転生先はガンプラバトルが大人気です (断空我)
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聖鳳学園高等部二年生です。

――ああ、大変だ。

 

 ホログラフィーで再現されている光球状の操縦桿を操りながら目の前に迫る敵の攻撃を回避する。

 

 今、俺はガンプラバトルをしている。

 

 ガンプラ。

 

 それは機動戦士ガンダムのプラモデルの略称。

 

 “この世界”はプラフスキー粒子というものによってガンプラを操り、動かすガンプラバトルがとても盛り上がっている。

 

 今、俺はガンプラバトルの公式大会に出ていた。

 

 大勢のファイターが入り乱れる乱戦式の大会で目の前にはガンダムSEEDというシリーズに出てくるジンやシグーが立ちはだかっている。

 

 中にはガンプラの主人公が使うようなガンダムの姿もあった。

 

 フィールドに出ているほとんどが基となっているガンプラを自身の手によってカスタムされている機体がほとんど。

 

 その中で俺が使っているガンプラは素組みでシールドや武装に少しばかり手を加えているだけのRGM-89ジェガン。

 

 迫って来るジンのコクピット部分をライフルで撃ち落とし、背後から狙いをつけているジムスナイパーの狙撃を盾で防ぐ。

 

 危ないなぁ。特殊コーティングしていなかったら心臓部直撃でアウトだ。

 

 武装をビームサーベルに切り替えて背中のバーニアを吹かす。

 

 スナイパーがライフルを向けるけれど、遅い。

 

 操縦桿を操ってビームサーベルでスナイパーのコクピット部分を貫く。

 

 ビームサーベルを引き抜いてジェガンを下がらせようとした時。

 

「あぶなっ!?」

 

 遠方から降り注ぐビームの雨。

 

 俺を狙っていた周囲のガンプラが光の中へ消える。

 

 遠くを見ればガンダム00に出てきたヴァーチェの姿があった。

 

「足止めだなぁ」

 

 目の前にいるヴァーチェを含む高出力の武装をしているガンプラ達。

 

 その後方には巨大な小惑星、アクシズの姿がある。

 

 アクシズに突入して敵を倒せば、勝利だが、これはダメだな。

 

「制限時間オーバーって、しゃーないよな」

 

 盾に仕込んでいるガトリングを連射しながらアクシズへ突撃していくガンプラ横目でみつつ、敵を足止めする。

 

「まー、時間は潰せたからいいか」

 

 倒したガンプラの数を確認しながら俺は設置したガンプラと専用のデバイス“GPベース”を取り外して大会を後にする。

 

 建物を出ると壁に設置されているスクリーンにある映像が流れていた。

 

 画面には凄いと言える出来栄えのガンプラとメイジンカワグチから表彰を受けている知的なイメージを持つメガネの少年の姿がある。

 

「はー、つまんねぇ」

 

 肩をすくめながら俺は帰路につく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「寝坊した……」

 

 翌朝。

 

 俺は通っている学校へ行くためにぶらぶらと通学路を歩いている。

 

 通学路は俺と同じ学生が一人もいない。

 

「まぁ、大遅刻なんだけどさ」

 

 昨日の夜、寝れないからってガンダムのアニメを一気見したのはよくなかったな。

 

 机で寝落ちしていた。

 

 慌てたところでどうしようもないからカバンを手に通っている聖鳳学園を目指している。

 

 何でも、ガンプラバトル世界大会出場者がいるという有名な高校(入学した後に知った)。

 

 当然のことながらガンプラバトルをするための部が存在する。

 

「最近はプラモデル部に人が流れているけれど」

 

 バトル部に残っているのは俺と後輩のみ。

 

「そういえば、携帯の電源、入れてなかったな……」

 

 ポケットから携帯を取り出そうとした時、路地裏で不良と一人の少年がいた。

 

「ん~?」

 

 不良に絡まれている愚かな少年、と思ったがよくよくみると違う。

 

 絡んでいる不良は気づいていないな。

 

 仕方ない。

 

「おいおい、チミ達」

 

「「「あ?」」」

 

 三人がこちらを睨む。

 

 続いて赤髪の少年がこちらを見た。

 

 その顔を見て少し驚く。

 

 

――少し、似ているな。

 

 

「何だよ、てめぇ」

 

「いやさ、絡む相手は考えた方がいいよといいたくて」

 

「は?」

 

「何だよ。生意気だぞ!てめぇ!」

 

 あ、こっちに矛先むいちゃったよ。

 

 溜息を吐いている間に、三人は赤髪の少年によって倒される。

 

 そして、俺と赤髪の少年はやってきた警官によって連行された。

 

 あれ、巻き込まれた!?

 

 

 

 

「だから、向こうから突っかかってきたんですよ!生意気だって」

 

「右の言うとおり」

 

「三人を二人で相手したの?そっちは無傷だけど」

 

「少しかじっていましたから」

 

「よそ見している間に、この子が一人で倒しました」

 

「柔道かなんか?」

 

「いえ、次元覇王流拳法です!知りませんか?」

 

「お、知っている。他に使う人いたんだなぁ」

 

「本当ですか!?」

 

 この会話、赤髪、俺、警官という順番に行われている。

 

 しかし、この赤髪、俺の知り合いがやっている拳法しているなんて、偶然だよな?

 

「そういえば、キミの方は?この時間、学校だよね?」

 

「盛大に寝坊して通学路に向かっていたところです」

 

「……あ、そ」

 

 俺の言葉に警官が呆れたようにみる。

 

「えっと、ハヤテ・シン君。聖鳳学園高等部二年生だね?」

 

「うっす」

 

「キミ達のこと保護者に連絡したから」

 

「……うぇ!?」

 

「え!?もしかして、事情も?」

 

「当然だよ。全く、名前だけで探すのは苦労したんだから」

 

 呆れた様子の警官。

 

 音を立てて後ろのドアが開いて一人の女の子が入って来る。

 

 腰にまで届く綺麗な髪、シミ一つない綺麗な肌。

 

 澄み切った瞳。

 

 あ、顔見知りだよ。

 

「あの、カミキ・セカイの保護者、カミキ・ミライです」

 

「……あれ、カミキじゃん」

 

「シン君?どうしてここに」

 

「姉ちゃん、この人、知り合い?」

 

 どうやら赤髪の少年は俺の知り合いの身内だったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程、カミキ・セカイか、俺はハヤテ・シン……お前が通う予定の高等部二年生だ、よろしく」

 

「カミキ・セカイです!よろしく!先輩!」

 

 頭を下げるのは黒い学ランのカミキ・セカイ。

 

 姉のカミキ・ミライに用事があるからということでカミキ・セカイを中等部へ連れてきていた。

 

 頼みを断ると俺が周りの男子たちに睨まれるからなぁ。

 

「失礼します……先生、いますかぁ?」

 

「ん?高等部のハヤテか?どうした」

 

「あ、中等部に転校予定の生徒を一名、連れてきました」

 

「転校生?そんなこと、職員会議で聞いていないぞ」

 

 あれ?

 

 転校するって聞いていたから連れてきたんだが。

 

 俺はカミキ弟をみる。

 

「どういうことだ?」

 

「……実は、一か月前に転校予定だったんですけど」

 

 一か月前!?

 

「何をしていたんだ?」

 

「師匠と修行の旅に」

 

 何じゃ、そりゃ。

 

 俺が呆れていると教師が外へ出ていく。

 

「先輩!」

 

「あれ、ホシノ?なんでここに?」

 

「大会の申請に」

 

「あー、そういう時期だったな。忘れていたわ」

 

「同じバトル部の部員のセリフとは思えないんですけど」

 

 俺の前で呆れた声を出すのは中等部後輩でガンプラバトル部の部長を務めているホシノ・フミナ。

 

 高等部の俺が部長になるべきだと思うだろうけれど、面倒だから押し付け……パスした。

 

「先輩、メールで連絡しておいたと思うんですけど」

 

「ん?あ、携帯、電源、切ったままだった」

 

「もう……」

 

「ハヤテ先輩、この人は?」

 

「コイツはホシノ・フミナ。ガンプラバトル部の部長だ」

 

「ガンプラバトル部?」

 

 首を傾げているカミキ弟。

 

「って、何です?」

 

「え?知らない?ガンダムのプラモデル」

 

「?」

 

 首を傾げているカミキ弟に尋ねるホシノ後輩。

 

 本気で知らないみたいだ。

 

「うそぉ!?」

 

「うるさ!?」

 

 俺の耳元で叫ぶなよ。

 

 隣を見ると信じられないという顔をしているホシノ後輩。

 

「カミキ弟は拳法をしているからな。それに熱中していたら無縁になるのは仕方ないだろ」

 

「ハヤテ先輩もやっているんですか?」

 

「ん……まぁ、たしなむ程度に」

 

「そんなわけないじゃないですか!?ハヤテ先輩は世界―」

 

「カミキ弟!!そういえば、お前は部活とかどうするつもりだ?」

 

「先輩、ここに柔道部とかありますか?」

 

「ない」

 

「じゃあ、剣道部とか」

 

「ないな」

 

「先輩、ここに武道系の部活はないこと、忘れたんですか?」

 

 あ、そうだった。

 

「そんなぁあああ!」

 

 ショックを受けるカミキ弟。

 

 可愛そうに。

 

「じゃあ」

 

 ショックを受けているカミキ弟をみていると隣である提案をするホシノ後輩。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺、カミキ弟、ホシノ後輩でガンプラバトル部の部室へ足を運ぶ。

 

 ガンプラバトル部はもともと模型部だったのだが、数年前に世界大会に出場した人がいたことを皮切りにバトル部とプラモデル部に分裂した。

 

 それで、俺達はバトル部の部室へ来ていた。

 

 バトルフィールドの筐体、棚には部員たちが作ったガンプラやトロフィーなどが置かれている。

 

「さてホシノ後輩?カミキ弟、俺、帰っていい?」

 

 うしろを見るとパイプ椅子に拘束されているカミキ弟とガンプラバトルの説明をしているホシノ後輩の姿がある。

 

「駄目です!」

 

「助けてくださいよ!?」

 

「まー、ロープくらいは解くから話だけは聞いてくれよ」

 

「あ、はい」

 

 俺の言葉にカミキ弟は素直にうなずく。

 

 コイツ、純粋だなぁ。

 

「ホシノ後輩も説明していたがガンプラバトルはお前がやっていた拳法などと違って自身の手足は動かさない。代わりにこのガンプラをもう一人の自分のようにコイツを動かす」

 

「もう一人の自分?」

 

「例えとして考えてくれればいい。どうして、ガンプラが動くとかそういう説明はできないから、聞くなよ。このガンプラを使って相手と戦うのがガンプラバトルだ」

 

 俺は使用しているジェガンと専用のGPベースを取り出す。

 

「って、先輩!?私と同じような説明しているじゃないですか!!」

 

「二人で見せた方が面白いだろ?」

 

「そう、ですけど」

 

 荒野のフィールドに立つジェガンとホシノのガンプラ、パワードジムカーディガンが立つ。

 

「軽く動かしてみるぞ~」

 

 カミキ弟へ見せるようにジェガンを動かす。

 

 コイツには武器とかを使わず、ビームサーベルを使う方がいいだろう。

 

 数十分後。

 

 バトルフィールドにてカミキ弟がドムを操っていた。

 

「ま、男の子だよな」

 

「先輩に言われてやる気になっているなんて納得できない」

 

「どういう意味だよ」

 

「だって、見た目不審者な先輩にいわれてやる気出すなんて」

 

「おい、俺のどこが不審者だよ!?」

 

「だったら、その長い髪と瓶底メガネやめたらどうですか」

 

「いいんだよ。これで、地味が俺のモットーなんだから」

 

 ん?誰かからメールだ。

 

「あ!」

 

「駄目!」

 

 顔を上げるとホシノ後輩がカミキ弟の上に覆いかぶさっていた。

 

 あれ?

 

 いつの間にこんな事態へ?

 

 それよりも、言わなければならないことがある。

 

「ホシノ後輩は年下好き……っと」

 

「何を言い出すんですか!!」

 

 後、乱入してきたカマキリことプラモデル部部長とホシノ後輩、カミキ弟の二人がガンプラバトルをすることになった。

 

 そこで俺はまたあのガンプラを目撃した。

 

 俺の師匠、イオリ・セイさんが作ったガンプラと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この世界にあの人がいるんですね」

 

「絶対に見つけ出す!」

 

「見つけ出して、逃げないように監禁して、えへへへへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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後輩から嫌われています。

――気に入らない。

 

 ライトニングガンダムを操るコウサカ・ユウマは目の前に現れたジェガンに苛立ちを隠せない。

 

 プラモデル部部長とガンプラバトル部がバトルをするということで見に来たユウマ。

 

 そこにいた人物とガンプラをみて、乱入した。

 

「おいおい、乱入かよ、面白いことするな」

 

 ライトニングガンダムの前に現れるジェガン。

 

 特殊なカスタムやコーティングが施されているわけじゃない。素組みに近いガンプラ。

 

 盾に何かギミックが隠されていることはわかる。だが、想像のできる範囲内のもので警戒する必要はない。

 

 問題はあの人が使っているということだ。

 

 それを操っている人を見て苛立ちが募る。

 

 腰にまで届く茶髪の髪をひとまとめにして、瓶底メガネで目を隠している年上の先輩。

 

 現れたビルドバーニングの前に立つジェガンをみて、ユウマはライフルを撃つ。

 

 ジェガンはビームの攻撃を躱すと突撃してくる。

 

 ビームライフルを構えようにも間に合わない。

 

 ビームサーベルを取り出して応戦しようとするが――。

 

「ここまでだな」

 

「え?」

 

 ユウマが驚きの声を上げる中、目の前に人の手が叩きつけられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合が強制的に中断される。

 

「カミキ、何の用事だ?」

 

 メガネを弄りながら俺は乱入。もとい、バトルフィールドに手をのせているカミキへ尋ねた。

 

「セカイ!先生が探していたわよ」

 

「あ、やべっ」

 

 そういえば、こいつ、転校の手続きをほったらかしにしていたな。

 

 すっかり忘れていた。

 

「もう!案内をシン君に頼んだのに、何をしているの?」

 

「んー、俺が頼まれたのは職員室へ案内をするまでであってそれ以降については」

 

「問答無用です!」

 

 カミキによって俺とカミキ弟は襟元を掴まれてずるずると引きずられていく。

 

 あれ、俺、無関係だよな?

 

 怒っているカミキに反論すれば痛い目にあうので俺は沈黙することにした。

 

 罰として家へ夕ご飯を食べに来るように言われた。ここで逆らうなんてことはしない。

 

 賢いんだよ。俺は。

 

 ただ、男子たちにばれたら俺が殺されるけれど。

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、カミキ弟、お前が使っていたガンプラ、あれ、どこにあったんだ?」

 

 教師に怒られた俺達(なんで、俺、巻き込まれているの?)は放課後、帰っていた。

 

 何でもカミキ弟はカミキ姉のところで生活するらしい。

 

 ちなみにカミキ姉の住んでいる家は俺の家の隣であるため、必然的に二人で帰ることになっていた。

 

 

――ちゃんとセカイの面倒を見てね!

 

 

 カミキ姉に言われて俺はちゃんとカミキ弟を連れていく。

 

 家の鍵を渡されるって信頼されていると思えばいいのか?

 

「え?トロフィーの中にありました。えっと、ガンプラバトル世界大会」

 

「……あれか」

 

「これ、そんなに凄いんですか?」

 

 俺に見せてくるビルドバーニング。

 

「少し見せてもらっても?」

 

「どうぞ」

 カミキ弟からビルドバーニングを受け取る。

 

 芸術品ともいえる出来栄えのガンプラ。

 

 間違いない。

 

 このガンプラを作ったのは“あの人”だ。

 

「ありがと」

 

 俺はカミキ弟にガンプラを返す。

 

「カミキ弟、これからガンプラバトルをしていく上でそいつを使うなら、一つだけ守ってくれないか」

 

「何です?」

 

「乱暴に扱うな、それだけ」

 

「え、はい!」

 

 俺の言葉にカミキは真っすぐな瞳で頷く。

 

 まだ会って一日と経過していないが、コイツはどこまでも真っすぐで純粋な奴だ。

 

 そんな奴があの人の作ったガンプラで戦う。

 

 それにしても。

 

 

――もう一人の次元覇王流使いか……。

 

 

何が起こるのか、少しばかり楽しみに思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パス」

 

「なんでですか!?」

 

 バトル部の部室に入った俺はホシノ後輩の提案を断る。

 

「わかっているだろ?俺は大会に出ないって、いや、出る気はないって」

 

「でも!セカイ君、先輩がいれば、三人で出場が」

 

「それでいいのか?」

 

 俺の問いかけにホシノ後輩が黙り込む。

 

 ホシノ後輩はある約束を小さいころに交わしている。

 

 その約束を捨ててまで全国大会を目指すのかと暗に俺は尋ねた。

 

 卑怯な言い方かもしれないが約束を反故してまで勝ちにこだわるようなことをしてほしくなかった。

 

「それで、建前は?」

 

「大会に出たくない」

 

「最低です!!」

 

 俺の言葉にホシノ後輩がため息を零す。

 

「もういいです。先輩が出てくれないことはわかりました。人を探します」

 

「……それはいいんだけど、何か、厄介ごとがやってきたみたいだぞ?」

 

 俺はホシノ後輩のうしろを指す。

 

 そこでは額に青筋を浮かべているカマキリ、カマキリに熱い視線を向けている女子、俺を睨んでいるコウサカ・ユウマがいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、こうなったんだか」

 

 バトルフィールドを見ながら俺はため息を零す。

 

 カミキ弟のビルドバーニング、ホシノ後輩のパワードジムカーディガン、そして、俺が使うジェガン。

 

 対する向こうはコウサカ・ユウマのライトニングガンダム、カマキリのイナクト、女子生徒のハイザック。

 

 3on3の大会ルールに則ったガンプラバトル。

 

 観戦している顧問?もとい協力者のラルさんと学園の生徒会長。

 

 俺のすぐ横に通信画面が開いてホシノ後輩の顔が表示された。

 

「先輩……」

 

「負ければ、プラモデル部と統合ねぇ……仮登録という形で三人やっているけれど、この戦いで納得させないといけないとは……面倒だ。帰りたい」

 

「もう!」

 

「はいはい、やるから、悪いけど……コウサカの相手をしないといけないから、二人は組んで行動しろ」

 

「え?」

 

 直後、ジェガンの傍にビームが通過する。

 

「カミキ弟とホシノ後輩は近くの崖で隠れていろ……コウサカはこっちで抑えるから」

 

「は、はい!」

 

 飛来するビームをシールドで防ぐ。

 

 さて、距離がかなりあるから障害物を利用しつつ、接近するのがいいんだろうけれど。

 

「めんどい」

 

 崖からジェガンを飛び出す。

 

 同時に飛来してくるビーム。

 

 盾で躱すことに限界があるから牽制でライフルを撃ってみる。

 

 相手は牽制されているとわかっているからか避けようとしない。

 

 実力があるとこういうことがわかる。まるでニュータイプだ。

 

「これだから嫌なんだよ」

 

 相手が使っているのは改造機体。

 

 次々と降り注ぐビームの雨。

 

 相手をするのは色々と大変だ。

 

 飛来するビームをいくつか盾で防ぐ。

 

「さて、そろそろ行くか」

 

 背中のバーニアを吹かしてライトニングガンダムへ接敵する。

 

 ライトニングガンダムは逆襲のシャアに出てくるリ・ガズィをベースとして作り上げた機体。

 

 可変システムがあるのかわからないが、狙撃が厄介なだけで他に装備はみられない。

 

 だったらぁあああ!

 

 飛来するビームを盾で防ぐ。

 

 ジュッと音を立てて表面が溶ける。

 

 そのまま突き進む。

 

 俺の傍ではCAUTIONというアラートが鳴り響いている。

 

 盾にある程度の加工しかしていないから長時間の防御は無理だ。

 

「だからこそ」

 

『盾を犠牲にしたのか!?』

 

 半壊した盾を投げ捨ててそのままライトニングへ接近しようとした時。

 

「どこだ~、バトル部~」

 

「うぉぉ!?」

 

 俺の前にハイザックが飛び出す。

 

 慌ててライフルを構える。

 

「あ~れ~」

 

 俺が発砲するよりも速くホシノ後輩の狙撃でハイザックが撃破される。

 

「シノダくぅぅぅぅうん!」

 

 カマキリの叫び声が聞こえた。

 

「あ、やばっ」

 

 ハイザックの爆風の中からビームがジェガンの右腕と右足を溶かす。

 

 バランスを崩しそうになりながら空中でとどまる。

 

「やっべぇ」

 

「なんで、そんなガンプラを使っているんだ!!」

 

 コウサカが俺に問いかけてくる。

 

「何を使おうと俺の自由だろ?」

 

「白い悪魔とまで呼ばれた貴方が!!」

 

 ビームライフルの狙撃から逃れようとしているジェガンにライトニングの狙撃が雨のように降って来る。

 

 性能がダウンしていることでビームが次々と掠めてジェガンの装甲が所々、溶けていく。

 

「なぜ、本気を出さない!」

 

「本気ねぇ……」

 

 悪いな。コウサカ。

 

 俺は―。

 

「前座だからさ」

 

 入れ替わるように飛び出してくるビルドバーニング。

 

 さて、あとは任せた。

 

「俺はポイント稼がれないように逃げるから!」

 

 振り返らずに全力で逃走する。

 

 これも戦略というものさ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後、カマキリが反則をしたことでバトル部とプラモデル部の統合はなくなった。

 

 あとは全国大会出場して優勝を目指す。

 

 ちなみに、コウサカ・ユウマがバトル部に来たことでメンバーが三人となる。

 

 チームトライファイターズ結成される。

 

「だから、俺は用済みのはずだったんだがなぁ」

 

 中庭でカフェオレを飲む。

 

「フミナさんやセカイはシン君を必要としているのよ」

 

「必要?こんなやる気なしに?」

 

 俺の言葉にカミキ姉がほほ笑む。

 

「私からもお願い。セカイ達をよろしくね」

 

 女神のように微笑むカミキ姉。

 

 普通の奴らならそれだけで目がハートマークになるだろう。

 

 俺には通用しないのだ。

 

 普通とは違うのだよ。普通とは!

 

「ま、やれるだけはやるよ」

 

「うふふ」

 

 微笑むカミキ姉から視線をそらしながら俺はカフェオレを飲む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、知らなかった。

 

 

 

 俺の過去が音を立てて近づこうとしているなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「必ず見つけて見せます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃がさないから」

 

 



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Gミューズの再会です。

ようやくクロスオーバーのタグともう一つが活かせる。

主人公はジム、ジェガンを使います。

今のところ。


「次元覇王流!聖拳突きぃぃいいい!」

 

 カミキ弟の操るビルドバーニングの拳。

 

 炎を纏っているような拳を、操るアクアジムで回避する。

 

 標的を失った彼の拳は地面に突き刺さり、大きなクレーターを作った。

 

「動きが直線的すぎるぞ」

 

 距離を取りながらマシンガンで狙撃する。

 

「くそっ」

 

 放たれる弾丸をカミキ弟は回避する。

 

 地上の動きはエースクラスだなぁ。

 

 だが。

 

「じゃ、ちょっと、付き合えよ」

 

 近づいてビルドバーニングの頭部を掴んで海の中へ放り込む。

 

 バシャンと音を立てて海の中へフィールドが変わる。

 

「こんなの!」

 

 動かそうとするカミキ弟だが、足場がなくなった途端、バランスを崩した。

 

「そっか、足場が……だったら!次元覇王流!聖槍蹴りぃぃぃいって、ぁああ!?」

 

 片足を繰り出そうとするもそのままグルグルとビルドバーニングが回転する。

 

「覚えておくんだ。カミキ弟」

 

 アクアジムで接近してビルドバーニングの背後へ回り込む。

 

 肩を掴んでそのまま海底へ押し込んだ。

 

「ガンプラバトルは色々なフィールドが存在する。こんな風に海も存在している。適応、対応しろ。さもないと、すぐにおっちんじまうぞぉ」

 

 トンと優しくアクアジムでビルドバーニングを蹴り飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フミちゃん、どうしてあの人は量産型しか使わないんですか?」

 

 コウサカ・ユウマは二人の試合を観戦しているホシノ・フミナへ尋ねる。

 

「うーん、私も知らないの。去年の世界大会から戻ってきてから急に量産機ばっかり……しかも、ほとんど素組みばっかり」

 

「何か理由でも?」

 

「おーい、何の話をしているんだ?」

 

 バトルが終わり、二人のところへ話題の人物がやって来る。

 

 瓶底メガネに手入れされていない髪。

 

 手の中には特にカスタムされていないジム。

 

「先輩、そのガンプラをカスタムしたりは?」

 

「その予定はないな。俺はあくまで手伝いだし、これもただ作っただけだからな」

 

 まただ、

 

 ユウマはメガネの奥で考える。

 

 この人はことあるごとに“手伝い”“前座”という言葉を使う。

 

 まるで、主役ではないというような言い方だ。

 

「それより、カミキの指導、そろそろ代わってくれないか?俺、疲れたんだけど」

 

「まだやれるでしょ?」

 

「コウサカ、お前、俺にうらみでもあるのか?カミキとの練習試合、既に二桁突入しているんだけど!!」

 

「手伝いなら頑張ってください。それが嫌ならオリジナルの機体でも使えばいいと思うのですが」

 

 この鬼メガネめ。

 

 呆れたようにため息を吐きながら筐体の前へ戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セカイとホシノさんがデートするの!一緒に来て!」

 

 休日。

 

 ガンプラバトルや課題などで疲れて眠っていた俺をたたき起こしたカミキ姉の一言がこれだった。

 

「デートって、Gミューズへ行くだけだろ?」

 

 寝ぼけ眼でカミキ姉に伝える。

 

 そういえば、ホシノ後輩が大会専用のガンプラを作ろうと考えるとかいっていた。

 

 協力者のラルさんがカミキ弟へガンダムを知るためにGミューズを勧めていたなぁ。

 

「とにかく!早く、着替えて!」

 

「いや、休みの日だから、ゆっくり寝ていたい……わかった、わかったから!そんな目をするな!すぐに着替えるから!!」

 

 今にも泣きそうになるカミキ姉に言って俺は着替える。

 

 三分で着替えて、顔を洗い、外へ出た。

 

「はい、シン君はこれをつけて」

 

 カミキ姉から渡されたのはサングラス。

 

 なして?

 

 

 

「普段のメガネじゃダメなのかよ?」

 

「ばれちゃうじゃない」

 

「あ、そ」

 

 与えられたサングラスを装着して俺とカミキ姉は少し先にいるカミキ弟とホシノ後輩を尾行する。

 

「どうでもいいが、カミキ姉、雑誌逆さまだ」

 

「心配、大丈夫かしら」

 

「駄目だ、聞こえていないし」

 

 雑誌を逆さまに向けて二人に熱い視線を向けるカミキ姉。

 

 俺は溜息を吐いて、座席へ腰かけようとした時。

 

 

――ゾクリ。

 

 

 全身を突き刺すような視線を感じて立ち上がる。

 

 周りを見るが誰もいない。

 

 気のせいか?

 

 俺はため息を零しながら立っているカミキ姉へ座席に座るように促す。

 

 しばらくして、電車から降りる。

 

 歩いている二人の様子をカミキ姉は見守っていた。

 

「どうでもいいが、カミキ姉、落ち着いたらどうだ」

 

「だって~」

 

 今にも飛び出そうとしているカミキ姉を俺は止める。

 

 先の二人が手を繋いでいるあたりから落ち着きがない。

 

「何度も言うが別にGミューズへ買い物に行くだけだろ」

 

「でも、デートよ!あのセカイが」

 

「カミキ姉、ブラコンになるのは仕方ないが落ち着け、頼むから」

 

「ううぅ、でもぉ、シン君~」

 

 涙目でこちらをみるカミキ姉。

 

 弟が心配で仕方ないのだろう。

 

「とにかく、Gミューズへ向かおう……お前がデートすることになってカミキ弟がこんなことをやりだすか心配で仕方ないよ」

 

「え?私?」

 

「カミキ姉だっていつかはデートするだろ?」

 

「……」

 

 頼むからこのタイミングできょとんとした表情を浮かべるのをやめてくれ。

 

 しかも、何か期待するような眼差しを向けられているような気がするんだが……。

 

 俺は溜息を吐きながらGミューズへ向かうように促す。

 

 

 

 Gミューズはこの街にあるガンダムを中心として扱う巨大な娯楽施設。

 

 

 入り口には巨大なファーストガンダムがある。実物大サイズではないけれど。

 

「凄い、大きなガンプラ」

 

「ガンダムだから」

 

「違うの?」

 

「違う」

 

 カミキ弟同様にガンダムに疎いな、カミキ姉は。

 

「お前もどうせだし、ガンダムを少しは知っておいたらどうだ?確か、読モやっていたよな?どっかで触れる機会もあるだろ」

 

「そうかな?」

 

 首を傾げるカミキ姉。

 

 わかっていないな。

 

 カミキ姉は知らないのだろう。七年前にガンプラアイドルの出現によって色々と変化が起こっていることを。

 

 

「ま、あいつらの邪魔にならない程度で教えるから……行こうぜ」

 

 あの二人も監視されていない方がいいよな。

 

 振り返ったところで俺は絶句する。

 

 最悪なタイミングで奴がきていた。

 

「何……やっているんですか?ミライさん、先輩」

 

「コウサカ君!?」

 

「よぉ、コウサカ」

 

「ここで、何を?」

 

 驚いた顔をしているコウサカ。

 

 そういえば、コイツは家で大会用の機体を制作していたよな。

 

「コウサカ君!あっちで何か食べない?」

 

 慌てた様子でカミキ姉がコウサカの前に立つ。

 

 その立ち位置だとコウサカから二人の様子は見えないだろうな。

 

「ごめんね、シン君」

 

「俺は別にいいよ。行こうぜ、カミキ姉、あとコウサカ」

 

「おまけみたいに言わないでください!!でも、行きます」

 

 だらしなく口元を開けながらカミキ姉についていくコウサカ。

 

 好きなんだな。カミキ姉のこと。

 

 そんなことを思いながら俺は二人の後についていく。

 

 これって、コウサカの恋路の邪魔をしている……かもしれないと思ったのは、ことあるごとにこちらをジト目でみてくる彼に気付いたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっさしぶりやなぁ!ハヤテ・シン!!」

 

 カミキ姉をコウサカに任せて(押し付けて)Gミューズから帰ろうとしていた俺に関西弁で話しかける奴がいた。

 

「よぉ、アホ毛」

 

「誰がアホ毛や!!」

 

「いや、頭にはねている髪あるから、アホ毛だろ」

 

「そんなん関係あるかい!てか、なんで自分がここにおんねん!」

 

「いたらダメなのか?」

 

「ああもう!飄々しおってからにムカツクやっちゃなぁ!」

 

「そろそろ落ち着いたか?」

 

「うるさいわい!……まぁいい」

 

 相手は半眼でこちらをみる。

 

「なんでガンプラ舞台から姿を消した!ハヤテ・シン!いや、白い悪魔!」

 

「引退するつもりだった。色々あって、今は学校の後輩に協力している。お前の嫌悪の対象のコウサカ・ユウマとな」

 

「!!」

 

 俺の言葉にサカイ・ミナトは目を見開く。

 

「ガンプラバトル?アイツが!?名人杯もあるんやぞ!」

 

「俺に怒るな。あとツバ飛ばすな。てか、近い!!」

 

 東のコウサカ・ユウマ、西のサカイ・ミナト。

 

 どこぞの高校生探偵のようにこの二人ほど名前を知られているガンプラビルダーはいないだろう。

 

 コウサカ・ユウマはイオリ・セイさんにガンプラを、サカイ・ミナトはガンプラ心形流に身を置き、様々なガンプラを世に送り出してきた。

 

 今年の名人杯も期待されている。

 

「大阪のお前がここにいるってことは」

 

「その通りや」

 

「不機嫌な理由はそれか」

 

 コウサカの当て馬にされたと思ったか。

 

 ライバル心……いや、敵対心が勝っているアホ毛なら仕方ないだろう。

 

「それで、むしゃくしゃして、俺の後輩に指導はやめてくれよ」

 

「あ?」

 

「何でもない……それで、俺に絡んできた理由は失踪したことについてか?」

 

「せや!お前ほどのファイターがなんで姿を消した!」

 

「逃げているからさ」

 

「は?」

 

「悪いな、アホ毛、ちょっと、面倒な客だ」

 

 否定したかった。

 

 これはウソだと。

 

 現実ではない。質の悪い夢だと。

 

 だが、嫌でも俺の前に彼女達は姿を見せる。

 

 どこかの学校の制服を着た女の子たち。

 

 微笑みながら彼女は俺を見た。

 

「探しましたよ」

 

「ようやく会えました!」

 

 

 悪夢が音を立てて俺の前にやってきた。

 

 



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励まされます。

 生前、俺は別の世界で提督をしていた。

 

 いわゆる前世の記憶を俺は宿している。

 

 その世界で俺は艦隊の指揮を執っていた。

 

 艦隊といっても人の形をしている船だ。

 

 艦娘といわれている彼女達と共に戦争をしていた。

 

 そんな彼女たちに慕われて、最後に俺は――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉおおおおい!?ハヤテ・シン!誰やこのかわい子ちゃんやらはぁ!!」

 

「顔見知りだ」

 

「あら酷いです」

 

 俺の言葉に銀髪の少女が悲しそうに言う。

 

「恋人の私達を忘れるなんて」

 

「は、恋人ぉぉぉぉ!?どういうこっちゃ!?」

 

「アホ毛、詳しいことは今度説明するから、今日はこれにて、じゃ、あ、これ、携帯の番号」

 

 教えていなかったことを思い出して連絡先を押し付けて、俺はその場を離れることにする。

 

 無言でついてくる彼女達。

 

 しばらくして、誰もいない公園へ到着する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 向き合う俺と彼女達。

 

「久しぶりです。提督」

 

「この世界じゃ俺は提督じゃない。どこにでもいるただの学生だ」

 

「そうだとしても、私達が愛した提督です」

 

 銀髪の少女、翔鶴がほほ笑む。

 

 同じように瑞鶴も頷いた。

 

「お前達……どうして」

 

「転生っていうの?出会った光の玉が提督のいる場所へ案内してくれたんだ!やっぱり瑞鶴達には幸運の女神がついているのよ!」

 

 笑顔で話すのは前の世界で特に俺へ好意を寄せていた翔鶴と瑞鶴の二人。

 

「他の人たちがどうしているのかは知りません。ですが、提督さんに会えたんです」

 

 にこりとほほ笑みながら二人が俺に近づいてくる。

 

 うしろへ下がろうとするが既に背後に回り込んだ瑞鶴が後ろから抱き着いてきていた。

 

「何?このサングラス、似合わないよ」

 

 着けていたサングラスを取られる。

 

 そのまま彼女は服の中に仕舞うとくんくんと俺のにおいをかいできた。

 

「おい、すぐに」

 

「ねえ、提督さん」

 

 うしろから聞こえる冷たい声。

 

 全身が震えて動けない。

 

 この状況、あの時の……。

 

「どうして、提督さんの体から他の女の臭いがするの?」

 

 振り返れば光のない瞳でこちらをみる瑞鶴と翔鶴の姿があった。

 

 ああ、結局。こうなるのか。

 

「色々と話をしたいです。私達も、提督のことを」

 

 笑顔で話してくる翔鶴。

 

 その顔を最後に俺の意識は闇の中に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生前の世界、俺の最後は愛していると言っていた少女達にナイフで殺されるという最悪なものだった。

 

 死んだあと、どういうわけか今の世界に意識を俺は得ていた。

 

 この世界に争いがないことを知った俺は日常を満喫することにした。

 

 その中でイオリ・セイさんと知り合い、ガンプラバトルにはまる。

 

 自由に、自分の好きな風にガンプラを作る。

 

 イオリ・セイさんに教えてもらいながら俺は自分の描いたガンプラを作った。

 

 そして、ガンプラバトルの大会に出る。

 

 最初は散々な結果だったが、色々と改造、特訓を重ねて、気が付けば全国大会に出場するほどの実力になっていた。

 

 楽しい。

 

 毎日が幸せというほどにガンプラバトルにのめりこんだ。

 

 だが、ある日、気付いた。

 

 この世界も何か筋書きのようなものがあるんじゃないか?

 

 前の世界のように争いはないにしても物語のようなものが存在するんじゃ?そう考えてからは周りがモノクロのように見えてしまう。

 

 だから、ガンプラバトルも好きじゃなくなり、やめた。

 

 いや、やめきれず中途半端にしがみついている。

 

 専用機を封印して量産機だけを使う。

 

 最低限のカスタムにとどめて。

 

 若さゆえの過ちなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと自室だった。

 

 体を起こそうとすると横から手が伸びてやんわりと押し戻される。

 

「目が覚めたみたいですね」

 

 横を見ると微笑んでいる翔鶴の姿がある。

 

「なんで、服を着ていない?」

 

「わかっているはずです」

 

 微笑みながら体を寄せてくる。

 

「もっと、もっと私達におぼれてほしいんです」

 

 逃げようとするとさらに力強く抱きしめられて抵抗できない。

 

 ギリギリと体が悲鳴を上げる。

 

「なぜ、自分が好かれているのかわからないという顔ですね」

 

 チュッと唇にキスがされる。

 

「貴方がいいんです。私も瑞鶴も……貴方が欲しい。世界を超えても、どこにいようと一緒に居たい……そのためなら何でもする」

 

「俺を殺すことも?」

 

「それは最後の手段です……」

 

 近づいてくる翔鶴の顔を手で止める。

 

「俺は」

 

「駄目です」

 

 その手を掴まれて、顔の横へ置かれる。

 

「逃がしません、許しません。遠ざけません。絶対に、絶対に離さない!貴方は私のものなんです。絶対に逃がさない。何があろうと、絶対!」

 

 ぞっとするほど暗い目でみられて俺の体は動けない。

 

 動けない俺を見て、満足したのか、別の理由があるのか微笑みながら翔鶴は離れる。

 

「そろそろ学校へ行く時間ですね。気を付けて、瑞鶴が作ったお弁当、持って行ってくださいね」

 

「提督さーん!時間だよ~」

 

 部屋の外から聞こえる瑞鶴に言われて俺はゆっくりと立ち上がった。

 

 渡された重箱を手に、聖鳳学園へ向かう。

 

「あ、先輩!」

 

 うしろから聞こえた声に振り返るとカミキ姉弟がやってくる。

 

「おはよう、シン君」

 

「よー、カミキ姉、弟」

 

「先輩!そろそろ俺や姉ちゃんのこと、名前で呼んでください」

 

「んー、前向きに検討しておくわ」

 

「なんでですか?」

 

「俺、人の名前を覚えるのが苦手なんだよ」

 

「そうだったんですか!?」

 

「まあな」

 

 ウソだ。

 

 元々は人の名前を覚えられていた。

 

 だが、いつからだ?いつから覚えられなくなった?

 

「シン君?大丈夫」

 

 考え事をしていた俺の前にカミキ姉の顔があった。

 

 女神のように整った顔をしている彼女に心配されて俺は慌てて離れる。

 

「どうしたの?」

 

「いや、大丈夫だ。悪い、少し急ぐわ」

 

 カミキ姉たちから逃げるように俺は学園へ急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神様という存在がもし、いるというのなら、とことん、性格の悪い人物なのかもしれない。

 

「私立艦コレ学園?」

 

「うむ」

 

 ホシノ後輩の問いにラルさんが頷いた。

 

「女子高なのだがね、そこからガンプラバトルの模擬戦申し立てがあった」

 

「急ですね」

 

「何でも、こちらと試合をしたいということらしい。しかも、向こうはある条件を付けてきている」

 

「条件?」

 

「何ですか?」

 

「ハヤテ君を試合に参加することを条件だ」

 

「え!?」

 

「先輩を?」

 

 ホシノ後輩とカミキ弟が驚いた顔をして、俺を見る。

 

 かくいう俺も驚いていた。

 

「どこから聞きつけたのか、ハヤテ君がここの部員であると聞きつけての勝負らしい……そして」

 

「そして?」

 

 続く言葉に俺は嫌な予感を覚えた。

 

「キミ達が負けたら彼を一年間、指導員として貸してほしいということだ」

 

「えぇ!?」

 

「また変な要求ですね」

 

「変過ぎるよ」

 

 コウサカの言葉に俺は同意する。

 

 もしかしなくても、あいつらが絡んでいるんじゃないんだろうな?

 

 嫌な予感が俺の中でひしひしと浮き上がる。

 

「しかし、先輩を出すとなると……バトル形式は?」

 

「1on1による三回戦、ファイターのガンプラが破壊されたら次のファイターとそのままバトルするサドンデス形式」

 

「こりゃまた、変わっているな」

 

「一人で戦えるほどの実力者なのか、公式大会のルールに慣れていないのか、とにかくこの試合、どうするかはハヤテ君が決めるべきだと私は思う」

 

 ラルさんの視線が俺へ向けられる。

 

「断るっていうのは?」

 

「勿論、可能だ。だが、それでいいのかね?」

 

「…………一日、考えさせてください」

 

 パイプ椅子から俺は立ち上がる。

 

「悪い、ホシノ後輩、今日は帰る。後は任せていいか?」

 

「え、はい」

 

「じゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、どうしたんですかね?」

 

 セカイの言葉にフミナも頷く。

 

「そうだね、今日の先輩はいつもと違った」

 

「あのへんなメガネをつけていないほどですからね」

 

 そう、ハヤテ・シンはあの瓶底メガネをつけていなかった。

 

「中等部でも大騒ぎだった。あのイケメンは誰だって」

 

「そこなんですか!?」

 

「セカイは知らないだろうが普段のあの人はずぼら、変な人、ミライさんに近づく不届き者っていわれているんだよ」

 

「え、知らなかった!」

 

「あまり人と関わろうとしないから変な噂があったの……あの格好も原因だけど」

 

「確かに、あのメガネはないな」

 

 うんうんと三人は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「風邪か?」

 

 放課後、ぶらぶらと町中を歩く。

 

 周りを見れば全国大会のお知らせが目についていた。

 

 大会も近づいているんだな。

 

 昔なら興奮してどんなガンプラで出ようかと考えていたが……今はそんな気分は微塵もないなぁ。

 

 さて、家に帰るかどうするか。

 

 そんなことを考えていたら前方からカミキ姉がやってきた。

 

「シン君?」

 

「……ん、よぉ、カミキ姉」

 

 そのまま去ろうとする。

 

「どうしたの?」

 

 だが、カミキ姉は俺の前に立つ。

 

「別に」

 

「でも、何か悩みでもあるの?」

 

 ああ、うるさいな。

 

「お前には関係ないだろ」

 

 そのまま去ろうとしたらカミキ姉に肩を掴まれる。

 

「ちょっと一緒に来て!」

 

「え、あ、おい!?」

 

 カミキ姉に手を引かれて俺達は近くの公園のベンチに座る。

 

「さあ、何があったの?」

 

「別に」

 

「話すまでここから動かないわよ」

 

「お前は俺の母親か何かか!?」

 

「友達よ」

 

 にこりとほほ笑むカミキ姉の言葉に俺は何ともいえない表情を浮かべているだろう。

 

「迷わずにそう言えるのはお前たちくらいだろうな」

 

「そうかしら?シン君も少し前ならいえていたと思うわ」

 

「ないな」

 

「ううん、言っていた。だって、セカイと同じくらい純粋で前向きだったもの」

 

「……何か、知っているような口ぶりだな」

 

「だって、何回かみたもの」

 

 は?

 

「何を?」

 

「シン君が頑張っていたところを」

 

「え?」

 

「教室とかでノートにガンプラのことを書いていたり、何かを必死に考えているところを」

 

「……そ、それは」

 

 恥ずかしい!!

 

 それって、あれだよな!?

 

 ガンプラの構想とかを練っていたころの奴だ!

 

 カミキ姉も確か同じクラスだったからみられていてもおかしくはないけれど、しっかり見られていたことに驚きだよ。

 

 手で顔を隠してしまう。

 

「だから、最近は嬉しいの」

 

「は?」

 

「セカイと一緒にガンプラを、真っすぐに向き合おうとしているように見える」

 

「真っすぐに?いや、それはないよ」

 

「え?」

 

「カミキ姉、俺は色々なことから逃げてきた。大事なところでいつも逃げてきた。ガンプラも世界大会とか、どんどん大きくなっていくにつれて怖くなって逃げた……今回もそう、昔に拒絶した奴らがやってきて、俺は逃げたいと思っている。だから」

 

 俺はカミキ姉が思うほど、純粋じゃない。

 

 どうしようもないくらい腐った人間だ。

 

「そんなことないわ」

 

 俺の手にぬくもりを感じた。

 

 気付けば俺の片手はカミキ姉の手の中にある。

 

「カミキ……」

 

「もう一度、自分を信じてみて」

 

「……なんで、こんな俺に」

 

「だって、真っ直ぐなシン君はカッコイイもの」

 

「そんなセリフ、他の男子に言われたら告白と勘違いされるぞ」

 

「え?」

 

 驚いているカミキ姉に俺は微笑みながら立ち上がる。

 

「カミキ姉……いや、ミライにここまで言われたらやらないとな、男の子なんだし」

 

「シン君」

 

 ミライに微笑みながら俺は立ち上がる。

 

「さて、少し真面目に取り組むとしますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギリッ」

 

「どうして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、何これ?」

 

 フミナは部室の机に置かれている書置きを見て目を丸くする。

 

「失礼します。先輩?」

 

「どうしたんですか……これは!!」

 

 二人は置かれている書置きを見る。

 

 そこには汚い字で書かれていた。

 

「艦コレ学園との試合は俺が全部出る……試合当日まで姿を消します。探さないでください」

 

 という汚い書置きがあった。

 

 



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無双します

次回の話でひとまず、終わることにしようかと思います。

多分


 

 

 艦コレ学園の正門前。

 

 そこにラルとトライファイターズのメンバーが着ていた。

 

「何か和風な学校……」

 

 フミナの言葉通り、目の前に広がるのはテレビでみるような田舎の学校。

 

 木造建築で近年みないような建物。

 

 正門もレンガ造りで掛けられている学校の表札も木造だ。

 

「時代遅れ……いや、時代が違うような」

 

 ユウマが呟いていると目の前に人がやって来る。

 

「失礼します。聖鳳学園チームトライファイターズのメンバーですか?」

 

「あ、はい!」

 

 メガネをかけた白い制服を着た女性がやって来る。

 

 ショートカットで知的なイメージの強い女性。

 

「失礼、私、ガンプラバトル部の副部長を務めています霧島です。部室へ案内しますね」

 

「あ、あの、まだ一人」

 

「悪い、遅れた」

 

 フミナがまだ一人が着ていないと伝えようとした時、後ろから声が聞こえる。

 

 三人が振り返り、フミナとユウマは目を丸くした。

 

「「先輩!?」」

 

「悪い、遅れちまった」

 

「どうしたんですか!?メガネは!」

 

「あ?バトルするのに邪魔だろ」

 

 遅れてきた人物、ハヤテ・シンは普段していた瓶底メガネを外していた。

 

 前髪も少し手を加えられているらしく、少し汗を流して三人を見ている姿はイケメン。

 

「~~」

 

「ん?」

 

 セカイが振り返ると顔を赤くしている霧島の顔があった。

 

 見られていると気付いたのか霧島は小さくせき込み、顔を上げる。

 

「そろったようですね。部室までご案内します」

 

「よし、行くぞ」

 

「……先輩、大丈夫なんですか?」

 

 フミナがおずおずと尋ねる。

 

「問題ない。ちゃんと用意してきた」

 

 背負っているリュックサックを揺らしながらハヤテは言う。

 

「そもそも、どこへ行っていたんですか?」

 

 ユウマが尋ねる。

 

 トライファイターズのメンバーの誰もが連絡を取ることができず、詳細がわからないまま。

 

 唯一、知っている人物が。

 

「ラルさんと姉ちゃんだけだもんなぁ……教えてくれなかったし」

 

 ミライはニコニコと微笑むだけ。

 

 ラルさんは「楽しみにしていたまえ」というだけだった。

 

「イタリア」

 

「「イタリアぁああああ!?」」

 

「色々あってな、ガンプラバトルの方はまー、試合をみて、判断してくれってところかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、この学校、和風過ぎないか?」

 

「それは僕達も思いました……」

 

 遅れてやってきた俺とトライファイターズのメンバーと共に弓道場のような建物の中に入る。

 

 そこでは大量の資料とガンプラが置かれていた。

 

「数は少ないですが、どれも素晴らしい出来栄えのものばかりですね」

 

「ありがとうございます」

 

 コウサカの言葉に霧島が感謝する。

 

 霧島が副部長ということらしい。

 

 俺に話をした様子だが副部長としての役目を果たしている様子。

 

「ところで、霧島さん、ここの部長は」

 

「あ、部長でしたら」

 

 霧島が言おうとした時、地面が揺れる。

 

「へ?」

 

「なに?」

 

「地震?」

 

「いや、違う!これは」

 

 扉の方をラルさんがみる。

 

 バァンと音を立てて白い制服の少女が現れた。

 

 茶髪、長い髪で団子のようなものがある奇抜な髪形。

 

 整った顔立ちの少女は俺を捉えると全力疾走で飛びかかってきた。

 

 盾、

 

 盾が!?

 

「なんとぉ!?」

 

「バーニングラァブゥゥゥウウウ!」

 

 エコーがかかった声と共に俺の視界が暗転する。

 

 音を立てて地面へ倒れそうになった。

 

 咄嗟にリュックサックをカミキ弟へ投げる。

 

「あぶな!」

 

 キャッチしてくれたカミキ弟に感謝したかったが地面に頭からいったことで喋ることができない。

 

「お、お前は」

 

「Hey!会いたかったデース、ちゅっちゅ!」

 

「やめろぉぉぉおお、金剛ォ」

 

 頬へキスしてくる彼女を全力で抑える。

 

「お姉さま、今は抑えてください」

 

「あーん、霧島ぁ」

 

 うしろからやってきた霧島が金剛を引きはがす。

 

「それよりもお姉さま。挨拶を」

 

「ハァイ!英国で生まれた帰国子女の金剛デース!この部の部長でもアリマース!よろしくお願いしまーす」

 

 ビシッと指を突き付けて俺達へ挨拶する金剛。

 

 彼女の挨拶にトライファイターズのメンバーは言葉を失っていた。

 

 どうやら、金剛もこの世界に来ていたみたいだな。

 

「隣の部屋へ。そちらに他の部員とバトルフィールドがありますので」

 

「あ、はい!」

 

 霧島の案内で俺達は隣の部屋に入る。

 

 ゾクリ。

 

 “俺”に突き刺さる冷たい視線。

 

 体が震えそうになりながら目の前の部員を見る。

 

 そこにはかつて前の世界にいた艦娘と呼ばれる少女達がいた。

 

 中には翔鶴、瑞鶴の姿もある。

 

 部員は部長の金剛、副部長の霧島、比叡、榛名、翔鶴、瑞鶴、吹雪がおり、この中でバトルに出るのは金剛、吹雪、翔鶴の三人。

 

 対して。

 

「本当に大丈夫なんですか?先輩一人で」

 

 ホシノ後輩が俺に尋ねる。

 

 書置きで俺が一人で参加するといったことを気にしているのだろう。

 

「ああ、大丈夫だ」

 

 頷いて俺はカミキ弟からリュックサックを受け取る。

 

「お前は大会予選が近いからな。ここでガンプラに傷をつけさせるわけにはいかないからな……負けるつもりは毛頭ない」

 

 不安そうに見ているホシノ後輩達に俺は真っすぐ見つめ返して答える。

 

 初戦の相手は吹雪。

 

 使用するガンプラはスノーホワイト。

 

 フィールドは地上。

 

「勝ちます!司令官」

 

「今はただのハヤテ・シンだ」

 

 吹雪へそう言いながらGPベース、続いて、用意したガンプラをセットする。

 

「ハヤテ・シン……ジェスタTE、出る!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「WWじゃない!?」

 

 コウサカ・ユウマはバトルフィールドに現れたガンプラを見て驚きの声を上げる。

 

「黒いな、あのガンプラ」

 

「ユウ君、あれってジェスタ……のカスタム機?」

 

「おそらく、だが、何だ?ジェスタのカスタムにしては機体周りの装甲がかなり分厚い……それに、背中に背負っているパーツ?武装なのか?あんなのじゃ、動きに制限がかかるだけだ」

 

 ハヤテ・シンが用意したガンプラ。

 

 それは機動戦士ガンダムUCで登場したRGM-96Xジェスタ。

 

 スリムなジェガンと比べると厚い装甲が取り付けられているが背中のバックパックによってガンダムに匹敵する速度を出すことが可能としている。

 

 だが、ハヤテのジェスタは本来のジェスタよりもさらに重厚になっているばかりか、武装や背中に取り付けているパーツが多すぎて動きが鈍くなるとユウマは捉えていた。

 

 対する吹雪が使用しているガンプラはポケットの中の戦争に出てきたガンダムNT-1アレックス。

 

 純白の塗装がなされ、ビームライフルとミサイルポッドが装備されている。

 

 専用のチョバムアーマーはつけられていないようだ。

 

「これじゃあ、スノーホワイトが有利だ。なんで先輩はWWを使わなかったんだ?」

 

「何か、考えがあったんじゃ」

 

 試合開始のブザーが鳴り響く。

 

 低空で移動するジェスタTEを追いかけるスノーホワイト。

 

 スノーホワイトのライフルがジェスタTEを狙うが無駄な動き一つなく回避していた。

 

「ウソ!?」

 

 驚く吹雪。

 

 くるりと回転しながらジェスタTEが盾の先端を向ける。

 

 盾に隠されているビームガトリングが音を立てて撃たれた。

 

「う、わぁぁ!」

 

 慌てて回避運動を取るスノーホワイト、弾丸のいくつかが装甲を掠める。

 

 弾切れになったのかガトリングをパージした。

 

「このまま、行きます」

 

 ミサイルポッドの全弾を撃ちながらスノーホワイトが接敵する。

 

 ビームサーベルを抜いてスピードを活かして迫った。

 

「危ない!」

 

 セカイが叫ぶ。

 

 ジェスタTEは回避運動を取らず、振り下ろされるビームサーベルを見ているだけ。

 

「そこ!」

 

 アームレイカーを操り、腰部分からビームサーベルを抜いてつばぜり合いをする。

 

「必ず勝ちます!司令官!」

 

「だから!!」

 

 ジェスタTEの両足に装備されている装甲から仕込み腕が飛び出す。

 

「仕込み腕!?」

 

 驚く吹雪の前で仕込み腕が持っていたビームサーベルがスノーホワイトの両足を切断する。

 

 バランスを崩したところでジェスタTEのビームサーベルがコクピットを貫いた。

 

 スノーホワイトが動かなくなったことを確認してジェスタTEの仕込み腕は収納される。

 

 

「まずは一機」

 

 すぐにシステムが次のファイターが現れたことを伝えた。

 

 ジェスタTEが振り返ると足元でビームが爆発する。

 

「五航戦翔鶴、デュナメスフライングスワンが相手をします!」

 

 翔鶴のガンプラはガンダムOOに出てくるガンダムデュナメス。

 

 GNスナイパーライフルを構えながら近づいてくる。

 

「狙撃タイプか……」

 

 ハヤテはジェスタの背中からいくつかのパーツを取り出す。

 

「私が倒します。私が!」

 

 叫びながら翔鶴が狙撃を行う。

 

 肩や足などにビームが直撃するが破壊に至っていない。

 

 代わりにジェスタTEに装着されていた装甲がパージされる。

 

「なんて固い装甲!」

 

 驚きながら狙撃を続ける翔鶴。

 

 目の前でジェスタTEはスナイパーライフルを構えていた。

 

「いつの間に!?」

 

 放たれるビームをデュナメスはGNフルシールドで防ぐ。

 

 衝撃で仰け反るデュナメス。

 

 その光景を見てユウマ達は息をのむ。

 

「あの装甲、チョバムアーマーだったのか、見た目よりもかなり厚めに作られているからビーム兵器を受けても本体へダメージが行かないばかりか……仕込み腕や補助パーツをたくさん用意している……まるで要塞じゃないか」

 

 重装甲かつ隠された武装の数々。

 

 量産機でここまでやるのか!?

 

 驚くユウマ。

 

 それは相手の翔鶴も同じ。

 

「負けない……絶対に、提督を手に入れます」

 

「なぁ、翔鶴」

 

 通信機越しにハヤテが話しかける。

 

「なんで、俺に拘るんだよ」

 

「それは!貴方しか、いないから!」

 

 叫びながらデュナメスが狙撃をする。

 

 ジェスタTEの狙撃がGNスナイパーライフルを破壊した。

 

「貴方の優しさに救われたから、だから!!」

 

 叫びながらビームサーベルで迫るデュナメス。

 

「悪いな」

 

 振り下ろされるビームサーベルを前にジェスタTEは盾を前へ向ける。

 

 盾に隠されているミサイルがデュナメスの顔と腕へ直撃。

 

 爆発を起こす。

 

 煙の中からジェスタTEが飛び出す。

 

 ジェスタTEの右腕にはガントレットのようなものが装備されていた。

 

「俺は、お前たちに好かれるような男じゃない。他の男を見つけろ!もしくは、こういうバトル相手ならやってやる!」

 

 ガントレットがデュナメスの装甲を貫く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウソ……先輩だけで二人も倒しちゃった」

 

「これが世界大会出場の実力……」

 

「すっげぇ!ハヤテ先輩、こんなに強かったんだ!」

 

「まだだ、最後の一人が残っている」

 

 ラルの言葉通り、部長である金剛が残っていた。

 

「流石デース!提督ぅ」

 

「だから、俺は提督じゃ」

 

「そうでも、私達からすれば提督なのデス」

 

 にこりとほほ笑みながら金剛が操るのはガンダムZZをベースにしているガンダムバーニングラブ。

 

「名前、まんますぎだろ」

 

 呆れているとロングビームサーベルを抜いてバーニングラブを襲い掛かって来る。

 

 ジェスタTEは盾で防ごうとするがビームサーベルの威力が途中で増す。

 

 

「ウソだろ!?」

 

 危機感を覚えて慌てて離れる。

 

 その際にライフルが破壊された。

 

「覚悟してくだサーイ!ファイア!!」

 

 叫びながらロングビームサーベルを振り回す。

 

「近づけないってか……くそっ!」

 

 極太のエネルギー刃がジェスタTEの装甲を焼いていく。

 

「残っている奥の手でなんとかするか」

 

 バーニングラブから大きく距離を取って背中の残りのユニットを展開する。

 

「あれは!?」

 

「剣?」

 

「まさか……」

 

 背中のユニットから現れたのは二本の大剣。

 

 ブンと音を立てて刃の部分にエネルギーが纏われる。

 

 ソードインパルスガンダムが使っていた武装エクスカリバー。

 

「さて、ギアを上げていくぞ」

 

 全ての追加装甲を外したことでジェスタTEの速度が増す。

 

「流石デース!でも、負けません!勝つのは私デース!」

 

「悪いな金剛」

 

 ロングビームサーベルを躱しながらジェスタはバーニングラブの懐へ入り込む。

 

「ガンプラ歴に関しては俺がまだ上なんだよ。お前らに負けるつもりはない!!」

 

 バーニングラブの体にエクスカリバーを突き立てて、ビームサーベルを腹部や足へ突き刺す。

 

 とどめとばかりに繰り出された拳がガンダムバーニングラブの頭部を吹き飛ばす。

 

 同時に爆発を起こしてガンダムバーニングラブがシステムに撃破認定。

 

「何より、せっかくの人生だ。過去何かに縛られず、楽しめよ。その方がいいぞ」

 

 勝者はハヤテとされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩!すっごいです!今度は俺とバトルしてください!」

 

「勘弁してくれ。流石に疲れている」

 

「その割には元気に見えますけれど」

 

「疲れているから」

 

「相変わらずですね。少しは見直しましたけれど」

 

 コウサカがデレた!?

 

「流石だね。ハヤテ君。腕は衰えていないようだ」

 

「ラルさんには勝てないけどさ」

 

 俺達は艦コレ学園を後にしていた。

 

 あの後、少しばかり彼女達と話をしたが果たしてどうなるかはわからない。

 

 まあ、これ以上の悪化はしないだろう。

 

「でも、もったいないな。先輩が強いとわかったのに」

 

「悪いけれど、今回は俺の尻拭いでもあったからやっただけ、こんなこと、何回もやっていられないよ」

 

 そういって瓶底メガネを装着する。

 

「俺はこうしている方がすっごい、落ち着く」

 

「残念だな~」

 

「勿体ない」

 

「でも、先輩らしいですよ!」

 

「……ありがとよ、セカイ」

 

「はい!……あれ?先輩、今」

 

「さぁて、かえってご飯でも食べるか……米が恋しいぜ。イタリアじゃ、食べていなかったからなぁ」

 

「そういえば、先輩はどうしてイタリアに?」

 

「……ある人に会ってひたすらガンプラバトルをしていた」

 

 誰に会ったかはここでいわない。

 

 言ったら大騒ぎする相手だからな。

 

 イタリアの伊達男なんていったら。

 

「ええ!?それだけのためにイタリアへ行っていたんですか」

 

「俺の場合、勘を取り戻すには実戦あるのみだからな……さて、次はお前達の大会地区予選だな。頑張れよ」

 

「はい!」

 

「ハヤテ先輩」

 

 少し離れたところでコウサカが俺に尋ねてくる。

 

「何だ?」

 

「どうして、今回の試合、今まで使っていたガンプラを使わなかったんですか?あの世界大会でベスト3にまで到達するほどの力を見せた……ガンダムデルタカイWWを」

 

「……そのことか」

 

 アレを知っているコウサカなら聞いてくると思っていた。

 

 そもそも、何度も聞こうとしている節があったからな。避けてきたけど。

 

「教えてください。あれなら今回の戦いも」

 

「あれな、時が来るまで封印しているんだよ」

 

「封印?」

 

「そ、本気で戦いたいあいつらと会うまで封印中」

 

「……そんな理由で」

 

「大事なことなんだよ」

 

 納得できていない後輩へほほ笑みながら俺は歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家へ戻るとちょっとした騒動が待っていた。

 

「なんで、お前らが俺の家に言えるんだ!?」

 

「遊びに来ました!」

 

 笑顔で答えるのは榛名と比叡。

 

 室内には他の艦娘だった奴らがわちゃわちゃいる。

 

 幸いにも俺のガンプラ制作室に足を踏み入れられてはいない。

 

「普通の生活送れいったのに」

 

「提督……いえ、ハヤテさん」

 

 呆れていたら翔鶴が俺の前にやって来る。

 

 いつもの光がない瞳なのかと身構えていると違った。

 

 それどころか、瞳が潤んでいません?

 

「何だ?」

 

「私達、ガンプラバトルをする貴方を見てますます、いえ、本気で好きになりました!」

はい?

 

「前の世界の気持ちもあります。でも、この世界でもあなたのことを本気で愛しています」

 

「……いや、俺は」

 

「ですから、負けません」

 

「は?何に」

 

「あんな子何かにあなたは渡しません!」

 

 拝啓、こいつらを転生させたクソ神様とやら。

 

 俺はアンタのことが嫌いだ。

 

 もし、ガンプラバトルができるというのなら容赦なく叩き潰してやる!!

 

 この後、カミキ姉が夕食を勧めてきて大騒ぎになったことはいうまでもない。

 

 




ジェスタTE

ハヤテ・シンが作ったジェスタをベースとしたカスタム機。
頭部を除くすべてにオリジナル加工を施したチョバムアーマーを装備、
足の装甲には仕込み腕が内蔵。
背中のバックパックには様々な武装のオプションとメイン兵装の折り畳み式エクスカリバーが二本、隠されている。
本来のジェスタのスピードが損なわれているが防御力は並みのガンプラでは突破することができない固さを持つ。

ちなみにTEとはタイプエクスカリバーの略称である。


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ビーチで騎士?をやります。

なんでか、ミライさんがヒロインっぽくなっている。

てか、アニメのミライさんの水着姿が女神に思えて仕方がない。
あんな人、いるのかねぇ。


「すまん、耳が遠くなったかもしれない。もう一回言ってくれ」

 

「お願いします!私達が作ったガンプラと先輩のガンプラでバトルしてください!」

 

「地区大会は突破しました。でも、全国大会はもっと強者がいます!どこまで通用するのか、先輩と戦ってみたいんです」

 

「お願いします!」

 

 俺の前で頭を下げるチームトライファイターズ。

 

 彼らの前には地区大会、全国大会に向けて制作されたガンプラが置かれている。

 

 少し前に地区大会の決勝相手宮里学院のGマスターと戦いボロボロだったのだが、見事に改修されていた。

 

 しばらく休養するのかと思っていたのだが……どうしてこうなった?

 

 そんな三人の懇願に俺は何とも言えない表情だ。

 

「別に協力することはやぶさかでもない。だが、俺は世界大会で使ったガンプラは使わないぞ。コウサカ」

 

「わかっています。ですから、先輩がカスタムしたガンプラで構いません」

 

「素組みは駄目なんだな」

 

「当然です。先輩の腕と合うガンプラでなければ、意味がありません」

 

「……わかった。ダメージレベルはCでいいな?三対一でやるぞ」

 

 俺の言葉に三人が笑顔を浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プラフスキー粒子が広がるバトルフィールド。

 

 俺と向かい合うのは三機のガンプラ。

 

 カミキ弟のビルドバーニング。

 

 コウサカのライトニングガンダム。

 

 ホシノ後輩のウィニングガンダム。

 

 そして、俺が使うガンプラは。

 

「あれは……ジムカスタム!?」

 

「でも、装備が」

 

 三人の前に降り立つ俺のガンプラ、それはガンダム0083スターダストメモリーズに登場するジムの発展機。

 

 誰にでも扱えるMSと銘打たれている。

 

 本来のカラーリングではなくオレンジ色。

 

 バイザー部分はブルーになっていた。

 

 背中のバックパックも別のものになっている。そして、両手にハイパーバズーカ、足にミサイルポッドを装備している。

 

「さ、始めるぞ。ガンプラバトルを!!」

 

 システムが開始のアナウンスを告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、負けた」

 

「何なの?あのジムカスタム……どこから刀なんて」

 

「対ビーム兵装も完璧……狙撃を封じられてしまうなんて」

 

 俺の目の前でショックを受ける三人。

 

 いや、そこまでいく?

 

「お前らが勝利しているくせになんでそんなショック受けているの?」

 

 ダメージレベルがCのため、機体は傷ついていない。

 

 俺のジムカスタム、トライファイターズの機体も傷一つない状態で机に置かれている。

 

 大会が近づいているからあまり傷つけたくないということがあったけれど、ここまで追い詰められたのは久々だなぁ。

 

「先輩!どうすれば、ここまで強くなれますか?」

 

「経験を積め、お前の場合、それしかない」

 

 他の二人は色々と問題があるが、まだ指摘しない方がいいだろうな。

 

「さて、程よい時間だな、俺、予定があるから……休むように」

 

 俺の言葉にコウサカが顔を上げる。

 

「予定?先輩に?」

 

「何だよ。俺に予定があるとおかしいか」

 

「「「はい」」」

 

 三人とも、表に出ろ(涙目)。

 

 俺にだって面倒だが、予定があるんだよ。

 

 本当に嫌なんだけどさ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺は私服にサングラスという格好でGミューズへ来ていた。

 

 なんでサングラスか、

 

 それは簡単。

 

「ごめんなさい、待たせたかしら?」

 

 俺と一緒に出掛ける相手がカミキ姉だから。

 

 事の始まりは一週間前。

 

 カミキ姉は読モをしている。

 

 かなりの人気があり、同じ学校かつ友達のフナキ・サトミと一緒に活動しているらしい。

 

 何でも、ガンプラとファッションの融合イベント「東京ガンプラ・コレクション」略して「ガン・コレ」のモデル対抗ガンプラ・ラリーに出ないといけないため、ガンプラ選定と制作に付き合ってほしいと言われたのだ。

 

「それならコウサカに頼めばいいだろうに……アイツは東の代表と言えるような奴だろ?」

 

「コウサカ君に頼めばいいかと考えたんだけど、全国大会が近いから……だから、シン君に」

 

「そこで俺に矛先が向いた理由がわからん……」

 

「ねぇ、どうしてサングラスをしているの?」

 

「予防策だよ。これ以上、学校で話題になりたくない」

 

「話題?」

 

 首を傾げるカミキ姉。

 

 コイツ、本当にわかっていないみたいだ。

 

 最近、コウサカとカミキ弟たちと絡む影響でカミキ姉と会話する機会が多くて、付き合っているのではないかと一部の男子が勘繰り始めていた。

 

 女子たちも黄色い声と視線をこちらに向けてきている。

 

 「大変だね~」とカミキ姉の友達、フナキ・サトミから揶揄われた。

 

 本当にこういうのってもっとイケメンな奴の方がいいんじゃないのか?

 

「どうしたの?」

 

「別に~……今更なんだけど、カミキ姉は」

 

「ミライ」

 

「……は?」

 

「ミ・ラ・イ」

 

 自身の名前を何度も繰り返すカミキ姉。

 

 その目はジト目で唇を尖らせている。

 

 溜息を吐いた。

 

「わかったよ。ミライ……」

 

 コイツ、急に名前呼び強要してきたな。

 

 面倒だなぁ。

 

「てか、手伝いは呼ぶからな。それでいいよな?」

 

 俺とカミキ姉はGミューズへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、色々なガンプラがあるのね」

 

「ガンダムといっても何作品もあるからなぁ……」

 

 相変わらずガンプラの山だよなぁ。ここ。

 

 俺とカミキ姉はその中からガン・コレイベント用のものを選ばないといけない。

 

「ちなみに、そのガン・コレだっけ?に出すガンプラに規定とかないんだよな?」

 

「ええ、大丈夫」

 

 といっても。

 

「カミ……ミライが使うガンプラだからなぁ。遠距離系は論外だから」

 

 俺は置かれている一つの箱を選ぶ。

 

「無難なのは、こういうのだよな」

 

 彼女へ見せるのはガンダムOOにて主人公刹那・F・セイエイが使っていたダブルオーライザーだ。

 

「近接……ブレードなんだが」

 

 あの顔だと、お気に召していない様子だ。

 

 男なら興奮する要素が多いんだけどな。

 

「女性向けでいけば、あとはノーベルガンダムとか」

 

「凄い、ガンダムがセーラー服着ている……あら?」

 

 側面のラベルをみてカミキ姉は顔を引きつらせていた。

 

 そこでは口のようなものをあけて不気味な姿をしているノーベルガンダムが描かれている。

 

「まー、セーラーガンダムなんて言われているけれど。バーサーカーシステムが搭載されているから不気味なんだよなぁ」

 

 それにしても、ノーベルガンダムがダメとなると。

 

「ザクレロなんて選んだらとんでもないことになるな」

 

 ザクレロ、

 

 機動戦士ガンダムに登場したMA。

 

 見た目がおそろしい怪物の顔をしている。

 

 ちなみに俺が手に取ったザクレロは世界大会出場者が使用していた記念品だ。

 

 余談だが、俺がザクレロを手に取ったことでカミキ姉は青ざめていたことを記しておこう。

 

「それなら、これしかないだろうな」

 

 最終的に俺とカミキ姉が選んだのはベアッガイ。

 

 元々はガンダムに登場するアッガイをクマにした可愛いガンプラだ。

 

 バーサーカーシステムもないし、初心者でも扱いやすい。

 

 何より。

 

「本人が滅茶苦茶、気に入っているからよしとしますか……さて」

 

 カミキ姉が会計を済ましている間に携帯電話を取り出す。

 

 電話をかける。

 

「どっかで尾行しているだろ?」

 

『な、何のことですか!?』

 

「別にいいや、ここからバトンタッチだ。制作の方を手伝え」

 

『……何を企んで』

 

「後輩へ花を贈ってやるのも先輩の務めってやつだよ」

 

 俺の言葉に相手が喜んでいることがわかる。

 

「何より……俺は自分の命が惜しい……お前の傍に、いるんだろう?アイツら」

 

『はい』

 

 頼むから怯えた声を出すなよ。

 

 マジでわかるんだからな。

 

 気配というか殺意というか、あ、嫉妬か。

 

 そんな類を向けられていたら嫌でも理解できる。

 

「とにかく、これ以上、俺がタッチすれば命がない……現に」

 

 顔を上げるとものすごい勢いでやって来る奴が一名いる。

 

 ありゃ、瑞鶴だな。

 

「一名が既に来た。後は任せた。可能なら骨を拾ってくれ」

 

『え、先輩?ハヤテ先輩!?先輩ぃぃぃいいいいいい!?』

 

 その後、飛び込んできた瑞鶴によってGミューズ内による緊急デートがスタートした。

 

 俺の財布がカッスカッスになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

 ガン・コレイベントに俺は後輩たちを連れてきていた。

 

 ビーチに設置された特設会場で水着姿のモデルとそれぞれが作ったと思えるガンプラを手に現れる。

 

「うわー、綺麗~」

 

「いただけないな。どれもガンプラの造りが甘い」

 

「ユウ君、見るところ違うから」

 

「少し、意外だな」

 

「何がです?」

 

「いや、ホシノ後輩もこういうのに憧れるんだなぁと失礼ながらガンプラバカの類かと思っていたから」

 

「失礼ですよ!私だって女の子なんですから!」

 

 怒る後輩へ謝罪をしているとカミキ姉がフナキとやってくる。

 

 二人とも肩にベアッガイをのせていた。

 

 ちなみにフナキのベアッガイがベーシックに対してカミキ姉のベアッガイは真っ白だ。

 

「流石はコウサカだな。あのガンプラ、中々の出来栄えだ」

 

「当然です。僕はアーティスティックガンプラの出場者ですから」

 

「いけぇ!姉ちゃん、やっちまえ!」

 

「セカイ君、違うから……」

 

「……」

 

「おい、カミキ姉をみて、鼻の下伸ばすなよ」

 

「な、の、の、伸ばしていませんよ!そういう先輩は!?」

 

「伸びているか?」

 

「……いいえ」

 

 ちなみにカミキ姉もフナキもビキニ姿。

 

 カミキ姉は純白で清楚なイメージが強い。

 

 だからファンも増えるんだろうな。

 

 実際、会場もカミキ姉の登場で白熱している。フナキの方もかなり人気あるらしいけれど。

 

 

 俺としてはもう少しくびれがいえ、何でもありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺と後輩たちは控室に来ていた。

 

 この後のガンプラ・ラリーの応援をするためだ。

 

「ガンプラバトルも姉ちゃん、頑張ってな!」

 

「正確には……ガンプラ・ラリーなんだけど」

 

「ラリー?」

 

 首を傾げるカミキ弟に俺が話そうとした時。

 

「自然を舞台にしたレースだよ」

 

 ドアを開けてやたらと決めポーズをとった肌黒の青年がやってきた。

 

「「何だ、あのチャライの」」

 

 あ、カミキ弟と被った。

 

「人気ロックグループ、三代目スゴックのボーカル、リーダー、TAKUよ。さっき、スペシャルライブしていたでしょ?」

 

「あー、何かやたら熱い曲歌っていたな……ん」

 

「良いステージだったよ。華麗なキミの姿を見ていたら歌詞のフレーズが浮かんできたよ」

 

「……」

 

 何してんの?

 

 TAKUというチャライの、壁に手を当ててカミキ姉へほほ笑む。

 

 いわゆる壁ドンだ。

 

「ど、どうも」

 

「名前は?」

 

「カミキ……ミライです」

 

「オッケー、キミの事務所には許可を取っておく。イベントが終わったら僕と一緒に食事へ行こう」

 

「おいおい、人気ボーカルがモデルさんを口説くなよ。ファンが見ている前で」

 

 俺はカミキ姉の手を掴んでこちら側へ引き寄せる。

 

「何だい?キミは、見たところ、部外者のようだけど」

 

「こいつの友達だよ。あと、ファンでもあるかな?」

 

 カミキ姉を守るように俺と後輩たちが前に出る。

 

「そもそも、人気者がこんな好き勝手なことしていいのかよ?」

 

「当然だよ。何せ、僕は有名人!だからね!」

 

「うわ、自意識高い」

 

「有名人だからこそ、ある程度の節度というのは持つべきなんじゃないの?」

 

「ほう、言うね」

 

「まぁ」

 

「先輩は世界大会出場者だぜ!!」

 

「同じ有名人として我慢できないんですよ!先輩は!」

 

「……さらっと、人の個人情報バラすんじゃない。あと勝手に人の気持ちをねつ造しない!」

 

 後輩たちを半眼で睨む。

 

「ほー、ならば、特別枠としてキミもガンプラ・ラリーに参加したまえ、ミライ君をかけてね。優勝した方がディナーへ招待できるということにしよう」

 

 はい?

 

「参加資格は僕から働きかける。ちなみに、僕は三度の飯よりもガンダムという作品が大好きでね。ガンプラも作る。プロが跣で逃げ出すほどでね」

 

 気のせいか?

 

 目の前のTAKUの姿が連邦軍の一般兵になっているぞ。

 

「コイツ、マジか」

 

「ウソ……」

 

「大丈夫だ!先輩なら楽勝だ!」

 

 カミキ弟。

 

 お前、姉が賞品扱いされていることに関しては何も言わないんだな。

 

 俺のうしろで姉が滅茶苦茶、動揺しているぞ。

 

「てか、いいのか?俺、参加しても」

 

「だ、大丈夫よ。許可が下りたみたいだから」

 

 携帯を見て答えるのはカミキ姉とフナキのマネージャーの人。

 

 許可下りたんだ。

 

「それよりも、ハヤテ、アンタ、ガンプラ……持ってきているの?」

 

 フナキの問いかけに後輩たちが動揺する。

 

 海で遊びに来ているのにガンプラを持っているのか、答えは。

 

「持ってきているぞ」

 

 俺はカバンの中から暇つぶしで作ったガンプラを取り出す。

 

「まさか、こんなところで使うとは思わなかったけどさ」

 

 どうせだし、少しだけ手を加えておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これより、ガンプラ・ラリーを開始します!なお、特別ゲストとして三代目スゴックのボーカルTAKUと去年の世界大会ベスト3という記録を保持している白い悪魔ことハヤテ・シンが参加するぞぉ!」

 

 司会者の言葉に歓声は二つに別れる。

 

 一つはTAKUのもの。つまり女性の者ばかり。

 

 もう一つは男性と女性が混じっている。ガンプラファンのものだ。

 

 どうやら俺のことはまだ記憶に残っているらしい。

 

 変装、もっと考えないとな。

 

 ステージは巨大な湖と小さな島がある自然。

 

 飛行システムを使わずゴールへ到着したガンプラの勝ち。

 

 何というか、女の子の中に男子二人って、うくなぁ。

 

 しかも、モデルばかりだし。

 

 俺は瓶底メガネの奥で目を閉じながらGPベースとガンプラをセットする。

 

 ラリーで使うガンプラはジム・クゥエル。

 

 地球連邦内に存在していたティターンズで使われていたというジムの発展型。

 

 飛行ユニットが使えないということで脚部に小型ローラーを仕込んだ機体だ。

 

 この中で脅威と言えるのはTAKUの作ったガンプラとカミキ姉のママッガイくらいか?

 

 ママッガイはコウサカが手伝っていたから完成度はかなりのもの。

 

 TAKUのガンプラは一目見てもわかる。かなりの出来栄えだ。

 

 ガンダムが好きというのはウソじゃないらしい。

 

 あの∀油断できない。

 

 レース開始のブザーが鳴り、多くのガンプラが飛び出す。

 

「さて……」

 

 アクセル全開で行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィールドへ飛び出すジム・クゥエルとママッガイ。

 

「カミ……ミライ、弟に操縦技術、習ったな?」

 

「うん!それにしても、シン君のガンプラも速いね」

 

「仕込んできたからな。色々と……っと?」

 

 鳴り響くアラート。

 

 俺達が見上げると無数のミサイルが降り注いでくる。

 

「なして?」

 

 驚きながらママッガイとジム・クゥエルは回避していた。

 

「攻撃!?どうして」

 

『TAKU様!』

 

 後ろを向けば他のレース参加者の七割ほどがこちらに攻撃してきている。

 

 気のせいか、桃色のオーラが∀へ向けられていた。

 

「約束するよ。あの二機を倒したらいくらでもデートしてあげる」

 

『はーい!』

 

「汚い!イケメンって汚い!!」

 

 有名人。

 

 いや、イケメンって汚い!!

 

 この場合。

 

「ミライ、許せ!」

 

「え?きゃああああああああああ」

 

 衝撃で悲鳴を上げるカミキ姉を湖へ突き落す。

 

「雑魚さん、こちらだよ!」

 

 マシンガンで牽制しながら逃げていく。

 

 殴り合いの必要はない。

 

 レースなのだからゴールすればいい。

 

 俺やTAKUがゴールせず、カミキ姉がゴールすれば問題ないのだ。

 

「だが……」

 

「お先に」

 

「なっ!?」

 

 同じように水面へ飛び込むターンA。

 

 見れば、盾をボードのようにして進んでいた。

 

「おいおい、こんなこと考えるのかよ。本当に、最・悪だよ!!」

 

 近づいてきたガンプラを踏み台にして空高く舞い上がる。

 

 メガネが邪魔だ。

 

 瓶底メガネを投げ捨てる。

 

 一瞬、黄色い悲鳴があがった気がしたが……。

 

「こういう無茶なんかしないんだけどなぁ!」

 

 大きく舞い上がるジム・クゥエル。

 

 腰部分に装備していたナパームを水面に落とす。

 

 爆風の勢いを利用して小島に到着。

 

 そのまま走る。

 

「ショートカットするにしても、少し乱暴だったな」

 

 システムがダメージを告げてくる。

 

 だが、しかし。

 

「男にはやらねばならぬときがあるのだよ!」

 

 見えてきた水面へナパームを投げる。

 

「使わせてもらうぜ!」

 

 盾を足元に乗せてそのまま飛ぶ。

 

 水柱でバランスを崩しそうになりながら次々とナパームを落として陸地を目指す。

 

「見えた!」

 

 砂浜ではママッガイに襲い掛かる∀の姿がある。

 

「なに!?」

 

 驚きの声を上げている∀の顔を蹴り飛ばす。

 

 ジム・クゥエルはボロボロの盾を投げ捨てて振り返った。

 

 そこではママッガイが背中に攻撃を受けて倒れている。

 

 襲撃を受けたのか。

 

 ミニサイズのプチッガイがママッガイに触れていた。

 

 あー、これはヤバイ。

 

「遅れてやってきて姫様のナイト気取りかい?そんなのは百年速いよ」

 

「あー、お前、死んだな。うん」

 

 少しジム・クゥエルでお灸でも据えてやろうかと思っていたけれど。

 

「俺は離れる」

 

「は?」

 

 戸惑う∀へ警告はしておこう。

 

「普段温厚な奴ほど、怒らせたら怖いってこと、身をもって知るといいさ」

 

 倒れているママッガイを担いでその場を離れる。

 

 

 

 

 

 その後、TAKUのガンプラは大事なところをプチッガイによる次元覇王流蒼天紅蓮拳によって倒される。

 

 尚、会場の、いや、みていた男子たちは自分の大事なところを押さえたことはいうまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、最後の最後で優勝できなかったのは残念でしたね?」

 

「別にいーんだよ。俺は優勝目的で参加してねぇし」

 

 ホシノ後輩、俺、カミキ弟は浴衣で海岸の花火を見ていた。

 

 あの後、レースはカミキ姉の優勝……ではなく、美魔女モデルのカリンさんとやらが優勝した。

 

 子持ちらしいけれど、そんな姿を感じられない美貌だった。

 

 旦那さん、誇らしいだろうな。

 

「けど、先輩の活躍が見れると思ったのになぁ」

 

「あのなぁ、今回の俺は真面目に脇役だ。主役はミライだよ」

 

「……そういえば、先輩、いつからミライさんのこと、名前で呼ぶように?」

 

「…………忘れろ、ホシノ後輩、俺はアイツのことをカミキ姉としか呼ばない」

 

「だったら俺のことを名前で呼んでください!」

 

「その方がいいかもな、よし、お前のことを」

 

「シン君?」

 

「いえ、何でもありません」

 

 後ろからやってきたカミキ姉に俺は首を振る。

 

 気のせいだ。

 

 後ろにママッガイのスタンドなんてみえなかったんや。

 

「ホシノさん、セカイ、シン君を借りてもいいかな?」

 

「「はい!」」

 

 あれ、俺の許可は?

 

 俺はカミキ姉に手を引かれて歩き出す。

 

 ちなみにカミキ姉の浴衣は似合っていた。

 

「今日はありがとう」

 

「別に、あのイケメンが気に入らなかったから参加しただけ……というのは建前で、友達の手助けだよ」

 

「……最近、変わったね。シン君」

 

「そうか?」

 

「うん!うしろ向きだったシン君だけど、今は前向き」

 

「……なんともいえないところだ」

 

 適度に命の危機を感じることが前向きになっているなんて、絶対、違うと思う。

 

「それに、今日のシン君はかっこよかったなぁ」

 

「気のせいだろ?いつもの瓶底メガネ……って、あれ!?」

 

 顔を触ればいつものメガネがないことに気付いた。

 

 どこいった!?

 

「悪い、メガネを」

 

「はい」

 

 俺の前に現れる普段の愛用品。

 

「カミキ姉が持っていたのか?」

 

「ミライ!」

 

「……どうも」

 

 カミキ姉の持っているメガネを取ろうとしたら手を遠ざけられる。

 

 なして?

 

「ちゃんと名前で呼んでくれないと返してあげません」

 

「わかった、ちゃんと呼ぶから、返してくれ」

 

「もう……そろそろこのメガネを外してもいいんじゃないかな」

 

「そういうわけにもいかない。色々と面倒なことがあるから」

 

「でも」

 

「姉ちゃん!そろそろ飯行こうぜ~」

 

 ナイスタイミングだ。カミキ弟。

 

「さて、お腹すいたなぁ、飯代は割り勘でやるからうまいもの食べようぜ」

 

「……仕方ないわね」

 

 カミキ姉と俺はやって来る弟たちを連れて晩飯を満喫した。

 

 魚介類はとてもおいしかった。

 

 特にアナゴがよかったな。うん。

 




ジム・クゥエル。
機動戦士Zガンダムで登場するジムの発展機体。
本来は搭載されていないナパームを無数に所持していることと、盾が通常よりも大きい。
加えて、脚部の裏にレース用にローラーが装着されている。


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メイジンです。

『いいぜ、もっとだ!もっと来い!』

 

「ぴーちくぱーちく、うるさいってぇの」

 

 あぁ、面倒だ。

 

 通信機越しで興奮している男の声ほど嫌なものはない。

 

 どうせなら、女の子が……うん、なんでもない。

 

 俺が操るスタークジェガンにしつこく迫って来るデスサイズヘルのような外観をしたオリジナルガンダム。

 

 データ上の名前ではガンダムジエンドということになっている。

 

 鋭い爪から繰り出される無数のファング。

 

 体から赤い粒子を放っていることから機動戦士ガンダム00のGN-X、もしくはスローネシリーズをベースにしていることがわかる。

 

 近づいてくるファングをバルカンと左手に装備している散弾式に切り替えたバズーカで撃ち落とす。

 

『すげぇ!ここまでやれる奴がいたなんてよぉ!もっとだ!もっと、相手しろぉ!』

 

 どうして、俺が興奮している男とバトルしているのか。

 

 トライファイターズは夏休みにヤジマ商事ガンプラバトルシステム、新システムを開発及び世界レベルのファイターを召集し各種データ、新プラフスキー粒子を研究する施設……またの名をニールセン・ラボがある静岡へと来ていた。

 

 このニールセン・ラボは最新式のバトルシステムや広大な工作室があり、ガンプラバトルの特訓場として有名。

 

 だが、参加条件として全国大会三回以上の出場が利用可能条件となっている。

 

 ちなみにトライファイターズは参加資格を有していなかったのだが、ラルさん、責任者のニルスさんの友誼によって利用できていた。

 

 やってきて早々、カミキ弟が鹿児島代表の我梅学院チームホワイトウルフと騒動を起こしてガンプラバトルをすることになっていたのだが、開始時間になっても三人が来ない。

 

 謝罪していると白い学ランの男が乱入。

 

 ホワイトウルフの三人を瞬殺した。

 

 それだけで終わればよかったのだが。

 

「アンタ、あのハヤテ・シンだな?」

 

 どういうわけか強面の男子、アドウ・サガは俺を知っておりガンプラバトルを挑んできた。

 

 何でも誰かから俺の特徴を聞いていたらしい。

 

 拒否していたら今にも殴りかかってきそうだったのだ、仕方なく合宿用に準備していたスタークジェガンでバトルすることになった。

 

 そして、現在。

 

「全弾、発射っと」

 

 近づいてくるガンダムジエンドにスタークジェガンの両肩に装着していたミサイルをすべて撃ちだす。

 

『邪魔だ!』

 

 ジエンドは巨大な手でミサイルのすべてを破壊する。

 

『こんなものでぇ』

 

「ある映画で、こんなものがあった」

 

 俺の声にアドウが驚きの声を上げる。

 

「ミサイルポッドを怪獣にぶつけるとかってなぁ!」

 

『なにぃ!?』

 

 爆炎の中からスタークジェガンが肩に背負っていたミサイルポッドが次々とガンダムジエンドへぶつかる。

 

 地上へ押し戻されるガンダムジエンド。

 

 このままとどめを刺そうとした時。

 

 ライトニングガンダムが乱入してきた。

 

「コウサカ!?」

 

『見つけたぞ!何年もお前を探していた!!』

 

 激昂しているコウサカ。

 

 彼は俺の制止を聞かずジエンドに攻撃をしていく。

 

 冷静さを欠いているのか。

 

 ジェガンのポッドを退かしたジエンドはDNファングを繰り出す。

 

 コウサカはライトニングガンダムをWR形態に変えるとファングから逃げていく。

 

 体勢を整えるために距離を取っているとコウサカとアドウが会話をしていた。

 

 何でも数年前にコウサカをぼこぼこにしてガンプラバトルから遠ざけた人物がアドウだという。

 

 だが、肝心のアドウは覚えていなかった。

 

 戦闘狂でバトルばかりしていて倒した相手を覚えていなかったというパターンだろう。

 

「……ま、こうなるよな」

 

 あの後、ライトニングガンダムを屠り、他のトライファイターズのメンバーを圧倒したアドウのガンダムジエンドが俺のスタークジェガンに迫る。

 

 仕方ない。

 

「俺も疲れてきているから……さっさと終わらせるか」

 

『あ?』

 

 怪訝な声を上げるアドウに向かってスタークジェガンはビームサーベルを取り出す。

 

 ジエンドが巨大な手を広げて襲い掛かる。

 

 その時、新たな乱入者が現れた。

 

 乱入者の姿を見て、俺は驚く。

 

 真紅に彩られたガンダム……プラモ狂四郎で主人公《京田四郎》が制作した新たなパーフェクトガンダムの三代目…パーフェクトガンダムⅢ…アメイジングレッドウォーリア

 

 三代目メイジンカワグチが作り上げた新たなガンプラ。

 

 その姿を見て、俺の口の端が浮き上がる。

 

 近づいてくるガンダムジエンドの腕と頭部を切り落としてそのままアメイジングレッドウォーリアへ向かう。

 

「メイジン、カワグチぃぃぃいいいいいいいいいいいい!」

 

 繰り出すビームサーベル。

 

 だが、アメイジングレッドウォーリアはあっさりと躱してジェガンのコクピットを貫く。

 

 また、俺はメイジンに負けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しいな、ハヤテ・シン君。相変わらず血気盛んなことだ。白い悪魔としての腕は衰えていないようだ」

 

「負けた後にいわれると嫌味にしか聞こえないんだけど」

 

 あれから少しばかり時間が進んで俺は一対一で三代目メイジンカワグチと会話をしていた。

 

「しかし、あのスタークジェガン、武装に手は出しているようだが本体そのものに手を加えないのは何故かね?」

 

「……」

 

「何よりキミは世界大会ベスト3という記録を出した後に半ば失踪のようなことをしている。やはり、あのスキャンダルを気にしているのかね?」

 

「あんなこと、でっち上げなので俺は気にしていないです。精神的な問題で離れようと思っただけです。でも、ガンプラバトルが大好きだから完全に捨てられないという中途半端な状態なんですよ」

 

「チナ君から聞いているが、キミがトライファイターズの面倒を見ているそうだね」

 

「なし崩し的なものです」

 

「……だとしても、キミがガンプラバトルにこれからも関わり続けようと思うのなら……何事にも本気で挑まなければならない!」

 

「本気で?」

 

「そうだ、ガンプラバトルは誰かのためにするものではない!自分のためでなければならない!!」

 

「……仰る通りです」

 

「私も含め、世界の覇者達は望んでいる。キミが、イタリアの伊達男のもとで鍛えられて純白の機体で敵を圧倒し、周りを魅了させた。あのファイターの姿を」

 

 こりゃまた、随分と買いかぶられているな。

 

 俺はメイジンの言葉になんともいえない気持ちになる。

 

「戻るのなら、この世界へ戻るというのなら今一度、覚悟を決めろ!キミが、白い悪魔としての姿を見ることを私は待ち望んでいる!キミのライバルも!」

 

 卑怯だ。

 

 ここで、アイツの存在を言うなんて。

 

「ああ、そうかい」

 

 息を吐きながら俺はメイジンの覇気と向き合う。

 

「それでは、私は」

 

「コウサカと会うなら、徹底的にしごいてやってください。アイツ、色々と後ろ向きなので」

 

「フッ」

 

 メイジンは小さく笑うと去っていく。

 

「さて、俺は制作ブースに行きますか」

 

 ニールセン・ラボにある制作ブース。

 

 そこで俺はあるガンプラを弄っていた。

 

 ボコボコにされたスタークジェガンのパーツを外してジェガンへ戻す。

 

 用意している箱の中に戻して、あるものを取り出す。

 

 コイツは埋もれるつもりだった。

 

 だが、メイジンからあんな言葉を貰ったら、やることは決まっている。

 

「さぁて、こっからが本番だ」

 

 鞄から工作パーツを取り出す。

 

 少しばかり徹夜を覚悟しよう。

 

 よし、やるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素敵なガンプラね」

 

 頭上から聞こえた声に顔を上げる。

 

「ぶべ?」

 

 口元から流れる涎を拭いながら顔を上げたら銀髪の小さな少女がいた。

 

 コイツ、どっかで見たような?

 

「先輩、こんなところで寝ていたら風邪ひきますよ?」

 

 小さな少女の隣にビルドバーニングを弄っているカミキ弟の姿がある。

 

「あれ、かなり寝ていたか?」

 

 端末の時間を見た。

 

 どうやら一時間ほど寝ていたか。

 

 首をゴキゴキと鳴らしながら立ち上がる。

 

「ところで、カミキ弟、この銀髪娘は?」

 

「えっと、今、知り合いました」

 

「あ、そう」

 

 コイツ、警戒心というものがないのか。

 

 俺は呆れながら少女を見る。

 

 彼女は興味深そうに机上のガンプラを眺めている。

 

「そこの少女、眺めているガンプラを取りたいのだが、いいか?」

 

「あ、ごめんなさい」

 

 少女は驚くように離れる。

 

 俺は机の上に置かれているガンプラを手に取った。

 

「それ、貴方が?」

 

「ああ」

 

 手の中でガンプラの稼働を確認しつつ、箱の中に収納する。

 

「カミキ弟、俺は部屋で休む。明日になったら起こしてくれ……シミュレーション使うから」

 

「はい!おやすみなさい」

 

 ふらふらと指定されている部屋で爆睡する。

 

 

 




スタークジェガン。
機動戦士ガンダムUCに登場したジェガンの特殊武装形態。
両肩にミサイルユニットが装備されている。
機体は素組みだが、武装のバズーカに実弾と散弾式にできるように調整。
ミサイルユニットもゴジ〇に出てきた機械の龍のようにユニットを相手へ射出できるようになっている。


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乱戦です。

「どうしたんだ?後輩」

 

 翌朝、機嫌の悪いホシノ後輩がいた。

 

「別に、何でもありません」

 

「それより、先輩。セカイからまたガンプラを作ったと聞きました。それはどんな?」

 

「ふぁわぁ……ああ、これのことか?」

 

 鞄の中から箱に納めていたガンプラを取り出す。

 

「これが先輩の?」

 

 コウサカが俺の作ったガンプラを眺める。

 

「(今回は武装だけじゃない……機体の方も弄っている?なんだ、肩や両手、両足にある切れ込みのような筋は?まるでユニコーンのように装甲がスライドするのか)」

 

「おい、そんなジロジロみるなよ。まだ動かしていないんだから」

 

「じゃあ、この後、バトルフィールドで?」

 

「ああ、テストする。どうなるか不安で仕方ないんだけどな」

 

「不安?」

 

「ちょっと弄ったからな。稼働した途端に爆発しないか心配で」

 

「「「爆発!?」」」

 

 驚いた顔をしてこちらをみる三人。

 

 ラルさんは知っているのか「ほぉ」と声を漏らすだけだ。

 

「久しぶりだな。キミの機体は作成して動かすことで完成したかどうかわかるからね」

 

「ええ、久しぶりなのでどうなることか」

 

「……先輩、ちなみに危険なものを積んでいるわけじゃないですよね?」

 

「ルールを犯すようなことはしねぇよ」

 

「じゃあ、この後、やりましよう!」

 

「そうだな」

 

 目の前の飯を食べる。

 

 その後、楽しいガンプラバトルだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんで乱戦?」

 

「すいません、先輩、巻き込んじゃって」

 

 俺の隣でカミキ弟が謝る。

 

「いや、悪いのはカミキ弟じゃねぇよ。問題なのはあっちだ」

 

 あのロングヘア―の阿呆め、ボコボコにしてやる。

 

 俺とカミキ弟がシミュレーションを使おうとした時、ガンプラ学園という全国大会優勝を続けている強豪校のエース、キジマ・ウィルフリッドがいた。

 

 彼だけなら問題なかったのだが、本牧学園チームのカリマ・ケイとやら、ホワイトウルフのメンバーに加えて。

 

「まぁた、てめぇと戦えるなんて嬉しいぜ。ハヤテ・シン!」

 

 俺にめっちゃ敵意を向けているアドウ・サガがいるんですけど。

 

 メイジン主催のバトルロワイヤルが行われることになった。

 

 おかしいな。俺はガンプラの試運転だけのつもりだったのに、まぁいい。

 

「こういう楽しいことをしてみたかったから丁度いいぜ。カミキ弟」

 

「はい!」

 

「お前はキジマ・ウィルフリッドとやりたいだろ?」

 

「はい!」

 

「じゃあ、奴のところへ向かえ。他は可能な限り相手するな」

 

「え?」

 

「俺が露払いをしてやるよ……試作で作った俺のガンプラ……XX(ダブルクロス)プロト!」

 

 射出されるガンプラ。

 

 ビルドバーニングの隣に降り立つのは純白の機体。

 

 ベースはジム・クゥエルにしているが両足と背中にブーストパーツを追加している。

 

 何より、頭部が。

 

「ガンダムヘッドだとぉ!」

 

 俺のガンプラの姿を見てホワイトウルフのメンバーが驚きの声を上げる。

 

 かくいうカミキ弟もガンダムを使っていることに少し驚いていた。

 

「先輩、どうして」

 

「少しばかり本気を出しただけだ。セカイ、行け!」

 

「はい!」

 

 カミキ弟に任せて。

 

 ホワイトウルフのメンバーと向き合おうとした時。

 

「邪魔だ」

 

 ジエンドが現れてホワイトウルフのメンバーを駆逐していた。

 

「おいおい、乱暴だなぁ」

 

「てめぇを潰すのはこの俺だぁああああ!」

 

 襲い掛かって来るガンダム・ジエンド。

 

 距離を詰めようとしてくる敵から距離を取るために左手のライフルを連射する。

 

「そんなものが通用するかよぉ!」

 

「知っているよ」

 

 放たれる粒子ビーム。

 

 迫るビームをXXプロトの右手で受け止めさせる。

 

「なに!?ビームが吸い込まれて」

 

 アドウの撃ったビームのエネルギーをそのまま吸収しながらXXプロトを走らせた。

 

「脱がすかよ!ファング!」

 

 ジエンドから射出されるDNファング。

 

 ファングを潰すには。

 

「こうするか」

 

 XXプロトに追加している実体剣のアームセイバーを展開して、ファングを切り裂く。

 

「ビーム兵器も考えたけれど……これで正解だな」

 

「面白い!来いよ!叩き潰してやる!!」

 

 巨大な手のようなものを広げて向かい撃つガンダムジエンド。

 

「さて、お試し、逝きますか」

 

 文字は間違えていない。

 

 何せ、

 

「久々の試運転だからよぉおおおおおおおおおお!」

 

 操縦桿を操作してSPスロットを選択、指で叩くように発動させる。

 

 操っているガンプラ、XXプロトの右肩の装甲がスライドして、そこから青い光が放出した。

 

「何だ、その光はよぉ!」

 

 放出される極太のビームとファング。

 

「切り裂くぞ、XX!」

 

 腕のアームセイバーでビームを切り裂いた。

 

「なっ!?ビームを!」

 

「驚くなよ。まだ、こいつは全力を出してねぇぜ!アドウ・サガぁああああああああああ!」

 

 近づくジエンド。

 

 逃げることなく向きを変えて懐に入り込む。

 

 ジエンドを覆っているマントのようなものがなくなって、本体が明らかになる。

 

 00系列以外のデザインが取り入れられているのが目に見える。

 

 だが、ほとんどオリジナルで何が隠されているか油断できない。

 

「ここで終わるかよ!」

 

 アドウ・サガが奥の手を使おうとすることに気付いた。

 

 おいおい。

 

「それは後輩のために全国大会で取っておいてくれよ!!代わりに、こいつをくれてやるからよぉおおお!」

 

 右手を大きく広げて前に突き出す。

 

 掌が輝きながらエネルギーを纏い、ジエンドの体を貫いた。

 

「ウソ……だろ?」

 

 信じられないという顔で倒されたジエンドをみるアドウ。

 

「残念、今回は引き分けだな」

 

 直後、音を立てて俺のガンプラ、XXプロトが大爆発を起こす。

 

「なにぃ!?」

 

 驚くアドウの前で壊れるXXプロト。

 

 システムが試合終了を表示する。

 

「おい!てめぇ、どういうことだ!!」

 

 アドウが怒りに染まった顔でこっちに近づいてくる。

 

 怖いんだけど?

 

 溜息を吐きながら俺はアドウをみる。

 

「名前にあるけれど、コイツはまだ完成してねぇんだよ。テスト機。試運転もまだだったからいきなり爆発はしなかったけど、こうなることは予想済みだったんだ」

 

「チッ、おい、てめぇ、ハヤテ・シン!全国大会で俺と戦え!」

 

「それは無理だな」

 

「なにぃ?」

 

「悪いが俺は補欠だ。全国大会はあそこにいるカミキ弟達が出るんだ……まぁ、どこかで会って気が向けば、バトルしてやるよ。コイツはあくまでテスト機。どうなっているかわからないが完成していたら、ガチのバトルができるからな」

 

 右腕がバラバラになっているXXプロトを手に乗せながら答える。

 

 顔を上げるとこれまた不敵な笑顔を浮かべているアドウ・サガ君がいました。

 

「いいぜぇ、ハヤテ・シン。てめぇのような奴を待っていたんだ。今度、俺と会うまでにそのガンプラを完成させていろ。俺が叩き潰す!」

 

 何やらこの人を本気にさせてしまったらしい。

 

 まぁ。

 

「いいぜ、やるなら徹底的に叩き潰してやる」

 

 カミキ弟の方もライバルができたみたいだ。

 

 俺の場合は叩き潰したい相手ができたという不純な動機だが、楽しめる理由ができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 合宿が終わった時、トライファイターズのメンバーは色々と成長していた。

 

 どこがどうとはいえないけれど、前よりも前を向いている。

 

 こんな言い方はどうかと思うが彼らは全国大会にどうすればいいかという課題をクリアすべく動き出す。

 

 かくいう俺もXXプロトを完成させないといけない。

 

 だから、家へ帰って早速ガンプラを完成させないといけないのだが。

 

「おい、何で、俺もカミキ弟の家へ行かないといけないんだ?」

 

「合宿です!」

 

「第二弾です!」

 

「付き合ってください。先輩のガンプラ知識、操縦などを僕達に可能な限り教えてほしいんです!」

 

 やる気を見せるトライファイターズのメンバー。

 

 その熱気に俺を巻き込むことをやめてほしいんだけど。

 

 熱気と言えば、俺にサインを求めてきた変な三つ子がいたなぁ。

 

「悪いな、カミ……ミライ、俺まで押しかけてきちまって」

 

「ううん。気にしないで、でも、料理の買い物とかは付き合ってもらうからね?」

 

 いきなり押しかけても受け入れるなんて、こいつの心の広さに限界はないの?

 

 まぁ、こちらとしては食費が浮くから丁度いいんだけど。

 

「そういえば、シン君」

 

「うん?」

 

「家の前に小さな子供たちがきていたけれど」

 

「子供?」

 

「うん、黒い髪の子、銀髪の子、茶髪の双子さん」

 

 それって。

 

「悪い、俺、家へ取りに行くものがあるから、少し外れるぞ」

 

 三人へそういって俺は家へ向かう。

 

 家に向かうとカミキ姉の言うとおり、四人の小さな子達がいた。

 

「お前達、暁、響、雷、電だな」

 

「あ、司令官!」

 

「なのです!」

 

「ハラショー」

 

「うわぁああああん!どこに行っていたのよぉ!」

 

 俺の姿を見ると黒髪の自称“レディー”の暁が泣きながら抱き着いてきた。

 

 暁の頭をなでながら俺は他の三人を見る。

 

「久しぶりだな、四人とも」

 

 さて、何の用事だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「商店街のガンプラ大会?」

 

「そうなの!私達も出場したいんだけど……今の私達じゃ初戦敗退しそうなの」

 

「だから、司令官の力を借りたいというわけさ」

 

「……その商店街の大会はいつだ?」

 

「明後日なのです」

 

「は?それで、お前らが使う予定のガンプラは?」

 

「これなのです」

 

 電が俺の前にガンプラを見せる。

 

 デュエル、バスター、ブリッツ、イージスの素組み。

 

 パーツの差し込みが甘いし、特に塗装もされていないなぁ。

 

 見上げると不安そうにこちらをみている四姉妹の姿がある。

 

「仕方ない」

 

 カミキ姉に食材は提供するからなんとかしてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「電なのです」

 

「雷よ!かみなりじゃないからそこのところ間違えないでね!」

 

「響だよ。こうみえて、次女さ」

 

「暁よ!司令官にはお世話になっているわ」

 

「一応、知り合いだ」

 

「先輩、ロ――」

 

「ホシノ後輩、それ以上を言えば、さすがの俺も怒るぞ」

 

「ごめんなさい」

 

 謝罪するホシノ後輩。

 

 机の上には制作中のガンプラパーツなどがある。

 

 俺が座っていた場所には壊れたままのXXプロトが置かれていた。

 

「セカイもそうですけれど、先輩もなかなかの」

 

「コウサカ、それ以上言うならマジで俺も切れるからな?何でも商店街の大会に出るからガンプラを見てくれと頼まれたんだよ」

 

「……そうですか、しかし、素組みでところどころ雑だな。これじゃあ、大会で優勝は難しいな」

 

「あう」

 

「そうなのですか」

 

 涙目になる暁と電。

 

 あー、泣かしたな。

 

「泣かした」

 

「最低だ」

 

「ユウ君」

 

「え、あ、いや!?」

 

 戸惑うコウサカ。

 

 まぁ、弄るのはそこそこにしておこう。

 

「手助けはできる。ただし、底上げしてやるだけだ。大会自体はお前達がなんとかして勝ち抜け」

 

 俺の言葉に四人は頷いた。

 

「さて、XXプロトは置いといて、お前達のガンプラを見てやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シン君」

 

 ガンプラの改修を疲れて眠っている四人に布団をかけているとカミキ姉に声をかけられる。

 

「何だ?ミライ」

 

「あっちの三人も寝ちゃったみたいなの」

 

「そっか、じゃあ、XXプロトの改修は明日だな」

 

「ご飯、どうする?」

 

「ああ、残っている?」

 

「少しだけね」

 

 カミキ姉の用意してくれた料理はおいしいからな。

 

 がっつくように食べる。

 

「セカイ達は大丈夫?」

 

「ああ、目標が定まっているからな。そこまで真っすぐ向かうだけだからな」

 

「そう」

 

「母親みたいな顔をしているぞ?」

 

「もう、からかわないで」

 

 頬を膨らませてこちらをみる。

 

「悪い悪い、冗談だから」

 

「……もぉ」

 

 こんな可愛い奴でも怒らせたらとんでもないからなぁ。

 

「シン君も目標ができたの?」

 

「ま、出来たと言えば、出来たな。もう一度、俺は世界に挑戦する」

 

「世界に?」

 

「世界大会へ出場する……ライバルとぶつかり合うために、なぁ」

 

 食器を流しへ置く。

 

「さてと、少し散歩でもするかな」

 

「あ、私も付き合うわ」

 

 はい?

 

 何といった。この子。

 

「お前、もう夜だぞ?」

 

「うん」

 

「女の子が夜を出歩くと……って、お前は強いから大丈夫か。むしろ、変質者が跣で逃げ出すだろうな」

 

「ちょっと!」

 

「冗談、でないけれど、まぁ、一緒に来るか?」

 

「うん」

 

 この時、カミキ弟達が寝ている場所から殺意のようなものを感じたが気のせいだろう。

 

 夏だが、この時間帯の外は涼しかった。

 

 頭の中でXXプロトの改修内容を考えているとおずおずとカミキ姉が話しかけてくる。

 

「シン君」

 

「うん?」

 

「実は、セカイ達に黙っているんだけど、全国大会中高年の部のイメージキャラクターを行うことになったの」

 

「イメージキャラクターって、おいおい」

 

 俺は驚きの表情を浮かべていることだろう。

 

 だって、読モのカミキ姉がイメージキャラクターを引き受ける=ガンプラアイドルキララのような流れにいくこともある。

 

 ガンプラバトルの公式大会のイメージキャラクターはアイドルなどの登竜門というイメージがここ数年の間についていた。

 

 もしかしたら、これを機会にカミキ姉も世界へ出ていくかもしれない。

 

「それは良いことなんじゃ?」

 

「少し前までは断ろうかなと思っていたんだけど、セカイやホシノさん、コウサカ君達が頑張っているのを見ると、私も……何より」

 

 こちらを見上げるカミキ姉。

 

 何だ、この空気。

 

「シン君が頑張っているのをもっと近くでみれるかなって」

 

 頬を赤らめているカミキ姉には悪いけれどさ。

 

「全国大会、俺は補欠だぜ?」

 

「そうだったね」

 

「だから、カミキ弟達のことを応援してやれ、まぁ、俺が代打で出ることがあれば、その時だけで応援を頼むわ」

 

「うん!」

 

 笑顔を浮かべるカミキ姉。

 

 その顔を見ているとなんともいえないなぁ。

 

 まぁ、俺も頑張らないといけない気持ちにはなる。

 

「お約束みたいなものだけど、互いに頑張ろうぜ」

 

 カミキ姉の前に拳を突き出す。

 

 最初は驚いていたがすぐにほほ笑んで拳をぶつける。

 

 カミキ家へ戻ると殺意で満ち溢れていたコウサカが俺を待っていた。死ぬかと思いましたよ。

 

 




XXプロト

ハヤテ・シンが作ったガンプラ、
本体のベースはジム・クゥエル。ただし、頭部は陸戦型ガンダムのものが使われている。全体的な塗装は白で統一されている。
背中のバーニアは0096シリーズのもの。肩、腕、足に奇妙なラインが入っている。
完全に完成していないが右腕に実体剣が装備されている以外はビームライフルとシールドのみ。



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全国大会はじまりです。

 いよいよこの日がやってきた。

 

 全日本ガンプラバトル選手権

 

 日本各地の中高生ファイター達がこぞって競い合う最高の舞台。

 

 七年前に行われた世界大会よりもさらに規模が大きくなったこの大会。

 

 場所は七年前に行われた会場の隣に建てられた施設。

 

 そして、七年前にあった大会の会場は記念碑だけが残されているだけだ。

 

 記念碑に俺は手を触れる。

 

「あれから七年か……」

 

 今でも脳裏に焼き付いて離れない。

 

 スタービルドストライクとガンダムエクシアダークマターの激戦。

 

 大会の後に起こった騒動、俺はみているだけだったがファイター達によって解決した騒動の後で行われたガンプラバトル。

 

 あの大会が一番、忘れられない。

 

 俺はあんなガンプラバトルをしたい。

 

 あの人達みたいに……。

 

 

「やべっ、感傷に浸りすぎたか」

 

 時計を見るとトライファイターズのメンバーが到着する。

 

 あいつらの出迎えをしないと。

 

 最後に記念碑を眺めてからホテルへ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホテルの入り口でカミキ弟達と合流する。

 

「先輩、早かったですね」

 

「寄りたいところがあったからな。さて、中に入るぞ」

 

「はい!うわぁ、人が一杯だ」

 

「だけどな、この人数も大会の日程が進むにつれて減るんだ。最終日はほとんど人がいないくらいだ」

 

「へ~」

 

「「……」」

 

 カミキ弟が驚きの声を上げる。

 

 何も知らなかったらこういう反応をするよな。

 

 左右の二人はかなり緊張した様子だ。

 

 それにしても、

 

「なぁ、ホシノ後輩。やけにこっちへ視線が集まっていないか?」

 

「……あのぉ、先輩、この前からずっと言おう、言おうと思っていて言えなかったことがあるんですけど」

 

「……なんだ?」

 

 真面目な顔をしているホシノ後輩に俺は尋ねる。

 

「瓶底メガネ、していませんよ」

 

「…………Oh、No」

 

 そっか、ここのところ、やけに周りの物が良く見えると思ったら。

 

 しかも、素顔を晒しているから。

 

「おい……」

 

「あの人」

 

「ああ、間違いない。白い悪魔だ」

 

「ウソだろ?あの伝説的なファイターがなんでこんなところに?」

 

「噂じゃ、去年の大会である企業があることないことを広めたからファイターとしての生命を奪われたって聞いたんだけど」

 

「でも、あんな大物が参加するならもっと話題になるだろ?」

 

 俺の世界大会の記録を知っている奴らがこそこそと話をしているわけね。

 

「ホシノ後輩、メガネ、もしくは変装用のアイテムをくれ」

 

「そんなもの持っていませんよ」

 

 だよなぁ。

 

 今も向けられる視線。

 

 有名人もこんな気分なのだろうか。

 

「しばらく、晒し者の気分を味合わないといけないってことか」

 

 だが、すぐにそのざわめきは別の者たちへ移る。

 

 ガンプラ学園のキジマ・ウィルフリッドの出現によって。

 

 彼らに視線が向けられる。

 

 全員がガンプラ学園に視線を向けられている間に遠ざかろうと思っていたのだが。

 

「おい、ハヤテ・シン」

 

 アドウ・サガが俺に話しかけてくる。

 

 やめろよ。逃げることが出来ないじゃないか。

 

 再び集まる視線。

 

 それだけならよかった。

 

 だが、キジマ・ウィルフリッドまでがやってきたのだ。

 

「お初にお目にかかります。キジマ・ウィルフリッドです」

 

「ハヤテ・シンだ。よろしく、ガンプラ学園のエースさん……こんな廃れたファイターにまで声をかけてくれるとは光栄だ」

 

「とんでもない、あなたほどの猛者。礼儀を尽くすのは当然のことです」

 

「買いかぶりすぎだっての、俺は本大会に出場はしないからな」

 

「そうだとしても、機会があれば貴方とも戦いたいところです」

 

「光栄だよ」

 

 キジマと握手をする。

 

 それだけで外野がおおぉ!と騒ぎだす。

 

 おいおい、この程度で騒ぐってどんだけだよ。

 

 いつの間にか、コウサカの姿が消えていたがWCだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 消えていたコウサカはどういうわけかサカイ・ミナトを連れてきた。

 

「アホ毛も全国大会に出るのか?」

 

「だから!アホ毛やない言うてるやろ!この瓶底メガネ」

 

「残念、メガネはしていない」

 

「なん……やと!?本体を捨てたというのか!」

 

「おい!?人をマダヲみたいな扱いにするんじゃない!メガネが本体なのは奴らだけだ!」

 

「いーや!よう考えてみぃ、今のお前にとってパーソナルパーツといえば、ダサイ髪型にしょうもないメガネ!どちらかをとればお前に存在価値はない!」

 

「な、なんだとぉ」

 

「……なに、この会話?」

 

「参加しない方がいいですよ。バカが移る」

 

「「なんだとぉ!?」」

 

「それより!サカイ君はどんなガンプラを使うの?」

 

「いやぁ、ほんまは教えられへんねんけど、フミナちゃんの前やからしゃーないわぁ」

 

 どこかで何かがあったのか、ホシノ後輩の前だと形無しだな。このアホ毛。

 

「誰がアホ毛や!」

 

「人の心を読むな」

 

 読心術を会得しているのか!?

 

「先輩がわかりやすいだけです」

 

「うるさいぞ、コウサカ」

 

 そんな他愛のない話をして俺達は与えられている部屋へ向かう。

 

 ちなみにホシノ後輩が一人部屋、カミキ弟とコウサカが二人で一部屋。俺が一人部屋という形になっている。

 

 本当はコウサカ達と三人部屋でもよかったのだが、何があったのか、運営側から急に一部屋与えられたのだ。

 

 まあ、こちらとしては一人だけの方が作業に集中できるんだけど。

 

「問題は、こいつだよなぁ」

 

 机に置かれているXXプロト。

 

 武装パーツなどを外して本体のみ。

 

 アドウに対して右手を失うだけで済んだが一回のバトルでいちいち片腕を失っていたら予備パーツがいくつあっても足りはしない。

 

 何より。

 

「もう一個の奥の手を使ったら全体がバラバラになる」

 

 WWのアレを他の機体で使えるようにデチューンしているからより繊細になっているんだよなぁ。

 

「完成すれば最高の出来栄えになるのはわかっているけれど……うーん、どうすべきか?コウサカやアホ毛に頼るべきか……ふーむ」

 

 ちらりと俺は武装の方へ視線を向ける。

 

 ビームライフルはガンダムAGEに登場したドッズライフルを弄ったドッズライフルカスタム。

 

 盾は対ビームコーティングを施している特別仕様。

 

 他の武装は本体につけている実体剣。

 

 背中のバックパックに搭載しているビームサーベル。

 

「うーむ、武装はこのくらいにしておくか?もう少しガトリングとかバズーカをつけたいところでもあるけれど……武器が多すぎると動きも悪くなる……ライフルの方を強くして粒子関係に対応できるようにしておくかぁ」

 

 そんなことをぶつぶつと考えながら俺は眠りについてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタ、バカじゃないの!?」

 

「うるさい、ギャン子」

 

 観客席にいる俺の言葉に呆れた態度をとるサザキ・カオルコこと、ギャン子。

 

 ギャンに浸透しているサザキ・ススムの実妹。

 

 聖オデッサ女子学園のガンプラバトルチームを率いている。

 

 隣にいるのはイズナ・シモン。ボクシングで中学生チャンピオンを務めるほどの人物。

 

 この二人はカミキ弟達がガンプラバトルを通して知り合ったメンツだ。

 

 カミキ弟達を応援するためにやってきたという。

 

 ちなみに補欠メンバーである俺は観客席ではなく、下にあるバトルフィールドのあるエリアへいかなければならないのだが。

 

「ま、俺は補欠で、バトルに出る予定は微塵もないからいいんだよ。何より寝坊した」

 

「最低」

 

「何をしていて、寝坊を?」

 

「作っていたガンプラの改造を考えていたら寝落ちしていたんだよ……直前に名案が出たことでプロトを取り外せそうなんだけど」

 

 鞄の中にあるガンプラのことを考えながら俺は開会式をぼーっと眺めることにした。

 

 ちなみに開会式で聖鳳学園の姿は微塵もなかった。

 

 全く、アイツラ、俺以上に寝坊をしているなんて……羨ましいなぁ。

 

 ホント。



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恋愛です。

はい、タイトル詐欺です。

次回くらいでこの話を終わらせるつもりです。
全国大会を軽く触れて、名人杯の話で終わるつもりでいます。





「うわぁ、一瞬で老若男女問わず桃色空間に包まれたよ」

 

 開会式の後、イメージキャラクターとしての姿を見せたカミキ姉。

 

 純白に近い衣装に青いヘッドギアをつけている。

 

 唇にうっすらとルージュらしきものがみえることから化粧をしているのだろう。より、彼女の美しさが引き立てられていた。

 

 彼女の開会挨拶で周囲は桃色の空間に包まれている。

 

 ちなみに例外が存在する。

 

 ガンプラ学園とか、俺の周りなどだ。

 

「流石にギャン子は耐性がついているか」

 

「何のこと?確かに綺麗だと思うけれど、周りみたいにならないわよ」

 

「そうだな、あとは隣の絆創膏だけか」

 

「絆創膏って、俺の事か!?俺はイズナ・シモンだ」

 

「忘れなかったら覚えておいてやるよ。絆創膏」

 

「覚える気ないじゃないか……」

 

 隣で絆創膏が何か言っている中、ギャン子が尋ねてくる。

 

「それはそうと、あなたは大丈夫なの?セカイ君のお姉さん、物凄いファンが増えているわよ」

 

「あんなの日常茶飯事だ。俺が気にすることじゃないよ」

 

 今も広がる桃色空間にコウサカが悲鳴を上げていたような気がするけれど、諦めなさい。

 

 量産フラグメイカーのカミキ姉なのだから。

 

 まぁ、アイツに悪気はないのだけれど。

 

 そんなこんなの間に対戦表が発表される。

 

「ウソ!?」

 

「初日……しかも、相手は」

 

 トライファイターズの対戦相手はオホーツク学園のチーム南北海道。

 

 去年の全国大会ベスト8という記録を出している。

 

「最悪じゃない!」

 

 対戦相手をみて、ギャン子が絶望の声を上げる。

 

 隣の絆創膏も同じ表情だ。

 

 わかっていないなぁ。

 

「大丈夫だよ」

 

「え?」

 

「どうして、そう思うのかしら」

 

「傍で見てきたからだよ。アイツらの実力なら去年のベスト8なんて敵にならない。むしろ」

 

 準備運動だ。

 

 フィールドに飛び出すチームトライファイターズのガンプラ。

 

 地区予選の時と彼らのガンプラは姿を変えていた。

 

 カミキ弟のトライバーニングガンダム。

 

 ホシノ後輩のスターウイニングガンダム。

 

 コウサカのライトニングガンダムフルバーニアン。

 

 それぞれの想いを形にしたようなガンダム達がフィールドに飛び出す。

 

 後は暴れるだけだ。

 

 頑張れよ。後輩たち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初戦を何もなく突破したトライファイターズ。

 

 ベスト8の相手は敵にならないということだろう。

 

 何より三人の連携が前よりも強くなっていたこともある。

 

 どんな敵が相手でもこの三人なら突破して優勝できる。

 

 そんな確信が俺の中に存在していた。

 

 勿論、油断はできない。

 

 なぜなら。

 

「久しぶりですね、ライバル」

 

 観客席から廊下を歩いていた俺の前に金髪の爽やかな笑顔を浮かべている青年がいた。

 

 こちらに向けて笑顔を浮かべているがその目は獲物をみつめる獣そのもの。

 

「久しぶりだな、ライバル」

 

 自然と俺の口角が上がっていく。

 

「まさか、お前が日本の全国大会に来るとはな。頼まれたか?」

 

「そうです。でも、それだけじゃあない」

 

 微笑む我がライバルは俺を指さす。

 

「キミが舞い戻ると聞いた。戦えるのなら、この全国大会で腕を見てみたい。そう思いました」

 

「楽観……いや、腕試しか?」

 

「そんなところです。貴方とはあの場でもう一度、決着をつけたい」

 

「……だな、俺もちゃんと決着をつけたいと思っている」

 

 互いに相手とにらみ合う。

 

「では、僕はこれで」

 

「なぁ、ルーカス」

 

 去ろうとする我が宿敵、ルーカス・ネメシスへ問いかける。

 

「ガンプラバトルは楽しいよな?」

 

「当然です。そして、ライバルと戦う時ほど、楽しいものはありません」

 

「同感だよ。さて、我が後輩達のライバルはどうなるのか……楽しみは尽きないねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やはり全国大会は凄い。

 

 ビルドバスターズというチームのガンプラ、トライオン3。

 

 陸、海、空のトライオンが合体して誕生するスーパーロボット、もとい、ZZを基にしたガンプラ。

 

 

 加えて、ガンプラ学園。

 

 キジマ・シアという少女が使うG-ポータント。

 

 プリマといわれても謙遜のない動きと行動で本牧学園チーム、グレート・Kのカリマ……だったか?が使うヴェイガンギア・Kを短い時間で倒した。

 

 

 そんな強豪ぞろいに対戦していない俺でもワクワクしてしまう。

 

 彼らの道の行く先がとても気になった。

 

 

 

 

 一人でぶらぶらと森林を歩いているとキジマ・シアとカミキ弟を発見する。

 

「おーい、カミキ弟」

 

「先輩」

 

「……だれ?」

 

 カミキ弟に近づくネコ娘。

 

「そこのネコ娘と親しくなっていたのか?」

 

「ネコ娘?ああ、シアのことですか、はい」

 

 頷くカミキ弟の言葉に嬉しそうな顔を浮かべるネコ娘。

 

 どうやらカミキ弟はフラグを建てたらしい。

 

「ハヤテ・シン、俺の先輩だ」

 

「……ハヤテ・シン、もしかして、白い悪魔?世界大会でベスト3の実力の持ち主?確か……使用していたガンプラはガンダムデルタカイWW」

 

「詳しいな」

 

「あのガンプラ、とても強かったから」

 

 ネコ娘の言葉に俺はひゅうと口笛を鳴らす。

 

「でも、戦い方が少し乱暴、あれじゃあ、ガンプラが可哀そう」

 

「可哀そう……か、扱いは気を付けているつもりなんだけどなぁ」

 

「そう」

 

 ネコ娘の言葉にまだまだ修行が足りないということだな。

 

 少し話をしているとどうやらカミキ弟のことを本気で好きになっているらしい。

 

 しきりに彼へ自分の作ったガンプラを使ってほしいといってくる。

 

 対して、恋愛に疎いカミキ弟は戸惑ってばかりだ。

 

 こういうのを青春というのだろう。

 

 ラル大尉の言葉を借りるとあぁ、尻がかゆい。

 

 その後、ギャン子が乱入。

 

 トライファイターズの次の対戦相手統立学園チーム「SD-R」の三人がやってきた。

 

 彼らはカミキ弟とネコ娘、ギャン子の姿をみて、呆れていた。

 

 それだけならただの挑発で済んだのだが。

 

「やっぱり、ハヤテ・シンさんには統立学園に来てほしいな」

 

「そうだね」

 

「あなたほどのファイターでありビルダーに指導を受けたら僕達はもっと強くなれる」

 

 なんでここまで好意を寄せられているのか全く分からない。

 

 俺が茫然としている間にカミキ弟のセリフを奪ってギャン子とネコ娘が宣言をしていた。

 

 哀れだな、カミキ弟。

 

 しかし、俺がここまで気に入られるなんて初めてのことではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、先輩、恋愛ってなんですかね?」

 

「いきなりなんだよ」

 

 カミキ弟に言われて俺は持っていたパーツを潰しそうになった。

 

 話があるということでカミキ弟は俺の部屋に来ている。

 

 明日はチームSD-Rとの闘いだ。

 

 早めに寝ておくべきだろう。

 

「恋愛ねぇ、カミキ弟はまだ中学生だろ?そのうちわかるようになるさ」

 

「そうなんですか?」

 

 首を傾げているカミキ弟。

 

 目を見てみる限り本気でわかっていないのだろう。

 

 少し、尋ねてみるか。

 

「カミキ弟はカミキ姉以外に好きになった人っているか、あ、友達とかそういうのとは別のものだ」

 

「……ない、です」

 

「経験あるのみだな。恋愛はとても難しいものだって聞くからな」

 

「先輩はそういう経験ありますか?」

 

「あったともいえるし、なかったともいえる。まー、こればっかりは本人の気持ちとかそういうところがあるからどうしようもない」

 

「難しいなぁ」

 

 困ったような声を上げるカミキ弟。

 

 ま、眺めるだけにしておこう。

 

 楽しみは尽きないな。

 

「そういえば、先輩は姉ちゃんと付き合っていないの?」

 

 ベキャン。

 

 音を立てて予備パーツが砕け散る。

 

「何を言い出すんだ?お前」

 

「だって、ユウマや先輩が言っていたんですよ。あの二人は恋人じゃないのかって、違うんですか?」

 

「違うわ!アイツとは友達だ。それ以上は……多分、ないさ」

 

 多分、違うだろう。

 

 だが、俺から動くつもりはない。

 

 カミキ姉は人気者だ。

 

 俺みたいな悪魔という異名を持つ奴が触れていい相手ではないのだ。

 

 返答にカミキ弟は納得していない表情をしていたが、そこもいつかは解決するだろう。

 

 それにしても、パーツ、無駄にしちまったなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チームSD-Rとの戦いはトライファイターズの勝利で終わった。

 

 面白かったのはコウサカが幽霊を苦手ということ。

 

 SD-RのSDガンダムが合体して三つ首のドラゴンになったこと、イオリさんが使ったアブソーブシステムを搭載していたことなど、色々と面白いものだった。

 

 ただ、彼らはガンプラ学園を憎んでいた。

 

 三つ子の長男がガンプラ学園の入試に落ちたことで恨みを抱いていたという。

 

 そして、彼らが俺に執着していた理由。悪魔という異名を持つような戦い方を見たことが原因だった。

 

 悪魔の指導を受ければガンプラ学園を超えられると考えていたという。

 

「おいしいところを持っていったな、キジマ兄」

 

「申し訳ありません、ハヤテ・シンさん」

 

 あの三人と話をしていたキジマ兄の前に俺は姿を見せる。

 

「でも、助かったよ。悪魔の俺が説得したら余計にこじれるかもしれないからな」

 

「そんなことはありません。貴方はあの時」

 

「色々あったとしても、俺はその結果をバトルで示した。だから、悪魔なんて言われているんだよ」

 

「……ハヤテ・シンさん」

 

「今回、俺は若い連中の邪魔をするつもりはない。だから、キジマ兄、全力でガンプラバトルを楽しめよ」

 

「勿論です。チームトライファイターズと戦える日を楽しみにしています」

 

「伝えておくよ。お前のライバルに」

 

「ありがとうございます」

 

 キジマ兄と別れて俺は部屋に戻る。

 

 部屋の中央には作成したガンプラがあった。

 

「完成したけれど、こいつのお披露目はしばらく先だな」

 

 純白のガンプラ。

 

 プロトの名前を外したXX。

 

 ガンダムXX。

 

 

 

 



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最後の戦いです。

無理やりですが、終わりです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

少し番外編をやるかもしれませんが、いつ掲載するかは未定です。


 全国大会から少しばかりの月日が流れて。

 

 いやぁ、月日が流れるのはあっという間だな。

 

 全国大会はチームトライファイターズの優勝で終わった。

 

 ガンプラ学園とのバトルは延長戦へもつれ込むという予想外な展開を引き起こしつつもカミキ弟達が勝利をもぎった。

 

 優勝という結果を残したのでバトル部が廃部、統合という形になることはないだろう。

 

 まぁ、俺は何もしていないんだけど。

 

 そんなことをいったら何故か三人に説教を受けてしまうという理解不能なことはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、メイジン杯へきたわけだけど」

 

 俺とホシノ後輩、ラルさんとコウサカはメイジン杯へ来ていた。

 

 メイジン杯はガンプラビルダーが作成したガンプラを審査員が評価して優勝を決めるというものだ。メイジン杯で良い結果を出せればビルダーとしての腕を認められたと同然になる。

 

 そこでコウサカとアホ毛のガンプラが展示されている。

 

 どちらが優勝するのか競っていた。全国大会でぶつかり合った二人がここでもぶつかるのは何となく面白く感じた。

 

 全国大会はコウサカの勝利で終わっている。ここでアホ毛が挽回するのか、楽しみだ。

 

「それで、ホシノ後輩、セカイと連絡は?」

 

「全然……セカイ君、書置きだけ残して出て行ってから……連絡はとれていないんです」

 

「風来坊か、アイツは」

 

 少し前に、カミキ弟の奴は旅に出た。

 

 何の前置きもないまま出ていった。

 

「思い立ったら即行動に移すのが奴ですから」

 

「ああ、まるで風のような子だ」

 

「風というより嵐かも」

 

「ホシノ後輩の言うとおりだな、さて、展示は表彰が終わってからにしておくか」

 

「え?どうして、ですか?」

 

「アホ毛のことだから、劇的な展開にしたいとかいって、表彰されるまで見ないという約束、とりつけているんじゃないのか、コウサカ?」

 

「その通りです。エスパー、いや、ニュータイプですか?ハヤテ先輩は」

 

「予想しやすいだけだ……それにしても」

 

 何だ?

 

 やけに周りから視線が集まっているな。

 

 俺達にというわけではない。その中の一人に視線が集まっていた。

 

「ホシノ後輩、何をしたんだ」

 

「何にも覚えがありませんよ!?」

 

 どうやら、視線が集まっている原因はホシノ後輩にあるようだ。

 

 普段と何ら変わらない筈なのだが、なぜ、こうも視線が集まるのか。

 

 視線が集中してホシノ後輩は困惑するばかりだ。

 

 何が起こっているのやら。

 

「そういえば、ハヤテ君」

 

 隣にいたラルさんが尋ねてきた。

 

「何ですか?」

 

「キミは世界大会に出るそうだね」

 

「あれ?誰に聞いたんですか」

 

「なぁに、噂を耳にしただけだ」

 

 ラル大尉。

 

 油断できない相手だな。

 

 戦慄している中で俺は頷いた。

 

「大会用のガンプラを作りました。その前にやることがありますけれど」

 

「やること?」

 

「ライバルとの勝負ですよ」

 

 ラル大尉に俺は微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メイジン杯はコウサカの優勝で終わった。

 

 彼が作ったライトニングZガンダムが勝利した。

 

 さて、その結果にアホ毛が納得しなかった。

 

 どうして、コウサカが優勝なのかと。

 

 結果を伝えたメイジンへ突っかかる。

 

 理由は簡単だった。

 

 サカイ・ミナトは人の許可を取らず、モデルとしたガンプラを大会に出したということだった。

 

 ガンプラでも最低限の人権がある。

 

 それを無視していてはどれだけ素晴らしい出来栄えだろうと認められることはない。

 

 しかも、本人が置かれているガンプラを見て顔を真っ赤にしているのなら尚の事、当然だろう。

 

「しかし、すーぱーふみな、ね」

 

「先輩!!あれを止めてください!お願いします!」

 

 俺の前で涙目のホシノ後輩。

 

 数秒刻みで彼女のライフは削られている。

 

 宇宙のバトルフィールドを飛ぶコウサカのライトニングZガンダム。

 

 そして、サカイ・ミナトの操るすーぱーふみな。

 

 そう、すーぱーふみなだ。

 

 名前から想像できるかもしれないがホシノ後輩をモデルとして作られているガンプラ。

 

 いや、ガンプラというより擬人化みたいなものだ。少し前からユニコーンの姿をした少女のフィギュアなどを目撃したが、まさか身近の人物をモデルにしたガンプラがあったことはとても驚いた。

 

 エプロンドレスにカチューシャ、時折、ウィンクをする人型ガンプラ。ちなみにモデルよりも少しばかりスタイルをよくしている。

 

 もはや、ガンプラなのかわからないもの。

 

 ライトニングZガンダムがすーぱーふみなを止めようとするがウィンクしたり華麗な動きをしたりとホシノ後輩を苦しませる?行為ばかりしていた。

 

「……何だろうな、数分刻みに生まれていく黒歴史」

 

「やめてぇえええええええええええええええ!」

 

 仕方ないか。

 

 後輩のためにひと肌を脱いでやろう。

 

「カミキ弟も行っているし、俺もやるか」

 

 カミキ弟自作のガンプラ、カミキバーニングガンダム。

 

 自分の名前を使っていることに笑みを浮かべてしまうが、出来栄えはとても素晴らしかった。

 

 教えていたのがネコ娘だからというのもあるだろうし、大会中、自分が何もできないことに歯がゆさを覚えていたから頑張ったのだろう。

 

 素晴らしいガンプラだった。

 

 フィールドにガンプラを設置する。

 

 動き出すガンプラを見て観客たちが驚きの声を上げた。

 

「なんや!?そのガンプラ」

 

「俺の作ったガンプラだよ、ガンダムXX(ダブルクロス)出撃だ!」

 

 叫びと共に宇宙空間へその姿を現すガンダムXX。

 

 純白の機体、背中に大型のバックパック。左腕にバンシィが使用していたアームド・アーマーVNをベースとしたアームド・アーマーX。

 

 右腕に長砲身大型ビームライフル。

 

 頭部のガンダムヘッドの瞳が輝く。

 

「せかやて、このすーぱーふみなちゃんを止めることは」

 

「悪いけどさ、後輩の黒歴史を量産するような機体は」

 

 XXのガンダムヘッドの瞳が赤く輝いた。

 

 それと同時に肩、腕、足のパーツがスライドして大量の粒子が放出される。

 

「なんて粒子量!?」

 

「あの瞳……まさかEXAMシステムなのか!」

 

 バーニアですーぱーふみなの前に立つ。

 

 音を立ててXXのアームド・アーマーXが展開されて高速振動している武装がすーぱーふみなの体を掴む。

 

 音を立てて崩壊していくすーぱーふみな。

 

 笑顔のままで服がバリバリと破けていく。なんか、後輩を襲っているような気分になって来る。

 

「何か、後輩を虐めているようですっごい嫌な気分」

 

 傍でサカイ・ミナトが悲鳴を上げている中、俺は顔をしかめていた。

 

 ボロボロになって破壊されるすーぱーふみな。一撃で破壊しないと後輩のあられな姿を見ることになってしまいかねない。

 

 自分でやった手前、大きな顔をするつもりはないが、さすがにやりすぎだった。

 

「てか、メイジンやラル大尉もいるからすっげぇ混沌としているなぁ」

 

 参加したカミキ弟をはじめとして、メイジン、レディーカワグチ、ラル大尉、ネコ娘、ギャン子、ホシノ後輩。金剛、吹雪、スガ、絆創膏などが参加して、とんでもない大乱戦だ。

 

「シン君!」

 

 俺の前にやって来るベアッガイ。

 

「もしかして、カミキ姉……いや、ミライか?」

 

 メイジン杯の司会を担当していたカミキ姉がベアッガイを操作してこちらへやってくる。

 

「どうしてやってきたんだ?この大乱戦に」

 

「楽しそうだから!あと、シン君に会いたくて!」

 

「……そりゃ、久しぶりだけどさ。喜ぶほどの事か?メールのやり取りはしていたじゃないか」

 

「もう!」

 

 画面の向こうでカミキ姉は不機嫌な顔を浮かべる。

 

「シン君!楽しみましよう!せっかくのガンプラバトルですもの!」

 

 

「そうだな、一杯、楽しもう!」

 

 俺の言葉にカミキ姉は微笑み、ベアッガイと共にガンダムXXを動かす。

 

 

 

 

 

 

 

 道中、カミキ姉のファンに襲撃を受けるも難なく撃退。

 

 心行くまでガンプラバトルを楽しんだ。

 

 日本で行うガンプラバトルを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少しばかり時が過ぎて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遂にこの日が来た。

 

 ある場所に設置されているバトルフィールド。

 

 向かい合う形で俺とライバルのルーカス・ネメシス。

 

 俺達は一対一でバトルフィールドの前に立っている。

 

「とうとう、この日がきた」

 

「おかしいですね。もっと興奮するはずなのに冷静な僕がいます」

 

「そうだな、俺も同じだよ」

 

「似た者同士ですね」

 

「お前とガチのバトルができるなら、何でもいいさ」

 

「奇遇ですね。僕も同じ思いです。できるなら、カミキ・セカイとも戦ってみたかった」

 

「おいおい、俺の前でそういうこというかぁ?まぁ、俺もそうだけど」

 

 互いに笑いあう。

 

 ここから会話は不要だ。

 

 GPベースとガンプラをセットする。

 

 ルーカスは大会でも使用していたクロスボーン・ガンダムX1フルクロスだ。

 

 ガンプラ学園との戦いで壊れたと思っていたのが、応急処置を施してきているようだ。

 

 俺が使用するのは純白のガンダム。

 

 ただし、XXではない。

 

 ガンダムデルタカイをベースにしたガンプラ。

 

 ガンダムデルタカイWW(ホワイトウィング)

 

 より、純白に、所々の武装をカスタムした機体。

 

 設置するとガンダムデルタカイWWの瞳が緑色に輝く。

 

「さぁ、始めよう!」

 

 

「楽しいガンプラバトルを!!」

 

 叫びと共に二人のガンプラが飛び出す。

 

 先手とばかりにクロスボーン・ガンダムが狙撃する。

 

 その攻撃を左手に装備している盾を展開して粒子を吸収した。

 

「やはり、アブソーブシステムは健在ですか!」

 

「前よりも強化しているぜ。この程度の粒子でも、機体の底上げができる!」

 

 叫びと共にデルタカイWWの背中から多量の粒子を放出しながらビームサーベルを取り出して突き出す。

 

 ビームサーベルをクロスボーンがザンバスターで受け止める。

 

 背中の両翼に搭載されている大型ビーム砲がクロスボーンへ向く。

 

「なんの!」

 

 クロスボーンの頭部バルカンによって破壊されるビーム砲。

 

 壊れたパーツをパージながら可変して距離を取る。

 

 大きく旋回しながらWR形態になったデルタカイWWの先端がエネルギーを纏う。

 

「可変しても攻撃は可能か!」

 

「そうだ!」

 

 突貫してくるデルタカイWWの攻撃をクロスボーンはザンバスターではなくビームシールドで防ぐ。

 

 MS形態になりながら盾(ブレードシールド)を繰り出す。

 

 ザンバスターとブレードシールドがぶつかりあう。

 

「やっぱり楽しい!」

 

「そうだな、楽しい!だから」

 

「「やめられない!ガンプラバトルは!!」」

 

 



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ガンプラマフィアです。

GMの逆襲を見たために意欲が沸き上がりました。

オリジナル話です


薄暗い室内。

 

 豪華な椅子に深々と座り、ワインとステーキを頬ぼっている太った男がいる。

 

 彼の目は正面に設置されている巨大なスクリーン。そこで流れているガンプラバトルへ釘付けになっている。

 

 映像は世界大会のものだ。

 

 多くのファイターによる乱戦形式のもの。

 

 ガンプラが飛び交う中、白いガンプラが多くの敵を倒していく。

 

 時にWR形態になりながらビームやミサイルを回避して、敵が迫ればMSに変わりビームサーベルで両断する。

 

 飛び交う戦火の中で多くのガンプラを倒していく機体。

 

 その機体の名前はガンダムデルタカイWW。

 

 大型ビームライフルで敵を一掃する姿を見て太った男が声を上げる。

 

「欲しい!このガンプラが欲しい!!」

 

 手の中のワインがこぼれながらも男は気にせず叫ぶ。

 

 その目は今も戦い続けているガンダムデルタカイWWをみている。

 

「このガンプラをなんとしても手に入れる!おい!」

 

「はい」

 

 傍に控えている黒服に男は指示を飛ばす。

 

「GMに連絡を取れ」

 

「……わかりました」

 

「なんとしても、手に入れるぞ!このガンプラを僕のコレクションに加えるのだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけでコウサカ、手伝え」

 

「前振りもなくいきなりなんですか!?」

 

 聖鳳学園のバトル部部室。

 

 そこで俺はコウサカを捕まえていた。

 

「うちの知り合い四人がショッピングモールのガンプラバトルに出るんだよ。そこでガンプラのアドバイスが欲しいという。手伝いでお前が必要になった」

 

「その程度のことなら先輩でなんとかできるでしょう?僕だって予定が」

 

「カミキ姉の写真」

 

「(ピクッ)」

 

「私服姿と水着姿、様々な角度から撮られたものだ。ファンクラブとかで入手するのも苦労するようなものばかりだぞ?」

 

「(ピククッ)」

 

 もう一押しか?

 

「俺の手伝いをしてくれたらお前の好印象をカミキ姉に伝えてやろう?前払いとして、これだ」

 

 硬直しているコウサカの眼前に俺はあるものをみせた。

 

「ガンプラを作っている時の純真なカミキ姉の写真」

 

「やりましよう!」

 

 笑顔で答えて俺の手を握り締めてくるコウサカ。

 

 うん、物で釣ったのはいけないかもしれないけれど、ここまで乗り気になったのは少し驚きだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コウサカを連れて俺が家へ戻るとそこには四人の先客がいた。

 

「スパスィーバ、ハヤテさん」

 

「よう、響」

 

 挨拶をしてくるのは制服を着た銀髪の少女、響。

 

 暁、電、雷の姿もある。

 

「こんにちはなのです!」

 

「コウサカ、自己紹介しておくと、こいつらは暁、響、雷電だ」

 

「「名前を一緒にしないで!」」

 

「冗談だ」

 

「えっと、コウサカ・ユウマです。先輩の手伝いでやってきたんだ」

 

 コウサカの笑顔で暁たちが笑顔を浮かべる。

 

 数日ほど前、暁たちからショッピングモールのガンプラ大会に出場したいということでガンプラを見てもらいたいと頼まれる。

 

 その依頼を俺一人で引き受けるのは大変ということでコウサカを巻き込むことにした。

 

「それで、お前達の使うガンプラがこれか」

 

「SEEDのGATシリーズですか」

 

 四人の前に置かれている素組みのガンプラ。

 

 イージス、デュエル、バスター、ブリッツ。

 

「見事にザフト四機か」

 

「こいつら仲良し四人組だからな」

 

「僕は暁ちゃんと響ちゃんのガンプラを見ます。雷電コンビは」

 

「「だから!一緒にしないで!」」

 

「申し訳ない(先輩の癖が移ったか!?)」

 

「じゃ、そっちは任せて、やるぞ。雷、電」

 

「はい!」

 

「なのです!」

 

 二人の前に置かれているのはバスターとイージス。

 

 電が使うのはGAT-X303イージスガンダム。

 

 他のGATシリーズの中で唯一の可変システムが搭載されている紅の機体。

 

 可変して相手を捕獲、高威力のエネルギー砲で戦艦を破壊することも可能。

 

 雷が使うのはGAT-X103バスターガンダム。

 

 遠距離からの支援砲撃を目的としており、特性の異なる二丁の大型携行砲を装備している。

 

 二丁の砲を前後に組み替えて連結することで散弾と収束火線ライフルとして盾が不要とされる狙撃機体。

 

「正直言って、操縦さえ問題なければ、素組みでも戦える機体でもあるんだが……これは一回バラバラにして、余分な部分を切り落とす方がいいかもな」

 

「どうすればいいの!」

 

「なのです!」

 

「今から手本を見せてやる……といいたいけれど、お前ら、なんで膝の上に座っている?

 

「なのです?」

 

「駄目なの?」

 

 二人から見上げられる。

 

 小学生くらいの少女たちが泣きそうな顔をされると本当に困る。

 

「仕方ない、まずは雷からやるぞ」

 

「はーい!」

 

「電は横でみてくれるか?」

 

「はいなのです!」

 

 少し横にずれて俺の膝の上(真ん中)へ腰かける雷。

 

 雷の使うバスターをばらして手を加えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をやっているんだ。あの人は?」

 

「レディーとしてあるまじきことよ!」

 

「嫉妬」

 

「そんなことしないわよ。レディーなんだから……」

 

 響と暁が羨ましそうにハヤテ達のやり取りを見ている中、コウサカ・ユウマは呆れていた。

 

 目の前に置かれているのは暁と響が使うガンプラ。

 

 デュエルとブリッツ。

 

 これらを改造する。

 

 ただし、自分がやりすぎてはいけない。

 

 ガンプラバトルは子供も大好きだ。しかし、大人や自分たちのようなベテランの領域の者達が手を加えるのは最低限にしないといけない。そうしなければ後の者達の成長につながらない。

 

「響ちゃん、暁ちゃんの操縦をどのようにしているか教えてくれるかい」

 

「了解」

 

「わかったわ」

 

 頷いた二人に最低限のアドバイスと改造方法を教える事だけにコウサカは考える。

 

 目の前で桃色空間偽が出来上がっているがあれは気にしないでおこう。

 

 全ては報酬のためだ。

 

 コウサカは目の前で改修されていくガンプラを眺めながら冷静に。

 

 冷静に。

 

「そう、そこのパーツとこのパーツを組み合わせるんだ。どうせだから」

 

「成程、勉強になる」

 

「うー、パンクしそうよ」

 

 冷静に、彼女たちのガンプラを最高のものにするんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大会当日。

 

 俺達はチラシに記されているはずのショッピングモールへやってきた。

 

 はずだった。

 

「何だ、こりゃ?」

 

「ショッピングモールに見えないですね」

 

 俺達の前に広がるのは小さなビル。

 

 なんで?

 

「住所を間違えたのか?」

 

「そんなはずは。ちゃんと端末のGPSはここを」

 

「とにかく、入ってみるか?」

 

「そうですね」

 

「行くわよ!」

 

「ハラショー」

 

「頑張るわ」

 

「なのです!」

 

 何か嫌な予感がしつつも俺とコウサカは四人を連れてビルの中に入る。

 

 その瞬間、音を立ててシャッターが閉じた。

 

「は?」

 

 ブン!と室内が消灯した。

 

 なんだ?

 

『ようこそ、待っていたよ。ハヤテ・シン君』

 

「は?俺?」

 

 いきなりのことに周りが戸惑う中で、俺はため息を零す。

 

「俺の名前を知っているのかとか、色々と言いたいけれど、直球で聞くわ。目的は何だ?」

 

 コウサカと共にさらりと四人を守るようにしながら声の主に尋ねた。

 

 音を立てて目の前のドアが開かれる。

 

「入って来いってことか」

 

「先輩……」

 

「コウサカ、端末、連絡できるか?」

 

「駄目です。電波が遮断されています」

 

「行くしかないってことか」

 

 俺とコウサカは頷いて奥へ進む。

 

「これは!?」

 

 奥はとても広い空間。

 

 その中心には巨大なバトルフィールドが設置されている。

 

「バトルフィールド?」

 

「なのです?」

 

「ハヤテさん、これは」

 

 戸惑う四人とコウサカに対して、俺は目の前の相手を睨む。

 

 黒い帽子にロングコートを羽織っている男たちがいた。

 

「成程。てめぇら、まだ生きていたのか」

 

 男たちの胸元にある「GM」というマークを見て俺は察した。

 

 こいつらが何者か。

 

「先輩、この人たちのことを知っているんですか?」

 

「コウサカも話に聞いたことがあるだろ?六年前、ガンプラバトルが再開しようとした時に起こった事件、それを引き起こした連中」

 

「……まさか、ガンプラマフィア!?」

 

 コウサカの言葉に俺は頷く。

 

 ガンプラマフィア。

 

 金のためなら合法、非合法問わずして活動する危険な集団。

 

 ビルダー、ファイターとして実力があるため、どんな依頼でも達成しようとする。

 

 六年前に国際ガンプラバトル公式審判員の手によって完全捕縛されたと聞いた。

 

「生き残りがいたなんて」

 

「どうやら、今回の大会自体、こいつらが仕組んだみたいだな」

 

 俺の言葉に四人は目を見開く。

 

「さて、早速だが、ガンプラバトルを始めようか……我々に勝利すればキミ達は無傷でここから返そう。負ければ」

 

「負ければ?」

 

「キミの持っているガンダムデルタカイWWを貰おう」

 

「は!?」

 

「お前達の狙いは先輩の作ったガンプラなのか!?」

 

「その通り、どうするかね?最も選択肢など」

 

「ないに等しい……仕方ない」

 

「おっと、そこの四人の少女達も参加するのだ」

 

「なに!?」

 

「ふざけるな!彼女達は関係ないだろう!?」

 

 コウサカの叫びもガンプラマフィアには届かない。

 

 アイツら、俺達を叩き潰すための足かせとみているようだな。

 

 だけど。

 

「暁、響、雷、電……巻き込んですまないな」

 

「気にしないで“提督”」

 

「そうよ!」

 

「もっと私達を頼ってもいいのよ!」

 

「電に任せるのです!」

 

 俺の言葉に四人はやる気を見せていた。

 

 コウサカをみる。

 

「コウサカ、悪いけど、手助けしてくれ」

 

「わかりました。僕もこいつらのやり方を許せません」

 

「だよなぁ……!」

 

 俺はにやりと笑い、四人とコウサカと共にGPベースとガンプラをセットする。

 

「コウサカ・ユウマ、ライトニングZガンダム!」

 

「暁!レディーブリッツ!」

 

「響……フェニックスデュエル」

 

「雷!サンダーバスター!」

 

「い、電!イージスなのです!」

 

 最後に。

 

「ハヤテ・シン。ガンダムXX!」

 

 設置したガンプラ達が動き出してフィールドへ飛び出す。

 

「何だ、このフィールド?」

 

「設定にないフィールドか、コウサカ、四人、警戒しろ」

 

 俺の言葉に五人は頷く。

 

 フィールドはバトルフィールドに登録されているものではない。

 

 草原に巨大な塔があるのみ。

 

「さぁ、その塔の扉を潜り抜けるのだ。最上階にいる私を倒せば、キミ達の勝利だ」

 

 六年前と似たようなことをしやがって。

 

 苛立ちを隠さずにガンダムXXのビームライフルで扉を破壊する。

 

 壊れた扉へ六機のガンプラが突入した。

 

 扉の向こうは宇宙空間だった。

 

「どうやら、六年前と似たようなフィールド形成のようですね」

 

「コウサカ、六年前のこと、どれだけ覚えている?」

 

「あまり、終わった後のことしか」

 

「ガンプラマフィアは卑怯な手を使う。注意しろよ」

 

「はい」

 

 コウサカと会話をしていると大量のガンプラが飛び出す。

 

 放たれる光線を回避する。

 

「早速お出まし……おいおい、多すぎだろ」

 

 現れたのはジム。

 

 ジム。

 

 ジム!

 

 とにかく、無数のジムが出現していた。

 

「なんで、ジムなのよ!?」

 

「ガンプラマフィアは基本的にジムを使う。GM/GMだ」

 

 現れたGM/GMがいないか探しながらビームライフルを構えようとした時だ。

 

「司令官、ここは私達に任せてほしい」

 

 フェニックスデュエルを先行させながら響が言う。

 

「そうよ!ここはレディーのやることよ!電、雷は二人と一緒に行きなさい!」

 

「でも!」

 

「暁ちゃん、響ちゃん!」

 

「任せていいんだな?」

 

「当然だよ」

 

「レディーの力をみせてあげるわ!」

 

 響と暁の顔を見て俺は決める。

 

「コウサカ、行くぞ」

 

「……わかりました」

 

 顔をしかめながらコウサカは頷く。

 

 本当なら二人をここに残しておきたくない。自分も残っておきたいのだろう。

 

 だが、そうすれば、この事態の解決につながらないことを理解しているのだ。

 

「二人なら大丈夫だ。操縦も教えている。何より、お前が改修したガンプラだ。信じていい」

 

「はい!」

 

「暁、響、雑魚の中に本体が紛れ込んでいる。油断。するなよ」

 

「了解」

 

「わかったわ!」

 

 二人に後を任せて俺達は先を急ぐ。

 

 ゲートをふさぐガンプラは俺とコウサカで叩き潰す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくゲートを進むと二つの分かれ道が現れる。

 

「分かれ道なのです!?」

 

「どうします?先輩……」

 

「俺と雷、コウサカと電で別れる。どちらかがゴールにつながっているはずだ。コウサカ、気をつけろよ」

 

「先輩も無茶をしないでくださいね」

 

 二手に別れる。

 

 

 

 

 コウサカ・ユウマと電のライトニングZガンダムとイージスなのですは雨が降る草原フィールドに到達する。

 

「ここは」

 

「待っていたぞ。コウサカ・ユウマ!」

 

「コウサカさん!」

 

 鳴り響くアラートにライトニングZガンダムとイージスなのですはその場から離れる。

 

「直上!」

 

 コウサカが見上げるとνガンダム(ジムヘッド)がライフルとバズーカを手にして襲い掛かる。

 

「くっ!」

 

 ライトニングZガンダムが盾でビームを防ぎ、ライフルを構える。

 

「遅い!フィンファンネル!」

 

 νGM/GMから放たれたファンネルがコウサカ達を襲う。

 

「させないのです!」

 

 イージスなのですが腕から刃を展開してファンネルを切り裂いていく。

 

 支援するようにライトニングZガンダムの狙撃がファンネルとνGM/GMの動きを阻む。

 

「電ちゃん!」

 

「はい、なのです!」

 

 動きを止めている敵機にイージスなのですが飛び込む。

 

 懐に入られたνGM/GMは反応できない。

 

 このまま相手を倒すという瞬間、フィールドに無数のGM/GMが現れる。

 

「乱入!?普通にバトルをするつもりはないということか」

 

「当然だろ!」

 

「ならば、教えてやるよ。僕が作ったガンプラは伊達ではないということを!」

 

「負けないのです!」

 

 現れた無数の敵影に二機のガンプラは突撃していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは」

 

「ようこそ、最上階へ!お待ちしていたよ!!」

 

 俺と雷がたどり着いたのは荒れ地のようなフィールド。

 

 ガンダムXXとサンダーバスターが到着すると同時に地面から巨大な音を立てて現れるガンプラ。

 

「コイツ……」

 

「司令官、これはなんなの!?」

 

「サイコガンダム……いや、ジムヘッドだからサイコジムといったところか?」

 

 巨大なガンプラ。

 

 それは機動戦士Zガンダムに出てきたサイコガンダムだった。

 

 違う点があるとすれば、サイコガンダムはファーストガンダムをモデルとしているのだが、このサイコはジムをモデルとしている。

 

 かといって、量産型デザインというわけでもない。

 

「雷、距離を取りながら砲撃だ。ミサイルで関節などを狙え」

 

「わかったわ!」

 

 サンダーバスターが両肩からミサイルを放つ。

 

 サイコジムはゆっくりと突き進む。

 

 ミサイルを受けて少しのけ反る。

 

 だが、それだけだ。

 

「固そうな装甲だな。おい!」

 

 叫びながらビームライフルを撃つ。

 

 攻撃を受けたサイコジムは手の指先から大量にビームを放った。

 

 ガンダムXXはサンダーバスターを守るように左手を構える。

 

 大量のビームがガンダムXXの左手に吸収されていく。

 

「ほぉ、だが、いつまでその小さな体で防ぎきれるかなぁ?」

 

 笑いながら繰り出されるビームの嵐。

 

「司令官!私が何とかするわ!」

 

「雷、無茶はするな!」

 

 サンダーバスターが前に出て高威力のビームを放った。

 

 しかし。

 

「うるさい羽虫だ」

 

 サイコジムの巨大な手がサンダーバスターを捕まえる。

 

 メキメキとサンダーバスターの体が歪んでいく。

 

 逃げ出そうともがくがサンダーバスターは動かない。

 

 バチバチと関節部が悲鳴を上げていく。

 

「一か八か……」

 

 操縦桿を動かしてSPモードの二番をタッチする。

 

 その瞬間、ガンダムXXの右腕、右肩の装甲が左右に展開し、大量のプラフスキー粒子を放出する。

 

「大穴、あけてやるよ」

 

 エネルギーをチャージしたビームライフルから放たれた極太の光弾がサイコジムの頭部、胸部を消失させる。

 

「雷、大丈夫か?」

 

 近づいてビームサーベルでサイコジムの腕を切り落としてサンダーバスターを救出する。

 

「大丈夫……でも、サンダーバスターが」

 

 サイコジムに握りつぶされかけたからか、フレームのいくつかが歪んでいる。

 

「とにかく、これで勝利……」

 

 待て。

 

 何かがおかしい。

 

 システムが試合終了のアナウンスを伝えていないことに気付いた俺が周囲を警戒しようとした時。

 

 地面から大量のビームが俺達のガンプラを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩たちは!!」

 

 コウサカと電、暁と響のガンプラが最終フィールドに到着した時、そこはとんでもない光景が待っていた。

 

 焼野原になっているフィールド。

 

 一部の崖が溶けている。

 

 その中心に佇む金色の巨大な怪物のようなガンプラ。

 

 後部から大量の赤い粒子を放っている。

 

「あれはアルヴァトーレか!」

 

 それはガンダム00のファーストシーズンに登場する巨大MA。

 

 疑似太陽炉を搭載したMAであり、主砲は主人公たちの旗艦プトレマイオスを半壊にまで追い込んだ威力を持つ。

 

 しかし、コウサカの知るアルヴァトーレと異なり、アルヴァアロンの上半身がアルヴァトーレから伸びている。ちなみにボディはGM/GMである。

 

 GMアルヴァアロンの砲の先には半壊しているサンダーバスター。

 

 全身から煙を吹き出しているガンダムXXの姿がある。

 

「先輩!大丈夫ですか!?」

 

「コウサカか。俺は大丈夫だ。それよりも雷のサンダーバスターを」

 

「雷ちゃん!大丈夫なのです!?」

 

「応答しなさいよ!」

 

「だ、大丈夫!でも、バスターは動かないの」

 

「それでも、雷が無事でよかった」

 

 四人が抱えるようにしてサンダーバスターを遠くへ連れていく。

 

「先輩、こいつは」

 

「コウサカ、少し頼みがある」

 

「頼み?」

 

「おやおや、遅れての援軍かい?無駄だよ。このGMアルヴァアロンに勝てるものは存在しない」

 

 挑発してくるガンプラマフィアの言葉に顔をしかめてしまう。

 

 かなりの改造が施されていることはみればわかる。

 

「先輩、何を」

 

「お前のビームライフルでXXの背中を撃て」

 

「え!?」

 

「エネルギーが足りないんだよ。雷の機体を守るために粒子を使ってしまって、フルパワーに程遠い……あの金ぴか野郎を潰すにはエネルギーがいるんだ」

 

「わかりました」

 

「悪いな」

 

 コウサカのライトニングZガンダムのビームがガンダムXXの背中に直撃……することなく、吸い込まれる。

 

 続けて放たれるエネルギーを吸い込む。

 

「余計なことをせず、おとなしく消えたまえ!」

 

 GMアルヴァアロンの両手がGNビームライフルをガンダムXXへ向けようとした時。

 

 後方にいたフェニックスデュエル、イージスなのです、サンダーバスター、レディーブリッツがそれぞれの武装でGMアルヴァアロンを攻撃していく。

 

 攻撃されたGMアルヴァアロンが下半身のアルヴァトーレの主砲を撃とうとした時。

 

「待たせたな!」

 

 射線上に飛び出す純白の機体。

 

 ガンダムXX。

 

 持っていたビームライフルを撃つ。

 

 アルヴァトーレの主砲に光弾が直撃、大爆発を起こして主砲が消滅した。

 

「なんと!?」

 

 ガンプラマフィアが驚く中、煙の向こうからアームセイバーを展開したガンダムXXが現れる。

 

 GNフィールドを展開するGM/アルヴァアロン。

 

 そのシールドをアームセイバーが切り裂く。

 

「まだだ!」

 

 アルヴァトーレから腕が伸びてガンダムXXを捕えようとする。

 

 瞬間、

 

「エクスプロージョンだ」

 

 ガンダムXXの瞳が赤く輝き、体から大量の粒子を吹き出し、力を増す。

 

 EXAMシステムとRGシステムを独自に改造したハヤテ・シンのシステム。

 

 瞬間的にガンプラの性能を一点集中で引上げ、その力で相手を倒す。

 

 アームセイバーの腕がGM/アルヴァアロンの両腕を切り落とし、仕込み腕を足で叩き潰す。

 

 武装を仕舞い、ビームサーベルでアルヴァアロンとアルヴァトーレの体を引きはがした。

 

「コウサカ!」

 

「はい!!」

 

 ハヤテの叫びと共にライトニングZガンダムの狙撃がGMアルヴァアロンを貫いた。

 

 攻撃を受けたGMアルヴァアロンが爆発して地面へ落ちていく。

 

 システムがバトル終了を告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日後。

 

「その後、どうなったんですか?」

 

 カミキ弟の家で先日起こった騒動について話をしていた俺にホシノ後輩が尋ねてくる。

 

「どうなったも何も、連中を追いかけていたガンプラバトル公式審判員の人たちに身柄を預けて、俺達は解放……大会も偽物だったんだよ。疲れただけだ」

 

「でも、先輩、凄いっすね!MAも倒してしまうなんて」

 

「あの時は正気を疑いましたよ。いきなり自分を撃てなんていいだすんですから」

 

「仕方ないだろ?敵の粒子は何か細工されている可能性があったから、コウサカの機体しか当てがなかったんだ。サンダーバスターなんかボロボロだったしな」

 

「それで、あの子達はどうしているの?ガンプラバトルを続けるのかしら」

 

 やってきたカミキ姉の質問に俺は答える。

 

「続けるさ」

 

 俺の言葉に全員の視線が集まる。

 

「どうも、俺のXXのエクスプロージョンをみたせいで、本気でガンプラバトルに打ち込みたいといって、色々と勉強しているさ」

 

「それはよかったです」

 

 コウサカがほほ笑む。

 

 俺も同じように笑った。

 

「さて、俺の話はここまで、お前らの全国大会予選について、打ち合わせしようじゃないか」

 

 

「はい!」

 

「わかりました」

 

「今年も勝ちますよ!」

 

 

 

 



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アイランドウォーズです。

かなり短いです。


チームトライファイターズが全日本ガンプラバトル選手権中高年の部で勝利を刻んで数日。

 

 

 俺は後輩のコウサカ・ユウマを巻き込んで海へ来ていた。

 

 これだけいえば、男だけで遊びに来ているようなものだが、少し違う。

 

 自身に向けられているカメラに笑顔を浮かべている美少女二人。

 

 ちなみに砂浜で微笑んでいる二人は水着姿だ。

 

 個人的に美女の水着は好きだが、知り合いでももう少し腰のくびれが欲しいと思う。

 

 そんなことをいえば、八つ裂きの刑が俺を待っているだろう。

 

「さっすが、コウサカだな。お前のガンプラだとやっぱり違うな」

 

「先輩に褒められても嬉しくありません」

 

「カミキ姉に伝えておいてやるよ。コウサカは真剣にバイトを挑んでいるってな」

 

「むっ」

 

 表情を緩めさせながらコウサカはガンプラに力を注ぐ。

 

 俺とコウサカはカミキ姉とフナキ・サトミが海でモデルの仕事をするということで手伝いに来ていた。

 

 手伝いと言っても写真を撮ったり、機材を用意するというものと少し異なる。

 

「ガンプラとモデル……この業界はどこへ進もうとしているんだろうなぁ」

 

「ミライさんが全校大会のイメージキャラクターをしたことでガンプラに熱を入れているのかもしれませんね」

 

「……そういえば、ホシノ後輩から連絡が来ていたような」

 

 少し離れて不在着信がきていた端末を取り出す。

 

「フミちゃん、僕は全国大会用にガンプラを改修したいから」

 

「ん?」

 

 内容を確認のため電話しようとするとすぐそばで真剣な表情で電話に出ているコウサカの姿がある。

 

 フミちゃんといっていたから相手はおそらくホシノ後輩だろう。

 

 俺は手短にバイトで海へ来ていますとメッセージを送っておく。

 

 それにしても。

 

「モデルで使われているガンプラがジオンのものばっかりなんだろうなぁ」

 

 どうでもいいことを思いながら俺は飛び出していくコウサカの後を追いかける。

 

 モデルの仕事を行っているカミキ姉とフナキの水着姿を見た。

 

 うーん。もっとくびれがあったら。鼻血が出ていたな。

 

「どうでもいいことを思っていないで片付けるか」

 

 必要のなくなったガンプラを専用のケースへ片付けていく。

 

 そういえば、この近くにはニールセンラボがあったなぁ。

 

 降り注ぐ日光を浴びながら俺はどうでもいいことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜ、お兄さんの代わりにギャン子?」

 

「わからない?」

 

「フミナさんをセカイ君と二人っきりにさせないためよ」

 

「私はそんなつもりでここにきたわけじゃ!」

 

「どうだか!」

 

「ちなみに私はそんなつもりできました」

 

「はっきり言う!?」

 

「気に入らないわね!」

 

「どうも」

 

「……貴方達何を!」

 

「わかりきったことを!」

 

「「恋もガンプラバトルも先手必勝!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダメだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暑さで頭がおかしくなっているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきからニュータイプみたいにホシノ後輩とギャン子、ネコ娘の会話が頭に響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 置かれている炭酸飲料をガボガボと口に含んで近くの海水へ頭を突っ込む。

 

「……シン君、大丈夫?」

 

「ああ。頭を冷やしたから問題ない」

 

「もしかして、ミライの水着に見惚れた?」

 

「え!?」

 

「なに!?」

 

「フナキ、俺をからかうな」

 

「む……」

 

「ミライ、残念ね~」

 

 何故か頬を膨らませるカミキ姉。

 

 フナキめ、余計なことを。

 

 ほら、コウサカが睨んでいるじゃないか、それにカミキ弟は見知らぬ女の子といちゃいちゃ。

 

「あ?」

 

 俺はもう一度後ろを見る。

 

 そこではカミキ弟が自身の作ったガンプラを白いワンピースにハイビスカスのような花を頭に乗せた少女と話をしていた。

 

「先輩、あれは」

 

「カミキ弟だな」

 

「アイツ、まだ増やすつもりでしょうか、そもそもどれだけ守備範囲広いんですか」

 

「さぁな。カミキ弟のことだからなぁ。噂じゃ、大和とかも接点もっているらしいし。大学生まで行けるんじゃないか」

 

「……恐ろしい、ハッ!それどころじゃない!」

 

 こそこそと逃げ出すコウサカ。

 

 うん、手遅れなんだけどなぁ。

 

「お前の進行方向にアホ毛が……手遅れだったか」

 

 青ざめているコウサカの前にアホ毛が立ちはだかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。

 

「なんだか合宿みたいになっちゃったね」

 

「楽しくていいじゃない」

 

「俺は面倒だけど」

 

 コテージで俺達は一緒に過ごしていた。

 

 床に正座させられているコウサカとカミキ弟は不幸か幸せか置いておいて。

 

「それより、ハヤテ、アンタ、ミライにアタックしないの?」

 

「ブッ!」

 

 飲んでいたお茶が器官に入ってせき込む。

 

「お前は、ゴホゴホ、いきなり、何を言い出す!」

 

「えー、噂になっているって聞いたけど、いつになったら告白するのかって」

 

「アホか」

 

 俺とフナキはひそひそと話し合う。

 

 ちなみにカミキ弟とコウサカは夕食抜きだった。

 

 がっくりしている二人にひっそりと非常食を与えることを伝えたところで室内が停電した。

 

「あ?電線でも切れたか?」

 

「あーん、セカイ君、怖い!」

 

「どさくさに紛れて何をしているのよ!ギャン子!」

 

 

 停電でキャー怖いを素でおこなうギャン子。

 

 ちなみにカミキ弟は平然としている。

 

 

「今、何かが外を……」

 

「幽霊かもなぁ」

 

「や、やめろよ!」

 

 停電で怯えるもの、いちゃつくもの。

 

「あほらしい。幽霊なんて」

 

 カチリ(俺が懐中電灯をつける音)

 

 ブン!(外に赤い光が発する)

 

『で、でたぁ!!』

 

「何が?」

 

「出た?」

 

 平然としていたのは俺とネコ娘のみだ。

 

 迫る赤い光にカミキ弟が飛び出す。

 

「次元覇王流!聖拳突きぃぃいいい!」

 

 叫びと共に赤い光が落ちていく。

 

「これ……モックだな」

 

「え?」

 

 落下した物体に懐中電灯を当てる。

 

 それはガンプラだった。

 

 バトルフィールドの模擬戦などで出てくるガンプラだ。

 

「あの時と……同じだ」

 

「あの時?」

 

 カミキ弟の言葉に俺が尋ねようとした時、ホシノ後輩の端末に連絡が入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニールセンラボで研究中だった新型結晶が暴走を起こしており、俺達に避難せよという連絡がホシノ後輩の端末に届いていた。

 

「ユウマ!あの現象はもしや!?」

 

「ああ、八年前、結晶体が暴走した時と同じだ。放っておいたらとんでもないことになる」

 

「そうなると……ガンプラを使って止めるしかないのか」

 

 アホ毛とコウサカの言葉に俺は八年前を思い出す。

 

 八年前の全国大会で設備の結晶体が暴走して、イオリ・セイさん達がガンプラを使って阻止したことがある。

 

「おあつらえ向きに発射台もあるで」

 

 施設の入り口、そこにバトルフィールドが設置されていた。

 

「アホ毛、出来るか?」

 

「問題ない。緊急モードで起動させるで!」

 

 アホ毛の言葉で全員がやる気満々になる。

 

 いや、違うな。

 

「ねぇ、ミライ、本気なの?本気でやる気なの?」

 

「サトミはこのガンプラを使って!」

 

「マジでぇええ!?」

 

 臆するフナキに俺はとどめを刺す。

 

「安心しろ。何かあっても骨は拾ってやる」

 

「そこは助けるってかっこいいセリフが欲しかったよ!!」

 

 

 解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホシノ・フミナ!スターウイニングガンダム!」

 

「コウサカ・ユウマ、ライトニングガンダムストライダー!」

 

「サザキ・カオルコ、ギャンスロット!」

 

「キジマ・シア……ガンダムダブルオーシアクアンタ!」

 

「サカイ・ミナト!ZZⅡ!」

 

「カミキ・ミライ!ベアッガイプリティー!」

 

「あ、え、あ、ああ、フナキ・サトミ、えっと、可愛いガンプラぁああああああああああ」

 

「ハヤテ・シン、ウイングガンダムゼロFカスタム!!」

 

「カミキ・セカイ!カミキバーニングガンダム!行くぜぇえええええええ!」

 

 出撃したガンプラの周りには様々なフィールドが形成されていた。

 

「何だよ。これ」

 

「結晶体の暴走でフィールドがおかしくなっているんだ。気をつけろよ。変に近づいたら巻き込まれて迷路のようにぐるぐる巻きこまれるぞ」

 

「八年前と同じなら……ぎょーさんいるはずやで!ほら、お出ましや!」

 

 アホ毛の言葉通り、暴走で動き出しているガンプラ達がこちらへ攻撃を仕掛ける。

 

 まずは。

 

「俺が露払いをする!ツインバスターライフル!」

 

 ウイングガンダムゼロFカスタムのツインバスターライフルから極太のビームが放たれて敵を蹴散らす。

 

 ギャンスロットが陸戦型の機体を切り裂き、

 

 ネコ娘がウィンクしながらダブルオーシアクアンタのソードビットで切り裂く。

 

 戦艦などをスターウイニングガンダムが打ち抜く。

 

 カミキバーニングガンダム、ベアッガイPが次元覇王流で敵を倒す。

 

 フナキの可愛いガンプラがメイスやトランペットで敵を蹴散らしていく。

 

「やるな。フナキ」

 

「お願いだからぁあああああああああああああああああとめてぇええええええええええええ」

 

 ビームサーベルで近づいてくるガンプラを切り裂く。

 

「これだけのファイターが居れば、こうなるよな」

 

「次のブロックを抜ければ……サイコガンダム!?」

 

「ネコ娘!ソードビットでマークⅡのファンネルを破壊しろ!アホ毛!サイコガンダムの攻撃を止めろ!」

 

「了解!」

 

「命令するなぁ!」

 

 その間にカミキ姉が次元覇王流で、俺はウイングガンダムの拳でサイコガンダムとサイコガンダムマークⅡにダメージを与える。

 

「ここを抜ければぁあああああああああああ!」

 

 いくつものブロックを抜けて到達した場所。

 

 そこで待っていたのは暴走しているガンプラ。

 

 カミキバーニングが突撃しようとすると粒子の結晶が動き出して道を阻む。

 

「アイツを潰せばこの騒動も終わるぞ!」

 

「よっしゃあああ!」

 

 俺とアホ毛のウイングガンダムゼロカスタムFとZZⅡが狙撃する。

 

 目の前で高速の動きをとる。

 

 ZZⅡの眼前に現れるガンプラ。

 

 回避運動も取れず殴られ、結晶の壁に叩きつけられる。

 

「くそっ!」

 

 俺のウイングガンダムゼロカスタムFでビームサーベルを振るう。

 

 しかし、結晶に阻まれるばかりか、頭部を掴まれて地面へ叩きつけられてしまった。

 

「なんて機動力だ……って」

 

 鳴り響くアラート。

 

 俺達が見上げると暴走しているフィールド空間、そこの三つからとんでもないものが現れる。

 

「フォトン……リングレイ?」

 

「ソレスタルビーイング!?」

 

「コロニーレーザー!?」

 

「全員!集まれ!」

 

 集まっていくガンプラの前でウイングガンダムゼロカスタムFの翼を広げる。

 

 その後ろでZZⅡとライトニングガンダムが。

 

 カミキバーニング、ベアッガイ、スターウイニングガンダム。

 

 ギャンスロット、ダブルオーシアクアンタ。

 

 それぞれが盾や粒子フィールドで攻撃を防ぐ。

 

 大量の攻撃を防ぐことに成功する。

 

 最悪の現状だったが、カミキ弟達の奥の手で暴走していたガンプラを倒すことで粒子暴走は無事に終わった。

 

 そして、その騒動を起こした原因の人物がいた。

 

 カミキ弟と触れ合っていた女の子。

 

 彼女はガンプラが欲しくてこの騒動を起こしていたのだという。

 

 まさかな。

 

 カミキ弟とホシノ後輩に説得?されて少女はガンプラを作り始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからはまさに夏休みだった。

 

 沢山のカレーを少女、カミキ弟、アホ毛が競争をして、少女が一番。

 

 フィギュアのように並ぶベアッガイ、SDガンダム、すーぱーふみなの後継機。

 

 ベッドの上で気持ちよさそうに眠る四人の少女。

 

 それを眺める俺とカミキ姉。

 

 海で楽しそうに遊ぶ少女を眺める俺達。

 

 俺は保護者のような気分を味わいながら少女達を後ろで眺める。

 

 少女は笑顔を浮かべてその場から消えた。

 

 文字通り消えた。

 

 おいおい、まさか。

 

「なんつーか、似ていると思っていたけれど、とことん似たようなことをしていくなぁ」

 

 

 幽霊だ―!!と悲鳴を上げるコウサカ。

 

 慌てているメンバーの姿を見て俺は小さく笑った。

 

 

 

 

 




ウイングガンダムゼロカスタムF

ハヤテ・シンが制作したガンプラ。
モデルはウイングガンダムゼロカスタム。
ただし、全体ほとんどが白で塗装されている。
まだ多くの手を加えられておらずツインバスターライフルとビームサーベルのみ。
ちなみにFは何となくでつけられているらしい。


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