 

 

「私は大丈夫、それよりも早く……ナナさんを……ううっ!!」

 

 

「アイリス!どうしたの!?」

 

 

「ナナさんの心、感じてしまうの……ゔっ……闇と瘴気が入り混じってっ、こんな酷いの…早く助けないとっ!………うっ!」

 

 

「!」

 

 

アイリスが涙ながらにナナの救出を訴えるが、アイリス自身は本能的に分かっていた。

 

もうナナを助けるのは無理だと……。

 

長年《闇》と《瘴気》を身体に蓄積され、<変化のルーン>で人の形を失い、自我もなくなってしまったナナはもう倒すしかないと分かっていた。アイリスのその提案はそんなナナから発せられる酷すぎるオーラから自分を解放してほしいという無意識的なものでもあった。

 

 

 

その赤髪達のパニックをよそにユウキは迫り来る触手をさばいていく内に、とある違和感に気付いた。

 

 

 

「これッ、攻撃じゃない……。」

 

 

ナナがユウキに出している触手は凄まじい速度ではあるものの、自分の身体にダメージを与えたりするような攻撃ではない。常に四肢を狙いにしていることにユウキは気付き、ナナのある言葉を思い出す。

 

 

『ナナト一緒ニナッテ、幸セニナロォォォヨォォォ!!!』

 

 

「一緒になッて……、てことは俺を捕まえようとしてるのか?」

 

 

「ソウダヨォォォスタインンンンン!!」

 

 

ユウキの独り言にナナが反応をする。その声はもはや人としてのそれではなく、ただのモンスターの鳴き声に近いものになっている。

 

 

「モウ辛ィコトハ考エナクテイイ、ナナト一ツニナッテナナト幸セニシテアゲルカラネェェェ!!!」

 

 

そう言うと、アルラウネの本体、まだ人であったナナの形が残るその胸には<変化のルーン>が妖しい光を出し続けている。

ユウキはナナの言葉に耳を貸しつつも、どうすればこの戦いを終わらせられるか考え続けていた。

 

 

(<変化のルーン>……、アレがナナを変えてしまッたのなら……、やッてみるか。)

 

 

ユウキはナナの胸にあった<変化のルーン>を取り出す作戦を考えたが、現状絶え間なく迫る触手に対応することでいっぱいいっぱいだった。

しかし、それしか今は策がないとして、覚悟を決める。そして、同じく変化のルーン>が組み込まれた自分の武器に語りかけた。

 

 

「……おい、お前だッて分かッてるんだろ……。」

 

 

ユウキがそう言うと太刀の柄の部分が少しずつ光り輝いていく。ナナのそれとは違い、辺りを明るく照らす光だ。

それとは対照的に血のように紅くなっているユウキの目は、ナナをじっと見つめている。標的を殺すまで地の果てまで追い続けるような目で。

 

 

「お前の力を寄越せよ、そのためにあるんだろお前は……。」

 

 

やがて武器は形を失う。それと同時に光はユウキの全身を包み込んでいく。

 

 

「ユウキさん……」

 

 

「ユウキ……」

 

 

「!」

 

 

そして、光が消えると姿を現したのは、鋭利な角が頭から生え、尻尾も生やし、腕部や脚部が肥大化、そこから伸びた指や爪も大きく且つ鋭く変化しているユウキだった。

 

 

その姿はまさに──

 

 

 

 

「悪魔……。」

 

「!」

 

 

アイリスがそう呟くと同時にユウキは臨戦態勢に入った。その紅い瞳には変化はなく、ナナを見つめている。

 

 

「行くぞ……ナナ。」




ぷぇーーー、長かったーーー(  ́ฅ ̀-)


もうすぐキングスクラウンのガチャが終わっちゃうなー。
オスクロルかシャルのどっちか欲しいなぁー。
3周年のために残すか奇跡を信じてガチャやるか悩んでいます。どうも、はまーんでした。(語彙力の無さに草)


今回も駄文だった気はするけど、まあ楽しんでくれればなによりです。


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最終話 ─メビウスの悪魔─ 後編

後から来た無料凱旋ガチャ爆死っす。
ついでにキングスクラウンのガチャもやったんですが爆死っす。
ただの爆死祭りだね。
酷いよ、こんなのあんまりだよ……。



今回でメインストーリーはいったん終了とします。
ですが、今後はサイドストーリーなり、設定なり、ラブストーリーなり、えなり(カンタンジャナイカー)、やっていく所存です。
活動報告のところにも書いてますので、コメントは出来ればそちらの方で(^_^)/
何卒よろしくお願いします。


悪魔は戦う……。

 

 

 

 

目の前の敵を殺すために……。

 

 

 

 

かつての仲間を助けるために──

 

 

 

 

 

 

<変化のルーン>の力を全身に纏い、まるで容姿が悪魔の化身となったユウキは構えた状態から目にも留まらぬ速さで急加速をしナナに接近した。ユウキがいたその場所が急加速の衝撃で突風と瓦礫が舞っている。

赤髪達は一瞬にしてユウキが消えたように見えたが、ナナはユウキの姿を確実に捉えていた。

 

 

 

「スタインカラ近ヅイテクレルナンテ嬉シイヨォォォオオオ!!!」

 

 

 

しかしナナにとってはユウキが何をしようとしているのかはどうでもよく、ただユウキと一体化を果たすことで思考が支配されている状態であった。

少しでも早く繋がりたい、欲望を満たしたいと考えているナナは触手をユウキに向かって素早く突き出し捕縛しようとする。

だが、あまりにもユウキが早すぎるため触手はユウキを捉えることができない。

 

 

「…………ッ。」

 

 

 

「スタイィィィィィィン!!!早ク一ツニナロォォォ!!!キット気持チイイカラァァァ!!!トォッテモ幸セナ気分ニナレルカラァァァァァァ!!!」

 

 

猛烈なスピードで迫る触手を更に速いスピードで無表情で躱し続けるユウキ。紅い瞳は光り輝き、残像となって線を描いている。それを美しいと思うのか、はたまたおぞましいと思うのかは人それぞれ。

少なくとも赤髪達は素早く移動するユウキを目で追うことは出来ず、その紅い光に後者の気持ちを感じていた。

 

 

「……なにあれ、アタシ達なんにも出来ないじゃない。」

 

 

「……そうね、こんな戦いに介入することなんて……ゔっ!!」

 

 

「アイリス!?あんまり喋らない方が……!」

 

 

「……大丈夫、でもユウキさんなら、もしかしたらナナさんを……。」

 

 

「;」

 

 

 

赤髪もこの戦いには加わらない方がいいと判断した。アイリスの容態も心配だし、今はユウキを信じるしかない。

三人はユウキがナナを解放してくれるのを祈るしか出来なかった。

 

 

 

 

 

「……ハァ……ハァ……スタイィィィン、早クゥゥゥ……」

 

 

「ッ!」

 

 

激しい戦闘が繰り広げられる中、ナナは疲弊したのか触手の連続攻撃の速度がほんの少しだが遅くなっていった。それに気付いたユウキはチャンスと踏み、真正面から一気にナナに接近する。

 

 

 

「スタイィィィィィィン!!!」

 

 

 

「ッ……!!」

 

 

数多の触手を掻い潜り、ユウキはアルラウネとなったナナの人の形をした本体に取り付いた。ユウキのその悪魔の様な腕がナナの胸に埋め込まれた<変化のルーン>に手をかける。

 

 

「ヴヴッ!!!スタイン、ナニヲスルノ!!!??」

 

 

 

「ナナ、今からお前の胸のルーンを引き剥がす!苦しいし痛いだろうけど、耐えてくれ!うおらぁぉぉ!!!」

 

 

 

ユウキは左腕で本体を抑え、右腕で掴んだ<変化のルーン>を思いっきり握りしめた。そして、全身の力を込めて<変化のルーン>を引き剥がそうとした。

 

 

「ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛カ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア!!!!!!!イ゛タ゛イ゛ヨ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!!!!!!ス゛タ゛イ゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!!!!!!!」

 

 

「ごめん、でも耐えろナナ!頑張れ!頑張ッてくれ!」

 

 

 

「ク゛キ゛ャ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!!!」

 

 

ナナはこの世の終わりがすぐそこまでやって来たかのような悲痛な叫びをあげる。あまりにも大きくて高い叫び声に赤髪達は耳を塞いでいたが、それでもほんの少しの隙間からその声が入ってきて苦しんでいた。

 

 

「!!!」

 

 

「ぎにゃー!なんて声を出すのよ!」

 

 

「ゔゔっ!」

 

 

 

中でも特に苦しんでいたのはアイリスだった。ただでさえナナの叫び声でも頭に響いているのに、そのナナの痛みと苦しみの気持ちと《闇》と《瘴気》で汚された想いを肌と心で感じ取ってしまっている。それらが重なってアイリスを苦しめていた。

 

 

(……辛い!ドロドロで黒い何かが全身を圧迫するような……っ!!こんなの不謹慎だけどっ、ユウキさん、早く終わらせて!私を苦しめないで!)

 

 

「!!!」

 

今の自分には何もできない悔しさと身体と心を苦しめる痛みで、アイリスは大量の涙を流しながらそう懇願した。今まで味わったことのない気持ちが考えてはいけないようなことまで考えさせられてしまう。その苦しみでさえアイリスをも蝕んでいた。

そんなアイリスの様子を見て赤髪は片腕でアイリスを抱きしめた。

 

 

「!赤髪、そんな、早く耳を!」

 

 

「!」

 

 

赤髪にとっては自分よりもアイリスが苦しんでいるのを黙って見ているわけにはいかなかった。アイリスを抱きしめることしか出来ないことに悔しさはあったが、今自分が出来ることを精一杯行うことに赤髪は全力を注ぐことにした。それが、アイリスと共にいる。アイリスと少しでも痛みを分かち合うことであった。

 

 

「…………ううっ。赤髪、ありがとう!」

 

 

「♪」

 

 

 

 

しかし、このような状況でも耳を塞ぎたくても塞げない者がいる。

 

 

 

「ぐうおおおおおおおおおおおおらああああああああああ!!!」

 

 

 

それはナナの胸の<変化のルーン>を引き剥がそうとしているユウキであった。最もナナに近い位置にいるため、ナナの叫び声がダイレクトにユウキの耳に届いて、苦しめていた。しかも、アルラウネの巨体が苦し紛れにのたうち回っているため、ユウキにも少しずつダメージが入っていく。

ユウキはそれに耐え続けて、作業に全神経を集中させている。しかし、なかなかルーンが剥がれない。まるで何層もの接着剤で着けられたようにビクともしない。それでもユウキは必死になって引き剥がそうとしていた。

 

 

 

(今一番苦しいのはナナだ。《闇》に利用され、道具となッて、気持ちを弄ばれて、こんな化物にされて。それで今は……クソッ!)

 

 

その時、<変化のルーン>にほんの少し動きがあった。ユウキはその時が近いと確信し、ナナに呼び掛けた。

 

 

「ナナ!もう少しで取れる!あと少しだから!」

 

 

「イ゛タ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!!シ゛ヌ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛!!!!!!スタイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!!!!!!!」

 

 

 

「もうちょッとだ!もうちょッとでお前は──」

 

 

 

そして、ついにその時が来た。

 

 

 

 

 

グジョバァァァァ……

 

 

 

 

肉が抉られるような不快音と共に、ナナから<変化のルーン>を引き剥がすことに成功した。

それと同時にアルラウネの動きは止まり、叫び声も止んだ。

 

 

「…………。」

 

 

「よかッた、ナナ!大じょ──」

 

 

ユウキは安心した束の間、ナナの身体から膨大な量の黒いオーラが突風となって発生した。一瞬の出来事だったので、ユウキは吹き飛ばされてしまう。赤髪達は吹き飛ばされまいと地面にしがみつき、突風が止むのを待つしかなかった。

 

 

「ユウキ!」

 

 

「ユウキさん!」

 

 

「!!!」

 

 

「んだよこれは!ナナぁ!」

 

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

 

…………。

 

 

 

 

 

……。

 

 

 

 

 

 

 

「……ナナ……。」

 

 

 

「……………なぁ…………にぃ………?」

 

 

 

オーラの突風が止んでアルラウネがいた場所には、鎖で拘束されていた状態で発見した時の、人間のナナが横たわっていた。

その時と違うのは胸に埋め込まれた<変化のルーン>が取れて、ポッカリと穴が空いてしまったこと。呼吸音が非常に弱く、身体の機能も大幅に低下し、顔と口をやっと動かすことしか出来ないこと。

 

 

そして、心臓の動きが徐々に弱くなっていっていること……。

 

 

 

「…………そんな…………。」

 

 

「…………ナナ……さん。」

 

 

「;」

 

 

 

そう……、<変化のルーン>は引き剥がせたが、それでもナナを助けることができなかったのだ。

 

 

 

 

「……ナナ、ごめん……、お前を助けるつもりが、お前を死なせることになッてしまった……。」

 

 

「…………でも、人間に……戻してくれたよぉ、それだけで……ナナ……じゅうぶん……。」

 

 

「……ナナ……。」

 

 

ユウキはそう優しく名前を呼ぶと、戦っていた時の悪魔の姿とは違う、人間の暖かな腕で横たわるナナを抱き留めた。

 

 

「……えへへっ、スタインの手ぇ、あったかくて……気持ちいい……、ねぇ、スタイン……。」

 

 

「……なに?」

 

 

「頭……なでなで…してぇ…。」

 

 

 

 

ユウキは無言でナナの頭をめいっぱい優しく撫でた。戦っていた時の紅い瞳とは違う、澄んだ蒼い瞳でナナを見つめながら。

 

 

 

 

 

「……スタインの目、昔から……キレイだね……、海みたいに……蒼くて……ナナ好き……。」

 

 

 

 

「……ありがとう、ナナ。」

 

 

 

 

「………そうだ、スタイン……、海に行こう……。」

 

 

 

「……。」

 

 

 

「……スラムと……全然違う、キレイで……広い海……、ナナ行きたい……。」

 

 

「……うん、行こう。」

 

 

「……ほん…と?」

 

 

「……うん、約束。」

 

 

「えへへっ、やくそく……。」

 

 

ユウキはナナのひんやりとした冷たい手を握りしめる。それと同時にナナはにっこりとした笑顔で弱々しく返した。

 

 

 

「……あれぇ……、スタイン……、どこぉ……?」

 

 

……ナナはユウキを見つめている。しかし、最期の時が訪れたのか注意しなければ聞き逃す程のか細い声でユウキを探しているようだった。

……もう視覚が機能していないらしい。

 

 

「……ナナ、疲れたんだよ、もう、眠ろ……。俺が、眠れるまで、一緒にいてあげるから。」

 

 

 

「……うん、……ね…る……、スタイ…………おや……す…………。」

 

 

 

「……おやすみ……ナナ……、また、会おう……。」

 

 

 

「……………………。」

 

 

ナナは、返事をせずにそのまま息を引き取った。最期までその表情は満足気に安らかだった。

 

 

「…………うそ……。」

 

 

「……ナナ……さん……。」

 

 

「;」

 

 

「……ナナ……。」

 

 

 

 

……………………。

 

 

 

…………。

 

 

 

……。

 

 

 

 

「……ねぇ、ユウキ。本当にこんな所で良かったの?」

 

 

「……ナナは海に行きたいッて言ッてたんだ。ここが最適だと思うけど。」

 

 

ここは依頼を受けた集落から少し離れた、キレイで澄んだ海を一望できる岬。

ユウキ達はナナの墓を立てていた。ナナをここで埋葬して簡易的な墓石にナナの名を刻み、上に置いただけの墓だった。

 

 

「……集落の皆さんには、私から説明しておきました。今回の魔物の暴走の原因は《闇》のせいだと。」

 

 

「……冒険家ギルドもあの遺跡の調査に乗り出すだろうな。もう何にも残ッて無いけど。」

 

 

「……貴方は、これからどうするんですか……?」

 

 

「……変わらないよ。《闇》を滅ぼす。それだけ。」

 

 

ユウキはナナの墓をじっと見つめながら、アイリスの質問に答えた。その言葉は、以前聞いた時よりも重たく感じた。

 

 

「……仇をとる、じゃなくて?」

 

 

「……そんなことをしても死んだ奴は生き返らない。それに……。」

 

 

「!」

 

 

「俺は生きている間に、出来ることをやるだけだ。」

 

 

赤髪はそのユウキの言葉にこれまでにない覚悟を感じ取った。

それはアイリスも同様だったみたいで、アイリスはある提案をした。

 

 

「ユウキさん、これからは飛行島に住みませんか?《闇》と戦うという目的は私達と私達の仲間と一致してます。貴方の力を、貸してください。」

 

 

「……別に構わないよ。でも、《闇》は俺が滅ぼすから。全て。」

 

 

 

「……よし、そうと決まれば早速飛行島に戻りましょ!みんなにユウキの事を紹介してあげるわ!」

 

 

「♪」

 

 

「別にしなくていいけど、まあいいや……。」

 

 

「あ、そういえば。」

 

 

キャトラが湿っぽい空気を明るくすべくいつも通りのテンションで話を進めていった。すると、ある疑問が思い浮かぶ。

 

 

「アンタのことはこれからも<ユウキ>でいいの?それとも<スタイン>?」

 

 

「……<ユウキ>でいいよ、もう俺は昔とは違うし。」

 

 

「……それでは、今後ともよろしくお願いします。ユウキさん。」

 

 

「♪」

 

 

「うん、よろしくね。」

 

 

 

そうして一行は飛行島へと帰投するため、飛行艇のある拠点へと戻っていった。かつて<メビウスの悪魔>として恐れられたユウキを仲間に迎えて。

そして、ユウキは一度もナナの墓へ振り返らなかった。ナナはいつまでも自分の中で生き続けている。ナナとは死んだ時にもう一度再会することが出来ると信じて、ユウキは決して振り返ることをしなかった。

ナナを目の前で失った悲しみよりも、ナナが自分にくれた《闇》と戦うための<勇気>を背負って……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クククククッ、今回のおもちゃは完成度60%といったところデショウカ、次のゲームが楽しみになりましたネェ、ギャハハハハハハハハ!!!!」

 

 

 

──To be continue──




第一部やっと終わったー!
まず一言。鬱展開ごめんなさい。いや、まじで。


本家3周年に向けて早足になってしまいましたが、皆さんいかがでしたでしょーか?
これからは楽しい楽しいサイドストーリーを展開していきたいと思っていますので、何卒よろしくお願いします!(フラグ乙


なんか3周年は新職種来る!みたいな流れになってますが、皆さんはパルメショックってご存知ですか?知らない人はググってね☆
あんな風にならないように絶妙なバランス調整とクエストを個人的に望んでいます。
それでは、ー(* ̄▽ ̄)ノ~~ マタネー♪


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登場人物紹介&用語解説

今回は簡単に作中に出てきた用語と人物について説明して行きます。
なにとぞ……(またもやキングスクラウン爆死なんて言えない……。)





【登場人物紹介】

 

ユウキ・ライナ

 

年齢…推定320歳(身体年齢は17で停止している)

身長…181cm

体重…67kg

髪色…黒

目の色…蒼(戦闘中に紅く光り輝くこともある)

性格…冷静沈着

好きなもの…食べること、寝ること、静かな場所

嫌いなもの…差別すること、うるさいこと、嘘つき

武器……ヴァリアブル・ブレイド

 

約300年前、《闇》との大戦で敗れた<メビウスの悪魔>と呼ばれる者達の生き残り。その戦闘力は同じ<メビウスの悪魔>の中でもダントツで高く、味方からも恐れられるほどに強い。

戦う相手には一切の容赦をせず、常にどうすれば相手を殺せるかを考え、戦闘中は積極的に頭部等の弱点を狙っていくスタイルである。逆にチマチマと戦力を削ったり、陽動や罠を貼る戦法などは好んでいない。(あくまで好みの問題なので、そうせざるをえない場合の戦闘も問題なく活躍できる。)また、長い戦闘経験を積んで得たものとして、離れた場所にある気配やオーラ、ソウルを感じ取ることができる。

人間関係はハッキリしており、仲間と認めた者は(本人的には)良好な態度を示すが、敵とする者や嫌いなタイプにはぞんざいな態度をとる。仲間が死ぬのを嫌ってはいるものの、死んでいった者のために今自分が出来ることを精一杯やり続けるといった割り切りの良さも併せ持つ。

本名はスタイン・ライナ。昔の自分とは縁を切ったため、新しくユウキと名乗る。(当初は本名を忘れていてあえなく名乗っただけ。)それでも、<メビウスの悪魔>としての力を存分に振るい、これからも《闇》と戦い続けていくことを決して止めない。

 

 

 

 

ナナ・グロースター

 

年齢…推定320歳(身体年齢は17で停止している)

身長…不明

体重…不明

髪色…茶

目の色…緑

性格…陽気

好きなもの…スタイン(ユウキ)

嫌いなもの…戦争、悪人、《闇》

武器…不明

 

 

ユウキと同じくかつて<メビウスの悪魔>と呼ばれた者の生き残り。元々の運動神経の良さもあって、戦闘力は高い方だった。

スラム出身で、人攫いに襲われたところを力試しに悪人と戦っていた当時のユウキに助けられる。その際にユウキに恋心を抱き、以降はユウキと一緒に幸せに過ごすことを夢として、自ら<メビウスの悪魔>の力を授かり《闇》と戦った。

《闇》との戦闘中に致命傷を受け、それをユウキに気付かれることもなく死んでいったと思われた。

しかし、身体はエピタフによって回収され、ユウキへの恋心を利用され、身体に自身の武器の<変化のルーン>を胸に埋め込まれ、実験体にされる。

それ以降、長い年月の間身体に《闇》と《瘴気》を蓄えられ続けるが、本人はそれに気付かぬまま、ただユウキを待つだけの器とされた。

約300年の時を経て、ユウキとの再会を果たすが時すでに遅く、身体と心を《闇》に侵されたモンスターとなってユウキに襲いかかった。

何とかユウキによって<変化のルーン>を引き剥がされ人間に戻されたが、すでに昏睡状態となっていたため手遅れとなっていた。

最期は最愛の人であるユウキに抱き留められ、海に行くと約束をし、眠るように息を引き取った。

遺体は実験された遺跡近くの海が一望できる岬に埋葬され、ユウキと調査に来た赤髪達によって墓を立てられる。

 

 

 

 

 

【用語解説】

 

<メビウスの悪魔>

 

約300年前、《闇》と敵対し戦いに挑んだ軍団とそれに属する人の総称。

<メビウスの悪魔>としての力は、禁忌とされる呪いによって授かることができるが、専用の武器である<ヴァリアブル・ブレイド>を使いこなすことでより猛威を振るう。

 

<メビウスの悪魔>が持つ力とは、

①不老不死となる。

②身体能力の飛躍的向上。

③<ヴァリアブル・ブレイド>を扱うことができる。

以上の三つであるが、《闇》との大戦中に①の力が不完全であることが判明。不老にはなるが不死にはなれず、致死量の大ダメージを立て続けに受けると絶命をしてしまう。その代わり、回復速度は常人より遥かに早く、(身体のエネルギーは持っていかれるものの)時間さえあれば傷はすぐに再生する。

 

また、<メビウスの悪魔>となった者の瞳は、普段は元の色であるが本気で殺すと決めた時に紅く光り輝く特性がある。

これは体内のソウルを爆発的に活性させた結果、循環しきれずに留まる場所を失ったソウルが瞳から光を放って漏れ出てしまう現象である。

 

 

 

<変化のルーン>

 

所持者の気持ちに反応し、ソウルの流れと性質に変化を与えるルーン。単体での使用ではなく、専用の武器に組み込むことで効果を発揮する。その際にルーンとしての形は失われるが、武器が使用不能になると形が元に戻る。

また、人体に埋め込むようなことは想定されておらず、人に流れるソウルが変化し異形の怪物になってしまうケースが現状確認されている。

 

 

 

 

<ヴァリアブル・ブレイド>

 

先述の<変化のルーン>を組み込んだ武器。所謂デフォルトの形態は片手で扱える剣。使用者の気持ちに<変化のルーン>が反応して、武器に流れるソウルに変化を与えることで、あらゆる武器に変化することができる。

変化する武器は使用者の気持ちや考えによって変化し、例えば素早く相手を殺したい時には「太刀」、遠距離で仕留めなければいけないと考えた時には「キャノン砲」、巨大な敵または大勢の敵を相手取った時には「大剣」といった具合である。

また、本気で殺すと決めた時(瞳が紅く光り輝く時)限定でこの武器の力を全身に纏わせて戦闘を行うことができる。その時の容姿と戦い方は悪魔そのものとなる。




こんなところですね……。

もうすぐ3周年イベ来ますね。ニコ生見たいんですが、仕事の関係でそれは叶わないです……、チクショー(´;ω;`)



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サイドストーリー
飛行島での生活と光の王の心


3周年、色んな事やりすぎてまさに神猫ですねw

しゅじ……闇の王子当たりました!
後はヒロインのアイリスに全て(のジュエル)を捧げます!
爆死の予感しかしないけど……


────────

 

 

「……アンタがバロンか。」

 

 

 

「ああ、いかにも……。其方のことは存じ上げているぞ。<メビウスの悪魔>よ。」

 

 

 

 

「……話は後、頼みがあるんだけど。」

 

 

 

 

「……!これは……!」

 

 

 

 

「……うん、これを────」

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

かつて《闇》と戦い、敗北を喫した<メビウスの悪魔>の生き残りであるユウキが飛行島に暮らし始めてから一週間ほど経過した。

 

 

 

「……ユウキさん、飛行島の生活に慣れたかしら?」

 

 

「さあ、アイツのことだから案外のんびりやってるんじゃない?」

 

 

「;」

 

 

普通の人間とは本質の異なったユウキをアイリスは心配していた。ユウキは現在飛行島にある空き家を提供してもらって生活をしている。

しかし、それまで一文無しでサバイバル生活をしていた者がしっかりと人間らしく文化的な生活を営めるかは分からない。

ユウキは空き家を貰い受ける際に「まあとりあえず何とかするさ。」といつものように軽い返事で済ませたものの、それ以降連絡もないので実際はどうしているかは不明である。

 

 

 

「一応冒険家として登録を受けたし、全く稼げないわけじゃないからきっと大丈夫よ。アイリスは心配しすぎ。」

 

 

 

 

「……そうかもしれないけど、でも……。」

 

 

 

 

「?」

 

 

 

アイリスが何故そこまでユウキを心配しているのか赤髪は気掛かりになった。彼は態度は少し冷めているがこれから一緒に戦う仲間でしかも強さは一級品。何かあればこっちに声を掛けるはずなのであんまり心配はいらないと思うが、ユウキの話をするとアイリスはいつも表情が晴れていない。<白の巫女>としての直感なのか、それとも……。

 

 

 

「そんなに心配なら、確かめにいきましょ!」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「実際にユウキの様子を見てみて、援助が必要なら手を貸しましょ!それならこっちも安心できるし、向こうも助かるから一石二鳥でしょ?」

 

 

 

「♪」

 

 

 

「……そうね。考えていたって仕方ないものね。」

 

 

 

「そうと決まれば善は急げよ!アタシに続きなさーい!」

 

 

 

キャトラの提案に赤髪とアイリスは同意する。するとキャトラはドドドドッと二人を置いて駆け出した。すぐにキャトラの姿を見失うが、ユウキの家の場所は把握しているので問題は無い。

 

 

 

「もう、キャトラったら……」

 

 

 

「;」

 

 

 

(……そうね、実際に会って話をして、確かめないと。そして、伝えないと、この気持ちを!)

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「────と言って来たはいいものの、留守なんて……。」

 

 

 

 

「;」

 

 

 

アイリス達はユウキの家の玄関にいた。訪ねてみたらまさかの留守だったが……。

 

 

 

「もうそろそろ日が暮れるし、もう少し待ちましょう。そうしたら流石に────」

 

 

 

「あれ?お前ら、どうしたの?」

 

 

 

「!」

 

 

アイリスが待ってみようと言った時、ユウキが大量の袋を持って帰宅してきた。

 

 

 

「……言ったそばから帰ってきたわね。」

 

 

 

「;」

 

 

 

「?……とりあえず家に上がッて」

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「へぇ、意外と部屋の中は片付いているのね。」

 

 

 

キャトラがユウキの家の中を見て率直な感想を言った。キャトラの言った通り、部屋はしっかりと整頓されている。家具やキッチン周りにある食器類、洗濯用品、寝具など生活に必要な物は見る限りでは全て揃っている。

リビングにはタンスや筋トレ用のダンベル等はあるが、きちんとゆったりくつろぐことができるスペースが確保されている。横に長いソファーとその前に置かれた机もあって、まさに一般的な家のレイアウトとなっている。

 

 

 

 

「これからここで生活するわけだし、俺なりに色々取り揃えてキレイにしたんだ。と言ッても、最低限の物しか買ッてないけど。」

 

 

 

ユウキが買ってきたであろうご飯や飲み物をしまいながらキャトラに返事をした。ご飯といっても、白米以外のほとんどがフリーズドライやレトルト食品という簡単に済ませれるものだったが。

 

 

 

「……そんなものばかり食べていたら、身体を壊しますよ。」

 

 

 

「死にはしないし、野菜ジュースも飲むから栄養も問題ない。」

 

 

 

「;」

 

 

 

そういうことではないのだが。一応生活には問題なかったが、生活力の方には問題はあった。これからは手助けが必要となるかもしれないと赤髪は予感した。

 

 

 

「それにしても、たった一週間でこんなにも買えたの?稼ぎすぎじゃない?」

 

 

 

「そりゃあ、賞金首とッ捕まえて差し出せば金がたくさん貰えるから。」

 

 

 

「指名手配犯を捕まえてたんですか?」

 

 

 

「うん、でッかい国や街に張り出されてた賞金首を捕まえ続けてたんだ。大きい所にある犯罪者は差し出せば莫大な金が手に入るから、楽して稼げるんだ。」

 

 

 

「楽してって、その人達を捕まえるの大変だったんじゃない?」

 

 

 

「探し出すのはそんなに。でも裏組織のトップはちょッとしんどかッたな、抵抗激しかッたから。その部下も全員半殺しにして差し出したけど。」

 

 

 

「;」

 

 

 

「……相変わらず怖いこと言うわね。」

 

 

 

「でも、ルクサントの所のだけは無理だッたんだよ。」

 

 

 

「……え?」

 

 

「!」

 

 

「光焔の御子……だっけ?そいつを探し出せッて王様から言われたんだけど、なかなか見つからなくて。」

 

 

<ルクサント>、<捜索>、<光焔の御子>、このワードで赤髪達はおおよそのことは想像できた。そして、一人のダメニートな少女の顔が思い浮かぶ。

 

 

「そ、そうなんですね……、今も探してるんですか?」

 

 

「ううん、もう結構稼いだからいいかな。でも見つけたら捕まえて引き渡して、貯金の足しにでもしようかなッて考えてる。」

 

 

「ハッハハッ……、その人の顔は知ってるの?」

 

 

「いや、向こうも必死すぎて顔を見せる暇もなく駆り出されたから分かんない。もし何か知ッてたら教えて。」

 

 

 

「う、うん、分かった、そうする。」

 

 

「;」

 

 

 

二人が鉢合わせになる前にあのダメ御子にこのことを伝えておこう。赤髪達三人は同じくそう考えていた。

そして話を逸らすべくしばらく談笑をしていた。

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……

 

 

 

 

赤髪達三人がユウキの家から出て10分くらいして、ユウキは晩御飯を食べようとしていた。昼間買ってきたお米とレトルトカレーで簡単なカレーライスを作ろうとユウキは考えた。

その時、玄関から自分の名を呼ぶ声が聞こえたので、一旦作業を置いて玄関の扉を開けた。するとそこには、ついさっきまでこの家で話をしていたアイリスがそこに立っていた。

 

 

 

「どうした、忘れ物?」

 

 

「……少しお話があって、戻ってきました。」

 

 

「……とりあえず入ッて。」

 

 

日も完全に暮れて夜になっていて、赤髪とキャトラはおらずアイリス一人だったため、ユウキはもう一度アイリスを家に入れた。そして、アイリスの雰囲気が夕方よりも違っていて真剣気味だった。それを不思議に思いながら、ユウキはリビングへと案内する。

アイリスをソファーへと座らせて。コップに注いだ冷たい水を渡した。ユウキはその隣に座り、目を合わせた。

 

 

 

「それで、話ッてなに?」

 

 

「……貴方に謝らなければいけないことがあります。」

 

 

「…………。」

 

 

ユウキはアイリスの言葉に返事をせず相槌も打たず、最後までアイリスの話に耳を傾けた。

 

 

 

 

「ユウキさんがナナさんを助ける時、私はナナさんの心と気持ちを感じ取っていました。《闇》と《瘴気》によって歪められたナナさんの心を、<変化のルーン>を無理やり引き剥がされるナナさんの苦しくて痛い気持ちを。その時私は最低なことを考えてしまいました。私を苦しめないで、早く私を解放してと。」

 

 

 

「…………。」

 

 

 

「私は無力でした。あの時のナナさんに近づくことさえ出来ない程に。私はナナさんの心を感じることしか出来なくて。辛かったんです、あの時何も出来なかった自分が。苦しかったんです、あの時ナナさんのことを考えず自分のことしか考えられなかった自分が。ナナさんの方が酷い目にあっているのにもかかわらず。でもっ、本当に一番辛くて苦しいのはっ……!」

 

 

 

「…………。」

 

 

 

アイリスはそれまで押し殺していた自分の気持ちを解放して、これまでユウキに言いたかったことを感情とその勢いに乗せて伝えていた。それが内に塞き止めていたダムを崩壊させ、大量の涙をアイリスは流していた。それでも構わずアイリスは話を続け、ユウキもまたアイリスの話を黙って傾聴していた。

 

 

「ユウキさんのはずですっ!戦いが終わった後ずっと一人で生きてきた貴方がやっと見つけた仲間が、あんな残酷な目に遭っていてっ!戦いが終わっても一人で戦い続けた貴方が、その仲間と戦わされてっ、殺すようなことになって!」

 

 

 

「…………。」

 

 

 

「ごめんっ……なさい!私がもっと力を持っていれば!こんなことにはっ……ううっ……ぐすっ…」

 

 

 

「…………。」

 

 

 

アイリスは全てを出し切ると両手で顔を覆う。それでも流れる涙は止まらずにポタポタと水滴となってアイリスのスカートを濡らし続けた。リビングにはアイリスの嗚咽だけがしばらく聞こえた。

 

 

 

 

「…………。」

 

 

 

 

「……うぅっ……ぐずっ……ひっく……ずうっ……」

 

 

 

「…………なんでアイリスが謝んの?」

 

 

 

「…………ふえ?」

 

 

突然のユウキの質問にアイリスは顔を覆う手を外す。目元は赤くなっており頬には涙が流れた痕がある。それはアイリスの気持ちを表現するのと同時にずっと溜め込んでいたものが溢れ出た証でもあった。

 

 

 

「俺が力の全部を出し切ッた結果ああなッたわけだし、何よりあの時はルーンを外す以外方法が思い浮かばなかッた。それはアイリス達がいてもいなくても同じだッたと思うけど。」

 

 

「……でも、貴方は、ナナさんを──」

 

 

「ナナは身体を《闇》に侵食されて心をルーンに支配されていたんだ。しかも、それによッて生み出された黒いオーラが周りの魔物の力になッてたし、オーラ自体がモンスターに変化する程淀みきッてたんだ。周辺の地域にも被害は出てたわけだし、ああする以外方法はなかッた……。」

 

 

 

そう言い終えるとアイリスはユウキに助けてもらった時に襲われたドラゴンを思い浮かべた。《闇》に侵され猛烈な強さを秘めていたあの黒いドラゴンを……。

 

 

 

(あれが……ナナさんから、そうだとしても、ユウキさんは……)

 

 

「辛く、ないんですか…………あっ」

 

 

また私は、ユウキさんの気持ちも考えず不謹慎なことを……。

そう考えまた自分を責めるアイリスであったが、ユウキはそんなアイリスの気持ちを察したのか、アイリスの頭を優しく撫でた。かつてナナに暖かいと言われたその手で。

 

 

「辛くない、ッて言えば嘘になる。でも……」

 

 

「でも?」

 

 

「ナナみたいな死んだ奴の分も生きて、俺の出来ることを、《闇》と戦うことをやり続ける。俺のこの力で……。」

 

 

「……。」

 

 

「それに、ナナとの思い出は<ここ>に入ッてるから。昼間から着けてたんだけど、気付かなかッた?」

 

 

 

そう言うとユウキは着けていたネックレスをアイリスに見せた。そのネックレスに込められた石は紫色に輝くひし形の形をしていた。アイリスはその石に見覚えがあったが、すぐに思い出した。

 

 

 

「これって、まさか<変化のルーン>、ですか?」

 

 

「そ、ここに来てすぐにバロンッて獣人に頼んでネックレスにしてもらッたんだ。俺は首やられると死んじゃうからお守り替わりにもしてる。」

 

 

アイリスはユウキの胸の位置にある<変化のルーン>をじっと見つめていた。その表情はどこか物悲しい感じだった。

 

 

「……綺麗な光、優しいユウキさんにとても似合っています。」

 

 

 

「……バロンから聞いたんだけどアイリス、お前、昔白の国を治めてた<光の王>なんだッて……?」

 

 

 

「……はい。」

 

 

 

「……そッか、何があッて大崩壊が起こッたのかは、聞かない。ぶッちゃけ興味無いし。」

 

 

 

二人は息のかかるほどのかなり近い距離でお互いを見つめ合う。それは決して微笑ましい関係だからそうなっているのではない。同じくこれからも《闇》と戦い続けることを止めない二人だからこそ、本音でぶつかり合い、お互いを仲間として認め合ったからこそ、二人は覚悟を決めた眼差しを交わしていた。

 

 

 

「…………。」

 

 

 

「でも、今お前は生きているんだから、今を精一杯生きろ。赤髪もキャトラも、お前の味方だ。俺もお前達に協力することを決めたから。もうお前は一人じゃない、これからも俺はお前達と一緒に戦う。」

 

 

 

「…………。」

 

 

 

「アイリスは俺には持ッていない力がある。ナナが閉じ込められてた扉を呪文で開けたような、あんな不思議な力がお前にはあるだろ。アイリスにはアイリスにしか出来ないことがある。逆に俺にはこんな乱暴な力しか持ッていない。でも、この力でお前達を支えていくから。分かッた?」

 

 

「……はい!」

 

 

 

今宵のこの会話でアイリスの気持ちはとても晴れやかなものとなった。悪魔と恐れられた力の持ち主は、こんなにも人に優しく、暖かく包み込んでくれる。

アイリスはユウキに励まされ、軽やかな気持ちで赤髪達の待つ自分の家へと帰っていった。その表情は先程までの悲しみの顔ではなく、自信を持って前を向き胸を張れるような希望に満ちた表情であった。

 

 

 

 

(ユウキさん、ありがとうございました。今度は、いつか私がユウキさんを守ります。貴方はもう私達の、大切な仲間ですから────────)

 

 




なんかアイリスがヒロインっぽく描写されている気がしますが、アイリスをヒロインにする予定は現在ありません。
じゃあ誰がヒロインになるのか?それも決まっていません。そもそもヒロインを出すかどうかも決めてません。←

んじゃあ……、ハーレム?←←←おい


身内にも白猫やっている人がいるんですが、なんとその身内は闇の王子とアイリスの両方を当てる神引きをしました。
羨ましい、その運をオラに分けてくれー!|ω・`)


※何度も追記修正ごめんなさい。読み返して「ここおかしい」「ここ上手く表現できてない」と思っちゃって……、ほんとに申し訳ないです。


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悪魔vs退魔士

ついさっきゼロ・クロニクルのイベントを終えました!
まだやってない人は是非やって下さい!これは今までで一番いいストーリーだと思っています!
古の大崩壊のきっかけとは!?闇の道化師エピタフの正体とは!?
そして、アイリスと闇の王子は結ばれるのか!?←


残す手持ちの神気解放はファルファラとメイリンだけになりました。
当時は当たらなさすぎて発狂しかけた辛い時期でした(´;ω;`)
ファルファラさんは出来れば化けてほしいです。当時の強さを彷彿させる性能になることを期待してます!

安定してアイリス狙いの爆死が続いていまーす(ヽ´ω`)トホホ・・
給料がやって来るまで配布で凌ぎますか……


ユウキはその日ギルドの依頼を受けて飛行艇で村へ向かおうとしていた。その依頼内容は要約すれば「村を脅かす魔物の討伐」というものだった。ユウキ自身は大したことのない依頼だと思っていたが、施設の警備や薬草の採取よりはと思って仕方なく引き受けた。

理由は魔物相手に実戦ができることであった。平和な飛行島に住み始めたので、サバイバル生活のように四六時中神経を張り巡らす必要はない。かと言って筋トレや鍛錬だけでは実際の戦闘の感覚が鈍ってしまう。そういった意味を込めて、ユウキは実戦が経験できそうな依頼をを出来るだけ引き受けるようにしていた。

今回もそうであったが、いつもとは違う。それは同じく村へ行く者達がいて、ユウキはその人達を飛行艇の搭乗口で待っていることであった。

ユウキは冒険家登録を受ける際、自分が<メビウスの悪魔>であることを伝えていない。そんなことをすれば混乱を招くだろうし、自分を狙って襲いかかる者も現れるかもしれない。向かってくる者を潰すのは簡単だが、そうなれば赤髪達に迷惑がかかると考えた。なので、自分を普通の17歳の人間ということにしてギルドに申請をした。

恐らくギルド側は今回の依頼をそんな子一人だけに任せるには流石にダメだと判断したのだろう。同行者の二人を付けることという条件をユウキに提示した。敢無くユウキは承諾し、ギルドが募ってくれたその二人を待っている所なのであった。

 

 

「んむ……もぐッもぐッ……。」

 

 

持参したおにぎりを食べながら飛行艇の搭乗口で待つユウキの前にその者達は現れた。

一人は服の首元の部分が口を隠してはいるが腹の所は出ており、やや大きな武器を二つ携えた男。もう一人はやや露出の多い服が華奢だがしっかりとした体つきを見せていて、所々に刃のついた武器を持った女であった。

 

 

 

「……ん?アンタらが一緒に行く人?」

 

 

「ああ、そうだ。俺はバイパーだ、よろしく頼む。」

 

 

「私はメア、よろしくね。」

 

 

 

………………

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「……あつい……。」

 

 

飛行艇で依頼のあった村へと到着した三人はそこの代表者と話をした。代表者によると村周辺の森林地帯に魔物の住処があり、そこの連中が村に被害を与えているということらしい。

三人がその魔物の住処に足を運び始めたのが、今から30分前の話。そして高湿度で高気温の環境をただひたすら歩いていたメアが呟いたのが、ついさっきの話である。

 

 

 

「バイパーさん、まだ目的の場所に着かないんですか?」

 

 

「住民の話によれば、恐らくもうすぐ到着するはずだ。」

 

 

「えぇ……、そんな気がしませんよ。この森、なんか暑いしジメジメするし。」

 

 

「それは関係ないだろう。というか、暑いと言うから余計に暑く感じるんだぞ。」

 

 

「じゃあ寒いって言えば寒くなるんですか?」

 

 

「ならん、気合いで乗り切れ。」

 

 

「はいはい、分かりました。」

 

 

そんな他愛のない会話をする元退魔士二人であった。しかし、ユウキはそこに参加をせず、ただひたすら前を向いて歩みを進めている。バイパー達に歩調を合わせてはいるが、その雰囲気は一人で目的地に向っているような感じであった。

 

 

「…………。」

 

 

 

(バイパーさん、このユウキって子、さっきから全然喋らないし目も合わせないし、なんだか嫌な感じですね。)

 

 

(さっきからというか、飛行艇に乗った時からあんまり話をしてないが……。)

 

 

ユウキはバイパー達とコミュニケーションをとっていなかった。飛行艇から村が見えた時は「着いた。」と呟いたり、村人の話に「ふーん」と相槌を打ったりはしたが、ちゃんとした会話は未だ二人とはしていない。

 

 

(この暑さに文句一つ言わないし、なんなんでしょうねこの子……。)

 

 

 

(クールをキメて寡黙になっているのかもな、サムかっこいい俺と気が合うかもしれん。)

 

 

 

(えぇ……?)

 

 

 

(ジョークだ。)

 

 

 

「…………!」

 

 

ヒソヒソと話す二人を他所にユウキは依然として歩みを進めていたが、なにかを感じたのか急に足を止めた。

 

 

 

「……二人とも、前から魔物が迫ッてる。」

 

 

 

「え!?」

 

 

「……来たか。」

 

 

ユウキは「すごい数だ。」と言うとヴァリアブル・ブレイドを構えて臨戦態勢に入る。バイパーとメアも続いて各々の武器を持って、迫っているとされる魔物を待ち構えた。

程なくしてドドドドッと地鳴りが聞こえ、それは少しずつ大きくなっていく。すると、前方から様々な魔物が大勢三人の方へ迫っていた。

 

 

「俺達の接近を察知して、住処の魔物が全て迎撃に来たみたいだな。」

 

 

「あんなにたくさん!?私達まだなにもしてないのに、なんであんな殺気立ってるの!」

 

 

「どッちにしろ最初から殺り合う気だッたし、手間が省けたからいいじゃん。」

 

 

「そんな簡単に……!」

 

 

目の前から走ってやって来るのは、幾百もの魔物達である。いくら熟練の三人とはいえ、あれだけの数を相手にするのは厳しいとメアは感じていた。

 

 

「……んじゃ、俺が先陣を切ッていく。二人はテキトーについてきて。」

 

 

「だから、あれほどの数は……、っ!?」

 

 

メアはふとユウキに目を移すと、いつの間にか片手剣程のサイズだったヴァリアブル・ブレイドは刀身が3m程にもなる巨大な大剣へと変わっている。しかし、そんな大剣を片手で持っていながら、しっかり身体のバランスを保ち魔物達に立ち向かっていくユウキにメアは一番驚いた。

 

 

「……行くぞ。メア、今は目の前の仕事に集中しろ。」

 

 

「……えっ、あ、はい!」

 

 

バイパーにやや強い口調で言われたメアはハッと我に帰り、バイパーと共にユウキの後に続いて魔物達と戦闘を開始した。

 

その後、二人は元退魔士としての力を駆使し難なく魔物を倒していった。しかし、幾百ものいた魔物の半数程はユウキ一人の手によって倒されていった。その戦い方はあまりにも人間離れをしていて、それを一言で表すとすれば<蹂躙>というのが適切なのかもしれない。

そのおかげで、大勢の魔物をたった10分程度で全滅させることになったが……。

 

バイパーはあまり深くは考えずに戦いに集中をしていたが、メアはユウキの戦いぶりに驚きとは別の感情が湧いていた。その感情の名前が何であるか、後のバイパーとの会話でハッキリすることになる。

 

 

 

……………………

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「……バイパーさんは、どう思いました。ユウキの、あの戦いを……。」

 

 

 

「……俺はあの時は戦闘に集中していた。強いていえば、アイツのおかげでこちらも大分楽になったということだけだ。」

 

 

「…………。」

 

 

「ユウキの力は相当のものだ。……今後はどんな依頼でも一人で活動が出来るようにギルドの奴らに言っておくくらいはしてやってもいいだろう。報酬もちゃんと山分けする奴だし、個人的には良い人間だとは思うが……。」

 

 

「……良い<人間>……ですか……。私は、ユウキがただの人間だとは思えません。あんなの、違う。」

 

 

「……お前は少し考えすぎだ。ユウキも探られたくない過去があるのだろう。あまり首を突っ込まないのも優しさだといい加減理解しろ。」

 

 

「…………。」

 

 

 

「……俺はこれからオズマとセラと別の仕事が待っている。お前はどうする、メア……。」

 

 

「……いえ、少し用事を思い出したので。」

 

 

「……あまり首を突っ込むなと忠告はしておいたぞ。じゃあな……。」

 

 

「…………。」

 

 

 

(…………なんであんなふうに戦うことができるの。いくら魔物相手だからって、あんな戦い方、人を捨てるでもしないとできっこない!バケモノの戦闘でも見てたみたいで……、うっ、気分が悪くなってきたかも……。)

 

 

 

「…………。」

 

 

 

(……でも、強かったのは確かよ。たくさんいた魔物の半分をアイツが仕留めるくらいだもの。しかもあんな短時間で……。……人を、辞めたら、ユウキみたいに強くなれるのかな?あの、ユウキの強さが……)

 

 

 

 

 

 

「…………羨ましい…………。」ボソッ

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……

 

 

 

バイパーとメアとの共同戦線から翌日、ユウキは昼食を外でとって帰路に着いていた。昨日の魔物の討伐で身体が疲れていたのか、起きたのが10時過ぎだった。

まだお金がそこそこあるのに気付いたユウキはせっかくなので珍しく外食を選択。美味しそうなハンバーガーの姿の店主が務める美味しいハンバーガー店でたらふく食べて、ユウキは体力が全回復した。

後は帰って昼寝でもしようかと考えながら家の玄関に着くと、そこには昨日共に魔物と戦ったメアが待っていた。その表情は暗めだったが、瞳が持つ強い何かをユウキは感じた。

 

 

 

「……メア?」

 

 

 

「…ユウキ、少し付き合ってくれる?」

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……

 

 

 

 

メアの案内の元、二人は少し離れた全く人気のない広場にいた。そこには今人はおらず、完全にメアとユウキの二人きりの状況だった。

 

 

「ここなら良さそうね。」

 

 

「何の用?いきなりこんな所に連れてきて……、武器まで持ッてこいなんて。」

 

 

「……ユウキ、私の質問に正直に答えてほしいの。」

 

 

「ん?」

 

 

「貴方は……、本当に人間なの?」

 

 

「……どういう意味?」

 

 

 

ユウキが質問に答えるのは簡単だった。自分はその昔《闇》と戦った<メビウスの悪魔>の生き残りであるということ。このことはギルドには言ってない。また、飛行島の人達には伝える必要があれば伝えるつもりでいた。

それをメアに伝える時が来たと思ったが、それよりも何故そのような質問をここでするのかを知りたいとも思った。だからユウキは、すぐには答えずにメアの真意を聞き出す選択肢を選んだ。

 

 

 

「……昨日の貴方の戦い方、異常だと思ったの。相手が魔物だからって、あんなメチャクチャな戦いをするなんて、絶対無理よ……。」

 

 

 

「……え?なんで?」

 

 

 

「なんでって、魔物の首を素手で貫いて、その殺した魔物を別の魔物にぶつけて、すぐさま大剣で容赦なく追撃を与えて二体とも真っ二つにするなんて!他にも挙げようか!?魔物の心臓を取り出して握りつぶしたり、常に頭とか首を狙って一撃で殺すような戦い方をしたり!あんなの普通じゃない!普通の人間には出来ないわ!!」

 

 

 

「……戦いッてそういうものじゃないの?殺すか殺されるかの場所に戦い方やルールなんてないだろ。」

 

 

 

「そうかもしれないけど、なんの躊躇もなくそんな戦いができる貴方が……っ!」

 

 

「……んで、何が言いたいわけ?」

 

 

「……ねぇ答えて、貴方は本当に人間?それとも……」

 

 

 

「……知ッてどうすんの?」

 

 

 

「!」

 

 

 

メアはその返答で覚悟を決めた。目の前の青年は殺すということに躊躇いがなく、さぞ当たり前のように話し、とても淡泊な態度を示している。

 

 

(この男は《闇》と同じくらい、それ以上に危険な存在になるかもしれない!いや、今の口振りは間違いなく、……《闇》そのもの!!!)

 

 

 

「もしそうなら…………、断ち切る!!!」

 

 

「ッ!」

 

 

 

激しくぶつかり合う金属音が辺りに響き渡った。メアはルーンチェーンソーの歯を回転させてユウキに襲いかかり、ユウキは片手剣状態のヴァリアブル・ブレイドでその攻撃を防いだ。

ユウキは曖昧な返事ではなく、本当のことをしっかり伝えるべきだったと少し後悔をした。

僅かな先入観とほんの少しのすれ違いにより、飛行島内で無意味な戦闘が繰り広げられた。

 

 

 

「ッたく、なんのつもりだ?」

 

 

 

「貴方が《闇》に関係しているのなら、貴方を断ち切らなければ、殺さなければならない!」

 

 

「俺は違う、俺は《闇》と敵対してる人間だ。」

 

 

「あれが人間のできるとはこととは思えない!貴方の力は脅威になりかねないのよ!」

 

 

二人は互いに主張をし合いながら斬り合いを繰り広げる。メアは一方的にルーンチェーンソーで攻撃を与えようとするが、ユウキはその攻撃を太刀へと変化させたヴァリアブル・ブレイドで防御したり寸前で回避をしていく。しかし、ユウキはメアに一切攻撃をしようとはしない。そんないたちごっこのような戦闘がただ続いていた。

 

 

「?」

 

 

「どうしたのよ!?少しは反撃したらどうなの!?」

 

 

すると、ユウキはメアの戦いぶりに小さな違和感があるのを感じた。しかし、それを聞こうにもメアはこっちの話に耳を貸さなさそうだし、かといってメアに攻撃をする気は全くもってない。荒削りな攻めに対して体力に自信はあったので、ユウキはメアの攻撃が止むのを待つことにした。

 

 

 

(……なんか殺す気があんまり感じられないんだけど、それとは別の気もあるみたいだし、なんなんだよ……。)

 

 

「はぁぁあああ!!!」

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

……

 

 

────それから、一時間後……。

 

 

 

「……ハァ……ハァ……ハァ……。」

 

 

 

「……。」

 

 

流石に休む間もなく戦い続けていたからか、メアの体力は消耗しきっており息も大きく乱れている。一方、ユウキはメアの攻撃を全て捌いていたのにも関わらず、体力に衰えの様子はなく息も全然乱れていなかった。

 

 

「……なんでっ、当てられない……のよお!!!」

 

 

メアは疲れきった身体で力任せにルーンチェーンソーで攻撃をするが、単調な動きに当然ユウキは反応し回避をした。

 

 

「くそっ…ハァ……ハァ……、私はっなんでこんな……。」

 

 

「…………。」

 

 

「こんなにも……、弱いっのよお!!!」

 

 

メアはまたも攻撃をしようとルーンチェーンソーを振るうが、ユウキは回避をしなかった。というのも今度は攻撃を当てるどころか届きすらせず、ルーンチェーンソーは風を切り地面に突き刺さった。

 

 

「ハァ……くそぅっ!くぅっ……ぅうう!!」

 

 

「……!」

 

 

勝てなかったという悔しさと弱い自分への憎たらしさがメアに涙を流させていた。突然溢れ出た涙にメアは気付いておらず、再びルーンチェーンソーを構えようとする。だが、ついには持つことが出来ないほどに身体が疲弊し、足腰の力も無くなり座り込んでしまった。

 

 

「なんで、貴方はそんなに強いのよぉ!ううっ!……ひぐっ!…………強く、なりたいよ…………。」

 

 

「……それが、お前の本音か。」

 

 

メアが最後に小さな声で呟いたのをユウキは聞き逃さなかった。メアの真意を知ったユウキは座り込んだまま項垂れるメアに近寄り、目を合わせようと腰を低くした。

 

 

「俺は、普通じゃないんだ。人間じゃなくなッた悪魔だから。」

 

 

「へ?」

 

 

「<メビウスの悪魔>ッて知ッてる?俺はその生き残りなんだ。」

 

 

「……あ、昔の《闇》と戦って滅んだ……。貴方が?」

 

 

「うん、そう。だから俺はもう人間じゃない。メアの言う通り悪魔で、バケモノなんだ。」

 

 

「ほう、それは実に興味深いな。」

 

 

二人が話をしていると、いきなり第三者の声が隣に出現し割って入った。その正体は、別の仕事に行ったはずのバイパーであった。

 

 

「バ、バイパーさん!?仕事は!?」

 

 

「アレは嘘だ、お前の様子が気になったのでな。」

 

 

「てか、いつからいたの?」

 

 

「メアがユウキを誘ったあたりだな。」

 

 

「最初からかよ。」

 

 

「まあ、ユウキがメアに攻撃をしようとしたら間に入って止めようと思ってはいたんだが。」

 

 

「メアが俺を本気で殺そうとしてたら手を出してた。でも、そうじゃなかッただけ。」

 

 

「……メア、どういうつもりだった?」

 

 

バイパーは声に圧をかけてメアを問いただした。メアは座り込んで項垂れたまま質問に答えた。

 

 

「……なんでだろ?自分でも分かりません。ただ、自分の弱さが悔しくて、自暴自棄になってたのかも……。」

 

 

「……メアは弱くはないと思うけど。」

 

 

「というか、ユウキが強すぎただけな気がするが。流石は<メビウスの悪魔>と言ったところか。」

 

 

「……ユウキ、ごめんなさい。私、なにも知らずにあんな……。」

 

 

「事実だし、俺がバケモノなのは。でも、このバケモノじみた力は俺だけのものだし、その使い方も俺だけのものだから。」

 

 

「……それは、人のために活かすという解釈でいいのか?」

 

 

「うん、人を捨てた俺が人を支えるというのもおかしな話だけど。でも決めたから。《闇》を滅ぼすことと、人の助けに使うッて。」

 

 

ユウキは立ち上がり強くそう答えたが、心の中ではそれが未だに果たせていないことにイライラしていた。前者は約300年前の戦いで、後者はナナを助けることが出来ずに死なせてしまったことに対してだった。

 

 

「……くそッ……。」ボソッ

 

 

「?どうしたの?」

 

 

「いや、なんでもない。それより、俺はもう帰る。」

 

 

「うむ、分かった。俺達も…………メア、お前こそどうした?」

 

 

「んん!んんん!!……アハハッすいません、腰が抜けちゃって力が……。」

 

 

メアは踏ん張って立ち上がろうとするが、一時間程の間戦い続いていたので身体は疲弊し動けなくなっていた。バイパーはやれやれと呆れた表情をしている。

 

 

「……ぃよッと。」

 

 

「え?あっ、ちょっと!」

 

 

見兼ねたユウキはメアを所謂お姫様抱っこの状態で抱えた。突然の事態にメアは頬を赤く染めている。

 

 

「こうなッた原因は俺にもあるんだし、責任もッてお前を運んでく。」

 

 

「ちょっと待って!これは流石に恥ずかしい!///肩を貸してくれればいいから!///」

 

 

「それだと歩きにくい。ちょッと我慢して、引きずられるよりマシだろ?」

 

 

「それはそうだけど!///ちょっと!なんか手つきがやらしい!///変なとこ触んないで!///」

 

 

「普通に担いでるだけなんだけど、気のせいだろ?」

 

 

「うそうそ!///いま指変な動きした!///」

 

 

無論ユウキにはそんなことをする気は皆無であり、怪我人を運ぶ感覚でメアを抱えているだけだった。

 

 

(どうしよう、人生初めてのお姫様抱っこがまさかこんな形になるなんて///やばい、意識してたらもっと恥ずかしくなる///)

 

 

「…………。」スッ

 

 

そんな痴話喧嘩のような二人をフレームに収めようとバイパーはルーンカメラを取り出した。

 

 

「ちょっとバイパーさん!///なに撮ろうとしてるんですか、やめて下さい!というか、私の武器返してください!」

 

 

「俺しかコレを持てる者がいないだろう。ユウキはメアを抱いているから無理だ。」

 

 

「抱いて……っっっ!!///訂正して下さい!///お姫様抱っこって…………、あっ、うぅっ……/////」プシュー

 

 

「もういいから、さッさと帰るぞ。」

 

 

メアは完全に自爆をして、茹でたこのように真っ赤な顔から蒸気を上げている。ユウキはそんなメアに興味を示さず、早く帰って眠りたい気分でいっぱいだったので、メアを抱えたまま帰っていった。

ユウキは普通に人通りが多い道で帰っていったので、二人の様子は大勢に目撃された。メアはあまりの恥ずかしさでもう何も言えなかった。そんな二人には少しの間、交際をしているという噂が流れたとか流れなかったとか……。

 

 

 

 

 

ちなみにバイパーはメアのお姫様抱っこされている写真を撮影することには成功していた。しかし、それを晒したり誰かに見せたりするようなことはしなかった。

 

 

何故なら、その方が色々面白いから。

 

 

毒蛇の口元はニヤリと薄気味悪く微笑んでいた……。




僕の中でメアは病んでる娘のイメージです。
バイパーはクールな二枚目といった所でしょうか?
ちょうど茶熊の2期が始まる前に白猫を始めたので、二人のことはそんなに知らないです。なので、キャラがおかしかったらごめんなさいm(_ _)m


もうユウキ君、ハーレム築いちゃえよ←


爆死報告!66回ガチャ回してもアイリスが出ません!どういうことですか!?
凱旋単発も全然当たる気配しないし、どれだけ絞れば気が済むんですか!
それでも僕は白猫が大好きです!はい!←


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守護天使の握り飯講座!wi☆th悪魔殺し

フェアリーテイルは原作読んだことないので全く分からないですが、エルザ姉さんとウェンディちゃんがやって来ました☆


そして、たまたま単発をしたらオスクロル閣下が来てくれました!( 厂˙ω˙ )厂うぇーい
なお溜まったジュエルは消化しきっちゃいました……。


「んむ……もぐッ……もぐッ……もぐッ……」

 

 

ユウキは自宅で昼ご飯を食べている。メニューはおにぎり三つ(鮭、昆布、塩むすび)、野菜ジュース、冷凍食品の肉だ。

今日の予定は特に決まっておらず、適当にギルドに行って依頼を受けようかと考えていた。

 

 

 

ドンッドンッ

 

 

 

「?」

 

 

 

すると、玄関から扉を強くノックする音が聞こえた。

ユウキは手をつけようとした残りのご飯と箸をいったん置いて、誰が来たのか予想しながら訪問者を迎えに行った。

 

 

ガチャリッ

 

 

そして、戸を開けると……

 

 

 

 

「よお、テメェが例の<メビウスの悪魔>か……?」

 

 

 

 

そこにはいかにも悪魔みたいな格好をした男が睨みをきかせて立っていた。ユウキは、いやいや悪魔はお前だろ、と思ったが口には出さなかった。

 

 

 

「……まあ、そうだけど。誰から聞いたの?」

 

 

 

「赤髪に聞いたら教えてくれたよ。それより、俺と遊ばねぇか?」

 

 

 

「遊ぶッて、何して遊ぶの?」

 

 

 

「そりゃあテメェ、ヤるんだよ。」

 

 

 

「は?」

 

 

 

「間近で見るとピリピリ伝わってくるぜ、テメェの中に潜む強大な力がよ。それを抑え込むなんて勿体ねぇと思わねぇか?」

 

 

 

「……。」

 

 

 

いきなり訪問してきて何を言ってるんだコイツは?とユウキは思っていた。しかし、相手が漂わせている殺気を感じ、これは冗談ではないとも思った。

 

 

「解き放ってやろうじゃねぇか、さあ!勝負といこうぜ!」

 

 

 

「うおぉぉぉぉい!!レイイィィィィィィィィン!!!」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

すると、遠くの方から荒々しい女性らしき声とこちらにドタドタと走って近づいてくる音が聞こえた。物凄い勢いで迫ってくるので、ユウキは多少警戒をするが、ふと目の前の男を見るとやれやれといった表情で溜め息をつき、音のする方角を見ていた。

 

 

 

「あのクソ天使……、来んなっつったのに……。」

 

 

 

「レイィィン!!やっと追いついたぞ!!」

 

 

 

砂煙を巻き上げながらズサーッと玄関の前で急停止をしたのは、背中に羽根が生えていて頭の上に輪っかのある、まるで天使のような容姿をした女性だった。しかし、天使の姿と相反するその言動と表情に、ユウキは面には出さなかったが多少戸惑っていた。

 

 

「…………。」

 

 

「クソ天使、なんでついて来たんだよ!」

 

 

 

「だって、レインは私がいなかったら何しでかすか分かったもんじゃないからね!私がしっかり見守ってあげないと!」

 

 

 

「いつからテメェは俺の保護者になった!?」

 

 

 

「保護者ではなく相棒です!言うなればコンビです!」

 

 

 

「なった覚えはねぇぞ!」

 

 

 

目の前で天使と悪魔が口喧嘩をしている……。

その様子を見て、何故かおいてけぼり感のあるユウキはさらに戸惑っていた。

 

 

(…………なんだこれ?)

 

 

その視線を天使の方は察したのか、ユウキに気付いて挨拶をしてきた。

 

 

 

「あ!ごめんなさい、放置する気は無かったんですけどね!」

 

 

 

「……まあ、大丈夫……。」

 

 

 

「あ、自己紹介がまだでしたね!私はルカと言います、守護天使です!こっちはレイン、悪魔です!今は冒険家もやっていまして、口は悪いですが結構腕が立つんですよー!」

 

 

 

「………………。」

 

 

 

「あ!貴方のことはアイリスさん達から聞いております!<メビウスの悪魔>ことユウキさん!この話を聞いたらレインがいてもたってもいられず勝負を挑もうとしておりましたので、私はそれを止めるべく参上した次第に…………、ってなんで扉を閉めようとするんですか!?なんでそんな、いかにも面倒な奴らだなみたいな顔で見つめるんですか!?ちょっと待ってくださーーーい!!」

 

 

話が長くなりそうな予感をしたユウキは、面倒くさくなったのでいったんドアを閉めようとした。ルカはそれを阻止しようと力いっぱいドアにしがみつく。レインははぁーっと大きな溜め息をついていた。

 

 

 

「クソ天使があまりにもウゼェから仕方ねぇだろ。」

 

 

「失礼な!私は積極的なコミュニケーションをとろうとしただけですよ!」

 

 

 

「ていうか、俺昼飯がまだ途中なんだけど、とりあえず食べ終わッてからでいい?」

 

 

 

「あ、お昼ご飯の最中だったんですか!それは申し訳ありま…………。」

 

 

 

突然、うるさく思うほど騒いでいたルカが静止した。そして、ユウキの方をじぃーっと眉間に皺を寄せて見つめ始めた。

 

 

 

「んんー?」

 

 

 

「……あの、なに?」

 

 

 

 

「……口元に海苔……、そしてご飯粒……もしや、お昼は握り飯を……?」

 

 

 

「にぎり……、あぁ、おにぎりか。<たまたま>買ッてたやつが残ッてたから<適当に>作ッて食ッてたんだけど。」

 

 

 

「………………なぬ?」

 

 

 

ユウキがそう答えると、ルカは顔を伏せて拳を力強く握りプルプルと身体を震えさせ始めた。レインは不機嫌な様子で耳に指を突っ込んでいる。

 

 

 

(あ、この様子じゃクソ天使のヤツ、多分うるさくなりやがるな……。)

 

 

 

「…………<たまたま>?、…………<適当に>?」

 

 

 

「え?なに?」

 

 

 

「……にぎりめしをおおおおおおおおおおおおおおお!!!ぅあまくみるなあああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

「!?」

 

 

 

すると、ルカは顔を上げて全身に力を込めて大声で叫んだ。腹の底から喉元を伝って湧き出す声に、近くの建物、地面、身体、空気、ありとあらゆる物質が反響し震えるのを感じるほどだった。

 

 

 

(予想的中、指突っ込んでても聞こえやがる。)

 

 

 

「貴方は握り飯を!!いや、食事そのものをなんだと思っているんですか!!ただ腹に入ればいいという訳ではないんですよ!!」

 

 

 

「えぇ……。」

 

 

 

「ご飯は身体のエネルギーとなる源であると共に栄養摂取のために必要不可欠なものです!!全身にエネルギーを供給し、その日の身体のパフォーマンスを向上させるための大切なものなんです!!」

 

 

 

「…………。」

 

 

 

「それを更に高めてくれるのは握り飯さんなんです!!パンやパスタといった小麦粉で作られた消化しやすい食べ物とは違って、握り飯は消化が遅く腹持ちがよく満腹感もある素晴らしい食べ物なんです!!それを<たまたま>!?<適当に>!?食事を!!握り飯さんをなめていると言っても過言ではありません!!」

 

 

 

 

「…………。」

 

 

 

「どうやら貴方には握り飯さんの素晴らしさを一から理解してもらう必要があるようですね!!ならば私が、ユウキさんのための握り飯講座をぉ!!」

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

「開いたらーーーい!!!!!」

 

 

 

ビシッと人差し指をユウキに突き付けてルカが高らかに叫んだ。レインは相変わらず耳を塞いでおり(ルカの話は嫌でも聞こえてくるが)、ユウキはキョトンとした表情をしていた。

 

 

 

 

「…………とりあえず、残りの昼飯食ッていい?」

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

────そして、後日……、

 

 

 

 

ユウキ、ルカ、そしてレインの三人はエプロンを身につけてヘレナがよくパイ作りに使っている厨房にいた。ルカはヘレナに事情を話して 、この厨房は今日一日貸し切っている状態だという。

そして、厨房の外の扉の隣には何故か<握り飯講座御一行様>と書かれた立て札が貼られていた。

 

 

 

 

「おいクソ天使、なんで俺までこんな茶番に付き合わなくちゃいけねぇんだ。」

 

 

 

「レインは料理が得意ということで今回は私のサポートということで!それと、握り飯さんの素晴らしさを再確認するいい機会だとおもうんだけどなぁ?」

 

 

 

「ちっ、んどくせぇ……。」

 

 

 

ルカがこの講座のために用意したとされる食材を準備しながら言う。完全にとばっちりを受け半ば強引に連れてこられたレインも不機嫌にはなりつつも、手伝いとして食器類や調理器具の手入れをしていた。一方、ユウキは椅子に腰掛けて肘をついてその様子を見守っていた。

 

 

 

(どうしてこんなことになッたんだッけ?俺、なんか流されてる気がするんだけど……。)

 

 

「さて!準備が完了したところでユウキに質問です!」

 

 

 

「え?」

 

 

 

ユウキにビシッと人差し指を突き付けるルカが聞いた。作業を終えて手を洗ったのか指にはほんの少しの水が含まれている。

 

 

 

「握り飯はなにで出来ていますか?」

 

 

 

「(あ、こんなふうに指向けられた時からおかしくなッたんだッけ?)えっと……、米?」

 

 

 

「そうです!お米です!お米がちゃんとしているから握り飯は美味しく召し上がれるんです!逆に言えば、お米がしっかりとしたものでないと握り飯は美味しくなりません!」

 

 

 

「まあ……、そうだな……。」

 

 

 

「ということは、一番握り飯が美味しく仕上がるお米の状態といえば!はい、レイン!!」

 

 

 

「…………チッ……炊きたてのやつ……。」

 

 

 

ルカはレインにビシッと指を突き付け話を振る。レインは小さく舌打ちをして低く答えた。

 

 

 

「そうです!炊きたてのお米が最高の握り飯を作るんです!というわけで♪今回はその炊きたてのお米をご用意しまし……った!」

 

 

そう言うとルカはどこからともなく取り出した大きめの炊飯器をドスッと鈍い音を立てながら厨房の机の上に置いた。既に炊きたての状態になっていて、噴気口から暖かな湯気が出ている。

 

 

 

「……クソ天使、そのバカでかい炊飯器を今どこから出た?」

 

 

 

「細かいことは気にするな♪さあて、次の工程に入るぞぉ!」

 

 

 

「おい」

 

 

 

「握り飯を作るのに必要なのはお米だけではありません!塩と氷水とキレイな布巾が要ります!」

 

 

 

またもやルカはどこからか塩の入った小皿と氷水の入ったボウル、白い布巾を取り出し机に置いた。連続して起こった怪奇現象にユウキは戸惑っていた。

 

 

 

「……この天使は何でもありなの?」

 

 

 

「……クソ天使なら、多分な。」

 

 

 

「そこ!無駄話をしない!まだお米に触ってすらいないんですよ!」

 

 

 

ヒソヒソと耳打ちをするユウキとそれを聞くレインをルカは注意した。完全に独走状態となっているルカに二人はついていくのがやっとである。残念なのは、ルカがそのことにいまいち気が付いていないことであった。

 

 

 

「ですが安心してください!必要なものはコレで全てです!遂にこれから握り飯を作っていきます!」

 

 

 

「……なんか作ッてく前から疲れた。」

 

 

「なに言ってんだ、これからもっと疲れるんだぞ?」

 

 

 

レインはドンマイと言わんとばかりに机に突っ伏したユウキの肩に手を置いた。この厨房内において二人はルカに大いに振り回された言わば同志に近い関係となっていた。

 

 

「むふふっ♪さて、今からお米を握っていくんですが、このままだと炊きたて熱々のお米に火傷してしまいます!そこで、この氷水が必要なんです!手をキレイに出来る上に冷たい水が手の温度を下げてくれて熱々のお米を触っても大丈夫なようにしてくれるんです!」

 

 

そう言うとルカは両手を氷水のボウルに豪快に突っ込んだ。勢いよく入れたせいで辺りに冷たい水が飛び散り、真向かいに座っていたユウキとレインにかかった。

 

 

「ちょッ、つめたッ。」

 

 

 

「……おいクソ天使、テメェは加減ってもんを知らねぇのか?」

 

 

 

「ごめん、つい。では気を取り直して!水のついた手を布巾で拭いて、ごく少量の塩を手につけて!いざ!お米を、握ったらーい!!」

 

 

 

ルカはササッと両手を布巾で拭うと、親指人差し指中指の三本の指で塩を取り手に広げ、炊飯器の蓋を開けてしゃもじを突っ込んだ。そして程よい量の米を取り出し手に乗せてせっせと握り始めた。その表情は荒々しい動作とは裏腹に天使のような優しい微笑みをしていた。

 

 

 

「せっせっせ♪ほっほっほっ♪ふんっふんっふんっ♪」ニギッニギッニギッ

 

 

 

「……ホント、いつも楽しそうに握りやがるな。」

 

 

 

「握り飯を作ってる時はいつだって楽しいぞ!」

 

 

 

(……炊きたてだからか、すッげぇうまそう。)

 

 

「まず初めは強く握らずに、米粒同士をまとめるように整えていきましょう!中がふんわり柔らかくなるように作っていくのが極意です!ある程度まとまってきたら手の形を変えて三角形になるように優しく形作っていきましょう!」

 

 

ルカは調理の実況をしながら、慣れた手つきで次々と握り飯を量産していく。握り始めてもうすぐなのだが、既に3個完成させている。

 

 

「海苔を巻いていって、これで!!塩握り飯の完成です!!」

 

 

「……美味そうだな。」

 

 

「でしょでしょ!さあ、どんどん作っていきますよー!次は鮭握り飯を作りましょう!レイン、具材の準備を手伝え!」

 

 

「指図すんなやクソ天使、たくっ……」

 

 

文句タラタラに言うとレインは冷蔵庫にあるたくさんの具材を取り出した。

三人の握り飯作りは日が暮れるまで続いた……。

 

 

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「もぐっもぐっ……作りすぎましたね。」

 

 

 

「……全くだ……もぐっもぐっ……」

 

 

 

三人はどんどん握り飯を作っていき、最終的には50個近く握り飯を作ってしまった。かと言って食べないと流石に勿体ないので、三人はその握り飯を今日の晩御飯にして食べていた。

 

 

 

「まあ俺うまいの食べるのは嫌いじゃないし、別にいいけど、もぐッもぐッ……」

 

 

 

「ユウキさん、握り飯も作り方次第で色んな味が作れて美味しいでしょ?」

 

 

 

「……まあ、そうだな。ちょッと侮ッてた。」

 

 

 

「分かってくれてなによりです!感激です!嬉しいです!」

 

 

 

「おいクソ天使、食いながら大声出すな。あと、口に飯ついてるぞ。」

 

 

 

「へ?どこどこ?」

 

 

 

「ここだよ、たくっ」ヒョイ

 

 

 

レインはルカの口についていたご飯粒を指で取り上げた。そして、そのご飯粒をペロリと口に運んでいった。

 

 

 

「あっ//」

 

 

「あ?なんだよ?」

 

 

「え?いや……そのぉ……///流石にそれをされるのは想定外という恥ずかしいというかなんというか……ええっと///」ゴニョゴニョ

 

 

「なに言ってんだよ?」

 

 

「いやぁ、なんでもない!///でも、そのぅ……///」

 

 

 

「いいからさっさと食うぞ、テメェの(握り飯)はうめぇんだから。」

 

 

 

「う、うまっ…!!?///さっきの……アレも……!!?///」

 

 

「あ?さっきの粒か?せっかく食わねぇと(ご飯粒が)勿体ねぇだろうが。」

 

 

「もったいな…!!?///まさか私の味を…!?///うぅっ……レ、レインのバカァァァァァァ!!!///」

 

 

ルカは顔を真っ赤にして厨房なら逃げるように走り去っていった。レインはキョトンとした顔をして走るルカを目で追っていた。

 

 

「なんなんだよ、アイツは。」

 

 

 

「ていうか天使なんだから飛んでいけば良いのに。」

 

 

ユウキは二人のやり取りをスルーして握り飯を食べるのに没頭していた。なので、なんでルカが走り去ったのかは分からない。

 

 

「ったく、それから<メビウスの悪魔>。」

 

 

 

「ん?」

 

 

「俺はテメェとの勝負を忘れたわけじゃねぇからな。今日はクソ天使に流されたが、そこんとこ覚えてとけよ?」

 

 

 

「……勝負は別にいいけど、今は食事に集中させてくれる?うまいのが勿体ないからさ。」

 

 

「……ふん、そうだな。てかアイツの分もたいらげなきゃいけねぇのかよ……。」

 

 

「あ……。」

 

 

そして男二人はただ黙々と握り飯を食べ続けて言った。ルカがいなくなったのでまだ20個ほどある握り飯を食べ尽くさなくてはいけなくなったが……。

 

 

 

余談だが、翌日以降ユウキは握り飯を市販で買うことはなくなり、全て自分で作るようになった。握り飯限定だが、自分で作って美味しいものを料理し自分で食べるということに少しハマっていったらしい。




更新がかなり遅くなってしまいましたね、申し訳ないっす。
(交通事故に巻き込まれて危篤状態だったなんて言えない……)


もうそろそろ茶熊の投票が来る頃かと思うのですが、個人的にはネモノア、レイルカ、レクリネは入学して欲しいなって思ってます!
色々妄想が広がります……へっへっへっ(*´ 艸`)


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ゆうしゃとまおうと、ときどきあくま①

おぃーす、久々の更新じゃー。

とりあえず、ネモ、ノア、オスクロル、ルビィ、ユキムラ、セツナ、レイン、そしてティナ、茶熊学園入学おめでとう!!
昨年と半分以下の入学者数なんですが、何としても当てたいキャラたちなんじゃよ。




ここに、一人の勇者がいる。

 

 

 

 

「ふごぉぉー…………ふぐぁぁー……」

 

 

 

 

名はソアラ、類稀なる勇者の素質を持って生まれし者。

 

 

 

 

「んんぅ…………ぐぅぅ…………」

 

 

 

 

年齢は15歳とまだ若いが、いずれはこの世界を明るく照らす光となるであろう力の持ち主である。

 

 

 

 

「ふぐぁぁー……………ふごぉぉ…………」

 

 

 

 

…………しかし今は、宿で盛大にいびきをかいて寝ているただの少女である!!

 

 

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

「え?ソアラちゃんを最近見かけない?」

 

 

「そうなんです。それで、今からソアラさんが宿泊している宿に足を運ぼうと思いまして……。」

 

 

「;」

 

ギルド支部の前で話をしているのは、赤髪、アイリス、キャトラ、そしてオスクロルである。

赤髪達はこれから複数の仲間と一緒に依頼を遂行しようとして、ギルド支部の前で仲間と待ち合わせをしていた。二人と一匹が最初に到着し、残りのメンバーを待っていようとしたら、オスクロルがギルド支部の建物からソワソワと落ち着かない様子で出てきたのだ。時間に余裕はあったので、気になった赤髪達はオスクロルに声をかけ事情を聞いた。

オスクロルは冒険家として依頼を受ける傍ら、ギルドの職員としても仕事をしている。以前は<デパーチア>で勇者育成の依頼をギルドから嘱託され、魔王としてその職務をこなしていた。旅路に設置する罠と魔物の配置の考案、武器屋に納品する武具の入荷手続き及び交渉、村人との勇者の行動を誘導する流れの打ち合わせ、勇者育成のための魔王達の会議への参加、多岐にわたる激務を彼女はなんとかこなしていたのであった。その仕事ぶりと職に対する姿勢、魔王とは思えぬ美貌、彼女自身の良すぎる人柄をギルドに買われて、現在はギルドの一員としても働いている。

だが事の発端は先日、魔王として最後に育成した勇者ソアラの冒険家実績をふいに見てみると……、

 

 

 

ここ二週間、空白であった。────

 

 

 

 

 

「それで気になって、今からソアラの止まってる宿に押しかけようというわけね。」

 

 

「はい。ソアラさんのことですから、恐らく今頃は宿でぐっすり寝ていると思うので。」

 

 

オスクロルが困った表情でキャトラの問いに答える。彼女からすれば最後に育てあげた(?)勇者なのだから気になってしまうのは当然と言える。

しかし、当の本人は「大丈夫っす、大丈夫っす。心配ないっす、心配ないっす。」と言うものの、宿を視界に捉えれば吸い寄せられるように宿屋に向かい、そこだけが安住地帯であるかのようにベッドに入り、睡眠という存在が人の形を纏ってこの世に舞い降りたかのように熟睡するような人間だ。赤髪達も二人を知らない仲ではないので手伝おうかと考えたが……。

 

 

 

「私達もこれから依頼があって、仲間を待っているのに、どうしましょう……。」

 

 

 

「;」

 

 

「いえいえ、いいんですよ。お手伝いをしてほしくて話をしたわけではないので、皆さんはお仕事を優先して下さい。」

 

 

アイリスが悩みながら言うとオスクロルは笑顔で自分達の仕事に取り組むよう促した。しかし、オスクロルもオスクロルで人が良すぎるため、変にソアラを起こしても同じことを繰り返すだけなのではないかと赤髪達は心配した。

どうしたら良いものかと考えたその時、三人と一匹に近づく者が現れた。

 

 

 

「あれ、赤髪達、どうしたんだ?」

 

 

「!」

 

 

それは赤髪達が待ち合わせをしていた仲間の一人であるユウキだった。

 

 

「あ、ユウキさん!」

 

 

「なんか悩み事?これから仕事に行くのに。」

 

 

「それがねユウキ…………、あっそうだ!」

 

 

キャトラが閃いたかのように声をあげた。ふいに他の四人はキャトラに目線を向けて疑問符を頭に浮かべたような顔つきをする。

すぐさまキャトラは不敵な笑みを浮かべ、ユウキを見つめる。そして、ユウキに力強く言葉を掛けた。

 

 

「ねぇユウキ!今日はオスクロルの手伝いをしてあげて!」

 

 

 

「……ん?」

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

………………

 

 

 

…………

 

 

 

 

「すいません、予定を変更してまでお手伝いをさせてしまって。」

 

 

 

「いいッて、気にしなくて。」

 

ユウキとオスクロルの二人はソアラが寝ていると思われる宿屋に向かっていた。

ユウキはキャトラの頼みを断らずにオスクロルの手助けをすることにした。本来は依頼を遂行してお金を貯めておきたいところであったが、飛行島の主でもある彼らには世話になっていたため断る理由はなかった。なにより極度のお人好しで心配性である彼らがその場に来たとはいえ自分を頼ってくれたのでユウキは嫌な気がまるでしなかったのだ。

 

 

「とりあえず、そのソアラッて子を宿屋から引きずり出せばいいの?」

 

 

「できれば説得して、自分から足を運んでくれるといいんですけど。」

 

 

「大変だなアンタも……。」

 

 

「いえ……、あ!申し遅れましたね。私はオスクロル・ラス・カサスです。以前は魔王をしていましたが、今は冒険家をしています。」

 

 

「俺はユウキ、俺も冒険家をしてる。昔は色々やッてたけど。」

(魔王……?)

 

「お話は、伺っています。ユウキさんは<メビウスの悪魔>……なんですよね?」

 

 

ほんの少しだけパッと目を見開いたユウキだったが、すぐにいつものクールな表情に戻る。

 

 

 

「なんだ、知ッてたんだ。」

 

 

「少し前にキャトラちゃん達から貴方が飛行島で生活をしていることは聞いていました。」

 

 

「もう少し口を硬くしてくれよアイツら、人のプライベートをなんだと思ッてんだ。」

 

 

「あはは……、……私が魔界にいた頃からその名は有名でした。<メビウスの悪魔>、<闇>を穿つために絶対的で強大な力という呪いを授かり、悪魔へと変貌した人達。」

 

 

そう語り始めるとオスクロルは顔を少し俯いたまま立ち止まった。ユウキもそれに遅れて気づき、同じく足を止めてオスクロルの方を見遣る。

 

 

「当時この話を聞いて少し恐怖心を抱きました。人であることを捨ててまで<闇>を葬り去りたいという気持ちに、でも同時に疑問に思うこともありました。なんでそうまでして力を得たいと思ったのか、<闇>を滅ぼしたいと思ったのかって。」

 

 

 

「…………。」

 

 

 

「烏滸がましいとは分かっています。けど、機会があれば教えていただけませんか?もっと知りたいんです。何故あなた達はそこまで<闇>と戦おうとしたのか、力を手に入れたいと思った理由を……。」

 

 

伏せていた顔を上げてオスクロルはユウキの瞳をじっと見つめた。一瞬の間見合っていたが気持ちが強く篭った紅色の瞳に耐えかねたのか、ユウキは目線をオスクロルから外した。

 

 

 

「んー、いいけどさ、なんでそんなに知りたいのかなーって。」

 

 

「え?」

 

 

「いや、ここに来て色んな奴に会ッたけど、アンタだけじゃなくて皆俺自身じゃなくて悪魔としての俺を見たり聞いてきたりするんだよ。」

 

 

「それは……。」

 

 

「もちろん俺が珍しい奴だッて分かッてるけど、何もそんなに聞いてこなくてもいいんじゃないかッて少し思ッてて……。」

(あ、初対面とはいえ流石に言い過ぎた。悪いことしたな…。)

 

 

 

目の前のオスクロルが悪いわけではないのだが、愚痴まがいの文句をオスクロルにぶつけてしまっていることにユウキは遅れて気付いた。オスクロルはいきなり愚痴を聞かされて戸惑っているのか少し困っている表情だった。こういう時にどうすればいいのか分からないユウキであったが、流石に一言謝っておくべきだろうと思ってそれを口にしようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知ってほしいんですか?あなたのことを。」

 

 

 

「──────」

 

 

 

開いた口が塞がらないとは今のことを言うのだろうか。一言「ごめん」と言おうとした口はそれを発しようとはせずに、起こった出来事が受け止めきれないと言わんばかりの証拠となってしまっていた。

 

 

 

「……あの、えっと……?」

 

 

 

まるで心の内を見透かされたかのような言葉に、ユウキは少しの間思考と身体の両方が停止していた。久しく忘れていた世界が止まっているような感覚。忘れていたかった自分だけ世界と切り離されているかのような精神。

 

 

 

「ユウキさん?」

 

 

 

「……ごめん、オスクロル。今は宿屋に行こう。」

 

 

 

「え、あの、ユウキさん!?」

 

 

足早に歩を進め始めたユウキにオスクロルは戸惑いながらも後を付いて行った。

何故一瞬ユウキが硬直していたのか分からない。もしかしたら今のは嫌われるような発言だったのではないかと思っていたオスクロルだったが、本来の目的はソアラの説得であったことを思い出し、今はそちらを優先しようと気持ちを切り替えた。

 

 

 

 

「……オスクロル。」

 

 

 

「はい?なんでしょう?」

 

 

 

「……時間があッたら話す、お前の知りたいこと……。」

 

 

 

「……はい、いっぱい教えてくださいね。昔のユウキさんも、今のユウキさんも。」

 

 

 

オスクロルは一瞬嫌われたと思っていたが、遠回しに話をしようという彼の言葉に内心ホッとして笑顔で返事をした。<メビウスの悪魔>とは関係のない、彼自身の話もたくさん聞いて、私のこともいっぱい話して、彼と少しずつ関係を築いていこう。そう意気込むオスクロルであった。

一方でユウキは、そんなオスクロルの気持ちを理解してくれるようななにげない言葉と何でも受容してくれるような態度にほんの少し安心感を抱いた。

 

 

 

 

 

 




うぃーっす、お疲れ様でしたー(自分に言ってるw)
まさかこんなに色んな手続きがあるなんて思ってなかったのじゃー!しんどいー!


転職勇者のファナちゃんめっちゃかわいくないですか!?
おせニャン見て一目惚れしたんですけど、なかなか来てくれなくて辛いですw
上半期に来てくれれば茶熊入学も夢ではなかったかも!?


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