とある姉妹の艦隊日和 (紫音提督)
しおりを挟む

とある姉妹の艦隊日和1

簡単な紹介とオリジナル部分
紫音提督 この作品の主人公
不知火 紫音提督の妹


第1章『姉妹の再開』

 

「今日からここが私の職場ですか…」

 

 第99鎮守府の前で電話で話している少女の姿があった、その少女は長い蒼色の髪を白色のいわゆる提督帽で抑えていた。年はまだ16ほどに見える。

 

「あなたも無理を言いますね」

 

『そんなことはないよ、きちんと君の適正を見て頼んでいる』

 

「ええまあ、そうなんでしょうけどね…でも私に艦隊の指揮を取るなんて出来るでしょうか?士官学校も出てないんですよ?」

 

少女はボヤきながらもその表情に不安や心配はなかった、相手もそれがわかったのだろう。

 

『その割には結構楽しみにしていたじゃないか、何だったかな妹がいるんだっけ?』

 

「はい、3年ぶりですね……楽しみです………わかりました、何とかしてみます」

 

『うん、頼んだよ?なにかあったら頼ってくれ』

 

「はい、ありがとうございます…それじゃあ失礼します」

 

 ピッ!

 

「それじゃあ、提督着任しますか!」[newpage]

 

 

 一方提督室ではちょっとした事件が起きていた……

 

「ちょっと!どうするのよ!?こんなに散らかしっぱなしで!」

 

 声を荒げているのは第6駆逐隊の雷であった…

 

「仕方ないじゃない!」

 

「不知火に落ち度はありません」

 

 怒られているのは陽炎型の二人であった……

 

「こんなに散らかってたら新しい司令官を迎えられないじゃない!」

 

 ドアに手を掛け、開けようとすると……

 

 ガチャリ……

 

「うわ!」

 

「え…?」

 

 不知火は入ってきた人物に避けようとはするがぶつかってしまいー

 

「キャッ…」

 

 ゴン!!

 

 鈍い音が響いた……

 

「だ、大丈夫ですか…?」

 

「い、痛た…うん、大丈夫だよそっちこそ大丈夫?」

 

「何してるのよ不知火!謝りなよ…?」

 

 不知火は入ってきた人物を見て固まっているようだった…

 

「ね、姉さん!?」

 

「ん?…ああ、ひさしぶりだね『夏恋』いや、今は不知火だっけ」

 

「な、なんで3年前にいなくなった姉さんが……?」

 

 不知火はボーッといま目の前にいる姉の事が信じられないようだった。

 

「あの後ちょっとした事件に巻き込まれちゃってね…施設から出れたのも半年前位なんだよね」

 

「もしかして姉さんが…?」

 

「うん、新しいここの司令官だよ。事件から救ってもらった三笠さんのツテでね」

 

 ガバッ…

 

「心配しました……ひさしぶりです、姉さん……」

 

「………うん、ただいま…」

 

ー30分後ー

 

そこには冷静になって恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にした不知火とそれを眺める3人の姿があった。

 

「いやーまさか提督が不知火のお姉さんだったとはねー」

 

「不知火、可愛かったわよ!」

 

「あはは、3年前の不知火は私のことを追いかけてくる可愛い娘だったのよ?おねーちゃーんって」

 

「くっ………」

 

「でもホントに驚いたなー提督が不知火のお姉さんだったのもだけどこんなに綺麗な女の子だったとはね」

 

「あははーそれじゃあ改めまして、第99鎮守府に着任しました紫音です、みんなよろしくね?」

 

「よろしくね!提督!私は陽炎型のネームシップの陽炎だよ!ほら不知火もすねてないで提督に挨拶しよ?」

 

「………拗ねてなんかいませんが、わかりました…陽炎型2番艦陽炎です。よろしくお願いします提督」

 

「雷よ!かみなりじゃないわ!よろしくね司令官!」

 

 パラパラと資料を捲りデータを確認していく。

 

「うん、みんなよろしく。ところでここにはもう二人艦娘がいるみたいだけど…?その娘達は?」

 

「島風ちゃんと長門さんのことね、島風ちゃんは遠征に、長門さんは他鎮守府の人と任務に出ているわよ」

 

「了解、それじゃあ質問タイム始めましょうか?知りたい事がある娘もいるみたいだし?」

 

「………姉さんは事件に巻き込まれたって言ってたけど3年前に一体なにが……?」

 

「それじゃあそれからにしようか、あれは今から36万…いや」

 

「巫山戯ないでください」

 

 不知火がピシャリと紫音のおふざけを辞めるよう言ってくる。

 

「ごめんごめん、でも少しふざけてないと語りにくい所もあるからさ。ちょっとだけ許して」

 

「………」

 

 周りが静かになっていく…

 

「まあ言っておいてなんだけど大丈夫、いまは幸せだし、なにがあったかはもう気にしてないから。それじゃあ少し長くなっちゃうけどいい?」

 

「……わかりました」

 

「みんなは?」

 

 みんなが頷いてくれている。

(それじゃあ話そうか、地獄みたいだったあの1年間の事を……)

 

「ー始まりは唐突だったんだ、まだ私が艦娘とか鎮守府とか知らなかった頃」




2000文字程度で遅筆でごめんなさい
まだこのサイトの仕様に慣れてないんです


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

とある姉妹の艦隊日和2

《過去を騙る》
とある姉妹の艦隊日和2話です
胸糞注意です。


       ー3年前ー

 

 雨の中走っている少女がいた、その少女は傘を忘れたのか雨具を使っていなかった。

 

「は〜……ツイてないなぁ……こんな雨が降るなんて聞いてないよ…」

 

 朝は1日晴れると言っていた天気予報が恨めしい。

 

「今日は友達とどっか行って遊ぼうと思ってたんだけどなあ……まあ流石にもう何かあるとは思いたくないなあ……」

 

 今日は1日厄日だったのだろう。遅刻し、日直は手伝わされ、雨にも降られた。

 

「もう帰って寝ようかな……」

 

 少女は黒髪に付いた雫を落としながらそう独り言を付いていた、すると

 

「すいません、立花紫音さん…でしょうか」

 

 黒服に変な帽子を被った人が声をかけてきた。

 

(なんだろう…?変な帽子被ってるけど…まるで軍じ…)

 

「あの…」

 

「は、はい…私が立花ですけど…」

 

 私がそうだと答えると黒服は電話で誰かと話を始めた。

 

「…わかりました、はい、必ず」

 

「あ、あの…何なんでしょうか…」

 

「………貴女には私達についてきてもらいます」

 

「えっ…それってどういうことで…」

 

 ガバッ!、男はハンカチで私の口を押さえてくる。

 

「モガっ!た、助け……」

 

 ーそして私の意識は落ちていった。

 

        ー???ー

 

「ここは………?」

 

 目が覚めると何か仰々しい機械が並んでいる施設の様な所だった。

 

「な、なに…ここ?それに……」

 

 それに私の四肢は鎖で繋がれていた、まるでテレビの

中のキャラの様に……

 

「どうなって……」

 

 声が聞こえてきた、男の声だった。

 

「お目覚めか、モルモット」

 

「………誰」

 

私は敵意を隠さずに目の前の人物が誰なのかを聞いた。

 

「……海軍所属、元帥の神原だ、覚えておけ『モルモット』」

 

 相手は私を見下してあくまでモルモットとして扱うつもりのようだった。

 

 それにしても海軍の元帥…?元帥ってのがどんな扱いかは知らないけどこんなことをできるはずがない……

 

「なんで私を攫ったりしたの」

 

「深海棲艦に対抗する兵器を創る為さ!」

 

「深海棲艦…アンタは何を言ってるの…?」

 

「チッ!五月蝿いなあ…お前は自分の立場がわかってないのか?」

 

 ガスッ!私の腹に蹴りが入る。

 

「ゲホッ!」

 

「お前はどうせ実験用のモルモットなんだよ!静かにしてろよ!」

 

 ガスッ!ガスッ!ガスッ!

 

 何発も何発も蹴りを喰らわしてくる。男は私の頭を踏みながらも気が晴れたのかこちらの質問に答える。

 

「まあいいや、深海棲艦ってのは海からやってくるゴミの事さ!そして君は艦娘と言う名の生きた兵器になるのさ!」

 

「グアッ……」

 

 声が出ない、なんだ、なんでそれで私がこんな目に遭うんだ……理解できない…

 

 男はそんな私を見て何が言いたいのかわかったらしく。

 

「ああ、君が兵器になる理由か?それなら簡単さ!君は『艦魂』を持つ事のできるキャパシティが普通じゃあなくてね、普通なら艦魂を持つ事なんてできないしそれが出来るのが艦娘なんだけどねえ、アレですら1つ持つだけだ。けどお前は違ぁう!全ての艦魂と深海棲艦の艦魂すらをも受け止められる身体の持ち主だからさ!………まあ君の精神は壊れて無くなるだろうけどね?」

 

「う…うわぁ…………い、嫌だ…嫌だよぉ!」

 私の精神は壊れてしまった、自分が無くなると聞かされて相手に反抗出来るほど私は強くなかったから。

 

         ー現在ー

 

 誰も口を開かない、それもそうだろうね…私が攫われた話も驚いたのかもしれないけど問題はその後……艦魂を複数持っていると言ったからだよね…

 

 元々人間で艦魂を持ち、その教育を受けている彼女達からすれば私がこうやって生きているのが奇跡なんだもんね…

 

「みんな、みんなは艦魂については知ってるよね?」

 青い顔だった彼女達だったけど頷いてくれた。

 

「私達の力の源、私達の魂の前世…私達は彼女達の残した魂を使って身体能力や艦装を使う事が出来る……」

 

 陽炎が答えてくれた。

「うん、そしてそれは同時に艦の記憶でもある、死んだ仲間達、沈んだ思い出そんな黒い記憶の吹き溜まりでもある。そしてそれを持つためには身体に適合させなきゃいけない」

 

 そう元々、艦魂は艦の怨念なのだ。それを上手く使いこなす技術が開発され怨念が具現化した深海棲艦に対抗している。

 

「……なんで姉さんは『あんな記憶』を受け止められたの……?」

 

 彼女達もあの黒い記憶は見ている、だからこそわからない。なぜあの記憶を見続けて精神が無事でいられたのか。

 

「……じゃあ次はその事についても語るよ」

 

 騙ろう、あの記憶の事も、今の記憶も



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

とある姉妹の艦隊日和3

『希望の光』
今回も紫音提督の過去編です。今回で過去編は終わりかなー?
それじゃあ見ていってくれると喜びます。


 「それじゃあ次はどんな改造をされたのか話していこうか」

 

 私は怯えているのか少し肩が震えていた

 

 ああ、嫌な時間だったなあ…

 

 

       ー時は戻り3年前ー

 

「君にはこちらに来てもらおう」

 

 神原は私を引っ張りある装置の前で鎖に掛け自由を奪った。

 

「この装置は一世代前の艦魂融合装置でね、今ではただの骨董品だがこれは無理矢理に艦魂を植え付けることのできる優れものさ!」

 

「何をする気…ですか…」

 

 私は蹴られた腹を気にしながら何をする気なのかを神原に聞いた。

 

「君には艦装を扱う為の兵器になってもらう、駆逐艦、軽巡、戦艦や空母果ては深海棲艦の力を振るうことのできる私の作品にねぇ…」

 

「………」

 

 私には彼が何を言っているのかは理解できなかったけどこれだけはわかった、狂ってるって。

 

 神原は抵抗する私を機械に無理矢理繋ぐと、何かの機械を動かし始めていた。

 

「さて、最初は何の艦魂から融合させようか…精神は壊れても良いが肉体が壊れるのは困る、まずは駆逐艦からでいいか…」

 

 ブツブツと何か言いながら神原は機械の操作を進めていた。しばらくすると半透明に光る『ナニカ』が彼の手の上に現れた。

 

「さて、まずは小手調べだ、いきなり壊れたりはしないでくれよ?データが足りなくなる」

 

 彼は『ナニカ』を機械にセットしていく、もう私には何かをする体力は残っていなかった、そして神原が『ナニカ』をセットし終わると、何かが私の頭の中に急速に流れ込んできた、軍服の男達、沈む艦、死んでいく仲間達…その流れ込んできた艦の記憶は私の精神を削り、語りかけてきた。「悲しい」と。

 

「ぐぅ…あぐっ………がぁ…」

 

 私は理解したこれは記憶なんだと、これが神原の言っていた艦魂なんだと。

 

「凄い、凄いぞ!本当に適合した!『吹雪』の艦魂は彼女の適正ではないというのに!アハハハハハ!!!愉快だ!これで深海棲艦への兵器が完成する!そして私こそが深海棲艦を滅ぼすのだ!」

 

 

 神原は笑っていた、そして彼は先程の艦魂より強い光を放つ艦魂を複数用意してきた。

 

「さぁ!さぁ!全ての艦魂をその身体に持った全知全能の兵器へとなれ!」

 

「………」

 

そこから2週間ほどの記憶は私には無い、気絶していたのか、記憶が削られたのか、はたまたあまりの記憶に私の脳が記憶を消したのか、それはわからないけど、とにかくそこから目が醒めたのは2週間後だった。

 

 

        ー2週間後ー

 

「ん…あれ、なにが……?」

 

 その瞬間体中に激痛が走り自分に何があったのかを私は思い出した。

 

「うぷ…ぎゃああぁぁ!」

 

 全身の骨が溶けたかの様な痛みで、特に頭には大量の記憶の濁流が流れて頭がおかしくなりそうになってた。

 

「ぐぁ………あぁ…あ、れ…?」

 

 ひとしきり叫び頭の中がスッキリし始めると自分がベッドのような所で寝ている事に気が付いた。

 

「なん、で…?施設、は?」

 

 私が困惑していると外からドタドタという足音が聞こえてきた。私はその足音の昔ぬしが神原やその部下だと思っていたから「ヒッ…」と怯えていた、そしてドアを蹴破り入って来た人物は、軍服を肩に羽織った背の高い女性だった…

女性は私の方を見るなり「目が覚めたの!?大丈夫だった!?」と声をかけてきた、「取り敢えず艦魂の活性化を押さえ込む薬と痛み止めの投与をしたけどまだ痛いわよね?」

女性に言われて頭に記憶の濁流はあってもこの前のような声が聞こえることが無いことに気づく。

 

「えっと…あなたは…?そしてここは…?」

 

 私は何が起こっているのか理解出来ずに女性に状況の説明を求めた。

 

「ああ、ごめんなさいね、まず安心して?ここは正規の海軍の医療機関で私はここの鎮守府の提督の三笠です」

 

「三笠…さん?」

 

 提督と聞いて私は体をこわばらせた、それが相手もわかったのだろう、三笠さんは優しく微笑んで「ええ、貴女をあそこから連れてきた者です」と答えた。

 

「貴女が…?」

 

「はい、正確には私と神通が、ですけどね。貴女は神原に捕らえられていた紫音さんでいいわね?」

 

「はい…あ、あの…たすけてくれて、ありが、とう…ございましたぁ…」

 

 ポロポロと私の目から涙が溢れた、三笠さんは私をそっと抱いて慰めてくれた。

 

 

        ー数時間後ー

 

「あの、すみませんでした、いきなり泣いたりして」

 

 あのあと私は緊張の糸が切れたかのように泣きじゃくった後眠ってしまった。

 

「ううん、いいのよ。あの拷問に近い苦痛は私には耐えられない、頑張って耐えてくれてたお陰で私達は貴女を救う事が出来た、こっちこそすまなかった、もっと速く君を助けに行く事ができなくて…」

 

「い、いえ!助けてもらって私こそありがとうございました、だから顔を上げてください!」

 

 私は頭を下げる三笠さんに感謝を伝えて、気になっていた事を訪ねた。

 

「それで私の体は今どうなっているんですか……?」

 

 三笠さんは少し間を置き答えてくれた。

 

「……酷い状態だよ、君の身体の中は適正の無い艦魂で溢れてこうやって私と話せるのが不思議な位君の身体は全身ボロボロになってる。だから君にはこれから艦魂の不活性化をさせる薬と1年ほどのカウンセリングとリハビリを受けてもらおうと思ってる…辛いかもしれないけど…頑張ってほしい……」

 

 三笠さんはそう申し訳なさそうに顔を伏せ身体の状態を説明してくれた。そして私は三笠さんに一番聞きたかったことを聞いてみる…

 

「…あの、私って今は、その人間なんですか…?それとも……ばけm…」

 

「人間だよ」

 

 三笠さんは食い気味に答えた。

 

「君は人間だよ、君の変わった所なんて無い、だから、大丈夫…」

 

「…なんで、そう言い切れるんですか…?」

 

 断言する三笠さんはとても優しいかおをしていたからそれが嘘や誤魔化しなんかじゃないと私は思った。

 

「…君には私はどんな風に写ってる?」

 

「えっ……?」

 

「私も君と同じ艦娘ですよ、でも私がこの身体になってできるようになった事は海に浮かぶ事と深海棲艦を倒せるようになっただけ、それも艦装が無ければできないただの人間ですよ」

 

 三笠さんはそう言って私の頭を撫でてくれた…

 

「だから…大丈夫、君も私達と同じ『人間』ですよ」

 

 そういって彼女はニッコリと笑ったー



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。