アクエリオンEVOL ~光の系譜~ (シエロティエラ)
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設定 【随時更新】



では予告通り、今回は設定を書いていきます。
字数が許す限り話が進むごとに随時更新していきます。





 

 ◎アマタ・ソラ

 

 本小説及び原作における主人公。今作では年齢不相応の落ち着きと分析力、少々固い人間性が出ている。服装は原作の様なハーフパンツやベストとは異なり、黒のジーンズに黒のTシャツ、その上に黒のライダースジャケットか薄手のロングコートを羽織っている。更には今作では現差うよりもエレメントを制御できているため、ブーツに重りは入れていない。

 表情の変化は乏しいが、感情はしっかりと持ち合わせている。ただしそのせいで周囲の人間からはとっつきづらい人柄と思われてしまっている。例外としてミコノとカイエン、アンディ、総司令は例外として判別できる。女性関係も長いこと離れていたからか初心である。また女性慣れしていないため、ミコノに対しても普通に接しているように見えるが、その実心臓はバックバクである。特に女性の心からの笑顔と泣き顔にはめっぽう弱く、笑顔を見れば赤面、泣き顔を見れば普段とは考えつかないほど動揺する。

 身体能力は幼い頃、からの鍛錬と彼の性質から常識から逸脱している。例としては、エレメント能力を使わずに高層ビルの上にひと飛びで登る、普通なら動けない重症でも行動できる、超高熱をだすなど。基本普段は抑えているため、一般人より少し運動のできるレベル。

 また、人間態の状態ならば、軽い光弾やウルトラ念力も使用できる。

 学業は修業中にノアや先輩ウルトラマンたちに指導されていたため、歴史を除いて大学卒業レベル。歴史は直接学ぶべきと判断されたため、周りの同年代と知識は変わらない。

 ウルトラマンのタイプとしては、マドカ・ダイゴと似て非なるもの。彼が「光であり、人である」のならば、アマタは光の直系。超古代人の遺伝子を受け継いだのではなくではなく、ネオ・フロンティアスペースを離れた光が()()()()()()()()()()()()()()()()()の末裔がアマタ。よってダイナの様に光に見いだされたり、ガイアの様に力を譲渡されたわけでもない。また昭和ウルトラマンによくみられる憑依でもない。

 過去のウルトラマンは、キングや六兄弟、ジャズティス、サーガ、レジェンド以外には会ったことある。

 

 

 

 

 ◎ウルトラマンシエロ

 

 アマタ・ソラの本来の姿ともいえるもの。戦況によって三つのタイプを使い分ける。変身直後は必ずバランスの取れた形態になる。それぞれ共通して使える技と、それぞれのタイプ専用の技がある。タイプ変化は自由に行うことが出来、ダイナの様な縛りはない。変身時間はエネルギーを消費しきるまで、変身前に疲労していたり負傷していたりすると時間は短くなる。エネルギーは宇宙空間でなら強力な太陽光によって無限供給されるため、精神疲労を無視すれば無限に戦える。よって地上で闘っても宇宙空間に行けばエネルギー回復が出来る。

 

 

 〇タイプ・ソレアド

 尤も能力のバランスがいいタイプ。外見の色は銀と青、赤の三色と少量の黒から構成される。主に格闘や左手から出す光剣で戦う。若干スピードが速く、それを生かした攪乱戦闘をメインに行う。

 

 身長:ミクロ~無限大

 飛行速度:マッハ15

 走行速度:マッハ6

 水中速度:マッハ1,5

 潜地速度:マッハ1

 ジャンプ力:1000メートル

 握力:57000K (人間換算で57K)

 

 

 〇タイプ・ユヴィア

 外見は蒼と銀に染まり、タイプ・ソレアドよりも若干細身。パワーは落ちるものの、その代わりスピードと特殊技能が強力になる。ただしタイプ・ソレアドよりもエネルギー消費が激しい。

 

 身長:ミクロ~無限大

 飛行速度:マッハ20

 走行速度:マッハ8

 水中速度:マッハ3

 潜地速度:マッハ2

 ジャンプ力:1400メートル

 握力:48000K (人間換算で48K)

 

 

 〇タイプ・??? 

 ??????? 

 

 身長:ミクロ~無限大

 飛行速度:??? 

 走行速度:??? 

 水中速度:??? 

 潜地速度:??? 

 ジャンプ力:??? 

 握力:??? 

 

 

 

 

 

(技)

 ◦ルス・フレア

 腕に込めたエネルギーを超高温の焔に変化させ、それを纏った拳を相手に打ち込む。元ネタはノアの技、ノア・インフェルノ。全タイプで使用可。しかしタイプ・ユヴィアでは威力が落ちる。

 

 ◦プロテグ・フィールド

 対象を中心に半径1メートルの球状のフィールド。フィールドは対象に害成す物理現象やアブダクターから対象を護る、ただし怪獣の攻撃や光線、熱線からは一度しか守られない。全タイプで使用可。

 

 ◦リバース・コンバート

 対象の時間をある過去の一点まで巻き戻す。生物以外ならこの能力で町一つでも元に戻す。それが燃えて参加した木材や燃料であっても戻す。ただし対象が多かったり、燃焼したものだと多量のエネルギーを消費する。また生物相手でも効果は薄く、精々軽い怪我を治す程度。全タイプで使用可。

 

 ◦セービングビュート・イヴォルブ

 腕から光の帯を出し、敵を絡めたり対象を救出したりする。ネクサスよりも救助のに特化しており、複数本帯を伸ばすことが可能。ただし本数に応じてエネルギーを消費する。多いほど多量に消費。タイプ・ソレアドとタイプ・ユヴィアでのみ使用可能。

 

 ◦ラジデソル光線

 右腕にエネルギーを集約させ、放出させる光線。左手は拳を握り、右肘に当てる。光線の色は水色。威力はティガのゼペリオン光線やダイナのソルジェント光線と同等。また感情の起伏や気合の入りようで、光線の威力は変化する。タイプ・ソレアド専用技。

 

 ◦レリーヴィング・ストリーム

 対象の興奮や怒りを鎮め、鎮静化させる光のオーラ。幾筋の光の筋が対象を包み込む。ただしこの技が効くのは生物限定。ゼロのフルムーン・ウェイブ、コスモスのフルムーン・レクトのシエロ版。タイプ・ユヴィア専用技。

 

 

 

 ◎変身道具

 

 ◦シエロリング

 左右の中指についている二個で一組の指輪。右側に赤色の、左側に青色の正八面体の宝石がはめられている。

 変身工程は、まず両腕を胸の前で交差させる。次に右腕を上方に、左腕を下方にそれぞれ半円を描くように広げる。最後に水平状に広げた両腕を胸の前で、両手の指輪を突き合せるように素早く戻す。

 簡略版として最初から水平方向に腕を広げて、そのまま拳を突き合せる。またはそのまま拳を突き合せるのみ。

 基本的に指輪として身に付けているが、場面に応じて形状の変化が可能。形態としては光弾を撃つブラスター、手甲、片腕用のガントレット、バングルなどと様々。ブラスター形態以外はそのままで変身が可能。

 あくまで変身能力を扱いやすくするために道具の形をとっているだけであり、ウルトラマンジャックこと郷秀樹のように道具を使わない変身もできないことはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎カグラ・デムリ

 

 野性的な性格で、物事を臭いで表現する。対人戦に類まれなセンスを持っており、人間離れした運動能力を使って暴れる姿はまさに獣のよう。

 本作ではウルトラマンティエラの変身者である。その力を制御するために修業したため、アマタ同様、原作よりも素の強さが格段に上がっている。人間態のまま軽い光弾やウルトラ念力、人間離れした脚力や腕力を発揮する。

 原作では原作開始まで彼の世界、アルテラ界にずっといたということになっているが、本作では途中で星の外に修業に出たことになっている。また彼に修業を付けたのは、色々紆余曲折を経て、自我を持ってノアに執着しなくなったあの方である。あの方のおかげで、アルテラ界の者には、彼がウルトラマンに変身できること以外は知られていない。

 現状人間態且つ能力全開で互角に戦える相手はアマタのみ。

 

 

 




以上設定です。
前書きにも書きましたが、この設定の項は話が進んだり新たな情報が出てくるたびに更新します。
アマタの項目にある名前は、いくつかスペイン語を基にしています。
【例】
シエロ(Cielo):空
ソレアド(Soleado):晴れ
ユヴィア(Lluvia):雨
ルス(Luz):光


といった感じです。



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Prologue



最近ふと思い立って、もう一度アクエリオンEVOLを見たとき、このネタを思いつきました。
留学直前に書いたため次の話がいつになるかわかりませんが、温かい心でお待ちいただけると幸いです。





 

 

 

 空も地面もない、真っ白な空間にその者はいた。全身を銀、青、赤に染めた人型が立っていた。胸の真ん中ではクリスタル体を赤く点滅させており、肩で息をついている。点滅と共に鳴り響く音は、まるで緊急事態を知らせる警報の様。

 

 

『……コォォォォォォォォォォォ』

 

 

 見た目とは裏腹に若い声で吐かれる息。全身の筋肉の付き方や精悍な顔つきに似合わず、実年齢は若いのかもしれない。

 

 

「……ォォォォオオ、シェアッ!!」

 

 

 銀の人型一度大きく息をつき一つ喝を入れるように声を出すと、クリスタル体の周りの紅に輝く別のクリスタル体を輝かせ、白い空間からいなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天使学園。そこはアクエリアパイロット、エレメント候補生をを育成する各園である。男女別学となっているこの学園の女子等では、生徒たちが歌を歌っていた。

 

 

「次元ゲートの彼方よりくるアブダクター。人を攫い、年を破壊する彼らの目的は未だ分かってません」

 

 

 ピアノを演奏していた女性は立ち上がり、歌っていた生徒を見渡した。

 

 

「ゼシカさん!!」

 

 

 女性が一人の生徒の名を呼ぶ。呼ばれた生徒、ゼシカは女性に目を向け、他の生徒はゼシカに注目する。

 

 

「貴方は四度、出撃によりアクエリア合体を経験しました。聖なる守り手に選ばれし喜びを、皆さんに教えてください」

 

「んーそうですね。まぁ気持ちよかったかな。でも女の子同士じゃなくて男と合体すればもっと刺激的かも」

 

 

 何気なく呟かれた彼女の言葉に生徒たちは一様に反応し、女性はその発言を破廉恥であると叱った。

 

 

「天空の乙女はグイゼ・ストーンによって純潔を守られています!! 男女の合体などありえません!!」

 

 

 女性の言葉にゼシカは呆れた表情を浮かべる。その時別の生徒から女性に質問が投げかけられた。

 

 

「そういえばスオミ先生。以前本を読んだ時に書いてあったことなんですが」

 

「何でしょう?」

 

「アクエリア以外にも戦った光の巨人がいたということですが」

 

 

 生徒の質問にしばし考え込み、女性、スオミは口を開いた。

 

 

「神話の中の話ですが、その光の巨人は強い輝きと共に現れ、守るべき人々を背に戦い抜いたと言われています。また赤、青、そしてその二つと銀色の混ざった形態に変化し、それぞれに適応した能力で戦っていたと。」

 

「またその巨人以外にも、胸に輪っか状のクリスタルを着け、剣で戦った巨人。白銀に輝く鎧を身に纏った二本角の巨人の話などもありますね。私たちはその巨人の戦士たちを過去の人々と同じように、畏れと感謝、憧れの意を込めて『ウルトラマン』と呼んでいます。そしてその存在のどれもが、アクエリアの戦い以後、一万二千年の間に確認されたとのことです」

 

「仮にその『ウルトラマン』が現れたとすれば、アブダクターに勝てるのでしょうか?」

 

「神話によると、"ウルトラマン"はアクエリアと同等以上の力を持っていると言われています。神話によれば、『夢を信じられる限り、光はそこにある』と、また『光は絆であり、誰かに受け継がれて再び輝く』と書かれています。恐らく人類が自らの力で苦難に立ち向かい、それでもどうしようもなかった時に、『光を受け継ぐもの』が現れるのではないかと私は考えています」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "アクエリアに舞う空"。

 それは今の世より十年以上前に作成され、放映された映画である。感動のラストを迎えてエンドロールが流れるが、客席はガラガラ、数えるほどしかいなかった。

 

 

「今日も客は少ない」

 

 

 ぼやく青年にこの映画館に館長と思しき男性が近寄った。

 

 

「そりゃ仕方ねーよ。アブダクター襲来に合わせて上映したら儲かるかと思ったが、まぁ見当外れだったな」

 

 

 ため息をつきながら男は客席を見渡す。客席にはゴミが彼方こちらと散らかっていた。青年もその様子を見てため息を一つついた。まぁどうせ今日の上映はこれで最後、ごみを片付けたら今日の仕事は終わりのため、青年は道具を手に取って掃除を始めた。

 

 

「ったく、ごみぐらい片付けろよ……ん?」

 

 

 青年はそこで、一人の人影に気付いた。女性は映画に感動していたのか。涙を流したまま未だ椅子に座っている。観てくれるのは嬉しいのだが、流石に閉館時間過ぎるまでいては困るし、彼女の家族もしんぱいするだろう。そう考えた青年は少女に近づいた。

 

 

「あの……」

 

「ッ!? はい」

 

「えっと……もう終わりですが」

 

「あ、はい。それじゃあ」

 

 

 女性はそう言うと立ち上がり、そこから去っていった。青年はそのまま掃除を続けようとすると、少女が座っていた椅子に財布が落ちていた。恐らく少女が落としていったのだろう。

 

 

「……まだ間に合うか。ちょうどこの席で終わりだし」

 

 

 手早く掃除を終わらせた青年は外に出て、比較的高い建物の屋上に跳躍した。人間離れした跳躍力で飛び上がった青年は、建物の屋上に立ち上がって通りを行く人を眺めていた。

 

 

「……見つけた」

 

 

 ボソリと呟いた青年は一度地上に降り、そのまま走って少女を追いかけた。既に上からだいたいの位置を把握していたため、直ぐに向く敵の人物を見つけることが出来た。

 

 

「すみません」

 

 

 呼びかけられた少女は振り向き、自身を呼び止めた青年を見て驚いた顔をしていた。

 

 

「これ、落してました」

 

「え? あっ!?」

 

 

 持ち物を確認し、財布を落としたことにようやく気付いた少女は、青年から財布を受け取った後、礼をしたいと言いだした。しかし青年は仕事として行った行為と考えているため受け取ろうとしない。

 それでも礼がしたいと食い下がる彼女に、ついに青年が折れた。

 

 

「……わかった。そのお礼受け取ろう」

 

「ありがとうございます!!」

 

 

 背年の言葉を聞くと、少女は笑顔を浮かべた。不覚にもその笑顔に、青年の顔は少し染まった。

 

 

「私、ミコノ・スズシロと言います。あなたのお名前は?」

 

「アマタ。俺はアマタ・ソラだ」

 

 

 一人の青年と一人の少女が巡り会うとき、運命の歯車が回り始める。

 

 

 

 






◎アマタ・ソラ
主人公。原作通り真面目で礼儀正しいが、都市不相応の落ち着きを持っている。服装は原作と異なり、黒の薄手のロングコートや、革ジャンをよく来ている。シャツからズボン、靴まで黒いのは、昔子供の頃に出会った男の影響を受けたため。
エレメント能力は原作同様重力干渉。それによって浮遊することが出来るが、滅多なことで使うことはない。両手中指には、それぞれ赤と青の石がはまる指輪をしている。
女性の笑顔に弱い。


◎ミコノ・スズシロ
原作通り。


◎ゼシカ・ウォン
原作通り。



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光をこの手に



お待たせしました、二話目です。
この先ちょいちょいオリジナル展開を入れる予定なので、作品タグにオリ展開を入れようと思います。





 

 

 

 映画館で出会ったアマタとミコノ、次の日彼らは川を進む小さな小舟に乗っていた。現在アマタとミコノがいるのは、山に囲まれた湖に栄えるネオ・ランディアと呼ばれる街である。

 

 

「私こっちに来たのは初めてなの」

 

「そうか。ということは、初めてきた町であの映画を?」

 

「うん。あの映画、一度観てみたかったから」

 

 

 ミコノは楽し気な笑顔を浮かべながら、アマタは口元に微笑をたたえながらミコノの話を聞いていた。アマタとミコノは自分たちが同い年とわかると、途端に改まった様子はほぐれ、互いに自然体になっていた。

 

 

「それにしてもアマタ君、何だか同い年とは思えないほど落ち着きがあるね」

 

「まぁ、色々とな。今まで会った人とか環境とかでこうなった」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「ん? 少し待ってくれ」

 

 

 アマタは一度話を止めると、漕ぎ手に川沿いの屋台に近づいて貰った。そこでアイスクリームを三つ購入し、ミコノに二つ渡した。

 

 

「え? 何で二つ?」

 

「その髪にいるの、そいつの分だ」

 

「えっ!?」

 

 

 ミコノの疑問にアマタが答えると、彼女の纏められた髪から一匹の奇妙な生き物が出てきた。その生き物はアマタのことを警戒しており、噛みはしないものの厳しい視線をアマタに向けていた。その様子にアマタは苦笑しか浮かべていない。まるで慣れているかのように。

 

 

「シュシュに気付いてたの?」

 

「ああ。どんな生き物も、気配を完全に消すことは出来ないからね。警戒されるのもこの子だけじゃないから大丈夫だよ」

 

「そうなんだ。シュシュ? アマタ君がこれをシュシュにって、お礼言わないとだめだよ?」

 

 

 ミコノがシュシュを促すが、シュシュは一向に警戒を辞めない。まるでアマタが自分への脅威であるかのように彼に敵意を向ける様子に、ミコトはため息をついた。

 

 

「ごめんねアマタ君、この子私以外には心を開かなくて」

 

「先ほども言ったが、よく動物には警戒されるんだ。シュシュに始まったことじゃないから気にしないでいい」

 

 

 苦笑を微笑に変え、アマタはミコトに応える。ミコノは彼のその様子に妙な感覚が胸を過ぎった。思えば昨日今日であった人物だが、彼は素でも公への顔でも、同年代のように感情を表にあまり出さない。一見落ち着きのあるともとれるが、何かが違うとミコノは感じた。

 船の散歩も終わり、二人は平和公園へと移動してた。そこには頭部と両腕部の失われた天使像が立っている。

 

 

「アマタ君って」

 

「ん?」

 

「アマタ君って、エレメント持ってるの?」

 

「……持っているが、あまり使おうとは思わないな」

 

「……どうして?」

 

 

 ミコノはふと思い立ち、アマタに質問をした。アマタは知る由ないが、彼女の実家は代々エレメント能力持って生まれる家系である。しかし彼女には発現せず、それがコンプレックスになっていた。

 しかしアマタはエレメントを持っているにも拘らず、それを秘匿しようとしていることにミコノは驚いていた。エレメントを持つということは、アクエリオ・パイロットに選ばれる資格があるということ。それを自ら不意にしようとしている彼が不思議で仕方がなかった。

 

 

「……人に限らず、強い力を持つとそれに溺れてしまう。エレメント然り、それ以外にも。己に出来ること以上の結果を求め、あるいは思い通りに出来ることに慢心し、そのまま破滅する。そうなるくらいならば、仮令力を持っていようと使わないほうがいい」

 

「それに俺のエレメントは重力操作何だけど、正直感情の起伏如何で勝手に発動してしまうんだ。己を律しきれえてない証拠さ。自身の力を知れないものは、力を振るうべきではないと思ってる」

 

 

 ミコノにとって彼の話は新鮮だった。彼は自身の力を誇示することなく、自分に厳しく接し、更に自分を知ろうと日々努力しているのである。そういえば昔読んだ本に書いてあった。神話の話の一つだったが、その主人公は未熟者だったそうだ。しかし己の未熟さを悲観することなく、どんなに苦しめられても、どんなに痛みを背負っても必ず立ち上がり、不可能を可能にしたという。

 アマタはその主人公とは似ても似つかないが、前に進む姿勢は似ているとミコトは感じた。そして少しずつ、仮令亀よりも遅くとも確実に前に数sまなければ、夢も希望もその手につかめないのかもしれないと考えた。

 

 

「……きたか」

 

 

 ふとアマタが空に視線を移すと、そこにはいくつかの小さな光が瞬いていた。まだ星の出るような時間ではなく、しかも規則正しく並んでる様を見て、ミコノは状況を察した。アブダクターが襲来してきたのである。まだ警報は鳴っていないが、アマタによっていち早く非常事態を察した。

 

 

「ミコノさん、シェルターに行こう」

 

「う、うん!!」

 

 

 アマタの言葉に従って像に背を向けたとき、街のあちこちからサイレンが鳴り響いた。そして町中は混乱に陥った。理由は不明だが、アブダクターは女性を連れていってしまう。ミコノも女性であるため、狙われる可能性がある。そう考えたアマタは非常事態としてミコノの手を掴んだ。

 

 

「えっ、なに!?」

 

「ごめん。でもこっちのほうが早いから」

 

 

 アマタはそう言うと彼女の手を引き、走り出した。彼一人で逃げるなら最寄りのシェルターに行くまでに三十秒もいらない。しかし今はミコノが走れる最速のペースに合わせているため、いつもより移動が遅い。ようやく最寄りのシェルターに到着するも、すでに人でいっぱいになっていた。別のシェルターに行くも、その悉くは満員か混乱で入れない状況。

 

 

「……くそ、どこもダメか」

 

「どうしよう……」

 

「危険だけど、虱潰しに探すしかない。ごめんな」

 

「ううん、いいの。……? ねぇ、あれ」

 

「ん? ……おいおいマジか」

 

 

 ミコノに指刺された先にアマタは視線を移すと、そこには驚きの光景が繰り広げられていた。アブダクターに対峙しているのは二機のアクエリア。しかしそれぞれ女性型と男性型であり、本来出会うはずのない二機が共闘しているのである。

 しかしその連携は余りにもお粗末なものだった。互いの動きが互いに邪魔してしまい、せっかくの好奇も逃すさまである。見たことのないアブダクターもそれに気づいているのか、二機を相手に手玉に取っている。

 何度目かのアクエリアの攻めに対し、アブダクターは反撃を加えた。アブダクターは手に持つ斧を掲げて竜巻を生成し、それを二機のアクエリアにぶつけ、昏倒させた。それがまずかった。その攻防の余波によって平和公園の像が吹き飛ばされ、運の悪いことにミコノたちの方へと飛んできたのだ。更に言えばその攻防の衝撃でミコノとアマタは転倒し、すぐに回避行動を取ることが出来ない。

 大重量を誇る像とは対照的に、人間は余りにもちっぽけだ。逃げたら割れた像の破片がぶつかって負傷するかもしれないし、それでいて避けなければ像によって潰されてしまう。

 

 

「……仕方がない、さらけ出すか。彼女を、ミコノさんを護るために」

 

「えっ? ……アマタ……君?」

 

 

 彼の言ったさらけ出すという意味を、ミコノは理解していなかった、だが彼は立ち上がると、飛んでくる像を真っすぐに見つめた。ここに飛来するまでもう数秒もない。そんな中彼は両腕を真横に伸ばし、そして大きく息を吸った。その後、彼は一息に両の中指にはめられる二色の指輪を突き合せた。

 そして……

 

 

「シュアッ!!」

 

 

 ミコノの目の前tその周辺は、眩い輝きに包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だ? あの光は」

 

「眩しい!!」

 

 

 突如現れた輝きに。ベクター各機のコックピットは勿論、彼らパイロットに指示を出していたスオミ達も目を奪われていた。アブダクターも突如現れた輝きに反応し、女性を拉致する動きも止めて全てのセンサーを光に向けた。

 光が治まった先にいたのは、輝く巨人だった。全身は銀を中心に、ラインを描くように青と赤の模様が走っている。額にはダイヤの様なクリスタルが埋め込まれており、白く輝く双眼はアクエリオとアブダクターを見据えている。胸には蒼く輝くクリスタル体があり、それを包み込むように赤い水晶体があしらわれている。

 

 

「ウル……トラ……マン……」

 

 

 静まり返った指令室に、スオミの声が響く。

 何かを優しく握りしめている手を地面につけると、その握っていたものを優しく地に降ろし、加えて光のドームで包み込んだ。そのドームの中には一人の少女がおり、その肩には不思議な生き物を乗せている。そしてその少女は信じられないものを見る目で巨人を見つめていた。

 巨人は一度少女に頷くと再びアブダクター達に向き直り、左腰の位置で両腕をクロスさせ、腕輪状の武具を合わせて、右手にエネルギーを集中させた。

 

 

「ォォォォオオ、シェアッ!!」

 

 

 ゆっくりと右手を右腰に戻して一息のもとに目に突き出すと、その手から幾筋もの光が伸びた。それぞれの光がアブダクターを貫通すると、その光を通じていくつもの光の玉が巨人の手元に集まった。一通り玉を集め終わると、巨人は先ほどの少女同様、優しい手つきで地面に降ろした。光が収まると、そこには先ほど拉致された女性が全てドームに包まれていた。その光景に更にパイロットと指令室の人員は驚く。

 

 

「ヘッ!!」

 

 

 救出された女性たちが無事なのを確認すると、巨人はアブダクターに向き合い、初めて構えを取った。幾星霜の果て、襲来者から人々を護るために、光の巨人が再びこの地に立った。

 

 

 






はい、ここまでです。運がよかったらもう一話更新できるかもしれません。
さて今回のオリトラマンのデザインですが、路線はネオ・フロンティアの宇宙を離れた光が、幾星霜の時間を経て残した因子を、アマタが受け継いだとしています。
またアマタは過去に何人かの先輩ウルトラマンたちに出会っており、その過程でとある変身者から光を少し受け継いでいます。よって、光系譜のウルトラマンの外見に、誰かを彷彿とさせる赤いクリスタル体をプロテクターの様につけています。

ではまた。



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アクエリオン ★



何か更新できそうだったのでしました。
前回初登場のオリトラマンですが、デザインで納得のいくのが出来上がったのでサンプル画を載せます。
本当ならサンプルではなく挿絵を入れたいのですが、画力がないためサンプル止まりです。どなたか絵が上手い方で是非挿絵を描きたいという人は、私にメッセージを送ってください。その人に個人的に私の匿名Gメールをお教えいたします。

この話は活動記録にも載せます。


【挿絵表示】





 

 

『……俺はシエロ……光を受け継ぎ、大空を駆ける』

 

 

 そう言って構えを取ったウルトラマンに対し、拉致した女性を取り返されたアブダクター達が一斉に襲い掛かった。当のウルトラマンは一度空に飛びあがり、いくつかの牽制弾を右手から放った。その光弾は一直線にそれぞれ数体のアブダクター達に飛んでいき、狙い違わず貫通して破壊した。

 しかしアブダクター達もやられるだけではない。未確認機はウルトラマンを脅威と判断したのか、斧を構えてウルトラマンに突進していく。対するウルトラマン左手の武具から光を伸ばし、光剣にして構え直す。未確認機は突進の勢いを緩めず、ついに互いに衝突した。

 ぶつかった衝撃で轟音が鳴る。その後力に任せて斧を振るう未確認機と、最小限の動きで攻撃を交わしてカウンターを加えていく。未確認機もそのカウンターを目を見張る動きで回避していく。

 その様子を眺めていた男性機と女性機の操縦者たちは、ふと我に返った。今残っている全てのアブダクター達は、巨人と未確認機の戦いに意識を向けてる。ならばその間に破壊するのが一番ではないだろうか。

 

 

「司令!! 今のうちにアブダクターを一掃します!!」

 

「行くわよみんな!!」

 

「やってやろうぜ!!」

 

 

 ベクター各機に搭乗しているパイロットは意識を切りかえてアブダクターに向かう。不意打ちを受けたアブダクター達は突然のことに対処できず、次々に討伐されていった。司令室にいる男子の司令官ドナールと女子の司令官であるスオミは、その様子を固唾をのんで見守っていた。見守りながらスオミは、現在闘っているウルトラマンについて考えていた。

 神話には、数多くのウルトラマンが登場する。授業でゼシカたちに話したものはほんの一部でしかなく、確認されているだけで38人いる。そのどれもが強力であり、理由は分からないがこの星のために戦っていた。今戦っているウルトラマンは過去に確認された三色のウルトラマン、そして最近確認されたカラータイマーの代わりに赤いクリスタルを持つウルトラマンに似ている。

『光を受け継ぐ者』の伝説は有名だが、まさかこのウルトラマンがそうなのだろうか。彼はどこから来て、何のために戦っているのか。ウルトラマンの考えていることがわからず、スオミは黙って戦いを見るしかできなかった。

 

 

「良し、残るはあの未確認機だけだ!!」

 

「二人とも、行くぞ!!」

 

「男子に後れを取らないわよ!!」

 

「ええ!!」

 

 

 アブダクターを掃討したのち、二機のアクエリアは空中へと飛び上がった。だがその途中、大振りの斧の斬撃を受け止めたウルトラマンが、地上へと吹き飛ばされた。先ほどまで蒼く光っていた部分は、警報と共に赤い点滅を繰り返している。心なしか弱っているようにも見える。

 

 

「!? 皆さん、急いで未確認機の注意をウルトラマンから外してください!!」

 

 

 司令室のスオミが声を上げ、男女各機に入電する。彼女が覚えている限り、ウルトラマンは三分しか顕現できない。一度変身者が公になったウルトラマンも、変身した後は三分しか戦えなかったらしい。

 

 

「ッ!? わ、わかりました!!」

 

「了解です!!」

 

 

 通信を受け取った二機のアクエリアは、急ぎ未確認機の前に立ち、進路を妨害した。しかし大したことないとでもいう様に未確認機は斧を振るい、アクエリオ両機を吹き飛ばす。そしてまたもや、吹き飛ばされた先がまずかった。

 攻撃されたアクエリオンは空中で三つに分かれ、それぞれ三機ずつのベクターに戻てしまったのだ。そのうち男女一人分ずつ、それぞれのベクターが、ウルトラマンの護っていた少女の方に吹き飛んだのだ。

 

 

「ミコノ―!!」

 

 

 地上に落ちたベクターの中から一人の男が叫ぶ。そして何とかベクターを動かそうとするが、故障しtのか動いてくれない。それでも男が機体を動かそうとしたとき、目の前を一筋の光が通り過ぎた。先ほどよりも早い警報を鳴らすウルトラマンは少女と二機のベクターの間に立つと、両の手から力場のようなものを生成し、ベクターを少女の横に不時着させた。

 しかしそれで力を使い切ったのか、最後に一度弱弱しく警報を鳴らしたのち、全身を光らせると光の粒となって消失した。その様子を見ていたパイロット達、そして指令室の人間全員は、悲壮感を纏ってウルトラマンの消えた場所を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前でアマタが光に包まれた途端、私は大きな手に包まれていた。その手は優しく私を下すと、私を光のドームで優しく包み込んだ。

 私は改めて目の前の存在に目を向ける。私を包み込んでいた銀の巨人は、その大きさとは違う優しげな眼で私を見つめていた。それで私は理解した。かの巨人、神話に語られる光の巨人になったのは、今まで一緒にいたアマタだったのだと。

 それを察した瞬間、私は驚きで動けなくなった。その後彼は拉致された女性をすべて救出し、アブダクターとの戦闘に入った。結果は圧倒的、次々にアブダクターは破壊されていく。正直未確認機の妨害がなければ、アブダクターはアクエリオンで相対するよりも早い時間で全滅だっただろう。

 未確認機に妨害されたアマタは傷を負いながらも相手を追い詰めていった。でもカウンターが入り、アマタは地上に吹き飛ばされてしまった。

 

 

「あの音、まさかアマタ君に限界が?」

 

 

 神話に書かれているように、警報を鳴らすアマタ。ドームは変わらずミコノや気絶している女性たちを覆っているが、その力も弱弱しい。彼の代わりに未確認機の相手をしていた二機のアクエリアもダメージを受け、それぞれ三機のベクターに戻ってしまった。そのうちの二機がミコノたちのいる場所に落下してきた。

 

 

「ミコノ―!!」

 

 

 聞き間違えようのない声が聞こえてくるが、ミコノは足がすくんで動けない。このままだとベクターに潰されると思った瞬間、先程より激しい警報を鳴らすアマタがベクターを受け止めていた。彼はベクターをゆっくりとミコノの隣に降ろした後、光となって消えた。角度的にミコノの隣のベクターも他のにも見えてないが、光が消えると同時に、ミコノの目の前に傷だらけのアマタが倒れた状態で現れた。

 

 

「アマタ君、しっかりして!? アマタ君!!」

 

「う、うう……」

 

 

 ミコノが必死に呼びかけるが、アマタは呻くだけで反応しない。全身の傷から血を流す彼を治療しなければならないが、今は非常事態で病院も開いてないしそもそもこの場所から遠い。

 ミコノは咄嗟に自分の袖を千切り、傷口へと当てがった。袖はゆっくりとだが赤い染みが広がっていき、血が止まる気配を感じさせない。

 

 

「お願い、アマタ君。死なないで……助けてもらったお礼もしてないのに」

 

「……」

 

「後ろばかりいていた私を、私のあり方を見直す切っ掛けを作ってくれた」

 

「……」

 

「君はいいというと思うけど、私は救われた。だから……」

 

 

 ミコノは目に涙を浮かべて、とめどなく涙を流しながらアマタに覆いかぶさった。服が血に染まるのも厭わず、全身を使って止血するかのように、アマタに覆いかぶさる。

 

 

「だから、今度は私が貴方を救いたい!! 貴方の手助けをしたい!! 貴方に生きてほしい!!」

 

「……ミ……コノ……さ……ん」

 

「ッ!? アマタ君!!」

 

 

 意識を取り戻したアマタが声を発すると、ミコノは優しくしかし必死に語り掛ける。数度呻いたのち、アマタは目を開けた。それを見たミコノは勢いよく、しかし優しくアマタを抱きしめた。

 

 

「……泣かせちゃった……な」

 

「ううん、いいの。あなたが生きていてくれて」

 

 

 アマタが意識を取り戻したことにミコノは安心するが、それも束の間だった。ミコノたちのすぐ近くに未確認機が着陸した。同時に機能を取り戻したベクターの一機が、未確認機に向かっていくが、悉く躱されてカウンターを放たれる。

 その様子を見ていたアマタは再び立ち上がろうとした。

 

 

「ッ!? アマタ君、無茶だよ!!」

 

「それでも……今のままじゃ……」

 

「それはアマタ君にも言えることだよ!! お願いだから、無茶しないで……」

 

 

 立ち上がろうとするアマタと、それを必死に止めるミコノ。その間にも戦況は動き、一機だけ立ち向かっていたベクターも撃墜されそうになる。

 

 

「いけない……!!」

 

「ダメッ!!」

 

 

 二人が声を上げた途端、目の前が真っ白に包まれた。気が付くと二人はベクターに乗っていた。それぞれ一機ずつ、彼らの隣に不時着していた機体に乗っていた。元々その期待に乗っていた二人は、ベクターによってどこかに飛ばされたらしい。

 座席に座っていたアマタに、突如膨大な情報が流れ込んできた。光の戦士たちの想いを受け取った時とは違う。無理やり利子機を植えつけられるように、しかし最初から知っていたかのように脳裏に情報が浮いてくる。

 

 

「……そういう……ことか」

 

「え? どうなってるの? アマタ君?」

 

 

 アマタは震える手でゆっくりと力強く、ベクターの操縦かんを握りしめた。

 

 

「……創聖合体」

 

「アマタ君?」

 

 

 次第にアマタから光が溢れだしてくる。それは先ほどまでの光ではなく、エレメントの輝きであった。

 

 

「GO……アクエリオン……!!」

 

 

 そしてその言葉を発したとき、そばにあったミコノの乗る機体、そしてこちらに飛ばされてきたベクターを巻き込んで、先程とは異なる眩い輝きに包まれた。

 

 

 






はいここまでです。
サンプルには仮名と表記しておりますが、ウルトラマンの名前に関しましては、これで本決まりです。
変身道具と変身後の腕輪の名前は募集中ですので、後程出す活動記録に案を出したい人は書いてください。

それではまた、カナダよりお送りしました。




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激闘の末



カナダからこんばんわ、ホロウメモリアです。
今回も機会があったので更新します。それでは。





 

 

 

 

 突如合体した三機のベクター。その様子に、司令室は混乱に包まれていた。それも当然である。男女による合体は、何年も前から禁止されており、そもそもグレイゼ・ストーンによって男女合体は封印されているため、現時点では起こり得ない現象なのである。

 しかし……

 

 

「まさか合体? ……しかしこの感覚は」

 

「な、なに!? こんな感覚……初めて!!」

 

「……くぅ!?」

 

 

 しかし封印なんて意味を為さぬかのように合体は行われ、ついにグレイゼ・ストーンは砕かれた。そしてアマタは、真の姿を現した機体名を、大怪我を感じさせない力強い声で叫んだ。

 

 

「アクエリオンEVOL!!」

 

 

 真名を解放された機体は一際眩しく輝くと、未確認機に向かっていった。しかし叫んだ当の本人は、頭の中が疑問に満たされていた。

 

 

(俺はなんでこの名を……いや、これは俺に刻まれたもの。記憶、体、心、いや俺の全てと言える魂に刻まれているというのか)

 

 

 考えるのは程々にし、アマタは思考を現実に戻す。先ほど戦ったときは、制限時間や変身前に消費していたエネルギーもあって、思うように戦うことが出来なかった。だからと言って、アクエリアに騎乗すれば大丈夫というわけではないのだが。

 

 

「ミコノ!!」

 

「カイエン!?」

 

 

 合体したそれぞれのベクターに乗っていたミコノとカイエンという青年が、互いの存在に驚いていた。どうやら彼らは知り合いらしい。

 

 

「なんでお前がそこにいる!! それに貴様は、異次元からのテロリストか!!」

 

「……勝手なことを」

 

「アマタ君はそんな人じゃ『無駄にさえずるな!!』……ッ!!」

 

 

 カイエンという青年は急に現れたアマタを警戒し、更にミコノに一方的に言いがかりをつける。恐らく互いに知り合いなのであろうが、それぞれの事情を知らないアマタは、カイエンの態度に少しだけ腹が立った。

 しかし敵にとってはそんなこと知ったことではない。カイエンやミコノたちの足並みが揃わない状態でも構わず、アマタたちに攻撃してくる。

 

 

「ちっ、向こうは武器を持っている分こちらが不利だ。おいあんた!!」

 

「な、なんだ!?」

 

「この機体に武器は? 他にどんな能力がある?」

 

「知らん!! そもそもこの合体になったのは初めてなんだ」

 

「……規則だっただろうとはいえ、厳しいな」

 

 

 基本的にアクエリオンは、搭乗者のエレメントに依存して能力が決まる。本当ならミコノやカイエンの能力を聞くべきなのだろう。先ほどミコノは、自身にエレメント能力はないと言っていた。だがこうしてベクターに登場し、アクエリオンとして合体しているということは、彼女がエレメント能力を持っているという何よりもの証である。だが未だ不明であるため、今回はアマタとカイエンの能力に限られる。

 

 

「ッ!? 空気の読めないやつだ」

 

 

 斧を構えて突進してくる未確認機に対し、アマタは咄嗟にいつものように、左腕に光剣に装備している感覚で操縦桿を操作した。普通だったら左腕を切られ、ついでに胴体も切り裂かれている。しかし驚くことに、アクエリオンの左手の甲から不可思議な剣が伸び、敵の斧を防いでいた。

 

 

「う、グゥッ!!」

 

 

 しかし振動はダイレクトに伝わってくる。大怪我を負っているアマタには酷なもので、攻防を繰り広げるたびに振動が傷口を抉る。操縦席内はアマタの体から流れ出て、飛び散った血によって汚れていた。

 

 

「アマタ君、大丈夫なの!?」

 

「おい貴様!? その傷は……!!」

 

 

 アマタの様子をみて、ミコノは現状よりも彼の心配をする。なまじ一番近くで彼の負傷を見ていたため、今この場でみたカイエンよりも深刻そうな表情を浮かべる。

 

 

「俺は大丈夫。おいアンタ……アンタの能力は?」

 

「ッ!? なんで貴様に教えなきゃいかんのだ!!」

 

「四の五を言ってる時間はない!! 全滅してもいいのか? アクエリオンは搭乗者の能力如何で仕様が変わる、俺は重力操作だってまずい!!」

 

 

 敵の攻撃を避けられず、ダイレクトにアマタたちはダメージを受けてしまった。

 

 

「キャアアアア!?」

 

「グゥ……貴様、許さんぞ!! ミコノをこんなことに巻き込んで!!」

 

 

 その時、アマタの脳裏に一つの情景が浮かび上がった。喪服を着た女性と男性が夕焼けを背景に墓場で挙式をしており、その後、荒れ果てた大地に()()()()()()が立っているのが見えた。

 

 

(今の二人、ミコノさんと誰だ? いや、奴は何だ? 他人じゃないような、だが俺と正反対の。そしてあの影、まさか……)

 

 

 アマタは今の光景に思考を奪われるが、頭を振って現実に戻した。

 

 

「なに……これ……?」

 

「これは俺のエレメント能力、"絶望予知"だ。未来に起きる不吉な出来事だけ、映像として脳内再生する」

 

「でもあくまで予知だ。人類は、自らの手で未来への道を切り開く」

 

 

 かつて最速の先達が信じた人類がそうしたように。だがアマタの思考は未確認機が馬乗りになり、攻撃してきたことで中断された。攻撃の衝撃がダイレクトにアマタを刺激し、ついにアマタは内臓を傷つけてしまったのか吐血した。それを見ていたミコノやカイエン、司令室の人間も一様に顔を蒼くした。

 

 

「もうやめて!! アマタ君死んじゃう!!」

 

 

 ミコノが必死に呼びかけるが、アマタは操縦桿を離そうとしなかった。寧ろ最早手を放すことが出来ないのではないだろうか。そう思わせるほど彼は操縦桿を力強く握りしめ、その目から闘志をなくしていなかった。

 

 

「どうしてそこまでするの!? あなたが……あなたが必ず戦わないといけない義務があるの?」

 

「そうだ!! 元を言えば、お前は正規のパイロットじゃないのだ。それにそのような大怪我を負っておいて……」

 

 

 先ほどまでアマタに敵意を出していたカイエンも、流石の事態にアマタを戦線から離脱するように促す。しかしアマタは梃子でも動こうとしない。

 

 

「義務じゃない……俺がやりたいからやるだけだ。それに……」

 

「え?」

 

「なに?」

 

「どんな時でも諦めず、どんなに苦しめられても立ち上がり、不可能を可能にする。それが、光を継ぐ者(オレたち)なんだ!!」

 

 

 その瞬間、アクエリオンが金色に発光した。外見も少し変化し、両の腕には赤と青の水晶体が、胸部にはカラータイマーを彷彿とさせる機関が追加されており、鮮やかな蒼い光を放っている。

 急な変化に驚いたのか、未確認機はアクエリオンから急いで飛びのいた。が、撤退を許されたわけではなかった。

 飛びのいた未確認機に対し、再度左腕に装着した剣で切りかかり、期待にダメージを負わせる。怯んだ敵に対して追撃の手を緩めず、合気道の要領で敵を投げ、両腕に纏わせたエネルギーの刃で敵の腹を切り裂く。

 未確認機も予想外の大きなダメージを負ったのか、その動きはおぼつかない。しかしアクエリオンは止めとばかりに今度は左腕に炎を纏わせ、一気に未確認機の腹に向かって振り抜き、空の彼方に吹き飛ばした。

 

 

「……ミコノ」

 

「……なに?」

 

「……お前に聞くのも可笑しい話だが、これはお前のエレメントか?」

 

「違うと思う」

 

「そうか……だが確か奴の能力は重力操作。だとすればこれは……」

 

 

 未確認機を吹き飛ばしたのを最後に、今回のアブダクター浸出の事態は収束した。しかし問題は多く残っている。一番の問題は、突如出現した光の巨人と男女機による融合、そしてそれを為したのが二人の一般人であることだ。

 司令室からカイエンに、二人を学園に連れてくるように指示が入る。特に青年の方は禁断の名前を知っていたため、場合によっては拷問も辞さないだろう。

 

 

「とりあえず……これで……ゴバァッ……」

 

「ッ!? アマタ君!?」

 

「まずい!? 司令、急ぎ緊急治療室の準備を!! 情報云々の前に彼が死ぬ!!」

 

 

 最後に大きく血を吐き出し、気絶するアマタ。その様子を画面で眺めていた司令室各人員は非常に焦りながらも、急いで治療の準備を進めた。

 

 

 

 






・三色の混ざった体をベースに、状況によって適応した姿を取った巨人:ティガ、ダイナ
・胸に円状の水晶体を持ち、剣を用いて戦った巨人:オーブ
・白銀に輝く鎧を纏う二本角の巨人:ゼロ
・未熟者だったが、何度も立ち上がって諦めなかった巨人:メビウス
・最速の先達:マックス
・最近確認された、カラータイマーの代わりに赤いクリスタルを胸に持つ巨人:ネクサス、ノア

以上、現在描写だけ出てきているウルトラマンです。



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闇の巨人



カナダでは動画を観れないので話の確認が記憶頼りになるんですよね。
では更新します。





 

 

 

 

 分解されたアクエリオンは、それぞれベクターに戻った。だがアマタは気絶し、ミコノはベクターを扱ったことがない。仕方がなくミコノとアマタはカイエンが機体に乗せ、彼らが乗っていた機体は元の搭乗者が回収することになった。

 そして次の日の学園の集中治療室、アマタは沢山の医療機器に繋がれて寝かされていた。内臓を傷つけていた原因となった骨折は手術で摘出、再接着され、その他の裂傷、刺傷、切傷の縫合は済まされている。しかし彼は未だ目を覚まさず、寧ろ現在彼の周りをせわしなく人が動き回っている。彼の対イオンは通常の人では考えられないほど高い値、87°を示しており、全身から異常なほどの汗を流している。そして心なしか、彼の体は赤く発光しているようにも見て取れる。

 

 集中治療室の外では、ミコノが手を組みながら座っていた。その隣には、若干の距離を置きながらもカイエンが座っていた。彼も彼なりに思うところがあり、アマタの身を案じていた。軍人としては失格だろう、だが巻き込んでしまったとはいえ、ミコノの話では彼はカイエンの妹であるミコノを避難させようと東奔西走していたそうだ。ならば感謝こそすれ、咎めるのは筋違いではないだろうか。だがアマタが禁断の名前を知っていたことも事実であり、怪しいということには変わりない。

 

 

「……こんなときにか」

 

 

 昨日の襲来があったのに、再び襲来するアブダクター。こちら側のことなどお構いなしと言わんばかりの事態に、カイエンは軽く舌打ちをする。しかしこの場に留まるわけにもいかないため、椅子から立ち上がった。

 

 

「カイエン……」

 

「お前はそこにいろ」

 

 

 一言だけ妹に言い、カイエンは出撃していった。

 病室の前には、ミコノだけが佇んでいる。もはやアマタに出来ることはないのか、医療スタッフは一人を残して場を離れてしまった。寝かされているアマタの体温は未だ80°を超えたままだ。普通の人間ならすでに死んでいるが、彼がまだ生きているのは彼が特別であるが故だろう。

 

 

「もし神様がいるのであれば、どうか……」

 

 

 無心にアマタの回復を祈るミコノ。先ほどからアブダクターと戦っているのか、地面が揺れている。現場から離れているのだろうが、学園も例外ではなかった。

 とそのとき、治療室で大きな音がした。ミコノが顔を上げると、そこにはよろよろと歩くアマタと、それを必死に押しとどめる医療スタッフの姿だった。驚きを通り越して焦ったミコノは、咄嗟に医務室に入った。

 

 

「アマタ君、何してるの!?」

 

「……いかないと……奴が」

 

「これ以上戦ったらだめ!! まだ治ってないのに」

 

「この子の言う通りです!! 貴方は安静にしないと」

 

 

 スタッフとミコノの二人掛かりでアマタを抑えるが、そんなものないかのように廊下を突き進むアマタ。外への出口がわかっているかのように進む姿は、先ほどまで病床についていた人間とは思えない。

 途中で力尽きたスタッフを置いたまま、アマタとミコノは外へ出た。襲撃を受けていた地区には複数のアブダクターがおり、その上空には……

 

 

「え? ……巨人?」

 

 

 アマタとはまた別の、もう一人の巨人がいた。しかしアマタとは異なり、その目とカラータイマーは漆黒に染まっていた。また綺麗な銀色だった肉体は黒と赤のツートーンカラーに染められ、その様子が不気味さを一層際立たせる。

 

 

「あいつは……あのビジョンの……」

 

「え? カイエンの?」

 

「ああ、あのあと映った巨大な影が……」

 

 

 巨人は浮遊して少しずつ前進しながら、時折光弾を発射して建物を壊していた。見た限り建物を壊して人を出すことによって、アブダクターに女性を捕獲させているようである。

 

 

「まさか……アマタ君、行かないよね」

 

「……」

 

 

 ミコノは聞くが、アマタは応えない。無言でジッと巨人を見つめている。おもむろにアマタはミコノから離れると、ミコノの制止を聞かずに再び変身した。

 対を為すように現れたウルトラマンは、強い光を纏いながらもう一人の巨人を蹴り飛ばした。黒い巨人の倒れた先は既に破壊されており、幸い人もいなかった。が、上空から落下したため、その衝撃で戦闘中だったアクエリアもアブダクターも、地上にいるものは一様に態勢を崩された。

 

 

「ちょッなに!?」

 

「またウルトラマンか!?」

 

「どうもあの闇の巨人の相手をするらしいが……」

 

 

 向かい合う二人の巨人を取り囲むように並ぶアクエリアとアブダクター。それらを無視するかのように向かい合う巨人。しばらく睨みあいが続く中、ウルトラマンの方だった。

 昨日と同様、右手にエネルギーを集めると、アブダクター各機に伸ばし、被害者たちを残忍救出した。だがやはり万全ではなかったのか、その動きだけで彼のカラータイマーが鳴りだした。

 

 

「パイロットたちに通達します。ただいまよりウルトラマンと共同戦線を張ってください」

 

「アブダクター掃討後、各機ウルトラマンを援護せよ!! 女に負けるなよ」

 

「「「了解!!」」」

 

 

 司令室より指示を出されたそれぞれのアクエリアは、周りにいるアブダクターに攻撃を開始した。闇の巨人もそれに合わせるように、ウルトラマンとの戦闘を開始した。

 アブダクターとアクエリアの戦闘は、数がアブダクターのほうが多いために五分、ウルトラマンと闇の巨人の闘いは、先にエネルギーの切れたほうの負けである。互いに小さな光弾で牽制し、空中で拳をぶつけ合い、腹や背中を蹴る。

 

 

「オラァ!!」

 

「ヤァァァァアア!!」

 

 

 男女各アクエリオンは順調にアブダクターを屠っていく。しかしウルトラマン同士の闘いは一進一退を繰り返しており、時折流れ弾がアブダクターやアクエリオンをかすめていく。

 

 

「ちょっと!! 昨日はこんなんじゃなかったじゃない!!」

 

「知らん!! 昨日はそもそも巨人がいなかっただろう!!」

 

「それにしたって、キャッ!? 限度があるでしょう!?」

 

 

 アブダクターは確実に減っているが、アクエリアも流れ弾によって負傷していく。現在ウルトラマンと闇の巨人は地上におり、互いに睨みあっている状況である。ウルトラマンのカラータイマーは激しく高い音を鳴らし、闇の巨人も自分のタイマーを蒼く点滅させている。どうやら互いにエネルギーは残されていないらしい。

 

 

『お前は……誰なんだ』

 

『……それは手前ェが一番わかってるだろう』

 

『何だと?』

 

 

 睨みあう中で何やら話始める二人の巨人。それは互いの、そして周囲でちょうど戦闘を終わらせたアクエリア搭乗者たちの頭の中に響くように声が聞こえた。そしてその声はミコノにも聞こえていた。アマタが変身していると分かっているミコノは兎も角、搭乗者たちや司令室の人間は、ウルトラマンの声の若さに驚いた。

 

 

「ウルトラマンって、男だったの?」

 

「なぁにMIX、今更男だから助けないとでもいうの?」

 

「オレ達とあまり変わらないんじゃねぇの?」

 

(……この声、どこかで聞いたことが)

 

 

 聞こえてきた声に対し、カイエンはある疑念を持った。ウルトラマンの声は、つい昨日禁断の合体をした相手、アマタ・ソラという青年の声に似ていた。似ているというより、彼の声そのままだった。

 昨日巨人が消えたのは、降ろされたベクター及びミコノのそば。巨人は昨日動けない自分以外のベクターに攻撃がいかないように立ちまわっていたため、何度も攻撃を受けていた。そしてミコノを護ったというアマタ・ソラ。彼は大怪我を負っていた状態で自分たちの前に現れた。そういえば彼が怪我をした場所は、ウルトラマンが攻撃を受けた場所と同じだった気がする。

 極めつけは縫合をした後の傷の治り。異常なほどに早く治ったかと思えば、通常では死ぬかもしれない高熱を出す始末。彼が普通ではないことは明らかである。

 

 

(……まさかな)

 

 

 一旦思考を終わらせ、目の前の戦いに意識を移す。今目の前の二人の巨人は、それぞれ右腕に強烈なエネルギーをため始めた。互いのエネルギーの余波がぶつかり合い、空気が振動している。

 

 

『消えな、デュア!!』

 

『受けろ、シェア!!』

 

「ッ!? みんな、衝撃に備えろ!!」

 

 

 ただならぬ雰囲気を察したカイエンは、合体している男女ベクター各機に通達した。その直後、二人の巨人は両の手をL字にくみ、縦に構えた右腕からウルトラマンは水色の光線を、闇の巨人は紫の光線を発射し、それが二人の中央でぶつかった。

 ぶつかった場所で大きな爆発が起こり、宙に浮いていたアクエリアは大きく吹き飛ばされ、瓦礫は舞い上がり、壊れかけた屋根は吹き飛ばされた。ミコノの立っていた場所にも暴風が押し寄せ、その位置からは眩い光が見えていた。

 暫くぶつかり合っていた光線は、最後に大きく爆発を起こし、皆の視界を白く染めた。視界が元に戻ったミコノが初めに見たのは、互いに膝をつく巨人の姿だった。二人とも最早攻撃をする力が遺されていないのだろう。

 

 

『手前ぇ……名は?』

 

『……シエロだ。お前は』

 

『光ある限り闇がある。覚えておけ、俺は闇、ティエラだ』

 

 

 最後に二人は名乗ると闇の巨人、ティエラは空高くへと飛び去った。シエロは立ち上がると、左手にエネルギーをため始めた。

 

 

「……何をするつもりだ」

 

 

 司令室のドナールはいぶかし気に呟く。他の者は声を発さないが、同じような表情を浮かべていた。ウルトラマンは左手を一度大きく輝かせると、壊れた街に向かって伸ばした。左手から発せられた光は粒子となり、壊れた街に振りかけられていく。すると不思議なことに、町は映像を巻き戻すかのように元通りなっていく。

 

 

「コォォォォォォ……」

 

 

 全ての修復を終えたウルトラマンは霞となって消えていく。同時にミコノのそばには柔らかな光が集まり、それはアマタの形を形成した。戻ってきたアマタは体のあちこちに青痣を作っており、肩で息をして膝をついていた。

 その様子にミコノは何もできなかった。自分にはエレメントも発現してないし、アマタの様な特別な力もない。でも何かをしたいと考えたミコノは、アマタを正面からそっと抱いた。"お疲れ様"の言葉と共に。

 

 

 






ティエラはスペイン語で大地、シエロはスペイン語で大空です。ティエラのデザインは後日載せます。
ではまた。



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交渉 ★



お待たせしました、更新いたします。
そして今回ティエラのイメージ画像を載せました。モデルはダークファウストとダークメフィストです。



【挿絵表示】






 

 

 あの後、アマタは再び医務室に運ばれた。流石に熱は下がっていたが、新たにできた全身の青痣についての診察が行われいた。引きずられていたミコノやスタッフの行いではないと判明はしていたため、彼女らにお咎めはなかった。だが彼女今、アマタが横になっているベッドのそばにいた。いつもは微妙に眉間に皺の寄っている顔と比べると、安らかに眠っているその顔はとても幼く見えた。

 

 

「いつも一人で戦ってたのかな」

 

 

 ミコノは独り言ちた。布団からはみ出している右手をそっと握る。兄の様にがっしりとしたその腕には、よく見ると無数の傷跡が見て取れた。一体彼はどのような日々を送っていたのだろう。彼がこの力を持った時、彼にどれほどの葛藤があったのだろうか。エレメントよりも強大で力を手に入れて、恐ろしいと感じたことはなかったのだろうか?

 あの言葉、「自分を知ろうとしない者に、力を振るう資格はない」というのは、彼の経験からくるものなのだろうか?

 

 

「……アマタ君」

 

 

 正確に心音を刻む音が鳴り響く部屋で、ミコノは眠り続けるアマタの手を握ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付くとアマタは白い空間にいた。前後左右上下全てが城に染められた空間で、アマタは一人立っていた。この状況にアマタは、ただただ冷静に前を見ていた。まるでこの空間に来たのが初めてではないという様に。

 

 

「また無茶をしたようだな」

 

 

 唐突に後ろからアマタに声がかけられる。その声は少し掠れていたが、とても威厳のあるものだった。掛けられた言葉にアマタは苦笑を漏らすと、後ろを振り返った。

 そこには一人の男が立っていた。彼は灰と赤のツートンカラーのツナギの様な防護服を着ていたが、腰にはいろんな装備のついたベルトを、その肩には青の"S"と黄色の"GUTS"の文字を、そしてその背中には"ASUKA"の文字を背負った男が立っていた。

 

 

「どうしてもあの子を守りたかったんで。何故か知らないですけど、なんか魂が護れと言っていたというか、()()()()()

 

「なるほどな、その気持ちはよくわかる」

 

 

 男、アスカはアマタの返答に頷いた。すると彼の横から、また新たな人影が出てきた。その男は全身白の防護服を着ており、アスカとは意匠が異なるものの、"GUTS"の文字が見て取れた。

 

 

「だが、それで君が死んだりしたら、彼女に消えない傷を残し彼女の心に闇を残していただろう」

 

「そこは俺も浅はかだったと思っています、()()()()()

 

 

 二人目の男の指摘に、アマタは素直に頭を下げる。その様子を見て満足したのか、男は硬い表情を崩した。それを察したアマタは一度笑顔を浮かべると、再び真剣な表情を浮かべた。

 

 

「あのもう一人のウルトラマン、ティエラは自らを闇と称してましたけど」

 

「……僕が対峙したような闇ではないと思う」

 

「だが君と同じで、奴にもなにかあるだろう。君がオレ達や他の君の先達から受け継いだものがあるように」

 

 

 二人の男も真剣な顔をして考察を述べる。しかしそれだけではなく、白衣の男は更なる見解を述べる。対になる存在という発言と、アマタが変身しなければならないという衝動に駆られたように、彼とアマタには切っても切れない繋がりがあるのだろうと。

 

 

「心配ない。どんな時でも立ち上がり、不可能を可能にするのが俺たちウルトラマンの役目だ」

 

「どんな時も逃げ出さないのが大切だ。彼から言われただろ? "諦めるな"と」

 

「だからこれからも頑張れよ、後輩」

 

 

 その言葉と共に二人の男はいなくなり、アマタの視界もブラックアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めると最初に目に入ったのは天上だった。それから耳に入る規則的な電子音。そして右手を握りしめる柔らか感触と腹にかかる僅かな重さ。身を起こしてみると、ミコノがアマタの手を握りながら寝ていた。時刻は夜中の二時、眠ってしまったのだろう。

 アマタはベッドから降りると、腕を回したり腰を曲げたりして、自分の体の調子を確かめる。幸い腹が空いている以外は全て正常の様だ。エレメントも問題なく使用できる当たり、先の戦いの傷も完全に癒えたのだろう。

 とはいえどうしたものか。この後尋問が確実にあることは分かっている。だが今の状態では傷が治っても体力が戻っていないために途中で力尽きても仕方がない。このまま朝まで何もしていないのは窮屈だ。アマタは部屋を見渡し、一度目を光らせた。そのあと、部屋の一角に移動するとこの部屋から瞬時に消えていった。

 

 ミコノが目を覚ますと、ベッドは持助の空になっていた。驚いたミコノは部屋を見渡す。そして思わず椅子から転げちてしまった。患者であるはずのアマタはスクワットをしていた。しかもどこから取ってきたのか、口にはサンドイッチを加えていた。

 

 

「あ、アマタ君? 何してるの?」

 

「ん? おはようミコノさん。体が鈍っていたからトレーニングをね」

 

「もう大丈夫なの?」

 

「問題ない」

 

 

 ミコノと会話しながらも、スクワットを辞めないアマタ。彼が口にくわえたサンドイッチを食べ終わったとき、医務室の扉が開いた。扉から入ってきたのは軍服を着た赤毛の男性と眼帯を付けた壮年の男性、そしてシスター服に似た服を着た女性が入ってきた。

 

 

「アマタ・ソラだな?」

 

「そうですが、あなた方は?」

 

「私は男士棟教官のドナール・ダンテス、こちらは司令だ」

 

「そして私は女性教官を務める、スオミ・コピネです」

 

「成程。御三方、よろしくお願い致します」

 

 

 自己紹介をされたアマタは三人に対して会釈を取る。すると司令と呼ばれた人物がアマタに近寄った。

 

 

「これから少し時間をもらえるかな?」

 

「構いませんが。まぁ言いたいことは分かります」

 

「話が早くて助かる」

 

「ただし、こちらにも条件があります。一方的な交渉には応じるつもりはありませんので」

 

「構わん」

 

 

 互いに牽制しながら話を進めていき、アマタと司令、ドナールは医療室から出ていった。ミコノはミコノで、スオミに連れられて医務室から出ていった。

 とある一室に通されたアマタは、机を挟んでドナールと司令の二人と対峙した。

 

 

「さて、交渉を始める前に最初の条件を。彼女を、ミコノさんを材料に使うな。彼女は巻き込まれただけだからな」

 

「無論だ。こちらもそのようなことはするつもりはない」

 

「そうですか……良かった」

 

 

 誰にも聞こえないように漏らした安堵の声を、しかし司令は聞いた。そしてまるで自分の身よりも他人を優先するような姿勢に、少なからず驚いていた。

 

 

「それで、他に条件はあるかね?」

 

「俺自身の個人的なことではありますが、これは他の誰にも内密にしていただきたい」

 

「一体なんだ?」

 

 

 もったいぶるように話すアマタに対し。ドナールは語気を強めて問いただした。しかしアマタは気にすることなく、一度胸の前で腕をクロスさせた。そこからゆっくりとそれぞれ半円を描くようにして真横に両腕を広げると、両手中指にはめられた二色の指輪を突き合せた。

 瞬間、密室は強烈な光に満たされ、ドナールと司令は思わず目を覆った。光が収まり、アマタの立っていた場所を見ると、そこには銀色に輝く人型が立っていた。そしてその人型は先の戦いとその前の戦いで出現した巨人に、細部に至るまでそっくりだった。

 

 

「まさか……君がそうだったのか」

 

「……光の巨人」

 

『これが理由です。この先、この力を使わなければいけないと判断したときは、私の自由行動を認めてほしい』

 

「認められるか!!」

 

 

 頭に語りかけるように木霊した声に、ドナールは噛みついた。仮令相手が人以上の力を持つ存在だったとしても、ここに身を置くのであればこちらの指示に従うのが当然と考えたのである。

 司令は黙考していたが、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「……いいだろう」

 

「司令!?」

 

「考えてもみたまえ。昨日現れた闇の巨人に、アクエリアが対応できていたか?」

 

「それは……」

 

 司令の問いかけに、ドナールは答えを窮してしまった。昨日の戦い、アクエリアやベクターはアブダクターには対応できていたものの、巨人にたいして手も足も出なかったのである。結局巨人は巨人でしか対応できず、どうしようもなかったのだ。

 

 

「……しかし」

 

「それに一昨日の戦闘において、彼は初めての合体で勝利を収めた。しかも禁断の合体を行ったうえで。今我々には力が必要なんだ、この際多少の条件を呑むことも大切だ」

 

『感謝します。今この事を知っているのは、巨人の先達以外にはあなた方とミコノさんだけです。再三言いますが、このことはくれぐれも内密に』

 

「分かった。しかし何故彼女は知っている?」

 

『やむを得ぬ事情で、彼女を死なせないために目の前で変身する必要があったので』

 

「そうか」

 

 

 その言葉を締めにアマタは元に戻り、司令と悪手を交わした。

 

 

 

 






はい、ここまでです。
いや、サンプルでもイラストって難しい。よくゲームで挿絵を描いている人やpix〇vに投稿している方々はすごいですね。
さて、これでようやく冒頭部分が終わった……かな?
次回もよろしくお願いします。




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アマタの過去




話は異なりますが連投です。いやはや、ストックがあるだけでこれだけ楽になるとは思っていませんでした。今度からこうしようかな。ワードなら誤字はすぐ訂正できるし。

というわけで続きをどうぞ。


 

 

 

 交渉と精密検査を終えたアマタは、施設内の別室に通された。そこには大きな装置が鎮座しており、アマタは何やら嫌な予感を感じ取っていた。

 

 

「……これは?」

 

「貴方の過去を探る装置です。安心してください、知りたいこと以外は見られないようになっておりますので」

 

「そう……ですか」

 

 

 正直アマタの気は進まない。いくら無駄な情報が読み取られないとしても、過去を覗かれていい気がする人はいないだろう。特にアマタの場合は身の上が特殊であるため、更にいい気分がしない。

 しかしここでもたついていても仕方がない。しかたがなくアマタは案内されたように装置に座り、一種の催眠状態に陥った。その間も装置は休むことなく動いていく。

 

 

「サイコレベル深度2000、見えてきました。波形マゼンダからシアンへ」

 

「……母……さん……ひ……め……や……さん」

 

 

 催眠状態に入ったアマタは、寝言の様に二人の人間の名を呼ぶ。その様子に学園長は勿論、ドナールやスオミも怪訝な表情を浮かべた。

 

 

「俺は……俺は……また!!」

 

 

 今度は何かを悔しがるように、呻くように言葉を発し始める。『また』という発言をしていたことから、何か同じことが最低二度も起こったのだろう。

 すると突然モニターに一つの映像が映し出された。

 

 一人の少年が突風に煽られながらも、必死に前に進もうとしている。その視線の先には一人の女性がおり、輝く何かに取り込まれるように空へ登っていく。そして女性は光り輝く何かと共に空へと消え、そこには少年だけが取り残された。

 

 

『なんで、なんでだよ!! オレに力が足りないからか!! オレに覚悟が足りないからか!! オレは……オレは光を継いでも、大切な存在さえ守れないのかよ!!』

 

 

 少年の悲痛な叫びが響き渡る。髪の色や顔の特徴から、映し出された少年はアマタ・ソラ本人なのだろう。父はいないと先の交渉で報告がなされていたため、この時から今まで、ほぼ一人で彼は生きてきたということになる。

 映像はここで終わらない。

 

 

 

 

 

--------------------

 

 

 

 

 

 次に映し出されたのは一面火の海の大地だった。煙の隙間から陽光が差し込んでいることから、時刻はまだ夜になっていないのだろう。しかし崩れた町並みはネオ・ランディアとは異なるものであるため、ここではないどこかの町なのだろう。

 少年はその火の海の中心にいた。先の映像より幾何か成長している少年は、その腕に一人の少女を抱えていた。しかしその少女は既に息絶えており、少年は涙を流しつつも、空を見上げていた。見上げる先には、一人の銀に輝く巨人がいた。その巨人は胸に大きく両翼の様な赤いクリスタル体を持ち、背中には翼のようなものが天に伸びていた。

 巨人は周りの鎮火を済ますと霞のように消え、次の瞬間には少年の前に一人の男が立っていた。男は全身を黒系統の服装で統一しており、無言で少年のことを眺めていた。

 

 

『あなたは……誰ですか?』

 

『……絆……ネクサス。この姿の時は、姫矢准と名乗っている』

 

 

 元々あまり喋らない気質なのだろう。その一言を話したきり、男は無言で少年を見ていた。恐らく、男は少年が光を受け継ぐ者であることに気付いている。そのうえで少年は、まるで少年自身の覚悟を問われている気がした。しばらく互いに無言で見つめ合った末に、少年は口を開いた。

 

 

『オレは、守る力が欲しい。貴方みたいな力が。もう二度と、二度と大切な存在をたくない』

 

『……』

 

『光は神じゃない。わかっている。力を持っていても掌からこぼれてしまう、それもわかっている!!』

 

 

 少年の叫びが響き、男は無言で少年を見つめる。少年の叫びは続く。

 

 

『それでも!! オレは力が欲しい!! 護るための、包み込むための、生きるための希望の力が!! オレを、オレの能力を怖くないと、みんなのための力と言ってくれたこの子のためにも!!』

 

『オレは生きる!! 仮令矛盾や誤解を孕んでも戦い続け、そして生きる!! オレは……俺は生きるために戦い、この光を繋ぐ!!』

 

 

 少年の声はもはや枯れていた。流れる涙は少女の遺体を濡らし、煤けた頬を洗い流している。力の限り叫んでいた少年は肩で息をし、しかし少女を抱いた腕の力を緩めなかった。

 しばらく男は少年を見つめていると、男は少女の遺体を抱え上げた。少年は黙って成り行きを見守っている。男は地面に少女を横たえると、少女に向かって光を照らした。少女の体は清められていき、やがて一つの棺桶に入っていた。棺桶の中は色とりどりの花で埋め尽くされており、その身は純白の衣装に包まれていた。

 

 

『……自分で埋葬するんだ。お前自身の力で。』

 

 

 男はそれだけを告げると近くの瓦礫に座り込み、少年を見つめた。少年は涙をぬぐうと腕を胸の前でクロスさせ、不可思議な力で地面を掘り始めた。

 

 

 

 

 

--------------------

 

 

 

 

 

 それからも映像は次々と移り変わっていく。姫矢と名乗る男のそばで安定していなかった少年の力は定まり、それによって少年の体も変わっていった。年齢と共に外見が青年へと変わっていくのは勿論、身体能力は人間離れしたものへと変わっていく。

 そして成長していく少年の記憶の中には必ず巨人の姿があった。時には宇宙で、時には別の星で、時には怪獣墓場と称される場所で。様々な姿の巨人たちと共闘や修行を繰り広げていた。およそ十六歳前後の少年が経験する、否、人間が経験するには濃密過ぎるともいえる生き様に、室内は静まり返っていた。

 最後に、ここ最近ともいえる姿の少年が出てきた。彼の目の前には姫矢と名乗っていた男が変わらぬ姿でおり、少年と向き合っていた。

 

 

『……姫矢さん』

 

『……お別れだ』

 

『また、別の時空へと?』

 

『本来私は、誰かに特別に関わることはない。私は私のやるべきことのために行動するのが主だ』

 

『……はい』

 

 

 男の言葉に、青年となったアマタは頷く。しかしその顔からは悲しみがぬぐい切れていなかった。男はそんなアマタを優しく見つめている。

 

 

『忘れるな。光は絆だ。誰かに受け継がれ、再びその者と共に輝く。君は君の光を受け継いでいくといい』

 

『……はい!!』

 

『……私の名を教えよう。私はノア。そしてこれが君につたえる最後の言葉だ。「諦めるな」』

 

 

 その言葉を最後に男の体は光に包まれ。宇宙の彼方へと消えていった。そしてそれを最後に映像は途切れた。

 

 

 

 

 しかし映像が切れてもアマタは目を覚まさなかった。それどころか多量の汗をかき、荒い呼吸を繰り返している。

 

 

「ッ!? 急いで医務室に運べ!!」

 

 

 いち早く事態を把握したドナールは周りに指示を出し、アマタを治療室に運ぶよう伝達する。そこからの行動は早く、アマタは寝台に横たえられた状態で治療のために運ばれていった。

 運ばれる様子を見ながら、ドナールは部屋の片隅に視線を向けた。そこから気配は感じられなかったが、そこには確かに誰かのいた形跡があった。しかしドナールは何も言わなかった。いずれはばれること、しかし見ていたのがあの二人ならば、むやみやたらに他人に言いふらすことはないだろうと考えた。

 

 

 






はい、ここまでです。
実はあともう一話分アクエリオンの書き貯めがあるんですが、時間をおいて更新しようと思います。遅くとも明日中には更新するのでご安心を。

では皆さん、またいずれかの小説で。




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集まる歯車



はい、時差ボケで更新しようとしたら寝ていたシエロティエラです。次の日に更新するとか言っておきながらこんなに火を開けてごめんなさい。
ではストック分の更新です、どうぞ。





 

 

 

 目を覚ますとアマタは三度医務室で寝ていた。この施設に来てからと言うもの、三回ほど意識を失ったが、三階ともこの医務室で目が覚めた気がする。もういっそうのことこの医務室で寝泊まりしようか。なんて馬鹿なことを考えていると、近くにいた男が声をかけてきた。

 

 

「よぉ、目が覚めたか?」

 

「……あんた誰だ?」

 

 

 ニット帽を被った青年が話しかけてきたが、名前も知らないし勿論顔も知らない。それに気づいた青年はベッドから少しだけ距離を置いた。

 

 

「おっと悪ぃ、俺はアンディ・W・ホイール。気軽にアンディって呼んでくれ」

 

「……よろしく。俺はアマタ、アマタ・ソラだ」

 

 

 挨拶を交わした後、二人は軽く握手をした。と、そこにカイエンもやってきた。何やら複雑そうな顔をしているが、アマタは気づかないふりをして話しかけた。

 

 

「あなたは、確かミコノさんのお兄さんの……」

 

「カイエンだ。お前はアマタ・ソラでいいな」

 

「ああ」

 

 

 互いに真っすぐ目を見つめて口を開く。軽くはない空気になったため、アンディは少々戸惑っていた。しかしそんな彼の様子を気に留めず、二人は話を続ける。

 

 

「話したいことがある。時間はあるか?」

 

「構わないよ」

 

 

 たった二言でこの後の予定を決めた二人は、さっさと医務室を出ていく。手持無沙汰になったアンディは、アマタとカイエンの後を追って食堂に向かった。先ほど覗き見た映像のことも聞きたかったために。

 三人で食堂の席につき、三人そろってカレーを口に運ぶ。無言で食器と当たる音と小さな咀嚼音を響かせる中、最初に口を開いたのはアマタだった。

 

 

「それで、聞きたいこととは?」

 

「ああ……()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 流石に声を落としているが、あまりにも直球な質問に思わずアンディは咽てしまった。彼もこの質問をするつもりだったが、もう少しオブラートに聞くつもりだった。しかしカンエンによって、いきなり本題に入ってしまったのである。

 対するアマタはスプーンを置き、顔の前で手を組んで瞑目した。しばらくその状態でジッとしていると、アマタは目を開いてカイエンに視線を向けた。

 

 

「俺自身、ウルトラマンと名乗ってるわけではありません。神話でも有名なウルトラ六兄弟とは出処が全く異なりますし、彼らの様に何万年も生きているわけではない。俺は先人たちの光を受け継いだだけです」

 

「だが、今回とその前に出てきた巨人はお前なのだな?」

 

「否定はしません」

 

 

 アマタ自身、カイエンとアンディに知られるのは構わないと思っていた。二人とも他人に言い降らすような人間ではないと感じているし、特にカイエンはバレる様な行動や事態が起こっているため、仕方がないと考えている。

 一方カイエンは全員が食べ終わった後、更に口を開いてアマタに質問した。

 

 

「まだ聞きたいことがある」

 

「何なりと」

 

「お前とミコノの関係は?」

 

「「は?」」

 

 

 あまりにも唐突な質問に、思わずアンディと揃って声をあげてしまった。しかしカイエンにとっては重要な質問の様で、先程よりも真剣な顔をしている。その様子にアマタは、今までのカイエンの人柄の印象を少し改めた。ただ妹に対して過保護で不器用な男なのだと。

 

 

「彼女が落とした財布を届け、その縁で礼をされていた関係だ。あなたが疑うような男女の仲ではないから安心しろ」

 

「巻き込んだわけではないのか?」

 

「むしろ巻き込んでしまって申し訳なく思っているところだ。彼女は今?」

 

「今日帰る予定らしい」

 

「見送りはしないと?」

 

「……」

 

 

 アマタの問いかけにカイエンは黙りこくった。アマタはそれを静かに見つめている。そして完全に第三者となってしまったアンディはというと。

 

 

(おいおい、何だよこの空気!! 物凄く脱け出し辛いじゃねえか!?)

 

 

 非常に混乱していた。しかし不幸かな、今の彼に救いの手を差し伸べる者は一人もいなかった。

 

 

『ネオ・クローンにアブダクター出現。総員第一種戦闘配置につけ。出撃メンバーはアンディ、カイエン、そしてアマタだ』

 

 

 そこに突如鳴り響くサイレン。本当は安堵していけないのだが、アンディにはこの場を抜け出す救いのように思えた。

 三人で揃ってゲートに向かい、全員戦闘服に着替えてベクターに搭乗する。それぞれ出撃準備を整えている中、アマタへカイエンから通信が入った。

 

 

「戦闘経験が豊富とはいえ、ベクターに乗るのはこれが二回目だろう。だがしくじるなよ?」

 

「しくじるつもりはありませんよ。俺の誓いのためにも」

 

「おっ、頼もしいね」

 

 

 軽口(?)を叩きつつも、目と鼻の先にあるネオ・クローンに向かう三機のベクター。そこには前回の巨人や前々回の人型未確認機の姿はなく、通常のアブダクターだけがいた。

 

 

『ヘッドはカイエン、アクエリオン、合体しろ』

 

「了解!! GO、アクエリオン!!」

 

 

 カイエンが駈るベクターイクスを頭部とした合体が行われ、男性機だけによるアクエリオンが完成した。

 

 

「アクエリオン、ゲパルト!!」

 

 

 到着したアクエリオンは早速ガンポッドを放ち、アブダクターに攻撃を仕掛けた。アブダクターも反撃してくるも、アクエリオンによって次々に撃墜されていく。

 

 

「おかしい、あまりにも簡単すぎる」

 

 

 あまりにもスムーズに事が運んでいることに、アマタは疑問を持った。勿論手っ取り早く終わるに越したことはないのだが、まるで誘われているような感覚に陥る。そしてアマタの疑問は決して杞憂ではなかった。

 アクエリオンゲパルトが両肩のミサイルポッドで一斉掃射をし、アブダクターの数を一気に減らした時に隙が生まれ、反撃を受けて一気に周囲を囲まれた。アブダクターの頭脳プレイにアマタとカイエンは更なる疑問を宿す。アブダクターは基本無人機、決まった動きをするのが常識だ。しかし明らかに誰かが操ったような動きに戸惑ってしまう。

 

 

「カイエン、暫く回避に意識を割いてくれ」

 

「策はあるのか!?」

 

「ないことはない。少し時間かかるが」

 

「なんでもいいから急いでくれ!! 頼む!!」

 

 

 二人の許可を得たところで、アマタの目が光った。そして何かを探すようにせわしなく目を動かす。そして上空のある一点、はるか遠くに一つの影を見つけ出した。それは以前出現した人型の未確認機だった。そしてアマタの目は更に多くのものを見抜いた。その人型の機体は搭乗員が操縦していることを。

 

 

「カイエン!! これから表示する座標にミサイルを撃て!!」

 

「分かった!!」

 

 

 はるか上空、アクエリオンのレーダーにも反応しない座標に向かってミサイルを打つ。結果ミサイルは全弾レーザーによって撃ち落とされて命中しなかったが、指定した場所に敵のブレインがあることが判明した。

 しかし敵も一筋縄ではいかない。自分たちの頭脳を潰させないように攻撃をし、防御をし、アクエリオンの妨害をする。アクエリオンも次第に傷つき、動きが荒くなっていく。

 

 彼らの戦闘の激しさは地上からでも確認できた。未だ学園の近くにいたミコノは、高所から戦闘の様子を眺めていた。戦っているのは男性型機、もしかしたら兄が搭乗しているかもしれない。アマタが変身せずとも搭乗し、戦っているかもしれない。いくらウルトラマンとはいえ、こうも連戦だと彼の精神にもよくない。しかし自分にはエレメント能力が発現していないため、何お助けにもなることが出来ない。ミコノは悔しかった、守られているだけの自分が腹立たしかった。

 拳を固く握りしめながらミコノは激しい攻防を見守っていた。だがその彼女に近寄るものがいた。

 

 

 

 






はい、ここまでです。
次回、いよいよあれが出てきます。それにしてもタイプチェンジの名前とデザインが思い浮かばない。いや、名前はなんとか思いつくんですけど、デザインが。ティガのようにするかダイナのようにするか、はたまたゼロやネクサスのようにするか迷ってマス。

ではまた、いずれかの小説で。




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復活の技、繋がる心



お待たせしました、約二か月ぶりのアクエリオンの更新です。
今回は今までよりも長くしております。
ではどうぞ





 

 

 

 アブダクターとアクエリオンの戦いは続いている。一機一機、確実に敵機は撃墜されているが、アクエリオンも撃墜されるのは時間の問題だろう。事実、動きが先ほどに比べると少々乱雑になっており、攻撃が機体をかすめたり、逆に敵に攻撃が当たらなかったりしている。仮にアブダクターを全機墜としたとしてもあとに来るのは万全の人型機、敗北の色が刻々と濃くなっていく。

 その様子をミコノも地上から見ていた。三機のベクターから成るアクエリオン、誰が搭乗しているかはわからないが、時折アクエリオンから漏れる光により、確実にアマタが乗っていることが理解できた。そして理解したからこそ、ミコノは眺めることしかできない自分に腹が立ち、悔しく思った。

 アマタとは出会って一週間も経っていない。しかしその短期間でアマタは何度も戦いに赴いている。ウルトラマンとして、そして緊急ながらもパイロットとして命を貼り続けている。それに対して自分はどうだろうか。いつも兄や親の背に守られ、そして今も尚、この地にいる人々の一人にすぎないにしてもこうして守られてしまっている。何も成長していない。エレメントがあれば、なんて言葉は言い訳だ。逃避しているに過ぎない、

 

 

「……悔しい」

 

 

 そう独り言ちるミコノ。周囲に誰もいないと思っていたがゆえに出てきた言葉だった。

 

 

「ならば君はどうしたい?」

 

「わひゃあっ!?」

 

 

 だから急に後方から声をかけられたら変な声が出るのも仕方がないのだ。ミコノが咄嗟に振り向くと、そこには編み笠に着物姿と、一昔前の風来坊のような人が立っていた。失礼だが、雰囲気からして怪しすぎる。

 

 

「もう一度聞こう。君は悔しいと言った、ならば君はどうしたい?」

 

「わ、わたしは……」

 

 

 頭に思い浮かぶのは兄とアマタの顔。言動に差異はあれど、彼らは確かな意志を持って戦いに臨んでいた。書して自分は。

 

 

「私は……守られて、見ているだけ」

 

 

――俺は自分の感情如何でエレメントが発動してしまう。自分を御しきれてない証拠だ。

 

――この力、最初に自覚したときは怖かったさ。でもこれを御せなかったらもっと恐ろしいことが起こる。俺はもうこの力のせいで失うのは嫌なんだ。

 

 

 

 アマタ(かれ)の言葉が頭に響く。彼がどのような経緯で戦いに身を投じたのかは分からない。きっと自分の考えもつかない多くの葛藤があったのだろう、いや、今も悩み続けているのかもしれない。そう考えると、自分の悩みがちっぽけなものに思えて仕方がなかった。彼は恐れながらも前に踏み出し、私は蹲っているだけだったのだ。

 もう一度アクエリオンに目を向ける。動きは先ほどよりも更に荒いものになっており、最早時間の問題だった。

 

 

「私が踏み出したら彼らの……アマタ君や兄の力になれますか?」

 

「あるいは」

 

 

 男の返答にもう一度戦闘に目をやる。

 

 

「本当に不器用な男たちだ。一人は大切なものを護るために一つの方法しか知らない、そう、自らが傷つくこと以外知らない」

 

「もう一人も、他には方法がないのかと探りつつも、結局は他の誰かが手を汚す前に自分で始末をつける。辛くとも泣きたくとも耐え忍び、一つ間違えれば修羅になることも自覚しつつ、それでも祈るように拳を振るう。(しろがね)の仮面と鎧で覆いつくして」

 

 

 男の言葉を聞いたミコノは目を瞑り、深く息を一つした。そして風来坊の様な男の方に、先ほどまでとは違い、強い決意を感じさせる目を向けた。

 

 

「私、いきます!!」

 

「君に出来るのかね? 今まで守られていた君が」

 

 

 男は試すように言葉を紡ぐ。

 

 

「確かに私は守られてばかり、もしかしたら役に立つどころか最悪の事態を招くかもしれない。でも、それでも私は手を伸ばしたい、彼らと手を繋ぎたい!!」

 

 

 ミコノの言葉を聞くと、男は口元に笑みを浮かべた。まるでその言葉を待っていたかのように。

 

 

「その意気や良し!! ついてきたまえ」

 

 

 男に先導される形で、ミコノはある場所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのころ、司令室では混沌とした状況になっていた。

 

 

「アンディのスピリットレベルが低下!! このままでは!!」

 

 

 一対多の状況でよく持ったとも思うが、流石に疲弊したのかダメージも受けてしまい、合体の維持が難しくなっている。

 

 

「こうなっては司令、シュレードを投入しましょう!!」

 

 

 ドナールが司令に進言する。シュレードは優秀な男性パイロットであり、且つカイエンとは親友同士であることから、急な投入でも互いに合わせやすいと判断したがためだった。しかしシュレードは体が弱く、ドナールの隣にいたスオミは彼の心配をしていた。

 

 

「しかし彼は体が……」

 

「だったら総員チェンジで、ここは女子がいきます!!」

 

「MIX!?」

 

 

 しかしそれらのいくつもの進言を聞いても司令は黙して何も言わなかった。騒然としている室内であった、がここで一つの声が場を沈黙させた。

 

 

「エレメントチェンジ!! アンディ・W・ホールを強制排出、パイロットはミコノ・スズシロ!!」

 

 

 声の発生源は司令席の更に後方、突如出てきた椅子に座っていた風来坊からだった。何故かその男の膝の上に一人の少女を座らせていたが。

 

 

「ええ!?」

 

「はあ!?」

 

「ふざけるなおっさん、部外者が指図するんじゃねぇ!!」

 

 

 突然の侵入者に皆声を上げる、が司令の次の行動によって、室内は驚愕に包まれた。

 

 

「お待ちしておりました、不動・ZEN総司令」

 

「「「そ、総司令!?」」」

 

 

 流石に司令よりも上の立場たる総司令とは思わなかったようだ。しかし見た目が怪しすぎるために司令以外は男を信用していなかった。そして当の本人はいつの間にか着替えたのか貴族の様な出で立ちになっており、ミコノをパイロット席に座らせていた。そして彼の指導の下、ミコノはアンディの乗っていたベクターへと転送された。

 

 

 

 

 

 

 戦闘中だったアクエリオンは合体が解除され、その時アンディの乗っていたベクターにミコノが搭乗してきた。

 

 

「ミコノ!?」

 

「ん?」

 

 

 突然のミコノの登場に、カイエンは驚愕に、アマタは意外そうな表情で彼女を見ていた。しかしこのまま呆けていても仕方がない。どうやら彼女は自分の意志でこの場にいるようだし、とやかく言うのは間違いだろう。そう判断したアマタはカイエンとミコノと共に合体することにした。

 

 

「行くぞ、二人とも。雪解け合体、GO!! アクエリオン!!」

 

「アクエリオン・EVOL!!」

 

 

 新たに合体したアクエリオンを駈り、ビームなどを駆使して残っていたアブダクターを撃退していく。

 

 

「お前だけは……お前だけは戦場に立たせたくなかったのに」

 

 

 カイエンは嘆く。冷たい態度を取ったりと妹を戦場に越させないために行動してきたのに、結局はこの場に来てしまった。故に自分の力の至らなさを悔いていた。しかしその様子を見たアマタは、わざわざ回線を開き、カイエンとミコノの間に割り込んだ。

 

 

「あんた、まだ気づかないのか」

 

「なに?」

 

「彼女は守られるだけなのが嫌だったんだよ、オレも今分かったがな。あんたはいい兄だ、今までも、そしてこれからも彼女のために行動するのだろう。だが、思うだけではいけなかったんだ。思いは伝えて意味を為す、そんな簡単なことを忘れていたんだ。オレもあんたも」

 

 

 アマタの言葉にカイエンは黙った。しかし彼は気づいていた、アマタもまた自らの不甲斐なさを悔やんでいることを。表情にこそ出てなかったが、言葉の端々にそれが感じられた。

 

 

「ミコノさん、何故乗ったんだ? 危険なのはわかっていただろう?」

 

「うん、わかってる。でも私、二人ともう一度手を繋ぎたかったから」

 

「そうか……ならいこう。光は絆だ、受け継がれた光は再び輝く!!」

 

「そうか、もう決めたのだな、ミコノ。……なら俺も腹を括ろう」

 

 

 ようやく、心が通わされた。アマタがそう判断したとき、何やら高鳴りのようなものが三人に沸き起こった。

 

 

「なんだ、この感覚?」

 

「何だろう……ワクワクする」

 

「このトキメキ……心を、手を繋ぐ、鼓動が高鳴る!!」

 

「天を貫く、空を駆ける!! 彼方へ届くオレ達の思いは――無限大だ!!」

 

 

無限拳(MUGEN ATTACK)!!≫

 

 

 アクエリオンの背中についているスラスターが展開され、アクエリオンはその拳を伸ばす。突き出された拳は伸び続け、逃げるアブダクターを流さず落としていく。それでも拳は勢いを止めずに伸び続ける。

 

 

「伝説の技、無限拳が今蘇った!!」

 

 

 不動の口から発せられた言葉。その言葉に違わぬように、拳は限界を感じさせずに伸びていく。一方パイロットたちは技を出したのはいいが、止め方がわからずに拳は伸び続ける様に戸惑っていた。また別のことでもカイエンとミコノは驚いていた。精神世界の様な空間、自分の全てがさらけ出されているような空間で、アマタのいる場所には人型がいた。

 全身は銀色であり、赤と青のラインが全身に張り巡らされている。胸には輝くクリスタルがあり、双眼は乳白色の優しい光を讃えている。

 

 

「お前……話には聞いていたし見ていたが」

 

「やっぱり本当なんだね」

 

「……ああ」

 

 

 伝説で語られるウルトマラン、自分たちと共にいる青年の本来の姿。彼がどのような道を歩んできたのか、どのような思いを持っているのかは分からない。

 そんな中ミコノは不動の言葉を思い出していた。「どんな辛さも哀しさも、その銀の仮面と鎧で覆い隠す」と。それはいばらの道、彼の行く先はもしかしたら破滅かもしれない。隠れていてもいずれは許容量を超え、決壊し、それこそ修羅の道に入ってしまうだろう。それだけは駄目だ。そう感じたミコノは彼に寄り添う。アマタは一人じゃない、ウルトラマンでなくとも自分たちがそばにいるという思いを込めて。

 カイエンもアマタの様子に何か感じたのだろう。ミコノとは反対側に回り、アマタの肩に手を置く。アマタの背中、それはとても力強く感じられたが、同時に恐ろしく孤独なものとカイエンには感じられた。愛しい妹が戦場に出ることになったのは残念で仕方がないが、彼女がはじめ巻き込まれたときに守ってくれたのは他ならぬアマタである。

 アマタの体から力が抜けていく。体を包み込んでいた輝きを収まり、穏やかなモノへと変わっていった。

 

 

 

 

 結局無限拳は留まることを知らず、星を二周ほど回ったのちに学園のベルリンの壁、男女を隔てる壁を破壊して止まった。修理するのもどうかということで、総司令不動の宣言の許、「恋愛禁止」で聖天使学園は共学化した。瓦礫の後片付けもすませ、色々手続きや先の戦いの処理などを行っているとき、一つの警報が学園内、いや、町全体に響き渡った。しかしアブダクターの影はない。

 この事態にを不審に思ったアマタやカイエンらは、急ぎ司令室に赴いた。司令室に入った途端、アマタたちは騒然としている室内の空気に呑まれてしまった。職員が右へ左へと動き回り、未知の事態に動揺を隠せていない。

 

 

「何が起こった?」

 

 

 代表してカイエンが一人に尋ねる。その職員によると、突如海中に巨大な熱源反応を感知したらしい。一瞬新型のアブダクター判断されたが、明らかに生物の様な形で、且つ魚の様に移動しているのだという。

 そしてソレは地上に姿を現した。背は黒、腹は白い色合いであり、鼻の位置に巨大なドリルがついている。魚というより、イッカクという哺乳類に似ていた。

 

 

「か、怪物?」

 

「化け物か!?」

 

「いや、あれはグビラ。この星の歴とした生命体だ」

 

 

 周りが騒ぐ中、ひどく落ち着いたアマタの声が耳に残るミコノとカイエンであった。

 

 

 

 

 






はい、ここまでです。
どうしてもこの一話で今回の襲撃の話を終わらせようと思っていたら、こんなに長くなってしまいました。
そして次回、この世界で初めて対怪獣戦をやろうと思います。果たしてアマタはどう対処するのか。次回もよろしくお願いします。

それではまた、いずれかの小説で。



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巨大生物侵攻



お待たせしました。それでは最新話更新します。
それでまどうぞごゆっくり。




 

 

 

 

「あれはグビラ。この星の歴とした生命体だ」

 

 

 混乱する室内に、アマタの言葉が静かに響き渡る。そばにいたカイエンやミコノは勿論、せわしなく動き回っていた人たちも動きを止め、アマタに目を向けた。その中には不動総司令の姿もある。皆が皆怪訝な視線をアマタに向ける中、不動が代表してアマタに口を開いた。

 

 

「君は知っているのか? アレの正体を」

 

 

 不動の言うアレとは、画面に映っているグビラの姿。その目は真っ赤に染まっており、背中からは何度も潮吹きが成されている。幸いにしてか、グビラが出現したのは人のいない場所、今は死傷者がいないが、それも時間の問題である。

 総司令の問いかけにアマタは首肯で応じた。

 

 

「教えてくれ、アレは一体なんなのだ」

 

「アレはグビラ。深海怪獣にカテゴリされる、この星の生き物です。神話にも何度か出ている鼻がドリルの巨大生物とはアレのこと。尤も、本来はあのような狂暴な生き物ではありません。あの目の妖しい光様からして操られている、若しくは怒っていると考えられるでしょう」

 

「ということは、アレを鎮めれば自然に住処に帰るというのか?」

 

「ええ、そのはずです」

 

 

 アマタのその知識は何処から来たのか、何故誰ひとり知らない怪獣の情報を知っており、且つ見ただけで怪獣がわかるのかと疑問は尽きない。だがミコノとカイエン、アンディに加え、ドナールと司令、そして不動はどこか納得している表情を浮かべた。

 しかし他はそうもいかない。スオミや他の者達、特に事情を知らないMIXやゼシカらパイロットは、今にもアマタに掴みがからんばかりの雰囲気を醸し出していた。

 

 

「ベクター出撃。パイロットはカイエン、アンディ、そしてゼシカだ」

 

 

 この雰囲気を打破するかのように総司令の声が響いた。そしてそれ以外の人員は各自待機という命令が下るも、アマタは不動によって別室に連れていかれた。

 

 

「お前に聞く。アクエリオンで対処出来ると思うか?」

 

「無理ですね。アブダクターは機械だったからまだしも、あれは生き物。機械よりも更に動きが不規則で、あの子らの意志もある」

 

「主に武装で固まったアクエリオンでは難しいと?」

 

「武装のない合体が出来たのなら可能性はありますが」

 

「そうか」

 

 

 そこで会話を途切ると、不動とアマタはモニターへと目を移した。既に到着したアクエリオンが何とかグビラを誘導しようとしているが、逆にグビラは気を荒立たせている。このままでは暴れだし、最寄りの都市が被害を受けるだろう。

 

 

「アマタ・ソラ。君はこの状況を打破できるか?」

 

「あるいはできるかと」

 

「その場合、アレを殺すのか?」

 

「そのほうが簡単でしょうが、オレは無駄な殺生は嫌いです」

 

 

 そう答えたアマタに、不動は満足そうな笑みを浮かべて扉を開いた。

 

 

「ここから出るといい。被害が出ないように好きにやれ」

 

「はい」

 

 

 指定された場所を通り、暫く通路を行くと、アマタは学園の外にいた。そして周りには人がおらず、ここで変身しても誰にもバレることはない。すぐに等身大に変身したアマタは空に飛び、雲に紛れて巨大化しながらグビラの許に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのころアクエリオンは、グビラを攻撃しないようにしつつ、都市部から離そうと四苦八苦していた。

 

 

「それにしても、攻撃したらいけないのがこんなにきついとは」

 

「疲れるわ、いい加減大人しくならないかしら」

 

「同感だけどもう少しの辛抱じゃないか?」

 

「どういうことよ?」

 

 

 アンディの言葉にゼシカが疑問を呈するが、カイエンはどこか納得したような表情を浮かべた。彼の視線の示す先、巨大な熱源反応が高速でこちらに向かっているのが分かっていた。そしてそれが思た通りの者であることも。

 

 

「こういう時は本当に頼もしいな」

 

「その通りだ」

 

「一体何の話よ……。ん? 何よこの反応!?」

 

「頼もしい増援さ」

 

 

 アンディがそう言うや否や、グビラのそばに輝く巨人が降りてきた。グビラはその衝撃で軽く後退り、アクエリオン搭乗者たちはその眩しさに一瞬目を細めた。

 グビラは一瞬怯んだものの、すぐに臨戦態勢に入ってウルトラマンに襲い掛かった。鼻のドリルを回転させて突進してくるが、ウルトラマンは頭と顎下に手を入れ、突進を止める。そしてそのまま合気道の様に突進の力を利用し、グビラを都市とは逆方向に投げ飛ばした。

 

 

「私たちも加勢しよう」

 

「そうだな」

 

 

 アクエリオンは武器を収めたままウルトラマンのそばに降り立つ。しかしウルトラマンはアクエリオンの前に立ち、首を横に振った。

 

 

「!? まさか、一人やるつもりか?」

 

「ちょっと、なんでよ?」

 

「分からん。だが奴の様子を見る限り……」

 

 

 カイエンらパイロットはウルトラマンを見た。無言でこちらを見つめる光る双眼は、こちらの手出しを望んでいないことを告げていた。そしてその真意を、カイエンとアンディはわずかながら読み取った。それは曲がりなりにも彼の巨人の正体を知り、彼の気質もわずかながら理解しているゆえである。

 

 

「……任せていいのだな?」

 

「……シェア!!」

 

「わかった、信じるぜ」

 

「なんなのよ、もう」

 

 

 カイエンとアンディはそう応えると、アクエリオンの合体を解除し、三機のベクターに戻った。が、やはりというべきかその場に滞空し、事の成り行きを見守ることにしたようだ。

 

 

「司令、これよりベクターは待機状態に移行する。緊急時は即時合体し対応します」

 

『了解した。各機滞空したまま事に当たれ』

 

「「「了解」」」

 

 

 司令の許可も下りたところで、ベクターはウルトラマンの邪魔にならない場所で滞空した。ついでにカイエンはコックピットにてこの戦いを記録し始めた。

 ウルトラマンはベクターが離れたことを確認すると、グビラに向き直った。投げられたグビラは態勢を立て直し、もう一度突進してきていた。次も投げ飛ばそうとウルトラマンは身構える。しかしグビラは突進ではなく途中で上体を起こし、一気にウルトラマンにのしかかってきた。流石のウルトラマンもこれを交わしきれず、まともにのしかかりを受けてしまう。

 

 

「ガアアアアアアアアアア!!」

 

「ンウウ!? シェエア!!」

 

 

 のしかかったまま足踏みするグビラだが、渾身の力を込めたウルトラマンに再び投げ飛ばされた。投げられたグビラは態勢を治そうと暴れているが、中々立ち上がれない。

 

 

「コォォォォォォォォォォォ……」

 

 

 立ち上がったウルトラマンは一度息をつくと、長く息を吸い込み始めた。気のせいだろうか、彼の左腕のブレスレットと額の宝玉が、うっすらと青い輝きを放っている。

 

 

「……ォォォォオオ、シェアッ!!」

 

 

 吸い込み切った息を吐き出すように力を入れたウルトラマンは、左手首を額に当てる。すると辺りは眩い青色の光に包まれた。光が止むと、先ほどまで打って変わって青と銀のみで体を染めたウルトラマンが立っていた。右腕のブレスレットはなく、透明だった額の宝玉は真っ青に染まっている。

 

 

「ハァァァァァァァアアア……」

 

 

 蒼く姿を変えたウルトラマンは右手から肘にかけてエネルギーをため始める。右拳を握りしめて腰の位置に置き、左手でその拳を包み込む。それでも抑えられない輝きが指の隙間から漏れ出す。

 

 

「ガアアアアアアアアアア!!」

 

 

 ようやく立ち上がったグビラは再びウルトラマンのほうを向き、鼻のドリルを回転させた。

 

 

「『レリーヴィング・ストリーム』……シェア!!」

 

 

 一際強い輝きを讃えた右手をグウルトラマンがビラに突き出すと、輝きとは趣の異なる柔らかな光の波が幾筋も発せられ、グビラを包み込んだ。光に包まれたグビラはしばらくもがいていたが次第におとなしくなり、ついには蹲って動かなくなった。一瞬グビラは死んだのかと思われたが、光が止むとそこには鼾をかいて寝ているグビラの姿があった。

 

 

「怪獣の鎮静化を確認。これよりベクター各機は帰投する」

 

『了解、周囲の警戒を怠らず帰還せよ』

 

「「「了解」」」

 

 

 鎮静化を確認したパイロットたちは、それぞれ船首を学園のほうに向けた。それを見たウルトラマンはベクターに向かって頷くと、グビラの頭を一度撫でて、両手で持ち上げたままどこかへと飛び去って行った。

 

 

「なんつーか光線とか出すから怖いイメージがあったけど」

 

「結構優しいのね、あの巨人」

 

「……そうだな」

 

 

 カイエンたちは各々今回の感想を言い合う。しかしカイエンはウルトラマン、アマタが取った手法がいかに難しいかを理解していた。恐らく彼がこの方法を取れるようになるまで、膨大な時間がかかったのだろう。その間、殺したくなくとも何匹もの怪獣を倒してきたのだろう。性根が優しいアマタのことだ、表面上は平気そうにしても、その心はその度に泣き崩れ、擦り減らしていたのだろう。彼の過去を考えると、素直に喜びの声をあげることが出来ないカイエンだった。

 

 

 

 





はい、今回はここまでです。
次回はこの小説におけるキャラ設定をもう少し細かく書いていきます。
そしてハリポタですが、もう少しお待ちください。何分年末やらクリスマスやらで親戚菅家のことが忙しものでして。

それでは皆様、またいずれかの小説で。



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運命の二人



一年半ぶりの更新になります。
正直そこまで時間が経つと、大元の話の流れとかを忘れてしまいますね。というわけで、この小説は、EVOLを観返しながら書いておりますゆえ、話の展開も遅くなると思います。

ではどうぞ。




 

 

 

 グビラの出現から一日が経過した。先の戦闘で崩壊した学園の壁は取り払われ、学園は新たに共学体制として歩み始めた。ただし、『恋愛禁止』を根底としたものであり、相も変わらず男女の精神的な壁は立てられていた。

 

 

「今日は課外授業を行います」

 

 

 スオミの発言と共に、生徒全員にプリントが配られる。あえてここでいうが、共学化したために、教室にも男女が混ざって入っている。

 

 

「共学化したことによって、色々と戸惑いを覚える生徒も多いと思います。この課外授業はそのような精神的隔たりを少しでも解消しようと、設けられたものです」

 

「まぁ少しでも仲間意識を育もうとすることには賛成だけど」

 

 

 スオミの説明を聞きつつ、アマタはプリントに目を落した。そこには今回の課外授業の予定とメンバー表が描かれている。

 

 

(プールでに散歩にホテルの喫茶店。もはやレクリエーションというよりデートコースのようになっているのだが)

 

 

 アマタの思考を裏付けるように、周囲にいた女子生徒も、ひそひそとした声で会話をしていた。ついでに周りにいる男子たちに、チラチラと視線を送っていた。中でもある程度噂や写真がある男子生徒たちは兎も角、今日から学園に編入したアマタに、視線は集まりがちであった。

 

 

「これってネオ・クローンの定番デートコースだよね?」

 

「そうよ、楽しみだわ!!」

 

(『恋愛禁止』を謳い乍ら、生徒にデートコースを歩かせる。明らかに矛盾しているけど、過去にアクエリオンについて、恋愛がらみでなにかあったのか? そうでなければこんなことはしないはずだが……。というより、先程から周囲の視線が半端じゃなく集まっているな)

 

 

 戦闘、計算能力、計略、経営などなど、様々な知識を身に付けていても、女心にはめっぽう疎いアマタである。だからアマタのすぐ隣で、ミコノが無自覚ながら、若干眉根を寄せ気味になっている理由も理解していない。加えて女性の視線が集中している理由も、新顔の自分が物珍しいという内容に落ち着いてしまっていた。

 

 

「さて、俺のグループは……ミコノさんだね」

 

「うん、よろしくね」

 

「あとは……ゼシカさんか? というか男一人に女性二人って」

 

「レクリエーションだし、仕方ないんじゃない? あっ、あたしがゼシカだよ。よろしくね」

 

 

 二人に近寄ってきたのは、明るめの緑色をした髪に露出が多めな服を着た快活そうな少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオ・クローンの街中を行き来する遊覧船にアマタたちは乗船していた。ゆっくりと流れる景色を横目に見ながら、アマタは両手の指輪を外し、一度両手で光ごと包み込み、中から片手に付ける様な手甲を取り出し、右腕にはめ込んだ。手の甲には、先程の二つの宝石が付属している。

 

 

「アマタ君、何してるの?」

 

「綺麗な宝石だよね」

 

「ああ、これか。これはオレの力の根源みたいなものだ」

 

「力って、エレメントの?」

 

「そんなところさ」

 

 

 ゼシカとミコノの言葉に反応しつつ、アマタは指ぬきグローブを手甲の上に付け直した。

 船での遊覧が終わり、三人はネオ・クローンの繁華街へと足を踏み入れた。レクリエーションに参加している生徒は勿論のこと、ネオ・クローンの住民たちも遊びに訪れており、非常ににぎわっていた。

 そんな街の人の様子を、眩しい様子でアマタは見つめていた。

 

 

「なんだかアマタ君お兄さんみたいだね。見守っているというか」

 

「な~んか年不相応に落ち着いているというか、カイエンさんとはまた違った色気があるというか」

 

「い、色気?」

 

 

 ゼシカのいきなりな言葉に、ミコノは動揺してしまった。別段ミコノは「おぼこ」というわけではない。まぐわい経験こそ当たり前だがないが、最低でも学び舎で教わる知識は持っている。決して世間知らずというわけではないが、そう言った話をする者が周りにいなかったのだろう。余りその手の話には耐性がなかった。

 

 

「え~だって、見てみなさいよあの横顔。キリッとした精悍な顔に、時々浮かべる憂いを帯びた表情。加えて眉間に皺を寄せつつも、慈愛を含んだ視線。極めつけは服の上からでもわかる、調度よく鍛えられた体に、大きな背中の頼もしさ」

 

「う、うん……」

 

「間違いなく優良物件よ。まぁでも……」

 

 

 そこで会話を切り、ゼシカはアマタへと視線を向ける。つられてミコノも視線を向けると、そこには女性たちに囲まれ、非常に困惑した顔をしたアマタがいた。ゼシカの評した通り、基本的にアマタは外見はいい。加えて本人の気質もあり、人当たりも表情以外はいい方である。

 それ故か、学園に編入する前も、何度か同じような事態に陥ったが、その時はバイト中という対策をとることができた。しかし今は課外授業中、バイトという口実は使えないし、何よりもそのような言い訳はミコノとゼシカに失礼である。だからか、非常に困った表情で、彼は二人に助けを求めていた。

 

 

「アレを見る限り、根っこから女性慣れしていないみたいね」

 

「そうだね」

 

「んじゃ、助けてほしそうだし、いきましょうか」

 

 

 ゼシカはそう言うと、アマタのもとへと近寄っていった、ミコノもそれに続くように近寄り、女性たちがいなくなったのはそれから五分ほど経過してだった。

 

 

 時間は流れ夕方。街を堪能した三人は、クローン・タワーの展望台にいた。三人で並んで夕焼けを眺め、一日の終わりを満喫する。課外授業という名のレクリエーションが終わるのももうすぐである。

 

 

「アマタ君、今日は楽しかった?」

 

「ん? ああ、久しぶりに、ゆっくりと出来たよ」

 

「久しぶりって、普段なにしてるの?」

 

 

 他愛もない話をしながら暁色の空と夕日を眺める。

 

 

「『地球の夕焼けは美しかった』」

 

「「えっ?」」

 

 

 黙って夕日を眺めていたところ、徐にアマタが口を開いた。

 

 

「『取り分け日本の黄昏は。あの陰翳礼讃(いんえいらいさん)が何よりの土産だったよ』。これは知人がある星に行った際に抱いた感想だそうだ」

 

「星って、別の星ってこと?」

 

「ああ。こことは別の星で生まれて、また別の星を訪れた知人さ。地球という星を愛し、愛したが故にその星の人間がその真の美しさに、気付かないことに悲しんだ宇宙人の」

 

「宇宙人ってそんな……」

 

「その知己が言っていたよ。この星の夕日も、負けず劣らず美しいと」

 

 

 懐かしそうに顔を綻ばせ乍ら、アマタはそう語った。とても大事な知り合いだったのだろう。

 

 

「その宇宙人さんは?」

 

「……数年前、街一つを壊滅させた大災害でね。でも最期まで、この美しい星に来れたことを喜んでいたよ」

 

「……そっか」

 

「ねぇ、アマタ君は見たことある? その地球って星を」

 

「そうだな。とても美しい、蒼い星だったよ。これは、彼女が撮影した写真だね」

 

 

 彼はそう言うと、懐から写真を取り出した。そこには太陽の光を受けて、漆黒の海に青々と輝く、一つの星が写っていた。成程、確かに話に聞いた通り、綺麗な星だ。

 

 

「大切な人だったんだね」

 

「うん。オレの『力』を怖くないと、人を守れる力だと初めて教えてくれたヒトだった」

 

 

 少ししんみりとした雰囲気となったが、ミコノはそれ以上追究しないことにした。誰にでも語りたくない過去、つらい過去があるものである。ゼシカは知る由もないが、ミコノはアマタの事情も少なからず分かっている。だからこそ、彼のスッキリとした顔を見て、大丈夫だという思いを持った。

 その空気を察したのか、ゼシカもそれ以上質問はしなかった。まるで彼自身が宇宙を超えてその星を見たような発言だったが、その疑問も一旦抑えることにしたのだ。いつか聞くことができるだろうと。

 

 

「さてと、そろそろ帰ろうと思うんだけど……そうは問屋が卸さないよね?」

 

 

 アマタはそう言うと、ミコノとゼシカを庇うように立ち、彼らよりもさらに上のほうに目を向けた。二人もつられて目をやると、そこには赤い髪をした、他者を威圧するような雰囲気を持った、一人の青年がいた。アマタとは意匠が異なるものの、彼も真っ黒な服を着ていた。

 

 

「そうだな……こんなにクサい、同じニオイを見つけて、はいそうですかと帰るわけないだろ!!」

 

 

 青年はそう言うと飛び降り、まるで狙ったかのように彼らの数メートル前に着地した。上げた面には好戦的な笑みが浮かべられていた。

 

 

「よう。また会ったな(はじめまして)()()()

 

「ああ。会ってしまったな(はじめまして)()()()()

 

 

 






はい、今回はここまでです。
アマタの言葉に出てきたセリフ、ウルトラファンの方ならわかるかもしれないですね。ただ、彼とは全く別の個体なので悪しからず。

久しぶりに更新しましたが、何とか形になったかと思います。実はパソコンも保存していたアウトラインも、別途外部接続メモリに保存していた下書きも一気に消えてしまいました。
ですので、メイン小説サブ小説関係なく、続きは一から構成し直しという事態になっております。

今後も時間がかかりますが、私目の拙作たちを読んでいただけたら幸いです。




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想いの交錯



 え~タグを追加しました。
 ウルトラシリーズでも度々言及されてきたマルチバース(多元宇宙論)を利用したゴリ押しが、この先時々横行すると予め報告いたします。
 それにしても、思う様に話を展開させられない。




 

 

 

 突如現れた男に、アマタたちは警戒心をあらわにした。それもそのはず、男は三人、特にアマタに対し並々ならぬ敵意をぶつけていたのだから。

 

 

「ああクセぇ。本当にテメエからは嫌な匂いがしやがる」

 

「匂いは知らないけど、いやーな空気はビシビシ感じるね。二人とも、すぐにここから離れて」

 

 

 ミコノとゼシカを庇うように立ちながら、アマタは男に対して構える。しかしそう言われて黙っていられるほど、ゼシカもミコノも聞き訳がいいわけではない。仲良くなったばかりの男子が一人残って殿を務めることを、はいそうですかと納得が出来なかった。

 

 

「何を言ってるの!? 私も一緒に!!」

 

「アマタ君を残していくなんて……」

 

「あいつは出来る。正直実力が予想通りなら、俺とどっこいかそれ以上だよ」

 

「そんな……」

 

「俺のエレメント能力だったら、この場所での戦闘はやりやすい。だから……ごめん」

 

 

 アマタはそう言うと二人に対し、手をかざす。戸惑う二人を無視するかのように光が包み込み、一度強く瞬いた後には二人はいなかった。二人がいなくなったことを確認したアマタは徐に男に振り返り、再度構えを取る。

 

 

「さて、これで二人きりだね」

 

「ああ。だがお前を倒して、あのクソ女はオレが貰っていくぜ」

 

「どっちを指しているかは知らないけど……させると思うか?」

 

「ハッ、寝言は寝て言え!!」

 

 

 互いに言葉を交わし、そして勢いよく飛び出す。

 突き出された拳をいなし、繰り出された蹴りを避ける。蹴りを受け流されて崩れた態勢に拳を入れるも、後方に飛び上がってそれを避ける。時には光弾を打ち出し、それを跳ね返し合う。

 そんな応酬を何度も繰り返して、二人はいよいよ組み合ってそのまま動きを止めた。

 

 

「……一応名乗っておこうか。俺はアマタ・ソラ」

 

「……カグラ・デムリだ。さぁ、続きといこうじゃねえか!!」

 

 

 カグラはそう言うと、大きく下がり、右拳を突き出しながらアマタに突進した。アマタも応えるように一度下がり、突進しながら右拳を突き出す。其々の拳は黒と白に輝きぶつかり合ったとき、大きな衝撃が発生した。

 その衝撃は大気を震わせ、地を鳴らし、視界を光で染め上げる。そしてその影響は叩きの場だけでなく、ネオクローン各地で知覚できる程であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──男がいた。

 ──初めは何処にでもいる少年だった。母に愛され、陽気に日々を過ごしていた。

 ──だがあるときそれは変わった。

 ──光に包まれた母親を追いかけたはいいものの、気が付けば独りになっていた。

 ──孤独が孤独と思えない独り身となり、今まで生きてきた。

 ──青年になるまでに、漆黒の巨人に力の使い方を叩き込まれた。これは誰も知らぬこと。

 ──星々を巡った。

 ──時には怪獣と、時には宇宙人と、戦闘に事欠くことはなかった。

 ──その全ては、己に刃を向けたものに対抗するため。

 ──戦いの中で、己についてくる者もいた。

 ──それは種族を問わず、己が方法(コロシアイ)で力を追い求めた者達だった。

 ──しかし青年の『世界』のため、彼ら彼女らに別れを告げた

 ──そして今、目の前の同類(ヒカリ)と拳を交えている。

 

 

 ──男がいた

 ──初めは何処にでもいる少年だった。母に愛され、陽気に日々を過ごしていた。

 ──だがあるときそれは変わった。

 ──光に包まれた母親を追いかけようとも、不思議な力で跳ね返され続けた。

 ──強すぎる力に恐怖するもののそれを良しとした者を弔った。

 ──青年になるまでに、白金の巨人に力の使い方を叩き込まれた。これは誰も知らぬこと。

 ──星々を巡った。

 ──時には怪獣と、時には宇宙人と、戦闘には事欠くことはなかった。

 ──その全ては、己の魂が守ろうとした者たちのため。

 ──戦いの中で、己と共に在ろうとした者もいた。

 ──それは種族を問わず、己が方法(ウタウコト)で戦士を支えてきた者達だった。

 ──しかし青年の『世界』のため、彼ら彼女らに別れを告げた。

 ──そして今、目の前の同類(ヤミ)と拳を交えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 唐突に二人は現実に戻される。夕日が世界を染め上げる中、二人の男は、互いに膝をついたまま肩で息をついていた。

 

 

(今のは……まさかとは思うけど……)

 

(間違いねぇ……アレはこいつの……)

 

((歩んできた道のりッ……!!))

 

「……なんだってんだ。気色の悪い」

 

「……こっちのセリフなんだけど」

 

 

 睨みあうことを辞めず、二人はゆっくりと立ち上がった。

 

 

「このままじゃあ埒が明かねえな。てめぇもまだ奥の手を隠してそうだし」

 

「それはお互い様じゃないのかな?」

 

「けっ、ぬかしやがる。いいぜ、ならもっとテメエを本気にさせてやる!!」

 

 

 カグラはそう叫ぶと身をひるがえし、展望台から飛び降りた。急いでアマタは後を追うが、その先に見たのは、真っ黒の光に包まれたのカグラの姿だった。

 

 

「テメエも同類なら、何をするかわかってんだろ!!」

 

「……まさか、こんな密集地帯でやるつもりか!!」

 

「いやなら、止めてみな!!」

 

 

 更に輝きを強くするカグラに、アマタはエレメント能力を発動したまま突進を仕掛ける。しかし一瞬のこと、カグラが咄嗟に放った拳を避けた際に、アマタは視界からカグラを外してしまった。そしてその一瞬が、明暗を分けてしまった。

 隙を見逃さなかったカグラは全速力で飛び出し、アマタに当て身を喰らわせる。飛ばされたアマタに目もくれず、カグラは走り出し、その場を離れた。そして辿り着いた先、人気のない海岸には、巨大な機械人がそびえ立っていた。それはカグラの専用機、ミスラ・グニスと呼ばれる機体である。

 操縦席に座ったカグラはすぐさま機体を動かそうと操作し始めた。しかし、それを拒むかにように、彼の後ろから腕が伸び、彼の首を締め上げる。

 

 

「グガッ!? こ……れは……!!」

 

『あまり僕の仕事を増やさないでくれ』

 

 

 声と共に、モニターに一人の男が映し出された。一件優男に見え、しかしその視線は冷ややかなものだった。

 

 

「ジン……てめぇ……!!」

 

『少々お遊びが過ぎたよ、カグラ。あとは僕が引き受ける』

 

「待……て!!」

 

 

 カグラは抵抗するも、彼と彼の専用機はゲートより強制退去されてしまった。そして代わりに出てきたのはアブダクター、二体のケルビム兵だった。二体は直ぐさま動き出し、街へと繰り出していった。

 だが男、ジンは知らない。ウルトラマンは寿命と引き換えに、テレポーテーションが使えるということを。

 果たしてネオクローンの町に二体のケルビム兵と、再び黒のウルトラマンが降り立つ。

 

 

 






 はい、ここまでです。
 アマタとカグラの戦闘は、オーブの人間態ガイVSジャグラーを参考にしていただければと思います。
 それとお互いに少しだけ垣間見たモノ、アレに関しては外伝として書くか、原作のスペシャル枠か、外伝作品で過去篇として書くか迷っております。
 さてカグラとアマタが別れを告げた者達、イッタイダレナンダロウナ……。

 ではまた次回。



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