山吹色の夜 (サバの缶ずめ)
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1話 新しい生活
「やった!合格だ!お前はどうなんだよ!」
隣にいる友人の声が響く。と同時に会場に貼り出されたボードを確認する。俺の番号は519。500番台に入り更に入念に確認していく。
「512.514.515.518.520」
残念ながらそこに519は無かった。
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「まあ良かったじゃん。お前は受かれたんだし。俺の分まで頑張って来いよ」
「そうだけど…お前は大丈夫なのかよ。この学校は誰よりも行きたがってたはずだろ?」
「しょうがないよ。落ちたんだし。自分の実力が無かったってことだよ。」
と言いつつもこの学校は落ちぶれた学校では無い。成績も上から数えた方が先に見つかるぐらいの学校だ。本人の都合と親の都合により公立に絞ろうと言う結果になった。選択肢はまだあったのだが夢を追いかける為にはこの学校に行きたかったのが現状。そして見てしまった現実。そう簡単には入れるような場所ではなかった。
「と言う事はここで学校自体の別れか。高校も一緒の学校に入りたかったんだけどな…」
シビアな話を切り出すがこればかりは仕方がないし落ちてしまったものに言い訳は付けられない。ただ電話や連絡は取れる為言うほど別れ感は無かった。
「じゃあ元気でな!文化祭とか有ったら遊びに来るから!」
「ああ!お前こそな!」
堅い握手を交わし別れを告げてその場を去った。
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その後、先生、俺、親の3人で面会を行い、一つの学校の案が出された。それは意外にも"定時制"だった。俺の学力があれば余裕で行けるとの事で言う程悪くないし考えて見ればバイトも出来るし俺にとっては効率のいい学校ではあった。ただ不安要素もある。大きく分けて2つ。
「今の生活リズムを崩し夜型の人間に対応出来るかどうか」
「様々な人がいる為に自分の良さを発揮出来るか」
高校選びは難しい選択である。正解の道を選ばなければならない為に選択期間ギリギリまで考えて迷った。時には親と意見が噛み合わなかった事もしばしば。
そうして導き出した答えは…。
「俺は定時制に行く!」
そう決めた心に迷いは無かった。
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試験も無事合格し俺は高校生になった。青春と言った言葉も言う程必要では無いからこれぐらいの生活が丁度いい。それからの日々は少し余裕も見え始めた。友人から送られて来る祝いのメッセージも華々しい気持ちで読めた。
「いよいよ明日か。入学式」
「だな。中学の様に高校生活もあっという間に終わるのかな」
「そうなんじゃない?案外あっという間だったりするもんだろ」
「とにかく楽しんで来いよ!」
あの入試以降昔以上に親身になって話してくれている。気遣ってくれているのだろうか。もうそこまで落ち込んでも無いし自分に合う学校を見つけられたのでそれはそれで良かったんじゃないかなあとは思っている。時間は戻りはしないからそれ以上の物が出来ればいいんじゃないかな。
それにしても定時制ってどんな所なのだろうか。全日制とは違い様々な年齢層の人が居るって聞いたから世代が違う様な人もいるのだろうか。不安が募るが実際は行って見ないと空気も立場も分からないし当たって砕けろの精神でいいとは思うがどうだろうか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そんなこんなで長かったようで短かった休み期間も終わり今日からは学校が始まる。いつも出る時間帯とは違った時間に入学式がある為何とも違和感を感じていたがここも慣れで変わってくるのだろうと自答して自分に言い聞かせた。だが制服が無いと何か締まらないな…
「母さん今日の入学式は来れないから」
「了解ー」
「まあ高校生活も頑張るのよ。たった3年間だから後悔はしない様にね」
「分かったー」
家を出て20.30分ぐらい掛け電車と徒歩を歩きでやって来た。中学の頃の徒歩の移動に比べたらこれっぽっちもない。
「さて。学校に着いたぞ。確かエントランス集合だったっけ」
「それにしても学校広いな…。方向音痴は迷子になるな、絶対」
全日制との兼用も合ってなのだろうか。だが今はそんな場合では無い。クラス確認表を見つけに行く為に先を急がなければ行けない。
少し歩みのスピードを上げようとした途端右手の影の女の子が視界に入る。
(あの人もここの生徒なのだろうか)
すると1.2と歩き出しこちらに近付いて来る。
「あの…。エントランスって何処ですか?」
「エントランスなら自分も向かってるので良ければ一緒に行きます?」
「良いんですか!?じゃあお願いします!」
途端に顔色を変え喜ばしい顔に姿を変える。状況は困ってる人の道案内で良いのだろう。
1人から2人になり少し経った。ただ会話に進歩はしない。数分前に会った人だ。会話して友達になるほど強メンタルの持ち主ではない。この静寂な状況を何とか打開するか、それとも時間を待つか、果たしてどちらが良いかは分からないが取り敢えず向こうが喋ってくれば最低限話すぐらいで留めておこう。それが無難だろう。
「連れてきていただきありがとうございます」
「いえいえ。当たり前の事をしただけです」
丁寧に深々と頭を下げこちらに向けて微笑むとその場を去っていった。
(多分俺と同じルートを通るならこの人も定時制の生徒なのかな)
ふと思いながらも俺も急がなければ遅れてしまうと同じ方向へ進んで行った。
「と言う事でこれで入学式を終える。」
一時間ちょっとの入学式が終わった。クラス決めも入学式も終わってようやく一段落と言った所か。と行きたかったがここからはクラスに別れて各自で進めていく。取り敢えず新しいクラスに行けという事。
俺は1年5組。ドアに貼ってあるクラス表を見るとこのクラスの人数は9人。9人は普通に見たら少ないが人数は気にしないタイプの人間なのでそこまで気にはならない。重要なのは数ではなく中身だと思っている。
中学卒業後この学校に即入学という形を取った為に歳は15。即ちここに居る人達は理論上では全て先輩に当たる。定時制とはそう言う場でもあるとここでも思い知らされた。
次々と同クラスの人が入ってくる中には予想通り見た目からして歳上ばかりだ。だが1人だけ同世代の人がいる気がする。後ろ姿からしか見れないが歳は同じぐらいだろう。
(いや待てよ、あの人さっき案内した人だよな…)
ヘアスタイルとか服装が案内した女の子と一緒。どうやら同じクラスになったみたいだ。
〜〜
「私は1-5担当の板野と言います!1年間だけですがよろしくお願いします!」
新学期あるあるの自己紹介タイムが始まった。まああるとは思っていたが何も考えてないし言う言葉も無いから取り敢えず軽く流すぐらいで合わせておこうか。順番が来れば柔軟に対応するか。
「じゃあ次は橋下くん。お願いします!」
「はい、このクラスの仲間達と頑張って行きたいです。よろしくお願いします」
「橋下くんは趣味とかありますか?」
「そうですね。あまり目立って主張出来るものは無いですが野球が好きです。」
「へー!そうですか!先生も良く野球観戦に行きます!」
「じゃあ次は山吹さん!」
「はい。短い間ですが1年間よろしくお願いします」
「山吹さんは好きな物とかありますか?」
「私は好きな物はあまり無いのでこの高校で作れていけたら良いなと思ってます」
「いい心構えですね!」
そんな感じで緩い自己紹介が終わった。
あの女の子が山吹さんと言うことは分かった。ただ多分向こうから話してくる事が無い限りは話にはだろうから正直知った事で得する事は無いし名前は遅かろうが早かろうがいずれかは知る事にもなる。
「では。皆さんこれにて今日は終了です。外も暗くので気をつけて帰ってください」
時計は6:30を少し過ぎたぐらいの時刻。7時に終了予定だったから少し早かったぐらいか。ここからは帰る一報で話が進んでいく。色々気になることは合ったが今日ではなく明日にしよう。明日からは通常日程だから時間を使える。今日は体力も使ったから疲れた。
「よし、帰ろう。明日も学校だし」
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2話 最初で最後
待ってた方ホントお待たせしました!
それではどうぞ!
2、
突然だが俺はパンが好きだ。日本人なのに米よりパン派なのだ。決してコメが嫌いとかいう訳では無いが米とパンのどちらかと言われたら迷わずパンを選択する事は自分でも分かっている。
パンの中でやはり塩パンは神だ。メロンパンとかチョコパンとかパンの良さを活かしきれてないあの系統のパンは邪道。塩パンの美味さ度でその店のランクが分かると言っても過言ではない。あくまで本人の都合と勝手な意見で発言している事は自覚している。パン好きとしてそこだけは常識が分かっているつもりなのだが他人からは碌でもないと言われるのがオチ。
そして今日も入学式終わりに自分へのご褒美にパンを買って帰ろうと思っている。自分に御褒美をあげる人が本人しかいないとかは突っ込まなくていいからな()
腕時計を確認すると今は6:30を少し過ぎたぐらい。時間が時間だしパン屋は基本的に5:00辺りで店を締めるから選べる程お店は開いてないと思うんだがたまには直感で選んだお店に入ってみて冒険してみるのも良いかもしれない。
商店街の方にやって来た。ここ周辺は初めてじゃないからある程度何処に何かがあるかは知ってるけど深くは知ってはない。精肉店とかは合ったのは覚えてるけどパン屋は合ったっけ…?
「あっ。合ったわ。ここっぽいな」
商店街に入ってから10〜15分ぐらいでパン屋を見つけた。商店街の混んでる方にあったから良かったものの多分店が少ない所にあったら見つけられなくて今日はコンビニで我慢しろってなったから良かった。
「あっ!お姉ちゃん!お客さんが来たよー!!」
「待ってよ!私が言いに行くんだもん!」
ここのお店はお姉ちゃんが切り盛りしているのか。小さな子供の無邪気な姿を見ると純粋な気持ちとなると共にこのパン屋で良かったかなって少し思った。
ちょっとして2人が帰ってくると共に1人の女の子が出てきた。買うパンを選んでた為にすぐに確認しようとはしなかったと言うかその時の気持ちはパンへの気持ちが先走ってたのもあるしそれどころじゃなかったのもあるから確認しなかった。
トレーにある塩パン三つ。もはや自分の中で他のパンが見えない程にぞっこんだった。「見た目で分かる。絶対美味しいやつだ!」いい感じの塩分量とフワフワの生地。これが数時間前に焼いたとは思えない。控えめに言って神だ。
「ありがとうございますー。塩パン三つですね」
お会計の際にふと目が合った。相手は何食わぬ顔で会計を売っていたが何処かで合った顔だった気がする。誰かはパッとは出てこなかったけどそこまで遠い人でもない気がする。
「お会計は360円です。」
「ちょうどお預かりしますねー。こちらレシートになります。ありがとうございましたー。」
その時はそこまで気にならなくて片隅に置くだけで良かったのだがパンを食べている時に何故か急に思い出した。
「あっ…山吹さんだ…あれ」
てか待てよ。って事は山吹さんが働いてるのか…?いやいや訳分からないし労働基準法に反してるはずじゃん。知らないけどさ。
その後スマホの地図アプリで検索した結果そこが"山吹ベーカリー"って事が分かって何となく全てが理解出来た。
「ああ…伝えれなかったなあ…」
こちらもどうやら悩みを抱えている模様。パン屋と家族の問題、新学期に入り学校と言う問題がまたも出てきたようだ。
「よし!明日は言おう!」
そう言いゆっくり目を閉じた。
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「おはよー。いい天気だねー。今日も一日頑張ろー!」
と同時に掛け布団が捲られ、朝の日差しと眠気で視界がが歪む。
「良いじゃんか…。時間帯変わったんだしまだ寝てても…」
「駄目!生活習慣を崩したら駄目なの!」
駄目の一押しで頑固。自分の筋を通すと言うか何と言うか。弟の俺でもイマイチ分からない所が時々あったりする。
「分かりましたよー。起きればいいんでしょ」
こんな事は普段は無かったのだがこれも環境が変わったと思わせる一つになりそうだ。
10分ほどかけて眠気をゆっくり覚ましながら歯磨きをする。鏡に映った自分が二重に重なって見え所々寝癖も見える。
時計は7時30分を差してテレビは情報番組をやっている。普段この時間は家には居ない時間ということもあり新鮮な感じがある。
「じゃあ行ってきまーす!今日は普通に帰ってくるからー!」
そう言い姉ちゃんが大学に行く為に家を出た。最近夜が遅い時がボチボチあるから彼氏でもできたのだろうか。そちらの方がベタベタに構われずに済むし彼氏さん頑張って!と他人事のように思った少しの時間であった。
「そ言えば返信来てたな。確認しなきゃ」
そう言いロックをササっと解除しトークアプリを開き確認する。
「おはよー。今日から学校だっけ?頑張れよー。って俺もだな(笑)」
こいつとは学校が離れたと言って連絡を切らしていた事は無いし暇さえあれば連絡してた仲だしそれが学校が変わっただけ縁や連絡が切れる ことは無かった。「良いけど学校中に送ってくるなよ(笑)」と冗談交じりに返信した。
すかさず返信が帰ってきた。僅かの間で返すとかお前学校だろ?といつも疑いたくなる。
向こうの学校は携帯禁止と嫌味を送ってきた事があったので知っていたが危なっかしいのに変わりはない。バレたら反省文行きだな、これは
「うちの学校にも可愛い子が居たんだよ!俺この学校で良かった。高校は恋愛に勉強にスポーツを両立させてお前に自慢するわw」
「それは良かったね。俺は特に恋愛をする為に高校に行くわけじゃないから頑張れとしか言えないわ」
「今度お前にデートの写真送ってやるよ。羨ましがるなら今のうちだぞw」
「まあ頑張れ」
「あっ、先生来たわ。また後で」
既読を付け一旦会話を切った。スリルをたのしんでいるのか。これもしメールとかで音鳴ると没収パターンだろ。到底真似出来ない神業(?)とでも思っておこう。
かれこれ10時まで時間は過ぎた。勉強したり、本読んだり、携帯いじったり、書類読んだり。1~2時間ほどとは思えない時間の密着度。
書類はもう1回読んどくか。昔からこう言った事がとある人のせいで几帳面になってしまった。誰とは言わないが思いつくんだな。これが
「あー。確かあったような。無かったような。どうだったっけ?」
と言うのも生徒手帳。生徒手帳は身分を示す為に必要と昔から口うるさく言われている。実際あったに越したことはないが極端に少ない使用時の為にするのもどうか。
昨日は気にしてなかったので生徒手帳貰ったかは、はっきり言って覚えてない()
初日だったししょうがないと言う理由を付けて主張すれば何とか誤魔化せるでしょ。
「入学初日に担任から渡された生徒手帳をいつでも提示出来るように所持していましょう」
「うわっ…。これ落としたやつじゃん…」
担任に言ってもなあ…。印象が台無しになる気しかしない。謎のプライドを持っている俺には新しく貰うと言う選択肢はない。あと昨日は言うほどエリア行動してないし見つけれるはず。
こうなったら見つけるまで意地でも諦めてやるもんか。
さて作戦会議だ、リミットは5時半、それまでに見つけておけば大丈夫。時間にして4時間から5時間ほど。
帰り道の間にパン屋、コンビニ、文房具屋寄っている。長居していたのは文房具屋だが落とした気は無いし何しろ文房具屋の時は胸ポケットに生徒手帳は入ってたはずなんだよね。それでも必ず証明できる論理では無いし一応は行ってみるけど。
「先にパン屋から回ってみるか。文房具屋、コンビニと並んで」
理由は聞かなくてもわかるだろ?率直にパンを買う。好きな物に歯止めが効かないのはしょうがないと思っているからね。皆んなもそうだろ?声を大きく言いたい「好きは正義」だと。
チャチャチャっと支度をし外に出てきた。見慣れない昼間の外の光景に疑問を覚えつつも目的地へと足を進める。
「人少ねえな。この時間」
よく考えてみれば当たり前。この時間明らかに違う格好で外いる人とかニートじゃん。絶対ニート(確信)
すれ違う人の中でスーツ着たサラリーマンとかいるけどその人達から俺もニートに見えているのか!?たまったもんじゃねえな。なんて思った昼下がりである。
商店街の方へやってきた。普段はこの方向は逆になるから来ないんだけど昨日は閉店間際と言うか夜ってのもあってこのパン屋に来たって事。散髪屋とかいろんなお店があり1度と言わず2回3回と来たくなるような商店街。
「暗かったからあんまり見えなかったけどここ色んな店があるんだなー。」
感心し街の風景を見ていき場所を理解していく。カフェとかちょっとした休憩スペースにも使えそうな場所もありそうだしこの商店街便利だな。今度アイツと来ようかな。遊ぶとこは無いけど
「いらっしゃいませー。」
「あのー。すいません。生徒手帳落ちてませんでしたかねー?」
「あっ!ちょっと待っててください!」
そう言って裏口へと走っていく。30秒ぐらい経ってから手に一つの手帳ぐらいの小さなものを右手に持って戻ってきた。
「これですか?昨日落し物があったので取っておいたのですが…」
「はい!これです!」
見つかって一安心した俺は感謝の言葉を伝え帰ろうとした・・その時
「あの!」
一言大きな声で俺を呼んでいる。
「橋本蒼太さんですよね!?」
「そ、そうですけどどうして名前を…?」
「生徒手帳に書いてあったのと私と同じ学校ですから」
そう言い微笑む。何となく理解出来た、山吹さんなのか。分かったぞ、だから山吹ベーカリーか。
ようやく理解した俺は山吹ベーカリーの常連になりそうだ。
どうでしたか!
ここから沙綾との絡みが多くなってくるのと次回以降ポピパを参戦させようと思っているので楽しみにしててください!
ではまた次回お会いしましょう!
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3話 キラキラドキドキ!?(1)
最近沙綾ちゃんにゾッコンしてる気がするのだが…()
やばい…。彩ちゃんに怒られる。
って事でどうぞ!
「へー。そうなんだー。」
「そうなんだよー。面白いから一回見てみてよ!」
微妙に話が噛み合わない。劇的な出会いをしたってゲームでもないし心理を操作出来るわけじゃないぞ。
話し始めたのだって1時間過ぎないかなってほど前の事。そう簡単に話が弾むとまでは行くはずがなかった。
空気が気不味いのは互いに理解しているだろうし何か率先して一言!と出たいが少し前に出た赤の他人の趣味を当てれるエスパーでもないからな。だが苦では無いからこのまま続けても構わない。
「橋本くんって趣味とかあるの?」
「趣味かー。そうだなー」
来ましたよー!この質問!山吹さんがが先に切り込んでくれたのは本当に有難い。人見知りを発揮した故に言葉もタジタジだったし何回も話してないとこの返しは出来ないぞ。
山吹さんはパン屋の看板娘なのだからコミュ力のバケモノに決まっている。昨日訪れた時も年配のおばあさんと話してたしこれはコミュ力おばけだな。
打ち解けてタメ語混じりで話していた事もあり趣味を暴露するのに抵抗はない。
「昨日クラスで話したけど野球が好きかなー。あと音楽関係も好きだったりもします。」
「音楽かー。好きなバンドとか居るの?」
「もしかしたら知らないかもですけどGlitterGreen(グリッターグリーン)ってバンドが好きなんですよ。」
「GlitterGreen!?」
おそらくこの日1の声で返答する。少しボリュームが計算外だった事もあり体が少し仰け反った。
「実は私もバンド活動してるんだー。GlitterGreenの人達は私達のバンドの先輩なんだよー。」
「マジ!?」
驚きのあまりタメ語が出てしまった。でも凄くないか?好きなバンドの知り合いと今こうやって話してるんだぞ?思えば思うほど手足が震えてくる。
「マジだよー。これ見て?」
そう言い山吹さんは携帯のフォルダに入っている画像を提示してきた。
「これは…!?」
そこには山吹さんとGlitterGreenのVOCAL牛込ゆりさんのツーショットがあった。
単に羨ましい。
山吹さんは実は凄い人だったのか。なんでこんなに凄い人なのに俺はタメ語を使ってるんだろうか。敬語使わなきゃ…。
人見知り特有の物凄い固定概念がここでも発動した。
「あ、、、あの…、、山吹さんって凄い人だったんですね…!」
「どうしちゃったの?急に敬語なんて使ってー?私はそんなに偉い人じゃないよー。」
「ただスタジオがたまたま一緒でそこから交友が深まったってだけなんだ。」
軽薄な話し方が一層事が軽いことを思わせるが俺は動じずにそんな訳ないと一貫したい。千冬の勧めで理由でゆりさんを知ったと言うのはあるが情報社会の今時はネットを頼れば名前、趣味、増してはプライベートまで露になる。
と言う興味本位で「Glitter」と打つと"GlitterGreen"が当たり前のように変換に出る。脂がのっている今大注目アイドルなのだ。
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少し過去に遡る。そもそも音楽が好きになったのはアイツの影響が諸なのだがそれと共に音楽が嫌いじゃ無かったというのはすんなり呑み込めた一つだとは思えている。それから勧めでとあるバンドのライブに行ったことがあるのだがこんなに心に刺さるのは初めてだろうかと言うほどに感動し更に高揚感に駆られた。
"もっと見たい"
"もっと知りたい"
"色んなバンドが見たい"
思えば思うほど音楽への想いは加速していった。留まることを知らない俺は夢中で動画を見漁った。あの頃の世代なら主なバンドは熟知していると言っていいだろう。それぐらいハマっていた。いや体の一部になっていた気がする。気付けば教え主よりもハマっていたのは俺だけの秘密にしておきたい。大体察していた気もするが…()
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「思ったんだけど橋本くんはバンドが好きならどうしてバンド活動とかしなかったの?」
「あー…それは…元々この存在を教えてくれた同級生がいるんですけど。その人は見るだけで満足するタイプで自分もそんな感じと言いますか(笑)」
「なるほどー。実際体験してみたら世界は変わって見えるもんね。」
山吹さんの言う通り。中を知らないから楽しめるし好き勝手共感したり出来る。触れてはいけないラインを決めてそれを忠実に守る事が趣味を続ける一つかも。
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趣味がピンズドでと言う事もあり先程の躓いていた空気が嘘のように風が吹き返す。コミュ力が高いしパン屋だしバンドをしているとかこれは趣味一致を越えて何か運命を感じる。これは今まで高嶺の花だと思ってたタイプの人間じゃないか。
目の前にいるのが率直に嘘みたいだ。事実を徴憑させる為に頬をパチパチと2回叩く。
"痛い!"これが夢じゃないだと?!?"
その瞬間何故か少しだけ心のもやもやが開放された。と同時に途轍もない全能感に襲われた。
今なら出来る。
今しかないんだ
怖い。怖いけど
今やらなければ後悔する
「あの!山吹さん!」
「どうしちゃったの~?疾呼して改まって」
「僕と友達になってもらえませんか…?」
「勿論良いよー!これから宜しくねー。蒼太くん」
「友達ならタメ語じゃないとね!山吹さんは堅苦しいし紗綾でいいよー」
「分かりました!ってぇぇぇぇ!?」
余りにも驚き唖然する。驚きのあまり言葉を失いかけていたわ…危ない所だった。すごい展開になってしまったけど勇気を出して言ったことは間違いじゃない事は分かっている。ホッとひと安心し入れていた気合がそっと抜けていく。
落ち着こう。経験が無いもので戸惑ってしまったのがバレバレ。辿々しさとか、からかい半分でしているのだろうか? でもこれでもう一つ増えたぞ。山吹さんは間違いなく友達になってくれた。それだけで綺麗事で纏められてもらっても構わない。それだけ心の余裕になる出来事なのだ。
波乱万丈の中身が濃い約2時間。刻は2時をすぎた頃。そろそろ学校に行かなければ行けない時刻になってきた。
「蒼太くんはいつ頃学校に行くの?」
「ええっと。学校には30分前には付いておきたいかな」
「へー。因みになんだけど一緒に行っていい?」
「構わないよ。」
「やったー!じゃあ4時頃に待ち合わせして一緒に行こうか」
タメ語は慣れないなあ…場数を踏んで行けば自然と慣れるのだろうからそれまでの辛抱。
ピピピーピピピーピピピーピピピー
途端に裏口の扉の方からストップウォッチの音が鳴り響く。多分焼き立てか生地が作れた知らせだろう。パン屋通なので一応基本的な事は記憶にあるわけですよ。
「あっ。ごめんね。焼けたみたいだからちょっと席はずすね」
「大丈夫ー。」
と言い先程鳴った当たりの裏口へと入っていく。関係者以外立ち入り禁止の貼ってある扉の向こうは企業秘密エリアだろう。是非とも入ってみたいがそこは暗黙の了解。もし入ったら仕返しが怖そうなので想像の範囲内で我慢しておく。
5分後大きなトレーを持って出てきた。先程のラフな格好とは違い衛生上のエプロン姿になっていた。仕事人スイッチがONになった感じがしてとてもいいと思う(素人感)
「あっ。焦げちゃった塩パンがあるのだけど食べる?」
「食べる!」
好きな物には目がないのはしょうがない。それが人間だと謎の合理化。即答で躊躇せずに答えたあたりパンが好きなんだなと改めて思う。
「はーい。お待たせー!」
「ありがとうございます!!恩につきます!」
「良いよー。家は塩パンたくさん食べる人いないから。捨てるぐらいならってお客さんに渡したりしてるんだー。」
捨てるなんて言語道断。勿体無いけどこだわりの上で省かないとこもあるんだよね。プロフェッショナルは凄いよな。値段以上のクオリティとはそういう事。
「そろそろ一旦家に帰りますね。また後でここに来るんでその時に一緒に行きましょう」
「あっ。待って!スマホ貸して!」
「不便だし連絡先交換しようか!」
「あー。そうですね。お願いします」
もはや山吹さんのやりたい放題だ。と言うかやられ放題だな。だけどほんと凄いよな山吹さんって
心からそう思っている最中に連絡先を交換しその後山吹ベーカリーを後にした。
「また後でねー。」
俺に向かって見えなくなるまで手を振りながら声を上げている。
俺も山吹さんに向かって何度か手を振り返す。
「さて見えなくなったし遅れないように帰るか」
山吹さんが見えなくなった途端に少し駆け足で走っていった。
~~~~~~
「これで送信。良しっと。」
「はあ…。緊張したな…。こんなにドキドキしたのは初めてだよ。これってまさか…、、、ってそんな訳ないよね!」
「さぁさぁ学校の準備しなきゃ!」
如何でしたでしょうか!?
一応蒼太くんはハイスペックなんですよねー。
音楽とパンが一致しているとか僕もこんな感じの青春したかったぞ(涙目)
では皆さんまた次でお会いしましょう!
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4話 キラキラドキドキ!?(2)
最近は発想力が爆発しめっちゃ意欲が湧いてるので沢山更新出来ると思います…(するとは言ってない)
「ただいまー。」
無事自宅に帰還し腰を下ろす。荷物はカバン一つだったがそれ以上に全身にドッと来るものがあった。そしてこれからすぐ学校へ行くのは中々疲れそうだ。
「あっ。おかえりー。蒼太。」
「ああ。姉ちゃん帰ってたんだ。」
平然を装って会話しているが心の中では最近めんどくさいって思ってしまっている自分に気付いてしまった。
「ねえ!聞いてよ!今日大学でね!」
あっ。始まってしまった。定期化した愚痴タイムだ。聞く耳立てるのも無駄なので山吹さんに貰ったパンを片手に聞き流している。
「で!どう思う!?」
「その彼氏さんが悪いんじゃない?」
「そうだよね!絶対悪いよ!」
話の盲点は大体いつも掴めているから深く聞かなくても大丈夫。慣れというか覚えてしまったのだろうか…慣れは本当に怖いものである。
「そんな事よりパンちょうだーい!」
「ええっ…さっきの話は…?」
「うーん。ちょっと話したからもう飽きちゃったー。」
弟ながら姉の思考が全く読めない。俗に言うこれが天才思考というものだろうか。昔天才の人間は何でも出来る上に切り替えが早いので飽き性が多いと聞いたことがある。それも関係しているのか。
「ここのパン美味しいよね~。商店街のトップのお店!って感じがするんだ」
「ん?姉ちゃんここ知ってるの?学校帰りにある事を最近知ったんだけど」
「ここ何度か新聞にも乗ってたよ~。パン好きなら穴場のお店」
「あと娘さん?看板娘らしくて近所でも評判高いらしいよー。ええっとなんだったかなあ。沙綾ちゃんだったかな」
「山吹さんか。ひょんな事に友達になってしまいました。」
「えっ!?あの!?山吹ベーカリーの!?」
「そうそう。あの山吹ベーカリー」
「えー!これで廃棄とか貰えるのかな!?」
廃棄目当てとかバイトかよ…
「ええっ… それ目当てなの…?」
姉弟のくだらないいつもの会話が結局時間を潰すのに丁度いいと分かった。めんどくさい姉だけど面白い姉ってのも自慢の1つ
「じゃ。行ってくるわ」
準備していた着替えと通学カバンを身にまとい家を出る。
「頑張って来るだよ~。友達作ってぼっちにはならないようにね!!」
「あいよー。」
と適当に返事を返す。
煽り混じりにも聞こえたが言われなくてもぼっちにならないように頑張る。と言うか山吹さんが居るからぼっちじゃないのか(?)
目的地の公園まではおおよそで15分ほど。最初は山吹ベーカリーで待ち合わせしよう!という事で進んでいたんだけど家からだと少し距離があるから配慮してここにしてくれたらしい。
「ごめーん~待ったー?」
ベンチでぼーっとしていた俺を現実に戻すように誰かが合図をしている。
だが辺りを周りを見てもこの公園には俺一人しかいない。遂には幻覚まで見始めたかと思ったその時視界が塞がり真っ暗になる。
思わず「うわっ!」と声を出し原始反射で勢いよく手前の砂場にダイブする。
「ごめん…。ちょっとやり過ぎちゃった…」
心配の笑いをしている方向を見ると今度はちゃんと一人の人間が立っていた。色々あって状況がうまく理解できてないけど幻覚を見てないことに安堵し制服に付いた砂を払った。
「大丈夫だよ。それにしてもビックリしたよ。」
「あはは… ごめんね、、」
「全然いいですよ。気にしないで」
行き過ぎた行動を反省するかのように少しシュンとしている山吹さんがそこには居た。
これも俺の為にしてくれた事だもん。山吹さんには何の罪もない。むしろ俺に罪があるかもしれない。
「そんな事より学校行きましょうかね。遅れちゃいますよ」
「うん。そうだね」
制服に付いた砂を全て叩き落としベンチに置いていたリュックサックを背負って2人で公園を出た。
「山吹さんって得意な教科とかあるんです?」
「そうだな。パン屋してるから数学が得意かなー」
「パン屋と数学って何か関係あるんですかね?」
「ほらほら。沢山買っていくお客さんも居るから頭の中で高速で処理しないといけないじゃん」
「なるほど~。」
それは数学では無く算数な気もするが何も言わないでおく、思わぬ一言は時に人を傷つける。
話が弾むと共に山吹さんのテンションが少しずつ上がっていくのが分かった。少し繊細な性格なんだなともこの時何となく感じていた。
電車、徒歩を継ぎ30分ほど日が落ち街灯が照らす歩道を歩いてきた。うちの学校は山の上にあるから途中から街灯が照らしきれず時々スマホの懐中電灯が必要な時がチラホラとあった。
「やっぱ山の近くだと鹿とか猪とか出るんですかね?」
「出るんじゃないんかなー?出たら蒼太君に助けてもらおうっと!」
「そんな時は逃げるのが1番ですよ。戦うとか万事休すってやつです」
「そうなのかなあ。パンあげたら懐いてくれるかなあ?」
「餌付けですか…。その時はその時ですね」
話が切れそうになった時に合わせるかのように丁度よく校舎が視界に入ってくる。
「あっ。見えてきましたよ。校舎」
「ほんとここ大きいよね。昨日も迷っちゃったよー」
「分かります。ほんとヤバいですよね」
山吹さんが方向音痴なのかはさておき俺みたいな重度の方向音痴に助けてと言う目をされても無理としか言えない。バスケットボールしてない人にいきなりドリブルからダンクシュート打てと言っていってるようなものだ。あの時は奇跡に奇跡に更に奇跡が重なって道案内が出来た。普段はされる立場なので時には道案内は行いたいが逆に案内されてしまいそうだから踏みとどまっている。
運動不足の為の心臓破りとも思われる最後の坂を登りきり正門の前にやってきた。
「おはようございます」
正門前に立っている先生が口を開く。
「おはようございますー」
2人が口を合わせて返す。
そのまま中庭を歩き下駄箱へと歩みを進める。
「9人しか居ないしな。靴は何処でもいいか」
自由制でその後目印を付けて靴箱を固定する感じ。何も考えずに上から何となく2番目に入れた。
「じゃあ私はここに入れよーっと、」
山吹さんは靴を一番下に入れた。多分俺のように特に意味は無いんだろうな。最初に目に入ったのがここだったからとかそんな感じなのだろうか。
教室があるのは4階だ。やたら傾斜がある階段を登っていく。荷物で両手が塞がっている時とか2倍3倍と恐ろしく襲ってくるこの傾斜なんだろうなとか愚痴を考えながら一段一段上がっていく。
「そう言えばさ。ここって全日制と兼用なんだっけ」
山吹さんが質問気味に問いかけてくる。
「確かそうだったはずです。でも教室は違ったような」
「あー。それだからこんなに校舎が広いのかー」
この先高校生活で全日制の生徒と絡む事も恐らくないだろうし増しては教室も違う。あるとしても緊急事項の数回のみだと思っている。
「ふー。着いた〜」
一息吐き教室の前までやってきた。昔から教室の前の独特の雰囲気には慣れない。
教室に入り黒板に貼ってある今日一日の流れを確認する。隣の席順も確認する。
「じゃあ。また後でね〜」
「あっ。はい。また後でー」
同じクラスの机3つの距離なのだが何となく心の支えがなくなった気がした。縋る気持ちが本心なのかもしれない。
「あっ。隣失礼します。」
女性だろうか。恐らく隣の席だと思う。
「滝沢と申します。よろしくお願いします〜」
「ご丁寧にどうも。橋本と申します。よろしくお願いしますー」
ちょっとしたコミュニュケーションも大切と山吹さんを見て分かったので少しずつ実行していく。
少し話していて思ったのだが案外気が合う。滝沢さんのコミュニュケーション能力が高いのは出会って数分の俺が感じたのだからみんな思うだろう。この後クラスの皆に声を掛けたりしそうな気が薄々する。
「突然だけど橋本君は何歳なのかな?」
「ええっと。今年16になりますね。今15です」
「へ〜因みに私は何歳だと思う?」
出た。この質問。女性が自分の評価を素直に表してもらう為の一般的なもの。若く見られたら喜び逆に年齢より老けて見えたら空気を読めとばかりに白い目で見られる。簡易的で合理的な質問の一つなのだ。
「16歳ぐらいですかね?」
「わー!凄いー!せいかーい!」
途端にテンションが上がる。
「歳上だからもちろん敬語で話してね!って言うジョークは要らないよ!これから宜しくね!」
そう言い右手をこちらに差し出す。握手をしたいのだろうか。すかさず右手を差し出すと右手を握り腕を強く上下に降る。乙女らしからぬ中々のフルパワー。
この後続々と生徒がクラスへと入ってくる。時間が経てば経つにつれて教室もワイワイガヤガヤと盛り上がっていく。1部の仲がいい人達の各派の話で盛り上がってるといった表現が正しいだろうか。
「はいー。おはようございます!」
勢いよくドアを開け先生が入ってきた。遅刻ギリギリでアウトセーフを判断する生徒みたいな感じがした。
この後HRを行い黒板に書かれている事に基付き今日の時間の動向を話し始めた。有耶無耶な感じではあったものの何となくは分かっていた。
「キーンコーンカーンコーン」
チャイムが校内に共鳴し響いた。に併せて1つの白羽を切り気持ちを入れ替える。いよいよ高校生活が始まると言う気持ちと少しの不安が募るような表現出来ない感情。
これの感情はもはや表現する事ではなく行動に表すのが不安をかき消す大方の方法なのかもしれない。そんな心胸を抱え1時限目の授業に面するのであった。
いかがでしたでしょうか…!?
こんなに女性に囲まれるのは羨ましいなあ…って限りですよね〜
これはこれで羨ましい悩みですよ〜
ちょっと余談ですが主人公の橋本くん。初期は橋下君と表現してますがこれからは主に橋本くんとして表現していきます。作者忘れてたら橋下君になるかも知れないので温かい気持ちで見ていただければ(笑)
あと登場キャラが通ってる学校はバンドリの登場高校と異なります。都合の良い所だけ原作を象った作者をお許しください…
という訳でまた次回お会いしましょう!
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5話 キラキラドキドキ!?(3)
題名を考えるのにめちゃくちゃ悩みます。パッ!と思いつく人が羨ましい限りです。
「という訳で1時限の授業を終わります。先程配ったプリント等はこの後家に帰ってしっかり確認してください」
「ありがとうございました。」
の生徒の礼から僅か数秒後、同時に空気が一転し当たりが騒然とする。これが学校なのだ。去年まで行っていた中学校とは基本的には違うが根本的には変わらない。
「2時限目は体育館か。準備して行かなきゃ」
体育館で移動は各自自主的。山吹さん誘って行こうかな。お互いまだまだ最初で心細いかもしれないから。
教室の左端の窓際にある机の方に体を傾けた。山吹さんは顔を伏せて座っていた。
「山吹さん。移動教室一緒に行きません?」
「うん。いいよ〜」
「それじゃあ行きましょうか」
片手に筆箱を持ち無人の教室を出た。
「久しぶりに頭使うと疲れちゃうね〜」
「そうですねー。春休みで完全に勉強をシャットダウンしてたんでほんとに久しぶりって感じです」
「私あんまり頭良くないからね〜。この先が不安だよ」
「そこはお互い様ですね。僕も隼ヶ丘受験して落ちちゃった身なんで」
「隼ヶ丘!?」
突如口調のイントネーションが変わる。世間的にも進学校として有名だが正しく前評判通りの結果となった。
「隼ヶ丘ってあの県内有数の進学校でしょ?凄いね。私が君付けできる立場じゃないなー」
と冗談交じりの発言に頬を少し緩めた。
「山吹さんと逢えたのもまあ何かの縁ですし僕はこれでよかったと思いますよ」
出会いは一期一会と言う。出会いを大切にして人を大切にしなさいと婆ちゃんも言ってたっけ。それが染み付いて当たり前となっているがご最も。
最中話しながら別校舎にある体育館へとやってきた。道中に何度か違う教室に入ってしまったのだが新入生と言う事で甘く見てくれるだろう。山吹さんに案内されているような気しかしなかったのだがそこも適当に誤魔化しておこう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして体育館に入った。まだ4月の夜ということもあって少し寒気が肌に触る。広い体育館に出来た少しの人の塊の中へ入ろうと足を再び進める。
おおよそ端から端に移動し列の最後尾に座りホッと1つ息を吐く。改めて周りを見渡すと50人~70人程だろう、それか気持ち多いほど
「皆さんおはようございます。この度司会進行を務めます。」
その後の話で現在系で話をしているのはこの学校の校長先生ということも分かった。
「以上で終わります。皆さん1年という短い間ですがよろしくお願いします」
プログラム通りに2時限目の科目が終わる。少し早く終わった為急遽先生の自己紹介のプログラムが追加された。
我が担任の板野先生や1年次の担任の自己紹介が始まった。周囲が歓声や喝采で圧倒される。
よみどりみどりな発言の数々に納得して頭を縦に振ったりと中々有意義な時間ではあった。
「では予定の時間になりましたのでこれにて終了とさせていただきます」
司会の一声によりこれで解散。近隣から伝染するように麗しい声へと変わっていく。おそらく学校が終わった幸福感だろう。
「さて。帰りますか」
そう思い人の波に流されるように体育館を出た。外はすっかり暗黒が支配する闇の中。目先の物もハッキリ見えるか怪しいぐらいの光度。そんな中他の事を考えながら教室へと戻っていく為一歩一歩歩いていた。
※
「忘れ物無いですか?」
「うん。大丈夫かな。じゃあ帰ろうか」
窓際の席でもう一度忘れ物確認の為に机の中を探る。忘れ物が無いと判断すると教卓で作業している先生にさようならと一言声を掛ける。ハッと気づいた先生が頭を上に上げ、さようならと声を返す。そうして役目を果たした今日の学業は終了。教卓付近のみを照らしている天井の蛍光灯が煌めき学校を彩っている。外から見る景色は中とはまた違った風景で新鮮だった。
あくびを噛み殺した午後8時。校門を出ようと駆け出した時何処からか声が聞こえたような気がした。隣に居る山吹さんの表情を確認した。これは多分気づいてない。だが近くに山がある、猪や鹿といった動物の鳴き声と間違えたという可能性も0では無い。矛盾している脳内が正しく状況を整理出来ない。歩行は校門側にあるが気持ちはそれに没入しているので、数秒と言った時間であったが、少し考えてから答えを出した。声が聞こえた方向に行ってみようと。
山吹さんに事態を混乱させないようにありのままに話した。やはり気のせいなんじゃないかとか動物の鳴き声と間違えたんじゃないかとかそんな言葉も飛び交った。だが場が展開して行くうちに次第に相槌が増えていき、納得してくれた。もし最悪の事があればなどリスクの事も全て話した。目的を変え声が聞こえた照明の消えかかっている学校の裏校舎へと方向を変えた。
無愛想な空が近辺を飲み込んで行けば行くほど洞窟の様でほとんど何も見えない。ポケットに入っているスマホを取り出した。ロックを素早く解除し懐中電灯のアプリを開き歩行分の数メートル先を照らし、桜が散った地面を踏みしめ再び歩き出す。 校舎の裏側で聞こえた声も時間が経てば風化されていく為ハッキリとは覚えてない。もしかすれば事の本人はもう既にここにはいないかもしれない。少し不安が募ってきてしまったが語られないように表情、歩行を乱さずに考えていた。その瞬間、わずか一瞬であったが゙ガサッガサッ¨と一定の安定した拍子で薄い音であったが2、3回ほど聞こえた。逃してなるものかと速度を上げ肩に掛けているリュックを左右に振り回しながら走った。
声が消えない。少しずつではあるが近づいている気はした。確信的な何かだ。足音を立てずに身を隠しながら進んでいく。気付けば学校の敷地内からは遠ざかっていた。どこかで僅かな不安が頭をよぎる。これ以上は探しようがならない。キリがない。未練や葛藤はあったが諦めがついた俺は山吹さんに本日2度目になるが正直に話そうと思う。やはり動物の鳴き声立ったのだろうか?期待させておきながら山吹さんの大事な時間を奪った。どう置いても弁解の余地はない。それぐらいしか分からなかった。
シリアスな空が空気を掻き立てる。少し遠くにいる山吹さんを呼び話そうとした。約1分後山吹さんが突き当りにやってきた。ん?と疑ったその光景は想像とは違いニコニコしていた。
「それどうしたんですか?」
「あー。さっき待っている時に鳴き声がして駆け寄って見たんだけどこれが置いてあって」
手には身に余る大きなダンボールをひとつ抱えている。中でゴソゴソと音がして1匹の動物が顔を出す。整えられた白い毛に綺麗な青い目をしているまだ子供ぐらいの小さな子猫。
「見つけちゃったんだよね。置いておくのも可哀想だし持ってきちゃった」
「まだ小さいですよね。その猫、もしかしたら捨て猫か何かですかね?」
「そうだと思うんだけど。私の家で飼えるかな。多分無理だろうなあ…」
「じゃあ。僕が飼いましょうか?」
「えっ?良いの?」
「うちは母の家に猫居ますし飼ったことあるんですよ。何かあったら聞きに行こうかなと」
「じゃあお願いできるかな?」
「分かりました」
と言い持っていた段ボールを渡される。曇った表情が一変し晴れ渡る空のように澄んでいく。弟や妹がいる山吹さんに取ってこの子猫の現状にほっとけなかったのだろう。そんな事を思いながら再び来た道を帰る。
※
「にゃーにゃ〜にゃ〜」
「ええっと。ご飯をあげようか」
「にゃ〜うにゃうにゃ〜」
「あっ。食べた」
家に戻った俺は自分の部屋に1人と1匹になる。帰った際に゙可愛い猫だねー゙と姉と母が一律した発言を呈した。この家に生まれて良かったなと何となく思えた瞬間であった。もしうちで飼ったら駄目!と言われたらとかが1種の悩みであったから安堵し気持ちを楽にし自分の部屋へと歩いた。
猫を飼うと言っても何からすればいいのだろうか。取り敢えずご飯をあげればいいと思ってさっきコンビニで猫用の缶詰を買ってきた。美味しそうに食べているからたぶんこれでいいんだよな。まるで専門家のように強く見せてしまったが実際は殆ど分からない。素人同然の扱いでも構わないぐらいのレベル。ただ困っている人を見逃せないイエスマンなのでこういった惨事の招いてしまうことがたまにある。
取り敢えず寝ようか。と電気を消そうとしたら、子猫は元気を取り戻したようで家中を不可解な感情を抱きグルグルと回っている。猫は縄張り意識を強くしてテリトリーを示して自分の存在を示したりするそう。そういう話を昔聞いて当時の母も苦労したそうだ。
だがまだやはり落ち着いていない様子で辺りを不規則に歩いている。
急に連れてこられて怖かったのかな?
本当に大丈夫なのかな?
本当にこれが正しかったのかな?
そんな少しの不安がリセットされた頭を埋め尽くす。
ネットに書いてあった猫は夜行性どうたらと言う諸説を信じ部屋の電気を消した。
「明日は休みだしな。久しぶりに1日ゆっくり出来るのかな。猫の世話もしないといけないといけないし、出来ないよな」
そう思いながらゆっくりと目を閉じた
如何でしたでしょうか?
猫を拾うって言うのは王道の話ではありますけどロマンありますよね〜。名前であったりとか、そしてこの猫の成長過程なんかも書けていけたらなーと思います。
次回は学校が始まって初めての週末です。何も起きないはずがなく…?
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6話 山吹さんはバンド活動をしているそうだ
そんなことはさておき!今回からポピパが登場します。因みに僕は有咲が好きです!!!(どうでもいい)
ではどうぞ!
「はあ…」
溜息を1つ吐き上を見上げる。繋がった赤、黄、緑のコントラストがどこまでも広がっている。ステージ上の人達にに被った色彩を見ながらカラフルだななんて思ったりもした。
「大変だね〜。お疲れ様」
「ありがとうございます。お世話になってる人なのでこれぐらいは大丈夫ですよ」
「こちらからすると男手があるのは助かるよ〜なーんて冗談は程々にして頑張ってね〜」
「ありがとうございます〜」
そう言い1人の女性が仕事に戻っていく。
彼女の名前は月島まりなさん。ここCiRCLEで働いているスタッフの1人。会ってからまだ数時間と言う時間なのだが人当たりが良く気さくで誰でも親しみやすいというのが感想。ここに来たくなる理由も何となく分かる気がする。
部屋の片隅の端の方で椅子を置きじっとしながらステージ上に居る彼女達を見ながら楽しそうだな〜とか楽器を演奏するのは難しそうだな〜とか幅広な感情の数々。
まるで彼女達だけの世界の中で曲が出来ていて
一人一人の個性が光っていて、
音楽が大好きで、
楽しそうに演奏していて、
その中でいつの間にか吸い込まれる。
魅力的なバンド。その名はpoppin-party
練習ではあるものの、世界観豊かで皆が集中し一つの方向に向かうと言う一致した目標があるからこそ、こうして質の高い練習が出来ているのだと思った。何かに喜怒哀楽出来るのはとても素晴らしい事だろう。
「それじゃ。15分休憩ね〜。」
先程の緊張感が解けダラっとした空気感へと変わる。帰りにあそこのお店に寄って帰ろう〜!であったりとかどこにでも居る女子高校生の会話をしている。スイッチのON/OFFとはこの事を言うのだろうか。ついさっきまであれ程重い楽器を演奏して、何回も通し直してかれこれフルを10数回は行っていた。
もしかしたら俺より体力あるんじゃないか?など歴然とした体力差を見せつけられた所でまだまだ未熟さを実感した。
すると山吹さんがこちらを向き手を折り招いている。座っており訛っていた体を柔軟しながらステージの方へと向かっていく。
「ごめんね〜。退屈させちゃって〜」
「いえ。そんな事は無いですよ。クオリティが物凄く高くて自分がこの場所にいるのがおかしいぐらいです」
「いやいや。そんな事は無いよ〜。」
と言いつつも少し緩んだ表情を見逃さなかった。やはり自分達の演奏を賞賛されたら嬉しいと言うのは当然。
「ね!キラキラドキドキしてたよね!?」
死角から1人の女の子が視界に入ってくる。
「ですね〜。キラキラドキドキしてましたよ」
頬を緩め笑顔を見せると、彼女は曇り空でさえも晴れにしてしまいそうな満面の笑みを見せ無邪気に笑った。
彼女は戸山香澄さん。poppinpartyのボーカルを担当している。バンド内のムードメーカーであり、抑制不能という事もしばしば。切り込み隊長らしく何にでもガツガツ行くと山吹さんが言っていた。多少の違いはあるけどおおよそは掴めている気がする。そりゃあ初対面でいきなり好きな色や好きな食べ物を聞いて来る人なんて滅多にいない希少種。挙句にはもうニックネームで呼ばれる程だから呆れるというか凄い人だなとしか思えない。
「ねー。さーや!飲み物買いに行こ!」
「分かったよ〜。ちょっと待っててね」
「わーい!いくらでも待つよ〜!」
二人の会話は親子を見ているようだった。
純粋な友達という感じ。
「じゃあ。行ってくるね」
「あっ。はーい。」
「またねー!もっち!」
もっちと戸山さんは俺の事を呼んでいる。どの路線でたどり着いたのだろうか。
2人が部屋から出てから少し経った。ふとステージ上にある楽器を見た。
ベース・キーボード・ドラム・ギターと様々な個性豊かな楽器が並べられている。キーボードには星のシールが貼ってあったりドラムには激しく叩いて出来た傷の後々。
「だーれだ」
気づいた時遅し。視界は闇黒に包まれていた。頬に伝わる感覚を頼りに答えを探す。おそらくこれは手だなと確信し次は答えを導き出す。
「花園さんですよね。分かりますよ」
「ちぇ〜。難しいと思ったのになあ」
「いや。流石に声出してるんだしバレるだろ…」
「でもこの前クラスの子にやったら間違えてたもん。絶対出来ると思ったのにな」
「まず出会ってちょっとしか経ってない人にそんな事出来る人は香澄かおたえしか居ないぞ。お前らはコミュ力のバケモノじゃねえか」
飽きたのかゆっくりとその手を離してくれた。目に再び輝きが戻ると共にサラサラの茶色の長い髪とレモンイエローの瞳が目に映る。
彼女は花園たえさん。poppinpartyのギター担当。彼女の右に出るものが出る人が居ないレベルでギターのセンス、素質があるらしい。先程も適当にチューニングを合わせ曲を合わせていた。努力では生み出せない才能という部類での即ち天才に値する人なのだろう。ちなみに天然と言うおまけつきである。
「なんか悪かったな。おたえが悪さしてて」
「いえいえ。慣れっこですから平気ですよ」
「そうなのか?それなら良かった。じゃあ私はこれで戻るから」
「はいー。分かりました」
金色に靡く髪をふわふわと揺らしながら設置されている楽器の方へと戻っていったのは、poppinpartyキーボード担当の市ヶ谷有咲さん。ツンデレで人思いで優しい人と山吹さんは語っていた。あと戸山さんの暴走を止めたりする補正係なのだとか。
大変そうなバンド内の役割。お察しします。
「もっちゃんちょっといいかな」
「ん?どうしました?」
「2曲目から楽器の位置を変えるんだけど移動を手伝って欲しいんだ」
「お安い御用です。大丈夫ですよ」
花園さんが的確に指示を出しそれと共に楽器を動かしていく。俺のひ弱で惰弱な体では少し劣るものがあったが小刻みではあったが少しずつ進んではいる。同じ作業を市ヶ谷さんが行っているのだが作業の効率は歴然の差。やはりここでも差が出てしまった。男というカテゴリーだけで人は判断出来ない。普段から家に篭って生活しているような男性では、普段から運動している女性の方が比べた時の差がはっきりしてある。
「もっちゃん。ありがとね〜。帰りにジュース買ってあげる!」
「ありがとうございます…」
あれだけの作業であったが憔悴しきったという表現が正しいほど疲れた。口から吸って吐く息がペースを崩し呼吸を安定させない。「しんどかった」本当にこれに限る。とにかく今は休みたいと願うばかりで近くの壁に体を任せ寄りかかる。
「落ち着いたらまた戻ろう」
と自分に言い聞かせてぼーっと景色を眺める。先程の視点とは違って色がぼやけて見えこれはこれで綺麗な感じもする。
「おーい。おーい。起きてよー」
「うわっ!」
急に視界に手が見えたことにより思わず大声を出し反射し顔を竦める。
「大丈夫?ぼーっとしてたみたいだけど…」
「大丈夫です…。あはは…」
大声を出した事と意外な一面と取られてしまった事に恥ずかしさを覚えた。更には変な人とまで誤解されたかもしれない。
「これ水持ってきたからあげるね」
「ありがとうございますー」
「それにしても初対面の人にニックネーム付けちゃうなんてほんとに香澄ちゃんらしいよね(笑)」
「まあいろんな人がいますし、おかしなことではないですよ」
「そう思えるってやっぱり橋下くんは凄いなあ〜。私ならビックリして固まっちゃうよ…」
「でも牛込さんもバンドをしている時の表情とかとても素敵だと思いますよ」
「そうなのかな…?私なんてまだまだだし、みんなに助けもらってるばかりだけど…」
「バンドをしている時の牛込さんと普段の牛込さんは、今日1日見ただけでも雲泥の差ですよ。皆さん牛込さん以外だと務まらないって思ってるはずだよ」
「そ…そうかな…?そんなことないよ…」
と言いつつも顔が紅潮している。留まりを知らず顔を渡り頬、おでこを渡り沸騰しそうな勢いでやがて体全体へと渡っていく。
少しして顔を冷やし口語を落ち着かせた。紅潮して口が回らない先ほどと比べなくても分かるようにいつも通りに戻っていた。
「りみ〜。おーい戻ってこい〜。そろそろ休憩終わるぞ」
「あっ、うん。今行くね!」
ステージ上の椅子に座っていた市ヶ谷さんが呼んでいる。それに合わせて戻っていく。
「じゃあ。また後でね」
「はいー。また後でー」
そしてステージに上がり立て掛けてあるベースを手に取った。彼女がpoppinpartyベース担当
牛込りみさん。先程の会話で殆ど性格がわかったと思うが、自分を自虐し否定的に見てしまうらしい。それ故に気持ちは人一倍強いのだが行動出来ないと言った問題が発生し、損をしてしまうというケースが発生する。ボーカルの戸山さんと正反対の位置にいる性格のタイプ。
poppinpartyと言うダイアモンドの原石のバンドで山吹さんはメンバーとして活動している。勿論俺も応援していくつもりで居るしこれからは優先的に見てしまうのはしょうがない事だろう。所々で見つける"この5人でしかできない演奏をしよう"という言葉もぴったりな言葉なのかもしれない。ガールズバンドを通じて思い出が増えることも、とてもいい事なのかと思った昼下がりであった。
いかかでしょうか?
今後で伏線回収などやっていこうと思います!次回は早く更新できるといいな…。
ではまた会いましょう!
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7話 つかの間の休息
気を取り直してどうぞ!
「今日はもう終わろうか。今日の分はもう纏められたから荷物まとめよう!」
山吹さんの一言で5人は片付けを始める。戸山さんが「まだやりたい!」と言う意思表示をしているものの虚しく拒否された。しばらくして納得したのだろう。片付けを始めた。
花園さんが部屋の電話に手を取る。どうやら中の方に繋がっているらしく、ここから時間延長とか様々なサービスが利用できるみたいだ。簡単に言えばカラオケみたいなものだな。
少ししてから先程の電話の内容を伝えにまりなさんがやってきた。今日はもう閉めるからステージの片付けを手伝って欲しいとの事でまりなさんの目が俺に向けられる。
「勿論手伝いますよ。ここに居る以上はそういう身分なので」
「助かるよ〜。男手が居ないから沢山動いてもらうよ!」
という事で早速箇所を指示された。それ程動く訳でもなく先程のように血の気が引くような感じではないのだがまりなさんの目はマジだ。きっと酷使されるに決まっている。
「じゃあ。このセットを片付けてくれるかな?取り敢えず動かすのはまた後でやるからこれだけやってもらえると助かるよ」
「分かりましたー。頑張りますね」
頼まれたのはステージ裏のパイプの片付け。そこまで難しい作業ではないと思っていたので早く終わらせてしまおうと思い素早く行動へと移った。パイプの継ぎ接ぎを上手く解除し数10分掛からず、すべてを折りたたんだ。
「まりなさん。終わりましたー」
「おっ!早いね〜。ありがとう〜」
終了報告をして再び所定の位置へと戻る。カーテン越しに声が聞こえてその声が反響し耳へと伝わってくる。普段は見れない終了後の片付けであったり何もかもが新鮮である。これも大切なものの一つだと言っていたがその通りだと思う。
「こっちも終わったよ〜。そっちは?」
「うん。こっちもOK」
「じゃ。片付け終了!お開きで!」
掛け声と共にスイッチが切れる。先程の集中力が嘘のようにどこかへ消えて普段の女子高校生の会話へと戻っていく。「帰りに寄り道していかない?」「ここのお店ずっと行きたかったんだよね」とか取り留めのない会話をしていた。
「さて。帰るか」
ドアに手を掛けた瞬間に肩に手が触れた感覚がした。
「もっち帰るの?」
「そうですけど。どうかしました?」
触れた相手は戸山さん。発言の際に少しだけ首を傾げたような気がした。
「ええっ〜 どうしてさ〜」
「今日の予定は終わったって感じの雰囲気だったのでお先に失礼しようかなと」
「まだ終わってないんだな〜!これが!!」
急に思い出したように声を上げた。
完全に終了した雰囲気だけに「そうなんですか?」と驚きの声が出てしまった。
「そうそう!この後さーやのお家に行くんだ!だからもっちも一緒に行こうよ〜」
まじかよって言うのが正直な感じ。でも流石に山吹さんも迷惑だろうし断ろうと最初から決めていた。だが簡単に言える空気ではない。戸山さんは断る事は許さないとばかりの威圧を目から放っている。気まずいが言わなければならない。生唾を飲み覚悟を決め、言おうとしたその時戸山さんが向こうに向き手を振っていた。その手を先へと視線を渡していくと、終点は山吹さんへと繋がっていた。
「さーや!もっち連れて行って行ってもいいよね?」
これはまずい。始まりも終わりも終始戸山さんペースで独り舞台で話が進んでいた。
「構わないよー」
何事もないように山吹さんの口からはOKの文字が出た。
「やったー!これでもっち連行できるね!」
いや、連行って…言い方…。
なんとなく分かった。主導権は俺にはないみたいだ。こうなってしまったら仕方ない。もうなるようになってしまえ!どうにだってなってしまえ!とやけくそになり身を任せていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜※※※〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ニャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
猫の鳴き声で目が覚めた。目を擦りながらぼやけた視界を安定させていく。
「ええっと。ご飯あげないとなあ」
机に置いてあった猫缶に手を伸ばし上手く蓋を開けて猫の元へと運ぶ。
「ニャーニャーニャー」
尻尾を振り嬉しそうに餌を食べている。
「ニャーしか言わないけど美味しそうに食べているから取り敢えずは大丈夫かな。今度猫に詳しい人に聞くか」
「そう言えばこの猫の名前決めてないな。このまま名前無いってのも可哀想だし決めなきゃな」
この前は預かったことで頭がいっぱいになってしまいまいそこまで手が回らなかった。更にはそういう雰囲気でもなかったし今自分で決めてしまっても良くない気がする。
「今度山吹さんと会った時に話そうか。それと今日はキャットツリーを見に行かなきゃいけない」
小さい猫だけど成長するにあたって段ボールではそのうち限界がやってくる。まだ早いとも思ったが後に訪れる為に早めに検討しておいた方が良いと思ったから今日ホームセンターなりと色々巡り歩こうと思ったのである。
ふとカーテンを開けて外を見てみた。まだ日が出て少ししか経ってない気がした。俗に言う日の出ってやつだ。時間を確認しようと充電していた携帯を抜き取った。携帯のブルーライトが目に余りとても眩しいがそれでもと目をを睨ませながら表示に写った時間を確認した。
携帯の時間は6時46分を表示していた。顔を洗おうと思い携帯を持ちながらベッドの布団を捲って洗面所を目指した。いつもの事だが朝起きると寝ている間に来ていた通知を全て一つずつ確認していく。迷惑メールが入ってたりすると何となく今日は厄日だなと勝手に判断したりしている。
「ん?山吹さんから来てる」
"山吹さん"と登録した連絡先の右上に赤文字で1と通知されていた。何かあったんだろうかと思いながら開いたその内容は、「今日はポピパのメンバーと練習があるんだけど香澄とおたえが橋本くん見たい〜!って言うから予定空いてたらで良いので来てくれると嬉しいな」というものだった。以前から話に聞いていた方達の話だろうと言うのは既に察していた。
顔を洗いながらどうしようかと考えていた。山吹さんのメンバーの方達がどんな人なのかってのは興味はあったものの何となく身が竦む。理由は間違いなく劣等感によるもの。「悪く言われないだろうか」とかそんな感じのこと。
と言いながらもやはり恩義には勝てず「分かりました。邪魔で無かったらお邪魔させていただきますね」と返した。果たしてこの後の返信はあるのかと思いながら続けて歯を磨いていた。
歯を磨き終わり口を濯いでいた最中にバイブ音が鳴った。山吹さんから返事が来た。
「ええっと。家に来てくれるかな?今日はここで集合にしてるんだ。」
と返ってきた。
「分かりました〜。何時ぐらいに向えばいいですか?」
と構えていた携帯に素早く返信を打つ
するとまるで返信の早さで争っているかのように即急に返信が返ってきた。
「8時半ぐらいでいいよ〜。スタジオは9時から取ってるからね」
「了解です(`・ω・)ゞ」
意味もなく顔文字を使ってみた。それっぽいだろうか。
「よろしくね〜」
そう言い一旦返信が途切れた。タオルで顔の水気を拭き取り部屋に戻った。
時間はそれほど進んでおらず7時を少し過ぎたぐらい。時間に表して14分を今過ぎ15分になったところ。
突発的に出来た予定で猫のゲージを買うと言うのは夢物語になり先延ばしの話となってしまった。ベッドに寝転びながら冷静に考えてみたのだがそれこそ詳しい人に聞くならそのタイミングの方がいいのではないかと。無駄になってしまうよりかはその方がいいはずだ。
「ちょっとだけ外を散歩してみるか。この時間に外に出るのも久しぶりだしな」
この時間に外に出るのは久しぶりの事。学校の時間帯が変わったというのもそうだが単純に出る目的がないと言うのもある。
30分ぐらい適当にブラブラしようと思い、クローゼットに入っていた服装に着替えた。パジャマを洗濯カゴに入れて外に出てきた。
「眩しいな…。帽子かぶってくれば良かった」
陽射しが目に焼き付け思わず目を細める。目が破裂してしまいそうなんじゃないかと思うような絶やさない閃光が一層に増している。
特に宛はないため同じ道を行ったり来たりしてみたり野際に咲いている花を見て綺麗だなって思ったりしているだけ。方向音痴がまとわりつき普段からあまり遠くには行かないようにしている。
「蒼太!!久しぶりだな!」
見つけた公園のベンチに座っていた俺に声をかけてきたのは中学の頃の同級生の智也だ。
「おお〜久しぶりだな。」
「連絡は取り合ってるけどこうして合うのは久しぶりだしな。少し話そうや」
「了解〜」
こうして久しぶりに会う友との会話に勤しむのであった。久しぶりすぎて何から話せばいいかは分からないが取り敢えず適当にで良いだろう。
いかがでしょうか?
色々難しいなって思う部分も上手く構成していきたいなという事で今後も早期更新を目標にやっていきたいと思っております!!
ではまた次回お会いしましょう!
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8話 久々の再会
約2年近く新作を投稿しないとかいうあれでしたので、かなり僕も悩んでました。(正直ネタが思い浮かばないとこはあった)
「へー。お前も大変なんだな。俺も新生活で心細かったってのはあったしお前の元気な顔見られて安心した」
「そっくり右に流す」
「俺は友達がようやく出来たとこだよ。ほんとに友達が居ないと生活が出来ないってのを肌で感じた気がする」
こんな天才でもコミュニュケーション能力は一般に近いのか。少しの安心感を覚えてしまった自分が情けない気もしてしまった。
それから少しして色々な日常の事。近辺であった事。面白いと思うような話を再度繰り返した。他人から見てしまえば面白くも中身も無い話。でもその1つ1つに意味があり普段の不安や普段の気遣しさを紛らわすような言葉があり話が次から次へと弾むように流れていく。
(バンドが好きな彼の為に一応話しておくか)
「そいやあさ。poppinpartyってバンド知ってる?」
「あー。ごめん分からんわ」
「そうか。いや実はな」
それからpoppinpartyについて軽く説明した。がやはり分からないと言う意思は変わらず断念した。智也が普段行ってるcircleではココ最近は主に2つのバンドを推している。
¨Roselia¨ ¨afterglow¨
Roseliaは本格的なバンドでプロの世界でも肩を並べれるんじゃないかと囁かれているレベルらしく、afterglowは多少の荒削りさはあるものの幼馴染や友達の仲で結成されたバンドが短期間でここまで出来るのは天才の域と評されていた。
智也が熱弁している姿を見て彼は何も変わっていないなと心から思えた。たった1年ではあるが中学生から高校生になり色々な悩み事も増えた。中身を見てしまえば1年では足りない程の容量だろう。だが昔話した事・癖・趣味は変わっていない。そして心から安堵できた。
「そいやあ今日poppinpartyの練習風景を見に行こうって誘われたんだけど智也来る?」
「ごめん。今日はちょっと学校の奴らと集まる約束してるんだ。せっかく誘ってくれたのに悪いな」
「いやこっちこそ。また機会があれば見に来てよ。必ず満足させるからさ」
「おっ!言ったな?」
「もちろん!次また会える時連絡くれよ」
「じゃあそろそろ行くから。また今度!」
そう言い智也は腰をかけていたベンチから立ち上がり歩き出した。
完全に姿が見えなくなるのを確認してポケットに入れていた携帯を取り出した。待ち受け画面と共に表示されていた時刻は7時58分。動き出すのにはちょうどいい時間帯だ。
「ここから歩いて行けば8時15分~20分辺りにつけるはず」
再びポケットに携帯を仕舞い30分ほど居た公園を後にした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「いらっしゃいませ~。って橋本くん来た~」
「お世話になります。よろしくお願いします」
軽く会釈をして山吹ベーカリーの店内に入る。
「結構早めに来たね~。まだ誰も来てないから中入ってていいよ~」
「大丈夫ですよ。外で待っておきますね」
「ええー。まあまあそう言わずに中入りなよ」
「それならお言葉に甘えてそうさせてもらいます」
半ば押し切りのような形だが関係者以外立ち入り禁止ラインへと入ってきた。
と言っても自宅兼パン屋なので中は何の変哲もない自宅である。
その後5分ぐらい経たずにお店の入口で声が聞こえた。「さーや!おはよう!」と言う声が。噂に聞いていたバンドメンバーの方であろう。と同時に山吹さんが「来たよ~」と言う声を発した。
「そうだそうだ。紹介しておくね。私の友達の橋本くん。今日はバンドの練習を見たいということで誘ったけど良いよね?」
一通り山吹さんが話をつけてくれたお陰で軽い自己紹介のみで内容をある程度理解してくれた。それ以上にメンバーの方はとても良さそうな人達でそっと肩を撫で下ろした。詰め詰めでのスケジュールの中
本来ならここでパンをご馳走してくれるはずだったが客様に自慢の演奏を見て欲しいと言う戸山さんの発言により無くなりスタジオへと足を運ぶ事にした。
道中は10分~15分程で途中信号を挟んでも20分はかからないほど。その間にも詰め込んで考えている人、一方でリラックスして談話を取っている人もいた。一定の距離を詰めることも大事だと思うが初対面という事実に変わりはない。「優しい」「コミニュケーションが取れる」 この様なタグがあってもそう簡単には踏み出せないのが現状なのであると共に隔離されている感じがして少し背徳感を感じたのに間違いはなかった。
いかがだったでしょうか?
この系列は何も思い浮かばなかったに近いので今後是非期待していただけたらなあと思います。
ではまた
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2章
9話 新しい自分
・1章の伏線をメインにしたいと思っております。
・主にpoppinpartyのメンバーとの関わりが主ですがとあるバンドのキャラも登場するかも…?
(ヒントは1章で出てきたある生物に関係しています!!)
少し言いすぎましたかね(笑)では2章もどうぞよろしくお願いします
中2のある日。約2年ちょっと前。
ジリジリと煩い蝉と焼け尽くすような日差しが煩わしいある日の夏であった。
いつも通りに通っている塾の帰りの電車へと進んでいる時の事。
「そこの君〜!」
後ろから自分を呼ぶ声が聞こえたのでクルっと体を180℃回転させ後ろに振り向くと、ガチガチのスーツ姿の自分より少し小さいぐらいの女性が立っていた。
「どうしたんですか?」
今までの自分と言えば「The真面目くん!」みたいな例えにしていただけるとありがたい。勉強!学校!寝る!みたいな1日の生活スタイル。
一方の服装、身だしなみは普通の中学生なのでそのイメージがオーラとして出ている訳ではない。
「君!アイドルとか興味ない!?」
「ないですね、すみません」
「げっ!?即答!?」
100点満点中120点のノリの良さ。自分は漫画の世界にでもいるのだろうか。
しかしながら負けじと怯むことなく直ぐに切り返してきた。こういう人間面倒臭い系の人間と何回も場数を踏んでいるのか何となく想像はついた。
「まあまあ!ちょっとだから!」
「勧誘が完全に悪徳じゃないですか…」
怪しい人には着いていくなと昔教えられた言葉はこういう時に役に立つんだなと思いながら瞬時に握られた右手が右手がみるみると引きずられていく。
制御が効かなくなる。
今はとにかく面倒事にならない事だけを祈ることしかできない気がした。
~~
市内なんて塾以外必要以上に滅多に出ないのでいつになっても緊張感のある人の波に慣れないなあと思いつつも目的地である場所に着いた。
「着いたよ!中入って!」
言われるがままに中へ入るとギターを真剣に見つめている人。ドラムをばしばしとよく分からない棒で叩いてる人様々な感情が含まれていた。
指定された席に座り軽く周りを眺めてみた。
「あれってなんですか?」
特別興味はなかった。単純に気になっただけなのだがそのドラムばしばしが目に止まった。
「おっ!いいね〜素質あるよ!」
「あれはスティックって言ってドラムを叩く時に使うんだよ。あの棒って実は結構高くて1万近くしたりするんだよね〜」
(1万するんだ、あんな木の棒が?)
価値観の分からない人間にとってはおかしくもない普通の反応だろう。なんせ好きで買ったものですら飽きてしまえば、「何でこんな物買ったのか」みたいな感情になる。価値観とは自分の欲でしかないかもしれない。
緊張って程ではなかったが、してなかった訳でもない。適当に話を済ませポケットに入っていたスマホを取りだすと画面を開き、にらめっこして現住所を調べてみた。
「circle?」
ガールズバンドの聖地!!だとかこのバンドはここから産まれました!!だとかそんな情報が書いてあった。レビューはそこそこ良いみたいなので悪い方向に進む事はないかなーとは思ってるけど…
そのガチガチのスーツ姿の女性の人は月島まりなさんと名乗り、この施設の従業員をしているらしい。かつ偉い方らしく社長並みの権力を持っているだとか豪語していた。
でその月島さんがなぜこの僕に目をつけたかと言うとシンプルにスカウトをしにきたらしい。と言ってもアイドルになって!とかではなく、「興味はないですか?」みたいなニュアンス。にしてはやたらとゴリ押し感があるけどそこは本人の性格が出るのかもねとも。
「そいや!名前聞いてなかったね!」
「ああ、僕は橋下蒼太って言います。中学二年生です。」
「蒼太くん!最高だね!」
確定的な人見知りだと気づいたのはかなり昔のことである。小学生に入ると周りのノリについて行けず、直るどころか酷くなる一方。コミュニティが作れるはずもなく隔離される孤独感が募るばかり。
そして何が最高なのか…が正直な感想。昔からシャイな所があって、嫌いなわけじゃ無いんだけどノリが良すぎる人も苦手で…、、一定の関係性は保ってほしいとどんな人でも思ってしまう。
「蒼太くん!是非これ見てほしいの!」
月島さんは小型のDVDプレイヤーを取り出し映像を流し、片耳ずつイヤホンを付け、5分少々の映像を見せられた。
「これはすごい…。もう凄いですね…」
「でしょ〜?蒼太くん中々筋がいいね〜」
感無量と言うか。
今までの経験にはまるで無かった。
昔から音楽はよく聞いてたが、クラッシック系とかそんなのばかりでアニメとかjpopはなんだか軽い気がしてならなかったが今こんなに自分に入ってくる音楽だとは思ってもいなかった。
しばらく月島さんとの積極的に話を聞いていて、「このバンドがオススメ!」「これから伸びる!有望株!」など参考になるものをいくつか紹介してもらい、忘れないようにすぐさまメモを取った。
今日あった事。
教えてもらった事。
偏見を振り払ってもらった事。
色んな新しさに出会えて感動すら覚えたかもしれない。
音楽と偏に言えども、様々なスペシャリストがあってこそ。これは音楽に関わらず物作りとして当然の心得だと思う。実際昔誰かがそんな事を言っていた。
〜△△△〜
「じゃあね〜。気が向いたらいつでも遊びに来ていいよ!」
「わかりました。ありがとうございます。」
一連の流れで本日の有意義な時間も終わってしまった。
「あっ!そうだ!ちょっと待って!」
と言いポケットの携帯を取り出した。電話番号教えるね的な事だとなんとなく察した。
「これ電話番号!いつでも連絡して!」
033から始まるダイヤルを数えながら1文字1文字文字を入れる。終わると画面に月島まりなと表示が出た。
「でもお店の番号じゃなくて月島さんの番号で大丈夫なんですか?」
「そりゃもちろんそうだよ、新規ユーザーを獲得する為にはこう言う事もしないとね!」
中学生故なのか正直理解が出来なかった。
ただ昼間会った時のような、手当たり次第当たってけ戦法みたいな人だとこういう手もあるのかと自己解釈して登録を押す。
「そうなんですね、お世話になった分もまた今度返しに来ます。今度はちゃんと自分の目で確かめたい事がありますから」
「おっ!良いね〜その目は確実にトリコになってる!」
月島さんの携帯番号と気持ちほどの飴をもらいお店を出た。この時世、飴が置いてるお店なんててっきり見なくなったがそれでもお客さんは大事にしたいみたい。
少し過剰なお気遣いに心を引きながらも感謝の気持ちを込めて今日は帰ったら久しぶりにパソコンで動画サイトを開こうと思った1日だった。
いかがだったでしょうか?
今回は蒼太くんの過去について少し触れさせて頂きました。
アイドルとパンが好きな蒼太くん!もうこれはあれですね、あれなんですよ!!作者が1番楽しみにしてる奴なのです(笑)
ではまた次お会いしましょう。
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10話 新しい自分(2)
「もっち〜もっと遊ぼうよ〜」
「眠いから勘弁してください…」
「え〜なんで〜」
戸山さんは顔を落とししょんぼりしてしまった。
なぜこうなってしまったかって?
今から説明しよう。
それは夕方の事。抵抗する術もなく山吹さんの家に連行されてしまった。山吹ベーカリーが1階、2階が実家みたいな感じで兼用していると昼頃聞いていた為それは心配無かったのだが、やはり年頃の男が女子の部屋に行くなんて信じられない話でもある。戸山さんはそれを知った上で誘っているのなら更に恐ろしくなってしまう。
ご飯もご馳走してしまった。
「いいよいいよ」と軽く笑いながらご馳走してもらったが申し訳ない気持ちがどうしてもあるので今度山吹ベーカリーで爆買いしよう。
そして今に至るわけである。
部屋の時計はそろそろ23時を指す頃。
いつもは22時には寝る為目を開くのが一杯一杯の状況。横になったらすぐ寝てしまいそうだ。
眠気と戦っている俺を他所に5人はトランプで遊んでいる。
「わー!!また負けた!!!もう1回!!」
「しゃあねぇな、もう1回だけだぞ」
戸山さんは眠気なんて言葉が存在しないぐらいハイテンション。市ヶ谷さんもそこまで眠くなさそうだが何回もやり続けているババ抜きに少し面倒臭いような感じが見えてうんざりしていた。
「僕もう寝ますねー」
さすがにもう限界だ。眠気とかそんな事を考える余裕もなく、ただ「寝たい」という気持ち一心になっていた。
「えー??せっかく可愛い子達と同じ部屋と一緒に居るんだよ?寝ちゃっていいの?」
「眠気の方が今は強いですね。おやすみなさい」
とんでもない爆弾発言をする花園さんを押しきって盛り上がっている部屋を後にして寝室に向かった。
流石に5人と同じ部屋で寝る訳にも行かない為に屋根裏の部屋に案内してくれた。物置になっており少し埃臭さはあったが、それでも寝室には十分すぎるほどのスペースだった。当初はご飯だけ頂いたら帰ろうと思っていた。しかしこんな夜に1人で返す訳にも行かないと、山吹さんに止められてしまった。男とは言えまだ15。山吹さんに言われた事はご最も過ぎたのでお言葉に甘えて今日は泊まることにした。
「でも友達出来て良かったな」
その日は不思議とよく眠れた気がした。
鳥のさえずりと屋根裏に入ってくる日差しで目が覚めた。携帯は6時46分を示していた。
少し足りない睡眠時間が関係しているのか重たい体を起こして眠い目をこすりながら布団をたたみ階段を降りて昨日遊んでいた部屋へと歩いた。
「おはよー」
部屋に入る前に廊下で山吹さんと会った。
「おはようございます。朝早いですね」
「まあねー、パン屋だから笑」
「そいえば朝ごはんあるから食べていきなよ」
「そうですね。ありがとうございます」
こういう時は謙遜せずに甘えた方がいい事に昨日気づいた。山吹さんが堅苦しい人では無いのは会った時から知っていたので断る方が逆に困るのかもしれない。
顔を洗って昨日コンビニで買ってきた歯ブラシで歯を磨いて朝食を食べた。テーブルには大好きな塩パンが置いてあった。
「塩パン僕好きなんですよね」
「知ってる。来たら毎回買ってるもんね」
「嬉しいですね。ありがとうございます」
軽く学校の話や世間話をして15分ほどの朝食の時間が終わった。
朝も終わった9時頃、動き出すにはちょうどいい時間だ。今日はやらないといけない事があるため全ての予定を断っていた。もちろん山吹さんの用件もだ。
「僕そろそろ帰りますね」
「もうこんな時間か、玄関先まで見送っていくよ」
「全然大丈夫ですよ。本当に今回はありがとうございました。戸山さん達もありがとうございました。と伝えてもらってもいいですか?」
「うん、じゃあ明日学校の時にね〜」
と言い山吹ベーカリーを後にした。山吹さんが見えなくなるまで手を振ってくれていたのに気付かないふりをしていたが、次会う時にありがとうございますと言っておこう。
〜〜〜
「ただいま〜」
9時半頃家に帰ってきた。玄関は閉まっていた為姉はまだ帰ってきてないのかな?と思っていたと同時に姉が部屋から玄関に向けて顔を出した
「あ、おかえり」
「うん、ただいま」
軽く挨拶を済まして家に上がる。
さて、ここからが本題だ。
今日の1番イベントでもある。
以前学校裏で保護猫を家で少し飼っていたのは記憶に新しいだろう。姉には言っていなかったのだがどうやら母親から知ってしまったらしく「それなら保護猫センターに行こう!」となっていた。それが今日と言うわけだ。
「さあ行くよ〜」
姉がまだまだ小さい猫に声をかけた。子猫はにゃーにゃーと甘えた声で姉に返した。
あの後病院に行ったのだが、怪我も病気も無く健康な体だったので通常通り子猫用の餌をあげていた。猫は飼ったことないのだがやはり動物というものはとても愛らしかった。ストレスの緩和剤になっていたのは言うまでもない。
車で30分ほどして、保護センターに着いた。軽く手続きを済ませ、いよいよ本題の書類に目を通した。かなり事細かく書かれておりた、2、3時間ほど説明→書類の流れで整理していった。本心は本当に飼いたい人に飼って欲しい。良い人に貰われて欲しいと思っていたが、いざ離れるととても寂しくなるのは性だろう。
と言っても今更引き返す事も出来ないので保護センターを後にした。可愛かった猫の顔を思い出してしまうがこれも悪いことではないと自己肯定して、その場を後にした。職員の人から「飼い主が見つかったらまた連絡しますね」と言われたのでもう子猫も安心だろう。
「あ、そういえば」
今日1日めっきりスマホを見ていなかったのでLI〇Eの通知が何件か溜まっていた。かるくスクロールしながら眺めていた。
「誰だこれ」
何人か許可していない人からのLINEがあった。だいたい察しはついていたが一応名前を確認してみた。戸山香澄の4文字がすぐさま確認できた。なんかこう、リテラシー無くてフリーな感じってすごいなって思ったんだよ。うん。
俺自身は全然構わなかったので許可し「昨日は楽しかったです。ありがとうございます」と返すと2秒?3秒かからないぐらいで既読が付き「私も楽しかった!また遊ぼうね! 」と顔文字付きで送られてきた。おそらく生きていて俺はこんな顔文字使わない。これがウェイ系かなんて思ったりもした。
家に帰ると辺りは真っ暗だった。腕時計は20時を指していた。今日の出来事を山吹さんに報告しなければと思いLI〇Eを開いた。すると予知されたかのように山吹さんから1件通知が入っていた。不思議に思い確認すると
「子猫の飼い主見つかったって」
継続性は本当に大事。
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