死亡から始まる異世界ハーレム生活 (小野寺キキ)
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01話 死亡〜転生

ご静聴のほど宜しくお願いします(o^^o)


俺はごく普通の人生を送っている。

一応入るのが難しい大学を出て、そこそこの大手と言われている会社に入社し、現在は35歳。一人暮らし。彼女はいない。彼女いない歴=年齢だ。

自分で言うものなんだが、身長は低い訳でもなく、顔に至ってはそこそこイケてると思っている。だけど、モテない。何故だろう。一応、彼女を作ろうと努力した事もあった。何回か告白を試みたけれど、全てフラれた。そして、俺は心が折れた。もうこの歳だ。結婚なんて諦めている。いや、機会があれば是非・・・。

仕事が忙しいというのもあるが、そういう機会がない。別に居なくても困るものではないし、身の回りの事は自分で出来るし。言い訳してる訳じゃないからね?本当だからね?

何故俺がこんな事に考えていたかって?それは・・・。

 

「先輩!今度の休みに合コンに来ませんか?一人来れなくなっちゃって」

 

笑顔で話しかけてくる爽やかな青年。俺の後輩の西崎だ。10歳年下の25歳だ。

そう、合コンに誘われたからつい、考えてしまったのが理由だ。

何故、俺みたいなおっさんを誘うのだろう。

 

「先輩!どうするんですか?行くんですか?行かないんですか?もし、この機会を逃したら一生独身ですよ」

 

俺がこのまま独身で一生を終える事が心配らしい。余計なお世話だ。

しかし、この機会は滅多にない。彼の言う通り、これを逃したら一生独身かもしれない。

 

「おお。分かった。行けばいいんだろ行けば」

 

「そうこなくっちゃ!じゃあ、今度の休みの19時に会社の近くにあるカラオケ屋で」

 

そう言うと彼は去っていった。合コンなんて初めてだ。どんな服装をしていこうか分からない。俺はスマホを片手に調べはじめた。改めてスマホは便利だなぁ、と思った瞬間だった。

 

合コン当日。

俺は待ち合わせのカラオケ屋に入った。既に俺以外のメンバーは集まっていた。女子2人、男子は俺と西崎の2人だけだった。いや待て、これはおかしい。おかしすぎだ。女子が若過ぎるのだ。20代前半といったところだろう。

おっさん1人と若人(わこうど)3人。当然、俺はハブられた。そのまま相手にされず合コンは終わった。来るんじゃなかった。

 

「先輩。これからっすよ!これから!あ、ちなみに僕、あの右側にいる子と今度、デートする約束したんですよ」

 

西崎は上機嫌だ。そんな彼に俺はイライラしていた。普通、先輩の俺を気遣って話を進めてくれるものだと思っていた。しかし、それがなかった。

 

「ふーん。そうか」

 

俺は西崎の言葉に対し空返事で言った。

 

「「「キャァァァァァァアアーーーーーーーーーーー」」」

 

悲鳴が聞こえる。

何だ?一体何が起きている!!?

 

「どけどけー!どかねぇと殺すぞ!!!」

 

その声がした方を振り向く。顔にはマスク、手には包丁、そして、全身黒ずくめの男がこちらに向かってくるのが見えた。

逃げようとするが足が竦(すく)んで動けない。

 

「先輩!どうしたんですか?早く逃げましょう」

 

西崎は俺を心配して引き返してきた。

仕方ないだろ。足が竦んで動けないのだから。

「どけどけぇぇぇぇぇええ!!!」

 

男は既にそこにいた。このままでは西崎が危ない。

俺は西崎を突き飛ばした。

 

ドスッ!俺の背中から全身にかけて焼けるような痛みが走ってきた。

・・・痛い。

 

「先輩!」

 

西崎は叫び声をあげながら駆け寄ってくる。

どうやら、怪我はなさそうだ。良かった。安心した。

こんな奴でも俺の可愛い後輩だ。

 

「しっかりしてください!だ、誰か早く救急車を」

 

今にも泣きじゃくりそうな顔で俺を抱えた。変な顔だな。俺は笑いたかったがそんな気力どこにもない。

 

「・・・先輩。しっかり、しっかりしてください」

 

「・・・心配するな。それよりもお前今、顔が面白いぞ」

 

西崎は少し苦笑いにした。それでいい。お前の泣き顔なんて見たくない。

 

「・・・そ、そんな先輩だって面白い顔してるじゃないですか」

 

「・・・俺はいいんだよ」

 

声を出すのが辛い。だんだん痛みが感じなくなってきた。

・・・寒い。もう死んでしまうのだろうか。

 

「先輩。しっかり。もうすぐ救急車が来ますから。」

 

声が遠い。それに目が霞んできた。

 

「・・・・・・先輩・・・・・・先輩・・・・・・先輩・・・・・・」

 

もうダメだ。

俺は最後の力を振り絞った。

 

「・・・・西崎・・・・ありがとな」

 

そう言うと俺は目を閉じた。

 

大野健(おおのたける)35歳。童貞。独身。1人暮らし。彼女いない歴=年齢。

今、彼の35年間の人生は幕を閉じ、そして新たに幕が開かれる。

 




ご視聴ありがとうございます( ^ω^ )


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02話 異世界

ご静聴のほど宜しくお願いします(o^^o)


暗い。

何も見えない。ここはどこなんだ。

ああ、そうだ。確かを通り魔に刺されて死んたんだっけ・・・。

35年間の彼女の1人出来ない。おかげで童貞。

まさか、未使用でこの世を旅立つ事になるとは・・・・・。

ごめんな。お前を大人にしてやれなくて。

次生まれ変わったらお前を必ず大人にしてやるからな。

温かい・・・。マシュマロみたいに柔らかい。それにいい匂いだ。

なんだか心地がいい。どうやら、本当に天国に来てしまったらしい。

怖いところだと思っていたが案外、天国というのもいいものだな。

そう思いつつ両手にある2つのマシュマロを揉み続けた。

 

「んんっ////♡」

 

んっ!?!?何だ今の声は?

気のせいか?うん。気のせいだ。俺はさらに揉み続けた。

「ああんっ////♡」

 

んんっ!?!?!?気のせいなんかじゃなかったのか!?

俺の息子が反応をしている。初めての感覚で喜んでいる、そう思った。気持ちがいい。もっとこんな快感を味わいたい。ただそれだけを考えていた。

そして更に揉み続けた。

 

「ら、らめぇぇぇええ////♡」

 

んんんっ!?!?!?!?やっぱり気のせいなんかじゃなかった!!!

・・・俺は察した。まだ、慌てるような時間ではない。大体、このクールな俺が慌てた事なんて、小学校の頃、朝起きて布団を見ると辺り一面、海になっていた時くらいだ。・・・あの時は本当に焦った。

まだ、大丈夫。そう自分に言い聞かせた。

よし。目を開けたと同時に謝ろう。

1 , 2 , 3 , ダァァァァァァァア!!!

 

「ごっ、ごめっ・・・・・痛っ」

 

俺は勢いのあまりに舌を噛んでしまった。

ちゃんと言い直そうと顔を上げる。

その先にはほっそりと尖った耳に澄んだエメラルド色の瞳。ブラウンのロングヘアーに光沢が溢れている。美しいその容姿はエルフのように完璧に冴え渡っている。細身の身体にピッチっとした黒い制服。彼女の身体のラインを表している。俺はつい見惚れてしまう。

 

「いっ、一体どこを触ってるんですか!」

 

彼女はしゃがみ込み、胸を両手に隠す。

頰を赤くし、少し涙目になっている。

 

「ごっ、ごめん。触り心地が良くて、つい何度も触ってしまった」

 

「最低ですね!」

 

彼女の泣きそうな顔が可愛らしい。Sっ気はなかったはずなんだが。

ともかく、可愛いのだ。お友達になりたい。

しかし、俺は女の子をまともに会話をした事がない。

どうしようか。やはり、スマホに頼るしかほかならない。

俺はスマホを取り出した。・・・ってWi-Fiに繋がってないじゃないか!

これじゃ何も出来ない。1つため息を漏らしポケットにしまった。

 

「一体貴方は何者ですか?ここら辺では見かけない顔ですけど」

 

「いやー、俺にも分かんないんだよ。死んだと思ったらここにいた」

 

「死んだ?貴方、何を言ってるんですか?」

 

本当の事を言っているのに・・・。まあ、いい。一体ここは何処なのだろうか。見覚えのない場所だ。まさか、異世界に飛ばされしまったのだろうか。

 

「ところで、貴方のお名前なんて言うんですか?」

 

「あっ、俺?俺の名前は大野健だ」

 

「・・・おおの・・・たける・・・?変わった名前ですね」

 

「え?あ、そう」

 

普通の名前だと思うんだけど。

 

「君の名前は?」

 

「貴方に名乗るのも癪(しゃく)に触りますが、まあいいですよ」

 

「私はエマ=ヴィクトリアです。エマって呼んでください」

 

エマさんか。いい名前だ。

 

「ところでエマさん。ここは一体どこなんだ?」

 

「ここは冒険者達が集う街《パンデモ》ですよ」

 

冒険者?パンデモ?その後、エマに詳しく教えてもらった。

結論。

どうやら、俺は異世界に来てしまったようだ。

ここでは、ギルドに登録して冒険者になるしかないようだ。

まあ、飲食店とか雑貨屋とかもあるんだけど。

でも、異世界に来たからにはやっぱり冒険者になるでしょ!!

こうして俺の異世界ハーレム生活が始まるのだ。

 




ご視聴ありがとうございます( ^ω^ )


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03話 窓口受付嬢

ご静聴のほど宜しくお願いします(o^^o)

お気に入り登録者増えてきて凄く嬉しいです(о´∀`о)


やばいやばいやばいやばい。まさか・・・。

俺は倒れていたところを助けてくれたエマというエルフの女の子と一緒にパンデモの街のギルドを訪れていた。

 

「初めての方ですね。私はこのギルドの窓口受付嬢をしておりますエイミー=グランチェと申します」

 

ダンジョンの運営管理をする「ギルド」の窓口受付嬢、エイミー=グランチェ。

丸みを帯びたモフモフの耳に澄んだ黒色の瞳。セミロングのブラウンの髪。

ギルドの制服である黒いスーツとパンツを綺麗に着こなす大人びた感じの女性だ。

仕事熱心でありながら親しみやすいと評判の彼女は、ケット・シーである。

彼女目立てでギルドに来る者も後を絶たない。それだけ魅力のある女性なのだ。

 

「あの、冒険者になりたいんですけど」

 

「ではこの書類にサインをお願いします」

 

俺は言われた通り、書類にサインをした。

オオノ・タケルっと。

 

「それでは登録料金として50ゴールドを」

 

ん!?50ゴールドだと!俺は急いでポケットやらズボンの裾やらを探した。異世界に放り込まれた俺は当然お金などない。まあ、元いた世界のならあるけど。でも、ここではそのお金は使えない。やばいやばいやばい!まさかつまずくとは・・・。だか、ここでつまずいてなどいられない。エマに借りるか・・・でも、俺のプライドが許さない。しかし、お金がなくちゃ何も進まない。俺は決心した。プライドを捨てお金を借りると!

 

「エマ。50ゴールドを貸してくれ」

 

こうする他方法がない。働くという選択肢もあるけどここまで来て働きたくなどない!

 

「随分と上から目線ですね。人に物を頼む時の礼儀があるでしょう」

 

「礼儀と言いますと」

 

「土下座ですよ」

 

土下座か・・・。前の俺なら抵抗しただろう。だか、今の俺は違う!プライドを捨てたからな!!

俺は綺麗なスライディング土下座を披露した。周りの哀れみの視線が集まるがそんなもの知ったこっちゃない!早くお金を借りなければならない。

ふん。これなら何も文句ないだろう。俺は心の中でそう思った。

しかし、彼女が胸を触った仕返しだろうか。無茶な事を言いだしてきた。

 

「いいでしょう。でも、あれを忘れたとは言わせませんよ。さあ!私の靴を舐めてください!」

 

な、なにっ!?

・・・まあいいだろう。容易(たやす)い事だ。俺は彼女の靴を舐めた。

 

「え?」

 

「ん?」

 

2人の間に漂う不穏な空気。彼女はびっくりした顔でこちらを見ている。

 

「じょ、冗談で言ったんですけどまさか本当にしてしまうとは・・・あっ、貴方にはプっ、プライドというものが無いんですか!」

 

プライド?そんなものなどとっくの昔に捨てとるわ!

 

「もういいです。50ゴールドぐらい出してあげますよ」

 

「ありがとう」

 

俺は冒険者達の仲間入りをした。

 




ご視聴ありがとうございます( ^ω^ )


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04話 能力

ご静聴のほど宜しくお願いします(o^^o)

お気に入り登録してくださる方、本当にありがとうございますm(_ _)m

すごく嬉しいです(*^▽^*)


これで俺も冒険者達の仲間入りか。

 

ギルドにいる人々の視線が俺に集まっている。当然だ。エマにスライディング土下座をかました挙げ句、なんの躊躇(ためら)いもなく彼女の靴を舐めたからだ。まあ、俺にはプライドというものがないし、過去を振り返らない主義だし何も気にしたりなんてしてない。・・・うん。してない。本当だからね。

「では、改めてご説明をさせていただきます。冒険者には各職業というものがございます。そしてこれが冒険者登録カードです。このカードには冒険者がどれだけモンスターを討伐したかや、能力、スキルなどが表示されます。レベルが上がるごとにスキルを獲得するためのポイントが与えられます。なので頑張ってレベル上げをしてくださいね」

 

「それでは、オオノタケルさん。この鏡に身体を映してください」

 

「こ、こうですか?」

 

すると、鏡が急に光だした。一体何が起きているんだ。

 

「これで貴方のステータスが分かります。なので、その数値にあったご職業をお選びください」

 

おおー!!キタキタキタァァァァァァァアアア!!!!!ここで俺の凄まじい能力が明らかになり、ギルド中が大騒ぎになるわけだ!それに女の子達にもちやほやされるのか!!!俺は何の根拠も無しにそう思っていた。

 

「はい。ありがとうございます。こっ、これはすごいです・・・っ!!!!!」

 

ふん。やはり俺の凄まじい能力が明らかになったか。

 

「・・・全ての能力が平均値より大幅に低いですね。冒険者向いてないんじゃないんですか?もし、冒険者になると言うのなら貴方、死にますよ」

 

・・・んんんっ!?!?!?全ての能力が平均値より大幅に低いだと。しかも冒険者人生を否定された。そんな馬鹿な。俺の想い描いた幻想がすぐに崩壊した。

 

「おい、エマ。いきなり冒険者人生を否定されたぞ。本当はここで俺の凄まじい潜在能力が明らかになり、ギルド中が大騒ぎになるはずじゃなかったのか」

 

「はぁ?そんなこと知らないですよ。誰がそんなこと言ったんですか?」

 

誰も言っていない。俺がそう勝手に想い込んでいただけだから。

ガックリとうなだれる。

 

「・・・ま、まあ、レベルを上げればなんとかなりますよ。だから、その・・・、そう落ち込まないでくださいよ」

 

「・・・そ、そうですよね。レベルを上げればいいんですよね。俺、誰が何と言おうとも冒険者として頑張ります!」

 

「その意気です!レベルが上がれば色々な職業に転職することも出来ますから。上級職目指して頑張ってください」

 

 




ご視聴ありがとうございます( ^ω^ )


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05話 ユニークスキル

ご静聴のほど宜しくお願いします(o^^o)

更新遅くなって申し訳ありませんm(__)m

不定期更新になりがちになってしまいます。

なるべく毎日投稿しようと思います!宜しくお願いします(^^)




「・・・そ、そうですよね。レベルを上げればいいんですよね。俺、誰が何と言おうとも冒険者として頑張ります!」

 

「その意気です!レベルが上がれば色々な職業に転職することも出来ますから。上級職目指して頑張ってください」

 

「・・・は、はい!」

 

・・・ってこんなはずはなかっただろぉおおおおお!!!俺は何の為に異世界まで来たんだ。初っ端(しょっぱな)から冒険者人生を否定され、挙げ句には能力値が最低値・・・。これじゃ、ハーレムを目指すどころかダンジョンに潜ることすらままならない。

 

「あの人、能力値が最低値に近いらしいんだって」

 

「へぇー可哀想だね」

 

「冒険者として頑張るって言ってたけど本当なのかねぇー」

 

「笑えるよねー」

 

周りからヒソヒソと話し声がする。それもそうだよな。スライディング土下座を公衆の面前でかまし、お金を女の子から借り、能力値が最低値。

は、恥ずかしい〜〜。穴があったら入りたい気分だ。せめて、俺だけの凄いスキルがあればいいのだけれど。まあ、そんな都合のいい話あるわけないよねー。

 

「タッ、タケルさん!」

 

「なんでしょうか」

 

「凄いです!ユニークスキルが沢山見受けられます!!!」

 

・・・都合のいい話あったぁぁああああ!!!

 

「どんなユニークスキルですかっ!?」

 

「そ、それがですね・・・」

 

なんだ?この雰囲気は。もしかしてユニークスキルとは言っても使えないクソみたいなスキルなのか・・・?

 

「スキル名が書いてないんですよ。それにスキルの説明も書いてないんです。普通はこんな事あるはずないのですか・・・」

 

スキル名がない?確かにおかしいな。俺は元いた世界で結構ロールプレイゲームなど数々のゲームをやり込んでいた。いわゆる隠れゲーマーだった。しかし、どのゲームもこんな事はなかった。一種のバグか?いや、ありえない。ここはゲームの世界じゃない。異世界、今の俺にとっての【現実世界】だ。こんな事があってもおかしくはないか。とはいえ、スキルが気になるなぁ。こればかりはモンスターと戦って明かしていくしかないか。

・・・この世界ではユニークスキルはどんな扱いなのかな。俺が知っている限り、仮説だが出現条件がなく、さらに熟練度を上げても得ることが出来ず、発生条件は謎、という事ぐらいだ。この仮説と同じなのだろうか。

 

「ユニークスキルとは、選ばれし者だけが獲得することが出来るスキルです。どんなに自分の腕を磨こうがどんなに辛い鍛錬をしようが関係ありません。獲得条件は謎なんです。なので、私たちがユニークスキルを《神の力》と呼んでいます。これまでにこの《神の力》を獲得した者は私の知る限り3人しかいません。この3人の方々は素晴らしい偉業を成し遂げております。いずれも伝記などの本で読んだものですけど・・・。冒険者は約1億人ほどいます。そんなに沢山の冒険者がいるにも関わらず、たったの3人だけなのです。それほど凄い能力なのです。しかし、500年ほど前の話です。本当にユニークスキルがあるのか私は信じきれていませんでした。一種の仮説かとずっと思っていました。しかし、目の前に《神の力》を有する冒険者が現れました!これは信じるしかありませんよね!」

 

・・・これ、来たんじゃね!?!?最初はこの先どうしようかと悩んでいたけどこれならやっていけそうだ!!!

 

「しかし、ユニークスキルは1人につき1つなんです。過去の3人がそうだったんです。1人の冒険者が複数のユニークスキルを保持しているだなんて聞いたことない!凄いです!でも、スキル名が書いてないなんて珍しいですね。凄い能力だったりして・・・」

 

・・・しかし、俺はえげつないほど不運な冒険者だ。凄いスキルだと言うけどクソみたいなものかもしれない。まあ!ユニークスキルに限ってそんなことないよねっ!!!俺を含めてまだ4人しか獲得していないスキルなんだから!絶対、強力なスキルだよね!・・・フラグ回収してるわけじゃないからね!

 

「うおーー!」

 

「ユニークスキル保持した冒険者が現れたぞぉー!」

 

「やばいですねぇーー!!!」

 

周りの視線が一変、歓喜の渦に包まれた。あれほど蔑(さげす)んだ視線だったけど今は違う。俺を歓迎してくれている。これで冒険者としての生活が始まる!

 

「おい、エマ。やったぞ!俺は遂に冒険者としての生活が始まるんだ!」

 

「良かったですね。タケル」

 

「もっと俺を褒め称えろよ!笑」

 

「・・・ぅざ」

 

「なんか言ったか?」

 

「いいえ、なにも」

 




ご視聴ありがとうございます( ^ω^ )


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06話 モンスター討伐

ご静聴のほど宜しくお願いします(o^^o)

文章おかしいところあったら教えてくださいm(__)m


迷宮(ダンジョン)とは、幾多もの階層に分かれる無限の迷宮。階層が上がるにつれ、モンスターのLvが上がっていく。未だにこの迷宮がいくつあるのか不明。仮説によると、100、500、1000階層を超えるという。また、最上層はLv.100相当のモンスターがごろごろいるようだ。これはあくまでも仮説だ。真相を知るのものは誰もいない。

現在は1〜14階層まで突破できている。しかし、15階層のエリアボスの【タイタンズレイン】というモンスターを突破することが出来ずにいる。全長2m30cmほどの大柄な体躯に、頭に2本の鋭い角と4本の腕を備える。4本の腕にはそれぞれ武器を装備しており、HPの減少に応じて攻撃のパターンが変化したり、装備していた武器も変わってくる。HPはそれほど多くなく耐久力もそれほどないが、剛腕の腕から振り下ろされる一撃一撃の攻撃が非常に重い。何度かトッププレイヤー達が集まる攻略部隊で突破を試みたが全てのプレイヤーが戦闘不能という失敗に終わっている。例え、戦闘不能になったとしても【パンデモの街】にある【神殿】で生き返ることができる。戦闘不能によるペナルティーは大きいが。トッププレイヤーと言ってもLv.10相当の冒険者の集まりだ。それに加え【タイタンズレイン】はLv.13。これじゃ勝てない。もっとLvを上げないと。今、現在も戦闘は行われている。

 

◆◇15階層ボス部屋にて◇◆

 

「3番隊!ヒールはまだか!!これでは1番隊のHPが保たんぞ!」

 

「すいません、クラウス隊長。直ちにヒールを開始します」

 

「【タイタンズレイン】のHPが半分をきりました。攻撃パターンが変わります」

 

「「グォォォォォォォォォォォオオオオオ!!!!!」」

 

【タイタンズレイン】は大きな雄叫びとともに4本の腕に装備していた短剣を捨て槍と盾に持ちかえた。

 

「このまま押しきるぞぉぉおお!!!」

 

一斉攻撃を開始した。プレイヤー達は防御を考えず、ダメージを与えることしか考えていなかった。

 

「【タイタンズレイン】のHP、残りわずかです!」

 

「ここまでHPを減らしたのは初めてだな。よし、このまま・・・ん?なんだあれは!【タイタンズレイン】の様子がおかしいぞ!」

 

【タイタンズレイン】の身体が青白く光はじめた。クラウスは何かの異変に気付き、相手の能力を解析出来るスキルを使った。すると、驚愕のことに気がついてしまったのだ。

 

「これはまずいぞ。ステータスが上がっている。直ちに防御系スキルを発動させろ!強力な全体攻撃が来るぞぉぉおお!!!」

 

プレイヤー達は防御系スキルを発動させた。しかし間に合わず攻撃を喰らってしまった。

 

「くそっくそ!ここまでかよ!次こそは絶対に倒してやる・・・!!!」

 

ーーーこの場にいたプレイヤー達は戦闘不能になった。

 

◆◇ギルドにて◇◆

 

ここで俺に大きな問題が生じていた・・・。金がない!これではいい武器が買えず宿にと泊まることすら出来ない。まあ、冒険者になれば誰でも貰えるLv.1の鉄の短剣ならあるけど。でもこの武器は弱い、弱すぎるのだ。しかし、今はこれで迷宮(ダンジョン)に潜るしかほかならない。

 

「エマ。金がない」

 

「クエストでも受けたらいいじゃないですか」

 

「おいおい。この装備でダンジョンを潜るとか自殺行為だぞ」

 

「別、戦闘不能になっても生き返るんですからいいじゃないですか」

 

「そ、そうだな」

 

生き返るって分かってても戦闘不能になりたくねえな・・・。だって、怖いじゃん?こんなただの鉄くずでしかない武器なんだよ?せめて、何かの追加効果が欲しかったよ。でも、冒険者だから行くしかないよね。

 

「よし!クエスト掲示板を見に行こうか!」

 

・・・なにこれ。ほとんど上級者向けのクエストばっかりじゃん!俺みたいな下級者向けをクエストはないの!?

俺は掲示板にあるクエストを全て見渡した。しかし、1番簡単なクエストでもLv.3以上が対象のものしかなかった。

 

「これじゃ、俺なにもできないじゃん!てか、あえて聞かなかったけど、エマってLvどのくらい?」

 

「Lv.9ですよ」

 

な、なに!?Lv.9!?なにそれ、そんなのないわー。てっきり、俺みたいな駆け出し冒険者だと思っていたのに。俺は一つため息を漏らした。

 

「どうしたんですか?ため息なんてついて。もしかして私がタケルよりLvが高かったからショックだったんですかぁ?」

 

こちらをニヤケついた顔で見てくる。そうですよ!ショックですよ!Lvが高くて羨ましいんですよ!・・・なんて言えない。

 

「べ、別にそんなんじゃねぇし。ショック受けてねぇし」

 

「へぇー。本当ですかぁ?」

 

「ほ、本当だし!」

 

・・・いや、待てよ。よく考えてみればエマをクエスト連れて行けばいいじゃん!

 

「エマ。このLv.3以上対象の【リトルゴブリン】を5体討伐のクエストに一緒に行こうぜ!」

 

「別にいいですけど、全部タケル1人で倒してくださいね」

 

「おうよ!【リトルゴブリン】なんて俺1人で倒してやるよ!そうと決まれば1階層に出発だ!」

 

その後、俺は自分の無力さに改めて気付かされるのだった。

 

◆◇1階層にて◇◆

 

「えい!」

 

・・・やべ。全然攻撃が効いてないじゃん。よし、逃げよう!

俺は走った。しかし、【リトルゴブリン】も追いかけてくる。すると、俺の身体に激痛が走った。

 

「い、いてぇぇぇぇえええ!!!な、なにされたんだ!?」

 

「【リトルゴブリン】が石を投げただけですよ」

 

石を投げただけ?いやいや、そんなはずないだろ!あの痛みは半端じゃなかった!HPも相当減っちゃったよね・・・ん?1も減っていない!?おかしいだろ!

 

ーーーユニークスキル《苦痛の加護》が解禁されましたーーー

《苦痛の加護》とは、どんな相手モンスターの物理攻撃や魔法攻撃、あらゆる攻撃を全て無効化にする。しかし、攻撃を無効化する代わりに通常の痛みの何倍もの痛みが襲ってくる。

 

「やったー、ユニークスキルが解禁されて嬉しい・・・って全然嬉しくねえわ!なにが加護だ!全然加護になってねぇじゃんか!」

 

「クスクス。タケル良かったですね!ユニークスキルが解禁されて!」

 

「笑ってんじゃねぇよ!そ、そんなことより助けてくれぇぇぇぇえええ!!!」

 

エマの助けにより無事にクエストをクリアすることができた。

【リトルゴブリン】5体の討伐完了。報酬1500ゴールドを獲得した。

 




ご視聴ありがとうございます( ^ω^ )


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07話 新たなクエストを

ご静聴のほどよろしくお願いします!


モンスター討伐を終え、ギルドに戻って来た俺達は新たなクエストを求め、掲示板を見た。

 

「んー、やっぱり難しいのしかないな」

 

「そうですね」

 

俺は頭をポリポリとかいて「これはどうしたものか」と悩んでいた。すると、窓口受付嬢のエイミーさんがこちらへと近づいて来た。

 

「どうしましたか、タケルさん」

 

「えー、難しいクエストしかないもので悩んでいるところです」

 

そう言うと、エイミーさんは一旦持ち場へと戻り、ゴソゴソと書類等を見てみる。なにかを見つけたのかこちらに戻って来た。

 

「これはいかがでしょうか」

 

「内容はなんですか?」

 

エイミーさんはクエストの内容について話しはじめた。

 

「えーっとですね。リトル・グランドベアーを5体討伐という内容ですね」

 

まだ、冬眠から覚めたばっかりで空腹のため、凶暴ではあるが、非常に弱っている。

リトル・グランドベアーは名前通り小さい熊だが、普段は温厚であり、単体行動が多い。しかし、危険を察知してしまうと凶暴化してしまう。そのため、冒険者たちは不意打ちという形で討伐をする。

 

「これなら、俺でも出来そうですね」

 

「でも、ひとつ問題点があるんです・・・」

 

エイミーさんは少し深刻な顔をしている。

俺は若干のキメ顔で「どうしましたか?キリっ」みたいな感じで答えた。

エイミーさんはどう対処していいものか悩んでいる。

しかも、エマからの視線が痛い。

俺は恥ずかしさのあまり冷や汗が半端なく出た。

気を取り直し、俺は「どうしましたか」と答えた。

 

「普段は不意打ちという形で倒せるのですが、現在のリトル・グランドベアーは周りに異常なほど敏感でして、不意打ちはほぼ不可能です」

 

・・・え?じゃあ、無理じゃね!?と思っている俺に対して、

 

「その依頼やります!」

 

と答えるエマ。

 

「おい、エマ。ちょっといいか」

 

「え?なんですか」

 

そう言うと、俺はギルドの隅にエマ連れて行った。

 

「おい、なぜ受けた」

 

「だって、簡単そうじゃないですか」

 

「俺にとっては簡単じゃないんだよぉぉおお!!!」

 

俺は必死にエマに訴えかけた。しかし、

 

「いいじゃないですか。タケルはどうせユニークスキルのおかげでダメージ受けないんですから」

 

と、最もな意見で対抗してくる。

だか、ここで諦めたら男の名がすたる!!!!俺はそう思った。

 

「だ、だって、痛いだもん・・・」

 

「タケルさん」

 

「ん?」

 

「女々しいですね!」

 

この一言で俺の内なる魂に火がついた。

 

「なっ!!そのクエストやってやろうじゃないのぉぉおぉぉおお!!!」

 

少し、声が裏返った。

エマが「ふっ」と笑った。

 

「・・・タケルはチョロいですね」

 

「お、おい。今、聞き捨てならんこと言ったよな!?」

 

「いいえ、言ってませんけど」

 

「いや、言ったね!だって、俺の男テレパシーにビンビンと反応したぞ!」

 

「気のせいじゃないですか?」

 

「気のせいじゃなぁぁぁあああい!!!」

 

その後、このようなやり取りが数分続いた後、俺たちは迷宮(ダンジョン)の2階層へと潜った。

 




ご視聴ありがとうございます!


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08話 新たな仲間

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺たちは迷宮(ダンジョン)の2階層に到着した。

 

1階層とは違って湖が多いエリアだ。

ここにしかいないモンスターもいるようだ。

 

「エマ。リトル・グランドベアーはここの近くにいるのか?」

 

俺は辺りを見渡した。しかし、全くいる気配がないどころか、湖ばかりだ。

 

「ここにはいませんよ。周りが湖だらけなので」

 

「じゃあ、どこにいるんだ?」

 

「ここよりもっと奥にあるエリアに生息していますよ」

 

どうやら、この奥にあるらしい。

ここから先は湖がないエリアになってくる。

 

水分補給が必要になってくるので近くの湖で水の調達をした。

ここの水は小回復効果がある。

 

その後、奥へと進んだ。

 

奥へと進んだところで・・・

 

「きゃぁぁぁぁぁぁああ!!!」

 

と、悲鳴が聞こえた。

俺たちは急いでその場所へと向かった。

 

そこには、モンスターに襲われている女の子の姿があった。

しかし、俺の能力では勝てるはずがない。

どうすればいい、と考えていると

 

《ユニークスキル「大天使のご加護」を獲得に成功しました》

 

なんだ?「大天使のご加護」って。

ええい!!そんなこと考えている時間がない!

俺は夢中でそのユニークスキルを襲われている女の子に向けて使った。

 

すると、女の子の周りが光り輝くオーラに囲まれた。

 

どうやら、「大天使のご加護」というユニークスキルは対象とした生物を魔法や物理攻撃等を無効化するらしい。

 

「苦痛の加護」の反対バージョン?みたいな感じか。

 

その後、エマがモンスターを片付けた。

 

「助けてくれてありがとうございます」

 

「どうってことないですよ」

 

俺はすごくいい気分になった。

 

「お強いんですね」

 

「いえ、そんなことないですよ」

 

頭を掻き、ニヤニヤとしながら言った・・・、

って、えぇぇぇえええ!!!!

その女の子は俺に対して「お強いんですね」と言ったのではなく、エマに言っていたのだ。

 

恥ずかしさのあまりの女の子の顔が見れない。

 

まぁ、別に、モンスターを倒したのは俺じゃないし、気にすることない、うん、気にすることない。と自分に言い聞かせた。

 

「そこの殿方は?」

 

「あぁ、この人はタケルと言って一応、このパーティーのリーダーです」

 

「・・・よろしく。ところで君の名前は?」

 

「あ、失礼しました。私の名前はアリス=ラヴェンツェです。気軽にアリスって呼んでくださいね」

 

「私の名前はエマ。よろしくね、アリス」

 

「はい」

 

俺たちは自己紹介を済ませ、何故、アリスがここでモンスターに襲われていたのか事情を聞いた。

 

「へぇー、大変だったんだね。じゃあさ、俺たちの仲間になりなよ」

 

「そうだよ、アリス」

 

「いいんですか?」

 

その問いに対し、俺とエマは「喜んで!」と口を揃えて答えた。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて・・・。これから、よろしくお願いします」

 

こうして、新たなパーティーメンバーが加わったのだ。




ご視聴ありがとうございます!


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09話 モンスター討伐の最中で

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺たちは、新しくパーティーに加わったアリスと共に「リトル・グランドベアー」を討伐するため、2階層の奥へと足を進めた。

 

徐々に湖がなくなり、本格的に砂漠化的な感じのところになった道を進んでいる。

 

「エマよ。あと、どれくらい進んだら「リトル・グランドベアー」はいるんだ?・・・この名前長いな。呼ぶの面倒臭いから「リトグラ」に改名しよう!うん、それがいい」

 

「リトグラですか。じゃあ、そのリトグラというのはもうすぐそこにいますよ」

 

「えっ?」

 

俺は前方を観た。

すると、体長約130cmの小型な熊がいた。

 

本当に小さいな。

元の世界のは体長2m越すのもいるからな。

よく見ると、小さくて可愛いものだな。

俺はそう思った。

 

「さぁ、「リトグラ」を討伐しようか・・・ん?」

 

討伐しようとしたが、すでに1人の冒険者が「リトグラ」と遭遇している。

俺たち以外に情報を持っている冒険者がいたとは・・・。

 

ーーん?あれ?

 

その冒険者は苦戦を強いられているようだ。

それもそうだよな、1人の冒険者に対して「リトグラ」は3体。

しかも、興奮のあまり狂暴化している。

このままではあの冒険者は確実に神殿送りにされるだろう。

少し考えた。

・・・よし、助けるか!

 

「エマ、アリス。あの冒険者を助けるぞ」

 

2人は「了解です」と答えた。

 

俺は、ユニークスキル「大天使のご加護」をあの冒険者に対して発動した。

その間、エマとアリスは「リトグラ」を片付けた。

 

その後、「リトグラ」との戦闘が終わり、あの冒険者の元へと向かった。

 

「怪我はないか?」

 

1人の男子冒険者だった。

 

「ふん。助けることなかったのに」

 

なんて生意気なんだ!

俺は少し腹が立った。

 

「・・・もう一度聞くが怪我はないのか?」

 

俺は再度、彼に聞いた。

 

「ふん。俺の右手に宿る〈漆黒の邪念(ダーク・インフェニティ)〉が炸裂するとき、この世界は混沌の闇へと堕ちるであろう。フフフ」

 

話、聞いてねぇし、

しかも、こいつ、やべぇ奴じゃね?

なに、漆黒の邪念(ダーク・インフェニティ)って。

エマとアリスもすげぇ引いてるし。

 

「我が名を聞くがいい。我が名は漆黒の闇を操りし者、〈デス・イン・ダークフレイヤー〉だ。いずれ、この世界を支配するものだ。覚えておくがいい、人間・・・とエルフ」

 

最後ぐらい、ビシッと決めろよ。

なにが、「覚えておくがいい、人間」だぁぁあ?

お前も人間だろが!!!

それに名前、です・いん・・・なに?

なげぇぇえんだよ!!!

まぁいい。

 

「その、です・・・なんちゃらさん」

 

「〈デス・イン・ダークフレイヤー〉だ!!」

 

「あ、はい」

 

・・・こいつ、めんどくせぇぇええ!!!

完全に厨二だよな!?

それ以上関わるのは骨が折れそうだ。

ここは退散しよう。「リトグラ」も倒したところだし。

 

「俺たちは用事も済んだので帰ります」

 

「ちょっと待てぇぇぇええい!!!」

 

俺は、「はぁ・・」とひとつ溜息を吐いた。

 

「なんでしょうか」

 

「お前たちとなにかの縁で結ばれているらしい」

 

こいつ、なに言って・・・。

 

「どうだ?俺と一緒に冒険をしようじゃないか」

 

「結構です」

 

俺たち3人は口を揃えてキッパリと言った。

 

「・・・え?そこは仲間にいれてくれる流れだろぉぉおお!!!」

 

「いいえ、そんなルールは存在しません」

 

「ふっ、まぁいいだろう。いずれお前たちとはまた会うことになるだろう」

 

どうやら、諦めてくれたようだ。

俺たちはもう貴方と二度と会いたくない。

↑ ↑ ↑

フラグ回収成立

 

「その時まで、我が名〈デス・イン・ダークフレイヤー〉を忘れるな!では、さらばだ!」

 

そう言うと、です・・・なんとかさんは走り去っていった。

嵐のような人だった。

 

俺たちはギルドへと戻った。

・・・大変な1日だった。

 




ご視聴ありがとうございます!


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10話 テリーヌの街

ご静聴のほどよろしくお願いします!


「エマさん、エマさん」

 

「なんですか?タケル」

 

「エマの家ってどこにあるんだ?」

 

「パンデモの街からひとつ山を越した〈テリーヌの街〉にありますよ」

 

「〈テリーヌの街〉とは一体どんな街なんだ?」

 

「言うのも面倒臭いので来てもらえれば分かりますよ」

 

「んじゃ、エマの家に行っても構わないってことですかい?」

 

「ええ、まぁ。別に構いませんよ」

 

「では、お言葉に甘えて行かせてもらうよ」

 

と、言うわけで俺たちはエマの家に行くことにした。

そのためには、山をひとつ越える必要がある。

 

当然、山にはモンスターも出現する。

例えば、木に化けてるモンスターとか昆虫型のモンスターとか・・・まあ、色々いる。

特に厄介なのが、どこにでもいるモンスターのスライムだ。

普通に戦ってちゃまず勝てない。

弱いからと侮(あなど)ってはいけない。

なぜなら、核を破壊しなければ倒せないからだ。

いくら、スライムを切り刻んだって核を破壊しなければダメ。

その核はひとつだけだが、どこに核があるのか分からない。

1匹1匹の核の場所が違うのだ。

まあ、とにかく面倒臭い相手なのだ。

 

今現在、山を越えている最中で、その面倒臭い相手のスライムと遭遇してしまっている。

 

「さてさて、どうしたものか」

 

「タケル、核を破壊しなちゃ倒せませんよ」

 

そうだよな。核を破壊しなきゃ倒せないよな。

どうしようか。

と、悩んでいると・・・

 

《ユニークスキル「物体透視」の獲得に成功しました》

 

ーーん?なにかユニークスキルを獲得出来たぞ?

なになに、「物体透視」とはスキルを発動することで相手の情報や獲得できるアイテム等が分かるようになる、か。

・・・いいユニークスキルじゃないか!

2回連続でいいユニークスキルに恵まれるとは!

さっそく、このユニークスキルをスライムに発動してみよう!!!

 

すると、スライムの情報が全て明らかになった。

 

すげぇぇぇええ!!!このユニークスキルすげぇぇぇええ!!!

めっちゃ見えるじゃん!!!

俺は情報をエマとアリスに伝えた。

 

「エマ、アリス。スライムの核は左下の地面に接してる部分にあるぞ!」

 

それを聞いたエマとアリスはスライムをなんなく倒した。

 

「そのユニークスキル、すごく便利ですね!」

 

アリスは興味津々だ。

 

「そうだろ!」

 

「はい!」

 

 

俺たちはスライムを倒した後、山を進んだ。

 

モンスターと遭遇はしたが、スキル等を使用して楽に倒した。

その後、エマの家がある〈テリーヌの街〉に無事に到着した。

 

「ここが〈テリーヌの街〉かぁー!」

 

俺は周りを見渡す。

すごく綺麗はところだった。

とても落ち着きのある街で、犯罪や殺人などが無さそうだ。

水や食料、資源が豊富だそうだ。

 

ーー凄くいい街だなぁ。

 

と、思っていると前方に大きい建物・・・いや、あれは城だ。とても大きな城だ。

 

「エマ。あの大きな城みたいな建物はなんだ?」

 

と、エマに質問をすると、驚きの返事が返ってきた。

 

「あの建物ですか。あれ、私の家です」

 

俺とアリスは「え?」と口を揃える。

 

そして、ポカン、としたままエマの家に向かったのだ。

 




ご視聴ありがとうございます!


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11話 自宅訪問

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺たちはエマの家がある〈テリーヌの街〉に着き、

目の前の大きな城みたいな建物がエマの家だと知り、

状況を理解できないまま、エマの家に行ったのだった。

 

「エマさん、エマさん」

 

「はい」

 

「本当にあの城みたい建物はエマさんの家なんですか?」

 

「何回言えば分かるんですか?私の家ですよ」

 

そう、俺はさっきからエマに対して何度も同じ質問を繰り返している。

 

同じことを何度も聞いているエマは少し答えるのに疲れている様子だった。

 

俺たちはエマの家の門まで来た。

すると、

 

「エマお嬢様、お帰りなさいませ」

 

「ただいま」

 

お嬢様!?うわ!ガチだったんか!!!

 

「ところでエマお嬢様。そちらの御二方は?」

 

「私のパーティー仲間です」

 

「ぱ、パーティー仲間ですか!?」

 

「そうだけど」

 

すると、その門番の人は急に泣き始めた。

 

「ど、どうした?」

 

「あの、内気なエマお嬢様にお仲間が出来るだなんて、このグランデ、凄く嬉しいです」

 

どうやら、嬉し泣きだったようだ。

それにあのエマが内気だったとは。

これはいいことを聞いたぞ。ぐふふふふ・・・。

 

「そ、そんな昔のこと、今言うんじゃなぁぁああい!!!!!」

 

エマは少し慌てているようだった。

 

「では、この中を案内させていただきます」

 

「い、いいです!私がこの2人を案内します!」

 

すると、グランデさんは「え?」と言っているような顔をしている。

 

「エマお嬢様。本気ですか?」

 

「ほ、本気です」

 

「未だに自分の家で迷うエマお嬢様が・・・」

 

「も、もう、迷ったりなんかしてないから!」

 

エマは俺とアリスを連れ、家に入っていった。

本当に大丈夫なのだろうか・・・。

「タケル、アリス。迷いました」

 

・・・俺たちは迷った。

 

「おいおいおい。迷ったってどういうことだよ!」

 

「いや、そのぉー。大丈夫だと思っていたんですけど」

 

どうやら、エマは少し見栄を張っていたようだ。

 

「エマさん。これからどうするんですか?」

 

エマは少し考えた後、

 

「とりあえず、メイドさんたちが所々に歩いているので見つめましょう」

 

ーーやっぱり、大きな家だけにメイドさんも雇っているのか。

なんて羨ましいんだ!!!!!俺も雇いたいよ!!!!

 

少し歩いたら、メイドさんに出会った。

 

「エマお嬢様!どうなされましたか?」

 

「ちょっと迷っちゃって・・・」

 

「見栄を張るから迷うんですよ!」

 

「は、はい」

 

雇っているメイドさんに叱られているエマお嬢様。

立場が逆転しているな。

 

「エマ、そのメイドさんは?」

 

すると、こちらに気づいたメイドさんは自己紹介を始めた。

 

「あ、申し遅れました。私の名前はアイリ=ランディアと申します。ここの邸のメイドをしております。何卒(なにとぞ)よろしくお願い致します」

 

丁寧な自己紹介だった。

俺も負けじと・・・。

 

「お、俺の名前はタケル=オオノって言います。こ、こ、こ、こちらこそよろしくお願いします」

 

ーーやべ。すげぇ噛んじゃった。

クスクス、とアイリさんに笑われてしまった。

は、恥ずかしい。

 

「私の名前はアリス=ラヴェンツェです。よろしくお願いします」

 

俺とアリスは自己紹介を済ませた。

そして、メイドのアイリさんは「旦那様のところまで案内します」と言い、連れていった。

 

 

「旦那様、エマお嬢様とそのお仲間達を連れて参りました」

 

「ご苦労様。入っていいぞ」

 

アイリさんは扉を開けた。

 

「エマ、おかえり」

 

「パ、パパ!ただいま!」

 

パパ?

 

そう言うとエマはパパさんに抱きついた。

とても嬉しそうに見えた。

 

どうやら、エマはお父さんが大好きのようだ。

エマの変わった一面が見れて良かった。

普段はしっかり者のイメージが強いから、

こんな一面を見ると少し安心する。

まぁ、少し「えっ!?」って思ったけど。

 

・・・でも、良かった!

エマも可愛いところあるじゃないか!

と、思った俺だった。

 




ご視聴ありがとうございます!


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12話 自宅訪問 その2

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺たちはエマの家に来ている。

そこで、エマの普段とは違う可愛らしい一面を見れて満足している俺だった。

 

 

「エマよ。元気にしていたかい?」

 

「元気にしてたよ!パパ」

 

久しぶりの再会を喜んでいるようだった。

そして、何気ない父と娘の会話が続いている。

俺とアリスはそれを聞き、凄く暖かな気持ちになっていた。

 

「ところでエマ。そこの御二方を紹介しておくれ」

 

「・・・御二方?」

 

エマはゆっくりとこちらを見た。

凄い顔をしている。

どうやら、我にかえったようだ。

俺とアリスはエマに温かい視線を送っていた。

・・・すると、

 

「い、い、今のこと忘れてください!!!!!」

 

凄く焦っているようだった。

 

「いいじゃないの。小さい子供みたいで可愛かったぞ」

 

「そうですよ、エマさん!」

 

俺とアリスは温かい視線を送り続けた。

次第にエマの顔がトマトのように赤く染まっているのが分かる。

 

「お、お願いだから本当に忘れてください!!!!!」

 

と、エマは言ってくるが俺とアリスは口を揃えて

「無理です!」

と、答えた。

 

当然、忘れるはずがない。

だって、こんなエマの姿見たくても普段は見れないからね。

トマトのように赤く染まっているエマを見て俺とアリスはニコニコ・・・いや、ニヤニヤしていた。

 

すると、

 

「エマよ。見られたものは仕方がない。だから、その御二方の紹介をしておくれ」

 

と、エマの父親が言った。

 

「分かりました。パパ・・・お父様が言うのであれば」

 

ん!?今、言い直したよね!!!?ね!!!

 

「右からタケル、アリスです。私のパーティーメンバーです」

 

「そうかいそうかい。あのエマに仲間が出来るなんて私は嬉しい限りだ」

 

エマの父親も嬉し泣きをした。

 

「もう、パ・・・お父様、泣かないでよ!」

 

エマのやつ、また言い直したぞ!!!

素直に「パパ」と言えばいいじゃないか!!!

そっちの方が可愛げがあるのに!!!

俺はそう思っていた。

 

「すまないね。では、私の自己紹介でもしようか。私はグラン=ヴィクトリアだ。この〈テリーヌの街〉を治めている」

 

この〈テリーヌの街〉を治めている!?!?

エマの父親、すげぇぇええ!!!まじすげぇぇええ!!!

じゃあ、目の前にいるグランさんはこ、国王様ってこと!?!?!?

そうなると、エマは・・・お、お、王女様!?!?!?

俺はびっくりして腰が抜けそうになった。

 

マジやばいよ・・・。

エマと初めて会った時、胸を何度も揉んじゃったよ・・・。

もし、これがバレたら、俺、死刑!?!?

俺は急に焦りだした。

 

どうしよう、どうしよう・・・、と思っていると、

 

「タケルくんとアリスさん、一緒に食事でもどうだ?」

 

と、グランさんから食事の誘いを受けた。

 

しょ、食事!?!?

きっと、豪華なものが沢山出てくるのだろう。

俺は想像しながら、ヨダレを垂らした。

 

・・・いやいや、ここでOKを出したら死亡フラグだ。

なんとしても断らなければ。

 

しかし、豪華な食事か。食べたい、食べた過ぎる...!!!

それに、エマの意外な一面を聞けるかもしれない。

だが、出会った経緯を聞かれることは避けられないだろう。その時は「死」あるのみだ。

んー、どうしたものか・・・。

 

俺は自分の中の自分に葛藤した。

 

そして、断ることにした。

不本意だが。

 

「ひ、久しぶりの家族団欒を邪魔してはいけないですし、俺とアリスは遠慮しておきます。な、アリス」

 

「え?」

 

「えっ?ってなに」

 

「私は食事に参加しようかと」

 

その時、俺は全身から滝のように汗が流れた。

きっと、「死」を悟ったからだろう。

 

「ほら、アリスさんもそう言ってることだし食事でもしようか」

 

「・・・はい」

 

チ、チクショー!!!!!

結局、断れず食事をすることになった。

 




ご視聴ありがとうございます!


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13話 自宅訪問 その3

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺はグランさんに食事に誘われるが、なんとか断ろうか試みた。が、結局、断ることができず食事に参加することになってしまった。トホホ・・・。

 

 

次々に目の前に豪華な料理が運ばれてくる。

俺は「美味そー」とか「どれから食べよう」とか考えている余裕がなかった。

どうにか、その話を避けようとあらゆる方法を考えていた。

 

「エマよ。このお仲間とはどのような経緯で出会ったのだ?」

 

さっそく、この質問が来たぁぁぁああ!!!

話をそらさねば・・・。

 

「えっとね、初めてタケルと出会った時、倒れているのを助けたら、突然、胸・・・」

 

「あぁぁぁあ!!!!」

 

「胸?」

 

俺は突然大声を上げた。

 

「きょ、今日は凄く天気がいいですねぇ!!!」

 

「えっ?曇っているけど」

 

えぇぇぇぇええ!!!

さっきまで雲ひとつない快晴だったのにぃぃぃいい!!!

ま、まさか、天気まで俺を見捨てたのか!?

 

「えっと、話に戻るけど突然・・・」

 

「こ、この料理凄く美味しいですね!!!」

 

「た、タケルさん!それ、皿食べてます!!!」

 

と、アリスが慌てて俺を止める。

俺はあまりの恐怖と不安により混乱していた。

まともな思考回路が出来ないでいる。

 

「タケル、大丈夫?」

 

エマがこちらを心配そうに見る。

そして、その話へと戻る。

 

「それでね、初めて会った時、胸を触られて」

 

あ、終わった・・・。

すると、グランさんの表情が豹変(ひょうへん)した。

そして、立ち上がり後ろにあった刀を取り出し、鞘(さや)から抜いた。

終わった。ここで死ぬのか・・・。

ーーん?あの刀の輝き、鋭さ、あれは正しく〈日本刀〉ではないか!

でも、「なぜ、この世界に〈日本刀〉が?」と疑問が生まれた。

 

「ぐ、グランさん!その刀、〈日本刀〉じゃないですか?」

 

すると、振り下ろされた刀は目の前で止まった。

 

「この刀を知っているのか?」

 

「はい、知っていますよ」

 

「そうかそうか」

 

といい、刀を鞘にしまった。

 

「どうして、グランさんがその刀を」

 

と聞いてみると、「少し長くなるがいいか」と言ってきたので、俺は「構いません」と答えた。

 

「あれは10年、いや20年程前の話だ。国王の仕事に飽きていた私は城を出て遠出したのだ。その時、「侍」という人に出会ったんだ。そして、色々と会話をし「日本」という国のことを知った。その時にこの刀を貰ったのだ。だが、いくら調べても「日本」という国がないのだ」

 

それもそうだ。

この世界には「日本」という国が存在するはずがない。

 

いや待て、グランさんの話が本当であれば俺以外の日本からの転生した者がいるってことになる。

是非、その人に会ってみたい。

 

「グランさん。実は俺も「日本」出身なんです」

 

「本当か!?」

 

「はい」

 

その後、会話が続いた。

無事に食事を終え、その日本人を探す手伝いを約束した。

まぁ、手伝いと言っても情報を提供するというものだ。

だから、旅路にはなんら影響はない。

 

俺たちはグランさんたちに別れを告げ、旅路へと戻った。

 

日本人がいる嬉しさと殺されなくて安心した瞬間だった。

 




ご視聴ありがとうございます!


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14話 俺(おっさん)のちょっとした幸福のひととき

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺たちはエマの自宅を出た後、ギルドへと戻り、クエストを受けるため掲示板を見ていた。

 

 

今回の掲示板のクエストの難易度はそれほど高くない依頼が多い。

そのためか、普段よりクエスト依頼を受ける冒険者が多く見受けられる。

 

「エマ。このクエストはどうだ?」

 

俺はあるクエスト依頼の内容を見せる。

 

「どんな内容ですか?」

 

「3階層にいるジンガってモンスターだけど・・・。んで、ジンガってどんなやつ?」

 

俺はエマに聞いてみた。

エマは「知らないで受けたんですか?」みたいな顔をして俺を見る。

 

「ジンガってモンスターは少し面倒くさい相手なんですよ」

 

俺は「なんで?」と首をかしげる。

 

「大きくて硬いんです」

 

えっ?

「大きくて硬い?」

俺は笑った。

 

それを見たエマは突然、顔が赤くなる。

そして・・・、

 

「そう言う意味じゃありませんから!」

 

とエマは言った。

俺は「はいはい」と返事をした。

 

「アリスはこのクエストでいいのか?」

 

俺は確認のため、アリスに聞く。

アリスは「大丈夫ですよ」と答える。

 

俺たちのパーティーは選んだクエストに全員一致で賛成しなければ受けられない。

これはエマが考えた案だ。

このおかげで一層、団結力が増したように感じる。

俺はこの案をとても気に入っている。

 

「じゃあ、このクエストを受けよう」

 

俺は窓口受付嬢のさんのところに持っていった。

 

「エイミーさん、このクエストを受けたいんですけど」

 

エイミーさんは書類の整理をやめ、ひょこっと顔を上げた。そして、そのクエストを確認する。

 

「このクエストですか。助かります」

 

そう言うと、承諾してくれた。

一体なぜ、「助かります」と言ったのだろうか。

俺は疑問に思ったが、大したことじゃないだろう、と聞かなかった。

 

「エマ、アリス。さっそく、3階層に向かおうか」

 

2人は「はい」と口を揃えた。

そして、俺たちは3階層へと向かった。

 

3階層に向かい途中、2階層で水を確保しておくことにした。

3階層は砂漠地帯だ。水が湧くところなんて当然ない。

そのため、水が大切になってくる。

 

◆◇3階層にて◇◆

 

「あっちぃー!」

 

「本当ですね。一体、何度あるのでしょうか・・・」

 

今現在の気温は42度になっている。

ここは最大で50度を超す時期もある。

だから、42度でも比較的涼しい。

 

ーー訂正。涼しいわけがない!!!なんだよ、42度って!!!

おかしい、おかし過ぎでしょ!!!

俺は汗が滝のように出る。

 

この猛暑の中、どれくらい歩いただろうか。

まだ、〈ジンガ〉とは遭遇出来ていない。

相変わらず、汗が止まらない。

 

俺は水を飲んだ。ごくごくごく・・・。

 

すると、エマも喉が渇いたのか俺に、

 

「その水、ください」

 

と言い、俺が口をつけたボトルで水を飲んだ。

 

か、か、間接キス!!!!

 

俺は突然の出来事により、エマを見続けていた。

 

「どうしたんですか?」

 

とエマが言うので、「な、なんでもない」と慌てて言った。童貞の俺は当然、間接キスなどという未知の領域なんぞやったことない。

 

俺たちは水分補給をした後、再び歩きはじめる。

すると、あることに気づいた。

 

エマとアリスのブラが透けている!!!!!と。

10代の女の子のこんなものを見れるなんて30代のおっさん、感激...!!!

でも、刺激が強過ぎ!!!と眼をそらした。

しかし、チラッと何度も見た。

俺の息子がビンビンに喜んでいる!!!そう感じた。

 

・・・ところでエマとアリスには俺は何歳だと思われているのだろう。

1度聞いてみるかな。

 

「エマ、アリス」

 

2人はこちらを振り向き、「はい」と答えた。

 

「俺って何歳に見える?」

 

俺は少しワクワク、ドキドキしていた。

すると、

 

「えっ?10代とかじゃないんですか?」

 

とエマが言うと、

 

「私も10代だと思いますけど」

 

アリスも同じような答えが返ってきた。

 

えっ?俺、そんな若返った!?

俺はなぜかカバンに入っていた手鏡で確認する。

 

ーーあらやだ。俺、結構イケてる男になってるじゃん!!!!

 

俺は自分の顔を見て満足した。

 

「どうして、そんな質問したんです?もしかして、10代に見えて実は中身は30代のおじさんだったり?」

 

「ま、まさか!!!」

 

俺は慌てて、適当に誤魔化した。

 

ーーな、なんて勘の鋭い子なんでしょう!!!

 

俺はそう思った。

 

その後、「ジンガ」を見つけるため歩き続けた。

 




ご視聴ありがとうございます!


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15話 「ジンガ」討伐

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺たちは「ジンガ」と遭遇するため、歩き続けた。

 

 

少し歩いた先に、不自然に砂が山のようになっている場所を発見する。

多分、これが「ジンガ」だろう。

砂に潜って眠っているのだろうか。

ピクリとも動かない。

 

「エマ。これがきっと「ジンガ」だよな」

 

「きっとそうです」

 

どうしたものか・・・。

エイミーさんが「助かります」って言っていた正体がわかった気がする。

これは多すぎる。

眼で確認出来る限り10体ぐらいいるだろう。

一体ずつ倒していくのがいいのだと思うけど、

きっと異変に気付いた「ジンガ」たちは群れとなり、

襲ってくることも考えられる。

大きくて硬く、それに厄介だ。

このまま、帰るのもいいが

せっかく暑い中、ここまで来て収穫ゼロというのもなんだか気が引ける。

俺はその場に座り込み、考えた。

一体どうすれば「ジンガ」を倒せるのかを。

 

「いつまで考えてるんですか?」

 

エマがそう聞いてくる。

あれから10分もの間、考え込んでいる。

でも、これといった策が生まれてこない。

 

ーーうーん。どうすればまとめて倒すことができるか。

いっそ、俺1人で倒せばいいのでは?

ダメージ受けないんだし。

そう考えるようになっていた。

 

ーーでもな、ユニークスキルのおかげでダメージ受けないっていうけど、すげぇ痛いんだよね。

 

あれこれ考えていると、さらに10分が経過した。

考え過ぎて俺の精神が崩壊寸前だった。

 

- ユニークスキル 《無音(ノーノイズ)》の獲得に成功しました -

 

ユニークスキル 《無音(ノーノイズ)》?

なになに・・・、

このユニークスキルはフィールド全体に存在する全てのモンスターに気づかれず行動することができる。

それにフィールド全体に存在する全てのモンスターを倒し切るまでそれは継続する。これは仲間にも使用することが可能、というものだった。

 

ほぉほぉ。これは使える。

俺はそう思った。

 

「エマ、アリス。倒しに行こう」

 

「一体どうやって」

 

「そうですよ。あんなに多いのに」

 

俺は自慢げに答える。

 

「ユニークスキル《無音(ノーノイズ)》を使えばなんとかなる!」

 

根拠はないが、自信だけはあった。

 

「新しいスキル、手に入れたんですね」

 

「うむ、さぁ、作戦を伝えるな」

 

俺はエマとアリスに作戦を伝える。

作戦はこうだ。俺が「無音(ノーノイズ)」の味方に対して発動をする。そして、Levelupによるポイントで事前に習得しておいた2つのスキルのうちの1つの「防御低下(アーマーブレイク)」を敵に発動して、防御を低下させる。

そして、もう1つのスキル 「吹雪(フリーズ)」を用いて攻撃する。エマとアリスにも攻撃をしてもらう。

 

これが作戦1だ。

作戦2は・・・逃げる!!!!!だ。

 

よし!作戦1を実行だっ!!!!!

 

俺たちは「ジンガ」に攻撃を仕掛けた。

思うように作戦が上手くいった。

上手くいき過ぎて怖いくらいだ。

10体いた「ジンガ」は簡単に片付いた。

 

ーー俺たち、結構強いんじゃね?

 

俺はそう思っていた。

そして、クエストを達成したので、ギルドに戻ろうとした。

しかし、その瞬間に巨大なモンスターが現れた。

これはまずい、と思った俺たちは走って逃げた。

暑いエリアを一生懸命走った。

そして、無事にギルドに着いた。

・・・一体、あのモンスターの正体はなんだったのだろうか。

 




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16話 正体

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺たちは「ジンガ」を倒した後、その帰る途中に謎の大きなモンスターに出会った。危険と感じた俺たちはその場を走って逃げることにした。そして、無事にギルドに着くことができたのだった。

 

 

あそこから走ってきたので、喉の渇きと息切れが想像を絶するものだった。

急いで、水分補給を済ませ、ギルドの椅子に座った。

様子がおかしいことに気付いた窓口受付嬢のエイミーさんがこちらに近づいてきた。

 

「どうしたんですか?そんなやばいものを見た!っていう顔をして」

 

そうエイミーさんが聞いてくるので今まであった出来事を説明することにした。

 

「〈ジンガ〉を倒した後、ギルドに戻ろうとした時、巨大なモンスターと遭遇したんですよ。あれは一体なんなんですか?エイミーさんなら知っているはずじゃないんですか」

 

俺はエイミーさんに説明をした。

すると、少し間を空けた後、受付のところに戻っていった。

そして、

 

「こっちに来てもらってもいいですか?」

 

というのでエイミーさんの元に向かった。

エイミーさんは1つの紙を取り出した。

それはモンスター討伐の紙だった。

よく見ると、国家を挙げてのモンスター討伐依頼だった。

 

「こ、これって」

 

「はい、そうです」

 

その紙には、先ほど出会った巨大なモンスターの写真が載せられていた。

このモンスターはいろんな階層に出現するため、初心者の冒険者の巣窟である1〜5階層に出現する可能性がある。

その証拠に俺たちは3階層でこのモンスターと遭遇した。

 

危険度はAA。AAとは1つの核爆弾に相当するレベルだ。

 

「エイミーさん、このモンスターの名前は」

 

俺は恐る恐るモンスターの名前を聞く。

 

「〈ジャイアント・トライド〉です」

 

その名前を聞くと、ギルドにいた冒険者たちが騒ぎはじめた。

 

「とうとう3階層に出やがったか」

 

「これじゃ、迂闊(うかつ)に迷宮(ダンジョン)に潜ることすら出来ない」

 

みんなの不安が募る。

すると、チリンチリンと、ギルドの扉が開け、4人の冒険者が入ってきた。外見からして強そうな感じがした。

 

「〈ジャイアント・トライド〉が出たというのは本当か」

 

4人の中の1人がエイミーさんに尋ねた。

エイミーさんは「えぇ、まぁ」と答える。

 

俺は冒険者に対してもユニークスキル〈解析〉が使えるのは疑問に思った。

ものは試しと思い、使ってみることをした。

どうやら、このユニークスキルはモンスターだけではなく、冒険者に対してでも使えるらしい。

 

次々と4人の冒険者の能力が判明した。

Lv.は大体20代前半で、ヒーラー、タンク、アタッカー、というバランスのとれたパーティーになっている。

 

俺はこれなら勝てるんじゃね!?

とそう思っていた。

すると、

 

ーユニークスキル〈確率〉の獲得に成功しましたー

 

と、俺の脳に直接聞こえた。

なんだなんだ?と思い、ユニークスキルを確認する。

〈確率〉?

一体、どんなスキルなのだろうか。

このスキルは、勝敗など確率を調べることができるというものだった。

 

俺は、このスキルを使って4人の冒険者と〈ジャイアント・トライド〉の勝敗を調べることにした。

 

- 99.999.....%の確率で冒険者たちは負けます -

 

という結果が出た。

 

おれはまずいと思い、伝えようとするが自信満々の姿を見て伝えることが出来なかった。

これは、俺たちが倒すしかないと思い、〈確率〉に調べた。

 

- 100%の確率で貴方たちのパーティーの勝ちです -

 

という結果が出た。

この結果を見てすぐ、エマとアリスを連れ、〈ジャイアント・トライド〉の討伐に向かった。

あの4人の冒険者たちに討伐される前に。

 




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17話 モンスターとの会話

ご静聴のほどよろしくお願いします!


あの大きなモンスターの正体が分かり、討伐に向かった俺たちだった。

 

とりあえず、〈ジャイアント・トライド〉と遭遇した3階層の砂漠地帯エリアまで行くことにした。

 

ーーまた、あの暑いところを進むのか。トホホ・・・。

 

と思いつつ、進んだ。

暑いが1回通った道であったのでなんなく着いた。

俺たちは物陰に隠れ、〈ジャイアント・トライド〉のいた地点を見てみると、やはり移動したようでいなかった。

この近辺をうろついていると思い、もう少しこのエリアの探索した。

あれから、1時間以上が経過したと思う。

未だに〈ジャイアント・トライド〉とは遭遇出来ていない。

それに、水分補給のため持ってきていた水もとうとう無くなってしまった。

俺たちは仕方なく2階層まで戻ることにした。

2階層へと戻り、水を確保した。

・・・ん?なにやら、見覚えのある大きなモンスターが湖の水を飲んでいる。

ゆっくりと近づいてみる。

・・・やはり、〈ジャイアント・トライド〉だった。

俺たちはすぐに戦闘準備をした。

そして、整ったと同時に1.2.3の掛け声で〈ジャイアント・トライド〉の前へと出た。

 

俺は不意をつく形で〈ジャイアント・トライド〉に襲いかかった。

斬りかかったと同時に「痛ッ」という声が聞こえた。

俺は、エマとアリスになにか異常があったのか振り向いてみるが、特になにもなかった。

あれ?おかしいな、と思いつつ、再度、〈ジャイアント・トライド〉に斬りかかろうとする。

・・・すると、

 

「私ハ、貴方タチト戦ウ意思ハアリマセン」

 

〈ジャイアント・トライド〉が喋った!?

そんなことあるはずがない。モンスターが喋るなんて。

俺はさらに斬りかかろうとしたが、

 

「ヤ、ヤメテクダサイ」

 

と、〈ジャイアント・トライド〉の方から聞こえる。

やはり、喋っているのは「ジャイアント・トライド」のようだった。

俺は、念のため、周りにスピーカーとか遠距離から音を出すことができるものがないか探してみた。

だが、この異世界にはそんなもの存在するはずがなかった。

周りを不自然にキョロキョロしていた俺を疑問に思ったのかエマが「どうしたんですか?」と聞いてきた。

一応、エマに「何か声聞こえなかったか?」と聞いてみたが「なにも聞こえませんよ」と返事が返ってくる。アリスにも同じ質問をするが返ってくる言葉は一緒だった。

どうやら、俺にしか聞こえないようだった。

 

- ユニークスキル 〈会話術〉 の獲得に成功しました -

 

なにやら、ユニークスキルの獲得に成功したようだ。

俺はユニークスキル 〈会話術〉 の効果を見てみることにした。

このスキルはモンスターとの会話を可能にできる。だが、このスキルが適応するモンスターは魔力が高く、また知能の高いモンスターに限る、という効果だった。

 

なるほど、このスキルのおかげで〈ジャイアント・トライド〉と会話が出来ていたのか。

 

俺はいいことを思いついた。

その内容は、このスキルを使用して〈ジャイアント・トライド〉と会話でもしようじゃないか、というものだ。

案の定、〈ジャイアント・トライド〉には戦う意思がない。上手くことを丸め込めば、この場から引いてくれるだろう。

そう思った俺は〈ジャイアント・トライド〉とお話をすることにした。

 

俺は初めてのモンスターとの会話にワクワク、ドキドキしていた。まるで、子供が欲しかったものが手に入ったかのように。

 




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18話 寂しがり屋さん

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺はモンスターと会話が出来るユニークスキル 〈会話術〉を獲得し、〈ジャイアント・トライド〉と話し合いをすることを決意したのだった。

 

 

〈ジャイアント・トライド〉はその場に座り込んでいる。

本当に敵対したい訳じゃないらしい。

ならば、なぜ、初心者の冒険者の巣窟である1〜5階層まで下りてきたのかを聞く必要があった。

一体、どうしてなのだろうか。

 

「はじめまして、タケルって言います」

 

俺は手始めに自己紹介をしてみた。

本当にモンスターとできるのか、未だに半信半疑だった。

 

「私ハ、〈ジャイアント・トライド〉ト言イマス」

 

やはり、会話が出来る。

はっきりとその声が聞こえた。

 

ーーそれにしても丁寧な自己紹介だな。

普通は偉そうに、語尾に〜ダ、とか言いそうだけど。

まぁ、そんなのはどうでもいいか。

 

その光景を見ていたエマとアリスは不思議に思ったのだろう。俺に、

 

「なに、独り言してるんですか」

 

と聞いてきた。

それもそうだろう。

普通はモンスターとの会話は出来るはずがない。

エマとアリスには独り言に見えているようだった。

 

・・・モンスターと会話している、なんて言ったらどう思われるのだろうか。信じて・・・くれるはずはないか。

まぁ、言っとくだけ言っとこう。

 

「・・・独り言じゃなくてモンスターと会話してるんだよ」

 

エマとアリスは「えっ?」みたいな表情をしている。

やはり、信じてくれな・・・、

 

「す、すごいじゃないですか!」

 

えっ?

 

「そうですよ。すごいです!」

 

 

えっ?えっ?

 

「信じてくれるのか?」

 

「もちろんですよ!」

 

2人は口を揃えて言った。

どうやら、信じてくれたらしい。

 

「本でモンスターと会話している人はいたって聞いたことあるけど、本当に存在するんですね!」

 

その後もこの話で盛り上がり、何十分経過した。

俺たちはなにか忘れてるようだったけど気にしなかった。

・・・すると、

 

「・・・アノー」

 

俺は振り向いた。

こちらを〈ジャイアント・トライド〉が困った表情で見つめている。

俺ははっとした。

そして、〈ジャイアント・トライド〉との話し合いに戻った。

 

「そ、それで、〈ジャイアント・トライド〉さんはなぜ、この階層に下りてきたんですか?」

 

〈ジャイアント・トライド〉は語り始めた。

 

「私ハ、普段、モット上ノ階層ニ住ンデイルノデスガ、誰モソノ階層ニ来ナクテ、寂シクテツイココマデ来テシマイマシタ」

 

〈ジャイアント・トライド〉は寂しがり屋さんだった。

みんなが思うような凶悪なモンスターではなかった。

だが、その大きな身体に鎧のような肌のせいで我々、冒険者に恐れられてしまったようだ。

 

外見で人を判断してはいけない。

まさにこのことを言っているかのようだった。

 

「でも、冒険者たちが怯えてますよ」

 

「ソンナコト分カッテマス、デモ、冒険者タチト触レ合イダケナンデス」

 

あ、そうか。

〈ジャイアント・トライド〉は冒険者たちのことが好きなのか。

そうなると、なんだか可哀想だな。

・・・よし!

俺はあることを決意する。

これはどちらにもプラスになる解決策とも言えるだろう。

それは・・・、

 

「〈ジャイアント・トライド〉さん!」

 

「ハイ」

 

「俺たちと友達になりましょう!!!」

 

という簡単な解決法だった。

 




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19話 認識を変える

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺は実は冒険者が好きで外見に似合わず、温厚な性格をした〈ジャイアント・トライド〉とお友達になることを決意したのだった。

 

 

「〈ジャイアント・トライド〉さん!俺とお友達になりましょう!!!」

 

俺はニコッとして手を差し伸べた。

すると、〈ジャイアント・トライド〉は、

 

「ハイ!喜ンデ!!!」

 

と俺の差し伸べた手をギュッと固く握った。

 

「痛いですよ」

 

俺は笑いながら言った。

〈ジャイアント・トライド〉は「ゴ、ゴメンナサイ」と頭を深々と下げ、謝った。

こうして、俺と〈ジャイアント・トライド〉は友達になった。

こんな強力なモンスターが友達になってくれて、とても心強かった。

あ、今思えば、ユニークスキル〈確率〉が勝てる割合は100%って言っていた理由が分かった。

こういうことだったのか!と、俺は1人で納得をしていた。

あの4人組の冒険者が相手だったらこうはいかなかっただろう。

 

「・・・タケル」

 

エマが後ろから耳元に小声で話しかけてくる。

耳元に話しかけてくるのでとてもくすぐったかった。

しかも、エマの声はなんだかエロい!

だから、少し興奮してしまったじゃないか!!!!!

 

「なっ・・・なんだっ!?!?」

 

「・・・〈ジャイアント・トライド〉とはどうなったんですか?」

 

エマは〈ジャイアント・トライド〉の方をチラチラ見ながら言ってくる。

不安そうな様子だった。

 

ーーあっ、そうか。

俺以外、〈ジャイアント・トライド〉の声が聞こえないのか。

 

「大丈夫!!!ちゃんとお友達になれたから!!!」

 

俺はエマたちを安心させるため、自信満々に答えた。

すると、エマたちはホッとした様子だった。

 

・・・さて、これからどうしたものか。

まずは、冒険者たちの〈ジャイアント・トライド〉に対する認識を変える必要がある。

これをどのようにするかが問題だ。

「実は〈ジャイアント・トライド〉は優しい性格でしたぁ!」

・・・なんて、言っても絶対に信じてもらえるはすがないだろう。

 

俺は少しの時間、どのようにして優しい〈ジャイアント・トライド〉のことを伝えるかを考えた。

 

・・・手荒な方法だがこれしかない。

 

考えた末、俺は1つの案に辿り着いた。

 

「〈ジャイアント・トライド〉さん!」

 

「ハイ」

 

俺は〈ジャイアント・トライド〉にある頼み事をした。

その内容というものは・・・、

 

「この周辺にいるモンスターを狂暴化することは可能ですか?」

 

「可能デスヨ」

 

この周辺にいるモンスターを狂暴化させることだった。

だんだん、あの4人組の冒険者たちがこの場へと来るだろう。

そして、その狂暴化したモンスターをその4人組の冒険者たちと遭遇させる。

狂暴化しているため、ステータスも跳ね上がっている。

そのため、勝てる保証はないに等しいだろう。

苦戦しているときに、ヒーローの如く〈ジャイアント・トライド〉が参戦し助ける。

その光景を見た4人は認識を改めてくれるに違いない。

その後、4人は街に帰り、街中にこのことを広めてくれるだろう。

そうすれば、街の人々は実は〈ジャイアント・トライド〉は凶悪なモンスターじゃないことに気づき、受け入れてくれる。

これが、俺の考えだ。

きっと、上手くいく。と俺はそう信じた。

ユニークスキル〈確率〉で結果を調べようとしたが、

 

- 私はバトルの勝敗しか割合を出すことは出来ません。そのため、このような判断することはできません -

 

という、返事が返ってくるだけだった。

そのため、この作戦の結果はどうなるか分からない。

 

ーーきっと、上手くいく。

 

俺はそう信じた。

早速、取りかかるため、〈ジャイアント・トライド〉とエマ、アリスに作戦を伝えた。

 

ーーさぁ、作戦を開始しようか。

 

・・・かっこよく言ってみたはいいけど、

すごく恥ずかしい。

 

俺はその恥ずかしい感情を抑え、作戦を実行した。

 




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20話 認識を変える その2

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺たちは〈ジャイアント・トライド〉に対する冒険者たちの認識を変えるため、ある作戦を実行したのだった。

 

 

「〈ジャイアント・トライド〉さん。準備は出来ましたか?」

 

これは岩の陰に隠れた。

 

「出来マシタ」

 

「じゃあ、早速お願いします」

 

俺がそう言うと〈ジャイアント・トライド〉は周辺にいるゴブリン、6体を魔法を使い狂暴化させた。

すると、ゴブリンたちは我を失った。

今にも誰かに襲いかかってきそうだ。

そして、近くに冒険者の声がした。

複数いる。きっと、あの4人組の冒険者だろう。

少し手荒になってしまうが、〈ジャイアント・トライド〉のためだ。そう俺は自分に言い聞かせた。

 

その後、ゴブリンたちはその4人組の冒険者を見つけ襲いかかった。

4人組の冒険者は油断していたのか、突然のことに驚き、自分を見失いかけている。

予想通り、今にもやられそうな勢いだった。

俺はそれを見て〈ジャイアント・トライド〉に合図をおくった。

合図は右手を振り上げるという簡単なものだ。

〈ジャイアント・トライド〉はその合図を確認すると4人組の冒険者の前へと走り、そして、ゴブリンたちをあっという間に蹴散らした。

やはり、〈ジャイアント・トライド〉は凄まじい魔力と腕力を持っていた。

 

4人組の冒険者は何が起きたか状況を理解出来ていなかったが、

これだけは分かっていた。

この〈ジャイアント・トライド〉が俺たちを助けた、と。

 

すると、4人組の冒険者は〈ジャイアント・トライド〉へと認識を変えはじめた。

そのうちの1人の冒険者はこう言う。

「なぜ、この心優しい〈ジャイアント・トライド〉が国家を挙げての討伐モンスターなんだ!」

と。

さらに続けてもう1人がこう言う。

「これは〈ジャイアント・トライド〉への認識を改める必要がある!急いで街へと戻り、全ての人々にこのことを伝えねば!」

と。

 

これで全ての人々は認識を改めてくれるはずだ。

でも、あの4人組の冒険者を襲ったのはある種、俺なのだ。

・・・心が痛い。

だが、これで〈ジャイアント・トライド〉が救われる。

 

無事に作戦は成功した。

俺はホッとした半面、少し罪悪感が生まれた。

 

俺は〈ジャイアント・トライド〉に方を振り向いた。

すると、〈ジャイアント・トライド〉の眼には涙があった。

 

「おいおい。泣かないでください。〈ジャイアント・トライド〉さんには涙は似合いませんよ!」

 

俺は〈ジャイアント・トライド〉に涙を拭いさせるため、

ポケットからハンカチを取り出した。

 

「・・・ツ・・・ツイ、嬉シクテ。本当ニ有難ウゴザイマス・・・」

 

〈ジャイアント・トライド〉は俺が渡したハンカチで涙を拭った。

どうやら、喜んでくれているようだった。

 

「俺たち、友達になったんだから、今から敬語は無しにしよう!」

 

「ソ、ソウデス・・・ソウダネ」

 

その後、なんて呼び合うかを決めた。

俺は〈ジャイアント・トライド〉を〈トライド〉と呼び、

〈トライド〉は俺のことを〈タケル〉と呼び合うことにした。

 

 

「なぁ、〈トライド〉」

 

「なんだ?タケル」

 

俺はあることを決心した。

それは・・・、

 

「俺たちと一緒に旅をしないか?別に嫌っていうなら断っていいけど」

 

ということだった。

俺は〈トライド〉のことをあまり知らない。

どんなことをやるのが好きで、どんな食べ物が好きなのか・・・なにも分かっていない。

もし、一緒に旅を出来るのであれば、〈トライド〉のことを知りたい。

それに、もう1つ理由がある。

それは、例え、あの4人組の冒険者がこのことを伝えたとしても、まだ、恐怖心がある者は少なからずいるだろう。

俺たちと〈トライド〉の触れ合っている姿を見てもらえれば、その者たちにとってプラスになるだろう。

 

ーー 一緒に旅をすることは出来るだろうか。

 

すると、〈トライド〉はこちらを嬉しそうに見つめている。

そして、

 

「ゼヒ、ソノ旅路ヘト連レテッテクダサイ...!!!!」

 

交渉が成立した。

 

俺たちのパーティーに強くて冒険者想いの心優しいメンバーが加わった。

 

ーー でも、どうやって宿に止めようか。

この大きな身体を泊められるだろうか。

・・・ まぁ、いっか!なるようになるさ!




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21話 宿探し

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺たちのパーティーに〈トライド〉という強力なモンスターが仲間になり、新たな旅路へとスタートするのだった。

 

 

俺たちは〈パンデモの街〉へと戻ることにした。

もちろん、〈トライド〉も一緒だ。

 

パンデモの街へと戻ったはいいが、街の人々の視線が気になるな。

それもそうか。なんせ、国家指定の討伐モンスターの〈ジャイアント・トライド〉を連れているからな。

でも、逃げる人はいない。

どうやら、あの4人組の冒険者たちが上手く街中の人々に広めることが出来たようだ。

中には、〈トライド〉と触れ合いたい人もいるみたいだが、どう話しかけていいか分からないようだった。

俺はその人のサポートをすることにした。

 

「大丈夫ですよ。どんどん触れ合ってください」

 

そう俺が言うと少しずつではあるが、〈トライド〉と触れ合う人が出てきた。

そして、数分後、〈トライド〉の周りには人で溢れかえっていた。

街の人々は〈トライド〉のことを仲間として受け入れてくれたようだった。

〈トライド〉の表情は嬉しそうに笑みを浮かべていた。

俺はその表情を見て、改めて助けて良かったな、と思った。それから、数時間の間、触れ合いは続いた。

 

そして、次は難関の宿探した。

・・・だが、どこにも泊めてはもらえなかった。

理由はどこも一緒。

〈トライド〉が大き過ぎるという理由だった。

 

俺は困っていた。

〈トライド〉自身は野宿でも構わない、というがそうもいかない。だって、可哀想だもの。

座り込んで考えていると、

 

「おい。そこのお前」

 

と声が聞こえたので、顔を上げた。

そのにいたのは、王国の騎士王、ウィリアム=バルベルだった。

 

「王国の騎士王様がどうしてここに?」

 

俺はそう尋ねた。

大まかの予想はついていた。

きっと、〈トライド〉の件についてだろう。

 

「その〈ジャイアント・トライド〉をこっちに寄こしてもらおうか」

 

ーーやっぱりか。

もちろん、俺は断った。

 

だが、拒否権はない、と答えられ、〈トライド〉は連れていかれてしまった。

〈トライド〉は抵抗しなかった。

しかし、表情は悲しげだった。

俺はそれを見て、〈トライド〉の手を取ろうとしたが周りにいた騎士たちに阻止されてしまった。

 

・・・あれから3日ほど経った。

 

「エマ、アリス。〈トライド〉は殺されたのだろうか」

 

「きっと、大丈夫ですよ。タケル」

 

「そうです!タケルさん!だから、その・・・元気出してください!」

 

元気のない俺を2人は励ましてくれた。

俺はその励ましに対して、笑って「そうだな!」と返事した。

実際のところ、笑える状況じゃなかった。

エマとアリスも一緒だろう。

2人とも笑顔が引きずっている。

俺たちはギルドの椅子に座っていた。

座っているのも疲れたので、気晴らしに外に出ることにした。

 

俺はギルドの扉を開けた。

すると、目の前には〈トライド〉が立っていた。

 

「タダイマ、タケル」

 

俺は〈トライド〉の姿を見て、嬉しさよりもなんでもっと早く帰って来なかった、という怒りの方が大きかった。

そして、〈トライド〉を腹部を思いっきり一発殴った。

 

ーー い・・・、痛い・・・。

 

俺の拳が真っ赤に腫れ上がった。

そうだった。〈トライド〉はダイアモンドより硬い皮膚に守られてるんだった。

すごく痛かったが、それと同時にその痛みがとても嬉しかった。

やっと、〈トライド〉が帰ってきた。

俺は涙が出そうになったが、きっとここで涙を溢したら〈トライド〉とアリスはともかく、エマに馬鹿にされる。

そう思った俺は「そうはさせまい!」と必死に堪えた。

 

様子がおかしい俺に気付いたのかエマは、

 

「もしかして、泣きそうなんですか?」

 

と、ニヤつきながらこちらを言った。

 

ーー この子やっぱり、勘が良すぎじゃありません?

 

俺はそう思っていた。

 

「あ、宿どうしよう・・・」

 

俺は重要なことを思い出していた。

 

「それは私たちで手配させてもらいます」

 

と、声が聞こえた。

3日前に聞いたことある声だった。

そして、〈トライド〉の後ろから出てきたのはやっぱりウィリアム=バルベルだった。

 

「手配させてもらいます、とは?」

 

「言葉の通りです」

 

・・・ということは〈トライド〉の宿は決まったってこと!?

でも、一体どこが〈トライド〉のことを泊めてくれるのだろうか。

 

「グレイシア=ベルダン様の城に泊まることになっています」

 

「グレイシア=ベルダン様ってあの?」

 

「はい」

 

俺はびっくりした。

この〈パンデモの街〉を国王であり元王国最強の騎士王でもあったグレイシア=ベルダン様が〈トライド〉の泊めてくださることに。

俺はホッと一安心した。

これで野宿ではなく、ちゃんとしたところに寝られるのだから。

 

ーー でも、どういった経緯で〈トライド〉を泊めてくれると言ったのだろうか・・・。

まぁ、良かった!

 




ご視聴ありがとうございます!


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22話 お詫び

ご静聴のほどよろしくお願いします!

今回は〈トライド〉視点です!
カタカナではなく平仮名で!


俺は〈トライド〉の宿探しに苦労していた。

だが、国王兼、元王国最強の騎士王でもあるウィリアム=ベルダン様のお城に泊めてもらえるようになった。

 

 

3日前、私は王国の騎士たちに捕らえられ、連れていかれてしまった。当然、「死」を覚悟した。冒険者たちには危害を与えてはいなかったが、恐怖を与えてしまったのだから。仕方のないことだと思い、私は自分を納得させた。

 

城に到着するないなや、騎士たちに先導させ、国王であるグレイシア=ベルダン様の前へと連れていかれた。

 

ーー どんな罰が下されるのだろうか。

 

どんな罰が来ようと全て受け入れるつもりだった。

 

私は罰が下される前に一言謝った。

私の声なぞ聞こえないとは思うが・・・。

 

「すみませんでした。冒険者の皆さんを怖がらせてしまって・・・。どうか私に罰を・・・」

 

すると、国王は「よいよい。頭を上げるのだ」と言ってきた。

 

ーー えっ?なぜ、私の声が聞こえるのだ!?

 

私は疑問に思いながら、国王に言われた通り、頭を上げた。

 

「どうしたのだ?そんなキョトンとした顔をして。・・・もしかして、なぜ声が聞こえてる?と思ってあるだろ」

 

私は上下に首を振った。

すると、国王は耳からほじり出した。

その手には米粒ぐらいの大きさの機械らしきものがあった。

 

「これはモンスターとの会話を可能にさせる装置だ。名を〈モンスターと会話できる装置〉・・・嘘。特に名はない」

 

国王は笑いながら話している。

最初は怖い方かと思っていたが、以外と気さくな方だったことに私は安心した。

 

「聞こえているならば話が早いです。どうか私に罰を与えてください」

 

「なに、バカなことを言っている。罰を与えられるべきものは私たちだ。お主のことを何も調べずに国家指定の討伐モンスターにしてしまった。本当にすまなかった」

 

すると、国王は頭を下げた。

周りにいる騎士たちは国王の姿を見て戸惑っている。

モンスターに頭を下げるなんて普通じゃ考えられない。

 

「ぜ、全然大丈夫ですよ。だから、もう謝らないでください」

 

国王はなにかお詫びをしないと気が済まないようで、私を食事に誘ってくれた。それも国王と私、2人きりで。

当然、周りには危険です。せめて付き人を、と言われていたが、国王はそれを拒否した。

 

ずらずらと長いテーブルに料理が盛った皿が並べられる。

どれも美味しそうなものばかりだった。

私は「いただきます」と言い、料理を食べた。

凄く美味しい。一口食べただけで口の中に料理の香りや味が全体へと伝わった。

こんなに美味しいものは初めて食べた。

私は自然と箸が進んだ。

 

食事が終わった。

すると、国王はこんなことを言ってきた。

 

「お主の強さに免じて、どうだね、私の護衛役にならないか?」

 

国王の護衛役なんて、とても光栄に思った。

だが、タケルに恩がある。

それもその生涯で返しきれないほど。

今の私はタケルのおかげでこうして冒険者たちと触れ合う事が出来ている。

 

「凄く光栄に思います」

 

「では、私の護衛役に・・・」

 

「いえ、断らせていただきます」

 

「なぜかね?」

 

「国王様の護衛役だなんてとても光栄に思います。しかし、私に恩を返さなければいけない人がいます。この命に代えてでも」

 

「・・・そうか。それなら仕方がないな」

 

国王は諦めてくれた。

その後、今までのお詫びとして宿と食事の提供などをしてくれた。宿のなかった私にはとてもありがたかった。

 

ーー国王様はとても優しい方だった。

 

そして、3日間お世話になり、タケルたちと合流した。




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23話 女の子!?

ご静聴のほどよろしくお願いします!


あれから1週間が経った。

〈トライド〉はずいぶんとこの街の人々と仲良くなった。

そして、ある変化があった。

〈トライド〉自身の魔力がどんどん増しているのだ。

元の魔力から約2倍近く増しているだろうか。

これは俺と契約をしたからなのか、街の人々と触れ合う事でどこかで自身の魔力を自然と制御していたものが徐々に解放されつつあるのかもしれない。

しかし、どちらかは今は分からない。

でも、〈トライド〉の表情は以前より柔らかくなっていることが俺はとても嬉しかった。

 

だが、それと同時に1つの問題点が生じていた。

それは・・・、

1週間、クエストをしなかったせいでゴールドが底を尽きそうだった。

さすがにこれはまずい、と思った俺はクエスト依頼を受けることにした。

幸いなことに〈トライド〉がパーティーに加わったおかげで今までより難易度の高いクエスト依頼を受けることが出来る。

当然、難易度が上がる毎にゴールドの量は多くなる。

現在の俺のLv.は6、エマはLv.15、アリスはLv.8だ。

〈トライド〉は・・・、分からん。

でも、元国家指定の討伐モンスターだった〈トライド〉は相当Lv.が高いだろう。

推定(俺の勘)でもLv.40以上はいっているんじゃないか?

しかし、実際のLv.はどれぐらいなのだろうか。

・・・知りたい...。

そう思った俺はどうすれば、Lv.が分かるのか考えた。

俺たち、冒険者の場合は〈冒険者の書〉というものでLv.や職業などが分かるようになっている。

だが、〈トライド〉はモンスターだ。

〈冒険者の書〉を発行することが出来ないだろう。

俺は座り込んで考えた。

〈トライド〉を見ることによってなにかいい案が生まれるかもしれない、と思った俺は〈トライド〉の方を見た。

・・・えっ?

俺はびっくりした。

そこには〈トライド〉がおらず若い顔の整った美少女が立っていたのだ。

俺は慌てて〈トライド〉を呼んだ。

 

「〈トライド〉どこだぁぁあ!?!?」

 

すると、「タケル、ココダヨ」と声が聞こえた。

俺は声のする方を振り向いた。

あの若い顔の整った美少女が言っていた。

・・・ま、まさかね...。

俺はそう思って再び〈トライド〉のことを呼んだ。

 

「私ガ〈トライド〉ダヨ」

 

やはり、その女の子が〈トライド〉だった。

・・・〈トライド〉は人間化していた。

 

ーー えぇぇぇぇぇぇえええ!!!!!

〈トライド〉って女の子だったのぉぉぉぉお!!!!

 

俺は〈トライド〉が人間化したことよりも女の子だったことにすごく驚いた。

だって、まさか女の子だと思わないじゃん!?

俺は開いた口が塞がらなかった。

 

「ドウシタノ?タケル」

 

「ト、トライド!!!その格好!?!?」

 

すると、〈トライド〉は自分の身体を見た後こう言った。

 

「アァ、コレ?〈人間化〉ダケド?」

 

ーー おぉぉぉぉぉおおい!!!人間化できたんかぁぁぁああい!!!

 

俺は心の中で〈トライド〉にツッコミを入れた。

エマとアリスも驚いている様子だった。

 

「・・・ど、どうして今になって!?」

 

俺は今の状況を上手く理解出来ないでいる。

 

「ダッテ、アノ格好ジャ色々ト大変ジャン?」

 

ーー じゃあ、最初からその格好でいてくれよ。

・・・でも、まぁいいか。

 

ようやく今の状況を理解することが出来た。

要するに、〈トライド〉のように魔力の高いモンスターは人間化することが出来る。

そして、いつ人間化するか迷っていたのだろう。

今まで状況を理解出来なかったエマとアリスもようやく今の状況を理解することが出来たようだった。

 

でも、〈トライド〉のLv.が分からない。

根本的な問題が解決していなかった。

まぁ、他にも金銭関係の問題もあるけど・・・。

 

そう考えていると、いつの間に〈トライド〉は鏡の前に立っていた。

すると、鏡が反応していた。

そして、〈冒険者の書〉に記述が始まった。

 

ーー えぇぇぇええ!!!できるのぉぉぉお!?!?

 

今日で何回〈トライド〉のことでびっくりしただろうか・・・。

まぁ、これでLv.が分かる。

そして、俺は〈トライド〉の〈冒険者の書〉を手に取った。

 

「・・・どれどれ」

 

俺は更にびっくりした。

Lv.が100だった。

そして、全ての能力値がカンストしていた。

ーー えぇぇぇええ!!!!なにこれ、チート!?!?

・・・どうやら、最強のモンスターを仲間にしてしまったようだった。

と言うことは〈トライド〉って実はAA級ではなくSS級モンスターだったってこと!?!?

 

でも、〈トライド〉みたいな心優しいモンスターがSS級で良かった。

エマとアリスと触れ合う無邪気な〈トライド〉見てそう思った俺だった。

 




ご視聴ありがとうございます!


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24話 奴隷

ご静聴のほどよろしくお願いします!


〈トライド〉が人間化して若い顔の整った美少女になった。推定年齢(俺の勘)だと16歳。まぁ、実際のところは100歳超えているのだろう。

・・・その後、〈トライド〉の能力を知ることになる。

まさかのLv.100。おまけに能力値が全てカンストというチート級レベルの能力。

そして、俺たちのパーティーは強くなり、今までより強いモンスターの出る階層に行くことを決意した。

 

 

少しはまだ動揺が残っているが、俺たちは掲示板を見ることにした。

今回は結構難易度の高いクエストが多い。

掲示板の依頼を見ていると俺の目にあるクエスト依頼が目に入った。

その内容というのは、

〈ドレイン討伐 1匹につき10000ゴールド〉

というものだった。

1匹討伐しただけで10000ゴールドというとても美味しいクエスト依頼だ。

俺はその依頼書を手に取った。

そして、エマとアリス、そしてトライドの承諾を得て、窓口受付嬢のエイミーさんに持っていった。

「あの、このクエスト受けたいんですけど」

・・・ってエイミーさんがいないじゃん!!!

俺はギルドの中を探した。

しかし、見当たなかった。

ギルドの窓口受付嬢が仕事をほったらかしにして一体どこにいっているのやら。

俺は手に持っていた依頼書を元の位置に戻そうとする。

・・・いや、待てよ。ここで戻してしまったら他の人に取られるのでは!?

と思った俺は街に出てエイミーさんを探すことにした。

 

 

正直、この街中を詳しく知らない。

この機会にこの街のことを知ろう。

そう思った俺は周りをキョロキョロしながら歩いた。

大通りは店屋がずらりと並んでいる。

そして、人通りも多い。

ーーなんだか、東京を思い出すな。

俺は元いた世界のところを思い出していた。

別に戻りたいとかは思っていない。

なぜなら、この異世界が楽しいからだ。

仲間と出会ったり、冒険したりと元の世界では味わえないことをしているからだ。

そう余韻に浸っていたら、人とぶつかってしまった。

 

「ご、ごめん」

 

小さな女の子だった。

頭の上に耳があり、尻尾もついている。

ケットシーだろうか。

それに手足には鎖がついている。

 

「・・・大丈夫です」

 

あまり元気がない様子だった。

汚れた身体にボロボロの服・・・。

まるで奴隷・・・だった。

 

「おい!早く歩け!」

 

とどこかの世間知らずの坊ちゃんがいた。

そして、バシっとムチでその女の子を叩いた。

俺はその光景を見てイラって来た。

関わったら面倒くさいことになるだろう。

でも、ほったらかしにすることが出来なかった。

 

「おい、お前」

 

「あぁ?」

 

とその坊ちゃんはこちらに振り向いた。

俺はそいつに対してスキル「便意」を使った。

すると、坊ちゃんは強烈な便意に見舞われ、哀れもない体勢をしている。

そして我慢しきれなかったのか、女の子を捨てトイレへと走っていた。

 

ーー まさか、ここでこのスキルが役に立つとは・・・。

 

俺はただ面白半分で「便意」というスキルを習得していた。だが、使い道が分からず、ほったらかしにしていたが、まさかここで役に立つとは。

俺はこのスキルも捨てたもんじゃないな!

と関心していた。

・・・ってそんなこと考えてる場合じゃなかった。

 

「大丈夫か?」

 

「・・・はい。ありがとうございます」

 

俺は女の子を身体にジロジロと見た。

・・・別にやましい事はないからね!?

 

この格好じゃ可哀想だな。

そう思った俺は服を買ってあげることにした。

・・・だが、手持ちのゴールドじゃ買ってあげることすら出来ない。

なので、かっこ悪いがエマにお願いした。

 

エマとアリスは女の子を連れ、服屋へと入っていた。

1時間以上が経過した。

 

ーー 遅い...。

 

俺とトライドは近くの椅子に座っていた。

更に1時間が経過した。

俺たちは何も考えず、ただボーッとしていた。

そして、やっとエマたちは服屋から出てきた。

 

女の子はメイド服を着ていた。

俺はそのチョイスに対して、

 

ーー なんでこの服にした...。

・・・でも、ナァァァァイス!!!!!

 

俺は人生初、少女のメイド服姿を拝むことができた。

 




ご視聴ありがとうございます!


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25話 居場所

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺は窓口受付嬢のエイミーさんを探しに街に出た。

そして、1人の女の子と出会う。

可哀想なことにその子は奴隷だった。

汚れきった身体にボロボロの服・・・。

俺たちはその子に服をプレゼントした。

しかも、メイド服!!!!

ケモ耳少女にメイド服が似合わないはずがない!!!!

俺はそう確信していた。

 

 

俺たちは本来の目的を忘れてこの子の相手をしていた。

話によると、帰る場所がないらしい。

パーティーメンバーに加えていいが、まだ年齢が達していない。

彼女は12歳。冒険者になれるのは15歳からだ。

俺はどうしたものか、と考えていた。

考えた末、とりあえずギルドに連れて行くことにした。

彼女は12歳ながらも相当、頭がきれる。

確か、エイミーさんが、

「若くて、頭がきれる子が助手に欲しいなぁー」

と言っていたっけ。若すぎるけどいいかな。

・・・ん?エイミーさん?

ーー そうだった!エイミーさんを探すために街に来たんだった!!!

俺はやっと本来の目的を思い出した。

そう思い、探しに行こうとする。

ふと、彼女の様子を見ると、疲れているように見えた。

当然と言えば、当然だな。

この世界の奴隷は休みというものを貰えない。

一日中、主人のいいなりだ。

過酷な労働・・・不眠不休・・・。

なかには、死んでしまう人もいる。

俺はエイミーさんを探すのは後回しにして、まずは彼女の休養と取らせることが最優先に考え、ギルドへと戻った。

俺は彼女をおんぶすることにした。

ヒョイっと簡単に持ち上がった。

・・・とても軽かったのだ。

12歳とは思えない体重の軽さ・・・。

俺はこの世界の残酷な部分に触れた瞬間だった。

 

歩き途中に俺はふと思った。

彼女の名前を知らない。

この機会に彼女の名前を聞くことにした。

 

「君の名前聞いてなかったね。教えてくれるかな?」

 

「・・・私はケイリー=ブライグと言います」

 

「ケイリーちゃんか。よろしくね。・・・君の主人・・・いや、元主人と言った方がいいのかな?名前はなんているの?」

 

「ベリン=ラグドール・・・です」

 

「・・・ラグドール?どこかで聞いたことあるようなないような・・・」

 

エマがボソッと口走った。

 

「エマ、知っているのか?」

 

俺はエマにそう質問したが、どうやら思い出せないようだった。だが、俺はこの時、少し嫌な予感がしていた。

そうこうしているうちにギルドへと着いた。

 

「お帰りなさい」

 

と聞き慣れた声が聞こえた。

エイミーさんだった。

どうやら、エイミーさんは街に買い物に出かけていたようだ。

ーーどこかですれ違いになったのかな?

まぁ、今はどうでもいいことだ。

それよりも・・・。

 

「エイミーさん!」

 

「なんですか、タケルさん」

 

「そう言えば、前、助手が欲しいとか言ってましたよね!?」

 

「はい、言いましたけど・・・それがどうかしましたか?」

 

俺はケイリーちゃんをエイミーさんに見せつけた。

 

「どうですか!」

 

「・・・どうですかと言われても・・・」

 

エイミーさんは少し困惑しているようだった。

無理もないか。

若いと言ってもさすがにこれは若すぎる。

でも、ここで引き下がっても、ケイリーちゃんの居場所を見つけることが出来ない。

俺は今までの経緯を全てエイミーさんに告白し、なんとかここで働かせてくれないか、と頼み込んだ。

どうやら、俺も頼みに折れたようで、

 

「・・・はぁ。分かりました」

 

とOKしてくれた。

しかし、条件があるようで、エイミーさんは1枚の紙を出した。

 

「これが出来なければダメです!」

 

俺はその紙を覗いた。

・・・なにこれ!?暗号!?

それは、とてつもない内容だった。

だが、これを全てケイリーちゃんはなんなくこなしてしまったのだ。

これにはエイミーさんもびっくりしている。

当然、俺たちもびっくりしている。

これを熟せるようになるには最低でも1.2年の年月は必要だ。

しかし、一瞬でしかも12歳でこのハードな内容をこなしてしまうとは・・・。

ーー 若いって素晴らしい!!!

あっ・・・、そういえば俺も若いんだった!!!

 

こうして、無事にケイリーちゃんをギルドで働かせることが出来た。

そして、ここがケイリーちゃんの新しい「居場所」になるのだ!

 

 

俺は本題へと戻り、依頼書をエイミーさんに見せた。

 

「あの、これ受けたいんですが!」

 

「あ・・・、はい、いいですよ!!」

 

ん!?なんだ今の「あ・・・」は。

まぁ、いい。

これでクエスト受けることができる!

俺たちは早速、準備をして6階層へと向かった。

 




ご視聴ありがとうございます!


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26話 漆黒の悪魔

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺たちはケイリーちゃんの居場所を与えることに成功した。そして、クエスト討伐のため、6階層へと向かった。

 

 

6階層は至って平和なエリアだった。

辺り一面、草木が生い茂り空気が澄んでいてとても心地がいい。

それにほどよいくらいの日差し.....。

今にも眠りたい気分だ。

ーー まぁ、一眠りはいいよね。

俺は草原に寝転んだ。

周りを見渡す限り、モンスターはいない、多分。

6階層に来るまで1時間くらいかかった。

それに、3階層の暑いエリアも通らなければならない。

俺たちはクタクタだった。

そして、1分の経たず、眠りについた。

 

「う、うぉぉぉぉぉおお///」

 

突然、強烈な快感が襲った。

俺はその正体を知るべく、重たい瞼(まぶた)を開けた。

すると、植物系モンスターが俺の体力を吸っていた。

当然、俺はダメージを喰らわない。ユニークスキル〈苦痛の加護〉によって。

 

ーー うむ、なんていい快感なんだ。

 

俺は呑気(のんき)にそう思っていた。

すると、だんだん敵が集まってきた。

気づくと俺たちは囲まれていた。

 

気色悪い触手でこちらに攻撃してくる。

エマとアリスは「きゃぁぁぁああ!!!」と悲鳴をあげている。トライドは・・・まだ寝ていた。

ーー触手プレイとはいい度胸じゃないか!!!!

でも、いい光景だな...グフフ...。

 

・・・冗談はさておき、これが例の〈ドレイン〉というモンスターだろう。

よーし、さっさと片してしまおうか!!!

俺は植物系モンスターに相性のいい火属性魔法の〈火炎地獄〉を発動させた。

この〈火炎地獄〉という魔法はユニークスキルだ。

なぜか、知らぬ間に獲得に成功していた。

 

そして、その魔法で〈ドレイン〉を一掃した。

クエスト完了!!!

 

「よし、帰るぞ!!・・・おい、どうした?」

「どうした?じゃないでしょう!!!」

「そうですよ!!!」

 

エマとアリスが怒っている。

・・・なぜなのだろうか。

 

「その魔法があるなら早く倒してくださいよ!!!おかげで身体中、ネバネバした液体でいっぱいですよ!!!」

「なんだ、そんなことか」

「なんだ、そんなことか・・・じゃないです!!!」

「いい光景だったぞ!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・ごめん」

 

なんやかんやありながらもクエスト討伐に成功した。

そして、俺たちはギルドへと戻った。

 

 

なんだか、ギルドが騒がしい。

なにか、出し物をしているのだろうか。

すると、エイミーさんが慌ててこちらへと走ってくる。

 

「タケルさん!大変です!!!」

「どうしたんですか?」

「ベリン=ラグドール様がタケルさんに用事があるようです!しかも、怒ってる様子でした...何したんですか!?」

 

ベリン=ラグドール?

あー、街中で出会ったうんこ坊ちゃんか。

 

「街中で恥ずかし目を受けてもらいました」

「・・・あ!思い出した!」

 

とエマがなにか思い出したようだ。

 

「ラグドールって聞いたことあるなって思ったけど、あのラグドール公爵家のことだったのか」

「公爵家?」

「はい。正直、面倒臭い家柄です」

 

「貴様ぁぁぁぁぁあああ!!!!!」

 

ギルドの扉を勢いよく開け、ベリン=ラグドールが飛び出してきた。

どうせ、要求は.....、

 

「ケイリーを返せ!!!」

 

・・・やっぱり。

どうして、ケイリーちゃんに執着するのだろうか。

公爵家ならメイドとかいるだろうに・・・。

当然、俺は「無理」ときっぱり断った。

 

「貴様、いい度胸じゃねぇか!!!」

「・・・・・」

「貴様、ケイリーの正体を知っているのか?」

「・・・正体?」

「その様子じゃ知らないようだな。特別に教えてやる」

「ケイリーはケットシーの中でもとても希少種なんだよ」

 

・・・希少種?一体、なにを言っているんだ?こいつは。

 

「ケイリーは1000年に一度生まれてくるかわからない〈漆黒の悪魔〉なんだよ」

「!?」

 

エマは驚愕していた、

エマだけじゃない、周りにいる全ての人々が驚愕している。

俺は状況を理解出来ない。

なぜ、みんながこんなに驚愕しているのか。

 

「・・・エマ。〈漆黒の悪魔〉ってなんだ?」

「えっ!?知らないんですか!?!?」

「恥ずかしながら.....」

「〈漆黒の悪魔〉っていうのはケットシーの最強の種族です。強大なほどの魔力を保有し、それは魔王にも匹敵すると言われています。それにカリスマ的な知識力・・・。まだ、謎に包まれたままですが。・・・本でしか読んだことなかったのでまさか〈漆黒の悪魔〉が存在するとは・・・」

 

どうやら、ケイリーちゃんは危ない存在らしい。

・・・でも、俺はそうは思わない。

だって、ケイリーちゃんはケイリーちゃんだから。

少し、無愛想だけど、それでも、一生懸命頑張っている。

だから、絶対にラグドールになんか渡さない。

 

「どうだ?ケイリーは怖くなっただろ?」

「そうは思わない」

「・・・なに!?」

「だから、お前になんか渡さない!!!」

「・・・き、貴様ぁぁぁぁぁあああ!!!!!」

 

すると、ラグドールは腰に巻いていた剣(つるぎ)を鞘(さや)から抜き、襲いかかってきた。

 

(そういえば、試したいユニークスキルがあったんだった)

 

そして、俺はユニークスキル 〈超減速(スローモーション)〉をラグドールに向けて発動した。

 

(・・・おっそ!!!!)

 

ラグドールの動きがゆっくりに見えた。

俺はラグドールの首にチョップを入れた。

 

「うごっっ」

 

すると、ラグドールは気絶した。

・・・弱!軽く入れたつもりだったんだけど。

 

まぁ、倒したのはいいけど、どこに運べばいいのか...。

すると、ラグドール公爵家のメイドたちが来た。

 

「すみませんでした。うちのお坊ちゃんがご無礼を...」

 

メイドたちは深々とお辞儀をして去っていった。

・・・まぁ、これで一件落着かな...??

 

エイミーさんの後ろに隠れていたケイリーちゃんが俺の所に来て...、

 

「・・・ありがとう」

 

と一言言った。

ケイリーちゃんの笑った顔を見て、

俺はホッコリした。

 




ご視聴ありがとうございます!


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27話 笑顔

ご静聴のほどよろしくお願いします!


ラグドールの件については一段落した。

そして、平穏な日常に戻った。

 

 

特に今やることがない。

金銭に関しては〈ドレイン〉を27体討伐のして270000ゴールドを手に入れた。そして、4人分に分けても70000ゴールド手元にくる。

1週間はクエストを受けなくてもいいくらいだ。

・・・あっそうだ!

俺はいい案を思いついた。

それは・・・、

 

「ケイリーちゃん、一緒に出掛けようか!」

 

ということだった。

すると、作業をやめ、ひょこっと顔を出した。

 

「・・・いいんですか?」

「もちろん!」

「・・・でも、仕事が.....」

 

俺はエイミーさんを見つめた。

すると、エイミーさんは「はぁ」と一つため息を吐いた後、

「わかりました、いいですよ」

と言ってくれた。

そして、俺とケイリーちゃんは街へと出掛けた。

 

 

まずは、服屋に寄ることにした。

メイド服1着というものなんだか可哀想だ。

1人の女の子なのだから、もっといろんな服が欲しいだろう。

 

「ケイリーちゃん!」

「・・・はい」

「いっぱい服買っていいよ!」

「・・・で、でも....」

「気使わなくていいんだよ!」

「・・・わかりました」

 

ケイリーちゃんは服を選び出した。

この時、俺はいいことを思いついた。

・・・今なら、ケイリーちゃんを着せ替え人形に出来るのでは!?

と。

そして、俺も服を選んだ。ケイリーちゃんに飛びっきり見合うものを。

・・・こ、これだぁぁぁぁぁあああ!!!!!

俺は1着の服に眼がいった。

 

「ケイリーちゃん!これ着てよ!」

「・・・?」

 

試着室へと入って行った。

- 10分後 -

ケイリーちゃんは着替えを終え出てきた。

 

純白のワンピースにケットシー用の帽子.....。

凄く似合っていた。それに可愛い。

 

「ケイリーちゃん、凄く可愛いよ!」

 

すると、ケイリーちゃんのほっぺが急に真っ赤に染まった。

 

「・・・そ、そうですか?///」

「うん!」

 

どうやら、照れているようだった。

そして、その照れた顔を帽子で隠した。

無愛想そうだけど、照れた顔が可愛くてなんだか新鮮だった。

その後、これ以外の服を何着か買った。

ケイリーちゃんは満足そうな顔をしていた。

 

それから、時間はあっという間に過ぎ夜になった。

今夜は中央通りで打ち上げ花火があるらしい。

そのせいか、周りにはカップルらしい人たちがたくさんいる。

・・・実にけしからん!

俺はそう思っていた。

 

ヒューーーー、バァァァアン!!!!

 

打ち上げ花火が上がった。

 

「ケイリーちゃん、花火綺麗だね!」

 

夜空に輝く花火を見て言った。

 

「・・・好き...」

「ん?何か言った?」

 

花火の音で上手く聴き取れなかった。

 

「・・・いえ、なんでもないです」

「そうか!」

「・・・今日はありがとうございました」

「こっちこそありがとね!」

「・・・良ければ、また一緒にお出掛けしてくれますか?」

「うん!もちろんだよ!」

 

すると、ケイリーちゃんは嬉しそうにニコッと笑った。

それと同時にバーーン!と花火が上がった。

 

雲ひとつない夜空に輝く花火に、宝石のように輝く無邪気な笑顔......。

ーー すごく綺麗だ.......。

 

2つの輝きが俺の目に焼き付いた瞬間だった。

 




ご視聴ありがとうございます!


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28話 冬

ご静聴のほどよろしくお願いします!


数ヶ月の月日が流れ、冬になった。

雪が徐々に降り始め、とうとう辺り一面が純白に染まった。

 

今日は焼けにギルドの中に騒がしい。

ギルドの中は冒険者で溢れている。

宴会状態だ。

酒を片手に取り、グイっと一気に飲み干す者もいれば、

宴会芸で周りの冒険者を楽しませている者もいる。

エイミーさん曰(いわ)く、この時期はいつもこんな様子だそうだ。そのせいでクエスト依頼がどんどん溜まって困るらしい。

まぁ、外は雪が降ってるし自分から進んで外に出るやつなんて早々いないだろう。寒いから。

・・・訂正。1人いた。

 

「〈トライド〉何してるんだ?」

 

〈トライド〉がマフラーとコートを着こなし、

雪の中、無邪気に遊んでいる。

・・・ 寒くないのだろうか.....。

 

「タケル!楽シイヨ!」

 

見ればわかる。

凄く楽しそうな表情だ。

人間化したせいか、心なしか性格が少しずつ変わっていってるように感じる。

まぁ、元の姿に戻る気になれば戻れるようだが、〈トライド〉自身はこの姿のままがいいそうだ。

 

そう思いつつ、俺は無邪気に遊ぶ〈トライド〉を見ていた。

 

「タケルさん!」

 

俺を呼ぶアリスの声が聞こえた。

すると、1枚のクエスト依頼の紙を持ってきた。

 

「これ、冬限定クエストだそうです!受けませんか?」

 

俺はそのクエストの内容を確認する。

〈冬限定クエスト。今ならなんと〈モルメル〉1匹につき15000ゴールド!迷っているそこのあなた!やらなきゃ損損!さぁ、武器を装備し出発しよう!

・・・お願いします。誰も受けてくれないんです.....これを見てくださっている冒険者様が居ればどうか討伐をお願いします.....15000ゴールドじゃなく20000ゴールド支払うので......〉

という内容だった。

・・・なんとも言えない.....。

まぁ、別に暇なので受けることにした。

 

そして、俺はその依頼書をエイミーさんに提出した。

 

この依頼書によると〈モルメル〉は7階層にいるそうだ。

7階層は極寒の地域。

ここより、寒い。

階層ごとに季節があるが、まさか、ここより寒いところに行くだなんて.....。

俺は「はぁ・・・」と一つため息を吐いた。

そして、俺たちは温かい服装をして7階層へと向かった。

 

 

7階層に向かう途中、俺たちはある失態を犯してしまった.....。

3階層の暑いエリアを通らなければならないことを忘れていたのだ。

地獄のような時間だった。

汗が滝のように吹き出し、今にも倒れそうな勢いだった。

そして、無事に7階層に着いた。

汗のかいた服に寒い風が吹きつける。

ーーさ、寒い.....!!!!

ガタガタガタ、と震える身体を両手で抑えつける。

 

すると、雪の中、ふわりと飛んでいるモンスターを発見した。

あれが〈モルメル〉というモンスターに違いないだろう。

そして、俺たちは寒さを堪えて討伐を開始した。

 




ご視聴ありがとうございます!


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29話 雪の妖精

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺たちはなんとも言えないクエスト依頼を受け、7階層に向かった。3階層で灼熱地獄に遭い、挙句に7階層で氷結地獄に遭ってしまっていた。今まで、かいてきた汗が寒さで凍り、まるで氷を身体に纏(まと)っている状態になっていたのだった。

 

 

俺たちは寒さを堪えていた。

すると、前方にひらひらと飛んでいるモンスターが複数いた。

あれが〈モルメル〉という討伐モンスターだろう。

この〈モルメル〉というモンスターは冬を長くするという言い伝えがある。

そのため、農家の人や家畜を育てている人たちがとても困っているらしい。

いち早く、冬の時期を終わらせるために〈モルメル〉の討伐を依頼を出したのだ。

まぁ、俺たちは倒せば倒すほどゴールドが貰え、農家の人や家畜を育てている人たちは大いに喜ぶ。

まさに、win-winの関係だ。

〈モルメル〉はあまり強くない。

ランク付けすると...Eランク相当だろうか。

Eランク相当とは、人身に害はなく、とても弱い。

だが、〈モルメル〉の生息しているエリアはこの通り、とてつもなく寒い。

そのため、この依頼を受けたがる人がいないのだ。

そして、年々、冬の時期が長くなっているそうだ。

 

早速、〈モルメル〉の討伐に取りかかった。

俺はユニークスキル〈火炎地獄〉で一掃しようと発動する。

しかし、よく見てみると〈モルメル〉はとても綺麗だった。

雪が降り注ぐ中、虹色に輝く綺麗な花を羽ばたかせ、踊りを踊っている様子に見えたのだ。

そして、俺は〈火炎地獄〉の発動をやめた。

 

(だって、こんな綺麗なモンスターを焼き尽くすのはもったいない!)

 

とそう思ったからだ。

そして、どうにかして〈モルメル〉を倒さずに農家の人たちを喜ばす方法を考えた。

しかし、いい案が思い浮かばないまま、身体の体温を奪わられていった。

・・・すると、

 

「「そこの旅のお方.....」」

 

とどこかから声が聞こえた。

 

「・・・エマ。今、何か言ったか?」

 

そうエマに聞くが「何も聞こえませんでしたよ」と返答が返ってきた。同様にアリスにも聞くが、同じ返答だった。

最後にトライドに聞いた。

「私モ聞コエタヨ」

と返答が返ってくる。

どうやら、トライドにも聞こえていたらしい。

さすが、トライドだなっ!!!と俺は心の中で関心していた。

 

そして、俺とトライドは辺りを見渡した。

すると、不自然に蒼白く輝く場所があった。

俺たちはその蒼白く輝く場所に歩み寄った。

・・・なんと、そこには人がいた。それに美人だった。

 

「私はスノー=アイズ=ホワイトと言います。この〈モルメル〉たちの主人(あるじ)をやっています」

 

モンスターにしては流暢な喋り方だった。

トライドと初めて会話した時はカタコトだった。

・・・本当にモンスターなのか....。

と俺の中で疑問が生ませた。

 

「トライド。あの人は人間か?」

 

俺は確認の為、トライドに聞くことにした。

 

「イイエ、アレハ私ト同ジモンスターデス」

 

ということは、トライドと同じ高い魔力を持ったモンスターなのだろうか。

・・・会話も出来ているし....。

 

「そうです。私はモンスターです。今は人間化しています」

 

ーー心が読まれた....!?

でも、おかしい点が1つある。

トライドは人間化して俺以外の人々と会話する事が出来ている。だが、ホワイトは俺とトライド以外には声が聞こえていない。

ーー 一体、何故なのだろうか....。

 

「お答えします。そこにいるトライド様より魔力が遥かに劣っています。なので、貴方とトライド様だけにしか聞こえていないのです」

 

ーー また、心が読まれた.....!!!

さっきから、俺が心の中で考えたことを読まれている。

心を読む能力があるのだろうか.....。

 

「ホワイトさんは心を読む事が出来るんですか?」

「はい、出来ます。トライド様のように圧倒的な魔力はありませんが、他人の心を読む事ができるスキルを保有しております」

 

だから、心を読む事が出来ていたのか。

・・・さっきから、トライドのことを「トライド様」と言っているが、2人は知り合いなのだろうか。

(ホワイトさん、聞こえているんでしょ。教えてもらえることはできませんか?)

すると、

(はい、分かりました)

と返事が返ってきた。

だが、俺以外には聞こえていない様子だった。

トライドは....聞こえていないようだ。

(トライドが聞こえていないようですか...?)

(これは〈テレパシー〉というスキルです。発動した対象にしかこの私の声が聞こえていません。なので、今、私の声は貴方にしか聞こえていません)

(・・・なるほど...)

 

「ドウシタノ?2人デ見ツメアッテ」

 

様子のおかしい俺たちに気付いたのか、トライドがそう聞いてきた。

 

「な、なんでもないよ!」

 

俺は慌てて返答した。

「ソウナンダ」とトライドはまだ疑っている様子だったが、どうやら、納得してくれたようだ。

とりあえずは一安心だな。

そう思った俺は本題へと戻った。

(本題へと戻りますが、トライドとは知り合いなのか?)

(知り合いといいますか、私はトライド様の右腕としておつかえしていました。そして、トライド様は何千人という部下を従わせ、北にある〈ブエスティール〉を支配していました)

・・・〈ブエスティール〉?

〈ブエスティール〉といえば魔王城があると聞いた事がある。

トライドはその〈ブエスティール〉を支配していた!?

・・・ということは....。

ーーいや、これ以上、詮索するのはやめよう。

トライドが話してくれるその日まで待つことにしよう。

そう思った俺は話の途中であったがやめたのだった。

 




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30話 雪の妖精 2

ご静聴のほどよろしくお願いします!


7階層にて〈モルメル〉の主人(あるじ)であるスノー=アイズ=ホワイトさんと出会う。

流暢な喋り方で俺は最初、ホワイトさんを人間だと思ったが、実は〈トライド〉と同じモンスターだと気付く。

その後、ホワイトさんとテレパシーで会話し、〈トライド〉の過去について少し知ることができた。

だが、これ以上、詮索するのは不謹慎だと思った俺は〈トライド〉のことを聞くのをやめた。

そして、いつか〈トライド〉が自分から話してくれる日まで待つことにしたのだった。

 

 

話は本題へと戻る。

〈モルメル〉を倒さず、農家の人たちの悩みを解消するという内容だ。

しかし、〈モルメル〉を倒さなければ、冬の時期が長くなる一方。

だが、〈モルメル〉を倒してしまうと農家の人々は喜ぶがホワイトさんが可哀想だ。

そして、〈モルメル〉を倒さず、そのままにしておくとホワイトさんは喜ぶが農家の人々が困ってしまう。

どちらかが悲しい思いしてしまうことになる。

俺はどちらも悲しまない方法を考えることにした。

 

- 10分後 -

 

俺はまだ考えていた。

いい方法がなにも思いつかないのだ。

すると、ホワイトさんがこう言いだしてきた。

 

「心を読ませてもらいましたが、貴方たちは間違っています」

 

ーー 間違っている...?

ホワイトさんはなにを言っているのだろうか.....。

 

「〈モルメル〉は冬を長くするという言い伝えは存在しません。〈モルメル〉は魔力がほぼなく、輝きを放つことが精一杯です」

 

ーー確かに.....。

俺はユニークスキル〈確率〉と同じ時期に手に入れた

ユニークスキル〈真実〉で調べて見ることにした。

(〈モルメル〉は冬を長くすることができるのか?)

- いいえ、ありえません。〈モルメル〉は魔力が非常に低いです。その為、季節を変化もしくは時期を長くすることは絶対に出来ません -

というのがユニークスキル〈真実〉の答えだった。

それなら、何故、年々冬が長くなっているのだろうか。

他に冬を長くしているモンスターがいるのだろうか.....。

もし、いるのであれば、相当、魔力の高いモンスターだろう。

疑問が増えるばかりだった。

とりあえず、ホワイトさんにここ数年でこのエリアになにか異変がなかったか聞くことにした。

 

「ホワイトさん、ここ数年でなにかこのエリアで異変は起きませんでしたか?」

 

と、質問してみる。

ホワイトさんは少し考えた後、こう言った。

 

「そういえば、3年ほど前から遠くの方から見知らぬ魔力を感じます」

「どんな魔力ですか?」

「相当、強い魔力です。なんせ、遠くからここまで伝わるほどの魔力ですから」

 

ーー なるほど.....。

そういえば、冬の時期が長くなってきたのは3年ほど前からってエイミーさんが言っていた。

ホワイトさんの話とエイミーさんの話が一致する。

ということは、そのモンスターがこの問題を起こしているに違いないだろう。

しかし、まだ確証はない。

俺たちはその確証を確信に変えるために7階層の奥へと進んだ。

 




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31話 雪の妖精 3

ご静聴のほどよろしくお願いします!


年々、冬の時期が長くなっている。

俺は〈モルメル〉の仕業だと勘違いし、討伐することを決意する。

だが、〈モルメル〉の主人(あるじ)と名乗る〈スノー=アイズ=ホワイト〉さんと出会う。

そして、事実を告げられる。

それは、この原因は〈モルメル〉ではないということだ。

その後、ホワイトさんの話を聞き、3年ほど前から見知らぬ魔力を感じていること聞かされる。

エイミーさんも3年ほど前から冬の時期が年々長くなっていると言っていた。

ホワイトさんとエイミーさんの話は一致した。

俺たちは7階層の奥にある魔力について知るべく、向かったのだった。

 

 

奥へと向かっている最中、俺はあることに気がつく。

それは、奥へと行くにつれ、冷気が増していることだ。

周りには、この冷気で固まったと思われる氷柱があちらこちらへと突き出ている。

それも、先は鋭く尖(とが)っており、まるで「近づくな...」と言っているかのようだった。

俺たちはその氷柱を潜り向け、奥へと進んだ。

 

だが、増した冷気が俺たちの身体へと容赦無く吹きつける。

あまりの寒さで手足の感覚が分からない。

身体が自由に動かない。

徐々に体力が奪われ、そこを尽きそうだった。

そういった悪循環が繰り返され、もう限界寸前だった。

俺はユニークスキル〈苦痛の加護〉によって、体力は削られていない。だが、〈苦痛の加護〉の追加効果に現在の寒さの倍以上に感じている。

これは、ダメージだけではなく、暑さや寒さも倍以上になるのだ。

 

「・・・寒い......」

 

と俺はやっとの思いで開いた口でボソっと言った。

すると・・・、

 

- ユニークスキル〈灼熱防御〉の獲得に成功しました -

- ユニークスキル〈寒冷防御〉の獲得に成功しました -

 

という聞き慣れた音声が俺の脳裏をよぎった。

俺は急いでスキルの説明の見た。

ユニークスキル〈灼熱防御〉とは、身体で感じている暑さといったあらゆる熱を無効化する。また、これを自分以外の人にかけることによって、その人も暑さを感じなる、というユニークスキルだった。

〈寒冷防御〉はだいたい〈灼熱防御〉と同じスキルで、熱ではなく、寒さから身を守ることが出来るユニークスキルだった。

 

急いで、自分とエマ、アリス、そして、トライドにユニークスキル〈寒冷防御〉を発動した。

すると、驚くことにみるみる内に寒さを感じなくなっていったのだ。

手足の感覚を感じることが出来る。

そして、身体も自由に動かせることが出来る。

俺たちはこの寒さから救われたのだ。

 

少し、その場で休憩した後、俺たちは奥へと進んでいった。

 

 

40分くらい歩いたところで7階層の奥へと着いた。

すると、なにやら、グーグーとイビキのような音が聞こえる。

ーー ここから近いな.....。

そう思った俺はゆっくりと起こさず気づかれないように歩いた。

そして、少し歩いたところでそのイビキの正体が分かった。

全長3mほどの大きさに、蛇のような長い身体。

そして、氷のようなその鱗は少しの光を吸収して無数の光を解き放っている。

 

俺たちは物陰に隠れ、様子を伺った。

 

- 1時間経過 -

 

そのモンスターは起きる気配がない。

俺たちは奇襲をかけることにした。

そして、俺は剣を片手にそのモンスターに飛びかかった。

 

ガッチィィィィインっっっっ!!!!!

 

というものすごく固そう音が周りに響き渡った。

そして、剣から振動が伝わる。

(・・・いってぇぇぇぇぇぇぇええっっ!!!!)

と心の中で泣き叫ぶ。

(・・・そういえば、俺の攻撃力は皆無に等しいんだった。エマやアリス、トライドに奇襲をさせればよかった....)

俺は悔いた。

・・・その音でそのモンスターは起きてしまった.......。

奇襲をかけるつもりがモンスターを怒られてしまった。

そして、その後、モンスターとの戦闘は避けられなかった。

 




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32話 白き蛇

ご静聴のほどよろしくお願いします!


全長3mの蛇のようなモンスターに奇襲をかけるべく、俺は剣を片手に攻撃をした。

しかし、モンスターに触れたと同時に、

ガッチィィィィインっっっっ!!!!!

という、騒音が辺り一面に響き渡った。

そのモンスターの少しの光を吸収し、無数の輝きを放っている氷のような鱗は鋼のように硬かったのだ。

まぁ、見た目通りだ。

それと同時に俺は重要なことを思い出す。

それは、俺の攻撃力が皆無に等しいこと....だ。

俺はこの時、自分の行動に悔いた。

どうして、エマやアリス、それにトライドに任せなかったのか。もし、任せていればこの状況をなんとか出来たんじゃないかと。

 

 

俺たちは今、非常にまずいことになっている。

なにがまずいことかというと、その鋼のような鱗を剣で叩いた時に生じたガッチィィン!!!という騒音でその蛇のようなモンスターが起きてしまったこと。

・・・これだけだったらどれだけ良かったものか......。

だが、この騒音で蛇のようなモンスターが起きただけではなく、この階層のモンスターたちがここへと集結し始めたのだ。

そして、現在、そのモンスターたちに360°取り囲まれてしまっている。

このまずい状況で焦っていた俺だったが、

 

「あっ!ユニークスキル〈火炎地獄〉で一掃すればいいのか!」

 

と思い始める。

・・・すると、

 

「俺様の領域に入るとはいい度胸じゃないか、人間」

 

と、その蛇のようなモンスターが話しかけてきた。

だが、俺は御構い無しに〈火炎地獄〉をぶっ放した。

 

「うんうん!最初からこうすれば良かったんだ!」

 

と俺は燃え盛るモンスターたちを見ながらそう言った。

 

「・・・ほほう。俺の話を聞かないとはいい度胸だな!人間!」

 

蛇のようなモンスターは「ぜぇぜぇ.....」と息を漏らしながら言ってくる。

俺は偉そうな奴だな。と思いつつ、〈火炎地獄〉の詠唱を開始した。まぁ、詠唱しなくても発動することできるけどね。

 

「・・・ふふふ。人間よ、なかなかやるな。それに免じて少し話ぐらい・・・」

 

「全ての炎を司る紅蓮の魔神よ。汝、我に力を与えよ.......」

 

「・・・えっ?なんで、詠唱なんかしてるの!?ねぇ!?!?は、話ぐら・・・」

 

「〈火炎地獄〉!!!!!!」

 

「ちょっ、待っ.....ウギャャャャャャャヤヤッッ!!!!!」

 

辺り一面、〈火炎地獄〉の炎で赤く染まった。

 

 

あら、やだ。この蛇 (蛇のようなモンスター、言うのが面倒臭いので、略して「蛇」)、失神してるんですけど。

 

遡ること数分前.......。

俺は、蛇が話しているのをわざと無視して、〈火炎地獄〉で攻撃していた。

だが、淡々と攻撃して倒すのもなんだか可哀想だし、しかも、ずっと無視するのも悪いし話でも聞くかと思った俺は、手前で〈火炎地獄〉を発動し、蛇には当てないようにした。

そして、話を聞こうと思って近づいたが、この有り様だった。

「人間よ。いい度胸じゃないか」とラスボス風に言うわりには、メンタルが弱いらしい。

そう思いつつ、蛇の顔を手でツンツンと突いていた。

 

ー 数分後 ー

 

蛇は眼を覚ました。

目覚めて早々、

 

「・・・人間よ、なかなかやるな。俺様の僕(しもべ)にしてやってもよいぞ!」

 

と言い出す。

・・・うざ。

俺はあまりにも蛇がウザかったので〈火炎地獄〉を詠唱を開始する。

 

「全ての炎を.......」

 

「す、すみませんでした。もう、偉そうにしません.....」

 

「うむ。それでよい」

 

そして、蛇との話し合いが始まるのだった。

 




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33話 白き蛇 2

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺たちは7階層の奥で謎の大型な蛇と出会う。

ラスボス風に「ふふふ、人間よ。なかなかやるな...!!!」という割にはメンタルがノミのような心臓だったのだ。

見た目はすごくかっこいいのに.....非常に残念だ.....。

そして、俺たちはその蛇の話を聞くことにした。

 

 

「ところで蛇さんや。なぜ、ここにいる?」

 

俺は何故か、鼻息が荒くなっている蛇を疑問に思いつつ、そう質問をした。

蛇は「すーはーすーはー」と深呼吸した後、

 

「ふふふ...。ここが俺様の砦(とりで)なのだ、人間...!!!」

 

と言った。

・・・言っていることが意味分からん。

俺は、適当に「ふーん」と軽く流すように返事をした。

 

「・・・おいおい!!!なにが、「ふーん」だよ!!!もっと、まともな返し方があるんじゃないか!?!?」

「・・・・・」

「ちょ!無視するでない.....!!!!!」

「・・・・・」

「ねぇ!本当に.....!!!!!」

「・・・・・」

 

俺はこの後もシカトを続けた。

それに徐々に蛇がシュン.....となっていくところがとても面白かった。

・・・そして、

 

「・・・お願いします。無視しないでください.....」

 

と、今にも泣きそうな声で言ってきた。

さすがに可哀想に思ってきた俺は一応、話を聞くことにした。

 

「・・・すみません。ここは俺の砦なんかじゃありません.....」

 

なんとなく、分かっていたが。

 

「じゃあ、なんでここに?」

 

すると、その蛇は回想を始めた。

 

「俺はジャーファル=ブリザードって言います。俺の種族は大蛇族()と言い、代々、魔力が高いことから上位魔族として名を馳せていました。しかし、大昔に空から巨大な隕石が降ってきて、大蛇族は絶滅してしまいました。幸いにも俺は生き残りました」

 

まるで、恐竜が隕石で絶滅したような出来事だな。

しかし、なぜ、他の大蛇族は絶滅したのにジャーファルだけが生き残ったのだろうか....?

俺は、ジャーファルに聞くことにした。

 

「ジャーファルは何故、生き残ったんだ!?」

「俺の鱗は大蛇族の鱗の数千倍の硬さだからだと思います」

 

・・・ん?どういうこと!?!?

 

「トライド。他の大蛇族の鱗の数千倍の硬さってどういうこと!?硬さは族で統一なんじゃないのか!?!?」

 

そう俺はトライドに耳打ちをした。

 

「族ノ中デゴク稀二....イヤ、数千年、数億年二1匹生マレルカモドウカモ分カラナイホドノ希少種デス。コレヲ【特異体質(イレギュラー)】ト言イマス」

 

トライドに聞く限り、非常に珍しいようだ。

これを聞いたエマとアリスはとても驚いている様子だった。

 

でも、なんでこんなにも弱々しいのだろう。

スキル【魔力感知】でジャーファルを見る限り、とても魔力が高いのだが。まぁ、トライドよりは劣っているけど。

 

「それじゃ、なんでジャーファルはその....弱いんだ!?」

「ゔぐっ......それはですね。魔力をどう扱うか分からないんです.....」

「・・・はい?今なんて?」

「だから、そのぉー.....魔力をどう扱えばいいか分からないんですよ」

「・・・・・」

 

無言になる俺。

 

「ちょっ!無言にならないでくれます?これでも真剣に言ってるんですから」

 

焦りだすジャーファル。

 

「・・・あ、ごめんごめん」

「まぁ、いいですけど」

 

ーーなんてこった!魔力を扱えないなんて。

・・・いや、待てよ。

俺はここで素晴らしき発想を思いついた。

 

「ジャーファルよ」

「はい」

「魔力の扱い方を教えてあげようじゃないかっ!!!」

「えっ!?本当ですかっ!?!?」

「うむ。だが、1つ条件がある」

 

首を傾げるジャーファル。

 

「魔力の扱い方を教える代わりに俺たちの仲間になれ!」

「えっ?」

 

ーー 我ながらいい考えだ!

自分で自分を褒め称えたいくらいだよ!!!

そう俺は思った。

 

そして、ジャーファルの特訓が始まる。

 




ご視聴ありがとうございます!


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34話 魔力の理論&特訓

ご静聴のほどよろしくお願いします!


ジャーファルは魔力の扱い方が分からないらしい。

俺は魔力の扱い方を教える代わりに仲間になることを条件とした。

「うーん...」と少し悩んだ後、ジャーファルはこの条件をのんだ。

この条件はお互いに良いと俺は考える。

ジャーファルは魔力の扱い方を知ることができ、俺は魔力の高い魔物を仲間にすることができる。

それにジャーファルは【特異体質(イレギュラー)】だ。数千年、もしくは数億年に誕生するかもわからない貴重な逸材をここに野放しになんてしたくない。

そして、俺はジャーファルの為に特訓を開始した。

 

 

って言っても俺もイマイチ魔力をどう扱うか分からない。

何気なく、【魔法】というものを使用しているが、そもそも、【魔力の理論】という根本的なものが分からない。

どうせ、魔法が使えてるからいっか!とかいう理由でそこんとこを怠ってしまった。

・・・まさか、ここでそのツケがくるとは.....。

まぁ、こういう時は物知りなエマに聞くことにしよう。

そう思った俺は、【魔力の理論】というものを聞く為、エマに質問をした。

 

「【魔力の理論】とは、魔法を扱う為にとても重要なことです。そもそも、魔法とは空気中に発生している【魔素(まそ)】というエネルギーを体内に取り込むことによって成立します。そして、この【魔素】を体内で増幅させます。増幅させる為に必要なことは、【魔力干渉(マジック・デモリッション)】と呼ばれる能力です。それが高ければ高いほど、魔法の威力の想像を絶するものとなります。【魔素(まそ)】を取り込むことは簡単ですが、【魔力干渉(マジック・デモリッション)】については個々の才能です。いくら努力をしたってこれは高めることはほぼ不可能です。

・・・それにしても、【魔力の理論】が分からないのによく【魔法】が使えますね。私はそこにビックリしてます」

 

「ハハハ.....」

 

俺は苦笑いを浮かべた。

・・・【魔力の理論】とは意外と簡単なものだな。

これなら、ジャーファルでもすぐに出来そうだ。

 

 

それからというもの、ジャーファルは特訓に励んだ。

・・・そして、なんと2日で魔力の扱い方や魔法を覚えた。

小手調べに【擬人化】という魔法をしてもらうことにした。

小手調べとはいっても、【擬人化】は相当な技術を要する。これをたった2日しか特訓にしていないジャーファルには至難のワザだろう.....。

・・・ん?え!?まさかっっ!?!?

そのまさかだった。

ジャーファルは見事、【擬人化】を成功させた。

そして、ジャーファルの容姿は.....、

・・・やはり、女の子だった。

【擬人化】を成功させたのは驚いた。

だが、ジャーファルは女の子だった、というところには驚かない。だって、トライドの時と状況が一緒なのだから。

・・・俺はそう思っていた。

デカい!とてもデカい!

ジャーファルは胸がデカかったのだ。

それに、出てるところは出てて、引っ込んでいるところは引っ込んでいる。

大人の女性の魅力を感じれずにはいられなかった。

俺は数秒間、その容姿に目が釘付けになっていた。

・・・いかんいかん。危うく惚れてしまうところだった。

正気に戻った俺だか、その後もチラチラとジャーファルを見ていた。

絶対、黒いスーツとメガネが似合う!と心の中で叫んでいた。

 

「よし!決めた!」

 

街に戻ったら、服を買ってあげよう!

もちろん、黒いスーツとメガネを。

 

俺は、「グフフフフ...」と不気味な笑みを浮かべていた。

それを見た4人は当然、俺のことを引いただろう。

 




ご視聴ありがとうございます!


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35話 特訓後の出来事

久しぶりの更新です!
ご静聴のほどよろしくお願いします!


「ジャーファル、仲間になるんだ」

 

「はい?」

 

「仲間になるという条件で魔法の扱い方を教えたんだ。拒否は許されない!」

 

「・・・」

 

ジャーファルはあらぬ方向を向いて「フーフーフー」と出来もしない口笛を吹く。

そして、「あれ?なんのこと?」みたいな顔をしてスッとぼけている。

 

「おい、何か喋りらんかい!」

 

そう問いかけてみたが、ジャーファルは知らんぷりを続けている。

 

「・・・分かった。もういいよ、仲間にならなくて。俺が仲間になれって強要したのが悪かったんだ、ごめんな」

 

そう言うと、俺は「行くぞ」とエマ達に言い、その場を後にすることにした。

すると、

 

「・・・えっ」

 

とジャーファルがこちらをキョトンとした顔で見つめている。

 

「ねぇ!待ってよ!なんでそんな簡単に諦めるの?」

 

そうジャーファルが言ってきたので、「仲間になりたいっていう意思が見えなかったから諦めただけ」と伝えた。

それを聞いたジャーファルは、

 

「いや、そうじゃなくて.....もっとこう.....ないの?」

 

とソワソワしたがら言ってきた。

このとき、俺は察した。

(こいつ、かまってちゃんだ)、と。

これを知った俺は無視した仕返しに意地悪をしてやろうと考えた。

 

「・・・ないよ」

 

きっぱりとそう言う俺。

これも作戦のうちだ。

ジャーファルの性格上、これを続けていくうちに自分から仲間にしてくださいと頭を下げるだろう。

まぁ、それまでいじりまくってやろう....グフフ....。

 

「ほ、本当にないの.....?」

 

「うん」

 

「へ、へぇー.....そ、そっかぁー.....ないんだぁー.....ふーん.....」

 

ジャーファルの表情には少し焦りが見える。

俺はその光景を見て楽しんだ。

このとき、「【Sadist(サディスト)】、通称【S(エス)】」というエクストラスキルが覚醒した。

 

 

 

しばらく、こんなくだらない会話が続いた後、とうとうその時がやって来た。

 

「・・・ごめんなさい。調子に乗ってました。仲間にしてください、お願いします.....」

 

深々と長い首を下げた。

意外と時間がかかった。

てっきり、俺は10分くらいで懲りると思ったが1時間もかかってしまった。

でも、まぁ、無事に仲間になったのだからよしとしよう。

 

「・・・ところで、ジャーファルさん?そろそろその頭を上げてくれるだろうか。さっきから俺の頭の上に乗っているんですけど?」

 

そう言うと、ジャーファルは下げていた頭を上げた。

 

「てか、さっきまで【擬人化】してたよね?」

 

「まぁ」

 

「なんで、やめちゃったの?」

 

俺はジャーファルにそう質問をしてみた。

3mを超える蛇を見上げて話すのは首が疲れる。

それに本音を言うと、ジャーファルの【擬人化】が見たいだけだけど.....。

このことはみんなに黙っておこう。

そう思ってなんとなく、ホワイトさんの方を向いて見る。

すると、ニタァーっとした顔でこちらを見つめていた。

(そういえば、トライドは心が読めるんだったぁぁぁぁぁあああ!!!!!)

と、今になって思い出し、少し恥ずかしくなった。

 

「慣れてないと変な感じがする.....それに疲れるから」

 

そうジャーファルが言ってくる。

(そういえば、ジャーファルと話していたんだ。数秒前に質問していたのにホワイトさんに気を取られて忘れていた.....)

 

「・・・そ、そっか」

 

俺は気を取り直して話した。

 

「まぁ、街に行ったら【擬人化】しないといけないから今のうちに慣れるのも大切だぞ」

 

そう言うと、ジャーファルは「分かった」と言い、【擬人化】をした。

 

「・・・やっぱり、慣れないと変な感じがするなぁー」

 

んー、最高だね。

大人の魅力を感じる!

 

・・・おっと、こんな事を考えていたらまたホワイトさんに心を読まれ、笑われてしまう。

俺は何も考えないように心がけた。

 

- ユニークスキル【無心(むしん)】の獲得に成功しました -

 




ご静聴ありがとうございます!


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36話 とある休日

ご静聴のほどよろしくお願いします!


・・・とある休日。

俺たちは街外れにある小さな洞窟を潜ることにした。

とはいっても、クエスト依頼でもなくお金に困っているだけでもなく、ただ潜ってみたいという好奇心だけで現在ここにいる。

入り口は小さく、周りには雑草が生い茂り、全く人の通りそうな場所には到底見えない。

人の通りがない=洞窟は未探索。

・・・ということはまだお宝が残っている可能性が高い。

そう思いつつ、俺とトライドは洞窟へと入った。

ちなみに、エマとアリスは家の用事とかなんかで今日は参加していない。

あと、ジャーファルはギルドの冒険者登録の際に予期せぬトラブルが発生した模様。

そして、一向に終わりそうも無いので置いてきた。

 

 

俺は一歩、洞窟に足を踏み入れた。

中は特に変わった様子もなく、ただの洞窟って感じがする。

洞窟の中は陽(ひ)が当たっていないせいか、ジメジメしなんだか少し温かい...気がする。

・・・しかし、暗くて何も見えないな、、、。

そう思いつつ、俺は進んだ。

10分くらい歩いただろうか、目の前がなんだか徐々に明るくなっていく。

ーー 陽(ひ)が当たっていないのに何故だろうか、、、。

しかし、その光の正体はすぐに分かった。

光る鉱石だったのだ。

だが、俺は鉱石についてなにも知識がない。

とりあえず、知っていそうなトライドに聞くことにした。

 

「トライド。この光ってる石はなんだ?」

 

「ソレハデスネ・・・【オリハルコン鉱石】デス」

 

【オリハルコン鉱石】?

それってゲームでいうレアアイテムなのでは!?

俺は【オリハルコン鉱石】と聞き、ワクワクしていた。

 

「【オリハルコン鉱石】ガココニアルナンテ凄イデス。トテモ希少ナ鉱石デ、ナンデモ、コノ鉱石デ武器ヲ作ルト、ソノ武器ハ、攻撃力ヤ耐久度ガ他ノ武器ニ比バテ、段違イニ強イダトカ・・・。マタ、高値デ取引モサレテイマスネ」

 

やっぱり、激レアアイテムだった!

早速、持ち帰ろうっ!

そう思った俺は【オリハルコン鉱石】を手に取り、バックへとしまった。

 

「デモ・・・」

 

「・・・でも、?」

 

ーー なんだか嫌な予感・・・。

 

「コノ【オリハルコン鉱石】ヲ主食トスルA級モンスターガイルト聞イタコトガアリマス」

 

「・・・いやいや、いるはずがないだろう。いるはずが...。冗談はやめてくれよ、トライドさんよ」

 

俺の額から汗が垂れる。

そして、【オリハルコン鉱石】の回収を急いだ。

 

回収には30分かかった。

【オリハルコン鉱石】は非常に強度が高いため、一つ採るだけでも数分かかった。

俺は「ふぅー」と一息吐いた。

そして、考え事を始めた。

 

(んー、これで引き帰ってもいいが、なんだか勿体無い気がする。せっかく、ここまで来たんだからもう少し探索をしてみようかな・・・)

 

数分間、考え事をし、それがまとまったのでトライドに

 

「もう少し、探索をしよう」

 

と一声かけた。

もちろん、トライドは賛成をしてくれた。

そして、俺とトライドはまた歩き始めた。

 

 

周りを見渡しながら歩くと様々な鉱石が見つけることができた。中には虹色に輝く鉱石やいかにも触ったら危険な鉱石がゴロゴロとある。

ここの洞窟は鉱石が沢山溢れかえる、いわゆる【鉱石洞山】というものだった。

当たり前のことだが、俺は周りにある鉱石を拾いながら歩いた。

換金すれば凄い額になると思う。

 

・・・しかし、このマジックバッグというものは凄いな。

あんなに鉱石を沢山入れたのにまだまだ入るし、全然重くもない。

バッグの中にある空間に秘密があるのだろう。

異世界ならではだな!

 

俺はそう関心しながら歩き続けた。




ご視聴ありがとうございます!


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37話 とある休日 2

ご静聴のほどよろしくお願いします!


俺とトライドはただの暇つぶしで街外れにある小さな洞窟へと潜っていた。

そこで激レアアイテムの【オリハルコン鉱石】を見つけることが出来たのだ。

その後、俺は「もう少し探索をしよう」と考え、洞窟に残ったのだった。

 

 

洞窟に残り、探索を進めていた俺とトライドだったが、ここでトラブルが発生してしまっていた。

 

 

あれから、何もなく進めていた。

むしろ、何もなくて怖いほどだった。

普通、洞窟探索というものは問題ごとが発生してなんぼという相場が決まっている・・・と思う。

だが、何もなく約1時間、探索が出来ている。

そこで俺は洞窟に入って問題ごとがなく進めていたので安心しきっていたのだった。

 

・・・しかし、それは起きてしまったのだ.....。

 

モンスターに遭遇?・・・いや、違う。

食料に困っている?・・・それも違う。

むしろ、それが良かった。いや、多少は困るけど.....。

 

 

一体、なにが起きたのかって??

ふむ。仕方がないな。特別に教えてやろう。

それはだな・・・、

 

「「 落とし穴に落ちた 」」

 

んだよ。

もっと、周りに注意しながら歩けば良かった.....。

あんな、いかにもな落とし穴に落ちてしまうとは自分でもビックリだった。

 

 

俺は鉱石たちに夢中になっていた。

その挙句に、前方にあるむきだしの直径1メートルちょいしかない穴に気づくはずもなく落ちた。

恥ずかし過ぎて穴があったら入りたい気持ちになった。

・・・あっ、入ってた。。。

 

 

まぁ、ここまでは大丈夫だと思っていた。

だって、抜け出せばいいのだから。

しかし、その後が問題だったのだ。

その穴は深い・・・いや、深すぎると言っても良いだろう。

それじゃ、どう足掻(あが)いても抜け出せない。

俺はまず最初に上を見上げた。

上を見上げるが、さっきまであった鉱石の灯りがなく、ただ首が痛くなるだけだった。

それに暗くて何も見えやしない。

 

(・・・はぁ.....これは困ったな.....)

 

と思っていると、俺は良いことを思いつく。

 

(もしかしたら、大声で助けを呼べばトライドが助けてくれるに違いない!!!)

 

そう思った俺は、大声で「助けてくれー!」と上に向かって叫んだ。

よし、これでトライドが助けてくれるに違いないだろう。

俺は少しホッと一息吐くためを腰を下ろした。

 

むにゅ・・・

 

俺のお尻になにやら柔らかい感触があった。

それを確認する為にその柔らかい感触があったところに両手を伸ばした。

 

むにゅ・・・むにゅ・・・

 

なにやら、触ったことがあるような感触だった。

(なんだろう、この感触は.....。何処かで触ったことあるような・・・ないような・・・思い出せない)

 

俺は思い出せるよう更にその柔らかいものを触った。

 

むにゅ・・・むにゅ・・・むにゅ・・・むにゅ・・・

 

・・・あっ!思い出した!

 

俺はやっと思い出すことができた。

 

(この感触は俺が初めてこの異世界に来て触れたもの!そう、エマの胸のような感触だっ!!!・・・懐かしい。でも、まぁ、あんなシチュエーションはラノベ主人公でも滅多にすることが出来ない領域。こんな俺が2度目はないだろう)

 

そう思いつつ、俺は更に更に揉み続けた。

 

 

 

・・・すると、

 

「タケル、イツマデ揉ンデルンデスカ」

 

と聞き覚えのある声がする。

 

トライド?いや、まさか。

だって、トライドは穴の上にいるばすだから。

 

俺はその更に揉み続ける。

 

「タケル、イイ加減ソノ手ヲトッテクレマセンカ?」

 

また、聞き覚えのある声が聞こえる。

困った、幻聴まで聞こえるようになったか.....。

 

俺はまたその更に揉み続ける。

 

「主、いつまでわっちの胸を触っとるんじゃ!早く離さんかい!」

 

「ほへ?」

 

俺はポカンとする。

そこには暗くて見えないがトライドがいる。

 

 

「あれ?トライドさん?なぜ、ここに?」

 

俺は少し動揺したがそう質問をする。

 

「なぜって、主が穴に落ちたからじゃ。一緒に落ちて悪いかや?」

 

「いいえ、悪くないです」

 

俺は反射的な返事になっていた。

 

「そうかや。でも、あのような行為をするときはここじゃなく、もっとふさわしいところでしなんし」

 

トライドは少し顔を赤らめてそう言った。

当然、暗くてトライドの表情が見えないので、どのように返事をしていいか分からなかった。

なので、とりあえず、「はい」と答えた。

 

「うん」

 

更にトライドの顔は赤くなった。

 

 

それから、少し間が空いた。

そして、俺ははっと我に返った。

 

「てか、トライド。キャラ、ブレてるけど・・・」

 

「・・・あっ、、、」

 




ご静聴ありがとうございます!


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38話 とある休日 3

お久しぶりです!
ご静聴のほどよろしくお願いします!


「.....気を取り直して.....タケルガ落チタノダカラ私モ落チルノハ当タリ前デス」

 

「いやいやいや!俺が落ちたからってトライド、お前まで落ちなくてもいいんだぞ!それに気を取り直して.....ってさっきまでキャラブレブレだったんだけど!?.....まぁ、いいけど」

 

俺はさっきまでキャラがブレブレだったトライドに戸惑いつつもなんとか本題へと話を変える。

 

「それにしても深いなぁ。登れるかな」

 

「不可能デス」

 

「.....冷静な判断ありがとう.....」

 

(トライドは冷静だな。それに比べて俺と言ったら.....いかんいかん!気を確かに持つんだ、俺!実際にここは暗いし、トライドには表情なんて見られることは100%有り得ないのだから!ハハっ!)

 

「ドウシタンデスカ?凄イ顔デスヨ。モシカシテ.....怖インデスカ?」

 

(.....えっえっ?見えてるの!?!?!....いやいや、まさかね)

 

「.....そっ、そっ、そんなこと.....ある訳無いじゃん.....!みっ、見えてもいないのに、そっ、そんなこと、いっ、言うのやめてくれよ.....!」

 

俺は苦し紛れにそう言う。

正直、トライドの言う通り、怖いです。物凄く怖いです。だって、暗いし周り何も見えないんだよ!?!?逆に冷静にいるのがおかしいと思うんだけど.....!!!

と声には出さず心の中で呟いた。

 

「イヤ、見エテマスヨ」

 

「えっ?ホント?」

 

「ハイ」

 

「.....いやいや、ご冗談を.....マジで!?!?」

 

「ハイ、マジデス。朝ト昼ト変ワラナイクライニ」

 

「.....ハハハ.....」

 

(みっ、見えてるのかよぉぉぉぉぉお.....!!!!恥ずかすぃぃぃいい.....!!!!今日で何回、トライドの前で恥を晒してんのぉぉぉお....!!!!これでも、パーティーのリーダー(?)だぞ、俺は.....!!!!)

 

俺はあまりにも自分の情け無さに膝から崩れ、手をつく。

 

(.....ハハハ、これじゃ誰がリーダー(?)か分からないなぁ.....)

 

とマイナス思考になりつつ、前方の方に眼をやると、微かに光が見えるのを確認した。そして、暗いところに数分いたせいか、だんだん眼が慣れ始め、今いる空間、そして状況を理解することが出来た。

 

(.....あ、あれは.....!!!)

 

トライドの後方に道があるのが分かった。

 

「トライド!道があるぞ!!!まだ俺はやれるぞ、ガハハハハ!!!!!」

 

(まぁ、道があるこのは知っていましたけど、何より、タケルの自信が回復して良かったです。これでもタケルは私たちのパーティーのリーダーなのですから!!!)

 

とトライドはこんな事を心情を思いながらタケルとともにその道を進んだ。

 




ご視聴ありがとうございます!


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39話 とある休日 4

ご静聴のほどよろしくお願いします!


「トライドっ!!あれを見ろ、光だっ、光があるぞっ!!!!!」

 

タケルはさっき見つけた細い道を歩くこと10分、出口と思われる光を眼で確認した。

一時はどうなる事かと思ったがこれで街に帰れる、と思いつつ光のあるところまで走った。

だが、そこは出口ではなく、金銭などの宝石の山だった。光の正体はこれだった。

正直、出口で無いことにガッカリしたがこんな宝石の山を眼にすることが出来たことは嬉しい.....しかし、何かがおかしい。1億ゴールドはくだらない量があると思われるこの山になぜ一体もモンスターがいないのか。普通は護りのモンスターがいてもいいのでは?と俺はそう思った。まぁ、モンスターがいないことにこしたことはないが.....。

 

しかし、一度にこんなに多くのゴールドを持ち運べるのだろうか.......無理だな。だから、出来るだけ多く持てるだけ持っていこうっ!!!!!

 

と、俺はゴールドに手を伸ばし触れた。

すると、その瞬間、ドドドドドッと地面が揺れ始めた。

 

これはマズイっ.....!!!!

 

そう俺は直感で思った。

 

「.....トライド.....!!一度下がるぞ!!!!!」

 

「ハイ」

 

・・・見事、その直感は的中し、いかにも強そうなゴーレムが50体.....いや、100体以上出現したのだ。

流石にこの量を相手にするのは骨が折れそうなので逃げることにした。ゴーレムの後ろに道が続いていたので、スキル《潜伏》で身を隠し、そこへと向かった。これはゴールドを多く持っていこうとした罰なのだろうか.....俺はそう思った。

 

だが、悪いこともあれば良いこともある。

 

ゴーレム達の出現により、新たに宝箱が出現したのだ。当然、スキル《潜伏》のお陰で気づかれずに手に入れることに成功し、その宝箱の中にはなんと《賢者の涙》というこの異世界に2つしかない超激レアアイテムが入っていたのだ。

こんなところで気に入れることが出来るなんて運がいい!まぁ、何故こんな場所にあるのか疑問だけども!

 

と思っていると..........

 

『アイテム説明』

このアイテムは持っているだけで全ての状態異常の無効、瞬間再生などといった賢者の加護を受けることが出来るチートアイテムなのです!

しかし、これほどのアイテムを所持する際には当然危険がともなうことになるのです!希少なアイテムなので、これを狙っている冒険者が多くいます。なかには闇商人や裏で動いている危険な人物も狙っています!もしかしたら、殺される.....なんてこともあるでしょう!いや、確実に殺られます!なので、気をつけてください♬ご健闘を祈っています♬頑張ってね♬(てへぺろ

 

とふざけた説明がタケルの脳内に流れたのだった。




ご視聴ありがとうございました!


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