テイルズオブソムニウム (エステリーゼ)
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1話 現実世界

夢の世界

 

小さな妖精たちは集まっていた。

 

「みんな、やろう」

 

「僕たちだけで出来るかな?」

 

「大丈夫、きっとうまくできる……」

 

「儀式をする準備をしよう」

 

「そうだね、呼ぼう」

 

「……夢見る目覚めの人を」

 

 

現実世界

 

 

 

「………それで、国は…《キーンコーンカーンコーン》さて、今日の授業は終わりだ。」

 

「起立ー礼!さようなら!」

 

 

授業が終わり、帰る支度をしていると幼馴染の佐々木鈴が話しかけてきた。

 

 

「ねぇねぇ、星菜!一緒に帰ろ!」

 

『うん、帰ろ!』

 

 

私は夢月星菜(むつきせいな)。私立夏梅高校3年生。

好きな科目は家庭。苦手な科目は体育。

成績は常に上位らしい……by鈴

佐々木鈴とは幼馴染で親友。今日も一緒に帰っている。

 

 

「そういえばさ、テストどうだった?」

 

『うーん……自信ないなぁ』

 

「だよね、難しいよね」

 

『勉強、苦手だもん』

 

「はぁ……でもあんたは良いじゃん。顔よし、スタイルよし……完璧じゃん!……あっスポーツはダメか」

 

『人は誰しも得意不得意あるものなの!』

 

「そうだね、……あ、そうそう話変わるけどさ、テイルズシリーズの新作、買う?」

 

『テイルズオブザワールドレーヴユナイティア発売されてるよね…もちろん、買うよ!』

 

「だよねー!リオンカッコいいし!現実にいないよあのツンメンは」

 

『ツンメン?』

 

「ツンデレイケメンの略!」

 

 

 

鈴はハートマークが飛び出しそうな位リオンについて熱く語った。

 

 

 

『なるほど、でもユーリだってカッコいいよ?あのクールドライ、素敵だもん』

 

「うむむ……確かに。あっそうだ!明日さ学校休みじゃん?……一緒にさ、買いに行かない?本当は今日買いに行きたいけど…バイト入ってて……」

 

『そうだね私も家の手伝いがあるから今日無理だわ、じゃあ、明日の9時、入江公園集合!』

 

「決まり!明日が楽しみだわぁ……じゃ、また明日ね!」

 

『うん、またね!』

 

 

夢月宅

 

『ただいまー!』

 

「おかえりなさい、星菜。夕飯、出来てるわよ」

 

『あっ!いいにお~い!』

 

「さっ、手を洗ってきなさい」

 

『はーい!』

 

お母さんの作った夕食、カボチャのスープとマカロニグラタンは絶品だった。

食べ終わった皿を洗い、お風呂に入って髪を乾かし、2階の私室に行き、今日の宿題をした。

 

 

『えーっと、次の英文を日本語に訳しなさい。これは《ピロリローン》あっメール………鈴からだ』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

差出人:鈴

 

ごめーんこれわかんない!教えてー!⬇

Last night, I went to see the cherry blossoms at night

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『…鈴、これは私でもわかるよ……とりあえず、返信っと』

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

宛先:鈴

 

これは昨日夜桜を見に行ったって訳すんだよ

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『《ピロリローン》早っ!えっと…何々』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

差出人:鈴

 

ありがとう!おやすみ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『ふぅ……疲れた~……もう寝よ。』

 

私は宿題を終わらせ、ベッドへ入り、眠りについた。

午前2時、星菜の部屋に訪問者が来た。

 

 

 

ガチャ

 

「星菜………安らかな夢を見てね」

 

 

 



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2話 夢世界へ

?「……あっあのあの、起きてくださいです」

 

『……ん、もう朝?』

 

?「えっえと、ここは夢の中です」

 

『夢の中?……おやすみ』

 

?「ねっ寝てはだめです!おっ襲われちゃいますです!」

 

『おっ襲われる?!どこどこ!どこにそんな変態がいるの!?』

 

?「あっ起きてくれたです」

 

 

私は目を覚まし、辺りを見た。緑豊かな森だった。

 

 

『……あれ?……ここ、どこ?たしか、部屋で寝たはず』

 

?「はっはじめまして、ぼっぼくはテルンっていいますです。」

 

『テルン?……可愛いね。ここどこかわかる?』

 

テル「ここは夢の……!!」

 

『テルン?どうし……ひっ!』

 

 

テルンはここがどこなのかを説明しようとしていきなり怯えた。何かと思って振り向くと、狼のような魔物が3びきこちらへと近づいてきた。

 

 

『とっ、とりあえず、にっ逃げよう!』

 

テル「はっはいです!」

 

 

走って走って魔物から逃げたがあちらの方が早く、囲まれてしまった。

 

 

『どっどうしよう!逃げ場がないよ!』

 

テル「たっ助けてぇ!誰か!誰かぁー!」

 

?「いた!」

 

?「魔物に襲われている。助けよう!」

 

『……う、うそ…』

 

 

テルンが言っていた夢の中だからなのか、TOSの主人公ロイドと、TOGの主人公アスベルが助けに来てくれた。

 

?「……。」

 

?「どうしたんだ?」

 

?「いや、勇んでみたのはいいが、戦い方とか俺達知ってるのかなって……」

 

?「う、そう言われると自信ないな……でも多分、大丈夫だ!」

 

?「え?」

 

?「ほら、俺達剣を持ってるだろ。ってことはきっと戦ったことがあるんだ。やろうぜ!」

 

?「ご、強引だな……。でもそうだな。迷ってる場合じゃない。行こう!」

 

 

二人がぎこちないが、なんとか魔物をやっつけてくれた。

 

 

?「大丈夫か?」

 

?「はぁはぁはぁ……あ、あのあの……ありがとうでした……」

 

?「怪我は無さそうだな。俺はアスベル、こっちはロイドだ」

 

ロ「よろしくな!お前は?」

 

テル「は、はい!え、えとボク、テルン、ルフレスのテルンです。あ、ルフレスというのは種族の名前で」

 

『落ち着いて、テルン。……私は夢月星菜。星菜でいいよ』

 

テル「は、はいです!……そ、そうだボク、みなさんを探してたです!」

 

ア「俺達を?」

 

テル「はいです!みなさんは夢見る目覚めの人ですよね?」

 

ア「夢……見る、」

 

ロ「目覚めの……人?」

 

『テルン、そのこと、詳しく教えてくれる?よくわかんなくて』

 

テル「え、あの、ち、違うんですか?」

 

ア「いや、違うもなにも、」

 

ロ「なぁ」

 

テル「で、でもでも、ちゃんと人の姿してるですよ!?」

 

ア「というより俺達、どういう訳か名前の他、何も覚えてないんだ」

 

テル「え!!」

 

『……本当?』

 

ロ「ああ、さっきだって最初は剣の扱いすら自信なかったんだよな。やってみたら、なんとかなったけどさ」

 

ア「2人共気がついたらこの森にいた。だからここがどこなのかも分からないんだ。知ってたら教えてくれないか?」

 

『お願い、テルン』

 

「覚えて、ない……そんな……儀式がうまくいかなかった?それともヴールのせい?」

 

ア「テルン?」

 

テル「はっ!?あ、す、すみません。えとあの、ここはレーヴァリアです。分かりやすく言うと夢の世界、です!」

 

ロ「夢の世界?さっきみたいなやつがいるのに?」

 

テル「あ、えとあの、そういう意味じゃなくて、その、眠る方の夢です、けど……」

 

『……つまり、今ここにいる私たちは現実では眠ってるってこと?』

 

テル「は、はいです!………と、とりあえずもっと安全なとこに行かないですか?この先にボクたちルフレス族の街があるです。そこでもっとお話しするですから……」

 

ア「確かに、いつまでもここにいるとまた襲われるかもしれないな」

 

テル「こっちです!」

 

ロ「あ、おい!」

 

『行こう、ロイド、アスベル』

 

「だな、今はついて行こうぜ!」

 

ア「うん、そうだな。」

 

 

私はロイドとアスベルと一緒にテルンを追いかけた。

 

 

ロ「お、あれがそうか?」

 

テル「はい、ルフレス族の街です。もうすぐ着くです!ここからだと小さいですけど、結構大きいんですよ」

 

ロ「へぇ。そういえば街にはお前の仲間も沢山いるのか?」

 

テル「あ、えと、それは、いるにはいるんです、けど」

 

ア「なぁ、テルン」

 

テル「はははい!なんでしょう、アスベルさん!?」

 

ア「アスベルでいいよ。いや、ここが夢だっていう話がどうもまだ信じられなくて。歩きながらでいいから、もう少し、何がどうなっているのか、話してくれないか?」

 

『わ、私も……(ロイドとアスベルがいる時点で夢だわ)』

 

テル「……は、はい分かったです。実はレーヴァリアは今……」

 

ア「!!テルン!危ない!」ザクッ

 

テル「え、わ、わあああっ!?」

 

ロ「アスベル!アスベル、大丈夫か!?」

 

『きゃあああ!!』

 

ア「不意討ちを受けるとは、油断した」

 

ロ「ヤバイな。結構いるぞ」

 

ア「くっ……これは毒か……!」

 

『ア、アスベル、だ、大丈…夫?』

 

ロ「テルン、星菜、お前たちは下がってろ!」

 

テル「ででででもでも!」

 

『でも、アスベルは毒を……』

 

ア「無理するな、下がるんだ!」

 

テル「は、はい!すすすみません!」

 

『テルン、離れよう!』

 

ア「なんだ!?あいつら、テルンを狙ってるのか!?」

 

テル「わわっ!」

 

『テルン!危ない!』

 

私がテルンを庇うのと同時にテルンを狙っていた魔物へ何処からか矢が放たれた。

 

ロ「弓矢!?だれだ!?」

 

?「助太刀しますわ」

 

ア「き……君は?」

 

?「話は後ですわ。先にこの魔物たちをなんとかしましょう」

 

『あ、あの!この魔物、毒を持ってるから気を付けて!こっちの彼も毒を受けたんです!治せないですか?』

 

?「まぁ、毒ですの?なら、私に任せなさい!今、治して差し上げますわ!穢れを浄化せよ、リカバー!」

 

ア「毒が消えていく……!すまない、助かった!」

 

?「傷ついてる方を助けるのは当然のことですわ」

 

ア「君は覚えているのか?その……術とか、記憶とか」

 

?「まぁ、ひょっとしてあなた方もですの?実は私もなんだか……」

 

ロ「2人共、喋っている場合じゃないぞ!」

 

?「いけない、今はあの魔物たちを退治するのが先ですわね」

 

ア「そうだな、片付けてしまおう!」

 

 

そう言って彼らは魔物に向かって駆けて行った。

魔物は先ほどまで狙っていたテルンよりも、術を使う彼女を狙い出したため、私とテルンは三人の邪魔にならないように離れていた。

 

 

『やっぱり記憶がないからかな…』

 

テル「え?」

 

 

ぼそりと呟いた言葉に、テルンが反応した。

 

 

『いや、なんかロイド達の戦い方がぎこちない気がするなー、と思って』

 

テル「そ、そうなんですか?ボクは戦えないですから、よくわからないですけど…」

 

いや、まあ、私も戦えないけど。

少し、戦っている三人の方へ近づくと、一番後ろにいる弓使いの女性がすぐに気がついた。

 

 

?「貴女!?危険ですわ、下がっていなさい!」

 

『わかってる。三人とも戦いながら聞いて!』

 

 

前線で戦ってるロイドとアスベルも驚いたようにこちらを見たがすぐにヴールに向き直る。

 

 

『ロイド!君は剣を2本持ってるんだから、片方で受けて、もう片方で斬れるでしょ!!』

 

ロ「そうか!頭いいなお前!!」

 

 

いや、ちょっと考えればわかるのでは?まあ、仕方ないかロイドだし。

 

 

『アスベル!アスベルはえっと、その…!鞘に手を掛ける癖があるから、きっと剣を鞘から出し入れして戦ってたんじゃないかな!!』

 

ア「剣を出し入れ?…もしかして抜刀、か?やってみる価値はある…」

 

 

アスベルは一度剣を鞘に仕舞う。そして

 

 

ア「一閃!!」

 

 

刀を抜きつつヴールを斬り飛ばした。

 

 

『弓使いの貴女!飛んでるやつは毒持ってるし、二人は戦い難いだろうから打ち落とせる?』

 

?「ええ!わたくしに任せなさい!!」

 

 

弓使いの女性は飛んでるヴールを的確に矢で撃ち落としていく。

 

 

テル「すごいです!星菜さんの一言で皆の動きが良くなったです!」

 

『いや、私よりも、すぐに実践して出来ちゃうあの三人のがすごいよ』

 

 

私とテルンが話していると、3人はあっという間にヴールを全滅させた。

 

 

?「なんとか勝てましたわね」

 

ア「ありがとう。助かったよ」

 

ロ「ああ、俺たちの剣だけじゃきつかったな」

 

?「どういたしまして」

 

 

三人は会話をしながらこちらへやってきた。

 

 

ロ「それと、星菜もサンキューな!」

 

『へ?あ、ううん。私はなにもしてないよ?』

 

?「あら、謙遜なさらなくてもよくってはなくて?なかなかの指示でしたわよ?」

 

『ありがとう。でも貴女の弓矢の的確さに比べたら…』

 

?「わたくしとしたことが、人と会えた嬉しさについ力が入ってしまいましたわ」

 

 

うふふ、と笑う女性からは気品が溢れていた。

 

 

?「わたくしはナタリア・L・K・ランバルディア。…ナタリアで結構ですわ」

 

ロ「そっか、俺はロイド。よろしくな、ナタリア!」

 

ア「アスベル・ラントだ。よろしく」

 

『夢月星菜です。よろしくね』

 

弓使いの女性、ナタリアを加え、私たちはルフレス族の街を目指した。



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3話 ルフレス族の街

ナ「本当にあなた方も記憶がないんですの?」

 

ア「ああ、気がついたらこの森にいて、名前以、ほとんど何も覚えていない。君と同じなんだ」

 

ナ「歩けどもひとの姿はありませんし、出会うのは魔物ばかり。一体ここはどこなのかしら」

 

ロ「一応、レーヴァリアって夢の世界らしいんだけどな」

 

ナ「夢……の世界?」

 

ナタリアは首を傾げた。

 

『……えと、現実では眠ってるんだって』

 

ロ「で、俺たちは、ええとなんだっけ?」

 

ア「…《夢見る目覚めのひと》だったかな」

 

ロ「そう、それなんだってさ」

 

ナ「なんですの、それは?どうしてあなた方はそんなことを知っているんですの?」

 

『ああ、それはこの子に教えてもらったからだよ。ほら、テルン』

 

ひょいと、テルンを掴んでナタリアの前へ見せる

 

テル「あ、あの…」

 

ナ「まあ、さっき襲われかけていた…テルンというお名前ですのね。はじめまして、ナタリアですわ」

 

テル「あ、あのあの…テ、テルンです。こ、こここんにちは」

 

ア「大丈夫だったか?怪我はないか?」

 

テル「は、はいです。ここ怖いだろうとは思ってたけど、こんなにとは思ってなかったです。は、早く街へ帰りたいです……。こんな街の近くでも襲われるなんて…」

 

ロ「さっきのあれ、魔物だろ?夢でもなんでも、魔物だけはどこでもいるんだな」

 

テル「…あれは魔物じゃないです」

 

『ヴール、だったっけ?』

 

 

はいです、とテルンが頷く。

 

 

ロ「ぶ、ヴ、ヴール?なんだヴールって?魔物とは違うのか?」

 

 

ロイドが訊ねると、テルンは震えて黙りこくってしまった。

 

 

ロ「おい、テルン?」

 

『ちょっと、あまり焦らさないであげて?』

 

ナ「そうですわ。怯えてますわよ」

 

ロ「あ、ああ、悪い。ごめんな、テルン」

 

ア「星菜は何か知ってるのか?」

 

『ううん。私も、目が覚めたらこの子がいて、話していたら魔物に襲われたから、わからない。』

 

ア「そうか。あそこに見えるテルンたちの街まで行けば、もう少し落ち着いて話もできるんじゃないかな」

 

ロ「そうだな、また魔物……じゃない、ヴールだっけか、が出てくる前に行こうか」

 

ナ「分かりましたわ」

 

『もう少し頑張ろうねテルン』

 

テル「は、はいです」

 

 

私たちは、テルンたちルフレス族の住む街へと歩き、街へ辿り着いた。

 

 

ロ「テルンの言う通り、ずいぶん大きな街だな。あの向こうにそびえてるのはなんだろう?」

 

ナ「かなり大きな…建物ですわね。あれも街の一部なんですの?」

 

テル「あ、はい、あれは…」

 

ア「みんな、待ってくれ。何か聞こえる」

 

 

アスベルの言葉に、皆は口を閉ざし、耳をすませる。

すると、遠くの方から音が聞こえてきた。

 

 

ナ「…本当、なにか………戦いの音ですわ!」

 

『まさか…?ヴール?!』

 

テル「そ、そんな、ここにまで…」

 

ア「テルン、落ち着くんだ」

 

テル「街が…街が…」

 

ロ「おい、あそこ!テルンの仲間に混じって……」

 

 

ロイドが指す先に、テルンと同じような生き物がたくさんいた。その先頭には…

 

 

ナ「ひとですわ!テルンのお友達を守っているんですの?」

 

ア「ひとりで!?無茶だ!」

 

ロ「助けよう!テルンは隠れてるんだ!」

 

テル「…は、はいっ!」

 

 

ぴゅーっとテルンは街の奥へと飛んでいく。

 

 

ア「星菜も早く!」

 

『私も行くよ!』

 

 

ナ「貴女は戦えないのでしょう!?」

 

『確かに私は戦えない。けど、あの子達を避難させることくらいは出来るよ!!』

 

ア「…わかった。頼むぞ!」

 

 

皆と共に戦闘しているそこへ駆ける。

 

 

?「くそっ、このままでは…!」

 

ア「大丈夫か、加勢する!」

 

?「君たちは!?」

 

 

ひとりでヴールに立ち向かっていた男は、私達をみて驚いた表情を見せた。

 

 

?「…ありがたい、助かる!」

 

『小さい君たちは私に着いてきて!大丈夫!街の奥でテルンも避難してるから!』

 

 

テルンの名前を聞いたからだろうか。小さな生き物たちは、すんなりと私の元に集まった。

 

 

ロ「頼むぜ星菜!!」

 

『任せて!皆おいで、こっちだよ』

 

 

私は先導して、走り出した。

 

 

 

街の奥でテルンと合流すると、小さな生き物達は喜びあった。

とりあえず皆のところへ戻ろう。

 

 

『テルン、私、皆の所へ戻るね』

 

テル「あ、あああの!星菜さん!」

 

『星菜でいいよ?テルン、どうしたの?』

 

テル「ぼ、僕も行くです!そ、その…みなさんにお礼を言わないと…」

 

そうだね、と頷いて、テルンと歩きだす。

みんなの元へ戻ると、戦いはすっかり終わっているようで四人は何やら話をしているようだ。

 

 

ロ「…なあ」

 

ナ「どうしましたのロイド?」

 

ロ「あの向こうの大きな建物、なんか見覚えある気がするんだ」

 

ナ「そう言われれば、私もなんだか見たことがあるような気がしますわ」

 

ア「俺たちの記憶に関係あるのか…?」

 

テル「…それはあの、多分、みなさんの世界にもそんなようなものがあるからだと思うです」

 

 

テルンがいきなり皆の会話に混ざると四人は驚いたように振り返った。

 

 

ロ「テルン!それに星菜も!」

 

『みんなお疲れさま!大丈夫だった?』

 

 

そう聞けば、アスベル、ロイド、ナタリアの三人は大きく頷いて見せた。

 

 

?「えっと、星菜だったかな?わた…、僕はフレン・シーフォ。さっきはルフレス達を連れて行ってくれて助かったよ」

 

『ううん。私、戦えないからこのくらいは…。えっと、フレンだね。よろしく』

 

 

よろしくと、フレンと握手を交わす。

フレンだ……生フレンだ……夢の中最高かも……

って、感動してる場合じゃなかった

 

 

『ほらテルン』

 

 

とん、とテルンの背を押す。

 

 

テル「あ、あのあの、みなさん、ボクらの街を守ってくれて本当にありがとうです!」

 

ア「そんな大袈裟に言わなくてもいいよ。それより、そろそろ聞かせてくれるか?なにがどうなっているのか」

 

テル「は、はい、お話しますです。あの、この世界がレーヴァリアっていう、夢の世界だってことは話したですよね。要するにここは、みなさんが見てる夢なんです。全部の《目覚めの世界》のひとが見てる夢、それがレーヴァリア!です!」

 

 

…??

要するに私の夢と他のいろんな人の夢の集合地ってこと???

 

 

フ「レーヴァリア…《目覚めの世界》…」

 

ロ「なんでその夢の中にあんな魔物、じゃない、ヴールがいるんだ?」

 

テル「……ヴールは夢見るひとの持ってる痛みとか悲しい気持ちとかから生まれるって教わったです。ヴールが増えるとレーヴァリアの具合も悪くなって、夢を見ているひとにも悪い影響が出るっていうです。レーヴァリアと全部の《目覚めの世界》はお互いに繋がってるです」

 

 

うーん…つまり負の感情が悪循環してるって事だよね。

 

 

テル「だからボクたちルフレスはヴールを食べてキレイにして、この世界と《目覚めの世界》を元気にしてる、です!」

 

 

つまりその悪循環に介入してストップさせるのが、テルンたちルフレスっと…。

 

 

ロ「その割にさっきはみんな逃げ惑っていたみたいだったけど…」

 

『食べるの?アレを??もしかして肉食系?』

 

テル「む、昔はヴールに形なんてなかったんです。最近になって、ああいう怖い形になってうろつくようになって……前は夢守たちが、そういう形のあるヴールを退治してたです」

 

フレ「夢守?」

 

テル「あ、あの、ええと、……ルフレス族で、生まれてからちゃんとたくさん勉強して、強くなった、その……」

 

ナ「…ひょっとして、大人のことかしら」

 

テル「そ、そうです、ひとのおとなと同じです!だけど、突然いなくなってしまって……残っているのはボクみたいな若仔だけで、街の近くにまでヴールが出るようになって、それで――儀式で《夢見るひと》をここで起こして助けてもらおうってことになったです」

 

フ「なるほど、だから《夢見る目覚めのひと》なんだね」

 

ロ「…自分が見ている夢の中で目を覚まして…?やばい、頭が混乱してきた」

 

『ロイドひとりの夢じゃなくて、たくさんの世界のたくさんのひとの見ている夢が集まって出来てる場所、だよ』

 

ロ「なるほど!星菜、頭いいな!」

 

『あはは……(やっぱロイドはロイドか……うん、ロイドだもん。仕方ないか)』

 

テル「ええと、例えばほら、あの向こうの建物、闘技場っていうらしいですけど、ボクたちが作ったんじゃないです。この街だってそう。ボクたち、ただ見つけて住み着いているだけです。たくさんのひとが夢みている《しゅうごういしきのきねんひ》だって、ある夢守が言ってたです」

 

ナ「ややこしいけど、わかりましたわ。私たち、テルンを助けるために呼び出されたんですのね」

 

ア「けどそれにしては、どうして俺たちは記憶がないんだ?力だって、なんとなく本当はもっと強かった気がするんだか…」

 

テル「それが…分からないんです。《眠りの壁》をくぐる時、ヴールが何かしたのかも…」

 

『あのさ、1つ聞いてもいい?もしかして、フレンも記憶がないの?』

 

フ「ああ、君たちと同じでね」

 

 

そうか……

やっぱり、フレンも記憶喪失か…。

 

 

『あのさ、このタイミングで言うのもなんなんだけど…』

 

ナ「まあ!もしかして記憶を思い出しましたの!?」

 

 

そうなのか!と他の三人も期待に満ちた目で見てきた。

 

 

『いや、思いだしたっていうよりも、最初から覚えてる…っていうか…』

 

ア「え?」

 

『ごめん、黙ってて。騙すつもりはないんだよ!最初はみんなうちどころが悪かったのかな?くらいにしか思ってなくて、でも何か会う人会う人みんな記憶喪失だし、逆に私がおかしいのかなって…!!』

 

ロ「別にいいよ。それに、騙されたつもりはないしさ!」

 

フ「でも、逆に不思議だね?みんな記憶がないのに星菜だけは覚えてる…」

 

 

まあ、たぶんそれは私がテイルズキャラじゃないからだと思うんだけどね。

 

 

『それになんで戦えない私がここに呼ばれたんだろ』

 

ア「武器を持ってないし、記憶がないから戦えないと思ってたんだが、元々戦ったりする環境に居なかったのか?」

 

『う、うん。私の世界は魔物とか出なかったし。生まれ育った国は、武器や兵器の使用は法律で禁止されてるんだよ』

 

ロ「魔物がいないのか!平和な世界だったんだな!」

 

『あはは…』

 

 

一応、日本は比較的平和だが、他の国は戦争してたりするし。

日本でも人同士の争いは絶えないし。

 

 

ナ「では、ここは星菜にとって、とっても危険な場所なのですわね」

 

『そうだね。でも夢の世界だしちょっとやそっと平気なんじゃないかな?……夢だけに』

 

テル「ダメです!」

 

 

珍しくテルンが大きな声を出した。

 

 

テル「レーヴァリアは確かに夢の世界ですけど、みなさんは《ここにいる》です!」

 

ナ「つまり、どういうことですの?」

 

テル「もし《夢見る目覚めのひと》がレーヴァリアで死んだら、《目覚めの世界》で二度と目を覚まさないです!」

 

 

テルンの言葉にギョッとした。

背筋が凍った。

 

 

ロ「げっ、そうなのか…」

 

テル「……そう、言われてるです……」

 

フ「…ま、まあ用心が必要なのは《目覚めの世界》でも同じだろうし、気をつけてかんばろう」

 

 

ここで死んだら二度と目を覚まさない、なんて…。

夢の中で死ぬだなんて考えてもみなかった。

 

 

ロ「とりあえず、これからどうする?」

 

ア「状況は分かった。ヴールが増えている原因を突き止めなければならないな」

 

フ「その前にまず、この街の安全を確保する必要がありそうだ」

 

ナ「街の周りのヴールを退治するんですわね。分かりましたわ、いきましょう」

 

テル「あ、あのあの、ただやっつけるだけではダメです!」

 

ロ「え、そうなのか?」

 

テル「ただ倒してもヴールは形を失うだけで、またその形になっちゃうです。やっつけるには、キレイに……浄化しないと」

 

ナ「ルフレス族がやってることですわよね。でも、それでは…」

 

フ「うん、誰かルフレスの協力が必要になるな」

 

テル「あのあの…ま、街の近くなんですよね?遠くまで行かないんですよね?」

 

フ「ああ、そのつもりだけど」

 

テル「だ、だったら、ボクが行く……です」

 

 

尻すぼみになりながらもテルンがそう言うとロイドがニッと笑った。

 

 

ロ「助かるぜ!」

 

ナ「そうですわ、星菜、外は危険ですから貴女は街で待っているのです」

 

『え、あ…うん』

 

 

そうだよね、危ないし、足手まといだし、街で待ってるのがいいよね。

…ほんとは、すっごいついていきたいけど。

 

 

『…みんな、気をつけてね?』

 

ア「ああ!」

 

ロ「よし、行くか!」

 

 

街を出て行く皆の後ろを眺めて、非力な自分にため息をつくのだった。

 



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4話 これから

 

皆がヴール退治に出てどの位だろうか…。

今回は街の安全の為に周りのヴールを片付けるだけだと言っていたが…大丈夫だろうか。

 

 

「あ、あのあの……みなさん、大丈夫でしょうか?」

 

『大丈夫、彼らは強いもの……そうだ、歌を歌ってあげようか?気が紛れるかもしれないよ?』

 

「歌ですか?聞きたいです」

 

『じゃ、歌うよ』

 

咲~き誇る花はいつか~♪

教えてくれ~た、生きるだけでは罪と~♪

 

離れられない、話せはしない、と~♪

抱く思いは~♪ 心を踊らせるばかり~♪

 

色は匂へど~ いつか~ちりぬるを~♪

彷徨う~暇ない~♪けれど~後ずさ~り~♪

甘えるか弱さと~ 甘えられぬ弱さで~♪

悪夢が~優しく~ 私を、もてあそぶ~♪

 

「癒されるです!」

 

「きれいな声です!」

 

『えへへ、ありがとう!これ、お気に入りの曲なんだ!色は匂へどちりぬるをって曲名だよ!』

 

「また、歌ってくださいです!」

 

『もちろん!……そろそろみんな、戻ってくるかな?見てくるね!』

 

「はいです!」

 

 

街の外は危険なので街の入り口で

みんなを待つことにした。

 

 

『みんな、大丈夫かな?』

 

ア「星菜?」

 

『あっ、みんな!待ってたよ!』

 

私は帰ってきたみんなを迎えた。

見覚えのある少女が近づいてきた。

 

?「あたしはルビア・ナトウィック!ルビアでいいわよ!よろしくね!」

 

『うん、よろしくね!』

 

 

みんなを迎え、街へと戻った。

ロイドが街の門を補強していた。

 

 

 

ロ「よいしょっと…ふう、これでよし、と。

ロイド特製バリケード、完成!」

 

フ「これでヴールも前ほど簡単には街に入り込めなくなったな」

 

テル「あ、ありがとうございます、ロイドさん!」

 

 

あっという間にロイドが街の入り口に大きなバリケードを拵えていた。

 

 

ア「お疲れ様。ずいぶん手馴れてるんだな」

 

ロ「いいって。物を作るのは好きなんだ。それより、これからどうするんだ?」

 

ア「うん、問題はヴールが増えていってることだ。だけど、俺たちがそれを全部退治できるとも思えない」

 

ナ「原因をどうにかしないといけない、ということですわね。テルン、あなた方ルフレス族は心当たりありませんの?」

 

 

ナタリアの問にテルンはシュンとなった。

 

 

テル「…ご、ごめんなさい。ボクたちにも分からないです。夢守たちならなにか知ってたかもですけど」

 

ルビ「その夢守たちはどこに行っちゃたの?」

 

テル「それも分からないんです。最後に見たっていう話では、西の山の方に向かってたらしいです、けど…」

 

ア「西か。とにかく行ってみるべきかな?」

 

 

アスベルの問にナタリアが頷いた。

 

 

ナ「そうですわね。ここでじっとしていてもなにも解決しませんわ。私たちが行動を起こさなければ」

 

テル「あ、あの」

 

ロ「うん、他の夢見る目覚めのひととも出会えるかもしれないしな」

 

 

あのあの!とテルンが手を上げた。

 

 

テル「街からあまり遠くには行けないです!ルフレスがいない場所はヴールが強いです!ヴールの領域では形がなくてもヴールは危険です。目覚めのひとだってどうなるか…」

 

ロ「それって、逆にルフレス族が一緒なら大丈夫って事か?形のないヴールは浄化できる訳だろ」

 

テル「そ、それは、そう、です…でも、ヴールの領域に行けるルフレスなんてこの街にい、いな、いないです。そそそんな怖いこと……」

 

ルビ「なによそれ、勝手に呼び出しておいて…」

 

ナ「仕方ありませんわ。ルフレス族は戦いに向いているようには見えませんもの」

 

『だからこそ夢見る目覚めのひとを呼んだんだもんね。何とかしたかったんだよね?』

 

 

そう聞けば、すみません、とテルンは頭を下げる。

 

 

ロ「それでもテルンは頑張って街の周りまで一緒に来てくれたんだもんな」

 

ルビ「でも怖いって…そんなの、あたしだって……」

 

 

ぎゅっとルビアは自身のスカートを握った。

私はルビアに寄り添った。

 

 

ルビ「ねえ、そもそもあたしたちってどうしたら元の世界に戻れるの?ヴールをなんとかすれば帰れるの?」

 

テル「多分…召喚の儀式を逆にやれば、それぞれの世界で目を覚ますです。街のみんなに言えばできるです。……声……かけてきますです」

 

フ「…いや、今はいいよ」

 

テル「え?」

 

 

テルンは驚いて振り返った。

 

 

フ「レーヴァリアと僕たちの世界はお互いに影響し合ってるんだろう?だったらこのまま帰る訳にはいかない」

 

ア「フレンの言う通りだ。俺たちは自分たちの世界のためにも、放っておく訳にはいかないんだ。それに、もしこれがやっぱり夢でしかなかったとしても、俺は困っている者を見捨てたくない」

 

テル「皆さん…」

 

ロ「そうだな。このまま帰るってのはないぜ。なんとなくだけど、俺、前にもこんな風に誰かの為に戦ってたきがするし」

 

『私も!正直戦う力はないけれど、ここに呼ばれたって事はなにか成すべきことがあるんじゃないかと思うの。だから、足でまといかもしれないけれど、戦略練ったりヴールについて調べたりは出来るし…ここで帰るなんて事はしたくない』

 

ルビ「も、もう!何よ!あたしだけが悪者みたいじゃない!あたしだってやるわよ!」

 

ナ「素敵ですわ、みなさん。もちろん私もあてにしていただいて結構ですわよ」

 

 

みんなの言葉を聞いて、テルンは下を向く。

 

 

テル「………クが」

 

ロ「問題はどうやって街の外を動き回るかだよな」

 

テル「ボクが!こ、こここ今度も、ボ、ボクがい、一緒に、い、い、行くです!!」

 

フ「君が?それは助かるけど……今度は街の周りよりずっと遠くまで行くかもしれないんだ。無理には…」

 

テル「い、行くです!みなさんが頑張ってくれるのに、ボクだけ、ま、街で待つなんて……そんなのダメです!」

 

ア「…本当にいいのか?」

 

テル「ほ、本当は怖いです。で、でもでも、き、決めたですから」

 

『なら!私も連れて行って!』

 

ロ「星菜?」

 

『私だって皆が頑張ってるのに待ってるだけなんてヤダよ。テルンだって怖いの覚悟で行くんだし、それに……危険だと思ったらテルン抱えて逃げるからさ。』

 

ア「……わかった。ならよろしく頼むよ2人とも」

 

テル「はい!よ、よろしくお願いしますです」

 

『ありがとう。こちらこそよろしくお願いします』

 

 

私はみんなと共に西へと向かうことにした。

 



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5話 ヴールに取り込まれし者

ロ「夢守たちを最後に見たってのは、こっちの方向でいいんだよな!」

 

 

ルフレスの町の近郊を歩きながらロイドはふよふよと飛ぶテルンに同意を求めた。

 

 

テル「は、はい・・・」

 

 

やはり外に出るとこは怖いのか、テルンは何処か緊張した面持ちでいて、私はそっとその頭を撫でた。

 

 

ア「フレン、どうしたんだ?さっきからキョロキョロと・・・」

 

フ「うん、またどこかに夢見る目覚めのひとがいないかと思ってね」

 

『もしまだいるなら早く見付けないとだもんね』

 

 

記憶のない状態で、1人で、ヴールに襲われて…なんて恐ろしい……。

 

 

フ「それにしても、なんだか雰囲気が重苦しいな」

 

ア「ああ、空気が淀んでる気がする」

 

 

フレンとアスベルの話を聞きながら自分も気配を探ってみた。確かに空気が淀んでいる気がする……。

 

 

ア「見た目にはのどかな風景なのに……」

 

ロ「俺たちが目覚めた場所とは逆だな。あそこは薄暗かったけど、ここまでおかしな気配はなかったし」

 

テル「ヴ、ヴールの領域が近いです、から。みなさん、ボ、ボクから離れないで」

 

 

やっぱり歴戦の戦士たちは気配の感知とかできるんだなぁ……。

 

 

ルビ「ねえ、そう言えば、ヴールの浄化って、一体どうやるの?」

 

テル「どうって……形のない弱いヴールならそのまま吸い込んで、キレイにするです」

 

ルビ「息するみたいにってこと?すごいじゃない!」

 

テル「えへへ、うんと集中すれば、もっと強いのだって浄化できるんですよ」

 

 

空気清浄機みたいだ。と思ったけどルビアに褒められてテルンが嬉しそうだから黙っておこう。

 

 

テル「……形のあるヴールと戦うのはできないです、けど……」

 

ナ「十分ですわ。頼りにしてますわよ、テルン」

 

『うんうん。テルンが浄化役に名乗りを上げてくれなきゃ困ってたもんね』

 

 

女の子たちと謙虚なテルンを褒めてると、突然アスベルが、そうか、と何か思いついたような声を上げた。

 

 

ア「前にヴールがテルンを狙っているように見えたのも、ルフレス族がヴールの天敵だからなのかもしれないな」

 

フ「それに僕にはテルンが他のルフレスとは少し違って見えるよ。しっかり自分を持っているというか……」

 

テル「そ、そんなことないです!ボクなんて街で一番年下なんです。力だって全然弱いし……で、でも、ありがとうございます。ナハトも喜んでくれるかも……」

 

ロ「ナハト?」

 

 

突然テルンの口から出てきた名前に皆首を傾げる。

 

 

テル「あ、ボクの育み手です。ヴールと一緒でらボクたちルフレスもひとりでに生まれるですけど新しいルフレスが生まれると、年長者が面倒を見る決まりで、それを育み手というです」

 

 

なるほど、ナハトってのがテルンの育ての親って事か。

 

 

テル「ナハトは夢守の中でも一番物知りで、すごく強いです。怒ると怖いけど色んなことを教えてくれたです。ボクもいつか、ナハトのような夢守になりたいんです!」

 

テルンはニコニコと、何処か誇らしげにナハトについて教えてくれた。

 

ナ「とても尊敬しているんですのね。素敵ですわ」

 

テル「あっ……ご、ごめんなさい。ついひとりでペラペラしちゃったです」

 

ロ「いいじゃないか。自分の親父みたいになりたいなんて、なかなか言えないと思うぜ」

 

ナ「素敵で不思議な関係ですわね。父、兄、師、どれでもあり、どれとも違うような……」

 

ロ「要するに大事な存在ってことだよな」

 

ア「うん、思い出せないけど、俺にもそんな相手がいた気がする。一緒にいると強くなれるような……」

 

ルビ「あたしも。思い出せないのがもどかしいな」

 

 

みんなそれぞれ心の何処かに家族やパーティメンバーの記憶が眠っているのだろう。

 

 

テル「あ……す、すみません!」

 

ルビ「え?なになに?」

 

テル「みなさんだって早く元の世界で目を覚ましたいのに、ボクだけ自分のことばかり……」

 

ア「あ、いやそういう意味じゃないんだ。ただ単に……」

 

?「うわあああああっ!」

 

 

アスベルの声が掻き消される程の男性の悲鳴。

 

ロ「な、なんだ、ひとの声か!?」

 

 

この悲鳴の声は聴いたことある……

たしか……

 

 

フ「誰か他に《目覚めのひと》が襲われているのかもしれない。あの橋の向こうからだ、行ってみよう!」

 

 

いち早くフレンとロイドそしてナタリアが駆け出す。

 

 

テル「あ、あのっ!」

 

ア「どうしたテルン?」

 

テル「こ、この先は完全にヴールの領域です。なにがあるか……」

 

ア「わかった。テルン、離れないようにしてくれ!」

 

 

そう言いってアスベルも3人の後を追う。

 

 

『テルン、みんなを追いかけるよ』

 

テル「は、はいです!」

 

 

テルンを抱えてみんなの後を追う為走り出せば、私たちが行くのを待っていてくれたルビアも隣に並んで走る。

 

 

ルビア「テルンもだけど、星菜もあたしから離れちゃだめよ!!」

 

『ありがとルビア!』

 

 

頼りにしてるよ。

みんなの後を追うと、川辺に出た。

そこにはやはり私が見たことある人物がそこにいた。

 

 

?「や、やめろ………手をだすな!このっ………やめろおおお!!」

 

川に掛けられた木製の橋の向かい側に落ち着いた金色の髪に青い瞳のイケメンTOAのガイがいた。

 

ナ「まあ、やっぱり…私たちと同じ夢見る目覚めのひとですわ!」

 

ルビ「ひとりで叫びながら剣を振り回してる……な、なんか様子がおかしくない?」

 

 

なんていうか、その。うん。女性恐怖症の時の彼みたいな……にしても今回は酷い…。

 

テル「あ、あれは……!大変です、あのひと、たぶんヴールに取り込まれちゃってるです!」

 

 

腕の中のテルンはぶるりと震える。

 

 

ア「取り込まれ………ってあの状態がそうなのか?まずい、他のヴールに取り囲まれてるじゃないか!」

 

ロ「まて、襲われてる訳じゃないみたいだ。どうなってるんだ、一体?」

 

 

ガイの周りに数体、オタオタやゲコゲコ、そしてビーの形をしたヴールがいるが、ロイドの言うように襲われてる様子ではない……。

それでひとりでに叫びながら剣を振り回してるガイって相当やばいんじゃ……。

 

 

ア「ひょっとして、仲間だと思われているのか?」

 

ナ「だからって、放っておけませんわ。助けますわよ!」

 

 

ナタリアのそういう所ほんとかっこよくて惚れるわ…なんて思いながら、ヴールにテルンが狙われないように橋から少し離れる。

 

 

ガ「うああああああああ……おまえらが俺の、俺のっ……!」

 

フ「落ちつくんだ!僕たちは敵じゃない!!」

 

ロ「ダメだ。俺たちの声がきこえてない!」

 

フ「テルン!どうすれば彼からヴールを追い出せる!?」

 

テル「か、形のないヴールなら、じょ、浄化できると思うです。で、ででも、そのためにはボ、ボクがあのひとに触れないと……!」

 

 

どう見ても今のガイに近寄って触れるなんて無理そう。

 

 

ア「……まずあのひとを大人しくさせなきゃいけないってことか」

 

ルビ「大人しくって!あのひと、あんな状態よ?戦いになっちゃうんじゃないの!?」

 

フ「だけど、あのままにもしておけない」

 

ルビ「でも……だって……」

 

フ「できる限り傷を負わせないようにするしかない」

 

テル「出来る限り気づ付けないように……そうだ!星菜さん!歌ってくださいです!」

 

『ふへ?!な、なに急に!』

 

テル「なっ仲間から聞きました。う、歌で癒されたって!もっもも、もしかしたら、い、癒されて、落ち着くと思うんです!」

 

フ「なるほど。なるべく傷を負わせたくないし、他のヴールは僕とロイドで引き受ける。頼めるか、星菜?」

 

『……確かに…何もしないでいるよりはましだよね……。うん、やってみるよ!』

 

ロ「気をつけろ!正気じゃないとはいえ…あいつかなり出来るぞ!」

 

 

歌で癒すにはまず、ガイに届く距離まで行かなければならない。

 

 

ガ「うおあああ!!」

 

ナ「これがヴールの影響なのですわね。何かが……何かが気になるのですが、なぜでしょう。あなた…どこかで………?」

 

ロ「虎牙破斬!」

 

ア・フ「魔神剣!」

 

ルビ「ファイアーボール!」

 

ナ「ピアシスライン!」

 

 

フレンとアスベル、ロイドが前衛でヴールを凪ぎ払い、ルビアは魔術を放ち、ナタリアは飛んでいるビーを弓で撃ち落とした。

みんなのお陰でヴールをあらかた片付け私はガイに声の届く範囲まで近づいた。

 

 

『ガイに…届きますように……』

 

弱さ知るアナタは今~♪

許してくれた 求める者の欲を~♪

 

健気に咲いた 刹那の美し~さ~

それを知るには 遅すぎたのかもしれない

 

色は匂へど いつか散りぬるを~♪

アナタのすべてに 幼く委ねた~い~♪

許せぬ優しさと 揺るぐ独占欲は~

秤にかけれぬ 我儘な愛~♪

 

ガ「う……うぅ……」

 

ナ「何とか落ち着いたみたいですわね。それにしても、星菜、あなたの歌は不思議と落ち着きますわ」

 

『あ、ありがとう………照れるな、たいしたことしてないし』

 

フ「たいしたことあるよ。現に彼を落ち着かせたじゃないか」

 

ロ「そうだぜ!」

 

ア「テルン、浄化してあげてくれ」

 

テル「は、はい!だ、大丈夫です、よね……

………。」

 

テルンはガイに触れるとガイは浄化された。

 

ガ「う、うぅ………はっ!?」

 

テル「ひぃっ!?」

 

ガ「こ、ここは………君たちは?」

 

ア「よかった。うまくいったみたいだな」

 

『よっよかった……』

 

ガ「俺はガイ。君たちのお陰で助かったよ。ありがとう」

 

ルビ「ガイさん、よろしく!」

 

『ルビア!あまり近づかない方が……』

 

ガ「ああ、……!?うわぁぁぁ!」

 

ルビ「きゃあ!」

 

『……遅かったか』

 

ナ「な、なんですの?まさか、まだヴールが!?」

 

ガ「あ、い、いや、大丈夫だ。………取り乱してすまない。」

 

ロ「おい、本当に大丈夫か?もう1回浄化してもらった方がいいんじゃないのか?」

 

『いや、ガイは女性恐怖症だから……それに、ヴールの気配はしてないんでしょ?テルン』

 

テル「あ、はい!」

 

ナ「随分、大袈裟ですわね。ひょっとしてあなた、女性が苦手なんですの?」

 

ガ「い、いや、そういう訳じゃない………と思う。それよりその、ヴールだったか?にわかに信じがたい話だな」

 

フ「でも本当なんだ。僕たちはその原因を調べて止めようとしている」

 

ア「ガイはどうする?俺達が来た道を辿ればルフレス族の街で休めるが……」

 

ガ「と言われても、勝手も分からないしなぁ。みんなと一緒で、何も思い出せないし……よければ君らと同行させてくれないか?多少は役に立てると思うんだが」

 

ロ「いいけど、無理するなよ。さっきまでヴールに取り込まれてたんだからな」

 

ガ「ああ、わかった。それじゃ、よろしく頼むよ」

 

 

 

先に進むために、一度街へと戻った。

ロイドたちと出会った森に行ってみてかわった事がないか調べてみた。

 

フ「君たちが初めてテルンと出会ったのはこの辺りなのかい?」

 

ア「いや、でも遠くはないよ。こんな森だったけどここほど空気は重くはなかったな」

 

ロ「あれからいろんなことかあったよな。」

 

?「うっざいわね!!」

 

ロ「誰だよ、今の?」

 

『この声!?』

 

ア「向こうに誰か俺達以外の目覚めの人がいるんだ!行こう!」

 

 

声のした方へと行ってみると、リタとルカがいた。

 

 

?「こっち来んなって言ってんでしょ!どうせ分からないくせに!分かろうとしないくせに!」

 

?「なんで……なんで僕ばっかり、いつも、損な役回り……」

 

ロ「いたぞ!って、なんだ2人もいるのか」

 

ガ「よくわからないが、なんだか争ってるみたいだな」

 

フ「君たち止めるんだ!目を覚ませ!」

 

リ「うっさい!邪魔すんな!あたしの前から消えろってのよ!」

 

ル「僕は、僕は何もしてないのに………なんで放っておいてくれないんだよ!!」

 

ルビ「2人共、すっかりヴールに惑わされちゃってるみたい」

 

ガ「テルンに浄化してもらうしかないって訳か。俺の時みたいに」

 

リ「なによ、あんたら。また上っ面だけの誉め言葉?自分が理解出来ないからって人を変人呼ばわり?うんざりよ!!」

 

ル「まただ、またそうやって僕を馬鹿にして!僕だって……僕だって!僕だって本当は……わあああっ!」

 

ア「ダメだ……ヴールに惑わされて理性を失っている。星菜、頼めるか?」

 

『うん、任せて。ガイの時だって落ち着かせたんだもの。やってみるわ!』

 

色は匂へど~すべて~ちりぬるを~♪

短き~記憶に~ 零れる~想い~♪

枯れゆく~命を~儚く強くあれ~

無慈悲で~優しい~ 時のように~♪

 

ル「う……嫌だ……嫌だよ、こんな……」

 

リ「なんで……なんであたしが悪いのよ……あたしはただ普通にやってるだけなのに……」

 

ガ「テルン、浄化してやってくれないか」

 

テル「は、はいです!」

 

テルンはルカとリタの所へ行き、触れた。

ルカとリタは浄化された。

 

ル「う………ん」

 

ガ「気がついたか。大丈夫か?」

 

ル「あ、あの、僕は一体……それに……綺麗な歌声が聞こえたような……」

 

リ「ちょっと、一体ここはどこなのよ!あんたら誰?説明して!」

 

『よかった。えーっと実は……』

 

 

私はルカとリタに分かりやすく、今起きている状況を説明した。

 

 

リ「夢の世界?なによそれ。そんなバカっぽい話を信じろっての?」

 

ナ「……随分な反応ですわね」

 

ア「まぁ、俺達も最初は信じられなかったし……それより大丈夫か?2人共、かなりうなされてたけど」

 

ロ「そういえば変人とかどうとか……」

 

リ「ふん!!」バシッ

 

ロ「いてっ!なにすんだ!」

 

リ「なんだか知らないけど、その言葉、ムカッとくるのよ」

 

フ「君の方は大丈夫かい?ええと……」

 

ル「あ、ル、ルカです。ルカ・ミルダ……あの、本当ですか?僕がその……正気を失っている間に言ったことって……」

 

フ「それはヴールのせいだよ。ヴールに取り込まれてしまうと、心の闇に囚われてしまうらしいんだ」

 

ル「……それってつまり、僕の中にそういう思いがあるってことですよね……自分がそんなこと考えていたなんて」

 

『誰だってそういう感情、持ってると思うから……あまり気にしないで』

 

ル「あ、ありがとう……ございます」

 

ア「それで2人はどうする?俺達と一緒に来るか?」

 

フ「ひとまずルフレスの街に行こう。そこなら安全だし……いいかな?」

 

リ「あたしも少し考えさせてもらうわ。このふざけた浄化された。理解しておきたいし」

 

 

ルカとリタを連れて街へと戻ってきた。

リタは質問した。

 

リ「ねぇ、ちょっといい?あんたたちってやっぱり誰も記憶戻ってないわけ?」

 

「そういえば………そうだな。みんなと過ごしてたら気にならなくなってさ。もちろん、元の世界には戻りたいけど」

 

リ「あたしはごめんだわ。印象だけ残ってて思い出せないなんてイライラする。ルフレス族から話は聞いたわ。レーヴァリアとあたしたちの世界の関係……それなりに筋が通ってる。それと、星菜だっけ?あんたの歌の力、魔術並の力が宿ってるわ。」

 

『へ?そうなの?気づかなかった……あの歌にそんな力が………』

 

リ「だ、だから………その……あんたを手伝うことにしたわ。(大切な何か……星菜から感じる……もしかしたら、大切な何かなのかも)」

 

ロ「俺達もリタのような術使いがいてくれると心強いぜ。よろしくな、リタ!」

 

フ「ロイド、ルカも僕らと一緒に行くことになったんだよ」

 

ロ「本当か!?そっか、ついにその気になったんだな!」

 

『よろしくね、ルカ、リタ!』

 

ル「よ、よろしくお願いします」

 

リ「よ、よろしく……」

 

 

 

ルカとリタを加え、西へと向かうことにした。



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6話 ヴールの力

 

ア「かなり荒れ果てた感じになってきたな」

 

テル「ヴールの力が増しているんです。前はもっと明るくて綺麗なとこだったですけど……こんなに広く荒れ果てたことは今までなかったっていうです。」

 

ガ「なぁ、もとはといえばヴールだって寝てるやつの夢なんだよな?それってつまり、夢を見ている側の心が荒んでいる、ってことなのか?」

 

テル「わからないです。ボクたち、目覚めの世界を覗くことは出来ないですから……」

 

ロ「しかし、本当にルフレス族の夢守たちは通り抜けたのか?」

 

テル「ボ、ボクも聞いただけなんで……その……すみません」

 

『テルン、大丈夫だよ。落ち着いて、誰も責めてないから、ね?』

 

テル「は、はいです…」

 

ア「なんだ!?」

 

フ「空気が……重い……これは?」

 

ルビ「な、なにこれ……体が……寒い……」

 

『ルビア!大丈夫?』

 

ナ「しっかりなさい!」

 

テル「こ、これはヴールです!ヴールの気!形がないままなのに、きゅ、急に強まって!」

 

ロ「う……た、立ってられない……」

 

テル「あ、あ、あ」

 

『みんな……そうだ!』

 

色は匂へど~いつか~ちりぬるを~♪

彷徨う~暇さえ~許せなかった~♪

 

ロ「……体が軽くなった…?」

 

ガ「星菜…凄いじゃないか、助かったよ」

 

リ「……やっぱり、あんたの歌…ただの歌なんかじゃないわ。歌から…想いを感じるもの」

 

『よかった。みんな無事で』

 

テル「レーヴァリアにあるものは全て見せかけにすぎない。確かなのは強い意思だけ。意志がくじければそれだけ弱くなる。何度もナハトに言われてたです。なのに……」

 

ル「……げ、元気出しなよ、テルン。誰もがなんでもうまくできる訳じゃないんだからさ……」

 

ロ「おい、あれ……」

 

ガ「宝箱……か?なんだってこんなところに」

 

ルビ「すごい!何が入ってるんだろ?」

 

テル「ま、待って!レーヴァリアにあるものは、みんな夢を見ている人の心から出てるです。ここはヴールの領域です。欲に繋がる物は危険だってナハトが……」

 

ルビ「そ、そうなの?あーん、こんなにあるのになぁ……」

 

ロ「それにしても、いっぱいあるなぁ……あそこにあるのなんて随分とまた立派な……って、おいあれ!」

 

ナ「……立派というよりけばけばしい宝箱と、女の人、ですわね」

 

フ「テルン、あれも夢の産物なのかい?」

 

テル「い、いえ、箱はそうでしょうけど、あの人は…」

 

?「やっと、やっとみつけた!」

 

『えーっと……なんか嬉しそうだけど』

 

ナ「え、ええ……しがみついてますわね」

 

ロ「俺達と同じ夢見る目覚めの人か。でもまてよ、ってことは……」

 

フ「君!それは危険な……」

 

?「なによ、あんたら!あたしのお宝を横取りしようっての!?渡さないから!」

 

テル「や、やっぱりあの人もヴールなに取り込まれてるです!!」

 

ロ「な、なんだ!?他の宝箱が魔物……じゃなかった、ヴールに変わったぞ!」

 

ガ「やるしかないみたいだな」

 

?「そこ!あたしに聞こえないように横取りの相談してんでしょ!ぜ~~~ったい、渡さないからね!」

 

『と、とりあえずテルン、隠れてて』

 

テル「は、はいです!」

 

リ「星菜、他の歌はないのもしあったらさ、歌ってくれる?」

 

『わかった。』

 

瞼~焼き付いた顔

理解者の証さえ~♪

 

刹那、退屈の隙間贖い 心燻り

不安を産み出した~♪

 

盲目消えた安らぎに出会って

芽生えた恋情 譲る気は無い~♪

 

月には叢雲 華には風と

此方より彼方へ永久 築けぬなら

雲突き抜け 風斬り裂いて

久遠の揺蕩いへ 誘う~♪

 

?「う、力が抜ける~」

 

ロ「すげぇ……力が溢れてくるぞ!」

 

リ「フムフム、この歌は相手の力をすいとる歌なのね……なるほど、テルンよろしく」

 

テル「は、はいです!」

 

?「はへ?ここは?」

 

『大丈夫?……えと、残念な報告があります。宝箱は初めから存在してなかったよ』

 

?「え~~~っ!?んじゃああたしってばありもしない宝箱に向かって1人騒いでたって訳~?」

 

フ「ま、まぁそうなるかな……」

 

?「ひどすぎだよっ!悲しすぎ!切なすぎ!なんであんたらもっと早くに止めてくんなかったのよ~~~!」

 

テル「あ、あのあの…その、ヴール取り込まれた人はその人の1番強い暗い思いで満たされてしまうのかもしれないです。」

 

ア「彼女の場合、宝への執着か」

 

?「誰が欲ボケよ、欲深よ、守銭奴よ、失礼ね」

 

『そ、そこまでは言ってないんだけど……ね』

 

?「あ~でもちょ~っぴり一理あるかも。あたし、な~んかすっごく欲しいお宝があったような気がするんだよね~」

 

ガ「でもそれって目覚めの世界での話だろ?レーヴァリアじゃ見つからないんじゃ」

 

?「だ~か~ら~!知らなかったんだからしょ~がないでしょ~!ま、いっか。せっかくだからあたし、あんたたちの仲間になったげる。というわけであたしはノーマ、テルぽん、星りん、よろしくぅ!」

 

「テ、テルぽん……ってボクのこと言ってる……ですか?」

 

『星りんって……私のこと?』

 

ノ「もっちろん!ベルベル、ロイどん、ガーさん、ナッちゃん、ビアっち、フレっち。みんなも、よろしく!」

 

ア「べ、ベルベル……」

 

ナ「ついていけませんわ」

 

ロ「なんか……取り込まれてた時とあんまり変わらないんじゃないか?」

 

リ「なるほど、星菜の歌といい、ヴールに取り込まれるとこうなる訳ね、興味深いわ」

 

フ「これからよろしく、ノーマ」

 

 

ノーマを加え、先へと進むとヴールの気配がないところについた

 

 

ガ「どこもかしこもヴールの領域になってないってのは救いだな」

 

ロ「うわっ!!」

 

『きゃっ!ロイどが消えた!?』

 

ルビ「ええーーっ!?どこ行っちゃったの?探さないと!」

 

ナ「みなさん、ここ、地面に穴が開いてますわ!」

 

ガ「うわっ、本当だ。危ないな……ロイドはここに落ちたのか?」

 

ア「ロイド!無事か!?」

 

ロ「ああ、……って、うわっ!?ちょ、お前なんだよ!わーっ!!」

 

?「待ちなさ~い♪」

 

テル「な、中にだ、誰か他にいるです……!」

 

ア「ロイドを放っておく訳にはいかない。行こう、みんな!」

 

 

私たちはロイドが落ちたであろう穴の中へと降り立った。

 

 

ア「ロイド!怪我はないか!?」

 

ロ「あ、ああ。なんとかな。………っていうか何だよあいつ!みんな、気を付けろ!」

 

?「……グフフ……」

 

『な、何?この地面からうなりあげてくる声は』

 

?「ん?私?ハロルドよ。ハロルド・ベルセリオス。で、こっちが………誰だっけ?」

 

?「リオンだ!リオン・マグナス!貴様、さっき僕たちに自己紹介させておいてもう忘れたのか!」

 

ハ「うんうん、そうだったわね。だって調べさせてくれないから興味ないんだもん。で、こっちが………誰だっけ?」

 

?「エ、エミルです…エミル・キャスタニエ」

 

ハ「だって。よろしくぅ♪」

 

『こちらこそ、よろしくねハロルドさん、リオン、エミル』

 

ハ「ねぇねぇ、この穴面白いのね~!魔物みたいな奴とか人がボロボロ降ってくるんだもの。ま、私も落ちてきた1人なんだけど。正直暇なのよね~穴から出られないし~この2人は調べようとすると抵抗するし」

 

リオ「抵抗するに決まっているだろう!」

 

エ「その調べる方法が怖いから抵抗したんです…!」

 

テル「え、えと……目覚めの人だと思うです。でも、ヴールに惑わされてはいないみたいです、けど……」

 

ハ「ねぇ、話終わった?じゃ、あんたたちちょっと調べさせてもらうから♪安心して?ちゃんときれいに開いて、閉じてあげるから」

 

ルビ「開く!?しゅ、手術するってこと!?絶対イヤよ!」

 

ハ「じゃ、行っくわよ~♪じゃ、あんたらもしっかり戦ってこの人たち捕まえなさいね?じゃないとあんたたちがその代わりになるんだから」

 

エ「い、嫌だ……!な、何とかしようよ、リオン」

 

『………ねぇ、ハロルドさんたち、本当にヴールの影響受けてないの?』

 

ハ「ヴール?ああ、この魔物、ヴールっていうの。なんか影響あるんだ。ふーん、今のところ異常はないと思うけど?」

 

ナ「落ち着いてますのね」

 

「うん。慌てるも何も、さっきここに来たばっかだし。ヴールって奴落ちてきたけど、倒して調べちゃったし」

 

テル「え、ええーーーー!?」

 

ハ「すっごく興味深かったわ♪だからあんたたちも調べさせてね!」

 

ルビ「ぜ~~~ったいにイヤよ!」

 

ハ「………ん?あら、追加のサンプルが来たっぽいわよ」

 

リオ「またか……」

 

ロ「へ?サンプルって何だ?」

 

『うわっ!』

 

テル「わわわわわ!ヴールです!」

 

ハ「また出たわね。んもう。あんたらにもう興味無いのよね~」

 

エ「ど、どうしよう……!」

 

ハ「決まってんでしょ。こうするのよ」

 

『へ?石?……まさか』

 

 

ハロルドさんは持っていた石をヴールへと投げ、素早くロイドの後ろへと隠れた。

 

 

ロ「うわっ!なんで俺の後ろに回るんだよ!!」

 

ハ「ほい、いっちょあがり。はーいヴールのみんなー。石を投げたのはこの人よ~」

 

ロ「え!?おい!」

 

『ちょっ、ちょっとヴール集まってない?』

 

ハ「……ってことで、ヴールはよ・ろ・し・く!じゃ、リオン、エミル!自分の身体を守りたかったらしっかりこいつらと戦って勝ってね♪」

 

リオ「鬼か!」

 

エ「うう、戦いたくないけど、負けられない。………ごめんね………!」

 

「ああんもう!何なのよこの人たち!!」

 

ア「来るぞ!」

 

『きゃっ!』

 

ロ「星菜っ!」

 

ハ「この子はあたしが預かっておくわ♪あんたたちが勝ったら返してあげるわよ♪」

 

ナ「まぁ!人質ですの!?」

 

ルビ「待ってて、すぐに助けてあげるから!」

 

フ「武器を収めてくれないか?僕たちには戦う理由はないはずだ!」

 

リオ「戦う理由だと!?あるに決まっているだろう!」

 

エ「ああ、そうだ!お前らに勝たないと俺達があの女に手術されんだよ!あのヴールって奴みたいにな!」

 

リオ「………え?」

 

ナ「なんですの、その粗暴な言葉遣いは!?」

 

ロ「いやそうじゃないだろ!」

 

ガ「……まるで別人だな」

 

エ「………うるせぇ!とっとと倒れちまえ!」

 

ナ「その言葉遣い、矯正した方がいいわよ」

 

ルビ「そうそう、そんなんじゃ好きな女の子に嫌われちゃうわよ!」

 

エ「………ぅ!!」

 

ルビ「あ、あれ?もしかして傷付いちゃった?」

 

ナ「何か記憶に引っ掛かるものがあったのでは?」

 

エ「……?俺の、記憶?……ちっ、そんなもの関係ねぇ!とにかくお前ら、とっとと倒れろっ!」

 

『ね、ねぇハロルドさん』

 

ハ「なぁに?」

 

『放してくれるとありがたいんですけど……』

 

ハ「だ~め~よ。あんたは他のやつらとちょっと違うっぽいから調べたいもの~♪」

 

『……もぅ、手術はダメだからね!』

 

リオ「はぁ……はぁ……ぐっ……!」

 

エ「うぅ……痛い……」

 

ハ「あらら、負けちゃった。せっかく異世界の人を調べられると思ったのに」

 

ロ「異世界の人?お前、記憶があるのか?」

 

ハ「記憶?……あら、そういえばないわね」

 

テル「あ、あのあの、この人たちも召喚された目覚めの人に間違いないです。多分、ここに来てそんなに時間が経ってなくて、それでヴールに取り込まれずに済んだんだと思うです」

 

ハ「へぇ、何ソレ。詳しく聞かせて?ついでにちょっと調べさせて?綺麗に閉じてあげるから♪」

 

テル「う、うわーーー!!」

 

リオ「……夢の世界、レーヴァリア?」

 

エ「僕たちは現実世界で眠っていて、この世界に来ると、元いた世界の記憶が、なくなる……」

 

リオ「そしてこの世界にヴールという存在がいて、そいつから影響を受けると、正気を失う……僕たちはたまたまソレを逃れた、という訳か」

 

ハ「ふーん。そうなの。だから覚えてないんだ。なら、私は今現実世界で寝てるってことなのよね?なんか引っ掛かるわね」

 

テル「ど、どうかしたですか?」

 

ハ「なんか、光っていうか……どかーん!みたいなのを見たような気がするのよ」

 

ルビ「どかーん?」

 

ガ「爆発ってことか?」

 

『じゃ、じゃあハロルドさんは気絶してるのかもしれないよね……寝てるんじゃなくて』

 

「……なら、僕たちは何だというんだ?」

 

テル「た、たぶん、ほぼ同時に召喚されたんだと思うんです。それでたまたま同じ穴に落ちて……」

 

リオ「なんだと、きさ」

 

エ「……てめぇ!ただでさえ意味が分からねぇのに、勝手に呼び出された挙句にこんな穴に落としやがって!もっとマシな場所があっただろうが!」

 

リオ「………。」

 

ナ「貴方、怒り損ねましたのね」

 

リオ「………うるさい」

 

『……。』ボカッ

 

エ「いてっ何しやがる!」

 

『テルン関係ないじゃない!この世界のヴールに困ってて私たちを呼んだんだよ!あんた少し考えればわかるじゃない!そりゃ、穴の中っていうのは嫌かもだけど!』

 

ノ「そーそー。とにかくこっから出ない?」

 

ルビ「ロープに石を括りつけて穴の上に投げるっていうのはどう?うまくいけば木とかに引っ掛かるかも!」

 

リオ「却下だ。現実性がない。第一、ロープなど誰も持ってないだろう」

 

ルビ「なによー!じゃあなたは何か他に良い案があるとでも言うの!?」

 

エ「あ、あの!僕、ロープ……持ってるみたいです」

 

『良かった!これで出られるね』

 

 

一度、街へと戻り、休息をしているとエミルが話しかけてきた

 

 

エ「あ、あの」

 

『どうしたの?エミル』

 

「僕、もあなたたちと一緒に行きたい……です」

 

ルビ「ちょっと、あなた、足震えてるわよ。無理しなくてもいいのよ?」

 

エ「僕、強くならなきゃいけないんです。僕には認めてもらいたい人が……」

 

ア「おまえ、記憶が……?」

 

エ「記憶はありません……そういう人がいたような気がするんです。」

 

『エミル……そうだね、一緒に頑張ろう!』

 

エ「……!うん、よろしく」

 

ロ「お、エミルも来るのか!ハロルドとリオンも一緒に行くことになったんだ!」

 

『そうなの?仲間が一気に倍になったね!』

 

 

リオン、エミル、ハロルドを加え、西の方角を目指した。

 



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7話 守りたいもの

 

ア「フレン、何考えてるんだ?」

 

フ「うん、ガイやノーマのことでちょっとね。僕たちはルフレス族の近くに現れたからヴールに取り込まれずにすんだ。ルフレスの街以外のレーヴァリアの土地がすでにヴールの領域になってるとすると……」

 

ア「他の目覚めの人がいたとしてもみんなヴールに取り込まれている可能性がある…か」

 

ハ「へぇ、面白いシステムなのね。この世界の原理に俄然興味が湧いてきたわ!」

 

『なんか、この辺の雰囲気だからなのかもしれないけど、寂しくなってきたね』

 

テル「ヴ、ヴールの力が働きかけてるです。暗い気分でいると、ますます暗く……」

 

ノ「じゃあ楽しいこと考えれば万事解決じゃん……想像してみなよっての。はい、ビアっち、目を閉じて。ベルベルも。ほらっ!」

 

ア「お、俺もか……」

 

ノ「目の前に現れた大きな宝箱……重いフタを開けると…………じゃーーーん!!」

 

『ノ、ノーマ?宝箱じゃなくて、女の子がヴールに囲まれてるみたいなんだけど……』

 

ノ「うぇ!!」

 

ア「……!!」

 

フ「待つんだアスベル!敵の数が多い。1人で突っ込むのは危険だ!」

 

ロ「どうしたんだ、あの子、知ってるのか?」

 

ア「いや、分からない……だが……」

 

ガ「俺やノーマの時と同じでヴールどもはあの子を襲わないみたいだ。先にヴールを片付けよう」

 

?「みんな……みんなが傷つく……だめ。わたし、わたしが守らなきゃ……許さない……許さない!うわあああああっ!!」

 

リ「星菜、頼むわよ!」

 

『うん!』

 

色は匂へど~いつか~ちりぬるを~♪

彷徨う~暇さえ~許せなかった~♪

 

?「う……ぅ」

 

ガ「どうだ?やっぱり知り合いか?」

 

ア「……いや、思い出せない。なぜか気にはなるんだが」

 

ナ「案外、目覚めの世界の知り合いなのかもしれませんわよ」

 

?「……わたしは」

 

ナ「無理に話そうとしなくても大丈夫ですわ。私たちみんな、記憶がないんですもの」

 

フ「星菜はあるけどな…」

 

?「わたし……友達が傷つくと思って、そうしたらなにも考えられなくなって……」

 

ア「……名前は覚えているか?」

 

?「………ソフィ」

 

「ソフィ。よかったら一緒に来ないか?俺たちとならヴールに取り込まれる心配はない」

 

「………うん、わかった。一緒に行く」

 

ア「よし、今から俺達がソフィの仲間だ。よろしくな、ソフィ」

 

ナ「ヴールに取り込まれると、仲間を守りたいという気持ちまで悪い方に働いてしまうんですのね……」

 

フ「どんなことでも、よい方、悪い方、どちらにもなりうるってことなのかもしれないな」

 

ナ「私たちも常にその危険を抱えているのかしら……私たち自身の心がこの光景を生み出しているのだとしたら……」

 

ロ「ここで考えたって仕方ないだろ?暗くしてたらヴールに取り込まれちまう。どうせだったら元気に行こうぜ!」

 

ルビ「ロイドの言う通りね。みんな、明るく行きましょう!」

 

 



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8話 テルンの育み手ナハト

ロ「なんだあれ、島が宙に浮いてるぞ!」

 

ナ「それより地面が手前で途切れていることの方が。私は驚きですわ……」

 

ア「ここは……この世界の果てなのか、テルン」

 

テル「い、いえ、そうじゃなくて、レーヴァリアの地面は、みんなあの島みたいに宙に浮いてるです。」

 

ロ「ええ?それじゃ俺達、空中にいるのか?」

 

ルビ「本当……下はずーっと崖だけど、その下は雲と空しかない。これ、落ちたらどうなるの?」

 

テル「さ、さぁ……考えたことないです」

 

『本当に……夢の世界って感じね』

 

リ「だからってデタラメすぎない?何でもありにも程があるわよ」

 

ガ「納得できないからって、ここでいきなり研究とか始めないでくれよ?」

 

リ「しないわよ、そんなこと!」

 

ノ「で、それはいいんだけどさ。その噂の夢守ってのはあの島に渡ったわけ?なんか、神殿みたいのがあるんだけど」

 

テル「あの先には何もないですし……多分」

 

フ「ここまで来たんだ。行ってみるしか無いんじゃないかな」

 

ノ「お宝あっるっかっな~♪」

 

ア「遊びに行くんじゃないんだぞ。………あそこの橋から渡っていけそうだな。ん、どうしたソフィ?」

 

ソ「………あれ、橋の上、ヴール」

 

ロ「ヴールの群れに女の人が襲われて……おい、ヴールの方にも男がいるぞ!」

 

ルビ「取り込まれた目覚めの人が同士討ちをしているの?」

 

『ここからじゃ、私の歌が届かない』

 

リ「あたしらが道を開くからあんたはそこを通って歌うの!いい!」

 

『……わかった!』

 

?「……なんだ、お前たちは………俺の、俺の邪魔をするな!!」

 

リオ「くっ!」

 

リ・ルビ「ファイアーボール!」

 

ナ「ピアシスライン!」

 

ロ・ア「魔神剣!」

 

ソ「はあぁ!!」

 

ル「今だ!お願い、星菜!」

 

『うん!!』

 

色は匂へど いつか散りぬるを~♪

さ迷うことさえ 許せなかった…

 

咲き誇る花はいつか~

教えてくれた 生きるだけでは罪と~♪

離れられない 離せはしないと

抱く思いは 心を躍らせるばかり~♪

 

?「う、ここ、は」

 

ルビ「よかった、気がついたみたい!」

 

?「あなたたち……それに……」

 

?「待つんだジュディス。彼らは敵じゃない」

 

テル「……!今のは…」

 

ルビ「な、なに!」

 

ナ「いけない!橋が崩れますわ!」

 

ノ「えっ?えっ!?ねぇ、ちょっと!あの人落ちちゃったよ!?」

 

ロ「やばい!このままじゃ俺達も道連れだ!走れ!」

 

ガ「ついでにさっきの男も拾っていくぞ」

 

『走るの……はぁ……苦手……なのに……!』

 

ロ「くそっ、またヴールかよ!」

 

ル「い、急がないと!」

 

ハ「シャドウエッジ!」

 

リ「スプラッシュ!」

 

ルビ「フォトン!」

 

ア「今だ!このまま走り抜けるぞ!」

 

『はぁ……はぁ……』

 

ナ「星菜、あと少しですわ!」

 

『う、うん……』

 

ルビ「きゃっ!」

 

ア「っ!はあっ!」

 

ノ「2人とも早く早く!」

 

ア「……うわっ…!!」

 

 

アスベルが落ちる寸前でフレンが引き上げた。

 

 

 

フ「大丈夫か?」

 

ア「ああ、ありがとう」

 

ノ「いや~危なかったね~」

 

ガ「橋の方は完全に崩れちまったな。これじゃもう向こうに行けない」

 

ナ「あの女の人も、助けられませんでしたわ…」

 

ルビ「結局、あの神殿みたいなの、何だったのかしら?」

 

ア「今となっては確かめようがないな。夢守たちがいるのが、あそこでないといいが…」

 

テル「あ、あの、浄化が終わりました、けど……」

 

?「う……ここは、お前たちは?」

 

『大丈夫?』

 

?「話はわかった。俺はヴェイグ。お前たちには、すまないことをした。それに落ちたという彼女のことも…」

 

ガ「自分を責めるなよ。ヴールに取り込まれていたんだ。お前のせいじゃない」

 

ヴ「それでも、俺は………誰かを傷つけたりしたくはなかった……」

 

?「心配ありません」

 

ノ「へ?誰!?」

 

テル「やっぱり、その声は………」

 

?「よくここまで来たね、テルン」

 

ロ「ルフレス族なのか?………側にあの落ちた女も浮かんでる」

 

テル「ナハト!」

 

ナハ「はい、僕はナハト。そしてこちらはジュディス」

 

ジュ「こんにちは。さっきはごめんなさい。てっきりヴールに取り込まれていると思ったものから」

 

ノ「そりゃこっちのセリフでしょ……」

 

ナハ「レーヴァリアにようこそ、夢見る目覚めの人のみなさん」

 

フ「それじゃ、君がテルンの言っていた、彼の育ての親、育み手なんだね」

 

ナハ「はい、その通りです。僕の継ぎの仔を守ってくれてありがとう」

 

テル「育み手からみた若仔、つまりボクです。育み手の後に続くから、そう呼ばれるです。」

 

ノ「ねぇ、あんたもルフレス族なんでしょ?ジュディスが何でヴールと一緒にいたりしたわけ?」

 

ナハ「あれは橋を護るジュディスの助けにと、僕がヴールに似せて作った紛い物ですから」

 

ガ「落ちた人間を宙に浮かべたり、ヴールを作ったり……テルンの話の通りナハトにはすごい力があるんだな」

 

ナハ「……テルン、身内の自慢話は感心しないな」

 

テル「ご、ごめんなさい」

 

ナハ「みなさんが正気だと気づくのが遅れたために余計なことをさせてしまいました。申し訳ない。橋の方もすぐ直しましょう。そうすればみなさんの仲間にも会わせることが出来る。きっとみな喜びますよ」

 

ア「俺達以外に目覚めの人がいるのか!」

 

ナハ「ええ、あの島の建物、メランコリウムにいます。街の若仔たちがみなさんを召喚したのはそこからでも分かりました……それに……」

 

『……??』

 

ジュ「私も、探しに来てくれたナハトに連れられて、あの島に渡ろうとしたところなの」

 

ヴ「そこに俺が来たんだな。………すまない。」

 

ナハ「みなさんの助力があったとはいえ、正直、僕の継ぎの仔であれ他の若仔であれ、ここまで来られるとは思っていませんでした。さっきも言ったけど、よく頑張ったね、テルン」

 

テル「わ、ほ、誉められた……」

 

フ「ナハト、君たち夢守はどうしてあのメランコリウムに………!?これは?」

 

ナハ「……!いけない!!」

 

テル「え、あ!?ナハト!?」

 

ノ「すっごい勢いで飛んでっちゃった」

 

ロ「メランコリウムに何かあったのか!?」

 

ヴ「いや、それより…これは……」

 

テル「ヴールです!ヴールの気がものすごく強まってるです!この辺一帯全部!」

 

ナ「大変!みんな、テルンの側に集まらなくては!」

 

テル「だ、ダメです、どんどん強まって……このままじゃ……」

 

ア「テルンが限界になる前に、いったんここから離れよう!」

 

ガ「ああ、橋が壊れたままじゃナハトを追うこともできないしな。」

 

 

私たちはこの場所から離れることにした。

 

フ「それにしても……酷く荒れた土地だな…。あちこちに焼け焦げたような痕があるのはなんだろう」

 

ア「火を吐くヴールでもいるのか?嫌な感じだな」

 

ナ「みなさん、あれをご覧になって!」

 

?「ぐっ、うう……!!ちくしょう!ちくしょう……!俺は道具じゃねぇ!!違えんだよ!!」

 

?「俺は………いない……いないんだ。それは俺じゃない。やめろ、俺を呼ぶな!やめろおおおおっ!!」

 

?「スパーダ!レイヴン!お願い、しっかりして!一体どうしたというの!?急に苦しみだすなんて」

 

テル「あ、あの、もうすでにヴールの影響を受けてるみたいです………!」

 

ガ「ちや、ちょっと待て。なんだか様子がいつもと違うぞ」

 

フ「ああ、男性2人はともかく、女性の方はまだ影響を受けてないみたいだ!」

 

ナ「ならまず女性の方を先に保護すべきですわ!急いで助けますわよ!」

 

ス「うわあああ!俺はっ俺は!」

 

レ「やめろ、やめてくれぇぇぇ!!」

 

?「スパーダ!レイヴン!………ダメだわ。まるで聞こえないみたい。どうしたら良いの?……!!誰!?」

 

ア「大丈夫か、君!」

 

?「それ以上、近づかないで」

 

ア「待ってくれ!俺たちは敵じゃない。話を聞いてくれ。とにかくこっちへ!」

 

?「あなたたちが味方だと信じられる根拠は?それにあの2人、ついさっきまでまともだったのに、突然おかしくなったわ。あなたたちがそうならないという保証は?」

 

ロ「疑われてるな」

 

ルビ「お願い、このままじゃあなたが危ないの!あたしたちを信じて!こっちに来て!」

 

ス「うぐあああ!」

 

レ「ぐあああっ!」

 

?「………っ!」

 

ス「お前……」

 

レ「お嬢さん……」

 

?「!?」

 

ス「美人だな♪」

 

レ「べっぴんさんだねぇ♪」

 

?「……は?」

 

ロ「は?」

 

フ「へ?」

 

ルビ「な、なんか急に違うこと言いはじめたよ」

 

?「……こ、来ないで!」

 

テル「あ、だ、だめです、そっちは!!」

 

?「うっ……!!」

 

ロ「ど、どうしたんだ?」

 

?「私が……私が止めないと……!どんな理由があっても……!ああああっ!」

 

『目の前でヴールに取り込まれるのを見るなんて…』

 

ゴロゴロ……ドガーーン!!

 

ルビ「いやーーっ雷ーー!!」

 

フ「……なるほど。あの焦げた痕は雷のせいだったのか」

 

ロ「冷静に分析してる場合か!星菜、頼む!」

 

『う、うん、分かった!』

 

色は匂へど いつか散りぬるを~♪

さ迷うことさえ 許せなかった…

 

咲き誇る花はいつか~♪

教えてくれた 生きるだけでは罪と~♪

 

テル「み、みなさん、大丈夫ですか!?」

 

ア「俺たちは平気だ。それより、この人たちの浄化を頼む」

 

ス「はぁ……はぁ……」

 

レ「……う……かは……」

 

?「……っ」

 

ナ「浄化が終わり次第、治癒術をかけますわ」

 

 

テルンは3人の元へ飛んでいき

浄化をした。

 

 

レ「ぬおおおおーーー!レイヴン様ふっかーーーつ!……んで、何なのここ。どこ?」

 

ス「ってぇ……誰だよ、本気で殴りやがったのはよぉ」

 

?「私が聞きたいくらいだわ……」

 

レ「おおっ!夢じゃなかった!いや夢か?いや、まったくもってクールビューティ!」

 

ス「おおっ!お前実在してたのかよ!こんないい女に会えるなんていい夢だな!で、何で殴られて痛ぇんだ?夢なのに」

 

?「よ、寄らないで!」

 

『あ、あのー』

 

ルビ「……コホン」

 

レ「お嬢さん歳いくつ?大人っぽいけど結構若いっしょ。おっさんの目は誤魔化せないわよ」

 

ス「へぇ、そうなのか?てかおっさん誰だよ。俺の夢におっさんいらねーから出てけよ」

 

レ「おや、ひどいお言葉。おたくが出ていけば?こんな美女が出てくるんだったら確実に俺様の夢だから」

 

ルビ「……コホン、コホン!!」

 

ス「んだよ、おまえ?俺はてめぇみたいな子供じゃなくてこの女に用が……」

 

レ「そこだけは同感。お嬢さんはあと5年くらいしたら……」

 

ルビ「ふん!!」バシッ

 

ス「痛て!……あれ?やっぱ夢なのに痛ぇ」

 

『ここはレーヴァリアっていう夢の世界だよ。痛みも普通に感じるから。ここで死んだらもとの世界で2度と目覚めることが出来ないの』

 

?「そう、なの?あ、私はティア、よろしく」

 

ルビ「ファイアボールも当てていいかしら?」

 

レ「わー!まっ待った!おっさんそれトラウマだから!ん?トラウマ?」

 

ルビ「もう!ふん!」

 

ス・レ「すみません」

 

 

スパーダ、ティア、レイヴンを連れて街へと戻った。

 

 

レ「おたくら、待ったあああああーー!!」

 

フ「うわっ!?そんなに全速力で来なくても待ちますから……どうしたんですか?」

 

レ「フレンだっけ?ねぇ一生のお願い!俺様をこっから連れ出して!おっさんにとって、ここは生き地獄なの!」

 

『……ここ、安全だよ?』

 

レ「華がないっ!ここには華ってもんがないっ!」

 

ナ「花なら街のあちこちにありましてよ」

 

レ「そんなお約束いらないから!いい?近くに女子がいないとおっさん寂しくて死んじゃうの!というわけで、おっさんも連れてって!」

 

『うん、レイヴン行こう、一緒にね!』

 

ア「ティアとスパーダも行くことになった。」

 

レ「よし、いきましょ!!」

 

 

 

レイヴン、ティア、スパーダが仲間になった。



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9話 ナハトの使い

 

ア「結局、ここまで戻ってくることになってしまったな」

 

ヴ「ルフレス族がたくさんいる。ここなら安全という訳か」

 

ナ「テルンは大丈夫かしら。かなり消耗していたようですけど……」

 

ア「ああ、俺達が無事、街まで戻ってこれたのはテルンのお陰だ。かなり無理をしたんだと思う」

 

ヴ「ヴールか……恐ろしいものだな。それが俺達自身の心から出ているとは……」

 

『でも、レーヴァリアの良いところも目覚めの人々から出てるみたいだよ』

 

ア「星菜、テルンは大丈夫なのか?」

 

テル「はい、ここはヴールの気配もないですから、すっかり元気です。それに、星菜さんが歌ってくれたから」

 

ナ「星菜の歌は人を癒す効果があるのかもしれないですわね」

 

『そんなことないよ……私はみんなみたく戦えないし』

 

ガ「謙虚しなくてもいいんじゃないか?実際、俺たちは助かってるんだから」

 

ナ「それにしても、あの時は何だったのでしょう……ナハトがメランコリウムに飛んでいった途端、ヴールの力が増しましたわよね」

 

テル「……分からないです。ナハト、無事でいてほしいです……」

 

ナ「あなたの育み手はルフレス族の夢守の中でも1番強かったのではなくて?大丈夫ですわ、きっと」

 

 

メランコリウムに起きた異変について話していると、見回りをしていたフレンとソフィがやって来た。

 

 

ガ「お、見回りご苦労さん。なにか変わったことはなかったか?」

 

フ「今のところ、問題なしだね。ヴールの姿も見当たらなかったよ」

 

ソ「今はルビアとロイドが見張ってる」

 

『……これからどうするべきなのかな?私たち、まだ何もしてないけど…』

 

ノ「ヴールの増えた原因を突き止めなきゃいけないんだよね~……あれ?そういえばどうしてヴールの領域の1番奥がナハトや他の夢守の居所だったの?」

 

ナ「そう言われれば妙ですわね。ヴールに1番対抗できる者たちのはずですのに」

 

ア「……やはりもう一度メランコリウムに行くべきだと思う。ナハトに会って話を聞くんだ。崩れた橋の問題はあるけど、他にてがかりはないし、」

 

ルビ「ねぇ、みんな来て!街の入り口になんか変なやつが来てるの!」

 

 

ルビアが慌てて呼んでいるため、街の門へと向かった。

 

 

ロ「おまえ、それが人にものを頼む態度かよ!」

 

?「うっせぇやつだな。いいからテルンと歌姫を出せって言ってんだよ!」

 

?「ルーク、ケンカするが、ダメ!ちゃんと説明すれば分かってくれるよ。な?」

 

ルー「だー、調子狂う!メルディ、お前までごちゃごちゃ言うなっての!」

 

 

正門へと着くと、ロイドと赤毛の男が言い争っていた。

あれは……TOAの主人公でお坊っちゃまのルークだ!

 

 

ア「どうしたんだロイド!………あいつがそうなのか、ルビア?」

 

ルビ「うん、いきなりやって来て、テルンと歌姫を出せの一点張りなの」

 

テル「ボ、ボクを、ですか!?」

 

ナ「歌姫とは………まさか、星菜のことでは?」

 

『へ、え!?わ、私!?』

 

ジ「ヴールに取り込まれているようには見えないわね。そうでもおかしくない態度だけれど」

 

ル「ど、どうしよう。僕の苦手なタイプだ……」

 

ルー「またぞろぞろ出てきやがって、……うぜぇ」

 

ロ「いい加減にしろよ、お前!」

 

ルー「あん?なんだ、文句でもあんのか?あのなぁ、よく聞けよ。この俺、ルーク様はナハトの使いなんだぞ」

 

ノ「様っていいつつパシリじゃん……ってナハト?今、ナハトって言った!?」

 

ルー「そうだよ。ほら、分かったら、テルンってやつと歌姫を出せってんだ」

 

メ「ルーク!ケンカ、ダメ!」

 

ルー「うるせぇ!おら、さっさと出せよ!」

 

テル「え、えと、あの、どうしたら……」

 

テ「ダメよテルン。惑わされないで。星菜、あなたもよ」

 

ルー「お前がテルンと歌姫か?ぐずぐずしてねぇで、来いっての!」

 

ロ「ナハトの使いだろうがなんだろうが、お前みたいなやつの言うことなんか聞けるか!」

 

フ「ロイド、抑えるんだ!」

 

ルー「へっ、やんのかよ。面白ぇ、相手してやらぁ!」

 

メ「バイバ!ケンカするが違うよ~。………でも、負けるが、もっとダメ!ルーク、メルディ一緒に戦う!」

 

ルー「お前らしつけぇんだよ!」

 

ロ「それはこっちのセリフだ!」

 

ルビ「………もう、なんで人間同士で戦わなきゃならないのよ」

 

ガ「なぁ、ルーク……だったよな?こんなことはやめて、話し合わないか?みんないいやつだぞ」

 

ルー「うるせぇ!お前と話し合うことなんかねぇ!つーかおまえ何なんだよ!馴れ馴れしく話しかけんじゃねぇ!」

 

テ「馬鹿なことはやめなさい。あなた、自分で何をしているかわかっているの?」

 

ルー「わ、わかってるに決まってんだろ!俺はテルンとその星菜ってやつを捕まえに来たんだ!おまえ、偉そうに何なんだよ!気に食わねぇ女だな!」

 

リ「星菜、あんたはあたしから離れちゃダメよ」

 

『う、うん……』

 

ルー「邪魔すんじゃねぇよ、この野郎!」

 

ロ「そんな訳にいくか!」

 

フ「!ヴール!?一体、どこから現れたんだ!」

 

ロ「お前が呼んだのか!?どういうつもりだ!」

 

ルー「な、なんだ、知らねぇ、知らねぇぞ!」

 

ナ「こっちに向かってきますわ!」

 

ルー「冗談じゃねぇ。お、俺は関係ねぇからな!」

 

メ「ルーク!まだみんなとお話ししてないよ!1人で行ったらキケン!」

 

ロ「あ、おい、逃げるのかよ!待てってば!……たく、どうなってんだ!?」

 

フ「ロイド、今はヴールから街を守る方が先だ!」

 

リ「こんなたくさん……やるしかないわね!星菜、あたしが援護するから歌って!なんでもいいから!」

 

『う、うん、わかった!』

 

嗚呼 華のように鮮やかに さあ

嗚呼 鳥のように優雅に~♪

嗚呼 風まかせも心地良い さあ

嗚呼 月明かり照らされて~♪

 

正しさなんてもの~♪

人のモノサシによって変わる

この世界 不変あるとするならば

華鳥風月 厳かで美しいもの~♪

 

後悔をして 学び また歩もう~♪

 

二度と過ち~♪

繰り返さぬように~♪

 

歴史とは~変わらぬ感情が~♪

廻り廻って 傷付けて和解された~

世界の成長~♪

 

リ「ファイアボール!」

 

ナ「ご覧になって!ヴールが消えていきますわ!」

 

テル「ヴ、ヴールが浄化されてくです!」

 

ルビ「……それにしても、あのヴールの群れ、一体どこから出てきたのかしら」

 

ナ「私たち、結構、街の周りを退治して回りましたわよね?」

 

ソ「見張ってた時も、全然見かけなかった……」

 

ロ「それにしても、腹の立つやつだったなぁ」

 

ガ「もう1人の女性は話し方が変わっていたけど、考え方は割とまともそうだったな」

 

ナ「態度はともかく、あの2人、正気でしたわよね?傍にルフレス族もいないのに」

 

ア「でもあのヴールたちは彼らを襲おうとはしなかったな。ジュディスの時みたいに幻だったのか?」

 

テル「あ、あのあの……さっきのヴールにはちゃんとヴールの気配があったです。それに……もしナハトが作った幻なら街を襲うわけない、です。」

 

ノ「でも、あいつらナハトの使いって言ってたよね。う~ん、こんがらがってきたぁ」

 

ロ「なぁ、だったらあのルークってやつ、あいつを追いかけて問い詰めたらなにかわかるんじゃないか?」

 

ガ「なぜテルンと歌姫を出せと言ったのか、とかな」

 

テル「そ、そうですね。ボ、ボクも、ナハトに聞きたいです、から」

 

『……そうだね、何で私が歌姫なのかも知りたいし……行こう』

 

ロ「よし、そうと決まれば出発しようぜ。ルークたちを追いかけるんだ!」

 

ルビ「ジュディスとヴェイグはどうするの?」

 

ジ「そうね、ナハトにはふられてしまったみたいだし、ここでじっとしているのもつまらないし、あなたたちと一緒に行くわ」

 

ヴ「……俺もだ。迷惑をかけた償いはさせてほしい。」

 

ア「よろしく、2人とも」

 

 

ジュディスとヴェイグが仲間になった。



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10話 さらわれる

ロ「ルークのやつ、逃げ足速いな。本当にこっちであってるんだろうな。」

 

ガ「足跡がはっきり残っている。まだ俺達が足を踏み入れてない方角だな。」

 

ア「どこへ向かっているんだろう。メランコリウムを目指している訳じゃないのか?」

 

ソ「……誰かいる」

 

?「………」

 

ロ「子ども?いや………あれ?」

 

?「ルークさんとメルディさんは先に行きました。私はプレセアといいます。みなさんと戦いたくはありません。大人しくテルンさんと星菜さんを渡してください。ここならまだルフレス族の街に引き返すことが出来ます。」

 

ルビ「テルンと星菜だけ寄越せってこと?………やっぱりルークの仲間だわ」

 

フ「プレセア、君もメランコリウムにいる目覚めの人なんだろう?ナハトも近くにいるのか?」

 

プ「………」

 

『………え、えと、』

 

テル「あ、あのあの、ボ、ボクは……」

 

ナ「心配無用ですわ、テルン、星菜、あなた方お2人を置き去りになんて絶対にしませんわ」

 

ス「たりめーだろ。てめぇらは俺達が守ってやるぜ!」

 

ジ「ナハトは何のためにテルンと星菜だけを求めているのかしら?」

 

プ「………」

 

ア「悪いが、要求は聞けない。」

 

プ「………仕方がありません」

 

ロ「プレセアだったよな?俺達だってお前とは戦いたくない。でも、俺達にはテルンが必要なんだ。星菜も俺達の仲間だ。どうしてもお前には渡せない」

 

プ「……破談、ということですね。ならば、何としてでもあなた方からテルンさんと星菜さんを………奪います。」

 

リ「あんたはあたしから離れちゃダメよ、ヴールだろうがあたしが倒すんだから!」

 

『リタ、ありがとう』

 

プ「はぁ!!」

 

ア「魔神剣!」

 

ハ「華連撃!」

 

フ「ホーリーランス!」

 

プ「………ぅ………」

 

ア「もう、終わりだ」

 

プ「……まだ、終わりじゃ……ないです。」

 

『……どういうこと?』

 

ノ「ちょっとちょっと、なになに、あのでかさ!」

 

ルビ「あんなのに殴られたら死んじゃうよ!」

 

ジ「確かに少し大きすぎるわね」

 

ノ「少しじゃないでしょ、少しじゃ!」

 

エ「へっ、面白くなってきたじゃねぇか!相手してやるぜ!」

 

『テルン、こっちに!』

 

テル「は、はいです!」

 

プ「これは……?」

 

ナ「え……?」

 

フ「ナタリア、危ない!」

 

ナ「きゃあ!」

 

フ「大丈夫か!」

 

ナ「え、ええ、なんとか……」

 

リ「ネガティブゲイト!」

 

ジ「月牙!」

 

ロ「くそっ、きりがない!」

 

プ「あなた方は、連れていきます」

 

『……きゃっ!』

 

テル「へ、え!?わわ!!」

 

 

みんなが戦っている間に

私とテルンは、プレセアに連れてかれてしまった

 

 

ヴ「しまった!テルンと星菜が!」

 

ロ「くそっ!ヴールが邪魔だ!」

 

ア「あのヴール、プレセアを無視した。やはりグルなのか…?」

 

ガ「何とかやり過ごして、今はプレセアを追いかけた方がいいな」

 

 

 

私はテルンもろとも、プレセアによって連れられ、

かなり離れたところまで来た。

 

 

『……はぁ……はぁ……』

 

プ「……大丈夫……ですか?」

 

『……はぁ……はぁ……ご、ごめん……体力……なくて……はぁ……』

 

プ「……ここまでなら、大丈夫です」

 

『……ね、ねぇ……プレセア……何で、私のこと、歌姫って呼ぶの?』

 

プ「……あなたは、歌の中に想いを込めて相手に伝えることができる」

 

『……へ?』

 

プ「歌姫は、歌うことで相手を癒し、穢れを浄化させる事が出来る者、1000人に1人の確率で生まれると……ナハトが言っていました。」

 

『……そんな…私、が?』

 

?「つまり、あなたは選ばれし者ということです」

 

『……!!』

 

 

声のする方を見ると軍服姿の男性とルークがいた。

ジェ、ジェイドだ。鬼畜で陰険な大佐だ。

 

 

プ「……ジェイドさん。テルンと歌姫を連れてきました。」

 

ジェ「ご苦労様、何やら変なこと考えてるみたいですが、私は鬼畜でも陰険でもありませんよ。……あなた方を連れてくるのに、少々手荒なことをしてしまいましたが、まぁ問題ないでしょう」

 

ルー「問題あるだろ!……どういうことだよ。無理矢理さらってくるなんて聞いてねぇぞ!」

 

ジェ「穏便に済むならそれにこしたことはありません。無理ならそれはそれ。それだけのことです。メルディから聞きましたよ。端からまともな話し合いにさえならなかったそうじゃありませんか。」

 

ルー「う、そ、それは、あいつらがむかつく態度をとりやがるから……」

 

ジェ「私だって好きでやってる訳じゃありません。そもそも、あなたが気にすることですか?普段の言動からはとても……」

 

ルー「うるせぇ!気に食わねぇもんは気に食わねぇんだよ!」

 

『………(嘘だ……内心楽しんでるのでは?)』

 

ジェ「またまた、私は決して楽しんではいませんよ?」

 

『どっ読心術!?』

 

ジェ「はぁ………それより、こんなところで余計な時間を取られたせいで追いつかれてしまいました。………隠れてないで出てきなさい!」

 

ロ「……!!俺達の接近に気づいてたのかよ。って、ルークもいるのか」

 

『みんな!!』

 

ア「テルン、星菜、無事か!」

 

ジェ「やぁ、みなさん、はじめまして。私はジェイド・カーティス。みなさんと同じ目覚めの人というやつです。お見知りおきを」

 

ア「お前がそっちのリーダーか?テルンと星菜をさらって何するつもりだ!」

 

ジェ「おや、とんだ買いかぶりですね。リーダーは私ではありませんよ。みなさんもご存じのナハトです。目的はレーヴァリアを含む全ての世界を救うこと。ルフレス族なのですから当然ですね」

 

ア「そのためにテルンと星菜が必要だったのか」

 

ガ「なるほど、と言いたいところだが、俺たちから無理矢理さらう理由の説明には足りないな」

 

ジェ「ふむ………やはり言わなければならないですか。………。ラーフ・ネクリア」

 

ア「ラーフ……」

 

ノ「ねくりあ?」

 

ジェ「この世界レーヴァリアには歴代のルフレス族が消しきれずに溜め込んだヴールの塊のようなものがいるんです。それがラーフ・ネクリア。長年、夢守たちが封じ続けてきましたが、ヴールの勢力が強まっていて限界が近い。解放されれば、レーヴァリアの全てを喰らいつくでしよう。そうなれば、あらゆる目覚めの世界も影響を受ける。最終的には全ての世界が滅びかねない。」

 

ジ「そしてラーフはメランコリウムにいる。だから夢守たちもそこを離れることが出来ない………そんなところかしら?」

 

ガ「それがなぜテルンと星菜が必要なんだ?」

 

ジェ「やれやれ、どうしても聞きたいですか?後悔してもしりませんよ。ナハトによればラーフを完全に滅ぼす方法がある。しかしそれには犠牲が必要なのです」

 

ア「!………まさか」

 

テル「ぎ、犠牲に……?ナハトが……ボ、ボクを!?」

 

『そ、そんな……わ、私、が……』

 

ルー「なんだって!?おいジェイド、今の話マジなのかよ!?」

 

ロ「冗談じゃないぞ、そんな話、あってたまるか!」

 

ジェ「……それで、真相を知った上でなおテルンと歌姫を取り戻そうとするんですか?」

 

テル「犠牲に……ボ、ボク……」

 

ナハ「ルフレス族の務めを忘れたのかい?テルン」

 

ロ「おい、ナハト、本当に……本当にテルンと星菜を犠牲にするつもりかよ?おまえ、テルンの親みたいなもんなんだろ?なんで平然とそんなこと言えるんだよ!」

 

ルビ「そうよ、それにルフレス族の街を襲わせたりして……やってること、逆じゃない!」

 

ナハ「……うるさいな」

 

ロ「……何?」

 

ナハ「文句ばかりで協力しようとしない目覚めの人など邪魔なだけだ。どうしても従うつもりがないなら……ここで死ねばいい!」

 

『……人に……なった?』

 

ヴ「……来るぞ!」

 

ルー「くそ、もうごめんだ!これ以上付き合ってられるか!」

 

『きゃっ!』

 

テル「わわっ!」

 

 

ルークはプレセアから私とテルンを奪い、私を横抱きにしてジェイドたちから距離をとった。

 

 

プ「あ、ルークさん、何を……」

 

ジェ「……ルーク!やれやれ、つくづく困った人ですね。この期に及んで勝手な行動を取るとは……やむをえません。プレセア、今からルークも敵です。すべきことはわかっていますね?」

 

プ「……はい、ジェイドさん」

 

ロ「なんだ、仲間割れか?ルークがプレセアからテルンと星菜を奪って……」

 

ヴ「よくわからないが、とにかくジェイドはルークを敵と見なしたらしい。………チャンスかもしれない。」

 

ジェ「いけませんね、ルーク。裏切るような悪い子にはキツイお仕置きが必要ですね」

 

ルー「はん!今さら何言ってんだっつーの!お前らのやることにはもうウンザリなんだよ!………おまえ、歌うとヴール消せるんだろ?なら、歌え!近づく敵は蹴散らしてやる!」

 

『え、あ、うん、わかった!』

 

 

嗚呼 華のように鮮やかに さあ

嗚呼 鳥のように優雅に~♪

嗚呼 風まかせも心地良い さあ

嗚呼 月明かり照らされて~♪

 

ジ「ヴールが消えたわ」

 

ルビ「うわっ!ヴールがまた来たよ!」

 

ハ「オッケー♪いくらでも相手してあげるわ!」

 

ノ「おおっ!ハロ姉さんヤル気満々じゃ~ん!よ~っし、あたしも~!」

 

フ「待ってくれ、このままじゃ消耗戦だ。ルークとテルン、星菜を連れて脱出しよう!」

 

ノ「えぇ~?なんでこうなるの、も~!」

 

ロ「ルーク!テルンと星菜を返せ!」

 

ルー「ちっ………ほらよ」

 

『わわっ!』

 

ノ「!?え?なんで、あっさり……」

 

ヴ「………どういう心境の変化だ、ルーク?」

 

ルー「うっせぇな。返してほしかったんだろ?文句ねぇじゃねぇか」

 

ナ「まぁ、それでこそ目覚めの人の1人、見直しましたわ」

 

ナハ「がっかりだな、テルン」

 

ロ「ナハト………!本気でテルンと星菜を生贄にするつもりなのか」

 

テル「ひっく………ひっく………ナ、ナハト……」

 

ナハ「また泣いてるのか?何かというとすぐそれだ。一体いつになったら一人前になるんだ?………それとももっとひどい目に遭えば涙も止まるのかな?」

 

『ひどい!そんな言い方しなくても!』

 

ナハ「………?なん………だ、これは?なにを………なぜ………?……?……??……あ」

 

ノ「え、なになに?いきなりしぼんで、またこの前みたいに飛んでっちゃった」

 

ジェ「いけませんね、ナハトがいなくては私達もヴールに取り込まれかねない。急いで引き上げますよ、プレセア」

 

プ「……了解しました。」

 

ロ「おい、待て!逃がすかよ!」

 

ソ「待って。………テルンが」

 

テル「あ、あ、ナ、ナハトがナハトが、あんな、あんなこと言うなんて………うああ………」

 

ア「テルン……」

 

ナ「無理もありませんわ。慕っていた相手にあんな物言いをされたんですもの」

 

ジ「なら、こちらの問題かしら」

 

ルー「なっ!テルンと星菜は返しただろ!」

 

ルビ「あんたねぇ、それで済むとでも……」

 

ガ「まぁ待てって。なぁルーク。お前、何でジェイドたちを裏切ったんだ?」

 

ルー「べ、べつにどうだっていいだろ。ただ……あんな子供と女を人の都合で連れ回すってのが嫌になっただけだ」

 

ガ「おまえ……いいやつだな」

 

ルー「ばっ……バカ言ってんじゃねぇよ!ぶっ飛ばすぞ、てめぇ!」

 

テ「そうね、その言葉遣いや態度はどうかと思うけど、少なくとも間違いを正そうと行動したのは評価できるわ」

 

『ねぇ、ルーク……さっきは、ありがとね。よかったら一緒に来ない?』

 

ルー「なっ……べ、べつにいいけど」

 

ノ「ふ~ん。ま、いっか。じゃ、よろしくね、ルーくん」

 

 

 

ルークはジェイドやナハトたちを裏切り、私たちの仲間になった。



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11話 天然な天使とナイト様

私たちはテルンが目覚めの人を感じたという大樹へと辿り着いた。

 

ロ「はぁ、はぁ……よし、樹の麓まで来たぞ!……で、どこにいるんだ、テルン?誰もいないぞ?」

 

テル「あの……ええと……上から気配がするです」

 

「上……?まさか、樹の上ですの?」

 

ロ「よーし、そういうことなら、みんな、登ろうぜ!俺、先行くからな!」

 

ア「いいな、こういうの。なんか懐かしい感じがするような」

 

ガ「そうだな。……おっと、大丈夫か?フレン。鎧着たままじゃ木登りは辛いだろ」

 

フ「だからって脱ぐわけにも行かないからね、善処するよ」

 

ガ「君たちは平気かい?結構高いところまで登ることになりそうだけど」

 

ルビ「はい!大丈夫です!……頑張ろうね、ナタリア、星菜!」

 

ナ「あら。置いて行きますわよ、ルビア」

 

ルビ「も、もう登ってるの!?ちょ、ちょっと待って~!」

 

ロ「よ……っと!……おおっ!高いな~!ここがてっぺんか?」

 

ア「ふぅ、風が気持ちいいな」

 

『はぁ……はぁ……』

 

ア「大丈夫か?星菜」

 

『……な、なんとか…はぁ……』

 

フ「見てくれ、2人、人がいる」

 

 

フレンが指す方向を見てみると金髪の女の子と黒髪の男の子がいた。

 

 

ロ「うおっ!あいつらの回り、ヴールだらけだな」

 

ア「これでは2人とも既にヴールの影響を受けているかもしれない」

 

ガ「なぁ。様子がおかしくないか?」

 

ルビ「……うん、会話……してるみたい」

 

フ「……様子を見てみよう」

 

 

私たちは2人の様子を見ることにした。

 

 

?「……それでね、私、たくさんの人が望んでるからがんばらなきゃ、って思ったの」

 

?「……うん。」

 

?「みんながうれしいのが、うれしいの。だからね、失敗したらいけないの。何かは思い出せないけど、きっと、すごく大切なことなんだ」

 

?「……そっか。君は……すごいね」

 

ア「あの人たち、無事なんじゃないか?」

 

テル「あれだけのヴールに囲まれて、影響を受けてないなんて……」

 

ロ「……。」

 

ガ「どうかしたのか、ロイド」

 

ロ「……あ、いや、何でもないんだ。声、かけてみようぜ」

 

フ「!不用意だ、ロイド!」

 

ロ「2人とも!そこは危険だ!こっちに……」

 

?「……!?あ……いや……いやだよ……!……来ないで!!」

 

ロ「なっ!!」

 

フ「駄目だ、下がるんだ、ロイド!」

 

テル「あ、あ……やっぱり……やっぱりこの人たちも、ヴールに……」

 

ナ「普通に会話をしていたようですけれど、やはり、最初からヴールの影響を受けていたのですわね……」

 

ガ「妙だな。全く負の感情が出ているようには見えなかった」

 

ア「今までに見てきたヴールの影響をを受けた人とは違う、ということか」

 

?「……コレット、急にどうしたの?」

 

コ「だめなの!私、ここで死んじゃったら、だめなの!殺されたら、だめなの!……最後まで、がんばらないといけないの!」

 

?「え……?あの人が、君を殺しに来た……ってこと?」

 

コ「……」

 

?「そんな……………て」

 

コ「え?」

 

?「逃げて!!」

 

コ「………どして?危ないよ。ジュードも、逃げないと」

 

ジュ「………うん。そうかもしれない。でも、ここは僕に任せて」

 

コ「でも!」

 

ジュ「………ごめんね。放っておけないんだ。ここで君を逃がさないと、後悔するような気がする。君にはなすべき事がある。でも……僕には君みたいに、そういうものがないみたいなんだ。だから君は逃げて。君がしなきゃいけないことのために」

 

コ「だめだよ!みんなが、みんながうれしくならないと……わたし……私も戦うよジュード」

 

ジュ「コレット」

 

コ「だいじょぶ、私も戦えるから。………ジュード、ありがと」

 

ジュ「わかった。無理しないで。苦しかったら、逃げて。」

 

コ「……うん」

 

ジュ「……出てこいっ!コレットを、君たちには殺させない!」

 

ア「……彼女から見て、俺達は暗殺者扱いか」

 

ナ「あのコレットという女性、命を狙われ続けたのでしょうか……痛ましいですわ……」

 

フ「そうだね。彼女もそうだけど、ヴールの影響を受けてもなお、他人を優先するジュードという人も、僕はすごいと思うよ」

 

テル「ヴールはあの人たちと同調しているのかもしれないです……!」

 

ロ「……くそっ!」

 

ガ「最初から彼らはヴールの影響を受けていたんだ、ロイド。せめて早く元に戻してあげよう」

 

コ「来ないで!ここで私が死んじゃったら……みんなが……みんなが……!」

 

ロ「何でおまえは1人で無理するんだよ!どうしておまえは誰かに頼ろうとしないんだ!……あれ?おかしいな。会ったこと、ないハズなのに……」

 

『きっと目覚めの世界での知り合いだからだよ、ロイド。』

 

ロ「そっか……そうかも。星菜、頼めるか?」

 

『わかった。』

 

色は匂へど いつか散りぬるを~♪

短き記憶に 零れる想い

枯れゆく命よ 儚く強くあれ~♪

無慈悲で優しい 時のように~♪

 

コ「……う」

 

ジュ「……ぅぅ」

 

『テルン、お願い。』

 

テル「は、はいです!」

 

コ「………ん……あれ?」

 

ロ「……大丈夫か?痛いところはないか?」

 

コ「えっと、だいじょぶみたい。ジュードは?」

 

ジュ「僕も平気。あの、僕たち、ここで何をしてたんですか?」

 

フ「覚えてないのかい?」

 

コ「うんと、いつの間にかここにいたの。でね、気がついたら隣にジュードがいて、ここどこだろうってお話ししてて、しばらくしたらまわりに魔物がたくさん出てきて……」

 

ジュ「うん、そこからの記憶が……ってあれ?……もっと前のこと、思い出せないみたい」

 

コ「あれ?ホントだ~」

 

ジ「あなたたちのんびり屋さんなのね。もっと驚くかと思ったのだけれど」

 

コ「そ、そかな?私、ヘンかな?」

 

ジ「いいえ?とても可愛らしくて、素敵よ」

 

ロ「じゃ、ルフレスの街に戻ろうぜ!ジュード、コレット!お前らも麓まで競争だからな!」

 

 

2人を連れてルフレスの街まで戻った。

 

 

コ「星菜ってお歌上手だね。声もきれいだし」

 

『そ、そんなことないよ!歌うのは好きなだけだし、でも、歌うとヴールが浄化できるみたい』

 

コ「それでも、すごいと思うな。私もお歌、歌うね」

 

『うん、コレットは空を飛ぶこと出来るし、私よりすごいよ!』

 

コ「そかな?ありがとう」

 

『どういたしまして』

 

コ「きゃっ!」

 

『コレット!大丈夫?』

 

 

コレットと話していると、すごい音をたててコレットが転んでしまった。

音にビックリしてロイドたちが駆けつけてきた。

 

 

ナ「ルフレスのみなさんは避難してください!テルン、誘導を!」

 

テル「は、はい!」

 

ロ「ヴールはどこだ!」

 

コ「あれ?ロイドだー!」

 

ロ「……へ?星菜とコレット?お前ら、何してるんだよ!2人だけでヴールと戦ってたのか!?危ないだろ!」

 

コ「え?ヴール?いないよ?」

 

ガ「え?すごい音がしたじゃないか。まさか君が?」

 

コ「あ、うん。えへへ、やっちゃった……ね?」

 

『あぁ……それね……うん』

 

ナ「や、やっちゃった……って倒したというのですか!?」

 

コ「うん、倒しちゃった。」

 

テル「わわ、ヴールの姿がないです。ボク以外のルフレスで浄化ができる仔がいたなんて……」

 

コ「?じょうか?」

 

ガ「強いんだな、君」

 

『あはは……』

 

コ「そかな?強いのかな?」

 

ロ「あぁ、すごいよ、おまえ。強いんだなー。ヴール倒しちまうなんて」

 

『え、違うよ?倒したのはこの壁だよ、ね?』

 

コ「うん。そだよ」

 

ガ「へ?」

 

ロ「壁?」

 

コ「うん、壁。………あのね、あっちもなの。あと、向こうも」

 

ナ「………荒れ果ててますわね。家の壁だけがただひたすらに」

 

コ「あのね、星菜とルフレスのみんなとお話ししながら歩いてたんだけど、話してる途中で転んじゃって」

 

ガ「転んで壁を壊したのか!?あ、ある意味すごいな……」

 

ナ「……壊した、というよりは、型抜きのようですわね」

 

ロ「カタヌキ?どういうことだ?」

 

ナ「壁をよくご覧になって。穴が開いてますでしょう?この穴の形が……」

 

ロ「………コレットだな」

 

コ「お話ししてたルフレスのみんな、どこかに行っちゃった。」

 

ロ「コレット。おまえ、これ以上壁に穴開けるな。俺たちと一緒に来い」

 

コ「うん!よろしくね!」

 

ガ「あ、そうそう…ジュードも行くことになった。仲間が倍だな」

 

『そうだね、どんどん増えてるね!』

 

 

コレットとジュードが仲間になった。



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12話 敵対、不思議な石版

 

私たちはナハトや他の目覚めの人の行方を追っていく中、洞窟へと足を踏み入れた。

 

 

ア「行けそうか、テルン。」

 

ロ「無理なら休んでからでも……」

 

テル「あ、あのあの、大丈夫です……から!」

 

ア「そうか……辛かったら言ってくれよ」

 

ナ「それにしても、ナハトのあの姿。驚きましたわね。まるで人間のようでしたわ」

 

テル「……夢紬…」

 

ソ「……夢紬……それ、なに?」

 

テル「……ナハトから聞いたことがあるです。昔、目覚めの人みたいになれるルフレスがいて、そう呼ばれていたって夢守になるよりずっと難しくて、本当にいたのかも分からないくらい、ずっとずっと昔のことみたいです、けど……」

 

ア「ナハトもそうだっていうのか?」

 

ナ「やはりナハトはそれだけ優れたルフレスだということなのですわね。なら、どうしてあんなことを……」

 

ジ「前に私がナハトと話した時の印象はあんな風ではなかったわね。夢紬になったせいなのかしら?」

 

テル「……でも、ボ、ボクは、ナハトを信じたいです」

 

ア「……テルン。やはりもう一度メランコリウムを目指すべきだと思う。」

 

『もともとヴールが増えてる原因を調べるのが目的だったもんね』

 

ノ「ルーくん、ねぇルーくんってば」

 

ルー「……変な名前で呼んでんじゃねぇ」

 

ノ「うっわ、あんた感じ悪っ!」

 

ルー「お前らが勝手に俺を仲間にしたんだろが。こっちから頼んだ訳じゃねぇっつーの」

 

ナ「まぁなんですの、その言い種は。テルンと星菜を助けた一件があるからいいようなものの……」

 

ルー「うっせーな、俺の知ったことかよ」

 

ル「ル、ルーク、そういうのよくない、と思うんだけど」

 

ルー「あん?なんだって?」

 

ル「ひっ!!」

 

『もう、ルークったら……ルカが怯えちゃったじゃない。ルカはテルンみたいに臆病なんだから、もっと優しく、ね?』

 

ルー「……へっ、知るかよ」

 

『……ルーク?なにか言ったかな?気のせいかな?知るかよって聞こえたんだけど?わたしの空耳かしらねぇ?……わたしの歌の中には力をすいとる効果があるやつ、あるんだけど。根こそぎ、2度と立てないように吸い付くしてあげようか?』

 

ルー「……わっ、悪かった!だ、だから、吸い付くのやめろ!てか、冗談でも怖ぇーぞ!」

 

ガ「……星菜は、怒らせないようにしようか」

 

リオ「……だな。下手したらこっちに飛び火しかねん」

 

フ「……敬意が敬意だけなのかもしれないが、ルークはまだ、馴染めてないみたいだね」

 

ヴ「………だが、今のうちにルークから知っていることを聞くべきだと思うが」

 

フ「そうだね、ルーク。メランコリウムにいた目覚めの人はあと何人いるんだ?」

 

ルー「あん?そうだな………ジェイドとメルディ、プレセアの他にあと2人いたな。」

 

『あ、あとさ、ナハトの話は本当なの?ラーフっていう悪の親玉がいることとか』

 

ルー「さぁな。ジェイドの話してたことしか知らねぇよ。興味なかったしな」

 

ノ「とか言って、教えてくれなかったんだったりして……」

 

ルー「なんだと!」

 

?「おー、いいセンいってるねぇ」

 

ア「誰だ!」

 

 

ルークに話を聞いていると、どこから現れたのか赤毛の男が話しかけてきた。

……あれはたしか、TOSの登場人物、ゼロスだ。

 

 

?「腹芸の1つも出来ねぇお子様に重要な話なんか聞かせるかよ」

 

ルー「ゼロス、てめぇ!」

 

フ「またヴールを引き連れている。……ということは君もナハト側の目覚めの人なんだな」

 

ゼ「まぁ、そういうことだ。ジェイドの旦那から聞いてるだろ?そこにいるテルンってやつと歌姫様が要るんだよ」

 

ア「ラーフを倒すためにか。そのためならテルンと星菜を犠牲にしてもいいっていうのか」

 

ゼ「当たり前じゃねぇか。テルンはともかく、歌姫様……星菜ちゃんだっけ?可愛いから俺様的には生きててほしいけど、犠牲にすりゃ世界が救われるんだ。仕方ないことさ」

 

ア「なんだって?」

 

ゼ「俺様は早くもとの世界に帰りたいからさ。ウヒャヒャ」

 

ナ「何て身勝手な!……恥を知りなさい!」

 

ゼ「ま、別にお前らにわかってもらう必要なんてねぇんだし。………ユ~リくぅ~ん!」

 

ユ「……むずがゆくなる呼び方すんなっての」

 

フ「もう1人!?挟み撃ちか!」

 

 

後ろから声がして振り向くと、TOVの主人公、ユーリが現れた。

………この状況じゃなかったらサインとか貰ってたのに……。

 

 

ゼ「こいつら頭固すぎ。話すだけ無駄だわ。どうするよ?」

 

ユ「どうもこうもねぇ。話して駄目なら、やるしかねぇだろ」

 

ルビ「ちょっ、ちょっと!なんで簡単に戦おうとするの!」

 

レ「殺気立っちゃってやだねどうも。おたくら性格悪いって言われない?」

 

ゼ「ウヒャヒャ!うさんくささ全開のおっさんに俺様の性格の話なんざされたくないね」

 

ユ「俺もゼロスも、恨みがある訳じゃねぇが、事情が事情なんでな。……恨んでくれてもいいぜ」

 

コ「星菜、私が守るからね!」

 

ソ「うん、テルンも星菜も、守る……だから、安心して、」

 

『ありがとう。コレット、ソフィ。』

 

フ「なぜだ!君たちは何のためにこんなことを!」

 

ユ「お互い譲れないんだったら、こうやって白黒つけるしかねぇだろ」

 

ゼ「そーそー、よそ見してると命取りだぜぇ?」

 

ロ「大丈夫か、フレン!お前はそれでいいのか!?誰かを犠牲にして守る世界が、本当に正しいと思ってるのかよ!」

 

ゼ「うわ~、俺様火傷しちゃいそー……お前みたいな暑苦しい正義のみかた様はお呼びじゃねーんだよ。ま、諦めてくれや。」

 

ユ「素直にテルンと星菜を渡してくれりゃ、お互い面倒ないんだがな」

 

フ「冗談だとしても笑えないな。僕たちは絶対にテルンと星菜を渡さない。………この剣に誓って!」

 

リ「星菜、あんたは隠れてなさい。こんなやつらなんかに負けないから!私が、あんたやテルンを守るから」

 

『うん、気を付けてね』

 

 

私はテルンと共に岩影へと隠れ、

みんなを見守った。

 

 

ロ「魔神剣・双牙!」

 

ユ「はぁ!蒼波刃!」

 

リ「ネガティブゲイト!」

 

ハ「デモンズランス!」

 

ゼ「おっと、エアスラスト!」

 

ジュ「はぁ!」

 

コ「エンジェルフェザー!」

 

ユ「うおっと………結構やるもんだな」

 

ゼ「ほんとほんと、ちょいヤバかったぜ。」

 

ア「……まだやるのか。テルンと星菜は渡さない。守ってみせる!」

 

ゼ「やーめたっと。今日のところはここまでにしとくわ。帰ろうぜ、ユーリ。」

 

ユ「なかなかいい戦いだった。また会おうぜ。じゃな」

 

ロ「逃げた?まだ戦力残ってるのに、なんでだ?」

 

ルー「あいつら手ぇ抜いてやがった。………くそ、馬鹿にしやがって」

 

ジ「私では満足させてあげられなかったのかしら?残念だわ」

 

ガ「本気じゃなかったってことか?ナハトの手先なのになんなんだろうな」

 

ノ「む、むむむむむ………お宝の気配……」

 

『ノーマ、今はそんな時じゃ……それにお宝なんて…』

 

ノ「あったーー!」

 

 

ノーマは石板らしき物を見つけた。

 

 

ロ「なんだ、これ?………石板、かなんかの欠片か?ゼロスたちが落としていったのか?」

 

ルビ「なにかしら。真ん中の怪物みたいなのを3つの珠が囲んでる図が書いてあるわ」

 

ジ「………三重の想いの輝きもて大いなる災いを退け……これは?……なにかしらね。石に触れた途端、そんな言葉が浮かんだのだけれど、でも途中で途切れてるみたい」

 

ルビ「あたしたちが触れてもなにも感じないけど………ジュディスだけどうして?」

 

ガ「ジュディスは少し不思議な雰囲気があるし、何かそういう能力があるのかもしれないな」

 

テル「………これは、レーヴァリアの文字です。真ん中は内なる闇、周りの珠は………慈しみ……望み……喜び……その名前に、確かそれぞれ、憎しみ……絶望、嘆きって、言葉が……」

 

ヴ「それをユーリとゼロスがわざと落としていったのなら罠かもしれない」

 

『でも、ただ、闇雲にメランコリウムを目指すより、まず、その珠について調べてみよう』



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13話 3人の女の人

 

私たちはテルンの感じた気配を追って虚誕の氷窟へと足を踏み入れた。

 

 

ガ「……遠くから見た感じ、ただの浮き島だと思ってたんだが、いざ来てみると……島ごとが洞窟だったな」

 

ルビ「ね、ねぇ、何かここ………寒くない?」

 

ナ「………ですわね。奥に進むにつれて、徐々に気温が低くなっているような気がしますわ」

 

ルー「………へっくしゅ!」

 

『ふふ、ルーク意外に可愛いくしゃみするんだね』

 

ルー「だ、誰が可愛いだ!つーか意外にって何だよ!」

 

ガ「………しっ。誰かいるぞ」

 

?「………!」

 

 

物陰から姿を現したのは紅色の髪の女の子がいた。

たしか……TOGのヒロイン、シェリアだ

 

 

ア「誰だ!」

 

?「………ミラ、エステル!人がいたわ!こっちよ!」

 

ロ「いや、それ俺たちのセリフだろ」

 

 

女の子が呼ぶと2人の女の人がこちらへとやって来た。

あれは、TOXの主人公ミラとTOVのヒロイン、エステルだ。

 

 

ミ「よくやったぞシェリア。あいつの言っていた通りだな………お前たち、夢見る目覚めの人だな?」

 

エス「そうですか……本当に、存在していたのですね………ミラ、どうします?」

 

ミ「どうするもこうするもあるまい。………今、楽にしてやる!」

 

『ま、待って!ミラさん、あなたたちも目覚めの人でしょ?どうして戦わなきゃいけないの?』

 

ミ「戯言を。私たちは夢見る目覚めの人ではない。私たちはとある者から夢見る目覚めの人は正気を失っているとの情報を得ている。今、もとに戻してやる。そして私はもとの世界に戻り、指名を果たす!」

 

ガ「まるで記憶があるような物言いだな。君たちは記憶があるのか?」

 

シェ「………記憶はないわ。わかっていることはレーヴァリアと呼ばれる異世界に来たということ。もとの世界に戻るために、この生物、ヴールと協力してあなたたち夢見る目覚めの人を倒し、人を惑わせる能力を持つテルンと、破滅を呼ぶ歌姫を捕らえること。」

 

『……ええ!?』

 

テル「ボ、ボクが、みんなを………惑わせる、ですか!?」

 

エス「……あなたたちを救う方法は、一度昏倒させることとテルンと歌姫を捕まえてあなたたちから引き離すこと、と聞きました。そうすれば彼がもとに戻す、と」

 

ルー「彼?誰だ、それ?」

 

ヴ「まさか………ナハト……?」

 

ミ「この世界レーヴァリアを混乱に陥れた諸悪の根源。テルンと破滅の歌姫に惑わされ従う、夢見る目覚めの人……覚悟しろ!」

 

『話を聞いて!私は違う!破滅へなんてしないわ!テルンだって!』

 

ミ「問答無用!」

 

ア「ヴールの影響から助けに来たのに、まさかその人に襲われるとはな」

 

ジ「話は通じないみたいね」

 

ルビ「……そういえば、女性3人なんて、特に辛い戦いになりそうですね、ガイさん。」

 

ガ「……やめてくれ。考えないようにしてたんだから」

 

ミ「今、もとに戻してやる。一度昏倒させねばならんと聞いているから一度は痛い目を見てもらわねばならんが、今はお前たちを正気に戻すのが先決だ」

 

ジュ「ちょっ、ちょっと待ってよ!僕たちは正気だし、君と戦う気なんてないよ!話を聞いて!」

 

ア「ちょっ、待て、誤解だ!俺達は敵じゃない!ほら、こうやってお前と話も出来るじゃないか。本当に俺が正気を失っているように見えるか?」

 

シェ「ナハトの言う通りね……それが手口なんでしょう?私は騙されないから……後であなたたちみんなをちゃんと治してもらうようにするわ。………だから今は、ごめんなさい」

 

エス「………すみません、あなたが歌姫です?こちらへ……」

 

『へ、え!?…わわっ!』

 

 

エステルに連れてかれてしまった私。

何かプレセアの時みたいに簡単にさらわれてるなぁ…

 

 

ノ「あー!星りんさらわれちゃったよぉ!」

 

ルー「何やってんだあいつ!おい、助けるぞ!」

 

ロ「わかってる!」

 

『ねぇ、エステル……お願いわたしを信じて!私は破滅に導かないよ!歌で癒したりできるもの!』

 

エス「えと、すみません、えい!」

 

『え、何を………んー!んー!!』

 

 

私はエステルの手によって口を塞がれた。

……どうしよう、何も話せない。

 

 

 

ミ「よくやったエステル。歌姫は歌うことで破滅に導く。口を封じておけば一先ず安全だ。」

 

リ「好き勝手言ってんじゃないわよ!ファイアボール!」

 

コ「はわわ、口を塞がっちゃってるよ~。待ってて、すぐ助けるから!グランシャリオ!」

 

シェ「はぁ!あなたたち、すぐもとに戻してあげるから!抵抗しないで!」

 

ルー「抵抗するに決まってんだろ!お前らこそ正気か!魔神拳!」

 

ス「珍しくお前と同意見だぜ。さっさと星菜返しやがれ!ライトニング!」

 

ミ「……くっ!このっ!」

 

『んーー!んーー!』

 

エス「ごめんなさい。あなたの口塞がないと滅亡しちゃいますから……スターストローク!」

 

ソ「シェルスロー!!」

 

ミ・シェ「きゃあ!!/くっ!!」

 

エス「ミラ!シェリア!」

 

テ「さぁ、あとは貴女だけよ。」

 

ジュ「星菜を返してくれるかな?僕、本当は戦う気なんてないんだ!」

 

エス「え……えと」

 

ミ「……くっ!こんなはずでは……」

 

ジ「勝負あり、ね」

 

ルー「んだよてめぇら本気で殴りやがって!俺達はお前らを助けに来てやったんだっつーの!」

 

ガ「落ち着けって。彼女たちにも事情がありそうだ。話を聞いてみよう。な?」

 

シェ「……話しはしないと言ったはずだけど」

 

エス「シェリア……わたし、この人たちと話がしたいです。」

 

シェ「エステル!」

 

エス「シェリア、ミラ、すみません。でも私には、どうしてもこの人たちが悪い人には見えないんです」

 

ミ「……そう考えた理由を聞こう」

 

エス「はい。この人たちは戦いながら、仲間の人を庇ったり、回復したりしてました。本当に悪いものに操られているなら、そんなことするでしょうか……。そう、考えたら不思議に思ったんです。だから、本当に悪い人たちなのかみなさんの話を聞いてみたいんです。お願いします。」

 

ルビ「よ、よかった……話してくれる気になってくれて……。」

 

『……んー!』

 

エス「あ、すみません。」

 

『ぷはっ!大丈夫だから気にしないで?エステル』

 

シェ「………この世界のこと、ヴールのこと。それから、あなたたちのこと……」

 

エス「みなさんのお話はわかりました。ヴールは、危険な存在だったのですね……」

 

フ「君たちがヴールに惑わされなくて良かったよ」

 

ミ「下手をすれば惑わされるのは私たちだったということか。」

 

シェ「ヴールの影響の話も聞けたものね。これだけの話を今ここで捏造できるとも思えないわ……ごめんなさい。」

 

エス「本当に、すみません。」

 

ミ「私も、情報の真偽を確かめずに……すまない。」

 

ジ「それで、あなたたちはこれからどうするのかしら?」

 

ミ「私は……もとの世界が滅びぬよう、ここで私のなすべきことをしよう。」

 

 

ぐぅ……

 

 

ロ「誰だよ腹ならしたやつは?お前か?」

 

ルー「な、なんで俺を疑うんだよ!俺じゃねぇ!俺はちげーからな!」

 

ソ「ルーク……おなか、すいたの?」

 

ルー「おい、俺の話聞けよ!俺じゃねぇって言ってんだろ!」

 

ガ「何食いたいんだ?」

 

ノ「や~い、ルーくんの腹鳴らし~!」

 

ルー「だから俺じゃねぇっつーの!」

 

ミ「私だ。」

 

ロ「は?」

 

ナ「まぁ」

 

ミ「だが、私1人の音ではないようだ」

 

ヴ「………?」

 

ジ「誰かしらね?」

 

エス「シェリア?俯いて、どうしたんです?」

 

ア「そうか、お前が腹を鳴らしたんだな。」

 

シェ「っ!!な、内緒にしてくれてもいいじゃない!……しんっじられないっ!」ドン!!

 

ア「うわっ!!」

 

『と、とりあえず、ご飯にしよう?』

 

 

みんなでご飯を食べ各自、休んでいた。

私はエステルに頼まれて歌を歌っていた。

 

 

エス「すごく癒されます!癒しの歌なんですね。」

 

『ありがとう。もとの世界でそんなこと言われたことないから嬉しいよ』

 

エス「そうなんです?」

 

『うん。』

 

ルー「おい、エステル!星菜もいたのか。何やってたんだ、こんなとこでぼーっとして」

 

ナ「ルーク!もっと言い方があるのではなくて?」

 

ルー「あ?何でお前に俺なの話し方で文句言われねーといけねぇんだっつーの!お前の話し方が固っ苦しいんだよ!」

 

ナ「まぁ、失敬な!いいですこと?人として礼儀というものはとても大切な……」

 

ルー「だー!うっせー女だな!」

 

ナ「何ですって!?」

 

『あらら、また始まったよ……ルークとナタリアの口喧嘩』

 

エス「私たちとは違う、未知の世界……まるで夢のようなお話ですね!」

 

フ「……ここは夢の世界ですよ、エステルさん」

 

ルー「あー、うぜぇ女だな!俺の顔を見る度に言葉遣いが汚いですわ!だぜ?うぜーってーの」

 

エス「今の、ナタリアの真似です?」

 

ルー「ち、ちげーよっ!」

 

エス「ふふ、仲がよろしいんですね。羨ましいです」

 

フ「そ、そうでしょうか」

 

エス「あの、私も連れていってください。この街の外を……世界を……見てみたいんです。だから私もルークやナタリアと同じように、仲良くしてください」

 

ルー「べ、べつに仲良くなんかねーし」

 

エス「じゃあ、喧嘩でもいいです」

 

ルー「これ以上口喧嘩の相手増やしてたまるかってーの。………来たかったら来ればいいだろ。誰も止めねーよ、だろ?フレン」

 

フ「はい。ですが、無理はなさらないでください。いいですね?」

 

ルー「?………そういやおまえ、何でエステルに敬語なんだ?」

 

フ「あ、あれ?」

 

エス「……!!私に敬語を使うのは、フレンと私がまだ仲良しではないからですね?わかりましたフレン。ルークとナタリアのように、私と喧嘩してみましょう。ルークもいいですね?」

 

『エステル、違うよ……てか喧嘩はよくないし……あ、でも、喧嘩して己をさらけ出して初めて友となるって小説、読んだことあるなぁ。』

 

ルー「星菜、お前…何言ってんだよ!てかそれ補強してるからな!」

 

エス「あ、でも、喧嘩ってどうすればいいんでしょう?」

 

ルー「やり方聞くもんでもねーだろ………」

 

シェ「ふふ、仲良くなったのね?エステル。」

 

エス「あ、シェリア……私」

 

シェ「私も行くことにしたわ。ミラも行くみたいよ。エステルも行くでしょう?」

 

エス「はい!一緒に行きましょう!」

 

 

エステルとミラ、シェリアが仲間になった。



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14話 石盤のなぞと遺跡

 

 

ア「この辺もだいぶヴールの気が強いな。例の3つの領域に通じる場所はこの先、か」

 

ガ「何を調べるにしても、もう少し手がかりが欲しいな……憎しみ、絶望、嘆きについてもう少し詳しく教えてくれないか、テルン?」

 

テル「あ、はい。その、前にナハトから聞いた話ですけど……憎しみの砂漠、絶望の荒野、嘆きの凍峡……その3つの場所は、昔、ルフレス族がやった何かのせいでヴールの領域になってしまったというです。何をしたかは聞かなかったです。……その話はあまりしたがらなかったです、から」

 

ア「ヴールを浄化するのが役割のルフレスがヴールの領域を生み出したのか?……おかしな話だな」

 

ナ「あの石盤に書かれているのが、ラーフを倒すためのものなら、むしろ逆ですわね」

 

ガ「あるいは、失敗した結果なのかもな。だとしてもそのままになっているのは解せないな」

 

テル「あ、それは、本当はなんとかするつもりだったみたいです。でもレーヴァリア全体で、ヴールが強くなって……」

 

ジ「それで後回しにされて、そのまま。そういうことかしら?」

 

『でも、確かめる価値はあるんじゃない?』

 

ヴ「ああ、星菜の言う通りだ。確かめに行こう。」

 

ノ「ヴェイくんと星りんに賛成~。世界を救うお宝探し!う~ん、いいね~!盛り上がるね~!」

 

ロ「待てよ、ヴールの領域の奥に行くんだろ?テルンは大丈夫なのか?またナハトが出てくる可能性だって……」

 

ルビ「……まって、誰かいるわ」

 

 

ルビアに言われ見てみるとピンクの髪を2つに結んだ女の子、TOEのメルディがいた。

 

 

メ「また会ったな、みんな」

 

ルー「……メルディ!俺たちの邪魔するつもりかよ!」

 

メ「……石盤返してほしいよ。あれ、メルディたちが持ち物」

 

ス「はん、そう言われてホイホイ返すやつがどこにいんだよ」

 

メ「ん~……ホイホイ返してほしいよ。………な?」

 

ロ「じゃあ、やっぱりあれはゼロスたちが落としていったものなんだな。………待てよ。だったら何で俺たちから奪い返す必要があるんだ?本当にラーフに対抗できるなら、争うこともないんじゃないか」

 

ルビ「ロイドの言う通りよ。テルンと星菜を犠牲にする必要だってないもの。あんたたちのやってること、支離滅裂じゃない」

 

ア「………初めてナハトと会った時から、いったい、何があったのいうんだ。」

 

メ「………難しいこと、分からないよ。メルディは、テルンと星菜と石盤、渡してほしい」

 

ソ「…させない。テルンと星菜は友達。させない。」

 

シ「ええ。そうね、ソフィ。テルンと星菜は私たちで守りましょう」

 

ア「ああ、悪いが渡せない。石盤も………テルンも、星菜もだ。俺達が守って見せる!」

 

メ「どうしても、戦うことがなるか……」

 

ルー「おいよせ!何するつもりだ!」

 

メ「………」

 

 

メルディはどこからか紫に光るクリスタルを出した。

そのクリスタルからヴールが出てくる。

 

 

フ「中からヴールが出てくる!何だ、あのクリスタルは!?」

 

メ「ヴールと領域、繋がる門。それが開くとき、ここ全部、ヴールになる。テルンと歌姫が力じゃ、浄化はムリ。ナハト、言ってた。」

 

テル「…………!!」

 

『色は~匂へど~いつか~ちりぬるを~♪あなたの~すべてに~幼く~委ねた~い♪許せぬ~優しさと~揺るぐ独占欲で~秤にかけれぬ~わがままな愛~♪………ダメだわ、浄化できない!きゃっ!!』

 

ミ「フレアボム!………大丈夫か、星菜。お前は下がっていろ。」

 

エ「スターストローク!……星菜、私が守ります。」

 

シ「あなたは下がってて!大丈夫、私たちなら!」

 

ナ「星菜の歌でも浄化できないなんて………それに、全部ヴールにって………あなたも巻き込まれてしまうんじゃありませんの!?」

 

メ「これが、メルディのやらなきゃならないこと。ゼッタイに、しなきゃいけないこと。」

 

ロ「そんなにしてまでもとの世界に帰りたいのかよ!ここがヴールに呑まれたらもとの世界だって無事じゃすまないんだぞ!」

 

ヴ「よせ、ロイド。今は目の前の敵が先だ。」

 

メ「………うっ」

 

ルー「お、おい、メルディのやつ、やばいんじゃねぇのか」

 

ガ「ああ、本当に自分の出したクリスタルでダメージを受けているらしいな。あのままじゃ自滅しかねないぞ」

 

コ「自滅………そんなの、ダメだよ!メルディ、やめて!」

 

リ「メルディ自身の術じゃないんだわ。彼女はあの魔術の動力源、それだけ。なんでそんなこと……!」

 

『それじゃ、捨て身ってこと!?メルディ!』

 

ルー「あの馬鹿!」

 

シ「なら、あのクリスタルを先に壊さない?それなら、メルディも無事じゃないかしら?」

 

リオ「そうだな。」

 

エ「んじゃ、さっさと壊しちまおうぜ!」

 

ソ「なら、解放します。必中筆頭、クリティカルブレード!」

 

 

ソフィは秘奥義・クリティカルブレードをクリスタルに向かって放った。

クリスタルは粉々に砕け散った。

 

 

ルー「おい、メルディ、お前の敗けだ。もういい加減、降参しろよ」

 

ナ「メルディ、あなた、ずっと辛そうですわね。………本当は私たちと戦いたくないんじゃありませんの?」

 

ア「………だったら、こっちに来ないか?一緒にレーヴァリアを救う方法を見つけるんだ!」

 

メ「まだ、まだ、できないよ」

 

『……?メルディ?まだって………どういうこと?』

 

メ「また会おうな」

 

ア「メルディ!」

 

 

メルディは不思議なことを言いながら去っていってしまった。

 

 

ルー「………くそ、何かムカつく!」

 

ガ「勝つには勝ったが、後味悪いな、確かに。」

 

ア「使ったメルディも巻き込むやり方………ナハトは一体どういうつもりなんだ」

 

ルー「しっかしヴールの領域の奥だけあって、どんどん暗くなってきやがるな。うっとーしいったらねぇや」

 

ヴ「あまり暗い気分にならない方がいい。ヴールを強めるだけだ。」

 

ルー「お前にだけは言われたくねぇっつーの」

 

ルビ「確かに………実際このままじゃ気分が落ち込む一方だよね」

 

ノ「じゃ、明るく行こうよ。歌でも歌いながらさ」

 

ナ「う、歌ですの?それはさすがに難しいものがありますわね……。第一、思い出せるかどうか」

 

ノ「まぁまぁナッちゃんもそう言わずにさ。そんなの、ノリで歌えばいいのよ。」

 

ルビ「そ、そんなこと言ったって………歌………」

 

 

………?何故だろう。みんなの視線が私に集まってる気がする

 

 

エス「星菜、歌ってくれます?」

 

ミ「………ふむ、頼めるか?」

 

シェ「……歌と言えば星菜ね、お願いできるかしら?」

 

テ「………私も、お願いしようかしら」

 

『み、みんなして………』

 

ヴ「………星菜、頼む。」

 

『ヴェ、ヴェイグまで………はぁ、わかったよ。』

 

これで、終わりそう思っていた遠いあの日~♪

今は言える、羽ばたける始まりだったと

 

君の温もりが広がる 掌と胸の隙間~♪

君と行き先探してる 心繋いで~♪

 

守りたい、守られてる会えないときもずっと

1秒ずつ私たちは強くなれるから~♪

 

シ「……素敵な歌ね」

 

ミ「………ああ、なんか、胸のなかが暖かくなるようだ」

 

エス「すごいです!星菜、また聞かせてくださいね?」

 

ルビ「確かに、星菜の歌、すごいよね。………そういえば歌姫って何なのかしら?」

 

『プレセアが言ってたことしか知らないんだけど、歌姫は何でも1000年に1人生まれてくるらしいの。歌姫は、歌を歌うことで相手を癒したり、力を注ぐことができる力があるみたいなの』

 

ロ「すげーな!じゃあさ、力を最大限に発揮することはできるのか?」

 

『どうだろ。わからないな………』

 

テ「あなたの歌にはいつも助けられているわ。」

 

リ「…………(あたしの調べが正しければ、最大限に力を使うと…最後は………)」

 

ア「どうしたんだ、リタ?」

 

リ「………何でもないわ。行きましょ」

 

 

私たちは、

遺跡らしきところへと辿り着いた。

 

 

ア「何か遺跡みたいだが………テルン、なんなんだ、ここは?」

 

テル「さぁ……あ、で、でもでもこの世界のものですから、誰かが作った訳じゃないはずです。確か、ここにすごくきれいな建物があるって聞いた気がするです。……恐らく、ヴールのせいで」

 

ガ「今じゃ、荒廃したイメージの具現と化してるってか。心が荒むねぇ」

 

ヴ「気の滅入る話だな……」

 

ルー「暗くすんなって言ったお前が暗いっつうの。おら、とっとと行こうぜ」

 

ルビ「ここ、崩れたりしないわよね?」

 

ノ「ここって思いが形になるんでしょ?そんなこと言ってると本当に~」

 

ロ「こ、こわいこと言うなよ」

 

エ「や、やめようよ。そんなこと言われたら、嫌でも考えちゃうよ」

 

ロ「や、やめろ!やめろってエミル!ゼッタイ考えるなよ!?」

 

ル「こ、こわいよ……」

 

『ルカ、手、繋ご?怖くないよ、ほら、エミルも』

 

ル「あ、ありがとう、星菜」

 

エ「え、えとその……ありがとう」

 

ルー「あいつら……」

 

ノ「あっれ~?ルーくんってばヤキモチ~?可愛いねぇ~手、繋いであげよっか?ほーれ、ペタペタ、ペタペタペタ!」

 

ルー「な!?何で俺がヤキモチ妬かなきゃいけねぇんだよ!てか、くっつくな!うぜーってーの!」

 

ヴ「しっ、待て、ヴールがいる。その奥は………なんだ、あの壁は?」

 

ジ「一番奥で道を塞いでいる…結界の類いかしら?傍のクリスタルが発生させているみたいね」

 

フ「偶々にしては出来すぎている。ナハトの仕業と見るべきかな」

 

テ「遺跡の他の部分の荒れようからしても、後から置かれたと考えるのが自然だわ。………私たちに向けられたものでしょうね」

 

ア「ああ、本気で俺たちを迎え撃つつもりなんだと思う。ナハトが何を考えているにせよ、ここは押し通るしかないんだ。やろう!」

 

エス「星菜、あなたは私から離れてはダメです」

 

リ「私が魔術でぶっ飛ばしてあげるわ!ファイアボール!」

 

ハ「そーれ、ネガティブゲイト!」

 

ミ「スプラッシュ!」

 

ルー「魔神拳!ほら、行くぞ!」

 

ア「あのクリスタルを壊せば!はぁ!」

 

ロ「もう1つは任せろっ!おりゃ!」

 

『やった、結界が解かれた!』

 

ロ「よし、………何!?気を付けろ、でかいヴールが現れたぞ!」

 

ガ「最後の最後にこんなのを控えさせておくとは、ナハトも意地が悪いな」

 

ルビ「でもこいつらで最後みたい。頑張りましょ!」

 

ル「ファイアボール!」

 

ノ「チアダンス!」

 

テ「ノクターナルライト!」

 

ヴ「……くっ!」

 

ジュ「つ、強い……」

 

『きゃあ!』

 

コ「星菜!グランティス!」

 

エス「ナース!みなさん、大丈夫ですか?」

 

ジュ「ありがとう」

 

『あ、ありがとうエステル』

 

ナ「一気に攻めましょう!」

 

ア「はぁ!」

 

ロ「や、やったか……?」

 

ソ「みんな、ボロボロ……」

 

ノ「あ~、マジ死ぬかと思った。」

 

ヴ「今までとは敵の本質も量も違った。それだけナハトも本気ということか……」

 

ルビ「…ねぇ、前から気になってたんだけど、いくらナハトが思考を形に出来るルフレス族で1番強いって言ってもさ、あんなヴールを、それも幻じゃない、本物を作れるものなのかしら?テルン、あれは幻だったの?」

 

テル「い、いえ………本物のヴールだったです、けど……」

 

ナ「ルフレス族とヴールは相反する存在なんでしたわね。それとも夢紬なら可能なんですの?」

 

テル「分からないです………。確かにおかしいとは思うです。でも……ナハトはいつだって正しかったです。ルフレスで1番強いんです。ボクなんかよりずっとずっとずっと………」

 

ルビ「それは、分かるけど………」

 

ロ「だけど、ナハトはテルンの親みたいなもんだろ?それなのにテルンや星菜に敵を送りつけたり、犠牲になれってなんて、やっぱりおかしい。」

 

テル「僕たち………やっぱりナハトとた、対決することに、なる、ですか………」

 

『テルン………大丈夫だよ、きっと』

 

ジ「まだ石盤の探索は始まったばかり。無理に結論を急がなくてもいいと思うわ。」

 

ア「そうだな………そう思う。今は探索を続けよう。テルン、それでいいか?」

 

テル「は、はい」

 

 

ナハトの思惑は謎ばかり………

私たちは石盤について考えることにした。



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15話 蠢く負の竜巻

 

ロ「………?なんか首のところ、ぞわぞわしないか?」

 

ヴ「風邪か?」

 

ノ「え~?夢の世界で?ロイどん、虫でも入ったんじゃないの~?」

 

フ「でも、何だろう。ルフレスのみんなもなんだか落ち着きない、というか……。」

 

ルビ「そういえばテルンもさっき、ずいぶん慌てた様子でどこかに飛んでっちゃったよね。どうしたのかしら?」

 

ルー「……お、あれ、戻ってきたんじゃねぇか?」

 

テル「み、み、みなさん、大変です!ヴールの気が、負の想いが、ぐるぐる渦巻いてるです!」

 

ソ「ぐるぐる渦巻く………?」

 

ア「竜巻のことを言ってるのか?」

 

ナ「負の竜巻……。レーヴァリアならではの自然災害……いわば天災ですわね。」

 

ルー「天才?」

 

ナ「……天災ですわ。」

 

ガ「竜巻なら、自然に収まるんじゃないか?」

 

テル「それが、どんどん膨れ上がってるです。このまま放っておくと、大変なことになるかも……。」

 

ジ「ヴールの領域の、もっとすごいもの、みたいなものかしら。」

 

『放っておけないね、行ける?テルン』

 

テル「はい……少し、怖いですけど……行きます。」

 

 

私たちはテルンの感じた、負の竜巻が蠢く洞窟へとやって来た。

 

 

ルビ「きゃっ!?す、すごい風……。って、う、うわぁ……何よ、これ……。」

 

ア「ここなのか?竜巻というからてっきり、外だと思っていたのに、まさか洞窟の中とは……。」

 

ヴ「あの渦巻いているのがそうか」

 

ジ「想像以上ね。ヴールもあれに引き寄せられてるのか、集まりだしたわね。」

 

ノ「うわっぷ!うう~。もう何か、かんっぜんにヤバそ~……。」

 

ガ「竜巻というより、負のか塊って感じだな。………さて、どうする?」

 

ルー「要するにあの塊をぶっ潰せばいいんだろ?」

 

フ「原因もわからないのに飛び込むのは危険だ」

 

ルー「じゃあ、放っておけっつーのかよ!」

 

フ「そうは言っていない!」

 

ソ「………けんか、だめ。」

 

『そ、そうだよ、今争ってる場合じゃ………それとも、永遠に眠らせてあげようか?』

 

ルー・フ「ひっ!!?」

 

ルビ「こうやって話してる間にも大きくなってない?」

 

ジ「………そのようね。せめて巨大化の原因がわかるといいのだけれど」

 

ロ「おい、あれ!渦巻いてる塊のとこ!人がいるぞ!………女の人か?!」

 

ノ「あ~、ホントだ~。つ~かあんな近くじゃ、またヴールにやられちゃってるよね……」

 

フ「早く助け………ん?あの負の塊の中心、少し光っているようにも見えないか?」

 

『………行ってみよう!』

 

?「クレスッ!お願い、手を伸ばして!!このままじゃ、キミが渦に取り込まれちゃうッ!」

 

ク「………コハク、逃げてくれ……」

 

コハ「いやだよ………!はやく………ッ!!」

 

ガ「こりゃ、ただ事じゃないな」

 

ナ「白い服の女性がコハクと呼ばれていましたわね。塊の中に、クレスという名の方がいますの?」

 

ルビ「ねぇ、危ないわ、コハク!あなたもこっちに!」

 

コハ「……!誰…?………だめ、………それ以上、来ちゃダメッ!」

 

ルビ「きゃあ!!」

 

ルー「ルビア!………な、何だコイツ!?」

 

ナ「すごい力ですわ。この負の渦の影響なんですの!?」

 

ロ「おい、コハク………だったか?何でだよ!助けるなら人は多い方がいいだろ!?」

 

コハ「ダメッ!この人は私が助ける!わたしは………もう、逃げないから!………ぜったい、私が助ける!」

 

ヴ「単独で助け出すことに固執しているように見えるな……」

 

ジ「ヴールの影響、かしらね」

 

ア「………彼女、ヴールの影響を受けているな。ということはクレスという人も既に……」

 

コハ「わたしは助けられてばかりだった!いっぱい戦って、傷ついて……。覚えてないけど、誰かが私のために……。その人をわたしは傷つけちゃったの!だから、今度こそキミは私が助ける!」

 

ク「うわあああああああああああああっ!!」

 

ノ「ねぇテルぽん、なんとかならないの?」

 

テル「あれは、悪夢?」

 

ガ「悪夢?」

 

テル「レーヴァリアは夢でできてるです。幸せな夢も、楽しい夢も、苦しい夢も、怖い夢も、全部ここにあるです。……この塊は、苦しいとか、悲しいとか、怖いとか、痛いとか……。そういうものだけでできてるみたいです。」

 

ロ「何でそんなもんだけが集まっちまったんだよ!?」

 

ノ「ひっ、光った!」

 

ルー「何してんだよ、お前!まさかこんな時に宝探しじゃ……」

 

ノ「違うよ!負の塊………悪夢の塊だっけ?その真ん中で光ったんだって!よく見て!」

 

『本当だ………あの剣から光ってない?』

 

ジ「剣が光ると、あの塊も同時に大きくなっていくみたいね。」

 

テル「い、一瞬あの人の周りの空間が歪んだ感じがしたです。ひょっとして、あ、あの人の剣が………?」

 

フ「レーヴァリアに干渉し、悪夢を集めているのか…?」

 

ク「………突然、家族を連れ去られた。………望まずして、友と戦う運命となってしまった。……大切な友人が、人らしさを次第に失っていく………ただひととき離れていた間に、村ひとつ……すべての人が……死ぬ…もうたくさんだ!やめろっ!!やめろおおおおっ!!」

 

コハ「きゃあああーー!!」

 

『コハク!…ひっ、引き寄せられる!』

 

ア「………戦おう。彼を抑えられれば、この悪夢の渦も止まるかもしれない。」

 

ガ「悪夢を呼び寄せた剣か。ゾッとしないな。みんな、用心しろよ」

 

ロ「よし、行くぞ!」

 

ルビ「コハク!大丈夫!?」

 

コハ「………誰も、信じてくれない。彼女は本当にいるのに……!誰も…誰も、信じてくれない!」

 

『コハク、落ち着いて!』

 

エス「とにかく、あの人を落ち着かせましょう!……フォトン!」

 

シェ「サンダーボルト!」

 

ロ「こがはざん!」

 

ク「……くっ!」

 

シ「今だわ!歌って!」

 

『うん!』

 

色は匂へど いつか散りぬるを~♪

さ迷うことさえ 許せなかった…

 

咲き誇る花はいつか~♪

教えてくれた 生きるだけでは罪と

離れられない 離せはしないと

抱く思いは 心を躍らせるばかり~♪

 

色は匂へど いつか散りぬるを~♪

さ迷う暇はない けれど後ずさり

甘えるか弱さと 甘えられぬ弱さで

悪夢が優しく 私を弄ぶ~♪

 

ク「………ぅぅ」

 

コハ「………ぅ……ん…」

 

ナ「やりましたわ!」

 

フ「剣の輝きも、収まったようだね……」

 

ルー「……聞いてねぇぞ……!こいつら……強すぎんだろ………っ!」

 

ノ「正直、もうダメかと思った~。あたしは、へっとへと~…」

 

ジ「ふふ、楽しかったわ。………確かに少し、疲れたけれど、ね」

 

ナ「浄化が済んだら、すぐ治療しましょう。ルビア、コハクをお願いしますわね。」

 

ルビ「う、うん。テルン、2人の浄化をお願い。」

 

テル「は、はいです……。」

 

ク「………う、ん」

 

『良かった。気がついた………クレス、気分はどう?どこか痛いとこ、ない?』

 

ク「君は………なぜ、僕の、名前を……」

 

コハ「………ぅぅ……?」

 

ルビ「コハクも気がついたみたいよ」

 

コハ「あれ、ここは……?私、何をしてたの?」

 

『……何も、覚えてないみたいだね』

 

ルー「おい!こいつら弱ってんだろ?話なんか後にして、とっととルフレスの街に帰ろうぜ」

 

ノ「おおっ、ルーくんがマトモなこと言った~!」

 

ルー「う、うっせーな」

 

ガ「ノーマ、茶化すなって。………お前の言う通りだよ、ルーク」

 

ルビ「……でも、くたくた」

 

ソ「………で、動けない人は、誰が運ぶの?」

 

ルー「あー、そういうの、パス。」

 

ノ「あ~、そう言うと思った。」

 

ルー「んだよ、お前がおぶればいいだろ」

 

ノ「ルーくんの鬼!乙女に肉体労働させる気!」

 

ルー「あ?どこにオトメがいんだよ」

 

ノ「ひどっ!星りんの時は運んでたじゃんか~!横抱きで」

 

『……!!』

 

ルー「んな!?そ、そんなこと、い、今は関係ねぇだろ!」

 

ノ「お~、ルーくんが照れてる~!」

 

ソ「みんなで行こ?」

 

ルー・ノ「へーい。」

 

「小さい子に言われるとは、ルークもノーマも、形無しだな」

 

 

私たちは、2人を連れてルフレスの街へと戻ってきた。

クレスとコハクにここでのことを説明した。

 

 

ク「レーヴァリア、ルフレス、ヴール、夢見る目覚めの人……」

 

コハ「……私たち、みんなに迷惑をかけちゃったんだね」

 

ア「君たちだけがそうじゃない。ここにいるみんなも何人か経験している。」

 

ジ「そう、今回がちょっと、特別だっただけ」

 

『何か、覚えてること………ある?』

 

ク「……いや、もう忘れてしまったよ」

 

コ「私も、助けてもらうまでのことは、あんまり覚えてないなぁ」

 

ノ「ああああああーーっ!!」

 

ガ「!!!どっ、どうしたんだ、ノーマ?」

 

ノ「スッゴい大事なこと忘れてた!クレすん!剣貸して、剣!」

 

『………ノーマ、悪いけど…すごく、どうでもいいよ』

 

ロ「クレすんって……クレスのことか」

 

ノ「そ~!クレすんの剣!ソフィたん、星りん、覚えてるでしょ?剣が光ったこと」

 

ソ「うん、覚えてる。光ってた。」

 

『………確かに光ってたね』

 

ノ「でさでさ、そんときテルぽん言ったよね。空間が歪んだって」

 

テル「は、はい……。」

 

ノ「もしかしたらそれって、すっごいお宝なんじゃないのかな~!だってさ、空間が歪むんだよ!?」

 

ア「悪夢を呼び寄せた原因かもしれないんだ。危ないんじゃないか?」

 

ク「この剣が?」

 

コハ「クレス……。何かわかる?」

 

ク「いや………」

 

ノ「とにかく、貸してよ~!んでもって、あたしにちょ~だい」

 

ロ「危ないだろ!ここ、ルフレスの街なんだぞ!同じことが起きたらどうするんだ!」

 

ノ「えぇ~!けち~!ラーフ対抗の武器になるかもしれないんだよ~?くらえ必殺!むしろあんたらが悪夢を見てしまえ~!とか」

 

フ「強力なような、まったくそうでもないような……」

 

ノ「じゃあこうは考えられないかな~。こ~だ鉄槌・応用編!みんないい夢見ろよ☆………どう?この剣調べて、悪夢じゃなくていい夢だけ集めんの」

 

ナ「レーヴァリアがめちゃくちゃになりそうですわ…」

 

テル「は、はい……。万が一、またさっきのようなことになったら、怖いです……。」

 

ノ「むむ~………。ていっ!!」

 

ク「あっ!僕の剣を!?」

 

ノ「でもって、とう!!」

 

ルー「わーーっ!?」

 

コハ「………何も、起きないね」

 

ルー「てめぇ、脅かすなよな!」

 

ノ「う~ん、やっぱり気のせいだったのかな~。テルぽん」

 

テル「あ、あの……。」

 

ルー「無視かよ!」

 

ノ「わ~ん!クレすんのばか~!!詐欺師~!乙女の純情返せ~!」

 

ク「ご、ごめん!」

 

ノ「謝られた!!ちょ、あんた真面目すぎ!てかあんたが笑ったの1回も見てないし!はい、笑う!」

 

『なら、私に任せて!笑顔になるおまじない!』

 

ナ「笑顔になるおまじない?なんですの、それは?」

 

『ふふふ、この水の入ったジョウロをこうして…で、光を当てると………』

 

コハ「わ、虹が出来たよ!すごい!」

 

ア「なるほど、光の反射で虹を作ったのか……不思議と笑顔になるな」

 

ク「ふふ、そうだね。」

 

ルビ「2人とも、ゆっくり休んでね。ここなら安全だから。」

 

 

 

 

ドシ!……ドシ!

 

 

『コハク、すごいよ!』

 

コハ「はぁ!やっ!とぉ!」

 

テル「星菜さん、な、何してるです、か?う、うわああああ!?」

 

『て、テルン?!』

 

テル「あ、あうあう……」

 

ロ「テルン!!どうした……って………あれ?星菜と……おまえ………」

 

コハ「ん?あ、みんな!」

 

ノ「で、コハはなにをしてたの?何かテルぽんが完全に腰抜けて地面に落ちちゃってるけど」

 

コハ「あ、もしかして、これのことかな?サンドバッグだよ!街にあるもので作ってみたんだ」

 

ルビ「ちょ、それ!そこに描いてある絵!ルフレスじゃない!」

 

コハ「私も戦わなくちゃって思ったんだけど、何と戦えばいいのかわからなくて………とりあえず近くにいた子の絵を描いてみたんだ♪どう、似てるかな?」

 

ロ「いや、まぁ、似てるっちゃ似てるけど……。ルフレスは敵じゃないし、そんなことしたら他のルフレスが怖がるだろ?」

 

コハ「うーん。相手がちゃんとイメージできた方がいいかなって思ったんだけど、それで、ボコメキョにしてたよ♪」

 

『………ヴールはいろんな形があるからって言ったらコハク、ルフレスの絵を描いちゃったの』

 

コハ「うん!大丈夫だよ!覚えてないけど、自信あるから!行くよ!ほら!」

 

ルビ「ああ、そのサンドバッグ、テルンの前で蹴らないでーっ!」

 

テル「きゅう………」

 

ノ「あ~ぁ」

 

コハ「??」

 

『こ、コハク、これからよろしくね!………せっかく作ったそのサンドバッグは…捨ててきてね』

 

コハ「うん!ガンドコ行こう!」

 

ア「ロイド、クレスも一緒に来るってさ」

 

ロ「そうか!仲間が増えたな!」

 

 

クレスとコハクが仲間になった。



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16話 夢紬

私たちは石盤に記されていた珠を調べるべく、憎しみの砂漠へと向かっていた。

その途中、断絶の崖へと辿り着いた。

 

ルー「おわ、なんだこりゃ!地面が割れてて進めねぇじゃねぇか!」

 

ルビ「本当。すごい地割れ………底が見えないわ」

 

ナ「見渡す限り、どこまでも亀裂が広がってますわね………橋も見当たらないし、どうしましょう。」

 

ジ「これもナハトの仕業なのかしら?」

 

テル「………。」

 

ヴ「あの地割れの先に見えるのが問題の3つの領域なのか?」

 

ガ「そうらしいな。遠目にも、今まで見てきた土地よりヴールの影響が強いのがわかるな。」

 

ソ「行き止まりなの?」

 

ア「わからない。ここまで来て」

 

テル「あ、あのあの、みなさん!ボ、ボク、みなさんと一緒に旅ができて楽しかったです。でもボク、いつも守ってもらってばかりで何もできなくて」

 

『テルン、それは違うよ。私だって、みんなに守られてるもの。テルンだけじゃないよ?……私も……弱いもの。』

 

ロ「な、何を言い出すんだ、急に?」

 

テル「僕たちルフレス族が巻き込んだのに、危険なことに巻き込んだのに、見てるだけしか出来なくて……だ、だから」

 

ア「………テルン。」

 

『テルン、言わなくてもわかるよ……テルン、犠牲にならなくていい………犠牲なら………私1人で……』

 

テル「………!!で、でもでも、ぎ、犠牲になれば、レーヴァリアが助かるなら、それで、み、みなさん、もとの世界にか、帰れるなら…」

 

ア「テルン!星菜!」

 

『………!!』

 

テル「………は!」

 

ア「それ以上言うんじゃない。俺たちは1度だってテルンを負担になんて思ったことはないんだ。星菜も」

 

ロ「そうだ。馬鹿なこと考えるなよ。友達だろ、俺たち!」

 

ガ「実際、テルンや星菜がいなければ俺たちはここまで来ることだって出来なかったわけだしな」

 

ロ「それにヴールが人の心の暗さの現れなら、それを倒すのに悲しさがいるなんておかしいだろ。寂しいこと言うなよ!」

 

コハ「そうだよ。私たちは仲間だよね?そんなこと、させないよ!」

 

テル「………でも、でも……」

 

ア「テルン、星菜、覚えてるか?俺たちと出会ったときのこと」

 

ナ「確か、テルンは他のルフレスが怖がって街を出ようとしなかったのに、1人探しに来てくれたのでしたわね」

 

フ「うん、勇気ある行動だったよ。君には強い意志があるんだ、テルン」

 

ル「ぼ、僕も………星菜が、癒しの歌を歌ってくれなかったら…今ごろ……」

 

リ「あたしもよ。あんたが歌ってくれなかったら………あたしも、今ごろ」

 

ロ「変人呼ばわり~って叫んでたかもな!」

 

リ「~!吹っ飛べ!ファイアボール!」バシュ!ボッ!

 

ロ「ギャーーー!!」プシュー……

 

ヴ「俺も、テルンや星菜がいなければ、死ぬまで悪夢の中で苦しんでたのかもしれない。」

 

ノ「あたしらだってそうだよね、ガーさん、ソフィたん」

 

ソ「うん、テルンと星菜、助けてくれた。」

 

ガ「だな、命の恩人ってやつだ。少しくらい面倒見てもらったってバチあたらないさ」

 

リオ「おまえ達がいなければ今ごろ……」

 

ガ「?リオン、何か言ったか?」

 

リオ「おまえ達がいなければ……僕たちはまだ穴の中だ。それに、ヴールに惑わされずにすんだ。」

 

ルー「だー、もう面倒くせぇ。どうしても気になるんだったら、俺たちが勝手にやってるって思えっての」

 

ジ「あら、いいこと言うわね」

 

ソ「でも、ここまで一緒に来た。テルンと星菜……最後まで行きたい」

 

テル「み、みなさん……う、うわーーーん!!わぁーーーーーん!!」

 

『う、……ひっく……みんな……やさし……すぎるよ…う、うう……』

 

コ「よしよし、だいじょぶだよ。みんな、友達だもん。安心して?だいじょぶだよ」

 

 

コレットは優しく抱き締めてくれた。

私は、コレットに抱きつく形で今まで抑えてた感情を吐き出した。

 

 

ロ「そうだぜ、友達は助け合う!これ、当たり前だろ!」

 

ルビ「もう、テルンったら、泣かない泣かない」

 

テル「す、すみません、ひっく……。」

 

 

テルンも泣きじゃくり、近くにいたルビアが慰めていた。

ノーマがそういえばと声を出した。

 

 

ノ「ねぇ、ちょっと思ったんだけどさぁ、テルぽんってさ、あのハトスケに一目置かれてるわけじゃん?」

 

ソ「ハトスケ……ナハトのこと?」

 

ノ「そそ。んで。ハトスケはもともと思いを形にする力があったわけでしょ?なら、テルぽんにもあるんじゃないの?」

 

ルビ「そうだよ!意志が強いルフレスなんだし、テルンにも出来るかもしれないよね」

 

ミ「確かにお前の発言や態度は弱々しい。しかし、お前の意志の力は強いものだと私は信じている」

 

テル「ミ、ミラさん……。」

 

ミ「己の意志の力に自信を持て、テルン」

 

ノ「そうそう、ね、テルぽん、ひとつ念じてさぁ、どーんと橋を作っちゃおうよ!」

 

テル「ボ、ボクが!?ナハトみたいに!?そ、それは……」

 

ルビ「ほら、自信持ちなさいよ!私たち、みんな信じてるから」

 

『テルン、自信持てるおまじない、教えてあげる』

 

テル「………??」

 

『こう、手のひらに、人って文字書いてみて』

 

テル「え、えと………こう、ですか?」

 

『そう!それを、飲む真似、してみて!』

 

テル「は、はい!………」

 

『どう?』

 

テル「何となくですが…力が出るです!…みなさん……。わ、わかりました。や、やってみます!………。………………?(何かが………強い力が………傍にいるような、中にあるような………これは!)」

 

 

テルンはみんなと過ごした時間を振り返っていた。

ロイドがバリケードを作っていたり…

ノーマが宝箱を見つけ、独り占めしてたり…

ジュディス達と夜空を眺めたり…

色々なことがあった。

 

テルンが光だしたと思ったら翡翠のケープに星の飾りをあしらった服装、しっぽをはやし、テルンの面影のある若草色の髪に、先端に星がついているステッキを持った少年の姿になった。

 

 

ルビ「………え?」

 

ロ「……な」

 

テル「………」

 

ヴ「テルン………なのか?」

 

テル「え?みなさん、一体………って………えええ!?ボ、ボク、体が長くなって?手も足もみんな長い、ええええ??どうなってるですか!?」

 

ノ「それを言うなら大きくなった、じゃないの?」

 

ア「ああ、まるでナハトの時みたいだ。テルン、何をしたんだ?」

 

テル「わ、わからないです。ただ自分の中に何か力を感じたと思ったら………でも、何だか今までにない力が溢れてくるような気がするです……!」

 

ロ「なぁ、ひょっとして前に言ってた夢紬ってやつじゃないのか」

 

テル「夢紬………これが……?ボクが………でも……」

 

ジ「とりあえず、今は目の前の問題を先に片付けた方がいいんじゃないかしら?」

 

ノ「うん、それもそうだね。よーし、テルぽん、その勢いでいっちょ橋の方も行ってみようかぁ」

 

テル「は、はい、今ならなんだか出来るような気がするです!………。………、………っ!」

 

 

テルンは念じてみた。

すると、橋が出来上がった。

 

 

ロ「………橋だ。本当に橋が現れた!すごいぞ、やったな、テルン!」

 

テル「はぁ………はぁ………わ、ボ、ボク………本当に?本当にやったですか?」

 

ハ「まさか虚空から物質を生み出すなんてねぇ♪あんたのこと、ますます調べたくなったわ!」

 

プ「………すごいですね」

 

 

私たちが喜んでいると、どこからか声がし、

振り向くと、プレセアが立っていた。

 

 

ロ「プレセア!」

 

プ「こうなることをナハトさんは危惧していました。だから……止めに来ました」

 

 

プレセアがそう言うと複数のクリスタルが現れ、

テルンが作った橋が消えてしまった。

 

 

ルー「橋が!消えちまった!なんだよ、あの結晶みたいなのは!?」

 

テル「う……あ、頭が……!」

 

プ「このクリスタルはルフレス族の心を乱します。………もう橋は作れません」

 

ロ「プレセア………何でだ、何でそうまでして、こんなことするんだ!」

 

プ「………。」

 

ア「くそっ、みんな、あのクリスタルを壊そう!テルン、少しだけ辛抱してくれ!」

 

テル「ま、待ってくださいです。………ボ、ボクも……ボクも一緒に戦うです!今なら……この姿の今なら、やれそうな気がするです!」

 

ア「テルン………だけど………」

 

テル「お願いするです!守られるだけじゃなく、ボクもみなさんと一緒に…!」

 

ア「……わかった。だけど、無理はするなよ!危ないと思ったらすぐに退くんだ!」

 

テル「……!はいです!」

 

リ「星菜、あんたは」

 

コハ「星菜、私から離れないでね!」

 

エス「そうです、私がお守りします!」

 

シェ「私も守るわ!」

 

ジ「うふふ、出鼻、挫かれたわね」

 

リ「………あー、もう!みんなで守るわよ!」

 

『うん、ありがとう、コハク、エステル、シェリア、リタ』

 

ク「魔神剣!」

 

ジ「月牙!」

 

テ「ノクターナルライト!」

 

 

みんながクリスタルに攻撃すると………

クリスタルを1つ、破壊できた

 

 

フ「壊れた!普通に攻撃すればクリスタルは破壊できる!」

 

ヴ「………テルン、ここだけでも橋を作れないか?」

 

テル「ち、近くで念じればもしかしたら……やってみるです!………出来たです!」

 

ア「いいぞ!よし俺たちがクリスタルを壊す。テルンは橋を作ってくれ!」

 

『わ!ヴールが現れた!』

 

シェ「大丈夫よ!星菜は私たち、美少女守り隊が守りきるわ!」

 

エス「ええ!守りますから!安心してください!」

 

コハ「うん!やれるよ!私達なら!」

 

『………え、えと?』

 

リ「……何よ、美少女守り隊って………」

 

シェ「ちなみに私が隊長よ!リタも副隊長で入ってるから」

 

リ「………は、はぁ!?な、何であ、あたしが!しかも副隊長………って」

 

『あ、あの………いつ結成したの?』

 

コハ「この前、私とクレスを助けてくれたでしょ?その時に結成したの」

 

エス「はい!とても素敵です!」

 

リ「………はぁ…」

 

『………は、はは』

 

 

クリスタルを壊すと、ヴールが現れるらしい。

現れたヴールはシェリア率いる美少女守り隊が倒してくれた。

 

 

ルー「な、なんか、すげぇな………あいつら」

 

フ「僕たちも負けてられないね!」

 

ア「シェリア、エステル、コハク!危な」

 

シェ「アスベルは黙ってて!私たち、美少女守り隊が星菜を守るんだから!」

 

コハ「うん!任せて!火旋輪!」

 

エス「フォトン!私たちは無敵です!………それとも、私達だけでは不安です?」

 

フ「い、いえ!そんなこと、ありません!」

 

ルー「おい、何言い負かされてんだよ!おい、お前らだけじゃ危ねーだろ!」

 

シェ・コハ・エス「ああん?なんか言った?」

 

ルー「………ナンデモナイデス」

 

ノ「うわっ………ルーくんが負けてる………」

 

 

その後もクリスタル破壊と同時に現れたヴールは

シェリア達の手によって消滅したのだった

 

 

「………ぅ!!」

 

ジ「私はまだ続けてもいいのだけど………どうするのかしら?」

 

ロ「プレセア、降参しろよ。もう勝負はついただろ?」

 

ルー「後ろは崖だ。逃げ場はないぜ?」

 

プ「………そうでもありません」

 

ルー「けっ、負け惜しみかよ。素直じゃねぇっつーの」

 

ナハ「………騒々しいな」

 

ルー「ナハト!!てめぇ!」

 

ナハ「プレセア、しくじったようだね」

 

プ「………すみません」

 

テル「ナハト!」

 

ナハ「………その姿、なるほど夢守にすらならないうちに、夢紬になりおおせた訳か。やるじゃないか、テルン………それで僕と対等にでもなったつもりかい」

 

テル「そ、それは……。」

 

ナハ「力を得た気でいるんだろうが、とても危ない綱渡りをしているんだ。いい気にならないことだね」

 

ルー「回りくどい言い方しやがって、どういう意味だ!?」

 

ナハ「どうなるか楽しみだよ、テルン。引き上げようか、プレセア」

 

プ「……はい。」

 

テル「ナハト!待つです、ナハト!」

 

ノ「うそっ、飛んだ!?ああ~どんどん小さく………見えなくなっちゃった」

 

ロ「……くっ」

 

ガ「しまった………そういえばナハトにはそんな芸当もあったんだったな」

 

ジ「情けないわね、忘れていたわ」

 

テル「ナハト………」

 

『………テルン…。』

 

コハ「と、とにかく、まずはクリスタルを壊そう!レイ!」

 

エス「そうですね、今はあれを破壊しなければ!スターストローク!」

 

シェ「先に進めないものね!」

 

テル「………最後の橋が出来たです!」

 

ロ「すごいな。段違いに大きな橋じゃないか」

 

ジ「もう自信の方は心配無さそうね」

 

テル「は、はい。なんだかコツがわかった気がするです………あ」

 

ロ「どうしたんだ、またもとの姿に戻ったぞ!?」

 

テル「き、気を抜いたら、戻っちゃったです。やっぱりあの姿してると、結構疲れるです………でも大丈夫です。少し休めばまたあの姿になれると思うです。」

 

ナ「それにしても、驚きましたわ。姿を変えたり、橋を作り出したり、本当、色んなことが出来ますのね」

 

テル「自分でもびっくりです。ボ、ボクがこんなことできるなんて」

 

『すごいよ、テルン!』

 

ジュ「うん、テルン、君はすごいよ!もちろん元からすごい仔だったんだろうけど………きっと君は、変われたんだね」

 

ルー「にしてもよ、さっきのナハトの言葉、あれどういう意味なんだ?」

 

ガ「夢紬であること自体が何か危険を伴うような言い方だったな」

 

ア「夢守よりなるのが難しいというのと、何か関係があるのか?」

 

ガ「そこはなんともわからないな。もしそうなら、ナハトだってそこは同じはずだが…」

 

ア「わからないことだらけだな」

 

ロ「わからないことは後で考えればいいさ。さぁ行こうぜ、いよいよ禁断の領域に挑戦だ!」

 

 

 

 

 



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17話 ナハトの心理、テルンの苦悩

 

私達は3つの領域1つ、憎しみの砂漠に着いた。

 

ヴ「ここが憎しみの砂漠か……。見た目はただの砂漠なのに、なんだ、この圧迫感は……」

 

ナ「ええ……なんだか肌がぴりぴりするようですわ」

 

ルビ「なんか気持ち悪い……。気を抜くとおかしくなっちゃいそう」

 

ル「こ、こんなところを探さなくちゃならないんだ。やだなぁ…」

 

フ「この熱気もただの暑さとは思えないな。まるで、誰かから物凄い敵意を向けられているみたいだ」

 

テル「なんでもいいから傷付けようとする悪意。………びっくりです。こんな混じりけのないヴールの領域なんて。……みなさん、絶対にボクから離れないで」

 

ロ「ああ、頼りにしてるぜ!」

 

シェ「なんだかテルン、本当に強くなったみたい」

 

『うん、テルン強いよ!』

 

ルー「けどよ、こんなだだっぴろい砂漠で何をどうやって探せばいいんだ?」

 

ソ「掘る?」

 

ガ「そりゃ無茶だ……。そうだ、ノーマなら何か手があるんじゃないか?宝探しは得意なんだろ?」

 

ノ「いくらあたしでも、こぉ~んなな~んにもないとこで手掛り0じゃ、ちょっとね~」

 

ア「テルンから離れられない以上、分散するわけにも………テルン?」

 

テル「………何か………感じるです。………あっち?」

 

『この辺り?テルン?』

 

テル「はい。何か………何かはわからないですけど、温かい感じがするです。」

 

ロ「よーし、早速掘ってみるか!」

 

ジェ「驚きましたね」

 

ロ「ジェイド!?ナハトも!」

 

ジェ「プレセアから聞いてはいましたが、本当にテルンは急速に成長しているらしい。どうしますか、ナハト?」

 

ナハ「………。」

 

ア「なんだ!?敵意むき出しじゃないか……」

 

テル「ナハト!どうしてこんなことするです!どうしてボクと星菜が犠牲にならないといけないですか!答えて、ナハト!」

 

ナハ「お前は……お前らは危険だ!」

 

テル「ナハト!?」

 

『ナハト、どうして……私とテルンは危険?』

 

ナハ「この地の憎しみに呑まれるがいい!」

 

 

地面からヴールが現れた。

あれは……確か、サンドワーム?

 

 

ガ「でかい!なんだ、何だ化け者共は!」

 

ナ「なんて禍禍しい……まるでこの砂漠の憎しみが形をまとったみたいですわ」

 

ジェ「正解です。ナハトがあなた達のために特別に作り出したヴールですからね。彼の敵意の顕現……といったところですか」

 

ルビ「き、気持ち悪い………あんなのと戦わないといけないの!?」

 

ジ「これは少し骨が折れそうね」

 

ナハ「夢見る目覚めの人もテルンもみんな危険!危険!!危険だ!!あらゆる次元、あらゆる世界から消えてしまえ!」

 

テル「本気なの、ナハト!?本当にボクや目覚めの人のみなさんを………?」

 

ナハ「くどいよ、僕はルフレス族の最上位者だ。その僕がやると言っているんだ。ならそれは起きたと同じことさ」

 

テル「それがナハトの本心なら………ボ、ボクは、ボクはナハトと戦うから!」

 

『テルン、よく言ったわ!』

 

ナハ「はっ!生まれて日も浅い、まだ夢守にもなっていなかったひとりぼっちのひよっこがさ!夢紬になった途端、一人前とは笑わせるじゃないか」

 

ロ「1人じゃないさ!俺たちがテルンと一緒にいるんだ」

 

ナハ「………ならもろとも、砂漠に撒き散らされるんだね!」

 

シェ「私たちが相手になるわ!」

 

エス「我ら」

 

ティ「び、美少女守り隊が」

 

コハ「星菜を守るわ!」

 

ルー「お、おいおい、ティア、なにお前まで仲間になってんだよ」

 

ティ「ち、違うわ!ただちょっと守らないとかいけないから?ベ、別に可愛いなぁとか思ってないから!」

 

『ティア……それ、言ってるから』

 

ティ「………!!」

 

ナハ「テルン………僕の継ぎの仔……同じ夢紬となったくらいで僕に勝てるつもりかい?」

 

テル「………ボクは、ボクはルフレスとして、目覚めの人達を守るです………だからボクは………ボクはナハトと戦うです!」

 

 

 

 

 

 

 

ルビ「今ので最後よね?」

 

ガ「ナハトは………見当たらないな。ジェイドもだ。逃げたのか?」

 

テル「ナハト達も他のヴールの気配も感じないです。………多分、もう近くにはいないです。」

 

ガ「尋ねたいことが色々あったのに、それもできないまま、とうとう戦ってしまったな。大丈夫か、テルン?」

 

テル「あ、はい、大丈夫です」

 

ア「あのヴールを倒したせいか、少しだけ場の圧力が和らいだ気がする。今のうちに捜索を再開しよう」

 

ロ「………。」

 

ソ「………。」

 

ロ「見つからないな」

 

ソ「うん、見つからない…」

 

ルビ「靴の中も服の中も砂だらけ…」

 

ス「だな。グローブの中まで入ってやがる。……なぁ、とっとと見つけちまおうぜ」

 

フ「テルン、もう少し絞り込めないか?」

 

テル「この辺りなのは間違いないです。ただ、ヴールの影響が強くて…」

 

ア「頑張るしかないか」

 

ク「そうだね。僕は向こうの方をもう一度探してみるよ」

 

ア「ああ、頼むよ、クレス」

 

ノ「ふん、ふん、ふん、……ん?おおお~?」

 

ア「どうしたんだ、ノーマ」

 

ノ「砂の中に硬くて小さい丸いもの~じゃ~ん、見っけ~!」

 

ナ「珠…?これがあの石盤に描かれていた、慈しみの珠なんですの?」

 

テル「多分……憎しみとは違う、なにかを感じるです。優しくて温かいです…」

 

ノ「こーんな砂の山の中から見つけ出すとはさっすが~あったしぃ~」

 

『すごい…これが、あと2つあるんだね』

 

 

私はノーマが見つけた慈しみの珠を手に持ってみた。

すると、声が聞こえてきた。

 

ー泡……の……ほ……くて……ー

 

『……っ!?何、これ……』

 

ア「どうした、星菜!」

 

『頭に……直接……何か………』

 

ーそっ………触れ………残………君の………ー

 

『あ………あ………』

 

ロ「星菜、しっかりしろ!」

 

 

私は、頭に流れた言葉とロイド達が心配するなか、意識を手放した。

 

 

 



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18話 戦い、終われば味方?

ア「絶望の荒野か。名前の通り、気が滅入る眺めだな」

 

ルビ「本当。1人でこんなとこにいたら、ヴールに取り込まれなくても、心が折れそう………」

 

ロ「でも俺たちは1人じゃない。だから行けるはずだ。だろ、テルン」

 

ナ「いいこと言いますわね。その通りですわ」

 

ル「それにしても、星菜、大丈夫かな?まだ目を覚まさないけど」

 

コ「だいじょぶかな?………チョンチョン」

 

エ「あ、あまり騒がない方が………時間が経てば目を覚ますんじゃないかな?」

 

 

 

 

コハ「うん!きっと、目を覚ますよ!みんな一緒なら大丈夫だよ。ね、テルン!」

 

テル「はい、大丈夫です!」

 

ゼ「へぇーえ、すっかり仲良しこよしで結構なこっちゃないの。場の空気ってやつをまるで読んじゃいねぇがな」

 

 

声のする方を見ると、

ゼロスとメルディが立っていた。

 

 

メ「ゼロス。読むのは本がこと。空気は読めないよー」

 

ゼ「………メルディちゃん、調子狂うから、ちょっと静かにしててね」

 

ロ「ゼロスとメルディ………また待ち伏せしていたのか?」

 

ゼ「ばーか。そんな暇じゃねぇって。俺達も探してたんだよ。お前らが探してる珠ってやつをさ。ちょうどいいわ。いい加減うんざりしてたとこだし、俺様の代わりに頑張って探してく………」

 

ジュ「………え?何?」

 

 

ゼロスはジュードを見て、固まった。

ちなみにジュードは現在、星菜をおぶっている。

 

 

ゼ「ちょっとちょっと!おたく何役得してんの!俺様と代わってくれない!?」

 

ジュ「な、何のこと?」

 

ゼ「おたくが!星菜ちゃんを!おぶってるっしょ!そこ、代わってくれない!?」

 

ジュ「え、えと、あ、あの」

 

シェ「ダメよ、ジュード。星菜は、あなたがおぶってて!………あなた!」

 

ゼ「はい?」

 

シェ「星菜に近づかないで、星菜には指一本触れさせないから!」

 

エス「私たち、美少女親衛隊が星菜に触れることを許しません!」

 

コハ「星菜は私たちが守るんだから!」

 

ティ「そうよ、だからその汚れた手で星菜に近寄らないで」

 

ルー「………なんか、守り隊から、親衛隊にランク上がってねぇか?」

 

メ「バイバ!ゼロス、汚れてたか?」

 

ゼ「汚れてない!てか、何なの!あの団結力は!それに、美少女親衛隊って何!?」

 

ア「そこは触れないでくれ。………というか、レーヴァリアのヴールの拡大はラーフ・ネクリアのせいじゃないのか?ナハトだってラーフは倒したいはずだ。なのに、なぜ邪魔をするんだ!」

 

ゼ「あ、話切り替えやがった………コホン、さぁてね。そうなのかもしれねぇしそうじゃないのかもしれねぇ。どうだっていいんじゃねぇの」

 

ア「なっ!」

 

メ「あ、あのなー」

 

ゼ「おっとメルディちゃん、余計なこと言うのはナシよ」

 

メ「…んー……」

 

ヴ「………何故だ?ラーフが復活すればレーヴァリアだけじゃない、俺たちのもとの世界だって危ないはずだ。お前だってもとの世界に誰か大切な人がいるんじゃないのか?まさか滅んでいいとは思ってないだろう」

 

ゼ「きれいさっぱりみんな滅ぶ、………案外、それも悪くないかもな」

 

ミ「………世界が滅ぶことをどうでもいいだと?」

 

ヴ「おまえ………」

 

コ「そんな………ほんとに?ほんとにそう思ってるの?今は忘れてても、みんなもとの世界に家族とか友達とか大切な人がいるはずなのに………あなたには、いないの?」

 

ロ「どうかしてるぞ、おまえ!自分の世界までどうでもいいなんて、本気で言える訳ないだろ!?」

 

ゼ「で、れいの珠探さねぇの?それとも………」

 

ソ「………ヴール!!」

 

メ「ゼロス、もう時間切れみたいだよぅ」

 

ゼ「あーぁ。まだ俺様の話終わってねぇのに。気が短ぇな、ナハトのやつ」

 

ロ「ナハト!?あいつも来ているのか!」

 

メ「トーゼンだよぅ!でないとメルディたちヴールに取り込まれるよ」

 

ロ「どこにいるんだ!」

 

メ「わからないよ。でも、安心!戦うが、メルディ達だけだよ」

 

ジ「仕方ないわね。それじゃまずあなたを倒してから、珠を探すことにするわ」

 

ゼ「いいねぇ、その冷たい言い方。………そんじゃ、お相手願うとするか!」

 

ロ「ゼロス、どうしても戦うのか!」

 

ゼ「おいおい、いい加減腹くくれって。………メルディちゃん、例のやつ頼むわ」

 

メ「はいな!」

 

ルビ「気を付けて!新手よ!」

 

ルー「たまたま居合わせたようなこと言って、やっぱり仕込んでんじゃねぇか!」

 

『………ぅ……』

 

ジュ「あ、気がついた?でも、今は危ないからじっとしてて」

 

『私………確か、珠に触れて……!!ご、ごごごめんなさい!おぶってくれてたみたいで!すすすみませんでしたぁ!!』

 

ジュ「気にしないで?………今、ゼロスたちと戦ってるところなんだ。だから、危ないからじっとしててね」

 

『う、うん』

 

シェ「星菜!気がついたのね!今、野獣ゼロスを退治してるところなの!」

 

レ「星菜ちゃんに触れてもいいのはダンディーなオッサンくらいよ」

 

リ「ファイアーボール!」

 

ミ「ロックトライ!」

 

レ「ゲフッ!ギャーー!………酷くない?オッサンに対して酷くない?」

 

ミ「すまない。星菜には近づけさせぬようシェリアから言われていてな」

 

リ「馴れ馴れしく星菜に近づいてんじゃないわよ!オッサン!」

 

レ「しくしく………こうなったらやけだ!喰らえ!ウィンドカッター!」

 

ゼ「うわっと!!俺様に八つ当たり!?」

 

メ「メルディも戦うよ!」

 

フ「守護方陣!」

 

コ「グランシャリオ!」

 

ティ「バニシングソロゥ!」

 

ルー「ふう、よし、1ぴき残らず倒した………よな?ったく、面倒かけやがって」

 

ア「ルークの言う通りだ。これ以上続ける意味はないが、どうする、ゼロス?」

 

ゼ「ってぇ~………手加減知らねぇんだな。やめやめ、やーめたっと」

 

ルー「へ?どういうことだ?」

 

ゼ「物分り悪いねぇ。俺ら降参するって言ってんの、な、メルディちゃん」

 

メ「はいな、コーサン!メルディ、疲れたよぅ~」

 

ゼ「お疲れ~メルディちゃん。でも、もうちょっとだけ、な?」

 

『信用、してもいい、のかな?』

 

ノ「な~んか、めちゃめちゃ怪しいんだけど」

 

ガ「散々、俺たちの邪魔してきたんだしな。どうする?」

 

テル「あ、あの、このお2人からは、その、悪意みたいなのは全然、感じないです。」

 

ナ「信用してもいいんですの?私には分かりませんわ」

 

ハ「確かにこの流れで信用しろってのも勝手な話よね~………開けてみちゃう?」

 

ナ「それはおよしになって」

 

ハ「あら、残念、グフフ!」

 

ロ「ゼロス、前は負けてもすぐ逃げたのに何で今回はあっさり降参したんだ?」

 

ゼ「それは教えられないね~………睨むなよ、冗談だって。ま、ナハトの加護もなくなっちまったし、このままじゃヴールの餌食だしな。事情はおいおい話すとして、とりあえず、お前らの熱~い心意気にほだされたってことにしといてくれよ。代わりといっちゃなんだが、俺様たちも珠探し手伝うからさ。うひゃひゃ」

 

メ「そうそう、手伝うよ~はよはよ」

 

ロ「はぁ………時間も惜しいし、追求は後にして、珠を探そう」

 

ナ「………なかなか見つかりませんわ」

 

『本当、見つからないね』

 

ロ「こんな場所だからな。諦めずに探すしかない、頑張ろうぜ」

 

ゼ「………ん?こいつはひょっとして……うおーい、何か見つけちまったんだけど」

 

ナ「珠が見つかったんですの?」

 

ロ「こんだけの人数で探してたのに、よりによってゼロスがかよ」

 

メ「ワイール!すごいな、ゼロス!」

 

ソ「ずるい」

 

ルー「お、おい、まさかあいつ壊しちまうんじゃ」

 

ゼ「………ほれ、珠」

 

『え、あ、ありがと………!!ま、また…だ……』

 

ガ「お、おい、大丈夫か?」

 

ーあ………君の………この………心………してー

 

『う………うぁ………』

 

ナ「大丈夫ですの?酷く取り乱していますが……」

 

ー泡………ろば………ふ………ー

 

『………ぁ、う………はぁ…はぁ…』

 

メ「大丈夫か?すごく辛そうよぅ」

 

『大……丈夫。』

 

ゼ「無理すんなって、俺様が運んで……」

 

リ「タイダルウェイブ!!」

 

ティ「ホーリーランス!」

 

エス「スターストローク!」

 

シェ「インディグネイション!」

 

ミ「レイジングサン!」

 

コハ「エクスプロード!」

 

メ「ライトニング!」

 

ゼ「ギャーーー!!ゲフッ!ゴフッ!」

 

シェ「言わなかったかしら?星菜に近づかないでって」

 

コハ「我ら、美少女守り隊が許すとでも思った?」

 

エス「星菜が汚れてしまいます!」

 

ミ「すまない。私も、どう意見だ」

 

メ「はいな、汚れるの、よくないよぅ」

 

ゼ「ちょ、ちょっとメルディちゃん、何で攻撃したの?」

 

メ「ん?メルディな、びしょーじょまもりたいに入ったよ!だから、メルディ、星菜に近づいてくるやつ、ボコボコよ!」

 

ゼ「そ、そう」

 

ア「これが、望みの珠か……」

 

ティ「それにしても………星菜、その珠に触れたら頭痛がするみたいね。」

 

『あ、うん、なんか、頭に流れ込んでくるの。言葉が……というより、歌?でも、途中までしか聞こえないの』

 

ルビ「でも、私たちが触っても、なにも聞こえないわよ?」

 

ジ「もしかしたら、星菜は歌姫だから聞こえるんじゃないかしら?」

 

メ「すごいな、星菜、特別よぅ!」

 

『あの歌、何としてでも、知る必要がある気がする。』

 

リ「無理しちゃダメよ。あんたはすぐ無理するから」

 

ゼ「気を付けな。ナハトとジェイドたちが絶対ワナ張って待ってるだろうよ。それに、ユーリは強いぜ?お前らも気づいてるだろうけど、この間は本気だしてなかったからな………ジェイドの旦那もな。俺でさえ手の内明かさねぇんだ。せいぜい気を付けるこった。」

 

メ「………そう。ジェイド、怖いよぅ。プレセアもな!気を付けるが必要!」

 

『それでも、進まなきゃね』

 

ア「気を付けて行こう。」



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19話 3つ目の珠

ナ「寒いですわね………体ばかりか心まで凍りつきそうですわ」

 

ジ「風がまるで悲鳴のようね。嘆きの凍峡ってこういうことなのね」

 

ロ「他の2つの領域もみんなで乗り越えてきたんだ。気をしっかり持とうぜ」

 

メ「雪ー!真っ白ー!冷たーい!ふわふわー!」

 

ノ「あ~!ちょっと待ちなさいよっ!最初に足跡付けるのあたしだってば~!遅れをとってたまるかぁ~!」

 

ガ「…テルンのお陰だろうけど、あんまり気にしてないのもいるっちゃいるな」

 

エ「あはは、うん、そうだね」

 

『エミル、嬉しそうだね。………もしかして、雪遊びしたい?』

 

エ「えっ!?そ、そんなこと……!え、えっと……じ、実は、少しだけ……」

 

ゼ「………。」

 

ロ「どうしたんだ、ゼロス。顔色悪いぞ、大丈夫か?」

 

『大丈夫?』

 

ゼ「いや、なーんかね、この景色見てると気が滅入るってーか………って、なに、ロイドくん、心配してくれてんの?」

 

ロ「そ、そりゃ、仲間になったんだし……そんくらい別に当たり前のことだろ」

 

『本当に大丈夫?』

 

ゼ「大丈夫だよ、星菜ちゃん、もし、よかったら俺様を暖めてくれない?」

 

レ「あっ!ずるい!オッサンも!オッサンも!」

 

ルビ「イラプション!」

 

リ「寝言は寝てから言いなさい、ファイアーボール!」

 

ゼ・レ「ギャーーー!!」

 

シェ「はぁ、全く、油断も好きもないんだから………星菜、近づいちゃダメよ」

 

ヴ「………しかし砂漠や荒野と違ってこの雪に寒さだ。珠を探すにしても同じという訳にはいかないだろうな」

 

ルビ「ナハトたちが待ち伏せしているかもしれないのよね」

 

テル「………感じるです。この冷たさの中に一点、ハッキリとした温かさが……あっちです」

 

ア「ここに来て、テルンの力がどんどん高まっているみたいだけど、どういうことなんだろうな?」

 

フ「夢紬になったからということもあるだろうけど、テルン自身の成長も大きいんじゃないかな」

 

ア「新しい力やナハトとの対決………テルンにとっては楽なことじゃなかったはずだ。俺たちが支えてやれるといいんだが」

 

テル「あったです!」

 

ノ「うそっ、もう!?あ~ん、今度はあたしが見つけたかったのにぃ……」

 

「す、すみません。でも今回は、ハッキリと場所が感じられたですから……」

 

『今回は早く終わったね』

 

ヴ「……喜びの珠か。これで慈しみ、望み、喜びの3つが揃ったわけだが」

 

ジ「見つかったのはいいとして、それでどうしたらいいのかしら」

 

ジェ「もちろん起動させるんですよね?ああ失礼。やろうにもその方法が分からないんでしたねぇ。あの石盤には大したことは書かれていませんし」

 

ロ「!?ジェイド!ユーリとプレセアも………やっぱり来てたのか」

 

ユ「ああ、お前らが早いとこ珠を見つけてくれたお陰で、凍えずに済んだぜ」

 

ジェ「そういうことです。………それにしてもゼロス他の人はともかく、あなたまであっさり寝返るとは思いませんでしたよ。後悔で眠れなくなったりしないのですか」

 

ゼ「ぜぇーんぜん。勝ち馬に乗るのが俺様の流儀なんでね」

 

ナ「………呆れたものですわね」

 

ゼ「そう言ってくれるなって、ナタリアちゃん。ちゃんと戦うときは戦うからさ」

 

メ「メルディもゼロスも、みんなが仲間!」

 

ジェ「ふむ、まぁいいでしょう。ユーリ、プレセア、行けますか?」

 

ユ「いつでもいいぜ」

 

プ「………はい。」

 

ジュ「くっ………みんな、来るよ!でも……わからないよ。この人たちも、ナハトも………」

 

ナ「そう、ですわね………。ですが今は、守り抜くことだけを考えましょう。戦えますの、ジュード?」

 

ジュ「う、うん……」

 

ア「………結局戦うのか。みんな、気を付けろ!」

 

ユ「お前らが珠3つとも揃えてくれたんで、手間省けたぜ。あとはまとめて壊せば、それで終いだ」

 

フ「なぜだ、なぜルフレスであるナハトがラーフに対抗する手段を壊そうとする!」

 

ユ「この期に及んで答えるとでも思ってんのか?………腹ぁくくれよ!」

 

フ「くっ………ならば、僕はこの身に代えても君たちからテルンと星菜と珠を守る!」

 

ジェ「………。」

 

ジ「あら、これから戦おうというのに、上の空でどうしたのかしら?」

 

ジェ「おや、これは失礼。ちょっと段取りをつけていたものですから」

 

ルビ「段取り?」

 

ジェ「いざという時の奥の手の準備です。あなた方を倒すためのね。少々時間はかかりそうですが」

 

『奥の手……?』

 

ルー「へっ、ただの魔術だろ。あいつのいつもの手じゃねぇか」

 

ジェ「ただの魔術ねぇ、さぁどうでしょう。いざという時のためにナハトから与えられた力ですから。ヴールの領域に繋いだ門から引き出した力を私の術に練り込み、一気に解放します。………みなさん全員を消炭にするくらいの威力はあると思いますよ?」

 

ルー「……てめぇ!」

 

 

 

 

 

 

ジェ「………ふむ、あと少しですか。あなた方を消し去る術式が」

 

リ「……まずいわ、あいつの周りで、すごい術が組み上がりかけてる。あんなのが発動したら………!」

 

ア「いけない!みんな、ジェイドを止めるんだ!」

 

ナ「な、なんとか生きてますわ」

 

ゼ「お前らの仲間になったことを後悔するとこだったぜ」

 

メ「やっぱり、ジェイド強いな……」

 

ジェ「………少々、意外でしたり彼らがこれほど腕を上げていたとは。なるほどゼロスが裏切るわけですね」「

 

ユ「ドジっちまったな。で、どうするんだ、ジェイド?」

 

ジェ「プレセア、動けますか?」

 

プ「はい。まだ大丈夫です」

 

ア「まだやるのか!」

 

ジェ「いいえまさか。用意したヴールは全滅、どうやらナハトの加護も消えたらしい。となればやることは1つです。降参します。はい、こーさん」

 

ユ「へいへい、降参降参っと」

 

プ「降参、です……」

 

ロ「ええ~~~~~~~!?な、なんなんだよ、一体!?」

 

ゼ「散々、人のこと非難しておいて、節操なさすぎじゃねぇの、ジェイドさんよ」

 

ジェ「心外ですねぇ。極めて現実的な判断をしているだけですよ。あなたと同じようにね」

 

テル「あ、あのあの、ナハトのこと聞かせてほしいです!」

 

ロ「そうだ。降伏した以上、こっちが知りたいこと、全部教えてもらうぜ」

 

ジェ「それはできません」

 

ルビ「ちょっと、そんなの通ると思ってるの!?」

 

シェ「ジェイドさん、ちょっとこちらへ……」

 

ジェ「何ですか?」

 

 

シェリアはジェイドを氷壁の陰に連れていった。

………。

 

 

シェ「私たち、知りたいだけなの。私たち、優しいから、正直に話して」

 

ジェ「それはでき」

 

エス「そんなので通じるほど世の中は甘くないですよ?」

 

ジェ「ですから私は」

 

コハ「星菜を時にはさらったり、忘れてないよね?」

 

ジェ「あれは……ってこれ、拷問ですよね?優しくないですよね?」

 

ティ「ジェイド、往生際が悪いわ」

 

シェ・コハ・エス「さぁ!正直に話なさい!!」

 

ジェ「な、何をするんです!というか、どこさわって!ユーリ!プレセアも!見てないで助けなさい!」

 

ユ「あー、うん、ジェイド………お前はいいやつだったよ」

 

プ「……ご愁傷さま、です」

 

ジェ「う、ちょっ、何を!!」

 

 

30分後………

ジェイドはようやくエステルたち美少女守り隊から解放された

シェリアたちは不服そうに、だが、晴れやかな顔で戻ってきた。側にはジェイドの亡骸が落ちていた。

 

 

シェ「ジェイドったら、往生際が悪いわ。吐かないもの。」

 

コハ「私たちの拷も……質問にも答えてくれないし…」

 

『今、拷問って言いかけたよね?』

 

エス「………なら、ユーリ、来てくださいます?」

 

ユ「な、なんで俺……」

 

コハ「絶対、吐かせてあげる!」

 

シェ「大丈夫よ。痛いのは一瞬だけだから♪」

 

ユ「いや、一瞬でもダメだろ……」

 

ジェ「………はぁ、知らない方がよいこともありますよ?どうしてもというなら、本人から直接聞いてはどうですか?」

 

ロ「復活早っ!」

 

ジェ「……こほん、私たちをヴールの気から護るために近くにいたナハトの思念体も、今頃はメランコリウムでしょう」

 

ロ「え、思念体?」

 

『どういうこと?』

 

ジェ「はい、思念体です。この世界で適切な言い方か分かりませんが、実態のない分身みたいなものです。あなた方が見ていたナハトは途中からずっと実態ではない思念体だったんですよ。彼の本体はメランコリウムを離れていない。どうです?道案内くらいはしますよ」

 

ナ「……あんなこと言ってますけど、信じられるんですの?」

 

ヴ「降伏の仕方といい、怪しすぎる。罠かもしれない」

 

ガ「でも確かに遅かれ早かれ、メランコリウムには行かなきゃならないんだよな」

 

ノ「テルぽん、珠の方はなんか反応ないの?」

 

テル「やっぱりダメです。力は感じるですけど、念じても何も起きないです」

 

ノ「3つ揃えただけじゃ、ダメかぁ。じゃ、やっぱりもうメランコリウムに行くくらいしか、やることないんじゃない?」

 

テル「星菜さん、どうですか?」

 

『触れてみるね………っ!!』

 

コ「だいじょぶ?星菜」

 

『ぅ………ぅぁ………』

 

ー触れて………さぬ……

…刹………まほ…ば……見…よー

 

『………。』

 

ノ「大丈夫?星りん。顔色悪いよ」

 

『大丈夫、歌は完成したから………』

 

リ「3つの珠に込められていたのかもしれないわね。でもこれで、ラーフに対抗する歌が出来上がったわけだし、メランコリウムに行く?」

 

ゼ「でもよ、肝心の珠の使い方も分からないままナハトが待つメランコリウムに行くのは正直、自殺行為じゃねぇの?」

 

フ「確かに、なんの宛もないのに行くのは危険が大きいが………」

 

ク「かといって、これ以上打つ手もない………か」

 

テル「あ、あの、ボク、ナハトに会いに行きたいです」

 

ア「テルン?」

 

テル「危険なのはわかるです。けどやっぱり会って答えを聞きたいです。今度は自分から会いに行って」

 

『決意、したんだね、偉いよ、テルン!』

 

ロ「だったら俺も付き合うぜ。会おうぜ、ナハトに」

 

ルー「で、結局、この3人はどうすんだ?連れてくのか、置いてくのか」

 

ナ「……置いていけば確実にヴールの餌食ですわ」

 

ユ「勝ったのはお前らなんだ。好きにすりゃいいさ」

 

メ「あ、あのな、みんなメルディとゼロス、仲良くしてくれた。ジェイドたちも同じ、してほしいよ」

 

ソ「アスベル………ジェイドとユーリとプレセア、友達?」

 

テル「あ、あのあの、ゼロスさんたちと同じで、この人たちからも悪意は感じないです」

 

エス「……私も、この人たちを信じたいです。あの……みなさん、何とかなりませんか?」

 

 

テルンとエステルの意見に

アスベルは少し考え、そして……

 

 

ア「………分かった。敵だったとはいえ、同じ目覚めの人を置き去りにすべきじゃないな。どうだろう、みんな?」

 

ガ「とはいえ頭から信用するのも危険じゃないか?」

 

ア「じゃあこうしよう。悪いけど、お前たち3人の手は縛らせてもらう」

 

ユ「ま、ついさっきまで剣を交えてたんだ。妥当な判断だと思うぜ」

 

プ「異存はありません」

 

ロ「こんなことしたくはないけど………ごめんな」

 

ジ「じゃあ縛るわね。きつかったらごめんなさい」

 

ユ「お手柔らかに頼むぜ」

 

ジェ「私、そういう趣味はないんですがねぇ」

 

ルー「お前は黙ってろっつーの!」

 

ジェ「アーーーー♂」

 

『うへっ!?ジェ、ジェイド?どうしたの?』

 

ジェ「いえいえ、こういう縛りプレイはなかなか体験できないので、つい」

 

ガ「つい、じゃないだろ……」

 

 

ジェイドとユーリ、プレセアを縛り上げ、私たちはメランコリウムへと向かうことにした。



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20話 取り込まれし者

ガ「結局、珠を起動させる方法が分からないまま、ここまで来てしまったな」

 

ロ「橋は前に崩れた時のままだ。…………まてよ、ジェイド達はどうやって出入りしてたんだ?」

 

ノ「毎回、ナハトにぷか~って空に浮かべてもらってたんじゃない?」

 

ジェ「さすがに数人まとめては無理でした。ですから必要に応じて橋を元に戻していたんですよ。私たちのためにね」

 

ルー「出したり消したりかよ。やっぱすげえんだな、ナハトって」

 

テル「あ、あのボクもやってみるです。…………、…………。…………!!」

 

『頑張って!テルン』

 

 

テルンは祈るように目を閉じた。

すると、光が溢れ、その中から橋ができた。

 

 

ルビ「すごい…………本当に出来ちゃった」

 

ロ「すっかり一人前の夢紬だな!」

 

『やった!すごいよ!テルン!』

 

テル「あ、ありがとうございますです。みなさんが信じてくれるから何でもやれそうな気がするです!」

 

ナ「ふふ、ずいぶん自信がつきましたのね。頼もしいですわ」

 

ア「よし、じゃあ中に入ろう。何があるか分からない。みんな、気を付けてくれ」

 

 

私達は橋を渡り、

メランコリウムへと足を踏み入れた。

 

 

ルビ「暗いね……それにすごくひんやりしてる」

 

ノ「いかにもお宝がありそうな雰囲気。なっにっがっあっるっかっな~」

 

ソ「…………あそこ。誰かいる」

 

テル「ルフレス族の夢守たちです。やっぱりここにいたですね」

 

ソ「つんつん………この人達つついても起きない」

 

ジュ「ちょ、ソフィ!危ないよ!」

 

ソ「そう?」

 

『寝ている人を無理に起こしちゃダメだよ?』

 

ソ「そっか、わかった」

 

ジェ「…………そのくらいで起きたりはしないでしょうが、不用意なことはしない方がいいですよ。ナハトの話ではラーフを封じるために夢を見ている…………つまり、結界を作り続けているんだそうですから。」

 

ジェ「しかし、ラーフが力を強めるにつれて、全ての夢守の力が必要になった。それでも、もう限界に達しつつある。彼らが抑えられなくなるのも、時間の問題でしょう」

 

ナ「だからテルンと星菜を犠牲にしようとしたんですの?」

 

『…………犠牲になれば、ラーフを封じることが出来るのなら……』

 

エス「駄目です!星菜!犠牲になんかなっちゃ駄目です!」

 

『……エステル……』

 

シ「エステルの言う通りよ、犠牲の上に成り立つ平和なんて……そんなの……」

 

ナ「……他にも何か方法はあるはずですわ。シェリア、私達は最後まで諦めませんわよ」

 

ユ「おしゃべりの時間は終わりだ。お出ましのようだぜ」

 

 

話をしていると、

奥からナハトが現れた。

 

 

ナハ「…………来たね」

 

ア「ナハト……!思念体か」

 

ナハ「わざわざ珠を全部持って来てくれて礼を言うよ。…………ジェイド、ご苦労だったね」

 

ジェ「ええ、どうなることかと思いましたが、皆さん、大変素直で助かりました」

 

ガ「どういうことだ、ジェイド!」

 

ユ「いてて、手が痺れちまった。きつく縛りすぎだっての」

 

ルビ「ちょっと、ユーリの縄が解けてるじゃない。いつの間に!?」

 

『え?…………?…………ゼロス?』

 

 

ルビアがそう言い、星菜は誰が解いたのか探っているとゼロスが不信な動きをしていた。

 

 

ゼ「ほいほい、お次はプレセアちゃん。お待たせ~っと」

 

プ「ありがとうございます」

 

ジェ「いいタイミングでした。さすがですね」

 

ロ「ゼロス、おまえ………」

 

ゼ「騒ぐなって。ここでジェイド達が動けないとここまで来た意味がねぇからな」

 

フ「くっ…………やはり罠だったのか……!?」

 

テル「そんな、でも……でもでも、みなさんから悪意は感じなかったのに、本当に感じなかったのに……」

 

ジェ「これで予定通り、3つの珠が揃いました。ナハト、次はどうするつもりですか」

 

ナハ「知れたことさ、ジェイド。いまこの場で、珠を壊し、テルンと歌姫を殺すんだ」

 

『…………っ!』

 

 

ナハトはそう言い、

冷たい目でこちらを睨み付けた

 

 

テル「……ナハト!やっぱり本気で……どうして……?」

 

ルー「てめぇ、テルンは自分の子供みたいなもんだろが!」

 

ロ「そうだ、そんなことはさせない!」

 

ナハ「夢の中でまで騒々しい………ジェイド、早く済ませなよ」

 

ジェ「お断りします」

 

ア「!?」

 

ナハ「……なんだって?」

 

ジェ「耳が遠いんですか?いけませんね。お断りする、と言ったんですよ」

 

『……ジェイド』

 

ジェ「ラーフが復活すれば、私たちの世界も滅ぶ。つまり我々全員が死ぬというのに、そんなことする訳ないでしょう」

 

プ「………当然です」

 

ロ「え?それじゃ、何か見返りの約束とかがあったから協力してたとかじゃないのか?」

 

ユ「おいおい、オレたちの本体は、それぞれ自分の世界にあるんだぜ?どんな約束だって意味なんかねぇよ」

 

 

ジェ「そういうことです。私たちの目的は最初からラーフの撲滅、ただ1つ」

 

リオ「ふん、食えないやつらだ。まさかとは思ったが、ここまで計算していたとはな」

 

ナハ「僕を……僕を騙したのか。目覚めの人に過ぎない分際で………」

 

ジェ「………それすら思い出せませんか。そもそも我々にラーフの危険を説いたのは貴方だったんですが。貴方は自分で矛盾していることに気づいてもいない。いや、それどころか指摘されてなお、理解することもできない。それこそが貴方の精神が取り込まれていることの何よりの証拠です。…………ラーフにね」

 

ア「ラーフに!?ナハトが!?ジェイド、一体…」

 

ナハ「だましたな!だました!!だました!だました!だました!!だましただましただましただました!!!ジェエエイドォォオオ!!!!消えてしまえ!!!」

 

ジェ「!!」

 

『ジェイド!…………っ!!』

 

 

ナハトはジェイドに向かって衝撃波を放った。

星菜は咄嗟にジェイドを突き飛ばしたため、衝撃波を食らった。

 

 

ジェ「…星菜…」

 

テ「ファーストエイド!星菜、無茶しないで」

 

『ティア…ごめんね』

 

ソ「大丈夫?星菜は私が守る」

 

テル「目覚めの人を呼んだのはボクたち……だからボクが守るです!」

 

ナハ「どいつもこいつも………そうかい、そんなに僕が嫌いなら自分に殺されるがいいさ!」

 

 

ナハトはそう言うと、どこからともなく自分達そっくりな魔物?が現れた。

 

 

ルビ「え、あ、あたしたち!?」

 

ノ「ぜ、全員こっちにいる、よね。ど~なってんの!?」

 

ヴ「…オレたちの姿をしたヴールかっ!」

 

ソ「ニセモノ…」

 

『なんか、気味悪い……自分の姿なのに……』

 

ス「胸クソ悪いマネしてくれんじゃねぇか!」

 

ルビ「テルンだけ向こうにいないみたい。どうして……?」

 

ノ「ルフレスは作れない、とか?」

 

ナハ「ここでみんな死ね!2度と目覚めない眠りに落ちるがいい!!」

 

ルー「胸糞悪ぃ……てめぇ、なんか胸糞悪ぃぞ、ナハト!」

 

フ「気を付けろ!もしあれが本当に僕たちと同じ力を持ったヴールなら………厄介なことになる」

 

ユ「心配すんなって。なんとかなんだろ」

 

ジェ「もちろん我々も協力しますよ」

 

ゼ「やれやれ、やっと本気で暴れられるって訳だ」

 

メ「メルディも頑張るよ!」

 

プ「私もやります」

 

ガ「要するにナハトがおかしくなったんで一芝居打っていた。そういうことでいいんだな、ジェイド?」

 

ジェ「話が早くて助かります。ほら、来ますよ」

 

ナハ「がはぁ!!」

 

ルビ「あ、ナハトが逃げる!どうして?」

 

『きゃ!!』

 

ミ「しまった!星菜が!!」

 

 

ナハトが奥へと姿を消した。同時に星菜は自分の姿をしたヴールに連れてかれてしまった。

すると、通路が壁で閉ざされた。

 

 

ロ「なんだ、ナハトが通った後、通路が壁で塞がっちまったぞ。あれじゃ追いかけられない!」

 

リ「壁なんてあたしのファイアボールで壊してやるわ!」

 

エス「私もホーリーランスでお手伝いしますね」

 

ルビ「ならあたしはイラプションで!」

 

ミ「なら私はサンダーブレードを」

 

コハ「そんなのじゃ駄目!私の殺劇舞荒挙でぶち壊してあげる!」

 

レ「ちょ、コハクちゃん?物騒よ?ジュード君何か言ってやってよ」

 

ジュ「殺劇舞荒挙なら、僕もできるよ…………手伝うよ(ニコッ)」

 

ゼ「いや、そうじゃなくて………てか爽やかな笑顔で言うことじゃないでしょ!」

 

コ「だいじょぶだよ。いざとなったらホーリージャッジメントするから、ね?」

 

ゼ「…………あ、うん」

 

ル「ジュードとコレットも、入ったんだね…………守り隊に」

 

ユ「………なぁ、前見たときより美少女守り隊だっけか?あれ、収まるどころか、広がってねーか?」

 

ア「いや、いつの間にかこうなってたと言うか……何でこうなったというか……」

 

テル「あ、あのあの、ボクがあそこまで行って、なんとかするです!……ですから」

 

ロ「わかった。みんな、テルンを援護して奥の壁を目指そう!」

 

 

塞がれた壁をどうにかするため、テルンは壁を目指すことになった。壁まで行く間、自分達の姿をしたヴールと戦い始めた

 

 

リ「デモンズランス!」

 

コハ「レイ!」

 

ソ「スカラーガンナー!」

 

エス「スターストローク!……手強いです」

 

コ「きゃっ!!」

 

テ「ノクターナルライト!…………コレット大丈夫?回復するわ、ファーストエイド!」

 

コ「あ、ありがとティア」

 

エ「自分相手なんて趣味悪ぃやり方しやがって……」

 

ハ「んじゃ、一気に片付けるわ。シェリア、最大威力の魔術放ちましょ」

 

シ「!…………ええ、やりましょう、みんな、離れててくれるかしら?」

 

ロ「一気に?どうするんだ?」

 

ゼ「(俺様、何か嫌な予感)ロイドく~ん、一応、離れておこうぜ~」

 

ロ「何でだよ?危ないだろ?2人だけじゃ」

 

ゼ「(危ないのは俺様達かも)ここは任せて、な?」

 

ハ「ディバインセイバー!」

 

シ「インディグネイション!」

 

 

ドガーーーーン!!!バギバギっ!!

 

 

「「「…………」」」

 

ハ「ぐふふ~♪片付いたわね」

 

ユ「(敵とはいえ……)」

 

ロ「(あまり、いい気分じゃない……)」

 

シ「さ、壁を壊しましょう?」

 

フ「………はっ!!か、壁はテルンが何とかしてくれるみたいだから」

 

テル「は、はいです!…………この壁、ナハトのすごい意志を感じるです」

 

メ「テルン、消せるか!?」

 

テル「は、はい!大丈夫、やるです!ただ………少し、時間がかかる、かも……」

 

プ「それでいいから、お願いします。その間………私たちがテルンさんを守ります!」

 

 

テルンは壁に向かい念じ始め、その間テルンを守ることにした。

すると、自分達の姿をしたヴールが数体現れた。

 

 

プ「増援です!」

 

ユ「ちっ、次から次へと。敵になってみると、面倒くせえもんだな!」

 

ゼ「ま、そういう道を選んじまったんだから諦めるしかねぇんじゃねぇの?」

 

ユ「はっ、違いねぇな」

 

ジェ「みなさん、戦いの最中だというのに、楽しそうですねぇ」

 

ユ「誰かさんのお陰でさんざん我慢を強いられてきたからな。せいぜい憂さ晴らしさせてもらうさ!」

 

 

 

 

エス「レイスティング!」

 

ジ「月牙!」

 

ル「ファイアボール!」

 

ジェ「セイントバブル!」

 

ゼ「瞬迅剣!」

 

ユ「爪竜連牙斬!」

 

テル「………やった!開きました!」

 

ロ「よし…………!危ない!虎牙破斬!……きりがないぞ」

 

リ「………うざいわね」

 

エス「………リタ?」

 

リ「万象を為しえる根源たる力…太古に刻まれしその記憶」

 

レ「ちょ、ちょ!リタっち?!」

 

リ「…我が呼び声に応え、今ここに蘇れ! 」

 

ル「な、なんか危なくない?」

 

ア「ま、まずい!みんな、離れろ!」

 

リ「エンシェントカタストロフィ!! これがあたしの研究成果よ!…………あー、スッキリしたわ。これで片付いたわね、さ、行きましょ」

 

ロ「あ、ああ……みんな、奥へ進もう!」

 

ゼ「ふぅ~、ひやひやしたぜ」

 

フ「まさか自分自身と戦うはめになるとは思わなかったな」

 

ナ「ええ、仲間と同じ姿をしたものを攻撃しなければならないなんて、気分のいいものではありませんでしたわね」

 

ルビ「でも力も同じだったし、よく勝てたわよね、実際」

 

ガ「いくら同じ姿をしていても、奴等は俺達と違って、仲間意識がなかった。その違い、ってとこかな」

 

ルー「おまえ、よくそんなこと恥ずかしげもなく言えるな………」

 

ジ「それで、ようやく詳しい話を聞かせてもらえるのかしら?」

 

ロ「そうだ、ナハトはどこに行ったんだろう。星菜は連れてかれちゃったし………っていうか、何でいきなりいなくなったりしたんだ?」

 

ジェ「この先に彼の本体があるんですよ。消耗したのでそこに戻ったのだと思います。…………ラーフもそこにいる訳ですが」

 

ヴ「ナハトはラーフのもとにいるのか…………。なぜだ?」

 

ジェ「この世界をヴールで呑み込むためでしょう。なぜなら………ナハトとラーフは一体化しているからです。」

 

テル「一体化!?ど、どどどういうことです?」

 

ジェ「………前に貴方達が初めてナハトと出会った時、ちょうどメランコリウムの中でラーフが活性化したのです」

 

ナ「……あの橋が落ちて、異様な気配がした時の事ですわね」

 

ジェ「ナハトはラーフを鎮めるために同化を試みた。その結果、鎮めることはできたものの、彼の精神は徐々に汚染された。そこで私達は、ラーフに取り込まれたナハトに真意を悟られずに、ラーフを倒す策を考えた、という訳です」

 

フ「石盤を落として珠のことを知らせたりしたのも、わざとだったんだな」

 

ユ「敵のふりをしたり、少しずつこっちのやつをそっちに寝返らせたり、もな」

 

ゼ「俺様、なかなかの演技だったろ?」

 

ルー「待てよ、俺は何も聞かされてなかったぞ?」

 

ジェ「ああ、貴方は嘘が苦手そうでしたから。それに本気で私たちから寝返る人がいた方が説得力が増しますからね」

 

ガ「正直者ってことだ。よかったなルーク」

 

コ「よかったね」

 

メ「メルディはみんなに話すが出来なかった。ごめんな」

 

ルー「…………なんか納得いかねぇ」

 

ジ「それで、ナハトは自分の体に戻っているのだったわね?なら急いだ方がいいんじゃないかしら」

 

ジェ「そうですね。また新たなヴールやら偽者やらを生み出されては厄介ですしね」

 

ノ「ねぇねぇ、でもさ、あたしらの切り札ってテルンと3つの珠と歌姫………星菜っちじゃん?でも珠の使い方はまだわかってないじゃん」

 

フ「確かに、このまま挑んでもいいものかな」

 

ジェ「ふむ、それについては…………」

 

テル「???」

 

ジェ「まぁ多分、大丈夫でしょう」

 

ア「どういう意味なんだ?」

 

ジェ「それより急ぎませんか。ナハト、いやナハト=ラーフと呼ぶべきか。彼が動き出してからでは手遅れになる」

 

リ「そうよ。星菜連れてかれたのよ!こうしてる間に何されるか……」

 

エス「そうです!星菜の貞操の危機です!急ぎましょう!」

 

ロ「………あ、ああ………どのみち迷ってる時間はないってことか…………だったら仕方ない、行こうぜ」

 

ア「分かった、大きな賭けだが、やろう。テルン、いいか?」

 

テル「あ、はい」

 

ア「どうした?」

 

テル「………ナハトが自分から悪くなったんじゃないって分かってよかったです。でも、そのナハトと戦うですよね……」

 

ア「………すまない。気休めにしかならないかもしれないけど、希望は捨てずに行こう」

 

シ「じゃあみんな、極悪非道なラーフに取り込まれたナハト………いえ、ナハト=ラーフをボコり!愛しの歌姫、星菜を助けだしに行くわよ!」

 

コハ「ボコメキョだね!」

 

守り隊一同「「「おおーーっ!!」」」

 

ゼ「よ、よし、行くぜ(こ、こぇ~敵に回したくねーわ。)」

 

フ「行こう!」

 

 




美少女守り隊のメンバー増えました!

隊長:シェリア
副隊長:リタ
隊長:エステル、コハク、ティア、ミラ、メルディ、ルビア、ジュード、コレット


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21話 救出

 

星菜side……

 

私は自分自身の姿をしたヴールに連れてかれメランコリウムの奥へと進んでいた。

 

 

『ね、ねぇ………どこに連れていくの?』

 

ナハ「…………」

 

ヴ星「………」

 

『………あ、あの』

 

?「グルルル……」

 

『っ!!な、何?あれ………』

 

 

呻き声が聞こえ、それを見ると…………

巨大な球体の姿をしたヴールがいた。

 

 

『………これが……ラーフ?』

 

ラ「グルルル…………」

 

『どうしよう……私だけじゃ…………?あ、あれは…………ナハト!?』

 

 

見覚えある姿が見え、よく見てみるとラーフの体内にナハトが入っていた。

 

 

『………ナハト……同化………してるってこと?』

 

ナハ「そう…だ。歌姫であるお前は……消えるんだ………」

 

『みんなは他に方法があるって言ってくれた。だから、みんなを信じる………私は消えたくない!』

 

ナハ「ふん……死んでるくせに………」

 

『死ん……でる?…………私が?』

 

ナハ「おまえは…………死んでるんだよ」

 

『そんな……私は……生きてるよ!記憶だって』

 

「お前は……忘れている………忘れたことすら気づいてない…………今教えてやろう………………本当の記憶を」

 

『え…………っ!!?何……これ………!?』

 

 

ラーフから溢れた負のエネルギーが私を包んだ。その時、私の頭に映像が流れた。

 

…………学校から帰って、家に帰って…それから………私は…………

 

 

ナハ「僕なら………生き返らせる事が………できる………力を貸せば………」

 

『私………は………』

 

 

 

気づかぬ間に失っていた記憶がラーフに取り込まれたナハトによって戻り、私はそこから意識が薄れた。

 

星菜side……………………END

 

 

 

 

 

 

ナ「………ここはもうラーフを封じる結界の内側なんですの?特別なにも感じませんけど」

 

ジェ「結界はあくまでヴールやラーフに対するものですからね。私たちには影響ないんだと思いますよ」

 

ユ「実感涌きにくいけど、実際、ラーフが出て来れない以上は効き目あるってことなんだろうぜ」

 

ゼ「だからルフレス族であるナハトだけが出入りしていたってことだな」

 

ジェ「恐らく。ナハトもその力を得ていたとはいえ、本当の意味でのラーフの姿も力も見た者は、まだ誰もいません」

 

ロ「それだけ気を付けなきゃならない相手ってことだな。そいつがこの先にいる…………ってことか」

 

テル「………はい、いるです。近いです」

 

 

メランコリウムを進み、奥へと進むと球体の姿をしたヴールとナハトがいた

 

 

ナハ「…………」

 

ア「ラーフ………これがラーフなのか」

 

ヴ「なんて禍々しさだ…………人の負の感情が集まるとこんな化け物になるのか」

 

ソ「気持ち悪い……」

 

エス「見てください!星菜がいます!」

 

 

エステルの指す方向を見ると、ラーフの近くに星菜がいた。

 

 

ロ「星菜!無事か!?」

 

テ「待って、様子がおかしいわ」

 

『…………。』

 

コ「どしたの?星菜、だいじょぶ?」

 

『…………消えろ……』

 

ア「星菜?………っ!?」

 

 

アスベルが近寄ると星菜はどこから取り出したのか、剣でアスベルを攻撃した。

よく見ると、星菜の目は光が宿っていない………

 

 

ソ「ヒール!大丈夫?アスベル」

 

ア「あ、ああ…………どうしたんだ、いったい?」

 

ガ「操られてるのか?」

 

テル「あ、あの………操られてるんですが……半分は、星菜さんの意思です!」

 

ル「何だって!?」

 

リ「そんな!どうして!」

 

ナハ「………夢の………夢への闖入者ども、自分や仲間を斬り………斬り伏せるのはどんな気分…………だったかな」

 

ア「おまえ……!」

 

ジェ「はぁ、闖入者は貴方の方でしょう。ラーフ・ネクリア」

 

ナハ「………僕が………なんだって?いや、僕はナハト………だ。ラーフでは……ない」

 

ジェ「惑わされてはいけませんよ、みなさん。今しゃべっているのは、ナハトの口を借りたラーフです」

 

ガ「同化したことで、ナハトの自我がラーフの知性の代わりを果たすようになってしまっているのか……」

 

ナハ「………僕はナハトだ。僕はラーフを封じる………封じ………た。これから…………自由になる………自由に」

 

ゼ「おいおい、何をおっ始めるつもりだ!?」

 

ナハ「路がある……夢の路が。そこを通る………夢見る奴等の…………夢を………たどって………あらゆる………世界に………出……る!そのために……まずおまえ達を消す!」

 

 

ナハト=ラーフが言うとヴールを生み出すクリスタルが出現した。

 

 

ノ「見て!クリスタル出たよ!」

 

ルビ「クリスタルからなにか吸収してる………まさか他のヴールの領域から力を!?」

 

ジェ「いけません、あれで一気に力を増そうというつもりです。急いでクリスタルを破壊しなければ」

 

テル「ナハト!ナハト!ラーフに負けないで!ナハト!」

 

ア「危ない、1人で行くな、テルン!」

 

 

 

ラーフを守るようにヴールが現れ、

それぞれ戦闘に入った。

 

 

ロ「魔神剣!」

 

ガ「弧月閃!」

 

ナハ「がああああああああ!!」

 

ルー「駄目だ、まるで傷を負わせられねぇ!」

 

ロ「傷を受けた傍から治してしまうのか。クリスタルから先に破壊しよう!」

 

ジ「わかったわ」

 

ソ「シェルスロー!」

 

『…………』

 

リ「スプラッ…!駄目、出来ない!星菜に攻撃するなんて!」

 

エス「リタ…………!危ない!」

 

リ「………!」

 

 

リタが攻撃に戸惑っていた隙をついて星菜はリタに攻撃しようとした。

それをユーリが攻撃を防いでくれた。

 

 

『…………邪魔……』

 

ユ「悪ぃな、邪魔するぜ」

 

リ「……ユーリ…あんた…」

 

ナ「星菜を傷つけたくはない…その気持ちは皆同じですわ。私達とて星菜と戦いたくはありません。……ですが、今、私達が倒れてしまっては、誰が星菜を助けるのです!」

 

エス「ナタリアの言うとおりです。リタ、私たちが助けないと」

 

リ「ナタリア………エステル…………わかったわ」

 

ス「ライトニング!ミラ、そっち頼んだぜ」バキッ!

 

ミ「任された、フレアボム!」バキッ!

 

 

リタ達やり取りをしている間に

スパーダとミラがクリスタルを破壊した。

 

 

メ「ワイール!クリスタル、全部壊したよ!」

 

ア「よし、今のうちにラーフ本体に攻撃しよう!」

 

ナハ「僕の邪魔を、邪魔、邪魔だ、邪魔邪魔邪魔ぁあああああ!!!」

 

テル「ナハト、目を覚まして、ナハト!」

 

ナハ「がはあおおああああああ!!よく、よくよくもおああああ!!!」

 

ロ「苦しんでるぞ!どうだっ、ラーフ!」

 

ジェ「今です!例の3つの珠を!」

 

ヴ「テルン…………できるか!?」

 

テル「ナハト………!…………分かったです。やるです!!」

 

ヴ「すまない、頼む」

 

テル「…………。」

 

 

テルンは今まで手に入れた3つの珠に祈った

…………だが、珠は反応しない

 

 

テル「……………………!?駄目です、なんの応えもない!なんの応えもないです!!確かに力を感じるのに、なにも起きてくれない、どうして!?」

 

ルビ「そんな、ここまで来て!」

 

ア「なにかやり方が間違っているのか!?」

 

ナハ「くふ、く、くかかか…………愚か……その珠……所詮………ただの感情の塊。意志なきもの………を起動など出来……ない。夢守たち………レーヴァリアに満ちる喜びの感………情をかき集めて………まで、珠を作ったが………無駄だっ………た………」

 

フ「珠のあった場所が徹底的にヴールの領域化したのはそのせいか。珠が吸い尽くしてしまったんだな……」

 

ノ「そんだけやったのにダメだったってこと!?それってないよ!世知辛すぎ!」

 

テル「ナハト………」

 

ナハ「無用の珠……無用の目覚めの人……無用の継ぎの仔……無用の世界…………無用の夢!!」

 

 

ラーフをみんなで攻撃した傷が凄まじい速さで塞がっていく………

 

 

ノ「うげっ!また出たクリスタル!」

 

ルー「やべぇ、すげぇ勢いでラーフの傷が治っていく!」

 

ナハ「は、は、は、は、僕が……ただ僕だけがあれば……いい。他は……消えろ!!」バシュン!!

 

ア「うわあああっ!!」ドガッ!

 

プ「さっきよりずっと強力です……」

 

ナハ「消えろ、消えろ、消えろ、夢から落ちて無へと消えてしまえ」バシュン!!

 

『………全て……消えろ………』ザッ!

 

ユ「ぐっ!……これは、ちっとやべぇかな」

 

ロ「くそっ、こんな……」

 

テル「…………どうしよう、このままじゃみんなが………ナハト、やめて、やめてよ!」

 

ナハ「無だ、無。なにもかも無。怒りも悲しみもなにもない無。あかかかかははははははは」

 

『………滅びよ……』

 

テル「嫌………嫌です。ボクが、ボクがみんなを守らなきゃ。ボク、いつも守ってもらってたです。だから今度は守りたい…………守りたいのに!なんで!なんで珠は応えてくれないですか!みんなも、ナハトも、星菜さんも助けたいのに!!…………え………?」

 

 

すると、テルンの思いが届いたのか、

珠が共鳴し始めた。

 

 

ルビ「珠が?起動した!?どうして!?」

 

ジェ「間に合いましたか……」

 

テル「力が………響きあって………温かい………。…………!そうか、ボクは………」

 

ナハ「……テ………ルン?な……に……をした?」

 

ソ「クリスタルが消えた………」

 

フ「ああ、それにラーフも弱ってるみたいだ。3つの珠の力が効いているんだ」

 

ア「テルンが……テルンがやってくれたおかげだ」

 

ナハ「う、ううぐ、ぼ、僕を、こ、こん………なこ………んな……!」

 

テル「ナハト………もう街に帰るです」

 

ナハ「うう………ま………だ、こ、このま、ま、ま、まだあああああ!!」

 

 

ナハト=ラーフが苦しみだしたと同時に

辺りからヴールが溢れだした

 

 

メ「バイバ!またヴール出てきたよ!」

 

ノ「ま、まだやるつもりみたいよ、あいつ」

 

テル「ナハト……ボク……絶対に諦めないから!」

 

ア「危ないテルン、無茶するな!」

 

ジ「ラーフを倒せるのは今だけ。彼を信じましょ?」

 

ア「………分かった。みんな、行くぞ!」

 

 

「おごうおおあ………あ………あああ」

 

ルー「またあいつクリスタルを出して回復しようとしてやがる。往生際が悪いっての」

 

ジェ「また回復されては厄介です。このまま一気に攻めましょう」

 

ロ「待てよ、それじゃナハトが………」

 

ナハ「テ………ルン………僕の継ぎの……仔よく……やったね」

 

ロ「!?まさか………」

 

テル「ナハト!正気に戻ったの!?」

 

ナハ「ラーフの力が衰えたおかげで………支配が弱まったようだよ。…………彼女は………戻らないみたいだが…………今ならラーフにとどめを刺せる。さあ、ケリを………!」

 

『…………』

 

 

ラーフの力が衰えたことにより、ナハトは正気を取り戻しつつあるが、星菜はまだ剣をこちらに向けて今も攻撃をしてきている。

 

 

テル「待って、その前にナハトを助けるから」

 

ナハ「………駄目なんだよ、テルン。今の僕はラーフの力の要なんだ。でも僕が消えれば、ラーフは統合を保てなくなる。ただの弱いヴールたちに分解するだろう。だから…………」

 

ガ「………俺達にあんたを殺せって言うのか!?」

 

ナハ「ラーフの浄化は全てのルフレスの悲願だった。この身でそれが達成できるというのなら喜んでそうするよ」

 

テル「そんな、嫌だ!!絶対に嫌だ!!!」

 

ナハ「テルン、これは僕らの使命なんだ。ヴールと戦い、消えていく。それがルフレス族の宿命なんだ」

 

テル「嫌だ!!使命とか知らないです!」

 

ナハ「また回復するまで時間がない。テルン、聞き分けのない…………僕のことより……彼女を……助けてあげてくれ」

 

テル「嫌だ!ラーフが人々の心の暗さの現れなら、それを消すのに悲しむなんて間違ってる!みんなにそう教わったです!ボク、絶対に星菜さんもナハトも助けるです!」

 

ロ「………テルンよく言ったな!みんな、ナハト以外のラーフだけを破壊するんだ。動きの鈍い今ならできるはずだろ」

 

ア「ああ、やろう!みんな、ナハトを傷つけないよう、注意してくれ!星菜は何とかして気絶させるんだ!」

 

ノ「うう、難しそ~。………でも、やるしかないんだよね!」

 

ジェ「やれやれ、若い方は熱血ですねぇ。仕方ない、付き合いますか」

 

ユ「本当はそういうのまんざらじゃないって顔してるぜ、ジェイド」

 

ソ「たああああっ!」

 

ジュ「………ごめんね…はぁ!」

 

『っ!!』

 

 

 

ジュードは隙をついて星菜を気絶させ、倒れる寸前で受け止めた。

そして、みんなが協力しあったおかげでラーフを倒すことに成功した。

 

 

 

ナハ「……………………僕は……消えて………な………い………?」

 

テル「ナハト!よかった、ナハト!!」

 

ナハ「………みなさん、テルン、大変な迷惑をかけてしまった。僕は………僕はひどいことを…………」

 

ユ「ラーフの言わせたことだ、気にすんなよ」

 

ナハ「そうであっても、僕の中に付け込まれる隙があったという事です。ルフレスのヴールの天敵としての本質を過信しすぎたのか……テルン、本当によくやってくれた。育み手とし誇りに思うよ」

 

ア「俺たちも礼を言うよ。テルンが珠を起動してくれなかったら、ラーフを倒し、ナハトを助けることもできなかった」

 

ナ「私たちを守りたいという強い意志が3つの珠を起動させる鍵だったんですのね」

 

テル「あ、あのあの、みなさんのおかげです。というか………気持ちだけじゃなくて、本当に力をくれたです。訳を知ってびっくりでしたけど………」

 

ナハ「…………そうか、じぶんのほんしつ理解したんだね、テルン」

 

ア「どういうことだ?」

 

ナハ「我々ルフレスもヴールも、レーヴァリアの全てはみなさんの夢………つまりは心から応じているのは知ってますね。ところがテルンの場合、みなさんを含む全ての夢見る人の良心だけから生まれた仔らしいんです。多分、ラーフたちヴールの拡大に対する人々の心の反動なんでしょう。この仔とみなさんは直接繋がっているんですよ」

 

ロ「そうか………俺たちはみんな少しずつテルンの一部でもあったんだな」

 

ノ「な~んかテルぽんって、守ってあげなきゃなって感じだったんだけど自分の良心じゃあ、当然だよね~」

 

ソ「良心………きれいな心?」

 

フ「良心は、ともすると弱気で決めることが出来ない…………しかし信じることのためなら大きな力の源となる」

 

ルビ「なるほど、それでああいう性格なんだね、テルンは」

 

テル「え、ええと………」

 

ガ「……そういえば、前に夢紬であることは危ない綱渡りだって言ってたな。あれはどういう意味だったんだ?」

 

ナハ「それは……そのままの意味です。………テルン、戦うルフレスなんて聞いたことがあるかい?」

 

テル「戦うルフレス………夢守は………違うですか」

 

 

テルンはそう答えると、ナハトは難しい顔をしながら頷き、夢守と夢紬のデメリットを説明した。

 

 

ナハ「夢守も確かに戦う。でもそれは守るためだ。自分から能動的に攻撃することはない。それがルフレス族の本質だからだよ」

 

ジ「そのルフレスでありながら戦うことのできる夢紬とは矛盾した存在、そういうことかしら?」

 

ヴ「そうか、だからなれるルフレスは少ない……」

 

ナハ「夢紬として戦うということは、戦いの感情に身をさらすこと。それに呑まれる危険を冒すこと。呑まれれば、もはやルフレスではなくなる。新たなヴールの誕生です」

 

ガ「じゃあひょっとして、あんたも………」

 

ナハ「ええ。並のヴールならなんとかなりましたが、ラーフ相手では甘かった。さっき言ったとおり、思い上がったせいです」

 

ノ「テルぽん、ヴールにならなくてよかったね~」

 

テル「は、はい、危なかったです」

 

ナハ「テルンはみなさんと繋がっている。多分、みなさんがここにいる限りはその心配はないでしょう」

 

テル「ほ…」

 

 

 

テルンは安心したのか、一息ついた。

ゼロスはそういえばとジェイドに話しかけた。

 

 

 

ゼ「それにしてもジェイド、あんたこうなるって分かってたのか?」

 

ジェ「確信はありませんでしたがね。いろいろと考え合わせた結果、その可能性に賭けてみようと思ったまでです」

 

ルビ「だからって………教えておいてくれたら、もっと安心できたのに」

 

ロ「まぁいいじゃないか、難しい話は。俺たちとテルンは友達。それだけで理由は十分だろ?」

 

ラ「うるるる…………」

 

 

みんなが和んでいると何処からか呻き声が聞こえた。声のする方向を見ると、先程倒したラーフの欠片が奥へと移動していた。

 

 

ノ「あっ!?なにあれ!?」

 

ジェ「しまった!…………ラーフの欠片がまだ残っていたか!」

 

ノ「え~!早く追わなきゃ!」

 

ア「急いてはダメだ!俺たちは既にかなり消耗している。用心して行こう」

 

 

 



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22話 ラーフとの決戦、決着

 

ナハトをラーフから助けることに成功し、バラバラになったラーフの欠片を追ってメランコリウムの最奥へとやって来た。そこにラーフの欠片が集まっていた。

 

 

ラ「うるるる…………嫌ダ…………消エタクナイ…………消エタクナイ…………」

 

ユ「ラーフは意思がないんじゃなかったのか」

 

ナハ「なんて事だ………僕の意思の名残で…しかも、消滅を拒んでいる」

 

ア「来るぞ!」

 

ラ「うるるうあああ!!」

 

 

 

ラーフは叫び声をあげると、ラーフの欠片が集まり大きくなっていき、クリスタルを四方に出現させた。

 

 

 

ルー「おわ、クリスタルまで出しやがった」

 

メ「バイバ!すごい勢いで回復してる………前よりも大きくなってく!!」

 

ラ「嫌ダ嫌ダ嫌ダ嫌ダ嫌ダ………」

 

ナハ「消滅することへの恐れに突き動かされているのか………」

 

 

 

ラーフは消えたくない衝動でさっきよりも巨大化し始めている。

 

 

 

ゼ「おい、このままじゃ、結界を内側から破っちまうんじゃねぇのか」

 

ナハ「くっ、あと一歩というところで……」

 

テル「まだです!出来るです!駄目でも何度だってやればいいです!」

 

ナハ「テルン………!そうだね、そのとおりだ。僕としたことが」

 

 

 

テルンは夢紬へと変身し戦闘体制に入り、ナハトもテルンの意思を感じ、夢紬へと変身した。

 

 

 

ユ「夢紬が2人か。こりゃ心強いぜ」

 

ロ「だけど、ナハトは大丈夫なのか?さっきの話だと………」

 

ナハ「大丈夫、テルンとみなさんが一緒なら、呑まれる心配はありません。さぁ、テルンと僕でもう一度、珠を使います。その上でラーフを!」

 

ロ「ああ、任せとけ!」

 

 

 

珠の力で弱体化したラーフは、

クリスタルの代わりにヴールを召喚した。

 

 

 

ガ「珠の力でクリスタルが消えたのはいいが、代わりにあいつ、手下を呼び出したぞ」

 

プ「私たちの複製もいますね………」

 

ヴ「だがここまで来たんだ。俺たちならやれるはずだ」

 

ナ「そのとおりですわ。私達、決して負けません!」

 

ア「みんな、これが最後の決戦だ!気を抜くな!」

 

ロ「ああ!それと、ジュード。悪いんだけどさ……星菜の事、診ててやくれないか?」

 

ジュ「えっ?でも………」

 

テ「そうね、私たちが戦っている中、誤って攻撃が当たってはいけないし………万が一負傷しても貴方なら治すことが出来るでしょう?」

 

ジュ「ティア………」

 

ゼ「俺様も治すことが出来るぜ~?というわけで俺様も星菜ちゃんを診て」

 

 

 

ゼロスはそう言いながらジュードに背負われてる星菜へと歩み寄るが…………

 

 

 

ユ「蒼破刃!」

 

ゼ「わっ!ちょ、ちょっと危ないじゃねーか!何、攻撃してんの!」

 

ユ「あーつい、てがすべっちまったごめんなさい。」

 

ゼ「何その棒読みは………反省してねーだろ!」

 

ユ「ばれたか。いや、眠り姫に魔の手が降りかかろうとしてたからな。取り除こうとして、な」

 

ゼ「それで技が当たったらだめでしょーが!」

 

ユ「当てるつもりだったんだが………ちっ避けやがったか」

 

ゼ「たちが悪ぃぞ……てか、まさかお前まで入ってないよな?…………美少女守り隊に」

 

ユ「…………蒼破っ!」

 

ゼ「だからっ!攻撃すんなっての!ていうかまじかよっ!」

 

シ「ナイスよ、ユーリ!…………ゼロスのことは後で制裁するとして、今は目の前のラーフを倒さなきゃ」

 

コ「そだね、殺ろうゼロス!グランシャリオ!」

 

 

ユーリとゼロスのコントみたいな会話の中、

シェリアは宥めながら自分達の姿をしたヴールを倒していた。

コレットもチャクラムを構えてラーフを攻撃していた。

 

 

 

ゼ「コレットちゃん?字が違うよ?………はぁ、今は目の前の敵だな。エアスラスト!」

 

リオ「グランドダッシャー!全く、いくら敵とはいえ、自分の姿をしたやつを攻撃するのは気分が悪い」

 

ハ「ま、私たち本物組の方が強いってこと!ネガティブゲイト!」

 

エス「スターストローク!その通りです。本物が偽者に負けるわけありません!」

 

ナ「シュトルムエッジ!そうですわ。いくら姿かたちが同じでも、心がなければ勝てませんわ!」

 

 

 

自分達の姿をしたヴールと戦っていると、ラーフがヴールたちを吸収した。

 

 

 

ルー「おわぁっ、お、おい見たかよ、今の。ラーフに吸収されちまったぞ!」

 

フ「自分の力を取り戻すために、1度生み出した配下を再吸収したのか………?」

 

ナハ「同じヴール同士、より強い方が取り込んでいくということでしょう」

 

ルー「なんだよ………ヴールの癖にそんな簡単に使い捨てしやがって………なんかムカつくぞ」

 

 

 

幾つか攻撃していくと、

ラーフの体が裏表が逆に変わった。

 

 

 

ナ「な、なんですの、今のは!?裏表で………」

 

プ「はい、ひっくり返りました。どんな意味があるか分かりません。気を付けてください」

 

ナ「あ、あなたはこんな時でも動じませんのね。でもその冷静さ、頼もしいですわ」

 

ガ「まただ、また本体に吸収されたぞ!」

 

ノ「ねぇ、ラーフのやつ、吸収するたびに、なんか元気になってってない?」

 

ガ「そうらしいな。これ以上、吸収させないように片付けてしまおう!」

 

 

 

ジュディスはラーフを物理で攻めた。

すると…………異変に気づいた。

 

 

 

ジ「月牙!……あら?」

 

メ「ジュディス、どうしたか?」

 

ジ「あのラーフって子、ずいぶん頑丈なのね。攻撃があまり通らないみたい」

 

メ「だったら魔術で攻めるか?」

 

ジ「ふふ、そうね、お願いしようかしら」

 

 

 

倒しても、倒しても、ラーフは新たにヴールを召喚した。

 

 

 

ソ「また、ニセモノ呼んだ」

 

ユ「惑わされんなよ、今ここにいんのが本当の自分だ。形だけ真似したヴールなんざ、いくらいたってぶっ倒すだけだ」

 

ソ「ぶっ倒す………分かった。私、あいつらぶっ倒す!」

 

テ「一気に行くわ…………穢れ無き風、我に仇なすものを包み込まん、イノセントシャイン!」

 

ジ「来たれ雷…裁きを受けよ!煌華月衝閃!いかがかしら?」

 

ユ「これで片付けてやる。閃け、鮮烈なる刃!無辺の闇を鋭く切り裂き、仇名す者を微塵に砕く!漸毅狼影陣!」

 

ルビ「私だって!我らの糧たる常明の光よ、ここに集いてかの者を滅ぼせ!セイクリッドシャイン!」

 

 

 

ティア達4人が秘奥義を放ち、ラーフをその名の通りボコボコにした。

 

 

 

ロ「やった………のか?本当に?これで終わりなのか?」

 

ア「ああ、急に空気が軽くなった気がするし、間違いないと思う」

 

テル「やった!やりました、みなさん!すごいです!あのラーフ・ネクリアを本当に」

 

ナハ「僕もまだ信じられない………あのラーフを完全に消せる日が来るなんて」

 

ゼ「大丈夫か?またさっきみたいに欠片が残ってて復活とかないだろうな」

 

ナハ「それは大丈夫。珠の力を借りて分解したラーフの気もすべて浄化しましたから。もっとも珠もその力を使い果たしたらしい。3つとも消え失せてしまいました。目覚めの人のみなさん、改めてお礼を言わせていただきます。…………ありがとう」

 

テル「ボ、ボクからも、ありがとうです!」

 

 

 

テルンとナハトはラーフを浄化することができたことをみんなに伝え、お礼を言った。

 

 

 

ロ「改めて面と向かって言われると、なんだか照れ臭いな」

 

ナハ「テルンも頑張ったね」

 

テル「えへへ…………照れるです」

 

ナハ「でも、慢心してはいけないよ。まだまだこれから学んで、いずれは育み手にだってならなければならないんだから」

 

テル「は、はい」

 

ガ「はは、釘を刺されたな」

 

ナハ「結界を夢見る夢守たちの役目もこれで終わった。街の仔らも待ちわびているでしょう。さぁ、もうここにとどまる理由もない。是非街に戻り、みなさんを労わせていただきましょう」

 

エス「ジュード、星菜はどうです?」

 

 

 

エステルはジュードに星菜の状況を尋ねた。

しかし、星菜はまだ気絶したまま目を開けていない……

 

 

 

『…………』

 

ジュ「それが………全然目を覚まさないんだ。気絶させるために殴ったけど……強くはないのに」

 

シェ「何で起きないの?」

 

ル「状態異常……とかかな?」

 

ナ「では私にお任せを、リカバー!」

 

 

 

ナタリアは、治癒術の1つであるリカバーを星菜にかけた。

だが、星菜は起きなかった。

 

 

 

ジュ「…………駄目だ……変化がみられない。効いてないのかな?」

 

コハ「ラーフを倒したのに………何で?」

 

ナハ「…………」

 

コ「どしたの?ナハト?何かあった?」

 

ナハ「いえ、気のせいだと思います。さぁ、街へ戻りましょう。星菜さんについてはそこで考えてみよう(気のせいであれば………)」

 

 

 



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23話 心の中へ

 

 

ラーフ・ネクリアを倒すことに成功し、みんなはルフレスの街へと戻った。

だが、星菜は目覚めていない…………

 

 

ソ「起きないね、星菜……」

 

シ「治癒術が効かないなんて……」

 

ナ「微かにですが、息はしていますわ。でも、状態異常でなければ何故なのでしょう?」

 

テル「あ、あのあの、星菜さん、夢を見てるみたいです」

 

ロ「夢?でもここは夢の世界だろ?」

 

 

 

ロイドはここレーヴァリアが夢の世界だからテルンの言ってることがよく分からないと首をかしげながら言った。

 

 

 

テル「い、いえ、心が眠ってるです……ナハトなら知ってると思うです……」

 

ナハ「テルンの言う通り、精神に何らかのダメージがあり、その影響で星菜さんの心が眠ってるんだと」

 

ヴ「………目覚めないのか?」

 

ナハ「いえ心が眠ってしまっても、起きたいと思えば起きることが出来ます」

 

ゼ「やっぱ眠り姫と来たら、ここはあつ~いキスで目覚めるんじゃね?そして俺様が~星菜姫を起こして」

 

レ「あ、ずるい!オッサンが起こして」

 

ユ「絶風刃!」

 

プ「爆砕斬!」

 

 

 

ゼロスとレイヴンは下心丸出しの顔で眠る星菜へと歩み寄るが、

ユーリとプレセアの攻撃により阻止された。

 

 

 

レ「ぎゃー!痛い!痛い!いきなり攻撃しないで!」

 

ゼ「そーだそーだ!危ねぇだろ!」

 

ユ「いや、街の中に寝込みを襲おうとする獣(ゼロスとオッサン)がいてな。退治しようかと」

 

プ「はい、星菜さんが危なかったから」

 

ゼ「プレセアちゃんまで…………って、まさか」

 

プ「星菜さんの身に危険が迫ったら仲間でも容赦なく攻撃しなさい、とシェリアさんに言われました。」

 

シ「えらいわプレセア。2人は汚れたケダモノだからくくりつけておきましょ」

 

レ「…ケダモノって………オッサン達って、信用ないの?」

 

テ「寝ている人を、それも女の子を下心丸出しの貴方達をどう信用しろと言うの?」

 

ナ「眠っている無抵抗な星菜に襲おうなど……恥を知りなさい!」

 

ゼ「…………はい、すみません」

 

レ「…………反省します」

 

 

 

ゼロスとレイヴンは今の星菜にとって危険だと思い、ルークとジュディスによって縛られることになった。

その際、リタが2人に1発ずつ殴っていた。

 

 

 

ロ「まったく…………でも起きたいと思えば起きられるんなら何で覚めないんだ?」

 

ナハ「………恐らく、起きたくないと思ってるのかもしれません」

 

テ「そんな………なんとかならないの?」

 

ナハ「彼女の心の中がどうなっているか分かれば対処できますが…………入ってみますか?」

 

コ「そんなこと、できるの?」

 

ナハ「はい、テルン、ルフレスを集めてきてくれないか」

 

テル「はいです!」

 

 

 

テルンは街にいるルフレス族を呼びに行った。

数十匹のルフレスが集めることができた。

 

 

 

ナハ「今から彼女の心の扉を開ける。手伝ってくれ!やり方は目覚めの人を召喚したのと同じやり方だ。夢と心の扉を開ける」

 

テル「お願いです!みんな、力を貸して!」

 

ポ「もちろん!」

 

マ「この人、テルン達の大切でしょ?」

 

カ「みんなで助けよう!」

 

 

 

ナハトとテルンが呼び掛けるとオレンジ色のルフレス・ポルン、ピンク色のルフレス・マール、黄色のルフレス・カービィが了承し、それを見た他のルフレスも協力すると言ってくれた。

 

ルフレスがそれぞれ祈り始めると、7色の魔法陣が展開され、星菜の上に純白の扉が出現した。

 

 

 

ナハ「………成功した。これで彼女の心の中に入ることが出来ます。」

 

テル「ボクたちは外から維持しないとみなさんが帰ってこれないですから、ここで待ってるです。」

 

ロ「分かった。みんな、行こう!」

 

 

 

テルンとナハト達ルフレスが作った心の扉を通ってロイド達は星菜の心の中に入っていった。

(ゼロスとレイヴンはおいてかれた。)

 

 

 

 

 

ー精神世界ー

 

精神世界に入ると、建物内だった。

白い壁に薄桃色の床、窓はあったけど外は暗かった。

 

 

 

ルビ「ここが……心の中?」

 

コ「きれい……」

 

フ「ああ、すごく、綺麗だ」

 

ヴ「………何か聞こえる」

 

ロ「え?なにも聞こえないぞ?」

 

ソ「耳を澄ましてみて、微かだけど、聞こえるから………」

 

 

 

ヴェイグが何か聞こえたと言い、ロイドは聞こえないと言ったが、ソフィに耳を澄ましてみてと言われ、集中した。

 

 

 

ー………私、星菜。よろしくねー

 

 

ロ「聞こえた。でも、これ自己紹介か?」

 

コ「誰にしてるんだろ?」

 

プ「声は…………あっちからします。先に進んでみましょう。何かわかるかもしれません」

 

 

 

声のする方を目指して進んでいると、見慣れた女の子がいた。

 

 

ルー「あ!あれ星菜じゃねぇか?」

 

テ「本当だわ、ここは精神世界だから、きっと星菜の思念体なのかも」

 

星?「あら?お客様?わざわざここまで来てくれるなんて!」

 

ルー「何訳わかんねー事言ってんだよ!つーか何だよその格好!」

 

星?「私、可愛い?似合ってる?」

 

エス「はい!とても似合ってます!」

 

コ「うん、とってもかわいいよ」

 

ガ「いや、そうじゃなくてだな……」

 

 

 

 

 

目の前にいる星菜?はニコりと笑いその場でクルリと回った。今の星菜?の姿は頭に華をモチーフにしたティアラを乗せ、首に白いチョーカーをつけ、胸元に大きな赤いリボンが付いた淡いピンク色のドレスを着ていた。

 

 

 

ルビ「貴女のために来たのよ。みんな、星菜の事、すごく心配してるんだから!」

 

星?「私のために?うれしい!うれしいわ!私のために来てくれるなんて!」

 

ア「……何言ってるんだ?星菜は」

 

フ「星菜、聞きたいことがあるんだ。君はなぜ起きないんだ?」

 

星?「???何で?何で起きなきゃいけないの?」

 

テ「何でって……みんな貴女の事心配してるのよ」

 

星?「……嘘よ」

 

ナ「星菜?」

 

 

 

さっきまで嬉しそうに笑っていた星菜?は急に無表情になった。

そして、みんなに対して嘲笑うかのような笑みを浮かべた。

 

 

 

 

星?「心配なんてするわけないわ。本当は私なんてどうでもいいくせに」

 

テ「どうでもよくなんか」

 

星「どうでもいいに決まっているわ!私なんて心配してないくせに、嘘並べないでくれる?」

 

ルー「嘘じゃねぇ!」

 

星?「偽りの言葉なんてうんざりなのよ!消えてしまえ!」バシュッ!

 

 

 

星菜?は魔法陣を展開し、ロイド達に蒼い炎の塊をぶつけてきた。

 

 

 

リ「!今の………ファイアボール?でも、闇属性に近かった………」

 

星?「もううんざり!うんざりなの!私の事、要らないくせに!放っておいて!」

 

 

 

星菜?はそう叫ぶと、その場から走り去っていってしまった。

みんなは先程の星菜?の言動について話し合った。

 

 

 

ロ「………星菜はどうしたんだ?」

 

ア「別人………みたいだったな」

 

ジェ「恐らく、影かもしれません。ここは星菜の心の中、真実と嘘があると同じで心の内側が具現化したのかもしれないですね…」

 

ナ「心の内側………星菜は傷ついているのかもしれないですわね。言葉が届かないくらい」

 

レ「でも先に進めばわかるんでしょ?こんなところで話し込んでないで、行きましょ?」

 

ゼ「そーそー。あれが星菜ちゃんの影ならどこかに本物もいるかもしんねぇし、とっとと行こうぜぇ?」

 

リオ「そうだな、珍しく意見があ…………なぜ貴様らがここにいる!」

 

 

 

リオンは疑問と共に剣を向けた。

みんなは声のした方を見ると、なぜか置いてきたはずのレイヴンとゼロスがいた。

 

 

 

レ「ちょ!剣向けないで!扱いひどいんでない?」

 

リ「何であんたらがここにいるの!動けないように縛りあげたのに!」

 

ゼ「いや、テルンとナハトがな、許可してくれたんだぜ?縄も解いてくれたし」

 

リ「テルンとナハト………甘すぎるわ」

 

エス「とにかく、今は先に進みません?」

 

ス「だな………うお!何だこれ!」

 

 

 

スパーダが言い先に進もうとしたが、目の前……星菜の影が去っていった方には虹色の球体が3つ右、左、真ん中と現れた。

 

 

 

ジ「何かしら?」

 

ジェ「どうやらそれぞれ、どこかに繋がっているみたいですね………球体からは何か感じます。ここはそれぞれ別れて入ってみましょう」

 

ア「そうだな、みんなで行くのもあれだし、誰が行く?」

 

ゼ「俺様!俺様!左の球体に行くぜ!」

 

シ「ゼロスは危険だからロイド、ついてってくれないかしら?プレセア、コレットも」

 

ロ「任せとけ!」

 

コ「見張っておくね!」

 

プ「はい、分かりました」

 

ゼ「俺様、信用ないのね……」

 

ヴ「左はあまり危険を感じられない。」

 

ナ「でも……右と真ん中の球体からは嫌な気配が感じられますわ。特に真ん中からは………」

 

コ「だいじょぶだよ。とりあえず見てくるね?」

 

 

 

ロイド、プレセア、コレット、ゼロスは左の球体へと入っていった。

 

 

 

レ「じゃあオッサンは右の球体に行こうかな?」

 

リ「あんただけにしとくと何するかわかんないからあたしも行くわ」

 

エス「何があるかわかりませんし危険ですから。」

 

ジ「そうね、危険だもの」

 

レ「みんなひどくない?オッサンに対してひどくない?」

 

リ「普段のあんたの言動からじゃ信用出来るわけないわよ!」

 

レ「…………はぁ」

 

 

 

エステル、リタ、ジュディス、レイヴンが右の球体へと入っていった。

 

 

 

ユ「御愁傷様だな、オッサン」

 

ノ「ほ~ら、ユリユリも行っておいで~!」

 

ユ「ユリユリ?俺の事か?」

 

エ「ユーリ、あ、あの人たちが暴走したら、と、止めてくれる、かな?」

 

ル「う、うん、僕たちじゃ止められないし……」

 

ユ「何で俺が………」

 

ノ「あの事言っちゃうよ~」

 

ユ「あの事って?」

 

ノ「シェリンが作ったプ………うぐ~!」

 

 

 

ユーリが素早くノーマの口を塞ぎ、小声でノーマに話した。

 

 

 

ユ「…………誰に聞いた?」

 

ノ「コレっちからだよ」

 

ユ「コレっちってあいつか……他に知ってるやつは?」

 

ノ「コレっちと私だけだよ」

 

ユ「…………言うなよ」

 

ノ「オッケー!言わないから~!」

 

ユ「……俺も行ってくるわ。」

 

ア「あ、ああ。大丈夫か?何かあったのか?」

 

ユ「…………聞くな。」

 

 

 

疲れている表情を浮かべたユーリにアスベルが心配したが本人は大丈夫だと言い、エステル達が入った球体に入っていった。

その様子にエミルとルカは首をかしげていた。

 

 

 

ミ「なら、私は真ん中の球体へ入ろう。」

 

ジュ「1人で?危ないよ!真ん中からは嫌な気配がするみたいだし」

 

ミ「安心しろ、行くのは私1人ではない。ジュードとルカとクレスとティアも一緒だ」

 

ジュ「それなら………わかった、行こう」

 

ル「僕も?な、何で?」

 

ミ「ジュードは攻撃と治癒術が使える。ルカは魔法と力技がある。クレスは剣の腕がいい。ティアは遠距離攻撃と高度な治癒術が使える。だからだ」

 

ジェ「すごい観察してますねぇ。では5人は行ってきてください。」

 

ル「い、行ってくるよ」

 

テ「気を付けて行きましょ」

 

ア「俺たちはここで待ってる。気を付けてな」

 

ミ「ああ、任せろ」

 

 

 

ミラ、ジュード、ルカ、クレス、ティアは真ん中の球体へと入っていった。

残りはその場で待機することにした。

 

 

 

 

 

ー希望溢れる世界ー

 

ロイドside

 

 

ロ「……ここは?」

 

コ「何の建物なのかな?見たことないね~」

 

プ「星菜さんのもといた世界なんじゃないでしょうか。…………誰か来ます」

 

?「……それでね、わたしのゆめは、おおきくなったらおはなやさんになるの!せかいじゅうをおはなでいっぱいにするの!」

 

?「すてき!おはなばたけだね!わたしのゆめは、だいすきなひとのおよめさん!」

 

 

 

小さな女の子が2人歩いてきた。

1人は赤みがかった茶髪をポニーテールにした女の子、もう1人はピンクブラウンの髪を2つに結ったどこか星菜に似ている女の子だった。

 

 

 

 

ゼ「ガキだねぇ、夢一杯だぜ。」

 

コ「???ゼロス、どしたの?女の子だよ?」

 

ゼ「俺様、ガキンチョには興味ないの」

 

?「およめさんかぁ、すてき!せいなならすてきなひとみつけられるよ!」

 

せ「すずも、すてきなおはなやさんになれるよ!」

 

す「ありがとう!」

 

ゼ「何ーーー!あの子、星菜ちゃんなの!可愛い、可愛すぎる!」

 

 

 

ゼロスの態度が変わるのにロイドは呆れていた。

 

 

 

ロ「ガキには興味ないんじゃなかったのか?」

 

ゼ「今はガキでも星菜ちゃんは素敵に育ってる!………よし、今のうちに俺様の愛を」

 

プ「弧月閃!」

 

ゼ「わわっと!……攻撃しないで!」

 

コ「ゼロス?ダメだよ?(ニコッ)」チャキッ

 

ゼ「笑顔でチャクラム構えないで!」

 

ロ「…………はぁ、つまりここは星菜の小さい頃の空間か」

 

コ「星菜、幸せそ~」

 

プ「そうですね。とても、心が傷ついてるようには見えません。戻りますか?」

 

ロ「だな、1度戻ろうか」

 

ゼ「そうだな、ここにはなーんもないみてぇだし」

 

 

 

ロイド達はその空間から出た。

 

ロイドside END

 

 

 

 

ー裏切られる世界ー

 

ユーリside

 

 

球体に入ると、どこかの建物の一室にいた。

そこでは十数名の男の子と女の子が椅子に座り、大人の人の話を聞いていた。

 

 

 

ユ「こいつら、何してんだ?」

 

エス「勉強してるんです………あれ?ユーリ来たんです?」

 

レ「おたく来たくないっぽかったのに、どういう心境の変化よ?」

 

ユ「………色々あんだよ」

 

ジ「ふふ、何か弱みでも握られたのかしら?」

 

ユ「!!あんた、知ってんのか?」

 

ジ「あら、私は知らないわ?」

 

ユ「わかってて言ってんのか?」

 

ジ「どうかしら?」

 

リ「へぇー、つまりここは学校なのね…………ってあれ、星菜じゃない?」

 

 

 

見ると、白いキャミソールにピンクのスカートをはいて、ピンクブラウンの髪をサイドテールにした女の子がいた。

 

 

 

レ「ふむふむ、可愛いわねぇ、歳は10歳位か…………今のうちにオッサンの愛を星菜ちゃんに」

 

ユ「三散華!」

 

レ「痛いって!攻撃しちゃダメでしょ!」

 

ユ「被害がでないよう考えたから大丈夫だぜ?オッサン」

 

レ「大丈夫じゃない!周りが無事でもオッサンが大丈夫じゃないから!」

 

リ「ナイスよ、ユーリ。よくやったわ」

 

ジ「うふふ、…………あら?星菜どこか行くみたいよ?」

 

エス「追いかけましょう!」

 

 

 

ユーリ達は星菜と女の子を追いかけることになりついていった。

外の庭に星菜と複数の女の子がいた。

 

 

 

?「ごめんねー!ここまで来てもらって。あたしらあんたに用があるの」

 

せ「え?」

 

?「あんたさ、こないだ邪魔したでしょ」

 

せ「いきなりどうしたの?」

 

?「惚けんじゃないわよ!あたしらがあいつで遊んでたのにあんたが止めに来たじゃんか!」

 

?「お陰であたしらのおもちゃなくなったじゃないの!」

 

せ「…!!りたはおもちゃじゃないよ!他の子をいじめはダメなんだから!」

 

?「うるさい!今度からあんたで遊んであげる。いいよね?他の子をいじめちゃダメならあんたがいじめを受けても」

 

せ「そんな!どうしてそうなるの!」

 

?「黙れ!このっこのっ!」

 

 

 

星菜は複数の女の子から殴られ、蹴られ、女の子達は飽きたのか星菜を置いて去っていった。

星菜も、しばらくその場を動けなかったが、去っていった。

 

 

 

リ「何よ!あいつら!よってたかって1人を攻撃して!しかも前にあたしと同じ名前の子で遊んだ?ざけんじゃないわよ!ファイアボールしてやる!」

 

エス「でも、星菜はりたっていう子を庇っただけなのに………吊し上げます?逆さ吊りにして」

 

ジ「星菜は本当に優しい子ね。…………そうね、何発か殴っても問題ないんじゃないかしら?」

 

ユ「見てて気分いいもんじゃねぇな、ああいうやつらは一度痛い目見せてやんねぇとな」

 

レ「…………これが、心の傷?」

 

ジ「わからないわ。とりあえず、戻って話し合いましょう?みんなの意見を聞くべきだわ」

 

 

 

ユーリside END

 

 

 

 

ー存在しない世界ー

 

ジュードside

 

 

ジュードとミラ、ルカ、クレス、ティアが降り立ったのは、日が傾きはじめた街にいた。

 

 

 

ジュ「ここは…………街?」

 

ミ「ふむ、そのようだな。このような建物は見たことないが…」

 

ル「…もしかしたら、星菜のもといた世界なんじゃないかな?」

 

ク「ん?あれ、星菜じゃないか」

 

 

 

クレスが指す方向を見ると、こちらへと走ってくるピンクブラウンの髪をツーサイドアップに纏めた制服姿の星菜がやって来た。

ぶつかると思ったがすぅっとすり抜けていった

 

 

 

ジュ「今の……何だったんだろう?」

 

ミ「恐らくこれは映像というものではないか?過去の出来事が映りだしているため、我々に触れることが出来ない」

 

テ「つまり、ここは過去ってことかしら?…………とりあえず、星菜を追いかけてみる?傷ついた原因わかるかもしれないし」

 

ル「行こう」

 

 

 

ミラ達は、星菜を追いかけることになった。

追っていくと、2階建ての家に着いた。

 

 

 

せ「ただいま!」

 

?「………でも……」

 

?「俺の言うことが聞けないのか?お前は言う通りにしてればいいんだ!」

 

せ「今帰ったよ、お母さん、お父さん」

 

?「……………わかったわ……」

 

?「わかればいいんだ。俺が一番偉いんだからな」

 

せ「………部屋に行ってるね」

 

?「おい!こっちに来い!」

 

せ「……え、えと………っ!!」

 

 

 

父親は怒鳴りながら星菜を呼び、星菜は父親の側まで行くと、殴られた。

 

 

 

?「お前は!このっ!」

 

せ「っ!!…っ!!…………ぅぅ……」

 

?「あ、あなた………」

 

?「俺は一番偉いんだぞ!町内会の会長なんだぞ!その俺が要らないって言ったら要らないんだよ!お前は俺に逆らうのか!」

 

?「…………わかり、ました。」

 

せ「!ごめん、なさい………ごめん、なさい!」

 

 

 

父親は星菜を何度も殴り続け、母親は迷っていたが結局助けなかった。星菜は逃げるように自室へと入っていった。

一部始終見ていたジュード達は顔を見合わせた。

 

 

 

ジュ「……ミラ、星菜の両親、星菜の話聞いてなかったよね……存在を否定されてたし」

 

ク「でも、母親は止めようとはしていたね。でも、助けなかったけど」

 

テ「星菜は、いじめられてたのね。実の親から」

 

ル「だから、起きないのかな?辛い現実があったから。それで、誰も信じられないのかな?」

 

ミ「ああ。もしかしたらこれが傷なのかもしれぬな。一先ず皆の所へ戻り、この事を伝えよう」

 

 

 

ミラ達はみんなのもとへと戻った。

 

ジュードside END

 

 

 

球体へと入っていったロイド達がほぼ同時に出てきた。球体は消えた。様々な表情をしている。

 

 

 

ア「おかえり、どうだ?何かわかったか?」

 

ロ「こっちはあまり、小さい頃の星菜が楽しそうにしていた位かな?」

 

コ「うん、楽しそうだったよ?」

 

ゼ「可愛かったぜ~星菜ちゃん!」

 

プ「他は、どうでしたか?」

 

ユ「集団暴行にあってる星菜がいた。」

 

エス「いじめです!許せません!」

 

リ「触れることができなかったのが悔しいけど、触れることできたらあいつらなんてボコボコにしてやってたのに!」

 

ナ「そ、そうなんですの」

 

メ「ミラ達はどうだったか?」

 

ジュ「ユーリ達と変わらない、かな?」

 

ル「それよりもっと酷かったよ」

 

ソ「………え?」

 

テ「星菜は父親に一方的な暴力を受けてたわ。母親は助けないし……」

 

リ「本当なの、それ!?」

 

シ「…………星菜が傷ついた原因、それかもね」

 

?「ふふ、すごいじゃない?正解よ」

 

 

 

ロイド達、ユーリ達、ミラ達が見たことをアスベル達に報告していると、どこからともなく声が聞こえた…………星菜の影が現れた。

 

 

 

影「誉めてあげるわ。ごほうびに良いこと教えてあげる」

 

ミ「良いことだと?」

 

影「もうすぐあいつは闇に呑まれ消える」

 

リ「何言ってんの!星菜は闇に消させない!ていうか星菜はどこよ!」

 

影「何言ってるの?星菜は私、私は星菜。何が違うの?」

 

ノ「違うに決まってんでしょ!どー見てもあんたは星りんの影で、消えなきゃいけないのはあんたでしょーが!」

 

シ「それにどういうことか詳しく教えて!」

 

影「光はあんた達との絆の事よ。絆なんて幻想。いつか裏切られるのにね。私があいつを消すの」

 

ア「星菜は俺たちが守ってみせる!」

 

コ「そだよ。私たちとの絆があるなら、私たちが星菜に教えてあげればいいんだよ。1人じゃないよって」

 

ゼ「お前なんかの好きにさせねーよ」

 

影「…………バカね。本当。あいつはこの先にいるわ。来れるものなら来てみなさい」

 

 

星菜の影は奥へと去っていった。

辺りは不穏な空気に包まれ始めた。

 

 

 

ルー「ぜってぇ負けねぇぞ、あいつなんかに!」

 

フ「ああ、消すなんてそんなことさせない!」

 

ナ「今まで星菜には助けてもらってきたのですから、今度は私達で星菜を助けましょう!」

 

ガ「この先だったな…………」

 

ア「ああ、行くぞ、みんな!」

 

 



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24話 絆のありか

辺りが不穏な空気に包まれ、警戒しながら先へと進む。

その中、メルディが不思議そうに話した。

 

 

メ「どうしてみんな星菜いじめるか?何かしたか?」

 

ナ「わかりませんわ。何故、星菜を認めないのでしょう?いじめられてる者を助けるとは素晴らしい行動なのに」

 

ス「単純にムカついたからとかか?それか、いじりやすかったとか」

 

リ「はぁ!?そんな理由で星菜を傷つけたって言うの!?ふざけんじゃないわよ!」

 

ス「俺に当たるなよ!」

 

ア「星菜の影は消すと言っていたな。まずは星菜本人に話してみよう」

 

ソ「話を聞いてもらえなかったら?」

 

ロ「それでも、何度でも話しかけるんだ!お前は1人じゃないし、俺たちがいるからってな!」

 

コ「そだね。届くよね」

 

ヴ「………敵だ」

 

 

 

ヴェイグが言ったのを見てみると、床から白い手と黒い手が数体出てきた。

 

 

 

 

ルー「何だあれ!あんな敵見たことねぇぞ!」

 

ジェ「やれやれ、そう簡単には行かせてもらえないみたいですねぇ」

 

ナ「でもやっつけないと先へは進めませんわ!ピアシスライン!」

 

ルビ「フォトン!………効いてないのかな?」

 

ハ「なら、シャドウエッジ!………ふむふむ、そゆこと」

 

ロ「どうしたんだ?」

 

ハ「白い手のやつは光属性に耐性あるっぽいけど、闇属性はめちゃ効くみたいね」

 

テ「なら、黒い手には光属性が効くのね。ホーリーランス!」

 

 

 

ハロルドの言った通り黒い手には光属性が、白い手には闇属性が効いていた。

 

 

 

コ「エンジェルフェザー!」

 

リオ「魔人闇!」

 

リ「ネガティブゲイト!」

 

ゼ「ジャッジメント!」

 

コハ「魔王炎撃波!………これで先へ進めるね」

 

ロ「でも、さっきまで敵はいなかったのに、何で今出てきたんだ?」

 

シ「星菜の影は“来れるのなら、来てみなさい”って言ってたわよね。もしかして私達を来させないようにしててるんじゃ」

 

ル「見たことない敵も、その影の力なのかもしれないね」

 

ス「だったらねじ伏せてやろーじゃねぇか」

 

ガ「ああ、向こうがその気なら、こっちもそれに答えてやろう」

 

ルビ「それに、こんなとこで負けてちゃ星菜を助けられないもんね!」

 

 

 

見たことない敵を倒し、先へと進む。進むたびに敵が増えていくが、上手く敵の弱点をつき倒しながら先へと進んだ。

進んでいくと目の前に大きな黒い扉があった。

 

 

 

ア「この扉の向こうに影がいるのか」

 

シ「この奥から、はりつめた空気がするわ……」

 

ソ「………入ろう」

 

 

 

 

黒い扉を開け放ち奥へと進んだ。

部屋のなかは全体が黒い空間だった。

そこには星菜の影と近くに苦しそうにしている星菜がいた。

 

 

 

エス「いました!」

 

影「みんな必要としていない」

 

『そん、な、こと……シェ、リア達、は』

 

影「あいつらだって本当はあんたの事なんて嫌いなんだよ」

 

『………ぅ、ぅぁ………』

 

影「現実見なよ、周りから酷いことされてきたじゃない?実の親からは愛情すらなかったんだし。ま、小さい頃はそれなりに優しかったけどさ」

 

『……ぃ、じめ………』

 

影「あんたはいじめられてる子を助けた。それから世界は変わったじゃない。持ち物をゴミ箱に捨てられてたり、隠されたり、殴られ蹴られ、人は誰かを痛めつけなきゃ生きてけないのよ…………それでもあんたは、あいつらの事、信じられるの?」

 

『…………わた、し、は………』

 

 

 

 

星菜の影は星菜に精神攻撃をしていた。

よく見ると、星菜少しずつ闇に染まりつつあった。

 

 

 

 

ロ「待て!」

 

影「!!………へぇ、ここまで来れたんだ」

 

ノ「あんなのチョロいもんよ!」

 

フ「星菜は消させないよ、僕たちにとって星菜は大切なんだ。…………星菜、今助けるよ」

 

『………ほ、んと、なの?』

 

影「騙されないで、こいつらは自分の都合の良いこと言ってるだけ…………本当はあんたの事なんて何にも思ってないのよ」

 

ロ「お前!」

 

影「それに……もう死んでるのに、みんなのところに帰えれるわけないじゃない」

 

ルー「何言ってんだ?あいつ」

 

『…………ゃ、ゃめ、て………』

 

影「あら、あんたら知らなかったの?なら教えてあげる。ここにいる星菜は」

 

『………やめ、て…』

 

影「殺されて死んだのよ。親の手によって、ね。もとの世界のみんなは星菜が邪魔だったのよ。消えてほしかったのよ」

 

『………ぅ、ぅぁ……うわあああああ!!!』

 

 

 

星菜の周りから闇が溢れ、星菜を呑み込んだ。

それを見た星菜の影は狂ったように高笑いした。

 

 

 

影「あは、あはは、アーハッハッハッ!!力が、力が溢れる!溢れるわ!これで、私、私が本物よ!!」

 

シ「星菜!!」

 

リ「………嘘……嘘よ…………」

 

エ「そ、そんな………てめぇ、好き勝手やりやがって!!許さねぇ……覚悟しやがれ!!!」

 

影「あは、あはは…………ふふっ、あいつは闇に沈んだ。あんた達の負けよ。ふふ、ふふふ、そうね………あなた達消してあげるわ!ホーリーランス!」

 

 

 

星菜の影は光属性の魔術を放った。それぞれなんとか避けることが出来たが、ルカはダメージを受けてしまった。

 

 

 

ル「うっ!!」

 

ナ「ヒール!大丈夫ですの?」

 

ル「あ、ありがとう………あ、あのさ、影を消せば戻るかな?」

 

ゼ「わからねぇ。でも今は影を何とかしねぇとこっちが消されちまう。エアスラスト!」

 

影「うふふ、もっと、もっとよ………私を楽しませて!」

 

ア「覇道滅封!」

 

ロ「魔神剣・双牙!」

 

ルー「烈震天衝!」

 

影「くっ!!やるじゃない。デモンズランス!」

 

 

 

星菜の影は狂ったように笑いながら、今度は闇属性の魔術を放ってきた。

 

 

 

エス「っ!!先程よりも威力があります!」

 

リ「光属性の魔術も使えるけど、得意な属性は闇ってわけね。影にはお似合いよ、タイダルウェイブ!」

 

ゼ「ジャッジメント!どうよ!」

 

影「がはっ!!…………このままでは………光からの生還!」

 

 

 

星菜の影は先程受けたダメージを淡い光で包まれ、回復していた。

 

 

 

ルビ「嘘!なに今の!?」

 

リ「あんな魔術知らないわよ!」

 

ミ「恐らく、光属性の攻撃を受けたら回復するのではないか?もしそうだとしたら、闇属性も」

 

ジェ「光がそうでしたら、恐らく闇もありそうですね。でも、光が弱いみたいですから………注意しながら戦いましょう」

 

ユ「爪竜連牙斬!」

 

エ「閃光墜刃牙!」

 

影「っ!!…………ディバインセイバー!」

 

コ「きゃあ!!」

 

エス「レイズデッド!大丈夫です?」

 

コ「ありがとエステル、だいじょぶだよ………ジャッジメント!」

 

ゼ「俺様も!ジャッジメント!」

 

影「くっ………光からの」

 

ヴ「させるか、凍牙衝裂波!」

 

影「ぐ、ぐうああああー!!!」

 

 

 

コレットとゼロスの光属性の技をくらい、星菜の影は回復動作に入るが、ヴェイグの攻撃により倒すことができた。

 

 

 

ク「やったか!」

 

影「私、は……まだ…………うっ……ぐ、ぐうああああー!!!」

 

ロ「な、何だ!?」

 

ユ「こりゃ不味くねぇか」

 

メ「バイバ!あいつ、どんどん闇が膨れてくよ!」

 

 

 

星菜の影は闇に包まれ辺りも同調するかのように闇が星菜の影を中心に溢れだし、闇から姿を現した星菜の影は巨大な化け物と化した。

 

ピンクブラウンだった髪は漆黒の髪に変わり、目の色も茶色から金色に変化し、背中に右は天使の羽で左は悪魔の羽が生え、黒い羽衣を纏い、白いローブを着た魔物がいた。左右には白い槍と黒い槍が浮いていた。

 

 

 

影「…………我は……裁かなくてはならない」

 

ア「な、何だ………何をする気だ?」

 

フ「わからない。あれは……本当に影だったものなのか?」

 

影「………消えろ………呪符【破滅の願い】」

 

ロ「うわああああっ!!!」

 

 

 

影はカードを浮かべ唱えると、上空に紫色の光が集まり、レーザーが放たれ凄まじい衝撃波が広がった。

 

 

 

ス「………う、うぅ……」

 

ルー「…………げほっ…お、おい……大、丈夫か?」

 

ア「ぐっ………この、ままでは………!!」

 

テ「…………はぁ……はぁ………か、回復、するわ………り、リザレクション!」

 

シ「……うう………ティア、ありがとう」

 

ユ「危うく全滅するところだったな…………それにしても、また見たことねぇ技使いやがったな」

 

ロ「さっきと比べ物にならない強さだ!みんな、気をつけろ!」

 

影「……月華天翔刃」

 

ジ「月華天翔刃!あら、私の技を」

 

 

 

影はジュディスの技を繰り出し、ジュディスも同じ技で防いだ。

 

 

 

影「…秋沙雨」

 

ロ「秋沙雨!こいつ、俺たちの技も使えるのか!?」

 

影「…蒼破刃」

 

ユ「蒼破っ!」

 

シ・メ「インディグネイション!」

 

影「ぐっ…………うぅ…………」

 

ア「やったか!」

 

影「光符【天使の祈り】」

 

 

 

シェリアとメルディの風属性最大魔術、インディグネイションを受け、影は大ダメージを受けた。

倒したかと思われたが、またもカードを浮かべ、唱えると小さな天使達が祈るように光が溢れ、傷を癒していった。

 

 

 

ク「ダメージを与えても回復されてしまう!」

 

ナ「でも完全には回復できていませんわ!…ストローククエイカー!」

 

影「……インディグネイション」

 

コ・エス・ソ「きゃあ!/うあっ!」

 

ロ「コレット!エステル!ソフィ!」

 

テ「レイズ」

 

影「時符【閉ざされし未来】」

 

 

 

コレット達が倒れティアが回復しようとするが、影はカードを浮かべ、唱えると、時計が浮かび上がり、みんなの動きが止まってしまった。

 

 

 

レ「ちょっ!動かない!」

 

ア「……体が……動か………ない」

 

ルー「お、おい、この状態で攻撃とか食らっちまったらやべぇじゃねーか!」

 

ノ「ぬおーー!う~~ご~~け~~!!」

 

影「終わりだ。嘆きの声に囁かれ生きる者に死を……屍の舞!」

 

 

 

影が唱えると、倒れたはずのコレット、エステル、ソフィが立ち上がり攻撃してきた。

 

 

 

コ「…エンジェルフェザー」

 

エス「…ホーリーランス」

 

ソ「…シェルスロー」

 

ロ「ぐあっ!こ、コレット?どうしたんだ!?」

 

ユ「…ぐっ………あいつに操られんだ…俺らの動き止めて仲間同士殺り合わせるってか……やってくれる」

 

テ「…うっ…体が動けば……治せる、のに…!」

 

 

 

ロイド達はコレット達の攻撃を受けた。攻撃がやむとコレット、エステル、ソフィは倒れた。同時に動けるようになった。

 

 

 

ルビ「!動ける!今、助けるね!レイズデッド!」

 

テ「レイズデッド!」

 

メ「レイズデッド!大丈夫か?」

 

コ「う、うん、だいじょぶだよ」

 

エス「ありがとうございます」

 

ソ「ありがとう」

 

ジェ「どうやら先程の技は秘奥義でしょう。倒れた仲間を使って攻撃とは…………なかなかやりますねぇ」

 

ゼ「危なかったぜ……でも、早いとこケリつけちまおうぜ。厄介な回復技持ってるみたいだしよ」

 

エス「今、治しますね……ナース!」

 

リ「あ、ありがと……」

 

ロ「一気にいくぞ!はああああ!見せてやる…!天翔、蒼破斬!」

 

ア「終わらせてやる!全てを斬り裂く!獣破、轟衝斬!」

 

エス「……邪と交わりし、悪しき魂に清き聖断を……セイクリッドブレイム!」

 

ジ「殺劇!はあああぁぁぁッ、舞荒拳!」

 

ミ「始まりの力、手の内に、我が導となり、こじ開けろ! スプリームエレメンツ!」

 

影「光符」

 

ガ「させるか!気高き紅蓮の炎よ…燃え尽くせ!鳳凰天翔駆!」

 

ノ「今なら使える、ししょー直伝の力、おいで、元始にて清浄なる炎、オリジネイトブレイズ!

立ちはだかる全てを、ノーマ・ビアッティの名の下に、焼き尽くせ!」

 

影「ぐ、ぐうああああー!!!」

 

 

 

影は姿が闇が所々下から上へとあがり、最初のドレス姿へと戻った。

膝をつき、苦しそうに肩で息をしている。

 

 

 

ルー「ど、どうだ?今度こそ、やったのか?」

 

影「………はぁ………はぁ…………この、私が……せっかく…………本物に………なれ、た………の………に……」

 

ロ「さぁ、星菜を返せ!」

 

影「…………はぁ………はぁ…………深淵の闇のなか、あいつは………さ迷っている………そしてそのまま………消え………る……」

 

シ「どうすればそこに行けるの!教えなさい!」

 

影「…はぁ…………はぁ…………ふ……ふふ…………あんたらが………本当に……あいつを………思え…ば…………」

 

 

 

 

話終えると星菜の影は、闇に還っていった。

そこには暗い球体が出現した。

 

 

 

 

ルビ「消えちゃった……」

 

ヴ「この中に、星菜はいるのか……?」

 

エス「行きましょう、みなさん」

 

 

 

 

 

 

 

ー忘れられし時の牢獄ー

 

 

エステル達が中に入ると、そこは何処かの家の中だった。

 

 

 

ジュ「!?ここって!」

 

テ「星菜の家……だわ」

 

エス「ここが……」

 

エ「……でも、何でここ」

 

プ「誰か来ます……」

 

 

 

タッタッタッタ…………バタンッ

 

タッ……タッ……タッ……タ……ギィ…バタン

 

 

 

 

ガ「…………走る足音と、ゆっくりな足音……だったな」

 

ソ「隣の部屋に入ったみたいだよ」

 

?「きゃあーー!やめて!」

 

ア「!!?今のっ!」

 

フ「星菜の声だ!」

 

ロ「何かあったんだ!行こう!」

 

 

 

叫び声がした部屋の中へと入ってみると、部屋の隅に怯える星菜と、片手に包丁を持った男がいた。

 

 

 

『……い………いや…………』

 

?「……お前さえ……いなくなれば………」

 

『いや!!』

 

?「死ねっ!!」

 

ア「待てっ!!」

 

?「っ!!?何だ?お前らは??」

 

『………う、うそ………』

 

 

 

アスベルが声をあげると男は振り返り、星菜はどうして?と驚いている。

男は金髪で茶色い目をした40代半ばのおっさんだった。この人が父親なのだろう

 

 

 

?「何だ?お前らは?ここは俺の家だぞ!出ていけ!」

 

ガ「そうはいかないな。あんた、彼女を殺そうとしたろ」

 

ゼ「殺しはいけないぜ?とっとと失せな!」

 

?「俺に指図すんじゃねぇ!俺を誰だと思ってる!偉いんだぞ!」

 

ア「例え偉くても、人を殺すのはダメだ!」

 

ナ「私欲のために殺人など………恥を知りなさい!」

 

?「馬鹿にするな!!俺より偉くなりやがったこいつが悪い!だからいなくなればいい!」

 

ロ「お前!そんな言い方ないだろ!」

 

?「うるせぇ!俺は偉いんだぞ!俺は悪くねぇ!法律ではな、殺人だと判断されなければ裁かれねぇんだ、こいつを殺しても俺は裁かれない!俺は偉いんだからな!」

 

ジ「……貴方って、救いようのないわね」

 

ユ「………法律がなんだって?法律が許しても、俺らはお前を許さねぇぞ」

 

?「ああん?何だと?」

 

リ「あんたが星菜を殺すなら!あたしがあんたを裁いてやるわ!ファイアボール!」

 

シ「サンダーボルト!」

 

?「ぐっぐあ………」

 

エス「まだ生きてるんです?とどめです!スターストローク!」

 

?「うわああああ!」

 

 

 

父親の悪行にリタはキレ、ファイアボールを放ち、シェリアは神雷招を、エステルはスターストロークを放った。

 

 

 

リ「ざまぁみなさい!」

 

エス「星菜、大丈夫です?」

 

『どうして?助けてくれたの?』

 

シ「助けるのは当たり前じゃない。殺されそうな人を見捨てるなんて出来ないわ」

 

『そんな……まさか、言うこと聞かせるために助けたとか!』

 

ゼ「俺様に任せておけって。説得してくるわ」

 

 

 

ゼロスは近づいて膝をつき、星菜に話しかけた。

星菜は来ないでと後退りしたが後ろが壁なのでそれができなかった。代わりにゼロスを睨み付けていた。

 

 

 

ゼ「そんな怖い顔すんなって。せっかくの可愛い顔が台無しだぜ?」

 

『可愛くないもん!』

 

ゼ「俺らは星菜ちゃんの事、本気で心配したんだぜ?だからさ、信用してくれないか?」

 

『行きなり現れた人を簡単に信用なんて出来ないわ!それに、ずっといじめられてたら誰も信じられないもん!』

 

ゼ「………確かに」

 

『それに、否定され続けてたのに急に大丈夫だの心配しただの………そんなの、勝手だわ!』

 

ゼ「……おっしゃる通りです」

 

 

 

ゼロスはトボトボと戻ってきた。

側から見ていたみんなは呆れていた。

 

 

 

ロ「ゼロス、説得しに行ったやつが説得されて戻ってくんなよ…」

 

リ「あーもう!全然役に立たないじゃないの!バカ!あんたはバカよ!」

 

シ「ゼロス、貴方の行動で私たち、疑われてるじゃない!」

 

ゼ「…………すみません」

 

プ「覚悟してください」

 

ユ「何やってんだか………星菜」

 

 

 

ゼロスがシェリア率いる美少女守り隊の制裁が加えられてるなか、ユーリが星菜に近寄った。

 

 

 

『……今度はあなたなの…私、信じないから』

 

ユ「ああ、信じなくていいぜ?」

 

ルー「ちょっ!あいつ!何言って!」

 

テ「ユーリなりの考えがあるのかもしれないわ。様子を見ましょう」

 

ユ「信じなくていいが……向けられてる好意には、ちゃんと対応しないとな」

 

『何言って…………はっ!…そうやって気を引いて私を騙す気ね!騙されないわ!』

 

ユ「人の話を聞かないわりに、自分の話は聞いてくれってか?そっちの方が勝手じゃねぇのか?」

 

『………う…』

 

ユ「人を信じられないなら、俺たちが教えてやるよ。人を信じることを、な?」

 

『何、言って』

 

ユ「俺達の所に来い」

 

『………信じて………いい、の?』

 

ユ「ああ、信じなくても俺らが勝手に思ってるからな」

 

『…………わかった』

 

 

 

差し出されたユーリの手を星菜は戸惑いながらもゆっくりした動作で握った。

 

 

 

ジュ「………ユーリってすごいね。信じさせる才能がある。」

 

ミ「ああ、信じてもらえなくとも、我らが諦めず接していれば声は届く」

 

シ「だいたい貴方はいつも……?星菜?」

 

ア「ユーリが説得してくれた。だから、制裁はもういいんじゃないか?」

 

リ「………そうね、とりあえずこの空間から出ましょ。星菜も来なさい」

 

『………うん』

 

 

 

 

 

球体から出ると暗い球体は跡形もなく消滅した。

 

 

 

コ「星菜、だいじょぶだよ。1人じゃないよ。みんないるよ」

 

『………本当に、私はいていいの?』

 

リ「当たり前じゃない!なにバカなこと言ってんの!」

 

『私、死んでるんだよ?それに、本当に、信じても……いいの?』

 

ス「何度言わせりゃいいんだよ。さっきもユーリが言ってたろ?お前が信じなくても俺らが勝手に思ってるわけだ」

 

エス「それに、死んでいたとしても、星菜は大切な友達です!疑ってもいいですから」

 

『みんな………ありがとう……私は………もう大丈夫だから……もうすぐ目覚めるから……みんなのお陰だよ…本当に、ありがとう……』

 

ロ「さぁ、ここから出ようぜ!テルン達が待ってる!」

 

ア「ああ、戻ろう!」

 

 

 

 

ーレーヴァリア ルフレスの街ー

 

テルン達がみんなを待っていると、心の扉からロイドが出てきた。そのあとにアスベル、ナタリアと次々に出てきた。

 

 

 

テル「あ!みなさん!戻ってきたです!」

 

ナハ「無事だったみたいだね………みんな、心の扉を閉じるよ!」

 

ルビ「………扉が、消えていく…」

 

ロ「これで、星菜は目覚めるんだよな」

 

ア「ああ、影は倒したし……」

 

ソ「……起きて。起きて、星菜」

 

『……………………ぅ…………』

 

 

 

一度呻き声にあげ、星菜はゆっくりと起きた。

それを見たみんなは嬉しそうに喜んだ。

 

 

 

エス「起きました!星菜が起きてくれました!」

 

コ「星菜、だいじょぶ?」

 

『………うん、なんか……ごめんね……私、死んでるし…消えなきゃいけないのに…』

 

ソ「あのね、星菜がもとの世界で死んでいても、関係ないよ星菜は星菜だよ。私の大切な友達だから……」

 

リ「そうよ、あんたはあんた、誰が否定してもあたしらは否定なんてしないわ。そんなやつがいるならあたしがファイアボールぶつけてやるわよ」

 

シ「私も。そんな人間は崖から落として足腰が2度と立たなくしてやるんだから!安心しても大丈夫よ」

 

ア「………なんか物騒なこと言っているが、俺達と星菜は友達だ。だから消えるなんて悲しいこと言うな」

 

『………うん………ありがとう…………本当に、ありがとう………』

 

テル「みんなでお祝いするです!ラーフ・ネクリアを倒してレーヴァリアに平和が訪れたお祝いと星菜さんが目が覚めたお祝いをするです!」

 

ナハ「ご馳走は我々ルフレスにお任せを、みなさんは寛いでいてください。」

 

ナ「なら、私がお手伝いしますわ。」

 

フ「なら、僕も手伝おうかな」

 

 

 

ルフレスが料理を作るのを手伝うと申し出たナタリアとフレン。

それにルークとユーリが慌てて制止した。

 

 

 

ルー「なっ!?…………お、おい、ナタリア、お前は手伝わなくていい」

 

ナ「あら、なぜですの?」

 

ルー「なぜだか知らねぇがお前が料理するのはいけない気がする」

 

ユ「フレン、お前もな」

 

フ「なぜだい?」

 

ユ「…………いや、なぜか知らねぇが…ダメな気がするんだ」

 

ナ・フ「………???」

 

 



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最終話 別れの時

星菜が目覚め、今度こそみんなでお祝いパーティーを開いた。

大量の料理をルフレス族が作ってくれ、みんなは美味しく食べた。

その際、ナタリアとフレンが作りたいと言い、デザートなら…と許可を得ていた。それを食べたゼロスとレイヴンとアスベルとスパーダは毒、麻痺、混乱、悪夢などの状態異常にかかってしまったが、エステルとテルンが直してくれた。

 

 

 

エス「大丈夫です?」

 

ス「……うう…何とか。てか何だよあの物体は!食いもんじゃねーぞ!」

 

ナ「失礼ですわね。あれはマフィンですのよ?それを物体など」

 

ス「食ったら毒になっちまうマフィンなんてあるかっ!」

 

レ「……うぅ…まだ口の中が…」

 

ゼ「……それにしても、どうなってんだ?フレンの作ったパイは見た目は旨そうなのに……味が壊滅的ってどうよ?」

 

ア「……うぷっ………気持ち悪……なぁフレン、このレモンパイ、何入れたんだ?」

 

フ「フラム・ド・カラリンだよ?」

 

『フラム・ド・カラリンって…?』

 

シ「調味料よ……それも激辛のね」

 

フ「甘いとぐどいじゃないか。だから辛さがあれば食が進み、最後まで食べれるかなって思ったんだ」

 

ス「デザートにんなもん求めんなっ!!」

 

 

 

フレンの天然にスパーダが鋭いツッコミをいれた。

ルフレス達がプリンアラモードを持ってきた。それを受け取ったロイドはそれをユーリに渡した。

 

 

 

ロ「ほら、ユーリ」

 

ユ「これを俺に?何でだ?」

 

ロ「だってユーリ、甘いもの好きだろ?この前だってシェリアが作ったプリン貰ってたみたいだし」

 

ユ「っ!?ノーマ、お前……」

 

ノ「あたしじゃない!てか喋ってない!誰にも話してないって!」

 

ロ「コレットが言ってたんだ。ユーリ、嬉しそうにプリン食べてたよ!って」

 

ユ「……あの天然ドジっ子が……」

 

ロ「他にもエステルにティア、レイヴンにスパーダ、あとゼロスも知ってるぞ」

 

ユ「エステルとティアはいいとして………よりによって一番知られたくねぇやつらまで知ってんのかよ!」

 

 

 

エステルはニコッと笑みを浮かべ、ティアは暖かい目で見ており、レイヴンとスパーダ、ゼロスはニヤニヤしていた。

 

 

 

ゼ「つまりユーリくんはシェリアちゃんに餌付けされて美少女守り隊に入ったってわけだ。隅におけね~な!でひゃひゃ」

 

ユ「……いや、あれはちょっと食べてみてって言われて食べたらな……こうなっちまったんだよ。何でこうなった」

 

リオ「おい貴様!」

 

ユ「リオンか、どうした?」

 

 

 

リオンは凄い顔でユーリに詰め寄った。

今のリオンはなぜか怒っている………

 

 

 

リオ「どうしたもこうしたもあるか!食べ物につられるなど、人としてどうなんだ!」

 

ロ「え、リオン?急にどうしたんだ?」

 

リオ「食べ物につられるなどというのは野生動物と同じだ!貴様は人だろう!」

 

ユ「確かに人だな、うん」

 

リオ「だいたいプリンの試食を頼まれたのなら、まず僕に伝えておくべきなんだ」

 

ロ「そうだな、伝えておくべき…………ん?」

 

ユ「あー…なるほど、お前もプリンが食べたかったんだな」

 

リオ「な!?ち、違う!違う!これはだな……」

 

レ「ほーほー。つまりリオン坊っちゃんはプリンが食べたくて仕方ない!と」

 

リオ「違うと言っている!」

 

ア「リオン、気持ちはわかるぞ。シェリアの作るデザートは旨いよな、うん」

 

ヴ「シェリアの作るピーチパイも美味い」

 

リオ「話を聞け!」

 

ゼ「リオンくんはプリンが食べれなくて嫉妬してんのか~」

 

リオ「…………貴様、そこになおれ!」

 

ゼ「やなこった。逃げるぜ~」

 

リオ「逃げるな!待て!」

 

レ「待てって言われて待つやつがいるかってんだ」

 

 

 

 

リオンは剣を抜きゼロスに向けた。ゼロスは逃げ、それをリオンは追いかけた。

 

 

 

『……あれ、いいの?放っておいて』

 

リ「いいのよ。バカっぽいやつらは放っておいて。あんたはあたしと話してればいいのよ」

 

『……いいのかなぁ』

 

シ「いいのよ。メロンケーキよ、食べてみて」

 

『わぁ、美味しそう!いいの?』

 

シ「もちろん、貴女のために作ったんだもの。さ、食べてみて」

 

『うん。いただきます。…………美味しい。こんなに美味しいの、初めて』

 

テ「星菜は………どんなものを食べていたの?あ、言いたくなければ言わなくていいのよ」

 

『ううん……大丈夫。みんなは見たんだもん。えっと、食べ物って食べ物は食べた事ないの』

 

ロ「え!?じゃあ、どうやって生きてたんだ?」

 

『料理の余り物…たまに賞味期限が過ぎてるものとか食べてたよ。飲み水は確保できてたから困らなかったけど』

 

リ「そんなんじゃ栄養がとれないじゃない!虐待じゃない!よく生きてけたわね…」

 

『うん、私も不思議。でも結局は殺されて死んじゃったから』

 

エス「星菜…」

 

ナハ「……その事でみなさんに相談があります」

 

ア「ナハト?どうしたんだ?それに、その珠は?」

 

 

 

星菜の話を聞いているとナハトが真剣な顔で話しかけてきた。側には七色の珠が浮かんでいた

 

 

 

ルビ「綺麗…」

 

ナ「ええ、とても……神秘的な何かを感じますわ」

 

ナハ「これは、星霊珠と呼ばれるレーヴァリアに伝わる宝珠です。星霊珠はどんな願いでも1つだけ叶うと言われ、大切に保管してました。」

 

テル「ボクも聞いたことあったですけど、初めて見るです」

 

ナハ「この星霊珠は、みなさんに託そうと思います。僕たちが持っていても仕方ないので」

 

ア「だが、そんな大切なものを貰うわけには…」

 

ナハ「みなさんにはラーフと同化していた僕を助けていただきました。それに、ラーフ・ネクリアを倒すのにも協力してくださいました。これは僕のお礼です。受け取ってください」

 

ロ「ナハト……わかった、ありがとう」

 

 

 

ロイド達は断っていたがお礼だと言われ、ナハトから星霊珠を受け取った。

 

 

 

ルー「でもよ、どうやって使うんだ?」

 

ガ「確かに…なぁナハト、何か方法があるのか?」

 

ナハ「星霊珠にこう、唱えるんです。望みを叶えよ、と。すると、精霊が召喚できます。そこで願いを言うんです」

 

ル「なるほど…」

 

『精霊かぁ…凄いね』

 

テ「それじゃ、ロイド、呼んでくれるかしら」

 

ロ「ああ…………星霊珠に宿る精霊よ望みを叶えよ!」

 

 

 

ロイドが唱えると星霊珠から光が放たれ、その中から翡翠色の髪をストレートにし、目は深い翠色、薄翠の羽衣を纏い、白いロングドレスを着た女性が現れた。

 

 

 

ル「わわっ!?」

 

ルビ「本当に召喚できた!」

 

精「我が名はルミナス。汝らの願いを叶えよう。さぁ、願いを言いなさい」

 

『綺麗な女性……初めて精霊見た……。でも、願いってどうする?』

 

ス「んなもん、決まってんだろ」

 

ナ「ええ、決まってますわ」

 

『???』

 

ロ「精霊ルミナス、願いを叶えてくれ、星菜を、こいつを生き返らせてやってくれ!」

 

精「汝らの願い、叶えてやろう…………」

 

『………え?ええっ!?』

 

 

 

精霊は小さな光を星菜に放ち、星菜は淡い光に包まれ、その光は収まった。

 

 

 

精「汝らの願いは叶った。では、さらばだ」

 

 

 

精霊は再び光を放ち、消えていった。星霊珠は役目を終え、黒い珠へとなった。

 

 

 

『……暖かい……私、生きて、るの?本当に?』

 

コ「よかったね星菜」

 

『まだ、信じられない………でも、みんなはよかったの?』

 

シ「星菜は生きていてほしい……それが、私たちの願いだもの。いいに決まってるわ!ねぇ、みんな?」

 

リ「あ、あたりまえでしょ!あんなろくでもないやつにあんたは殺されたのよ?何で星菜が死ななきゃいけないのよ!」

 

エス「私たちと星菜は友達です。私たちは星菜にもう一度生きてもらいたいですから………それとも、星菜は嫌だったです?」

 

『み、みんな…………グス………ありがとう』

 

コ「よしよし、だいじょぶだよ。」

 

 

 

星霊珠の力で星菜に命が宿った。

みんなは喜び、お祝いパーティーの続きをした。

ご馳走を食べ、飲んだり、踊ったりして、みんなは思い切り楽しんだ。

 

 

 

ノ「いや~食べ物もおいしいし、平和っていいよねぇ~。ここが夢だなんて信じらんないわ~」

 

ユ「このまま帰りたくないってか?分からないでもねぇけど、そういう訳にも行かないだろ」

 

ノ「も~ユーくん、意地悪言わないでよ。分かってるってば」

 

ジ「はしゃいでいるのもいいですが、もうじき私たちを送り返すための儀式の準備が整うそうですよ」

 

プ「はい、これでこの世界ともお別れです。…………みなさんとも」

 

ノ「そっか………みんなともお別れなんだっけ………」

 

ルー「なぁ、星菜はどうなるんだ?」

 

ノ「星りんって、確か、もとの世界で死んでるんだったよね。まずくない?」

 

プ「……誰かが引き取るとかはどうでしょう?」

 

リ「引き取るって……猫じゃあるまいし………そ、そうね、星菜、あたしの世界に来る?」

 

『え?』

 

 

 

リタは星菜を誘ってみて、星菜は驚いた。

エステルはそれを見て割って入った。

 

 

 

エス「あっ、ずるいです!星菜は私の世界に来るべきです!」

 

シ「いいえ、星菜は私の世界に来るの!」

 

コハ「違うよ!星菜は私の世界に来るの!」

 

コ「ちがうよ~。星菜は私の世界に来るんだよ?ね?」

 

『え、えと……どうしよう』

 

ゼ「俺様の世界に来るってのはどうよ?優しくするぜ~」

 

守り隊「お前が一番危険よ!/です!/なのよ!」

 

ゼ「………俺様信用ないのね……」

 

 

 

美少女守り隊(女子組)に却下され、ゼロスは落ち込んだ。

未だにシェリア、リタ、エステル、コハク、コレットは誰が星菜を誘うか、睨みあっていた。

 

 

 

テル「あ、あのあの……それなら、必要としている世界に行くというのはどうでしょう」

 

ア「なるほど、世界に決めてもらうってわけか。それなら、シェリア達、恨みはないよな?」

 

シ「し、仕方ないわね」

 

コハ「それなら……」

 

エス「私の星菜は渡しません」

 

リ「誰もあんたのじゃないでしょ………ま、世界に決めてもらうってのなら…………」

 

コ「うーん、それなら仕方ないね~」

 

『あ、あはは……(みんなってこんなキャラ?)』

 

 

 

ルフレスの街 近郊…………

私たちはもとの世界に帰るための儀式の場所にいた。

 

 

 

 

ナハ「みなさんに伝えたいことがあります。夢とはいっても、レーヴァリアは目覚めの世界の写し鏡みたいなものです。そのレーヴァリアでヴールがあれだけ増えた事の裏には、それぞれの世界でそれだけ多くの苦しみがあるはずです。今回、ラーフが消えたことであるいはその苦しみも消えたかも知れません。ですがもし…………」

 

ジェ「苦しみが満ちれば、同じことが、ラーフが再来するかもしれない、ということですね」

 

ロ「そうならないように元の世界に戻っても、ちゃんと頑張らなきゃな」

 

ナ「そうですわ。私、レーヴァリアでの体験をなんとか元の世界の人々にも伝えます」

 

ナハ「………それはできません」

 

ナ「え?どういう意味ですの?」

 

 

 

ナタリアは言うが、ナハトはそれは出来ないと否定した。ナタリアは何故なのか聞いた。

それにナハトは真剣な顔で説明した。

 

 

 

ナハ「あなた方は夢見る目覚めの人元の世界で目覚めれば、ここでの出来事は思い出せなくなるはずです」

 

ルー「どういう事だ?俺たちの記憶がないのは、ヴールのせいじゃないのか!?」

 

ナハ「いいえ。元の世界とレーヴァリアを隔てる眠りの壁…………その働きによるものです。レーヴァリア数多の世界の意識の集合。特定の世界の記憶が持ち込まれれば、その影響は計り知れません。だから…………レーヴァリアとみなさんの世界の間では何も持ち越す事が出来ないのだとされています」

 

テル「じゃあ………じゃあみなさんが帰ったら、ボクたちの事も忘れてしまう、です、か……」

 

ナハ「残念だけど、そうなんだ。本来、あり得ないはずの出会いだったんだよ」

 

 

 

ナハトの説明でテルンは悲しい顔をし、

みんなの表情は曇った。

 

 

 

 

ヴ「俺たち、互いの事も、か」

 

メ「……メルディ、忘れたくないよ」

 

ソ「………わたしも、忘れたくない」

 

テル「ボクも嫌です。忘れられたくないです!」

 

ナハ「テルン、我が儘を言ってはいけない。みなさんをいつまでも引き留めておくわけにはいかないんだ」

 

プ「テルンさん……」

 

ア「……何もかも忘れてしまう訳じゃないはずだ。現に俺たちは自分の名前は覚えていたじゃないか」

 

ロ「……そうだ。戦いの技だって、少しずつだけど思い出していったんだ。忘れる訳じゃない。思い出せなくなるだけなんだ。だったらいつか思い出せる日が来るさ」

 

テル「みなさん……」

 

ゼ「せっかく自信ついたとこなのに、そんなしょぼくれるなって」

 

ユ「だな。それに忘れちまったからって、起きたことがなかったことになる訳じゃないしな」

 

ジ「そうね。私たちは一緒に戦ってラーフを倒した仲間。でしょ?」

 

ジュ「うん。僕も、この世界に来られてよかった。例え忘れちゃっても、ここで過ごした時間は、ウソじゃないから」

 

『忘れないよ、絶対!だって、みんなは私に教えてくれたじゃない。1人じゃないよって………だから、私たちとテルンは心が繋がっているんだもん!』

 

エス「繋り…………そうですね。どこに行ってもこの繋がりは消えるわけではありませんから。………また、会いましょう」

 

テル「………グス………そう、ですね。その通りですね!ボク、ずっと忘れないです。だから、みなさんも絶対忘れないです。絶対です!」

 

テ「………そうね。あなたが覚えていてくれるように私も忘れたりはしないわ」

 

ロ「ああ、俺だって忘れないさ。忘れても必ず思い出してみせる」

 

ジェ「歳なので自信ありませんが、頑張りますよ」

 

ソ「わたしもがんばる……がんばるよ」

 

エ「僕、この世界で、僕は、僕を少し好きになれそうな気がしたんだ。……だから絶対、忘れないし、思い出すよ!」

 

ル「テルンの勇気は僕の勇気だから……だから僕も忘れないよ」

 

メ「メルディ、思い出すよ…やくそく!」

 

ミ「……約束、か。ふふ、実に人らしい行動だな。よし、私もおまえと約束しよう」

 

コ「私も、一生懸命頑張ってみるね!忘れても、忘れないから。みんなの事」

 

ゼ「俺様も気が向いたら努力くらいはしてやってもいいぜ」

 

ルビ「また、そんなこと言って………ちゃんと思い出さなきゃダメなのよ?」

 

ルー「こんな散々な目に遭っておいて、忘れる訳ねぇっつーの!」

 

フ「言えてるね。僕もそう信じるよ」

 

リオ「フン、僕を甘く見るなよ。思い出してみせるさ。…………必ずな」

 

リ「こんな変な世界の事、そのまま放ってなんておけないわ。また来てじっくり調べてやるんだから」

 

ハ「私もこの世界のこと調べたいもの。だから絶対、来てやるわ。もちろん、呼ばれなくてもね!グフフ!」

 

ノ「あたしは、またここに来て次こそでっかいお宝見つけるからね~」

 

ス「だよな。そんなんでオレらの仲が切れるとは思えねぇ。……だから、また会おうぜ!宝探しでも何でもやってやるからよ!」

 

ジ「私はヴールが出たら呼んでほしいわ。またお相手したいもの」

 

ユ「ああ、いつでも声かけてくれりゃいい」

 

プ「はい、私も手伝います」

 

ク「そのときは僕も呼んでくれ。僕はこの世界のみんなに迷惑をかけてしまったから、今度は僕が、誰かを助けたい」

 

コハ「私も!ルフレスのみんなが困るようなことは全部私がボコメキョにするからね♪」

 

ナ「まぁ、みなさん血気盛んですこと。でもその時は私も加えていただきますわ」

 

シ「……もう、みんな好戦的なんだから。なら、私の回復術も必要になるわよね、テルン?」

 

ヴ「テルン、また会おう」

 

レ「おっさん、この次、来るときはもっと美女たくさん揃えといてくれるとうれしいねぇ」

 

テル「ありがとう、みなさん」

 

ナハ「さぁ………目覚めの時だ」

 

 

 

ルフレス達の儀式によって展開された術式から光が溢れ、私たちは入っていった。

 

 

 

 

ア「また会おうな、テルン!また会おう、みんな!ナハト!さようなら!」

 

『テルン、みんな、ありがとう!そして、さようなら!』

 

テル「みなさん、ありがとう!さようなら!」

 

ナハ「ルフレスの口伝にいわく、夢はいつか覚めるもの。覚めるべきもの。されど常にまた訪れるもの、とさようなら、目覚める人々。僕達はきっとまた会えるでしょう」

 

テル「さようなら!……さようなら!」

 

 

 

みんなは、それぞれの世界へと帰っていった。

 

 

ーfinー



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エピローグ 転生

 

 

ルミナシアのとある森。

緑が生い茂る森の中、……その奥に大きな樹がある。

人々からはそれを世界樹と呼んでいる。

 

その世界樹の側に眠る少女がいた。

 

 

『………ムニャ……暖かい………う………ん?あれ?ここ、どこ?……確か………あれ?……思い出せない………何で?それより私、生きて、る?どうして?たしか死んだはず………???』

 

 

少女は目を覚まし、辺りを見渡した。

そして首をかしげ、何故ここにいるのかわからなかった。

 

 

『……変わった服………それにここ、森?この大きな樹、凄く神聖な感じがする』

 

 

 

星菜の服装はすみれ色のケープを羽織り、桜色のワンピースに少しヒールの高い白いサンダルを履いていた。腕には銀色のブレスレットを身に付けていた。(ブレスレットには丸い小さな青い宝石が嵌められていた。)

 

…………ガサッ

 

 

『っ!!?だ、誰!?誰かいるの?』

 

?「ご、ごめん、驚かせるつもりじゃ……」

 

?「…………?」

 

『………え?』

 

?「ここに人?……あ、自己紹介しないとだね、私はカノンノ。カノンノ・グラスバレー。ギルド・アドリビトムの者だよ」

 

?「あ、ぼ、僕はルカ・ミルダ」

 

?「私はリコ……よろしく。あなたは?」

 

 

 

ピンク色の髪をサイドテールにして、紅葉の髪飾りつけているのがカノンノ、銀髪で大人しいのがルカ、鮮やかなピンク髪がリコ……

見たことあるなぁと思っていると、リコに名前を聞かれた。

 

 

 

『……え?あ、私は星菜。えと、貴女たちは何でここに?』

 

カノンノ「私たちは」

 

?「お前に会いに来たのだ」

 

 

 

カノンノが教えようとしていたら、後ろから赤みがかった茶色の髪をした男の人が現れた。

 

 

 

リコ「……クラトス、遅いよ」

 

クラトス「辺りを警戒していたのだ………我々はお前を探していたのだ」

 

『私、を?』

 

ルカ「え?何言っているの?僕達は精霊を探しに来たんだよ?」

 

クラトス「この者が我々が探していた精霊だ。」

 

『え、えぇ!?私が、精霊!?』

 

 

 

クラトスは私を見ながら精霊だと言った。

ルカとカノンノは驚いてこっちを見た。リコはきょとんとしている

 

 

『あ、あの、説明お願いします』

 

クラトス「ああ、私はクラトス・アウリオンだ。」

 

『あ、それはどうもご丁寧に…………じゃなくて!』

 

ルカ「く、クラトス?もしかして彼女、記憶がないのかも……」

 

カノンノ「とりあえず、セルシウスに逢ってもらおうよ。何か知っているかも!」

 

クラトス「ふむ、そうだな………では、我々に着いてきてくれるか?」

 

『……え?』

 

カノンノ「私たちの船、バンエルティア号に来てほしいの。そこに貴女を迎えにいってって依頼を受けてたから………ダメ、かな?」

 

『あ、ダメじゃない、けど……』

 

ルカ「じゃあ、戻ろう!」

 

 

 

カノンノ、ルカ、リコ、クラトスに着いていき私は、バンエルティア号へと入った。

現在、甲板で青髪の女の人と話しています。

 

 

 

カノンノ「セルシウス、この子…星菜なんだけど、世界樹の側にいたの……星菜は、命の精霊なの?」

 

セルシウス「…ええ、この子よ。私はセルシウス。氷の精霊よ。貴女に逢えて嬉しいわ」

 

『……命の、精霊?でも、私、自分の事わからないし……貴女の事も……』

 

セルシウス「大丈夫よ。貴女が私の事を知らなくても、私は貴女の事を知っているわ(貴女は深く傷つきすぎた……世界樹は、それで貴女を呼んだのね)」

 

『セル、シウス?』

 

セルシウス「ふふ」

 

?「あらあら、楽しそうね」

 

 

 

声のする方を見ると、水色の髪をポニーテールにし、白い服を着た女の子が現れた。

 

 

 

カノンノ「あ、アンジュ!この子が命の精霊だよ」

 

アンジュ「そう、これで依頼達成ね。お疲れ様。」

 

セルシウス「アンジュ、この子を船に置いてはくれないか?」

 

アンジュ「ええ、構わないわ。只し、働いてはもらいますけどね」

 

『えと……どんな仕事があるの?』

 

アンジュ「ふふ、やる気ね。でも、先ずはみんなに挨拶よ」

 

セルシウス「ありがとう。カノンノ、すまないが星菜を案内してくれないか?」

 

カノンノ「わかった。行こう、星菜!」

 

『う、うん!』

 

 

 

私はカノンノに連れられ、バンエルティア号を案内&挨拶周りをすることになった。

が、途中でカノンノとはぐれてしまい……とある部屋の前で…………

 

 

 

?「…………」

 

?「…………」

 

『……え、えと…何でしょうか?』

 

 

 

現在、何故か、男の人2人にじろじろ見られています。

というより、そこ退いてもらわないと挨拶しに行けないんだけど……

 

 

 

 

?「お前が命の精霊か、俺はチェスター・バークライト。よろしく」

 

『ど、どうも…』

 

?「俺様ゼロス・ワイルダー。仲良くしようぜ」

 

『あ、私は星菜、よ、よろしくね』

 

 

 

赤髪の男の人がゼロスで、薄水色の髪を下の方に結っているの男の人がチェスター。

 

 

 

ゼロス「星菜ちゃんか、よろしく~!………にしても、いいねぇ」

 

チェスター「確かに、いいな」

 

『な、何が?』

 

ゼロス「てか、走ると揺れてやべぇかもな」

 

チェスター「あぁ。出てるとこ出てるし、うん、申し分ねーな」

 

『え、えと?あの、退いてくれますか?まだ、この部屋の人たちと挨拶してないので…』

 

ゼロス「あ、そうだ、俺様の部屋行かね?星菜ちゃんに似合う服、あるんだけど。きわどい服とかも❤」

 

『ふぇっ!?』

 

チェスター「まじか!よし善は急げだ。早速行」

 

?「トラクタービーム!」

 

?「ファイアボール!」

 

ゼロス&チェスター「ギャーーー!!!」

 

 

 

ゼロスとチェスターの足元に突如出現した魔法陣。上へと上げられ、落とされた。追撃に火の玉が飛んで来て、燃やされた。黒焦げになっている。

 

 

 

?「全く、油断も隙もないんだから……あそうそう、私、アーチェ・クライン!よろしく!」

 

?「僕はジーニアス・セイジ。ごめんね、このバカは放っておいて平気だから。挨拶するんでしょ?行ってきなよ」

 

『え、でも……』

 

 

 

薄ピンク髪をポニーテールにし放棄を持っている女の子はアーチェ、銀髪で青衣服着た男の子はジーニアス。

ジーニアスに放っておいて大丈夫と言われるが、放っておいていいのかな?これ………

 

 

 

 

アーチェ「いいの、いいの!こいつらはスケベだから。近づいちゃダメよ」

 

チェスター「おい、誰がスケベだ!」

 

アーチェ「何よスケベ大魔王」

 

チェスター「誰がスケベ大魔王だ!誰が!」

 

アーチェ「あんたよあんた。きゃーたすけてぇ。スケベ、スケベが感染る~!」

 

チェスター「てめぇ、待ちやがれ!」

 

 

アーチェは逃げ出した。それをチェスターは追いかけていった。

 

 

ゼロス「いてて……おいガキンチョ、船の中で魔術はよくないっしょ?」

 

ジーニアス「いいんだよ、アンジュには許可貰ってるし、だってゼロスだもん。いいでしょ?」

 

ゼロス「よくねぇ!俺様何かしたか!?」

 

ジーニアス「下心丸出しのナンパ」

 

ゼロス「このっ!」

 

ジーニアス「逃っげろー!」

 

ゼロス「待てこら!ガキンチョ!!」

 

 

ジーニアスも逃げ出した。それをゼロスも追いかけていった。

私はその場に取り残された。

 

 

『…………えーっと……』

 

?「騒がしかったんだが、何かあったか?」

 

?「何かあったんです?」

 

 

 

私が挨拶しに行こうとした部屋から、黒髪の男の人とピンク髪の女の人が出てきた。

 

 

 

『あ、えと私、星菜っていいます。今日からこの船においてもらうことになりまして、挨拶しに廻ってて、その、あなたたちで最後で……えと……』

 

?「貴女が命の精霊です?私、エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインといいます。エステルって呼んでください」

 

?「俺はユーリ・ローウェル。よろしくな。因みにエステルはお姫様だぜ?」

 

『ふぇっ!?お、お姫、様!?』

 

エステル「あ、かしこまらなくていいですから。私もみんなと同じに接して下さい」

 

『み、みんな、と…』

 

?「ふふ、かわいい子ね」

 

 

 

部屋から声がし、中へ入ってみると深い青髪のグラマーな女の人と鎧をした金髪の男の人がいた。

 

 

 

?「私はジュディス。仲良くしましょ?」

 

?「僕はフレン・シーフォ。ガルバンゾ国の騎士をしている。よろしく」

 

『あ、えと、私は星菜。よろしくお願いします』

 

ジュディス「ふふ、緊張してるのね。可愛いわ」

 

『…あ、あう~…』

 

カノンノ「星菜!無事っ!?」

 

 

 

エステルたちと話していたら、カノンノがすごい勢いで部屋に入ってきた。

私を見てホッと安心した表情になったが、質問してきた。

 

 

 

エステル「カノンノ、どうしたんです?」

 

カノンノ「さっき星菜がゼロスとチェスターから下心丸出しのナンパを受けていたってミントから聞いて!心配したよ!大丈夫?」

 

『あ、うん、アーチェとジーニアスが助けてくれたから』

 

カノンノ「本当に、よかったぁ……」

 

エステル「星菜は、魅力的ですから。…………決めました!」

 

ユーリ「何をだ?」

 

エステル「私とユーリで星菜を守る騎士になって守ります!」

 

フレン「エ、エステリーゼ様!?」

 

ユーリ「……ちょっと待て、俺もか?」

 

エステル「はい!ユーリと私なら守ることができます!頑張りましょう!」

 

 

エステルは意気込んでいると、フレンは止めに入った。

 

 

フレン「お待ちくださいエステリーゼ様!ユーリはともかく何故貴女も!」

 

ユーリ「ともかくとはなんだともかくとは」

 

エステル「ユーリは気配を殺して星菜に近づこうとする不届きな輩の不意を突くことができます。私はとどめをさしたいからです。」

 

フレン「ですが………」

 

エステル「………私の意見が聞けないです?」

 

フレン「いえ!そんなことは!……頑張って下さい」

 

ジュディス「ふふ、なら私も騎士になろうかしら?」

 

ユーリ「ジュディ、面白がってんだろ」

 

 

 

挨拶が終わり私の部屋はカノンノと同じ部屋になった。カノンノはルームメイトが出来て喜んでいた。

 

 

 

カノンノ「星菜、これからよろしくね」

 

『うん、よろしくね』

 

 

 

私は、これから……ここで生きていく………

この、ルミナシアで…………

 

 

 

 

 

 

 



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