ペルソナ3×仮面ライダーエグゼイド【ゲンムがほぼメイン】 (K氏)
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嘘予告
ペルソナ3:E/X【嘘予告】


 そうです。私が嘘予告量産おじさんです。

 おじさん↑だとふざけんじゃねぇよオラァ!(精神不安定)


――ネットワークの深奥には、触れてはならない禁忌に触れ封印された、禁断のゲームデータがあるという。

 

 仮面ライダークロニクル事件。檀正宗が起こした未曾有のパンデミックが終焉を迎えて間もなく。

 事件は、檀黎斗が次なるゲームの作成の参考とする為、そのデータの海からあるゲームのデータをサルベージし、それをガシャットとして起動した事から始まる。

 

「おい、檀黎斗。こいつは一体どういう事だ?」

「まーたやらかしやがったのか」

「五月蠅いッ! このような事態は私も想定外だッ!」

 

――突如として訪れる、深夜十二時の怪異。ライダー達やバグスターを除き、全ての人間が棺桶のオブジェと化す現象。

 そして、その時間だけに現れる、バグスターとは似て非なる怪物達に、ドクター達は苦戦を強いられる。

 

「倒せなくはないんだ……がッ!」

「チィ、倒しても倒してもキリがねぇ!」

 

 この異常事態を解決する為に、仮面ライダーエグゼイド――宝条永夢は、もう一人の自分とでも呼ぶべきバグスター――パラドと共に、原因となったゲームの攻略に挑む。

 

「ゲームの名前は――『ペルソナ3』。詳細までは分からなかったが……『滅びに向かうゲーム』、だそうだ」

「心配はいらないさ。俺達のキョウリョクプレーで、あっという間にクリアしてやるよ。なぁ、永夢?」

「ああ。……僕達が攻略してる間、こっちの事は任せましたよ、黎斗さん」

「檀黎斗・神だァ! ……だが、いいだろう。可能な限り、こちらからサポートしようじゃないかァ……神の恵みをありがたく受け取れェァア!」

「じゃ、行ってくるね、ポッピー」

「行ってらっしゃい、永夢」

「無視ィッ!?」

 

 『ペルソナ3』のゲーム世界へと突入した天才ゲーマーを待ち受けていたのは、そのゲーム世界を支配する法則。そして――

 

「――ッ!? マイティアクションXしかない!?」

「俺のガシャットも無いな……恐らく、この世界のどこかにあるんだろうぜ」

「つまり、正真正銘のニューゲームって事か」

「はっ、いいね。心が躍るなぁ……!」

 

 その世界の主人公として呼び出された永夢の役割は、なんと高校生。

 

「待っていたよ。そこに署名を」

「君は……?」

(コイツ……妙な気配をしてやがる……凄く身近な……なんだこの違和感は?)

 

 永夢を待っていたという、囚人服の少年。

 

「君が、今日来る予定の転校生か」

「あっ、はい。宝条永夢、です。コンゴトモヨロシク……」

 

(おい、永夢。なんだよ今の挨拶)

「い、いやぁ……なんでかこういう風に挨拶しないといけない気がして……」

「ねぇ、ちょっと? 一人で何呟いてるの?」

「へ? ……あ、あぁ、ごめんね岳羽さ……うわぁ!?」

「え、えぇ!? 階段でこけた!? ちょ、大丈夫?」

「う、うん。平気平気……」

 

「よっすよっす。俺ッチ、伊織順平! 迷える転校生を案内する親切なイケメンさ! 気軽に順平って呼んでくれよな!」

「あ、どうも。宝条永夢です」

「うぉ、ゆかりっちと違ってツッコミもなくノーリアクション……逆に凹むわ」

 

 数多の出会い。交流。そして――

 

「これって、最初にやってきた時もなってた……」

(ほぅ、でけぇのが外にいやがんな)

「宝条君! 逃げるよ!」

「多分そのデカいのを攻略すれば――へ?」

 

「き、来た……シャドウ……!」

「シャドウ?」

(それより永夢。分かるか)

「ああ。……アイツのあの腕、ゲキトツロボッツの……」

 

 『仮面ライダー』そのものが存在しない世界の人類の脅威、『シャドウ』。それに立ち向かえる力は、人間の心の仮面の力のみ……そう、本来ならば。

 

「む、無茶よ宝条君! 召喚器も使わずに!」

「もしかして、この銃の事? 駄目だよ岳羽さん、自分の命は大切にしなきゃ」

「え? え、えと、そういうのじゃなくて……」

「それに――大丈夫」

「……え」

 

 召喚器を用いた、死を意識する事による力――『ペルソナ』の具現。それこそが本来の筋書きであり、シャドウに対抗するにはそれしかなかった。

 だが、彼は、彼の中のバグスターは違う。長きに渡る戦いで死の恐怖と向き合い、命と向き合い、その大切さを知る彼らは。

 

「君の命は、僕が救う。――さぁ、行こうぜ、パラド」

(ようやくか。待ちくたびれたぜ、永夢!)

 

――MIGHTY ACTION X!

 

「べ、ベルトに……ゲーム? あれ、ゲームなの? よくわかんないけど……」

 

「あれは……見たところ召喚器の類ではなさそうだが……」

「ほう。あの機械、影時間に適応しているのか」

「理事長……?」

 

 彼は、変身するのだ。人類の自由と平和を守る者に。ゲームの力で戦う、最強のドクターに。

 

「――変身ッ!」

 

――ガシャット! レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?

 

「……何あれ、四等身? ゆるキャラ?」

 

――アイム ア カメンライダー!

 

「更に……大・変・身!」

 

――ガッチャーン! LEVEL UP! マイティジャンプ! マイティキック! マイティマイティアクション、X!

 

「こ、今度はスマートになった!?」

「――ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!」

 

 ペルソナとは異なる仮面ライダーの力で、永夢はシャドウに立ち向かう。

 その戦いもまた、今までと同様に死の気配が纏わりつく。だが、戦えるのは永夢を含め、力に目覚めた少年少女だけ。

 

「ここが、タルタロス……塔のダンジョンか」

「ああ。ここはシャドウの巣窟でな。だが、この塔を登っていけば、この影時間の事が何かわかるかもしれない。どうだ、中々楽しそうだろ?」

「す、すっげぇ! よぅし、男、伊織順平! 張り切ってリーダーとして「待った」……え?」

「順平君。分かってるのかい? これは、遊びなんかじゃない。命がかかってる遊びなんて、遊びじゃない。遊び感覚で挑めるような場所じゃないのが、分からないのかい?」

「お、おいおい、永夢ぅ。そんな脅かそうったってそうは――」

「僕は真剣に言ってるんだ! ……誰の犠牲も、出したくないんだ」

「宝条君……」

 

 命の重みを知る者と、未だ知らぬ者。それが生む確執。

 

「なんだよ……お前はいいよなぁ! あんな風にカッコ良く変身できちゃってさぁ! オマケにリーダーもこなせて!」

「順平君、僕は……」

「うるせぇんだよぉ!」

 

「桐条さん。僕は、慎重すぎるんでしょうか?」

「……君がどんな経験をしてきたのかまでは、分からない。だが……そうだな。君は、間違ってなんていない。だが、()()()()()()()そんな命を懸けるような経験はしない。我々の活動が、特殊過ぎるだけなんだ」

 

「どうしたどうした、宝条! 戦いであれ程動けるんだ。こっちでも、動けるん、だろう!?」

「うわ、ちょっ、待ってください、よぉ! 真田さん!」

 

「……シャドウとの戦いでも思ってたんだけどさ」

「おう」

「こういうのもなんか悪いけど……彼、変身してないと逆にフツーに弱いってか……ドジ?」

「だよなぁ」

 

 青春と戦い。その日々の積み重ねは、最初は希薄だった永夢と仲間達の繋がりを強くしていく。それはまるで、かつての戦いのように。

 

「貴方は……そうですか。貴方が」

「えっと……君は?」

「私は、対シャドウ用特別制圧兵装七式、アイギスです。貴方が、代行者なのですね?」

「代行者?」

 

 謎めいた機械の乙女、アイギスとの出会い。

 

「分かりませんね。何故、影時間を消そうとするのです?」

「ホンマやで。折角の力が失われてもええんか?」

「ペルソナが、失われる……?」

「――アイツの口車に乗せられちゃいけません」

「え、永夢……」

「では貴方は、力を失う事があってもいいと? ……まぁ、どうも貴方の力はペルソナとは異なる、道具を用いたモノですし、消える事は――」

「消えるかどうかなんて、そんなの関係ない」

「……ほう?」

「少なくとも――命が失われるよりは、誰かの笑顔が理不尽に奪われるよりかは、遥かにいい」

「ったく、交渉不成立やな。しょーもない」

「貴方達こそ、命をなんだと思ってるんですか!」

 

 初めて出会う、敵のペルソナ使い。復讐代行として人を殺す者達――『ストレガ』との邂逅。

 

「僕は、見たんです……あの人が、僕の母さんを」

「きっと、何か理由があるんだよ。それが分からないと――」

「じゃあなんですかッ!? 母さんを殺したアイツを、のうのうと生かしてて良いって言うんですか!?」

「……少なくとも、生きて罪を償わせる事はできる。いいかい、天田君。死んだ人の事を想うのはいい。けれど復讐は、どこまで行っても自分の満足の為でしかないんだ」

「自分の……満足」

 

「何やってるんですか、荒垣さん! その薬は一体!?」

「……チッ、何でも」

「無いとは言わせませんよ! ……まさか、以前ペルソナが暴走した事と何か関係が?」

「関係ねぇよ、お前には」

「いいえ。あります。僕らは仲間だ。そして僕は――ドクターを志す者として、今の貴方を放っておく事なんてできない」

「お前……」

 

 時には、子供と大人の狭間にある多感な時期を生きる少年少女の抱える、苦しみ、悩み、痛み。それらに『大人のドクター』として向き合い――

 

「っつぁー! つぇぇなぁ宝条!」

「俺はゲームには自信があるからな。天才ゲーマー舐めんなよ」

「それ自称すんのか……ってか、あれ、なんか性格変わってね?」

「気にすんなって! あ、それと俺の事は永夢でいいぜ、友近!」

「ま、いいか! じゃあそう呼ばせてもらうぜ、永夢!」

 

「あら、またきたのね宝条クン……どしたの一体?」

「あ、いや。やっぱり僕の知ってる社長とは違って、まともだなぁと」

「アンタの知ってる社長はどんな奴だったのよ」

「えーと……自称神だとか、極悪非道な奴とか」

「それホントに社長なの?」

 

――時には、『今時の高校生』として、様々な出会いを通じて青春を味わったりした。

 

『敵、大型シャドウ……来ます!』

「クッ、この力……まさかマイティブラザーズXX!?」

(この調子だと、マキシマムマイティXとハイパームテキを取り込んだシャドウも出てくる、なーんてな)

「パラド、それフラグだから!」

 

 そして、深夜の戦いの中で、エグゼイドとしての力も徐々に取り戻していく。

 

「ん?」

(どうした、永夢?)

「……いや、さっき変なビジョンが見えて……僕がやってきた事を、別の誰かがやってる、そんなイメージが……」

 

 その旅が進むにつれて、脳裏を過る謎の少年のビジョン。

 

「ご無沙汰しております、代行者様」

「……あの、前々から聞きたかったんですが、その代行者っていうのは一体……?」

「……なるほど。存じ上げない、と。失礼しました、宝条永夢様。先程の発言はお忘れになって」

「いやいや、それじゃ誤魔化されませんよ?」

「くっ、かくなる上はこの偶然拾ったアイテムのマキシマムでハイパーでムテキでゴージャスなパワーで……」

「ゴージャス? ……って、それ僕のガシャット!?」

(永夢、気をつけろ。コイツ、今までの奴らと格が違う)

「あら、貴方様のペルソナとも呼ぶべき方は、私がどのような存在かお分かりなのでしょうか」

「――ッ!? この人、パラドの存在が分かるのか!?」

「それでは改めまして。わたくし、ベルベットルームにてエレベーターガールを務めております、エリザベスと申します」

 

「ここは……?」

「ようやく来られましたな、代行人の方。ようこそ、我がベルベットルームへ」

「!? 鼻の長いお爺さん!?」

「ほっほっほ、驚かれるのも無理はありませんな。しかし、敵ではない事だけは断言させていただきます」

「……根拠は?」

「貴方様が、あの方の代行人であり……そして、『仮面ライダー』だからです」

「仮面ライダーを知ってるんですか!? それに、あの方って?」

「……私からお伝えできる事は一つ。貴方様には、この『世界』の運命を変える力がある。そう……本来存在するはずの、真なる終末(トゥルーエンディング)に辿り着く為の、ね。その為に、この世界の人々との絆を紡ぎなさい」

 

 そして、物質と精神、意識と無意識の狭間にある世界、『ベルベットルーム』で語られる、宝条永夢の真の役割。

 

「貴方様はかつての、あるいはこれから来られるであろうお客人のような契約者でも無ければ、旅人でもない。貴方様は既に旅を終えられた。されど、その旅の道に果てはない」

「……どこまで知ってるんですか」

「集合的無意識は、この世全ての生命の心と繋がっている。そこでは、世界の壁など意味を為さないのですよ」

 

 激化する戦いの中で、少年達は幾度となく命を散らしかける。その命を救うべく、永夢は奔走する。

 その必死な後ろ姿に、仲間の少年少女達は頼もしさを感じると共に、命の大切さを学んでいく。

 

――彼の立ち位置に、違和感を感じながら。

 

 そして、戦いは終焉へと向かう。そして明かされる、この世界の真実。そして、『ペルソナ3』の根源に潜むもの。

 

「世界の終わりを望んでいるのは、全ての生命の死を望んでいるのは他でもない! 人類自身なのですよッ!」

「だとしても! まだ俺は、俺達は諦めちゃいない!」

「フフ……絶対的な終わりに、抗えるとでも?」

「だったら、俺が変えてやるよ。このゲームをクリアして!」

 

『ようこそ。タルタロスの頂上へ。だが――嗚呼、残念だ。この物語のエンディングは既に決まっている。この世全ての命が、やがて『死』に辿り着く限りね』

「ち、ちっくしょぉ……!」

「これが、ニュクスの力だと……!」

「こんなの……圧倒的過ぎじゃない……!」

 

 『死』の概念そのものの具現。病を治す事はできても、生命がいずれ死に至るという事実までは変えられない。

 かつてはとある敵の不死性すら書き換えたリプログラミング、更には無敵の力すら、この敵の前には無力だった。

 

――この敵は、今までのどの敵よりも強い。クロノスよりも。ゲムデウスよりも。

 

「クッ……攻略、できないのか……!?」

「――諦めるなんて、白ける事するつもりないだろ? 永夢」

「ッ、パラド!?」

「え、誰!?」

『……やめておいた方がいい。もう一人の代行者。君が加わったところで、この事態は好転しない。それこそ、神の力でも借りない限りは――』

 

『ならば呼ばれてやろう。この神たる私がなァ!』

 

「って、この声、黎斗さん!?」

「驚いたか? いくらこの世界独自の法則で縛られてるっていっても、俺はバグスターだぜ? ……その代わり、体力使い過ぎちまったけどな」

 

 地獄に仏ならぬ、ゲーム世界に檀黎斗神。窮地に陥った永夢に託されたのは、この世界と永夢の世界を繋ぐ、無色のガシャット。

 

『そのガシャットの真の力を解放しろォ! 永夢ゥ!』

「……そうか、そういう事か! 見せてやるぜ、天才ゲーマーMの力を! そして、この世界で紡いできた絆の力を!」

『絆、だって? 君も知っているのだろう? この世界は……言ってしまえばゲームの世界なのだと』

「この世界が、ゲーム……」

「関係ない! 例えデータでも、彼らには心があるんだ! 死を望む願いも、今この瞬間を『生きたい』って願いも、心があるからできるんだ! だから!」

 

――MESSIAH OF UNIVERSE!

 

「その心を――この世界を守りたかった『彼』の願いを、否定させやしない!」

 

 永夢の叫びが、想いが仲間達に、そしてこの世界の人々に届く時、真なる救世主たる少年が目覚める。

 

『ありがとう。ここまで戦ってくれて。僕にはできなかった事を成し遂げてくれて』

「何水臭い事言ってんだよ。こうなったら、世界を越えた超キョウリョクプレーでクリアしようぜ!」

『……あぁ! 行こう!』

 

 そして生まれる、二つの世界を股に掛けたガシャット。その名は――

 

「――この世界の運命は、俺達が変える! ユニバァァァス! 大・変・身!」

 

 

――PERSONA3 E/X!

 

 

 公開未定!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか。檀黎斗があのデータ群からサルベージを……」

「はい。……ですが、他のゲームに関してはまだ触れられていないようです」

「構いません。確かにあのゲームもまた、封印されて然るべき強大な力を秘めていましたが――何も、あれ一つ無くてはいけない、という事ではありません。その他のサルベージ状況は?」

「『デビルサマナー』。『ペルソナ』シリーズの4、5。『デビルサバイバー』。そして『アバタールチューナー』がサルベージ完了。その内、後者の二つは、檀正宗からの技術提供もあり、既にガシャットとして作成済みです」

「ふむ。なら、次はテストプレイヤーが必要ですね。そちらは手配するとして……例のゲームは?」

「はっ、それがまだ……」

「……スティーブンめ。小癪な真似を。あのゲームのデータさえ入手できれば、あの仮面ライダー鎧武にすら匹敵しうる力が得られるはずだというのに」

「伝承の神格、悪魔の召喚。……今更なのですが、そのような事が本当に可能なのでしょうか?」

「そもそもそのような存在がこの世にいるのか。そう言いたいのでしょう?」

「ええ、まぁ」

「それも全て、必要なデータをサルベージし、ガシャットとして復元すればわかる事です。……ガイアメモリ部門の連中からメモリは借りられましたか?」

「……目的のメモリの4割は。しかし後のものは、そもそも入手自体が困難なようです」

「風都のライダーに悟られるな。それと、鴻上にもな。いざとなったら『誕生』というワードを使え、と、そう言っておきなさい」

「かしこまりました」

 

 

 

「いずれ、手に入れて見せますよ……女神転生。そして、その原初に当たるデジタルデビルサーガのデータを、ね」

 

 

 

――To be continued...?




 あくまでも(嘘)予告だからと解説不足気味だったり、クロスオーバーなのにバトルで活躍してるのが基本的に永夢だけになってしまっているのは私の責任だ。だが私は謝らない(KRSM)

 ちなみにアイギスは重要キャラとして書くつもりが、ちょっとミステリアスな感じな雰囲気出すだけだして後は空気気味になっちゃったのでここで捕捉させていただきますと、彼女だけは色々あってゲーム本編後の時間軸からやってきたからです。理由はまだない。


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【聖夜の嘘予告】ペルソナ3×仮面ライダーアマゾンズ


 よく来てくれた。まぁお茶でも飲んでいってくれ。

 うん。またなんだ。また嘘予告なんだ。

 ハイパー手抜きな最新話を書いてたら何故かデータが吹っ飛んだもんだから、カッとなって書いたんだ。本当に申し訳ない(博士並感)


 

――古代インカ文明研究の第一人者、山本氏は語る。

 

「現在のところ、インカ文明にはケチュア語という公用語は存在すれども、文字は存在しないというのが定説となっています。……が、同時にこのような説もある。『かつては文字を使っていたが、ある理由からそれを廃止した』、という説がね」

 

「私自身、後者の説に対しては何とも言えなかったのですが……しかし、最終的には信じるようになった」

 

「かつて、私が偶然にも遭難した南米アマゾンの奥地で、その裏付けとなり得るものを発見したのです」

 

「その文献……『秘すべき歴史書』を見せてくれた一族の長老は、その文献について私にこう教えてくれた」

 

「『そこに書かれている事は、紛れもなく真実である』、と。……最初はどういう意味かと思って読み進めて、そして更に首を傾げましたよ。何せそれは……歴史書と言うには不可解過ぎましたから」

 

「――何故? それはそうでしょう。ページを捲っていく内に、そこに書かれてあるものの内容が、どんどん現代を描いているようにしか見えなくなっていたんだから」

 

「勿論、問いかけましたよ。『これは預言書なのではないか』とね。そしたら、彼はこう言った。『いいや。紛れもなく歴史だ。人類が辿る歴史だ』と」

 

「その歴史が最終的にどうなったかは後で話すとして、私がまず気になったのは、書物の最初の方でした」

 

「存在しないとされた文字で書かれているものだから、長老の助けを借り、なんとか読み解く事が出来ました。そこにはこうあった」

 

――まだ、命に限りが無かった頃。空より来たる『母』は、この世全ての命に、『死』を与えた。その結果、命は生命となり、『死』への恐怖を抱き始めた。その恐怖は、生命を脅かす脅威を産み落とした。

 

――やがて、生命はそれに抗う術を編み出した。しかし、それは同時に、一つの更なる脅威をこの世に産み落とす事でもあった。

 

「私はね。この最初の部分が、最近起きている無気力症患者の増加と、不可解な死亡事件の数々。これらが何か関連があるのではないかと睨んでいるのですよ。――でしょうな。勿論、信じられるとは思いませんとも」

 

「私がその考えに至ったのは、さっき話したものの、その直後にあった」

 

――其は、『影』。光に照らされた心が生み出したもの。己の暗き姿にして、やがて己を蝕むものなり。

 

――其は、『仮面』。己を保つ為の理性の結晶にして、影より身を守る為の鎧なり。

 

――されど、仮面を産み落とすに相応しきは限られた者のみ。それでも抗わんとする者が辿り着くは、『本能』。ただ、『生きたい』という願いより生まれ出る、如何なる生命であれど抱える野性。

 

「……はっきり言って、確証と呼べる物は何もない。証拠を示せと言われても、無理な話だ。……だが、あの歴史書に描かれている事は、全てにおいて正確だった。人類がこれまでに辿ってきた歴史の、文明開化。そして、戦争。歴史の光と闇」

 

「大まかではあったが、世界規模のイベントは、ほぼ網羅していたんじゃないかと思う。そして……最後に書かれていたのは、『魂が死んだ人間』。『肉を獣に食いちぎられる人間』『絶望に暮れる人類』」

 

――『再訪せし母の愛』。世界の死。つまり、世界の滅亡ですよ。

 

 

 

 

「ハジメ、マシテ。僕、マコト、イイマス」

「すみません。兄は海外生活が長かったもので……私は妹の(はるか)って言います!」

「そうか。君達が山本教授の養子という……」

 

――月光館学園に転校してきた、不思議な双子。

 

「ね、ねぇ……その魚、どうしたの?」

「ゥ……と、トッテ、来た」

「……釣竿も使わず? 素潜りで?」

「わーッ!? ちょ、ちょっと(マコト)! そういう野生児っぽいのナシって言ってるでしょーッ!」

 

 妙に野生児染みた兄と、常識人の妹。

 しかし、自然と彼らは高校生として、次第に日常へと溶け込んでいく。

 

――影が蠢く夜を除いて。

 

「あれが……シャドウ!」

「ゥウ……ガァァ……!」

「――ッ! 駄目! 理! 自分を抑えて!」

 

 不気味に輝く満月が昇る時、それは目覚める。

 

『大型シャドウ』

『ペルソナ』

 

 そして――

 

『ZERO』

「ウォォォォ!!! アマゾンッッ!!!」

「ま、理、くん?」

 

 野性を剥き出しにした理が、『変身』する。

 『生きたい』という本能を、理性の仮面で抑えつけながら。

 

――仮面(ペルソナ)ライダーアマゾン・ゼロ。

 

 同時に襲い掛かる、シャドウとは異なる怪物。

 

「なん、なの、あれ……!」

「……アマゾン。ペルソナが人間の心の鎧を発現させたものとするならば、あれらは誰しもが持つ生存本能の具現であり、生命の進化形にして、人類から見れば退化したもの」

 

――アマゾン。変身した理と同じ名前を持ち、同時にシャドウと同様の分類が為される、生存本能の怪物。

 

 魔術師のシャドウと、アマゾンタイプ1『マジシャン』を退けた少年達は、桐条美鶴と幾月修司により、この世の真実を知らされる。

 

 シャドウは人の心を喰らい、その脅威に晒された人間が、稀にアマゾンを産み落とす。『敵』に囲まれたアマゾンは、本能的に生きようとするが故に、全てに牙を剥く。

 

「だが、これまでにペルソナ能力を発現させながらアマゾンになる、そんな人間は()()()()()()()確認されてない」

「それを可能とするのがその制御装置……ドライバーというわけか」

「ちょ、ちょっと待ってください。一例? それは一体……」

 

「……死にたくなけりゃ、大人しく帰れ」

 

 幾月修司らが語る、たった一例の男――荒垣真次郎。

 

「死ぬ気なんて、ありませんよ。先輩」

「……チッ。警告はしたぜ、俺はよ……」

『FIVE』

「……アマゾン」

 

――仮面ライダーアマゾン・ファイブ。

 

 常に暴走の危険を伴いながらアマゾンとシャドウを狩るのは、ひとえに贖罪の為。

 

「理解できませんね。彼は死に場所を求めている。だから、我々が提供しているのです」

「フ、ザケルナァァァ!!!」

「やれやれ、困った御方だ――」

『TEN』

「――アマゾン」

 

――そして、彼らの前に立ちはだかる、復讐代行者にして人工ペルソナ使いの集団、ストレガ。そのリーダーたる男、タカヤが変身する第三の仮面ライダー、アマゾン・テン。

 

 S.E.E.S.の少年少女達一人一人が抱えるもの。桐条グループ。エルゴ研。ストレガ。アマゾン。

 複雑に絡み合う人々の因縁と歪み、そして本能が、少年達の運命を翻弄する。

 

「お、俺はッ、死にたくねぇ!」

「俺は、弱い……ッ!」

「お父さん……どうして……?」

「アンタが母さんを!」

「ペルソナが無かったら、私は、一体……」

「分かっている。桐条の影の側面、そして闇と、いずれ向き合わねばならないと」

「いいんだ……これで……いい……」

「死なないでください! 先輩!!!」

 

 如何なる事象が起きようとも、時は残酷にも待たない。すべてを等しく、終わりへと運んでいく。

 先の見えない明日に、限りある未来に、そして今生きているこの瞬間に、少年達は何を見出すのか。

 

『ペルソナ』

『シャドウ』

『アマゾン』

『孤独』

『桐条グループ』

『人を守る理由』

『人工ペルソナ使い』

『人造アマゾン』

『古代インカの秘術』

『アマゾンタイプ13・デス』

『ギギ・ガガ』

『救世主』

 

『――分からないな。これ以上戦えば、君が傷つくだけだ。いや、傷つくだけじゃない。そのままだと、間違いなく死ぬ。それでも何故君は――』

「決マッテル! 俺、トモダチ、守ルッ! オォォォォォッッッ!!」

 

 命を懸けた戦いの中で、少年は迷いを断ち切(大切断)り、コンクリートジャングルを駆ける。

 

『UNIVERSE』

 

――大空に、荒波に、大風に聞け。彼の名は――

 

「アァァ! マァァ! ゾォォォォォンッッッ!!!」

 

 

 

 

――ペルソナ3 A to Z

 

 公開予定(今のところ)無し!



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ゲームマスター、キタローになる。
ゲームマスター、主人公になる。


 ああ、またなんだ。また嘘予告なんだ。

 正直色々とやりたい事尽くしなもので...ここは社長の大暴走でも見て、ゆっくりしていってね!(何様)


――十年前の深夜0時、ムーンライトブリッジ。

 

 本来なら今もなお車が行き交う静かな橋は、今や目も当てられない程の惨状と化していた。

 車は横転し、煙を吹き、酷いものは既に炎上してしまっている。

 

 一体、何故。誰がこんな事を。

 

 誰にもわからない。何故なら、それを目撃した者は、一人たりともいないのだから。

 

「……私、は」

 

――今しがた、車から這い出してきた少年を除いては。

 

「私はァ……不滅だァァァ!!!」

 

 ボロボロの身体を無理矢理腕で引きずって這い出してきた少年は、おおよそその見た目から出てくるとは到底思えないような台詞を吐く。

 

「……はっ!? なんだここは!? 夜だと!? 私は、私は確か……何をしていた?」

 

 まるで記憶喪失にでもなったかのように頭を抱える少年。

 

「そうだ、私はレベルXを限界まで極めて……違う、マイティアクションXオリジンで……それも違う。そうか、クロノスとの最後の戦いで……ぐぬぅ、どれも合っているようで違ァう! それになんだこの姿はァ! 子供、子供だ! 恐らくこの視線の低さ等を鑑みるに……小学生、だと……? 私は、若返ったのか? だが、こんな場所に見覚えは……」

 

 錯乱する少年だが、ムーンライトブリッジの惨状を目の当たりにしたからではない。ただ単に、自分自身の事で困惑しているようだった。

 

「……ん?」

 

 ふと、考え事をしてその場をウロウロと歩き回っていると、チラリと視界の端に、真っ白な何かが映る。

 本来なら彼にとって気に留める事でもないのだが、偶然にも目に入ったそれは、人間の腕のようだった。

 

 ようだった、と形容するのは、それが果たして、本当に人間のそれなのかが疑わしかったからだ。

 一体どんな人間が、腕にドラムマガジンを備えているというのだ。

 

(……仮面ライダーか? それとも、それに近しい何かか?)

 

 いずれにせよ、現状を確認する為にも、その現代日本において異常としか思えない光景を確かめるべく歩み寄る。

 

「……これは」

 

 それは、確かに人の右腕だった。……本来あるべき場所から千切り取られ、断面から配線が飛び出し、スパークしている事を除けば。

 

(ロボット、か? ……これがそのパーツだというのなら、まだ周りに何か……)

 

 そう思い、少年は周辺を歩き回り、探す。

 

 程なくして、それは見つかった。

 

(女? ……いいや、ただの女じゃない)

 

 膝をついた状態で項垂れるその金髪の少女は、一切微動だにしない。まるで、そもそも生きていないかのように。

 だが、本来右腕のあるべき場所に右腕がなく、そこから配線を垂らしている事から、彼女こそが件のロボットなのだと推察できる。そこまで行けば、考えられる事は一つ。

 

機能停止状態(スリープモード)か。ボディの傷を見る限り、余程激しい戦闘があったようだな」

 

 冷静にその機械の少女の状態を確認すると、(恐らく)動かないのを良い事に、彼女の身体を(まさぐ)り始める。

 念の為に言っておくが、少年にやましい気持ちなどこれっぽっちもない。というより、()()人間はもはや性がどうだの色欲がどうだのといった話を、軽く超越してしまっている節すらある。

 

「ふむふむ……なるほど……」

 

 普通、そんな風に弄ったところで何も分からないものだが、彼は違う。伊達に神を自称してはいない。していた、ではなく現在進行形でしているのがポイントだ。分野こそ異なれど、多種多様な装備を制作した手腕は、ここでも発揮されている。

 

「そういう事か……やはり私は天才だァ……!」

 

 そう言うと、おもむろに少女の首元のリボンを乱暴に剥ぎ取る。

 見ればそこには、淡い水色に光る蝶が宿っているではないか。

 

「この蝶のような物質が一体何なのかは分からないが……少なくとも分かるのは、この蝶こそがロボットの身体を動かす原動力のようになっている事だ。オマケに、この腕から察するに火器管制も行える、一種のシステムを構築していると見た。となるとこの物質、相当な情報量が詰め込まれているのか?」

 

 同時に、少年はこの物質が地球上に存在しえない物なのではないかという仮説を立てていた。地球の隅々まで見たわけではないが、彼の知る限り、このような物質は見た事がない。

 いや、近しい存在がかつて風都という街に出回っていたという話は聞いた事があるが。確か、地球上の物質や概念等の記憶を内包しているというメモリだったはずだ。

 

「そして、このロボットがあまりにも人間に近い姿をしているのにも、何か関連があるはずだ……もっと詳しく調べたいところだが……」

 

 そうして彼女の肢体を眺めていると、遠くからサイレンの音が聞こえてくる。

 

「……そういえば、この周りの状況。何か大規模な事故か何かがあったようだが……いや、ただの事故ではない。ただの事故で、現場にこんなロボットがいるものか。大方、証拠隠滅を図れると踏んで運用したんだろうが。だとすれば、残念だったなァ……」

 

――その時、少年の顔を見る者がいれば、ドン引きすること必至だっただろう。

 

 これまた、子供のものとは到底思えないような邪悪な笑みを浮かべた少年の脳内で、一つの計画が組み立てられていた。

 

 

 

 

 翌日、この事故の報道の際、一人の少年が行方不明扱いとなっていた。

 

 時同じくして、機械の少女を擁していたとある企業が彼女を回収した際、首元に内蔵されていたはずの蝶型の物質、『パピヨンハート』が無くなっているのを確認する。が、少女の状態から「恐らく敵との交戦の際に紛失、あるいは消滅した」と判断され、闇に葬られる事となった。

 

 

 

 

 そして、数年後。ゲーム業界に震撼が走る。

 

 突如として流星、もとい彗星の如く現れた謎のゲーム会社。本来なら大企業が目に留める事すらないような無名の会社が発売したゲームが、何がどうしてそうなったのか、世界的に大ブームを巻き起こしたのだ!

 

 メディア媒体からの予告も無しに発売されたそのゲーム――『マイティアクションX』は、最初期に限定された店舗で少数が発売された折に口コミで話題となり、徐々にその生産数を増やし、ついには日本中はおろか、世界的なヒットタイトルとなったのだ。

 

 このゲームを制作した会社の名は、『幻夢コーポレーション』。たった一人の少年が起業し、更に当初は金髪の美少女と噂される秘書の二人だけで運営されていたが、『マイティアクションX』の発売以来、この会社を見つけ出し、入社を希望するクリエイターやプログラマーが跡を絶たない。

 

 2009年現在、幻夢コーポレーションは一躍、既存の有名ゲーム会社と肩を並べる程の大企業へと成長した。

 会社を生み出し、経営する傍ら、自ら主導し数々のヒットタイトルを世間に送り出してきた少年は、今や高校二年生になろうとしていた。

 

「……ほう。月光館学園、か」

「如何いたしますか、黎斗さん」

「……桐条グループから直々の推薦だ。いいだろう。出向いてやろうじゃないか」

 

 少年の名は、檀黎斗。()()()()においては幻夢コーポレーションの元社長であり、仮面ライダーゲンムとして暗躍し、最終的にはドクターライダー達と共に人類をパンデミックの危機から救った()()()男である。

 




多分続きます(社長のキャラを再現できるとは言っていない)


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ゲームマスター兼社長、月光館学園に転入する。

 嘘予告ではなァい!連載だァ!

……普通に別で作るべきなのか、それともタイトルを変えるか。うーむ。


「……やれやれ。ギリギリ間に合ったか」

 

 港区の巌戸台駅。夜遅くという事で元々人が少なくなっている時間ではあるが、今ばかりは違った。

 世界を彩るのは、夜の帳の青ではなく、緑がかった不気味な色彩。そして、人間の代わりに立っている、棺桶のオブジェ。

 

 そんな奇怪な光景を目の当たりにしても、今しがた駅から出てきた二人の男女は特に気に留めるでもなく、手元のパンフレットと携帯電話に目を通していた。

 

 男の方は、やや長い前髪の下に中世的な顔つきを隠し、どことなく尊大な雰囲気を醸し出す少年。

 女の方は、金色の髪に、透き通るような空色の瞳をした少女。

 共通するのは、二人ともこの港区は辰巳ポートアイランドにある高校、月光館学園の制服を着ている事だ。

 

「全く、この時間は実に気に食わない。文明の利器が一切使えなくなるとは……」

「……やはり、パピヨンハートの欠片の一部を携帯電話に搭載するべきだったのでは?」

「馬鹿を言うな。限られた資源を、よりにもよって時代遅れの電子機器にわざわざ使う理由は無い」

 

 どこかおかしな会話をしながら、うら若い少年少女二人はある方向に向かって歩き出す。

 だが、二人の間には特に甘い雰囲気など無く、例えるならば社長とその秘書といった方が正しい。実際そうなのだが。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「ふむ。奴らめ。珍しく襲い掛かって来なかったな」

「そうですね」

 

 特に何事も無く、目的の場所である建物……巌戸台分寮へと辿り着いた二人は、特に迷う事無く、中へと入っていく。

 

「……出迎えも無しとは」

「時間が時間ですし、あまり無茶を言うのはよろしくないかと」

 

 不満さを隠すつもりもないのか、尊大な態度を崩さない少年に対し、冷静に突っ込みを入れる少女。

 

「やぁ。やっと来たね」

 

 そんな彼らに、唐突に声を掛ける者がいた。

 

「ん……?」

 

 人の気配など一切無かったにも関わらず、突然聞こえてきた幼い少年の声。その声がする方を見てみれば、囚人服に身を包んだ小学生ぐらいの少年が立っているではないか。

 

「この寮の人間、なのか?」

「……下がってください。この子供は……」

 

 純粋に疑問に思う少年とは裏腹に、少女は警戒心を露わにする。

 

「この子供は、なんだ?」

「……分かりません。ですが、駄目なのです」

 

 理由も分からない警戒心。どうやら少女自身もよく分かっていないようだが、分からないという事が分かってもなお、彼女は警戒を止めない。

 

「……君。何の用だい?」

「黎斗さん!」

「心配はいらない。……それに、これは勘でしかないが、恐らくスルーは出来ないイベントだと見た」

 

 だが、そんな少女の困惑と警戒を他所に、黎斗と呼ばれた少年は囚人服の少年へと声を掛けた。

 

「ここに署名を。一応、決まりだからね」

「ほぅ……?」

 

 囚人服の少年の指し示す方を見れば、カウンターの上に何やら一枚の書類が置かれている。

 内容をかいつまんで説明すると、「今後行う全ての事に責任を負う事」といったような具合だ。

 

「……寮生名簿にしては、随分と大袈裟な事が書いてあるじゃないか。いいだろう」

 

 しかし、契約書云々でこう言った書類は見慣れているせいか、特に何の違和感も抱く事無く、彼はその書類の空欄に、自分の名前を記入した。

 

 『檀黎斗』、と。

 

 直後、少女は書類に名前を記入するまでもなく、囚人の少年は意味深な台詞を語り掛け、まるで影に溶けるように消えてしまった。

 

 

 

******

 

 

 

 

「申し訳ない。何分、最近この辺りは物騒なもので」

「いえ、お気にせずに。銃というチョイスは日本ではあまりお勧めしかねますが、まぁ、脅しとしては十分でしょう。今のエアガンは威力も相当なものと聞きますし」

「感謝します」

「そんなに畏まらないでください。ビジネスではあるまいし。それに私はこれから、貴方の後輩になるのですから。ね、桐条美鶴さん?」

「……ありがとう。では、そのように」

 

 囚人服の少年が消えた直後、奥の方に薄っすらと見える階段から、一人の少女が警戒心を露わに現れた。

 ようやく本当の入寮者に出会えたと、穏便に事を済ませようとした黎斗だったが、その少女――恐らく月光館学園の生徒なのだろうが、制服の上にピンクのカーディガンを着ている――は何を考えたのか、おもむろに太股のホルスターから銀色に光るモノ――拳銃を手に取り、それを自分自身の額へと押し付けたのだ。

 

 これには流石の黎斗も困惑し、思わず「ま、待て! 早まるな!」と言ってしまったのだが、直後にその少女の先輩らしい凛々しい女性が止めに入り、加えて明かりもついた事で丸く収まった。

 

 正直、先程の奇行について問いただしても良かったのだが、恐らく求める答えは得られないだろうと考えた黎斗は、あえて黙っている事にした。ちなみに秘書の少女はと言えば、冷静に事の成り行きを見守っているだけだった。

 

「え、えーと……桐条先輩。この人達ってもしかして……」

「ああ。今日来る予定の転入生だ。だが、随分と遅かったようだな」

「ええ。電車が人身事故を起こしまして。全く、傍迷惑なものです」

「なるほど、それなら仕方がないな」

 

 そんな、どこか違和感の感じるやり取りの後、入寮者二人と転校生二人の自己紹介が行われた。

 

「改めまして、檀黎斗と申します。以後、お見知りおきを」

「は、始めまして。私は岳羽ゆかり。え、えと……よろしく」

「よろしく、岳羽さん」

 

 同年代とは思えない程の社交的な挨拶に、ピンクの少女、ゆかりは思わず緊張で噛んでしまう。そんな彼女を気遣うように、黎斗はにっこりとゆかりに微笑みかけた。

 

「あの、それでそちらの方は……?」

「ああ。これは失礼。ご紹介が遅れました」

 

 そう言うと、黎斗はやや後ろで静かに控えていた少女に、前に出るよう促す。

 

――めちゃくちゃ美少女、ってか外国の子!?

 

 その少女を見たゆかりは、思わずごくりと息を呑む。

 見るからに外人の美少女としか思えないその少女を見て、ゆかりは何故か敗北感を感じてしまう。

 

「初めまして。黎斗さんの秘書を務めさせていただいてます、ミネルバと申します。コンゴトモヨロシク」

「……え?」

 

 そんなどこからどう見ても外国人な少女の口から流暢な日本語が飛び出し、その敗北感もあっさり引っ込んでしまう。

 

「よ、よろしくお願いします……あの、日本語お上手ですね?」

「ええ、勉強しましたから」

 

 ミネルバと名乗った少女は、そう言って柔らかくほほ笑んだ。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「では、黎斗君。自己紹介お願いね」

「わかりました。ただ今ご紹介に預かりました、壇黎斗です。どうぞよろしく」

 

 その日、月光館学園では、ある話題で持ち切りになっていた。それは、2年F組に転入してきた二人。

 

 一人は外国人の見た目ながら、流暢な日本語で話す美少女。そしてもう一人は――

 

「はいはーい! 質問!」

「ちょっと、もう授業があるんだから休み時間に……」

「しかし先生。彼らも何かしら聞きたい事があるようですし、今のうちに済ませた方が、授業に集中できないという事にもなりかねません。大丈夫です。慣れてますから」

「そ、そうね。そういう事なら……」

「もしかしてもしかして、檀黎斗ってあの幻夢コーポレーションの!?」

「ああ。如何にも」

「じゃあ、マイティアクションXを作った!?」

「おや、プレイしてくれているのかい?」

「勿論! 何週やっても飽きないぜ!」

「それはうれしい限りだ。君、名前は?」

「俺は伊織順平! 気軽に順平って呼んでくれ!」

「よろしく、順平君。君はどうやら、私のゲームの熱狂的なファンのようだね。なら君には今度、新作ゲームのテストプレイをお願いしようかな」

「マジ!?」

 

 そのやり取りの直後、教師が何やら悔しそうな顔をしていたのは、また別の話。

 

 




>檀黎斗は力を溜めている……


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ゲームマスター、シャドウと戦う。【前】

 今回は前後編で分けます。


 夜中の11時頃。巌戸台分寮の二階の奥に、その少年、檀黎斗が住んでいる。

 

「…………」

 

 黎斗は、何故か暗くした部屋の中で一人、黙々とノートパソコンに向かい、何かを入力していた。

 内容を見ても、訳の分からない英語やら記号の羅列ばかりで、恐らく普通の人間には凡そ理解できまい。理解できたとしても、ところどころに見覚えのある英単語があるぐらいだろう。

 

「………………」

 

 ほんの一瞬、作業を進める指を止め、ある方向をチラリと一瞥し、そして何事も無かったかのように作業を再開する。

 

「……………………」

 

 どれ程の時間が経過したであろうか。パソコンの画面の右下に、突然ピンクの髪をした、ポップという言葉が似合いそうな少女のデフォルメキャラが現れる。

 

『クロト! もうすぐ十二時だよ!』

「……チッ、もうそんな時間か。奥の手で作業を続行してもいいが……」

 

 そのキャラクターの音声を聞いた黎斗は、苛立つようにそう呟き、再びある方向を一瞥。

 そして、パソコンをシャットダウンすると、手元に置いていた布を広げ、()()()()()()()()()覆い隠し、そのままベッドに倒れ込んだ。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「彼の様子はどうだい?」

「理事長」

 

 黎斗の部屋より更に上階。作戦室と呼ばれるその広い部屋には、本棚や机、ソファーの他、いくつものモニターが壁一面に並んでいる。そこに、ウェーブがかったロングヘアーをした眼鏡の男が入室する。

 先にこの部屋におり、そして画面を注視していた美鶴に理事長と呼ばれたその男は、彼女の隣にいたゆかりとは更に逆の方に立ち、モニターを見る。そこには、先程まで何かの作業を行っていた黎斗の部屋が映っていた。

 

「……先日と何ら変わりありません。暗い部屋の中でパソコンに向かい、何か作業を行い、そして十二時前には就寝する」

「ふむふむ。ゲームクリエイターと社長を兼任しているとは聞いていたが、存外に健康的な生活をしているのだねぇ。一種の生活リズムを形成し、モチベーションを一切崩さない。いやはや、あの年で大したものだ」

 

 私には、あんな静かで音も何もない空間で作業を続けるなんて無理だねぇ……と、その男、幾月修司は瞳を閉じ、何度も頷く。

 

「……ん? クリエイターの仕事は、栗、エイト(ate)、栗を、食べた……」

「理事長、流石にその駄洒落は無いかと」

「寒いどころか虚無感が……」

「酷いッ!?」

 

 本人曰く『渾身のギャグ』を、よりにもよってJK二人にスルーされるどころか冷たい目で見られた幾月は、分かりやすく『ガーン!』という態度を取る。

 

 そうこうしている内に、唐突に明かりが消え、窓の外から不気味な緑の色彩が入り込んでくる。

 しかし、モニターと、その下に備えられたコンソールの電源は未だ健在だった。

 

「……オホン、気づいたら影時間になってしまったが……」

「……何の変化も、ないですね」

 

 画面の中の黎斗は、ベッドに突っ伏したまま動かない。

 

「そうそう、あのミネルバという子はどうだい?」

「……こちらも変化なし。同じように寝てますね」

 

 別の画面に映っている金髪の少女の部屋を確認しても、やはり黎斗と同じような状態だ。というか、部屋の質素さも黎斗と似ている、気がする。

 

「……檀君、ミネルバさんの部屋について何も思わないのかなぁ」

「まぁ、見た限り女性に対して何かしら特別な関心を抱いているようには見えないな。良くも悪くも」

 

 檀黎斗という少年は、その肩書もそうだが、容姿自体も中々イケている為、転入直後は非常に目立った。

 当然、ゲーム好きの男子生徒達以外にも、彼の容姿(と肩書)に惹かれて女生徒が集まったが――

 

『失礼。これから取引先と、ちょっとしたミーティングがあってね』

 

――と、そんな風に軽く躱されてしまった。本当にそんな用事があったのかは分からないが、聞くところによれば壇黎斗の経営面における手腕は確かなものらしい。それも相まって、「ああ、それなら仕方がない」と思えてきてしまう。

 

(……私も、あんな風になれるのだろうか)

 

 美鶴は人知れず、そんな不安を心の中だけで漏らす。

 世界有数の多国籍企業、桐条グループの社長令嬢にして一人娘である美鶴は、いずれ桐条家当主の座を、そして桐条グループのトップの座を引き継がねばならない。

 そうなるに相応しい努力と研鑽を積んでいるという自覚はあるし、それらを欠かすつもりもない。だが……今の自分は、檀黎斗には遠く及ばないという自覚もあった。

 

 桐条美鶴は、才色兼備という言葉を体現したような人間である。月光館学園の生徒会長を務める他、学業・運動面においてもトップの成績を修めており、周囲からの信頼も厚い。完璧を体現したような人間とは、誰の言であったか。

 

 しかし、それも桐条家という元からある下地と、定められた運命があるからこその、言わば当然の帰結。だが、檀黎斗は違う。

 

 過去の詳細な記録等は分からないが、少なくとも彼の家は元から大富豪や財閥という訳でもなく、そして特別な家の生まれというわけでもない。分かる範囲の経歴を見る限りでは、彼は自らの才能を駆使し、努力し、そして自らの力で幻夢コーポレーションという会社を一大企業へと成長させたのだ。それを成し得たのは、他ならぬ自らの意志を以て、だ。

 学生の範疇に収まらないその才覚と行動力に、美鶴は年上の先輩という立場ながら賞賛と、そして僅かに嫉妬の感情を覚えた。

 

 だからだろうか。彼女は気づかない。ミネルバを見る幾月の目が、普段とは違ってどこか怪しげだという事に。

 

 そんな折に、作戦室の通信機に通信が入る。三人とも、このタイミングで通信を入れる人間への心当たりが一人しかいない。

 

「明彦か?」

『美鶴! 今夜のはすごいぞ! 大物だ!』

 

 美鶴の同級生であり、月光館学園のボクシング部のエース、真田明彦。彼から入った連絡は、これから起きる戦いの前触れであった。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

(どうして……どうしてこうなった!)

「ほら、早く! 屋上まで逃げるのよ!」

 

 先を行くゆかりに半ば強制的に導かれ、巌戸台分寮の階段を駆け上がりながら、黎斗は心の中で怒りをぶちまける。

 

 始まりは、ほんの三分か五分前。例の時間――手に入れた情報によれば『影時間』と呼ばれている――が発生する直前に、いつも通り作業を終了し寝床に着いた黎斗だったが、程なくしてゆかりに叩き起こされたのだ。

 影時間における活動は、通常の時間における活動以上の疲労感があるという事で、徹夜が当たり前の彼にとっては腹立たしい事この上ないのだが、無理せず休むようにしていたのだ。

 これだけでどれ程のロスが生じるか等、考えたくも無い。

 

 が、そうして休もうとしていた矢先にこれである。

 

「あとこれ。念の為に持っていて」

「……は?」

 

 更に、唐突に頼りなげなナイフを渡されるのだから、ますます青筋が立つ。これは一体何のつもりなのか。常人から逸脱した精神を持つ黎斗でなくとも、そう思うかもしれない。

 

――全くもって説明不足だな。時間がないならないで、簡単に説明できるようにしておけ、この素人め。

 

 慌てているゆかりに、そんな意図を込めた恨めしい視線を向けたが、当のゆかりはと言えば、焦りでこちらの視線に気づきもしない。

 

「……如何いたしますか、黎斗さん」

 

 一階に降りて、寮の先輩達と合流した際、先にゆかりに誘導されていたミネルバが小声で黎斗に問いかけてくる。

 その問いかけに、黎斗は一度髪をかき上げ、そして一度深呼吸をし、答える。

 

「……問題ない。この程度は誤差、修正可能な範囲だ。後は、私が抜け出すチャンスさえあればいいのだが……」

「……ねぇ、ちょっと、聞いてた!?」

「え?」

 

 こっそりと会話をする黎斗とミネルバに、ゆかりが怒鳴る。

 まるでそちらの方に気を向けていなかったのだが、玄関の扉にもたれかかり蹲る、学校指定のカッターシャツに赤いセーターの青年と、彼を見守る美鶴の姿が見える。赤いセーターの青年は、確か三年でボクシング部の真田明彦だったか。

 そしてゆかりは、こちらの事を怪訝そうに見ている。

 

「あ、ああ。すまない。……何が何だか分からない内に、慌ただしく連れ出されたから、状況が全く掴めなかったものでね」

「う……ご、ごめんね。でも、ほんっとうに急いでるの」

「岳羽、二人を連れて上に逃げるんだ」

 

 その時、美鶴がゆかりに指示を飛ばす。その指示に、ゆかりは「はい!」と勢いよく答え……そして、今に至る。

 

「……!? やば、もう来てる!?」

「……おい」

 

 窓の外を、黒い何かが通る。というか、この寮の壁を登ってきているのだろう。

 となると、この後考えられる展開は――

 

 そこまで考え、黎斗はゆかりに声を掛けるが、あえなく無視される。

 

「う、上! もっと上に上がらないと!」

「いや、だから……」

 

 そこから先は、もうお察しいただけるだろう。

 登れども登れども、黒い影との距離は一向に離れず、寧ろ屋上という行き止まりに向かっているのだから、当然その距離は逆に詰められてゆき――

 

「う、嘘……」

「だから、やめたほうがいいと、言おうとしたんだ!」

 

 普段被っている仮面を脱ぎ去った彼は、肩で息をしながら、目の前で屋上に這い上がってくる黒い手と、その手が持つのっぺりとした青い人の顔の仮面を見やる。

 ちなみにミネルバは一切息を荒げていない。

 

「あれが、シャドウ……!」

「……シャドウ。そうか、それが奴らの名前なのか」

 

 なるほど、と合点がいったような声を上げる黎斗。

 疲れで息こそ粗いが、妙に冷静な黎斗を見て、思わず訝し気な視線を向けるゆかりだが、そんな人間側の事情など、怪物にとっては知った事ではない。

 

 無数の手で構成された不気味な姿のシャドウは、手を足とし歩き、そして他の手には無骨な両刃の剣を握っている。その大きさは、黎斗の知るある存在と比べれば小振りだが、それでも()()()()()()()()ボスキャラと呼ぶには十分な大きさと、相応しい禍々しさは備えている。何故ボスだと思ったのか? 何も不思議な事ではない。黎斗のゲームクリエイターとしての勘である。

 

「私が……私が何とかしなくちゃ……」

 

 そんなシャドウを前にして、ゆかりは黎斗と初めて会った時と同じように、太股に巻き付けたホルスターから銀の拳銃を抜き、自身の額に押し当てる。だが、その手は、体は震え、息は荒くなる。

 

(やれやれ。この女、実戦経験が浅いどころじゃない。経験皆無の素人だ。素質があるかも怪しい程に。……この寮の責任者は、いや、桐条美鶴を含め、一体何を考えている?)

 

 そこでふと、自分が元の世界において最高のテストプレイヤー(モルモット)だと評した、あの水晶の輝きを持つドクターの事を思い出す。自分が感染させた例のウィルスの影響もあったが、彼には確かに素質があった。だからこそ、同じように怪物を前にしても、何の躊躇も無く『変身』して見せた。

 だが、この少女は躊躇っている。何故か。

 

(……そうか。あの銃が何かのキーなのか)

 

 そこで、黎斗はゆかりが何を恐れているのかを把握した。

 かのドクターが使用したのは、単なるベルトだ。変身の際に使用する、あるアイテム次第だが、適合手術を受けていなければそもそも起動しない。彼の場合、そもそも適合手術を受けずとも抗体があったから変身できたのだが。

 そして、ゆかりの使用するあの拳銃。恐らく弾丸は込められていない。しかし、彼女はまだ高校生、しかも――人知れず怪物が蠢いているとは言え――長年にわたり大規模な戦争の無い平和な国、日本の生まれだ。普通、拳銃なぞモデルガン程度でしか触れる機会などない。

 それが、彼女の『死』の恐怖に拍車をかけているのだろう。

 

(……ん? 『死』の恐怖?)

 

 そこまで思い至ったところで、彼の思考は他ならぬシャドウによって中断させられる。

 

 シャドウが、その手に持った剣をゆかりに向ける。だがゆかりは――あろうことか、目を瞑ってしまっている。

 

「……! チィ! 馬鹿が!」

 

 一体何が黎斗を突き動かしたのか、黎斗はゆかりに向かって飛びつく。

 

「えっ」

 

 拍子抜けした声を上げるゆかりを他所に、シャドウはまるで弾丸かミサイルを発射するかのようなスピードで、その剣を持つ腕を伸ばす。

 

 結果、ゆかりを庇う形で、黎斗に剣が直撃する。その拍子に、ゆかりが手にしていた拳銃がコンクリートの床を転がる。

 

「黎斗さん!!!」

 

 同じく冷静に事の成り行きを見守っていたミネルバも、黎斗の突然の行動に唖然とし、そして彼の負傷に、ミネルバは慌てて駆け寄る――

 

「ミネルバァ! 私に構うな!」

「ですが!」

「お前は! ()()()()()()()()()()()ォ!!!」

 

――が、黎斗のその言葉を受け、立ち止まる。

 

 改めて黎斗の様子を確認すると、ダメージを受けた脇腹を抑えてはいるが、命に別状はない様だ。転がった際に髪が乱れ、右目を覆い隠すようになってしまってはいるが、まだその目には、確固たる意志を感じる。

 ゆかりの方を見てみれば、うつ伏せで倒れているが、呻き声のようなものを上げている事から無事な事が分かる。

 

 それを確認した黎斗は、懐からある物を取り出し、ミネルバに向かって投げ渡す。

 

「それを使え。若干()()()()()()()、寧ろ好都合だ」

「……はい!」

 

 それは、一見すると幻夢コーポレーションが発売しているゲームカセットのようだった。薄いカード状のクリアなカセット部分。更にグリップ部分正面には、モノクロのガンマンと、『BANG BANG SHOOTING』と書かれたラベルが貼られている。

 そのアイテム――ライダーガシャットを受け取ったミネルバは、何を考えたのか、おもむろに着ていた制服の上着をややめくり上げる。

 気づけば、彼女の腰にはライトグリーンの大きなバックル――ゲーマドライバー。

 

「え……?」

 

 何が何だか分からないゆかりを他所に、ミネルバは黎斗を守るように、シャドウの前に立つ。

 

「だ、駄目……逃げて!」

「やれ、ミネルバ」

 

 ミネルバを心配するように声を荒げるゆかりに対し、黎斗は淡々と、ミネルバに指示を飛ばす。

 

「了解。『プロトバンバンシューティング』のテストプレイを開始します」

 

 ミネルバが聞き届けたのは、彼女の第一優先である黎斗の声だった。

 

 彼女は手にしたガシャット――『プロトバンバンシューティング』を前方に突き出し、カセット部分側面の根元にあるスイッチを親指で押す。

 

『BANG BANG SHOOTING!』

 

 男の音声と共に軽快な電子音楽が鳴り響き、ミネルバの背後にガシャットのラベルと同じ絵の、ホログラムめいた映像が浮かび上がり――

 

「ど……ドラム缶?」

 

――そこから更に、大量のドラム缶が出現。

 

 これにはシャドウも困惑の色を隠せないのか、飛翔するドラム缶を見渡す。

 

「変身」

 

 その間にミネルバは、ガシャットをドライバーの中央寄りのスロットに装填。

 

『ガシャット!』

 

 ガシャットの装填時特有の音声と共に、ミネルバの周囲を、まるで格闘ゲームなどのキャラクターセレクト画面のように、デフォルメされたキャラクターのアイコンが回りだす。

 

『レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?』

 

 続けて発せられた音声の最中に、ミネルバは右手を真っ直ぐ水平に突き出し、あるキャラクターのアイコンをセレクトする。

 

 それは、奇しくも今の黎斗のように右目を髪の毛のようなパーツが覆い隠した、狙撃手を想起させるキャラクター。

 

 そのアイコンの光が彼女の身体を包み――

 

『――アイムア、カメンライダー!』

 

――次の瞬間には、三等身のずんぐりとした体型の何かに変わっていた。

 

「……え?」

 

 ゆかりは、この日何度目かもわからない疑問の声を上げた。

 




 (社長が直接戦うとは言っていない)


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ゲームマスター、シャドウと戦う。【後】

 ビルド、始まりましたね。
 正直あの武器のガンモードはそれでいいのかって感じだったり、日本全土に壁ができるという中々な設定なので、恐らく同じ世界観を共有しているであろうエグゼイド以前のライダーとは冬映画でどう絡ませるのかなと不思議だったりしますが、とりあえず今後に期待というところでしょうか(前作のエグゼイドで大分ハードルが上がった印象)


「なんだ、あれは……」

 

 場所は変わって、作戦室。負傷した明彦を連れて戻ってきた美鶴達は、屋上に設置された監視カメラの映像でその一部始終を見ていた。

 

 檀黎斗が投げてよこした何かを手にしたミネルバが何かをした瞬間、まるでゲーム音楽のようなものと音声が聞こえ、次の瞬間にはミネルバは何か別のモノへと『変身』していた。

 

 彼女らが把握しているのはその程度だ。

 一体、檀黎斗が何を渡したのか。ミネルバは一体何をしたのか。あの三等身で大きな目の付いたゲームのキャラクターめいたものは何なのか。

 

 分からない事だらけだが、今分かる事は一つ。

 

「まさか、ペルソナ以外にシャドウに対抗する技術が存在するというのか……!?」

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「これより、『仮面ライダープロトスナイプ』の運用による、対シャドウ戦闘のテストプレイを開始します」

 

 三等身の寸胴ボディの戦士――『仮面ライダープロトスナイプ レベル1』となったミネルバは、そう宣言すると共に、再び周囲に先程のセレクト画面と同じようなサークルを出現させる。しかし、今度はアイコンが一つ――銃のような絵のそれしか現れない。

 

『ガシャコンマグナム!』

 

 それに触れると音声が流れ、プロトスナイプの手にAとBのボタンが側面に備えられた、大型の玩具めいた銃が出現する。プロトスナイプの専用武器、ガシャコンマグナムだ。

 ガシャコンマグナムを手にしたプロトスナイプは、銃身側面のBボタンを叩く。

 

「掃射!」

『バ・キューン!』

 

 プロトスナイプがトリガーを引くと、ガシャコンマグナムから光弾が高速連射される。

 光弾が着弾したシャドウは、しかし仰け反る事はない。

 

「やっぱり駄目――!?」

 

 正体不明の戦士の登場に困惑していたゆかりだったが、その攻撃が通用しないのを見て、絶望の表情を浮かべ――

 

「―――!?!?」

「う、嘘……効いてる!?」

 

――シャドウの腕だらけの肉体の内部から爆ぜたのを見て、驚愕の表情へと変わった。しかも、爆ぜた場所から『HIT!』という、如何にもゲームらしいエフェクトが発生する。なんなのだアレは。本当にゲームのつもりなんだろうか。

 

 だが、シャドウはそれでも止まらない。

 反撃とばかりに、構えた剣をプロトスナイプに向かって振るう。

 

「回避行動!」

 

 だが、プロトスナイプはその鈍重そうな見た目に反し、くるりと空中で前転し、軽やかに回避。更に、回避しながら銃撃を叩き込む。

 

 一見して、プロトスナイプの優勢に見える状況を、しかし黎斗はあまり嬉しそうな表情を浮かべない。

 

「……駄目だな。まだ奴には大したダメージを与えらえていな……グッ!?」

 

 そう呟いた途端、黎斗は胸が張り裂けそうな痛みを感じる。

 

 どこかで覚えのあるその苦しみを、しかし黎斗はこらえる。

 

(なんだ今のは……まるであのガシャットのような……まあ、いい。それは今は捨ておくとしよう)

「そこッ!」

 

 その間にも、プロトスナイプは恐ろしい程の精密射撃で、シャドウの持つ仮面を狙い定め撃つ。

 だが、シャドウもタダではやられないのか、剣でその銃撃を防ぐ。

 しかし、集中して弾丸を受けた剣は、半ばで折れ、砕けてしまう。

 

「…………」

 

 その剣を一瞥したシャドウは、もはや使い物にならない剣を捨て、身体に空いた手を中心に向かってめり込ませる。そして引き抜くと、そこには新しい剣が。

 

「厄介な奴だ……だが、それもどこまでできるかな」

 

 それを見ても、黎斗はなおも変わらない。彼には確信があったのだ。「自分の製作物が奴らを上回っている」と。

 

 だが、その慢心故に気付かない。

 

「……! 檀君、危ない!」

「……何だと!?」

 

 密かに、シャドウが黎斗を狙っていた事に。コンクリートの地面スレスレで、三本の黒い腕が黎斗の元へ向かう。

 

「黎斗さん!」

 

 下から急速に接近する黒い腕に、プロトスナイプは遅れて気づく。

 すぐさまBボタンを叩き、黎斗に向かう腕へと撃ちまくる。

 

 一本、二本と、数多の弾丸を受けて腕が消えていくが、最後の一本の進行を許してしまう。

 

「うぐッ」

 

 腕はそのまま黎斗を掴み上げ――

 

「グアァ!」

 

――屋上の柵を越え、建物の外へと吹っ飛ばす。

 

「――ッ! 黎斗さ――」

「私に構うなッ!」

 

 落ちる間際、黎斗はそう叫び、そして屋上から姿を消した。

 

「そ、そんな……」

 

 それを目の当たりにしたゆかりは、身体の震えが止まらなくなる。

 

――どうしよう。私が、私が彼を守らなきゃいけなかったはずなのに。

 

 圧倒的な自責の念が、彼女から動く気力を奪い去る。

 

 そんな彼女を次なる標的と定めたのか、シャドウは再び腕を伸ばそうとする。

 しかし、プロトスナイプがそれを許さない。

 

「貴方の相手は、私です!」

 

 そして、プロトスナイプは体を回転させ、その身に巨大な弾丸のエネルギーを纏い――

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 一方で、シャドウによって巌戸台分寮の屋上から落とされた黎斗は、運悪く頭から落下中だった。

 

(……やれやれ)

 

 そんな状況であっても、彼は酷く冷静だった。そして、彼の自称神の頭脳は、この状況をこう捉えていた。

 「むしろ好都合」と。

 

(ここにカメラが無い事は把握している。一時はどうなるかと思ったが、やはり運命は私に味方しているらしい)

 

 落下のスピードに反し、黎斗の体感時間は酷く遅い。それとも、単純に黎斗の思考速度がずば抜けているのか。

 どちらにせよ、彼の為すべき事は変わらない。

 

 黎斗は懐から素早く、見覚えのあるライトグリーンのバックルを取り出し――

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「クッ……硬直時間が……」

 

 唐突な解説になるが、プロトスナイプ、ひいては完成版バンバンシューティングで変身可能なスナイプには、レベル1のみにある技が備わっている。それは、先程プロトスナイプが行った、自らに弾丸状のエネルギーを纏い、高速回転して突撃するという技である。

 しかしこの技、()()()1()()()()()高威力を誇る攻撃だが、当然デメリットも存在する。

 それがこの反動による硬直だ。

 

 叩き出すダメージは相当なものだが、それでもシャドウは倒れない。

 

「…………!」

 

 その様子を見たシャドウは、先程の仕返しとばかりに、剣でプロトスナイプに斬撃を加える。

 

「くぅ……!」

 

 ダメージを受ける度に、プロトスナイプの胸部装甲の左胸に設けられたゲージが減少していく。ゲーマドライバーによって変身したライダーに存在するこのゲージ――ライダーゲージは、プロトスナイプとしての変身可能な残り体力を可視化したものであり、これが尽きる事は即ち、変身者の命の危機(ゲームオーバー)に繋がる。

 

「うぅ……ハァッ!」

 

 ライダーゲージが半分ほど削られたところで、先の技の硬直が解除され、プロトスナイプはガシャコンマグナムを乱射。逆にシャドウを怯ませる。

 

 その隙を突き、プロトスナイプは転がってその場を脱出すると、ドライバー前部を隠すレバーに指を掛ける。

 

「こうなれば、致し方ありません」

「何するつもり……?」

 

 最初こそ行けるとは思ったものの、このままではシャドウを倒す事はできない。そう思っていたゆかりは、突然の謎の行動に首を傾げる。

 

 そして。

 

「第弐戦術、であります!」

 

 その言葉を皮切りに、ドライバーのレバーを展開する。

 

『ガッチャーン! LEVEL UP!』

 

 ドライバーから音声が流れ、プロトスナイプは上空へ跳ぶ。

 

『ババンバン! ババンバン! バンバンバンバンシューティング!』

 

 ハイテンポな男の歌と音楽が流れたかと思うと、レベル1の白いボディが弾け飛び、中から現れたスリムな人影が振り返る。

 

「な……」

 

 これ以上一体何を驚く事があるのか。そう思っていた時期が、私にもありました。

 

 そう言わんばかりの表情を浮かべるゆかりの前で、その灰色の人影は降り立った。

 

 レベル1時の顔を背中に背負い、首元から黒いローブをたなびかせていたそのライダー――『仮面ライダープロトスナイプ レベル2』は、次いでガシャコンマグナムのAボタンを叩いた。

 

『ズ・キューン!』

 

 音声と共に、ガシャコンマグナム側面に折りたたまれていた長銃身が展開。ハンドガンモードからライフルモードへと変形する。

 

「そこです!」

 

 ガシャコンマグナムを両手で構えると、銃口にエネルギーが収束。そしてトリガーを引くと、チャージされていたエネルギー弾が発射される。

 

 それを、シャドウは剣を二本重ねる事で防ごうとする――が。

 

「………!?!?」

 

 ガシャコンマグナム・ライフルモードでチャージし発射された光弾1発の威力は、ハンドガンモードの50発分に相当する。その威力にさらされた剣は、HITエフェクトと同時に発生した爆風で呆気なく砕け散る。

 

 そして、間髪入れずプロトスナイプは銃撃を叩き込む。

 

「…………」

 

 これには耐えきれないと判断したのか、プロトスナイプの照準を振り切るべく、先程以上に素早く動きながら、なおかつ腕と剣を飛ばし、プロトスナイプの妨害を図る。

 しかし、プロトスナイプはあっさりとこれを回避せしめ、更に片手で銃撃を試みる。

 だというのに、その銃撃は――数発ほど外れたが――ほぼシャドウの身体に命中する。

 ガシャコンマグナム・ライフルモード時に展開された照準装置、サイドレンズスコープと、プロトスナイプの各種センサーの連動による照準補正、そして変身者たるミネルバ自身の素質が成せる技だ。

 

 高威力の銃撃を幾度も受け、シャドウは段々と穴だらけの悲惨な状態になっていく。しかし、そこで手を休めるような彼女ではなく、今度はその状態でBボタンを叩く。

 すると、それまでのチャージ以上にエネルギーが銃口に収束していく。

 それを見てもがくシャドウだが、抵抗も空しく、そのチャージは完了する。

 

「更に、駄目押しで!」

『ガシャットォ! キメワザ!』

 

 更に追い打ちをかけるように、ドライバーからガシャットを抜くと、ガシャコンマグナムのスロットにガシャットを装填。そう、音声が示す通り、決め技を撃つつもりなのだ。

 

「ゆかりさん、伏せていてください」

「へ?」

 

 プロトスナイプの忠告に抜けた声を上げるゆかり。

 

「ハァッ!」

 

 そして、忠告はしたぞと言わんばかりに発せられた掛け声と共に、プロトスナイプがトリガーを引くと、フルチャージされ、更にガシャットを装填された事でより強化された光弾が、爆音とも言うべき銃声と共に発射される。

 

『BANG BANG CRITICAL FINISH!』

 

 その破壊の光は、一直線にシャドウに殺到し――的確にシャドウの仮面を貫いた。

 

「ォォォ………」

『会心の一発ゥ!』

 

 シャドウが断末魔の声を上げ、ガシャコンマグナムからは決め技が決まった事を告げる音声が流れる。

 必殺技の直撃を受けたシャドウの仮面にぽっかりと穴が開き、やがて体ごと崩れ落ちる。

 

「ミッション、コンプリート。であります」

 

 その宣言、というより決め台詞の後、シャドウの身体が爆ぜ、黒い煙のように――

 

 

 

 

『ガッチャーン! LEVEL UP!』

『マイティジャンプ! マイティキック! マイティアクショーン、X!』

 

 

 

 

――消えるかに思われた時、プロトスナイプの変身時、そしてレベルアップ時と似たような歌と音楽が流れる。

 

「こ、今度は何!?」

 

 まだあるのぉ!? と言いたげなゆかり。

 それに対し、プロトスナイプはジッと、シャドウの消えた跡を見据える。

 

――はたして、そこにいたのはどことなくプロトスナイプに似た意匠を持つ、毒々しい黒さを持つライダー。

 

 プロトスナイプと違うのは、頭部がまるで逆立った頭髪のようになっている事と、マフラーも何もない、シンプルな姿な事だろうか。

 そしてその右腕の甲には、紫色のデヴァイスが装備されている。AとBというボタンに、両端にそれぞれチェーンソーの刃めいたものと、二門の銃口らしいものが見えるそれは、恐らくガシャコンマグナムと同種の装備だという事が見て取れる。

 

「誰……?」

 

 新たな仮面の戦士の登場に、もはや理解の追い付かないゆかり。そんな彼女の前で、プロトスナイプは――

 

「ゲンム……確認!」

 

 そのライダー――ゲンムに向かって、ガシャコンマグナムの銃口を向けた。

 

 




 ゲンム……一体何者なんだ……(すっとぼけ)


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社長、ゲンムについて語る。

 おお……何やら評価が赤色になっておる……こんなの初めてでおp……おっぱげた!

 本当に恐ろしいのは、神のネームバリューだぁ……(あの顔)

 あと、一応今回の話では『エグゼイド系列のライダーは肉体を変異させるタイプの変身を行っている』としてますが、どこを探してもそれらしい設定が見当たらないので、違ってたら後で修正します。


「さて、あらかたこちら側の話が終わったところだし……話してくれるね? 檀君」

「ええ。元よりそのつもりでしたから」

 

 巌戸台分寮の屋上での戦いから数日後。あの後、巌戸台分寮の路地裏から怪我をした状態で現れた黎斗は、そのまま病院に送られ、つい先日退院した。

 そして今、分寮の作戦室には、ここを拠点とする特別課外活動部――通称『S.E.E.S.』の面々と、退院したばかりの黎斗。加えて、ある素質が分かった事でここに入る事になった伊織順平がいる。

 ミネルバは、港区外のある病院に搬送され、今はいない。帰ってくるのは明日だという。

 

 あの後、プロトスナイプとゲンムが戦闘を行ったものの、用は済んだとばかりにゲンムが逃走。プロトスナイプがそれを追おうとしたが、変身が解除されてしまう。

 原因は、プロトガシャットの持つ強大な力と、そのバックファイア。

 底知れない力を秘めている反面、その代償も必然的に大きなものとなるわけである。

 

 その結果――

 

「じゃあまず聞かせてくれ。あのミネルバという少女は……()()()()()()()()()?」

 

 変身解除時のミネルバの異変に、最初に気が付いたのは最も近くにいたゆかりだった。

 身体から煙を噴き、身体全体から高熱を発しているのが、はたしてただの人間だと思うだろうか。

 そして彼女の肉体を調査した結果、『限りなく生命体に近い機械的存在』という事が判明した。

 単なる人型ロボットならともかく、完全なロボットと呼ぶにはあまりにも生命力を感じる彼女に、S.E.E.S.の面々は困惑せざるを得なくなった。

 

 その後、彼女は黎斗が手を回し、彼の知り合いの病院に搬送された。彼としては、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から。

 

「……正直に言えばどうです? ()()()()()()()()()()、とね」

「そう断じるには、彼女はあまりにも……生き生きとしている。普段無表情なのはともかくとしてね」

「確かに、彼女は特異な存在だ。そして、私は貴方の質問に対し、YES以上の回答をするつもりはない」

「あくまでも、何であるかまでは言わないと?」

「ええ。……ただこれだけは言わせてもらいましょう」

 

 何を? と、幾月は首を捻る。

 

「――彼女もまた、一つの命である、と」

 

 その言葉を言った時の黎斗は、それまでに見た事のないような、柔らかな表情を浮かべていた。まるで、人生で大事なものは何かを悟っているかのような、そんな顔。

 

 幾月は、そんな彼の顔を見て、これ以上の追及は無意味だと判断し、ただ「そうか」と呟いた。

 

「まぁ、ミネルバ君の事も気にはなるが、それよりも先日の戦いの事だ。ミネルバ君が変異……いや、『変身した』と言うべきか。アレは一体何なんだい? あのようなパワードスーツの技術はまだ完成してないはずだし、それにあれは、ゲームをモデルにしているようだったけど? 君の会社は確か、大企業とは言え、単なるゲーム会社だったと記憶しているんだが」

「ああ、俺も気になるな」

 

 そこに口を挟んだのは、S.E.E.S.きってのバトルジャンキー、真田明彦。

 先日、シャドウと戦った際に負傷し、現在は療養に勤めている彼だが、その目には闘争心の炎がめらめらと燃えている。

 

「あの力……見ているだけでも相当なものだな。ミネルバの元々の身体能力がどれ程のものかは知らんが、あれほど動けるんだ。使えばどれだけ強くなれるのか、試してみたくなる」

「俺も俺も! チョーかっけぇジャン!? 他にもあんの!?」

(……チィ、この手の奴はパラドやグラファイトを思い出す……)

『新しいゲームか……心が躍るなぁ!』

『強い相手との戦いこそが俺の生きがい……』

 

 かつて協力関係にあった二人の男との嫌な思い出を脳裏によぎらせながら、それを顔には一切出さず、黎斗は明彦に首を振りながら語る。

 

「……ご期待に沿えないようで申し訳ないのですが、あれはまだ試作段階でして。適正の無い人間が使用するには、非常に危険な代物なのです」

「そうだよ。ミネルバさんが病院送りになったの、見たでしょ?」

 

 ゆかりからの思わぬ援護射撃に、いきり立っていた男二人は「うっ」と唸り、ついでに黎斗は意外そうな顔をして目を丸くする。

 

「……しかしだからと言って、絶対使わせない、というわけでもありません。ガシャットの完成品が出来上がれば、勿論この活動の為に喜んで提供いたしますし、可能なら試作品……プロトガシャットの試験運用(テストプレイ)をお願いするかもしれません」

「……てことは、まだチャンスある!?」

 

 やりぃ! と天高く拳を突き上げ、喜ぶ順平。

 しかし、黎斗とてそのはしゃぐ気持ちは分からないでもない。というより、彼がかつて作り出そうとしたあるゲームは、本来そうした子供の夢を叶える側面も持ち合わせていたのだ。

 

「とりあえず、まずアレがどういったものなのか、というのをご説明――」

 

 と、彼の開発したライダーシステムについて説明しようとした時に、先程から何かを思案していた美鶴が口を開く。

 

「……待って欲しい。君は、君の持つ技術を提供すると言ったが……タダで、というわけではあるまい」

 

 美鶴からの鋭い指摘に、幾月を除く全員は、ハッとした表情で黎斗を見やる。

 当の黎斗はと言えば、相も変わらず人の好さそうな笑みを浮かべている。

 

「ええ。本当は仮面ライダーについて説明が終わった後にでも話そうと思っていたのですが……桐条先輩がお望みでしたら、先にお教えしましょう」

 

 そう言うと、彼は監視カメラのコンソールに歩み寄り、先日の屋上での戦いのビデオを早送りする。

 しばらくして黎斗は、あるシーンでカメラを一時停止する。それは、あの黒いライダー……ゲンムと呼ばれたライダーが現れた瞬間の映像。

 

「このゲンムと呼ばれるライダーですが……このライダーが使用するガシャット、及びゲーマドライバーは、我が社から盗まれた物なのです」

「盗まれた……!? そんな話は聞いた事がないが」

「当然です。不祥事は隠すもの、でしょう?」

 

 何か含みのある台詞に、ゆかりと順平は何のことやらと、頭の上に疑問符を浮かべる。一方で、美鶴、明彦の両名は、ほんの一瞬だがビクリ、と肩を震わせた。

 幾月だけはまるで様子を変えないが――

 

(図星か。そして恐らく、幾月もクロ……()()()()()()()()な)

 

 黎斗もまた隠し事をしているからこそわかる、人が何かを隠しているというサイン。彼からすればまだまだ未熟な美鶴や明彦は分かりやすく、幾月も()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 こういう手合いは、元の世界でもいた。そして自分自身もそうだった。

 

「続けますが、突然我が社からドライバーと、一本のプロトガシャット――『マイティアクションX』を盗み出した奴は、自らを『仮面ライダーゲンム』と、そう名乗ったのです。……全く、わざわざ私の会社の名前を使うとは、舐められたものです」

「なるほど……それで?」

「……ここまで言って、分からない貴方ではないはずだ」

「つまり、そのゲンムという奴の捕縛に協力しろと、そういう事か?」

「お分かりいただけましたか? 勿論、その為には協力を惜しみません」

 

 黎斗はニッコリと微笑み、肯定する。

 

「あー、なんかマイティに似てるなぁって思ってたら、そういう事かぁ……」

「え、どういう事?」

「いやな。多分だけどガシャットって、市販されてるゲームと同じ内容のモンだと思うのよ俺っち。……待てよ?

でもバンバンシューティングなんてゲーム知らないし……てこたぁ、そのガシャットって、もしかして発売予定のタイトルも含まれてる……?」

「素晴らしい!」

 

 順平の珍しい推理に、黎斗は拍手と共に賞賛する。

 

「よくわかったね。そう、プロトガシャットにはそれぞれ、ゲームのデータが入力されている。つまり――先んじてそのゲームを体験する事にも繋がるんだ」

「マジで!?」

 

 これには、順平も諸手を上げて大喜びし、そしてガシッと、黎斗の手を握る。

 

「不肖、伊織順平。黎斗社長のゲーム製作に、是非とも協力させていただきまぁーーすッ!!!」

「ははは、ありがとう……本当に……」

 

 その時、ゆかりの目には奇妙なものが映り込んでいた。

 

 黎斗が浮かべる、普段からは想像もできない程の禍々しい笑みが。

 

 しかし、瞬きをすると、黎斗は普段通りの落ち着いた様子を見せていて。

 「疲れてるのかな……?」と思い込んだゆかりは、この後風呂に入るのも忘れてベッドに飛び込んでしまったとか、していないとか。

 

 




 (ペルソナ要素はちゃんと)ありまぁす!

 しかし、社長の台詞考えるのは楽しいけど、なんていうかこう、心境の描写と言いますか、とにかく難しいですよね!(多分これ読んでる皆分かってる事だけどネタバレになりそうだからとりあえず分かってほしい奴)


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ゲンム、暗躍する。【Stage 1】

 新たに社長とロボっ娘秘書(とついでにテレッテ)が仲間になったS.E.E.S! しかし、そんな彼らの前に現れる謎のライダー、ゲンム! 敵か味方か、その正体や如何に……!?(全部棒読み)


 檀黎斗、及びミネルバと伊織順平のS.E.E.S.入りが決定して、数十日が経過した。

 

 ミネルバの退院後、彼らは月光館学園に影時間のみに現れる塔型の迷宮――『タルタロス』に乗り込み、探索を続けていた。

 そして黎斗は、前線に出ながらも、彼らの支援を行っていた。

 

 シャドウとの戦闘というのは、普通の人間であればまず不可能。しかし、それを可能とする力、それこそはS.E.E.S.の創設メンバーたる美鶴や明彦が持ち、ひいては彼らが捜しだしたゆかりや順平が持つ素質――心の仮面にして鎧、『ペルソナ』の力である。世界各地の神話や物語に登場する神や悪魔の姿を借りて現出するこの力は、これまではシャドウに対抗しうる、唯一の力であった。

 その召喚に用いるのが、ゆかりが使用しようとした拳銃型の召喚器。安定してペルソナを召喚、制御する為のものだが、しかし黎斗とミネルバは、どういうわけかこれによる召喚ができなかった。

 

 ペルソナ使いの特徴として、影時間に適応できるというものがあるが、これに関してはペルソナ使いのみというわけではない。例えば幾月のように、影時間に動く事はできても、ペルソナを召喚できない人間もいる。

 二人もそういったタイプなのかと、美鶴と明彦は落胆したが、しかし彼らには代替となる仮面の力、即ち『仮面ライダー』の力がある。

 

……そして黎斗は、密かに自分達が『()()()()()()()()()()()()()()』理由について、既にアタリをつけていた。

 

 召喚器が拳銃の形をしているのにも、理由がある。

 死の恐怖を疑似的に体感し、そしてそれに対し覚悟し、克服する事でペルソナを呼び起こすのだ。

 これを乗り越えた事で、美鶴や明彦、最終的にはゆかりや順平もペルソナを呼び出す事に成功した。

 だが、二人にはそもそも『()()()()()()』そのものが無いのだ。

 

 ミネルバはともかくとして、黎斗にはその自覚も、原因に対する心当たりもある。

 

(恐らくは、元の世界においてあまりにも『死』を経験し過ぎた事が原因だろう。この世界での私は普通の人間の身体だが……まぁ、神の才能を持つ私にとっては、然したる問題ではない。死とは超克するもの。いずれ、この世界でも不滅の肉体――レベルXへの神化を成し遂げてみせるとも)

 

 内なる野望に、黎斗は人知れず笑みが零れる。そこにあったのは、圧倒的な自信だった。もっとも、その自信こそが、同時に彼の首を絞めかねないものでもあるのだが、本人はその可能性について全くという程考えない。檀黎斗は、どこまで行っても檀黎斗だった。

 

「……斗君。黎斗君ってば」

「ん? ……ああ、すまない。少しぼんやりしていた」

 

 自分の名を呼ぶ声に反応し、思考の海に潜っていた黎斗は声を掛けたゆかりに謝罪する。

 

 あれから、()()()()()人と交流していった事で、彼とS.E.E.S.の面々は()()打ち解けていった。

 桐条グループに対する技術提供。その見返りである情報面、技術面での協力。未だ完成しないガシャットのテストプレイの為のVRシミュレーションゴーグルの完成。ついでに部屋に設置された隠しカメラの排除、etc.。

 

 そういったやり取りもあってか、今では彼は、S.E.E.S.において頼れる博士ポジションとなっていた。本人にそのつもりは微塵も無いが。

 

「よし。これより、シャドウの反応があった電車内に乗り込んでもらう。準備はいいか?」

「いつでもOKッス」

「同じく」

 

 現在、5月9日の影時間。

 本来ならばシャドウはタルタロスの外には滅多に現れないらしいのだが、この日、人工島である辰巳ポートアイランドに向かうモノレール内部にその反応があったのだ。

 先んじて到着していた黎斗達二年生組と明彦に、少し遅れる形でバイクに乗り颯爽とエントリーをかました美鶴は、バイクに搭載されている通信機器を展開する。

 そして黎斗もまた、装備を整えて件のモノレールに乗り込もうとしていた。

 

 彼としては現在の状況を鑑みて、前線よりも後方支援に徹する方がいいと考えたが、何分シャドウの反応を探知できるペルソナを持っているのが今のところ美鶴しかいない。その為、彼はミネルバの事もあるので、念の為に武器と防具、そして回復アイテム等を持ち、前線のメンバーの支援に回る事となったのだ。

 どうも、黎斗はペルソナこそ出せないが、それを補えるだけの戦闘技術はあるらしかった。一応、桐条グループが特別に製作した武器はシャドウにも通用するので、自衛ぐらいはできるのだ。

 本人曰く、「素晴らしいゲーム作りの為にリアリティを追求するのは、クリエイターとして当然さ」、だそうである。

 

 その時の穏やかな声調に対するどや顔を見て、S.E.E.S.の(幾月を含む)面々は、何となく檀黎斗という人間を理解してしまったとか、していないとか。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

――数分後。

 

「そっ、そんな……」

『どうした岳羽! 檀の反応が消えたぞ! 何があった!?』

 

 通信機越しに、美鶴が叫ぶ。それに対し、ゆかりは声を震わせる。

 代わりに応えたのは、順平だった。

 

「くっ、黎斗がっ、俺を庇って……俺……」

 

 順平の目には、明らかな恐怖の色が伺える。

 

 つい先ほどの出来事だった。戦闘メンバーの中で最も統率力と指揮力に優れた黎斗の指示の元、停車したモノレールに乗り込んだ一行だったが、それはシャドウの罠だった。

 突然モノレールが動き出し、シャドウが襲い掛かってきたのだ。

 

 種類こそ、タルタロスを徘徊するような雑魚シャドウと変わりないが、戦いの場は広く安定した立地のタルタロスに非ず。

 横幅が狭く、動くモノレールの上では自由に戦う事すらまかり通らない。

 そんな状況でもその場を切り抜けられたのは、一重にメンバーが必死の覚悟でシャドウと対峙したからか、それとも檀黎斗の指示が良かったのか。

 

 そんな中で、生き残った一体のシャドウが、前方の車両に向かって逃走を図る。

 直感で「罠だ」と判断した黎斗は、一旦体勢を立て直すよう指示を飛ばすが、ここで彼に気に食わない事態が起こる。

 

『何ビビってんだよ、たかが雑魚一匹だぜ?』

 

 順平である。黎斗の中で伊織順平という人間に対する評価がゼロを下回った瞬間だった。

 あくまでも、表向きは平静にしつつ、彼を止めようとした黎斗だったが、それでも、名誉に対する欲があったのか、「ビビってんのか? だったらここで待ってろ。俺が片付けてやる!」と、勇み足で前方車両に突っ込んでいったのだ。

 

(クソッ、だからああいう低能は嫌いなんだッ!)

 

 元々、順平がこのS.E.E.S.に入部したのも、『自身が特別であるから』という、そんな単純極まりない理由だったのだ。黎斗なりに分かりやすく解釈するなら、仮面ライダーの適正があるからとはしゃぐようなものだ。

 この手のお調子者な現代っ子がそうした特性を持っている事もあるというのは黎斗自身も知ってはいたが、まさかここまで自惚れ、現実を見れていないとは思わなかった。

 

……と、黎斗は思っているが、実際のところ自惚れて調子づくという点においては黎斗も人の事は言えない。

 が、残念ながらその辺りの自覚がそもそもないので、棚に上げている事にすら彼は気づいていないのである。

 

 ここ一ヵ月間の中で何度目かもわからない想定外の事態に、同じく何度目かもわからない心の中での舌打ちをし、残りのミネルバとゆかりを伴い、順平の後を追う。

 

 先頭車両にてようやく追いついた時、順平は荒く息をし、剣を杖にしなければ倒れてしまいそうな程に疲弊していた。

 その眼前には、運転室への道を塞ぐように触手の如き髪を、そしてあろうことか股をも広げる女の大型シャドウの姿があった。その顔面には、先日出現した大型シャドウとは異なる仮面が。

 

『あ……ああ……』

 

 黎斗達からは見えないが、恐らくその時の順平の顔は、絶望の色に染まっていただろう。

 

『順平、逃げて!』

『――チィ! 世話を焼かせるッ!』

 

 ここで初めて、黎斗は人前で素の部分を露呈させたが、この極限状態では誰も気にも掛けない。

 

 黎斗は支給された片手剣を構えると、順平の前に躍り出る。

 

『く、ろと』

『いいから立て。死にたいのか』

 

 今の順平にかける言葉は、それで十分だ。

 この際、素地が出てしまっているのはやむを得ない。

 黎斗は剣を構え、まるで囮にでもなるかのように迫る触手に自ら飛び込んでいき――

 

『クッ……この速度では、流石に……』

 

 黎斗が走るモノレールから叩き落されたという事実を聞いた美鶴は、苦しい表情を浮かべる。

 

 前回は運よく助かったものの、今回もそうとは限らない。まして、速度の出ているモノレールからの転落など、ただではすまない。

 

『……とにかく、まずはシャドウを倒し、列車を止めるんだ!』

「でも!」

『いいか岳羽! そいつを倒さない限り、現実に被害が出る。それに、お前達もモノレールから出られないし、何より檀の救助もできない!』

 

 最もな理由を突き付けられ、ゆかりはただ、「わかりました」と返し、主武装たる弓を背中に背負い、代わりに太股のホルスターから召喚器を抜く。

 

「来て……『イオ』ッ!」

 

 自身の額に突きつけた召喚器のトリガーを引くと、ガラスが割れるような音と共に、ゆかりの身体から青いオーラが発生。立ち昇るオーラと、トリガーを引いた時に発生した破片のような光が集まり、それは牛の頭を模した玉座の上に、腕を組み座する乙女の姿を為す。

 かの名高き嫉妬深い女神の巫女であった者の名を冠するそのペルソナが手を広げると、順平を緑の光が包む。

 イオが得意とする、癒しの力だ。

 

「すっ、すま――」

「謝る暇があるならさっさと戦って!」

「今は緊急時です。謝罪は後で聞きます」

 

 普段通りの冷たさで、しかしどこか怒気を含んだ声で順平にそう言い放ったミネルバは、ロボ娘らしく腹部に格納されていたゲーマドライバーを展開。

 

「変身!」

『BANG BANG SHOOTING!』

 

 更に懐から取り出したプロトバンバンシューティングガシャットの起動ボタンを押し、ゲーマドライバーに装填。

 

「開幕から、第弐戦術であります!」

 

 そこからレベル1になる事無く、ベルトのレバーを展開し、ミネルバは仮面ライダープロトスナイプ レベル2に変身する。

 

「私が前進します。ゆかりさんは援護射撃を!」

「わかった!」

「お、俺だって!」

 

 ガシャコンマグナムをハンドガンモードのまま前進を開始したプロトスナイプを、後方からゆかりが弓矢を射り援護。立ち直った順平も、疲弊した状態ながら、召喚器をこめかみに当て、自らのペルソナを呼び出す。

 

「来やがれ、『ヘルメス』!」

 

 彼の叫びと共に、手から足にかけて繋がる真鍮の翼を備えた鳥のような鎧の人型が現出する。

 ギリシャ神話にて俊足を誇る伝令の神の名を冠したそのペルソナが翼を広げると、前方にいる大型シャドウが突如として炎上する。

 しかし、威力としてはまだ弱いのか、大型シャドウは今だ健在だった。

 

「来ます!」

 

 プロトスナイプのその言葉通り、大型シャドウは赤黒いオーラを立ち昇らせる。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「……やれやれ。まさかまた落ちるとは」

 

 二度目の落下に、流石の唸ざるをえない。しかし、存外にきつい。身体の方はまだ17歳という事もあってか、ダメージが尋常ではない。オマケに、モノレールから飛ばされながらも、後方の車両に無理矢理捕まったのもあり、右腕が痛くて痛くて仕方がない。

 

「……肉体の酷使は、いつぶりだったか」

 

 思えば、この世界に生まれ変わって、あの時のような無茶な身体の使い方をした事がない気がする。

 なお、徹夜はもはやゲームクリエイター的には日常生活と変わりないので特にカウントしない。

 しかし、今は好機である。

 

「……む」

 

 と、そこで前方の方を見やると……辰巳ポートアイランド側の駅が見えてきていた。

 流石に事故を起こすのは、個人的にはあまりよろしくない。

 

「ミネルバ達も、順調に攻略を進めているようだな。……では、私も仕事を始めるとしようかァ……」

 

 普段とはまるで違う、ねっとりとした口調でそう呟き――

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……」

「もう……精神が……持たない……」

「俺も……きっちぃ……」

 

 戦いが始まってそれ程時間は経過していない。だが、彼らにとっては、かなり長い間戦ったような気がする。不思議なものだ。電車を止める為に早急にシャドウを倒さねばならないというのに。

 

 だが、ダメージは確実に入っている。それは、どこか力の無い様子の大型シャドウを見ればわかる。

 

 あと、もう少し。

 

「これで……決めます!」

 

 疲弊しきったゆかりや順平に代わり、まだライダーゲージにも体力にも余裕のあるプロトスナイプが、再びガシャットをガシャコンマグナムに装填し――

 

 

 

 

『ギュ・イーン!』

 

 

 

 

――ようとした時だった。

 

 突然、モノレールの天井から火花が飛び散り、段々とそれが、四角を描くように移動していく。

 

「な、何!?」

「なんだなんだ!?」

 

 疲弊していた二人も、これには仰天せざるを得ない。

 

――まさか、新手か?

 

 疲れ切った身体に鞭打ち、二人はそれぞれ武器を構える。

 

 やがて、飛び散っていた火花が鳴りを潜め――ガコン、という音と共に、天井が落下した。

 

「……ゲンム」

 

 そこから降りてきたのは、いつぞやに現れた黒いライダー、ゲンム。

 

「こ、こいつが、ゲンム……にしてもマジでマイティに似てんな……」

 

 その顔を見た順平は、直感的にマイティとの関連があると感じたものの、当のゲンムは全く意にも介さない。

 

『…………』

 

 一瞬、プロトスナイプとその背後の二人を、黒いゴーグルの中の血のような赤い目で視認すると、どうでもいいと言わんばかりに大型シャドウに向かい合う。

 

「それが、命取り!」

 

 だが、ミネルバにとっては千載一遇のチャンス。

 

『BANG BANG CRITICAL FINISH!』

 

 ガシャットをガシャコンマグナムに装填したプロトスナイプは、そのままこちらに背を向けるゲンムに照準を合わせる。

 だが、その引き金が彼女によって引かれる事は無かった。

 

「……なッ!? 消え――」

 

 突然視界から消えたゲンムに、驚愕の色を隠せないプロトスナイプ。だがそれを言い切る前に、ゲンムがスライディングで彼女の足を蹴りつける。

 意識外からの突然の攻撃に驚きの声を上げる間も無く、ゲンムは膝でプロトスナイプを打つ。

 

「ぐっ」

 

 しかし、変身者自身に物理的な攻撃への耐性のあるプロトスナイプはそれを耐える。だが、ゲンムは()()()()()()()()()()()()()()()()、アクロバティックな動きで伏せた状態で回し蹴りを放つ。

 プロトスナイプの身体が浮き上がったところを、ゲンムは容赦なく、その腹部に痛烈な蹴りを入れる。

 蹴りを入れられたプロトスナイプは、そのまま後方にいた二人を巻き込み、車両同士を繋ぐドアをぶち破り、二号車へと吹っ飛ばされた。

 

「が、は」

「きゃあ!?」

「うげっ」

 

 苦悶の声を上げるプロトスナイプ、否、ミネルバとゆかり、そして順平。

 

『…………』

 

 そんな彼女らの苦し気な様子を、ゲンムはまるで感情を感じさせない目で見る。

 その手には、プロトスナイプが持っていたガシャコンマグナムが――しかもガシャットがスロットに挿さったまま――握られている。

 

「そ、そん、な」

 

――まさか、ゲンムはシャドウの味方なのか?

 

 そんな考えが、ゆかりの脳裏に過る。

 

「お、起きて、起きてよミネルバ!」

 

 プロトスナイプの下敷きになったまま、ゆかりはプロトスナイプを揺する。

 スマートな見た目に反し、意外と重量感のある彼女から脱出するのはかなりの時間を有するだろう。

 しかも、先程の一撃が効いたのか、プロトスナイプは気を失ってしまっているらしく、声を掛けてもまるで反応を示さない。

 

 なんという絶望的状況。もう時間がない。

 

『…………』

 

 そして、ゲンムはガシャコンマグナムを構える。

 ゆかりは、次に来るであろう衝撃への恐怖から、顔を地面に伏せ――

 

 

 

 

『会心の一発ゥ!』

 

 

 

 

「……え」

 

――しかし、いつまでたっても痛みが来ない。

 あの武器の爆音は聞こえた。なら、一体誰が……。

 

 

 

 

「キャアァァァ……」

 

 

 

 

 その異様な悲鳴は、女の姿をした大型シャドウのものだった。見れば、大型シャドウの腹部に、大きな穴が開いているではないか。

 ゲンムは、奪ったガシャコンマグナムのキメワザ『バンバンクリティカルフィニッシュ』を、大型シャドウに撃ち込んだのだ。

 

 そのまま、使い終わったガシャコンマグナムを二号車の方へと放り投げると、大型シャドウが抵抗とばかりに飛ばしてきた触手をいなし、後方に下がって距離を取る。

 そして、自身のゲーマドライバーに挿さっている紫のガシャット――『プロトマイティアクションX』を抜き、左腰のホルダー――『キメワザスロットホルダー』のキメワザスロットに装填。

 そのまま、キメワザスロット上部のボタンを押す。

 

『ガシャット! キメワザ!』

 

 すると、独特のゲームチックな音楽が流れ、ゲンムは再度ボタンを押す。

 

『MIGHTY CRITICAL STRIKE!』

 

 ガシャコンマグナムに装填した時とはまた異なる音声と共に、ゲンムが大型シャドウ目掛けて駆け出す。

 

 対する大型シャドウも、当然ただではやられるつもりは毛頭ない。無数の触手を飛ばし、ゲンムを迎撃せんとする。

 

『ギュ・イーン!』

 

 だが、そんな最後の悪足掻きも空しく、ゲンムの右手に装着されたゲームパッド型の紫の装備――『ガシャコンバグヴァイザー』から伸びるチェーンソーによって、触手が切り落とされ、切り刻まれていく。

 

 後5メートルもあるかないかというところで、ゲンムは片足に力を籠め、独特のジャンプ音と共に飛び上がる。

 そして、懐がガラ空きになった大型シャドウの顔面目掛け、紫のエネルギーを収束させた右足による飛び蹴りを食らわせる。

 

『会心の一発ゥ!』

 

 瞬間、派手な爆発音と共に、大型シャドウが爆ぜる。

 

「キィィイヤァァァ……」

 

 甲高い断末魔の声が、二号車にいるゆかりの耳にも届く。

 

「お、終わっ、た?」

 

 なんとかプロトスナイプの下から這い出したゆかりは、同じように下敷きになっている順平も気絶している事に気付く。

 同時に、一号車の先頭の方で巻き上がる黒い瘴気のようなものの中から、こちらを見ている赤い瞳にも。

 

「ひっ」

 

 ゆかりは顔を引きつらせる。

 

 ミステリアスなんてもんじゃない。理解不能どころじゃない。そもそも、奴はその理解できる範疇の存在なのか?

 

 何もわからないという、無知への恐怖。ゲンムのゲームキャラクターめいた顔が単なる『仮面』でしかない事への唯一の理解が、その恐怖を増長させる。

 

『チュ・ドーン!』

 

 ゲンムは、ガシャコンバグヴァイザーの向きを入れ替える。チェーンソーの代わりにこちらに向けられたのは、二門の銃口。

 

 ゆかりの身体がこわばる。もう駄目だ、おしまいだと、本能が叫ぶ。

 

『…………』

 

 怯える彼女に対し、ゲンムは容赦なくバグヴァイザーで撃つ――というわけでもなく、代わりにモノレールの連結部分を撃ち抜く。

 

 困惑する彼女を他所に、連結部分が火花を散らす。すると、何故か身体が前のめりになり、視界に移る先頭車両が、そこに乗るゲンムがどんどん小さくなっていく。

……否。決して小さくなっているわけではない。連結部分が破壊され、先頭車両だけが進行しているのだ。

 

 そのまま先頭車両は遠くへと走っていき……やがて停車した。

 

 そこまで行くと、ゲンムの姿は見えなくなっていた。

 

 だが、あの時向けられた無感情でありながら禍々しさすら感じるあの赤い目が、ゆかりの脳裏に、記憶に、そして心に焼き付いて離れなかった。

 

 しばらく、ゆかりの寝付けない夜が続く事となった。




 ゲンムこわ……とづまりすとこ……(檀黎斗神の動画見ながら)


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あるパソコンから復元された5月頃の記録

気づけばお気に入りが100超えてる……ひぇっ……(小心者)


 記録日時:5月■■日

 

 先日の5月9日、巌戸台駅から辰巳ポートアイランド駅にかけて運行しているモノレールに、大型シャドウが出現。この処理の為に出動し、これを撃破に成功。しかし、何故あの日に大型シャドウが出現したのか、また、影時間に出現する塔、『タルタロス』には何故その反応がないのか、まだまだ不明な点は多い。

 

 そこで、今回は記録を残すがてら、現在分かっている範囲で、大型シャドウを含めたシャドウの特徴、そして推測を書くものとする。

 

 現在出現している大型シャドウは、先月、巌戸台分寮を襲撃したもの。そして、前述のモノレールを占領した大型シャドウの二体が確認されている。

 

 この二体に共通する点は、それまでのシャドウよりも巨大であるという点しかない。4月時点でS.E.E.S.創設メンバーたる桐条美鶴、及び真田明彦、そして顧問の幾月修司から聞いた話では、それまでにこのような大物が出現した事は一度も無いという。

 

 もっとも、『タルタロス』には『死神』と呼ばれる強力なシャドウがいるそうだが、こちらは時期等関係なく、一つのフロアに長時間留まっていると出現する、との事。

 私自身はまだ遭遇した事はない。というのも、それほど長時間留まらず、ハイペースで『タルタロス』を攻略しているからだ。どうやら、私の判断は間違っていなかったようだ。

 

 『死神』の詳細な情報に関してはおいおい調査を進めるとして、本題に戻ろう。

 

 現在確認されているシャドウだが、桐条美鶴のペルソナ能力によるアナライズによれば、それぞれに大アルカナという分類があるようだ。(注:彼女のアナライズは機械で補っており、ペルソナ自体は前衛向けである)

 これはペルソナも同じで、例えば伊織順平のペルソナ『ヘルメス』は『魔術師』。岳羽ゆかりの『イオ』は『恋愛』となっている。

 アルカナは文字通り、タロットカードのそれである。どうやらそのアルカナによって、シャドウの仮面が異なるようだ。

 例えば、『魔術師』のシャドウはあの青い仮面。『女教皇』ならば赤のドミノマスクとなっている。

 

 また、シャドウの名称や姿も、タロットのそれに何らかの関わりがあるようだ。

 例として挙げるなら、『マーヤ』の名のついたシャドウ。この名前のシャドウは、どれも共通して、影から手と頭が生えている。違いは被っている仮面と、そしてマーヤの前につく最初の言葉ぐらいだろうか。

 その名前は、ギリシャ神話に語られる女神か、もしくはインド神話に存在する概念の事を指していると思われるが、この辺りは語るべき事は無いので省く。

 今回重要なのは、それらの最初の名前が、タロットカードのアルカナ、その逆位置と呼ばれるものに合致するという点だ。

 タロットカード占いにはあまり詳しくはないが、調べたところ、占いの際に重要なのは、タロットカードの『向き』だという。

 『魔術師』のアルカナのマーヤは、『臆病』という名前を冠する。これは、『魔術師』のアルカナの『逆位置』の意のようだ。

 正位置はチャンスや才能といった意味がある事から、そのネガティブの面をこのシャドウが表しているのだろう。

 そもそも、シャドウという名前自体がそういった意味合いを持つのかもしれない。ペルソナという言葉自体、ユング心理学における『心の仮面』の意味だ。ならばシャドウも、単なる英語の『影』ではなく、ユング心理学の用語から来ていると考えられる。

 

 また、シャドウの姿――というよりデザイン――に関しても、何らかのモチーフがあるのだろうと思われる。

 『魔術師』のモチーフとして、『手腕』というものがある。それと同様に、『魔術師』のアルカナのシャドウにはハンドというものが存在するし、4月に出現したあの大型シャドウが腕と手のみでその肉体を構成していたのも、恐らくその辺りが関係していると思われる。

 

 そして、『女教皇』の大型シャドウ。タロットカードに関しては悔しい事に明るくない為、後に知った事だが、あの姿は俗にウェイト版と呼ばれるタロットカードの『女教皇』のデザインに近しいという事が分かった。

 股を開き、身体の正中線で二色に分かれている女という、実に下卑た姿をしていたが、あのシャドウの両乳房に書かれていた『B』と『J』は、アーサー・エドワード・ウェイトという人物がある組織の解釈に基づいてデザインしたものらしい。『B』は闇、『J』は光を意味しているという。

 どうでもいいが、どこかで見た事のある色合いだと思ってしまうのは、私の考えすぎだろうか。

 

 ともかく、これらのシャドウは様々な姿をしているが、いずれも分類される大アルカナに関連した姿であるというのは、疑いようはあるまい。

 それにしても、あれらの姿は如何にして構築されたのだろうか。シャドウ……ユング心理学では自意識の影、つまり「こうなりたくない存在」として定義されているが、ではあのシャドウ達は、一体誰のシャドウなのだろうか?

 そうして考察に耽ると、こういった要素もゲームには重要であるというのが分かってくる。こういった考察をし、そしてその考えを発表するというのは、ユーザー側としてもゲームの楽しみの一つだと考えられる。実際、謎を多く含んだ物語でファンが話題にするのは、秘められた真実に迫る考察や、何気ないシーンに映り込む異常性への考察だ。

 私も、ゲーム制作の為に様々な文献や資料を見てきたが、なるほど、人間の心というまた奥深いものを無視していた。

 思えば人の心を掌握する術は経営者としてやっている内に学んだが、それでもどうにもならない心が存在するという事を、私は知っている。

 

 そういえば【この箇所は数行ほど書かれていたが、データの損傷による文字化けで読み取れず。現在修復中】

 

 その答えに、私は未だに辿り着けないでいる。迷宮入りというやつだ。実に腹立たしい。

 そして、■■■■■■■■■■■■■■■■私にできる事は一つしかない。

 

 『■■■■■最高のゲームを作る』、その一点に限る。

 

 正直、シャドウの被害など私にとってはどうでもいい事だ。いや、プレイヤーが減るというのは良くないが。

 岳羽ゆかりや伊織順平が何の為に戦おうと、桐条美鶴達が何を隠していようと、■■■■が何を企んでいようと、私には関係ない。私の使命は、信念は、どこまでいっても最高のゲームの為にしか存在し得ないのだ。

 

【文字化け。以下同文】

 

 どうせなら、この世界にも神の恵みを与えてやろう。私には、それを可能にするだけの神の才能と、そして経験がある。

 事実、■■■■■私は『幻夢コーポレーション』を、そして数々のゲームを生み出す事に成功した。だが、まだだ。まだ最高のゲームには程遠い。

 

 幸いにも、この世界にはアイデアがゴロゴロと転がっている。私はただ、それを利用し尽くし、最高のゲームを作る。その為に、私はあの少女を雇い入れた。

 ■■■■■■■■■■■■■■、■■■限りなく遠い。従順で、純粋。

 

 心は一切痛まない。彼女にとって私に協力するのは、義務であり贖罪だ。ならば、これを利用しない手はない。

 

 だがしかし、私は仲間となった者への恵みは惜しまない。だからこそ、私は彼女に、『仮面ライダー』としての力を与えた。理論上、『プロトガシャット』に耐えうる肉体を用意した。

 一応給料も支払ってはいるが、どうもそこまで欲が深くないらしい。神の恵みをありがたがらないとは、と思うが、彼女が如何なる存在かを理解している故、ここは慈悲というものを見せるべきだろう。

 

 気づけば関係ない自分語りに一部割いてしまったが、まぁいいだろう。ここに記録するという形で決意表明をしたという事にしよう。

 

 私の崇高な目的の為にも、シャドウのデータ収集は欠かせない。特に、大型シャドウのデータは――私の勘でしかないが――必須だ。思うに、奴らはボスキャラだ。それも、ある一定の周期を置いて出現するタイプの。

 それを証明する為に、恐らく次に出現するであろう大型シャドウ――『女帝』の出現日を正確に把握する必要がある。

 

 ■■■■■■、恐らく■■■■。

 

 後は実証を残すだけだ。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 今回発見された記録は、以上の通りである。

 恐らく、他にも記録があると思われるが、意図的にデータを破損させたのか、一部が文字化けを起こしている。

 この件に関しては、山岸風花に一任し、このデータの修復、及び残りの記録のサルベージを行ってもらい、我々は引き続き調査を行うものとする。

 

 以上。



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社長、囚人服の少年と話す。

 何故か投稿ボタン押してない(つもり)のに投稿した事になってる……疲れて操作ミスでもしたんだろうか。

 それはともかく、一時的にとはいえランキング28位に入れるとは思ってなかったので、改めてありがとうございます。


――檀黎斗は、時々奇妙な夢を見る。

 

 どこか高い場所、その屋上。天辺には不気味に輝く満月――そう、丁度4月と5月の大型シャドウが現れた辺りと同じような月が昇り、まるでこちらを矮小な存在を見るかのように見下ろしているような、気がする。

 

『待っていたぞ……■■■■……』

 

 そこで彼は何かを待ち構えていた。普段通りの、堂々という言葉を通り越して傲慢さを惜しげも無く晒しながら。

 

 そして、彼の前には、吸い込まれそうな程の漆黒。よく目を凝らすと、何かが黒い翼を広げているというのが分かるが、それ以上ははっきりしない。

 

 明らかに尋常ならざる存在を前にして、しかし彼は傲慢にも言い放つ。

 

『人類の運命はお前が決めると言ったな? そして、私は必ず死ぬ、とも……違う、違うなァ……私は、死なない。なぜならば、そうッ!』

 

 夢の中の檀黎斗は、大仰に体を逸らせ、纏った白いジャケットを広げる。

 

『私も、否、私こそがァ……神だからだァァ!!! ヴェハハハハァ!!!』

 

 それは、ある時期からまるで吹っ切れたかのようになった檀黎斗そのもの。自身の神の才能を信じて疑わず、己の意に逆らう者を嫌悪し、排除せんとする。

 

『そして今宵ィ! 貴様の、そして私自身の運命は、この私の手によってェ! 変えられるゥ! 遂に完成した、このガシャットでなァ!』

 

 そう言うなり、懐から一本のガシャットを抜く夢の中の自分。しかし、今の檀黎斗は、そのガシャットには全く見覚えが無かった。ラベルもタイトルも、まるでバグが起きているかのように見えない。

 

 そして、そのガシャットの起動スイッチを押した。

 

 

 

 

 何も、起きない。

 

『……ッ!? 何故だ、何故起動しない!?』

 

 不測の事態に、慌てふためく夢の中の自分。彼は、この手の予測不能の事態には滅法弱かった。

 

『チィ! ならば!』

 

 黒い影がこちらに接近しているのを見た彼は、そのガシャットを仕舞うと、代わりに別のガシャットを取り出す。

 元の世界で製作したガシャットギアデュアルに酷似したそのガシャットのダイヤルを回し、起動スイッチを押す。

 

『ESCAPE FROM DEATH!』

『グレード50……変身ッ』

 

 

 

 

「……なんだったんだ、今のは」

 

 夢は、そこで終わり。

 

 まるで、悪夢だ。見ているだけで、寝苦しくなってしまう。

 

 黎斗は汗ばんだ肌を撫でると、すぐに部屋に備え付けられた洗面台に向かい、顔を洗う。

 

 見た事の無い景色。見た事の無いガシャット。

 

 また私に許可無くゥ……となりかけたが、あれを見た限りだと、作ったのはどうやら()()()()らしい。

 

「……ますます訳が分からん」

「何がだい?」

 

 突然掛けられた声に、黎斗は勢いよく振り向く。

 

 先程、自分が横たわっていたベッドの上には、何時ぞやに見たあの囚人服の少年が座っていた。

 

「……どこから入ってきた」

「そんなのどうでもいいじゃないか。それより、僕は君とお話しがしたいんだ」

 

 黎斗の問いの答えをはぐらかすように、少年はニコニコと黎斗に微笑みかける。

 

「……生憎、私は疲れている。()()()()()()()()()()()()()()、私は寝させてもらう」

「つれないなぁ……大丈夫さ。ほんの少しだから、ね?」

 

 すげなくあしらう黎斗に、それでも食いつく少年。左目近くに泣き黒子があるからか、どこか愛嬌を感じさせるその顔は、しかし黎斗にはどことなく現実味のないようなものに見えて。

 

「……分かった。5分、いや、3分で済むのならいいだろう」

「うんうん、そうこなくっちゃ」

 

 何故そう答えてしまったのか、自分自身でも分からない。しかしまぁ、ほんの数分程度であれば付き合っても構わないだろう。

 そう思い、黎斗は少年と話をする事を決断した。

 

「といっても、本当に些細な事さ。君、大活躍だね?」

「当然……待て。何処で、いや、何処まで私の事を見ていた?」

「そりゃ、もう。()()()()()()、ね」

 

……何かおかしい。

 

 黎斗がそう思うのも無理はない。この少年は、今確かに、「自分の行動を全て見ている」と言った。

 だというのに、何故自分は、この少年に敵意を抱けないのか。

 

「でも、不思議だよねぇ」

「……何がだ」

「君の扱う、『異形の仮面』の力。確かにあれは強い。そこら辺のシャドウなら、苦も無く倒せるだろうね」

「そうだとも。私の才能の賜物だ。寧ろ褒めちぎってくれてもいい」

「うんうん、凄いね。……でも、だからこそ不思議なんだ」

 

 何が、と黎斗は問う。

 そして少年は、意外にも素直に答えた。

 

 

 

 

「だってあの力――『()()()()()()()()()()()』には見えないんだもの」

 

 

 

 

「――フッ」

 

 その答えに、黎斗は鼻で笑ってのけた。

 

「戦えて当然だ。何故な――」

「何故なら?」

「――私には神の才能があるのだからなァ……」

「へぇ。そっか。凄いんだね、君自身も」

 

 その時は自信満々にそう返した黎斗だったが、反面、彼もまた、その事への疑問が生まれていた。

 

――檀黎斗は、この世界でシャドウを倒す為に『仮面ライダー』を生み出した。しかしあれは本来、元の世界における人類の脅威、『バグスター』を倒す為の物で、シャドウとはまるで異なる存在だ。ユング心理学的に言えば、似通った部分――例えば、かの天才ゲーマーと、彼と存在を同じくするバグスターの事――はあるが。

 

(……私は、ごく自然な流れで『シャドウに対抗できる仮面ライダー』を生み出した。だが、今思えば何故そんな事が私にできる? シャドウはともかく、ペルソナの事すら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 確かに、この月光館学園に転入する以前にも、シャドウという名前は知らずとも、何かが存在しているというのは知っていたし、実際に接触した。しかし、その知識自体は中途半端なものだった。

 かつて、10年前に回収したあの物質から情報を得ようとした事があった。恐らくそれには、シャドウに纏わる重要な情報が記録されていたと思われるが、調べてみるとその幾らか欠落していたのだ。

 その為、仕方なく手探りで残りの知識を得る目的も兼ねて、影時間における仮面ライダーのテストプレイを行ってきた。

 

 だが、そこで疑問が生じる。

 

 ここに来るまでの檀黎斗には、影時間への適正はあったが、知識に関してはまるでなかった。

 影時間が特定の人間だけに訪れるものだという事は感覚的に把握できたが、何故それの適正が自分にあるのかは、此処に来るまで終ぞわからなかった。

 

 調べていく中で、あの物質――ミネルバが『パピヨンハート』と呼んでいた物は、機械が動かなくなる影時間において、唯一機械を動かす事ができる物質だという事で、彼はそれを削り、ゲーマドライバーやガシャットに組み込んだ。そこまではいい。

 

 しかしながら、彼女のパピヨンハートにも限りがあるし、何より()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、それすらわからない。それ程までに、シャドウという存在には謎が多かった。

 

 だが、黎斗は確固たる自信をもって、ガシャットのプログラムを組み上げ、仮面ライダーを生み出した。ペルソナという、それまでは唯一シャドウに対抗できる力の存在を知らないままに。

 結果的にシャドウに対抗できたそれを、自身の神の才能が成し得た事だと断じる事もできた。……だが、はたしてそれで済ませて良いのだろうか? 彼の()の事も含めて。

 

(……妙だ。スムーズに事が進み過ぎている。まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そこまで考えて、黎斗は首を振る。

 

(……馬鹿馬鹿しい。理由付けなどどうにでもできる。「私の神の才能があったからこそ解決した」、「私にかかれば10年もあれば余裕」。そうだ。複雑に考える必要などない)

「――ねぇ、ねぇってば」

 

 そこまで思考したところで、黎斗は無理矢理、思考の海から引きずり出される。

 

「ん、あぁ。すまないな。少し考え事をしていた。……おっと、もう3分は過ぎたな。さぁ、子供はさっさと帰れ。そして寝ろ」

「えー」

「……次来た時に、私の製作したゲームで遊ばせてやる。ありがたく思え」

「ホント? 僕、ゲームやった事ないんだよねー」

 

 楽しみだなー、とウキウキした様子で、少年はベッドからぴょいっと飛び降りる。

 黎斗自身、酷く甘いなと思ったが、子供が相手なのだから別に構わないかと思い直す。自身のゲームを楽しみにしてくれる子供に、冷たくする道理などないのだ。

 

「じゃあね、また会いに来るよ。約束、忘れないでよ」

「分かった分かった、早く帰れ。……いや、少し待て」

 

 今度はなんだい? と、自分勝手にも程がある黎斗に不満を漏らすでも、ましてや悪するでもなく、ニコニコと彼に振り向く少年。

 少しばかり意外な反応だった為、驚く黎斗だったが、すぐに持ち直し、最後の問いかけをする。

 

「……名前」

「名前?」

「君の名前だ。何という」

 

 その問いに、うーん、と少し考える素振りを見せ、少年は顔を上げる。

 

「――ファルロス。僕の名前は、ファルロスだ。じゃあね!」

 

 ファルロスと名乗ったその少年は、以前と同様、闇に溶けるように消えてしまった。

 



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S.E.E.S.、黎斗とゲンムについて考察する。【前】

 あまり気づかれてないような気がするのでここでも書きますが、前回のは間違って投稿されたのを加筆修正した上で改めて投稿してます。念の為。

 今回は個人的にやりたかった話その1です。長くなりそうなので前後編になります。


「……でよぉ、ゆかりっち」

「何よ、藪から棒に」

 

 6月も下旬。梅雨の時期も間もなく明け、そしてもうすぐ夏がやってこようかというそんな頃合いの休日に、S.E.E.S.の2年生組は1階の広間で話合いをしていた。

 と言っても、そこには檀黎斗と、その秘書の少女ミネルバの姿は無い。この日、黎斗は幻夢コーポレーションの社長として、ある取引先との打ち合わせの為、朝早々に出かけていた。

 ちなみにミネルバは、先の戦闘……満月の夜に出現すると判明した大型シャドウ二体との戦闘で、現在休息中である。

 

 そして今いるのは、ゆかりや順平に加え、先日仲間になった2年E組のペルソナ使い、山岸風花である。

 貴重な探知能力、及びアナライズ能力を持つ彼女が加わった事で、それまでその役割を担っていた美鶴が戦線に復帰。同じく怪我が完治した事で復帰した明彦の事もあり、S.E.E.S.には十分な戦力が集まった事になる。

 

「思ったんだけどさ、俺達、黎斗がどんな人間か、そんなに把握してね?」

「ホント唐突に放り込んでくるよねアンタ……まぁ、確かにその通りなんだけど」

 

 その二人の言葉に、えっ、と疑問の声を上げたのは、他ならぬ風花である。

 

「あの、確か黎斗さんって、4月にはこの寮に来てたんですよね?」

「うん」

「で、S.E.E.S.にも4月には入ってたんですよね?」

「そーそー」

「……それなのに?」

「そうなんだよねぇ、悲しい事に。……いや、悲しくはない、かな」

 

 実際そうなのだから仕方がない、という風に、ゆかりは肩をすくめる。

 

 実際、黎斗との付き合いはかれこれ二ヵ月程になるが、()()()()()良い人間だとしか言いようがない。

 そう、表面的には。

 

「思えば、彼ってあまり、自分が何をしたいかとかって、そんなに言わないのよね」

「『最高のゲームを作りたい』ってのは聞いたけどよ。そういうんじゃなくてこう、なんかあるだろって」

 

 そう言われて、風花も納得する。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 檀黎斗と山岸風花の初遭遇は、そんなに特別なものではない。

 風花が故あって学校に閉じ込められ、そしてタルタロスに迷い込む事になる、その数日前。

 ただ、友人――と、風花は思っている――にいじめられていた時に、偶然彼がいた。それだけだ。

 

「……すまないが、そういう事は私の目の届かないところでやってくれないか。正直、迷惑だ」

「あん? ……アンタ、D組の」

 

 穏やかに彼女の友人と、その取り巻きに言い放った彼は、一切彼女らに視線を向けず、ただ黙々とノートパソコンで何かを入力していた。

 風花自身、彼の事は聞いていた。あの有名ゲーム会社、幻夢コーポレーションの社長であり、ヒットタイトル『マイティアクションX』の産みの親。

 その時の風花にとって、密かな憧れの対象――勿論、恋愛的な意味ではない――であった。

 

「ふぅん。随分と偉そうにしてるじゃない」

「まぁ、君達よりかは遥かに偉いだろうね」

「……ッ、何よ、調子に乗っちゃって」

「私の事が気に食わないのなら、さっさと何処かへ行けばいいと思うんだが。それとも、君達は自分が馬鹿だという自覚があるのかな?」

「ッんの……!」

 

 パソコンから一切目を離す事無く、黎斗は淡々とそう煽る。友人達が軽くあしらわれる様子を見て、風花としては複雑な心境だった。

 

「……もういいよ。行こ」

「調子乗ってんじゃねぇよバーカ」

 

 ギャルめいて一番肌が浅黒い、風花の親友だった少女、森山夏紀に促され、取り巻き連中は捨て台詞と共にその場を去った。

 

「あ、あの!」

「気にする事じゃない」

 

 その時、風花は「え?」と疑問符を上げる事すらできなかった。

 さもどうでも良さげに、黎斗は言い放つ。

 

「私の(崇高な)作業の時間を妨害されたくなかったというのもあるが……君が放っておけなかった。ただそれだけの事だ」

 

 それが、如何なる意図を持った言葉だったのかは分からないが……少なくとも風花にとって、感謝しなければならない事なのは確かだった。

 

「そ、それでも、ありがとうございました……でも、大丈夫ですから。あの子……夏紀ちゃんとはその、友達だから」

「そうか。でも、友達はもう少し選んだ方がいいと思うよ、私は」

 

 その一言は、彼女にとっては鬼門であった。彼も善意で言っているのかもしれないが、しかしこれだけは譲れない。

 

「……お気遣い、ありがとうございました」

 

 しかし、彼女にはその言葉に反抗できる程の度胸も無く、またほんの少し、ほんの少しだけ、彼の言う事は的を得ていると思ってしまったが故に、ただそれだけを告げ、その場を去った。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「でもまぁ、案外色んなところで見かけるって話、聞くぜ」

「そうなの? 仕事してる最中とか?」

「それもあんだけど、意外と色んな奴と絡んでるらしい。ほら、同じクラスの友近とか」

「あー……それでも意外っちゃ意外なんだけど」

 

 檀黎斗という人間は、一見すると人当りは良さそうだが、かと言って社長という肩書も含め、クラスメイトと楽しく談笑するといったようなイメージが全く浮かばない。

 寧ろ、会議室で偉い人と会話をしているシーンしか浮かばない。

 

「それに、運動部にも顔出してるらしいぜ」

「えっ」

 

 こちらに至っては、完全にイメージの外だ。なんでも、先生に無理矢理部活に入るよう言われ、仕方なく水泳部に入ったそうだ。

 これがまた意外と筋がいいらしく、将来有望視されているとかいないとか。

 

「……なんでだろう。想像できないけど、様にはなりそうなのがまた……」

「なんでもできそうって感じは、あるよね」

 

 『プールでクロールを泳ぐ檀黎斗』というイメージを勝手に思い浮かべ、納得する2年組。

 

「あとは生徒会の手伝いしたりとか、文化部にも顔出してるとか何とか……」

「え、何? 本業もあるのにわざわざ掛け持ちしてるって事?」

 

 ここで言う本業とは、言わずもがな、幻夢コーポレーションの社長の事である。

 

「……この話題、やめとこ。前に俺、アイツに嫉妬しかけた事あったけど、そもそも俺らとは比較にならないレベルでハイスペックだったわ……」

「アレに張り合えるの、桐条先輩ぐらいじゃない……?」

「そうだね。……でも、実績で言えば檀君も凄いし……」

「おいおい、そこで何故、対抗馬に俺がいない」

 

 急に新しい声が聞こえたと思い、順平が振り返れば、そこには彼らの先輩、真田明彦が立っていた。汗まみれで。

 トレーニングをしてきた帰りなのか、来ているタンクトップは汗で湿っており、首からかけているタオルで額の汗を拭ってはいるが、あまり意味は無さそうだ。

 

「……まぁ、直接バトルってなると、真田先輩に軍配が上がりそう……かな」

「思えば、アイツとは一度も拳を交えた事が無かったな。むぅ、一度でいいからやり合ってみたいものだ……」

 

 「絶対断るだろうな」と、順平が呟く。

 

「そ、そうだ! そういえば私、まだミネルバ、さんにお礼言えてないんだけど、どんな人なのかなぁって」

 

 何やらこの先の会話に不安を感じた風花は、思い切って話題転換を試みる。

 

「あー、ミネちゃんね。つっても、俺らも正直、キャラ掴み損ねてるっつぅか」

「分かる。何というかこう……不思議ちゃん? と言えなくもないし……」

「だが、強者というのは分かる。……そうだな、ミネルバともいずれは……」

「あー、はいはい。それはミネルバ本人に直接言ってくださいねっと」

 

 試みは上手くいったらしく、皆、ミネルバの話をしだし、風花も胸を撫でおろす。

 

「そういえば、聞いた話だとミネルバさんは、その、人間じゃないというか……」

「あー、なんていやぁいいのかなぁ……限り無く人間に近いロボット娘って話だけど、俺もよく分かんねぇんだよな」

「こればっかりは、順平の頭が悪いってだけじゃないのがね」

「サラッと貶すのやめて頂けませんかね……」

 

 

 

 

******

 

 

 

 

――時は遡ること、6月9日の影時間。

 

 この日、S.E.E.S.の面々は、虐めによって体育倉庫に閉じ込められ、そのままタルタロスに迷い込んでしまい、加えてペルソナ能力の適性者と思われる少女、山岸風花の救出の為、数名が同じ方法でタルタロスに侵入した。

 山岸風花救出チームには、明彦を臨時リーダーとして、順平、そしてミネルバの三名。残りの三名は、タルタロス1階のエントランスにて待機していた。

 この場所はタルタロスの中でも比較的安全な場所の為、アナライズ担当の美鶴は此処から探索組の支援を行っているのだ。

 しかし、今回はエントランスからタルタロスを登るのではなく、変異前の月光館学園から直接侵入した事で、彼らが何処にいるのかまるで見当がつかず、更に通信も行えない為、支援が一切できないでいた。

 焦燥感と、あとゆかりが美鶴と黎斗に対して気まずさを覚えて、微妙な空気が漂う。

 

――そこに突然、大型シャドウが出現した。しかも、これまでに前例のない二体同時の出現。

 

「う……ぐ……」

「つ、よい……」

 

 アナライズの結果、腹部が太った女王のような姿のシャドウは『女帝』、逆に盛り上がった上半身と細い手足を持つシャドウは『皇帝』のアルカナのシャドウだという事が分かったのだが、その力は今までの大型シャドウとは比べ物にならない。

 

 何せ、攻撃がことごとく防がれるのだ。

 

「が、は」

 

 剣で応戦しようとした黎斗も、斬りかかった相手の『皇帝』にはまるで通用せず、結果、地面を這う事となった。

 

(なんだ、コイツは。光ったと思ったら、こちらの攻撃が効かなくなるなど……)

 

 そこで、黎斗は思う。そういえば先程、戦闘向けのペルソナを持つゆかりと美鶴、二人の攻撃の際、最初は通用していなかったかと。

 最初、ゆかりの『イオ』の風の魔法は『皇帝』を。そして美鶴のペルソナ――如何にも女帝らしい姿をした『ペンテシレイア』が、手にした剣による斬撃で『女帝』を転倒させた。

 光ったのはその直後。その瞬間から、先程は通用した彼女らの攻撃が、まるで通用しなくなったのだ。

 

(まさか、こいつらは耐性を自在に変えられるのか!?)

 

 ペルソナ、及びシャドウには、それぞれが持つスキルや魔法以外にも、耐性というものが存在する。例えば、ゆかりのイオは風属性に対して耐性があり、風の攻撃を受けても軽減する事ができる。

 更に、シャドウの中には攻撃を完全に無効化する事が出来るものもおり、オマケに反射・吸収するものまでいるのが確認されている。

 

(だが、これまでに確認されたシャドウの中には、耐性を変化させるものまではいなかった……厄介な)

 

 そして、そういった耐性や相性に関しては、仮面ライダーも例外ではない。ガシャコンマグナムによる銃撃が通用しない事もあれば、格闘攻撃が効かない事もある。

 

 しかし、大抵の場合は別の攻撃が通る。しかも、耐性以外にも弱点があったりするので、そこを上手くつけば、総攻撃を仕掛ける事すら可能なのだ。

 

(クソッ、弱点はなんだ!? ……いや、慌てて探したところで、また弱点を変えられては……やはり手探りでは限界があるか)

 

 こういう時に、弱点をサーチできる支援者がいればと思うのだが、今の時点ではいない。

 

「美鶴ッ!」

 

 ペルソナ召喚時の特有の割れる音と共に、『皇帝』と似て上半身がマッシヴな長髪のペルソナ――『ポリデュークス』が、その尖った右腕で『皇帝』を殴る。

 

「援護射撃!」

「行けェ! ヘルメス!」

 

 それに続くように、プロトスナイプ レベル2に既に変身していたミネルバがガシャコンマグナムで『皇帝』を射撃し、順平もヘルメスの持つ炎の魔法で『女帝』を燃やす。

 

 だが、二人の攻撃は無効化され、掻き消える。

 

「駄目だ! どういう理屈かは分からんが、こいつらは耐性を変えられるらしい!」

「えぇッ!? そんなのどうやって倒せっつぅんですかァーーッ!?」

「嘆いてる暇はないぞ順平!」

 

 そこからまた、壮絶な戦いが繰り広げられたのだが、その最中に、突然エントランスに一人の少女がやってきた事で事態は急変する。

 

「……あの女は」

 

 戦闘に巻き込まれないように柱にもたれかかり、傷薬で応急手当をしていた黎斗の死線の先には、山岸風花の親友、森山夏紀が。

 

(……そういえば、影時間に適性のない人間も、シャドウの『呼び声』で一時的に影時間に入れるんだったな)

 

 ここ最近、港区を中心に起きている無気力症患者……S.E.E.S.の間では『影人間』と呼ばれる者達の増加も、この『呼び声』があるからこそである。

 こうして影時間に入ってしまった人間は夢心地に誘われ、そして最後はその精神を喰われてしまう。

 

 風花の事情を話し、訳あって巌戸台分寮で保護していたはずの森山夏紀もまた、そうしてこのタルタロスにおびき出されたのだ。

 

「わ、私……風花に謝らなきゃ……」

 

 恐らく、呼び出された理由も、彼女の言葉通りなのだろう。彼女の心の影に、シャドウは付け込んだのだ。

 だが、その辺りは黎斗には関係ない。

 

 その後、夏紀を守る為に、お守り代わりとして渡されていた召喚器を使い、風花がペルソナ能力者として覚醒。

 彼女をスカートに包むように現れた目隠しをされた乙女のペルソナ、『ルキア』は、しかし戦闘向けではないらしく、風花の視界を確保するスカートのガラスのような部分で、なんとか攻撃を防いでいた。

 

 その本領が発揮されたのは、それから程なくしての事だった。

 

「クッ、これ以上はまずい――!」

 

 流石に二体の大型シャドウの攻撃を一方的に受けさせるのはまずいと判断したプロトスナイプが、彼女を庇う様に吶喊。

 バンバンクリティカルフィニッシュで『女帝』を運良く転倒させたが、今度は『皇帝』の一撃を貰い、彼女はエントランスからそのまま大きな門を弾き、外へと吹っ飛ばされてしまった。

 

 しかし、時間稼ぎは十分だったようだ。

 

「私……分かります。あいつらの、弱点」

 

 ルキアの本来の能力、それこそがアナライズ。敵の弱点を的確に当てた彼女の言葉に従い、残りのペルソナ使い達が攻撃を仕掛ける。

 幸いにも、基本となる攻撃……つまり『斬』『打』『貫』『火』『氷』『風』『雷』、以上の攻撃手段を全員で補える為、それをもって弱点を突き、次々と転倒させ、総攻撃を加える。

 

 だが、2体の大型シャドウも負けじと攻撃を返し、斬って斬られての消耗戦が続く。

 

 

 

 

――その最中。

 

 

 

 

『MIGHTY ACTION X!』

 

 もはや聞き馴染みすら感じさせる音声が、エントランスに響き渡る。それと共に、灰色のホログラムめいたエリアがエントランスの壁に沿って展開され、チョコレートのブロックのようなものがエントランスを飛び交う。

 

「――ッ、まずい! 奴だ!」

 

 それにいち早く反応したのは、他ならぬガシャットの製作者である黎斗だった。

 

 その声に、S.E.E.S.の面々と風花が反応し、『女帝』と『皇帝』も、先程の奇妙な音声と共に発生した空間の変質に気付く。

 

 黎斗が指差す方向を、シャドウ含め全員が見る。

 

 先程、プロトスナイプが吹っ飛ばされ、大きく開かれたエントランスの出入り口の門に、黒い人影。

 

――これまで、大型シャドウが出現していたのは、満月の夜であったと、明彦は推理した。

 

――ならば気づくべきだったのだ。

 

『マイティジャンプ! マイティキック! マイティアクショーン、X!』

 

――大型シャドウが現れるところ、常に黒いライダー、ゲンムが現れるという事を。




(社長特有の狂喜スマイル)

 ちなみに社長の部活は、檀黎斗役の岩永氏が子供の頃やっていた習い事から。選択肢にバスケ部があるのはP4だからね、仕方ないね。


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S.E.E.S.、黎斗とゲンムについて考察する。【後】

 ランボー怒りの(更新)高速化! ありがたみの欠片もねぇや!

 今回はガシャット関連の独自解釈が含まれています。ご了承ください。


「私ね、檀君がいない今だから言うけど……実は、彼がゲンムだったんじゃないかって思ってたんだ」

 

 突然のその告白に、その場にいる全員が目を丸くする。

 結局、ミネルバはあまりにも自己主張をしなさ過ぎる為、とりあえず彼らの中で『ミステリアスな外人秘書』というポジションに収まった、その矢先の出来事だった。

 

「な、なんだよ藪からスティックに……」

「それを言うなら藪の事もbushと言え」

「先輩、今そういうのは良いですから」

 

 明彦は後輩達からは筋肉バカだと思われつつあるが、意外と知能派でもある。しかしそこは特に触れられず、少しばかり落ち込む。

 

「……とにかく。私ね、最初は彼の事、そこまで信用して無かったって言うか」

「あー、高校生って言うのはちとかけ離れてるしなぁ」

「それもあるんだけど、なんていうのかな……モノレールの時の事、覚えてる?」

「あー、あの時もゲンムが来たんだよな」

 

 俺っちその時気絶してたんだけど、と順平が密かに呟き、へぇ、と風花が声を漏らす。多分彼の呟きは、風花の耳には届いていないはずだ。多分。

 

「うん。……その時、こっちを見たゲンムの目がね。すごく似てたような、気がしたんだ」

 

 そこまで言い、ゆかりは俯いた。

 

 彼女の脳裏に、こちらを静かに見つめていたゲンムと、初めて出会った時の檀黎斗がオーバーラップしていた。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 タルタロスのエントランスに足を踏み入れたゲンムは、悠然と二体の手負いの大型シャドウに歩み寄る。

 対するシャドウ側も、彼が敵であると本能的に察したのか、『女帝』は手にした小さな杖を振りかぶり、『皇帝』は剣を振りかぶる。

 

「■■■ィィィーーー!!!」

 

 金切り声を上げて『女帝』が杖を振るえば、その眼前に炎が浮かび上がる。その大きさたるや、順平のヘルメスのそれよりも一回り大きい。

 その炎の塊が、ゲンムに向かって放たれるが、ゲンムは横に転がって回避。

 続けざまに、『皇帝』がゲンムに斬りかかるが、これもジャンプで回避する。

 

「中々の機動力だが……しかし弱点を突かなければ奴とて……」

 

 黎斗の呟きの通り、いくらゲンムが身体能力的に優れていたとしても、攻撃手段が限られていてはどうにもならない。手数が少ないという事は、この場においては非常にデメリットになる。現在確認されているだけでも、ゲンムの攻撃手段は格闘攻撃に、腕部のガシャコンバグヴァイザーによる斬撃と銃撃のみ。

 どうやら物理攻撃が弱点らしい『女帝』はともかく、魔法攻撃が弱点の『皇帝』には届かない。

 現に、ゲンムが格闘攻撃を『皇帝』に仕掛けるが、『MISS!』というエフェクトが発生している。あれは、攻撃が効いていない時に現れるエフェクトだ。

 つまり、このまま戦っていたところでジリ貧というわけだ。

 

――そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…………」

 

 それを分かっていたのか否か、ゲンムは腰のガシャットホルダーからもう一本、ガシャットを抜く。

 

 プロトバンバンシューティングのように黒一色のカラーリングのそのガシャットのラベルに描かれているのは、剣と盾を構えた騎士の絵。

 そのタイトルは――

 

『TADDLE QUEST!』

 

 『タドルクエスト』。剣と魔法のファンタジーRPGの、その試作品である『プロトタドルクエストガシャット』の起動スイッチが押されると、プロトマイティアクションXの時とは打って変わって、荘厳な音楽が辺りを包む。

 

 そのガシャットを、ゲンムは前部のスロットには入れず、キメワザスロットに挿入。

 すると、彼の周囲にガシャコンウェポンが呼び出される時と同じサークルが出現。

 そこに一つだけ浮かぶ剣のアイコンにゲンムが触れる。

 

『ガシャコンソード!』

 

 そこから召喚された剣――AとBのコントロールパネルが備わった、炎のような刀身を持つ西洋剣『ガシャコンソード』を左手に構え、おもむろに『皇帝』に飛び掛かる。

 

 応戦しようとする『皇帝』。だが、ゲンムは空中で身体を捻り、それを回避。

 そして、ガシャコンソードで『皇帝』に斬りかかる。

 

「なッ――」

 

 なんと無謀な、と、ペルソナ使い達は同じ事を思っただろう。

 

 だが――

 

「―――ッ!?!?!」

 

 直撃する直前、ガシャコンソードがその刀身に超高温の炎を纏う。その炎の斬撃を食らった『皇帝』が転倒。今度は『HIT!』のエフェクトが発生する。どうやら、今は炎属性が弱点だったようだ。

 ゲンムは続けざまに、『皇帝』に斬撃を加える。しかし、背後で『女帝』が杖を振るう。

 

「……!」

 

 次に放たれたのは、電撃の魔法。

 突然上空から降ってきた電撃を、ゲンムはまともに食らってしまう。

 だが、ゲンムは怯まない。

 『女帝』は立て続けに電撃魔法を飛ばすが、今度はゲンムに回避され、『皇帝』の体表を電撃が跳ねる。

 

 電撃を回避したゲンムは、ガシャコンバグヴァイザー・ビームガンモードで銃撃を加えるが、『女帝』には全く効かない。

 それを確認すると、ゲンムはガシャコンバグヴァイザーをチェーンソーモードに変更。その太った腹に斬撃を加える。

 

 チェーンソー特有の駆動音がけたたましく鳴り、嫌な音を立てて『女帝』の腹が斬り裂かれる。

 

「■■■ャアァァ!!!」

 

 手負いの『女帝』は、悲痛な叫びを上げる。だが、ゲンムは一切手心を加えるつもりは無く、そのまま一閃する。

 弱点を突かれた『女帝』は、そのまま膝をつく。

 そんな『女帝』を庇うように『皇帝』が躍り出ると、その胸元辺りが再び光る。

 

「――! また弱点が変わりました! 今度は氷です!」

 

 この時、ゲンムを敵だとは知らない風花は、アナライズで『皇帝』の弱点属性を叫ぶ。

 『皇帝』は、先程のガシャコンソードの攻撃が炎属性()()だと高を括ったのだろう。

 

――だが、他のガシャコンウェポンがそれぞれ二つの形態を持つように、ガシャコンソードも例外ではない。

 

 風花の声を聞いていたゲンムは、ガシャコンソードのコントロールパネルのAボタンを叩く。

 

『コ・チーン!』

 

 ガシャコンソードから音声が流れ、その炎の刀身が()()()

 先の炎の刀身を持つ形態――『炎剣モード』から、氷の刀身を持つ形態――『氷剣モード』に切り替えたゲンムは、更にBボタンを三度連打。

 

 一体どうするつもりなのかと見守るS.E.E.S.メンバーの前で、ゲンムはガシャコンソードを逆手に持つと、それを地面に突き立てた。

 瞬間、突き立てられた場所から凍り付き、それが冷気の衝撃波を伴い、地面を走る。

 

「―――!?!」

 

 仮面以外に顔の無い『皇帝』はたじろぎ、それを防ごうと剣を構えるが、無意味だ。

 『皇帝』に到達した冷気が、『皇帝』、ひいては後ろに庇われた『女帝』ごと、足元から凍らせる。

 そして、遂には全身を氷漬けにしてしまう。

 

「す、すげぇ……」

 

 その威力に、順平も感嘆の声しか上げられない。

 

「…………」

 

 二体の大型シャドウが氷漬けになったのを確認すると、ゲンムはキメワザスロットのプロトタドルクエストガシャットを抜く。

 

『ガッシューン』

 

 そして、ガシャコンソードの鍔にあるスロットに装填。

 

『ガシャット! キメワザ!』

 

 キメワザ音声が鳴ると、ゲンムは再び、ガシャコンソードを逆手に持ち、構える。

 

『TADDLE CRITICAL FINISH!』

 

 その音声と共に、先程凍った地面の上を、ゲンムが滑る。

 更に、刀身から溢れる冷気が地面に触れ、それが傾斜を描き、簡易的なジャンプ台が作られる。

 

 氷のジャンプ台から飛び上がったゲンムは、逆手持ちのまま、氷漬けになった『皇帝』に横一閃の斬撃を加え、そのまま『女帝』諸共斬り込む。

 

 二体の大型シャドウを通り過ぎ、残身を決めるゲンム。

 

 その背後で、巨大な氷塊が切り口に沿って切り裂かれ、上半分が少しずれたかと思うと、激しい爆音と『PERFECT!』というヒットエフェクトと共に、派手に砕け散った。

 

「うわ――」

 

 砕け散った氷と一緒に周囲に飛んできた冷気に、その場にいた全員が顔を庇う。

 

「……あれ、ゲンムは?」

 

 気付いた瞬間には、もう遅い。

 ゲンムは既に、影も形も無くなっていた。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「……でも、あの時は黎斗もいたぜ?」

「うん。てことは、ゲンムは檀君じゃないって事になるんだよね……」

「それに、ミネルバはプロトスナイプという奴に変身するしな」

「じゃあ、一体誰が……」

 

 そこまで考えると、ゆかり、順平、明彦は揃って腕を組み、考え込む。一体、ゲンムの正体は誰なのかと。

 しかしただ一人、風花が考えている事は違っていた。

 おずおずと手を上げた風花は、「あのー」と切り出す。

 

「ゲンムって、本当に敵、なのかなって……あれ?」

 

 そこまで言ったところで、風花が他の3人の顔を伺ってみると、なんとも不思議そうな顔をしているではないか。

 

「ごっ、ごめんね! 私、変な事言っちゃって……今言ったのは――」

「……いや、確かにその通りだな」

「忘れて……へ?」

 

 最初に立ち直り、風花に同意を示したのは明彦。

 

「そういや、黎斗の奴もガシャット盗まれたーって事以外、なんも言ってなかったっけ」

「……思えば、今のところゲンムって、大型シャドウをやっつけてるぐらいしかしてない……あれ? って事は案外悪い奴でもない……?」

 

 非常に単純な話、ゲンムは今のところ、シャドウの討伐を掲げるS.E.E.S.にとって、得な事しかしていないように思える。

 その最中にプロトスナイプを含め、被害を被っているところは多少なりともあるが、単にこちらが大型シャドウ退治の邪魔になっていたと考える事もできるわけだ。

 

 順平が調子づくように、むふーと鼻を鳴らす。

 

「ま、なんだ? 確かにドロボーはよくねぇけどよ。でも実質手伝ってくれてるならいいじゃん? えと、こういうのなんて言うんだっけ? ビンビン?」

「Win-Winだ」

「そーそーそれそれ」

 

 檀黎斗、ミネルバ、ついでにこの日、家の事情で不在の桐条美鶴の預かり知らぬところで、謎のライダーゲンムが味方として認識され始めた瞬間だった。

 

――その仮面の下に、何を隠しているのかも考えずに。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

――その頃。桐条グループの本社ビルにて。

 

「……『黄昏の羽根』。確かに受けとりました。感謝致します」

「何。礼を言うのは此方もだ、檀君」

「気軽に黎斗と、そうお呼びください」

 

 その社長室で、檀黎斗はある人物と取引を行っていた。

 

「しかし、良いのかね?」

「何がです?」

「『仮面ライダーシステム』……ペルソナ使いでなくとも、シャドウに対抗できる技術と力。当然、君の会社が表立って公表しているゲームとは異なる。つまり……」

「企業秘密レベルのものだろうと、仰りたいわけですね?」

「そうだ」

「……なんら問題はありませんよ、桐条武治さん。これは我が幻夢コーポレーションからの、桐条グループへの親交の証のようなものなのですから」

 

 あくまでもにこやかに、黎斗は目の前のスーツを着た眼帯の男――桐条武治に、そう返答する。

 

「元々、私から幾月理事長や、ご息女の美鶴さんと約束した事です。だというのに、それを反故にするわけにはいかないでしょう。……それに」

「それに、なんだね?」

 

 にこりと、黎斗の口元が弧を描く。

 

「いえ。シャドウのせいで、我が社のゲームのファンやプレイヤーを失うなど、耐えられませんから」

「……そうか」

 

 一瞬、ほんの一瞬だが、武治の黎斗を見る目が厳しくなったが、次の瞬間には、いつも通りの威厳ある仏頂面へと戻った。

 

(……この少年、侮れん)

 

 武治は内心、黎斗に対し複雑な感情を抱いていた。

 

 未成年でありながら、自ら会社を起業。そして、今では世界有数のゲーム会社としてその名を轟かせる、『幻夢コーポレーション』の社長。

 

 特別な家柄の人間ではないが、だからこそ、怪しむ。

 

(……自分の身一つで成り上がった人間というものは、得てして腹に何かを抱え込んでいるもの。その点で言えば、この少年は……分からない)

 

 以前にも、武治は一度だけ、黎斗と会った事がある。その時はまだ中学2年生だったが、その風格は少年とはとても言えない程に堂々たるものだった。

 まるで、()()()()()()()()()()()かのように。

 

(仮面を被るのが得意なのか、それとも心の底からそう思っているのか……)

 

 問いただすべき事はいくらでもある。例えば、ゲーマドライバーにガシャット。あれらが一体、如何なる理屈で動いているのかを。

 現在、彼が知る中で唯一影時間で機械を動かす方法は、今しがた黎斗に渡した『黄昏の羽根』と呼ばれる物質である。

 だが、黎斗が開発したそれらが、一体どうやって動いているのか、そこまでは把握できていない。

 

 武治の予想としては何処からか『黄昏の羽根』を入手したとしか思えないのだが、もしそれ以外、何らかの方法でそれを成し得たのだとしたら――

 

(……若者に頼らず戦えるというのなら、今すぐにでも彼らを元の生活に戻し、我々の手でケリを着けたい。……そうだ。本来なら全て、我々が精算すべき事なのだ……)

 

 厳格ながら、内心では娘を思いやる父。それが、桐条家の現当主、桐条武治という人間であった。

 先代のような冷酷な人間には、彼はとてもなれそうになかった。

 

 そんな悩める父親を前に、黎斗はただただ、にこやかに微笑むだけだった。

 




 シャカリキスポーツが来ると思った? 残念、プロトタドルクエストでしたー! ……はい。エグゼイド本編でも奪った事のあるガシャコンソード君の出番でした。
 本編では奪ったら自動的に所持品みたいな扱いでしたが、急に出してもアレなので今回はシャカリキスポーツの初登場時みたいにしてみました(ゲンムが地上波初登場時のアレ)。

 おかしい……アイゲフンゲフンミネルバが全然目立ってないぞ……?

 


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ゲンム、暗躍する。【Stage 2】

 不要なシーンは削除する……(大胆な法王&恋愛の大型シャドウ戦カット)

 そういえば、けものフレンズのアニメが二期からたつき監督が外されるそうですが、つまり仮面ライダークロニクルの製作者やら運営がコロコロ変わる的なアレなのでは……?(飛躍)


「ひ、やめ――」

 

 「ろ」、あるいは「て」と続くはずだったであろうその言葉は、一発の銃声と共に消え、そして辺りには静寂が満ちる。

 

 ここは、港区某所の路地裏。普段であれば学校、あるいは社会からドロップアウトした不良達がたむろしている場所である。

 以前、山岸風花が行方知れずになった時も、檀黎斗と岳羽ゆかり、伊織順平、ミネルバの四人が、ここに手掛かりを求めてやってきた。

 なお、当然不良達は彼らからカツアゲするなり、女性二人に舌なめずりしていたが、黎斗の圧倒的交渉力(金)で丸く収まった。

 

 しかし、今現在は、ほとんど人気が無い。それどころか、そこかしこにいるであろう無視やら動物やらの生気すら感じられない。

 それもそうだろう。今は影時間。普通の人間には認識できない時間である。

 そして稀に、適性を持たない人間でも、シャドウの「声」に招かれてこの時間に入ってくる事もある。そうした人間の多くは、シャドウに襲われ、最終的に無気力症患者――S.E.E.S.の面々が言うところの影人間――となる。

 

 S.E.E.S.の活動は、そうした被害を最小限に食い止める為のものでもある。だが、それとは真逆に、影時間の性質を利用し、血生臭いビジネスを行う者もいる。

 

 ストレガ。イタリア語で『魔女』を意味する言葉だが、この港区では、ネット上で囁かれる、復讐代行を行う集団の事を指す。

 曰く、ネットの何処かに、隠された彼らのサイトがあるという。そのサイトに、自身が復讐したい相手を入力すれば、彼らがその復讐を代行するのだ。

 普通なら到底上手く行かないだろうが、彼らには可能なのだ。そう、影時間で象徴化した人間を、影時間に引きずり込む事が出来る彼らならば。

 

 この日も、ストレガのメンバー――と言っても、ここにいる三人の少年少女しかいないのだが――の手により、一人の男への復讐代行が完遂された。彼らもまた、影時間に適応できるだけではない。出自は異なれど、ペルソナ使いである。

 

「はー、楽な仕事やわ全く」

「……そうね」

 

 奇抜なファッションに、どこか生え際が危ない頭髪の眼鏡の少年――ジンが、言葉とは裏腹に退屈そうに首を捻り、コキコキと音を鳴らす。

 それに対し、真っ白のゴスロリファッションというこれまた浮世離れした格好の少女――チドリが、ジンの言葉に同意を示しつつも、全くジンの方を向いていない。

 

「そうは言いながら、随分と退屈そうですね? ジン」

「……まぁ、普段俺がやっとる事なんて、薬の商売とサイトの運営ぐらいやし」

 

 そして最後に、両腕に刺青の入っている、やせ細った上半身を堂々と晒しているという、三人中ダントツで浮世離れし過ぎている少年――その異様な雰囲気といい、大して整えている様子も無く伸びた頭髪や無精髭を見る限りどう見ても少年とは呼べないが、とにかく少年なのだ――、ストレガのリーダー、タカヤがジンに微笑みかける。

 その手には、不気味に光る月に照らされた、銀色のリボルバー――S&W M500が握られている。ただでさえ銃刀法違反だというのに、加えて()()()獣の狩猟用に使われるような強力な拳銃を所持しているのだ。これでどうすれば、警察にも悟られる事無く、復讐代行に及べるのか。

 そこに、影時間特有のルールや法則とでも呼ぶべきものが絡んでくるのだ。

 

 当然の事だが、影時間の最中であろうと、生命活動が不可能になれば人間は死ぬ。現実と同じだ。

 しかし、現実と大きく異なるのは、シャドウや人間によって物理的な死をもたらされた場合、影時間が終わると、全く別の死因に置き換わるのだ。

 例えば、今のようにタカヤが銃で誰かを殺したとしても、現実世界においては別の死因――例えば、病死や事故死となるのだ。そして、銃撃を受けた痕跡も、跡形も無く消える。

 更に彼らは、ターゲットとした人間を影時間に引きずり込む事が出来る。それを利用して、完璧な復讐代行を行ってきたのだ。

 

「……では、帰りましょうか。彼は来ていないようですし」

「せやな……ん?」

 

 今日も非合法にも程がある仕事を終えた彼らだったが、ふと、ジンは足を止める。

 仲間のチドリが、何故か後ろを向いているのだ。

 

「どないした、チドリ」

「……誰か、いる」

「なんやて?」

 

 それを聞き、ジンの脳裏に浮かんだのは一人の少年。こちらも、少年と呼ぶには乾いた雰囲気を醸し出している、訳有りの少年だが、チドリの言葉を聞く限りではその少年ではないらしい。

 彼女のペルソナがもつ固有能力。その応用のようなもので、隠れた人間やシャドウも判別ができるのだ。

 

「……隠れてないで、さっさと出てきてはどうです?」

 

 一連のやり取りを聞いていたタカヤは、ベルトにそのまま差していたリボルバーを抜き、背にした路地裏の闇に向かって突きつける。

 ジンもそれに続き、警戒するようにジェラルミンケースから、何と手榴弾を取り出す。

 一方チドリは何もせず、構えもせず、相も変わらずの無表情でゆらゆらと揺れていた。

 

 明らかに非合法な手段で手に入れたと思しき、危険な武器を突き付けられたその謎の人物は、しかし、闇の中から悠然と出てきた。

 

 

 

 

『……ほぅ。随分と、物騒なものを持っているな』

 

 

 

 

――果たして、それは常人では無かった。毒々しい紫のラインが走る黒いアンダースーツに、両肩には紫の装甲。胸にはゲームを意識しているとしか思えないボタンやゲージのついた銀色のプロテクターがあり、何よりも目立つのはその顔。

 赤く、妖しく光る大きな眼をゴーグルで隠したその頭部は、髪の毛のように逆立ってはいるが、見るとそれは、何かしらの仮面か、もしくはヘルメットのようなものであるとわかる。

 

「……ああ。貴方は最近、大型シャドウが現れるところに必ず出現するという」

 

 その人物を見て、しかしタカヤは動じなかった。それどころか、手にした拳銃を下ろしたのだ。

 

「タカヤッ!」

「良いのです。彼には、前々から興味がありましたので」

『それはまた、好都合だ』

 

 なおも謎の人物に警戒するジンを、タカヤが諫める。そして、そんなタカヤの言葉に、謎の人物が口無き口を開く。その声は、どうやら合成音声のようで、男か女かも判別できない。

 

『復讐代行屋、ストレガ。君達の事は既に調べてある。……故に、自己紹介は私だけしよう。私は、ゲンム。仮面ライダーゲンム』

 

 その人物――ゲンムが自己紹介をすると、ジンの顔が更に険しくなる。

 

「……なぁ、コイツ此処で殺しといた方がええんとちゃうか?」

『無駄だ。手榴弾程度では、私には通用しない』

 

 ギョッとした表情を浮かべるジン。何故なら彼は、タカヤにしか聞こえないように小声で話したつもりだったのに、このゲンムなる人物は、それを聞き取ったのだ。

 その言葉には、「タカヤは自分に攻撃を仕掛けてこない」という、そんな確信すら感じられる。

 

「……今日は、一体どのような要件で我々に接触をしたのです? 何の用もないというわけではないでしょう?」

『ああ。では、手っ取り早く話を進めるとしよう。夜は長いが、影時間は短い』

 

 タカヤに同意するように、ゲンムはストレガ三人の方へと歩み寄っていく。

 話を聞くつもりのタカヤ。構えこそしていないが警戒するジン。そして、我関せずとでも言いたげなチドリ。

 三者三様ではあるが、ゲンムもまた、気にしていないように見えた。

 

『今日は、君達に新しいビジネスを提案しに来た』

 

 言いながら、ゲンムは右手に提げた黒のアタッシュケースを両手に持ち、三人に見えるように掲げる。

 その表面には、世界的に有名なゲーム会社、『幻夢コーポレーション』のロゴマーク。

 これにはタカヤも、思わず怪訝そうな表情を浮かべてしまう。

 

「……まさか、我々にゲームをしろとでも?」

『似たようなものだ』

 

 訝し気に問いかけるタカヤに、ゲンムはなおも態度を変える事無く、そのアタッシュケースを開く。

 その中にあったのは――

 

「……なんやこれ? 幻夢コーポレーションのゲームカセットに……玩具みたいな……ベルトかこれ?」

『少し違うが、これらこそが、君達に新たなビジネスのカタチを提供するものだ』

 

 紺色のゲームカセット。そして、ライトグリーンの大きなバックル。言わずもがな、ライダーガシャットと、ゲーマドライバーである。

 

『ゲーマドライバー、そしてライダーガシャット……君達の為に用意したものだ』

 

 そう言われ、タカヤは目の前にいるゲンムの格好をもう一度思い出す。

 確か、腹部にこれと同じものがあったはずだ、と。

 そこまで考えて、これが如何なる用途の物かを、タカヤは把握する。

 

「……なるほど。しかし、解せない事がいくつか」

『何だ』

「この道具の使用が、私のデメリットにならないか、という事です」

 

 当然の疑問だ。例え強力な力を秘めていても、そういうものは肉体へのフィードバックが激しいのが大半だ。事実、彼らのペルソナも強力な力を秘めているが、その反面、暴走という危険が秘められているように。

 

『問題ない。君がこれを使って『変身』できたならば、余程のダメージが無い限りは死ぬ事は無い』

「『できたならば』、やて? そら、何かしら必要な適性があるっちゅうことか?」

『問題ない。君達が影時間に適応している。それこそが、このドライバーに必要な適性なのだから』

 

 ジンの疑問を、ゲンムはあっさりと一蹴する。

 

『君達のビジネスは、確かに理に適ったものだろう。復讐代行。金を貰い、ターゲットをあり得ざる方法をして殺害。君達の痕跡を残す事無く、依頼を達成する。……しかし、それでは限界がある』

「と、言いますと?」

『君達の商売に足りないもの……それは『循環』だ』

「循環、やて?」

『そうだ。如何に面白いゲームを創り上げ、それを世に送り出し、賞賛の声が上がったところで、その現状に甘えたままでは、いずれは衰退の一途を辿るのみ。だからこそ、新たなゲームを生み出し、そして売れる。そういった一つの循環を生み出さねば、君達に明日は無い』

「……えらい大層な物言いやんけ。お前に何がわかるんじゃ、ああ?」

 

 ジンがゲンムを睨む。だが――当然ゲンムの表情は変わらない。無機質で、色を全く見せない。

 

『分かるとも。言っただろう? 「君達の事は調べてある」と』

「……んのッ!」

「ジン」

「タカヤ! なんで止めんねん!」

「……別に、知られたからと言ってどうというわけではないでしょう? 我々は」

 

 思わず拳を振り上げかけたジンを、タカヤが語気を強め戒めた。

 

「つまり、貴方は我々の復讐代行に、一種のパターンを作れと、そう仰りたいのですね?」

『そうだ。復讐と憎悪が、輪廻の如く続く。そのシステムこそが、君達が生きていくには必要だと、そう思ったまでの事』

「……いいでしょう。その話、乗りましょう。あと一つだけ、聞かせていただければ」

『……なんだ』

 

 辺りの空気が、重々しく彼らにのしかかる。だが、この場にいるのは手練ればかりで。

 ジンの視界に、タカヤとゲンムが、いつぞやに見たウェスタン映画で、荒野で向かい合うアウトローと保安官の決闘のシーンがオーバーラップする。

 

「まさか、タダでこれを渡していただける、という事ではないでしょう?」

 

 この世は、ギブ&テイクで成り立っている。食べ物を買うのに、定められた値段と同じ金を払う。良い物品を得るのに、相応の価値があるものと交換する。

 彼らストレガもまた同じだ。復讐を代行する代わりに、相応の金を貰う。等価交換、それこそが世の常である。

 

 そして――

 

 

 

 

『……フム。見方によっては、そうなる』

「……は?」

 

 

 

 流石にタカヤも、これには拍子抜けした声を上げる。ジンも同じく。チドリは……やはり無関心だった。

 

『何、そう変わった事でもない。私にとって重要なのは、君が、それを使い続ける事にあるのだ』

「……どういう事です?」

『それは不必要な詮索だ。心配はいらない。それを使えば、少なくともペルソナを使うよりも遥かに燃費がいい』

「…………」

 

 当然、怪しむ。何故、使い続ける事に価値があるのか? 理由は?

 だが、恐らくゲンムは答えようとはしないだろう。そえに――彼らにとって、悪くない話でもある。

 

「……分かりました。詮索はしません。特にリスクが無いというのなら、それでいいでしょう」

『理解して頂けたようで何よりだ。……では、早速使ってみたまえ。心配はいらない。それが、君に新たな世界を見せるだろう』

 

 そう促されるままに、タカヤはケースの中のガシャットと、ゲーマドライバーを手に取る。

 ジンが心配そうに見ているが、タカヤは違った。

 

 手に取った瞬間感じたもの。それは――

 

「――ああ」

 

 そして、タカヤはそのガシャットの起動スイッチを押した。

 

 そのガシャットの名は――

 

 

 

 

『FORTUNE GAMBLER!』

 

 

 

 

 この夜、タカヤは、ジンは、そしてチドリは、己の運命をベットした。

 

 そしてそれから程なくして、復讐代行屋『ストレガ』は、より悪名高き存在として、ネットはおろか現実にも、その名を轟かせる事となる。



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社長、ナンパする。

 社長、人生はじめての……というわけで、オリジナルガシャットの力のお披露目前に、何故か思いついてしまったシーンを書きたいだけ書くなど。

>どうでもいい……


「……私は、何をやっているんだ」

 

 燦々(さんさん)と照り付ける真夏の太陽。太陽の周りには、広がる青空。所々に浮かぶ白い雲と、水平線で海と交わる光景がアクセントとなって、実に美しい景観であると言える。……檀黎斗が、そんなシチュエーションを楽しめるような人間であれば。

 

「きゃっ、風花やったなー!」

「ひゃあッ! 冷たーい! フフッ!」

「なるほど。喜んでいるのを見る限り、とりあえず水を掛ければよろしいのですね?」

「えっちょ、何を……」

「水掛け、全・開ッ! であります!」

「ブボボババボボ!?!?」

 

 キャッキャウフフというのは、ああいうのを言うのだろうと、砂浜に打ち付けられたパラソルの下にあつらえられたビーチチェアに寝そべりながら、黎斗はそんな事を考えていた。自分自身、らしくもない考えをしているものだとも思いつつ。

 

 現在、学校が絶賛夏休み中のS.E.E.S.がいるのは、日本の本州から南に離れた島、屋久島。

 屋久杉で有名なこの島には、桐条家の別荘が存在しており、美鶴の父、武治からの提案もあって、この島にやってきたのだ。

 そして、現在は二日目。本来であれば、黎斗はこの日の朝にでも本島にある会社へと帰っているはずなのだが、武治に諭され――黎斗自身は、「よもや断るまい?」という圧力だろうと勝手に考え――、仕方なしにこの島でバカンスを送る事にしたのだ。

 

……が、案の定と言うべきか、ゲーム以外には無頓着な彼は、こうして電源も存在しない砂浜で、ただ無意味な時間を過ごしていた。

……否、過ごしていていいはずがない!

 

(……そろそろ抜け出すか。何か理由でもつけて……)

 

 「社員にも休暇は必要」という事で、ミネルバはゆかり達と楽しんでいるようだ。いつの間にか(美鶴を除く)女性陣で買ったと思しき、水色の水着を着ている。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、という思いが頭をよぎるが、すぐにその考えを振り払う。

 

(……暑いからな。熱に浮かされたのだろう)

 

 そう自分に言い聞かせると、チラリと隣を見やる。

 

 パラソルの支柱を挟んで置かれたビーチチェアに、先程までの黎斗と同じように、美鶴が優雅に仰向けになって寝転がっている。というより、寝ている。

 制服の上からでも分かる抜群のプロポーションの持ち主である彼女は、白の水着にパレオという、その悩ましい肉体も相まって、どんな男でもイチコロであろう妖艶さを醸し出している。

 当然だが、その「どんな男」には、黎斗は含まれていない。彼は女性に対して、個人的にはそれ程興味がない。それどころか、寧ろゲーム作りにおいて、自分自身の色欲は邪魔だとすら考えている。現に、彼が今までに製作したゲームには、『ときめきクライシス』のような恋愛ゲームはあるものの、色欲を感じさせるようなゲームは一つたりとも作った事が無かった。

 

――そんな矢先であった。

 

「ほほぉーう?」

 

 突然、鬱陶しい声が掛かる。

 その声の主――伊織順平に、黎斗は思わずうんざりとした様子で向き直る。

 

「……何だね、一体」

「いやいやぁ~、黎斗クンも、オトコノコなんだなぁってね」

「…………」

「ちょっ!? そんな冷たい目やめて!? 普通に否定して普通に!」

 

 どっちなんだ、と思いつつ、黎斗はなおも冷ややかな目を順平へと向ける。

 

「まぁ、お前が今考えている事は、分からんでもないぞ。黎斗」

「……真田さん」

 

 見れば、その隣には引き締まった細マッチョな男――真田明彦が立ち、うんうんと頷いている。

……ちなみに、順平は普通にトランクススタイルのものを穿いているのだが、明彦はなんとブーメランパンツである。もう一度言う。ブーメランパンツである。

 スポーツマン故にそんな水着を選んだであろう事は明白ではあるが、ここはプライベートビーチではない。

 他にもやってきている人がいるというのに、流石にそのスタイルはまずいだろうという事で急遽、白いシャツを着てきたのだが、今の黎斗の位置からだとそのブーメランパンツが良く見えてしまう。なんというか、生々しい感じに膨らんでいる感じが、目も当てられない。というか毒だ。

 

 そのままトレーニングへの情熱を熱弁しだした明彦を前に、黎斗は極力嫌そうな顔を見せず、しかしゆっくりと目を逸らす。

 目の保養になるとすれば、不本意だが、全くもって非常に不本意だが、隣で寝ている美鶴の方だろう。

 

「……だーッ! とりあえず、お前来い!」

「えっちょっ、待っ――」

 

 そこが命取りだったのか、黎斗は順平に引きずられるようにして、影の外から引きずり出されてしまった。

 

 照り付ける陽の光が、黎斗の白い肌を容赦なく焼く。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「……断る」

「えー、いいジャン! やろうぜ、ナ・ン・パ!」

 

 順平がわざわざ(理事長を除く)男性陣を招いた理由を聞き、黎斗は一層、げんなりとした様子を見せる。

 彼らがいるのは、他の面々がいる場所より少し離れた木陰。そこで順平が明かしたのは、ナンパ。

 

「時間の無駄だと思うんだが」

「しかし、やらないならやらないでなんだか負けた気がしないか」

(この脳筋が……)

 

 内心で明彦に毒づきながら、黎斗は溜め息をつく。

 

「……そもそもの話、ナンパをする事によって、私に何の得がある?」

「そ、そりゃあ、水着のカワイコちゃん達と渚のデート――」

「言っておくが、私にはそんなものはどうでもいい。そんな事をする暇があったら、新作のゲームの開発をする。時間の無駄だ」

 

 それを聞いて「確かに」と同意を示したのは、他ならぬ明彦。

 

「正直、ナンパをしたからと言って、身体が鍛えられるわけでもないしな……」

「おや、話が分かるじゃないですか」

「ちょいちょいちょい待ち! いやいやいや、海ですよ!? 水着ですよ!? 女の子にときめかないんですかアンタら!?」

「どうでもいい」

「右に同じく」

 

 何故か黎斗の脳裏にときめきクライシスの起動音声が聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだ。

 

 二人の返答を聞き、思わず順平が天を仰ぐ。……が、そこは順平。こんな事ではへこたれない。

 

「そっ、そぉーだ! 黎斗、お前恋愛ゲーって作ってねぇの!?」

「……まぁ、データぐらいならあるが。それが何か?」

「だったら話は早いぜ! いいか? フツー、どんなゲームを作るにも知識は必要だろ?」

「……それはそうだが」

「ならさならさ! 面白い恋愛ゲーを作るのに必要なのは……そーゆー経験だと思うんですよ俺っちてば!」

 

 なるほど。一理ある、かもしれない。どんなゲームを作るにも、必要不可欠な知識のデータというものがある。特に、現実に則した技術があるゲームならば尚更。

 もっとも、求めるのはリアルではなく、あくまでもリアリティーだ。リアルを突き詰めてしまっては、プレイヤーが見たくないものまで映し出してしまう事になる。それは駄目だ。

 ゲームはゲーム。現実ではなく、誰もがヒーローになれる世界でなければならない。それに――

 

(確かにときめきクライシスのデータは頭に叩き込んであるし、一通りパソコンに入力済みではあるが……もし、あれよりも面白くできるとしたら?)

 

 順平の言いくるめが、まさかの功を奏した瞬間だった。

 

「それにぃ、真田センパイもぉ、身体だけ鍛えてていいんスかぁ~?」

「何? どういう意味だ」

「つまり、精神的にも鍛えなきゃいけないと思うんスよォ~! ホラ、ボクシング部のエース、真田明彦と言えば! やっぱり女の子がたくさん来るじゃないッスか! だから、もし女の子がいっぱい来てもいいように、平常心で対応できるようにしないと!」

「美鶴となら話せるぞ?」

「美鶴サン以外は?」

「…………」

 

 明彦はただ、沈黙した。

 

「……いいだろう。今回は君の口車に乗ってやろう」

「……非常に不本意だが、同じく」

「人聞きの悪い事言うなっての! ……ヘヘ」

 

 こうして、二人はまんまと順平に丸め込まれてしまったのだった。

 

 

 

 

――そして時は過ぎ去り。

 

 

 

 

「何故だ……何故一人もナンパできないッ……!?」

「そりゃ、あんなアプローチじゃ寄り付くわけないじゃないッスか……」

 

 明彦と順平は、二人して地に伏せていた。

 そう、見ての通りナンパに挑み、そして見事に敗北、撃沈したのだ。

 

「……ふむ。明らかに見た目は女。だというのに男。……これは全年齢向けではないな」

 

 そんな二人とは対照的に、黎斗はたった一人、夕焼け空を背に堂々と立ち、そして思考の海へと潜っていた。

 

 彼も失敗したのか? 否、逆である。ただ一人、成功していたのだ。

 そも、黎斗は人生経験で言えば、他の二人の追随を一切許さない程度には積んできている。何せ、本来の世界での約30年に、こちらの世界での10年程、加えて社長として社交界でも渡り歩いてきたのだ。しかも、ときめきクライシスの製作時に培った知識もある。

 普段の紳士的な立ち振る舞いを貫いたままなら、そんじょそこらの女性を口説くなどわけない。素の状態でナンパをしろと言われたら、まず間違いなくアウトだが。

 

 ちなみに、口説いた女性には何かしらの理由を付けてそそくさと別れた。何とも罪な男であるが、本人は全く罪悪感などこれっぽっちもないのだから余計性質が悪い。

 

「畜生……これが、汚ねぇオトナのやり口ってかぁ……」

「待てよ……つまり俺は……後輩に負けたのか……?」

「悔やむ事はない。これも経験の差だ。人生の、ね」

 

 非情にも追い打ちをかける黎斗。そのたった一言で、それまでのナンパでの数々の失敗が祟り、ハートブレイク寸前だった二人の心は、完全に折れてしまった。こればかりは、如何にペルソナが心の鎧であっても防げない。

 

 そこに、海で遊び終えたS.E.E.S.の女性陣が集まってくる。

 

「あ、おーい、檀くーん! ……と、あれ、順平に、真田先輩? 何してんの二人とも……?」

「何、ただの日焼けだよ。順平はモテたいが為にワイルドさを。真田先輩は、我慢強さを磨きたいらしい。もう少しやっていくそうだから、しばらくそっとしておこう」

「ふーん……」

 

 本当にテキトーな言い分だが、順平、明彦ともにダウンどころか戦闘不能状態の為、それどころではなかった。

 

 こうして、黎斗は二人を放置し、女性陣と共に先へ桐条の別荘へと戻っていった。

 その後、残された二人がようやく我に返り、慌てて別荘へと向かったのは、日が沈んでしばらく経った頃だった。




 本筋と全く関係ないし、山もなけりゃオチもない。そんな与太話があってもいいじゃない。人間だもの。ミツオ。


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社長、ストレガと対峙する。【前】

 お久しブリーフ...(レ)

 読んで貰えてるかよくわからないですが久しぶりの投稿です。


「――お見事です」

 

 その日、大きく不気味に輝く満月が天に登った。それが意味するところはつまり、新たな大型シャドウが出現するという事に他ならない。

 現に、風花のペルソナのサーチ能力で、その存在が確認されている。

 そして、S.E.E.S.の面々はこれを討伐すべく、港湾部某所に存在する旧陸軍の基地へと乗り込んでいった。

 だが、そんな彼らを追うように、突然その二人は現れた。

 半裸の少年らしからぬ風貌の少年に、眼鏡の少年。

 

 復讐代行人、ストレガのタカヤとジンだ。

 

「お目にかかるのは初めてですね」

「え、誰……!? 私のルキアには、今の今まで何の反応も……!」

 

 風花のペルソナは、主に探知能力に優れたペルソナである。それ故に、見る限りではシャドウではない人間が、自分のペルソナの探知に引っ掛からなかった事に、戸惑いを隠しきれないでいた。

 しかし、そんな彼女を気にも留めず、タカヤは自己紹介をしだす。

 

「私の名はタカヤ、こちらはジン。"ストレガ"と、我々を呼ぶ者もいます」

「ストレガ……確か、ネットで噂されている、復讐代行者か」

「おや。まさか、かの有名な幻夢コーポレーションの社長が我々の事をご存知とは」

「構成員までは知らないがね」

 

 自分達以外の影時間適性者の突然の登場に驚きを隠せない一同だったが、黎斗は相も変わらず平静を保ち、ミネルバに至っては既に臨戦態勢に入っていた。

 

「さて……今日までの皆さんのご活躍、陰ながら見せて頂きました……聞けば、人々を守る為の"善なる戦い"だとか」

「まぁ、一応は間違っていないが」

 

 何か含みを感じさせる一言に、ゆかりと美鶴は引っ掛かりを覚える。だが、次に放たれたタカヤの一言に、意識を逸らされる。

 

「実は、今日はそれをやめて頂きに来ました」

 

 そこから語られたのは、あくまでも可能性の話。

 シャドウや影時間を消せば、力――ペルソナが消えるかもしれない。なればこそ、自分達は止めねばならないのだと。

 それは同時に、目の前の二人に関する、ある事実を示していた。

 

「まさか……ペルソナ使いなのか!?」

 

 美鶴の言葉に、黎斗とミネルバを除くS.E.E.S.の面々が驚愕する。

 

「もう少し、頭を使って欲しいものだ……貴方がたは力が消えても――」

「構わないさ、少なくとも私は」

 

 即答。これからタカヤによる説得が始まろうかというところで、黎斗がバッサリと切って捨てた。

 これは仲間達のみならず、タカヤらも驚きを隠せない。

 

「……躊躇なく言いよったな、この社長」

「ほう。それは、シャドウを危険視するからですか? ……それとも、貴方には他の力があるから、でしょうか?」

 

 他の力。言うまでもなく、『仮面ライダー』の事だろう。現状、ペルソナ使いでなくともシャドウを倒しうるこの力は、召喚の際に精神力を消耗するペルソナ使い達にとっての、もう一つの切り札になり得る。

 

「ふむ。半分は正解だという事にしておこう」

「半分やと?」

 

 「そうとも」と、黎斗はあっけらかんと言い放つ。一応言っておくと、現段階でS.E.E.S.の戦闘メンバーの中で、最も戦闘能力に劣るのが彼である。風花はサポートの為、含まないものとする。

 

「君達の言葉から何となく感じた事だが……君達はペルソナという力に、特別なものを感じているんだろうね」

「せや。ペルソナがあるから、わしらはこの影時間で自由に動ける。ここは、わしらのテリトリーっちゅうわけや」

「それに、復讐代行という仕事から察するに、君らは人殺しに対して……いや、人が死ぬ事に忌避感や嫌悪感を感じていない。違うかな?」

「ええ。ですから、シャドウが人を襲おうが、放っておけばいい。シャドウでなくとも、人が人を襲う」

「確かに」

 

 異様な会話に、S.E.E.S.の面々も口を挟めない。タカヤもそうだが、黎斗も冷静ながら、高校生らしからぬ言動である。

 

「貴方がたなら分かるはずだ。退屈な日常から乖離した現状を、楽しんでいる自分を」

「た、楽しんでなんて……」

 

 タカヤのその一言に、動揺するゆかり達。しかし、それすらも黎斗は、少し笑うだけで流す。

 

「全くだ。こんなもの、ゲームとしてはまだまだバグだらけ。コンティニューすらできないとは、プレイヤーからクソゲーと呼ばれても無理はない。楽しめるクソゲーも無くはないが……それとこれとは話が別だ」

「……そういえば、貴方はただ一人、ペルソナを召喚できず、しかしあの力を使っているわけでもありませんでしたね。ならば、力を持つ事に憧れを抱いたりなどはしないのですか?」

「それこそ、愚問だな」

 

 メンバー最弱一歩手前ながら、余裕綽々といった態度を崩す事無く、黎斗は口元を緩める。

 

「私はプレイヤーではない。ゲームを作る側の人間だ。彼女に与えた仮面ライダーの力も、私が生み出したもの。……そしてゲームとは、それを楽しむプレイヤーの存在が不可欠だ」

「……何が言いたいんや、己は」

「単純な事だ。影時間によって影人間が増えれば、その分、私の創り出したゲームをプレイする人間も減っていく。それは、経営者としても、クリエイターとしても看過できない事だ」

「……つまるところ、自分の目的の為にしか戦っとらんってわけやな。結局お前も偽善者ってこっちゃ」

「少なくとも、私達には人を救ったという実績がある。進んで人を殺すような君達に、どうこう言われる筋合いはないと思うな」

 

 自分達を他所に、どんどん話を進めていく黎斗に、ゆかりは同年代として違和感を感じつつも、それは彼が社長という存在であるからと、そう自分で納得させた。

 

「あー……それなんやけどな」

 

 と、黎斗の発言を聞き、ジンがブレーキを掛ける。

 

 

 

 

「わしらな、やり方をちぃとばかし変えたんや」

 

 

 

 

「……何?」

 

 明彦と美鶴は眉をひそめる。彼らのやっている事は、黎斗と彼らの対話から察するに、人殺しなのだろう。それでやり方を変えるとは、より残酷な手口になったのか、それとも……。

 

「ある方からの贈り物のおかげです。以前よりも、我々の生活はそれなりに改善はされた、かもしれませんね」

「贈り物ぉ?」

 

 首を捻る順平を他所に、ジンは手にしたアタッシュケースを開くと、中からある物を取り出す。

 ライトグリーンのバックルに、紺色で手の平大の物体。

 

「……! ドライバーにガシャットだと!?」

 

 美鶴が、今宵幾度目かになる驚愕の表情を浮かべ、そしてすぐさま黎斗を見やる。

 他のメンバーも同様だ。ミネルバは相変わらず構えているが。

 

「い、いや。私は知らない。あのガシャット……まさか、ゲンムが作ったのか!?」

「おや、ご存知でしたか。いやはや、我々のペルソナは、貴方がたのそれと比べると強力なのですが、制御に難がありましてね……これは、素晴らしいものだ」

 

 そう言いながら、タカヤはジンから渡されたゲーマドライバーとガシャットを、黎斗達に見せつけるように掲げる。

 そして、ドライバーを腹部に当てると、自動的に彼の腰にベルトが巻かれる。

 

「ふふ……たまには、他人の意見を取り入れるというのも、悪くない」

 

 微笑みを称えながら、タカヤは手にした紺色のガシャットを起動させる。

 

『FORTUNE GAMBLER!』

 

 その音声と共に、ガシャットと同じ紺色のゲームエリアが展開。

 タカヤの背後には、ガシャット――『フォーチュンギャンブラー』のロゴと、弾倉がルーレットのようになっているリボルバー拳銃をこちらに向けた男の絵が描かれたホログラムパネルが出現する。

 

「そのおかげで――我々は新たなステージに立てた!」

『ガシャット!』

 

 そして、ガシャットをドライバーに装填。

 

「さぁ、賭けなさい! 貴方がたの命を! 運命を!」

 

 タカヤの内を巡る高揚感。その赴くがままに、彼はレバーを開く。それと同時に、彼の周囲にいつものセレクトパネルが出現。

 

『ガッチャーン! LEVEL UP!』

 

 いつものレベルアップの音声と共に、タカヤは左手をそのまま左に伸ばし、あるパネルに触れた。

 触れられたパネルが跳ね上がると、そのままタカヤと同じぐらいの大きさにまでパネルが拡大。そこに描かれているのは、派手な襟が目立つライダーの絵。

 

『命賭ける! 運命の輪! 俺はギャンブラー!』

 

 そのパネルがタカヤの身体を透過し、彼の身体を超人へと変化……否、変身させる。

 

 果たして、そこに立っていたのは、シルクハットめいた帽子を被り、派手な襟と長い裾が特徴的なスーツを身に纏った仮面ライダー。

 

「では、改めまして自己紹介を。私は、そうですね……仮面ライダーストレガ、とでも名乗っておきましょうか」

「……随分安直じゃないか」

「意味は存じ上げています。が、だからどうだというのです。かつての魔女狩りでは、男も魔女として断罪されたそうですしね」

「いずれは、君自身も断罪されると?」

「さぁ、そこまでは。……ただ分かっているのは一つ。如何なる人間であろうと、生命であろうと、やがては死ぬという事だけです」

「道理だな。……ミネルバ、やれるか」

「問題ありません」

 

 黎斗が一言そう告げるよりも早く、ミネルバはドライバーを装着し、プロトバンバンシューティングガシャットを構えていた。

 

「桐条先輩、皆を連れて先に向かってください」

「っ、しかし!」

「貴方もご存知でしょう? ライダーの力を。はっきり言って、今の貴方達で相手取るのは無謀というものだ」

 

 冷静にそう言い放つ黎斗に、美鶴は一瞬、苦い顔をする。だが、彼女も伊達にこれまで戦ってきたわけではない。すぐに気持ちを切り替え、残るS.E.E.S.のメンバーに指示を飛ばす。

 

「……我々は、先んじてシャドウを討つ! 行くぞ!」

「でも――」

「いいから行きたまえ。ライダーの相手は、ライダーか怪物がするものだ。……それとも、君らでは大型シャドウをどうにもできないと言うつもりか?」

「……! 出来らぁ! 行こうぜ!」

 

 黎斗の発破(?)が効いたのか、単に嫌な含みを感じて、負けん気が起きたのか。いずれにせよ、黎斗の言葉を聞き、S.E.E.S.の面々は奮い立ち、そのまま陸軍基地の深部へと潜っていく。

 

「第弐戦術、変身!」

『ガッチャーン! LEVEL UP!』

『バンバンバンバンシューティング!』

 

 その間に、ミネルバはプロトスナイプ レベル2に変身。ガシャコンマグナムを召喚し、臨戦態勢に入っていた。

 

「ちぃ! 邪魔を!」

「そう慌てる事はないですよ、ジン」

「しかし!」

「そうだ。折角だから、ゆっくり楽しんで行きたまえ。タカヤ、君も自分以外のライダーとの戦闘は初めてだろう?」

「ええ――存分にこの力、試させていただきましょう!」

 

 そう言うなり、タカヤ、否、仮面ライダーストレガは、自らのガシャコンウェポンを召喚する。

 

『ガシャコンリボルーレットガン!』

 

 彼の右手に現れたのは、大型の拳銃。グリップ付近とボタンまでは、撃鉄が付いている事を除けばガシャコンマグナムと形状が似ているが、その銃身のほとんどが大型の回転式弾倉で占められており、全体的にはガシャコンマグナムのハンドガンモードよりも大きい。

 

「では、始めましょうか。当然ながら、掛け金は――その命です」

 

 感情を感じさせない仮面の奥で微笑みながら、ストレガはその銃口をプロトスナイプに向ける。

 

「敵のガシャットは、どうも純正モデルのようですが……」

「関係ない。恐らく使い始めて間もないのだろうが、その程度では、プロトガシャットの性能差を埋められん。さっさと倒して、皆の後を追うぞ」

「了解、迎撃します」

「はん。自信過剰やのう……出来ると思とんのか?」

 

 今ここに、新たなるライダーとの戦いの火ぶたが切られた。




 なんだか文章力が下がってる気がしなくもない……いや確実に下がってるなこれ? それとも神が凄すぎるだけなのか……?

 それはともかく、新ライダーストレガのレベルやら何やらは、多分次回になると思います。パンチ力? キック力? そこまではちょっと...。

 あ、あと感想もどしどしお待ちしてナス!


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社長、ストレガと対峙する。【後】

 平成ジェネレーションズFINAL、ヤバいッスねクォレハ……
 監督のリスペクト精神がフルスロットルだし、オーズ周りも攻めてくるし、今年の最後の最後でとんでもない映画が世に放たれたって感じでした……

 あ、今回は後書きの方にちょっとした設定みたいなののっけてます。


 新たに現れた仮面ライダーストレガ。そして、現時点においてS.E.E.S.側唯一の仮面ライダー、プロトスナイプ。両者ともに銃を武器にしているだけあり、戦いは熾烈を極めた。

 

 基地の入り口を、光弾が飛び交う。

 

「フッ」

「ハッ!」

 

 ストレガは、ガシャコンリボルーレットガンの大きさの問題から、片手で撃鉄を起こしながらトリガーを引く。

 一方で、撃鉄を起こす必要のないガシャコンマグナムを使うプロトスナイプは、とにかく連射しまくる。

 

 そして、双方ともに銃撃を数発受ける。この時点で、プロトスナイプの方が弾幕という意味では上回っているが、単純な火力ではストレガの方が上回っていた。

 現に、プロトスナイプのゲージの方が、ストレガよりも減っている。ストレガのゲージがまだ三分の一程しか減っていないのに対し、プロトスナイプは既に半分。

 

「なるほど。あのリボルーレットガンとやら、連射は不向きだが、単純な火力ではマグナムより上か……いや、それだけではないな」

 

 冷静に状況を見極める黎斗は、更にリボルーレットガンのある性質を見抜いていた。

 それは、銃身上部にある三つの枠。ストレガが撃鉄を起こす度に弾倉部分が回転し、そしてトリガーが引かれると弾倉の回転がストップ。さながらスロットマシンのように、枠の中に絵柄が現れるのだ。

 

「『フォーチュンギャンブラー』というガシャットの名前。そしてあのガシャコンウェポン。随分と分かりやすいな。ミネルバ、敵のガシャコンウェポンの出目を逐一記録しておくんだ」

「っ、了解、です!」

 

 恐らく、スロットの出目次第で何らかの効果が発生するのだろう。現時点ではどういった効果が発生しているのかが分かりづらいが、与えるダメージアップや防御力アップがあっても不思議ではあるまい。

 

「おや、流石はゲーム会社の社長……いえ、創造者なのだから当たり前と言うべきですかね」

「随分と余裕そうじゃないか……ならば」

 

 そう口にするなり、黎斗は懐に手を伸ばす。

 

「――! なんやするつもりか! させるかオラ!」

 

 その仕草を見逃さなかったジンが、黎斗よりも素早く拳大の物体――手榴弾を手にすると、そのピンを抜き、黎斗に向かって投げつける。

 

「……ち、ィ! ――ミネルバァ!」

 

 その間に黎斗は、懐から目的のものを取り出していた。だが、このままでは手榴弾を避けるのは到底難しい。

 

 だから、黎斗は手にした赤いそれ――『ゲキトツロボッツガシャット』を、迷う事無くプロトスナイプへと投げ渡した。

 

「……! いけない!」

「やらせませんよ!」

 

 ようやく黎斗の元へと向かう手榴弾に気付いたプロトスナイプは、それを撃ち落とさんとガシャコンマグナムを向けるが、そうは問屋が卸さない。

 それを邪魔するように、ストレガが発砲。プロトスナイプはその銃撃と、黎斗から投げ渡されたガシャットの受け取りに専念せざるを得なくなってしまう。

 

――そして、手榴弾は黎斗の足下へと転がり――

 

「…………!」

 

 激しい爆発が起こる。手榴弾の破片が飛び散り、巻き上がる炎と煙が、黎斗の姿を覆い隠す。

 

「黎斗さん!」

「余所見は、禁物ですよ!」

 

 黎斗の安否を気遣うプロトスナイプに、ストレガが容赦なく銃撃を加える。

 

「クッ……仕方ありません!」

 

 なんとか銃撃を掻い潜り、ゲキトツロボッツガシャットを手にしたプロトスナイプは意を決し、ゲーマドライバーのレバーを戻すと、手にしたゲキトツロボッツのガシャットをドライバーのもう一つのスロットへと差す。

 ライダーとしての経験がまだ浅く、ゲーマドライバーの持つ機能の全てを把握しきれていないストレガは、思わず首を傾げる。

 

「何を――」

「第参戦術!」

 

 その声と共に、プロトスナイプは再度レバーを開く。

 

『ガッチャーン! LEVEL UP!』

『ババンバン! ババンバン! バンバンバンバンシューティング!』

 

 ここまでは、通常のプロトバンバンシューティングと同じ流れ。

 しかし、ゲキトツロボッツガシャットが加わる事で、プロトスナイプは更なる力を得る!

 

『ア・ガッチャ! ぶっ飛ばせ! 突撃! ゲキトツパンチ! ゲキトツロボッツ!』

 

 追加で聞こえてきたのは、プロトバンバンシューティングとは異なる、熱血系の歌。

 それと共に、プロトバンバンシューティングのパネルの前に、新たに赤いパネルが追加され、そこから赤い身体をした、小型のロボットのようなものが飛び出してくる。

 

「何……!?」

 

 たじろぐストレガだったが、気を取り直し、その小型のロボット――ロボットゲーマを撃ち落とそうとするが、ロボットゲーマは機敏に動き回り、逆にストレガに攻撃を加えていく。

 そして、出現した赤いパネルが元々あったパネルと重なり、プロトスナイプの身体を通過すると、ロボットゲーマはプロトスナイプの頭上に舞い戻り、そのまま落下。

 落下したロボットゲーマがプロトスナイプと文字通りゲキトツ……する事は無く、ゲーマのボディが分裂し、それぞれがプロトスナイプの身体に被さる。

 プロトスナイプの前髪のようになっていたパーツが捲れ上がり、頭部にはV字アンテナのついたヘッドギアのようなものが装着される。

 更に、胸部及び両肩を、如何にもロボらしいアーマーが覆い、極めつけにその左腕には、元のプロトスナイプのそれよりも一回り大きいアーム――ゲキトツスマッシャーが装着されていた。

 

「何です、それは……!」

「仮面ライダープロトスナイプ、レベル3、であります」

 

 レベル3へとレベルアップを完了したプロトスナイプは、そう宣言するやいなや、ゲキトツスマッシャーが装着された左腕を、思い切りストレガへと突き出す。

 瞬間、ゲキトツスマッシャーに内蔵されたロケットブースターが、腕の動きと連動し点火。さながらロケットパンチのようにストレガに向かって飛ぶ!

 

「な――」

 

 射出されたアームに一瞬呆気に取られかけたストレガは、すぐさま態勢を立て直すが、ガシャコンリボルーレットガンでは間に合わないと判断し、両腕で防御する。

 だが、それこそがプロトスナイプの狙い。

 

「そこッ!」

 

 プロトスナイプは、今もなお手にしているガシャコンマグナムでストレガを銃撃。

 本来、ゲームコンセプトにおいて格闘戦に特化したゲキトツロボッツではあるが、何もそれだけにしか能がないというわけではない。ロボット特有の高い精度という側面が、ガンシューティングゲームであるプロトバンバンシューティングとの親和性を発揮し、ストレガの防御の薄い部分への更なる精密射撃を可能としたのだ。

 結果、ガードを崩されたストレガは、ゲキトツスマッシャーの一撃をモロに受けてしまう。

 

「が、は」

 

 57トンものの威力を誇る強化アームの直撃を受けたストレガは、肺から息を絞り出す。

 そのライフゲージは、残り2メモリ程度。このままでは、キメワザを受けない内にゲームオーバーになってしまうだろう。

 対するプロトスナイプは、ゲキトツスマッシャーを回収すると、警戒したままストレガへと歩み寄る。

 

「勝負あり、ですね」

「グ……認めましょう。私にはまだまだ、同じ仮面の使い手との戦いの経験が浅い」

「ならば、この場は引き下がってくれるのですか」

「そうですね……」

 

 そう言いながら、ストレガは身体をよろめかせながらも、なんとか立ち上がる。

 

「……置き土産ぐらいは、残していきましょう!」

 

 気付いた瞬間、既にストレガはフォーチュンギャンブラーガシャットを、ガシャコンリボルーレットガンに、素早く装填していた。それこそ、リボルバーに弾丸を装填するが如く。

 ストレガの変身者たるタカヤの主武装は、リボルバー。それも、かなり長い間使っている。

 だからこそ、その動作は彼にとって慣れ親しんだものであった。

 

『FORTUNE CRITICAL FINISH!』

「――ッ!」

 

 予備動作をまるで感知できなかったプロトスナイプは、咄嗟にガシャコンマグナムを放り出すと、ゲキトツロボッツガシャットを素早く左腰のキメワザスロットに装填、スイッチを押す。

 ゲキトツスマッシャーは強力な武装だが、その反面、左手が固定される。ガシャット等を握れない為に、唯一空いている右手にガシャコンマグナムを持ったままでは、キメワザを放つ事が出来ないのだ。

 

 プロトスナイプがキメワザに入るより少し先に、ストレガがガシャコンリボルーレットガンの撃鉄を起こす。

 瞬間、弾倉部分が回転。銃身上部の枠の中のスロットもまた、回り始める。

 そして、ストレガの指が、トリガーに掛かった。

 

(間に合え――!)

『GEKITOTSU CRITICAL STRIKE!』

 

 キメワザの音声が鳴ると同時に、プロトスナイプは捻り込むように拳を突き出し、ゲキトツスマッシャーを射出。

 回転しながら飛翔するゲキトツスマッシャーに、ガシャコンリボルーレットガンの銃口から飛び出した、コインの形をした無数のエネルギーの弾幕が襲い掛かる。

 コイン型のエネルギーがゲキトツスマッシャーとぶつかり、小爆発を起こしながら弾ける。

 

 その切迫した攻防が、どれほど続いたであろうか。

 たった数秒のようにも、はたまた数分にも思える打ち合いの末、プロトスナイプとストレガの間でぶつかり合っていた鉄拳と弾幕の中心から、激しい爆発を起こす。

 

「――ッ!」

 

 先程のジンの手榴弾とは比較にならない程の爆発に、プロトスナイプは腕で自らを庇う。

 

『――では、またお会いできる日を、楽しみにしていますよ』

 

 そんな風に、タカヤの声がエコーが掛かっているかのように聞こえたかと思えば、プロトスナイプが気づいた瞬間、既に復讐代行人の二人は、忽然と姿を消した後だった。

 

「……逃げられた」

 

 口にした通りの事実に、プロトスナイプから変身解除したミネルバは、知らず知らずのうちに、拳を強く握りしめていた。

 だが、今は立ち止まっている場合ではないのも、また事実。

 

「……そうだ。黎斗さんは」

 

 先程、ジンの手榴弾を受けた黎斗の安否を探るべく、辺りを見渡す。

 だが、何故か黎斗の姿は何処にもない。

 

(爆発にやられて……? まさか、そんな事……)

 

 しかし、可能性が無きにしも非ずなのが苦いところである。事実、今現在の黎斗は、ペルソナ能力を持たない、影時間に適性があるだけの人間でしかない。

 これがペルソナ使いであれば、ある程度は耐える事はできただろう。だが、常人が手榴弾の一撃を浴びれば――

 

『――えるか! ミネルバ!』

「美鶴さん?」

 

 そこまで考えたところで、唐突に美鶴から通信が入る。

 

『まず――になっ――』

「なんです? よく聞こえません」

 

 が、どうも通信状況が安定しないらしく、時折テレビの砂嵐のような音が混じり、よく聞き取れない。

 

『――ムが、ゲンム――入して――』

「え?」

 

 だが、一瞬聞こえた『ゲンム』というワードに、ミネルバは反応せざるを得なかった。

 

――まさか、また来たのか? だがいつの間に? どこから侵入した?

 

 全く気づけなかった、気づかなかった事から、恐らくはストレガとの戦闘の際、隙を突いて侵入したのだろう。

 そして、その目的は恐らく――

 

 そこから先の思考をしようとした時、S.E.E.S.の面々が潜っていった地下の方から、けたたましい爆音が轟く。

 

「この音は……バイク?」

 

 バイクのエンジン音には違いない。ただし……ただのバイクではないが。

 

 しばらくして、下層から光が溢れ、そして何かが飛び出していく。

 

――ゲンムだ。乗っているのは、モヒカンのように並ぶスパイク付きのヘルメットのようなものがついている、灰色のバイク。

 ミネルバもテストの際に見た事があったそれは、プロト爆走バイクガシャットから召喚されたバイクだ。本来であれば、このガシャットを使って変身できるライダー……レーザーがレベルアップする事で変形する形態だが、キメワザスロットに挿す事により、人格の無いバイクとして召喚可能なのだ。

 バイクに跨るゲンムは、ミネルバに目をやる事もなく、そのままミネルバの頭上を飛び越し、外へと走り去っていく。

 

 その後、黎斗が外でボロボロになっていたのを発見。

 そして、ゲンムはまたしても大型シャドウを倒すだけ倒し、何処かへ消えたという事が明らかになったのだった。




大雑把な解説

・仮面ライダープロトスナイプ ロボットシューティングゲーマー

 ミネルバが変身する仮面ライダープロトスナイプが、正規版のゲキトツロボッツガシャットを使用してレベルアップした姿。
 本編での判断材料が少ない為、便宜上レベルは3とさせていただく。
 本来はジェットコンバットと相性がいいのだが、戦闘エリアが閉所であった為(それと、檀黎斗の都合により)、変身者であるミネルバと相性が良く、正規版が完成していたゲキトツロボッツガシャットが選ばれた。
 前もってプロトスナイプ(及びスナイプ)による運用を想定し、格闘能力よりも精密動作に重きを置かれた調整が為されている。ゲームマスターが一晩でやってくれました。

・仮面ライダーストレガ ギャンブルゲーマー

 復讐代行集団(三人だけ)ストレガのリーダー格の少年(?)、タカヤが、ゲンムから譲渡されたフォーチュンギャンブラーガシャットを使用して変身した仮面ライダー。レベルは2。

 変身時の歌の通り、命懸けのギャンブルゲームを題材としたガシャットであり、その戦闘スタイルも運要素が強いものとなっている。
 特に、専用武器であるガシャコンリボルーレットガンを使用したものが顕著で、Aボタンでは銃身上部のスロット、Bボタンでは弾倉の前面にあるルーレットによって、戦闘時に様々な効果が発生する。スロットでは戦闘能力や攻撃関係が、ルーレットでは状態異常や防御に関係する効果が発生する。
 勿論、運が絡むだけあって自分だけに有利な効果が発生するというわけではなく、運が悪いと自分が不利になる事もある。逆に言えば、運さえ良ければ圧倒的なレベル差があったりという不利な戦況を、一気にひっくり返しうる可能性を秘めているが、それだけにかなりリスキーでピーキーなガシャットである。

 「全然分からん!(ジャガー並感)」という方に大雑把に説明すると、パラドクス パズルゲーマーのように自在にエナジーアイテムを操れないが、わざわざエナジーアイテムを探し回る事なく、バフを掛けれたりデバフを与えたりできるという事である(ただし運次第)。

 どうでもいいが、本編でコラボしたラッキーなレッドは特に関係ない。あと歌はタドルクエスト系統のものである。


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