Fate/AlterZero (NeoNuc2001)
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マテリアル
マテリアル アーチャー


なんだこれ、二千文字とか馬鹿でしょ。

ちなみにオリジナル設定を含めているので注意。

ネタばれになるのでできれば読まないでほしい。

非公開にしなかったのは伏線をある程度知ってもらいたかったからです。

その割にはあからさまだが。

改稿
2017/09/05 表現の修正


クラス:アーチャー

 

真名:ギルガメッシュ

 

ステータス

筋力:A

耐久:A

俊敏:B

魔力:A+

幸運:A

宝具:EX

 

スキル

カリスマ A++

本来、人としては得ることのできないレベルのカリスマ。しかし、大幅な神性の向上と本来のカリスマの高さが相まって、破格のカリスマを得ることができた。だが物語では三人の勇者に圧倒されているが...

 

黄金律 A

生前、どれほどの金が回っていたかをあらわすスキル。Aランクともなると各種賭け、投資、会社経営における成功はもちろんのこと、挙句の果てには金を落としただけでそれ以上のものが手に入るというチートぶり。

 

神性 A++

神霊適正をあらわすスキル。彼の場合2/3が神の血筋だったり、冥界の神としてあがめられたことにより最高ランクを得られた。また聖杯から得られた知識により神性スキルが必要と判断したアーチャーは神を一時的に受け入れたことも影響している。それでもランクの値が本来より多いのが謎となっている。本来、神の存在を毛嫌いしているにも関わらず許容しているということも謎になっている。

また、彼の場合バーテックスには攻撃は問題なく効くのだが...

 

対魔力 B

魔術による攻撃を軽減・無効化するスキル。本来はこれより低い数値を持っていたのだが、五人の英霊を召喚する際に強奪した魔力の余りが現れたもの。魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。 大魔術等をもってしても、傷つけるのは難しい

 

単独行動 A++

マスターからの魔力供給なしでどれほど現界できるかをあらわすスキル。Aランクならば莫大な魔力を使用する宝具の使用を除いて、基本的に無期限に現界できる。

 

コレクター EX

より品質の高いアイテムを取得する才能。レアアイテムすら頻繁に手に入れる幸運だが、本人にしか適用されない為、マスターに恩恵はない。

 

宝具

全知なるや全能の星

ランク:EX

種別:対人宝具

レンジ:−

最大捕捉:1人

シャ・ナクパ・イルム。常時発動型の宝具で意図的に制限することはできない。発動中はありとあらゆる真実を看破することが可能だが、バーテックスに対しては判明しないものもあるらしい。そのため、瞬間的な戦闘時の選択は指示されるが、最終的な結末を知ることはできない。彼曰く「このようなことは二度目だな。まぁ今回の方がいいがな。」

見たいものはなんでも見れる。見ようとはおもわないものは見れない。それがこの宝具の性質である。

 

王の財宝

ランク:- 

種別:対人宝具 

レンジ:- 

最大補足:-

ゲート・オブ・バビロン。彼が生前に世界各地の宝を集めたという逸話が昇華したもの。その中には彼が生前収集した世界各地の宝の全てが収納されているという。これは文字通り「全て」であり、結果としてその後に現れたありとあらゆる宝具の原典を所有することになった。

だが原典を持ち合わせていたからなのか、世界各地を旅して見聞を深めたからなのか、生前に「この世の全ては我の物」と言ったからなのか、その後に現れたありとあらゆる物品、発明の雛形を彼は所有している。そのためバビロニア時代にはなかったであろうタイムマシン、光の速度で進む船。果てにはあやしい人形などのよくわからない物まで所有しているらしい。

なお「物品、発明の雛形」という条件は曖昧なため、実質的には雛形ではないスマホや現代の服なども所有している模様。もはや何でもありである。

ただし、彼は所有者であり担い手ではないので一つの宝具を極限に使いこなすことはできない、のだが...。

また、人間が直接関与せずに作り出した新しい概念はさすがに内臓されていないとのこと。その例として「各種神造兵器」、「ロンギヌスの槍」、「ソウルジェム」などである。

なお上記の例外を次に表記する。

 

乖離剣

ランク:EX

種別:対界宝具

レンジ:*

最大補足:*

事実上の「名前なし」。便宜上「エア」と名がつけられている。彼が事実上の担い手にあたる宝具。他の宝具とは違い、アーチャーの信頼を得ている宝具。それは世界を裂き、星を創造せしめた力の具現化。数々の宝具の中で頂点に位置すると言われても過言ではない。現状、バーテックスに対抗する際の切り札とも言える存在だが、実際に使うかどうかは不明。

 

天の鎖

ランク:-(公式準拠)

種別:対神宝具

レンジ:- 

最大補足:-

エルキドゥ。神を縛ることができる数少ない神特攻の宝具。彼が乖離剣以上に信頼を置いている宝具。その正体は文字通り、彼の友エルキドゥが持っていた宝具とされる。この宝具ならばバーテックスの進行を妨害できる模様。なおその性能は不明。

ちなみに大赦がエルキドゥを召喚しなかった理由として■■■を利用した■■は効果的ではないから。

 

 

詳細

バビロニア時代に生きた最古に語られた英雄。王の中の王。英雄王。その人生は壮絶であり、子供の時代は賢王として良き国として指揮した。しかし大人になると180度入れ替わり、暴君となった。そして民に圧制を行ったという。これには「生きながら、生まれ変わった」といわれるほど。実際の真実は不明となっている。

なお彼は魔法使いに対して何らかの関連性があると思われる。

彼の代名詞は慢心、黄金、チート、ダサい、そして愉悦である。もはやよくわからない。

彼は召喚された直後はやる気に満ちていたが、バーテックスの存在を聞くと途端にやる気を失った。

これらに関しては真相は不明である。




王の財宝が長い。あとオリジナルの宝具が乱発...

黒い四角はなに?原作の情報どおりの理由ですよ。

最後のなに?わかってるでしょ...


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少女の約束
第零話 召還儀礼


特に戦いません。たぶん。

2018/08/29 表現の変更


「答えよ、貴様らが王の威光に縋らんとする雑種か」

 

 これがこの計画の最初の台詞である。もちろん、これ以前の活動は存在する。英霊を現世に固着させるための小聖杯の準備、霊脈の設定と強化、神樹様のバックアップと英霊召喚に必要な媒体の確保。いや、厳密に言えば特定のサーヴァントの召喚に必要な媒体の確保である。

 

 黒のジャンパー、古びた赤い布そして銃の形状を持つ魔術礼装等々。そして私に渡されたのは謎の石版。これらを利用して様々な英霊を召喚するらしい。そしてこの礼装は全て万華鏡の魔法使いが用意したものだ。

 

「意図的にアーチャーを引き出し、貴公が召喚するサーヴァントをキャスターに決定付ける重要な触媒だ。まぁ、この触媒で儂が出るならそれに越した事はないがな」

 

 触媒を見せられた時、万華鏡の魔法使いはそう説明した。その重要な触媒とはアーチャーのものか、私のキャスターのものか私には理解はできなかった。そして説明を求めようとも思わない。そう、そして、私が召喚するサーヴァントはキャスターなのである。そのはずなのだが、ステータスは魔術を得意とする様には見えずいやむしろ、単独行動を得意にしている様に見える。

 

「クラスはアーチャーか...まぁよい。その方が楽しめるものよ」

 

 その英霊は言葉を綴る。やはりアーチャーなのか。だとすればあちらでキャスターが召喚したと見える。いきなりドジを踏んでしまったか。しかし、どちらにせよ計画をここまでこぎ付けたのだから勝利は目前だと言っていいのだろう。

 

 多少の計画の変更に思案しているところに、何かを感じる。唐突に変化を感じる。方向は後ろ、扉の方だ。妙に騒がしい。まるで、鬼の狂宴を始めたかのように。時折、叫び声が聞こえる。バーサーカーを呼び出す予定はないはずなのに。

 

「おい、何の音だ..」

「サーヴァントが暴走しているのか」

「俺が見てくる」

 

 上司に確認すらとらずに、一人の部下が扉をあける。自分の魔術回路が警告音を奏でる。いや、これは共鳴? 

 

「なにやってるんだ。うゎ!」

 

 一人の魔術使いが引きづり込まれる。最後に見たその顔は恐怖と混乱に満ちていた。いやそれは疑問なのかもしれない。だが、どちらにせよそれは異常事態に間違いはなかった

 

 扉が開かれる、いや迫ってくると言う感じか。

 

「...!」

 

 魔術を紡ぐ、ゆったりとしたその詠唱は来るべき扉を目前で停止、静止させた。そして、当然ながら扉の目の前には確かに一人の魔術、いや魔法使いが立っていた。

 

「ふむ、やはりか。どうやら不味いことになったか。抑止力が弱まっているのが原因か。いや霊脈が限度を迎えてるのかもしれない」

 

 理解する。

 そしてアーチャーがやっと魔法使いを視認し、問いを放つ。

 

「ほう見たところ、貴様がこの群の長か。ならば問おう。なぜ貴様は王の面前で見るに値せぬ血を撒き散らし、食うに値せぬ肉を匂わせ、居るに値せぬこのみずぼらしい部屋にまねいたのだ?」

 

「それは英雄王に裁定してもらいたいからな、この世界を。それはこことはあまり変わらないが、つまらないとは思わんよ」

 

 魔法使いは答える、その手に狂気と欲望に満ちた仲間の頭を持ちながら。周りにいた部下は泡を吹きながらとうに倒れている。所詮は魔術使い。その急激な変化に耐えることができなかったのだろう。そう魔法使いのいったように、私が召喚したサーヴァントは最古にして最強の英雄、英雄王ギルガメッシュだ。

 

「なるほどな。この我を理解しているようだ。だがこの俺が聞いているのはそのようなことではない。他のサーヴァントはどうした。この魔力、強力なサーヴァントが召喚したようにも思えるが」

 

「お前が奪った、全部。本来五基の英霊を召喚するために用意したすべての魔力と四人のマスターの魔力をお前が全部持っていた。さすがは暴君として名高い英雄王だ。お陰で理性をなくした人間を処理することになってしまった」

 

「ほう、そうか。それは惜しいことをした。強力なサーヴァントと争うためにセイバーとして顕現しようとしたのが失敗か」

 

 魔法使いの言葉に英雄王は激情し、この場にいる全ての人を殺すのかと思ったのだか、英雄王は後悔こそはしたものの殺意をそこに見いだすことができなかった。一体なぜ。いやそもそも、英雄王が検知した魔力とは。

 

「ならば、マスターはどうした。貴様の口振りからすれば一人生き残っているのではないのか」

 

「今、お前の目の前にいるが」

 

「なに? 貴様がこの我のマスターだと。いや、待てよ。なるほどな、そういうことか」

 

 英雄王は私を凝視し、納得顔でくっくっくと笑いながら、何か言っていたが、どうやら英雄王から見れば私はマスターとしての資質が足りなかったらしい。それもそのはずだ。なにせ、私は7歳になったばっかりの子供に過ぎないのだから。

 

 どちらにせよ、私はただの渡し役に過ぎない。実際にマスターとして間接的に、一時的に魔力を捻出し、共に戦うのは三人の少女なのだから。計画における今回の私はサーヴァントを召喚するために魔力を一点に集める魔術使いに過ぎない。いわゆる中継地点。実際には聖杯が行うべき仕事だが、急造の礼装のためにマスターが代行することになった。しかし、他の四人は上手く制御できなかった。その隙をこの英霊が突いたのだろう。

 

 やはり、私はこういうことが得意らしい。

 

 しかし、実際にサーヴァントと向かい合うと「このサーヴァントと一緒ならば何かを得ることができたかもしれない」そのような後悔の念がある。やはり、自身も戦闘に参加すべき立ったのだろうか。

 

 ただ、バーテックスとの戦闘で得るものはあっても、この英霊に献上すべきものがほぼない。それでは意味がないのだろう。下手すれば、勇者やサーヴァントの戦力を削る恐れがある。やはり、譲るべきなのだろう。

 

「では、説明してもらうぞ。一体この我をどのような戦いに導くのか」

 

 英雄王に説明する。この世界の成り立ち、戦うべき敵、共に戦うべき味方、隠匿すべき事実。そして勝利の先にある報酬、つまり受肉を。

 

「なるほどな、ではこの我はその雑種のところに向かえば良いのだな。くだらん戦いとは言え、ある程度はやらぬ訳にはいかん」

 

「あぁ。できれば、あいつらと信頼関係を築けよ。三度目の戦いの後だ、ある程度のグループが構築されて、連携がうまくいかないかもしれない。心配するな、バーテックスの襲来はまだ先だ」

 

「信頼など、そのようなものはこの我には要らん。ただ、羨望と敬愛の意をもってこの我を見ればよい」

 

 英雄王は己の信念を曲げずに前に進む。魔法使いは心配する、勇者との連携は上手く行くのか。だが彼は知らない、それが杞憂だと言うことを。英雄王は知らない、勇者と確かな信頼関係を得ることを。

 

 この戦いは、王の庭を荒らし、愉悦を略奪した神を誅罰するものだ。そして、人にそれを返すものだ。

 

 今のところは。




万華鏡の魔法使いにかんしては、特別な事情(裏設定)で弱体化しています。具体的にいうと色位と冠位の中間ぐらいです。魔法と魔術の両方が阻害されています。

英雄王ギルガメッシュは設定上ステータスがやや上です。また、聖杯の誘導でスキルが多少変化しています。これについてはまた後日。

ギルさんとNOT慢心については”万象の夜”によって引き起こされた、とだけ書いておきます。


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第一話 愛される少女たち

前回のあらすじ

英雄王を召喚。
魔法使いが登場した

以上!
改稿
2017/07/28 あとがきに追記
2017/08/09 英雄王のあだ名の呼び方を変更


アーチャーはただ一歩を踏み出しただけでここではないどこかに向かった。恐らく大橋であろう。とりあえず、大赦の関係者にその旨を伝えるべきだろう。

 

しかし、その前に英雄王に成すべきこと,果たすべきことを伝えたが理解したのだろうか、いや理解はしたのだろう。ただ、賛同はしていないのだろう。敵が人類の天敵であるバーテックスであると伝えた時はまさに不満を顔に表したのだった。

 

だが、どちらにせよ、彼は人類の守護者。バーテックスとの戦闘ではその力を自在に、それこそ見せつけるかのように振り撒くのだろう。

 

唯一の問題点は彼がバーテックスに対抗出来るだけの力を持っているかどうかだが、それに関しては私の知るところではない。

 

次に起きるのは、勇者システム起動時に令呪が私から移行されるということだ。

足りないあと6画の令呪は小聖杯を利用して捻出するらしい。

強引だとは思うが、これにより三人の勇者が一騎のサーヴァントのマスターになる。そしてマスター権限を失う私はバーテックスとの戦闘、いや戦争から離れるのだろう。

 

私に残ってい仕事はアーチャーのアフターフォローと大聖杯関連の仕事だ。とは言え、サーヴァントに魔術的エラーが起きるとは考えづらく、大聖杯の調整は戦いには関係なく、勇者システムは専門外なため、もはや勇者の戦いには関わらないのだろう。

 

だが、唯一行えることがあるとすれば...それは祈り。勇者が戦闘で死なないでほしいという祈りである。それを達成するために努力をすべきだろう。

 

 

 

 

 

 

 

ある朝、一人の少女が緊張したおもむきで水浴びを行っていた。

己の精神を高め、気を引き締めるその行為は魔術師及び魔術使いが使用するある種の自己暗示に近いとも言える。とはいえ魔術の概念を知らない彼女ではそれは初歩的な暗示にすら届かないが。さらに言えばそれは今回特別に行った行為ではなく常日頃行ったものである。これを世間一般では日課と言い、彼女の日常の一部なのである。

 

一人の少女、つまり鷲尾須美は今日もこの日常をこなしていく。そして彼女は日常を楽しんでいた。だがしかし、この日常を真に大切に思うのは当分先のことである。ともかく、須美は日常に生きていた。今はそれでいい。

 

「今日も鍛練ね。頑張らないと。」

 

須美がこの言葉を繰り返したのは三度、一日の中で、である。それを随分前から、三体目のバーテックスを倒してからである。

この事から須美は気負いし過ぎであることが窺えるが、彼女の気質ゆえに仕方のないこととも言える。さらに言えば三度の戦いでは思うように戦えなかった。その際には仲間の心強さを感じていたが、頼りぱなっしではダメだと思っているのだろう。

 

「さて、そろそろ父上と母上が起床なさる時間かしら。それじゃ、そろそろ朝ごはんを作らないと。」

 

朝食を作る、これもまた彼女の日課である。それはルーティンであり、小さくも日常である。さらに言えば、平凡で当たり前されど輝しく、いとおしい。そして壊れやすく、分かりやすい、須美を構成する要素である。

今日も彼女は日常に生きる。奇跡も含めたありとあらゆる万象を裁定した最古の英雄ですら日常はさぞや価値の高いものだと思うのだろう。何故ならば、その可能性はあまりにも膨大だから。しかし彼はそれに気づくのだろうか。

 

今日も学校に向かう。友人と共に日常を過ごすために。そう思うだけで彼女達は幸せな気持ちになった。ただ、あまりの幸せにそれを大切に思うことはなかった。

 

「おはよ~う。わっし~。」

 

いつもより気だるげに答えるのはそのっちである。彼女はわっし―が教室に入る前まではすやすやという寝言を言いながら寝ていたのだが、わっし―が教室に入るや否やそのっちは目を擦りながらも起きたのだった。これは彼女らの友情が果たせるものなのか、直感でわっし―に気づいたのだろうか、はたまたその両方か。どちらにせよそのっちの才覚が成せるものだろう。

 

「おはよう、そのっち。あら、サンチョはどこに行ったの?」

 

「それがね~、家においてきちゃの~。」

 

「珍しいわね。これは何かが起きる予感がするわ。バーテックスの襲来とかかしら。」

 

「最近来たばっかりだから、それはないよ~。もしかしたら新しい転校生かもしれないよ~。実はその転校生とわっし―は幼馴染みで今日の放課後に突然転校生の方から告白されて~、そこに銀さんが出てきてドロドロな三角関係になるんよ~。」

 

「そうかも...って、何で私が転校生に告白されてるのよ。そして何で銀と三角関係なのよ?」

 

「それは全て来週わかるんだよ~。真相はいつも私の掌の上に~。」

 

「恋愛なのか、推理なのか分からなくなってきたわ。あっ、安芸先生が来たわ。」

 

彼女達の会話は、担任の先生が教室に入り、朝の学活を始めようとしたところで止められた。

園子はウェブで小説を投稿しており、その小説の内容が恋愛がらみのため、いささか不安を残す状態となったが園子以外はその事実を知らない。故にそれはまた別の話になる。

 

「ちゎーすっ。今日こそ間に合った。」

 

「三ノ輪さん、今日も間に合っていません。」

 

安芸先生に怒られながら頭を叩かれてる女の子が三ノ輪銀である。元気が有り余っており、クラスの中で随一の身体能力を持つ。いわゆるクラスの人気者になっている。なお、女の子である。

銀はその元気ぷりから逆に危なかっしさが滲み出しており問題をよく発生させているが、彼女自信は困った人を放っておけない性格ため自他共に発生する問題に対処する日々である。これもまた銀の日常なのだろう。ちなみにこの体質とも言うべき状況は改善に向かいつつある。

 

「あっ!筆箱忘れた...」

 

改善に向かいつつあるはずだ。

ともかく、これで全てが整った。三つの花と一つの光。三つの花は光を守護の手段として手を取る。何を守るべきか分からずに。光は己の愉悦のために花を照らす。その光を遮れるものなどないかのように振る舞いながら。

 

 

 

 

 

 

彼女らの学校生活は充実したものだった。習字で何を書くのかを話し合ったり、宿題の教えあったりしていた。後者は主に須美が先生、銀が生徒の立場になっていたが。

時は放課後にて、彼女ら三人は稽古場で安芸先生の話を聞いていた。

 

「今日、あなた達に新たなサポートが来ます。」

 

「援軍ですか。大幅な戦力上昇に繋がります。」

 

「一体誰だろう~。もしかして上級生かな~。」

 

「それは少し困るな。私、敬語苦手だから。」

 

「大丈夫だよ~。勇者経験ではこっちの方が上だから~。」

 

「なら、敬語ナシでオーケーだよな。」

 

「こら、銀。誰に対しても礼儀正しく、親しき仲にも礼儀ありよ。」

 

「そうね、鷲尾さんのいう通りだわ。特に今回の相手は...」

 

「どうしたんですか~、先生~?」

 

「実際に会えばわかるわ。丁寧に対応してね。ではどうぞお入り下さい、英雄王。」

 

「「「?」」」

 

彼女らの先生の言葉を理解しても尚、勇者は困惑していた。新しい助っ人は勇者であるはずで、それを見れば分かる、と言うには違和感があったからだ。

だが、彼女らは更に困惑する。何故なら出てきた人は女性にはとても見えなかったからだ。更に言えば彼は子供ですらなかった。

 

「ふむ、貴様らが人類を守る盾にして矛か。しかし、戦いには強者をつれて行くべきだというのに貧弱な少女にしか任せられんとは大いなる“矛盾”ではないか...“矛盾”ではないか。どうした、笑ってもよいのだぞ。」

 

「「「...」」」

 

「もしかして“盾にして矛”の部分と“矛盾”を掛けたのかな~。」

 

「ほぅ、この我のジョークを見破るとは。貴様、もしや道化か。」

 

「ううん、私は道化じゃなくて乃木園子だよ。よろしくね~。ほら、ミノさんも挨拶。」

 

「わ、わたくしは三ノ輪銀であります。」

 

「最後の私は鷲尾須美です。宜しくお願いします。」

 

三人はそれぞれの対応をした。園子は自身のペースを崩さないで、銀は逆にペースを崩しながら。そして須美は先生の言い付けを守りながら挨拶をした。

 

「よもやこのAUOジョークを看破してかつ道化ではないとは、王とは別の気風を有しているな。俗に言う、天才か。」

 

「ちょっと待って。この人ジョークを理解出来ない前提で言い放ったんだわ。」

 

「そうなのか!最初からよく分からないやつだったのか。」

 

「王の配慮すらも理解できぬとは本来なら万死に値するところだが、この我の庭を僅かながらも守った実績をもって不敬の免罪符としよう。

理由ときたか...我は繊細でかつ大胆な芸術的ジョークをもって我が威光を知らしめようとしたが、ジョークがあまりにも高度な故に誰もが理解しなかったようだ。なればこそ、全く別の方向から言葉を投げ掛けることにより貴様らの本性を覗こうとしたが我が眼の前では要らぬ心配だったわ。」

 

「へ~、そうなんだ~。でも王様?ってどういうことかな。」

 

「それは私から説明するわ。つまり、かくかくしかじかということよ。」

 

安芸先生は彼女らに英霊について説明をした。それはとても丁寧で分かりやすいものであった。たとえ、かくかくしかじかとしか言っていなくとも。

 

「成る程成る程。それじゃ、この英霊の真名は何かな~?きっと有名な英雄なんだろうね~。どっか~んて感じですごいんだろうね~。なにせ、王様なんだから~。」

 

「よくぞ言った、乃木園子。我が真名、心して聞くがよい。この我は最古にして最強の英雄、英雄王ギルガメッシュである。クラスはアーチャーと少し物足りんが、そこは少し多めに見るがよい。」

 

「「「...」」」

 

「どうした?この我に聞くべきことなど沢山有るだろうに。真名を明かした今がチャンスではないか。」

 

「ごめんね~。多分誰もギルガメッシュなんて英雄に詳しくないと思うんだ~。」

 

「なに?誰もこの我を知らぬだと?ならば、この我が手ずから教授してやろう。」

 

最初に王様などと褒められたために気を良くした英雄王は多少の不敬を気にすることもなく、自らの逸話を自慢げに語ろうとしたが、

 

「その前に、戦闘の際の連携について確認したいのですが。」

 

三人の勇者に会わせる前に何があったが分からないが、固くなっていた安芸さんはチャンスと見たのか、話題の切り替えを促した。

 

「この我は王だ。そしてアーチャーでもある。前線の活躍を後方で見届けることこそがこの我の義務とも言えよう。なに、この我についてこれぬのなら我の横に立つ権利はないと思え。」

 

一見、無理をいっているようにも見える発言。だが、全体的に考えれば勇者三人の身の安全に気を使い、肝心なときには自身が駆けつける言動にも思える。おそらく。どちらにせよ、王の威厳は残したままだが。

 

「ところで先生。英雄王さんが召喚されたなら、他にも英霊を召喚する予定はあるんですか?主に日本を守護した英雄とかは。」

 

「残念ながら新たに英霊を召喚するには神樹様の力を強化するか、更に準備が必要だそうよ。前者は不可能に近くて、後者はかなり時間がかかるそうだから。少なくともあなたたちが中学生になるまではないわね。」

 

「そうですが...」

 

「さぁ、質問は終わりよ。鍛練を再開するわよ。今回は人が増えたからまず自身の能力を紹介するところから始めましょう。」

 

三人の少女は勇者システムを起動する。そこには清楚の花、優雅の花、情熱の花が咲いた。既に聞いていたとはいえ、人がここまでの力の奔流を得ていることに英雄王は少し感嘆をしていた。だからこそだろう、英雄王は次の不意討ちに気づくことはできなかった。

 

「それじゃよろしくね~、ぎるっち~。」

 

「ぎるっち?もしやと思うが、それはこの我を指したのか?」

 

「えっ?そうだけど~。ギラギラ王の方がいいかな~?」

 

「ええい!この我のことは好きに呼ぶがよい!なに、その程度で王の威光はうすれぬ。」

 

「それじゃ、私はギルギルと呼ぼう!」

 

「なんだその呼び名は?この我をこけにしているつもりか?」

 

「いやー、親愛を込めてのギルギルだよ。」

 

彼女ら二人に悪意はない。その事に気づいている英雄王は強く反論できずにいた。しかし、このような時は無理を通していたのが彼の流儀だったが。しかし、ここでは王の威厳が示せないと思ったギルガメッシュは口を開こうとするが。

 

「二人が迷惑をかけてごめんなさいね。私は英雄王さんと呼ぶわ。」

 

「...」

 

唐突に不意打ちを食らった英雄王である。須美がつけたそのあだ名には一見、敬意を込めているように見えるが別の側面から見ればけなしているようにも見える。須美はいつもはしっかりしているが、たまにドジを踏むことがある。

 

「もうよい。我が力を見てもなのその名で呼べるのなら、呼ぶがいい。」

 

そういいながら、湖のほうを向きながら後方に空間のゆがみを発生させた。それだけならば、さほど目立たないものであろう。

しかし、そこからは太陽と負けずとも劣らない黄金の光があふれていた。

そしてそこから様々な歴史を語る宝具が現れた。

 

其は剣であり、

其は斧であり、

其は槍であり、

其は弓矢であり、

其は短剣であり、

其は爆雷であり、

其は奇跡であり、

其は呪いであり、

其は破壊であり、

そして、万象であった。

 

そしてその門と形容すべき空間の融解からそれらの宝具がミサイルのごとく放たれ、複数の的に命中した。そこからとてつもない爆風と爆炎がひろがり、水と風が修練場にまで届いた。

 

「すっげー!!!」

 

「なに、この程度、小手調べだ。」

 

「すごいよ、ぎるっち~。」

 

尚、彼女らに悪意はない。




アーチャーのステータス

AABAAEX

英雄王の過去最高のステータスです。
この物語の時間軸は二章の手前あたりからです。
なぜかって?やりたいことがあるからです。

それにしても、この世界での英雄王のスタンスがよくわからない感じになっちゃたかな。

最後まで読んでくださってありがとうございました。


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第二話 イネスうどん決戦

前回のあらすじ
ゲートオブバビロンで忘れた筆箱を持ってきた。(うそ)


改稿
2017/09/05 表現に誤りがあったので修正:暗に監視の必要もない(ry


鍛練が終了した後、つまり下校中において三人の少女と一人の英霊が会話にいそしんでいた。無論それは社会人によくある会議や営業の堅い雰囲気はなかった。そして怪しげな遊戯に勧誘している様子でもない。つまり、少女らしい和やかな雰囲気であった、違和感は残るものの。

 

会話の内容は少女たちが英雄王に質問し、それに答えるというもの。結論から言えば英雄王の自慢大会である。そこには子供らしく驚く様子もあるのだから、やはりそれは和やかな雰囲気なのだろう。

 

なお本来、英雄王は大赦が手配した車に乗ってもらう予定だったが、英雄王はそれを拒絶。それは暗に監視の必要もいらないと言ったものだ。それを大赦は承認。少女の持つ令呪九画を以てすれば英雄王を押さえることが出来ると考えたのだろう。

なお、英雄王が会話にいそしんでる間、彼の服は違和感丸出しの状態である。彼の服は全体的に黒いスーツになっており内側に白いYシャツではなく、豹柄のYシャツを着ていたのだった。

これは銀と園子は絶句するあまりだったが、肝心の須美はその服を許容しただけではなく。

 

「もうすぐ夏だから、もう少し涼しい格好にしたら。」

 

などといったのだ。これにより、園子と銀はそのずれてる服のセンスを指摘することはできなかった。

なお、この須美の行為が後の着替え大会につながるとはそのときの彼女は知らなかった。

 

もとの場面に戻し四人は英雄王の能力の話に耽っていた。それは同じ和やかな雰囲気とは言え、戦術的に気になるポイントであるゆえに緊張感が漂っている。

 

「ねぇ〜ギルっち、一体どれぐらいの武器を持ってるの〜?あんな風に使い捨てていいの〜?」

 

「この我は人が作り出した万象の原典を始めとしたありとあらゆる物をもつ。あの程度のモノなど惜しむ理由などどこにあるだろうか。この我が真なる黄金として認める財などほんの一握りに過ぎぬ。」

 

「あれ程の火力を"あの程度"ね...なんだかすごいわね、サーヴァントは。」

 

「ばかめ、我が強いのはそれが我だからだ。他の有象無象と一緒にしてくれるな。」

 

確かに彼の持つ宝具"王の財宝(ゲートオブバビロン)"は普通のサーヴァント、いや下手すれば一流のサーヴァントにとっても切り札に見えるだろう。壊れた幻想(ブローケン・ファンタズム)をはじめとした純粋な火力、あまりにも多種多様な宝具を利用して確実に相手の弱点をつく、そしてそれらの飽和攻撃。通常の聖杯戦争では間違いなく最強格であろう。しかし、この英雄王はその宝具のほとんどが価値のないものと評した。つまり言い換えればこれ以上の力が彼にはあるということなのだが。

 

「それじゃ、ギルっちがやってきたお祝いとしてイネスで歓迎会をしようか~。」

 

「おぉ、いいねイネス。イネス万歳!」

 

「あら、いいんじゃないイネス。ちょうどお腹も空いてきた頃だし。」

 

勇者のリーダーはあえて彼の力の奔流の本流を聞かず、そのまま三人の少女はイネスでの歓迎会を喜ぶ。彼女らにとってイネスはそれだけ重要な場所なのだ。なにせゆりかごから墓石まで買うことができ、公民館やゲームセンターがある万能なモールなのだ。それに加えてイネスマスターたる三ノ輪銀がいる以上100%フルにイネスを満喫することができる。しかし英雄王が反対すればそれだけでおじゃんになるのだが。

 

「なるほど、イネスとやらで余興を行うのか。よいぞ、この我を存分に楽しませろ、雑種。」

 

「ねぇ、なんで今"雑種"という風に呼んだのかしら。」

 

ここで英雄王が賛成したは良いものの、流れが急に変わった。雑種という呼び方が須美にとっては気に入らないらしく、彼女のオカン属性が発動してしまったらしい。

 

「この我以外の人間は血の混ざり合った雑種に過ぎん。ならばそのように呼ぶのがふさわしいだろう。」

 

今ここに時代の壁が降り立つ。明治時代などでは男尊女卑の風潮を変えるために様々な活動が展開されていたようだが、もはやこれはそのようなレベルの差別ではない。英雄王は全ての人間が自分よりも下だと考える。故に"雑種"などという呼び方をしたのだ。少なくとも三人の少女はそのように考えていた。

しかし、勇者のおばあちゃんはその程度でくじける弱い個性を持っているわけがない。よって

 

「そのような呼び方をしてたらだれもあなたに寄り付かないわよ。すくなくとも友達ができなくなるわよ。」

 

須美はまともに考えれば小学生として真っ当な返答をしたのだろう。しかし、それは英雄王の常識ではとんだ的外れになっているのだ。その証拠として彼が一瞬古き友を思い出したのか空を見上げ、王の威厳をわずかに揺るがせ、懐かしむように小さな笑顔を浮かべたのだ。しかし、すぐに英雄王は元に戻りいつもの傲慢な態度にもどったのだ。先ほどの英雄王の異常に気づく者は誰もいない。観察眼のするどい乃木園子を除いては。

 

「ばかめ、この我に友などいらぬわ!過去から未来にしてこの我の友は唯一にして絶対の無二。貴様らにはわかるまい。」

 

「...」

 

オカン属性を持つ須美ですら彼の言葉には反論できなかった。それほど彼の言葉には強さがあり、英雄王の壮大な過去をちらつかせるものであったからだ。彼女三人はここで理解する、英雄とはやはり規格外なのだと。歴史に名を残す者がごく一般の人生を歩んでなどいないということを。

空気がさらに悪くなる。空気など最初から読むつもりなどない英雄王はそれに拍車をかけ、三人を少女はそれに絶句する。そして英雄王の気分もマイナスの方向に進んでいた。行動にはまだ移してはいないものの、下手をすれば王は勇者三人をこの場で処断する恐れがあった。

この悪い状況を打破しようとしたのは

 

「まぁまぁ、とりあえずイネスに行こうぜ。イネスにゴーゴー!」

 

勇者のムードメーカーである三ノ輪銀である。彼女は三人の勇者たちの気分を盛り上げ、士気を落とさない役目を間接的に担っている。もちろん、彼女は意図的にそれを行っているわけでもなく、純粋に今ある日常を楽しく過ごしたいのだ。彼女の周りにいる全ての人と一緒に楽しみたいのだ。それにおいては彼女は優秀な才能を持つ。明快な笑顔、やや過剰ぎみな肉体言語、相手を思いやる心、それら全てが彼女を助ける。

 

「ふむ...まぁよい。このようなことは今考えるものではあるまい。よいぞ、そのイネスとやらでこの我を存分に楽しませるがいい、フハハハハ。」

 

どうやら英雄王は一時見せた、王の怒りの片鱗、を収め勇者三人と一緒にイネスに行くことに再び賛成した。今の状況を鑑みれば拒絶されることは必死かと思われたが、銀がムードメーカーとしての力が功を奏したのか、もしくは彼女に何かを見出したのか。とにかく、彼女ら三人と一人の英霊はイネスに行く道をとった。

しかし、この状況を大赦が見れば青ざめるどころか実際に死んでしまう者も出てきてしまうだろう。なぜなら、いくらイネスとは言えそのフードコートにある料理で英雄王が満足できるとは到底思えない。もちろん、英雄王と呼ばれるとは言え彼がいかに豪勢な生活をしたのかは叙事詩を読まない限り、知りえないだろう。そしてその事実を三人の勇者は知らない。

 

 

 

 

 

「ば、ばかな。この我が...ズルズル...このような奴に!」

 

「なんか、負けフラグみたいぜ、それ。」

 

「むっ、確かに...ムグムグ...そうだが。よもや...ズルズル...これ程とは...ゴクゴク...。」

 

さらなる負け台詞を放った英雄王だが、彼をそれほど唸らせるモノは一体なんなのか。

と言うまでもなくそれは、うどんであった。あのうどん、究極のうどんであった。

曰く、うどんは早い時は奈良時代から、遅いときは室町時代までの間に伝来された様々な品物の一つがうどんになったと言われ、江戸時代にその人気は大きく跳ね上がったという。ともかく、流れを辿ればうどんの原典は王の財宝(ゲートオブバビロン)に貯蔵されているのは間違いがないが、如何せん最盛期を迎えた江戸時代には鎖国を迎えており、うどんは海外の影響を受けなかったのだ。

つまり、王の財宝(ゲートオブバビロン)に収納されている原初のうどんとは違い、また他の財宝が辿った進化の歴史とは大きく異なる発展の道をうどんは進んだのだ。故に英雄王はほぼ未知に近いうどんに思わず舌鼓を打ったのだ。とはいえ、うどんが如何に珍妙な食べ物だとしてもそもそも質が良くなければ英雄王の持つ基準を超えることなどなかっただろう。しかし、さすがはうどんをこよいなく愛する四国であり、讃岐うどんという上質なうどんを用意できたわけである。

 

「しゃべりながらうどんを食べないの、英雄王さん。」

 

「なんだ、この我に...ズルズル...礼を重んじろというのか。ばかめ、...ムグムグ...この我は...ズルズル...世界の王たる...ゴクゴク...英雄王...ズルズル...ギルガメッシュであるぞ。」

 

「郷に入ったら、郷に従え。そのようなすばらしいことわざがこの国にはあるのだけど。」

 

「貴様、この我に...ムグムグ...指図するというのか...ズルズル...。」

 

「なら、そのうどんも没収ね。どうやら日本の文化を受け入れられないらしいから。」

 

「や、やめろ。しかたあるまい、そのことわざやらにこの我も乗ってみるとするか。」

 

「あら、ついでに"雑種"呼びもやめてもらいましょうか。」

 

「なんだと貴様、この我にまた指図をする...待て、箸をもってなにをする。もしや貴様、この我のうどんを。待て、早まるな。良いぞ、ならば、貴様らは雑種などではなく、その名で呼ぶにふさわしいとこの我が認めよう。」

 

「あら、それは良かったわ。」

 

「やはり、このうどんは...ズルズル...至高の一品にちがいあるまい...ゴクゴク...。」

 

雑種事件で一瞬険悪なムードになっていた勇者三人と英雄王だが、うどんの力によってその仲は急激に進展したのだ。

 

「それじゃ、三人の名前を呼んでもらおうかな~。」

 

「おおいいね、ギルギル、早く早く。」

 

「はやくしないと、これよ。」

 

須美は英雄王のうどんの丼に手を伸ばしながら、英雄王を脅した。もはや力関係はここで崩れたと見て間違いはないだろう。

 

「くっ、園子、銀、須美。それでよいな!わざわざマスターなどと呼ぶ義理などないからな。」

 

今この瞬間、英雄王と三人の勇者において時空を超えた絆がうまれたのだ。それはまだ確かなものではないかもしれない。まだ真なるものではないかもしれない。しかし、それはお互いにある程度気を許し、戦いにおいて十分な強さはあった。

 

「マスタ~なんて呼び方、味気ないよう~。それなら名前で呼んでもらったほうがいいよ~。」

 

「ならばこれでいかせてもらうぞ、ざっ...。勇者ども。」

 

「...今なんていったのかしら。」

 

なお、須美と英雄王の関係は少し違う形になりそうだ。

 




解説
アーチャーのスキル
神性:A++
英雄王は強者との戦闘に備えるために、また聖杯から得た情報を元に、一時的に神性を大幅に上げた。いや、むしろ戻したのほうが正確である。しかし、それ以上の神性が隠れているように見えるが...

カリスマ:A++
本来人としては得ることのできないレベルのカリスマ。しかし、大幅な神性の向上と本来のカリスマの高さが相まって、破格のカリスマを得ることができた。しかし、物語では三人の勇者に圧倒されているが...

というわけで、三人の勇者と一人の英雄王の日常 その一です。

実は、銀の描写はもう少し多かったのですが、主人公回はもう少し先なので削りました。英雄王かつ裁定者と呼ばれるギルガメッシュですから...気になるところです。


英雄王、その服は見たことないです。

なに、オリジナルで考えたからな。

もともとのやつとあまり変わらないでしょ。


あと、コミケまで三日でしょうか。西のC92ではゆゆゆのアイテムが並んでいるとのことなので行きたいと思います。ですが、私一人ではかなりの不安です。どうしましょうか。

あとは、うどんですね。うどんはマジ最高。ですが、史実に関しては付け焼刃なところがあるのでご了承ください。(たとえ違ってもセーフです。)

読者の皆さん、最後まで呼んでくださってありがとうございます。誤字脱字、その他アドバイスや純粋な評価などはしたの評価・感想欄におねがいします。

このような拙い文ですが、これからもおねがいします。



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第三話

あらすじ:
うどん、やばい!


「そこまで!」

安芸先生の号令と共に勇者達は動きを止める。彼女達は来る敵に備え、毎日が違う内容でもなく、移り変わりを感じられないものだ。後ろに佇む黄金の王を除いては。黄金の王、アーチャーは壁に寄りかかりながらその訓練を見ていた。鋭い眼と笑わない顔で何を見通そうとしているのか。

「技術に関してはまだ毛が生えた程度のようだが、勇者システムとやらの力は本物のようだな。」

ある程度勇者達が訓練を続け、予定の半ばまで進められた頃に英雄王は口を開いた。あくまで、勇者システムを称賛するアーチャー、その超然的スタンスは変わっていないようだが。

それもそのはず。何しろ通常の英霊は今で言う数十年の鍛練、もしくはそれに相当する才能を持ち合わせた者の内、さらに僅かな一握りの人がなることができるからだ。

そしてアーチャーはその中でも上位に位置する者であり、力の差は歴然である。

 

だとしても勇者は怖じけることはない。

「確かに、そうかもしれないわ。でも本当にそうなのかしら?」

「この我に指図をすると言うのか?ざっし...須美よ。」

「今、なんて言ったのかしら?もしかして......雑種?」

「ば、ばかな。そのようなことは言っていないに決まっているだろう。」

「あら、そうなのね。でも本当にそうなのかしら?」

「ああ。そうだとも。貴様らが何を言おうと、技術が低能なのは変わりない。」

須美とアーチャーの攻防はあったものの彼はその言葉を変えることはなかった。すなわち、彼の放った言葉は妬みでも皮肉でもなく、単なる事実なのだと。歴戦を戦い抜いた彼のオーラが見せる絶対的真実なのだと。

「だとしても〜技術はまだあげられるよね〜。」

「まぁ、それも真実よな。」

だとしても、その事実は塗り替えることができるとそのっちはすぐさま証明した。さすがは名家の生まれと言ったところか。

 

「だとしても、貴様らの成長を待ってはくれんよ、あのバーテックスとやらは。」

「なら、頑張って行かないとな!」

「えぇ!国防にこれからも励みましょう!」

「それでは、皆さん。お話があります。」

 

 

 

 

 

訓練が終わった後。勇者にとっては訓練による疲労、痛みを癒すためにゆっくりしたいところであり、英雄王としては三人の勇者が次に何を示してくれるのか、それを楽しみにしている。だが、須美は先生からの話がある故に優先順位は一段低くなっているが。

「マスターになれば新しく二つのことができます。一つは令呪という切り札。これを利用すればサーヴァントを瞬間的に強化できます。その効果は凄まじいものですが、合計で九画しかないので注意してください。もう一つは念話による連絡です。こちらは念じれば会話ができるというものです。これを利用すれば...」

「待て。念話はこの我が許さん限り使うなどもってのほかだ。よいな。」

 

安芸先生はマスターになったことで新たに獲得した能力を説明した。一つ目は令呪。彼女は切り札と説明したが、正確に表すなら命令権。

 

「えぇ、別に構わないわ。いつも私たちがやってるようにすればいいのだし。」

「そうだよな!声掛け合った方がやる気出るもんな!そういうのは調子が狂うというか...」

「そうだね。でも念話、私は試してみたいなぁ〜。」

 

三人が三者三葉の意見を出す。須美は平常を保つため、銀はやる気を出すために念話に反対する。園子は二人の意見を尊重した上で念話の実態を探ろうとした。たった今三人の意見が違い、そして尚未だに共存しているのは目を張るものがある。

 

「貴様ら、やはり、それなりに似合っているではないか。良いぞ、その勢いならこの我を楽しませるやもしれん。」

 

「「「...!」」」

 

勇者三人はその言葉の真意に気付き、驚いた。なぜなら英雄王は初めて会った時から今まで、軽い裁定を下したのだ。そしてその裁定の内容が誉めるものだったのだから。とはいえはそれはまだ不明瞭なものだが。

 

「楽しませる――――なんだよ、つれないなぁ。側で見てるんじゃなくて、一緒に遊ぼうぜ、ギルギル!」

 

銀は英雄王の意外な言葉に対していつも通りの返事をしたが、

 

「この我も貴様らの滑稽な余興に付き合えと?――――」

 

突然英雄王は口調を変えた。その口調は先日の放課後における須美の説教に対する反論と全く同じであり、まさしく絶対的な否定が出るかと思われたが

 

「面白いではないか。貴様らの余興はこの我の愉悦通りではないか。下界に降り、ざっ――愚民の生活ぶりを見るのも王の勤めよ。」

 

「愚民のところがちょっと気に入らなかったけど、英雄王さんと一緒に遊んでいけるのは良いわよね。」

 

須美が小さな小言を言う。彼女が気にしたのは愚民の方なのか、それとも言いかけたもう一つの単語か。

 

「...ごほん。そしてもう一つ、あなた達にお役目があります―――――」

 

安芸先生の言葉に三人の勇者に緊張が走る。お役目、任務。それは彼女らにとって身近で真剣味を帯びている言葉なのだ。

 

「―――しばらくの間しっかり休むこと。安定した精神状態だと変身できない。――王様と一緒に遊んでみたらいいんじゃないかしら。」

 

新たな戦いに身を投じるのかと思いきや、新たな休養の獲得だった。とは言え後半の言葉は英雄王の機嫌を損ねるものかと思われたが。

 

「さぁ、この我を如何なる余興に付き合わせるか?―――つまらんことであったらその首はないと思えよ。」

 

自身の趣味に合わせた余興を行えと。それが為されなければ命はないと。英雄王は言ったのだ。

しかし、これは王の威厳というフィルターを通した結果であり、それをなくせば温厚なものになる。つまり―――

 

この王様、乗り気である

 

キャストオフだけはしないでほしい。

 

「やった!休むのなら任せて下さい!」

 

「それじゃ何する〜?」

 

「ならイネスに行こうぜ。」

 

二人の勇者は純粋に休日を貰えて嬉しいようだが、残り一人は....

 




アニメ放送がはじまったので、それにあわせて予約投稿しました。


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第四話 狂宴という名の日常

前回のあらすじ
英雄王だけ訓練していないのに妬みを感じない勇者部員(そのっちは気になっている様子だか)


それは日が明けたばかりの朝。

彼女は今日も身を清める。

 

暦の上では7月の中旬。暑さが増す中での水浴びは涼しさを与え、同時に暑さによって損なう冷静さを取り戻す。

 

しかし、その一日をより洗練するだろうその行いは、今回は一つの悩みを解決するために利用されていた。

 

「休息を取ることもまたお役目。でも私、気が休まるかしら。」

 

悩みは須美の鉄壁とも言える性格なら当然と言える不安であった。自分の意思で気を休める。これまで、ある意味、一度も休息を取ったことはない故に、一般とは違い、難しいことなのだろう。

 

 

しかしそれは杞憂に終わる。

 

 

「お嬢様。乃木様がお見えです。」

 

「こんな朝早くから?」

 

来たのは須美の親友、乃木園子である。しかし、須美にとって彼女はこんな朝早くから活動をするアクティブな人ではなく、むしろ気付いたら正午、下手をすれば夕方までぼ〜っとしている気まま屋の印象が深い。

 

その園子が来たとすれば、それなりの介抱をするべきだろうと須美はいきこんでいたが、

 

「ヘイWasshi!レッツハブKAGAWAライフ!!!!」

 

それはこの世のものだと思えなかった。

 

その異物、車、の色は全て黄金色だった。

 

タイヤホイールは銀で、窓も光輝いていた。

 

幾たびの洗浄を越えてはがれず

 

ただのひとつも金メッキはなく、ただのひとつの贋作もない。

 

...とにかく、そこには、黄金の、ハイカラな、車のような何かが存在したのだ。

そしてその車からひょっこりとそのっちがサングラスを掛けながら顔を出しながら元気に言葉を交わそうとしていたのだ。しかし、須美はその言葉には反応せず、

 

「これは一体どういうことかしら、そのっち?」

 

「ひぇぇ~。わっしーが怖いよ~。」

 

「一体もなにも無かろう。新たに娯楽を行うのだ。ならばそれにふさわしい者をそろえるのが当然であろう。それに喜べよ。この我が直々に運転をして見せよう。バイクもよかったが、車も中々。」

 

須美が少し怒ったら突然運転席の窓が開き、ギルガメッシュがその返事を行った。少しとは言え、それは泣く子も黙るほど。それに対して平然と答えるのはさすが英霊(サーヴァント)と言うべきなのだろうが、言い切った後に窓が降り続けているのはなんともいえない空気を作った。無言の中窓が下がり、ギルガメッシュのドヤ顔が少しずつ見えてくる。異常なまでの窓のスピードの遅さ。狙ったとしか思えないが、ギルガメッシュの性格ならそれはありえないのだろう。

 

「あはははは...って、おわぁ!」

 

さすがのそのっちもその空気には苦笑をせざるを得なかったが、窓から飛び出してたためか、バランスを崩して地面に頭がぶつかりそうになったのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

車の中でゴタゴタがありながら、三人は乃木家に到着した。

乃木家の家系は神世紀300年の間において絶大な権力と義務を持ち続けた大赦のなかでもトップに位置する家だろう。特に初代勇者のリーダーとして抜擢された先祖は英雄とも遜色違わぬ力、技量、精神を持ち合わせたという。そのような家である以上、当然家風も厳格なものになる。娘は英才教育を受け、家の隅々まで静けさが染み渡る。

そのような厳かな空気において似つかわしくない口喧嘩が繰り広げられていた。

 

「そもそも、あの車はどこから持ってきたのよ!」

 

「なに。あれはこの我の宝物庫にしまっていた物の一つに過ぎない。あまり使いたくはなかったが、」

 

「なら、使わなければいいじゃない!ここにはアレ意外にも車はあるでしょうに!あと、プレートはつけないとだめでしょ!」

 

「むむむ。しかし!王たるもの、上に立つのは当然のことである。そしてその下に置くべきものも己にふさわしき物であるのは当然というものだ。」

 

「あれが"ふさわしき物"ねぇ...」

 

確かに王にはそれに相応しいオーラをまとい、それを維持する義務を持つ。ならばそれに相応とする車を持つのはそれを損なわないのは当然といえば当然なのだが、金ぴかの車とはそれに合う物なのだろうか?

 

「まぁ、さっ!それはともかく。なんでギルギルは園子と最初に合流したんだ?」

 

「それは~ギルっちを私の家に泊めているからなのさ~」

 

家屋には静けさが少女たちの周辺を除いて支配している。確かに物理的にはそうだ。しかし、見た目は静けさとはかけ離れたものが空間を支配していた。

 

「あとさ。気になっていたんだけど、この宝石とかは園子の?ギルギルの?」

 

それは各所に飾られている宝物のことである。

その一つ一つが素人にもわかるほどの最高の品。やや雑に飾れているルビーも割れば灼熱の太陽が出てくると言えば完全な否定はできず、神秘を知る者なら信じる者も多いだろう。

そのような宝石が乃木家の家屋の様々な場所に置かれており、やや目につらい部分はあるものの、きれいと評するに値する光景が映し出されていた。それはさながら、様々な色があり、幾千の花が咲き誇る、夏の花園(・・)であった。

 

「これらは新たに王の住処を得た際にこの我が賜ったものだ。この我が住むのだ、ならばそれ相応の舞台を用意するのは当然であろう。」

 

「"相応"ねぇ...」

 

人々を支配するにはそれに対応する権威、そして権力が必要だ。前者はオーラ、後者は力。共に常に保持し、誇示するべきものだ。ならばそれを物品に任せるのは良い方法なのだろう。宝物を並べれば感嘆し、風と火を巻き起こせば驚嘆し、見下せば畏怖し、書を残せば後世まで語り継がせることも可能だろう。だが、しかし...

 

その後、少女たちは着替えパーティを始めた。男であるギルガメッシュは追い出されたが、最終的にギルガメッシュが観客、少女たちがモデルというファッションショーをすることによって王の機嫌は損なわずに済んだ。

 

 




王とはなにか。

これから立て続けに投稿します。アニメのほうに合わせながら行きたいと思います。

Fate/strange fake。早くアニメ化しないかな...

というわけでいつもの

誤字脱字、アドバイスは感想欄へ

評価関連は評価欄へGO

そしてこのような駄文をよんでくれてありがとうございます。

またそう遠くない日に。


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第伍話 the beginning of Hopes and Dreams

前回のあらすじ?
投稿遅れてすみません。予定の進行から大きく遅れてしまいました。
今後この物語で起きること。先週のわすゆの内容。その二つが私に絶大なダメージを与えました。
つらいです。悲しいです。眠いです。
まだ頑張れそうです。というわけで本編にどうぞ!


「そのっち、銀。私、アイドルになる決意を決めたわ!」

 

「おぉ~。」

 

「うぅーん。ロック!」

 

「二人も一緒よ。さぁ、ライブが始まる―――。」

 

「この我の許しを得ずして、誰がライブをやってよいと言った!」

 

一つの怒声が響く。袖と舞台の狭間。まさしく世界の境界線上に彼は立っていた。名前は英雄王ギルガメッシュ。彼は夢のライブに到達するために邪魔をするのか。

 

「ちょうど良かった~。たった今プロデューサーが欲しかったんだぁ~。こういうのってよくそういうのが出てくるでしょ~。Pさんとかぁ~。」

 

「なに?いや、待て。そのような下らんことに我は――――」

 

「おっ!良いアイディアじゃん、園子。ご褒美のナテナデをしてあげよう。」

 

「えへへ〜。」

 

褒められ、かつ頭をナデナデしてもらった園子は花が一斉に咲いたようなとびきりの笑顔を見せた。

 

「あら、それも良いわね。マネージャーというのも時に必要わよね。」

 

「貴様、待てと

 

コールは消え去り、ステージは既に体育館と化した。こうして三人の少女と一人の黄金Pによる新たなアイドル物語が始まる。

 

 

 

 

 

「最近、忙しくなってきたわね。」

 

「それはつまり〜、お仕事がもらえているということだから良いんじゃない?」

 

「お仕事が多いのは良いもんな!」

 

「喜べよ、お前ら。この我のマネジメントスキルによってここまで成長出来たのだからな。」

 

四人とも意思溢れる熱意によってアイドルグループ「国防の世界」は全国クラスの人気者になったのだ。ライブは各地域のイネス、香川県警、遊園地等で行われた。また、ファンクラブ「国防会」は一万人以上が所属しており、その人気を伺うことができる。

 

「さぁ!今日は何しようか!」

 

「今日、お前らの予定に何も入ってはおらん。好きに遊んでくるが良い。」

 

「ギルギルも一緒に行こうよ〜。」

 

「この我がその程度の戯れに興じる必要はなかろう。なに、久しぶりの休暇だ。お前ら三人で好きに動くがよい。」

 

「そうね、たまには三人で行くのも良いわね。」

 

そして、そこは白銀の車の中。行き先を決めるための重要な作戦会議室だ。

 

「それじゃ、どこ行こっか!やっぱりイネス?」

 

「イネスは昨日のライブの帰りに行ったでしょ。また行って楽しいはずが...ないわけではないわね。」

 

「だろだろ!やっぱイネスはスゴいだろ!」

 

我が子の事が如くミノさんはイネスを褒め称える。イネスマスターであるからなのか、銀はイネスをとてつもなく愛している。

 

「普通に行くのもいいけど〜、たまには変装して、こっそり行くのも良いかもね〜。」

 

「おぉ!良いアイディアじゃん、園子!」

こうして三人は隠れながらイネスに行く事が決まった。隠れながら行くには当然変装が必要だ。幸い、国防の世界の後援団体、乃木家は大量の服を所持しており、そのような事には困らない。

 

「行き先は決まったわね。運転手さん、そのっちの家にお願いします。」

 

「これから、イネスに行くんだって?なら怪しい人に気を付けな!あんたらは有名人なんだから。」

 

「「「ありがとうございます!」」」

 

 

 

 

 

わっしー、ミノさんは男女の変装を行い、その様子はさながら

 

「て言うか、これデートじゃないか!めっちゃ恥ずいんだけど、これ。」

 

「こんなヒラヒラの非国民な服を着せて、私も恥ずかしいわ。」

 

「フッフッフ。納得したところで行くよ〜。」

 

「「納得してない(わ)!」」

 

二人が納得した所でイネスに向かうために車に乗るが、

 

「ちょっと待て。園子のその服はなんだ?」

 

園子はビシッと決めた黒いスーツに白いYシャツ、サングラスと小さな通信機?みたいな機械を装備していた。

 

 

「デートをしているカップルを汚す輩は言語道断〜。そんな二人組を守るのが私の役目だよ〜。」

 

「つまりはSPかよ。うーん、ロック!」

 

「ズルいのか、ズルくないのか私にはわからないわ。まぁ変装、なのかはわからないけど、イネスに行きましょうか。」

 

「(スゥー)」

 

「寝てるし!こんなんでSPが勤まるのかよ。」

 

「そのっちには爆発力があるから。大丈夫よ。」

 

「そうだな」

 

こうしてわっしー、ミノさんはイネスに行く事になったのさ。園子も二人で背負って、連れていきながら。

 

 

 

 

 

「そのっち。起きて。起きて、そのっち。」

 

「あれ?わっしーが三人〜?」

 

「ほら、寝ぼけないで。もうイネスよ。」

 

わっしー、ミノさん、そして園子はイネスに到着した。交通手段は本来なら歩きなのだが、服装が動きづらいのと、園子を起こすのが申し訳なくて車を使ったらしい。

 

「ありがとう。わっしー、そしてミノさん」

 

「いつもの事でしょ。気にしないで」

 

「そうだぞ、あまり気にするなって。それより今からイネスだぜ!明るく行こうぜ!」

 

「えへへ〜。」

 

園子は幸せだ。素敵な友達に囲まれ、こ〜んなに光り輝いている日常にいれてとっても幸せだ。

 

「それじゃ、どこ行こうか?」

 

「えっ?銀が既に決めてたんじゃないの?」

 

「いや、園子が決めていたんだと思って何も考えてなかった、ごめん!」

 

「謝らなくていいよ〜。何せミノさんの言う通り(デート)プランは考えてきたから〜。」

 

「あら、やるわねそのっち。でも何か不穏な雰囲気を感じたのは気のせいかしら。」

 

「おー!私の思い違いじゃなかったかぁ。でも、何か不気味な感じがするな。」

 

ミノさんとわっしーの二人のデート。一体どんな素晴らしいプランを考えたんだろうか。園子の小説のネタになりそうだ!

 

「よ〜し!それじゃ〜行こうか〜。」

 

 

 

 

 

「いいよ〜!う〜ん。もうちょっと奥かな。」

 

「そのっち。この体勢は結構恥ずかしいのだけど。」

 

「こっちだってトロットロッに溶けちゃう。」

 

「それなら一気に決めたいとね〜。」

 

三人でやっていたのは...前に園子がわっしーにしたように、ミノさんがわっしーにジェラートを食べさせていたのだった。それは恋人を連想させる服装もあり、一層デートらしさが浮かび上がってきた。

 

「ミノさん〜、今だよ〜。」

 

「よ、よし。須美行くぞあ〜んだ。」

 

「あ、あ〜ん。」

 

わっしーも普通のあ〜んなら許容できたかもしれない。園子とミノさんの二人と行動し続けて丸くなったわっしーなら精神的余裕を持てるかもしれない。

しかし、今のわっしーのポーズは両手を顎に付け、少し顔を傾けてあ〜んをしているのだ。これに照れずして何に照れる。さしもの進化したわっしーでも頬を朱に染めざるを得なかった。

 

「いいよ〜いいよ〜。」

 

「はい、もう食べたわ。もう終わりよ、そのっち。」

 

「えぇ〜。もう一口〜。」

 

「ダメよ、そのっち。こんなはしたない事...」

 

須美は言葉を止める。何故なら園子の後ろから一人おじさんが近づいていたのだ。こちらを確実に見据え、下卑な笑いを浮かべながら。

 

「こんにちは、デュフフフ。今から一緒にお茶をしませんかぁ?」

 

年齢は40代だろうか。背中は猫背、あごに無精ひげを残す、そして髪は爆発ぎみであり、動きがキモい。それはまさしく怪しいおじさんだった。そのような人にはついていくべきではない、お茶など無論拒否だ。

 

「ありがとうございます。でも遠慮しときます。」

 

「抵抗するですかぁ。なら、引っ捕らえろ!」

 

男らしさが僅かににじみ出たその号令に従い、現れたのは十人程度のおじさん。その貧弱さに対し、わっしーをすぐさま捕獲する。さすが、大人と言うべきか。

 

「これがアイドルの匂いかぁ。デュフフ。良い匂いだなぁ。」

 

「は、離して!」

 

強制的に体を拘束し、わいせつな行為を行う。明らかに犯罪行為だった。しかし、気になるのはアイドルという単語。三人の正体がバレたというのか...バレたに違いない、あの変装もどきなら。

 

「なんでそんなことを!それより、わっしー〜!くっ、わっしーを離せ〜!」

 

SP園子、自身の役職に従って反抗を試みるも、

 

「おっ!カモネギ、カモネギィ!」

 

僅かな攻防の末、捕縛される。それこそ野苺のように、あっさりと。

 

「やめろ!」

 

銀が叫ぶ。己の心に秘めたる炎を吐き出すかのように。銀は走る、大切な友人を助け出すために。三人の巨漢が立ちはだかるも減速することはない。しかし銀は「己の犠牲を省みない上、何一つ助けられないかもしれない」、そのような行為に走っていた。

それを正義とするなら、まさに偽善。人の醜悪さが生み出す化け物に過ぎない。されど、そこに純粋さ(・・・)が加わると大きく変わる。

そこには助けたい、守りたいという意志がある。「他者を」ではなく、「自身を」でもない、とある一点を守るためにその意志はある。

故に、それは偽善ではなく、美しい願望である。

 

なればこそ、■が現れる。

 

派手に響く衝撃音。巨漢の一人は攻撃を受けたものの、立ち続ける。銀の隣に立つのは一人の人間。

 

現れた人間とは...

 

 

 

 

 

 

「という夢を見たんよ〜。」

 

「この我がアイドルのマネジャーと来たか。な、中々悪くないではないか。それよりも、この我の出番が少ないとはどういうことか!」

 

「つっこむとこ、そこ?!」

 

銀はギルガメッシュの的はずれな感想に思わずつっこみを入れる。むしろ気になるのは。

 

「一体現れた救世主は誰かしら、銀とならきっと私たちを助けてくれそうだわ。」

 

「私、一人じゃだめなのか、須美?」

 

「いえ、銀一人でもどうにかなったと思うわ。不幸体質を除けば。」

 

「うぅ。」

 

 

無論、銀に対する裁定は誰も知る由はない。たったの一人を除いて。

 

「それにしても、すごく長い夢ね。そのっちらしいと言えばらしいし、らしくないと言えばそうだし。」

 

「そうかもね~。私も起きたときはなんか気分が悪かったんだ~。」

 

「それでも覚えてるなんてすごいな、園子は。ギルっちはどう思う?」

 

「たわけめが。己に合わぬ夢を見たのだ。おのずと記憶に残るものなろうよ。褒めるに値することではないわ。」

 

「そうなのかな?」

 

理解に苦しむ銀。それを傍から見て満足顔のギルガメッシュ。夢とは醒めて消えるのが道理。ならば、いまだに残るこの夢は一体なにか。

 

日々は進む。大一番に突き進む。




(以下イメージ)

黒髭「なんか、拙者が悪役に?!?!?!?」

???「そんな感じじゃない?」

黒髭「こうなったら、砲弾ぶちかましてやる!」

???「それはできないよ。」

黒髭「?」

???「私は君を召喚してないどころか、カルデアにすらいないからね。」

黒髭「ダニィ?」

(イメージ終了)

遅れたことはまえがきの通り。まじめに「勇者」をやらせるなら避けては通れない道の厳しさを知り、ショックというものを受けてました。

夢はすごいですよね。Fgoではなんだかオリジナルの設定?みたいなのが夢にあるらしいのですが、それは全力で無視させていただきました(だって剣豪だよ?まだ一切完勝してない剣豪七番勝負だよ?)

上のことはさておいて、Fateにおいて夢はそれでも重要な位置づけになります(英霊の前世とか)。ゆゆゆにおいては純粋に利用するだけで重要なものになると思っています(意味深)。なので使わない手はない、というわけで出てきた訳ですね。(なぜ、こうなったのか。)

最後に、アドバイス・批評・誤字脱字等・その他コメントは感想欄へ

評価は評価欄にお願いします。

HappyEndを迎えられるように。


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第六話 続く狂宴

まえがき
園子の夢~


イネスからの帰り道。四人の仲間はいつもの談笑に興じていた。

 

「それにしても、英雄王さんがそのっちの家に住んでいるとはね。心配だわ。」

 

「王たるこの我が他者の手を借りるなどあり得ん。むしろこの我が住まうことを光栄に思うがいい。」

 

「はっは〜。ありがたきしあわせ〜?」

 

「英雄王さん、変に威張らない!そして、そのっちはそれに乗らない!」

 

「あと、何でクエスチョン的な感じで答えたんだ?」

 

「えへへ〜。何でだろうね〜。」

 

三人は冗談も交えながら笑顔を絶やさなかった。

 

「いやー、やっぱ毎日がこれくらい楽しいと良いんだけどな。」

 

「これからもそうなるわよ、銀。」

 

「うん!そうだね〜。」

 

「ほぅ。このような余興まだが続くというのか。良いぞ。この我が飽きぬ限り、我の前でその滑稽さを見せるがいい。」

 

「何が滑稽よ。あなただって一緒にやっているじゃない。あなたこそ滑稽なのではないかしら。」

 

「馬鹿が。この我など、何も滑稽ではないわ!余興を行うのは道化の務め。それを笑い飛ばすのが王の務めだ。王たるこの我が滑稽などあり得ぬわ!」

 

「本当にそうかしら。あなたの主張に全く証拠がないわ!」

 

須美とギルガメッシュはまた喧嘩を始める。須美は根拠の薄い所、矛盾が生じている主張を的確に攻めていく。対してギルガメッシュは自身の経験、自信、カリスマを以て須美に対抗している。

 

一見すれば、かたや真実を伝えているつもりがそれを否定されて嘘を主張されイラつき、かたや根拠も何もない下手をすればただの子供の駄々にしか見えない主張をされ是正しようと躍起になる。

 

しかし現実は僅かに異なる。ギルガメッシュは己に反抗する現代の人間などいないだろうとたかをくぐっていた分、須美の性格は新鮮なものだった。

対して須美は遥か昔の王が何を思い、何を知り、何を考えていたかを知るいい機会となり、自信の経験を大きく跳ね上げる興味のあるものだった。

 

故にその争いにいがみ合いはない。何故ならそれが自身の損にはならないとお互いが知っているからだ。

 

「はぁ、まあいいわ。それが英雄王さんの主張なら。」

 

「ああ、我も疲れた。貴様を諭すのにこれ程の心労を煩わねばならんとはな。だが、我が余興に参加していたのは事実だ。我が参加してこその醍醐味もあった故にな。」

 

言葉通り、ギルガメッシュは数多くの“余興”に参加していた。

ファションショー、イネスでの散策を始めとする、水泳、ゲームセンター、カフェ、うどん屋、クリスマスプレゼントの購入などなど様々なイベントに一緒になって楽しんだ。

 

水泳では圧倒的を差を付けて圧勝した上に「なんだお前ら。この我はナメクジの歩きの程でしか進んでおらんぞ。お前らはナメクジより遅いのか?ハッハッハッ!」と言い、

カフェでは客として四六時中居座り、困らせるだけのために園子を驚かせ、須美に早口で大量の注文をし、銀には「お持ち帰りはお前だ!」と言って須美を怒らせていた。それでもギルガメッシュは三人のリアクションの愉悦のあまり大爆笑をし続けていた。

 

このようにしてかの英雄王は自身の愉悦を満たしていったのだ。

 

そして、

毎日聞いてきた昔ながらの音楽が聞こえる。夕日も沈み始める。別れの時がやってきた。

 

「おっと、私だけ違う道か。」

 

須美、園子、そしてギルガメッシュが銀と異なる道を進む。銀だけが別方向に家があるのだ。

そして間を開けて言う。

 

「それじゃ、またね。」

 

銀は背中を向けて去っていく。

須美は不安になっていく。もう会えないのでは、という直感がよぎる。

そこからは泥沼となる。

不安は際限なく広がっていき、ここで引き止めねばと腕を伸ばそうとするが、

 

「何を言うかと思えば、そのようなことか。よもやこの程度で帰すと思うか?今日はお前の寝泊まりする場所で宴会を開くぞ!」

 

英雄王が銀を引き留める。その目は確かにこの場を見ていたが、同時に虹の先を見ていたかのようだった。

 

「おお〜いいね〜。なら私はお菓子を買ってくる〜。ワッシーはどうする?」

 

「えっ?わ、わたしは、カードゲームとか持っていこうかしら。」

 

「ちょっ、待てよ。何で話を勝手に進めてるんだよ。」

 

「ほぅ、ならばこのまま何もせず帰るというのか!」

 

「いや、別にそういう意味じゃなくてさ。」

 

「ならば結構。園子、須美。お前らは己の役目を果たしてこい!」

 

「了解!」

 

「了解〜。」

 

英雄王の号令に須美と園子は慌てることなくすんなりと応答したのだ。

二人が自身の役目を果たしている最中、ギルガメッシュは銀と一足早く、家に向かったのだ。

 

 

 

 

 

「はぁ、またやらかしたの。英雄王さん。」

 

「でも、すごく綺麗だね〜、ワッシー。」

 

須美と園子が帰ってみれば、銀は外でぶらぶらしていた。

 

「銀、どうしたの?」

 

「ギルっちが外で待ってろだってさ。合図をするまで誰も入れるな、だって。」

 

「なんだか、嫌な予感がするわね。」

 

自身の楽しみのためなら何でもするギルガメッシュ。それを無監督で放置すれば何が起きるかわかったものではない。

 

「これでどうやってう、うるくという国は繁栄したのかしら。」

 

神秘の濃い遥か昔の神代の時代、ウルクは存在していた。神々が未だに圧倒的権力を持ち、人間を抑圧していた時代。それでもウルクの人々は目覚ましい発展を遂げていたのだ。その先導者がかの英雄王だと言うが。

 

「ふむ、どうやら揃っているようだな。この我が直にプロデュースした新たなる模様替え、その目に焼き付けるがいい。」

 

英雄王は家の扉をいきなりを開け、来訪を許可した。三人は中に入ろうとしたが、扉の目の前で異変に気づく。

アーチャーの能力だろうか、見える景色はあまりなく、かろうじて下駄箱の床が見えるのみ。恐れながらもこのような状況下で三人の勇者は一歩、中に踏み込んだ。

 

「わぁ~。」

 

「はぁ、またやったのね。」

 

「な、なんだこれ?私の家が園子のみたいになってるぞ!」

 

須美はあきれながらも笑顔をこぼし、園子は純粋に感動し、銀はその変化に驚愕をあらわにしている。

 

そこには、金、ダイヤ、プラチナ、ラピス、ルビー、サファイア、そして数多のシルバーがそこにはあった。

 

しかしその光の調和は前回、園子の家の時と違い、花園のような色鮮やかさはない。

しかし、そこには数多のシルバーが生み出す一点の曇りもない純粋な白、まさしく曲がることのない極限の光がそこにあった。

その光はあまりに眩しく、味気のないものだが、目を背けたいとは不思議と思わず、むしろ見続けてみたいと思うものであった。

光は三人の少女が行く道のりをあらわしているようで、その先にある「希望」を体現しているようでもあった。

 

「なに、これからビックイベントを行うのだ。これ程の仕込みは当然であろう。」

 

英雄王は口元に笑みを浮かべ、ビックイベント、お泊り会の始まりを宣言したのだ。

 

なお、この準備において実質的準備を担ったのは銀の家族であった。どのような手段かはわからないが、英雄王が銀の両親を説得し、協力させたという。また、銀の父親はギルガメッシュに連れ出され、飲み屋に連れて行かれたという。ギルガメッシュは店の酒はほとんど飲まず、自身の蔵から取り出した美酒を楽しんだようだが、その際の問答によって銀の父親の寿命は30年縮んだと思わせたという。

 

だが、それでも十分に楽しいイベントとなったのは間違いない。

 

最後の休暇はここで終わる。

 

 

 

 

 

「...」

 

須美は黙々と黒板を消す。本来黒板係は園子の仕事だが、きれい好きの須美は黒板が「まだ足りない」と叫んでいるように感じた。

 

教室の扉が開く。須美はかなり早くに学校に来ており、まだ誰も来る時間ではなく、誰が来たのかと振り向けば。

 

「ここが勇者さんの教室ですか。思った以上に狭いですね。あとこの壁の色は塗った...いやもとの材質がそういう色をしているんですね。」

 

立っていたのは神樹館の制服を着用し、ランドセルを背負った少年。ここまでならただの同級生なのかもしれないが、着込み方が他のそれと一線を画し圧倒的経験を物語っている。そしてなによりその少年は金髪であった。

 

「お姉さん。という呼び方は同級生だからちがうか。須美さん、おはようございます。」

 

「あなたは...だれかしら?」

 

「忘れたんですか?僕はあらゆる英雄の頂点に位置する英雄王ギルガメッシュですよ。」

 

「えっ.........ええええええ!!!」

曰く、若返りの薬があるらしく、それによって歳を須美たちと同じぐらいにしたらしい。なお、精神も若返るらしく、肉体よりさらに幼い年齢になっているらしい。

 

だが、その日は波乱の幕開けであった。

とりあえず、安芸先生は転校生ということにし仮の書類を作ることによって矛盾をなくす。勇者の存在とは違い、英霊(サーヴァント)の存在は魔術の存続の観点から秘匿されるべき存在。故にこのような緊急的措置を取る。

幸い、神樹館は大赦と密接に繋がっているため書類は容易の準備ができ、一人の少年の新たな学校生活は幸先のいいスタートをきったのだ。

 

 

 

子供ギルガメッシュ改め、子ギルは様々なことに首をつっこんでいった。

新一年生に紙芝居をするために、自身の蔵から園子が夢に見た国防仮面の装備によく似た宝具を貸し出し、

須美と一緒に遠足の現地偵察に向かい、模写や散策を行ったり、

そして当然のように三人の少女と一人の子供は毎日を過ごしたのだ。

 

それは耀く日常の断片。

 

されど、変化はいつか訪れる。

 




子ギルがでてしまった。
わすゆが小学生がメインの登場人物である以上、回避不可能な現象。
どうなるのか?どうもならないのか?

超特急で投稿をしなければいけないので、ここで。

感想、意見、批評、誤字脱字等、その他アドバイスは感想欄へ

評価は評価欄へお願いします。

最後に

この小説を読んでくださってありがとうございます。できればこの小説があなたの糧になればと思います。

ではまた次。


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第漆話 運命の戦い 

銀ちゃんの誕生日
眠い。


「いや〜、それにしても楽しかったな!」

 

帰り道。三人の少女と一人の英霊が遠足からの帰宅の途中だった。

 

遠足では子ギルが愛想を振り撒き、銀が勇者としての注目を一点に集め、園子と須美はそれを遠くから眺める。

 

注目を集め調子に乗ったのか、銀はアトラクションを危険な方法で攻略しようとしが、事故の一歩手前までの事態となり須美にきつく叱られた。

 

いわく、「口数を減らします!」とのことだが、気付けばそれは風に流れ、さらに須美たちはそれを気にする様子はもはやなかった。

 

そして

今日もあの昔ながらの音楽が流れる。夕日も沈み始める。別れの時間だ。

 

「明日は休みか。なら、イネスに...」

 

しかし、音楽が止まる。夕日は沈まず、全てが静止する。鳥も動かず、全てが硬直する。

つまり、戦いの時がやって来た。

 

「敵の襲来ね。」

 

「最後の最後でこんなのってアリかよ!本当に、なんでさ!」

 

「バーテックスが空気を読んでくれないな〜。トホホ〜。」

 

三人の少女は不平不満を漏らしながらも変身する。

 

 

一人は情熱の花に。

一人は優雅の花に。

一人は清楚の花に。

 

そして三人が変身を終え、顔を上げた頃には樹海化はとうに終わっていた。

樹海。そこはたくさんの色が存在していた。しかし、英雄王の宝とは一味違う。

光を強く発さず、周囲の光をもって自身の美しさを表す。

それはまさしく謙虚とも言える姿勢であり、日本特有の「わびさび」に通じるものもあるかもしれない。

そしてその謙虚さが神としての存在の確定、神秘の認知へと繋がっていく

しかし、ギルガメッシュはこの景色に不満げな表情になっている。

「なんだ、このみずぼらしい光景は。あまりにつまらぬではないか。」

「これが日本人の持つ感性よ。いつかあなたも理解できるわ。」

不満を漏らしたギルガメッシュは既に大人ギルガメッシュに戻っていた。子ギルフォームの時点で異変は察知し大人ギルガメッシュに戻っていた。いわく

「お前らが対峙する魔物、バーテックス、この我が見定めてやろう。なに、お前らを苦しめたとはいえ、所詮は魔物。この我が軽く裁定するのがちょうどよい。」

と、イネスのジェラートをぺろぺろ食べていながら宣言し、その裁定を行うために本来の性格である大人ギルガメッシュに戻ったのだ。

「それじゃ、行くよ〜。えいえいお〜。」

「おー!」

「お、おー...」

「ふん、下らん。このような児戯、すみやかに終わらせよ。」

リーダーの園子が掛け声をかける。銀は素直に答え、須美はそのテンションの無さにペースを崩され、アーチャーはいやな時間が来たとばかりに不機嫌な表情を浮かべている。

これから向かうは大橋。異型と争う戦場の地。

跳躍を数回繰り返し、大橋にたどり着く。今回は比較的大橋に近かったため、跳躍回数が少なく、短時間で到着ができ、時間の余裕が生まれる。

時間の余裕は集中するために使われる。そして、ひたすら相手を待つ忍耐力も消費する。

そして、敵はやってきた。

一体は大きな鋏を尾に持ち、複数の盾?のような物を周囲に展開させている。

もう一体は手のような物で水のらしき液体が内封されている球体を持ち、それらの上部から尾が出ており、こちらは針状となっている。

 

つまりはニ体。これまで一体ずつやってきたパターンを破って新たなプランをもって四国を攻めてきたのだ。

「えっ、ええ〜!」

 

「2体。そう来たか。」

 

「何を驚いている。魔物とて幾度も敗れて尚単身で乗り込む程の阿呆ではなかろう。だが所詮は魔物。本来通りに行動せよ。」

 

「うん、そうだね〜。それじゃミノさんと私で一体ずつ相手をするから、ワッシーは後ろから援護をお願い〜!ギルギルはズガ〜ンってやっちゃって〜!」

 

「「了解!」」

 

「ああ、お前らに王の財宝、その一端を見せてやろう。」

 

アーチャーはそう口にしながら自身の後方に数十の門を展開する。そこに現れるのは一つ一つが伝説を持つ宝具。

それらの一斉掃射。

轟音をたてながら放たれたその砲撃は戦いの号令となった。

 

「突撃~!」

 

園子の更なる号令のもと銀と園子は敵に向かっていく。須美は弓に矢を構え、二人の援護を行う準備を行う。アーチャーは敵に次の手を打たせないためにさらなる連撃を加える。

 

「じゃぁアタシは、気持ちわるいほうと戦う!」

 

「どっちの敵も気持ち悪いと思うんだ~。」

 

銀は気持ち悪い敵、巨大な鋏を持つバーテックスと、園子は針を持つバーテックスと対峙していく。

須美も援護を始める。鋏を持つバーテックスに矢を放てばすでに派手に動いている銀がさらに派手に動き、大ダメージを与える。その様子はまさに炎。

針を持つバーテックスに矢を射れば回避しながらも防戦一方だった園子が攻撃に反転し、同じく大ダメージを与える。その様子はまさに蜂と蝶。

 

そして二人のいずれかが与える大ダメージ。それはリスクを負いながらの攻撃。

そのため、その攻撃後には体勢を立て直す必要がある。

その後退に合わせ、アーチャーが後方から宝具の乱射によって敵の追撃を許さない。

本来、アーチャーは訓練に参加せず、連携を取れるかは問題点であったが、この作戦ならばアーチャーさえ信頼できてればいい(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

戦いが本来の予想よりうまく進む。連携は訓練のみで培われたものではない。アーチャーの能力も然り、四人の信頼も然り。なればこそこの戦いは勇者側の必勝パターンに持ち込まれつつある。

 

ここまでは。

 

晴れの次には曇りが来る。そして時には雨も降る。

 

「!?上からなにか来る!!」

 

「これ、広域だ逃げられない。」

 

「みんな~。こっちに来て~。」

 

降り注いだは幾千もの矢。それは正に"雨"と呼ぶにふさわしい量であった。三人(・・)の勇者は園子が槍の盾で守っていた。

しかし、その盾はこれまでのバーテックスに最も有効的な手であった。それが封じられたとすれば、バーテックスが出る手段は当然、

 

「うぁぁぁあああああっ!!。」

 

矢のダメージを受けながらも針を持つバーテックスが横からの尾ごと振り回し攻撃した。銀は辛うじて自身の斧で防いだが、園子と須美は空中に跳ねられ、さらに地上に叩き落とされた。

 

バーテックスは自慢の回復力を利用し、矢のダメージを回復。こちらに向かおうとした。そしてその矢を放った張本人は

 

「三対目...」

 

現れたのは不気味な口を持つ三体目のバーテックス。これは己の回復力、陽動、等を利用したバーテックスの作戦。信頼が無ければ達成できないものであり、同時に須美たち三人より強固な信頼を持っていたという証明になる。

 

「銀!今は撤退だ。だが、勘違いするなよ。あくまで須美と園子を置いていくためだ。」

 

「えっ?あぁ、わかった!」

 

一瞬困惑しながらも銀は意図を理解し、須美と園子を肩に担ぐ。銀は足場から飛び降り、バーテックスから高速で離れた。その刹那の後、巨大な矢が元居た場所に突き刺さり、爆砕音が響いた。

 

アーチャーもともに下へと下っていく。状況をそれなりに楽しみながら。

 

 

 




死にそう。(精神的に)


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第捌話 少女の約束

ノーコメント


そこは樹海の遥か下方。上層とは違い、樹木に鮮やかな色合いは無く、むしろさらに下方にある液体にこそ虹色を放っていた。

 

横たわるのは重傷の二人の勇者。そして側に一人の勇者と英霊が立っていた。

 

「動けるのはアタシとギルっちだけか。」

 

須美と園子は敵の二度の攻撃に満身創痍、動くどころか意識を保つことすら叶わない。戦力は単純計算で二分の一。これまでの猛勢から一転、一気に劣勢となった。

 

「ギルっち、須美と園子をすぐに回復させるすごいやつある?」

 

それに対してアーチャーは愉悦を絵に書いたような笑顔をもって答える。

 

「そのような物などない(・・)。無論、回復させるだけならそれ相応のものはあろう。だが、今すぐに回復し、我ら全員で以てあの魔物を倒しに行くなど無理に決まっていよう。あの“神樹”ですらここまでの治癒力しか使わん。」

 

ここでギルガメッシュは一つの嘘を口にした。

 

「そうか。じゃあ仕方ない。ここは怖くとも頑張り時でしょ!それにギルっちもいるし。」

 

「ああ。我の力を以てすれば十二分に倒すことが可能だろう。存分に己の力を振るうがいい。」

 

気高き花は自身の本能(恐怖)を押し込め、友人のために戦いの継続を決意する。そしてその隣にはアーチャーもいる。

この戦い、どう揺れ動くか。

 

 

 

 

 

進行を続けるバーテックスをよそに銀とアーチャーが跳躍を交え、追い付きに行く。

一人は素早く、小さい跳躍を。

もう一人は堂々と、大きな跳躍を。

 

やっと追い付いた時にはバーテックスは分け御霊が多い、いわゆる最終ステージに到達していた。

 

「ほう。我らが幾分か時間を取っていたにしてもよくもここまで進めたものだな。さあ、どうする、銀!」

 

「わかってるさ。ここから先は一歩も通さない!」

 

その宣言こそ戦いの始まりを告げるものだった。

銀は双斧を両手に突撃を行い、アーチャーはそれを援護するように王の財宝から武器を射出する。

 

鋏を持つバーテックスが盾状の武器で攻撃、しかし銀は避ける。

大量の矢が放たれるも、斧で防ぐ。

針を直接刺しにいこうと針が迫るも、今度は王の財宝の射出によって阻まれる。

 

「ハアッ!」

 

気合いと共に銀は鋏を持つバーテックスに自身の斧を投げつけ、その斧が投げられた部位に跳躍を行った。

 

銀は追撃を行うも、盾によって落とされ、矢による追加の攻撃がされるも、

 

「魔物ごときがこの我を無視するとは、万死に値する!」

 

そう口にしたアーチャーの後ろに現れるのはおよそ千程の黄金の門。そして数多の宝具。それらがマシンガン程の速さで連続掃射、数多の矢を迎撃。さらに本体にも射出を行う。樹海が傷付くのもいとわず、放たれた宝具は地面に突き刺さる。

 

アーチャーの援護もあって銀は鋏を持つバーテックスに再び接近する。

 

しかし、針を持つバーテックスがそれを止める。自身の針を振りかざし、建て直しにかかる。

 

針を自在に、いや異様に振り回しながら勇者を確実に仕留めに行く。しかし、

 

「さっき見たよ!それ!」

 

銀は園子が防御に徹したことによって得られた経験を元に華麗に避け、顔のような板に一撃を加える。

 

そのまま彼女は鋏を持つバーテックスにまた再び接近を図る。

 

彼女は思う。大切にしている友人を。

彼女は願う。安寧の日常を

故に彼女は勇んで戦う。願いを阻む存在を倒すために。

 

「ワタシの身勝手な夢だけど、邪魔をするやつはみんな出ていけ!!」

 

 

 

彼女が抱くは常に純粋で当たり前の願望。だが、それは完璧に無垢な訳ではない。

そこには意地汚さがあり、我欲があり、そして銀が言った通り身勝手な部分もある。

 

双斧に炎を灯す。

 

しかし、それこそが人の性であり、それらの合計は人々が生み出す奇跡の結晶であり、尊い物であった。

故に彼女は純粋さと意地汚さの両方を持ち合わせるという、本来不可能なことを成し遂げられる。

 

これこそ、英雄王が彼女を、彼女らを気に入った理由のひとつなのだ。

 

気合いをもって全力で斧を連打していく。

 

故に英雄王は一つの嘘をついた。

 

すなわち、“即時に対象を回復させる宝具”を持たないということ。

 

森羅万象、古今東西のありとあらゆる伝説における宝具のなかには勿論前述の効果を持つ宝具は存在する。しかし、ギルガメッシュは敢えてその存在を隠匿した。

 

理由は簡単。単に銀に花を持たせたいから。

 

鋏を持つバーテックスはうめき声をあげる。

 

須美と園子とも一緒に戦えば勝利は確実だろう。撤退はあくまでも奇襲によってのダメージによる物であって、建て直せれば勝機は見える。

 

しかし、敢えて銀のみを連れていくことによって、銀が大きな戦果を挙げることができる。

 

アーチャーはあくまでアーチャー。援護を主体とするクラスである以上、戦力はそこまでではないと思わせる。現に銀は傷を負っていながら全力で戦っているが、アーチャーは慢心をしながら無傷で立ち続ける。。

 

銀は更なる連撃に向かう。

 

人は極限まで追い込めば進化をする。

 

ならば、残るのは三体のバーテックスを倒すという前代未聞の記録である。

 

背後の空間が僅かに歪む。

 

バーテックスの力量を見誤らなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

現れたのは槍

放ったのは矢を放つバーテックス。

短い空間転移。

その魔術には気配がほとんどなく、気付くことはない。

見ようとしなければ、千里眼をもってしても当然見ることはできない。

狙いは心臓。まさしく必中不可避。

気高き花は奈落に落ちる

ついでとばかりに針を持つバーテックスが地面に叩きつける。

全てはバーテックスの思う壺か。

 

「銀!」

 

英雄王が落ちる花を拾う。

しかし、落ちた花は死に絶える運命。

銀は虫の息。

胸には大きく穴が空き、血はすぐさま全て出てしまったようだ。

紅蓮の花を背負う己をなお、朱に染め上げる。

 

英雄王は王の財宝から回復宝具を取り出し、治療を開始する。須美の時とは違い、出し惜しみはしない。

しかし、回復は進まない。勇者に灯る炎は小さくなるばかり。

 

「ば、ばかな。」

 

自身の宝具をもってすれば回復否、蘇生すらも可能。ならばと、それを妨害するものを千里眼で見るもギルガメッシュは驚愕と憤怒に襲われる。

 

すなわち、呪いと憎悪。人間に対する圧倒的嫌悪。まさしく、人の全てを否定したいかの如くであった。

 

魔物ごときがなぜと疑問に思う。

自身の楽しみを失う不安にかられる。

出し抜かれたことに圧倒的怒りを膨れ上がらせる。

 

しかし

 

「ギルっち。」

 

その一声が全てをかき消す。

 

「銀!よいぞ、この我に進言を許す。何事でも言うがいい。」

 

英雄王は言葉を口に出す。

全神経は全て銀に向く。

バーテックスなど眼中にない。

そして銀は答える。

 

「それなら...ギルっち...ワタシと...約束して...須美と園子を...世界を...日常を...助けて...くれよ...」

 

それはあまりにも銀らしくない言葉。全てを投げ出し、諦める言葉。本来ならば英雄王が聞き遂げるものではないが、

 

バーテックスが回復終える最中、ギルガメッシュは悩んでいた。

銀をここまで追い込んだのは自身の責任。ならば前述は拒否する理由にならない。

彼が気にしていたのは、裁定者としての立場。

人類の行く末を見届け、それを愉悦とするのが彼の役目。神代がとうに終わった時代に口出しなどもっての他。

だというのに、世界を、人を守るなどあり得ない。

しかし、ギルガメッシュは何故か拒絶することはできなかった。

 

だから、ギルガメッシュは自身の信念を守り通すために、その迷いを断ち切るために銀を再び見るが、

 

銀は笑顔を浮かべていた。

 

きっと約束をしてくれると信じていたのだろう。

あまりにも激しい痛みに意識を保つことすら難しいというのに。

笑顔を保つことなど到底不可能なはずなのに。

 

しかし、銀は笑顔を浮かべていた。

 

そして、その刹那の時でギルガメッシュは決断した。その笑顔のみで決めた。

 

「よい。許す。この我との約定、結ぼうではないか..」

 

この時、薔薇の令呪が光り、消える。

 

そして、ギルガメッシュは気付く。

そもそも三ノ輪銀が自身にとっていったい何か。

 

雑種?無論、否。

道化?否。そのようなくだらないものではない。

友人?否。友は、いついかなる時も一人。

 

ならばギルガメッシュにとって三ノ輪銀とは一体。

 

それは、仲間である。

共に過ごし、共に生きる。それが仲間だ。

人生の一時を共有し、喜びも悲しみも分かち合う。

それこそがギルガメッシュにとっての三ノ輪銀であり、その関係である。

 

ギルガメッシュは立ち上がる。そこに怒りはなく、悲しげな表情を残すのみ。

 

銀は微笑みを残したまま、横たわる。

 

見上げるはバーテックス。

 

「貴様らなど、この我が手をかけることすらわずわらしい。しかし、約定がある以上...万死絶刑に値する!」

 

見下ろすはバーテックス。

 

英雄王とバーテックスの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

須美と園子は歩く。己の友人を求めて。

 

「銀ー!」

 

「ミノさん〜!」

 

その声に応えるものはない。しかし、樹海の中で光りを見つける。ここまで眩しいものはただ一つのみだった。

 

足早に近づいていく。

 

「ギルギル、お疲れ〜。ミノさんは〜?」

 

近づいていく。

 

「ねぇ、英雄王さん、銀はどこかしら?」

 

近づいていく。

 

「ミノさんは〜...!」

 

遅めに近づく。

 

「...」

 

近づく

 

「...」

 

近づく

 

「...」

 

近づく

 

「...」

 

近づく

 

「...」

 

そしてたどり着く。

一人の気高き、散った勇者に。

 

「その勇姿はこの我が目に焼き付けた。あれはまさしく勇者であった..」

 

英雄王は呟く。

 

須美と園子は膝を落とす。大粒の涙を流す。それが絶えることはない。悲しみで胸が裂ける。一人の親友の永遠の別れ、今知る。

 



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少女の願い
第玖話 禍正し(前)


勇者の章がよかった。

ただ、大満開友奈をこっちの世界観でどうしようか悩んでる。

~前回のあらすじ~
ナメプ、ナメプ、ナメプに続くナメプ。

その罪は許されるのだろうか。

かの約束をもって赦されるのだろうか。




雨が降りしきる中での学校。

六年一組、勇者たちが在籍していたクラスには、授業がなく、朝の学活のみがある。

 

されどその自由な時間に喜ぶ者はいない。

「三ノ輪銀さんは神樹様のお役目の最中に亡くなりました。」

そこには悲しみの嗚咽があった。

一人は手に顔を当て涙を大量にこぼす。

 

一人は目から涙を拭い続ける。それでも涙は溢れ続ける。

一人は机に腕を当て、声を静かに張り上げる。

しかし中には膝に手を当て、聞く体を保っている者もいる。

さらには涙すら流さない者もいた。

それは園子と須美だった。

勇者のいるクラスだけではなく他のクラス、学年の垣根を越えて、悲しみに暮れている中、

 

あの黄金の王はいない。

雨が降りしきる。

「────人間味豊かな性格をもって、神樹様の重大な任務に務められていました。その輝かしい偉業は永久に我々の指針として残ることでしょう。どうか神樹様の下で安らかに、そして末永く私どもの行方をお見守りください。」

二人の勇者は目前を見続けたまま。不動の体制を取る。

その先には数百の参列者が座っている。涙を、嗚咽をこぼす者も多い。

「それでは、一旦の休憩とします。」

二人は依然として目に涙は浮かべていなかった。

 

 

 

 

 

付き添いの大赦の神官に従い、勇者二人は一つの大部屋に向かう。

そこでは親族はもちろん、学校の先生や大赦の代表が各々の目的を果たしにきた。。

されど、中には暗い雰囲気が漂い、まだ一人の勇者の死を嘆いてるようだった。

 

「銀ちゃん、お務めなさっていたのですね。」

 

「ああ、我々市勢の者では見当もつきませんが、大変だったのでしょうね。」

 

やはり言葉の上では弔いの意を示しているように思える。

 

「神樹様のお役目の中で逝かれるとは大変名誉なことじゃないか。」

 

「銀ちゃんはね、英霊に成られたの。羨ましいことだわ。」

 

しかし、人々が見る先は正しいのだろうか。

 

「あぁ~、あぁ!あぁ...」

 

三ノ輪家の三男が空に手を伸ばす。その赤子の手は何かを掴むことはなく、さらに手を伸ばそうと努力するも、やがて力なく手を降ろす。

 

この場に集まった人間の中で生ではなく、死に向かい合ったものはいるだろうか。

 

それを気にする者はここにはいなかった。

 

勇者二人がその異様な雰囲気故に部屋に入ることを躊躇している中、

 

「君たちは...勇者だね...」

 

後ろから声が聞こえる。廊下は無音ゆえの糸が張ったような雰囲気であったが、その一声で雰囲気はがらりと変わった。

 

「ちょっと...来てもらえるかな...」

 

声の主は男だった。黒いスーツに黒曜石のような革靴を履いていた。顔の血色は良くなく、目はハイライトのない死んだ魚の目だった。廊下の薄暗さも相まって幽霊のようだった。

須美と園子は従うか迷うものの、大赦の神官が幽霊のような男に従うように促したため連れられるまま一つの部屋に向かった。

 

 

 

 

 

そこは調度品の少ない殺風景で真っ白な部屋だった。部屋は必要最低限の物しか置かれておらず、部屋が“部”“屋”であるかのようだった。故にその部屋はあまりに寂しく、つまらない様子だった。

 

「そこに座って...」

 

謎の男に言われるがままに二人の勇者は数少ない家具の一つである長いすに座った。彼女らは何も言わず、下を向いているだけであった。

 

「私は...いわゆる魔法使いみたいなやつだ。その魔法を使って君たちと一緒に戦った、英霊というすごいのを召喚したのも私だ。」

 

須美はその男の言っていることを理解できなかった。

 

「かなり...強い英霊を召喚したはずだから...」

 

須美はまだ理解することは出来なかった。

 

「戦いが...結局...どんな感じだったのか...教えてくれないかな...」

 

須美はやっと理解した。

 

「いや!...あのね...あの王様がね...監視システムを...全部...壊しちゃったからね...」

 

「えぇ、知ってますよ!あの暴虐非道で、身勝手で、人を人と思わない王様だと!」

 

「...」

 

部屋が静まり返る。男は無言を貫き、園子は以前として顔が持ち上がらなかった。

その静寂を破ったのは、

 

「勇者様、そろそろお戻りの時間です。」

 

突如、扉をわずかに開けた神官の空気を読まない言葉だった。

勇者二人は何も言わず、その場を立ち、神官の後を従った。

男は何も言わず、ただ二人の勇者が消えていった扉の先を見ていた。

 

 

 

 

 

葬式は続く。

黄金の王は...




今回は戦いません。それなりの伏線を残して終了です。

ですが、原作に沿えばもうすぐ戦います。

そうあのギャグ担当の乙女座です。

いろいろ欠けている今ではとても倒せるとは思えませんが、どうなるのでしょう。

なんか一見矛盾が起きてますが、ありのままで理解してください。















正直、この第玖話は結構苦戦しました。


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第玖・伍話 中間報告

閑話休題的ななにか。


英霊とは?聖杯とは?

 

私が初めて聞いたのは宝石の魔法使いに弟子入りした直後だった。師匠から聞いたその話は私固有の能力を必要とする計画だった。

 

「霊脈も整い、魔力も十分。支配の術式は既に再現できた。あとは...」

 

当たり前だが、精霊関連の計画と共に私は己の力を遺憾無く利用し英霊召喚計画を進行させた。そして私はギルガメッシュを召喚した。クラスの指定に失敗し、他の四騎の英霊を取り込んでしまったのは誤算だったが、師匠はあまり気にしている様子はなかった。

 

葬式の1、2日前。勇者たちが遠足の準備を行っていた時、私は召喚儀式の考察を続けていた。

 

クラスの曖昧性、他の霊基に簡単に干渉出来ることから聖杯に問題があると結論つけた。

 

そもそも我々が所持する聖杯は名前通りのものではない。

 

起源をたどれば、聖杯はイエス・キリストの体液が触れた杯があらゆる願いを叶える万能の願望器に変質したものである。その聖杯の情報を元に作られたのが、アイツンベルンの聖杯であると聞いている。七騎の英霊が争い、最終的に生き残ったマスターが聖杯の所有者になる聖杯戦争も付随していたらしい。

 

そして我々のそれはそのアイツンベルンの聖杯をさらに模倣したものだ。つまりはイミテーションのイミテーション、贋作にすぎない。

 

さらに記せば、我々に大聖杯は存在しない。

 

魔力を貯蔵する小聖杯とは違い、大聖杯は英霊の召喚の根幹を担う部分のはずだ。それがなければ召喚等出来るはずが無いのだが、師匠が何かの礼装を用意したのか、成功してしまったのだ。

 

とはいえ、それは邪道な進め方。部分的に失敗する可能性も否めない。

 

 

 

 

 

だが、どちらにせよ。この英霊召喚計画は失敗に終わるだろう。

 

勇者に話を聞いたところ、アーチャーは必ずしも良い働きをしたわけではないらしい。

 

アーチャーの妨害によって戦闘データは十分に取れていないが、どうやら宝具を十全に使いながら三ノ輪銀に対する致命的な攻撃を防げなかった模様だ。

 

音速を越えて放たれる宝具は一つ一つが強大な爆発を引き起こす。しかし、ミサイルと形容してもいいその攻撃ですらバーテックスには届かなかった。神の力を用いていないにも関わらずそれほどの力を発揮するということは、やはり本気で戦いに挑んでいたのだろう。だがそれでも届かなかった。

 

神の尖兵と争うのだ、まさか油断するはずもないだろう。

 

恐らくは精霊システムと別の新システムが実装された頃にアーチャーは契約を解除されるだろう。神にも近い英雄とはいえ、所詮はコピーされた偶像。神樹様の命令には抗えないだろう。

 

今から会場に戻る。一人の尊き勇者を弔うその葬式に。

 

神世紀298年8月■日

 




聖杯と英霊について。

本当にわずかですかヒントが残されています。

ちなみに”彼”曰く、あれが英雄王の本気らしいです。

まぁ、どうなるかはお楽しみで。

葬式の続きはまた今度。


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第拾話 決別(上)

「お役目とは言え、子供たちの尊き命が失われた事はご親族、ご友人にとっては堪えがたき悲しみです。ご遺族のご心痛、いか程ばかりかと案じております。」

 

淡々と述べられる平凡、無意味な定型文(テンプレート)。壇上に立つのは大赦のトップの一人。銀をお役目に縛り付け、死地に送り込んだ張本人。にも関わらず、己の非を認めないその姿勢。それを糾弾し、正す者は―――

 

―――この場にはいなかった。何故ならば、それは、それでも、誰にとっても否定できない(正しい)ことだからだ。

 

そのまま壇上に立つ()は目を閉じ、一時の間を置いて再び開く。何かを隠す(守る)かのように、確かめるかのように。

 

「だからこそ、我々は失われた尊き時間を負債として負い、戦い続けるのです...人生という名の戦いを。」

 

()()は、(呪い)であり、虚無(過去)であり、故に人の原点(発展)の一つである。

 

スピーチの後、無言で礼をした()は後ろに振り返り、二人の勇者を見た。その目は冷酷であり、冷静であるように見えれば柔和で温厚にも見え、何かを伝えようとし、何か特別であるようだった。もしくは単に何も見てないのかもしれない。

 

()は参列者がざわめき始める直前まで不動の体制をとり続け、そのまま大赦のトップらしく堂々と壇上を降りた。

 

そして二人の勇者は―――エールにすら気付くことなく、無表情だった。

 

 

 

 

 

「献花。」

 

神官の言葉を合図に二人の少女が立ち上がる。自身の親友と別れを告げるために。

 

神官から■■の花を受けとる。

 

迷うことなく、拒絶することなく、その足を着実に進める。その先には一人の眠り姫が住まう。()()()()に囲まれて。

 

それでも勇者は突き進む。

 

別れを告げるために。

 

(寝台)の中に彼女はいた。

 

その時ですら眠り姫、銀は眠りについていた。但し彼女は目覚めることはない。残酷な程にこの世界には王子様の目覚めのキスは無い。

 

二人の勇者は棺の前に立つ。最後の別れの時。

 

「ミノさん。」

 

「銀。」

 

園子が花を渡す。

 

染々と、彼女は自然と花は添える。その表情は悲しみに満ちており、僅かな憤りも含めていた。

 

しかし、その憤りは添えた後には空洞となり、そこに驚きと安堵が瞬時に発生しては消失し、最終的に悲しみがまた満たされた。

 

そして

 

須美が花を捧げる。

 

しかし

壊れたコンパスのように手は震え、石頭以上に腕は固まる。

 

迷わないと決めたはずだった。

拒絶しないと覚悟したはずだった。

 

だが、銀のその表情が瞬時に塗りつぶす。

 

様々な思い出、記憶、体験。そのすべてが決意を、覚悟を否定する。

 

自身の奥底から何かが叫んでるようだった。

 

困惑し、動揺し、停止し、諦めかけたその時...

 

静寂が訪れる。

 

「えっ...」

 

世界が須美に合わせたかのように時が止まり、四次元の虚無が満たされる。その状況に驚いた須美はやがて事実に気付く。

 

「そんな、こんなときに...」

 

須美は再び銀を見る。もはや耐えられなかった。この場には須美の叫び(悲しみ)を知らない者はいない。

 

「わっしー...」

 

限界だった。

 

 

 

「うああああぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

その怒りは

その声は

その怨瑳は

誰に対して。

 

世界は再び花びらに包まれる。樹海化の現象。二人の勇者は混沌の中、戦いに入る。心は既に呪いに塗り固められ、もはや須美は天を仰ぎ見るのみだった。

 

しかし、

 

須美は、

 

銀の側に添えられていた、

 

一輪の黄金色の花に気付いただろうか。

 




黄金色の花
十の大家

そして、わっしーに宿る怨嗟。
ヒントは大体撒いてあるはず(多分)
ちなみにわっしーが大好きなので不幸にさせるつもりはありません(多分)

ではまた

P.S LE最新話を見て、「さすがきのこ&シャフト!」と思いました。

■■発動まで■■■■■■■■


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第拾壱話 決別(下)

混沌を深める


「あぁぁぁ!!!」

 

樹海に須美の叫びが木霊する。

葬式時の硬直(矛盾)は吹く風の如く消え去り、彼女の身体は一つの固い意思と共に動いていた。

 

彼女にとってバーテックスは速やかに討伐するべき障害物。近距離から攻撃を行うため、園子の強力な刺突をするための撹乱のために須美は接近を続けていた。

 

敵の攻撃。バーテックスの下腹部から射出された白濁な卵状の爆弾、その数は5つ。須美は己の弓にも5つの矢をつがえ、迎撃し、更なる接近を試みるが、

 

「えっ!?」

 

爆弾は予期せぬ位置に既に移動していた。

 

爆弾は攻撃目標を変えてはない。

瞬間移動をした訳でもない。

急加速、急停止の様でもない。

 

ただ、須美は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。先ほどまでに放たれたものとは異なるスタイルであった。

 

当時の須美が預かり知らぬ事だが、卵状の爆弾を射出するバーテックス、ヴァルゴ(乙女座)は人とは完全に異なる理を以て爆弾を操作していた。人類がいずれ獲得する技術かもしれないが、今の彼女にとって未知の概念だった。

 

爆弾が迫る。

 

もはや回避は間に合わず、防御は無意味。

須美は既に爆弾の強力な威力を知っており、自身の死を覚悟―――

 

「そのっち!」

 

須美は一人で戦っているわけではない。

大切な親友が自身の盾で防いでくれたのだ。

 

「突出しちゃダメだよ〜、わっしー。」

 

戦いの前、園子は心配していた。

自身を怒りの色に染め上げた須美が暴走してしまわないかと。

無論、自暴自棄、自殺願望に引っ張られていない事は知っている。現に須美は自身の弓で爆弾を直接叩き、同時に後方に跳躍する事で爆風の被害を最小限に押さえようとしていたからだ。

 

むしろその怒りに我を忘れ、特攻と何ら変わらない突撃を始めるのではないかと。

 

そしてその予想は現実となった。確かに須美を守りに行けるほど園子には余裕が出来たが、その分須美が数倍ものリスクを背負うことになった。

 

須美を守れたとは言え、戦況は悪化。園子が迫り来る爆弾を凌ぐも体力の限界が近づく。無理矢理攻勢に出たとしても、実質必中不可避の爆弾にやられる。

 

膠着したまま砕けるのを待つしかないのか思われた時、

 

王の財宝(ゲートオブバビロン)!」

 

正しく雨粒程の数の宝具が天から迫る。その一つ一つは装飾過多でもあり、日本のわびさびを表現しているものもあった。しかし、多種多様なその宝具群はヴァルゴ(乙女座)が自身に巻かれている布に巻き取られ―――

 

「たわけが。その程度の浅知恵、我が双眸を使わずとも見えておるわ!」

 

門から放たれた宝具は巻き取ろうとした布を貫通し、それどころか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「すごい〜、ギルっち。」

 

「...」

 

ヴァルゴ(乙女座)は奇妙な叫び声をあげながらも、下腹部から爆弾を射出し、勇者等には目もくれず、自身よりも高みにいる脅威を排除しようとするが、

 

「ふん。」

 

英雄王は()()()()()()()()()()()()()のだった。

 

「やはり下らんな。だが、約定は果たす。」

 

そう口にした英雄王はヴァルゴ(乙女座)の周囲に王の財宝の門を展開し、そこから出現した宝具を一斉に放ったのだった。それら全ては寸分違わず目標に命中し、ヴァルゴ(乙女座)を粉砕したのだった。

 

そして合わせたかのように鎮花の儀が始まった。

 

如何なる力か、大橋で花びらが舞い、次の瞬間にはヴァルゴ(乙女座)は消えていた。

 

戦いは終わった。

 

「やっぱりすごいよ〜、ギルっち〜。ところで、今までどこにいたの〜?」

 

園子は英雄王ギルガメッシュの力に驚き、感嘆し、

そして須美は英雄王の強大な力を理解して

 

その弓に矢をつがえ、英雄王に放った。

 

しかし英雄王はその攻撃には驚かず、矢を盾状の宝具に防ぎ、その展開した宝具を収納すると同時に円盤状の宝具を取り出す。

 

「わっしー...?」

 

「そのっちも手伝って!あの人は銀の仇なのよ!」

 

「でも...」

 

「わからないの、そのっち?あいつはあんなに簡単にバーテックスを倒せる力がある。なのに!それを使わずに銀を見殺しにした!」

 

英雄王は口を固く閉ざしたまま、じっと須美たちを睨みつけた。その場を観察するかのように。

 

「おかしいと思ったのよ!銀は...銀は...死んだのに、バーテックスは撤退してた。それはあいつが自分の力を誇示するためだったのよ!」

 

「...」

 

園子は押し黙る。反論が出来ないのか、それとも。

 

「あいつが今の敵を倒して確信したわ!あいつは人の命を何とも思ってない!王様だから?自分が死人だから?理由なんてどうでもいい。あいつが銀を...殺したのよ!」

 

「ならば、どうする。」

 

重い口を開き、英雄王が問う。その眼光は一般人が見れば気絶必死。しかし須美はその眼差しに負けることなく、むしろ正面から抗うように睨み返し、答える。

 

「ならば、あなたを殺す!」

 

そう叫んだ須美は五本の矢を同時に放つ。上下左右、そして前から迫る矢に英雄王は

 

一つは円盤状の宝具(自動防御宝具)が撃ち落とし、

一つは英雄王に当たることなく虚空に消え、

二つは盾状宝具で再び防がれ、

最後の一つは英雄王自身の鎧の手甲でもって弾かれた。

 

五本の矢でダメージを与えられなかった須美は、しかし怯むことなく次の攻撃に入っていた。

 

「南無八幡大菩薩!」

 

弓は大きく拡張され、矢の先端部から展開されていた円が収束したと思えば、光を纏った矢が凄まじい勢いで放たれた。音速を遥かに越えたその矢は自動防御宝具(オートディフェンサー)を掻い潜り、複数の盾状宝具を貫通し、それでも落ちぬその矢は英雄王に必死の一撃を与えようとしたが、

 

「はっ!」

 

矢は英雄王が宝物庫から取り出した剣で()()()()()()()()

 

「ふん、その程度か。」

 

「まだ!」

 

須美は不屈の意思を表し、更なる追撃を与えようとするが、

 

「よもや見るに値せぬ。」

 

そう口にした英雄王は須美の矢をつがえようとしていた右腕に黄金の鎖が絡ませた。須美が勇者の力をもって強引に引きちぎろうとしたが、びくともせず、むしろさらにきつく絞めてきた。

 

「その鎖は天の鎖、神の力を纏う貴様に逃れられるものではない。さぁ、裁定の時だ。この我の前から疾く消え失せるがよい!」

 

その言葉と同時に英雄王ギルガメッシュの背後の門から複数の宝具が現れる。必殺の攻撃に須美は次の瞬間の死を理解し、目を閉じたが、

 

「令呪をもって命ずる〜!アーチャー、私たちと対等に話し合って〜!」

 

園子が自身の盾を展開し、さらに令呪を使用する。しかしそれは攻撃の中止でもなく、謝罪でもなければ、自害でもない。園子は単純に対話を求めた。しかし無論、財宝の雨は止むことを知らず、むしろその勢いを増したように見えた。

 

「この我と話し合いだと?たわけが。この我に弓を向けた時点で須美の沙汰は決まっておる!話し合うことなど、何もないわ!」

 

英雄王は激昂し、財宝の雨はさらに加速し、その密度は増えたように感じる。それでも園子は盾を構え続け、こう答える。

 

「ギルっちは何でわっしーを殺そうとしなかったの〜?」

 

「...」

 

沈黙を貫く英雄王。未だ二人を睨み付けており、宝具は放たれ続けている。

 

「本当は最初からわっしーを殺す気はなかったよね〜。」

 

「そんなことはないでしょ、そのっち。あれほどの速度、量。そのっちが守ってくれなかったら私はここにいなかったわ!」

 

「うんうん。違うよ、わっしー。あれは全部ギリギリで致命傷にならない方向だったよ〜。」

 

「えっ?」

 

「それにわっしーが攻撃している間は防御こそはしたけど反撃はしなかった。やっぱり殺す気はなかったんだよ。」

 

「でも...」

 

須美は反論出来ずに口を閉ざす。園子の盾が宝具を跳ね返す激突音の中、須美は落ち着き始めた。同時に自身の行動に疑問を抱き始める。

 

それでも

 

「でも、何で英雄王は未だに攻撃してくるの?」

 

その言葉を受けた園子はニコッと微笑み()()()()()()()()()()

 

「!」

 

須美はその行動に驚いた。先ほど自身を殺しに来ただろう攻撃とは比べ物にならない豪雨と形容すべき宝具の量、そして一流の英霊(トップサーヴァント)ですら見切るのは難しい宝具の速さ。三度目の死の危機を感じた須美は、今度こそ自分の死を覚悟し、それでも目を開き続けた。

 

「だってギルっち。何で当たらない攻撃を続けたの〜?」

 

しかし、頭上から放たれている宝具は全て須美と園子のすぐ側を通るものの、当たることなく地面に突き刺さる。

 

「ほう、よもやこれらの攻撃を見切ったというのか、それとも...」

 

感嘆の意を表しながら、宝具の雨が最早無意味だという事実を知覚したギルガメッシュ王は全ての宝具を回収し、展開していた門も閉じた。

 

「うん、それともの方だね〜。」

 

園子は一度目を閉じ、開く。自身の確信(核心)を確かめるために。

 

「私はギルっちを()()()()()〜。ギルっちが頑張ってミノさんを助けようとしたことを私はわかる。」

 

園子はいまだに微笑みを続け、ギルガメッシュ王もまた、凶悪な、傲慢を絵に描いたような笑みを浮かべる、何かを理解したかのように。

 

「ならば園子、何故この我が貴様らを殺さぬと信じた。」

 

英雄王は問いを投げる。その真意を確かめるように。

 

「それは、ギルっちと一緒に過ごした毎日の思い出だよ〜。」

 

園子が答える。更なる言葉は不要とばかりに。

 

そして、その答えに須美は愕然とした。園子が英雄王を理解し、信じていたことに。対して自分はどうだろうか。ただ怒りのままに子供のようにわめき散らしていただけなのではないか。しかし、やはり、

 

「それでも、英雄王...さんが銀を殺した可能性は残ってるんじゃない?証拠はあるのかしら...?」

 

須美は弱々しくも確かな反論(正論)を掲げる。信頼は簡単に裏切れるもの。そのようなものを証拠としてよいのか。

 

「いろいろあるよ。例えばギルっちが言ってた“約定”とか、かな〜。相手は王様なんだから約束を結べる人はこの世界にはいないよ〜。いるとすれば死に際の人、ミノさんだね〜。ミノさんと約束するなら見殺しは考えづらいよ〜。それにギルっちはミノさんのお葬式に来てたね〜。多分私たちより前に来て目立たないようにしてたんだね〜。ツンデレだね〜。でも黄金色の花が一輪ミノさんの隣に添えてあるんだもん〜。目立とうとしてるのか、そうじゃないのか分からないよね〜。それにね〜、」

 

孤独、天才、大切な友とその喪失。共通項があまりにも多く、だからだろうか、園子が英雄王を見透かしているようだった。故に

 

「くは、クハハハハハハ!フハハハハハハ!」

 

英雄王の哄笑が樹海に響く。

 

「よもやここまで見抜くとはな!もしや貴様、千里眼の類いを持っているのではないか?まぁよい。どちらにせよ、問いには答えよう。とは言えもはや気づいているのだろう、園子。この我が銀と結んだ約定は貴様らの安全を保障すること。そのためならば戦いで貴様らの身を守るのではなく、戦いから身を引かせるのが道理。ならば、心を乱している須美にその死の恐怖を与えれば良かろう。」

 

須美は英雄王の言葉を理解し、膝を落とす。

 

(私は何もわかってなかったんだ。)

 

英雄王の不自然な戦闘、ただ防御するだけのスタイルは須美の力量を正確に計るもの。

 

「駄目でしょ、ギルっち〜。そんなことしたら、わっしーが困っちゃうよ〜。」

 

「逃げも人が持つ足掻くための術の一つに過ぎん。それにこの我は選択肢を与えたであろう。仮に死の恐怖に打ち勝つことができるというのならば、わざわざ除け者にはせん。」

 

「ああ言えばこう言う〜。」

 

園子は頬を膨らませ文句を言う。そして、須美は落とした膝を引き上げ、

 

「ごめんなさい!」

 

「!」

 

「...」

 

足を揃え、手を両太ももに当て、腰を曲げる。すなわち、須美の唐突な謝罪。園子は驚き、英雄王は顔から笑みを消し、再び須美を見る。

 

「私はまた...また()()のことを、英雄王さんのことを信じなかった。やっぱり私...」

 

「なに下らんことを言っている?貴様は死の恐怖を乗り越えたではないか。なにもわかっておらぬようだな。あの場においては貴様がこの我と敵対することは()()()()()()()。むしろこの我と全力で相対して尚意識を手放さぬその肝は褒めてやろう。」

 

その時、相変わらずの厳しい表情だったが、一瞬英雄王は顔に綻びを浮かべたのだった。

 

それは、ひな鳥が初めて飛んだ様子を見る親鳥のようでもあり、園の演劇で見事に役目を果たした幼い娘を見ている父親のようでもあった。

 

すなわち、試練を突破した少女に安堵したのだ。

 

少女は赦され、王は綻ぶ。

樹海は遂に晴れ、現実にへと帰る。

しかし、その心は未だに曇りだった。

 

 

 

 

 

変身が解けた二人の少女は草むらに横たわっていた。大橋の近くにあるその公園では曇があり、そして未だに雨も降り続ける。

 

しかし、少女は雨に対して不快に感じることはない。水は弾かれ、肌が蒸れること能わず。すなわち、英雄王の粋な計らいだった。

 

雨は降り続ける。

 

世界は嘆きを続ける。

 

二人の少女は戦いの疲労故に体を動かそうという気持ちにはならなかった。

 

しかし、幾時経とうと彼女たちは立ち上がることをしない。

 

幻想的な戦いを終えた後、現実的な考え方をすれば

 

いや、彼女たちは...

 

「...」

 

安芸先生が無言で近づく。英雄王とはお互いに視線のみを交わし、歩みを続け、英雄王は霊体化を行う。

 

「...立てるかしら。」

 

「「はい...。」」

 

先生がポツリと呟いた言葉に少女たちは答える。

 

 

 

 

 

「...」

 

静寂が車内を包む。

 

樹海にて英雄王と和解してにも関わらず、須美は暗い気持ちであった。英雄王がいない今、それは顕著に現れる。

 

樹海にて英雄王と和やかに談笑していた関わらず、園子は持ち前の明るさを発揮しなかった。英雄王がいない今、それは顕著に現れる。

 

「...あのね...!」

 

安芸先生が声を張り上げ、静寂に挑むも、敵わず。

 

「...辛い中、お役目ありがとう。」

 

「...いえ...」

 

小さな声が響く。

しかし、未だ破れず(敗れず)

 

「...こんな、辛い中、頑張ってお勤めを果たして...二人は、まさしく...勇者だわ。」

 

「先生...」

 

「何かしら...?」

 

故にある挑む精神は、変化を生む。

 

「私たち二人だけじゃないよ、ミノさんが...ミノさんが一番頑張ったんだよ!だから、だから...私たち三人が勇者なんだよ!!」

 

園子が泣き伏し、須美も閉じた瞼から雫をこぼす。(非現実)から樹海(幻想)へ、そして自身(現実)という道を渡った彼女らは何かに洗い流されたようだった。

 

勇者たちは思い出(執着)と決別し、新たな血肉(決意)を得た。

 

「そうね。訂正するわ。三人とも...勇者だわ。」

 

雨は未だに降り続ける。止む日は誰も知らない。




まさか5800文字を一本にまとめる日がくるとは思わなかった私です。

そんなこんなで乙女座戦ですが、私の中ではバーテックスのお笑い担当というイメージしかないので、早急に退場してもらいました。内容的理由としては英雄王の強さがありますが、前回と比べて慢心がかなり抜けてます。完全ではないけど。

ちなみにバーテックスには原作由来の能力の他に+αの能力をつけてます。

そのっちのセリフは変更されてますが、それは私の気分です。伏線でも何でもないです。

現在更新停止中の「郡千景は魔術師である」の千景ちゃんの設定を練っていて、あとは詠唱を残すのみ。出来れば鉄心エンドは避けたいです。ちなみにこの作品との関連性はあるので、よんでみてください。

では、

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第拾二話 朱に交われど赤の他人

遅れてすみませんでした!


訓練場にて二人の勇者が鍛練を積んでいた。最早個人の技量を向上させる段階は過ぎ、連携により各々の弱点を補いあう領域にあった。しかし、その段階ですら最終段階にあり、細かい調整を残すのみだった。

 

園子の盾の内側にて須美が真剣な面持ちで矢を弓につがえる

 

対して英雄王は依然として訓練らしき訓練、特訓らしき特訓は一切行っていなかった。生前の性格もあるだろうが、英霊(サーヴァント)の状態において、それらは無意味だとわかれば当然であろう。

 

矢は真っ直ぐ英雄王を向く

 

むしろ、英雄王は無言をもって裁定を行っていた。勇者の精神を、友を失った故の心持ちを、戦いの後ゆえの覚悟を。

 

須美は反転し、そのまま盾の中から離脱しながら的を撃ち抜く

 

英雄王の圧力は凄まじく、矢を向けられた程度で動じる筈もなく、またしかし矢を向けた須美も特に何も感じなかった。

 

 

 

 

 

あの戦い以降、須美と英雄王の仲は決定的な何かに変化した。お互いは憎むべき敵ではなく、赤の他人でもなく、愛する隣人でもない、そう理解するに至る領域に。

 

須美は英雄王を理解できなかった。彼の価値観を知らなかったのは、単に知らなかっただけなのではなく、知ることができないということだった。

 

銀を全力で守らなかったのは事実。しかし、見捨てた訳でもないのも事実。命より優先すべきものなど何一つない、という須美の考えが英雄王の価値観を拒絶した。それでも、銀を全力でサポートしたのは偽りのないことだと須美は理解していた。故に否定はしなかった。

 

対して英雄王は須美の拒絶を否定しなかった。須美が自身を到底理解できないことは知っていながらも、敢えて共に動いていたのは今に始まったことではない。何よりそれ以上の愉悦を享受できるのだから、わざわざ手放す理由もない。

 

ハリネズミのジレンマ。吸血鬼の悲しみ。

 

近づこう、会話しよう、仲良くなろう、と願った結果、正反対のことが起きた。

 

それでもこの関係はお互いが無言で納得し、了承したものだ。

 

園子を除いて。

 

 

 

 

 

「...」

 

園子はギルガメッシュと須美の仲をどうするべきか、を考えてた。

 

「どうしたの、そのっち?」

 

「あっ、ごめん〜。もうワンテンポ速くだよね〜。」

 

善悪の判断はつきにくい。それでも、改善した方がいいと彼女は考えた。その為にはきっかけが必要だ

 

「そうだ〜、一緒にお祭りに行こうよ〜!」

 

「っ!、驚いたわね、まさかそのっちと考えが全く同じだったなんて。」

 

流石、親友と言うべきか。運命的とも言える偶然の一致が起きた。

 

「ほぅ、催しか。面白い、その祭りにこの我もつれて行くがいい。」

 

そして英雄王が二人の会話に反応する。どうやら、祭りに何か引っ掛かるものがあるらしい。

 

「あなたは呼んで、むが!」

 

園子が須美の口を塞ぎ、お互いが武器を落とす。

 

「いいね!三人で一緒に行こうよ〜!いいですよね〜、安芸先生。」

 

安芸先生が無言でうなずく。

こうして勇者二人と英霊(サーヴァント)は日本の祭りを堪能することにした。

 

 

 

 

 

 

黄昏時、二人の少女と一人の英霊(サーヴァント)が石畳と砂利の道を歩く。その三人は各々の浴衣を決めて祭りに向かっていた。須美は青を基調としたゆったりした浴衣、腰に日の丸印の団扇が刺さっているのが須美らしい。園子はピンクを基調とし、優美な花があしらってある園子らしい可愛い浴衣を決めている。

 

少女二人がそれぞれの個性を主張している中、ギルガメッシュ王は通常では考えられない浴衣を着ていた。布は灰色に縦に入った深青色の縞模様、帯は黒一色とギルガメッシュ(金ぴか)らしくない地味さである。

 

「それにしても〜、ギルっちの浴衣は“和”な感じはするけど、らしくないよね〜。」

 

「ふん、和に馴染んでこそ祭りの悦に浸ることができると言われた故にな。そも、この我のオーラは装衣ごときでは変わらんわ!」

 

そう言うギルガメッシュ(金ぴか)は確かに目立っていた。というのも金髪に外人顔というのは神世紀の四国にしては珍しい。しかし、それとは別にただならぬカリスマが彼を凡百という概念に埋することを許さない。それこそ彼が何をしようと周囲の人々が彼の味方になりうるほどに。

 

 

 

 

 

 

石畳の道を抜けると、神社の入り口である厳かな門と、その印象とは裏腹に、色彩ある賑やかな声が聞こえる。子供が泣く声然り、神社の鈴の音然り、肉を焼く音、その肉を売る店の店主の大きな声然り。中から見れば、その騒がしさ(風景)は色褪せた、使い古された(光景)だとしても、外から見れば懐かしくも胸が踊る人の営み(絶景)なのである。

 

すなわち、この賑やかさこそ勇者である二人の少女と一人の英霊が守ったものである。故にこの祭りが、本人が見飽きた等という感慨すら浮かばないほどの凡百の一瞬(ワンシーン)であったとしても、英雄王が小さな笑みをこぼす程度の素晴らしいものなのである。

 

「くんくん、イケてる香り〜!」

 

しかし、そんなことを気にすることもなく二人の少女は祭りを楽しむ。

 

 

 

 

 

「むむむっ、ちょこざいな。」

 

園子は射的を遊んでいた。手元に大量のコルク弾を抱えながら。

 

「なんてこったい....」

 

園子は射的を遊んでいた。手元に一つのコルク弾を抱えながら?

 

「くくくっ、クハハハハハ!あまりに間抜けな幕切れだな、園子。」

 

園子の戦略を知ってか知らぬかギルガメッシュはこう言った。

 

「とほほ...」

 

「大丈夫よ、そのっち。私が...」

 

「だが案ずるな!不本意ながらもこの我が弓兵(アーチャー)として顕現したからには何も問題はあるまい。」

 

見ずともわかる。今、ギルガメッシュ(金ぴか)が文字通り光輝いていることに。

 

「いいわよ、別にあなたの助けなんか...」

 

須美が振り返る。

 

「うん?どうしたの、わっし〜?って、えっ!?」

 

園子も振り返る。

 

そこにはギルガメッシュと()()()()()()()()()()()()()()()

 

「クハハハハハ!」

 

「ちょっとまち、キャャッ!」

 

暴風と破壊が吹き荒れる。それは射的の屋台を難なく吹き飛ばし、その跡の後ろにクレーターを残した。

 

景品の殆どは、当然ながら、ほぼ全てが灰と化した。

 

周りには騒音を聞きつけ、野次馬が集う。

 

絶対絶命のピンチかと思われたが。

 

「ふむ...確かこの射的とやらは射る以前に褒美を与えねば、ということだが、この我にかかれば後でも先でも変わりはしないだろうよ。」

 

と状況をあまり気にしていないギルガメッシュ(金ぴか)は言いながら、一つの両手で収まるような金塊を木っ端微塵にされた屋台に僅かに残された平らな机の上に置いた。

 

無論この金塊により、机も破壊された。

 

屋台の主人は呆然自失、目の前の出来事を受け入れられないようである。

 

その壮大な音を聞いたからなのか、野次馬が集まり、警察が呼ばれるのも時間の問題。

 

絶体絶命かと思われたが、

 

「驚いたよ、まさか一発で全部吹き飛ばすなんてよ。あんた、すごいな。」

 

屋台の主人が人形仕掛けのように急に動き出したかと思えば、周囲から拍手がギルガメッシュ(金ぴか)に送られる。

 

「クハハハハ、賛美せよ!賛美せよ!」

 

本人も満更ではない様子であり、むしろ自身から周囲を煽っていく勢いすらある。

 

その直後───

 

「危険ですので下がってください!」

 

青い装束を身に纏った、祭りには相応しくなくも、この場において相応しい職種の者が現れた。すなわち警察である。

 

野次馬がざわめきながらも移動していく。

 

「あなた方も御移動を御願い致します。」

 

ギルガメッシュ(金ぴか)を含めた三人に対しても誘導をお願いするも───

 

「...」

 

「...わかりました。」

 

警察の一人に対して舌打ちをした英雄王(ギルガメッシュ)に対して()はこのように答えた。

 

「須美、園子!我は貴様らと別行動をする。我が祭り場から離れる故にこの我の分も含め、祭りを楽しむことを許す。存分に遊ぶがいい。」

 

英雄王(ギルガメッシュ)の離脱に───

 

「あら、わかったわ。」

 

須美は自然と理解し、

 

「...うん、わかったよ〜。」

 

園子もぎこちなく了承する。

 

今宵は祭り。物も、人も、心も動き出す。

 




実は書きたかったネタの一つが祭りでのギルガメッシュの暴走。カニファン曰く、かなりの祭り好きとのことで。

という訳で第"拾"二話でした。決戦に向けてことが動き出すなか、一体どうなってしまうのか。

面白いと思ったら、高評価していただけるとありがたいです。感想をくれるととても嬉しいです。筆が捗ります。

それでは、また。
(「郡千景は魔術師である」も同時公開中)


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第拾参話 回帰と変革

久しぶりの投稿です。



───勇者サイド───

 

あの英霊(サーヴァント)が起こした事件から少し間が空き、私たちは街の坂のてっぺんに立っていた。

 

「ここからなら一番よく花火が見られるわ。穴場よ。」

 

そう、私たちは祭りの醍醐味である花火を見るためにこの坂を登ってきた。関連するブログを見て回って正解だった。

 

花火が上がる。

 

「ありがとう」

 

少し恥ずかしげな様子でありながらの須美の感謝だった。

 

「これ」

 

それは白熊のストラップ、青のマフラーを首に軽く巻きつけたそれはギルガメッシュによって木っ端微塵にされた屋台の中で()()()()無傷だった景品だった。

 

「うん!これはミノさんのぶんね」

 

「あとこれはギルっちの分。後で渡しに行かないとね」

 

「別にあいつになんか渡さなくていいと思うけど」

 

「...」

 

そう言った須美の顔を園子は覗き込む。須美は花火に夢中だったのか園子の覗き込みに気づかなかったが、その顔には花火を楽しむだけではない表情が見られた。

 

さらに鮮やかな朱色の花火が立て続けに打ちあがる。たまやという声がどこかで響く。

 

「私もありがとね」

 

「!?」

 

須美は唐突に受けた感謝の言葉に思わずその本人を見返す。

 

花火は多種多様な色彩を見せ、かぎやという掛け声も聞こえる。

 

「ほら、わたしって変な子じゃない。そんなわたしと、ミノさんとわっしーは友達になってくれた」

 

「うれしかった、楽しかった。だからありがとね」

 

「そんな、ちがっ」

 

思わず否定の言葉を述べそうになる口を閉じ、言葉を飲み込む。私が言いたいのは。

 

「うんうん、まだこれからよ。よろしくね、そのっち」

 

と天高くに上がる火花に勝る絢爛な笑顔で返す。

 

「うん!」

 

そのっちも負けず奇麗な笑顔で返事をする。

 

不安も動揺もある、けどそのっちがいる、銀も一緒にいる。なら、怖いことはなにもない。

 

祭りは終わる

 

 

 

 

───英霊(サーヴァント)サイド───

 

警官は英雄王の後を無言で付き従い、そして唐突に英雄王が振りかえる。

 

「...」

 

二人が向き合う。

 

一人は英霊(サーヴァント)、気だるそうでありながらも、眼差しには一切の迷いがない者。

 

もう一人は...言うまでもない、信念を表さない者。

 

その二人の奇縁ゆえ、マスターとサーヴァントの関係であった二人は召喚儀礼以来の再開を果たしたのだ。

 

「貴様がこの場に来たということは、この我に早急に知らせるべきことができたのであろう。言ってみよ」

 

英雄王(ギルガメッシュ)はその聡明さから私の存在のみでこれからの展望に予想がついたようだった。

 

「見た目とか、色々と聞くべき───いやもういい。あなたはもうわかってるだろうからな。」

 

そう言う元召喚者は、いかなる力か、当時とは似てもにつかない、若干チャラいが、健康的な青年の姿に変化していたのだ。服装も考慮に入れれば、さながら新米警官といったところか。明らかに意図的な変化である。

 

しかし英雄王は含み笑いをするも驚きなどはしなかった。まるで最初から理解してるかのように。その笑いすら真理(当然)ゆえの結果であるかのように。

 

そして、本題への突入を促された青年は、膝を崩し、頭を垂れ、述べる。先ほどとはまるで違う口調で。まるで人格を捨てたかのように。

 

「王よ、敵が来ます。恐らくこれまでとは比べ物にならないほどの。今の王の力でも勝てるかどうか。今こそ御身の真の力を解放するときです。」

 

青年が、()が、続けた言葉は王に進言する臣下が必死の様子で伝えたようだった。故にその言葉は真剣であるが、それでもなお、本来ならばその言葉は英雄王を侮辱したと捉えうるものである。しかし───

 

「ふむ、この我を越えるものが来るとな。」

 

「...」

 

如何なる所以(ゆえん)か、英雄王は激昂(げっこう)することもなく、()の言葉を事実と捉えた。無論、真偽の程を英雄王の眼を通して確認したが、そもそも本来ならば実際の真偽を確認せずに王の財宝(ゲートオブバビロン)で殺していただろう。そうしないということは───

 

英雄王は()を信頼している。

 

「我が宝物の検品などしてる暇はないようだな。ならば───」

 

()()()()が相応しいかと。」

 

「貴様も同じ結論か。名残惜しいがどうやら遊びはここまでのようだな。」

 

「はい。王には大赦本部に来てもらいます。それも一日二日ではなく、数週間の間。今の私では工房や触媒を用意しなければ達成できませんから。」

 

「当然だ。この我の霊基を変化させるのだ。いくら準備があろうと足りるものではないわ」

 

とダメ出ししながらも英雄王はほくそ笑みを浮かべる。

 

「時間がありません。勇者様にお別れのお言葉が無いようでしたら、今から大赦本部に向かいます。」

 

「構わん。今生の別れでも有るまいしな」

 

そう言いながらも英雄王(ギルガメッシュ)はどこか寂しそうだった。

 

「そうだ」

 

英雄王(ギルガメッシュ)はふと言葉を出す。

 

「本来ならばしないが、貴様に一つ忠告をしてやろう。須美と園子に派手な敬称なぞいらん。奴等は、所詮は少女だ。()(はや)されるべきでも、責任を背負うべきでもない。あれは我のモノ(宝モノ)だ、貴様であろうと勝手は許さん。」

 

それは冷徹にして無慈悲な目線、圧倒的な死そのものに近いとすら思えるオーラが英雄王(ギルガメッシュ)からあふれ出ており。しかし、その目には不機嫌に紛れた、王としての当然の義務感が隠れていた。

 

「...肝に銘じておきます。」

 

それでも汗ひとつ流さず、動じることもなかった()が了解の意を述べた次の瞬間には二人の姿は消えていった。

 

祭りは終わる。




あとがきです

毎回そのエピソードの裏話てきな何かを話してたような気がしますが、実は半分ぐらい1,2年前に書いたものでかなり覚えてないんですよね...なんかすみません。

久しぶりに自分の作品を見返したので色々ギミックを仕込んでて面白いなって思いました。

あとアンケートを見たんですが、早く投稿しろが多かったですね(個人的にはつまらないが少なくて安心しすぎて安心院になってしまったのですが)。

色々久しぶりすぎてなんか忘れてることを忘れてるような気がします。なんか結構重要な設定とかが抜けてたり、矛盾してたりしてると思うと怖いですね。

決戦は近いです。つまり最終話も近いです。走りきれたらいいですね。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

面白いと思ったら、高評価していただけるとありがたいです。感想をくれるととても嬉しいです。筆が捗ります。



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番外編
鷲尾須美生誕記念小説


誕生日おめでとう!!!


「明日から学校ね。」

 

「そうだね〜。」

 

「そ、そうだな。それよりもさ、い、イネスに行かないか?」

 

「銀、もしかして宿題が終わってないのかしら?」

 

「そ、そんな訳がないだろ。はははははっ!...」

 

銀の空笑いが部屋に響く。

暦は神世紀二百九十九年、四月三日の午後である。場所は銀の家。彼女の弟が須美と園子と遊びたいとおねだりした結果、須美が

 

「富国強兵を進めるにはまず、肉体訓練よ!」

 

と異常なテンションで了承したのだ。辛うじて須美が園子に許可を求めるだけの理性は残っていたが、その気迫は園子の頭を縦に振るには十分だった。

 

しかし男の子のわんぱくぶりにさしもの三人の勇者は疲弊してしまった。というのも、これの次はあれ、あれの次はそれ、と色んな遊びを次々にやらされ精神的疲労を感じたのだった。まるで無限に沸く骸をひたすら狩り続けるような。

 

結局、三人の少女はリビングで休息の時間を過ごしていた。

 

そう、三人の少女は今日も日常の喜びを噛み締めていた。

 

しかし、それは泡沫のように終わる。

 

「須美お姉ちゃん!一緒に遊ぼ!」

 

「おっ!わっしー直々のご指名だね〜。」

「何言ってるの?三人も一緒よ。」

 

須美は園子と銀がサボろうとしているのではないかと疑問を投げ掛けたが、

 

「でも、ミノさんは宿題を終わらせないと〜。なら、私がミノさんのお手伝いをしないとね〜。」

 

「なら私も銀の世話をするわ。」

 

「私はよいぼれのおばあちゃんか!」

 

銀の的確?なツッコミに一瞬世界が止まったが、

 

「と、とにかく、私も銀の宿題を見るわ!」

 

「でも、鉄男君が待ってくれるかな〜?」

「なぁ、須美お姉ちゃん!国防ごっこしよう!」

 

「こうなったら、もうこいつは止まらんぞ。」

 

銀が須美に追い討ちをかけていく。須美は悩みに悩み、

 

「仕方ないわね。私が行ってくるわ、でも銀は早く宿題を終わらせるのよ。さぁ、鉄男君、一緒に国防をしましょう!」

 

結局ノリノリの調子で須美はリビングから出ていった。

 

「ふぅ、さて作戦会議だな。須美を除け者みたいな感じにしたのは申し訳ないな。」

 

「そうだね〜。でもそうしないと二人きりになれなかったよね〜。」

 

二人の顔が近づく。自然に近づく唇、お互いの顔が目の前まで近づき、頬が高揚する。

 

「それじゃ...」

 

「そうだね〜、決めようか〜...」

 

お互いが笑みを溢す。

 

「「誕生日プレゼントを!」」

 

 

 

 

 

二人の少女が須美を外に追いやったのは、決していかがわしいこと出はなく、須美の誕生日プレゼントを決めるためだった。

 

「でも、何がいいんだろうな。」

 

しかし、手詰まりな状態でもあった。

 

戦艦のプラモデル、旧世紀の歴史書、宝石、果てには羅漢像の模型も考えられていたが、どれも様々な理由によって不発に終わった。特に須美の個性的性格が彼女達を悩まさせていた。

 

「うーん〜。」

 

流石の園子も苦しんでるようであり、中々珍しい光景だった。

 

「そうだ!一緒に滝行とかどうだ?」

 

「でも、結構辛いらしいよ〜。」

 

「やっぱ、やめます。」

 

うんうんと唸り続けること30分、園子が顔を上げて一つの答えを出す。

 

「そうだ!わっしーが欲しそうなものじゃなくて、私たちが欲しいものをあげればいいんじゃない〜?」

 

「そうか、それで喜ぶかな。」

 

「大丈夫だよ〜。心がこもってたらきっとわっしーも喜ぶよ〜。」

 

そうして計画は次の段階に進んだ。尚、銀が宿題を全く進めてないことにわっしーが怒ったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

最近、二人がよそよそしい。

遊びに誘っても断られ、連絡が遅れることもあった。

きっと何か隠し事をしているに違いがないと私、鷲尾須美は偵察に向かった。

 

最初に向かったのは安芸先生のところ。もしや勇者のお役目に関わることかと思ったが、関係がないとのこと。そして、

 

「真実を知りたいなら、三ノ輪さんの家に向かいなさい。」

 

とゲームの主人公を導く賢者のようなことを仰った。流石に先生に言い寄るのはどうかと思ったので、大人しく銀の家に向かう。

 

そこでは

 

「須美お姉ちゃん!」

 

銀のご家族が外出の準備をしていた。

 

「あら鉄男君、こんにちは。今日はお出かけ?」

 

「うん、これからその――」

 

「こら!鉄男。それは秘密だろ。」

 

秘密が多少気になるけど、それよりも、

 

「ところで銀はどこにいらっしゃるのでしょうか。」

 

今まさに外出しようとしている銀のご家族には肝心の銀がいなかった。

 

「あぁ、銀なら乃木さんのお家にいるぞ。」

 

銀のお父様が答えをくれた。

私はそのままそのっちの家に向かった。

 

「須美様、こちらにどうぞ。」

 

そのっちの家に着いたらお手伝いさんが案内してくれた。一体二人は何を。

 

「それではお楽しみください。」

 

私はとある部屋の前に案内され、お手伝いさんは何処かへ消えてしまった。

二人がここにいるにしては静かだと思いながら、扉を開け、部屋に入る。

 

中は暗かった。何も見えず、そのっちと銀に呼び掛けようとした時、

 

反転

 

爆発する音がした。

色豊かな紙吹雪が舞い、一つの言葉が紡がれる。

 

「誕生日おめでとう!」

 

そこには色んな人がいた。

安芸先生

三ノ輪家のみんな

乃木家のお手伝いさん

そして、銀と園子も。

 

「もしかして、私のために!?」

 

須美は涙を溢す。しかし、そこには笑顔があった。

 

「そうだよ〜、それにはい、これ〜。誕生日プレゼントだよ〜。」

 

「えっ!?」

 

園子が満面の笑みで小さな箱を渡す。須美が箱を開けると、

 

「ブレスレット?」

 

出てきたのは七色ね色彩を放つブレスレットだった。その色の調度はプロの仕事と言っていいレベルだった。

 

「頑張って、自分で作ってみたの〜。どうかな〜?」

 

「物凄く嬉しいわ。ありがとう、そのっち。」

 

須美は満面の笑みで感謝を表す。そこには不安はなく、安堵があった。

 

「はい、須美。これ。」

 

銀から紙切れが渡される。クレヨンで色付けされて、中央に「何でも言うことを聞く券」と書かれているそれは、

 

「お願い券かしら。」

 

「私、須美が欲しいものも、私が欲しいものもよくわからなかったからさ、パパとママにいつもあげるこれにしたんだけど、いやだったか?」

 

「うんうん、全然いやじゃないわ。むしろ嬉しいわ。これであのお着替え大会の続きができるわね。」

 

「えっ?ちょっと待て。あれはもうやらんぞ。」

 

「銀の意思は聞いてないわ。私にはこれがあるものね。」

 

高圧的な態度でチケットをヒラヒラと揺らす様は昔の貴族のようだった。

 

「園子ー!助けてくれよ!」

 

「私はミノさんの新しい一面が見たいな〜。」

 

「そ、そんなー。」

 

「皆さん、ケーキですよ。」

 

結局、ケーキを食べたあとに銀のファションショーは始まった。家族の目の前で。

 

その後も楽しい日々は続く。

まもなく、三人の少女は中学生になる。

それでも三人の日常は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続かない。

 

何故なら、その全てが290年の四国滅亡の事象に繋がる。銀の生存も、英霊の未召喚も、全てあってはならないこと。すなわち、剪定の域を越えたその世界は全ての人類滅亡の可能性を内包したただ一つの事象だから。

 




最後の部分はfgo第二部(予定)に関わる重要な情報です


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