インフィニット・ソング~繋がる無限の歌~&【異世界旅行】 (金宮 来人)
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インフィニット・ソング 設定集 7/7 更新

設定集が欲しいという事で急ぎ作りました。
あははは・・頭が熱暴走起こしそう。
どうか、参考に読んでください。
作者の努力を無駄にしないで・・。がくり・・。

12/30 更新
新たなワードを更新いたしました。
7/7 更新
新規ワード更新・・「シンフォギアAXZ」のデータ更新編



イグナイト社所属メンバー

 

●イチカ・ダインスレイフ (元、織斑一夏)

一度死んだ経験が有る。その際は世界中を平和にしようと行動したのが、逆に世界から追われる身となり、最終的にはコアを集めて戦争に使用されるのを防ごうとしたが、学生時代のメンバーが国家代表となった五人と姉によって最終的には命を落とす。その際に神と自称する存在に拾われ、平行世界に神さまから与えられた知識と技術、前世の記憶を持って神様転生させられる。

その知識は天才的ではあるがそれを隠したまま小学生時代を過ごし、出来損ないと呼ばれるようにしていた。周りが気づく様な察しの良い人間がいないかと考えて探しながら。しかし誰もが自身をいじめた。途中、中国からの転入生の凰鈴音を自分に注意を向ける事で助けたり、中学生になって新たに五反田弾やその妹の蘭、御手洗数馬と友人となった。本人はそのつもりは無かった。第二回モンド・グロッソで誘拐された時にそのまま誘拐犯に同情されて、ファントムタスクに売られて今のスコールやオータム、マドカと出会う。更にそこで自分の才能に気がついた束、クロエと共に家族として過ごす。

新生企業《イグナイト社》を設立し、社長として束を据えて側近はクロエと元ファントムタスクのメンバー幹部。更に世界中の女尊男卑に苦しむ技術者などを取り入れて他の企業を追い抜いて最先端を突っ走る一流企業に。

ファントムタスクは解体され元テロ組織としての活動は無く、イグナイト社に吸収された。その際にIS委員会に繋がりを持ち、テロメンバーとしての指名手配を解除。現在のイグナイト社で満足に働いている。中には女尊男卑派がいたがそれはオータムとマドカによって秘密裏に処分された。イチカもそれは知っているが問題を起こされるのが嫌だったのでほっといていた。

そこからは、隠していた爪をむき出しにして才能を爆発させて『シンフォギア』、『オートスコアラー』、更に世界各地を回りラウラやシャルといった主要メンバーの過去に介入しつつ目的の【完全聖遺物】と『聖遺物の欠片』を集める事に奔走。更に『リンカー』の開発に自身の体にギアとの適性手術を施し、いくつかのギアを一人で装備できるようにした。

現在装備ギアは《アメノハバキリ》《イチイバル》《シュルシャガナ》

そして専用機であるオリジナルギアの《アイギス》と完全聖遺物のデュランダルを使用できる。

現在の異名は《肩翼の蒼天使》《防人の剣》《黒蒼の楯》《アイドル大統領》と色々ある。

 

●マドカ・ダインスレイフ (元、織斑マドカ)

ファントムタスクのメンバーで今は普通に学園に通う生徒。イチカの妹で織斑千冬のクローン。血さえつながって居なければ襲っていたと断言するほどイチカが好きで、最近は周りに狙う女子が増えた事にやきもきしている。もてる兄に嫉妬する妹という状況を傍からは可愛いと見られている事を本人は知らない。

イチカの一番の相棒を自称し、アイドル活動の相棒をする。

使用機体はファントムタスク時代に盗んだイギリスの【サイレントゼフィルス】を正式に買い取り《神獣鏡(シェンショウジン)》を組み合わせた《サイレント・ミラー》。

 

異名は《方翼の紫天使》《嫉妬形妹アイドル》《紫色の天使》《ダンシングエンジェル》など。

 

●暁 シャルロット(あかつき しゃるろっと)《元シャルロット・デュノア》

イチカに父のパトリックと共に救われ、日本にいた祖父の友人の養子になった父と共に暁の性になる。その事から返しきれない恩を感じており、体ででも良いからどうしてでも恩を返したいと思っている。デスデス言うのは、日本語で《です》というのが丁寧という勘違いが混ざっているから。

製作設定からは戦姫絶唱シンフォギアの【暁 切歌】のキャラクターを混ぜているためで有る。技名もそのままシンフォギアから転用。決して艦コレの金剛などが混ざっているわけではない。作者は艦コレに対する知識はあってもそれ自体はやっていないのでマンガや二次創作知識がほとんどです。

専用機は政府を通して正式に買い取った《ラファール・リヴァイブ・カスタム》を改造し、シンフォギア《イガリマ》を組み込んだ、《ラファール・デス・サイズ》。

 

●篠ノ之束

イチカと出会い生き方を変えた天災。彼こそが自分を理解してくれると思い、イチカを応援する。過去のデータを見てイチカの才能にいち早く気が付き、接触するために売られる先のオータム達に接触。そのままイグナイト社の社長に。社長と言いながらも技術系の仕事はそのまましていて、簡単な書類仕事は他の社員に丸投げ。それでも会社が上手く回るのは振り分ける仕事もできる能力を見越しての事なので、やはり天才のなせる技である。

イチカに医療用ナノマシンを作り投与しているが、あまり効いていない。リンカーに効力を阻害されている。その事でどうにかできないかと心を痛めている。

IIIIの0002のナンバーはこの人。

 

●クロエ・クロニクル

原作と一緒で束に拾われた少女で生体同期型ISを持っている。

IIIIの0001は実はこっち。イグナイト社の難しい書類仕事は一括で受け持っている。束の勉強のおかげで普通よりも処理能力の高い状態。

 

●スコール・ミューゼル

元ファントムタスクのメンバーで現在はダインスレイフ兄妹の特別顧問であり、IS委員会から直接雇用されている為、教師の仕事もありながらイグナイト社の幹部でもある。

IIIIの0003はこの人。

専用機は持ってはいるが、使う事は無いと思っている。

 

●オータム・ハート

原作よりも丸い性格で姉御肌のいい感じの女性キャラ。専用機のアラクネはあるがコレは無断使用しないことが決まっている。スコールと一緒で学園に赴任している。

IIIIの存在に気がついたのはスコールに言われてからなので少し番号が後ろになっている、うっかり属性あり。

姉扱いされた事でイチカの事を可愛い弟として見ている面が有る。

 

他所属

●織斑冬二《おりむらとうじ》

織斑一夏の弟にして自身がこの作品の主人公だと思っている転生者。

実際はイチカを送り込んだ神が同じように送り込んだ転生者で、まったく主人公などとは言っていない。織斑の一家に生まれたいと言われたのでそうしただけで、後は何も関与はしていなかった。努力などは実際にする方で勉強や剣道で強かったのは本人の努力。

但し、その考えもねじ曲がった欲と姉の誘導による物で有った事を本人は知らない。

イチカと本心でぶつかり合い、結果として手をつなぎ合った。

彼が変われるかは本人の努力次第だがイチカは信じている。そう信じて手をつなぎ合った。

元、アンチ対象で手をつなぎ合った後からは更生の道をたどっている。

 

●篠ノ之箒

織斑冬二に執着するヒロイン(笑)。

この作品では感想欄でもモッピーやモップ、掃除道具扱いと酷い言われようである。

姉の束とはイチカに被害をもたらす存在と認識されており、それもやつあたりでイチカに恨みを募らせている。

考えは危険思考の、暴力で解決しかない脳筋。

VTシステムを勝手に組み込まれた被害者であるが、誰も同情しないかわいそうな存在化としている。

幾多にわたる殺人未遂と暴力行為で学園内で一番反省文を書かされて、謹慎やらを受けているのはコイツであろう。アンチ対象。

 

●織斑千冬

アンチ対象で最もひどい存在。弟を所有物としてしか見ておらず、その能力が低いと見たイチカの方を見捨てて嫌がらさえもした。誘拐された時も合えて無視して捨てることにした。政府高官は伝えたがあえて無視している。

多々重なる違反行為に学園からも見捨てられ逮捕、隔離された。

現在は幽閉され、処分を待つ身となっている。

自覚は無いが前の世界の姉が最後まで優しかった為、こちらの姉にも少し甘い対応になっている事をイチカは気がついていない。しかしそれを踏み躙る行為をしている為、束の怒りを買った。

 

●セシリア・オルコット

原作と違いイチカが四組に入った為繋がりは少なく、初めて会ったのはクラス代表決定戦時に少し通りがかった程度。そのあと、マドカの操縦技術のつながりからイチカに講義などを求めたりして段々と仲良くなる。

専用機は原作通りである。装者としてのフラグは立ってはいないが・・。

 

●凰鈴音

原作と一緒でイチカに助けられた存在。しかし、友人としての付き合いは原作よりも少なく、ハーレムを狙う冬二に邪魔をされていた。イチカの事を意識していてマドカ共々、色々と画策している。

イチカを中心にしたハーレムも問題ないとの考えが有ったり。

現在、専用機は原作通り。シンフォギア装者ではないが・・フラグはすでに立っている。

 

●ラウラ・ボーデヴィッヒ

原作では織斑千冬を信仰して居たレベルであったが、こちらでは力の意味を知り、それは愛だと言い張るような子になってしまった。力こそ愛、愛が有るからこそ強くなれると自分の心に刻み込み、力におぼれる事は無くなった。

VTシステムはイチカに事前に見つけてもらいソレを消してもらったのでドイツもろとも被害をこうむる事は無かった。そもそも、千冬に幻滅している時点でシステムが起動するかは知らないが。

イチカによって初めは眼のせいで同機が難しかったシンフォギアを纏えるようになり、原作の【シュバルツェア・レーゲン】を改造し、イチカが名付けた通称《ガングニール・ブラック》と言われるマリアのガングニールを組み合わせる。

結果見事に適合し《シュヴァルツェア・ランツェ》(黒き槍)が生まれてその装者となった。

イチカに愛を持っていて愛人でも良いと言っている。

 

●更識簪

原作だと夏までに完成しなかった打鉄二式をタッグマッチまでに完成させて色々と上手くギミックを入れて改造した。第三世代としての機体として恥じない性能を持つ。ほぼ完成形の第三世代機と言っても良しの完成度であり、これを元に日本の量産機をつくる事も決定しているのが裏設定。

現在は、シンフォギア装者ではないがコレまた鈴と一緒でフラグは立っている。

 

●更識楯無

簪と仲が良くなりイチカとも良好な関係を築いている。

束の発表の後イグナイト社の裏情報は実は手に入れており、政府と協力している。

IS委員会と政府と更識家は協力している状態で、問題が有ればイグナイト社につく気である。元テロリストのスコール、オータムの事情も知っており、様子見をした後味方と認識。寧ろ織斑千冬の力による圧力の教育を否定的に思っていたのでこれに乗じて排除。女尊男卑派の一斉摘発も画策していたが、その前にタッグマッチで問題を起こされた。

専用機は原作通り。

 

●坂上静香【サカガミ シズカ】

まったくのオリジナルキャラで元になったキャラは存在しない。

ただ初めのイチカを否定するセシリア的立ち位置にいてくれればと思い作ったキャラだったのがいつの間にかイチカのファンとなっていた。

IIIIの0004という数字を持っていた恐るべき存在で、歌っているといつの間にかに先頭に居る様なとんでも存在に。

作者自体こうなる事は考えていなかったのに、独自に暴走し始めたキャラで、何処まで突っ走るのか疑問視していた。

専用機は無い一般生徒なのに女尊男卑だったからという事で戦って、その後は強さに引かれ、自分を守って庇って怪我した事に惚れて、歌を聞いてファンになって・・あれ?無茶苦茶ヒロインしてるなと後から疑問に思う事に。本格的なカメラで、イチカの専用スーツ姿を激写。後にその写真が元でファンの先導役にもなりクラス代表よりもクラスを取りまとめている。簪としては予定に無かった仕事を受け持ってくれる存在と化している。

イチカのファンの【IIII】でイグナイト社所属メンバーを除くと、一番近くで理解した存在と自負しており人が暴走しないように力を振っている。

 

●本先 加賀音(もとさき かがね)

オリキャラでクラスのムードメーカー。以上。

 

専門用語集

 

・シンフォギア(または 聖遺物)

アメノハバキリ・イチイバル・ガングニール・イガリマ・シャルシャガナ・アガートラーム・神獣鏡 が存在する。装備する者を装者と呼び、歌によって力が力を解放し強くなる事が出来る。

 

・完全聖遺物

作中では《デュランダル》と名前だけでそれ自体は出ていない《ネフシュタインの鎧》が存在する。原作では生物型完全聖遺物としてネフィリムという存在もある。

 

・オリジナルシンフォギア《アイギス》

イチカの専用機で中にはAIとして《キャロル》が存在する。正式名称は《キャロル・マールス・ディーンハイム≫。イチカの錬金術の知識の元となっている存在で、元の【戦姫絶唱シンフォギアGX】のラスボスであり、森羅万象の構成をあばこうとしていた。

後の自動人形《オートスコアラー》の本来の制作者であり、今作品ではアイギスの中での制御を担当している。後に重要なファクターとなるが・・。

 

・エクサバイトコア《アイギスのコア》

某会社のゲームI/O《アイオー》にて出て来た《エクサバイトクリスタル》を組み合わせて作ったISコアで多次元の力が必要になったため今作品内では錬金術の力を借りている。元のエクサバイトクリスタルは人間を一人丸々記憶できるほどの容量を持つ物で、作中内でもそのクリスタルの中にそのままの性格の人間が存在できるほどの要領を持つ。イチカはソレを持っていろんなギアや装備を保存している。

 

・イグナイト社

束を社長としてイチカが作った会社。女尊男卑の駆け込み寺状態で、捨てられた子供なども保護している。

この会社の名前に関しては後のシナリオにシステムが出てくるので分かるはず。

というかシンフォギアを知っている人は分かると思います。

 

・紅く光る瓶

本来は宝石なんですが・・見た目が瓶にしか見えなかったのでそう書いていました。後に資料を見たら《テレポートジェム》と書いてあり、アレ、宝石だったのかよ!?となりました。もう、直すのが辛いので見た目瓶だしいいやという事でこの作品では瓶と表記されています。

 

・ダウルダブラ

正式にはダウルダブラの竪琴で戦姫絶唱シンフォギアGXのラスボスが使用した聖遺物。弦を主にした武器となり、原作ではそれを共振させて出力を上げる等を行っていた。

 

・アウフヴァッヘン波形

シンフォギアなどの聖遺物の力が発動する時に発生する光などの波形。

それぞれに違う形が有り、印象としてはそれぞれを現す紋章と言えなくもない。

 

・ シルバリオ・ゴスペル

暴走しているアメリカ・イスラエルの共同制作IS。だが、実際は・・

 

・イグナイトモジュール

魔剣『ダーインスレイフ』の欠片から作り上げた呪いを元にした強化装甲システム。『ドゥベルグ・ダイン』という刀鍛冶が作った魔剣で、一度解放すれば人を着るまで鞘に収まらなかったという呪いが有る剣。

ソレを強化のために使用している。

 

・エクスドライブモード

XDモードとも。シンフォギアの絶唱などの歌の力『フォニックゲイン』を高めてソレをシンフォギアの強化に使用した場合のモード。

イグナイトよりも高出力であるがそのモードになるには原作の繋ぐ力である主人公の響きが使うガングニールが、この作品では冬二の使うガングニール・ホワイトで使用する『S2CA』というシステムでそれによりフォニックゲインを束ねて力に代える事が出来る。

 

○新章から

・ギャラルホルン

完全聖遺物にして謎の多い異世界移動用聖遺物。

平行世界へ移動してそこで起きる事件を解決する際の移動手段。

今回の世界でも元の世界の『立花響』に異変が起こり、今作の世界に来た所は同じ。ただし、原作にはない要素として、シンフォギアを一から作った制作者でガングニールの持ち主でもある事から本作主人公の『イチカ』も引き込まれた。

 

◎がっこうぐらし編

・錬金術師(パヴァリア光明結社)

三人の女性が幹部としており、シンフォギアGXのキャロルに技術提供をしたと言われている秘密組織。サンジェルマン、カリオストロ、プレラーティの三人が幹部であり、この三人の武器を参考としている。

・スペルキャスター 『三種類』ラピスフィロソフィカスにより武器として使用できる武装。ラピスフィロソフィカスの材料は命と言われており、原作内でもサンジェルマンがその為の犠牲になった人数を数えている。

現在使用可能なのは【銃】のみ。

スペルキャスターのみだけではなく、ソレを元に戦闘用の装甲『ファウストローブ』を形成し変身する事が出来る。

 

他の事については随時更新して行きます。

 




・・むくり・・。
そうそう、もしも疑問が有れば感想に書いて下されば此処に追記して行きますので。
それじゃ、本編も上げるように頑張るデス!

9/21本編完結です。ありがとうございました。

12/30新章開始です。よろしくお願いしますね。

7/7 更新しました。 今年も天の川は見えない。寧ろ氾濫しとる・・。


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本編 インフィニット・ソング
インフィニット・ソング 00 プロローグ


新作です。いや、旧作と言いましょうか。
昔書いたものですが編集して投稿できるようにしました。
順次投稿いたします。よろしくお願いします。



俺は・・もう・・何年まともに寝ていないのだろうか・・。

 

「居たぞ!!死神だ!」

「殺せ!」

 

俺は‥何度、死にそびれただろう・・。

 

「くそ!?なんで・・なんで死なない!?」

「ぎゃあぁぁ!?腕があぁぁ!?」

 

いったい何人・・殺したのだろう?

 

「くっ!?この化け物め!?」

「何故・・がはぁ!?」

 

俺は・・どうすればよかったのか・・。

「答えなど無い・・。」

 

俺は本気で死ぬ気が無いのか?

「されど・・」

 

俺は一体・・・どこに向かって行けばいいのだろうか?

「俺は・・俺だ・・。」

 

そして、目の前には六機のIS【人影】・・

「そろそろ、普通にお前を止めることもできそうにない。」

「ここらで止める事は出来ないのか?」

「一夏・・もうやめようよ・・。」

「一夏さん・・何故このような事を繰り返すのですか?」

「イチカ・・もう、止まれないの?」

「嫁‥いや、一夏よ・・これが最後だ・・。」

 

そのIS【人影】は俺と戦い、そして、俺は負けた。五機は落とした。操縦者は無事だろうが・・、そして、最後に俺は心臓を刺された。

「・・許せとは言わん・・お前を止めるすべを持たなかった・・私を・・私達を恨め・・。」

「ふっ。いや、ありがとう・・と言っておく。俺は・・コレを待っていたのだろうさ‥今凄く解放された気がするよ・・だから、泣かないでくれ・・俺がおかしくなっていただけだ。」

貴女は・・正しい事をした。多くの他者の命と、俺の命を天秤にかけた、それが正しい。

「これで・・いい・・生きてくれ・・皆・・。」

「すまない・・すまない一夏!!」

視界が暗くなり、視力が失われて行くのが分かる。最後に見た千冬姉の顔は泣いていた。俺はゆっくりと目を閉じて・・意識は遠退いて行った。

 

「さて、やぁ。」

「・・おい、どういう事だ?俺はさっき死んだはずだ‥。」

「まぁ、確かに死んだよ?此処はいわゆる死後の世界と言う奴さ。」

「・・・はぁ・・。」

俺は目の前でにやにやしている胡散臭い奴を見てため息をつく。

「何をため息ついて、『なんだこの胡散臭い奴。自分を神様だとでも言うのか?』とか考えてるんだね。」

「・・なるほど。確かにそう考えたな。まぁ、お前が神だろうが、禿げだろうが関係は無い。」

「髪の話はやめろ!・・と言う感じでいいかな?ま、そんなことより君は死んだことは間違いないよ?そして、僕は確かに神と言われる者に近い存在だね。そんなことはどうでもいいんだけどさ、君にはもう一度生き返ってもらう・・いや、生まれ直してもらおうと思う。拒否は無いんだけどね。」

「なら聞くな。俺はそんな面倒な事は嫌いなんだ。」

「そうかいそうかい。ま、その際に君に記憶を持って生まれ直してもらおうと思う。」

やれやれと言った感じの行動がイラつく。

「で、だ。まぁ、君が生き直す際に強くてニューゲームをする。その上生きづらい世界に送る。僕が知っている力の種を君に植え付けるから、それをもとに君がどう生きるか見せてくれ。」

「力の種って・・何だ?」

「うーん、力は二つ。一つはシンフォギアと言う世界のギアの知識と錬金術。」

「錬金術・・と言うか世界?平行世界のことか?」

「そうそう、世界はこう・・本のように・・横に大量に重なっているというが、どちらかと言うとその上になん順にも本棚があって、本の一つ一つの世界が一つの本で束ねられて、更にその本が横にならんでいる棚が大量に上下に有り、その本棚が大量に並んでいる図書館のようなものが世界・・と言った感じだね。」

「・・規模でか過ぎる・・。」

「世界とは一人の想像で小さな可能性の世界が出来る。それが『元になる世界』に何億と存在していりゃそんなことになるさ。で、その図書館がまだ何億何兆と存在するわけさ。僕はその一つの図書館の司書みたいなもんさ。」

「なるほど。わからん。」

「だろうね。後、話は戻るけどもう一つの力と言うのは君が錬金術以外の科学や物理にも知識が多くなると言ったものさ。言わば、物理チートと言った感じだね。あ、孤独●グルメって知ってる?アレで『チート』って出て来たんだけどアレ割と美味しそうだったんだよ。」

「しらない。」

「そっか。ま、どうでもいいけど。さて、じゃあ、そろそろ行ってもらおうかね。」

「さっき言ってたのは?」

「あぁ、力は君の生まれた世界の体にあるから此処じゃ何もしなくていいさ。」

「そうか。なら、後はたのんだ。」

「りょ-かい。じゃ、グッドライフ、グッドラック。」

「あぁ、好き勝手生きてくるさ。」

そう言って俺は目を閉じると、意識が無くなった。

 

「・・面白い素材だね・・。ふふ、コレは一度じゃすみそうにないな‥。さて次の世界でも選んでおくかね・・うーん、彼はハーレム気質はあるが・・自身の意志的にそう言うのは望まないようだね・・だったら、女の子が多くて彼に選ばせると言った世界が良いか・・。コレはどうかな?・・いやこっちも捨てがたい・・女性の武将・・古代中国・・異世界との扉が繋がる世界・・ま、彼が得た結果で決めようかね・・。」




死後の世界は皆さまは信じますか?
私はこんな神様なら嫌だと思って書きました。


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インフィニット・ソング 01

初めまして。俺は一夏。正直、死にたがりだった俺はいろんな戦場を渡り歩いた。そして死んだ直後に自称『神様』とか言う奴に拾われた。

「お前の人生、強くてニューゲームとか言う奴にすると楽しそうだから、もう一回生き直せ。拒否は許さん。」

とかそんな感じの事言って強制的に生き返らされて、もう一度子供のころからやり直させられた。

そして、今は・・

「おい!どう言う事だ!?織斑千冬が試合に出ているぞ?」

「知るか!?コイツを攫えば棄権するんじゃなかったのか?」

そう言っている誘拐犯の元でぼーっと話を聞いている。

「あぁ、やっぱりか。」

そう言う俺の声を聞いて振り返る男。

「どういうことだ?」

「決まっているさ。織斑千冬はもう一人の弟、【織斑 冬二】の方しか大事じゃ無かったってだけさ。」

そう言いつつ首をテレビの方に動かす。男がまたテレビを見るとすでに決着はついていたようだ。勝利インタビューなんかを受けている。

『この勝利を誰に伝えたいですか?』

『当然、弟にです。お姉ちゃん勝ったぞ!見ているか、【冬二】?』

『あれ?弟さんはふt『私には冬二しかいませんよ?』・・そうですか。』

この会話を見てへどが出る。

「・・・おい、お前はどうする?」

「まぁ、別に問題は無い。どうせ近いうちに姿を消すつもりだったしな。」

俺は世間では≪織斑の面汚し≫とか言われている。テストの点数は、毎回奴より下だし、運動の成績も奴より下だ。さらに剣道もやっていた頃は一度も勝っていない。

「そうか・・・。なんか、その・・。」

「なに、誘拐犯が同情してんだ。」

なんか、男が泣きそうな顔になっている。てめぇ、犯罪者だろうに。

「・・・金にしろよ。一応これでも織斑の血は入っている。そこそこの金にはなる。」

「いや、それは・・。」

「同情してくれた礼だ。おっさん、少しはましな余生を送れ。」

「・・すまん。ガキ・・。」

そう言って携帯を取り出し、電話をかける。

「あぁ、・・そうだ。少し面倒かもしれんが・・。」

電話口で相手は女らしい。

「・・そうか。分かった、そうしておく。」

電話を切り男がこっちに向く。その顔は少しうれしそうだった。

「俺が知っている限り、一番非人道的な事をしない組織に売る事になった。おそらくそこでなら少しはまともに暮らせるだろう。」

「おっさん、アンタ馬鹿じゃないのか?こんな事で同情していたら仕事にならんだろうに。」

そんな会話をしているとおっさんが拘束を解こうとする。が、ロープがうまくほどけないらしい。

「あぁ、別にいいぞ。・・ふん。」

俺は両手に力を入れると簡単にロープを千切った。

「…お前、なんて力なんだ。初めっから逃げれたのか。」

「あぁ、別に逃げる気も無いし捕まっていた方が安心して見れるからな。」

下手に拘束を解くと周りから取り押さえようと飛びかかって来る事もあるかもしれないから、捕まったふりをしていた。その方が後痕面倒が無いからな。

「ふふ、全く変なガキだ。」

「変なおっさんには言われたくない。」

そう、変なのは自覚している。そりゃ、俺はやり直しているのだから。

普通じゃない。そうだ。だからこそ、今度は、自分の思い通り動く。そのための初めの一歩がこれだ。ここから俺の自由が始まる。そう思っていると外から女が入って来た。

「おい、そいつが織斑一夏か?」

「そうだ。姉に捨てられ、周りから蔑まれていたらしい。」

「・・へぇ、その割に眼は死んでないが?」

そりゃ、此処まで俺が考えたシナリオに沿う形だしな。

「そうだな。コイツは俺が見た中で一番強い。力も生き方も意思も。」

「そうか、なら一度、名前を捨てる覚悟はあるか?」

「捨てれるならさっさと捨てる。俺は、自由の為に生きている。お前らも俺を縛るつもりか?」

そう聞き、目の前の女を睨む。じっと睨みあう事数十秒。

「よし、気に入った。お前は今日から家【ウチ】のもんだ。言わば家族だ。」

「アンタも、・・変な奴だな。」

「変なガキに言われたくはないな。お前名前はどうする?」

「一夏は捨てない。あえて【・・・】な。俺は、名字だけ変えるよ。その方が面白そうだ。」

「そうか、なら‥私らの弟だ。皆で考える事にする。…おい、おっさん。コイツ買いだ。金はいつものように振りこんで置くぞ?」

そう言って、電話をしつつ手でこっちに来いと合図をする。俺はおっさんの方を見て、

「おう。…じゃあなガキ。達者でくらせよ?」

「おっさんもこれ以上悪い事はせず、普通に暮らしやがれ。」

そう言いつつ手を叩きあい俺は女について行った。

「あぁ、このガキかなり面白そうだ。しかも何気に強い。…そうだ、あの噂はどうも腑に落ちん位に…待てよ?」

そう電話を一時中断しこっちに向き直る、

「おい、イチカ。お前まさか・・[今まで隠してきていた]んじゃないのか?」

「・・。」

あ、マズイ。気が付かれたっぽい。

「・・・コイツはどうやらとんでもない拾いもんみたいだぞ?」

すっごくにやにやしながら電話口の相手に話す。うわ、やっぱりか。

「あぁ、速攻で帰る。そうだ、アイツ(・・・)も紹介するからな。」

そう言いつつ電話を切る。そして、俺は今まで聞きたかった事を言う。

「ところで・・」

「あ?何だ?」

「アンタの事、なんて呼べばいいんだ?」

今まで俺の事は行ったが相手の名前を知らないでここまで来ていた。

「あ、そっか。言って無かったな。私の事は、・・・【オータム】さまと呼べ。」

ドヤ顔しながら言ったこの女。オータムか・・。

「秋姉ちゃん。」

「ぐはぁ!?」

わざと変な風に変換して言ったらいきなり胸を押さえた。

「・・・こ、コイツ意外にやるな!?」

一体何が言いたいのかさっぱりわからんが、まぁ、怒っているようでは無いのでほっておこう。そうして俺とオータムは一緒に歩き、乗り物を乗り継いで、郊外に行きそこからさらに車に乗り一軒の家に入る。

「おーい、戻ったぞ!!」

そう中に声をかけ扉を開くとそこには、

「あらお帰り。思ったより早かったじゃない。」

「帰って来たのか。」

「お、おかえりおーちゃん。」

「お帰りなさい、オータム様。」

四人の女性。ってか、

「何故、篠ノ之束さんがここに居るんでしょうか。」

そう、ISを創った大天才、篠ノ之束博士が何故か居るのだ。

「ん?あぁ、君は・・イチカって言ったよね?出来が悪い方の弟って言われてたけど、私まで騙すなんて凄いなぁ。ねぇ、大天才にならびうる天才くん?能ある鷹は爪を隠すとか言うけどさ、調べてみると一目瞭然だったよ。ってか気が付かないとか馬鹿じゃないのかってね。なんで毎回のテスト、全教科で【オール60点】なんて出せるんだ。って気が付かないもんかね。私は君に興味が無かったから見てな方けどさ、いざ気が付くと君の恐ろしいぐらいの計算が見えたよ。テストはまだ出来る。でもさ、50m走で毎回タイムが全く一緒っておかしいよね。コンマ二桁までとか、絶対あり得ないし。あぁ、そうだ。興味持ったからさ、君の事いっくんて呼ぶね?そうそう、ここにいるシルバーな髪の子は私の娘。私が生んだわけじゃなくて、拾った子だけどさ。正直、私に釣り合う男なんかいないと思ったけど君なら将来有望かもね。…どうしたんだい黙って?」

「テメェがうるせぇから何も言えなかっただけだろうが。」

そう言いながら束博士を小突くオータム。その横でこっちを睨むように、だけど観察するようにも取れる視線で見ている少女。さらにさっき紹介された娘と言われていた少女がこっちに近づいてくる。

「私は束様に「お母さんて言っていいんだよ?」・・束様に拾ってもらった者です。名前はクロエ・クロニクルと言います。どうぞよろしくお願いします、一夏さん。」

「・・・私はマドカ。一応、挨拶はしておく。が、まだ認めたわけではない。」

酷く対照的なあいさつをされた。

「ふふ、私はここのまとめ役のスコール。一応、此処の保護者みたいな存在ね。」

「で、最後に私らの立ち位置だが、一応テログループみたいに言われている。正直面倒なんだが、本当はISを正規の使用目的に戻そうとしている組織なんだ。名前は」

「名前は『亡国機業』。ちなみに私は幹部クラスで結構地位が高いわ。」

そう、オータムが話している所にスコールが話を被せて来た。

「そう。じゃあ、俺はイチカ。名字は捨てたから好きに名づけて。オータムがさっきそう言ってた。」

そう言うと、何故かオータムが少しさびしそうな顔をした。何だ?

「・・まぁ、いいか。」

「オータム?どうした?」

マドカがオータムに聞いているが顔を少し赤くして反らしつつ「なんでもない。」と言っている。

「???」

訳が分からないと言った風な表情のマドカ。さらに顔を背けるオータム。その光景をにやにやするスコール。そして、ソレを微笑ましそうにする残り二人。なんだこれ。何がテログループだ。思いっきり家族のほのぼのシーンじゃないか。

「さて、じゃあ今日はイチカの名字を考えましょうか。」

スコールがそう手を鳴らして話しだした事で一応収拾付いた。そして、俺はこのメンバーの事がなんとなく気に入ってきていた。

 



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インフィニット・ソング 02

今回はまだ名字は出ません。でも、名前が変わったのは分かる表記になっています。あと、GXの人気キャラのあの子?『機体?』たちも出て来ますよ?出番は少ないですがね。では行ってみましょう。


アレから3年。

「おい、イチカ。設計はどうだ?」

「あぁ、オータム。大体出来た。マドカは?」

「待ち遠しいらしく、そこら辺をうろうろしてる。じっとしてられんらしいな。」

くくくっ。っと笑いながらにこにこしているオータムも嬉しそうだ。言ったら照れ隠しに叩かれそうだから言わないが。

「で、後は何が要るんだ?」

「あー、もう後は制作に差し掛かる時間と費用くらいだな。ぶっちゃけ、イギリスのブルーティアーズなんかはコレの劣化品だし。俺でも作れるくらいなら束さんでも片手間に出来るさ。」

「いやいや、いっくんは私並みかもしかしたら私より少し上かもしれないからね。悔しいけどさ。」

「おいおい、大天災からそう言われるとかマジこえぇ。」

そんな話をしながらも手は休めない。ちなみに今俺が何をしているかと言えば、

「これで完成するまであとちょっとか。マドカの【専用機】が。」

マドカに渡す専用機、その製作途中だった。まぁ、実際作るのは簡単だったしな。それよりも、

「それよりもいっくん。君は今は何を作っているのかな?」

「俺の専用機。まぁ、ISによく似た別の存在。俺が一番好きだった事に突きつめて進化させたISもどき、一応名前はインフィニット・ソング・ギア。通称、ISGを八割がた完成させたし、それに付随する子を作っている。」

「・・・やっぱりいっくんは私よりすごいや。」

目の前にある四つのカプセルと丸いガラス玉みたいな物に包まれた黒い球体。さらに画面には八個の窓。そして、

「それで、いっくんはその文字が何か分かってるんだよね?」

「とうぜん。」

普通では読めないようなアラビア文字や、図形。それを色々といじりながら高速で作業している。

「これでも、一応疲れているから効率落ちて来てるんだが?」

「「これで!?」」

そうこうしているうちに一個の窓を閉じる。そして、束さんに機械に繋がっていたUSBを渡す。

「はい、これマドカの。後は制作だけだからオータムとスコールにも手伝ってもらえるよ。システムと図面は中に入ってる圧縮ファイルを解凍してね。」

「おっしゃ。じゃあ、マドカも呼んでさっさと作業に入るぜ。」

「束さんは制作時に負荷がかかりやすい所とかの注意を。クロエにはどう作ればいいかの勉強もさせてあげて。」

「うん、分かったよ。いっくんが作ったって言えばくーちゃんも喜んで勉強すると思うよ。」

そう言いつつ二人は部屋から出て行った。

「はぁ、・・・後は彼女達が動くまでの辛抱だ。・・・錬金術と聖遺物。さらにオートスコアラー。結構、しんどかったがどうにかなりそうだな。」

画面には天羽々斬、イチイバル、ガングニール、アガートラーム、シュルシャガナ、イガリマ、オートスコアラーと言う窓が出ていた。

そしてソレをまた完成に近づけるため指を動かし始める。

「すべては俺の自由の為に。」

新しく出した窓には【コード・アイギス】と書いてあった。

一夏が動き出すまであと‥二年。

 

 

あれ?俺、さっきまで作業していたと思っていたのに気が付いたら布団に寝かされていた。

「・・とうとう倒れたか・・。」

マドカの機体のデータを完成させてから一年。とうとう体が持たなくて倒れたらしい。だが、この部屋の中はロックして誰も入らないようにしていた。誰が布団に・・

「お、気が付いたようだぞ?」

「まったく、マスターは自分の体の管理もできないのですか?」

「まぁ、しょうがないですわ。私達を作るためでしたもの。」

「だからと言って、このような所で地味に死なれたら困るのだがな。」

四人ほど女の声がする。しかし、此処は四人で無く四体と言った方が正しいのか?

「・・・勝手に起動していたのか。」

「はい、初めは待とうと思いましたが流石にマスターの身体機能の低下が著しかったので・・。」

「ガリィ達がマスターのお手伝いしますから、これからはこんな事は無いようにしてくださいね~。」

「アタシも手を貸すぞ。」

「私達は、マスターの為に手足となって動きましょう。」

そう、四体のオートスコアラーは起動し、俺を助けてくれていた。そして、これからも俺のために働くと言っている。あぁ、彼女たちにはちゃんとした意思が、心があるんだ。だから、

「俺が作ったからとかそう言うのはいい。ただ手伝いたいと思ってくれるのならば拒みはしない。」

「「「分かりました。」」」「わかったぞー。」

家族が増えた。って感じだな。彼女たちの動く動力源は俺の意思の熱量。つまり、強く思えば思うほど彼女たちはエネルギーを得る事が出来る。そして、俺は彼女たちの思いが嬉しくてかなり感情が高ぶっている。これならエネルギーの枯渇とかは無いだろう。俺が死ぬ時が彼女たちが止まる時だ。・・・何か対策もとっておくか。それはともかく。

「では、さっさと最後の仕上げに取り掛かろう。もうすぐこれも完成する。そうすれば、目的までそうかかる事は無いだろう。皆手伝ってくれ。」

「「「はい。」」」「わかったぞー!」

これからが、正念場だ。

 

 

そして、完成した。あれから数週間でコアを完成させた。残り半年でギアの装備を完成させて、最後のシステムも作り上げた。それがこの機体、

「さて、皆。これで完成だ。」

最後の仕上げの電源を入れてシステムを立ち上げる。すべて正常に稼働し、問題無く完成した。

「これが、イチカの専用機・・・。」

「ISG・・【アルケミスト】。」

錬金術師の名を持つこの機体は聖遺物の力とオートスコアラーの力を組み合わせる事が出来る。そして、

「いっくんが作った・・」

「新たなコア・・・」

「そうだ。これが進化の開始・・・エクサバイトコア。」

普通のISコアに人一人さえも保存できるほどの大容量の新たな記憶媒体、エクサバイトクリスタル。ソレをかけ合わせて作った新たなるコア。そこにさらに聖遺物を組み込みいかなる状況にも対応できるように作った機体。

完全に今の技術を超える物だ。科学の範囲だけではこの機体を超えれる物は無い。そう言えるものになった。

外見は蒼を基本とした大きな装甲が手足を覆い、さらに背中を隠すようなマントを付けている。

真ん中の装者が乗る場所にはさらに厚い装甲があり、頭も覆い隠すヘッドパーツもある。

「なんで、全身装甲なの?」

「ソレは、元の存在が宇宙に行く物だから。俺は、元の目的に戻すためにこれに乗る。そして、今の世界を壊す。そのために歌う。」

この機体の鍵となっているのが歌だ。ソレを俺は自身が歌う事で発揮できるようにして組み込むことで、俺の思いも高める事が出来る事に気が付いた。そして、自称神からもらった強くてニューゲームの【強さ】。それが、【神に近い聖遺物を使う事が出来る】と言う事と、【錬金術が分かる】と言う事だったらしい。確かにこれは強い。科学と魔法と言った物に精通しているようなものだから。

完成したアルケミストに近づき装着する。

脚部と腕部の装甲が装着され、前の装甲が閉じるそしてヘッドパーツが装着され視界が一回暗くなり目の前が急に明るくなる。ヘッドアイ部分が紅く光り、立ち上がる。

「システム、オールグリーン・・。これで、俺は世界を壊す!!」

アルケミストを待機状態に変える。首にチョーカーの様なものが付きその真ん中に紅い鉱石の様なものが付いている。

一度壊し、もう一度作り上げる。それが俺に託された命題。錬金術の根本は分解と再構成。これこそ俺にしかできない事だと思う。世界を一回壊し造り直す。そのために俺は‥

「これにて俺の目的の第一段階は終了だ。マドカ、オータム、スコール、クロエ、束。俺はIS学園へと行き第二段階を始めるぞ。最終段階の為、皆、手を貸してくれ。」

「あぁ、イチカの為だ。構わない。それに私はイチカと一緒だからな。」

「私も大事な弟分の為だ。惜しむ事など無いさ。」

「私は初めから手を放す気はないわ。イチカ、私達の世界の為頑張ってね。」

「イチカ様と離れる事は寂しいですが、束様のことは私がサポートします。貴方に教わった物もしっかりと行かせますから安心してください。」

マドカ、オータム、スコール、クロエが答えてくれた。そして束。

「いっくん、私の・・いや、私達(・・)の世界の為にお願い。」

「あぁ、束。」

束と抱擁し合い。放すと後ろを向き歩き出す。

「・・ミカ、ガリィ、ファラ、レイア。」

「「「おそばに。」」」「いるぞー。」

四人のオートスコアラーを連れてIS学園に向かうための荷物を集める。一応、学園近くのホテルに泊まるようにしているためとその後の為の荷物。そしてガリィ達を一緒に錬金術式の六角形の中に入れて亜空間に入れる。

「マドカ、準備は?」

「出来ている。では、行くか。」

そう話して、後ろを振り向き皆と向き合う。

「では、」「皆、」

「「行って来る。」」

「「「「行ってらっしゃい。」」」ませ。」

 




才能を隠す事をやめた『イチカ』。
その目指す先は・・

To be NEXT.



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インフィニット・ソング 03

今回はイチカ君の名前が出ます。
貴方が予想していた名前と一緒でしょうか?
では、第三話です。


「今日は転入生を紹介します。」

そう言われたのは入学式から三日後。流石におかしいと感じたのかクラスのみんながざわつく。

私【更識簪】が所属するのは一年四組。入学式が三日前だったというのに流石に早すぎておかしいと思うのは普通の事だろう。

「二人いますが・・驚かないでくださいね。」

そう言ってドアから入って来たのは・・え?

「・・初めまして。俺は【イチカ・ダインスレイフ】だ。」

「私はマドカ。マドカ・ダインスレイフ。イチカの双子の妹だ。」

世界初の男性操縦者は織斑冬二。それは知っていたが二人目がいたなんて・・。

「・・・驚いている者がいるだろうから先に言っておく。俺は世界で二番目の男性操縦者だ。現在世界中にそれを放送している。今は妹ともどもIS企業【アリス・イン・イグナイト】社に所属しテストパイロットをしている。・・・これ以外に聞きたい事はあるか?三つまでなら聞こう。」

そう言った男の子の方、ダインスレイフ君は顔の半分くらいを隠す位髪が長かった。当然、眼は隠れていて見えない。でも、輪郭を見るとすっきりとしてかっこいいようなイメージを持った。

「はーい。」

そう言って手を挙げたのはクラスの中でも一番明るくゆったりとしている子【上田直子】さんだった。

「ダインスレイブ君はもしかして専用機を持っているのですか?」

「あぁ、試作型全身装甲機体。試作型ゆえに色々と試すために特殊となっているが、そこは新参者ゆえの事だ。マドカも一緒で試作機を持っている。で、他は?」

淡々と話す彼は少し怖いと感じた。何故か冷たい物を感じる。

「はいはい、私も質問があります。」

「どうぞ。」

次に手を挙げたのはクラスのお調子者と言うかムードメーカー的存在になりつつある子【本先 加賀音】さんだ。

「好きなタイプはどんな子ですか?」

「「「「・・・。」」」」

クラスのみんながじっとダインスレイフ君を見る。

「好きなタイプ‥。今は無い。好きになればその子が好きなのだろう。形は問わん。俺はそんな物に対してはあまり興味も無い。どんな美人だろうと、金があろうと、地位があろうと、そんな物にすがるしかない女などに興味はない。…強いて言うなら心の在り方が綺麗な者か?」

そう言うと、クラスの中から少し空気が悪くなる気がした。女尊男卑な思想の持ち主がいるのだろうか。

「そんなところか。他が居ないなら終わるが?」

「・・・。はい。」

その一番冷たい目線で彼を見ている私の隣の子、坂上静香【サカガミ シズカ】が手を挙げた。彼女は、政治家の娘で母親は政府の議員である。そんな子が見ているという事は・・。

「貴方は何故こんな所に来たんですか?‥気に入らないならさっさとここを去って実験材料にでもなればいいのに。そうですわ、貴方の妹さんは見た目はいいのですから私がもらいうけましょう。どうです・・ひぃっ!?」

そう言った瞬間、教室の前方からナイフが飛んできた。そのナイフは坂上さんの机に刺さり、彼女は悲鳴を上げる。

「・・・マドカ・・。何をしている。」

「すまない、イチカが悪く言われていたから・・。」

そうナイフを投げたのは妹のマドカさん。そして、いつの間にか教室の真ん中に立つ彼の手に二本ほど握られていた。そして、その手から血が滴る。

「「「きゃぁぁ!?」」」

近くにいた子は驚いてその場から逃げる。

「・・・マドカがこんな事をした事は謝ろう。しかし、・・・。」

軽く頭を下げ、そう言いつつ冷たい目を坂上さんの方に向ける。

「俺は、売られたケンカは買う主義だ。そして、一応言っておく。発言の責任は取れよ。」

「な・・!?ば、馬鹿にして!!」

そう言って怒った彼女は近くにまで行き手を上げる。

「そこまで。」

振りかぶった手を止めたのは担任教師の長谷川先生。

「坂上さん、貴方の発言は教師として、そして人として認めるわけにいきません。」

「しかし、先生!!」

正面から向き直り坂上さんの両肩を掴む。

「貴女は・・はっきり言いましょう。人として最低な事を云いました。これ以上言うのなら私は貴女を生徒として見れません。」

「・・いいわ!!私はこんな男を認める気はありません!!・・そこの男!私に専用機を渡しなさい!!そして目障りだからここから消えなさい!!」

そうはっきり言った。それが彼女の運命を決めた一言であった。

 

「・・。ならば、この機体をお前が扱えるというなら渡してやる。放課後、第三アリーナに来い。」

そう俺は伝えた。その瞬間、首に強い衝撃が走る。

「ぐぅっ!!」

「な、イチカ!?また・・アルケミストか!?」

そりゃそうだ。認めた相手以外が乗るというのだからこいつ【・・・】も怒るわな。

「一応言っておくが、その際、俺は責任を取らん。この機体はピーキーな事に特化している。そして、下手をすると四肢がつぶれるからな。」

「そ、そんな事を・・騙されませんわ。」

「そうか。ぐっ、・・ならば放課ごふっ。」

さっきからさらに怒って衝撃が強くなってきている。

「・・ダインスレイフ君・・さっきからどうしたの?」

「気にするな。」

初めに質問した女子が俺に聞くと首を振りなんでもないと言いつつ首を押さえる。

「・・・アルケミストって?」

「これ以上は時間が・・「アルケミストはイチカの専用機であるISのAIシステムの名称兼機体名だ。」マドカ‥。」

そこでそれはばらすなよ。

「AIシステム?あのプログラム的な?」

「アルケミストは半ば自分の意思を持っていると言ってもいい。癇癪も起こす。そして今、それがイチカに八つ当たりをしている。あと、そこの女・・坂上と言ったか?アルケミストは人見知りで自分が認めた奴しか乗せない。私でさえ振り落とされた。あんな発言をした貴様ならはっきり言って殺される可能性もあるぞ。」

そこまで言ったマドカを殴る。

「あだぁっ!?」

「お前は俺のアルケミストをどうするつもりだ?ん?」

そこまで言うとどう言う事か分かったらしく、顔が青くなった。

「一週間、おやつは抜きだ。」

「そ、そんな!?」

せっかくリミッターつける事をしぶしぶ了解したアルケミストが、今度は他の方面から狙われるじゃないか。まったく。しかし、ソレを聞いた坂上だったか?が顔を真っ青にしている。怖気づいたか。

「・・・どうした。・・分かった、乗せるのはやめよう。さっきの話を聞いたら分かるようにコイツはうちの会社でも特別な存在だ。マドカの機体はそうでもないが乗り手を選ぶことは間違いない。」

そして、俺は提案をする。

「俺が専用機を持つにふさわしいか見せるため、先ずは・・・このクラスの誰かと模擬戦するというのはどうだ。」

そう言うと坂上は今度は顔を赤くして睨みつける。

「男風情が!!良いでしょう私がやりますわ!!」

坂上は専用機は無いはずだが・・まぁいいか。

「ならば・・先生アリーナが開いている日は?」

「生徒同士で勝手に話を進めないでよ・・。まぁ、君の言うようにした方がいいみたいね。」

ため息をつきつつ端末を操作する。

「四日後の放課後、一組の使用後なら何とか出来そうね。」

「ではその日に。」

「分かったわ。・・はぁ、君は少しは自重してね。」

俺が知るか。このクラスの馬鹿に言え。それにこれくらいしないとマドカがキレて大変なことになる・・。

席に着こうとするとアルケミストに連絡が入る。一応、送信者の名前を見ると

【アリスイン・イグナイト】本社 社長室 固定電話

ぶわっと冷や汗が出る。

「せ、先生、すまないが本社から連絡が入った。一度退出する。」

「・・分かったわ。初日だし許します。でもこれからは気を付けてください。」

そう許可をもらい、廊下に出てISの通信機能を開く。

「はい。」

『あの小娘つぶそう。』

疑問形でも無い声が低く聞こえる。抑揚も無くただ平坦な声なのがヤバさを引き立てている。

「そ、それはちょっと・・」『イチカ様、あの小娘消しましょう。』「クーまで!?」

『『私達もそう思う。』』

電話口に皆いるようだ。ヤバい・・。

「コレは俺の問題だ。これが終わってからならどうしてもいい。」

一応押さえるように言おうと思ったがこの人らが止まる気はないと思う。家族大好き人間だし。

「それに、これをきっかけに動きだす事もできる。これを、始まりの合図にするというのはどうだ?」

『そうだな。私はそれでいい。あ、そうだ。私とスコールは教師と言うか特別顧問してそっちに行く事になったからよろしくな。』

『そうそう、イチカの試合の日にそっちに行くから。・・そん時にあのガキ締めるわよ。』

スコールが怖いいぃ!?初めてだよこんな怖いスコールは。

「はぁ、・・。」

一応その後は連絡事項を話し、教室に戻る。

廊下の陰でこっちを観察していた女子生徒に手を向けピストルを撃つような仕草をしつつ。

『!?』

驚いたような気がしたがどうでもいい。さっきの話でアルケミストが気分良くして歌を歌っていた。その歌に耳を傾けつつ、教科書の内容をノートに写しそれを分かりやすくまとめる。すでにこれで教本の三分の二を読破しつつまとめたノートが十冊以上ある。

勉強は実際必要として無い。あとは世界の動きをみるか。・・俺は少し鼻歌を歌いつつノートを書き続けた。

 




さて、貴方の予想と合っていたでしょうか?
引き続き投稿して行くのでよろしくお願いします。


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インフィニット・ソング 04

今回、専用機登場ですがまだ能力の一部しか発揮しません。
お楽しみはこれからだ!!
という事で次回以降も順番に能力解放して行きますのでお楽しみに。
さて、今回は誰の能力でしょうか?


模擬戦当日、俺は機体の前に手を突き立っていた。

「アルケミスト・・俺たちの始まりだ。表に立って動き出す。ここから、きっと困難が大量に待ち構えている。それでも・・一緒に行くぞ。」

そう言いつつ装甲をなでると、腕が上がり俺の頭に優しく当てられる。

「・・ふふ。」

俺は専用のスーツを着ている。普通は肌の露出を増やすのが一般的だが、俺は全身を覆うフルスキン。そして、髪を掻き上げる。俺の右目は今紅くなり、左目は蒼いだろう。

(ミカ、ガリィ、アイツの動き見ておけ。)

(わかったぞ!・・でもそんな言うほどに見えないぞ。)

(そうですよぅ。あんな屑に機体を見せる必要もないし・・今からこっそり消しましょうか?)

こんな状態でも変わらない二人に安堵する。今オートスコアラー達はこの機体のシステムに一緒に入り込んでいる。やろうとすればいつでも実体化もできる。が、今は見せる気など無い。

「では、・・・そろそろか?」

一組の試合が終わったらしくブザーが鳴る。そして、イギリスのブルーティアーズをまとった女子がピットに入って来る。

「な!?貴方は何者です!?」

「・・四組転入生、イチカ・ダインスレイフ。」

スーツの手首をいじりながら空中投影した六角形の画面を見つつそう答える。そして、ピット内の画面に長谷川先生の顔が映る。

「ダインスレイフ君、準備はいい?」

「問題無い。」

そう言い、俺はピットの出口に立つ。そして、飛び降りる。普通なら無事じゃ済まない高さを飛び降りてアリーナに立つ。そして、ピットのカタパルトから無人のアルケミストが出てくる。俺の後ろに降り立ち手を前に出す。

「『アリスイン・イグナイト』社所属、ダインスレイフ。これが俺の機体だ!!」

そう叫び後ろにある手に飛び乗りそこからさらに飛ぶ。空中で一回転して脚部の空いている所に足が入りそのまま装着。腕も広げると一緒にそこに体が合うように後ろから添えられ装着。前面の装甲が閉じ背後に回っていたヘッドパーツが付いて頭に装着。

『我が機体の名は、アルケミストなり!!』

そうして中央に佇む俺に会場は静かになった。

『・・君、どうしてそんな演出を・・』

先生がそう聞いてくる。まぁ、当然だろう。

『愚問。この機体は全身装甲。顔まで見えないから後からパイロットが違うとか言われないためだ。』

『わかったわ。そろそろ、坂上さんが来るわ。』

『承知。ブザーが鳴るまで待機している。』

話し終えた俺は眼を瞑り少しため息をつく。自分からやって置いて何だが、中二病発症しているようだ。でも、こうしたほうがアルケミストが気分上がるらしいのでやめるにやめられない。

『そのような木偶の坊な機体で、何が出来るのかしら。』

そう言いつつラファールリヴァイブに身を包んだ坂上が出て来た。そして、俺に銃口を向けている。俺は何も装備していないが、それはわざとだ。

『この機体は‥普通では無い。』

そうだけ言い俺は無防備に立つ。それに腹が立ったのか顔が赤くなった。

『それでは試合を開始します。』

そう言った後ブザーが鳴る。そしてすぐに坂上が撃ってきた。それを俺は右手を前に出して防ぐ。装甲で受けるわけでは無く、その前にある物によって止めている。

『な、なんなの!?』

≪!?≫

会場も驚いているようだ。それはそうだろう。空中に六角形のレモンイエローの様な模様が浮かんでそれによって銃弾が止められているのだから。

『まさか、ドイツのAIC!?』

『そのような物では無い。そして、・・・そんな物にこんな事は出来ん!!』

黄色い六角形からさらに周りに円が浮かびそれが四重に前にならんで浮かぶ。そこに左手に同じ色をした図形を浮かべそれを円の真ん中、六角形の真ん中に配置すると円が後ろにスライドし、一つの平面になる。それと共に光があふれラファールを包み込む。

『きゃあぁぁぁ!?』

坂上は吹き飛ばされ地面に落ちる。俺はそこに歩いて近づく。

『まだ、この機体の力の十分の一も見せてはいない。そして、この機体は普通ではないと言った神髄はここからだ。』

そう言って俺は前に右腕を出し、手のひらを上に向けて紅い鉱石を出す。

『Seilien coffin airget-lamh tron♪』

そう歌うと俺のアルケミストは光り、シルバーに色が変化。そして、左腕が肥大化し右手にナイフを持つ。

『言っておくが、俺は弱い。それが強さの元でもある。』

『ぐっ、弱さが強さとか・・意味が分かりませんわ!!』

立ちあがった坂上はそう言って壊れた銃を捨て、剣を出してつっこんでくる。

『それが分からないから、俺に負ける。』

それを見つつ俺はまた歌う。

~BGM【銀腕・アガートラーム】~

『~♪』

歌いながら剣をナイフで受ける。そして、そのまま歌いながら振って来る剣を受ける。

『っく!?そんな歌って・・余裕のつもりですか?!馬鹿にして‥!!』

『~♪‥馬鹿になどしていない。答える気も無いがな。・・・~♪』

そう。俺は歌い続けながら戦っている。これもとある理由があるんだがそれを言うつもりはない。

殴り、蹴り、ナイフで切る。

歌を歌い続けると出力が上がり俺の機体のゲージがもう少しで貯まる。右手でアッパーをして顎の下から殴り、そのまま勢いで空中に打ち上げる。

『ぐあっ!?』

そして、すぐに飛びあがり空中で追い抜かして、左腕にナイフを装備すると刃が大きくなり肘にあるブースターが火を出し加速して降りる。そして左腕を引き絞るようにして行き過ぎる前に振り下ろす。

『~♪』

歌い終わると同時にゲージがMAXに。そして、同時に坂上のラファールの胴に攻撃があたり、絶対防御が発動しSEがゼロになる。ブザーと共に試合終了がなる。

『・・う、ぅ・・。』

坂上は気を失ったらしく。そのままの状態で倒れたままだ。

(マスター、そのままコイツ締めちゃいませんか?)

(良いならアタシが分解したいぞ?)

(はぁ、まて。コイツは今回の事で役に立った。これで今は手打ちだ。‥まだ、面倒な事を起こすならその時に考える。)

(分かりました。)(わかったぞ。)

ガリィとミカが騒いだが黙らせギアを解除する。坂上をピットに戻すため抱えようかと考えている所にいきなり後ろから攻撃が飛んできた。いや、飛んできて攻撃して来たというところか。

『その子に何をするつもりだ!!』

そう叫び攻撃してきたのは、

『男性操縦者一号指定、織斑冬二・・。』

元(・)俺の兄弟の男だった。切りかかって来た剣をまた初めの六角形で防ぐ。

「おい!!てめぇ、何もんだ!!ここには俺しか男はいないはずだ!!‥俺がオリ主なはずだ!!」

『・・意味がわからん発言を・・。俺はダインスレイフ。四組に転入した第二男性操縦者だ。』

「なに!?どう言う事だ!!俺しかいないはずじゃ・・。」

『俺は先日急遽転入した。まぁ、クラスも離れているしどうでもいい。そこをどけ。』

六角形の外に二重の円を出しまた吹き飛ばす。出力を押さえたからただ衝撃があるくらいだ。

「くっ!?」

そして、俺は坂上の前に立ち抱えあげる。訓練機だから待機状態には出来ないのでそのまま抱えなければならない。そして、俺が出たのとは反対のピットに向かう。

『・・長谷川先生、彼女の救護用員の手配。あと、織斑の戦闘停止をお願いします。』

後ろから。「この!くそ!」とか言いながら切りかかってきているが、さっきの六角形の障壁に阻まれて俺には当たらない。音がうるさいだけだ。

「なんだよこれ!?この卑怯者!」

『うるさい。いきなり切りかかって来た奴に言われる覚えはない。それに、コレは俺の機体の装備だ。貴様にとやかく言われるような・・!!』

そこまで言っている途中でその障壁が急に壊されて俺の腕に切りかかって来た。危なく坂上を落としそうになるが、体制を直し持ち直した。そこにまた連続で切りかかって来た。見ると剣が開き中からエネルギーブレードの様なものが出ている。

「これなら喰らうんだろ!死ねぇ!!」

そう言い俺に無茶苦茶に切りかかって来る。初めは避けていたが腕に坂上が居るので、だんだんと避けづらくなってきた。そして、

「おらぁ!!」

あろうことか、SEが切れている坂上に攻撃してきた。俺は焦って、体をひねる。

『ぐぁっ!!』

右腕にブレードがあたり、装甲が切れてそのまま二の腕が斬れる。そこから血が出て、痛みが走るが、坂上を落とす事は無かった。そしてその衝撃で、坂上が目を覚ました。

「・・わたしは・・な、なんで貴方がわたしを・・か、抱えて・・。」

「もういっちょ!!」

俺がくらった事に気が付いたのかまた坂上に攻撃を仕掛けて来た。しょうがなく俺はまた同じようにして避けつつ後ろに下がる。また、右腕に傷が入り、さっきよりも血が出る。

「きゃぁ!?、な、なにを・・!?」

俺の腕が血まみれな事に気が付き、俺の顔の方を見上げる。お前にかまっている暇はない。と心の中で舌打ちをして、ピットになだれ込むように入る。

「貴方、私をかばって・・」

『知るか。さっさとどけ。あの馬鹿が来る!!』

腕から投げるように下ろすと、すぐに織斑が剣を構えてつっこんで来た。

「おおぉぉらああぁぁ!!」

俺はカタパルトに足を乗せて即座に発信シークエンスに接続、射出しながら体当たりして織斑ごとアリーナに飛び出る。

『この、馬鹿があぁぁ!!』

「ぐぁ!?」

そのまま、アリーナの地面に突っ込むようにブースターとスラスターを吹かし、地面との間でサンドイッチにする。衝撃は逃がしきれず、織斑は剣を手から放した。しかも、その時にSEはゼロになったのか、待機状態に戻った。

「・・ぐ、こ、この・・くずが・・。」

そう言い織斑は気絶した。俺はアルケミストを待機状態に戻し、血が出ている右腕に専用スーツの腰の救急パックから出した包帯を巻く。傷口はそう深くないようでよかったが、多少血が流れ過ぎて気分が悪い。

(マスター!!その屑。ここで締めましょう!!)

(そうだぞ!アタシがバラバラにする!!)

キレているガリィとミカが実体化しようとシステム内で暴れているのをどうにか押さえて、その場に座り込む。担架が二つ来て、俺と織斑を運んで行く。

その途中、廊下でこちらを睨む教師と女子生徒と眼があった。

【織斑千冬】と【篠ノ之箒】であった。

 




はい、今回はアガートラーム。一番最初は悩みましたが、
このギアが何気に好きなので選びました。
セレナァァァァ!!と叫んでいると
「こんな所で叫ぶ姉さんは嫌いだ」
とか言われるかもしれないので注意してください。


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インフィニット・ソング 05

感想が多い事に嬉しくて投稿です。

冗談です。明日また投稿が遅くなりそうなので
今日のうちに投稿させてもらおうと思ったのです。

皆さまの応援と感想で、私は完走できると信じています。
では、修羅場、行ってみよー(え?」


「・・・おどろいた・・。」

担架で運ばれた先はアリーナの救護室。そこで包帯を外し、傷口を見ようとした教師はそう呟く。

「君は医療タイプのナノマシンを使っているのかい?」

「あぁ、上司の知り合いにその方面に強い人がいてその人に。まえに、少し大きなけがをしてその際にな。」

傷口はふさがりつつある。まぁ、傷跡は残るだろう。

「ふーん。まぁ、傷口は縫うほどでは無くなっているし、後は流れた血が少し多かったから安静にね。」

そう言われて診察は終わる。俺は「すまない。」とだけ答え部屋から出ようとする。しかし、

「ダインスレイフ、貴様を拘束する。ISをこちらに渡せ。」

そう声がして入口から教師が数人入って来る。

「な、彼はけが人で安静なのに!?」

そう救護室の教師が言うが戦闘に立つ教師には関係ないようだ。俺を睨みつけ、手を前に出す。

「もう一度言う、ISを渡せ。」

「何の権限が合って・・。」

「貴様の機体が危険だと判断した。」

「はん、貴様の独断か。」

そう言うと周りから怒りの様なものが感じる。まったく稚拙な殺気だ。

「そこの四組の生徒を一時的に気絶させ、無関係な織斑に手を挙げた。」

「前者は試合で有り、後者は明らかに正当防衛だ。事実、俺は武器を出していない。」

「そんな事はどうでもいい。さっさと言う通りにしろ。さもなくば・・」

「さもなくば・・どうなるのかしら?」

入口から二人の新しい影が入って来る。聞きおぼえがある声だ。・・なんてボケはしない。

「スコール、オータム・・。」

「何者だ?部外者が入って・・」

「部外者ではない。私達は列記とした教師だ。今日付けだがな。」

「なに!?」

手に持つパスコードカードと身分証明、さらに学園長のサインの入った書類を出す。

「・・だが、貴様らに何の権限も・・」

「はいこれ。」

手に持つ端末を織斑千冬に渡す。

「・・ダインスレイフ兄妹に関する機体には特例を持つ?・・どういうことだ!?」

「どうもこうも、彼らの機体はIS委員会直属の私達が管理に付きます。コレはIS委員会会長からの指令です。さらに、学園長からも許可がありそれを破るなら罰則がある。そこに書いてあるとおりよ。それに、一応私が元所属していた企業だから、と言う事で他の人にメンテナンスしてもらう必要もないし、IS委員会の方で管理するからデータを開示する必要もないわ。まぁ、貴方は面白くないでしょうが、そんな事はこっちには関係ないの。さらに拘束って、何の権限が合って出来ると?私達は一教師。そのような機関ではなければ、軍人でもない。貴女は、ただ気に入らなければとらえて罰する屑の女尊男卑の女その物よ。恥を知りなさい!!」

本気でキレるスコールを見るのは、初めてかもしれない。後ろで、今にも殴りかかりそうなオータムを後ろ手で押えている所には理性が残っている所を感じるが。

「っく・・。ふん!!」

そう言い残し織斑千冬は去って行った。つられて他の教師も慌てたように出て行く。俺は、スコールとオータムの所に行く。すると後ろからマドカが出て来た。泣きそうな顔で・・。

「イチカの元に行こうと思ったのに・・あの屑に止められて・・。ごめん・・。」

そう言うマドカを抱きしめる。

「・・いい。大丈夫だ。」

「っぐす・・。」

抱きしめた胸の中で泣きだしたマドカの頭をなでて、スコールとオータムを見る。

「教師とは思っていたが、IS委員会の直属や会長の指令と言うのはどう言う事だ。」

「うちの社長(束)が話したのよ。【このままISを兵器として使用するならコアを止めるつもりだ。彼は宇宙開発の為に目的を持っている。彼を邪魔する気ならこっちも黙っていない。そして、織斑千冬や女尊男卑の奴等は彼を排除しようとする。私は、彼を護るためになら鬼にでもなるつもりだ。すでに、私は彼女も彼女の弟も私の妹さえ怒りを覚えている。確かに、ISを作ったのは私だ。だが、誰が人殺しに使えと言った!彼女はそれを助長している。IS学園さえ軍人の養成所の様なものだ。そんな事は私は望んじゃいない!】そう・・はっきりと、今まで他人を認識しなかったと言われていた彼女の慟哭を聞いた委員会の会長は、本気で後悔していた。だって、会長は男で、ただ言われるままにしていただけだった。しかし、今回の件で彼は実権を使い本気で動き始めた。彼の人となりはよく多くの国の企業やトップを動かした。そして、彼らが私達の事を認めてくれてテロリストのリストからは消された。今から、世界は変わり始めるわ。」

「・・俺が表に出た事でやっと変わり始めるか・・。」

それにしてもIS委員会の会長って男だったのか。普通に女かと思っていたが・・。

「イチカ・・大丈夫か?」

顔色が悪いのかオータムが心配してくれる。

「すこし、血を流しすぎたようだ・・。部屋で安静にしたい・・。」

肩をオータムが掴んでくれてそのまま進もうとするが胸の中にはまだマドカが居る。後ろからオータムが押して来たので体が密着した状態になる・・。

「・・。」

俺がどうしたものかと考えているとオータムがにやにやし始める。

「どうした?私の胸が気持ちよかったか?」

「なんだと!?」

オータムの言葉にマドカが反応した。そして、二人でいい争いが始まる。マドカの胸は控えめだからな。まぁ、年相応だと思うのだが・・。

「いいから部屋に戻るぞ・・。」

そう言いつつ俺は部屋の方に歩き始める。スコールがそっと肩を支えてくれて余分な力を抜ける。楽に歩き始めた。

 

 

『あの屑ども消そうか?』

『消しましょう。』

部屋に戻ると、束とクーからそう言われた。

「いや、待て。」

二人とも一体誰に・・織斑姉弟か。

「落ち着け。今度からは下手に手はだせんだろう。」

そう言いつけたからな。下手をすれば退学だけでなく逮捕までいくかもしれない。IS委員会直属の指令だからな。

「・・・それで済めばいいのだけどね。」

そう、スコールがため息をつく。

「だな。アイツ等きっといろいろとやって来るぞ。」

そう言いつつオータムは頭に手を当てる。

「マドカは・・・落ちつけよ。」

ナイフの手入れをしているマドカを見て呆れる。ナイフをケースに入れて本気の目つきで頷いている。

「それに・・俺はまだ本気は出していないし・・アイツに関して今回は様子見だ。織斑姉弟はアルケミストの能力解放で歯牙にもかけなくなる・・。もう少しかかるがな。」

そのためにはオートスコアラーの能力を解放する必要がある・・が、まだ時間がかかる。俺自体だけでなく他の方面の関係があるから下手に急げないのがもどかしい。ガリィとミカを先に回したのは少し悔やまれる。

「まぁ、それだからお前らは心配はしなくていい。後は・・?」

そこまで話していると部屋のドアがノックされる。来客だとハンドサインで知らせると束とクーは手を振りつつ回線を切り、スコールとオータムが資料を手に持つ。一応そう言う体裁を整えるためだ。更にマドカはナイフを構える。おい、お前だけなんで臨戦態勢なんだよ。

「誰だ。」

「私は、更識楯無。生徒会長よ。話がしたいの。」

ドアの向こうから聞こえた声はかなり真剣なようだ。。

「・・今来客が居るんだが長くなるか?」

「スコール・ミューゼル先生とオータム・ハート先生でしょ?その人達にも関係あるの。」

そう言っているこの人物。・・・たしか、日本の対暗部組織だったか?束の注意人物リストに居たはずだ。一応全員の方を見る。全員が頷いたのを見て鍵を開けて、ドアを開く。

「・・・驚いた。色々と言ってドアを開かないと思っていたわ。」

「俺はそこまで狭量なつもりはない。それに、言いたい事はわかっているし、どちらかと言うと協力を得たかった相手でもあるのは本音だ。」

そう言ってスコールに顔を向け指で戸棚を指してその後手を開く。スコールは頷き戸棚から湯呑を五個、更に緑茶の茶葉を急須に入れてポットで準備をする。

オータムは部屋の丸テーブルを広い所に置きそこに椅子を二つ置く。勉強用のいすをベット脇に置き自分はそこに座った。

そして、準備された椅子に俺は座り、マドカは一応立ったまま俺の後ろに控える。スコールがお茶を入れてそれぞれに配り、更識の分をテーブルに置く。その後自分の分を確保してベットに腰かける。

「では話そう。俺は、イチカ・ダインスレイフ。正直、偽名なのは知っているだろうが、一応俺はそう名乗っている。昔の名は捨てた。それに、【織斑家のでき損ない】はもういないのだからな。」

「そう・・。私は更識家現当主、更識楯無。一応私も本名と言う訳ではないわ。でも当主は楯無と名乗る物であるから私の名前はそうなの。」

「知っている。で、本題は?」

茶を口に運びつつ大体の予想は付いているがな・・。と眼を向ける。

「何が目的で簪ちゃんに近づいたの!?」

『ぶーー!!』

思いっきり噴き出した。全然違うとは思っても見なかった。てか、

「どこがこの後ろのメンバーにも関係あるんだよ?!思いっきり私情じゃねぇか!?」

「関係あるわ!後ろの貴女達が貴方に関係している。そしてそんな人が簪ちゃんのクラスに編入してきた。勘ぐるでしょ。私に対する人質とか。」

「一切考えてない方向からのアピールだな・・。俺は編入手続きに対しては知らない。織斑千冬以外のクラスならいいとしか言っていない。・・・そこら辺は話した学園長、轡木十蔵にでも聞いてくれ。」

「・・ホント?」

疑う様な眼で見られてもなぁ・・。正直、

「逆に聞くが、俺はお前の妹とやらが居ることさえ知らないんだぞ?そんな俺がどうするというんだ。それに、初めに言った通りどちらかと言うと協力を得たいんだ。俺には・・あまり時間がない。無理しすぎて寿命は極端に短くなっている。おそらく、三十までは無理だ。」

「「「!?」」」「な、なんだと!?」

部屋中に動揺が走る。俺以外全員が驚く。

「へ!?あ、貴女たちも知らなかったの!?」

「あぁ、初耳だ。どう言う事だ、イチカ!!」

オータムが俺を掴み上げる。

「・・・オートスコアラー・・ギア・・アルケミスト・・これらを使うために俺は色々と犠牲にした。何かを動かすためには何かが必要だ。コレは化学でも『錬金術』でも一緒だ。そして、物理法則に囚われない方法で動かす事に至った俺は、ソレを組み込み力を得た。しかし、大きすぎる力は代償も反動も大きい。結果、俺は感情の熱をエネルギーとしてオートスコアラーを動かし、感情の一部と強制同調剤『リンカー』を使用し適正の低いギアを装備。開発に時間かけたくないため極力体に無茶をさせアルケミストを開発した。・・正直俺の体はボロボロだ。束とクーは知っている。その上で俺の体をどうにかできないかと探ってくれて、医療用ナノマシンを改良し俺に組み込んだ。・・どうだ?俺に同情してくれるか?」

オータムから視線を反らし更識を見ると信じれないと言った表情をしている。

「・・俺は疲れている。長生きなどする気はさらさらなかった。実は昔から色々と悟っていた俺は自身の思いを隠し、実力も隠し他人を見ていた。…何が家族だ、何が血が繋がっているだ!!結局はその能力だけで依怙贔屓して傷つける!!ソレのどこが家族だ!!ソレのどこに繋がりがある!!俺は!!・・・だから俺は、自身の夢を実現するために他人も巻き込んだ。だが、その他人の方が俺を家族として温かく見てくれる・・受け入れてくれる。俺は・・どうすればいいか分からなくなってきたよ。」

本当は話すつもりもなかったが口を開くととめどなくあふれてくる俺の思い。一人で死ぬのが怖いのか・・どうしたのか・・。そう思っているとオータムが俺を強く抱きしめる。更にスコールが後ろから頭をなでる。マドカは袖にしがみつき泣き出してしまった。

「・・ごめんなさい・・。貴方が怒る意味が初めはわからなかった。でも、貴方は誰よりも頭が良くて、その上優しかったのね。・・お願いがあるの。ソレを聞いてくれたら私は貴方を信用します。」

ハンカチで目元を拭きながら言う。俺の言う事で泣いてくれるのか・・。

「お願いか・・内容に依るな。それ以上に言いたいのが・・アンタホントに対暗部か?俺の話に感情移入し過ぎだ‥。だが、ありがとう。」

「えぇ、対暗部としては駄目ね。・・内容は、私のさっき言っていた妹の事。そう、私は周りの言っている評価の事と一緒に思ってもいない事を言ってしまい、彼女を傷つけたの。そして、私はそれを後悔している。それは・・」

そうして話して行くと色々と長いのでカット。と言うか途中から妹自慢が始まっていた。

まとめると、

・妹に暗部の仕事をさせたく無くて『貴女は無能のままでいて』と言ってしまった。

・そのせいで従者も遠のかせている。

・悪い事が重なるもので日本の代表候補生になったのに開発途中の機体を男性操縦者の機体の為に開発途中で凍結された。

・それもこれも、織斑千冬が指示した事の所為らしい。

・更に何故か織斑冬二が妹に色目を使おうとしているらしい。【従者の一人からの報告】

・凍結された機体の制作を手伝うとか言って近づいてきているが本人は拒否。そのせいで人間不信が進行しているようだ。

と言う事。

「・・・めんどくせぇ事になってんな。」

ついため息が出てきた。つか、あの男あの性格のままか。

「・・昔から女に対し色目使っているのは変わらねぇのか・・。ガチであんな奴と同じ血が通っているとか思いたくないな。」

まぁ、もうすぐ血の内容も変わるだろうがな。ナノマシンとギアの所為で。あのように血を出すほど大きな怪我をすると・・な。

「まぁ、同じクラスだ。どうにかできるかもな・・。実際ただのIS作るくらいなら速攻で出来るし。」

「・・は?貴方が?篠ノ之束博士が関わっているって聞いたのだけど?」

「ん?あぁ、マドカのは・・な。俺は完全オリジナルだ。コアから新記憶媒体。装備からシステムまで全て俺の物だ。・・さっき言っていた錬金術・・信用できるか?」

「あぁ、・・・はぁ!?ど、どう言う事!?」

「俺は言っているように錬金術師なんだよ。あの機体にはその技術も含まれている。だからこそ、他に開示できないんだ。理解できたか?」

「え、えぇ・・。はぁ、織斑のでき損ないとか言われてたのに・・」

「能ある鷹は爪を隠す。そう言う事だ。・・まぁ、一応作ることに対しての意見が聞ければ少しは進展するだろ。」

 




はい、やはりこうなりました。
皆さま嫌いな力ずくのブリュンヒルデ様でございます。
スコールやオータム仲間にして権力持たせるとこんなにも頼もしいんだなと書きながらも思いました。
事実、亡国機業は手強いのは、実動班のこの二人が手強いというのもありますよね?


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インフィニット・ソング 06

皆さん、こんばんわ。おはようございます。こんにちは、かな?
では、返ってきましたので、早速ですが投稿行ってみよう!



どうしてこうなるのか‥。

「それでここはどうすれば?【師匠】。」

「・・そこは・・どう軌道を加えるつもりだ?」

「自分的には多数は誘導重視で残りは大周りの挟み撃ちの軌道とようどうの軌道を含みたい。」

「なら、・・何割にするかを決めて、出来次第トライ&エラーの繰り返しで最適な量を考えろ。」

「はい。」

メンテ室に二人っきりの状態で話してはいるが・・おかしい、この子は今人間不信の状態だったはずなのに‥。

 

~二日前

第二整備室。更識との話の後来たのだ。ここで彼女の妹、更識簪が作業しているらしいのだが・・、

「うーむ、正直あまり関わる気もなかったのにな・・。どうしてこうなるものやら。」

愚痴が少し出てしまうがしょうがない。

「うにゅ~・・。」

諦めて中に入るとそこにいたのは制作途中の機体に向かってうめき声を上げる少女の図だった。やたら可愛いうめき声だな。

そこから離れた所に座りついでだからシステムの強化パックを進めることにした。

「・・だれ?」

気が付いたらしくこっちを見る。

「イチカ・ダインスレイフ。ちょっとこっち使わせてもらうぞ。」

そう俺は答えて作業を続けた。

「貴方、その機体、作ったって言ってたよね。凄い・・。」

「何がだ?」

「え、・・その・・前の試合で・・凄い強かったから・・。」

「そうでもない。織斑の攻撃で怪我してしまうくらいには弱い。」

「ソレは彼女を庇ったからで・・そう言えば私の事知ってるの?」

「同じクラスの更識簪。クラス代表と言う事くらいは知っている。一応この学園の生徒会長更識楯無の妹で、日本代表候補生と言う事は情報があるが、それくらいだ。・・そう言えば、所属は倉持技研だったか?・・と言う事はあの織斑の機体と一緒という事か。なるほど、あの機体に人員を取られたという事か。・・で、自分で作ると・・。無謀に近いな。代償が大きすぎる。」

「そ、そこまでなんでわかって・・でも、貴方なんかに私の気持ちはわからない!!」

一瞬戸惑ったようだが、その後急に怒りがこみ上げたのだろう。大きな声をあげて叫んだ。

「あぁ、分からない。話もせず、他人と関わらず、誰が分かるものか。それに俺は、すでに捨てたものだ。ソレを後悔はしてないが、お前みたいに捨てもせずただずるずるとしがみついて後悔しているようなやつの事など分かるわけがない。」

「・・捨てた?」

つい口が滑ったが、まぁ、コイツも暗部の家系だ。口は固いだろう。

「・・今から言う事は他言無用だ。俺は元、【織斑】と名乗っていた。」

「!?・・イチカってまさか、【でき損な】っ!!」

慌てて口を塞ぐ。別に気にして無いのだがな。

「ま、それは置いておこう。とある事件をきっかけに俺は織斑千冬から捨てられ、俺自身もそれで名前を捨てた。そこで、俺を拾ってくれたのが今の会社のメンバーだ。彼女たちには感謝している。居場所と名前をくれたからな。そして、俺は恩返しをするため会社を大きくできるように色々と開発していた。もうすぐ、それが世界に出回る。世界が変わり始める。名前と存在を捨て一から自分を作る。普通なら怖いだろうが俺は元から一人だった。だから、お前は出来ないだろう。家族がいる、一人じゃない。・・そう言いたかったんだ。」

俺はそう言いつつ、ポケットからメモリーカードを投げ渡す。

「え!?きゃ?メモリー?」

「一人で作る。それも良いだろう。だが、歴史の誰も一人でやり遂げた者などいない。必ず、誰かしらが関わった。…先人の知恵や誰かの物を参考にするくらいは問題ない。」

そう言い俺は席を立つ。

「時間は有限だ。後悔することがいやなら、一度試してみろ。そして、その後からまた一人でやってみろ。それならできるだろう。お前には下地が無い。土台が無い。それを作り上げてからでも遅くはない。」

俺は部屋から出て行った。

 

~翌日

『簪ちゃんが話をしてくれたのよ!!ホントにありがとう!!』

「五月蝿い・・。」

電話がかかってきたので出てみると、更識楯無だった。どうやら妹と話が出来たらしく、お互いに謝って仲直りが出来たらしい。その上で、俺に約束通りにすると言ってきたのだ。だが、それからずっと話がループしている。どう言う状況で話があったとか、その内容とかもう五月蝿くて・・。

「・・俺はもう一度彼女に合う。一応、一目見ておくからな。あと、クラス代表の機体だから早めに仕上げる必要もあるだろう。手伝いが欲しいかどうかも聞いておく。」

『うん、そうしてあげて。天災君なら大丈夫だと思うわ。でも、簪ちゃんに手を出したらただちゃ置かないから。』

「知るか。俺はそんな気は全くないし、・・俺はもうそんな事はいらん。」

『へ?もうって・・どういういm』

話している途中で切り、電源を切っておく。第二整備室に入るとまた同じ所に更識簪がいた。おれはその顔を見てしっかりできそうだと思ったので去ろうと後ろを振り向こうとする。が、急に腕を掴まれる。

「どこ行くのですか?【師匠】?」

「・・師匠とはなんだ?」

「私に色々と教えてくれた先生、人生の価値観を教えてくれる、そんな人を師と仰いでもいけませんか?」

「俺は別にお前に・・「簪。」・・更識に「簪。」うぅむ・・簪に教えることなど無い。後はお前が知ろうと思う事がお前の人生になるだけだ。」

「だからそう言う所が師匠っぽいって言ってるの。」

簪はくすくすと笑い、俺は少し眉をしかめる。うーむ、なんかこの子は色々と吹っ切れたようなんだが。

「その‥だな、簪は俺に何を聞きたいんだ?」

「ソレは、あのデータの事。どう調べてもアレは既存のデータではない。私は調べつくしたうえでそう思ったもの。機動効率、エネルギー変換率、データ処理速度。どれをとっても一級品。そんなデータは無かった。だから、貴方の企業のデータと思った。そして、昨日の作業風景を見ていて貴方が慣れているという事、それに貴方が『開発した』と言った事を踏まえて、貴方が作り上げたシステム。私もプログラムについては自信があったけどそれを軽く凌駕する・・いや、そんなもんじゃない。篠ノ之束博士に匹敵するほどの物と言える。・・本当にどう言う事なの?昔の噂は?」

本当によくしゃべる娘だ。こんな子じゃないと思っていたが、自分の得意分野だからテンションが上がっているのかもしれない。

「俺は・・『能ある鷹は爪を隠す』。まぁ、自分を護るための方法だ。・・はっきり言えば俺が作ったシステムだ。だが、それも既存のデータを参考にしている。個人の力でもない。」

『いっくんはまったく謙虚だねぇ?』

そう声がした。おい、この声は・・

「はい?こえが・・どこから?」

『こっちさ。君が更識簪ちゃんだね?』

そう声がした方に向くと、モニターに束が映っていた。

「は、はい・・って篠ノ之博士!?」

『そうそう。ふふん、彼は私の大のお気に入りで・・君の見立て通り私を超える存在さ。彼のISは唯の機体ではなく、新型でISGと名前を付けたものさ。そんなもの私でも出来ないのを、作ってしまったのだから、ホントに凄い。そして、私がここに姿を見せたのには理由がある。わかるかな?』

そう言われた簪は考え込むしぐさをして、急に顔を上げる。

「もしかして、彼に何かあるんですか?」

『そう。彼は少しのめり込むきらいが合って、本気でやると八徹とかやるの。で、ソレを止める際にまーちゃん、‥マドカだけじゃなくて君にも手伝ってほしいんだ。止めるだけじゃなく、システムを手伝うという方法でもいい。早く仕上げる事が出来ればそれだけ彼は休む時間が出来るのだからね。まーちゃんはそっち方面が弱いのさ。』

「なるほど、それならできます。・・ですが貴女で無いのはなぜ?」

『おいおい、そこは日本の中の異国。束さんがそこに行ったら問題が発生しちまうさ。というか、私、イグナイト社社長だし。そう、出歩けないのさ。』

「はぁ!?・・わかりました。でも、私も自分の専用機が・・。」

「そこは俺が手伝おう。・・別に作るわけじゃなく、意見を聞いてきたら答える。それならどうだ?俺も手を休めずに出来るからな。」

そう俺がかぶせる。俺抜きで話が進むからどうしようか思っていたんだが、何とか話をねじ込めた。

「それなら・・うん。やっぱり師匠だね。」

「ぐっ・・ま、しょうがないか。」

『あれ?もしかしていっくん照れてる?いやぁ、いっくんの照れた顔とか珍しいのが見れた。キミ凄いね・・。でも、いっくんは渡さないからね。』

「ふふ、どうでしょうか。まぁ、今はそんなつもりはありませんから。・・今はね。彼の事まだよく知りませんし・・でも、凄く頼れるという事はよくわかりました。」

『ふふん、彼の周りにいる私達はそう簡単に譲る事はないからね・・。供用するなら、考えておこう。』

「おぉ、なるほど。」

「おいい!?何を言っている!?」

いったいこの話はなんなんだ!?まるで意味がわからんぞ!?

 

俺は疲れて部屋に戻った。マドカはもう寝ている。俺は暗幕をして静かにキーボードを叩く。

(・・マスター、私達も使っていいんですからね?)

(そうだぞ?マスター。まぁ、アタシはバラバラにする事しかできないから出来ても重い物を持つくらいだぞ?)

(私に地味な作業は無理だからな・・期待するなよマスター。)

(私はあの兄弟と篠ノ之妹の刃を折る事が出来れば・・。)

こいつら・・。

(お前らはまだ見せるわけにはいかん。その時は近いが・・タイミングと言う物が居る。その時に頼むぞ?)

(((分かりました。)))(わかったぞ・・。)

(ふふ、近いうちに出してなでてやるから。)

(おぉ!?それならしっかりするぞ。マスター!!)

ミカは元気になったようだが・・他の奴の気配が・・

(ケッ・・子供ブリやがって・・。)

(地味に私達がないがしろに・・)

(あの子を一番に折ってやろうかしら・・。)

おいおい、

(お前らもだ。期待しておく。それまでは・・【イグナイトモジュール】のシステムの完成をいち早くするぞ?)

(((はっ!!)))(おう!!)

そうして夜は更けて行く・・。

 




えーっと、皆さんも色々と思う事が有ると思いますが、
・・シンフォギア本編の指令の呼ばれ方を見て良いなと思ってやりました。
反省も後悔もありません。だって、【OTONA】ですから。
はい。これも言いたかっただけです。
すいませんでした。シンフォギアネタばかりですいません。


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インフィニット・ソング 07

「また徹夜かイチカ。そろそろ寝ろ。な?休め?」

「あぁ・・そのうちな。」

「そう言ってすでに四日たっているぞ!?くそ、コイツ強いから無理やりと言うのもできないし・・薬を盛っても効かないし。」

暗幕を使っていると明るくなってきていた事に気が付いていなかった。

「マドカ、すまんがシャワー使うぞ。」

「あぁ、出て来て、そのまま寝ても良いぞ?」

「何言ってんだ?授業があるだろうが。」

「お前は一切必要ないだろうが。」

何言っているんだと睨まれた。まぁ、しょうがないか。そう言ってシャワーを浴びて出ると声がする。どうやら、マドカと誰かが話しているようだ。スコールか、オータムだろう。そう思って出るとそこには、

「あ、出て‥おい!!上着を着ろ!!」

「は?きゃっ!?」

「はわわ!?凄い良い体なのですわ!?」

二人の女子生徒だったのだ。マドカが怒るのでしょうがなくシャツを着る。で、そのまま冷蔵庫に向かい、アイスコーヒーを出して飲む。そして、タオルで頭をわしゃわしゃと拭きながら、携帯食料を口に含む。そして、牛乳を出してそれで流し込む。

「・・?」

そんな事をしていたら横から視線を感じたのでそっちを向くと二人の女子がこっちを紅い顔で見ていた。

「何だ?」

「い、いえ・・その、お風呂上りがなんか色っぽいとかそんな事を・・」「うんうん。」

よくわからんが、横のマドカはその言葉にうなずきながら怒りの表情だ。意味がわからん。

「で、何用だ?【坂上】、【簪】?」

「あ、そ、その・・申し訳ありませんでした!!」

坂上は即座に土下座した。なんだこれ・・。

「そ、その・・昨日、謝ろうと思っていたのですが、その・・顔を見せる勇気がなくて・・更識さんとダインスレイフさんが少し友人関係が進んでいると聞いて相談して‥。」

「で、俺の部屋に押し入ったと。まぁ、ちゃんと反省しているならそれでいい。それに、俺は気にして無い。マドカがキレそうだったからこういう形を取っただけだ。簪は付き添いか?」

「うん、あと一緒に朝ご飯食べないかなって?ねぇ?師匠。」

「し、師匠?」

「そう。私よりもISのプログラム成績は上なの。で、色々と教えてもらって・・クラスになじめない私を叱ってくれて・・。だから、師匠なの。」

「は、はぁ・・。そうですね。確かに、私も今はそう思います。」

二人が尊敬のまなざしで見てくるので流石に俺もたじろぐ。こんなはずじゃないのに・・。

マドカに助けを求めようと思ってみると、どうすればいいのか悩んでいるようで、百面相になっている。‥褒められてうれしいのか、女子が言っているから怒ればいのか、兄の事を認めたという事で許せばいいのか・・そんなとこか。

「マドカ。どうする?一緒に行くか?お前に任せる・・。」

「ちなみにイチカはさっきので朝食は終了してるぞ?」

はは・・そう俺はもう教室に行くしかやる事はない。そして、それはいつもだ。

「そ、そうなんだ・・だから早かったんだ。」

「か、体に悪くないのですか?」

「・・別方面で問題があるから何とも云えん。それに栄養面では問題ないように作ってあるし味も悪くない。だが、・・カロリーが凄いんだ。アレ一つで三日分くらいある。」

「はぁ!?」「そ、それはおそろしい・・。でも、先ほどの体を見る限り・・」

「そうだ。イチカの体は少しおかしい。だから、真似するなよ。」

「しません。」「出来ない。」

マドカはこの二人と友達になれたようだな。ふむ、おかしな縁だがそれも一興か。

「さて、行くぞ。残念だが私とだがな。イチカ、また教室でな。」

「あぁ。」

 

校舎に入り廊下を歩いていると前から男女が歩いてくる。

「おい、お前!!」

そう声をかけて来たのは、

「・・男性操縦者第一号【織斑冬二】・・。」

「てめぇ・・あんときゃよくもやってくれやがったな!!」

「冬二があの後二時間も気絶していたんだぞ!!」

そう続いて行ってきたのは、

「篠ノ之束の妹【篠ノ之箒】‥。」

「姉は関係ない!!」

そうだな。お前の馬鹿さ加減には束は関係ないな。

「何用だ。」

「決まっている!!あの時の礼を・・させてもらう!!」

そう言って織斑は竹刀を、篠ノ之は木刀で殴りかかって来た。

「礼?恨みを晴らすという事か・・。」

織斑の振りは一度横に避け、篠ノ之の木刀はしゃがんで避ける。

「ここには他の女子が居るんだが?」

朝の廊下だ。登校途中の生徒が大量に居る。

「知るか!!てめえがさっさと殴られれば良いんだよ!!箒!!」

「あぁ、さっさと観念しろ!!」

二人掛かりで掛って来るがぶっちゃけ邪魔し合っている。動きがめちゃくちゃ阻害されて隙ありありだ。

「何をしている!!」「何をしているの!!」

騒ぎを聞きつけて織斑千冬と長谷川先生が来た。

「こ、コイツが因縁つけて来たんだ!!」

「そ、そうだ!!」

「・・。」

はぁ、・・こいつら小学生の時と全く変わって無い。自分が悪くないといい、逃げようとする。小学生時代は俺と言ういじめの標的がいたから誰も助けなんかなかったが‥。

「せ、先生・・私、織斑君と篠ノ之さんが声をかけてその後、手に持っている物で襲いかかっているの見ました。」

近くにいた別のクラスの女子がそう発言した。

「「なっ!?」」

「ほう、それは本当か?」

織斑千冬はその言葉を言った生徒を睨む。

「ひぃ!?」

「そいつの言っている事はでたらめだ!!俺じゃない!!こ、この嘘つきめ!!」

そう、女子に言う。

「こう、織斑は言っているが?」

「そ、その・・。」

織斑千冬は手に出席簿をぱしぱし言わせながら言う。それによって女子はもう泣き顔である。イライラしてくるな・・。そう思って声を出そうと思ったら、

「織斑先生・・そのような行動をしているとどう見ても脅迫です。おそらく、その女子の言う事は正しいでしょう。」

そう端末を見ながら長谷川先生が前に出た。

「何か問題が?嘘をついているのなら、叱る必要があるでしょう?」

「だからと言って、そのように体罰を与え、恐怖を植え付けるやり方はおかしい。それに・・。」

そう、指を指す。その方向には・・

「か、カメラ?」

そう、一応防犯用の監視カメラが校舎内にある。それに気が付いていなかったのだ。俺はそれを知っていたからそれを言おうと思ったんだが、それは学園長以下数名しか管理できないはずだ。

「今しがた、確認を取りました。織斑君、篠ノ之さんが校舎内でその手の物を振り回し、彼に襲いかかっていた。危険極まりなく、厳重に注意、反省が見られないようなら処分を下すようにと。」

そう、端末を向け学園長が指示した事が書いてある。

「・・お前がそれを今書いたのだろう!!」

「この発信者のアドレスは学園長室の端末からしか送れないし、なんなら電話しますか?」

流石に怒りが浮いてきたのか、長谷川先生の目つきがかなり鋭くなってきた。

「っく・・ふん。織斑!篠ノ之!貴様等は校舎内で危険行為を行った。それは確定だ!!罰として反省文三十枚だ!!」

「は、はぁ!?でも、千冬姉!!」

「織斑先生だ!!」

言い負かされた怒りも織斑に向いているようだ。まぁ、この女の馬鹿さは昔かr・・!!

「くそっ!!」

後ろから篠ノ之が木刀で頭部に殴りかかって来た。即座に前転し、足で木刀をはじきあげそのまま体制を変える。

「篠ノ之さん!!」

「っちっ・・。」

聞こえた。織斑千冬が舌打ちをした。さっきの大きな声はそっちに注意を向けるためか!!

「・・織斑先生、篠ノ之箒、織斑冬二・・。いま、三者に処分が決まりました。全員、自室謹慎五日。篠ノ之箒には木刀、竹刀の没収及び部活動の停止。剣道部からの退部。今後一年全大会の試合出場禁止。織斑冬二は専用機の一時的没収。および凍結。織斑千冬には今後半年の給料の5割減額。この決定は学園上層部及びIS委員会よりです。異論は認めない。」

後ろから、スコールとオータムが端末を掲げながら来た。その顔には明らかな怒りが浮いている。

「な、なんだと!?」

「文句は言わせねェ!!こんな所で木刀を振り回してやがったんだ。コレは軽いぞ。普通なら速攻拘留室にぶち込む所だ。織斑冬二は危険思想がある。そのため一時的に取り上げるという事だ。そして、一番気に入らないのはテメェだ織斑千冬!!」

「教師でありながら、生徒に自分に有利な発言になるように脅迫行為、および暴行行為の黙認。こんな事は許されることではない。恥を知りなさい!!」

「ふ、ふん。一教師にそんな権限はない。IS委員会とやらも嘘だろう?」

「あら、織斑冬二君と篠ノ之箒さんは知らないのね。私、スコール・ミューゼルと後ろの彼女、オータム・ハートはIS委員会会長直属でイグナイト社のISを持つダインスレイフ兄妹の機体の管理を任されている。更に、彼らの周りに女尊男卑の問題が起こりかねないからその事も注意するようにと仰せつかっているわ。貴方には姉がいるからと言う事で私達ではないようだけどね。」

そう言いながらIS委員会の証明である手帳を見せる。国際IS委員会のロゴが入っていてそれを持っているのは本当に一握りである。普通はバッジとかそういうものがあるのだ。

「・・は?」

「だから、テメェらはさっさと寮の自室に行け。そこにいる奴に専用機の待機状態を渡してだ。そいつは私の部下だ。分かったらさっさと行け。抵抗するなら拘束してもいいと言われている。校内で凶器を振り回す危険な奴に遠慮する事はないってな。」

織斑は「くそっ!」とか言いながら歩き、篠ノ之は俺の方を睨んで動かなかったため強制的にオータムに連れて行かれた。

「・・大丈夫?ダインスレイフ君。」

「・・アイツの攻撃は別に・・。でも・・」

そういって左手を出す。そこにはまた血まみれのナイフ。

「マドカの攻撃を止めるのには苦労した。」

それを【カランカラン】と落とすと、後ろからマドカがものすごい形相で現れる。

「・・何故止めた。」

「お前も、一度頭を冷やせ。お前も危険思想持ちの一人だ。」

【ごん】とげんこつをしておく。

「ぐぅ・・。」

頭を抱えつつ、俺を睨むマドカを胸に抱きしめる。

「お前の怒りはうれしい。だが、お前まで謹慎されては俺が寂しい。」

初めてかな?コイツに俺の弱音を吐くのは。

「段々とお前らの事が・・離れるのが怖いとも思えて来ている。だが、もう止まれんのだ。俺を恨め。憎め。だが、俺はお前らが好きだ。大切なんだ。」

周りに聞こえないよう抱きかかえるようにした頭の近くでささやく。

「っぐ、ぐすっ・・ごめん。」

「いい。俺の為に怒ってくれる。それはものすごくうれしい。」

こんな俺の為に怒ってくれるこいつらが好きだ。だが、歯車は回り出した。止まれないのだ。

 

 




ヘイトが更にたまって行ってる気がしますね。
まぁ、この先品ではオリ主(笑)とモッピーですからね。
感想、評価お待ちしております。


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インフィニット・ソング 08

お気に入りや評価をしてくださる方が居てうれしい限りです。
これを励みにいっそう、頑張りたいと思います。


「・・で、コレはなんだ?」

教室に入るとクラス中から好奇の目で見られていた。殆どが悪い感情を感じない視線であるから少しびっくりした。

「そりゃ、木刀を振り回す剣道全国優勝女と竹刀を振り回す男を相手にかわし続けるほど強く、周りの事まで考えて反撃せずあえて人がいない方に誘導していた。しかも、その男がほとんどいない男性操縦者だ。気になるのだろう。」

すこし不満げなマドカが説明してくれたが、なんだ?お前やきもちか?

「・・・クラスの手のひら返しに少し思うだけだ。」

「そうか。しかし、俺は別に何もしていない。だから・・あまり見るな。視線にはあまり慣れていない。」

顔を反らすとクラス中から『キャーーアァァア!?』と黄色い声が上がる。なんだよ。

「・・ギャップ萌え?なるほど・・クラリッサが言っていたのはこういう事か・・。」

「おい、マドカ。今聞き捨てならない名前が上がったぞ?いつの間にあの女と仲良くなった?」

「あ・・、ソロソロジカンニナルカラ、セキニスワルナ。」

「・・クラリッサ・・懐かしい名だな。アイツ等は元気だろうな。」

「・・秘密にしておこっと・・。」

マドカが何か少し小声で言っていたが俺は気にしなかった。クラリッサとメルアド交換しているとかそんな事だろうしな。

 

そして織斑がいない事で平和な日々が流れた。ある日の昼、

「ねぇ、イチカ君。知ってる?」

「転入生の事か?どこかの代表候補生が来るとは聞いているが・・。」

「そうそう。中国からの転入生で・・専用機も持ってるらしいわよ。」

クラスの女子が俺に声をかけて来て話していた。なんか最近クラスのメンバーと話す事が多くなった気が・・あぁ、開発の時間が減る・・。ま、いいか。そのおかげかマドカも友達が増えたし、簪とは親友クラスになったらしい。坂上はあの後仲良くなったらしく、性格はともかくかなり優秀で人材を見る目はあるらしく、適材適所の配置を出来る。そのため簪の専用機はすぐに完成しそうだ。このままならクラス代表選は十分間に合うくらいに。

「・・ここにイチカ・ダインスレイフっている?」

食事をとってクラスに戻ると女子が入って来た。背は小さく髪型はツインテール。目つきは鋭めで、猫のような感想だな。

「・・そこの男、アンタね・・?」

「あぁ・・。確かに俺がダインスレイフだ。お前は?」

「私は‥ん?んん?」

「な、何だ・・。」

近くに来たと思うと急に怪訝そうな顔になり、鼻をすんすんと言わせながら匂いつつ近づいてきた。流石に俺もそんな行動は予想外で焦る。ん?この娘、どっかで・・。

「い・・いちか?」

「・・?確かに俺はいち・・!?」

思い出したマズイ・・コイツは!!

「・・なるほど。お前は凰鈴音か。・・さすがだな・・。」

思い出したが・・コイツにあの話をされるのは不味い。少し時期尚早だ。だから

「そうだな・・放課後、少し話がある。妹の、マドカともども少し話をしよう。」

「・・・何か事情がありそうね。分かったわ。・・じゃあ放課後に。」

俺が言った事に何かを感じたらしくおとなしくひいてくれた。この勘の良さとかは昔から変わって無いらしい。しかし、そんな事を考える暇はない。だって、

「・・今のは?誰だ?」

マドカが怖い状態な事を止めなければならないからだ。

「そこを含めて放課後まで待て。・・周りの聞き耳を立てて居る奴らが居るからな。」

「分かった。」

少し不満そうだが、納得はしてくれたようだ。その日の午後の授業はそわそわした奴が多くて落ち着きがなかった。

 

 

「で、どこで話す?」

「企業の事もある。だから・・スコール、オータム。生徒指導室、仕えるか?」

「確かにあそこなら外に音は漏れないわね。まぁ、良いでしょう。私は許可取って来るわ。」

「じゃあ、私はお前らを部屋まで連れて行く。その後は一応部屋の前で待機しておこう。」

「すまん。では行くか。」

と言う事で部屋の中に入り席に着く。

「まぁ、お前は気が付いたらしいが・・」

「ねぇ、一夏・・よね?どういうことなの?死んだって聞いたのに・・。」

「イチカ、コイツは誰でなんでイチカの事を知っているんだ?」

「二人一緒に聞くな。先ず、凰。俺はもうイチカ・ダインスレイフだ。前の【織斑のでき損ない】の姿はない。アレは死んだ。戸籍もない。だから・・俺とおまえは企業の出張の際に知り合った事がある。分かったか?」

「・・そう。アンタが死んだって聞いた時は弾と数馬が悔しがっていたのよ?」

「そこまで言うほど付き合ってはいなかっただろう。精々一日に数回声をかわす程度。そんな思うほどでは・・」

「あんたに!!・・アンタには借りがある。妹を助けてもらった上、本人も助けてもらった弾、孤立していたのを弾やアタシと繋げてくれて人間不信から治った数馬。そして、何よりも言いたいのは!言葉がうまくいかなくて虐められていた私を・・・自殺までしようとしていた私を救ってくれた。そんなアンタに私達は借りも・・何も返せていない!!」

「そんなものはいい。あの時、孤立していたのは俺もだ。友達なんか作るつもりもなかったがそれが原因でいじめを受けている俺。その横に居てくれた。それで充分だった。だから・・織斑一夏の事は忘れろ。」

「結果的に私の質問にも答えてもらえたな。・・なるほど、イチカの懐の深さはその頃からだったんだな。」

納得したのか頷くが・・そこでマドカは急に【はっ!!】とした顔になる。

「ちょっと来い、凰。」

「まって、アタシ、アンタの事聞いてない。」

そう言いながらも部屋の隅に行く。なんだ?そこにスコールが質問をしてくる。

「・・イチカ。彼女と弾と言う子の妹。何があったの?」

「凰は小学生の時、中国から引っ越してきてそれが原因でいじめられていた。言葉は片言だったから少し発音の練習に付き合い、中学にはその持ち前の明るさとキャラで友達も多くなっていた。弾の妹は【蘭】といって、兄が少しやんちゃだったからと言う事で人質に取られた。そいつら自体には別に興味はなかったが、帰り道で騒いで居たから塀に座って見ていた。そしたら、弾がぼこぼこになった頃に人質に取っていた男の一人が中学生で蘭に性的に触ろうとしていた。流石に見逃せなくなり、俺は塀から飛び降りてその男をぶっ飛ばした。顔は御面で隠してな。で、その時に凰も帰り道だったらしく、弾がそれを話したら即座に蘭を連れて逃げてくれた。そして、弾を囲んでいた奴と周りの馬鹿どもをぶっ飛ばして俺は姿を隠すように帰った。で、翌日に凰が横を通り過ぎた時に急に振り返って、『昨日のはアンタだったのね?』とか言ってきた。」

「なんで急に?」

「・・それがアイツの驚く所なんだが・・・匂いだそうだ。」

「・・彼女は人よね?動物的すぎない?」

「それがアイツの怖い所だ・・。なんか記憶にあるような気がしていたが、その時に気が付いたって。だから、俺はアイツを猫とか思っていた。」

そう思うくらいにアイツは面白い奴だった。で、そんな事を話していると、二人が帰って来た。

「・・スコール。マズイ、コイツ含めて結構な量が居るかもしれん。」

「何が?」

「イチカが・・織斑一夏かも知れない・・て事に気が付いたやつら・・。」

「それは・・まずいわね。」

聞いてみると、なんか俺に興味を引いていた奴らがそうじゃないかって言っているらしい。凰は国に帰って代表候補生になっていたから最近の事は知らないが、連絡を取る事は出来るらしい。

「連絡してもらってもいいか?」

「分かった。じゃあ、・・弾?久しぶりね・・。そうよ。・・え?あ、あのね・・」

『だから!!今IS学園に居るイチカ・ダインスレイフって奴があのイチカじゃないのかって気がするんだ!!アイツって生きていると思うんだって!!』

凰の携帯から叫ぶように声が聞こえる。

「お、落ち着きなさいね?弾?」

『落ち着けるか!!俺が、アイツにどんだけ借りがあると!!』

弾がやかましいので俺は携帯を取り上げる。

「五月蝿い。」

『な!?アンタ誰だ!!・・ん?その声!!一夏か!?』

「一言でわかるとか気持ち悪いな。・・あぁ、面倒だ。お前ら、なんで気が付くんだよ・・。」

『お前はどう思っていたか分からないがなぁ!!俺たちはお前の事を親友のように思っていたんだ!!だから!!・・だからお前が死んだと聞いた時は・・俺たちは・・』

「・・織斑一夏は・・死んだ。俺は、ダインスレイフだ。‥だが、また会おう。いつかな。」

『・・分かった。ありがとう。・・鈴に代わってくれ。』

「ん。」

そう言いつつ携帯を返す。

「そう。うん・・分かった。またね。」

少し涙目になりながら携帯を切る。

「・・まずいな。確実に確信してやがる。」

「そのようだな。ま、名前を残したからしょうがないか。」

「・・・ま、お前が思っているほど嫌われてはいなかったという事だな・・。」

「何故だ‥。解せん。」

俺はやりたいように振る舞って、他人とあまり関わっていなかったと思っていたが‥。

「一夏・・いえ、イチカ。また、これからも、よろしくね。」

「分かった。」

俺たちは握手をして理解し合った。

 

「で、凰?イチカに対しての恋愛感情は?」

「ん?それは・・分かんない・・かな?強さとか優しさに憧れてたとか、孤高見たいな感じに感銘を受けていたとか・・そんな感じだったから。それにそこまで長い期間じゃないし。イチカは中学に行き始めて結構早い段階から休んでたし。二年生の時はほとんど初めに死んだ事になってたし。小学四年の時にアタシが引っ越してきたから・・計二年とちょっと位かな?」

「そんなもんだったのか。」

「・・俺を見るな。覚えとらん。」

つか、俺が居る所で話す事じゃないだろう。

「じゃあ、スコール。後の事は任せる。オータムに説明と束とクーに対処を相談して考えてもらってくれ。俺は、そろそろ完成させなければならんとこがあるから一度整備室に言ってから部屋に戻る。」

「・・とうとう完成?」

「あぁ、・・これでアルケミストの機能が十全で使える。」

「そう。じゃあ、頑張ってね。」

「あぁ。」

俺は部屋を出て整備室に向かって行った。

 

「アイツ、やっぱり普通じゃなかったのよね。そんな雰囲気はあったけど、確信は持てなかったのよ。・・あの屑の織斑冬二と違って、・・あれ?やっぱりそう思うとアタシ、イチカに憧れてたのかしら?うーん、確かに男で誰と付き合いたいかって言われるとイチカが浮かんでくるかもね。弾はシスコンヘタレで選択肢には無いし、インテリ形の数馬は好みで無いし。・・うん。マドカ、イチカに恋愛感情あるかも。しかも結構。」

「だろうな。お前の知りあうきっかけを考えると惚れないのがおかしいと思っていた。だが、アイツにはかなり惚れている奴が多い。競争率は高いぞ?しかも、イチカ自身はあまり恋愛に興味はないようだ。」

「そうね。・・はぁ・・。」

部屋に残っていたスコールはオータムを部屋に呼び込み説明をして、そんな話をする二人を眺めていた。

(・・束に聞いてみようかしら。)

[スコール、イチカ争奪戦と言うよりアイツ中心のハーレムとかどうだ?認めたメンバーなら家族って事で私は認めてもいいぞ?]

[ふふ、それはいいかもね。どちらにしろ束に相談してみようと思うの。]

[そうだな。]

[[ふふふっ・・・。]]

 

 




さて、受け入れられたイチカはどう言う事に巻き込まれていくか・・
ソレはこの先に待っていますので、こうご期待。


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インフィニット・ソング 09

えぇっと、今回から戦闘が増えて行きますので、曲を持っている方は聞きながら読んで頂けると一層、場面の想像をしていただけ易くなると思います。
では今回行ってみましょう。
『シン・シン・シンフォG‥『ブツッ』』


「えー、今日はクラス合同の実習となるわ。四組と一組が合同で行うのでスーツに着替えて第二アリーナに集合よ。ダインスレイフ君は・・アリーナの更衣室を使用してね。」

「・・俺は必要ない。まぁ、とりあえず移動する。」

俺は別に着替える必要はない。と言うか前の試合の時に見せていると思うのだが、俺は基本制服で展開時に専用のスーツが同時に装備される。

「早いわね?って、スーツじゃないじゃない。・・・あれ?貴方って前にスーツって来てなかったわよね。」

ジャージ姿の四組担任、長谷川先生が俺が付いてからすぐに来た。まぁ、俺はゆっくり歩いて移動していたし、先生の方はジャージを上に来ているだけみたいなものなのだろう。

「俺のは展開時に同時に装備される。即時対応を兼ねているし、少し普通ではないからな。」

「ふーん。一応聞くけど、スーツだけ展開する事は出来るの?」

「まぁ、一応出来るが・・。見たいのか?」

「今最高の企業力を持つ企業の専用機の専用スーツ。参考になるかどうかは関係なく興味はあるわね。」

「はっきり言ってくれてありがたい。下手な事を言って誤魔化したら拒否するつもりだったが、そう言う風に言われるのならかまわない。」

そう言って俺はスーツだけ展開する。そこには・・

「は・・。」

「どうした?」

普通のIS用スーツはスクール水着の様なもので、なるべく肌と触れる面を増やすようにした設計だが、俺のスーツは逆に一切顔以外の場所は肌が出ていない。足や腰、肩にはプロテクターの様なものが付いていて、胸部や腹部には肌にぴっちりと張り付くように膜の様なものがある。色は青を基調としていて皮膜部分は紺色で顔も顎などにくっつくような部分、さらに頭部にも突起部分が付いている。

「零式装者強化装備。ISがエネルギー切れになった場合に極地でも一定時間活動が可能な装備となっている。」

[マブラヴの零式衛士強化装備の形状]

「な、なるほど。エネルギー切れの後まで考えてある。・・見る場所が違うわね。」

「それにこの装備は、皮膜部分でも一トンの衝撃に耐えられる。斬、刺し、銃弾に対して強く耐熱性もある。但し、皮膜状であるためあまりエネルギー光学兵器には強くないという欠点がある。・・どうだ?参考になるか?」

「いいえ、まったく。見ている着眼点も環境も違いすぎる。・・なるほどね。こんなんじゃ他の企業は置いて行かれるわ・・。」

昨日スコールに聞いた事だが、現在、技術力の点において世界の他の企業をぶち抜いてイグナイト社が一位らしい。圧倒的すぎて二位との差がとんでもないとか。

「さて、ほかの子達もきた・・[きゃああぁぁ!?]・・そりゃそうか。」

きた生徒が急に叫び出した。その視線の先にあるのは・・言うまでも無く俺だな。

「この格好はセクハラにされるか?」

「いえ、むしろ別の意味で叫んでいるわね。」

指を刺した先には真っ赤になって鼻血を出している女子が三人。更に指で目元を隠しつつその指の隙間からちらちらと見ている更識と坂上。真っ赤になりながら写真を撮っているマドカ‥っておい!

「何をやっているんだマドカ。」

「決まっている!!お前のそんな姿を見た事はなかったからな!!写真に収めている!!」

なんでそんなに力強く言うんだ。

「長谷川先生。俺の姿、元に戻した方がよくないか?」

「いえ、むしろ私がやる気が出るから続行。」

「・・なんて教師だ。」

「誤魔化されるのは嫌いなんでしょ?」

「違いないが・・どうした?凰。」

合同だからここに居るのはわかるが、何故そんなに近くに来ている。

「この・・膜の部分・・何この感じ・・変な感じ。強く突くと固いのにゆっくり触るとふにふにする。」

指で腹や胸のあたりをつついている。

「鈴!ずるいぞ!!私も触るぞイチカ!!」

そう言いつつ突いてくるマドカ。女子二人に指でつつかれる俺。なんだこの光景・・。

「あー、そろそろ時間ね。整列して。ダインスレイブ君は一番前で私の横に来て。列に居たら誰か触りに来ちゃいけないし。」

「そう言いながらも指でつつくのをやめろ。」

教師の癖に思いっきり興味津々でつついて来やがった。言ってることとやってる事が一致して無い。

「ふむ、何の素材なのかしら・・。こんな特殊な使用法・・。凄いわね‥。」

あ、コレ普通に研究肌的な面から触ってやがる。この教師意外と多方面に強そうだわ。

「・・時間です。」

「それでは実習を始めます。・・まず、ダインスレイフ君。模擬戦をしてください。」

そう言って、指を空中に向かって指す。そこにはラファールをまとった女性が居た。

「相手をするのは・・一組の副坦の山田先生よ。」

「一組の副担任、山田麻耶です。今一組は普通の一般授業中なので私が実習を担当させてもらいます。」

「山田先生は元国家代表候補で、ヴァルキリー候補だったの。でも、大会で上がり症なとこが合って実力を発揮できなかった。だから、候補どまりだったけど実力は凄いわ。」

「そ、そんな・・。結局候補どまりな私は・・。」

「ま、ダインスレイフ君には勝てるかどうかは分かんないけど。」

「そうなんですよね。前の模擬戦の時の動き、かなりリミッターかけていたんじゃないのですか?」

「・・まぁ、それは確かに。それにあの時は5徹でかなり体調は最悪だったが。」

「は、ごてつ?・・五日間も徹夜と言うことですか?」

「色々と忙しいんだ。まぁ、昨日完成したので久しぶりに寝た分、今日はかなり体調はいいが。」

「そ、それならいいのですが・・夜はちゃんと寝てくださいね?体に悪いですから。」

「善処はする。」

そう言って誤魔化す。ま、そんなことよりも展開するか。

「アルケミスト・・。行くぞ。」

そう言い俺はアルケミストを展開。そして他のメンバーはアリーナの席へと移動していく。

 

『山田先生は先ほどの話とデータを見る限り射撃特化型。だな?』

「そ、そうですが。データとは?」

『決まっている。過去の大会成績データだ。射撃部門の試合で無くてただの射撃ならば最高得点を出しているからな。・・と言う事で、俺もこうする。』

前のように手のひらに紅い鉱石を出して歌う。

『Killiter Ichaival tron~♪』

そう言うと蒼かった機体が紅く染まり、腕部に紅く大きなでっぱりが出る。

『・・モード、イチイバル。』

「な、装備が変わるとはまた凄いシステムですね・・。しかし、歌うのは何か意味が?」

『ソレを答える義理はない・・と言いたいが普通に起動コードの様なものだ。正しく歌わないと起動しない。そんな感じだ。』

「そ、そうですか。」

そう答えると納得いかないのか首をひねっている。聖詠の事を言っても通じんからこんな認識でいい。

『用意はいい?』

「はい。」『問題無い。』

『では、始め!!』

そう言うとブザーが鳴り俺は地面に降りる。対して山田先生は空中でライフルを構え俺の動こうとする方向に打ち込み動きを阻害する。その腕前とこの場を利用できる事に気が付いた俺は息を吸った。

~BGM【TRUST HEART】~

『~♪』

そう歌いながら腕の突起が銃の形になりそれが大型のガトリングに変形する。それを思いっきりぶっ放しながら横に走る。

「な!?い、一体どういう構造を・・きゃあぁ!?」

山田先生は弾膜が急に展開された事により慌てて回避。ライフルを撃ちつつ体をひねったり回転してなんとか弾の間を抜けようとする。

『~♪』

山田先生が撃ってきた弾を避けつつ俺はガトリングを撃ちまくる。

≪BILLION MAIDEN≫

更に腰の部分から横に開き小型ミサイルが数十発発射される。

≪CUT IN CUT OUT≫

「は、はい!?更に来るのですか!?」

ガトリングで撃つ弾はなるべくスピードを上げて避け、ミサイルをライフルで撃ち抜き爆発させる。

『~♪』

≪MEGA DETH PARTY≫

「更に攻撃が増える!?一体どんな・・上から?!」

ガトリングだけでなく右手をボーガンに切り替える。しかしそこから撃つ矢は普通で無く大きなクリスタルみたいな形だ。それを空中に撃つとそれが宙で分解され何百と言う細かい針になる。下からはガトリング。上からは大量の針。逃げようにも追尾してくるミサイル。そこに気が移った時、最後のとどめを撃つ。

『~!!~♪』

≪MEGA DETH FUGA≫

大型ミサイルを背中に展開ソレを撃つ。それと更に腰からも小型のミサイルが出て撃つ。

「こ、これは・・無理です!!」

グレネードランチャーで大型ミサイルを撃ってみたがまったく意味をなさず、思いっきりぶち当る。

「ぐあぁ!?」

そこでSEがゼロになりブザーが鳴る。

『そこまで・・と言うか、ダインスレイフ君やり過ぎよ!!』

『これでも最後のミサイルを爆発させなかっただけましだ。』

「・・きゅう~・・。」

見たら上から山田先生が倒れて堕ちて来ていた。それを空中でキャッチ。そのままピットに持って行き、報告して許可を取り保健室に運んだ。

 

翌日から、山田先生から紅い顔で見られながらも少しおびえるような視線を受けるようになったのはしょうがない事かもしれない。

 

私(マドカ)達はそんな光景を唖然として見ていた。

「・・ホント、イチカって強すぎでしょう。私勝てる自信ないわ。クラス代表選勝ち確定じゃない。」

「え?イチカはクラス代表じゃないよ?」

「そうなの?じゃあ誰?」

「私。」

凰と簪が隣に立っていて話していた。どうやらイチカの動きを見て追っていたら見やすい位置に揃っていたらしい。更に、坂上も一緒に居る。

「・・日本代表候補生更識簪。・・でも、専用機がまだできてないって聞いたんだけど?」

「出来たよ。クラスのみんなが手伝ってくれて。そして・・イチカ師匠が色々と教えてくれたから。」

「し、師匠?」

「そう。全部教えるんじゃなくて基本を教えてその解き方と応用の方法を考えさせる。そして私をさらなる高みへと導いてくれた。だから師匠。時には厳しく叱ったり、時には優しく諭したり。うん、彼は素晴らしい人間だと私は思う。」

「そう。彼は素晴らしい。・・あんな愚かな行為をした私を叱って、でも貶めたり傷つけたりせず、危険が迫れば自らを楯にして戦う。現代に存在する誰よりも不器用で誰よりも誠実な紳士。・・・あの一組の男なんかに比べる事もおこがましいと思うわ。」

「ここまで行くとか…、何があった?」

「ソレは~・・。」

~少女説明中~

「そりゃひどい。なんであんな男の為にイチカが怪我を‥」

「ソレは私を護ってくれたから・・。」

「それにあんな男の所為で簪さんの機体の開発が遅れたのも気に入らないわね。」

「ホント。しかも、廊下で二人掛かりでイチカ君を襲ったり、他の生徒がきたら危なかったのにそれを悪くも思わない。そして、織斑先生もホントの事を云った生徒を脅迫して黙らせようとしたし・・。」「がっかりだよね。憧れて入った生徒も多かったからかなり荒れているらしいよ。一組の子がクラス変わりたいって言ってたくらいだし。」

「まったくよね。」

私は黙ってクラス内の評価を聞いていたが・・イチカの株が急上昇し過ぎな気がする。いや、しょうがないのは分かっている。他の奴に顔は見せてないが、ホントはイケメンなんじゃないか。とか顔だけじゃなく性格イケメンだし。とか、今日の体見ただけでイケる。とか・・ん?最後のは待て!!

「イチカ君のあの体ヤバかったわね。」「確かに・・。」

「今度からこの実習の時間が楽しみでしょうがないわ・・。」

「くぅ、なんで私は違うクラスなのかしら・・。」

「あぁ、・・確かマドカさんが写真撮って無かった?」

その一言でそこにいた全員の目がこっちに向いた。怖っ!?

「マドカさん。その写真欲しいんですが・・。ただでとは言いません。一枚に諭吉さんが一人でもかまいません。撮った写真のコピー、いただけませんかね?」

言ってきたのは坂上。しかも、背後から肩に手を置きしっかりと押さえつけ逃がさないと言った風にだ。

「・・イチカに聞く。出回るのが嫌だと言われたらどんな手を使われても、断る。」

「・・わかりました。イチカ君が嫌がるなら言いません。しかし、許可が通れば必ず、どんな手を使っても譲っていただきます。」

「そうだな。私としても、兄がここまで人気が出るとは思っていなかったし。だが、本当の顔を見ている私が言うが・・イチカを見続けると本気で血のつながりとか関係なく惚れるぞ。」

「そ、そんな・・じゃあ、マドカさんは・・。」

「妹で無ければ襲っている。本気でな。イチカが嫌がるだろうと思い引いてはいるが・・。」

「「「きゃああぁああぁぁぁ!!?」」」

 

その後、イチカに聞いたら『別にかまわんが・・そんなの誰が要るんだ?』とか言われた。もちろん一番初めに買ったのは坂上だった。諭吉十人がいきなり飛んできた。この日から、ファンクラブ『IIII』[アイ・フォー]が発足された。【イチカ・イケメン・一緒に・居たい】の略らしい。学校内だけかと思ったら、インターネット上にすでに発足していたらしい。私は会員ナンバー0005だった。準備している番号が初めから四ケタとか・・。校外にも会員はいるらしく、三番まではとある企業の上層部らしいとか。

「束とクー、スコールあたりか?」

「ちなみにアタシは0006。簪は0007。オータムさんは0008で、坂上が0004らしいわ。」

「坂上すごい・・。」

正直あの初めの事からこんな事になると誰が予想していたか‥。

 

 

薄暗い部屋、俺は寮の一室から抜け出しとある場所に来ていた。そこは、大きな歯車が回り、パイプオルガンの様なものが置いてある。配管がいたるところに通り、物々しい雰囲気があるがそこには空中に浮かんでいるモニターと少し後ろにベッドがあるだけだ。

「アガートラーム、イチイバル、・・まだ後四個か。・・・ダインスレイフを開放して歌う事は出来ないし、フォニックゲインが集まるまではまだかかるな・・。」

「マスター、次はいつ使うか決めているのか?」

「あぁ、もうすぐ、アイツ等(・・・・)が転入してくるらしいからな。そこで、イガリマ、ガングニールを使う。他はシュルシャガナを当てたいとこだな。それに織斑にはアイギスとオートスコアラーの力。更に、何とか準備できたデュランダルをぶち当てる。と、残りはアメノハバキリか・・。」

「一番いいのは織斑千冬、または篠ノ之箒ですか?」

「そうだな。まぁ、そこはタイミングを見てと言ったところだな。個人的には織斑と当たる時が待ち遠しいな。」

「えぇ、本当に・・あの屑をぶちのめせるのをこのガリィは本当に楽しみにしてますぅ♪」

「その時は派手に頼むぞマスター。私に地味は似合わないからな。」

「あのマスターを傷つけた剣。へし折る事が出来るのは本当に楽しみですわ。」

「あの屑をバラバラにしたいぞ~。でも、マスターが困る事になるからせめてあの機体をバラバラにする所で勘弁してやるぞ。」

「その時は頼むな。」

「「「「すべては。マスターの為に・・・。」」」」

「あぁ、そろそろ寝るか。…久しぶりにガリィ、ミカ。一緒に寝るぞ。今度はファラとレイアだからな。」

「ホントですかマスター!?」「やったぞ!!」

「ふ、まぁ、今回は譲ってやる。」「また、ゆっくり出来るときにお願いしますわね。」

レイアとファラは紅いビンの様なものを床に投げる。すると足元に紅い魔法陣が現れ、二人は消える。

「では、寝るか。」

ベットに横になると残る二人も一緒に左右に分かれてベットに横になる。俺の腕を腕まくらの様な状態で二人はくっついてきて喜んでいるようだ。そして、俺はすぐに目を瞑り寝る。オートスコアラーは普通寝ないはずなのだが、彼女たちは俺にくっつくと夢を見て寝れるらしく、いつも彼女たちは嬉しそうにそれを話してくれる。こんな所でも俺のは役に立っているらしい。そう思うと少しうれしかった。

 

 




感想・評価お待ちしております。


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インフィニット・ソング 10

今回も推奨BGMが有ります。
戦闘パートに関しては拙いと思いますが、頑張ろうと思います。
10話となりました事喜びつつ、投稿させていただきます。
では、続きをどうぞ。


今日はクラス代表戦があるらしいのだが、俺は少し遅れる事を教師に伝え、整備室に来ていた。

「・・あぁ、これでいいか?」

「えぇ、これで一応暴走せずに使えるはずですわ。」

「なんでマスターはこんな難儀な物を使うのですか?こう、もっと使いやすくてぇ、可愛いぃ、ガリィちゃんとかどうですか?」

「・・・ひと癖ありそうだな。」

「まったくですわ。」

「あぁ!?そりゃどういう意味だファラ!?」

「そのままの意味でしてよ。マスター、あまり遅れるとよろしくありませんが・・。」

「そうだな。ガリィ、ファラ。行くぞ。」

「はいはい、マスターぁ。」「えぇそういたしましょう。」

オートスコアラーを戻し部屋から出ると、そこには織斑千冬が居た。

「・・ここで何をしている。」

「忘れ物があったから取りに来ていた。許可は取っているし、アンタに何か言われる理由もない。」

俺は通り過ぎようとしたが、急に違和感を感じ頭を下げる。そこに風を切るような音がして、俺はすぐに体勢を立て直し距離をとる。

「・・っち。」

「何をする。」

「教師に敬語を使わないからだ。」

「俺はアンタを尊敬して無い。だから使う必要もない。」

「・・貴様は一体何者なんだ・・。」

「・・何者・・ね‥。」

一応(・・)血の繋がっている奴は分からず、血の繋がって無い鳳達が気が付く。まったく変なもんだな。

「俺は、俺だ。・・そろそろ行かなければならん。」

俺は背後に気をつけながら廊下を歩き始め、アリーナに向かった。

 

「・・あの声、どこかで・・。」

 

アリーナに来ると丁度、第一(・・)試合が始まる所で三組対四組だった。

そして見ていると、簪の表情は嬉しそうに、そしてその次の瞬間には表情が引き締まり、目の前の三組代表をしっかり見据えていた。

『三組代表、イタリア代表候補生。イタリア人と日本人のハーフ、アリサ・ラスティ。機体はラファール・リヴァイブです。』

そう言われたラスティは手を振ってアピール。

『四組代表は日本代表候補生、機体は自ら作り上げた新生天才少女、更識簪。これが初披露、【打鉄弐式・防人】!!』

そう言われた簪は一度俯いて首を振り、急に顔を上げた。

『・・いいえ、自らでは無い。私のこの機体は、四組皆の力で作り上げた。だから、私だけじゃ出来なかった。皆の力が集まったこの機体で負ける事はない!』

アリーナに響き渡った声にクラスの女子は喜び、顔を笑顔に。対してラスティは顔をしかめて、少し弱気になったようだ。

『・・それでは試合を始めます。第一試合、初め!!』

ブザーが鳴り、ラスティは手に持ったライフルを構え撃つ。それに対して簪はそれを予測していたのか、一度下に下がりすぐに上昇。左右に機体を振りつつ、視界からソレた瞬間荷電粒子砲≪春雷(しゅんらい)≫を撃ち、確実に当てる。

『おお、更識選手、大型の装備でいっきにSEを削りました!!これはラスティ選手痛い一撃だ!!』

『くそ、ここまでの機体なんて聞いて無い!?』

『まだ。私の、私達の機体はこんなものじゃない!!』

また、機体を振り回すように動き急上昇。大型のミサイルポット、【山嵐(やまあらし)】を構え、一斉に撃つ。システムは一番気を使い、完成に時間がかかった。だが、コレは簪が一人で作った。質問には答えたが一切プログラムには触れてない。今までは行き詰っていただけで資料や参考になるものがあれば彼女は応用して完成させたのだ。

『行けえぇぇ!!』

6機×8門のミサイルが独立で動き多方から迫る。

『こ、こんなに!?無理ぃ!!』

数発は撃ったが起動がバラバラなミサイルはほとんど誘爆せず、直撃。その結果ブザーが鳴り、試合終了が告げられた。・・・オーバーキルだろ。

『四組のみんな、この試合に出れたのはみんなのおかげ。ありがとう、本当にありがとう。』

そう言って頭を下げた簪に会場からエールが送られた。ラスティは気絶はして無いもののあまりの衝撃にダウンしていた。そこで簪が手を差し出し、少し謝りながら彼女をピットに連れて行った。

 

「・・なんで、更識簪の機体が完成してるんだ・・。これも、あの変な野郎、ダインスレイフとか言う奴の所為だな。・・一回戦が一組対二組じゃない時点でもう原作からずれてやがる。・・くっそ!!鈴もなんでか俺に会いに来ねえし、セシリアはなんかそっけない。・・訳が分からなくなってきやがった。オリ主は俺なのに・・主人公は俺なんだ!!あんな奴の所為でぐちゃぐちゃだ。くそっ!!」

 

「・・イチカ、見ててね。この試合でアイツをぶっ飛ばしてやるから。」

選手控室でモニターを見ていた鳳鈴音は次の試合に決意を込め、精神統一をしていた。

次は第二試合、一組対二組。織斑冬二対凰鈴音の試合・・のはずだった。

『え~。すいません、次の試合第二試合の事なのですが、先ほど試合の影響か、会場設備が不調を起こしているようで一時的に点検及び整備に時間をいただきます。・・え?!その間に・・?』

急に会場の設備の点検整備が入りアナウンスが慌てている。どうしたというのか?

『大発表です!!【イグナイト社】企業代表ダインスレイフ兄妹の専用機を披露するそうです!!メディアには初披露ですよ!!』

「はぁ!?あの機体を世界に披露するの!?」

放送を聞いてモニターにくぎ付けになる。

『では、どうぞ!!先に出て来たのは一年四組所属イチカ・ダインスレイフ君。専用機は【アルケミスト】!!』

イチカがピットから出て来て・・って!?

『おおっと!?コレはISスーツの姿でピットから出て来た!?そして、今入った情報によりますと・・コレは異常な姿にも見えますが専用のISスーツだそうです!!ISのSEが切れた場合でも一定時間活動できるように考えられた装備で、【零式装者強化装備】と言うそうです。そして!』

イチカは落ちて行き、空中で一回転し着地。地上について少し歩き手を横に広げISを展開した。

『この機体が新機体、【アルケミスト】意味は錬金術師。蒼き新星は世界を作り変えるのか!?そして、続いてピットから出て来たのは妹の、マドカ・ダインスレイフさん!こちらは初めから機体を展開しているが、見えるISスーツは同じもののようだ!イギリスのブルーティアーズと多少似ているような形状をしている。専用機は《サイレント・ミラー》!!』

マドカはピットから機体を展開して飛び出て来た。機体の色はアルケミストより淡い青。この機体は全身装甲では無く胴よりも大きな脚部が特徴だ。そのまま、イチカが居る所の上空に停滞し、イチカも空中に飛び上がり、顔を向け会い、頷く。そして曲がかかる。・・?曲?

~BGM【不死鳥のフランメ】

[Huu…~♪]

お互いが交差するように左右に分かれ、アリーナのSEの内側すれすれを回る。

一度交差する瞬間にイチカは仰向けに、マドカはうつ伏せに飛び、横に回転しながらお互いがぶつからず交差した。その隙間は十センチから数センチ。

少しでもタイミングが合わなければ、お互いにぶつかり落ちるだろう。ものすごい技術を見せながらも平然と歌う。途中で止まり、右手を上に向けるとそこに紅い六角形と火が出る。反対側にいるマドカは紫色の光を手に光らせる。

「~♪」

そして、交差した場所の反対側でもう一度近づき今度は縦に体制を変えお互いに錐揉み交差を続けながら上昇。お互いに剣を出して構える。

マドカは銀にきらめく剣を、イチカは黄金にきらめく剣を構え、お互いに向け合いクルクルと回りあう。

『[~!!~♪]』

最後には左右反対に分かれる。

『[ Ignition!! ]』

その言葉と共にイチカは茶色の六角形から何かを射出し、マドカは銃を撃つ。それは撃った先にあるイチカの出した六角形と同じものに当たり音はしつつもSEには何もなかった。同じタイミングで会場に火が舞う。それはシールドエネルギーを削ることも無く、干渉もしていない。見ていてどういう原理なのか分からない。そしてまたアリーナの中をイチカは火をまとって、マドカは紫の光をまとって、SEの内側すれすれを飛び回る。

『~♪』

また二人はアリーナ中央に行きお互い近距離で止まり、手を取り合いクルクルと回る。

『キ・ズ・ナ!~♪』

【絆】の部分で手を離し、モニターを背にして観客の方を向く。

『~♪』

歌いながら今度は蒼い六角形を出して周りに水を出す。しかしそれも会場に落ちる前に同じ六角形に当たり消える。

『[~♪]』

今度は背中に緑の六角形が出てそれから風が出て空に舞い上がるように飛び上がる。

『[~!!Phoenix Song!!~♪]』

空中にまた赤い六角形が出て、火で出来た羽の様なものが降り注ぐ。

会場はただISの紹介だと思っていたのに、いきなりライブが始まり動揺していたが、一人二人と拍手をしだすと段々と観客は立ち上がり拍手をしだす。最終的には会場すべてから拍手が起こり口笛を吹く者、感情が高ぶり過ぎて、手を上で打つ者などとんでもない事になった。そして、イチカが会場の真ん中に行きマドカはその右後ろに立つ。

『・・急に歌い出して悪かった。ただ、俺の機体は特殊で『歌』によって反応する。これが俺が戦闘時に歌う理由だ。世界中、様々な人種が存在する。国籍、言語、文化、バラバラだ。しかし、それぞれに≪音楽や歌≫と言った物はあるだろう。言葉でも動作でも通じない事も、音によって伝わる事もある。・・男だろうと、女だろうと、そんな事は関係ない。俺たちは・・イグナイト社は人類を・・その未来を見るため発足した。俺の歌を聞いて何か少しでも感じる事があるなら、ソレは音によって、歌によって通じ合う事が出来るという事だ。・・・長々とすまなかった。以上でイグナイト社の専用機と俺たちの紹介を兼ねたデモンストレーションを終わる。・・・会場の整備も終わったらしいので第二試合を開始するそうだ。引き続き、放送席の黛にマイクを戻す。』

『え!?あ、そ、その・・ダインスレイフ兄妹様、ありがとうございました・・。あまりに感動してしまいまして・・失礼しました。では、会場が準備整いましたので第二試合、一組対二組の対決です!!』

イチカー!!こんな、こんな・・

「こんな会場盛り上げた後って!!めちゃくちゃやりづらいじゃないのよーー!!」

私は控室から出ながらつい叫んでしまった。でも、しょうがない。いいわ、この興奮さめやらない感情をあの馬鹿にぶつけてやるわ!!

 

「イチカ‥なんか・・ネットでイチカの事を政治関連の話とかしていたことから、【アイドル大統領】とか言われてるぞ?」

「俺のどこにアイドル要素と大統領要素があるんだ?・・本当に書いてある・・。」

「しかも、さっきの歌がネットにアップされて、【IIII】のページのサーバーがパンクしそう。」

「その【IIII】を俺は知らないんだが?何だそれは・・。」

「あ、そ、その・・イチカのファンクラブ。【イチカ・イケメン・一緒に・居たい】の略。」

「意味がわからんが!?・・うわぁ、ホントに俺の顔がホームページに張ってある・・。おい、コメントに【イっくんがかっこよすぎな上、歌も上手い。もう完全にアイドルな上、各国の人間も束ねそうな人望。まるで大統領だね。アイドル大統領?コレはイケそう!!】とか書いてあるの、名前欄に【魔剣の世界のアリス】・・て束だろう?」

「その下の【妹さんもアイドルイケますね。歌って踊って戦うIS操縦者兄妹ユニット。兄はクールでミステリアス。しかし、その懐は深く優しさにあふれている。妹は一見可愛い見た目だがこちらは熱くツンデレ気質。お兄ちゃん大好きっ子でも正義感あふれ、困っている人は見逃せない優しさと強さを兼ねた存在。まったく完璧な素材です。】なんて書いている奴。名前欄に【創世兎】なんてあるがクロニクル【創世】って考えてクロエだな。」

「「・・アイドル活動する事になるのか?」」「俺たち。」「私達。」

 




いかがだったでしょうか?
個人的に好きな曲だったので、是非入れたいと思い書かせていただきました。
本来は歌詞と振り付けを書きたかったのですが、規約に反するので振り付けだけ。曲を聞いてこんな感じかなと想像していただければ幸いです。


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インフィニット・ソング 11

どうも、私です。
今日も投稿して行きまっしょい!
あ、ここら辺から更にオリジナル展開に傾いて行きますので要注意です。
では覚悟を決めたら本編へどうぞ。


第二試合、一組対二組。その試合の状態は・・

『さぁ、もうSEが残りわずか・・。どうするのか・・織斑冬二(・・・・)選手!!』

織斑が終始押された状態で、凰がSEを三分の一も減らしていないと言った圧倒的状態だ。しかし、織斑の機体には【単一仕様能力】がある。俺に傷を付けたのもその機能、【零落白夜】とか言う機能でSEを消された状態で切られたからだ。もし、あの時少しでも当たりどころが悪ければ俺の腕は落ちていたかもしれない。・・もう、あの一件からリミッターがかけられ機能は著しく低下しているらしい。が、試合では十分効果的ではある。

『ふん、まだまだぁ!!俺は負けちゃいねぇ!!!これさえ当たればぁ!!』

そう叫びながら瞬時加速をして突っ込んでいく。それを俺は見て鼻で笑う。同じように凰がそこに衝撃砲を撃ちこみ、更に前進しつつ片手の青龍刀を振りあげる。織斑は直線的に飛んでいるので正面からの攻撃を避けれず当たって速度が落ち、頭部に合った事によって体制が崩れて後ろにのけぞっていた。そして、その崩れた体制の鳩尾あたりに上から武器が振り下ろされ、織斑は地面に落ちた。そしてブザーが鳴り、試合終了が告げられる。

『試合終了。勝者、二組代表、凰鈴音。』

会場は沸きあがり、何故か一組の一部以外も喜んでいた。

 

「くっそ!?なんでゴーレムが襲ってこないんだ!?・・俺と鈴の試合中に来るのがシナリオだっただろ!?訳わかんねぇ・・。まじ・・どうする・・いや、俺は元々シャルロッ党とファース党、オルコッ党。あぁ、貧乳なんか関係無い・・それに新生のほほん党や、他の巨乳は色々いる・・まだ俺は諦めないぞ!!」

 

「イチカ‥!!アタシ、勝ったわよ!!あの馬鹿をボッコボコにしてやったわ!!」

「見ていた。頑張ったな。・・。」

あまりの喜びようについ近くに来た頭をなでてしまった。

「ふわあぁぁ!?」

「む、すまん。つい。」

「いやいやいや、別に嫌じゃなくて・・ものすごいご褒美貰っちゃった。」

鈴はそう言い後ろを向きながら頬に手を当てていた。

「わ、私もしてほしい!!私も一回戦勝ったし!!」

そう言いながら簪が近くに寄って来る。そこにマドカが、

「なら、さっき一緒に歌った私は!?頑張ったぞ!?」

「わ、わかった。ほら。」

二人を両手でなでる。

「「えへへへ・・。」」

なんだこれ・・。まぁ、いいか。そう思っていたら、

《ドガァァン!!》

急に振動が襲ってきた。それと共に何か爆発音・・何だ?

『イチカ・ダインスレイフ!!私達はお前のような奴は認めない!!ISに乗れない事を告げおとなしくそれを渡せ!!』

そう聞こえて来た。アリーナ上空にISが五機見える。打鉄が二機、ラファールが一機、テンぺスタが一機、・・あと、何だ?

「打鉄二、ラファール一、テンぺスタ一、後はメイルシュトロームが一か。」

「メイルシュトロームってイギリス製の第二世代だっけ?」

「そうだ。一組のセシリア・オルコットの機体と違い第三世代モデルで無い為にただの精密射撃用の後方支援機だ。しかし、以外に布陣は良い機体配置だな。先頭にテンぺスタとその後ろに打鉄二機。その後ろでラファール。さらに後方にメイルシュトロームか。・・だが。イチカ、ギア、使うぞ?」

「・・許可しよう。しかし、殺すな。無効化までだ。呑まれる様なら取りあげるからな。」

「そんなヘマはしない。・・行くぞ、サイレント・ミラー!!あの馬鹿どもを鎮める!!」

ピットからマドカが出撃して上空に行く。

「スコール、マドカがアレを排除しに行った。何かあれば俺が出るが、それ以外は手を出すな。来賓および、一般生徒は退避。専用機持ちは織斑を除外して待機。IS委員会にもそのように伝えろ。」

『・・分かった。コレは必要な事なのね?』

「マドカが神獣鏡を使う。」

『分かったわわ。じゃあ、また後で・・。』

「しぇ、シェンショウジン?」

「は?神獣鏡?・・聞いたことある・・古代中国、三国時代とかもっと前に作られた銅鏡の事だったわね。」

簪と凰が近くで聞いていた反応する。簪はよくわからなかったらしいが、凰は聞いた事があるとその説明をした。だが、それは違う。

「・・ソレは人が作ったものだ。あの機体にあるのはもっと神聖なもの。聖遺物だ。しかも、俺が復元したからほぼ完全なものだが・・。」

「聖遺物?・・さっき、マドカがギアを使うとか・・」

「それから先は秘匿情報だ。知る必要はない。」

「・・。わかった。」

鳳はかなり色々と聞きたそうな顔をしていたが俺が顔を反らしたことで引いてくれた。コレは言えないからな。まぁ、一つだけ言える事は、

「・・マドカなら問題ない。アイツは俺と違い、神獣鏡に選ばれたから無理無く使用できる。むしろ相性が良すぎて呑まれないかが問題なだけだ。」

ため息をつきながら言うと、簪は焦ったように声を上げる。

「の、呑まれるって?」

「マドカ曰く感情が高ぶり過ぎて、暴走するってことだ。あの機体の特性は俺の力と似て非なるものだから変換しないと相性が悪くて、俺は使えないからあまり分からんが・・。」

「ぜ、全然大丈夫じゃないじゃない!!」

「怪我はしない。それに、暴走してもすぐ俺が止める。問題は無かろう?」

「・・。諦めたわ。」

「そうか。」

俺は戦闘しているマドカを見た。そこにはすでに前衛三機を落とし、残る二機のうち、ラファールは半壊。メイルシュトロームは武器がすでに無い状態だった。

 

『なんで、妹の方が来るのよ!?貴方の兄を出しなさい!さもないと撃ち落とすわよ!?』

「・・お前らに、イチカは落とせない・・。それに、私の太陽を・・暖かい場所を奪おうとする愚か者を許す気も・・無い!!」

マドカは前に手のひらを向けそこに少し紫色に光る赤っぽい鉱石を出す。

その行動に相手は武器を構える。打鉄一機は刀、もう一機はライフル。テンぺスタは二刀流のナイフ、ラファールはマシンガン、メイルシュトロームは大型ライフルを構える。

『なら、落ちなさい!!全機攻撃!!』

「・・Rei shen shou jing rei zizzl~♪」

マドカがそう謳う(・・)と、紫色に光り、攻撃が消えさる。更に格闘をしようと近づいていたテンぺスタが弾かれ打鉄一機は剣が折れる。そして、光が収まった所には、

『か、形が変わった!?』

元々青っぽかった機体は紫となり、顎の部分と額にギザギザしたパーツが付いている。両手の付け根から左右に帯の様なパーツが伸び、元々の大きめの脚部の特に膝とかの部分が更に肥大化していた。

「・・。」

そして、横向きに開いた手を閉じるとそこに鉄線が現れる。そして、ソレを一度開き閉じると顔のパーツが目の高さで閉じて、その真ん中のジグザグと折れている部分が光る。そしてマドカは口を開くと音楽が流れ始める。

~BGM【歪鏡・シェンショウジン】~

『・・~♪』

歌い始めると同時に持った鉄扇でまず一番近く体勢を崩して立ち直ったばかりのテンぺスタを殴り、開いて横薙ぎにしながら切り、更にそこに完全に開いた扇から複数のビームを照射。≪閃光≫

後ろに居た打鉄二機を一緒に巻き込みダメージを与える。

『~♪』

テンぺスタはそれだけでSEが切れ、落ちて行き更に打鉄一機もすぐに扇を閉じた物で殴られ撃ち落とされる。

ライフルを構えていた打鉄も≪閃光≫の一撃でライフルが壊れ、剣を出そうとするが慌てていて上手く展開できてない。そこに近づいていたマドカは急に消える。驚いた打鉄は周りを見渡すが見つからず焦る。

「今そこにいたはず・・!?」

それもそのはずだ。今、マドカは・・

『~‥!!~♪』

メイルシュトロームの後ろに現れその大型ライフルを開いた鉄扇で真っ二つに斬り壊す。

「な!?今まで前のあそこに‥!?」

「ど、どういう事?あの娘が・・二人(・・)!?」

ラファールの前にも同じ姿のマドカが居て、マシンガンを避けている。

『~♪』

次に出したライフルもすぐに壊され、残るは一応で入っている近接武器しかないメイルシュトローム、そして、メイルシュトロームの武器が無くなった後すぐに目の前のマドカは消えて、後ろから来たもう一人に攻撃されていた。そして、脚部装甲からの円形のミラーパネルが展開され、腕のあたりのケーブルが接続される。

≪流星≫

そして、巨大なビームが撃たれ、今頃になって気が付いた打鉄と共に巻き込まれる。何とかシールドを展開したラファールはシールドが溶けて機体もボロボロの半壊状態。打鉄はSEが切れて落ちて行った。

『~大好きだよ!!~♪』

更に大量のミラーデバイスを展開し、更にビームを大量に撃つ。

≪混沌≫

ミラーデバイスに当たり反射、そこに偏向収束したビームを含め360度全ての方向から攻撃を受け二機とも大破。墜落して行った・・。

 

「・・終わったな。」

「なんか、マドカが凄く大きな声で告白して無かった・・?」

「アイツはいつも言っている事だ。別に今さらだな。」

「さらっと、とんでもない情報来た!?」

腕を組んで上空を見ていた俺はそこでため息をつく。

「しかし、・・≪混沌≫は使う必要はなかっただろう・・。」

「へ?アレそんなにすごい技?」

事の面倒さが分かって無いようだ。が、横から助太刀が入る。

「実質、ビームの偏向射撃に収束、…光学兵器の到達点に至っている。」

「はぁ!?簪、それマジで言ってんの!?」

「‥マジ。コレは数世代先とも言えるもの。ビーム兵器がすでにそれで、ソレを偏向射撃出来る事、更に反射、収束など、机上の空論。・・師匠の技術でしょ?」

「・・黙秘する。秘匿する。」

「それ、完全に自供してるわよ。」

ジト目で見られるがしょうがない。コレはギアの特性なため俺の作った技術と言うことでは無いんだが、ソレを言うと世界中の聖遺物の争奪戦が始まってしまう。俺が把握していない物があっては困るからな。

「・・あ、マドカが戻って来た。・・雰囲気怖いわね・・。」

「・・マズイ、若干暴走し掛けだ・・。」

「「ちょっ!?」」

ピットに凄い速度でマドカが飛び込んできた。が、飛び込みながらギアとISを格納、さらにスーツを制服にまで変換して俺めがけて飛んできた。

「イィィィチィィカアアァァアアア!!」

「・・なるほど・・。」

どうやら神獣鏡の影響で人恋しくなっているようだ。しかも、あの機体の特性上高ぶる感情は【愛】らしい。その場合、順番的に一番なのは俺・・らしい。で、そんな事を考えているとマドカが飛んできて胸に突っ込んでくる。俺はそれを受け止めながら横に回転。衝撃を受け流しつつ、マドカを落とさないようしっかりと捕まえる。

「イチカ!!私頑張った!!なぁ、なぁ!?」

「あぁ、よくやった。言われた通りに殺しはせず、無力化しただけだったし偉いぞ・・。」

そう言いながら頭をなでる。猫みたいに「うに~・・。」と言いながら胸に頬ずりする。

さて、俺も必要なモノは記録したし、後は・・この後どうなるんだ?

 

「ま、中止になるわよね。」

「そりゃな。」

大会後、部屋に戻ったのだが何故か俺とマドカの部屋に鈴と簪が普通に入り浸っている。

・・ま、俺にはそこまで関係は無いしな。

「そう言えば、イチカ。どうやら世界中でお前の事が騒がれているらしい。特に多民族が多い国家においてはかなり英雄視されているとか・・。」

・・うわぁ、そりゃアイドル大統領とか言われるわ‥。

「ねぇ、アイドル大統領。」

「いきなり来るか・・、何だ?」

凰の方を見ると、少し顔を紅くしていた。なんだ?

「簪も名前呼びなんだから、もっと古い付き合いの私も名前で呼んでくれない?」

「ん・・鈴音【すずね】・・。」

「ちっがーう!!リンイン!!もう、鈴【リン】でいいから。ね?」

「鈴。」

「そうそう。うん。」

嬉しそうに笑っているが、その程度の事がそんなにうれしいのか。俺は初めからイチカ呼びなのに・・。そう思っていたら急に鈴が思いついたように「あっ。」なんて声を上げる。

「今のうちにサインちょうだい?」

「あ、私も。」

そう言いペンと書いて欲しい物を出してきた。鈴はキーホルダー。簪は下敷き。

「・・なんでそんな所に?」

「いつでも持ち歩いている物だから。」

「勉強するときにいつでも見れるし、クラスに持って行っても問題ないから。」

けど、キーホルダーはいいなぁ・・。なんて簪は言っていた。

俺は机にある引き出しから、銀色に輝く剣のキーホルダーと太陽の形をしたキーホルダーを出す。それの裏にサインとして軽く名前を走り書きする。そして最後に片方が開いた無限の様なマークを掻きソレを渡す。簪に剣、鈴に太陽だ。

「え?・・くれるの?」

「これ、いいの?」

「あぁ、別に大したもんじゃないがな。」

ま、そんなもんで喜んでくれるなら。・・なんて思っていた。

後日、アレを五十万で買いたいなんて奴が現れるまではな‥。

そんな価値ねぇよ。

 




今、シンフォギアのアプリでは神獣鏡のエクスドライブモードのイベやってるそうですね。ガラケーなのでできませんが・・。
一応サイト等で見ましたが、カッコいい!!
未来さんが新しい技を放つとかマジかっこいいですよ。
やってる友人からはお勧めだそうです。
強制はしませんが、私はスマホに代えたらぜひともやってみたいと思いました。因みに好きなギアはイガリマとアガートラームです。
使うなら黒いガングニールかな?
眺めるならクリスちゃんで。(何処をとは言わない)


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インフィニット・ソング 12

おはようございます。
メインシステム起動、パイロット情報を更新。
我々は貴方の期間を歓迎します。

はい、ACMAD見て、言いたかっただけです。
すみません!

では、続きをどうぞ。


クラス代表戦は中止。そして俺は最近、放課後に少し動かすようにしている。その理由も、時期に分かるが・・。昨日は鈴も一緒にしていたし。そこにあの屑が寄ってこなければよかったのだが、何故か突っかかって来た。あぁ、本当に面倒だ。軽くいなしてそこで終了にしたが、その後織斑千冬まで絡んで来た。スコールが問題行動は無いと他の教師と共に言いくるめてその場を収めたが・・。

そのせいか今日の朝は少し疲れが残っている感じがした。

「なんか、・・今日は皆そわそわしてない?」

「確かに。空気が浮ついてるわね。」

「あぁ、今日はアイツ等(・・・・)が来る日か?‥マドカ。」

「そうだ。クラスはこのクラスに入るようになっていると聞いている。なんか、途中で一組の馬鹿担任が無理やり自分のクラスに取り込もうとしたとか・・許可が通らなくてうちのクラスの担任の長谷川先生に怒鳴ったとか。で、スコールと学園長に連れて行かれたって聞いたが?」

「・・馬鹿ね。」「馬鹿だね。」

教室の中、普通にうちのクラスに入り浸る鈴。ちゃっかり俺の席に座り、隣の席のマドカや前の席の簪と話している。俺は教室の一番後ろの窓側で、今は席を取られているので窓枠に座っている。

「じゃあ、そろそろ行くわ。どんな子が来たのか教えてね。」

「・・さっきのうちに聞いておけば教えたのに。」

「アイツ、地味に抜けてるとこあるよな。」

「あ、あはは・・。」

 

「じゃあ、ホームルーム始めるわよ。知ってる人もいるようだけど、転入生よ。入ってきて。」

「「はい。」」

そう言われ入って来たのは予想通りの二人(・・)。銀の長髪の小さい少女と、ブロンドのショートカットの少女。

「私はラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツ国家代表候補生だ。所属はドイツ軍で階級は少佐。軍で育ったが故一般常識に少し疎い。何かあれば教えてくれると助かる。」

そう言って、ラウラは頭を下げる。背筋をピンと張ったしっかりした礼にクラスはどよめく。そして、その横のブロンド髪の少女が口を開く。

「初めまして、暁シャルロットと言います。・・暁の名字なのは、私はハーフと言う訳では無く、養子で日本名になっているので。元フランス人ですが、今は日本国籍です。あ、後イグナイト社所属で、イチカの婚約者デース!・・ひぃ!?」

デースの前にナイフが飛びシャルの顔の横に刺さる。

「何が婚約者だ!!イチカにそんなもんはいない!!ふざけているとぶっ刺すぞ!!」

「ちょ、マドカ!?ジョークジョーク!!ね?クラスが騒いで、その後ちょっとしたらなーんちゃってみたいな感じで気持ちを掴もうかとね!?だからナイフしまって!?」

「フー!!フー!!」

毛が逆立った猫の様な感じのマドカを簪が押さえつつ座らせている。俺は顎に手をやり、肘をついている。そこにラウラが前に来る。

「・・なんだ?」

「・・久しぶりだな、ダーリン。」

がっしゃーん!!クラス中がこける。なんだこのコントは‥。

「貴様もか!?ラウラァ!!」

「む?私は婚約者なんて言わないから安心しろ。」

「そ、そう?・・て、じゃあなんでダーリンとか・・。」

「愛人でいい。」

「この馬鹿あぁぁ!!」

「うおぅ!?危ないではないか、マドカ。」

ナイフで無く、体重の乗ったストレートが飛ぶが、ラウラはかわしながら下がる。

「イチカ、大統領になったなら私に命令していいぞ?別にお前を私は拒む事はしない。」

「大馬鹿あぁぁ!!」

今度はカエルパンチの様なアッパーが放たれるが、それをまたラウラはかわす。

「ぬぅ、だからマドカ、危ないではないか。」

「oh‥chaos・・。」

収拾付かんので俺は立ち上がり、シャルとラウラの頭を持つ。

「あ、イチカ。やっほー。」

「む?私もなでてくれるのか?」

そして、力を入れてふたりを持ちあげる。

「「あががががああぁぁ!?」」

「二人とも、ふざけが過ぎたから御仕置きだ。」

頭頂部を持って二人ともぶら下がっている状態なのが相当効いているようで、腕を掴み外そうともがいている。が、俺の握力はそう簡単に外せない。

「割れる割れるぅぅ!?いだだだだだぁ!?ごめんなさいいぃぃいい!!?」

「ごめんなさいいいいぃぃ!?もうしわけありませんでしたあぁぁ!?」

シャルとラウラが謝ったので下ろして放す。二人とも頭を押さえてうずくまっているその二人を席に連れて行き座らせる。

「・・・。じゃあ、ホームルームは以上ね。授業遅れないようにね。あ、合同の実習だから遅れないように・・。」

そう言い教室から出て行く長谷川先生。アレをスル―とかすげぇ。

まぁ、俺は着替える必要はないのでアリーナに歩いて行く。シャル達はマドカが連れて行くだろう。

「さて、じゃあ行くか‥。今日はどこを使うんだ?」

「今日は最悪な事に一組と合同で、第三アリーナ・・。おい。」

「ん?」

「なんで居る。ラウラ。」

そこには並んで歩くラウラがいた。

「いや、それは私が場所が分からなくて誘導してもらわないとな。で、一緒に行こうかと・・。」

「着替えは‥済んでいるのか。」

「あぁ、聞いてきていたからな。と言うか、基本私は下に着ている。基地ではいつ出撃がかかるか分からない状態だし、ここではいつ襲撃があるか分からないからな。」

「誰が襲撃して来るんだ。」

「少し前に狙ってきた馬鹿どもがいたと聞いているが?」

「む、そうだったな。」

そう言えばマドカが落とした奴らがいたか。戦って無いから忘れていたな。

「で、私はお前の護衛もするという訳だ。ああ、織斑千冬が私を取り込もうと思っていたらしいが、私はもうあの力に憧れは無い。・・アレは強さではない。ただの暴力だった。」

「そうだな。・・今はどうだ?お前にとって強さとはなんだ?あの時(・・・)から答えは出たか?」

「あぁ、はっきりと答えれるぞ。」

「そうか、じゃあ聞くが。【お前にとって、強さとは・・一体何だ?】」

「ソレはもちろん、・・愛だ!!」

「何故そこで愛!?」

「愛があれば、世界が変わる。それを気が付かせてくれたのもお前だ。」

「・・そうか。面白い答えだ。」

「それにマドカの強さの根本も愛らしいぞ?イチカへの・・な。」

「恥ずかしいものだ・・。」

「少しは顔色を変えろ。つまらん。」

「この学校ではときどき俺の驚いているとこが見れたりとかもある。期待していると良い。」

「そうだな。・・あぁ、新鮮だ。これもお前の愛のおかげだな・・。」

「恥ずかしい奴・・。っふ。」

「おぉ!?確かにお前が笑うとこは初めて見たが・・なんと言うかシニカル?な笑いなんだな。」

「・・着いたぞ。」

第三アリーナの入口についていたので俺は入りながら零式装者強化装備を展開。

「・・なんというか、・・エロいな。」

「そうか。」

そこで、ラウラはこそこそと腰の小物入れのバッグからカメラを出す。

「その、写真撮っていいか?」

「何故?」

「部隊の部下に送る。クラリッサがそう言う姿が見れたら写真を送ってくれと言っていた。」

「それに何の意味がある?」

「・・愛、ですよ!!っと言っていた。」

「だから、何故そこで愛!?」

「部隊員が言うには愛は世界を救うらしい。あと、クラリッサだけが言っていたが、せ、【性欲を持てあます】?だったか?」

「・・あの馬鹿が‥。」

俺はアリーナのグラウンドに出て、そこで屈伸や柔軟をして時間をつぶす。

「・・・・。」

なんかラウラが無言でじっと見ている。どうしたんだ?

「・・イチカ‥。」

「なんだ?」

「動くたびに尻や胸板がはっきりと見えてエロいぞ。」

「男の見たって嬉しいもんじゃないだろうに。」

「いや、クラリッサの言う事が分かって来た。うん、コレは性的に興奮しそうだ。」

「こんな所で発情すんなよ。」

「ま、今は抑えられるが・・うん。」

なんで(今は)って付けた。じゃあ、今じゃ無ければヤバいのか・・。

「すみません、今よろしいですか?」

「・・?誰だ?」

「わたくし、一組のセシリア・オルコットと申します。一度お話ししたかと思うのですが?」

「・・・?」

「わ、忘れてられてますか‥。一組のクラス代表を決める時、試合後に貴方がピットに入って来たので名前をお聞きましたが?」

「あぁ、そうだったな。俺は名乗ったが時間が無かったのでそのまま出撃したんだったな。で、オルコット。何の用だ?」

「率直にお聞きします。貴方は何者ですの?その機体の異常性に、ソレを扱える精密な操縦性。相手の動きを見切る洞察力とどう見ても普通じゃありませんわ。」

「前も同じような事を聞いてきた奴がいたが、俺は俺だ。」

「そうだな。イチカはイチカだ。そして今や第二の男性操縦者にしてアイドル大統領で、イグナイト社筆頭研究開発兼主任だもんな。」

「っち、馬鹿‥!ソレはまだ機密だぞ!?」

「な!?す、すまん!!」

「ひ、筆頭開発員!?まさかその機体も貴方が作ったと!?」

「っち・・。大声で言うな。・・そうだ。コレは他に言うなよ。アルケミストおよびサイレント・ミラーは俺の制作だ。・・なんだ?」

なんか、オルコットが口を押さえつつ下を向いて考え込むような表情をしている。

「別にイギリスのBT兵器のデータを盗んだとかじゃない。マドカのミラービットのデータはイグニッションプランの前に出来ていた。それに、あの機体の特性上、ミラービットが出来たんだ。元は普通のビットの予定で・・なんだ?」

今度は地面に膝を付きお願いするようなポーズをとっている。いや、ソレは神に祈るポーズだろ。それで、なんで俺を見ている。

「その、お願いがあります。無理は承知ですが、妹さんと一度でいいので戦闘をさせていただけませんか?」

「いや、何故俺に言う?マドカに言え。」

「その、一度断れまして・・【イチカに怒られるから勝手な事は出来ない・・。】って。」

「俺を出しにして断ったか?いや、そうか・・確かに難しいな。」

「な、何がですの?」

「その、お前の機体とお前が無事じゃ済まなくなる。と言う事だ。」

「は、何故ですの?」

「あの機体の特性上、戦闘になった時、出力を押さえても結構な被害がある。その理由はあの機体の特性が、【分解】と言う所なんだ。まぁ、これ以上は言えないが、前の戦闘の際にもIS操縦者に火傷とかを負わせている。SEを削り過ぎて操縦者の絶対防御さえも越えかねんのだ。命の心配までは無いが・・代表候補生に怪我をさせたとなれば国際問題になるし・・。お前が良いと言ったという問題じゃないんだ。」

「そ、それは・・確かに。しかし・・わたくしもあの偏向射撃が目標でして・・。」

「ん?それならさらに無駄だぞ?アレは機体から微粒の粒子によって反射屈折させているだけだし、それ以外は収束と反射しかない。正確に言うと【ビームを曲げるという偏向射撃ではない】と言う事だ。レーザーでやるなら光粒子に反射させると言ったイメージを持つ方がいいと思う。レーザーを発射する。その光は一方、この際は銃口から前方【Z軸方向】にしか進まないのが普通だが、その際に光の粒子同士をぶつけ会い横にある粒子同士【X・Y軸方向】へ干渉させることで曲げることは可能だ。しかし、光粒子と言う物のイメージが出来てソレを大量に認識、干渉するイメージを持たなければいけない。普通なら脳が焼き切れそうになるが?」

「???申し訳ありませんが、本当に分かりませんわ。その、お時間を取って頂いて講義などをお願いしたいのですが‥。」

「むぅ・・。私もイチカが何を言っているのかまったくわからんかったぞ?」

「そうか。ならば、今日の放課後に講義をするか。マドカの勉強にもなるからな。」

そう言い後ろを向くと、簪がメモをとっていてマドカは目を回していた。

「・・うぅ、意味がわからん・・。」

「流石師匠・・勉強になります・・。」

そう言う簪の後ろで何か光った気がしたのでそっちに目を向けると坂上が向こうから顔を紅くしてこっちを見ている・・訂正、望遠レンズの大型カメラで写真を撮っていた。なんだその本職の野鳥観測用の装備みたいなものは・・。

「おい、お前!!何セシリアを虐めてんだ!?」

「やっぱり、そのような卑劣な奴だったんだな!?恥を知れ!!」

そう織斑が叫びながらこっちに来る。あぁ、セシリアが拝むようにしていたから、俺に何か悪いように言われていると思ったと。

「別にそうではない。放課後、一緒に訓練が出来ないかと言われていたが、会社の理由から難しい所があると言っていただけだ。」

ラウラが俺の前に出て庇うように道を塞ぐ。その背中はかっこいいと思ってしまった。

「な、ラウラ?なんでそこに居るんだ!?」

「ん?・・何だ貴様?私はお前の様な男に名前を許したような覚えはないが?何故私の名前を知っている?」

「え、い、いや・・前、ドイツにこういう子がいたと千冬姉から聞いていてな・・。」

「ふん、あの織斑千冬か‥。聞くところによると私が四組に編入になっているのに無理やり変更しようとしたとか‥。まったくIS学園の教師と言うのに聞いてあきれる行動だな。」

「な!?お、お前!?千冬姉に憧れてたんじゃないのか!?」

「ソレは過去の私だ。強さ=力と思いこんでいた頃のな・・。」

「な、何を言っている!強さとは力だ!何者にも屈する事無い絶対的な力。それが強さだろ!!」

「かわいそうな奴だな・・。私はもう、そのような事は思わない。時間の無駄だな。イチカ、マドカ、更識。シャルが来たから向こうに行くぞ?」

「そうだな。・・アイツ、なんであんな所に立っているんだ?」

目線の先にはアリーナの観客席の一番下。今はシールドが出ていないが、そこに仁王立ちしている。

「馬鹿なんだろ。そろそろ怒られるから引きづり下ろすぞ?」

「後でアイツ連れて来い。もう一回、掴んでおく。」

「・・南無~【‐人‐】」

なんかラウラがおかしい。絶対クラリッサの所為だな。今度言って同じようにお仕置きしておくか。

 

「な、なんで・・なんでシャルがあっちに居るんだ‥。一組に入ってきて俺が助けるシナリオだろう!?意味がわかんねぇ・・。やっぱり野郎の所為か・・。なんつったけ?ダインスレイフとか言ったか?モブの癖に!!」

 




いまだにシナリオ云々行ってるオリ主(笑)はどうしようもない・・。
・・事もないんですよね。
それの内容はいずれ・・。
ふふふ・・。


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インフィニット・ソング 13

今回から波乱の展開の幕開けです。
明日遅くなるため今晩のうちに投稿です。
時間指定すればいいんですが、
投稿はパソコンをつけた時にするのが楽しみになってしまって。
作者の都合です。すみません。
では、怒涛の展開の13話。
どうぞ、お楽しみください。


実習はまったく問題無く、専用機持ちをリーダーとして各班に分かれてと言った時に・・俺の所に大量に女子が殺到し、織斑の所には篠ノ之ぐらいしかいなかった事が問題だったか。

ちなみにその時判明した事だが、この学校にはかなりのアニメ好きや、ロボもの好きの女子が多いらしい。口々にそんな事を言っていたのを聞いた。

 

そして、昼休憩になり俺は屋上に出てスコールに連絡をする。

「スコール、放課後に生徒相手に講義をしたい。視聴覚室を使えるか?」

『抗議?・・あぁ!講義ね。うんうん、生徒同士で教え合うって言うのはいいわね。青春してるじゃない・・。で、視聴覚室?いいわよ。一応聞いておくけど、内容は?』

「ビーム兵器の偏向射撃説明とレーザー兵器の偏向射撃の説明。」

『・・・。イチカ・・言っておくけどそれって仲間内だけよね?』

「いや、イギリス代表候補生セシリア・オルコットがいるが。」

『・・・。なんで貴方がする事に?貴方の素性はうちの会社の秘匿情報よね?』

「ラウラがばらした。」

『あの馬鹿チビ黒兎いいいい!!』

「で、行ってもいいのか?」

『えぇ、わかったわ・・。ついでにその馬鹿も連れて来て。御仕置きしておくわ。』

「わかった。」

電話を切って昼食をとる。携帯食料をかじり、小型端末を操作する。二人(・・)ほど人の気配がする。そして、急に首から違和感があり意識をそっちに向けると、待機状態のアルケミストが光った。

「・・何のつもりだ?」

「うるせえ!!てめえのせいでめちゃくちゃだ!!どうしてくれる!?」

いきなり首元に剣を振って来たらしく、それに反応したアルケミストが緊急展開したらしいが、流石に俺もこんな所でISを展開して襲ってくると思って無かったので少し焦った。流石は俺の相棒だ。

「意味が分からん世迷言ばかり・・何なんだお前。」

「ソレはこっちのセリフだ!!お前こそ一体誰なんだ!?何なんだよ!?ダインスレイフなんて奴は原作にはいなかった!!どういう事なんだよ!!」

「?‥原作とか一体何なんだか。・・所でお前、こんな所で無断でISを展開していいと思ってんのか?」

「ソレは俺が襲われた事にすればいいんだ!!箒がそう発言してくれるからな!」

「その篠ノ之は居ないが?」

「隠れてんだよ!出てこい箒!」

(・・・。)

「どうした!?なんで出てこない!?」

「ソレはそうだ。だって、ここには俺と、お前、そして・・IS学園生徒会長(・・・・)しかいないんだからな。」

「その通り!私、参上!ってね?」

扇を開きそこには【神出鬼没】と書いてある。

「な!?ほ、箒は!?」

「私を見たら木刀を振り回して来たので、さっさと無効化して生徒指導室行きよ。」

「な!?なんで・・そ、そうだ!俺、コイツに襲われかけてそれでISを展開したんだ!!俺は悪くない!!」

「おバカさん。私は初めからここに居たの。全て見ていたし、私の専用機にも録画してあるわ。言い逃れもできないわよ。・・はぁ、なんでこんな馬鹿の為に簪ちゃんの機体が一時的にも凍結されたのかしら・・。」

そう呆れたように溜息をつく。

「さて、キミもさっさとISを解除して、投降なさいな。まぁ、おそらく専用機は没収だろうけど。」

「う、うるさい!!コレは俺の機体だ!俺のもんだ!!誰にも渡さない!!」

そう言いながら逃げ始める。屋上から、逃げてアリーナの方に飛んでいく。

「・・まったく、・・コレは専用機没収なんてもんじゃないわね。・・でも、あの単一仕様能力は厄介よね・・。手伝ってもらえるかしら?」

「簪にはよくしてもらっている。その姉なら一応手伝うのはやぶさかじゃない。・・と言うか、むしろこれは俺にやらしてもらおう。」

「あら、そう?じゃあ、お姉さんサポートに回るわね。」

俺は頷きアリーナ上空に急ぎ、織斑を発見。第二アリーナに降りて隠れる所を探しているようだった。

「第二アリーナに発見。十秒後、アリーナのシールドを展開し、各ブロックをロック。ピットにも入れないようにしてくれ。」

『分かったわ。カウント10、9、8・・』

カウント始まったので俺は急降下。アリーナ内に≪ドオォォン≫と音がするくらいの勢いで降りて、砂埃を上げる。

「な、なんだ!?だれだ!?」

織斑が驚いている間にカウントが0になる。シールドが展開され更に隔壁や扉が閉まる音がする。

「な、なんだよ!?一体何なんだよ!!俺が主人公だ!俺がオリ主だぞ!?あいつも千冬姉に捨てられて・・これで俺が主人公だと思ったのに・・【織斑一夏】が居なくなったからやっと俺の思う通りに・・原作の一夏の位置に俺が入れると思ったのに・・くそ・・こんな所で終われるか・・終われるかぁああ!!」

『そうか・・そんなために・・俺は・・オレは!!』

≪コード・・アイギス & コード・・ヘキサ 起動≫

『ぐおおおぉぉぉぉおおお!!』

「な、なんだ!?またてめぇか・・!?」

「テメェだと・・俺は・・イチカ。イチカ・ダインスレイフだ!!」

「イチカ・・イチカだと!?お前、一夏か!?死んだんじゃなかったのか!?それじゃあ、今までうまくいかなかったのも・・てめえが生きてるからだクソオォォお!!死ねよぉぉおお。そしたら今度こそ俺が主人公だあぁあ!!」

『・・『defendend. guardend. protectend AIGIS tron ~♪』 』

俺は【俺が造りあげたギア】を纏う。聖遺物を変換するだけじゃなく、俺自身の意志と俺の意味を込めたギアだ。つまりはこのギア自体は【オレ】だ。

元々蒼かった装甲が、黒と青に染まりより重厚な装甲になる。更に一層大きくなった背中と両肩に大楯が装備され、空中にもシールドビットが四機漂う。

『守れ、護れ、衛れ!!≪我が身は他が為に或!!≫」

『『『『そして、我が身は貴方の為にある!!』』』』

後ろから、青、紅、黄、緑の光が飛び出し、それぞれシールドの上に立つ。

『コード・・ヘキサ・・最後の鍵だ・・『デュランダル』!!』

手に黄金に輝く剣を出し握る。

シールドの上にガリィ、ミカ、レイア、ファラが乗っている。そして、そのシールドがそれぞれの色に染まり彼女たちはそれぞれ乗っているシールドに消えて行く。

「な、何だ今の・・なんだその機体・・一体お前はなんなんだよ・・」

『俺は俺だ。今から、貴様を無力化する。これ以上抵抗するなら・・その機体も破壊する。護るために。守るために。衛るために。』

「や、やってみろよぉぉおお、このでき損ないがあぁぁあ!!」

そう吠えながら突っ込んで来た。俺はその剣をデュランダルで受ける。

「何!?じゃあ、これならどうだ!!」

雪片二型と言う剣を展開しエネルギーモードで切りかかって来た。しかしそれももう一度受ける。

「その剣切ってやぁ・・何ぃ!?なんで‥」

『・・ふん。どうした?』

「なんで零落白夜で切れないんだ!?」

『デュランダル・・絶世の命剣。その剣は決して壊れず、その硬さに折るためにぶつけた岩が切れるほど。この剣も俺と一緒で、斬るだけじゃなく守る事が出来る。だから・・』

俺は蒼いシールドを背中に装備して、剣に氷をまとわせ、長さを伸ばす。更に、織斑の足元を凍らせ動けなくして、俺は後ろに下がり遠くから何度も切る。

「ぐあ!?・・くっ、くそっ卑怯だ!!」

『一番初めに俺と相対した時の行動覚えているか?そんなお前に、その言葉を言われる筋合いはないな。お次はこれだ。』

黄色いシールドを次は装備、腕にコインが乗ったガトリングが装備され、そのコインを超速連射する。

≪ドガガガガガ≫と言ったおかしな音が鳴り、織斑の足がまだ凍って動けない事をいいことに好き放題撃つ。

「あががががぁあ!?」

剣一本しかない織斑は何か楯にする事もできず、ほぼ全弾くらう。そこで足の氷が砕け、織斑が移動し始める。俺は撃つのをやめるとシールドを赤に変える。

「これなら・・どうだあ!!」

そう言いながら瞬時加速をする。が、俺はそこに右手をのばすだけ。その右手は爪が伸びまるでその一本一本が刃物のようだ。そして、そこに織斑が零落白夜を発動し突っ込んでくるが、

≪ガキィン≫と音がしてそれを止める。

「な、なんだこれは!?」

紅い六角形の集合体みたいなものが球体となっていてそれの中心に炎が燃えている。

『『どっかーん。』』

そう俺とミカの声が重なり、目の前の球体は大爆発を起こす。

「ぐあぁぁぁ!?」

そして、更に手から高圧縮カーボンロッドを撃ちだす。飛んでいく織斑に空中で当たりそのまま俺も飛んで新たに出した長い棒でたたき落とす。

「ぐおぁ!?」

地面にたたきつけた織斑はもうボロボロで、すでにSEはつきかけている。だが、オレはまだ終わるつもりはない。

『どうした。終わりか・・。』

「ま、まだだ・・俺はなんかに負けてない。負けてなんかねぇえ!!」

そう叫んで織斑が突っ込んでくる。俺はそれをもう一度デュランダルで受け、更に、シールドを緑に変える。

『・・その剣、それがお前の希望か・・。』

「そうだ!!この剣が、千冬姉の力がある限り負ける事は無い!!テメェの様なでき損ないにはなぁ!!」

『ならば、その希望をへし折ってくれる。』

俺はそのままデュランダルに力を込め風を起こし、自身の機体にも風をまとわせる。すると‥

≪バキィイン≫

「な、・・・ゆ、雪片が・・千冬姉の・・絶対の力が・・。」

雪片を壊した。ファラの力をまとったおかげで概念武装も使用できるのだ。

『【ソードブレイカー】・・剣である物なら壊せぬ物は無い。守るために壊す。それも俺の機体の理念だ。』

シールドを外し、全員がまたシールドの上に立つ。

「っち、屑が・・てんで弱すぎる!!」

「まったく、私が派手に活躍出来る暇もないとはな・・。」

「まったくだゾ。簡単にバラバラになられたらつまらないぞ。」

「まぁ、私はあの腹の立つ剣をへし折れましたので、少しは満足はしましたわ・・。ほんの少しだけど・・・。」

「お、お前ら‥何者なんだ!?何なんだ!?」

「「「「オートスコアラー。マスターに尽すために作られた存在」」」だぞ。」

『どの道、もうSEも無い。お前は終わりだ‥。』

「う、うわぁああああ!!」

逃げようとアリーナのピットに向かうがそこはロックされていて空かない。そして、空かないと思った織斑は他の方に逃げるがどこからも逃げることはできない。シールドを切ろうにも、剣はもう無いのでそれもかなわない。もう、袋の鼠だ。

「出せ!!出せよオぉお!!俺は主人公だぞ!!物語が終わっちまうんだぞおお!!」

『意味が分からん。この世界が何かの物語とでも思っているのか?だったら、その物語はさぞかし駄作だな。主人公がこんな屑ではな・・。面白い事を教えてやろう、織斑。』

「な・・なんだよ・・」

『能ある鷹は爪を隠す‥。知っているか?俺の小学生から中学までの成績テストの点数を・・。』

「いつも俺より低かったじゃねぇか・・何が能ある鷹だ‥。」

『そうか、じゃあ、六年の時は理科は何点だった?』

「小六?理科は・・60点だ。」

『じゃあ、社会は?』

「・・60点・・。」

『じゃあ、国語は?』

「ろ、60点・・。」

『算数。』

「・・60点!?」

『小五は?小四は?逆に中学一年時は?覚えてるだろ!?お前がいつも比較してたんだからなぁああ!!』

「す、全て・・60点だ!そ、そんな!?」

『計算していつも60で止まるように、中間の成績をとるようにした。成績をすべて見た束は気が付いたようだがなぁ。だが、比べると世間も織斑千冬も点数が全て。成績しか人を見ない。あの女には弟なんか愛するする気はない!ただ自身の思い通りになればいいだけだ!!だから俺は織斑を捨て、イチカ・ダインスレイフとして生きると決めた。お前も、目が覚めたらよかったのにな‥。』

「・・そ、そんな・・。」

『その機体、解除しろ。・・そろそろ体がきついだろ。手当てしてやる。』

「・・すまん。おれは・・。おれ・・、は・・。」

力つきたようで、俺が手を出して前に来た所で意識を失った。そのまま、白式は待機状態になり、何故か織斑の腕から勝手に外れて落ちた。俺も即座に解除し、コイツを支え頭をぶつけないようにする。

 

「・・マスター、優しすぎんじゃねぇ?」

「コイツもある種この世界の被害者だ。・・俺は壊す事もするが、基本は守るためにある。あの心を捨てたのだったらコイツも俺が護る価値のある男だ。・・それに一応、こんなのでも俺の弟だしな。」

「マスター、アリーナのロックが解除されるようです。我等は戻ります。」

「あぁ、よくやったなお前ら。」

「ありがとうございます。しかし私達の存在意義は」

「ぜんぶマスターの為だぞ?だから、もっと頼って欲しいぞ。」

「ふふ、分かった。ありがとうな。」

そう全員の頭をポンとなでると笑いながらまたアルケミストの中に戻っていく。

「・・更識楯無。終了したぞ。」

『こっちは逆に大変よ。さっきまで私以外からロックがかかって、そのままハックされたんだから。キミがISを解除してから急に消えてロックが開いたぐらいよ。』

「そうか・・。」

束だな。下手な邪魔が入らんようにしたか。

「担架を用意しておけ。コイツを運んで行く。」

『あら?そこまでしてあげるの?』

「今回、最後にちゃんと話した。お互いに本音でぶつかり合って、想いが伝えられた。きっと目が覚めたらコイツは今までのコイツじゃない。それに、・・お前は知っているだろうが一応コイツは弟だからな。」

『そうだったわね。お兄ちゃんは強いわね。』

「そうか。そろそろ中に入るから担架と医療班の手配を頼む。」

『もうしてあるわ。そして、悪い事にそこに織斑千冬が向かっているわ。』

「あぁ、目の前でこっちを睨みながらつっこんで来た。片手に真剣を持ってるがな。」

『はぁ、本気でクビになりたいのかしら‥。まぁ、いいわ。そっちにスコール先生とオータム先生が向かったわ。』

「了解した。・・!」

近くまで来た織斑千冬が首めがけてその真剣を振って来た。避けなければ首が飛んでいた。

「貴様あぁあああ!!よくも、よくも冬二をオおお!!」

「ふん、貴様にとやかく言われる言われる筋合いはないぞ、織斑千冬。成績の良くない弟一人を見捨てて見殺しにして、出来のいい弟は自身の思い通りに行くように恐怖を植え付けつつ、自身の後ろを付いてくるように仕向けた癖に。」

「な、に!?」

「ふん、貴様の弟はきっと目を覚ました時、貴様にこう言うだろう。【俺を騙してたのか‥。】ってな。」

「き、さ・・ま、貴様あ!!」

もう一度振りかかって来た剣を左腕で受ける。そこにはシールドがついてあり、その色は緑。つまり、・・≪パキィン≫折れる。

「く、くそぉおお!!」

「そこまでよ!」

部屋に銃を構えた兵が数人とスコール、オータムが入って来る。

「IS委員会から【織斑冬二】および【織斑千冬】の確保が入っています。冬二からは専用機の所持資格のはく奪、織斑千冬はIS学園教師資格はく奪および、殺人未遂の現行犯として逮捕状が出ています。おとなしくしなさい!」

「私に逮捕状だと?・・私の後ろには篠ノ之束が居るんだぞ?私の一言で世界中のISを止められるぞ!?良いのか!?分かったらさっさと下がれ!!」

『ふーん、そんなこと言うんだ?』

「な、何!?」

急に施設の電気が消えたと思ったらモニターが勝手につき、そこには

「た、束・・。」

『私、もうあんたと手を切ったって言ったよね。イっくんを捨ててさ・・自称天才の馬鹿を私に押し付けようとしたから私は逃げた。そしたら、彼にであった。ねぇねぇ、彼の名前知ってる?』

「ダインスレイフだろうが!それがどうした!そしてこれはどういう事だ束!!」

『そうか・・そこまで馬鹿だったか‥うん、言っていいよね。イっくん・・。』

「そうだな。許可しよう。あと、あの冬二は目が覚めたら要監視だけで、下手に手を出すなと言って置くぞ。俺は帰る。スコール、オータム。残りの事は楯無が終始見ていたからそっちに聞け。もし問題があればすぐに来る。」

「「わかった。」わ。」

俺は部屋に帰る。もう歩くのも億劫なので六角形の光から手に紅く光る瓶の様なものを出しそれを地面にたたきつける。すると俺は次の瞬間には自室に帰ってきていた。

「・・・。くー・・。」

「ここに居ますよ。イチカ様・・・。」

俺はクーを膝の上に載せて頭をなでながら、無言で座り続けた。

 

『じゃあ、面白い事を教えてあげようか。彼の名前は・・イチカ・ダインスレイフだよ?』

「イチカ‥だと?まさか‥あの一夏か!?」

『分かるか?この馬鹿が。彼はお前が捨てた弟で、本当は私を超える本当の天才だ。・・だからこそ人の心理と世界に敏感であるが故に愚かに見せていた。』

「あのでき損ないのごくつぶしが・・どうして‥生きているんだ?死んで清々したと思っていたのに・・。今頃‥。」『私も騙された口だけどさ、彼自身を見る事が出来ると凄いんだよ?だから言っとこう。お前なんかに付く位なら私は宇宙に行く事をあきらめるし、世界を相手にもできる。それくらい私は彼の事が大好きだ!!こんな私を許して一緒に居てくれる。そんな彼のあったかさに触れた。もう私はお前みたいな馬鹿に付く事は無い。力で抑えられると思うなよ!!それなら私は死んだ方がましだとさえ言える。さぁ、そこの馬鹿女を連れて行ってしまうがいいさ。私は絶対に手を出さないと誓おう!!』「束えええ!!」

『私の名前を気安く呼ぶな!!お前も、篠ノ之箒も大っ嫌いだ!!』

そう言って束は画面を切り、ハッキングを解除する。証明が付いた時にはオータムがすでに織斑千冬をロープと鎖と手錠、更にワイヤーで拘束していた。厳重すぎやしない!?

「イチカの・・苦しみしらねぇだろ。・・私が・・初めにあった時、アイツ誘拐犯と話してたんだぜ?しかも笑顔で。アイツを金で売るって言われて『良い金になると良いな。』[それで達者でくらせ]とか『あまり悪い事はせず今回で終わりにしとけよ?』なんて身を案じてまで居るんだぞ?馬鹿かと思ったけど、あの後分かった。アイツにしてみれば、世界中の人間は殆ど平等なんだ。ただ、嫌いな人間はいる、ただそんなことぐらいなだけ。自分の気に入るかどうかだけでそれ以外は許しちまうんだ。懐の深さや優しさを知らず、自身の価値観だけで気に入らないってだけで傷つけて来たこの女を、私は許せねェ。だが、イチカが任せたというのなら、お前は殺さない。殺すよりも後悔する様な眼に合わせてやる・・。」

そう言ってオータムは織斑千冬を連れて行った。

彼女は後に弟から絶縁状を突き付けられた。そして、一人精神がおかしくなり幽閉され続けた。

 




誤字脱字、展開に無理が有る等の感想などや、、
作者に言いたい事が有る場合も感想にどうぞ。
評価等も気軽に思った通りにどうぞお願いいたします。


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インフィニット・ソング 14

ハーメルンよ!私は帰って来た!!
はい、出かけた先で色々とあってちょっとテンションがおかしいです。
待ち合わせの相手が待ち合わせ場所に時間になっても来なかったり、
電話を何度かけても出ないと言う状態で、ついついテンションがおかしくなりました。
愚痴を言いました。申し訳ありません。
という事で、投稿です。


結局色々と聞かれて、午後の授業は出れなかったがまあ元々教わる意味は皆無だしな。

「さて、では始めるとするか。と思ったんだが‥」

「どうかしましたの?何か不都合でも?」←オルコット

「痛たた・・ん?どうかしたか?」←ラウラ

「どうしたの?」←鈴

「何かあったの・・?」←簪

「・・ふん。何かあったのかしら?」←スコール

「どうした。」←オータム

「なにか問題があるか?」←マドカ

「でーす?」←?!

おかしいのが居る・・。あと、すでにスコールはラウラにお仕置きしたのか、ラウラが頭をさすっている。

「おい最後・・なんで居るんだよ。お前一切関係ないじゃないか。」

「ソレはイチカが居るからだよ?いや、デスヨ。」

そうかよ。・・まぁ、いい。

「それにアシスタント用にガリィ達から資料を預かって来たよ?」

「よくやった・・ガリィ。」

「えへへ・・って私じゃなかったです?!」

預かったっていう資料を見て頷いたんだが、まぁ、それを届けてくれたこいつも一応頭をぽんぽんとして教室の前に戻る。

「・・はうぁあ!?」

さて、一応モニターに映す機材は持ってきていたがそれが必要無くなった。どうしてかと言うと、・・

「これがビームの粒子構造モデルだ。そして、こういう感じで干渉させる。そして、レーザーの場合はこちらの光粒子による構造で、こっちとこっちにぶつけるとこういう方向に動くというイメージだ。・・以上だ。」

言葉で説明すると、難しいだけでこういう風に構造体があると説明が簡素化する。

「「な、なるほど・・。」」

オルコットと簪は理解したらしい。絵が無いからイメージが固まらないだけで、モデルがあると大体は理解したらしい。マドカは知っているから置いておく。が

「「「?」」」←ラウラ、鈴、シャル

「まだ分かって無い奴等がいる・・。・・はぁ。」

まぁ、こいつらに光学兵器は関係ないからいいか。

必要な奴等は理解したらしいから講義自体は終わりだ。

「で、質問があるか?」

「え、なら・・はい。」

「・・簪。」

「えっとね、この理論は元があるの?」

「ふむ、・・一切他言しないという事なら答えるが?」

部屋の中を見るとラウラがヘッドホンして目を瞑ろうとしている。

「おい、ラウラ・・」

「あ、あぁ、誰かに言うつもりはないんだが・・今日の時点ですでにやってしまったからな。一番の情報漏洩防止は知らない事だからな。」

そう言いながら少し申し訳ないような表情をしてヘッドホンをした。

「・・。終わったらマドカが教えてやれ。・・・」

気にしてたんだな・・。

「さて、さっきの質問だが。ある。と言うかまぁ、・・理論と言うよりもギアが教えてくれた・・。だな。」

「ギア?」

「そうだ。神が作ったとされる物。普通の人が作れるものではない物。それを『聖遺物』と言う。そして、これがその一つ。絶剣『デュランダル』。壊れず、切り裂く。それを元に概念がある剣だ。まぁ、さっき言った聖遺物のほとんどは形を失っていてかけらがほとんどだがな。」

俺はデュランダルを出す。とそのほかにも目の前に六角形を出してそこに天羽々斬、イチイバル、シュルシャグナ、イガリマ、アガートラーム、ガングニール、神獣鏡を出して映す。

「これらは聖遺物の一部で構成されている、または完全聖遺物と呼ばれている物たち。で、問題はこっちだ。」

今度は、アイギスを出す。

「コレはほぼ概念武装を元に作ったギア。俺のオリジナルギアだ。元になる聖遺物のかけらが存在しないために一から組み立てた。まぁ、殆ど神獣鏡とネフシュタインの鎧と言う聖遺物をかけ合わせてそこに概念を組み上げて作ったまがい物だ。まぁ、これこそ俺の集大成と言った感じだがな。・・とまぁ、ギアはこんなものでそれぞれ歌に反応する。そして意志の様なものが存在する。・・で、神獣鏡に教えてもらったという感じだ。・・」

「ソレはISと同じような物では・・。」

「そうらしいな。俺のアルケミストはアイギスとISG『インフィニット・ソング・ギア』のコアが反応し合い出来た意識らしい。初めにはAIと言ったが本当は意識があるんだ。」

『そうだ。だから、オレは生みの親のイチカ以外乗せる気はない!』

「・・また・・勝手な事を・・。」

『だって、イチカが女にばっかり囲まれているから・・。』

「ソレはいつもの事だと言っている。なんで、そう心配性なんだ。俺はお前以外の機体に乗る気などは無いしそれがどうしたんだ。」

「あ、アルケミスト‥ですの!?こんなにもはっきりとした意識が・・」

『それはどうでもいい!後はっきり言ってやる。お前のブルーティアーズ、お前の事を馬鹿にしているぞ?【私を使うなら、そんなことよりももっと腕を磨きなさい。】だってさ。【じゃないと、チェルシーさえも失うわよ?】って。ふん、友達いたのか・・。』

「な!?・・分かりました。」

「では、後は無いな。・・ラウラを起こせ。」

ヘッドホンして目を瞑っているだけかと思ったら、よだれを垂らして寝ていた・・。コイツドイツ軍佐官なんだよな・・。しかも、その後ろにも馬鹿が一人いるがそいつは俺が頭を掴む。

「あ、あがががぁああ!?あ、頭が割れるでええす!?」

完全に寝ていて、「もう食べられないでーす」とかほざいていたシャルの頭を握り掴みあげると叫びをあげた。

「!?」

ラウラがそれに気が付きヘッドホンを外しながら体制を低くとって臨戦体制をとった。

「ラウラ~お前もああはなりたくないなら・・もう少し危機感を持て・・な。」

「は、はい!了解しました‥!!」

頭を押さえて『Deathしそうで~すぅ。』とか言っている馬鹿を投げて敬礼するラウラの横を指を後ろに指して通り、俺はモデルを片づける。

「最後にもう一度言っておくが、この話の事は他言無用だ。言った奴はどうなるか‥。」

分かってるな?と言う事を含めて全員の目を見るとしっかりと目を合わせたことからまぁ、信じてやろう。

で、俺はガリィが用意した物を片づけるために一度帰る事にした。

紅いビンを地面に投げ割る。すると足元に魔法陣が現れ、俺は転送移動する。

帰って来た場所はまた暗い部屋。荷物を納め、ベットに横になる。ファラとレイアが横に現れベットに腰かける。

「そうだったなお前らの順番だ。好きにするがいい。」

「「分かりました。」」

そう言いながらまた腕まくらを所望され、俺はそのまま眠りについた。思っていたより疲れていたようですぐに睡魔に襲われ意識を手放した。

 

そして、翌日に部屋に戻りカレンダーを確認すると連休。マドカはサイトで知り合った女の子と遊ぶらしく朝早くから出て行った。大丈夫か心配だったが、マドカなら問題無かろう。束に連絡すると今急いでやる事は無いとのこと。久しぶりに休暇を過ごすことになった。・・なんか、電話口の向こうでクーが『またアイドル活動をする予定がある』とか言いていた気がするが‥まぁ、そんな事は後から考えれば良い事だ。それに、事によると【フォニックゲイン】を手に入れる事も出来るしな。

そう思い、俺は出かける準備をする。久しぶりにどこかで食事がしたい。俺は少し顔や髪形を変えて変装をする。と言っても普通に目を見えるように髪をあげたりしつつ眼鏡をかけたりするだけだが・・≪コンコン≫・・と客か。

ドアを開けるとそこには鈴と簪がいた。

「どうした?済まんが俺はこの後出る予定が‥ん?」

二人とも驚いたような表情をしていた後、急に顔が真っ赤になる。

「「ふわぁ!?」」

そう叫びつつ顔を反らし二人で柱の陰に行く・・なんだ?

「ちょ、ちょっと!?顔が見れるようになっただけなのに・・ヤバい・・ヤバいよぉ!?」

「昔見た事はあったけど・・途中から殆ど隠してたしここまでイケメンになってるなんて!?やばいやばい・・・マジやばいって!!」

小声で言ってるつもりなのだろうが・・思いっきり聞こえてるぞ・・。

まぁいい。俺はもう一度部屋に戻り上着を着て荷物を持つ。で、部屋から出て鍵を閉める。

スコールに電話をかけつつ外出する旨を伝えつつ青いビンを取り出す。寮の外にでて、それを地面に落として割ると青い六角形の魔法陣から青いバイクが出る。俺はそれに乗りエンジンをふかしヘルメットをかぶって発進する。

そして、そのまま海に向かって進み、バイクは水上を走る。タイヤの下には青い六角形がある。このバイクが青い理由はガリィの力を利用しているからだ。ちなみに、緑だと空中をとべるし、赤だと目の前の物体をぶち壊して進める。黄色はコインを射出できることと光って目立つ事。レイアの使う事はあまりない。目立ちたくないし。

しばらくして海から上がり町中に入り、走り続ける。そして、そのまま走って昼前になると、とある一軒の店の前で止まる。そして、店に入り店員の男を呼ぶ。ヘルメットを取って無いから少し警戒したらしい。

「この近くにバイクを止めるスペースはあるか?食事をとりたいのだが‥。」

「へ?あ、それなら‥うーん、食事だけならウチに止めていていいですよ。そこの横の所で空いてるとこにどうぞ。」

「そうか。すまない。」

一度店を出てバイクを店の横の自転車の隣に止める。そのまま店に入り直す。

「お客さん・・お一人ですか?」

「そうだが?」

「なら、こちらにどうぞ。・・あの、すいませんがヘルメットは御取り願えますかね?」

「ん?すまなかった。・・ふぅ、これでいいか?」

「はい・・ん?すいませんが、どこかで会ったことありません?」

「まぁ、あるだろうなぁ。それより、席に着かせてくれ。」

「あ、はい。えっと、こちらにどうぞ。・・?」

俺は座って、メニューを開く。すぐに手をあげて、

「業火野菜炒め。あと、チャーハンとウーロン茶。」

「はい、業火野菜炒め単品にチャーハンとウーロン茶ですね。しばらくお待ちください。」

そう注文を取って一度厨房に行き、ウーロン茶を持って戻って来た。昼前だからか店の中には他に客はいないらしく、客は俺一人だった。

「どうぞ、ウーロン茶です。・・と言う所で一ついいか?」

「あぁ、予想はしていたが気が付いたか。」

「そうか・・やっぱりな。」

そう確信していただろうに。とか思いながらも立ち上がり手を出す。男も同じように考えていたらしく同時に手を出して握手をする。

「久々だな。イチカ‥。」

「あぁ、電話の時には言わんかったが、そうだな『五反田』。」

「あぁ、もう!弾って呼んでくれよ!!」

「くくっ、そうか『弾』。変わって無いな。」

つい笑ってしまうが、まぁ、昔からこういう奴ではあった。俺自体はあまりつるむ気はなかったが、よく周りにいた一人だ。コイツは騒がしいだけだったがな。

「えぇ?俺あの頃よりイケメンになったぜ?」

「まぁ、顔はな。性格はどうだ?」

「ぐはぁ!?」

「まぁ、それよりそろそろ出来るだろう。積もる話はあるだろうが先に料理を食べてからだ。」

「おう。・・とチャーハンは確かにできるな。持ってくる。」

厨房に居る老人に少し何か聞かれながらも、それを笑顔で答え、怒鳴られても笑いながら答えた事で老人は呆れた顔をしながらも頷いていた。

「・・へへ、チャーハンおまち。業火野菜炒めもすぐ出来るから持ってくるな。」

と言って戻ってもう一度料理を運んでくる。そしてそのまま俺の前に座った。

「・・またお前と話せるとは思っていなかった。」

「俺もだ。・・弾、御手洗やお前の妹は元気か?」

「おう。数馬も蘭も元気だ。何か蘭は今日サイトで合った女の子と会いに言ってくるとか言っていたが‥。あの、アイドルの関係者とか‥何かつぶやいてたな。数馬ならすぐ呼べるぜ?」

「・・まて、お前の妹・・蘭が会いに行ってるのってまさか・・。」

「おにいぃぃ!!?」

そう呟いていた所で急に一人の女子が走って来た。

「ら、蘭!?どうした!?何があった!?」

「ま、マドマドマドオォォォオオ!?」

「お、落ち着け蘭!窓がどうした?!」

「ち、ちがちが・・ちがああうう!!会いに行った子がマドカだったの!!あの!今!最新の兄弟ユニット、ダインスレイフ兄妹の妹の方のマドカ・ダインスレイフ!!」

「な、なにぃぃいい!?・・は!!」

さっきの言葉の続きが分かったのか弾がこっちを向く。そうだ。と頷くとなっとくしたらしい。

「おにい、なんでそんな落ち着いてんのよ!!ダインスレイフ兄妹の片翼に生で会えるとかありえない事よ!!もっと驚かないの!?」

「あー、蘭。御客が要るんだ。」

「へ!?あ、す、すみませ・・きゃああぁぁぁあ!?」

「あ、気がついちまった。」

「弾、さっき言ってたから何があるか分かったが、やかましい。蘭、お前もだ。」

厨房から老人が出てきて俺たちに注意をする。

「う、すまねぇな爺さん。」

「む、すまないな。俺が急に来たから。俺も此処まで驚かれるというか、反応があるとは思ってなかったからな。」

「へっ。お前さんは別にいいさ。所でさっきからどうしようか迷っている娘さんを入れてやれ。入口で立ちつくしてんぞ。」

そう言いつつ厨房に戻る老人。そこで慌てたように蘭が気が付く。

「あ、ご、ごめんなさい!!マドカ様!!」

「「っぶっ!?」」

様って、・・アイドルの熱烈おっかけか!?弾も驚いているし。マドカはかなり苦笑いだ。そしてこっちに気が付いて歩いてきた。

「おや?イチカ。どうしてここに?」

「ここは、鈴が言っていた昔の知り合いがいるからな。前の電話の相手がこいつだ。」

「あぁ、俺は五反田弾。一応コイツの友達と思ってんだがなぁ・・。」

「俺はあの頃はまだ誰かとつるむ気はなかった。ただお前らが付いてきていただけだ。まぁ、別に嫌いと言う訳じゃなかったし今思うと友人と言う間柄でもおかしくない付き合いか‥。」

そう言ったら、マドカが驚いた顔をしていた。弾に向き直り、

「お前、コイツにこう言わせるってすごいな。」

「基本照れやなとこが多いだけって見ると、分かりやすいぞ。」

そう言ったらマドカが手を出してきて弾も握手をする。

「マドカ。マドカ・ダインスレイフだ。」

「名前はさっき言ったが、呼び方は弾と呼んでくれ。マドカさん。」

「あぁ、弾。よろしくな。」

何か認めあったみたいだ。よくわからん。とりあえず話している間に俺は料理を食った。食事の後を持って厨房の方に行き、食後のコーヒーがあるか老人に聞いて出してもらうとそれを片手に食べた物と飲み物の金額を老人に渡す。

「・・丁度だな。まいど。」

「聞きたいんだが、さっきアイドル大統領・・て言ったな。」

さっき気になった事を老人に聞く。

「ん?あぁ。そうだが?」

「俺たちの歌、聴いたか?」

「おう。聴いたぞ。心に来る感じでよかったな。」

「そう言ってもらうと嬉しい物だ。老若男女関係無く人種も越えて伝える思いを込めている。それが伝わって無いのが居るのは悲しいからな。」

「まぁ、中には伝わらんのもいるさ。だが、そこで諦めるんじゃないだろ?」

「当然だ。・・歌ってやる。楽しみにしておけ、サービスだ。・・マドカ!!」

「ん?・・なるほど、いいな。五反田家にファンサービスしてやる。」

手に『錬金術で作った宝石』を出しそれを割る。一度周りが真っ暗になりもう一度光ると、そこには厨房と食事スペースは後ろに下がり、前にはステージの様なものがあった。

「な!?なんだこれ!?」

「別に建物の大きさは変わって無い。少し次元とか弄ったからこの建物はドアから入ると外観以上のスペースがあると言った面白になっているが・・まぁ、気にするな。さて、歌うか。マドカ、準備はいいか?」

「当然だ。」

俺は次の瓶を出し俺とマドカそれぞれが持って割る。すると服が変わりステージ衣裳の様な物になる。

「初披露だ。・・スタート・・。【ORBITAL BEAT】・・。」

~♪

 

歌い踊る俺たちは全力を使い、額に汗を浮かべ肩で息をする。

 

反応を見ようと弾の方を見る・・!?

「凄いわねぇ・・」

「流石はイチカだな‥。心に響く・・。マドカはもう少し精進だな‥。」

「やっぱりイチカはすごい・・凄いデス・・。」

「ホントにイチカってアイドル向いてるね‥。」

「ホントだね・・。」

「おい、なんでお前らここにいる!!」

鈴とラウラ、シャルに簪、そして、楯無がいた。意味が分からん・・

「なんでも何も、簪と一緒に弾のとこに来たらアンタがいただけよ。」

「うん。鈴に昔のイチカの事知ってる人のとこに行くって聞いたから一緒に行くって言ったの。で、イチカを誘いに行ったのに目を離したすきに出て行っちゃうし、見失うし・・。」

そう鈴と簪はこたえる。

「私はシャルと一緒に買い物に出ていて、急にシャルが走り出して、こっちにイチカが居るデス。とか言うから付いてきたんだ。」

「イチカの歌が聞こえたです。胸に響き、奏で伝う歌が。で、聞こえる方に来たらここにいたんだ。」

「あ、私はキミが個人で行動を始めたって聞いて問題が起きた時の処理があったらと思って出て来たわ。」

「楯無は仕事してろ。・・思いっきりくつろいでコンサート聞いてるじゃないか‥。」

そして、少し休んだらマドカを下がらせ俺一人でもう一度ステージに立つ。

「次は俺のソロだ。・・片翼だけでも飛べる。行くぞ・・≪FLIGHT FEATHERS≫」

『~♪』

一人で歌い踊る。汗をかき、ソレを気にせずに一心不乱に思いを乗せて歌う。

『~♪』

 

俺は歌い終わり疲れているが顔をあげると・・!?

「「「きゃあぁぁイチカ様ああぁぁぁ!!」」」

「イ・チ・カ様ああ!!」

会場にいつの間にか女性が大量に増えていた・・確かに空間はいじったがここまで人は入れたか!?と言うか、一番前にいるのって坂上だろ!?アイツ何してんだ!?

そう思っていたらマドカが隣に来た。

『皆、ありがとう。だが、今回は五反田家へのファンサービスなんでここで終わりなんだ。また、希望があればIS学園や市内のアリーナで講演するからその時は・・・』

そこで俺を見て目配せ。俺もマイクを持って

『[一緒に飛ぼうぜ!!]』

「「「「きゃああぁぁぁ!!」」」」

俺は紅いビンを取り出しマドカと一緒に割り移動した。場所は五反田家の廊下。そして、衣裳を着替えてもう一度食堂に入る。そして、観客全員を出した後、また会場に『宝石』を落として元に戻す。

「さて、・・どうだ・・た?!」

みると弾はすでに「おおぉぉぉ・・」とか呻いてるし、蘭は失神していた。老人は顔だけ向けて凄かったぜ。とだけ言ってくれた。

「すっげぇええ!!マジもんのライブ見れて感動したぜ!!」

「そ、そうか・・。ならキーホルダーやるから手を放せ。痛い。」

急に興奮さめやらない弾が俺の手を握ってきてその強さについ顔をしかめる。で、物で釣るとさっさと放してくれた。

そして、昔の話をして俺たちはまたIS学園に戻った。

 




はい、色々と有りますが展開がかなり進み始めました。
ビームの曲げる事やレーザーの偏向射撃については適当なので、
そこは突っ込まないでください。
そう、ギア・・神獣鏡に教えられたと言う事で。
お願いします。


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インフィニット・ソング 15

やっはろー、皆さんどもデース・・。
あまりキャラじゃないのはやらないほうがいいな。うん。
という事で、投稿です。
いってみましょーう。


俺は今、学年別トーナメントの為に練習に来ている。比較的誰もいないアリーナがあったので教師に行って模擬戦をさせてもらう事にした。

「さて、先ずはどこまでやれるか見てやる。シャル、イガリマ起動しろ。俺もシュルシャガナを起動する。」

そう言い俺はアルケミストを起動する。シャルはすでにラファール・デス・サイスを起動している。

「え!?イチカが相手してくれるのデスか!?それはラッキーデス!!」

『では行くぞ!!』《行くデス!!》

『Various shul shagana tron~♪』

《Zeios igalima raizen tron~♪》

俺のアルケミストは後部に二本の機械アームみたいなものが出て来て、足の甲が無くなり代わりにそこにローラーが出てくる。増えた装甲の色にはピンク色のパーツが出ている。俺は手にヨーヨーを出してそこに刃が飛び出てそれを振り回す。

シャルのラファールには緑を基調とした装甲が更に出て来てラファールの大型スラスターが肩に移動する。その先がとがり更に頭部のヘッドパーツが帽子の様な形になる。そして、手に大きな鎌を持つ。

《デース!!》

『ふん!・・行くぞ・・。』

《行くデース!!私もここまで強くなったと見せてやるです。イチカああ!!》

~BGM【Edge Works of Goddess ZABABA】

《~♪》

シャルは初めに速度をあげて突っ込んで来ながらも、鎌を振りつつ鎌の刃が増えそれを振って飛ばしてくる。

≪切・呪リeッTぉ(キル・ジュリエット)≫

俺はそれを手のヨーヨーで弾きつつ、小型の丸鋸を射出する。

≪α式 百輪廻(アルファしき ひゃくりんね)≫

『~♪』

俺は背中のアームに大型の丸鋸を出しそれで斬りかかる。

γ式 卍火車(ガンマしき まんじかしゃ)

それをシャルは鎌で受けて更に体をひねりながら蹴りを入れてくる。

《・・っ!~♪》

『!!~♪』

蹴りを腕で受けつつ俺も下からすくい上げるように蹴りを入れるが、それは避けられシャルはいったん下がる。そのまま一回転して脚から刃を出し自分を中心とした大型丸鋸で前に走りシャルに迫る。

≪非常Σ式 禁月輪(ひじょうシグマしき きんげつりん)≫

《~!!♪》『~!!♪』

シャルはそれを肩に付いたパーツから先に尖ったパーツの付いたワイヤーで牽制し、真っ正面で鎌を鋏のように変化させ挟んで受け止める。

≪双斬・死nデRぇラ(そうざん・シンデレラ)≫

《~♪》『~・・!~♪』

止められた俺は刃を閉じて後ろに飛び、アームから大量の丸鋸を飛ばす。

≪α式 百輪廻(アルファしき ひゃくりんね)≫

シャルはそれをさっきの鋏を分解した二振りの鎌で弾き砕く。俺は撃ち終わった後加速してシャルの懐に飛び込んでいく。シャルも、二振りを戻して一つの鎌にして、更に肩からのワイヤーでまた牽制する。

『《~♪》』

ワイヤーを避けつつ速度を殺された俺は、アームに大型の丸鋸を出してそれで切りかかり、シャルの方は鎌に力を込めて少し大きくしつつそれで俺の攻撃を受け止め弾く。俺たちはまた距離をとって着地して、お互いに構える。

 

『ふむ、かなり良いな。』

《やっぱりイチカ相手だと全力が出せるデス。イチカと一緒・・最高だね。》

そう笑ってそれぞれ武器を納める。ピットに戻り教師の方にも模擬戦の終了を伝える。別にSEを零にするのが目的ではないから、良いのだが、模擬戦と言う事にしないと周りをどかせないし本気を出せないからだ。で、俺からの評価だが・・

『もうちょっと出力を上げてもいいな。フォニックゲインの出が少し弱すぎる気がする。』

《う、・・ごめんねイチカ・・。やっぱり私じゃ役に・・》

『そう言うな。お前は十分助けになっている。イガリマとシュルシャガナは俺とあまり相性は良くないからな。お前の方が適合率が高いのは正直かなりの助けだ。それに二人で会わせる事が出来るこのギアはお前と合わすのがかなり楽なんだから。』

《そ、そうですか!?やっぱり、イチカ!!大好きでーす!!》

『な、やめろ飛びかかって来るな‥。そろそろ下がるぞ。』

そう言って俺がアルケミストを解除するとシャルが同じように解除しつつ飛びついてくる。

「ふふーん、イチカはテレ屋さんですね?」

「・・言ってろ。・・これならやっぱり対するより相する方が出力が上がりそうだな。」

データを起動して過去の情報と照合すると、お互いで歌いつつ斬り合うのもなかなか良いが、タッグを組んだ方が相乗効果でかなり上がっているようだ。前よりも腕の上がっているコイツと今ならかなりいい感じでいけそうな気がする。

「ふむ、・・コレはまた一緒にやる時が来るな。シャル、今日は助かった。そのまま精進しろ。」

「分かったデスよ。あ、ついでにお礼として頭なでなでしてほしいんだけど?」

「そんな事か・・。ほれ・・。」

なでるとマドカの様には声を出さないが、同じように猫の様な顔で撫でられていた。少しして、満足したらしく部屋に帰ると言って出て行った。

 

さて、・・なんで俺の望むように進むのか‥。この世界はこわいな・・。

『学年別トーナメントの変更の知らせ』と書いてある紙が貼ってあり、その内容は【学年別『タッグ』トーナメントになるという事だった。

「「「ダインスレイフ君!!一緒にタッグを組んでください!!」」」

「お願いします、イチカ様!!」「「「「イチカ様!!」」」」

まぁ、なんかそのせいでタッグ申請がめちゃくちゃ来たけど・・。つか後半は【IIII】のメンバーだな。この言い方。その先頭は坂上だし。

「俺は会社の理由からシャルと組む。機体の性能とかの評価の為にな。」

「わーい、やったデース。」

俺が答えたらすぐそこにいたシャルが手をあげて喜んだ。つか、軽いな・・。

「会社の理由なら仕方ないですね…。皆さん、下がりましょう。」

「「「「うう、イチカ様ぁ・・。」」」」

坂上はメンバーの先導役らしく大体のファンクラブメンバーの生徒が言う事になって来ていてアイツはやっぱり上に立つ立場に向いているのだろうと改めて感心した。

部屋に戻ると、

「聞いたぞ、イチカ。なんで私じゃないんだ?タッグだろ?ペアだろ?」

「イチカ、私じゃ駄目なの?」

「イチカ!私と組も?ね?」

「私を選ばないのか・・。」

「わたくしは駄目なのでしょうか?」

マドカと鈴と簪、ラウラにオルコットがいた。

「シャルと組む。シュルシャガナとイガリマの相性がよく、イガリマは適合率が一番高いのがシャルだからな。」

「う、それはそうだな‥。私は神獣鏡があるし・・。」

「私達はそもそもギアが纏えるか知らない。」

「私は眼の事から、通常のギア適合率は最悪らしいし。」

「わたくしはそもそもそんな間柄じゃないですわね。」

その一言に気が付いたらしくラウラがそっちを見る。

「そう言えば何故オルコットもいるのだ?」

「わたくしはただ単にここに来ればどなたかとタッグが組めないかと思いまして。・・わたくし一組の中では初めのうちにうかつな事を言ってしまい、浮いているのです。」

「高校デビューと言う物で失敗したという事か。・・ま、多分四組にいればそんなことはなかったのにな。」

「だな、この浮かれた顔している馬鹿は、婚約者発言して怒られていたしな。」

「あはは・・、でもイチカに返せれないほどに恩があるのに、あげれる物って私は体しかないし・・。」

「そういうのはいいと言っている。・・ラウラ、お前に少し聞きたい事がある。」

「ん?ドイツ軍の事か?よほどの事でなければ言うぞ?」

こんな所で情報漏洩されても困るんだが‥。つか、ドイツ軍の情報とかそんなに要らんし。

「ギア、使えると言ったら使う「要る。欲しい。使いたい。」・・か?・・早い。」

もう言っている途中から言葉にかぶせて来やがった。

「どういう事だ!?早く教えろ!!」

「まてまて、・・ギアの調整をしてお前に合わせる事が出来るかもしれない。と言う事が分かった。しかし、お前は歌えるか?」

「い、いや・・分からん。が、やってみたい。」

そう言う心配そうな顔のラウラの頭をぽんぽんと叩き、

「ならばドイツ軍の許可を取って来い。俺が自ら調整してやる。そして、お前にも歌ってもらうように指導してやる。どうだ?」

「は、はっ!!ドイツ軍上層部に早速報告し、どんなことしても許可をさせます!!」

「おいおい、・・ま、頑張れ。」

「はい!!では!・・クラリッサか!?至急軍上層部につなげ!緊急招集だ!・・何故か?そんな物、決まっている!私達にあのイグナイト社が機体の改造を思案してくれたんだ!!・・そうだ!イチカがだ!!・・そう、そうだ!だから何としても、どんな手を使っても許可させるぞ!!よし任せた!私は上層部を納得させるよう色々と考える!また集まったら連絡してくれ。・・・あぁ以上だ。即、仕事にかかれ!!」

廊下に出て部屋に戻りながら話しているのに全文丸聞こえだ。どんだけ力が入っているんだか‥。

「と言う事で、マドカ。俺は一度あそこに行くぞ。」

「了解。なら、スコールにも連絡しておく。社には?」

「先に言ってある。元々からトーナメントの時に言うつもりだったし。」

「分かった。じゃ、気を付けて。あと、無理はするなよ?」

「・・ふ、別に問題はない。」

俺は瓶を床に落とし、転送移動した。

 

「あの、イチカさんはどうして消えているのでしょうか?前も気にはなったのですが‥。」

「あ、しらないのか?イチカは・・錬金術師なんだよ。だから機体もアルケミスト『錬金術師』。」

「な、なるほど・・だからあのような発想が出来るのですね・・。」

「にわかには信じづらいよね~?でもさ、私はそこが逆に良いと思うんデスよ?ミステリアスなのに少し照れ屋で、不器用なのに優しい。そんな彼がもう・・ね?」

「イチカは渡さんからな。」

「イチカ争奪戦か・・皆まとめて見てくれそうだけどな、イチカなら・・。」

「イチカがハーレム・・うわ、結構リアルに想像できるわね。それならアタシも可能性あり?」

そんな話があったとか‥。

 




元々黒と青っぽい機体が黒とピンクのようになってるのに、乗ってるのが男とか・・。まぁ、イケメンはピンクでも似合うのが居ますからね。
ただ、ツインテールじゃないですよ?
作品内にあるように戦闘用補助アームです。
あと、今までもですが、変身時に光りながら裸等にはなりませんよ?
誰も聞いてないか。


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インフィニット・ソング 16

最近、昼と朝夕に温度差が大きくなってきましたね。
おかげで風邪をひいてしまいました。
それでも、投稿しないと落ち着かない!
と大人しくするために投稿します。
皆さまはお気をつけて。
ではどうぞ。


今日はラウラと共にアリーナに来ている。アレからすごい速さで上層部をまとめて説得しやがったからな。あまりの早さに驚いた。

という事でギアを組み込んだ。その起動実験だ。まぁ、相性的な物はもう本人にしかどうしようもないがな。

「それでは説明するが、その前に聞く。お前にとっての機体は相棒である。それは分かっているな?」

「もちろんだ。私はコイツが居なければ此処には居られなかった。」

「そうか。ならば良い。あぁ、そうだ。コイツを更迭しておけ。」

俺はデータを渡しそこから空中に画面が展開される。

「・・?アインバル中佐?コイツがなんだ?私に関わって来た事など一回しかないが‥」

「コイツ、お前の機体にVTシステム組み込んでいやがった。」

「VTシステム!?あんなものが!?」

「そうだ。コイツはどうやら織斑千冬肯定派で、お前の存在がむかついているようだ。すべての証拠はそこにある。」

「あの様な力のみの屑を肯定するとは愚かな‥。」

「そうだ。ほっておくと面倒だからさっさと片付けとけ。」

「あぁ、感謝する。これでまた軍内の膿が出せたな。」

「では、説明の続き・・と言うかもう簡易的ことしか言えんが。お前は自身のISを信じ、心を通わせろ。そうすれば、答えが聞こえる。ギアはお前を選べば答えが来るはずだ。・・だが、どう言っても適合率は低めだ。しかし、元からするとかなりIS自体の機能は上がっている。生かすも殺すも、お前の心次第だ。では、起動してみろ。」

「え?起動コードは?何のギアなんだ?」

「それも、聴けば答えてくれるはずだ。心通わせ、信じろ。」

「わかった・・。」

眼を閉じ、静かに待機状態のISに手を添える。ラウラの場合はレッグバンドだから太ももに手を当てて目を瞑っているような状態だ。今ここは、IS学園の第四アリーナ。他の生徒の立ち入りは禁止し、中央に立っている状況だった。

「・・・・。」

「・・・。」

俺は下がりアリーナの端から見守る。すぐ上の観客席にはマドカとシャルが居る。

「なるほど、お前の名前はそうか・・。ならば私に力を貸してくれ・・。」

「!!」

対話が出来たのか。あのギアが心をかわしたと・・。

「行くぞ!!《~Granzizel bilfen gungnir zizzl~♪》」

そうラウラが歌うとISが展開し更に腕部が大きくなる。そして腕から槍が現れ、背中にはマントが広がる。

「そうか、成功したな・・。」

「これが、私の新たな力、新たな相棒!シュヴァルツェア・ランツェ!!」

「黒き槍か・・。まったくそのとおりだな。前に向き突き進む。お前にふさわしい機体だ。」

「・・く、黒い《ガングニール》だと!?」

マドカが驚いている。

「適合率が低めだからな・・。色が黒っぽくなってしまうのは仕方ない。しかも元の機体は黒が基本。結果、鮮やかになっても黒メインになってしまうだろうな。」

「そうか・・。お前の(・・)《ガングニール》は白だったな?」

「あぁ、しかし俺も適合率が高いという訳でもない。適合率が俺以上にがあるのは誰か分かってはいるんだがな・・。」

しかし、まだ渡す事は出来ないし、機体も組み終わって無い。

「そうなのか‥ではなんでラウラに渡したんだ?」

「・・ふふん。アレ《・・》は【ラウラの】だからな。」

「アレは・・?まさかお前!?」

「そうだ。・・スコールとオータムには黙っとけよ。」

「はぁ・・マジで化けもんだな。天才超えて神才だな。」

マドカから眼を反らし、軽く動き続けるラウラに目を向けその表情を見ると楽しそうだ。

「なるほどな‥あいつらしい真っ直ぐさだな。愚直なまでに。」

「しかしあのマントはなんだ?」

「アレも武装だ。下手するとIS用対物ライフルでもぶち抜けんかもしれん。」

「それは・・また凄いものだな。」

「ソレを使えるかはアイツ次第だ。さて、そろそろ良いだろう。」

「・・おい、アイツ急にとまったぞ!?」

「・・マズイ。」

『~♪』≪~BGM【烈槍・ガングニール】前奏部分≫

アイツ・・すでに胸に曲が浮かんできている!!

「ラウラ!そこまでだ!!今日は起動までだ!!それにその力はまだお前には扱いきれん!!」

『!?、す、すまない・・。ガングニールが答えてくれて一緒に歌いたくて・・。』

「分かっている。そいつは【お前の】《ガングニール》だからな。一緒に要れて嬉しいのは《ガングニール》も一緒なんだろう。しかし、今日はそれ以上はまだだ。それに・・まだ最終調整がまだなんだ。あれで歌った場合下手するとお前は体を壊してしまうし、ガングニールにもおかしなことがあるかもしれない。分かってくれ、ラウラ。《ガングニール》。」

『ごめんなさい・・。そして私の体の事も心配してくれてありがとう。それに《ガングニール》もありがとうって言ってるぞ。』

「そうだな。」

そう言って俺はラウラの頭をぽんぽんとなでる。ラウラはISを解除して横に並ぶ。

「さて、後はデータと合わせて調整するそ。整備室に行く。」

「わかった。」

 

 

「クソッ・・。アイツが・・冬二を・・千冬さんを・・。許さん!!私にもっと力があれば‥。アイツから・・奪う事が出来れば・・強い力が・・。」

 

 

「さてさて、これで一応は完全にその《ガングニール》はお前の物だ。だが、俺の許可なく歌う事は禁止だ。・・あ、ISを纏って無い時ならば好し。普通に歌う事は許可する。が、聖詠は・・起動コードの事だ。それは禁止だ。いかなる場合も俺の許可なくは絶対にな。破った場合。その機体は没収、封印処分となる。わかったか?お前の相棒をそんなことにしたくないなら言う事は守れ。」

「わかった。それに、普通になら歌っていいなら十分だ。コイツも普通に歌が聞きたいと言っている。」

ニコニコと笑いながら新たな待機状態に変わったシュバルツェア・ランツァをなでる。レッグバンドからアームバンドとなり、二の腕に付いたソレをなでるラウラは本当にうれしそうだった。

で、俺は整備室からラウラを連れて出る。

「そう言えばお前は誰とタッグを組むつもりだ?」

「む?・・・忘れていた!!それどころではなかったからな・・。」

「そうか・・どうするんだ?マドカと組むか?」

「いや、マドカと簪でオールラウンダー同士組むと言っていたはずだ。鈴は近中距離だから中遠距離のセシリアと。だから、私はそうだな・・当日にあるランダムにして見ようと思う。自分の力がどのくらい通じるか見て見ようと思うしな。」

「その意気やよし。・・さて、じゃあ俺は戻る事にする。」

「そうだな。ではな・・。」

 

廊下を歩いていると急に目の前に篠ノ之箒が立ちはだかる。

「・・・。」

「何だ?」

「お前が・・お前が冬二を・・冬二をどうして・・。」

下を向いて俯いたままポツリポツリと言葉を発す。

「どうしても何も、アイツが自分でISを無断使用して捕まっただけだ。」

「お前が居なければそんな事をする事も無かった!!」

「そうだ。しかし、俺は居ようと居なかろうと、してはいけない事をした。だから裁かれる。罪は罪だし、罰は罰だ。・・織斑冬二だから許される?そんな事はない。俺も、大きく間違った事をしたら裁かれる。そう言うものだ。」

そう言ったら篠ノ之は震えだした。

「・・寄こせ・・。」

その震えは手に力が入り過ぎたためだ。拳が白くなっている。

「・・何をだ?」

「貴様の専用機をだ!!そんな物!貴様なんかにはもったいない!!私は知っているぞ!貴様が元【織斑のでき損ない】の【織斑一夏】だってことは!!だから、そんなでき損ないには力はもったいない!!私によこせ!!よこせええぇぇぇ!!」

いつもと違って素手だった篠ノ之は飛びかかってきて俺に手をかけようとしたが、途中で止まる。その理由は・・

「てめぇ・・【マスター】に何しようとしてくれてんだ!!こらぁ!!」

目の前にはガリィが立っていて、足元を氷で固定し、頭を掴んでいた。

「な、何だ貴様!?誰だ!?」

「ふん、アンタなんかに言うわけ無いじゃない。てゆーか、アンタさぁ?マスターの専用機をよこせって?専用機がどういうものか分かって言ってんの?」

「そいつは別に苦労せずに手に入れたんだろうが!?男だからなぁ!!冬二と同じようにデータ収集と言う事でなぁ!!」

「はっ!!テメェみたいな馬鹿には分かんないだろうけどさぁ、そんな簡単に手に入ると思ってんの?コイツはねぇ、マスターが一から作ったの。コアから、メモリから、ねじの一本からねぇ・・。アンタにそんな事できる?出来ないよねぇ、そんな覚悟も無いよねぇ?だって、自分が強くなるってことよりも、簡単に強そうな機体を手に入れるって事に行くくらいだものねぇ?ねぇねぇ?どう?自分より弱いと思っていた人間の前でこき下ろされる気分はぁ?ねぇ?どうなのぉ?」

「く・・こ・・このおおぉぉおお!!」

「そもそもさぁ、もし専用機を手に入れたとしてさぁ・・」

頭をがっしりと掴み髪を引き上げ上を向かせる。

「弱い(・・)アンタに使えるの?」

そう言ったら篠ノ之は眼を見開く。

「な・・に・・?!」

「アンタは自分がポンコツなの分かってるぅ?織斑がいないと自分を見てくれる人がいないと思って、そのために力を求めてるって分かってるぅ?」

「そ、そ・・そんな・・。」

「はっ!アンタにはがっかりだわ。覚悟もなく力を入れる気だったとは・・。」

《くだらない》と言う感じで呆れたと言わんばかりに声を出した後、ガリィは氷を砕き篠ノ之を投げすて、瓶を叩きつけるようにして消える。「・・・。」

篠ノ之は地面を見つめ何も言わなくなったので俺はそのまま廊下を歩きだし、その場を去る。

俺にはやらなければいけない事がある。アイツ(・・・)の機体を用意するために。

そして、俺は・・。最後のピースを準備しだす。

 

「喪失までのカウントダウン・・か。」

 




さて、皆さまはラウラに渡すギアは想像どおりでしたか?
原作から黒と主人公のライバル位置から仲間になると言う条件を考えると、
どう見てもガングニールマリアさんなとこかなと。
時たまうっかりとか、天然とか。そしてたまに可愛くてかっこよくなってとあるのがマリアさんぽいかなぁと。まぁ、作者の感想ですがね。


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インフィニット・ソング 17

どうも、少し間抜けな作者です。
運営からクロスオーバーのタグをつけてないと警告されてしまいました。
『え!?』と忘れていた事に気がつかされまして、いやぁ驚きました。
朝から心臓がきゅっとなるような思いでした。
問題なく解消しましたので、また始めて行こうかと思います。
もし、これによって迷惑を被った方がいましたら、
大変申し訳ありませんでした。
以後、このような事はしないよう気をつけます。
これからも投稿を続けるのでよろしくお願いいたします。

では、このような作者が書く作品ではありますが、
それでも、よろしければ続きをどうぞ。


タッグトーナメント当日。俺はまた展開したアルケミストにシュルシャガナを装備していた。しかし、それはいままでの機体ではなく特殊な装備を付けていた。更に展開しているシュルシャガナ以外も同じ装備を付けていた。装備が増えただけでなく、全体の性能もアップしているのだが、ラウラの《ガングニール》とマドカの《神獣鏡》には適合せず装備できなかった。

「・・で、私のイガリマは強化されているということデスか‥。」

「しかし、それは俺が言うまであの【‥】装備は使うな。・・もし使えば‥。」

「だ、大丈夫。うん、イチカの言う通りにするから‥。と言うか正直逆に使うのも怖いくらいのなのに‥。」

「ならいい。どこかの馬鹿なら勝手に起動しそうだからな‥。」

「それって、篠ノ之箒の事?なら私は怒っていいよね?そんなのと一緒にされたんだからさ。」

「・・一応だ。お前の場合は興味本位というのがある。勝手にギアを触った結果が今のコレなのを忘れているのか?」

そう言いつつシャルの体を指さす。

「あ、あはは・・。で、でも・・結果的には私はイチカの役に立ててるならいいじゃん。ね?」

「・・。」

ジト目でシャルの方を向く。

「そ、それより・・そろそろトーナメント表が出るよ?・・あ、ほら!・・へ?」

そこに出ている専用機持ちの名前は、

《セシリア・オルコット&凰鈴音》

《マドカ・ダインスレイフ&更識簪》

《イチカ・ダインスレイフ&暁シャルロット》

そして、

《ラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒》

だと・・。

 

「ふむ、コレは予想外な展開だ。」

「・・くそ。よりにもよって、あの《でき損ない》の仲間と組むとは‥。」

横でペアになった篠ノ之箒が何かほざいている。昔の私なら大事な人の悪口を聞いてキレているだろうな。だが、

「ふむ、先に言っておこう。私は勝つ事は別に興味はない。ただ、私の力がどこまで通じるかが分かればいい。だから、お前に手を貸す気はない。仲間とも思わない。思うつもりも全くない。」

「こっちこそ願い下げだ!!誰が貴様なんぞに!!」

「ならいい。私はお前には何もしないから勝手にしていろ。」

そう私はいい。トーナメント表をもう一度見直す。一度勝てばイチカとぶつかるだろう。しかし、その際にコイツがどう動くか・・。すぐにイチカにぶつかって行って落とされるだけか‥。ならば、私はその時にガングニールを解放しよう。そこまで我慢したほうが気持ち一杯歌えそうだからな・・。な?ガングニール?

 

 

さて、組み合わせで一回戦の相手は普通の一般生徒の相手か‥。俺は、シャルと一緒にISG展開して会場に出る。

『さて、今回の大会の一番の注目ペア、イチカ・ダインスレイフ&暁シャルロットペアの入場です。さぁ、会場のみなさん、ダインスレイフ君を呼びますよ!!せーの・・』

「「「「アイドル大統領―!!」

何だこの茶番・・力が抜ける‥。

『お相手は一般生徒だが‥何たる因果か【IIII】の会員ナンバー一桁台の一人、この学校でも一番初めに彼にかみついたその人含む、坂上静香&本先加賀音ペアだ!!』

『噛みついたとか、その事はもう勘弁してください!!すでに私は後悔で一杯だったのですから・・。』

叫んで出て来た訓練機に乗っている二人。坂上はラファール、本先は打鉄だ。

「彼女・・確かイチカの事馬鹿にしていたんじゃなかったけ?」

『もう、昔の事だ。今は問題が起きないように周りを押さえる役を率先しているから、助かる存在なくらいだ。クラスの中の女子もまとめる事が出来るから、結構有能だぞ?』

「ふーん。イチカがそう言うならそうなんですね。」

なんか、シャルが少しつまらなそうだ。

「・・イチカは優しいから、あんなこと言われた後でも許しちゃうんです。」

『別に・・。』

優しいつもりなんかないんだがな‥。さて、そんなことは良いから試合に集中するか。

『では!試合を開始します・・。始め!!』

そう言うと同時にブザーが鳴り、俺は即座にシュルシャガナからアームを伸ばし、丸鋸を出し、脚部にも丸鋸を出して地面を走りながら左に動く。シャルは鎌を構えつつ右に動き、空中を動く。

『行くぞ。』「行くデス!!」

≪~BGM【Just Loving X-Edge】≫

シャルが初めに斬りかかりに行く。坂上は俺の方を見ていてライフルを撃っているので、本先の方が距離が近い。ソレウィ即座に判断し、シャルは本先に斬りかかる。本先はブレードを出して構えるが、そもそもリーチが違う。更に動いていないので、斬りかかられるだけになる。俺は坂上の方に小型の鋸を射出する。≪α式 百輪廻≫

「~♪」

連続で切りかかり、本先は押される一方だ。俺は、シャルを気にしだした坂上に急接近しアームを伸ばした鋸の連続攻撃を仕掛ける。≪γ式 卍火車≫

『~♪』

アームを伸ばし丸鋸を展開したまま自分自身がスピン。

そのまま坂上に攻撃を続ける。

『~《~♪》』

俺は坂上を、シャルは本先を攻撃した後、ほぼ同じタイミングで同じような所に押し飛ばす。結果、二人は背中をぶつけ会う。それと離れた所に俺たちも行き対面して一緒の位置にならぶ。

『「~♪」』

お互いに手を握りシャルを俺中心に振りまわし、シャルはかかとの部分に刃を出す。その状態で俺も片足脚の鋸を肥大化させ、スピンしながら二人に近づく。

『「~♪」』

坂上はライフルで撃ってくるが弾丸はスピンに弾かれ、本先はそれでは駄目だと思ったのかブレードで切りかかって来る。が、シャルのかかとの刃がそれをはじき、すぐに俺の脚の鋸が、シャルのかかとにブレードを弾かれて開いたボディに斬りかかる。

『「~♪」』

途中でシャルを投げて、俺はさっきとは逆の右に動き、シャルは左に走る。その途中ヨーヨーを二つくっつけて空中に投げ、巨大な刃を出してソレを二人めがけ落とす。

≪β式 巨円断(ベータしき きょえんだん)≫

俺は飛び上がり脚部の鋸を巨大化させる。シャルも同じように飛びあがり踵に刃を再度展開。更に本数を増やす。そして、二人で空中で手を取り合う。さっきのヨーヨーは本先が前に立ってブレードで抑え、更に坂上がシールドを前に押す事によって、何とか弾けたようだ。だが、

『「~♪」』

俺はそれを狙っていた。二人で手を取り合ったまま一回転し勢いを付けて、蹴りを放つ。俺は本先、シャルは坂上に蹴りを決める。

 

『試合終了~・・。勝者、イチカ&シャルペア!!』

ブザーが鳴り、試合が終わる。俺はシャルと繋いでいた手を放す。

「イエース!イチカと一緒にいる私は無敵デース!!」

『ふう・・。シャル、はしゃぎ過ぎだ。』

手を振るシャルを押さえるように言いつつ俺はピットに戻る。今回は少し調整をしていたので、坂上達は問題なくピットに自分から戻れた。しかし、俺はどうも嫌な予感がしてならない。何か大きな問題が起きそうな予感がする。そう思った俺は準備しておくことにするため、一応何かなって無いか見に行くと整備室に向かった。いや、向かうふりをして瓶を割りいつもの部屋に移動する。

「・・何かおかしな気配がする。ファラ・・」

「はい。一応調べておりますが、爆発物、危険物等は見つかっていませんわ。」

「そうか、気のせいならばいいのだが・・俺の勘は当たる事が多いからな。」

「今の所100%ですわ。」

「・・そうか。ならば、もう少し探っておけ。」

「はい。分かりました。マスター、そう言えば学内に不審者‥と言うより工作者がいました。とらえていますがそちらは?」

「楯無にでも渡しておけ。見つかりやすいとこにでもしばって放置すればいい。」

「わかりました。そのように処理しておきますわ。」

そう言ってファラは瓶を割り消える。俺は目の前に画面を展開し、一応の確認をしておく。

「フォニックゲインが足りないのは・・後は天羽々斬、ガングニール。その他は殆ど良いがあちら【・・・】の旋律が足りんな・・。まぁ、何とかなるだろう。」俺は画面を消して瓶を割り元の場所に戻った。

「・・さて、次の試合は・・ラウラか。篠ノ之はおそらく俺に突っ込んでくるか。ならば・・

篠ノ之はさっさと叩き、ラウラの機体と戦おうか・・。しかし以外にもラウラとの適合率が上がってきているらしいからな。後天的に上がるとは・・あまり予想していなかったが・・コレはこれで有りのようだ。」

予想外だがいい方向なのでこのまま計画は進める事ができそうだ。

そのためには後は《天刃々斬》の旋律を得るか‥。どうする?最悪、相手は篠ノ之か?しかしあいつは弱いからな‥。

「まぁ、いいか。」

良さそうな時点で使えばいい。臨機応変で行くか。

 




誤字・脱字、感想、評価、お待ちしております。

あと、過去の話で誤字の報告をしてくださった方が居ました事、
この場にてお礼申し上げます。ありがとうございました。


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インフィニット・ソング 18

明日は朝から出かけるので今日のうちに投稿です。
またアイツがやらかします。
不可抗力でもあるが・・まぁ、誰かというのは皆さんの思う通りでしょう。
では、此度のお話、どうぞ。


私【ラウラ】は、まったく問題なく元のシュバルツェア・レーゲン時の装備だけで一回戦は勝っていた。元々そう弱くはないからだ。イチカやマドカが特別なだけだ。

「ふむ、今度はイチカ達が相手か‥。」

「ふん。あのでき損ないの事などさっさとつぶしてやる。私や冬二に剣道で勝った事がない愚か者の事など・・。」

「・・イチカが勝てないんじゃなく勝たなかったんだろうな・・。と言ってもお前には関係ないか。・・私は次の試合、初めには手を出さん。精々イチカにボロボロに負けるがいい。」

私はピットに向かい瞑想しつつ次の試合を待つ。あのような女の横にいるとまともに集中もできん。イチカと戦うのなら、集中せんとすぐに落とされる。歌う暇も無くな…。

 

 

『さて皆様、本日二度目の登場、アイドル大統領のイチカ・ダインスレイフと暁シャルロットペア・・そして対するは現役軍人ラウラ・ボーデヴィッヒと篠ノ之箒ペア。』

「ふむ、では篠ノ之箒。私はこの場を動かん。好きにしろ。」

「言われなくとも!!貴様の言う事など知るか!!私のするようにする!!」

『・・シャル、初めは俺一人にやらせろ。』

「うん、良いけど・・そんなイチカが相手するほどの事?」

『・・おそらく、嫌な気配がする理由はあの機体だな。』

「へ?・・やめてよ。嫌な気配って・・イチカの勘は必ず当たるんだから・・。」

『それでは、・・試合、開始です!!』

そう言った瞬間に俺は手に紅い鉱石を出す。

『Imyuteus amenohabakiri tron~♪』

装甲の青い部分が細くなり、装甲の先が尖る。脚部にもくるぶしのあたりから横に刃が装備され、見た感じから鈍重だった装甲がシャープに変わる。そう、装備するのは、天刃々斬である。コイツ相手に使う必要はないと思っていたが、あの機体にある気配にこれを起動した。そして、俺は手に一振りの剣を出す。

「な!?き、貴様!?ISを二機も所持しているのか?!」

『否。コレはアルケミストに相違無く、ただ己が形を変えただけだ。今までの己の役目は人を守るための楯。しかし、今は・・』

剣を構え、足に力を入れ一気に前に飛び出す。

『剣だ!!』

「くぅ!?」

俺が剣をわざと大きく振り、それを篠ノ之は受け止める。

「しかし、私に剣道で勝った事が無い貴様が!!私に剣で挑む気か!馬鹿者が!!」

『・・それだから貴様に力は渡せんのだ。己が力量とその目的が歪んでいる事に自覚を持たんのだからな。』

「ほざけ!!」

上から斬りおろし、振り上げ、左からの薙ぎと相手の動きに合わせ受ける。《ガキン》《ガキン》《ガガン》と続いて音がする。

「その程度か!!それなら冬二の方が上だ!!」

『そうだろうな。今【・】はな‥。』

「何!?」

~BGM『Beyond the BLADE』~

『【~♪】』

剣を収め、細めの刀を二振りに増やし斬りかかる。急に連撃になった事に驚いたらしく篠ノ之は動きについてこれずに、たびたび攻撃をくらう。

「く、くそ!?うるさい!!歌うのをやめろ!!」

『~♪』

俺はその言葉を無視し、斬りかかる。更に連続で切り、飛び上がった後空中に大量エネルギーの剣を出してソレを降らせる。

≪千ノ落涙≫

「な、くそ!?こんなにいきなり飛び道具とは卑怯な!?」

「卑怯も何もその機体にも乗ってるのに、お前が使わないだけでーす。」

「まぁ、これも昔あった攻撃法だしな。飛び刀、短刀を投げて避ける先に切り込む。今は隙が生まれやすいから使う物は少ないがな。」

シャルとラウラが一緒にならんでアリーナの端の方にいる。というか、お前らコメンテイターか?

空中から加速しながら降りつつくるぶしの刃をかかとの部分に移動させ、蹴りながら落ちる。

「なに!?ぐあぁ!!」

飛んで来る剣を落とした事に安心して、油断していた所に蹴りをもろに食らう。

『~♪』

そこで刀を一つ戻し、もうひとつを持ち直すとそこに大型の片刃剣が出る。それに力を込めて振ると、蒼い刃紋が出て篠ノ之めがけて飛ぶ。

≪蒼ノ一閃≫

「く、・・な!?こ・・こんなぁ!?があぁぁぁ!?」

おそらく今のでSEはゼロになったぐらいなはずだ‥と思い剣を刀に戻す。

その後急に篠ノ之が立ち上がる。その姿はどう見ていてもほぼ大破。SEはゼロにならなくてはおかしい損傷率だ・・!?急に嫌な気配が大きくなってきたが・・まさか!?

『ぐ・・ぐが・・ぐがっぁぁぁぁぁ!?』

急に篠ノ之は呻きだし、その機体は黒く染まっていく。

「アレは・・まさかVTシステム!?」

「なぜ!?アレは学校の訓練機!そんなものが入っているはずが‥まさか教師に!?」

・・!しまった!教師陣の中にはドイツ出身の織斑派が一人いたはずだ!まさか!?

そう思った時に会場にスピーカーから声が聞こえた。

『そうよ篠ノ之さん!そこの、でき損ないの男風情が、貴女の織斑冬二を貴女から奪った。だからあなたの憧れる強さの織斑千冬様の力で‥葬ってやりなさい!!』

「貴様!!フリーデル・ゲルハルト!!ドイツの負の遺産を持ち出したのは貴様か!?」

『うるさい裏切り者の落ちぶれモノが!!千冬様に鍛えてもらった恩を忘れ、でき損ないの男風情に尻尾を振り、あまつさえ中佐を更迭した裏切り者め!!』

「織斑千冬には確かに鍛えられた!だが、それはすべて力でねじ伏せるやり方だった!そんな物では世界中に争いの種火を振りまくだけだ!私は一度離れて考えてそれがよく分かった!だから私は!!」『うるさい!!さっさとそこの男を殺せ!!』

『ぐあぁぁぁ!!があぁぁぁ!!』

そう叫んだ篠ノ之は黒い粘質に飲み込まれ、その形を変える。黒い塊はヒトの形となり、剣を持った女性型になった。俺は黙っていたがまた剣を構える。それに反応してVTも攻撃してきた。

 

『~♪』

歌うのを再開し、縦振り横振り掬い上げ、突き払い切り、そう繰り返しつつ攻撃して更に俺は刀を投げ、逆立ちするようにして、脚の剣を使いまわりつつ連続で攻撃する。

≪逆羅刹!≫

そして、そのまま逆立ちから空中に飛び、斬りあげる。

『悪・行・即・瞬・殺!!』

その一言が技の【キーコード】になっていた。投げていた刀を空中で掴み、もうひと振りを出す。そしてそれを柄の部分でつなぎ合わせて双刃剣として回し、炎をまとわせる。

その剣を回し、炎が円を描きながら。地面を滑空するように進む。

VTはその俺をつぶすように渾身の力で切り下ろしにかかる。だが、俺はそれに突っ込むようにして進む。

≪風輪火斬!≫

そして、俺は振り下ろしてきた剣ごとVTを切り、中から篠ノ之を引っぺがしてそのままつきぬける。VTは操縦者が居なくなった事で形を保てなくなり、元の打鉄に戻る。

『ば、馬鹿な!?千冬様の力が・・あんな・・あんな男風情に負けるなんて!!ありえない!!ありえないわ!!・・!?やめなさい!放しなさい!放せ!!くそおぉぉおお!?イチカ・ダインスレイブぅぅうう!!』

そこまで叫ぶ声が聞こえた後、会場からは《どうするんだ?》と言った感じの空気が流れていた。

「・・くそ・・あんなクソ女に、私のガングニールの初舞台が汚されようとは‥。」

「分かるよ・・イガリマも怒ってる。・・ん?」

『・・そうか・・。』

ギア達が怒っている事が分かったからどうにかできないか?と思っていたんだが、急に何か聞こえて来たようでシャルが首をかしげる。俺はそれが何か分かっているから、機体を元に戻し、空中に上がる。そこにはマドカが待っていた。

「イチカ‥学園長より依頼だ。・・・盛り上げろってさ!」

『了解。・・ならば飛ぶぞ!!』

~BGM『逆光のフリューゲル』~

 

会場に曲が流れ俺とマドカは片方ずつ肩に羽を付けて舞う。そして、アリーナの中央でお互いに対照的になるように踊る。

~「『♪~』」~

俺たちは会場の上空シールドぎりぎりにまで上がりそれから、回って羽を広げお互いの羽が無い方の腕で体を寄せ合い、両肩に翼があるようにした。

 

 

『・・急遽始まったアイドル大統領こと、イチカ・ダインスレイフ君とマドカ・ダインスレイフさんのライブ!いかがでしたか!?・・会場を見る限り素晴らしいものだと思いましたが・・そんな一体化した会場に残念なお知らせです。この度、教師陣に不適切な行動をした者がいたため、今後訓練機の全機点検を行います。今回のタッグマッチは延期、または中止とさせていただきます。』

控室で座っていた俺は、ため息をついた。

「だろうな。俺もそうだろうと思っていた。・・しかし、実に残念だったな‥。」

「そうだな。私も全力でイチカと戦う事が楽しみだったのにな‥。」

「おいおい、アリーナを吹き飛ばすような事態は勘弁だな。」

「はは・・イチカ達が言うと冗談に聞こえないから怖いね‥。で、篠ノ之箒はどうなったの?一応担架で運ばれて行ったけど。」

「VTに取り込まれていたからな・・おそらく二日くらいは眼が覚めんだろうな。その後‥二日間ぐらいはまともに体が動かんだろうな。無理やりな動きもある・・それ故VTは却下されたのだ‥。操縦者をパーツがわりに使うシステムなど・・。」

拳に力が入り、酷く怒りがわいてきたらしい。

「ソレはひどいね。・・あの女はどうなるの?」

「ドイツでは先に捕まったアインバル中佐ともども刑を待っている。正直、死刑にしてやりたいぐらいだが‥」

「その人物、IS委員会から身柄引き渡し依頼があり、さっき行われたわよ?すでにドイツ内にはいないし、その先も秘匿されたわ。」

会話に入り込んで来たのはスコール、その後ろにはオータムもいる。

「ちなみに、私が知る限り、ドイツに責任は行かないから安心しな。」

「そうか、なら安心だな・・。」

そして、後日。専用機持ちだけで各一戦だけの対決が決まった。その対戦表は

『セシリア・オルコット対マドカ・ダインスレイフ』

『凰鈴音対暁シャルロット』

更識側の要求により『更識簪対暁シャルロット』

そして、

『イチカ・ダインスレイフ対ラウラ・ボーデヴィッヒ』

となった。奇数だったため、一応の確認をしたら簪はシャルとの戦闘を希望。本人も許可したための処置となる。とのこと。あぁ、これでラウラとの戦闘・・ガングニールとの戦闘だな。旋律が‥揃うまで秒読みだ‥。後は《アレ》を探し出し手に入れるだけだが‥遺跡に言っても見つからないし、どこに行ったのか。しかし反応が無い所を見ると、起動はしてないようだ・・。もうひとつの世界の鍵が・・見つかれば・・。

「もう少しの辛抱だ・・もってくれよ・・・。」

 

 

 




作者的には初めは箒はこっちに入れようかとも思ってたんですけどね。
そうするとオリ弟のヒロイン候補(笑)が居なくなるので、仕方なく自分が使う事になりました。但し、本人曰くそこまで強いと言うほどでもないと・・普通から見れは十分ですがね。シンフォギアの世界の知識が有る分で、翼の技も使えますし、十分ですね。後はギアとの相性問題ですが問題なしとしました。まぁ、イチカは・・元々剣道はしていたので剣術自体はそう難しい事は無いと思うのです。では次回まで。


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インフィニット・ソング 19

皆さま、おはこんばんちわ。
おはようございます、こんにちは、こんばんわ。
全てを混ぜておはこんばんちわ。
どの時間帯に見てられるかは分からないのでとりあえずの挨拶です。
さて、・・風邪がぶり返しました。
体がだるいのから元気になっていたら、今度はのどが痛い状況に。
兄弟にうつされた様で・・喋るのも何かを飲み込むのもおっくうです。
だからこそここで書く事が癒しになっていますので色々と書かせてもらいました。皆さまは、風邪などひかぬ様お気を付け下さい。
今回は会話が多めなので、そこから戦闘風景を想像をしていただく事になると思いますが、よろしくお願いいたします。
では・・19話、スタートです。どうぞ。


トーナメントから、専用機持ちの力を見せる場と化したこの大会、

『では、私、新聞部、黛が放送席の司会をさせていただきます‥。聞こえるか、大会の選手ども!今この瞬間は、力こそがすべてだ!!強さを!その誇りをかけて戦え!!』

「・・・うるさいな。」

「なんでこんな事に・・。」

『では、放送席のゲストを紹介します。先ずは、現役軍人にして戦いの事に対しての質問をさせてもらうためにお呼びした、ラウラ・ボーデヴィッヒさんです。』

『私も参加者なのだがな・・。まぁ、私はトリを任されているようだからそれまではここにいるとしよう。ドイツ軍所属ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐だ。よろしく頼む。』

一応モニターに、その放送席が映っていてラウラが軽く頭を下げて挨拶する。

『お次は当大会の本命にして、世界に名前をとどろかせ始めたアイドル大統領!そのお顔を見た物は数少なく、見た者たちは魅了されてしまう。・・天使の方翼、イチカ・ダインスレイフ様です!!』

『・・紹介されたダインスレイフだ。だが、訂正がある。この大会に参加した者皆が、本命である。今、訓練機が無く参加できなかった者・・その機体の整備をするはずだった者、全てが本命であったと思う。・・俺が狙われるという事で今回の事件が起こった可能性は否めない。この場を借りて詫びておく。済まなかった。・・だが、その分俺は歌い、伝え、戦い、そして護る!そう宣言しておく・・。以上だ。』

『しびれるお言葉ありがとうございます!!あ、私【IIII】会員ナンバー000025でして・・これにサインください・・。』

『・・一応してやる・・。が、これでしっかり解説を頼むぞ。』

『おっしゃああぁぁ!!やります!やりますとも!!さぁ、第一回戦!入場してきましたのは、イギリス国家代表候補生、セシリア・オルコット対、イグナイト社企業代表、天使の方翼のもう一方、マドカ・ダインスレイフ!!機体名はブルーティアーズとサイレント・ミラーです。どちらもビット型遠隔兵器を装備した機体同士、中遠距離型の対決となります。では・・』

会場のモニターにカウントが現れ3、2、1と減り、ゼロになったと同時にブザーが鳴る。

『試合開始!!』

マドカは早速、ビットを展開、この動きを見る限り本気は見れないだろうな‥。本気なら初めはライフルを展開する事からするからな。

『早速、マドカさんはビットを展開・・数は・・なんと八個!オルコットさんを超える数をいとも簡単に、しかも複雑な動きを‥』

『まぁ、マドカの特技だからなマルチタスク。前、どうして得たのか聞いたら、イチカの事を考えつつ勉強や家事、ISの操縦や戦闘訓練をしていたら身に付いたと言っていた。よかったなイチカ‥愛されてるな。』

『余計な情報ありがとう、ラウラ。あと、マドカは御仕置きな。』

『なぜ!?』

試合中にもかかわらず、こっちに向かって顔を向け、ものすごい悲壮感あふれる表情をしている。しかし、後ろではオルコットがどうにか避けれるくらいの弾膜を張っていて、攻撃する暇がないくらいだ。だが、そう言うくらいに手加減(・・・)している。手にライフルを出してないし、ミラービットも使って無いのがその証だ。明らかに手を抜いている。まぁ、コイツ相手じゃ歌う意味もないからな。

『そうやって、こっちを見る余裕があるほど相手をなめきった態度をしているからだ。』

『・・だって、本気出したら三十秒で終わるぞ?』

『最悪それでもいい。おれは、そうやって相手をいたぶるようなやり方は好かん。』

『しょうがないな。セシリア、勝負決めていいか?』

『ちょ!?わたくしこれでも手一杯なのに!?』

『あー悪いが、それ片手間分。倍の数とミラービットによる反射、更に収束とライフルでの狙撃も同時に出来るから。』

『この化け物!!』

お嬢様言葉が無くなってる。あまりに驚愕するとこんなことになるか。

『酷くない?・・ま、イチカが言うから決めちゃうね。さぁ、舞い踊った後はおとなしく散れ!』

『きゃあぁぁ!?』

四方八方からビームを撃ちこまれ、更にレーザーを撃たれてボロボロになり落ちるオルコット。そのときSEがゼロになったためブザーが鳴った。

『しょ、勝者・・マドカ・ダインスレイフ・・。』

『いえーい・・。なぁ、イチカ。・・勝った気がしない。』

『お前は戦闘中毒か?・・まぁ、いい。後でなでてやる。』

『よっしゃああぁぁ!!』

マドカがガチのガッツポーズをしていた。気合入りすぎで怖い。そのままピットに帰って行った。すぐに次の試合の準備があるらしい。

『えー、あまりに一方的な戦闘でしたね・・。ラウラさん。』

『それはそうだろう。マドカはイチカの指導を一番受けていて、正直私も勝った事が無い。格闘戦についてはイチカが強いが、射撃戦になるとマドカが上だろう。』

『え!?そんなにですか?イチカ様!?』

『様って‥まぁ、そうだな。基本俺は待ちの構えの楯持ち型だ。前に射撃装備も使ったが、弾膜撃つばっかりで狙って撃ってないんだ。つまりは、基本俺は狙撃には向いて無い。』

『ほほー・・イチカ様の方がお兄さんなので全て上回っているのかと思ってました。』

『まぁ、ISを使って戦ったら俺が上だろうがな。』

『なるほど、興味深いお話ありがとうございました。では・・選手入場です!続いてのカード、中国国家代表候補生、凰鈴音対イグナイト社所属、暁シャルロットです。機体名は甲龍対ラファール・デス・サイズ。では・・勝負開始!!』

またカウントがゼロと共にブザーが鳴り勝負が始まる。シャルは普通の大鎌を出して、更にブースターも一気に点火。瞬時に近寄っていく。一方、鈴は様子見の為に二振りの青龍刀で斬りかかろうと思っていたのか、出鼻をくじかれリーチの差から防戦一方になっている。

『さて、イチカ様。今回の勝負、どうなると思いですか?』

『すでに、様付けが基本か・・。まぁ、そうだな。はっきり言うと、シャルは俺よりもトリッキーな動きが得意で基本的な格闘や普通の動きならば俺の方が上だ。しかし、制限無しでの勝負になるとかなりいい所まで持ってくる。先日、俺はシャルと模擬戦をしたのだが、その際にも一定時間のうちに勝負が付かなかったくらいだ。まぁ、俺も少し理由が合って基本装備で無く今回使用していた装備としての【・・・・・・】『シュルシャガナ』を使用したからという点があるが‥。その点を抜いても普通の国家代表候補生じゃ難しいだろうな。・・えっと確かここの生徒会長は国家代表だったな。その会長と同等クラスだろう。』

そう言っているうちにシャルは大きな鎌から小さめの鎌にしていてその後ろには鎖、更に先には鉄球が付いている。鎖分銅の鎖鎌とか・・明らかにトリッキーすぎる。その鎖で青龍刀を防ぎつつ、鎌と鉄球で攻撃している。明らかに鈴は焦りとかイラつきがたまってきている。それを煽るようにしているシャル。アレは相手したくないだろう。

『それはどうかと思うが‥。お前は少し身近な物に対し甘い所があると思う。私が見た感じで言うと、一応国家代表クラスではあるが、あの生徒会長とは少し相性が悪いためそれよりは下だろう。』

『そうですか。ラウラさん、補足説明ありがとうございます。さて、試合は続いておりますが、現在攻撃している凰選手より、暁選手の方がSEが多く残っていますね?』

『そうだろうな。鈴は攻撃していて、シャルが守っているように見えるだろうが、実際は攻撃を仕掛けるごとに反撃でじりじりと削られ、守りに入ろうとすると素早くその移り変わりに攻撃してきつつ離脱される。遠くに逃げると、シャルは・・ほら、こうなる展開は予測できていた。』

鈴が逃げた瞬間にライフルとマシンガンに持ち替え、脚・腕・肩に浮遊部位に攻撃をしかけ、更に相手が近づこうとすると逃げ、逃げようとすると距離を保ちつつ攻撃をする。

『[砂漠の逃げ水]デザート・ミラージュだったか?この動きにはまると簡単には抜けれない。元々のシャルの持ち味はここにあって、近接戦闘は苦手な部類だったんだ。しかも機体は第二世代機でシャルはその腕前をしていた。そこに、イチカの戦闘技術を教えてもらい、それを自分の動きに取り入れると言った柔軟性を持っているシャルがこうなる事は明らかだった。正直、私もこれは相手したくない。』

撃とうとしたのか浮遊部位を構えた瞬間に撃たれその真ん中からは煙が出ている。そして、焦った瞬間に急速に近づいて、右手の青龍刀が瞬時に持ち替えたショットガンで撃たれて弾かれ地面に落ちる。

『そうだな。一応俺が鍛えた結果だが、この動きはアイツの功績だ。努力して勝ちとったものだ。・・だから、此処にいる全員に言える事だが、今からの伸び代によっては国家代表も目指せる事は出来る。だが、それは自分の強い意志、そして努力が必要だ。才能や天性の物、家柄や血筋。そんな物は関係ない。・・とある人物(・・・・・)もそれに気が付き今死ぬ気で頑張っている。強くなりたいと、目的を見つけたと・・。だから、諦めるな。』

『さっすが、イチカ様!!かっこいい!!』

『そうだな、イチカが言う言葉には重みがあった。此処にいる生徒達もそれは分かってくれるだろう。』

そう、話しているとシャルが撃ったライフルの弾が残る青龍刀をはじいた。そして攻撃する手段が無くなり、青龍刀を取りに行こうにも、そうはさせないと撃たれて動く事が出来なくそのままSEが削りきられた。そして、ブザーが鳴り試合はシャルが勝利した。

『勝者、暁シャルロット選手。』

『イチカ―、私頑張ったでーす。ごほーび欲しいデース。』

『後で、マドカと一緒になでてやる。』

『わーい、やったデース。』

そう言いながらピットに帰って行くシャル。金が掛からなくて楽だがそれでいいのか。

『では、お次の対戦カードは・・えー日本国家代表候補生、更識簪さんのお相手は更識さんの指名により先ほどのイグナイト社所属、暁シャルロットさんなのですが・・試合直後と言う事でSEの補給および、休憩の時間が必要なので、午後の部とさせていただきます。』

『ならば、多少の休憩だ。皆、食事や休憩にするといい。午後の部は一時半からだ。遅れるなよ。』

『あ、休憩中に本部席裏にてイチカ様のサイン会しません?』

『何故急に!?』

『いえ、先ほど初めに頂いたサインの件で、友人から殺してでも奪い取るってメールが殺到していて・・お願いします。』

『お前のせいだろ。だが、私も欲しいな。』

『ラウラもか・・。まぁ、良い。裏で無く、アリーナの真ん中だ。廊下が込み過ぎて通行の邪魔にならぬ様、Aピット下のゲートから一列に並ぶように。順番抜かしや、問題を起こした者にはサインをしないからそのつもりでいろ。それと走って怪我をしないようにしろ。並んだ者にはちゃんとサインはやる。そのくらいの時間はある。』

『分かったか!!ちゃんとしない奴にはイチカ様からのサインは無しだ!!さぁ、しっかりとルールを守って整列しろ!!』

そう、黛が叫ぶと生徒たちは我先にと走らず、ちゃんと歩いてそれぞれの出口に向かって行く。というか、アリーナ観客席には誰もいなくなった。後は来賓席の各国の人だが、どうやらその方に目を向けると紙とペンを振っている。・・え?そっちも要るというアピール?・・俺は先にそっちに行きその後アリーナの真ん中に行くことにした。

ちなみに、来賓席のサインした人達の中にはとある国の代表などがいた。握手を求められて、握手すると涙して喜ばれた。どうやら人種差罰をなくそうと活動していたらしく同じ思いを訴えた俺に感激したとか。・・そこまでの事はして無いが、まぁ、想いが通じ合うのは俺の求めた事なので、お互いに頑張ろうと言っておいた。その後、アリーナのサイン会が始まり、順調に進んで休憩中に問題は起きなかった。

後にこのサインが値が貼った物になるとは思っていなかったがな。

 




どうでしたでしょうか?
多少読みづらい所が有ったかもしれませんが、そこは新たな試みでした。
もしも難しいという方がいたらすいません。
感想評価、誤字脱字訂正等、有りましたらお願いいたします。


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インフィニット・ソング 20

どうも作者です。
今日の私は風邪で薬を飲んで寝てたんですが、午後一で寝たのに、
気がついたらもう暗くて七時を過ぎてました。
一体私の今日はどこに消えた!?
さて、投稿です。
専用機大会の続き、イチカの関わった機体同士の戦いです。
皆さまはどっちが勝つと思うでしょうか?そしてイチカの対決もありますが、果たしてどうなるでしょう。
予想しながらご覧ください。では、どうぞ。


午後の部、第三試合。

『さて、会場の皆さま。ちゃんとお昼は取りましたか?もし、取って無ければイチカ様の試合の途中に低血糖で倒れたりするのだけはやめてくださいね。午後も実況は私、黛がお送りします。』

『なぜ、そのような注意になる・・?まぁ、いい。引き続き解説のラウラ・ボーデヴィッヒだ。』

『‥同じく引き続き何故かコメンテーターのイチカ・ダインスレイフだ。』

『それはあたりまえですよ。おそらくこの学園で一番人気のある方ですから。・・さて、午後の部の試合ですが、日本国家代表候補生、更識簪対イグナイト社所属、暁シャルロットです。更識選手の機体は【打鉄弐式・防人】。この二人の試合の見所はどこでしょうか?先ずはボーデヴィッヒさん。』

『それは、お互いにどちらもの動きがトリッキーな事がある。これがどう動くかによっては試合は分からなくなってくる。』

『なるほど。ではイチカ様はどう思われますか?』

『ラウラが言うように二人ともトリッキーだ。が、簪は機体の機能を生かす事を得意として、シャルは機体の動きを生かす事が得意だ。お互いのジャンルが違う。そこが欠点となっている。おれはアイツが勝つと予想している。』

『アイツとは?』

『ふむ・・一応言わない。が、此処に書いておく。試合終了時に見せよう。その予想が外れていたら、勝った方はむしろ褒めてやるために‥そうだなハグしてなでてやる。予想道理でも撫でてやろう。』

『『絶対勝つ!!(でーす!!)』』

『えー・・両選手、気合一杯のようです。では、始めましょう!試合・・開始です!!』

試合開始のブザーが鳴る。先に動いたのは簪だ。打鉄弐式・防人の性能の中でもえげつない物を使った。それは、

『な!?更識選手、薙刀を展開しそれを使って近接戦闘をしかけました。あのような装備があるのですか!?』

『アレは、ただの薙刀ではなく、刃先が超振動で斬りこんでくる。下手なシールドなどは少し押しきれば真っ二つだ。』

『怖!?それって、やばくないですか!?』

『あぁ、私のプラズマ手刀も同じ機能を搭載したから分かるが下手に当たるとヤバいな。』

『しかし、弱点もある。』

『そ、それは・・?』

『それは・・シャルは分かっているようだ。ほれ、アレを見ろ。』

そう指さす先の試合、そこにはシャルが鎌を二振り構え、簪の薙刀をはじきながら攻撃している。

『あれ!?真っ二つになって無いですが!?』

『刃先は、と言った。シャルは柄を攻撃している。そこには刃が無いから斬れず、更に長物の扱いも慣れているアイツからするとその動きは分かりきっているようなものだ。しかし、それで終わる簪じゃない。』

そう、シャルが弾いて斬りこんでくる途中、簪は柄を取り外した(・・・・・・)。

そして、石突の部分で逆に攻撃に入る。そう、あの薙刀にはギミックがあり、その機能を生かす戦闘方法だ。

それをシャルは片方の鎌を変えて攻撃に入る。その選択した武器は、

『な、なんと暁選手!?選択した武器は‥な、鉈!?』

『いや、アレはグルカナイフだな。ククリナイフとも言うが、シャルは至近距離での戦闘特化した時に使う。しかし、それは認めた相手にしか使う気が無いと言っていた。俺はいつもだが、他の奴と訓練している時も使った所は見た事無いな。』

『あれ?マドカ様は?』

『アイツは基本、射撃で仕留めるから近接になる事が少ない。』

『なるほど。確かに、マドカは射撃戦になって近づけることが少ないな。近付こうとすると大量のビットで撃たれるからな。ホントに雨のように撃たれる場合がある。視界殆どビームだった時はトラウマになるかと思ったぞ。撃った後の分もシールドビットやミラービットで反射させたり収束させたりするんだからえげつない。』

シャルは鎌を消してとある武器を装備。それを駆使して戦い始めている。

『そ・・それは・・恐ろしいですね。』

『そうだ。だから・・シャルほど近中遠全てで動ける奴はすごいんだ。そこは簪も一緒だ。彼女たちは誇れるとこがある。』

『おおっと、そう言っているうちに暁選手のもう片方の武器が鎌から変わっている・・何ですかあれ?』

『ふむ、おかしい物を出してくるな。アレは・・。』

『ソードブレイカー・・まぁ、剣を折るための武器だ。あの凹凸で剣をへし折るのが普通だが、アイツのあれは特殊で凹凸が大きい。だから・・』

簪の薙刀の刃の方をソードブレイカーで柄に引っ掛け抑え、反対の部分をククリナイフで弾きながら蹴りや肘打ちをしていく。当然そこにも仕掛けがある。

『あの、何故肘打ちやひざ蹴り、踵やつま先での蹴りなどの格闘が?』

『アレはあの機体にある機能だが、元々あの機体自体が武器と言っていい。各関節や肩などのシールドなど、各部に武器が付いていて基本エッジパーツになっている。だから、格闘をしているだけでも十分脅威となっている。まあ、普通にはしても意味が無いからアイツも確実に当たる部分で攻撃している。機体が凄いだけじゃなく、十全に使えるあいつが凄いと言える。』

『ほわー・・、しかし、更識選手も動きだした!一番振りが大きい時に薙刀を消して離脱しながら‥春雷だ!!何とか暁選手も避けたが、・・おおっと大量のミサイル!!コレは山嵐!!万事休すか!?』

春雷と山嵐を使用して、確実に仕留めにかかった簪。しかし、それは悪手だ。

『それを待っていたデース!!』

シャルは大型のガトリングを出して撃ちだす。更に、肩にも同じようなガトリングとショットガンしかも弾はバードショットを撃っているようだ。つまり、どれだけ軌道がよかろうとミサイルのほとんどは撃ち落とされてしまう。そして、その後に残るのは爆発の煙。

『くっ、見えない・・。』

『そう、だから私のターンでーす。』

いつの間にか後ろに回り込んでいたシャルが鎌で切りつけながらすぐに離脱。簪もその離脱した方向に向かって春雷を撃つが、またもや後ろから斬られる。そのせいで春雷の砲身が壊れ、更にブースターも出力が落ちる。

『これじゃ、もう撃てな・・きゃあ!?』

『これで、私の勝ちです!!』

『まだ、負けてない・・負けるもんかー!!』

簪は周りに何かを撒く。それは・・

『な、み・・ミサイルですか!?』

撃ちだすのではなく周りに撒く。その意味は・・

『吹きとべ!!』

一個に薙刀の石突で突きを入れ、爆発させ、更に周りの分にも誘爆させる。

『く・・何!?きゃあぁぁ!?』

それに驚いた瞬間、シャルの腹部に春雷が押しつけられ撃たれる。春雷は完全に壊れてしまったが、これでシャルはほとんどSEを失った。

『まだ・・まだデス!!負けてられないです!!』

『私も・・負けられないんだーー!!』

シャルはまた鎌を構え突っ込む。簪も薙刀を展開。お互いが突っ込みながら斬り合い、一度離れ、加速を付けて斬り合う。そして、そのまま横を抜けてお互いの動きが止まる。そして、試合終了のブザーが鳴る。結果は・・

『・・勝者、・・暁シャルロット選手!!』

『や、やったでーす!!勝ったです!!』

『負けちゃったか‥。ごめんねクラスのみんな・・。』

『しかし、白熱した試合でした。どちらが勝ってもおかしくない名勝負。・・あれ、他の試合が薄く見えないですか?』

『言うな。相性というものがある。さて、俺たちも準備をする。覚悟しろ。俺たちの勝負は、ヤバいからな。』

『あぁ、私とイチカ・・かなり本気で行く。』

『おおっと、お二方は一度準備に向かわれました。・・さて、イチカ様はどちらが勝つと予測していたのでしょうか…紙には・・【勝者、暁シャルロット。近接戦闘で鎌による攻撃。SE僅差による辛勝。】・・え?何これ?予知?未来予知とかのレベルなんですが‥。』

その後、俺には未来人と言う噂が立つ。まぁ、別にどう思われようと良いがアレは唯の予測だ。シャルと簪の相性から、長物の扱いについてはシャルに軍配がある。更に、シャルと簪の差は機体の挙動に慣れているという物。出来てからあまり時間がたっていない分、その機体の癖がまだ自分に慣れ切っていないだろうと予測した結果だった。

 

 

「さて、・・どうするかな。」

(マスター、ガリィ達を使うというのはどうですかぁ?)

ピットに入ると、ガリィが声をかけてくる。

(あの機体、アタシ達を使ったら、面白いと思うゾ?)

(そうだな。私達を披露してみるといい。派手にな。)

(相手は剣で無いので私が折る事はできませんが、それでも役に立つでしょう。)

「・・ふむ。では、今回はお前たちだけだ。コード、アイギスセット。」

そう言いつつ、俺はピットから飛び出す。そしてアルケミストを起動。空中で止まる。

反対側からラウラが飛び出してくる。そして、お互い紅い鉱石を出して、向かい合う。

『defendend. guardend. protectend AIGIS tron ~♪』

『Granzizel bilfen gungnir zizzl~♪』

俺は蒼い四つのシールドに包まれ、ラウラは黒いマントと槍を持つ。

『・・ラウラ。お前に一つ言っておくことがある。』

『なんだ?手加減は許さんからな!!』

『ふむ、・・逆に厳しく行くぞと言うつもりだ。』

『・・マジか‥。』

ラウラの顔が蒼くなる。そりゃな。

『さて、初披露だ。集え、我が力。』

そう俺が手を広げると四色の六角形が現れその上にオートスコアラーの四人が現れる。

『な、だ・・誰だ!?』

「誰と言われましても・・」「私達は・・」「マスターに作られましたぁ・・」「『自動人形』オートスコアラーだゾ。」

ファラ、レイア、ガリィ、ミカがそれぞれの六角形から俺のシールドの上に立つ。

『オート・・スコアラー・・?』

「ふふふ・・」「では派手に行こうか。」「マスターがどのくらい凄いのか、そして私達の力がどれほどのものか・・」「思い知るが良いゾ!!」

四人はシールドの中に入る。そして色が変わり、俺は先ずは緑のシールドを装備する。

『な、何か分かりませんが・・お互い準備できたようです。では、試合開始です!!』

ブザーが鳴り、ラウラは槍を前に突き出しつつ、先ずは様子見の突撃をしかけてきたようだ。だが、

『な!?き・・消えた!?』

俺はファラの力で周りの空気を操り、俺を見えないようにする。そのまま、後ろに行き、ファラの持つ剣を大きくした物で切りつける。

『ぐあぁ!?後ろだと!?』

斬りつけた後、上に逃げ、そのまま後ろに回り込み、また背中から斬りつける。

『ぐっ、また!?ならば!!』 

槍を回し、そのままその場で一回転。それによって俺の剣が当たり居場所がばれる。

『そこだぁ!!』

即座に止まり、突きを放ってくる。それを俺は剣で受けつつ姿を現し、後ろに下がる。

『ふっ、やるな。』

『そのような機能・・ISのハイパーセンサーでさえもとらえられんとは・・。』

『ならば、コレはどうだ!!』

黄色いシールドを装備して、腕にガトリングを出し、コインを発射する。

『こ、コインだと!?』

普通の弾丸でなくコインな所に驚いたようだ。これも一応意味があるのだが、それは今関係無いので割愛だ。

『しかも、とんでもない弾膜・・避け切れん・・これなら!!』

ラウラはその場でまた回る。しかし今度は槍で無く、マントだ。それでコインが防がれ、更にうまく当たった物は跳ね返される。俺は自分の前のシールドを動かし守りつつ撃ち続ける。すると、マントで守っていたラウラから別の何かが発射された事に気が付き、俺は撃つのをやめてその場から離脱。ラウラがマントをどけるとそこには肩のレールガンから発射後のプラズマが残っていた。

『くそ、今のは当てたと思ったが‥。』

『危なかった。が、マドカならもっと確実に隙を狙ってくるからな。それに慣れた俺には今のは避けれるものだ。』

『この化け物兄妹が・・。』

『ふっ。では今度はこうだ!!』

今度は紅いシールドを付けて、腕を伸ばす。すると腕が変わり爪が付く。そして、手のひらに穴があり、そこから・・

『くらうが良い!!』

『ふん!そんな物、レールガンで砕く!!』

俺が撃ちだした燃える棒状の物をラウラは迎撃しようとレールガンを撃つ。が・・ソレは悪手だ!!

『なに!?レールガンで落とせないだと!!ぐぁ!?』

そう、俺の撃ちだしたのは高圧縮カーボンロッド。並みの硬度じゃないのだ。

『更に、油断している所をこうする!!』

手から二本出してソレを両手に持ち、未だ体勢を立て直していないラウラに突っ込んで先ず上から振り下ろす。

『くそ!!』

ソレを槍で止めるが、あまりに強かったため両手で押さえている。そこにすかさず横から殴る。

『ぐおぉ!?』

ラウラはそのまま吹っ飛び、壁に叩きつけられる。

『ふむ。歌わないのか?そうでなければこのまま終わりだ。』

『・・ガングニール・・行くぞ!!私はまだお前と歌っていない。まだ負けるわけにはいかない!!』

≪BGM【烈槍・ガングニール】≫

ラウラに答えるように、会場に曲が響く。ガングニールが答えてくれているんだ。ますます、相性の良さに笑いが出そうになる。

『~♪』

槍を構えなおし、スピードを上げて突っ込んでくる。俺も、カーボンロッドを構えなおし、それに答える。

突き、横振り、縦振り、そこからまた突き更に連続で突きを繰り出す。俺はそれをシールドとカーボンロッドで受け、払い、流す。しかし、その後に視界を覆い隠すようにマントが広がり、六角形の高圧縮カーボンを広げて構えるとそこにランスが突いてくる。しかも渾身のつきの為、俺も踏ん張っていた脚が下がり、カーボンが砕ける。そして、

≪HORIZON†SPEAR≫

掲げた槍の先が開き、そこからビームが撃たれる。俺は教えてないから、それもガングニールが答えているのだろう。俺はその攻撃を喰らい、弾き落され地面に叩きつけられる。あまりの衝撃に、土煙りが立ち、一瞬ラウラは戸惑うが、それでも、繰り返し撃つ。

『絶対譲れない 夢が吠え叫ぶよ!正義の為に 悪を貫け!!~♪』

撃つのをやめ、地面を見るとシールドで受け止めている【俺】が要る事に気が付き、そこに突っ込む。高低差がある事も踏まえ、加速を付けて、槍を構えなおし、突っ込む。

ラウラは更に加速、【俺】はシールドで受けるが少し足が浮いてしまう。そこにラウラは下から槍を振り上げ、【俺】は撃ちあげられる。

『!!~♪』

下から渾身の突きを繰り出し、俺の胴部分に槍が突き刺さる。

そして、水がはじけるように形を失い、【俺】は消える。

『え・・?』

『「それは水に映った唯の偶像」。俺は地面に降りた後、一切お前の攻撃を受けていない。』

「そう言う事で、ばいならー!!」

ラウラは空中であっけに取られ動きが止まっている。俺(・)は下で【青いシールドを外し換え紅いシールドをまた装備】する。また手のひらを向けてその穴からカーボンを撃ちだす。ラウラはそれに当たり、下から突き上げられSEを失う。ラウラは地面に落ちたあとISが強制解除される。

『な、・・なんと言う事だ!?イチカ様は下にいる!?じゃあ、さっきまで攻撃を受けていたイチカ様は!?』

「さっき言ったじゃない。だからぁ、水なのよ。圧縮してマスターの形をとった水が攻撃を受けた。」

「で、アタシが下で待機して水の偶像が壊れる瞬間に、交代してまた撃っただけだゾ。」

『そう言う事だ。ラウラ・・一度お前が俺を見失った土煙り。アレはわざと俺が立たせたものだ。相手を見失うとこうなる。お前の敗因は歌に集中し過ぎて相手を見ていなかった。心がガングニールに傾きすぎたんだ。目の前の目標だけが敵ではない事もある。覚えておけ。』

「は、はい・・。ありがとうございます・・。」

最後のダメージが聞きすぎたようだ。上手く動けないようなので、責任をとって抱えあげるためアルケミストを解除してラウラに近づく。

「い、イチカ・・何を‥!?」

「些かやりすぎたようだ。一応出力は、模擬戦闘用だったのだがな。やはり、ミカは最大戦力なだけある。」

そう言いながらもラウラを抱えあげる。所謂お姫様だっこと言う奴だ。

「そうじゃなく・・何故抱えるのだ!?」

「医務室に連れて行くからだ。暴れるなよ。」

俺はラウラを抱えて医務室に連れて行った。

因みに会場はラウラを抱えた時から黄色い叫び声とかそう言うのが響いていたが、うるさいので放置。マドカとシャル、鈴と簪も叫んでいたような気がするが、知らん。

 

【IIII】会員報告

・イチカ様のお姫様だっこ・・うらやましすぎる・・。

⇒ラウラって子、虐める?

⇒馬鹿が!虐めた奴は本気でイチカ様から嫌われるぞ!あの方はそう言うのは本気で嫌う。

⇒そうだ。むしろ、その発想で此処にいることすら許したくない。だけど、そう言うのもイチカ様は嫌うだろう。

⇒本当にごめんなさい。・・昔そうやって虐められていたからつい・・。

⇒そう思うなら、もっとイチカ様を見て、歌を聞きなさい。きっと、心が通じたら変われるわ。

⇒00004より、皆さんへ。熱くなりそうなので本日の報告はここまで。はっきり言いますと、彼女は本気で戦って彼に想いを伝えていた。だから、彼にそうしてもらえる。私達のすべきことは、彼の思いを感じ伝え、手を取り合う事。それが出来ないというなら、此処から去ってください。以上です。

⇒分かりました。先ほどの発言、本当に申し訳ありませんでした。

⇒謝るならよし。私達は手を取り合う。彼の御意志を伝え広げましょう・・。

⇒世に平和を・・平穏を・・手を取り合いましょう・・。

 

 




皆さまの予想はどうでしたか?
私は書いていてどうなるか分かりませんでした。←(え?)
どちらにも勝てる要素が有ってのでね・・。
そして、イチカ戦ですが見た人なら分かると思うあのシーン。
私は何故かビッキーじゃないのにガングニールつながりでラウラにこんな事を・・。
まぁ、おいしい思いしたのでチャラで。
最後の【IIII】の話し合い、桁が一つ増えているのに気がつきました?
そして、00004は一体誰だったでしょう?


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インフィニット・ソング 21

皆さまおはこんばんちわ。
風邪薬って物によったら本当に眠くなるもんですね。
軽く眼を瞑っていたら爆睡しててびっくりしました。
という事で遅くなりましたが、次のお話です。
舞台はレゾナンス。
そして、イチカのまで出ていなかった過去話がついに明かされます。
気になっていた方も居るでしょう。
では、お楽しみください。


今日はあの試合から数日たった週末。俺は買い物の為、外に出ている。それは数日前に聞いた臨海学校の準備。必要な物が足りないからだ。

「・・で、こうなるか‥。」

「何言ってんのよ?さっさと、これを買って来なさいよ!」

で、買い物に出たわけだが、変装して分からなくしていると急に買い物中に女がそう言って俺に買わせようとしてきた。しかし、変装といたらパニックになるだろうし、だからと言ってコイツに従うのも癪だな・・。そう思ってどうしようか悩んでいた。

「早く買わないと、警備員呼ぶわよ!さぁ、さっさと買って来なさいよ!!」

「ふーむ、どうしたものか・・。」

(なぁ、マスター・・こいつバラバラにしたらダメなのか?ムカついて仕方ないゾ。)

(ガリィもぉ・・、この馬鹿の脳漿ぶちまけたくてうずうずしてますよぉ?)

(派手に殺すか?)

(私が後ろからこっそり首を切りましょうか?)

(お前ら・・物騒すぎる・・。)

むしろ、警備員を呼んで貰って人目に付かない所で話すと言った手を使うか?

「ん?おい、そこで何してんだ?」

「な、何よ?あなた?」

声をかけて来たのは通りがかった見た目は綺麗な女性だ。ま、コイツが此処にいる理由は分かってんだがな。

「ん?あぁ、そこで何かもめてるのかと思ってな?」

「この男にこの服を買わせようとしているのよ。分かったらさっさとどっか行きなさい。」

「・・なるほど。じゃあ、・・警備室行こうか?」

そう言いながら手を掴む。

「な、なんでよ!?」

手を掴まれた相手は女の方だった。

「んー、私な、こう言う者なの・・。」

そう言いながら出したのは手帳。

「IS委員会・・会長直属特殊会員!?な、なんでそんなアンタが私を捕まえるのよ?」

「んーまぁ、コイツと一緒に行こうか。行くぞ?」

「あぁ、まぁ、わかった。」

そう言いながら女と同じようについて行く。その間、「なんで!?放しなさいよ!!」

と女は喚いていた。

「あぁ、そうそう。アンタ一応捕まえるから。」

「なんでよ!!こんな男一人に金を使わせたからって罪になるわけ無いじゃない!!」

「んー。アンタ、タイミングが悪かったな。そう言うのはもう古い。すでに各国はそう言うのはちゃんと恐喝として処理するようになってるぜ?」

「はぁ、なんでよ!!」

「コイツが原因かな。よし、此処まで来ればいいな。部屋貸してくれ。」

そう言いながら警備室の一人に手帳を見せ、隣の部屋に入る。

「・・さてと、はい。いいぞ?変装を解け。」

「へ、へんそうって・・。・・!?」

俺は帽子を外し、眼鏡を取り、眼の下の付け黒子を外して、髪を下ろす。

「ん。これでいいか?」

「な、なな・・いい・・いぃ、イチカ・ダインスレイフ!?」

「そ。コイツIS操縦者だからそう言うのは特に問題なわけ。とりわけ、恐喝などにはうるさくしないといけない存在なの。で、私はその担当のオータム・ハート。まぁ、コイツの言葉に共感を受けた各国はすでに水面下で女尊男卑主義な社会の撲滅、更に撒き返そうとする男尊女卑団体も潰している所な訳。これからはコイツの言う平等を目指しているんだ。と言うわけで、恐喝の現行犯で逮捕。」

「・・そんな・・。」

 

さっきそこら辺で何かもめ事があったらしいが、私(ラウラ)は現場にいなかったのでよく知らない。待っていると店から三人が出て来た。

「お待ちどうさま。さて、それじゃ向こうの店に行ってみようか?」

「そうだな。私はよく分からないから、そこら辺は任せる事にする。」

「うーん、ラウラはもっとおしゃれに気を使ったらモテルと思うんだけどなぁ?なぁシャル?」

「そうそう。もっと、可愛くした方がいいと思うデース。」

私と簪、マドカとシャルが揃って買い物に来ていた。此処は大型のショッピングモール。名前は『レゾナンス』というらしく、私は一度も来た事が無い。最初に地形は把握したが、品ぞろえやどんな店かは分からないので、他のメンバーに任せている。そう話していると、横から声をかけてきた二人組がいた。

「あれ?ラウラ達も来てたの?」

「あら、奇遇ですわね。」

鈴とセシリアが並んで歩いていた。此処にほぼ一年生の専用機持ちが揃っている。だが、イチカは一人で出かけているらしく、マドカに聞いたら声かける前にバイクで海を走って行ったとか・・。流石はイチカだ。うん。未来に生きている気がする。そんな事を考えながら歩いているとそのまま鈴たちも一緒に行くことになったらしく、休憩とどこに行くか相談すると言う事で座ってお茶を飲み始めた。

「そう言えば、イチカとあんた達っていつ知り合ったの?私は‥まぁ、子供の頃って事で色々と言えないんだけど。」

「あぁ、まぁ‥分かる。機密事項にかかるだろうな。もう私も怒られるのはごめんだ。それはそうと、イチカと私の知り合った時は‥2年前イチカがヨーロッパに来ていて、その際にとある事情から、ドイツ軍に来ていた。」

私は思い出しながらイチカとの出会いを話す。

 

「なんだ貴様たちは?」

ゲートから四人の男女が入って来た事に驚いた私は、先頭を歩く事務員を止めて一番前にいた女に声をかける。が、答えたのは男、しかも子供だった。

「ドイツ軍、陸将のアドルフ・ヴァイツヘルガーに会いに来た。すでに許可は得ている。」

「何故貴様が答える。私はこの女に聞いている。部外者は黙っていろ。」

「私はコイツの護衛だ。・・まぁ、護衛なんか必要はないんだがな。そうしないと周りがうるさいんだ。」

「護衛?・・このガキのか?」

「ガキ‥お前さんも同じように見えるな・・。だが、まだまだこいつには程遠いが、そこそこ良い筋をしているな。」

「オータム。無駄口はいい。・・分かったら此処を通せ。」

男が偉そうにしゃべっているのが気に障った私は、困らせてやろうと思い更に足止めにかかった。

「そう言っても、子供が陸将に逢いに来るなどと言った事は前例がない。不審な点が多すぎる。おいそれと通すわけにはいかんな。」

「・・何が言いたい。」

「さっさと帰って、ミルクでも飲んでいろと言っている。ガキが・・。」

そこから私は声が出せなくなった。その理由は、この男が気が付かないほど早く近づき、私の脚をもってフェンスに向かって投げたからだ。私は肺から空気が全て出てしまうほど強く背中を撃ちつけてしまい、その場で気を失った。その間に、その四人は行ってしまったらしく、医務室で気が付いた私は怒りのあまり、基地内でその男を探しまくった。

そして、IS整備施設で案内されている所を見つけた私は、すぐさま飛びかかった。投げ飛ばされ見下された事に怒りで我を忘れた私はナイフで本気で切りかかった。首を斬り裂く勢いで本気で飛びかかったのに、

「見え見えの奇襲など、取るに足らん。出直せ。」

そう言ってナイフを持っている手を掴みつつ流れる動きでまた私を投げた。そう言われた私は頭に血が上り、ISを起動。

「き・・貴様あぁぁ!!言わせておけばぁ!!」

そのまま、殺すつもりで、ワイヤーとプラズマブレードで切りかかった。が、

《ピピン》と軽い音がして≪ガガン≫と音と共に私の頭部に凄まじい衝撃が走る。私は気が遠くなりそのまま壁に激突した。そのあと地面に伏した私は体に力が入らず、何とか体を仰向けにして男の顔を見上げる。髪で顔はよく分からなかったが、その隙間から少しだけ見えた眼は別に少しも馬鹿にしている眼ではなく、悲しそうに私を見降ろしていた。

「・・なんだ、同情か?・・私に、・・何をした?」

「眉間と顎にコインを撃ち当てた。確かに絶対防御により、撃ち抜かれたりはしないが、その衝撃は残る。そのせいでお前は脳震とうを起こし、更に急所を守るために絶対防御が普通よりも強く発動した。それによって、体調の負荷が起こり。お前は倒れているという事だ。あと、同情ではなく、もったいないという感情だな。」

「もったいない?何がだ‥」

「磨けば、あのブリュンヒルデも越える事が出来る可能性がある。だが、思想によってそれのレールは変わり道を外しかけている。」

「思想?レール?どういう事だ?」

「ふむ、・・成らば問おう。お前にとって、強さとはなんだ?」

「強さとは・・力だ。圧倒的な、何者にも屈さないほどの・・教官の様な!!」

「圧倒的な力か。・・ならば、お前は己が身にそぐわない力を手に入れ、自らその身を滅ぼすだろうな。」

「何だと!?だったら!お前はどうだ!!」

「強さとは、【己】だ。しかし、力が無ければ意味を持たず。逆に力だけでは暴力をもたらし、結果は破滅と破壊だ。」

「・・ならば、私はどうすれば‥どうすればよかったというんだ‥生まれも育ちも普通じゃないわたしは・・。」

「ならば、一度試してみよう。」

「な、なにを・・?」

男は急にISを展開した。しかし、戦闘用の装甲や武器は無く、スピーカーの様なものがあった。

「お、男なのに・・ISだと!?」

「イチカ‥この子はそこまでする存在なの?機密事項を見せてしまって・・」

≪BGM【空へ】≫

「…~♪」

男は何も答えず、ISから曲が流れる。唄い出す。その声は綺麗で、とても澄んでいた。

謳う声は建物の中で響き、曲は綺麗な旋律を奏でていた。

唄う男は顔を見せないようにしているのか上を向き、その表情は髪と角度から全然見えなかった。

風が建物内に吹いた時、男の眼が少しだけ見えた。そこには、悲しみと後悔が見えた。私は今までまったくと言ってもいいほど他人の気持など考えなかった。しかし、この男からは、歌を通じてか・・胸が締め付けられるような感情が流れて来た。

「~♪」

歌った男は、ふぅ‥と息をつき私を見た。

「・・その表情なら大丈夫だな。伝わった感じ、覚えておけ。コレは力を求め最後に心を得て、優しさの下に亡くなった人に捧げた歌だ。元々のこの歌を歌ったのはその人を忘れず、だが、先に進む決意をしたんだ。音は奏で、唄う思いは伝い、響き合う。」

「想いは伝う・・。」

「それが分かれば、お前は自分の強さを手に入れれる。・・さて、どうせまた明日も来る。今日はここらで帰るぞ。」

「あ、あぁ・・。」

後ろで聞いていた三人も曲に聞きほれて、忘れていたようだ。

「そうだな。明日は稽古を付けてやる。」

「ふ・・明日こそは、私が勝つ。・・お前、名前は?」

「名前か‥イチカ。イチカ・ダインスレイフだ。」

「イチカか・・。分かった。私は「ラウラ・ボーデヴィッヒ。」・・知っていたか。」

男‥イチカは、背中を向け歩き出す。私は体が動くようになっていたが歌に聞き入って、まったく気にしていなかった。イチカが急に立ち止まり、背中越しに声をかけて来た。

「陸将からお小言があるだろうから、覚悟しておけよ。」

「む・・そ、そうか・・」

その後、イチカは帰り、私は陸将から給料の減額と説教をされた。イチカが先に『少しは見所がある。あのくらいの跳ねっ返りは可愛いものだ。』と言っていたらしく、これでも短い方だとも怒られたが・・。

翌日、訓練中に来て参入したイチカに部隊全員がなめてかかった。しかし、圧倒的な強さに戦慄し、更に強さの為の訓練方法も伝授された。その後のアフターケアまでしてもらい部隊員はイチカに骨抜きにされて、未だにイチカの事を『お兄様。』と呼んでいる者も少なくない。

 

「・・と、こんなもんだったか。」

「・・アイツ、とんでもないわね。・・で一応聞いておくけど、イチカって何の用でドイツに?」

話終わると早速鈴から鋭い質問が入った。

「・・基地のIS設備の向上と、操縦者のチェック。あと、ドイツ内に違法施設があったらしく、それの関連を調べていたそうだ。」

「なぜ、イチカさんが?イグナイト社の一社員でしょうに・・。」

「知らないのか?イチカはAIを独自に作る事が出来るほどの人間だぞ?どうやってかは知らないが、陸将は個人的な付き合いからその方面に強い人物に相談していたそうだ。・・陸将は実は、私達の事を娘のように思っていたらしくて、その娘たちの為にどうにかしてやりたいと相談された。とイチカが言っていた。陸将にもイチカにも足を向けて寝れないと思ったさ。」

「はー、やっぱり師匠は凄いね・・。」

あれ?もしかして、私はまた機密をしゃべってしまったか?・・気が付かなかった事にしよう。うん。

 

 

 




さて、今回はラウラとの過去話でした。
翼は奏に向けて送った歌でしたが、イチカは何を思い歌ったでしょうか。
空へ・・この曲を聞くといつもせつなくなります。
皆さまも一度は聞いてほしい曲ですね。
そして、ラウラはまたもやらかしました。まぁ、ばれなきゃ何もありませんが・・もしばれたとしたら・・・。
スコールからのお仕置きが来るでしょうね。
では、また次回。


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インフィニット・ソング 22

はっはっは・・風邪悪化。バッカじゃないのって話ですよね。
毎年の事なのになんで今年は大丈夫と思って油断していたのか・・。
皆さまは気をつけて、作者のようにひいたとしても悪化させないようにしてください。
では、どうぞー。


「ラウラは分かったわ。じゃあ、シャルの方は?」

「あぁ、私デスか?それじゃあ話してあげるデース。」

ラウラの話が終わったら鈴が私(シャルロット)の方にも聞いてきた。

さて、私も話しましょうかね。

「私の方は、フランス。多分、時期は同じ時じゃないかな?実を言うと私の名前、元は違ったの。暁は親が養子で日本に来たから、その際に代わったの。だから私はハーフとかじゃなくて、正真正銘フランス人。だけど、国籍は日本なんだ。」

「え!?シャルさんはハーフだと思ってましたわ!?」

「ふふ、まぁ、その原因もイチカなんだけどね。アレはラウラと同じく2年前だね。」

そう、あの頃は世界がモノクロに見えてた‥。そんな頃だった。

 

≪パシーン≫と音が響き、私の頬に衝撃が走り床に倒れる。

「ふん、・・顔も見るのが嫌になるわ。・・さっさとどっか行きなさい。」

そう私の義理の母は私を張り倒して、去って行った。母が死んで、父に引き取られて、この女が義理の母だと言われて、・・勝手に国家代表候補生にされて、会社の道具として使われて、上手く結果を出せなかったり、あの女が気が悪い時にはこうして叩かれる毎日。

「・・おかあさん・・お母さん・・う、うぅ・・」

何故あの優しい母が死んで、あんな女に叩かれるような眼に合わなければいけないのか‥。こんなことになるのなら、生まれて来たくなかった。私は、あの家でひっそりと死んでいたかった。こんな思いまでして生きていたくなかった。このままだと、おそらく≪女≫としての体まで道具として使われる。そんなことになるくらいなら・・そう思って私は、会社から逃げ去ることを決めた。ひっそりと、あの思い出の家の中で死のう。そう思い、私は会社からこっそりと抜け出した。郊外にでて、バスを乗り継ぎ、歩き続け、日が暮れた頃に母と暮らしていたあの家に付いた。しかし、そこには明かりが付いていた。

もしかして、追手が?私が逃げだしたのがもうばれた?

そう思い、こっそりと覗くとそこには父がいた。一人だった。机に座り泣いていた。

「・・ジネット・・シャルが・・あんなにつらい思いをしているのに私は‥どうして助ける事が出来ないのか‥あの女と結婚した事はもう何度後悔した事か‥。」

そう言いつつ、立ってキッチンに向かい、水を持って座る。

「助けたい・・でも、そうするとあの女は会社の社員の私と共にがんばって来た者達の大半を首にして、会社を自分の思う通りにするといいだした‥。最悪な事に、冤罪で捕まえさせるのも良い、などとほざいて・・。彼ら大勢の家族と我が子、ホントなら天秤にかけても決まっているはずなのに‥私は‥もう駄目だ・・。シャルだけでも海外に逃がすしか手が無い‥どうせなら、あの女も道連れにすればあるいは・・。そうなったら、‥ジネット、君が天からでも見守ってくれ。おそらく私はあの女と共に地獄に堕ちるだろうからな・・。」

父は天井を見上げ、覚悟したような顔をした。・・そんな風に思っていると思わなかった。この人は私を見捨てたのだとばかり、私は・・

「だめ!!お父さん、そんな事をしたらお母さんに嫌われるよ!」

「シャルロット!?何故ここに!?」

飛び込んだ私を見て父はひどく驚いていた。

「・・私、お父さんの事勘違いしていた。・・私は一人なんだと、お父さんはお母さんのことなんか忘れていると思ってた・・。」

「・・そうか。シャルロット、あの女とは金の為に結婚したに過ぎない。だが、本当に愛していたのはお前の母、ジネットだけだった。本当はお前達と三人でくらしていたかった。会社を捨てて、生きていたかった。だが、私は会社を取ってしまった。あの時、間違った選択をしてしまったのだ。それも・・もう終わる。・・シャルロット。お前は私が責任を持って、安心できる人に任せる。そして、その後の事は私か終わらせる。あの女の好きにはさせない・・。」

父はそう言いながら、泣き出す私の肩を持ち、目線を合わせて、力強い目で言う。

「お父さん!?そんな・・」

「シャルロット・・よく聞きなさい。お前は強く生きるんだ。お前の母、ジネットは私に強さを見せてくれた。・・だから、お前も自身の胸の中を信じて、強く進むんだ。」

「お、お父さん!!」

「ソレは困るな。」

急に後ろから声がして、入口を見ると、男の子が一人、その後ろに女性が三人・・いや、一人は女の子みたいだ。その四人がいた。

「な、何だ君たちは!?・・!まさかあの女の!?」

「あの女がどの女かは知らないが、とりあえず、話を聞いてもらえるか?パトリック・デュノア。因みにお前にも関係ある話だ、シャルロット・デュノア。」

「・・君は何者だ?」

「イチカ。イチカ・ダインスレイフ。しがない一研究員だ。まぁ、一応アンタの上司になる予定の男だと言っておく。」

男の子は、自分が上司になると言っている。私には何を言っているのかまったくわからなかった。

「じょ、上司だと?・・どういう事だ?」

「ふむ。簡単に言うとだな、俺の所属する会社に亡命しろ。その手続きはこっちがしてやる。俺は良い技術者が欲しいんだ。そのためになら、世界を渡ってでも集めるし、死ぬと分かっている奴でも助けてやる。パトリック、シャルロットお前達にはその価値がある。」

「どういうこと?私も?」

「私が技術者に戻るということか?」

「そうだ。社長と言う立場になってからお前は苦労してきただろう。そんな物はもう背負う必要が無くなる。良ければお前のよく知っている者達も一緒に連れて行くこともできる。俺は、イグナイト社の技術部の責任者でもあるからな。お前達の価値はよく分かる。どうだ?」

「君が!?あのイグナイト社の!?最近とんでもない技術を持って進出中の会社って聞いていたが、君のような子供が‥」

「ふむ、信じれないのも分かる。だが、事実だ。・・さて、どうする?俺は手を差し伸べる。その手を掴むか否かはお前次第だ。・・シャルロットの方は会社所属のテストパイロットになってもらう予定だ。・・そして、技術者として上を目指せ。最高の現場を用意してやる。」

「・・その言葉、胸が躍るね・・本当に助けてくれるんだね?」

「身命を賭して。」

「わかった。信じるよ。シャルロットも、それでいいかい?」

「私は・・うん。今ならお父さんの言う事が信じれるから‥。」

「そうか。・・お願いします。私達を助けてください。」

「よし、わかった。なら、今から一度会社に戻って準備して来い。専用機は置いてきて、俺がこの端末に連絡をするから、そうしたら表まで出て来い。パトリックはその間に連れて行きたい社員に連絡を入れておけ。明日の夜には此処を発つ。」

そう言って、一度家から出た彼は、後ろにいた女性に連絡して一人の女性と少女が一緒にその場を去って行った。

「・・さて、帰る前に一か所よる所がある。行くぞ。」

そういって、車を指さす。私は父を先に家から出させ、鍵をして車に乗った。

金髪の綺麗な女性の運転で向かったのは墓地。車から降りて、花束を持って歩き、目的のお墓の前に立つ。そこには・・

≪ジネット・オーブ≫『Ginette・Aube』と名前があった。

「お母さんの・・なんで・・」

「俺は色々と知り過ぎているからな。・・アンタの旦那と娘、預かる。もし何かあったら導いてやってくれ。」

そう言いながら彼は花束をお墓に備えた。

「・・さて、じゃあ会社に送るぞ。パトリックは連絡な。」

そう言って車に戻り。父は連絡をしている。私はこの後どうなるか分からない不安でいっぱいだったが、彼を信じていようと、信じれると確信していた。

会社に戻って、支度をして準備完了になると借りた端末に連絡が入る。

『正面玄関、今から十分だけ停車するから、そこに来い。出来るだけ、見つからないように。』

必要最低限の荷物だけ持って、会社を抜け外に停車していた車に乗る。そこには父と仲のよかった技術者数名がいた。

「これで全員か?」

「・・残りは、会社に残ると・・。この地を離れられないと言っていた。もし、冤罪がかけられれば、命を捨てる覚悟もあると…。それに残ったのは、独り身の歳が多い者たちとすでに病気で余命幾ばくの者達。彼らはもう後が少ないと・・私に・・頑張って来いと言ってくれ・・ました‥。」

「そうか・・良い部下を持ったな。・・行くぞ。」

そう言って車は進み始めた。その後、空港に向かい、飛行機に乗る。疲れていた私はすぐ、機内で寝てしまった。気が付くと、日は高く周りは明るくなっていた。そして、機内アナウンスで間もなく付くと言っていて、突いた先は日本の羽田空港。そこから待機していた車に乗り、とある会社の前に付いた。表札は『イグナイト社』。今世界で、驚くほど急成長している会社らしい。中に入ると、ロビーに老人が座っていた。その人は、日本語で話しかけて来た。

「・・君がパトリックか・・。ジネットの親、ジル・オーブの友人だった『暁 桜雅』(アカツキ オウガ)と言う。彼から聞いた。君をわしの養子として迎え入れ、この会社で働いて欲しい。ジルとは仲が良くてな、昔、私の知っている人が困っていたら助けてやってくれ。と言われていた。アイツは、数年前に逝ってしまったが、君が困っていると聞いたからな。ワシの養子になれば、財産もあるし、暁性になって日本で問題無く暮らせる。」

「・・私を・・息子として‥と言うことですか?」

「あぁ、わし達には子が生まれなかった。妻も去年他界して、寂しく逝く者と思っていたが、少し前に君の事をイチカ君が教えてくれてな。聞いたら息子と孫までできると言われて、嬉しくなってしまったわい。・・君がシャルロットちゃんか?日本語わかるかな?」

「は、はい・・私は、貴方の孫になってもよろしいのデスか?」

「ふふふ、かわいい孫が出来るとは、妻にも見せたかったのう。・・是非、孫になってくれ。」

「あ、ありがとうございますデス!!」

「わははは、では早速手続きじゃな。イチカ君、もういいぞ。」

そう言うとイチカさんは近くに来て書類を渡してくれる。

「他の人は俺と一緒に来てくれ。宿舎があるからそっちに住んでもらう。後で部屋に雇用の手続きの書類を社の者が持っていくから部屋の中で寛いでいてくれるか?急いだ旅で疲れているだろう。部屋にはシャワーもある。服も、一応は用意してあるから、サイズが合わなければ言ってくれ。雇用の件の際に必要な物は申請してくれれば、当面は用意しよう。・・イグナイト社にようこそ。俺は君たちを歓迎する。」

そうイチカは言った。これが私とイチカの出会いだった。

 

 

「てな感じデス。」

「はー、じゃあ、今デュノア社は?」

「多分、第三世代機の制作が出来ずにフランス政府からは研究費の打ち切りになってるんじゃないかな?あの女がまともに会社を動かせるわけ無いし・・。」

「じゃあ、ラファールはどうなるの?」

「すでに、日本にあるラファール・リヴァイブのメンテナンスはイグナイト社が受け持つことになっている。フランス政府からもそう打診があったからな。」

マドカが私が知らない事も答えてくれる。

「へー。じゃあ、学園のラファールはシャルのお父さん達が頑張ってくれてるんだね。」

「そうデス!まぁ、最近はおじいちゃんも一緒なんデスけどね・・。」

「へ?おじいちゃんもなの?」

「元々、ジルお爺さんと知り合ったってのも、技術者の時なんだそうデス。で、お互いにライバルとなって競い合っていたから、お父さんにもその面影があるそうなんです。お父さんの師匠はジルお爺さんだから・・。」

「はぁ~なるほどねぇ・・。」

そう、あの時イチカが居なければ、私はここにいないし、おそらくこの世界にもすでにいなかった。その恩を返したい。そして、そんな優しい貴方が・・

「だから、私は イチカが‥だーい好きデース!!」

アナタが好きなんだ・・。

 




はい。シャルロット編でした。
暁の理由もこれで謎が解けたと思います。
別に切ちゃんが好きで暁にしようと思ったわけじゃないんだからね。


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インフィニット・ソング 23

要望があったので設定集を作りました。
一番上にあるので是非参考に。
では本編です。


さて、俺は一体どうするべきか‥。さっきみたいに何かに巻き込まれたくはないから、さっさと用件を済ませて帰るべきなのか‥。

「・・と言うのもつまらんし、まぁ、どうにかなるだろう。オータムも居る事だ‥。」

そう結論付けて歩きながら次の目的地を探す。

「アレ?・・もしかして・・?」

後ろから声が聞こえ、振り向くとそこには一組副担任の山田先生が居た。

「・・えっとあの、違ってたらごめんなさい。ダインスレイフ君ですか?」

近くに来て小声で聞いてきた。

「そうだが、よく分かったな。担任ならまだしも、会った事は数少ないだろうに。」

「えぇ、それはもう。私もファンですから。・・前のサイン会の時にも並んでましたし‥。」

「あぁ。‥あの時、並んでいた教師の中で一番早かったな。」

「それはそうですよ・・。っと、お買い物の邪魔ですね。それじゃここらで失礼しますね?」

「あぁ、気を使わせてすまない。・・さて、俺は・・と、ここか・・。」

目的の店に付いたので、中に入る。そして、目的の物を素早く買い、そのまま帰る事にした。(因みに帰りは、物陰に隠れ一度例のアジトに飛んでそこで一休みする。それからしばらくして寮の前に戻った。)

 

俺はその買ってきた物をまとめてしまい、臨海学校の準備を済ます。そこに、マドカ達が帰って来た。俺を見た鈴が首をかしげていた。

「あれ?イチカ、もう帰って来てたんだ?」

「あぁ、さっき戻った。」

そう答えると今度はマドカが少し上を見て首をかしげている。

「ん?・・さっきって・・・。あぁ、そっか。バイクで行ったからモノレールには乗って無いよな。」

「・・まぁな。そっちも出かけて居たんだな。いつも見たいに皆一緒だったのか?」

「うん。あ、あとセシリアも一緒だったけど、疲れちゃったらしくて部屋に帰っちゃった。」

そりゃ見かけないだろうな。帰る時はバイクにすら乗って無かったんだし。とか思いながら、話題変更の為に質問してみると簪が答えてくれる。

「所でどこ行ってたんだ?私達も買い物行っていたんだぞ?」

今度はラウラが聞いてくる。つか、一人ずつ聞くなよ。

「む、まぁ、何と言ったか忘れたが、ショッピングモールだな。」

「そうなのか。私達も一緒に行きたかったぞ?まぁ、私達もショッピングモールに行っていたのだがな。」

「ここら辺で言ったら、レゾナンスしかないような気がするんだけど‥。」

今度は簪が言ってくる。

「そんな名前だったかな?よく覚えてないが、さっさと済ませて帰ったからな。」

「そんな、じゃあ一緒の敷地内にいたんじゃないか‥。うぅ、イチカが居た事に気が付かなかったとは、ショックデース・・。」

「そんな落ち込む事はない。もしかしたら、俺はお前らが来てすぐに帰っていたのかもしれんのだから。買い物は早く切り上げて、バイクで走ったり、途中で休んだりしていたからな。」

という事にしといた。説明が面倒だし。

「そっか、それならしょうがないです。・・でも、イチカの水着選びたかったデス・・。」

「そうそう、イチカの水着ってどんなのなの?気になるんだけど・・。」

「イチカの・・、水着・・上半身・・裸・・。」

そうブツブツ言って要る簪に少し恐怖を覚えつつ残念な知らせをする。

「あぁ、悪いが俺は海には入らんし、泳ぎもしなければ砂浜にもいかんが?」

「「「「「はぁ!?」」」」」

声を揃えて言うもんだからうるさいし、鈴とシャルとマドカからは威圧感も感じた。

「そもそも、俺は特殊なISだから行く必要すらない。だが、団体行動があるためにしょうがなく行くだけだ。個人的には学園に居たいのだが、そう言う訳にもいかんから向こうでしかできない実験について研究するだけだ。それに、どうやら色々と嫌な予感がするから、・・な。」

「イチカの嫌な予感とか、もう問題ある事確定じゃないデスかやだー・・。」

シャルが嘆くように上を向きつつ、叫ぶ。そして、それを聞いていたマドカは表情が変わる。さっきまでは旅行に浮かれていた小学生の様だったのに、今は元ファントムタスクの頃の表情だ。

「まぁ、そうだな。コレは気を引き締めないとな。」

「え?イチカの予感って当たるの?」

「あぁ、99.998%の確率だ。」

「おい、ほぼ確定じゃないか。」

「師匠さすが・・。」

鈴が聞くとマドカが答え、それにラウラが戦慄し、何故か簪が俺を褒める。いや、最後のだけよく分からんが、仲良いなおい。

「まぁ、そう言う事で俺は行きはするが、基本待機しておく。あと、・・マドカとシャル以外はそろそろ帰ってもらえるか?イグナイト社に連絡する事があるからな。」

「あれ、そうなの・・じゃ、しょうがないわね。行くわよ。」

「そうだな。では、また明日だ。」

「じゃあ、・・今日は楽しかったよ。」

そう言って三人が出て行く。しばらくして、二人を机に座らせ、話し始める。

「さて、・・シャル、マドカ。そろそろ、アメリカが動くぞ・・。」

「軍用に転化させたISの事だね。やっぱり、ごり押ししてきたのデスか?」

「そうだろうな、あの機体がなければアメリカは一番と言い張れない。・・ま、イグナイト社に勝てる国など無いがな‥。それにしても、なんでそんなことを今頃?今回の事と関係があるのか?」

「大ありだな。日時は臨海学校期間内。場所はハワイ沖1000キロ。北太平洋だ。」

「はぁ!?イグナイト社に対する当てつけか!?」

「だろうな。おそらく、イグナイト社に対する挑発行為だと思われる。俺は今回もし目に余る様なら、はっきりと抗議する予定だ。」

「そうだな。一応、束とも話しておこう。」

「そうデスね。イチカに対しても色々とやってきているから、私は正直つぶしたいくらいデス。デスです。DEATHデス。」

「デスですうるせえ。・・まぁ、とりあえずはその方針を決めておこう。」

会社に繋ぎ話をすると、俺が言った方針で進めるようになった。

因みに俺が水着を着ない事を言うとブーイングのあらしだった・・。解せん。

 

 

さて、俺はバスに乗ると席の関係から面倒なので、いつも通りに瓶を使い、一人先に移動していた。

「あ、あの~もしかして、IS学園の生徒さんですか?」

「あぁ、知っているだろうが、問題の男子生徒だ。いろいろと世話をかけるがよろしく頼む。俺は訳有って先に一人で着いたんだ。」

「あぁ、なるほど・・。確かに、もし他のバスと一緒なら色々とあるかもしれませんしね。わたくし、当旅館の女将の清州恵子と申します。では・・・ダインスレイフ様、一応こちらとこちらにサインを。」

「一枚は分かる。確認の為のサインだな。しかし・・もう一枚がどう見ても色紙なんだが?」

「それは、当旅館のロビーに大切に飾らせてもらうために・・です。」

「一瞬、飾るのが惜しいと思ったろ・・ふむ。まぁ、いい。」

俺はそう言って紙と色紙にサインして、更にそこら辺にあったお土産用の扇子を一つ取り、ソレを開いてサインをする。それと値段の通りの千円と消費税を渡し、それを受け取った女将はきょとんとしている。

「そのサインはやる。どうするなり好きにしろ。・・で、皆が来るまでロビーのいすに座らせてもらうぞ?」

「・・!は、はいいい!ありがとうございます!!」

サイン一つでやたらと元気になった女将に少し苦笑いになった。

そして、俺は荷物から本を取り出し、それを読む。読み終わってからは端末を出して例のアメリカの件に変更がないか確認。さらに、その件の対策の一環(・・)に連絡を入れ、準備やもろもろについて聞いたり少し談笑する。そして、それも終わった俺は少し体をほぐして居るとバスが付く音がした。

「ダインスレイフ様、IS学園の方々が到着なされましたよ?」

「そのようだな。・・さて、俺の部屋等を聞いてくる事にしよう。」

「あの、大変申し訳ないのですが‥お部屋はわたくしが知っておりますが‥。」

「・・。そうだったか。」

そりゃ、女将が部屋割知らないと大変か。だが、部屋に行くにしても一応担任には報告しておくべきだろうと思い、女将に礼を言いつつ俺は長谷川先生に声をかける。

「お疲れ様。で、俺は部屋に行っても良いか?女将には挨拶はしているが。」

「いえ、団体行動という事を忘れないように。・・ま、あいさつが終われば好きにすると良いわ。」

「了解した。」

全員が揃い、挨拶をして旅館内に分かれて行く。俺はさっきの女将に聞き部屋に案内してもらう。そこは、

「ふむ、いた仕方ないな。」

教員室一年4組担任。と書いてあった。なるほど、俺一人だと女子が押し掛けてくる事を見越したか。

「納得した。ありがとう、後は勝手にしておく。」

そう言うと少し寂しそうにしながら女将は部屋を去っていく。俺は部屋で荷物を収め、茶を出して飲む。少し経って、海と反対側に向かった。

 

「・・さて、本当にそろそろ、時間が無いな・・ぐぅ・・ごほっ。」

ある程度旅館から離れて、木にもたれ掛かる。喉が苦しくなってむせると咳と共に血が出た。

「ふぅ・・やっぱり、この体でリンカーを使うのは無理だったか。しかし、・・そうでもしなければ適合率が低かったからな‥。」

「マスター・・。もう、終わりになるのですか?」

「ガリィ、すでに物語は最終章に入っている。俺は・・異物だからな。」

「マスターがどうなろうとアタシらは一緒に行くだけだゾ?」

「ふふ、そうだなミカ。」

「そうなれば派手に行きたいものだな。」

「レイアは相変わらずか。」

「マスターの心は私でも折れそうには有りませんわね。」

「ファラ、自分のマスターに対して何て言い草だ。まぁ、事実だろうがな。」

俺が座っているとその木の上にそれぞれが立っている。ソレを見上げ、空が目に入る。すでに青々とした空の色がよく分からなくなり始めていた。

 

「もう少し‥後少しは耐えてくれ・・。」

俺は誰かに祈るように、小さくつぶやいた。

 




設定資料を作るのにはつかれたです。
実際に用語集なんか考えてなかったから・・。
見るとしたらシンフォギアも好きな人ぐらいかと思っていた自分が、
情けないです。皆さまに楽しんでみてもらう事を考えて書かなくては・・。
という事で疑問が有れば感想にどうぞ。
では、また次回。


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インフィニット・ソング 24

えー・・原作乖離しているこの作品の最後の見せ場が近付いてきました。
そして、ちょっと納得いっていなかったこの作品の終わりを、昨日急遽思いついた方向に仕上げて書き直しました。
コレでこの作品について思いっきり書きあげる事が出来たと思います。
その原因になったのがアプリのシンフォギアのゲームのやさぐれビッキーと未来さんの話。
その話を見て書き直す事が出来まして、作者大満足しております。
終わりまで実は残り少なくなってきておりますが、お付き合いくださいませ。
では本編へどうぞ。


旅館に戻り、夕食を済ませ俺はまた外へ出る。

「・・来たか・・。」

そう呟くと後ろから束が現れる。

「うん、イっくんが思ってるように連絡が来たからね・・。」

「・・渡すのか?」

「ううん、渡さない。アイツに拒絶を言い渡しに来た。前に私は関係ないって言ってた事も知ってる。だから、そう言ってやる。」

「そうか・・もう駄目なのか?」

「そうだね。・・でも、その言葉そっちに返すよ。もう無理なの?もっと行けない?」

「もう無理だな。・・お前も、そしてクー・・クロエも知ってるだろ。」

「知ってる・・それでも・・でも!!」

「ありがとう。そう言ってくれるだけで十分だ。」

「私は十分じゃない!!まだ、もっと一緒に居たい!!皆と!イっくんと!!」

「・・・それでも、壊れた歯車はいつかは割れてそのかけらが周りも止める。そうなる前に取り去らなくてはならない。・・そうして、世界は周り、思いは伝わり続ける。そう言うものだ‥。」

俺はもう話す事はないと、旅館に向け歩き出す。背中に束のすすり泣く声を聞きながら。

もう、俺は止まれない。止まった時は、壊れた時だ。

 

 

夜が開け、朝食を済ませた後は一般生徒と専用機持ちに分かれ実習または作業がある。

代表候補生や専用機持ちは機体の新しいパッケージやパーツの試運転。一般生徒は屋外での実習だ。そして、専用機持ち組から、声が上がる。

「なんでこの女こっちなの?」

鈴が嫌そうに顔を向ける先にいるのは一年一組、篠ノ之箒。何故か・・俺は知っているが、こっちにいるから今までの態度を見てきた生徒は全員冷たい視線を送る。

コイツは、前の事を教師の所為にして姉の束の事をちらつかせ政府を脅してかなり減刑させたのだ。だから、数日の謹慎と反省文で済んでいる。

「ふん、言っていろ。・・今日、私は代わるんだ。冬二の為に・・。」

そう言いつつ俺を睨む。知るか・・。アイツはもう此処には居ないんだから。

「どうやってよ‥ん?」

そう鈴が言っていると、向こうから歩いてくる女性が居る。

「あ、あの・・一般の方は・・え?あ、あれ!?」

一組の山田先生が声をかけたが相手が誰か分かり、混乱し始めたようだ。

「ふふん、来たな。・・姉さん!頼みを聞いてくれたんだな。」

「・・・。」

箒の目の前まで来た束はにこやかに笑う。その顔は本気で怒っている時の表情だ。俺は一応わかるが、心の中はマグマが煮えたぎっているようだ。

そして、さっきの言葉とつなげて分かった一般生徒から声が上がる。

「え!?もしかして、篠ノ之博士に専用機を頼んだの!?」

「妹ってだけで!?ずるくない!?」

ソレを聞いたマドカと鈴は怒り心頭と言った感じで、顔を真っ赤にする。

「なんだそれ!?ばっかじゃないのか!?」

「私達、専用機を持っている代表候補生がどんなに苦労しているか、それも分からずに・・。馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ!!」

「なんとでも言え!!私はどんな手を使ってで‥ぶはぁ!?」

マドカと鈴に言い返して居た篠ノ之は、言葉の途中で束にぶったたかれ砂浜に倒れる。

「・・な、なにを!?」

「何‥だって?・・このクソ馬鹿が・・。」

「く、クソ馬鹿だと!?」

腕を振り抜いたまま、俯き低い声で唸るように篠ノ之を罵倒する。

「そうさ、自分で何もしない癖に周りにばっか当たり散らして、思い通りに行かなければ力と暴力で押し通す。そのくせ、恋愛にもヘタレであの冬二の馬鹿をおっかけては思い通りに行かないと暴力で解決しようとする。そして、前、自分が発言した言葉も忘れて、私に当然のことと思いながら連絡してきて、専用機を創れと命令までしてくる。そんな事をのたまう馬鹿をクソ馬鹿と言って何が悪い。・・はっ、前に行って言葉って言うのも忘れているようだね?じゃあ、教えてあげるよ。篠ノ之束博士の妹って言われた時、『あの人は関係ない。』そう言っていたのに、その関係ない私に頼るの?ばっかじゃないの?もうあんたとは縁を切った。戸籍上も他人なの。両親にも連絡を入れて、私は他人となってるの。アンタはもう私の妹じゃない、赤の他人。専用機なんか作るものか・・。今日は、ソレを言いに来たの。じゃあね、元妹。もう関わるな。あ、先生さんごめんね~、じゃ、私帰りますんでお騒がせしました。皆もごめんね~。」

そう言って、束は帰って行く。一人、砂浜に倒れ放心状態の篠ノ之箒を軽蔑の眼で皆が睨む。俺は、関係無いので普通に岩場に座り、海を眺める。すると、後ろから何か来る音がしたので即座に退避。さっきまで居た場所に木刀が振り下ろさせていた。もっとも、全力過ぎて折れていたが。

「おまえが・・お前が来たからだ・・・。お前の所為で、お前が生きているから・・。」

そんな事を俯いたままのたまう篠ノ之。すぐに教師が来て取り押さえる。

「冬二が言っていた!お前が元凶だ!お前の所為で世界がおかしくなってると!!お前がぁぁ!!このでき損ないの癖に!!その、専用機をよこせぇ!!私が、冬二を迎えに行ってやるんだぁぁぁあああ!!」

暴れる篠ノ之を更に教師が増え取り押さえ、連行する。俺は別に気にもしていないが、少しため息をつく。

「・・どうせ、終わる。」

小さくつぶやいた。

 

その後、俺は砂浜のパラソルの下で端末を開き作業をしていた。そして、思っていた通り事件は起こる。

 

「た、大変です!!先生方、集まってください!!」

そう山田先生が教師陣に招集をかけ、そろって話し始める。そして、長谷川先生が振り向き、

「緊急事態の為、作業は中止。急ぎ、各自の部屋に戻り荷物をまとめて待機。専用機持ちはそれが終わり次第、第三宴会場に集合・・かかれ!」

「「「「『はい。』」」」」

とうとう来たか・・終わりの始まりが。

俺は部屋に戻り、荷物をまとめ、更にスコールとオータムにも連絡を入れておく。

「スコール、例の件。実行に移す。オータムは先日完成したアレを取りに来てくれ。」

『一応言っていたからすでに手筈は整っているわ。後は、作戦実行に移すだけよ。』

『アレか。もう出来て居たんだな。・・分かった。すぐに行く。』

俺は白いアームバングルを手に取り、ソレを眺める。所々に金色とオレンジ、黄色の装飾の付いたソレを額に当て、

「アイツを守る強さと、その想いに・・頼んだ。」

そう呟き立ちあがる。するとふすまが開き、オータムが来ていた。

「来たぞ。・・本当に渡すんだな?」

「あぁ。これが鍵になる。アイツは変わって居たからな。もう大丈夫だ。」

「・・分かった。お前の頼みだ。信じよう。」

ソレを渡して、俺は第三宴会場に行く。

「・・・気を付けろよ・・。」

「・・・ありがとう。」

背中にかかるオータムの声に振り返らず答えた。

 

「・・集まったようね。ミューゼル先生、お願いします。」

「えぇ。・・今から二時間前、太平洋の此処から二千キロ沖でアメリカの最新鋭機、シルバリオ・ゴスペルが実験中、突如暴走した。しかも、周りの施設、および護衛艦も破壊してその後日本に向かって生きているわ。そして、自衛隊はそれに追いつかないし、今ここには最新鋭機が揃っているからという事で連絡が入ったの。別に、落とせと言った事ではなく、あくまで上陸阻止が目的。時間さえ稼げれば、自衛隊が救援に来るわ。それまでの防衛が今回の任務よ。」

「・・先生、その機体どのような装備なのでしょうか?機体の情報開示を求めます。」

スコールの後、鈴が手をあげて発言。イの一番で突っ込む奴かと思っていたが、以外に頭が働くのか‥。

「情報は見れるけど、コレは機密事項よ。もし外部に漏れれば大変なことになる。監視も付くからそのつもりで。」

「はい。・・・何よ・・これ・・。」

そこに出ていたのは、

『最新型広域殲滅用兵装』『特殊殲滅用軍用IS』『新型殲滅用AI搭載型無人機』などと言った、明らかにアラスカ条約に違反する物ばかりだった。

「因みに、今回の事でこの機体の兵装は凍結、その後白紙になるわ。」

「・・アメリカは抗議の嵐でしょうね。」

「でも、一応言っておくけど私は現大統領との面識があって、彼は今回の件は知らなかったらしいわ。調べてみると、副大統領と防衛次官、軍の上層部の独断だったわ。だからと言って、知らないじゃ済まされない事だから、きつく言っといたの。」

「それはまた・・酷い物ですね。」

そう話している間に、俺は装備を整えた。

「・・さて、では作戦内容は、今回はイチカ君とマドカさん、それにボーデヴィッヒさんと暁さんで行います。」

「・・しょうがないわね。」

「イチカさん達なら問題なく行えるでしょうし・・。」

鈴とセシリアが納得するが、一人納得していない表情の女子、更識簪が手をあげた。

「何故私は呼ばれていないのですか?」

「お前は機体に慣れている期間が少ない。しかも、高速戦闘は未経験。更に、コレは暴走機を相手の実戦、それを踏まえて実力が足りないとした。同じ理由の点で鈴は除外、オルコットは高速戦闘は経験あるが、それが実践に伴っているかは疑問だ。更に実戦経験はない上、多対一の戦闘経験もない。以上を踏まえ除外。ラウラは軍人である故、実戦経験は防衛の点ではあり、更に多対一の動きも把握できる。高速戦闘はそこまで経験がないが、それを補う知識は十分戦力だ。・・まだ理由が必要か?」

「・・分かった。」

「ならば、お前らはもしもの事態に備え、一応準備しておけ。・・どうもきな臭い気がする。」

「・・きな臭い?」

「このタイミングの暴走、この場への襲撃、この対応。‥裏がありそうだ。」

俺はそう呟き、部屋を出る。・・これ以上は、何を言おうと無駄だからだ。

「マスター・・あの馬鹿、どうやら織斑千冬と同じ所に収容されるようですよ?」

「ガリィ、下手に出てくるな。此処からは下手にできないからな。」

「はぁい・・。マスター・・では、最後にキスしてもらえますか?」

「・・ん。」

俺はガリィの頬に軽くキスをした。

「ん~、ガリィちゃんすっごくやる気出ました~!!・・では頑張りましょうね。」

「あぁ。・・そんな殺気を向けるな。そう思うなら来い。」

後ろから三人の殺気が向けられているから振り向かずに呼ぶと、即座にファラが来て、前に立つ。俺はまた同じように頬にキスをして、次に同じように来たレイアにも同じようにする。そして、最後にミカが後ろから肩を掴み、逆立ちするようにして俺の上を通り、顔の前で止まる。そして、

「んむ~・・。」

俺の口にキスをした。

「あぁ、アンタ!?何してんのよ!?」

「ん?マスターとキスだゾ。」

そんな、『何あたりまえの事を聞いてんだ?』と言わんばかりのミカは俺の肩に座り、肩車をしている状態だ。

「・・・。」

「んな事聞いてんじゃ無いんだよ!アタシが一番乗りしようと思ってたのに!!マスター!!」

俺は呆れてそのまま歩きだす。もうどうにでもしてくれ・・。

 




他の方の作品見て、「あー・・こういう風に終わらせるのもありか・・。」とかそういう風に勉強をさせてもらっています。
なかなかに物語を描くのは出来ても終わらせるのって難しいですね。
では、また次回。


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インフィニット・ソング 25

それでは物語も佳境に入って来ましたが・・
この先の展開はどうなるのか。

投稿前に設定集を更新したので、もし内容が分からなければ参考にどうぞ。


砂浜で、準備を整えた俺は海を見て立っている。

「・・これで、最後だな。」

砂浜に視線を下ろし、波打ち際まで歩く。

「・・・結構、色々とあったが、・・楽しかった・・かな。」

一本の木を拾い、ソレを縦に地面に挿す。そこに大きめの波が打ち寄せ、木を流してそのまま引き波が攫って行った。

「・・そろそろ、来たようだし、・・行くか。」

旅館から残り三人がこっちに来たので、俺は、アルケミストを起動して、纏う。

『オレはお前と共にある。だから、安心しろ・・。』

そう、『アルケミスト』が『俺』に伝えてくる。俺は「心配などしていないさ。」と告げると、満足したような気配が帰って来た。

『さて、準備はいいな?カウント十で作戦開始だ。』

「大丈夫だ。」「問題はないな。」「イチカと一緒なら、どこまでもいけるデース。」

マドカ、ラウラ、シャルが答えてくる。そして、カウントを数える。

『十、九、八、七、六、五、四、三、二、一・・開始!』

俺たちは海に飛び出して行く。

そして、しばらくして、センサーが敵を捕らえた。

「来たな、シルバリオ・ゴスペル・・。」

確かに、暴走しているようだが、何かおかしい。俺があえて進行コースから外れて見ると、こっちに向かってきた。まさか・・!?

『!!コイツ、・・作戦変更!コイツの狙いは俺だ!!』

どうやらただ暴走しているだけじゃなく、俺が目標になっているらしい。

『何!?クソ!!イチカをやらせるか!!』

『まずは私達を倒して行くデース!!』

『そうだな・・・出来るもんならな!!』

マドカ、シャル、ラウラが前に出て、三重に壁を作り、ゴスペルの進行を止める。

『俺は、何か違和感がある・・もう少し戦闘から離れ観測する・・お前ら頼む。』

『――――。』

機械音声の様なもので俺を見た後、マドカと戦闘を開始。だが、

『な!?早い!?クソ、抜けられた!!』

攻撃をすると見せたフェイントでマドカの横を抜け、更にシャルとラウラに向けて光弾を発射し同時に攻撃を仕掛ける。

『く!?やっぱり、エネルギー弾はAICが効かないから不利だな!?』

『遠距離装備が少ないのが痛手デス!』

避けつつ、ラウラはレールガンを、シャルは肩のワイヤーを伸ばすが、すぐに避けられる。

『あの機体・・データよりも出力が上だ!!クソ、嘘のデータつかませやがって!!』

始めに抜けられたマドカが計測していたようで、そのデータがこっちにも送られてくる。どうやらマドカの言う通り、全てにおいて、出力がデータよりも上だ。

『・・だが、これなら‥』

普通の機体では不安な要素があったので、俺はギアを使う事にした。

『ラウラ、シャル、マドカ。ギアの使用を許可する。』

『分かった。』『了解だ。』『了解デース。』

『~Croitzal ronzell gungnir zizzl~♪』

『~Zeios igalima raizen tron~♪』

『~Rei shen shou jing rei zizzl~♪』

そう、三人がギアを起動して戦い始める。三人に攻撃され翻弄されているが、なかなか落ちないようで、機体はボロボロになりながらも、まだ空中に浮いていた。

そして、俺は気が付いた。所々に赤い物が見える事に。

『・・この機体、・・無人機ではない!!』

もう一度計測データを見ていたら、生体反応がある事に気が付いた。

『『『な!?』』』

『なんだと!?無人機という事さえ嘘か!?』

『・・出た‥搭乗者、ナターシャ・ファイルス‥。年齢、25歳・・アメリカ軍所属・・。』

『この外道どもが‥機密保持のために、この人の命さえも捨てようとしたのか!?』

ラウラはうろたえ、シャルはデータを更に収集、マドカは怒りをあらわにした。

『作戦さらに変更、俺が行く・・『defendend. guardend. protectend AIGIS tron ~♪』』

俺はアイギスを纏い、シルバリオ・ゴスペルに近づく。先ほどと違い、あまり攻撃性が見られない・・?

『どういう事だ!?イチカ!どうしてくるか分からん。気を付けろ!』

そう言われ、俺は気を引き締めた。・・が、

『――――。』

目の前に来てもシルバリオ・ゴスペルは攻撃を行わず、こちらにゆっくりと近づいてくる。

さらに、眼の前で俺に向かい合い、俺の顔をじっと眺めた。

『マスター、コイツ・・暴走はしているが、現在はISの意識が表に出ているようだ・・もうすぐ本格的に暴走してしまう・・その前に何か渡したいと言っている・・。』

『何か?・・ソレはなんだ?』

『・・【ナターシャ】?ソレを頼むと・・』

『ナターシャ・・操縦者の事か?!』

そうだというように頷き、胸の部分から開き、操縦者を解放する。ソレを俺は受け止め、シャルに渡す。

『シャルロット、先に帰り彼女の保護と処置を・・。』

『任せてイチカ。・・気をつけてね?』

そう言ってシャルは旅館の方向に撤退していく。そして、目の前のゴスペルが苦しむように動きだす。

『――――!!――!?』

『下がれ!システムが暴走する!!あの音が体を!?と言っている‥音だと!?』

そうアルケミストが叫んだ後ゴスペルから異常な反応が現れた。光を放ち形が変わる。

『こ、この反応は!?』

『なんだこの光は・・!?』

ラウラは光りに驚いていたが、マドカは気が付いたようだ。

『この反応は‥アウフヴァッヘン波形・・シンフォギアだ・・。』

特殊な波形パターンが検出され、俺はそのデータを即座に照合、そして驚愕した・・。

『通りで遺跡に無いはずだ・・。此処にあるとはなぁ・・【ダウルダブラ】・・。』

そう、ゴスペルから光がやんだ時、背中には左右に二本ずつの横に伸びるパーツとその間に繋ぐように弦が増えていた。俺が探していたダウルダブラの竪琴がそこに存在していたのだ・・。一体どうして・・まぁ、そんな事はいいか・・。アレは回収するだけだ・・。そのためにも・・

『すまないが、ゴスペル・・貴様を破壊する・・。』

手に、デュランダルを出して構える。そして、マドカとラウラが前に出て攻撃を始める。マドカは後ろからビームの偏向射撃にラウラが前でランスを振っている。俺もその隙を見てデュランダルで切りかかっている。しかし、ランスはゴスペルの出した弦に阻まれ、ビームは弦を何重にも重ね編む込むように楯にして防ぐ。更にデュランダルは弾くとともに一度ごとに絡み取られ、絡んだ弦を切るという動作を有する事で動きが格段に悪くなっている。そして、その力がどこから出ているのかと疑問に思って観察してみると、

『――――♪~。』

ゴスペルは唄っていた。しかし、俺にはその歌は聞こえない。だが、その歌の意味は分かる。世界を壊す、そんな意味が込められていた。でも、ゴスペルの意志はそこには無く、暴走している原因のプログラムがその意志を乗っ取っているようだ。

『くそ・・コレは・・難しいな・・』

『私のビームすら弾くとか・・マジできついぞ・・。』

ラウラとマドカは苦戦し、俺も思ったように動けず体力とSEが消費されていく・・。

そして、ゴスペルは光弾を発射し、あたりが爆発する。ソレをシールドで受けつつマドカとラウラを守る。

『・・大丈夫かイチカ?』

『まずいな・・コレでは消耗戦だ・・』

そう呟いた瞬間・・俺にも異常が起きた。

『・・ウグ・・ぐはっ!?』

俺は吐血した。それも結構な量でそれが器官を塞ぐ。そして、俺はフェイスマスクを解除して言ったん後ろに下がる。

『ごふっ・・ごほごほっ・・』

『な、ど、どうした!?攻撃をくらったのか!?』

『イチカ‥まさか・・』

ラウラは状況が分からず慌てているが、マドカは何が起きたのかを理解した様だ。

『ふっ・・やはり・・こうなるか・・。ラウラ、マドカ・・最重要命令を出す。絶対に従え。』

『な、何を・・それよりイチカ!どういう事だ!?何故血を!?』

『・・・分かった。』

ラウラはまだ動転しているようだが、マドカは冷静だ。まぁ、俺が何を言うか分かったのだろう。

『お前らは一時撤退、その後、俺とゴスペルを回収に再度出撃。その際には例のアイツと専用機持ちを同伴させろ。』

そう告げると、フェイスマスクを再度展開。俺は攻撃態勢に入る。

『・・了解・・だ・。』

『な、どういう事だイチカ!?答えろ!!』

『マドカ、・・その五月蠅い奴をさっさと連れて行け。』

『・・ラウラ、イチカのあの命令は絶対だ・・。』

『マドカ!?まて・・何故イチカが!!くっ、離せ!!』

マドカはラウラを掴み更にワイヤーで拘束し、連れて行く。

『・・もう、・・なのか?』

『・・そうだな。おそらくは、・・な。』

『・・そうか・・。っく・・。』

『さっさと行け!!』

ゴスペルが、また弦を出して振りかぶろうとしているのを見て俺はシールドとデュランダルで守りに入る。そして、マドカとラウラの無事戦闘空域を離脱を確認。俺は、四つのシールドを駆使し、ゴスペルに接近する。途中間は光弾を多数発射しかなりのSEを消耗したが、俺はゴスペルに取りつく・・そして、

『お前も、操縦者のナターシャが好きだったんだな‥。オレと同じだ・・。』

そう、アルケミストがゴスペルのシステムにハッキングをしかけ、更にプログラムを書き変えて行く。俺はその間、もがくゴスペルから攻撃を受け更に吐血してしまうが、ゴスペルを放さないように食いしばる。そして、

『これで・・終わりだ・・。』

そう、アルケミストの中で奮闘していたキャロルが言った瞬間、ゴスペルの暴走は解除され、更に機体も形が変わる。

元に戻り、俺の手の中にはダウルダブラがあった。俺はそれをすぐに収めゴスペルを抱える。・・これで、コイツは・・そう安心して、俺は気を緩めた。体からも力が抜け、後わずかのSEを残すばかり。

 

 

【この瞬間を待っていた!!】

【死ね!!屑が!!】

 

 

俺は油断しきっていた。・・こんなことになるとは思っても居なかった。

『・・ぐはぁ・・。』

俺の背中には二振りの剣が刺さっていた。その剣の先には二機のISと更に後ろには十機のIS。前の機体の操縦者は俺が知っている奴だった。

 

『織斑千冬・・篠ノ之箒・・』

 

 

俺はシルバリオ・ゴスペルと共に海に落ちて行った・・。

 




あーあぁ、やっぱりこうなりますよね。という風な展開です。
ふふふ・・これからの皆さまの反応が楽しみですよ。
どれだけ、アンチとしての二人に誹謗中傷が飛ぶのか・・。
感想欄を読むのが恐ろしくなってきますよ。
では、次回。


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インフィニット・ソング 26

気がつけば九月も半ばを過ぎ、台風も一瞬で過ぎて行くような事もありました。
感想を多く頂き嬉しい限りです。
では、今回あのキャラクターが少し活躍します。
誰でしょうね。
では、本編へ。


イチカの信号が途絶えた。更にそこには多数のISの反応がある。そう報告を受けて、私(マドカ)達は慌ててその場に向かうとイチカは居なくて、代わりに十数機のIS。それの先頭に立つのは・・

「織斑・・千冬・・。」

『篠ノ之箒・・。』

捕まったはずの二人がいた。後ろに見えるのは前拘束されたはずの元教師【ゲルハルト】がいた。そして、その横にいたのは女性優遇権利団体の団長【向日 さやか】が・・。

つまりはコイツの手引きで脱走してISを手に入れ、更にイチカを・・イチカを・・・!!

「貴様らあぁぁぁああ!!」

『でえぇぇえええす!!』

神獣鏡を起動し、全出力で撃つ。シャルロットもワイヤーを放つ。だが、ソレは織斑千冬の持っている剣で防がれた。

「何!?」

『ふん・・確かにいいものだな・・。あんな屑にはもったいない。』

その剣はデュランダル。イチカの剣だった。しかし、その剣の柄にはべっとりと赤い物が・・。

『アイツを後ろから襲い、気が抜けた瞬間に奪ったのだ。良い剣だからな、あんな奴にはもったいない。私が有効に使ってやるさ・・はははははっ!!』

織斑千冬がそう笑い、更に後ろの女どももにやにやと笑っていた。

「ころす・・殺す・・お前たちは・・絶対に殺す!!」

『マドカ!落ちつけ!!』

ラウラが何か言っているがうるさい。アイツ等は私の温かい居場所を奪ったのだ。だったら、代わりにアイツ等を冷たい所に送ってやってもかまわんだろうが!!

『ふん、千冬さんが手を下さなくても私で十分だ。この最新機、赤式があれば!!』

そう叫ぶ篠ノ之は白式の色が赤い機体でこっちに剣を向ける。その剣は零落白夜と同じように光る。検出した力は白式と比べると弱いがそれでも十分脅威である。すると、ISに警告が出る。

『後方からISの反応!?照合機体・・無し!?』

簪が叫ぶように通信してく事に耳を傾けた。ようやく来たか・・遅い‥が、この状況を変えるのにはアイツの力が必要になるだろう・・。不服だがな・・。

『遅いぞ・・早く片付けて、イチカを探さなければ‥。』

『悪いな・・まだ、慣れ切って無い・・が、それでも、イチカのおかげでお前らには後れを取らんはずだ・・。』

そう聞こえてくる声は少し前まで憎くてイラつく声だったが、今は多少腹立つくらいで済んでいる。

『な、何故貴方が!?』

『貴様!?何故ここに!?』

『『・・・。』』

『そんなこと言う前に早くしろデス。』

口々にそう言う。その姿が視認できる距離にまで近付き、両集団の真ん中に止まり立つ。

『・・さて、イチカの命令により、俺様推参ってな。・・お前ら・・覚悟はいいか?』

その姿は白いIS。腕部が大きくナックルのような部分があり、更に脚部にも大きなブースターが付いている。しかし、まだ本格的な力は出していなかった。

『な、なぜ・・おまえが・・そこに・・』

『何故・・何故そっちに立っているんだ!?』

『『答えろ・・冬二!!』』

そう、その機体の操縦者は織斑冬二。かつてイチカに負けて捕まった第一番目の男性操縦者だった。

 

 

「俺は・・イチカと話した・・アイツの理想と・・俺の馬鹿さ・・そして、現実を知った。俺は…ただ、自分の妄想で思う通りにならなかったら癇癪を起すガキだったんだ。俺は色々と経験しその上でイチカに頼んで鍛えてもらった。力も、心も・・。だから、その恩を返すため、イチカの助けになるためアイツと約束したんだ。俺の力は唯の暴力ではなく、守るための力だと。守りたい人の手を握るための拳だと。」

イチカが俺を鍛えてくれた。死ぬかと思う様な事もあったし、本気で血反吐を吐いた事もあった。だが、それでも俺を見てくれた。見捨てないでくれた。俺の一人の兄弟として接してくれた。普通ならあんな事した俺を助けるわけがない。そんなあいつの優しさで俺はここまでこれた。

「そして、守りたいから、繋ぎたいから俺はこの力を得た!」

紅い宝石を構えて胸に浮かぶ唄を口ずさむ。

「だから、行くぞ!!【Balwisyall Nescell gungnir tron~♪】」

白式改、そう名づけられていたこの機体。それにギアの力を足し、俺に預けてくれたこの機体は、

『これが!俺の!機体!【ガングニール・ホワイト】だ!!』

白いだけだった機体に金色のパーツが増える。脚部や腕部に大きなパーツが付き、最後に頭部にツノの付いたヘッドギアが装備されそれが煌めくと体中に力がみなぎる。

『なに!?ガングニールだと!?』

『ガングニールが二つデスか!?』

ラウラとシャルロットが驚いている。マドカは知っているからか、落ち着いているが。

『・・繋ぐ力‥か。・・うんいいわ。冬二、今はアンタを認めてあげる。』

『・・私は認めてない・・でも、今はそんなことは後回し。』

『わたくしも貴方の事は信じてませんわ。でも、今は目の前の敵をどうにかしましょう・・。』

鈴と簪、セシリアがそう言ってくれて、俺は拳を握りこむ。すると手のナックル部分が【ガッチャン】と音を立て装着され、更に腕のパワージャッキがスライドして動き、脚部の部分も動くそして、空中に立っていたその部分に足を踏みしめ、

「だから、俺はあんた達をぶっ飛ばす。・・イチカの為に!!」

『あの男に洗脳されたんだな!?くそ、あの屑が・・!!』

『冬二・・私だ!!箒だ!!分かったらあのでき損ないに従う馬鹿達の所から離れてこっちに来い!!なぁ、冬二!!』

そう言って手を伸ばす二人に俺は首を振って拒否を表す。

「・・千冬姉、箒・・俺は間違っていたんだ。だから、あんた達とは一緒に行けない。俺もケジメをつけるため・・俺自身が許せないから・・だから、犯罪をしたら償わなきゃならないんだ・・。だから、捕まってくれないか?」

『・・お前は冬二じゃない!!そんな私を否定するような事は冬ニは言わない!!』

『そ、そうだ!!この偽物め!!私達は騙されんぞ!!』

「千冬姉・・箒・・そうか・・。なら、サヨナラだ・・。俺は俺の道を行く。あんた達とは道が分かれた。だから・・」

俺は拳を握りこみ、

「あんた達をぶっ飛ばしてでも捕まえる!!」

ギアの力である足のジャッキを使う。思いっきり後ろに伸ばしたジャッキを解放すると反動で前に直進し、一瞬で箒の懐に入り込む。腕部のジャッキを引きながらそのまま拳を鳩尾に向けて殴りこむ。

『ぐはぁ!?』

そして、腕部のパワージャッキの力が解放され、衝撃が拳から箒の体に向けて放たれる。

『ごぶぅふ!?』

その衝撃が強かったせいか、箒は一瞬で白目をむき意識を飛ばした。

『箒!?』

千冬姉が驚いたようだが、俺はそのままかかと落としで近くの小島に叩きつける。

そして、俺が動いた事で後ろの女権団のISも動き出したが、こっちのみんなもそれを塞ぐように動き戦闘が始まる。ラウラは槍で三人を相手し、セシリアとマドカが連携して六人をビットで翻弄してSEをがりがり削っている。

鈴とシャルはお互いに背中合わせとなって四人を相手している。簪は一人で全体の援護に回り離れた奴をミサイルや荷電粒子砲で落として、近付いてきた相手には薙刀で翻弄している。そして、俺は・・

『な、なぁ・・冬二・・何故お前があの屑の味方をするんだ?私の知っているお前はどこに行ったんだ!?』

声を荒げる千冬姉。いつもなら怖いと思っていたんだろうが・・もう哀れとしか思わない。

「千冬姉・・俺は・・もう、分かったんだ。前、思っていたのは全て妄想で間違いだった。俺は、現実を見てなかったんだ。・・それに、アイツは屑でもでき損ないでもなかった。俺よりももっとすごい。束さんを超えるほどの天才だった。だからこそ隠していただけだった。」

自分の手を開き、見つめ・・そして握りこむ。

「そんなあいつが、俺に教えてくれた。強さの意味を。」

『強さとは力だ!!だから私は世界一になった!!』

「その強さ・・虚しくないか?俺は・・そうなった自分を考えて悲しくなった。虚しくなった。・・そこには心が無いから・・。」

『心だと!?そんなものが何になる!!』

「そう思っているから、俺はアンタと一緒に行けないって言ったんだ。・・そろそろ終わりにする。行くぞ、千冬姉・・。」

『くっ・・良いだろう・・。お前では私にかなわない事をもう一度よく教えてやる!!』

俺は拳を、千冬姉はデュランダルを構える。

≪BGM【限界突破 G-beat】≫

「~♪」

俺は歌いながら、力を込める。そして、拳を構えて殴る。

『な、なんだその歌は!?うるさい!!』

「~♪」

回し蹴りに、正拳突き、掌底。繋がる様に格闘で攻撃を繰り出す。

『うるさい!!歌うなと言っているだろうが!!』

そう叫び切りかかって来た剣を俺は拳で弾く。真っ正面からぶつかると斬れるから少し斜めにして側面を殴るようにして弾いた。火花が散る。

「~♪」

そして、俺は更に振って来る剣を拳と足で、時に殴り、時に蹴り、弾き捌いて行く。

『五月蠅いと言っているだろうがああ!!』

大ぶりで振って来た所で、足のジャッキを解放。瞬時に後ろの回り込む。

『何!?がっはぁ!?』

「~♪」

ジャッキを引いて背中に向けて拳を突き出し、当たった瞬間解放。俺の今の本気で殴る。

『ぐはぁっ!?なぜ、何故剣では無い・・お前には私の雪片があっただろうが!!』

「~♪」

俺はその言葉に答えず、更に殴る。振って来た剣を避け、弾き、出来た隙にまた殴る。

「!!~♪」

俺は全力で飛び、空中で体勢を変え、蹴りを放つ。更に、脚部のジャッキも思いっきり引き、千冬姉に当たった瞬間に全力を解放。

【ガッキョン】と激しい音がして、その力は全て千冬姉の腹部に襲いかかった。

『ぐあああぁぁあああ!?』

そう叫び声をあげて、吹っ飛ぶ千冬姉。周りを見ると、すでに戦闘はほぼ終わっていて、あちこちにSEが切れて落ちている人が見える。それは全て敵ISでこっちのメンバーは誰一人欠けて居なかった。

「ふぅ・・これで、イチカを探しに・・」

『がああぁぁあああ!?』

そうため息をついた瞬間、また千冬姉の声がした。しかし、さっきとは明らかに状態が違っておかしい。

『あの馬鹿・・・デュランダルに取り込まれやがった。』

「取り込まれったって・・?どういう事だ!?」

千冬姉がもがく様子を眺める。目は赤く光り、昼間というのに顔は暗く見えない。それなのにゆがみ笑う口元は見えていた。

『あの剣はイチカがあえてロックをかけていた剣なのデス。だけど、あの女が恨む意識と同調し、そのロックが解けてしまったのデス。』

『その証拠に、あの剣が金色に光る勢いが強くなっている。今はなんでもぶった切れるほどの威力を持つぞ・・。』

そうか・・暴走しているのか‥そこまで強いなら・・

「わかった。ならば、こっちも奥の手を使う!イグナイトモジュール!」

『・・私も使わせてもらうデス。』

『・・くそ、私はギアの能力的に使用できない・・。』

『私は適合率が低いから・・。口惜しいが、織斑、シャル、頼む。』

そう言っていると、海から赤い光と、銀色の光、ピンクの光が上がって来た。そして、その光は赤はセシリアに、銀色は簪に、ピンクは鈴に向かって飛んでいき、ISがその光を取り込んだ。そして、急に光り輝き、その光がやむとそこには

『な、なんですのコレは!?』

『アガートラーム・・?これ・・イチカの‥。』

『シュルシャガナ・・?これもイチカの力よね。』

ISの形が変わり、それぞれの機体にもギアが付いていた。しかし、まだ色はついて無く、黒ずんだような色をしている。

「皆、胸の歌を聴け・・。そして、それを口ずさめ。そうすれば、ギアは答えてくれる。」

そう言うと三人は戸惑いながらも頷き、目を閉じる。

『Killiter Ichaival tron~』

『Seilien coffin airget-lamh tron~』

『Various shul shagana tron~』

三人が聖詠を口ずさみ、それにギアは答えた。三人はそれぞれの光に輝くISを装備していた。

『ブルー・ティアーズ改め、戦争を止めるために流す涙、【レッド・ティアーズ】とでも名乗りましょう。』

『打鉄二式改め、全てを合わせるための手、【打鉄銀腕】(ウチガネギンワン)。』

『甲龍、改め、皆を照らす龍、照龍(ショウロン)!!』

三人のISはISGになっていた。イチカの力が・・アイツ等に力を貸してくれたのか・・。

「皆、・・今から俺たちはあの暴走している千冬姉に対抗しなければならない。アレは完全聖遺物。エネルギーが違いすぎる。だから、今のままでは出力が足りない‥。その機体にもとある力が付いている。それを使うには・・心を強く持たなければ、あの状態と同じになる。・・それでもやれるか?」

『それって、意識を強く持てばいいのよね?イチカの事を思えば大丈夫でしょ。』

『なめないで、織斑冬二・・。師匠の心の強さを、知っている私達が負けるはずがない・・。』

『わたくしは、あまり自信がありません。・・でも、今の冬二さんや皆さんが力を貸してくれるなら大丈夫と思います。』

そう言った皆を見て、俺は胸の所にある赤い鉱石を握る。

「なら、・・やるぞ!イグナイトモジュール・・」

「『『『『抜剣!!』』』』」

【ダインスレイフ】

『カチッ』と押すと機械音声がしてその部分が空中に飛び、棘が四方向に開きその一つが胸に刺さる。

『ぐっ!?ぐああぁぁぁ!?』

『うぐぐぐぐ!?』

「うおおおおぉぉおおお!!」

『ああぁぁぁあああ!?』

『デエエェェエエエスウウウウウ!!』

黒い靄に包まれ、押しつぶされそうなほどに、辛さ、痛み、苦しみ、後悔、怒り、色々な黒い感情に押しつぶされそうになる。だが、俺はもう、そんな物は経験している・・その気持ちに比べれば・・。

「こんな物・・屁でもねえぇぇえええ!!」

そう叫んだ俺は黒い影が形を変え、ISに張り付く様に形を変える。黄色い目の様なものが付き、体中が黒くなる。さっきと比べ物にならないほど出力が上がっている事を感じる。

「うおおおぉぉ!!はぁ!!」

正拳突き、回し蹴り、そこから縦に宙返りして、構える。さっきよりも格段に動きやすく、力強くなっているのを感じる。

「イチカよりずっと弱い俺が乗り越えたんだ・・お前らにも出来るだろうが!!」

そう言って俺はセシリアと簪の手を握る。

『くっ・・そうですわね・・初めは心が弱かったのは貴方と同じでしたものね・・。』

そう言ってセシリアも簪の手を握る。

『・・師匠の手を握った事がある・・その温かさを失う辛さを考えたらこんな物‥辛くもなんとも・・無い!!』

『わたくしも・・親友を失う苦しみと比べるまでも・・有りませんわ!!』

そう言って二人は顔をあげると、俺と同じように黒い影がISの形を変え、出力が大幅に上昇していた。

『くううぅぅうう・・イチ・・カ・・』

『イチカアァァアア・・』

鈴とシャルロットは二人で手を握り合い、額を当てていた。

『イチカが居なくなる悲しさ・・味わいたくないデス・・そんな事を考えた私が・・』

『シャルロットの気持ちが分かる・・。はじめ、イチカが居なくなった時、助けてもらったのに・・何も返す事が出来なくて・・それなのに、何もできなかった自分が悔しかった・・。でも・・』

『デスが・・』

『『そんな私達にも優しくしてくれるイチカが好きだから!!大好きだから!!』』

顔をあげ、お互いに目を見合う。

『『こんな感情に負けてたまるかあああぁぁあああああ!!』』

二人も黒い影を纏い、全員がイグナイトモジュールを装備していた。

「行くぞ・・さっさと倒してイチカを探すぞ!!」

『はい。』『うん』『わかった。』『デス』『お前に言われなくても・・。』

『出力は低いが、援護ぐらいはしてやる。』

 

 

 




ラウラやマドカが使うギアは本編でこの時点では失われており、イグナイトモジュールが無いのでこちらでも二人のギアには適合しないシステムとしました。イグナイトモジュールは設定集に追加しました。
正確には本編でマリアさんの位置のラウラのギアは主人公が持って行ってしまうのですが、現在は二つ存在するので彼の方だけに。
シンフォギアをご存じの方はだいたいの事をイメージできると思いますが、
原作シンフォギアとその装者の性格はあまり考慮されてないです。
ただ、どちらかというと外見や使用武器が関係してます。
胸の大小ではありません。
では次回。


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インフィニット・ソング 27

今回最終回との二話連続投稿をします。
これにてこの物語は終わりとなりますので、
皆さま最後までよろしくお願いいたします。
では最終回前、本編へどうぞ。


俺(冬二)はガングニール・ホワイト・イグナイトでデュランダルに取り込まれた千冬姉に殴りかかる。更に、後ろからも皆が援護してくれて、確実に攻撃は当たっていた。

『はぁあぁああ!!』

「おりゃあぁああ!!」

『ふん!せい!』

『デエェェス!!』

セシリアがライフルとミサイルで動きを阻害し、俺がそこに殴りこみ、蹴り飛ばす。そして、その動きに合わせて鈴が衝撃砲と鋸で攻撃してきて、それをよけようとするとシャルロットの鎌で斬られる。シャルロットの攻撃が当たって吹っ飛んだ千冬姉を見るが、相変わらず暴走したまま笑っている。

「SEは削れるんだが・・一向にダメージを受けている気がしねぇな・・。」

『おそらく、SEも一時的にしか削れていない・・。デュランダルは完全聖遺物。そのせいで普通ではありえないエネルギーを内包している。暴走している今はそっちからエネルギーを回しているのだろう・・。』

俺の疑問にマドカが答える。それを聞いたラウラの顔がしかめる。

『って事は、じり貧ではないか・・。どうしたら・・。』

『あぁ・・めんどくさい・・。あのデュランダルを引き剥がせばいいんじゃない?』

「それが出来たら‥、ん?あ、・・いけるか?・・いや、行くしかないか・・。皆、力を貸してくれないか?一つ勝機が見えたかもしれない。」

そう俺はみんなに伝える。俺の機体の特性を利用すれば‥。そのためには・・。

『まぁ、私はよろしいですわよ。・・皆さんは?』

『・・私も問題は無い。さっさとこいつを倒してイチカを探しに行きたいし・・。』

『良いからさっさとするデス!!』

「わかった。なら、更識!俺の横に来てくれ。あと後ろに全員回って来てく・・」

『アイツ何を!?』

そう鈴が叫んだからそっちを見ると、千冬姉がデュランダルのエネルギーを解放して、ものすごく長いエネルギーの剣を作り上げていた。

『皆逃げ・・「いや、これを待っていた!!皆集まれ!!早く!!」何言ってんの!?』

「いいから!!早く来い!!今しかチャンスが無い!!」

『あ~もう!!皆こいつの後ろに!!』

そう、鈴が叫び俺の後ろに皆が揃い、更識簪が俺の横に来る。そして、さっきまでは参加していなかったマドカさえも俺の肩を支えるように持つ。

「・・イチカを助けるためだ。ギアの攻撃なら私も調整や偏向できる。癪だが・・手伝ってやる。・・イチカの為だ。」

「ありがとう。・・この機体の本質!力を束ねて、繋ぐため・・その力を・・解放する。『S2CA・・ヘキサ・ドライブ』!!」

両腕のパーツをくっつけて右手にそれを展開する。その腕を簪が支える。反対の肩にはマドカが俺を押さえてくれる。

「アガートラームの本質は調律・・。俺の束ねるエネルギーを一緒に頼む・・!!」

『わかった。・・来る!!』

デュランダルのエネルギーを千冬姉は振りかぶり、俺たちに向かって振り下ろしてきた。

「いっけえええぇぇええ!!」

『このおおおおぉぉおおお!!』

そのエネルギーを取り込み、体が裂けそうな痛みを堪え、制御する。そして、そこに急に左手に感触が加わり、体の痛みが軽くなった。その瞬間俺は全てのエネルギーを束ねる事が出来た。

「『うおおおおおおぉぉぉおおお!!』」

吹き荒れるエネルギーの渦を空へと打ち上げた。

 

≪BGM 始まりの歌(バベル)≫

 

吹き荒れるエネルギーは無くなり、さっきまで荒れていた海が沈まる。そして、空から光が降りて来てその中から7人(・・)の天使の姿が舞い降りる。

『・・俺にも・・出来た・・。』

『こ・・コレは・・』

『・・きれい・・。』

『わたくしも・・。』

『神獣鏡も・・エクスドライブモードになれたのか・・・。』

『イチカが言っていた天使ってコレの事だったのデスか‥。力を束ね、空から天使が舞い降りしとき、争いは一つの終わりを告げる・・。』

それぞれのギアの色をした光り輝く羽が背中で天を打つ。エクスドライブモード、最終形態とも言える機体だ。

「・・そして、一つの大切な物を失うだろう・・。」

そう答えた俺(・)の声に皆が弾かれるようにこっちを向いた。

『・・イチカ!?』

天刃々斬のエクスドライブを装備した俺がいた。

「そうだ、俺だよ。ふっ・・冬二、よくやった。お前なら出来ると思っていた。俺では無理だった。その繋ぐ(・・)ガングニールは俺には無理だった。でも、あの時俺の話を聞いた時の答え。お前ならできると思っていたよ。」

『そうか。・・無事だったんだな。』

「いや、もう死にかけているようなもんだ。だから、さっさと決めるぞ。」

『そうだな、兄さん・・。』

手を握り、それを話した後拳をぶつけ会う。

『お、おい!アレを見ろ!!』

俺は空を見上げる。そこには・・

『‥―――。』

『☆●◇。』

意味が分からない言葉を叫ぶVTシステムを起動したISが十数機。来ていた敵ISが全てそれを起動していた。

『各機、一機はやれるな?!マドカ!お前はデュランダルのエネルギーを減らせ!対聖遺物特効のお前のエクスドライブなら削りやすい!逆にくらうなよ?』

『誰に言っているんだ!私はお前の相棒だぞ!』

『なら安心だ!俺は3機は行ってやるよ!シンフォギアに慣れてないセシリアと簪は一機ずつ!ラウラはその援護!シャルは鈴と協力して2機!冬二は・・3機は行けるだろう!?』

『へっ・・誰に言ってるんだよ!!アンタのとんでも修行に耐えた俺ならもっと行けるぜ!せらぁああ!!』

俺が指示を出すとそれぞれが動きだす。エクスドライブで脚部について大きな剣を片足ずつ振り上げそれに合わせて剣を一本大きく展開し、そのまま自分が回転しだす。

≪無恐三刃!≫

それで一人を海に落とし、更に剣を二回×印に振り蒼い剣撃のエネルギー光波を出して

≪蒼刃罰光斬≫

二人目を切り裂くとSEが切れて海に落ちる。

そして、三人目には剣を二つにして軸にするように周り、足の大剣を揃えて振りまわして体全体で回りながら炎を纏う。

≪羅刹 零ノ型≫

三人目を落として俺は止まる。その際に背中から血が滴り落ちた。

「ぐ・・はぁはぁはぁ・・。」

あまり持たないなんてもんじゃない・・だが無理してでも・・この騒ぎだけは収めるんだ。何に代えても・・俺の命さえも賭けてな・・。

冬二は言われた通りに三人落とし、シャルと鈴も二人、簪にセシリアもラウラの援護が合って一人ずつ落として集まった。マドカがエネルギーを削りながらも奮戦してくれている。

「マドカ!!こっちは落としたぞ!」

『イチカ!コレは私一人じゃキリがない。』

そう言って顔を反らしたらまたデュランダルからエネルギーの塊の刃が伸びる。

「また、あの剣が来る。一旦散開して各自の攻撃をしてみろ!しかし、近寄らずにすぐに回避に移れるようにしろ!あのエネルギーはエクスドライブでも防ぎ切れるかどうか分からん!」

【了解!!】

全員が答え俺たちは散開して攻撃する。セシリアはライフルで剣を握っている腕を撃つ。が、それはエネルギーを増幅させて楯のように扱い防がれる。鈴は小型の鋸を飛ばし更に大型の鋸を投げそれに衝撃砲を当てて加速させる。シャルがそれに合わせてワイヤーを飛ばしつつも鎌の刃を増やしてそれを振って飛ばし、織斑千冬の動きを阻害しようとするが、ワイヤーを斬り払い、鎌の刃と鋸をエネルギーで一太刀の下に消し飛ばした。

冬ニは元から遠距離武器が無く、簪はミサイルと粒子砲、更に左腕にナイフを装備してそれからエネルギー状のナイフを一斉に撃つ。俺もそれに合わせてエネルギーの剣を飛ばし更に足に大型の剣が付いていたのを使い、高速移動しながらそれで斬りかかる。

しかしそれも一振りで消し飛ばされ、俺自身にもエネルギーが近付いて来た。そこにマドカが足の鏡面と手の扇を開いた物をすべて使ったエネルギー波を撃つ。

≪暁光≫

ソレでエネルギー刃が逸らされたので高速で機体を振り避ける。もし、距離が近かったら真っ二つだっただろう。

『く、あの守りは金城・・。』

『各自で当たっても意味がない。』

『でしたら、どうするというのですか?』

「ギアにエクスドライブのエネルギーを使って鎧通すまで。」

『力をまとめて・・思いっきりぶつける。瞬間最大火力を当てる。単純明快ね。』

『ついでにその攻撃をまとめて、同時収束でぶつけるデス。』

皆で答えが決まったようだ。全員がアーマーパージをしてアームドギアにエネルギーを収束させそれを撃ちだす。

「決まったなら、行くぞ!!・・はぁ!!」

『エイ!!』

『せやぁ!!』

『はい!!』

『デス!!』

『てやぁ!!』

冬二のガングニールにはアームドギアが無いから、冬ニは全員のエネルギーを束ねるように羽を広げ、包み、収束させる。

『ぐあぁぁぁああああ!!』

それは織斑千冬に向かって飛んでいく。さっきと同じように消し飛ばそうとエネルギーの剣を振るが、こっちのエネルギーに当たり、拮抗するようにエネルギーが押し合いをする。

「・・くっ!?」

そして、お互いのエネルギーが膨張して爆発を起こした。

「・・まだなのか・・。」

先ほどのエネルギーは無くなり、剣は短くなったがまだ金色に光り、織斑千冬は暴走したままだった。しかし、体は先ほどと違いボロボロになり、SEも回復していないようだ。

『ぐぅうう・・。』

にやりと笑い、後少しだけ足りなかったと言っているようだ‥だが、忘れてもらっては困る。

「・・頼んだぞ・・冬二・・。」

そこには、残りのエネルギーを受け取った冬ニが、右手の拳を大きくさせ、そこにいた。

『・・殴ると痛い拳でも、手を取り合って分かりあえると、その手を支えられると分かった。イチカが、兄さんが教えてくれた。だから、繋ぐため、俺はこの拳を振うと誓った!!』

『ぐぅ・・ぐぅううう・・じ・・冬・・トウジ・・冬二イイィィ!!!』

織斑千冬は暴走しながらも冬二の名前を叫びながら突っ込んでくる。その剣を振り、冬二に斬りかかる。しかし、冬ニは避けず、一度拳のパーツをばらして、受け取ったエネルギーを纏わせ、もう一度構成する。全てのギアの力を受けたガングニールの拳は輝き光りを放つ。

『行けええぇぇええ!!』

『ぐうああぁぁああ!!』

冬二と千冬は拳と剣で拮抗し、お互いに一歩も引かないような状態になる。だが、千冬は更にエネルギーを引き出したのか残りを使いつくすような勢いで更に出力が上がる。見た目にも少し剣のエネルギーが大きくなって居た。そのせいで冬ニは少しずつ押され始める。

「冬二・・力を!!天刃々斬!!」

『そうですわ!イチイバル!!』

『シュルシャガナ!!』

『イガリマ!!』

『アガートラーム!!』

『神獣鏡!!』

「『『『『『はああぁぁああ!!』』』』』」

俺たちは最後の力を振り絞り、ギアの力を解放する!!

『これが、俺の!!ガングニィィィル!!』

≪【Glorious Breacak!!】≫

『ぐぅ!?ぐ・・ぐあぁぁぁああああああ!!』

デュランダルのエネルギーを超え、その拳は千冬に届いた!拳はエネルギーを纏い、千冬を海まで吹き飛ばした。

『ぐ・・はぁはぁ・・。』

冬ニは勝った。・・己の上だと思っていた、手の届かないと思っていた姉に。それも、皆が手を貸してくれたから。手を握り、繋ぎ、取り合っていたからの事に気が付けた。

『終わったのか・・。』

そう言って力を抜いた・・その時、海から勢いよく機体が上がってきた。

『●▼■☆~』

ソレはVTシステムに取り込まれた『ブリュンヒルデ』その物だった・・。

『くそっ。もうエネルギーも体力もヤバいってのに・・。』

そう言っている冬二、そして他のメンバーの顔を見る。シンフォギアの力を使ったせいで、ほぼスーツ状態だ。ラウラが唯一戦える状態と言ったものか・・。

「・・全機撤退命令だ。・・冬二、ラウラ・・他の全員を運べ・・。」

『なに!?』

『あの状態のあの女を放って置くと居のか!?』

「いや・・もう終わりだよ。だからだ・・。」

俺は小島に降りてギアもISも解除してクビに『リンカーモデルK』を打つ。

「くふっ・・。」

口の端から血が出て背中からも絶え間なく血があふれる。気にせずそこで紅い宝石を出す。

「~Croitzal ronzell gungnir zizzl~」

自身に最終決戦用機能を乗せたIS『ガングニール・ラストウィング』を纏わせる。しかし、リンカーをもってしても適合率は低く、ところどころが黒い。

「・・三つ目の・・ガングニールだと!?」

「・・分かったら行け。リンカーは長く持たない。」

「そんな・・。」

俺は空に飛び上がり、腕のパーツを合わせ撃ちだす。するとそれは槍になって、それを握り、俺は突きだす。

≪BGM【君ト云ウ 音奏デ 尽キルマデ】≫

『~♪』

その槍をかわし、振り下ろしてきた剣を柄で受けつつ、その力を利用して飛びかかる。加速をつけた俺は槍の先を回し、ドリルのようにして突く。剣で受けようとしていたVTは剣が折れ、思いっきり貫かれる。人は居ない部分を狙ったのだが、また再生する。

『~♪』

斬りかかって来たVTを蹴り、少し離れ小島に降りる。そして、左に手を伸ばしその手を赤い、爪の長い手が握る。右手も伸ばすとそこには青い手が、足には緑と黄色の手が握る。そこで、やっと冬二とラウラが皆を連れて離脱していく所が見えた。

赤い手は光りになり俺の体に入って行き俺は眼を閉じる、そして、もう一度開くとその目は輝いて、体からは赤いオーラを纏っていた。次に青い光を取り込むと、蒼いオーラも纏い足元から海は凍りだす。緑の光を取り込むことで足には風が纏われ、自由に空中を飛べるようになり、黄色の光でコインを打ち出して遠距離攻撃が出来る。

『バーニングハート・メカニクス発動、カウント残り240秒』

そして、俺は地面を蹴ると一瞬で後ろに回り込んでいた。

『~♪』

≪LAST∞METEOR≫

槍の先を高速で回して風を起こし、槍を振るとその風の竜巻がVTを吹き飛ばした。

それでもまだ向かってくるのは中の人間の精神が強いからか?

槍の無い左手を向け指をはじくとコインが発射され、剣を振りかぶっていたVTの剣に当たり、剣をはじく。

「前の世界でアンタには世話になった・・アンタは知らない話だけどな。」

振り向きざまに、槍を突き出し、更に反対の手でコインを連射する。

「道を外した俺を最後には優しく終わらせてくれた・・。そんなアンタに救われたんだ。」

剣を弾き、VTにダメージが入るが・・。

「世界が違おうと・・どうにも憎み切れなかった・・。存外俺は甘い男の様だ。」

残念だが、制限時間もエネルギーも少なく、体もこれ以上は持ちそうにない・・。

エネルギーを消して槍をつき立て、かろうじて動いているVTに向き直り、俺は・・終わらせる事にした。

「アンタを憎み切れないなら・・救うしかないよな。間違った道を・・正しい道を歩いてくれないか?コレが俺の‥織斑一夏として生きた男の・・最後の願いだ。」

そう言って頭を下げると、VTシステムに取り込まれているはずなのに、その顔の眼の部分から涙が漏れていた。

『いち・・か・・。』

何処からか声が聞こえた気がした。だが、俺は眼を瞑っている。集中するために。全てを終わらせるために・・。

「さってと、束・・聞こえる?・・・・最後にすまん。・・ありがとう、そして・・」

 

繋がった通信からは最大音量の束の声が聞こえた。

『イっくん!!それはだめぇぇええ!!』

 

『Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl

Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl~』

 

「さようなら・・。」

 

俺は絶唱を口にする。俺からフォニックゲインが解放され、それによってVTは全て消え去った。しかし、操縦者の織斑千冬は全く無傷で異常は無い。コレはISの機能だけを壊す物で、ギアを纏っている者には異常は無いし、人体にも問題は無いものだ。

 

 

「・・・ぐふっ・・ごぼぉ・・」

俺は目、口、鼻、そして、刺された背中。至る所から血を噴き出し、倒れる。

 

「・・無様だな・・。」

近くには気を取り戻した篠ノ之箒がいた。しかし、俺にはもう言葉を発するほどの気力もない。

「・・・」

静かに、目を閉じようとする。

「・・どうして私達を殺さなかった?何故私を助けた?」

「・・織斑冬ニが・・悲しむ も知れな から・・。」

「悲しむ?冬ニが?・・ふ、アイツは私達から離れていたじゃないか‥何を馬鹿な事を・・。」

「アイツ 人と手 繋ぐた に・・ごぶふぅ・・。」

もう目も開けない状態なのに言葉が出てくる。これが最後というのになんでこんな事話しているんだか‥。

「お前とも・・繋ぐだろう・・。手を取り合いたいと言っていた・・か・ら・・な・・」

「アイツがか?・・そうか。」

「・・・」

「なら、もう一度やり直してみようか・・どうだ?私はやり直せるだろうか?・・なぁ?」

「・・・」

 

 

一人になった私は、記憶の中で一番古い歌を口ずさむ。

≪BGM【Apple】≫

「姉さん、ごめん・・。」

『許さない・・絶対に・・。お前たちは私の大好きな人を奪った・・絶対に許さない・・。』

「そうだな・・きっと、私達は許されない・・罪を背負って生きて行くしか・・。」

 

『・・絶対に・・許さないから・・・。』

 

 



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インフィニット・ソング 28 最終回 

連投二話目。これにて完結となります。
ではどうぞ。


イチカ・ダインスレイフは死んだ。そう伝えた時の皆の悲しみは計り知れないものだった。

「・・俺が・・もっと強ければ‥。」

「いや、・・お前が強かろうが弱かろうが・・こうなる予定だった。アイツの中ではな‥。」

俺が月を見上げているとマドカが背後に立っていた。

「・・俺を殴ったりしないのか?」

「イチカが許していた。今さらだ。・・それに、お前も私達と一緒だ。アイツに救われた存在。ならば、お前の手を握る事はするが、突き放す気は無い。それがアイツの目的だった。」

「ソレはガングニールの・・」

「いや、ガングニールは唯のきっかけだ・・あと、言っておくがお前とラウラ私とシャル以外のギアは全て封印することが決定した。すでにイチイバルとアガートラーム、シュルシャガナは摘出されている。・・ガングニール・ホワイトは完全にお前の物だ・・責任もって管理しろ。」

「・・ん、わかった。」

そう答えたら、マドカは無言で去って行った。俺が月を見上げているままな理由に気が付いたのかもしれない。実際さっきから月なんか見えていない。丸ぽい黄色い優しい光しか見えない。

「い・・ちか・・ごめ・・ごめんな・・俺が・・ちゃんとしていれば・・仲良くしていれば・・お前がこんなとこで死ぬ事は・・無かったのに・・。」

もう駄目だ・・涙があふれて・・

「うあぁぁああああ・・・。」

俺は声を出して泣いた。たった一人の兄を・・やっと思いが通じた兄を、失った事に。その悲しみに泣く。自身の馬鹿さ加減に怒りを覚えつつも泣いた。そして、最後に聞いた歌を思い出し、俺なりに歌う。同じガングニールだからかその音は胸に浮かんでくる。

≪BGM【私ト云ウ 音響キ ソノ先ニ】≫

「~♪」

俺は立ち上がり空を見上げてアイツに届くようにと月を見上げて歌う。歌い続ける。

正直な自分の気持ちを歌い続ける。

「~♪」

拳を握り、歌にも力が入る。

「~♪」

歌い終わり俺は目をこすり立ち上がり、空に向かって、月に向かって拳を突き出す。

俺はこの先、この力で手をつないで生きて行く。そのためにも、どんな事があろうと、

「生きるのを諦めない!」

 

 

「イチカ‥もう・・どうやって・・恩が・・」

「いちか・・。」

旅館に寝かしてあるイチカの遺体に縋るようにしがみつく私(簪)とシャルロット、ソレを立って俯きながら見ている鈴。その鈴の横に支えるようにセシリアが立っている。

「イチカってホントは昔、織斑一夏でさ・・弾やアタシに勉強を教えてくれていたの・・。そんだけできるのに、いつも成績が真ん中位って言ってたから・・アイツ、ホントは物すっごく頭良かったの‥。知っていたけど、周りがいじめていたのも知っていたけど・・アイツはわざとそう見せてさ・・アタシとか皆がいじめに合わないようにしていた‥それに気が付いて、どうにかしようと思っていたけどそんときにはアイツいなくなっちゃって・・どうして・・いつも、・・いっつも間に合わないんだろうね・・ホント・・やんなっちゃうわよ・・」

「鈴さん・・。わたくしはあまり彼との関わりは有りませんでした。それでも、今の私があるのは、少しでも強くなれたのは、彼のおかげです。皆さんと一緒にいられたのも、あの人のおかげなのです。それなのに・・。」

鈴の足元にはたくさんの涙で出来たしみがあって、肩は震えている。セシリアが肩を持って無ければ、すぐに崩れ落ちそうなほど力が抜けていた。

「イチカが居なければ‥私はどうして生きて行けば・・イチカに・・君に恩を返す事が、私の生きる目標とも言えたのに・・そう父さんと誓ったのに・・。」

「私も、私の打鉄二式の事、お姉ちゃんとのこと・・恩を返してないのに・・。」

口にすると悲しくなってもう一度、彼の頬を触る。暖かくて寝ているだけじゃないかと、そう思って触ってしまう。でも、触った指に伝わる感覚は冷たく、まったく動く事の無い彼だった。それを思ってまた、涙があふれる。

シャルロットも一緒に逆の頬をやさしく擦り、起こせないかと、起きないかと思っているようだった。そして、私と同じように触った事を後悔するように涙を流し、顔を伏せた。

 

≪推奨BGM【tomorrow】off vocal bersion≫

 

こんなことになる事は分かっていた。それでも・・、

「信じたくなかった。・・どうにか変えられるって思ってた・・。」

私(オータム)はそう呟いた。私は・・私達はアイツが一番多く使っていた部屋、いや空間というか‥次元というか・・その場所、【チフォージュ・シャトー】に来ていた。イチカが一番多くいた場所だからか、そのために使う機材や、ベット、後モニターなどが置いてあるだだっ広い空間だ。

「初めアイツを[私の事はオータム様と呼べ]って言ってからかったんだ。そしたら、秋姉ちゃんとか言ってさ、・・その顔があまりにもきょとんとしていたからつい嬉しくて、キュンとしちまったりもした・・。男って好きになれなくて私の相手はスコールだけだと思ってたけどさ、アイツならいいかなとかも思った事もあった・・。いつの間にか、アイツを中心とした家族になってたり、・・マドカがアイツにべったりになった時は驚いたぜ。」

「そうね・・あんだけ初めは毛嫌いしていたマドカが、一緒に出かけて帰ってきたら腕を組んでいた時とか、本当に驚いたわ・・。」

私の言葉にスコールが答える。

「ソレは、・・イチカがどんな人間か知らなかった時の事だ。あの馬鹿のようにへらへらもして無いが、無いも言い返さない。成績は中の下で、喧嘩も強くない。そんなデータしか知らなかったからな。」

「イっくんはホント凄い子だったね・・脳さえ無事なら私でも直せるとか思ってたけどさ・・逆に体の外側の形はあっても、仲がズタズタになってたとか・・イっくんの力をなめてたよ‥束さん・・あの子だけは救いたかったのに・・何が大天災だ!何が私にかかればだ!・・・一番救いたい物が救えなくて・・・何のための頭脳なんだろう・・。」

「イチカ様・・・私は、貴方に教えてもらった事、貰った物・・大事にしていますよ?料理、掃除洗濯、そして、困っている人に手を伸ばすこと・・。」

束とクロエが空を見上げるようにしてつぶやく。途中、束の慟哭が見えたが、それについては頭の悪い私には分からない苦しみがあるんだろう・・。クロエは箱を抱えそれを抱きしめながら静かに泣いていた。

そこにとんでもない情報が入って来る。あの大量のISはデュノア社が提供した物らしい。どうせつぶれると捨て置いたのが間違いだった。この後、全力で潰して跡形も残らんようにしてやる事は決定した。

「ブッコロス。本気で、肉片もこの世に残さん。」

「私も行くわ。・・あの子を失った私の怒りは・・誰にも止められないわ。」

「もう、抵抗する力もないのに明らかなオーバーキルだな。ま、私も行くが。」

「束さんはIS委員会を通じて各国に連絡してその事伝えとくね。もし、許可しなかったらその怒りがそっちにも向かうと言っておくよ。」

「束様・・お母様、私もいたします。あと、すでにドイツとイギリス、イタリアとギリシャはこちらにあらかじめその行動をする事を見越して許可が届いております。ドイツに至ってはドイツ軍が援助や支援もすると。・・むしろさせろと言ってきておりますね。」

「あぁ。あの黒い兎さん部隊ね。イっくんが居なくなった事を聞いて、隊長から連絡が言ったんだろうね。・・明らかな年上な子もいっくんを『お兄様』って呼んでて呆れたけどさ。」

そうはなして、今後の予定は決まった。そう言った後、沈黙が流れる。

「どうにもできなかったのか?」

「・・・無理だね。最後に口にした唄は、【絶唱】。それは全てを壊せるほどの力もあれば、イっくんみたいに人体に影響を残さずISのみを破壊することもできる。でも、その力には代償が要る。まず、壊す場合はとてつもないほどのフォニックゲインが必要。それも、普通の歌を歌いながら引き出すには足りないほど。そして、さっきのどちらにも言えるのはバックブラスト、というかバックファイアというか・・装者にとんでもないダメージや負荷がかかる。普通、彼のように体中から血が噴き出す。そして、彼のように死にいたる事もあるほど。それを、使うとは思って無かった。そのダメージで体中はボロボロのズタズタ・・無事な臓器や器官も無い。当然脳も・・。」

「そうか・・それなら、アイツがそれを知っていて使ったんなら・・しかた・・ない・・よな・・」

「そうね・・イチカ‥、結局他人の為に・・力を使いはたすって・・・優しすぎたのよね・・。」

「あの方が生きるには、この時代は厳しすぎます・・。」

「でも、イチカの思いは不服だが、あの馬鹿には伝わった。・・最後に私に届いた言葉は、伝い、繋ぎ、響き、奏で、・・音となって、広がって欲しい。そう言う思いだったのだろうと思う。」

「束様、調べた結果、イチカ様は最後にリンカーモデルKと決戦兵器『バーニングハート・メカニクス』を使用しています。」

「そっか、もうほとんど動かない体をそうやって動かしてたからこんなになってたんだね・・。」

「おい、束。その決戦兵器ってなんだ?」

「私はリンカーのモデルKという物が気になるが・・。」

「うーんとね、私も軽い説明と記録でしか分からないんだけど、・・簡単に言うとモデルKはかなり体を強化するけど、その分負荷が大きすぎるリンカー。決戦兵器の方は・・使うと制限時間がきたら死ぬ‥かな。発動すると四分後に使用者の全機能を停止するってあるし・・。」

「・・どっちにしろ、助かりっこないからって、大盤振る舞い過ぎだろう・・。」

「その思い切りの良さ・・イチカらしいな・・。」

イチカには最後まで呆れさせられる‥。まったく、・・。

「ほんと、お前はとんでもない弟分だったな・・・。」

 

 

―そうか。それは光栄だな・・。―

 

 

そんな声がどこかから聞こえた気がして、つい周りを見渡す。

「ん?」

私が見た先には回収したアルケミストのコアが置いてあり、それが端末につないであった。

「・・おい、誰かアルケミストを起動したか?」

「いや・・。」

「もしかしてまた勝手に・・おい、【キャロル】・・。」

「キャロル?」

その時端末の画面に金髪の後ろ髪をお下げにした少女が映る。その後ろにはオートスコアラーの四人もそれぞれの色のついた台の上でポーズをとっている。

『何をしみったれている・・。』

「キャロル、勝手に起動するなと言っているだろうが。しみったれているとかいうな。イチカが、大事な家族が死んだのに・・。これだから機械は・・」

『まて、起動に関しては元々仕掛けてあった。マスターの・・イチカのしていた設定でオレの意思じゃない。そしてマスターの死については・・お前らは知らないんだな・・。だから俺にそれを伝えるように・・そう命令したわけか・・。なるほどな・・。』

「何!?イチカから何を聞いている!?教えろ!!」

『イチカは・・このコアと同じ物をもう一つ作っている。そして、このコアの一番の特性は何か覚えているか?』

「エクサバイトクリスタルとISのコアをかけ合わせた大容量かつ高速処理の出来る新型コア。それがどうした・・。」

『この馬鹿が‥その大容量はどのくらいか・・このヒントで分かるだろう?』

「えっと、確か・・!? クーちゃん!!さっき箱を持ってきていたよね!?」

「え?えぇ、此処に・・・。「貸して!!」は、はい・・。」

そう叫び束はその箱を開くと、エクサバイト・コアが入っていて、それを別の大画面の機器と繋いだ端末に接続する。パネルを操作し、大慌てでそのシステムを起動していく。

『最後のロックは私が開けれる方法を知っている。そうすれば・・』

「行ったよ!最後のロック、キャロちゃん!外して!!」

『・・早いな‥。まぁ、良いか。出て来い、【ダウルダブラ】。』

アルケミストから、竪琴が出てくる。それは聖遺物『ダウルダブラ』それを、出したという事は・・、

『一回弦を全て弾け。』

横になでるように手を動かすと、音が成る。

【ダウルダブラの旋律とアウフヴァッヘン波形と酷似したエネルギーを確認ロック解除・・】

そう音声が流れると、【チフォージュ・シャトー】の内部が起動し始める。歯車が動きだし、上部から赤、蒼、黄、緑、の幕が降りて来てそれぞれに錬金術の術式が書かれる。

光りだした術式は宙に浮いた。その光を術式の形として形成し、中心部のパイプオルガンの様な場所へと流れて行く。

そして・・術式を読み込んだその装置は一か所、小窓を開けた。そこには何かを置くように台座がおかれている。

『最後だ・・ロックではなくデータ認証のために・・あの台座にエクサバイト・コアを置け。そうすればこの術式の最後の手筈が整う。』

そう言われてクロエはすぐにコアをその台座に置いた。小窓は閉まり、また歯車の動く盛大な音が鳴り響く。それぞれの幕の下の台座が光り・・

「あらまぁ、ガリィちゃん。復活してしまいましたぁ。」

「この演出は派手に登場だな!私にふさわしい!」

「優雅に私登場。まさに雅ですわね・・。」

「じゃじゃーん!ミカも居るんだゾ!!」

それぞれの台にオートスコアラーが現れる。そして・・最後に歯車の音が止まったと思うと中心のドアが開く。

「・・ふむ・・記憶の転写も間違いないようだ。問題なく複製もできている。・・拒絶反応もないと来たか・・つくづくうまくいったようだ。」

小さな少年がそのドアから出て来た。

その場にいた人間は全員言葉を失う。それに気がついた少年は昔のような表情で笑った。

「何を呆けている。俺がここに居るのが、そんなに滑稽か?あんだけ言って置いてこのような手段を残して居たんだ。とんだ道化とでも思ってくれて構わ・・むぐあ!?」

「イチカああああああぁぁぁぁぁあああ!!」

マドカに飛び付かれそこまで無い胸に押しつけられた。

「いっくーーん!!」

反対からは豊満な束の胸に潰される。

「「イチカ!」」

スコールとオータムにも抱きしめられて、

「帰ってきてくださると信じて居りました。」

そう言って手を握るクロエに精いっぱい身長を伸ばして頭をなでる。

そして騒ぎを聞いていたキャロルとオートスコアラーは、

『やれやれ、我がマスターはとんだ男だな。こんなに女を泣かせるとは。』

「しょうがないんじゃありません?マスターはガリィちゃん達のマスターですよぅ?」

「そんなマスターが好きだから一緒に居るんだゾ。」

「アレは地味に苦しいだろうな。」

「私も混ざって来ましょうか、あの少年のような体ならまだ無垢でしょうし。」

『・・お前等も変わらんようでなによりだ。これからもよろしくな。』

「どうせ、マスターが居る限り、私達は貴女のコアに入っていますけどね。」

『・・ふん。』

締めたつもりがガリィによって茶々を入れられた。少し赤く成りながらもまんざらでもないキャロルだった。

 

 

「という事で、少年の体になったイチカ・ダインスレイフだ。名前はそのままだが少々変わっていてな、血液型なども前と違うので、データを取り直す事になった。まぁ、よろしくな。」

教室で挨拶すると全員が固まった。

そして、一番にそれに反応したのが・・

「ショタっこイチカ様!?すんばらしいですわ!!≪||||≫のメンバーとして貴方の周りには敵の指一本触れさせません!!ですから、私に直筆のサインとツーショットを!!」

此処に来て坂上だった。

「ま、まぁ・・構わんが・・。ほら、俺のイメージ記念キーホルダー『歯車型』に『楯型』、サインしてあるからどちらもやるよ。写真は‥休憩にな。」

「すばらしいいいいですわああぁぁぁぁああ!!」

「「「「「ずるいいいいい!!」」」」」

教室がとてつもない喧噪で騒がれる事に。ソレを見た担任の長谷川先生は・・

「ショタっこ萌えに目覚めそうよ。どうしてくれるのダインスレイフ君?責任取ってくれる?」

「面倒見切れるか!!」

そう言って俺は席に座ると急にマドカが席を立つ。

『ガタッ』

「ど、どうしました?マドカ・ダインスレイフさん?」

「血液が変わったという事は・・兄弟の関係・・近親では無くなった・・そう言う事か。」

「・・あ。」

教室はマドカが兄妹で無くなった事にショックを受けると思い、慰めの言葉を用意した。だが・・マドカはソレを思いっきり裏切った。

「近親相姦の問題もない!!完全にイチカを襲えるぞ!!」

「何ぶっ放してんだあほがああ!!」

叫ぶと同時に教室のドアが開く。

「ショタっこイチカと聞いて!凰鈴音参上!!」

「同じくセシリア・オルコット、馳せ参じましたわ!」

「イチカが帰って来たと聞いて居ても立っても居られない織斑冬二、登場!!」

「マドカに対抗して妹の座は私の物だ!ラウラ・ボーデヴィッヒ参戦する!!」

「イチカは私の物にする!カッコいいより可愛いイチカ、推奨派。更識簪、婚約者に立候補します!!」

「イチカは誰にも渡さないデース!絶対に、私を貰ってもらうため、暁シャルロットも絶対参戦するデス!!」

各々が叫び教室に乱入するは、席の上に立つは・・もう無茶苦茶になった。

「おまえら・・いい加減にしろーー!!!」

 

今日もIS学園は平和の様です。

 

診察してもらった医者から話を聞いた。どうやらあの騒ぎはデュノア社の壊滅で終わるだけではなく、あいつが一度死んで帰って来るという予想外の事が起きたという報告だった。

ソレを聞いた時、先ず頭に浮かんだ事が有った。自分が死にかけでもデュノアの女狐によって、私の機体にも仕掛けられていたVTに飲み込まれた私を、文字通り命懸けで助けてくれたアイツに対しての言葉・・。

「・・謝ろう。そして・・もう一度・・やりなおそう・・。」

窓から見える景色は青空が見えて時折、いい風によってカーテンが揺れる。

体中に包帯を巻いた女性は病室のベットの上で上体だけ起こして、手紙を書いた。

その書きだしには・・

『感謝すべき・・弟へ。』

そう書いてあった。

「もう・・夏だな・・。暑い・・。」

カーテンが揺れた拍子に見えたその表情はほのかに笑顔だった・・。

鍛えるんだ・・間違った過去を進んで来たなら・・未来を変えるために・・。

「くっ・・はぁ、・・ふん・・・はぁ・・。」

間違った力じゃなくて・・彼の横に再び並んで、共に歩む未来を夢見て。

その日の為に心を正す。一から鍛え直す。

「はぁはぁ・・しかし・・生き返るとはな・・本当にふざけた奴だ・・。」

あの男がまた生き返ったと聞いた時は驚いた。しかも体が縮んで少年の姿というからなおさらだ。どこの少年探偵だと言いたい。だが、それよりもやるべき事をする。

重りのついた木刀を監視の元、鍛えるために許可が降りた。

「はぁ・・くっ・・こんなになまっていたのか・・私は・・。弱いと言われるはずだな。」

正しき剣に、正しき精神は宿る。ソレを忘れた私は唯の愚か者・・愚者と罵られても仕方ない。・・だからこそ、過去を変えられないから未来を変える。

その為に・・いま、できる事をする。

刑期を終えて、外に出たらまず、あの男に謝ろう。

そして、彼に告白しよう。絶対に・・断られても・・悔いは残らないように。

だから・・待っていてくれ。

≪ED用BGM【虹色のフリューゲル】≫

 

そして、IS学園アリーナにて・・

「今日こそ、俺が勝って見せる!というかその状態の兄さんには負けらんないぜ!」

「こんな姿だろうと・・俺は《俺の勝ち》を守って見せる。さぁ、御託はいいから・・かかって来い!」

「あぁ、行くぜ!!『Balwisyall Nescell gungnir tron~♪』」

「こちらも相応で相手してやろう!『defendend. guardend. protectend AIGIS tron ~♪』」

お互いにギアを装備して、アリーナ中央でぶつかり合う。

 

「「俺の・・いや、俺達の身体も、魂も、シンフォギアだ!!」」

 

   ~FIN~

 




これにて完結となりました。
一応あとがきを書いていますので裏話等に興味が有ればそちらもどうぞ。
では、一応ここでも挨拶を書かせていただきます。

皆さま本当にありがとうございました。


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あとがき

どうも、作者の金宮 来人です。

このたび、《インフィニット・ソング~繋がる無限の歌~》を最後まで読んでいただきありがとうございました。

無事に最後まで投稿できました事、とてもうれしく思います。

これも皆様の感想や評価、応援などが有ったためでございます。

この場を持って皆さまに感謝申し上げたいと思います。

 

誠に感謝をしております。皆さま、どうもありがとうございました。

 

さて、これからは作者の製作に関する話なので興味の無い方は戻られても問題ありませんし、作者としても問題は無いと思います。

 

インフィニットストラトスと戦姫絶唱シンフォギアを合わせるきっかけになったのは、主人公の武器の少なさと色が始まりでした。

武器がなく、あるのは拳のみで白い色に金色が有るシンフォギアの主人公『響』と、持つ武器は絶対の切れ味はあるがほぼ使いづらい能力の剣しかない機体で、白い色に青や金色のパーツのあるインフィニットストラトス主人公『一夏』。

どちらも一般で関わるはずの無かった環境に無理やり押し込められてから、成長をして仲間を増やすという共通点。それらを考えて書き始めたのがきっかけでした。

そして一番の共通点は、どちらの主人公もやはり王道ではありますが『守る』という事を目的とした主人公であり、自身が傷付く事をいとわない行動をする無鉄砲さなどを考えるとやはり話的にも合わせられると初めは考えてました。そして企画を考えた時点から『一夏をそのままではなく、性格を変えて強くしてみたらどうか。』『代わりに主人公を置けば問題ないんじゃないか』『あえて転生者にして白式はそいつに持たせて、曲がった性格にしてみたらどうだろう?』という考えの元プロットを書き始め完成した際には、元の織斑一夏の形はまったくない様な状態になってしまっていました。

『あれ?どうしてこうなった?』

と思いながらも『このまま一夏を反対な性格にしてみよう。』と考えてその際に一番初めのプロローグの時点で世界中から追われている状態にしてみてそれから始まりをつくる事にしました。

ここからは設定上の裏話になりますが、前世の織斑一夏の行動は戦争でISが多用され大勢が死んでいった事が有り、ソレを良しとしない為に自身の機体を使って世界中の戦争に介入しISを使っての戦争を止めようとした結果、世界中から追われるテロリスト扱いされたという事になっています。書かなかった理由は、そこまで書くとこの世界で戦いに普通にIS使用しまくってるじゃんか。という事が考えられたからです。あくまでコレは初期の裏設定であり、結局はソレを消す事にしました。それでプロローグが完成しました。

それからは指が進むように考えたシナリオを只打ち込むだけでしたが、いつしか四組の最初の敵『坂上』が何故か、本当に何故か暴走し始めて最終的には学園や一般のファンのリーダー的存在にまで上がっていたのです。コレは作者のプロットには存在していませんし、何故かこうなって行ったのです。元々暴走するのはマドカとラウラのはずだったのですが・・。時には簪も暴走させようと思ってましたが坂上が全て奪って行ったようなものでした。コレは本当に作者もびっくりしました。

 

そして、最終回とその前の話にも裏が有りまして・・コレはごくごく最近書き変えた新たな終わりで、元々の終わりとまったく別の形に書き直してあります。

初めは最終話前にデュランダル暴走の千冬を倒した後にVTが複数登場する予定でした。

さらに、最終話は普通に死んだあと人が一人分入る情報容量が有るエクサバイト・コアの中にデータ体としての存在を残すという形の終わりでした。コレは作者の好きなゲーム『I/O アイオー』というゲームの中で出て来たキャラクターの事が頭にあったからです。コレで何かなければ無限に生きて居られる。そう言う考えで書いていたのですが、その後の作品で書いたのが前作『インフィニット・エクシリア』でした。そこでまた同じような終わりにしてしまっていたので、読み直して腑に落ちない終わりと思っていました。

しかし、コレが最近になりシンフォギアのアプリで『神獣鏡』のエクスドライブモードが出てコレにヒントを得た私は早速書き換えを考えました。しかし、なかなかどう言う風に描くか決まらずにいたら、シンフォギアAXZの方で過去は変えられなくても未来は変えられる。俺達は今を生きている。というセリフを聞き、感銘を受けるとともにコレが私の考える最高の終わりだという物が降りて来ました。風呂に入っていた私は早速風呂から上がり忘れないうちに編集作業に入り予定していた終わりを変更。

これにより、千冬はデュランダルとともに消滅するはずだったのが生存、更に箒も改心して鍛えて弱い自分を変えて過去の自分が見て居た夢ではなく、未来を見て歩み出す。というエンディングを迎える事になったのです。アプリのシナリオと本編が無かったら変わる事のない微妙な終わりでしたが、変更した終わりのこれには作者としての私は大満足で「納得の終わりが出来た。」と言える物になりました。

 

長くなりましたがこのような事が有りましたが全てを書き終わる事が出来て、とても楽しかったのも、皆さまの感想を読んで嬉しかったのも、評価を見てまだまだ甘い所が有るなと思ったのも、すべて事実です。

しかし、これからも自分のこの頭に浮かぶ妄想を文字にして書いて行きたいと思っていますので、もしも、読んで下さる方が居れば続けて行きたいと思っています。

しかし、・・次の作品として書いていた物が『仮面ライダーエグゼイド』のライダーが出る物で、終わってしまったからちょっと執筆に勢いが無くなってしまって今スランプ中です。

八割方が出来て入るのですが・・どうもプロット通りにいかなくて終わりが見えない暗闇状態です。下手をすると他の作品に浮気をしてそっちが書き上がってしまうんじゃないかという心配すらあります。ですが、頑張って書きあげる気持ちはありますので次回作を読むとおっしゃって下さる方はもう少しお待ちください。

 

後最後になりますが、プロローグ時にあるように、コレは神様転生。他の世界に飛ばす事を考えています。その際は長編ではなく短編集みたいな形になる可能性が有ります。

決まり切っていないので、まだプロット作成中です。

 

もしもまた次をあげた時はよろしくお願いいたします。

この作品を応援して下さった皆様、本当にありがとうございました。

では、またいつか。

 

 



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戦姫絶唱シンフォギア・エクスドライブアンリミテッド編
異世界旅行記 ~シンフォギアXD編00


今年もあとわずかとなりました。
新規投稿をこんな時期に始めるのもなんですが、今年の事は今年のうちに。
書いたなら上げる事を決意しました。
今年はとても多くの方や皆様にお世話になりました。
この場にてお礼申し上げます。ありがとうございます。

では、今回からアプリ『戦姫絶唱シンフォギア・エクスドライブアンリミテッド』の世界に入り込ませたいと思います。
では、本編へ。


ある日、暇な休日だからと外にでて歩いていると何かしらの音が聞こえる気がした。

その方向に歩いて行くと変哲もない路地だったが、違和感を感じた。いやな気配を感じた俺は体をひねろうとしたが急に光りに包まれた。

「な、何だコレは!?」

そう言っているうちに光りは増して、目の前が白くなったと思ったら・・

『ガヤガヤ・・』

知らない町に立っていた。

「・・ここは、何処だ?」

俺に気がついてないのか、はたまた俺は別に気にされない様な格好なのか。

「いや、この真夏のような季節にロングコートで大きな帽子をかぶった俺は明らかに異様である。なら、気にして居ないのではなく気が付かれて居ないという事か。

「よくわからんが・・先ずは・・」

『ウーウゥー!!・・』

「何の音だ!?」

「の、ノイズが発生したんだ!!逃げろ!!」

「ノイズ・・俺はアルカノイズなどは撒いていないが・・」

そう言っていると通路の奥から走って来るように確かにノイズと呼ばれる物らしき存在が集団でこちらに向かってくる。

「・・良くは分からんが・・相手になるか。」

ロングコートを脱いで『ジャラリ』とギアを取り出す。

「今回は・・手始めだからな。『Croitzal ronzell gungnir zizzl~♪』」

ISではなく直にガングニール・ラストウィングを纏い、両腕を合わせて造り出した槍を構える。

「さて、先ずは・・肩慣らしと行こうじゃないか!!」

走り出し、俺がギアを纏った瞬間に色の変わったノイズに槍の先を突き刺す。

「てんで弱すぎる!!そぉら!そらそらぁ!!」

横薙ぎ、連続突き、石突で撃ちあげて蹴りと共に踏みつぶし圧殺する。

「こ、これは!?」

そこに俺と同じようにギアを纏った女が来た。蒼いソレは【アメノハバキリ】か。

「そこの貴様!!なぜシンフォギアを・・」

「御託は後だ!!先ずは人命優先しろ猪武者!!」

「っく!?分かった!!」

女は蒼ノ一閃を使い、俺は槍と回転させたまま集団に突っ込む。中から突き上げて吹き飛ばし、残りが一体になったのを見て槍を投げた。突き刺さったノイズは崩れ去り、そこには俺と女だけになった。

「さて、話してもらおう。何故、シンフォギアを・・ましてや奏と一緒のガングニールを装備しているのか・・?しかも男が!」

「あぁ・・俺はイチカ。・・イチカ・ダインスレイフ。呪われた名前の装者にて、錬金術師。歩いていた所を急に光りに包まれたと思ったら此処にいたんだ。そして、ノイズに襲われたから俺は戦った。お前は?」

「私は風鳴翼。ノイズに対しては昔、もう一人の相方がいたが・・戦いによって命を失って以来、一人で戦い続けて来た。防人の剣なるこの身で人を守るために。」

「そう・・か。先ほど言った奏という者だな。そして、アメノハバキリの元の持ち主はお前さんのようだな。」

思い出した。古い記憶だったが、シンフォギアの知識の中にいたはずだ。

「元の持ち主・・とは?今もこの身に纏っているが・・。」

「俺には・・ほら・・。」

『ジャラリ』

「他のギアもある。今の所、六種類装備可能だ。」

「そ・・そんな・・では、適合手術は?」

「俺は体自体をつくられた存在でね、簡単に言えば・・『神さまに造られた人型の器』だな。一応、合わないギアもあるし、そこら辺はお前さんの上司・・が居るのかは知らんがそこら辺と話そうかと思うが?」

「最後に聞いておく、何処から来た。」

「他の世界・・異世界から・・だろうな。」

 

~移動

なるほど、このようになっているのか。

俺は錬金術の術式で音と風の流れから大体の構造を把握する。大きなシャフトとなっているこの形状には、違和感を持たざるを得ないが・・。

「珍しいのか?」

「あぁ、・・聞き忘れていたが年は?まだ若く見える。」

「まだ学生の身だ。若いせいで不甲斐なく思われるが・・。」

「そうか。俺は・・若輩者でな35歳だ。」

「はぁ!?15の間違いでは!?」

「一度は普通に15の見ためだったのだが、ある事件で五歳児の見た目に戻ってな、アレから二十年。長かったが、やっと見た目が年を取ったんだ。最初の五年は変わらずにいたので焦ったものだ。」

「は、はぁ・・では、本当に?」

「あぁ、35歳だ。(面倒な転生の話は置いておこう)そういえば、俺はどう言う扱いになるんだ?」

「ソレは何とも・・。我等の組織も一枚岩ではない所が有りますので・・。」

「面倒な話だな。まぁ、俺の邪魔をするなら・・叩き潰す。」

睨むと一歩下がりながらも、覚悟を決めた様に前傾姿勢で口を開いてきた。

「邪魔・・と言うと?」

「決まっている、ただ単に帰りたいだけだ。」

「帰りたい?それだけなのか?それだけの力を持っているのに?!」

「アッチじゃノイズは存在しない。俺はただ自分の能力を生かす為にシンフォギアシステムを開発したにすぎん。それに、俺の本分は錬金術だ。更に言うと家族がいる。十分すぎる理由だと思わないか?」

「そ・・ソレはそうだが・・。」

「それより・・着いたようだ。」

ドアが開き、そこには黒い服を着たグラサンの男が二人とスーツ姿の青年らしき男が一人。計三人がいた。そのうち二人は銃を構えて俺を見ている。

「・・コレが歓迎か?」

「貴方がどう言う存在か分からない以上、こうしなければならないのは義務です。」

そう言った男に俺はシールドを出して見せる。

「『ヘルメス・トリス・メギストス・・』コレで俺にその銃は効かんが?」

「・・侮っていましたね・・。目的は?」

「話すだけだと言っている。面倒な奴らだなぁ・・。俺も何やら巻き込まれた様で急にこの場所に送り込まれてきたからよく知らんのだよ。・・ったく。それなのにどいつもこいつも喧嘩腰で、買ってやろうか?施設一つぐらいは吹き飛ばせるぞ、あぁ?」

「待ってください!・・話していたうえでこの方は安全です。銃を下ろして、話し合いましょう。この方は帰り方が分からなくて困っているだけらしいのです。」

「帰り方とは・・?」

「異世界から来たと・・言っています。」

「異世界・・?」

その場で話はやめて移動した。歩く際に俺は自身の三重のシールドを三方向にずらし前左右を固める。

「で、俺が話すべき相手は誰だ?さっきの青年じゃねえだろうな?」

「この施設の責任者は俺だ。」

赤いシャツと髪、髭と顔の濃い男が前に出て来た。

「名前は風鳴弦十郎。基地司令をしている。」

「イチカ・ダインスレイフだ。家族はいるが、全員血縁関係は無い。錬金術師で、シンフォギアも扱える。IS・・『インフィニット・ストラトス』と言うパワードスーツみたいな物が有る世界から来た。歩いていたら急に体が光って、気が付いたらこの世界にいた。一応、この世界の知識は・・神に造られた時に頭の中に書き込まれているから一応は知っている。多少、古いので思い出すのに苦労するがな。さっき言った世界で、シンフォギアをISに合わせて開発する作業をしていたので改造等は得意だ。・・これ位で良いか?」

「色々と言いたい事はあるが・・先ずは敵対する意志は無いんだな?」

「ない。帰る方法さえ分かればおとなしくしてるつもりだ。手伝えというなら手伝う位はする。代わりに衣食住を寄こしてくれるならな。それじゃない限りはどこかで雑魚寝でもする。死にやすい体だが、死ねば元の世界に戻れる可能性もある。そちらに一応の体を用意している。小さいけどな。また五歳児の体になるのは煩わしいが、背に腹は代えられん。」

「まてまて、早まるな。とりあえずは何故ここに来たかを探り、原因を解決する方がいいと思う。事は穏便に済ました方がいい。」

「いきなり銃を向けられたのに、穏便とはよく言う。」

「ソレはこちらの不備によるものだ。正式に謝罪しよう。申し訳ない。」

「ふぅむ、話が分かる男で良いな。どれ・・この筋肉の付きようなら相当鍛えているようだな。話が分かり、強い男で礼儀正しい。そう言う相手は物分かりがいいと相場が決まっている。よし、腹を割って話して見よう。謝罪は全面的に受ける。」

「重ね重ねありがたい。所で、なかなか貫禄が有るのは何故ですかな?どう見ても見た目は少年なのですが、下手をすると此処にいる小川よりも年上に感じる。」

「これでも35歳なのでな。死ぬ目に合ってなぁ・・錬金術師と言う事で体を一度造り変えたのだ。死ねば用意していた体に記憶を転写してまた活動できるという事だ。15の時に一度死んで5歳児の体になったのでこのような貧相な見た目だ。不甲斐ないものだよ。」

「いえいえ、それは・・何と言うか・・私どもの理解できる範囲を超えてますな。」

「まぁ、そこらはどうでも良いさ。手を組むか組まないか。それが先ずは話す事だよ。」

「それもそうです。では、こちらへ・・。応接室で少し詳しい事を話しましょう。」

 

「光りに巻き込まれて・・ですか。」

顎に手を当てて考える様に風鳴司令が首をひねる。

「あぁ、歩いていたら急にな。そのような現象の原因となりうる存在に心当たりは?」

「我々の知る限りでは・・。しかし、現れた直後にノイズが出現したというならもしかしたらノイズの関係なのかもしれませんな。そちらも装者と言うことなら、それによって呼ばれたと。そもそも装者とはノイズを倒す者たちですから。」

首を振るが、思いついた様に人差し指を立てて俺の首のギアを指す。

「ふぅむ・・それが事実なら、確かに有りうるな。こちらの世界ではノイズが居ないから考えていなかったが、そもそもの原因がノイズなら確かに製作者で普通の装者である俺が呼ばれたのは分かるな。他の装者はISに組み込んでいるから、装者と言いたりえない。」

「なるほど・・その身に纏う装者が貴方一人なら、それもありうる・・と。」

納得するように腕を組んで頷く。

「事実はどうあれ、俺がここに呼ばれたなら何かしらの意味が有ると見た。それがノイズにあるなら確かに、手を貸す事は俺の換える為の早道となるだろうからな。」

「それじゃぁ、一時的な協力者と言う事で。」

「あぁ、よろしく頼む。」

共に握手をするが周りからは下手をすると親子に見えたらしい。

ここまで暑苦しい父親なぞ要らんわ。

 




はい、みんな大好き『やさグレビッキー』の世界でございます。
なんでこのシナリオかって?
作者が大好きだからに決まってるじゃないですか。
因みに、作者・・ガラケーなのでやってません。
スマホじゃないのでできません。
友人のクリスちゃん狂いに教えてもらって書いています。
『クリスちゃんのピックアップの為なら給料の半分以上課金する!!』
「ひ、控えろガーチャー!礼呪を持って・・」
『できぬぅ!!』「ぬはぁぁ!?」
そんな寸劇の後、自分で引けない彼は、
『頼む、後生だ。クリスちゃんを・・引いてくれぇ・・(ネットリ』
「わ、分かったからそう拝むなよ・・あ、一発で引けたわ。」
『貴方が神か!?貴方こそ神か!?素晴らしい!!』
こんなやり取りが有りましたので、この話をつくる際に、彼には十分に協力してもらっております。(にっこり。

今年最後がこんな文章なんのもどうかと思いますが、皆さま本当にありがとうございました。来年も、よろしくお願いいたします。

追伸 ピックアップガチャで困るたびに持って来ては、自分が引くとレアばかり出ます。自分のゲームでは全くレア引きはできません。・・これって、やっぱり所謂、物欲センサーってやつですかね?


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異世界旅行記 ~シンフォギアXD編01

あけましておめでとうございます。
皆さま、今年もよろしくお願い申し上げます。

新年一発目の一言は、
「あ、もう五分過ぎてる・・」

カウントダウンもせずにゆっくりとゲームをしているうちに新年を迎えて居ました。因みに家族に言うと、「あ、ホントだ。あけましておめでと」と家族も全く気がついてない新年でした。

そして次の日、
「気分悪い・・」
正月早々熱を出してダウン。新年早々に上げようと思っていた分も書けずにお手洗いと布団を行ったり来たり。雑煮や餅を食べているのを横目におかゆ生活・・。
嘔吐と発熱でしんどい思いをしました。
私厄年じゃないのに・・。

と言う事で復活して書き終わりましたので、上げようと思います。
本年もよろしくお願いしますね。


そして、またも出現したノイズを錬金術と片手間に作ったノイズ対抗の音響弾を撃って、片付けていると、急に変身した様な反応が出て、二人の人が現れた。

「この反応・・アガートラーム!?それにイチイバル!?」

銀色の装甲をつけた女性と赤い装備をつけた少女だった。

そして、二人が周りのノイズを片付けてこちらに来た。

「そこに居るのは、風鳴翼だな?加勢してやるよ。」

「私達も装者だから・・て、まだ男性が残っているじゃない!?早く逃げて・・そうか、その人を守って・・。」

何故か勝手に俺は逃げ遅れて民間人にされているようだ。

「・・ちょっと待て、お前・・その格好は・・」

赤い装備の少女が俺を見て何かに気がついたようだ。

「キャロルと一緒の服装、お前錬金術師か!?」

そう言って俺に向かって銃を構える。

「待て!その人は我々の味方だ!貴様らこそ何者だ!?」

そう言って風鳴が俺の前に立つ。というか、何故こうも初対面に銃を向けられなければならないのかと思う。・・

「そう言えばそうか。平行世界だもんな。別人が居ておかしくないか。アタシは平行世界から完全聖遺物『ギャラルホルン』の力を使い、こっちに来た雪音クリスって言うんだ。」

「私はマリア・カデンツァナ・イブ。平行世界の・・」

そう言っているうちに通信が入る。

『例の介護施設の近くに新たなノイズが出現した!逃げ遅れた人がまだ居るぞ!』

そう聞いた途端に俺は走りだす。別段他人が死のうが構わないとして来たが、守る対象になっている作戦なら話は別だ。

「守るのは俺の役目。」

俺は走りながら口を開き「・・『defendend. guardend. protectend AIGIS tron~』」

聖詠を口にした。そして紺色に輝く鎧とマント、複数の楯を身にまとい走る。

「護るべきが我が使命!!」

飛びこんで今にも介護士と介護老人に当たりそうになっているノイズの間に潜り込み、楯で壁をつくる。そして、緑の楯を装備するとそこから剣を取り出し、それでノイズを切りはらって行く。そこに反対から・・

『ドガン!バシン!!』

と音がしてノイズを殴り飛ばし、貫く拳が見えた。

「・・・。」

白いギアの装甲と黄色と金色の関節部。それは、俺が弟で会った奴に渡したのと同じ『ガングニール』の拳だった。

「・・とりあえず、援護は感謝する。」

「・・・・。」

そう言うが、冷めた目で見るだけで何も話さない少女。

マフラーで口元を隠して居るそいつは『何もかも、全てに絶望した目』だった。そのまま近くに先ほどの雪音が声をかけるが無視をされた。どうやら知っている人物とは、平行世界で性格が大きく違うらしく、それについて三人で話している。

「・・もしも、助けが欲しけりゃ呼べ。俺は、別の世界の人間だ。お前さんがどうであろうと知った事じゃないが、助けてほしけりゃ守るのが俺の役目だ。その身だけじゃなく、魂や心が痛いなら・・耐えきれなくなれば呼べ。助けてやるよ。」

「・・・?・・・ん。」

離れていた俺の横を去っていく背中に声をかけると、振り向いて不思議そうにこちらを見た。マフラーで顔は見えづらいが、値踏みをする様な視線を感じるので、信じていいのか考えているようだ。

「俺はこんななりでも大人だからな。子供が苦しんでいるなら、助けてやるくらいはするさ。特に、そのガングニールを使っているなら、俺の弟と同じように心が曲がってても、苦しいと手を伸ばしたならその手を繋いでやるよ。」

そう言って笑って手を伸ばして見せる。

「・・何かあればまた・・。」

目線を反らしてそう言ってから、駆けて去って行った。どうやら、少しは信用されたらしい。でも、アレは怯えた目だ。また信じても裏切られると思っているのだろう。信じ切れないからまたと言って逃げた。なら・・

「信じ切れるに値するように動くしか、ねえよな。」

行動は決まった。俺はアイツを守る事も自身の心に誓い、伸ばしていた拳を握った。

 

「はぁ!?男の装者で、オリジナルのギアを作った!?」

「信じられないわね。そんなことが可能なのかしら?」

二人と話して分かった事は、平行世界のシンフォギアのある世界から来た事。そして、その方法は、完全聖遺物『ギャラルホルン』と言う物が有り、それによってこの世界に来た事。それからおそらく俺もその『ギャラルホルン』に呼ばれたという事。

それから、二人が一緒に行動をするようになる事だった。

更に話を聞くと、『カルマノイズ』と言う特殊個体が居て、それによって『ギャラルホルン』が発動しているらしい。ソレを倒す為にいくつかの平行世界に行ったと言っていた。その特殊個体は総じて強く、厄介な能力を持っていたりする場合もあるとか。

「ふぅむ・・面倒なものだ。」

そう言って頭を抱える。

「それであなたは?男性の装者など聞いた事が無いんだけど?」

「それは確かに。俺の名はイチカ・ダインスレイフ。IS・・インフィニットストラトスと言うパワードスーツが有る全くの異世界で一度死んだ。その時に神とか名乗る存在に拾われたらしくてな、シンフォギアの知識を植え付けられて、体を作り変えられたんだ。その後、生まれ変わった俺は十歳の頃に家族に捨てられて、今の名前を名乗りシンフォギアをさっき言ったISの装備として作り上げた。聖遺物同士の干渉を考えて完全聖遺物の『ネフシュタイン』と『デュランダル』から【壊れない】と言う概念を抜き出して組み上げ、概念武装を込めて新たなギア、『アイギス』を作り上げた。さっきの装備がそれだ。コレは俺自身の守るという思いを具現化して固定、楯の形に定着させてそこにさっきの【壊れない】と言う概念を組み込んで、楯と鎧としての装備に作り上げたものだ。そして、おそらくさっきの反応からそちらも錬金術について知っているのだと思うが、俺はさっき言った神の知識から一応大まかなシンフォギアの知識はある。錬金術師であった『キャロル・マールス・ディーンハイム』や、オートスコアラーについても知っている。」

「・・訳分からないんだが・・要するにお前が天才で、ギアをつくる事もできる、錬金術師って事で良いのか?」

「その上、装者でありながらも科学者でもある。独自のシンフォギアをつくるとは驚きね。」

「そうでもないな。そこはそちらの世界の知識が有ったからこそだ。能力的にはキャロルと変わらん。こちらにもキャロルが居るしオートスコアラーも居るが、俺の作った存在なので別段問題ではない。大きな騒ぎも終わり、余生を過ごしていた所でここに呼ばれた。」

「余生って・・あなた若くして、お爺さんみたいじゃない?」

「あの馬鹿の元気を分けてやりてーぐらいだ。」

そう言われ、歳を言うのを忘れていた事に気がつく。どうやら相手は俺の事を年下だと思って話している気がする。まぁ、面倒な騒ぎは起こさないようにしておくか。

「そっちの雪音君・・と言ったか?言葉遣いがなって無いんじゃないのか?」

「あぁ?同い年か年下ぐらいには、十分だろ。」

「いささか口が悪いのは確かに気になる所だけど、注意をするほどかしら?」

二人がそう言う風に反応していると、俺の正体を知っているこっちの人達は少し困った顔をする。特に尾川さんと言ったか?何やら凄く微妙な顔になっているが・・。

「その・・イチカくんは35才なんだが・・。」

「「はぁ!?」」

腕を組んで頷く風鳴に藤鷹。お前等・・。

「ちょ、冗談だろ!?」

「その若さで35はありえないわよ!?15の間違いじゃないの?!」

慌てて顔を覗き込む二人。失礼・・とは言わんが、流石に近すぎやしないか?

「15の時に一度体が死んで、5歳の体からやり直したのだ。キャロルが居たなら理解できるんじゃないか?」

「「あ・・・。」」

二人とも目を点にしている。

「それよりも、ノイズについてもっと話そう。俺の居た世界にはいなかった存在だ。アルカノイズは試験用に作った事はあるが、どうにも仕様が違うからな。後は、カルマノイズの存在だな。大きく違いが有るらしいのでそこらへんも詳しく話して行こう。」

とりあえず話をまとめて、この場を切り変えて行った。

 

 




とりあえず、先ずは本編に沿って動きますが、途中から独自の流れになる予定です。やさぐれビッキー可愛い。恋愛対象になるならあんな性格の人が良いな。そばにいてあげて一人じゃないって言いたい。

ソレはそうと仮面ライダーの新しいベルトのコマーシャル見て、味噌汁噴きそうになりました。
あまりに癖が凄いベルトですねwww
何と言う強力な若本www
フルボトルを挟んだ場合に『つぶれなーい!」に更に笑いました。
正直ライダー関係無しに欲しいかもww

ではまた次回。


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異世界旅行記 ~シンフォギアXD編02

はい、みなさん。お久しぶりーね~、と言うことで私です。
なかなかこのストーリーは難産です。元の話をスマホを持ってない私がよく知らずに改変して書こうと思ったのが間違い?
だが、シンフォギアは愛だから間違っていないはず!!
そんなこんなで本編へどうぞ。


それから話していると警報が鳴る。そしてカルマノイズの出現が確認された。

「奴が出るのか!?」

「早速お出ましと言う訳ね。」

そう二人が言っている。

『数日前の奴だ!反応が大きすぎる!』

そう言われて目の前に現れたのは紫色をしたノイズ。

「コイツが‥カルマノイズか・・。」

確かに普通のノイズとは全く違う馬鹿デカイ反応だ。

「しかし、ノイズと言うことなら潰すのみ!」

俺はアイギスを装備して赤いシールドを装備して腕を肥大化させて攻撃するように構える。

そうして全員でカルマノイズにかかるが、攻撃をする端から再生して一向に攻撃をくらわせれている気がしない。そこへ、

「うおおおぉぉぉ!!」

立花響が攻撃に突っ込む。しかし反撃をくらってしまう。更に追い打ちが来るが・・、

「カハッ――!?・・・はっ!?」

「ハッ!!・・間一髪ね。」

「オイ、大丈夫か!?」

マリアが助け、クリスが援護に入りながら大丈夫か確かめる。

「・・余計な事しないで・・。」

「何だと!?」

「どうせ死ぬ時は一人。本当に苦しい時には誰も助けてくれない。ツライ時には助けてくれない。」

そう言って言葉とは裏腹にさびしそうな色を目に灯した。

「まって、カルマノイズが・・」

そう言われてそちらを見ると、カルマノイズが消えて行った。

「人が減ったからかしら・・?」

「クソ!あんだけ削ったのにまた初めからかよ!」

そうしていると立花響が去ろうとする。

そうしてカルマノイズは消えたと思ったら、立花響もどこかへと立ち去る。

「・・どうして付いてくるの?」

アイギスの緑の楯の機能でその場から一旦消えて、立花響が去っていく方へとついて行きアイギスを解除した。

 

「待てよ。」「・・何?」

「アタシは雪音クリス。17歳、誕生日は12月28日で血液型はA型だ。」

「・・?」

「それから・・好きな物は・・え~とその、あれだ、あんパンだッ!!」

「・・いきなり何?」

「・・いいから覚えとけ!!」

「・・・・・・。」

「私はマリア・カデンツァナ・イヴ。22歳よ。」

「貴女まで・・一体何なの?」

「フフ、ただの自己紹介よ。昔を思い出しちゃって・・ね。」

「・・そう。もう行く。」

そう言って立花響は走りだした。しかしその眼は前よりもマシに見えた。

俺はすれ違い際に手を振る。横で止まった立花響に声をかけておく。

「あまり無茶すんな。俺みたいな男じゃたよりがいは無いかもしれんが、それでも孤独よりは、まだマシだと思うぜ?俺もこの世界じゃ孤独だしな。お互い息抜けりゃ面白い世界が待ってるかもしんねぇぞ?」

そう言って手を振り背中を向けた。鼻で笑う様なそんな短いため息が聞こえた気がした。

 

それから聞いてみると雪音達の世界の獣神鏡は失われているらしく、この世界の物を探しに来たとか。

「俺ので良いなら貸せるが?」

「「有るの!?」かよ!?」

そもそも俺は全てのギアを管理している。すでにIS操縦者から引退したマドカの獣神鏡は、今現在は抜いてギアではなく専用パーツで他の操縦者が扱っている。ギアの適性が低い為装備できるものが居ないのだ。マドカも戦いから離れた方がいいと思った為にギアはすべて回収した。ガングニールもイガリマも全て俺の管理下だ。なので、当然獣神鏡も持っている。

ソレを取り出す。ジャラリと並べたそれから獣神鏡のギアを取り、他は収める。

「これだな。装者を呼んで来れれば俺が適合させることは可能だが?話じゃ昔に装備していたのだろう?ならばその時のバイタルデータが有れば三分でできるし、無くても本人を連れてくりゃ一日とかからない。リンカーが必要そうなら軽めの奴を使えるが・・必要そうか?」

「そう・・だと思う。一応前も軽く使用はしたみたいだし。」

「んじゃ、改良型の軽い奴使うか。つっても負荷が無いわけじゃないから量は適量だし、多少は普通よりはましなぐらいだろうけどよ。」

「サンプルとしてソレ貰えるかしら?うちの技術者にも作らせておきたいの。」

「ん?あぁ、リンカーの事か。いいぜ?ただし、見返りが欲しいがな。」

そう言いながら手を前に出す。

「お金?それとも、体とかゲスな事を言うのかしら?」

マリアと名乗った女は顔をしかめる。それに明らかに嫌悪を現した雪音。

「誰がそんなもん要るか、バーカ。テメェらのギア見せろっつってんだよ。俺のとどう違うかでもしかしたら使えねぇ可能性も出て来るからな。寧ろテメェらの頭ん中がピンクなんじゃないのかよ。ったく。」

「「・・・。」」

思いっきり睨んでくるが、自業自得だ。

「まぁ、私のアガートラームで良いかしら?でも、変な事はしないでよ?」

「大きな違いが無いか見るだけだ。見たらすぐ返すよ。」

そう言って受け取って即座に端末に接続。そのまま、自身の記憶通りの情報と照らし合わせてコンソールから多順で窓を開き全体を見てすぐにしまう。その間一分。

「ん、大きな違いは昔、ISに組み込まれたかどうかだけだ。装者にあわせりゃすぐに使えるな。」

そう言って返すと呆然とした顔で見られた。

「貴方‥本当にすごいわね。」

「だから、俺が作ったんだからすべて覚えてるに決まってんだろうが。ある意味、神に造られたからだという事は俺自身も生きている聖遺物のようなもんなんだよ。」

「とんでもねぇな。」

「まぁ、自分でも知ってるよ。・・んで?装者はどこに?」

「向こうの世界に居るわ。次に来る際に連れて来るから・・部屋とか用意してもらえるかしら?」

「それはこちらの仕事だ。しておこう。・・しかし、イチカさんの様な人物が居ればこの組織も安泰なんだがな。」

「爆弾抱える気かよ。俺は薬にもなるが毒にもなる。劇薬は離れて見てる方が楽だぜ?それがニトログリセリンなら衝撃でドッカンだ。」

笑いながら言うとその場の全員が顔を青くした。

「んじゃ、今日は上がるぜ。またノイズが出たら知らせろ。」

そう言って俺は外に向かった。

 

向かった先は公園。

夕暮れ時にそこに立花響が寄っているようだったので遠くから見た。つらく寂しそうな瞳で空を見て、手を伸ばそうとしてやめてきつく握る。

(・・助けを求めてその手を掴まれなかった時が怖いか・・。)

それからまた顔を落とし、歩いて去って行った。俺は静かにその場を去る。

「・・伸ばした拳が救いになる事を願って・・。」

頑張ってやろうじゃないか。

守ってやる。救ってやる。・・体も、心も、魂も。

 

それから向こうの世界から来た獣神鏡の装者である、『小日向未来』に合う。

一度血液検査と共にリンカーの適合検査、獣神鏡の適合検査をして問題ないので一度リンカー無しで渡す。

「『Rei shen shou jing rei zizzl~』♪」

聖詠を口にすると装備する事が出来た。

「なんか・・前のよりも体になじむ気がする?」

「ふむ・・出力安定、適合係数上昇、リンカーは必要ないな。」

「なんでだ!?コイツはそこまで適合しないはずじゃ・・」

「まぁ・・ギアに必要なのは・・感情と言われているからな。」

「感情?」

獣神鏡を装備した小日向が首をかしげる。

「特に適合に関するのは・・愛・・らしい。」

「「何故そこで愛!?」」

雪音とマリアが声を揃えて言うが、

「知った事か。俺のとこの獣神鏡の装者がそう言う結果を出したんだよ。初めは適合係数低かったのに、人と一緒に居たいという気持ちが大きくなるにつれて係数も上昇、ある一定の相手と共に居たいという思いがあふれて、最終的に装備できるんだから知った事か。」

俺が聞きたい。むしろ、愛って何なんだよ?

「あぁ・・博士が言っていたわね・・。愛ってそう言う事なのかしら・・。」

「博士とは?」

「私の所に居たマッドの頭のいかれた博士≪最低の英雄≫よ。」

「ほう・・まぁ、過程はどうあれその結果にたどり着いていたというのは凄いな。」

「えぇ・・そうね。・・ん?適合率が愛で上がるということなら・・つまりリンカーの基本部分は愛の感情に作用するように作れば完成すると?」

「・・確かに、そうなるな。」

「リンカー製作で問題の深層がこんなにあっさり解決とは・・。」

データ作成してリンカーを試作用のデータをメモリに入れて渡す。

「これ、リンカーの改良案だ。愛を元にするという事は感情に作用するという事で色々と副作用と言うか・・感情に作用される可能性が有るから。気をつけろ。そこら辺はそっちで改良してくれ。」

「それは助かるわ。ありがとう。」

 

因みに、適合出来たその理由を小日向未来に話すと

「確かに響への愛なら負ける気は無いです。」

「女の子同士でそこまで言い切れる君は、かなり特殊な趣味の持ち主だと、俺は認識した。」

 




友人が
「前回のイベントのときは一発目からクリスちゃんが当たったから、頼まなかった。後あけおめ。これライダーの映画DVDね。」
と言ってライダーのDVDを貸してくれました。結果他の作品ネタが浮かび、そっちを並行しているので次の更新は更に遅くなると思います。
ご了承ください。だって、ライダーも好きなんだもの。


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異世界旅行記 ~シンフォギアXD編03

新しい話ができたので、さっそく投稿です。
ではどうぞ。


それからいとど向こうで訓練をして帰ってきた・・いや、帰って訓練をしてきてもう一度来たというのが正しいか。・・どちらでも良いか。

再会した時には戦えるほどに腕をあげたそうで、実質戦力が増えたという事は嬉しい。

そんな状態で向こうから来たメンバーと風鳴が弦十郎と話をしていると警報が鳴る。

即座に俺はテレポートジェムで場所の上空へ飛んだ。

いつでも行けるようにとアイツ等が帰っている間にこの町付近の上空を飛んで置いたのが正解した。

そして、採石場らしきところでノイズが発生している。そこに一人で戦っている影を見つける。

「アイツ・・早すぎんだろ・・。」

俺はギアを構える。

「ほんじゃ、行きますかね!・・『Imyuteus amenohabakiri tron~』♪」

そう詠うと俺の姿は『アメノハバキリ』を装備した姿となる。アイギスじゃない理由は、

「当たるなよ!!立花響!」

アレはもっと大勢か一人の時が一番扱いやすいからだ。打撃が居るなら斬撃が応援したほうが良い。そう言う判断からだ。

【千ノ落涙】を放つと一瞬上を見て眼を見開き当たらない位置に移動した。半歩ずれただけだが良く見ているようだ。

「・・危ないじゃないか・・。」

「お前さんが避けると思ったからな。それより行くぞ。背中は任せて突っ込め。本来楯になるのは俺だが、今の姿なら背中に来るやつを切りはらうくらいはしてやるよ。それとも怖くて突っ込めないか?」

「・・上等。」

そう言って笑ってやると、眉をあげて拳を構えて突っ込む。俺はその背中を守るように二つの刀で切り払い近付く物を捌いて行く。

「・・良い切れ味。こっちまで切られそう。」

「お前さんの拳は思いを乗せて貫けばいい重さだろうがな。有る奴が言っていたが、『握る拳に思いを乗せて、引いて伸ばせば貫ける。想いを重さに引き代えて、この身全てが槍となる。』つまりは、自分自身を貫いてこその【ガングニール】己(おのれ)だよ。」

「・・良い言葉だね。まぶしすぎて今の私には似合わない。」

「貫く思いが有るのなら一緒さ。ノイズに復讐したいんだろ?眼を見ればわかる。お前さんの目は俺が知っている奴がしていた過去にとらわれた目だからな。」

そう言うとこっちを睨んでくるが、俺は顔を反らして剣を振う。

「何、文句?何が言いたいの?」

「いや、孤独と孤高は違う。ましてや己から孤独を選ぼうったって、周りが居るうちにはできないってことだよ。今に気がつく時が来るさ。だから・・」

俺は剣を大きくして横に振い【蒼ノ一閃】を放つ。

「・・そん時まで精々悩んであがいて苦しんでみな。ソレは後に誰かを助ける時の糧になる。苦しんだ誰かに手を伸ばして、引き上げた時にあの時の自分はこうだったと重ねてどうすればいいかも分かる。苦労して、這いつくばってでもまた立ちあがった奴は強くなれる。そんな奴を知ってるから・・な。」

目の前に居たノイズを切り裂き、立花の方を見ると殴りながらも何か考えた様な表情に見えた。後は任せるとしようかね。

「後詰が来たぜ。一気に片すぞ。一度引いてもう一度突っ込み直す。お前も巻き込まれないように一度来い。」

他の装者が来たから俺はノイズの塊の中から一旦立花を引っ張り出した。

「・・っく、力強い。離せない。」

逃げようともがく立花を掴んで一旦引いて、全員集まりもう一度仕掛ける。

「雪音、お前が一斉に撃って、片っ端から数を減らせ。そこに各個撃破で全員突っ込む。小日向は雪音と組んで遠中距離と雪音の近くに来た至近距離担当。風鳴とイヴはそれぞれで自由に動け。立花は言わずもがな好きにやれ。俺は全体を見て動く。」

そういってアイギスのギアを取り出す。

「『defendend. guardend. protectend AIGIS tron~』♪」

そして纏ったアイギスで赤いシールドを纏う。

「『ミカ』の力なら全体に攻撃を届けて援護できるし、そこそこ攻撃力も高いからな。行くぞ、先ずは雪音、やれ!」

「まぁ、やってやるよ!!おらぁ!!一斉射撃だ!!ハチの巣になりやがれ!!」

≪MEGA DETH PARTY≫

そう言って射撃をした後、ミサイルを撃ち尽くして一旦止まった隙に全員が飛び出す。

各自がそれぞれの方向に切り開いて敵をせん滅して行く。ソレを援護するように小日向と雪音が射撃したりして、俺は空から両手を開いて大量の高圧縮カーボンロッドを大量に打ち出す。

何箇所かには太めの分を撃ちこみ中の空気と炭素を反応させて燃焼、爆発させて纏めてつぶしたり、数が少なくなってからは降りてその手で切り刻んで走ると一気に数が減る。

そして、

「あらかた片付いたわね。」

「コイツで終わりだ!!」

と風鳴が最後の奴を切った所で小日向未来と立花響が会話をしていた。

世界が違っても響を大切にしたいと言っていた少女は初めての挨拶をして、同じ顔なのに性格が違う事を戸惑いながらも会話を引き出して行く。・・曰く、愛のなせる事らしいが・・よくわからん。

そうして居ると急に大型の反応が現れて目の前に黒い靄の様な物が集まる。

「デカブツのお出ましか!!」

そういって雪音が構え、全員が戦闘準備をする。

予想通りに現れたのはカルマノイズ。そいつに全員で攻撃を仕掛ける。

しかし攻撃した端から再生されてきりがない。そんな時、

「きゃぁ!?」

カルマノイズが小日向未来を攻撃対象に選んだ。

「近すぎだ!距離を取れ!!」

そう言われてもすぐそばまできている。あまり戦闘経験が無い事に気が付いたのか、はたまた近くに居たのが偶然か。しかも俺は対象の反対側に居た。止めきれない。

一気に詰め寄り攻撃を仕掛けられる。そこへ、

「・・!どいて!!」

「きゃぁ!?」

そう言って立花が突き飛ばして、そのまま攻撃を仕掛ける。

偶然かはたまた、やはり立花響と小日向未来だからなのか・・守った様にしか見えなかったが・・。

そのまま全員が攻撃を仕掛けるが、結局逃がしてしまった。

それから全員が話すかと思いきや、すぐさま立花は走って去って行った。

「あ、おい・・」

「アイツはしょうがないだろ。放っておいた方がいい。小日向、お前さんが説得してくれ。世界は違っても、立花の事を一番知ってるのはお前なんだろ?」

「・・はい、私です。響の事を一番わかるのは私ですから。」

「・・胸を張ってそう言えるお前さんはすごいよ・・。やり方は任せる。アイツと仲良くなれ。」

「・・響と仲良くしていいんですか?」

「あぁ、好きにしろ。・・誰だって一人ぼっちは寂しいもんな。孤独は苦しいし寒い。お前さんが知っている立花は温かいんだろ?ならば、お前さんが一番その温かさを知っている。温かさを伝えて、仲良くなって一緒に日だまりで転げてろ。そうすりゃ自然と寒さもしのげるさ。」

「!・・・はい!!」

そう言って小日向は立花を探しに行った。

「それじゃ俺達はカルマノイズの対策会議だ。・・気が付いていたんだが、イグナイトモジュールが付いていたのは何故使わないんだ?俺のアイギスには付いていないから使用はしていないが・・」

「それについては基地で話すわ。カルマノイズの【呪い】について。」

「呪い・・か。まったく・・ダインスレイフの俺に良く付きまとう言葉だな。」

そう言って首を振った。

それから話を聞くと、カルマノイズに対してイグナイトモジュールを使用すると呪い同士が反応し合い、下手をすると暴走するらしい。ソレを起こさないように強力な戦力とは分かっていても使用できないらしいのだ。

 

 

「はぁ・・面倒だな。」

「強いと分かっていても使えないのはつらいな。」

雪音とそう言う部分が共感もてたので話していると、

「あなた達、仲良いの?」

「あ?・・そういやなんとなくだが近い感じはするな。」

「む・・俺はここまで粗野ではないぞ?」

「何だと!?アタシの何が悪いってんだ!?」

「言動の育ちの悪さと、教育。まぁ、栄養は良かったようだが・・それにしても言動が悪いだろ。言葉遣いに、めんどくせぇとか言っている性格。大方、俺と同じく両親が居ない系だろうが、それにしてももう少し女の子らしくしたらどうだ?」

「う、うるせぇ!!」

「見た目は良いんだから、礼儀とか作法を覚えればそれなりに良縁もあるだろうに・・。」

「なっ!?え!?っちょ!?」

時間が有れば服でも見立ててやろうか。コイツなんかこう・・世話したくなるというか・・なんとなくマドカに似てるのか・・・・。体系は全く似てないけど。

「お前さん俺の妹に似てるんだな。」

「い、妹?」

「まぁ、・・俺よか見た目が年くった事に最近凄い落ち込んでるけど。」

別にまだまだ二十代で見えるのにな。小じわが・・とか気にするからしわ増えるんだと思うんだけど違うのか?・・女の考える事は分からん・・。いや、男も分からん。自分以外がよくわからん。そもそも自分が人外だからあてにならん。

「まぁ、・・そう言う事だ。お前さんを気にした理由はそこだろうな。アイツも出会ったころから口が悪くて、すぐに手が出るわ、喧嘩を売るわ、買うわと面倒だった。」

「・・分かる気がするわ。」

イヴがそう神妙な顔つきで頷く。

「マリア!?」

「この子は聞いたところによると、口元や衣服をケチャップで汚しまくってナポリタンを食べたりしてたらしいのよ。」

俺は雪音の方を見て、呆れた顔になり、

「・・お前‥子供じゃないんだから・・」

「昔だよ昔!!」

「え?響達と出会った頃って聞いたけど?もう、高校生の年よね?」

ソレを聞いてますます顔が呆れ顔になった気がした。眉間にしわが寄っているかもしれん。

「お前‥」

「う、うるせぇ!!」

雪音は真っ赤になり騒ぎたてた。まったく・・そう言う所が子供なんだ。

 

 




だんだんとオリジナル展開になり始めました。次回投稿はかなりオリジナル展開になっていくと思います。
では、また見てシンフォギア。


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異世界旅行記 ~シンフォギアXD編04

えー今回大幅に話の展開が変わっております。
原作が好きな方はご注意ください。

ではどうぞ。


ノイズの反応を感知してそちらに来てみれば、そこではすでに戦っている立花響がいた。

すぐに加勢して敵を倒す。

「結構あっという間に片付いたな。」

「そこまで数は多くなかったしね。」

「それに立花が先に来ていてくれたおかげで、民間人にも被害はないしな。」

そう言われてみんなから目を向けられる。

「・・・別に。近くにいただけだし。」

そう言いながら目をそらす。少し照れているのかもしれないと思ったら、小日向未来が更に近くに行って話をして顔が少し赤くなっていた。

和やかなムードに落ち着いていたら、アラームが鳴る。

『カルマノイズの反応だ!!至急現場に行ってくれ!』

すると遠くの公園のあたりにカルマノイズの反応が発生したらしい。

位置情報を見てすぐさま立花は走り出す。俺もそれを追おうとしたら、一緒にいた小日向がすぐさま追いかけ始めた。行動の速さに驚いて足をゆるめてしまった。

するとまたもやアラームが鳴る。

『に、二体目のカルマノイズが出た・・だと!?』

「俺もいる事で二重にカルマ『業』がたまったか?」

呪われているこの身だししょうがないと言われればそれまでだが。

「く、あちらは二人に任せておけない!マリア!」

「何やらこの場から嫌な予感がする。俺はこちらに残る!頼むぞ!」

何やら俺の感がそう感じるので、俺と雪音、風鳴はこちらに残る。

「来たぞ!!」

カルマノイズが姿を現した。全員で攻撃をかける。やはり回復力が高く、攻撃してもすぐに再生してダメージを与えれたような気があまりしない。少しずつは蓄積されているのだろうが、眼に見えてのダメージは回復されるのは厄介なことこの上ない。

「食らいやがれ!!」

「風鳴、下がれ!俺が前に出る!」

装備しているのはアイギス。それのシールドを赤に付け替えて、爪を伸ばして攻撃する。

至近距離での高圧縮高熱カーボンロッドを打ち込んだりすると少しはダメージになったらしく、その再生力が下がった。

「いいぞ!そのまま・・!?」

「あいつ、また消えかけてやがる!!逃がすかよ!!」

「むぅ!?駄目だ!すでに手ごたえがない!」

爪で引き裂こうと手を伸ばすがその当たる端から消えて、手ごたえがなく消え去られてしまう。

「くそっ!絶対今回はいいとこまで行ったんだがなぁ!?」

「やはりある種の現象のようなものなのかもしれないな。こうも消えると言うのは、ノイズもカルマノイズも一種の現象であるとして、それを完全に取り払うというのは難しい事なのやも知れんが・・。む!?」

急に地価から高反応エネルギーを検知。更に地響きが鳴り始める。

「な、何が!?」

「離れろ!何かが地下から現れる!!」

全員がそこから散開して離れた瞬間に地下から地面を割って表れたのは、

「な、んだ?!ありゃぁ!?」

「いったい、これは!?」

紫色の怪獣のような見た目をした物体だった。それを俺は『観る』。

「反応、確認。指定品目『完全聖遺物』。データ確認・・目標反応『ゴライアス』。」

俺は錬金術の能力で鑑定を使い、その存在のデータスペックを確認する。

『そこに現れたのは地下の倉庫に有った、完全聖遺物『ゴライアス』だ。しかし、幼体で機能を停止していたはずなのだが・・』

それがいつの間にか起動して、そして、完全性異物が俺たちの戦いとカルマノイズの反応で覚醒しそのまま暴走を始めたようだ。つくづく昔のISを思い出すぜ。一緒に戦っているところと、暴走に・・聖遺物。

「あぁ、血がたぎってきた!んじゃ、いっその事、無茶するかねぇ!!」

そう言って俺は武装を変える。

「風鳴!!言うまで空中で待機!やつの頭上に行け!」

「む!?わ、分かった!」

「雪音!あいつの頭狙え!」

「わかったぜ!うらぁ!!」

ガトリングをゴライアスの頭に打ちまくる。前進をやめてガードをする。

「雪音!今だ!一発強めの奴撃ち込め!」

「あぁ!?頭に撃ちこみゃいいんだろ!?」

そう言いながらスナイパーライフルを出して頭に狙いを付ける。引き金を引いて撃った瞬間に、

「風鳴!今だ!龍ノ逆鱗を奴の後方から首めがけて落とせ!」

「はぁぁぁぁああああ!!」

【龍ノ逆鱗】

放ったと同時にゴライアスの頭部に弾丸が当たり、前傾姿勢になる。すぐさまそこに向けて技が放たれた。

『ガキン!』

巨大な剣が首元に当たるが堅い装甲に傷を付けただけだった。

「くそ、傷が多少付いただけだ!」

「傷付ければ御の字。多少の衝撃がありゃいいんだからな。それは固定するための重石変わりだよ!!」

そう言って俺はデュランダルを出して出力を少量アップ。断ち切る威力を上げる。

「せいはぁぁぁぁ!!」

その剣で上からゴライアスの首に剣を落とすと、

『ガギャァン!』

と音がして、デュランダルと龍ノ逆鱗がゴライアスの首を跳ねた。

「な!?完全性異物の首が!?」

『シンフォギアの攻撃で完全聖遺物が壊れるだと!?』

驚いているのは俺以外全員だ。技を放った全員と基地でモニターしていた奴も含めて。ふん。それはお前らの勉強不足というものだな。

「完全聖遺物だろうと、形あるものは壊れる。この絶剣である、デュランダルもネフシュタインの鎧とか、真の聖遺物であるアイギスとかがあれば壊れる。そも、完璧なるものなどありはしない。それは理だ。神でさえも殺す神殺しの槍があるのだから、絶対なる不変の者などありはしない。それは『ゴライアス』つまりは『ゴリアテ』も同じくだな。むしろ、完全聖遺物であるが故の弱点だ。」

そう言うと、風鳴が考えるようにしている。そして顔を上げて、

「ゴリアテ・・、あのダビデの話の『ゴリアテ』か!?」

「その通りだ。つまりは知っていれば簡単に理解できる。調べた限りはそうだろうな。」

『イチカさんは何故あの完全聖遺物が壊れるものだとわかったのですか!?』

「ゴライアスの聖遺物と聞けば、伝承はダビデとの一戦から対処はたやすい。しかし、どの程度の威力が必要かは分からなかったから、こちらも切り裂く伝承を使ったまで。」

『む?すまない、よく分からないのだが・・?』

「司令、古代『ゴリアテ』はイスラエル軍に一騎打ちを挑発して行っておりました。しかし、当時のゴリアテは常人の二倍くらいの大きさがあり兵士も手が出せませんでした。しかし、挑発を受けてキレた羊飼いの少年であったダビデにスリングで頭に攻撃をくらい、額を抑えてうずくまったところを剣で首を跳ねられて倒されています。頭に一定の衝撃があれば攻撃を受けたとして怯み、首に絶剣のデュランダルで刃をあてられれば、斬れるという事象が勝手に伝承で起こるのです。つまりは『こうすればこうなる』と言う『概念』によって事象が起き、『結果』として『ゴライアスの首は落ちる』と言う事実が残ったのでしょう。」

『なるほど。』

なった臆したように頷き、俺は立花達の方向を向いてにらむ。

「嫌な気配がする。獣『けだもの』の匂いだ。

昔の姉が暴走した際の気配を感じる。

どうにも嫌な予感しかしない。

「俺はちょっと立花たちの様子を見に行ってくる。」

『待ってくれ、イチカさん!響君の様子が!?』

「暴走してんだろう!?知っている!一発ぶんなぐりゃ気絶して、元に戻るだろうよ!」

俺はその方向に飛ぶ。

緑の盾を付けて足元に風の錬金術の魔法陣を出して加速する。

「やっぱり、嫌な予感ってのは当たるな!畜生が!」

反応があった先には立花響が暴走していた。

そして、小日向未来とマリア・カデンツァナ・イヴが見えたのでそこに降りる。

「状況は!?」

「イチカさん!響が暴走して・・」

「あぁ、見りゃ分か・・何だと!?」

カルマノイズの反応があった。そう、立花響を見たときに反応を見つけたのだ。

「響が『カルマノイズと融合しちゃった』の!」

「何・・だと!?」

カルマノイズと融合し、呪いをまき散らすように黒い瘴気が上がっていた。

『立花響』、自身から。

自分を呪ったか・・。自分の人生がこうなるのも相手を傷つけるのも自分のせいだと、自分が悪いのだと。そう呪ってしまったのか・・。

 

「下らないものだ。」

俺はそう吐き捨てた。こちらを立花響『暴走』が見る。

アイギスのシールドを赤に変えて拳を肥大化させる。

 

「ふん、小娘が好い気に成るなよ?自身を呪った歴は俺の方が長いんだ。所詮数年の小娘に数十年の俺を超えられるものなら超えてみろ!!」

『ガァァァアアアアアア!!』

お互いに吠えあう。

 




えー、今回少し遅くなったのは、
父がインフルエンザ→治ると同時に母が気管支炎の風邪とインフルエンザ(父と同型)→治ると同時に私が母から気管支炎の風邪を移される→風の影響で咳や鼻詰まりから鼓膜が破れる→一時期立ってる事もまともにできなくなるほどふらふらになる。(元から三半規管が弱い)→ようやく鼓膜が治り、風も直ってきたので日常生活に戻る。
とまぁ、こんなふうに成ってて一月半ばから半端なく疲れました。バレンタイン?私には関係の無いイベントです。
やっと上げる事が出来てうれしいです。

あ、次回。シンフォギアへんの最終回です。
お楽しみに。
また見てシンフォギア。


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異世界旅行記 ~シンフォギアXD編05 終

今回でシンフォギア編終了です。
なかなかに難産でした。
また次の作品も色々と投稿していきたいと思います。

では、ラストです。どうぞ。


俺たちは拳をぶつけ合い、吠えあう。

「うらぁ!」

「ガァアアア!!」

お互いに衝撃で拳が弾かれるが、それでも次々と体勢を立て直して殴り続ける。

「おらおら!!お前の呪いを吐きだしてみろよ!」

「ガゥ!ウガァァアアアアア!!」

「言葉を解さん獣にやられるほど俺は耄碌してないぞ!?オラァ!!」

本腰を入れて拳を突き出す。今まではただの殴り合いだったが、これからは本気の出し合いだ。少し離れた立花は赤い目に涙を浮かべていた。

「チ・・ガゥ・・ガウ!チガウ!」

「何が違う!?なぜ違う!?本音を叫べ!吐き出してみろ!!」

俺は地面を叩きそう叫ぶ。

「ワタシハ・・コロシテイナイ・・ダレカヲカワリニシテイキノコリタカッタンジャナイ!!」

「そうだ!その想いを呪う理由を吐け!それこそがお前に業『カルマ』を背負わせた!」

言葉が通じてお互いに叫ぶ。そうじゃないと届かない。耳じゃなく心に届かせる必要があるから。

「ワタシノセイジャナイ!シンジテクレナイ!ワタシガノゾンダンジャナイ!タダシアワセニナリタカッタダケナノニ!?ナンデワタシガセメラレルノ!?ワタシハシネバヨカッタノ!?ワケガワカンナイ!!ドウセミンナタスケテクレナイ!!ナライキテイテモイミガナイ!!ノイズヲミチヅレニシテシヌシカナイジャナイ!!」

「それがお前の苦しさか・・。今から俺と小日向が助けてやる。解放してやる。だから・・俺たちに任せろ。今は自分の苦しさをぶちまけろ!!俺たちが受け止めてやるよ!!」

アイギスを解除する。

 

今なら使える。適性は無かった。それでも今なら。

心がシンクロしている。

魂から救いたいと。

彼女を開放したいと。

この怨嗟の苦しみから。

シンフォギアを取り出す。

 

「だから俺はお前の力となり、その両手を握って引いてやる。友として!」

俺は多くのギアの中から、織斑冬二が使っていたガングニール・ホワイトから取り出した『ガングニール』を取り出す。

「『Balwisyall Nescell gungnir tron~』♪」

俺はアームドギアの無いガングニールを装備してその場で体を動かす。

「ふっ!せいっ!はぁああああ!!セイハァ!」

演武をして動きを確かめてそのまま構える。

「さぁ、小日向!俺たちのライブだ!あいつを助けるぞ!力を合わせろ!」

「え?あ、はい!!」

俺の後ろに小日向を配置して俺と立花はお互いに拳をぶつけ合う。

「オラぁ!叫べ!今までの苦しみを!謳え!人生を!歌え!そのすべてを!!」

「ガァァァァァアアアアアアアアアア!!」

「響ぃぃぃいいいいいい!!」

「行くぞ!」

 

「すぅ・・『Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl

Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl~』」

 

「「『S2CA【デュアル】トライバーストォォオオオオオオ!!』」」

 

≪推奨BGM 永愛プロミス≫

 

お互いに吠えた『歌(うた)』を『唄(うた)』を『嘔(うた)』をすべて力に変えて空へと打ち出す。そして俺と小日向は姿を変えた。俺の絶唱はすべてをフォニックゲインと方向を変えて『力』へ変わる。

「ガングニール/エクスドライブ!」

俺は両拳を撃ち合わせて、『ガシャン』と音を立てる。

「これが・・エクスドライブ・・」

小日向も獣神鏡/エクスドライブへと姿を変えていた。

「うん。これならいける。響を助けて見せる!!」

「行くぞ、これ以上、業を背負わせるのにはあの少女には器が小さすぎる。その肩にのしかかせれる重さじゃないんだから。」

「はい!」

 

「ガァアアアアア!!」

周りに光が満ちてそれに反応した立花が完全に興奮状態になったようだ。なにかとせめぎ合いあがくようにしている。それに対して俺と小日向が構える。

「解放してやる。そして、世界を見てみろ。つらいことばかりじゃない。苦しいことばかりじゃないんだから。」

「私が響を救うんだから!!この光で、あなたの未来を輝かせて見せる!!」

 

「わたしを・・たすけて・・」

 

聞こえた小さな本音。それを聞き洩らさない。

「助けてやる!約束したからな!守ってやるよ!お前の世界も体も魂もそして・・」

「響が生きていくこれからの『未来』も!!」

「行くぞ!はぁ!」

俺は接近戦で拳を打ち合わせ、響もそれに対抗する。お互いに拳同士でラッシュを打ち合う。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」

「グゥ!グガアアゥゥアアアアア!ガアアアアアアアア!!」

【ドガガガガガ】と音が鳴り合う中、援護するように後ろから閃光の攻撃が放たれる。

「当たって!」

「グガァ!?」

くらった暴走立花は後ろにのけぞる。

「眩しいか!!?それはお前の未来への輝きだ!!セイヤァ!」

そう言いながら俺は蹴りを放つ。足のジャッキを即座に引いてインパクトの瞬間に思いっ切りの一撃を放ち地面にたたきつける。

「ガァァァアアア!?ぐぅ、ガァァアアア!」

地面にたたきつけられた後に、空中で一回転して体勢を立て直して、獣のような格好で飛んでくる。そして、俺にその爪で攻撃をくらわせる。

「ぐぅ!?」

「ガァァアアアアア!!」

それから真上に飛び、腕のギアを槍にして突き立てて落ちてくる。

【狂装咆哮】

『助けてほしい時に助けてくれなかった!誰も!皆が私を否定した!』

そんな苦しみを込めた一撃。それをくらい、吹き飛ぶも同じように空中で一回転して体勢を整える。

「なかなかやるじゃないか!そうだ!吐き出せ!受け止めてやるよ!それは、大人である俺の仕事だ!子供は黙って甘えてろ!しかし、『それだとしても』!!『だとしても』だ!それを怖がって誰も信じれなくなったのはお前の弱さだ!支えてやる。しかし縋るな!背中を押してやる、だが背中を差し出すな!手を引いてやる、だがしゃがみこむな!それはすべてが相手に依存している。手を伸ばせ!そうすれば明るい未来が待っているのだから!!!俺を信じろ!俺が信じれないなら、お前を助けたいと思う小日向を信じろ!それさえ無理なら、助かりたいと思った自分を信じろ!!」

「がぁ・・、グァアアアアアア!?」

暴走立花はそう叫びながら頭を抱えて苦しむ。

「これが私の、シンフォギアだ!!皆の、私の、響を思うこの想い!届いて!!」

そう叫んでいくつもの鉄扇を周りに展開して足のパネル部分も展開する。

 

「さぁ、手を伸ばせ!!」

「ウゥ、うわぁぁあああああ!!」

「響ぃぃぃいいいいいい!!」

【暁光】

まばゆい閃光が辺りを照らし、その光に俺と暴走立花は包まれた。

「ああああああああ―――ッ!?」

 

「痛く・・ない?・・何なの?この光は?」

(あぁ、・・温かい。・・まるで・・)

「響ー!!」

(未来が私に手を伸ばして・・)

「未、来・・未来・・未来―!!」

(今なら分かる。これが人の温かみ。そして・・)

「ごめんね、未来。」

「へいき、へっちゃら。だったでしょ?」

「うん。・・ありが、と・・。」

 

(私にとっての陽だまりなんだ。)

 

 

それから三人は問題解決と同時に帰って行った。

俺はどうするべきかと悩んだが、ギャラルホルンに巻き込まれただけで合って、アラートが止まり次第どうやら時間がきたらじきに戻れるようだ。心配して損した。しかも俺はおそらく元の時間軸に戻るらしい。並行世界にゆがみができてそこに無理やり穴を作って引きこんだ状態だそうだ。

まぁ、簡単に言えば元の世界のそこにいた時間に戻るだけだそうだ。

まぁ、面白いデータがとれたし、ここの世界の獣神鏡も無事に調律して小日向に渡せたし・・、問題は終わった。

 

彼女たちが帰った後の場所で、黄昏ている少女以外は。

 

「未来、また来てくれるかな・・?」

「まぁ、そうは言っても向こうにも事情があるし、向こうの世界にも立花響が居る。お前以上に手がかかるそうだからな・・難しいだろうな。」

「そう・・だね。私は向こうの私を苦しめていただけなんだもんね・・。」

俺は頭をなでる。

「わぷっ!?ふぇ!?」

「そう言うもんじゃない。」

「・・やっぱり無理・・だよね。向こうでの暮らしがあるし。」

「俺もなぁ。正直、お前さんぐらいなら向こうに連れて行って、家族にするんでも問題は無いんだが・・、今回の問題になったあっちの世界の立花響に同栄光があるか分からないからなぁ・・。」

「・・また結局、一人・・か。」

「いや、今度は信じれる大人たちも、近い年の風鳴もいるじゃないか。」

「う、うん・・。でも・・」

 

「やっと・・見つけた・・。」

「え?」

 

振り返ると【小日向未来】がそこに居た。

「あれ?帰ったんじゃ・・」

「ごめん。」

そう言って立花を抱きしめた。

 

「ごめんね。何も響に言わずに引っ越しちゃって・・」

「へ?」

「あれからずっと手紙を送ったり、連絡取ろうとしたんだけど・・どうやっても響が見つからなくて・・」

「あ、あれ?」

 

(なるほど、『違うな』。『この子』は・・)

 

≪推奨BGM 陽だまりのメモリア≫

「ごめんね。響が一番つらい時に一緒に居てあげられなくて・・」

「どうして・・」

「特殊災害課の人たちが助けてくれて、今まで探してたんだけど、やっと、今日ここまで来れたの。」

「そう、あの人たちが・・」

「でも、やっと・・、やっと会えたんだよ、響?」

「うん・・、うん!私も合いたかったよ、未来!」

 

「そうだね分かった。やっと思い出したんだよ。」

「何を?」

「私の居るべき場所はここだって。私の陽だまりはここにあるんだって。」

「・・うん!」

 

 

数歩引いたところの橋の欄干に背を預けてその光景を見る。

「これは俺の居る場所じゃねぇな。まぁ、最後の仕事が残っているが。」

俺はギアの複製ができる。

精々レプリカで、本物には到底及ばないが。

 

「お二人さんに記念のプレゼントだ。おそろいのネックレス。二人なら間違った使い方はしないと思うからな。もしも、どちらかが、危なくなったら使え。お兄さんとの約束だぞ?」

「これはシンフォギア?」

立花が少し嫌な風に聞いてくる。まぁ、あんな目にあったんだから仕方ないわな。

「いいや、レプリカ。ノイズに負けない程度だ。もしも、誰かを助けたいと思った時は使え。俺と、お前のつなぐ絆だ。見えなくても、聞こえなくても、繋がっている。」

「・・うん、分かった。ありがとう。」

真剣な顔つきでうなずく立花。その頭をなでる。

「言ったろ?お前の未来も守るって。お前さんはそれで・・大事なものを守れ。隣のお嬢さんも。」

「分かった、約束する。」

「分かりました。」

握手をしたところで俺の足元が光の粒子になっていく。

「おや、時間のようだ。」

「もう・・行っちゃうの?」

「こうして出会えたんだ。またいつか、どこかで出会えるかもしれん。一期一会でもいいんじゃないか?出会いは大切にしろ。」

「分かった。私は私の大切なものを守るよ。」

「それでいい。」

ぽんぽんと頭を叩いて背中を向けて手を上げる。

「じゃぁな。達者でな。」

「ありがとう。」

「ありがとうございました。」

そうして俺はその世界から元の世界に戻った。

そこは路地。平然とみんなが歩いている。

端末を見ると俺が路地にいた時間のままだった。

「面白い経験だったな。これもまた、人生ってか。」

俺は家に向けて歩き出した。俺の居る場所が無性に恋しくなったからな。

 

 

そしてあの人は消えた。

「消えちゃったね。」

ぽつりと未来が言う。

「うん、あの人の居る場所へ帰っちゃったんだよ。」

「あの人、誰だったの?」

そうか未来は知らないもんね。言うならば・・、

「うーん、・・私の理想・・かな?」

「え!?響ってあんな感じの人がタイプ!?」

「ち、違うよ未来!?そうじゃなくて・・」

 

「あんな風に強くて皆を守れる、優しい太陽みたいになりたい。そう思ったから。」

 

私を見た未来はニマニマと笑う。

「やっぱりそう言う人がタイプなんじゃないの!?」

「嫌いじゃないけど、子供扱いされるからね。私だって年相応に扱われたいし。」

「でもうれしそうだったよ響?」

「う、うそ!?」

「うそだよん!引っかかったね?」

「未―来―!!」

「わー、ごめんごめんー。」

 

 

確かに温かな日々がここにあった。

あの人が守ってくれた私の未来。

それは確かに・・、

まんざらでもない・・かな?

 

 




と言う事で、シンフォギアのレプリカを渡したことで、この世界のビッキーは守ることを引き継いでくれました。
出力的には普通のシンフォギアの三分の二程度で、S2CAもありませんので基本的に防衛用です。ズバババンに基本は頼りますが、時間を稼ぐのには有効な手です。
ノイズから大事な人を守ってほしいというイチカの意思を引き継ぎ、この世界のビッキーは守る戦いをこれからもしていくことになります。
その想いを受けた未来さんも一緒に支えてくれるでしょう。

これにてこの世界の物語は終わります。
また、どこかの世界でイチカ君のお話を紡ぎましょう。
では、ここで一度のお別れです。
またいずれ、どこかの世界で。

ありがとうございました。


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無限の錬金術師 異世界旅行 学校編『がっこうぐらし』
第0時間目 プロローグ


今回から、インフィニットソングの主人公を別作品、【がっこうぐらし】とクロスさせたいと思います。
作品を選んだ理由は、この作品をハッピーエンドにしたいからです。
では、皆さまよろしくお願いします。


俺は何度か死ぬたびにホムンクルスを作り、小さな俺になり一生を繰り返した。最終的には自分の年相応のホムンクルス体をつくる事に成功したが。

皆は普通に生き返ったと思い込んでいるが、その実ホムンクルスに自身の記憶を定着させている別人なのだが、そこにたどり着く事は無かった。

結局、五人の【俺】を経験して、知り合いがいなくなると共にその世界への執着心も消えた。その為、その世界のチフォージュ・シャトーを破壊し共に俺も果てた。

これで終わると思って。

 

だが・・

「やぁ、久しぶり。魂の質は変わって無い様だね。器を作り変え記憶を転写して魂を入れこむ。錬金術師らしい行動だ。実に面白い。神に対する冒涜だ。ソレを踏まえてはいるよね?」

「神だろうが知った事か。俺は自身の思った事をする。俺は俺だ。」

「そう、それが君の素晴らしさ、君の価値だ。という事で、君には次の世界へと行ってもらうよ。拒否は許さない。」

「・・べつに拒否もない、所謂転生だな。記憶と技術を持っているだけの、輪廻転生。神道や神話に聞く物だろう。錬金術もその応用を踏まえた部分が有る。神への冒涜とも言えるが、それも神が居たからこその応用。感謝こそすれ、馬鹿になどしてはないがな・・人がソレを行うこと自体がおこがましいと言われるだろう。だからこそ、自身にしか適応させていない。結局は、俺がやったことはこの転生技術の真似ごとだ。」

「そうだね。君自身のホムンクルス体に移行する機能は、この技術の一端とも言える。同じ人間ではなく器を用意して記憶を転写する事で『同一人物である』と世界に誤認識させそこに魂を組み込む。よく考えている方法だよ。」

「この記憶と知識、技術を与えたのはアンタだがな。」

「別に否定はしない。だが、ソレを使うかどうかはまた違うだろう?」

「そうだな・・。」

「という事で、最終的に死を得た記念に君には次の世界に行ってもらおう。という事だ。君は実に面白い素材だからね。次はまったく科学が進歩して無い世界・・という事も考えたが、間違った化学の進んだ世界に行ってもらう。」

「間違った・・科学?錬金術の失敗みたいなものか?」

「ノンノン、・・多くの人が病気にかかる原因は何か。」

「普通なら風邪とかそういうたぐいならウィルスだったり病原菌だったりするな。」

「そう、病原菌つまりは細菌だ。人は強くなるためにいろんなものを作り出す。もし、・・もしもだよ?その過程でできた間違った特性を持つ特殊な細菌が、世界規模を巻き込んだ事故・・規模では災害として、多くの地域に一斉に散布されてしまったら?」

「物によるが・・酷いものなら世界中の人が死に至るな。」

「コレは感染すると本能しか残らず死に至る病原体だ。三大欲求のうち食欲しかほとんど残らず、生存者を食い、死んだ者は感染し、同じ存在へと化す。後は唯、生前の記憶の通りに少し行動する者もいる。そんな特性を持った厄介な物だ。」

「・・昔見た映画みたいなものだな。」

「そう。そんな病原菌が散布されてしまった街に、生き残った生存者と共に君には生活してもらう。」

「・・いや、待て。なぜそうなった?」

「実はね?君の元の世界も数多ある世界の分岐させられた一つにすぎない。元になる根の世界という物から、一つずつ違う要素で終わりも違う物語が作られた仮想の世界だ。つまり『IF』から生まれた世界の一つにすぎない。まだ数多の世界に『織斑一夏』という存在は居る。しかし、それには君の様な錬金術という物を扱う者はほぼ、存在しないと言っても良いだろう。まぁ、可能性に零という物は無い。数多の世界は多すぎて分からない事もある。重要な事は、同じような君は存在するかもしれないが、その君がその世界へ行くとは限らない。そして、認知できる範囲ではそんな存在は知らないという事だ。そう言う理由からその世界へ君がいく事を望んだ存在が居る。その為にその世界が生まれた。そう言う事だよ。神の意志とは別の意志から望まれた世界だからね。決定事項なのはすまない。」

「・・決定事項なのならこのくだりはいらなかったんじゃないのか?」

呆れるように溜息をついてしまう。

「そうだけど、・・じゃぁ君はソレをはいそうですかと納得して受け入れれるのかい?」

「・・・・説明ありがとうございました。」

「よろしい。・・それでは、先ずは君の情報のアップデートだ。その世界にいくにあたって、更に情報が増えている。ソレを与えるのが今回ここで引き留めている理由だ。」

「アップデートとは?何をするんだ?」

「簡単には君の頭に手を置かせてもらう事で、君の脳内にある情報に上書きをする。」

「・・へぇ。」

「今回は錬金術の極意や強化された装備を追加する。扱いには気をつけたまえよ?一発で街一つが消滅する力もあるからな?」

「そんな恐ろしいものを足されても・・。」

「決定事項だ。それから、一応言っておくがその世界の開始地点には女性しか生存者がいない。・・悪い事はするなよ?」

そう言いながらも俺の頭に手を伸ばしてきた。触られると何か情報を書き込まれるような感覚が有る。まぁ、違和感はあっても痛いわけじゃないから会話でもして紛らわそう。

「今まで俺がどれだけの女性に囲まれて過ごしたと・・。見て来たアンタなら分かるだろう?」

「・・不能?」

「違う!!・・その・・家族と認識している相手に手は出せないだろう・・。」

「そうか?・・そうだなぁ・・君達と神とは違うからそう言う物はあまり意識されないものだ。歴史上の神話を見ればわかるとおりに兄妹親族での関係は割とあたりまえのことだ。姉の子を妻として迎えるならまだしも、我が子を妻にした話もある。そんな些細な事を気にしてはいられないのだよ。」

「あまりに意識が違いすぎて引くわ。」

「ソレは良いよ。・・・終わったよ。」

「・・へぇ・・これはおもしろ・・うわ・・コレか。確かに焦土と化すな。」

早速情報を整理してみるととんでも情報が有った。

「ちょっと待て、ホムンクルスの体を作る際に情報を書き換えて女性体にする情報とかいらん。」

「ソレは仕方ないさ。その世界の情報を書き加えただけだ。選別して与えるわけじゃない。必要かどうかは君が決める事だ。」

「まぁ、・・納得しておくとしよう。ではこれで終わりか?」

「そうだね。君が行くべき世界の扉を開いて送りだせば終わりだ。」

「そうか・・また長くなりそうだな。」

「その世界ではチフォージュ・シャトーは使用できない事も記憶したな?」

「確かに有る。世界の軸が違いすぎて、俺の作った『一旦亜空間に入り、計算した場所に送りだすというシステム』を使うワープジェムも使えない事も見えた。ただし、亜空間倉庫だけは使えるのはよく分からんが・・。」

「それはまぁ、君自身の近くだけに発生する物だからだな。手で触れている限り使えるような物と覚えればいい。まぁ、しかし、錬金術自体は使えるから問題は無いだろう。さっき言った通り術式倉庫など自体も使えるし。」

「移動手段には最悪、シュルシャガナを使えば早く移動もできるし、イチイバルでミサイルで空を飛べばいい。」

「そこまでするととんでもだな・・。錬金術の新しい力を使えば問題ないだろう?」

「ん?・・おぉ、そう言う使い方もあるのか。それなら有効活用範囲が素晴らしく広がるな。」

「そうかい、それなら問題は無いね?」

「そう・・だな。後はその世界で過ごさないと分からない事ばかりだ。」

さぁ、そろそろ出発だな。あ、聞いとくことあった。

「あぁ、そう言えば君の機体とオートスコアラーは一時的に使えないから。機会を見てそっちに送ろう。こっちからそっちに連絡はできるから。君に連絡が有る時は昔の方式の電話を送るからそれが鳴ったら取ってくれ。」

「・・なるほど。錬金術師のやり方・・だな。」

「そう。別にこっちはそういう事じゃないけど自由に使える手段は使うさ。行く前に必要な物は無いかな?」

「一応、一回分の抗ウィルス薬。注射器で欲しい。」

「使いやすい様にリンカー型で用意しよう。他は?」

「食料と水・・あと、一応街の地図かな。いきなり生存者のいる所に降りるわけじゃないんだろ?」

「いや、生存者のいる学校前に送るよ。後者に入る前に声をかければ歓迎してくれるだろうね。」

そうか・・歩く手間が省けるならいい。

「それなら一人分の食料を。何もなしだと明らかに怪しまれるだろう?」

「・・それなら用意しよう。ついた際に一緒に荷物は送られてくるようにした。」

「ならそれでいいや。連絡待っている。俺の大事な仲間たちだからな・・。」

「ふふ・・責任を持って預かろう。一応言っておくよ・・死ぬな。」

「くくく・・面白い冗談だな。死んだあとに呼び寄せた奴の言う事じゃないな。」

「あぁ、それもそうだね。コレはこちらからの出発祝いだ。」

お互いに握手をする。するとソレを通じて一つの錬金術の生成物が渡される。

「ソレを使って頑張ってね。それじゃ、健闘を祈る。」

「あぁ、ありがとう。アイツ等の事は任せる。」

 

俺は意識を失って・・眼が覚めると、

「・・あぁ・・・うぁ・・」

見た事のない地獄に立っていた。

 




これから、ゆっくり書いて行きますので、よろしくお願いします。
では、また次回。またね~。


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第一時間目

最近の気温の変化で体調崩してました。
熱いんだか涼しいのか、じめっとしてるのか・・。
身体が追いつかないです・・。
とりあえずゆっくりと登校して行きます。


目の前、いや・・周りにたくさんの感染者が歩いている。こちらに気がついた一体がこっちに向けて歩いて来始める。

「あぁ・・あ、あ、ああああぁぁ」

「目障りだな。まったくもって、耳触りで目障りだ。・・新しき力を使わせてもらうとするか・・。まだなじんではいないが・・【だとしても】・・俺がやる事は一つ。」

【ラピス・フィロソフィカス】を出す。赤いハート型のはずであるソレは俺を現す【蒼】に染まっていてそこへ、金色の線が血管のように張り巡らされている。起動するファーストローブのスペルキャスターは「銃」。目の前まで来た感染者を蹴り飛ばし、引き金を引いて起動する。

装着したファウストローブは騎士を現す様な形であるがその手には銃を持っている。

「この近くの生存者を助け、進む事こそわが使命。これを引き起こした者たちへの革命の引き金。そして・・コレが始まりの一撃だ。響き渡れ我が鼓動!!支配者たる貴様らへと恐怖を植え付けてやろう!!」

肩から錬金で生成した弾を銃に装填し、こちらに向かってくる感染者が増えた状態でそれに向かって引き金を引いた。

『ドガォゥン』

音が響き渡り、金色のエネルギーと共に飛び出した銃弾で目の前の感染者は跡かたもなく消え去る。

「・・さて・・アレが目的地の学校か・・。」

足元に会った荷物を持ち上げ装備だけは解いて歩きだす。見えた先には普通の設備を備えた学校には見えない、明らかに相応の準備を備えた施設だ。

校門まで来た時には確かに学校にしか見えないが、大型太陽光発電用のソーラーに屋上に植物すら見える。・・自給自足の生活用か。

そうこうしていると周りを感染者に囲まれていた。

始末しようと腕をあげると、

「おい!!そこに居るのは生きてるってことだよな!?こっちに来い!!」

そう叫ぶ声が聞こえた。

手にシャベルを担いだ少女。おそらくそれで攻撃して生き残ってきたのだろう。確かに便利だからな。良い選択だ。斬る、叩く、突くの武器に、掘る、すくう、遠くから触るなどの道具にも使える。

俺はそれに手を振り要らぬ世話だと教えた。銃を振り剣に変える。

「な!?」

「解放の為に・・貴様等の命・・いや死んだ躯だからな・・魂でもないな。」

一度眼を瞑り、苦笑を浮かべる。

「貴様等の躯を力と変えて、我が錬金の糧とする!安心して消え逝け!亡者ども!!」

近くに来た感染者を避けて足を引っ掛けて転がさせて、後ろから来た奴の首を斬りそのまま更に周りの感染者達を切り刻む。

「世界への礎となれ。」

最後の一体の首を切り離して、その周りの死体を錬金で変換する。

「・・っち。死体如きじゃエネルギーにもならないな。」

手のひらの中に収まる程度の小さな光程度で弾の錬金にも使えない程度のエネルギーだ。

やはりエネルギーにするには命が必要か。生存者は基本的には助けるからな・・。おそらくはこの程度を大量に集めるのが必要だろう。処分しても良いのはそこらに大量に居るのだから。

振り返り見ると、驚いた顔で固まっている女子生徒が見えた。

「・・生存者と見た。話を聞かせてもらおうか。そちらに行っても良いか?」

「え?あ、あぁ!今梯子を下ろすから・・」

「必要ない。」

俺は足元に緑色の錬金術、風の陣を出して浮かぶ。

「な!?う、浮いて・・どうなっているんだ?」

外の非常階段の下がふさがっていたので俺は上に言ったのだが、驚かれたようだ。

まぁ、普通の事じゃないからな。

「他にも生存者はいるのか?」

「あ、あぁ。・・一応聞いておくが、あたし達に何かする気はあるのか?」

「ふん、本人に聞いて素直に答える事は無いだろうから気をつけて置く方がいいぞ。まぁ、俺は性欲などは無いから安心しろ。・・一応聞いておくが、さっきの話から聞く限りここには女しかいないのか?」

「そうだ。今は四人、生徒が三人と教師が一人だ。」

「・・ほう、大人がいるなら話しやすいな。冷静な対応に期待しよう。」

そう言いながら手を掴み、俺は銃を渡す。

「・・は?」

「武器を持ったままの男など怖いだろう?預けておこう。まぁ、それ一つとは限らないがな・・。くくく・・。」

「なら渡す意味ねぇじゃないか。返すよ。」

押し返されたソレを錬金術式に戻しておく。

「さっきからのソレはなんだ?手品とかじゃなさそうだし・・魔法か?」

「錬金術だ。術式と計算、ルーンを組み合わせて更にそれを組み合わせた高高度文明遺産だ。理解しろとは言わないからそういうおかしな人間だとでも思っておけばいい。」

「はぁ・・、そういや名前は?あたしは恵比寿沢胡桃。」

「・・まだ此処にいるのかも決まっていないのに安易な・・。まぁ・・名乗られたのなら返すか・・。イチカ・ダインスレイフ・・いや、違うな。昔の姿に戻ったし、やり直しをしてるから俺は織斑一夏だな。」

「一瞬どう見ても日本人だろと思ったが・・織斑一夏、な。なら、一夏って呼ばせてもらうよ。」

「・・お前を見ていると昔の気の良かった相手を思い出して、調子が狂うよ。」

「あ?それは褒めてんのか貶してんのか?」

「一応、褒めている。おそらく頼りになるムードメーカー的存在だろう。」

「頼りにはなるかもしれんが・・ムードメーカーは他だな。こっちだ、この部屋の中に他は居るはずだ。」

そう言って通されたのは生徒会室。の下に『学園生活部』と書いてある。

少しジト目でソレを見てしまった。

「あー・・ソレはそのムードメーカーが貼ったんだよ。」

「なるほど、ろくでもないお馬鹿さんという事は見てとれる。」

「言ってやるな。馬鹿は否定できんが・・。」

そう言いながらドアを開けた。

「さっきの音は・・!?」

「誰誰?くるみちゃんの彼氏?」

「・・どなたでしょうか?」

三者三様の表情だな。というか、誰がアレ貼ったのかはっきりとわかった。

「・・おい、アレ貼ったの・・アイツだろ。」

そう言いながら彼氏なんたらいっていた奴を指さす。

「・・その通りだよ。」

呆れて頭に手を当てるようにして首を振る胡桃。

なるほど、大体の関係は分かってきた。

「あー、頭おかしいと思われるが・・異世界から飛ばされてきた錬金術師。織斑一夏という。一応、既に胡桃とは挨拶したが、此処でも言っておこう。俺はこの学園内に居る生存者の助けになる為に送られてきた。学園から脱出し、多少のサバイバル技術を教えるのが俺の役目だ。後はお前等とは行動を別にして生存者を助けるか、移動するかを決めて行く事になる。一時的なものだが、信用はしてほしい。」

「い・・異世界って‥」

「ん?くるみちゃんの彼氏じゃないんだ。でも、結構かっこいい人だね。一夏さん、・・なら『いっくん』で良いよね。私は丈槍ゆき。よろしくいっくん。」

「待てコラ。なれなれし過ぎだろ。」

でこを人差し指でつっつきまわしてやる。そこに明らかな大人が近付いてくる。

「あらあら・・。まったく困った子ですからすいません。所で・・危ない物は持ってないんですよね?」

そう言ってこっちに向ける視線が鋭くなった。ほう。この人は本当に大人として此処の責任を持っているんだろう。信用におけるな。

「ん・・その前に名前を聞いても良いか?」

「あ!すいません、私はこの学校の教師で佐倉恵といいます。それで・・」

「あぁ、佐倉先生さんね。覚えた。武器は・・持っていますよ。俺自体が危ない存在ではあるな。なんせ錬金術って言うのは此処じゃ魔法みたいに見えるものだ。一定のプロセスと媒体となるエネルギーの等価交換により、術式と計算を経てルーンの効果を発動し、ソレを更にエネルギーを元にして現界に具現化する方法で・・」

「・・すいません。こちらから聞いておいてなんですが、話が一切分かりません。」

「だろうな。分かった時点で先生も錬金術師になっちまう。うーん・・見せるのが良いか。」

そう言って風の術式で少し浮かぶ。

「・・は?」

「すっごーい!!手品?ねぇ!?手品!?魔法!?」

「いや、種も仕掛けもあるが・・分からないだろうからいいや。」

まだ名前を聞いてない生徒が目を見張っている。

「後は・・コレとか。」

水の術式でコップに水を入れる。更にそれを俺の手の上にうつして凍らせる。

「一瞬で凍ったよ!?すごいよ!ねぇ?りーさん!」

「え、えぇ・・そうね・・。」

「・・えっと名前を聞いても良いか?」

「えっと・・若狭悠里です。」

「・・信用できないか?」

「まだ貴方を知りませんから・・。」

そう言い合ってお互いの眼を見合う。俺は眼を瞑り・・

「ならば良し。」

そう言って頷き、眼を開いて満足したようにそう言うと全員が目を丸くして・・いや、丈槍だけは嬉しそうだった。状況を飲み込めてない様だな。

「いきなり訪れた男を信用するようでは危機感が足りん。こういう風に少しは敵対する方が相手にとっても動きづらくなるから、覚えておくように。特に見目麗しい・・年頃の女子達が居る様な場所なら尚更だ。その点では安心できたよ。胡桃は初めっから信用するからこういう風にたまには疑いを持つようにな。悪い男にだまされるぞ?」

「そ、それで良いの、貴方は?」

「良いも何も、それが現実的でお前さん等が取らなければいけない行動だ。あそこの頭の中がお花畑みたいなやつは一番注意な。こういうタイプは勘で判断する。次に胡桃よりも佐倉先生だ。大人のアンタが一番警戒するべきだ。おそらく腕っ節なら胡桃だろうが・・ここにいる以上大人のアンタが引っ張って行かないといけない。いくらつらくてもな。」

そう言ってみると手をぐっと握っていた。呆れたように溜息をつく。

「・・安心しろ。全て背負えと言っているわけじゃない。大人としての責任だけだ。もしも何かあった時の全責任じゃない。子供を引っ張って行くという責任だよ。つらいなら誰かに相談してでも解決しろ。それを自分の責任だと思い詰めるな。大人だからだと自分を追い詰めるな。全て背負いこむな。皆が生きて行く為には必要な責任だけ持って置け。たとえば・・食料をどこか外へ取りに行く際になったら、全員を率いて静観するための方法を考えて置く・・などだな。」

そう言いながら肩をたたくとぽろぽろと泣き始めた。おそらくかなりため込んでいたのだろう。辛くても誰にも言えなかったのだろう。声は殺してでも止めどなく涙は伝い落ちる。

「外から来た俺にならぶちまけても八つ当たりしても良いぜ。相談には乗るし、此処にいる限りは責任は俺も受け持つ。その為の存在だからな。

そう言ってハンカチで涙を拭いてそのまま渡してやった。

「さ・・て・・おい、何を睨んでいる?」

「めぐねえ泣かすなんて悪いの。謝って!いっくん!!」

「・・めぐねえ?」

「あー。生徒と年齢が近くて姉のような存在だからめぐねえってみんな呼んでいるんだ。」

そう胡桃が説明した。ふーん・・。

「じゃあ、俺もそう呼んだ方がいいのか?」

「ぜひ佐倉先生で。」

泣いていたはずのめぐねえは顔をあげてそう言った。

「・・泣かせて悪かったよ・・めぐねえ。」

「だから佐倉先生って呼んでって言ってるじゃないですか!」

「くははは。わるいわるい。佐倉先生、よろしくな。えっと、・・若狭さんも。」

「よろしくお願いしますね、いっくん。」

「・・こちらも何かあれば頼みますね、いっくん。」

「・・お前ら・・。」

良い笑顔でそう呼んで来やがった。クソ、やり返されたか。しょうがない・・。

 

 




更新は不定期ですので、申し訳ありません。
ではまた次回。


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第二時間目

各地で雨の被害が大変なようです。
私の家もなかなかな騒ぎになりました。
それでは、投稿いたします。
どうぞ。



「ふぅ・・。」

「あ、質問いいか?」

そう胡桃が手をあげて質問して来た。

「何だ?」

「制服着てるようだが・・学校に通っていたんだろ?年は何歳なんだ?」

ロングコートの下はIS学園の男子制服だった。

「・・歳・・か・・。」

聞かれて真剣に考えた。遠の昔に卒業した身だが、何故こんな恰好なのか。とかそこら辺は神の奴のさじ加減なのだろうか。とか、見た目に合わせたのか?とか。

「あー・・私達は三年生だからな。年下なら、そういう態度を・・」

「この体で言うと18ぐらいだろうな。元のホムンクルス体なら同じ大きさに作り変えたから年数から言うと二歳だったが・・おそらく普通の人間に造り戻してるだろうから、18か。作り変えて魂を込めた回数から言えば年齢は、・・・198・・ぐらいになるのか?」

「・・すまん、聴こえなかったみたいだ。何歳だって?」

「体なら18歳。魂は198歳、転生回数は二桁。・・と言った所だな。俺からすればホムンクルス体に入れ替える事が多々あった為に、死ぬのはそう怖くないが・・この世界じゃ体をつくる所がないからな。一旦死ぬと終わりだ。一応気をつけるが・・多少の無茶をしようとする癖が有るので、気がついたら注意してくれ。俺もなるべくは・・」

「「「ええええ?!」」」

「まてまてまて。とんでもない年齢と事実をぶちまけられても、はいそうですか。とは行かないんだよ。・・本当に規格外だな。」

「人間じゃないとも言っても良いぞ。」

「いや、それは絶対に認めない。ここまで私達に親身になってもらえる存在を人でなしとは言えない。言いたくない。」

「そう・・か。まったく・・。」

俺は胡桃の頭をなでる。

「な、なにを・・」

「昔いた妹にそっくりだよ。その跳ねっ返り具合とかな。」

「跳ねっ返りとは何だ!!」

手をあげて威嚇するようにした胡桃を置いて、若狭に近づく。

「それで、俺は何を担当しようか?」

「今のところは見周りと胡桃の無茶を押さえる役を頼みます。」

「・・なんで先生に頼ってくれないのですか?」

「あー、さっき泣かせた分、ちょっと・・」

眼を泳がせながら言うと佐倉先生は顔を赤くした。

「し、仕方ないじゃないですか・・。」

「後は、さっきの事からもここを仕切っているのは若狭だと思って。警戒していたならそこに言って、どう言う風に判断するかが見たかったのもある。」

「・・試されてたのは私の方ですか。」

「まぁな。そう言う事だ。俺自体もこういう点からも色々と注意点を探って行かなければ安心して送り出せないからな。」

「そう言うことなら納得です。本当に信用おける方かはまた少しして判断しましょう。」

「それでいい。」

「なら、見回り行って来る。そろそろ暗くなってきたしな。」

席を立った胡桃の横に立つ。

「俺もいくから、少し待て。」

暗くなってきた廊下に向けて俺は手に光りの術式を出してランタンぐらいの明かりをともす。二人で見周りに歩きだす。

「おぉ・・電気いらずだな。」

「だが、これを出していると光りの術式は使えないから少し戦力は落ちる。」

「おいおい、それで大丈夫か?」

「近付かれる前に水の術式で足元を凍らせて、伸ばした水の剣で首を落とせば十分だろ。」

「戦力過多じゃないか。お前一人で十分戦えるよ。」

「まぁ、女の子に守ってもらうほどじゃないさ。逆に、此処にいる間ならお前等の事は俺が守ってやるよ。」

「な・・何を・・。」

真っ赤になった顔の胡桃を見て昔の鈴達を思い出す。そして懐かしさを覚える。あぁ、老けた気がしていけない。

「まるで孫を見る爺さんみたいな顔になってるぞ。」

「自覚はあるな。だからこそ、お前等は女子としての危機感は持たなくて大丈夫という事だがな。」

「まるで女としての魅力がないと言われているようで、少し納得がいかないな。」

「孫と思われてる。と思って置け。・・む。」

廊下の端あたりまで来た。目の前には机とワイヤーなどで出来たバリケードが有る。バリケードの向こうにまで光がいくと、そこには一体の感染者がいた。

「一体か・・なら・・」

「待たんか。」

走り出そうとする胡桃の首根っこを捕まえた。

「ぐえ・・な、何をしやがる・・。」

「若狭から言われたからな。お前の暴走を止めろと。まったく・・。一体ならそこまで危惧しなくても良いし、もう少し危機感を持て。それに此処には俺が居るんだから、そう飛び込む事はいらないと分かるだろう?猪武者じゃあるまいし、突っ込むしか能がないのかお前さんは?頭を使って向こうに頭を向けた時に背中からやるという方法などもあるだろうに。まったくもって頭を使う気が無いのがマル分かりだ。」

「そ、そこまでにしてくれ・・。すっごく説教されている気分になる。」

「説教をされているというのを自覚していないとはますます度し難い。後で若狭からと佐倉先生からも事情を話して怒られてもらう事にしよう。」

「ひー、勘弁してくれ。」

そう言っているうちに俺は錬金術式を取り出して先ず全体を凍らせる。そのまま風の錬金術に代えてカマイタチを発生させてその場で氷ごと砕いてバラバラにする。

「・・もう私、いらないだろ。」

「お前さんは俺の見張り役だよ。若狭から見れば一番腕っ節が有るんだから、何かあってもすぐに対応できると踏んでいる。」

そう言って背中を向ける。

「・・信用されないのはなれているんでな。」

そう言って俺は歩きだした。後ろから何も言わずに歩いて付いてくる音がした。

 

 

そして、生徒会室に戻り若狭と佐倉先生に話をすると胡桃は正座で説教をされ始めた。

俺は少し離れた位置にパイプ椅子を置いて錬金術の本の完成の為に専用の机を出して、錬金術のインクを専用で作った羽ペンにつけつつ書き込む。

「何しているの?」

丈槍が来てソレを覗き込む。

「うえ・・訳わかんないよ・・。見てるだけで頭が痛くなりそうだよ。」

「理解できる方が恐ろしいがな。見るだけなら下がっていろ。背中にもたれかかられると面倒なんだ。話し相手くらいはしてやるから大人しくしていろ。」

そう言いながらさらさらと書き始める。おそらく錬金術が分かる相手じゃないとこの意味は分からないだろうという言葉を書いていく。

「いっくんは昔・・ここに来る前はどんな事してたの?」

「・・年上と分かっても態度を変えないその根性には、ある意味尊敬の念を覚えるよ。・・昔か。・・学生時代は宇宙を目指す為に作られたロボットに乗っていたな。結局は争いに使われたりして兵器と化してしまった、悲しい過去を持つものだが。俺はソレを元の目的に戻す為の活動をして世界を回っていた。宇宙開発の為の力という物ならそう使うべきだとな。一応、弟が居てそいつと一緒に世界中の戦争に使われるそのロボットを止めていた。」

「一応?血が繋がって無いとかそういうやつ?」

術式の形状を書き込みながらソレを聞いた俺は、一度きりのいい所までペンを進めて手を止めてペンをインクつぼに戻す。

「いや、昔に捨てられてな。初めに胡桃には名乗ったが、外国で誘拐されて、保護者から見捨てられて更に人身売買で売られた先に行ったからな。日本名だと面倒だったので、日系の血が多いハーフという事で、名前を【イチカ・ダインスレイフ】と名乗っていた。もう意味の無い名前だ。」

「ダインスレイフって何?意味が有る言葉なの?」

「捨てられるほどの運命を背負っていたという事から【ドゥベルグ・ダイン】という悪い刀鍛冶が作った魔剣の名前だ。そう言う本は読んだ事がないだろうがな。小難しい事が書いてあるからお前さんには理解できそうにないだろう。」

「あー・・とりあえず、悪い剣の名前なんだね。」

「・・お前さんにはその理解で十分だ。【今宵の虎鉄は血に飢えておる。】なんて言葉聞いた事無いか?」

「あー、なんか昔の時代劇とかでやってたとか。よく男子が傘を持って振りまわしながら言ってたよ。」

「それと一緒で【誰かを斬らなければ鞘に収まらない呪い】を持つ魔剣だったんだよ。つまりは俺自身の人生も呪われていたと言いたくてそんな名前をつけたってわけだ。結局は俺の周りにはいい奴が増えて来て呪われた人生なんてもんじゃなかったがな。・・幸せだったよ。割とな・・。」

またペンを持って書き始める。そこで気がついたが説教の大声が聞こえなくなっているので顔をあげて見てみると、

「うおっ?!」

胡桃は涙目でこっちを見ているし、佐倉先生はハンカチを咥えて涙流しているし、若狭に至っては顔を押さえて肩がふるえていることから泣いていることが明らかだった。

「ご、ごめんね・・そんな話させちゃって・・。」

「いや、別に。此処もある種、退屈しそうにないしな。アイツ等が逝った後も別に一人じゃなかった。俺にはここには連れて来られなかった【自動人形(オートスコアラー)】達が四人いたからな。騒がしい奴等がいた分寂しいなんて思う暇なんざなかったよ。」

ペンをまた置いてその四人の映像を術式の陣の中に映す。

「わー・・凄いカラフル。皆いっくんの友達?」

「友達・・いや、一応俺の使いだが・・仲間とでも言っておこうか。」

「仲間・・じゃあ、今は私達がその四人の替わりになれるね。」

「お前さん等には無理だよ。コイツ等ほどアグレッシブになられたら困るしな。」

肩をすくめてインクが渇いた書を閉じて練成陣に収める。

「そんじゃ、・・俺はお前さん等とは別な部屋で寝ようと思うから、何処が良いのか教えてくれ。準備しておくか、掃除の必要はあるだろう?」

「生徒会室は朝の食事を作るからうるさくなると思うし・・隣は私達の部屋で・・」

「更に横は私の部屋なんですよね。」

若狭と佐倉先生が答えた。

「別に気にするな。日の出位には起きて見回りをしている。昔の生活も脳だったから気にする事は無いからここで寝かしてもらう事にしよう。ソファは使って良いのか?」

「体痛めません?」

「別に。昔は壁にもたれかかって寝る事もあったからな。戦場とは甘い事は言っていられない。多少位痛くても死を経験した俺からすれば問題などは無い。」

「はぁ・・。」

そして、食事をとって遅くなったころに寝る事に。

 

「・・・面倒な事に巻き込まれたのは俺じゃなくてあいつらだな。」

寝る気にならずに色々と考えていた。

「どうやったって普通は生まれないはずの細菌、とてつもない感染拡大、それに対して自衛隊、警察、または他国の軍事介入も無し。おかしすぎるからな。おそらくだが・・ここは実験場なのだろうな。もしかして箱庭・・なのか?地図が無いから分からんが・・。」

一体どうなっているのやらこの世界は・・。

「はぁ・・・。」

ため息が出るのはしょうがない事だった。

 




因みに、私の家の近くの溝も氾濫しました。
車庫が少し浸かった程度の被害で、問題無かったので助かりました。
隣町では床上まで浸水したそうです。
恐ろしいのは細菌などだけではないですね。
災害など人の手でどうにかできる事ではありませんからね。
がっこうぐらし編、頑張って書いてます。
では、また次回。
またね。


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第三時間目

各地の被害が酷いですね。
幸い、親戚は被害に遭っていませんでした。
親戚の近くの家は床下浸水が有ったとか。
晴れていても土砂がゆるんで落ちてくるかもしれないので、気をつけましょう。
では、授業開始です。


錬金術の精製用に校内にいた感染者を始末してエネルギーとして収集して行く。

「う・・あぁ・・。」

「消えろ、亡者よ。」

銃を剣に代えて首を切り落とす。周りには血があふれているが・・それさえも変換する。

そして、使用していない一つの部屋を借りて工房として色々と展開した。

「さて・・貰った【ラピス・フィロソフィカス】は一つで、銃のスペルキャスターだったからな・・。他の装備用にも必要だからな。ラピスの純度は・・命を練成して輝く。ほぼ死体を変換しても得られるエネルギーは少なすぎるな・・。生存者は殺したくはないし・・どうしたものか・・。」

面倒な事に素材となるエネルギーが少なすぎる。コレでガリィが居れば死体からの記憶をエネルギーに変換してもらいもっとましな量が取れるのだがな。

いきなりガリィが居ない事で困るとは思っていなかった。ミカが居れば戦う必要はないし、守りも完璧だ。偵察ならファラが居れば良いし、囮にはレイアが居れば問題ない。こう考えると俺はアイツ等に頼り過ぎていた気がするな。そこも少しは直さなくては・・。

「少しさみしいと思ってしまうとは・・俺はこんなにも弱かったとはな。なんともみじめだ・・。」

しょうがないので俺の感情と要らない記憶をエネルギーとして昇華して、燃やして注ぎ込む。198年の記憶などそう必要な部分などはない。・・だとしても、昔のアイツ等の記憶だけは消すわけにはいかないな・・。

「・・ふぅ・・。ラピスの研究はこれぐらいにして・・ギアの調整に入るか。今この世界には・・おい、なんで全部のギアが揃っているんだよ?ラウラとマドカ、冬二に渡したギアまで帰って来ているじゃないか。アイツ等が死ぬと共に消えたはずだったのに。」

いや、天に昇ったとしたら、神であるアイツの管理下に入るか。なら回収してアップデート時に返却されたか?

まぁ、問題はない。一応問題はない。イグナイトモジュールも問題はないし、・・は?」

何故かガングニール・ホワイトの適合係数が俺にある状態になっていた。俺にはこのガングニールは合わなかったはず・・。しかし・・そうか・・俺とアイツが繋がった結果という訳だ。手を伸ばし続けた意味はあった。

「まったく・・。」

苦笑いになりながらも、この世界に来て一番安心した瞬間だった。

「俺とアイツの繋がりか・・。面白いな。」

織斑として名乗り直したら俺もガングニール・ホワイトが使えるようになっているとは、なんとも言えない繋がりを感じざるを得ない。

「まぁ、死を灯すしかできない、今の俺には過ぎたものだ。」

この世界で適合が出来るなら、丈槍か?繋がる力を持っていそうだ。

ならまとめる力のアガートラームは若狭だろうな。戦う事にはあの先生は向いていなさすぎる。胡桃は・・どちらかというとラピスの力を使わせたいな。髪型から言うとシュルシャガナだが・・アイツは小細工よりも全力で壊すイチイバルや切り裂くイガリマあたりか?

それでも、今は考えても意味をなさないか・・。

ギアの状態を確認して全てを収めた。もし、誰か適合するようなら渡すのもありだな。生きて行く為に・・。

「力を持つ覚悟が有れば・・だが。」

外を見ると雨が降り始めていた。

 

雷が鳴り始めたころに朝食が準備できたらしく呼ばれた。

「男性には少ないかもしれませんが・・。」

「問題はない・・というか、最悪俺の食事は抜いてくれ。助けに来たのに食事事情を圧迫するのは気が進まん。」

「いえ、お世話になるならその分を返すのは当然ですから。先行投資です。」

首を振り、はっきりとした言葉で考えを伝えてくれる若狭は、こちらの意をくんでくれていてこのメンバーの頭脳というのがよくわかる。

「・・それなら、量は少なめにしてくれ。元々少食なんだ。錬金術師というのは自分でエネルギーの生成が出来るので外部からの供給が過多になると少し、中毒みたいになってしまう事が有るからな。」

「へぇ・・背も高いし、ガタイも良いのに少食なのか・・。すごいな。」

そう言いながら胡桃が肩や腕をもむ様に掴む。

「くすぐったいのだが・・。」

「あぁ、すまないな。」

そう言いながらも触るのをやめない。いや、コレは筋肉の付き方を調べているのか?

「・・腕を使う何かをしていたな。後は、・・どう言えばいいのか分からないな。」

「確かに腕はよく使っていたよ。楯と剣を使ったり、ガトリングを構えたり、鎌を振ったり、槍で貫いたりと。戦場をかけ回ったんだ。人の死をいくらも見て来た。・・どうだ?俺が怖くなったか?」

そう言って睨んでみるが、

「まったく。」

そう言いながら顔の前で手を横に振る。

「・・俺は殺人をする様な男だぞ?」

「それでも私達を助けに来たというんだから、頼りにしてるぜ、・・色男!」

胡桃はそう言いながらも背中を叩く。まったく気にしていない明るい顔だ。

周りを見ると丈槍は気にしていない・・「んぅ?」なんて言いながら朝食をとっている。

若狭は少し警戒しつつ、何かを考えているようで目を細めている。佐倉先生は明らかに少しどう言って良いのか分からないのかおどおどしている。

「まったく、甘い奴だな。」

「せっかくの強い戦力だ。あたしが今まで苦労した分を助けてくれるというんだからな。頼りにさせてもらわないとな。」

「くく、俺が居なくなるまではこのメンバーは守りきってやろう。危害を加えようとする全ての脅威からな。」

食事を終えている丈槍を見ると俺の皿を見ていた。

「・・もう食べないの?」

「・・・はぁ、食え。育ち盛りだろう。」

そう言って俺の皿を丈槍に渡した。

「わーい、いっくんありがとー。」

受け取ってすぐに食べたので若狭が止める暇もなかった。

俺は肘付いてその光景をため息をつきながらも苦笑してみていた。

寂しがる事はないな。此処はこんなにも騒がしいのだから。

 

朝の見回りという事で胡桃と共に校内を見回る。

歩きながら俺は少し考え事をしていた。病原菌にしては散布されてからの日にちがたっているだろう遺体もまだ活動している。体の中の活動エネルギーは枯渇するはず。

そもそもからの病原体が普通じゃないという事か・・、はたまた同種を食べる事ででもエネルギーに変換できるのか、・・俺が知らない生存者を食べ続けているのか・・。いや、それなら増え続けるだけで、やはり全体個体数に限界が来る。町中に居るだけでは多すぎる?しかし・・情報が少なすぎるな。

「何か考えているのか?眉間がこーんな事になってんぞ?」

そう言いながら自分の指で眉間にしわを寄せる。

「・・しわが残るぞ。将来きれいな肌でいたいのならソレはやめて置け。」

「うわ・・ソレは嫌だな。」

そう言いながら指を放す。俺は外を見た雨がひどくなってきたようだ。

「外が雨だからな・・アイツ等は雨を嫌って建物内に来るから気をつけよう。」

「それも生前の記憶な・・そうか・・。」

気がついた。細菌ならば、その体の中には何万、何億という生命が有る。

「く、くくく・・はあはっはっは!」

「ど、どうした?」

「できる、新たな【ラピス・フィロソフィカス】の精製エネルギーが得られる方法が見つかったぞ!これならば問題はない。体を媒体としてその中の生命エネルギーを変換する時点に術式を含めて体と魂だけでなく、その体内の生命自体からもとる術式を挟めば、全てをエネルギーに変換できる。一度ウィルスをエネルギーに変換して、すると一時的にだが死体が動いている以上、生命活動の動き自体はあるはずだ。そこに変換をかけた術式を挟めば全てを変換できるはずだ。そうすれば変換効率も死体を変換するよりも大きく変えれる。・・ならば、術式を組み込んだ弾丸を撃ち出す方が効率的か。遠距離からでも撃つごとにエネルギーは収拾出来てそれに込めて地面に落ちるようにしておけば、後から収集しやすい。・・胡桃、戻るぞ。効率のいい奴等の退治方法が見つかった。俺は工房にこもってソレをつくる。一人じゃまた若狭に文句言われるからお前も帰って来い。」

そう言って返事を待たずに俺は歩きだす。完成すれば、ラピスの装備がまた作れる。外にも出れるし、奴等の退治も一気に楽になる。周りを掃討すれば、おそらくは行動範囲も広がるはずだ。せめて二階か一階までは自由に移動できるようにしておきたいな。

「ま、待てよ!分かった行くから置いて行くなってば。」

そう言いながら俺の横についてきた。途中で一階から階段を上って来た、ソレの首に剣を挿しこんで、簡易だが少し変化させた術式でエネルギーに変換する。

「・・ふむ、従来よりも簡易でも二倍以上の高率だ。コレでなら変換効率をあげた術式なら五倍以上の見積もりだな。やはり急ぐべきだ。」

俺は胡桃の手を掴んで持ち上げ、走り出した。

担ぐようにしたのは最後のバリケードを越える際に止まる必要がない様にだ。

バリケードを風の術式を使ってジャンプで越えて胡桃を下ろし、文句を言いたそうな顔を無視して工房へ入り鍵を閉めた。そして、術式の研究を始めた。

 

因みに工房や三階の教室、廊下の窓はすべて術で直した。俺が工房で使うのに窓が割れたままなのは都合が悪かったからだ。工房は防弾ガラスと樹脂で固めているから割れる心配はない。奴等がバリケードを越えて来た時でも俺の工房は完璧だ。代わりに寝る様なスペースはないが。

一度かけらを集めて練成を使い溶かして固めて窓の形にして結合させて、ソレをはめ込みながらも持っていた樹脂の接着剤を隙間に埋め込みながら直した。

普通に使える程度には直っている。

一部、ステンドグラスを遊びでつくったら、丈槍が祈りにいくようになった。俺が知っている神の像を作って、書物を持たせたらそれに少し若狭が食いついて、何の神様かと聞いてきた。

俺の知る唯一の顔見知りで、此処に俺を送った神だというと若狭も祈るようになった。

アイツってなんの信仰なんだろう。知恵や英知の神・・後は世界をつなぐ分から縁談の神?もしくは、祝福の神・・なんてのもあるかもな。

 

 




雨が降って居なくても川が土砂の影響から堤防が決壊したり、氾濫したりするらしいです。
あまり増水している川の近くには行かないようにしましょう。
では、また次回。
またね。


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第四時間目

どうも、私です。
暑いので壊れそうです。
どうしてこうも毎日暑いのか・・。
皆さまも、熱中症に気をつけてください。
因みに私は過去に熱中症と脱水、カリウムなどのミネラル不足で倒れかけた事が有ります。
水分塩分ミネラルの摂取は怠らず。
では、授業を開始します。


俺は術式をつくり、ソレを今まで集めたわずかなラピス・フィロソフィカスの為のエネルギーを弾へと変換。これもまたある種のラピス・フィロソフィカスなのだが、それに更に集めた命を吸収してエネルギーへと変換し閉じ込めておく術式を組み込んである。小規模なエネルギーの膜でそれ以上のエネルギーを包み込むような形だ。言わば、オブラートの様な物だ。消費して作った膜はまたエネルギーに変換して再利用する。

そして、俺は変換した術式のコピーを取りいつでも作れるように簡易の弾丸製造の装置も作って、持ち運べるようにしておく。

それが終わり、腰にラピスのファーストローブのスペルキャスターである銃を腰につけて、朝の挨拶に部屋から出る。・・が、

「・・夕方・・だと・・?」

オレンジ色の太陽が見えた。おそらく一日と半日は過ぎてしまったようだ。

生徒会室・・学園生活部の部屋に顔を見せると、初めは不安そうな顔が俺の顔を見る事で明るくなった丈槍がいた。

「いっくんが、一日以上見えなかったから心配したんだよ?もう少し皆の事も考えてよ?いっくん。」

「む、それは・・その・・悪かった。昔からこういう性格でな・・八徹とか普通にしていたから・・その・・心配かけた。すまん。」

「うん、それでよし。皆にも謝っておいてよ?りーさんなんかはかなり心配していたよ?自分が信用しない分で顔をなるべく合わせようとしないんじゃないかって・・。」

「そんなつもりはない。悪い癖でな・・俺は自分の気が済むまで、実験や色々と考える癖が有って一定の結果が出るまで梃子でも動かなくなるんだ。まったくもって、俺が悪いとは分かっているんだが・・今回は此処にいる皆の命を救うための開発をしていたんだ。」

「ソレは良いから、悪いと思ったんだったら先ず謝る。言い訳よりも謝ることが重要だよいっくん!?」

「むぅ!?・・よりにも寄って丈槍に正論を言われるとは・・。」

「いっくん、それどういう事!?」

そう言って手をあげて、怒っているアピールする丈槍の頭をなでる。一応言われる事はその通りで、謝るべきだろう。

「丈槍、皆はどこに居るんだ?」

「んぅ?えーっと、りーさんは昨日の雨で屋上の植物がどうなっているか確認に行くって。くるみちゃんも一緒について行ったよ。めぐねえは記録所を書くって部屋に居るはず。それで私はお留守番してたの。いっくんが来た時に探さないようにね。」

「ソレは助かった。なるほど、先ずは佐倉先生に声かけて屋上にでも行くか・・。」

そう言って俺は背中を向けて生徒会室を出る。

女子の寝室と逆の部屋の佐倉先生の部屋に生きノックを四回。

「織斑一夏、部屋から出ました。心配かけた挨拶なんですけど、入っても良いですか?」

『え?あぁ織斑さん。どうぞ。』

部屋の中に入ると端っこにベッドが有り、机といす、ソファが置いてある簡素な部屋だった。

「・・どうも、すいません。丈槍に聞いたんですが、心配かけたようで。」

「そうそう、皆心配したんですよ?私も教師ですからね、織斑さんが制服を着ていると生徒と同じように思ってしまうんですけど、部屋から出てこないと聞いて初めは不登校の生徒を想像しちゃって。」

「いやいや、ソレは置いておいてください。長くなりそうだ。とりあえず、研究がひと段落したんで出て来ましたって言うのと、心配かけましたっていう謝罪です。このあと、残る二人にも怒られなくちゃいけないので。」

「あら、・・確かにね。怒られてらっしゃい。」

「う、・・うぃ。」

子供を見る様な目で見られてむずがゆくなりなんか変な返事をしてしまった。

 

「ここか。」

屋上へ出るドアを開けると、胡桃がシャベルを構えてこっちを睨んでいるのと、警戒した感じの若狭がいた。そして、俺を見て二人とも表情を緩める。

「なんだ、お前か・・。」

「何かあったのかとおどきましたよ。」

そう言って二人は首を下げるようにする。

「あー、二人とも、その・・心配かけたようで‥すまんかった。」

そう言うと近付いてきた胡桃が俺の胸を指でつつく。

「そうだよ。お前、一日以上出てこなかったが、どうしたんだ?」

「あぁ、その皆を助けるための新しい物を開発していた。コレが有ればより効率的に奴等から助ける事が出来るようになるから。」

「・・つまりは、私達の為ですか?」

「俺がここに居る理由はそれだからな。自分の為になる事でもあるが・・それなら焦る必要はないからな。ゆっくり進めても良いが、此処にいるメンバーを助ける為になら急がなければいつ危険な目に会うか分からないからな。急ぐにこしたことはない。」

そう言うと、納得したのか口元に手を持っていた若狭が頷く。

「分かりました。私も貴方を信じます。」

「あ?いま、信じるのか?もっと後でも・・。」

「コレ以上は貴方を信じない自分が嫌になりますので。それに、貴方の貢献を無下にするほど私は冷徹であるつもりはありません。信じれると思ったなら信じる。だから・・私達を助けてください。」

「おぅ、ソレは任せろ。残してきた奴等が必要に応じて来ると聞いているからな。それが来れば・・」

『じりりりり・・』

急に音が広がり俺達はその音の方角を見る。

屋上の柵の上に電話が置いてある。旧式のまわすダイヤル式の電話がベルの様な音を立てている。その電話にはコードも何も付いていない。

(いや、早すぎるだろ。)

そう思い電話を取る。

「いくらなんでも早すぎるだろ。」

『いやぁね、・・いたいいたい。オートスコアラー達が暴走して居てね?早くマスターの元に送り込めってさぁ・・がふぅ?!蹴るのはやめろ!大人しくしなさい!!』

≪マスター!きこえるかー?≫

≪このボケなすび!さっさと送れっつってんだろうがごらぁ!!≫

電話の向こうで聴こえたのはミカとガリィの声だ。何やってんだアイツ等は・・。

『もう少し君達の仲が深まるまで待ってもらおうと思うんだが、ちょっと一言でも、言ってもらえな・・いってぇ!!やめろって言っているだろう!!』

「あぁ、・・聞こえるように頭上に上げろ。」

『マスターなのか!?ひっさしぶりだゾー!』

「すぅ・・この馬鹿共が!!大人しくする事も出来んとは言わさんぞ!!俺がこちらでベストなタイミングで送ってもらう事は決まっているんだ、それまでおとなしくしておけ!そうじゃないと今度会った時にぶっ飛ばすからな、覚えておけよ!!・・・コレで良いか?」

『流石だね。すぐさま全員台座の上に戻ったよ。声を出して居なかったけど、ファラはステップ踏むように足踏んでくるし、レイアは派手好きの癖に、あまりのいらつきで地味にコインを顔に撃って来るって嫌がらせをしてきたからね。正直助かった。』

「まったく・・。ガリィ、お前の入れる紅茶が一番うまいからお前が茶をもてなしておけ。そうすれば今回の事はチャラだ。いいな?」

『はぁい!ガリィちゃん丁寧に頑張りまぁす♪』

「よろしい。それじゃ、コレだけか?」

『えっと、・・いや、ラピスの事でも一つあってね・・どうやら通常の細菌じゃない様だ。と言う事を教えておこうかと・・。』

「なるほど、やはりか。ソレは俺も考えていた事だ。ここまで長期で活動できる死体というのが腑に落ちんからな。どちらかと言うと脳の活動を変更させていて、体的に言えば結局は生きているのがほとんどだが、一部の皮膚などが壊死している状態と言う事か?そして、死体を食うが排出物などは見えない事から、エネルギーとして吸収し、その排出物がわりに皮膚などが通常よりも老化してボロボロに見える、と仮説を立てている。」

『こちらも真実は知らないからねぇ、真相は君が掴んでくれ。とりあえずはそれだけだね。』

「ラピス関係あったか?」

『君は命のエネルギー化をしているのだろ?ならばそれが生きて魂が有るかは重要な事だ。・・あぁ、生存者の中には屑が居るらしいからね・・そいつらに関しては好きにすればいい。殺してラピスの素材にするもよし、感染者の囮に使うもよし。君が負ける事は無かろうが、気をつけたまえ。』

「心に刻んでおこう。では、また。ガリィ達も準備だけはしておけ。いつでも来れる様にな。会う日を楽しみにしている。」

そう言って電話をきる。

振り返ってみると二人が驚いた顔をしていた。

「今のは誰から・・?」

「神さま。っつたらいいのか?俺を此処に送り込んだ転生の責任者。今俺の自動人形が暴走して『俺の元に早く送れ』って暴力振っていたらしいから、叱って置いた。んで、いつかこっちに来る時には準備完了して来いって。神さまが送って来るから、いつ来るかは知らんが・・。安心していいぞ。少し癖が有るが、俺の手足となって動く凄い存在だ。まぁ、お前等から見たらとんでも技術だろうだが。」

見るとそこにあった電話は無くなっている。

「まったく、近くに居ても居なくても困った奴らだよ。」

ふぅ、とため息をつくとクスクスと笑われた。

「織斑さん、まるでできの悪い生徒を見る先生のようでしたよ?」

「作ったのが俺だから、困った子供を叱る親の様な感じだがな。」

そう言ってアイツ等との過去を思い出し、頭を押さえる俺を傍から見て居た二人が笑っていた。

 

 




学園編と言う事で、今度から授業開始を挨拶にしようかと。
あぁ、こんな事を言い出したのも暑さの所為かと。
空気が『暑い』ではなく『熱い』と言っても過言じゃない気がします。
ではみなさん、またね。



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第五時間目

皆さんどうも。私です。
暑い・・暑すぎる・・。
あんなに雨が一期に降らなくてもちょくちょく、ゆっくり振ってくれればよかったのに・・そう、ぼやいてしまいます。

それでは、五時間目の授業を開始します。


『ダガァン!』

「ぐぅあぁ!!」

『チャリーン』

夜の町中に響く音。そして、銃を構えた鎧姿の男。

「まったく・・学校来ているなら大人しく家に帰ってろってんだ。」

道沿いに歩いて軽く地図を書いて、面倒な位置に『奴等』を見つけたら撃ってラピスに取り込むという行動を繰り返していた。コレが初めての実験だが、なかなかに良いようにできているようで、中の生体エネルギーを取り出せば繰り返し使える弾丸となっている。形はとりこむと、アルカノイズの発生時のクリスタルに似ているが、ソレを一度練成機に入れたら弾丸状に戻り出てくる。ソレを繰り返す事で持ち歩きようの簡易錬成機にエネルギーをためている。持っている弾丸が少なくなると練成機に入れてエネルギーを抽出し、また使えるように戻すという繰り返しだ。

「コンビニ・・か。昔ながらに悪い奴がたむろするには持って来いという訳だ・・。」

学校に一番近いコンビニだしな。そう思いながら店内を物色する。結構な物が無くなっているようだ。しかし、缶の飲み物は持っていけるだろうから裏側に回り、箱ごとジュースを持って帰る。更にペットボトルもあったのでそれもついでに持って行く。

縦に重ねて引っ張れる台車が有ったので、ついでにソレを使って三箱ぐらい持って行く。

更に、冷凍庫内は駄目だが、少しながらに缶詰めが残っていたのでそれも一緒に持ち出す。

面倒だが、あまりこの世界の物は亜空間の物入れには入れたくないので手で持って帰る事にしている。

『ガラガラガラ』

夜中だからなのか、やたらと音が響き奴等が近付いてくるが、ソレを撃ってまた練成機にためて歩く。

朝になるまでにどの程度たまるのか試しておきたいからだ。それによってはまたやり直しになるかもしれないのだから。

「ラピス・フィロソフィカスの練成は本当に疲れる。命の輝きってのは、こんなもんで作れるのか不安でたまらないな。」

そうぼやきつつも、集めては練成機に収集。ソレを繰り返し、学校近くに来たので荷物を担ぐ。

「さて、これ位で良いか。今日ぐらいは寝ている姿でも見せよう。」

昇降口から風の術式でそのままバリケード内に入り、生徒会室・・もとい、学園生活部の部室に入る。

荷物を横においてソファに横になり、久しぶりにコートと帽子をつけて寝た。

眼を瞑り、しばらくすると懐かしい学園時代の記憶がよみがえった。色々と大変だったが家族と呼べる皆が居たあの頃はとても楽しかった。そして、その前の世界はつらかった。自身が見据えた正義は偽善で、結局は皆を不幸にしてしまったから。そんなことは繰り返さないと決めて次の世界は過ぎて、今の俺はどうなのか。そう思うと人の気配がしたので俺は起きる。まぁ、・・天国やらで幸せにしてると良いな。

「あ、起こしたか?悪い。」

「いや、元々敏感なんだ。よく寝れたし問題ない。」

「・・・いや、お前学校抜け出しただろう。」

「・・何故そう言い切れる?」

「横見てみろ。」

そう胡桃に言われて見たら、そこには積み上げた段ボールと缶詰の入ったリュックが。

「あ・・・。」

「お前って、時々ものすごい天然やらかすよな。」

「まぁ、・・その・・手土産だ。実験に出て居た際に手に入れて来た。」

「ソレを手に入れに行ったんじゃないんだな?」

「それならもっと効率よくやる。俺の武器の実験だ。皆に声かけたら、また実験室にこもるつもりだ。コレがうまくいけば一気に戦力アップできるからな。」

「ほぉ~。なら頑張ってもらうか。仕方ないな、そうでもしないと生き残れないだろうしな。私だって囲まれたらお終いかもしれないし。」

「そうならんように俺が居る。そうだな、お前さんの力をあげることは可能だな。」

「どうやってだ?武器とかくれるのか?」

「いや、俺が持っているのはお前さんには扱えるようなもんじゃないな。代わりに身体能力をアップさせる事は出来る。」

「へぇ・・どうやって?」

「とりあえずは、・・映画見て飯食って寝る。」

「そんなんで強くなれるか!!」

「しまった、コレは漢(おとこ)の特訓方法だったな。・・いや、確かガングニールの元の持ち主である立花響もコレで強くなったんだったか?なら女でも・・んー。仕方ない、普通に武器の間合いの訓練だ。今回は早く出てくるつもりだから、それが終われば特訓してやろう。」

「なるほど、武器の使い方の訓練と言う事なら分かる。頼むな。」

「おう。」

そこまで話していると残りの三人がやって来る。

「おー!?ジュース、ジュースが有る!!」

「こら、由紀ちゃん。朝の挨拶。」

「あ、おはよー、いっくん。」

「おう、おはようさん。若狭も佐倉先生もおはよう。」

「えぇ。おはようございます。」

「はい、おはようございます。」

朝食を軽く食べて済ませる。

「いっくん、それだけでいいの?もっとくるみちゃんみたいにがつがつ食べて良いんだよ?」

「なんで対象があたしなんだよ!?」

「いや、俺はあまり食わない方だから良いんだよ。それに、メンバーの食料を減らす方が問題だしな。俺なら最悪一人でいなくなっても問題はないから気にすんな。」

「おいおい、まだそんなこと言ってんのか?」

「そうですよ。貴方ももうメンバーの様な物なんですから。」

「織斑さん、あまり周りに面倒かけちゃいけませんよ?」

「ぐむ・・はい。」

どうもこのメンバーには弱い。昔を思い出させるからか・・あるいは・・。まぁいい。

「とりあえず、俺は実験に戻りますんで。昼は用意しなくて結構。夕方ぐらいに出てくるだろうから。」

「また籠るらしいぜ。まったく。」

「まぁ、戦力の増強と言う事でな。んじゃな。」

そう言って素早く部屋から出て実験室へこもる。

持って帰った練成機から大型の練成陣へとエネルギーを流す。そのまま練成を始めてしばらく、

「・・ふむ。」

時間が経過するにつれて一気に形が出来たそのハート形をよく観察する。

「やはり、元が俺の知っているラピスとは違うようだな。」

ラピス・フィロソフィカスと言うよりも、ラピス・ラズリと言った方がいいのではないかという色合いだ。

俺が元にしてあるからこうなったのかもしれない。アイギスの事が有るから俺に合わせると紺色っぽくなるのかもしれないな。

あと一歩で完成すると言えるだろう。

今日はエネルギーが付きそうなのでここら辺で終了しておく。

部屋から出ると、予定通りに夕日が見える。かと思ったら外は雨だった。

「あめ・・か。」

生徒会室に行くと皆いなかった。

「む?なぜ・・あぁ、置き手紙か。」

ソレを読んで焦った。

「購買部に行く・・だと!?外は雨だ!奴等は校内に侵入してくるぞ!?」

俺は焦って廊下に出た。そのまま走り購買部のある2階へと飛び降りる。

途中で奴等がいたが関係ない。走って行くと被服準備室の前に人だかりの様な物が・・

「クソ!間に合わなかったか!?」

ファウストローブを鎧に変化させ、銃のキャスターを剣状にして奴等の首を飛ばしながら近付く。

「どけ!どけ!!どけ・・な!?」

そこでドアを叩いている下には佐倉先生が・・。

肩に噛まれた跡が有り苦しんでいる状態だ。

「・・しょうがないよな。」

俺は一気に周りの敵を一掃するために鎧各種の銃を撃った。ドアに向けては撃たないように、ドアを背にしてだが・・。

肘、踵、膝、頭の飾り、そこら中に仕込んである銃で撃って周りを一掃。

そして、俺の周りには奴等が居なくなった所で、亜空間収納から神さまに貰った抗ウィルス薬を取り出す。佐倉先生の肩にある噛み跡へ向けて、刺してトリガーを引いた。

「ぐぅ・・あぁ・・うあああぁぁぁぁ!?」

「大人しくしろ!効けば治るはずだ!耐えろ!生きろ!生きる事を諦めるな!!」

もがく佐倉先生を抱きしめるようにして押さえる。しばらく空を掻くようにしていたその腕は次第に動かなくなり、力が抜けたように落ちた。

「・・すぅ・・すぅ・・」

息はある。脈は少し早いが、問題はちゃんと効いたかだ。

「此処にいるのか!?中は無事か!?」

『一夏か!?』

『織斑さん!!』

内からカギが開き扉をそっと開ける。

「めぐねえが・・めぐねえがぁ・・」

そう言って胡桃が泣きそうになり、中を見ると丈槍が気絶して若狭に膝枕をされていた。

「佐倉先生なら大丈夫・・だと思う。」

「どう言う事!?」

若狭が眼を見開いて聞いてくる。

「俺が一個だけ持っていたワクチンと言うか・・抗生剤と言うか・・俺が感染した時用に貰っていた分を打った。おそらくは、問題ないはずだが・・神様も言ってたんだがこの病原体はどうも変異が早いのかもしれない。完全に効くとは限らない。」

「それでも!!それでも・・今は助かったのか?」

「おそらくは・・。起きた時に検査をしなければ分からない。」

「それなら・・良かった・・。」

「とりあえず、皆・・おつかれさま。先生は俺が運ぶから、丈槍を頼む。」

「私が運びます。くるみちゃんは周りを警戒して。」

「分かった。」

そうして四人を上まで連れて行き、何とか生徒会室で休める事に。先生は俺が寝ていたソファーに寝かせてタオルでソファに繋がれた。

もしもの時の為にだ。

そして朝まで俺は監視をしていた。

 




夜十時を過ぎても三十度を超えているとか勘弁してくれって感じです。
クーラーかけても、ベットが熱い。
布団から熱がしみ出すように熱くて寝苦しい毎日です。
皆さん、こまめに水分は取りましょうね。寝る前起きてからも。

それではまた、御機嫌よう。


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第六時間目

どうも、私です。
前回、先生が噛まれて感染した所からの続きですが、
此処からはオリジナルのルートになります。
元のシナリオから大きくかい離しますので、
読む際はそちらの事をご確認の上、ご了承ください。

では、授業を開始します。


朝になり俺は寝ずの番をして先生を監視していた。

「ん・・・ぅん・・あれ?私・・丈槍さん!?若狭さん!?恵比寿沢さん!?」

「落ちつけ。おはようさん・・だな。水でも飲んで落ち着いてくれ。」

佐倉先生に落ちつくように言いながら拘束を解き、用意していたコップに入れた水を渡して話す。

「え?・・織斑さん?」

「あぁ。とりあえず飲んでくれ。話はそれからだ。」

「え・・あ、はい・・苦い!?」

舌を出す様にしてソレをアピールした。なんだかそう言う反応は幼いよな。この人。

「手持ちの風邪薬を混ぜてみたんだ。」

「な、何故そんな事を!?怒りますよ!?」

「俺こそ怒っているんだがな。なぜ、俺が居ないうちに下に降りた?そのせいで何が起きたか覚えているのか?」

「え?・・あ、あれ・・私は・・はっ!?」

肩の噛まれた跡を調べているようだ。

「傷は縫合した。そもそも、感染は俺が持っていた神からもらった抗生薬を打った。コレで直せないのは運が悪かった時ぐらいだ。・・おそらくは、だがな。・・分かるか?お前等の軽はずみな行為で本当に貴重な物が無くなった。ソレは分かるよな?」

「・・貴方が持っていた一つしかない物なんですね?何故私に使ったのですか?」

「アンタが大人で、あの子たちを導いて行く責任が有るからだ。逃げるとは言わないよな?」

「・・逃げれるわけ無いじゃないですか。あんなにかわいい子たちを置いて。」

「それならいい。使う意味はあった。それだけだ。」

俺は風邪薬入りの水を飲む。苦い。

「コレは味覚が生きているかの実験用だ。もしも、それに気がつかなかったら、組織が壊死しているからな。一応、皮膚は調べた。表面上、壊死した個所は無し。女性の肌だとは分かっていたが、オレにしかできない事なので勝手にした。」

机に向けて歩き、さっきまで座っていた横の台にある『薄い本』を手に取る。

「そうですか。・・絶対に治ったのですね?」

「ソレは確かに。さっき血液の採取と検査をした。反応は無し。しかし、どうやらこの病原体は厄介なようだな?」

「ソレはどう言う・・」

「コレはどう言う事かな?」

俺の手にあるのは、『薄い本』。その表紙には、【職員用緊急避難マニュアル】。

さっきまで俺が読んでいた本だ。

「そ、それは・・。」

「内容は読んだか?・・いや、意地の悪い事は言わない方がいいか。」

開いた痕のあるそれを読んでいないわけがない。この部屋の棚の本を見つけて引き抜いたら隠すようにしてあったコレが落ちて来たのだ。

「・・α、β、Ω・・しかも、実験途中ならこの限りではない。このランダルコーポレーションと言うのは気が狂っている。しかも、コレが配布されているという事は国も関係しているんじゃないだろうか?」

「そこまでは知りません。しかし・・何らかの関係が国にあるとは思っています。」

「だろうな。」

そう言いながら本を閉じる。

「それで、俺が居ないうちに下に降りた理由を聞こうか?昨日はそれどころじゃなかったのでな。俺も流石にこうも不在なのは悪かったと思っているが、夕方には出てくると言ったはずだ。朝のうちに行ってくれれば予定は変更した。それもこれも無しに問題が起きたのだから、俺にはどうすればよかったのか分からない。なぁ?俺は此処に不要なのか?信用が置けないから無用か?言ってくれればすぐに去るぞ?」

「そんなことはないです!・・私が・・悪いんです・・。」

そう語り出した話は、初めはトイレに丈槍がいきたいと言い出したことから始まった。

トイレに行くとトイレに紙が無く、下のトイレに行くついでに購買部まで取りに行く事になったらしい。その際にオレに話すか、待つようにできないかと胡桃は言ったらしいが、佐倉先生が一階下だから大丈夫だろうと言ったらしい。それに行っている途中から雨が降り出した。トイレを済ませた全員が購買に入り必要な物を持って出たら、廊下はすでに奴らだらけ。慌てて戻ろうにも音に反応して反対のドアからも入って来た。

片方しかドアがない被服準備室に入り込もうとした瞬間、佐倉先生は足を掴まれてこけたらしい。そこで全員が手を伸ばしたが、佐倉先生が伸ばした腕を噛まれた。そこで、全員にドアを閉めて俺が出て来るまで耐えておけと言ってドアの前に陣取ったらしい。それからは意識がもうろうとなり、ほとんど覚えてないと・・。

「なるほど・・話は分かった。」

ため息をつきながら俺は本を開く。

「佐倉先生も行き着いただろうが、この病原体はおそらく2の例外だ。さっきの全部に当てはまらない。感染力は高く発症までは短い。コレはβだが、明らかに行動時間が長すぎる。βの派生または進化形だと予想できるな。一番面倒なタイプだ。おそらくは、三大欲求の食欲が一番大きく特化していて、それによる感染率の上昇、致死性の向上、更に栄養を取った場合に行動時間の継続が有るのかもしれん。だがコイツは、奴等に噛まれなければ何とかなる。しかし、αとβの混合主系統なら最悪だ。奴等の血飛沫や、体液からの感染、しかもα系列には死滅時期が書いてない。それなら広範囲拡大感染して、しかも多くの感染者を出しつつ奴等が減らない理由も頷ける。しかし、ウィルスと細菌では混合はできないはず。という事なら最終的に考えられるのはΩだが・・まったくの塗りつぶしで分からないな。」

「・・さすが、錬金術師と言うだけあって色々と考えられるのですね。」

「それこそが錬金術師たる宿命よ。生きて考え続け、死ぬまで考えをやめない。・・それよりも、俺がコレを書いた奴に言いたい事は唯一つ。」

「何ですか?」

「4.最後に・・そう書かれた蘭の【覚悟せよ】だと!?馬鹿にしているのか!!これをしでかしたのは貴様らだろうが!!何が美徳ではないだ!何が数百万人の命が掛かっている、だ!!ふざけるな!!」

キレた俺は本を叩きつけようと振り上げる。

≪ジリリリリリリン≫

「!?」

「・・奴か。・・もしもし。」

『使ったね?しかも自分じゃなくて他の人間に。』

「・・あぁ。」

『アレは君が使うべきものだった。ソレを勝手に他の人間に投与した。』

「分かっている。覚悟はした。もう使う事が出来なくなる事は分かっていた。」

『そうじゃなくて、他の人間に使った事も問題だ。あるはずの無い薬を助かるはずの無い人間に投与して助けた。コレは世界が歪められたのだよ?ペナルティを与える。コレは決定だ。』

「・・受けよう。内容は?」

『・・・自動人形は送らない。ISもだ・・。代わりに今から彼女たちの力の一部を送る。コレは神々の決定だ。覆る事のない決定だ。』

「十分だ。すまない・・。アイツ等の事、頼んだ。」

『・・では、今から君の実験室に送って置く。後で取りに行きたまえ。全員の属性と能力の込めた物が有るからソレをインストールすれば使える。』

「・・重ねがさね、すまないな。」

『もう・・ここまで承保させるの大変だったんだからね。それが分かればいいよ。』

「あぁ。ありがとうな。」

『じゃぁ、頑張りたまえ。』

「すまない。」

電話を置くといつの間にやら消える。

「い、今のは?」

「神さまからのペナルティの報告。俺の相棒達は送らないとさ。」

「そんな・・私のせいで・・。」

「使うと決めたのは俺だ。」

早朝から気が滅入る様な一日になりそうだと頭を抱えた。

「まったく・・本当にままならん世界だ。」

俺は謝る佐倉先生の頭を撫でて、落ちつかせる。

「貴女はここであの子たちを支える役目が有る。死に至るその時まで・・それが貴女の役目で、貴女への罰だ。・・それが分かったなら泣きやみなさい。」

そう言って頭を抱えると声を殺して泣きだした。

色々とたまっていた物があふれたのだろう。

「・・今は、今だけはゆっくりと休みなさい。」

そう言って頭をなで続けた。

 




今回書いてある薬は神さまの作った万能薬の様な物。
良く有るファンタジー物での一回しか使えない貴重な薬です。
ソレを使用したことは、神自体が用意したから良しとしても、
その薬を他人に使うのはアウトだった。
そう言う解釈でお願いします。

では次回。またね。


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第七時間目

どうも、私です。
最近暑いのが更に暑くなってきて寝苦しい日が続いていますね。
私の親戚が熱中症でダウンしました。
皆さんは熱中症に気をつけてくださいね。

では授業を開始します。


俺は落ち着いた所を見ると、部屋に行く事にした。

皆が起きてからの説明には必要だと思うからだ。

「・・さて、何が有るか・・む?」

そこには四色に輝くラピスの様な宝珠が有った。

なるほど・・ここにあの四人分がね・・。

「その力・・使わせてもらおうか。」

四つの光りと共に四種類の記号が体中に刻まれた。

蒼い聖杯、黄金のコイン、紅きロッド、緑の剣。

それぞれの形の象徴があの色の輝きを放つ。

俺はソレをなでるようにして一つずつ触る。

そして、頭に使う形を描くと右手が赤く光り、手首から先が肥大化して大型の爪と真ん中に高圧縮カーボンロッドを打ちだす機構になっていた。

そこに左手に緑色に光を宿して、剣を取り出す。

足元を青く光らせて氷にしてその台座の上に立つ。

剣を消した左腕に黄色を輝かせるとコインでできた黄金のトンファー・・目立ち過ぎだ。

「これはめったに使う事はないが・・気を引くのには使えるだろうな。」

コインをはじいて音を立てればそこへ奴等が集まる事だろう。・・使い方は地味だが・・集まった所をコインで撃ち抜けば派手にはなる・・か?

「皆の力は貰った。必ず、役に立つだろう。」

そう思いを空に告げて部屋を出る。

元の教室に向かうと丈槍に若狭、胡桃が佐倉先生を抱えて泣いていた。全員に泣きつかれた先生はわたわたしているが、それはアンタの行動の結果なので甘んじて受けてもらう。

とりあえず、問題はない事を全員に説明し、更にどういう経緯から感染するか分からないことから、本格的に奴等の体液などは浴びないようにしてほしいと告げる。面倒くさそうに胡桃が顔をしかめたが、これも全部、全員の無事の為だと説明すると納得してくれた。

 

それから俺はすぐさま校内の奴等を殲滅。一切残さずに駆除した。その際に手に入れたエネルギーを変換して今までの分と一緒に練成したら新たなラピス・フィロソフィカス一個分になった。俺はすぐさま練成に・・入りたいところだが、先ずは校内の安全確保を最優先事項にした。

入り口を錬金術で作った強化合金の扉にして、ドアノブを開ければ開くようにした。更にのぞき窓もつけたので外の様子も見れる。それから一階の窓は内部にワイヤーを通して強化ガラスに張り替える。外は見えるが人の体では割れない強度にしておいた。更に防火扉を改造して専用の避難経路をつくる。もしも奴等が入ってきても、これより先には行けない様な構造にした。人ならば開けれる構造なので問題はない。

それから、一度外に出てホームセンターから鎌とスコップの補充、ガスコンロとテントなどのセットを拾って来た。

ソレを終わらせた後で俺は練成に入る。三日間、食事以外には部屋にこもりひたすらに練成陣を組み立てて、不純物を取り除いて行くようにして練成して精製して行く。

そして、最終的に紺色に染まりきったハート形の宝珠が出来て、それが青くきらめいた。

「まさに、ラピス(ラズリ)の輝きと言った色になるな。」

ソレを起動させるためのスペルキャスターに組込む。・・知識通りなんだが・・何故けん玉なのだろう?

ソレを組み込んだ後は試しに起動してみた。けん玉の宝石が光り俺の姿が変わる。

「・・これはちょっと・・。」

マントと肩あてに全身タイツの様な格好だった。流石に男がコレは変態扱いされそうなので内部を変更して鎧を組み込む。肩に大型のけん玉を担ぎ、蒼いマントと白メインと赤い関節部の鎧をつけた男。うん、けん玉がめちゃ浮いてるな。しかし・・威力と能力はとてつもないんだがな、これ。

俺は変身を解いて部屋から出た。そして、部屋に入ると全員が集まっていた。

「あ、いっくん出てきた!」

「一夏、もう出来たのか?その・・新しい武器とやらが。」

「見せてもらってもかまわないかしら?」

「私も興味が有ります。」

皆から言われて取り出したのがけん玉。全員が目を丸くしていた。

「なにこれ、可愛い!ハートが可愛い。」

「確かにこれはちょっと・・ふざけてんじゃないんだよな?」

「実にかわいらしいですが・・武器・・なんですよね?」

「けん玉ですかー。昔やりましたが、あまり得意じゃなかったですね。」

それぞれ分かりやすい反応をされる。

「まぁ、外に出る時にでも見せてやるよ。それで、話をしに来たんだが・・。」

これからの予定は三個目のラピスをつくる為に奴等を狩りつくして行く予定と告げる。

「それなら、ちょうど物資を取りに遠出をしたかったんです。一緒にお願いしても良いですか?」

若狭から提案をされる。

「構わない。テストを兼ねて外に行かなければならなかったからな。それで、何処まで行くんだ?」

「えっと、ゆきちゃん。そこの地図を取ってもらえる?」

「コレ?・・はい。」

ソレを渡された若狭はページをめくり、学園が書いてあるページを開く。

「私達が居るのがここ。それからこの道を通って・・」

ページをめくり道を指で辿って行く。最終的に大きな建物が書いている所を指す。

「このデパートに行こうかと。此処なら大型なので物資に食料以外も手に入るかと。」

「ふむ・・足は?」

「めぐねえに車を出してもらいます。四人乗りなので少し手狭かもしれませんが・・。」

「なら俺はこれで行こう。」

手に持つけん玉を振って知らせる。

「・・行けるのですか?」

「むしろ車やバイクよりも安全だ。『チャリオットパイル』と言っても良いかもな。」

そう言って自信満々に言うと、ひきつった笑いをされた。

「なら、それで。車までの護衛を頼みます。私達は入り口で待っておいて、車が着き次第乗り込んで出発します。」

「分かった。明日は任せておけ。地図も大体頭に入ったからな。道は平行して移動して、何かあれば俺が先導しよう。」

そうして予定を組んで全員就寝。そして翌日になった。

「それじゃ、めぐねえをよろしくお願いします。」

「あたしが行っても良いんだが、適任が居るなら任せる方がいいだろ。」

「足手まといにしかならんからな。」

先ずは銃のスペルキャスターで変身し、先行、剣で切りはらう。周りに居なくなったら離れて銃を撃ちこちらに敵を寄せる。その間に佐倉先生は車にたどり着きエンジンをかけて発進した。俺は周りの奴等を処理してエネルギーを回収。すぐさまけん玉のキャスターに変更してけん玉を振りまわして肩の調子を見る。そして球の部分を下にして地面に叩きつけて変形させる。すると柄の部分を軸に球が回り出し、柄は固定された角度で俺がそこに乗り、そのまま走りだす。普通なら皿になっているはずの一番先は先端が尖った形状になりそのまま槍のように突き刺す事が出来る形だ。車の隣まで来ると全員が目をむく。

「そ、それがあのけん玉ですか!?」

「まったく、けん玉じゃねぇ!!」

「すっごい、いっくん。カッコいい!!」

「本当にそれなら問題はなさそうですね。びっくりしました。」

一人だけ何故か喜んでいるが、大体は驚きの様だ。

それから道をおさらいして、大通りに出てから先行する話をした。それで、トランシーバーを渡す。一応、道の変更が有れば話す様に準備していた物だ。

「それじゃ、いくぞ。」

車が発進したのと同時にけん玉を走らせる。・・字づらにすると何だこの違和感。

なんでけん玉が走るんだと言いたいが、そういう変化をできるのだからしょうがない。そして走って大通りに出るとトラックが横向きに塞いでいた。

『織斑さん、戻って迂回をしましょう。』

「いや、突破する。どかすから周りに気をつけておけ。」

『ドガッシャァン』

そう言って俺はけん玉を加速させて荷台に突きさし、そのまま押して方向を変える。

『ギャリリリリリ・・』

そして道を開く。すると音によってきた奴等が前から来た。けん玉を一度武器に戻す。

「やはり、音に集まって寄って来るわけだ。・・だからこそ、ラピスの礎に加えてやるわけだ!!」

そう言ってけん玉を振う。赤い大玉がエネルギーの糸で振り回されて、周りの奴等をなぎ倒して行く。戻ってきた玉をハンマーで殴り、打ち出して反対にいた奴にぶつける。

『ガコォン!』

大体がつぶれる様に倒れ尽くす。そこにキャスターを変更して、銃で錬金の弾を撃ち込みエネルギーを集める形にして集めておく。それからまたけん玉を装備して、バイクモードで辺りを確認する。それからトランシーバーに連絡を入れる。

「こちらは一掃した。大丈夫だ。」

『むちゃくちゃしますね。了解しました。それではデパートまで行きましょう。』

そう言った後車が横を通って行ったのを見て追いかける。それから先導するように前に出て走る。時々奴等がいたら突きさしてエネルギー体に変換しておく。そして、大型デパートに着いた。

『あぁ・・ぁ・・ぁああ・・』

大勢の奴等の声が聞こえる。そこはすでに地獄と化していた。

 




水分塩分ばかりとり過ぎると、カリウム不足になります。
私は医者にカリウム不足の数値が危険域と診断されて、
要治療を言われました。
お腹を下したりするとなりがちだそうです。冷たい物はほどほどに。

あと、少し私事で次の更新が遅くなります。
申し訳ありません。

では、また次回。


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第八時間目

どうも、私です。
お久しぶりです。遅くなり申し訳ない。
暑くてパソコンの調子も、身体の調子も悪くて書けませんでした。
長時間の使用してると調子悪くなるので、筆もあまり乗らず・・。
難産となりました事お詫び申し上げます。
これからも少し遅くなると思います。申し訳ない。

では、とりあえず授業開始です。


こうも狭いと流石にけん玉を振りまわせるスペースは無いので、・・銃のスペルキャスター・・は音が反響するかもしれないか。やめておこう。俺はギアを取り出す。

「ここは、普通に手堅く行くか。」

選んだのは広くない所でも動きやすい様にアイギスにした。アイツ等の力を使う為にも。

「では、久々に・・『defendend. guardend. protectend AIGIS tron ~』♪」

そう聖詠を謳い、変身する。

「ふむ・・それじゃ行くとするか。」

肩に赤い楯をつけて赤に染まったマントをたなびかせながら、手を変換する。

「・・ミカの力、借りるぞ。」

そう言って俺はその場から奴等のひしめく所に飛び込んでいく。

「バラバラにしてやる!覚悟しろ!!亡者ども!」

叫ぶとその声にひきつられて集まって来る。殴り、高圧縮カーボンロッドを射出したり、それで殴りつけたり、巨大な爪でバラバラに切り刻んだり、巨大な手で殴りつけたりと、見える限りの奴等を始末するように暴れた。

その間に必要そうな物を近くの店から集めて行く四人。そして置くに行くと上に続く階段が有り、そこには・・

「ば、バリケード・・」

「て、事は・・?」

「誰か、居るの・・かしら?」

「生きてる人が居るのかな?」

そう丈槍が目を輝かせる。しかし、あまり生存者って言うのは良い存在じゃないんだよな。他人を犠牲にして生きてきたのが大半だから、心が壊れている場合も多いにある。

「俺が行って来る。お前らよりも良いだろう?」

そう言って俺はその場から飛び上がりバリケードの向こうに降りる。

(煤臭い?何か焼けて・・!!)

「ねぇ~?誰かいた?」

「来るな!お前等!!」

目の前には大量の奴等と数体の焼け死んだらしき死体。ソレから遠くの扉の燃えかけの紙が目に入る。

「緊・・避難・・?」

緊急避難所か?!それならもしかしたらその中に人が!?

「大勢居やがるからバリケード越えてきた奴等と下から来るやつが居たら、そいつらだけ始末しろ!俺は奥にもしかしたら生存者の居るかもしれない扉を見つけたから、行って来る!できる事なら、出口まで退避していろ!」

近くに来た奴等の群れを切り刻み、ロッドで回りを薙ぎ、吹き飛ばした後で楯を緑に代える。そして剣を取り出して切り刻んでいく。

「『ダンスマカブ!!』」

踊るように舞うように剣を振り、相手を避けながら首を落として胴を切り払い、足元の転がる這いずる奴等の首を切りあげて、蹴り飛ばす。転がって行ったそれに連れられて数体が奥に移動して数が減った。そのうちに楯を変える。今度は青。

そして奴等の間を足元を凍らせてジグザグに高速で抜けて移動する。そのままドアの前に行きドアを叩く。

「生存者、居るのか!?」

『だ、誰かいるのですか!?』

「!!生きているな!無事か!?」

『は、はい!!良かった!生きている人が居た・・。』

「まだ数人いる。脱出するぞ。行けるか!?」

『・・丁度、出て行くタイミングを探して居ました。生きているだけと言うのが辛くなってきたので・・。ドアは開いても大丈夫ですか?バリケードをしているのを退かせます。時間がかかるのでちょっと待っててください。』

「あぁ。一人か?」

『よっと・・元はもう一人居たのですがっ、・・少し前に出て行きました。んしょ・・。』

積んであった影がどけてドアが開いた。そこに居たのは・・、

「はぁはぁ、良かった人が居た・・。」

胡桃達と同じくらいの同じ制服を着た少女だった。

「お前‥生存者はおそらくお前の学校の生徒と教師だ。今は階段か、外に居るはずだ。奴等の間を走って抜けられるか?」

「・・ソレは少し怖いです。もし、噛まれたら・・。」

「ならば俺が守ってやる。」

そう言って俺はその女子を抱き上げる。

「ひゃぁ!?お、お姫様だっこですか!?」

「守るのに一番適している。今からはしばらく口を閉じろ。舌をかむぞ・・いいな?行くぞ。」

そう言うと頷いたので、足元を凍らせて高速で抜けて行く。そして、階段の前にあるバリケード前で一度止まる。

「さて、此処からは少し装備を変えて行く。奴等は近づけない様にしておくから安心しろ。」

一度ギアを解く。そして次のギアを用意する。

「すぅ・・『Various shul shagana tron~』♪」

そして俺はシュルシャガナを装備してその場でジャンプ。足を軸に一回転する。

≪非常Σ式 禁月輪(ひじょうシグマしき きんげつりん)≫

自分を軸にした大きな丸鋸のタイヤの様な物を出して、また少女を横抱きにして走り出す。階段は全く問題なく通れるし、そのまま一気に駆け抜けるように構えて一応声をかけておく。

「そこには誰も居ないな!?」

声に返事は無いのでバリケードを切り裂きながら出て階段を駆け降りる。途中に奴等が前に出てくる。

「ひぃ!?」

少女が少し悲鳴を上げるが、俺はそのまま突っ切ると、そいつはひき肉になった。

または、胴事真っ二つになったりしてはじけ飛んでいく。駆け降りた後はそのまま走り抜ける。すると、四人の後ろ姿を見つけた。どうやらコンサートをする予定だったピアノが置いてあるホール前に多くの奴等が居て、進めなくなっているらしい。

「おい、追いついたぞ。この子が生存者だ。見た所噛まれたりした後は無い。」

「そうか、良かったな。お前、助かったぞ。アイツが一緒なら、生還率は100%だ。」

なんか後ろでむず痒いやり取りが有るが、まぁ、とりあえずは・・

「目の前の奴等を始末しますかね。」

飛びだして禁月輪を消した後、伸びるアームを開き中から小型の丸鋸を無数に飛ばす。

≪α式 百輪廻(アルファしき ひゃくりんね)≫

それで結構な数をつぶして、真ん中に降りたち、回転する。

≪γ式 卍火車(ガンマしき まんじかしゃ)≫

そして、円状に全ての奴等を殺しつくし、残る奴等は手に持つヨーヨーを合体させて大きくして振りまわす。棘が出たそれが俺を中心に大きく回り切り裂き散らして行く。

ピアノも破壊されたが仕方ない。そして、暴れた音で奴等が奥から出てくるかもしれないので、すぐさま俺は動く。

シュルシャガナを解除して、けん玉のスペルキャスターを出し変身する。

弾を前に向かって打ち飛ばして正面の敵をぶっ飛ばして道をつくり、横から来るやつらを球で殴りとばして殺す先からエネルギーを回収する。そして、作った道を5人がついて走って追いかけてくる。そのまま出口まで行き、俺は体の方向を変えて殿を務める。

「いけ!俺は少しエネルギーを回収して帰る。コレだけ居るんだ。次のラピスの輝きに使わないのはもったいない!実験材料になってもらう。」

これからは音を立てて良いので銃のキャスターに変身して錬金用の回収弾を装填して撃つ。

【バガァン!!】

音によって奴等が集まりだした。それで4人は少女を連れて車に乗り込み発車させた。

俺は見送りながら銃を撃つ。

「くく・・これで3522体目。・・生存者を守るため、俺の誇りを守るために、3個目のラピス・フィロソフィカスの礎となれ!!」

銃を乱射するように大量によってきた奴等を全部変換して行く。

 

それから学園に帰って来たのは夜になってからだった。

少女は気が張っていたのが付かれたのか、シャワーを浴びて食事をしたら気絶する様に寝てしまったらしい。あんな環境に一人だ。しょうがない。

今日は監視の為に俺の寝床を使わせてほしいらしい。エネルギーだけ練成陣のタンクに入れて、生徒会室兼学園生活部部室に戻ってきた俺は、近くに置いた椅子に座ってその少女を観察した。

「・・よく生きていたな。」

そう言って俺は頭をなでた。

こわばっていた少女の表情が少しゆるくなった。

「け・・い・・。」

そう言って涙を流した。人の名前か?・・前にもう一人いたと・・。そいつの名前か。

「・・・もう、奴等になってしまったかもしれないな。」

楽観視できる状況じゃないので悲観的になるのは仕方ない。これも現実的な考えだと思う。

「・・見つけたら、俺が【守ってやる】よ。」

月を見上げながらそう俺は呟いた。

空には黄色い大きな満月が輝いていた。

 

 




これからも独自ルートを突っ走るつもりですが、難産となる事が分かっているのでエタらない様に気をつけようと思います。

では次回、またね。


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第九時間目

どうも皆さま、私です。
最近まだまだ暑いですね。寝苦しい日々が続いてつらいです。
暑いからと冷たい物を取ってしまいがちで、少し夏バテ気味です。
適度に冷房や食事などで丁度いい温度にして、冷たい物を取り過ぎないようにしたいと思います。

では、授業開始します。


 アレから気になるのか若狭が起きてきたので、デパートで助けた少女を任せた。

 そして俺は外に出てけん玉のスペルキャスターで移動を開始、昨日のデパートよりも少し先まで遠征していた。あの助けた少女の言っていた、少し前までもう一人居た。と言っていた事。

 それがどれくらい前かは分からないが、本当に少しならまだ近くに隠れている可能性もあったからだ。可能性が有るなら、せめて見て回るくらいは使用と思った。

「しかし、まるでチャリオットだよな・・・。」

 変形させたけん玉で走行し、目の前に出てきた奴を貫いてそのまま前進し続ける。貫いた奴はエネルギーに変換して更にけん玉で引いた奴も変換できるようにしておいたので、走るだけでエネルギーが溜まる、本当にそれだけで溜まるのは楽だ。走っているだけなのにラピスの為のエネルギーを得られるというのは全く持って便利な機能だ。

 そうしていると駅の方へ向かう途中のビルに人影が見えた。しかも奴等に追われる様に逃げて壁を乗り越えて居た。少し足を引きずる様にだ・・。

「・・生存者か?」

 俺はけん玉を止めて飛びあがり、空中で武器モードに変形させて手に持ち直し、近くに居た奴等をぶん殴りエネルギーに変換した。

「・・生きてるならまぁ・・見過ごせないが・・怪我とかも見とかなくちゃな。」

 生存者と言う事ならなるべくは助けたいと思うが、足を引きずっていたようなので駄目だったら見捨てる気でそのビルに入って行く事にした。けん玉を振るには狭いので、

「『defendend. guardend. protectend AIGIS tron』~♪」

 アイギスを装備して中へと入る。

盾を使って奴らが迫ってくるのを抑えて首を跳ねてエネルギーを回収する。

「しかし、あの人影は・・三階の廊下だったか?」

 近くにあった建物の見取り図を見て三階には大きな部屋が三つと小さな部屋が二つある。その大きな部屋の前から小さな部屋の方へと走っていた。そっちが住処かもしれない。

 階段を上がると壊された簡易的なバリケードがあり俺はそれを階段から飛んで、空中で回転して避ける。音を立てて奴等を更に呼びたくはないからな。

 それから三階の非常口から廊下へと入り、歩く。町の方を見ればガラス窓の向こうには煙が立っている場所がいくつも見える。ゾンビによるものならいいが、それが狼煙ならそれだけの生存者がいると言う事だ。よからぬ事を考える奴がいる方が厄介なので見回りをして害があるなら処分しよう。

 そう考えながらも歩くとさっきのあたりに来る。そこには数人の奴らがいるので首を切り落としておいた。

 それから歩いて慌てて建てたらしいバリケードの前まで来るとそこには数体の奴らとバールのような物を構えた少女がいた。噛まれたのではなく、たんにガラスなどが割れたような鋭利な物で怪我をしたようにも見える。奴等に引き裂かれたのではこうも綺麗な切り口ではないだろう。助けるかどうかはしっかりと判断する。奴等に感染して居れば、助かる見込みは極めて低いからだ。その少女はこちらに気が付いた。

「な!?えっ?人!?」

 その声が大きかったせいで奴らがその少女に向かって飛びかかろうとする。

「はぁ、面倒だ。」

 そう言いながらも俺はそこにいた奴の首を一瞬で跳ねる。

「いきなりで、エネルギーに変換する練成陣が組めんかった。ただ働きになった。」

 しょうがないので死体から少量のエネルギーを頂くくらいにした。

「さて、そこな少女よ。君は生きたいか死にたいか選べ。俺がその通りにしてやる。」

「な、なんで!?」

「この地獄のような世界で生きるより、いっそ楽になって死にたいという奴もいるだろうからな。生きる事を無理強いはしない。ただ、生きたいなら手助けするし、死にたいなら奴らにならんように解釈して、骨まで燃やしてやろう。さて、どうする?」

「わた、私は・・」

 ふと気になった事があった。服自体は制服ではないが、年的には学生くらいに見える。

「一応聞いておくが、ここにずっといたのか?それともどこかから来たのか?」

「え?あ、私はショッピングモールにいたわ。でも、助けも来ないし、食糧も減ってきた。更にいたのが最奥だったから、助けも来ないと思ったの。それならと、助けを呼びに外に出た。ただ何もせずに死ぬよりも、何かをして生きることを求めていないとおかしくなりそうだったの。駅に行けば放送機材が有ると思ったからね。でも途中で追いかけられて、このビルに逃げて、バリケードはったんだけどソレ壊されて・・そしたら音で更に増えた。もう駄目だと思ったわ。」

「ふぅむ。名は?」

「祠堂圭(しどうけい)。圭で良いわ。みんなはそう呼ぶの。」

「ケイ・・か。そのショッピングモールには一人だったのか?」

「もう一人いたけど・・、置いてきてしまったわ。喧嘩をしてしまったから・・このままここで何もしないで死にたいの?って言っても、出たくない。怖い。って言うから・・。私は何もせずにただ死ぬのを待つだけは嫌だったの。生きる為に足掻きたいって・・。だから、まだあそこにいるはずだから・・あなたが一緒に助けに行ってくれるなら・・」

その言葉を聞いて俺は、自分の考えは間違っていなかったと確信できた。

「そうか。やはり、な。寝言でケイと言っていた。おそらくその子は昨日助けた子だ。今はこちらで保護しているし無事だ。」

「う、そ・・。」

「ショッピングモールのバリケードを崩さなくて正解だったな。あれで俺たちは生存者の可能性を見出したからな。あれがなければ引き返していた。」

「よかった、よかった・・美紀。」

「ミキ・・ね。そんじゃ、俺たちの避難所までお送りしましょうかね。」

「お願いするわ。そう言えばあなたの名前は?」

「一夏。そう呼んでくれればいいさ。」

俺はそのケイを連れてそこから脱出をする。必要なもの、置いてあった生活用品や食料を持って帰ってきたケイを守ってビルから脱出する。それからアイギスを解除して、スペルキャスターをけん玉に変えて装備。荷物ごと抱きかかえてけん玉をチャリオットモードにして敵を突き刺しつつ、跳ね飛ばして学校へと走る。

「貴方、いったい何者なの?」

「んー、しがない救世主ってやつ?普段は錬金術師やってる。これは依頼で仕事中だな。」

依頼主は神様と言う何ともファンタジーだが。

「錬金術?そんなファンタジーじゃないんだから・・」

「ま、そういうもんだよな。普通は。学校にはそんな俺でも信じて仲間にしてくれた奴がいるからな。おそらくお前の言うミキという少女もそろそろ眼を覚まして話をしているころだろうさ。」

「そう・・。じゃぁ、そこまでお願いね。錬金術師のナイト様?」

「・・へっ。俺の性質は守るってことだからな。安心して運ばれろ。」

そう言ってまた一体の奴らを引き殺して行った。

 

学園に着くとすぐさま玄関前に居る奴らを一掃。それから中に入る。

「玄関前にも何か罠をして、奴らを近づかせないようにするべきかな?」

そう呟きながらも、銃のキャスターを変形させた剣についた血を振るう。

「貴方、人の形をしていてもあっさり殺すのね。」

「生前の世界では生きている奴も殺した。そんな事にはためらいは持たん。そんな経験ばかりだ。そろそろ心が壊れるんじゃないかと思っているが、そうなればお役御免でこの生活からおさらばだ。まぁ、そん時までやる事をやるだけだな。一番初めの人生は大きなところで選択を間違えた。二回目は満足したが、何度も死んで生き返った結果、最終的に一人になったからな。先に死んで放っておく方が良かったかもしれん。そしてこの世界だ。まったく世界は醜く見えていけんな。汚染されて、更に人の醜さも見えて。生きている人間も生きるために醜く生きる者もいれば、清く生きる者もいる。これだから人と言うのは分からない。」

階段を上がり一度、練成陣に今回得たエネルギーを納める。

「・・最後のスペルキャスターがもうすぐできるな・・。」

それから全員が居るはずの生徒会室に行く。一応、いつも通りノックする。

「今、帰った。入るぞ?」

中に入るとそこには全員がそろっていた。

「圭!?」

「美紀!!」

昨日の少女と、今日助けた少女がお互いの名前を叫んで抱きしめ合う。

「生きてたんだ、圭。」

「勝手に殺さないでよ、美紀。でも危ないところだった。もう少しで襲われるところを助けてもらったの。出る時にモール出口の扉で足を怪我して・・逃げるのは大変だったけど。ギリギリのところで助けてもらったの。」

「貴方は・・、昨日はありがとうございました。起きたら居られないから夢かと思いましたが、夢じゃなかったんですね?」

「お嬢さんをお姫様だっこしたナイト様だからな。そこの圭嬢さんもお姫様だっこしてやったからな。俺は織斑一夏。イチカ・ダインスレイフとも名乗っていたがまぁ、今はこっちの方がいいみたいだしな。圭は足のけがが有るから一応検査な。血液貰うぞ?」

「噛まれたんじゃないから大丈夫だと思うけど・・。」

「一応だ。発症しないと思っていた奴が発症したからあのショッピングモールは、あんな事になったんじゃないのか?あくまで予想だがな。そんじゃ検査と実験の方行ってくるから、用事あれば呼んでくれ。」

そう言い残して俺はさっきの部屋に戻る。

血液は検査用の培養機と血液検査キットを作った。二時間もすれば結果は出るだろう。

最後のスペルキャスターの製作のために練成に俺の力を使う事にしてみたのだ。

「俺自身の力を足したならどうなるか、変化をためさせてもらおうか。」

そして実験して練成する事、二時間。

「・・出来た。」

最後のキャスターができた。それは手甲。そして鎧。

・・アイギスの力から守る成分が強かったか?それとも前の世界で使った分でガングニール拳の成分が混ざったか?

「まぁ、いいか。ふむ、普通の状態ならガントレットといった感じか・・。展開すると?」

スペルキャスターを展開。鎧として全身をゴールドの鎧が覆う。何と言うか・・ファンタジー・・だな。

「・・七☆聖戦士か?」

彗星拳なんてうてんぞ?

「まぁ、いいか。普段は少し小さくして手のガントレット程度にすれば付けやすいな。近接武装もこれならガングニールよりも練成用のエネルギーを得やすいな。・・あぁ、もう最後だったんだっけ?んじゃ意味ねぇじゃん。まぁいいか。」

それから俺は試運転のために外に出かけた。外で奴らの群れを殴り、蹴り飛ばしをしていると、少し量が増えて集まってきた。吹き飛ばしたいと考えると手甲の一部が開く。そして、そのまま腕を突き出すと、

『キュドォ』

ビームのようなものが飛び出した。撃てちゃったよ、彗星拳。

そのまま拳でジャブを打つように拳を何度もシャドーボクシングを放つと、その回数ビームを放つ。拳を合わせて腰のブースターで前進して『奴ら』の束を吹き飛ばすと空中にその集団は浮いて、地面に落ちてエネルギーへと変わる。

「効率いいなぁ、おい。先にこっち作るべきだったな。」

まぁ、自身の因子含んだ結果使いやすいのは当たり前か。アイギスと一緒だ。

それからエネルギーを回収して、練成陣で弾丸を増やした。

何か使う事があるかも、・・しれないし。

・・いや、どうだろう?コレ使いやすいし、回収楽だし、・・遠距離の連射や精密射撃はやっぱりあっちか。人が居る状態で撃つ事になれば、巻き込むことが無い銃を使うだろうし、あっちもやっぱり使い勝手は良いもんな。

 

それと検査キット、培養機から取り出した結果は白。

感染は無し。今の所、ただの怪我だ。

だが、もしも発症するならあの冊子からして潜伏期間が有る可能性を考え、用心する事にした。

 




という事で、今回登場したのは、オリジナルルート生存者二人目の『祠堂 圭』さんです。
実際の漫画の方なら、巻末の青襲さんのレポートに書いて有りますが、駅構内からの機材で放送をしていたらしいのです。ですが、今回のルートでは普通に怪我をしただけと、駅までたどり着けていない事にしました。
なので性格は適当です。私の予想の感じから書いているので違和感を感じたらすいません。
これからもがんばっていきます。
では、次回にまた。


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第十時間目

どうも、私です。
急に涼しくなり皆さん風邪はひいたりしてませんか?
私は田舎に住んでいるのですが、山風が以上に冷たくて湯ざめしたり、
朝方の風が寒くて、多少喉がやられて風邪気味です。
全く、来週にはまた熱くなるというのですから嫌になります。
からっとした厚さは耐えれますが、じめじめした厚さは無理です。
全く持って無理久保です。・・いきなりネタ挟みましたごめんなさい。
では、長い前置きでしたが、授業を開始します。
・・最近、どうも筆の進みが悪いんです。スランプかな?


美紀と圭を助けて、学園で再会を果たす。それがなされた事で学園生活部は結構な大所帯となって来ていた。そして、学園内の施設を修繕するついでに色々と確認する事が有った俺は皆に話す事にする。

「全員聞いてくれ。」

そう言って切り出すと、何時になく丈槍が真剣な顔をして口を開いた。

「いっくん、ハーレム形成宣言?」

【ごすっ!】

結構力を入れて殴った。ソレは見事に頭の頂点に直角に。

「ひきゃぁあああああ!?い、いたあぁああああい!!」

「あたりまえだ。この馬鹿。人が真剣な話をしようとしているのに・・・。」

そう言って俺は睨みつける。

「いっくんが酷いよ、くるみちゃん!」

「お前の自業自得だろ。今のはお前が悪い。」

「同意見ですね。悪いのはゆき先輩です。」

「みーくん!?」

「流石にあそこで言うのは無いわよね。真実はどうかとしても・・。」

「けーちゃん!?」

おいこら、圭。お前もか。なんなら一発行くか?

「さて、静かにして話を聞きましょうか。今度は邪魔しちゃ駄目よ?由紀ちゃん。」

「うー・・りーさんまで・・。ねぇ、めぐねえ・・。」

「静かにしましょうね?」

「・・はい。」

そこまで納得いかんか?全員に聞いたぞコイツ。

「はぁ、まぁ・・こほん、では真剣な話だ。今回分かった事でヤバい事が有る、コイツを見てくれ。」

そう言って緊急対策マニュアルを取り出す。そしてページを開きながら説明をしていく。

「まずは、今回の件は【ランダルコーポレーション】という企業が起こした事だ。コレが事故なのか、わざと蒔いた事件なのか、はたまた何かの実験なのか・・、ソレは分かっていない。しかし、とてつもない事に三種類の病原体の事が書いてある。呼称はα、β、Ωとなっている。αとβは虫食い状態の情報だが一応は分かる。しかしこれらの危険性は低い。αの細菌なら危険性は低く、βなら感染力は高くない。隔離すれば終わりだし時間が来れば死滅するはずだ。しかしそれが無い・・感染が止まらない上、その感染被検体・・この場合は感染者と呼ぶが、その感染者が活動を停止しない。その情報からこの感染体はΩである可能性が高い。・・対策もなくその性質も分からない。以上から現在立てれる対策は奴等から攻撃を受けない・・それしかない。」

「・・そう・・ですか。」

美紀がそう言って頭を下げる。

「更に言っておくが後から知ったら、不審になるだろうので情報を共有しておく。先ずは俺も感染するとどうなるか分からない。ソレはこの体は一応人間だからな。簡単に傷を負うことは無いが、それでも絶対感染しないとは言い切れないからな。」

「それはどうして・・?」

言わなければならない。この考えは最悪であるが故に言わなかった考えだが・・。

「まだ憶測の域を出ないが・・細菌である可能性が有る以上は空気感染の可能性は否定できないからだ。」

そう言うと全員が息をのんだ。顔も青ざめている。

「体液などの飛沫感染意外にも、細菌なら細胞壁によって守られている以上、空気で感染する可能性が有る。ウィルスがもとなら接触感染や飛沫感染に気をつけるだけでも良いが、細菌なら空気感染の可能性が有る。すでに感染している可能性が有るんだよ。いや、感染しているが抗体が出来つつある、または元々抵抗力が強いなども考えられる。」

「じゃ、じゃぁ・・もう助からないって事?」

「いや、抵抗力が何らかの事で働き発症してないのは何かあるはずだ。そもそも、まだ空気感染が確実であるという確証は無い。あくまで可能性の話だ。俺も、俺を此処に送り込んだ神の発言から細菌兵器の可能性を考えていた。そのせいで細菌だと確実に思い込んでいたが、ウィルスも研究していた機関ならどうなのかはっきりとは分からない。」

首を振って否定すると少しだけだが顔色が良くなる。

「まぁ、そう言う事だから体調の変化には気をつけてほしい。もしも、友達やメンバーが大事なら特に嘘は駄目だ。ソレは仲間を危険にさらすだけの行為だ。ただの風邪だから気を使わないでほしいとか言うことは許さない。」

「そう・・ね。わかったわ。でも・・その・・」

若狭が一人顔を赤くしてもじもじとしている。・・・あぁ。

「・・家族がほとんど女性だった事であっちの心配が有るのはあるが、そちらは女性同士で相談して解決してくれ。そちらはノータッチだ。」

「え、えぇ。分かったわ。言いづらいのを分かってくれて助かるわ。」

「まぁ、そこは・・おてんばな妹が大変でなぁ・・。兄さん又から血が・・病気!?コレヤバい!?・・なんて言って来た時が有って・・俺も兄として説明したり、対応したのだが・・姉がわりの家族がいたからそっちに任せるのが一番だと気が付いてなぁ・・。」

「大変だったのね、お兄さんは・・。」

「むしろソレを知らない妹にびっくりした。まぁ、ホムンクルスというかクローンと言うか、人体実験で出来た人間でなぁ・・遺伝子上は家族だったからな。故に知識が足りない所が有って、身体も成長した状態で出来ていたから大きさはあったが・・知識と経験が足りなかった。」

そして、そんな騒ぎになった時に、まだ体が成熟してなかったのかと驚きもしたんだよ。正確には俺がナノマシンで体のつくりを変えた時から人間として成長しだしたのかもしれんが・・。そうすると俺が苦労したのは自業自得という事だが・・まぁしょうがない。

「色々とぶっ飛んでる話で信じがたいんだけど、その話しはマジなの?」

圭がそう言って来る。

「お前にも見せたろう?俺は普通じゃない。」

「あぁ、そっちじゃなくて・・空気感染とかの方。」

「・・・可能性の話だ。どうできるかはまだ今の所どうしようもない。」

「じゃぁ・・これからどうするか・・ですね?」

佐倉先生がそう言ってくるので頷く。

「そう、先ずは学園内のほとんどは修繕したので危険は無い・・が、これを見てくれ。」

またマニュアルを開いて中心に置く。そこは建物の見取り図。その一階の端と地下を指さす。階段と防火扉の記号だ。

「ここから地下には行っていない。そして、その先・・ここには備蓄が有ると書かれている。そして、研究中の試験薬もあると。」

そう、書いてある以上三名分の薬品が残っている可能性はある。誰かが持って言って居なければ・・だが。

「・・そう言う事でここに資材を確認しに行って欲しい。」

「・・ん?一夏が行くんじゃないのか?」

胡桃がそう聞いてくる。まぁ、それでも良いのだが・・

「如何せん手狭になったからな。部屋は少し片付けたりしたが、資材が少し少なくなってきたんだ。人が増えたことは良い事だがそれは流石にどうしようもない事だ。屋上庭園の野菜を錬金術の栄養で大きくはしたりしたが、それでも流石に限度がある。今俺達は七人で生活しているんだ。俺は体の性質上、食事は最低限で良いがそれでも流石に育ち盛りの子供が我慢するのは体に悪い。いざという時に腹が減って走れません・・なんて笑えないからな。」

そう言って肩をすくめる。布団や寝袋、レトルト食材などが少し少なめなのだ。しょうがない事だが、そう言う事で俺が一っ走り行ってこようと言う事だ。守る相手がいない方が効率が良いのでな。

「佐倉先生が基本的に学園側の資材確認を。若狭が全体把握して、もし何かあった時には丈槍と共に居て全体の指示を。胡桃、圭と美紀が資材の確保で先生の指示に従う事。胡桃には少し大変かもしれないが、もし奴等が居た時にはコイツ等を守ってくれ。俺は専用の改造トランシーバーを持って出るから、何かあった時は連絡する。これは若狭に片方渡しておく。各自のやることは分かったか?」

「ねぇ、いっくん。私は結局なにするの?」

「お留守番しておけ。若狭が一人だと流石に学園内に奴等が居ないとしても心苦しいだろう?一緒にいてやる事もしっかりとした役目だ。」

そう言って帽子をかぶった丈槍の頭をなでる。

「・・なんか、いっくん。お父さんみたいだね。」

「・・こんな能天気な娘など要らん。」

「酷い!?」

そうやり取りをすると皆が笑った。空気が軽くなった。

「それじゃ、行って来る。」

そう言って俺は窓から飛び出してギアを取り出す。

「『Various shul shagana tron』~♪」

そう詠い、シュルシャガナを装備してそのまま着地。足に歯車の様なタイヤを出してそれで走る。

 




まぁ、遅くなったというのに、内容はあまり変わり映えしなくてすいません。なかなか進まないのはやっぱりオリジナル展開をどうつなげるかで、矛盾が起きないようにするのが難しいので、前の分を見たり書いたりを繰り返して、行ったり来たりを繰り返すのです隅が悪いんです。

ごめんなさい、結局は言い訳ですよね。
ただ、そう言う訳で進みが遅いという事を理解していただけると幸いです。
また次回も更新が遅くなると思います。
但しエタらないようにだけは頑張ります。
ではまた次回。


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第十一時間目

どうも、私です。
急に涼しいと思ったら暑くなったりと、体調がおかしくなりそうですね。
まぁ、私はものの見事に風邪をひきましたが・・。
夏風邪はなんとやらがひくと言いますし、私は毎年夏に体調を崩すのでなれました。
それでは、授業開始です。


シュルシャガナで走りつつ、更に背中に廻したサブアームの先に大型の丸鋸を出してソレを構えて前進する。

走り回るだけで奴等を切り裂いて進む事が出来る。そして、走りながらどこかに食料が無いかと探していると、通りの横に大きな建物にシャッターが閉まった建物を見つける。

「・・?ふむ、・・このような造り・・明らかに何かあると言わんばかりだな・・。」

そう思って丸鋸をプロペラがわりにして空から建物を確認する。シャッターの建物上部に昔の映画に出てくる潜水艦の様なバルブの付いた丸い入口らしき物、それ以外は全くの窓もない、・・換気用の施設が有る位で外部と完全に遮断されている。

「明らかに・・何かありますと言わんばかりの施設か・・。」

俺はその建物の屋上に降りてギアを解除する。

手に展開用のナックルを装備しておく。そして、バルブをまわして内部に入る。

「・・中は・・静かな物だな。」

そう言いながら回る。すると、ドアが有る。それと反対には倉庫らしき扉。

どちらに行くべきか・・そう思っていると、

【こちら、ワンワンワン放送局!終わった世界の皆、元気かい?まぁ、聞いている人がいたら元気じゃねぇって怒られるかもしれないけどね。】

「!?」

ドアの方から声がしてきた。ドアに近づくと人の気配と椅子のきしむ音がする。

【それじゃ、今日もワンワンワン放送局、行ってみよう。今日の曲はこちら・・】

「ま、マジで・・生存者だと?」

こんな施設に居るんだ。おそらくランダルとか言う会社の関係者かもしれない・・。どうするべきか・・。

【・・どうだったかな?良い曲だと思うんだけど・・こっほっ、こほっこほっ・・。】

「・・発症しかけか・・。」

【それじゃワンワンワン放送局、またね~。】

俺は静かにドアを開く。

「・・ふぅ・・けっほ、こほっこほっ・・。これは。もう長くないかなぁ・・。」

そう言って椅子にもたれる。

「その様だな・・。」

俺は中に入って声をかける。

「誰!?」

「安心しろ・・不法侵入者だ。」

「何処に安心する要素が有るって!?」

「間違っても奴らじゃない。こんなにはっきりした意識を持った奴がいたらヤバすぎるだろ?」

「それはそうだけど・・生きた人間がいたなんて・・。」

「俺のほかにも六人いるぜ?それに正確には俺は生存者じゃないしな。」

「・・それじゃどう言う事?」

「駆除者・・という面もある。生存者を助けて、大丈夫そうなら保護場所に連れて行く。・・その見込みがなければ残念だが・・。」

「・・そうね、私は後者だわ。最近咳が止まらない。無性に食欲がわく。睡眠欲が下がってきた・・。」

「だろうな・・あの咳の感じからも発症まで後持って数日か?」

そう言うとテーブルの上にあったカップを煽って中を飲む。

「はっきり言ってくれるじゃないの。」

「正直な性格でな。あまり、希望を持たせるのも酷だろう?」

「そう・・ね。正直、もうこのまま寂しく死んでいくと思っていたの。誰にも会えずに・・。」

そう言って机の上から紙を取り出す。

「一応こんな物も用意しておいたの。誰か来た時様にね。」

そこには車の鍵が貼り付けられて、

【生きてここに付いた人にこれを託す。出来る事ならあなたと共にお茶を飲みたかった。出来るならあなたと共にお話をしたかった。出来るならあなたと一緒にここを出たかった。】

そう書いてあった。

「ここから出て行くことは難しいな・・。ランダル関係なら薬は無いのか?」

「・・。」

首を振る。

「私は傷が付いてもいないのに発症してる。ならおそらくだけど、ランダルコーポレーションの研究していた試験薬では意味が無いだろうね。」

「・・空気感染の可能性が有るんだ。病原体がウィルスでなく細菌ならば、抗生物質でどうにか症状は抑えられるかもしれないが・・」

「ソレを作る施設などここにはないし、そんな知識もない。」

「・・俺も医学系はあまり詳しくない。すまない。」

「いや、・・こうして生きているうちに希望を託す事が出来るんだ。・・一緒にお茶をしてくれるかい?」

「そうだな・・それは構わない。俺は珈琲にうるさいぞ?」

「ふふ、インスタントしかないよ。」

そう言って入れてくれた珈琲と缶詰のクッキーを食べながらお互いに話した。素性は明かさない。お互いに未練が残るから。そうして短いお茶会が終わる。

「・・さて、これで私の役目は終わりかな。最後に楽しかった。ありがとう。」

まぶしい位の笑顔でこちらに笑いかける。

「この施設の物は持って行ってくれてかまわないし、この車も使ってほしい。」

そう言って鍵とさっきの手紙を渡してきた。

「せめて、私が生きて居た証だけ残させてくれないかな?」

「・・了解した。」

丁寧に手紙を畳んで収める。

「さぁ、最期になるけど・・けほっ。こほっこほっ・・」

「・・・・。」

俺は今どんな顔をしているのだろうか。

鏡もガラスも見たくない。人を殺す事など、そこまで苦しい事じゃないはずだ。初めの世界でコアを集める為にどれほどの犠牲を出したか・・。分かっているはずだ。

人の命を奪う事など軽い。ギアを持つ今は更にたやすい。

「ごめんね・・ふぅ・・。そろそろ疲れてたんだ。皆居ない世界。人は一人で生きていけないってホントだね。心が死んで行く。・・君に救われた。ありがとう。」

「そう・・か。・・なら、良かった。」

そう言って俺はキャスターの銃を剣にする。

「それじゃ、君に酷なお願いだけど・・私を奴等にならないように、終わらせてほしい。」

「・・どうにかあがこうとか考えないのか?」

「こうして引きこもっていて発症したんだ。どうにもできないだろうね。おそらく、君達が特別に発症が遅いのか、抗体でもあるのか・・。どちらにしろ、私はここまでの様だし・・。実は、私の父がランダルコーポレーションの関係者なんだ。帰って来ない所を見ると、どこかで死んだんだろうね。初めは外に居たけど危険と分かって、引きこもった。安全だと思ったのに咳が出て最近は熱もある。おそらく、もう駄目だろう。娘の私もこんな事になるとは思っていなかった。父がこんな家を建てた以上、何か危ないことはしてると思ったけど、思っていた以上にヤバかった。そして、一人安全にして生きていたと思ったけどこれ。生きて行くのが辛くなっちゃった。薬が有れば確かに助かるのかもしれないし、生きながらえることが出来るのかもしれない。だけど・・もう、私は決めたんだ。これ以上の地獄はもうたくさんだ。無事なら一緒に行きたかったけど・・ごめんね。最期まで聞いてくれてありがとう。」

そう言って隣の部屋に移動した。物置みたいな部屋で壁とドアしかない。

「・・それじゃお願い。短い間だったけどありがとう。楽しかったよ。」

そう言われて俺は眼を閉じる。しばらくして眼を開き、手をあげる。そして、キャスターの剣を・・消す。

「・・え?」

「…賭け・・。・・そうだ、賭けに出てみないか?」

俺はそう問いかけた。

「賭け?何の?私はもうすぐ・・」

「今、【私立巡ヶ丘学院高校】に俺達は居るんだが、そこも避難所として書いてあり、地下に避難所施設が有る。そして避難所にあるマニュアルに、校内に薬が有ると書いてあった。俺の仲間がその物資を確認しているはずだが、もしも・・その薬が効けば一時的にだが助かる可能性はある。」

「・・そんな数の少ない物をただの一般人でしかない私に使うの?馬鹿げてるわ。それはもっと大事な時に使うべきよ。」

そう言われて俺は苦笑いする。

「・・俺も甘いと思うんだがなぁ・・どうも、可能性が有るなら試したくなった。あの手紙を見たせいかもしれないな・・。お前の想いに共感してしまったのかもしれない。お前の必死な気持ちが見て取れたからな。・・俺の知り合いに【手の届く相手を助けたい。手を伸ばすのは殴る為だけじゃない、掴んで引き寄せる為にもあるんだ。】って言った奴がいてなぁ・・。救えるならば手を伸ばす・・そう思っちまったんだよ。元の俺には無かった。感傷だが・・アイツが居たからこそ、今の俺になったのかもしれん。」

そう言って俺は上を見る。

前の世界の元兄弟を思い出す。ちゃんと相互理解を出来たアイツに感化されたのかもしれないのはある。さらに、行った異世界での経験もなぁ・・。

言葉では拒絶しながらも助けを求めていたあの少女を思い出してしまった。

「・・そんなこと言われたら・・我慢できないよ?」

「苦しかったろう?怖かったろう?・・可能性はゼロじゃない。俺がどうにか助けるよう努力する。・・だから・・」

 

「【生きるのを、諦めるな。】」

 

そう言うとその女性は泣き出して、縋る様に俺の胸元にしがみつく。

「死ぬのは怖い!一人はさびしかった!誰にも死ぬのはもっと怖かった!誰にも私の事を知られずに消えて行くのは怖かったよぉ・・。」

「・・あぁ、吐き出せ。それは、毒になる。生きる精神で対抗して俺達は生き残るんだ。」

そう言って頭をなでた。

そして、荷物を整理して使える物は持って行く事にして、多くの荷物をキャンピングカーに乗せた。そのままキャンピングカーを使い学園に戻る事になった。

もし、この先ランダルコーポレーションや聖イシドロス大学に移動する際にも拠点になる。

街を出るなら尚更だ。

睡眠を快適にするのはストレスによる消耗を減らす一番大事なことだしな。

そして、車を運転しながら邪魔な奴等がいたら、車から降りてキャスター銃でエネルギーに変えて回収して行った。そうして学院にまで戻ってきた。

また生存者を引きつれて。しかし、それは感染している人物。

それがこの後、大きなカギとなるとはこの時は思っていなかった。

 

 




今回のキャラクターは本編で助けられなかったラジオの放送していた子です。わんわんわん放送局のラジオ放送していたあの子。
名前は書いて無いのでオリジナルの名前にします。
一応名前はオリジナルですが、オリキャラと言う訳じゃないのでよろしくおねがいします。
それでは、また次回。



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第十二時間目

どうも、私です。
最近また一段と寒くなったりしますね。

体調を崩さないようにしたいのですが、どうもこの季節はやはりきつい。
熱いのと寒いのが交互に来て体が疲れてます。
皆様はお気を付けください。
私は気を付けていても無理でしたが・・(笑

それでは授業を開始いたします。どうぞ。



「また生存者・・ですか?・・でも、その方は?」

「あぁ。詳しいことは待て。それよりも地下の荷物は見たか?」

「え?あ、はい。コレがその目録です。りーさんと私で作りました。」

「めぐねえと圭が順に何が有るか言って、それを書き込む手順でしたので早く終わりました。その間、くるみとゆきちゃんは周りの警戒をしてくれて順調に進みました。」

そう言って二人分の目録、ソレをまとめた全体表を見る。

「・・食料は良し、飲料も良し、・・消耗品の類は少し少ないのは他に容量を使う為か・・。」

そうして見て行き二枚目をめくる。アレが無いと・・そう思うと目的の文字が見える。

「やはり有ったか。」

そう言ってそれがどこにあるか確認する。重要資材は地下にあるまま。ソレを確認すると、全員を集める。

「・・という事で、連れて帰った生存者は、発症している。しかし、初期段階。薬で治る可能性が有る。しかし完全に治る可能性は低い・・限りなくゼロだ。だが、それでもこの薬を使っても良いか?もし、文句が有るなら言ってくれ。」

経緯を話し、それでも全員の許可を得る事にする。

「・・アレは重要な薬、分かって言っているんですよね?」

若狭が厳しい顔をして言う。

「・・こういうのも酷いかもしれないが、・・効果は分かっていない。確実性は極めて低い。俺の持っていた薬と違って、効能は低いかもしれない。ソレを調べるための人体実験と言っても良いだろう。非道だと思うなら言え。それでも、いざという時に使えないと分かるというのだけは嫌なんだ・・。」

そう言うと全員が黙る。そして、

「・・うん、それで誰かが助かるなら使おう!」

そう声をあげたのは丈槍だった。

「良いのか?」

「だって辛いんだよね?苦しいんだよね?だったら、使わなくちゃ。それに治ればその人も一緒に居られるんだよね?」

「あ、あぁ。それはそうだ。俺が確認して、症状の緩和、完全発症の可能性が低いと確認したら一緒に行動することになるだろう。それまでは、アイツの持ち物のキャンピングカーで生活してもらう。」

「見ず知らずの人にキャンピングカーを渡そうとしてたり、迷惑をかけないようにしてた人が酷い人な訳じゃないもん。私は一緒に合ってお礼が言いたいな。だから、その人を助けてあげて欲しい。」

そう言われた俺は、アイツの書いた手紙を渡す。

「お前ならこれを読んで思いを拾えるだろう。・・俺からも頼む。アイツに薬を使わせてくれ。」

そう言って頭を下げる。

「・・初めから誰も反対はしてませんよ?ただ、確認をしただけです。」

にっこりと笑った若狭、それから全員の顔を見る。笑っていた。

「ちゃんと直してやれよ。」

「一夏さんなら大丈夫だと信じています。」

「私を助けてくれたように彼女も救ってあげて。」

「苦しいのは私が一番知っています。だから、彼女を助けてあげて。」

胡桃、美紀、圭、佐倉先生・・それぞれから賛同を貰い、俺は顔をあげる。

「分かった。すぐに処置してくる。皆と早く合わせたい。」

そう言って俺は地下倉庫へ走り、薬を持って車へと戻った。

 

「これで・・大丈夫なはずだ。」

注射器に薬液の入れる部分が付いた特殊な形のソレを使い、薬を注射する。更に、体温や代謝温度、瞳孔の動きや味覚の検査などをする。

結果として【辛い・苦い・渋い】を認識しづらく、【旨味・しょっぱい・甘い】などは感じやすくなっている。感染のせいかもしれない。食欲が強くなり、空腹感によりおいしいという味を感じやすくなっているのかもしれない。

以前、佐倉先生は苦みを感じ取ったことからかなりの差が有ることは明らかだ。

少し経過を長く見なければいけないかもしれない。

そして、俺は街で見つけた車の改造所のパーツを思い出して、ソレを取りに行く事に。

校庭端に有った体育での授業で使う備品倉庫を改造してキャンピングカーの車庫にした。

更に車を改造。牽引型トレーラーみたいなタイプの形にして前方運転席を切り離して間にドアと緩衝材を入れる。イメージは電車などの接続部みたいな感じだ。

シャワーが無かったので最後部のソファーを一部取り払い、外付けでシャワールームを作り、エンジンの熱で温水が出る様にした。水タンクも大型を運転席上部に装着。後方が大きくなったために上部の寝室をもう数人増やしても寝れる大型に変更。

元のキャンピングカーは結構大型だったがさらに大きくなった。あまり細い道は走れないかもしれないが、俺が居る限りは大きな道だけで十分大丈夫だ。

燃費が悪くなったので他の車からエンジンをかっぱらって来て、乗せ換えた。燃費が良く、馬力のある最新エンジンだ。・・魔改造し過ぎた気がするが気にしないでおこう。

そこで暮らす事になったコイツは少し喜んだ。まるでVIPの様だと。

・・コイツ心が強いようだ。

 

「・・そう言えば出かけた際に、途中でここの事が書いてある紙を拾ったんだが、これ誰か知っているか?」

俺は此処の住所、生存者がいる事が書いてある紙を見せる。

「あぁ、それはいっくんが居ない時に皆で書いて空へ飛ばしたの。ほら、いっくんが連れてきた様に、他にも生きている人がいるかもしれないじゃない?」

「・・ふむ、それは一理有るな。ソレはどうやって飛ばした?」

口に手を当てて考える。確かに多くの不確定な所へ飛ばせる手段ではある。誰が生きているか分からない以上は、確かに分かって無くてもどこかへ行けばいいというのも頷ける話だ。ランダム性でも、俺の様に拾う奴がいるかもしれない。手段はどうしたのだろうか?

「理科準備室に有ったガスで、購買に有った風船を膨らませた分につけたり、捕まえたハトにつけたり・・」

「・・・ハトは病原菌が多い動物だからな?あまり近づかないようにした方が良いぞ?動物を媒介しての感染もあるだろうからな・・?」

「うげ!?マジで!?あの後ちゃんと手をよく洗っておいてよかった・・。」

「ハトってそんなにばい菌持ってるの?」

胡桃と丈槍は知らないようだが、若狭と美紀は頷く。

「ハトのふんによる病原菌の繁殖および、それを元にした肺炎なども確認されてます。」

「いろんな所に入り込んだり、いろんな所でご飯を食べてるから何のばい菌を持ってるか分からない位なの。問題になるほど繁殖した場合は駆除したいけど、法律で禁止されてたり、平和の象徴とされていることから、人からどう言われるか分からなかったりと色々と面倒なの。」

知っているなら、捕まえるの止めろと言いたい。まぁ、聞かないと思ったのかもしれんが・・コイツ等全員が基本的に丈槍に甘いからその後をしっかりすればいいと思ったのだろうな。

はぁ・・。まぁいいか。

「とりあえず、事は分かった。そう言う事なら一理あるのでやったこと自体には何も言うことはないが・・人が来た場合は俺に言え。感染したりしてないか俺が確認したり、信用に足りるかなども審査する。男の俺なら、力で負けることは少ないからな。」

それ以上に普通の人間に負けることすらないが。

「それじゃ、この話はコレで良い。・・あと、朗報だが・・」

紙の束を見せる。全員がソレを覗き込む。

「これは・・例の方ですか?」

「あぁ、症状の安定・・完全発症の可能性は低いという事が分かった。咳をしていたのも減少し、今じゃすることは見なくなった。ただし、血液内には確かに感染の跡が見えることから、完全治療完了と言う訳じゃなく、ある程度の抗体が出来たと見て良いだろう。それによって症状の緩和、発症の可能性の低下が確認できた。ただし、血液からの感染が無いとは言えないし、体液からの感染の可能性は否定できない。それでも、共に暮らしても良いというならどうにかもう少しどうにかできないか善処する。・・いやならば今からでもあの場所に戻ってもらうことも可能だが。」

そう言うと即座に丈槍が袖を掴む。

「そんなさびしいこと言っちゃ駄目だよ、いっくん。あの手紙・・凄く人と一緒に居たいってわかるもん。」

「・・他も否定意見はないな?」

そう言って見回す。全員が微笑んでいた。

「はぁ・・わかった。もう少し頑張ってみて、感染の可能性を下げるための処置をする。最終検査を終わって問題なければ・・ん?」

俺は話している途中で耳に集中する。

「なんだ・・・この音は?」

そう言うと全員が不思議そうな顔をする。

そして・・

≪バラバラバラバラ・・≫

大きな音が聞こえた。

全員が顔を合わせて屋上へ走る。外を見まわす。

「こちらじゃないです。」

「こっちも何も言ないわ!」

それぞれが声をあげる。

「違う!下じゃない!上だ【・・】!!」

見上げた先にはホバリングするヘリが一機・・。

揺れて【・・・】いた。

 




先日、医者から慢性のコレステロール過多・・肥満だといわれました。
しかも、血中カリウム量が極度に低く、すぐに対処がいるほどの状態から、そっちの対処もしなければならない。正直、食べることが好きな私には辛い事この上ありません。
おいしい料理を食べることが一番の楽しみなのに・・。
皆さんは健康管理をしっかりと。
私みたいに薬ばかり飲むようにならないように。

さて、次回もまた遅くなるかもしれませんが、できたら早くしたいと頑張っておりますので生暖かい目で見守ってください。
せめても、この作品は完結させるつもりです。
プロットはあるんですがねぇ・・、文章にしてシナリオをつけると難しい・・。
あぁ、文才が欲しい・・。

ということで、さよなら。元気でまた次回。


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第十三時間目

ハオ!・・こんにちわ、どうも、私です。
最近の気温の変化に風邪をひきまして、のどをやられてあまり声が出ないです。
それでも、ついついシンフォギアの曲を口ずさんでしまうのはしょうがないですよね?
正直、また熱くなるとニュースアナウンサーが言っていた時の絶望感が半端ないですが。
でも、まぁ、平気へっちゃらの精神で頑張りたいと思います。
それでは、十三時間目、授業開始です。
どうぞ。


見上げた先のヘリは【揺れて】いた。

「おーい!!」

「こっちだー!!」

「私達!生きてるわよー!!」

それぞれが声をあげる。しかし、俺と美紀だけはソレを見ているだけだ。

「・・一夏さん・・アレ・・」

「あぁ、おかしい【・・・・】。」

ヘリのホバリングでもアレほど揺れるのはおかしい。そう思った俺は、美紀に目を合わせてお互いに頷く。

「お願いします。」

「承った。」

そう言って、俺は離れて手を開く。

「【defendend. guardend. protectend AIGIS tron】~♪ 」

そう詠い、アイギスを纏う。そして緑の楯を装備して剣を持ち、足元に風の錬金術式を浮かべて空へと飛ぶ。

ヘリに近づき、ドアを開けると・・

『・・う・・あう・・ぅうう・・』

もがいてる操縦者が居た。

しかし、その顔はガスマスク。完全に装備されている・・が、

『ぐぅ・・がぁぁ・・』

発症していた【・・・・・・】。

俺は・・瞬時に判断。これは無理と断定。明らかに最終段階の発症状態だ。助かる見込みはかなり・・いや、ゼロだ。今は葛藤しているだけで、精神状態ももうもたない。薬を投与しても遅すぎる。そう判断した俺は被害を出さない為に、持っていた剣で突いて首を切った。横にずらして首を落とす。

せめて・・完全に奴等になるまでに人のまま殺してやりたかったからだ。

その体を後部に投げる。操縦桿とスロットルを操作、そして揺れて居た理由をみると燃料ゲージがエンプティだった。これでは落ちる・・。

すぐさま着陸態勢を取り、校庭外の教職員用駐車場の近くに下ろす。校舎から離れて下ろしたのは音がうるさく、奴等が寄って来ているのが分かったためだ。

した事が無い為に、無事完璧な着陸とはいかず、数台の車にぶつけてしまう。ドアを開けて機体を見ると後部の安定用尾翼が折れて、その近くのコードがショートしている。

近くの車もつぶれた部分が有り、そこからわずかながらに燃料が漏れているようだ。

それに気が付いた俺はすぐさま機内の荷物を調べる。

機内用の消火器、不要。備え付けの無線機、必要。ケース・・内容物は拳銃、数本の注射器、地図・・重要物。・・アレ?コレは【・・・】‥後回しだな。・・後はコレと言ってない為、無線機周辺の計器から周りを切り取り、繋がっていたコードを抜いてすぐさま脱出。

案の定、周りに奴等が来ていた。更に校舎からこちらへ胡桃と美紀が来ていたのが見える。

「来るな!!戻れ!!」

そう叫んで、胡桃達の元へと走る。剣で近い奴らだけ切って全速力で走ると校舎へ戻ろうとした胡桃達に追いつく。

「これを持って全員で地下のシェルターへ。俺がヘマして車に当ててしまった。燃料が漏れて・・もしかしたら・・」

そう言った瞬間に後ろで爆発音。続いて衝撃が来る。

楯を構えて二人の前に立つ。

破片が飛んできた。ソレを楯で弾く。

「行け!俺は火事を押さえて、キャンピングカーの元に行く!後で落ち合うぞ!」

そう言って前方に走ると、二人は校舎へ走り出す。

言う事聞いてくれるのは良い子たちだ。だてに修羅場をくぐって来てないな。

俺は楯を青に代えて水を出す。

それによって炎上を小さくする。しかし、燃料は油、こちらは水、下手な注水は規模を拡大させてしまう。

ソレを考えて駐車場を囲うフェンスに水をかけて氷で上から覆う。燃料が漏れださないようにしながらも冷却で燃料の温度を下げて発火まで起こさないようにして更に地面にも氷を作って駐車場の中心に燃料や水を誘導する。

それから楯を変更し、黄色の楯で地面を操作。

中心に穴を掘り、そこへ燃料を誘導すると乾燥した砂をかける。

更に発火した車、ヘリ、付近の車にも乾燥砂をかけて消火。

それから、周りの確認をして地面を戻す。氷はじきに解けて排水されるし、駐車場の地面はこれからは使う事もないだろうから土のままにしてある。

それから、俺は状態を確認した後で運動場体育倉庫・・いや、車庫に行き中に入る。

「あの騒ぎは何!?どうしたの!?」

「・・落ちつけ。助けかと思ったが、どうやら巡回のヘリが居たらしくてな、学校近くまで来ていたらしい。しかし、運悪く発症して落ちて来そうなのを俺がどうにか乗り込んで墜落は止めたんだが、発症したパイロットに気を取られてたのと場所を迷った為に、着陸に失敗して駐車場の車に当ててしまったんだ。その結果、車から燃料が漏れて爆発した。重要そうな物は持って降りたから大丈夫だ。」

肩に手を載せてしっかり目を見て話す。他のメンバーと違って普段から、一人でここに居る分精神的にもストレスになっているかもしれない。

「・・そろそろ、最終検査をする。それが問題なければお前もメンバー入りだ。」

そう言って頭をぽむっと撫でる。

「・・うん、わかった。ありがとう。」

そして俺は車にある物で不備はないか聞いて、少し話してから校舎へ戻った。

 

「いっくんは平気!?大丈夫だった!?」

「・・丈槍、俺はそもそももっと危ない世界から来てる。・・そこはSFみたいなロボットで間違ったら殺し合いが出来る様な世界でな?そこで、一番最初の人生で殺した事も有った。相手のロボットを倒す為に。そんな世界に居た俺だぞ?これくらいでは怪我すらしないぞ。」

そう言って頭をなでる。心配かけたのは確かなのだ。

「うん・・。」

「皆も心配かけたな。・・パイロットは完全に発症していた。手遅れだったので対処【・・】しておいた。機体は燃料がほぼ無い状態だったので、そもそもあのヘリは使えない。おそらくだが、少ない燃料で飛んだか、長時間飛行をし続けたかのどちらかだ。・・ヘリの機内にコレ【・・】が有ったことから、おそらく後者だと思うが。」

取り出したのは機内で見つけた、一枚の手紙。

【わたしたちは元気です。】

そう書かれて絵が書いてある紙だ。

「・・これ・・。」

「届いてたのか?」

「・・じゃぁ、助けが?」

皆が驚きながらそう言っているが、俺は首を振る。

「それならばもう少し人が居るはずだ。パイロット一人はありえない。許可なく低い可能性に駆けて飛びだした正義感の強い人物か、あるいは・・」

胡桃からケースを受け取る。開いてケース内に有った拳銃を見る。

「感染者を増やさない為の尖兵か・・。」

俺は拳銃を取りマガジンを抜いて、コッキング。チャンバー【薬室】内の弾薬を抜く。マガジンに弾薬をはめ直し、拳銃を懐に収める。

「どちらにしろ、助けはないだろう。・・逆に危険性が有るかもしれん。」

そう言いながら次に注射器を取り出す。袋に入っている。

「俺は中身を検査する。もしも、コレが緊急の薬なら、学園内に有る分よりも効果が高いかもしれん。そうなれば、アイツにも投与して効果を見る。」

注射器も収める。そして最後にケース内の地図。

「ここの学校と、ココ。マーキングしてある所が有る。」

二か所の学校にマーキングがしてあった。

「もう一か所は・・聖イシドロス大学ですね。」

「後はランダルコーポレーションか。」

地図の裏になる場所にもう一か所マーキングしてある。

「・・緊急連絡で書いて有った場所ね。」

圭がつぶやく。ソレを聞いて思い出したように佐倉先生も、

「ここら辺の企業をまとめていた大型企業です。・・今回の事もこの会社がもとだと思います。警戒したほうがいいのかも。」

そう言う大人の意見は皆が耳を傾けるのでありがたい。

「俺も同意見だ。とりあえずは、此処の学園にマーキングしてあったことから、緊急避難所としての場所を回るつもりだったが、その途中で発症したと見るのが自然だ。そして、その際に飛行が困難となり、異常に燃料を消費・・着陸も困難となりホバリングの末俺によって緊急着陸・・その際にパイロットは処理【・・】。となった形だろう。しかし・・処理をした際に気が付いた大きな問題が有る。」

俺の真剣な声に全員がこちらを向いている。

「パイロットはガスマスクをしており、怪我もなかった。・・発症する原因はなんだ?」

その一言で、全員の顔が凍りついた。

「・・おそらくだが、発症には潜伏期間が存在するのだろう。空気または飛沫、接触感染での感染から一体どれくらいで発症するのか分からない。こうも完全な装備だったことからおそらく管理は徹底していたはずだ。なのに発症した。・・空気感染からの発症期間が長いとしたら、いつ発症するかも分からない。」

おそらく全員が自分がいつ発症するか分からない恐怖と闘っている。

全員の顔がこわばっているのが分かる。ここでのんびりした奴が居た方が問題なので俺は安心する。これは脅したのだ。

「まぁ、薬はある。アイツもそれで症状が緩和されている以上、完全とは言わないがかなりの効果は望める。そこまで気を張ることはない。ここまで発症してない以上、もしかすると、俺達は空気感染に対しては抗体が有るのかもしれない。しかし接触感染や、体液などを通しての直接感染に対しての抵抗は未知だ。試す事もやめた方が良い。佐倉先生でさえ発症しかけた。おそらく、それに対しては無理なのかもしれない。そこだけは覚えておいてくれ。」

そう言うと全員が安心した顔をした。

「いっくん、こういう時はホント頼りになるね。」

「本当にな。」

「こういう時の男の人は助かります。くるみやゆきちゃんも見習ってほしいわ。」

「知識が有るというのはやはり有利ですね。勉強になります。」

「美紀にこう言われるなんて流石。あれ、私含めてハーレム狙い?」

「圭さん、おかしなこと言わないの。・・私もお手伝いできればいいのですが・・。」

全員が落ち着いたようなので、俺は薬の成分を調べることにした。

予想通り、少しだけ改良した抗生物質だった。ソレを車に居るアイツに投与し、経過観察。

二日後、問題なしとなり、全員と挨拶する事になる。

 

「初めまして、・・ラジオで【ワンワンワン放送局】を流して生存者を探して居ました所を助けてもらいました、【狗三 夢子(いぬみ ゆめこ)】と言います。皆よろしく。」

 

 




【狗三夢子』という名前はオリジナルですが、人自体は助からなかったあのシェルターの女性です。
個人的に助けたかったのと、あるファクターとしての存在が必要だったからです。
とりあえずは、オリキャラじゃないことだけ理解してもらえると助かります。
それでは、また次回。


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第十四時間目

どうも私です。
先日、調子を悪くしていましたが、かなり良くなりました。
心配かけました。お気遣いありがとうございました。
しかし、来週はまた暑くなると天気予報で言ってました。
体調が崩れないか心配です。結構、体調管理に気を使っているのですが・・。
とりあえずは、気を付けるしかないので頑張ります。

では、授業開始です。どうぞ。


「狗三 夢子と言います。よろしく。」

ラジオで生存者を探していたらしい、シェルターの生存者・・しかし感染者の狗三がそう自己紹介をした。

「イヌが三匹で『ワンワンワン』なのかな?かわいいね。私は丈槍由紀。」

「思ったよりも年上か。成人してそうだな。よろしくお願いします。恵比寿沢胡桃です。」

「若狭悠里です。生徒内ではまとめ役をしてます。」

「教師の佐倉慈です。生徒からはめぐねえって呼ばれてます。」

「直樹美紀です。私も外から保護されたメンバーです。」

「祠堂圭、圭って呼ばれてるわ。私も保護されたメンバーよ。元は美紀と一緒に居たんだけど、助けを求める為に外に出たら怪我して奴等に追われてたの。危ない所を彼に助けてもらったわ。」

「俺は面倒になるが、もう一度詳しく自己紹介しておくか。異世界人。元は【イチカ・ダインスレイフ】名乗っていたが、ここでは更に前の世界での名前の【織斑一夏】を名乗っている。元々異世界、他の世界で死んだところを自称神様に拾われて、頭ん中にいろんな知識を与えられた男だ。SFみたいなロボットが居る世界出身だったが、此処とはまた別の世界の知識を神に与えられて身体をホムンクルスにしたりして生きてきた錬金術師だ。また、『シンフォギア』、『スペルキャスターを使った錬金術のファウストローブ』という特殊な物の装備が出来たり、無から有を作りだすなどの魔法も使える。正確に人間と言うかはあやしいが、まぁ、ここではまとめ役や戦闘をメインとしている。大体のことはこなせるのは知っているだろう。そんなくらいだな。簡単に一夏とでも呼んでくれれば良いさ。まぁ、よろしく。」

そう言って締めくくる。コレでまたメンバーが増えた。

「さて、どうするべきか・・ソレを話し合おうと思う。」

「ん?狗三さんが来てそれ以外何かあるのか?」

そう胡桃が不思議そうに言う。

「・・お前は一生此処にいるつもりか?いつ老朽化して施設が止まるかは分からんが、他の生存者を探したり、発症を止めるためや感染を抑える方法を探したりなどは・・、いやこれはお前に言う事ではないな。大人である俺の役目だった。今のは聞かなかった事にしておいてくれ。・・まぁ、そのだな・・とりあえず、今の生活以外の方法でも生き残れる方法を覚えさせる。最悪の場合、文明を棄ててサバイバル的な生活をしなくてはならなくなるかもしれない。その際の知識を俺が色々と教え込んでいく。」

「・・サバイバルにこだわる必要はあるのか?」

胡桃がまた返してくる。

「そもそも、インフラ整備などを行う人間自体が居ない。ライフラインがいつ止まるか・・その頃になって水が飲めないとか言いだしたら終わりだ。多少の病気に効く薬草や、その処方なども教えるし、罠や防壁などの作り方も教える。最終的には家なども作る様にしてもらえるようにしておこうかと思う。伝統的な大工から学んだ知識で、釘は使わない手法が有るから慣れればどうってことはない。基本だけを教えて置くからソレを活かせるかは俺が居なくなった後のお前ら次第という事だ。」

そう言って俺は部屋の端に置いておいた本を机に積み上げる。

「その本は町中の本屋から集めた物で、印が付いているページの植物が役に立つ知識の植物だ。食べ物になる物、滋養栄養が取りやすい物、薬になる物、逆に毒になる為に誤食してはいけない物だ。キノコ類は基本的にはあまり食べるな。食えるように見えて毒性の酷いドクササコなども有る。キノコ類は分かりやすい物以外には手を出さない事、コレは基本的な事だ。肉類は・・どうなるかこれについては山に入らんと分からん。感染しているようなら腐臭がするだろうが、基本的に獣臭いのが多いのでな・・動物にも感染する可能性が高い以上、あまりお勧めはしないが、それでも色々と食べる必要はある為に、畑づくりの応用編も教えて行く。・・まぁ、コレが出来たら学校を出て付近の山で散策したり、キャンプカーの使い方を覚えたりだな。その後は・・大学かランダルコーポレーションに行く予定だ。」

例の機密冊子を取り出して、避難施設の聖イシドロス大学とランダルコーポレーションを指さす。

「こちらにはまだ生存者がいる可能性が高い為、それと大学ならば、この学校よりも多くの資材もあるだろう。それから、もし研究施設が使えるなら、そこで抗生物質の製造に着手したいのも有るし、そちら方面の生存者がいないかも気になる。」

大学を指さしてそう言う。

「もしも、大学にそれに該当する研究施設が無ければ、またはデータが必要となればやはりランダルコーポレーションに行くしかない。」

今度はランダルを指さす。

「俺はこの順番で行くつもりだが・・異論はあるか?」

「・・今の生存者って、大丈夫なのでしょうか?」

そう美紀が聞く。

「大丈夫って?」

「発症したりしてないか、感染してないか・・そんな事に対して凄く警戒してそうなんです。そうだとしたら、怪我をした圭や先生、発症を起こした夢子さんが・・」

「ふーむ・・それについては人間だから何とも云えん。その人間に合わなくては予想もできないな。現に狗三も迷惑かけないようにと思っていた人間の一人。人間はそれぞれで此処が違いすぎるから予想も立てれん。その上、極限状態か、意外に余裕を持っているかでもその性格で変わる。・・有って話さなくては分からないという事だ。」

「・・美紀も気にしすぎよ。夢子さんも私も先生も今は、一夏さんが守ってくれるじゃん。」

「ここまで生活や症状が改善された事を見ても、希望は大きいと思います。」

「そもそも、私は此処にいる状態の人間じゃなかったからね。彼に会わなきゃ、きっと死んでたよ。だから私は一夏君にまかせるさ。」

圭、佐倉先生、狗三がそう言うと全員が俺の方を向く。

「それじゃ、決まりだね。いっくんに頑張ってもらおう。」

丈槍がそう言ったので即座に頭を掴む。

「お・ま・え・ら・が!覚えなきゃいけないんだよ。頑張るのはお前らだ馬鹿者。」

ぐりぐりと頭を掴んで回す。

「いだだだだだ!?痛い!?ちょっと痛いよ!?」

「ゆきちゃん、お勉強はちゃんとしましょうね?」

「・・ゆき、諦めろ。」

「由紀先輩が頭を抱える事になるとは思いますが・・。」

「勉強苦手そうだもんね。」

生徒は皆で苦笑いや黒い笑顔だ。

「一応、教師免許を取ろうとした事もあるから、教えること出来るよ?」

「私は国語なので・・植物は・・」

「それは俺が出来る。抗議もした事が有るからな。資料作りだけ手伝ってもらえれば、後は俺がやろう。佐倉先生にもお願いしたい。」

「あ、それでしたら・・。頑張ります。」

そう話して、職員室に行き無事そうなパソコンを立ち上げて、入っている書類作成用のソフトを起動。

文章を作成し、・・途中で作成に行き詰る。

理由は、誤植しやすい植物などをまとめようかと思ったが、ネット環境などが死んでいて画像が持ってこられないのだ。

「どうすべきか・・。」

そうして行き詰っていると佐倉先生がお茶を持って入ってきた。

「お茶をどうぞ。・・あれ?どうかされたんですか?」

「あぁ・・行き詰りましてね。画像が持ってれないんですよ。ネット環境が無くて・・。」

そう言うと佐倉先生は黙って少し考えて、そこら辺の机を開け始める。

「あ、有りました。他の先生の私物ですが、自慢していたので覚えてたんです。」

デジカメを一つ持ってきた。・・これでどうしろと?

「図鑑の写真を取って、メモリーから入れればいいんですよ。おそらく此処の印刷機なら写真でも印刷できます。白黒かもしれませんが・・。」

「・・なるほど。ならソレは先生にお願いしておきます。文章だけ作成しておくので、・・あぁ、生徒にやらせても良いですね。楽しく覚えるかもしれない。」

そう言って苦笑いをした。すると、手を合わせて叩いて、

「それは良いですね。特に勉強嫌いが二人もいますからね。」

そう言ってカメラを持って出て行った。俺はソレを見送って書類作成を進める。

 

「あ、・・あのカメラバッテリーはあったのかな?」

 

案の定、充電切れでした。充電器はさっきの先生の机から出てきたので充電して使った。

そして、作成したサバイバル用の基本資料は結構分厚かった。

書類系の作成はのめり込むと、つい調子に乗ってしまうのは今後の課題にしよう。

 




ラジオ放送していたキャラクター、ウィキで見ても名前がないのでつけたのですが、センスがないと言われたらどうしよう、と思いつついろいろと悩んで結局はこの名前にしました。
私は昔から友人にも、『名前を付けるセンスが悪いんじゃないか?』と言われたりしており、ゲーム等では大体がハンドルネームか、ランダムにして決定しております。
どうにもならないので、ご容赦ください。

では、また次回。


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第十五時間目

どうも、私です。
また台風が来て騒いでますね。怖い事です。
さて、秋と言える気温になったり暑くなったりと忙しいですが少しずつ落ち着いてきましたね。紅葉の見ごろということで色々と食べ歩きたいのに肥満で食べられない。・・とてもつらいです。

それでは、授業開始です。


それから、校外に出て実習としてキャンピングカーの運転を覚えたり、少し離れて竹などやペットボトルでろ過装置を作ったり、簡単な火の起こし方やビニールシートを使った『タープ』の張り方、自然に生えている薬草を合わせて虫が嫌う匂いの薬の作り方などを教える。

食べれる植物を見つけた場合はすぐさま味を覚えさせる。誤食しやすい植物は微量なら問題ない物はかじらせて味を覚えさせる。

「自然に生えているセリなどの野菜と誤食しやすい、ドクゼリは特に危険だ。誤食の割合が多くて毒が有るのは覚えておくように。」

「・・キノコの類は覚えないのか?」

胡桃がそう言ってくる。

「キノコ類は素人が見かけで判断しづらく、その上口にするとヤバい物が多い。ツキヨタケなどは酒と一緒でなければいいが、ドクササコやドクツルタケなどは見た目に普通に思える見た目で猛毒だ。間違って食うとマジで死ぬ。松茸やヒラタケ、小さい物はシメジなどと間違えられる事もある。」

「うえー、マジでヤバいって・・どんくらい?」

「あぁ、私は聞いた事が有ります。血を吐いて苦しみながら臓器が毒で溶かされて行くらしいですね。毒が体中に回るとそのせいで痛みが駆け巡り、痛みに耐えかねて気が狂って自殺をすると聞いた事が有ります。」

「・・おおむねその通りだ。中には塩漬けや数時間湯がけば食える物もあるが、うま味成分自体が毒という極めて面倒な物なのでそうした後は全く旨くない。食うだけ無駄だな。確かにキノコ類は確実なのが分かればいいのだが、そもそも最近の山を手入れしていない状態では松茸やシメジなどの食用キノコは決まった所でしか取れない。」

俺は地面の土をさしながら説明をする。

「土の中に菌糸が伸びて生えるキノコと、倒木などの枯れたり腐った木に生えるキノコが有る。こちらは個体で有ったりする。菌糸が伸びて生えるキノコは、地中で繋がったりしているのだから、その周りにいっぺんに生える。個体で生えるキノコはまとまった形に一個体で生えたり、バラバラに散らばって生えたりと様々だ。松茸なんかは『シロ』と呼ばれる菌糸の駆け巡った土がアカマツなどの下に出来て、そこから決まった範囲に生える。コレと違い、よく似たキノコの【バカマツタケ】は同じような見た目だが一本だけでブナやナラの森に生える事もある。」

土をすくった手をはたく。

「とまぁ、素人目に分かる物だけ食えるなら大丈夫だが・・誤食系だけなら良い。それよりも触っても危険なキノコと言う物が有る。写真が先ほどの冊子に書いてあるので目を通しておくように。名前は【カエンタケ】。赤く細いサンゴの様な見た目が特徴のキノコだ。・・触るだけで猛毒で、皮膚が焼けただれたりする。誤食すれば確実に死ぬだろう。致死量は5gぐらいだったか?厄介なのは現在の自然界でこのキノコが増殖しているんだ。」

「はぁ!?そんな危険な物がなんで!?」

「一説には、生える辺りに同じ環境下で生息する虫が居る。それには毒が効かないので繁殖して、他の場所に行く事で菌を一緒に広げてしまうそうだ。手入れをしなくなった森や山に多く生える事から、近年注意を呼び掛けている所もある。子供などが見たら触ってしまうだろうから・・丈槍、特に!お前は絶対に触らない事。いいな!?」

「な、なんでいっくん!私だけに言うの!?」

「この中で一番緊張感が無いのはお前だからだ。珍しい物見つけたとか持って来そうだからだ。そこら辺の自覚が無いというならば自覚しろ。」

そう言うと周りの全員が頷いたり、苦笑いしたりして否定はしなかった。

「ひ、ひどいよ、みんなー。」

そう言っていると狗三が笑って、

「まぁまぁ。気をつけるべきだってことだからさ。ゆきちゃんは勉強苦手でしょ?だから皆で覚えるのに一番気に駆けてくれたって事で。大事にされてるんだよ。」

「むぅ・・そういうことなら、わかった。」

「うん、良い子だね。それじゃもっと覚えて行こう。」

「うん!」

そう言って狗三は丈槍の頭をなでた。それに笑顔で答える丈槍。

・・佐倉先生よりも教師に向いているのかもな。

 

それから、学校に戻って疲れを癒す。山を歩かせたり、川での洗濯をさせたりと色々とさせたので全員が疲れていた。

慣れない生活の仕方で、文明の利器を失った状態はかなりの疲労になるようだ。しかし、ガソリンも灯油も限りが有るし、新しい服なども今後増えることはないかもしれない。そう言う状況で、どうやって暮らして行くかは、考えないといけないのだ。

俺達は、生きているのだから。

そう言う事で更に今後の事を考えての植物から服が出来る繊維の強い植物や、ロープなどの替わりに出来るようなつる性の植物を教えて行くようにした。

連日の学園と山などの行き来によって、色んな人物の予想外な事が分かった。

たとえば丈槍はナビゲーションや地図の見方がうまく道の選択も的確。車の種類によって通れそうな道幅の選択肢を考えてそれからの最短距離を選んだ。

胡桃は元陸上部らしく、足の速さが早い為にあえて音を立てて駆け抜けて、その先で反転見つからないように走って帰る事で多くの感染者を人が居ない方向に導くという手を考えた。

若狭は元から食材や消耗品の残りの管理や家計簿なども出来る。

若狭と胡桃とコンビネーションで、奴等をひきつけて荷物を運んで抜けたり、音を立てる物を投げて奴等を誘導したりなどの行動を見せる。考えの応用が利くようだ。テグスで伸ばした先で離れた位置の防犯ベルを鳴らしてそちらに奴等を引き寄せたりした。

美紀と圭は植物を見分けたり、間違いを指摘すると覚えるなどの作業がの見込みが早く、サバイバルに適していると言えるだろう。二人で協力して物を引き上げるなどの時も、息の有った行動でこの二人はコンビでの行動には生き残れる可能性高いことがわかる。

佐倉先生は大人だけあって全体の状況を確認して、若狭のサポートや支えとしての行動に回ったり、他のメンバーの精神的な支えにもなっているようだ。天然で誤食する植物を持ってきたりなど間違いが多いが、それ以外はかなり全員の支えとなるだろう。

そして、最期に残った狗三が面白い事にかなり有能なのだ。全体のサポートをこなせられる事にはびっくりした。

身体能力は少し高めなのか、足が早くて更に道具の扱いが上手い。右に棒を投げて音を立てて、奴等がそっちを向いたら反対から鎌を首にかけて切り裂いたり、胡桃のようにスコップで敵を切り裂いたり叩いたり、突き刺したり、時には投げて囮に使ったりと応用が利く使い方をする。鉈や斧で足を切ってこかせて首を落としたりなどもして見せる。コンピュータ系も得意で書類作成にも手伝いに来てくれた。

全員の前でお気に入りの歌を唄って踊って、精神的に盛り上げたり雰囲気をあげてくれる。

元々からが有能なのだろうと思う。

 

全体のサバイバル講習を終えてから全員の能力を確認。

「これくらいで大体の基本は終わりだな。」

山で自生していた野草や『ノビル』などを調理した夕食を取る。

それで、大体の事が出来たので学園から移動することを提案する事にした。

「それで大学への移動として考えていた事だが・・皆、賛成で良いか?」

そう言うとまずは胡桃が声をあげた。

「そうだな・・そっちにも生存者がいるなら言ってみた方がいいと思う。」

「他にも、生きてる人がいるならお友達になれるかな?」

いつも通りの呑気な発言の丈槍。

「こら、ゆきちゃん。先輩に当たる人だからちゃんとしなくちゃ駄目よ?」

若狭が叱るがそこじゃないと思う。

「怖い人じゃなければいいのですが・・。」

佐倉先生は俺と同じ所を危惧しているようだ。

「私みたいな、感染はしてなくても怪我してるだけなのを否定するタイプは危険だと思う。」

「感染してるって思われて攻撃される可能性はあると思います。」

圭と美紀は相手が攻撃的な可能性を示唆している。

「・・完全に感染していた私はヤバいね。」

発症していた為か身体的にも常任とは少し違う狗三は自嘲気味に笑う。

「・・まぁ、噛みつかれてとかじゃないからな・・むしろ、空気感染の発症の可能性を立証できる生き証人と言っても良いからな。俺からすればお前はどうしてもこの先に必要だ。完全に治っている先生と症状が治まったお前、両方から抗体が取れるならば、抗生物質などの薬が出来て、全員の感染の確率が一気に減るし、いざとなった時の発症を止める事も出来るからな。そこら辺は俺が研究するからその施設の為にも大学にはぜひ行っておきたい。」

そう言うと全員が頷く。

「それじゃ、全員の賛同が得られたと見て、大学への移動をする。基本的には俺が守るから大丈夫だが、移動時に危険はつきものだ。サバイバル時の訓練を活かし、危険などは回避するようにしろ。道中、店が有れば服などを足して行く気だ。モールやファッションショップ、靴屋なども寄ってから大学へ向かうつもりなので、各自必要になるだろう衣類を考えて置く事。あまり時間をかけて見た目では無く性能重視で選ぶようにしてほしい。かさばり過ぎない様に吟味しておいてくれ。これからの時期、暑かったり、寒くなったりと考えて種類を選ぶようにな。後当然ながら洗える物だ。洗って縮む物などやらはやめろ。では各自、確認しておけ。」

「わかった。」「うん。」「「「はい。」」」「わかったわ。」「わかりました。」

そう言うと全員が今持っている服を確認するために部屋で荷物を確認しに行った。

やはり全員女の子だな。そう思ってしまった。

 




完全にサバイバル回です。今回のキノコの知識はウィキと私の中学生時代の自由研究から来ています。調べると面白いものがとても多いので、気になる人はどうぞ調べてみてください。
『ヒトヨタケ』など、普段は毒性のないのにお酒と一緒に摂取すると毒性を発揮するキノコなどもあります。正確にはアルコールが分解できなくなるんですがね。それでも本などでは毒キノコの類にされています
。正直食い合わせの問題みたいなものなんですけどね。
ホテイシメジなども同じ効果がありますが毒成分が違い、そちらは四時間くらいで毒成分がなくなります。
同じ種にササクレヒトヨタケと言うのがありますが毒はありません。が、見た目的にあまり食が進まないかも〈笑

では、普通のキノコを食べながらお酒をいただきつつ、また次回。


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第十六時間目

どうも、私です。
台風の影響で各地で気温が上昇していますね。
最近は長袖を着ていたのに半そでに戻っちゃいましたよ。
これを超えるとまた寒くなるらしいので、皆さんも気を付けてくださいね。

では、今回も授業開始です。どうぞ。


拠点を移し始める前に荷物の確認。地下施設を詳しく探索した際に食糧が有り、肉類などが冷蔵庫に入っていた。・・感染を防ぐ特殊な形状のドアが有ってその部屋の内に首をつっていた噛まれた男の遺体が有ったが、他のメンバーが見つける前に処分しておいた。以前に地下を確認させた事が有ったが、ドアが開いた形跡はなかったのでおそらくは誰も見てはないだろうが・・。車にも冷蔵施設が有るのでそこに傷みやすい食材は入れておいた。車外にソーラーをつけたのでそれから蓄電池に充電された電力を使う形だ。

食料や飲料水、生活用水用の車載用の水に道中の何かあった時様のサバイバル用のグッズ、緊急用の医療薬品類、武器がわりになる物、付近の地図などを確認。数日にかけての衣類やタオルなどの布類も準備しておいた。

ソレを載せたり準備していると、

「何か手伝うことはある?」

そう後ろから声をかけて来たのは狗三だった。

「いや・・あぁ、そう言えばお前の居たあの施設に途中寄っても良いか?」

「こっちは別に良いけど・・何かあったっけ?」

「持ってきていない食料類が有るのと、こっちでは飛び散った血などが付いてダメになっていた包帯などの医療薬品類が有ったからな。少量ぐらいは残しておくが、基本的には持って行こうかと思ってな。大学などにも生存者がいた時などに使うかもしれないからさ。」

そう言いながらタンクに水を入れる。燃料は今は結構あるが、移動の途中でガソリンスタンドによって注いで行こう。後は車の簡易メンテ用の器具を乗せる。

「こっちは終わった。後は全員が準備出来たら行けるな。・・俺はトランシーバー持って一緒に武装を使って外を行くからな、女同士で車内は色々と面倒を見てやってくれ。」

車庫に持ってきていた食料も乗せたし、改造用の器具は元の所に戻したのでとりあえず、此処は唯の少し改造された倉庫に戻っていた。

「・・これから私はまた生きていけるんだね。・・離れるのが少しさびしくなるな。」

「アイツ等の周りに居ればそんな思いは吹き飛ぶ。お前の荷物はそれだけか?」

ボストンバッグ一つしか持っていない。

「元々そんなに持ってきていないからさ、これで十分だし。衣類はこれから増えるんだしね。」

「まぁ、そうだな。途中で回収する予定だからな。それならあまり衣類は多くないのもそうだな。」

「あと、元々薄着なのよね。誰もいないと部屋の中で下着にパーカーだけとか。寝る時は下着だけとか。そんな生活してたわ。」

「健康なんだな。まぁ、子供がいる前だし、だらしないのはほどほどにな。」

そう言うと背中からつついてくる。

「あれあれ?想像して照れちゃった?」

「まったくこれっぽっちも。そもそも俺はこんな見た目で有っても人知を超えた年だぞ?今更そんな感情はない。今の俺に必要なのはお前等を守る。その事だけで十分だ。」

そう言って車に乗る。エンジンをかけて車を校舎の前に移動させる事にした。狗三も追いかけて来て乗ったので車を倉庫から出して、校舎前に移動させて車から降りて倉庫を閉める。そして、戻って来た時には皆が集まっていた。

「全員居るな?」

「いっくん、こういう時は点呼していこうよ。」

「・・まぁ、乗ってやろう。丈槍由紀。」

「はい!」

「次、恵比寿沢胡桃。」

「お、おう。」

「次、若狭悠里。」

「ふふっ、はい。」

「次、直樹美紀。」

「はい。」

「次、祠堂圭。」

「はーい。」

「次、教師陣。佐倉慈。」

「は、はい!・・私も点呼されるんですね。」

「最後、教師陣、特別講師枠。狗三夢子。」

「はい・・講師枠なの?」

「音楽やラジオなどの教師陣営とでも思って置け。一般教科は佐倉先生、音楽などは狗三講師、特殊知識講師としての俺、織斑一夏が大人枠だ。」

そう言って全員を見て、

「これから俺達は途中いくつかの経由地を通って、聖イシドロス大学へと向かう。・・おそらくは此処に帰って来ることはないだろう。各自荷物は持ったな?忘れ物はないな?」

「大丈夫だ。皆確認した。」

胡桃がそう言う。

「ならば、これからの経路を説明する。一度、狗三が居た隔離施設によって医療薬品類を補充、更に必要な物も補充する。それから衣類があるショップを数件経由して、必要な衣類を確保、その後で大学へと向かうがその道のりで各所を確認することがある。おそらく大学に着くまでに二日くらいはかかるだろう。今まで経験した事を活かして途中川が有る所や休めそうな所を選んで、洗濯をしたり夜の見回りなどを実際に経験してほしい。前回は俺が居て安心を確保した上での事だが、今回は奴等が跋扈する町の中での本番だ。全員が気持ちをキッチリと引き締めてかかる様に。いくら俺でも見えていない所で起きた事はどうしようもない。危険があればすぐに対処する事も覚えてほしい。」

そう言って締めくくると、

『はい!』

と全員が声を揃えて答えてくれた。うん、これくらいしっかりしているなら大丈夫だろう。

「それじゃぁ、俺はこのトランシーバーを使って並走するか、先行して奴等を蹴散らすかして進むように道を確保する。車内で何も無いとは言え、十分に気をつける様に。」

そう言って俺は外に出る。

改造してバリケード状にした校門を閉めていた分を開ける。その際に奴等がその音で寄って来た。

俺は奴等を倒す為に、変身しようとして途中で止まる。アップデートした際の知識から取り出して特殊なギアの使い方を使用して見る事にした。

ギアを『二つ』取り出して、口を開く。

「『Various shul shagana tron~』『Imyuteus amenohabakiri tron~』♪」

◆推奨BGM≪風月ノ疾双≫

そう詠うと青と桃色に光り、ギアを纏う為の装甲が付く。

鋸と刀が装甲のあちこちにつくと俺は手に剣を二つ持った。

「ふっ・・はぁあああああ!はぁ!!」

剣を振り、逆さに足をまわして『逆羅刹』をするとそこからヨーヨーが広がり円を描くように、周りによってきた奴等の首を飛ばす。

それから立ち上がり、両手に持っていた双剣を斜めに合わせると、手裏剣のようになり繋がる。ソレを投げるとブーメランのように円を描きつつ首をはねたり切り裂いたりして手元に戻って来る。

周りにいる分は全部倒してことを確認してキャンプカーに向かって手をあげる。

「状況よし。これより移動を開始する。とりあえず校庭外に車を進めてくれ。」

そう言うと車が外まで出てきた。俺は校門を閉める。

「・・何かあってどうしてもここに戻らなければいけない状態にならない限りは、おそらく此処には戻らないだろう。全員、校舎に向けて礼。」

教師と自分で言っていた事でそんな気分なのだろう。そう言って頭を下げた。

そして、俺は変則的なギアの力を使う前に校舎外に出た際に使ったバイクに跨りギアの力を纏わせる。バイクに『アメノハバキリ』の力を纏わせると脚部の剣が変形して前輪の先に装備される。そして『シュルシャガナ』の力を使い、光臨の更に後ろにタイヤの様な物を装備して、更にその横にのこぎりを装備させる。

『チャリオットパイル』の様な物が出来てそれで俺はキャンプカーの前を走り始めた。

「これなら安全だろう。ついて来い。」

『いやいやいや、明らかにおかしいから!なんだそのとんでもバイクは!?』

『すごーい!変形ロボット見たい!』

『あ、ありえないわね・・。ホント、一夏ってすごいわ。』

胡桃、丈槍、狗三の声が聞こえた。だが、無視だ。これは使いやすそうだから遠慮する気はなかった。途中道を塞ぐトラックなどを突き刺して運んだり、倒れかけた電柱を切り裂いて走ったり、道に多く居た奴等を、車体をまわして細切れにしたりした。

『すいません、助かります。』

『本当にすごいわね。聞いた話じゃ美紀の時もこんな感じだったの?』

『此処まで派手じゃないけど・・大体こんな感じ。』

『あ、そこの道の先でガソリンスタンドが有ります。寄りましょう。』

運転手の佐倉先生に、圭と美紀の会話、若狭のナビゲートの声が聞こえた。

「わかった。ならば先に見て奴等がいたら始末しておく。その後は来ないように近くの道を確認するから、燃料補給は任せた。」

『わかりました。気をつけてください。』

佐倉先生との会話を終了し、ガソリンスタンドを視認。敷地内に奴等はいない事を確認後、近くに居ないか道路を確認。すこし離れた公園に居ることは確認したが、こちらには来ないだろうと来た方向に戻り給油中なのを確認。間違った燃料を補給していない事を確認していると、胡桃がガレージ内に有った携行燃料缶を持ってきた。それにも燃料を入れている事を見るに、もしも道中のガソリンスタンドが使えなかった時様だろうと判断。こういう時は本当に役に立つと思った。

給油を終了後、俺達はまた走りだした。

 




と言うことで、巡ヶ丘学園を脱出後の話でした。
本来ならここで会うはずの狗三を先に出しましたので、カーステレオでのわんわんわんラジオ放送局はありません。
あと、本編で書いて無かったのですが、かなりの間出入りした跡が無かったのと、普通から使うはずのないキャンピングカーをもらった後であれだけエンジンを吹かせたり、行き止まりを戻ったりしているということは、燃料が無くなると思ったのでガソリンスタンドに寄らせました。某、ゾンビダッシュゲームのステージを思い浮かべたのです。
ショッピングモールやヘリコプターなどもそれを思い出したきっかけですね。
もしかしたらそのネタがこれ以降もちょくちょく入るかもしれません。

それでは、また次回。


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第十七時間目

どうも、私です。
特に言う事もないので、授業開始です。どうぞ。


ガソリンスタンドを後にした俺達は服を多く売っている店が立ち並ぶ店の通りに来た。

街のめぼしい商店が書いてある地図などでも此処にはファッションの一番集まる地域と書いてあった。

故に此処で服を集める。種類も好みもより取り見取りだ。俺は錬金術の付いているため汚れないコートが有るし、そもそもギアを纏うとコートなどの衣類は一度異空間に収められて、展開を解除すると戻って来る。その際に衣類以外の不純物は全て落とされる。故に洗わなくても血は落とせれるのだ。だから俺はこの世界で自分の衣類を洗濯した事はない。

風呂は入っているぞ?不潔なのは菌類を増やす原因になるからな。不衛生なのだけは避けているし、そもそも風呂などに入らないと落ち着いて寝れない・・まぁ、あまり寝る必要はないのだがな。

とりあえず、俺はギアを解除して代わりにスペルキャスターのナックルを展開して、そのままファウストローブを纏う。

「・・近距離も遠距離でビーム発射も可能なこの姿なら何かあればすぐに対応できる。」

少しきらきらするのが気にはなるが、それはまぁ、この際気にしないようにしよう。

俺は近くの店にバラけて入る前に全店を見回る。活動している感染者がいたら即座に殲滅して一か所に集めて置いた。後でまとめて吹き飛ばす為だ。

それからあたりの店内に他の動く存在が無い事を確認して全員がそれぞれの思う店に入った。俺はその間に近くに有ったウィンタースポーツショップに入る。

こういう店は冬以外の時期には登山道具などを売っているので、ソレから必要になりそうな少し厚めの上着を選んで確保しておく。趣味で選ばせるとこう言うのは派手になってしまいがちなので地味な物を選ぶ事にする。

後は雪山などに登る時用の商品が端に置いてあるのでその中から、『アイゼン』と『ピック』を持っておく。後は雪上歩行用の【カンジキ】とかストックも持っておくか。

それから折り畳み式のテントに小型コンロのセットやランタン型ライト、消耗品類を持っておく。こういう消耗品が殆ど減っていないのは、生存者がいないのかそう言う方面に考える余裕が無いのか・・。

とりあえずの必要な物は集めたのでソレを車に積んでおく。

すると、丈槍と胡桃が帰って来る。

「あれ?いっくん、何か買ってきたの?」

「何も言って無かったのに必要そうなもんが有ったのか?」

二人が袋の中を覗き込む。

「あぁ、そこに登山グッズを売っている店があってな。便利な物が多いので色々と集めた。」

そう言っているうちに丈槍はランタンを出していたりして色々と物色していた。

「あまり構うな。・・それよりも、お前等は必要な服は見つかったか?」

そう言うと二人はそこそこの大きさの袋を抱えて見せてきた。

「ふふーん!いっくんが可愛いって言っちゃいそうな服をたくさん選んだんだよ?」

「こっちも良い服が多くてな。動きやすそうな奴をメインでいろんな分を選んできた。一応だが秋物や冬用も端に有ったからそっちも持ってきた。」

「あぁ、そこら辺言い忘れていたな。偉いぞ二人とも。」

そう言って頭をポムポムと叩いておく。

「うん、くるみちゃんがこう言うのを持っておいた方が良いって教えてくれたんだ。」

「あぁ、俺も上着はあったから持ってきておいたが普通の分はああいう店にはないからな。そこら辺はお前等が持ってきたのは正解だ。」

そう言っていると佐倉先生と若狭、狗三が帰ってきた。

「あぁ、先に帰って来てたのね。一夏さん終わりました。良いのありましたよ。」

「こちらもちょうどいい服が有りました。教職に就いてからこういう買い物はあまりしてなかったので、久々に楽しめました。」

「私はあまり服にこだわらないから、とりあえず着やすそうなのメインになったけど。」

そう言って三人も袋を見せる。コレまた結構の大きさだ。

そして、狗三がにやりと笑って、

「あと下着系も探してきたんだけど、悠里ちゃんとかセンセーとかおっきいからサイズ探して困ってたんだよ?私は普通だからすぐ良いのあったけど。」

「「ちょっと!?狗三さん!?」」

おそらく狗三は俺をからかおうとしているんだろうが・・、

「今更女性の下着で慌てるような感性はしてないぞ?遠の昔に思春期は過ぎている。」

ニヤついている狗三に「ふん。」っと鼻で笑ってやった。

「あらら・・かれちゃってるねぇ。若くして・・大丈夫?」

「そもそも、俺は若くない。体は若いが精神から言えばお前らなど孫やひ孫みたいなもんだ。そんなもんにどうこうする様な状態じゃない。」

そう言って顔を赤くしている二人に向き直り、

「まぁ、女性がそう言うのを気にするのは分かりますがね・・掃除洗濯などをしていた俺から言えば今更な話です。結婚して無くてもその女性の下着などを干したり洗濯ものを取り込んだり、それぞれの着替えに仕分けて畳んだりとしてきた俺からしたらそんなもんです。下着ぐらいであわてる年じゃないので気にしないでください。若狭もな。」

そう言って俺はまだ帰って来てない美紀と圭がどうしたのかと考える。

「あと二人は?まだなのか?」

「うーん・・おそらく美紀さんはすぐに選んでいるんでしょうが、圭さんが美紀さんに似合いそうなのを選んだりして自分のを後回しにしていたりとか・・」

「・・あぁ、ありそうだな。」

若狭が言って来た事が有りありと頭に浮かぶ。その情景はすごく有りそうだ。

「まぁ、問題があれば声が聞こえるだろうし、それぞれにトランシーバーが有るから問題があればすぐに連絡が入るだろう。」

そう言って俺は近くの自動販売機を見つけ鍵穴を錬金術で破壊。表面を開いて中の飲み物を取り出す。

「ちょっと!?一夏さん!?」

「ん?・・久々にコーヒーが飲みたくなったんだよ。最近メインでは普通の飲料水系をメインだったからな。もともとこういう物は好きなんだが我慢してたんだ。で、今は待つ間暇だし、久々に見つけたからな。電気が通って無いからぬるいが、それでもこう言うのは久々に飲むとうまい。」

そう言って一気にあおる。あき缶はその隣のゴミ箱に投げ入れた。

「ふむ、帰ってきた様だな。」

丁度、視界端に入った二人の方を見ると、圭が頭を押さえて美紀に怒られていた。

「まったく・・圭はいつもそうなんだから。」

「だから、ごめんってば、美紀ぃ・・。」

なにやら怒っているが、このやり取りはいつもの事なんだろう。凄く普通な感じで自然にしていた。

コレで全員が揃ったので、その荷物を車に乗せるのを待つ。

そして、全員が集まってきたので自動販売機から持ち出した飲み物をそれぞれに配る。

「それでは、先ずはこの後の事を話そうと思う。まず、今日中に大学まで行くのは難しいだろう。すでに夕方に近づいて来ているし、此処からなら少し距離が有る。故に今日はこのあたりで一夜を過ごす。その為の器具も準備している。それじゃ先ずは少しでも開けた所で川が近い所に行くぞ。地図からソレに適した所はあるか?」

そう言ってこの付近の地図を広げると、

「うーん・・いっくん。ここなら大学に行く道の途中に有るし川も近いよ。夏には確かキャンプ場みたいになるはずだし。昔に此処に行ったことあるよ。」

丈槍が指さした場所は川の近くに有る河川敷の自然公園だ。

「いい感じの条件だな。水はきれいか?」

「うん。昔行った時には泳いだりしたよ。」

「そういや、私も行ったことあるな。確か井戸水を手こぎポンプでくみ上げる様な物も有ったよ。子供にそう言う物を触らせるのも一環と言う事で設置したはずだから今でも動くんじゃないか?」

そう言う物が有るなら川がダメそうならそっちを使うのも有りだ。まぁ、街に人が居ない以上は川の方も綺麗だろうがな。

「それじゃそこで一晩過ごすぞ。」

そう言って地図の通りの場所に向かう事にした。スペルキャスターをそのままに、バイクにまたがる。そして、走り出した後、目の前に出てきた感染者にはナックルのビームで穴をあける。そしてそのままエネルギーを回収して錬金術の変換機へと溜めた。

そして、しばらく走って着いたその自然公園の良さそうな位置に車を止める。

「それじゃ、先ずは車の周りにカラーコーンを置くぞ。」

コレは事前に使えそうだと車庫まで持ってきておいた荷物の中から、おそらく使う事になると車に乗せた物だ。カラーコーンなら重ねて収納できるのでソレを出すと車の周りに等間隔に置いた。

「それから、この『鳴り子の付いたロープ』を『カラーコーンにかける用のわっか』に繋いだものだが、これをカラーコーンどうしでつなげ。」

言う通りに作業を進める全員。ソレを俺は傍から見ながら指示を進める。

今回はカラーコーンにしたが、長い期間移動しない場合や風の強い時はこう言うのはあまり使わない様にな。移動しない場合なら杭を打ったりしているのが良いし、風の強い日は鳴り子がなってしまい、感染者が音によってくる可能性が有る。この鳴り子が鳴った時は素早く移動する事を考える様にな。」

「「「わかったよ。」」」「なるほど、分かった。」「「「わかりました。」」」

返事一つで性格が分かるな。丈槍と圭、狗三は距離の詰め方が独特。胡桃は相手との距離をうまく保つ。直樹、若狭、佐倉先生はなるべく失礼の無い様に相手の事を見る。

まぁ、このメンバーならうまくやるだろう。

「それじゃ、食事をして今日は此処でキャンプだ。一応、夜中に交代で見張りをつけるから、その順番を決めておけよ。あぁ、俺は貫徹するから気にするなよ。」

そうして順番を決めて、それぞれの順番で見張りをしつつその警戒の仕方を教えていった。

 

 




キャンプと言うとゆるきゃん△とか面白かったですよね。
こちらはガチキャンですが。
命がけですしね・・。
では、まだ次回。


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第十八時間目

どうも、私です。
最近めっきり寒くなってきたのでこたつを出しました。
すっかり秋めいてきたので優雅に紅茶を飲みながら本でも読もうと思ったのですが、どうも私はこたつに緑茶とせんべいと言う感じで優雅とは程遠いのが落ち着くようです。

それでは、本編へ。
授業開始です。



俺は徹夜でそれぞれの見張りに声をかけて寝ないようにする。

そして見張りの一番手は狗三だった。

「やあ。それじゃよろしくね。一応、前に練習してるけど、本当に感染者が歩いているような危機的状況じゃなかったからね。少し緊張してるよ。」

「それくらいが良い。程よい位の危機感を持っている状態じゃないと、細かい違和感やおかしい状況に気が付かない場合もあるからな。」

そう言う俺は、変身せずに椅子に座って足を組んでいる。

「どう見ても寛いでるけど?」

ジトりとした目で見られる。

「どうせ長期戦の様な物だ。お前は途中で抜けるが貫徹の俺はどうもこう言うのは慣れっこでな、なれるというか・・ダレるというか・・。まぁ、そう言う事だ。」

そう言って俺は両手をあげる。

傍目に見る限りは、全く持って緊張感の欠片も感じないだろう。

だが、既に俺は罠を仕掛けている。

『・・ピン・・チリン』

そんな音が聞こえる。

「え?今の音は何!?」

「あの音色は北西の通りか。少し行って来る。」

そう言って俺はギアを手に持つ。

「『Zeios igalima raizen tron~』♪」

イガリマを装備する。

「さて、・・シャルロット・・力を借りるぞ。」

懐かしき思いでの中になった、明るい性格の親しき友人を思い出す。

 

≪◆推奨BGM『デンジャラス・サンシャイン』≫

 

緑色の光と共に、その手に俺の背よりも大きな鎌を持つ。ソレを振りまわして感覚を確かめる。

「それじゃ、さっさと逝くデス!」

シャルロットの口癖を真似して、明るく振る舞う。

駆けだしたのは音がした方向だ。

音がした『ソレ』は【ダウルダブラの竪琴】で張った線だ。

音がしたという事はそれに触れたか、当たって切れた音だ。『チリン』という音はその意図につけておいた鈴の音だ。全員が夕食の支度をしているうちに見回りを兼ねて近くの各所の道に仕掛けておいた。

鈴の音はそれぞれ違い、低い音や高い音、二回連続で鳴るようにしたのも有る。それで何処が鳴ったかですぐに対応できる。後で回収する気はなかったので、すぐに切れる軟い物にしておいた。

そして駆けだしてしばらく、公園内を超えて道にまで出ると、

「「「「うあぁ・・あぁ・・」」」」

「「「あうぅ・・」」」

「「ぐぅううう・・」」

結構の数の感染者が居た。

「お前らの魂、革命の礎にさせてもらう。・・大人しく、『逝け』。」

鎌に錬金術の術式をかける。そして、肩のブースターを噴かせて一気に跳躍、一番手前のサラリーマン風の感染者の首を落とす。

≪切・呪リeッTぉ(キル・ジュリエット)≫

振り上げた鎌の刃が三枚に増えて、ソレを振る事で飛ばして奴等を複数切り裂く。

「さぁ、・・織斑一夏、参る!!」

≪封伐・PィNo奇ぉ(ふうばつ・ピノキオ)≫

肩のパーツから複数のアームについた鎌が出て、それにより敵を切り裂く。

次には鎌を二つに分けて、鋏のようにして数体の感染者の身体を挟み上げて、そのまま閉じて挟み切る。

≪双斬・死nデRぇラ(そうざん・シンデレラ)≫

肩のパーツが形状を変えてブースターを出す。そして、鎌を構えるとそのまま回転して感染者の塊に突っ込む。駒のようにして回る鎌に触れた感染者は切り裂かれて飛んでいく。

≪災輪・TぃN渦ぁBェル(さいりん・ティンカーベル)≫

その戦闘音を聞いて近隣の感染者が更に増えた。

鎌を今度は長刀『ナギナタ』に変えた。衣装も歌舞伎者の様な格好になる。

「そらそらそら!!行くぞ、行くぜ、逝けぇ!!」

声をあげる事で、更に感染者が寄って来る。ソレを切り捨てて、噛みついてくる奴を避けて吹き飛ばし、蹴り飛ばして、石突でついて離し、大振りでまとめて切り裂く。

「大立ち回りには少々物足りないが、感染のリスクが有る分からしたら十分スリルが有って良いな!面白くなってきたぞ!」

最近、少し思う通りに暴れて無かったからか、少々ストレスがたまっていたようだ。

いや、過去の事を思い出したからか?あの楽しかった頃・・もうすでに遠の昔だ・・。

「~『大好きが、あふれる!』~」

シャルロットの歌っていた声が蘇る。あの頃の温かい思い出が胸にあふれる。

大好きだと声に出して好感を示してくれていたあの優しさが、あの思いがよみがえる。

「支え合って強くなった、あの時・・。俺はあの頃から何も変わっていない・・、いや・・むしろ弱くなっただろう・・。」

そう言いながら下を向いても、見ていない状態で横に来た感染者の首を飛ばす。

「だから・・ここで俺はアイツ等を支える。心の支えとなり、アイツ等に支えられて此処に居る!!」

最後に残った奴を縦に真っ二つに切り裂く。

辺りは血まみれの状態だが、俺はギアの影響で血を浴びても、特殊な振動数で跳ねられて体はすぐに清浄化される。

ギアに施した錬金術の術式から魂の力をエネルギーに変換した物を取り出して専用の錬金術の練成陣に移す。

辺りを見回して、人影が無い事を確認して変身を解く。

ギアを纏っていたから全く汚れなどはない。俺はその場に一度【ダウルダブラ】の線を張り、鈴をつけておく。そして、車の位置まで戻り始めた。

そして、元のキャンピングカーの近くの、夜番の机や椅子が有る位置に戻ると狗三が顔を青くしていた。

「どうした?」

「いや、早速現れたからね。私の番は早いから大丈夫と思っていたから・・」

「むしろ深夜の方が徘徊する数は少ないだろう。生きていた行動からすれば、コレは塾などの習い事で帰るのが遅いタイプの帰宅の時間や、仕事終わりの一杯に行くなどの時間だろう。生前の行動からすれば、こういう時間はまだ歩きまわるのが多いという事だ。逆に深夜などの時間帯ならばそう徘徊するのはいない。しかし、偶には居るし、そう言う奴はいろんな所に行くのが多い。こう言う自然公園などの中に来たりな。お前以上に辛い時間帯で緊張するだろうが・・まぁ、俺が居る限りは指一本触れさせない。お前等は、俺が守る。・・俺の魂と存在にかけて『護り通す』。それが俺の役目だから・・定めだからだ。」

俺の前世から続けてきた護る役目。『アイギス』のギアと共に刻んだ俺の魂の形だ。

だからこそ、・・俺は死んでも護る。何が何でも・・最悪な状態でも・・。

そう思っていると狗三が顔を赤くしていた。・・言われ慣れてないか・・。

「あ、あはは・・。その・・熱いね・・。」

「俺は前世から続けてきた事だ。今更照れる事などはない。胸を張って言えるからな。」

「そう言うの・・凄いと思う。」

そう言っていたら車から次の番の一人が降りてきた。

「あれ?いっくんとゆめちゃん、どうかしたの?」

少し狗三が慌てていた事に気が付いたようだ。

「俺の昔の事を聞いて驚いていたんだよ。前世でも人を守るために闘ったりして居たって言う事から、凄いって言う話になったからな。」

「あー、そう言う事か。うん!すっごいよね?そう言うの、ヒーローって感じ!」

本気にしたらしく、頷いて納得している。やっぱりこいつは能天気だな。

「ヒーローなんて柄じゃないが・・会社からの指示でアイドルをしていたことはある。」

「「マジで!?」」

二人の声が重なった事で俺はびっくりする。

「あ、・・あぁ。妹とコンビでデュエットや、ソロの曲を唄っていた。向こうの世界のロボットみたいな、『IS』ってパワードスーツを使って空飛んだりしたし、錬金術の術式で演出をしたりもしたな。はしゃいでいた頃だ。」

懐かしい・・。そう思いながら空を見上げる。満月だった。

「俺が一度死んだ日もこんな月の綺麗な日だった。日の出になる暁の時間に俺はその命をかけて最期の力を使った・・。一番大きかった戦いの終わりは人を守り、自己犠牲で終わったんだ。・・まぁ、ホムンクルス体を作っていたから、そちらに記憶の転写をして帰って来たがな。そん時は子供の体で、リアル『見た目は子供、頭脳は大人』みたいな状況だった。ネタにしかならん。」

そう言って手を振ると二人は笑っていた。

「さて、狗三は寝る時間だ。丈槍、見張りだからな?お前は寝るなよ?」

どうしてもボケッとしたようなイメージのある丈槍につい突っ込みを入れてしまう。

「いっくん酷い。私、授業でも居眠りした事無いんだからね?」

「代わりに夜寝るのが早く、朝起きるのも早そうだな。」

「うぅん、起きるのはゆっくり起きるよ?」

「・・聞いた俺がバカだった。」

そうだ、コイツはだいたいいつも一番早く寝るのに、一番遅く起きて来るんだった・・。

やはり子供っぽい扱いで十分だな。

奴等が近くに現れない限り、ゆっくりとしておこうかと思い珈琲を沸かす。

キャンプ用品のセットで持ってきていた小型ガスコンロに少し大きめの金属製のカップを乗せて水を入れて湯を沸かす。途中のコンビニに有った真空パックの珈琲豆を開けて、専門店に有った『フランネル』と言う柔らかい布製のネットに豆を入れる。

そして、ポットにかざして上から沸かした湯を入れる。

コレは【ネルドリップ】という方法で普通よりも豆の油が出る事で苦みが抑えられて丸い味わいになるのが特徴だ。

だが、どうして一般的にならないかと言うと、この『ネル』が手入れが大変で、適当に扱うとすぐに痛む。喫茶店でもあまり使わない理由がそれだ。基本的にはサイフォン式が楽だし、時間的にも早く入れれる。だが、煮出す分苦みや渋み、雑味が出やすいのだ。

そこまで気にしないで良いのだが、時間も有るし、一度やってみたかったんだ。

入れたコーヒーにミルクましましの砂糖を多目で丈槍に渡す。

「あ、ありがとーいっくん。」

「ついでだ。気にするな。・・ふむ。」

【ズズッ】と音を立てて熱いコーヒーをすする。なかなかいい感じだが・・豆があまりいいもんじゃないらしい。出来れば今度は好みの豆で入れて見たいものだ。

時間は静かにゆっくりと進んで行った。

 




最近になってゆるきゃん△にハマりました。
しかもちょうどCMもやっていて、その影響でカレー麺を食べたくなったり、餃子鍋もやりたいなぁ。と思いました。
辛いのも餃子も大好きです。

それでは、また次回。


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第十九時間目

どうも、お久しぶりです。
しばらくの間、精神的な病気で書ける状況じゃなくて更新せず申し訳ありませんでした。
今はもう大丈夫となりましたので少しずつですがまた更新していきたいと思っています。
ご心配をおかけしたこと、又更新してなかったことについては申し訳ありません。

それでは授業を開始いたします。


一度の感染者の襲来。それを片付けた後で見張りの交代をした。

それから、丈槍とゆっくりとした時間を過ごした。

お互いに眠くならないように静かに、でもいろんな事を話した。

あまりコイツと二人で昔話をすることは無かったからあまり知らなかったとは言え、俺の過去や俺自身に興味を持つのは意外では有った。

「・・という事でテロまがいな事が有った時に学園長よりの依頼で、妹のマドカと一緒に歌ったという訳だ。その時は・・【こんな風に】・・力を使ったんだ。」

その眼の前に赤い錬金術で炎の羽を見せる。青い錬金術で巨大な雪の結晶を浮かべた。

「す、・・すっごい!!凄い、凄いよ!いっくん!」

「・・ふふん。これでも俺達はそれなりに人気は有ったんだから当たり前だ。」

珈琲をまた啜りつつ、見せた術式を消す。

「いっくんって、凄いけど・・どうしてそんな力を使おうって思ったの?」

「力は使ってこそ力。だが、使い方でその方向性は大きく変わる。そこに意志も執念も思いも無くただ振う力は、悪意のある力と同じで暴力にしかならん。俺はわざと弱者になる事でソレを見極めて使い方を学んだ。そして、友と慕う奴、仲間たちや家族の為に使う為にこの力を使うすべを探した。そして、見出したのが【俺は友達を、仲間を、家族を≪護りたい。≫】という思いだった。その目的の為にいろんな物を開発して≪守る≫装備を造り上げた。それが俺のオリジナルギアの【アイギス】だ。」

そう言って赤い宝石を見せる。

「楯を持っていた奴だよね?」

「そうだな。『護る、守る、衛る。』これがこのギアの根本だ。だからこその楯であり、俺自身が守るべき楯となる存在になる。その想いを現せたギアなんだ。」

あの頃の想いを思い出して少し感傷的になってしまう。

「イチカ!ダイスキデス!」「「「「イチカ!」」」」「イチカくん」「イチカさん」「イっくん」「兄さん」

そんな声が聞こえてくるようだ。

まぁ、この仕事が終わればこんな人生も終わるだろうから、最期までやりきるか。

そう思った。

そんな事を考えていると急に耳に音が入る。

『ピピン・・シャラン・・』

「む?この音は・・」

「今の音って何?」

丈槍の言葉に返事をせず、俺は駆けて行く。あの音は感染者が掛っただろう音だが、音の方角があまりこの時間帯に人の居ない方角からだった。

あの方角に有るのは小学校や過疎地区の方角だ。仕事帰りなどのサラリーマンが使うような道でもないので感染者が生前の通りに通ることはあまりないと思っていたんだが・・。

そして、そこにはやはり感染者が居た。但し一体・・だが・・。

「・・おいおいおい!?本気か!?マジなのか!?」

その感染者に俺は止まった。別に見知った姿とかそういうのじゃない。

そいつの胸にある『ソレ』に俺は眼が止まった。

すぐさま感染者を【キャスター銃】の剣状態で切り裂いて地面に落ちた『ソレ』を拾い上げる。

「・・これ・・急ぐか・・。」

キャンピングカーまで全力で走って戻る。

「全員起床!緊急案件発生!全員起床!」

声をあげて全員を起こす。

「ど、どうしたの!?いっくん!?」

丈槍が俺の腕を掴んでそう言ってくる。

「緊急事態だ。・・生存者がいるかもしれない・・。」

「本当に!?」

「・・これを見ればわかる。」

キャンピングカーに電気が灯る。

「織斑さん・・どうかしたのですか?」

「緊急事態って・・どうしたんだよ?」

「ふわぁ・・寝たばかりだったんだけど?」

「一夏さん、何かあったんですか?」

「眠いんだけど・・。」

「圭ったら・・。で、何かあったんですか?」

全員が顔を出してくれたので机に『ソレ』を置く。

「「「「!?」」」」「・・マジか・・。」「これ・・本当に・・?」

『ソレ』とは【なめかわ小学校にいます。水と食べものがほしいです。】と書かれていた。

「文字からしても子供・・場所からして小学生の生存者がいるかもしれない・・。」

「一体これを・・どこで?」

「近くに来た感染者の首にかけてあった。・・正直いつからソレが書いてあるのかは分からないし、いつ頃の話かもわからない。少なくとも、雨が降ったり濃い霧が出たりした時よりも後の事だろう。朝つゆや雨で濡れた跡が無い。数日以内の可能性は高い。」

そうしていると丈槍が地図を取り出す。

「今は此処、そして・・ナメカワ小学校と言うのは此処だよ。公園からもすぐ近くだね。」

その地図を全員が見る。

「・・俺は一応皆の判断に従おうと思う。これを見たら見ないふりは後味が悪過ぎる。しかし、客観的に考えると生存者のいる可能性は低いだろう。小学生なら少しの傷をほって置く可能性もある。それから発症する可能性は高い。だとすると生存者は壊滅しているだろうが・・皆はどう思う?一応でも生存者がいるか分からない小学校に行くか?それとも危険は冒さないようにしてこのまま大学に行くか?」

「どうしよう・・私は行った方がいいと思うんだが・・。」

胡桃がそう言って皆の方を見回す。他も悩んでいるようだ。しかし、

「行くべきよ!!行くしかないわ!」

そう言うとあからさまに顔色を変えた若狭が、『バンッ!』と机を叩いた。

「・・どうした若狭?」

「・・るーちゃん・・」

そう呟いて俯く若狭。全員が顔を見合わせる。

「・・もしかして、その書いてある『なめかわ小学校』に知り合いが居るのか?」

「そうよ、妹が・・るーちゃんが居るわ。」

俺は苦渋の表情になる。だとしたら生きている可能性は低いが・・。

「まぁ、そう言う事なら行かなくちゃね!」

丈槍がそう言って帽子をかぶる。移動時の物がつまったリュックを背負って準備をする。

「・・そうだな。この暗さなら俺はに乗って一緒に移動しよう。外の物を片付ける。全員準備をしておいてくれ。」

そう言って外を片付ける。カラーコーンなどを外して車に乗せる。そして、車に戻ると丈槍がナビゲーションをして胡桃が運転を始める。小学校へ向けて走り出してしばらく、学校近くまで来て広い辺りに車を止めた。校門は閉まっているし開けると音がする可能性が有る。その音を聞いて静まった夜中に感染者が集まってくる可能性を考えるとこれ以上の危険は冒せない。

「救出班は俺と胡桃、若狭と丈槍が校内に入る。圭と美紀、佐倉先生は車の警護を。トランシーバーを持って行くから何かあればそれで通信。作戦内容は生存者の確認だ。間違っても深入りし過ぎないようにしろ。・・生存者の居る可能性はかなり低い。だが、ゼロではない。だからと言って希望的観測はするな。若狭、お前に言っている。妹が心配なのかもしれないが、可能性としては生きていない可能性の方がずっと高いんだ。もし、・・もしも、妹が感染者になっていたら、・・俺が神の元へ送ってやる。ずっと彷徨うよりもいいはずだ。もしかしたら、お前を求めて動き回っている可能性もあるし、どうにか優しい人に助けられている可能性もある。・・だが、絶望して生きるのをあきらめるのだけはやめろ。お前は生きている。もしも妹が駄目でも、お前には生きる権利と此処まで生きてきたからこそ、生き延びる義務が有る。」

若狭の肩を掴み、眼を合わせてそう伝える。若狭は眼をそらさず・・それでも視線は揺れていた。

「・・辛いだろう、苦しいだろう。それでも、俺達は生きている。それならば残された者は精いっぱい生きるんだ。そうじゃないと、居なくなった奴の事を知っている奴が居なくなる。誰も覚えていない、覚えていた奴が誰もいなくなった時、それが【真の死】の瞬間だ。生きて居た証が無くなる。記録は有っても記憶には無い。誰なのかもよくわからない。ソレは生きていたと言えない。誰かが覚えて生きて行く。それがその人が死んでも【意味のある死】なんだ。・・俺はずっと記憶の蓄積をした分で必要ない分は記憶の焼却で力として使って来たが、大事な人の記憶は一ミリたりとも消したことはない。・・どうか気を確かに持て。大事な妹だったら、もし此処に書いた生存者じゃなくても、どこかで生きているように祈れ。それが今お前に出来る事だ。」

「・・そう・です・・・ね。ありがとうございます。」

瞳の揺れが収まりキッチリと心が決まった様な顔になった。

「もしも生きていたら、絶対に助ける。どれだけ祈っても今からできることは限られているんだ。」

 

車から降りて俺はギアを出す。

「『Balwisyall Nescell gungnir tron~』♪」

そう詠う。

纏ったのは【ガングニール・拳】だ。アイツの使っていた繋ぐ力。

「・・俺はこの力で守りたい。いや、ブン守る!」

≪グッ!≫と力を入れて拳を握る。

いつも通りにシャベルを構えて肩をまわす胡桃と眼を合わす。頷くとニヤリと笑い、

「それじゃ、行くぞ!」

「うん。」

「・・待ってて、るーちゃん。」

俺達は校内に向けて駆けだした。

 




またしばらくちょっとずつ書いていくつもりなので、更新が不定期になりますがよろしくお願いいたします。
せめてこの作品だけでも完結させたいと思っています。

ではまた次回。


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第二十時間目

どうも、私です。
最近寒くなってきましたね。炬燵がありがたいです。
寒いせいか、うちの猫『オス5歳』がものすごい膝の上に載ってきます。
昔飼っていた猫『メス 23歳』と違い、すごく重いので上に載られると石抱きの刑みたいな感じです。足が無茶苦茶痛いです。
それでも風邪で調子の悪い時にも横に来てくれるのは少しうれしくなります。
やっぱり猫大好き。

それでは、授業開始です。どうぞ。


地図の通りにあった滑川小学校、若狭の妹が通っていた小学校だ。

校門にたどり着いて音を立てないように人が通る所だけを開く。門の大きな方ではなく人が通る方の小さいほうだけだ。

大きな方には有刺鉄線がしてあったのでどの道開くことはないのだが。

静かに校内を歩く。

【カツン・・カツン・・】

どうしてもこのメンバーで歩けば足音が小さくでも響く。俺だけならば音はしないが・・。

一階から見て回る。職員室にも感染者が居たのですぐさま首を掴んで握り潰す。音を立てないように一瞬で起動をつぶして断末魔もあげられないようにした。

「え、えげつないな・・。」

「そんなことはどうでも良い。守るべき人間がいるなら急がないといけない・・。」

「そうよ、るーちゃんが・・。」

そう言う若狭の顔色はかなり悪い。

「・・次は二階だ。」

その人物かは分からないので同意しかねると思ったが、わざわざ言うべき事でもないので流して移動を始める。

二階に移動して廊下から教室を確認する。何処もドアが開いていて教室内が荒れていた。

「・・ここでもない。」

三階に上がる階段の踊り場に少女の感染者が居た。

『あ・・あぁ・・』

「・・子供は大人しく還る[・・]が良い。」

腕を水平に開いて首を飛ばした。体が倒れる。

「・・死者でも子供に手をかけるのはやはり嫌な物だ・・。」

そう言いながらも手に付いた血を払う。ギアなのですぐさまに浄化されるが、付いたままなのは嫌だったのだ。

「いっくん・・。」

苦々しい顔をしていると心配そうに丈槍が声をかけて来る。

「一夏、嫌なら代わりに私がやろうか?」

・・胡桃にも心配されているようだが、俺は首を振って背を向けて歩きだす。

「問題はない。どうせ助かっている命ではない。仕方の無い事と割り切れる事だ。」

階段を上がり見ると教室の二つがドアが閉まっているのを見つけた。

「・・ここか。」

ドアの閉まっている内で手前側の教室のドアを開く。

[カララララ・・]

軽い音がしてドアが開く。その目の前には、

「!!・・バリケード!?」

「やっぱり此処に生存者が!」

「るーちゃん!」

三人はそう声を上げるが、気が付いていないようだ。

そう・・俺は気が付いてしまった。この、臭い[・・]に。

「・・死臭・・か。」

コレは駄目だ。おそらく・・中は‥。

「よし、助けに中へ・・」

そう言って胡桃が中を覗き込むと、

『『ガァ!!・・グアァァア・・・』』

血まみれの手とうめき声が一斉に飛び出してきた。

バリケードのせいで手のみだが・・。

「「「・・なっ!?」」」

「だろうと思った。死臭がする。手遅れだ。感染者が中に居たのか、発症したのか・・いずれにしても手遅れだった。」

そう言ってドアを閉める。そして歩いて移動する。

「待って!るーちゃんが!!」

「そこは無理だ!もう一つのクラスに希望を託すしかない!!」

振り向いて指さしてそう言う。俺だって心苦しいんだ。分かってくれ。そう思ってドアを開く。

「るーちゃんのクラスは此処なのよ!」

「そう言っても仕方ないんだよ!中に生存者は無理だ!ただの傷でさえ感染するのにこんな狭い教室内に生存者が生き残ることはできない!不可能だ!」

そう言った後、若狭からその妹の特徴をよく聞いておいた。髪型や服装、いつも抱えている持ち物など・・。

もう一つの中にもバリケードが有った。覗きこんでも感染者が飛び出してきたりはしない。

一度ドアを閉めて、教室の廊下側の上の換気用の小窓を開く。俺はそこから飛びこむ。

「・・あぁ・・すまない。・・・遅くて、すまない・・。」

そこには首をつっている少女の遺体があった。

見た目からしてもそこまで最近じゃないようだ。死後数日以上は経過しているように見える。すでに皮膚が腐食してちぎれかけている。俺はロープを切って遺体を下ろす。

そして、若狭が言っていた妹とは全く違う少女だと思い、その遺体の近くにあった名札や私物を見る。『佐竹』・・若狭ではない。俺は近くにあったちぎれたカーテンをかけて教室を後にした。教室を出ると若狭が俺に掴みかかる。

「るーちゃんは!?」

「・・・。」

俺は首を振る。

「そ・・そんな・・。」

「生存者は・・無理だったのか?」

「怪我が有った。おそらく、怪我をして発症しかけたのだろう。そして、絶望して自ら・・。」

そこまで言うと顔を反らした。丈槍は涙を流しながらも声を上げない様にこらえている。

「・・隣の教室の奴も送って来る。このまま、永遠の迷子はかわいそうだ。」

そう言ってさっきの教室と同じように、上の小窓から感染者の居た教室に入る。

「生存者は・・居ないな。」

想像以上に酷い状態の教室。やはり中で感染者が発症して、中に居た生存者へ襲いかかったのだろう。逃げようとして暴れた様な痕が有るし、抵抗した跡も有った。そして、おそらく一番初めに考えたのはこちらの生徒の様だ。書いたと思われるマーカーが落ちていた。

「悪いが、他の生存者を助けるための力となってくれ。・・ざっと見て三十人・・か。今までの分、三千と五百二十二人の魂と共になれる事、誇って逝くが良い。」

俺はギアを解いて積み重ねられた机の上に立つ。教室の隅、四か所に金色のバッチを突き刺す。しっかり刺さったソレを見て、静かに息を吸って口を開く。

「『~Lied der~』」♪

俺は聖詠のように歌いあげる。『ソレ』はそのバッチの中で反響しエネルギーの力場を発生させる。

「『~Ewigkeit~』♪」

死灯~エイヴィヒカイト~を口にする。

その歌を唄い出すとその教室内に居た感染者は光の粒子となり、終わると共にその光の粒は勢いを増して感染者となっていた全ての子供をエネルギーへと変換した。

ソレを変換機に溜めて俺はため息をつく。しかし、この教室にも若狭の妹らしき人物はいなかった。ドアを開きつつソレを考える。目の前には若狭が涙目のままこっちを見ていた。

「やっぱり、るーちゃんは・・・」

「いや、それらしき人物は此処にも居なかった。もしかしたらだが、何らかの理由から生存しているのかもしれないぞ?または、別の場所に居たか、何かの理由ですでに感染者としても行動していないか・・。」

「るーちゃんが・・。」

「まぁ、最後の様な状況ならソレはそれでいいかもしれないと俺は思う。小さな子が生きて行くにはこの今の状況は過酷すぎる。とある人物の受け売りだが『死は解放なりて【正】なり。死を拒み生にしがみ付くは【悪】なり。しかして、自ら死す事も【悪】なり。故に【死は救済なり。しかして死を求める行為は悪なり。汝、死を恐れる事無かれ。】』・・という話だが、過酷なコンなこの状況で生きるのは文字通り生き地獄だ。故に死の救済に手解放されるのも有りだと俺は思う。だが、今を生きるともがいているのならその手助けはする。お前らには出来る限りは生きてほしいからな。」

廊下を歩く。階段を下りて校舎から出て小学校の敷地を後にする。

最後に振り返る。

「・・この学校は避難場所では無かった故に生存確率は低かった。大学はそうなってなければいいのだがな・・。」

子供だからこそ、友達を守ろうとして怪我をした友人を教室に入れて発症した可能性が有る。子どもゆえの無垢故に・・。

大人ならば逆に自分以外を排除する可能性もあるが・・空気感染なら発症するかもしれない。どうなるかは見てみないと分からないな。ただ、こう言う可能性もある事を教えてくれたので、全くの無駄足ではなかった。それに若狭の妹が居なかった事もある意味ではよかったのかもしれない。

・・町中で似たような感染者をこの手にかけた覚えはある。もしかしたらソレが若狭の妹だった可能性もあるが・・。それこそすでに返還した後なので姿かたちもない。

どちらにしろ、俺にはそれについてどうにも言う言葉はないという事だ。彼女は生きている。妹の生存の可能性を胸に抱く事で彼女自身に生きる意識がわくなら俺はそれを利用させてもらう。非道だと思われようとも。あの手にかけた感染者は似た感じの他人で、若狭の妹は生きている。誰か優しい人物に保護されているんだと・・。俺自身はそう願っているのだから。

たとえそれが自己満足だろうと。

 




今回は道中の話をまとめた感じでした。

次回も不定期です。

ではまた次回。


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第二十一時間目

どうも、私です。
最近寒くなりましたね。
私の地元でもカキがおいしい時期になりました。
なのですが、今年の水害でカキ筏が多く壊れたりして漁獲量が減っているそうで、
私の行きつけのカキの直売場も数量を限定しているらしく、今年はカキをあまり食べれませんでした。残念。

直売所とスーパーで買ったカキでは濃厚さが違うので、できれば直売所で買いたいのですがね。カキ小屋などで食べるか・・。

それでは授業開始です。



滑川小学校を後にして俺達は聖アンドレアス大学を目指す。

途中、若狭の状態が不安定になる事もあった。

「るーちゃんは・・」

そう繰り返して滑川小学校に戻ろうとしたり、

「るーちゃんが!待ってる!探さないと!」

と言って取り乱す事もあった。

「りーさん、落ちついて。」

「りーさん、大丈夫とは言えないけど、信じてあげないと。」

「りーさん、冷静になってください。この状況では何処に居るかも分からないでしょう。」

「どうなっているかもわからないのに、何処を探すというのですか?若狭さん、落ちついてください。」

「胡桃と丈槍、美紀と佐倉先生の言う通りだ。もし見つけたとしても完全に治す薬が無い以上どうしようもない。じりじりと焦る恐怖を妹に与える気か?」

俺はその焦る若狭にあえて冷たくする。それにより俺に対する敵がい心から、少しは気がそれたようだ。俺を睨んだりして俺の言う事に反対しようとしたりするが、冷静に考えると理にかなっている事を周りが言うとそれに応じる。

結果として少し俺は全員から距離を置いている状況にした。キャンプカーから降りて帽子をかぶった錬金術師コートスタイルで足元に氷の術式を出して滑りながら背中に風の術式で推進力を得て進み続けていた。ギアやキャスターを用意していない理由はここら辺にあまり感染者が居ないからだ。もう少し進むと大学だ。

その門が見えてきた。俺はキャンピングカーに少し門から離れた所で止まる様に合図する。

門の近くには感染者が複数いた。おそらくは元が此処に通っていた学生だったのだろう。門のあたりに群がっていた。ソレを見ていると準備したメンバーが降りて来る。胡桃、丈槍、美紀、それと目を反らしたままの若狭だ。後は車を守っているようだ。生存者がいてもそれが危険だと判断したら学園なりと逃げる事も考えて車を確保して、すぐに逃げれる様にした。

「・・あそこに梯子が有ることから、日常的に出入りをしているんだろう。・・そうなると武装している可能性が有る。奴等を倒せるようにな。まぁ、武装しているというのはおそらくという考えなのだが、食料などを取りに出たりする際に俺や胡桃みたいにしっかりと武装している状態で無ければ無理だと思う。故にひと固まりで動く。先ずは俺、それから順に全員が入って来い。胡桃は殿を頼む。もしも音に気が付いて感染者が来た場合に対応をしてくれ。声を上げてくれればすぐに動く。」

「了解。」

「丈槍と美紀、それから若狭は俺の後について順番に中に入れ。」

そう言って俺は少し加速をつけて一瞬足の裏に風の術式を展開。そのまま飛んで塀を超えて敷地内へ。感染者が居ない事を確認する。

「よし、奴等はいない。」

そう声をかけると、外の梯子から丈槍が上がって来て中へ降りるはしごで降りて来る。続いて美紀、若狭が降りて最後に胡桃が降りてシャベルを構え直す。

「よし、校内探索を・・」

 

「そこに居る全員!手に持つ物を置いて、手を上げてその場で動くな!」

 

校舎のすぐそこの茂みから拡声器の様な物を突き出した手が見え、その茂みからボーガンが突き出された。

「えぇ!?」

「いきなり何を!?」

「私達、生存者・・人間ですよ!?」

「そんな物を向けるんじゃない!!」

俺以外はそう声を上げるが、

「うるさい!そんな事は分かっている!もう一度だけ言うぞ!?手に持つ物を置いて、手を上げて動くな!次は撃つぞ!?」

「「「・・・・。」」」

三人は荷物を置いて手を上げる。胡桃、美紀、丈槍だ。若狭は・・

「これは・・るーちゃんのだから・・放すもんですか・・。」

滑川小学校で見つけた妹の帽子を胸に抱いたままだった。

「クソ!!俺は言ったからな!?」

茂みから立ち上がった男は、ボーガンを若狭に向けて、そのトリガーを引いた。

即座に胡桃がシャベルを拾って楯になろうとするが、

「そもそも俺が居る以上そんなおもちゃは効かん。脅しにもならん。」

指を【クイッ】と動かすと俺の手に出していたダウルダブラの弦がその矢に巻きついてバラバラに切り裂く。

「な!?」

「相手の出方を見ていたが・・どうやら相容れないようだ。この場は去ろう。あぁ・・追いかけて来て何かするなら、容赦をする気はない。・・覚悟する事だ。」

相手の男と俺が正面で見あっているうちに四人は梯子を上ってキャンピングカーへ走って戻った。俺は通信を入れる。

「どうも此処は合わんらしい。攻撃をされた。だが、まぁ・・最悪生存者を始末して施設を使うのもありだし、とりあえずは裏門へと行くぞ。そっちから入ると俺の目的の理科実験棟が近いはずだ。さっき校内敷地の掲示板が有った。先導するから行くぞ。

俺が裏門への道を先導し走り始める。足元に風の術式を出して軽く浮いてホバー移動みたいだ。

そうして移動しているうちに後ろから車の音が近づいてきた。

『後ろから、さっきの人達が追ってきた様ですよ!?』

「・・この塀沿いに行け。俺が止めておく。」

ダウルダブラの線を持ちあげて道の両端にあった電柱に巻きつける。

楯横斜め絡ませ編み込み完全な弦による壁を作り上げる。

「ただのワイヤーより強く、ピアノ線よりしなやかなこの弦を越えれる物なら越えて見ろ。」

俺はそう言ってその場を去った。後ろからはクラクションが鳴り響いていた。

 

裏門につくとそこに車は無く、代わりに見たことのない人物が三人立っていた。

「ふむ?ここへ車が来なかったか?」

相手が武器を持っていないことや敵意がないことを確認した俺は武装を解除する。そしてそこにいた女性達へと声をかける。

「それなら中へ入りました。さっき車に追われていましたよね?あなたも一緒だったんですか?」

「私たちはあの人たちと袂を分かち、別に生活することを決めたメンバーです。」

「とりあえず、歩きながら話そうか。」

そう言われて三人と一緒に歩きながらさっきの続きを聞く。

「分かりやすくあちらを強硬派、または武闘派と言いましょうか。私たちは反武闘派ですね。」

「あちらのやり方に賛成できない人や追い出された者が集まって別の区域で暮らしているんです。」

「あちらから逃げてきたのが見えたんで、こちらの方で保護させてもらったんだ。奥に皆はいるよん。」

どうもこのメガネの人は少し軽い感じのようだ。パーカーのような服のポケットに手をつっ込んだままだし。

「そうか、なら。・・安全を確保していただきありがとうございます。あのメンバーの大まかなまとめ役をしていますので、代表してお礼申し上げます。」

俺が軽く頭を下げてお礼を言うと目を見開いて固まった。

「い、いや・・そんな大したことじゃないし・・。」

「いえいえ、どの道この大学に入る予定ではありましたが、安全が確保されているのならあのメンバーには大変ありがたいことですので。」

お転婆や天然のメンバーが多いあの集団を受け入れてもらえるのはありがたい。こうも敵意が無いならば安心できる。

「えーっと、・・さっきと態度が大きく違わない?」

「代表してということですので・・。それとも、こちらの方がいいのか?初対面だから初めはどうしたものかと思ったが、恩人ならば丁寧にした方がいいかと思ったのだが?」

「あはは。大丈夫だよ、普通にしてくれていいよ。むしろ固くなるとやりづらいかな?こっちはのんびりしたメンバーだからお堅いのは無しだよ。」

「そうか、そう言って貰えると楽だ。実はあまり慣れてないのでな。」

「いやいや、十分しっかりしていたよ?」

「まぁ・・年を重ねた分はそれなりに場数を踏んでいるのでな。」

「年って・・君どう見ても私たちより若いよね?」

「・・ふむ、後で言うから二度手間になるが・・まぁ、いいか。俺は所謂『転生者』と言われる存在でな、別の世界で生きていた人間だ。頭がおかしいと言われるかもしれんが、これでも世界を渡ることをしてきたのでななかなかに荒波にもまれたのだよ。見た目通りの年ではないしこれは一番動けるときの姿なだけだ。そもそも一番初めに転生した時から別の世界の知識を取り入れているので、・・『こうやって』・・錬金術が使える。」

手の上に『火の錬金術式』を展開して火を浮かべる。

「・・は?・・えぇ!?はぁああああああ!?」

大声で驚かれた。

 




大学到着です。
ただ、り-さんがおかしくなってないので状況はかなり変わっていきます。
まぁ、最強戦力【チート持ち】が居ますので原作ほど大変なことにはなりません。

では、また次回。


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第二十二時間目

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

はいどうも、私です。

現在こたつで膝に猫を抱えて書いております。
非常に足が痛いです。
片手のサイズだった子猫が、ここまでデカくなるのは、ほんと予想外でした。
しかもなぜか兄よりも私の足に乗ります。
でも兄の言う事しか聞きません。
私は猫よりも下か?

そんなことを思いながらも新年初の投稿をさせていただきます。
いのしし年らしく、思ったことを猪突猛進で書いてみました。
では、授業開始です。


驚かれた俺は又かという感じで肩をすくめた。

俺は招待された部屋でさっきと同じ様に術式を展開して見せたのだ。ちなみにこれは幻術だ。建物の中に入ったので外と同じように火を出すのはやめておいた。代わりに術式の一部を書き換えて火の羽を浮かべて見せた。歩きながらじゃなくて詳しく話をしながら見せるためだ。

生存している男子は武闘派にいるらしい。あまりそういうのに向いていないような男だったが、男だからということで武闘派に呼ばれたそうだ。むしろ初めは全員が向こうのリーダーの言うとおりにしていたらしいが、感染者を攻撃できなかった人を追い出したことからそれと離反したメンバーがこっちにいるそうだ。

「手品!?それとも超能力!?えっと、なんて言ったっけ?サイコキネシスじゃなくて・・」

「パイロキネシス『発火性超能力』か?」

今の状況を考えているとメガネの明らかにオタク系の女子がすごくはしゃいでいる。

「それ!!」

「火だけじゃないし、風も水も地も扱えるし光や音なども扱えるぞ?あとは超常的な武装も持っている。」

俺はシンフォギアの待機状態のクリスタルや、スペルキャスターの銃を出す。

「あれ!?さっき手には何も持ってなかったよね!?」

「大体の武装は、亜空間の倉庫に入れている。ギアはコート中に入れているし、呼び出せば勝手に出てくる。」

「何それ、かっこいい!?」

本当に食いつきまくりだな・・。

「小説とかである転生者とか錬金術師とか世界を守る役目とかそういうのをしてそうでかっこいい!!」

「あぁ、確かにしていたが・・それが何か?」

「「「・・・・・・・。」」」

大学の女子は完全に固まった。黙り込んだので俺は体の中の自動音楽人形の四人の力を出して見せる。

ミカの手で爪を鳴らし、風の剣を取り出して、コップに指の先から出した水を入れ、空中から取り出したコインでコイントスをして見せる。

「うわぁ!?本当に何もないところからいろんなもの取り出した!?すっごい!!」

そう言ってはしゃぐばかりだ。いや、別にあんたを喜ばすために出したわけじゃなくて武闘派との戦闘になる可能性を考えてこういうものが使えるという分だったんだが・・・まぁ、いいか。

「それじゃあ改めて自己紹介しましょうかね!」

メガネの女性がそう言って立ち上がる。目の前にはお菓子やジュースが並んでいる。

「私の名前は出口桐子。あだ名は『トーコ』だよ。出口さんとか堅いこと言わなくてトーコで呼んでね。それで初めにあったこのポニーテールが・・」

「光里晶〈ひかりざと あき〉よ。『アキ』って呼んでね。よろしく。次は・・」

「どうも皆さん。初めまして、喜来比嘉子〈きらいひかこ〉と言います。皆からは〈ヒカ〉と呼ばれています。武闘派から放逐されまして・・こっちに拾ってもらわれてことでは皆さんと一緒ですから仲良くしましょうね。」

三人と挨拶した。若狭が手を挙げて質問する。

「ここにいるのは三人だけなんですか?」

「あぁ、あと一人は図書室にいるよ。本の虫でねぇ・・基本的には図書室からあまり出てこない。声はかけたんだけどキリのいい所まで読むといって来なかったんだ。一応こっち側の生存者ということではあるんだけど、サークルメンバーというわけじゃない。サークルは私とアキ、ヒカと・・あと一人いたんだけど、布地を探してくるって言って出て行ってから帰ってきてないんだ・・。おそらくは・・。まぁ、そういうわけで今は三人が基本的にここで過ごしているよ。サークル名は『自堕落同好会』!」

「うわぁ・・。」

サークル名を聞いた胡桃が声を上げた。

「あと武闘派って・・」

「俺たちを追いかけてきたりボウガンを向けてきたりした奴らのことだ。ここに来る前に聞いたが、所謂過激派みたいなやつらだな。俺は織斑一夏。いわゆる錬金術師なのはさっき見せたな。このメンバーの主戦力だ。」

そういいながら手を挙げておく。

「一応聞いておくが、あっちのメンバーの人数と男女比は?」

立って壁に背を持たれたまま全員が見える位置にいた俺が声をかけた。全員からの視線が集まる。

「向こうは知っている限りで五人。おそらくボウガンを使っていたのはコウガミ、それからその恋人関係のシノウ、リーダーのタカヒト、残る一人の男子がタカシゲで副リーダー的なアヤカ。男子三人と女子二人ね。」

メガネのト-コが答えてくれた。やはりこちらのリーダ的なのはこの女子のようだ。

「・・女性に暴行を加えそうなやつは?または危ない性格の人間は?」

「正直私から言えば元はこっちにいたシノウ以外は全員危険人物だね。アヤカは女性でも何考えてるのかわからないし。」

「ふむ・・わかった。俺は残る人物に会いに行ってくるか・・。あぁ、ついでに理科実験棟の位置を知りたいんだが?」

「え!?・・理科実験棟は封鎖してあるよ。あそこは危険だからね。」

「危険?中に感染者がいるということか?」

「いや、あそこにはなんていうか‥マッドサイエンティストがいるんだ。」

「・・ふむ?何が危険なんだ?人間だろ?」

「感染した人間で実験しているらしいんだ。」

「・・ほぉ・・。余計に会いたくなったな。俺以外の人物の考えを聞きたい。この災害のことについていろいろと言葉を交わしたいものだからな。」

「・・危険だよ?」

「だが、この状況下なら情報は何にも勝る必要なものだ。」

そういって俺は手に例の冊子をもって見せる。

「それ・・は・・?」

「俺たちの学園にあったものだ。おそらく、この学校にもあるだろうがな。緊急避難所としてここが書いてあった。それならおそらく地下にシェルターと食糧庫があり、屋上には浄化槽とソーラーがあるだろう?電気はそこから来ているはずだ。」

「その通りだよ。あっちの地下は知らないけど屋上は見たからね。でもこっちの棟には地下の資材は少なかったから、他にあるとするならあっちの武闘派の生活している棟かもしれない。あっちが主な授業のある学生棟だから。こっちはサークル棟だし。」

そう言われて俺は少しがっかりする。なら武闘派に荒らされている可能性が大きいからだ。武闘派を名乗るからにはそこそこの人数はいたはずだ。おそらく武闘派と言う名の通り感染者と戦ったりして資材を集めたりしたのだろう。結果として感染し発症したりして今の人数になったと考えるべきだ。だとするならリーダーのタカヒトは、人間を使い捨ての駒にする可能性がある。やはりあちらと手を組む可能性はないだろう。普段は監視していて中に入ってくる人物を待ち構えて手駒にして資材を集めるだろうが、自分たちは学校にこもっているので資材があるならそちらを使うだろう。

「それならまぁ、仕方ないな。それじゃ俺は残りの生存者に挨拶に行ってくる。図書館と理科実験棟だな。」

「うん、行ってらっしゃい。私たちはここでみんなと仲良くなっておくからさ。あぁ、図書室の人物はリセっていうの。もし、よかったらこっちに来てみんなと挨拶するように言っておいてくれる?」

「わかった。では行ってくる。」

そう言って俺は目線を若狭と美紀、佐倉先生に向ける。三人は俺の視線に気が付いて頷いてくれた。あまりにおかしな行動するなら抑えになってくれるだろう。

そして部屋を出る。

 

「それで、あの子・・いったい何者?君たちとはどういう関係なの?」

トーコが巡ヶ丘側の女子に聞く。

「えっと、・・難しいですね・・。」

苦笑いで答えたのは美紀。

「お兄さんであり、お父さんであり、近所のおじさん的な感じでもあり、ときにはとても紳士的な人でもあり、と思いきや自分勝手な行動をしたり・・」

「とりあえず、私たちを助けてくれるとても強い人・・ですかね?」

圭とりーさんが続いて答える。

「胡桃ちゃんとは何か実の兄弟みたいだし、・・由紀ちゃんとは親子のようだし。」

けらけらと笑いながら狗三さんがそんなことをいう。

「わたしの言葉遣いとかに妹を思い出すらしいんだよね。聞いたところによると異世界人で神様に私たちを助けろと言われたとか・・。よくわかんないけどすごい力を持っていて、なおかつわたし達を助けてくれる人物なのは確かだな。」

腕を組んで頷く『わたし』。

「なんでいっくんは私のことを子ども扱いするんだろうね?」

「それは丈槍さんが自覚しなきゃダメなことですよ?」

由紀とめぐねえがそう言いあっている。いや、自覚ないのかよ・・。

正直めぐねえも一応大人の対応してもらっているが、どうもおっちょこちょいな人を対応するような扱いな気がするんだけどな・・。

もしかしたら、前の世界とやらにそういう感じの人がいたのかもしれないな・・。

「まぁ、正直敵にしちゃいけない人物だと思いますよ。わたし達がもし何かに巻き込まれてもどこからか駆けつけてくれるヒーロー的にでも考えておけばいいかと。」

そういうと全員がちょっと考えたような仕草をしたが、そのあと頷くような動作をしていたのをわたしは苦笑いで見ていた。

 




もう少しで最後まで書けそうですが、最後を先に書いてしまっているのでそのすり合わせのシナリオを描くのが難しいです。
でも、こうしたいと思う勢いで書いた終わりは納得しているのであまり変えたくない、というジレンマに陥っています。
大体三十数話を予定しています。
頑張っていきますので今年もよろしくお願いいたします。

いつもと違い、意外なことをしてみる年にしようというのが今年の抱負です。

だって、亥『い』亥『がい」ですから。

ではまた次回。


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第二十三時間目

どうも私です。

風邪をひいてなかなかしんどいです。
この季節は大体病気になるのは嫌なジンクスな気がしてます。
八幡様への新年のあいさつをここ数年してません。
山を登るのが辛くなってきたからです。膝が悪くてですがね。
以前はなってなかったから、地元の土地神様へのあいさつが無いと怒られているのでしょうか?

では、授業開始です。どうぞ。


理科実験棟に向かう前に先に図書室が近いのでそちらに顔を出すことに。

「・・と言うことで初めまして。俺は織斑一夏だ。」

「へぇ・・私は『リセ』と呼ばれている。本名は『綾河原 理瀬』だけど普通にリセと呼んでくれて構わないよ。」

「それは助かる。さん付けで呼ぶのはあまり慣れていないのでな。できないことはないがそういう風に呼ぶのが一番楽だし。」

「そうかい?しっかりとしてそうだけどね。・・まぁ、君のような人がいるならほかの子も面白そうだ。たまにはほかの人たちとの交友を持ってもよさそうだね。・・それじゃ行ってみるよ。鍵をするからここから出てもらってもいいかな?」

鍵を取り出して出口に向かう。俺はその後について一緒に出るようにした。

「あぁ、俺は理科実験棟に向かうつもりだ。」

「・・理科実験棟?」

出口手前でリセの足が止まる。

「あの場所は近づかない方がいいと思うけど?」

「俺に必要な器具や施設があるか見に行くんだ。なんだ?何か不都合があるのか?」

こっちを見て首を振る。

「そう言う訳じゃないんだ。あそこには所謂マッドサイエンティストがいるから・・。」

「その程度は別に問題じゃないさ。俺だって実験と称して感染者に新しい装備を試したり、錬金術の術式を試したりとしているからな。そこらへんで言うなら俺もマッドの一員だ。」

「・・そう・・それなら止めるだけ無駄ということかな?」

「そうだな時間の無駄だな。俺はどの道行くつもりだ。」

「わかった。もう何も言わないからそれでいいよ。」

そう言って鍵を閉めてリセの背中を見送る・・が、

「そうそう、お前さんと気の合いそうなのがいるからな。名前は直樹美紀。本などを読むのも好きだし、知識欲や好奇心が強く責任感もある。本を大事に扱ってくれると思うぞ?」

「それはいい情報だね。本を大事にしてくれる正確なら私とも気が合いそうだ。」

そう笑顔で振り返って歩いて校舎へと入っていった。俺は理科実験棟のある方向へと足を進めた。・・その途中、

「・・む?」

『ゾクッ・・』と悪寒がして次の瞬間に面倒な予感がしたのでおそらく俺の悪口を言っているのだと予感した。後で問い詰めていろいろと聞き出してやろう。

そう思いながらも校内の敷地を歩く。

途中おかしなものを遠くに見つけた。大型のコンテナがいくつも置いてあり、そこから感染者の声が聞こえる。

「・・何かの理由からあそこに感染者を閉じ込めているのか?」

生き返る可能性などはないので始末するべきだと思うが・・、もしかしたらかつての同胞のために手にかけられないというのなら人間味があるのだが・・そんな事は無いだろうな。

だとすると、何かの理由からあそこを使うのかもしれないな・・。生きている人間を落としたり・・?よくわからんな。そもそも武闘派と言うやつらの考えることがわからん。こういう場合こそ生きている理由がよくわからんし、何の目的でこのような行動になるのかも理解できん。・・理解などしたくもないがな。

 

さらに歩くと理科実験棟・・いや、理学研究棟か?・・文字が汚れてよく読めん。

まぁいいかと思い入ろうと入り口を見ると・・、

「なぜこうも厳重に封をしてあるんだ?」

ドアの手すりを針金やいろんなものでぐるぐる巻きにして扉を閉じている。

どうしたものかと思っているとドアの横に呼び出しホンがあるのに気が付いた。

『ピンポーン・・』と間抜けな音が鳴る。

「まぁ、さすがにこのような状況では人も・・」

『・・誰だ?』

「おう?・・本当に声をかけてくれるとはな・・。どうも初めましてだ。俺は異世界から来た、神の使いでもあるが・・まぁ唯の錬金術師だ。」

『錬金術・・だと?ふざけているのか?』

「まぁ、普通だとそう言われるものだよな。そうなるとと思ったが、なぜか武闘派以外には受け入れられたんだ。・・コレ、俺の考えがおかしいのか?それともこの状況でみんながおかしくなっているのか?」

『それは・・どうとも理解はできないな。その事実があるというなら理解できなくもないが・・どういう理由で起きているかがわからなければ一概にはどうとも言えんな。』

「そうだよな。ふむ、そういう現象を見てその現象の発生する工程やその動きを理解すれば科学的な方からでも信じるに足るのか・・。その反応はありがたいな。」

『・・それで、そんなことを言いに来たのか?こっちは忙しいのだが?』

「あぁ、すまない。とりあえず聞きたいことがいくつかあるんだが・・まずは、この学校内に細菌やウィルスなどを培養するための施設や滅菌室、培養室に・・そうだなBSLがレベル3くらいあるのが望ましいな。」

『・・BSL・・『バイオセーフティーレベル』か?・・あるわけないだろう。理科の実験と言ってもせいぜいレベルは2があるくらいが普通だ。レベル3など食品を扱う専門の大型施設でもなければあるわけがない。しかし、それがあるなら培養室などはないだろうな。・・いや、まぁ、品質保持期間があるようなところなら培養器もあるか・・?しかしそれらしき建物は近くにはない。』

「だよなぁ・・。一応、聞いてみたようなものだ。それが無いなら・・此処のほかにそんな設備がありそうなとこはどこかあるか?」

『いや、無いだろう・・。待て、一か所だけ思い当たる。近くではないが・・。』

「それなら、俺も考えがあるんだよ。・・一緒に答え合わせでもするか?せーの・・」

「『ランダル・コーポレーション。』」

『だろうな・・。同じ考えということか・・。』

「この大規模災害も現況だろうしな。」

『・・なぜそう言い切れる?』

「それは・・これがあるからだ。」

俺は巡ケ丘学園の職員室でコピーした資料をインターホンのカメラに向ける。

『・・!?っそ・・それは・・?』

「どうだ?興味がわかないか?」

『・・面白そうだな・・。あぁ、すこぶる面白い。』

お互いにお互いを面白いと確認した俺たちは・・

「俺は織斑一夏。錬金術師だ。」

『私は青襲椎子〈あおそいしいこ〉だ。少し待て。準備をして降りる。』

ぶつんと音がして、内線が切れる。

それから中でいろいろと音がしたり、しばらくして玄関の方から音がする。

【ガチャ・・ガンガン・・】

『ぬおっ!?・・開かんぞ?』

「そりゃこれだけ締めてあるなら開かないな。・・ちょっと待て、今開けるから。」

そう声をかけながら入り口のロープや縛っているものを外していく。最後に閂〈かんぬき〉になっている鉄パイプを抜いた。

「開いたぞ。」

そう声をかけると扉が開き、中から煙草をくわえた女性が出てくる。

「・・あぁ、・・チッ。」

こっちを見るなりいきなり舌打ちされた!?いきなりなんだ!?

「あぁ、すまん。今まで外にいなかったものでな。こうも久しぶりに外に出ると空気がまずい気がしてな・・。」

荷物を持っているその女性、顔はキレイという感じの整い方だが、いかんせん目つきの悪さと、煙草をくわえている感じでそれを打ち消しているような感じだ。

[・・タバコでもなければ、それはそれでクールビューティーとして人気があったんじゃないかな?]

そんな風に考えながら手に持っていたコピーを渡す。

「これがさっきのコピーだ。この学校にも非常食があったらしいが薬はなかったらしいからな・・。実験施設があればそういう分の成分も調べようと思ったんだが当てが外れたぜ。」

そういいながら肩をすくめる。

「・・腰を据えてじっくり読みたいな。これは借りてもいいか?」

「あぁ。俺以外の研究者の話も聞きたい。ちなみにこの大災害ともいえる感染はどの規模だ?県内か?日本のどのくらいだ?」

「・・世界中だ。地球丸ごとの感染だ。」

「・・は?」

「私がまとめたデータではまず重要諸国の都市から広がる。それから海外の重要機関の機能がマヒ。それのせいで都市部に来た他方の人間が感染者と接触、または充満していた最近かウィルスにより、感染して持ち帰りその各所で発症する。それを繰り返し約一週間としないうちに世界の主要都市は壊滅。おそらくは私たちのように生きている人間はいるだろうし、何かあった時のためにランダルも手を打っているだろう。」

「・・なんか昔見たゾンビ映画そのものだなぁ・・。」

「そういう系の映画は見たことがないな。その映画の最後は?」

「感染のもととなった都市を加熱滅菌処理。地図からなかったことにする。」

「・・この町でもあり得ることだな。」

「だろう?・・急がないと時間がないかもしれない。手を貸せ。」

そういいながら手を出す。煙草をくわえなおし・・、

「・・いいだろう。」

そう言って俺の手を握った。

「改めて、錬金術師の織斑一夏だ。」

「理学系生物専攻、青襲椎子だ。よろしく、織斑。」

「あぁ。こちらこそだ、青襲。」

お互いにしっかり挨拶をしてこれからのことを話し合うことにした。

 

「ところで、タバコをやめて目つきを緩くするとモテると思うぞ?」

「・・誰に需要がある?感染者でも集める気か?ばかばかしい。」

「・・それもそうだな。」

 

 




最近箱根を取り上げる番組が多くていいなぁ、と思っています。
親戚が居るんですが、箱根に行って温泉入りたい。
雪の降る中で露天風呂に行きたいなぁ。

では、また次回。


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第二十四時間目

どうも、私です。
最近部屋の模様替えをしました。
そしたらおいていた場所がわからなくなり結局散らかすことに・・。
ここにあったはずと思っていたものが無くて、見つけたのはその下の棚と言うオチ。
気分で突拍子もなくするもんじゃないですね。

では、授業開始です。


「理学棟から出てきた、青襲椎子だ。織斑からこの資料を見せてもらった。」

「俺とともに感染者の原因を探し、特効薬や抗体を見つけ出したり、対処法を探すために呼んだ。おそらくはこれからは一緒に行動することになる。こちら側についてもらったということだ。」

「私は中立だし、武闘派にもサークルとやらにも興味はない。とりあえずはこのバカ騒ぎが終わって、ランダルに移動する際にでも私は行動をする。まずは郊外に自由に行き来できるようにしておいた方がいい。あのバカ騒ぎしてるやつらを、始末するかかからわないようにするのか、どうするか決めてくれ。」

そう言って腕を組んで椅子に座って全員を見て、いきなり目を見開く。

そして席を立ちあがり、つかつかと足音を立ててある人物の横に立つ。

そしておもむろに腕をつかむ。

「な、なに!?」

それは戌三夢子。俺が連れてきた感染後、症状が抑えられている人物だ。

完全ではなく、その皮膚はひどく体温が低い。動きも以前より少しだるくなっているそうだ。

しかし、まだまだ感染者としての明らかな症状らしきものは現れ切っていないはず。

それを一目で看破して見せたのだ。

「おまえ・・感染したな?」

「え?・・隠すのはフェアじゃないわね。そうよ、私はそこの錬金術師である織斑一夏によって助けられたわ。でも、一命をとりとめただけ。完全に症状が治ったわけではないの。」

そういうと、青襲は・・

「くく・・くくく・・はっはっは!!」

思いっきり笑い出した。

「素晴らしい。完全ではないにしろ、その薬の効果で症状を抑えている。つまりは抗体を作りつつあるということだ。」

「・・あまり褒められた言い方じゃないが、狗三のおかげで抗生物質ができるかもしれないということか?」

「あぁ。明らかにこれは重要なカギとなる。こいつと・・そこの大人だな。こいつらがいればおそらくだが抗体を作り、抗生物質を作ることも可能だろう。」

煙草を指に持ち、指さす先には佐倉先生。何故ばれた?

「先ほどから話を聞いている途中に肩を抑えて、こちらを見ようとしない・・しかしどう見ても正常に見える。これはおかしいことだが?」

「一回きりの神様特性特効薬をもらっていたんだ。エリクサーとでも言おうか?そいつを使ったので今生きている。当時は薬の情報がなかったのでな・・。」

「ほう・・。その特効薬とやらは?」

「一度使ったら入れ物ごと消えたよ。ゲームでアイテムを消費するようにな。」

肩をすくめると、明らかに落胆した顔をされた。いや、俺のせいじゃないし・・。

それから俺と青襲と共に計画を立てる。

学校を抜け出した後でどういうルートを通るか、ついてから研究や実験にどのくらいの期間かかる予想か、そこまでに行く日付や時間からどのくらい食事や生活用品が必要になるかの予定を立てていく。

錬金術からの魔法とそれに追従する化学は余裕だが、大型企業のセキュリティがどのようなものか、それを操作できそうかなどは俺には少々難しい。

確かにISという近未来的な物を扱ってきたが、それは決まったことを覚えていたからであり、今から新しく覚えるとなるとやはり少し時間がかかるだろう。俺は実験の方向での補佐がメインになるだろうと話して、最終的な結果は青襲がメインの実験とシステムの掌握をして俺が実験の補佐や企業内に何かあった時の戦闘部門をすることとなった。

 

「織斑君、好きなタイプはどんな子だい?」

「・・・・。【心底、面倒くさそうな顔】」

「そ、そんな顔しなくてもいいんじゃないかな?ほ、ほら!いろんなタイプの女子がいるからさ、男の子一人だし、正直こういう話するのに女子だけだとアレだからまずは男の子からと思ってさ。」

「・・はぁ~・・。【深いため息】」

ジュースとお菓子を手にトーコがそういう話題を振って絡んできた。

「あんたはジュースで酔っ払うのか?・・もしもその人がタイプだと言ったりしたらその人と会話がしにくかったり面倒なことになると思うけど?・・と言うか、俺はあんたたちの何倍も年を取っているわけだが・・それでも聞きたいのか?」

「むー・・。大人っていうか・・枯れてるっていうか・・。面白くない反応だなー。もっと慌てたり、赤くなったりしないものなの?」

そうトーコが言うと全員が興味深そうにこっちを見ている。オイコラ、ちらちら青襲まで見てんじゃねぇぞ?!

タバコふかして気にしてないふりしても視線が合ってんだよ!

「・・あー・・面倒だな・・。正直お前ら全員玄孫【やしゃご】みたいな感覚だし。」

「孫ですらないですと!?」

「特にやかましいのはいらない。自称許嫁がたくさん居たし、周りの奴らがうるさかった。あえて挙げるなら、自然と後ろにいて支えてくれるタイプかな?しっかり者だったらなお良しかな。・・この中からどうしてもと言われたら直樹美紀・・かな?狗三と圭と丈槍は無い。若狭は友人として・・かな?胡桃は妹と被るのでそうとしか思えん。佐倉先生はおっちょこちょいなのが少しなぁ・・。後は、面倒でないのは青襲だな。だが、タバコの匂いはあまり好かんのでな。リセは本のことになると面倒そうだし、トーコはこうやって絡むのが面倒だから嫌。アキは兄妹的な感じならいいと思う。ヒカは面倒見たやつに似てて少し気にして世話をしてしまいそうだが、恋愛感情かと言われると違う気がする。妹なんかに対するような保護欲というか父性かな?まぁ、そんなところだろう。これで満足か?まぁ、どの道俺が誰かと付き合うことなどは無いから意味のない話だがな。」

そういうと大体の全員が頭を抱えていた。

「えー・・どういう顔すればいいんでしょう?」美紀

「無いって・・断言された・・。」狗三

「私も無いって・・」圭

「いっくんひどいー・・。」丈槍

「妹かー・・。」胡桃

「私もらしいです・・。」ヒカ

「わたしって姉?妹?どっちだと思う?」アキ

「タバコ・・禁煙するかな?」青襲

「友達ですか・・。」若狭

「おっちょこちょいって・・。」佐倉

「面倒・・本に限ってはしょうがないかな?」リセ

「はっきり嫌って言われた・・。」トーコ

 無いと断言した奴らとトーコが沈んでいるし、地味に佐倉先生は傷ついている。

「まぁ、そこまで長い付き合いじゃないからそこまで悲観することもなかろうさ。それよりも・・面倒なことがあるんだが、どうするかの問題で悩んでいるんだ。」

「あぁ・・さっきの話か。・・正直私は関わり合いになりたくはない。この状況であんな頭のおかしい奴らなど正直バカとしか思えない。」

そう言って煙草をくわえて揺らす。・・火をつけて吸わないのかな?

「みんなで解決できる問題なら手伝おうよ!」

「そうそう!気にせず言ってくれていいよ?何々?」

トーコと丈槍が前に出てくるようにして聞いてくる。はっきり言ってやるか。

「武闘派連中。」

「「「「「あー・・・・。」」」」」

「アレかー・・。」

「どうすればいいんでしょう?」

「和解・・とかできるんですか?」

「んー、たぶん無理。」

全員が大体思うとおりのことを口にした。

「そもそもあんな頭のおかしい連中と手を組むこととかできるか。」

苦々しく青襲が吐き捨てるように言う。

「本を大事に扱わないし、意見は合いそうになよね。」

「リセは黙っておこうねー。」

リセとアキがそういう天然と突っ込みをしていた。

「・・しょうがない、とりあえずは一時的にいろいろと計画立てて今後の予定を立てておこう。そのうちにこっちに何かしかけてきたら・・」

「仕掛けてきたら・・どうするの?」

トーコがにやにやしながら声をかけてくる。どうするか気になるのか?

まぁ、正直な話、まったく面白い事にはならないんだがな。

「まぁなるようになるさ。」

そうつぶやいて部屋を出ることに。

 

廊下を歩きながら俺は実際にそうなった時のことを考えた。

その結果は・・

「生きながらに、俺の錬金術の生贄になってもらおうかな?」

実際に生きている人間ならば感染者よりも多くのエネルギーを集められるだろうし。

その時にならないとわからないが、おそらくは面倒なことになるのは確実だな。

いや、面倒なことが起きたからこそそうせざるを得ない状況なのかもしれないな。

何れにせよ、それが起きるのはそう遠くない気がした。

 




このあたりからすでにオリジナル要素が強くなってきています。
全員の精神がかなり保たれている状況なので、そこら辺の状況からのルート変化が大きいですな。
こういったルートの違いは物語の終わりに関係してくるので、よければ楽しみに待っておいてください。
まぁ、読み手の方の望む終わりではないかと思いますが・・。

では、また次回。


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第二十五時間目

どうも、私です。

あまり書くこともないので早速どうぞ。

では、授業開始です。


俺は校舎のいたるところに術式を書き込んで歩くことにした。

「さて、書いておくのはここが最後だな。」

通路以外にも外に続いている一階の教室などにも術式を書いていく。

円の中に六角形、さらに中にアラビア文字とルーン文字の両方を書いて、最終的に真ん中に梵字を書くことで俺のオリジナル術式は完成する。オリジナルなのでかなり無駄があるが、これを研究して改良するのは時間がないので難しいな。

術式を書いた最後の仕上げにサークルメンバーと巡ヶ丘組、リセと青襲の血を一滴ずつもらい、それを認証の術式に登録した。

「ねえ、いっくん?その血を使ったのは何かの実験?」

「一応こっちは血を提供したんだから、聞かせてくれるよね?織斑君?」

「ちょっと待ってろ・これが終わればすぐに答えてやる。」

丈槍とトーコが聞いてくるのだが、俺は作業中なのでとりあえずは【待て】をしておく。

最終的に機能してない携帯端末の内部基盤を抜いて、術式を組み込んだ錬金術の基盤を作り、それに全員の血を組み込んだ術式データをインストールしていた。機械の性能じゃなくて術者の能力で動くものなので気が散ると面倒なのだ。

そして、それが終わったからこそ説明をするために顔を上げた。

「・・【待て】をされている犬か?貴様らは・・。」

椅子の上で足を組んで座っている二人がこっちをじっと見ていた。

「終わった!?じゃあ、いっくん!」

「今さっきのことを教えてくれるかい!?」

「「「「「はぁ・・・。」」」」」

大体のメンバーはため息をついた。中には静かに何をしたのか気になっている奴もいるようだが・・。

「これは校内・・むしろこちらの棟内に侵入者があった時の警報装置だ。各所に術式が施されていて、それに登録していない人物が通るとこの端末に連絡が来る。あらかじめどこに仕掛けたかは登録して作ったので、生存者だろうが感染者だろうが、このメンバー以外が通ると警報が俺に来て即座に迎撃態勢をとれるわけだ。それと・・」

俺はお守り袋のようなものをいくつか用意していたのを全員に渡す。

「それは俺が持っている端末から、全員に緊急事態を教える際の子機だ。俺が一人で対応できない時や、相手がバラバラに動いているとき、校内に多数の感染者が入ってきたときなどは、この子機の術式から警報が鳴るようになっている。その場合各自で安全な所へ避難するか、どうしても非難ができないなどの緊急事態の場合はその中にある紙を破れ。強制的に俺のもとにジャンプができる。ただし、その術式を使った場合はある程度の記憶・・いわゆる思い出だが・・それを焼却してエネルギーへと変えるので、多少のリスクがある。」

「記憶の焼却って・・、それは思い出を忘れるってことですか?」

美紀が聞いてくる。まぁ、そういう風に慎重になってくれた方が楽だ。勝手に楽観視して破られても面倒なのでな。

「そうだ。別の言い方にするなら『思い出』というデータを『脳』という記録メモリー媒体から抜き出して、データを変換してエネルギーとして、術式の起動するエネルギーに完全に使用することを端的に【記憶の焼却】という形にしている。普通ならできないが、それは錬金術の基本であり、または科学と合わせる応用でもある。人体という科学的には奇跡の結晶とも言える物を使用することで莫大なエネルギーを使えるのだ。・・おそらくは使用したとしても軽い日常の一部くらいだろうがな。・・例えばそれを消したいと願いながら使えばその記憶を使って術式を発動することは可能だ。昔のドジを忘れたいと思いながら紙を破れば術式によってその記憶は焼却される。記憶の焼却とは完全燃焼させることだから、もう思い出すこともできないがな。そういう記憶を燃やすようにしたらいいだろうが・・大変な状況ではそう記憶を選ぶこともできんだろうな。・・故に使うやつは覚悟して使うようにな。」

全員がお守り袋を見つめていた。

 

それから、俺と青襲は独自の見解を言い合い、最終的な予想を立てることにした。

「つまりは、ウィルスか細菌かはわからないが、コレに書いてある『Ω型』だろうということだということには同意見だな?」

「そうだな。しかし、感染の拡大経路、期間、規模を考えるとやはり空気感染であることがわかるだろう?つまりはかなりの確率で細菌ということになるだろう。」

「俺も同じ意見だ。ぶっちゃけ細菌兵器に流用できないかの研究をしていたんじゃないかと思われる。ランダルコーポレーションというのが何を求めていたのかは知らないが、驚異的な薬を作ろうとしたのか、はたまたバイオテロ兵器を作ろうとしたのか・・。」

「それについては知りたくもないな。しかし、ここまでの世界規模で広がったんだ。」

日付と感染開始からどれくらいで連絡が途絶えたかが書いてあるノートを見せられる。

「ここに書いてある通りに、世界規模にしても感染速度が速すぎることから、もしかすると誰かがワザと感染をさせた可能性も出てくる。主要都市に始まり、広がっている。つまりは人口が多い都市を狙った可能性があるんだ。」

「・・ランダルの中にテロメンバーでもいたということか?または頭のおかしな宗教団体メンバーとか。」

「さすがにここら一体の巨大企業だ。そのような人物はさすがに重要なところに入れないだろう。」

「ふむ・・それもそうか。一定以上の信用に足る人物でなければこのような機密事項に関連できるはずもない・・か。」

「そういうことだ。つまりは、私から言うと・・」

青襲はそう言いながら一旦ノートを閉じてポケットから煙草を取り出して吹かす。

「おそらくは人為的要因がからんでいるが、事故であった可能性が高いだろうな。」

「・・冷静に推理するとそうなるか・・。こんなもの(緊急マニュアル)を用意しているくらいだからかなりの危険意識があったはずだよな。・・ランダルに行った際にそれもわかるかもしれんな。」

「それは同意だ。」

お互いに最終的な予想に落ち着いてひと段落した。

「しかし、私とここまで話し合うような人物がいるとはな・・。正直、私は頭がおかしいと言われていたのだがな。」

「俺だってある意味ではだれもが知る知識の外、いわゆる『既知外〈キチガイ〉』と言える存在だが?」

「くく・・それもそうだな。」

「おかしい同士でそれなりに世界でも救おうじゃないか。まぁ、すでに世界の方がおかしいのだがな。」

「はは・・それは違いない。」

お互いに苦笑いをしながら最終的な話し合いの結果をまとめて記録していく。

それを書いて残しておくのは、後からの観察や気が付いたことなどを踏まえて合っているかの考察をしていく基礎にしていくからだ。

 

ランダルコーポレーションへ行っても施設が破損していたりしたらどうするか。

そこも考えなくてはならない。先の話から、もしかすると何らかの理由から事故が起こり、それが原因で通称【Ω】が世界中にまかれたか・・・。

しかし、それが原因としては世界中の主要都市に広がるのがとてつもなく速かった。

やはりテロの可能性が高いのか?

・・どちらにしろとてつもない規模の災害なのはわかった。

俺たちの手に負えない規模ということもな・・。

まったく面倒なことをしてくれるものだ・・。

「一度、今後のことも踏まえて全員で詳しく話し合うべきかな?」

特に、学校内にいる武闘派の対応もな。

・・どうやら何か気にして探っているようだ。

校内のこっち側までは来ていないが、遠くから監視したりいろいろと辺りを嗅ぎまわっているようだ。

面倒なことにならなきゃいいんだがな。・・本当に、こっちから始末しに出た方がいいのかもしれない。

俺はそう思いながら、ある意味での錬金術の禁忌【死の灯『エヴィヒ・カイト』】をいつ、使うことになるかとその手を見ていた。

 




正直、風邪がきついですね・・。
のどが痛くて飲み込むのもつらい・・。
自分が感染者になったことが夢に出てきました。
『しんどいなぁ』と思いながら寝ていたら、すごく息苦しくなって、『これはやばいかなっ』と思って目を覚ましたら飼い猫『オス・6キロ越え』が胸の上に寝てました。
さすがに重いわ!!

では、また次回。


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第二十六時間目

どうも、私です。
のどが痛い。腰が痛い。咳のし過ぎで腹筋が痛い。
風邪ってこんなに長くてつらいもんでしたっけ?
そんな感じです。

それでは・・授業開始です。


面倒臭い面倒くさい、やってらんねぇ、バカバカしい。

深夜に俺は武闘派の動きがあることに気が付いた。

数人が夜中に窓からラジカセをつるしているのが見えた。

そして、ゆらゆらと歩きながら来たのは、校内に入った初めにボーガンを向けてきたあの男。

メガネをつけてニット帽をかぶっていた男が、感染者となって歩いて窓から手を伸ばす。

ラジカセに届かないその手は空を切り、そのままバランスを崩して地面へと落下。

それは遠くから見たあの、いくつものコンテナが固めて合ったところ。

感染者となった学生を隔離し、処分するための場所だったことを俺は校舎の屋上から眺めて知った。

「・・やはり、空気感染での発症は個人での時間差があるが・・、高確率で感染はしているのだろうな。発症しないのは、免疫が強いか、抗体ができているか・・。個体差があるようだが、どちらにしろあまり時間は残されていないようだな。」

いつも通りのロングコートが風になびき、後ろを向いた瞬間に吹いた強い風に帽子を押さえる。

視線を感じ、振り向くと、髪を束ねた女がこちらを見ていた。

「・・思いつめた目をして・・面倒なことが起きそうな予感がひしひしと伝わるな。」

俺は屋上を去り、リセを含めたメンバーを全員起こして一か所に集めることにした。

 

「それで、武闘派の一人が感染者になったっていうのは本当なの!?」

代表してトーコが俺に聞いた。

「まぁ、見た限りでは俺たちが大学敷地内に入って初めに見た、メガネにニット帽の男が感染者として発症していた。」

「どうして・・あっちは確実に感染が無いようにケガなんかしてなかったはずだけ・・あ・・。」

「気が付いたか?話していた通り、おそらくは空気感染での発症だろう。しかし・・問題はそこではない。もっと重大なことだ。」

腕を組んで首を振る。

「発症したことよりも重大?」

「ここで気が付くやつもいないか・・。」

「・・!そうかっ!感染経路の把握か!?」

「さすがは青襲。ビンゴだ。」

机を叩いて立ち上がった青襲に俺は指をさす。続いてアキが手を挙げて俺に質問をする。

「どういう事?空気感染が原因なんだよね?」

「あぁ!?そういう事ですか!!きっとまずいことになります!」

続いて気が付いたのは美紀。横で圭は首をかしげている。若狭が考え込んでいたあと顔を上げた。

「もしかして・・原因?感染、発症する原因は私たちはある程度把握している。でも・・」

「あぁ!そうか、あっちは何でケガしていないのに発症したかがわからない可能性があるのか!?」

「以前に発症したのがいれば別だが・・そうなるとマスクや何かしらの対応している可能性が普通だ。俺たちは感染に対して反応が遅かった。故にここにいる全員が感染、発症する可能性があることもわかっている。・・この場で言うのだが、狗三は発症したがランダルの試作薬によって症状が抑えられた。・・が、あくまで【抑えられた】だ。完治したわけではない。・・つまりは、狗三の血液などを通して感染する可能性はある。それだけは気を付けておいてくれ。もしも、大学のメンバーが一緒にいたくないと言うなら俺はこいつと共に車で生活メインにする。」

そう言うと全員が顔を見合わせた。

「いやいや、これまで一緒で今更それは無いよ。」

「そうそう、それこそ私たちも今からでも発症する可能性があるんだし。」

「怖がることでもないと思いますよ。」

「本を大事にしないなら怒るけどそう言う訳でもないなら怒る事はないね。」

最後に青襲が席を立って狗三の顎をクイッと持ち上げて目を合わせる。

「・・瞳孔も正常、しかし脈拍、体温、共に低い。生きているのにこのように冷たい。しかし体温自体は発しているようだ。つまりは奴らと同じ死体ではない・・。」

腕を持ち上げ、手首を握って触診。そして、それの後で煙草を銜えてニヤリと笑う。

「やはり・・面白いな。研究しがいがある。」

そう言って席に戻る。

「・・どうやら別に問題は無いようだ。では、ここにいるメンバーは基本的にこの部屋に集まってくれ。この区域付近には俺が人物判定の錬金術式をつけているから、こちらに来る場合の経路もわかる。その際に集まっていた方が守りやすいからな。」

そう言って俺はギアを取り出す。それは【ガングニール拳】。

「俺はお前らを守る。だから、お前らは生きるのを諦めるな。」

俺は全員を見ながら言った。この思いを貫くことこそが俺の命題だと。改めて実感した。

 

そして、深夜だったのに集まってもらった事で全員が眠いとなったことから解散。メンバーは近くに集まって普段遠くにいる人物、リセや青襲も近くの部屋に泊まりそれぞれの部屋で寝た。

俺が廊下に立ち、全員は朝まで眠った。翌日の朝に軽く仮眠してそれから早速俺は準備を始める。それはあちらに動きがあったからだ。なぜかいろんな場所を確認したり、何かを探しているような動きがある。きっと今夜あたりに動きがあるだろう。

メンバーは基本的に一つの区域にいてその周りには俺の術式で侵入者がわかるようになっているのでみんなは普通に過ごした。

 

そう予想して構えていると、二階の図書室方面に向かう廊下を四人が通る反応があった。

武闘派メンバーだろう。しかし、リセは今トーコの部屋で俺たちの持っていたサバイバル用の本を見ている。誰もいない。

それに気が付いたのか、図書室方面から急ぎ足でこちらへと向かう反応がある。しかし、三人に減っていた。

どうして一人が減ったのかはわからんが・・。

そう思っていたら、車近くの術式が反応。こちらに一人回したらしい。

廊下で立っていると目の前に武装した三人が現れる。

「・・お前ら・・。」

「何やら気分がさえないようだな、武闘派リーダー。風邪薬でも必要か?」

「うるさい!!俺たちのメンバーの一人が発症した!お前たちの仕業だろう!?」

「・・はぁ、どこかで感染していたんじゃないのか?」

「・・それは無い。必ず全身の検査はする。ケガなどがあったらすぐに気が付く。それが無いのに発症した。奴らになった。」

そう言ってライダースーツのような姿のサイドテールの髪型の女はアイスピックを構える。

リーダーらしき男は釘バットを持っている。話に聞いたタカヒトと言う男だろう。

もう一人の女は手袋とマントと言う防具はありはするが、肝心の武器は見えない。

声を聴いて廊下へとメンバーが顔をのぞかせている。だが、いざとなった時に閉じこもれるように完全には出てきていない。それを確認した後、俺は考え込むようなポーズをとる。

顎に手を当てて肘を持つ。

「それは、俺も遠くから確認した。しかし、感染した経緯がわからないと見える。」

「だからお前らが何かしたんだろ!?」

リーダーはそう言って叫びながらバットを廊下へとたたきつける。

「・・ふむ、どうやら相当に焦っているようだな?・・どうかしたのか?自分もそうなるのが怖いのか、はたまた・・」

じろりと半目になってリーダーを見る。

「【何故か体がおかしくて、次に発症するのは自分だと確証している】とか?」

「なっ!?」

そう言って固まるリーダー。

「まさか・・タカヒト、貴方・・・」

「・・タカヒトさん?」

女二人が距離を取り、俺の近くに来る。

「今回の件、真相は簡単なこと。この感染経路は空気感染。発症はそれぞれの体調や耐性、抗体の違いにより、個人差が現れているがそれも特に疲れて体力が低下したりすると発症する可能性がある。完全に体力を消耗した際には特に・・な。」

そう言って俺はサイドテールの女の方を見る。思い当たることがあるのか芽を見開いていた。トーコからこいつとメガネ男は恋人関係と聞いていたからな、いろいろとあった上なのだろう。明らかに挙動がおかしくなる。

「タカヒト・・あなたが決めたルールよね?」

「ち、違う!!俺は・・俺はぁ!!・・・うっ!?・・」

マント女と口論している途中、リーダーは口元を抑えると後ろに嘔吐した。

「はぁ・・はぁ・・」

「明らかに・・発症してるわね。・・なら、あなたも・・」

「まぁ、・・そういう事だ。こちらの人物にも危険が無いようにさせてもらおう。俺達もいつ発症するかわからない。故にせめて危険は排除させてもらう。」

そう言ってこちらについた女たちと共に距離を詰める。

「た、タカシゲ!おい、タカシゲ!!俺を助けろ!」

そう叫びながら、廊下を引き返し外へと向けて走り出した。

「タカシゲは、あなたたちが外に出ないように、私たちが来た方向とは別の正面玄関の方へ行ったはずね。・・もうここもお終いのようね。」

そう言ってマント女は立ち去ろうとする。

「どこへ行く気だ?」

「きっと自棄になったタカヒトは奴らを校内に引き込む。なら、私はそれから逃げるだけ。本来なら全員居なくなってからのつもりだったけど、あなた達と敵対するのはどうにも得策ではないようだしね。・・もう会う事は無いでしょうから、さようなら。」

そう言って去ろうとする背中に声をかける。

「面倒なことはするなよ。・・あと、駐車場のオレンジの車が一番ガソリンが残っていたから、それでならそこそこ遠くへ行けるだろう。何かあった時用に一人分のキャンプ用品が乗っている。」

「あら?私とあなたは敵だったはずだけど?」

「余計な事されるくらいならさっさとどっかに行ってもらった方がいいんだよ。面倒なのは嫌いだ。」

「そう。ありがたく頂くわね。オレンジの・・普通車かしら?」

「一台しかないからすぐわかる。鍵は運転席の上に挟まっている。」

「そう。じゃぁ、もう会う事は無いでしょうから、さようなら。」

「あぁ、じゃあな。」

そう言ってマント女は去っていく。

「あぁ、あんたはここでこいつらを守ってくれないか?さっき言った通り、今回の件は誰もが発症する可能性があるんだ。あんたのせいでもなく、タイミングが悪かった。俺は今回の件の解決法を探しているから・・。思い人が無くなったのは残念だが、せめてあんたと・・そのお腹の生命が生きれるようにしたいからな。よろしく頼む。」

そう言って帽子の位置を直し、俺も外へと歩いていく。

外へと走っていったリーダーとタカシゲと言う男の叫びあう声が聞こえてくる。

「だから、俺は・・うぐぇ・・はぁはぁ・・はめられたんだ!」

「どう見たっておかしいんだよ!いったい何があったのか教えろって!」

帽子をかぶった男と、さっきの男が言い争っている。話しているうちにやはり嘔吐したりしている。これは相当に時間が無いだろう。

「いいから・・いや、もういい!!」

「なに・・がぁ!?」

とうとう、リーダーが帽子の男、タカシゲといったか?そいつを殴った。手ではなく、釘バットでだ。

「もう・・何もかもお終いだ・・はぁはぁ・・。俺は、・・ごほっ・・選ばれたんだ・・だから生き残らなくちゃ・・いけないんだ・・。」

そう言って歩き出した。それは土嚢の積まれた鉄門の方向だった。

 




微熱が長いのですが、病院でもインフルじゃないと言われるし治らないし・・。
すっげぇ面倒くさいっす。
ボックスティッシュが何個無くなったか・・。
日本のティッシュはいいと聞いてても鼻のかみ過ぎではやはり痛くなります。
皆さんは気を付けて。

ではまた次回。


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第二十七時間目

どうも、私です。
現在、がっこうぐらしは十一巻まで出てますが、内容に対してびっくりしましたよね。
今更ながらに、本当に『ランダル」の杜撰さにあきれるばかりな感じです。

それでは、授業開始です。


武闘派のリーダー、タカヒトは土嚢の積まれた学校の門へ向かって行く。

その横へ転がるのは帽子の男。タカシゲが釘バットで殴られた頭を抱えて血を流して呻きながら転げて苦しんでいる。

遠くからそれを確認した俺はギアの待機状態のクリスタルに手を伸ばす。

そして聖詠を口にしようとしたその時、

『ウゥゥゥウウウウウウウー!!』

『ジリリリリリリリ』

『キーンコーンカーンコーン』

大音量でいろんな音がスピーカーから流れた。

「何!?」

驚いた俺は校舎へと振り返る。それは学校中のスピーカーからなっているようだ。

「何故こんなに・・音・・が・・。いや、あの男以外にも頭のおかしい奴がいたという事か?!」

そう考えてあのマントの女が頭に浮かぶ。

「あの女狐め!!こちらが少しでも甘くしたら付け上がりやがったか!?畜生めが!」

そう叫んで、さっきの門の方に向き直る。

『ガキンガキン』

土嚢をどかして門を開き、鉄門をバットで打ち付けて、音を立てる。

「こっちだ!もうこうなれば!道連れにしてやる!!」

学校敷地内に大量の感染者が入り込んでくる。俺はそれを止めようと思ったらフラフラとしながらも走って他の門の方へと向かって行った。

「くそ・・先ずは、こっちの対処しなくては・・。」

俺は右手にガングニールを構えて、さらに逆の左手にはイガリマを構える。

「『Balwisyall Nescell gungnir tron』『Zeios igalima raizen tron』~♪」

そう詠うと白と緑の装甲で作られた【デュエットフォーム】を装備する。

〈推奨BGM 必愛デュオシャウト〉

「行くぞ!・・ハァッ!」

その場から走って加速して、感染者の間を抜けるようにして高速で殴り蹴り、数体の感染者にダメージをくらわせて抜ける。その後、振り向いてギアの腕部にエネルギーを集めてソレを放つ。

【我流・無明連殺!!】

俺が言ったあの世界の『立花響』が使える技だ。

数回見ただけだったが、なんとか『見取り』はできたようだ。

それから反対を向きながら腕に鎌の刃を生やして、それを腕を振って放つ。

【切・呪りeッTぉ】

数枚の刃が飛んで感染者を切り裂いていく。

「ぎゃぁああああ・・・!?」

叫び声がしたがそれは男の声。

頭を殴られていたタカシゲと言う男が感染者にたかられて生きながらに食われていた。

おそらくすぐに感染し、発症して奴らの仲間入りするか、そのまま発症することもできないくらいに食われて死ぬか・・どちらにしろもう助からないな。

俺はその集団に向けて走り、手前で飛ぶ。そして集団に向けて両手を突き出してそこに両手に鎌を出してクロスさせて、巨大なハサミのようにして構える。

【双斬・死nデRぇラ】

巨大なハサミでまとめてそこの範囲に入る数体の体を真っ二つに切り裂いた。

タカシゲもすでに感染したような肌具合とうめき声をあげていたので死に体か、発症していたのだろう。

しょうがない事だが奴らと共に【処理】させてもらう。

その後、キリがないと思い俺は門を閉めて、土嚢を積みなおし、さらにヒートカーボンロッドを差し込んで開かないようにしっかりと門を閉める。

それを行った後、辺りにいた奴を切り裂いた後で俺は走り出す。

道中、ナックルを回転させてドリルの状態で腰のブースターと、肩の裏のブースターを吹かして、一気に加速。

近くにいた感染者を十体以上貫いて、裏門へと向かう。

そこにはキャンピングカーと、サークル派のメンバーが生活する棟の方面だ。

アイツがやけになって他のメンバーに手を出しかねない。

現にあいつは自身の仲間であったはずの男を殴ったのだ。

俺は急いで行かなければならないと、優先順位を変えてタカヒトに向けて加速することにした。

ブースターと腕のスラスターを使い、体の方向を曲げながら加速。曲がり角になった時に目的の男が車に乗ろうとするのを見つけた。その車でキャンプカーにでもぶつかられてはたまらない。そう思った俺は車の前に飛び出る。

「これ以上の愚行、見逃すことはできない!」

そう叫びながら手を広げる。

タカヒトは構わずにアクセルを踏み込んで急発進した。

俺に向かって突っ込んでくる車に対して俺は肩の裏からワイヤーを発射して先の爪を地面に食い込ませる。

そして、つっ込んできた車を掴んだ。

【ガッシャン!!】

とすごい音がしているがそれでも全く止まる気はない。問題なくタイヤは回り続けて、

【ギャギャギャギャ・・】

と言う音を立てているが前には全く進んでいない。俺が抑えて・・いや、止めてフロント部分を持ち上げているのだ。

「・・貴様は・・これ以上の罪を重ねる気なのだろう。・・なら、俺はそれを止めて・・貴様の仲間のもとへと送ってやる!せめてもの、手向けと知れ!」

そう言ってその位置からブースターを下に向けてふかす。それと共に爪を収納。足の力と脚部のパワージャッキを使って車を掴んだままジャンプ。空中で持ち直し。車のガソリンタンク部分の根元を掴み捩じって止めて、タンクごと引きちぎり下に投げる。

逆さに掴み上げた車を構えて、敷地内にあった例の感染者の墓場に投げ込む。

【ドガッシャァン!!】

と音がして車はコンテナの囲む中央へと落ちる。

壊れた車から這い出てくるタカヒトを見て、周りにいた感染者が寄ってくる。

遠くから見ても明らかに「来るな!」と叫んでいるが、奴らは止まらずその手を伸ばし、掴みかかろうとするもの、嚙り付こうと首を伸ばすもの、いろんな感染者が近寄った次の瞬間、

【ドガァン!】

と少量残っていた燃料に引火して小規模でも爆発が起きた。

結果としてタカヒト含むそこにいた全感染者が吹き飛び燃えた。

それを俺は生活棟の屋上から眺めていると、裏門から一台の車が出ていく。

それはオレンジの車。

「・・やはり逃げたか・・女狐が・・。」

裏門が開いているのを閉めるために飛び降りる。あのマントの女が逃げたのだろう。

飛び降りる際に少しだけ見えた運転席からは、手袋をはめた腕と見覚えのある服が見えた。

あの女がしていた服装だ。この結果を見届けてから逃走したとみるが・・。

「ふん・・、俺が本当に貴様を信用などするものか・・。己が行動を悔やむといい。」

あの車にはある一定距離を走ったら、エンジンが故障するように仕組んでいる。

そもそも、ガソリンも多くは無い。車から抜くための器具は無かったのであの車に移しては無い。そもそもそんな時間などは無かったしな。

アイツも俺に嫌がらせをしでかしたのだから、そのお返しをしてもいいだろう。

アイツは自分が生き残るためには、相手を蹴落とすだけでなく、優越感に浸るためや自分が上だと認めたい、認めさせたいがために人を足蹴にするタイプだ。

どうせここにいても被害を出しただろう。

あのように見えないところで自滅してくれるのを切に願う。

そんなことを考えながらも、音を聞いて近寄ってきた感染者を腕に出した鎌で切り裂きながら、門を閉めて近くにいた感染者だけは始末した。

校内の生活棟に入るところは無いはずなので、辺りの外を歩いている感染者を貫いて切り裂いて、殴りつぶして始末する。

それからキャンピングカーのあたりに何かされていないか確認して、異常が見つからなかったので校内に戻る。

 

全員が無事で、話を聞いた武闘派の最後の一人、右原 篠生(みぎはら しのう)・・通称〈シノウ〉が穏健派ことサークルメンバー入りすることが決まったらしい。

そもそも、もとはそう物騒な性格でも無い人物だったが、その戦闘力を買われ、さらに恋人と居るためにあちら側に移動したメンバーらしい。

戦う理由もなければそこまで危険な人物でもない。

俺はサークルメンバーからも意見を聞いた。

「それで、全員が納得しているんだな?」

「もう、危険な人物が多くいるわけでもないし・・敵対する理由もなくなった。」

「それなら手を取り合って生きていく方が建設的じゃない?」

「その・・危険がないか守ってくれていましたし・・。」

「結局、私は本を大事にする人物なら信用に当たると思っているよ。」

青襲以外の意見を聞いた。

「リセはブレねぇな。・・で、黙っている青襲は?」

「私は・・今後お前たちと行動する。」

「なるほど・・。ここを離れるとわかっているんだな?」

「目的地は分かっている。それに目下の危険は去った。ならば移動しない理由はあるまい?」

「さすがだな。」

俺は肩をすくめる。

「えっと・・それじゃ次に行くのは・・?」

「決まっているのですか?」

そう聞いてきたのは若狭と美紀。俺はそれに答えるために青襲と目を合わせる。

「当然・・」

 

「「ランダル・コーポレーションだ。」」

 

 




もう十一巻。次巻完結と書いてあり驚きでした。
そして、実写版のがっこうぐらしもありますね。
私は一切見る気はありませんが。
・・リアルでゾンビ系にスコップとか振り回してるのを見て、そう言う系の事件が起きないことを祈るしかできませんが・・。
以前にそう言うニュースを見たことがあり、親にそう言うのどう思うとか聞かれました。
「現実とゲームの違いが判らなくなったら、ギャルゲーとかできない。」
と自分的には至極真面目な意見を言ったら、呆れられました。

では、また次回。


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第二十八時間目

どうも、私です。
最近天気が異常ですね。
雪が降ったり、温かくなったり・・。
インフルエンザも流行ってますから、気をつけましょうね。
では、授業開始です。


それからの行動はあっさり決まった。

簡単な話だが、この大学に残る側とランダルに行くメンバーだ。

と言ってもはっきりしているようなものだがな。

「巡ヶ丘メンバーに青襲さんが加わっただけですね。」

「サークルメンバーと図書室暮らしのリセに新しくシノウがメンバーとなっただけだしね。」

「正直代わり映えしない。」

「シノウさんもしっかり一緒にやっていけると思いますしね。」

「本を大事にするなら敵にならないね。」

「リセはそればっかだな。」

それを言うとみんなが笑う。

「それじゃ、とりあえずの支度をしよう。青襲は必要になりそうな器具を持ってきてくれ。ほかのメンバーは水や食料の確認と資材系、消耗品の数を確認しておいてくれ。」

そう言って俺は席を立つ。

「一夏君は何かあるのかい?手伝えるなら手伝ってあげるけど?」

トーコがそう声をかけてくるが俺は首を振る。

「無理だな。俺にしか務まらんし、数日かける可能性もあるんでな。その期間、外で過ごすなら誰かを見張らなければいけない状態よりも、俺だけの方がむしろ楽だ。」

「えー、そうかな?こう何もしてないように見えても私たちって大学生だし、君たちよりも習ったことは多いから役に立つかもしれないよー?」

「ギアを纏っての行動と錬金術だが?」

「無理だね。はい、撤収。」

「早っ!?」

ついついな感じで胡桃が突っ込みを入れた。

「いや、それは人外の域だし?」

「あっさり人間を否定されたよ?」

そう言いながらこっちを向く圭、そしてメンバー全員。いや、青襲なんかは笑っているのを隠すために逆の方向を向いてやがる。だが、明らかに肩が震えている。

「こいつらめ・・。まぁ、いい。正直、自分でも前世から普通の人間とは思ってはいない。」

そういいつつ俺は背を向けて自分のするべきことをしに行く。

 

走り出して加速した後飛んで大学の敷地の外に出て、大学の横にある校庭を走る。

突っ切ってあったその建物の敷地内に入る。

そこは神社。『調神社』と書いてある。

「・・これで、『ツキジンジャ』と読むのか。シラベと読んでしまいそうだ。」

そう言いながらもそこへ入っていく。本殿ではなく、その横に続く道。

そこにあるのはご神体としての突き刺さった岩。岩の周りに縄が締めてある。

それほどのことをしてあるこの岩を見に来たわけではない。

この場所もある知識の中では神降りるためのエネルギーを得るための場所だ。俺はその岩に向けて拳を向ける。

『キャスター・拳』を展開しそのまま振り上げたこぶしを一直線に打ち付ける。

【ドガシャン!!】

と音がしてめり込む腕。その先にひびが広がっていき岩が崩れた。

そして地面に残る岩の先を踏む砕く。

細かく壊して俺はそのまま次の場所へと急ぐ。

そして、向かう先は別の神社。

そこでも同じことをする。理由は先ほど言った俺の知識の中の力のため。

使えるかもしれない手は取っておくべきだと思い、いくつもの神社を駆け回りその要石を壊して回る。

俺の目的は俺の使う錬金術の元々の使い手が行った事。【鼓星の神門】を開くことだ。

読みは「ツヅミボシノカムド」。

地上にある神社をつなぐとオリオン座の形となる。

その要石同士はレイラインと同じくつながりを持っていて独立の力を封じている。

その封印を解き、その地上と天のオリオン座が向かい合うときにその間に神の降りる力が集うといわれている。

そして、俺はその中心になる調神社に戻ってくる。地面が若干発光している。

おそらくは龍脈の流れがつながったことによる、レイラインの形成でエネルギーのわずかな漏れだろう。

その流れがつながる一番中央は元要石があったところ。その要石のあったところに俺は新しく作った術式の錬成石を突き立てる。

これは俺の手元でこの石を壊すことができる術式を閉じ込めた石で、全部の位置からの中心核となるこの神社の要石の代わりに力を封じておくものだ。

その時が来たらこの力を使うために、今はこれをして封じておく。

おそらくはこの力はとてつもなく大きなものだろう。

神の門、神門【かむど】とはシュメール語で【カ・ディンギル】。

つまりはギアを知っているものならわかるだろう。

巨大な力を持つ物の一つだとはっきりと言える。

なので、これは俺の奥の手の一つとして取っておく。

 

神社周りを終えて戻るころには日を跨ぐ頃になっていた。

山道などが多く、さすがに道が狭く、車形態のものを使って回ることができなかったのは痛かった。疲れは別に気にならんが、それ以上に問題なのは時間がかかりすぎた事だ。

聖イシドロスに戻ってきたのはすでに夜になっていた。

ほぼ丸三日ぐらいかかってしまった。

まぁ、お守り袋の方に何も連絡がない事から緊急事態は無いようだし、そう思って気軽に校内に入った。さらに歩きながら、水と風と火を組み合わせた錬成陣で汚れを落とす。

「はぁ・・、帰ってき・・た・・。」

入ったのはいつものみんなの集まっていた部屋だ。

だが、そこでその場にいた全員がこちらを見て固まっていた。

俺もその光景を見て固まる。

トーコとシノウ・若狭の三人が皆から【胸をもまれている】状況だったからだ。

「・・・。」

俺は無言でドアから下がって廊下に出てドアを閉める。

そのまま無言で頭をかいて冷静になるようにした。

とりあえず、もう一つすることを先にしようと廊下を歩いて階段を上り始めると、

「「「きゃぁあああああああ!?」」」

甲高い声が聞こえた。あぁ、言っておくが服は着ていたぞ?

少し服が乱れてはいたが別に肌が大きく見えていたわけではない。

ラッキースケベと後から言われるが、そもそも俺はその方向に対しては別に興味をなくしているんだがな。そもそも、神に好きに使われるこの体を、列記とした生命と言えるのかもわからないんだが・・。

 

「とりあえず、違うんです。」

「何が違うのかは知らんが、別に言い訳をしなくても大丈夫だが?」

「いえ、その・・皆がですね・・」

「だから別に言わなくて大丈夫だ。トーコはどうしてか知らんが・・いや、おそらくはシノウや若狭の体を見てからかったか触ったかして、その報復をしていてさらに興味を引いた奴らが混ざってふざけあったという事だろうな。」

「・・すごい。見てきたように正解です・・。」

「意外なのは青襲が少し興味深そうだったことだな。・・いや、体を見ていた先は狗三と圭、佐倉先生だったか・・?だとしたら、発症した後の体の興味だろうな。おそらくは触ってみても大丈夫なのかも一応観察していたのかもしれないな。そこについては全くの問題は無いが、狗三については体液などでの感染については分からないな。それを考えていたんだろうから別に女性に気があるわけじゃないだろう。気にする必要もない。」

俺は屋上で作業をする。そこに若狭が来て言い訳を後ろからしている形だ。

「それで・・、何をしているんです?」

「これか?・・説明が面倒だし、難解だから気にすんな。」

そう言いながら手を動かす。機械をくみ上げながら、内部に錬金術で使う文字を書いて術式を組み立てている。ただ、これは本当にどうにもならない時に使う、最後手段で使う物の一つだ。なので、同じものをいくつかの場所に設置する予定ではある。

どう使う物かは面倒なので言わないし、言っても意味が理解できないだろうから言わない。

簡単に言うと俺が使う【巨大設備】の代わりになるためのパーツをあちこちに置く形だ。

本来はその【巨大設備】をレイラインの集中している点に置くのが望ましいのだが、それはこちらにはない敷材も足りない。今から作るんじゃ時間もかかりすぎる。

故に代わりになる装置を数多く置いて代わりにさせるんだ。

【巨大設備】・・いや、【巨大施設】かな。

我が居城、【チフォージュ・シャトー】の代わりだ。

しかも呪いの旋律もないのでかなり苦しいが、そこをどうにかしたいが為に神社を回った。

【鼓星の神門】はその為だ。

何とかなればいいが・・。

 

どうにも嫌な予感がする。

 

 




では、また次回。


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第二十九時間目

どうも、私です。
最近、グルメ系の本や小説を読んでいて、動物のホルモンを食べるという話を見ました。
よくある分では魔物の肉を食べるというのは聞くのですが、ホルモン系はびっくり。
しっかりと読んでそのあと一言、
『ホルモンの焼肉とビールが欲しい。』
ホルモンとコウネの焼肉とビールが非常に欲しくなりました。
とまぁ、個人的な話はこれくらいにしておいて。

では、授業開始です。



俺はある程度の準備を済ませて装置の設置用に尽力した。

俺は今まで来た途中の建物の屋上などに装置を仕掛けていく。

それと、ランダルコーポレーションにはついても先に入る事は無いように伝えておく。

「俺は一度、来た道を順に辿って巡ヶ丘学園に戻る。そこで装置を設置してきてから合流するから、お前らはランダルにゆっくりと向かっていてくれ。予定ではそちらも道を探しながらだと三日くらいかかるだろう。こちらもそれくらいにはつくように急いで回るから、くれぐれも先にランダル内に入り込むことが無いように。特に狗三、胡桃、丈槍。」

「名指し!?」「信用ねぇな!?」「えー、私も?」

三人はそう文句を言うが却下した。

「それじゃ、いったん別行動だ。・・しつこいが、くれぐれも危険なことはするな。」

真面目にそう言うと全員が頷いて答えたので、俺は安心して先に出発することにした。

「それじゃ、達者でな。」

大学側に残るメンバーにそう声をかける。

「あれ?もう会えないのかい?」

「役目が終われば、おそらく俺は神のもとに呼ばれるだろうからな。別に死ぬという事じゃないが・・消えると思う。面倒だが、そろそろ開放してほしいものだ。世界を超えた仕事など、勘弁してほしい。」

首を振ってそう答える。

「あはは。上司に恵まれないね。」

「そうだな。気分屋で飽きっぽいからな。」

「神様相手にそう言えることはすごいよ。・・それじゃ、まぁ、またどこかで。」

「あぁ、会うことがあれば。」

俺とトーコはお互いに手を上げて手のひら同士を打ち合う。

【パン!】

「じゃぁな。」

「うん、頑張りたまえ。」

「気をつけてくださいね。」

「楽しかったよ。」

「・・それでは、お達者で。」

そう声をかけてもらい俺は先に校舎を出る。

俺は一旦ある程度離れたところで止まる。

そして、二つのギアを取り出して聖詠を口にした。

「『Killiter Ichaival tron~』『Seilien coffin airget-lamh tron~』♪」

デュアルギアの起動で俺の姿は赤い装甲と銀色に輝く装甲に包まれる。

赤い装甲からは大きなミサイルを構え、腕には銀に光る大型のナイフを装備する。そのまま前に腕を構えて足に力を入れて構える。

そして、さらに歌を口にしてその力を開放する。

 

~推奨BGM『Change the Future』~

 

「♪~」

歌を口にしたら腕についたナイフは巨大化し、背中のミサイルはロケットとなって一体化して巨大な刃のついたロケットになる。そしてロケットから火が噴出してそのまま加速して直進。まっすぐになっている道を巨大な刃物が高速で直進してそこにある物や感染者を切り裂いて吹き飛ばしていく。

今から行うことはすべて、未来への布石。

暗い、閉ざされそうな未来を切り開くためのその一歩。

「間違った過去は変えられなくても・・」

ロケットを止めてガソリンスタンドの近くの喫茶店のあるビルの屋上に装置を設置する。

そして、またロケットは火を灯して、高速で空を進む。

「多くの人は救えて来なくても・・」

狗三が居た施設の屋上に到着して、同じく設置。

そのまま、また進む。

次についたのは圭と出会ったビルの屋上。駅が見えるそこから駅構内にはぞろぞろとスーツ姿の感染者が見える。

「手の届く範囲くらいは・・」

設置して、また空へと飛び立つ。

次についたのはデパートの屋上。

「守ってやりたいと思える。・・奇跡が起こるかわからない・・。生きていくにはつらすぎる世界だろうが・・。」

ここで美紀を助けることができた。

自身がケガしてても助けを求めて出た圭。

こもって精神がおかしくなるかもしれない状況でも、出て行った圭の事を気にかけた美紀。

お互いの友情をしっかりと見せつけられた。

こんな世界でも、まだ友情・・いや、友愛と言おうか。

その思いやりは生きている。

「だからこそ・・。」

そして、俺とみんなが出合い、集まった・・いろいろなことのあった校舎。

巡ヶ丘学園の屋上につく。そこには水をやらなくても青々と茂った野菜と、人が居なくなった校舎の静けさがあった。

近くの手すりには鳥が止まり、こちらを見ていた。

「この世界に俺はありえなかった終わりを・・ハッピーエンドを見たいんだ。」

俺が住んでいた部屋にあったラピスの研究の機械や装置をもって部屋を片付ける。

屋上に戻って装置を設置する。

「これこそが・・未来を変える、その切っ先にならんことを・・。」

思ったところに設置はできた。しかしこれではまだ少ない。

もっと何か所にも置いて、レイライン上のエネルギーを変換する装置を増やさないと。

しかし・・こうも俺の関係してきたところにレイラインが・・龍脈があるというのも、何かしらの因果を感じるものがあるな。

まぁ、それはいいかと思い俺は屋上からまた空へと飛び立つ。

 

レイライン上、龍脈の走るところの位置にある建物の屋上にいくつもの装置を設置しつつ俺は地図のランダルコーポレーションに近づいていく。

夜中も飛び続け、装置を設置する。そして、朝陽が出てきたころに飛んでいた途中で神社を見つけた。普通なら気にかけないのだが何か予感めいたものを感じたので寄ることにした。

そこにも要石があったのだが、おかしい事にそこには龍脈は走っていない。その要石は何の意味もないものだった。

しかし、そこにある立札を見ると俺は興味を寄せる。

『過去、この地に一度死にながらも、翌日には元気に泳ぐ鯉の姿がこの池にはあった。それを見世物として当時の住職は人を集めた。しかし、いくら食べ物をやろうともその鯉はエサをねだる。当時の住職もその食欲にはおかしいと考えエサを与えることを禁じた。するとその鯉は他の鯉と共食いをはじめ、ついには池から鯉が居なくなってしまった。住職とその近くにいた住民はこの地の池を呪われているとしてお祓いをして、池の水を絶つために要石を置き、呪われた水を封じる栓とした。現在、科学的に進歩した技術で地下水をいくら検査しても、多少の雑菌は在ってもそこまでの危険性は無い。科学的に証明できないがこの地の歴史としてこの要石を残すことを決定した。 平成〇〇年 ◆◆市環境課』

・・いくら食っても腹を空かせる・・一度死にながらも動く・・。

明らかにその現象は今の災害と酷似していた。

「・・多少の雑菌・・これがカギかもしれん。」

そう思うと俺は試験管を取り出して近くの水場を探す。そして神社の裏手に封じられた井戸を見つけた。そこの封を壊して水と風の術式で地下から水を引き上げる。

そして、その水を試験管に入れて蓋を閉めて密閉。さらに井戸も再度、土の錬金術式でしっかりと蓋をする。

俺の予想が正しければこの地でランダルコーポレーションなどと言う大企業が研究施設を作った理由、学校の施設や関連する人物の建物に避難シェルターなどが用意してあったこと、そして今回ここまで爆発的に広がった理由。

今回の災害のすべてがこのランダルコーポレーションの研究施設を中心に起きた可能性が高い。

俺はいくつかの建物にまた装置を置きつつ、その地に近づいて行った。

 

二日目の深夜にランダルコーポレーションの敷地内にたどり着いた。

まだキャンプカーが見えないことから来ていないようだと思い、せめて近くの安全は確保しようと周りを確認する。

すると、近くにあった神社・・いや、小さな社『やしろ』と言うか・・祠と言うか・・。

とりあえず、それの近くに手水場がある。地下水ではないかと思ったが上水道の水らしくカルキの匂いがする。既に薄まってきているが・・この近くに浄水場がありポンプが動いているところがあるらしい。勢いは少なくちょろちょろとなっているが・・それでも動いていることはおかしい気がする。

俺はこの近くに独立した水の流れがあると考えて、その設備がある先をたどる。

水の術式でその水が流れてくる元をたどっていくと・・、俺が来た方向・・。

辿って歩き、見上げた先にある建物・・そこが水の出どころ。

 

つまり、その水の出どころは、ランダルコーポレーション研究施設だった。

 




ではまた次回。



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第三十時間目

どうも、私です。
最近夢見が悪く、昨晩は昔埋めたタイムカプセルが見つからなくて、あちこちを掘りまくる夢を見ました。さらに、途中からゾンビが出てきて手に持ったシャベルで攻撃したりもしてました。
そして、朝に目が覚めたら体中の筋肉が痛い。
相当に筋肉に力を入れて寝ていたようです。
普段使わない内ももの筋肉も痛い。
明日には筋肉痛にならないか心配です。

では授業開始です。



再びランダルコーポレーションの施設に着いて、そのまま施設内の侵入経路を探すために近くにいた感染者を掃討した。

正確には内部から出てきたやつらだから元研究者や職員だろう。

白衣やスーツ姿の感染者を見て、こいつらの誰かがどういった手でかは知らないが・・感染の被害・・このバイオハザード『生物災害』と言えるものをもたらした。

つまりはここから始まったものだろうと予想を立てている。施設内を見て回るが見える範囲はあらかた見た。逃げまどったり、いろいろと試みたんだろうが、結局は全員が死んだのか、見る限りでは生存者はいない。だが、上の階に上がる階段がシャッターでふさがれていた。防火扉などではなく、明らかにソレ用に用意したものと思われる。

巡ヶ丘の校舎の地下につながるシャッターと同じものだ。俺は外に出て施設の周りを見て回る。最悪俺が二階や三階に風の術式でもって運ばなければいけないのだから。

そう思うが、さっきの静けさ、俺が暴れても音によって誰かが声を上げなかったところを見るとシャッターの向こうには誰もいないと思える。

ならばどこからか脱出した可能性が高い。

裏手の窓を見ていると・・、

「・・ふん、ビンゴだ。」

やはり何かあった時用の脱出に使う梯子があり、そこの横の窓が開いている。

俺はそこの窓から中に侵入。近くに感染者がいないとは思うが危険がないかを確認する。階段のところはシャッターとさらに防火扉があり、完全に封鎖されていた。

内部に人の気配も歩く音もない。完全に無人のようだ。

入ったところは廊下ではなく部屋だったようで電気が通っているのかボタン式の電気が緑に光っていた。それを押して電源を入れると、少し薄暗かった部屋に電気が付いた。

そこには脱いだ白衣、社員証、そして・・揃えられた革靴・・。

後ろを見ると壁にはおびただしい計算式と、仮定する場合の結果の予想、そして・・計算式の先に書いてあった言葉。

『Q・E・D=NO FUTURE!!』

そう書いてあった。

俺は腕を組んでそこにあったデスクの椅子に座る。

「何が未来は無い・・だ。それならこんなことをしでかすんじゃないって事だ。」

俺はその文字を見てバカバカしいと思いつつ計算式を見る。

基本的に間違ってはいないが・・その数値も、式も、結果も・・仮定した物での導き出したものだ。つまりは仮定が間違っていた場合はこの計算式自体が間違っているともいえる。

つまりは・・青襲と一緒に考えるのが一番正解を導けそうだという事だ。

この壁の計算式も参考にはするが、鵜呑みにして計算する必要もない。

そうこうしていると梯子の下の方から音がした。

窓から見下ろせば、そこにはキャンピングカーが止まっていた。

「・・問題なくつけたようで何よりだ。」

そう言って俺は上からロープを投げおろす。そしてそのロープの先にはデスクの上にあった『カラビナ』をしっかりと結び付けて、火の錬金術とナイロンで焼き付け固定したものが付いている。車から出てきた奴は俺がいることにほっとしたような顔をしていた。

そして梯子のところにあるロープまで来るとそれを持ち上げた。

「・・一夏さん、このロープは何?」

「梯子を上る際に一応の固定だ。一人ずつ上がってこい。上からロープを引っ張ることで補助するから楽に登れるはずだ。」

そう言うと美紀がそのロープをもって腰に巻いてカラビナをもう一度ロープにかける。すると俺がゆっくり引っ張ればカラビナは腰で固定されて上がる際に腰を上から支えてくれるようになる。さらに前から引っ張ってもらえるので後ろに落ちる怖さも軽減される。

多少締まって痛いかもしれんが、それは女子特有の身の軽さでそこまで負担じゃないだろうし我慢だ。

それを順で行い最後に青襲が上がってきて壁の式を見る。

「全員、問題なかったか?」

デスクの椅子に座って肘をついて全員の顔色を見る。問題がないようだが・・一応は聞いておく。

「途中の道がかなりふさがれているところが多かったのが辛かったですね。」

「結局大通りを回って大回りで来なければいけなかったの。」

「あと、途中で遠くにオレンジ色の車を見た。走っていたし遠くだからよくわからんが、あの大学でのマントをつけていた武闘派の女が乗っていった車に見えた。だけど、運転席のガラスは割れてたし、人の気配もなかった。」

若狭、狗三、胡桃の順に声が返ってくる。美紀と圭は近くに何かないか確認に言っている。部屋などの下見だそうだ。就寝時に仕える部屋は見つけたことを言ったのでそこを見に行っているかもしれない。カプセルホテルみたいなところだが十分に睡眠はとれるだろう。

「・・そうか。もしかしたらアイツも発症したのかもしれんな。」

そう言って俺はいつもうるさいはずの人物を見る。

「丈槍、どうした?いつもやかましいお前が静かだとは珍しいな。」

「えぇ?いっくんそんな風に思っていたの!?ひどい!」

オーバーリアクション気味だが、それでもこちらに答えれるなら問題は無いようだ。

「いやぁ・・壁にらくがきっていけないよね。って思って。」

「・・はぁ。その考え方は実にお前らしくて、聞いた俺が馬鹿らしいな。」

そう言って俺は頭をかいて、苦笑いをした。

「やっぱりひどいよ!?」

「いや、しょうがないだろ。・・、それで青襲?その式はどうだ?お前が考える、『答え』に至る物か?」

壁の式を見ている青襲のところに行くと煙草を取り出してそれを眺めていた。近くのデスクから椅子を引っ張って座る。口にくわえて火をつけて一息。白い煙をゆっくりと吐き出して、俺の方を見てまた壁の方へ向きなおす。

「そうだな・・。正直言うと大体考えていることは同じようだ。この式も大体は合っているし、計算や予測もそう間違ってはいないな・・・一つを除いてだがな。」

「・・俺と同じ意見か。こいつらになくて俺たちにある物・・それは・・」

そう言いながら俺はちらりと見る。その方向にいるのは、

「・・佐倉恵・・。その体の中で作られたであろう『抗体』・・。」

同じ方を見て青襲がつぶやいた。

他のメンバーは俺達の目線に気が付かないで全員で探検しようとか寝る事とかを言っている。

この建物内の事は一応調べた。奴らや危険なところがないか調べた結果、問題は無かったが気になることがいくつかあった。俺はそれをこれから調べる気だ。

「ここにはBSL『バイオセーフティーレベル』がレベル3の施設があるようだ。前を通ったらセンサー付きの扉とバイオハザードマークがあった。」

「・・ちょっと待て。レベル3だと?」

「・・正直言うが、レベル4は絶対に欲しい研究だと思う。しかし、それを3止まりにした。そこにこの感染災害の広がる原因か、何かしらの理由があると思う。」

「・・調べてみよう。しかしセンサーと言うことは認証システムか・・。どうするべきだ?」

「ここに研究者の残したネームプレートと認証ICが付いたパスが用意されている。」

「それを、どこで手に入れた?」

「ここに入った時に靴や白衣と共にそろえて合った。おそらくこの担当者は自分たちが犯したこの事態に耐えられなかったか、発症を恐れて自ら命を絶ったか・・。どちらにしろ、これが置いてあったのはそいつのおかげだ。・・もしもこいつが原因じゃなければ礼を言うんだがな。おそらくは、こいつも高確率で関係者だ。このレベルだと責任者以外は部屋に入れないはずだ。相当のポストにいただろう人物と言うことがわかる。」

BSLはレベル3になると担当者しか部屋に入れない。外部との確実な遮断をする。内部が汚染されても外部に持ち出さないことが重要なはずだ。それなのにこの災害は起きた。それなら、ここのセーフティレベルは問題があったという事だ。

「・・部屋は廊下を進んで奥のあたりにある。入るのはもう少し待て。位置や認証気を確認ぐらいはしてもいいぞ。」

「わかった。ドアに窓はあったか?」

「・・ん?どうだったか・・あぁ、そうだ。前を通った時にはちらりと見ただけだが、多分あったと思う。」

「なら少し内部を確認できるか見てくる。」

「俺はこの内部の見取り図や、施設のレベルなどを確認しておく。」

そう言って俺たちはお互いにやることを決めた。青襲は立ち上がって部屋を出て行った。

他のメンバーはすでに仮眠室へと行ったか、探検とやらをしているのか・・この場から出て行っていた。

「・・まったく、面倒なこったな。それじゃ俺はこの施設のシステムでも確認するか。」

棚の資料を見てソレを手に取り、内容を記憶していった。

 

終わるころには夜が明けていた。

 




では、また次回。


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第三十一時間目

どうも、私です。
最近目がかゆいです。
そのせいなのか余計目が疲れます。
正直花粉症は大っ嫌いです。
これを書いている途中でも目をこする。
あぁ、花粉症って面倒だ。

それでは授業開始です。


「おい、起きてるか?」

そう言って青襲が入ってくる。まだ日も上がってない早朝だ。ようやく空が白ずんできたような時間にこいつはよく起きているもんだ。

そして俺はそもそも寝ていない。一晩中書類を確認してそれからパソコンで施設内の情報を見ていた。

そして分かった情報で、やはりここはP3レベル・・いや、BSL『バイオセーフティーレベル』3だった。

そして、おそらくだが何かしらのミス・・いやこの場合は手抜きと言おうか。

手洗いや除菌作業を怠ったために起きたのだろうと推測される。

普通ならこのような危険な実験は相当に厳しく管理するべきだ。

そもそもで、この実験自体がレベル4相当の危険な実験だったことは明らかだ。

それを隠してレベル3程度で行ったらこの状況になった。

それは当たり前と言っていいだろう。

そして、ランダル風に言えばΩ『オメガ』の細菌。これがアルファやベータと同じく研究していた中で一番やばいものだ。それを研究していてこの部屋を出る際に面倒くさがって手を抜いた。または内部できちんと衣服を着用しなかった為に感染した可能性もある。

つまり、どこかの馬鹿が、手を抜いて殺菌作業または感染防止・拡大を怠ったためにこの感染は広まった。

「・・と言う事だ。」

「それは・・救いようがない愚か者だ。」

説明すると、青襲はそう言って煙草を口にくわえた。俺は指先に火を灯して煙草に火をつけてやる。

「おぉ・・すまんな。」

そして俺たちはそのまましばらく黙った。

「・・・どう言っていいのかわからんな・・。」

「それは・・どういう意味だ?」

「こんな事態になったのはそんな馬鹿がいたからという事だろう?それについて言葉も出ん。」

「そいつも馬鹿だが、そもそもこんな実験している方が愚かだ。生物兵器でも作ろうと思っていたとしか考えられない。」

「まったくもってその通りだな。」

俺は近くの棚にあったインスタントコーヒーをカップに入れて、手から水と火の術式を組み合わせた錬金術でお湯を注ぐ。

「・・器用なものだ。」

それを見た青襲は少しあきれたような顔をしていた。まぁ、人類が夢に見た錬金術がこんな使い方をされているんじゃしょうがないだろう。

「俺は楽にするためならこれくらいする。どうせあまりこの世界にも居られないようだしな。」

そう言ってコーヒーをすすりながら、もう一つのカップを青襲に渡した。

「それはどういう?」

「もし、・・抗体で薬が作れた場合、それを散布して終わる。そうなれば俺はこの世界でのやるべき事は無くなる。お役御免だ。」

外を見ると朝日が上がってきた。少しまぶしくて目を細める。

「そう・・か。居なくなるのか・・。」

「おそらくな。俺の上司である神の気分次第だ。」

「なるほどな・・。そう言えば面白いものを見つけたぞ?」

そう言ってノートパソコンを出す青襲。

「面白いもの?」

聞き返すとパソコンを立ち上げてシステムを起動して端末をつなぐ。それはこの部屋にあった物だ。

「これで良し。・・『ボーモン』起動。」

『はい。起動 しました。』

「それは?」

「この施設の管理しているシステム。昨日座った、其処のパソコンの画面に起動コードとパスワードがあった。このパソコンは個人所有じゃなくて会社の備品だ。システムは入っていたからそれを使って開いた。」

「・・人工頭脳・・AIか?」

「どうなんだろうな?とりあえず、ここにあった端末で起動したから一緒にもっておけ。」

そう言って一つの端末を俺に投げて渡した。

『やあ。はじめまして。僕はボーモン。』

「ふむ、俺は一夏だ。」

『わかった。イチカ だね。』

「かなり性能がいいな。」

「昨日実験室をのぞきに行った時に、認証端末が起動してこいつが居たんだ。そのあと一回ここに来たんだが、お前は見えないからどこかに行ったのかと思ったんだ。」

「俺はこの部屋にいたが・・?ふむ・・あぁ、もしかしたら死角で見えない位置にいたのかもしれないな。あのあたりを見ていた時かもしれん。」

指をさすのは上司などが座る席のあたりだ。俺は夜目が利くから電気もつけないでいたしな。机の中の書類を探していた時なら屈んでいて見えないだろう。

「そうか。ならいいんだ。少し心配だったからな。」

「ふっ・・・。俺の心配するのか。意外だな。」

「なっ!?くっ・・、悪いか!?」

「いや、クールに見えてなかなか人思いだなと。優しいんだな。圭や狗三を見ていてくれていたと見える。」

「そ、そんなことは・・」

「ふふっ。まぁ、いいか。」

少し頬が赤いように見えるが、あまりいじめるのも悪いしな。

さて、この結果をどうしたものか・・。煙草の一本を吸い終わった青襲がまた一本取り出して口にくわえた。

「あいつらにこのこと教えるのか?」

そう言いながら煙草に火をつけてやる。

「・・ふぅー・・。どうするべきか、・・言うしかないだろうな。」

「だよな・・・・・。落ち込むと思うか?」

「当り前だろう。または怒りで頭が白くなるか・・。正直、言われたときは言葉が出なかったよ。」

そう言って髪をかき上げる。

「俺もこの結果を導き出して、頭がおかしくなりそうなくらいに叫びそうになった。」

そして、俺は額に手を当てて、

「笑えることに、そいつはおそらくこの認証パスを持っていた人間で・・」

そう言ってデスクを指さす。

「そこのパスワードを画面に張り付けていたやつだ。管理署の中にちょくちょく問題が挙げられていた。・・もう、呆れすぎて言葉も見つからん。」

そう言ってカップのコーヒーを飲み干す。

「本当に・・愚かしいな。」

二人して言葉をなくしたようにぼーっと天井を見上げたままデスクに座っていた。

 

そして、会議室を片付けてそこに全員を呼んで、今回分かったことを話すことにした。

その内容は今回の感染媒体の正体、Ωが細菌であること。細菌とウィルスの違い。この施設の事。そして、今回の感染が拡大した原因、この施設の研究者が手洗いをさぼったことで今回の災害が起きたという事。

「・・と言う事だ。」

「「「・・!っ・・」」」

全員が言葉を失っていたようだ。

「どうしてですかね・・怒りよりも呆れしか出てきません。」

「あまりにもバカバカしいからだろう。愚かと言ってもいい。」

美紀が頭を押さえつつ震える声でそう言ったから俺は答えた。

「それじゃぁ・・もうどうしようもないのかよ・・。」

胡桃がそうつぶやいた。

「そうでも無い・・。これを見てくれ。」

俺ではなく青襲がノートパソコンで映し出した。

それはこのあたりで起きた怪事件の新聞記事。

「かなり前から流出などが起きていたか・・もともとが土着の細菌らしい。そして、それで被害が起きてはいるが・・」

「・・その時は感染は拡大しなかった?」

「そうだ。つまり、感染が拡大しなかった何かがあるという事だ。しかも起きたのはこの地域内だけ。」

「それじゃ?」

「そうだ。この土地に答えがある。」

そう言うと全員が明るい表情になった。

「それに狗三と佐倉先生がいるからな。」

そう言うと二人は目を開いて不思議そうにする。

「はい?私ですか?」

「それにわたし?」

「あぁ、二人は感染したことがある。狗三は試作の薬ではあったが、現在症状は小康状態だ。佐倉先生に至っては完全に克服している。俺の持っていた薬があったからな。つまり・・二人の血から抗体を取り出しそれを培養できれば、完全な抗生物資となる。希望となるわけだ。」

そう言うと全員がさらに顔を明るくして喜んだ。

「ただし!・・結構な時間がかかる。それが間に合うかはわからない。・・最悪の場合には手を残しているが・・正直に言うとそれは使いたくない。俺としても正念場に来たと思っている。これからは時間との勝負だ。もしかしたら手伝ってもらうことがあるかもしれないから・・その時は頼む。」

俺は頭を下げた。

「大丈夫だよ、いっくん!」

「わたし等がちゃんと手伝う。」

「ここまで来たんだから一蓮托生です。」

「生きていられるのも一夏さんのおかげですから。」

「あの時救い出して貰って恩が返せていないですからね。」

「美紀ともう一度会わせてもらった事感謝してるし。」

「あそこで朽ち果てる運命だった私を助けてくれたこと、感謝してもしきれないんだからね。私をここまで連れてきたんだし、頑張るわ。」

「・・お前がそう言わなくても私はお前と同じことをする。つまりはそう言う事だ。」

そう言ってくれたみんなに頭をもう一度下げる。

「・・ありがとう。」

 




では、また次回。


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第三十二時間目

どうも、私です。
早速ですが本編へどうぞ。

では授業開始です。


俺はまずはバイオ実験室内の除菌作業する事最を優先にした。

BSL3相当の部屋なのでそこの中でまず体の除菌をする。

さらに衣服を、『オート・グレーブ』で滅菌したものを取り出して専用の衣類に変える。

一回部屋の内部に錬金術の生命のエネルギー化の術式を使って広げてみる。

俺以外の生命は一応居なくなったはずだ。これで滅菌効果が得られたろうが、それでも室内全部ではないのでアルコールを散布しておく。これはちゃんと密封された滅菌用アルコールがあったのだ。それと水道水をろ過、さらに特殊なフィルターを通して純粋に近い状態にする装置を通して出てきた水を混ぜた除菌用アルコール水だ。そのままではなくある程度薄める方が使いやすいのだ。

97%アルコールを専用の散布機でまいて室内をすべて滅菌する。そのまま数回まくことで一日おいておくとかなりの滅菌作用はあるはずだ。そもそもからウィルスと違い、滅菌や殺菌すれば何とかなる物だろうと思うのだが、細菌というのは面倒なものが多いのだ。

そして抗生物質の話をした会議室の中で少し話をすることにした。

「さて、今までよりも躍進したがここで少し予備知識だ。大腸菌という物も細菌だが、体内に普段から存在するものだ。さらに、ボツリヌス菌も有名なものだな。さらに周りにいる物で破傷風菌、これもそこら辺の地面に存在するかもしれない。という風に俺たちの周りには本当に多くの細菌がいる。これらを滅菌したりする際に時々間違えられるものがあるのだ。缶詰や瓶詰、そう言う密閉物にしたら大丈夫・・と言うのは間違いだ。あれは高温で過熱する際に滅菌処理を施す。しかし、それができていない場合、つまり缶いっぱいに液体が入っていて、空気が入っていない状況でも細菌は繁殖する。酸素や空気がない際に繁殖する細菌、コレを『嫌気性細菌』という。逆に酸素が無いと繁殖しない菌を『好気性細菌』という。前者はさらに詳しく言うと【酸素があっては増殖できない】『偏性嫌気性細菌』と【酸素がない状態とある状態で性質が変わる】『通性嫌気性細菌』が存在する。とりあえず、ここまでは問題は無いな?一応は生物の範囲だが、よく聞いておけば意味は分かるはずだ。」

「いっくん、よくわかんない。」

正直にそう手を上げて発言した丈槍に、俺はレイアの力で生み出したコインを頭にぶつける。当然力はかなり優しくだが、それでも堅いものが当たれば痛い。

「ひぎゃ!?いったーい!?」

「はぁ・・。こいつは刹那的に生きているのか?・・まあいい。とりあえずだ、水などならそこまで汚染されては無いはずだが、それでも少し気を使ってほしい。」

そう言うと俺はさらに社内の見取り図をモニターに映し出す。

「そして、この施設内にある・・・、三階の部屋には社内の専用の衣類を洗濯するための洗濯機がある。さらに、併設してシャワールームも存在する。おそらく仮眠室などで眠るにしても汚れた状態では問題があるからだろう。・・喜べ、しっかりと動いていることは確認済みだ。お前らは最近車の水を節約するためにあまりゆっくりできてなかったからな。好きなだけシャワーを浴びてこい。」

そう言うと全員が表情を明るくした。

「いっくんは入らないの?」

「俺はバイオルームの中にあった簡易シャワーで流した。ついでにこの服も錬金術で選択して滅菌したし、問題は無いだろう。」

元々代謝はこの体になっても少ないようで、あまりに汗をかかないし水などや食事を多くとる必要も少ない。有害な菌類が他に蔓延していた場合に、外に多く持ち出さないため行ったのがほとんどだ。

Ω以外にもαとβがあったはずだ。αは細菌、βはウィルスだったはずだ。

きれいにしたはずだが、もしも万が一があったら面倒だ。

「それとこのタイミングで言うと、一緒に入るように言われているようだからやめるように。」

そう言うと、

「あ、そうだね!ごみん。」

「・・本当に反省してるのか怪しいところだが、まぁ・・いいか。とりあえず、さっさと入ってこい。」

そう言うと全員が嬉しそうに部屋から出ていく。

青襲も何か思うことがあるようにそそくさと出て行った。

 

俺はモニターに向けて向き直して座る。

「ボーモン、俺が今から『本当に効く薬』や抗体を作り出したとして、・・此処にいる全員が確実に生き残れる可能性はいくらぐらいだ?」

『ここにいる全員とは、この施設内の人間の事だね?』

「そうだ。俺も含めてだ。」

『計算中・・結果が出たよ。約、0.002%の確率で生存可能だね。』

「・・そうか。そんなもんか・・。」

最悪なことが分かった。それは狗三に投与した薬は、なんと試験用の抗体ではなく、ただの抗生物質と栄養剤だ。つまり・・風邪と同じ治療しかしていない。

それなのに狗三は持ち直した。発症は抑えられて今は完全とは言えないが小康状態で意識ははっきりしている。

つまり、ただの気休めにしかならない薬で回復したという事実が存在する。これには何らかの意味があるのか、はたまたこの土地特有の菌であることに関係している事なのかもしれないが・・推測の域を出ない。

そして、やはり生き残れる可能性はほぼない。狗三や佐倉先生の体内に抗体があるという話もしたが、それを確実な薬にするとなるとまた別の問題だ。それを行っている間には確実に発症するだろう可能性が高い。

また、近いうちに狗三が完全に発症してしまう可能性が非常に高い。今現在は小康状態だが、それでもやはり生き残れる可能性は極めてゼロに近いだろう。

「・・やはり、どうにかするしか・・ないんだな・・。」

『イチカは・・悲しいのかい?』

「どちらかというと苦しい・・だな。どうしても確実にみんなを助ける方法が無い。誰かが犠牲になるか、辛い思いをすることになる。そう思うと胸が苦しい。」

『病気では、無いんだね?』

「人間の感情とはとても難しいものだ。機械が処理するともっと難解になる。だからこそ、人と機械は違う。・・俺はきっとここに来た皆と居ることが楽しかったんだろうな。」

『・・人生とは先の見えない道である。ボクを設定した人物が初めて入力した言葉だよ。きっと先が見えなくてイチカも怖いんじゃないかな?』

「・・それでも俺は足の置き場を考えて、選んだ道を歩み続ける。それこそが、俺のするべきことなのだから。」

俺はボーモンの端末を持ち上げてパソコンをシャットダウンする。

「・・覚えておけボーモン。【奇跡も魔法もない事は、科学では証明できない。】悪魔の証明と一緒で居るか居ないかは証明できないんだ。だから、俺はその奇跡を俺自身の力で起こす。今回はここでみんなを生き残らせることが俺がすべき命題だ。」

『なら、それが叶うといいね。』

部屋の電気を落として廊下を歩いて初めのデスクの部屋に戻った。

「ボーモン、スリープモードだ。」

『了解、スリープモードに移行するよ。』

デスクに端末とパソコンを置いてマグカップを持ちそこにコーヒーを入れる。

良いコーヒーならまだしも、インスタントを砂糖もミルクもなしで飲むのはあまりしないことだが、こういう時はブラックで飲むと頭がさえる気がして落ち着くものだ。

「・・まったく面倒なものだ。先を察して先手を打つのは定石だと思っていたが、俺とこいつらがみんな幸せになることはできない・・か。なら、俺がするべきことは決まっているよな。あいつらと俺の運命・・どちらかを取ることになるだろう。」

足をデスクの上に置いて背もたれを思いっきり倒すように力をかける。

「昔のアニメを見た奴が言っていたよな・・、『命なんで安いものだ、特に俺のはな。』・・て。今ならその意味がそれとは違った意味でだが、分かる気がするぜ。」

椅子から立ち上がると夕日が見えた。

「俺の命の輝きはこんな風に明るく、温かいものならいいのにな。」

今にも山の稜線に沈まんとするその夕日を見て俺はそう思う。

 

俺がすべきことはおそらくみんなが幸せであるための事ではないと。

 




終わりまでもう少しです。
では、また次回。


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第三十三時間目

どうも、わたしです。
今回は二本立てで投稿します。
と言うか最終話前と最終話です。
と言う事で最終話前行ってみましょう!

授業開始です!


深夜、俺がデスクの部屋で錬金術を組み込んだ装置を作っているとバタバタと足音が聞こえた。

「いっくん!?椎子さん!?ちょっと来て!!」

それは丈槍だ。

いつもならぐ~すか寝ている時間だというのに、いったい何があったというのか。

相当に焦っているようだったので、俺も持っていたものを置いて立ち上がる。

「なんだ?」

「どうかしたのか?」

「端末からなんか音がしてるの!」

「「!?」」

二人してお互いを見て頷く。

「行こう。」

「見せてみろ。」

そして寝室の部屋に行くと全員が端末を真ん中にして座っている。

「連れてきたよ!」

丈槍がそう言うと全員こちらを向いた。その顔が緊張した顔になっているのがわかる。

「見せてみろ。」

そう言うとこっちに端末を見せる。

『ザ・・ザザ・・』

ノイズのようなものが音がしている。

「ノイズのようなものがずっとなってて・・」

「ふむ・・、これはノイズじゃないぞ。モールスだ。」

「あぁ、確かに‥こ、ち、ら、ら、ん、だ、る、ほ、ご、き、こ、う・・ランダル保護機構だと?」

俺が眉間にしわを寄せる。

「あぁ、そのようだな。ボーモン、音声通信にできるか?」

『ハンドシェイク中・・どうぞ。』

【ボーモン君?起動したの?いったい誰が・・】

「もしもし!!」

【誰かそこにいるの!?】

「います!生きています!他にも7人ほど!」

【!!緊急報告!生存者確認!繰り返す、生存者確認!!緊急対応準備!】

通信の向こうがいきなり騒がしくなる。

正直、俺はこの通信がものすごく嫌な予感しかしない。

【そちらの状態は安定してる?】

「今のところ、安定しています。」

【わかった!救助隊を送るわ。そちらの現在地を教えて。】

そう言われたときに青襲が端末を持つ。

「こちらの居場所はランダル本社ビルだ。」

【!!・・わかった。そちらに行くには少し時間がかかるかもしれないわ。】

「どのくらいかかる?」

【おそらく数日中には。】

「水と食料はあるからそこまで急ぐ事は無いが、安全にして来てくれ。数日中には助かるんだな?」

【えぇ、もちろん。】

「ならいい。そちらの居場所がわかれば、それなりに移動して分かりやすいところに移動することもできるが?」

【いいえ、それには及ばないわ。こちらの場所は禁止情報なの。感染したことをどうにかしようと自棄になった危険人物が情報を知ると押し寄せる可能性もあるから。】

「それなら仕方がないな。」

【あなたたちと話せてよかったわ。】

そう言われてこのままでは通信が終わると思い俺も声をかける。

「俺が知っているなかでガスマスクをしていたヘリのパイロットが発症していたぞ?あれがお前らの関係者だった場合、もしかしたら感染している可能性が内部にいるかもしれない。気を付けた方がいい。」

【なっ!?それは本当の事なの!?】

「事実だ。燃料がほぼなくなり、墜落したが何とか遺体は形があった。落ち方がよかったから内部を確認した。このあたりの地図と注射器があったが、使用した形跡がなかった。しかし発症していたことは確かだ。」

飛び乗ったとは言えないのでごまかす。それでも全く表面上の傷は無かった。

おそらくガスマスクなどの前に感染したか、内部でも蔓延しているかのどちらか。

後者なら助けが来たとしても生き残れる保証はない。

【・・重要な情報ありがとう。】

「別に、あれがもしお前らの関係者なら危険だと思ったんだ。お前らも、《保護されるだろう》俺達もな。」

【・・そうね。じゃぁ、また。】

『通信が終了したよ。』

その通信が終わった後、俺は元の部屋に戻る。

後ろで喜んでいる皆の声を聴いて、やるせない気分になる。

そのままさっきの部屋に戻ってデスクに座る。

機械と違うが、俺も音声の状況からある程度まで人心把握を行うことができる。

「明らかに、動揺が大きかった。それにランダル本社ビルと行った時に息をのんだ。」

口にして冷静に考えながら状況を把握していく。

「なら、ここは危険視されている。故に何らかの隊を打をしてくる可能性はある。」

さらに数日かかると言っていた。

「故にその数日以内で何らかの対応をしてくる可能性が高い。」

さらに相手は自分たちの位置は教えなかった。

「助けを送る気も、情報を開示する気もない・・と言う事なんだろうな。」

そして、最終的にはどう判断するかはわからんが・・。

「結局は最悪の事態が想定されるわけだ。」

もしも、助けが来るというのならもっと情報を聞き、詳しいやり取りがある。

あれは情報を出さないで規制している対応だ。

「やはりお前もそう思ったか。」

そう言って入ってきたのは青襲。同じようにデスクに座り、端末をパソコンにつないだ。

「ボーモン、さっきの会話の録音を嘘かどうかの解析をしろ。」

【わかった。解析を 始めるね。】

カリカリとパソコンから音がする。青襲はコーヒーを入れて俺のところにも一つ置いてくれる。

「・・これで・・終わりか。」

「そうだな・・。あまりに時間が足らなかった。」

時間さえあればみんな助かったかと聞かれるとその可能性は低い。

狗三が特に危険だが、それ以外も発症する可能性はあった。

時間は初めから足りていなかった。

タイムリミットが唯短くなっただけだ。

「・・・ふぅ。どうするつもりだ?」

「一度解析結果を聞いてから、決めることにしよう。」

「わかった。では私はもう少し解析を待つ。」

そう言ってパソコン前に戻る。俺はその背中を見て覚悟を決めた。

「俺は俺にしかできないことをしてくる。一度外に出るが、しばらくしたら帰ってくる。」

それはあの要石、地上の神の門である【鼓星の神門】を使用すること。

その力の集計地点を【調神社】〈つきじんじゃ〉の上空から転送してランダルコーポレーションの建物に集約されるようにする。

そもそもランダルコーポレーションのビルもレイライン上だ。二つの力を集約するには条件は合っている。

大きな建物だが、その大きさ故にアンテナ代わりに使える。

力は要石の代わりにおいて錬成石、いや、これも一種のラピスフィロソフィカスか。ハート形のそれを二つに開いて中に転送の術式を掻き、もう一方の半分に割った先に転送されるようにした。

残るかけらをもってランダルコーポレーションに戻り、屋上に錬成陣、さらにラピスのかけらを組み込んだ巨大な装置を作り上げる。それは天空の星空を映したような時計。

それを組み込んで今までにないほどの大きな錬成陣を作り上げた。チフォージュシャトーはそれ自体が装置なのではあるが、元の完成型を俺は神に教えられていたからできた。

だが、この錬成陣は俺のオリジナル。

完全に動くかはわからない。失敗するかもしれない。

だとしても、何もしないよりもいいと思った。

どの道俺は消える存在。

ここにいる命は仮初だから。

だから、・・今までの記憶を燃やしても・・こいつらを助けたい。

そう思った。

 

レイラインと【鼓星の神門】が繋がり、ビルの中の錬成陣を通って巨大な錬成陣は完成する。

しかし、それが完成するにはまだ足りない。時間も、代償も。

 

俺が求めていない終わりが刻一刻と近づいていた。

 

夜を超えて作業をした後、ビル内に錬金術の錬成陣を特殊な素材で書いているところに、全員が顔をうつむけて歩くのが見えた。

青襲から聞いた。データの嘘鑑定。

結果は救助の可能性は非常に限りなく『0』であること。

数日以内に何らかの対処をしてくるであろうこと。

それがおそらくは殲滅兵器のようなものであるためどうしようもない事。

 

おそらく誰も助かることができないこと。

 

俺はそれを予想していた。だからこそこうして動いて、前を向いていた。

それは終わりの為じゃなく、始まりのための行動だ。

終わりの始まりではなく始まりの終わりだ。

 

俺はこの間違った物語を終わらせる。終止符を打つものだ。

 

すべての支度を済ませた。そして、珍しく夕食は豪華なメニューだった。

レトルトのハンバーグやカレー。冷凍のステーキも出していた。

「ダメになっちゃもったいないからね。」

若狭はそう表情に陰りを浮かべたまま呟いた。

まるで最後の晩餐のように、豪華な食事。俺は珍しくそれに手を伸ばした。

ステーキをナイフで切って口に運ぶ。

こっそりとレストランで見つけて持ってきていたワインを、開けるのではなく瓶の上部を切ってそのままラッパ飲みする。

「あ、あの・・一夏さん?」

「このように豪華なのだ。少しぐらいは目を外しても構わないだろう。」

そう言って皆にワインを飲ませた。

胡桃は甘え上戸、若狭は説教ばかり、美紀は眠りだして、圭はそれを見て笑っていた。

「いっくん、私たち・・助からないの?」

意外なことに丈槍は不安になり泣き上戸になりかけだった。

そっと肩を抱えて頭をなでる。

「大丈夫だ。俺がいるんだからな。」

「・・うん、そう・・だ・・ね・・。くぅ・・。」

子供をあやすようになでるとそのまま寝た。

佐倉先生と青襲、狗三はゆっくりと飲んでいた。さすが大人。

「もう、怖がることも、不安になることも、重さを感じることもないんですね。」

「大人であることは少し重たかったな。途中からの私でさえも重いと思ったものだ。比べてアイツは本当に強い。」

青襲は笑う。それを見て狗三は苦笑い。

「だから甘えてしまうんでしょうね。」

「くくっ、違いない。」

「私先生なのに駄目ですね・・。」

そう言ってゆっくりと飲んでいた。

 

そして、明朝みんなが眠っている中俺は屋上に来た。

【一夏 みんなを 起こさなくていいの?】

「俺一人でいいんだ。これは相当に苦しいからな。そんなこと俺がすればいいんだ。」

給水タンクの上で座ってボーモンと話す。

「それでは、最後の準備と行きますかね。」

そう言って見上げた先には黒い点が見える。錬金術の窓でそれを拡大する。

【一夏 反応兵器が放たれたよ。】

超高高度からの爆撃みたいだ。あの形状は核か。燃料気化爆弾程度にしてくれるとありがたいのだがな。

「さて、リトルボーイ級か、ファットマン級ならいいが・・、ツァーリ・ボンバ級なら・・きつそうだな。」

 

俺は気合を入れコートを広げて帽子をかぶった。

「さて、最後の大仕事だ。」

 

「派手にかますか!」

 

 




ファイナルに続きます。


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第三十四時間目 変換と変化と【元気です】

遠くからこちらへと向かって近づいてくる一つの点。

このあたりをすべて焼き尽くす【反応兵器】を見つめた。

「・・このようなことを一人でやらなければいけないとは酷だな・・・。だが・・いや、【だとしても】・・だったな。」

一人、屋上で呟き、首を振る。

「俺一人、たった一人【だとしても】、ここにいる人たちを救うための力を、持っているすべてを使う。」

銃のキャスターを展開し、そのままファウストローブを纏う。

曇天にでも輝く鎧は俺の心の輝きを示す。

「これこそ最後で俺が使える中でも、最高の錬金術式!【解析】【分解】【掌握】【再構成】を込めた最初で最後の世界の掌握よ!!」

銃と弾丸を両手に構えて、銃を開いて弾丸を装填する。

それこそがこの世界を変えるカギとなる。この思いこそが世界を変えるすべとなる。

 

「俺こそが世界を変える、世界で一人の錬金術師、錬金術師の王、すべての頂点に立つ【アルケミックマスター】の【イチカ・ダインスレイフ】である!!」

 

銃のキャスターに力を籠めると銃が変形しさらに出力が上がる。

「しかし、龍脈でもある【レイライン】が俺の通ってきた道にあったというのも、すべての布石だったとしか言いようがないな。」

巡ヶ丘学園の裏、聖イシドロス大学の脇の神社、ショッピングモール近くの石櫃、狗三の居たシェルター施設の裏手の小型の石台、圭の向かっていた駅近くのビル横の神社、そしてガソリンスタンドの会った通りの稲荷神宮。

すべての場所でレイラインのふさいでいた要石があるとは、なんとも言い難いものだ。

その要石をすべて壊した先がこのランダル・コーポレーション脇の縦長の石だというのもやはりすべては決まっていた道筋なのやもしれんな。

 

推奨BGM『死灯~エヴィヒカイト~』

 

「だとしても、俺はこれをやりきるために力を使う!!『解放の~♪』」

そう言って俺は力を開放すると、体から金色の粒子が放たれる。

歌によって力が増幅される。

それはすべてキャスター銃の銃口へと集まり、バレル内からも光があふれる。

「さぁ、幕だ!すべての愚かしい物語は終わらせるとしよう!そして新たな物語へと紡ぐための再構成で再生を!!」

空へと飛びあがり、銃を構えて殲滅兵器へと弾丸を放つ。

 

「今ここに!革命の炎を!!」

 

雄叫びをあげて放たれた弾丸は殲滅兵器へと直撃、その場で術式を幾重にも展開させて、爆発を包み込みその熱量さえもエネルギーとして術式の起動へと力に変わる。

弾丸に一番強固にしたのは力の吸収とエネルギー変換。それにより爆発はすべてのエネルギーへと変わり、術式の起動へと変わる。

 

だが、

「術式はもっても・・エネルギーが足りんとは思わなかったな・・。」

あれほどの爆発ですら、世界の分解と再構成へは足りない。

神出門『かみいずるもん』【鼓星の神門】と龍脈を操作して作った【レイライン】。エネルギー源は在ってもそれを変換する装置が少ないうえ、そもそもの規模が大きいのだ。当たり前だろう。エネルギー自体があっても増幅する設備が小さすぎるのだ。

ランダル・コーポレーションのビルを中心核に部屋をいろいろと改造しても、チフォージュ・シャトーの制御装置の機能からすれば四分の一にも満たない。元から小さなビルを使うには無理がある。予想の範囲には入っていたが、これほど最低値に近いとは・・。

しかし、それについては最悪の場合を考えて準備した。

故の【俺、自身】なのだから。俺自身をもとにしてバイパスを作り、さらにエネルギー自身も作り上げた増幅装置にする。しかし、負担が大きく賭けであることも確かだ。

『だとしても!』それが辞める理由にはならない!

「記憶の焼却を!!すべてを燃やして力と【換えろ】ぉ!!」

頭の中へ浮かぶのは、この世界で出会った人の事、大学での争い、みんなを救った事、みんなと巡り合った事、学園に来たこと。

それが次々と燃えて力と変わり、体中から金色の粒子があふれる。

それは空へと昇り、爆発で起きた術式へと注がれる。

それでもまだ足りない。故に俺は命の輝きさえも燃やす。

「この体も!命さえも!エネルギーとして、変換【かえ】尽くす!」

勢いよく更に金色の輝きがあふれる。

それは【四本の筋】となって・・。

「・・四本だと!?」

他の三本の光をたどると俺が使っている変換の術式陣の上に3人、【狗三夢子】と【青襲椎子】、【佐倉恵】が乗っていた。

「馬鹿者が!そこにいてはいずれ消えてしまうんだぞ!?早くそこから退け!」

俺は叫ぶ。

「無理だな。(・×・)」

「あぁ、無理・・だ。」

「いくら織斑さんのいう事でもそれは聞けませんね。」

そう言ってむしろ俺の肩や背中をつかむ。

「俺が消えても、元に戻るだけだが、お前たちは再構成する際にその力を使い果たしてしまっていたら、存在が消えてしまうんだぞ!?死ぬのが怖くないのか!?」

そう言うが三人は離れない。俺の顔を見て狗三が口を開く。

「私はもう死んでもおかしくない存在だった。・・いや、一夏が居なければ死んでいたんだよ。感染者になって・・無残にね。それを変えてくれたんだ。今更どういう事でもないさ。」

「狗三・・。」

次に袖を引っ張ったのは青襲。

「そもそも、私も一人で朽ちていただろう口だ。どうせあそこで死んでいたのなら、今でも変わらないさ。四人もいれば、どうにかなる。」

そう笑って、肩を叩く。最後に佐倉先生。

「私はあなたに救われ、生徒を救われ・・返せるものなど何もなかった。なら、せめて・・あなたが成すことの手伝いはさせてください。お礼をする機会をください。」

そう言って頭を下げる。

そう言われてどうにもできなくなった俺は、

「・・危険になれば陣の外へ投げ出す。そうなれば邪魔だけはするな。・・それまで力を借りる。・・・・不甲斐なくて、すまん。」

そう言って術式の構成を強める。分解の最終段階まで起動さえすればあとはすべて自動だ。解析は済んだ。次はレイラインを使っての分解、そして分解した後の掌握と再構成を残すのみ。

「さて、ラピスフィロソフィカスよ!命の輝きよ!その力をもって、守る力を!!はぁああああああああ!!」

「「くぅぅうう!!」」「ふうううううう!!」

金色の光があふれて空へと舞いがる。

 

推奨BGM【アクシアの風】

 

そして、俺は三人を突き飛ばして錬成陣から弾き出した。

「「きゃぁ!?」」「うわぁ!?」

アイギス以外の全部のギアを構える。

『Croitzal ronzell gungnir zizzl~、Balwisyall Nescell gungnir tron~、Imyuteus amenohabakiri tron~、Killiter Ichaival tron~、Granzizel bilfen gungnir zizzl~、Seilien coffin airget-lamh tron~、Various shul shagana tron~、Zeios igalima raizen tron~、Rei shen shou jing rei zizzl~』

これ以上は消えてしまう。消えるのは俺だけでいいのだから。

これは最後の絶唱。すべてのギアを使った絶唱。それを使って増幅した力を使う。

『・・・!!』『・・!・・・!?』『・・・・・。』

錬成陣の外に張った壁に三人が手を叩きつけている。

声は聞こえない。佐倉先生に至っては泣き出している。

だが、俺はすべてを終わらせる。その義務がある。それを行う力がある。

解析は済んだ。分解をあと少し残すのみ。そうすればあとは掌握と再構成に使う力は補充できた。

「世界を解析し、森羅万象をつかさどる錬金術師、その最高峰の力をなめるな!!」

さらに俺はけん玉とナックルのキャスターを展開し、それにも術式を展開、ラピスフィロソフィカスの力をさらに燃やして力へと、輝きへと変えていく。

「ラピスの力は、命の輝き!」

 

記憶が消える。この世界であったいろんなことが、消えていく。

 

「すべてを力へ変えて、今!」

 

大学のメンバーの顔、敵味方関係なく、燃えて灰になり、すべてが力と変わる。

 

「森羅万象の黙示録をこの手に!」

 

手を取り合った皆の顔も消える。近くにいた皆の顔さえ光でにじんでもう見えない。

 

「すべては今こそ我が手によって生まれ変わる!」

 

さぁ、終わりだ。〈始まりだ〉。

 

「さぁ、・・起動せよ!世界を変えるそのすべを!最終錬金術式、世界変換術式【ワールド・エクスチェンジ】!!」

 

すべての光は錬金術式に吸い込まれ、術式から光があふれた。

世界は分解され再構成される。

 

一度、生ある者も死に得た者もすべてが等しく分解される。

イチカ・ダインスレイフ・・織斑一夏以外のすべては分解されてすべてがエネルギーへと変換される。

そして、すべての記録を異世界に置いてきたそれから再構成を始める。

木も、花も、石も土も・・世界のすべてが再構成されていく。

龍脈、レイライン上からエネルギーがあふれてそれによってすべての物が再構成される。

さらに人さえも再構成されるが、その際に世界中の生きている人間や感染者の中から今回の災害にかかわる記憶だけと限定してエネルギーに変換した。

さらにランダルコーポレーションは変換したまま消去して、その会社の実験にかかわった人物の記憶はすべて消去した。

世界を戻すために織斑一夏はすべてを使う。

その命さえも燃やし尽くして、ラピスの輝きに変える。

 

そして、自分がかかわってきた人物を再構成して最後とした。

 

世界を分解、把握、再構成してそのすべては終わった。

この世界での織斑一夏の役目さえも・・。

 

 

 

最近、学校が好きだ。

そう言うと変に思われる。

だけど、理科実験室には不思議なものがいっぱいある。

音楽室にはたくさんの楽器がある。

放送室は、学校中がステージに。

何でもあってまるで一つの国みたい。

でも、一番好きなのは友達が一緒にいる事。

みんな大好きな友達。

 

・・でも・・

最近少しなんだかさみしい。

誰かの事を忘れたみたいで少し・・ううん、すっごく寂しくなる。

りーさんやみーくん、くるみちゃんや圭ちゃん、めぐねえでも、狗三先生でもない・・。

誰かもう一人いた気がする。

頭を撫でてくれた‥大事な誰かが・・。

そう言ったらみんなが少し悩んだ。

「わたしも・・同じようなことがある・・。」

「私もです。」

「皆そうらしいのよ。なんでかしらね?」

くるみちゃん、みーくん、リーさんも同じようだし、みんなそうだって言ってる。

 

よくは分かんないけど、何かに押されるように最近進学を考えて、近くの大学に行こうと思って勉強してる。

オープンキャンパスで聖イシドロスって大学に行ってみたの。

よく知らないけどサークルっていう部活動みたいなのがあって、そこで親切にしてくれたトーコさんて人たちとも仲良くなった。

どこかで会った気がするって言ったら、向こうも同じようなこと言ってた。不思議な感じ。

 

・・たぶん忘れちゃったんだろうと思うけど、きっと誰かいたんだと思う。

そんな気がするから・・。

 

だから忘れちゃって、ごめんなさい。

そして、よくわかんないけどありがとう。

 

遠く青い空に、風船が飛んで行ったのを見つけた。それを見て空を見上げる。

 

「私たちはここにいます。元気でーす!!」

 

太陽に手を伸ばして叫んでみた。どうか思いが届くようにと。

 

 




ファイナルを無事に迎えることができましたこと、うれしく思います。
今回でこの話は終わりですが、まだ何か投稿したいなと思っています。
どうもありがとうございました。
また、どこかで。

では、卒業おめでとうございました。


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