東方染色記 (折れない黒鉛筆)
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第一章 普通の少年と幻想郷 第一話 とある少年の幻想入り

 皆さん、初めまして。この小説のうp主の折れない黒鉛筆です。
 このような小説は全く書いたことがないので文脈等おかしくなるところがあると思いますが生暖かい目で見ていただけると幸いです。
 それでは、第一話をどうぞ。

修正履歴(?)
2017/12/22 台本形式になっていたのを修正+ストーリーに関係ない程度に文を追加
2018/03/07 段落の始め(?)に全角スペースを追加+一箇所台本形式のままだったので修正


 俺の名前は天ケ原 康介(あまがはら こうすけ)。今俺は遠くの友達の家に初めて行き、自分の家に帰るために駅へと帰路を急いでいるところだ。

「あいつの家…いいところだったな…」

 そんな事を一人でボソボソ呟きながら一人でこの辺りの地図を見ながら駅へと続く道路の端を歩く。

 ちなみに友達はこれから用事があるとか言って、この地図を俺に渡し、その用事のための支度を始めてた。別に駅まで送ってくれてもいいじゃないか。アイツのケチ。

 そんなことより、早く家に帰ってリハビリも兼ねたスプラトゥーンがしたい。ここ数日触っていなかったから少しは下手になっているだろうなあ。ちなみにSwitchは家に置いてきたからここ数日間はスプラトゥーン2の方もしていない。とりあえず早くスプラがしたい。

「うーん…どっちからリハビリするか…まあ普通なら2の方だよな…」

 そんな事を呟いていると、ふと視界に神社が入った。そういえば、最近俺がやっているコンビニのバイトがあまり上手く行っていない。ちなみにだが、ここ数日間は休みをもらっている。

 これから先コンビニのバイトが上手く行くようにあの神社でお参りでもしていこう。バイトでヘマしてクビになりたくない。そう考え、俺は神社へと続いているであろう脇道へと入っていく。

 少し遠いが、たとえ寄り道しても夜にはならない時間帯だから大丈夫だろう。多分。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 5分くらい歩いたような気がする。ようやく(?)お参りしようとした目的の神社が近くに見えてきた。少し帰路から外れたが、地図を見れば余裕で駅まで辿り着けるだろう。少し心配ではあるが。

 そんなことを考えていると、神社の鳥居の前に着いた。ちなみにどうでもいい事だが、ここに来るまでに階段とかは無かったのでまだ気力が有り余っている。

「そういやこの神社の名前何だ…?」

 俺はふと気になったことを知るため、鳥居の上の方に視線を向ける。テレビゲームとかをやっているにも関わらず、何故か視力は良い方なので、これぐらいの距離ならはっきりと見える筈だった。しかし、

「……?この神社の名前何だ?鳥居がボロボロで全く読めないぞ…」

 そう、俺が寄り道しようとした神社はボロボロで名前すらまともに読めなかったのだ。しかも神社の癖に人気が全くしない。名前さえ分かればこの神社がどんな神社なのかスマホで調べられたのだが。

 そもそも神社がボロボロって何だ?この辺りの地域の人とかこの神社の巫女さんとかが管理とか手入れとかしてるんじゃないのだろうか?ちなみに、神社がボロボロなことに対してキレてはいない。キレてないですよ。珍しいなーって思っているだけだ。

 まあ、ここで神社に巡り合ったのも何かの縁だし、コンビニのバイトが上手く行くためだ。そう思い、俺はお参りを続行することにした。

 ふと気付けば日が落ち始めている。早く元の道に帰らないと面倒くさいことになりそうだ。だからさっさとお参りして元の道に帰ろう。

 そんな事を考え、俺は鳥居をくぐり、神社の境内に足を踏み入れた。

 その瞬間、眩しい光が辺りを包み込んだ。俺はその光が眩しすぎて目を瞑り、手で覆い隠す。

(ああ、どこかのゲームでもあったけど、めのまえが まっしろに なった!ってこういう感じなのか…)

 

 

 

 気付けば光は無くなっていた。そして目の前にはつい先程も見た神社が……

「ん?神社の境内こんなに広かったか?」

 そう、鳥居をくぐる前に見た神社の境内の広さと鳥居をくぐった後、つまり今見ている境内の広さが全く違っていたのだ。慌てて鳥居の外に出て、もう一度神社の名前を確認する。するとそこには、

「博麗…神社?なんだそれ?」

 思わず声に出してしまう。何故なら全く聞いたことのない神社名だったから。しかしこれがこの神社の名前で間違いないだろう。

 そうだ、この神社が博麗神社っていう名前ならスマホで検索すれば今俺がいる場所がわかる。そう考え、俺はスマホを取り出し、検索しようとする。

「ん?圏外?」

 そう、スマホの電波表示は圏外を示していた。困ったぞ。これだと検索どころか友達に連絡すらできないじゃないか。

 そしてふと俺は(何となくだが)後ろを見て、絶句した。

「階段がある……何故?」

 そこにあったのは、とても長い階段だった。階段の終着点が見えないくらいの。どう考えてもおかしい。だってこの神社に来る前は階段なんて無かったはずだ。というかそもそも俺階段登ってない。

 神社の鳥居に寄り掛かり、少し考える。何故鳥居をくぐった瞬間境内の敷地が広くなり、ボロボロだったはずの文字が読めるようになり、スマホの電波表示が圏外になり、登ってもない階段が現れたのか。少しばかり俺は考えることに集中した。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 3分ほど考えただろうか。俺はある一つの結論(?)に辿り着いた。だがしかし、もし俺の立てた結論が本当なら、俺は今相当大変な状況に置かれていることになる。

「もしかして俺…異世界とかそういう感じのやつに飛ばされた感じか?」

 この考えはあまりにもファンタジーしてるので最初はありえないと思っていたが、考えていくうちにそうとしか思えなくなってきた。俺は謎のあの光に包まれ、異世界?のような場所に飛ばされた。そう考えたとすれば、全ての辻褄が合う。

「…これからどうする?とりあえずお参りするか?」

 呑気な事を言っているというのは自分でもよく分かっているつもりだ。これから先どうなるか分かったもんじゃない。ならとりあえずお参りだけはしておこうという安易な考えだ。ていうかお参りする内容コンビニのバイトがどうとか言ってる場合じゃねえな。もっと大事なことを願わなきゃ。

 カバンの中から財布を取り出しつつ、境内の中にある賽銭箱に近づいていく。その途中で何かに見られているような視線を感じたが気のせいだろう。周りには何もいなかったし。気のせいであってくれ。俺こういうのにはほんと弱いんだから勘弁してほしい。

 賽銭箱の前に立ち、財布の中から適当に50円玉と100円玉を一枚ずつ取り出し賽銭箱の中に入れる。

(このよく分からない世界から早く元の世界に戻れますように・・・)

 カラカラと2つの硬貨が賽銭箱に当たって音が鳴る。その音が鳴った瞬間、奥にあった襖が音を立てて勢い良く開いた。突然のことで俺は驚く。心臓止まるかと思ったわマジで。

 襖の奥から出てきた黒髪の少女は、ぱっと見巫女のような服装をしていた。しかしよく見ると赤をベースとした服に白色の袖がついていた。さらに腋と肩が露出しており、頭に大きい赤いリボンをつけていた。

「あ、地元の人ですか?少し聞きたいことg」

「あなたよね!?お賽銭入れてくれたの!!一体いくら入れたの!?」

 いきなり少女に駆け寄られて両肩を掴まれ、体を揺さぶられながら興奮気味に話され若干困惑する。だって初めてのことだから。女の子に両肩掴まれることが。ていうか体揺さぶらないで。頭痛くなる。

「えっと、150円いr」

「本当!?ありがとう!!」

 また言葉を打ち切られる形で少女が話す。とりあえず最後まで喋らせてくれ。ていうか150円入れただけでこんなに喜ぶのか…この神社どんだけ貧乏なんだ?

「えーと…とりあえず肩から手を離してもらえませんかね?」

 そう俺が言うと黒髪の少女は手を離してくれた。案外素直で良かった。

「とりあえず…貴女は誰ですか?」

「私?私の名前は博麗霊夢。この博麗神社で巫女やってるわよ。」

 霊夢と名乗った少女は、次に俺の方をジーッと見始めた。

(何だ?俺の顔に何かついてるのか?)

 そんな風に考えていると、程無くして霊夢が喋りだす。

「あなたのその服装に加えこの幻想郷でそこそこ有名な私を知らない…さてはあなた、外来人ね?」

 幻想郷?外来人?何か今の霊夢の話から意味分からん単語がいっぱい出てきたのだが…

「えっと…どういう事ですか?詳しく説明してください」

 俺がそう聞くと、霊夢さんは一から説明してくれた。




次回予告(?)
 何故か幻想郷に来てしまった康介。霊夢から幻想郷とは何たるかを一から聞いていく。そこに現れる至って普通の魔法使い…
(この地点で誰が来るか大体の人は分かるはず)
次回!「幻想郷と普通の魔法使い」(予定)

 若干中途半端ではありますが文字数が文字数なので(気付けば3000文字突破してた)ここまでを第一話とさせていただきます。
 いかがだったでしょうか。もしよろしければ感想等書いていただけるとうp主が泣いて喜びます。
 ではここらで。うp主の折れない黒鉛筆でしたー。

補足 天ケ原康介くんについて
 高校二年生で剣道部所属。勉強はそこそこできる方で運動神経は良い。
実はゲーマーで主にスプラトゥーンをやり込んでいる。その為か反射神経はとても良い。一応1のS+カンスト勢。2では全ルールS+まで到達している。
 性格は基本やるときはやるタイプ。それ以外は基本マイペース。


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第二話 幻想郷と普通の魔法使い

 どうも、筋肉痛に悩まされているうp主の折れない黒鉛筆です。
 まずは第一話を見てくださった方、ありがとうございました。拙い文章でしたが見てくださってとても嬉しいです。
 さて、今回の第二話ですが、タイトルや前回の予告でも言ったように、「普通の魔法使い」が登場します。お楽しみに。
 では、第二話をどうぞ。


(念のため)前回のあらすじ
康介が神社にお参りしようとしたら変な光に包まれた
気付けば康介は異世界的なところに飛ばされていた
霊夢と出会い、今自分がいるこの世界について聞いた

修正履歴
2017/12/22 台本形式になっていたのを修正+ストーリーに関係ない程度に文を追加
2018/05/01 段落頭に全角スペースを追加+一部表現を修正・追加


少女説明中…

 

 

 

 

 

 

「…どう?理解できた?」

「…はい、一応理解出来ました。」

 霊夢の問いかけに敬語で普通に返す。どうやら俺の読みは当たっていたようで外れていたらしく、ここは"幻想郷"という異世界のようなもの(正確には異世界ではないらしく、日本と地続きになっているらしい)忘れ去られた物や人や妖怪がやって来る場所らしい。そして俺のような外の世界から来た人のことを外来人と呼んでいるらしい。…ってあれ?

「あの…もしかして俺って忘れ去られたんでしょうか?」

 頭の中で情報を整理して出てきた一つの質問を口にする。

「いや、その可能性は低いわね。だって外の世界で普通に生きてりゃ忘れ去られることなんてほぼほぼ無いから。となるとアイツかしら…?」

 霊夢がそう答えてくれるが、益々謎は深まる。何故俺は幻想郷に来てしまったのだろうか。もしかして境内に入ったときのあの光が原因か?というか俺、元の世界に戻れるのか?仮にもし戻れなかったら色々と困るんだが。バイトのこととか高校のこととかスプラトゥーンのこととか。

「そんな心配はいらないわ。私かもう一人アイツの力があればあなたを元の世界に戻すことができるわよ。」

「サクッと心読まないでくださいよ…で、本当に戻れるんですか?」

「ええ、私の場合だと準備に丸一日かかるけどね。あいつの場合はいつになるか分からないけど。ちゃんと元の世界に戻れるわよ。」

 その霊夢の言葉を聞き、一安心。丸一日という時間はかかるが元の世界に戻ることは出来るらしい。

「但し、もし戻るならここでの記憶をすべて消させてもらうわ。外の世界に幻想郷があると知られると色々面倒だから。」

「はい。わかりました。」

「そういえばあなたの名前何?」

 霊夢に聞かれ、そういえば自身の名前を名乗ってなかったと思い出す。俺としたことがすっかり忘れてた。

「俺の名前は天ケ原 康介と言います。よろしくお願いします、霊夢さん。」

「康介、短い間だけど宜しくね。あとさん付けしなくて良いから。」

「…了解。じゃあさん付けしないでおく。」

「…急にタメ口にならないでくれる?」

「俺の中ではさん付けしない相手はタメ口でいいんだよ。…そういえば、今日泊まるとこ無いな…どうする?」

 もう日も落ち始めている。聞いた話だと幻想郷には妖怪もいるらしいので剣道以外でまともに戦えない俺が妖怪なんかと出くわしたら死しかないだろう。それに俺は今唯一の使える武器である竹刀を持っていない。そもそも竹刀一本で妖怪に立ち向かえるかと言われれば微妙なのだが。取り敢えず死なないためにはとりあえず今晩泊まれるところを探さなくては。

「あらほんとね。こういう時にアイツが来てくれたら私が泊めなくて済むのだけれど…」

 霊夢が独り言のように言ったその時、微かに遠くの方から声が聞こえた。俺は思わず声が聞こえた方を振り向く。所謂条件反射だ。そこにはこちらに猛スピードで向かってくる箒に乗った少女が一人。

「おーい!霊夢ぅ!遊びに来てやったぜええ!!」

「あっ、噂をすればなんとやらね。」

 霊夢の話し方からするにあの少女がついさっき霊夢が言っていた"アイツ"だろう。しかしその少女はスピードを緩めることなくこちらに向かってくる。

(あれ?このままだと俺あの子とぶつかるんじゃね?)

 俺はそう思い、すぐ左に数歩ステップを踏む。ステップを踏み切ったその瞬間、俺の少し右を風切り音と共に少女が通過。少女はそのまま地面に激突し、激しい音と共に土煙が上がった。

(あっぶね…ステップ踏んでなきゃ多分死んでるか重傷負ってたぞ俺…)

「えっと…大丈夫か?」

 心の中で冷や汗をかきつつ、土煙の中にいる少女に声を掛ける。

「心配しなくても大丈夫よ。魔理沙、早く起きたら?丁度あなたに用があったのよ。」

 霊夢がそう声を掛けると、魔理沙と呼ばれたその少女が土煙の中から出てきた。

「いてて…着地またミスっちまったぜ…」

「あんた着地ミスるの何回目よ…まったく…」

 魔理沙?と霊夢が軽く会話を交わす。すると魔理沙?が俺の存在に気づいたのだろうか。こちらを見て金色の目と視線が合う。

 魔理沙と呼ばれた少女は一言で言えば魔法使いのような服装をしていた。リボン付きの黒三角帽のようなものを被っており、そこから片方だけおさげにした金髪が前に垂れている。白のブラウスらしき物の上に黒い服を着ており、あの着地のせいか土がついた黒スカートの上には白いエプロンが巻かれていた。

「ん、お前誰だ?この辺じゃ見ない顔だな。それに服も珍しいぜ。」

 自身についた土を払いながら、魔理沙?が俺を見つめながら話し掛ける。

「俺の名前は天ケ原康介。ついさっきここに来たいわゆる外来人ってやつらしい。」

「お、外来人か。私の名前は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ!」

「やっぱり魔法使いか…てか魔法使いってほんとにいたんだな…」

 容姿や箒に乗って空を飛んでいることから魔法使い系かと予測はしていたが、まさか本当に魔法使いとは。思わず声に出して驚いてしまう。

「魔法使いはほんとにいるんだぜ。よろしくな!康介!」

「ああ、宜しく。魔理沙。」

 魔理沙と軽い自己紹介を交わしたところで霊夢が魔理沙に話しかける。

「魔理沙、少し頼みたいことがあるんだけど…」

「おう、なんだ?」

「この康介ってやつ、今晩だけあんたの家に泊めてもらえない?」

 霊夢のその言葉を聞き、魔理沙があからさまに面倒くさそうな顔をする。

「え?なんで私がしないといけないんだぜ?霊夢がすれば良いじゃないか。」

「…面倒くさいのよ。」

「ま、そんなとこだろうと思ったぜ。仕方ない、今夜は私の家に泊めてやるよ。」

 その会話を聞いていた俺は一安心した。これで泊まる場所の確保ができた。俺はこれと言って特に何もしてないけどな。というか本人がいる前で堂々と「面倒くさい」と言える霊夢がすごい。

「あんたならそう言ってくれると思ったわ。…んじゃ、後は宜しく。私は康介を外の世界に帰すための準備があるから。」

 そう言うと霊夢は神社の中に戻っていった。今から準備をするのだろうか。巫女さんも大変だなあ。

「…じゃあ行くか。康介、箒の後ろ乗れ。」

「…え?何処へ?」

 突然魔理沙に箒の後ろに乗るよう促され、俺は若干驚く。この魔法使いは何を言っているんだ。

「魔法の森にある私の家に行くんだよ。もう日が沈みかけだろ?」

 魔理沙に言われて初めて気付いたが、もう日が沈みかけで辺りが暗くなり始めている。急がないと妖怪に襲われてマジで死ぬかもしれない。そう思った俺は箒に乗って飛ぶ準備をしている魔理沙の後ろに乗った。若干不安定だがどうにかなると思う。

「じゃあ行くぜ…飛ばすからしっかり掴まってろよ?」

「えっまだ心の準備g」

 俺がそう言い切らないうちに魔理沙と俺を乗せた箒は宙に浮かび、そのまま猛スピードで進みだした。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「ほら着いたぜ。ここが私の家だ。」

 魔理沙のその言葉で俺は箒から地面へと降りた。箒が進むスピードはとても速く、博麗神社から3分程でここへ着いた。…にしてもよく箒から落ちなかったな俺。

 ついさっきの魔理沙の話からするとここは魔法の森という場所らしい。なんかすごく神秘的な場所だ。何故かは分かんないけど。

そして俺の目の前には魔理沙の家がある。傍には「霧雨魔法店 なんかします」と書かれた看板が。

「魔理沙の家って自宅兼店舗なんだな。」

「ああ、今まで仕事の依頼で来た人はほぼいないけどな。」

 じゃあ店舗の意味がないじゃないかと思いつつも、看板を見てふと湧いた疑問を魔理沙に問いかける。

「ところで、なんかしますって具体的には何するんだ?」

「そりゃなんかするぜ。妖怪退治とか水道管の工事とか……」

「割と何でもしてくれるんだな…」

 そんな会話を交わしつつ、俺と魔理沙は玄関の前に着いた。魔理沙がドアを開け、魔理沙の次に俺が魔理沙の家へと入った。

「お邪魔しまーす…」

「一人暮らしだから誰もいないぜ?」

「それを早く言えよ。てか散らかりすぎだろ…」

 魔理沙の家は色々なものが散乱していて、散らかっているどころの話ではなかった。俺の部屋も散らかってたけどここまで酷くないぞ。一体どうすればこんなに散らかるんだ…?

「気づけばこんなに散らかってたぜ」

「サクッと心読むなって…ちなみに、片付ける気は?」

「全く無いぜ」

「ですよねー」

 そんなどうでも言い会話を交わしつつ、何とか器用に足を動かして散乱している物を踏まないようにしつつ俺はテーブルの近くのイスに座る。気付けば魔理沙がキッチンに立ち、料理を始めていた。

「魔理沙って料理できるんだな。てか俺も手伝おうか?」

「ああ、大丈夫だぜ。客人へのもてなしってやつだ。」

 魔理沙が食材を持ちながら言う。キノコを持っている辺りキノコ料理でもするのだろうか。

「魔理沙って意外と気が利くんだな。」

「当たり前だろ?デキる女は違うんだぜ。」

「まあ当たり前か。…そうだ、何も手伝わずにこの家にいるのは少し居心地が悪いから明日の朝食は俺が作るぞ。」

「本当か?じゃあ明日の朝食は頼んだぜ。…不味かったらマスパぶっ放すからな。」

「…本当にぶっ放さないでよ?それに何だよ、マスパって。」

 そんな冗談?も交えた会話をしていると、魔理沙が料理を持ってこちらにやってきた。予想通りキノコ料理のようだ。

「料理出来たぜー。一緒に食べようぜ。」

「早いなオイ…じゃあ食べるか。」

 

「「いただきます。」」

 その日は2人で美味しいキノコ料理を食べた後、一人づつ風呂に入り、外の世界について魔理沙が聞きたがっていたのでひたすら話した。そして気付けば魔理沙が寝落ちしていた。俺の話つまらなかったのかな…結構興味深そうに聞いていたのにな…残念。

 そう思っていると俺も眠くなってきた。とりあえず寝るかと思い、俺はイスに座り直してそっと目を閉じた。正直なところこっちの方がよく寝れるんだよな。

 …とりあえず明日の夕方まではこの幻想郷にいるんだ。どうせなら楽しもうじゃないか。そう考えて俺は眠りについた。




次回予告
 幻想郷での初めての朝を迎えた康介。魔理沙の提案で2人で人間の里へ行くことになった。「人間の里ってどんなところなんだろうか」と期待に胸を膨らませる康介。その人間の里でハプニングに巻き込まれることも知らずに…
次回!「人間の里でのハプニング」(仮)

 いかがでしたでしょうか。今回も3000字余裕で超えました。と言うか3000字超えがデフォルトなのかなと思ってきてます。
 さて、次回ですが、康介くんと魔理沙が人間の里に行きます。そんで色々観光します。つまり平和回…と思いきや、ハプニングに巻き込まれる…予定です。
とりあえず、また次回お会いしましょう。うp主の折れない黒鉛筆でした。

補足 康介くんが魔理沙に対して初めからタメ口だった訳
 彼は幻想郷に来て緊張していました。彼は目上の人と話す以外に緊張すると人に対して敬語()を使ってしまうよく分からない癖があります。それで霊夢に対して最初は敬語だったのですが、霊夢の一言で緊張が解け、後に出てきた魔理沙にもタメ口で接した、ということです。


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第三話 人間の里でのハプニング(前編)

 どうも、筋肉痛がようやく治ってきたうp主の折れない黒鉛筆です。
 まずは第一話、第二話と読んでくださった方、ありがとうございます。まだ読んでない方もぜひ読んでみてください。
 ということで第三話です。一応書いたのですが第三話にして前後編に別れてしまいました。つまりタイトルにもあるように前編です。
 前編ではまだハプニング要素はあんまり無いです。許してね。
 前書きが長くなってもアレなんで、ここらで終わりにして第三話をどうぞ。(すでにだいぶ長め)

前回のあらすじ
霊夢に心をサクッと読まれた
霧雨魔理沙と出会った
魔理沙の家で一晩泊めてもらうことになった

修正履歴
2017/12/22 台本形式になっていたのを修正+ストーリーに関係ない程度に文を追加
2018/05/01 段落頭に全角スペースを追加+一部表現を追加・修正


 翌朝…

 俺のカバンに入れてあるスマホの目覚ましアプリが勝手に起動し、音を立てる。その音で俺は目を覚ました。

「…あぁぁ、よく寝たなあ…」

 眠い目をこすりながら昨日のことを思い返す。…今になって冷静に考えると、凄いことに巻き込まれたな、と思う。いきなり変な場所に来て、そこで派手な色合いの巫女さんと出会い、そして白黒の魔法使いとも出会った。そして今はその白黒魔法使いの家に泊まらせて貰っている訳だが。

 一通り思い返したところで、壁に掛かっている時計を見る。午前6時前。朝飯を作るにはちょうど良さそうな時間帯だ。椅子からそっと立ち上がり、まだ寝ている魔理沙を起こさないようにキッチンへと向かう。

「さて…何作ろうか…」

 そう呟いて少し考えるが大した考えは出ず、とりあえず余り物で何か作るかと思い、周りを漁ってみることにした。

 

 

 

 

 

 

 見つかったものから作れそうなものを考えた結果、無難な和食を作るかという結論に至り、早速作り始める。味噌汁に卵焼きに白米ご飯。一応この辺の簡単な料理なら作れるので安心だ。そうやって朝食を作っていると、魔理沙が起きたらしく後ろの方で物音がした。

「お、魔理沙おはよ。今朝食作ってるからちょい待ってな。」

「ん…ああ、おはよ。…ってええ!?なんで男が私の家にいるんだ!?」

 魔理沙の驚いた様子を見て呆れる。…こいつ昨日のこと何も覚えてないのかよ。ってか何か構えてるし……

「あのさぁ…お前昨日のこと思い出せよ…」

「…あああ!思い出したぜ!…ゴメンな康介。」

「別にいいよ。てか朝食出来たから食べようぜ。」

 

「「いただきます。」」

 どうやら俺の作った朝食は好評だったらしく、魔理沙にべた褒めしてもらった。嬉しいなあ。元の世界だとほぼ自分の為にしか作ってなかったからな。あとどうやら魔理沙は和食派だったようだ。

「「ごちそうさまでした。」」

 朝食を食べ終わって俺が食器を洗っているところに魔理沙が話しかけてきた。

「なあ康介、今日どうする?確かここにいるの夕方までだよな?」

「ああ、夕方まではこの世界にいるぞ。……となると確かに今日暇だな。どうする?」

「なら今日は人間の里に行こうぜ!楽しいぞ!」

 聞き慣れない単語が魔理沙の口から出てきて、思わず首を傾げる。

「人間の里…?人が集まってる集落みたいなものか?」

「まあそんなところだぜ。」

「なら行くか。今日どうせ暇だし。」

「決まりだな。じゃあ早速行くか。外で待ってるからなー。」

 そう言って魔理沙は箒を掴み、外へ駆け出していった。俺も人間の里に行く準備をするためにカバンを持つ。そういえば、今持ってるものでも見ておこうかな。後々役立つかもしれない。

 そう考え、俺はカバンの中身を取り出す。中にあったのはスマホとスマホの充電器、イヤホン、まだ飲んでいない飲料水、あと財布。

「うへえ…ほぼ役立ちそうにないな…それにいつの間にやらあの周辺の地図失くしたし……」

 そう愚痴らしい事を言いつつもカバンの中に戻し、そばにあった上着のパーカーを掴んで俺も外に出た。

 外はそこそこ暑く、正直パーカーなんていらなさそうな感じだ。夏だもんな。でもここで置いておくと元の世界に帰るときに忘れそうだな。きっとそんな感じがする。なら忘れないように今持っていくかと考え、カバンの中にパーカーを詰め込んだ。

「ほら乗れ。人間の里まで飛ばすぜ。」

「ああ、ありがと」

 軽くお礼を言い、俺は魔理沙の箒の後ろに乗った。今度は心の準備はできてる。いつでも来い。

「じゃあ行くぞー」

 その言葉を聞いた瞬間、箒は浮かび上がりかなりのスピードで発進した。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「ほら着いたぜ。ここが人間の里だ。」

 スマホで魔理沙にバレないように現在時刻を見る。午前10時半。ちょうど良さげな時間帯だ。これなら大方の店も開いているだろう。と言ってもこれはあくまで元の世界での常識なのでこの世界で通用するかは俺も知らないのだが。そう思いながら俺は広めの空き地に着地した。

「ここが人間の里かあ…なんていうか、和風だな。」

 人間の里は一言で言うならば『江戸時代の町並み』をしていた。行き交う人々も皆着物姿だったり和服だったりで、民家(多分)も和風建築のような感じだった。俺の住んでる場所ではこんな風景見たことないなと思い感動していると、

「まずどこ行く?別に私はどこでもいいぜ。」

 といつの間にやら隣に立っていた魔理沙に聞かれた。正直俺は人間の里をよく知らないのでそもそも何があるとかは分からない。てか初めて来たから何も知らなくて当たり前か。なので、

「うーん…魔理沙のおすすめの場所に連れてってくれ。」

と返しておいた。多分これが一番無難な返し方だと思います。

「分かったぜ。…じゃあ寺子屋にでも行くか。」

 へえ、寺子屋もあるのか。ますます江戸時代じゃないか。まるでタイムスリップでもしたような気分だ。

「ああ、頼んだ。」

 そう返し、俺と魔理沙は寺子屋に向かって魔理沙を先頭にして歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「少しいいか?魔理沙と…そこの男性。」

 周囲の景色にいちいち感動しながら歩いていると、不意に後ろから声をかけられた。俺と魔理沙は足を止め、後ろを振り返る。

 そこには、青い服を着た女性がいた。髪は銀髪で、腰近くまで垂れているのではと思うくらい長い。そして頭には変な形の青い帽子をかぶっていて、その上には赤いリボンが。胸元にはこれまた赤いリボンがあり、袖は短めの白。

「おっ、慧音じゃないか。今日は寺子屋休みなのか?」

「今日は日曜日だろ?休みで当たり前じゃないか。」

 魔理沙と慧音と呼ばれた女性の話を聞くに、今日は日曜日らしい。魔理沙の家にはカレンダーらしきものが無かったので曜日が知れてちょうど良かった。…という事は俺のスマホはこっちに来たときに時間は合わせたから合っているけど曜日はズレているのか。面倒くさいなあ。

 そんな暢気なことを考えていると、慧音と呼ばれた女性がこちらに話しかけてきた。

「ところで…君の名前は?この辺では見ない顔だが。」

「俺の名前は天ケ原康介。昨日の夕方ここに来た外来人ってやつだ。」

「そうか、私の名前は上白沢慧音。よろしくな、康介。」

「慧音さん、よろしく。」

 あれ?なんで俺さん付けしてるんだ?まあ慧音さんの身長が高いからということにしておくか。

「ところで、康介はなぜここに来たんだ?」

「えっと、それは…」

 俺が慧音さんにここまでの経緯を説明しようとしたところで誰かのお腹が鳴る。どうやら犯人は魔理沙のようだ。

「ヘヘ…お腹空いちまったぜ。そろそろ昼飯にしないか?」

「あれ、もうそんな時間か。慧音さん、昼飯食べるのにいい場所無いか?」

「ああ、それなら団子屋にでも行こうか。今日は私も暇なんだ。」

「じゃあそれで決まりだな!早く団子が食べたいぜ〜!」

 そんな会話を交わし、俺たち3人は慧音さんを先頭にして団子屋へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「…という訳なんだよ。」

「なるほど。それは大変だったな。」

 今俺たちは団子屋に着き、団子を食べながら、俺がこの世界に来た理由を慧音さんに話していたところだ。ちなみに魔理沙もこの話を聞いている。

 話が一段落つきお茶を飲んでいると、慧音さんが質問してくる。

「という事は…康介は今日の夕方頃に帰るのか?」

「ああ。博麗神社で霊夢が準備してくれてるからな。」

 さっきからずっと思っていたのだが、慧音さんは凄く人の話を聞くのが上手い気がする。あとこれは勘なのだが、慧音さんは単なる人間ではないような気がする。うまく言葉で言い表せないけど、なんかオーラ的な何かが違う感じ……まあ気のせいだと思うが。

「…少し残念だな。ずっとこの幻想郷に居てくれてもいいのだが…」

「いやいや、流石に…外の世界だと学校とか行ってるからもしここに居続けるならその辺が面倒になりそうなんだよな。」

 ずっと居てもいいなら居たいんだけどね。一応高校生である以上は学校やバイトもある。それらを投げ出してここに居続けるのは少し胸が苦しくなりそうだ。それに元々俺は外の世界の人間だ。まあ、帰れなくなるなんてこともないだろう。…こらそこ、フラグとか言わない。冗談抜きで心臓に悪いから。

 そう考えながら、俺は最後の団子を口に運ぶ。ここの団子屋の団子はとても美味しい。これからも記憶に残り続ける…って外の世界に帰るときに記憶消されるのにそれは無いか。

「康介ー、これからどうするぜ?」

 そんなことをしみじみと考えていると、魔理沙が突然話しかけてきた。落ち着いて口の中にある団子を飲み込んでから、魔理沙の問いに答える。

「そうだな…寺子屋も今日休みなら、完全に行く場所がないんじゃないか?」

「まあ他にも行ける場所ならたくさんあるが…」

「へえ、他にも行ける所あるのか。慧音さん、良かったら案内してください。」

「私で良いのであれば案内してやろう。魔理沙も一緒にな。」

 良かった。これで夕方辺りまで暇することはなさそうだ。ふと辺りを見渡すと、どうやら全員団子を食べ終わっているようだ。ちなみに代金は慧音さんが全員分支払ってくれた。優しい人だ。

「それじゃあ…行きますか。」

 そう言い、腰掛けていた長椅子から立ち上がる。その次の瞬間、

「キャー!助けて!」

 遠くの方から悲鳴が聞こえてきた。あの方角は…俺と魔理沙が降り立った空き地の方か。

「大変だ!もしかしたら妖怪かもしれない!急ぐぞ!」

「ああ!行くぞ康介!」

「…え?なんで一般人の俺まで行かなきゃいけないんですかね?」

「細かいことはいいんだよ!とにかく行くぞ!」

 正論のような事を言ったが魔理沙にそう言い返され、強引に右手を掴まれた俺はなす術もなく走っている慧音と魔理沙に渋々付いていくしかなかったのであった。

(このまま平和に夕方迎えると思ったのに…ついてねえな俺…)




次回予告(?)
 悲鳴の聞こえた方に駆けつけた康介たちはそこで妖怪に襲われそうになっている女の子を発見する。
 魔理沙が攻撃を加えてもびくともしない妖怪。さらに康介が絶体絶命のピンチに!?
次回! 人間の里でのハプニング(後編)

 いかがでしたでしょうか。今回は慧音さんが出てきました。慧音さんをさん付けしてる康介くんすこ。
 さて次回ですが、妖怪との戦闘です。と言っても、康介くんはどこかでもあった通り剣道以外でまともに戦えないので基本は魔理沙vs妖怪になるかなって思ってます。
 初の戦闘シーンなのでいつもよりさらに文章が見苦しくなると思いますがどうかご了承ください。
 ではここらで失礼。うp主の折れない黒鉛筆でした。
 なんとか次の日曜までには第四話を投稿できるように頑張ります。是非感想等お待ちしております。


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第四話 人間の里でのハプニング(後編)

どうも、テンション上がって小説書いてたら4000文字を超えかけたうp主の折れない黒鉛筆です。
そういえば、先日(第三話を投稿してから)UAが100を超えてました。ありがとうございます。これからも励んでいきますのでどうかよろしくお願いします。
ということで第四話です。前回戦闘描写すると言ったな、あれは嘘だ。実際に書いてみたら戦闘要素が薄くなったような気がします。ごめんね。
それでは、戦闘要素の薄いただ長いだけの第四話をどうぞ。

前回のあらすじ
魔理沙の提案で人間の里に行くことになった
上白沢慧音と出会い、お団子を奢ってもらった
悲鳴が聞こえて魔理沙に半ば無理矢理そこへ連れて行かれた

修正履歴
2017/12/22 台本形式になっていたのを修正+ストーリーに関係ない程度に文を追加
2018/05/04 段落頭に全角スペースを追加+一部表現等を修正・追加


(えっと…どうしてこうなった…)

 今俺はついさっき悲鳴の聞こえた方にある少し開けた空き地にいる。もちろん魔理沙と慧音さんも一緒だ。

そして目の前にいるのは…恐らく妖怪。その妖怪はかなり大きく、ぱっと見2mくらいはありそうな体つきをしている。全身は錆びた鉄のような色をしていて、特に口が大きく、何でも丸呑みしてしまいそうな口だ。……まさかとは思うけど、俺丸呑みされないよな?

 ちなみに襲われかけていたのは子供で、先程俺達が駆けつけた瞬間隙をついて逃げていた。これで安心…じゃないよなどうすんだよこの妖怪。

「私は里の自警団の人を連れてくる!二人共、しばらく時間稼ぎしておいてくれ!」

 そう慧音さんが言い、俺達がここまで走ってきた方角へと走り去っていった。

「なあ魔理沙…こいつ、どうにかなるか?」

「大丈夫だぜ。このミニ八卦炉があればな!」

 魔理沙がそう言い、自慢げそうに懐から今朝俺に構えていた謎の箱?を取り出し、自身の前に構える。どうやら妖怪に攻撃を仕掛けるようだ。

「じゃあ行くぜ…そうだ康介、私から離れておけ。加減はしてあるが怪我するかもしれないぞ。」

「お、おう。」

 魔理沙の指示に従い俺は魔理沙から少し離れる。これから一体何が起こるんだ…?

「恋符!「マスタースパーク」!」

 魔理沙がそう叫ぶと、ミニ八卦炉と呼ばれた箱に光が収束し、光線となって妖怪に向かって発射された。

 俺はそれを見てただ絶句するしかなかった。何故なら魔理沙の出したマスタースパークはまるで、アニメや漫画の中に出てくるかのような光線そのものだったからだ。効果音とか聞こえてきそう。というか今朝もしこれが放たれてたら俺確実に死んでたな…

(いくら妖怪と言えどもこれは消し炭になったか…?)

 そう思っていると、マスタースパークが止んだ。その後の光景を見て、俺と魔理沙は驚愕する。だって無理もないだろう。

 どう見ても威力が高そうなマスタースパークを喰らってもあの妖怪は、傷一つ負っていなかったのだから。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「はあ…はあ…こいつ硬いな…」

 ついさっきから魔理沙は色々な魔法(と言っても俺から見た感じ大体同じ感じの魔法に見えるが)を打ち続けている。俺はそれを見ることしか出来ない。だが、妖怪は未だに傷一つ負っていない。更に言うと、妖怪は全く攻撃を仕掛けてこない。こちらが疲れ切ったところに攻撃を仕掛けてくるつもりなのだろうか。すると魔理沙が、

「すまん…魔法打ち過ぎた…」

と言い、地面にへなへなと座り込んだ。ヤバい。さっき考えた俺の仮説が正しいなら…敵の攻撃が来る!

 結論から言うと、悲しくも俺の仮説は当たってしまった。妖怪が魔理沙の方に手を伸ばし始める。このままだと魔理沙が食べられてしまうかもしれない。そんな最悪の考えが頭をよぎり、気づけば俺は魔理沙の方に駆け出していた。やることはただ一つ。間に合うか…?いや、間に合わせる。

 俺は全力疾走で魔理沙のもとに走り、その勢いで…魔理沙を突き飛ばす。幸いにも魔理沙は吹っ飛んでくれた。すまんな魔理沙。そして妖怪は…魔理沙の代わりにそこにいた俺を掴んだ。

「!!康介!」

「がッ…」

 魔理沙のそんな叫びが聞こえたが、今はそれどころじゃない。

 妖怪の腕力はかなり強く、今はその痛みに耐えるのに精一杯だ。もしかしたら骨折れるかもしれない。ていうかもう既にどこかがミシミシ言ってるような。幸いにもカバンと俺の両腕は握られていない。つまり両手ならまだ動かせる。

 今まで感じたことのない壮絶な痛みに耐えながらも、何とかカバンの口を開ける。ただ、朝に確認したとおり俺のカバンの中にはろくな物が入っていない。開けたところでどうにかなる訳でもない。

「クソがっ…!」

 悪態をつきつつも里の自警団の人が来るまでの時間稼ぎでもしようと思い、水が入ったペットボトルのキャップを開け、右手に持とうとする。

だが、ここで手が滑ってしまいペットボトルの中から水がほぼ全部こぼれ出てしまった。妖怪の手に溢れたペットボトルの水がかかる。妖怪の目に水をかけて時間稼ぎの目潰しを出来るかもしれない、と思ったのだが。

 しかし、妖怪の手に水がかかった瞬間、なぜか少しだけ妖怪が苦しんだような表情を見せた。慌てて周りを見ると、先程水がかかったところが少しだけ溶けていた。

(こいつ…もしかして水が弱点か…?)

「魔理沙!こいつは水が弱点だかr…ぐッ。」

 魔理沙に弱点を教えようとしていると、さらに締め付けが強くなった。あまりの痛さに途中で言葉が出なくなる。そして段々と妖怪の大きな口が近づいてきた。どうやら今の水で妖怪を怒らせてしまったようだ。

 段々と目の前が白みを帯びてくる。俺には既に走馬灯が見えていた。

(…よく考えれば楽しいとは言えない人生だったな…それにこんな若さで死ぬなんて…本当に最期までついてなかったな俺…)

 そして俺が意識を失いかける直前、俺の中に一つの願望が生まれた。

(ああ、もし大雨が降ったらこいつを倒せたかもしれないのにな…)

 そこで俺の意識はプツリと途絶えた。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 私は、ただひたすら後悔していた。目の前で私の【友達】が喰われてしまう。それなのに私は何もできない。あまりの悔しさに、涙がこぼれる。

「くそッ…なんで打ち過ぎてしまったんだ…」

 康介は私に弱点を教えてくれた。だが、それを聞いたところで最早私には何かできる力は残っていない。

「ごめんな康介…ごめん…守りきれなかった…」

 私はただ妖怪に掴まれて今にも喰われそうな康介を見ながら謝ることしか出来なかった。康介は操り糸が切れた操り人形のように動いていない。おそらく意識を失ったのだろう。

 妖怪が康介を口のそばに近づける。もう駄目だ。康介は助からない。そう思い、私は目を瞑る。

 …すると私の手の甲に、何か冷たいものが当たる感覚がした。それと同時に妖怪が苦しみの声を上げる。

 思わず私は目を開け、上を見上げる。先程まで雲ひとつない晴れていた空に雨雲が広がっていた。そして、大雨が降り始める。

 雨粒が当たる度、妖怪が少しずつ苦しみながら溶けていく。どうやら康介が言っていたことは本当だったようだ。そして、とうとう妖怪は溶け切ってしまった。溶けた妖怪の跡らしき液体も、雨によってどこかに流されていった。

 私はすぐに康介のもとに駆け寄る。康介はまだ意識を失っているようだ。だが息はしているので取り敢えず生きていることは確認できた。

「良かったぜ…それにしても何故雨雲が出て来たんだ?」

 気づけば雨は止み、雨雲が無くなっている。本当に不思議だ。すると遠くから慧音の声が聞こえてきた。

「おーい!里の自警団の人を連れてきたぞ…って妖怪は?」

「それなら謎の集中豪雨で溶けてしまったぜ…そんなことより康介が…!」

「ん?康介がどうかしたのか?」

「康介が妖怪に…そして今も意識を失ってて…」

 話す度に涙が出そうになる。だって私のせいで康介はこうなってしまったのだから。

「そうか…取り敢えず寺子屋に運ぶぞ。応急処置をしないといけないかもしれない。」

 慧音がそう言うと、すぐに里の自警団の人が康介を抱え、寺子屋の方へ向かった。

「頼むから目を覚ましてくれよ…康介…」

 そう願いながら私と慧音は寺子屋へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「…知らない天井だ。」

 某アニメの台詞を口にしつつ、まずは状況整理。……ここどこだ?えっと確か、俺は妖怪に掴まれて食べられそうになった…けど死んではいないようだ。多分。足付いてる感触するし。取り敢えず体を起こす。全身がかなり痛かったが何とか起き上がれた。どうやら骨は折れていないようだ。

「お、起きたか。おはよう、康介。」

「おはよう。慧音さん。ところでここは…?」

「ここは寺子屋だ。安心しろ、日曜日だから誰も来ない。」

 あ、寺子屋かここ。じゃあ死んでないな俺。確信した。

 ふと時間が気になって時計を見る。午後4時半。まだ約束の時間ではなくて一安心。するといきなり扉が勢い良く開いた。ビビるからやめて。そこには魔理沙がいた。

「あっ魔理沙。おはy」

「ごめんな康介。私が不甲斐ないばかりに…」

 挨拶しようとすると、魔理沙がいきなり頭を下げる。どうしよう。いきなり謝られた。こういうの初めてだから対処法がわからん。取り敢えず…

「気にしてないぞ。それよりこっちもごめんな。いきなり突き飛ばして。それより体調はどうだ?」

「体調は少し戻ったけど…でも…」

「あのさ、結果的に俺も無事だったんだからいいだろ。俺も魔理沙も無事だった。それで十分だ。」

「…それもそうだな。」

 なんとか納得してくれた。これで次の話ができる。

「そうだ、魔理沙。少しお願いが…」

「なんだ?康介。」

「そろそろ博麗神社に行かないと行けないからさ、連れて行ってくれないか?」

「ああ、それくらいならお安い御用だぜ。」

 よし。これで博麗神社に遅れることはなさそうだ。そう思っていると慧音が俺に声をかける。

「そうか…じゃあ私とはお別れだな。」

「ああ、短い間だったけど楽しかったよ。ありがと、慧音さん。」

「こちらこそありがとう。君は私のことを忘れてしまうが私は君のことを忘れないからな。」

「おーい康介、まだかー?置いてくぜー?」

 そんな事を話していると、気付けば魔理沙が外に出て準備を済ませている。早く行かないと。

「おっと、じゃ…ここらで失礼しますかね。」

「ああ、あっちの世界でも頑張れよ。」

「…はい!」

 そう言って俺はカバンを掴み外に出て魔理沙の箒に飛び乗った。まだ体が痛かったので正直こんな事してる余裕なんかないのだが。

「じゃあ行くぞ。」

 魔理沙がそう言い、二人を乗せた箒は博麗神社の方へと飛んでいった。

 

「康介…不思議なやつだったな。」

 飛んでいく箒を眺めつつ、独り言のように慧音はそう言った。




次回予告
 別れを惜しむ康介たち。そこに現れる幻想郷を作った妖怪。
 彼女が不敵に笑っている理由とは…!?
次回! 「出会いがあれば別れもある」

 いかがでしたでしょうか。終わり方がかなり微妙でしたがこれ以上書くと4000字を超えてしまうのでやめときました。
 ちなみに次回予告のタイトルに(仮)とついていませんが、この後書きを書いている地点で既に本文は完成しています。つまり内容が決まっているので(仮)とつけなくていい、ということですね。
 次回ですが、とうとう幻想郷との別れの時間がやってきます。そしてようやく登場するのはもちろんあの人!
 それでは、ここらで失礼します。うp主の折れない黒鉛筆でしたー。

 ……そういえば、あの時何で急に雨が降り出したんですかね…?


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第五話 出会いがあれば別れもある

 どうも、調子に乗って5話目をノリだけで書き上げたうp主の折れない黒鉛筆です。
 実はこの前書きって第四話の前書きとかを書いたあとに続けて書いてるんですよね。つまり書くことが(ry
 ということで、第五話です。ややシリアス気味かもしれません。ていうか自然に書いてたらそうなりました。許して。
 さて、もう書くことがないので第五話をどうぞ。

前回のあらすじ
妖怪に出会った
(天候のお陰で)妖怪に勝利した
慧音と別れの挨拶をして魔理沙と一緒に空へ飛び立った

修正履歴
2017/12/22 台本形式になっていたのを修正+幾つかストーリーがズレない程度に文章を追加
2018/05/04 段落頭に全角スペースを追加+一部表現を修正・追加


 今俺と魔理沙は博麗神社に向けて幻想郷の上空を飛んでいる。おそらく一緒に飛ぶのはこれが最後になるだろう。

(どうしよう…何か凄い気まずい…)

 俺がそう感じている理由としては、前回の時は乗せてもらって飛んでいるときにどうでもいい雑談のようなものをしていたのだが、今回は互いに全く話さない。更に言うと前までと比べて飛行速度が少し遅いような気がする。乗せてもらってる身だから何も言えないし言うつもりは全くないが。

「…あのさ」

 なんの前触れもなく魔理沙が喋りだす。

「康介は…この幻想郷での短い生活、楽しかったか?」

「ああ、楽しかったに決まってる。辛いこともあったけど、それも含めていい経験になった。」

「…そうか。なら良かったぜ。」

 …ほんとに色んな事があった。それもこれもあのオンボロ神社にお参りしようなんて思わなければ起こらなかったことだ。そう思うと本当に思い出に残る旅だったな。まあ元の世界に帰るときにここでの記憶は全て消されてしまうので思い出に残る旅、というのも少しおかしい話だが。

「ほら、博麗神社が見えてきたぜ。」

 そうだ、魔理沙にお礼言っておかないと。

「…魔理沙、短い間だったけどありがとな。色々世話してくれて。」

「ああ、こちらこそだぜ。」

 そんな短い会話が俺と魔理沙の幻想郷の夕暮れ迫る空での最後の会話だった。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「…お疲れ様、魔理沙に康介。里の妖怪の話、聞いたわよ。」

 博麗神社に着き、霊夢の第一声がこれだった。

「…いや、私は何もしてないぜ。たまたま雨が降ってきたから勝ったようなもんだ。」

 へえ。俺が気絶したあと雨が降ったのか。道理で俺の所持品が少し濡れてるわけだ。まあスマホは防水なので大したことないが。

「あらそう。ならいいわ。」

「…で、俺が帰れる準備は出来てるのか?」

「ええ、でもその前に…いるんでしょ紫。出てきなさい。」

 霊夢が突然何もない方向に向かって言葉を放つ。すると何もない筈の空間がパックリと開き、中から金髪の女性が出てきた。口には扇子をあてている。…さすが幻想郷、何でもありなんだな。

「あら、よく分かったわね。」

「…私の勘はよく当たるのよ。」

「えっと…霊夢、この人誰?」

「ああ、こいつの名前は八雲紫。簡単に言うと幻想郷を作ったスキマ妖怪よ。」

「紫よ。よろしく、康介くん。」

「お、おう。よろしく。」

 ところで何でいきなり幻想郷を作った妖怪さんが出てきたのだろうか。…まさか俺、何かしちゃいけないことしちゃったやつか?

「いえ、幻想郷から外の世界に帰るあなたに挨拶だけしておこうと思ってね。」

(またサクッと心読まれた…)

「そういうことか。」

 内心驚きながらも何とか返す。すると紫さんが俺の方をジロジロと見始めた。

「な…何なんだ?紫さん。俺の顔に何かついてるのか?」

「いえ、何もついてないわ。でも…」

 そこで紫さんが話すのを止めてしまい、

「…最後まで言えよ。気味悪いなあ。」

と思わず考えていたことが口に出る。しかし、紫さんは特に気にしていない様子だ。

「私が言いたいことはいずれ分かるわ。ふふふ…」

 なんかこの人胡散臭いな…まあ信じないようにしておくのが吉だろう。

「話は終わり?」

 俺と紫さんが話してたところに霊夢が割って入る。

「ええ…じゃあこれにて失礼。また会えたら会いましょうね。康介くん。」

 そう言うと紫はいつの間にやら消えてしまっていた。

(…あれ?なんであの人俺の名前知ってたんだ?俺名乗ってないのに。…まあいいか。)

「じゃあ…簡単に元の世界に帰るための説明をするわね。あなたがすることはただ一つ。あの神社の鳥居をくぐるだけよ。」

 そう言うと霊夢は博麗神社の鳥居を指差した。なるほど、俺は入ってきたときの逆再生をするってわけか。

「記憶については元の世界に帰った瞬間消えるわ。だから安心して鳥居をくぐりなさい。」

「なるほど、了解した。」

 これでやっと元の世界に帰ることができる。最初は早く帰ってスプラしたいと思っていたけど幻想郷も良い所だったな。また来れるなら来たいなあ。…到底来れる場所ではなさそうだけれど。

「さてと…霊夢も魔理沙も本当にありがとな。お陰で無事に帰れそうだ。」

「ちゃんと元の世界でもしっかりやりなさいよ?」

「ああ、お前はいつまでも私の【友達】だからな!」

「ああ、お前らも元気でやれよ?じゃあ…そろそろ行くか。」

 一息ついて、二人に背を向け、鳥居へと歩き出す。正直引っ掛かることはまだあるが、こうして無事に帰れるんだからこの際気にしないでおこう。

 ゆっくりと鳥居へ向かって足を進める。その途中でこの幻想郷での思い出が蘇り、涙がこぼれそうになる。我慢我慢。

 俺は境内から出る一歩手前で立ち止まり、くるりと霊夢たちの方を向く。そして、最後の挨拶として某有名漫画のあのセリフのオマージュを言うことに決め、息を吸い込む。

「短い間でしたが!くそお世話になりました!この御恩は!たとえ記憶が消されても!一生忘れません!」

 言いながら大きく頭を下げる。言ってる途中で涙が少し出たが気にしない。それにこの距離ならあの二人にもバレない筈だし。最後に大きく霊夢と魔理沙に手を振って、俺は境内の外に出た。

 ここに来たときと同様に眩しい光が辺りを包み込む。俺はこの前のときと同様に目を瞑る。

 こうすけ は めのまえ が まっしろに なった…

 これでようやく元の世界に帰ることができる。

 

 

 

 

…はずだった。

 

 

 

 

 俺が再び目を開くとそこには親の顔より見た…訳ではないがこの二日間数回見たとんでもなく長い階段が。まさかと思いスマホの電波表示を取り出して確認。……圏外だ。後ろを振り返って鳥居の文字を見上げるとそこには「博麗神社」と書かれている。嘘だろ…?そして境内に視線を戻すとそこには……遠くからでも分かる程驚いた様子の霊夢と魔理沙がいた。

「…あれ?俺これで帰れるんじゃなかったのか…?」

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

「おれは 鳥居をくぐって元の世界に戻るはずが

なぜか 鳥居をくぐっても 元の世界に 戻れなかった…」

な… 何を言っているのか(ry

 とかいう寒すぎる冗談は置いといて。

 今俺と魔理沙は緊急会議として博麗神社にある霊夢の居住空間に上がらせてもらっているところだ。もちろん、霊夢もいる。

「なんで康介は元の世界に戻れなかったんだぜ!?」

「おかしい…準備段階で失敗はしていないのに…」

「失敗してないならどうして…」

 そう言い、俺は頭をフル回転させて考える。しばらく考えていると、霊夢が口を開いた。

「失敗していないのに元の世界に帰れない…だとするとあの可能性しかないけれど…ありえるの?そんなこと…」

「その可能性ってやつは何だ?取り敢えず聞きたいんだけど。」

 俺がそう誘うと、霊夢は「分かったわ」と言い、こう続けた。

「その可能性…それは、"康介が能力に目覚めた"可能性よ。」

「…は?」

 思わず素が出る。能力?なんだそれ美味しいのか?全く意味がわからん。それでも魔理沙は理解したような表情を見せている。

「あああ!それなら辻褄が合うんだぜ!」

「霊夢に魔理沙、一体どういうことだ?急展開すぎてついていけないんだが…」

「えっとね…私みたいな特別な能力を持った人間っていうのは外の世界では普通ありえない存在じゃない?」

 全く理解できていないので霊夢と魔理沙に説明を求めると、霊夢が説明を始めた。

「まあ…そうだな。」

「もし外の世界にその能力を持った人間がいたら世界はどうなると思うぜ?」

 霊夢の説明に魔理沙が続ける。ふと霊夢の方を見るとまるで私の説明を邪魔するな、とでも言うような目で魔理沙を睨みつけていた。まあそんなことは俺にはどうでも良いのだが。

「そりゃ、大変なことに…ってああああああ!そういう事か!」

 どうやら俺の中でも上手く納得したらしく、俺にしては珍しく大声を上げてしまう。

「ようやく理解したようね。そう、大変なことにならないようにもし外の世界が能力者を拒むとしたら…?」

 畳み掛けるように霊夢が問いかける。その問いに対する俺の答えは一つ。

「外の世界にその能力者は行けなくなる…?」

「そう、だから無いとは思うけどこの可能性しかないの。」

 霊夢がそう言って説明を終える。つまり俺は何らかの理由でここに来て、何故か能力を取得した、って訳か。ややこしいなあ。ここまで考えたところで、俺と魔理沙のお腹が鳴った。

「はあ…仕方ないわ、二人共、今日はここに泊まっていきなさい。もう夜も遅いし。」

「おう、ありがとな、霊夢。…そうだ、夕食は俺が作るよ。」

「あら、あんた料理出来るのね。」

「そうなんだぜ!康介の料理は美味しいんだぜ!」

 魔理沙の言葉を最後に俺は台所へと向かう。

「取り敢えず台所借りるぞー、霊夢。」

「別に構わないわ。」

 その日はオムライスを作った。何故かって?なんとなくだけど食べたくなったんだよ。どうやら二人共オムライスは見たことがなかったらしいが、美味しいと褒めてもらった。

 その後は一人づつ風呂に入らせてもらい、布団を敷いて(一応俺は別室にしてもらった)寝ることにした。

(今日は本当に色々ありすぎた…俺の能力とかもあるけど、取り敢えず疲れたから寝ますかね…)

 俺は布団の中でそう考えながら静かに寝息を立てた。




次回予告
まさかの二日目の朝を幻想郷で迎えることになった康介。もう帰らなくてもいいかな、と半ば諦めている様子。そんな中ついに康介の能力が判明する…!
次回 「康介の能力」(仮)

 いかがでしたでしょうか。まあ大体の人は察してたと思いますが案の定康介くん、帰れなくなりました。彼はフラグ建築士なんでガンガンフラグ建てていたのですぐ分かったと思います。
 さて、第六話ですが、康介くんの能力が判明します!ちなみに伏線らしきものは張ってあります。是非探してみてください。
 感想等お待ちしております。以上、うp主の折れない黒鉛筆でした。


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第六話 康介の能力

 どうも、最近モンハンXXを始めた折れない黒鉛筆です。
 まずは…お気に入り登録者が一人になりましたー!(イェーイ
 正直お気に入り登録してくれる方がいるとは思ってなくて内心めっちゃ驚いてます。これからも頑張って書いていきますので応援の程宜しくお願いします。
 一応活動報告の方にも書かせて頂きましたが、一応こちらにも書いておこうと思いまして、書かせていただきました。
 さて、第六話です。とうとう康介くんの能力が明らかになります…!とだけ言っておきます。
 では、第六話をどうぞ。

前回のあらすじ(忘れてた)
元の世界に帰れなかった
3人で話をして康介に能力がある説が出来た
霊夢の家(博麗神社)に泊めてもらった

修正履歴
2017/12/22 台本形式になっていたのを修正+ストーリーがズレない程度に文章を追加
2018/05/04 段落頭に全角スペースを追加+一部表現を追加・修正


「こんな場所に呼び出して俺に何の用?」

「俺はな…お前がムカつくんだよ。友達もいないくせに楽しくヘラヘラ笑って生きてるお前が。」

「急にどうしたよ?」

「だからさ…5秒で今すぐ死ね。」

「…ッ!」

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 無機質な目覚ましアプリの音で俺は目を覚ます。

「見たくない夢見ちゃったな…はあ。」

 俺が見た夢は過去の夢。俺が中学生のときの嫌な思い出の一つだ。…といっても中学の思い出なんて嫌な思い出しかないのだが。急に死ねと言われてあの時は家でどんだけ泣いたことか…極力思い出さないようにはしているがやはり思い出すだけで嫌な気持ちになる。朝からこんな気持ちじゃダメだ。切り替えなければ。

「さてと…まさかこの世界で二日目の朝を迎えるとはね…」

 正直これからどうしようか全く考えてない。だって普通に昨日の夕方帰れると思ってたから。とりあえず居間へ行くかと考え、俺は眠い目を擦りつつ布団から立ち上がる。ついでに時計を見る。午前7時。

「誰も起きてなかったら朝食作らないとだな…」

 そう言った瞬間、居間の方から美味しそうな匂いがした。どうやら既に誰かが起きて朝食を作ってくれたようだ。朝食を食べるために俺はすぐさま居間へと向かおうとする。すると目の前の襖が開いた。

「おーい康介ー。朝だぞ…ってもう起きてたか。」

「ああ魔理沙か。おはよ。ところで霊夢は?」

「霊夢なら朝食作り終えたところだぜ。霊夢にお前を起こすよう頼まれて私が来たんだぜ。」

「あー、そういうことか。なら居間へ行くか。」

 そう言い、俺と魔理沙は居間へと向かった。霊夢が作った朝食。どんな味がするんだろうか。……ゲテモノ料理でないことを願う…

「私も何回か食べてるけど霊夢の作る食事は美味いんだぜ。この私が保証する。」

「へー…て言うかまたサラッと心読まれたんだが」

 そんな俺の呟きをよそに、魔理沙は居間へと入っていった。その後に俺も居間へと入る。

 居間には少し大きめのちゃぶ台があり、その上には朝食が。どうやら和食のようだ。元の世界だと朝食に和食なんてほぼ無かったなあ。いつもさっさとパンを食べて学校やバイトに出発していた。時間が無くて朝食を食べなかった日もあったっけ。そう考えていると、気づけば俺はちゃぶ台の近くに座っていた。無意識ってこわい。ふと魔理沙の方を見ると、魔理沙もちゃぶ台の近くに座っていた。そして料理をまじまじと眺めている。

 するとキッチンから霊夢が出て来た。そして霊夢がちゃぶ台の近くに座る。

「康介おはよ。少し寝過ぎじゃない?」

「別にいいだろ。今日の朝は特に用事無かったんだから少しでも多く寝た結果だよ。それに外の世界だとこの時間にいつも起きてるんだよ。」

「ふーん。ま、あんたが寝すぎたお陰で今朝は私が朝食を作ったんだけどね…」

 まるで俺が朝食を作って当たり前みたいな目で俺を見ないでほしい。確かに正論だが今それを言うと場の空気がヤバいことになる。

「…早く食べようぜ。腹が減ってしょうがないぜ。」

 ナイスアシスト魔理沙!心の中でナイスと言う。

「…それもそうね。じゃ、いただきます。」

「「いただきます。」」

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「さてと…昨日の話の続きをしましょうか。」

 食器を片付け、俺たち3人は再びちゃぶ台を囲むようにして座った。

「えーっと…昨日はどこまで話したっけ?」

 魔理沙のまさかの問いに呆れつつも俺が答える。

「俺に能力があるかもしれないって話だろ。」

「ああそうか。…で、どうするんだぜ?」

「そうね…アイツならアレが分かるかもしれないわね。紫ー!いるんでしょー!?」

 また霊夢が紫さんに呼びかける。そうやって呼びかけてホイホイ出て来る物なのか…?

「はいはい…何の用かしら?」

 前言撤回。呼びかけてホイホイ出てきたわ。紫さん本当に神出鬼没だな…

「言わなくても判るでしょ。康介の能力が何なのかって話よ。」

「あら、私がその時からいたって良く分かったわね。…まあいいわ。康介くん。悪いけど少し動かないで。」

 そう言うと紫さんがまた俺のことをジーッと見始める。俺は言われた通りに動かないようにする。割と暇だ。…あれ?いつから俺ジーッと見られるのに耐性ついたんだ…?まさかもう慣れたのか…?

「…分かったわ。この子の能力が。もう動いて大丈夫よ。」

「早いな。ろくに考え事も出来なかった。」

 まあその考え事自体も相当ショボいものだけれど。

「で、康介の能力は何?早く結果を聞きたいんだけど。」

 霊夢が急かすが、紫さんはまるで慌てていない。そもそもあまり慌てる内容ではないと思うが。

「まあ焦らない焦らない。今から言うから。」

 これで分かる。いつ目覚めたか全く分からない謎に包まれた俺の能力が。一体どんな能力なんだろうか。…正直なところショボい能力が目覚めてそうで怖い。

「その前に…康介。あなたには能力が二つあるわ。」

「…え?」

「能力二つ持ち…!大分珍しいな…」

 魔理沙がそう言うという事は基本的に能力は一つなのか。…ていうか魔理沙や霊夢も能力持ちなのか?そんなどうでもいい疑問をよそに、紫さんがまた話し出す。

「…でも、片方の能力は分からなかった。曖昧としていて私でも掴めなかったわ。」

 へえ。そんなことがあるのか。取り敢えず俺は能力二つ持ちってことだけ覚えておこう。こういうのはいつか分かるようになるって相場が決まっている。まあソースは漫画とかアニメなのだが。

「で、肝心のもう片方の能力は何なんだ?」

「もう片方の能力。それは…」

 紫さんがそう言った後少し沈黙の間が出来る。多分紫さんが意図してやってるんだと思うけど正直タメとかいらない。あくして。

「【天気を操る程度の能力】よ。」

「天気を…操る?」

 思わず紫さんが話した俺の能力をそのままオウム返しする。

「ええそうよ。雷に雨、雪や熱。天気に関連してる物なら割と何でも操れるようね。雲とか風とか。それにそれらを生成することも出来るようね。」

「雨を生成…ああ、それであの時大雨が降ったのか!やっと理解できたぜ!」

 魔理沙の納得したかのような言い方で俺はあの時のことを思い出す。確か俺はあの時意識がなくなる寸前に「雨さえ降れば」と考えた。そこで能力が勝手に発動して雨が降った、と考えればある程度納得はいく。というか……

「待って。もし天気を自由に操れるのならその能力、強くない?」

 霊夢が俺の思っていた事をそのまま口にする。

「ええ。でも強い能力だからかデメリットがいくつかあるの。」

 紫さんのその言葉を聞いてまずは一安心。まあ天気を自由に操るならチート能力だからな。デメリットがあって当然だ。て言うかあってホッとした。チーターにはなりたくねえからな。

「一つ目は範囲ね。今のところは自分を中心として半径5mまでしか能力が使えないみたい。」

「そうなのか…割りと狭いな。じゃあ幻想郷中の天気を変えるとかいう神みたいなことはできない感じか。…ってん?一つ目?」

「一つ目ってことは…二つ目以降もあるってことね。」

 また俺が思っていたことを霊夢が口にする。コイツ本当に心読めるんじゃねえのかな。

「ご名答。二つ目は能力の限界ね。あなたの中には霊力があって、霊力を消費して能力を使っているようね。あなたの場合だと霊力はそこそこあるから大丈夫だけど、もし使いすぎると倒れたり…最悪、死んだりするわね。」

「……待ってくれ。霊力ってなんだ?初耳なんだが。」

 死ぬ、という言葉に恐怖を覚えながらも紫さんの説明の中に出てきた『霊力』という言葉に首を傾げていると、霊夢が話し始めた。

「それについては私から説明するわ。霊力って言うのは簡単に言うと私たち人間が持っている不思議な力のことね。これを使うことで空が飛べたり色んな事が出来るの。」

「へー。そうなのか。」

「…話を戻すけど、取り敢えず私が掴んだもう片方の能力の詳細はこんなところね。」

「…なんか壮大だな。そういえば魔理沙達もこんな感じの能力持ってるのか?」

「ああ、私の場合だと【魔法を使う程度の能力】だな。」

「私は【空を飛ぶ程度の能力】ね。」

 魔理沙が【魔法を使う程度の能力】で、霊夢が【空を飛ぶ程度の能力】か。二人の間で能力の格差が起きているのは気のせいだと信じておこう。…思い込んでおこう。

「話すことは話したし、用が無いなら私はこれで失礼するけど…?」

「紫さん、ちょっと待て。聞きたいことがある。」

 そういえば聞きたいことがあったんだった。紫さんに声をかけ、呼び止める。ここで聞いとかなきゃ忘れてしまう。

「何?康介くん。あと紫でいいわよ。」

 紫さn……紫がこちらを見ながら俺に反応してくれる。

「俺はここから帰れないんだよな?」

「まあ能力があるから帰れないわね。」

「じゃあ外の世界での【俺の存在】は一体どういう扱いを受けるんだ?」

 これが最も気になっていたこと。もし幻想郷が"忘れ去られた奴が来る場所"なら俺の存在は一体どうなるのか。

「そうね…あなたは外の世界から忘れ去られることになるわね。つまり皆の記憶から天ケ原 康介という人物がいなくなる。いいえ、最初からいなかったことになるのよ。それはそれで寂しいと思うけどね。」

「そうか…」

(まあ外の世界で良い思い出なんて無かったしここに残ることしか出来ないんならここで過ごしていくか…それに家族もいないし。)

「質問は以上かしら?」

「ああ、ありがとな。紫。そしてこれからもよろしく。」

「ふふ、よろしくね。康介くん。」

 その言葉を最後に紫さんは謎の空間へと消えた。

「さて、どうしたもんか…」

 取り敢えず能力のことについては大体分かった。あとこの世界で生きていくのに必要なことと言えば…

「あ。そうだ。寝泊まりする場所どうしよう。」

 思わず口に出してしまった。能力があるとは言え寝泊まりする場所がなければ死ぬ可能性だって十分にある。要するに死活問題だ。初日は魔理沙の家に泊まったが…

「…また私の家に泊まるのか?それは研究の邪魔になるから出来ればやめてほしいんだが…」

「マジか…じゃあ本気でどうする…?」

 案の定魔理沙に断られ、今度こそどうしようかと悩む。

「はあ…しょうがないわね。今夜から私のところに居候しなさい。お賽銭のお礼みたいなものよ。」

「え?それマジ?ありがとう霊夢様…!」

 マジで感謝感激雨あられだわ。これで死ぬ可能性がぐんと減った気がする。…ん?何で一日目は泊めてくれなかったんだ?

「まだあんたのことを信用してなかったからよ。なんか文句ある?」

「まあ当たり前か…」

(にしてもサクッと心読まれ過ぎでは?そんなに俺の心読まれやすいのか。道理でスプラの読み合いにいつも負けてる訳だ。…まあそんなこと今はどうでもいいか。)

「そろそろ私帰ってもいいか?よく分からないが凄く疲れたんだぜ。」

「別にいいんじゃない?じゃあね魔理沙。」

「じゃあな霊夢!あと康介!また来るからな!」

 そう言い残し魔理沙は箒を掴んで外へ飛び出していった。俺が見送ろうとその後を付いていき、外に出ると既に魔理沙は箒で遠くの方を飛んでいた。

 今の魔理沙の姿を眺めていたら一つやりたいことが頭に浮かぶ。そう考え俺は居間へと戻り霊夢に声をかける。

「霊夢ー?少し頼み事があるんだけど…」

「何?能力の使い方でも教えてほしいの?」

「…お前は覚りか何かかよ。まあ大体そんなところだ。霊夢。俺に空の飛び方を教えてくれ。」

 そう言って頭を下げる。少ししてから霊夢が、

「…いいわよ。それくらいなら教えてあげる。じゃあ外に出なさい。」

と返してくれた。そして彼女は立ち上がり、外へと歩いていった。その後俺はカバンを肩にかけ、外へと急いだ。カバンを肩にかけてる方が何か落ち着くんだよな。

「…さて、何日で飛べるようになるかしら?」

 霊夢から気になる文章が聞こえたが気のせいだろう。…気のせいと思い込んでおこう。

 

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

 

 夕方。俺は霊夢から境内でひたすら能力の使い方とか空の飛び方とかを学んだ。…結論から言うと俺は飛べたし能力もそこそこ使えるようになった。どうでもいいけど今も飛んでる。

「まさかとは思ったけど…こんなに飲み込みが早いなんてね…普通なら3日ほどはかかるわよ…」

「普通は3日もかかるのか…やべえな俺。」

 霊夢からその情報を聞き、自分に軽くドン引きする。因みに俺の飛び方だが俺の周りに風を発生させ、それで浮き上がっているようなイメージだ。霊夢の話だと霊力を纏って飛ぶのが普通らしいが、両方やってみた結果今の方法が疲れにくいのでこの方法にした。正直めっちゃ楽だ。

 これで一人でも色んな所に行けるようになった。今のところ人里しか知らないけど。

「…んじゃ、夕食の準備よろしくね~」

「え?なんで俺がしないといけないんだ?」

「私がタダで先生やるとでも?」

「…あー、まんまと策に乗せられたわ。」

 まあ策に乗せられたとは言え俺にも利益はあったしまあいいか。

 俺は台所に向かい、夕食を作り始めた。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 その後、俺達は夕食を食べ、一人づつ風呂に入り、その後各自で寝た。

 ちなみに昼頃スマホの充電が切れたので試しに能力を使って電気の塊のようなものを作り、充電器に接続してみた所問題なく充電できた。本当にこの能力便利だな。もっと上手く使えるようになろう。




次回予告
 康介の能力が半分判明してから数日が経った。自分の能力をただひたすらに磨いていた康介は、ある人との再会を果たす。
 そして能力に慣れたと判断した霊夢からこの幻想郷でのあるルールが話されるのであった…!
次回「幻想郷のとあるルール」
 お楽しみに!

 いかがでしたでしょうか。
 活動報告にも書きましたが、今回は少し多めに書いてみました。そして気付いたら5000字超えそうになっててビビりました。
 さて次回ですが、ある人と再会します。…と言っても、康介くんが会いに行くのを忘れてただけなんですけどね。そして、ついに霊夢からスペルカードについて話されます。て言うか康介くん、今までスペルカードを知らなくてよく生きてこれたなって感じですね。
 感想等書いていただけるとありがたいです。
 では、次回の話でお会いしましょう。うp主の折れない黒鉛筆でした。


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第七話 幻想郷のとあるルール

どうも。まさかの一日に二話分投稿をしてしまったうp主の折れない黒鉛筆です。
六話目の本文を書ききったあとすぐにアイデアが思いつき、七話目書こう!って感じになり、バーッて書いたら日曜日の15時よりもっと前に七話目の本文が出来ちゃったのでこんな形になりました。許して。
さて、第七話です。今回も少しだけ康介くん以外の視点から物語を進めてみました。さて、今回の視点は誰でしょうか?
それでは、第七話をどうぞ。

前回のあらすじ(忘れてた)
康介の能力の一つ目が分かった
霊夢にほ色々教えてもらった
(まだ未完成だけど)空が飛べた

修正履歴
2017/12/23 台本形式を修正+ストーリーがズレない程度に口調やら文やらを修正&追加
2018/05/26 段落頭に全角スペースを追加+一部表現・セリフを変更


「…いつまで寝てるのよ…全く。」

 そう言い、私はため息をつく。目の前にはスヤスヤと幸せそうに寝息を立てている康介がいる。

 あの日、康介の能力が分かってから数日が過ぎた。康介はその間ひたすら自分の能力を磨いていた。私の手伝いもさせながらだけど。それのお陰か今は大分安定して能力を使えているように見える。…にしても康介は本当に飲み込みが早いわね。普通なら能力を安定して使えるようになるのに一ヶ月程掛かってもおかしくないのに。

「…そろそろアレを教えても良いかもしれないわね…」

 そう一人でボソリと呟く。そうだ、そろそろ起こさないと。流石に寝すぎね。こういうときは…

「せいっ。」ポカッ

「…!!痛った!」

 ほら起きた。ちなみに今何をしたかと言うと、私が持っているお祓い棒に霊力を少し込めてそれで軽く叩いただけ。割と魔理沙にもよくやっている常套手段よ。

「おはよ。康介。よく眠れたかしら?」

「ん…ああ、よく寝れた…文字通り叩き起こされたけどな…」

 私が叩いた部分をさすりながらアイツ…康介が布団からゆっくりと出てくる。

「何で私が叩き起こしたか分かる?」

「…え?あっ…寝すぎだろ俺…」

 どうやら時計を見てようやく気づいたようね。今は午前10時。正直言って寝すぎ。

「はあ…寝すぎた罰として今から境内の掃除をしてきなさい。箒ならそこにあるから。」

「はあ…正直やりたくねえな……でもまあ俺が悪いしやるかあ…」

 よし、上手く行った。正直今日はなんか面倒くさくて境内の掃除をやりたくなかったからこれでゆっくりとくつろぐ事が出来る。

「んじゃ、よろしくね~」

 箒を握って外に向かう康介にそう言い、私は縁側でくつろぐことにした。お茶でも飲みながらね。そうだ、ついでだし煎餅も食べましょうか。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「にしても葉っぱ散らかりすぎだろ…」

 今俺は霊夢に「寝すぎた罰」として境内の掃除を命じられ、境内に箒を持ってただ立ち尽くしている。まあ居候だから今まで掃除とかやってきたので大したことはない……いつもなら。

 今日の境内には今までに無いほどの大量の木の葉が落ちている。それに加え、博麗神社の境内は相当広い為にかなり広範囲に散らばっている。

 正直めっちゃ面倒くさい。これを普通に箒で掃くとなると果たして何時間かかるんだろう…ていうかこんだけ広いと掃いた所にまた葉っぱが落ちてきそうだ。そうしてそこを掃除している最中に別のところに葉っぱが落ちて…っていう無限ループにハマるなんてことは嫌だ。そもそも分かってる無限ループになんかハマりたくない。

 ていうか暑い。夏だから仕方ないけど暑すぎる。

「…そうだ。風を使って一気にやってしまうか。」

 我ながらいい案だ。なら善は急げだ。俺は集中し、風をイメージする。最近能力を使い続けたお陰か割と自分の能力には慣れてきた感じがする。習うより慣れろってマジだったんだな…

(まずは葉っぱを飛ばす程度の風を発生させる…で次にその風を操って葉っぱを中央周辺に集める…最後にあそこにあるゴミ箱に入れる…これでいいはずだ。)

 イメージすると、辺りに風が吹き始めた。まずは第一段階の風を発生させるをクリア。

 次に俺は巧みに風を操り、広い境内に落ちている葉っぱを中央付近に寄せる。中央周辺ににみるみるうちに葉っぱが集まってくる。

 後は一旦風を解除し、持っている箒で一気にかき集めて再び風を発生させる。そして一点にかき集めた葉っぱを風に乗せ、あそこにあるゴミ箱に風ごと葉っぱの塊をシュゥゥゥーッ!!超!エキサイティン!!

 …おっと、ついテンションが上がってしまった。辺りを見渡した感じだと誰も見てないから別に良いよな…?

 俺はゴミ箱に葉っぱが入っている事をしっかりと確認し、再び辺りを見回す。境内には今のところ葉っぱは一つも落ちていない。

「ふう…能力使うとすぐ終わったな。にしてもほんとに便利だ。…そうだ、霊夢に終わったって報告しないとな。」

 どうせアイツの事だろうし縁側で煎餅でも食べながらお茶をすすっているのだろう。そう思い、縁側へと向かおうとすると、後ろの階段から足音が聞こえた。どうやら誰かが来たようだ。

(霊夢呼びに行くのも手間がかかるし面倒くさいから俺が応対するしかなさそうだな…)

 そう考えて俺は縁側へと向かおうとしていた足を止め、階段の方を向く。頼むから俺の数少ない知り合いの誰かであって欲しい。正直そっちの方が色々とやりやすい為だ。

 最初に見えたのは何処かで見た、いや、見覚えしかない青い帽子。

 あのヘンテコな帽子の形を忘れるはずがない。そう、神社に来たのは慧音だった。

「にしてもこの階段はいつ登っても長いな…えっ?」

 そう言いながら階段を登って来た慧音さんと目線が合い、慧音さんが固まる。そりゃ無理もない。本来なら俺は元の世界に帰っていて、この世界にはもう居ない筈なのだから。それに俺はここ数日ひたすら能力の練習してて人間の里に行っていなかった。というか行くの忘れてた。すまんな慧音さん。

「…よ、よお。慧音さん。数日ぶりだな。」

「なんで康介が居るんだ…?今から数日前に外の世界に帰ったはずじゃ…?」

「ああ…実はな…」

 

 

 

 

 

 

少年説明中…

 

 

 

 

 

 

「…という訳なんだ。すまん。今までそっちに行けてなくて。」

「別に構わない。取り敢えずこれからも宜しく、だな。」

「ああ、これからも宜しく。ところでどうしてわざわざこんな遠い神社に…?」

「…ああ、少し霊夢に用があってな。悪いが霊夢を呼んできてくれ。」

「了解。すぐ呼んでくるわ。」

 そう言うと俺はその場を後にし、霊夢を呼びに縁側へと向かった。

(ついでに掃除終わったって言ってこよ…)

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「慧音さん、霊夢を連れてきたぜ。」

「何の用?慧音。また妖怪が出たの?」

 如何にも面倒くさそうに霊夢が聞くと、慧音は首を横に軽く振り話し出す。

「いや、違う。最近霧の湖の方に真っ赤な建物があったのを里の住人が発見してな。多分大丈夫だとは思うが一応注意だけはしておいてくれって事を伝えに来た。」

「あら、それだけ?分かったわ。注意しておくわね。」

「頼んだぞ。…それでは私はこれから用事があるので失礼する。またな、霊夢と康介。」

「ああ、またな。」

 そう言って俺達は階段を降りていく慧音さんを見送った。

 慧音さんが見えなくなったところで霊夢が話しかけてくる。

「そういえばあんた、もう能力には慣れた?」

「前よりは大分慣れてきたぞ。」

正直に返すと、霊夢が話を続ける。

「そう。ならこの幻想郷での護衛術…と言うよりルールについて教えましょう。知っておいた方がいいわ。」

「了解。それってどんなルールなんだ?」

「それは…【スペルカードルール】よ。」

「スペル…カード?」

 そう疑問に思い、つい言葉に出してしまうと、霊夢がそのスペルカードルールについて説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

少女説明中…

 

 

 

 

 

 

「…というのがスペルカードルールよ。ちなみに私達は弾幕ごっこって呼んでるわ。」

「なるほど。つまりは揉め事とかが起こった際に人間と妖怪だと力の差が激しすぎるから対等に勝負できるようにしたのがその弾幕ごっこって訳か。」

「まあそんなところね。さてと、今からあんたにやってもらうことは…もう分かるわよね?」

「まあ分からなくも無いな」

 言われなくてもスペルカードについてあんなに長い説明をされたら嫌でも次に何をするか分かってしまう。どうせ俺のスペルカードでも作るのだろう。

「物分りが良くて助かるわ。じゃ、ここで少し待ってて。必要なものがあるから。」

 そう言って霊夢は倉庫の方へと歩いていった。一体何が必要なのだろうか。取り敢えずカードは要りそうな感じがするが。

 しばらくして、霊夢が何かを持って戻ってきた。手に何か握っている。

「はいこれ。倉庫を見たら割とあったからいっそのこと多めに10枚あげるわ。」

 そう言って霊夢から渡されたのは何も書かれていない真っ白のカードの束だ。確かに10枚ほどはありそうだ。

「こんなにいいのか?ありがとな、霊夢。」

「いいのよ。どういたしまして。さて、次はスペルカードの作成ね。」

「作成って…具体的にどうするんだ?」

 何せ初めての作業だ。聞けることは聞いておいた方が良いだろう。

「簡単よ。作りたい弾幕を頭の中でイメージする。あと名前もね。こんな感じに。」

 そう言って霊夢は懐から二枚のスペルカードを取り出した。片方のカードには【霊符「夢想封印」】と書かれている。もう片方には【境界「二重弾幕結界」】と書かれている。……成程。つまりは◯符「◯◯◯◯」みたいな感じで作るのか。ついでに言うと別に◯符じゃなくても別に作れるって訳か。

「で、頭の中で弾幕が完成したらそのカードに弾幕のイメージと少し霊力を流し込むような感じにすれば完成よ。」

「最後だけ曖昧だな…」

「し、仕方ないでしょ!最後は感覚なんだから!ほら、さっさとやりなさい!」

 霊夢に急かされた俺は目を閉じ、頭の中で弾幕をイメージする。

(弾幕…まるでバレルスピナー…いや、ハイドラントのように静と動があってそれでいて俺の【天気を操る程度の能力】と関連できるような物…あった。まずは雨関連だ。)

 ひたすら頭を回転させ、頭の中で一つの弾幕を完成させる。そして一枚の真っ白のカードを手に取る。

(弾幕のイメージと少しの霊力をカードに流し込む感じで…!)

 …流し込むイメージが終わり、俺はゆっくりと目を開く。そこには、一枚のスペルカードがあった。

「…雨符「断続的な通り雨」そんなに強くないと思うけど出来た…俺のスペルカード!」

「おめでとう。どうやら上手く行ったみたいね。ちなみに勘違いしないで欲しいんだけど、弾幕は自分で作るのよ。別にスペルカードを唱えたからって弾幕が勝手に出て来る訳じゃないから注意ね。」

「そうなのか。了解。」

 自身のスペルカードを眺めながらそう言うと、霊夢が話を続けていく。

「ちなみに、弾幕とは言ってるけれど別に直接攻撃しに行ってもいいからそのスペルカードを作るのもアリかもね。」

 直接攻撃もありなのか。そう聞いて俺の頭の中に一つの案が思い浮かぶ。俺があっちの世界にいた頃にしていた剣道…もしかしたら使えるかもしれない。

 また俺はイメージを膨らませる。剣を装備するようなスペカを作るので剣をイメージ。ちなみに俺の能力は天気の規模等もいじれるのでめっちゃ切れ味がいい雲とかも作れちゃうわけだ。前に一回料理する時に作ってみた事がある。それを応用して…!

「…出来た。雲剣「クラウドソード」…多分これで近距離戦も大丈夫だ。」

「二枚目ね。じゃあ次は…」

 そう霊夢が言いかけたその時、遠くから聞き覚えしかない声が聞こえてきた。そう、魔理沙だ。

「霊夢に康介〜!遊びに来たぜー!」

 そう言ってこちらに飛んできた魔理沙は、今度はしっかりと俺達の近くに着地した。そういえば、俺が見た感じだとここ数日はずっと着地に成功しているような気がする。

「あら、いらっしゃい。丁度良かったわ。」

「…?何が丁度良かったんだぜ?」

 霊夢の一言で霊夢が何を企んでいるのかが俺には分かってしまった。スペルカードが作成完了…そしてそのスペルカードの用途…あっ(察し)

「康介の弾幕ごっこの相手をしてくれない?」

 デスヨネー。霊夢の言葉を聞いて思わず苦笑い。まあ何処かでも言ってたけど「習うより慣れろだ!これマジ!」って言ってたしな。やらないよりかはマシだな。

「頼む魔理沙。今さっき作ったばっかりのスペルカードを実践してみたいんだ。」

 俺からも頼み込む。…ていうかこれって本来なら俺から頼むことなんだから俺が頼むのは当たり前なのか。

「…仕方ない!その役、引き受けるぜ!」

「ありがとう魔理沙!!」

 こうして、俺と魔理沙の弾幕ごっこが幕を開けようとしていた…

 

「じゃあスペルカードは3枚でやるぜ!」

「…速攻でもう一枚作るからちょっと待ってくれ。」

 開始する前から不安しかないが大丈夫だろうか。




次回予告
 ついに始まる魔理沙との弾幕ごっこ。最初は魔理沙の圧倒的な力の差に苦戦する康介。しかし、とある一枚のスペルカードが流れを変える…!?
次回「魔理沙との初めての弾幕ごっこ」(仮)

 いかがでしたでしょうか。今回も少し多めに書いてみました。この先もこれで行こうかなと思っていますのでどうか宜しくお願いします。
 さて、次回ですがとうとう弾幕ごっこが始まります。ということは戦闘描写です。伝わりやすく書けるようがんばります。前後半に分けないように上手いこと書きたいなあ。なんて思っていたり。
 もし良ければ感想等書いていただけるとありがたいです。
 それではこの辺で失礼。うp主の折れない黒鉛筆でした。


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第八話 魔理沙との初めての弾幕ごっこ

どうも、持久力vs瞬発力のフェスを楽しみすぎて予約投稿を忘れかけたうp主の折れない黒鉛筆です。
フェス始まる前に書ききっておいて本当に良かった。ちなみに私は瞬発力派です。
さて、第八話です。一応第一章はこれで終わりにしようかなって思ってます。あ、第二章に移る前にとあるものを投稿する予定なので期待せずに待っててくださいね。
それでは、第八話をどうぞ。

前回のあらすじ
慧音さんと再会した
霊夢にスペルカードについて教えてもらった
自分のスペルカードを作ったらなんか魔理沙と弾幕ごっこすることになった

修正履歴
2017/12/23 台本形式を修正+ストーリーがズレない程度に口調や文などを修正


「…よし、3枚目出来たっ!」

サクッと3枚目を作り終えると、魔理沙がやや驚いたような表情で話しかけてくる。

「早いなオイ…てか元々2枚しかないなら2枚でやるつもりだったのに。」

「え。それを早く言えよ…まあ作っちゃったし3枚でおk?」

「…まあいいぜ。じゃあやるか。」

魔理沙と会話を交わすと、魔理沙が上空へと飛び立った。続けて俺も飛び立とうとすると、霊夢に引き止められる。

「あんた弾幕の作り方知らないでしょ。それでどうやって戦うつもり?」

「あっ…えっと…どうするんだ…?」

「適当に弾をばら撒くだけよ。難しくないわ。こんな風にね!」

そう言うと霊夢がいきなり赤い弾を大量に発射。俺は驚きながらもその赤い弾を全て避けた。

「おいおい…初見殺しは勘弁してくれよ…」

「あら、ごめんなさいね。でもこれで大体分かったでしょ?」

絶対反省してねえこの腋巫女。

「あんなので分かるか!…って言いたいところだけどだいたいわかった。」

「なら良かったわ。ほら、魔理沙が待ってるわよ。」

ペースを崩されたような気しかしないが今度こそ俺は上空へと飛び立ち、魔理沙と少し間合いを開けて滞空する。

「魔理沙ー!手加減しなさいよー!」

「分かってるぜー!」

「…本当に分かってるのかしら。」ボソッ

そんな霊夢の呟きが聞こえた。霊夢は誰にも聞こえてないと思ってるみたいだけど悪いが俺は地獄耳なんだよね。その程度の呟きだったら聞こえてしまう。そんなことより今は弾幕ごっこに集中しよう。

「スペルカードは3枚までで、被弾は…ハンデとしてお前は3回被弾したら負けだが私は1回被弾したら負け。これでどうだぜ?」

魔理沙の言葉を聞き、少し嫌な感じになる。ハンデか…。正直ハンデを貰って楽して勝ちたくはない。やるなら対等に勝負したいが…あくまで俺は初めての弾幕ごっこだ。それに魔理沙は聞いたところによると相当強いらしいし……仕方ない。ハンデありで行くか。

「…ああ、それでいいぞ。」

「じゃあ始めるぜ!!…先手必勝!」

魔理沙がそう言った途端ハイスピードな星型のエネルギー弾が大量にこちらに向かってきた。ふむ、これが霊夢が出してた弾幕ってやつか。霊夢のより大分速いが避けられないほどではない。

「集中…!」

俺は前から飛んでくる星型弾をしっかり見つつ右へ左へ移動して避けていく。

(弾幕…あんな感じで一回やってみるか。)

そう考え、俺はまず魔理沙が放ったような弾幕を頭の中でイメージし、それを魔理沙に向かって放った。

しかし、初めての弾幕だったからか魔理沙のような弾幕は出ず、代わりに出たのは米粒のような弾5つだった。ショボい。ショボすぎる。

(まあ最初は上手く行かねえよな…)

「何だ?それで終わりか?ならこっちから仕掛けさせてもらうぜ!」

そう言った魔理沙が何処からかカードらしきものを出した。おそらく…

「行くぞ康介!魔符「ミルキーウェイ」!」

やはりスペルカードだ。避けきれるだろうか。…そうだ、一応唱えておくか。装備品は持ってるだけじゃ意味がないもんな。

「じゃあこっちも。雲剣「クラウドソード」!」

そう唱えた次の瞬間、俺の右手にはドラ◯エの片手剣のような雲でできた剣が装備された。ていうか作った。一応雲のあれこれを変えて斬ることもできるし叩くことも出来る。ついでに雲だから伸縮自在だ。

装備されたことを目視で確認し、魔理沙の方を見ると魔理沙の周りには魔法陣のようなものが集まっていた。すると魔理沙がついさっきより大きな星型弾を出してきた。隙間は全然あるので避けられそうだ。

「よっと…」

弾幕の隙間に入ったその瞬間、目の前から小さい星型弾が飛んできた。どうやら魔法陣のような物から発射されたようだ。いきなりでどっちに避けようか一瞬戸惑ったせいで弾幕は俺に命中しそうになる。

(避けきれない…!?なら…!)「はぁっ!」

俺は気合いの入った声と共にクラウドソードの切れ味を高め、縦に振った。正直切れるかどうか心配だったけど弾幕は上手く縦に真っ二つに切れ、俺の左右を通り過ぎ、俺に当たることは無かった。

「ほう。その剣、そんな事も出来るのか。」

「ああ、色んなことが…痛っ!?」

突然左肩に痛みが走る。何があったと左肩を見ると、いつの間にか横から来ていた星型弾に当たっていた。ほんと視野狭いな俺。スプラとは全然違うなこれ。すぐその星型弾は消えたが、まだ激痛が走っている。マジで痛い。だが多分骨は折れてないだろうな。その証拠にまだ左腕はかろうじて動く。

「ふふ…これで一回だぜ。」

「マジかぁ…」

そんな事を言うと、魔理沙が再び弾幕を展開。負けじと俺も弾幕を避けながら自分の弾幕を魔理沙に放ってみる。ついさっきよりは数も増したが、全く持って当たらない。これが経験の差ってやつか…こうなったら。

「当たらないならスペルカードだ!雨符「断続的な通り雨」!」

スペルカードを唱え、上空(正確には魔理沙の上空だけ)に雲を展開。そこから雨に見立てた弾幕を降り注がせる。しかし魔理沙は、これをヒョイヒョイと避けていく。

「うへえ…マジかよ…」

「どうした康介!こんなもんか!?」

正直こんなもんです。ハイ。ていうか相当ピンチだ。これは相手の動きを読んで攻撃を仕掛けないと当たらないかもしれない……相手の動きを読むのはスプラでは上手く行ってたけど果たしてここではどうだろうか…そう考えていると、魔理沙の上空にあった雲が消えていた。どうやら時間切れのようだ。

「反撃行くぜ!魔符「スターダストレヴァリエ」!」

そう言った魔理沙の周りに魔法陣のような物が集結。そこから魔法陣が星型弾を出しながらこちらに向かってきた。もちろん前からの攻撃は避けれる。避けた魔法陣は俺の少し後ろで停止した。

この時俺は魔理沙が何かしてくるのではと思い、ただひたすら魔理沙を警戒していた。もちろん出てきた星型弾に当たらないようにして。だが、いきなり後ろから何かに突撃されたような感覚が。

「がっ…!」

まさかと思い後ろを見ると、なんと俺は魔理沙の方に帰っていく魔法陣と衝突していた。要するに凡ミスだ。…てかこいつにも当たり判定あるのか。 

(うっわ…やらかした…)

「おっと、言い忘れてたぜ。私のそれも当たると痛いからな。」

「それを早く言えよ!」

魔理沙に軽くツッコミを入れるがどっちにしろ、被弾したという事実は変わらない。これであと一回被弾したら負けか。大ピンチだな俺。ヤバイよヤバイよとか言ってらんねえな。

…どうやら最後のスペルカードに賭けるしかないみたいだ。

そう思い俺はズボンのポケットの中に入れてある最後のスペルカードを見た。これで勝つには…

「よそ見は禁物だぜ!!」

その声を聞き前を見ると、再び魔理沙が弾幕を展開してきている。それに負けじと俺は残り半分くらいしかないであろう霊力を使い弾幕を展開するのであった。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

(にしても康介の成長は早いな。もうちゃんとした通常弾幕になりつつあるもんな。)

私は弾幕を放ちつつそう思った。にしても、ついさっきの康介のスペカは正直なところ危なかったぜ。上からくる弾幕なんてあんまり避けたことなかったからだ。

今私と康介は互いに弾幕を放ち、飛んでくる弾幕をひたすら避けている。おそらく康介はチャンスを伺ってチャンスのときに最後のスペカで私を被弾させるつもりだろう。

だが、正直なところ康介は限界が近い筈だ。いつ被弾してもおかしくないくらいに。事実、少し前から康介の放つ弾幕の密度が薄くなっている。それはつまり、彼の霊力が少なくなっている証拠だろう。

すると、突然康介がバランスを崩した。おそらく弾幕を避けてバランスを崩したんだろう。その隙を逃さずにすかさず私はスペカを叩き込むことにする。最後はやっぱりこれで締めるぜ!

「これで終わりだぜ!恋符「マスタースパーク」!」

そうスペカ宣言した私はミニ八卦炉を構える。そしてミニ八卦炉にエネルギーを貯め、発射。

「クソがっ…!」

康介は何とか体勢を立て直し、彼の最後のスペカを宣言していたが、もう手遅れだぜ。康介は私が放ったマスタースパークに飲み込まれた。そして小さい爆発が起こる。

「これで3回目の被弾だな。私の勝ちだぜ。」

そう言って私はマスタースパークを撃つのをやめ、康介の元へと飛んだ。一応手加減はしたので大丈夫なはずだぜ。

「おーい康介。大丈夫かー?」

しかし、次に聞こえた康介の言葉は「大丈夫」でも「大丈夫じゃねえよ」でもなかった。

「悪いけど…俺のバトルフェイズはまだ終わってないぜ…!」

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

爆発の煙の中、魔理沙が驚いたように話しかけてくる。声の方角でどこにいるかはだいたい分かるが煙のせいで姿が見えない。仮に煙無くても見えないと思うけど。

「何でだぜ!?確実に被弾してただろお前!」

魔理沙が驚いたかのような声で話してくる。まあ普通ならそう見えるだろうな。あのスペルカードを宣言してなければ、の話だが。

「魔理沙、まだ終わってないわ。康介はマスタースパークを防いだわよ。…最後のスペルカードで。」

どうやら霊夢は分かっているようだ。そして煙が晴れる。

「…!?雲…?」

「ヘヘ…反撃「積乱雲障壁」…」

そう、俺はマスタースパークに当たる直前、このスペカを宣言し、目の前に雲でできた障壁を展開したのだ。横幅は大体キャンピングシェルターをバージするときぐらいの幅なので何とか凌ぎ切った。

そして符名にもある通り、このスペカの特徴は「攻撃を凌ぐ」だけじゃないんだよな。

魔理沙が察したのか急いで俺と距離を離す。だがもう遅い。

…おそらく霊力がもう尽きる。ならアレで決めるしかない…!

「…ファイヤ!」

そう俺が言い放った瞬間、雲からマスタースパークのようなレーザーが発射された。そう、このスペカのもう一つの特徴は「展開した雲が食らった攻撃をそっくりそのままお返し出来る」という点だ。

一応避けてほしい方向があるのでまずはレーザーの右側に軽く弾幕を飛ばす。続いてレーザーから離れすぎないように左側のレーザーから遠い位置にも弾幕を飛ばす。正直もう限界が近い…これで決まってくれ…!

「よっと…危ない危ない。」

魔理沙が避けた方向は…左。そして魔理沙がいる位置も完璧。取り敢えず運ゲーには勝てた。悪いけどこの攻撃は魔理沙を被弾させるために撃ったわけではない…!

「これで…チェックメイトだ…」

「は?何言って…痛っ!!」

作戦成功。見事に魔理沙は俺がカウンターレーザーを放った瞬間に上空に投げ、落ちてきたクラウドソードに当たってくれた。一応切れ味を無くして完全に打撃武器にしたしそんなに高く投げてないので死にはしないはず。ただ音を聞いた感じ気絶はしてそう。

「これで魔理沙が一回被弾…俺の勝ちか?」

「ええ、あんたの勝ちよ。」

気付けば霊夢が俺の近くまで飛んできていた。ハンデありだが何とか勝てた。と言っても不意打ちだけど。

「はは…やったぜ…」

全身から力が抜ける。そして地面へと落下。多分霊力が切れたんだろうな。

「ちょっと!?」

霊夢が急いでこちらへ飛んでくる中、俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「…知ってる天井だ。」

「は?何言ってんの、あんた。博麗神社の中なんだから当たり前でしょ。」

霊夢が冷たく反応を返す。流石に泣きたい。泣いてもいいかな?そんなことより、えっと…?確か俺は魔理沙と弾幕ごっこをして運ゲーに勝って不意打ちを決め、俺が勝ったんだっけか…

辺りを見回す。霊夢の言ったとおりここは博麗神社の中のようだ。そして外を見ると、すっかり日は落ちて辺りを闇が覆っていた。

そういえば被弾した左肩と背中が痛くない。おかしいと思って左肩を見たが、傷一つついていなかった。…どういうことだ?

「はあ…あんた、一日も寝てたのよ?色々寝言を言いながら。」

あれ…?人間の傷って一日で治るものだっけか?それより寝言?基本俺は寝言を言わないけど…んんん?

「ちょっと、人の話聞いてる?」

「あっ、すまん。少し考え事してた。そういえば魔理沙は?」

「魔理沙ならあの弾幕ごっこのあとすぐに復活して帰ったわよ。『また勝負しような!』って言い残してね。」

あいつもあいつで大分タフだな。流石【普通の魔法使い】を名乗ってるだけのことはある。それに引き換え俺は…情けねえな。

「取り敢えず霊力が足りなくてこうなった訳だから…霊力頑張って増やさないとな…それに運ゲー仕掛けなくても勝てる実力を…」ブツブツ

「独り言かしら?取り敢えず夕食できてるからパパっと食べて今日はもう寝なさい。寝すぎたから寝れないと思うけど。」

「おっけ。ならそうさせてもらうよ。」

その日はさっさと夕食を食べ、残りの家事を霊夢に任せて俺はさっさと寝ることにした。霊夢マジ感謝。

色々腑に落ちないことはあるけど、まあいいやと一旦保留にし、俺はすぐに深い眠りについた。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「そろそろかしら?あの計画を実行するには…」

「私は図書館で敵の来襲に備えておけばいいのね。」

「私はここに敵が来たら門で迎え撃てばいいんですね!」

「お嬢様。あの計画についてですが…いつ実行いたしましょう?」

「そうね…大体今から一週間後かしら?まだ若干準備が足りてないわ。それに今から丁度一週間後は満月だしね…」

「承知いたしました。」

「じゃあ一週間後にあの計画を実行するわよ。博麗の巫女…覚悟してなさい。ククク…」

 

この時、今から一週間後にあんな事件が起こるとは康介や魔理沙、そして霊夢でさえ知らなかったのである。




次回予告
次回からとうとう第二章!
第二章は紅魔郷編です!
幻想郷の空を突如覆い尽くした紅い霧…スペルカードルールを制定して以来初めての異変が幻想郷を襲う。
異変解決のため動き出す霊夢と魔理沙。そしてその時康介は…!?
次回「紅霧異変第一話 康介の予知夢と恐怖の紅い霧」(仮)

いかがでしたでしょうか。次回予告がなんかハイテンションですがこのまま行きます。
次回ですが、とうとう紅魔郷編に突入します!あの吸血鬼姉妹に完全で瀟洒なメイドさん…ようやくあのメンバーを登場させられると思うとワクワクするのは私だけですね。
あ、前書きにも書いた通りこの後(忘れてなければ)とあるものを投稿しますので適当に待っていてくださいね。
それではここらで。うp主の折れない黒鉛筆でした。


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康介くんのキャラ設定(第一章終了地点)

どうも、最近ソイチューバーというブキが楽しく思えてきているうp主の折れない黒鉛筆です。(チャージが当たるとは言ってない)
ちゃんと忘れずに予約投稿できました。やったぜ。
ということでタイトル通りここでは康介くんのキャラ設定的なものを投稿しました。
一応最新話のところに投稿してますが要望があれば一番上に持ってくるかもしれません。(というか出来るのか?そんなこと)
ただひたすらに書いたのでグチャグチャになってると思いますが生暖かい目で見てくださいね。
それでは、キャラ設定的なものをどうぞ。


康介くんについて

 

天ケ原 康介(あまがはら こうすけ)

性別 男

年齢 17歳

身長 169㎝

体重 60㎏

好きなもの ゲーム(主にスプラ)、剣道

嫌いなもの 水泳(全く泳げない)

今作品の主人公。自宅から遠い友達の家から帰宅する最中にふと神社を発見し、「コンビニのバイトが上手く行きますように」と願うために神社へ向かったところ、何故か幻想入りしてしまった高校二年生。

高校では剣道部に入っていたため、剣に関してはそこそこ扱える。実際弾幕ごっこで魔理沙が出した(正確には魔理沙のスペルカードで出現した魔法陣が出していた)弾を真っ二つに斬っていた。

スプラトゥーンというTPSが大好きで前作であるスプラトゥーンの方ではS+カンスト経験者。新作であるスプラトゥーン2でも三種ルールS+までは到達している。ちなみにメインブキは特になく、何でも使えるタイプのプレイヤーらしい。ただマイナーブキを好んで使っている傾向にある。

人里に妖怪が出たときに何故か魔理沙にそこへ連れて行かれて死にそうになったり、いつの間にか能力を発現して元の世界に帰れなくなったりとそこそこ悪運は強い。しかし彼曰く「運は収束する…多分。」らしく、実際魔理沙との弾幕ごっこで糸のように細い勝ち筋(こちら側が圧倒的に不利な運ゲー)で勝利した。

どうやら中学生の頃いじめられていたらしく、幻想入りした後に一回その夢を見ている。彼にとってはかなりトラウマとなっているようだ。さらに彼自身の家族についてもあまり話したがらない。何かあったのだろうか。

敵の行動を予測して行動することが多く、その予測はかなりの確率で当たっている。要するに勘がいい。実際に妖怪が魔理沙に対して攻撃しない理由を推測し、実際に当てていた。

どちらかと言うと頭脳派。ただ一刻を争うときは後先考えず行動してしまうことが多い。

稀に予知夢を見るらしく、かなりの確率で予知夢で見たことが現実になる。(重要)

実は地獄耳でスプラトゥーンではそれを活かしたサウンドプレイもしていた。

 

能力について

・天気を操る程度の能力

自分自身の霊力を使い、天気に関連するもの(雷、風、雲、雨etc…)を自在に操ったり発生させたりすることができる。チート。しかし、効果範囲は今のところ自分を中心として半径5mまでで、起こす天候の規模によって霊力の消費が違う。そして霊力を使いすぎてしまうと気を失ったり倒れたりする。

彼自身はこの能力を色んな所で使っており、空を飛ぶのに風を発生させて飛んでいたり、彼が幻想入りする時にたまたま持っていたスマホの充電が無くなりかけた時には雷の電流や電圧を調整しスマホを充電していたりする。

・???

謎。八雲紫によって存在自体は判明しているが、何が出来るか、そしてどんな名前なのかが一切分かっていない。

彼曰く「いつか分かるだろうから存在だけ認識してる」らしい。

 

服装

ショートヘアーで長袖のネズミ色の服を着ており、寒ければ上着である紫色のパーカーを着用する。靴は黒をベースとしたスニーカー。ちなみにパーカーは二種類持っており、生地が薄いバージョンと生地が厚いバージョンがある。

スボンは長ズボンでベルトも着用している。彼曰く「足見せたくないし長ズボンでもそこそこ動きやすいから履いてる」らしい。

ちなみに服に関してはパーカー以外替えが無いので八雲紫にお金を払い、全く同じズボンと服を買ってきてもらった。(六話と七話の間の話)

ワンショルダーバッグを肩からかけており、その中には彼の持ち物が入っている。

 

持ち物

・スマホとスマホの充電器

スマホに関しては電波が圏外なのでほぼ目覚ましに使っている。でも一応バッグの中に忍ばせているようだ。

・財布

中には現在2万円ほど入っている。ただ元の世界と幻想郷の世界ではお金の単位が違うため現在全く使い物になっていない。

・イヤホン

スマホに繋げて曲を聞くためのイヤホン。ただスマホが目覚し時計化したのでほぼ使えない。強いて言うならダウンロードした曲を聞く程度だろうか。

・空のペットボトル

水が入っていたペットボトル。第四話での妖怪との戦闘のときに妖怪を怯ませるために水を使った。結果としては弱点が分かったが。使ったあともバッグの中にしまっている。

・何も書いていないスペルカード×7

霊夢に貰ったスペルカード。10枚セットで貰ったが、そのうち3枚は既にスペルカードとして使用している。

 

康介のスペルカード

・雨符「断続的な通り雨」

相手の少し上に雲を展開し、そこから雨に見立てた弾幕を降り注がせる。スペルカード名のとおり、一定時間で一回止むが、また弾幕が降り始める。そのため、避けきられてしまうことが多い。

・雲剣「クラウドソード」

その名の通り雲でできた片手剣を装備するだけ。この剣は切れ味を自在に操れるため、純粋な剣として使うこともできればハンマーのように打撃で使うこともできる。更に言えば伸び縮み自在でもあるためゼ◯ダの◯説のようなフックショットも出来るかもしれない。

・反撃「積乱雲障壁」

雲でできた障壁を前に展開する。大体キャンピングシェルターをバージするときくらいの大きさのため、かなりの範囲の攻撃を防ぐことができる。更に符名にもあるとおり、この障壁で防いだ攻撃はカウンターとしてそっくりそのまま返すことができる。カウンターを発動するタイミングは自由で別にカウンター発動は強制ではないためカウンターを打たないことも可能。




次回予告
特になしッ!!!
康介「オイ」

いかがでしたでしょうか。もしこれを読んで疑問等出てきましたら出来るだけ答えますので感想にでも書いておいてください。
ということで、うp主の折れない黒鉛筆でしたー。


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第二章 紅魔郷編 第九話 紅霧異変第1話:康介の予知夢と恐怖の紅い霧

どうも、最近スプラトゥーン2のギア作りが楽しすぎてガチマッチに潜っていないうp主の折れない黒鉛筆です。
ということで、第九話です。今回の話から紅魔郷編へと突入します。そして康介のよくわからん特徴?が出てきます。タイトルでネタバレしてますが。
ちなみにタイトルの恐怖の紅い霧はとあるゲームをリスペクトしてつけたものです。許せサスケ。
ということで(?)、第九話をどうぞ。

前回のあらすじ
魔理沙との弾幕ごっこに勝った(運ゲーを制した)
霊力の使い過ぎで倒れ、一日の間目覚めなかった
誰かが一週間後に何かを決行する(らしい)

修正履歴
2017/12/23 台本形式を修正+ストーリーがズレない程度に口調や文などを修正&追加


「ふぃー。疲れた。」

そんな事を言いながら額についた汗を拭う。魔理沙と弾幕ごっこをしてから一週間が過ぎた。あの日から俺は霊夢の手伝いもしつつ霊力を増加するための特訓をし続けていた。あとついでに体力も。今は朝の5時ぐらい。この一週間俺は朝の4時半に起床し体力増加のために30分ほど博麗神社の長ーーーい階段をダッシュで昇り降りしている。確か階段ダッシュ…だっけか。お陰で前より大分体力がついたような気がする。しんどいけど。

ちなみに霊力は霊夢によると「瞑想とかで増えるんじゃない?」と言っていたので昼食後に瞑想していたりする。今のところ霊力が増えたような気はしてない。だって霊力をほぼ全部出し切ったの魔理沙を相手にしたときだけだから。仕方なし。

さて、階段ダッシュも終わり、寝室に戻ってきた俺がすること。それは…

「んじゃ、二度寝ー。」

そう、二度寝である。霊夢の手伝いをするのは大体9時からなのでそれまでの4時間の間少し寝るのだ。「だったら早起きする意味なくね?」とか言わないで。これが俺のやり方だから。霊夢にはそういうことをすると伝えてあるので大丈夫だ。だけどその分前よりは仕事量増えたけどな。

ちなみに二度寝せずに起き続けることもある。大体そういう時は事前に霊夢から朝食作ってと頼まれたときだけだが。

今日は朝食作ってと頼まれてないからぐっすり寝るかぁ…

そう考えて俺は布団に入り、すやすやと寝息を立てた。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「そろそろ康介が起きてくる気がするけど…あいつ起きてこないわね。またあのお祓い棒でつついてやろうかしら。」

私は今康介が起きてくる前に先に境内の掃除をしようと思い、箒を持って境内の掃除をしている。あいつ、早起きしてそこの階段を走ってるみたいだけど本当かしらね…私その時間に起きれないから確認が出来ないのよね。もし嘘だったら今度夢想封印撃ってやろうかしら。

「…にしても暑すぎない?まあ夏だから仕方はないと思うけど…」

そう、私のはるか上には雲ひとつない真っ青な空があり、そこには光り輝く太陽がある。まさに夏真っ盛りのような天気ね。本当嫌になっちゃうわ。そう思いながらのんびりと掃除をし続ける。すると、いきなり空が暗くなった。そして周りが赤く見え始める。

「これは…霧?」

空を見上げるとそこには赤い、いや紅い霧のようなものが広がり幻想郷の空を覆い隠していた。もちろん太陽も見えない。

「これは…異変ね。しかもかなり大規模。解決するの面倒くさいわねぇ…」

そう独り言を呟きため息をつく。そして箒を置き私は準備を始めた。もちろん、異変解決のための準備だ。

「康介は…寝かせておきましょう。もし起こしたら行くとか言い出しそうだし。」

ちなみにこの推測も勘。まあ私の勘はよく当たるから起こさない方が賢明でしょうね。て言うかあれでも康介はまだこの世界や自身の能力に慣れきっていない。どうせ連れてっても異変解決が遅くなるだけでしょうけどね。一応康介のために書き置きを残しておこうと思い、私はササッと書き置きを書く。そして書き置きを居間のちゃぶ台の上に置いておいた。多分これで目を通してくれるはず。

「じゃあ…行きますか。」

準備を終えた私は博麗神社から飛び立った。ちなみに異変の元凶がいる方向なんて分からないから博麗の巫女としての勘を頼りに飛んでいくことにした。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「いつもこの辺りは霧が深いけど、今回はこの紅い霧のせいで更に深く見えるわね…」

今私がいるのは霧の湖。勘に任せて飛んでいたらこんな所についてしまった。…そういえば、この前慧音が霧の湖に何か赤い建物があったって言ってたような…まさかとは思うけど、その建物の主がこの異変の元凶だったり…?割とあるかもしれない。

そう思っていると、後ろから聞き覚えしかない声が飛んできた。

「おーい!れーいむぅー!」

「あら、魔理沙。何でこんな所まで来たの?」

「もちろん異変を解決するためだぜ。この【紅霧異変】をな。」

「ふーん…で、この広い幻想郷の中からなぜここを?」

「勘だぜ!」

魔理沙のその自信満々な返答を聞き、やれやれと首を横に振る。やっぱりそうだと思った。まあ勘で動いてる私が言える話じゃないけど。

「そうだ、霊夢。どうやらこの霧、人間の里でも影響が出てるらしいぜ。」

魔理沙が口にした話題に興味が湧いた私は、具体的に聞き出そうとする。

「具体的には?」

「この霧が発生してから里で体調を崩す奴らが出てきてるらしい。絶対この霧が影響してるんだぜ。」

「そう。なら早めに解決しないとね。」

そんな話をしながら飛んでいると、前方に赤い建物が見えてきた。おそらくここが慧音の言っていた場所で合ってるわね。にしても赤すぎ。しかも見た感じ窓無いし敷地広いし。…そして私の勘が言ってる。ここに異変の元凶がいると。

「魔理沙、あの館に犯人がいるかもしれないわ。」

「ほう、それも勘ってやつか?」

「当たり前じゃない。あ、門の前に誰かいるわよ。」

その辺の地面に着地し、その門の前にいる誰かに近づいていく。

「むむ!この先は紅魔館門番、紅美鈴が通しませんよ!」

「…面倒くさいわね。一気に片付けましょうか。」

そう言うと私はスペルカードを一枚取り出し、すぐさま唱えた。

「霊符「夢想封印」。」

「えっ…ちょっと待ってまだ戦闘態勢g」ドカーン‼

「容赦ねえなお前…」

魔理沙が憐れみの目で門番を見つつ、私の横に並ぶ。

「早くこの異変を解決したいのよ。邪魔するやつは容赦しないわ。」

「はあ…あ、こいつ気絶してやがる。」

「大したこと無かったわね。ほら、中に入るわよ。」

そう言うと私は気絶してる門番を横目に自分の身長の何倍もありそうな大きい門を開け、魔理沙と中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

目の前に広がる光景。金髪の少女にやられたのか至るところから血を流して今にも死にそうな霊夢と魔理沙。そしてそれを止めようと金髪の少女に向かっていく青髪の少女。よく見るとその二人の少女の背中にはまるで蝙蝠のような羽が。周りを見渡そうとするも全く持って視点が動かない。そしてこの光景に、俺はいない。

「アハハ♪次ハアナタガ遊ンデクレルノ?」

「これ以上はさせてたまるもんですか!フラン!」

「エイッ。」 

力を入れているのかどうか分からない声を出したフラン?に呆気なく吹っ飛ばされる青髪の少女。

「アーア。飽キチャッタナア。次ハ…アナタタチヲ壊シテアゲル!」

そう言ってフラン?が霊夢と魔理沙に手を伸ばす。もう既に二人はボロボロでとても闘える状態ではない。もしそんな状態であんな攻撃を喰らったら…確実に死ぬ。…やめろ。やめてくれ。

 

 

 

「やめろおおおおおおッ!…はっ!」

ここは…?何だ。博麗神社か。…と言う事はついさっきのは夢…?首を触る。汗まみれだ。二度寝する前に汗は拭き取ったので今かいていた汗なんだろうな。更に息が荒い。まああんな夢見たら誰だってそうなるわ。にしては何か妙にあの夢リアルだったような…?ここまで考えたところで俺は自分に稀にしか起こらないとある現象を思い出す。

「まさか…!?」

嫌な予感がする。急いで俺は居間へと駆けた。そして居間へと着き、ちゃぶ台が視界に入る。ちゃぶ台の上には何か書いてある白い紙が一枚。

「置き手紙…?」

急いで俺はその置き手紙を見た。

 

康介へ

少し大規模な異変が起こったので解決しに行ってきます。あんたが行っても足手まといだしすぐ戻るので大人しく待ってなさい。  霊夢

 

(足手まとい…まあ正論だけど悲しいなあ…)

その言葉がグサリと心に突き刺さる。そんなことより、大規模な異変ってなんだ…?そう思って俺は縁側から外を見た。するとそこには赤い霧が一面に広がっていて、空さえ覆い尽くしていた。確かにこれは大規模だわ。てかなんで今まで気づかなかったんだよ俺。

「ふふ、確かに大規模でしょ?」

「うわぁ!ビックリしたぁ!」

後ろからいきなりスキマから出てきた紫に話しかけられて驚く。心臓止まるかと思った。

「…なんだ紫さんか。ってそんなことより大変なことが…!」

そう言い切ったところで俺は口ごもる。だってこんな事"普通はあり得ない"話だもんな。それに今まで色んなやつにこの事を話そうとしてきたけれど、誰一人信用してくれなかった。ただ、ここで言っておかないと絶対に後悔する。そんな気がして、俺は話を続けた。

たとえ嫌われてもいい。取り敢えず俺の"普通じゃない所"を告白しないと…!

「もしかしたらだけど…霊夢と魔理沙が死ぬかもしれない。」

「…その根拠は?」

紫さんがしっかりとした目でこちらを見てくる。俺はその目を見ながら話を続ける。

「…俺は子供のときから稀に妙にリアルな夢を見るんだよ。そして現実で夢で起こった出来事と同じことがほぼ起きる。」

「つまりあなたは今日霊夢と魔理沙が死ぬ夢を見たのね?」

「厳密には少し違うけど大体そんなところだ。正確には誰かが死にかけの霊夢と魔理沙に手を伸ばしたところで目が覚めたからな。」

これで全部話した。…さて、どう捉えるのだろうか。この信じがたい話を。まあ信じてくれるとは思ってないけど。

「どうやら信じてくれないって思ってるみたいだけど、私はあなたの過去を知っているのよ?」

「…は?つまりどういうことだ?」

「つまり、あなたの予知夢が当たった瞬間を見てきた。それを見て信じない訳ないでしょう?」

え?こんな馬鹿げた話を信じてくれるのか?確かに筋道が通ってるが…俺の過去を知ってるって…。紫さん、何か胡散臭い雰囲気だけど流石幻想郷を作った妖怪だなあ。…ってそんなことより。

「こんな嘘みたいな話を信じてくれるのか…じゃあ信じる前提で話を進めるぞ。」

「ここは幻想郷ですから。外の世界では嘘みたいな話が本当になりかねないのよ?」

「へぇ。…で、俺の予知夢の使えない所は幾つかある。一つ目はさっき言ったとおり稀にしか出ないこと。二つ目はその予知夢がほぼ本当になっちまうことだ。」

「…つまり、霊夢と魔理沙が死ぬ未来を阻止したいけど阻止できる可能性が低い。そういう事ね。」

物分りが早くて本当に助かる。…そういえばこんな事言ってる場合じゃないんだけど、一応聞いてみよう。

「もしかして俺のもう一つの能力って…この予知夢か?」

「もしそうなら私が能力を話す段階で段階で言ってるわよ。」

「…それもそうか。」

妙に納得したところで、話を戻すとしよう。

おそらく魔理沙ではなく別の人がその現場に居合わせても霊夢とその別の人(このパターンのままなら魔理沙)が死ぬ運命は変わらないだろう。つまり、少しの変化ではその運命は変わらないのだ。実際そうだった。…どうにかして大きな変化をつければなんとかなるかもしれない。やったことないけど。

「何か夢とは違う大きな変化をつければ何とかなるかもしれんが…」

「…その夢にあなたは出てきていた?」

「出て来てないが…あっ!そういうことか!」

これで少しの変化ができる。後は俺がどういう行動を取るかによってあの二人がどうなるかが決まる。死ぬか、生きるか。

「じゃあ急いで異変の元凶の元に急がないと…!でも場所が分からない以上はどこ行けばいいのか…それに今の俺の実力じゃ足手まといにしかなんねーだろうし…」

「足手まといでも良いから行ってきなさい。ということで、貴方にヒントを授けるわ。人間の里から北に進みなさい。そうすれば湖が見えてくるわ。その湖は【霧の湖】と言うのよ。後は自分の知識でどうにかしなさい。それじゃあね〜」

「あっ、ちょっ!」

俺が呼び止める前に紫さんはスキマの中へと消えていった。

たとえ足手まといでもいい。それに紫さんも行ってこいと言ってた。あとで霊夢にどれだけ叱られても良いから取り敢えず霊夢と合流しないと。

そう決意した俺はワンショルダーバッグを肩にかけ、今あるスペルカードを持ち、まずは霧の湖へと急いだ。その先のことは飛びながら考えるとするか。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「うっぷ…気持ち悪い…」

そう言いながらも俺は飛行を続ける。おそらくこの霧の影響だろう。さっきからずっと気持ち悪いけど吐きたくても吐けない。だって俺の下には湖が広がっている。流石に湖に嘔吐物を吐くなんて出来ない。しかもこの湖、だいぶ広い。歩いて一周するのにどれぐらい掛かるのかなあ…さらに霧の影響でめっちゃ視界が悪い。何も見えない。一寸先は闇ならぬ一寸先は霧みたいな感じだ。

霧の湖まで来れたはいいけど、この先どうするか…確か紫さんは「自分の知識でどうにかして」って言ってたような。そう思って俺は空中で静止し頭をフル回転させる。そしてひたすら思い出していく。幻想郷に来た瞬間から今のこの瞬間までの記憶を。俺の予測だがその記憶の中に何か手がかり的なものがあるはず。…多分。

(…!あった…!)

見つけた。俺の記憶の中から引っ張り出してきたのは慧音さんと再開し、慧音さんと霊夢が話しているのを横で適当に聞いていた記憶だ。

『最近霧の湖の方に真っ赤な建物が出来てな。急に出来てたから一応注意だけはしておいてくれって事を伝えに来た。』

霧の湖にある真っ赤な建物…そしてこの恐怖の紅い霧…多分この二つが繋がってるのではないか。主に色の方向性で。そう考えたのだ。

(要するに、俺は今から真っ赤な建物を探せば良いのか。)

そう自分の中で結論が出たところで、再び俺は当てもなく霧の湖を飛び回り始める…はずだった。

「ん?あれじゃねえか。真っ赤な建物。」

案外あっさり見つかった。探してた建物が見つかって気が楽になったからか気持ち悪い感覚が少しマシになった気がする。俺はその真っ赤な建物の近くにあった陸地に着地する。

近くで見るとえげつない迫力だ。豪邸以上はありそうな敷地面積、そして建物(多分館か何かだと思う)の大きさ…それによく見ると窓が一つもない。それに門もバカでかいし…ってあれ?門の近くに誰か倒れてる。誰だろ?見た感じあの二人ではなさそうだけど…?

「おーい、大丈夫かー?」

俺が声をかけた女性は一言で言えばTHE・中国みたいな服装をした人だった。チャイナドレスと華人服…?だっけ。それを足して2で割ったような感じの淡い緑のような服装をしていた。髪の毛は赤でストレートヘアーのようだ。頭には帽子を被っており、「龍」と書かれた星型の飾りのようなものが帽子の中心に飾ってある。

「うーん…はっ!まさか貴方もこの【紅魔館】への侵入者ですか!?」

「まあ待て待て…俺は余り争いは好きじゃねえんだよ。それにお前、ボロボロじゃんか。それで戦うつもり?まあ侵入者って言われればそうなのかもしれんけど。」

「…それもそうですね。」

ふう。これで何とかこの子とは戦闘開始にならなさそうだ。ちなみに争いが好きじゃないと言うのは例え争ったとしても勝てる気が今のところ全く無いからな。足手まといだし。あながち間違ってない。

「そういやお前、紅白の巫女さんと黒白魔法使いを見なかったか?俺はそいつらを追いかけて来たんだが…」

「あー、その人たちなら紅魔館の中へ入っていったと思います。私を気絶させる前にそんなことを話してましたので。」

「ハァ…あいつらこいつを気絶させてここを通ったのかよ…パワープレイだなほんと。」

そう言って俺は頭を抱える。まさかあいつらが強引にここを突破するとは思ってなかった。…て言うかよく考えたら霊夢と魔理沙ならやりかねないな。うん。

「ところで、お前の名前は?」

「私の名前は紅美鈴(ほんめいりん)です。ここ紅魔館で門番をやってます。もう突破されましたけど。貴方の名前は?」

「俺の名前は天ケ原康介だ。少し前この世界に来た外来人ってやつだ。…しばらくあっちには戻れなさそうだけどな。ってな訳で、よろしくな美鈴。」

…そうだ、呑気にこんな話をしてる暇無いんだった。早くあいつらと合流しないと…!

「悪いが美鈴!俺は紅白巫女に用事があるんだ!通らせてもらうぜ!」

「えっちょっと待ってくださいこれ以上入らせたら…」

美鈴が言い終わらないうちに俺は門を開け、紅魔館の中へと入っていった。急げ。急がないとあいつらが…!

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「全てヲ…壊しタい…」

紅魔館の地下で今、"狂気"が目覚めようとしていた…




次回予告
※少し時間を前に戻して霊夢視点からスタートします。
紅魔館に足を踏み入れる霊夢と魔理沙。そこで彼女たちは別行動をすることになる。魔理沙と別れ、霊夢が進んでいるとメイド長から手荒な歓迎を受ける。そして始まる二人の勝負。そこに幸か不幸か、康介がやって来てしまう…二人は果たしてナイフを操るメイド長に勝利できるのだろうか…?
次回「紅霧異変第2話:完全瀟洒なメイド長との戦い」(仮)

いかがでしたでしょうか。今回は気づいたら6000字ほど書いちゃってました。自分でも驚いてます。
さて、次回はあの!完全瀟洒なメイド長が登場しまっす!(あえて名前は言わないスタイル)お楽しみに!あと、もしかしたらメイド長戦は少し長引くかもしれません。許せ。
ではここらで。うp主の折れない黒鉛筆でしたー。


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第十話 紅霧異変第2話:完全瀟洒なメイド長との戦い

どうも、最近忙しすぎて日曜投稿にギリ間に合わせたうp主の折れない黒鉛筆です。
今回はかなりハイペースで書いたため、おそらくただでさえ酷い内容がさらに酷くなってると思われますので、先にここで謝っておきます。ごめんね。
さて、紅霧異変第2話です。今回は完全瀟洒なメイド長との戦闘です。前回で前後編に分かれるかもーみたいな事を言ってた気がしますが分かれませんでした。許せサスケ。
それでは、第十話をどうぞ。

前回のあらすじ
紅霧異変が発生した
康介が予知夢で霊夢と魔理沙が死にかける夢を見た
紅魔館の門番がザル守備だった(?)

修正履歴
2017/12/23 台本形式を修正+文などを修正


康介が叫びながら起きた頃霊夢たちは…

 

「ここが紅魔館ね。」

「外観からは想像もできないくらい中は広いな。」

私たちは門番との死闘(なお一撃KO)に勝利し、現在紅魔館に入ったところ。このどこかに異変の黒幕がいるはずなんだけど…これだけ広いと探すのに時間がかかって面倒くさいわね。なら…

「魔理沙…」

「…分かってるぜ。手分けして探すぞ!」

魔理沙は理解が早くて助かるわ。正直早すぎるレベルだけど。多分同じことを考えていたのでしょう。

「それじゃ私は一階を探すから、霊夢はそこにある階段を上がって二階を探してくれ。」

「分かったわ。頼んだわよ魔理沙。」

そう言うと魔理沙は箒に跨り右へと飛んでいった。

「さてと、取り敢えず二階へ行きますか。」

私は目の前にある大きな階段へと近づく。次の瞬間上の方から物凄い霊力を感じ取り、身構え上を向く。

そこには、短い銀髪に青と白の見たことないデザインの服を着た人間が立っていた。

「…この紅魔館に何の用でしょうか。要件によってはあなたを抹消することになりますが…」

「要件はただ一つよ。この紅い霧を出した犯人を退治しに来たの。あんた邪魔だからさっさとどいてくれない?」

そう言い、私はお祓い棒とお札を構える。所謂臨戦態勢だ。

「そうですか。私の名前は十六夜咲夜。ここ紅魔館の主に仕えるメイド長です。」

「これまたご丁寧に。知ってると思うけど私の名前は博麗霊夢。博麗の巫女よ。」

「さて、要件は以上ですね?では…」

そう言うと咲夜と名乗った人間はナイフを手に取り、

「ここで貴女を抹消させていただきます。」

そう言った。その瞬間、彼女の周囲に大量のナイフが出現。それら一つ一つが私へと飛んできた。私は手にしたお札とお祓い棒を使い、私に飛んでくるナイフを叩き落としていく。

「そっちがその気なら…これでどう!?」

そう言うと私はお札を咲夜に向かって10枚ほど投げた。このお札は敵を追尾してくれるお札なので、一度避けても油断はできないわよ。

「こんな単純な攻撃すぐに避けられ…!?」

ふふ、アイツも驚いているようね。おそらくあのままだとあのお札は少なくとも一枚は当たるでしょうね。そう考えて私は追撃するために咲夜の近くへと飛ぶ。しかし、

「油断大敵ですよ?」

突然咲夜が目の前から消え、後ろからそう囁かれる。私は驚いて後ろを向く。しかし、咲夜はもうそこにはおらず、代わりに大量のナイフが私を取り囲んでいた。そしてそのナイフが全て私の方へと飛んでくる。

「弾くのが間に合わない…!?なら…夢符「封魔陣」!」

すぐさま私はスペルカードを唱え、自分の周りに青白い結界を展開。ナイフの数はとても多かったものの、何とか防ぎ切ることができた。ナイフが止んだところで私は結界を解除し、咲夜を探す。すると咲夜は私の正面でナイフとスペルカードを構えていた。おそらく、いや絶対にスペルカードを唱える気満々だ。

「ふふふ…翻弄されなさい。奇術「ミスディレクション」。」

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「ふふ…私の奇術はどうかしら?」

「…まるでタネ無し手品みたいね。まあ手品には大体タネがあるんでしょうけど。」

あれから10分。まだ私は戦えるが勝算が全くつかない。だってあいつの「タネ無し手品」みたいな瞬間移動のせいでこちらの攻撃が全く当たらないのだから。ただ絶対に何か仕掛けがあるはず…それさえ掴めればすぐ倒せるはず。そう考えていると、また後ろから聞き覚えしかない声が飛んできた。

「霊夢ー。大丈夫かー。全くトリックが掴めてないみたいだけど。」

私は驚いて後ろを振り返る。そこには、神社で留守番してる筈の康介が立っていた。

「はあ!?何であんたがここにいるのよ!神社で大人しく留守番しときなさいって書いておいたでしょ!?」

「ヘヘ…つい嫌な予感がしてここに来ちゃった…それに見た感じまだ元凶倒してないでしょ。俺も手伝うわ。」

そう言って康介が私の隣に飛んでくる。ただ、若干体調が優れてない感じだったけど大丈夫かしら…?

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しまーす…」

小声でそう言いながら俺は紅魔館の中へ入る。外観も真っ赤だったけど内観も真っ赤に染まってるなあ。それに外観の館の大きさからは想像もできないくらい館の中広いし…どうなってんだこれ。

そう考えていると、いきなり前方から何かが一個飛んできた。俺は難なくそれを躱し、その何かは後ろの壁にサクッと音を立てて刺さった。まさかと思い、恐る恐る後ろを見ると、そこには銀のナイフが壁に突き刺さっていた。

(うっわ…やっぱ来ない方が良かったのかなあ…仮にあいつらが死ななくてもその前に俺が死にそうで怖いぞ…)

そう考えながらも、ナイフが飛んできた方向を見ると、そこには霊夢と青と白のメイド服を着て頭にカチューシャをつけている銀髪の少女がいた。

「ふふ…私の奇術はどうかしら?」

「…まるでタネ無し手品みたいね。まあ手品には大体タネがあるんでしょうけど。」

そう霊夢と銀髪の少女が話す。タネ無し手品のような奇術って一体どんなんだよ…でも何か時間稼ぎされてるだけに見えるなあ…取り敢えず霊夢が苦戦してる事は分かったので、霊夢に声をかける。

「霊夢ー。大丈夫かー。全くトリックが掴めてないみたいだけど。」

そう声をかけると、霊夢が驚いたかのように後ろを振り向く。そりゃそうだよな。だって本来俺は神社で大人しく留守番してる筈だもんな。

「はあ!?何であんたがここにいるのよ!神社で大人しく留守番しときなさいって書いておいたでしょ!?」

案の定めっちゃどやされた。まあ仕方ないか。取り敢えずここに来た理由を話すとするか。でもいきなり「お前がこれから先死ぬかもしれんから来た。」なんて言って信じてくれる奴なんかほぼいない筈だ。…それっぽく言ってこの戦闘を手助けしよう。足手まといなりに。

「ヘヘ…つい嫌な予感がしてここに来ちゃった…それに見た感じまだ元凶倒してないでしょ。俺も手伝うわ。」

そう言った後に俺は霊夢の横へと飛ぶ。紅い霧の影響かさっきよりも体調が悪い気がする。吐きたい。これから活動できる時間も限られてるかもな。

「あら、また新たな来客者が…私の名前は十六夜咲夜。」

「これまたご丁寧に。俺の名前は天ケ原康介だ。嫌な予感がして霊夢の手助けするためにここまで来た。つまりお前は俺の敵ってことだ。」

「2対1ですか。まあいいでしょう。…このタネ無し手品、あなた達に見破れるかしら?」

そう言うといきなり咲夜が目の前から消え、後ろから大量のナイフが飛んできた。何せいきなりだったもんで回避するのに時間が遅れ、右手に掠ってそこから血が出る。

「痛って…まああんま血出てないから適当に塞いどくか。」

そう言って俺は傷の周りに応急処置として雲を纏わせる。多分何もないよりマシなんじゃないかな。

取り敢えず適当に攻撃をしようと思い、咲夜に弾幕を放つ。霊夢もそれに乗っかってくれたらしく、同時に弾幕を放ってくれた。これでかなり高密度な弾幕になった。多分避けるのは困難だろう…

「どこを見ているんですか?」

「!?」

弾幕の中には咲夜の姿はもう無く、気づけば俺達の後ろに咲夜がいた。これか…咲夜の言ってた「タネ無し手品」…確かに厄介極まりないなあ。どうにかしてこの手品のタネを見破らないことには一生相手のターンなんだよなあ…どうしたもんか。まあ色々試してみるか。

「雲剣「クラウドソード」。霊夢、今からちょっと咲夜に凸ってくるわ。」

そう言って俺はいつもの片手剣を装備する。そして、スピードを出して咲夜に突っ込み、斬りかかる。(と言っても今は硬化させてるので斬れないのだが。)霊夢が首を傾げていたが、俺の取った行動を見てすぐに理解してくれたらしく、咲夜の方に弾幕を張ってくれた。ありがたい。これで回避しにくくなるはずだ。

「はあああああっ!」

咲夜の目の前で大きくクラウドソードを振りかぶる。その瞬間、咲夜が若干声を出さずに笑ったのを俺は見逃さなかった。次の瞬間、ブンッとクラウドソードが空振る音が聞こえた。驚いて前を見るが、咲夜の姿はもうそこには無かった。

「康介!後ろ!」

霊夢に言われるまま後ろを向くと、そこにはこちらに向かって飛んでくる大量のナイフと咲夜がいた。

「くっ…」

間一髪で俺は大量のナイフを避けきる。これは霊夢マジ感謝だ。

しかしさっきから攻撃を放つ度に咲夜が消え、後ろにワープ?されてて全く攻撃が当たらん。それにあの短時間であんな大量のナイフを投げられる訳がないし…もし仮にこれらの現象が咲夜の能力的なやつだとすると…

「うーん…駄目だわかんねえ!」

さっぱりわからん。ついさっきまでは頭回ってたのになあ…この霧の影響…かなあ。取り敢えず頭が回らないんだったら回らないなりに頑張ってみますか…

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「ふふ…そろそろ疲れが見えてきてますね…」

「はあ…はあ…だーもう!勝算が全く見えてこねえ!」

そう言い、頭を掻きむしる。最早ヤケクソの域にまで達してるような気さえする。正直、もう限界だ。霧の影響と俺の霊力の少なさのお陰で今にも倒れそうだ。霊夢は全然余裕そうだけど、同じく手掛かりを掴めてないのだろう。

「そろそろトドメを刺すとしましょう…幻世「ザ・ワールド」。」

あ。今のスペルカードの名前で閃いた。確かザ・ワールドってあのアニメで聞いたような…もしそうだとすると…全部のタネ無し手品に説明がつく。まさかとは思うが一応試してみる価値はありそうだ。取り敢えず弾幕と当たり前のように突然大量発生するナイフに注意を払いつつ、咲夜に聞こえないように霊夢と話す。

「霊夢、敵の能力で一つ仮説が立った。」

「何?」

「あいつの能力はおそらく、【時間を操る】系の能力なんじゃないか?」

「何で?」

「そうしないと大量のナイフが置けないだろうし瞬間移動のメカニズムもこれで説明がつく。」

「大分雑な予測ね…まあいいわ。で?」

霊夢のその言葉を聞いて一瞬焦るが、一回閃いてから何故か頭が回る。まずは今までの瞬間移動後の位置を思い出す。確かあいつはずっと【俺らの後ろ】に瞬間移動してた筈だから…次もきっとそうなるはず…多分。

「もしかしてパターン入った…?取り敢えず霊夢は咲夜に攻撃してくれ。そしたら俺がどうにか出来るはず。」

「はずって…分かったわ。他に作戦がない以上はあんたのその胡散臭い作戦に乗ってあげるわ!」

良かった。これで霊夢は協力してくれる。て言うか今バカにされたような…?

「行くわよ!霊符「夢想封印」!」

霊夢がそうスペルカード宣言をした瞬間から俺は左手に弾幕のエネルギーを一つにまとめる。そして一つの大玉が完成した。それと同時に霊夢が夢想封印で攻撃。

(さあ…チャンスは多分一度きり…正直相手は多分人間である以上はパターン入ったかどうかなんて分からない。それにほぼ決め撃ちみたいなものだからな…ミスするなよ俺…!)

霊夢の攻撃を避けるために咲夜が目の前から消えたその瞬間、俺は全く後ろを見ずに真後ろ方向に向かって思いっきり大玉を撃った。所謂『読み撃ち』、或いは『決め撃ち』と言うやつだ。そして後ろを見る。

そこには、瞬間移動してきたであろう咲夜がいた。しかも大玉の軌道上。このチャンスを逃すわけには行かない!

「霊夢!」

「分かってる!夢符「封魔陣」!」

そう言うと霊夢は咲夜の周りに結界を展開。もちろん大玉も結界の中だ。

「そんな…!申し訳ございません…お嬢様…」

そう咲夜が言い終わった瞬間、大玉が咲夜にヒット。咲夜は吹っ飛び、そのまま地面に倒れ込んだ。

「オッケー…か?」

「どうやらそのようね。良い作戦だったわよ。」

その言葉を聞き、俺はへなへなと地面へと座り込んだ。長い戦いだったなあ…でもこれまだ元凶との勝負があるんでしょ…?大変どころの話じゃねえなこれ。

「取り敢えず先に進みましょうか。大分時間割いちゃったし。」

「咲夜はどうすんの?」

「その辺で寝かせとけばいいんじゃない?どうせすぐ起きるでしょ。」

まあそれもそうか。と相槌を打ち、俺は立ち上がって二階へと歩いていく霊夢の後を着いていった。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

一方その頃…

「くっ…中々やるじゃねえか。だがこれでトドメだ!恋符「マスタースパーク」!」

「そうはさせないわよ。日符「ロイヤルフレア」!」

紅魔館の地下の図書館で、魔理沙ととある魔法使いが戦っていた。

そのさらに地下に眠る、【狂気】に気づかず…




次回予告
ついに現れる紅霧異変の元凶。一時は説得を試みるも、やっぱり実力勝負に。そこに乱入してくる狂気…果たして康介らの運命やいかに!?
次回「紅霧異変第3話:異変の元凶と狂気」

いかがでしたでしょうか。
正直今回は本当にギリギリで仕上げたので内容が支離滅裂してそうで怖いです。だが反省はしていない。(キリッ
次回はあの吸血鬼姉妹が登場しまっす!お楽しみに!
それでは、うp主の折れない黒鉛筆でしたー。


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第十一話 紅霧異変第3話:異変の元凶と狂気

どうも、オデッセイやらポケモンやらで財布の中身が寂しくなりそうなうp主の折れない黒鉛筆です。
内容少なめですが許してください何でも(ry
さて、第十一話です。今回はとうとう異変の元凶が出てきます。といっても二次創作だとカリスマがブレイクすることでお馴染みのあの吸血鬼なんですけどね。あと妹様も出てきます。少しだけですが。
それでは、第十一話をどうぞ。

前回のあらすじ
紅魔館の中に入った
咲夜と戦った
決め撃ちして何とか咲夜に勝利した

修正履歴
2017/12/23 台本形式を修正+ストーリーがズレない程度に文などを修正


俺は少し前(メタイこと言うと前回)霊夢と協力して咲夜を倒し、異変の元凶を探す為にここ紅魔館をひたすら歩いている。なのだが…

「…どこだよここ…」

「どうやら迷子になったようね。あのメイドに道を聞いておくべきだったわ。」

はい。完全に迷いました。かれこれ一時間は歩いてるよな?これ。なのに全くもってそれっぽい場所が見えない。この紅い霧の影響もあってか、どんどん体調が悪くなる一方だ。

「…どうする?霊夢。」

「もしかしたらその異変の元凶が一階にいる可能性もあるかもしれないわね。一度一階に戻る?一応一階は魔理沙が調べてるんだけど…」

マジかよ。この館に魔理沙もいるのか。あの時見た予知夢が本当にならなければいいが…取り敢えず一階に戻ろうと提案しようとするが、ここで何かが俺の視界に入ってくる。

「おい霊夢。あそこにいかにもそれっぽい扉があるぞ。」

「あそこ?ああ本当ね。しかもあの中から強い妖力を感じるわ。きっと異変の元凶があそこにいるのかもね。」

妖力…?まーた知らない単語が出てきたぞ。多分言葉の意味からして霊力と似た力なんだろうけど…まあ後で聞くとするか。そんなことより今は目先の異変だ。

「…入る?嫌な予感しかしないんだけど…」

「当たり前じゃない。それにあんた、相当無理してるでしょ。この紅い霧のせいで。ならさっさとこの異変を終わらせたほうがいいんじゃない?里の人達も困ってるでしょうし。」

「…お前には全部お見通しだったって訳か。」

そう言いながら霊夢の方を見ると、既に扉に手をかけていた。あ、もう開けちゃうんすね。まだ心の準備が…とか言ってもどうせ待ってくれないだろうしやるしかないだろう。…まあ所詮俺は一人じゃ何もできない雑魚だから霊夢のアシスト専門でもした方が良いかもな…

そう考えていると、霊夢が扉を開く。その部屋の中には、子供のような容姿をした少女が一人。その少女はまるで、いや、あの予知夢に出てきた青髪の少女とほぼ同じ容姿をしていた。

若干水色がかかった青い髪にナイトキャップをかぶっている。白がかかったピンク色のドレスっぽいものを着用しており、見た目はまるで子供のようだが、その背中には蝙蝠のような翼があり、それが彼女が人間ではないことを物語っていた。

「あら、ようやくご到着ね。博麗の巫女に…あなたは?」

「俺か?俺は天ケ原康介。外の世界で暮らしてて諸事情で帰れなくなったいわゆる外来人ってやつだ。」

「そして、私が博麗の巫女の博麗霊夢よ。」

「あら、これまたご丁寧に。私は紅魔館の主、レミリア・スカーレットよ。」

「単刀直入に聞くわ。この紅い霧を発生させたのはあんた?」

あら霊夢さん。いきなりそれ聞いちゃいますか。まあそっちの方が面倒くさくなくて良いと思うが…こんな質問に「そうだよ」みたいに答える奴なんかいるのか…?

「そうよ。私がこの霧を発生させたの。」

前言撤回。ここにいたわ。取り敢えずこいつが異変の元凶ってことは分かった。けど…何故こんなことを?

「一ついいか?お前は何でこんなことをしたんだ?」

「吸血鬼の弱点を克服しようとして何が悪いの?」

その言葉を聞き、内心俺は呆れる。克服って言ってももっと他に方法は無かったのか…?例えば日傘さすとか。取り敢えず説得してみますか…なんとなく返答の予想はついてるけどさ。

「なあレミリア。この霧を晴らしてくれないか?人間の里を始めとした大体の人間に悪影響が出てるんだよ。」

「お断りね。第一なんで勝手に入ってきて美鈴と咲夜を倒した奴らの願いを聞かなきゃいけないのよ。」

デスヨネー。やっぱり断られたよ。それに正論だから言い返せないし。となるとやっぱり…実力行使しかないのか?そう思って霊夢を見ると、既に臨戦態勢に入っていた。あ、これもうやるしかないやつだ。霊夢の目がそんな感じになってるもん。

「そう…もう夜で時間もないわ。ここであんたを…倒す!」

「やれるものならやってみなさい。この夜の帝王と呼ばれた吸血鬼に勝てるのならね!」

(あー…やっぱりこうなるのね…。取り敢えずやりますかあ…死なない程度に頑張ろう。もちろん霊夢も殺されないようにアシストもしなきゃな。そういや魔理沙は大丈夫かなあ…)

こうしてレミリアと霊夢(あと俺)の激しい戦いが始まった…

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「ふふふ…さっきまでの威勢はどうしたのかしら?」

「うるさいわね!これでも喰らいなさい!霊符「夢想封印」!」

「そんな単純な攻撃、簡単に避けられるわよ?」

「は…?レミリアが大量の蝙蝠に!?んでもってサクッと躱されてるし…」

「はあ…はあ…どうしたらあいつに攻撃が当たるのかしら?」

さっきからずっとこんな調子だ。何せレミリアは吸血鬼だ。あの時の人間の里の妖怪や咲夜とかとは全く持って格が違う。正直今の状態で挑むべき相手じゃなかった気さえする。

「霊夢…どうする…?こっちの攻撃全く当たらんし相手もまだ本気じゃないだろうし…」

「これはあくまで弾幕ごっこよ。被弾さえさせればこっちの勝ち。つまりどうにかして被弾させたいんだけど…」

「どうする…ってん?」

……地面が揺れている。地震?んなわけ無い。何かが下から飛び出してくるかのような感じの揺れ方っぽいけど…そして何か嫌な予感が…

そう思った次の瞬間、下から見覚えのある何かが飛び出してきた。

「うわあああ!どいてくれええ!」

「ちょっ…痛ぁ!」

いきなりどいてくれと言われてもどけるはずがなく、敢え無く俺は下から出てきた何かとぶつかってしまった。何とか俺は能力を最大限に活かして後退するのを止める。

「痛ってえ…って魔理沙!?どうして…?」

「康介じゃないか!大変なんだぜ!あいつはヤバい…」

「あいつ…?あいつって誰のこと…?ってまた誰か飛び出してくるわよ。」

その霊夢の声を聞きつい先程魔理沙が突撃して出来た穴の方を見ると、また人影が飛び出してきた。いや、吹っ飛んできたと言ったほうが正しいかもしれない。それに人影の様子がおかしい。

(あいつ怪我か何かしてるんじゃないか…?)「魔理沙!そこどけ!」

そう思って魔理沙をどかし、俺はその吹っ飛んできた人影に向かって飛ぶ。そして近くまで行きその人を受け止める。

受け止めた少女は寝巻きのような薄い紫っぽい服を着ていて、髪は服より濃い紫。頭にまるでドアキャップのような帽子をかぶっていて、その帽子には三日月の飾りがついていた。そして俺の予想通り彼女は左腕に怪我を負っていた。

取り敢えずここの紅魔館の関係者的なやつかなと思い、レミリアの元へ運ぶ。ついでに怪我してた箇所を応急処置しとこうと思い、俺の右手に巻いてた雲を彼女の左手に巻きつけ直す。そのときにたまたま彼女の傷に俺の右手にある傷が触れて痛かったけど気にしない。

「レミリア、こいつお前の知り合いか?」

「知ってるも何も、パチュリーじゃない!どうして…」

「レミィ…フランが狂気化しているわ…それも過去最高に強くなってる…早く止めないとまずいわよ。」

レミリアとパチュリーの会話を聞いていたが、また知らない単語が出てきて困惑する。…狂気とはどういう意味合いか後で聞いてみるか。にしてもフランって…あの予知夢に出てきたフランじゃないよな?

「ちょっと待って。色々と急展開すぎて話についていけてないんだけど。取り敢えずフランって奴を止めればいいわけ?」

霊夢が今すべきことの確認を取る。恐らくそうだろう。

「そうね…部外者であるあなた達に頼むのも気が引けるけど…今回ばかりは私達だけでどうにかできるレベルじゃないかもしれないわ…」

「要するに一時休戦して俺らで協力してフランって奴を止めれば良いのか?」

「…まあそういうことね。」

レミリアの肯定の言葉を聞き、今すべき事をようやく納得する。そういや魔理沙がついさっきから何も喋んないが…どうしたんだ?

「おーい魔理沙ー。生きてるかー?」

「…生きてるぜ。つーか喋ってないだけで勝手に殺そうとするな。」

魔理沙から言葉が返ってくる。ただ魔理沙が今までにないくらい焦ってるけど…

「まさかお前…フランと出会ってしまったのか?」

「ああ…そこにいるパチュリーと戦っているときに出会ったんだぜ。ただあいつはガチでヤバい。私達全員でかかっても勝てるかどうかわかんないくらいだぜ。」

マジかよ。魔理沙の言葉を聞いて俺の中の焦りがさらに大きくなる。ただでさえ霊力使い切りかけなのにさらに強いやつが出てくるのかよ…勘弁してくれよ。それに魔理沙やレミリアの話聞いてた感じだと予知夢に出てきたあのフランの可能性が高いだろうし…本格的にまずくなってきたぞこれ。

「話し込み中悪いけど、そのフランってやつが出てきそうよ。」

その霊夢の言葉を聞いて俺はクラウドソードを装備し身構える。霊夢や魔理沙、そしてレミリアも同じく身構えているようだ。次の瞬間、また穴から何かが飛び出してきた。

その姿は、ほぼ予知夢で見たフランそのものだった。濃い黄色の髪の上からナイトキャップを被っていて、真紅を基調とした半袖とミニスカートを着ていた。そしてその背中から、一対の枝に七色の結晶がぶら下ったような特殊な翼が生えていた。それがこれまた人間ではないことを物語っていた。

(ハハハ…いよいよ洒落にならなくなってきたぞ。予知夢通りじゃねえかこれ…取り敢えずここから先は霊夢と魔理沙が殺されないように立ち回るしかなさそうだな…)

「アハハ♪ココニモ遊ビ道具ガイッパイ!」

「フラン!早く戻ってきなさい!でないとあなたが…!」

「ミンナ壊シテアゲル!!」

…どうやらレミリアの声は届いていないっぽいな。こうなってしまうとやっぱり物理的に止めないといけなくなるのか…

「攻撃は任せる!俺は霊夢たちの防御に徹するわ!ただ攻撃し過ぎるなよ!」

「了解。魔理沙、行くわよ。あとレミリアも。」

「ああ。やってやるぜ。」

「フラン…」

こうして、俺達四人とフランとの決戦が始まった…




次回予告
とうとう始まるフランとの戦い。最初は圧倒的な力の前に苦戦以上のものを強いられ、予知夢が本当に実現してしまいそうになる。しかし、康介の「二人は死なせない」という強い決意が奇跡を起こす…!(多分)
次回「第十二話 紅霧異変第4話:フランとの戦い」

いかがでしたでしょうか。
今回少し短めなのはもう時間がギリギリなのとフランとの戦いをどうしても次回に回したかったからなんですよね。
さて、予定では次回辺りからスプラトゥーン要素が出てくるはずなので楽しみにしておいてください。
それでは、うp主の折れない黒鉛筆でしたー。


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第十二話 紅霧異変第4話:フランとの戦い

どうも、唐揚げには塩コショウをかけるうp主の折れない黒鉛筆です。ていうかレモン嫌いなんでかけたことないです。
さて、第十二話です。今回はタイトル通りフランとの決戦です。若干長くなったような気もしますがまあ許してくださいね。
それでは、第十二話をどうぞ。

別に投稿は午後三時頃って言ってたから別に数分くらい遅れても…いいわけ無いですねすいませんフェスTのクリーニング優先しました。

前回のあらすじ
異変の元凶はレミリア・スカーレットという吸血鬼だった
魔理沙の 体当たりを受けた
フランとの決戦に突入した

更新履歴(?)
2017/11/19 若干日本語部分がおかしいところがあったので修正
2017/12/23 台本形式を修正+文などを修正&追加
2018/03/16 一部表現を修正


「早めに決着をつけるぞ!はあっ!」

とうとうフランとの戦いが始まった。まずは魔理沙が掛け声と共に弾幕を散らして攻撃を仕掛ける。その間少し考える時間が出来そうなので少し俺は今後どうすべきか考えることにした。脳死で生き残れるほどこの状況は甘くないと思ったからな。

さて…防御は自分がやると言ったものの、今俺の霊力はかなり少ない。どうするべきか…取り敢えずやばそうな攻撃は雲を展開させて守るとするか…そう考えたところで、ふとレミリアに声をかけられる。

「康介…だったかしら?フランは【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】を持っているわ。何でも右手にその物体の弱点を持ってこれるらしくてね…そのまま握り潰されれば、あとは…分かるわよね?」

「……おう。」

何だそのチート能力。聞いて身震いする。やろうと思えば俺達なんかいつでも殺せる能力を持ってるのかよ…鳥肌立ったわ。多分レミリアの言い方から俺の展開する雲とか弾幕とか普通の人間とか文字通り何でも破壊出来るんだろうな……尚更厄介だぞこれ。場合によっちゃ守りたくて雲を展開しても守る前にぶっ壊されちゃうな。

ここで俺にある一つの疑問が浮かぶ。何故今すぐその能力を使って俺たちを殺さないのだろうか。やろうと思えばいつでも出来るなら、すぐ俺たちを殺してもっと暴れまわることも出来る筈だ。ということはもしかしたら────

「康介!弾幕来てるわよ!」

霊夢のその声で我に返る。取り敢えず弾幕を躱し、フランを再び視界に入れる。

流石に考える時間はそんなに与えてくれないか。ただ何も考えられてないよりはマシだ。取り敢えず霊夢たちに念押しするためにもう一回声をかける。

「さっきも言った通り攻撃は霊夢たちに任せる!けど俺はフランを元に戻したいんだ!だから絶対に殺すなよ!」

霊夢と魔理沙が言われなくても、という顔でこちらを見る。信頼できるなあ……

そんな話をしている間にも、フランは高密度な弾幕を放ち続けている。取り敢えずこれらを躱さない限りはどうにもならんだろうな。

(取り敢えず躱しながらどうやってフランを元に戻すか考えないとな…)

そう考えながら、俺は戦闘へと意識を向けた。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「うへえ…密度たっけえなあ…」

そう愚痴をこぼしながらも弾幕を避ける。狂気に飲まれているだけあって、フランの放ってくる弾幕は今まで避けたことのないくらい密度が濃い。もしかしたらレミリアよりも弾幕が濃いかもしれない。何で今まで俺が躱せているのか不思議なくらいだ。

一方フランは魔理沙や霊夢が放った弾幕をヒョイヒョイと躱している。全然余裕そうだ。それにまだ一度も能力を使って破壊しているような所が全くない。それ即ちまだ本気ではないということだ。するとフランが弾幕が一瞬少なくなったその瞬間に何かを手に持った。ぱっと見炎の剣みたいな感じだが…

「来るわよ!」

その声を聞き俺はほぼ反射的に俺が今出せる最大の雲の障壁を皆の前に貼る。速攻で作ったから障壁の反対側が見えない不良品だけど仕方ない。まあすぐ壊されるだろうけど無いよりは幾らかマシだ。次の瞬間雲で作られた障壁にとてつもない衝撃が走る。その衝撃に耐えきれず、雲の障壁は一瞬にして消えてしまった。これがレミリアの言ってた【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】か…消えるのめっちゃ早いな。本当にまずいかもしれない。一応障壁が消えたことで目の前が見えるようになったが、そこにはフランはいなかった。

「マズハアナタ♪」

まるで悪魔のような声が後ろから聞こえ、反射的に振り返る。次の瞬間、俺の腹のあたりに何かが当たった感触が一瞬だけあった。そして腹に激痛が走る。そして振り返った目の前にはフランが。

「ぐわああああああ!」

あまりの痛さに声を上げる。そして腹を見ると、そこには炎の剣が突き刺さっていた。そしてフランが右手で思いっきり俺の鳩尾を殴り、俺はあっけなく吹っ飛ぶ。

「康介!大丈夫!?」

霊夢のそんな声が飛んでくるが、正直全く大丈夫じゃない。一応吹っ飛ばされたお陰で腹に突き刺さっていた炎の剣は抜けたけど、そこから出てくる血の量がやばい。多分出血多量で死ぬかもしれないってくらいやばい。取り敢えず止血するために気絶しない程度で雲を生成し、思い切って腹に空いた穴に詰め込む。尋常じゃないくらい痛かったが、何とか血の出る量はかなり収まった。だが正直なところ立ち上がれない。腹に空いた穴の痛さや、鳩尾に食らったパンチのダメージもあって、意識を保つことで精一杯だ。

「俺のことは気にすんな!取り敢えずフランを頼む……ぐっ…」

声を張り上げるだけでもこんなに痛むのに、立ち上がって戦線に立つなんてそんなの自殺行為だ。幸い俺はかなり吹っ飛ばされ、フランや霊夢たちのいる所からは少し離れているので襲われるなんて心配はないだろう。

「アーア。モウ壊レチャッタ…」

気のせいかフランがさらにヤバくなってる気がする。霊夢たちの方を見ると、霊夢や魔理沙、そしてレミリアも限界が近いようだ。

俺にもう少し力があれば霊夢たちをあそこまで追い詰めずにフランを元に戻せていた筈だ。そう考えると力(主に霊力)が少ないことに対する劣等感と悔しさが込み上げてきた。

(マジすまん…後は任せたぞ…)

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「くっ…」

フランが康介を半殺し?にしてから5分ほど時間が経った。フランの出してくる攻撃はどれも激しく、こちらは避けるだけで精一杯だ。さっきまでは康介が居てくれたから防御面は彼に任せていたけれど、いざ無くなると回避にしか集中できないわね……そんな訳で、こちらはどんどんジリ貧になっていくばかり。どうにかしないと…!

「霊夢…どうするぜ…?」

「……勝負をもう決めてしまった方が良いのかしら…?」

「……仕方ないわ。それで行きましょう。」

三人でそう話している間にも、フランの攻撃の手は止まない。炎の剣(レミリア曰く「レーヴァテイン」と言うらしい)を縦に振って私達狙いでその剣を振り下ろし館の屋根を破壊したり、密度の濃い弾幕を放ってその隙に肉弾戦を仕掛けようとしてきたり、正直本当にまずい。問題はいつ一斉攻撃を仕掛けるか……

「誰か吸血鬼の苦手な攻撃を打てる人はいないかしら?流水とか日光とか……」

「…悪いが私たちはその分野は専門外だぜ。」

「仕方ないわね……もう力で一気に決めるわよ!霊符「夢想封印」!」

「おう!恋符「マスタースパーク」っ!」

「行くわよフラン!紅符「スカーレットマイスタ」!」

3人の攻撃が放たれ、一斉にフランに向かって飛んでいく。そしてフランの元に着弾。着弾点を中心に大爆発が起こった。流石にここまですればフランは気絶くらいはしてくれるはず……

しばらくして目の前に出ていた煙が晴れる。私は煙が晴れたあとの光景を見て愕然とした。なぜならフランは無傷、しかも四体に分身していたからだ。

「アハハ♪残念ダッタネ。」

そう言ってフランが笑う。そして攻撃を再開。もちろん残りの分身三体も攻撃を仕掛けてくる。私たちは為すすべもなくその弾幕に被弾。傷だらけになってしまった。

(そんな…もう駄目だと言うの…?もう少し早く本気を出しておけば…!)

幸いにもレミリアはまだ立っている……もう彼女に賭けるしかないのかしら…

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

ヤバい。霊夢と魔理沙が被弾した。多分ついさっきの攻撃で色々使い果たしたからか…?しかも傷だらけ……もう勝ち筋がほぼ無いぞこれ。

しかもこの状況…予知夢と大体同じ状況だ。少し違う点はあるが。ということはもしこのまま行けば……!

そこまで考えたところで俺は立ち上がろうとする。だがやはり俺の体はほぼ動かない。さっきのダメージが予想以上に響いているようだ。止めなきゃ行けないのに止められないのか……

「アハハ♪次ハアナタガ遊ンデクレルノ?」

「これ以上はさせてたまるもんですか!フラン!」

予知夢で見た通りの台詞をフランとレミリアが言い、レミリアがフランに向かって突っ込む。

「エイッ。」 

そして呆気なく吹っ飛ばされて壁に激突するレミリア。多分まだ気絶とかはしてないと思うが…そんなことよりこのままだと……!

「アーア。飽キチャッタナア。」

(待ってくれ……もう……)

「次ハ…アナタタチヲ壊シテアゲル!」

(目の前で人が死ぬのは見たくないんだよ!)

フランがそう言って手を振り上げた瞬間、何とか気合的なやつで俺は立ち上がれた。取り敢えずたとえ俺が死んでも良い……4体のフランのヘイトをこっちに向けなきゃ…!

そう考えた俺はすぐさまその辺にあった何かを全く見ずに掴み、フランに向かって思いっきり投げる。多分この状況からして天井の瓦礫の破片だと思う。正直投げたやつなんてどうでもいい。フランの注意をこっちにひければワンチャンス生まれるはずだ…!

俺の投げた何かがフランに向かって放物線を描き、飛んでいく。そして霊夢と魔理沙を襲おうとしていた一人のフランにヒット。ヒットしたその瞬間、俺にとって聞き覚えしかない音、いや効果音が鳴った。まるで何か水を入れたものが破裂するかのような、そんな音。俺は驚き、フランの方をしっかりと見る。

フランには、何か青いインクのようなものが少しついていた。そして彼女の足元には青いインクが大体円状っぽく広がっていた。

(ファッ!?もしやこれって…クイックボム!?)

何故こんな所にクイボがあるのか。本来ならそれはゲーム上のサブウェポンであって現実には一切存在しないはずだ。それとももしや────

「ナンノツモリ…?」

フランが二人を襲うのを止め、こちらを見る。その狂気に飲まれた真紅の目で睨みつけられ、思わずゾッとしてしまう。だがこんなもので怯んでいる場合ではない。

「マアイイヤ。サキニアナタカラ壊シテアゲル!」

クイボ?をぶつけたフランのその一声で、4人のフランが一斉に襲い掛かってくる。取り敢えずヘイトは稼げた。が……

どうしようもない状態だ。正直ここからどうするか全く考えてなかった。ただついさっき立てたバカみたいな俺の仮説が正しければ…!

俺はカバンから乱雑に白紙のスペルカードを取り出す。そして周囲の状況を確認し、今までの記憶から今フランを止めるのに一番有効な方法を思い浮かべる。この状況を打開できるようなもの……!

(あった……!)

見つけた。あいつを大人しくできるかもしれないスペシャルウェポンが。俺はすぐさまそのスペルカードに残り少ない霊力をかき集め、そのスペルカードが出来ることをひたすら願う。

フランがどんどんこちらに近づいてくる。あと数秒で攻撃されるというときに、ようやく俺の思い描いたスペルカードが誕生した。ってあれ?乱雑に取り出したからか二枚一気に作ってたわ。しかもなんかスペルカードの名前違うし。その二枚に書かれたスペルカードの名前に目を通す。そして二枚唱えないとあのスペシャルは発動できないと知る。じゃあ二枚唱えるまでだ!

「間に合え…!「スペシャルフルチャージ」!」

まず一枚目。唱えた瞬間俺の力が思いっきり無くなったがまだ倒れないということは霊力ではないのかもしれない。だがそんなことはどうでもいい。詠唱に成功していることに賭け、二枚目を唱える。

「頼む……!スペシャル「アメフラシ」!」

唱えた瞬間に何か機械のようなものを出現させる。何とか出来た。あとはこれを破壊される前に投げる!

康介「おらあぁぁぁぁ!」

俺はその機械を両手で持ち、思いっきり地面に叩きつけた。するとその機械は壊れ、その機械から煙が発生し誰かの威厳のある笑い声とともに上昇。その煙はフランの上で広がり、ポツポツとインクの雨を降らし始めた。

「何コレ…!」

フランが出していた三人の分身は消え、フラン本人も動きを止める。レミリアがついさっき話してたけど吸血鬼の弱点は「流水」らしいのでそれっぽい雨を降らせばどうにかなるかもという算段だ。

フランがアメフラシを破壊しようとする。破壊させてはいけないと、ワンチャンスに賭け俺はフランを説得する。

「おいフラン!破壊の限りを尽くす活動はやってて楽しいか?」

「エ……」

「だから、人間を破壊しかけたりするのは楽しいかって聞いてんだよ!」

傷口がめっちゃ痛い。そりゃあんな動きして今現在大声で話してるもんな。だがフランを元に戻せる唯一のチャンスかもしれないと思っていた俺には最早どうでも良かった。

「……楽シくナイよ!」

康介「なら、その狂気を自分で抑えてみろ!もし自分で抑えられなかったら、俺達がいくらでも協力する!だから……!」

もう言葉が続かない。あまりの痛みに俺は再び倒れてしまう。もう限界だ。アメフラシはいつの間にか止んでいて、俺の言葉がフランに届いたかどうかによって俺達の運命は決まる。

「……ありがとう…お兄さん…」

その言葉を最後に、俺の意識はプツリと切れた。

 

 

 

 

 




次回予告
気絶した康介がようやく目覚めた。康介の無茶に霊夢と魔理沙は大激怒。自分ながら面倒くさいことになっちゃったなと後悔しつつも、終盤で起こった不可解な現象(主にクイボ、アメフラシ)をしっかりと考察する。そして紫さんから自分の能力についての全てを教えられるのであった…
次回「第十三話 異変の後で」

いかがでしたでしょうか。
ようやくスプラ要素が出せました。書いててめっちゃわくわくしてたのは内緒です。
一応今回で紅霧異変は終わりますが後日談的な感じであとしばらく続けます。宴とかしたいからね。
それでは、うp主の折れない黒鉛筆でした。


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第十三話 異変の後で

どうも、発売日にポケモンウルトラムーンを買ったうp主の折れない黒鉛筆です。でもまだ殿堂入りしてないっていう。早く厳選やらしたいんですけどねえ……
さて、第十三話です。書ききってふと見たら6000文字行ってました。(過去形)色々詰め込んだからしゃーなし。でも文才は絶賛c-逆カンストしてます。どうしたらうまく文章が書けるようになるのやら…
ではでは、前置きもここらへんにしておいて第十三話をどうぞ。

前回のあらすじ
フランと戦闘開始
康介のお腹に風穴が空いた
康介くんの必死の説得+αのお陰でフランを元に戻せた…はず

修正履歴
2017/12/23 台本形式を修正+ストーリーがズレない程度に文などを修正&追加


………なんだここは。

俺の前に広がる景色は確か……中学一年の頃だっけか。懐かしいなあ。といってもこの景色には嫌な思い出しかないが。

今にも雨が降り出しそうなほど黒い雲。その下で楽しそうに話している学生服を身にまとい、カバンを持った人影が二つ。片方は中一の頃の俺。もう片方は…俺のクラスメイト兼俺の数少ない親友だった(・・・)奴だ。

「………でさー、そしたら色違い出てきちゃってさ…」

「え?普通に良かったじゃんそれ。」

「普通に出るならまだいいんだけどさ…そんときの俺のパーティガチガチにしてたからマジ焦ってさ……」

「あー、なるほどなあ。んで、そいつは結局捕まえられたん?」

そんな他愛も無い事を話しながら二人は交差点で一時停止する。そして信号を待つ間にも話は進んでいく。

「もちろん捕まえたよ。ダメ元でハイパーボール投げたらいけた。」

「マジかよ!今度見せろよな!」

「おう。またいつか見せてやるよ。」

そんなことを話していると、信号が青になり、その二人は歩き出す。その時だった。

信号無視して突っ込んできた車があったのだ。それにいち早く気づいたのは親友の方。

「危ない!」ドンッ

「……え……?」

過去の俺は親友に押され、何とか信号を渡りきって後ろを振り向く。次の瞬間だった。親友が車に轢かれたのは。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「……どこだここ。」

つい素のリアクションが出る。まず目に入ったのは見知らぬ天井。体制や布団を掛けられてる状態から俺は寝てたんだなとようやく理解。取り敢えず右手で頬をつねり、夢じゃないことを確認。

「はあ……まーた胸糞悪い夢じゃねえかよ……」

そう言いながら体を起こす。えーと確か……そうだ、思い出した。紅霧異変であの二人が死ぬかもしれん的な予知夢を見て紅魔館に来て、咲夜さんと戦ったあとレミリアと出会ったんだっけ。そしたらフランが乱入してきて……あっ。

「そうだ…!腹の風穴……!」

思い出している過程でようやく大事なことに気付く。周りに誰もいないことを確認し、サッと上の服を捲って確認。

「……うん、しっかり包帯されてるわ。まだ治ってねえんだろうな。」

包帯の上から一応触ってみる。しかし、予想に反して返ってきたのは何かに当たる感触だった。つまり、あの風穴もう治ったのか…?てっきり治らずに出血多量で死んだと思ってたのに……

取り敢えずここは紅魔館……だよな?そこに窓あるけど多分最初に見たときに窓がないって見間違えたんだと思う。そして紅霧異変は……外を見ると、既に太陽が空高く登っているのが見えた。ということは解決と見て良さそうだな。

後何か忘れていること無かったっけ……あっ。

俺は何かを思い出し近くのテーブルに置かれていたワンショルダーバックに手を伸ばす。その中から、ある二枚のスペルカードを取り出した。

「「スペシャルフルチャージ」に……スペシャル「アメフラシ」。」

何故かフラン戦で突然作られた一見謎だらけのスペルカード二枚。しかし俺には一つ心当たりがあった。

(このスペシャル「アメフラシ」ってスペルカードの図柄…どう見てもスプラトゥーン2のアメフラシの機械にそっくりなんだよなあ……)

俺が思い浮かべたのはだいぶ前に外の世界でガッツリやり込んでいたスプラトゥーン2というゲームに出てくるとあるスペシャルウェポンだ。このスペルカードを使ったときのことをもう少し詳しく思い出す。

(えーっと……うん。スプラトゥーン2のアメフラシまんまだな。)

どう考えても一致してしまうのだ。それにあの時瓦礫の破片と思ってフランに投げつけたモノ。あれどう見てもクイックボム(略してクイボ)だもんなあ……ヒット音といい塗りあとといいそれ以外に説明のしようがない。

「まじでややこしいぞこれ……俺の体どうしちまったんだよ……」

そんな事を言いはあ、と深いため息をつく。すると突然、目の前に現れたメイドが一人。こんなことするのは俺の短い幻想郷生活で今のところ一人しかいない。

「はあ……いつになったら康介様は起き……!?」

「あ、咲夜さん。おはようございます。」

「あ…おはようございます。康介様。」

「そうだ、咲夜さん、俺何日くらい寝てましたか?」

「……大体3日くらいですね。目覚めたことを博麗の巫女達に伝えてきますので少々お待ちを。」

そう咲夜さんが言うと、すぐさま俺の目の前から消えた。どういう原理なんだろうか……結局本人からネタバラシはされてないからわかんないんだよなあ……今度聞いてみるか。

そんなことより何となくだが嫌な予感がする。具体的には霊夢たちが走ってここの扉思いっきり強く開けて俺の生存確認した後めっちゃ怒られる感じのやつ。何故なら俺には心当たりしかないからだ。相当無茶したし。実際このスペカ無かったら今頃俺は生きてはいないと思う。

程なくして、ドタドタと廊下を走る音が聞こえてくる。廊下は走るなって突っ込みたいけど多分そんなこと言ったら夢想封印とか打たれるなこれ。はあ……騒がしくなるぞこれ。

覚悟(主に叱られる方面)を決め、手に持っていた二枚のスペルカードをしまったところで俺の予想通りドアが思いっきり開く。そこには霊夢と魔理沙、あと紅魔館の奴らもいた。ちなみにパチュリーって奴はいなかったけどどうしたんだろうか。

「起きたのね!」

「口々に起きたのねって言うな。バラバラに言うからうっさい。」

取り敢えず率直な感想を述べる。まず部屋に入ってきたのは霊夢と魔理沙。続いて他の奴らも入ってきた。

「何であんなに無茶なんかしたのよ!!こっちはもし死んだらって気が気じゃなかったのよ!!それなのにあんたは私たちの気持ち考えずに無茶して……!」

「そうだぜ!!あの時フランを説得できてなかったらどうするつもりだったんだぜ!!」

はい。案の定めっちゃ怒られました。そりゃそうだよな。だって幻想郷に来てまだ日も浅いのにあんな行動したら普通は怒るよな。これはもう正直に謝るしかないか。まあこんなに叱られなくても謝る気ではいたけどな。

「正直あの時は霊夢たちを死なせないことで頭がいっぱいだったからああするしかなかったんだ。それに魔理沙の言うとおり説得できなかったときの事も何一つ考えちゃいなかった……すまん。」

最後に頭を下げた。正直フランの気を引いてからのことは考えてなかった。それに俺にもう少し力があればあんな展開にならずに済んだはずなのに……

「もういいわ。康介。顔を上げなさい。」

霊夢に言われて顔を上げる。

「今回は許すわ。但し!次こんな真似をしたら容赦しないからね!」

「私も許すぜ。だがもう無理だけはするなよ。」

「二人共…ありがとう。」

「……少し良いかしら?」

霊夢たちと話が終わり、その数秒後にレミリアが話しかけてくる。

「ん?どした?」

「……悪いけどお前と二人で話がしたいの。少し席を外してくれるかしら?」

レミリアのその言葉を聞き、皆が部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「……んで、霊夢らに席外させてまで俺に言いたいことでもあるのか?」

一応重要な話系と予測し、少し気を引き締める。

「ええ。まずは…フランを止めてくれてありがとう。そして、ごめんなさい。関係のない外来人に迷惑をかけて……」

「フランの事か。別に謝らなくていいぞ。俺は気にしてないし。」

「でも…そのせいで貴方、死にかけたじゃない。貴方も死にたいとは思っていないのでしょう?」

レミリアが冷たく言い放つ。当たり前だ。死にたいとは思ってない…とは言い難い。何故なら俺にも一時期死にたいと思っていた時期があったからだ。だが今は違う。少なくとも今は生きたいと思ってはいる。それに今回は俺が首を突っ込まなきゃもっと酷い結末になっていたかもしれない。

「ああ。まあ一時期死にたいと思った時期はあったけどな。今はそう思っちゃいない。まあこの異変に首を突っ込む段階で死にに行くようなもんだったから死ぬことに対する覚悟は出来てたよ。まあ今回は偶然生き残った訳だけど。」

そこまで言ったところで部屋のドアがいきなり開く。そこには……

「フランじゃん。もう大丈夫なのか?」

「ごめんなさい。康介。私のせいで…」

そう言ってフランは頭を下げた。俺はそんなフランの顔を起こしながら話す。

「頭を下げないで。結果的に誰も死ななかったんだからそれで良いじゃん。俺ももう気にしてないよ。」

「でも…!」

「フランの言いたいことも良く分かる。だから、これからはあんな事にならない様にその力を上手く使えるように努力すれば良いじゃないか。俺も協力するから、な?」

俺はそう言いフランの手をしっかり握る。正直全く良いことは言えていないがそれでもフランには伝わったらしく、

「うん…!ありがとう…康介!」

と言ってしっかり手を握り返してくれた。しんみりしてたって何も始まらない。だったら早く立ち直って前に進んだ方がきっと何倍も楽しいだろう。俺はそう思っている。

「……そろそろ入ってもいいかしら?」

ドアの外から霊夢の声が聞こえ、それにレミリアがいいわよ、と返す。そして霊夢たちがゾロゾロと入ってきた。気づけばパチュリーさんもいるじゃん。いつから来たよ。……にしても…

「紫さん…?何盗み聞きしてるんですか…?」

「あら、バレちゃったかしら?」

やっぱり。どうも気配的なのが少し多かったから紫さんかな〜と思っていたけど…案の定そうだったわ。

「あら、スキマ妖怪じゃない。こんな所に何の用?退治されにでも来たのかしら?」

霊夢が若干冗談を交えながら話す。それに対し紫さんは、

「今回は…康介くん。貴方に用があるのよ。……と言っても薄々何の用事か分かるんじゃないかしら?」

「…恐らくだが俺のもう一つの能力について、だな?」

「ご名答。」

まあその能力の見当も大方ついてるんだけどな。恐らく俺の予想だと…フラン戦でピンチになって能力覚醒した、っていうよくある主人公補正みたいなのがかかってるような展開のやつか?

「そうね、貴方の考えている通りフランと戦っているときにそのもう一つの能力が出てきた感じね。」

紫さんの言葉を聞き、納得する。そうでければあんな芸当の説明がつかない。というか心を読まれることにもう驚かなくなってる自分が怖い。

「貴方のもう一つの能力。それは……」

紫さんが再びタメを作る。待つのも面倒なので、今回は自分から予測を言ってみることにした。

「まあ、さしずめ【インクを操る程度の能力】みたいな感じだろ?俺の予測だけど。」

俺がそう言うと紫さんはあからさまにムッとした。やっぱタメを邪魔しないほうが良かったのかもしれない。やらかしたかなあこれ。

「……合ってるわよ。」

ムッとしながらも紫さんがそう言ってくれた。内心ビクビクしていたが、俺は取り敢えず答えを聞けたことに対しホッと胸をなでおろす。

「紫、その能力ってどんなのなんだ?」

「魔理沙、その回答なら私に聞くより……康介の方が詳しく答えられるんじゃないかしら?」

紫さんがそう言い、全員の視線が俺に向く。

「これは…俺が答えないといけないやつか?」

「当たり前じゃない。早く答えなさいよ。」

霊夢に急かされる。そんなに俺の能力が知りたいのだろうか。大した能力じゃないと思うが…ただ、一つ問題がある。それは俺が大まかにしか能力を把握してない点だ。まあフラン戦でいきなり覚醒した訳だから仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないけど。まあいいや、説明するだけしてみよう。

「えっと、まず俺自身は能力をあまり把握してないから説明はあくまで俺の予測も含むかもしれないってことだけは言っておく。俺の能力を一言で言うならば……そうだな、【とあるゲームの力が使える】って感じか?」

「その【とあるゲーム】って何?」

「…スプラトゥーンだな。このゲームは4vs4で操作キャラのイカと人になれるインクリングっていう奴を操作して、インクを打って相手を倒しつつ様々な場所を塗り合い、最終的に塗った面積を競うっていうゲームだ。予測だけど俺の能力はそのスプラトゥーンに出てくるインクを塗るためのブキが使える。あとブキについているサブウェポンや条件付きだがスペシャルウェポンもそれら単品で使うことができる。……こんな感じか?」

話しだすとマジで長くなるのでガチマッチとかサーモンランとかそういう系統のやつは省いた。別に省いちゃってもいいよね?

「……一つ質問いいかしら?」

俺が大まかに話し終わると、パチュリーさんが質問を問いかけた。

「ん?なんだ?」

「貴方の説明と魔理沙から聞いた貴方の一つ目の能力を足して考えても一つ腑に落ちないことがあるわ。それはどうして寝ると貴方の重傷がすぐ治るのか、ということよ。」

その質問に対し俺はぐうの音も出ない。子供の頃から自然治癒が早い、なんて話は聞いてこなかったからだ。俺がその質問に対する回答を全力で考えていると、ふと霊夢が

「そういえば寝るで思い出したけどあんた、ここで寝てる時も何か寝言…というかうんうん言ってたけど大丈夫なの?」

と言ってきた。もちろん俺は何の問題もないが、その霊夢の発言で一つ俺の中に仮説ができた。

「パチュリーさん、一応仮説はあるにはあるんですけど…聞きます?」

「ええ、是非聞かせて頂戴。あとパチュリーで良いわよ。敬語も必要ないわ。」

「了解した。一応俺の仮説としては、その…急速回復?は【インクを操る程度の能力】のオマケ的能力だと思う。スプラトゥーンは操作キャラが受けたダメージを回復させるにはイカ状態で自分色のインクの中に潜らないといけないんだ。多分それの応用で、俺は純粋な人間だからイカになれない。だから寝ることでその急速回復が実現してるんじゃないかっていう考えだ。」

「成程。何となくだけど良く分かったわ。ありがとね。」

パチュリーにそうお礼を言われ、俺は軽く会釈を返した。

「他に質問は……無いみたいだな。さて、これからどうするか……」

「あら、あんたが目覚めたからすべきことがあるじゃない。」

「そういえばそうか。異変解決の後は大体アレが待ってるからなあ〜。」

「ん?すべきこと?何だそれ?」

俺が首を傾げながら霊夢に聞くと、霊夢はこう答えた。

「異変解決の後は大体宴会って相場が決まってるのよ。あと康介の歓迎会もついでにやっちゃいましょうか。」

「……そんな相場いつから決まってたんだ?」




次回予告
異変解決の後は大体宴会が行われると言う事で、康介もその宴会に参加することにした。そして博麗神社にて宴会(康介の歓迎会含む)がスタート。最初は初対面の人(人間、鬼、妖精etc…)に挨拶をして回る康介だったが、そんな康介にいつもと違う雰囲気の霊夢たちが絡み……
次回「第十四話 酒は人を変える(色んな意味で)」(仮)

いかがでしたでしょうか。正直に言うと予約投稿忘れかけてました。でも間に合ってはいるから問題なし。
さて次回は、もちろん宴会です。書くの楽しみだなあ……
あ、一応言っておくと、あの伝統の幻想ブン屋は第十五話辺りで出ると思います。多分。
それではまた一週間後ぐらいにお会いしましょう。うp主の折れない黒鉛筆でした。

p.s.スプラトゥーン2でのハイドラ実装まだですか(´・ω・`)


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第十四話 宴会は色々と面倒だが楽しい

どうも、約10時間の遅刻をしたうp主の折れない黒鉛筆です。
ほんとすいませんでした。まさか急に携帯が動かなくなるとは思っていなくて……しかもあの活動報告を書いたあとに再び動かなくなるし……買い替えたほうがいいかもですね。
さて、前書きでタラタラ話すのもあれなので、早速第十四話をどうぞ。
今回はサブタイトルを前回の予告と変えました。と言うのも、書いていてタイトル要素が少なかったので仕方なくタイトル変更しました。(仮)ってつけといて良かった()

前回のあらすじ
起きた
自身のもう一つの能力について考察した
宴会をすることになった

修正履歴
2017/12/24 台本形式を修正+ストーリーがズレない程度に文などを修正&追加


「……そんな相場いつから決まってたんだ?」

「さあ?いつからかしら?」

「お前も知らねえのかよ…」

霊夢に聞くも知らないらしく、ため息をつく。

「取り敢えず宴会するわよ。ついでに康介の歓迎会も。」

「……もし俺が宴会に出席するのを断ったら?」

「悪いが拒否権は無いぜ」

「さいですか…」

魔理沙にそうサクッと言われ、若干憂鬱な気持ちになる。厄介なことになってきた。別に歓迎会を開いてくれること自体はありがたいが、宴会という言葉がどうも引っかかる。嫌な予感しかしない……と言っても魔理沙曰く拒否権は無いらしいし…仕方ない。腹を括って宴会に出るしかないな。たかが宴会なんだ。別に大したことも起こらない筈だ。

「…で、肝心の開催日と場所だけど…場所はいつも通り博麗神社にしましょうか。開催日は……準備等合わせると、今日から二日後が丁度良いかしら?」

「肝心の食材費等はどうするんだ?」

魔理沙が顎に手をやりながら霊夢に聞く。

「そうね……元はと言えばこれは紅霧異変を解決したっていう祝い?のための宴会なのだから…レミリア?言いたい事は分かるわよね?」

霊夢がそう言いレミリアに視線を向ける。つまりレミリアら紅魔館組に食材費を出せ、と言うことだろう。

「…はあ。別にいいわよ。迷惑かけたのは事実だしね。」

レミリアがため息をつきながらも渋々承諾してくれる。

「そうと決まれば話が早いわ。康介、行くわよ。」

不意に霊夢に声をかけられ、一瞬反応が遅れる。…いや別に考え事とかしてたわけじゃなくて、単純にこの流れで声かけられるとは思ってなかっただけなのだが。

「…行くってどこに?」

「決まってるじゃない。宴会の準備よ。そういやあんた、料理そこそこ作れたわよね?」

「待て待て待て。俺これでも怪我人だからな?」

「問答無用。行くわよ康介。あ、魔理沙も手伝いなさい。」

「……へいへい。」

どうやら抵抗するだけ無駄っぽいので仕方なく俺は荷物を手に取り、レミリアさん達に挨拶をする。

「レミリアさん、色々とお世話になりました。またここにお客として来るかもしれませんがその時はよろしくお願いします。」

「あら、貴方も敬語使えたのね。」

「……敬語じゃないほうが良かったか?」

「まあそうね。そんなことより、来れるならいつでもいらっしゃい。私達皆で貴方を歓迎するわ。」

「おう、ありがとな。んじゃ俺はこれで。」

そう言うと俺達は部屋を出て、紅魔館を後にした。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

それから二日という日はあっという間に過ぎていった。そして、宴会当日…

俺は博麗神社のキッチンに立ち、今日宴会に出したい、と霊夢が書いた料理名のメモ書きを見ながら料理をひたすら作っていた。幸いにもほとんどが作り方が分かる料理だったので手は止まってはいない。ただ、

「量多すぎねーか?これ……うし、だし巻き卵出来た。」

そう、宴会に出す料理の量が多いのだ。既に外はガヤガヤ賑わっていて、霊夢からは「あんたが大方料理を作り終えたらあんたの事紹介する」と伝えられている。にしても本当に量多くねえか?一人じゃ到底間に合わんぞ…

とその時、視界の端に写った裏口に、見たことのあるメイド服が見えた。

「…咲夜さん?ここで一体何してるんですか?」

「お嬢様から「早く康介の事皆に紹介したいから康介がやってる仕事手伝ってきなさい。」と命を受け…」

「あー、なるほどね。んじゃそこのちゃぶ台に置いてる料理を宴会会場の方に持ってってくれない?悪いが手が離せなくてな…」

「かしこまりました。」

咲夜のその言葉を聞いた次の瞬間、ちゃぶ台に置かれていた大量の料理が一瞬にして消えていた。やっぱり時間操ってんのかなあ。

手は離せない状況だが口は動かせるので咲夜さんに聞いてみる。

「やっぱり今の料理を運んだのも能力を使ったのか?」

「よく分かりましたね。康介様。」

「あー、様付けしなくていいよ。あと敬語も別にしなくていい……ていうか敬語だと若干喋りにくいからさ」

「分かったわ。康介。その代わり貴方もさん付けしないようにね。」

「それくらいなら…そうだ咲夜、俺の推測からしてお前の能力は【時間を操る】系統の能力で合ってるか?」

「ご名答。私の能力は【時間を操る程度の能力】よ。読んで字の如く時間を止めて私だけ動いたり時間の流れを早めたり遅めたりすることも出来るわ。」

「うへえ…チートじゃねえかそれ。一応聞いとくけど、咲夜は人間だよな?」

「当たり前じゃない。私は人間よ。」

こんな人間離れした人間に出会えるとはな…幻想郷、ほんと今までの常識を覆される。だからこそここで生きてて楽しいんだけど。

「さてと、小話はこれくらいにしてさっさと残りを仕上げるわよ。」

「おう、あと少しだ。頑張らねえと…!」

聞きたかったことをようやく聞けたところで、気合いを入れ直し俺と咲夜は残りの料理を作り始めた。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「これで最後か…?」

最後に作り終えた器に盛られている炊きたての白飯を見ながら、俺はそう呟く。最も、その白米も咲夜によってすぐ運ばれていったが。

「はあ〜、ようやく終わった〜!」

自分で達成感を得たからか、伸びをしながらそう言ってしまう。取り敢えず霊夢に言われたものは全部作り終えた。こんなに料理を作ったのは初めてだったが上手く行って良かった。ふと白米を炊いた釜を見ると、少しだが白米が残っている。それに海苔や少しだが具材も余っている…これを見て俺はアレを作らずにはいられなかった。

「この白米の余り具合だと…4つか?咲夜と俺に二個ずつで良いか。バレたら面倒臭そうだし。さてと、最後に一品作ってやりますか!」

そういえばラップが無いがまあどうにかなるだろう。そう思い、俺はおにぎり4つを作り始めた。

しばらくして咲夜が白米を運びきったのかこちらに戻って来た。

「お疲れさま。これで全部よ。」

「あー、それなんだけどさ、ちょっと待っててくんない?一分もあれば……って話してるうちに出来たわ。」

そう言って俺は小皿を2つ出し、その上におにぎりを二個ずつ乗せる。そして片方を咲夜に差し出す。

「手伝ってくれてありがとな。炊いた白米が少し余ってたからサクっとおにぎり作ったわ。こっちが塩むすびで、こっちがだし巻き卵ね。」

「あら、私はお嬢様に命令されてやっただけよ?」

咲夜が首を傾げながらそう言う。しかし、別にそんな事を言われたところで、だ。

「別に細かいことは良いじゃねえか。命令されててもされてなくても咲夜が手伝ってくれたっていう事実は変わんねえだろ?俺はそれに対してありがとなって感謝の気持ち込めてそのおにぎり作っただけだ。」

「……あらそう。じゃ、遠慮なくいただくわ。」

「おう。あと、俺もう行かないとだから食べ終わったあとの小皿はちゃぶ台の上にでも置いといてくれ。じゃ。」

割と急がないと霊夢に怒られそうな気がしたので自分のために作ったおにぎりを2個すぐに食べ、俺はキッチンを後にした。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「ふーっ…って人多っ!」

今俺は霊夢を探すため取り敢えず博麗神社のキッチンを出て外に出たところだ。そして人が多い。思わず声に出たくらいだ。いや、最早全員が人なのかどうかすら分からんけど。一応雑談している程度でまだ乾杯はしてないようだ。

「さて霊夢は…と。お、いたいた。霊夢ー、終わったぞー。」

辺りを見回して霊夢を探すと、賽銭箱の近くの階段に腰掛けていた。その隣には魔理沙も。ぱっと見からしてやっぱり待たせてしまったようだ。

「わりーな霊夢に魔理沙、少し遅れちゃって…」

「別にいいわよ。大した程じゃないし。」

「そんなことより早く乾杯の音頭取ってくれよ〜!待ちきれないんだぜ!」

魔理沙がそう言う。乾杯の音頭ってあれか?「かんぱーい!」ってやるやつか?

「そうね…さっさとやっちゃいましょうか。皆ー、こっち見てー」

そう霊夢が声を上げると今までザワザワしていた境内が一瞬にして静まり返る。やべえ、緊張してきた……そう言えば何言うべきなのか全く考えてないわ。あっ、詰んだか?これ。

「乾杯の挨拶する前に…新たな幻想郷の住人を紹介するわよ。ほら、さっさと挨拶しちゃいなさいよ。」

俺が呆気にとられていると霊夢から小声が飛んでくる。頭は相変わらず真っ白だがもうどうにでもなれ。

「あ…えーっと、今から……うーん…大体二週間前くらいに外来人としてこの幻想郷に迷い込んだ天ケ原康介です。諸事情により帰れなくなってしまったのでこれからよろしくお願いします。」

「そんな堅苦しい挨拶してないで!さっさと乾杯する!」

「えっ…お、おう。それじゃ、乾杯!」

『乾杯!』

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

乾杯の挨拶を無事(?)終えたところで霊夢に「あんた、折角なんだから色んな人の所行ってきなさいよ。」と言われたので、仕方なくまずは慧音さんの所に行ってみることにした。

「お、康介じゃないか。」

慧音さんに声をかける前に慧音さんがこちらに気づき声をかけてくれた。慧音さんが座っている隣には見たことがない少女が一人。

その少女は、白髪のロングヘアーに深紅の瞳をしていて、髪には白地に赤の入った大きなリボンが一つ。上は白のカッターシャツで、下は赤いもんぺのようなズボンをサスペンダーで吊っており、その各所には何か紙のようなものがが貼られている。そういやあの紙どっかで見たぞ…

「慧音さん、と…貴女は?」

「ああ、私か?私は藤原妹紅(ふじわらのもこう)だ。慧音の友達でただの健康マニアだ。」

「天ケ原康介です。よろしくお願いします。妹紅さん。」

「ああ、よろしくな。それとさん付けも敬語もいらないぞ。まあこっち来なって。」

妹紅s…妹紅に誘われ、俺は妹紅の隣に座る。ちなみに若干拳2つ分くらい距離をとっている。流石に近づきすぎるのもね。

「さてと…康介は何で幻想郷に来たんだ?」

まずは妹紅に聞かれる。と言っても、その問いに対する答えは正直ないのだが。

「何でって目的を聞かれてもな…普通にあっちの世界で過ごしてたら突如幻想郷に来たから特に目的は無いな。」

「じゃあ何でここに残ったんだ?普通帰るだろ?」

「残ったじゃなくて帰れなくなっちゃったんだよ。こっち来て何故か能力が発現してしまってな…」

「そう言えば康介、風の噂でもう一つ能力が発現したと聞いたが…そのもう一つの能力って何だ?」

話の流れで能力という単語が出てくると、今度は慧音がだし巻き卵を取りながら質問してくる。

「実は俺もまだよく分かってなくてな……簡単に言うととあるゲームの力を使えるんだ。これ以上話すと時間が惜しいからまた今度でいいか?他のやつとも話したいしな。」

「それなら仕方ないな。いつかちゃんと説明してくれよ?」

慧音の問いには詳しくは答えられない。自身の能力について話そうとすると時間が掛かるのは仕方ない事だ。それに一つの場所に居座るのも慧音や妹紅に迷惑がかかるだろうし。

「ああ、分かってる。んじゃ俺行くわ。じゃあな〜、慧音に妹紅。」

そう言って俺は立ち上がり、別の場所に向かうことにした。するとこっちに近づいてきた少女…いや魔理沙が。

「何か用か?魔理沙。特に用事もないのに近づいてきたとかじゃないよな?」

「お前に紹介したい奴がいるんだぜ!さあ行くぞ!」

「……大体返答に予測がつくが拒否権は?」

「そんなの無いに決まってるじゃないか!」

デスヨネー。抵抗するだけ無駄なので仕方なく俺は魔理沙の後ろに付いていった。

(そういえば妹紅…多分普通の人間なんだろうけど何か慧音さんと同じオーラ的なアレが少し違ってたな…もしかしたら普通の人間じゃないかもな。まあ別にどっちでもって感じだけども。)

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「アリスー!康介を連れてきたぜ〜!」

「あら、ありがとう魔理沙。それで……貴方が康介ね?」

「魔理沙ー?この人が紹介したいっていう人か?」

俺がそう聞くと、魔理沙はもう一人座っていた少女の隣に座り、

「ああ、こいつはアリス・マーガトロイド。正真正銘の魔法使いだぜ。」

と彼女を紹介してくれた。折角なので俺は魔理沙の横に座る。

アリス・マーガトロイドと呼ばれたその少女は金髪で、一見人形のような人(?)だった。青のワンピースのようなノースリーブにロングスカートを着ていて、その肩にはケープのようなものを羽織っていた。そして頭にはヘアバンドのように赤いリボンが巻かれていた。そして近くに浮いてる人形が。なんか「シャンハーイ」って言ってる。

「初めまして康介。魔理沙も言ってたけど私がアリス・マーガトロイドよ。そしてこの人形が上海。」

「あ、どうも。って何で俺の名前を?」

「私が話したんだぜ!」

魔理沙の自信満々な返事にあー、なるほどと納得する。道理で出会ってすぐ俺の名前が出て来たのか。それはそうと…

「俺に何の用?」

「ああ、少し貴方の能力の一つである【天気を操る程度の能力】について聞きたくて……それで、貴方はどうやって天気を操っているのかしら?」

どうやってと言われても、自分でも感覚だから仕方がない。取り敢えずありのままに説明しますか…

「えーっと、俺の場合だと……例えば空を飛ぶときには『空が飛べるくらいの風を自身の周りに』って考えて風を発生させてるな。多分具体的に考えてやらないと調整が効かなくなるかもしれないな。……訳のわからん説明だが許してくれ。正直俺も良く分かってないんだ。」

「別にいいわよ?まだこっちに来て日も浅いし、しっかり話せるようになったらまた説明してね。」

「ああ、分かった。んで用事はそれだけ?」

「ええ、それだけよ。もっと別の人や妖怪にも会いたいでしょうし私とはまた別の機会に話しましょう。」

「分かった。それじゃ俺行くわ。じゃあな、魔理沙にアリス。」

そう言って立ち上がり、別の場所に行こうとすると、どこからか「見つけたぞー!」という声が。声をした方を振り向くと、そこには水色の服を着たかなり低めの身長(霊夢とかに比べたらの話)をした少女と、その後ろには緑色の髪をした優しそうな少女がいた。

「ねえチルノちゃん、止めようよー。異変解決に協力した人に勝てるわけがないってー。」

「うるさい大ちゃん!こいつはガイライジンってやつなんだろ?だったらサイキョーのあたいならすぐ凍らせられるって!」

「えっと…誰?」

取り敢えず誰か聞くためにチルノと呼ばれた少女に聞いてみる。

「サイキョーのあたいを知らないとは呆れたね。あたいはチルノ!サイキョーの妖精よ!」

えっへんと威張るようにしてチルノと名乗る少女。その次に名乗ったのは、緑の髪をした少女だった。

「あ…こんにちは康介さん。私は大妖精って言います。よろしくお願いします。」

「おう、チルノに大妖精、よろしくな。俺は天ケ原康介だ。」

「よーし康介!あたいと勝負だー!」

何か面倒くさい奴に絡まれたなと思い、後ろにいる魔理沙とアリスに目線で助け舟を出してもらえないかと求めてみる。……っておい。二人共あからさまに目線逸してるじゃねえか。

宴会の席で勝負なんてしたくないので、ちょっと牽制程度にクイボを一発投げつける。これで帰ってくれるとありがたいが…

「いてっ!き…今日はこれくらいにしておいてやる!」

「あ!待ってよチルノちゃんー!」

チルノには何とか帰ってもらえた。牽制クイボに当たって帰るって……何ていうか…チルノはバカってやつなのか?クイボが直撃しても60ダメージだぞ?特に大したことは無いはずなんだがな…

「はあ……何か疲れた。」

そんな愚痴をこぼしつつ、今度こそ俺はアリス達の元を去った。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「………暇だ。」

今俺は木の上の太い枝に腰掛け、ボーッとしている。辺りも暗くなってきた。なぜこんな所にいるかと言うと、少し前に遡るが……

 

「こうすけぇ〜!酒飲みなさいよ〜!」

「無理だ。あっちの世界では20歳未満は酒飲んじゃいけないからな。」

「あっちの世界とここは違うわよ〜?」

「……はあ。」

俺の目の前には酒を飲んだからか酔ってる霊夢が。周りのやつも酒飲んでるからかいつも見ない一面を見せていた。特に咲夜さんの変わりっぷりがやばかった。

「取り敢えず酒飲みなさいよ〜!」

「断固拒否だ。」

「そう言わずにさ〜、ほら。」

俺が飲まないって言ってるのに霊夢は俺に酒を飲ませようとしている。それにこのやり取りを始めてから10分くらい経ってるような気が……いい加減面倒臭くなってきたな。

(……あの技、試してみるか。この辺り一帯に霧を発生させて…)

俺がそう考えてやってみると、霧が発生した。ちなみにこのメカニズムだが、バレない程度に雪を発生させて辺りの温度を下げることにより大気を露点に到達させて大気に含まれている水蒸気を水滴に変え、それで霧を発生させてる。目を眩ませたところで…

俺は全力で空に逃げた。そして簡単に見つからない場所を探した結果……

 

神社の中にあった木の一本に紛れ込んだ、というわけだ。

宴会をしていた方向はまだ騒がしい。まあ戻る気も全くないが。戻ったところで酒を飲まされるのがオチだ。

(眠くなってきたな。どうせバレないし、少し寝るか。)

そう考えた俺はスマホを取り出し、現在時刻を確認。

(現在時刻は……19時か。20時くらいに起きるか。)

20時に鳴るように目覚ましをセット。そして俺は木の幹に寄り掛かり、すやすやと寝息を立てた。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

ピピピピピピピピピ……

(ん……ああ、もう20時か。)

目覚ましの音で俺は目を覚ます。すっかり辺りは暗くなってしまい、宴会をしていた方も静かになっていた。

「さてと……そろそろ顔を出しても大丈夫かな?」

そう一人で呟き、取り敢えず木から降りて宴会の方へと向かう。宴会をしていた博麗神社境内はほぼ誰もいなく、誰かいたとしてもただ寝てるだけだった。そしてゴミやらが散乱していた。

(これは宴会お開きになった感じっすね……片付けますか…)

今まで寝ていて何もしないのもアレだったので仕方なく俺は袋を取り、ゴミ拾いを始めた。

すると不意に後ろから声をかけられる。と言っても聞き覚えしかない声だけど。

「……ん、あれ?皆は?」

「多分帰ったぞ。霊夢。」

声のした方向を向くと、そこには今まで寝てたであろう霊夢の姿が。俺は話をしながらゴミ拾いを続ける。

「霊夢、今日はもう寝ていいぞ。後片付けは俺がやっとく。」

「えっ……じゃあ任せようかしら?」

そこで遠慮しない辺りが霊夢らしい。まあ会って日も浅いから霊夢らしいとか言えたものでは無いが。

「おう、やっとくわ。んじゃおやすみ、霊夢。」

霊夢がいた方向を向くと、境内に戻る霊夢の姿が見えた。

(さて、と。いっちょやりますか!)

 

 

ちなみに後片付けが終わったのは日が昇り始める頃だった。

仮眠をとっておいて良かった。いや全然良くないけど。




次回予告
あの宴会から数日が経った。特に変わったこともなく毎日を過ごしていた康介のもとに、とある来客が来た。何でも「ぜひ新聞の記事にしたいので取材させてください!」とのこと。断る理由もないので取材を受けるために彼は妖怪の山へと向かうのであった……
次回「第十五話 取材と妖怪の山と鴉天狗」(仮)

いかがでしたでしょうか。
急いで書ききったため最後が雑になってます。多分。許してください。
さて次回ですが、伝統の幻想ブン屋が登場します。多分。そして来週もとい今週はこの話を除き二話投稿しますので待っててください。
それではまた次回お会いしましょう。うp主の折れない黒鉛筆でした。


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第十五話 取材と妖怪の山と鴉天狗

どうも、2話投稿すると言ったもののまだ一話しか書けてないうp主の折れない黒鉛筆です。
いきなりですが書くこともあんまり無いので第十五話をどうぞ。

前回のあらすじ
宴会の準備をした
宴会に参加した
宴会の片付けを一人でやった結果朝までかかった

修正履歴
2017/12/25 台本形式を修正+ストーリーがズレない程度に地の文やとある新聞記者のタレコミ情報等を修正&追加


「うーん…」

そう言って軽く溜息をつく。あの宴会から数日が経った。その数日の間俺はひたすら自身の【インクを操る程度の能力】について実験していた。と言っても分かったことは一日に使えるインクの量に限りがあって、インクは睡眠を取ることで回復するって事だけなんだけどな。

そして今俺がしていること。それは……

「……暇だ。」

ただ縁側に座り、暇している。今日の能力実験もある程度終えたし境内の掃除も終えた。それは霊夢も同じで、俺の横でお茶を啜っている。

「なあ霊夢、何かする事無いのか?暇で仕方ないんだが。」

「あら、別に暇でもいいじゃない。たまにはこういう一日を送ってもいいんじゃないかしら?」

まあ確かにそうだ。あっちの世界ではこんなに日向ぼっこしてボーッとする事なんてほぼ無かったしそれする暇があればガチマッチ潜ってたしな。

「…まあそうか。んじゃ、今日はダラけますかね……」

「そうね……って誰か来たわね。」

確かに、賽銭箱がある方から足音が聞こえた。何かが着地する音ぽかったが……大体こういう時は魔理沙でも来たのか?と思ってしまう。だってあいついつでも来るし。

「あやややや、ここに居ましたか。」

「……勝手に人の家上がりこまないでくれる?」

恐らく話し方からして魔理沙ではない。取り敢えず声がした後ろの方を振り向くと、そこには見たことのない少女が一人。

その少女は黒いフリルの付いたミニスカートと白いフォーマルな半袖シャツを着ていた。まるで学校の制服みたいだ。

「初めまして!私、こういう者でございます。」

その少女からいきなり名刺を渡され、取り敢えず見る。

「あ、どうも。何々…『文々。新聞(ぶんぶんまるしんぶん) 記者 射命丸 文(しゃめいまる あや)』…?」

「はい!清く正しい射命丸です!よろしくお願いしますね、康介さん!」

「おう、よろしく。ところで何故俺の名前を…?」

「あら、私新聞記者ですよ?それくらいの情報くらいすぐ掴めますって。」

文の説明にああそうか、と妙に納得したところで霊夢が口を開く。

「で、何の用?用件によっては今すぐここから出ていって貰うけど…?」

「ちょっと、落ち着いてくださいよ〜。今回用があるのは、そちらにいらっしゃる康介さんですよ。」

「え、俺?」

唐突に文の話の内容に俺の名前が出てきて一瞬困惑する。

「そう、貴方です!今回は貴方を取材したくてですね…」

「取材…ねえ…」

実は、俺は新聞記者をあまり信用してはいない。そもそもメディアですらあまり信用してない。理由としてはあっちの世界にいた頃様々な情報は基本ネットから仕入れるか自身の目で確かめたりしていたし、そもそも本当の情報をメディアが報道しているのか、という所で疑っているからだ。

だからといって今回の取材に断る理由もない。どうしようか悩んでいると霊夢が口を挟んだ。

「康介、断った方が良いわよ。こいつ、デマしか書かないから。」

「酷い言い様ですね…真実だってちゃんと書きますって〜。」

霊夢の提案を聞き、文が反論を述べる。何だかんだ言ってこの二人も仲良いのだろうか。まあそんな事は今はどうでも良い訳だが。

「うーん……いや、断る理由もないし取材に応じるわ。但し、二つ条件がある。」

「ありがとうございます!それで、二つの条件とは…?」

「なに、簡単な事さ。一つ目は『デマを書かない。』まあ俺というネタが入るからデマを書く理由なんてないだろうと信じてるけどな。二つ目は『ここではない人気の少ない室内で取材する。』これに関してはただ単にやって欲しいってだけなんだがな。ちなみに約束を破ったらこれからの取材には応じない。どうだ?」

そう言いながら右手の人差し指と中指を立て、文に条件を提示する。すると文は少し思案する様子を見せた。そして、

「分かりました。それでは私の家で取材でもしましょうか。と言っても妖怪の山に人間を入れるのは気が引けますが…まあ私がいますし大丈夫でしょう。」

条件を飲む事を承諾してくれた。まあ最近何も無かったからこういうミニイベントみたいな事があっても良いなと思っていた自分がいる。

「ちょっとあんた、大丈夫?」

「ん、平気平気。大丈夫だって。日没までには帰るから。」

「……はあ。しょうがないわね。行ってきなさい。但しそこの鴉天狗に何かされたらすぐ言いなさいよ!」

「おう、分かってる。んじゃ文、少しだけ支度するから待っといてくれ。」

「了解です!」

霊夢にも承諾を得たところで、俺は外出準備を始めるべく、自身の荷物が置かれている場所に向かう。そしてバッグの中身を確認。

(えっと…いつものバッグにスペルカードと白紙のスペルカードとスマホと財布…そうだ、少し試したいことがあるから仕込んどこ。博麗神社の裏手辺りで良いかな。)

 

 

 

少年仕込み中…

 

 

 

「おっけー、準備できたぞ。」

「それじゃ行きますか!私の家は妖怪の山にありますからしっかり付いてきてくださいね〜。」

そう言って飛び立つ文の背中を追って、俺は幻想郷の空へと飛び立った。

「ところで妖怪の山ってどこだ…?」

そんな疑問を抱きつつも取り敢えず文について行けば良いかと思い、先を飛んでいる文を見失わないように飛び続けた。

 

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「よっと……康介さん、ここが私の家です!」

「うへえ…遠いし疲れたなあ…」

ようやく着いた。俺がこう言っている訳としては、遠かったのもあるが、何より妖怪の山に入ろうとしたとき何か文の知り合いらしい見張りの白狼天狗(犬走 椛(いぬばしり もみじ)と言うらしい)に太刀で思いっきり斬られかけたからだ。何とか文が説明してくれて今回だけ入山を認められた。多分文が説明に入ってくれなかったら弾幕ごっこに発展してただろうし多分今の俺じゃ勝ち目はないと思う。ていうかそもそも斬りかかられた段階で死んでたな。まじで文に感謝。どうやらここ妖怪の山は基本的に人間は立ち入っちゃいけないらしい。椛からも『用事が済んだらすぐ帰ってくださいね?』と言われている。まあすぐ帰るつもりだし今回は上手くやれば即帰宅できるしな。

そんなことを考えていると、文が扉を開けてくれた。

「ささ、どうぞどうぞ〜。」

「さてと…お邪魔しまーす。」

「私以外この家には住んでいませんよ。」

「…それを早く言えよ。」

何処かでやったような会話を交わし、俺は中へと入った。これが所謂デジャヴというやつなのか…?

「そこのちゃぶ台の近くにでも座っててください。今お茶を入れますので…」

「別にお茶なんて出さなくていいぞ。そんなに長居する気はないしな。取材が終わったらすぐ帰る。」

「あやや、そうですか。じゃあお言葉に甘えて…早速取材を始めますか!」

「おう、分かった。」

文が向かい側に座り、手帳とペンを取り出す。さて、取材開始だ。一体どんな質問が投げかけられるのやら…

「さてまずは……どうしてこの幻想郷に?」

(割と真面目な質問だな…もっとこう、『好きな女性のタイプは!?』とか言って来ると思ったわ。まあ良いか。言ってこないのならそれで良いか。)「友達の家から帰る途中、神社に立ち寄ろうとして神社に足を踏み入れたら何故かここにいた。それだけだ。だから理由なんてない。」

ありのままに答えると、文が「ふむふむ…」と言いながら手帳にメモを取る。対面する形で座っているのでどんな事を書かれているか見えないが、変な事を書かれていない事を祈る。

「じゃあ何故帰らなかったんですか?霊夢さんや紫さんなら貴方を元の世界に返せるはずですが?」

「『帰らなかった』と言うより『帰れなかった』だな。いつ発現したかは知らんが帰るときには何故か俺に能力があって帰れなかったんだ。」

「なるほど…で、その能力というのは?」

「俺の場合は二つだな。まず【天気を操る程度の能力】。幻想郷中の天気を変えるなんて神みたいなことは出来んが雲に風、あと…雨なんかの天気に関わるあれこれが操れる。もう一つは【インクを操る程度の能力】で、これに関しては……長くなるから割愛するが外の世界にあるそこそこ有名なゲームに登場するブキやらを扱うことが出来る。」

「なるほど……ところで、いんく というのは?」

そうか、一応インクも外来語だからこっちで伝わる人と伝わらん人がいるのか。まあ今回に関しては霊夢の話から推測すると『人』ではなく『鴉天狗』だが。

「そうだな、簡単に言うと……カラフルな墨汁?青や緑、オレn…橙色もあるぜ。」

「よく分かりませんが理解は出来ました。それで、次なんですが…」

まあこの流れからして次もまともな質問だな。文のこと怪しい目で見てたけど清く正しい射命丸って言う二つ名?は本物だっ──

「ズバリ!この幻想郷で今まで会ってきた人妖の中で一番タイプな方は!?」

……前言撤回。その二つ名、偽物だわ。全然清く正しくねえじゃねえか。霊夢があんな態度取るのも頷ける気がする。思わず溜息が出た。

「……帰るわ。」

「ちょっと!待ってくださいって!せめて質問の答えだけでも…!」

「冗談だって。一度取材を受けるって言ったんだ。命に危険でもない限り俺は逃げたりしねえよ。こんな所で死なないと思うしな。」

「なんだ、冗談でしたか……それで、質問の答えは!?」

「その質問に拘りすぎだろ…まあいいけど。んで、その答えだが……今の所はいない。」

「あやや…そうでしたか…」

俺の回答聞いてあからさまにテンションを落とす文。流石に落としすぎな気もするが、まあこれで変な質問は終わりだよな…?

「じゃあ、博麗霊夢さんのことをどう思ってますか!?」

はいフラグ回収。これ系統の質問もう少しだけ続きそうだな。

「霊夢か?若干怠け癖強いし興味ないことにはとことん興味示さんし……でも、何だかんだ弾幕ごっこも強いし他の奴らからも好かれてて普通に良いやつだと思うぞ?」

「そうですか……うーん、中々ネタに出来そうな話がありませんねえ…」

「面白味のない人間で悪かったな。」

自虐気味に返すと、文は少し思案した表情を見せ、「あっ!」と言った。何か思い出したのだろうか。

「私としたことがまだ紅霧異変について聞いてませんでした!」

「そういえばそうだったな。」

「まず事実確認ですが、貴方は異変解決に協力したという事で間違い無いですね?」

「多分合ってるんじゃないか?と言っても途中から霊夢について行ってただけだけどな。」

「あや、そうなんですか?噂によると、咲夜さんを一人で倒してレミリアさんも倒し、暴走していたフランさんを元に戻したとかと聞いているのですが…?」

「一部合ってるが少し違うな。咲夜は霊夢と協力して倒した。んで、霊夢と一緒にレミリアと戦ってる途中にフランが乱入。その暴走してたフランを説得+αで元に戻したってだけだ。でも実際咲夜戦といいレミリア戦といい霊夢の足手まといしてたと思うぞ?」

「なら、どうして霊夢さんについて行ったんですか?足手まといになるくらいなら博麗神社とかで留守番していれば良かったのでは?」

「それに関しては詳しくは言えないからパスで。そうだな…嫌な予感がしたから、という事にしておいてくれ。」

「むむ、何か重大な感じですね…分かりました。そういう事にしておきます。」

仮に予知夢のことを話したとして、もしそれが新聞に載ったらその新聞を見た奴の対応で面倒くさくなりそうだったので話すのはやめておいた。そもそも信じてくれるかどうかすら怪しいけどな。まあ予知夢に関しては話さざるを得ない状況になれば話すつもりではある。

「ふむふむ…まあこれくらいあれば何とか記事は書けるでしょう。」

文がメモ帳を眺め、うんうんと頷く。って事はつまり…

「今日はわざわざ取材を受けていただいてありがとうございました!一応記事は書けるくらいに内容が出来たので…あ、そうだ。」

「ん?なんだ?」

「最後に新聞に載せる用の写真を撮っても良いですか!?」

「おう。別に良いぞ。出来るだけ早めに帰りたいからさっさと頼む。」

「ありがとうございます!じゃ、こっち見てください……」

そう言って文がカメラを取り出す。見た感じフィルム式だから相当古いと思うけど…

「取り敢えず一枚撮りますねー…はい笑って笑ってー……」(パシャリ

「撮れたかー?」

「多分大丈夫なはずですが…念のため、もう一枚宜しいですか?」

「別に構わないぞ。」

「ありがとうございます!それじゃもう一枚……」(パシャリ

「これで正真正銘今度こそ取材終了か?」

「そうですね。今日はありがとうございました!良ければ麓まで見送りますよ?多分事情を知らない天狗達から見たら貴方は侵入者にしか見えないでしょうし。」

「確かにそうだ。だが…少し試したいことがあってな。多分成功すればすぐにここから出ていけると思う。」

「じゃあもし試したい事が失敗したらまた戻って来てください。その時はしっかりと麓まで送りますので。」

「ああ、頼む。それじゃ、またいつか。頼むからガセネタ書いたりするなよ?」

「任せておいてください!この清く正しい射命丸、デマなんか書き上げませんって!」

「なら良いんだ。それじゃ。」

そう言って俺は文の家を出た。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「さて…と。やるだけやってみるか。」

文の家を出た俺は近くにあった少し開けた場所に行き、先ずは博麗神社に置いたアレをイメージする。やり方が分からないし確かアレは本来ならばイカにしか察知できない信号か電波だかをを察知して飛ぶって感じらしいし……まあ一応スマホで写真撮ったしそれでも眺めれば何とかなるか?そう考え、俺はスマホを操作し始める。

「えっと…あったあった。」

よくよく考えれば不思議な光景だよな。だって現実の風景の中に本来スプラでしか出てこない筈のジャンプビーコンが同じ写真内に写ってるっていう写真を眺めてるもんな。

……で?ここからどうしろと?

全くもって手掛かりが掴めん。俺は純粋な人間(多分)だからイカにはなれんし…だから電波的なやつは察知出来る筈がない。

もう日も沈みかけてるし早めに諦めるか、とスマホをしまい文の家に引き返そうとしたその時、頭の中に突然ジャンプビーコンを置いた辺りの風景が蘇ってくる。

(今ならワンチャンいける…!?)「スパジャン!博麗神社境内のジャンプビーコン!」

今しかないと思い、スペル宣言をする時のように行き先を口に出す。そして助走をつけて空に向かい軽くジャンプするつもりで足を踏み切る。すると一気に俺は博麗神社方面へと飛んでいった。

「〜〜〜っ!」

あっという間に博麗神社が見えてくる。あれ?そう言えばこれって着地どうするんだ…?やばいと直感的に悟り、着地点であろう場所に雲を出そうと試みる。しかし、全くもって雲は出てこない。もしかして…

(片方の能力発動中はもう片方は発動出来ない!?)

あ、詰んだわ。俺の体は急降下を始め、どんどん地面は近づいてくる。取り敢えず被害を抑えるためにどうにか足から着地できるように体制を調整。そのまま…着地。

「痛…くない!?」

後ろを見るとそこにあったビーコンは無くなっている。そしてここは博麗神社。そして足は痛くない。これらから導き出される結論は、ただ一つ。

「成功した…のか?」

あんな高さから落ちたら普通ひとたまりもない筈なのに。もしかしてスパジャン…もといスーパージャンプ中は何かが起こって足の方は心配しなくても良いとか…?それとも一瞬だけ減速してるとか…?これもう分かんねえな。

取り敢えず帰ってこれたし神社の中に入りますか…

「ただいまー。」

「あら、早かったわね。それはそうと、あんたがどっか行ってる途中、レミリアのとこのメイド長が来て、『明日紅魔館に来て欲しい』とのことよ。」

「? 何で来て欲しいんだ…?」

「なんでも紅魔館の魔法使いが用事あるそうだけど。」

紅魔館の魔法使いと言うと…パチュリーさんか?なんであの人が俺なんかに用事があるんだ?

「……???尚更訳がわからん。取り敢えず夕飯作るわ」

そう言い残して俺は頭にハテナを浮かべつつ夕飯の支度を始めるのだった……




次回予告
翌日、霊夢に言われるがまま紅魔館に出向く康介。そこでパチュリーから超意外な事実を告げられ、一時は困惑する康介。しかし、その事実をしっかり受け止め、その事実を使い新しい事を練習し始める…!
次回 「第十六話 魔法使いが言う魔法関係の事は大体信用できる」(仮)

如何でしたでしょうか。
あまり後書きで話してる時間もあまり無いのでここらで失礼。
以上、うp主の折れない黒鉛筆でした。


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第十六話 再び紅魔館へ

どうも、着るならあったかいアウター派のうp主の折れない黒鉛筆です。
本編に移行する前に、この前書きを書く前に確認してみたところ、UAが1000を突破してました!すげえ。
まさかこんなにも早く行くとは思ってなくて若干驚いてます。そして誰かUAの助数詞を教えて下さい。件なのか個なのか若干戸惑ったりしてる自分がいる。
因みに今回はあれやこれやと詰め込んだら本題がだいぶ後ろの方になっちゃったのでタイトル変えました。
さて、前置きはこれくらいにしておいて第十六話をどうぞ。

前回のあらすじ
射命丸文という新聞記者から取材を受けた
とある白狼天狗に斬られかけた
ジャンプビーコンを上手く使い博麗神社に帰宅した

修正履歴
2017/12/26 台本形式を修正+ストーリーが動かない程度に地の文や主人公の口調等を修正&追加


「そういえばさ、霊夢」

夕飯を食べ終わり、私がお茶を啜っていると康介が話しかけてきた。

「何の用かしら?」

「いや、大したことじゃないんだがふと気になったことがあってだな…」

そう右手の人差し指で頰を掻きながら言い、康介は言葉を続ける。

「明日紅魔館に行けって霊夢が咲夜から伝言受けたみたいなこと言ってただろ?その伝言受けたときの事なんか少し気になったから聞きたくなって…」

なんだ、そんなことなのね。別にあのメイド長からこの事について隠しておいてとも伝えられていないし別に話してもいいわよね?

「良いわ。軽く話しましょう。」

そう言い私は両手で持っていた湯呑みを置き、まずその時のことを思い出した……

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

康介が妖怪の山へ出発した約一時間後…

 

「はあ…暇だしあいつも居ないから尚更退屈ね。」

そう言って私は茶を啜る。アイツと言うのはもちろんそう、天ヶ原康介のこと。あいつは今おそらくだけど、ブン屋の取材に応じて妖怪の山辺りにでもいるんでしょうね。

やっぱり引き止めておくべきだったかしら。一応あの時は私の勘が大丈夫だと言っていたから許可したけど…まあ多分ブン屋とあいつの事だし何とかなるでしょ。

それにしても…こんなに誰もいないと静かでいいけど逆に退屈すぎる。あいつが来る前は大体いつもこんな一日を送っていた訳だけど……やっぱり誰か居ないと物足りない。こういう時に魔理沙でも来ればいいんだけど…そういう時に限っていつも魔理沙は来ないから困る。

ふと小皿に手を伸ばすとそこにあった煎餅が無くなっていた。まあ自分で食べ切ったからなんだけど。それに出した煎餅3枚くらいだったし。まだ退屈しそうなので私は煎餅を取りに行こうと立ち上がる。それに…お客も来たしね。お茶も入れないと。

「誰か知らないけど何か用ー?用があるなら縁側で待ってなさーい。お茶淹れるからー。」

おそらくお客がいる方向(賽銭箱の方向)に向かって声をかける。そして台所に向かって歩き出そうとすると、

「いいえ、お茶を淹れる必要は無いわ。気配からして康介が居ないから彼に用件だけ伝えてくれるとありがたいけど…」

と後ろから声が聞こえた。この声質に数秒でここまで来れる能力を持ったやつ…もう確定で誰か分かるわね。私は振り返りながらそいつに話しかける。

「…紅魔館とこのメイド長かしら?」

「あら、察しがいいのね。取り敢えず手短に話すわ。パチュリー様が『宴会のとき康介に違和感を感じたから連れてきて』と言われて来たのだけれど……居ないのなら仕方ないわ。この時間帯からして…明日まで待ってもらうしかなさそうね。」

康介に違和感…?少なくとも私は感じなかったけど……やっぱり純粋な魔法使いにしか分からない事だってあるという事ね。

「分かったわ。明日紅魔館に行くように伝えておくわ。それだけ?」

「ええ、それだけよ。それじゃ私は仕事があるからこれで。」

そう言い残すと咲夜は瞬間移動でもしたかのように何処かへ消えた。康介曰く彼女の能力は【時間を操る程度の能力】らしいから、時間を止めて紅魔館に戻ったのでしょうね。

「さて…また暇しますか。」

そう言った私は、欠伸を噛み殺しながらも煎餅を取りに行った。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「…とまあ、こんな感じかしら?」

思い出しながら端的にまとめ、話すと康介も納得したらしい。うんうんと頷いた。

「成る程。ありがと、霊夢」

そう言って康介は立ち上がり、お風呂がある方向に向かって歩き出した。そういえば今日は康介がお風呂沸かしてくれるんだっけ。確か夕飯製作中にそんなことを言ってた気がする。

康介もいなくなり、居間には私一人しかいなくなる。いや、正確には……もう一人いるわね。

「紫、さっさと出てきなさい。」

「……あら、よく分かったわね。」

何もなかった空間からスキマが開き、紫が出現。ほんとこのスキマ妖怪は盗み聞きが趣味なのかしら?

「…で、少し聞きたいことがあるんだけど良いかしら?」

「…質問によるわ。」

紫のその言葉を聞いた私は、とある質問を投げかける。その質問は、本来あいつも気にしなければいけない内容。それなのにあいつはまるで気にしていない。まあこの世界をまだよく知らないというのもあるかもしれないけど。しかし本来なら気付いていないといけない。寧ろ気づかない方がおかしいまである。

 

「どうしてあんたはあいつ…天ケ原康介をこの世界に連れてきたのかしら?」

 

私と紫の間に暫くの間沈黙が流れる。聞こえてくるのは風の音などの自然の音。そんな音も気にせずに、ただ私は紫を見つめる。紫は相変わらず扇子で口元を隠している。そして、紫が口を開いた。

「……どうしてそう思うのかしら?」

「康介はこっちの世界で能力に目覚めた可能性が高い。つまりここに来た段階ではまだ普通の人間だったかもしれない、ということよ。基本普通の人間が幻想郷に迷い込む可能性は主に二つ。博麗大結界が緩んだときにあいつが偶然博麗大結界付近にいたという可能性。こっちの可能性はもしそうだとしたら博麗大結界の管理人である博麗の巫女、つまり私が気付くはず。でも康介が幻想入りしてきた時私は賽銭が入るまで気づかなかった。だからこの可能性はないと思うわ。となると、もう一つの可能性が高くなるわけ。そのもう一つの可能性は、あんたが神隠しとして連れてくるという可能性よ。」

「……霊夢にしては珍しく頭が切れてるわね?その通りよ。」

紫が事実を認めたところで、肝心の理由を聞き直す。

「で、なんであいつを連れてきたわけ?」

「私が康介を連れてきた理由。それは───」

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「……よし。風呂沸かせた。相変わらずこの方式は慣れない…」

愚痴っぽい何かをこぼしながらも今日は風呂を沸かすことに成功した。一昨日辺りは失敗したからな……このまま俺から入っても良いけど流石にそれはやめておくか、という事で先に霊夢から入ってもらおうと思い、霊夢がいるであろう居間に戻る。

「霊夢ー、風呂沸かしたから先入ってくれー」

「……あっ、うん。わかったわ。」

霊夢の反応がおかしかったような気もするがまあ良いか。どうせ大したことじゃない筈だ。そういえばまだスプラに出てくる全スペシャルを使ったスペルカードを作りきってなかったことを唐突に思い出し、霊夢が出てくるまでの間その作業をすることにした。

 

 

 

 

 

 

翌日………

 

 

 

 

 

 

朝食を食べながら、俺はふと思いついた質問を霊夢に投げかける。

「……そういえば紅魔館にはいつ行けば良いんだ?」

「さあ?朝食食べ終わってすぐでも良いんじゃない?用事があるのはそこの魔法使いであって吸血鬼ではないんだから。」

それもそうか、と言って俺は残りの飯を一気にかきこんだ。因みに念のため今日は階段ダッシュや能力の実験はしてない。紅魔館で何かあったときインクとかが切れると面倒くさい事になると思ったからだ。

「ごっそーさん……霊夢、今から紅魔館行ってきてもいいか?家事やら丸投げになるが……」

「別にそれくらい構わないわよ。さっさと行ってきなさい。」

「ありがと霊夢。んじゃ行ってくる。」

そう言って茶を一気飲みした後立ち上がり、俺は外出準備を始めた。

(えーっと……カバンの中にスマホ、財布、スペカ、白紙のスペカ、後は……まあこれくらいで良いか。)

準備を終え別室でいつものパーカーに着替え、身も引き締まったところで俺は外へと向かう。そして紅魔館に向けて空を飛んだ。

紅魔館には一度行ったことがあるし迷ったりはしないだろう。多分。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

迷うと思った?残念、迷いませんでした!!!

そんな分からない誰かに向かって言った煽り文句っぽいのはどうでも良いが、至って道中イベントとかもなく無事紅魔館に着くことが出来た。のだが……

「確か美鈴……だっけ。紅魔館に入る許可貰いたいんだけど…」

「zzz……」

「ダメだ起きねえ」

紅魔館に入れません。どうしよう困った。一応強硬手段でここを通ろうと思えば通れるのだけど、そうした場合その後が面倒臭い。許可貰ってないから不法侵入者扱いされて、敵対視され…その後は言わずもがな。

つまり美鈴をどうにかして起こさないとこの先には進めない、ということだ。

……にしても立ちながら寝るって別方向で捉えたら凄い芸当のような気が……

「あら、誰かと思って来てみれば康介じゃない。」

途方に暮れていると、紅魔館の敷地内の方から聞き覚えしかない声がした。

「咲夜じゃん。何でこんなところに?」

「お嬢様から『誰かが門前で途方に暮れている』と聞いたから美鈴の監視ついでに来たのよ。で、何の用……と言ってもパチュリー様から用件は聞いてるけど。さあ、入って。お嬢様の許可は得ているわ。」

咲夜がそう言うと、紅魔館の門を開けてくれる。ようやくこれで正式に紅魔館に入れた……何か凄い時間がかかったような気がする…

「さあ康介、付いてきて。……と、その前に…」

咲夜が美鈴に向かって何かを飛ばす。何となく見ないほうが良いかなと思い目を逸らした数秒後、門の方から断末魔っぽい何かが聞こえてきた。多分ナイフでも投げたのだろう……ってん?

「咲夜、今お前ナイフ投げて多分あの断末魔から察するに美鈴に突き刺さったと思うんだが……あいつ大丈夫なのか?」

「仮にも美鈴は妖怪よ。大丈夫に決まってるじゃない。寧ろああした方が居眠りされずに済むのよ。」

最早美鈴が妖怪であることに対し驚かずにへえ〜、と納得してる俺が怖い。幻想郷何でもありだな……下手したら死なない奴とかもいたり……なんてな。流石にそれはない。

閑話休題。

今俺は咲夜にパチュリーがいる(らしい)場所である大図書館へと案内されている。にしてもだだっ広いな…この館。掃除とか大変そう(小並感)

「さて着いたわ。ここが大図書館への入り口よ。くれぐれもパチュリー様に失礼のないようにね。」

「失礼のないようにって……敬語使えばいいのか?」

「さあ?そこを考えてこそじゃないかしら?じゃ、私は仕事が忙しいからこれで失礼するわ。」

そう言い残し、咲夜は一瞬にして俺の目の前から消えた。もうこの現象にも慣れつつある俺が怖い。幻想郷マジパネェ。

取り敢えず中に入ろうと思い、俺はかなり大きい大図書館の扉を開いた……

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「ここが大図書館か……でけえな。それに何かカビ臭いのは気のせいか…?」

そこには、天井にまで届きそうなほど大きな本棚がズラリと並べられていてその本棚の中にはギッシリと本やらの書物が詰まっていた。一部詰まってない箇所もあったけど。そして何かカビ臭い。まあこの大図書館は地下にあるらしく、ぱっと見窓も無いっぽいから風通しが悪いからだと思うけど。

「さてと、こんないかにも広そうな場所から人…いや魔法使いを見つけなきゃならんのか……なんか雑用係みたいなの居ないのか?もし居ればそいつに聞けば万事解決なんだけど……」

そこまで一人で言ったところで、ふと本棚と本棚の間を行き来する本を持ったパチュリーとは違った服装の少女が目に入る。

その少女は赤い長髪で頭と背中に黒い羽、白いシャツに黒色のベストに黒色のロングスカートだった。ひと目で見ればパチュリーじゃない事がわかる。ついでに人間ではないことも。まさか『雑用係』…なのか?取り敢えず追いかけて声をかけてみることに。

「おーい。そこの赤長髪の……人ー。」

「はい?何でしょうか?」

取り敢えずその少女を呼び止めると、その少女はこちらに気付いたらしく、こちらを振り向いた。

「俺今日パチュリーって魔法使いに呼び出されて来たんだけど、パチュリーがいる場所知らない?」

「パチュリー様ですね。丁度私もパチュリー様のところへ戻る所だったので良かったら一緒に行きませんか?」

「ああ、頼む。」

取り敢えず雑用係っぽい人?を見つけられたから後は大丈夫…かな。多分。

 

 

移動している最中に色々と話をしたが、どうやら彼女の名前は『小悪魔』というこれまた大雑把なくくりがあるだけで大した名前は無いらしい。何か可哀想。まあ今のところ小悪魔の別種出てきてないし小悪魔で良いかな。因みに紅霧異変の時はパチュリーの指示に従ってどうやらこの大図書館に隠れていたらしい。道理で初対面だった訳だ。

 

 

「着きましたよ。パチュリー様ー、お客さんが来てますよー。」

「ん……ああ、康介ね。わざわざ来てくれてありがとう。」

「こちらこそすまんな。用事があるって時に外出してて一日遅れちまってさ。」

取り敢えず椅子に座っているパチュリーと軽く話す。

「小悪魔、次はこれらの本を所定の位置に戻してきてもらえるかしら?」

「はい!行ってきます!」

そう言って小悪魔はパチュリーに指示された本を数冊持ち、飛び去っていった。こんなだだっ広いのに所定の位置があることに驚きだが。

「さて……私が貴方を呼んだ理由はただ一つよ。」

「ただ一つ?俺何か悪いことしたか?」

「いいえ、呼んだ理由は貴方を宴会で見たときに力の違和感を感じたからよ。単刀直入に言うわ……」

 

「貴方に微かにだけど霊力以外の力……魔力を感じるのは何故かしら?」

 

「…は?言ってる意味が良くわからんのだが…」

「言ってるも何もそのままの意味よ。で、何か心当たりはあるの?」

心当たりといっても……確か霊力は人間に元々ある力で、魔力は種族が魔法使いの奴にある力だっけ。で、その力は血液とかに流れてるらしい。つまり……?俺は顎に手をやり、考える。ベタなポーズだが割と考えやすいから困る。

考えた結果、幾つか可能性が考えられたのでそれを話すことにした。

「取り敢えず考えられる可能性は二つだな。一つは俺の親のどちらかが魔法使いだった可能性。そこから遺伝でこうなった的な感じ。ただそんな話は聞いちゃいないしそもそも現実世界に魔法使いなんて居る筈がないからこの可能性は消して良いはず。もう一つは俺の傷とかから魔法使いの誰かの血液が少しだけ混入したっていう可能性……ってその可能性しかないな。紅霧異変のときパチュリーを応急手当した際俺の傷口とパチュリーの傷口が触れたんだった。多分その時……かな?」

「成る程……で、どうするの?」

「どうするって?」

「その魔力よ。自身の身体から捨て去るのか簡単な魔法に使うのか。どうしたいの?」

そんなの答えは決まってる。その答えを自身の行動に出すために、俺は椅子に座ったままのパチュリーに向かって頭を下げる。

「パチュリー。俺に簡単な魔法を教えてくれ。」

その言葉を待っていたかのようにパチュリーは答える。

「良いわよ。ただ、教える魔法によっては相当長い年月がかかるかもしれないわよ?それでも良いの?」

「構わん。そもそもこの魔力は偶然入ってきたんだ。なら偶然でもその力を活かすべきだと思う。」

「……そう。なら良いわ。貴方に簡単に魔法を教えてあげる。」

こうして、大図書館にて俺はパチュリーに魔法を教えてもらうことになったのであった……




次回予告
パチュリーの指導のもと魔法について勉強を始めた康介。やはり彼の魔力は僅からしく、パチュリー曰く使える魔法も限られてくるとのこと。それでも限られた魔法の中から彼が選んだ魔法とは…?
次回 「第十七話 主人公、魔法はじめました」(仮)

それではまた次回。
うp主の折れない黒鉛筆でした。


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第十七話 主人公、魔法はじめました

どうも、ガチアサリが追加されたもののやる気が出ないわ時間と合わないわで結局ガチアサリをやれていないうp主の折れない黒鉛筆です。
前置きで話すことがもう無い。ということで、第十七話をどうぞ。

前回のあらすじ
美鈴にナイフが突き刺さった
微量ながら魔力があることが分かった
パチュリーに魔法を教えてもらうことになった

修正履歴
2017/12/26 台本形式を修正+地の文や一部キャラクターのセリフ等を修正前のストーリーから変更されない程度に修正&追加
2018/05/01 前回修正で修正し忘れていた箇所があったので修正+台詞を除く段落の頭に全角スペースを追加+誤字・一部表現を修正


 パチュリーに頼み込んで魔法を教えてもらえることになったのは良いが…如何せん魔法を教えてもらうなんて初めてだ。もしスパルタとかだったら嫌なんだが……取り敢えず。

「まず……俺はどうすればいいんだ?」

 近くにあった椅子に腰掛けながらパチュリーに問いかける。

「まずは…本来なら貴方の魔力の量を見るのだけれど、見なくてもいいくらいの少なさね。」

 具体的には?と聞こうとしたがもし聞いた場合の返答を予測すると聞いてただただ悲しくなりそうな予感がしたのでやめておいた。

「取り敢えず……何がしたい?」

「何がしたい?どういうことだ?」

 思った以上に曖昧な質問で思わず聞き返す。まず何がしたいって……

「魔法を使って何がしたいかよ。それによって適する魔法も異なってくるから先に聞いているのよ」

 何がしたいと急に言われてもな……先ず俺の魔力量はお察しだからメイン火力には使えないだろうな。となるとサブ火力かサポートか……俺の能力と照らし合わせるとサブ火力は多分いらない…と思う。となると……

「……俺の能力をサポートする感じのやつ?」

「成る程。で、どうやってサポートするのかしら?例えば能力強化とか…欠点を補うとか…」

 少し考えよう。能力強化はあまり試してもないからこれを強化したい!的なものは今のところ無い。となると欠点か?俺の能力の欠点……あった。それをカバーしつつ尚且つ魔法っぽいものといえば…

「もし出来るのなら、霊力とインクを溜めておける何かを作りたいな。起きている間に使えるインクの量や霊力には限りがあるし、俺の能力だとインクはともかく霊力をガンガン使うから。……出来そうか?」

 取り敢えずパチュリーに聞いてみる。パチュリーは少し考える仕草を見せ、小悪魔を呼んだ。

「そうね……貴方の魔力からすると…まあ頑張れば出来るんじゃない?魔法陣二つくらいなら生成できるでしょう。」

 そうパチュリーから告げられ、まずは一安心。すると本棚の方から小悪魔が飛んできた。

「こぁ。魔法陣を生成するための方法が記された本と魔法陣に力を溜め込む方法が記されている本を持ってきてもらえるかしら。出来るだけ簡単なやつね。確かD-3の辺りにあったはずだから。」

「はい!わかりました!」

 そう言って小悪魔は来た方向とは別の方向にある本棚の方へと飛んでいった。D-3っていう情報だけで何処の本棚か分かるとかすげえな。

「さて……小悪魔が本を持ってきてくるまでの間に少し貴方にお願い事があるわ。」

「ん?願い事か?まあ出来る範囲ならやるが……その願い事とは?」

「外の話を聞かせてほしいのよ。一応この図書館にも外の世界に関する本は幾つかあるけどやっぱり外の世界にいた本人から聞いたほうがいいと思ってね。良いかしら?」

「ああ、こちとら魔法を教えてもらってんだ。それくらいお安い御用さ。で、何から話せばいいんだ?」

「そうね、まずは……」

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「成る程…その『しんごうき』っていうものが人間のために光を出しているのね。」

「そうだな。因みに信号機は三色の光を出して俺たち人間に合図を伝えているんだ。例えばその光の中の一色、赤なんかは『一旦停止』って感じの意味を伝えているんだ。他の色は…」

「パチュリー様ー。持ってきてと言われた本を持ってきましたー」

 話すことに夢中になっていたが、後ろから声が聞こえたので後ろを振り向く。そこには、本を数冊持った小悪魔がいた。

「ありがとう、こぁ。さて、これらの本だけど……一回読んでみてもらえるかしら?」

「分かった。じゃあ、少し集中するから待っててくれ。」

 そう言って小悪魔から本を受け取る。そして、本を開くと同時に集中。基本的に本を読む際は集中しないのだが、割と大事なことが書かれているかもしれない本に関しては別だ。集中せずに読み、大事な情報を頭に入れられないのでは本末転倒。出来るだけ早く、的確に情報を抜き出す。これが俺が文章を本気で読むときに心がけていることだ。

 どうやらこの本にはパチュリーがさっき言っていた『魔法陣を生成するための手段』が載っているようだ。それに何となくだが分かりやすい。ただ所々文字化けみたいな感じになっていて読めないけど。

小悪魔「何で康介さんは魔導書が読めるんですか?」

パチュリー「そういえば言ってなかったわね。康介には僅かながら魔力があって……」

 何か小悪魔とパチュリーが会話しているが今は関係ない情報なので頭には入ってこなかった。軽く聞こえはしたが。

 取り敢えず要所を理解しつつ読み終える。そして実際にやってみる。これが今の俺の目標だ。

 

 

 時間はどれくらい経ったか分からない。それに身の回りで何が起こったかもよく覚えていない。まあ時間に関しては後で時計なりスマホなり見ればどうにかなるだろう。一冊目を読み終え、大まかな方法は理解できたのでまずは魔法陣を生成してみる。

「パチュリー、ちょっとこの辺使うぞ……」

 取り敢えず許可を得てから、読んでいた本をその辺にあった机の上に置く。そして目を閉じ、また集中。これだけ集中できる自分の力に呆れそうになるがよくよく考えたら8時間ぶっ続けでガチマッチ潜り続けてS+99達成したこともあったのでどうということはなかった。

(取り敢えず本に書かれていた通りにやるか。魔力をかき集めて本に載っていた魔法陣みたいなものを意識…そして実体化させる感じで…)

 何となく上手く行ったような感じがして目をゆっくりと見開くと、そこには魔法陣とは言えない形をした何かがあった。

「…………何だこれ。なあパチュリー、成功……したのか?」

「まあ魔力はそのよく分からない変な物体から感じるし、成功してるんじゃない?」

 曖昧な返答に戸惑いながらも、まず一つ目を作ることに成功。形状等は使っていくうちにどうにかするとして…問題はこの状態から二つ目が作成できるか?と言う事だ。

 やってみない事には何も分からないので二つ目を生成しようとする。しかし、当然ながら一つ目を生成した時より相当大変だ。魔法陣の維持と魔法陣の生成を同時に行わないといけないからだろう。当然といっては悲しいが、魔法歴一日も経っていない(はず)俺がそんな高度な技術を出来るはずもなく、二つ目を生成する前に元々あった一つ目が消えてしまった。

「まあそうなるわよね。もしこれで成功されたら魔法使いの面目丸潰れよ。まだまだ潰れないでしょうけど」

「にしても康介さん、凄い集中力でしたよ……時間からしてもう日も傾き始めてるでしょうし、何より魔理沙さんがここに来て貴方に声をかけたのにそれにすら気付いていないようでしたし……」

 小悪魔にそう言われ、慌てて時間を確認すると確かにもう日が落ちそうな時間帯だ。というか魔理沙来てたのか。小悪魔の話からするとガン無視決め込んでたっぽいしなあ……本当に気づかなかった。覚えてたら会った時に謝っておくか。

「さて、日没まであと少しだから早く帰らないとだからそろそろお暇させてもらおうかな?」

 そう言って立ち上がろうとすると、パチュリーにちょっと待って、と呼び止められる。

「魔法について質問が出来たら何時でもいらっしゃい。それと……これらの本を持って行きなさい。貴方なら多分本を貸してもしっかりと返してくれるでしょうから。」

 そう言ってパチュリーが小悪魔に持ってこさせた本を数冊渡してくれた。若干気が引けるが有難く受け取っておこう。

「因みに返却期限は?」

「無いわ。まあ読み終わったら返してさえくればそれで良いわよ。」

「その言い草といいさっきの言い方から予測するとまるで読み終わっても本を返さない本泥棒がいるように思えるのだが…?」

「居るわよ。『死ぬまで借りてくぜ』とか言って私の本を持っていく奴がいるのよ。まあ貴方の知り合いなんだけど。」

 俺の知り合い……?それにさっきの言葉の語尾というか口調……あんな喋り方をするのは今のところ一人しか知らない。その人物が頭に思い浮かぶと、何故か溜息が出た。あいつこんな事もやってたのか。

「………魔理沙か。」

「当たり。またあいつに会ったら本を返すよう伝えてくれない?まあ聞く耳持たないと思うけど。」

「……善処しとく。じゃ、妖怪の時間である夜になる前に失礼。」

 そう言って俺は荷物を纏め、大図書館及び紅魔館を後にした。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

「にしても、夜のフライトは良いな…」

 あれから紅魔館を出て博麗神社への帰路を急いでいた訳だが、結局日没までには間に合わなく今こうして真っ暗な空を飛んでいる。

 霊夢の話だと夜は妖怪の時間らしい。だとしたら相当やばい。俺が少なくともタイマンで妖怪に勝てるような位の実力を持っている訳がない。

 要するに急がないといけない訳だが、何故か俺は今の状況を楽しんでいる。暢気だと思われるかもしれないが、よくよく考えたら夜の空を飛ぶなんてことはこれが初めてだし、自分自身昼より夜の方が好きだからかもしれない。

(そういえば…この幻想郷で生きていくに当たってまだ必要な物事をこなしてないな。お金はどうやら香霖堂という場所に行けば両替してくれるらしいし今度魔理沙に連れて行って貰おうか。後は…流石にずっと居候するのも霊夢に迷惑だしニートなのも少し気が引けるし……働き口と自分の家でも探そうかな…)

「あなたは食べても良い人類?」

 唐突に聞こえた物騒なセリフに思わず耳を疑う。

「少なくとも食べても不味い人間ではあるが。それに食べても良い人類なんて基本いないからな?」

 そう言いながら声のした方を向くと、そこには金髪のいかにも幼女みたいな雰囲気をした少女がいた。夜なのであまり容姿は見えないが、自分から見て右側頭部に赤いリボンのようなものを付けている。

「そ~なのかー……」

「そんなに落ち込まなくても良いじゃねえか。で、お前は?セリフ等から人外であることは簡単に想像できるが…」

「私はルーミアなのだー。お前の言う通り妖怪なのだー。」

「そうか、俺は天ケ原康介だ。よろしくな。」

「それで、食べてもいいのか?」

「人の話を聞いているのかお前は」

 思わずツッコミ気味に返す。それにしても、妖怪か…さっさと博麗神社に行きたいっちゃ行きたいがもし背中を見せて逃げようものなら何をされるか分からない。見た目はだいぶ幼く見えるがこの幻想郷では『外見=年齢』という公式は使えないからな。用心しておいて損はない。

「さっさと家帰りたいんだけどなあ……」

「そうなのかー?」

「そうなのだー……いけねえつい口癖が映っちまった」

「じゃあ別に良いのだー。康介の言う通りお前、不味そうだし」

「不味いことを自覚してるとか悲しくなるな……じゃあお言葉に甘えて。また会おうな。ルーミア。」

「バイバイなのだー。」

 取り敢えず今回は見逃してくれるらしいルーミアに別れを告げ、俺は博麗神社へと急いだ。一応ルーミアに背を向けてはいるが念のため不意打ち食らっても対応できるように警戒はしているので多分大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。着いた着いたー」

 境内に降り立ち、伸びをしながらそう言う。地味に本が多いので辛かった。時間をスマホで見ると午後8時半。大分遅くなったな…それに朝飯以降何か食べ物を口に運んですらいないし取り敢えずは何か食べよう。そう思って居間に上がる。

「只今戻ったぞー…」

「遅い!どれだけ時間かけてるの!」

 開幕いきなり怒られた。まあこんな時間まで俺みたいなやつがフラフラしてたらそりゃ心配されるわな。

「すまん。パチュリーんとこで魔法の勉強したり帰り道にルーミアに絡まれたりそもそも飛行速度がそれほど速くなかったりでこんな時間になっちまったんだ。」

「……まあいいわ。で?その手に持ってる本は?」

「ああこれか?パチュリーから借りた。どこぞの魔法使いのように一生借りるなんてことはする気はないけどな。」

「ふうん……まあ色々と聞きたいことがあるから夕飯でも食べながら話しなさい。一応私が作ってあるから。」

 サンキュー、と言いちゃぶ台の上にあった飯を食べ始める。それからはただひたすら飯を食べながら霊夢の質問に答え続けた。魔力が微量ながらあるらしいと言ったときは『あんた、本当に外来人?』と言われた。まあこれでもまだ外来人ではあるからな。そういえば、俺が外来人である以上はもし元の世界に帰れるようになった場合俺は帰るのだろうか。まあ今そんなことを考えても仕方ないと割り切り、俺はまだ止みそうにない霊夢の質問に答え続けた。




次回予告
まだまだやるべき事が多い康介。次はどうしようかと悩んでいると、魔理沙がやって来て『香霖堂に行こうぜ!』と提案してくれる。香霖堂に前から行きたいなと思っていた康介は魔理沙に連れられ、香霖堂へと向かうのであった…
次回「第十八話 香霖堂の風変わりな店主」(仮)

いかがでしたでしょうか。
割と後書きでも話すことが無いのでそれではまた。うp主の折れない黒鉛筆でした。

p.s. Twitterやってます。一応アカウント名は「折れない黒鉛筆@ハーメルン」だったような気がします。たまにしか呟きませんが更新報告等ならやっているので良かったらどうぞ。


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第十八話 香霖堂の風変わりな店主

どうも、クリスマスに何かしようかな、なんて思っている割にずっと文字を打っているうp主の折れない黒鉛筆です。 こうしてまた今年のクリスマスも終わっていくんだな……
さて、そんな自分語りはどうでも良いので第十八話をどうぞ。

前回のあらすじ
魔法はじめました。
魔理沙が来たらしいが本を読むことに集中していて気づかなかった
ルーミアと出会った


「えーっと?ここをこうして…」

「あんた最近そんな変な事しかしてないわね。」

「変なこととはなんだ。それに最近と言っても昨日の夜から始めたばっかじゃねえか。まだ最近の範囲じゃねえよ。」

霊夢にいきなり心外な事を言われ、思わず言い返す。

「まあ精々頑張ってみなさい。私は何も言わないから。」

もう既に何か言われている気がするが面倒くさかったので突っ込まないことにした。

俺は縁側にて魔法陣の二個同時生成に挑戦し直す。にしても、やっぱそう簡単には行きそうにないな……まあそれが当たり前なのだけれど。どうしても二個目を出す前に一個目が消えてしまう。ただ割と目標には近づきつつあるような気がする。後どれくらいかかるか見当もつかないが、こうやって試行錯誤しつつ努力して、一つの結果を得られるタイプの物事には俺はとことんハマってしまう性格だと思っているので、途中で出来ないからといって諦めることはないだろう。

「さて、もう一回チャレンジするか……」

そう適当に呟くと同時に一度魔法陣を全て消し、再挑戦しようとしたその時だった。

「おーい!霊夢に康介ー!遊びに来たぜー!」

賽銭箱の方角から聞き覚えしかない声が飛んでくる。もしアイツならちょっと頼みたい事があるから丁度いいんだけどな…まあ別にその頼み事は霊夢でも良いかもしれないが、どうせ霊夢のことだし『面倒くさい』の一言で断られるに違いない。

「縁側に居るからさっさとこっち来たら?」

霊夢が面倒くさそうに声の主にこっちに来いと促す。

「分かったぜー。今すぐそっち行くから待ってろよ?」

そんな会話を聞いていると、遊びに来たと言っていた声の主が縁側までやって来た。

「やっぱり魔理沙か。いらっしゃい。今お茶淹れるからちょっと待ってろよ…」

「いや、その必要はないんだぜ。遊びに来たとは言ったが……今良い事を思いついた。」

魔理沙に引き止められ、お茶を淹れるために台所に向かおうとしていた足を止める。魔理沙が考える良い事って何か嫌な予感しかしないのは気のせいだろうか?

「康介、今日空いてるか?」

「別に今日は能力やらの特訓するだけだから空いてはいるが……俺をどうするつもりなんだ?」

俺がそう返すと魔理沙は少し思案した様子を見せた後、話を続ける。

香霖堂(こうりんどう)とか行ってみないか?確かお前、まだ外の世界のお金持ってて幻想郷のお金持ってないだろ。それに香霖だってお前のこと知りたがってたぞ?お前も香霖のこと知らないだろうし丁度いい機会だと思うんだが……」

どうやら嫌な予感は杞憂だったようだ。それに昨日から「香霖堂に行きたい」という思いはあったしこれぞ『渡りに船』というやつだ。そんなベストタイミングでやって来た船をそのまま見逃すなんて訳には行かない。ただ話の中で出てきた『香霖』って奴は誰だか分からないが。

「奇遇だな、俺も丁度この前魔理沙から聞いた話を思い出して昨日から香霖堂に行きたいなと思ってたんだ。良かったら魔理沙、香霖堂まで案内してくれないか?」

「お安い御用だぜ。じゃあさっさと支度してこい。私はここで待ってるぜ。」

魔理沙がそう言い、縁側に腰掛ける。魔理沙に言われた通りさっさと支度する為に自身の荷物を取りに行こうとしたが、ここでふと霊夢に許可を取っておいた方がいいかと思い、俺は霊夢の方に視線を向け、話し始めようとする。

「……はあ。霖之助さんの所でしょ。良いわよ。行ってきなさい」

「ありがとう霊夢。じゃ、さっさと行ってくる」

どうやら霊夢は俺が今からする事を分かっていたようだ。霊夢から許可を得ることができたのでさっさと自身の荷物を取りに行く。

 

「ほい、お待たせ。先に言っとくけど箒に乗る必要はもう無いからな。俺もう空飛べるし」

「……そうか。じゃあ行くぜー、しっかり付いて来いよー。」

そう言って箒に跨り飛んで行く魔理沙の後をついて行くように俺も博麗神社から飛び立った。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「ほら、着いたぜ。ここが香霖堂だ。」

魔理沙の家がある魔法の森の入り口付近に、香霖堂はあった。人間の里で見たかのような瓦屋根の和風の一軒家で、上を見上げるとそこには『香霖堂』と書かれた看板が。香霖堂の隣には倉らしき物もある。

「邪魔するぜー、香霖」

気付くと魔理沙が既に入り口のドアから入ってしまっている。俺は急いでその後を追いかけるようにして店内へ。

店内には様々な物が置かれており、魔理沙宅程では無いが軽く散らかっていた。それでもまだ足元を気にせず歩けるから良いのだが。

「やあ魔理沙。よく来たね……とそこの男性は?」

ふと声がしたのでそちらの方を見ると、そこにはカウンターだと思われる場所の奥の椅子に腰掛け、本を読んでいた男性が一人。恐らくこの店の店主でこの人が魔理沙の言っていた『香霖』だと思うのだが……

その男性は銀色の髪を短くしており、その頭には一本だけ跳ね上がった癖毛が。そして眼鏡を着用していて服装はまるで着物のような黒と青のツートンカラーの服装をしていた。そして感じるこのオーラ的な何某、慧音の時や妹紅の時と同じように感じる。

「紹介するぜ。コイツは森近 霖之助(もりちか りんのすけ)。私とは幼い頃からの付き合いでここの香霖堂の店主だぜ。」

「魔理沙に紹介された通り、僕が森近 霖之助だ。えっと…君は?」

「ああ、俺は天ケ原 康介だ。宜しくな、えっと……霖之助。」

「ああ、宜しく。康介君。」

若干霖之助の呼び名で迷ったが、やはり霖之助と呼ぶことにした。……にしても君付けで呼ばれたのって地味に久々だな…

ふと魔理沙の方を見ると、既に店内の品物を物色している。俺も品物が気になってはいたので物色しようとするが、ここに来た本来の目的を思い出し、霖之助に尋ねてみる。

「そうだ霖之助、此処では外の世界のお金と幻想郷でのお金が両替できるみたいな話を聞いたんだが…それって今からでも出来るか?」

「ああ、そういえば君は外来人だったね。別に今からでも構わないけど…」

その霖之助の言葉を聞いて俺はバッグから財布を取り出し、中身を確認する。現在財布の中には諭吉が二枚。取り敢えず諭吉一枚、1万円分両替しておいて貰おうかな。もし元の世界に戻るとなれば全額両替しているとなると若干面倒くさくなりそうだから。

「じゃあ頼めるか?一応これを両替して欲しいのだが……」

そう言いながらカウンターの上に一万円札を置く。

「分かった。終わったら呼ぶからそれまで適当に店内を物色なりしておいてくれ。」

良かった。これでどうにかなりそうだ。そう言えば、最初に出会ったオーラ的な何某が人間ではあるけど人間ではないみたいな感じ、何故俺がそう感じたのか今なら聞けるかもしれない……

「り、霖之助。」

「何だい?康介君。」

霖之助が作業をしながら声だけ反応する。

「不躾な質問かもしれないが、もしかして霖之助って……人間じゃないのか?…いや別にどっちでも俺のとる態度は変わらないし変える気無いが」

その質問を聞いた瞬間、霖之助の作業をしていた手が止まり、俺と霖之助の間に気まずい空気が流れる。しかしそれも一瞬のことだった。

「……まさか初対面の人に見抜かれるとはなあ。まあ君の言っていることは強ち間違いでは無いよ。半分正解、と言ったところかな。」

この気まずい空気を打ち破り、そう言いだしたのは霖之助だ。半分正解という事は……どういう事だ?頭を捻っていると、霖之助が自ら答えを言ってくれた。

「僕は妖怪と人間のハーフなんだ。多分君は僕から感じる何かが種族が人間の人とは違うと思ったんだろうね。」

「やっぱりそうだったのか。そう言えばこんな感じ、慧音や妹紅の時にもあったんだよな…」

そんな独り言を呟くと、霖之助がその独り言に対してこう語った。

「それに関しては慧音さんや妹紅さんに聞くといいと思うよ。僕が今此処で言ってしまうのも彼女達に失礼だろうし、何よりそういう事は自分の耳で本人自身から聞くのが一番だからね。それに…いや、何でもない。ほら、両替終わったよ。」

「あ、ああ。ありがと。」

そう言って霖之助から一万円札分の幻想郷での通貨を受け取る。…にしても、気になるのは霖之助の最後の言葉だ。彼は何かを言おうとして明らかに口を濁した。別に追及しようだなんて思ってはいないが、気になってしまいしょうがない。まあ世の中には知らない方がいい事だってある。今回霖之助が口を濁したのはその所為だという事にしておこう。

取り敢えず此処での目的は達成したのでどうしようかと悩んでいると魔理沙が霖之助に声をかける。

「そうだ香霖、確か前にお前『使い方がわからない外の世界の道具がある』って言ってなかったか?もしまだその悩みが解決してなかったら康介に相談してみたらどうだ?」

「ふむ…確かにまだその疑問は解決していなかったな。康介君、少し協力して欲しいんだけど…良いかな?」

「全然大丈夫だ。で、俺は何をすれば良いんだ?」

今の二人の話の流れからして俺が今からすべき事は大体予測がつくが、念の為霖之助に聞いておく。

「うん、この店には色んな品物があるんだ。普通の道具に魔理沙のミニ八卦炉のようなマジックアイテム、そして…外の世界の道具。僕の能力は【道具の名前と用途が判る程度の能力】でね、一応道具の名前と用途までは理解することが出来るんだ。ただ、問題は使い方がさっぱり分からないというところなんだ。特に外の道具なんかはお手上げ状態になっている。つまり君にして欲しい事は…」

「外の世界の道具の使い方を教えてくれ、ってところか?別にお安い御用だ。」

「ありがとう康介君。じゃあこの道具なんだけど…」

そう言って霖之助が椅子から立ち上がり、店内の一角に案内される。まさかこれを幻想郷で見れるとは思ってもみなかった。

「この道具は”てれびじょんせっと”と言うらしくてね、映像を映す為に使われていたらしいんだけど…この通り、それらしいスイッチを押しても叩いてもビクともしないんだ。」

そう言いながら、霖之助がテレビジョンセットことアナログテレビを叩く。取り敢えずそれを静止させる。

「それを使うには電気や電波などがいるんだ。どうやら電気なら妖怪の山の一部に通っているらしいが…電波は多分どうしようもないだろうな。という訳でそのテレビジョンセットことアナログテレビはほぼ文鎮化しているな。」

取り敢えず真実を伝えた。因みに妖怪の山の一部に電気が通っているのはこの前霊夢から聞いた。まあ自身で電気出せるから別に俺自身は大したことないが。

「成る程……まあ珍しいし置いておこうかな。じゃあ次なんだけど……」

そう言った霖之助に連れられ、俺は外の道具についての説明をし続けるんだな、と察した。まあ頑張るしかない。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「ふむ、大方全部知れたかな。ありがとう、康介君。」

「うへえ……まさかこんなにあるとはな……」

思わず近くにあった椅子に腰掛ける。いくつあったなんてそんな事数えてない。とにかく大量にあってそれらを片っ端から説明されたのだから疲れるのも当然かも知れない。

「お、ようやく終わったか。」

俺が椅子に腰掛けたのを見て、今まで店内を物色していた魔理沙が声をかける。

「魔理沙まだいたんだな。先に帰っても良かったのに。」

「流石にそんな霊夢みたいな無粋な事はしないぜ。さて、そろそろ帰るか?」

「ああ、それもそうだな…という訳でお邪魔したよ、霖之助。」

椅子から立ち上がり、霖之助に軽く挨拶をする。すると霖之助は暫く考えていた素振りを見せると、時計を見る。

「そうだ、康介君。折角と言ってはアレだが、今からなら時間もあるし慧音さんや妹紅さんに聞いてきたらどうだい?君が感じた違和感の正体をさ。」

その提案を聞き、俺は少し考える。確かに気になったのは事実だ。しかし、慧音はともかく、妹紅の方は少し嫌な予感がするのは気の所為だろうか。だが気になったことをそのまま放置で良いのだろうか。否、良いわけがない。

「……そう、だな。悪いが魔理沙、少し寄る所が出来た。自分一人で帰れるから魔理沙は先に帰っておいてくれないか?別について来ても良いが……」

「いや、あいつらの事に関しては私は首を突っ込まない方が良いと思うから私は此処で帰るぜ。……そうだ、一応霊夢のヤツに康介が遅くなるってこと伝えておくぜ。」

「ああ、頼む。じゃあ今度こそお邪魔したよ、霖之助。」

「ああ、またいつでも来てくれ。」

「邪魔したぜー、香霖」

そう言って俺達は香霖堂を出て、店先で別れた。

俺が目指すは人間の里、寺子屋だ。少なくとも慧音はそこにいるだろう。そういえば能力の詳しい説明をまだしていなかったと思い出し、折角なので能力の詳細説明もする事にしよう。そう思った。

 

別に知る事が怖い事だとは思っていない。ただ本当に世の中には知らない方が良かった事だってあるのだ。それでも知らずに後悔するより、知って後悔した方がまだマシだ。だから俺は人間の里に向かう。この事は知っておいた方が良いと思ったから。

例えそれが、知らない方が良かった事だとしても───




次回予告
慧音と妹紅から感じた違和感の正体を突き止めるべく、康介は人里へと向かう。しかし今日は寺子屋がやっていた日らしく、仕方がないので少しだけ見学させてもらうことに。そして寺子屋が終わり、慧音から違和感の正体を聞く。そこに偶然(にしては出来過ぎだが)妹紅がやって来て、同じく聞こうとするが、妹紅の口から語られたのは……
次回 「第十九話 違和感の正体」(仮)

いかがでしたでしょうか。
自分の中では香霖はこんな感じかな、と思っていたり。
あと今回からは台本形式で書いていません。もし分かりにくい点等ありましたら教えていただけると幸いです。
では、また次回お会いしましょう。うp主の折れない黒鉛筆でした。

因みにクリスマスには多分これといった小説投稿はしないと思います()


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第十九話 違和感の正体

 どうも、今年も後僅かなのにやり残した事がまだまだ多いうp主の折れない黒鉛筆です。
 今回は少し他の話と書き方を変えたので良かったらどちらの方がより良いか意見を教えていただけると助かります。もし今回の方が良さそうであれば全話また書き換えることになりますが。
ダラダラここで書き続けるのもアレなので、第十九話をどうぞ。

前回のあらすじ
香霖堂に行った
ようやく幻想郷の通貨を手に入れた
香霖堂店主の森近霖之助が半人半霊だった


 幻想郷の空は今日も晴れ模様だ。雲一つない青空。そしてギンギンに光り輝く太陽。確か7月末ぐらいに紅霧異変が起こり、それから大体1週間ほど経ったという事は……大体今は夏真っ盛り、8月上旬といったところだろう。つまり何が言いたいかと言うと…

「はぁ……めちゃくちゃ暑い…」

 幻想郷の空で誰にも聞こえないような声でそう呟く。暑いのも無理はない。何故なら今日俺が着ている服装は暗色系の色が中心。それに加え長袖長ズボンという服装なのだ。一応長袖の袖を捲り上げて擬似半袖みたいにはしているのだが、それでも暑い。あの時はまさかこの服装で夏真っ盛りを迎えるとは思える訳がないので、仕方なく耐えている、という訳だ。

 因みに此処から帰れない理由が判明した次の日辺りに一度紫に頼み、外の世界から着替えを買ってきて貰ったのだが、その時は半袖という存在をすっかり忘れていたため、自分の着替えは長袖しかない。しかも暗色系のやつだ。どんだけ長袖好きなんだ俺。

 話を戻そう。今現在俺は香霖堂を出て大体南西方面、場所で言うと人間の里に向かっている。目的は今のところ二つ。俺が慧音と妹紅から感じた違和感の正体を突き止めることと、慧音と妹紅に『自分の二つ目の能力』について詳しく話すという約束を果たすことだ。人間の里に行く理由としては妹紅は何処に居るかは分からないが慧音ならほぼ人間の里に居るだろうと予測したからだったりする。

 さて、人間の里に着くまでに少し時間が余った為少しだけ考察をしてみる。まず『人間だけど人間じゃない』みたいな違和感ある雰囲気を感じたのは今のところ3人。慧音と妹紅、そして霖之助だ。次に霖之助に聞いてみたところ、彼は自身の種族が『半人半妖』であると明かした。もし『人間だけど人間じゃない』=『半人半妖』だと仮定するならあの二人は半人半妖であることが確定するのだが…

「まあ、そう上手く推測が当たらないのが現実だよな……」

 考え事をしているうちに、人間の里の門が見えてきた。取り敢えず推測はここまでで一旦ストップしよう。そう考えて色々考えていた頭をリセット。そして門に続いている小道の脇に着地。此処からは歩きだ。一応人間の里に入るのに門を通らないのは流石にね?

 人間の里にはよく来てたりするのでここの門番さんとは普通に顔見知りだ。門を通る際軽く会釈をするとしっかりと笑顔か会釈を返してくれる辺り良い人だと思う。顔は怖いけど。そんな事を考えていると門が目の前に来ていた。その横にはいつもの門番さんが。

「あ、どうも。少し用事が出来たので来ました。」

「うむ、通って良いぞ。」

 俺が軽く会釈をすると門番さんも軽く会釈を返してくれ、普通に門をくぐる。先ずは人間の里に到着した訳だが…次にやる事はもう決まっている。

「うし、寺子屋行くか。」

 そう自分に言い聞かせ、俺は寺子屋へと歩き出した。何とか道は分かるはずだ。多分。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 結局あの後道に迷ってしまい、色んな人に道を聞きながらどうにか寺子屋に辿り着くことができた。正直疲れたのは気の所為だろうか。さあ寺子屋に入ろうと手を戸にかけ、戸を開けようとするが、ある音が耳に入りその手を止める。

「さてと……どうしたものか」

 そうなるのも無理は無いのかもしれない。恐らく今聞こえて来たのは子供の声。つまり高確率で授業中という訳だ。確か慧音の他にも教師は居ると前に聞いたが、流石に授業中に入るのは気が引ける。どうしようかと悩んでいると、

「お、康介じゃん。こんな所で何してるんだ?」

不意に後ろから声をかけられた。驚きながらも後ろを振り向くとそこには何かを背負った妹紅がいた。

「ああ妹紅か…ビビった…」

「今の私の行動の何処に驚く要素があったんだ?」

「警戒してない場所からの不意打ちには弱い。とだけ言っておく…因みに此処にいるのは寺子屋もとい慧音に用事があるから来たんだが…どうやら授業中っぽいんだよな」

 何とか最低限の落ち着きを取り戻せたので此処にいる理由を話す。まだ心臓バクバク言ってるけど。

「奇遇だな。私も慧音に用があったんだ。この筍を届けに来るという用がな。まあ後幾つか慧音に頼まれた事はあるんだが…で、別に入っても良いとは思うけど?」

 どうやら背中に背負っていたのは竹籠だったようだ。その中には筍がいくつか入っている。しかし、今寺子屋に入っても良いものなのか…?そう考えて寺子屋に入るのを躊躇っていると、妹紅がじれったそうに寺子屋の戸を掴んだ。

「まあ私は入るけどな。邪魔するぞー」

「あっ、ちょっと待てよ!」

 そんな俺の声も届かず(多分届いてたとは思うけど妹紅が意図的に無視したと思う)、先に妹紅が入っていってしまった。仕方ない、もう俺も入ってしまうかとようやく決断し、少し遅れて寺子屋の戸を開ける。

「お邪魔しまーす」

「お、康介じゃないか。どうしたんだ?」

 戸を開けるとそこには慧音と竹籠を背負った妹紅が。

「ちょっと慧音に用があってだな…」

「用事か?悪いが少し待ってて貰えないか?授業が終わって生徒たちが下校する時間になったその後でなら用事を聞くぞ。」

「ああ、別に構わないぞ。じゃあその辺で──」

 待っておくから終わったら呼んでくれ。そう言おうとしたその時、妹紅が俺の言葉を遮るようにして喋り出した。

「そういえば康介、お前まだ慧音の授業一回も見てなかったよな?良かったら見てみたらどうだ?私も今からそうしようかと思っていたんだ」

「授業を見るのか…別に慧音が構わないならそれで良いけど…」

「ああ、構わないぞ。じゃあ私は授業に戻るから適当に見ておいてくれ。」

 そう言い残すと慧音は数ある教室のうち一つの扉を開け、その中に入っていってしまった。まあ別に許可貰ったのなら此処にいるか。そう思ってふと妹紅を探すと、妹紅はもう既に竹籠をその辺に置き慧音が入っていった教室の中を廊下の窓から見ていた。

「行動が早いなお前は…」

 そう一人で呟き、俺は妹紅の近くに行く。本来の目的は一旦保留だ。今は慧音の授業を見よう。まあ此処の関係者ではないから授業を見ようってのも変な話だが。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 慧音がしていた授業が終わり慧音から「あの部屋で待っておいてくれ」と言われ、俺と妹紅は寺子屋のとある一室に通された。慧音曰く「生徒達が帰宅時に危険な目に遭わないかしっかり見ておかないといけない」らしい。しかし俺自身は特に何もすることがなくただボーッとしている。このタイミングなら妹紅にあの事聞けるとは分かっているのだが、どうしてもあと一歩が出ない。此処に来る前はあんなに決意で固まっていたんだがなあ。結局その決意も意味を成さなかったと言うことか。

「なあ康介。少し聞きたいんだが、お前が言っていた『慧音への用事』って何だ?」

 そう俺に聞いて来た妹紅。幸か不幸か、あの事を聞けるかもしれない状況になってしまった。仕方ない。こうなったらやるしかないだろう。

「そうだな、用事の内容としては二つ、だな。一つ目はこの前宴会で『俺の二つ目の能力について詳しく話す』っていう約束を果たしに来た。そして、二つ目なんだが…ここ最近過ごしていて少し聞きたい事が出来てな。慧音だけじゃなく…妹紅にも。本来なら慧音の方にだけ聞いて妹紅は会った時に聞こうかと思っていたんだが……手間が省けたって訳じゃないが偶々今日妹紅と会う事ができたからな。このタイミングで聞いておこう。」

「私に聞きたい事?一体何だそれは?」

 慧音への用事の内容に突然自分の名前が出てきたからか、妹紅が聞き返して来る。俺は一呼吸おいて、質問を投げかけた。

「単刀直入に言う。藤原妹紅。お前の種族は何?」

 若干ぶっきらぼうになってしまったが、俺の語彙力ではこんな言い方しか出来なかった。返答を待つために妹紅の方をじっと見る。

「人間ではないと言える証拠は何だ」

 妹紅が圧のある声でそう言う。正直怖かったが、ここで引き下がる訳にも行かないし、それに今突っかかる点が今できた。別に揚げ足を取りたい訳ではないが相手の流れに飲まれないよう利用させてもらおう。

「おいおい、俺は『種族』を聞いているだけだぞ?別に『お前が人間ではない』だなんて一言も言ってないが?早まりすぎだぞ」

「……!」

「まあまずは俺の仮説を聞いてくれ。まず俺は宴会の席で妹紅と出会った。そこで感じた雰囲気が『人間だが人間ではない』っていうこれまた矛盾した雰囲気だった訳。ここまでは良い?」

「…ああ」

 妹紅が俯きながらも小さくそう言う。こんな妹紅見たことなかったが今はそんな事どうでもいい。俺は自分の中で立てた仮説を話し続ける。

「次に、そんな雰囲気を感じたのは俺が妹紅と出会う前に一人、今日に一人いた。前者が慧音で、後者が霖之助。そして今日会ってそう感じた霖之助に思い切って聞いてみたよ。『種族は何?』みたいな事をさ。そしたら彼は『僕の種族は半人半妖だ』みたいな事を言ってくれた訳。」

「……?」

「今挙げた出来事等から推察するとだな、俺が感じた雰囲気を出してるやつらは大体『半人半妖』なんじゃないかと思うんだ。大体と付けたのは他にも人間に近いけど厳密には人間じゃない、みたいな種族がいるかもしれないからな。」

「……そうか。」

「一応勘違いされない内に言っとくが別に種族が違おうと俺のとる態度は変わらんし変える気ないからな。例えどんなに人間から嫌われる種族だったとしても、少なくとも俺はそれを受け入れるぞ。そもそも種族による差別とかあっちゃいけないと思うしな。」

 これは外の世界では世間一般的に言われている事なのだが、結果的に見ると差別やいじめはまだ無くなっていない。それにあんな体験をしたからこそだが言葉の重みを持って言える言葉だと思う。

「……はあ。分かったよ。答え、言ってやるよ。但し、聞いて後悔するなよ?」

 そう言ったのは妹紅だった。しかし声のトーンはまだ低いままだ。

「……後悔するくらいならあんな事言わないぞ。」

「それもそうか。さてと…慧音、そろそろ入ってきたらどうだ?」

「えっ…は?」

 妹紅が余りにも予想外な事を言い、俺の頭等が混乱していると部屋の扉が開いた。

「やはり妹紅にはバレていたか。完全に入るタイミングを見失っていたから気づかれていて有難いが…」

 そこに居たのは、言わずもがな慧音だ。色々確認したい事はあるが取り敢えず落ち着け俺。平静を取り戻せ。そしてあの時感じた違和感の正体を聞くんだ。

「話を戻すか。取り敢えずお前の予想だが……私に関してはハズレだ。」

 そう妹紅が言い、俺は若干落胆しかける。…あれ?”私に関しては”?という事はつまり…

「そうだ。康介が恐らく思っている通り私、上白沢慧音は半人半妖だ。そういえばあの時お前に言ってなかったな。すまない。」

「やっぱりそうだったのか…という事は妹紅は何なんだ?」

「……蓬莱人って知ってるか?」

 そんな俺の疑問に答えたのは他でもない、妹紅自身だった。そこに慧音が割って入る。

「妹紅、本当に良いのか?」

「ああ、構わないさ、慧音。あいつの言葉は本物だ。だから信頼してこの事を話すんだ。」

「……そうか。邪魔してすまない、続けてくれ。」

「…で、蓬莱人だっけか?一応”蓬莱”って言う単語だけなら聞いたことあるが蓬莱人に関しては全く知らないな。」

「そうか。なら単刀直入に言おう。私は”年をとれない”し”死ねない”んだ。」

「……えっ?」

 妹紅の口から飛び出した言葉に耳を疑う。つまり、妹紅の言ったそれは、俺的に、分かりやすく言うとするならば──

「……不老不死、か」

「そうだ。私の能力は【老いることも死ぬこともない程度の能力】。分かりやすく言うとするならば今お前が言った通り不老不死だ。私のこの能力は蓬莱の薬っていう薬による作用的な物なんだが…」

 ん…?妹紅の話を聞いていた俺だったが、どうも何かが引っかかった。なんか、今まで妹紅から聞いたことが線で繋がりそうな気がする。蓬莱…不死の薬…そして藤原…

藤原不比等(ふじわら の ふひと)…?いや、あくまでもそれは車持皇子のモデル候補の一人で…ただ蓬莱の玉の枝…不死の薬…竹取物語もといかぐや姫とは無理矢理かもしれないが繋がるんだよな…」

「おい康介、良かったらその竹取物語って話、詳しく聞かせてくれないか?」

 俺が独り言をブツブツ言っていると、食いついてきたのは妹紅だ。やっぱり竹取物語関係あるのか?まあ取り敢えず俺が知っている竹取物語を話すか。

「ああ、良いぞ。まあ少し長くなるから簡潔にパパッと行くけどな。」

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「……で、最後はかぐや姫が残していった不死の薬と手紙を日本一高い山のてっぺんで焼いたんだ。これで俺の知ってる竹取物語はおしまいだが…」

「……違うな。最後の部分だけ。」

 一応俺の知っている竹取物語を話したのだが、それに異議を唱えたのは妹紅だ。俺は思わず首をかしげる。

「違うって…一応これが俺のいた世界での竹取物語だったが…?」

「先に結論から言ってしまうが、不死の薬はそこでは焼かれていないらしい。だからと言って別の場所でも焼いていないらしいがな。」

 そう結論を述べたのは慧音だ。つまり俺が聞いてきた竹取物語と本来の竹取物語は違うというのか?しかし、どうしてそんな事が言えるのだろうか。そこまで考えたところで、妹紅が口を挟んだ。

「まあ一部端折りながら説明するが私はその当時、かぐや姫への仕返しとしてその不死の薬もとい蓬莱の薬を燃やしに行く奴らから強奪しようとしたんだ。しかしその時の私はまだ子供。一番高い山の頂上なんて登るにはまだ早すぎたんだ。そして道中で力尽きたんだが、幸か不幸かその燃やしに行く奴らのリーダーに助けられてしまったんだ。そしてその一行に私は付いて行った。そしていざ燃やすとなった時に、その山の噴火を抑える女神が出てきて蓬莱の薬を燃やす事を禁じられた。更にその女神は私とその一行のリーダー以外の兵士たちを皆殺しにした。そして別の山へ行くよう言われたからリーダーと共に下山してたんだ。その時に私はそのリーダーを殺した。そして蓬莱の薬を飲んでしまった…と言うわけだ。これが真の竹取物語だな。」

 …確かにこんな残酷な話、竹取物語に書けるわけが無い。ただ、真実がどんなに辛かったとしても受け入れず、その出来事を無かったことにするのは少々違う気もするが。

「…成る程。それで妹紅はそうなったのか…」

「そうだな。まああの時やったこと…命の恩人を殺した事に関しては正直やらなかった方が良かったと思っている。自らの欲望のためだけに命の恩人を殺めたしな。到底許されない事だとは思う。」

「…そうか」

 正直、もう殆ど妹紅のした罪をどうこう言える奴はいないと思う。この話自体がもうかなり前の話だ。だからもう時効で良いのでは?…とは何故か言えなかった。

「ところで、そう言えばもう一つ用事があるんじゃ無かったか?」

「あ、そうか。じゃあ俺から切り出しておいてこんな事言うのもアレだが事の話は一旦止めにして…二人共、宴会の席でした約束、覚えてるか?」

「ああ、二つ目の能力だったか?」

「一応ある程度なら判明したからな。という事で今から約束を果たそうと思うんだが…良いか?」

「ああ、頼む。」

 慧音からの了承(?)を受け、俺は詳しく自身の二つ目の能力について説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

少年説明中…

 

 

 

 

 

 

「……とまあ、大体こんな感じか?」

「成る程…ありがとう。そう言えばそろそろ夜になりそうだな…というかもう既になってるな。」

 慧音が言ったことに耳を疑う。慌てて外を見ると、外は闇に包まれ、空には月が昇っていた。

「マジかよヤバい。急いで帰らないと…」

 急いで帰る準備を始める。霊夢絶対キレてるぞこれ……

「そうだ康介。折角だし私が送ろうか?慧音は里の守護しないといけないしお前一人だと何かと危険かもしれないしな。」

「ありがとう妹紅。じゃあ頼んでも良いか?」

「ああ、分かった。じゃあ康介と共に私も失礼するよ。」

「またいつでも来てくれ。康介もな。」

「おう。…そうだ。慧音。あの時のことなんだが…いつから俺達の話聞いてたんだ?」

 ふとあの話をどこから聞いていたか気になったので聞いてみる。しかし返ってきた答えは、

「ああ、確か妹紅が『私に聞きたい事?一体何だそれは?』って言った辺りからか?」

──正直聞かない方が良かったかもしれない答えだった。




次回予告
偶にはないのも良いかなあって()

 いかがでしたでしょうか。
 今回は段落前(?)に全角スペースを入れて書きました。一応見やすくするための配慮だったりしますが、もし余計な配慮であればすいません。
 さて、いつも以上にふざけている次回予告ですが、割と本気で何も浮かんでいません。一応閑話的な話を投下しようかな、なんて考えてる訳ではありますがもしそうした場合章の管理がややこしくなるかもなのでもしかしたら話を進める可能性もあります。つまり次に投稿される話はどうなるか分かりません。ご了承下さい。
 因みにですが、恐らくこの話が今年最後の投稿になると思われます。短い間でしたが今年もお世話になりました。そして、来年も私、折れない黒鉛筆と東方染色記をよろしくお願いします。
 以上、うp主の折れない黒鉛筆でした。良いお年を。


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第二十話 人間の里で迷子探し(前編)

 どうも、ここ最近睡眠時間がやや足りていないうp主の折れない黒鉛筆です。まじで眠い。さっさと後書きも書き上げて寝たい。半日くらい。
 さて、第二十話です。実を言うと多分閑話じゃないです。悩んだ結果この小説を書き始める前に出していた案を使うことにしました。ついでに言うと長くなりそうだった+眠気が限界だったので前後編に分けました。
 そういえば、週一ペースで投稿するなんて言っちゃったためにもう二十話です。正直後悔してますが、可能な限り週一投稿は守ります。多分。
 それでは、第二十話をどうぞ。


あ、そうだ(唐突)
(今更ですが)新年明けましておめでとうございます。今年も細々と二次創作活動を続けていきますので、どうか私、折れない黒鉛筆と東方染色記をよろしくお願いします。


前回のあらすじ
慧音の授業を見た
慧音が(予想通り)半人半妖だった
妹紅が蓬莱人という不老不死の種族であることが判明した


「ここにも居ないし…あの親の子供達、一体どこにいるんだか…」

 夏ももう終わるであろうこの季節、どうして俺が人間の里を走り回りながら人探しをしているのか。それは今から約一時間前に遡る…

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「えっと…最後は八百屋でネギと大根…だよな、多分」

 とあるメモ用紙を見つつ、自分に言い聞かせるようにそう言う。何故俺がこんな事をしているかと言うと、端的に言えば『買い出しに行かされた』からだ。霊夢が突然「これ買ってきて」と今俺が見たメモ用紙を俺に押し付け、その直後にどこかへ行ってしまったので拒否する事も出来ずに仕方なく買い出し(俗に言うお使い)に来ている、と言う訳だ。

 因みについさっき訪れた魚屋(川魚しか置かれていなかった)や肉屋は人間の里で初めて行く場所であった為に、毎度ながら迷ってしまっていた。更に言うと今から行くであろう八百屋も初めて行く場所だ。これらから導き出される答えはただ一つ。

「絶対人に道聞かないと迷うよな、これ。」

 メモを見るために下に落としていた視線を上げつつ、そう呟く。つい先程行った魚屋や肉屋で道を聞いておけば良かったな、なんて思い直してももう遅い。何故ならそう…

「と言っても…もう既に迷ったんだけどな。はぁ…」

もう迷ったからである。周りを見渡してみるも知らない建物ばかり。どこだここ。何故迷うと分かっているのに道を聞かずに一人で行こうとしていたのだろうか。ほんと馬鹿だな俺。

 また人を探して道を聞くか、と思い、何処か全く分からない人通りの少ない場所を歩いて行こうとする。すると道の端に置かれている長椅子が視界に入った。恐らくただ視界に入っただけなら俺はそのまま素通りしていただろう。しかし、そこに座っている幼い少女を見て、素通りはできなかった。

「…お前、大丈夫か?そんなに泣いて一体どうした?」

 10歳くらいの少女が一人で長椅子に座って泣いている。そんな状態を見て、どうも嫌な予感がした為、少女に目線を合わせようとしゃがみ込み、声をかけた。元の世界なら声掛け事案とかに発展しそうで怖いが多分大丈夫だろう。確証はないが。

「あっ…この前寺子屋に妹紅先生といたお兄さん…実はママとはぐれちゃって…」

 先程まで泣いていた所為か鼻をすすりながら少女が答える。そう言われて寺子屋での記憶を思い出す。ああ、確かにこの子いたわ。確か慧音に算数の問題を解くように指名されていた子だっけ。まあそんな記憶はどうでも良いが。

 色々気になるところはあるが話を戻そう。聞いた感じ、恐らくこれは所謂迷子だろう。もしここが元の世界なら遊園地等の施設にあるサービスカウンターや迷子センターに駈け込めば大体こういう案件は解決する…のだが、此処は幻想郷。ましてや人間の里。そんな場所が有る訳が無い。というか俺が知らない。つまりこの少女が言う「ママ」の元に直接連れて行かないといけない訳だが…

 見た感じこの通りは人気が少なそうだ。もしここで俺がこの子を放っておいてしまたらこの子は暫くこのままここにいることになるだろう。少なくともこの子のお母さんが此処に来るまでは。それならば俺がこの子の母親を探した方が断然早い筈だ。この子の母親を俺は知らないがまあ何とかなる筈だ。多分。

「そうか…よし、なら俺も協力するから一緒にママを探そう。此処でずっと泣いてたってママがこの場所に来ない限り何も始まらないぞ?」

「えっ…でもお兄さん、買い物中じゃ…?」

 少女が視線を俺が右手に持っている買い物袋に向けながらそう言う。確かに現在俺は買い物中だが、帰るのが遅れるくらいならアイツに遅れた訳を説明すればどうにかなるだろう。多分怒られる事に変わりはないだろうけど。

「ああ、別に俺は大丈夫。そんな事よりどうするんだ?ここに居続けてママを待つか、それともここから動いて俺と一緒にママを探すか。」

「うーん…ママは知らない人についていったらダメだって言ってたけど妹紅先生と一緒にいた人なら大丈夫だよね。お兄さん、行こ。」

 少女が涙を手で拭い、長椅子から立ち上がった。俺はそれを見てから立ち上がる。

「よし、じゃあ行くか。取り敢えずママが誰かは俺には分からないから…ママの特徴を教えてくれないか?」

「えっとね……特徴はないよ。ただ、今日は緑色の着物を着ていて髪の毛は短かった気がする。」

「おいおい…要するにほぼノーヒントじゃねえか。ていうかそれを特徴って言うんじゃ…まあ良いか。こういう場合は闇雲に探してもダメな気がするから…慧音の所行けば何とかなるか?…あっ。」

「どうしたの?お兄さん?」

 この少女と話しているうちに、大事な事を思い出した。何で忘れていたんだ。そもそも何故この子の母親をこんな状態で探そうとしたのか。

「……俺も迷子なの忘れてた。悪いがここから寺子屋までの道、わかるか?」

 ほんとダサすぎる。迷子の子供に道を聞くとか。一応頷いてはくれたので分かるっぽいが…こんな調子でこの子の母親探し、大丈夫なのか?

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「うーん…居ないなあ…」

「やっぱりこういうものって大体すぐには見つからないよな…寺子屋に行くまでに見つかれば楽だったんだが…あ、寺子屋見えてきた。ありがとな。ここまで連れてきてくれて。」

 寺子屋に行くまでの道中、もしこの子の親が見つかれば良かったのだがそう上手くいかないのが現実。寺子屋がもう見えてきた。

 …にしても、この子が言った特徴に当てはまる人物が多すぎる。一応条件に当てはまる人を見つける度にこの子に聞いてはいるのだが、彼女は首を横に振るばかりだった。

「にしても…なんで寺子屋に来たの?」

「ああ、もしかしたらお前のママが慧音の所来てるかもしれないと思ってな。で、慧音が高確率でいる(と思い込んでいるだけだが)であろう寺子屋に来た訳だが…」

 そんな事を話しているうちに、寺子屋前に着いた。取り敢えず扉をノックする。

「おーい、慧音、いるか?少し相談事があってだな…」

 そう言ってから10秒も経たずに、扉が開かれた。そこに居たのは、慧音ただ一人。

「どうした康介、今少し立て込んでいて…ってその子はどこにいたんだ?」

「ああこの子か?どこかに置かれてた長椅子に座って泣いてたぞ。この子の話を聞くに多分迷子だったから一応ここに連れて来た。ただ闇雲に探すよりかは慧音の力を借りた方が早いと思ってな。」

「ナイスだ康介。つい先程この子のお母さんがここに来てな…今丁度話を聞いていたんだ。」

 どうやら俺の判断は合っていたらしい。慧音のその言葉を聞いて、すぐさま反応を示したのは迷子だった少女だ。

「って事は慧音先生、ママはここにいるの!?」

「ああ、居るぞ。今呼んでくるから少し待っていてくれ。」

 そう言うと慧音は数ある教室のうちの一室に入っていった。取り敢えずこれで迷子案件は解決で良さそうだな。そう思って少なめの達成感を感じていると、隣に立っていた少女が俺に話しかけて来た。

「お兄さん、ありがと。」

「ああ、別に構わないぞ。俺は特に何もしてないしな。強いて言うなら…道案内を頼んだぐらいか?」

「いや、お兄さんがあの時声をかけてくれなかったら私はずっとあそこにいたままだったし…お兄さんがいなかったらどうなってたんだろう。」

 そう少女が言ったと同時に、慧音が入っていった扉が開いた。そこにいたのは、この少女が言っていた条件と一致する女性。多分母親だろう。後ろには慧音もいた。その姿を見て、少女が母親らしき人物に駆け寄って行く。

「ママ!会いたかったよ…」

「よしよし、もう私から離れないでね…」

「…うん!ママ、ごめんなさい…」

「別にいいのよ。里子が無事だった。それだけで十分だよ…」

 親子の再会をを見ていたが、流石にこの空気を邪魔するのも悪いのでゆっくりと扉を開き、外に出ようとする。すると母親がこちらに気付いたのか、「あの」と声をかけてきた。

「もしかして、貴方がここに里子を連れてきてくれたんですか…?」

「……まぁ、一応そうだが…特に俺自身は何もしてないから礼なんていらないけど。」

「いえいえ…どうもありがとうございました…」

「私からもお礼を言うぞ。ありがとう。」

 母親がこちらに向かってお辞儀をしてくれたので、一応お辞儀を返す。

 さて、これで完全解決かと思い、寺子屋から今度こそ去ろうとすると慧音に呼び止められた。

「康介…えっとな…まだこのお母さんの子供が迷子なんだが…」

 マジかよ。慧音の言葉に耳を疑った。思わず外に向かっていた足を止める。

「慧音先生、彼も用事があるはずでは?荷物とか見ると、彼、買い物中みたいですし」

「あー、因みに聞くが慧音、その親御さんの子供で迷子になっているのは後何人居るんだ?」

 これまたなんとなく嫌な予感がしたので慧音たちの方を向きつつ、半ば強引に会話に割り込み慧音に聞いてみる。

「それがだな…後3人居るんだ。」

「3人ねぇ…まぁ乗りかかった船だし俺が出来る限りの事をやってみるか…よし、その3人の特徴を教えてくれ。」

 俺が少し考えた後にそう言うと、母親さん(仮称)は驚いた顔をした。

「良いんですか?大分面倒くさくなると思うんですけど…」

「え、ああ。さっきも言った通りこれは乗りかかった船だ。こうなったらとことん最後まで付き合わせてもらいたいし、それに…いや、何でもない。取り敢えず、残りの3人の特徴を教えてくれないか?」

 一瞬過去を語りそうになったが過去の事は色々あってあまり語りたくないので強引についさっきの話題に戻した。

「ありがとうございます!それではまず…買い物を終わらせてきてください。生もの、腐っちゃいますよ?」

「あっ……かんっぜんに忘れてた…」

 いけない。母親さんの指摘があるまですっかり忘れてた。どうも買い物袋の中身が若干見えていたらしい。俺が買った物の中には母親さんが言った通り肉や魚といった生ものがある。時間はそれほど経っていない筈だし、多分今はまだ大丈夫とはいえ、このまま迷子探しを続行したら十中八九腐るに決まってる。ならすぐにでも行きたいのだが…まあ流石に同じ過ちを犯す訳にはいかない。

「慧音、八百屋さんある場所って分かるか?」

「八百屋か?それならここを出て真っ直ぐ行って二つ目の十字路を右折してすぐだった筈d…」

「了解!トップスピードで行ってくる!ついでに博麗神社に買い物した品も置いてくる!」

 必要な情報は最低限聞き取ったので強引に会話を切り上げ、トップスピードで寺子屋を出る。生ものが腐る心配もあったが、迷子の子供たちを早く見つけてあの母親さんを安心させたい、というのもあったからだ。

(あの母親さん、顔や言動には出さないけど相当焦っている筈なんだよな。子供がいない。危険な目に遭っていたらどうしよう。そんな事を考えてると思うと恐らく焦るのも無理はないし…だから早めに行動する。『善は急げ』みたいなものか?)

 そんな事を思いながら、事故を起こさない程度の速度で八百屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

約5分後───

 

 

 

 

 

 

「只今戻りましたよ、っと」

 寺子屋の扉を開けながら、至って普通の声でそう言う。そこで待っていたのは母親さんと慧音、それとあの少女だ。

「博麗神社まで行ってた割には随分早い到着だな。」

「まあな。割と飛ばしたし…でもそのお陰で疲れたから正直飛ばしたのは意味ない感が凄いけどな。」

「博麗神社って…あの博麗の巫女がいて別名妖怪神社とか言われてるあの博麗神社ですか!?」

 母親さんが驚きの表情を見せる。ぶっちゃけついさっき俺が去り際に言った言葉に博麗神社ってあったんだけどな…まあ良いか。ていうか博麗神社の別名が妖怪神社って。まあ大体合ってるけど。

「そうだが…まあ取り敢えず話を戻そう。母親さん、今現在迷子になってる3人の特徴を教えてくれ。知っておいた方が…ってか知らないと探せないしな。」

「ええ、分かりました。まず一人目ですが、次女の京子です。6歳で、おかっぱの黒髪なんですけど、右頬にホクロがあるのでまあ分かりやすいと思います。次に二人目ですが、長男の勝です。3歳でとても好奇心旺盛なので次男と一緒にどこかにいると思うんですが…一応若干茶色がかかった髪の毛をしています。そして最後は、次男の圭太郎です。3歳で勝と同じく好奇心旺盛なので多分長男と一緒にいると思いますけど…一応真っ黒の髪色に一本癖毛が立ってます。」

「えっと…京子ちゃんに勝くんに圭太郎くん…で、子供達の特徴…了解。覚えた。じゃあ行ってくる。」

 頭の中でもう一度情報を整理し、必要な情報だけにする。そして完全に覚え、俺は寺子屋を飛び出そうとする。

「お、おい!ちょっと!」

 しかし慧音に呼び止められたので急ブレーキをかけ、グルリと後ろを振り返る。

「ん?何だ?」

「一応聞いておくが…お前はどうやって探すつもりなんだ?」

「ああ、全く決めてないぞ。強いて言うなら『色々』だな。上空から探したり、聞き込みしたり、普通に歩き回ったり…」

 …ここまでとなると自分でも言ってて結構クソみたいな開き直り具合だなー、と思う。勿論慧音は頭を抱えている。

「はあ…結局それって闇雲に探すって事じゃないか…」

「まあそれもそうだし、いつもの俺なら一回落ち着いて作戦立ててから探しに行くだろうね。でも何故かは分からんけど今回は早めに探した方が良い気がするんだよな。何でだろうな。まあ多分『善は急げ』ってやつなんだろうけど。てな訳で、行ってくるわ。」

 多分言ってることが訳わからないな、なんて考えながらも今度こそ俺は寺子屋を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 寺子屋を飛び出してからおよそ10分。現在はただひたすらに走って捜索中。しかし、一向に見つからない。やはり作戦を立ててから来るべきだったかな、と思いつつも行き交う人々にぶつからないようにしながら走る。

「ここにも居ないし…あの親の子供達、一体どこにいるんだか…」

 これで俺が知っている場所のうち子供がいそうな場所は大方探し尽くした。後は…どこかあったか?……ダメだ。全くもって良い場所が思いつかない。完全に作戦立てた方が良かったな、と後悔する。

「うーん…仕方ない、一度寺子屋に戻るk…ってあれは…?」

 一度寺子屋に戻ろうとした俺の視界に入ったのは、白髪のロングヘアーが特徴的な俺の知り合い。しかもその隣には母親さんが言っていた次女の特徴と合致する少女が一人俯いて妹紅の手を握っている。

「お、康介じゃないか。どうしたんだ?えらく珍しい目でこっちを見ているが…もしかして、私が慧音以外と二人でいるのが珍しいとかかー?」

「いや、断じてそんなんじゃないからね?そんな事より妹紅、その隣にいる女の子は?」

「ああ、コイツか?コイツ、なんか迷子みたいなんだよな。確か名前は『京子』ちゃんだっけ。」

 はいビンゴ。思わず小さくガッツポーズ。まさか妹紅が偶然とはいえ協力してくれるとは思わなかった。取り敢えず事情を説明すればなんとかなる筈だ。

「妹紅、実はだな…」

 

 

 

少年説明中…

 

 

 

「という訳なんだよな。」

「成る程。つまりは今からコイツと一緒に寺子屋に行けば良いんだな?」

「ああ、母親さんが移動していなければ寺子屋にいる筈だし」

「そうか…良かったな、京子。お母さんにようやく会えるぞー。」

「……うん!」

 京子ちゃんは嬉しかったのか涙を拭き、嬉しそうな声でそう言ってくれた。これで一人発見できたから…後は男の子×2か。

「まあ取り敢えず寺子屋派まで行こうぜ。この子と母親さんを対面させて少しは安心してもらいたいしな」

「それもそうだな。じゃあ慧音のところ行くか」

 意見が合致したところで、俺と妹紅と京子は寺子屋へと向かって歩いて行った…

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「なあなあ…ここに里の外に出るための穴があるんだぜー!」

「おおお!兄ちゃんスゲー!もちろん出るよな?」

「当たり前だろ?さて、出ようぜ!」

 ───この日、二人の子供が里の外に出た。里の外で待つ脅威なんて知らずに…




次回予告
 寺子屋に京子を連れて戻ってきた康介と妹紅。妹紅も慧音から事情を聞き、迷子探しに参加してくれることに。そして手分けして人間の里内を探すが、どこにもあの二人は見つからない。
 そんな中、康介は人間の里にある柵にとある異変を見つける。まさか、と思う康介。果たしてあの二人は無事見つかるのだろうか!?
次回 「第二十一話 人間の里で迷子探し(後編)」(仮)

 如何でしたでしょうか。
 一応今回も段落っぽい箇所に全角スペースを入れて書きました。もう仕方がないのでここからは全部全角スペース入れて書きます。
 従って1~19話くらいまでの段落初めに全角スペースを入れるのですが、生憎リアルが多忙になってきたため少し修正は遅れるかもしれません。許せサスケ。
 それではまた次回。うp主の折れない黒鉛筆でした。


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第二十一話 人間の里で迷子探し(後編)

 どうも、色々ありすぎて書く時間すら確保できていないうp主の折れない黒鉛筆です。
 先週は唐突に休んでしまい、申し訳ありません。本当に色々あったんでその辺は深く突っ込まずに察してくださると助かります。
 割とこれから先も忙しくなりそうで書く時間が取れなくなりそうな予感がするので毎週投稿ではなく亀更新の不定期投稿にしてしまっても良いかなと考えている今日この頃。
 それでは、第二十一話をどうぞ。

前回のあらすじ
買い物中に迷子を発見した
寺子屋に連れて行ったらその子の母親がいた
あと3人の子供たち探しに協力する事にした

修正履歴
2018/04/30 誤字を修正(走馬橙→走馬灯)


 少年少女移動中…

 

 

 

「はあ…地味に遠かったなあ…」

 寺子屋にようやく着き、探す前に買っておいた水を飲む。剣道部に入っていたとはいえキツイものはキツい。

「お前はあれだけでバテるのかよ。情けないな。さてと、慧音ー、子供見つかったぞー。」

 そう言って妹紅が扉をノックし、開ける。酷い事を言われた気がするが気のせいだろう。…気のせいだと信じよう。

 扉を開けるや否や、自身の母親を見つけたからか京子が走りだした。そして母親に抱きつく。

「ママー!」

「よしよし…ごめんね、見つけてあげられなくて…」

「大丈夫だよ、ママ!妹紅先生がすごく優しかったもん!」

 そう言って京子が妹紅の方を指差した。当の本人である妹紅はやや照れくさそうだ。

「あ、先生が見つけてくれたんですか?」

「あ、いや…まあ、一応見つけはしたよ。ただ大したことは…」

「ありがとうございます。お陰で京子と無事再会することができました。」

 妹紅が先生と呼ばれている事には後で突っ込むとして、取り敢えず今はこれからを考えるか。

「さて慧音、あれから後二人の子供は見つかったのか?」

「いや、まだ見つかったという報告はないな…一応ほぼ全域は探したんだが…」

 うーん、これだけ探してまだ見つからないか。となると…いや、まさか。あの人達がそんな事する訳がない。よりによって3歳程の子供二人を外に出すなんて、流石にしないだろう…と思いたい。

 敢えてこの”可能性”は口には出さないでおく。もしこんな事を言ってしまったら、母親さんのプレッシャーやその他諸々が大きくなるだろうから。

「慧音、私もその子供達、探しても良いか?」

「ああ。人手は多いほうが良いしな。じゃあその子達の特徴なんだが…」

 もしこの可能性が無いとするならば何処に行った…?店舗…いや、店にいるならおそらく店長か誰かが此処に来ている筈。ならば何処に…?やはり、あの可能性とあの可能性しかないが…まさか。そんな事あってたまるか。

「とまあ、こんな感じだが…」

「了解。じゃあ私は空から探してみるよ。」

「ああ、頼む。さて、康介はどうするんだ?」

 もう一度、可能性を潰すために里を囲んでいる柵っぽい物を伝うようにして探す…?とても非効率な気がする。だが、可能性を潰す意味でもやっておいたほうが良い。

「康介、聞こえてるか?」

 となると、まずは……

「康介!」

「わっ!…ああ、すまん。少し考え事してた。」

「全く…しっかりしてくれよ。で、お前はどこを探すんだ?」

 恐らくそれらしい事を言えば慧音なら勘付く筈。ならば悪いけど少しだけ誤魔化すしか…

「えっと…取り敢えずもう一度俺が知っている場所を中心に探そうかな、と」

 取り敢えず適当に誤魔化そうとする。俺の態度に少し違和感を感じたらしく、首を傾げる慧音だったが少ししてから「分かった」と言ってくれた。

「…ああ、分かった。じゃあ、頼んだぞ。」

「お願いします…どうか勝と圭太郎を見つけてやって下さい…」

 嘘をついた事に対する罪悪感を胸に覚えながら、俺は軽くお辞儀をして寺子屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「…さて、この辺りか…?」

 俺の目の前には3mはあるであろう柵が。見た感じ柵には手足を掛けて登れる…ようには見えない。やはり杞憂だったか…?いや、杞憂かどうかはここを一周調べたら判明する事だ。

「取り敢えず柵沿いに歩いて見てみるか。多分こんな感じだとあの可能性は切り捨てられると思うんだがな…」

 辺りを見渡して目印になりそうな物を探す。一周したと分かるようにするためだ。……あった。良い感じに目印になりそうな井戸が。井戸の形状をしっかりと記憶し、俺は柵に沿って歩き出した。

 

 

 

少年可能性消去中…

 

 

 

「…そろそろ一周か?やっぱり何も無かったなあ。まあそれでいいんだけど。」

 途中に門番さんとも出会い、子供達について聞いてはみたのだがどの門番さんも口を揃えて「そんな子供は通っていない」と言っていた。やはりこの考えは杞憂だったな。なんて暢気に思っていると、ふと柵に違和感を感じた。

「ん?あっ。これは…」

 柵の途中に穴が空いている。穴は小さく、俺ぐらいの体格の人間は通れそうにない。しかし、子供なら通れないこともないだろう。例えばそう…3歳くらいの子供。

 まさか。そう思った。よく調べてみると、穴には誰かが通ったような痕跡が。辺りを見回す。この場所は良い感じに通りからは見えない。そして柵から外を見ると、今にも消えかかっている足跡が二人分。

「嘘だろオイ…」

 圧倒的に嫌な予感がする。俺はすぐさま飛行で柵を越え、今にも消えそうな足跡を辿っていった…

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「お、おい…兄ちゃん…どうするんだよこれ…」

「う…どうする…?」

 森の中、見た目はおよそ3歳程に見える兄弟二人は、じりじりと後ずさりしていた。理由は簡単。目の前に二本足で歩く狼の妖怪、所謂バケモノがいたからである。その妖怪は牙を見せながらもゆっくりとこちらに向かってくる。今すぐにでも回れ右してこの場から逃げ、人間の里に逃げ帰りたいがそうもいかないのが現実。まだ彼らは3歳。3歳の足と妖怪の足とではどちらが速いかは明白だ。それに、背中を見せようものなら今すぐにでもこの妖怪は襲ってくるだろう。

 そんな中、生まれた順番的に兄である勝は自分がした行いを後悔していた。自分が柵に穴が空いているのを見つけなければ。そこから抜け出して今まで見たことがない里の外の世界を見てみたい、なんて思わなければ。そして、弟である圭太郎を誘わなければ。こんな状況にはならなかった筈なのに。

 そして、それは弟である圭太郎も同じだった。あの時兄の提案に易々と乗らずに兄を止めていれば、と後悔していた。

 しかし、今更後悔したところで、だ。妖怪は少しずつこちらに近寄ってくる。妖怪から遠ざかるために二人もゆっくりと視線を妖怪から外さずに後ずさりする。しかし、

「いてっ!」

「圭太郎!」

 弟の圭太郎が後ろにあった木の根に足を引っ掛け、こけてしまった。すぐにでも立ち上がりたかった圭太郎だが、恐怖と痛みで足が動かない。急いで手を伸ばそうとする勝だったが、届かない。

「だ…だれか…助けて…」

 圭太郎が蚊の鳴くような声でそう言う。その声が勝の耳に届いた刹那、狼妖怪が圭太郎目掛けて飛びかかった。

「う、うわあああああああああ!」

「圭太郎ーっ!」

 圭太郎は怖さから目を閉じる。しかし、いつまで経っても痛みは襲ってこなかった。

「はあ…はあ…間に合った…!」

 そして圭太郎と勝の目の前には、雲のようなものを展開させて狼妖怪からの攻撃を防いでいる少年がいた。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 どうしても嫌な予感というものは大体当たってしまう。今回に関しても例外ではなかった。全速力で飛ばないと間に合わないと思い、本日二度目の全速力飛行をした。と言ってもいつもより少し速いだけだが。

 その結果、ギリギリでこの妖怪の攻撃を遮り子供達を助けることができた。しかし安心するにはまだ早い。まずはこの子供達を逃がす。話はそれからだ。

「良いか、お前ら。一度しか言わないからよーく聞け。今すぐ人間の里へ戻れ。全速力で走って、だ。そして里に着いたら、寺子屋に行くんだ。お前らのママはそこにいる。」

 この積乱雲障壁もそう長くは持たない。さっさとやって欲しいことだけを伝える。

「でもそれだとお前が…!」

 そう言ったのは茶色の髪をした方の子供。確か勝だっけか。

「俺の事は気にすんな。お前らは今は逃げることだけを考えろ。このクソ妖怪は俺が何とかする。分かったらさっさと行け!」

 早く行かせるために口調を強めながらそう言い、障壁の反撃機能で妖怪のバランスを崩す。妖怪はしっかりよろめき、少しながら隙が出来た。

「……うん。行くぞ!圭太郎!」

「…分かったよ。兄ちゃん。」

 勝と圭太郎が交互にそう言い、俺が来た方向へと駆けて行った。それを逃がすまいと追おうとする狼妖怪だが、もちろんそんな事させない。

「おらッ!」

 軽く作った電気玉を狼妖怪にぶつけると、狼妖怪は子供達を追うのを止め、こちらをギロリと睨んだ。どうやらターゲットを変更したらしい。

「ふぅ…お前の相手はこの俺だぜ?さっさとかかってきな。」

「グルルルル…ワオーーーン!!!」

 取り敢えずこれだけ挑発しておけばあいつらが里に着くまでの時間稼ぎは出来るだろう。正直1vs1で妖怪と闘うなんてやりたくないし勝てる気がしない。現に今も内心ビビりまくりだ。誰か腕に頼りのある人にでもすぐに丸投げしたいくらい。だがしかし、「子供達が妖怪に襲われかけた」という事実を知っているのは今のところ俺とその子供達だけ。結局のところ俺がやるしかない、という訳だ。それに、子供達の前であんな事を言ったからには尚更だ。

 そう考えていると、いきなり狼妖怪が俺に飛びかかってきた。恐らく両手にある切れ味が凄そうな爪で八つ裂きにでもしようと考えているのだろう。勿論八つ裂きになんてなりたくないので俺はそれをサイドステップを使い左に避ける。

 さらに挑発しようとしたが、止めた。もしこれで狼妖怪の攻撃の手が激しくなり、避けきれなくなれば元も子もない。取り敢えず狼妖怪に隙が出来ているのでそこに弾幕をぶつける。

「はあッ!」

 しかし狼妖怪はまだ元気そうだ。流石に威力が弱すぎるか。ならば…スペルカードアタックだ!

「行くぜ!電撃「サンダービート」!」

 スペルカードを掲げながらそう宣言する。こんなの弾幕ごっこでも何でも無い気がするため、宣言も要らない気がするが正直どうでもいい。両手に雷雲を纏い、目の前に大きなシャボン玉を作るようにして両腕を振る。すると振った軌跡に雷雲が完成。そこからリズムを刻むようにして電撃が狼妖怪目掛けて降り注ぐ。しかし、狼妖怪は雄叫びをあげながらこれを難なく回避していく。

「チッ…!これじゃダメか…ならこれだ!風符「吹き荒れる暴風弾幕」!」

 これだと相手にダメージを与えられないと判断し、スペルを解除して次のスペルを宣言する。このスペルは単純。俺が弾幕を適当にばら撒き、突風を吹かせて弾幕を突風に乗せて縦横無尽に吹き荒れさせる、というものだ。しかしこれもあの狼妖怪にとっては簡単なのか、ヒョイヒョイと避けられてしまう。そうこうしているうちに弾幕が止み、時間切れ。

「グルルルル…」

 一転攻勢、だろうか。狼妖怪が攻撃体制に入った。正直今のスペルカードアタックで決めてしまいたかった。何故ならこいつの攻撃を躱し切れる気がしないから。

「クソがっ……!」

 悪態をついたところでこの状況が変わる訳でもない。どうするかと思考を張り巡らせながらも目の前にいる狼妖怪から目を離さない。すると狼妖怪が両手に何かを纏った。この感じ…もしや。

 次の瞬間、狼妖怪の両手から数多くのエネルギー弾が発射された。所謂弾幕だ。まさかこいつも使えるとは思っていなかったので一瞬驚くが、すぐに冷静になり弾幕の隙間に前転で入り込むようにして弾幕を避ける。

「あっぶねぇ…反応遅かったらモロに食らってたな…」

 前転動作を終えて無事に避け切れたため一安心していると、背後で弾幕が何かに当たる音がした。その直後に聞こえて来た「メキメキメキ…ドガーン!」という音からして多分木に当たった…っては?

 思わず背後を振り向く。あの狼妖怪が放った弾幕が当たったであろう木が、折れていた。地面からから1m程の所で、真っ二つに。

「……ウッソだろこれ」

 多分、俺は今顔面蒼白になっているだろう。この弾幕の威力から察するに、コイツは完全に俺を殺しに来ている。こんな弾幕に俺なんかの弱っちい人間がモロに当たれば即終わりだ。そもそもあんな弾幕を放ってくる奴なんかに俺が勝てる訳───

「しまっ……がッ!」

 油断した。思考を巡らせる事に夢中になりすぎるあまり、位置を変えた狼妖怪が弾幕を放って来ている事に気付かなかった。被弾する寸前でギリギリ即席の障壁を張ることには成功したのだが、衝撃が強すぎるあまり俺は吹き飛ばされて折れた木とは別の木の幹にまともに衝突してしまった。衝撃により肺の中の酸素と共に何か液体を吐き出す。

「ゲホッゲホッ…ってやっべえなこれぇ…」

 俺から出てきた液体を見て、思わず引いた。血だ。要するに先程吐いたものは血反吐、という事になる。全身に痛みが広がり、耐えるので精一杯だ。恐らく骨は折れていないっぽいがとんでもなく目眩がする。暫くしないと立てないだろう。しかしあの狼妖怪がそんな悠長な事をしてくれる筈が無い。

「グルルルルル…」

 少しずつ、狼妖怪が牙を見せながらこちらに近寄ってくる。恐らく今度こそ俺を殺すつもりだろう。後ろに下がろうにも、背後は木の幹で下がることが出来ない。どうにか、この圧倒的ピンチの状況を切り抜けられる何かは無いのか。そう思って頭を回そうとするも、何故か頭は回らず何も考えつくことが出来ない。

 ……あんな如何にもそれっぽい事を言っておきながら、俺は殺されるのか。そもそもこんな妖怪を相手にする前に妹紅とか霊夢を呼んでくればこんな事にはならなかった。はぁ。馬鹿だな俺。勝手に実力もないのに大口叩いてそのまま勝手に死ぬなんてな。

「ワオオオオオオン!!」

 狼妖怪がそう言って右手を振り上げた。頭の中が真っ白になり、走馬灯が頭の中を少しだけよぎる。もう助からない。そう思って両目を閉じた。

 

 

 

「…ったく、無理しやがって。あの子供らが教えてくれなかったら確実に死んでたぞ、お前。」

 聞き覚えのある声がして、恐る恐る目を開く。そこには白髪のロングヘアーが特徴的な白のカッターシャツを着た知り合いが、背中をこちらに見せ狼妖怪の右腕を片手で掴んで立っていた。

「も…妹紅…なんで…」

「何でもへったくれもないだろ。私の友達が子供を助けて強そうな妖怪と戦ってる、なんて聞いたら飛んでくるに決まってるだろ。よっと。」

 そう言って妹紅が左腕を狼妖怪の右腕に添え、炎を起こす。堪らず狼妖怪はその場から飛び退くようにして離れ、距離を取った。

「慧音からは出来るだけ妖怪は殺さないようにって言われてるんだけどなあ……里の外だが私の友人を傷付け、何もしていない子供を殺そうとした。」

 妹紅がそう言っていくにつれて右手の火が大きくなっていく。その姿や言動から見て取れる彼女の感情は、頭がまだよく回っていない俺なんかでもよく分かった。

「その罪…償ってもらおうか!」

 今の妹紅は…怒っている、と。

「グルルルルル…ワオオオオ──」

「遅いっ!蓬莱「凱風快晴-フジヤマヴォルケイノ-」!」

 狼妖怪が距離を詰めようとする前に妹紅がスペルカードを宣言。すると妹紅の背中にフェニックスのようなオーラが出現。そして妹紅が大玉を一発狼妖怪に打ち込んだ。その大玉が…爆発。

「ガゥッ!」

 狼妖怪が声を上げたが妹紅は構わず同じ様な弾幕をばら撒き続ける。狼妖怪は大玉の直撃こそ免れ始めているものの、大玉の爆発範囲が相当広いが故にダメージを受け続けているように見える。

 そして、妹紅が弾幕をばら撒くのを止める。どうやら時間切れのようだ。しかし対する狼妖怪は被弾しすぎたからか至る所に怪我を負っている。しかし、そんな狼妖怪に向かって妹紅は弾幕を放っていた右手を下ろし、こう言い放った。

「…ここで大人しく身を引けばこれ以上やるのは勘弁してやるが?」

 何だろうか。…何というか純粋な、殺意。そんな風に感じた。妹紅の顔はこちらから見えない為どんな表情をしているのかは分からないがやはり里に関わりのある人間だからこそ、この妖怪に対して殺意を剥き出しにしているのだろう。しかし、それを聞いた狼妖怪は妹紅の姿を見て隙だらけでチャンスと思ったのか、飛びかかってきた。どうやらまだ戦う気はあるらしい。

「そうか…」

 悲しそうに、そう呟く妹紅。しかし、そんな妹紅を御構い無しに狼妖怪は妹紅の右肩に噛み付いた。

「……!!妹紅!」

「ぐっ…仕方、無いか。惜命「不死身の捨て身」。…永遠に消えろ。」

 噛みつきによる痛みに耐えながらもスペルカードを一枚宣言した妹紅。次の瞬間、妹紅の全身が噛み付いていた狼妖怪諸共炎に包まれた。そして、何処かへ向かって全速力で飛んで行った。その先には大きい岩が。その岩に妹紅と狼妖怪を包んだ炎球が衝突。凄まじい衝突音が辺りに響き渡った。

ズドーーーーーン!

 

「うっ………止んだか?」

 ある程度は立てるようになったのでふらふらと木にもたれかかりながら立ち上がる。そしてあの炎球がどうなったのか岩の元へと目線をやる。

「……は?」

 そこには、砕け散った岩の残骸だけが残っていた。あの狼妖怪の姿と妹紅はどこにも見当たらない。…まさかとは思うが、念の為一応近くまで行ってみる。

 フラフラ歩きながらも近くまでやって来た。辺りを見渡してみるが狼妖怪らしき影は何処にも見当たらない。多分物理的に燃え尽きた…と考えるべきだろう。そして、妹紅もいない。恐らくだが…いやまさか、そんな事ある筈が無い。アイツに限って、そんな事しない筈だ。…何か忘れている要素がある気がするけど。

「おーい、妹紅ー?」

 一応辺りを見渡しながら妹紅の名前を呼んでみる。しかし返事はない。妹紅らしき姿もない。…嘘だろおい。まさか。そんな筈無いだろ。再び頭の中が真っ白になる。まさかとは思うが…こんな妖怪の為だけに…

 そんな事を考え始めてすぐだっただろうか。不意に肩を叩かれ、クルリと振り返る。

「どうも、妹紅さんだよ。」

 そこには、傷一つ負っていない妹紅の姿が。……今思い出した。詳しいメカニズムは聞いてないけど、この人不老不死だった。

「ははっ…変な心配掛けさせんなよ…」

 安堵したからか、思わずへなへなと座り込む。そんな俺を見て、妹紅はやや呆れ気味にしている。

「それはこっちのセリフだ。勝手に無茶な戦闘始めやがって。別に注目を集めたら逃げても良かったんじゃ無いのか?」

「結果論になるけど、まあ何とか最終的に生き延びれたからこれで良かったんだよ。多分。俺が注目を集めて時間稼ぎしたところでそこから注目貰ってる状況で俺が逃げ切れるかって話だし。まあ、助けてくれてありがとな、妹紅」

「あ、ああ。どういたしまして。それじゃ、戻るか。歩けるか?」

「全然行けるから大丈夫」

 そんな会話を交わし、俺と妹紅は人間の里への帰路を急いだ。

 

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

 

 そこからは、本当に色々あった。

 まず寺子屋に顔を出すや否や慧音にくっそ怒られたり、母親さんからお礼めっちゃ言われたり、お礼にどうぞとおにぎり貰ったし、怪我の状況を医者さんに診てもらったりとまあ色々だ。因みに怪我に関しては大事には至っていないらしいが「暫く運動等はしない事」だそうだ。と言っても大体丸1日ぐらいで良いらしいが。ただ能力を使うのも身体に負担がかかって怪我が悪化する恐れがあるとの事だ。期間がまだ短いから良いけど能力使えないのは辛いなあ。

 それで、色々としているうちに夜になってしまったので妹紅に付き添ってもらい、博麗神社まで送ってもらった。一人で行けそうだったので一人で行こうとしたのだが、

「能力を使うと怪我が悪化するかもしれないなら実質使えないようなものじゃないか。その状態でアイツみたいな妖怪に出会ったらどうするつもりなんだ?」

と妹紅に言われ、ついて来てもらった、という訳だ。

 そして今、俺は妹紅と別れ博麗神社に帰って来た。

「ふーっ…疲れたなぁ…」

 本来なら只の買い物だけだったのだが、そこから母親さんの子供探しに発展し、そこからさらに妖怪に退治されかけたところを妹紅に救われるって事になったから相当予定外だったとも言える。しかしまあ、良い思い出になったんじゃないか、とも思う。

 さて、実は霊夢には買い物の品を置きに来た時に書き置きにて「遅くなるかもしれない」とだけ書いて戻っただけなので相当怒ってるかもしれない。まあ過ぎたことは仕方ないか、と思い中に入る襖に手を掛けて開ける。

「霊夢ー、ただいm」

「遅い!!!」

「わっ!五月蝿いなぁ…ごめんって」

「はあ…大体のことは紫から聞いてるわよ。さっさと今日は寝なさい。明日の境内の掃除も私がやっとくわ」

「まじ?じゃあお言葉に甘えて寝るとするか。」

 霊夢にしては珍しい事言うなー、なんて思いつつも霊夢に言われた通りさっさと風呂を沸かして寝る事にした。




 次回予告
 夏もいよいよ終わりそうになって来た。保存魔法陣の練習や新しいスペルカードを考えながら生活していた康介だったが、そこに慧音がやって来る。
 どうやら「里で行う夏祭りの手伝いをして欲しい」との事。断る理由も無かった為、手伝いを快く引き受けた康介。一体どうなるのやら。
次回「第二十二話 祭りと弾幕と一輪の花」(仮)

 いかがでしたでしょうか。
 割と冗談抜きで不定期投稿にするのは考えてます。別に不定期でも見てくれる方がいればそれで良いんですけどね。
 まあ話す事も無くなったのでまた次回お会いしましょう。うp主の折れない黒鉛筆でした。


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第二十二話 祭りと弾幕と一輪の花(前編)

 どうも、花なんか見るより団子が食べたいうp主の折れない黒鉛筆です。(フェスの団子派だとは言ってない)
 前の話を投稿してから約一ヶ月ちょっと、かなり遅くなりましたが第二十二話です。元々はこの話、一話でササっと完結させて秋に移行させてとある異変を書きたいのですが、書いているうちに気づけば8000字を超えてました。しかもこれで前編っていう。
 取り敢えず、久々の第二十二話をどうぞ。

p.s. 私の作品を定期的に見てくださってる方の中で「何で毎週更新してないん?」と思う方がもしいたならばお手数ですが私の活動報告の方を見ていただいて察して頂けると幸いです。

前回のあらすじ(書き忘れ
子供を探した
狼妖怪と戦って殺されそうになった
駆けつけた妹紅が狼妖怪を倒した

修正履歴
2018/04/30 前回のあらすじを書き忘れていたので修正


 あの迷子探しから数日が経過した。相変わらず俺は能力に慣れる為に霊夢に許可を取ってから博麗神社の境内にて色々練習させてもらっている。因みに今は【インクを操る程度の能力】の方、つまりスプラトゥーン(具体的に言うとスプラトゥーン2)にあるブキのうちの一つ、『スプラマニューバー』を持ち、マニューバーにしか出来ない動きである『スライド』を練習しているのだが…

「ここをこうして…行くぜ!スライド!」

「あんた、よく飽きないわねぇ…さっきからずっと失敗してるじゃない。ってあっ、また…」

 マニューバーの銃口と逆側にある噴出口みたいな所からからインクを噴射。その勢いで前転しようとするが、途中で勢いが無くなり前転は出来ず。境内の敷地内に仰向けに寝そべる形になった。

「よいしょっと……はあ、前転だけならまだ出来るんだが両手にブキを持ったままブキから出るインクの勢いだけで前転するのって相当難しいな…」

 動きに関しては親の顔より見た……という訳ではないがゲーム内の説明や実際のインクリングの動きを何回も見ていたので、ある程度は頭の中でイメージ出来ている感じだ。まあ成功はしてないが。

 因みにだが少し前パチュリーに教えてもらった魔法陣を使って力を貯める計画はスライドという無関係な事をしながらだが少しずつ進歩している…気がしている。あくまで気がしているだけだが。一応二個同時出しには成功したので次は試しに霊力を入れ、入れた霊力を取り出すというステップにこの前差し掛かったところだ。

「にしてもなあ…どうにかして上手くスライド出来ないものか…」

「ま、頑張ってみたら?努力が報われると良いわねー」

 霊夢がそう言って縁側の方へと向かっていった。当たり前だがやっぱり興味ないよなぁ。正直自分と同じ年頃の高校生の練習風景とか絶対需要無いし。

 …それにしてもここに来てから大体2ヶ月くらい、まだそんなには経ってない為霊夢のことはよく知らないが、どうやら霊夢は魔理沙曰く『努力をしない天才』というヤツらしい。なんでも、努力は報われないものだと思っているんだとか。それ故、博麗神社のおみくじには末吉が入っていない…って魔理沙が言ってた。まあ今はそんな事どうでも良いが。

「…さて、一度休憩でも挟んで頭を冷やすついでに色々考えるかなー」

 別にこのままスライドでグルグルしていても良いのだが、俺が一日に扱えるインクには限りがある。そのインクを節約する事に加え、少し頭をグルグルさせてコツを考えた方が効率的だろうと思い、人間の里へと続くあの長い階段へと向かう。一応念の為に言っておくが、縁側とかに戻るより距離的にこっちの方が早く座れる場所に着けると考えた結果こうなっただけなので、別に追い出されてるとかいう訳ではないのでご安心を。

 …ってあれ?俺誰に向かってこんなこと言ってんだ…?まあ良いか。取り敢えず階段のうちの一段に腰掛ける。

 さて、スライドを上手くする為にはどうすれば良いのやら…。取り敢えず今はインクリングがやっていたスライドを見よう見まねっぽくやっていたが正直よく考えてみると人間とインクリングでは体のつくりも違う。そもそもインクリングを現代におけるイカとするならあいつら軟体動物で俺は脊椎動物だし。そう考えるとインクリングと全く同じやり方でやっても無理な気がしてきたぞ…?

「やあ、康介じゃないか。丁度良かった。少し手伝って欲しい事があるんだが…」

 なら別のやり方ですれば良いのだが…生憎俺は人間ver.のスライドを知らない。というか知ってる筈が無い。そもそもそんな方法あるかすら分からない。となるとやはりインクリングver.のスライドを使えるようにするしかないのか…?

「……おーい、康介…?聞いてるかー?」

 いやいや、コツすら掴めてないこの状況でインクリングのスライドをやり続けたら一生かけても足りないな。となると自己流スライドを編み出すのが一番良い感じになるのか…?ただ自分で言っときながらだが自己流スライドってなんだ…?正直全く意味がわk

「康介!」

「うわぁっ!…って慧音じゃん、驚かすなよ…。ってもしかしなくてもまた気付かなかったやつか、すまん。」

 不意に大声を出されこちらも驚きで大声を出してしまった。そして目の前を向くと若干怒った顔の慧音と目線が合う。そして即座に察して謝った。いい加減考え過ぎると周りが見えなくなる癖直さないとな…

「はあ…考え事に夢中になるのは良いが流石に考え過ぎだぞ…そこまでして一体何を考えていたんだ?」

「まあ話すと長くなるから簡潔に纏めるが…自身の能力の活用法、だな。ところでこんな遠い所まで一体何の用だ?霊夢に用があるなら呼んでくるが」

 取り敢えず階段から立ち上がりつつ、少し気になった事を聞いてみる。大体こういう系統は霊夢に用があるってのがほとんどだから聞く必要も無いかもだが。すると慧音は溜息を少しついてから話し始めた。

「何も聞いてなかったんだな…まあ良いか。今日人間の里で『夏祭り』を開催するのだが、それの準備を手伝って欲しいんだ。男性であるお前にな。もしこれから用事とかがあれば無理はしなくても良いが…どうだ?手伝ってくれるか?」

 慧音の言葉を聞いて色々と驚いた。今日人間の里で夏祭りが開催される事も初耳だし、その準備に俺が参加して良いのも驚きだし。それはそうと、今日は特に予定が入ってる訳ではない。要するにずっと暇だった、ということだ。一応特訓はしていたが、正直後回しでも全然問題ない。そんな事より、普通に幻想郷の夏祭りが気になる。要するに行ってみよう!と言うわけだ。

「良いぜ。丁度暇だったしこれから予定も無いしな。」

「ありがとう。じゃあ早速──」

「あ、ちょっと待て。少し外出準備と外出許可取ってくる。ま、どうせオッケー出してくれるだろうけど。」

「ああ、分かった。じゃあ私はここで待ってるからな。」

「了解、すぐ行ってくるわ」

 そう言い残して俺は霊夢が居るであろう縁側に向かった。どれだけ経ったは知らないがどうせこの時間帯ならまだ縁側にいるでしょ…多分。のんびりのんきな昼下がりだし。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 やっぱりと言うか、それとも計算通りと言うべきか。案の定霊夢は縁側でお茶を飲んでいた。そして俺が事情を説明して人間の里に行く旨を伝えると「さっさと行って来たら?」と言われた。さらに霊夢から「もう私に伝えなくても勝手に何処かに行っても良い」との事を言われた。…もう少し言い方はどうにかならなかったのだろうか。まあそんな小さい事気にしてもどうにかなる訳ではないけど。

 サクッと外出準備を整え、慧音がいるであろうあの階段へと急ぐ。一応待たせてるしな。

「お待たせー、許可取れたから行けるぞ」

「分かった。それじゃ行くぞ」

 そう言って階段を下っていく慧音の後ろをついて行く。…そういえば、夏祭りと聞いて二つ返事で了承しちゃったが準備って一体どんなことをするんだ…?力仕事とかは正直面倒くさいからやりたくないのだが…十中八九力仕事だろうなぁ。そうじゃなきゃあの時『男性であるお前にな。』なんて言わないだろうし。一応俺を連れ出す為の都合が良い理由だったからそう言っただけ…とも考えられるけどその可能性を考え出したらキリが無いし慧音がそんな事するような人には見えないし。そう考えて、心の中でため息をつく。が、受けてしまったものは仕方がない。とことんやってやろうじゃないか!……正直こんな感じで開き直るとヤケクソみたいな感じがして嫌なんだけどな。

「そういえばな、最近妹紅が少し明るくなったような気がするんだ」

 しばらく歩いていると、慧音が歩きながらふと何か話し始めたので一度考えていた事を保留させ、こちらも慧音に置いていかれないように歩きつつ話の聞き手に回る。

「へえ、そうなのか?」

「ああ、この前妹紅と色々話したり私の仕事を手伝ったりしてもらったんだが、お前に色々と打ち明ける前より少しだけポジティブと言うか何と言うか、とにかく少し明るくなったような気がするんだ。多分だがお前が妹紅自身の秘密を受け入れてくれて少し気持ちが楽になったのかもしれないな。」

 慧音が雲一つない青空を見上げながらそう言った。あれ以来妹紅とは会っていない為どこがどう明るくなったのかは俺も知らないがあの時気になったことを聞いてしまって良かったんだな、と思う。やはり時には思い切った行動も必要なんだよな…

「だからな、康介」

「ん?何ぞ?」

 少し自身の世界に入りかけてたが慧音の話の中にふと俺の名前が出てきて我に返り、少し変な反応をしてしまった。正直恥ずかしいが、そんな事は御構い無しと言わんばかりに慧音は話を続ける。

「お前には妹紅と仲良くしてやってほしいんだ。あいつの人生にとってはほんの一瞬のような時間かもしれないが、そのほんの一瞬の時間を良い思い出にさせてやりたいんだ。…まあ、お前にこんな事を言わなくてもお前は仲良くしてくれるだろうけどな。」

「当たり前だろ?任せとけって。」

 そう言って右手の握り拳で自身の胸を軽く叩く。これは『任せとけ』の身振り手振りバージョン……と俺は勝手に捉えている。あくまで俺がそう捉えているだけであって慧音には伝わるかどうかは微妙だが。

「ああ、頼んだぞ。…と、ここからならあと少しで里に着くはずだ。」

「お、もうそんなに歩いてたのか…」

 辺りを見回してみると進行方向の遥か遠くにうっすらと人間の里の門が見える。歩きながらだったとはいえ、話をしていると時間はあっという間だなぁ。そういえば人間の里、もとい人里に行くのは迷子案件の時以来だっけ。慧音がいるから今度は迷わない…よな?

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「おお〜、祭りの準備って感じがしてる」

「だろ?今年はここで祭りのイベントの一つ、弾幕ごっこが行われるんだ。」

(…正直イベントとか銘打たなくても良い気がするのは気のせいだろうか。)

 今俺は慧音に連れられて里の中央辺りの広場に居る。その広場にはどこかの漫画で見たような地面より一段高いステージが。おそらくこの中で弾幕ごっこをするんだろうが…こんなステージとか用意しなくても普通に空中とかですれば良いのに、と思ってしまう。

「で、何故俺はここに連れてこられたんだ?まさかとは思うが、観光なんかじゃないだろうな?」

「当たり前じゃないか。ここ以外にも通りに出店が並んだりするのだが、実はとある屋台が少しばかり人手不足なんだ。その手伝いをして欲しくてお前を連れてきたんだ。」

「とある屋台…?」

「ああ、その屋台が焼き鳥屋なんだが少し手間取ってるみたいでな。準備だけで良い。だから、その屋台を手伝ってくれないか?」

 焼き鳥の屋台か…別に断る理由も無いのでやるつもりだが、なんかとんでもなく嫌な予感がするのは気のせいか…?いや、気のせいだろう。…そういう事にしておこう。そうしないと、いつまで経っても俺が心配しそうだ。

「おう、良いぜ。じゃあ、その焼き鳥の屋台まで案内してくれよ。」

「…ああ。じゃあついて来てくれ。」

 そう慧音が言い、広場から伸びている通りの一本へと歩き出した。当然俺もついて行く形で中央の広場を後にした。

 

 

 

 

 

 

数分後…

 

 

 

 

 

 

「確かこの辺だった筈だが…あっ、あったあった。」

「へー…これがこっちでの焼き鳥の屋台か。あまり外の世界と変わらないな。」

 様々な屋台が並び、夜への準備の為かバタバタしている通りの端に、その焼き鳥屋はあった。軽く中を覗いてみたが誰もいない。まだ準備中のようだ。…というか『準備を手伝って欲しい』と言われて来たのに準備終わってましたー、とかだったら流石に洒落にならん。

「ん?あいつ、何処行ったんだ?おそらくここに居るはずなんだが…」

 そう慧音が言いながら、辺りを見回している。多分あいつ=ここの焼き鳥屋台の店主(?)なんだろうけど…

「なあ慧音、少し気になったんだが、ここの焼き鳥屋台を切り盛りしてる人って誰なんだ?慧音がそいつに頼まれたから俺が連れてこられたんだよな?」

 先程から頭の片隅で気になっていた事を聞くと、慧音はこちらを向いて答えた。

「あ、ああ。友人の頼みだったので引き受けたんだが…私も仕事が残っているから早めにお前を引き渡してさっさと仕事に戻りたいんだがな…本当に何処行ったんだ…?」

 何故仕事が残っているのにこの人は人手を連れてくることを引き受けたんだろうか。慧音ってお人好しだったりするのか?そう思いながら俺も適当に辺りを見回していると、偶然反対方向を見ていた慧音が何かを見つけたような声を出した。おそらくここの店主、つまりは俺が今から手伝う相手だろう。多分。そう思って俺も慧音が向いていた方を向き…色々と納得した。

「あ、いたいた。全く、何処行ってたんだ?───妹紅」

 そこには、何処かで買い物をして来たのか、色々と荷物を持っている妹紅がいた。どうやら俺は、今から焼き鳥屋台店主でもある(らしい、というか今初めて知った)藤原妹紅の手伝いをするらしい。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「………よし。これでどうだ?」

「どれどれ…うん、良い感じに切れてるじゃないか。じゃ、そこに置いといてくれ。」

「あいよー」

 軽い応対をした後黙々と作業を続ける康介と私。正直最初こいつが来た時はどうしようかと頭を抱えかけたが、案外その性格に似合わず康介はそこそこ料理が出来るようだ。この準備を始める際、この前慧音に誘われて行った康介の歓迎会での料理が大体康介が作っていたと彼の口から聞かされた時は驚きだった。あの時はてっきり紅魔館のメイド長とやらが作ったかと思っていたが…まさか彼だったとはな。

 さて、問題の準備の方だが彼の手際が割と良かったお陰で本来の予定時間どころかそれより前に準備が終わりそうだ。久々に焼き鳥屋台を出店して欲しいと慧音に頼まれ、久々に出すと意気込んだは良いものの、まさか他人の手を借りる事になるとはね。それでも上手くいきそうで本当に良かった。一応慧音には『今暇で私の知り合いの人』と頼んだが…慧音が連れてきたのが康介で良かったと思える。

 気付けば陽がだいぶ西の方に傾いてきた。そろそろ私の方も準備が完了しそうだ。後は康介の鶏肉カットを待って、串に刺し、塩をふって焼くだけ。流石に焼き鳥を焼いたことの無い康介に任せるのもアレなので、彼には鶏肉カットだけを頼んだ。串に刺すやり方も知らないだろうし。

「…よし、鶏肉やり。…じゃなくて、鶏肉カット終了ー。」

「おお、ありがとな。お陰で予定時間に間に合いそうだ。」

 陽の傾き的に本来の予定時間には十分間に合いそうだ。私は康介の方を向いて、彼の手を握り感謝の意を伝えた。当の本人は少し照れ臭そうだ。

「別に良いってことよ。お陰で祭りが始まるまでの暇は潰せたしさ。ところで一つ聞きたいんだが…」

「ん、なんだ?」

「いや、大した事じゃないし俺が言うのもアレだが、この量で祭りが終わる辺りまで行けるのか?」

 康介が先程自分が切った鶏肉に目をやりながらそう言った。確かにこの量だと客足がどうとかは分からないが、繁盛した場合を考えるとおそらく中盤辺りまでしか持たないだろう。まあ焼き鳥のストックが切れてしまえば閉店するだけで良いし、そもそも良くて中盤で切れるように調整して買ってきたからな。ってん?あいつはイベントの事知らないのか?いや流石に知ってるか。

「いや、敢えてこの量なんだ。中盤辺りで少し屋台を閉めないといけないからさ。」

「へー、妹紅も色々大変なんだな。…じゃ、そろそろ行くかな。流石にこれ以上俺がここにいると邪魔になりそうだし」

「手伝ってくれてありがとな。…あ。そういえば、バイト代的なものはどうしよう」

 割と重要なことを忘れていた。知り合いであるとはいえ流石にタダで手伝ってもらったでは済ましたくない。かと言って特に今何か出来るかーと言っても特に出来そうにないし…そう考えていると、彼が口を開いた。

「あー、別に見返り求めて手伝った訳でも無いから別にこれと言ったものはいらない。ただ、どうしてもって言うんなら…祭りの終盤くらいにここに顔を出すからその時にもし焼き鳥が余っていたら、2本ほど割引きしてくれないか?一応手土産にさ。」

「…まあそれで良いか。じゃあまた後でな。私との約束、忘れるなよ?」

「あいよ、忘れるまで忘れないぜ」

 私が少し怖目に言うと、彼は少しニヤッとしてそう言い、焼き鳥屋台を去っていった。

 …あの言い方だとマジで忘れそうで心配だが。そう思いながらも、私は串に鶏肉を刺す作業を始めた。

 

 

 

 

 

 

数時間後…

 

 

 

 

 

 

「(mgmg…)これ美味いなあ…」

「ふふ、そう言って頂けると嬉しいです」

 陽が落ちて祭りが始まってから1時間くらい経っただろうか。俺は今たまたま見つけた空いてる屋台に入り、八目鰻の蒲焼きを食べている。そして目の前にいるやたら和服が似合うこの妖怪はミスティア・ローレライ。何でも夜雀の妖怪らしく人を鳥目、つまり夜盲症にする(らしい)妖怪だそうだ。あくまでそれは本来の能力では無いらしいが。

 祭りも中盤、今まで軽く食べ歩きしてきたがどこも良い感じに財布の中身に優しい店ばかりだった。まあそんな事はどうでも良いのだが今の俺には少し気になることが一つ。折角なので聞いてみる事にした。口の中にある物を飲み込み、ミスティアに一応敬語らしきもので聞いてみる。

「ところで、ミスティアさん」

「はい、何でしょう?」

「少し通りの方が寂しくないですか?」

 そう、ついさっきまで人混みと化していた通りが、少し人が減ったように思えるのだ。そして、ミスティアの屋台も人が少なめ。一体どういう事なんだろうか…

「この時間帯は今年だと広場の方で弾幕ごっこがあるんですよ。飛び入り参加オッケーの少し特殊な弾幕ごっこがね。皆そっちに行ってるんじゃないですか?」

 ミスティアがおでんコーナーに具材を追加しながらそう言った。確か昼間慧音に連れられて行ったところだっけな。やはりあのあまり意味が無さそうなステージの上で弾幕ごっこしてるのか。しかも飛び入り参加オッケーって…まあ弾幕ごっこって観客に回れば美しいものだしそっちに客が吸われるのも当然か。

「寧ろこういう時間帯に店に人が入ることの方が珍しいくらいなんですよ?ところで天ケ原さん、弾幕ごっこ見に行かないんですか?」

 ミスティアが菜箸でおでんを突っつきながらそう言ってきた。何故俺の名前を知ってるんだ、と思ったがそういえば文に取材されたんだっけか。反射的に湧いた疑問を頭の中で消化し、ついでに食べていた鰻を飲み込む。

「いや、そもそもこの時間帯に弾幕ごっこしてるって事初めて知ったからな。…まあもし仮に知ってたとしても参加しないけどね。俺弱いし。」

「天ケ原さんって弾幕ごっこ弱いんですね…てっきり異変解決に貢献したからには強いと思ってましたが」

「あんま期待はしないでくれや。幻想郷歴1ヶ月ほどだしな。…さて、ご馳走さん。お代ここに置いとくねー」

「はーい、またいらして下さいねー」

 代金をきっちりカウンターの上に置き、俺はミスティアの屋台を出た。少し賑わってるとはいえ、流石に序盤ほどの賑わいはない通りをのんびりと歩く。少し背伸びをして、これからどうするかでも考えるかな…

(さて、これからどうするかな。ミスティアの言ってた弾幕ごっこを見に行くのもアリだが…ぶっちゃけ何故か嫌な予感しかしない。かと言って丁度今軽くだが飯食ったとこだしな…少し歩いて腹を減らしつつ次の出店でも探すかな)

 適当に思考を巡らせながら普通に歩く。人混みの中だと人混みに思考を割かれあまり出来ない行為だが、あまり人の行き交いも激しくない今なら何か考えていても大丈夫だろう。多分。

「…………は?」

 普通に歩きながら色々と思考していたが、いきなり浮遊感に襲われ思考が止まる。言い訳っぽく言うなら、別のことを思考していたが故に少しだけ反応が遅れた。

 慌てて下を見る。下にはまるで落とし穴かと言わんばかりに気味悪い空間が広がっていた。いやまず風を起こして浮かばないと普通に落ちる…!そう思って風を起こそうとしたが、もうその時には既に俺の身体は気味悪い空間に落下していた。

「うわあああああ!?」

 辺りが謎の空間に包まれる。しかも、周りには誰のものか分からない目玉がたくさん浮いてこちらを見ているし…気味悪いなと思いながらも俺はひたすら落下していく。そういえばこの空間、どこかで見たような…?

 5秒と経たないうちに、ふと下に別の空間が見えてくる。何だあれは。と言うかあの色をした地面…いやステージを俺は今日の昼頃に見たぞ…?

 思考が回らないうちに俺は取り敢えずの風を起こし、下に見えた地面に上手いこと着地。気付けば周りはあの気味悪い空間ではなかった。というか周りに人々がたくさん。そして視線を前に向けるとそこには──

「お、まさかとは思ったが本当に連れて来てくれるとは。スキマ妖怪に言った甲斐があったな。」

 臨戦態勢らしきものを取っている妹紅がいた。……今度からは周りに気をつけて歩くことにしよう。ボーッとしていて気付いたら別の場所でしたー、みたいな事が起こる(今起こった)幻想郷、色々と怖い。まあそれを差し引いても楽しいから良いんだが。




次回予告
 謎の落とし穴に落ち、昼間広場で見たステージに(半ば強制的に)降り立った康介。どうやら妹紅と少しだけ特殊な弾幕ごっこをしないといけないらしい。「まあやるからには…」とやる気を少し入れ、妹紅との弾幕ごっこが、始まる…!
次回「第二十三話 祭りと弾幕と一輪の花(後編)」(仮)

 如何でしたでしょうか。おそらく次回は今回ほど文字数は多くならないかなーと思います。ただ、だからと言って次話の投稿が早まる、なんて事は大体無いと思うので気長に待っていてください。
 それではまた次回。うp主の折れない黒鉛筆でした。


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第二十三話 祭りと弾幕と一輪の花(後編)

 どうも、うp主の折れない黒鉛筆です。
 まず、投稿がやばいほど遅れてしまって申し訳ありませんでした…正直4月の忙しさを舐めていた。
 それでも何とか4月中に書き切った第二十三話ですが、 知らないうちに1万字超えてました。あれも入れたいこれも入れたいと欲張って、尚且つ(後編)と宣言したからには出来るだけこの話に収め切りたい、なんて考えつつ書いてた結果なのでどうか許してヒヤシンス。
 それでは、第二十三話をどうぞ。

p.s.前回のあらすじの書き方を確認しようと第二十二話を見たんですが、なんと前回のあらすじを書き忘れていたという…
すぐ書き加えますので少々お待ちを。

前回のあらすじ
妹紅の手伝いをした
ミスティアの屋台で八目鰻の蒲焼きを食べた
変な落とし穴にかかった


「お、まさかとは思ったが本当に連れて来てくれるとは。スキマ妖怪に言った甲斐があったな。」

「……唐突に色々と起こりすぎてて何が何だか良く分からん」

 今はあんな事思ってる暇なんかないな。うん。取り敢えず状況整理。多分この場所は見回した感じ、昼間見たあのステージで間違い無いと思う。周りに人が多くて騒がしく、昼間とは全く違う雰囲気だが。で、今から何をするかはまあ明白だから今は別に考えなくても良いか。そして俺を落としたあの落とし穴みたいなアレは…まあ妹紅の話からするにスキマ妖怪、つまり紫の仕業だろう。そうと決めつければあの落とし穴の既視感にも納得がいく。

「で、最低限の脳内整理は終わったか?」

「ああ、最低限は終わったぞ。…で、一応聞くが今から何するんだ?まさかとは思うがこのまま帰してくれるって訳では無いよな?」

 待ってくれている妹紅にも悪いので、取り敢えず思考を終わらせた旨を伝えダメ元で妹紅に聞いてみる。

「決まってるじゃないか。私と弾幕ごっこをするんだよ。少し特別なルールでな。」

 ですよね。思わずため息が出てしまう。多分今ここで帰ろうとしても帰れると思うが、どうせならやってみるしかないだろう。妹紅の弾幕ごっこの実力も気になってはいたし。

「…で、その特殊ルールってのは?」

「簡単なことさ。敗北条件が少し増える。従来の『一定回数被弾したら負け』と『指定されたスペルカードの枚数分を相手に攻略されたら負け』に加えて、『このステージから外に出たら負け』ってのが追加されるだけ。」

 つまりは某武道会みたいなルールが加わった弾幕ごっこって事だな。理解理解。

「で、被弾回数等はどうするんだ?一応お前の方が詳しいだろうからルール設定とかはお前に任せるが?」

 俺がそう言うと、妹紅は少し考える素振りを見せた。

「それじゃあ…被弾3回目で敗北、スペルカードは4枚でどうだ?」

 特に俺が不利になるような要素はない。スペルカードの方は前のハンデ付き魔理沙戦の時より一枚多いがまあ足りる。ただ、いかんせん弾幕ごっこに慣れていないため、被弾許容回数が少なめなのが怖い。まあ何とかなるか。特に何か賭けてる訳でもないし。

「ああ、それで良いぜ。……じゃあ、やるか。勝てると良いんだけどな…」

「私に勝てると思うなよ?…まあ、もし勝てたらあの焼き鳥タダにしてやっても良いが。」

「成る程ね…いや、別に良いや。」

「そうか、なら止めておくか。」

 軽く会話を交わしつつも、互いに集中していく。初撃をどうするか。そしてどう立ち回っていくか。

(妹紅の弾幕はほぼ見たことが無いからな…初見の対応力があれば何とかなりそうだ。まあそんなの俺にあるとは思えないけどな。対して俺は能力だけならバレてるか…若干不利か?)

 思考を巡らせる。俺と妹紅の間に緊迫した雰囲気が流れている。観客もその雰囲気に呑まれたのか静かになった。

 

 夏の夜の涼しい風が頬を撫で、静寂が辺りを包む。どれくらい経った…と言ってもおそらく5秒も経ってないだろう。

「行くぞ康介!弾幕ごっこ、開始だ!」

 そう言って空中に浮かび、弾幕を放ってきたのは妹紅。色とりどりの札を周囲に放つ。周りに放ったら観客の人たちも危ない…なんて、そんな悠長な事を考える時間はないか。俺に向かって飛んでくる札と札の隙間に身体をねじ込み、俺も負けじと弾幕を放つ。ただ、妹紅に比べると弾幕量に差がありすぎる。その分俺は弾幕を回避するのに精一杯になり、妹紅は俺のただでさえ少ない弾幕を簡単に回避する。つまり開幕ジリ貧。まずい。いつ被弾してもおかしくない。スペルカードで打開したいが…正直なところ打開出来そうなやつあったか?どれでも打開できそうな感じはあるけども。

「どうした康介、お前の力はそんなものか!?」

「うっせぇ!これでもそこそこ本気出してるんだからな!」

 言葉共にやや乱雑になりかけながらも弾幕を放ちつつ、今まで作ったスペルカードを思い返す。……うーん、無さそうだがまあ一度やるだけやってみるか。一度弾幕を放つのを止め、肩にかけたワンショルダーバッグに手を伸ばし適当に一枚のスペルカードを取り出す。念の為取り出したスペルカードの名前を確認。まあこれなら行けるか。俺はスペルカードを片手に前を向き、妹紅を視界に捉える。そして一呼吸置いてからスペルカードを掲げ、宣言。

「行くぞ!雨符「断続的な通り雨」!」

 そう宣言し、妹紅の頭上に雨雲に見立てた雲を作り出し、そこから弾幕を落とす。妹紅は一瞬真上から弾幕がやって来たのに驚いたように見えたが、難なく躱していく。やっぱりこのスペルカードだと色々欠けてる気がしてならない。ただ効果時間自体は長いから少しの足止めにはなりそうだ。実際スペルカードを宣言してから妹紅の弾幕量が少し減ったように思える。流石に避けられてるとは言えども頭上から飛んでくる弾幕なんてあまり避けた事無いだろうからそっちに気をとられるのは仕方がない事なのかもしれないけど。まあ取り敢えずその間に態勢を立て直すとしますか。

「中々、やるじゃないか!じゃあ私も行くぞ!時効「月のいはかさの呪い」!」

 態勢をある程度立て直した直後、妹紅が俺の弾幕を避けながらスペルカードを宣言してきた。一応態勢はある程度なら立て直しているので特に問題は無いが…俺のスペルカードを避けながら自身のスペルカードを宣言するって凄えな…。そう思っているうちに妹紅が線状に並んだ米粒っぽい弾と青いナイフのような弾を回転させながら発射させてきた。勿論当たる訳にはいかないので、米粒のような弾と弾の間を身体に当たらないようにしながら通り抜ける。青いナイフの弾は色々な方向にばら撒いてるだけっぽいから俺に飛んでくるやつだけ避ければ……なんかこの展開どこかでやったような。

 ふとデジャヴを感じ、後ろを振り向く。そこには、こちらにゆっくりと迫ってきている赤いナイフのような弾が。まじかよと思いつつも赤いナイフの弾を避ける。そしてすぐ前を向くと、そこには不敵に笑みを浮かべながら弾幕を発射し続けている妹紅の姿、そしてその手前に米粒みたいな弾、そして青ナイフの弾が大量にあった。もしかしなくても、これ全部避けないといけないっぽいな…

「お、赤いナイフに気付けるとはな。中々鋭いじゃないか。」

「まあな…」

 一応気付きはしたが、いつ被弾してもおかしくないくらいにキツい。米粒弾の間と間を潜り抜け、自分の方向に飛んでくる青ナイフの弾を避け、後ろを時々見て自身に飛んできている赤ナイフの弾を避ける。まだ弾速が遅いのが幸いだ。その幸いに救われたからか、何とか妹紅のスペルカードが時間切れになるまで避け切ることができた。ただキツい事には変わりない。全く勝ち筋が見えないし。ただ弾幕を放たないことには相手を被弾させられないので弾幕を放つ。

「まだまだ序盤の癖に疲れが見えてきたようだが?そのままだと私が勝ってしまうぞ?」

 妹紅が煽りっぽく言葉を発する。確かに最序盤の癖に俺は疲れてきている。それは事実。避けた事があまり無いような弾幕量、そもそも弾幕ごっこの経験の無さ、そして地面にいる事からの回避範囲の狭さがこの疲れを起こしている…気がする。多分。最後のは飛べばどうにでもなるから良いが。

 一応飛んでいない理由は無いわけではない。ただ飛行縛りでやるつもりも毛頭ない。だからと言って飛んでいる時にアレをしようものなら今の俺なら即落下、場合によっては弾幕ごっこどころじゃ済まなくなるかもしれないし。 ただ、不意程度ならつけるかもな…どうしたものか…

 …少し考えすぎたか、目の前に飛んできている札に気がつかなかった。この距離は……回避は出来ないと判断し、雲を展開しようとしたが雲を展開するより前に札が自身の右腕に当たってしまった。

「……っ!?いってぇ……」

 思わず被弾した箇所を抑える。一応流血なんて物騒なことは起こらないと思うからおそらく大丈夫な筈。ただ、場合によっては利き腕が使えなくなるかもなぁ。キツい。

「これで被弾1度目だな。さあ、一気に畳み掛けるぞ!不死「火の鳥 -鳳翼天翔-」!」

 色々思考を巡らせていると、妹紅がすぐさまスペルカードを宣言。それと同時に妹紅から赤い炎のような弾の塊がこちらに飛んでくる。それはまるで火の鳥、不死鳥のようだった。一瞬見惚れたが、流石に被弾する訳には行かないので塊自体に当たらないよう大きく右に避ける。炎弾の塊を避けた後で左側を見ると、炎弾の塊が通った後にはまた別の赤い弾が。なるほど、こういう感じか。

「余所見は禁物だぞ?」

 そう言う妹紅の声を聞き、慌てて前を向くと二つ目の炎弾の塊がこちらに飛んできている最中だった。後1秒もあれば普通に被弾する。更に、あの炎弾の塊の幅からして今から普通に避けても間に合わず被弾するだろうな。…って何冷静に考えてるんだか。

「クソがッ……!」

 咄嗟に自身の左側から突風を吹かせ、その突風の勢いで一気に何もない自身の右側に飛び込む。左足を炎弾が掠め、ついでに着地を失敗して右腕からステージに着地してしまったが、何とか第2波も避け切ることができた。急いで体勢を立て直し、妹紅の方にいくつか弾幕を放つ。だが、それも難なく妹紅に躱されてしまった。そして弾幕を躱した妹紅がこちらに向かって全方位弾と大量の炎弾の塊を放つ。流石にこの弾幕量ではこのまま、つまり地上移動だけでは避けきれない。ならどうするか?答えは簡単だ。妹紅と同じく空を飛べばいい。

 そう考えて、すぐに行動に移す。弾幕に被弾する前に上昇気流を起こし、自身を上昇させる。未だにメカニズムが分かっていないが飛べてるのだから今はどうでもいい。飛んでいる俺の足元を弾幕が通過していったのをチラ見し、同じ高さにいる妹紅の方を見る。相変わらずさっきと同じような弾幕が飛んできているので避けながら、だが。

「お、ようやく飛んだか。という事はつまり、『いんく』を使った攻撃を捨てたって事か。それで良かったのか?」

「良かったから飛んだんだよ。それに飛ぶのやめる事なんざいつでもできる。インク攻撃もまだ捨ててないぜ。」

 妹紅が弾幕を展開させながら話しかけてきたので適当に返しておく。一応こちらとしてもやりたい事があるので悟られないように少しずつ妹紅より上に上昇する。

 妹紅は弾幕ごっこが相当上手い。俺なんかが真正面から立ち向かっても俺に勝ち目はない。今も妹紅の弾幕を避けつつ余裕があれば弾幕を放ってはいる。が、こちらの弾幕は全くもって掠りやしない。どんだけ上手いんだあいつ。

 

 それでも少しずつ上に上がりながら妹紅の弾幕を躱していると、妹紅が炎弾の塊を発射するのを止めた。どうやら時間切れらしい。

「まさか私のスペルカードを一枚だけとはいえ被弾せずに避け切るとはね……中々やるじゃないか、康介。」

「どういたしまして…っと!」

 会話を交わしながら弾幕を互いに飛ばし合う。おそらくこれを観客視点で見ると綺麗なんだろうな、なんて思いつつも少しずつ上に向かう。この上に向かう行為もバレバレだろうけど。

「で、お前はどうして上に向かってるんだ?バレバレだぞ?」

 妹紅が俺を見上げ、弾幕を放ちながらそう言ってくる。まあ予想通りバレバレと。ただもう充分なくらいの高さには来れた。本来なら一回被弾させた後にこれをしたかったのだが…仕方ない。まあ初見殺し程度にはなるだろう。俺は一回落ち着く為に一息つき、そして…とあるスペルカードを宣言。

「…「スペシャルフルチャージ」!」

 そのスペルカードを宣言した刹那、自身を浮かせていた上昇気流が無くなり、重力に従い落下。観客がざわめく。妹紅の顔は遠くてよく見れないが、おそらく驚いてる事だろう。不意を突くには充分だ。取り敢えず落ち着いてとあるブキを持ち、頭から落下しながら妹紅の方を向く。

 チャンスは一回きり。それに最後まで成功させられるかがまだ分からない。ただ成功すれば多くて二回分の被弾になる筈だ。ただやった事はない、つまりぶっつけ本番なのだが。

 そう考えている間にも、俺の身体は下へと落下していく。そろそろだと思い、ブキを構える。妹紅の位置を確認。先程からずっと動いてない。射程も見た感じ届く。そして…妹紅の目の前を落下して通過するその瞬間、俺はそのブキ…『ホットブラスター』のトリガーを引き、その直後にとあるスペルカードを宣言した。

「スペシャル「スーパーチャクチ」っ!」

 そのスペルカードを宣言した直後、俺の身体が少し上へと浮き上がる。そして右腕を振り被って力を溜めつつ、チラリと妹紅の方を見る。どうやらホットブラスターの弾を受けたらしく、腕でガードをした直後だった。その証拠に、腕に青いインクの跡が付いているのが見える。

 反射的に妹紅が一発弾を放ち、俺の身体にヒットする。予想外の痛さに思わず顔をしかめるが、ここまで来たらゴリ押すしかない。

「これで…どうだっ!」

 そう叫び、右腕を突き出して地面に向かって急降下。地面に右手を叩きつけ、インクの大爆発を起こす。右腕が尋常じゃないくらい痛いがまあ仕方ない。すぐさまインクがかかった地面の上に立ち上がり、妹紅の方を見上げる。妹紅は腕にかかった青インクを払いのけながら弾幕を飛ばしてきた。マジかよ、と思いつつも右へ左へと避ける。

「今のは少し驚いたな。まさか一瞬で二被弾持っていかれるとは」

「どういたしまして……っと、あぶね」

 会話しながら弾幕を避け続け、こちらも弾幕を放つ。足元が自インクと化したので動きやすい…訳ではないので先程と同じ状況、下手したらさっきの状況より悪化しているかもしれない。というのも、今のでこちらはスペルカードを3枚使用。4枚目を避け切られると負けになってしまう為迂闊にスペルカードを宣言できない。対して妹紅は後二枚…まだ余裕がある。それに加え、今の初見殺し気味な二連続被弾を取ったからといって先程からの不利状況を打開できた訳ではない。要するにまだまだ相当キツい状況だ、という事だ。

「さて、そろそろ決着を付けようか!滅罪「正直者の死」!」

 妹紅が3枚目のスペルカードを宣言。そして妹紅の左右から俺の左右へとまるで線が引かれるかのように青い弾幕が並ぶ。試しに少し左に動いてみると、ライン状に並んだ弾幕も左へと動いた。どうやらこれは俺を敢えて外して飛んでくる弾のようだ。そう確認した刹那、妹紅の方からさらに追加の赤い弾幕が飛んでくる。取り敢えず自身に向かって飛んできている弾幕があったので、右に少し移動して弾幕を避ける。そして、自身の右側にレーザーが出現。左へと薙ぎ払うようにしながらこちら側に向かってくる。避ける為に慌てて左側を見ると、ライン状に配置された先程の弾幕が。早く左へと移動しないとレーザーに轢かれるが、下手に移動しても左側に展開されているこの弾幕に被弾するだけ。

「マジで言ってるかそれ…はあっ!」

 頃合いを見計らい、左側に展開されていた弾幕と弾幕の隙間を走って通過。右側を見る。まだレーザーは追ってきている。左側には……またあの赤いライン状の弾幕が。うんざりしている時間はない。また頃合いを見計らい、隙間を通って通過。

「よし、これで……」

 右側を振り向く。頃合いを見計らいすぎたせいか、レーザーがすぐそこまで迫ってきていた。急いで左に抜けようにも、赤い弾幕とのタイミングが合わない。上に飛んで避けようとしたが、今から上昇気流出しているようじゃ絶対間に合わない。スペルカードで対抗しようにもこの状況からたった一枚で妹紅の被弾を取れるスペルカードを俺は持っていない。今から作る事も考えたが今からササっと作れるほど手際は良くない。そもそも間に合わない。

「……詰み、か。」

 やっぱ弾幕ごっこ手慣れてる人は違ったな。上手い。この一言に尽きる。俺も妹紅達に追いつけるようもっと練習しないとな。

 はあ、とため息をつき俺は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、いててて…」

 ため息を一つついて、先程の弾幕ごっこで被弾した箇所をチラリと見つつ、静まり返った通りをゆっくりと歩く。あの後、案の定俺はレーザーに被弾し、妹紅の勝ちとなって俺と妹紅の弾幕ごっこは幕を閉じた。

 祭りも終盤になり、先程弾幕ごっこをしたステージで様々な催しが行われているからか辺りを見回しても人や妖怪は殆ど見当たらない。そんな通りを何故俺が歩いているのか、と言えばただ一つ。妹紅の店へと向かう為だ。

 あの弾幕ごっこの後、妹紅に焼き鳥が売れ残っているかをこっそり聞いてみた。すると、残っていると妹紅が言ったので今こうしてあの屋台へと向かっている、という訳だ。

「確かこの辺……お、あったあった。」

 暗がりの中に手伝いをした場所である妹紅の屋台が浮かんでくる。光はついておらず、もう閉店したという雰囲気を醸し出している。そういえば妹紅に肝心の尋ねる時間を言っていなかったな、なんて思いながら妹紅の屋台へと歩みを進める。

「ようやく来たな、康介。」

 屋台がもう目と鼻の先にある。そんな時に不意に屋台の方から声を掛けられた。

「よっ、妹紅。約束通り焼き鳥、買いに来たぜ。」

 そう言って屋台に設置されている椅子に腰掛け、辺りを見回す。屋台の周りこそは夜のため暗いが、そこそこ良い雰囲気なのは暗くても分かる。そして目の前には妹紅の姿。

「取り敢えず……4本余ってるか?持ち帰りで頼みたいんだが…」

「4本…?まあ良いか。了解。」

 疑問を感じた口調でそう言った妹紅だったが、作業を始める。その間俺は寝ないようにしつつ焼き鳥が出来るのを待つ。流石にこんな場所で寝たりはしないだろうが。

 焼き鳥の焼ける音と良い匂いが静寂に包まれていた空間を支配する。暫くの間二人とも口を開くことは無かったが、先に口を開いたのは焼き鳥を焼いている最中の妹紅だった。

「そういえばお前、弾幕ごっこ中々強いよな。あのインク攻撃で二連続被弾を取られた時は本当に驚いた。本来ならあれも避けられそうな気がしたんだがな…間に合わなかった。」

「逆に最初だと避けられない弾幕を放つことでしか被弾を取れないからな、俺は。だからそんなに上手くはないぞ」

 思い返してみれば、魔理沙とハンデ付きで戦った時もそう。霊夢と共に咲夜と戦ったときも……あれは不意打ちに入るのか?まあ良いか。その時もそうだ。俺が今までに少ないながらも取った被弾は不意打ちだったり初見殺しだったりと、全部実力で決めていないようなものだ。不意打ちや初見殺しをしっかり決めるのも実力のうちなのかもしれないが、それらは出来て当たり前。今の俺にはTPSやFPSで言う所の『対面力』が足りていないように思える。相手と対面した状況下で互いに弾幕を放ち、相手の弾幕を避けつつ自身の弾幕を当てる。そんな事が出来ていない。正直妹紅や魔理沙のような弾幕ごっこが上手い相手にはそういう事は出来ないのかもしれないが。

 思考を一通り終え、ふう、と息をつく。すると、妹紅が焼き鳥を焼き終えたらしく、トレーに入れてくれている所だった。

「あいよ、焼き鳥4本お待ち。」

 そう言って妹紅がトレーの入った袋を差し出す。

「お、ありがとな。じゃあこれ、お代な。」

 そう言って俺は焼き鳥4本分の代金を妹紅に渡し、袋を受け取ってカウンターの上に置き、その中から焼き鳥が入ったトレーを取り出す。

「さてと……持ち帰りと言ったが、折角だしここで一本食べるか。ほら、妹紅も食べなって。」

 そう言ってトレーを開き、焼き鳥を一本妹紅の方に差し出す。

「良いのか?なら遠慮なく。」

 妹紅が焼き鳥を受け取ったところで、俺ももう一本焼き鳥を取り出し、焼き鳥を眺める。如何にも美味しそうな見た目だ。

「それじゃ、いただきます。」

 そう言って焼き鳥に息を吹きかけて少しだけ冷まし、口の中に入れる。

「……!美味い!」

「ふふ、そりゃどうも。何せ大分前からやらせてもらってるからな。」

 …妹紅の言う『大分前から』は一味違う。そんな気がした。そんなくだらない事を考えながら焼き鳥を食べていると、いきなり後ろの方で何かが爆発する音が聞こえた。何だと思い後ろを見る。

「……ああ、成る程。夏祭りって言ったらこれか。」

「おお、今年も綺麗だな。」

 振り向いて視界に入った夜空に打ち上がっていたのは、花火。まさか幻想郷で花火を見られる事になるとは。正直考えてなかった。

「なあ妹紅、これって一体誰がやってるんだ?」

「山の河童達だよ。あいつら、ああいう系のやつに滅法強いからな。」

 妹紅が焼き鳥を頬張りながらそう答える。それを聞いている合間にも花火は一発、また一発と打ち上がっていく。ふと河童が火薬を扱って大丈夫なのだろうかという疑問が頭をよぎったが、そんな事はどうでも良いと割り切った。今はこの夏の象徴のような幻想的な風景を楽しもう。

 ──幻想郷の夜空に咲いた、色とりどりの花火を。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「……よっと。ふぅ、着いた着いた。」

 スタッと境内の石畳に着地する。あの花火を見終わった後、俺は妹紅と別れ真っ直ぐ博麗神社へと飛んだ。そのお陰か少し早く着くことができた。辺りを見回してみると、少しだけ霧は出ているような気もするがおそらく気のせいだろう。取り敢えず一刻も早く風呂に入って寝たい。そう思い、俺は神社の住居スペースへと向かう。

「ほう……良い匂いがするねえ。この匂いは…焼き鳥か。」

 何の前触れもなく、いきなり何処からか声がした。思わず身構える。紫の仕業かと思ったが、それにしては声質が違いすぎる。

「………誰?」

「そんなに身構えなくても良いじゃないか。ほら、私はここに居るよ。」

 そんな声が何処からか聞こえると、辺りにかかっていた霧が一点、俺の目の前に集まり、人の形となって俺の目の前に現れる。

「はじめまして…かな?私は伊吹萃香。見ての通り、鬼さ。」

「…はじめまして。俺の名前は天ケ原康介。幻想郷から帰れなくなった只の外来人だ。」

 萃香と名乗った少女は、薄い茶色のロングヘアーに、その頭の左右から身長と不釣り合いに長くねじれた角が二本生えている事が鬼である事を物語っていた。服装こそはよく見えないものの、頭に大きな赤のリボンをつけ、左の角に青のリボンを巻いている事はかろうじて分かった。そして片手には瓢箪のようなものが。そして酒臭い。

「康介ね、よろしく。取り敢えず一回その臨戦態勢を解こうか?私は別に戦いたくて出てきた訳じゃないんだ。それに……鬼と戦ったらどうなるか分かってるよね?」

 後半の気迫が詰まった言葉もあってか、取り敢えず俺は臨戦態勢を解く。それを見て、うんうんと頷いた萃香。

「それじゃあ、何故今出てきたんだ?」

「うーん、少しお前に色々話したい事があるんだよね。取り敢えず縁側の方へ行こうか。大丈夫。霊夢はまだ帰ってきてないよ。あ、後鬼だからって変に気を使わなくて良いからね」

 そう言って縁側の方へと向かう萃香の後をついていく事にした。

 

「よいしょっと。隣座りなよ、康介。」

「じゃあ遠慮なく。」

 萃香に促され、俺も縁側へと腰掛ける。すっかり静かになった夏の夜特有の空気が辺りを包み込んでいる。そんな中、萃香が口を開いた。

「さてと、何から話そうかね……そうだ、その焼き鳥貰って良いかな?酒のつまみに合いそうだ。」

「ああ、一本だけな。」

 そう言って自身の右側に置いていた袋の中から焼き鳥が入ったトレーを取り出し、萃香に渡す。萃香はトレーを開き、その中から一本焼き鳥を取ると、トレーを俺に返してきたので受け取る。本当は霊夢と俺の分だったんだが…まあ良いか、霊夢にラスト一本をあげるとしよう。

「ありがとうね。さてと……確かお酒は飲めないんだよね?外の法律ってやつでさ」

「よく知ってるな。そうだ。俺のいた世界では20歳未満はお酒を飲んではいけないって決まりなんだ。」

「なら仕方ない。盃を交わすのは当分先か…はあ。」

 心なしか萃香が落ち込んでいるように見えるのだが気のせいだろうか?萃香は瓢箪を口につけ何かを飲むと、瓢箪を口から離し、話を再開した。

「さてと、話を戻そうか。最近、何か異変を感じないかい?」

「異変…?それってこの前に起こった紅い霧の異変のことか?」

「違う違う。最近、力が存分に出しきれてない気がするんだ。私や霊夢、魔理沙を始めとした幻想郷で強いと有名な奴らがさ。それでお前はこの考えを聞いてどう思うのかな、って。」

 萃香の言葉を聞き、少し思考してみる事にした。俺から見た感じでは皆強そうに見えるし実際強いが、確かに言われてみれば所々引っかかるところはあるかもしれない。弾幕ごっこ初心者の俺がハンデ付きとはいえ魔理沙に勝てた事や、霊夢と魔理沙がフランに倒される寸前まで持っていかれている事。さらに、今日の妹紅戦で初見殺しを放ったが、あの後妹紅は「あの初見殺しは避け切れる気がしたが無理だった」と言っていた。俺は本来の皆の強さを知らないのでどうとも言えないが、萃香の言う通りなのかもしれない。

「確かに、言われてみれば少し引っかかるところはあるな…正直、実際の強さを知らない俺が言うのもどうかと思うけどな。」

「成る程ね。ありがとう。で、お前はどうなんだい?」

「俺…か?別に不調とかはあまり感じていないけどな…おそらく、だが。」

「へー。そうなのかい。……これで聞きたかったことは全部だね。答えてくれてありがとう。」

 萃香が縁側から立ち上がり、俺にお辞儀をしてくれる。俺も一応お辞儀を返しておいた。

「最後に一つだけ。何かあったら、すぐ戻ってこいよ。」

「……え?おい、それってどういう…はぁ、逃げられた。」

 萃香の意味深な言葉を問いただそうとしたが、もう既に萃香はどこかへ行ってしまっていた。そして縁側に俺一人が取り残される。

「どういう意味なんだ、今のは…」

 『何かあったら、すぐ戻ってこいよ。』その言葉が頭の中でずっと繰り返されていた。

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

 不気味な空間に佇む一人の妖怪。その空間に、妖怪が一人、入ってきた。

「…どうだったかしら?萃香。」

「ああ、まあ話してて嘘をつくようなやつじゃないって事は分かったよ。後あいつが不調を感じていないことも。」

「霊夢にも聞いてみたけれど、霊夢も特に不調は感じていなかったわ。ただ、フランドールにあと一歩のところで殺される所まで追い詰められたのは気になるわね…」

「なあ、それなんだが、単にそのフランドールって奴が強かったっていう説はないのか?」

「それについては無いと考えてるわ。霊夢は相当強いはずですし。」

「はずってなんだ…まあ良いか。つまり、今のところ力の衰えを感じているのは私と紫のような"幻想郷で長く生きてきた妖怪"くらいしか感じていない、ということか。」

「殆どそうね。ただ、あいつはどうかしら?あいつは言ってみればこの幻想郷にとってイレギュラーな存在。ここに来ることを私と萃香、そしてあの吸血鬼ぐらいしか知っていなかった。もしこの力の衰えが人為的なもので、その力の衰えを起こしている犯人があいつの存在を認知していなかったら…?」

「成る程な。でも、この異変の為にあいつを連れてきた訳じゃ無いんだろう?」

「…そうね。あの会話を見ていたけれど、霊夢にしては珍しく勘が外れていたわね。」

「で、その本来の目的は達成されたのか?」

「ええ、見ていた感じだとある程度は達成できたんじゃないかしら。」

「……じゃあ、前から話してたアレをするのか?」

「……仕方がないのよ。この異変の犯人があいつに気づくのも時間の問題。ただ、普通に実行する訳ではないわ。少し細工を加える。その為にあの言葉を言ったんでしょう?萃香。」

「…盗み聞きは良くないよ。私が言えた事ではないけど。」

「ふふふ…この作戦、成功するも失敗するもあいつ次第。場合によっては、幻想郷が滅ぶかもしれない。それでも…こうするしか無いのは残念なものね。」

 妖怪が何もない不気味な空間を見つめながら、残念そうにそう言った。




次回予告
 夏が過ぎ、秋がやってきた。そんな中、「いい加減魔法陣のやつとかスライドとかを完成させないと」と焦る康介。まずは魔法陣から取り掛かることにした。
 自身でやってみたり、紅魔館のパチュリーにやり方を教わったりしながら動く裏で、康介も気づいていない計画が少しずつ動き出していた…
次回「第三章 第二十四話「秋一番の魔法陣」(仮)

 如何でしたでしょうか。
 次回から第三章に突入します。しかし、章の名前を言ってしまうと完全なネタバレになってしまうので暫くは伏せておくことにします。明かしても良いなって頃に章の名前を付けます。一応章の名前は決まっているので。
 それではこの辺で。うp主の折れない黒鉛筆でした。次回は5月中に上げられたら良いなぁ。


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