家の家族は獣耳 (しらす丸)
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祖父が亡くなりました

どうもしらす丸です。
前々から予定していた2作目が完成したので、投稿しました。
この作品も他の作品も両方読んでいただけると私としても、嬉しいです。
評価や感想も私を動かしてくれる原動力なので、お願いします。


『爺ちゃんが死んだ。』

 

電話越しで女性が受話器を持った青年に話した言葉だった。青年は至って自然にその言葉の返事をした。

 

「やっぱり駄目でしたか...。葬式はいつありますか?。」

 

そう青年が聞くと、女性は

 

『まだ詳しくは決まってないの。けど遺言通り身内だけでやるみたいよ?。大学はどうするの?。』

「来週から2週間くらい休みをとるのでその間でいいですか?」

『分かったわ。そう言っとく。』

「父さん達には俺が連絡しておきます。誰が行くかはこっちで話し合ってみます。ありがとうございました、予定を合わせてくれて。」

『全然気にしなくていいわ。じゃあ葬式の準備とか色々あって忙しいから切るわね。』

「はい、分かりました。すいません。忙しいときに手伝えなくて。」

『気持ちだけでも嬉しいわよ。ありがとね。』

 

電話は切れた。青年は受話器を置き、その場で独り言を呟いた。

 

「爺ちゃんが死んだ...。もう、会えないのか。最後に会ったのは正月だったし、先月くらいに顔を見せときゃあよかったな...。」

 

 青年はリビングのソファーに寝転がり、窓をみた。窓から見える景色はビルが乱立している。まるで鉄とガラスで出来た、ジャングルのようだ。青年はその景色をぼーっと見ていると、思い出す。

 

「父さんに連絡しなきゃ。」

 

青年は机の上に置いてあったスマホをとり、電話をかけた。電話から出た声は、男性の声だった。

 

「もしもし?父さん?。」

『お!、龍牙か!。元気にしてるか?。お前が俺に直接電話掛けてくるなんて珍しいな。何の用だ?。』

「爺ちゃんが死んだんだ。叔母さんから連絡がきた。葬式は身内でやるって。」

 

そう青年が言うと、父親は少し暗く返事をした。

 

『そうか...。葬式はいつだ?。』

「俺の都合に合わせてくれた。まだ詳しくは決まってないみたい。そっちは誰が行くの?。」

『うーん。こちら側で話してみるよ。まぁ多分俺が行くことになるだろうけど。』

「分かった。予定が決まったら向こうに連絡して。」

『あぁ。分かった。一応お前にも連絡しとくよ』

「ありがとう。」

 

青年..否..天野 龍牙(あまの りゅうが)は電話を切り、時間を見た。時間は夕方の7時。夏の初めの梅雨のせいか冬の夕方よりは明るいが、雲に覆われ雨が降りそうで薄暗くなっていた。

 

「飯、作るか。」

 

 そう言って、夕食を作り始める。、薄暗い空はポツポツと雨が降り始めていた。

 

「さて、何作るか。冷蔵庫は...卵と野菜か...。」

 

彼は一人暮らしのため、家事のスキルが高い。手先もそこそこ器用なため、模型なども得意である。

 

「卵と野菜炒めでいいかな?。楽だし。」

 

米を砥ぎ、炊飯器にかけ、炊いてる間に卵を溶き、野菜を切るなど、手際もよい。そして野菜も全て切り終わったが、まだ肝心なご飯が炊けていないので、野菜をボウルにまとめラップをかけ、溶き卵が入った容器も同じ作業をした。そして、2つの容器をただでさえ腐りやすい時期なので冷蔵庫にしまう。

 

「さて、炊けるまでテレビでも見てるか。」

 

龍牙はテレビをつけ、たまたまやっていたお笑い番組を見始めた。テレビに写るお笑い芸人が面白いネタを披露したのに龍牙はそれを真顔で見ていた。

 

「最近のお笑いは面白くないねぇ。言ってる意味が全く理解できねぇわ。」

 

そんな独り言がテレビから出てくる誰かの笑い声に掻き消されていった。天気予報でも見るかとチャンネルを変えた瞬間、炊飯器が炊き上がったことを知らせるブザー音が鳴った。

 

「米も炊けたし、再開するか。」

 

そうして龍牙は切っておいた野菜と溶いておいた卵を冷蔵庫から取り出し、フライパンを用意した。

フライパンに油をひき、まずは卵を菜箸でかき混ぜながら固まらせる。卵は固まるのが早いので、素早く混ぜる。そして、野菜を入れ、野菜がシナシナになるまで。炒め続ける。少し経つと、殆どの野菜がシナシナになっている。

 

「味付けは...塩胡椒でいいか。」

 

味付けに塩も胡椒を適量かける。調味料が全体に行き渡ったら火を止め、皿に盛る。ご飯を茶碗に盛り、箸を用意し、テレビの前のテーブルに置く。そして、コップとあらかじめ冷やしておいた水が入った容器を取り出し、コップに水をつぐ。これで、質素だが夕食の完成だ。

 

「いただきます。」

 

どこか寂しそうな声が一つ、部屋の中で聞こえた。

 

「どれどれ。味は...少ししょっぱいけど、ご飯が進む味だな。」

 

3杯くらいご飯を食べたあと、食器を片付け、洗う。洗い終わったあと、食器乾燥機にかけ、その間、風呂の準備をする。まだお風呂に入る時間ではないので、テレビをつけ、ニュースと天気予報を見る。

 

(まさか...爺ちゃんが死ぬとは。あの人のことだし90くらいまではくたばらないとは思ってたけど...。84が限界だったか...。)

 

『明日の東京の天気はくもりです。降水確率が高めなので、折りたたみ傘を持って行くと安心でしょう。』

 

そして、ぼーっとしながら風呂に入り、涼んだあと、布団に潜り眠りにつく。こうして都会の夜が開けて行くのだった。

 

 

そして、何事も起こらず1週間が経っていった。その日の朝。

 

 

「今日か...。準備して、仮眠とって夕方くらいに父さんを迎えに行くかな。」

 

結局、龍牙の祖父の通夜と葬式に行くのは龍牙の父親のようだ。

 

そして昼頃。龍牙は車を走らせ1つの大きなビルの地下駐車場へと入っていった。中を回っていると、シャツにデニムというラフな姿をした男性がビルへの出入口辺りで車の中にいる龍牙に向かって手を振っていた。彼は男性の近くに横付けし、エンジンを止める。すると男性は車の中に入った。

 

「お待たせ父さん。待った?。」

「いや、全然だぞ。さっき出てきたばっかりだよ。」

「荷物は?。」

「今秘書に持ってこさせてる。」

「まったく...。それぐらい自分でやりなよ。」

「いやー、俺が運ぶから大丈夫だって言ってんのにあの子ったら「あなた様の手を煩わせないようにするのが私の役目です。」って言ってさー。運ばなかったんじゃないんだよ?。運べなかったんだよ」

 

龍牙の父親...天野 翔一(あまの しょういち)は自分が荷物を運べなかったことに言い訳をしていると。出入口からキャリーバッグと菊の花束を持った女性が歩いてきた。

 

「俺、手伝うから。」

 

龍牙そう言って車から出て、女性に話しかけた。

 

「瑠美さん。荷物は全部俺が乗せるんで、大丈夫ですよ。」

「お気になさらず。これは私がやっておきます。」

「全然大丈夫ですよ。これから長いドライブになるんで少し動きたかったのもありますし。」

「あっ、ちょっと...。」

 

女性...永基 瑠美(ながもと るみ)から荷物を半ば強引に取り、キャリーバッグをトランクの中に入れ、花束も優しく中に入れた。

 

「むぅ...。私の仕事奪わないで下さいよ。」

「大体これは瑠美さんの仕事じゃなくてこれは父さんの仕事なんで気にする必要なんて皆無ですよ。」

 

 

瑠美はため息をした。

 

「はぁ...。あなたは昔からそうでしたね。いい意味でも悪い意味でも。」

「ま、これが俺の個性なんで。変えることは出来ませんよ。」

 

龍牙はそれに対し、薄笑いを浮かべる。

 

「では、行ってきますね。」

「はい、お気を付けてくださいね。」

 

龍牙は車に戻り、エンジンをかけ、地下駐車場から出ていく。

 

「さて、龍牙。久しぶりだなぁ。電話だと何回か話したけどな。大学はどうだ?。」

「まぁボチボチってところ。特に面倒事には巻き込まれてないよ。そっちは?。」

「こっちも同じ感じだな。あとは最近まとまった睡眠がとれてないのが問題っちゃあ問題かな?。落ち着いたら溜めておいたアニメを消化しないとな。」

「そうかい。楽しそうだね。」

「そうだぞ!。お前も見ろよ。最近のアニメは腐女子向けのが多いがそれでも面白いのが多い。」

 

翔一はアニメが大好きである。世間で言うとオタクである。確かに龍牙はアニメは好きだが、父の話を聞いていても、

 

「ふーん。」

 

と返すだけである。

 

「凄く興味が無い反応だな。」

「まぁ、アニメは好きだけど、そこまで興味はないかな。」

「ハッキリ言った!。この人ハッキリ言っちゃったよ!。」

 

嘘泣きでオタク仲間を増やそうと息子に声をかけるが、断られて涙目になる父(48)であった。

 

「そんなに増やしたいの?。オタク仲間。」

「社内でも私と話てくれる人自体が少ないんだ...。」

「まぁ、社長だしね。」

 

こんな父親でも彼は超一流企業の社長である。だが、龍牙にはどんなことをしているのかは伝えてないらしい。超一流企業とだけ聞いているのだが、翔一に聞くと、「言うのが面倒だから言わなくていいよね」っと毎回言うのだった。だが、彼の家族はそのためお金持ちである。だが、龍牙は「家族の顔を使いたくない」と言って一人暮らしをした。

 

閑話休題

 

「俺には仕事以外で自由に話しかけてくれたっていいのに...。酷いんだよ社内の皆、昼ご飯に社員と親睦を深めようとして、社員食堂に入ったら。食堂内の皆の動きが止まって凄い顔で苦笑いを浮かべたんだよ?。」

「イメージ的には?。」

「吸血鬼とかメイドとかの時止めみたいだったよ。」

「悲しいね。皆が憧れる社長って。」

「俺もやっていて凄くそう思うよ。」

 

暫く高速道路を走っていると欠伸が出た。休憩として近くのサービスエリアに止まり、トイレを済ませ、お腹が空いたと言い出した翔一は中にあったコンビニで買い物をしている間、龍牙はアイマスクを付け仮眠をとっていた。

 

「おーい。龍牙ー。フライドチキン奢ってやったぞーって寝てんのかよ...。2つ食っちゃうか...。」

 

1時間くらい経った後。眠気を覚まし、再出発した。太陽は西にゆっくりと傾き始め、ラジオは午後5時を知らせていた。

ラジオを聞きながらずっと車を走らせている。

 

「父さん。」

 

返事はない。少し気になってバックミラー近くにある、車内が全て見渡せるミラーを展開し、見ると、父は眠っていた。

 

「まぁ、ずっと徹夜続きだったらしいし、ゆっくり寝させとくか。」

 

更に1時間後、山道を走り、目的地に到着。山の中だから辺りは森だらけである。数台車も止まっている。龍牙は翔一を起こす。

 

「父さん、着いたよ。起きて。」

「ん...んぅ?。あぁ着いたのか。ふぁー、よく寝た。勝手に寝てすまんな。久しぶりにゆっくりしたもんで眠気がね。」

「大丈夫。疲れているのは分かってるから、そこを攻めるつもりはないよ。」

「いやー。いい息子を持ったもんだ。まったく、龍頭(りゅうと)と全く違うよ...兄弟なのになんでこんなに違うのかね...。」

「そんなに酷いの?、兄さん。」

 

龍頭...天野 龍頭(あまの りゅうと)とは龍牙の兄であり、父の会社で働いている。

翔一は車から降りて、花などの準備ながらボヤいていた。

 

「酷いのなんの、ちょーっとサボってるとすぐ怒るんだよ。自分の仕事をやってからサボれって言われてさー。」

「ふーん。」

「まぁ、その後作業な終われば、話し相手になってくれるし。いやー、アイツの幼女愛には流石にドン引きだわー。だけど頑なに触ろうとせず愛でるだけってのがなかなか面白いわ。」

 

龍頭もアニメ好きである。特に小さい女の子が好きで、世間で言うロリコンである。

 

「荷物は全部持った?。」

「あぁ持ったとも。さて出発だ。」

 

2人は広めの砂利道を歩き、大きな家の前に立った。

 

「いつ見てもデカいわ。親父の家。」

「馬鹿なこと言ってないで早く行くよ父さん。家がデカいのはいつもと事だし。」

「あっ、こら待てよ。」

 

玄関に着き、出迎えてくれたのは電話に出ていた女性の声の主だった。

 

「いらっしゃい、遠くからよく来たわね。」

「お久しぶりです。真理叔母さん。」

「帰ったぞ妹よ!。」

「はいはい。兄さんもおかえり。荷物は兄さんの部屋に置いていいから。」

「それを俺は認めていいのか?。」

「拒否権は無いわ兄さん。強制よ。」

 

翔一は溜息をつきながら元翔一の部屋に荷物を置いた。

親戚がもう何人かいるという広い部屋に行く途中。とある部屋からひょこっと白く尖った耳と、同じ毛色のもふもふの尻尾をした。狐が出てきた。2人は驚きもせず撫で始めた。

 

「なんだスミレか。お前も久しぶりだな。」

 

スミレと呼ばれた狐は嬉しそうに目を細め、龍牙に擦り寄っている。龍牙に懐いているようだ。だが、翔一には懐いていないようで、嫌がりはしないが、翔一のことを気にしていないようだ。

 

「しっかしこの狐も何でお前に懐くんだろうなぁー。飼い主の親父とお前にめっちゃ懐いてるよな。」

 

この狐は元々龍牙の祖父、天野 誠二郎(あまの せいじろう)が飼っていた狐で、アルビノのアカギツネである。神社で誠二郎が拾ってきたらしいが、拾ってきた当時はとても騒がれたらしい。

 

「スミレ、じゃあまた後でね。」

「キュ〜キュ〜。」

 

着いてきてと言わんばかりにスミレは龍牙のズボンの裾を噛んで引っ張る。

 

「そっちに行けばいいのか?。」

「行ってくればいいさ。俺は先に向こうに行ってるがな。」

「わかった。スミレについて行ってくる。」

「おう、向こうには色々話を作ってやるよ。」

「ありがとう、父さん。」

 

龍牙がスミレに付いていくと、とある部屋に着いた。龍牙は部屋を見渡して何か思い出したのか独り言を喋り始めた。

 

「ここって確かスミレと初めてあった部屋だったっけ。」

「そうじゃのう。お主と出会った場所じゃ。まだあんなにちいこかったのじゃがのう。いやはや、時が経つのは早いのう...。」

「あぁ、早いね、え!?。うわっ!。」

 

龍牙の独り言に受け答えしたのは、幼い女性の声だった。龍牙はビックリして、後ろに転んで尻餅をつく。

 

「いたた...。ん?。君は...誰だ?。」

「何じゃ?、わしか?。お主、すぐにわしの名前を忘れてしまうのじゃな...。」

 

少し残念そうに落ち込むその声の主はスミレと同じ毛色のセミロングと、尖った狐のような耳。そして同じ毛色のふさふさの尻尾が生えた120cmくらいの、和服を着た幼い少女だった。




どうだったでしょうか?。
1話ということで長くしましたが、流石に毎回ここまでは無理なので、2000~3000文字くらいで投稿したいと思います。5000文字超えたのは初めてです。
それではまた。


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狐耳の女の子

どうもしらす丸です。
作風もホンワカにしたいのでこちらの前書き、後書きにはネタを書かないようにしようかと考えております。
その代わり何を書こうかなと考えてしまいますね。


「え?、え?。」

「なんじゃ?その顔は。鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしおって。」

 

龍牙の思考は止まっていた。現在の状況に追いついていないようだ。

 

「あれ?、スミレは何処?。」

「なんじゃ、わしに何か用かな?。」

「え、お前がスミレ?。」

「そうじゃぞ、この耳と尾を見ろ。どう考えてもわしはスミレじゃ。」

「確かにその耳と髪の色、尻尾を見るとスミレと一緒だけど...。」

「なんじゃまだ信じぬと言うのか!。これならどうじゃ!。」

 

そう言うと、狐耳の少女から煙が出てきて煙が無くなる頃にはいつも龍牙が見ていた狐がいた。

 

「...本当にお前はスミレなのか?。」

「それ以外有り得なかろう。」

 

少女の姿になりながら、スミレは話した。そしてドヤ顔自慢してきた。

 

「どうじゃ?、凄かろう?。」

「うん、けど...背伸びしてる小学生みたいだぞ?。」

 

そう龍牙が言うと、顔を真っ赤にして怒りだした。

 

「ぬぅー!。わしは子供ではない!。見た目はアレじゃが立派な大人の女なのじゃあ!。」

「ふふっ...。分かった分かった、立派な大人だよな?。」

「そ、そんなに撫でるでない!。」

 

龍牙はクスリと笑い、頭を撫でながら適当に聞き流した。スミレは嫌がりながらも目を細め嬉しそうにしていた。そして、龍牙に質問をした。

 

「それよりものぅ。お主、主様を知らぬか?。」

「ん?、爺ちゃんの事か?。」

「そうじゃ、何か知らぬか?。前に主様から山の方に遊びに行ってこいと言われ、今日の夕方の頃に戻ってきたのじゃが、知らぬか?。」

 

スミレは今は亡き、彼の祖父の居場所を聞いた。

 

「爺ちゃんそんなこと言ってたのか。」

「そうなのじゃ、今探そうとしているのじゃが。居場所を知らぬか?。」

 

その言葉を聞き、龍牙は静かに話した。

 

「爺ちゃんは...、とっても遠い場所に行ったんだ。」

「それはわしらでも行ける場所なのか?。」

「行けないって言えば嘘になる。けど、俺達は今行ってはいけない場所なんだ。」

 

スミレは首を傾げた。

 

「どういう事じゃ?。」

「爺ちゃんは死んだんだよ。2週間くらい前に。」

「ぷぷっ...何を言っておるのだ!。そんな縁起の悪い冗談を言うのはよさんか。」

 

どうやら龍牙の答えはジョークだとスミレは認識し、笑った。

 

「じゃあスミレ。爺ちゃんに会うか。」

「そうじゃの。そうするしかなかろう。お主、わしを運びながら探してくれんかの。」

「丁度いい。俺も顔を合わせてなかった。」

 

スミレは狐の姿に戻り、龍牙は狐のスミレを抱き上げて運んだ。少し家を歩いていると翔一の妹である天野 真理(あまの まり)に出会った。

 

「叔母さん。爺ちゃんに会いたいんですけど。」

「あ、そういえばそうね。まだ挨拶を済ましていなかったのね。こっちよ。」

「ありがとうございます。」

 

真理に祖父が眠っている部屋まで案内され、その部屋の前まできた。

 

「ここよ、スミレを離さないようにね。」

「はい、大丈夫です。あと、部屋の中は俺とスミレだけにしてもらえませんか?。」

「分かったわ。じゃあね。」

「ありがとうございました。」

 

真理が見えなくなったときにスミレは人間の姿へ戻った。

 

「なぁスミレ。そのときの姿は爺ちゃん知ってんのか?。」

「そうじゃ。この姿を知っているのはお主と主様だけじゃの。」

 

龍牙は襖を明け、話した。

 

「爺ちゃん、ただいま。遅くなってごめん。」

 

布団に寝ており、顔に布が被さっているのを見たスミレは一気に顔を白くした。

 

「主様!!。」

 

スミレは祖父の横に急いで座り、起こすように揺すった。

 

「主様、起きるのじゃ。主様、孫も来たから早く目を覚ましてくれんかの?。主様、主様!。」

 

スミレはずっと揺すり続けた。揺っていたゆれで祖父の顔に被ってあった布がはらりととれ、その顔が露わになった。祖父の顔は安らかに眠りについた顔をしていた。

 

「主様!。早く目を覚まして欲しいのじゃ!。こんなに冷たくなりおって!。早く起きてお風呂に入って貰おうぞ!。そうしたらわしを存分に撫でて欲しいのじゃ!。」

 

祖父の頬に2粒の水滴がついた。更に頬に4粒、6粒と2粒ずつ水滴が増えていった。スミレの目からは大粒の涙が零れていた。

 

「...どうして主様は...そんなに勝手に行ってしまうのじゃ?...。わしは...両手でも抱えきれないものを沢山貰ったのに...、けれど...わしは...わしは主様に何一つ返すことができなかった!!。....何か返そうと考えていた矢先に.....何故こんなにも簡単に消えてしまうのじゃ!!。」

 

スミレの祖父への後悔の叫びは止まらなかった。言う度に、叫ぶ度にスミレの涙は増えていった。

 

「どうして...主様はわしに...遊びに行けと言ったのじゃ?...。最後のときくらい...一緒にそばに居たかったのじゃ!!。」

「おい、もうその辺にしておけ。これ以上過去を言っても駄目だ。」

 

スミレの嘆きに龍牙は反論した。スミレは涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔で龍牙へ反論した。

 

「お主に...お主に何が分かるというのじゃ!!。」

「お前の気持ちなんかよく分からないよ。けどさなんでそんなに過去を悔やむの?。変えられない過去を悔やんで過去が変わって今が変わって未来が変わるの?。」

「....。」

「人間はな、成長していくんだ。体が大きくなるのは勿論、心も成長していく。それは分かるな?。」

 

スミレは無言で頷いた。

 

「心は未来を作るんだ。今と過去を材料にしてね。確かにいい未来を作るには心にいい材料を入れるんだ。けど、そのいい材料には、過去に気づかなかった後悔、それに気づいたときの後悔も入っている。他にも過去に悪いことをしたときの気持ちとか、初めて恋人と別れたときの気持ちとか。そんな悲しく、薄汚れたものだっていい未来を作る為にいい材料になる。」

「何が言いたいのじゃ?。」

 

龍牙はスミレの頭を撫でながら優しく話した。

 

「爺ちゃんへの後悔を消せなんてことは言わない。俺が言いたいのはその後悔をまた同じ未来を繰り返さないようにするんだ。ここから出て、新しい家主にもしも飼われたとき、同じ後悔をしないで欲しいってやつだ。分かったな?。心も体も成長、しようぜ?。」

 

その言葉を聞いた瞬間、スミレはいつものように怒り出した。

 

「なぬ!?。わしは神でもう身長は伸びぬ!!。」

「は?。お前神だったのか?。」

「そうじゃが?。何か文句でもあるかの?。」

「いや、別に文句はないけどさ。ぷぷっ...こんな小さいやつが神って...。」

 

龍牙はそれに対し、笑い始めた。

 

「ふふっ...ふはははは!!!。」

「ぷぷっ...おかしいのぉ...あははははは!!。」

 

スミレも釣られて笑った。少し経つとスミレは泣き疲れ、笑い疲れたのか眠ってしまった。

 

「ふふっ...寝たのか...さて、どうするかこいつ。」

 

少し考えていると襖の向こうから足音が聞こえてきた。

 

「ふぅんふーん♪。おーい龍牙!。親父の挨拶終わった?。俺もするから飯食おうぜ。ってなんだその幼女....」

 

龍牙とスミレがいた部屋の襖を開けた瞬間、翔一の動きは止まっていた。




感想や評価、お待ちしております。


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父はよき理解者

どうもしらす丸です。
しばらく更新出来なくって本当にすいませんでした!。
理由は……聞かないでください…。


「へぇーそんなことがあったのか。」

「お願い父さん。このことは秘密にしてくれないか?。」

「いいだろう。他でもない息子の頼みだ。」

「ありがとう。」

 

龍牙がスミレの事を話し、それを理解してくれた父にお礼を言った。翔一は気にすることはないと言い、畳に寝転がった。

 

「ところで龍牙、そいつどうするんだ?。寝てるし戻せるのか?。」

「あ、そこまでは考えてなかった。…起こすしかないか。」

 

龍牙はスミレの肩を揺すり、起こした。

 

「スミレ、スミレ。一旦起きて。」

「んぅ?…何じゃ?。わしが寝てるのに起こしおって

…。」

「スミレ、寝るなら狐の姿になるといいよ。」

「そうじゃな...そうするとしよう…。おやすみなのじゃ…。」

 

スミレはぽんっと狐の姿に戻った。もうスミレは寝ているようだ。

 

「わお、ほんとに狐になった。」

 

翔一は驚いたように言った。龍牙はジト目になった。

 

「父さん…信じてなかったの?。」

「いやーしょうがないじゃん。いくらその人が本当だって言ってもそんな非現実的なことを信じることわ難しいと思うよ。」

「そっか…。それも一理あるな。」

 

ぐうの音も出ない龍牙であった。

翔一は「ふふっ、論破だな」とクスクス笑い立ち上がった。

 

「さて、晩御飯ができたってさ。行くぞ。」

「うん。けどスミレはどうしたらいいかな?。」

「真理に預けとくといいだろう。きっとどうにかしてくれるさ。」

「根拠は?。」

「俺の勘だ!。」

「ないんだね…。まぁ真理叔母さんは信用できるから預けるかな。」

 

ドヤ顔でしょうもない事を言いだす父に龍牙はため息をこぼした。

部屋に行く途中、龍牙は翔一に質問をした。

 

「そういえば父さん。向こうの部屋にはどれぐらいいた?。」

「今回参加できる人は全員集まっているぞ。結愛ちゃんも来ててさ、俺見た瞬間走ってきてさ「龍兄来てるの?」って言ったんだ。俺がスミレと遊んでいるって言ったら、「早く連れてきて」って急かされたんだよ。まったく結愛ちゃんもすごくおまえに懐いてるよ。」

 

翔一は疲れたように話した。結愛…天野 結愛(あまの ゆあ)とは龍牙の祖父である誠二郎のいとこの孫、所謂龍牙のはとこである。彼女は小学2年生で小さいときから龍牙に懐いていた。彼自身は気づいていないが、結愛は龍牙に恋心を抱いている。

 

「俺も何であんなに俺に懐いたのかよく分からないんだ。まぁ嫌われているよりかは圧倒的に良いけど。」

「何だかんだでお前は優しいんだよ。欲しいオモチャ買ってあげたり遊んであげたりしたしさ。」

「あー言われてみればそうだったね。まあ止めるつもりは無いけど。」

 

数分後。翔一がある1部屋の襖を開けた。瞬間…

 

「龍兄ぃぃぃぃぃぃ!!!!!。」

 

ツインテールの女の子が龍牙に飛び付いてきた。龍牙は驚きながらもしっかり受け止めた。そして下ろしたあと頭を撫でながら注意をした。

 

「危ないじゃないか。次はやっちゃ駄目だよ。結愛。」

「えへへー、ごめんなさい!。じゃなくて!。龍兄が早く来なかったのが悪いの!。」

 

結愛と呼ばれた少女はにへらと笑ったものの、すぐにプリプリ怒りだした。

 

「ごめんね。スミレの相手をしていたんだ。すぐに行こうと思ったんだけどスミレが寝るまで俺に抱きついたままで戻ろうにも戻れなっかったんだ。」

「もー!。スミレと私、どっちが大事なの!。」

「勿論どっちも同じくらい大切だよ。」

「むぅぅぅ!……龍兄のバカ!。バカバカバカ!!。」

「ちょっ!地味に痛いよ!。」

 

結愛は顔を真っ赤にしながらポカポカ殴ってきた。すると、

 

「こら結愛!。やめなさい!。ごめんね龍牙君。」

 

結愛の母親の天野 麗美(あまの れみ)が結愛を止めに来た。

 

「気にしないでください。死ぬ程痛い訳ではないので。それに子供は元気が一番ですから。」

「ふふっ。相変わらず優しいわね。そんなに優しいとお彼女さんもさぞ幸せだわ。」

「冗談言わないでくださいよ。残念ながら彼女はいないですよ。」

 

麗美の言葉に龍牙は苦笑いで答えた。それを見た麗美は結愛に耳打ちをした。

 

よかったわね結愛。龍牙君まだ彼女いないらしいわよ。チャンスね!。

「おっお母さん!。何言ってるの!?。やめてよ!。」

「??」

 

母の言葉を聞いた結愛はかおを真っ赤にしてくびを横にブンブン振っていた。母も自分の娘の恋路を密かに応援しているのだ。一方龍牙は何が何だかよく分らないようで、首を傾げていた。

 

「龍牙ー!。夜ご飯ができたから運ぶの手伝ってこい!。」

「分かったー。今行くよー父さん!。じゃあまた後でね。」

「うっ、うん!。分かった。」

 

龍牙は夜ご飯を運ぶため、台所へ向かった。

 

「お待たせ。どれ運べばいいの?。」

「おし。これとこれを運んでくれ。」

 

色々な親戚と沢山話をし、夜ご飯を食べ終わり。龍牙は風呂からあがった。

 

(スミレも同じところで寝たほうがいいよな。)

 

龍牙はそう考え、真理にスミレは何処か聞いてみた。

 

「真理叔母さん。スミレ何処にいるか知らないですか?」

「スミレ?。応接間の隣の部屋に寝かせといたわよ。」

「ありがとうございます。」

「いえいえ。別に気にする程でもないわ。」

 

龍牙は真理が言っていた部屋まで行き。スミレを自分と翔一の分の布団が置かれている部屋まで持っていった。

 

「ここなら間違えて人間化しても大丈夫だと思うから。ゆっくり休んで。」

 

龍牙は優しく頭を撫でるとスミレは少しだけ尻尾を動かした。それを見た龍牙は布団に入り、眠り始めた。




突然ですが、この小説ではキャラ募集を行う予定はありませんのでご了承ください。


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好物

どうもしらす丸です。
最近いいアイディアが全然浮かばなくて…。ですが飽きて辞めざるを得ないとき以外は終わらせるつもりはありません!。頑張ります!


スミレと出会った日から5日が過ぎた。今回参加する親族全員揃い、通夜も終えた。そして今日は葬式である。葬式場へは少し距離があるため、何台か車を出すことになった。龍牙はそれに選ばれたのだった。その日の朝。朝食を済ませ、出発前の準備をしている所だった。

 

「なぁ龍牙よ。わしも葬式に行くのかの?。」

 

龍牙が荷物の準備をしているときにスミレが話しかけてきた。呼び名は龍牙で安定してるようだ。

 

「スミレは…、お前はその姿を知っている人って俺と父さん以外にいるのか?。」

「前にも言った通りこの姿を知っているのはおぬしと翔一と主様だけじゃ。」

 

翔一のことはもうスミレは知っているようだ。龍牙が教えたらしい。

 

「それ以外はない?。知り合いの孫を預かりましたとかで皆の前に出たことはあるか?。」

「いや、ないぞ。」

 

その反応を聞いた龍牙は、荷物と車の鍵を持ち立ち上がった。

 

「駄目だな。家で留守番だ。」

「そこを何とかできないかの!」

「流石に今は友人の子を連れてきたなんて言い訳出来ないから。今回は待っててくれないか?。後で2人でゆっくり墓参りでも行こう。」

「くぅ〜…分かったのじゃ…。後でゆっくり行こうかの。」

「お詫びと言っちゃあなんだが、シュークリームかなんかを買ってきてやるよ。」

「それは本当かの!?。」

 

龍牙がそう言うと、拗ねていたスミレがガバッと起き上がり、子供のように目を光らせた。

 

「ああ。勿論だ。」

「行ってらしゃいなのじゃ!!。」

 

竜牙は部屋の前まで歩いて行き、立ち止まった。

 

「ごめんな。爺ちゃんを最後まで見せられることが出来なくて。」

「気にせんで良い。わしがこう生まれてきた以上、これも抗うことの出来ない運命じゃ。はよう行けい、遅れても知らんぞ。」

「ああ。行ってくる。」

 

龍牙は外に出て車へ移動していった。

 

「よう龍牙。遅かったな。まあ気にするもんでもないな。」

「えーっと、俺の車に乗るのは父さんと結愛ちゃんと麗美さんでいいのかな?。」

「はい、よろしくお願いします。ほら、麗美も挨拶しなさい。」

「よっ……よろしく…お願い…します…。」

 

結愛は顔を真っ赤にしながら挨拶した。それもそのはず。彼女は初めて好きな相手の車に乗るのだから。

 

 

葬式も終わり、火葬も終え御骨を墓に入れる頃にはもう4時を過ぎていた。墓地からの帰り、竜牙は洋菓子店に車を止めた。

 

「あれ?、龍牙どした?。道に迷ったか?。」

「違うよ父さん。結愛ちゃん。今日のお葬式疲れたでしょ。何か買ってあげるよ。麗美さんもどうですか?。お金出します。」

 

そう言うと麗美は顔を赤くして言った。

 

「ごめんなさい…気持ちは嬉しいけど…私今…ダイエット中なの…。」

「分かりました。そんな無理には進めませんから。」

「ごめんなさいね…龍牙君…。」

「気にしなくて大丈夫ですよ。結愛ちゃんはどうする?」

「食べる!」

 

結愛は目を光らせ即答でこたえた。

 

「父さんも食べる?」

「うーん…俺はいらない。結愛ちゃんだけで大丈夫だろ。」

 

翔一は断った。結局食べるのは結愛だけだった。

 

「んじゃ、俺は車の中で待ってるから。2人でゆっくり買ってくれば。」

「そうね、私も車の中で待ってるわ。頑張ってね、結愛

「う…うん…龍兄いっしょにいこ?。」

「うんじゃあ行こっか。」

 

2人は店に入り、ショーケースに並べられた沢山の洋菓子を眺めていた。

 

「何にする結愛ちゃん?。何でも大丈夫だよ。」

「うーんうーん。」

 

結愛はずっと考えてショーケースの前をウロウロしながら唸っている。

一方龍牙はもう決まったのか結愛を待っていた。

 

「うーん、じゃあこれ!。このイチゴのがいい!。」

「分かった。すみません注文良いですか?。」

 

龍牙が店員を呼ぶと店員がこちらに来た。

 

「はい。どれにしますか?。」

「えっと。この苺のショートケーキとシュークリームとエクレアを1つずつお願いします。」

「こちらで食べますか?。お持ち帰りにしますか?。」

「ここで食べることが出来るんですか?。」

「はい。出来ますよ。」

「どうする?。結愛ちゃん?。」

 

そう龍牙が聞くと、結愛は顔を赤くしながら答えた。

 

「こっ…ここで食べてもいいかな?。」

「分かった。エクレアとシュークリームはお持ち帰りで

お願いします。」

「分かりました。」

 

店員はエクレアとシュークリームを箱に詰め、保冷剤を入れシールで箱を止め、トレーに苺のショートケーキをのせ。ホット用のカップをのせて渡してきた。

 

「コーヒーやココアなどは飲み放題ですがセルフサービスとなっております。」

「はい、分かりました。」

「ありがとうございました!。ごゆっくりどうぞ。」

「さて、行こうか。」

「うん!。」

 

その後2人は結愛の学校の話や、龍牙の大学の話などをして楽しんだ。暫くして。

 

「さて、もう出ようか。父さんや麗美さんも待ってるし。」

「うん!。今日はありがとうね。龍兄!。」

 

2人は車へ戻った。

 

「よう龍牙。随分遅かったな。」

「カフェコーナーがあったからそこで休んでたんだ。すいませんでした麗美さん。話をしてたらつい時間を忘れてしまいました。」

「気にしなくて大丈夫よ。寧ろ話し相手になってくれて本当にうれしいわ。お金を渡さなくちゃね。いくらかしら?。」

「あ、そこは大丈夫ですよ。元々俺の好意だったので。」

「あらいいの?。ふふっ、優しいわね。龍牙君はいいお婿さんになれそうね。」

「ははっ、それがあんまり俺、モテないんですよね。」

 

実は彼が高校生の時、ひっそりとファンクラブができていた事を彼は知らない。

 

「龍兄!もう行こ!。」

 

結愛が怒ったように言った。

 

「あらあらごめんなさいね、それじゃあ行きましょうか。」

「おっ、やっと行くか。待ちくたびれたぜ。」

 

空気と化した翔一であった。

家に帰り、竜牙は真っ先にスミレを探し始めた。

 

「スミレー。どこだー。」

「キュー!。」

 

龍牙が呼ぶと、廊下の向こうからすぐにスミレが走って来た。

竜牙はキツネ状態のスミレの耳元でこっそり囁いた。

 

「お土産買ってきたから部屋で食べるか。」

「キュー!。」

 

スミレは目を光らせ、尻尾をブンブン振っている。部屋に入るとスミレはすぐに人間の姿になった。

 

「改めておかえりなのじゃ。さあシュークリームを渡すのじゃ!。」

「ハイハイ、どうぞ。」

「いただきます!。」

 

スミレは幸せそうに食べ始めた。

 

「はむはむ…うーん♡、美味しい!。」

「それならよかったよ。こっちも食べてみなよ。」

「ん?、その細長いのかの?。何なのじゃ?。」

 

龍牙が進めたエクレアをスミレは不思議そうに見た。

 

「これはエクレアっていうお菓子だ。美味しいよ。」

「ふむ、では頂くのじゃ。」

 

エクレアを食べた瞬間、スミレに衝撃が走った。

 

「な…なんじゃこれは!。この世にこんな美味いものがあったなんて!。」

 

どうやらスミレの大好物になったようだ。

 

 

 

 

おまけ

 

 

「そういえばなんでシュークリームのことを知ってたんだ?。」

「主様が洋菓子が嫌いだったから、よく食べさせて貰ったのじゃ。」

「あー、確かに爺ちゃん嫌いだったなぁ。俺達が何回も買ってくるもんだから1回だけ本気でキレてた。」

「そうなのか!?。」

「ああ、あのときは大変だった。飾ってある本物の刀を振り回したんだよな。」

「主様は優しいけど怒ると本当に怖いのじゃ…」




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夜空よりも綺麗な笑顔

どうもしらす丸です。
暫く手がつけられなくて本当にすいませんでした!。まだ生きています。
私の生存報告も兼ねてお送りします。


気付けばもう龍牙の祖父、誠二郎の葬式から1週間たった。龍牙は自宅で1日ゆっくりしたいため、翔一は仕事のため、明日には帰ることになった。

そんな日の昼間。

2人と真理以外の親族は帰った。真理はずっと誠二郎の介護をしていたため、この家に住んでいるのだ。そんな真理も今は買い物で出掛けていて不在である。つまり、家に居るのは龍牙と翔一だけになる。龍牙は真理が帰ってくる時間までは人間の姿でいても大丈夫と言った。真理には帰ってくる頃には連絡してくれと伝えたので、完璧である。

 

「ふぅ〜。やはりこっちの姿の方が楽でいいのじゃ。」

「よくあるアニメみたく動物の姿の方が楽とかじゃないんだな。」

「ふむ、わしは神じゃぞ翔一よ。空想の人物と一緒にするでない。」

「あくまでも神の切れ端だろ…。」

「なんじゃと!?。踏み潰すぞ翔一!。」

「はっはっは!!。やってみろ!。その小学生みたいな小さな足で踏み潰してみろよ!。」

「わしは子供ではない!!。」

「ははは!!あっ…ちょ!、痛い痛い痛い!。片足で太もも踏むの止めて!。結構痛い!。」

「ははは!。わしを馬鹿にした罪じゃ!。このこのこの!。」

「なにやってんの2人とも…。」

 

縁側でくつろいでたスミレと翔一のくだらない喧嘩を見ながら龍牙は溜息を1つ、初夏の空に溶かした。

 

「そんなことよりもスミレ。」

「なんじゃ龍牙。今はそれどころではない。こやつがわしを子供扱いするのじゃ!。」

「父さんもいったん止めて。真面目な話をするから。」

「おう!。分かったぞ!。この話はまた後日だな!。」

「はぁ…。で、スミレ。お前はどうするんだ?。俺について行くのか、ここに残るか。」

「龍牙はどちらがいいのじゃ?。やはりわしがそちらに行くと迷惑かの?。」

「資金的な問題は気にしなくていい。兎に角自分の意思で決めてくれ。」

「わしがここに残ったらお主はどうするのじゃ?。」

「俺は一旦東京へ戻る。スミレはここに残って真理叔母さんの世話になることになる。」

「けどさ、神社から離れてもいいのか?。」

 

翔一がスミレに質問を投げた。

 

「そこは気にせんで良い。わしは元々神の一部だったとはいえ。もう完全な個体じゃ。完全に分離しておる。」

 

実は彼女は誠二郎がスミレを拾った神社で祀られていた神の力の一部なのだ。そのことを詳しく聞かされたのは誠二郎の葬式が終わってから3日経ったころのことだった。龍牙はスミレから、翔一は龍牙から彼女は神ということは聞いていたので、そんなに驚きはしなかったらしい。

閑話休題

龍牙が話し始めた。

 

「で、どうするんだ?。ここに残るか、俺について行くか。どうするか決めてもいいぞ。何なら父さんの会社は?。」

「うーん。すまないがうちは多分無理だな。ほら、マスコミの目とかあるし、何よりも家にはあのロリコンもいるしな。」

「兄さんのことだね…。」

 

龍牙は苦笑いした。

 

「それで、わしはなんの選択肢があるのかの?。」

「取り敢えず上がっているのは、俺の家に来るかここに残るかだな。まぁ後はこれから1人…1匹かな?…で暮らすことになるな。どうする?。」

「うーむ…。今夜までには決断をしようと思うから待ってくれんかの?。」

「うん。ゆっくり考えるといいよ。」

「それは助かるのじゃ。」

 

龍牙は久しぶりにゆっくりした時間が流れていくように感じた。空を見上げると、青い空に雲がゆっくり流れている。

 

「久しぶりだな。こんなにゆっくり空を見上げるのは。」

 

龍牙は独り言のように呟いた。

 

「そうなのか?。」

「うん。勉強が忙しくてね。空を見る機会なんてないのさ。」

「ふむ…。そうなのか…。」

 

スミレはなにか考えるように頷いた。

 

「スミレ、俺、少し寝るよ。」

「分かったのじゃ。わしも一緒に寝るとするかの。」

 

スミレは狐の姿に戻り龍牙の横で眠り始めた。龍牙もそれに釣られるように眠り始めた。

 

「おーい、2人とも。アイス食べるか…って寝てるし…。あれ?。なんかデジャヴ…。」

 

 

時間が経ち、日は沈み始め、辺りは橙色に染まってゆく。龍牙は真理に起こされ。3人で夜ご飯を食べた。その夜ご飯で、真理は誠二郎の介護が必要なくなったため、翔一と龍牙が帰り、準備をした後、この家を出るらしい。つまり、スミレは龍牙について行くか真理について行くかのどちらか、もしくは1人で生きることを選ぶことになったのだ。

そしてその日の夜。

 

「龍牙。少し外に行きたいのだが、いいかの?。」

 

龍牙は真理に事情を話し、スミレと外に出た。

 

「なあ龍牙。今宵はとてもいい空じゃの。」

「ああ。そうだな。」

 

暗い空に水飛沫のように瞬いている星を眺め、スミレは話し始めた。

 

「それで、スミレ。真理叔母さんから聞いたんだけど、俺と父さんがここを出たら真理叔母さんもここを出ることになったんだ。どうする?。」

「そうなのかの…。うむ。これで決まったのじゃ。」

 

スミレは龍牙の前に立ち、話した。

 

「龍牙。お主は前に成長しろとわしに言ったの。わしもこれを機に成長してみようと思ったのじゃ。」

 

2人の間に涼しい風が吹いていく。

 

「まだわしは主様のことを信じておったのじゃ。まだ生きてるとこの家で待っていればいつか帰ってくるとな。」

「……。」

「だが、結局わしはまだ主様の死を認めていなかったのじゃ。あんなに近くで見たのに…。わしはただ単に現実を直視出来なかったのじゃ。わしはとんだ愚か者じゃ…。」

 

スミレは自虐的に笑った。

 

「だからわしは成長する。しっかりと現実を見ると決めたのじゃ。だから龍牙。わしはお主について行くことにする。あのときわしにあの言葉をかけてくれたお主なら大丈夫じゃ。これからは龍牙。お主が私の主じゃ。これから沢山世話になるの!。」

 

スミレのその笑顔は夜空の星よりも綺麗に眩しく輝いていた。

 

「ああ。こちらこそよろしく頼む。」

 

龍牙はスミレと違い、優しく微笑んだ。




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嫌いな物

お久しぶりです。しらす丸です。
しばらくの間更新出来なくて大変申し訳ございませんでした。やっとの合間で書けたのです(言い訳タイム)
少し短いですが楽しく読んで頂ければなと思います。


「ってことで、スミレはおれが預かることになった」

「ふむ。それで真理にはこの事を話したのか?」

「うん。普通に了承してくれた。爺ちゃんの次に俺が懐かれていたし、そっちの方がスミレも嬉しいだろうってさ」

 

龍牙は夜にスミレと話した出来事を、翔一に話した。そして飼ってもいいことも真理から了承のことも話した。翔一は「そうだもんなー、親父と同じくらいに懐いてたからなぁ」と納得していた。

 

「ま、これから世話になるの。龍牙よ」

「ソファーでお漏らしとかすんなよ~」

「なんだと!。わしはそんな只の動物のようなことなどしない!!」

「アッハッハッハッハッ!!!てちょ!!。痛い痛い痛い!!キツネの姿で噛むな!!」

「はぁ・・・」

 

そして昼頃。

 

「のう龍牙。ほんとにこれに入らなきゃダメなのかの?」

「大丈夫。車に入ったら出してやるから」

 

スミレは持ち運び式のペットケージ入ることを躊躇しているようだ。

 

「何なら首輪にするか?。家に帰るまでつけっぱなしだけど」

「それもいやじゃ!」

 

少し涙目になっているスミレを見て、龍牙は察した。

 

「もしかしてスミレって高いところ苦手?」

「ぎくぅ!!。そっ・・・そんな訳なかろう!。わしがじゃぞ?。この神であるわしが高い所が苦手なわけなかろう!」

「ふぅん。じゃあキツネの姿になって早く入ってよ」

「わ・・・分かったのじゃ」

 

スミレは渋々ケージの中へ入った。龍牙が持ち上げて中を見ると、スミレは端っこで丸まってブルブル震えている。

 

「なんだ。やっぱり怖いんじゃないか」

 

龍牙はふふっと笑い、慎重に車へ運んだ。やがて全ての荷物を乗せ終わり、とうとう出発の準備が終わった。

 

「龍牙君。スミレのことをお願いね」

「勿論です。引き受けたからにはしっかりと責任をもって飼っていきます」

「ふふっ、そうね。兄さんも元気でね」

「ん~、妹よ、俺の扱い少し軽くないか?」

「知らないわ。いつもの事でしょ?」

「デスヨネー」

 

翔一はガックリしていた。

 

「じゃあまた。次はお盆ですかね?」

「そうなるわね。そのときがきたら2人に掃除を手伝って貰おうかしら」

「分かりました。そのときは呼んでくれれば父さんごと来るので」

「え?、決定事項なの?」

 

2人は車に戻り、スミレをケージから出した。

 

「ふー、全くちょっと遅かったぞ」

「ごめんね、少し話し込んじゃってさ」

 

スミレは人間の姿に戻り、愚痴っていた。

 

「さて出発しようか。まず行き先は父さんの会社かな?」

「ああ。はぁ・・・また明日から仕事が始まる・・・」

「大変そうじゃの。翔一」

「おおー!!そう言ってくれるのは龍牙とスミレだけだぁ!!」

「ええいくっつくな!!尻尾を触るな!!」

「じゃ、出発するよ」

 

龍牙は2人のやり取りを完全に無視し、車を走らせた。

 

父の会社に着く頃にはもう夕方になってしまった。

スミレはもう寝ている。龍牙は念の為、スミレにキツネになって眠れと言ったので、キツネの状態でスミレは眠っている。

荷物を全て下ろし、翔一と少し話しているとき、スミレは目が覚めた。

 

「んむぅ・・・。何処じゃ?・・・ここは・・・」

「目が覚めたんだね。ここは父さんの会社だよ」

「うーむ・・・でかいのう・・・」

 

まだスミレはボーッとしているようだ。

 

「それじゃあ父さん。またね」

「ああ、たまには連絡よこせよ」

「うん。じゃ、スミレ。帰ろっか」

「?、何処にかの?」

「俺の家だよ」

 

「ほぉー。ここが龍牙の部屋か。少し狭く感じるのぉ」

「爺さんの家が広すぎなだけだからね」

 

スミレは龍牙の部屋を品定めしていた。

 

「長旅で疲れただろうし。今日はもう寝ても大丈夫だよ」

「そうさせてもらうぞ。わしは疲れた。布団は何処かの?」

「こっち、ていうか俺はベッドだから」

「べっど?」

 

スミレはベッドが分からず、首を傾げている。

 

「ここが寝室。これがベッドだよ」

「ほう、布団に台が着いておるのか」

「ゆっくり寝るといいよ」

「分かったのじゃ・・・。それじゃあおやすみ」

 

スミレはベッドに潜り込み、眠った。それを見た龍牙はリビングに戻り、ソファーでゆっくりしていたそして龍牙は不意に思った。

 

「そういえば寝る場所どうしよう」

 

そう考えていると、寝室のドアがゆっくり開いた。

 

「のう龍牙。寂しい訳ではないのだがもちと一緒にいてくれんかの?」

 

スミレは昼間はピンっと立っていた耳を下にさげ、顔を出してきた。

龍牙はふふっと笑い。パジャマ代わりのTシャツとジャージを持ってきた。

 

「少し待っててくれ。着替えたらすぐ行く」

「そうなのか。心強いのじゃ」

 

安心したようにスミレは寝室へ入っていった。

 

「さて、寝ますか」

 

龍牙は着替え、寝室へ入っていった。

 

こうして夜はふけていく。




もう1つの作品も少しお時間を頂ければなと思います。


追記
サブタイトルを間違えてしまったので書き直しました。


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どうも皆さんお久しぶりです。気づけば作者を始めてから1周年。気づけばW杯で日本が負け、気づけば九州で大雨。時間が経つのは早いですね。被災した皆様は必ず助かると希望を捨てずに頑張ってください。少しの気晴らしにこれを読んでほしい・・・、なんて冗談は置いておきましょう。


「・・・・・・朝か・・・。」

 

いつもと変わらない朝、けど今日はいつもとは少し違うようだ。

 

「ほらスミレ。朝だぞ。起きろ。」

 

龍牙はその犯人である狐耳を起こす。

 

「ん?、むぅ・・・まだ寝てたいのじゃ・・・。わしは健康第一に考える神でのぉ・・・、しっかり寝ないと健康に悪いのじゃ・・・。」

「健康第一ならこの時間ぐらいに起きることをおすすめするぞ。ほら、早く起きないと朝飯抜きにするぞ。」

「それは困る!。」

 

スミレはガバッと起き上がった。

 

「だったらさっさと起きた起きた。」

「このなぁ?、べっどという素晴らしい寝具がわしを惑わすのじゃあ・・・。」

「はいはい、愛しのオフトゥンってやつと一緒だろ。」

 

因みにこれは父の入れ知恵である。龍牙はスタスタとリビングへ行った。

 

「ま、待つのじゃあ!」

 

それを追うようにスミレも出ていった。

 

「さて、朝飯どうするか。スミレ、なんかリクエストある?」

「ふむ、わしは少し軽めがよいぞ」

「そっか。少しのカルメ焼きね。まってて、すぐ作れるから。」

「まてまてまて!。わしはカルメ焼きなぞ頼んでおらん!。胃に優しいものということじゃ!。」

「ふふっ。冗談だよ。お茶漬けでいいかな?。」

「な、冗談か・・・。わしで遊ぶでない!。」

「ごめんごめん。すぐにお湯沸くから。」

 

少し経ち、お湯が沸いた。龍牙は昨日予め炊いておいたご飯をよそり、茶漬けの元をふりかけ、お湯をかけた。

 

「おまたせスミレ。出来たぞ。」

「すまぬの龍牙。ではいただきます。」

「いただきます。」

 

こうして天野家の1日が始まった。

 

「ところで龍牙よ今日はなにをするのじゃ?。」

「まぁ特には決めてないよ。そうだなぁ・・・。服でも買いに行くか?。」

「服など気にせんでよい。わしはこの着物だけで十分じゃ。」

 

因みにスミレの服は着物である。

 

「いや、流石にずっと着物は不自然だぞ。神とはいえ、自然に社会に溶け込まないといけないんだ。それに普通の服の方がゆったりできるぞ。」

「そ、そうか・・・。わかった。では服を買いに行こう。ご馳走様。」

「ああ。ご馳走様。」

 

龍牙は普段着に着替え、ふと思い出した。

 

「そういえば服買うまでどんなふうに誤魔化せばいかな。もう初夏だし、七五三の季節でもないし・・・。」

「そういえばそうだの。どうするのだ?。」

「うーん。母さんあたりに相談しようかな。」

「ほう、龍牙の母は何かそこに関した職業にでも就いているのか?。」

「いや、父さんには2人秘書がいてね。母さんがその内の1人なんだ。おしゃれにも乏しくないし、同じ女性だからいい服を見つけてくれると思うんだ。」

 

龍牙はスマホで電話をした。

 

「もしもし?。」

『あら龍牙?。久しぶりね、元気にしてた?。』

「うん元気だよ。しっかりご飯も食べてるし。」

『そうなのね、よかったわ。まぁ龍牙だしそこを気にする必要はないかしらね。』

 

母・・・天野双葉(あまのふたば)は電話越しにクスリと笑った。

 

「それで、母さん。少し用があるんだけど。」

『あら、何かしら?。何でも手伝うわ。』

「知り合いの子供を預かってるんだ。それで服を買いたいんだけど、俺じゃサイズとかよく分からないから、母さんに手伝って欲しいんだけど・・・。今大丈夫かな?。」

『それってどうゆうこと!?。・・・まぁ詳しい話は会ってからにしましょう。会社で待ってるわ。』

「分かった。すぐに行くよ。父さんとも会えるかな?。」

『大丈夫よ。そろそろ休憩する(サボる)頃だし。』

 

龍牙はありがとうといい、電話をきった。

 

「龍牙、連絡は済ませたかの?。」

「ああ、大丈夫だ。すぐに行くぞ。」

 

龍牙は普段着に着替え、顔を洗い、歯を磨いた。すると。

 

「龍牙よ、わしの歯ブラシはあるかの?。」

「ちょっと待ってて、確か買い溜めしたやつがあったはず。」

「すまぬの。」

「気にしなくていい。ほら、あったぞ。」

「ありがとうなのじゃ。」

(そっか・・・。もう1人じゃないのか。)

 

改めて、家族が増えたことを確信する龍牙であった。

 

「そろそろかな。よし、出発だスミレ。」

「了解だぞ。」

 

2人は車で両親の会社へと向かった。

 

「しっかし暑いのう・・・。冷房が無ければわしは溶けてしまいそうじゃ。」

「東京は気温自体それなりに暑いだけなんだけど、車が多く通るからね。余計暑く感じるんだ。」

「そうなのか。何だか辛いの、都会というものは。」

「ま、辛いこともあるかな。けど、慣れだよ慣れ。それに涼しい建物も多いし、交通機関なんかは田舎に比べると圧倒的に便利だからね。」

「慣れ。か・・・。お主も疲れておるの。」

「そうかもね。」

 

スミレの一言に龍牙は自虐的な笑いをした。

 

 

 

 

しばらく車を走らせていると、両親の会社が見えてきた。

 

「そろそろ着くぞ。」

「了解じゃ。」

「そういえば名前どうする?。」

「わしはスミレじゃぞ?。」

 

スミレは何をいまさらと言っているかのような顔をした。

 

「一応お前は知り合いの子っていう立ち位置にいるんだ。名前はあっても苗字は必要だろ?。」

「ふむ、そうじゃの・・・。では苗字は狐々耳(ここみ)とするが良い。」

「ここみ?。書き方は?。」

「狐と耳じゃ。」

「安直だな。」

「それでいいのじゃ。」

 

2人はふふっと笑った。




非常に遅くなりましたが。1周年本当にありがとうございます!。皆様のお陰でこの作品が続いていると過言ではありません。今後ともよろしくお願いします!。エタらないように頑張ります!。


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