誰のためにベースは鳴る (ほおずきん)
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俺と音楽と幼馴染
初めての連載小説の投稿になります。
至らない点もあるかもしれませんが面白いと思っていただけましたら幸いです。
ヒロインはひまりちゃんとなっておりますので可愛さが前面にでていて感じていただけたらなと、思います。
それではどうぞ!
『幼馴染』それはお互いが幼少期から顔見知りであり、家族よりも多くの時間をともにすることがあるかもしれない。そんな密で濃い関係のことを言う。
男同士、女同士でも幼馴染と呼ばれるらしいが、男女の場合が多くだろう。
小学校で幼馴染と仲良くしているのを見るとクラスの一部の男子が、「お前ら付き合ってるんじゃねーの?」などとからかってきたり「そんなに仲がいいなら早く付き合っちゃえよ!」と交際をそそのかしてきたりといじりの対象になることがしばしばである。
俺も幼馴染とそのいじりを経験してきた一人だった。
当時小学生だった俺には幼馴染への恋心などは微塵もなく、”ただ家が隣のよくしゃべる友達”としか考えておらず、いじりに対する対処も適当に受け流して笑っていただけだった。
やがて時は過ぎていき中学校へ進学する年齢になると幼馴染は女子校へ、俺は共学校へと進学してしまい俺たちは学校で顔を合わすことはなく高校進学まで時が過ぎ去ってしまった……
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――第1話『俺と音楽と幼馴染と』
――2年前
「ねーしゅう! 窓開けてよー! 大事な話があるんだよー」
2階の自室で休んでいた俺の耳に聴こえてきたのは窓をドンドンと叩く音、それと窓に音が遮られ小さな声で何か喋っている幼馴染の顔。
俺は立ち上がり窓を開けようと足を進め幼馴染へ一言。
「今は漫画を読んでいるんだ、後にしてくれ」
ピシャリと窓を閉めてカーテンを勢いよく閉じる。よし邪魔者もいなくなったことだし快適に漫画が読めるな。
カーテンを閉めるときに一瞬幼馴染の涙ぐんだ顔が見えた気がしないでもないが大丈夫だろうか……いや気のせいだろう。
俺はその場に座り込んで読みかけていた漫画に手を伸ばす。するとまたもや窓がドンドンと鳴り響く。
無視してもドンドン……さらに無視してもドンドン……その音は回数を増すごとに強くなっていき、我慢できないほどの音量になっていった。
「だー! うるせぇ! 集中してマンガ読めねぇじゃねぇか! それにご近所さんに迷惑だろうが!」
再び立ち上がり文句を言ってると窓を開けた瞬間に「スキあり! とぉうっ!」と幼馴染は部屋へと飛び込んできた。
部屋へと飛び込んできた幼馴染の名前は『上原 ひまり』
ひまりは俺と幼馴染であり、家が真隣にある。こうしてなにかあると必ずと言っていいほどベランダをつたって俺の家のベランダへと侵入し窓を叩いては俺を呼び出す。
いつか不審者として通報してやろうか考えたこともあるくらい頻繁に訪れる。
ひまりはなかなかに明るい性格で周囲を盛り上げたりすることがとてもうまい。
ただ一つだけ空気が読めないという難点があり、さきほども俺がごろごろしているところを窓越しにがっつり見ていたはずなのに部屋に上がり込んできやがった……なんつー空気の読めないやつ。いや俺の心が狭いとは言わないでくれ……自分の時間を邪魔されるのが大嫌いなんだ。
ついでに付け加えていうとひまりは感動系のエピソードに弱くてすぐに泣いてしまうという涙もろく可愛い一面もある。
先日も子猫が飼い主の家に帰るドキュメンタリーを視聴しておいおい号泣していた。
これはもちろん難点ではなくむしろプラスポイントだ。
可愛い女の子が可憐に泣いている姿、抱きしめてあげたいよな。
……抱きしめたことないけど。
そしてそのひまりに『しゅう』と呼ばれている俺の名前は有地 柊史(ありち しゅうじ)
何の変哲もないそこら辺にいる学生だ。
「で、ひまり、何の用だ? 俺マンガ読みたいから早くしてほしいんだが」
俺がこういうとひまりは頬をむぅーっと膨らませてプンプンッなんて効果音が出そうな表情で俺に問いかけてくる。可愛い幼馴染のこんな一面も見れるとはやっぱり幼馴染は役得だな。
「もー! いったいしゅうはマンガと私どっちが大事なの!」
なんだ、いったい何を聞いてくるかと思えばそんなくだらない質問か。新婚さんじゃないんだからまったく、それはもちろん……
「マンガに決まってるだろ」
そんなうふふなことを思いながら俺がマンガと答えるとひまりはすかさずツッコんでくる。
「返答はやっ!? まさか私マンガに負けたのっ!? うぅ……」
いいツッコミだ、やっぱひまりは漫才の才能あるなぁ……
「って! 私が大事かマンガが大事かなんてそんなことはどーでもよくてさー私バンド始めたんだよ!」
結局どうでもいいのかよ……ちょっと涙浮かべて泣きそうになってたくせに。
マンガをだらだら読みながらも俺はひまりの言葉に耳を傾け、問いかける。
「バンド? バンドってもしかしてあのギター弾いたり歌ったりの?」
「そうそう! ギター弾いたり歌唄ったり!」
そういっているひまりはとても楽しそうにそして嬉しげに話していた。チラッと見ると案の定ひまりは楽しげな様子だった。
バンドと聞くと男性グループが主で女性がいたとしてもグループに一人いて、その人たちがテレビ出演などをして活躍しているイメージが強いのだが最近はそんなこともないらしくグループ全員が女性でそれぞれかっこよくギターを弾いたりドラムを叩いたりし、メディア進出をしているらしい。
「で、メンバーは誰なんだ? またいつも通りのメンバーか?」
いつものメンバーとはひまりのほかに4人女の幼馴染がいて幼馴染5人組をいつものメンバーと俺は呼んでいる。
「よくお分かりで! ほら、前に相談したでしょ? 蘭がひとりだけ別のクラスになっちゃって学校の授業もサボりがちでどうしよう……って。それでねしゅうにいろいろ考えてもらったり蘭以外のメンバーでどうにかできないかなって考えたりしてどうしようかって思ってたの」
一度だけだがひまりに蘭について相談を受けたことがある。今まで幼稚園、小学校と幼馴染全員で同じクラスになっていたのだが、中学校進学で俺が離れ、今度は中学2年のときに蘭だけクラスが別になってしまったのだ。
これがきっかけで蘭はクラスに居場所を見つけられなくなってしまい、授業をサボったりしてしまったらしい。もちろんこいつらが放っておくわけもなく心配してなにかみんなでやり始めようという魂胆らしい。
「んでみんなでできることがバンドっていう答えに行きついたのか」
「そうだよ! 私たちみんな初心者だけどみんなとならなんでもできる気がするよ!」
なんかいつも行き当たりばったりで行動するやつらだったからあまり変わってなくてこちらまで微笑ましくなってしまうな。
「最初はね軽い気持ちでモカと私でひーちゃんバンドなんて言ってたら……つぐが『部活とかで忙しいかもしれないけどみんなで一緒に何かやったら蘭と一緒の時間増えるよね!』って言ってくれてさ!」
「へーよかったな、またみんなでいろいろできて」
「うんっ! それでねそれでね! ギターボーカルが蘭でーギターがモカでしょー巴がドラムやるって言っててーつぐがキーボード!」
蘭ってば一人で歌詞書いてたんだよ、すごいよね! とか巴って商店街で太鼓叩いたりしてるでしょ! とかつぐは昔ピアノやってたしキーボードぴったりだよね! なんて言ってた。
ひとりひとり幼馴染の名前を挙げていき担当楽器を説明してくれたひまり。
「へぇ、じゃあ余ったお前はベースってことか」
「余ってないよっ! ちゃんとみんなと話し合って決めたんだよ!」
そう言っているので今日のところはそういうことにしておいてやろう。
先ほど挙がったいつものメンバーはひまりだけでなく俺とも幼馴染だ。
小学校までは6人全員クラスが同じでいつも6人でいることのほうが多かったが、中学生になった今は家が隣のひまりとしか喋っていない。
まず最初にギター&ボーカルをやると言っていた美竹 蘭。
彼女は100年以上も歴史のある華道の家元の一人娘に生まれた子で跡継ぎを期待されているが本人はさらさらそんなつもりはないらしい。学校をさぼっていた時期も父親と一悶着会ったらしいが何とかなったみたいだ。時折照れる姿がとてもかわいい。
続いてギターの青葉 モカ。
非常にマイペースな性格で蘭とモカは6人の中で一番仲がいい幼馴染といえるだろう。特に人の上げ足を取るのがうまく、よくほか4人をいじって遊んでいる節がある。
3人目は宇田川 巴。
彼女は他人を悪く言ったり恨むなど絶対しないやつだ。いわば姉御肌というやつでもしかしたら俺よりも男らしい一面があるかもしれない……
なんというか俺も見習っていきたいな。
4人目は羽沢 つぐみ。
彼女は普通の女の子といっても過言ではないほど突出したところは見られない。しかし彼女は人一倍努力家で前向きである。
俺たちは彼女の努力を一番近くで見ていたと言ってもいいだろう。他人が見て頑張りすぎないようにって言われているのを初めて見た人物でもある。
5人目の上原 ひまり。
先に言った通り可愛くて、とても真っ直ぐな女の子。
そして重要なのがこの女の子『上原ひまり』
――――どうやら俺はコイツに恋をしているみたいだ。
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この恋に気づいたのは中学へ進学してひまりがバンドを始めると聞いてからのことで、いつから好きになったのかはわからない。それが小学生の時なのかそれとも中学で離ればなれの学校になったからなのか、はたまたひまりがバンドを始めると言った瞬間からなのか。
当時なにも熱中することがなかった俺にはベースを買って部屋で一生懸命苦労しながら弾いているひまりがあまりにも輝いていて眩しかった。ただただ真っすぐに突き進んでいるひまりに憧れていたんだ。
そんなひまりを2年間も指をしゃぶってみていた俺はある決心をした。
自分も何か熱中できることをしようと。
ひまりの一生懸命な背中を追いかけるように俺も何か始めようと思い高校進学とともにラグビーを始めた。
ほかにもボートや卓球、剣道に弓道初心者にできそうな様々な部活があったがラグビーを始めようとしたきっかけは、面白そうだったことが一つ。それとかっこよくなりたかったからだ。
中学の時俺をよく面倒見てくれていた先輩も同じ高校のラグビー部に所属していて中学の時とは見違えるほどがっしりとした体形、程よい筋肉質になっていて俺もそんな風になってみたいと思ってしまったのだ。
本心はもちろんムキムキになったらひまりが好きになってくれるだろう。とかいう安直な考えなんだが……
幸い俺の高校では経験者はおらず初心者ばかりなのでそういうところも理由にすんなりと入部することができた。
もちろん先輩も俺の入部を歓迎してくれた。
そしてこのラグビー部へ入部するときに俺は初めてひまりを頼った。
それまで俺がひまりの家に現れたことがなかったからか窓をたたいた時にカーテンを開いたひまりがお化けを見たような顔なのか不審者を見た時のような顔をされた。
一応なんとかその場を収めることができ、ひまりに相談を持ち掛けた。
相談したときはまだ体験入部の時で『えー! しゅうがラグビー!? 大丈夫なの? 吹っ飛ばされたりしない? 絶対痛いよー』
なんて馬鹿にされもしたがひまりは俺の不安にも真剣に答えてくれた。
今考えるとあれも心配してくれていたのかもしれない。
それから部活で心配になった『やっぱり俺身体細いし大丈夫かなぁ』なんて悩みを言えば『人一倍食べてほかの人より大きくなろうよ!』だとか、『しゅうならやれるよ!』
なんてひまりはどんなネガティブな俺の言葉も全部ポジティブに置き換えてくれて不安な俺を励ましてくれた。
この太陽のようなひまりの存在が俺を大きく変えてくれたんだ。
このとき俺もひまりを照らす太陽になろうと決心したんだ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
お楽しみいただけたでしょうか。
次話も楽しんでいただけると嬉しいです。
それではここらへんで失礼いたします。
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帰り道と幼馴染
――第2話、帰り道
キーンコーンカーンコーン
「じゃあ今日の学校はこれでおしまい。気を付けて帰るんだぞ」
放課後を知らせるチャイムとともに先生の帰りのあいさつが終わった。結構な時間ぺちゃくちゃ連絡やら世間話をながーく話していたがようやく家へ帰ることができる。
ん? 部活はどうしたんだって? 大丈夫、ラグビー部は毎週火曜日に部活が休みになっている。
基本的には日曜日に練習試合をして月曜日に筋力トレーニング、火曜日に筋肉または全身の疲れを取ろうという顧問の意向により毎週火曜日がラグビー部定期休みの日となっている。顧問は超回復がどうたらこうたらなんて言っていたが難しい話はわからないので右から左へ流しておいた。
さて、週に1度しかない休みの日なのでもちろん有意義に過ごしたい。
「じゃーなー」「また明日なー」
新しく高校でできた友人たちと一言二言かわし、その場で別れを告げ、帰りの支度をした。家に帰ったらラグビーの動画を見てタックルの勉強でもしようかな、とかそれとも今日新しく提出された宿題を早めに済ませておこうかな、なんて思っていると……
「あー! やっと来た! 一緒に帰ろーよ、しゅう!」
校門を出ると目にとまったのはひまりの制服姿だった。ひまりたち俺以外の幼馴染組は羽丘女子学園という女子校に通っている。
羽丘女子学園の制服の特徴はネクタイとスカートが緑の基調となっていてその上にブレザーを羽織るといった形になっている。
そんな制服姿で待っていたひまりを見たうちの学校の人たちは少しざわざわしていた。大方『彼女じゃない?』とか『リア充爆発しろ』とかいう言葉だろうな。残念だが彼女でもないしどちらかといえば俺も『リア充爆発しろ』側だ。
ただ一つよかったなと思ったのは夕日に照らされたひまりの姿がとてもきれいに見えたことだ。
いやもちろん可愛いのはいつもの事なのだがなんだか雰囲気と風になびく髪がひまりをより可愛く、美しくさせていた。
俺の胸がドキンと高鳴ったのが自分でも感じることができた。顔がどんどん赤くなっていくのも手に取るようにわかる。
「よ、よお。な、なんでひまりがここにいるんだ?」
動揺して声が上ずってしまった。
そして未だに抑えきれない胸の高鳴りと顔の赤らみを隠すように俺は下を向いてひまりに向けて喋った。
赤い顔なのはばれていないだろうか……とりあえずこのまま何事もなく時間が過ぎるのを祈るだけだ……
「いやーたまたまバンドの練習も部活も休みでさ!」
説明が遅れたがひまりはバンドだけでなくテニス部にも所属して掛け持ちをしている。
俺はラグビーと学校の勉強でいっぱいいっぱいだっていうのにひまりは部活にバンドに勉強、かなわないな……
まだまだ顔の照りが冷めそうにないので下を向いて待っているとひまりはそのまま続けて喋った。
「それでね! そういえばしゅうも火曜日休みだったなーって思いだして、待ってたら来るかなーって! ってどうしたの!? 下向いて……まさかお腹でも痛いの!?」
もちろんそんな俺の儚い祈りも届くことなく、ひまりは俺の気持ちも知らずに顔を覗き込むように聞いてくる。
また目の前にはひまりの顔があらわれて恥ずかしさのあまり紅潮してしまう。やっぱりこいつ空気読めねぇな……
「い、いや! 大丈夫! 大丈夫だからさ! 気にすんなよ! ほら、この通り!」
俺が慌てて顔をあげ体調の万全を報告するようにマッスルポーズをとるとなぜかひまりも急に慌てだした。
「えぇっ!? しゅう顔赤いじゃん! やっぱり全然大丈夫じゃないよ! 早く帰らなきゃ! 大丈夫? 歩ける?」
そういって俺を心配するひまりは手をとって帰り道を走り出す。
ひまりの手は俺のごつごつしたような怪我だらけの手とは全く違ってとても柔らかく、そして優しく包み込んでくれるようだった。
すらっと伸びてきめ細かやかな指。傷一つなくまさに女の子というのにふさわしい手。
そんな素晴らしい手に握られているとふと考えるだけでまた自然と顔が赤くなってしまう。
「わわっ! さっきよりまた赤くなってる! これはやばいかも……ちょっと熱測るね」
俺の顔がさっきよりも赤くなっていたらしくひまりは走るのをやめてそういってひまりが顔を近づけてくる。”まさか”とは思うがおでことおでこをくっつける熱の測り方なのか……? そんなマンガみたいなことあっていいのか?
俺が覚悟を決して目をつぶって待っているとひんやりとした感触がおでこに触れた。
ゆっくりと目を開けるともちろん”まさか”なんて起きているはずもなく、当たり前のようにひまりの手が俺のおでこに触れていた。
いや、もちろん好きな人の手がおでこに触れているだけでうれしい状況なんだが……
あ、いや期待してたわけじゃなくてだな……
「あっっっっっつーーーーーーい!!!!!!」
俺が必死に自分に問いかけていたら、ひまりが急に悲鳴を上げだした。俺のおでこがよほど熱かったらしく今も手をフーフー冷ましている。
嘘だろ!? って思って自分でも頭を触ってみるとそれはもうアツアツに熱された鉄板を触ったような熱さだった。
周りを歩いていた近所のおじいさんや犬の散歩をしていた人は一体何が起こったのか言わんばかりの表情でとこちらを見ている。まさか赤の他人にまで俺の紅潮した顔を見られるなんて……今後生きていけないかもしれない。
っとそんなことよりひまりがすごい悲鳴を上げていたからこんなことになったんだった。
「ひまり、大丈夫か……?」
「うぅー……だ、大丈夫なんだけど、しゅうはなんでこんなに熱くなるまで頑張ってたの? とりあえずすぐ家帰るよ! 看病してあげるから!」
そういってひまりはまた俺の手をぎゅっと握って走り出す。
俺の通っている高校は家からそれほど遠い距離ではないのですぐに到着するのだが、俺はまだまだこの幸せな時間をもっと過ごしていたいと思ってしまった。俺の手を引くひまりをそのまま立ち止まり引きとめた。
「ひまり! 俺の顔は熱いけど、風邪はひいてないから! この通りピンピンだからさ! ほら、その……ゆっくり帰らないか?」
顔は熱いのに風邪はひいてないって事情を知らない人からすれば何を言っているかわからないとは思う。
けどこの幸せな時間を長くするためにはこれしかなくて、これくらいしか言えなくて。我ながら強引だとは思ったけど動揺してた中で考え付いた言い訳はこれが限界だった。
「そ、そうなの? しゅうがそういうならいいんだけど……じゃあゆっくり歩いて帰ろっか!」
案の定ひまりは困惑してたが一緒に帰る時間を延ばすことに成功することはできたのでよかった。
少し歩くと手が少しじわっと汗をかいているような気がして、なんでだろうと思っているとふと手のほうへめをおとすとまだつないだままの手を目で確認できた。なんだかいい匂いが近くからすると思ったら、こういうことだったのか。
「で……ひまり、この手どうしようか……」
「あわわわわっ! ごめん! いやだったよね! すぐ離すから!」
俺が手を胸のところらへんまでもっていきどうしようかひまりに尋ねるとひまりも慌てて手を振りほどいた。
ひまりの手の感触がとても名残惜しく感じてしまい、言わずに家までこのままずっと手をつないでいればよかったなと思った。手もつないでいればさっきも言ったようにお互いの距離やにおいも近いわけで、手を振りほどいたひまりの顔がとても近くにあった。お互い一瞬目が合ったがすぐにそらしてしまった。後から考えたら俺は汗臭くなったかなと考えたりもしたけどその時はそんなこと考える余裕もなくて、ひまりからするいい匂いを何とか感じたりチラッとだけひまりの顔を見るので精いっぱいだった。チラッとひまりのほうを見たときひまりはなぜだか頬を赤く染めていた。
「なんかひまりも顔赤いけど大丈夫か?」
「……」
返事がないな……もしかしてひまりも急に風邪でもひいたのか? いやこんな短期間で風邪なんてひくわけないか、夕日にでも照らされて顔が赤く見えたんだろう。
「ひまり? ひまり!!」
「は、はいっ!!!! あ、しゅうどうかした?」
俺がちょっと声を大きくしてひまり呼ぶとようやくひまりが反応してくれた。授業中に寝ていて先生に起こされたくらいにいい返事だった。
「どうかした? じゃねぇよ、何度呼んでも返事がないから……大丈夫か? ひまりも疲れてないか?」
「う、うん! 大丈夫だよ! なんともないよ! あ、あははー……」
何でもないと本人は言ってるがどうも大丈夫そうには見えない。ただ俺もさっき同じ状況だったのでそのままひまりに対して何もできなかった。
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そのまま無言の状態が10分ほど続き結局何もできないまま家の前まで来てしまった。
いや、無言というのは正確ではなくて会話という会話をすることができなかった。
会話がない状態から俺が勇気を振り絞って『最近バンドどうなんだ?』って聞けば、『うん! 普通だよっ!』とか逆にひまりのほうから『しゅう部活楽しい?』なんて聞かれても変に意識してしまって『おう、楽しいぞ』とか一言二言で終わる会話ばかりで話を広げられなかった。
無言の時も俺はどうにか会話できないかとか、さっきの会話をまた持ち出したら変に思われてしまうかな、なんて考えていたらいつの間にかお互いの家についてしまった。ということだ。
「さて、家に着いたし今日はここでお別れだな」
俺がひまりと別れを告げようとするとひまりは何か不思議なものを見るような顔でこちらをみつめた。
「んー……ほんとに看病しなくて大丈夫? しゅうのおでこ、感じたことのない熱さだったけど……」
また校門での出来事が思い出されて顔が赤くなってしまいそうだったのでなんとか抑え込んだ。
「だから大丈夫だって言ってるだろ? 心配するなって。それよりひまりも手は大丈夫か? やけどとかしてないか?」
俺が心配するとひまりはニコッと笑ってみせた。
「うんっ! 大丈夫だよ! なんかあんなに熱かったのになんともないし!」
よかった、なんともないらしい。自分も確かに触って熱かったはずなのになんともなかった。
「じゃあここでお別れだな、バンドに勉強にいろいろと頑張れよ。また一緒に帰ろうな、ひまり。」
「うんっ! しゅうもほかの部員の人に負けないようにラグビー頑張るんだよ! 私にいつかかっこいい姿見せてよねっ! バイバイ!」
かっこいい姿をいつか見せてなんていわれてまた心臓がドキッと鳴った。今日だけでひまりは何回ドキッとさせるつもりなのだろう。やはり空気が読めないらしい。
とりあえずその場でひまりに手を振り、家に入っていくのを見送った後俺は一目散に家へと入り自分のベッドへと飛び込んだ。枕に顔をうずめて足をバタバタさせていた。
これで俄然ひまりにかっこいいところをみせてやろうと決心が固まった。明日からめちゃくちゃ頑張ろう。
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どうやらベッドに飛び込んだまま寝てしまっていたらしい。日頃の疲れだろうか、結構な時間寝てしまっていたみたいだ。
まだまだ眠かったので今日の晩御飯は諦めてもう一度寝ようかなとベッドに身体を預けるとなにやらベンベンベンベン……と微かに音が聞こえた。
この音には聴き覚えがあった。ひまりのベースの音だ。
俺はベッドから降りて立ち上がり、窓からひまりの部屋を覗くとベースと楽譜と必死ににらめっこをしているひまりが見えた。
なんだかこうしてひまりを見ているといつも自分がみじめに感じてしまう。
明日から頑張ろうと決心して満足していた自分がとても恥ずかしいからだ。明日の部活から真剣にやろう。明日の学校の授業から真剣に受けよう。もちろんそう思うことは大切だ。しかし、行動に移さなければ何も意味がない。思うだけなら幼稚園児でもできるからだ。俺は行動に移すことなくひまりは行動に移している。
ひまりは今の状況に満足することなく先を見て歩き続けているのに俺は休みだからと言って気を抜いていた。
ひまりは休みの日を生かしてベースの練習をしている。俺は相当な時間寝ていた。
もしひまりが家に帰った時点でベースの練習をしていたとしたら、どんどんひまりは歩き続けて遠く離されていることになる。
そんなひまりに追いついてひまりの隣を歩いてかっこいいところを見せてやろうとなんて甘い考えだ。
そう思った俺はベースを弾いているひまりを見た後にリビングへ降りて遅めの夕食を取った後に筋トレをするのだった……。
「俺は絶対お前のそばでそのベースを聴いてやるからな……」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
第2話も楽しんでいただけたなら幸いです。
感想や評価もお待ちしております!
それでは次話でお会いしましょう。
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チョコレートと幼馴染
普段はこんなに更新早くないのであまり期待せずにこれからもお待ちください。
それではどうぞ。
――第3話チョコレートと幼馴染
俺にはこの世の中で愛してやまないものが二つある。
一つはチョコレート、チョコレートを知らない人はいないと言ってもいいほど多くの人に人気の食べ物だ。
俺がチョコレートを愛してやまない理由はポキッと音を立てチョコレートが割れる瞬間がなんとも言えないくらいに好きだからだ。
理由はもちろんそれだけではなく子供にも大人にも親しまれている甘いミルクチョコレート、子供には味わえない気品高くふくよかで奥深く、大人っぽいビターチョコレート。などいろいろなチョコレートがあることだ。その数あるチョコの中でも俺が一番好きなのがホワイトチョコレート。
大人になったら上質のカカオで作られたチョコレートを専門店で買い、お酒やコーヒーや紅茶に合わせて少しずつ味わう。という夢をひそかに持っている。
そしてもう一つ大好きなもの――――
もちろんご存知の通り幼馴染のひまりだ。
”もの”という括りにしてしまうと失礼な気もするがまぁ許してほしい。
ひまりに関して言えばこちらが勝手に好きになっているだけなので、ひまりは俺の事どう思っているのだろうか毎日頭を悩ます日々が最近続いている。
ついこの間一緒に下校したときも全然うまくしゃべれなかったし……
まぁそれはさておきだな、実はひまりも俺と同様にチョコレートが大好きで昔はよく一緒にコンビニに出た新作のチョコレートを食べ比べしたものだ。
チョコレートに関してはひまりとよくケンカをすることが多い。なぜかというと俺はホワイトチョコレートが好きなのだが、ひまりはミルクチョコレートが好きだからだ。
有名どころのチョコレートはもちろん、これはミルクチョコのほうがおいしいホワイトチョコのほうがおいしいだの不毛な議論を幼少期から続けている。
逆にミルクチョコレートしか出ていない商品であったりホワイトチョコレートしか出ていない商品であればお互い意見が一致してそれはもう兄妹のように仲良くなる。
残念ながらホワイトチョコのみのチョコはないのだが……
――そして今現在ひまりと俺は絶賛喧嘩中なのだ。
理由はもちろんミルクチョコのほうがおいしいかホワイトチョコがおいしいか、ということだ。
しかし今回ばかりはいつもと違って俺がミルクチョコ派ひまりがホワイトチョコ派に分かれてしまっている。
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――遡ること1時間前。
俺がパソコンで某動画サイトでラグビーの動画を見ているときの事だった。
いつものようにひまりが俺の部屋の窓をドンドン叩くところから始まった。
またか……と思いつつもいつも通りカーテンを開くと手にチョコレートをもって満面の笑みでこちらを見てくるひまりがいた。
これにはさすがの俺も反応してしまい、窓をすぐさま開けてひまりを招き入れた。
「じゃーん! コンビニで新作売ってたからしゅうと食べようと思って買ってきたよ!」
ひまりが買ってきたのはチョコをしみこませた焼き菓子にさらにチョコレートをコーティングした新作お菓子だった。
そのお菓子がミルクチョコのコーティングとホワイトチョコのコーティングされたものだったのがケンカのすべての元凶だ。
もちろんひまりは「しゅうはホワイトチョコのほうが好きだし一応二つ買ってきたよ! 食べ比べしようよ!」なんて俺を思って買ってきてくれているのだが……。
食べ比べをすればもちろんこっちのチョコのほうがおいしい、なんていう感想にもなるわけで……。
俺もひまりが食べ比べって言った時点で断ればいいのだが、可愛い幼馴染の提案とあらば聞かないわけにもいかないし、せっかく持ってきてくれたのに俺はどうせケンカするからいやだなんてもちろん言えるはずもなく結局そのまま興味本位で食べてしまうのだ。
二つの種類のチョコをお互い吟味して同じタイミングである言葉を口にする。
「今回のはミルクチョコのほうがおいしいな!」
「ホワイトチョコのほうがおいしいね!」
おや、おかしいな……意見が一致しなかった気がするのだが。気のせいだとは思うが一応ひまりに確認を取ってみる。
「ん? ひまり今なんて言った?」
「しゅうのほうこそ、もちろんホワイトチョコのほうがおいしいって言ったよね?」
気のせいではなかったようだ。ひまりはなんとミルクチョコではなくホワイトチョコのほうを取ったらしい。
「いやホワイトチョコの訳ないだろ、このシリーズのチョコレートはミルクチョコのほうがおいしいぞ!」
「しゅういつもホワイトチョコのほうがおいしいっていうじゃん! なんで今回に限ってミルクチョコのほうがおいしいっていうの!」
実は今回俺がミルクチョコのほうがおいしいって言ったのには理由があって、ひまりに合わせてミルクチョコのほうがおいしいといったのだ。
しかしまさかひまりがホワイトチョコのほうがおいしいというとは思わなかった……計算外だ。
「いや俺はいつもおいしいと思っているほうを言ってるだけだぞ? というかそれを言ったらひまりだって一緒だろうが!」
「うぅ……そ、それはホワイトチョコのほうがおいしかったからだよ! 私はちゃんと両方味わったうえで言ってるからね!」
「俺だってそうだわ! 結論でミルクチョコにたどり着くだけだからな!」
「なにをー!!!!」
「むー!!!!!!」
このままお互い一歩も引くことなく意見を譲らないまま時間だけが過ぎていった。
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今冷静になって考えたら子のケンカは不毛で何ともばかばかしいのだろうといつも思う。
気づいたころにはひまりは頬を膨らませぷいっとそっぽを向いているし、いつも収拾がつかない状態になってしまっている。
しかし頬を膨らませ拗ねているひまりも可愛いな……これからもこんなくだらない喧嘩をするのもいいかもしれないな。
ってそういうことじゃなくて何とかひまりの機嫌を直さないと。
「まったく……しゅうはなにもわかってないんだから」
なんてひまりがぶつぶつ言っていたがなんのこっちゃわからないので無視しておいた。
「あれ、もうなくなったのか」
お互い終始無言のまま広げられたチョコレートを食べていたが先になくなったのはホワイトチョコレートのほうだった。
先ほどミルクチョコのほうがおいしいと言った俺だったが本心はもちろんホワイトのほうなので無意識のうちにホワイトチョコのほうばかり食べてしまっていたらしい。
「あれ~? しゅうミルクチョコこんなに余ってるのにホワイトチョコなくなるの早くない? さっきミルクチョコのほうがおいしいって言ってたよね? しゅうのお口は正直みたいだね♪」
ひまりがニヤニヤしながらこちらを見て言ってくる。なんとも憎たらしい。タックルでもしてやろうか。
「お、俺は好きなものは最後まで取っておく主義なんだよ!」
「うっそだー! 私しゅうはいつも好きなものからバクバク食べて嫌いなものはいつまでも残してるの知ってるんだからね!!」
すべてひまりの言ったとおり、好きなものを最後まで残しておくなんて嘘。どうやら幼馴染に嘘は通用しないらしい。何年も一緒にいるんだし、当たり前か。
そんなこといったら俺がホワイトチョコよりミルクチョコのほうがおいしいって言った時も見抜けるだろって思うだろうがそういうとこはちゃっかりぬけてるんだよな、ひまりは。
まぁ、そんなところも可愛いところなんだけど……。
「ぐっ、なんで知ってるんだ。そうだよ、ホワイとチョコのほうがおいしいと思ったよ!」
「それはもちろん幼馴染だからねっ! もー何年一緒にいると思ってるのさー素直じゃないんだからー」
俺の質問にひまりは腰に手をあててエッヘンとでも言いたそうに自慢げな態度をとる。
いやその格好されるとふくよかな……胸が……強調されてだな……俺の理性が持たないのだ。つい胸をツンとしてみたくなる衝動に駆られた指を構えたところでなんとか抑え込んだ。
というか今思ったんだが実際ひまりって高1のバストサイズじゃないよな? 誰だこんなにふくよかに育てやがって! ありがとうございます!
「? しゅうどうしたの? いきなり両手人差し指出したりしたと思ったら今度はひっこめたり」
「ああ、いやなんでもないんだ。ナンデモ」
俺がそういうとひまりは怪訝そうな顔をしてこちらを見てくる、いや、近い近い。
「ほんとになんにもないのー? ほらー幼馴染なんだし何でも言ってみなよー!」
ひまり胸のサイズいくつなんだ? なんて言っていいものなんだろうか……。まぁひまりもなんでも言っていいって言ったし、俺に責任はないよな。
「なぁ、ひまり」
「ん? なーに? しゅう」
「あーその、非常に言いにくいんだけど」
俺が言うのをためらうとひまりはまだか、まだかとバタバタし始める。
「もー! 早く言ってよしゅう! 気になるじゃん!」
「あー! もう! わかった、いうぞ?」
「うんうんっ! はやくはやく!」
ひまりはまさに餌を待てと言われている犬のように今か今かと待っている。
そんな顔をされると今からくだらないことを言うのになんだか申し訳ない気持ちになるからさらに言いにくいんだが……。
まぁいい俺も男だ、腹を括って言うか。
「ひまりの胸って大きいよな? 何カップあるんだ?」
「……………………………」
辺りを流れる静寂俺が言葉を放った瞬間にお互い沈黙が生まれた。死ぬほど気まずい。というか聞いてしまった事実を今すぐにでも消し去りたい。
あぁなんでこんなこと聞いてしまったんだ……別にひまりの胸について考えていたってほかのことを質問すればこの場は何とか収められたはずなのに……。
「ア、アハハー。あ! 私宿題思い出したから帰るね! バイバイしゅう!」
そういって立ち上がって帰ろうとするひまり。もうすでに窓に手をかけて開けようとしていた。この場でひまりを帰らせたら今後一切口をきけなくなる気がしてならない、俺の本能がそういっているのだ。逃がさないぞひまり。
「ちょっと待てよひまり! ひまりが何でも聞けって言ったんだぞ! 俺は何にも悪くない!」
俺はひまりが逃げ出さないようにがっしりとしがみつき言った。ひまりはもう窓を開け外に出ようとしていたところだったが間一髪で捕まえた。
「うぅー私はかえって宿題するのー! しゅう離してよー!」
「離すわけないだろ! ほら! チョコもまだ残ってるし食べきらないと!」
「それ全部あげるから! 私もうお腹いっぱいだから!」
そんな問答を数回繰り返したところでひまりが急に「そうだ! 押してダメなら引いてみろだよ!」と言い出し力を抜いた。
もちろん俺が引っ張っている状態ひまりが前に進んでいる状態でとれていた力のバランスは後ろだけにかかることになるので、俺たちはそのまま後ろへと倒れた。
ドシーーーーーーーン
「グエッ」
大きな音を立てて地面へ俺の身体は打ち付けられた。2人とも仰向けに倒れたのが幸いしたのか俺が下敷きとなり、ひまりが地面へ身体を打ち付けることはなかった。
「イタタ……ってしゅう! しゅう! 大丈夫!?」
ひまりのお尻がおなかに、背中が顔面を直撃し頭はもちろん地面に強く打ち付けた。俺はそのまま静かに意識を手放した。最後に聞けた声が幼馴染の声でよかった……。
「って気なんて失ってないでしょ!」
ピシッとおでこをひまりにたたかれて再び俺は現実へと帰ってきた。
「いてぇな、何すんだよ」
「元はと言えばしゅうがホワイトチョコのほうがおいしいのにミルクチョコがおいしいって言ったり私の胸の大きさ聴いてきたリ……」
恥じらいからか後半はあまり聞こえるような声で言わなかったが大体想像はついた。
「とりあえず今回は全部聞かなかったことにしてあげるから次回から気を付けてよねっ!」
どうやら今回の件いろいろと許してくれるらしい、ケンカもしたが仲直りができてよかった。
そういえば聞いてなかったことがあったな……
「おう、気を付けるわ。で、ひまりの胸の大きさは……」
バッッッッッッッシーーーン!!!!!!!
「しゅうのバカ! もう知らない!」
俺が事を言いきる前に頬に雷が落ちたかのようなビンタを喰らった。このあと3日間頬のもみじ跡が消えることはなく俺はもうひまりの前で胸の話はよそうと決心した日だった……。
みなさんはミルクチョコ、ホワイトチョコ、ビターチョコどれが好きですか?
私はひまりちゃんが好きです。
それでは次話でお会いしましょう。
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