東方独団記 (十六夜凜)
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第零章 始まりの章
第一話 孤独な少年の幻想入り


初めまして。十六夜凜です。ハーメルンがやっと使えるようになったので書いて投稿してみました。まだ使い方もちゃんと分かってませんしつまらない作品ですがよろしくお願いします。


―――一人は嫌だ。

 

―――どうして皆居なくなる。

―――誰か……

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

俺は宮代琴羽、名前のせいでよく女扱いされるが男だ。

頭の悪い学校に通う、ごく普通の高校生だ。

子供の頃から女のような中性的な顔をしていて、周りからは姫呼ばわりや男の娘扱い。

俺は女扱いされるのが嫌で、どうすればいいか子どもの頃から悩んでいた。

結果俺は、強くなろうとした。

知恵を付けることや権力を得ること。

そんなに難しいことなんていらない。

腕や脚を鍛えること。

ただそれだけでいい。

強くなれば女扱いされることも、嘗められることもない。

そう思ったからだ。

それからは喧嘩を続けた。

喧嘩をして、力をつけて、自分のことを知らない奴が居なくなるぐらいにまで強くなれた。

一人前の男として見てもららう。

それがひとつの望みだった。

だけど、喧嘩をし続けて、悪い噂ばかりになった俺は校内でも、校外でも、争い続けた。

そんな俺に近づこうとする人は、当然いなかった。

俺はそんなこと微塵も考えていなかった。

ただ強くなりたくて、喧嘩をしていただけだった。

ただ男として見られたかっただけだった。

一人になりたいなんて、思ってなかった。

そして今もまた、俺は喧嘩をする……

「お前が宮代か、随分弱そうだな~。本当にそんなに強いのか~?」

体の大きいいかにも小物感のある男が絡んできた。

どうやら他校の奴らしい。

俺とは違う制服を、乱しながら着ていた。

そんな奴に、俺は微塵の興味もなかった。

(他校の奴か。面倒くさい。適当にやるか。)

「おい聞いてんのかよ。」

そんな相手を面倒くさいと感じた俺は、そいつの懐に潜り込み……

「な!?」

「喧嘩を初めんのにスタートの掛け声があると思ったか?」

そいつの腕を折った。

こうゆう奴は何度も見てる。

だからこの後の行動も分かっていた。

逃げるか、反撃か。

その二つだ。

「てめえ!?」

殴ってきた。

この場合のこいつの行動は、完全なる外れだ。

拳が俺に当たる寸前―ガシャァという音がした。

殴り飛ばしたそいつの体が後ろにあった鉄の棒に当たったのだ。

工事中だったのだろう、そいつの体は腕だけでなく足の骨も折れていた。

(自分よりも腕力が強い相手を見つけたなら、逃げるのが正解だろうに。反撃にしても、殴るのは愚策もいいとこだろ。そんなんだから弱いんだよ。)

俺は心の中で、その相手を蔑んだ。

(どうせもう動けない、帰ろう。)

そう思って俺は帰路についた。

どうせ明日も喧嘩は売られる。

とっとと帰ろう。

 

 

 

 

「――!?」

帰宅途中、上から声がした。

女の声だった、間違いなく喧嘩売りじゃない。

「――別の世界に行ってみませんか?」

突然上から声がして驚いた、だが、普段なら別にどうと思いもしなかっただろう。――その女がよく分からない空間から体を出していなければ。

「お前誰だ!?それは何だよ!?」

動揺を隠せずに叫んだ。

「お前とは失礼ね。こんな美人が声を掛けたんだから少しは喜んだら?」

その自称美人の女は、そういいながら空間から出てきた。

確かに美人ではあった、少なくとも町を歩けば誰もが見るほどの。

しかし、残念ながら俺はそうゆうことには全くと言って良い程興味がない。

人と関わってこなかったんだ、当然のことだろう。

俺はとりあえずその人?に色々と聞くことにした。

「……別の世界って言うのは一体何のことだ?新手の勧誘か?」

落ち着きを取り戻し、とりあえず一番気になっていたことを聞いた。

「言葉のまんま。異世界に行きたくない?って聞いてるの。」

(こいつが変な空間から体出してなけりゃ別の世界なんて信じなかったな。)

正直今の退屈な毎日に嫌気がさしていた俺は、そんな突拍子もない現実を面白く思った。

新しい暮らしを、新しい場所を、今より楽しめる場所を。

俺は求めた。

だから俺は、次の質問で行くか決めることにした。

「この世界より……面白いか?」

「ええ。少なくとも普通に学校に通う高校生でいるよりは楽しいわ。」

女は即答した。

そして俺も、この回答を聞いて即答した。

「行ってやる!」

瞬間、女は微笑して空間を作った。

そしてそれに入った俺は――酔いで意識を失った。

 

 

 




ありがとうございました。つまらない作品ですがこれからもよろしくお願いします。


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第二話 博麗の巫女

二話目です。何か暇な時間が多いから毎日更新するかもしれません。最近近くの野良猫が家に来ます。どうすりゃいいですかね?ではでは~


「頭痛い。」

と、俺は誰に言うでもなく呟いた。

「まさか、私の隙間で酔う人がいるなんて思ってなかったわ。」

今俺はあの変な空間(隙間?)というものによって、長い階段の前に立たされていた。

隙間を使っていた女性は、八雲紫と言うらしい。

紫の話によれば、俺みたいに、外から来た人間のことを、外来人と言うらしい。 外来人は、博麗神社にいる博麗霊夢という人のところに、行かなければならないという決まりが在るらしい。

らしいらしい言ってるのは、全部紫が言っていたことだからだ。

ちなみに紫は妖怪らしい。

(いまいち信用出来ないんだよなー。)

そう思っていたらあれだけあった長い階段をいつの間にか登りきっていた。

「霊夢~?」

紫が呼ぶが家主からの返事はない。

「貴方お金持ってる?」

急に聞かれて少し吃驚した。

まあ財布は持っていたから数千円程度は持っていた。

「持ってるけど、どうすんだ?」

言ってから何故必要なのかなんとなく分かった。

「…賽銭か?」

俺が聞くと、その一言で把握したのか、「ええ。」と頷いた。

おそらく金に目がないのだろう。

金で釣られる巫女でいいのだろうか。

俺は紫が頷いたのを見てから、賽銭箱に二百円放り投げた。

カラーンという音を立てて、賽銭箱に二百円が入り込んだ。

瞬間、奥から赤い何かが飛んできた。

と同時に賽銭箱にしがみつく。

もしやと思い紫に聞いてみたら、当たりのようだ。

「霊夢外来人のお客さん来てるわよ。」と紫が呆れ顔で言った。

霊夢と言われた赤い服を着た少女は二百円でどこまで喜ぶのか、お経のように俺に感謝の言葉を言っている。

そこまで酷いのか。

それから霊夢を落ち着かせるために、紫が五分位説教をしていた。

もちろん俺はガン無視された。

 

 

 

「恥ずかしいところを見せたわね。私は博麗霊夢。この神社の巫女よ。お賽銭二百円もありがとうね。」

「いや二百円位はいいんだが、とりあえず俺がここに連れてこられた理由を教えてくれ。」

「そうね。」

と言い霊夢は急に持っていた大幣を俺に向けてきた。

「何だよ急に。」

何をしているか分からないが何か考えているようだ。

「どう?」

紫が聞いていた。どうやら紫は何をしているか分かっているようだ。

「あるみたい。」

何かあるみたいだ。何が?

「…その様子だと理解してないみたいね。」

紫に笑われながらそう言われた、むかつく。

「…仕方ないだろお前と違って霊夢と会ったの初めてなんだから。」

「それもそうね。」

また笑われながら言われた。殴りたい。

「能力についてよ。」

霊夢が言った。

「能力?」

「そう。」

(…………は?)

「つまり何か?俺は能力があると。向こうの世界では一度もなかったぞそんなの。」

「この世界に来て開花したんでしょ。よくある話よ。」

「まあ、私が幻想郷に連れてくるぐらいでしか来る人いないけどね。」

「はあ、何かもう慣れたわ。で、俺の能力って何なの?」

「武器を創る程度の能力よ。」

「…割りと強くないか?何でそれが程度なんだ?」

「この程度にはそれ以上のことは出来ないっていう謙遜の意味があるのよ。だから気にしなくていいわ。」

「そうか。でも必要あるのか?襲われるわけでもないし。」

言った後なぜか二人共静止した。

「あ?何だよ、変なこと言ったか?」

「…この世界は下等妖怪とかが人を食べようとしたりするから出来る限り気をつけて。」

(下等妖怪?そんなのがいるのか。紫の言ったことは本当だな。)

本当に向こうの世界より面白そうだった。

「分かった。出来る限りは気をつける。」

「ええ。そうしなさい。面倒ごとは持ち込まないで欲しいから。」

「貴方戦う気でしょう。その顔見れば分かるわよ。」

紫にばれていた。

ここまで話てて、霊夢の性格がある程度分かってきた気がする。

そして二人の関係性も。

「まあ、とりあえず人里に行ってみたら?」

「人里?」

「そう。人間の里よ。そこなら仕事とかも見つかるしね。人里で住む場所と仕事を見つけなきゃ無職家無しの状態になるわよ。それは嫌でしょ?」

「…野宿は確かに嫌だな。場所は?」

「ここからそんなに遠くはないわ。まあ、案内位は私がするから大丈夫よ。」

「悪いな。」

「じゃあ早く行きましょ。急がないと日が暮れるわ。」

「分かった。」

「じゃあ私はもう帰るわね~。」

「じゃあね。」

「あ、おい、俺が連れて来られた理由……」

言いきる前に紫は姿を消していた。

「私達も行きましょ。紫ならその内来るから。」

「……ああ。」

 

 

 

 

 

 




絵は苦手なんで主人公のたち絵は書けそうにないです。三話もお願いします。では。


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第三話 能力の開花

初戦闘回です。何気に主人公の能力強いです。しかし自分の文章読み返してみると文法おかしかったりするんですよね~。ではでは~


博麗神社より出て、快晴の昼頃俺は―――霊夢と共に森を歩いていた。

博麗神社に居たときに人里はここから少し行ったところにあると聞いていたが、実際は飛んだ場合はだった。

今歩いているこの森は魔法の森と言うらしい。

霊夢が言うには「森直進した方が速いし、香霖やアリスも家が近くにあるから挨拶してくれば?」らしい。

香霖やアリスとは誰だ?と思ったが会えば分かることだ。

どうせ幻想郷の住人には人以外にも挨拶はしようと思っていた。

何故人以外もなのかは、紫がそもそも妖怪だからだ。

森を歩いていたら一つ家があった。

霊夢の話だと森の中にアリスの家、人里側に森を抜けると香霖堂という店があるらしい。

となると多分アリスの家だろう。

迷わず家に向かう霊夢にとりあえず付いていくことにした。

どうせ道が分からない。

何故霊夢はこんなに嬉々として歩いているのか?

「アリスー居るー?」

霊夢が叫んだ。と思ったら「シャンハーイ」と言いながら一つの人形が出てきた。

(……これがアリス?)

と思っていたら「上海アリス居る?」と霊夢が言った。

なるほど上海と言うのか。

「シャンハーイ」と言いながら人形は部屋へ戻って行った。

「居るみたいね。」

どうやらアリスとやらは部屋に居るらしい。

というかなんで今分かったんだ?

「じゃあ琴羽は少し待ってて。」

「…は?」

「アリスって凄い人見知りでね。家からあまり出ない程なのよ。だから貴方のことに関しては言っておくから少し待ってて。」

「……分かったよ。」

まあ、別に挨拶位しなくてもいいだろ。

「じゃあ暇潰しにその辺ぶらぶらしてくるわ。」

「それなら人里にもう行っとけば?」

「道分からんし知らない不良が一人で来たら皆怖がるだろ?だから待ってるよ。」

「…ならあまり遠くまで行かないでね。」

「ハイハイ。」

 

 

 

 

俺は霊夢が部屋に入ったことを確認してから「行くか。」と呟いて歩き始めた。

周りを少し見ただけで、そこが自分の知る世界じゃないことは一目瞭然だった。

見たことない花や草、キノコ、虫。下手したら空想上の生物も居るのではないか?

「!?」

草の方から物音がした。

俺は咄嗟に構えた。

(下等妖怪か?)

そう思ったが出てきたのは商人と思われる男だった。

その男の顔はひどく怯えていて、何かから逃げてるようだった。

「あんた、大丈夫か?」

「助けてくれ追われているんだ!」

(妖怪か?とにかく霊夢を呼びに行こう。)

俺は霊夢のところに行こうとして後ろを向いた。

(………?なんだ?)

しかし少し嫌な感覚がきて、俺は再び男を見た。

そこには――――血しぶきをあげて倒れる男の姿があった。

嫌な感覚というのは、男の出血によるものだった。

「!?」

俺は頭で考えるよりも先に男を喰っている狼を殴り飛ばしていた。

助けられるかもしれないと思ったからだ。

しかし男は即死していた。

「人の食事邪魔するたぁいい度胸じゃねえか」

(―――まずい!)

「そんなに喰われたきゃとっとと死になぁ!」

まずいと思って俺は後ろに飛んだ。

瞬間、さっきまで俺が居たところに鋭い爪が刺さっていた。

「避けんじゃねえよ!」

蹴りが飛んできた。

反応しきれず直撃をくらった。

直撃をうけた俺の体はボールのように飛んでいった。

かなり離れたところにあった木にぶつかって止まったが、体中にとてつもない激痛が走った。

だが俺には痛み以上に別の感情が沸き上がっていた。

その感情は――怒り。

目の前で人間を殺されたことからくる殺意。

何故ここまで自分が怒っているのかも分からない。

しかし体は思考より先に動いていた。

俺は無意識に能力を使っていたのだろう見に覚えのない刀が手に握られていた。俺はただ、本能に動かされるままに、走り出していた。

 

 

 

「どこ行きやがった?折角今日は二人も人間を喰えると思ったのによぉ。」

(見つけた。)

「ああ?」

俺はそいつに姿を晒した。

「おお!自分から喰われに来るたぁ本当に死にたがりだなぁ!」

―殺す

「今度こそ死ねぇぇぇ!」

「てめぇが死にやがれぇ!」

俺は刀をそいつの頭目掛けて振り下ろした。

「―ッ!」

爪によって弾かれた。

続けざまに蹴りを放った。

人間の脚力じゃ妖怪には効かないだろうが、狼の体は後方に大きく吹き飛んだ。

殺意から目を覚まし、心を落ち着けてから狼のところに行こうと考えていた俺は、戦う前に能力のことを考えていた。

その時、本能により出現した刀を見て少しの違和感を感じた。

刀を持っている、いや刀を造り出した俺の右手から、普段からは考えられない程の力を感じた。

だから俺は自分の能力は武器を造る能力だけじゃないと判断した。

自分自身の力を強くする能力。

霊夢でさえ把握出来なかった俺のもう一つの能力は、

[自身に武器の力を付加する能力]

あの刀を持った手には、普段以上の握力や、金属の擦れる音が聞こえた。

おそらく刀の性質の一つ、金属としての硬度が付与されていたのだろう。

俺は吹き飛ばした狼に足に弾丸の力を加え、一瞬にして追い付いた。

「止め…!」

もう遅い。

俺は腕に槌の力を加え、容赦なく刀を振り下ろした。

激しい轟音が辺りに響き渡った。

 

 




ありがとうございました。はい終わり中途半端です。仕方ないんです!…モンハンやドラクエがしたいんですよ。


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第四話 少年の苦悩

こんにちは凜です。主人公これからもっと強くなる気がします。ではでは~


殺した。

俺が殺した。

死なせた。

生物を。

あいつらと同じように。

死なせた。

殺した。殺した。殺した。殺した。

「アアアアァァァァァァ――!」

殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した

俺が、殺した。

生物の死を見たくないと思っていたのに。

もう死ぬところを見たくないと思っていたのに。

殺した。

殺してしまった。

「アアアアアアァァァァァァァァ―――」

 

 

 

 

突然轟音が鳴り響いた。

「何!?今の音!?」

(まさか、琴羽に何か!)

「アリス、少し様子を見てくるわ。ごめんね!」

私は家を飛び出した。

そして急いで音のした方へ走った。

「――ッ!」

少年の叫び声が聞こえ、その方角に足を向けた。

「――――!」

少年の姿が見えた。

しかし私は、その少年の、少年の前を見て、再び絶句した。

そこには――――少年により割られたと思われる地面と、その上に、真っ二つになっている狼の死骸があった。

その少年は、泣きながら叫び続けていた。

見間違えるはずもない。

その少年は琴羽だ。

琴羽が私を視界に入れた。

「霊…夢…」

と声が聞こえたと思ったら、琴羽は倒れた。

「琴羽!」

私は考えるよりも先に走り出していた。

私は彼を抱え込み何度も繰り返し名前を言った。

反応はない。

よく見れば彼の体は傷だらけだ。

いくら妖怪と戦っても、あの短時間で付く傷とは到底思えなかった。

私は彼を永遠亭に連れていくため、彼を抱えて飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「いくら妖怪と人間が戦ったとはいえこんな傷が付くはずかないわ。」

目の前にいる医者、八意永琳は彼の傷を見るなりそう言った。

「その傷は大丈夫なの!?」

「命に別状はないわ。だけど、能力もない下等妖怪との戦いでこんな、内側から破裂するするみたいな傷を受けるとは思えない。彼の能力は武器を造る能力なのよね?」

「え、ええ。」

急に永琳は何かを考え始めた。

一分位熟考した後に彼女は口を開いた。

「もう一度能力を確認しなさい。もしかしたらこの傷は、彼の能力による対価かも…」

「―!分かったわ!すぐに能力を確認する!」

すぐに能力を確認するため儀式の準備を始めた。

能力を確実に確認するには多少の儀式が必要になる。

自身の血を流し、陣に垂らす。

霊力を琴羽の体に流し、陣の能力を発動する。

「少し離れて。」

琴羽の体が少しだけ光を放った。

「……分かったわ。彼の能力は二つ。武器を造る程度の能力とあらゆる道具の力を自身に付加する程度の能力よ。多分付加した時に琴羽の体が耐えられずに破裂したんだと思うわ。」

(どうしてこんな簡単なものに気付かなかったの……人の能力は一つとは限らないのに……!注意しておけば、こんな怪我をしなくて済んだかもしれないのに……!)

「そうゆうことか。」

「琴羽!」

目の前の少年は、目を覚まして起き上がった。

「つまり俺の能力には制限があるってことだな。」

「そんなことよりもう体は大丈夫なの!?」

「ああ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

知らない天井がそこにはあった。

「…付加した琴羽の体が耐えられずに破裂したんだと思うわ。」

霊夢の声が聞こえた。

俺はその声を聞いて自分の傷が何故付いたのか把握した。

「そうゆうことか。」

「琴羽!」

俺は体を起こした。

「つまり俺の能力には制限があるってことだな。」

「そんなことよりもう体は大丈夫なの!?」

「ああ。」

能力に関して知ることができた。

どうやら俺の能力にも制限があるようだ。

体が耐えられるレベルの物。

それ以上は自身の身を滅ぼすだけということ。

「病院に連れてきてくれたんだな。ありがとう。」

俺は霊夢に礼を言った。

「そんなこと、貴方の能力を把握しきれてなかった私が悪いのよ。」

「お前がそんなこと言うなんてな。思いもよらなかったよ。」

「失礼ね!目が覚めないからずっと心配してたのに!」

本気らしい。

「体の頑丈さには自信があるんだ。そんな簡単に死にゃしねえさ。」

「人間なんだから、もっと体を大切にしなきゃ。」

「!」

(そうだ、能力を手に入れたとは言え、俺は人間なんだ。)

「あいつらとの約束じゃないか。」

「?琴羽?」

「何でもないさ。とりあえず家と仕事が必要だし、折角病院にいるけど人里に早く行きたい、行けるか?」

「何言ってるの!そんな体で!」

「残念だけど霊夢の言うとおりよ。貴方の傷は人間なら生きてるだけでもおかしいほどなのよ。」

知らない赤青の服を着た女性(おそらく医者)でさえも俺を止めた。

「ああ。傷のことか。それならもう……」

俺は体に付けられた包帯を外した。

『!?』

「治っているさ。」

「どうゆうことなの!?」

霊夢に叫ばれた。

「本当にどうゆうことなの!?貴方の傷は、人間なら確実に致命傷レベルだったのよ!?」

体の下腹部の左端、そして腕は破裂、更に肩は深々ときりさかれている。

確かに致命傷レベルではある。

人間なんて、腹の一部に穴が空くだけで死ぬ。

しかし俺の能力は、道具なら使用出来る。

「さっき霊夢の言ってたことを思い出せよ。」

「私の………まさか!?」

「そうゆうこった。能力で治した。」

「そんなに簡単に使いこなせるの…!?」

「順応性は高いんだ。薬の力を使うこと位は出来るさ。病院あるものくらいなら一般的なものなら知ってるしな。」

「何でそんなことが出来るの…?貴方はどれだけ人間を止めれば気がすむの!」

霊夢が知ってるとは思えないが、人を傷つけることに躊躇いはなく、目の前で人が殺されたというのに、逃げるよりも殺すことを考え、挙げ句自身に穴が空こうが構わず相手を殺しにかかる。

人間を止めたレベルではないが、十分普通とはかけ離れている。

俺は、あいつらとの約束を守る。

たとえ、人間を止めてでも。

「……………俺は決めたんだ。………約束したんだ。あいつらと。もう誰も、死なせない。死にはしないと。」

(駄目だな。こんなこと思いだしたくなかったのに。)

思い出さないために、人を傷付けて生きてきたのに。

殺さないと誓ったのに、妖怪だからと殺した。

「琴羽……?一体…何を…?」

「……霊夢、人にはあまり言いたくないことが一つは有るものだ。だから…あまりこの事については、聞かないでくれ。」

俺は精一杯の空元気で、全力の笑顔を作った。

「人里に行かせてくれないか?」

俺ってやつは、一体何を考えているのか自分でも分からない。

「………分かったわ。行きましょう。ただし、私から離れないようにね!」

「分かってるよ。」

「永琳、ありがとう。世話になったわね。」

「永琳って言うのか。世話んなったな。次来る時は遊びに来るよ。」

「今度は傷付けて来ないでよね。」

「ああ。」

俺は病院から出た。

「霊夢ー道案内頼むよ。」

(琴羽の根は、きっと優しい。誰よりも。だから、私は……)

「……ふふ。分かってるわよ。さ、行きましょ。」

「ああ!」

俺はこの世界で生きるための最初の一歩を踏み出した。

 

 




ありがとうございました。正直こうゆうの書くの難しいと思います。というかすごく難しいです。次は琴羽の過去を書こうと思います。では。


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第一章 少年の始まり
第五話 過去の傷心


宣言通り過去を書きました。作中出てないけど小学校の頃の主人公の話です。あと、原作名の件すみませんでした。他にも間違いがあったら教えてください。まだ使い方を把握出来てないので。ではでは~


 

 

[これは、ある少年の過去に起きた

友との誓いの物語]

 

 

 

 

 

 

 

「今日は楽しかったな!」

「ああ!皆で集まって遊ぶことなんてあんまないもんな!」

俺は宮代琴羽。

今日は友達十三人で集まってパーティーを開いていた。

「今日はありがとうな。また集まろうぜ。」

俺は言って皆より一足先に部屋を出た。

その俺を追って二人の友達が部屋を出てきた。

「行くの早いよー。」

「待ってくれよー。」

少年と少女が一人ずつ俺を追って来た。

「そんなに急いでどこ行くのよ。」

「別にどっかに行こうなんて思ってねえよ。」

この少女は田鐘陽。(たがね よう)

仲良しグループのムードメーカーだ。

「暇ならこれから三人で別のとこ行って遊ぼうぜ琴羽姫~。」

この少年は 和野翔大。(わの しょうた)

こっちは仲良しグループの中では企画を立てたりする役目をいつもやってくれるリーダー的存在だ。

彼が俺をふざけて姫と呼ぶのは、俺が少女顔だからだ。

俺達はいつも三人一緒に居た。

親友というものだろう。

物心付く前に死んだ父さんと、二年前に病気で死んだ母さん。

俺の親はもういなかった。

陽や翔大、他の皆も同じで、親がいない。

養護施設だ。

そんな中、俺達は誰よりも仲が良かった。

本当の家族じゃなくても、俺達は家族同然だった。

「姫は余計だ。 別にいいけど、どこ行くんだよ。」

「う~ん。」

「じゃあ公園に行こうよ!」

「公園?」

「何で公園に行くんだよ?」

翔大は陽に聞いた。

「ふふふ~や~っぱり知らなかった。」

「何を?」

今度は俺が聞いた。

「今日公園でね、動物と遊べるイベントやってんのよ。琴羽はこうゆうの好きでしょ?」

小さい町な分、こうゆうイベントはよくある。

「好きだけど、人が多いのはなぁ。」

「良いんじゃないか?楽しそうだし。」

「あれ?翔大はこうゆうの好きだっけ?」

「わりと好きだよ。」

「まあ、確かに楽しそうだし、行くか。」

「やったぁ!じゃあ早速行こ!」

 

 

 

 

 

 

「わぁ~。」

目の前には動物好きにとっては楽園が広がっていた。

「驚いた?凄い数だよね!もう三時過ぎなのにこんなにいるとは思わなかったけどこのイベント五時までなんだよね~。だから五時まで楽しも!」

彼女は言い、我先にと走って行った。

『待てよー。』

走って行く陽に付いていった。

 

 

 

 

 

「楽しかったねー!」

屈託のない笑顔で陽はそう言った。

「よく言うよ。あんだけ犬猫追っかけといて。」

「まあ、楽しけりゃ良いんじゃね。」

「陽、あんまそうゆうことすんなよ。」

肯定する翔大と、否定する俺の言葉が重なった。

全く、この二人は楽しければ何でも良さそうだ。

「琴羽!」

「何?」

「また来ようね!」

俺は少し笑って「ああ。」と言った。

 

 

 

 

こんな日々が、これからも続くと、

この時の俺は思っていた。

 

 

 

「うわぁぁー!」

「?何だ?」

俺は声のした方を見た。

そこには――――笑いながら人を殺す、悪魔のような人間が居た。

「ひひひ。」

「!?」

「け、警察を呼べー!」

「ひひ、はははは!」

殺人鬼は、何の躊躇いもなく、叫んだ男の胸を、持っていた包丁で突き刺した。

「逃げろー!」

「助けてー!」

「うわぁぁー!」

周りに居た人達は誰一人として、殺人鬼と戦えるような体格を持っていなかった。

「アハハハハハ。」

殺人鬼は周りに居た人を次々と殺していった。

そしてその刃は次に――――俺の親友の、翔大の肩を割いた。

『え……』

俺と陽は、二人揃って何も言えず、驚きの声を漏らした。

その男は、次に俺に刃を向けた。

「あ、あ…」

「ひひ。」

男は躊躇なく、その手を振り下ろした。

恐怖で動けなくなっていた俺は、逃げることも出来なかった。

―――自分は死ぬ。翔大と同じように。

でも、せめて陽には生きてほしい。

俺は陽に、逃げろと言おうとした。

しかし声が出ない。

恐い。

(俺は…死ぬのか?……でも陽が、親友が生きるなら、翔大も、許してくれるよな。)

俺はそう思い……嗤った。

突然目の前が暗くなった。

そして包丁が振り下ろされた。

―――陽に向けて。

「え…」

俺は再び驚きの声を上げた。

(陽……何で……?)

「アアアアァァァァァ。」

泣いた。

悲しんだ。

だけどそれだけじゃない。

こいつを殺す。

仇を取る。

俺は、振り下ろされる包丁を掴んだ。

そして、落ちていた石を、力一杯に叩き込んだ。

男は包丁を落とした。

俺は包丁を手に取り、男に振り下ろした。

何度も、何度も。

殺意を剥き出しに。

泣きながら、何度も。

不意に手を捕まれた。

「もう……止め…ろ。」

「翔大…?」

「もう…止めて。」

「陽…?」

「貴方…は……生……きて」

「何…言ってるんだよ…お前らが居ないと嫌だよ……母さんだけじゃなくて、お前らも俺を置いてくのか!?」

「私…達は……貴方…の……心の…中に…生きてるわ…。」

「だから…約束……してくれ…死なないと………もう……殺さないと…。」

まるで自分がそうなることを知っていたように。

自分の死を受け入れたように。

二人はそれらの言葉を最期に、意識を失った。

(二人共……分かったよ。)

「約束する。俺はもう、死なない。誰も死なせない。」

俺は泣くのを止めた。

二人の顔は、笑ったように見えた。

その後、警察に保護された俺は、様々なことを刑事から聞かれた。

正当防衛として、また子供ということで、人を殺したことは不問となった。

警察との話が終わった後、俺は家に向かった。

その時の皆の顔は、もう、忘れられない。

二人の葬式を終えて、俺は世話をしてくれていた人に、今の母さんと父さんに、家を出たいと言った。

幼い俺が一人で生きることは出来ない。

そんなことは分かっていた。

でも、ここにいるのは嫌だった。

二人が居ない家に居るのは嫌だった。

母さんと父さんはそんな俺の思いをわかってくれた。

二人から生活費と、マンションの一部屋を与えられた。

俺は、そんな優しい二人に、感謝の言葉しか出なかった。

強くなる。

俺は、もっと強く、大きくなる。

誰も死なせないために。

 

 

 




ありがとうございました。この話半分は僕の知る実話なんですよね~。ここからは幻想郷の話だからちゃんと話を作ります。では。


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第六話 少年の里入り

こんにちは凜です。これからは章分けしようと思います。零は琴羽の幻想入り、一は幻想郷の琴羽を書きます。ではでは~


霊夢ー人里ってこっからどんぐらいなんだ?」

俺は気になって霊夢に聞いた。

俺が居たのが幻想郷唯一の病院(永遠亭)らしい。

つまりここから人里はある程度は近いところにあるはずだ。

霊夢は少し考えてから「神社からアリスの家位だと思うわ。」と言った。

「遠いなぁ。」

「仕方ないじゃない。この世界、飛べる人多いもの。」

「なぁ霊夢、一つ聞きたいんだが…」

「何?」

「いや…俺の能力は、俺の世界にあった物にも使えるのか?」

何度か考えていた。

あの時、俺が体に付加したのは、この世界に存在しない弾丸の力。

きっと他の道具も、使おうと思えば使えるはずだ。

あの世界の道具なら、便利なものは大量にある。

その力が付加できれば、戦いにも日常生活にも役立つはずだ。

俺はそう思って霊夢に聞いた。

「可能、ではあるでしょうね。ただ…」

そこで一度、霊夢は言葉を区切った。

「貴方の体が持つとは思えない。軽い物なら出来るけど、大きい物は、多分出来ない。」

「そうか。」

やっぱりそうか。

俺の体の傷は、狼に裂かれた傷と、能力によって破裂しかけた右腕。

つまり弾丸程度なら使うことが出来るということだ。

「サンキュ。そんだけわかりゃ充分だ。試したいことが出来た。」

言って俺は、空想上の道具である、イーカロスの羽の力を自分の体に付加した。

ふわっ。

少し浮いた。

やはり予想通りだ。

存在したかどうかも分からない空想上の道具でさえ、俺の知る道具なら使えるということだ。

「霊夢、どうやら俺も飛べるそうだ。」

笑いながら霊夢にそう言った。

「貴方ならもっと能力を上手く使えそうね。この世界だけじゃない、自分の世界の道具も使えるんだから。」

「…そうだな。」

「とりあえず飛べるなら飛んで、とっとと行きましょ。正直歩いていくことあんまなかったから疲れてんのよ。楽だし、飛べるならそっちの方が良いわ。」

「じゃあ競争でもするか?」

嗤いながら言った。

俺が嗤った理由は、疲れてるのに競争しようと言ったからだ。

「冗談、そんなつもりねえよ。さすがの俺もそこまで鬼畜じゃねえよ。」

「本気で言ってたら殴ってたわよ。」

「ひゃー怖い。ま、とりあえずとっとと行こうぜ。」

「ええ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと着いた。」

俺は疲れて倒れこんだ。

「そんなことで、仕事なんて出来るの?今日は決めに来ただけだけど、決めるだけでも時間は掛かるわよ?」

「大丈夫だろ。別にそんな難しいことじゃないし。」

俺はわりと空気を読むことや理解力は高い方だ。

大抵の仕事は出来る。

嫌われさえしなければ。

「掲示板はこっちよ。」

そう言って霊夢は、倒れてる俺を置いて歩き始めた。

「ちょ、待てよー」

急いで追っかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

掲示板にはそこまで多い訳ではないが、いくつもの仕事の募集があった。

「わりとあるな。」

「まあ、幻想郷はそこまで仕事が多い訳じゃないし、ちゃっちゃか決めちゃって。」

最初見た時に目に止まった仕事が合っていると思った俺は、既にそれに決めていた。

「霊夢、もう決まった。」

少し霊夢は驚いていた。

「早いわね。それで?どの仕事にするの?」

「これにする。」

「これは!?駄目よこの仕事は!貴方は死なないって決めたんでしょ!」

俺が霊夢に出した紙にはこう書いてあった。

[里の巡回、並びに里の護衛]

つまり霊夢が言いたいのは、危険があるということだ。

だけど、俺は死なないこと以外にも決めたことがあった。

誰も死なせないこと。

だから俺は、霊夢にこう言った。

「霊夢、俺が決めたことはそれだけじゃない。皆を守る。そうも決めたんだ。だから俺は、この仕事に決めた。」

「……そう。やっぱり貴方は自分が苦しむ道を選ぶのね。」

「死ぬかもしれない。守れないかもしれない。でもそれでも、何もしないよりはましだ。」

「……ふふ、そうね。でもそれだけじゃ生活費も稼げないわよ?」

「安心しろ。永遠亭の手伝いをすれば、その分の報酬はだすと言っていた。」

「いつの間にそんなことを…」

「仕事で悩んでるときにな。まあ、それだけじゃ生活費稼げなくてもそれが二つなら充分だろ。」

「貴方がそれで良いなら良いけど、掛け持ちは辛いわよ?」

「向こうの世界でバイト位したさ。そんぐらいは大丈夫だ。」

「じゃあ次は家を探さないとね。」

「分かってるさ。永琳の話だと番人が居るんだろ?確か、上白沢…だっけか?」

「上白沢慧音。里の番人と呼ばれる人よ。普段は寺子屋に居るわ。まずはそこに向かいましょう。」

「分かった。」

(まずは家を見つけないとな。)

と思いながら霊夢に付いていった。

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。これから更新どうなるか分かりません。以外と学校終わりに書くの時間ないです。でも毎日更新は続けたいです。では。


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第七話 厄介者の襲来

こんにちは凜です。やっとお馴染みと言えるキャラ出ます。里行くまで長すぎましたね。後、メインヒロインは霊夢になりました。…名前の通り僕が好きなのは咲夜さんですが。ではでは


俺は霊夢に案内されるままに、里の大通りを歩いていた。

「へぇー里ってこうゆう所なのか。……向こうの世界より雰囲気が明るい気がするな。」

向こうの世界ではあまり外には出たくなかった。

ひとたび外に繰り出せば、すぐに喧嘩をかけられる。

それに…明るい顔をしている奴らなんて、数える程しか居なかった。

たまに見る外も、部屋から見える通りも、争い事や警察沙汰なんて珍しくなかった。

でもここは違う。

皆が皆、明るい顔で通りを歩いている。

(向こうもこうだったら……俺も少しは楽しめたかもな。)

そんな事考えているとは知らない霊夢は、こちらもまた嬉しそうな、明るい顔をしていた。

「霊夢ー!」

(ん?)

「魔理沙…。」

呆れ顔で霊夢は言った。

「どうしたんだ?」

何に呆れているのか分からない俺は、霊夢に聞いた。

「いえ、面倒臭い奴が来たなと思って。」

「面倒臭いとは失礼だぜ!朝霊夢ん家行ったのに居ないし、里に居ても賽銭の音を聞き取るお前が、全然帰って来ないから、それからずっと探してたんだぜ!?」

どうやら霊夢が中々帰って来ないから、何かあったのか心配して探していたらしい。

「心配掛けたのは悪かったけど、異変も起きてないのに私が何にやられるって言うのよ?」

「う、確かにそうだけど…だったら何やってたんだぜ?」

「俺の案内してもらってたんだよ。」

二人の会話に割って入った。

「?お前誰だぜ?」

俺を知らない魔理沙は、当然の反応を見せた。

「でも何か見たことある気が……。」

「外来人なんだからあんたが見たことあるわけないでしょ?」

俺も疑問に思った。

この世界であったのは霊夢、紫、永琳、もしかしたらアリスにも顔は見られてるかもしれない。

それ以外にあった人物は一人もいなかったはずだ。

そう考えていると…

「あー!思い出したぜ!新聞で出てた霊夢の彼氏か!」

は?

こいつは今何て言った?

「な、な、…」

凄い霊夢が狼狽えてた。

確かに霊夢は良い奴だが、そんな見方はしたことがない。

俺は誤解を解くために口を開いた。

「なぁ、一つ言っとくが別に俺らは付き合ってねえぞ?単なるデマだよ。」

当然そう言った。

「そそそそうよ!私達は別に付き合ってなんか……」

何か凄い慌ててる。

魔理沙がイタズラな笑みを浮かべている。

これはヤバい。

一瞬で魔理沙の性格を判断した俺は、魔理沙が言おうとした言葉を遮り「悪いが急いでるんだ。話はまた今度な。」と言った。

「そ、そうね!早く慧音のとこに行きましょ!」

「えー!少し位良いじゃんかよー!」

玩具を奪われた子供のような声で、魔理沙は騒いだ。

「早く行くわよ!」

言うなり霊夢は、俺の手を掴んで、逃げるように早足で歩き始めた。

「待ってくれよー私も行くんだぜー。」

笑いながら走って来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何であんたもいんのよ?」

「面白そうだからだぜ!」

こいつは反省の言葉を知らんのか?

まあ、いいや。

「で?慧音呼ぶんだろ?早く頼むよ。夜になる前に家見つけたいし。」

「はぁ、そうね。魔理沙に構ってる暇なんてないわね。

慧音ー!居るー!?」

霊夢が叫んだ。

………………全然出てこないな。

居ないのか?

と思っていたら、「誰だー?」と言う声がした。

「何だ、霊夢と魔理沙か。それに…新聞の?」

「あの新聞やっぱ嘘だったぜ。」

「そうなのか?てっきり本当かと…」

「ちょ、ちょっとそんな話どうでもいいわよ!琴羽の家探して欲しいの!」

「名前で呼ぶとは…」

「仲がいいですなぁ。」

二人が暗い笑みを見せながらひそひそと話始めた。

名前で呼ぶのは当然じゃないのか?

「う、五月蝿い!」

『あっはははは』

「うう……」

霊夢が泣きそうな顔してた。

(そろそろ助けるか。霊夢って弄ると面白いな。)

「なぁ、そろそろ家探し始めてほしいんだが…」

「ははは、そうだな。では空いてる家の確認をしようと思うから、少し待っててくれないか?」

「分かってるよ。特に希望はないから適当に家を見つけてほしい。」

「聞こうと思ったが余計だったようだな。じゃあ少し待っててくれ。」

慧音は寺子屋に戻って行った。

十分経って慧音が出てきた。

「いくつか空き家を見つけたが、本当に希望はないか?」

「…それなら一つだけ良いか?」

「何でも言え。特に困ることもないしな。」

「…なら出来るだけ人が少ない場所にしてくれないか?人が多いのは、まだ難しい。」

「…分かった。なら西端の家にしよう。あそこはあまり人は来ないからな。」

「ありがとう。それから、仕事についてなんだが…掲示板で決めたんだが、そのことについてあんたに言わなきゃ駄目か?」

「決めた仕事が何か報告してくれればいい。」

「分かった。俺が決めた仕事は里の護衛だ。」

「良いのか?この仕事は危険を伴う。外来人の君にこの仕事を頼むのはこちらとしても気が引けるが…」

「良いんだ。俺がしたくて決めたんだからな。」

「…そうか。承諾した。では、まずは家に向かうとしよう。こっちだ。」

言った後、西の方に俺達を先導して歩いていく。

歩いていく慧音に、俺達も付いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここだ。」

慧音は一つの家を指差した。

外見は綺麗だ。

きっと誰かが今まで掃除していたのだろう。

窓から見る限り中も綺麗そうだ。

「ここで良いか?」

「ああ、充分だ。ありがとう。」

「とりあえず中に入るといい。部屋割りとかも見る必要があるだろう?」

「分かった。とりあえず家を使えるようにしたいから少し確認したら店に行くよ。」

「そうか。終わったらでいいから寺子屋に遊びに来いよ。」

「気が向いたらな。」

「ははは、そうだな。では私はもう行くとするよ。じゃあ。」

「またなー!」

「さよならー」

「じゃあなー」

慧音に挨拶をしてから、「じゃあ家に入るか。」と言った。

「そうね。」「そうだな!」

二人の声が重なった。

そして、俺は家に挨拶をするように言った。

その言葉と、二人の声がまた重なった。

『失礼しまーす。』

その家に三人揃って入り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。昨日今日毎日更新ギリギリです!里パートはまだまだ続きます。書くことないのでこれで。


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第八話 里の日常

こんにちは凜です。里パートはまだまだ続くと言ったな。あれは嘘だ。もっと続けたかったけど無理でした。ではでは~


「……とりあえずこれ位で充分だな。」

俺は家の中の間取りを確認した後、最低限生活に必要な家具を買いに来ていた。

「それだけじゃ足りないんじゃないの?」

俺の買い物に、魔理沙と霊夢も付き合ってくれた。

しかし当然、二人に荷物を持たすような事はしない。

大半一緒に居て、話相手になってもらっていただけだ。

まあもっとも、霊夢の言う通り持ってもらう程、家具を買ってなかった。

というか家具を買いに来たと言っているが、この世界には冷蔵庫のような便利な物はなく、せいぜい扇風機レベルが限界だった。

なので最低限の生活用品を揃えた程度だ。

「薬と食料さえありゃ生活に困ることないだろ?」

「本とか買えば良かったじゃん。暇な時とか困るだろ?」

「暇な時は筋トレとかするから良いさ。向こうの世界じゃ喧嘩すること多かったから気にしなかったけどこの世界じゃ鈍ってしょうがない。」

「物騒な奴っ。」

「物騒で悪かったな。」

「なら暇な時は寺子屋を手伝ってくれないか?」

不意に後ろから声を掛けられた。

何度もこうゆうことはあったからさすがに慣れていた。

驚く事もなく声を掛けてきた本人に言葉を返した。

「慧音、いつから居たんだ?」

「三人が店から出てきた時に見かけたのでな。それにしても随分と馴れ馴れしいな君は。」

「悪いが俺は面倒臭いのは嫌いでな。年上にも敬語を使う気はない。そもそも人と関わらなかったんだ。わざわざ一人一人言葉使いを変えることなんてすると思うか?」

「…するわけ無いだろうな。それに年上だけ言えば霊夢も君より上だしな。」

「?そうなのか?てっきり同じ位だと思ってたが…」

「君の歳は十六位だろう?霊夢は十八だったと思うが。」

「おい慧音、俺の見た目はそんなに餓鬼か?これでも俺は十八だぞ?」

「そうなのか?私より身長が低いからもう少し低い歳を高く見たつもりだったよ。」

「悪かったな身長低くて。十五で成長止まったんだよ。」

俺の身長はこの歳だと確かに低い。

もしかしたら女として見られていた原因の一つだったのかもしれない。

「別に気にしなくて良いんじゃないか?私なんてもっと低いし。」

「……確かにそうかもしれないが、この見た目だとかなり嘗められるんだよ。」

「別に良いじゃないかそんなこと。この世界では人間間の争いはそうない。妖怪は見た目関係なく襲ってくるしな。」

「やっぱり俺がいた世界とは全然違うな。」

「それが幻想郷よ。自由な奴しか居ないのよ。妖怪も人間も、神でさえも。何もかもを受け入れるのが幻想郷よ。」

(…何もかもを受け入れるか。)

「どうしたの?」

「…いや、この世界に来て良かったと思ってな。面白いこと探してこの世界に来たけど向こうよりもよっぽど良いところだったしな。」

「妖怪を恐れるよりも面白そうの一言で片せるのはお前位だろうな。」

「そうゆう性格なんだ。別に良いだろ?」

「そうだな。それより…」

「さっきから変なのが居るな。」

「気づいてたのか?あれは天狗だが、面倒臭いエセ記者だから無視した方が良いぞ。」

「誰がエセ記者ですか!」

突然上の方に居たはずの天狗が、目の前に現れた。

「さすが天狗、かなり早いな。」

俺には、天狗は天界の生物だから地上の生物より早く動けるものとは思っていたが、顔は隠していると思っていた。

「文、とりあえず一発夢想封印食らいなさい。」

霊夢のこの反応を見る限り魔理沙の言っていた新聞を書いたのはこいつらしい。

「霊夢、お前は慣れてるんじゃなかったのか?」

「そうだけど今回のは…」

「まあ、落ち着いて下さいよ。今回は新聞関係無く情報を提供しにきたんですよ。」

「情報?」

いったいなんのことだろうか?

「それはですねぇ、ニトリさんが貴方の為に何か作ったみたいですよ?私も何を作ったかは聞いてませんが。」

文と呼ばれた天狗は、俺を指差しながら言った。

「伝えに来たなら何作ったか聞いてから来なさいよ。」

「とゆうか俺に何作ったんだよ?」

「だから言っているじゃないですかー私は何も知りませんよー。」

「はぁー、じゃあ直接行って確かめるか。」

「それもそうね。ただ、ニトリが作る物ってろくなものないのよねー。」

「そんなことはどうだっていいので私の取材を受けて下さい。」

「何で取材なんか受けなきゃいけないんだよ。嘘の記事書かれるの分かってて受ける奴がいるか。」

「えー!なんでですかぁ!少し位良いじゃないですかー!」

「早く行こうぜ。」

「そうね。」

「じゃあ慧音、またなー!」

「ああ、また遊びに来い。」

「待って下さいよー!私も行きますよー!」

結局文を含めた四人で妖怪の山というところに向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。霊夢の歳は見た目とネットに書いてあった歳で判断しました。多分原作設定だと違いますがね!あと主人公と慧音先生の口調似てますね。すみません。では。


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第九話 誘拐される琴羽

こんにちは凜です。東方キャラの容姿の説明は知ってる人多いと思うので書きません。ではでは~


(ここどこだ?)

俺は霊夢、魔理沙、文と計四人で妖怪の山に来ていた。

文がどれぐらい嘘の記事や妄想の記事を書くかは、前の一件で分かっていた。

だが行く途中、「取材させて下さいよー」やら、「ちょっとだけですからお願いしますよー」やらとても五月蝿かった。

かなりしつこいから条件付きで取材に応じた。

その条件は妖怪の山に着くまでという条件だった。

(それから妖怪の山に着いた、までは分かる。何故こんなところに居る?)

俺は今、少し大きい位と思われる滝の前に居た。

向こうの世界では川でさえ見たことが無かったから、その滝を見て圧倒された。

(そんなこと考えている場合じゃない!落ち着け…何故俺はここに居る?確か……)

俺はここに来るまでの経緯を思い出すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊夢ー妖怪の山ってどんぐらいだ?」

「貴方そればっかりね。…神社から人里位よ。」

「仕方ないだろ?気になるし。てか神社から人里って相当遠くないか?」

「飛べばそんなに遠くありませんよ?琴羽さんの能力、聞く限りでは飛べるらしいじゃないですか。」

文の言うとおり確かに能力を使えば俺は飛べる。

しかし…

「悪いがそう簡単には飛べねえんだよ。永琳から聞いたが能力は魔力によって発動するらしいからな。魔力量が少ない俺は、あまり使い過ぎると疲労が大きいんだ。」

「まあ普通の人間ですからねぇ。…なら着くまでの間私の取材受けて下さい!」

「お前もしつこい奴だなぁ。ただでさえ歩き疲れてんのに。分かったよ。騒がれるのも面倒臭いし受けてやるよ。ただし俺が答えたくない質問は答えないからな。」

俺が取材を受けたのが相当嬉しいのか、子供のように目を輝かせていた。

「分かりました!この清く正しい射命丸文、野暮な質問はしません!」

「お前は全く清く正しくねぇだろ。変な質問したらとりあえず一発殴るからな。」

「物騒ですねぇ。しませんってば。ではまず…………」

 

―――三十分後

 

「え~とじゃあ次は…」

「文、もう見えてきたから終わりにしなさい。」

「え?…あーもう着いちゃいましたか。どは次でラストにします。」

やっと終わるのか。

さすがに疲れた。

「何故幻想郷に来たんですか?」

「…その言い方だと来ないでほしかったみたいだな。」

「別にそんなこと考えてませんよ!ただ、こんな危険な世界に何故来ようと思ったのか、それが気になったんです。改めて聞きます。何故幻想郷に来たんですか?」

「…面白いことを求めて。 向こうの世界にいるよりも、もっと面白い、生きてる実感を得られるところに行きたかったから。」

本当はそれだけじゃなかった。

「本当にそれだけですか?」

まさか読まれたのか?

「…どうゆう意味だ。」

「どうも何も、ここまで聞いた話だとそれだけじゃないと思っただけですよ?それとも本当に心当たりが?」

「野暮なことは聞かないんじゃなかったのか?それに関してこれ以上答えるつもりはない。」

「…分かりました。聞きすぎましたね。すみませんでした。それと、取材を受けて下さりありがとうございました。」

「いや、これぐらい構わない。」

「終わった?なら早く来なさい。」

門の前で待つ霊夢からそう言われてしまった。

「分かった(分かりました。)」

俺と文は足早に二人の元へと行った。

「これが妖怪の山か。かなりでかいな。さすが天狗の住み処ってところか。」

見たところ周りに川は見られない。

(まさかこれを登るのか?)

絶望しか感じられない。

いやそれ以上に、どこかから視線を感じるのが気になる。

「なあ霊夢、何かに見られてる気がするんだが。何だ?これ。」

「きっと椛ですね。椛ー降りてきて下さーい。」

「まさか私の千里眼を見抜く人がいるなんて思いませんでした。」

「なるほど。千里眼か。悪いが向こうでは喧嘩が多かったからな。視線や殺気には敏感なんだ。」

「そうですか。それで?何の用で貴方達が妖怪の山に来たのですか?あと、文さんは私に押し付けた仕事を自分でして下さい。」

「あやややや、すみませんが琴羽さんの記事を書かないといけないので。では。」

「全く。あの人は。」

「慣れてるんだな。あの鴉の横暴さは。」

「何年一緒にいると思っているんですか。さすがに慣れますよ。」

「そうか。……そう言える奴が居るってのは良いことだ。大切にしな。」

「?なんのことですか?」

「何でもない。ところで、ニトリに用があるんだ。案内してもらえるか?」

「その必要はないよ!」

声がしたと思ったら上からでかい鞄を背負った子供が降りてきた。

と同時に、鞄から銃のようものが出たと思ったら、俺の意識は無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そうだ寝かされたんだ。じゃああれがニトリか。)

「やあ盟友。やっと起きたかい?」

気を失う前に見た少女が、再び目の前に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。ギリギリ毎日更新出来てます。次はもっと早い時間に更新するように頑張ります。…多分出来ません!では。


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第十話 河童と少年

こんにちは凜です。1日目兄とマイクラ、2日目執筆データ全消、この二つが原因で更新出来ませんでした。本当にすみませんでした。ではでは~


「盟友?何の事だ?」

この河童と会ったのは初めてのはずだ。

(とゆうか本当に河童なのか?)

俺の中の河童のイメージは、頭に皿を乗せていて、手には水掻きがある姿だ。

だが目の前に居る少女には、水掻きが無ければ皿も無い。

とても河童には思えない。

だがそれ以上に気になるところがある。

一体後ろにある鞄には何が入っているのだろう?

その鞄の大きさはその少女の数倍の大きさだ。

(どうやって持ってるんだ?)

そんな自分のイメージと全く違う河童の事を考えていると、最初の俺の疑問に答えるかのように、河童は口を開いた。

「君が人間だからさ。」

「どうゆう…そうゆうことか。」

一瞬疑問に思ったが、要は同志と言いたいらしい。

「君が琴羽だね。私は河城ニトリ。外来人であるあんたのイメージとは違うかもしれないが立派な河童だよ。」

「それで?お前が俺に用があるって文から聞いて妖怪の山に来たんだが、何で急に寝かせられなきゃいけないんだ?」

俺は怒気を含めた声でニトリに問いかけた。

「そんなに怒らないでくれよ。私としては作った機械をなるべく早く試してみたかったんだから。それにこの機械が使えれば確実にあんたの役にたつはずだ。」

「役にたつと何故言い切れる?悪いが俺の世界にはこの世界に存在しない道具や機械はいくらでもある。俺の世界にもないものをお前が作るのは不可能に近い。それでも役にたつと?」

今言った通り、この世界に存在しない物は基本向こうの世界にはある。

そしてこの世界には向こうの世界から流れてくる物以外、新しく作られるのは永琳の薬や魔法に関係するもののみ。

つまりニトリが作る物で役にたつ物は、、魔法に関係するものしかない。

「君の世界にあったところでこの世界では使えないだろ?ならどんなものでも基本役にたつ物しかないじゃないか。」

多分こいつは俺の能力を知らない。

知らないなら仕方ないとは思うが…

(説明が面倒だから能力位知っておいてほしかった。)

俺は面倒だとは思ったが能力のことを説明した。

説明していくとニトリの顔が少しずつ青ざめていった。

理由は分かる。

睡眠弾で寝かした上無理矢理連れてきて、挙げ句作った物が一切役にたたないとなれば、普通なら激しい怒号と正当な暴力を受けることだろう。

もしくは役にたたない道具を作ったという資材の消費に青ざめていたのかもしれない。

何にしても魔法関係の物を作った訳ではないということだ。

「ああしまった…能力のことをちゃんと調べておくべきだった……これじゃ全く意味がないよー…」

この反応から見る限り後者のようだ。

「なあ、大丈夫か?」

一人でぶつぶつ言い始めたニトリを見て、さすがにまずいと思ったので、とりあえず落ち着かせることにした。

 

―五分後

 

「悪かったね。取り乱して。いやーまさかそんな能力を持ってるなんて思ってなくてね。」

「いや、そんなに気にしてないからいい。あとお前も気にすんなよ。魔法関係なら俺の知らない道具はいくらでも作れるんだから。」

「そうだね。今回は魔法に全く関係なかったけど、次からは気を付けるよ。」

「なんか悪いな。」

「いや君は何も悪くないし、実際調査不足だった私の落ち度だよ。まあ次からは能力に関係あるもの作るから買いに来てくれよー。」

「分かったよ。次から買いに来るよ。でもしばらくは無理だな。仕事見つけたばっかだし。買える位稼いだら来るな。」

「ならそれまでにいろいろと作っておくよ。」

「ああ。それと霊夢達知らないか?多分一度来てるとは思うが…」

「ああ彼女らなら確かに一度来てるよ。用が済んだら人里に連れてくってことで人里に向かったよ。まあ霊夢がすごい怒ってたけどね。」

「そうか。じゃあとりあえず人里に向かうことにするよ。」

「送るかい?」

「いやいい。人里なら一人で行けるからな。」

「そうかい。じゃあ次来る時は客として来てくれよー。」

「分かった。じゃあな。」

「じゃあね。」

ニトリと別れ、能力を使って人里へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。毎日更新は出来なかったけど更新ペースはなるべく早くします。しかし東方キャラの口調とか一人称全くわかんないです。では。


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第十一話 子守りの時間

こんにちは凜です。いつも場面転換同じですみません。思い付かないんです。あと更新これからは毎日は無理なんで本当に気まぐれ更新です。ではでは~


「あー遠い。この山高いから飛べねえんだよなぁ。いっそ木ぃ倒してくか?」

気がたっていた俺は、そんな野蛮なことを考えながら歩いていた。

ニトリと別れた後しばらくは飛んでいたが、どれだけ飛んでも木しか見えない。

仕方がないので歩いて下山することにしたが、やはり知ってる道に出られない。

そこから川が高いところにあったことが分かる。

ひたすらに歩くしか出来ないので、そのうち出られると諦めた。

しかし長い間歩いていたので、さすがに疲れてきた。

気がたっていたのはそれが原因だろう。

(まあ怒っても仕方ないし、とにかく歩こう。)

「魔力ねえから山は歩くしかないし…せめて木がなけりゃなぁ。」

愚痴を言いながら歩いていたら、大穴が広がっていた。

「なんだこれ?なんで山にこんなものが?」

素直に気になってしまった。

(いやいやこんなこと考えてる暇無いだろ。とっとと帰ろう。)

そう思い再び歩き始めた矢先…

ガサッ

なんだ?と思い音のした方を見た。

音の正体を確かめた俺は少し疑問に思った。

何故か小学生位の少女が真っ昼間から爆睡している。

普通なら驚くところなのだろうが、この世界だとこれ以上によっぽど驚くことがある。

さすがに耐性が出来ていた。

「おーい起きろー。」

………全く起きない。

放っておいても別にいいんだが、妖怪に襲われればこの位の子供ではすぐに喰われるだろう。

(仕方ない。)

それはまずいと思った俺は、とりあえず人里に連れていこうと思い、その少女を背負った。

はたから見たら完全に誘拐だ。

あらぬ疑いを掛けられないように気を付けなければ。

と、人里に着いた時の言い訳を考えていたら、周囲の草むらから笑い声が聞こえてきた。

「ひひひ、久々の人間の匂いだぁ。」

「とっとと喰おうぜ!」

「どっちから喰う?」

数は七体。

この数ならいける。

前は狂って意識を失ったが、今ならもう大丈夫だ。

俺はそう思い、背負っていた少女を下に置いた。

「喰われてたまるかよ!」

俺は能力によって目の前に居る妖怪の懐に入り込み、刀で腹を裂いた。

「ガアアア!」

「!いつの間に…!」

次いで横に居るもう一体をトンカチの力を付加して殴り飛ばした。

槌では体が保たない。

しかしトンカチ程度なら充分に耐えられる。

下等妖怪ならこれだけでも充分な威力だ。

「てめぇ!」

予想通り後方から鉤爪がとんできた。

殴りながら回転し、その勢いで襲ってきた奴を切り裂いた。

残るは四体。

居る場所は全員少し離れている。

(今なら逃げられる。)

俺は少女の方に走った。

「死ねぇ!」

「お前がなぁ!」

襲ってきた奴に刀を振り下ろした。

「その程度でやられるか!」

刀を捕まれ砕かれた。

と同時に、能力により走る速度を上げた。

一瞬の内に少女の所に走り着き少女を抱えて跳んだ。

幸いここは木が多いい。

太い枝の一つに飛び乗り、そこからクナイを投げつけた。

上手くは飛ばせなかったが牽制にはなった。

そう判断し、隣の木に飛び乗るのを繰り返し、逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、はあ、ここまで来れば安全だろう。」

能力を使っても疲労は変わらないので、俺はかなり疲弊していた。

「くそ!たかが下等妖怪に…!」

過去喧嘩での負けがなかった俺としては、憤りを感じずにはいられない。

(そんなこと考えてても意味ないな。)

とりあえずは無事だったことを喜ぼう。

しかし川から真っ直ぐ歩いてきた以上、逃げたことによって全く別の場所に来た今、道が全く分からない。

ここからまた真っ直ぐ行き始めたら夜までに帰れそうにない。

(てかもう夜だな。さて、どうしたもんか。)

「んん…」

「?ああ起きたのか。大丈夫か?」

どうやら連れてきた少女が起きたようだ。

どこか分からないと言うように辺りを見ている。

「あれ?なんでこんなところにいるの?」

「お前でかい穴の横で寝てたんだよ。妖怪に襲われるとお前みたいな子供はすぐ喰われると思って人里連れてこうとしたらそのタイミングで襲われてな。」

「そーなの?また無意識で外に来ちゃったんだ。」

「無意識?無意識でこんなとこ来たのか?」

「うん。私の能力なんだ。」

「能力?てことはお前妖怪か?」

「うん。」

「ならここの道分かるか?道に迷ってしばらくさまよってたんだよ。分かるなら教えてくれないか?」

「んーそれならあそこに神社あるしそこで一晩泊まらしてもらお!」

「神社?……ああ、あれのことか。泊めてもらうのは悪いが神社には行くか。もう夜だし、急いで帰らないとまずい。」

「私も行くー。」

「お前は帰らないのか?」

「別に明日帰れば良いもん。」

「そうか。なら早く行こう。また襲われたら堪ったもんじゃねぇ。」

「あ、待ってー。」

結局里に帰れず、神社に行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?こんな時間に参拝客か?」

こんな時間に来たのは悪かったと思うが一体なにをしているんだ?

目の前にはこいし(行く途中聞いた)と同じ位の子供を叩く女性がいた。

「いや、道に迷ってな。こいしから神社があると聞いて来たんだ。」

「こいし?居るのかい?」

「は?いやここに居る……あれ?どこいった?」

あ、なんか女性の踏んでる子供の横に居る。

「あんたの踏んでる子供の横に居るぞ。」

「え?あ、本当だ。全くこいし、いつの間にか居たらびっくりするからやめてくれ。」

「はぁーとにかく迷ったんだ。出来れば人里の道を教えてくれないか?」

「そうか。迷うとは災難だったな。だが今日は遅いし帰るのは危険だ。なので今日は泊まっていくといい。」

「いいのか?迷惑じゃないか?」

「いやいや人が多いのは良いことだよ。こいしも泊まっていくかい?」

「うん!」

「なら神社に入ろう。諏訪子、この件は後でまた話すからな。」

「悪いな。お言葉に甘えさせてもらうよ。」

「ああ。ゆっくりしていきな。私は八坂神奈子よろしくな。」

「俺は宮代琴羽。今日は頼むよ。」

結局一晩世話になることになった。

 

 

 




ありがとうございました。気が向いたら友達に主人公の立ち絵書いてもらうかもしれません。期待はしないで下さい。では。


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第十二話 地底の入り口

こんにちは凜です。はい、なかなか帰らぬ琴羽さん。自分でも何考えてんのか分かんないですよ僕。更新遅くてすみません。テストやっと終わりました。学校怠い!ではでは~


「早苗ーお客さんだぞー。」

俺は今、神奈子に連れられて寺の一室に来ていた。

「お客さん?こんな時間に来るなんて、霊夢さんあたりですか?」

「いや森でさまよってた人間とこいしだよ。とりあえず説明と挨拶をしたいし、こっち来な。」

「分かりました。少し待ってて下さい。」

どうやらこちらに来るようだ。

「それで、何があって夜中に森をさまようことになったんですか?」

俺はいままでのことを、襲われたことを除いて話した。

「なるほど。またニトリさんが騒動を起こしたんですか。それで森から出られなくなったからここに来たと。」

「ああ。迷惑なら帰るが、どちらにせよ道を教えてもらいたい。」

「いえ、一日位別にいいんですが、こいしさんがいるのが以外でして、少し驚きました。」

「以外?でもこいしの住んでるとこはあの穴の中だろ?ならこっから近いしそんなに以外でもないだろ?」

「いつも人里に行くこいしさんがここにいるのが以外なんです。この神社に来るのなんて霊夢さんと魔理沙さんくらいですし、妖怪の山の方々でさえ来ませんしね。」

「そうなのか。まあこんなとこにわざわざ人里から来る奴なんていないだろうしな。」

「人里の人達は飛べないからねー。」

いつの間にか諏訪子がいた、というかどこに居たんだ?

「神奈子~終わったからもう許してくれよ~。」

「……何があったんだ?」

「あんたが来たときに私が踏みつけてたろ?実はその前に諏訪子が私の部屋の物をいじって壊したんだよ。ニトリに作ってもらったからまた作ってもらわなきゃいけなくなったよ。」

「その罰ってことか。なに壊されたんだ?」

「掃除機だよ。掃除するときに使ってたんだが諏訪子が壊したんだよ。だから罰として掃除させてた。」

この世界にも掃除機はあったのか。

「それで~?何の話をしてたの?」

「ああ、実は……」

 

 

――数分後

諏訪子にも数分前に早苗にした説明をした。

「なるほど。別にいいんじゃないかな。早苗?」

「私も構いません。」

…なんかすごい簡単に話終わったな。

「それじゃ一晩世話になる。」

「じゃあそろそろ夕飯にしましょうか。お二人もよろしければ…」

「夕飯に誘ってくれるのはありがたいんだが疲れてるんだ。出来ればもう寝たい。」

「そうですか…みたところ貴方も外の世界の人のように思えたので、今の外の世界のことを聴きたかったのですが…」

「『も』ってことは三人は外から来たのか?」

「私は外の世界でも巫女として働いていた現人神です。神奈子様と諏訪子様は私の家が管理していた寺の神様です。」

「……神?この世界には妖怪もいりゃ神までいんのか。そうなると化け物とかもいそうだな。」

「幻想郷は全てを受け入れる。何がいても可笑しくないさ。」

「…それもそうだな。話が脱線したが、もう寝たい。」

「分かりました。では客室に案内します。」

「ありがとう。こいしはどうするんだ?」

「んー?」

「こいしは夕飯食べるのかい?」

「食べるー!」

少し笑って客室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「ここです。布団は自分で敷けますね?」

「ああ大丈夫だ。」

「では、また明日。」

と言って戻っていった。

「はぁ。」

思わず溜め息をついてしまった。

能力を使い続けていて更には妖怪との戦闘も行った。

魔力的にも肉体的にも疲労は溜まっていた。

妖怪との戦闘のときに、軽くではあるが怪我もしている。

普通ならとっくに倒れている。

「こんなときだけだよな。喧嘩してて良かったと思えるのは。」

今なら馬鹿なことしてたとも思う。

だけどこの世界なら役に立つ経験だったとも思う。

もしかしたら俺という人間の本質は、戦うことが生き甲斐だと思う馬鹿なものなのかもしれない。

…もう寝よう。

こんなこと考えてたらいつになっても眠れそうにない。

(明日おきたら早々に出るとしよう。寺とかは寝起き早いだろうし。)

そう考えながら、俺は少しずつ意識を失っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「痛―!」

起きた瞬間激痛が走った。

なにかと思い痛みがあったところを見るが怪我はない。

しばらくならなかったから分からなかったが…

(多分筋肉痛だな。こんなに痛いとは。)

と考えていたら、「んぅ。」と声がした。

そちらに目を向けたが誰もいない。

(空耳か?だけど声は確かに聞こえた。見えない…認識出来ない…ああ。)

こいしの無意識だろう。

そう結論付けた俺は、それなら意識すれば見えるはずだと思い、再び辺りを見渡した。

すると真横に半眼の状態で目を擦る少女が現れた。

紛れもなくこいしだ。

「ん、おはようお兄ちゃん。」

「…はぁ。何でお前が横で寝てるんだよ。それに俺はいつお前の兄貴になった?」

「ん~?早苗さんとかが横で寝てた方が良かった?」

「興味ねえよ。今何時くらいだ?」

「えーと、九時過ぎ。」

「そうか。なら俺はそろそろ行くよ。こいしも来い。」

「?里に帰らないの?」

「結局一晩帰らなかったんだ。別に良いさ。それにお前を送ってく必要もある。」

「じゃあ早く行こ!」

「ああ。」

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか。では穴から人里への道は一応教えときますね。」

とりあえずこいしを送ることを伝えて出ることにした。

「ああ助かる。今度礼をしにくるよ。」

「期待してますね。」

(こうゆう会話をしていると随分変わったと思うな。)

会話を終え、俺とこいしは寺を出た。

 

 

 

 

 

 

 

妖怪に襲われたところに俺達は戻ってきていた。

「ここから降りるのか?」

「うん!」

「階段は?」

「ないよ?」

「落下か。」

「うん!」

(飛び降りて地面ギリギリで飛べばいけるか。)

「じゃあ飛ぶか。」

「うん!」

(何でここまで元気なんだこいつは。…気にすることでもないか。)

俺は飛び降りるというよりも落下を開始した。

続いてこいしも飛び降りて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。更新これからもこんなになるかもしれません。校則厳しいしイベントとかも多いので。出来る限りは更新早くします。では。


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第十三話 地霊殿の主

こんにちは凜です。いい忘れてたけど一章は琴羽が幻想郷の人達とだいたい会うとこまでです。そこからは変えるのでよろしくです。ではでは~


現状を説明すると、俺は今巨大な穴の中を永遠とまで思える程の間落下し続けていた。

(地面が見えない…。こんなに深かったのか。)

などと考えていると、ようやく地面が見えるところまで来たようだ。

地面が見えるやいなや、すぐさま能力による停止を行った。

「やっと着いたー。何でこんな深いとこに住んでんだよ。」

誰に言うでもなく呟いた言葉は、知らない声によって否定された。

「深いってそんなにここは深くないぞ?」

「?誰だ?」

声の主を視認した俺は、ここに住む者達の種族をある程度把握した。

いや正確に言えば予想が当たったとでも言うべきだろう。

角が生え、見上げるほどの巨体は、まさしく鬼の姿だ。

「勇儀だー!久しぶりー!」

こいしの知り合いだったようで、駆け足ですり寄っていった。

「こいし?今までどこにいたんだい。さとりが探してたよ。」

どうやらこいしは心配いらないと思ってたようだが姉は相当心配したらしい。

「今から帰るところ~。勇儀も行こ!」

「まあいいけど、その前にそこの人間は何だい?」

こいしの行動はいつも通りらしい。

半分無視している。

「皆に差し入れー!」

ぺし!という小さい音が出る程度の力で、こいしの頭を叩いた。

その程度だが、「痛て。」と軽く声を出した。

「勇儀だったか?今のはこいしの冗談で俺はお前らの食料になるつもりは断じて無い。説明はするからとりあえず話は聞いてくれ。」

鬼は人喰い妖怪の中でも強力だ。

向こうの世界でも鬼は人間に恐れられていた。

そんな妖怪なら食料と聞いて襲ってきてもおかしくない。

「さすがに分かってるよ。とりあえず人間がここにいる理由を聞かせてもらおうか。」

どうやら地上の常識は地下の奴らもあるようだ。

俺は安心して事情を説明することにした。

「分かった。ある程度は省くが、いいな?」

「別にいいさ。」

今までの出来事をある程度説明し終えたところで、勇儀が口を開いた。

「事情は分かったよ。だけど人間のあんたがよくこの穴の中に来れたね。能力があるのかい?」

「…武器を作るのと道具の能力を自身に付加する能力だ。空を飛んだのは後者の方だ。」

「空を飛べる道具なんて地上にはあるのかい?」

「いや地上には存在しない。さっき俺のことは完全に省いたが俺の説明もいるか?俺の知る情報に興味があるならだが…」

「あんたが必要と思うくらいの説明だけで十分だよ。」

「そうだな。簡単に言えば俺は外来人なんだ。外の世界の道具も俺は使えて更に言えば神話の道具も使える。飛行は神話の道具で行っている。まあ説明はこんぐらいだな。つか必要なかったな。」

「外来人だったのかい。でも便利な能力を持ってるねぇ。」

「あんま便利でもねえよ。加減に失敗したら壊れるしな。まあその話はもういいや。とりあえず地霊殿に向かおう。こいしの家なんだろ?」

「それもそうだね。こいし、行くよ。」

「分かったー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

―道中

「なあ勇儀、周りの奴ら睨んでないか?」

「ああ、鬼も所詮は人喰い妖怪だからね。睨んでるんじゃなくて歓迎してるんだよ。……食料として。」

「そうか、食料か。勇儀、少し待っててくれないか?人間が食料じゃないってことを教えてやる。」

人間を食料と見てる姿勢がむかついた。

「人間のあんたじゃ鬼には勝てないよ。」

「殴り合いの喧嘩ならそう簡単には負けねえよ。」

「……せいぜい頑張りな。言っておくけどどっちか死にそうになったら何を言われようが割り込むからな。」

喋り方から予想はしてたが、勇儀は鬼の中でも上の奴らしい。

十数人の鬼を相手する自信はあるらしい。

「お兄ちゃん頑張れー!」

 

 

 

 

 

 

 

「よう人間の兄ちゃん。何だ?俺らに喧嘩でも振りに来たのか?」

ガハハハハハ!

複数の鬼が同時に笑った。

複数人で一人を襲う。

向こうの世界でも何度も見た光景だ。

だからこそ言える。

負けることがないと。

「ああそうだ。人間がお前らよりも弱いのが当たり前だと思うんじゃねえぞ。」

「いい度胸じゃねえか。気に入ったぜ。」

鬼の一人が前に出てきた。

「ならこの数相手に勝つ自信があるってことか。」

「一対一なんてまどろっこしいこと言わなくてむしろ良かったぜ。全員まとめてかかって来やがれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――二十分後

「ガ!?」

どさ、

今ので最後だったらしい。

俺は疲労で座り込んだ。

「お疲れ。まさか本当にあいつら倒すとはね。」

「いや、さすがに、疲れた。」

数は十数人。

それを一人で相手したんだ。

疲労が溜まってもおかしくはないだろう。

それ以上にあの数相手(しかも鬼)に勝ったこと自体人間でなら奇跡と言えるだろう。

「大丈夫?お兄ちゃん。」

「疲れただけだから大丈夫だ。」

息を整え、こいしにそう言った。

「とりあえず早く地霊殿に行かないか?早めに行かなきゃ今日中に人里に帰れないしな。」

「じゃあ早く行こうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――地霊殿

まず俺の目には、死体を滑車に乗せる猫耳の変人が映った。

「………」

「…この光景を見たら驚いても仕方ないよ。」

「驚いたわけじゃないが、変人とは思ったよ。」

「初対面で変人呼ばわりとは随分と失礼な人間だね。」

いつの間にか近づいていた猫又?と思われる妖怪につっこまれた。

「失礼で悪かったな。俺の性格なんだ。それよりお前は誰だ?」

「あたいかい?あたいは火焔猫燐。勘違いされやすいけどあたいは火車だよ。貴方は?」

「宮代琴羽だ。こいしを送りにきた。 」

「!こいし様が居るんですか!?」

急に胸ぐらを捕まれた。

「お、落ち着け!」

「燐、少し落ち着きな。 」

「は!すみません!こいし様が居ると聞いて…」

「いや、別にいい。」

どうやら心配してたのは姉だけじゃなかったらしい。

「お燐ー!」

「こいし様!良かったです。何事もなく。人間、ありがとう。」

「…どういたしまして。ついでに人間呼びもやめてくれ。」

「名前知らないんだから仕方ないじゃないかい。」

「さっき説明しただろ。宮代琴羽だ。呼び方は何でもいい。とにかくこいしは送ったからな。俺はもう帰るよ。」

「それなら私も帰るよ。」

「いやこいし様を送ってくれたお礼をしたいし少し寄ってかないかい?迷惑でなければだけど…」

「そうだよ!お姉ちゃんのとこ行こ!」

「そうだな…まあ幻想郷の奴らに挨拶周りもしてたし、折角だから寄ってくよ。」

「じゃあ私もついでだし寄ってくよ。」

「やったぁ!じゃあ早く行こ!」

 

 

 

 

 

 

 

「さとり様、こいし様が帰って来ました。」

「そうですか。入って下さい。」

「失礼します。」

二人のいかにも主従関係に見える会話を終え、部屋に入った。

(…予想はしてたがやっぱり子供か。)

「こちらも貴方がそう考えるのは予想してましたよ。」

心を読まれた?

さとり…なるほど。

「俺の心を読むってことは名前通りお前は覚り妖怪か。」

「正解です。私の能力は心を読む程度の能力。まあこの能力のせいで私は嫌われてますけどね。」

「そんなことないですよさとり様!私達はさとり様のこと大好きです!」

「ふふ、ありがとうお燐。」

「…仲良いのは良いと思うが、それを他人に見せるのはどうかと思うぞ。」

「確かにそうですね。すみません。。」

「とにかく挨拶も済んだし俺の用はもう済んだ。もう帰るよ。あと、礼なら人里への道を教えてくれ。」

「そんなことでいいのですか?」

「ああ、もともと道に迷ってさまよった結果ここに居るんだ。それだけで十分だ。」

「そうですか。しかしそろそろお昼ですし、良ければ食べて行きませんか?」

確かに少し腹も減ったな。

「なら、お言葉に甘えるとするよ。」

「じゃ早速作って来ますね。」

「あ、お燐、ついでにお空を呼んで来て。」

「分かりましたー。」

燐は部屋を出ていった。

「では、少し待ってて下さい。」

「ああ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

―食事中

「お兄ちゃんこれも美味しいよ!」

「あ、ああそうだな。」

そこまで大食いなわけでもないのに、こいしに進められるままに食っていたから、さすがに満腹だった。

「こいし、琴羽さんも困ってるようだから食べてほしいのは分かるけど、もう止めておきなさい。」

「はーい。」

(助かったよさとり。)

と心の中で礼をしておいた。

 

 

 

 

 

 

「じゃあそろそろ行くな。飯ありがとな。」

「道案内はお燐に任せるわね。」

「分かりましたさとり様。では琴羽さん、行きましょう。」

「ああ。」

食事を済ませ、地霊殿を出た。

「お、やっと見つけた!おーい!こっちにいたぞー!」

出た瞬間鬼の声が聞こえた。

一人の鬼が他の鬼を呼んだことによって複数の鬼が集まってきた。

「よし!連れてくぞー!飲みに行きますが姐さんもどうですか!」

「おお!いいじゃないかい!」

おい、まさか…

「よし行くぞー!」

有無を言わさず複数の鬼たちに連れていかれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。琴羽いつになったら帰るんでしょうね。次は霊夢側書きますね。では。


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第十四話 琴羽のいない一日

宣言通り霊夢側書きました。挨拶無しなのはもう挨拶めんどいからです。ついでに投稿が遅いのはゲームが好きだからです。久しぶりのPSP楽しい!はいこれが原因です。だってメモスティ割れたんですもん。……すみません。ではでは~


「何でいつまで経っても琴羽は帰ってこないのよ!」

河童のところに迎えに行ったあと、少し用事があると聞いていくつか話をしたあと、琴羽の役に立つものを作っていると判断したから預けてきたけど……

「ニトリが送るって言ってたんだし、多分大丈夫だと思うぜ?それに下等妖怪に負ける程弱くないだろ?」

確かに魔理沙の言うことは間違っていない。

既に下等妖怪を一度彼は倒している。

いや、殺している。

だからこそ心配なのだ。

彼は妖怪でさえ殺せない。

殺せば彼は狂ってしまう。

負けることはない。

そんなことは分かっている。

しかし魔理沙はそれを知らない。

彼女だけじゃなく、琴羽を治療した永琳でさえ知らない。

あの時、狂った彼を見たのは私一人。

知らないのだから考え方が違ってもおかしくはない。

彼女にそのことは私も彼も知られたくないだろう。

「そんなこと分かっているわよ。でも心配じゃない。それに妖怪の山にいるのよ?一匹二匹なら倒せても、囲まれたら琴羽じゃ勝てないわ。」

「でも天狗が張ってるし大丈夫だろ。」

「そうだけど…」

「それ以外に妖怪の山に何かあったか?他に心配することもないだろ。」

「…まあそうね。地底に用もなく一人で行く程馬鹿でもないし、文と椛がいるから天狗には襲われないだろうしね。」

「朝になっても帰って来てないなら天狗の詰所やら守矢神社やらにでも泊まってるんじゃないか?」

「確かに。なら迎えに行きましょうか。」

「なら善は急げだぜ!」

「あ、待ちなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―道中

魔理沙と世間話をしながら私はあることを考えていた。

何故紫は琴羽を連れてきたのか。

紫の性格から考えてそんな特殊な人を、その可能性がある人を連れてくるわけがない。

能力者など連れてきても、順応できず帰ることを望んだり、下等妖怪に喰われたり、意味がない。

琴羽の能力的に紫の役に立つ能力とも思えない。

それに永琳は琴羽の能力は魔力で使えると教えた。

人間の能力は霊力によって使える。

魔力はそれこそアリスやパチュリーみたいな魔法使いにしか必要がない。

妖怪達は妖力。

人間、幽霊などは霊力。

神は神力。

そして魔力は属性能力(炎や雷など)の使用者に必要になる。

それぞれの力は全て専用の能力が必要になる。

ここから分かることは魔力の使用は属性のある能力に限られる。

だが琴羽の能力は確実に属性能力ではない。

能力の派生で使えるかもしれないが、メインで使うことはないだろう。

なら何故永琳はそう言った?

まだ琴羽には何かあるのかもしれない。

あの永琳が言い間違えるとは思えない。

一応魔力は属性能力以外にも精神に作用する能力や肉体に作用する能力にも使われる場合がある。

属性能力を使えない琴羽は後者だ。

だけど、力の足りない琴羽にそんなことは出来ない。

なら永琳の言うことは違うの?

これから琴羽はどうなるの?

戦いの時に私さえ気が付かなかった能力を開花させた。

既に下等妖怪よりも琴羽は強い。

これからも戦うことがあるのなら、琴羽はいつか私よりも強くなるかもしれない。

そうなれば勿論琴羽は、霊力も魔力も使う。

もし永琳の言葉が未来のことなら、間違いは言ってないのかもしれない。

……帰ったら永琳に話を聞いてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――妖怪の山[天狗の詰所]

「琴羽さんなら私達は知りませんよ。」

着いた後、すぐに椛を呼んだ。

そして来た瞬間その言葉を言われた。

どうやら詰所には一度も来ていないらしい。

「何で私達が来た理由が分かったのよ。」

「貴女方が来る理由なんていくらでも予想出来ますよ。私もこれから神社に向かおうと思っていたのでよろしければ一緒に行きませんか?」

「どうする霊夢?神社にいるのは確定みたいだぜ?」

「どうするって…行くしかないでしょ。とゆーか何であんたも来るのよ。」

「帰ってないと知ったら心配するのは当たり前ですよ。正直ニトリさんを抑えられなかった私達の非でもありますし。」

「まあ確かに当然ね。なら早く行きましょ。」

椛を追加して、私達は神社に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――守矢神社

「早苗ー居るー?」

……返事が返ってこない。

「はーい。」

と思ったら返ってきた。

聞こえてるなら早く返事してほしい。

「霊夢さん達でしたか。珍しいですねここに来るなんて。」

「天狗の詰所に琴羽がいなかったから来てみたんだぜ。こっちにいるか?」

「琴羽さんですか?でしたら数時間前に出ましたよ。道中こいしさんと会ったみたいで、今は地底に向かいました。」

こいしと会ったってことは帰ってこない原因はこれね。

つまりニトリは琴羽を送らなかったってゆうことね。

……後で会いに行こう。

「じゃあ地底にいることも分かったしすぐに行こうぜ!」

「そうね。椛も来るの?」

「いえ、琴羽さんの無事も分かったことですし、私はもう帰ります。」

「そ。じゃあ私達はもう行くわね。」

「じゃあなー。」

「鬼は戦闘狂ばっかりなので気を付けて下さいね。」

椛と早苗に別れを告げ、地底に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――地底入り口

「……ねぇ魔理沙。」

「……なんだぜ霊夢?」

「…なんでこんなに騒がしい声が聞こえるの?」

「十中八九琴羽だろうな。」

「そうね。」

『………』

……………

「行きましょうか。」

「そうだな。」

そこからの記憶は琴羽を見つけたところから途切れた。

 

 

 

 

 




ありがとうございました。そういえばずっと忘れてたけど四話にとてつもなく分かりづらい伏線あるのですが回収は……いつになるんですかね?まずだれも気付けませんね。では。


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第十五話 決まらぬ行き先

そういえばアリスの設定なんですが最初の方でひきこもりのように書いてましたが違うので安心して下さい。ちゃんと既に役割を振ってあります。ではでは~


「酷い目に合った。」

「酷い目に合ったのは私達の方よ。何で鬼と宴会なんて開いてるのよ。」

俺と霊夢、魔理沙の三人は地底入り口に向かって歩いていた。

…全員死にそうな顔で。

原因は鬼との宴会だ。

なんでも鬼十数人を相手に全員倒したのをほとんどの鬼が見ていたようで、「お前強いんだな!どうだ?一緒に飲まねえか?もっとも、答えは聞いてないがな!」と言われ、連れ去られた。

というよりも道中でそう言われた。

地霊殿から連れ去られた俺は鬼の宴会に無理矢理参加させられた。

霊夢と魔理沙は意識のない俺を見つけたはいいが、鬼に捕まり(勇儀に)結局意識が飛ぶまで飲まされたらしい。

「それで地底の入り口って何処なんだ?全く見えないが…」

「もうすぐよ。いつもいつもうるさいわね。歩いてればそのうち着くんだからいちいち聞かないでよ。」

「分かったよ悪かったな。」

…………………

話すことがない。

世間話をするにも互いに知っている情報に違いがありすぎる。

なら幻想郷の実力者のことでも聞くか。

紫から言われてたし。

「着いたぜ。」

…聞く前に着いたようだ。

(また今度にするか。)

「そういえば琴羽、鬼に襲われなかったの?」

俺が鬼との宴会に参加した経緯は説明を省いていた。

簡単に説明をしたせいで、説明してないことが多くあった。

(次からはもっと詳しく説明しよう。)

「ああ平気だ。こいしがいたしな。」

「そうなの?鬼のことだからすぐに襲ってきてると思ったのに。」

…何か割と霊夢って鋭いな。

まあ、襲ったのはむしろ俺だけど。

「そうでもない。さとりのとこにに連れてってくれたのも勇儀だしな。そつちは平気だったのか?」

「宴会に全員行っててほとんど見なかったわよ。」

「そうか。しかしこの穴やっぱ深いな。」

「そんなに深い?」

「私達は慣れてるからな。」

「あんま長い間飛ぶと疲れんだよ。こっちは元々普通の人間だぞ。お前らみたいに慣れる程能力も使ってねえし。」

「まあそうね。でもちゃんと飛んでよ?」

「分かってるよ。早く帰んないと仕事の準備も出来ねえしな。」

「そういえばいつから仕事は初めるの?」

「ん?挨拶周りの為に一応一週間後になってるが…」

「そう。紫から行った方がいい人のことは聞いてる?」

「行った方がいい?幻想郷の実力者に会えって言われたぐらいだ。」

事実いままで会った奴らも、少なくとも妖怪の山の奴らはその中に入るのも居るだろう。

いや、山大きさ的に会えてはいないかもしれないな。

「実力者に会え?誰かっていう説明は受けなかったの?」

「誰か知らないから気になってんだよ。実力者ってあやふやな言い方じゃ何人いるかもわかんねえ。まあ会った方が良い奴らは何人か聞いてるが、この山の奴はその中に入るとはいえ明らかに弱い。実力者とは言えない。」

「まあ実力者なんて決まってないわよ。要はこの世界で権力をある程度持ってる人のこと。会った方がいいのは…多分役立つって意味だと思う。」

「役立つ?……あー永琳とかニトリは薬やら機械やら使えそうだったな。確かに役には立ちそうだ。」

「誰か覚えてる?その二人以外。」

「そうだな…二人を除いたら風見、霖之助、アリス、パチュリー、慧音、…多分これで全員だ。」

「う~ん二人と慧音は分かるけど、他は特に琴羽の役に立つとは思えないわね。」

(?でもパチュリーとアリス?二人が使うのは魔力。関係があるなら…)

急に霊夢が黙り込んだ。

何か考えているようだ。

なにか会ったらまずい奴でもいたのか?

『…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

(何で急に二人共黙り込むんだぜ!)

全く状況が理解出来ない。

しばらく黙ってたのも駄目だとは思ったけど急な沈黙を破る程図太くもない。

喋ることも出来ないので自分も黙ってしまう。

(どうする?別に喧嘩して黙ってる訳じゃないし喋ってもいいか?……無理だぜ!どうしたら…どうしたら…)

「霊夢さーん。魔理沙さーん。」

(あれは…椛!ナイスだぜ!)

沈黙を破ったのは椛だった。

 

 

 

 

 

 

 

(誰がまずかった?つか霊夢が会いたくない奴なんてそんなにいないはず…)

「霊夢さーん。魔理沙さーん。」

「?椛か。」

「琴羽さん見つけたんですね!」

「椛ぃ!凄ぇいいタイミングで来てくれたぜ!」

「え、ちょ魔理沙さん!?」

なんか魔理沙が凄く興奮してる。

(何だ?)

同じことを霊夢も思ったのか同じく疑問を感じてる顔をしている。

「それで椛?何か要か?」

「あ、いえ別に。単に能力で三人を見つけたので。」

「あー琴羽?椛も心配してくれてたのよ?」

「そうなのか?」

「ええ心配はしていました。特に鬼に襲われなかったかですが。まあ見つけたのは偶然ですし琴羽さんの迷子の原因の一つは妖怪の山の責任ですし。」

「そうか。心配掛けて悪かったな。鬼なら割と友好的だったぞ。あとニトリは責めないでやってくれ。一人で大丈夫って言ったのは俺だしな。」

「そうですか。まあもとより責めるつもりはありませんよ。説教ならすでに終わってます。」

「そうか。ならいい。」

「ねえ琴羽?帰りに香霖堂に寄っていかない?前は結局行けなかったし紫に会った方が良いって言われてるんでしょ?」

「そうか。確か香霖堂があんのは魔法の森の里側か。じゃそうするか。」

「じゃあ私は様子見に来ただけですし、仕事もあるので帰りますね。」

「ああ。じゃあな。」

「妖怪には気を付けて下さいね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――香霖堂

「香林ー。いるかー?」

「……また魔理沙かい?む、今回は霊夢も居るのか。はぁ。」

奥から出てきた店主であろう男は、二人を見るなりため息をついた。

「今度は何を盗りに来たんだい?」

「な!?別に盗ってなんてないぜ!死ぬまで借りるだけだ!」

「そうよ!」

「またそう言って店の物を盗りに来たんだろ?全く……ん?後ろの彼は誰だい?」

「ん?俺か?あーまあ俺は外来人だ。紫にあんたに会っとけって言われたから二人に案内してもらったんだよ。あと魔理沙?死ぬまで借りるは泥棒と変わんねえから止めとけ。」

「二人に堂々と注意してくれるということは君は結構まともな人みたいだね。僕は森近霖之助。この店の主だ。外界のものもいくつか取り扱っているし、必要なら来てくれ。」

「俺は宮代琴羽だ。なら金が出来たらたまに来るよ。」

霊夢と魔理沙が騒ぐのを無視して、俺と霖之助は軽く挨拶を終えた。

「そうだ。琴羽君。ここでバイトする気はないかい?外の世界の道具は僕には分からない物も多くてね。」

「いや、折角だが遠慮しとくよ。その代わりたまに来た時に見せてもらえればその道具の用途位は教えるよ。」

「そうか。それでも充分助かるよ。」

「じゃ挨拶に来ただけだしもう帰るな。魔理沙、霊夢、行くぞ。」

「む~分かったわよ。」

「ああ。また来るといい。」

よし今日はもう帰ろう。

まだ昼だけど疲れたし寝る。

そう決めた俺は足早に店を出た。

 

 

 

 

 




ありがとうございました。なんか話ほぼ進みませんでしたね。でもどこ行くかは出してますね。多分順番はランダムです。では。


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第十六話 妖精との邂逅

僕を忘れないで下さい。どうも凛です。そういえば僕書き留めとかないんで基本投稿ランダムです。話は出来てるけど書く時間無かったんですよね~この一ヶ月。いや二ヶ月ですか?まあつまんない作品だしいいですよね?
…本当にすみません。次からは報告します。ではでは~


「アアアアァァァァァァァァァ!!」

(?叫び声?一体どこから?そもそもここはどこだ?)

そう思い辺りを見渡してみた。

しかし見えるものは何もない。

ただただ暗闇が広がるばかりで、一切の生物も建物も、光でさえも見当たらない。

目が機能する空間ではないと判断し、聴覚に頼って辺りを再び確認した。

しかし叫び声によって聴覚も機能する事がない。

諦めて叫び声の方に近づくことにした。

危険だろうが、無言でただ前に進み続けた。

すると…ピチャッとゆう液体を踏んだ音がした。

液体の音と感覚だがそれだけではなかった。

急に生臭い匂いがしてきた。

(この匂い……血か?まさか下の液体は!?)

理解と同時に我慢できない吐き気が襲ってきた。

それだけでは終わらなかった。

「ガッ!?アァ!?」

足に急な激痛、掴まれた感覚がきた。

骨の動く音、肉の引き摺る音、様々な音が聞こえる。

目が暗闇に慣れてきたおかげで、見にくいが多少なら見えるくらいにまでなっていた。

だが、目を開けたくなかった。

見るのは嫌だった。

聴覚で分かる恐怖を視覚でも理解するなんて嫌だ。

人の死体が見たい奴なんているか!

『コ…ト…ハ…ァ』

声がした恐怖で、思わず目を開けてしまった。

うめき声、しかも複数。

(名前!?何故俺の名前を……!?しかもこの声……)

目の前に映っているのは……俺に向かって体を引き摺って近づいてくる骸。

そして、赤い液体……血の海だった。

もう俺に、頭を動かす力は残ってなかった。

俺にあったのは、狂いそうなほどの苦しみだった。

「あ、あぁ…あああああアアアアアアアァァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は!?」

俺が居たのは紛れもない俺の家だった。

(さっきのは夢…?……はは、当たり前だな。)

なんでこんな夢を見た?と疑問に思いながら、時間を確認した。

時間は九時、昼から寝ててこの時間まで寝ることは初めてだ。

自分が酒にここまで弱いなんて知らなかった。

外の世界から来て、数日しか経ってないのにいろいろとあった。

それによって疲れが溜まってたようだ。

それに外の世界から来て思い出せなくなったことがある。

(さっき見た悪夢は関係があるのか?……無いことを祈りたい。)

コンコン

「!誰だ!?」

「琴羽ー居るー?」

「……霊夢か。入っていいぞ。」

「あーやっぱり居た!昨日帰りに今日紅魔館に行くって決めたじゃない!ほら早く行くわよ!」

「……なんでそんなに急いでるんだ?」

「そりゃ紅魔館行けば上手い飯にありつけるからな。霊夢にとっちゃ死活問題だぜ。」

と霊夢の後ろから出てきた魔理沙が説明した。

「魔理沙も居たのか。でも急に飯くれって言ったって用意する奴は普通いないぞ?」

(霊夢を可哀想と思ってるならあり得るな。)

「あー確かに普通はそうだな。だけど霊夢の場合向こうも諦めてるからな。」

どうやら何度も飯を貰ってるらしい。

「それより私も早く行きたいんだぜ!丁度借りたい本があるからな!だから早く行こうぜ!」

「借りたい本?何で館に借りに行くんだよ。里の本屋で十分だろ。」

館の書斎と本屋とはそこまでの差は無いはず。

里や神社から離れて過ごしてる以上、外の世界の本なんてあるはずがない。

だが里なら多少は外の世界の本もある。

たまにくる外来人が外の物を持って来た時に貰うことが里ではあるらしい。

俺も持っていた財布を欲しがった子供がいたからあげたくらいだ。

つまり里には外の世界の物、本を含めた様々な物がある程度はある。

本以外に関しても本に関しても、里程物がある場所はないだろう。

ならこの疑問はもっともな疑問のはずだ。

魔理沙はわざわざ意味のない方を選んでいるのだから。

「琴羽は甘いな~。幻想郷に居る奴が元々外の世界から来たことぐらい知ってるだろうに。」

「どうゆうことだ?外の世界から来た?そんなの初めて聞いたぞ。」

「へ?霊夢か紫から聞いてないのか?」

「ああ、聞いてない。」

ずっと黙って待ってた霊夢が口を開いた。

「そういえば言ってなかったわね。必要なこととは思わなかったから。幻想郷で過ごしてたらそのうち知るしね。過去に異変が起きたあと、首謀者を幻想郷に迎えいれてたから、元からここの住人だったのは、私や魔理沙の家系、里の人、紫。そのくらいしか居ないと思うわ。」

「そうだったのか。外の世界から来た奴らばっかとは思わなかった。まあそれなら魔理沙が本を借りたいのも納得いくな。」

「そうゆうことだぜ。って長々と話してたから結構時間経っちゃったぜ。とりあえず早く行こうぜ。」

「ああ、そうだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで霊夢?紅魔館ってどこにあんだ?」

「里の丁度真北ぐらい。距離は神社とそう変わんないわよ。」

「飛べば五分ぐらいで着けるぜ。」

魔理沙が少しにやけた顔で言った。

「ならあんたの箒に琴羽乗せなさいよ。」

「この箒は一人乗りだぜ。それなら霊夢が抱えて飛べば良いと思うぜ。」

魔理沙が玩具を見つけた子供のような言い方をしている。

変な言い争いが起きそうだったから止めることにした。

「魔理沙、言っとくが俺は自分で飛べるぞ。霊夢は知ってるだろうが。」

「なんだ飛べたのぜ?なら何でいつも飛ばないんだ?」

「魔力を消費したくないんだよ。疲労で倒れんのも嫌だしな。」

魔理沙を横目に霊夢を見たら、助かったような顔をしている。

(……やっぱり魔理沙は面倒くさいな。)

「まあ歩いてもそこまでかかんないだろ?なら別に歩いてても問題ない。」

「いや、少しはかかると思うぜ?湖を避けてかなきゃいけないし、面倒くさい馬鹿がたまにいるしな。」

「魔理沙、もしかしてチルノのこと言ってる?」

「他に馬鹿なんていないだろ?琴羽寺子屋行ってるなら見たこと無いのか?」

「まず姿も知らないのに見覚えがあるはずがない。それに寺子屋に行ったのは慧音にここについての説明を受けた時くらいだ。」

「そうなのか?…なら湖が見えたら少し警戒しといた方がいいぜ。急に攻撃仕掛けてくることもあるからな。」

「警戒は常にしてるさ。なんせ知らないとこに、しかも妖怪がいる場所を歩いてるんだからな。解けってゆう方が難しい。」

「確かに椛に気付いたしね。でもチルノはそんなに誰かれ構わず襲う程野蛮でもないから、別に戦う必要はないわ。しかも私達と一緒にいる人を襲うなんて、よっぽどの命知らずよ。そんなの幻想郷にはいないと思う。」

「そうか。……なあ一つ聞きたいんだが、なんでこここんなに霧が出てるんだ?」

歩いてるうちに辺りに霧が出てきた。

そこまで深いわけではないが、遠くを見ることが出来ない。

ここまでは霧がなかったのに急に霧が出たことを考えると、おそらくこの場所自体に霧がかかっているのだろう。

「あれ?言ってなかったっけ。ここ霧の湖って言われてるのよ。たまに霧がかかっててそういう時はだいたいチルノがいるわ。」

「そういえばチルノって奴は妖怪なのか?話聞く限りそうとしか思えないんだが…」

急に襲ってくる、それだけでも危険な妖怪の可能性を考えるには十分な理由だ。

しかも霧をかける能力を持つとなると、本当にそうとしか思えない。

(でも寺子屋行ってんだよなぁ。)

「妖怪じゃなくて氷精よ。他にもここでチルノと遊んでるのいるし、襲われる心配はないから安心して。」

「お前らいれば襲われても平気だろ?早く紅魔館行くんじゃなかったのか?」

話してる間、少しだけ止まってしまっていた。

魔理沙だけは少しも止まらず歩いていってしまった。

もしかしたら魔理沙が一番行きたかったのかもしれない。

「分かってるわよ。湖がそろそろ見えると思うし、湖の逆側に面しておそこは建ってるから、湖見えたらもうすぐと思っていいわ。」

「霧が出てるってことはそろそろ見えるのか?」

「もう見えてるじゃない。」

「……ああ、見えるな。悪い霧に目が慣れなくてな。」

「まあ霧があるうちは普通は見にくいかもしれないけど、慣れてくると普段と変わらず見えると思うわよ?」

「ん、確かに少しずつ……?あれ魔理沙か?」

人影が少し遠くに見えた。

しかし一つは魔理沙だとしても人影は三つ見える。

歳のわりに身長が平均より低い魔理沙以上に小さい。

(子供?里から離れたところに子供が?)

「魔理沙ね。横にいるのはさっきから話してるチルノと、いつも一緒にいる大妖精よ。」

「あれがチルノ?…そんな危険に見えないが、馬鹿なのは納得いきそうだ。」

「馬鹿なのが納得出来るなら襲ってくる理由も分かるでしょ?『あたい最強ー!』って言って襲ってくるわよ。だから危険なの。」

「あーそうゆうことか。でも魔理沙のあの言いぐさ、仲悪いと思ったのに、なんか仲良さそうじゃないか?」

「あの二人は仲良いわよ?たまに遊ぶしね。私も一緒に。」

「お!霊夢ー!」

「魔理沙、一人で走ってかないでよ。」

「そんなことより霊夢も一緒に遊ぼうぜ!少しくらい良いだろ?」

「まあいいけどねぇ、琴羽はどうする?」

「先行ってるわ。ここまで来たら道ぐらい分かるし。」

「多分ここより危険よ?なんせ紅魔館は吸血鬼の館なんだからね。戦っても勝てないわよ?」

「戦うつもりはねえよ。あくまで挨拶に行くだけだからな。まあ向こうが襲ってきたら、そんときゃそんときだ。」

「……可能な限り気を付けて。まあレミリアは人間を好むから、襲われないと思うけどね。」

「ん?霊夢~、後ろの奴誰?」

「チルノちゃん駄目だよぉ。男の人となんて話せないよぉ。」

「何言ってんの!知らない奴と会ったら戦ってみたいじゃん!」

チルノが戦えと騒いでいる、が……

「俺は戦うつもりなんてかけらもねえよ。遊ぶくらいだったら今度付き合ってやる。」

相手するのが面倒だと理解した俺は、その氷精を無視して館へ急ぐことにした。

「えー!戦えよー!」

「だから今度付き合ってやる。なんなら帰りに付き合ってやるから。じゃーな。」

今度こそ無視して歩きはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そういえば話決まっているなら役割決まっていると思う人いるかもですが、全員は決まってません。あと出来る限り東方キャラは出そうと思うけど僕が知らないキャラ…は居ないんで(調べたから)、まあゆっくり実況で出るキャラは出します。出てない人いたら……謝ります。では。


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第十七話 戦闘前

もう一ヶ月に一回投稿でいい気がしてきました、今はもう二ヶ月ですが…凛です。学校以外にもわりと忙しくて書く暇まじでないです。もう春休み終わったのに…。なんとなく始めたことなんで投稿は本当気まぐれですがご了承下さい。ではでは~


魔理沙と霊夢から聞いていた通り、巨大な館が見えてきた。

「確か門番寝てんだっけ。どう起こすか…」

これほどの館を守る門番が、いつも寝ている居眠り門番だと聞いた時は信じなかったが、歩く内に確かに寝ている門番が見えてきた。

「………おーい起きろー。……」

反応が全くない。

仕方ないので少し攻撃してみることにした。

……殴っても蹴っても反応がない。

「なんでこんなん門番にしてんだよ!?」

息を切らしながら誰ともなく突っ込んでしまった。

はたから見たら人を殴りながら騒ぐ頭のおかしい奴だったことだろう。

しかし本当に起きない、むしろここまで起きないとある意味尊敬できる。

勝手だとは思ったが無視して入ることにした。

中に入ると外見からも納得出来るほど広い空間ができていた。

「どなたでしょうか?」

「!?」

不意に声をかけられて思わず身構えてしまった。

(あり得ない。どれだけ気配を殺そうが全く気配がない奴なんているはずがない。どこから?)

「驚かせたなら申し訳ありません。連絡もなしにここに来る方といえば霊夢や魔理沙しかいませんので。」

「そ、そうか。何の連絡もなしに来たのは悪かったよ。それにいきなり身構えて……しかし門番寝てたがいいのか?どれだけ攻撃しても起きないから無視して来たが…」

「そうでしたか。すみません、彼女は眠りへの執着が強いので……起こして来ますので少しお待ちを。」

「あ、ああ分かった。」

返事をすると同時に目の前にいたメイドが消えた。

 

 

 

 

……………

「ギャァァァァァ!!」

一分も経たずとてつもない叫び声が聞こえた。

「!?何だ!?」

無言で待っていて周りは無音だった状況下で、突然の叫び声は不意打ち過ぎた。

「お待たせ致しました。私は十六夜咲夜。お嬢様がお呼びですので、どうぞこちらへ。」

「あ、ああ分かった。……さっきの叫び声は何だ?」

「門番ですが、ここでは日常的なことですので問題はありません。なので気にかける必要はありません。」

「…………分かった。早く行こう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン

「お嬢様、お連れしました。」

「入りなさい。」

「失礼します。」

「ようこそ。新聞の人間だと思ったから、部屋まで来てもらったわ。私はこの紅魔館の主、レミリア・スカーレット。霊夢の友人なら知ってるでしょうけど、吸血鬼よ。」

目の前には自らをここの主と言う少女が腕を組んで座っていた。

唖然としている俺を無視して

「…お前がここの主?主の娘…とかじゃなくてか?」

「…分かってはいたけどその反応は信じられないと言うことね。姿はこれでも、私はあなたより年上よ。」

(つまり吸血鬼と人間の時間の流れは違うわけだ。しかし……この姿で信じろなんて無理だろ。)

「それで霊夢はいないの?貴方が来たなら当然居るのでしょう?」

「霊夢と魔理沙なら来る途中チルノと会ってな。多分もう来るだろ。」

「そう。少し残念。」

「何が……ああ。それ文の嘘だぞ。面白いこと期待したなら残念だったな。」

残念と言いながら手に持って見せたのは文の新聞だった。

(多分霊夢の反応が見たかったんだろうな。)

「まあ予想はしてたから、別に残念でもないわ。もう一つ試したいこともあるしね。」

「試したいこと?俺を実験台にでもするつもりか? 」

「………ふふ。そんなことしないわ。」

「なら試したいことっていうのは何だ。厄介な事なら即効断らせてもらうが?」

「貴方にとっては厄介さより力試しになっていいんじゃないかしら。」

「力試し…?正直に言うが吸血鬼に勝てる程の実力なんて俺にはない。見る…会うのは初めてだが、俺の知る吸血鬼とお前が同じなら、その力量の差は子供でも分かるほどだ。」

(俺のイメージでしかないが、力の差が大きすぎる。もし戦闘になるなら逃げるしかない。)

最悪逃げることも想定していると、レミリアが説明をし始めた。

「ふふ、戦うには間違いないけど相手は私や咲夜じゃないわ。門番よ。」

「門番…?」

俺は言われて門前に立っていた人物を思い出した。

「あの寝てた奴か?」

「ええ、仕事は全然してくれないけど、彼女は格闘技術においてはこの幻想郷でもそうとうなものよ。まあ格闘技術が高くてもこの世界では弾幕とか剣や弓っていった武器を使うのが普通だから、そんなに強いとも言えないけどね。」

「いや俺の戦い方も近接戦なんだが……とゆうかあの門番も弾幕撃てるだろ。遠距離攻撃なんてほとんど使えないぞ?完全に俺不利じゃねえか。」

「門番には弾幕、能力の使用は禁止するわ。貴方は能力は使えるのだから、これで対等に戦えるはずよ。」

つまり向こうは格闘以外の攻撃は出来ないが、こっちは能力も使える。

「……あの門番妖怪か?」

「なんで分かったの?」

「なんの妖怪かは知らん。だけどここを守る門番なら人間は無いだろ。だから妖怪だとは予測していた。本当に妖怪なら確かにそれで対等だな。だがそれなら俺も使う能力を絞らせてもらう。俺の能力は二つなんでな。」

「構わないわよ。でも…」

「お嬢様、霊夢と魔理沙が到着しました。」

「このことを二人と門番…美鈴にも伝えないとね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一章を今回で終わるか次で終わるかどうするか悩んだんですけど、時間やっぱり取れなかったんで、区切ります。まあ次で終わるんですけどね。それとキャラの口調なんですがゆっくり実況や他投稿者様のを使うので原作と違ったら『あ、ここではこんな口調なんだ』くらいに考えて下さい。性格も同様に。では。


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第十八話 スペルカード

こんにちわ。凛と申します。もう誰も覚えてません程休み過ぎたこと反省しています。前の回の事ですが。これからは休みの日が増えるので投稿を早めます。ではでは~


三人への説明を終えて、俺、レミリア、咲夜、美鈴、霊夢、魔理沙の六人は門前に移動していた。

「説明した通りのルールでよろしくね美鈴。」

「分かってますよ咲夜さん。でも…たとえ相手が人間でも、加減は出来ませんしする気もありません。」

「こっちこそ分かってるわ。貴方の性格ぐらいはね。」

二人の会話を遠巻きに眺めていたが、互いのことを知っているような会話は、まさに家族の会話のようだった。

(家族…か。俺もああなれたのか?)

『自分で壊したくせになにを言っているんだ?』

「!?」

急に声が聞こえた。

自分と全く同じような声が。

(自分で……壊した?)

一人で考え事をしていたら、声をかけられた。

「琴羽ーそろそろ始めるわよー」

「!あ、ああ分かった。」

霊夢の声で現実に引き戻された。

(そうだ、今はこっちに集中しよう。)

「琴羽さん私も負けたくないので、全力で行かせてもらいます。」

「ああ、こっちも本気で行かせてもらう。」

………

「始め!」

レミリアの掛け声で戦いは始まった。

「…………」

「…………」

「……………………」

「……………………」

始まったはいいが、美鈴の殺気が強いために無闇に動けない。

動けば死ぬ、それが素人ながらに分かってしまう。

しかし、動かなければ終わらない。

(なら……)

俺は今の脚力で出来る全力で走りだした。

向こうも同じ考えだったようで、ほぼ同時に走りだしていた。

(明らかに向こうの方が早い。なら……ここだ!)

俺は能力を使って脚力を上げ、突進した。

美鈴はそんな行動をすると読んでいなかったようで少し驚いていた。

しかしその程度の読み違い、戦闘慣れしている美鈴からすれば問題無かったようだ。

少しの遅れもなく防御体制をとった。

能力で強化したとはいえ、防がれては威力が出ない。

「甘いですよ、琴羽さん。」

その言葉の直後、腹に激痛が来た。

「がっ!?あ…」

カウンターのようだ。

さらに追い打ちで横腹を蹴り飛ばされた。

「ぐっ!?さ…せるかぁ!」

ただ蹴り飛ばされるだけでなく、蹴ってきた脚を全力で肘打ちした。

蹴り飛ばされて平原に伏す形になった。

「脚を打ちましたか。いい反応と判断ですね。でもその程度では痛みにもなりませんよ。」

「ぐっうう……」

腹の痛みが大きく、立つだけでも一苦労だった。

「どうしました?その程度なのですか?それなら…これで終わりです!」

走る足音が聞こえた。

(この状況を打破する方法はある。だが読まれれば終わる。どうする……)

自分の状態からやらなければ負けることを理解した。

「出来ればやりたくないが……」

「はああぁぁぁ!」

美鈴の攻撃を避け、勢いに任せて蹴りを放った。

「くっ!?」

もうそんな余力は無いと読んでた美鈴は、後退してこちらへの警戒を強めた。

その隙を逃さず、追いながら俺は言った。

一枚の紙を持って。

(あれは…スペルカード!まずい!)

「幻符 『影槌拳』(えいついけん)!」

ドオオン!

高威力の殴打が美鈴に繰り出された。

「くっ!?(こんな威力の技をまだ……)」

「遅い!」

再び力任せに蹴りを放った。

「そんなもの…もう効きませんよ!」

美鈴はその蹴りを防ごうとし、片腕を脚に向けもう片方の腕を構えた。

(ここだ!)

美鈴が防いだ蹴りは美鈴の体をすり抜け、代わりに美鈴の腹に激痛が来た。

「がっ!?なぁ!?」

何者か、いや俺に殴られた美鈴は、耐えられずに吹き飛び、門にぶつかった。

「がっ!?…く、何…が…?」

あの様子だと、もう美鈴は起き上がれなそうだ。

「はぁはぁ…成功して良かったぜ。美鈴の場合読まれた可能性があったからな…痛っ!?がはっげほ!」

血を吐いて伏した俺を見て、霊夢が駆け寄った。

「琴羽!どうしたのよ!」

(もう意識が…)

薄れていく意識の中で、霊夢の声が聞こえた。

それと同時にレミリアの引き分けの声と、咲夜への治療の指示を出す声も聞こえた。

(よっ…しゃ…)

心の中で軽く喜んだ直後、俺は完全に意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んん…ん?ここは……永遠亭?」

起き上がって周りを見渡すと、見覚えのある部屋にいた。

とにかく誰かいないか探すことにした。

「ん?あっ起きたんですね!待ってて下さい!すぐに皆さんお呼びしますので!」

「あ、おい鈴仙……」

走っていってしまった。

「皆さんって……あいつらいんのかよ。」

まだ体が痛むので、ベッドに戻ることにした。

「ふぅ…初めて使うと疲労がやべえな。あんま使わないようにするか。」

一人言を呟いていると、急に襖が開いた。

「琴羽!」

急に霊夢が飛び付いてきた。

「うお!?霊夢落ち着け!とにかく離れろ!」

「あ!ご、ごめんなさい。」

「琴羽~怪我は平気か~?」

魔理沙の気の抜けた声が部屋に響いた。

「ああ。さすが永琳だよ。」

「それよりあの時に何をしたかを聞かせて欲しいのだけど?私達、半分はそのために来たんだから。」

続いてレミリアと咲夜も来た。

「レミリア達もいたのか。あの時…スペルカードのことか。」

「あ、それ私も聞きたかったぜ。」

「私も。」

全員あのスペルカードがどうゆうものか聞きたいようだ。

「あれ作った方がいいって言ったのは紫だよ。能力の特性を封じ込めたカードを、つまりスペルカードを作っとけってな。もちろんスペルは自分で作ったが。」

「紫が?でも何で…」

「戦闘になった時にあったら便利だからだそうだ。他にも二枚作ってる。まあ使う時に見せてやるよ。」

「それよりあのスペカの能力教えろよ~」

魔理沙が急かすのでとりあえず説明を始めた。

「あのスペルは完全に俺の能力で行われてるんだ。本来の使い方なら最初の打撃は無い。」

「本来の使い方?」

「ああ、あれは自分のホログラムを投影、戦わせて相手の死角から槌の力で殴り付けるんだ。硬い妖怪でも相当なダメージになるだろ。」

「なるほどね。美鈴にも伝えておくから今度また手合わせお願いするわ。まあお見舞いも済んだし、私達は帰るわ。夜も遅いからもう寝た方がいいわよ。お大事に。」

最後に咲夜がお辞儀をして二人は部屋から出ていった。

「レミリアも言ってたけど、もう夜だし二人も泊まっていけば?永琳ならそんぐらい許してくれんだろ。」

「分かったわ。おやすみなさい。」

「お休みだぜ。」

「ああ。」

二人が出ていくのを確認して俺は布団に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

琴羽達が永遠亭に居るとき一人の少女は笑っていた。

「ふふふ、準備は出来たわ。琴羽……自分の大切な物に壊されたとき、自分の大切な物が壊されたときに貴方はどんな感情を抱くのかしら?ふふふ、あははは!」

狂人にも似た笑い声で……

 

 

 

 

 

 




さて、予定通り一章は終わりです。琴羽のスペカはほかにもあります。いつか出ますよ…次の回も。休みの日に書けば娯楽の時間を生け贄に書けそうです。……では。


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第ニ章 狂気と怨念
第十九話 嵐の前


そういえば琴羽のスペルなんですけど説明足りないですよね?あれは琴羽の能力でホログラムを投影したとゆうよりは自分に自分のホログラムを投影することでその場所に自分の分身のようなものを作っているので、道具の力を自分に付与する能力の応用になります。死角に入るために使っているのはメタギアのステルススーツとでも考えて下さい。他二つのスペルは琴羽のもう一つの能力を使ったものと両方を使ったものの二つを考えてます。スペカの設定はwiki参照です。長々とすみませんでした。ではでは~


「世話になったな。次来るときは遊びに来るよ。」

「仕事に来てくれると嬉しいわね。」

「冗談だよ。とりあえずじゃあな。」

「ええ。霊夢たちには先に帰ったって言っとくから、後でお礼言いなさいよ?」

「言われなくてもそうする。」

起きた後、体が治ってることを確認してから、永琳に挨拶しに行った。

霊夢と魔理沙は寝ていたから置いて帰ることにした(美鈴は泊まらずレミリアと帰ったらしい)。

永琳と別れて、竹林を適当に歩いていたのだが……

(ここどこだ?)

出て少し歩いただけで、道が全く分からなくなった。

永遠亭に戻って道を聞こうとも思ったが、その道も分からなくなっていた。

仕方がないから、以前試そうとした能力を使ってみることにした。

「この能力の使い方出来るのか?……いいや。やるだけやろう。」

俺はその能力を使ってみた。

「やっぱ見たことなきゃ駄目か。せめて意識がある状態で運ばれりゃなぁ。」

と一人で愚痴る結果になってしまった。

その能力は対価はないが、脳への負担がある系統のもので、地図を能力で使うものだった。

それはつまり、自分の覚えている景色を地図にして記憶に新しく覚えさせるものだった。

しかし見たことのない場所では地図の元になる記憶すらない。

仕方がないからコンパスを能力で使って方角の確認だけ行った。

これも初めてやったが上手くいった。

「延々と真っ直ぐ行きゃ林は抜けられるか。」

と決めて歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~十分後~

さすがに幻想郷に来てから、運動ばかりしていることもあり、十分歩く程度なら疲れはなかった。

(向こうに居た時より足速くなったな。)

十分歩いて出た感想は、本当にしょうがないことだった。

「お!出れたっぽい。」

林が無くなって空けた場所に出た。

だが奥にまだ林があるから抜けたわけではなさそうだ。

「不死『火の鳥-鳳翼天翔-』!」

「…は?」

急にスペルが聞こえた。

すると不死鳥のようなものが出現、俺の真上に飛んでいった。

「そんなもの聞かないわよ!」

真上に飛んでいった不死鳥は、(俺に向かって)落ちて来た。

「ちょ、ちょっと待……」

ボオオオ

『あ…』

俺の叫びは炎の音でかき消された。

「か、輝夜……」

「も、妹紅……」

二人は顔を見合って、同時に、しかも同方向に逃げ出した。

俺は逃げ出した二人を、素の腕力で殴りつけた。

「ふざけんな!殺す気か!」

ぼろぼろになった服は直せなかったが、炎で上がった体温は能力で下げられた。

その原因を作った二人に対し怒りが止まらず、殴ってしまったことを謝罪した。

「あ…悪い。」

勢いが強かっただけに二人共ノックアウトしてしまったようだ。

起こそうとしたが、起きる気配がない。

両方傷だらけだし、病み上がりの体ではきついが永遠亭に連れて行くことにした。

「良かった…地図が使えなきゃ永遠亭にも戻れなかった。…どうせ戻るなら最初使って戻りゃよかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…ん?…!?」

「ん?やっと起きたか。なら自分で歩いてくれ。」

完全に持ち物になっていた二人のうち、白髪の方が目を覚ました。

「え…あ、お前誰だ?」

「てめ、まず謝ったらどうだよ。…まあいいか、結局こっちも殴ったし。宮代琴羽、とりあえず名前くらいは言っとく。」

「なら私も名前くらいは言っとこう。藤原妹紅だ。それで、何で私らは担がれて運ばれてたんだ?しかもそっちは服ぼろぼろだし…」

俺は少し前にあったことを話した。

「…まあそれで永遠亭に向かってたとこだ。そろそろ…お、丁度見えてきたな。」

青ざめた顔で何度も謝罪の言葉を繰り返す妹紅に「とりあえずもういいからやめろ。」と言ってやめさせた。

「永琳~いるか~。」

数分で永琳が出て来た。

「何してるんですか姫様。それと随分早い帰還ね琴羽?そんなに早く働きたいのかしら?」

「永琳、お前の言葉だと冗談に聞こえん。知り合いならこの二人の治療とっととしてやれ。」

「必要ないわよ。二人共不老不死ですもの。それより琴羽の治療ちゃちゃっとやっちゃうから早く来なさい。」

「………この世界は何でもありなのか。二人運んで来た俺の苦労はなんだったんだ。」

落胆しながら永琳に言われるまま付いていった。

 

 

 

 

 

 

 

「状況は何となく理解しているから、どうせ道に迷って二人の喧嘩に巻き込まれたんでしょう?優曇華に案内させるから、次からはもっと気を付けて来なさい。あと服ここにはないから人里で買いなさい。」

「すまん…けど姫ならお前が止めろよ。もう燃やされんのはごめんだ。」

「いつ始めるか分からないから無理。」

(だろうな。)

「まあとにかく治療は終わったから、帰るなら帰りなさい。帰らないなら働いてもら…」

「いや帰るから。案内頼む。」

「分かったわよ。優曇……」

『オオアアアアアアァァァァ!!!』

突然聞こえた雄叫びに、俺と永琳は固まった。

「何今の!?」

「声の大きさ的に幻想郷ほとんどの場所に聞こえただろうな。向こうの方角には何がある?」

「ここは幻想郷の南西の端の方よ。ほとんどのものが向こうの方角にあるわよ。」

「永琳!?居る!?」

突然現れた紫が抱えていたのは、意識がなく、ぼろぼろの姿の霊夢だった。

その後に続いて隙間から何人か同じ状態の人達が出て来た。

「!?紫、いったい何が…」

「そんなことより早く治療を…う…」

「紫!?優曇華!すぐに怪我人を連れていきなさい!琴羽も手伝って!」

「わ、分かった。」

「琴羽…」

紫が名前を読んだのを聞き、動きを止めた。

「紫喋らないで!伝えたいことがあるなら後に…」

「いいえ永琳…今じゃなきゃ…駄目なの。琴羽…隙間から…早く妖怪の山へ…藍がまだ…押さえてる。早く…」

その言葉を最後まで聞かないうちに、俺は隙間に飛び込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ゴールデンウィーク中にいくつでますかね?そうそう設定のほとんどはwiki参照なんで何も言わないで下さい。次回戦闘回です。相手はなんとなく分かりますかね?
では。


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第二十話 限界

こんにちわ。凛です。そういえば前回運ばれて来たの誰か分からないですよね?霊夢、魔理沙、ニトリ、文、椛、他天狗達(白狼天狗達)です。戦闘中は藍、橙、他天狗達(白狼天狗達)です。ちなみに他の戦闘が弱い妖怪達(下等妖怪)は避難してます。ではでは~


隙間を抜けて最初に映ったのは、風の斬撃(おそらく鎌鼬だろう。)だった。

その斬撃は天狗達の体を次々と裂いていく。

その中で、狐と猫の妖怪が避け続けていた。

『ルオオオオオオォォォォオオオ!!』

斬撃を放っていた者は、雄叫びを上げ避け続ける二人に飛びかかった。

(まずい!)

と思い俺も同時に飛びかかった。

その巨漢は狐の妖怪を切り裂こうと手を上げた。

「藍様!避けて下さい!」

猫が声をかけるも遅く、腕から血が噴き出した。

ただし、その直前に狐を突飛ばした俺の腕から。

「ぐっ!吹き飛べ!」

痛みに耐えながら蹴り飛ばした。

「あ、貴方は…?」

「悪いが自己紹介は後だ!構えろ!」

「!そうですね。見たところ貴方は近接攻撃が得意そうですね。後ろから弾幕で援護しますので近距離で攻撃して下さい。橙!行きますよ!式神『橙』」

「分かりました!藍様!化猫『橙』!」

「じゃあ俺も突っ込むか。」

二人のスペルと同時に弾幕が出現した。

直後に俺も能力で走った。

『オオオオォォォォォォ!』

だが俺達の攻撃が届く寸前、雄叫びを上げた巨漢からとてつもない竜巻が起こった。

周りの天狗は全滅し、近くにいた俺は吹き飛ばされ、二人の弾幕はかき消された。

「がっ!?な…なんだ?」

吹き飛ばされた俺は木に激突し、二人も離れていた筈なのに吹き飛ばされていた。

「そんな…まだ…こんな力が…大天狗の妖力は底なしとでもいうのか…!」

(大天狗?この山は天狗のものだろ?なら治めてるのは大天狗じゃないのか?)

「そんなことどうでもいい…狐!猫連れて早くどっか行け!誰でもいい!助けを連れてこい!」

「そんな…貴方はどうする気ですか!」

「俺は……!?」

答える前に鎌鼬が俺に向けて放たれた。

「糞が…!」

大きい力には大きい力を。

俺のスペルの一つは、無理をすればかなりの威力(下手をすれば魔理沙のマスパ以上の威力の)を出せるものがある。

しかし霊夢や紫が壊せないような竜巻を壊す威力はだせない。

そう理解した俺は別の攻撃法を考えた。

大天狗の攻撃は狐と猫には行かず俺だけに集中していた。

(狙いは俺なのか…?なら…!)

「狐!狙いは俺だ!時間は稼ぐ!早く行け!」

俺は狐と猫のいる逆側へ回り込み、鎌鼬を避け続けた。

渋ってはいたようだが、狐と猫の姿は消え、もういなくなっていることが確認された。

スペルを使わず攻撃を当てられないか試したが、俺の放つ銃弾や投げナイフは弾かれ、相手の弾として飛んできた。

(反射の能力か?これじゃ撃っても反されるのがおちか。避け続ける…いや…)

俺は奴の攻撃の弱点を突くため、スペルを変換した。

それと同時に新たなスペル作った。

(威力は下がるがこれしかない!)

「魔壁『翻る大地』(ひるがえるだいち)、魔砲『大地巡る剣砲』(だいちめぐるけんほう)!」

地形を利用した新たなスペルは、ぱっと思い付いた程度のものとしては強力だった。

『ガアアアアアアァァァァ!』

地面が捲られ盾となり、大天狗の地面からは大剣が飛び出ていた。

そこらの妖怪なら確実に倒せる一撃だった。

「これでどうだ…?」

あの雄叫びからして、明らかにダメージにはなっていた筈だ。

ただ一つの誤算を除き、狙い通りの攻撃になった。

だがその誤算は大きすぎた。

その竜巻の能力だった。

地面から突き出た剣は砕かれ、鎌鼬は壁を破壊した。

(!なっ!?嘘だろ!?)

砕かれた壁の破片を避け、飛び続ける鎌鼬も避け続け、相手の能力解析を行った。

しかし、明らかになったのは自分の能力では、勝ち目がないということだけだった。

自分の最大火力の攻撃を砕かれ、弾幕やナイフさえも弾かれ、時間稼ぎさえも出来るか分からない。

「ぐっ!?こんな…ときに…!」

全身から血が噴きでる。

能力の対価だった。

動きが止まった一瞬の隙に、鎌鼬が放たれる。

「しま――!」

防御も間に合わず、腕が裂かれる。

続けて脚、腹と次々に裂かれた。

「がっ!ああ、あ…」

倒れこみ、激痛によって薄れる意識の中、歩み寄る大天狗の足音だけが鮮明に聞こえる。

頭を掴まれ、後ろの木に押さえつけられる。

「ガアアアアアア!」

そのままとてつもない握力で頭を握られる。

大天狗が纏っている風は俺を裂き続け、体中がぼろぼろになる。

(こんな簡単に死ぬのかよ……約束も守れねえのかよ……こいつ倒せなきゃ傷付く人が…大勢…出るのに…仕事も…こなせねえのかよ…)

『生きて…!』

過去に親友から言われた言葉を、いま思い出した。

「!……死ねない…まだ…死んでたまるか…」

ぼろぼろの腕を無理矢理動かし、対価などお構い無しに能力を使った。

だがどれだけ力もうがほどくことは出来ず、自分を掴む腕の力が強くなるばかりだった。

(どうすりゃいいんだよ…俺の力はこの程度なのかよ…狐………頼む…倒してくれ…)

「せめて…こんぐらいはしてやる…!」

能力で大天狗が纏っている風を消した。

だがそれで魔力は完全に尽きてしまった。

脱力し、腕は下がり、抵抗の力ももう残っていなかった。

意識は薄れ、視界には何もなくなった。

周りが白くなり、死んだはずの親友達の姿が見えた。

それと共に遊ぶ過去の自分、血の繋がらない家族、そして霊夢や魔理沙、幻想郷の人達。

(これが走馬灯ってやつか?そうか…俺はやっと、お前らの所に…)

『本当にそれでいいのか?』

目の前の景色が消え、一人の少年が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




橙の様呼びは読み方しゃまです。書きづらいんですよ。しゃまの方がいろんな作品で多い喋り方ですし。どうでもいいですかそうですかそうですよね。そういえばタグにチート能力を付けた理由はそのうち分かります。では。


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第二十一話 天力の解放

こんにちわ。そういえばこの作品下の方の空白が多いのですが、半分はわざとやってます。ただミスって予想より増えるだけなんです。あとこの章だけで戦闘ニ、三回あります。話の構成的に戦闘多いのは仕方ないです。あと括弧の付いてないところの表現少しいつもと違います。ではでは~


『本当にそれでいいのか?』

 

何もない空間の中、少年は呟いた。

距離が遠くて顔も分からないのに、声だけが頭に響いてくるように聞こえる。

 

それでいいか?

いいもなにも関係ないだろ。

俺には選択肢なんてないんだから。

頭押さえつけられて、魔力は空っぽで、出来ることなんて何もない。

どう頑張ろうが、死は絶対に来るものだ。

それが今だった。

ただそれだけのことだろ?

 

何故か声が出なかったが、少年は俺の言いたいことを分かっているようだった。

 

『…もう一度聞くぞ。それでいいのか?』

…………いいわけがないだろ。

何も出来ずに死んでいくことが…願いも叶えられずに死んでいいと思うわけがないだろ。

でも駄目だった。

俺は結局、力を持たないただの人間と変わらないんだよ。

世界を跨いでも、俺は弱いままだった。

守りたいものがあった。

助けたいものがあった。

なのに俺は何も出来なかった。

いつだってそうだった。

自分で願いを捨て去って、自分で居場所を消してきた。

俺の願いは叶わないものばかりじゃなかった。

きっと叶うものだってあった。

親友や家族と一緒に居たい、その場所を守りたい、俺の願いはいつもそんなことだった。

だけど…叶ったことなんてなかった。

結局は俺のエゴでしかなかった。

何もないからこそ、何かが欲しかった。

俺が手に入れたのは、願いと体よく言った汚い欲望だ。

大天狗だって、白狼天狗達だって、助けたかった。

でも、こんな考えだって、強欲の証明でしかなかった。

俺はそんな欲望しかない俺自身が、どんなものよりも「大嫌いだ!何も出来ないくせに欲望ばかりが増えていく。大天狗を助けることも、出来なかった。…なあ、教えてくれよ?俺が生きる理由をさ。強くなる方法をさ…」

 

いつの間にか声の出るようになっていた俺は、涙を流しながらその少年に救いを求めた。

少年は全く読めない声音で話始めた。

 

『それがお前の望みだろ?お前は救いたいんじゃない。救われたいんだ。お前は弱くなんてない。お前の本質は自分より他人ってことだ。自分の為に他人を救おうと考える奴が弱いはずがないだろ?俺はお前を救える。気付いてるだろ?大天狗が正気じゃないことぐらい。こいつを倒すんだ。俺達であいつを救おう。それがお前の救いになる。』

 

どうすればいいのか、どうするべきなのか、最初から知っていたように頭に浮かんだ。

 

「……お前は誰なんだ?どうして俺に協力してくれるんだ?」

『俺はお前さ。能力とでも考えてくれ。俺はな、お前に感謝してるんだよ。生きてることにな。俺が協力するのは、俺の為さ。…さて、ここは精神世界だ。時間の進みは現実とは違う。現実に戻れば、お前はまだ押さえつけられてる。ここからは、もう分かるな?』

「ああ。存分に使わせてもらうぜ。お前の力…」

能力との会話を終え、俺の意識は消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現実に戻った俺は、自分の頭を押さえつけている大天狗の腕に向かって、新たなスペルを唱えた。

「天上『天風貫雷』(あまかぜのかんらい)!」

直後出た雷は、大天狗の腕を貫通し、雷から散った風は鎌鼬となって大天狗を切り裂いた。

『ガアアアアアアァァァァ!?』

瀕死の相手が急に動きだしたことに対し、大天狗は意味が分からないというように、また体の痛みから雄叫びを上げた。

新しいスペルは二つ。

この戦いにのみ、この一瞬にだけ使えるようにされた、“風のスペル“。

『ガアアァァァァ!』

予想通りの反撃に、再びスペルで対応した。

「幻符『影槌拳』!」

狙い通り飛んできた攻撃を難なくかわし、全力の拳を大天狗の脚に叩きこんだ。

動けなくなった大天狗に向かって、与えられたもう一つのスペルを唱えた。

「解放『付与術消去』(エンチャント デリート)」

静かな声で唱えたそのスペルは、大天狗の体を風で包み込み、晴れる頃には大天狗は意識を無くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘のある回の文字数いつもより少なくなるかもです。
この作品では致命的ですが仕方ありません。今回戦いは終わったけど、最初いた藍と橙が琴羽戦闘中何してたか次の回で出します。あと、オリスペカには振り仮名振るようにします。では。


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第二十一話おまけ 藍逃走後の行動

結局おまけとして出しちゃうんですよね~。今更前の霊夢視点の話をおまけにすりゃよかったと思いましたよ。あと二十二話の最初に繋がるよう終わらせます都合いいんで。あ、前の話の最初に霊夢達置いてきたってナレーションしてましたが、そのあと琴羽が永遠亭でた直後に紫に呼ばれて大天狗と戦ってます。ではでは~


「狐!狙いは俺だ!時間は稼ぐ!早く行け!」

言いながら紫様の連れて来た少年は、私達のいる側とは逆に走った。

「藍様…?」

橙がどうすればいいのか困っていた。

私にも分からない。

何故大天狗にあの少年が狙われているのか。

人間でありながら、何故私達のような妖怪を助けるのか。

あの少年から感じる力は通常の人間と変わらない。

ここで逃げれば、彼を見捨てることと同義だろう。

(どうすればいい?何が正解なんだ?)

私は少し考えた。

時間がないからほぼ即決になってしまったが、大天狗に対抗することが出来るのは、彼女達だけだ。

今二人の戦いに乱入すれば、間違いなく大天狗に切り裂いかれるだけだ。

仕方がないと無理矢理自分を納得させ、地底へ向かうことを決めた。

私は橙にその意を伝え、地底へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「藍様!あの人置いてきてよかったんですか!?助けに行ってももう間に合いませんよ!?」

橙の言い分はもっともだ。

だけど私も分からない。

だから…

「信じるしかないでしょう。仮にも紫様が連れて来た方。ある程度の実力はお持ちと願いましょう。今は彼を早く助ける為に、一刻も早く地底を目指しましょう。」

「……はい…」

橙は人間が好きなので、彼のことが気がかりでしょうがないようだ。

橙の為にも、そして自分の為にも行かなければならない。

「橙、少し速度を上げますよ。」

「はい、藍様。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地底の入り口に着いた。

入り口まで響き渡る笑い声から、鬼達が朝から酒宴を開いていることが分かる。

「橙、飛ぶだけの妖力はありますか?」

「は、はい、大丈夫です!」

「そうですか。なら行きますよ。」

私達は飛び降りた。

 

 

 

 

地面に足を着いた頃には、酒の匂いが強くなっていた。

どうやら入り口の近くの酒場で飲んでいるようだった。

「ん?何だお前ら?狐の妖怪と猫の妖怪か?地底に何か用か?」

入り口付近を歩いていた鬼の一人が、私達に気付き話しかけてきた。

鬼は人間以外となら友好的な妖怪なので、襲ってくるつもりはないようだ。

「おお~その尻尾九尾か。ならなかなかの強さを持ってると見た!いっちょ手合わせ願おうか?」

……前言撤回、強者を見ると衝動を押さえられない戦闘狂のような性格も持っていた。

「ら、藍様…」

橙が少し怯えている。

私も戦える程の妖力はもう残っていない。

それに早く行かなければ彼がどうなるか分からない。

「すまないが、今は戦える妖力は残っていない。それに今は少し急いでいるんだ。勇儀と萃香はいるか?」

宴会で何度か会っているので、二人の強さは知っている。

助けを求めるなら、あの二人以外に適任はいない。

「姐さん達ならあっこの店で飲んでるぜ?」

案の定二人はすぐ近くで飲んでいるようだ。

「すまない、感謝する。橙。」

私達は急いでその店へ向かった。

「次来たときは手合わせ願うぜ~。」

 

 

 

「勇儀と萃香はいるか?」

店員にに勇儀と萃香が居るかを聞き、二人の居る場所へ向かった。

大量の鬼達が一ヶ所に集まっている中心に二人はいたので、すぐに見つけることが出来た。

「ん?よぉ藍じゃないか!橙も一緒か!地底に来るなんて珍しいじゃないか!何か用かい?」

萃香は普段博霊神社にいるが、こちらもまた珍しく地底にいたようだ。

「二人に頼みがあって来た。今、地上で大天狗が正気を失い暴走している。私達や紫様、霊夢でさえも負けた。もう頼めるのは二人しかいない。どうか協力してくれないか?」

「大天狗の暴走ねぇ。でも霊夢や紫が負けた相手に私らじゃ勝てないと思うけど?まぁそういう相手の方が楽しめるかもね。」

萃香は勝てるとは思っていないようだが勝つつもりではあるらしい。

「萃香、そういえば大天狗の能力って何だった?」

「ああ~あの能力は勝てるの私らくらいだね確かに。」

「能力?大天狗の能力とは一体…」

戦う中解析してはいたが、予想出来るとすれば弾幕を消す能力としか思えなかった。

「まあこれは知識の問題だね。私らは一応天狗の上司だし、部下の能力は把握してるのが当たり前だからね。」

「萃香はわざわざそんなもの把握しているのか?私は大天狗くらいしか覚えてないぞ?」

「私だってそうだよ。でも大天狗は覚えてるんだろ?」

「あの、それで大天狗の能力ってゆうのは…」

橙が勢いの強い二人の言動に怯えながら聞いた。

「ん?大天狗は能力二つあってね、本人と風にそれぞれ能力があるんだ。まず本人には弾幕を写しとる程度の能力がある。そして風には、自分が理解している相手の持つ能力を無効にする程度の能力がある。」

「え…それじゃ私達の弾幕が消えたのは…」

「その能力のせいだろうね。」

萃香が能力の説明を終え、倒す方法を考えた。

そして紫様や私では倒すことは不可能だということを遅れながらも理解した。

「つまり、私や紫様の能力で倒すことは…」

「最初っから不可能だよ。なんせあんたらを幻想郷で知らない人はいないんだから。弾幕の構造は全部一緒だしね。」

「だからあんたがここに来たのは正解だったよ。なんせ私らは……」

「腕力の方が自信があるからな。」

普通なら私や紫様が負ける相手はいないが、大天狗においては二人程に頼れる人物はいない。

「私らでよけりゃ協力するよ。」

「感謝…します。」

私達は地底を抜け、あの少年が耐えていることを祈りながら大天狗のもとへ向かった。(移動中に説明は終えた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「藍、大天狗がいるのはどのあたりなんだ?」

「もう近くまで来てる筈…なのですが…」

戦闘中とは思えないほど力を全く感じない。

人間の霊力どころか、大天狗の妖力さえ感じない。

「本当にこっちで間違いないのかい?」

諏訪子がもっともな疑問をかけたが、間違いはない筈だ。

「とにかく向かうしかないだろ?間違っていても分からないんだ。」

「そう…ですね。とにかく周りに注意しながら行きましょう。」

「……いやもう見つかったみたいだよ。」

「え?」

諏訪子が向いている方向を見ると、さっきの少年が大天狗に頭を掴まれているのが見えた。

力無く項垂れている少年からは、霊力も一切感じず、体はぼろぼろで死んでいてもおかしくない状態だった。

「そんな……間に合わなかった…」

「?藍、橙、諏訪子!少し離れるよ!」

「な!?何を…!?彼を見捨てる気…」

言い切る前に異変に気付いた。

少年の空っぽだった霊力が、神力となり増幅していた。

髪は白くなり、力無く垂れていた腕は力を取り戻していた。

そして少年は力を取り戻した腕を動かし、大天狗の腕を掴んだ。

直後、少年の声が、音のない空間に響き渡った。

「天上『天風貫雷』!」

少年の腕からは雷が延び、その雷からは鎌鼬が飛び散った。

あるものは大天狗を裂き、またあるものは周辺の木々を倒してゆく。

『ガアアアアアアァァァァ!?』

「いったい何が…!?」

「とにかく近づくのはまずい。遠目から見守ろう。」

「…はい。」

『ガアアァァァァ!』

目の前で死にかけていた少年の突然の攻撃に対し、大天狗は反撃した。

「幻符『影槌拳』!」

その反撃を受ける直前、少年はスペルを唱えた。

大天狗の攻撃はスペルを唱えた少年の体をすり抜け、少年の背後にあった木を裂いた。

当然大天狗の体制は崩れ、消えた少年が突然姿を現したのにも気付いてなかった。

現れた少年は大天狗の足を殴り、大天狗の動きを封じた。

封じると同時に、静かな声で囁くようにスペルを宣言した。

「解放『付与術消去』」

そのスペルに込められた力は、神力だった。

宣言後、風に囲まれた大天狗は、意識が無くなった状態で倒れていた。

一部始終を信じられないという心境で見ていた私達は、ただ見ていることしか出来なかった。

少年も力を使い果たしたようで、その体からは神力も霊力も感じなかった。

なので当然意識も無くなっていたようで、その小さい体は地面に倒れ伏した。

「!早く永遠亭へ…」

私は二人を永遠亭へ運ぶべく駆け寄った。

「藍様!私も手伝います!」

「知り合いなんでね。私も手伝わせてもらうよ。」

意図を察した二人も同時に駆け寄った。

「私は先に永遠亭に行ってるよ。ベッド空いてるか分かんないからね。永琳に伝えるだけ伝えとく。」

「分かりました。とりあえず応急処置だけでもしておきます。」

「じゃあまた。大天狗は頼んだよ勇義。」

「私以外こんなでかいの運べるかい?早く行きな。」

「はいはい。」

霧状になった萃香は、永遠亭に向かって飛んでいった。

戦わなかったとしても、二人を呼んだことは間違ってなかったようだ。

三人がかりで永遠亭へ二人を運んで行った。

 

 

 

 

 

 

 




藍視点なのに括弧付いてないところ琴羽視点と変わらないですね。僕にその表現力はないのでお許し下さい。あ、ここでは大天狗と天魔は同じにしてます考えんの面倒だったんで。…すみませんwiki設定スルーです。能力もwikiにないので勝手に作らせてもらいました。では。


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第二十二話 二人の琴羽

たまにある違和感の解説だいたい後書き前書きでやってるのって問題ないですよね?ではでは~


「ん…ここ…どこだ…?」

おそらく大天狗を倒したあとに誰かが運んでくれたのだろう。

ベッドに寝かされていた。

傷ついた人間を連れて来たということは、ここはおそらく永遠亭なのだろう。

(退院直後にまた入院とか…永琳に謝んなきゃな。)

などと考えていると、自分の視界がぼやけているのに気が付いた。

起きたばかりで視界がぼやけてしまっているのだろう。

あまり気にしないで視界が治るのを待った。

……何か違う。

視界がぼやけているのは確かだが、違和感を感じる。

右側はぼやけているわけではないようだ。

そう思い手を伸ばしてみた。

だがその手さえも動かなかった。

左手を動かそうとしたら痛みはあるものの、動かすことは出来た。

左手を右目に持っていったとき、あることに気付いた。

右目が無い。

右目があるはずの場所には、空洞があった。

なぜだかその事実に気が付いても、驚きはなかった。

大天狗との戦い、そして自分の精神世界にいたもう一人の自分とその能力。

もともと能力に対価があったことから大きな対価が反動としてくることは予想していたからだ。

右手や左手も確認してみると、形はあったが動かすことは全く出来なかった。

魔力は回復しており、体を動かすことはさして痛みはなかった。

(そうか…あのとき…死んでないのは能力のおかげか?)

『琴羽?聞こえるか?』

「!お前…!?何で…」

別のことで驚かされた。

その声は大天狗との戦いの中に現れた、もう一人の俺自身だった。

『現実で会話してたら他人来たとき面倒だ。会話は精神世界でするぞ。』

「は?」

精神世界に連れていくと言われた直後、金縛りにあったかのように体が動かなくなった。

それと同時に治りかけていた視界が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

視界が白から変わらないが、もう一人の俺が話しかけてきた。

『よう琴羽。よく生きたな。現実のお前の体は普通なら死んでるぜ?』

口調は俺と同じだが、出てくる言葉は俺が普段言わないようなほど軽かった。

「……言われてみれば腕は動くし、目もあるな。精神世界だから姿は現実と違うのか?」

確認したら無くなった目、動かない腕など、現実で壊れていた俺の体は治っていた。

『はは!やっぱお前の理解力は高えな!だけど惜しい。ここはお前の精神世界だ。それは間違いない。だがその支配権は俺にある。お前の姿は俺が創り出しているものだ。』

「お前が創り出している?いや、それ以前に何故俺の世界の支配権をお前が持っているんだ。」

『……俺はずっとここに居たんだよ。知ってるか?二重人格者の人格支配権は、片方が存在を認識していない状態で、もう片方が存在を認識していれば、認識している側にいくんだ。たとえ裏の人格でもな。その支配権はそう簡単に移せるものじゃねえ。お前が今更俺の存在を認識したところで、この世界の支配権は俺から移ることはない。』

「……つまりお前の存在を俺が認識していなかったから、この世界の支配権をお前に譲渡されたってわけか?ならなんで現実での俺の意識は存在出来ている。この世界がお前の支配下なら、俺の精神がお前に蝕まれてるも同然だろ?」

『くく、やっぱりお前は俺らと比べて頭がいいな。確かにその通りだ。俺は現実に出ることは出来る。少し言い方を変えよう。支配権は確かに俺にある。だが意識と精神にはそうとうな違いがある。簡単に言うと内側がどうなろうが外側はお前以外には無理なんだよ。仮に俺が他人と会話すれば、すぐにお前じゃないことぐらいばれるだろ?そういうことだ。』

質問ばかりで面倒くさくなったのか、答えが投げやりになってきた。

だがこいつに関してはなんとなく分かった。

「最初にお前は俺の能力だって言ってたな?あれはどういう意味なんだ?」

『ああ言ったな。別に嘘はついていない。お前は特殊なんだ。』

「は?特殊?」

『ああ。お前は二重人格ではない。だが俺は存在している。お前の能力によってな。』

「?俺の能力はあの二つ以外にもあるっていうのか?」

こいつの言葉からはそうとしか思えない。

『お前の能力はあんな程度の低いものじゃねえ。まあ今はまだ俺は教えられない。ある奴の願いでな。いつかちゃんと教えてやる。(まあ思い出すの方が正しいな)』

その答えは子供に何かを聞かれたときの大人の対応とほとんど同じだった。

「………分かった。いつか教えてもらえるまで待つことにしよう。」

『そうしてくれ。それと、お前が俺を認識したんでな。お前が望めば俺も表に出られる。たまにはこの世界以外にも俺を出してくれ。お前の能力上手く使えば分裂くらい出来るだろ。そうだな……俺のことは…………天智(あまち)とでも呼んでくれ。呼ばれなくとも勝手にお前の頭には話しかけるがな。』

「分かった。まあお前もここにいたら暇だろうしな。霊夢達にお前のことは話した方がいいか?」

『永琳には話しとけ。必要になる。あとは好きにしな。』

「必要になる?」

『現実に戻ったら分かるさ。そろそろ現実に戻すぜ。』

「ああ頼む。」

たった一人目の前に立っていた天智は消え、完全に真っ白な空間が続いた後、見知った部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻った…?ん?………!?」

俺はあることに気付いた。

右目が戻っている。

(腕は………?)

腕も動く。

自分の体が完全に治っている。

だが驚きも一瞬、何故治ったかを理解すれば驚くことでもなかった。

「天智、お前の言ってた必要になるっていうのはこのことか?」

予想を確信に変えるため、天智に聞くことにした。

『ご名答~ついでにお前の霊力に関しては俺の神力で代用しといた。まあ一日寝てたけど。』

「そうか…お前には助けられっぱなしだな。」

『それが俺の役目だ。結局お前がいなきゃ俺はいねえからな。言い忘れてたけど俺の力使いたけりゃ勝手に使いな。』

「そういえばお前の能力はなんなんだ?そうとう強かったが……」

『天の力を操る程度の能力だな。その気になれば付与術や回復、風さえも操れるぜ。』

「すげえ能力だな。…なら紫達の傷治せるのか?」

『望むならやってやるよ。ただし俺の力をお前が使う形になる。制御はお前がやることになるから頑張りな。』

「なら行こう。紫なら練習台にしても問題ない。」

「……何一人で話してるのよ。何か悲しいわよ?」

天智と話していると、永琳が入って来た。

「永琳か。悪いな気付かなかった。…そうだ!紫達のいる部屋はどこだ?」

「貴方まさか行く気?そのから…あれ?何で!?目は!?腕は!?」

今更俺の目と腕に気付いたらしく、永琳にしてはとても珍しい程声を張り上げた。

「治した。それと一人紹介したい奴が居てな。えっと…こうすりゃ出来るか?」

能力を使って以前ニトリに見せてもらった道具を使ってみた。

天智はこれを見越していただろう間違いなく。

ニトリの道具はさまざまな生物の魂分離装置だった。

なんでも別の体に別の人物の魂を入れたときどんな反応するか、という遊び心で作ったらしい。

つまりは肉体入れ替え機のようなものだ。

案の定分けることは出来たが、疲労が半端じゃない。

「数分な。」

と天智に言い、いままでのことを永琳に説明した。

 

 

 

「すまん。天智…もう無理だ。」

『説明は終わったから問題はない。じゃあな。』

説明が終わると力を使い切り、天智の姿が消えた。

「なるほど。とにかく事情は分かったけど、どっちにしろここに今日明日は泊まりなさい。様子見も必要だからね。当然働いてもらうわよ?」

「分かってるよ。従業員としてここに来る筈が患者としてしか来てないからな。天智の能力使って怪我なら俺が治すよ。永琳は病気の奴優先して紫達は任せてくれ。」

「分かったわ。それなら私も優曇華も助かるわ。でも無理はしないように。また寝込まれても困るから。」

「当然。ただ……今は疲れたから少し寝かしてくれ。」

「…ええお休みなさい。」

疲労が大き過ぎてそのまま意識を失った。

 

 

 

 




会話多くなっちゃいました~。まあ会話だけの回出してる作品もあるしいいですよね?……今度言葉だけの回出そうかな。では。


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第二十三話 永遠亭一日目

こっから三、四日分は永遠亭です。ではでは~


『…琴羽、そろそろ起きろ。』

天智の声が頭に響いた。

(眠いんだよ寝かせてくれ。)

面倒だから考えるだけで言葉には出さなかった。

『お前俺に話しかける必要ないからって会話方法を簡略化すんな。とにかく起きろ。話しがある。頭働かせろ。あと声に出せ。』

「分かったよ起きるようるせえな。まあ紫達の治療必要ならしなきゃいけないし、あまり寝てても永琳に悪いからな。どんぐらい寝てた?」

『分かればいいんだよ。あと言っとくが昨日からずっと寝てたからな?永琳と会話してからも二時間寝てたぞ。眠いとか言ってんじゃねえ。』

どうやらまる一日寝てたようだ。

「はぁ、それで?話ってのはなんなんだ?」

俺は一つ溜め息を吐いて天智から話を聞くことにした。

『話は二つ。一つは霊夢や魔理沙、つまり永琳や鈴仙以外に能力のことは話さない方がいいっていうこと。まあこれに関してはお前でも理由は分かるだろ?つことで説明無しで二つ目だ。大天狗との戦いを少し思い出してもらうぞ。あいつはお前を狙って攻撃をしてきたな?』

天智の言うとおり大天狗は俺を狙っていた。

いいや、俺が戦いに参加してから俺しか眼中になかった。

おかげで狐と猫を助けられたが、不可解な点ではある。

『悪いが俺にも予測しか出来ん。ただもしかしたら……お前の元の世界の知り合いか何かがお前を殺そうと大天狗を仕向けてきたのかもしれん。』

天智はつまり、この世界の存在以外で、さらには俺への憎しみの念を持っている者が、俺と俺の周りの奴らを襲ったということだ。

そしてこれからも襲ってくるということだ。

「幻想郷の住人が俺を狙う必要がない。だが狙われてるのは俺だ。ならそこまで考えることは子供にも出来る。それでもただ一つ分からない。」

『俺もだ。狙いがお前でかつ大天狗と同レベルの奴が駒としているのなら、お前が寝ている間に殺せばよかっただけだ。』

天智は知識の共有はしてくれるからありがたい。

天智の言うことを簡単にするならば、俺が寝てる間に殺せばよかっただろ?ということだ。

『何らかの原因、もしくは俺の存在が攻撃をしてこない原因の可能性はある。さらに言えば大天狗の力はもともとの力をはるかに越えていた。』

「?どういうことだ?大天狗が強くなってたってことか?」

『ああ。正確に言うなら妖力の量があいつの体に合わないレベルだった。』

「…確かに妖力の量は異常だったが、それなら俺は勝てないんじゃないか?たとえ正気に戻すため近づくだけでも無理だろ。」

大天狗の妖力は紫や野良の下等妖怪よりも強かった。

さらに腕力や脚力も普通じゃなかった。

『ならその力を大天狗が扱いきれてなかったらどうだ?能力を使わない身体能力だけで戦っていたとしたら?』

「身体能力だけで…?」

俺は思考を巡らせた。

『生物の行動は考える頭がなくなれば、体が覚えている動きを行う。能力も同様だ。そこから考えられる敵の能力は、いったいなんだろうな?』

その天智の言葉から、敵の能力に関してを考えるよう頭を切り替えた。

その中にあった可能性は、敵の能力が俺が考えていたよりも恐ろしいものであり、また使うのが難しい能力だということだった。

『その可能性以外に存在するならそれはもっと恐ろしいとおもうぜ?』

考えていたことが天智にはばればれだったようだ。

「つまりそれ以外の可能性はないと?」

『調べる必要はある。紫に話すしかないだろ。俺の存在はどうせばれる。運が悪けりゃ霊夢達にもな。なら俺に関しては戦うことは出来ないとでも言えば問題ない。』

話して問題があるのは、天智が戦えるということ。

その力が強すぎれば、当然幻想郷の敵として天智が疑われる可能性があること。

それは俺がそう考えられるのと同じことだった。

天智が使うのは神力。

当然力は強い。

そう思われることは当然のことだった。

(口止めくらいはしといた方がいいな。)

「……分かった。話しすぎたな。これからも襲われる可能性があるなら紫達の治療は急いだ方がいい。とにかく今話した内容を紫に伝えよう。」

話しを切り上げて紫達のいる部屋へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「この部屋か?」

「はい。紫様と霊夢さんはここです。他の人達も隣の部屋にいます。」

永琳に聞き忘れて部屋の場所が分からないから、偶然部屋を通りかかった鈴仙に案内をしてもらっていた。

病院だけあって、患者が寝る部屋はなかなか多かった。

しかしそこまで広いわけでもないから、特に迷うことはない。(ただし外は例外)

「サンキュ鈴仙。」

「いえ仕事を手伝ってくれるんですからこれくらいいいですよ。正直私の仕事なくなって休みができて嬉しいですし。何かあったら呼んでください。では。」

患者に接するような態度で俺と会話をする。

確かに患者ではあったが、一応従業員だし患者扱いは出来ればやめてほしい。

……いや、従業員だと永琳の実験台か。

何でここ仕事場に選んだんだ。

とはいえ紫達の部屋には着いたわけで、部屋に入って天智を呼んだ。

「天智、俺はお前の能力どうやって使えばいいんだ?」

『お前自身の能力を使うときと同じやり方すりゃいいだけだ。まあ使う力は神力だから、発する力の種類は変えた方がいい。そうそう、お前が能力を同時に使えるのは二つだ。既に三つあるが同時には使えない。体が保たないからな。覚えとけ。』

「分かった。とにかく紫達の治療に力は貸してもらうぞ。」

『こっちこそ分かってるさ。力の加減は上手くやれよ。』

言われた通り回復の力を使おうとした。

瞬間、髪の色が薄い茶髪から真っ白の白髪に変わった。

俺は気付かずにそのまま力を使っていた。

戦い始めてから力の変動、傷の付きかた、気配の探知、あらゆることが成長していた俺は、一目見ただけでどこに傷があるかや傷の深さを把握出来た。

『まあ自分が怪我ばっかするからだけどな。』

天智が皮肉を込めて言った。

しかし無視して調べ始めた。

(全身に切り傷、他を庇ったのか?左腕に左足は折れてる……右足に関しては一部が無い。普通なら死んでるだろこれ。妖怪なら平気か。)

紫こそとてつもない傷の量だったが、さすがに使う力が神力だっただけに傷は急激に治っていった。

通常妖怪に神力は毒だが、紫や大天狗のような強大な妖怪はあらゆる点において通常とは異なる性質を持つ。

そのうちの一つは弱点である神力の感覚変化、他にも通常妖怪は人間に知覚されないが、知覚されるようになるなどいろいろあるらしい。

霊夢は紫程傷は深くなく、傷の治りは早かった。

「ふぅ。思ったより力使った感じがしねえな。お前神力の量多くねえか?」

『当たり前だろ。たかが霊力と一緒にすんな。疲労無いなら次行くぞ。』

「分かってる。」

それからは他の奴らの治療を行い、疲労で寝る可能性考えてたことを馬鹿に思いながら、説明のため紫が起きるのを待った。

 

 

 

 

 




今言うこと特にありません。では。


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第二十四話 永遠亭二日目

そういえばネタバレになるからまだ付けてないタグあるんですよね~。最初付けるか途中から付けるか、迷ってたら付けずに始めちゃいました~本当にごめんなさい。ではでは~


「うう……」

「ん?」

紫が呻き声を上げた。

傷は治せても俺の能力では痛みは消せない。

しかも折れた骨は付けることは出来るが、ずれた状態を治すには手で動かすしかなかった。

腕を掴みながら紫は呻いていた。

「藍…橙…」

呻きながら寝言のように以前の狐と猫の妖怪の名を呼ぶ。

藍と橙はしばらくここにいたようで、俺も会った時に名前を聞いておいた。

当の二人は俺や他の連中が無事だと知って安堵し、永遠亭から帰っていった。

(悪い夢でも見てんのか。そういや藍達が無事かすらこいつは知らないのか。夢の中で何かあっ……)

「!藍!?橙!?」

俺の考え事はその叫びで消された。

「やっと起きたか。藍と橙なら無事だ。そもそも俺はあいつらに運ばれたからな。」

言った通り俺は二人に運ばれた。

その言葉に平静を取り戻した紫は、長く寝た者が最初に口にすること確定の言葉を言った。

「……二人が無事ならいいわ。私はどれぐらい寝てたの?大天狗は?」

大天狗がどうなったか、実は俺も知らない。

ここに運ばれてから俺が起きるまでの間に、俺より先に起きた大天狗は山に帰ったらしい。

礼をしたいから山に来てほしいと俺への伝言を永琳に残して。

「大天狗は問題無い。お前が寝てる間に騒動は起きてないからな。」

「そう……」

「ついでに言えばお前は来てからまる二日眠っていた。とっくに霊夢達は帰ったよ。」

言葉の通り俺が紫達を治したのは昼にも関わらず、既に今は夜だった。

紫に話す筈の内容を先に永琳に話していたことで、暇ではなかったが、永琳がいなかったら寝てたな。

「そんなに寝てたの?………私の怪我は?」

「治した。そのことも含めてこれから少し話がある。」

いままでの自分の考察や天智のこと、とにかく話す予定だったことは全て話した。

紫はどんどん考えるような顔つきになってゆき、一言だけ残して去っていった。

「私の方で調べてみるわ。貴方も永遠亭で働きながら少しでも調べておいて。」

「分かった。何か分かったら来てくれ。」

自分が原因である可能性がある以上、協力は惜しまないつもりだ。

しかしいつ来るか分からない敵に、悠長に構えていることも出来ない。

なので出来る限り天智の能力を使いこなせるよう永琳の患者の中で、怪我人は俺に任せてもらった。

患者には悪いが、成功すれば永琳より早く治せる。

だから実験台にしてもあまり怒らないでもらいたい。

結局今日一日は紫と話した後、怪我人の治療を行っただけで終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜皆が寝静まったころに、俺は竹林を歩いていた。

能力を回復だけに使っていても仕方ないと思い、攻撃にも使えるよう練習しに来た。

元の二つの能力も、ある程度は使えるがまだ甘い。

それぞれの能力の使い道を考察しながら、まずは大天狗のときの鎌鼬を使ってみることにした。

スペルは使えるが、能力は無我夢中だった。

スペルに関してはもともと天智の物なので、俺が使えると思わなくても使えるらしい。

「今更だけど髪白くなるのか。面倒くせえな。」

月明かりに照らされ、少し輝いた後ろ髪を見て、俺は今更ながらに気付いた。

『こんな夜中に練習する必要あるか?昼に紫にでも頼みゃいいじゃねえか。』

天智に言われたが、既にそれは思いついていた。

しかし……

『病み上がりに働かせるのは心が傷むと。別に平気だろ。あいつなら。』

心を読み、考えていたことを先に言われた。

「………別にこの竹林を切っても問題ない。とにかく力は使わせてもらうぞ。」

『明日の仕事に関わらないぐらいでやめとけよ~』

強いイメージをするため、刀を作り出した。

「せやぁ!」

そのまま横凪ぎに刀を振り、衝撃波のような鎌鼬を大量に飛ばし、目の前の竹林を切り伏せた。

 

 

 

 




次の回でとりあえず永遠亭は終わります。まあ番外編みたいなものですし、文字数少ないのは仕方ないということで。では。


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第二十五話 永遠亭三日目

そういえばちょっと分かりずらいスペルを作ってしまったので少し解説。『付与術消去』は相手の能力、狂化、弾幕などを全て消すスペルです。ただし指定した一人の能力を消すものなので二人以上なら片方には効かないという欠点があるスペルです。一対一なら最強です。もとになった能力はちゃんとあります。とゆーか何かの漫画とかからパクる以外スペル作れませんよ。ではでは~。


「なあ天智?雷はスペル以外でも使えんのか?」

竹林を切るのに鎌鼬しか使ってなかった俺は、今更だが天智の能力を思い出した。

『使えないわけないだろ。俺の能力が風だけとか勘違いしてんのか?』

天智の言うとおり天智の能力は天の力を操る能力だ。

使えないわけがない。

「それもそうか。なら風や雷以外には何が使えんだ?」

天の力を操るというのがいまいち理解しきれてない俺は、本心で何が出来るか気になった。

『お前の体が保つなら使えんだがなぁ。天の力を操るってのは簡単に言えば天を操るってことにもなるんだ。やろうと思えば天候も操れる。実際俺は出来るからな。だけどお前は体が保たないからな。あまり勧めはしない。』

確かに治療には対価はないようだが、『天風貫雷』を使ったときは、目と腕を片方ずつ失った。

『今のお前なら以前の戦いとは違って雷も対価無しで使えるだろうな。他の力を使うには、お前は条件を無視しすぎてる。』

「条件?」

『ああ。この能力はたった一つだけ使用に条件がある。まあいつか教えてやる。』

「今は出来ないのか?」

『やめとけ。今のお前じゃ精神が保たない。いつかお前が耐えられるようになったとき、力を与えてやる。』

「……分かった。今なら雷を使うのは対価無しに出来るんだな?」

『前は俺の力をお前が発揮しきれなかったのが原因で対価を与えられた。今なら対価はいらない。』

原理的には天智の能力を俺が使う形だから、天智の神力を俺の霊力に還元、それから使わなければならないが、大天狗との戦いは神力をそのまま使った。

そのために対価が与えられたが、その変換の方法は既に理解出来ている。

対価がいらないのはそのためだ。

『まあ俺の力を使うときの容姿の変化は抑えられないけどな。』

「…………」

神力を還元するときに発せられる力は、俺ではなく天智のものだ。

天智の姿になってしまうのは、少なからず天智の力を使っているからだ。

(あんま使わないでおこう。)

そう心に決めたものの、恐らくこれから先ずっと使う力だ、と諦めた。

「これで最後にして永遠亭に帰ろう。」

鎌鼬で既に切り刻まれた竹林に、軽くだが雷を放ってみた。

軽くやったつもりだが、切り倒された竹を焼きつくした。

「こんな威力出んのか。バレないうちに帰ろう。」

思った以上の威力が出て、少し焦った俺は、風を足に纏って走った。

(鎌鼬以外も練習してよかった。)

 

 

 

 

 

 

 

 

地図を能力で使うのを忘れず走ったおかげで、以前のように迷うことなく永遠亭に着いた。

「便利だなこの能力。」

一人言を呟いてもともと自分が抜け出した病室へと戻ろうとした。

しかし後ろから声をかけられた。

「満足したかしら?」

声の主は永琳だった。

満足したか、ということは俺の行動は完全にバレてたようだ。

「…いつ気付いたんだ?」

「貴方が抜け出したときから。」

つまり最初から俺の行動は筒抜けだったらしい。

「………俺の能力全部知られたみたいだな。」

「…ええ。悪いとは思ったけど、少し見させてもらったわ。紫は知っているの?」

「いや…勝手に抜け出して能力使ってたのは俺だ。ついでにこっちも悪いんだが、この能力について誰にも言わないでくれ。少し事情があるんだ。」

「…分かったわ。でも永遠亭にいる間は私に言ってってもらうわ。優曇華が琴羽がいないって騒いでたのを宥めるの大変だったんだから。」

理解してくれたようだが、鈴仙にも悪いことしたようだ。

「そんな早く起きてんのか。後で謝っとくよ。」

「今の時間的にはあまり早くもないけどね。さ、もう優曇華が朝ご飯作ってるんだから、早く来なさい。」

「分かった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「優曇華、ただいま。」

「あ、師匠!琴羽さん見つけたんですね!」

元気に永琳を迎える鈴仙に、とにかく謝ることにした。

「悪い勝手に抜け出して。」

「あ、えっと…気にしないで下さい。……と、とにかくご飯にしましょう!」

空気が悪くなったと思ったのか、それだけ言って鈴仙は行ってしまった。

「ほら、行くわよ。」

「…分かった。」

 

 

 

 

 

 

「ねえ琴羽~食べた後一緒にゲームしましょ。」

輝夜から食事中にそう言われた。

「…俺ゲームなんてほとんどしたことないけど…」

実際もとの世界でもほとんどしなかった。

暇なときは本を読むか、寝てるか程度だった。

「いいのよ下手でも。どうせ今貴方が見る患者なんていないし暇でしょ?」

確かに怪我人は今はいなかった。本来なら紫も入院しなきゃいけなかったが、無視してあいつは帰った。

他にも霊夢や魔理沙達はあまり怪我が多かったわけではないので、治したすぐ後に帰っていった。

永琳に目配せしてどうすればいいか聞いた。

「琴羽、どうせ今日は患者は少ないし、今日の貴方の仕事は姫様の遊び相手にするわ。」

永琳なら許さないと思ったので、少し驚いた。

「え…?」

「やった!」

「…はぁ。分かった。ついでに明日は俺は休みにしてくれ。そろそろ一度帰りたい。」

「ええいいわよ。でも仕事に関して日程や内容を決めたいから、後で来てくれる?」

「ああ。……ごちそうさま。」

「後で部屋来てねー」

食事を終えて一度部屋に戻った後、輝夜の遊び相手をしてその日は終わった。

途中でてゐも加わり疲れ切って部屋に戻ったころには、既に夜の十時を過ぎていた。

 

 

 

 

 




今考えると天智十分チート能力ですね。まあこれからもっとチートになりますが。では。


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第二十六話 琴羽退院後

遅れる場合は連絡するとか言っていたのにしないですみませんでした。少し用事が長引いて連絡する暇もありませんでした。とあるゲームの周回クエもやってましたしね。……こっちは完全に私情ですね。すみません。ではでは~


「ただいま。」

誰ともなく呟いたのは、誰かに向けてではなく、家に向けて放った。

朝起きてすぐ永遠亭を出て家へと帰った。

紅魔館へ行こうと思っていたので、帰宅早々出かける準備を始めた。

準備という準備は特に無いが、家に酒が放置されていたので、消費のため持っていくことにした。

前の住民が置いていった物らしい。

紅魔館は里の北側から出た方向にあるので、まずは北の入り口まで向かった。

 

 

 

 

 

 

 

『最近聞いたか?』

『ああ正体不明の妖怪のことか?』

 

『寺子屋の子達平気かしら?』

『なにせ目撃者がいないからねぇ。』

 

『勘弁してほしいや。商売上がったりだ。』

『そっちもかい?人通り減ったもんなぁ。』

里を歩いていると、いろんなところで妖怪の噂を聞いた。

(正体不明……わざわざこんな回りくどい方法をあの敵がするとは思えないな。)

『案外この妖怪も刺客かもしれないぜ?』

天智の言うとおりかもしれないが、里に姿を現す必要はない。

刺客の線は薄いだろう。

(とにかく紅魔館に行こう。結局戦っただけで目的も果たしてないんだからな。)

紅魔館に行った目的は挨拶と、パチュリーに会いに行くことだった。

会った方がいいと紫から言われた者の中に、パチュリーはいたのと、そいつが溜めてる本に興味があった。

今日はその目的のため紅魔館に向かっているのだが、妖怪の噂ばかり聞こえる。

無視を続けるのも難しいが、慧音が里の異変を無視することはないだろう、と不干渉を続けることにした。

「ん?琴羽じゃないか。どこか行くのか?」

団子屋の前を通ろうとしたら、不意に声をかけられ足を止めた。

「慧音か。そっちこそ寺子屋はどうした?」

声の主は慧音だった。

真ん中に団子、横にはいつかの竹林で俺を焼いてくれた妹紅がいた。

「あ…琴羽?…ごめん前スペル当てちゃって。」

「いや前謝ってもらったし別にいい。そのあと殴った俺も悪かった。」

俺と妹紅が知り合いとは知らない慧音が、「なんだ、二人は知り合いだったのか。」と言っている。

「いや、もとはといえば私のスペルが原因だ。…そうだ!奢るから団子一緒に食べてかないか?」

俺もやり返したからあれで手打ちにしようと思ったが、妹紅はそれでは満足しないらしい。

「…じゃ言葉に甘えるとするよ。慧音にも聞きたいことあったしな。」

「よし!おじさん!団子追加!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで寺子屋はどうしたんだ?」

さっきも聞いたが、答えは聞いてなかった。

「謎の妖怪が現れたとかで、寺子屋は数日休みになったんだ。目撃者がやっと今朝一人見つかったから、容姿どおりの相手を探そうと思ってな。朝食を摂って行こうと思ったら琴羽が来たんだ。」

妖怪については既に容姿が判明しているようだ。

「どんな妖怪だったんだ?」

「妖獣…というよりは聞いた限りだと魔獣に近そうだ。三つ首の四足歩行、大きさは人並み、外の世界の物語で言う『ケルベロス』という奴と似た容姿をしているらしい。」

どうやら妖怪の正体はケルベロスらしい。

里の人はその容姿を知らないから正体不明の妖怪などと言っていたようだ。

「ケルベロス?何でそんなのがここにいんだよ。外の世界でのそいつの呼ばれ方は地獄の番犬だぞ?それに物語どおりの狂暴性なら何人か死人が出ててもおかしくない。見間違いじゃないのか?」

「分からない。目撃者も襲われて動転してたんだ。……いや、襲われたかすら分からない。とにかくまだ何も分からないんだ。琴羽も何か分かったら知らせてくれ。」

「分かった。団子ごちそーさん。また機会があったら一緒に食おう。」

「え、私空気だったんだけど。」

妹紅がなにやら言っていたが、紅魔館へ急ぐことにした。

(次は俺が奢るか。)

 

 

 

 

 

 

 

 

「美鈴。何でまた寝てんだ。」

紅魔館に着いて早々、美鈴が寝ていた。

無視するのもよかったが、一応起こして行くことにした。

殴っても起きなかったので、ナイフを作って刺した。

(これでも起きなきゃ弾幕喰らわせてやる。)

弾幕を当てるのを少しだけ楽しみにしていたが、思ったよりナイフは効果的だったらしい。

「さ、咲夜さん!眠ってなんていませんよ!?」

半眼の状態で自分は寝てないと無理な言い訳をしている。

「寝ぼけてんじゃねえよ。」

気付いてなかったようなので声をかけた。

「あ、あれ?琴羽さん?退院出来たんですか!よかったです!」

ナイフを刺したことは気にしてないらしい。

俺の退院を祝福してくれた。

「前は来て直後に病院送りだったからな。あまり話せもしなかったし、問題無いか?」

「いえ、問題なんてありませんよ。魔理沙さんじゃあるまいし。とにかく入りませんか?お嬢様も心配してました。」

魔理沙の場合は問題ありらしい。

「ああ、あとパチュリーって奴はここにいるのか?」

「パチュリー様ですか?奥に大図書館があって、基本そこから出てこないので、後で行ってみてはどうですか?」

この広い館の奥とはいったいどこなのだろう。

とにかく後で行くことを決め、門をくぐった。

「美鈴どうしたのかしら?」

急に咲夜が現れた。

しかし以前も三度程見たので、たいした驚きもなかった。

「あ、咲夜さん。いえ、琴羽さんが来たのでお嬢様のところに連れていこうと思いまして。」

美鈴が簡潔に現状を説明した。

「琴羽さん?退院していたのですか。おめでとうございます。」

こちらも美鈴と同じく、退院を祝福してくれた。

「美鈴、後は私が引き継ぐから、貴女は仕事に戻りなさい。」

「分かりました。」

どうやらここからは咲夜が案内するらしい。

「では、行きましょう。」

「ああ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで琴羽さん。美鈴との戦闘で永遠亭に泊まった後、入院したようですが、何があったのですか?」

多分大天狗のことを言っているのだろう。

…いやどこから情報を得たんだ?

考えると美鈴にも退院を祝福された。

「何でそのこと知ってんだ?」

「いえ、永遠亭から家に戻っていれば、ここに来ると思っていましたが、一向に来る気配がないので…」

行動を予測されていた。

ほとんど初対面のようなメイドに見透かされた。

今までも永琳に何度か俺の行動は見透かされていた。

(そんなに分かりやすい顔か?)

俺は少し疑問に思ったが、嘘をつけないというのは別段悪いことではないと思い、思考を止めた。

「…まあ間違ってない。実際来てるしな。でも入院の理由はちょっと事情があって話せない。」

「……聞くつもりはありません。いつかは話してもらえると思うので。」

こいつはさとりなのか。

「着きましたので私は仕事に戻ります。では。」

一礼して咲夜はその場から消えた。

俺は一応ノックだけしてレミリアの部屋へ入った。

「三日ぶりね。元気だったかしら?」

「病院でくたばってた人間が元気だったわけねえだろ。」

実際は傷を治してからは疲労しかなかったが。

「そう。でもあそこのお姫様には付き合わされたみたいね。疲れた顔してるわよ?」

どうやら隈が出来ていたようで、睡眠不足なのはレミリアにさえばれたらしい。

指を指されて初めて気付いた。

おそらく咲夜と美鈴は気付いていたが、原因は予測できたから黙っていたのだろう。

「ああ…輝夜に付き合わされて寝てないだけだ。」

「疲れてるところ悪いのだけど、また美鈴と戦ってくれないかしら?」

「お前俺殺す気か?だいたいもう戦う意味ないだろ。」

「言い方が悪かったわね。実は紫から少し頼まれたのよ。」

美鈴との戦闘を紫は隙間から見ていたらしく、大天狗との戦いの後、美鈴に俺へ武術を教えるよう頼みに来たらしい。

「武術を教われか。」

確かにこれから戦うことは増えるだろう。

『必要ねえぜ。俺の能力ありゃ近接戦なんてする必要ねえからな。それにお前も弾幕打てるようになったろ?』

天智から言われたが、天智の能力は隠している。

人前で使うことが許されない以上、武術は知っておくべきだろう。

『まあお前がそう思うなら受けたらいいんじゃねえか?』

(分かった受けよう。)

「じゃあ頼む。でもその前に図書館に行っていいか?」

「ええ。それで一つ提案なのだけれど、貴方教わる間だけでもここに泊まらない?」

思わぬ提案に俺は目を丸くした。

移動時間はなくなってさらに図書館の本を読むには都合がいい。

「いいのか?正直こんなでかい屋敷で俺ができる仕事なんてないぞ?」

下手したら永琳のとこほど働きたくないところかもしれない。

だがレミリアから返ってきたことは働けではなかった。

「働けとは言わないわ。どうせ美鈴に稽古付けてもらうならそんな余裕ないでしょ?だから…暇な時間は私の妹の遊び相手になってほしいのよ。」

レミリアの妹、フランドール・スカーレットは、495年間あらゆるものを破壊する程度の能力が原因で閉じ込められていたらしい。

霊夢と魔理沙によって出ることができたものの、夜にしか行動出来ない吸血鬼にとって、昼間は紅魔館の外に出ることは出来ず、また夜では遊び相手になりそうな妖精もいない。

紅魔館の従者は基本働いており、日傘をさして外に行くことは付き添いがいなければレミリアが心配して外に出してもらえない。

実質フランドールは自分の部屋に一人でいるしかない。

だからせめて遊び相手として琴羽に頼んだらしい。

「まあそんぐらいいいけど、俺子供と遊んだことないから、なにすりゃいいか分かんねえぞ?」

「それはあの子の好きにしてあげて。図書館に入り浸るつもりなら一緒に本でも読んであげて。」

「……分かった。そこは会ってから考えるよ。まあとにかく図書館行ってからそのフランドールって奴のとこに行くから、図書館の場所とそいつの部屋だけ教えてくれ。」

場所を聞き、まずは図書館へ向かった。

ついでに家から持ってきた酒は移動中咲夜に渡しておいた。

 

 

 

 




次は図書館から始めます。予想はしてたけど紅魔館や妖怪の山は広い分長くなってしまいましたね。美鈴の稽古は多分あまり描写は書かないと思います。その分パチュリーとアリスの役目の断片は見せるので許してください。では。


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第二十七話 動かない大図書館

やばいです。図書館だけで一話分使ってしまいました。しかも前の話から結構時間空けてしまって申し訳ない限りです。これじゃ忘れられてしまいます。と理解していても早く出来ない悲しみが。………ではでは~。


「………………」

『………………』

初めてここの図書館に来た俺、ないし天智の二人は目の前に広がる異様な光景に絶句していた。

数えきれないほどの本。

それはただの図書館というには大きすぎる。

(十八…十九…二十………まだあるな…)

俺が数えたのは本の数ではない。

その本が入る棚の数を数えていた。

壁にはびっしりと本棚が置かれ、棚一つ分を空けて四つずつ。

数は十や二十では収まらない。

(パチュリーって奴はこれ全部読んだのか?)

本を読み初めると、その本を読み終えるまでは新しい本を読もうと思えない。

話が気になってその気が起きないのだ。

それは俺も同じで様々な本を同時に読もうとは思わない。

もしその考えと同じ考えを持つなら、全て読んでることになる。

『信じられねえな。』

「……」

天智と同じで俺もそう思った。

呆けて突っ立っている間に、どこにいたのか羽を生やした女性が近くまで来ていた。

「あの…どうかしたんですか…?」

「………」

『おい。』

(…悪い。)

近くまで人?が寄ってきていたことに気付いてはいたが、俺はここの本をどれだけ読めるかを考えていて、無視する形になってしまっていた。

天智に言われとにかく声を返すことにした。

「悪い。少しボーとしてた。ここにパチュリーって奴はいるか?」

「あ、パチュリー様に御用でしたか。でしたら一番奥にいますよ。」

(奥………あれか。遠いな。」

能力で視力を上げ(双眼鏡)本棚の隙間から最奥を確認した。

本が積み上げられた机があるだけだったが、おそらく居るのだろう。

とにかく向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

積み上げられた本を避け、横から机の逆側を確認した。

「こあ?丁度いいわ。ここの本片しておいて……?貴方は?」

こあとは入り口にいた女性のことだろう。

とにかくここに来た時のことを説明した。

「なるほど。人間でよくここに来ようと思ったわね。」

「いや一度以前に来てるんだが……とにかく暫くはここにいるから少し挨拶にな。」

「そう。まだ聞いてなかったけど貴方の名前は?」

「宮代琴羽だ。」

「!琴羽?……そう貴方が……」

「?」

「貴方に渡すものがあるから、少し付いてきて。」

「?ああ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

付いて行って着いた場所は、この館の一室だった。

「ここに置いといたから、少し待ってて。」

完璧に物置だった。

ただし年季の入った本や瓶、フラスコ。明らかにパチュリーという魔法使い専用の物置だった。

「あったわ。これよ。」

それは形こそただの箱にしか見えないが、俺にとっては見覚えのあるものだった。

「!?どこでそれを!?」

その箱は俺の居た孤児院の子供たちが全員持っていた唯一形のある繋がりだった。

何故かは知らないが、孤児院に来たばかりのころに俺たちは全員これを渡された。

親代わりの二人からはお守りと言われ、またこの箱はどう頑張ろうが開けることが出来なかった。

その箱はもう俺の手元にはなかった。

ここに来た時から、理由は分からないが手元から消えた。

箱があった場所には箱に付いていたチェーンのみが残っていた。

その箱はとても小さかったが、紋様が刻まれており、見間違うことはあり得なかった。

「紫からの預かり物よ。それの魔力の制御を頼まれたの。終わってから貴方が来たら渡すように言われてたから渡しとくわ。」

「魔力制御……?」

「…まさか知らずに持っていたの?あれ程の魔力の塊を?」

「は……?魔力?」

「…本当に知らなかったのね。あれの中身はおよそ人間に持たせていいとは言えない程の力の塊よ。それもご丁寧に石のようなものに形作った物にしてね。あんな物持っていたら普通の人間なんて耐えられないはずだけど……」

自分では開けられなかった箱の中身がそんなものだったということが知れた喜びと、なぜそんなものを皆に持たせていたのかという疑問が頭の中で浮かんだ。

魔力の塊というものがどうゆう意味なのか。

この世界に来なければ知ることも出来なかっただろう。

魔力の持たない人間がそれを持てばどうなるか。

答えは簡単だ。

魔力は人間の脳が作り出す情報によって使用出来る。

つまり魔力を自覚することで使用が可能になる。

たとえ魔力を元より持っていたとしても、自覚しないうちにそんなものを持っていれば、脳が耐えられずに壊れてしまう。

そこから分かることは、この箱を渡した者による明確な殺人予告に近い。

それを理解した俺は、何故という言葉しか出てこなかった。

「……何を考えているか分かるしその気持ちも分かるわ。でも何故かなんて知ったところで意味はないのだから、その感情は忘れたほうがいいわ。」

(忘れろ?あれだけ優しくしてくれた人たちがしたことを気にするな?)

不可能だった。

大好きだった二人が自分を、皆を殺そうとしていた。

その事実を忘れる。

その事実から目を背ける。

(出来るわけがない………!)

「………?」

「………それは貰ってくよ。でも一つだけ頼む。もうこんなこと頼んでも意味がないのは分かってる。だけど頼む。もうこれについては詮索しないでくれ。」

この箱に付いてこれ以上調べられたくなかった。

いや、俺が知りたくなかった。

「………分かったわ。」

その意を汲んでか、パチュリーはその頼みを承諾してくれた。

それからはこの図書館を利用していいか、紫から頼まれたことはそれだけかなど、軽い世間話をして図書館を後にした。

 

 

 




急遽追加した話によって美鈴の出演時間が延びそうです。というか別のところでやろうとしてたことを予定を変えてここにした結果です。しかし断片を見せるといったパチュリーの役目、断片じゃなかったですね。もうパチュリーに話に関係する役目はありません。話の都合上仕方ありません。まあ別に出番なくなるわけじゃないんでご理解いただけると幸いです。では。


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第二十八話 フランドール

題名適当いつも通り。題名フランなのにほぼ喋らない。まあずっといますが。なんか今まで子供(輝夜とこいし)相手だと琴羽苦労ばかりあった気がして今回のフランも同様ほんと琴羽可哀想。そうは思いませんか!?……話作ってるのお前?………すみません。ではでは~……つかロリコンには嬉しいのですかね?自分は違うから分かりません。


「こちらが妹様のお部屋です。……ないとは思いますが、もし妹様が弾幕ごっこがしたいと申されても断るようお願いします。」

「ああ分かった。案内ありがと。」

「では。」

フランドールの部屋が分からず迷っていたら、仕事中の咲夜を発見、案内を頼み現在に至る。

やはりこの館は広く、道が全く覚えられない。

挨拶に行くだけだったのだが、毎回こう迷うようなら能力を使おうと、たった今決めた。

軽くノックをしただけで反応が返ってきた。

よほど暇だったのか、はたまた寂しかったのか、ノックしてから数秒と立たないうちに扉は開かれた。

「誰~?」

「お前がフランドールか?」

レミリアの容姿から予想はしてたが、やはり子供だった。

「?そうだよ?でもフランドールなんて呼ぶ人初めてー!皆フランっていうから。」

「なら俺もフランって呼んでいいか?フランドールって言いにくいんだよな。」

「うん!よろしくね!」

知らない相手でも無邪気に話せるのは子供のいいところだとも思うが、やはり危険とも思える。

まあ他人の家のことなど知ったことじゃない。

特に注意するでもなく、他と同じように説明した。

「ふ~ん、じゃあ別にここで働くわけじゃないんだね。」

心底残念そうに言うのは、やはり相手してくれる人がいなくて暇なのだろう。

「でもここにいる間だけでも遊べるならいいや!ねえ何して遊ぶ?」

無邪気にそう言うフランだがこれはつまり………

「今から遊ぶのか?」

つまりそういうことだ。

今から遊ぼうとしていた。

(挨拶に来ただけだったんだがなぁ。……まあまだ朝だし昼ぐらいまでなら遊んでやってもいいか。)

子供が好きだったから、こうも遊びたがっている子供を見るとつい甘くなってしまった。

(俺も甘くなったな。向こうじゃ絶対にあり得なかったのに。)

と元の世界で暮らしていた日を懐かしく思った。

まあそもそも喧嘩ばかりしている俺に近づくのが子供だけだったからだが。

「昼までな。」

「やったー!じゃあ何して遊ぶ?」

「お前がやりたいことなんか言えよ。レミリアからはフランがしたいことに付き合ってやれって言われたからな。」

「ん~じゃあ弾幕ご…」

「それ以外な。」

言われることは分かっていて、冗談のつもりで言っていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一時間ぐらいが経過し、時間は十二時になっていた。

「妹様、昼食の準備が……琴羽様もいらしてましたか。では、食堂へ参りましょう。」

「ああ分かった。…様呼びやめてくれ。」

「ふふ、分かりました。では先に食堂に行ってますので、お二人とも後程。」

「うん!お兄様、行こ!」

何故かフランにはお兄様と呼ばれていた。

子供は目上の人全てを兄、姉と呼ぶようだとこの世界で思った。(こいし)

 

 

 

 

 

 

「琴羽特訓はどうしたの?」

レミリアに聞かれたが、午後からやることにしていたので問題はなかった。

「すまん。勝手だったが午後からやることにしてた。美鈴も悪いんだがそれでいいか?」

「私は構いませんよ。それなら午後に倒れるまで教え込んであげますよ?」

「頼むから俺が保つレベルにしてくれ。まずはもう一回戦うから、そのつもりでいろよ。」

「私のリベンジ戦ですね!今度こそ負けませんよ~。」

「俺だって負けてたまるかよ。これでも負けず嫌いなんだ。次も勝ってやるよ。」

偽りない本心を言い合って、やる気の証明にはなったようだ。

「お願いだから壁壊したりしないでね。」

レミリアからの切実な願いだった。

 

 

 

 

 

 

「ルールは以前と同じでいいですか?」

美鈴は前と同じルールで戦って勝ちたいらしい。

ハンデがあったとはいえ負けたことは相当悔しかったらしい。

だがそのルールで戦うのは、俺が納得できなかった。

食事の時に言った通り、俺の性格も負けず嫌いだった。

だから俺が提案したルールは……

「悪いがルール変更だ。今回はそっちにも本気で戦ってもらう。」

以前の戦闘は、能力が弱く、弾幕も使えない俺を殺さないため美鈴は力をかなり制限されていた。

能力が禁止なら、弾幕を張ることでさえ禁止されていた。

だが今なら能力の多岐にわたる使い方、弾幕の使用法、大天狗との戦い以来会得した様々なスペル、そのどれもが俺の力になっている。

たとえその一部は見られてはいけないものだとしても、美鈴と戦う分には十分だ。

天智の能力はそれほど強力なものだ。

弾幕も大天狗レベルの相手に対抗できるほどの数と密度を作れるようにした。

それを考えての提案だが、そのことを欠片も知らない美鈴は、やはり納得出来ないらしい。

「私に殺されたいんですか?知り合いを殺すのはさすがの私でも辛いのですが?それに貴方を鍛えろと言われた以上殺すわけにもいかないんですよ?」

予想通り俺を殺すことを心配していたようだ。

『力の断片でも見せてやりゃそんな文句言わねんじゃねえか?』

天智の言うことはもっともだったが、そんな必要はなかった。

「ああそう言ってんだよ。殺す気で戦え。死んだら死んだで俺はそこまでの人間だったってだけだ。」

挑発、それが一番手っ取り早い方法だった。

俺を殺せと言うだけでも妖怪なら反応する。

だが自我を完全に制御する美鈴のように人間と共存する妖怪は、その程度では少しの反応もしない。

『………!!!』

そこでダメ押しの一手、『殺気』の放出を行った。

気を操ることは能力を制御するための精神修行のようなものでは基礎だ。

武術を主な戦法として使う美鈴は当然それを感じることぐらいは出来る。

その殺気を美鈴は感じ取ったらしく、十分な挑発にはなったようだ。

この場にいるのは美鈴、レミリア、咲夜、フランの四人だが、フランを除いた三人はこの殺気を見たことにより、美鈴と戦うことを認めたらしい。

「美鈴。本気でやりなさい。これは当主からの命令よ。」

「……はい。お嬢様。私も加減をするつもりはありません。武人として、ここまで魅せてくれる方に加減することは侮辱です。琴羽さん、本当にいいんですね?」

「構わないさ。俺もお前を殺すつもりでいかせてもらう。」

「……さすがにどちらかが死にそうになるほどの怪我を負いましたら、私が参入させていただきます。」

「お願い咲夜。私たちは日陰にいるわ。傘を持つ必要はないから、いつでも割り込めるように準備しておきなさい。フラン来なさい。」

「うん!二人とも頑張ってね!」

「はい、妹様。」

「ああ。これ終わったらまた遊んでやるからな。」

「では、二人とも準備はよろしいですか?」

「はい!」

「いつでも。」

「では……始め!」

咲夜の合図とともに、俺も美鈴も走り出した。




あーーー時間がない!誰か僕に時間を恵んでください。と友達にも同じこと言ったら「せめて形のあるものにしろよ。」って笑いながら言われました。しかも別の友達には「嫌だよ俺も欲しいし。」って言われました。時間がないのは皆同じなんですね。では。


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第二十九話 再戦

そういえば琴羽能力慣れ過ぎだし幻想郷来てから十日しか経ってないのに慣れ過ぎですよね。前者は理由がちゃんとあります。つかもう出てます。後者は琴羽の順応性が高いだけです。これも理由ありますが琴羽の性格よく分からないです。……プロフィールは全キャラでてからまとめて出します。ではでは~


同時に駆け出した俺達は、最初こそ能力を使用していなかったが、俺は風による派生の能力で速さを増加し、その勢いで殴りつけることによりパワーも上げた状態まで能力を使っていた。

そして美鈴は、気を乗せた力の使い方をし、殺気や闘気といったものを可視化出来るレベルで纏っていた。

その打ち合いが、約五分近くも続いていた。

人間を超えた速度で放つ俺の殴打も、地を抉るほどの威力の蹴りも、美鈴は全てを捌ききっていた。

逆に美鈴から放たれる同レベルの攻撃を俺も捌いていた。

だが力は互角でも技術の差は歴然。

俺は徐々に押されていた。

お互い弾幕もスペルも一度も使っていない。

この状態では使うことも出来ない。

なんとか隙を作ろうにも簡単にはさせてくれない。

(やっぱ格闘技じゃ相手にならねえな。それなら……!)

俺は放とうとしていた右足に、一瞬だけ魔力を強く込める。

「……?」

その蹴りを受けた美鈴は疑問に思ったことだろう。

守りを固めた状態であったというのに、地を抉るほどの衝撃は美鈴を抜け、俺の足は美鈴の側頭部側にあった。

「これで…どうだ!」

格闘技では敵わないことは分かっていた。

だからこそ、使ったことのない脚の動かし方をした。

一瞬だけ脚の軌道を膨らませ、後方から頭部を狙う。

フェイントである。

風を爪先に纏った状態で後方に脚を回し、纏った風を放出する。

止まった状態でこの動かし方をしても、膝裏が首に当たる程度だろう。

だが美鈴は走っている。

一瞬だけでも音速に近い速さの蹴りは、止まらずこちらに近ずく美鈴の頭部に丁度到達する。

その速さの蹴りに美鈴ほどの格闘家でも反応出来るわけもなく、その蹴りは激突した。

「が…!?」

だが美鈴はその程度で倒れるわけがない。

俺は右足を地面に着けると同時に勢いのまま左足を振り抜いた。

「そんなもの……!」

頭部へのダメージはかなりのはずだが、美鈴も妖怪、速さだけに特化した蹴りの威力ではよろめかせるのが限界だった。

振り抜いた左足は美鈴の右手に阻まれ、その衝撃は完全に受け流された。

(予想通りだ!)

俺はさらに先の攻撃を作っていた。

右足に魔力を込めた直後、俺は左足にも魔力を込めていた。

右足には風によるスピードアップ。

そして左足にはいつでも発動出来る鎌の能力。

それと同時に込められた麻痺毒。

一瞬の隙を作らなければこの程度の攻撃はまず当たらない。

だからこそこの左足にのみかけてここまで攻撃を繋げた。

想定通り鎌となった足は美鈴の右手を裂き、それと同時に少しだが、麻痺毒も放出された。

正確に言えば自身に付与する能力である以上、麻痺毒を他に回すには自身の体の一部でも相手に送る必要がある。

体の一部を送るため、俺の左足は一部無くなっていた。

だがそこまでの動きを作り、少しだが毒が自分に回るリスクを背負ってでも、実行したのは、それほどに美鈴は手強いからだ。

恐らくこの程度の麻痺毒では動きを鈍らせるのが限界。

右手から体全体に毒は回らないだろう。

だがこれ以上の攻撃は美鈴には届かない。

仕方なく距離をとり、左足を治した。

美鈴はこれ以上の攻撃を警戒してか、ほぼ同時に後退していた。

「……!?」

体の異変に気付いた美鈴は、麻痺と気付いたのか、左手で右手を殴った。

衝撃を与え、痺れを取る。

近接戦闘経験があればその手法はすぐに思い付く。

だがこの痺れは取れない。

衝撃が強すぎたため起こる振動による痺れではなく、毒による痺れだったからだ。

右手は使えないと判断した美鈴は、片腕が使えない状態で俺とやりあうのはまずいと考え、最初のスペルを発動した。

「虹符『彩虹の風鈴』(さいこうのふうりん)!」

虹色の弾幕が円形に張り巡らされる。

「嘘だろ……?」

その数は視界を埋め尽くさんばかりの量だった。

スペルなだけに一つ一つの密度も濃い。

「仕方ない……解放『付与術消去』!」

風が俺の周囲から無数に飛び出た。

その風は、美鈴が展開した弾幕の結界を消していく。

スペルの枚数は三枚。

これで互いに残りは二枚。

だが使う気もなければ使わせる気もない。

弾幕に穴が空き、美鈴までの道が出来ると同時に駆け出した。

足に能力を集中させ、駆けたその脚は、十メートル近く離れた美鈴まで、一秒も経たずに到達していた。

そして振りかぶった右手には、槌の能力、肘には風を纏っていた。

同じ威力の殴打を地面にやれば、軽い地割れでさえ引き起こせるだろう。

美鈴は自分のスペルが消されていくことに動揺したのか、または気付いてなかったのか、力の放出を止めなかった。

近距離まで近づいた俺にようやく気付き、片手だが防御の姿勢を取った。

だがこの殴打はいままでのそれとは違う。

当然美鈴も片手で防ぎ切れるわけもなく、壁と平行に吹き飛んだ。

「かは…!」

美鈴は起き上がらない。

美鈴の意識は既になくなっていた。

「そこまで!咲夜、美鈴の怪我の具合を見なさい。」

「はい。」

美鈴が起き上がらなかったことにより、勝者は俺に決まったようだ。

咲夜は美鈴の方に走っていく。

「貴方、以前よりも強くなった?それとも能力の使い方を学んだのかしら?」

「両方だろ。以前よりも力の総量が増えて、さらに使わなかった能力の使い方をした。」

「それだけで自分の足の一部を切るなんて、普通の人間には無理ね。」

「そうでもしなきゃ勝てないなら、どんな奴でもするだろ。」

「…変な人間ね。」

「人間や他の妖怪と暮らしてる奴に言われたくねえな。」

レミリアと談笑していると、治療が終わったのか咲夜が近づいて来た。

「ん?終わったのか?」

「ええ。美鈴も妖怪だから、問題ないでしょう。」

戦闘前に霊夢や魔理沙と同じ話し方でいいって言って以来、咲夜の話し方は砕けた感じになった。

(……それでもタメ口でないのは本当に意味が分からない。)

「…ん?問題ないって治療してないのか!?」

「…?ええ、必要ないので。」

聞くと美鈴はいつも門番の仕事をさぼっているものだから、ナイフを刺して起こしているのだが、その傷はものの数分で治ってるらしい。

……妖怪の治癒力は恐ろしい。

「それで琴羽?これからどうするの?」

「遊ぼ!」

「……フランがこう言ってるし、付き合うことにするよ。」

見ると遊びたそうにこちらを見ていた。

「……お願い。フラン、弾幕ごっこは止めてね。」

「うん!お兄様、行こ!」

「夕食の時間に呼びに行きますので、そのつもりで。」

「うん!分かった!」

「悪い…」

「謝る必要はないわ。」

「…サンキュ。」

フランに手を引かれてその場を後にした。

 

 

 




話の作り方によっては永遠亭みたいに何日表記になってしまう……。この調子で行くとこれから先出てくる広い場所も何日表記になっていく…。そんなことを考えながら書いていた私でごさいました。では。


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第三十話 鍛練

テストは勉強しない人にとってはかなり楽な時間だと思うのは僕だけじゃないと思います。絶賛テスト日程中の凛です。もっと早く投稿したいです。ではでは~


「これくらいにしておきましょう。」

言ったのは美鈴だ。

俺は今、格闘技術の基礎を美鈴から教わっていた。

中でも美鈴が能力上、最も得意とする気の操作は、どの格闘技を覚えるにも必須の能力の一つらしい。

紅魔館に来てから一日、すでに美鈴との戦闘から丸一日が経過していた。

何故昼を過ぎてから修業をしているかというと、深夜中フランの相手をしていた俺が、昼頃まで起きなかったからだ。

先日戦闘を終えてから、三時まで遊ばされて、それからは図書館に籠っていた。

夕飯を終えて俺に割り振られた部屋で天智と大天狗のことを話していると、フランが、「眠れないから遊ぼ!」と言って部屋に入ってきた。

断ってはいたが、やはり一人で過ごすのは寂しいのか泣き出してしまった。

一つ溜息を吐いて、「分かったから泣き止め。」と言うと、今度は子供っぽい明るい笑顔に変わった。

フランが眠くなったら寝かせようかと思っていたのだが、結局朝まで付き合わされてしまった。

朝までで何度か「もう寝たらどうだ?」と言っていたのだが、「まだ眠くないもん!」と言って遊ぶのを止めなかった。

フランが吸血鬼だということを忘れていたのが原因だが、その結果一睡もできずに朝になってしまった。

さすがに眠かったので、生活リズムとしてはかなり悪いかもしれないが、咲夜に伝えて、六時頃から昼まで寝ることにした。

昼食の後、数分経ってから修業を始め今に至る。

だが、さすがに寝起きなのでコンディションは最悪……だったのだが、いざ始めると疲れ以上に集中力が勝っていた。

時間がどれほど経ったかも分からず基礎訓練(気の操作、教えられた動き)を行っていた。

「まだ出来るぞ?つかもともと出来ることまで復習することねえと思うが……」

「どれだけ時間経ったと思ってるんですか。とゆうか何で五時間も続けられるんですか。私が疲れました。」

「えっ……」

……いつも寝ている居眠り門番にはその時間は長く、また五時間も経っていると知らなかった俺には疲労がなかった。

「なので今日は終わりにしましょう。この修業は精神にくるものなので、ゆっくり休んでください。」

あたかも俺を休ませようとしているように見せて自分が休みたいだけである。

しかし疲労に気付いてないだけの可能性もある、と考えた俺は素直に休むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

『お前は修業が好きなのか?見ているこっちは暇なんだよ。』

「別に時間は自由に使わせろよ。何ならお前の魔力使わせろ。そっちの修業ならもっと面白いの魅せられるんだぞ?」

能力が使えないことを知りながらそんなことを言ってみると、

『煽っても無駄だぜ?使えないのは分かってんだ。使って困るのは俺だけじゃねえからな。』

ともっともな答えが返ってきた。

こんな会話ばかりでは気に入らないと思っても仕方ないはずなのだが、どうにも嫌うことが出来ないのはこいつの不思議なところだ。

『それはこっちも同じだぜ。お前も俺も結局は一人なんだ。同じ体にいるからな。』

分かってはいたがやはり考えは筒抜けだった。

俺は咲夜の持ってきたお茶に口を付けて、紛れもない本心を言った。

「これからも頼むぜ『相棒』。」

『…『相棒』とはな。ああそうだな。……いつまでもそうあれたらいいな。』

最後のほうは自分の中で発される声なのに、かすれて聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「琴羽さんは基礎はほとんど出来そうなので、ここからは応用にしましょう。」

そう言って美鈴は、俺から十メートル近く離れた。

「ここに向かって気を放ってみてください。以前戦った時にとても強い殺気を放っていましたが、方々に散ってしまっていて攻撃に使えるものではありませんでした。」

「つまりさっきの基礎訓練でやった型で、一点に集中した気をお前に撃てってことか?」

「……基礎訓練があまり必要ない人って皆理解力高いんですよね……私なんて基礎だけで一週間も掛かったのに…」

昔の自分を思い出してか少し嘆いていた。

「……理解力高い奴はどうゆう形で動けばいいかの判断が早いだけだ。結局は実力なんて努力で決まるもんなんだからそう嘆くこともないだろ。」

少しフォローを入れることにした。

しかし…

「今まで鍛錬を怠ってはいなかったのに私は琴羽さんに負けましたよ。努力だけじゃ埋まらない差もあるんですよ。」

自虐していてため息が止まらない。

多少距離があるから小声でぶつぶつ言ってる美鈴の言葉の大半は聞こえないが、明らかに暗かった。

無視して気を一点に集めるために集中した。

(能力を使う時と同じように……)

能力はイメージが大切だと永琳から言われた。

そしてそれは気の操作にも言えることだった。

右手の一点に集中して構えをとった。

そしてその状態で腕をばねのように弾き、溜めていた気を一気に放った。

その気は、小声で何かを言っていた美鈴に直撃した。

「っ……!」

距離があったというのに、その気は美鈴を弾き飛ばした。

さすがに受け身をとっていたが、普通に怒っている。

「い、いきなり危ないじゃないですか!せめて防御態勢くらいとらせて下さいよ!」

「悪い、悪意がなかったわけじゃないが。」

「今悪意なかったわけじゃないって言いましたよね!?」

「とにかく、あんだけ出来りゃ十分だろ?」

うるさく喚く美鈴にそう言う。

「あ……はい…正直私が教える意味ないですよ…」

「まだ基礎だけだろ。」

「そうですが……本当に教える意味ないんですよ………そうだ!もうこれからは戦いましょう!」

突然戦うと言い始めた。

「お前またやられたいのか?」

冷ややかに却下する。

今の俺の能力の状態、美鈴から教わったものだが気も使えるようになった。

格闘技の差はあっても、実力の差は歴然。

たとえ能力を使わなかったとしても、気と身体能力は美鈴のそれとは違い、確実な殺気を持っている。

加減が利かない分、殺してしまう可能性もある。

「戦って私の格闘技を写してもらうんですよ!確かパチュリー様の本にそんな修行の方法が書かれてました!」

そんなこと欠片も考えてないのか、美鈴はあくまで戦う気だった。

物語の話まで持ち出して。

「加減利かない分死ぬかもしれないんだぞ?」

事実を言った……つもりだったのだが…

「なら加減が出来るようにルールを作ればいいんですよ!」

俺に教えるつもりはあるようだが、本人はそれと同等に戦って勝てないことが悔しいらしい。

結局俺が折れて鍛練の方法を戦闘にした。

「でも今日は止めときましょう。今から戦ったら夕食の時間になりますしね。」

時間を確認したら、既に六時になっていた。

確かにそれぐらいの時間か、と納得して夕食の時間まで部屋にいることにした。

 

 




案外一つ一つの回に題名付けられそう。ちなみに琴羽は子供は好きですが、元の世界では親が近づけないようにようにしてたので子供と過ごす時間はありませんでした。では。


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第三十一話 日常の一コマ

そういえば最初の方いくつか効果音みたいなの出してたと思うんですよ。あれ止めました。なんかそういうのよく分かんなくってですねぇ。最近のには出てないと思いますがこれからも出しません。今更ですが伝えときます。ではでは~


「天智、誰もいないな?」

『問題ない。』

俺は今、紅魔館の廊下を歩いていた。

時刻は深夜二時。

この時間はもう全員が寝静まっている時間だ。

ここに泊まってから三日。

歩き回って道もある程度は把握した。

その紅魔館の廊下を玄関まで、誰にも見つからずに向かっている。

勿論紅魔館の人の寝てる部屋の前を通ることさえしない。

見つかったら終わり。

何かのゲームのようになっていた。

何故そんなことをしているか。

その理由はフランと美鈴にあった。

美鈴から格闘技盗むためこの三日間戦い続けた。

その間にはフランの相手をしていた。

暇な時間は居候らしく、妖精メイド達の手伝いをした。

ここまでしていると、天智の能力を使う機会が全くない。

つまり紅魔館から深夜に抜け出そうとしている理由は、天智の能力の練習のためである。

新しい使い方を思い付く度に、どうすれば能力を使える?と考えていた。

その答えは人がいないところに行くこと。

しかしそんな時間はどこにもなかった。

なので仕方なく深夜に抜け出している。

『しかし吸血鬼が夜寝るってのもおかしな話だよな。』

(それは俺も思ってたよ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

「この辺でいいな……」

湖面を挟んで反対側、紅魔館からはかなりの距離があった。

香霖堂と紅魔館の丁度間くらいにいる。

『まあ霖之助にもばれたらまずいからな。』

「跡は残るかもしれないが、距離があれば音は聞こえない。それだけで十分だ。」

『それで?能力を試すんじゃないのか?』

「その能力の派生でできたスペルを試すんだよ。俺が何考えてるかはお前には分かるだろ。」

『なら早くやろうぜ。その使い方は出来るがどこまで威力が出るかは俺も知らないんだ。まあ俺が使ったらお前の倍の威力は出せるけどな。』

「勝手に言ってろ。」

そんな天智とのやり取りを終え、スペルを宣言した。

「スペル________」

 

 

 

 

 

 

 

スペルの試し打ちを終え、俺は紅魔館に戻った。

出るときはこそこそとしなきゃいけなかったが、帰りはその必要がなくて気が楽だった。

まだ誰も起きてないようで、俺がいなかったことにも気付いてなかったらしい。

安心して部屋へ戻った。

 

 

 

 

 

 

「琴_さん。起き_下さ_。」

微睡の中で、掠れた声が聞こえた。

「ん……ん?」

「朝食の時間ですよ。もう皆さん集まっていますよ。」

「ああ……咲夜か。ん……分かったすぐ行く。呼び出しサンキュー。」

「あ、はい。では私は先に食堂に行きます。」

そう言って咲夜は部屋から出て行った。

「時間止めたんだろうが相変わらず一瞬だな。俺もとっとと行くか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもと変わらず、食卓は賑わっていた。

単に食事をしているだけなのに、ここまで騒がしいのは何故なのだろうか。

「琴羽さん、今日はどれくらい後にやりますか?」

戦う気満々の美鈴だが今までの戦績は、たった三日だというのに既に五戦五勝しかも勝ってるのはいずれも俺だった。

「今日こそ勝って見せますよ~!」

意気込みはいいんだが、何分実力が足りない。

一応紅魔館の戦闘力をある程度分析してみたが、フラン、レミリア、パチュリー、咲夜、美鈴の順に強い。

まあフランは予測でしかないんだが。

とにかくどう考えても美鈴はここでは最弱だ。

力をつける相手としては少し足りない。

かといってあのメイドと戦えば時を止められて一瞬。

やはり俺にちょうどいい実力を持つ奴はここにいない。

しかし格闘技を美鈴から盗むだけだからこんな考察するだけでも無駄なのだが、天智が『もっと面白い対決見せろよ。』というので考えていた。

(ったく、俺はまだ美鈴の格闘技盗めてねえっての。)

『何もできないこっちは暇なんだって言ってんだろうが。』

軽く頭の中で会話をして、紫にでも相談しようと決めた。

 

 

 

結局食後の運動とばかりに勝負を受けた。

結果は当然のように俺の勝ちだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




琴羽の新スペル何でしょうね。多分知ってる人は知ってるけど国所属の異能者の話で出てきた能力です。すぐに分かるんで別に言う必要もないんですけどね。近々戦闘回ですので。つか久々に二千文字超えませんでしたね。では。


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第三十二話 予兆

一日目三日目一週間。そんな感じで終わらせる紅魔館。出来れば表記三日分で大体の場所を終わらせたい。どうも凜です。この挨拶久しぶり!なんか言いやすい。紅魔館はあとこの回含めて二、三話分ですかね?やっとできた暇な時間中に投稿させていただきますよ。……次の土曜までは暇な時間ができたんでそれまでにこの回含めないで四話出します。勘違いしないでください。これは宣言ではなく僕の希望です。ではでは~


「せいっ!」

掛け声とともに放たれた蹴りは、綺麗な曲線を描いて俺に飛んでくる。

「ふっ!」

その蹴りを俺は難なく躱し、逆に鞭のようにしならせた俺の足が、目の前にいる門番へと放たれる。

ここまでの状態から分かる通り、戦闘中だ。

防御が間に合わずに、その蹴りは後頭部を蹴り飛ばした。

ここに来て一週間。

戦ってはフランの相手をし、暇なときは妖精メイドの手伝いか図書館で読書。

深夜は敵に関する分析。

ただ休むだけでも時間がない。

そもそもがここに来た理由は美鈴に格闘技を教わることが目的だった。

今はもう美鈴の型の動きは盗み切った。

もともとこうゆうことは出来るようで、今や美鈴の動きは完璧と言っていいほど把握していた。

美鈴曰く、格闘技の才はかなりあるようで、もはや美鈴から教わることはなく、あとは自己鍛錬次第とまで言われた。

こうなるともう俺はここにいる理由はない。

だが何故まだこうして紅魔館に留まっているかというと、パチュリーの本を読みたかったからだ。

この一週間霊夢や魔理沙も来ることがあり、幸か不幸か、俺は二人が来ている時だけは会えなかった。

来てたことを後から言われるだけで一度も会うことはなかった。

まあ二回しか来ていないのだが。

魔理沙はパチュリーの本を盗むらしく、俺が読みたい本を盗まれるのも困るのでここに留まって読み漁っている。

居候である以上、住人に付き合うのは当然。

結局美鈴と戦う日課は変わらない。

「う………」

「お前の攻撃は型にはまりすぎなんだよ。もっと臨機応変に行動しろ。例えばさっきの蹴りは受け止めるんじゃなくて受け流せばいい。」

既に二十になる戦果において、当然敗北を続けた奴は自分を倒した相手に教えを乞うわけで、いつの間にか美鈴と俺の立場は完全に逆転していた。

「咄嗟の判断でそんなこと出来ませんよ……受け流すなんて普通なら高等な技術なんですよ……?」

「知るか俺に出来ることぐらいやれ。」

「そんな…横暴です……」

そんなやり取りをしていると、大抵フランがいつの間にか来ている。

どうせ来ているだろうと思って、門を見たが、珍しくフランの姿はなかった。

(久々に図書館でゆっくりできるか?)

そう思って美鈴に今日はここまでにしようと伝えて図書館に向かった。

 

 

 

 

 

 

「琴羽さんお茶を入れますけど、琴葉さんもいりますか?」

小悪魔が聞いてくる。

図書館で過ごしていると、飛び回ってる姿くらいしか見ない小悪魔は、パチュリーに紅茶を入れるときだけは作業を止める。

その時についでに俺の分も入れてくれる。

当然断る理由もないし、喉も乾いたから「ああ、頼む。」とだけ言って本に目を戻す。

余談だが読み終えた本をしまう時についでに他の本もしまっている。

ここの本は外の世界にない情報が多かった。

それは俺の知的好奇心を揺さぶり、現実から引き離していく。

当然時間など分からない。

ここで過ごすと、自然と夜になっている。

現実に引き戻されるのは、決まって夕食の時間か入浴の時間だけだ。

今日もそれは例外ではなく、咲夜から俺達は三人呼び出された。

 

 

 

 

 

 

食堂に着いた俺は疑問に思うことが一つあった。

フランの姿がない。

いつもなら誰よりも先に食堂に着いている筈のフランの姿が、だ。

嫌な予感がした。

『琴羽、あまり不安にさせたくなかったが、朝から奇妙な霊力を感じる。』

突然放たれた天智の言葉は、確信ともとれるほどの不安さを醸し出していた。

「琴羽さん?どうかしたんですか?」

小悪魔無邪気に言ってくる。

『琴羽。急がないとフランがまずい……!』

何故そのことを早く言わなかった、なんていう言葉は出なかった。

何故かは分かっていたから。

聞く必要も聞く時間もなかったから。

天智が言った直後に俺は駆け出していた。

後ろから静止の声も聞こえたが、気にせず走った。

ほんの少し行った所で咲夜に捕まったが、俺の切羽詰まった顔を見てただ事じゃないと判断したようだった。

手を緩め、それ以降追ってくることはなかった。

フランの部屋に着いた。

思い出すと来たのは二度目だったと考えることもなく、すぐに扉を開けた。

 

 

 

 

 

部屋に入って最初に目に入った光景は、バラバラになったぬいぐるみの残骸、ボロボロになったベッド、中心に蹲っている………フラン。

嫌な予感に限って当たってしまう。

「フラン……?」

「お…兄…さ…ま…?」

途切れ途切れに聞こえてくるその声は弱弱しく、フランが弱ってることを確認するには十分だった。

敵に何かされた。

俺も天智も当然そう考えた。

そしてその思考は、二つの可能性を生み出した。

「待ってろフラン!すぐに治してやる!」

一つは敵が俺の知り合いから殺そうと考え、襲った。

二つは大天狗と同じ……暴走。

俺は大天狗の時と同じように、解放のスペルを使おうとした。

その俺を、天智が静止した。

『琴羽!無理だ!俺の力が届く範囲を超えてる!急いで逃げろ!』

「でも……!」

「逃……げて…」

「!」

フランは弱弱しい声で逃げろと言った。

弱っていたのは力を押さえつけているから。

フランからはその体に収まり切れない量の妖力が滲み出ていた。

俺を追ってレミリア達が着いたときにはもう遅かった。

「ああああああああぁぁぁぁぁぁ!」

滲み出ていた妖力は、周囲を覆うほどの邪気となった。

 




皆さん!ほとんどの作品に出るベタ展開が次回ですよ!原因は他とは違っても十分ベタ!そんな次回です。投稿は明日です。これは前書きとは逆で宣言です。では。


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第三十三話 本来の紅魔館

近々最初の方の回を全部書き直すかもしれません。正直最初の方は急ぎ足で書いていたもので、まあ簡単に言うと話に入るまでは結構適当に書いていたんで、今ならもう少しまともな文は書けるでしょう。ということです。……この説明も分かりずらいですね。書き直すかもしれないということだけ分かれば十分です。本当にやるかは未定ですがね!ではでは~


咲夜が時を止めて逃がしてくれなければ全滅していただろう。

フランを除いた紅魔館の面々は、紅魔館から少し離れて休んでいた。

フランから発せられた妖力は、周囲に霧のように張り巡らされていた。

それは結界のように誰も寄せ付けない。

それを間近で受けた俺たちは少しとはいえ傷を負っていた

そんななか、レミリアが口を開いた。

「……なんで貴方は気付いたの?」

フランが暴走する直前、俺だけがそのことに気付けたことを訝しんだようだ。

俺は沈黙しか出来なかった。

もし話すのなら、天智のことも話さなければならない。

そうなれば俺の居場所はなくなる。

レミリア達にこのことを話せば、天智の存在は危険なものだと判断されるだろう。

たとえ俺が天智は危険な存在じゃないと説得できたとしても、すぐに俺の能力の痕跡は見つかり、危険だということは変わらないだろう。

そう思われれば弁明のしようなどない。

危険な能力は忌み嫌われるもの。

紫は認めていたが、他がどう思うかは分からない。

確かに天智より強い奴はこの世界にはたくさんいる。

だがこの能力は特殊だ。

使いようによっては悪用も、戦闘にも使える。

妖怪を嫌う人間にばれれば、退治屋に仕立て上げられてもおかしくない。

ニトリのように魂を操作できる機械や能力を使われれば、天智がどうなるか分からない。

外来人のように家族がいないものが強い能力を持っているということは、他人が悪用しやすいということでもある。

他人の関心を自分に向けないためにも、この能力がばれるわけにはいかなかった。

外来人が幻想郷に住み着いた。

その程度の噂で終わらせるべきだったんだ。

しかしこの能力を使わなければフランを助けられないのも事実。

この能力についてぽつぽつと話し始めた。

 

 

 

 

 

「……これが今の俺の能力だ。」

「…天智っていうのは今も聞いてるの?」

『おい、能力で体作れ。今なら数分ぐらい平気だろ?』

(分かった。)

能力を使って天智の体を作りだした。

『初めまして、だな。』

問題の張本人であり、唯一フランを救える存在が姿を現した。

「……確かにこの力ならばれるだけでも問題ね。」

レミリアにはこの力の強さが分かるらしい。

咲夜には分からなかったようだが、抑えの利かないその力の強さに、他の三人は身構えていた。

「それで貴方はフランを救うことに協力してくれるのかしら?」

この場で唯一フランより強い力を持つ者である天智に、その問いは至極当然と言えるだろう。

その問いに、天智は静かに答えた。

『今程度の俺の力じゃかてもしないだろうな。本来の力ならともかく。それにお前らに協力するつもりもない、が…』

言いながらこちらを見る。

『フランにはあそこで世話になったからな。それに琴羽は助けたいみたいなんでな。俺は戦えないが、琴羽に俺の神力を分けるぐらいはしてやる。後は任せるぜ?』

「力分けられりゃ十分だ。まああの強さだと加減は利かない。いや、全力で戦っても勝てるか分からない。」

『だろうな。弱らせるだけでもきついだろうな。そこはお前の技量次第だ。助けたいなら弱らせな。その後なら解放のスペルも効く。』

弱らせるだけで勝てる。

だとしてもそれが難しい。

(こっちの攻撃は効くか分からない。攻撃をくらえばそこで終わり。まったく、理不尽なもんだな。)

「天智、行くぞ。」

『分かった。』

俺は天智の姿を消そうとした。

しかしレミリアから疑問が投げかけられた。

「私たちが協力するのは出来ないの?」

出来れば協力はしてほしい。

だがあの中で自由に動けるのは俺ぐらいなもの。

理由は簡単。

フランの暴走が敵の仕業だとしたら、大天狗の時と同じように狙いは俺。

あの結界のような霧にある因果は、俺の殺害。

それによる副作用は、俺以外の侵入の妨害。

レミリア達には悪いが、待っててもらうことしかできない。

そのことを説明した後に、天智の姿を消して、俺は紅魔館に戻った。

 

 

 

 

 

 

近づくだけでも痛いと思う殺気。

禍々しい妖力。

まさに吸血鬼の館と言えるだろう。

これが本来の紅魔館の可能性と言っても過言じゃない。

『琴羽、フラン以外の気配がする。数えきれない。』

「全部蹴散らす。倒さなくとも風で吹き飛ばせばそれでいい。」

天智の言った通り紅魔館の中には、亡霊のようなものなのか、黒い人の形をした靄が闊歩していた。

宣言通り鎌鼬は亡霊を次々と切っていく。

俺の足は少しも止まらない。

亡霊を裂きながら、この館で唯一生命力を持つ者の元まで走る。

『琴羽、絶対に躊躇はするなよ。こいつらにも。____フランにも。』

「…………」

分かっている、とも答えなかった。

ただ黙々と、走り続けた。

 

 




次フラン戦闘回です。ちなみに琴羽の能力はまだ変わります。とゆうか増えます。まあ軽くネタバレしちゃうと天智以外にも精神世界の住人みたいの次かその次で出ます。名前……決まってないんですよね。あと準備回だと文字数少なくなるのって結構仕方ないことだと思います。次回は二千文字超えるかな?では。


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第三十四話 狂鬼

今回だけで新スペル四つは出ますよ。東方キャラってスペル二十枚くらい一人あたり持ってるじゃないですか。となると琴羽は天智も含めてそれくらい持っててもおかしくないんですよ。まあ何が言いたいかと言うと琴羽のスペルは結構多い。ということです。しかも能力上、東方のゲームのようにスペルが弾幕大量ーていうのが簡単に出来てしまうんですよ。種類はいろいろですが琴羽が使うスペルはどれもチートです。それだけはお忘れなきように。ではでは~


紅魔館から逃げ出す直前と同じように、フランはいた。

ただし、獣ともとれる異形の姿。

いるだけで痛みを与える殺気。

そんなフランは俺を見るなり襲い掛かってきた。

『ルアアアアアアア!』

フランの声とは思えない咆哮。

襲い掛かってくると同時に俺は、その場から跳びのいていた。

その鉤爪のような手は、さっきまで俺がいた場所を切り壊し、壁を破った。

館内で戦うのは確実に不利、そう判断した俺は今のフランと同じように壁を蹴り壊した。

『ガアアアアアァァァァ!』

(フラン、着いてこいよ……)

蹴り破った壁から飛び降りた。

フランの部屋は二階。

能力を使う必要もない。

狙い通り俺を追ってフランも飛び降りた。

ご丁寧に攻撃の体制をとりながら。

飛んで躱すが、その衝撃は俺を軽く吹き飛ばした。

「ぐっ……!」

すぐに体勢を立て直し、フランの姿を見た。

四足で立ち、殺気の篭った眼光、かろうじて見えるフランの目は、血走った赤眼だった。

『グルル………!』

その姿はまさに、獣が獲物を狩るときの姿と同じだった。

「来いよ…!」

挑発的に笑みを浮かべ、気を集中した。

『ガアアアアアアア!』

獣に考える頭はない。

その獣は、馬鹿正直に、一直線に突進してくる。

横に跳び、カウンターを決めようと手を振りかぶった。

「っ!」

突進の風圧は俺を吹き飛ばすのに十分だった。

横に跳んだ時点で、俺の体は宙を舞った。

そんな隙を見逃すわけもなく、見たことのない量の弾幕が周囲に出現した。

『『生物の行動は考える頭がなくなれば、体が覚えている動きを行う。能力も同様だ。』』

過去に天智に言われた言葉を思い出した。

つまりこの弾幕は、フランの素の数。

(やべえ……!)

「解放『付与術消去』!」

咄嗟に発動したスペルで、弾幕は凌いだ。

消えた弾幕の隙間から、フランが飛び掛かってくるのが見えた。

ギリギリで避けるが、再びその風圧に飛ばされた。

半ば地面に叩きつけられるようにして、地面に着地する。

追撃に爪を前に出して降ってくるフランから、能力を使った瞬間移動じみた速度で離れる。

(冗談じゃねえ!近づけもしないならどうしろってゆうんだよ!?)

『止まるな琴羽!来るぞ!』

「チィッ……!」

近づけない以上、弾幕やスペルで攻撃するしかない。

もはや出し惜しみするつもりもない。

新しく作ったスペルは十や二十にも上る。

いくつ使っても、あの獣を倒す。

(スペルのコンボはやったことねえが……数を作るぐらいは簡単だ!)

スペルなしに集中して密度を濃くした弾幕を、フランの周囲に張り巡らす。

やはり動きを止めることさえ出来なかったが、一瞬の目くらましにはなった。

弾幕を視界を塞ぐように張ったおかげで、その一瞬の間に背後に回ることが出来た。

「雷符『ハイボルテージ』!雷熱『エフェクトライトニング』!」

雷符は体に雷の力を溜め、雷熱はその力を即座に放出するスペル。

ただし雷熱の力の放出は、高温まで高くなった雷を辺りに線のように張り巡らすもの。

その線は発動者である俺を除き、他に触れたもの全てを焼く。

当然フランはそれを避けることは出来ない。

それは全て、フランに向かっているのだから。

雷のワイヤーは、フランを串刺しにするために、ただ一直線に向かっていく。

光から逃れることは出来ない。

その光は完全にフランを串刺しにした。

『アアアアアァァァァ!』

苦痛の声。

初めてあの獣に痛みを与えられた。

普通なら死ぬ筈の電圧。

しかしフランは、それを耐えた上、あろうことか反撃をした。

(ペースを握られれば終わる。一気に終わらせる!)

反撃をしてきたフランに、さらにスペルを浴びせる。

『ハイボルテージ』は使用後一定の時間、量の雷系能力の威力を上げるもの。

それが切れる前に片をつける。

天智から受け取った神力の量から考えれば、少なくとも三十秒。

(その間で勝つ!)

「天上『雷鳴の轟(らいめいのとどろき)』!」

天上のスペル、『天風貫雷』の進化、風はなく、閃光のみが走る。

一つは迷わずフランを貫き、無差別弾幕のように雷が飛び散る。

だめおしのラストスペル。

「雷符『閃光の檻(せんこうのおり)!』」

フランの周囲から、雷の線が出た。

そしてその線は、フランを捕まえるように刺さっていく。

威力を上げ、数で圧倒する。

俺に出来たのはここまで。

しかしここまでやればフランもまともに動ける身ではないだろう。

そう思いフランを見る。

しかし人生とは時に残酷であり、神は時に薄情である。

ぼろぼろになりながらも立ち上がるフラン。

こちらは力を使い切って満身創痍。

誰がどうみても勝敗は明らかだった。

だが、諦めることが許されない。

諦めることを自身が赦さない。

そんな絶望的な状況にも関わらず、俺の闘志はまだ消えない。

死ぬことに未練がないわけじゃない。

死ぬことが怖くないわけじゃない。

なら何故まだそんな小さな希望を捨てないのか。

その答えは単純だ。

(約束した。死なないことを。この程度の絶望で倒れてたまるか。)

ぼろぼろの体で、霊力もろくになくて、それでも倒れることはない。

腕が折れようが目がなくなろうが足がもげようが内臓が潰れようが、そんな程度、痛みにもならない。

フランを助ける。

その覚悟を超えることは出来ないのだから。

だから俺は諦めない。

死ぬことに変わりはなかろうが、絶対にフランを救い出す。

「それが俺の覚悟だ。簡単に潰せると思うなよ獣風情が。」

『ガアアアアア!』

フランの突進を食らえばおそらく死ぬ。

避ける力も残っていない。

霊力は生命力。

ただの突進が俺へのとどめ。

この獣の力ももうない。

だが俺の命を奪うだけなら簡単だ。

死を直前にして、俺からはこの言葉しか出ない。

「すまない。」

どんなに取り繕うが、俺はフランを救えなかった。

守れなかった。

自分の覚悟も通せなかった。

そんな俺からこれ以上の言葉はでなかった。

ただ涙を流して、しかしその姿から目を逸らすことはなく、俺はそのまま突進を受けた。

飛び散る血、裂かれる体、まず助からない。

そんななか、一つの声が鳴り響いた。

『手伝ってやるよ。』

その一言は、俺の頭に異様に残り続けた。

 

 




『フラッシュオーバー』この言葉を知っている人なら雷系スペルの元ネタは分かるでしょう。それ以外も出しますけど。では。


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第三十五話 黒い世界

前書きなんですけど次回のこともう言っときますね。次回はまた琴羽の過去です。前回の前書きの目標は微妙ですね。あと一話を今日中に出せるか。………深夜二時くらいに出せればいいぐらいですね。ではでは~


『手伝ってやろうか?』

その声には聞き覚えなどない。

しかし頭に残る声だった。

意識が遠のく。

そんな中聞こえた声。

いったい誰だと考える暇もない。

死の間際の幻聴、そう考えるしかなかった。

俺の意識が完全に途絶える。

それでもその声は俺の中で鳴り続ける。

 

 

 

 

目の前にフランの姿はない。

いるのは一人の少年だけ。

下卑た笑みを浮かべ目の前に立っている。

以前にもこんなことがあった。

天智の時もこんな世界だった。

何もない空間に、たった一人で立っていた。

しかし天智とは何もかもが違った。

真っ暗な空間、何もないと思われたところを目を凝らして見てみれば、大量の骸が散乱しており、少年が立っていたのはその中心。

そしてその少年の姿は俺の姿であるというにも関わらず、黒髪の黒眼。

天智とは真逆だった。

『よお。久しぶりだなあ琴羽。』

その声は見た目通り、俺と同じ声だった。

そこだけは天智と同じだった。

「久しぶり?俺はお前と会った記憶なんてないぞ?」

『ああそうだな。会ったことはない。でも話したことはあるぜ十日前ぐらいにな。』

十日前に話したことがある。

こいつはそう言った。

十日前は正確には分からないが、紅魔館で初めて美鈴と戦った時だ。

その時を思い出してみた。

『『自分で壊したくせになにを言っているんだ?』』

(あれはこいつの言葉だったのか?)

『当たりだ。天智が言ったとでも思っていたか?』

天智と同じように、こいつも俺の考えてることは分かるらしい。

『あの言葉の意味、分かるか?』

こいつはそう言った。

おそらく俺が何をしたのか、それを思い出したかということだろう。

『はぁぁ……思い出せもしないなんて、見込み違いかねぇ?』

「……俺は何をしたんだ?お前は知ってるんだろ?」

『ああ知ってるさ当然だろ。天智と同じだ。俺もお前の中にずっといたんだからな。』

天智は俺の中にいた。

今もこの会話をどこかで聞いてるのかもしれない。

その天智からは、今までこんな奴のことを聞いたことがない。

『知らなかったんじゃない。知りながら教えなかったんだよ。俺たちはお前が力をつけて初めて姿を現せる。』

こいつの説明は何とも適当なものだった。

要約してしまえば、互いのことを俺に教えること、能力を使った直接的な行動、俺が望まない行い、互いの世界への干渉、それらを禁止すること。

さらに俺の精神が耐えられるようになること。

体が大きな力に耐えられるようになること。

これらの条件全てを守ったうえでなら、俺に姿を現すことは可能。

さらに精神世界の主導権は俺以外に与えられている。

そして認知された後なら、能力による手助けや俺以外の者にも知られること、それらのようにある程度の自由が認められる。

それらのような契約をこいつらは行っていた。

天智やこいつが姿を現したのはそれらが達成されたから。

現に天智の能力に俺は耐えている。

それだけでもこいつの言葉は真実だという証明になる。

『……以上が条件だ。納得できるか?』

「…………まあ嘘を言う必要もないからな。信用しよう。でも気になることもある。」

『何故自分の体に自分以外の二人の魂が存在するか、か?』

その通りだった。

『俺も知らねえ。天智は頭いいから分かるかもしれねえが、俺は頭を使うのは苦手でな。天智にでも聞け。』

口調から分かる通り馬鹿だった。

これ以上こいつから聞けることはないと諦め、会話を切った。

『長々と話したが最初の問いに答えろよ。』

この世界も天智の世界と同じように、外とは時間の流れが違うはず。

時間を気にする必要はないが、確かに長々と話しすぎた。

最初の問いとはおそらく、『手伝ってやろうか?』この言葉だろう。

「手伝うってのはフランを止めることか?」

聞く必要もない当然のことだった。

当然その回答は適当なものになる。

『それ以外に何がある?』

俺はこいつに頼りたくなかった。

こいつからは殺気しか感じなかった。

慣れてないものなら失神してもおかしくない。

そんな殺気を常に纏っている。

フランを殺すことはあっても、助けることはしないだろう。

『ああその通りさ。俺はただ暴れてえんだよ。お前の体使って溜まった魔力を放出してえんだよ。』

予想通り危険だ。

「フランを殺そうとしてるお前に、簡単に体を貸すと思うか?」

当然そんなつもりはない。

殺させて堪るものか。

『ま、当然の反応だな。』

当然分かっていたようだ。

『だから少しだけ記憶を戻してやるよ。』

脈絡のないその言葉は俺にとってはこいつとの会話の中で、最も欲しかったものだ。

『この記憶はお前の罪だ。この記憶は少なからずお前を壊す。壊れたお前の代わりに、俺がお前になってやるよ。』

記憶は欲しい。

しかしその記憶は俺を壊す。

フランも助けられずに、俺は壊れる。

俺の中に確実な恐怖が表れた。

「……………………」

逃げるように後ずさる。

『諦めな。お前には断罪が必要なんだ。永遠とも思える時間の中で苦しめ。自分の行いに懺悔しながら、俺のために………壊れな!』

その言葉を区切りに、そいつは俺の前から姿を消した。

同時に俺の頭に、処理できない量の情報が流れ込んだ。

 

 

 




もしかしたら主人公の能力の進化はここで終わってたかもしれない。天智とこの人だけでも『天と地を操る程度の能力』にもできたです。しかし最初の主人公の能力でその手は使えなくなりました。まあ狙ってやったことなんで予定の変更とかありませんでしたけどね。この辺から僕がどういう能力を主人公に与えたいか分かる人もいるんじゃないでしょうか?そして分かってしまえばチート過ぎる能力と思うでしょう。勘違いしないでほしいのはいくら能力が強くなろうと琴羽は人間なのでそこまで強くなれません。能力チートでも絶対に戦いに勝てるとは思わないでください。では。


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追憶 閉ざされた記憶

一昨日持病で気絶、昨日用事があって編集作業も出来ず。朝学校ありましたしね。休日登校ほど嫌なことはありません。しかも結局投稿出来ませんでした。
モンハン2g久々やると楽しいんですが昨日一昨日出来なかったです。ではでは~


(?何だ?ここ…あれは……俺?)

あいつの声が消えたと思ったら、俺は公園にいた。

自分の体は透けていて、もう一人、『俺』が目の前にいた。

そしてその横には、死んだはずの翔大と陽。

三人は楽しそうに会話している。

「楽しかったねー!」

屈託のない笑顔で陽はそう言った。

「よく言うよ。あんだけ犬猫追っかけといて。」

「まあ、楽しけりゃ良いんじゃね。」

「陽、あんまそうゆうことすんなよ。」

肯定する翔大と、否定する『俺』の言葉が重なった。

「琴羽!」

「何?」

「また来ようね!」

『俺』は少し笑って「ああ。」と言った。

この会話は、二人が死ぬ前の会話だ。

(これ……あいつは!?)

辺りを見渡した。

あの時、最初に悲痛な声を上げた男の人。

その後ろには、既に包丁を持った男が立っている。

男は容赦なく、包丁を突き刺した。

悲痛な声を上げて死んでいく人々。

能力を使えば助けるのは簡単だ。

しかし触れることも出来ない。

これはあいつが俺に見せる記憶でしかないのだから。

理解はしている。

そこらの知らない奴らが死ぬのはまだ見ても平気だ。

でも、親友の二回目の死は耐えられない。

もう俺に声は届いてなかった。

「やめろ……やめてくれ……!」

何も出来ない俺は眺めるしか出来ない。

その残酷な現実を、変える方法はない。

ただ涙を流して、死んでいく二人を眺めていることしか出来ない。

目の前の三人が最後の会話をしている。

 

 

会話が終わったのか、目の前の『俺』は二人から離れていく。

過去の一部始終が見終わったというのに、この記憶は終わらない。

ここからがあいつの見せたい記憶らしい。

なにがあったのか。

記憶のない俺には分かりようがない。

そのままふらついた足取りで公演から出ていく。

(家に行くのか?)

 

 

 

歩いていく『俺』に付いて行くと、そこには数年間帰ることはなかった。

しかし何年も住んでいた思い出の家があった。

暗い顔で俺達は中に入っていく。

そこには、元気な姿の家族がいた。

久しぶりに見る家族の姿に、思わず涙が出る。

そこには血は繋がっていない。

しかし自分を育ててくれた母さんの姿があった。。

俺の記憶通りなら、これから事情を話して警察に行く。

しかし現実は違った。

過去の『俺』の眼は虚ろだった。

ただ暗いだけじゃなかった。

そんな状態の俺に家族からの声が届いているはずがない。

(何を?)

そんな『俺』は、急に母さんの首を掴んだ。

(……は?)

状況が理解できずに、しばらくの間呆然としていた。

母さんは、そのまま力なく倒れ伏した。

異変に気付いた父さんが部屋から現れる。

その後に続いて兄弟が現れる。

その父さんは、何もなかったところから現れた蛇に咬みつかれた。

(能力!?しかも使っているのは俺!?でもこんな能力俺は……)

「抑えきれなかったか…すまない。琴羽。」

蛇に咬まれた父さんに、兄弟たちは声をかけた。

その声を無視して、父さんは謝っていた。

咬まれているのは自分だというのに。

咬みついた蛇は、次々と切り裂かれていく。

どうやら父さんにも能力があったようだ。

目測で言うのなら、『斬撃を作る程度の能力』。

父さんが手を向けた蛇たちは、次々に裂かれていく。

「琴羽、絶対に助けてやるからな……!」

(助ける?どうゆうことなんだ。俺に何が起きてるんだ。)

困惑していたら、過去の『俺』が父さんの名前を呼んだ。

いいや違う。

『俺』の体を使っている何者かが、だ。

「漸(せん)、やっぱ手前ぇも能力者だったか。」

「鬼め……琴羽の体から出ていけ!」

「そう簡単に出てくと思うか?これは呪いなんだよ。望む者にとっては力になり、望まない者にとっては呪いとなる。こいつは永遠の呪いに蝕まれながら!いずれ死んでくんだよ!」

父さんを嘲笑うかのように、その声は部屋に響き渡った。

「さあ、手前からまずは殺してやる。その次は後ろのガキどもだ!こいつはその罪に囚われながら、惨めに死んでいくんだよ!ハハハハ!」

「………貴様の強さは知っている。俺が勝てないことも分かっている。だからせめて、封じるくらいはしてみせよう。」

「封じる?手前ごときに出来ると思ってんのかよ!仮に出来るとして俺が抵抗しないとでも?」

「…………………翔大、あとは任せたぞ。」

父さんは翔大に任せたと言い、自分を切り裂いた。

「父さん?何で……」

「この命と引き換えに、貴様を封じよう!」

『この命と引き換えに』確かに父さんはそう言った。

(命と引き換え?父さんは…死ぬのか…?そんな…そんなことって…………)

父さんの体から夥しい量の血が飛び散る。

その血は、まるで意識を持つように、『俺』の体に取り付いていく。

「な、何だこれは!?手前の能力は斬撃だけじゃねえのか!?」

「これは俺の使う能力の中で、生涯一度も使わなかった力だ。この能力は一度の使用で命を奪う。光栄に思え。この力を見ることを!生滅永封魂霊(しょうめつえいふうのこんれい)!」

父さんの体は崩れていき、その全てが『俺』の体に纏わりつく。

「この、程度……!この程度で、俺が封じられると思うなぁ!」

纏わりついていた父さんの残骸は、その言葉とともに弾かれた。

その直後、頭に直接鳴り響くように、父さんの声が聞こえた。

『琴羽…美霊…子供たち…救うことも、守ることも出来なかった弱き父に、謝ることを許してくれ…」

俺の名前を呼び、母さんの名前を呼び子供たちを呼び、尚も謝っていた。

「ククク、ハハハハハ!やはり貴様では俺を封じることなんて出来ねえんだよぉ!」

そう言った『俺』は、手を爪に変えて、兄弟たちを殺していく。

「やめろーーー!」

叫んだ。

届かないことは分かっていた。

それでも、叫ばずにはいられなかった。

 

 

 

全員を殺した『俺』は、やっと能力を消した。

「ハハハハハ!やってやった!これでやっと………!」

なにに気付いたのか、言葉を区切った。

「これは…!……腐っても除霊者の家系だったか。…いいぜ。今回は引き分けだ。俺の目的は達され、お前は俺を封じる。だが、これで終わりだと思うなよ、漸。」

そこで、俺の記憶は途絶えた。

 

 




ただ僕は眠りたい。睡眠不足が一番きつい。学校で存分に熟睡します。では。


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第三十六話 虐殺

今回最初と最後以外琴羽の精神世界に出てきた新キャラ目線です。あとレミリア。あと新タブは憑依です。まも一個ありますが、多分もう分るでしょう。もう数話でタブ付け……できればいいですねぇ。
ではでは~


(何故あんな記憶を見せた?何故俺はあんなことをした?何故……何故……?)

疑問しか浮かばない。

俺には何も分からない。

忘れていた記憶を知れた。

失ったものを知った。

それはあまりにも大きく、あまりにも、残酷な現実だ。

親を殺した。

兄弟を殺した。

親友を殺した。

俺に取り付いた何者かが、皆を殺した。

でも嗤っていたのは、他でもない、俺自身だ。

(俺は、一体何者なんだ……?)

自分が分からない。

壊してきた俺に、何を守る資格がある?

(自分を、知りたい……)

俺の心の声は、静かに消えていった。

 

 

 

 

鮮血が噴き出た。

腹に穴が開いた。

目の前まで爪が迫っている。

(それがどうした?)

迫ってくる獣を、殴りつける。

その殴打は、獣を地面に埋め込んだ。

何が起きたかを理解出来ず、もう一度迫ってくる。

それをもう一度殴りつける。

方向的に紅魔館を貫通する。

「どうした?何故動けるのか気になるのか?」

やはり困惑の表情を浮かべる。

腹は開いたまま。

血は流れたまま。

そんな相手から攻撃を受け続ける。

何故死なないか。

何故動けるか。

困惑の理由はそんなところだろう。

「この程度で倒れるのは人間ぐらいだぜ?」

俺は正確には人間ではない。

琴羽と入れ替わった。

琴羽の能力は使えないが、人を超えた能力を使える。

腹に穴が開いた程度なら痛みにもならない。

『グルルルゥゥゥゥゥ!』

「獣らしい声じゃないか。」

警戒して距離を取る。

「はは!距離を取ったところで…無駄なんだよ!」

離れる獣に、攻撃を仕掛ける。

地面より突き抜けた針は、その腕を貫いた。

『ガアアアアアァァァァ!』

「痛えか?痛えよなぁ!もっと鳴けよ!獣らしくなぁ!」

針は出現を続ける。

地面から、何もない空から、その針は獣に向かって迫り続ける。

俊敏な動きで避け続ける獣は、こっちに攻撃を仕掛ける暇もない。

「避けんのはうめぇみたいだな。なら、これならどうだ?」

針に代わって黒炎が現れた。

獣を囲って焼き続ける。

『アアアアアアァァァァァァァァァァ!』

黒炎を纏った針は、獣を貫く。

貫き、焼き、引き裂き、溶かす。

この炎の特性は、溶解と焼却。

獣を嬲って殺し続ける。

その行いに笑いが止まらない。

数千年ぶりの外。

数千年ぶりの解放。

(この感覚だ…!もっとだ……もっと嬲ってやる………!」

いつの間にか妖力の結界は消えていた。

 

 

 

 

 

フランの張っていた結界が消えた。

妖力が完全に消え切ったわけではないから、フランが死んでいるわけでも、意識を失ったわけでもない。

ただ結界は消えた。

なら、私たちが行かないわけにはいかない。

「咲夜、行くわよ。」

私は従者にそう言った。

「はい。お嬢様。」

「当然私も行きますよ!」

その言葉を、従者たちは快く頷いてくれた。

「私も行くわ。こあも行くわよ。」

「もちろんです!パチュリー様!」

従者に続いて親友も来てくれるようだ。

急いで行かなければ。

 

 

 

 

「はははははは!」

着いた私たちは、その目を疑った。

あの人のことしか考えてないような少年が、既に倒れているフランに向かって手を振り下ろし続けている。

見たことのない能力で。

見たこともない顔で。

その手を止めるつもりはないようだ。

その状態のままこちらを見た。

「あ?ああ。お前ぇらこいつの家族だったか?今更来たのか。まあいいか。とにかく今は………暴れてぇ!」

その手をこちらに向けてきた。

黒い炎が迫る。

咄嗟にパチェが水の盾を張ってくれたおかげで、炎は防ぐことが出来たが、貫通して針が飛んできた。

「パチェ!」

「レミィ!彼を止めなさい!」

あんな能力は見たことがない。

彼の使う能力は創造と付与。

どう応用してもあんな使い方は出来ない。

「レミィ!」

「!咲夜!拘束を!」

咲夜が時間を止めて拘束すれば、動きを止めることは出来る。

しかし……

「すみません、お嬢様……能力が…効きません!」

「な__!」

咲夜の能力が効かない相手は、今まで見たことがない。

「よそ見してる暇があるのかぁ!?」」

針が飛んでくる。

「くっ!」

避け続けるが、数が多い。

上から下から飛んでくる。

これを続けても、いずれ倒される。

(もう、耐えているだけでは時間の問題だ…………)

皆を守るために、戦うしかない。

「パチェ!攻撃しなさい!殺す気でかからなきゃ殺されるわよ!」

後ろで咲夜を守り続けるパチェに、そう伝えた。

「…………いいのね?レミィ。」

「………ええ。」

「…水符『プリンセスウンディネ』。」

水色の弾幕が、大量に放たれる。

「……やればできるじゃないか。もっと抵抗しろよ?黒炎!」

その全てが燃やされる。

「!そんな…仮にも水のスペルなのよ……?」

「スピア・ザ・グングニル!」

その炎をなんとか弾く。

「ここからは私が相手になるわ。これ以上、彼も、フランも、傷つかせない!琴羽を返せ外道!」

私にしては感情的になってしまった。

でも、これ以上彼の声で、姿で、こんな酷いことはさせない。

私の思いは、戦いの中に生きながら、行いへと変わっていった。

 

 

 

 

真っ白な空間、音のない空間、見覚えがある。

『琴羽、目を覚ませ。』

(誰だ?俺を呼ぶのは、一体誰なんだ?)

その声の主を、俺は聞き覚えがありながら、思い出すことが出来なかった。

 

 

 




特に説明もないし、終わります。では。


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第三十七話 本物

最初琴羽真ん中黒い琴羽最後琴羽の順で視点変わっていきます。黒琴羽にもちゃんと名前は付けますが待ってください。まだ思いついてません。出るキャラの構想はあっても名前って思いつかないんですよ。出来るだけ意味付けて作りたいですしね。名前のセンスがないのは言わないでください。ではでは~


真っ白な空間。

止まった時間。

そんな場所に、俺は居た。

過去に誰かと話した場所。

俺が始まった場所。

目の前には少年がいて、こちらを見ている。

『琴羽、もう一度言うぞ。目を覚ませ。』

その少年は、俺に話しかけてくる。

(お前は誰だ?あれ?この声を俺は知っている?)

何も思い出せない。

自分が何をしてたのかも、何故ここに居るのかも。

『琴羽、お前はそんな簡単に壊れる奴だったか?』

(お前に何が分かるんだよ。俺だって自分が何も分からないのに。)

記憶がない。

でも、なにもかもどうでもいいことだけは分かる。

ただ眠い。

眠りたい。

『琴羽……』

少年が近づいてくる。

『目を覚ませ。記憶を拒むな。思い出せ。自分を。』

何を言っているか、理解できない。

『何回言わせりゃ気が済むんだ……!さっさと……起きろ!』

近づいてきた少年に殴られる。

勢いで飛ばされる。

「っ!何しやが………」

どう来たのか少年はすぐ目の前まで近づいていた。

『手前はそんな簡単に壊れてていいのかよ!外で何が起きてると思ってんだ!』

(何のことだよ……関係ねえよ……外ってなんだよ………)

『お前から言ったくせに……相棒だと思ってたのは俺だけなのかよ………!』

少年が悲痛そうな声を出す。

(相棒って……なんの……)

「っ____!」

(何だ!?頭が……痛い!?)

急に頭痛に襲われた。

『琴羽……フランを助けるんだろ……?なら、こんなところで壊れてんじゃねえよ!』

その叫びを聞いて、今までの記憶が流れ込むように思い出される。

天智のこと、フランのこと、それ以前の過去の記憶。

思い出した、なにもかも。

「天智……あいつは……どこだ?」

『!壊れてると心も読めねえんだよ……面倒掛けさせんな。』

「悪いな相棒。もう大丈夫だ。あいつはどこいにる?」

『……はは。お前の体奪って外で暴れてるぜ。』

「そうか。」

聞くなり俺は外に向かう。

明確な出口はないが、以前出た時は出ることを考えた。

今回も同じようにした。

『行くんだな、琴羽。』

「ああ。フラン助ける気だったのに傷つけた。なら、今度こそ救ってみせる。力……貸してくれるか?」

『当然だろ?まあそこまで協力出来ることはないが、お前が力を貸してほしいのなら、いくらでも貸してやる。行ってこい。奴のところに。』

「……戻ってきたら教えろよ?お前やあいつのこと。」

『分かってるさ。絶対に戻ってこい。』

「ああ。」

その空間は、黒の世界へと変化していった。

 

 

 

「ハハハハハ!その程度で吸血鬼なのかぁ!?相手にもならねえなぁ!」

俺は、黒炎と針だけで吸血鬼と魔法使いを圧倒していた。

人間は戦う術もなく、悪魔は戦力外。

格闘家は針で貫かれ死亡……に見えるがあいつも妖怪。

その程度では死なないだろう。

しかし戦闘不能状態にあるのは変わらない。

実質吸血鬼と魔法使いしか戦っていない。

「パチェ!魔力はまだ持つ!?」

「平気よ。でも、スペルはあと一枚が限界。」

どうやら魔法使いはもう限界らしい。

(暴れるにはもの足りねえな……)

そんなことを考えていると、急に頭痛に襲われた。

「……!?動かない!?」

体が動かなくなった。

理解できずに困惑していると、そんな隙を吸血鬼たちが見逃すわけもなく………

「動きが止まった……?今なら…………!」

「レミィ!」

「分かってる!『紅色の幻想郷』!」

「水&木符『ウォーターエルフ』!」

それぞれの弾幕が大量に発せられる。

「しまっ………!」

その全てをくらう。

「ガアアアアアアアア!」

(一体あれは………?)

その瞬間辺りが暗転した。

 

 

 

「来たな。」

天智はこの世界には来れないらしく、一人でいた。

世界への侵入。

それは精神を最も蝕む行為。

案の定目的の相手はここへ来た。

「ここは……?」

「よう。さっきぶりだな。」

来たばかりのそいつに声をかける。

「お前………!?」

「何故俺がここに居るのかって顔だな。」

「馬鹿な!なぜお前はそこまで平静としている!?あの記憶を見て、何故壊れない!?」

「………一度は壊れたさ。それを救ったのは他でもない。俺の相棒さ。」

「!……天智……!」

天智に激怒しているようだ。

当たり前だろう。

自分の邪魔をされて怒らないものなどいないのだから。

だからこそ俺は言ってやった。

「怒ってるのがお前だけだと思ってんじゃねえぞ……」

「……何が言いたい。」

「フランやレミリアを傷つけておいて、簡単に許されると思うな。戦え。叩きのめしてやる。」

「……お前ごときが俺に勝てると?」

「逆に聞くぞ。たかが俺の別人格の分際で、俺に勝てると?」

「減らず口を。いいぜ、相手してやる。お前を殺して俺が本物になってやろう。」

「やってみろよ。地獄の断罪者。天智から聞いてるぜ?お前の能力を。」

「くく。能力を知ってれば勝てると?」

「お前の能力、『獄を操る程度の能力』と、天智の能力、『天を操る程度の能力』。どっちが強いと思う?」

「俺が天智に負ける?ありえないな。」

「能力の相性は考えた方がいいぜ?」

「必要ねえな。殺す奴の能力なんざ知ったことかよ。」

「それがお前の敗因だ。後悔するんじゃねえぞ。」

「ならその慢心がお前の敗因だ。そっちこそ、後悔するんじゃねえぞぉ!」

その叫びを皮切りに、実体のない二人の戦いは始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近パソコンで書くようになったんですけど、誤字脱字ありませんかね?まああったら教えてください。オリキャラ多いんでフランの話が終わったら一度説明挟みます。では。


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第三十八話 精神の戦い

普通逆だと思うんですけど、技を表記するとき、『』はスペル、《》はスペル以外の技の時に使います。分かりずらくてすみません。黒炎は技じゃありません。戦闘後は現実に戻ります。ではでは~


『黒炎『神魔の腕甲』(しんまのわんこう)!』

「天上『雷鳴の轟』!」

炎と雷が衝突する。

その隙間からほぼ同時に突撃し、さらにその拳が衝突する。

衝突後すぐに距離をとり、相手を囲うように風の弾幕を展開した。

「弾幕結界、《風》!」

『そんな弾幕が当たるかよ!」』

そのことごとくを避けてくる。

だが……

(狙い通りだ!)

頭が悪いこいつなら、馬鹿正直に突っ込んでくることしか考えない。

動きを予測することはさして難しいことではない。

「『雷符『閃光の檻』!」

予測していた場所に、雷の檻を展開、閉じ込める。

「そのまま焼いてやるよ。雷符『ハイボルテージ』。」

そのまま檻の電流を強くする。

『グゥゥ……!ラアッ!」』

炎を纏った足で、雷の檻を無理矢理蹴破る。

体を捻って回転、遠心力を利用し、スペルを宣言する。

「黒炎『闇虎の旋脚』(やみとらのせんきゃく)!」

黒炎を纏った回し蹴りを、雷を纏った手で受け止める。

しかし受け止めきれずに吹き飛ばされる。

「グァッ!」

すぐに態勢を立て直し、雷の弾幕を張った。

「弾幕結界、《雷》!」

風と同じく、雷の弾幕が相手を囲う。

『黒炎!』

雷の弾幕が、全て燃やし尽くされる。

その炎は、そのまま俺に迫ってくる。

「グッ!『付与術消去』!」

迫ってくる炎を消した。

『《黒炎針》(こくえんしん)!』

俺の足元から黒炎を纏った針が突き出る。

それはそのまま檻のように無理矢理ねじ曲がる。

『《黒炎檻》(こくえんかん)!』

「雷熱『エフェクトライトニング』!」

黒炎が俺を、雷が相手を囲う。

『アアアァァァァ……!』

「グウウゥゥゥゥ……!」

互いに攻撃を避けるために後退した。

『やるじゃねえか琴羽……正直ここまでやるとは思ってなかったぜ。』

笑っている。

この殺しあいの中で、あいつは笑っている。

「何故……何故笑ってられる!これは殺しあいなんだぞ!?何故そうも楽しそうなんだ!?」

『………楽しいに決まってんだろ……久々にここまで暴れてんだ。外の奴らじゃ足りなかった。俺はなぁ、認めてるんだよ。お前の強さを。そんな相手と戦って、楽しまねえわけがねえだろ!』

黒炎を纏って脚力を上げ、こちらに迫ってくる。

「ッ!弾幕展開、《霊》!」

霊力弾幕を自分の周囲から飛ばした。

『今更効くかぁ!』

当たっているのに止まらない。

そのまま接近され、攻撃を受ける。

『その程度か!?近距離戦は出来ねえのか!?』

「舐……めるなぁ!」

風を足に纏い、背後へと回り込む。

「《風剣》!」

『ッ!ガアアアアアァァァァ!』

風の剣を作り出して、相手の体を袈裟に切り裂く。

(一気に決める!)

「《風旋》!」

円状に回転する鋸のような風でさらに切る。

その勢いで吹き飛ばすが、追い討ちのために跳ぶ。

「拳符『ガトリングガン』!」

付与の能力と風の能力を一度に使って、音速に近い速度のパンチを連続で繰り出す。

『グアアアアア………!』

最後に放ったスペルが、かなりのダメージを与えたようで、既に相手の意識は朦朧としている。

「はあ………はあ……」

俺自身もかなりの力を使い、疲労が残った。

それで終わったと思った俺は油断していた。

『黒針『罪贖いし咎人の刃』(つみあがないしとがびとのやいば)。』

その油断を突き、相手のスペルを受け止めることも出来ず、串刺しになった。

「なっ……かは………!?」

『く、ははは……終わったと思ったかぁ?くく、うっ……』

そのスペルもギリギリの攻撃だったようで、血を吐きよろめいた。

相手が弱ったおかげか、針は消え、支えのなくなった俺の体は地面に叩きつけられた。

「ぐっうう………」

『はあ……はあ…どうやらお前も俺も限界みてえだな……』

「はあ……はあ……そう………らしいな……」

『はあ……互いに、力は、限界……次が…最後の一撃だ。決着を……着けようぜ……』

「……ああ、そう、だな…終わりに……しよう……」

一呼吸置いて、俺たちは互いの最後のスペルを発動した。

『喰らい尽くせ。神炎『黒竜の顎』(こくりゅうのあぎと)!』

「雷鳴『雷竜の轟咆』(らいりゅうのごうほう)!」

黒い炎を纏った竜の首と、雷の竜の咆哮が衝突する。

『オオオオオォォォォォ!』

込めた力の総数か、力の残量か、その二つの衝突は咆哮が勝利した。

『ガアアアアアァァァァ!』

その咆哮は勢い止まらず、相手を飲み込んだ。

主を失った世界は消え、目の前が暗転した。

 

 

 

 

(ここは?俺は……寝てるのか?)

目が覚めると空が見えた。

自分の現状が分からないので、体を起こしてみる。

「!?まだ起き上がるの………!?」

「?レミリア?」

「え………?」

目の前には、俺を見て身構える紅魔館の面々がいた。

「………そうだ!フランは!?」

「琴羽……なの?」

俺を見て困惑の表情を浮かべている。

(そうか……あいつは俺の代わりにフランを……レミリア達を見る限りレミリア達も襲ったようだな。)

止められたことに一瞬安堵したが、フランを見つけてすぐに駆け寄った。

「フラン!………よかった………生きてる…」

『琴羽。』

(天智!丁度よかった。フランは平気なのか!?)

『意識がないだけ……と言いたいところだが、まだ正気は戻ってないだろうな。解放のスペルを使ってやれ。』

(分かった。)

「琴羽?」

俺はフランに手をかざして、スペルを発動した。

「解放『付与術消去』。」

風がフランを包み込む。

これでフランは正気に戻るだろう。

現実に戻ったせいか、俺自身の力はそこまで減ってなかった。

だがなにかおかしい。

あいつが力を使ったのなら俺の体に力は残ってないはず。

その前にも俺は力を使い果たしていた。

(何故?)

『大方あいつの使った力は自分の力だったんだろう。お前の能力は使えなかったみたいだしな。その間にお前の力が回復した可能性はある。単に気付いてないだけの可能性もな。』

(なるほど……でも精神的には疲れたな。傷は治ってるけど、少し寝たほうがいいかもしれないな。)

『そうしな。俺も疲れた。お前が面倒掛けるからな。』

何も言えなかった。

「レミリア、パチュリー、傷を治すから、こっちに来てくれ。」

フランの治療は解放と同時に行ったので、傷が酷かったレミリアとパチュリーの治療を行ってから、帰ることにした。

「え、ええ。」

二人の傷を癒した後、とてつもない疲労に襲われた。

どうやら気付いてなかっただけのようだ。

(完全に回復してなかったか。)

「ごめん。ちょっと………寝る……」

そのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 




名前付いてないとどう表現すればいいか分からないです。ついでにそいつの使うスペルは自分の体の部位でスペル化してます。名前がでるのは二話先ぐらいですかね?では。


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キャラ紹介1

今回はキャラ紹介をします。まあまだ数人ていどてすが。まだ増えますしね。あと少しネタばれ入るかもしれません。ほんの少しですけどね?ではでは~


宮代 琴羽

 

種族 人間

 

年齢 16(高ニ)

 

誕生日 3月16日

 

身長162cm体重52kg

 

能力 『武器を作る程度の能力』

『道具の力を付与する程度の能力』

『???』

 

状況把握能力が高く、順応性も高い。女扱いされるのを最も嫌い、自分を弱いと言った相手は情け容赦なく半殺しにする。他人に興味を深く持つことはなく、深く思い入れを持つこともない。だが知り合いが傷付けられることを許せず、またどんな相手だろうと殺すことはない。

度を越える面倒臭がり。

 

容姿

少しの茶髪、薄い黒の目、髪は背中くらいまで伸びていて、体が小さい。そのぶん細身のぱっとみ少女。唯一の男らしさは身体能力のみ。

 

 

 

天智

 

種族 天人(半神半人?)

 

年齢 不明

 

誕生日 不明

 

身長162cm体重52kg

 

能力 『天の力を操る程度の能力』

 

基本的なステータスは全て琴羽と同じ。外見に少しの違いがあり、白髪。能力は琴羽も使うことが出来るが、レベルは琴羽使用時の数倍。更に琴羽と入れ替われば、逆に琴羽の能力を使うことも出来る。性格も琴羽と大差はないが、琴羽以外の相手に関わるつもりはない。琴羽の望むこと、また琴羽が関わりの深い者にのみ協力する。

 

容姿

琴羽とほとんど同じ。違いは白髪で黄色の目。

 

 

 

黒琴羽(名前思考中)

 

種族 地獄の罪人(元獄卒)

 

年齢 不明

 

誕生日 不明

 

身長162cm体重52kg

 

能力 『獄の力を操る程度の能力』

 

*[獄卒]でありながら罪人を弄び、殺した咎人。その罪により獄卒の権利を剥奪、罪人と成り下がった。性格は戦闘狂。他人に対してはほとんど興味がなく、強い相手にだけ興味を示す。殺しに躊躇いはなく、弱い相手も強い相手も、戦った者を平気で殺す。能力は大半黒炎と針しか使わない。

 

*地獄で死者を責める悪鬼。殺すこと、また命令違反は重罪。

 

容姿

琴羽とほとんど同じ。黒髪黒目。

 

 

――――――――――――

 

ここからは琴羽の過去の人物です。

 

神薙 漸 (かんなぎ せん)

 

種族 人間(徐霊者)

 

年齢 48

 

誕生日 7月26日

 

身長179cm体重66kg

 

能力 『斬撃を操る程度の能力』

『命を代価にあらゆるものを封じる程度の能力』

 

強力な能力とは裏腹に、その心は聖人のそれである。昔から霊や妖怪を相手しており、その家系の終代。嫁と子供たちをなにより愛しており、皆のために通常の生活を創り上げた。性格はとても琴羽に似ており、誰よりも強い正義感を持つ。嫁美霊とは徐霊の仕事の先輩後輩として知り合った。

 

容姿

少しの大男。短髪黒目。琴羽と比べかなり男らしい。

 

 

 

 

 

神薙 美霊(*筑紫 美霊)

 

種族 人間(徐霊者)

 

年齢43

 

誕生日 12月31日

 

身長160cm体重48kg

 

能力 『浄化する程度の能力』(作中登場なし)

 

夫と同じく、心優しい人物。倒すことを目的とした徐霊者の中でも、攻撃を行わずに成仏させる特殊な戦い方をする。能力上それが出来るのは彼女だけであり、同職者からはあまり好かれない。戦いが嫌になったことにより、夫漸と出逢った数日後にその仕事を辞めた。

 

*筑紫 美霊(つくし みれい)は本名。

 

容姿

茶髪長髪黒目。細身で小さい体は女性らしい。

 

 

 

 

 

田鐘 陽

 

種族 人間

 

年齢 16 (高ニ)

 

誕生日 2月3日

 

身長159cm体重48kg

 

能力 『未来を見通す程度の能力』

 

琴羽の兄妹。血は繋がってないが、本物の家族、もしくは親友のような仲のよさ。とても明るい性格で、家庭内、外問わず周りの人までも明るくするムードメーカー。過去の一件にて命を落とした。

 

容姿

死亡時:小学三年生126cm29kg。茶髪短髪薄茶色の目。小学生男子とほとんど変わらない体型。

 

 

 

和野翔大

 

種族 人間

 

年齢 17(高ニ)

 

誕生日 5月6日

 

身長170cm体重61kg

 

能力 『魂を操る程度の能力』

『???』

 

琴羽の兄弟。陽と同じくらい仲がいい。周りを引っ張っていくようなリーダーシップを持ち、人一倍強い責任感を持つ。家では長男であり、家事なども得意。陽と同じく、過去の一件にて命を落とした。

 

容姿

死亡時:小学三年生133cm35kg。黒目黒髪短髪。他の男子よりも少し筋肉質な体型。

 

 

 

いかがでしたか?まだキャラは増えますがこれまで出たキャラの説明はこんなもんです。結構適当ですみません。ちなみにこれを書いてて僕の思ったことが一つ。

琴羽の周り個性的過ぎない?とゆうことです。まあもっと個性的なキャラは出るので、気にしないでください。

 

 

 

 

 

 




本文に後書きっぽいのしちゃったんで後書きはなし!
では。
すみません。四十一話投稿前に容姿を追加しました。
もし今まで容姿を書いていて、間違った容姿をここで書かれてても、こっちが本物です。本当にすみません。
ついでに陽と翔大の二人の身長体重は、死ななければの予測です。死亡時も追加しますので、お許し下さい。


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第三十九話 帰省

特に説明することもないし、前書き終わり!ではでは~


「ううん……ここは……?」

どうやらあの後、意識を失ってから運び込まれたらしい。

(あいつがいつ目を覚ますか分からない。紫を呼ぼう。)

またいつあれと戦うことになるか分からない状態で、普通の生活をするのはまずい。

また周りの人達を傷付けてしまう可能性がある。

そう思った俺は、紫を頼ることにした。

紅魔館の面々には申し訳ないが、早く出ていくのが得策だ。

またここに来たときに礼はすればいい。

俺は急いで紅魔館の外に向かった。

 

 

 

 

玄関に着いたとき、既に紫はいた。

まだ呼んでもいないのに。

しかも隙間があるってことは門を通らず無断で入ったということだ。

「……何で紫がここにいるんだ?」

「吸血鬼の妹さん、無事のようね。」

紫は唐突にそう言ったフランが暴走したことは紅魔館メンバーしか知らないはずなのに。

(まあ紫なら知っててもおかしくないな。)

と勝手に納得した俺は、紫に何故レミリア達を手伝わなかったかを聞くことにした。

「紫?フランが暴れたのを知ってたなら、何で手伝わなかった?お前の能力ならもっと早くどうにか出来ただろ?」

「……ごめんなさい。霊夢や魔理沙を行かせないようにしたのも私よ。理由なのだけど……貴方の中の存在を警戒していたわ。」

「俺の中の存在?」

(天智やあいつのことか?)

「その力は危険過ぎる。けれどその力のことは私と永琳しか知らない。だから、貴方に選択肢を作っていたの。」

「選択肢?」

考えるような顔をしてから、紫は深刻な顔をして言った。

「一つ、その力を完全に制御出来るまで、この世界から脱界すること。二つ力を失ってただの人間として暮らすこと。そして三つ目………幻想郷の敵として……その命を、落とすこと。」

どれを選ぼうが地獄だった。

だが、丁度よかった。

元々紫に頼もうとしてたことは、紫の選択肢の一つ目だ。

「他の二つは貴方次第。だけど最初の一つは、貴方の家も用意してあるわ。」

「ふ、別の世界にほっぽり出してはいさようならってことか?」

「この世界を守るには、必要なことなのよ。」

「その世界……俺の元居た世界か?」

「!………よく分かったわね。」

「分かったわけじゃない。元の世界じゃないとどうにもならないだけだ。違う世界なら特定させてもらってた。」

「………そうね。向こうでは貴方のことは行方不明になっている。それが戻ってきた。そういうことになるわ。学校にも行かなければいけない。貴方は能力も使えなければこの世界よりも自由がない。向こうにいる間、精神を蝕まれ続ける。そんな生き地獄を、選びたいの?」

「…………‥……」

紫は心配してくれている。

深刻に考えてくれているということは、どれも俺が苦しむことを分かっている証拠だ。

紫なら、向こうの世界を俺が壊す可能性も考えているだろう。

それでもこの選択しか出ないのは、それ以上の手が、ないからだ。

(なら、逆らう必要も従わない理由もないな。)

「紫。」

「………それでも、いいのね?」

「ああ。」

それ以外の選択肢は俺にもない。

「霊夢や魔理沙、他の娘達も寂しがるわよ?」

「ああ。」

分かっている。

元々俺はこの世界の人間じゃない。

この世界が元の姿に戻るだけだ。

「最悪周りを巻き込んで死ぬのよ?」

「ああ。」

そんなこと、俺が絶対に許さない。

「覚悟は…もう出来てるのね?」

覚悟なんて大層なものはいらない。

俺はただ……

「帰るだけだ。」

「そう……ある程度私も貴方に封印を施すわ。貴方のそれは私のレベルじゃ完全に封印することなんて到底できない。それを分かって行って。」

「ああ。分かってる。」

「…………出発は夜。それまでに、準備はしておいて。」

「なら夜まで俺は家にいるよ。元の世界に俺が戻った後、皆には伝えてくれ。」

「ええ。」

紫との会話を終えて、俺は家へと走った。

あまりその場に居たくなかったからだ。

 

 

 

 

 

「……ただいま。」

また、誰ともなく呟いた。

元の世界から持ってきたものなんて財布程度だった。

「天智、能力を抑えることは出来るか?」

『出来るぜ。お前の身体能力はどうにもならないけどな。」

「そうか。能力だけ抑えてくれ。」

『分かった。……なあ琴羽?」

「なんだよ。」

『本当に良かったのか?』

……こいつは今更何を考えているのだろうか。

そう思いながらも、天智も俺自身。

危惧していることはおそらく同じだろう。

「いいんだよ。敵は紫が抑えてくれる。」

『そうか。………それがお前の選んだ未来なんだな。』

「………………」

 

 

 

 

「琴羽、そろそろ行くわよ。」

「………ああ。」

 

 




準備回は文字数が少なくなる。仕方ないことではあるんですが増やせない。次回から章を変えます。今回の回は無理矢理新しく作った物なんで下手になってても気にしないでください。では。


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第三章 元界生活
第四十話 子供


今回から元の世界の話!章分けしますがこの章は十話もいかないと思います。あくまで元の世界の話なので。
ではでは~


「うう……相変わらず紫の隙間は気持ち悪い…」

既に俺は、元の世界に戻っていたようだ……路地裏に。

幻想郷でこそ二週間しか経ってないが、こっちでは半年経っているらしい。

何でも、幻想郷と外の世界の時間の流れは違うらしく、また紫の能力にもう一人の俺の力が作用したことにより、紫の隙間内でさらに時間が狂ったらしい。

無間地獄を持つあいつの能力が作用したらしい。

(まあここに出るのは仕方ないか。確か学校の寮に部屋用意してくれたんだっけか。)

どうやってとは思いつつも、まずは通ってた学校に向かうことにした。

(さて、まずここはどこだろう。)

路地裏なんていくらでもある。

まずはここがどこの道なのか調べる必要がある。

俺は人通りの多い場所まで向かうことにした。

 

 

 

 

「…………」

何故俺が無言なのか、その理由は俺の目の前にあった。

「いや!離して下さい!」

「へへ、いいじゃねえか。こんな道通るってこたぁ少しは期待してたんだろ?」

「どうせこの人数逃げらんねえっつの。」

一人の制服を着た少女が、男六人に囲まれている。

見るところ学生、しかも一人は前に骨を折った奴だ。

助けるつもりはないが、向こう側に道路が見える以上、無理矢理にでも通った方が早い。

(はあ……しょうがない。)

「へへ……あ?」

「んだ手前?こいつの連れか?」

「どうした?」

俺の存在に気がついた男どもが絡んでくる。

「邪魔するってんなら痛い目見ることになるぜ?」

『はははははは!』

(下劣な笑いだな。やるか。つか何であいつは気付かないんだ?……まあいいや。)

「通りたいだけなんだが。」

「へ、どっちにしろこんなとこ見たんだ。ただで帰れると思うなよ?」

「や、やめて!そんな小さな子に乱暴しないで!」

少女が叫ぶ。

誰が子供だ、と思いながらも無視する。

その声を無視して男が近付いてくる。

「精々いい声で鳴けよ?」

一人の男が俺を殴ろうとする。

横の壁から破砕音がなる。

ただし、そこにあるのは蹴り飛ばされた男の姿だ。

『……は?』

「……え?」

「なあ、通せば別に追わねえぞ?」

何が起きたか理解出来ない男女の集団に声をかける。

「な、や、やっちまえ!」

「お、おう!」

「そうだ!」

「何びびってんだ!」

「面倒臭いな。」

 

 

 

 

「があっ!」

最後の男が倒れた。

周りの壁はかなり砕けてた。

(あ~あ、やり過ぎた。こりゃ早く逃げた方がいいな。にしても視点低いな。何でだ?)

「あ、あの……」

 

「こっちです!」

「そこの路地裏だな。」

 

「察か。一旦逃げるか。」

面倒事に巻き込まれたくないため、もと来た道を一度戻ることにした。

「あ……」

何か言いたそうな少女は無視して走った。

 

 

 

 

それからまた路地裏をさ迷うのも面倒になったので、能力を使わずに跳んだ。

能力を使った状態に慣れてはいたが、能力の後遺症に近いものなのか、通常の身体能力が普通ではなくなっていた。

おかげでただ跳んだだけなのに、五階建ての建物の三階まで跳べた。

そこから更に上へ跳ぶ。

(もう人間やめてんな。でも、人間らしくしなきゃな。)

種族は人間から変わっていない。

たとえ人の力を越えてるとしても、幻想郷に行く前となにも変わらない。

「………こんなこと、考えるだけ無駄だな。早く行かなきゃ夜になっちまう。」

自分の考えを一蹴して、学校を目指すことにした。

 

 

 

 

今は朝、当然人が多い。

さっきの少女も登校中に絡まれたのだろう。

人通りの少ない場所を探してとりあえず建物から降りる。

既に学校はすぐ近くにあったので、普通に歩いて向かう。

 

 

 

 

学校の教師用の入り口からインターホンを鳴らして校内に入る。

「ん?君、どうしたんだい?」

二十代程度に見える若い男性だ。

「お兄さんかお姉さんに届け物かな?」

「…………」

何かおかしい。

身長が低いとはいえ、少女も教師も俺を子供に見すぎだ。

高校生でも160cm程度の身長の人はいるだろう。

(何でだ?……後にしよう。)

「校長に用があるんですけど……」

「ああ校長先生に用か。ならここ真っ直ぐ行ったところにあるから、行ってみなさい。」

子供に対する口調だ。

少しむかついたが、話して面倒なことになるのも嫌だったので、早く行くことにした。

「……ありがとうございます。」

「ああ。じゃあね。」

若い教師は言いながら教務室に入っていった。

 

 

 

ドアをノックして校長がいるかを確認する。

「入りなさい。」

俺の知る声がした。

相変わらずのじいさんの声だ。

まあ口調的にそれでも三、四十代だろうが。

「失礼します。」

ドアを開けて中に入る。

「久しぶりだね。琴羽……弟くんかい?」

「は?いや、正真正銘宮代琴羽ですけど……」

「本当に琴羽くんなのかい?……鏡を見てみなさい。」

(は?何で弟に見えるんだ?)

鏡を覗き込んでみた。

そこには……150cmあるか程度の子供が写っていた。

「は……?」

「君はこの学校でも結構有名だったから、私も見たことはあるが、そんなに小さかったかな?」

「どういうことだよぉ!?視点低いのこれが原因か!つか何で縮んでんだ!?」

(紫か!?紫のせいなのか!?ざけんな!あいつ帰ったら叩きのめしてやる!)

「………どうやら原因も分からないようだね。まあ仕方ないだろう。原因も分からないのでは戻しようもない。とりあえずその姿で過ごすしかないだろう。」

「そんな……」

一生このままなら紫焼いてやる、そう考え、諦めることにした。

「もういいです……とにかく部屋の場所と、部屋の鍵だけください……」

「わ、分かった。」

校長から鍵を貰って寮へ向かうことにした。

「後で教室に向かうから、着替えたらまたここに来てくれ。」

「はい…失礼しました……」

挨拶だけして、校長室を後にした。

 

 

 

 

部屋の場所は変わっていたが、さすがに知っている場所で迷うことはなかった。

紫が置いていったのか、寮には制服と食料、キャッシュカードが置かれていた。

(これで生活しろってことか。まあ十分か。)

特に趣味がないぶん、食料さえあれば生きられる。

自分でも思ったが、現代の人間にしては色々と特殊だ。

だが今回はその特殊さが役立った。

とりあえず制服に着替えて校長室に戻ろうと、制服を取り出した。

……縮んだことを紫は確実に知っている。

その証拠に、制服は俺にぴったりの大きさだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




こうゆうのって蓮子かマエリベリーのどちらかが出ると思うんですけど、琴羽の歳的に都合悪いので止めました。ベタな展開も創りたいんですよ。まあ現代では琴羽がどれくらい強いかの目安を作る意もありますがね。
では。


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第四十一話 転入

……まあ予想通り転入回ですよ。元の世界の話はなん話か未定です。なんせ章の区切り付けるため無理矢理作ったのですから。ではでは~……あ、視点説明忘れてました。???→琴羽→???です。???はすぐ分かります。
今度こそではでは~


「ねえ聞いた?今日転入生来るんだって!」

「転入生?」

私は目の前ではしゃぐ友達、天童 音々(てんどう ねね)に聞き返す。

噂話が大好きな彼女は、こうゆう話題を誰より好む。

私、結花 美友華(ゆいはな みゆか)は、噂話に全く興味がない。

だがこの子の明るい話し方に、私は自然と引かれていた。

「転入生って男だろ?男に興味はねえよ。」

そう言い放ったのは、化野 衛人(あだしの えいと)。

女好きの無節操男だ。

一応幼馴染なのだが、最近(一月前くらい)互いに気付いたばかりだ。

しかし、音々の性格も相まって、この三人でいることが多い。

俗に言う仲良しグループというものだ。

「でも昨日急に転入が決まったんでしょ?なんか面白そうな人が来そうじゃない?」

「私初めて聞いたけど、転入って昨日決まったの?」

「まあみゆはそういうの興味ないからね。でも不思議じゃない?昨日決まって今日転入。普通もっと時間かかるでしょ?」

「そういやそうだな。まあ急な引っ越しくらいよくある話だろ。」

「うーん……後で本人に聞いてみたら?」

「そだね。」

ドアを開けるとともに、担任の先生が入ってくる。

「全員座れー。朝のホームルーム始めんぞー。」

その声を聞いて、私達はそれぞれの席に戻る。

まあ集まっているのは私の席だが。

「えー聞いての通り転入生が来るんだが、残念ながらまだ来ていない。校長に聞いたら既に寮に行ったらしいからすぐ来ると思う。だから立ってもいいから教室出ないでしばらく待機していてくれ。」

先生が教室から出ないよう言ったが、特に教室から出てもトイレくらいしか行くところがないので、大人しく待つことにした。

 

~二分後~

「よーし全員座れー。ようやく来たぞー。」

どうやら着いたようだ。

私の席に集まっていた二人は、自分の席に戻っていった。

「教室を探して迷ったらしい。じゃ入っていいぞー。」

扉から現れたのは、朝の少年だった。

 

 

 

 

 

「入っていいぞー。」

俺の新しい担任教師の声が聞こえた。

一応二年として入れられると聞いた時は、勉強も追い付かないから丁度いいと思った。

担任も話しやすい性格で助かった。

だが教室の場所が違い、少し迷ってしまった。

次からは覚えておこうと決めた。

とりあえず呼ばれたので教室に入る。

「じゃ自己紹介よろしく。」

「宮代琴羽だ。」

さまざまなところで、俺の容姿から感想が飛び出る。

「男の娘……だと……!」

「かわいい~!」

「ちっちぇ~!」

(元の姿に戻りたい。)

そうしみじみと思った。

「静かにしろ。話したければ後で話しかけろ。宮代の席は……一例目の一番後ろな。俺は教務室に戻るからな。」

先生が出ていく。

先生が出ていった瞬間、周りの奴らが集まってきた。

「ねえ君本当に高校生なの?」

「身長いくつ?」

「今度遊ばない?」

鬱陶しく話しかけてくるが、何を言ってもこの見た目じゃ意味がない。

だがら落ち着くように言った。

それから質問攻めは授業が始まるまで続いた。

 

 

 

「え~じゃあここの問題………宮代。」

「ルート2i。」

「………うん正解。じゃあ次、衛人。」

「えーと……i。」

「よし、相変わらず外れだな。」

「先生!?」

「じゃ代わりに琴羽、解いてみろ。」

(怠い。もう寝ようかな。)

「琴羽?おーい?」

「え?あ、すみません。」

聞いてなかった。

どうやら数学の解答を求められていたようだ。

「……3。」

「正解!衛人はここ逆に解いたんだな。」

「え~もっかいチャンスください!」

「いいだろう!」

笑いが教室を覆う。

(怠いやっぱ寝よう。)

俺の意識は完全になくなった。

 

 

 

起きたら既に次の授業が始まっていた。

「琴羽~起きてるか~」

「起きてますよ……」

『あははははは。』

何故こうも教師は新しい生徒を面白がるのか……

(早く終わんねえかなぁ。)

 

 

 

「え~今日は知らせもないし、終わり。号令~」

「きりーつ、れー」

『さよなら~』

各々が終わったことに歓喜し、走って帰る者も多くいた。

俺も早く帰らなければならないので、早々に教室を出た。

いや、出ようとした。

「琴羽君、寮?」

「よ、よかったら一緒に帰らない?」

「そうだぜ琴羽。」

男女三人が話しかけてくる。

「悪い、急ぐから。」

「そ、そうか……」

「じゃ、じゃあね。」

「あ……あの!」

女子の一人が大声を上げる。

「あ…えと………朝は、ありがとう。」

と礼を述べてくる。

「朝なんかあったの?」

「う、うん、ちょっとね。」

なにか朝やったか?と思ったので、聞いてみた。

「なんかやったか?」

「………」

『え………』

「ん?」

『琴羽、朝の不良。』

(天智?お前喋れたのかよ。ってあ~あれか。学校じゃ喋んなよ。)

『はいはい。』

「あー思い出した。別にいいよ。」

別についでだったからどうでもよかった。

その意を込めて言った。

「じゃあな。」

俺は言って歩き出した。

だというのに、また呼び止められた。

「あ?転入生っつのは手前か?」

不良が多い学校だったこともあり、がらの悪い奴に捕まった。

だが、なにをするにも邪魔をされ続けた俺は、喧嘩を売ってくる相手に加減が出来るほど余裕がなかった。

「どいつもこいつもうぜえ……」

「あ?なんか言……」

窓側の壁から破砕音が鳴る。

『あ……………』

「はあ……逃げよ。」

小走りに逃げた。

 

 

 

「どうしよう……」

「あんなすげえのか……」

「見た目より全然強え……」

音々と衛人が言っている。

でも私には別のことしか頭になかった。

(碌にお礼も出来なかった……)

ということだけだった。

明日学校で改めてお礼をしようと決めた。

 

 




名前が出た時点で、人の容姿って出した方がいいんですかね?僕には無理です。なのでキャラ紹介の時に書きます。ちなみに転入生来るまで教室待機はリアルでありました。僕の時は五分。では。


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第四十二話 困難な能力

元の世界の季節は夏です。リアルも夏ですね。蝉まだ鳴いてないけど。あの三人鬱陶しい
ですね。リアルでいたら殴ってます。ではでは~


俺は今、寮に向かっている。

といっても学校にほど近いところにあるため、そこまで歩く必要はない。

俺の生活の本番は、寮での時間だ。

あいつと会って制御する。

それを行うのに必要だった。

特別な場所が。

寮には紫が張った結界が存在する。

霊力や魔力を使う時、大気に浮いてる力、自身の中にある力、それらによって発動される。

霊力や魔力の多い幻想郷なら、その結界はすぐに壊される。

だが、ここなら大気の力は幻想郷よりもはるかに弱い。

なのでここに来る必要はかなりあった。

(ここでもいつ暴れるか分からない。急ごう。)

ここまでの考察を行い、俺はこの世界に戻った。

結界が壊れないかは心配だが、これ以外に方法はない。

なので寮へと出来る限り早く行く。

蝉の声に耳を傾けながら、寮への道を一人歩く。

 

 

 

 

寮に着いた。

周りには紫が置いていった物が散乱している。

さすがに邪魔なので、少し片付けることにした。

 

 

 

 

「これくらいでいいか。」

ある程度片付けて終わりにした。

段ボールはかなり減った。

まあ大半は食料だが。

やることも終わったので、当初の目的を行うことにした。

いや、行おうとした。

しかし、突然のインターホンに止められた。

「はあ……」

誰だと思いながら応答する。

「はい。」

「おーいたいた。琴羽~俺だぜ?衛人だぜ?」

誰かはなんとなく分かった。

数学の時間に笑われてた馬鹿だ。

罵ってやろうかと思ったがその前に。

「何で俺の部屋知ってんだ。」

「先生に聞いたに決まってんじゃん。」

飄々と答えてくる。

(あの教師……余計なことを……!)

「あ、二人もいるぜ。」

「こんにちは~!琴羽君~!」

「こ、こんにちは…」

「……はあ…それで何で来たんだよ。」

「引っ越しの手伝い。出来ることねえか?」

「あと、みゆがお礼がしたいって。」

「なっ!」

「出来ることもなにも、今終わったっつの。」

「そ、そうか。」

「まあいいや。とにかく入れよ。そこいられても迷惑だから。」

鍵を開けに扉へ向かう。

「お、おう。」

『お邪魔します…』

三人が入ってくる。

『いいのか?』

(別にいいが、お前は喋るな。)

『分かった分かった。』

「お茶ぐらいは入れるけど、飲んだら帰れよ。」

「少しくらい会話を楽しもうぜ?」

「まあ話すのはいい。でもやることあるんでな。………精々一時間な。」

「おう。」

「大丈夫少し話したいだけだから。」

 

 

 

クラスについて話していたら、丁度一時間くらいが過ぎていた。

「ん…そろそろか。もう一時間経ったぞ。」

「え、あもうそんな時間か。」

「つい話し込んじゃったよ~」

「じゃ、じゃあもう帰るね。」

「え?ちょ、みゆ早いよ!」

「おい!待てよ!」

慌ただしく三人は出て行った。

それを見送って扉を閉める。

「……さて、始めるか。」

霊力を垂れ流す。

あいつに会う方法は二つ。

一つは天智と同じように、向こうが俺に会うことを望むこと。

これなら意識がある状態でも会うことは出来る。

しかし、現状意識がないのとほぼ同じ状態のあいつがそれを望むことは、まずありえない。

故に二つ目の方法しか取ることは出来ない。

二つ、自分の精神空間へ、能力を使って侵入する。

これを行うには天智の協力も必要になる。

天智を中継してあいつの精神空間を強制的にこじ開ける。

意識と霊力を大幅に失うが、確実な方法だった。

だが力が残った状態では、この世界の人間を傷つけられる。

そこで現実の時点で力を使い切ることによって、俺自身が乗っ取られる可能性を消す。

そうすれば後は、自分の力を使って俺を乗っ取るしかない。

それなら、俺を殺すしか方法はなくなる。

故にあいつは必ず俺の前に姿を現す。

そこからが本番だ。

あいつの精神支配権を、完全に奪う。

そうすれば、俺の体を乗っ取る方法は完全になくなる。

どれだけの力を使うか。

どれだけの苦しみを受けるか。

それは向こうも同じ。

「我慢比べといこうぜ……!」

俺とあいつの戦いが、再び始まる。

 

 




会話シーン完全カット。ただの会話たらたら流してても長くなるだけですからね。ま~た次は戦闘回ですよ。この二人の殺し合いはあと何回やるんですかね?能力上は天智の力も使える琴羽の方がはるかに強いです。琴羽学校平気ですかね?では。


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第四十三話 天災

名前やっと出ます。正直あいつもチートです。地獄の八大地獄を操る能力ですからね。まあ天智も天に関係するものは操れますけどね。……あれチートばっかり。
ではでは~


『準備はいいか?琴羽。』

「今更だろ。」

『よし、飛ばすぞ。会ったらすぐに戦いが始まると思っとけよ。』

「ああ。」

白い世界が黒に変わる。

天智と入れ替わりに、あいつが姿を現す。

 

 

 

『きひ、ははははは!久しぶりだなぁ!琴羽…』

「ああ、そうだな。」

目の前の少年は嗤った。

『お前に負けてから随分の間閉じ込められてたんでなぁ…寝覚めの運動程度にはなってもらうぜぇ?』

「お前に俺が負けると?」

『一度勝った程度でいい気になるなよ……記憶もまともに覚えてられないような奴に!何度も負けるかよ!』

「……そうだな。覚えてられなかった。だがそれは過去。一度壊れた人間を、簡単に壊せると思うなよ…」

俺は一度壊れている。

それが幸なのか不幸なのか、打たれ強くなった。

そう簡単にやられることはない。

『ならとっとと始めようぜ。正真正銘の…殺し合いをよぉ!』

「簡単に終わんじゃねえぞ……!」

雷と炎が衝突する。

 

 

それから打ち合いを繰り返していた。

『黒炎!』

「雷光!」

やっとの思いで黒炎を貫いた雷が、相手を貫く。

貫かれた体が消え、新しい相手が現れる。

「なに……!?」

『知ってるか?陽炎っていうのはなぁ人の姿をとることも出来るんだ。さて、どれが本物だろうな?』

その数は二十以上。

しかも、その全てに魔力がある。

(どういうことだ!?何故全てに魔力が……)

『無間『廻り続ける輪廻』(まわりつづけるりんね)。尽きることのない無限の魔力。滅ぶことのない不滅の分身。さあ、全てが本物なら、お前はどうする?』

「っ!」

能力の使い方が、その格が違いすぎる。

(これが……地獄の悪鬼……)

天智から聞いてはいたが、完全に力を使えるこいつがここまで強いとは思っていなかった。

 

 

 

『琴羽、あいつはお前の考える以上の力を持っている。以前のように倒せるとは思わない方がいい。』

「なんでだ?」

『あいつは軽い封印状態だったからな。お前が倒したことで解放されたって考えた方がいい。』

「封印?なんで封印なんてされてたんだ?」

『俺とは違ってあいつは表に出られない。長く抑えられ続けた。』

「……何故俺はあいつを抑えていた?」

『相性や戦術では確かに俺の方が強い。だが、素の力の量だけ言えば、俺とは桁違いに多い。』

「………………」

『あいつに魔力、妖力、神力、その三つの力を使える。正真正銘化け物だ。後は分かるな?封印の理由。詳しくは知らないが、奴には何かある。お前を乗っ取ろうとする理由もあるかもな。ま本人に聞いてみな。』

 

 

 

過去の会話の内容を思い出してみるが、聞く余裕はない。

今思い出してる中でさえ倒し続けている。

『おらおらどうしたぁ!その程度なのか!?』

(くっどうすれば……待てよ?分身は陽炎………はは。)

「お前の分身はあくまで気象現象に過ぎない。なら、これで……どうだぁ!」

風を周りに集める。

少し無茶な使い方だが、霊力を異常なほど使って竜巻を起こす。

『馬鹿な!?お前にここまでの力は……』

「お前が解放した力のように、俺も成長くらいするさ。ここで問題だ。竜巻の上には何がある?」

『っ!まさか……』

竜巻は積乱雲の真下にある。

積乱雲は雨や雷を落とす。

真下に竜巻を起こした状態で同時に起きることはない。

竜巻によって全て吹き飛ばされるからだ。

だが、それを同時に起こすことが出来たなら?

それが意味するのは……

「《天変地異》!」

ただ動く木偶の坊なら、耐えられる代物ではない。

天災に敵う者はいない。

神でさえも、止めることは出来ない。

『ありえない……そこまでの力を何故……!?』

今までの俺が創れないほどの雷と、鉄塊をも貫く水塊、そして竜巻が、俺以外のものを全てを飲み込む。

 

 

 

 

『………何故そんな力を使える?』

「…………少し前に、天智に試練を受けた。魂だけの移動だったんでな。天智でさえ詳細は知らない。だが少なくとも、俺の時間は他の奴らよりも二十日分多い。」

『……一体いつ、そんなことをしたんだ……失敗すれば死ぬのに、よくやろうとしたもんだ。』

「それが俺の覚悟さ。死ぬことは怖い。だけどな………俺にとっちゃ死ぬことよりも、失うことの方が怖えんだよ。」

『……くく………獄羅(ごうら)。』

「は?」

『俺の名前さ。また戦おう。またすぐに。』

そう言って獄羅は姿を消した。

 

 

 

『どうだ?琴羽。あの力は。』

現実に戻った直後に、天智からそう聞かれた。

「正直すげぇ疲れる。これ毎日とか考えただけで気が滅入りそう……」

本当に疲労が恐ろしい。

起き上がれないほどの疲労と痛みが、全身を蝕む。

『仕方ないだろ?それとも何か?あいつに言った言葉は嘘で、覚悟なんて出来てなかったのか?』

「んなわけねえだろ。疲れただけだ。とにかく眠いんだ。おやすみ。」

『とうとう聞きもせずに寝るようになったな。………おやすみ。』

(あ…忘れてた……現実の体……霊力ないんだった。)

その後すぐに、俺は意識を失った。

 

 

 

その後、学校を忘れて爆睡していた俺は、遅刻反省文を五枚書かされた。

 




天智の試練、受けてたのは幻想郷の家にいたときです。紫が来る直前にやってます。試練回創るか~では。


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間章 試練
天界入り


試練回書きました。獄羅が死ぬって言ってた理由はちゃんと書いてます。まあこれでも甘い方ですよ。いろいろ用事があって投稿出来なくてすみません。試練回二、 三話、もしくはもっと続きます。ではでは~


紫に言われて家に帰ってきた直後、俺と天智は話していた。

「天智、能力を抑えることは出来るか?」

『出来るぜ。お前の身体能力はどうにもならないけどな。」

「そうか。能力だけ抑えてくれ。」

『分かった。……なあ琴羽?」

「なんだよ。」

『本当に良かったのか?』

「いいんだよ。敵は紫が抑えてくれる。」

『そうか。………それがお前の選んだ未来なんだな。』

「………………」

『琴羽。』

「なんだ?」

『強く……なりたいか?』

強くなりたいか。

それは天智からすれば聞く必要もないことのはず。

だがこいつはあえて聞いてきた。

「……当たり前だろ。」

『そうか。』

「……………」

『……………』

沈黙が続く。

その中で、天智が先に口を開いた。

『以前、俺の力は天候をも操れるって言ったな。』

「…ああ。」

『…お前も使えるなら、使いたいか?』

その言葉は、俺も出来るということを表していた。

『もしお前が望むなら、それだけの力をお前に与えよう。どうする?』

「力……何で今?」

『お前が成長したからさ。体内にある霊力量、その総量は大妖怪の妖力量にも劣らない。』

つまり成長する以前、霊力の総量が今より少ないときでは、俺が壊れる可能性があったということだ。

力に耐えられずに壊れる。

過去に家族を殺したように。

『そう考えるな。俺が聞いたのは力が欲しいか欲しくないかだ。力を恐れて失うか、力を欲して手に入れるか。さあ、お前はどうしたい?』

(分かりきったこと聞くなよ……)

心の中でそう言うだけでも伝わるが、その決心を言葉にした。

「勿論…寄越せ。」

『……随分と即決だな。その理由は?』

「力が欲しい。ただそれだけのことだ。」

何も壊されることのない、壊すことのない絶対の力が。

『ま、当然だな。そんな力があれば、守れないものはないからな。いいぜ。くれてやるよ。条件付きでな。』

「分かってたよ。その条件は?」

『俺のいた世界に行くことだ。俺と同じ環境で、死んでいけ。』

「……死ねとは随分と過激な言葉だな。…死んでたまるか。生きて、力は貰う。お前のようにはならない。」

『…やっぱり気付いてやがったか。』

「お前の力は、過去に死んで手に入れたものだ。いや、俺と同じく壊れたときのものだ。なら簡単だ。連れてけよ。天界にさ。」

『天界までの予測までたてられるなんてな。行ってきな。お前の能力は、場に出向くことで真価が発揮される。精々足掻け。俺みたいになりたくなけりゃな。』

足場が消える。

自分の体が見える。

『世界を越えることは、特別な能力でもなけりゃ出来ない。俺にさえな。体を奪われたくなけりゃ、とっとと終わらせて帰ってこい。』

その声は、遠くへと消えていった。

 

 

 

 

気がつけば、俺は見知らぬ場所にいた。

元の世界でも、幻想郷でもない。

しかし普通の人がいて、普通の空がある。

芝生に転がって上を見上げている。

体を起こした。

辺りを見ても、俺のいた世界となんら変わりない。

違うのは、俺も含めて全ての人間が、神力を持っていること。

(ここは化物の巣か?俺もだけど…)

「ん?お前、そんなとこでどうしたんだ?」

他より少し神力の強い青年が話しかけてきた。

「……別に。」

俺は無視して行こうとした。

「そんな神力を持つ奴が、何もないのにこんなとこで寝てると?」

「!?……お前……」

「俺は天宮光司(あまみや こうじ)。お前は?」

「……宮代琴羽。」

警戒を解かずに睨み付ける。

「そう睨むなよ。戦うのは苦手なんだ。それに神力の把握は俺や他、数人程度しか出来る奴はいない。」

「……俺には出来るのにか?」

「神力の量によっては更に数人は出来るかもしれないが、この場にいる人の中では俺にしか出来ない。」

確かに天宮程神力がある奴はいない。

神力の量はここでは重要なものなのだろう。

実際天宮は、最初にそんなようなことを言った。

「なあ、少し話さないか?俺よりも大きい神力を見たのは、まだ二度目なんだ。どうせなら家でさ。」

「……まあやることもないし、聞きたいこともある。」

ここについて俺は何も知らない。

情報を集めることはこの場においては正解だろう。

「よかった!じゃ付いてきてくれ。」

天宮は俺を先導して歩いていく。

それに俺も付いていく。

 

 

 

 

一つの大きい家の前で、天宮は足を止めた。

「ここが俺の家だ。」

神力の量がここでは重要。

それを裏付けるように、周りよりも一際大きい屋敷だった。

「ま遠慮なく入れよ。」

「……邪魔する。」

「そんな硬くなるなよ。友達の家に来た。そんな感じで接してくれ。」

「……………」

(友達……)

俺は元の世界でそう言える人を皆殺した。

それからは、ただの一度も友達なんていなかった。

霊夢や魔理沙も………

「…………」

「?どした?」

「……いや…なんでもない。」

「……?」

 

 

 

 

奥に行くほどその屋敷の広さに改めて驚く。

一つの部屋の前で、俺達は足を止めた。

「ここ俺の子供の部屋でさ。女房に琴羽のこと話してくるから、その間遊び相手にでもなってくれないか?」

「……は?」

「いや…あの子割と引っ込み思案で、友達いねえんだよ。話し相手もいなくて、あまり俺も構ってやれないし……だから頼む!少しの間でいいから!」

頭を下げて頼まれる。

断る理由もないので承諾することにした。

「それでここに連れてきたのか。表札掛かってるし、明らかに子供部屋だったから疑問には思ったが…別にいいよ、そんぐらい。とっとと行ってこい。」

「……!ありがとう!じゃ、すぐ戻るから!」

「はいはい。」

天宮は走り去っていった。

ノックをしようとして一瞬手を止める。

(相手は子供だし別に……いや、一応しとこう。)

軽く戸を叩いた。

「……お父さんのお友達?」

声がかえってきた。

天宮の声が大きかったから、聞こえていたのだろう。

「……まあ一応な。入っていいか?」

「……………どうぞ。」

入れていいか考えていたみたいだが、一応入れてくれるようだ。

俺は引き戸を開けて部屋に入った。

 

 




数日飛ばしで終わらせる。最初からその予定です。どうせほとんど天宮との暮らしの描写で終わりますし、試練っぽいのは最後だけです。勿論戦闘もあります。ほのぼのでは終わらせませんよ。では。


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過去の自分

二話です。……今更なんですけどこれ別章として分けてもよかったかもしれません。これのせいで、この章結構とられます。……ではでは~


部屋に入り、まず目に写ったものは、ぬいぐるみを抱えた少女だった。

おそらく部屋の主だろう。

顔の大きさくらいの熊のぬいぐるみを持ってこちらを見ている。

その眼には、恐怖しか写っていなかった。

(知らない奴が部屋に入ってきたら、入れたのが自分でも怖いよなぁ……どうするか……)

「…………」

対処法を一人で考えていると、少女は怯えながらも俺に話しかけてきた。

「あの……どうしたんですか?」

流石に相手は子供。

俺が何を考えているかは分からなそうだ。

「……いや…怯えてるみたいだからどうすりゃいいか考えてた。」

嘘ではない。

少女は少し驚いた顔をした。

「……皆私のことなんて考えてないのに、何でそんなこと考える必要があるの?」

と少女は言った。

「宥めることくらい誰でも考えるだろ?怯えてるのにも気付かないわけがない。そんなことを聞く意味があるか?」

その言葉に、またも少女は驚いた。

「……変な人。」

「は?」

「私のことなんて、考えてくれなくていい。」

「………」

おそらく少女は両親以外の人から、ただの一人にも見てもらえなかったのだろう。

だから、自分のことなんてどうでもいいと思っている。

だからその言葉を聞いた俺は……

「……?痛っ!」

少女の頭を軽く叩いた。

「誰にも考えてもらえないなら、考えてもらえるよう話せ。見てもらえないなら、見てもらえるように努力しろ。一人になっていいと思うなら、一人になりたくない理由を探せ。お前のそれは、ただの逃げでしかない。」

「!」

「会ったばかりの俺でも分かる。家族さえ自分を見てればいい。そうお前は考えてる。だから誰にも心を開かない。自分なんてどうでもいいと思ってる。本当は寂しいはずなのに。孤独は辛いと分かっているのに。」

「…………」

俺もそうだったように、この少女は苦しんでいる。

孤独という暗闇に、捕らわれ続けている。

だから俺は言葉を繋ぐ。

少女を孤独から放すために。

「孤独でいることは楽じゃない。家族がいても、心は閉ざされ続ける。幼い心は、それだけで壊れるほどに脆い。だからお前は逃げ続ける。孤独を忘れて、違う夢に浸りたいから。」

 

「独りじゃない自分を知りたいから。」

 

「独りじゃない自分になりたいから。」

 

「逃げれば逃げ切れると信じているから。」

 

「……はあ……はあ……」

苦しそうに胸を掴んで息を吐く。

だが俺は続ける。

「でもそれじゃ駄目なんだ。孤独は逃げちゃ駄目なんだよ。」

「……なん……で……?」

涙を流して理由を聞く。

「孤独は残る。誰の心にも。どれだけの人が周りにいようが、たった一人でも親友と呼べる人がいようが、独りは独りなんだ。心っていうのは、何も忘れられない。」

これは俺の見解の一つだ。

心はどんな感情も忘れない。

脳が忘れる記憶でさえ、心には残り続ける。

それがたとえ、喜びでも。

それがたとえ、悲しみでも。

だから……

「逃げるな。孤独を少しでも苦と思うなら、それを認めて受け入れろ。逃げた自分に残るのは、ただの悲壮な現実だ。」

過去の俺のように。

孤独は自分を支配する。

自分の制御が利かないほどに。

そんな惨めな思いを、こんな少女にさせたくなかった。

だからこそ、自分も出来ないことを偉そうに語った。

(……何言ってんだろうな。俺…)

「私は……」

少女は俯きながらも口を開いた。

「私はどうすればいいの……?」

手には力が込められ、ぬいぐるみは潰れていた。

そこまで真剣に聞いていたのだろう。

しかしその問いの答えは、至極簡単なものだった。

それは既に言っている。

「逃げなければいいんだよ。最初に言ったろ?誰にも考えてもらえないなら、考えてもらえるよう話せ。見てもらえないなら、見てもらえるように努力しろ。一人になっていいと思うなら、一人になりたくない理由を探せ。そして、孤独が怖いなら、認めて抜ければそれでいい。孤独が心を塞ぐなら、開く感情を知ればいい。自分の感情と逆のことを知れば、それだけでいいんだよ。」

単純だろ?と俺が言うと、少女はすすり泣き始めた。

「………」

俺は少しどうするか考え、その部屋を出ることにした。

しかし少女に腕を捕まれ、それは許されなかった。

(ここにいろってことか……分かったよ。)

無理矢理ほどくわけにもいかないので、少女の座っていたベッドに腰かける。

(早く来いよ。天宮……)

少女の父親が早々に来ることを祈りながら、泣き止むのを待った。

 

 

 

 

「お~い琴羽~女房にお前のこと話したら飯作るって……は?」

天宮の言葉は途中で止まった。

当然だろう。

引っ込み思案の自分の娘が、初めて会った俺の膝に、頭を乗せて眠っていたのだから。

この状態になったのは数分前だ。

泣き止む頃には俺の肩に体重を預け、眠たそうに瞬きをしていた。

泣きつかれたのだろう。

俺はあまりに眠そうにしているので、「寝てもいいぞ。」と言った。

そしたら少女は少し頷き、俺の膝に頭を移動させて、すぐに寝た。

どかしたら起こしてしまうことも考えて放置していた。

「悪い……少し話してたら眠っちまった。」

「……お前よくその子にそこまで出来たな。どんな手使ったんだ?」

「後で本人から聞け。それで?何言いかけたんだ?」

「………まあ明友(あゆ)が心を開いてるなら、別にいいか。女房が飯作ってるけど、食うか?」

「いいのか?」

「娘の相手してくれたしな。昼飯くらい食ってけよ。」

「……じゃあそうする。ありがと。」

「礼なら女房に言いな。ほら、案内するから付いてきな。その子は布団に寝かせてやって。」

「ああ。」

そっと明友の頭を膝からそっと下ろし、布団に置いた。

そして部屋から天宮と一緒に出て、二人で廊下を歩いていった。

 

 




今回琴羽の説教回でしたね。当初予定していなかったことですがまあ思いついたんで書きました。琴羽の今までを伏線として利用出来そうだったので。ただこうゆう回って次話に繋げるの難しいからあまりやりません。ほのぼのより戦闘とかえぐいものとかの方が好きですしね!
では。


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琴羽vs光司1/3

この回だけ二話構成にします。下手したら五千文字越えそうだった…というか越えたのでそうします。戦闘回はこれだけですかね?予定だと戦闘というより……すみません。例え思いつきませんでした。軽くネタバレしそうですしやめましょう。ではでは~


天宮に連れられて食堂らしき場所に着いた。

「琥蓮(くれん)、連れてきたぞ。準備手伝おうか?」

「ありがとうございます。でも大丈夫です。琴羽様もお座りになってお待ちください。」

料理の乗った皿を乗せた滑車を、女性が押している。

おそらく使用人かなにかだろう。

ここに来るまでも何人か見かけた。

女性は皿をテーブルに置きながら天宮の言葉に応える。

(そういえば明友の苗字も天宮か。二人とも名前で呼んだ方がいいか?)

「ありがとうございます。」

とりあえずと天宮が座っている席の二つ隣の席に着く。

「…………一つ空ける意味は?」

「………なんとなく。」

「……なあ、琴羽。俺らは名前で呼んでくれよ?分かりずらいから。」

「…………」

自分の考えていることの答えを言われて少し驚いた。

いつものように顔でばれたのかとも思ったが、そこまで分かる筈がない。

その答えはすぐに出された。

「確かに分からないだろうな。俺の能力、解明『視』の効果だからな。」

「解明?それに視?」

「俺の能力はな?なにもかもの答えを出すことが出来る。相手が何を考えているか。過去に何があったのか。その全てを見ることも出来る。全ての問いに答えを出すのがこの能力だ。あまり好きじゃないがな。」

答えを視る。

それが光司の能力らしい。

「……人の心勝手に読むな。」

「悪い悪い。能力を使ってみせたくてな。ついでに琴羽の能力も教えてくれないか?」

「は?何で……」

(そんな簡単に教えていいのか?)

「だってフェアじゃないだろ?」

「は?フェア?」

「そ。だって俺ら、戦うんだから。」

「………は?」

戦うと言われた俺は、思わず警戒の念を作ってしまったようだ。

無意識のうちに睨んでしまった。

「だからそう睨むなって。俺以上の神力持つんだ。戦ってみたいと思うのは当然だろ?」

「当然なわけねえだろ!戦うのがどういう意味か分かってんのか!?」

「…………分からないわけがないだろ……!」

「!………」

怖い顔をして俯いた。

こいつは知っている。

戦いが何だということか。

何を手に入れることもなく、失うものしかない。

損しかないそんな行為を、何故行おうと言うのか。

「……何で……知りながら戦うんだ……失うことしかしないのに、そんな………」

「………強く……なりたいんだよ。」

「…………」

「さっき、お前は戦いを失うことしかない行為だって考えたな。その通りだ。」

「…………」

数秒前の俺の考えを、否定するでも、訂正するでもなく、天宮は言葉を紡いでいく。

肯定しながら、自分の意を表していく。

「戦いは何も得られない。だから俺は……なにもかもを失った。だから俺は強くなりたい。何も失わないために。」

強い意志を持って、強い言葉で、天宮は言っていく。

(こいつも…俺と同じ……ああ……俺も…)

「………はは。いいぜ。やろうぜ。俺の能力は武器の創造と特性の付与、そして天力の操作だ。」

これが試練。

その一つ。

なら、その全てを消していこう。

その全てを終わらせよう。

そして力を手に入れる。

「……くく、化物じみてるな。でも、いい目だ。まあ………」

「?」

「あなたがお友達を連れてくるなんて。珍しいこともあるものですね。」

扉の方から女性の声が聞こえてきた。

「妻も来たし、飯食ってからにしよう。」

どうやら妻らしい。

使用人は彼女と入れ替わりに出ていったようだ。

「…分かった。」

 

 

 

 

「え!?戦う!?琴羽さんそんなにお強いのですか!?」

「ああ。彼は強いよ。確実に。そうだ!友美(ゆみ)も見るか?」

「いいのですか!?」

「おい。あんま知られたくないんだけど……」

お淑やかな見た目と全く違い、性格は光司と似ている。

「光司、そもそもどこで戦うのか考えてんのか?」

苗字は三人とも同じだから、名前で呼ぶように言われた。

そもそも光司も友美さんも明友も、最初から名前で呼んでいた。

その方が都合がいいだろう。

「場所は決まってるさ。食ったらすぐ行くぞ、案内するから。」

「私も行きます!じゃあ早く見たいから早く食べちゃいましょう!」

『…………』

訂正、似てるどころか光司以上に自分勝手だった。

 

 

 

 

 

『おい!天宮様が戦うらしいぞ!』

 

『何!?一体どこのどいつだ!?』

 

『そんなことより早く行くわよ!天宮様の勇姿を目に焼き付けるのよ!』

 

着いた直後から通行人に囲まれていた。

見た限り普通ならおかしくはない。

なんせここは闘技場なのだから。

光司が通る度に通行人が騒がしくなった。

そう思ったら通行人が付いてきた。

通行人の中に闘技場の常連の客がいたらしい。

そいつが噂を広げたらしい。

「……光司ィ……?これはどうゆうことだぁ?」

「いや、だって俺が本気でやって平気な場所なんてここぐらいしかなかったからさ。ここは特殊な鉱石で造られている。簡単には壊れないよ。」

「だからって……はあ…もういいや。ただし終わった後の観客への口止めはしとけよ。」

「ああ。約束する。だから、本気で来い。死ぬ気でな。」

光司から強い殺気が放たれる。

「上等だ。行くぞ……!」

俺も殺気を出す。

(ここからが、試練の始まりだ。利用して悪いが…力は貰うぜ。)

試練の本当の始まりを覚悟して、俺は構えた。

 

 




程度って能力に付けるのは幻想郷だけです。なんか……アニメとか漫画とかって~程度って能力の呼び方しないじゃないですか。なので幻想郷外では程度は付きません。文字数調整しやすいですし。では。


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琴羽vs光司2/3

やっぱり章分けすればよかった……十話近くになってしまう……まあもう諦めましたがね!ついでに前回二話構成といいましたね?あれは嘘だ。三話構成です。予定より文字数増えたから急遽変更しました。ではでは~


『ルールの説明を再びさせていただきます。能力、武器の使用は可。相手の降参、もしくは気絶を勝敗条件とします。闘技場よりの逃走は敗北とみなし、また闘技場を破壊する威力の能力の使用も可とします。最後に、命の保証はいたしまん。双方、準備はよろしいですか?』

闘技場の審判らしい男性が手を上げる。

『……では、始め!』

風による俊足化で、光司の眼前へと一瞬で踏み込む。

「な!?」

「遅い……!」

躊躇なく拳を突き出す。

「………」

「!?」

光司は薄っすらと笑みを浮かべる。

神力が膨れ上がる。

拳が腹に到達する前に、光司の神力が爆発する。

(そんなの聞いてねえぞ……!)

瞬時に足に爆弾の力を付与して、同時に爆発させた。

吹き飛ばされた俺と光司は、互いに攻撃を止めない。

「鎌鼬!」

「光震波!」

鎌鼬が光の一閃にて相殺される。

「雷光!」

風以上の速度で再び踏み込む。

「神速……!」

光司も神力を脚に溜めて、同レベルの速度で踏み込む。

「アアアアア!」

「ルオオオオ!」

脚に集中していた力を互いに全身に回し、高速で殴り合う。

蹴り、裏拳、殴打、全力の体術で組合う。

「俺の体術についてこれたのはお前が初めてだぜ琴羽ぁ!」

「この程度なら誰でも出来んだろ?もっとペース上げてくぞ!」

さらに速度を増す。

「ぐっ!心眼……」

しばらく押すことが出来ていたが、心眼の一言から全て防がれ始めた。

光司の能力は未来を視通せる。

さらには防ぎ方も調べられる。

どこにくるか、どう防げばいいか、全て知られていれば対処法は二つしかない。

「……!」

「もう少し遠くの未来を視通せれば回避出来たのにな。雷符『閃光の檻』……!」

距離を開けようとした光司を焼きながら、雷の檻はその身を捕らえる。

一つ目は捕縛。

逃げられることが分かっているなら、俺から逃げる道の全てを潰し続ければいい。

組合中の計測では、五秒までの未来を視られていた。

なら、それまでの自分の行動を、自分で把握し続ける。

たった五秒の間を、全て掌握すればいい。

そしてもう一つの方法は……

「逃げられないほどの範囲と威力をぶつければいい!天上『天風貫雷』!」

檻に捕らわれた状態で、俺も避けなければならない程の範囲を、その状態で避けることは当然出来ない。

空中に回避しながら唱えたそのスペルは、檻の中にいる光司へと向かう。

「ぐぅっ……あああああ!」

神力の障壁を創っていたようだが、それだけで防ぎ切れる程弱いスペルじゃない。

すぐに障壁は姿を消し、光司は雷に飲まれた。

大天狗の時よりも強化されたこのスペルは、人一人を優に飲み込む程の雷砲となっている。

その上その周りには鎌鼬。

人が耐えられる一撃ではない。

勝負は終わった、そう思ったことで気が緩んでしまったのだろう。

背後に迫る人物に、俺は気付けなかった。

「残念だったな。琴羽……」

「!?がっ!」

そのまま背後から叩き落とされる。

「ぐっ……」

(一体どうやって……避けられる答えはないはずなのに…)

「教えてやるよ、琴羽。」

光司は離れたところに降りてくる。

「この世界には、神に仕える者や次代の神、その才を持つ者やもちろん普通の天人なんかもいる。その中で俺は次代にこの世界を統べる者三神の内の一柱、神名、スサノオ。この世界の……神様さ。」

「!だからお前程の神力保有者がいなかったのか。」

「神力があれだけあって、たかが予知や読心術で終わりだと思ったかよ。俺は海を統べる者。海は世の全てを巡るもの。俺の能力は、それを利用しただけに過ぎない。」

「神と戦うなんて、予想出来るかよ……でも、面しれぇ。神に力を貰えるなら、それほどまでに信憑性の高いことはない。続けようぜ光司。今度は本気でやれよ…」

力の流れを切り替える。

今まで使っていた風を全て消し、雷へと変更する。

「まあ待てよ琴羽?まだどんな能力を本当は持ってるかも、種明かしもしてないだろ?」

「フェアじゃないとか言ってたのはどこのどいつだ?能力隠してたんじゃねえか。」

「話さなかったのは悪かったよ。正直に言えばそこまでの力を持つとは思ってなかった。だけど認めた。お前には神としての俺を見せていいってな。」

「…随分弱く見てたんだな。力を使う必要がないから、いや、俺を殺したくないから使わなかったのか。」

「……ああ。俺の本来の力なら殺してもなにもおかしくない。……折角知り合ったのに、すぐにいなくなるのは嫌なんだよ。…でもここからは違う。俺の本気でもお前は死なない。だから……ここからが本番だ。」

水を纏い、腰に一つの剣を差し、神力は、今までとは桁違いになっていた。

「俺の本当の能力は『海』。さっきのタネは、超純水を盾に、蒸気を薄く張った幻影に近い状態で接近した。種明かしは終わりだ。簡単には殺られてくれるなよ?」

「精々努力するさ。力のために……!」

草薙剣を光司は抜き構え、俺も雷で造った雷槍を構える。

「第二ラウンドの始まりだ。」

 

 




光司の妻は神大市比売にあたる人になります。そもそも結構伏線はありました。戦うのが苦手なのは殺すことを危惧してたからだし、そのあとの戦いたいという矛盾のような言葉は隠し切れない本性の表れだし、自分より強い神力の持ち主が二人目っていうのもイザナギ以外に見たことがないってことだしまだ他数ヶ所。まあこじつけですが。能力の解説はそのうちキャラ紹介でやります。多少神話を都合よく変えてますが他の作品にもよくありますしご了承下さい。では。


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琴羽vs光司3/3

琴羽vs光司、勝つのは果たしてどちらなのか? これ以上言うことがない!ということでではでは~


「雷槍!」

槍の投擲は何よりも強い威力を出せる。

俺は光司に向かって投げつけた。

「そんなもの、今更効くと思うのか?」

余裕を見せた光司は、草薙剣を振り上げた。

「ふっ!」

予想通り雷槍は剣に砕かれ、届くことはなかった。

「確かにただ投げつけるだけなら愚策にも程がある。だがなぁ、それが十や二十なら防げても、百や二百は防げるか?」

「!」

分かっていた。

槍の投擲なんて光速を越える速度でもなければ光司には当たらない。

スペルは殺さないものというルールがある。

だがこの戦いにおいて、そんなルールは必要ない。

だからこそ、本気を出すことが出来る。

「『雷槍乱舞』!」

周囲に大量の槍を展開する。

形状と密度を変えた弾幕だが、その一つ一つが持つ威力は幻影郷なら使うことも出来ない。

「数で圧倒出来ると思うなよ!」

その一つ一つを粉砕していく。

「思ってないさ。」

「なっ!」

雷の速度と同格の速度で光司の眼前まで走る。

雷が地上に落ちるまでの速度は秒速約150km。

光に届かなくとも、音速は越えている。

当然体は耐えられない。

(俺の能力が無ければ、の話だがな。)

「俺の能力、忘れたのか?」

「がっ!」

俺が拳を放つよりも先に、光司の拳が俺にささる。

そのまま殴り飛ばされた俺に、光司は追い打ちと言わんばかりに斬撃を飛ばしてきた。

「……!雷光!」

斬撃を避け続ける。未来を視る能力は健在。

おそらく攻撃に行った所で返り討ちに遭う。

(どうすればいい?範囲の広い攻撃を行ったところで全て斬られる。かといって威力の高いだけじゃ……)

避けながら光司を見る。

笑みを浮かべ俺を見ている。

その笑みは、まるで何かを待っているようだった。

おそらく待つとすれば、俺からの反撃。

(何かあるな。だがこのまま避け続けても俺の力が尽きるだけ……なら!)

一か八か、一瞬だけ自分さえ破壊する威力の攻撃を行う。

自爆。

それ以外に攻撃はまず当たらない。

避けながらも神力を全身に溜める。

「光司!未来が見えるなら、この先で俺が何するか分かるな!?」

「ああ。分かるさ。それなら俺も応えないとなぁ!」

斬撃を消し、同じように神力を全身に溜める。

「力比べといこうぜ。どっちが先に相手を壊せるかのなぁ!」

互いに走る。

激突と同時に神力を爆発させる。

『アアアアアア!』

俺と光司を中心に、巨大な爆発が起きる。

地面はクレーターのようになり、衝撃のみで壁は崩れ、吹き飛ばされた俺は壁にめり込んだ。

吹き飛ばされたのは俺。

そのまま意識は薄れ、壁から剥がれた俺は、地面に倒れ伏した。

勝者は……光司だ。

『宮代琴羽の気絶を確認。この勝負、天宮光司の勝利とする!』

 

『オオオオオオオオォォォォォ!』

『凄かったな!あんなのもいるなんて……』

『俺あの人に弟子入りしようかな……』

『かっこよかったなぁ。』

『求婚しちゃおうかな?』

『また誰かと戦ってくれよ!』

 

「……ふぅ、意識のない人間に好き放題言うなぁ。よっと。……俺もこれくらい言ってもいいよな?……頑張れよ、琴羽。」

 

 

 

 

「友美、琴羽の様子はどうだ?」

琴羽は未だに眼を覚まさない。

俺との戦いから丸一日。

爆発によって消し飛んだ右腕は治したが、消費した神力は戻らない。

眼を覚ますのには神力の回復が必要になる。

しかし俺も力をかなり使った。

少なくとも、抑えた今の状態では俺の神力を移すことも、友美の神力を移すことも出来ない。

俺には移せるほどの残力もない。

琴羽の自然回復力による。

「命に別状はないわ。あんなに派手に力を使ったのだから、これぐらいが当然なのよ。なんで貴方は平気なの…」

「まるで倒れろとでも言ってるみたいだな?そもそも力の総量にどれだけ差があると思ってるんだ。それなのに俺ももう力がない。全く、大した奴だよこいつは。」

「ふふ、自分に匹敵する人がいて、いいえ、来てくれてよかったわね。明友はどお?」

「はは、今は落ち着いてご飯を食べてるよ。本当どうやってあんなになつかせたのか。羨ましいよ。」

「そうね。」

琴羽が起きるのを、二人で待ち続けた。

それから琴羽が起きたのは、翌日の朝のことだった。

 

 




琴羽の負けってあんまない?主人公補正というものはチートなんですよ。神には勝てませんでしたが。ちなみに光司は回復も出来ますが、友美は豊穣の神なので特に回復や戦闘に使える能力はありません。琴羽はまだ死にかけますね。それは知ってて下さい。では。


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修業の末に

この世界で琴羽がやることはそこまでありません。光司に勝つことだけに集中した毎日を送っていたので、琴羽は修行以外してません。この回はその日常回なので、次の回の準備で終えます。最後に視点説明琴羽→???→琴羽。ではでは~


「光司の奴、あんな力隠してるなんて……次は絶対に勝ってやる……!」

起きてから少し会話をしたが、光司の神力は抑えられ、傷もなく元気だった。

しかも闘技場は直したらしく、俺との戦いで本気を出していなかったことが分かる。

俺は今、光司に勝つために新技を考えていた。

能力を使いながら考えた方が強力なものが創れる。

そう思って人のいない場所を探している。

しかし……

 

『どっか行くのか?俺らも連れてってくれよ!』

『どうやったら天宮様とあんなに戦えるの?』

『琴羽さん!弟子にしてください!』

 

通行人がうっとおしい。

光司との戦いで一気に有名になった。

そんななか誰もいない場所を見つける方法はあるのか?

半ば意地になって探していた。

「あ、そうだ。『ステルス』。」

 

『!?消えたぞ!?』

『どこ行ったの!?』

『天宮様との戦いですげー速かったよな?』

『じゃあそれか!急いで探すぞ!』

 

(………なんだ。最初からこうすりゃよかった。)

能力による透明化。

風による浮遊。

これだけで誰も俺に気付かない。

そのまま飛びながら修行場所を探した。

 

 

 

 

不自然な程人のいない場所を見つけた。

いや、どう考えても不自然だった。

人通りの多い街路から外れて五分。

少しずつ人はいなくなり、家や店でさえなくなった。

何故不自然なのか、それは真下にある。

透明になった家屋に俺は立っている。

つまりこの辺の家屋、人間は全て透明になっている。

誰が?何のために?という疑問はあった。

だから、人がいないところを見つけることを諦めた。

どれだけ探しても見つかる気配がない。

だから仕方なく、空中で行うことにした。

「さて……どうするか……」

 

 

 

 

少しの間イメージトレーニング。

その後更に一時間程能力を半永久的に使用。

更に一時間弾幕の操作。

最後に三十分程美鈴の格闘技の復習。

終了後光司の家に帰った。

宿がないかを光司に聞いたら、天宮の一家全員が泊まるように言ってきた。

断る理由もないし、宿を探す手間も省けるから、言葉に甘えて泊まることにした。

 

 

 

「また行くのか?」

「何のためだと思ってんだ?」

泊まり始めてから二週間。

毎日修行は行っていた。

光司にいい場所も聞き出し、少しは神力も強まった。

試練…などと言いながら特にこれといった戦闘も何もない。

ただの日常を過ごしているだけだ。

修行を少しして明友の相手をして光司と話して、それ以外のことは特に何もしていない。

「こんなことでどうやって力が手に入るって言うんだ……」

そう考えつつも修行するしかないために続ける。

光司や友美さんが何を考えているかも知らずに……

 

 

 

『――様、報告にあった人間、並びに天宮光司単体での能力。他、数十人の人間、その実力全ての把握が完了しました。』

「スサノオに関する情報はいらぬ。我が力にも干渉を受けんあの人間についてを調べて来い。」

『はい。』

部下が去って行くのを見届け、改めて能力を使う。

この能力の干渉を受けない。

それはこの世界の者であれば神でさえも不可能なこと。

つまりその人間はこの世界の者ではない。

天宮に負けたとはいえその実力は天界内でもかなりのもの。

(どう殺してくれようか……)

そう考えながら、再び能力を使う。

 

 

 

 

天界の崩壊まで、残り四日

 

 

 

 

「やっと……やっと完成した……」

修行を続けていた俺は、新しい技の完成に震えていた。

相手を殺さないことを考えたスペルカードではなく、相手を殺すことだけを考えた奥義。

正確に言えば、殺さないことを考えないで創った奥義。

例え未来が視通せても、避けられないほどの範囲、受け止め切れない威力の力。

自分を捨てた一撃。

光司を倒せる可能性。

そして完成を喜ぶと同時に、俺の意識は途絶えた。

俺の周り一帯全ては、クレーターのようになっていた。

 

 




一気に飛ばして二週間。そもそも二十日しかこの世界に琴羽は滞在しません。後五日。光司とは戦うのですかね?後二話で終了しますこれ抜いて。では。


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殲滅

FGOのイベントやってると他のことやる余裕がなくなる……夏休みだだと親戚とのイベントも多くなる……どうか僕に時間をください。次の話でとりあえず終えますむりやりでも終わらせます有無は言わせません。ではでは~


どれぐらい経ったのだろう?

既に辺りは夜になっていた。

(帰ろう。)

そう思い立ち上がる。

 

 

―――残り三日

 

 

 

 

 

「琴羽~起きろ~」

光司の声が部屋に響く。

「んん……分かった……」

「眠そうだな。」

部屋を開けて入ってくる。

「……勝手に入るなよ。」

「この部屋も家の一部なんだから別にいいだろ?」

「………」

「とりあえず食堂行くぞ。」

「……ああ。」

 

 

 

 

 

「今日も行くんですか?」

「うん。」

修行に行くかどうかを聞いたのだろうが、即答した。

技が完成したとはいえ、鈍ってしまっては意味がない。

継続は力と言う言葉は、かなり的を射た言葉だと思う。

「……なあ、琴羽。」

「ん?」

「今日は…家にいてくれないか?」

「は?なん……」

何でという言葉は言えなかった。

その顔は、悲しそうな、覚悟を決めたような、――――別れの前のような、そんな顔をしていた。

過去の記憶を見た時、父親がしていたように。

覚悟を決めるようなことがある。

光司程の神が、死ぬ気でいる。

家にいてほしいと頼む光司の真意は分からない。

だが、一人で行かせてはならない。

それだけは本心から思える。

光司一人に苦しみを与えることは間違っている。

なら、俺も苦しんでやろう。

俺は笑みを浮かべてこう言った。

「悪いが俺はここを出る。ここに俺がいる理由が、分かった気がするからな。」

「……お前……まさか来る気……」

「どうだろうな?能力でも使ったらどうだ?」

「………本気か。ふふ……」

「貴方……まさか…」

「俺らは少し出かけてくる。友美、明友のことは任せるよ。」

「……ええ。」

何が起こるか、正確なことは何一つ分からない。

たった一つ分かることは、試練の始まりはこれからだということ。

 

 

 

 

 

「どこまで走るんだ!?」

「あと2kmなら一分もかかんねえだろ!?」

俺と光司の二人は、能力を使った全力疾走を行っていた。

走りながら光司に事情を聞いていた。

要約すると、一月前に異変が起きたらしく、その異変と同様の魔力を、つい数日前に感じたらしい。

光司はここにいる神、天照大神と同様、須佐能乎命としてここに存在している。

神力の把握を神は出来る。

光司の話ではもう一人の神、月読命がここにいない分、異変には気付きやすいらしい。

結果、今から一月前に異変に気付き、すぐに解決に迎えたらしい。

その異変の首謀者は少し力の強い悪魔。

その程度なら光司が命を賭ける必要はない。

光司が気付いた魔力が桁外れに強くなければ。

一月前の異変の首謀者、その魔力が千近く。

その中の一人、光司と同格の魔力を持つ者がいる。

光司の警戒はそれだ。

今向かっているのは、その魔力の固まっている場所。

そしてその場所に警戒する一人はいない。

異変が起きる前に潰すための……殲滅。

そのために能力を使ってまで全力で走っている。

その一人が来る前に、他を全滅させるため。

「数は!?」

「二百!まだ八百いる!急げ!」

少し見えてきたところで数を聞いた。

何人やればいいかを知るために。

「百は任せた!」

「百以上やってやるさ!」

 

 

 

 

 

『ん?なんだ?あれ……』

『どうし……』

「雷光、一閃!」

「神速!海崩!」

俺は雷の剣による斬撃を行い、斬ることはなく全員痺れさせることに止まる。

光司は神力を解放して殴る。

それだけで二十は倒した。

そこからは範囲の広い攻撃を行うのみ。

「雷槍乱舞!」

「波紋・草薙!」

殲滅の始まり。

 

 

 

 

「ふぅ…他に敵は?」

「問題なさそうだ。敵はいない。次に行こう。」

「ああ。」

 

 

 

 

昨日も一度思った。

どれぐらい時間が経ったのだろう。

千いた敵は、何らかの作戦なのか、二百ずつ四方に散っていた。

その全てを倒しきり、最後の二百対を倒しに行きたいのだが……

「…………やっぱり魔力を感じない。琴羽、ここは一度引き返そう。」

この通り光司にも居場所が分からない。

行く宛がない以上、どこに行くことも出来ない。

「そうだな。霊力と神力の消費が大きいし、少しぐらい休んだ方がいい。」

俺達二人は家に帰った。

 

 

 

 

帰って来る頃には、もう既に夜になっていた。

「それで残りはまだ見つからないのか?」

「力を少しも感じない。おそらく今、俺達の行ける場所には存在しないんだろう。」

「……そうか。」

相手は悪魔。

天国や地獄があるぐらいなのだ。

魔界のような場所があってもおかしくはない。

相手が出現しない以上、奇襲どころか遭遇すらも出来ない。

友美さんも明友も眠っている。

俺達も体を休め神力を回復するために、眠ることにした。

 

 

――――残り二日

 

 

 

 

 

 




そういえば前の回の???なんですがあれは次話で出ます。今回の異変の首謀者です。ワニに乗った老人の姿。詳しい人ならこれで分かるんじゃないですかね?では。


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亡霊の龍

???の正体やっと出せた。ついでにスサノオ関連の敵も出せた。夏休みなのに時間がない。結構辛い。……はぁ…ではでは~……


「まだ見つからないのか?」

「悪い…やっぱりこの世界自体にいないようだ。」

「そう、か……」

早朝からずっと探し回っている。

残った二百の敵を。

既に街中は探し終え、街の外れに来ていた。

しかし魔力は全く感じず、見つかることはない。

「……………!?」

数秒黙ったと思ったら、光司が顔を勢いよく振り上げた。

「琴羽!上に……」

という光司の言葉の直前、気付いた俺は跳んでいた。

強烈な落下音がすると同時に、一つの声が響いた。

「良い日だのぅ天宮。滅ぼすには……丁度良い日じゃ。」

『!?』

以前感じた一人だけ強力な魔力。

その持ち主が、目の前にいる。

乗っているのはワニ。

老人の姿をしたその手には、一つの頭蓋骨が持たれている。

地を揺るがし、全てを見通すその者は……

「アガ……レス……」

ソロモン七十二柱の魔神。

第二柱、アガレス。

「久しいのぅ天宮よ。いつ以来じゃったか?」

「………!」

光司は、何も言えずに顔を伏せる。

会話から見て二人は間違いなく知り合い。

戦闘がすぐに始まることはなかった。

その中、俺も動けなかった。

光司以上の魔力の前に、動くことを許されなかった。

そしてもう一つ。

俺達の前には絶望があった。

過去スサノオが倒し、草薙を生み出した怪物。

八岐大蛇。

その姿と力の前に、俺は恐怖していた。

「だんまりか。折角こいつまで用意したのだ。楽しもうではないか!」

「……お前には何もさせない。もう、お前に心は許さない。ここで殺す……!」

「ふん。我に望み、自ら失ったのはお前であろう?なにを怒ることがある?」

何故ここまでの殺意を向けるのか。

何をアガレスはしたのか。

何を光司は望んだのか。

何も知らない俺は、光司を見るばかりだった。

「……む?お主が宮代か。何も分からないという顔をしておるな。教えてやろうか?」

「!」

「天宮はのぅ、元々は神ではなかったのじゃよ。神になりたいがために、我に魂を売った。それがその男の真実じゃ。」

「………光司……?」

「………本当の…ことだ……神になりたいがために悪魔と契約し、神になりたいがために人を殺した。」

「…………」

「数え切れないほど、その体を壊し、数え切れないほど魂を喰った。俺は………」

光司は力を弱めた。

いや、無意識に弱めてしまったのだろう。

その姿は、かつて自分を倒した男の姿ではなく、殻に籠る子供のようだった。

「死ぬことが当たり前のような者なら、潔く死ぬがよい。」

大蛇が光司に首を伸ばす。

まるで死を受け入れたような光司に向かって。

その首を、俺は切り裂いた。

『ガラアアアアァァァ!』

首を切られたことにより、大蛇は咆哮をした。

「恐怖を感じた俺が馬鹿みたいだ。」

俺は光司を殴った。

「なあ光司。俺さ、誰も死なせたくないし殺したくもないんだよ。俺だって、家族を殺した。その償いなんて出来もしない。自分が死んで償いになるなら、喜んで命を絶つさ。でもな、自分が死ぬことなんて、償いにならないんだよ。だから、お前も死のうとするんじゃない!自分の殺した奴らに償う気持ちがあるのなら、殺した奴より人を救え!還らない者を想うなら、生きる者を思え!昔の悲しみに打ちのめされるなら、今を守るために戦え!」

「!………」

「茶番は終わりかね?では、君たちの今というものも終わりとしよう。」

大蛇が全ての首を伸ばしてくる。

その全てが、一つの刀に弾かれる。

「ああ……そうだな。街の奴守るのは俺の仕事だよな。琴羽、強力してくれるか?」

「当たり前だろ?今は競争でも何でもない。ただあいつ。あのじじいをぶっ倒せ。大蛇は任せな。」

「ああ!」

それぞれの戦いが始まる。

 

 

 

 

 

アガレスと光司は、アガレスの創った別の世界へと移動していた。

そして俺と大蛇は、場所は変わらず戦っていた。

「雷槍!」

雷で創った槍が、大蛇の首の一本に刺さる。

だが威力が弱かったせいか、叫ぶこともなく首を伸ばしてくる。

それを跳ぶことで大きめに避けた。

それと同時に一つの弾幕を展開した。

「『雷槍乱舞』!」

無数の槍により、大蛇の首も体も串刺しになった。

『アアアアア!』

一つ一つの首に痛覚はあるのだろう。

大蛇は大きく叫んだ。

しかし八つの首は襲ってくる。

俺を喰らうために。

しかし音速を越える速度を出せる俺に、その大蛇はあまりにも遅かった。

首の全てを避け、その体を撃ちに行く。

首や尾は八つある。

だがその体は一つしかない。

(そこを叩けばそれで終わる……!)

そう思うも、その考えはすぐに正される。

「!?」

強烈な酔い。

視界がぐらつき、感覚が麻痺する。

大蛇は伝説上、酒で酔って眠ったところを倒されている。

この大蛇は、そのアルコール成分や体内の毒素。

それらを周囲に張ることで、一種の強力な毒の結界を張っている。

おそらく上位妖怪に与えられる能力と同種のもの。

首は薄くなっているが、体はおよそ人間の耐えられるレベルではなかった。

体には近づけない。

首の近くにも、あまり長くいれば危険だろう。

近づくことが出来ないことが分かった俺は、ただ伸ばされる首の一つ一つを回避することしか出来ない。

(長期戦になったらまずい……なら!)

回避を続けながら、雷槍を撃ち込む。

可能な限り弱点を速く見つけ、そこ一点を狙い撃つ。

雷槍乱舞をつねに使い続け、全首体を貫く。

順番に、一つずつ。

『ガラアアアアァァァ!』

「!」

その結果、一本だけ過剰な反応を見せる首があった。

(なるほど……一つ一つに痛覚があるんじゃなく、あの一本が本体なのか……?)

それが本当かどうかの確認のために、雷槍を全てその首に集中する。

『アアアアアァァァ!』

どうやら正解のようで、同じように異常に反応した。

だが、見つけるのが少し遅かった。

「!?」

先の毒膜と同様の感覚が襲ってきた。

横目に確認すると、首の一つが少し離れたところから毒を吐いていた。

毒のせいで動きが鈍くなった瞬間、全ての首が襲いかかる。

避ける術もなく、襲ってきていることすらも分からない俺はただ……吠えた。

「アアアアア!」

ハウリング。

能力で付加した道具は、スピーカー。

さらにその音の波には、雷の付加。

怯んだ上に、その体は痺れる。

人間や下等妖怪ならそれだけで死ぬ。

だが大蛇には、その程度の効果しかなかった。

それでも十分だった。

光司を倒すために編み出したスペル。

俺はそのスペルの名を、高々と叫んだ。

「雷鳴『雷界・雷の輪廻』(らいかい・いかづちのりんね)!」

辺り一面、大蛇の体の全て、俺さえも飲み込む雷の結界。

それはもはや、雷による世界を一部造ることと同じ。

その雷は、消える度にまた出現する。

俺の霊力が尽きるまで。

それをもろに受けた大蛇の体は本当に少しずつ、その体を崩していく。

まるで、元々の姿が土のように。

その姿は崩れていく。

力を使い切った俺は、そのまま地面に倒れ込む。

意識を手放すわけにもいかず、体は動かない。

光司が戻るまで、俺はただ待ち続ける。

 

 




すみませんあと二話で終わりと前に言ったのですが、次で終わりです。あとこういう回は間章としてやることにします。この回からそうしました。では。


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一柱の悪魔

一話から何ヵ所か訂正しました。書き方知らなかった時に書いたものでしたし、でも全話ではないしまだ手直しはすると思いますから読み返す必要は特にありません。とりあえず報告でした。ではでは~


「さあ始めよう。お前だけは、絶対に倒す!」

俺は明らかな殺意を、アガレスに向ける。

「あの頃より成長したのか、見させてもらおうかの?しかしここは狭い。大蛇は大きいからの。我もお主との一体一の戦いを望んではいたのでな。我が世界へと行こうではないか。」

俺は過去に行ったことがある。

アガレスの世界、人間を一人でも多く殺すために創られた――魔界。

行けば勝ち目はなくなる。

アガレスの魔界に存在する、下級の悪魔達に、体の一つ一つを喰われる。

一体一体は弱いが、その数は確実に人間を殺すため、万を越える。

その世界に誘われ、そう簡単に行くわけがない。

「そう警戒するでない。我の世界は一つではないのだからな。」

(一つではない?俺の知らない世界が………?)

「あるのじゃよ契約以前からの。さあ、一体一の真剣勝負じゃ。簡単には死ぬでないぞ?」

「……上等だ。」

視界が黒に染まる。

次に見えたころには、目の前は更地だった。

「この世界が我がもう一つの世界じゃ。魔界とは違い、大地の操作を我が行う、アガレスとしての世界。お主に見せていた魔界は我の別の名の世界じゃ。この世界も我が支配下。しかしこれこそが戦闘に特化した我が力。これが我が本気だと理解するがよい。」

アガレスの別名はヴァサゴ。

世界を二つ持っていることはおかしくもなんともない。

「………こんな世界もあったなんてな。結局は自分有利の世界か。」

「魔界を我は創っていない。我を創造した者が創ったものじゃ。自分有利に世界を顕現しているといのは確かじゃが、この世界は我が持つ世界を、魔力を代償に召喚しているもの。以前の魔界は召喚のみ。なにより、この世界は我が創ったもの。これは我が実力に他ならない。」

「………くくっ。有利にするのが悪いとは一言も言ってないぜ?お前の本気を、真っ向から叩き潰す!二度と、お前に負けることは赦されない!」

「ふむ、良い眼をするようになった。ならば始めよう。殺し合いを。」

 

 

 

 

 

「――はぁ!」

数秒の沈黙を破り、自分に出来る最高速でアガレスの懐に飛び込んだ。

「我が能力を忘れたとは言わせんぞ。」

その一撃を、軽々と受け流す。

受け流された腕を引き戻しながら、もう片方の拳を突き出す。

そこから連打を始める。

(アガレスの能力は歴史を視ること……俺がこれから何をするかも筒抜けだ。だがもう一つの能力は発動出来ない筈だ。発動前に――倒す!)

伝説上、アガレスの能力は過去・現在・未来を見通す能力。

そして別名、ヴァサゴの能力は地震。

人間の世界ではそう伝えられている。

それだけの情報があれば十分。

知らない能力への警戒は少なく済む。

もし地震が事実ではなく、例えば地を操る能力でも、警戒することが分かっていれば問題ない。

「よく分かっておるではないか。過去のお主ではそれすらも分からなかったであろうな。」

「!?」

俺の殴打を受けていたアガレスとは別に、背後から声がかかった。

「がぁっ!」

そのまま背後から殴られる。

だけでなく、眼前にはアガレスの杖が迫る。

咄嗟に腕で防ごうとしたが、間に合わずに地面に叩きつけられる。

以前のアガレスに、ここまでの力は出ない。

(なんでだ!?なんでここまでの力が……そもそもなんであの連打で……!?)

「能力を知ることは最も重要なことじゃぞ?」

「ぐぅ……!」

地面を砕かんばかりの勢いで、俺は両手で飛び退いた。

しかし、その背後からさらに殴られる。

「………!?」

「ほれ、どうした?まだ能力が分からんのか?」

そのままお手玉をされるように、後ろから、前から、横から、ずっと殴り続けられる。

「このままなぶられ続けることほど、つまらぬことはないぞ?」

「………」

俺は三つのことから、既に能力が一つは分かっていた。

一つ目はアガレスにないはずの防御力。

俺の殴打に耐えられるほど、奴の防御は堅くない。

二つ目はそれと同等の攻撃力。

ここまで俺がやられ続けるほど、防げない攻撃を奴は出来ない。

そして三つ目は、無数の分身。

能力上、数を増やす能力はない。

(ならこの分身は――)

俺は大きく跳躍した。

分身一つ一つが、地面と繋がっていることを確認した。

「『水流閃』!」

その場から、水でできた蛇のような剣をしならせた。

「!ほぅ……」

出現していた分身の全てを裂く。

裂けた破片の全てを水で包む。

分身の全てが消えたことを確認して、俺はアガレスに向き直った。

「お前の二つの能力、やっと分かったぜ。地を操る能力、いいや、地の概念が少しでも混ざっているものの完全操作権。つまり分身はただの、泥人形だ!」

「ふむ……時間はかかったようだが、ようやく理解したようじゃな。同時に人形を作っていた土自体を無力化するとは見事……」

水の圧は、場合によっては空気以上の重さを持つ。

深海においての水圧は、人間の体でさえ潰す。

たかが土の強度なんて、巨大な塊にでもなっていなければただの粒。

消滅するまで潰すことは容易だった。

数ミクロの単位まで潰せば、無力化は完了する。

「『水牢』。」

人形と同じようにアガレスの体を水で包む。

地の概念が存在するものの中で、攻撃や防御を強化するものは主に重力。

(だが、そんなことは関係ない。俺の神力の量なら、機械以上の圧を人体にかけられる。)

神力を解放して、異常な圧をかける。

「!ここまで成長しているのなら、認めるしかなかろう。じゃがしかし、残念じゃ。」

「!?」

予想していた以上の重力で潰される。

俺は耐えられず地面にめり込む。

辺りの地面を蜂の巣上に砕きながら。

耐えきれずに水牢が解かれる。

「お主が死を望んだのじゃからな。」

アガレスの周辺の地面から、杭のような土の塊が五本浮く。

「お主は知らぬじゃろうが強い能力は他の人物や獣などだけではなく、物体にも付与出来るのじゃよ。たとえその系統の能力でなくともな。」

ただの土の塊が鉄に変わる。

四本が、俺の周囲に突き刺さる。

「『四結界』。」

重力の箱のようになる。

「これでお主が逃げることは出来んな。何故一本残しているかも気になるようじゃの。それは……」

残った一本の鉄杭が迫る。

「動けないお主を、確実に殺すためじゃよ。」

(__っ!動けない!やられる!)

覚悟をした直後、杭が止まる。

『!』

それを止めたのは、八つの竜首だった。

「………」

その首は、そのまま四つの鉄杭を噛み砕く。

見間違える筈もない。

八岐大蛇そのものだ。

「これは………!」

最後の鉄杭を噛み砕き、直後にその首はアガレスを狙う。

アガレスは飛び退き、大蛇は俺を守るように前に出る。

「お主……そこまで使えるようになっておったのか……!」

「使…‥える?」

「まさか勝手に発動したと言うのか!?」

大蛇の姿が薄れていき、その四つの首は徐々に姿を変えていった。

草薙太刀と呼ばれる刀へ。

それを見て、俺はある話を思い出した。

その武器に選ばれた者に与えられる特別な権限。

選んだ相手にのみ見せる本来の能力。

俺はその力を、自分の意志で解放した。

「させぬぞ!」

さっきよりも強い重力で押さえつけられる。

しかし膝を付くこともなく、俺の体からは膨大な神力が放出される。

「何故だ……何故それほどの力がある!?四結界すらも壊すことの出来ない貴様に!」

「素が出たなアガレス。これは俺の賭けさ。なりふり構わず能力を使い切る。倒せば勝ち。耐えれば負け。逃がしはしない。この一撃で、この戦いの決着にしよう。」

「く、くかか……よいぞ!その勝負、受けようではないか!我が守りを砕いてみよ!その力の全てを!我に見せてみよ!」

アガレスの体に金属の光沢が出来、地面から四結界と似た魔力を帯びた三つの柱が突き出る。

「『三柱神』!」

「こいつが俺を選んだ。なら俺は、それに答えなければならない!神としての力を纏え草薙!」

太刀が神力を纏い、刀身が輝き始める。

「『光蛇・草薙』!」

八首の光蛇がアガレスに襲いかかる。

「アアアアア!」

「ぬうううう!」

 

 

 

 

『…………』

攻撃が止み、その戦いに決着が着いた。

「光司よ………一つだけ、教えてはくれぬか?お主は、何がために戦った?」

「……この世界の……皆……家族のためだ。」

「……そうか。」

そう言うアガレスの体は大蛇に喰われ、半分がなくなっていた。

「死に逝く老骨から、最初で最後の教えじゃ。負けた分際で言うことではないがな。……大切なものがあれば、何者でも強くなれる。人間が神を倒すことさえ出来る。最も強い存在は、大切なものを持つものじゃ。我にはなかった。じゃがお主なら、まだまだ強くなれる。……これをお主にやろう。お主の好きにするがよい……ではな。」

アガレスは、自身の持っていた杖を俺に渡し、その体を灰に変える。

「………じゃあな。」

そのアガレスに一言、それで別れの言葉は終わりにした。

 

 

 

 

 

どれだけ経っただろう。

起き上がる力もなく伏していた。

その時間がずっと続いていたが、突然足場が消えた。

暗い空間に、何故か堕とされていた。

「これは……?」

『お前の試練が終わったんだよ。』

その声は、久しぶりに聞く声だった。

『よく、帰ってきたな。奴と戦う力は手に入ったか?』

「天智……ふふ…新しいスペルも手に入れたし、神力もかなり強くなった!今なら、お前の本気レベルも使えるだろ?」

『ああ。行く前よりも、別格だ。今なら嵐も起こせるぜ?』

「そうか。ありがと。」

『……?その刀は?』

「?」

そう言われ腰を見た。

魂だけの移動の筈なのに、そこにあったのは、草薙太刀だった。

おそらく、神としての力を使って、魂の俺に与えたんだろう。

その刀を、俺は常備することにした。

光司達を忘れないために。

 




光司→琴羽に視点途中から変わってます。今更一つ思ったことあるんですよね。文字数五千がここでは普通だって。だから文字数気にしないようにします。そのうち光司と琴羽の対戦回も、多分!統合します。しないかもしれませんけど。まああくまで平均二千は続けます。時間ないからそんな書けませんしね。では。


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第三章 元界生活
第五十四話 精神の崩壊


三章帰ってきたー!ってことでどうも凛です。元の世界の話は長くするつもりないのに、試練回対戦分けたせいでそうとう長くなりましたし、もうどう分けたらいいか分からないですよ。正直一話四、五千文字で書けば十~二十は短く出来ましたね。……まあぶっちゃけめんどいんで纏めるのはそもそも一話分で考えてた奴だけだと思います。それすらめんどいと僕が考えたらしませんけどね!そうそう、この回は三章前半の終わりの続きと考えてください。ではでは~


一体何日が経ったのだろうか?

獄羅との戦いはずっと続いていた。

倒し、倒され、裂き、裂かれ、壊し、壊され、潰し、潰され、……殺し、殺され。

精神内の戦いに死は存在しない。

俺が死ぬことで獄羅に体を盗られることもあり得ないことを知った。

この体は、俺の所有物として、所有権は俺にある。

奪うためには俺の合意、または完全に俺を消滅する。

必要なことはこれぐらいだ。

以前に精神世界での戦闘で獄羅に負ければ、体は奪われるものだと思っていた。

事実体の所有権の全てが俺にあるわけではなく、天智と獄羅にも分かれて与えられていた。

いつの間にか天智の権限は俺へと譲渡され、統合された俺と天智の権限によって獄羅の権限は消失した。

結果、俺の精神、魂から創られた世界から、死という概念が完全に消滅した。

俺が消した。

だからこそ、本気の殺し合いを何十回と続けている。

首が切れること。

全身が灰になること。

無数の針で串刺しになること。

細切れになること。

死ぬ理由なんていくらでもあった。

だがだからこそ、俺の精神は壊れかけていた。

生の終わりである死を、何度も繰り返しているのだから。

「俺は……何がしたいんだ?」

 

 

 

 

 

騒々しい教室に、無言のまま入り込み、無言のまま席に着く。

誰かが話しかけてくる。

何も言わずに会話を切る。

罵倒されようが知ったことじゃない。

獄羅との戦いに備えて、力を蓄えるのは正解だ。

会話をするのも、動くことさえも無駄なこと。

力の拮抗した相手と何度も戦うことは、両方が死ぬことを覚悟することだ。

死ぬことがない現状、その覚悟はぶれる。

そうならないために、感情を抑えなければならない。

ならどうする?

答えは既にあった。

一人になればいい。

俺にとっては簡単なことだ。

だがどこかで分かっていたんだ。

こんな状態の俺では、獄羅を倒すことは出来ないと__

 

 

 

 

『お前、弱くなってねえか?』

戦闘中、突然獄羅がそう言った。

「あ?」

俺は苛ついた声で言葉を返した。

『お前、最近弱えよ。俺とお前、死んだ回数はどっちが多い?死んでもいいって思って気が緩んだか?』

「………そんなわけがないだろ……!」

『ならもう限界だろ?』

「………」

図星だった。

確かに限界に達していた。

だが、やめるわけにはいかなかった。

「関係ねえだろ……限界なんざどうでもいいんだよ……!お前の存在が俺にどう影響してるかなんて知らない。そんなもの関係ねえ。お前のしたことを、俺は許さない。だからこそ、お前を支配する!」

『……今のお前じゃ無理だな。』

「………お前が決めることじゃない……!」

獄羅に向かって踏み込む。

しかしその拳は届くことなく、獄羅に掴まれる。

そしてそのまま、針によって串刺しにされる。

「がっ…!ああ……」

たったその程度で、俺の意識は刈り取られた。

 

 

 

琴羽が意識を失った直後、俺は誰に聞かせるでもなく呟いた。

『今のお前じゃ駄目なんだよ……何も分かっていない。今のお前じゃ、死んじまう……帰って来いよ…琴羽…』

 

 

 

 

「………?ここは……?」

体を起こし、辺りを見回してみると、獄羅の姿はなく、明らかに自室に戻っていた。

(また……負けた……)

負けてはいけないと理解しているのに。

何度戦っても勝てない。

生きているのに、生きている気がしない。

自分が壊れる寸前だということが分かる。

守らなければ。

そのために倒さなければ、勝たなければならない。

誰も傷つけないために。

勝たなければ。

倒さなければ。

封じなければ。

殺さなければ。

殺せばなくなる?

俺の苦しみも周りの危険も。

あいつがいなければ消える?

(ああそうだ……殺せばいいんだ。)

死の概念を創ればいい。

本気で殺せばいい。

(殺せば………殺す?)

殺してもいいのか?

逆に俺も死ぬのではないか?

あいつに勝てない俺じゃ、殺すことなんて出来ない。

それに約束もある。

殺しは、赦されない。

この約束だけが、俺の精神を保ち続けている。

生きるんだ、俺は。

今はただ、眠ろう。

壊れないために……

 

 

 

 

「宮代最近どうしたんだろうな?」

衛人がそう言った。

「さあ……なんか元気ないよね~」

音々が返した。

正直私も気になっていた。

ここしばらくの宮代君は話さない。

それどころか自分の席から動くこともない。

号令の時や指名の時以外は立つことすらない。

疲れた顔で、今にも気を失いそうなほどに弱々しい。

そんな彼に、私どころか二人でさえも話しかけようとしない。

周りの人も誰も……

「みゆ?」

「あ……」

考えてると音々に声をかけられた。

「どしたの?」

「あ……ううん。何でもない。」

「?そう。」

どうすればいいのかも分からず、私は外に目を向ける。

私は後になって思う。

この時にもっと気にかけていればよかった。

宮代君のことだけじゃない。

外を見た時に見えた、不敵に笑う少女を……

 

 




いつも通り視点説明~琴羽→(一瞬)獄羅→琴羽→結花。
そろそろ学園祭の日が近いですね。ま他の学校がいつかなんて知りませんけどね。時間が減る一本です。では。


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第五十五話 百鬼夜行

祭りが近いよわーいわい!なんて思えた小二くらいまでが懐かしい。ただの学園祭でここまで気が滅入るとは……体育祭では倒れそう。高校生はそんな風に思う人は多いでしょう知らないけど。さてと……この回の話、ぶっちゃけるとただの準備回です。既にお分かりでしょうね。はい!テンプレです!それと現代に琴羽がいるからって宇佐見とマエリベリーが出ると期待しないで下さい。登場は今ではありません!出す予定もないのでこの二人のファンならすみません。でも出せたら出します。
長々とすみません。ではでは~


弱くなった。

そう獄羅に言われてから、さらに三日が経った。

自分の何が駄目なのか。

どうすればいいのか。

何も分からないまま過ごした。

だからこそ今、俺は何も出来ずにいる。

襲われる人を助けられず、下等な妖怪に負け、囲まれている。

こんな事態になって初めて気付いた。

自分が愚かだったという現実に……

 

 

 

 

数時間前

 

いつものように教室に着いた俺は、いつものように自分の席で、無言で過ごしていた。

戦いに備えて英気を養う。

空想の物語ではよくある話だ。

しかし実際に自分がやるとは思ってなかった。

そんな日を過ごしていた。

その日の昼頃、突然騒ぎ始める者がいた。

騒ぐだけなら学生にはよくある話だ。

特に馬鹿なことばかりする問題児とかは。

だがこの時の騒ぎ方は異常だった。

 

 

 

 

 

「うあああ!」

「何!?どうしたの!?」

「押さえろ!早く!」

机が宙を舞い、狂人のような咆哮が教室に鳴り響く。

『があああぁぁあああ!』

「ぐっ!先生呼んでこい!救急車も!」

「わ、分かったわ!」

流石に騒々し過ぎるので、意識をそちらに向けた。

「かは……」

その時、ロッカーに叩きつけられた奴を見た。

そのまま意識を失ったのかロッカーにもたれかかる。

暴れている男子生徒は、五人に押さえられながらも暴れ続けている。

 

『うわあああ!』

 

『きゃあああ!』

 

同タイミングで廊下からも叫び声があがる。

どうやら暴れているのはこいつだけではないようだ。

俺が無感情にそれらを見ていると、校内放送が流れた。

『校内の生徒の約一割ですが、暴れている生徒がいます!正常な生徒は全員、グラウンドに避難してください!』

その放送を聞いて、何人かが走りだした。

「女子から行かせろ!男子は少しでも時間を稼げ!」

クラスの学級委員が皆に指示を出す。

女子が全員行った後、男子も教室から次々と出ていく。

「琴羽、何してる!行くぞ!」

学級委員に手を引かれる。

(何が起きてる?天智。)

『分からない。でも気を付けた方がいい。妖力を感じる。暴れてるのは生徒だけじゃないかもしれない。』

「………離してくれ。」

「!?」

俺は手を振りほどき、立ち止まった。

『琴羽?まさか……』

(戦いにいくに決まってるだろ。俺以外に誰が戦える。)

『………今のお前じゃ、全部の処理なんて無理だぞ。』

(…そうか。)

天智との会話を切り、皆とは逆に走りだす。

「琴羽!どこに行くんだ!琴羽ー!」

 

 

 

 

暴徒と化した生徒を殴り、締め上げ、叩きつけ、俺は目についた全員を気絶させていた。

「…多いな。」

そんななか出た感想はこれである。

妖怪ならいざ知らず、人間なんて今更相手にもならない。

そのために学校の生徒の鎮圧にはそう時間はかからなかった。

学校の、は――

 

 

 

 

ふと外を見ると、襲われてる人が目についた。

すぐに飛び降り、襲われている人のところまで走った。

(この騒ぎ、外まで広がってるのか!?)

『妖怪の気配が近い。来るぞ!』

「雷槍!」

なりふり構っている暇ではない。

能力が見られる心配もせず、俺は雷の槍を手に顕現した。

その槍は、次々来る妖怪を殴り、あるいは貫き、妖怪達を無力化していった。

「…ありがとう…」

その男性は目の前の現実に恐怖しながら、感謝の言葉を言った。

俺は構わず走りだした。

 

 

 

 

 

「ふっ!」

背後から妖怪を裂く。

気付き襲ってきた四体をさらに裂く。

自分の甘さを痛感しながらも、俺が倒した妖怪に死者は出ていない。

一体残った妖怪は、必死に命乞いをしている。

その妖怪を裂かない理由は、妖怪の出所を知るためだった。

「お前らがどっから来たのか。とっとと吐け。」

「わ、分かった!教える!だから助けてくれ!」

みっともない。

そんなことを思った。

「……早くしろ。」

俺はその姿を長く見ているのも馬鹿らしいと思い、早く教えるよう催促した。

「こっから向こうに2kmぐらい、そこに門が開いてる!理由なんて知らない!これ以上は何も知らない!」

どうやらその辺の下等妖怪にそこまでは教えられてないようだ。

(門……これ以上出られないように塞ぐか?それとも壊すか?……どっちでもいい。向かおう。)

そいつが人を襲えないよう足を一本落とした。

直後、能力による光速で走った。

 

 

 

 

門と呼ばれたものの場所に着いた。

まるで空間が裂かれたようなもの。

妖怪の出所はここで間違いなかった。

見たところ妖怪は二十程度しかいない。

(あの程度なら……)

俺は能力を発動した。

せいぜい麻痺する程度の雷咆を、妖怪全てを飲み込む範囲で放った。

『があああぁぁ!』

狙いは成功し、そこにいた妖怪を全員無力化した。

何体かは気絶しているが、死者はいないようだ。

(後はあれを……)

その考えは途中で切り替わった。

 

『オオオオーーーン』

 

遠くの方で遠吠えが聞こえた。

そしてその方角は――学校。

そこで俺は、妖怪の本能とさえ言えるある習性を思い出した。

食人という妖怪の嫌われる要因。

恐怖の対象となる原因。

意思を持つことさえ出来なかった下等妖怪には、それ以外の感情はない。

ならばそういう妖怪はどこへ行く?

その答えは至極単純。

人間の多い場所へ向かう。

一ヶ所に固まってるなら尚更だ。

門を破壊する暇もなく、俺は一つ罠を張るだけでその場から離れた。

 

 




次の回若干グロ描写あるかもしれません。相変わらず時間はないですけど、三連休ですしもう一話ぐらいは出します。これは確実です。では。


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第五十六話 傀儡

多勢に無勢とは戦いにおいて、もっともなことだと思います。fpsでパーティーメンバーがすぐにやられて、たくさんの敵に囲まれる。苦しいです。……そんな話は置いといて、久しぶりの投稿です。絶対僕を覚えてる人はいないでしょう!まあ以前よりは早く投稿しましたし、許して下さいお願いします。学校も用事もあったので朝から夕にかけては無理なんですよぅ。深夜に投稿しろ?………iwannaの中毒性にやられました。
……ではでは~


今俺は、学校までの道を戻っていた。

数分前に俺が気絶させた暴徒や妖怪が転がっていたが、避ける余裕もなく走る。

(間に合え……!)

そう願いさらに速度を上げる。

 

 

 

 

「あ……ああ……?」

目の前には爪が迫っていた。

自分に迫る死への恐怖が私を蝕む。

いつか見た映画に、死ぬ前には走馬燈が見えるって表現があった。

体内時計の感覚が狂って、時間が遅くなる。

死ぬ。

ただその事実だけが迫っている。

そんな中で私は今までの人生を思い出した。

今までに出会った人、友人たちの顔、両親の姿。

(死にたくない!)

私は本気で思った。

私は目を閉じた。

血の噴き出る音が聞こえた。

私の顔に血が付いた。

……顔に?

痛みはなかった。

当然だった。

私に傷はなかった。

噴き出た血は全て、目の前の化け物の腕から出ていた。

否、切れ落ちた腕の切断面から。

『ギャアアアアァァァァ!』

「……え……?」

理解出来なかった。

助かった喜び以上に、何故そうなったか、頭が追い付かなかった。

その時、声がした。

まるで記憶の中の会話のように、その声は脳内で直接流れた。

『あいつが変われそうなんだ。だから……お前の身体、少し借りるぜ。』

その声と同時に、雷が唸りながら化け物を飲み込んでいく。

「みゆ!大丈夫!?」

いつの間にか傍に、衛人と音々がいた。

「みゆ!しっかりして!早く逃げよう!」

「う、うん!」

とりあえず助かったとだけ分かってればいい。

それだけ理解した私は、二人と一緒に逃げた。

先生達に追い付いたが、休むことも許されず走った。

グラウンドには入り口が二つ。

そのどちらも化け物に塞がれていた。

周りはネットに囲まれており、グラウンドから出るには入り口からしか出られなかった。

しかしさっきの雷によって、一方が開いていた。

その方向に走る。

「!」

私はあることに気付き、足を止めた。

自分の真横を、一人の少年がすれ違っていく。

まるで少女のようなその姿は、真後ろにいた化け物を軽々と裂いていく。

「みゆ?」

止まった私に気付いた音々と衛人が、後ろを振り返る。

その目線は、その後方へと向けられた。

「……琴羽……?」

そこにいたのは、宮代琴羽という少年だった。

 

 

 

 

 

「間に合った……」

俺はそのことに少し安堵し、妖怪達に向き直った。

数は百にも満たない。

その程度なら、雷咆だけでも終わる。

しかしここまで戦い詰めだった琴羽には、もうそんな力も残っていなかった。

そこで琴羽が選んだ選択は、全てを雷槍で貫くことだった。

手元の一本。

槍術など基本も出来ない琴羽には勝算はない。

やらなきゃやられるということのみが頭にあった。

槍を構え、足に風を纏う。

そのまま妖怪に向かって突撃した。

目の前の妖怪の腹を貫き、振り回して横の妖怪を薙ぐ。

そのどちらも、声にならない悲鳴を上げて倒れた。

次に一体、視界に入った妖怪の顔面に槍を叩き込み、地面に叩きつける。

前から更に二体。

その状態で少し持ち上げ、槍を前に突き出す。

一体に刺さった状態でもう一方の攻撃の盾にする。

構わず味方ごと裂いてくる妖怪の腕を殴り、軌道をずらす。

盾の妖怪の肩が裂かれ、腕が切り落ちる。

槍を妖怪から抜き、回すようにして二体の妖怪を同時に殴る。

この動作にかけた時間は十秒。

倒れた妖怪は五体。

残り八十。

全て倒す力はない。

ならばどうするか。

答えは簡単。

逃げるしかない。

学校に避難していた教職員や生徒が逃げられれば俺のいる意味はない。

なら後は、全員が逃げるまで、耐えればいい。

(五分……いや十分か?そんぐらいならやってやる…!)

俺は風の魔法を解いて、雷槍に魔力を溜めた。

そしてその形を鞭に変え、逃走中の避難民と妖怪の前に立ち塞がった。

「来やがれ……!」

 

 

 

 

 

避難者side

「はぁ、はぁ、」

「急いでみゆ!」

 

[__市に謎の生物が多数発生。既に軍も出撃しており、怪我人は多く出ていますが、幸いにも死者はありません。隣の市まで謎の生物が出てくることもないようです。__市にまだ残っている市民も多く、_____」

 

先生の聴いていたラジオ音が急にノイズになった。

「よし。すぐに移動しよう。軍の人に守ってもらえれば安全なところに避難できるかもしれない。」

「でも皆走り続けでもう体力が……」

「……そうだな。少し休もう。」

 

 

 

 

 

 

「そろそろか……」

風を足に纏って後方に跳躍する。

着地と同時に振り返り、能力を解いて走る。

避難はさせたが、安全とも言い切れない。

学校の柵を一つ破壊して持っていく。

 

 

 

 

 

「……ん?……!おい!あれ!」

「?どうしたの衛人?」

避難していた奴らを見つけた。

それと同時に衛人が俺に気付いたようだ。

「やっぱりさっきの琴羽だったのか!お前すげーな!」

やはりこいつは馬鹿だった。

通常恐怖を持つはずのこの力に、凄いという一言で済ます。

普通とは言えない。

だからこそ、周りの生徒は俺に暗い眼を向ける者もいる。

平静を装う者。

俺を睨む者。

衛人のような者は少数でしかない。

そしてその注意は、すぐに俺から離れることになる。

『オオオオオォォォォォ!』

『!』

上空を一匹の妖怪が通る。

そしてその妖怪は、俺たちの目の前に着地する。

「久しぶりね。琴羽。」

その背から、一人の少女が飛び降りる。

「久しぶり?俺は会った覚えは無えぞ。」

実際見たことはない。

この世界でも幻想郷でも、一度も見た覚えはない。

しかし妖怪に乗って現れたことから考えると、こいつは敵。

ありえるとするのなら、この騒動の元凶。

「いいえ。貴方は私と会っている。少なくとも、私は貴方のその幼い姿をよく覚えているわ。私が初めて、憎しみを覚えたその姿をね!」

「!お前……まさか……」

「お父さんは、凄く優しくて、いつも私達のことを第一に考えてくれた……お母さんは、私達とたくさん遊んでくれて、皆をいつも笑顔にしてくれた……」

「………」

「貴方は…‥お前はそれを奪った!何故だ……あんなに素晴らしい人たちを……何故殺したぁ!」

『ガアアァァ!』

「!」

妖怪の尻尾のようなもので、腹を殴られ、壁に叩きつけられる。

衝撃で壁は壊れ、既に霊力が限界だった俺は、動く体力すらも刈り取られた。

「かはっ……がっああぁぁ……」

「一つ教えてあげる。私の目的はね?貴方への復讐。私と同じ思いを味わわせる。私の場合は大切な人を。貴方の場合は、その誓いを。護ると決めていた者達の残虐なる死を!そこで見ているがいいわ!」

(動…けない……意識が…朦朧と……やめ…ろ……)

このままでは、全員が殺される。

俺への復讐で、関係のない者を巻き込んでしまう。

(動け……動け!)

「そうそう、もう一つ教えてあげる。妖怪が私の意のままに動いてくれる理由はね?私の能力が、幻想郷で強化されたから。強化されて得た力……スペルカード、傀儡『怪異のマリオネット』。妖力を持つ者を操る特殊な力。鵺、殺りなさい。」

鵺と呼ばれた妖怪は、逃げ出した生徒を追い、その腕を噛み砕いた。

腹を貫き、足を潰し、頭を叩きつけ……喰らう。

内臓を引きずり出し、頭蓋を割り、血を、骨を、肉を、喰らっていく。

殺し、喰らう。

妖怪の本能がままに、人間を喰らっていく。

目の前で喰われていく皆を見ながら、俺は何も出来ない。

その光景に、俺は怒った。

憎しみ、殺意を覚えた。

 

(動け!動いてくれ!俺は何も出来てない……何が護るだ…役立たずが!奴を止めろ!奴を殺せ!)

『いいのか?殺して。』

頭のなかに直接声が響いた。

『俺がやってやろうか?』

(必要ない……)

『誓いを自分から破るのか?』

(違う……俺は……)

『護りたいんだろ?』

(……ああ。)

『助けたところで、見捨てられるのがおちだぞ?』

(……そうだろうな。)

『それでも助けるのか?』

(……やっと分かったことがある。俺は一人じゃなかった。いつも誰かに助けられてきた。嫌われることがなんだ?憎まれるのがなんだ?そんなこと知らない。俺は、俺の自己満足のために皆を助けるんだ!)

『力がない今の状態で、何が出来るっていうんだ?』

(そうだな……でもお前が語りかけてくるのなら、貸してくれるんだろ?)

『……くくっ。欲しいか?ならくれてやる。ただし……最後に俺に勝てたらなぁ!』

その世界は黒に染まる。

獄羅と琴羽の、最後の戦いが、始まる。

 

 

 




視点説明琴羽→結花→琴羽。珍しく三千越えましたね文字数。次回も越えるかもしれませんが。幻想郷にはあと二話あるかないかで帰ります。なかったら次回がやたら長くなるし、あったら次回の投稿が中途半端に終わります。どっちもやですね。そこは頑張ります。では。


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第五十七話 氷と炎の終末技

獄羅の能力の説明は前書きか後書きで書こうかとも思ってたんですけど、長いし本文に入れました。まあそれは置いといて。病気で半分倒れてたりしてて投稿出来なかったという言い訳と、久しぶりに投稿した謝罪の言葉を書かせてもらいます。本っ当にすみませんでした!話は出来てるんです!なので時間があれば書けるんです!
………まあ言い訳は言い訳ですね。ではでは~


「……相変わらず暗いな。」

『俺の世界が明るいと思ったのか?見慣れた光景だろう?』

暗くて何もない世界。

黒以外の色も見えない。

ただ見えるのは、互いの姿ただ一つ。

そんな世界に俺はいた。

決着を着けるために。

『この世界は精神世界のようなもの。この暗闇も、お前の心だ。天智の白の世界もお前の心の一つだ。これがお前という人間の本質だ。人間の本質は変わらない。この暗闇から逃れることは出来ない。』

「…………」

『お前はかなり不安定だ。闇にも光にも成りえない。普通の人間に存在する心の世界と、お前の世界は違う。どちらにもならないお前は、俺も、天智も受け入れることは出来ない。そろそろ選ばなきゃいけないんだ。他人を護りたいなら、選べよ。どうせ人を越えてるんだ。それとも綺麗事ばかりでなんの覚悟も出来てなかったのか?』

「……ははっ」

『…なにが可笑しい?』

「選ぶ必要がどこにある?お前は俺を殺せばいい。俺が生きれば闇を手に入れる。単純な話だ。俺はどちらを選ぶ必要もない。俺がお前に勝つか負けるかだ。話を変えるなよ獄羅。今は『俺がどちらを選ぶか』じゃなくて、『俺が力を欲しているか』だろ?」

『………!』

「俺は何も選ばない。自分のために、自己満足のために、全て手に入れる。何であろうと俺のものだ。闇だ光だと右往左往するだけ無駄だ!とっとと寄越せよ。力ってやつをよぉ!」

『……荒々しいな。やっとらしくなってきたじゃねえか。なら始めよう。せいぜい足掻いてみせろ!』

獄羅の周りに熱気と冷気、真逆のものが集まり始める。

近付けば燃えるのではないかという熱気。

近付けば凍えるのではないかという冷気。

それらが同時に発せられようとしている。

『琴羽、これは俺からの多少の気遣いみたいなもんだ。この一撃に全魔力を注ぐ。戦いは、この一撃で終了する。これはスペルとは違うからな。喰らえば死ぬだろう。あれだけの大口叩いたんだ。即効死ぬんじゃねえぞ!』

二つが混ざり、気体から個体へと変化する。

炎と氷。

まるで魔法のように、その二つは重なる。

氷が溶けることもなく。

また炎が凍るわけでもなく、これらは広がっていく。

『地獄は誰でも知っている。中でも針地獄や血の池地獄と呼ばれるものは最も知られる。』

獄羅は淡々と説明していく。

地獄とゆう世界を。

人間の果ての世界を。

『しかしその実、全ての地獄を知る方法を、人間は持たない。予測を起てた者達でさえある数種類のものしか知らない。その点で言えば、八大地獄を当ててただけでも見事だと言えるだろう。』

「……その八大地獄ってのがお前の能力か?」

『ご名答。俺の能力は八大地獄を操る程度の能力。八熱八寒とも呼ばれるその地獄は、全て俺の力となる。まあ全ての地獄を支配するのは、俺じゃなくて閻魔だがな。八大地獄が俺の支配下なら、どうなるか。お前なら分かるな?』

「俺もそこまで知識があるわけじゃない。ただ、八大地獄の四方には門があり、それらの門全てに小地獄が存在する。それぐらいなら知ってる。つまりお前は、八つの地獄を使えると同時に、隣接する小地獄も操れる。そして八大地獄に属さない針地獄の針。これをお前が使っていたことから、他の地獄の力も使えるだろう。」

『ふむ……確かにそこまでは正解だ。あえて間違いを言うのなら、俺が使っている針は針地獄の一部。そして俺が使える力も、能力以外じゃそれぐらいだ。』

「……お前の能力に属さない能力はもう一つある。お前が使う黒い炎は地獄には存在しない。人間の世界にも、……天界にも。その炎は、能力とは全く関係ないお前自身の体質のようなものだろう?」

『ふっ…半分は正解だな。この炎は地獄のものじゃない。つまり俺の能力じゃなく、獄卒全てが使える 種族的な能力だ。最も、俺程使いこなす奴は他にいないがな。だからこそ、能力と併用すれば、技を強化も出来る。』

広がっていく炎が黒に変わる。

『さて、俺の能力も説明は大体した。これが冥土の土産ってやつだろうな。……そろそろ俺の力も頃合いだ。確実にお前を殺すための力も溜まった。』

「……なら、早く終わらそう。これが最後だ。来いよ、その力のある限りを、全て呑み尽くしてやる。」

『その覚悟は認めてやる。せいぜい生きることに尽くすことだな。死んでから後悔すんじゃねえぞ!『氷炎獄』(ひょうえんごく)!』

混ざりながら炎と氷は壁を造る。

俺を囲うように、徐々に縦にも広がっていく。

ドーム状に形成が終わった時点で、その攻撃の仕掛けが全て発動する。

黒と青の炎と氷が、柱状に全て俺に向かってくる。

氷炎獄の仕掛けとは、混ざった力全てが、対象に襲いかかること。

その威力は少なくとも、過去俺の使ったどのスペルよりも、数倍は上のものだった。

『……これを喰らい、生きてた奴は一人もいない。どうやって、生き延びた?』

その攻撃を俺は喰らった。

完璧に全身を飲み込まれた。

しかし生き延びた。

それは何故か。

ただ防いだだけだ。

ある物を使って。

「こいつを解いただけさ。」

その俺の手にあったのは、一つの箱だった。

幻想郷で、初めて中身が分かった、形見。

その箱の役割を、俺は既に知っていた。

強力過ぎる力の封印。

魔力の塊である石は、父さんの術による封印式。

父さんが育ててきた子供は、皆何らかの理由で魔力、霊力が高かった者だったのだ。

あとは単純、その封印を解いただけ。

過去に俺が開けなかったのは、力が目覚めてなかったから。

幻想郷で開いたのは、力が目覚めたから。

そして中にある封印式を破壊する。

そうすれば、元よりあったはずの力の全てを解放できる。

「俺は、自分本来の力の全てを解放しただけさ。」

全ての柱がぶつかる直前に、魔力、霊力による最大の防御障壁。

ただ力を垂れ流したものを、障壁として展開するのみ。

それが防げた理由だった。

『……くくっはっはっはっはっ!』

「!」

『はぁ……長時間体が保つとは思えない。ぶっつけ本番でやるには危険過ぎる賭けだな。そのまま死んでもおかしくない。異常だよ。お前は。』

「長時間は無理でも、一瞬なら、十分だろ?」

『……そうだな…琴羽、お前の勝ちだ。力はくれてやる。天智と俺は、これで完全に対等となった。使い方は同じさ。説明は……いらないな。その箱は持ち続けろよ?長時間解放しっぱなしじゃ死ぬからな。封印もし直してやるよ。』

「……やっぱりな。最初からそのつもりだったろ。」

『そのつもり?何のことかな~?』

「……嘘が下手な奴め。」

『何にしても俺はお前の力となった。助けるんなら早く行けよ。鵺倒して来い。この世界もお前のものになったんだから、自由に出入り出来るしな。』

「もう来ねぇよ。これからは普通に話そう。外でな。」

『ああ。』

暗闇から抜けて元の世界へ。

現実へと戻る。

(さあ、ここからが本番だ。)

俺は能力を発動して、囲っていた妖怪の手足を、燃やした。

 




多分話の流れから分かると思うけど説明しときますね。最初から獄羅がしようとしてたことは琴羽に能力を与えること、結構前に投稿していた回では獄羅が死んじまうって言ってた回もあります。その伏線回収でもありますね。分かりずらいところはここで説明することにします。今までも分かりずらいところはありましたから。
では。


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第五十八話 忘却への道

めっちゃ久しぶりの投稿ども凛です。そろそろ多分紹介文編集します。完璧に挨拶ですしね!久しぶりの投稿直後に紹介文変わったらこの数ヶ月ずっと考えてたみたいに思いますね?多分間開けて変えるけど紹介文に関しては今これ書いてる時に思いついたものです。言ってる意味分かりますね?つまり何も考えてません!とゆうことで唐突ですがではでは~


現実に戻った瞬間、俺は妖怪を燃やした。

さらに直後に、鵺に襲われている生徒の前に行き、鵺の顎を蹴り上げた。

さらに完全に霊力で能力を発動し、身体能力を底上げした。

その状態で大剣を造り、鵺を薙いだ。

「な!?鵺!?なにをして……」

「『雷槍乱舞』」

雷の槍が鵺につき刺さる。

「!琴羽……?何で…妖怪達は何を……!?」

女は妖怪達の方を見る。

俺により燃え散った残骸を。

「妖怪達が……!」

「お前が誰か、今更だが思い出した。考えればすぐに分かることだった。なぁ?堺(かい)。」

「…………」

「あの時、お前は家に居なかった。だから俺は、お前を殺さずに済んだ。俺は今、それが何よりも嬉しい。」

「……まれ…」

「父さんも母さんも、俺達の……いや、俺のために死んだ。」

「…だまれ……!」

「弁明する気もない。皆、俺が殺した。」

「黙れ!分かりきったことを今更何だ!お前が殺した!お前だ!何もかもお前が悪い!だからお前を殺すんだ!お前の友人を殺すんだ!分かりきったことを言って、時間を稼ぐのもいい加減にしろ!」

「時間稼ぎ……ふふ…確かにそうかもな。」

「何を……!?」

「お前が俺を殺すために、周りの人達を傷つけるなら、俺はお前を許さない。それが……俺の誓いだ。」

魔力と神力が、俺の体から溢れ出る。

それと同時に俺の体は、元の大きさまで変化する。

おそらく力が抑えられた分、力の総量、器自体がその大きさまで縮小したことにより、体が子供の姿まで退化したのだろう。

獄羅の魔力まで解放したことにより、器がそれに合わせて拡大したのだろう。

「俺の能力には、いくつかのルールがある。使える能力は二つまで。三つ以上の力を使えば、対価を支払わなければならない。そして力を使う時の俺の姿は、使う力によって変化する。」

「……何が言いたいの。」

「……今回は、三つの力を使ってやる。後学のためにでも覚えとけ。お前は俺には勝てない。」

「………」

堺はすぐさま鵺と入れ替わるように飛び退いた。

「勝てないなら、勝てるまで戦えばいい。今は退く。それが最善の行動だから。だけど琴羽、必ずまた殺しに行く。それだけは覚えておくといい。」

(鵺は置いて行くのかよ……)

俺は魔力を抑え、使い慣れた神力を雷に変化させた。

『ガアァァァ!』

「……『雷狡狩牙』(らいこうしゅが)」

雷を竜首にして鵺に放った。

竜首は鵺に噛み付き、鵺は瀕死の状態となった。

「解放『付与術消去』」

すかさず堺のスペルを解けるであろうスペルを発動した。

そして死体となった友人達を見た。

死んだ悲しみや、誓いを破ったことに対して、懺悔の言葉も出なかった。

ただそこに立ち尽くした。

今回の騒ぎの原因である俺に、罵倒や非難の声はなかった。

その場にいるほとんどが、悲しみや喪失観に打たれ、怒りの感情など、持つ余裕がなかったからだ。

辺りが泣き声に包まれた。

その雰囲気を壊すように、そいつは現れた。

「お疲れ様。」

 

 

 

 

 

 

 

(?誰だ?お疲れ様だと……?)

突然の乱入者に対して、罵倒の言葉ばかりが浮かんだ。

だがすぐにその考えは改まることになる。

「それと……ごめんなさい。」

「………」

その声は俺の知る人物で、なにより俺をこの世界から連れ出し、そして戻した。

八雲紫その人であった。

「こちらの世界に私達が干渉するわけにはいかなかった……忘れられた存在である私達が、それも能力を持つ者が、この世界で力を使うことは許されない。」

「能力を持つ者の霊力や魔力は、この世界においては力と成さない。世界自体に、大気中に存在する力の量が能力者達の持つ力の総量に届かないから。大気中に存在しないものを集めることは出来ない。故に能力者は自分の体内に残存する力を使うしかない。力が弱く、回復も出来ない状況下で、危険なことをすることもされることも、幻想郷を護るためには出来ない。」

「……まさにその通りよ。貴方のように、使える力がいくらでも在るわけじゃない。どう力をセーブして使っても、能力を使えば回復までに時間が掛かる。その間に幻想郷を襲われれば、霊夢達だけでは危険過ぎる。」

全て分かっていた。

幻想郷から助けが何故来ないのか?

能力を持ち、戦える者は一人もいないのか?

その答えはとうに出ていた。

忘れられていたのだ。

能力という概念そのものが。

存在していなかった。

この世界には。

「俺は……どっちの世界でも厄介者だな。」

「………」

「…くくっ……ははは……」

「………」

「なぁ紫?幻想郷に連れてってくれるか?」

「…え?」

「繰り返さなきゃ駄目か?幻想郷に連れてってくれよ。」

「……この世界を捨てるの?」

「そうだな。捨てるのかもな。……俺は弱い。何も護れない。だから強く成りたい。その為に、俺はここにいちゃいけない。だから紫……」

「………」

「幻想郷に『棄てて』くれ。」

「……!」

紫は涙を溢した。

あの紫がだ。

 

 

 

俺はその日から、自身のいた元の世界を去り、幻想郷へと戻った。

霊夢達には知らされず、紫のみが知る中で、俺は幻想郷へと戻った。

その日から、俺の存在は幻想郷からも、勿論元の世界からも、忘れられた存在になった。

 

 




先に書いときます。次の回この回の数日後の話になります。その後霊夢、魔理沙側のこと書きます。もしくは順番逆で。……あ、何で投稿遅れたかは聞かないで下さい。説明しきれないので。強いて言うなら、病気とカービィです。部屋中カービィのぬいぐるみ!皆もぜひカービィのゲームやってね!……ガチですがむしろカービィのアニメ全話見たのが原因です。それだけではないですが。……では。


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第四章 幻想帰り
第五十九話 地獄での隠居生活


幻想郷……戻るけど琴羽と他キャラとの関わりが思いつかない……まいっか!つっても新しく東方キャラは出すので!そして謝罪は私の義務!一月?空いてすみません。ではでは~


「………」

幻想郷に帰り、約一週間が経過した現在。

俺は呆けていた。

川近くの芝生の上で。

幻想郷には俺の知り合いと呼べる者が思ったよりも多かった。

出来れば霊夢や魔理沙とか、紅魔館の面々には会いたくない。

旧地獄と呼ばれる地底。

妖怪の山。

人里の人達等々。

それらを除く場所というのなら、必然的に俺のいける場所は限られる。

結果、俺は地獄にいた。

知り合いも居ず、知り合いが来る可能性が比較的低い場所。

勿論そんな場所俺は知らなかった。

なら何故そこにいるのか?

完全に偶然だ。

ただ誰もいないところを探していたら、三途の川にたどり着いていた。

まあ三途の川があることに驚きはあったが、一週間前の俺は特に何も思わなかった。

そもそも知らなかったのだから当然だ。

むしろ驚いたのはその後と言える。

鎌を持った奴が急に、しかもかなりフレンドリーに話しかけてきて、そのうえ俺の事情をある程度知っていたのだ。

これで驚かないわけがない。

その女の説明では、現世の者をある程度知ることができる場所であり、また俺は何度も死にかけたことから、要注意人物としてマークされていたらしい。

いや、単純に心配されていたらしい。

そのためある程度の行動は全て知られているようだ。

霊夢達と会いたくない事情も知っていて、しかも会う確率が低い場所ということで、しばらく地獄に匿ってくれることになった。

それが一週間前のことである。

なら何故呆けているのか?

単純に暇なだけだ。

地獄の仕事において俺に手伝えることはない。

かといって他の雑用も特には必要ない。

実質単なる居候となっていた。

その間に力の制御を完璧なものにする、というのも考えたが、力の使用を禁止された。

勿論草薙も禁止だ。

よって今までになく暇な時間をただただ過ごしていた。

誰に禁止されたか?

閻魔にだ。

第一声『とうとう来た』だった緑髪の子供だ。

まあとにかく、何もすることがなくなったことによって、この世界に来る前のことを思い出したのだ。

『つまらない』

俺は睡魔に抗わず、芝生に身を預けたまま、静かに瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

「……寝てるのかい?」

「…すぅ……すぅ…」

少年は静かに寝息をたてている。

「…私も寝るか!」

私は鎌を置いて横になった。

 

 

 

 

「――!……!さ……たら……!…なさい!」

俺は身を寝かせたまま、誰の声なのかを判別した。

もっとも、ここにいることが多いのは俺ともう一人だけ。

会話はそう聞かない。

ならこの声は誰の声か。

身を起こさない理由はそこにあった。

「貴女の仕事はどうしたんですか!魂はまだ残っているんですよ!?だいたい貴女はいつもさぼってばかり―」

鎌を持った女こと小野塚小町が、上司である閻魔こと四季映姫・ヤマザナドゥに説教をされている。

二日目で既に見た光景だったために、特になんとも思わなかったが、説教を一緒に受けるつもりなど毛頭ない。

最悪叩き起こされる可能性もあるにはあるが、映姫はあまり暴力的なことはしない。

(まあ小町が寝てるのを見つけたら起きるまで、しかも怖いくらいの笑顔で真横にいることもあるしな……起こすこともあるが。)

つまり今回、小町を生け贄にしてこの場はやり過ごす。

 

 

 

 

 

 

 

「―――ん?そろそろ日が暮れますね。今日はこれくらいにしておきますが、次さぼれば私の部屋で説教します。さぁ仕事に戻りなさい。」

「は、はいぃぃ!」

小町は走り去る。

「……起きてるのでしょう?琴羽?」

「……!」

「貴方もだらけてばかりではなく、多少なりとも体は動かして下さい。健康に関わります。それと……」

映姫は少し考える素振りを見せ、決心したように口を開いた。

「貴方の持つその刀、素人目でもわかる業物ですね?私が見ている時には使う素振りすら見せませんでしたが……どころか手に入れたことすら分かりませんでしたが、それの使用……いえ、素振り程度は許すことに決めました。」

「………!本当か!?」

俺は直後に飛び起きた。

暇を持て余す時間に終わりが来たと思ったからだ。

「はい。私が禁止していた理由は、能力やその刀を使えば、貴方はまた、危険に身を置くと判断したからです。能力など許可してしまえば、それこそ貴方は貴方ではない別の何かに喰われてしまうと思ったからです。」

「……いつから見てた?」

これは推測に過ぎない。

しかしもし子供のときの俺を、あの事件を見ていたのなら、ここにいるわけにはいかない。

たとえ受け入れられても、俺が許さない。

許されない。

「貴方がフランドールに殺意を向けたあの時から、その方と、それからの貴方を見ていました。いえ、本当のことを言えばそれよりももっと前、貴方が幻想郷に来た時から。」

俺は少し安堵しながら、次の言葉を発した。

「なら分かっているだろう?獄羅はもう俺の、俺達の仲間だ。フランを殺そうとしたあいつはもういない。」

これは事実だ。

今の獄羅は俺の許可無く表に出ることも、力を使うことも出来ない。

本人もそのつもりはない。

「そうですね。ですが私は心配なのです。それが本当だとしても。」

映姫の言うことは全て正論だ。

たとえ見ていたとは言え、誰かを殺そうとした奴のことを、簡単には信用出来ない。

それはもはや、理として世界に存在する考えだ。

閻魔といえど例外はない。

「……なら、約束してくれ。」

「え?」

「もし俺が別の何かに取り憑かれ俺じゃなくなってしまったら……迷わず殺せ……!」

「!」

気のせいか、辺りの花が散った気がした。

 

 




こんな空いた理由なんですがね?特に理由があるわけではないんですよ!春休みに入ったことで、僕の闘病生活がきつくなっただけなんです!基本引きこもり病弱野郎は運動も出来ないんです!学校に行く自転車が一番の運動なんです!まぁ理由はほとんど言い訳なので聞き…見流して下さい。空けてすみませんでした。次回は近い内に出します。では。


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第六十話 草薙の担い手

視点説明~映姫→琴羽。今回ずっと出なかった設定を一つ出します。刀に関するものですね。当然!ある漫画の設定と同じものです。設定パクりは僕の特徴!
ではでは~


私はどうすればいいのか。

先日琴羽に、[殺す]ことを頼まれてしまった。

私は閻魔であり、こと殺しに関してはむしろ管理者と言える。

しかし私が行うのはあくまで審判。

手を下すことを私はしたことがない。

そもそも私が行うのは魂の審判であり、実体ある者と関わることはなかった。

地上に出て、説教をして、それで深い繋がりを持つ者は、ただ一人とていなかった。

宴会にも行かず、休日も遊ぶなどと腑抜けた生活を送らず、仕事をする毎日。

だから私は悩んでいた。

琴羽という実体のある人間を、どう扱えばいいのか。

どう接すればいいのかと……

 

 

 

 

 

「………」

「………」

横にいる小町も、俺も、今の心境は同じだろう。

『……なんでこうなった…』

目の前には、切り刻まれ、穴だらけの修練場があった。

 

 

 

 

 

それは今から約一時間前程のこと……

「~♪お?琴羽じゃないか。どこか行くのかい?」

俺は修練場に向かっていた。

その道中、おそらくまたさぼってどこかへ行こうとしているであろう小町と会った。

「修練場にな。振る程度は許されたが、正直外でやるとどうなるかが分からん。」

この刀、草薙は神からの預り物。

ちょっとした能力があってもおかしくはない。

なかったとしても、外で振れば、風圧で花が散ってしまう。

ここは地獄と思えない程花が綺麗だ。

まぁ映姫が言うには全て魂らしいが、命を散らすことには変わりない。

「修練場ねぇ~あそこは戦うの大好きな殺しが仕事の死神ばっかりだからね~………」

そこで小町は言葉を区切り俺を見た。

おそらく楽しそうな顔してたのだろう。

小町の笑顔はひきつっていた。

「あのー琴羽?やっぱり外で……」

「今の聞いて外行くと思うか?」

「あははー思ってませんよー」

もはや棒読みだった。

(存分にストレスを発散させてもらおう!)

俺は足早に修練場へ向かった。

 

 

 

 

 

修練場に着いた俺は驚いていた。

とてつもない広さに大量の傷痕、しかしその広さを活かせてないと思う程の……人のいなさに。

「小町?血気盛んそうな奴どころか誰もいなくないか?」

結局付いてきていた小町に問いかける。

「……なんでだろうねー……」

目に見えて安堵している。

「……まぁいいか。」

そう言って俺は草薙を抜いた。

刀を使うことは初めてではない。

能力上武器は何でも使える。

それが普通の武器ならば。

草薙は突然光だし、持っていることが出来ない程暴れ出した。

その姿は龍となり、ところ構わず噛みついた。

尾は地面を叩き、牙は地面を噛み続ける。

「………」

「……琴羽、あれは?」

「……分からん。」

収まるまでと俺達はただ見ていた。

 

 

 

 

 

十分後、その龍は力尽きたように刀へと戻った。

「……よし。やっと始められる。」

俺は刀を手に取った。

「あれ見てからすぐに刀を手に取るのかい……」

それを見た小町が呆れていた。

実を言えばこうなることは分かっていた。

あの刀は仮にも神の持つ刀。

どんな力があっても不思議ではない。

その上この刀の前の持ち主は友人である光司だ。

刀本来の力は知らないが、光司が使っていた時の力は予想出来る。

武器は持ち主の能力に関連した力を得る。

俺の雷槍のように、能力で造った武器は当然、鍛冶屋などが打った刀も、使用する時間によっては力を吸収する名刀などは存在する。

単なる本の受け売りでしかないが、あれを見て嘘とは思わない。

光司の能力『海』が刀に吸収されていたのなら、さっきのは持ち主から離れた刀の怒りが具現化した姿なのだろう。

力尽きて刀に戻ったのだろうが、そのうちまた暴れだすだろう。

(持ち主として認めさせるしかないか……)

「琴羽?」

「……ふっ!」

俺は刀を壁に向かって投げつけた。

「ちょっ!?何してるの!?」

「小町、数日間修練場に引きこもるって映姫に伝えといてくれ。」

「へ?あ、ちょっと待っ……」

返事を聞く前に、俺は雷の檻を造った。

修練場の大半を囲う程大きいものを。

「ついでに誰も近付かないようにもしといてくれ。」

間髪入れずに檻へと飛び込んだ。

「琴羽!?熱っ!」

『ありゃ相当やべぇぞ?光司って奴はどんだけ強ぇ奴だったんだよ?』

(仮にも神だぞ?)

「まぁでも、面白そうじゃねえか。」

その言葉の直後、水色の龍がその姿を創りあげた。

「元の世界での知識だが、こうゆう生意気な奴は殴って躾りゃいいんだろ?」

『……歪んだ知識だな。』

俺は雷の槍を造った。

「さぁ…躾の時間だ!」

 

 

 

 

 

それからは早かった。

龍の力は相当に大きかったが、怒りに身を任せてただ暴れ回っている子供のように、攻撃は全て単調なものだった。

「パワーはあってもスピードはない。力はあっても技はない。誰かが従えることで初めて力を発揮出来る。」

『刀ってなそういうもんだ。自立は出来ねえんだよ。たとえ一つの魂でもな。』

「……お前と同じか。……草薙。お前の主はここにいる。偽りだとしても、お前の友に認められた者がここにいる。俺を主と…認めてくれないか?」

『…………』

草薙は首を上げて答えた。

『認めましょう。長き時共に過ごせし我が友が、私を譲るがまでに認めた御方を。その心が、私に喰われるような脆き物でないことを願います。』

頭に直接響くように聞こえた言葉は、その言葉で区切られた。

そして同時に、草薙の姿が刀へと戻った。

俺はそれを手に取り、言葉をかけた。

「これから頼む。草薙。」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから俺は、映姫に説教を食らっていた。

生半可なものではなく本気。

小町はそれを横で見ていた。

映姫の説教は二時間続いた。

 

 

 

「……まぁこれくらいにしておきましょう。……全く。心配して損しました。」

そう言った映姫の顔は、少し笑っていた。

 




草薙擬人化させようか迷ってます。もしくは龍の姿での出演か。どっちでもいいですよね?僕の好きにさせてもらいます。あと戦闘中は意識が明確でないってことを忘れないで下さい!喋った時が本来の草薙なので!では。
4月5日追記 サブタイ変更が反映されていませんでした。すみませんでした。


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第六十一話 琴羽の道

そういえば霊夢と魔理沙の話忘れてたな~……ということで凛です!久しぶりですねぇ~一月位ですか?空いたの。まぁここまで読んでる人少ないと思うから読んでる人なら分かると思います。また古いゲームに嵌まってました。すみません。デジモンワールド初期の奴もリデジも両方面白いのでよかったらプレイしてみて下さい!(宣伝)ではでは~


あれから草薙が暴れることはなかった。

刀そのものとして使わせてくれている。

たまに小町と手合わせする以外、瞑想と素振りしかしていないが。

本気で振ると地面が抉れ、それを見た映姫に説教され、血気盛んな奴らは抉れた地面見て萎縮して、それでも争いもなく、平和な日々が続いた。

(自分が狙われてるとは思えないな。)

その油断が命とりになることを俺は知っている。

しかし、これから会う人物を俺は欠片程も予想していなかった。

 

 

 

 

 

庭で寝ていた俺は、俺を探していた映姫の一言で目を覚ました。

飛び起きたと言ってもいいだろう。

『霊夢が来た』

その言葉通り、映姫の横には霊夢がいた。

今にも泣きそうな顔をした、弱々しい少女が。

「……久しぶりだな。」

俺は顔を逸らして言った。

「……久しぶり。」

霊夢も、顔を逸らした。

空気を読んだのか、映姫はいなかった。

天智も獄羅も、二人がいる気配すらなくなっていた。

「…もう会わないつもりだったのに……なんで来たんだ…」

本心からそう言った。

「………」

「……俺には、この世界にいる資格はない。本当なら、死ぬべきなんだ。」

「…そんな………」

「でも今起きてることの原因は俺、責任を取らなきゃいけないのも俺だ。無責任に投げ出すことは出来ない。」

ここで死ねば、俺はただ逃げただけになる。

救うことも、護ることも、約束を果たすことすら出来ない。

「霊夢。俺はもうお前達に合わせる顔がないよ……だから……帰ってくれ。」

地獄にいるのももう終わり。

後はただ、誰にも会わないように放浪するだけ。

それが俺の道なのだから。

道のない暗がりを進むだけ……

「何言ってるのよ……!」

霊夢が怒気を孕んだ声で叫んだ。

「ここは幻想郷よ!?資格なんていらない!幻想郷は全てを受け入れる!これはたとえ魔理沙でも違えさせない!私が創った楽園を、侮辱するな!」

涙まで流して、霊夢はそう言い放った。

(……クク……幻想郷創ったのは霊夢じゃないのにな。)

でも、道は示してくれた。

暗がりに迷い込んだ俺を、光へ導いてくれた。

(幻想郷は紫が創った。でも、妖怪と争わないためのルールを創ったのは、霊夢だったな。)

「霊夢。」

「………」

「ありがとう。」

「!」

これ以外に言葉はいらない。

意味のない言葉を羅列するなら、たった一言の感謝の方がずっと大きい。

でも、それより大きい罪はある。

今はこの一言以外に、俺に出せる言葉はない。

俺の道は、暗がりから外れない。

贖罪こそが俺の道。

この光を護るためなら、俺は殺人鬼にだってなってやる。

たとえ過去の家族でも、幻想郷を襲うならば断罪する。

罪を背負って生きていく。

これが俺の人生だ。

 

 

 

 

 

それから数分、霊夢は何も言わなかった。

何も言わずに時間が経って、流石の霊夢も帰宅時刻となった。

結局その日、俺は映姫に別れを告げた。

 

 

 

 

 

それから俺は、紫を待つことにした。

幻想郷で過ごすのも難しい。

かといって外の世界に戻ることも難しい。

なら後は、堺の情報を手に入れるために、紫を頼るのが先決だ。

自分から会いに行けないのは面倒だが、他に選択肢がない。

俺は人里の自宅に帰ることなく、湖にいた。

そこが紅魔館の近くとも知らずに。

 

 

 

 

 

「ふぁ~あ…釣りって退屈だな…」

それから十日間、紅魔館の奴に気付かれることなく時間が過ぎた。

ここに住み始めてから五日目で俺は気付いた。

釣りは同じ場所でやってても釣れないと思ったから、湖の周りを探索してたら偶然見つけた。

それからは気付かれないよう、日に日に場所を移しては食料調達(釣り)を続けた。

たまに妖精がいたが、気配を断った状態の俺に気付けるはずもなく、十日間を過ごせた。

紫からの音沙汰なし。

堺からの襲撃なし。

霊夢や魔理沙の捜索なし。

いや最後に関しては三日前に二人を見たからないのか完全には分からない。

それからもずっと、堺に関する何かが起こることを、紫から情報を届くことを、俺は待ち続けた。

 

 

 

 




そういえば堺の名前って出したっけ?またキャラ紹介しますか!……さきに霊夢達側書かなきゃ。近い内に投稿出来ることを投稿者ながら願います。では。


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第六十二話 本物の地獄

お久しぶりでございます~。更新出来なかった理由は説明が出来ません。とにかくいろいろあったということでお許しください。ではでは~


十、二十、三十と時間は経ち、気付けば一月を過ごしていた。

そしてついに、待ち続けた者が現れた。

「一月ほど…だったかしら?気分はどう?」

まるで囚人にでも話し掛けているようだった。

「悪くない。といっても疲労は否めないがな。」

「そう。ついでにそれはどっちの?」

「…想像通りだ。」

つまりは精神的な疲労。

一月することなく隠れて過ごせばそうなるのは当然。

(紫が情報を持ってなかったらまた……頼む。)

「堺については何か分かったか?」

「ええ。」

あっさりと答えた。

どうやら精神的疲労をさらに重ねずすんだらしい。

「それで堺はどこに?」

「別の世界。」

……肉体的疲労もくるらしい。

 

 

 

 

 

「ここに堺が……」

紫から場所を聞いて、すぐにこの場所へ来た。

獄羅の故郷でもあり、死者の集いし場所。

ほとんどの人間が知るその世界……地獄。

それも幻想郷のように優しくない。

獄卒が闊歩する異界だ。

何故堺がここにいるのか。

何故いることが出来るのか。

紫でさえ知ることは出来なかった。

しかし堺がここを拠点としているなら、獄卒のほとんどが敵。

罪人を逃がす断罪人などいないのだから。

そして、その原因とも呼べる者もまた、逃れることは出来ない。

 

 

 

 

 

 

獄卒が行き交う中、隠れながら歩いていた。

獄羅から聞いた話では、獄卒には専用の種族能力のようなものがあるようだ。

いわゆる罪人と呼ばれる者達が分かる勘に近いもの。

つまり俺は、その適用内。

見つかれば、戦闘は免れない。

(厄介な奴らだ。悪いのは俺だけどな……)

歩いてるのはただの道、いや廊下。

隠れる場所はどこにもない。

更に言えば紫もここには来れずに帰った。

つまりどう隠れているのか。

簡単なこと。

能力による透明化。

道具の能力を付加する能力。

今の力量なら使い続けられる。

(堺は既に罪人…俺と同じくどこかに隠れているのか?それとも獄卒を…?特定の部屋に潜んでいるのも考えられる。常に気配を探れ…小さな力も見逃すな…!)

「!」

俺は全力で飛び退いた。

「へえ……この程度の殺気に気付くんだぁ♪…面白そうだねぇ?」

その前に現れたのは、明らかな幼女だった。

(だがこの殺気は間違いなくこいつから出てる…見た目が子供でも中身は化け物だ……!)

「僕のことどう考えてるかすっごく分かりやすいねぇ?楽しめそうだなぁ♪」

会話の内に背後にも獄卒が現れた。

「…一つ聞かせろ。何故俺に気付いた?」

「ん~?何で?気付かない方がおかしいんだよ♪そんな雑魚………いらないね?」

背後から血飛沫の音が聞こえた。

「………?」

反応が出来なかった。

見えてもいなかった。

何も分からないまま、背後にいた獄卒は……死んだ。

「あっはっはっは!滑稽だねぇ?弱いからこうなるんだよ?ははは……君は、どうだろうねぇ?」

「!消え……」

「こっちだよ?」

背中に強い衝撃が走る。

「がっ!」

「ほら次!次!次!次!!次ぃ!」

手、足、腹、首、頭。

人間にとって重要な部位一つ一つを破壊されていく。

「がっあぁ……ごほ!」

「あっれ~?もう終わり~?張り合いないなーつまんないなー。もっと強いと思ってたのにぃ……見込み違いだねぇ?」

その言葉の後、俺はその場から消えた。

文字通り、消えた。

その子供の後ろにいた。

風で造った手刀を首に当て、動作を止めた。

「……どういうこと?今みたいな速度、出したらそれこそ早死にするだけだよ?死にたいの?」

「…はっ!死にたいわけがねえだろ!お前の攻撃受けて、ある程度は理解したさ。お前の能力は、スピードを上げる能力じゃない。」

「へぇ…あんな数秒で分かったんだ。ならいったい何の能力だと言うのかな?」

「お前が行っていた高速移動。そのからくりは、その手だ。」

「!」

その手は、血塗れだった。

「………」

「その血は最初に殺した部下の血。そしてお前の能力は、置換。物質の場所を入れ替えるだけ。高速移動しているように見えたのは、部下の血を散らすことで、移動場所を造ったからだ。俺の足元の血と場所を入れ替えるのも可能なんだからな。正解だろう?」

「…それじゃ説明つかないこともないかなぁ?何故部下の血が手に?他の部位に付着してもおかしくないでしょうに。最初の移動は何と?そもそも、置換が床に着いた液体で出来るの?」

「答えはこいつだろ?」

俺は構えていた手刀を背後に放った。

「ぐああ!」

突然何もない空間から一人の獄卒が現れた。

「お前の置換能力で入れ替わった直後、その獄卒は透明になって身を潜めた。もともとお前の部下は、倒れてるのともう一人いたんだ。透明化の能力を持つ奴がいると分かれば後は簡単だ。自分とともに連れてきた部下と入れ替わるだけだ。透明になった部下がただ他の奴らと同じ場所に行けばいいだけなんだからな。」

「……ご名答。降参だよ。」

降参の意思表示かのように、手を上げた。

「第一お前、いらないとか言って誰も殺してねえじゃねえか。」

「まあ当然だよ。ただの私闘で部下を殺しちゃ、部下なんてすぐいなくなっちゃう。(まぁ重症にはしちゃったけど……)」

「……試してたのか?」

「そうだよ♪」

(そんな私闘で部下は殺さない、だが平気で他人は痛めるのか…)

「そんな顔しないでよ♪僕はただ知りたかったんだよ?彼女が殺したい人っていうの。」

「!堺のことか!?あいつはどこにいるんだ!教えろ!」

「まあまあ…ねぇ琴羽君。もし、自分が絶対に勝てない相手が、誰にでも出来るけど、誰にも出来ない方法で力を手に入れてたとしたら、君ならどうする?」

(誰にでも出来るけど、誰にも出来ない方法?)

「……やっぱりまだ分からないんだね。それじゃ軍配は彼女に上がるかな?あっはっは!」

豪快に笑う。

笑ってから端的に言った。

「彼女はもうここにはいないよ♪地獄にも、現世にも、どこにもね♪六道の道は開いた。追うなら急いだ方がいいよ♪この奥、一番大きな扉へ。」

そう言って彼女は、部下を連れて去って行った。

「六道の道……?」

何も分からないのに考える必要はないと、ただ一つ、俺の行かなければならない場所へ向かった。

『一番大きな扉』、そこを堺は通った。

「絶対に連れ戻すぞ、堺。」

 

 

 

 

 

 

「……行ったみたいだねぇ♪死んだら僕が裁こうかな?二人とも♪……君たちの魂がここに来るのを笑顔で待ってるよ♪」

 

 




最後のちょっとした説明。地獄へは基本死んだ人の魂のみが行く場所とほぼ常識的に知られている。ここでは生身の琴羽はもとより裁くことの出来る存在ではないので、琴羽が隠れて移動してた意味は皆無。というわけでもなく、見つかればゲームよろしく現世に強制送還されるので、琴羽の考えは若干間違っていた。罪人だとしても琴羽や堺を裁く権利はこの幼女にはない。幼女の名前未定。ということで終わります。では。


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第六十三話 六道輪廻

漫画の受け売り全開!ということでこんちはー。僕の投稿開く理由はいろいろなので考えないで下さい。夏休みですし何話かだしますよ。ではでは~


「これか……?」

幼女と別れ向かった先には、確かに巨大な扉が一つあった。

一人で開けられるとも思えない程に巨大な扉が。

(…迷ってられないか……)

「槌」

能力で一時的に腕力を高め、思い切り扉を殴った。

予想通り硬く、壊すどころか動きもしない。

仕方なく開ける仕掛けがないか探そうと扉に近づくと、あれだけ強く殴った扉がひとりでに開いた。

(何だこれ?…まあいいか。)

俺は考えるのを放棄した。

 

 

 

 

進めば進む程わけが分からなくなる。

ある時は怨霊の誘い。

またある時は鬼の啖呵。

様々な情景に移り変わる道の先は、ドス黒い闇。

ゴールなどないかのように続く道を、それでも確かに進めていた。

誰もいない道を。

何もない道を。

俺は遂に渡り切った。

 

 

 

 

そこに人はいない。

強さを求める鬼や魂。

弱きは居らず強者のみ。

それはもはや人ではなく、全てが鬼と呼べん程。

闇の中にあったのは、修羅と呼ばれる武士ども。

『修羅道』

闘いのみのその世界は、血に塗れた俺の世界。

 

 

 

 

修羅を抜けたその先に、やはり人間はいはしない。

獣や虫が溢れ出で、飲み込まんとする邪念のみ。

悪行を成した者が墜ち、果てる姿は畜生と化す。

『畜生道』

その世界は醜い心の行き着く先。

醜い心を持つ俺の墜ちる世界。

 

 

 

餓える者の集まりを、もはや誰も咎めない。

食の全てを奪われ、満ちることのない腹の内。

その全てが罰であり、その姿はもはや人ではない。

『餓鬼道』

決して満たない腹を持つ俺は、この世界にて餓え続ける定めにある。

 

 

 

大悪を成した罪人は、その身全てを引き裂かれる。

人を殺し、外道と成った者に救いはなく、永遠に続く苦しみに壊れゆく。

その世の主の言葉一つで、その苦しみは永遠に。

『地獄道』

数々の友を殺した俺は外道としてこの世界に墜ちる。

 

 

 

たった一度の善行にて、救いを得られる一つの世。

他に救いは一つもなく、この世界のみが清きもの。

『天道』

たった数度人を救った俺は、この世界に昇ることを許された。

 

 

 

 

欲に塗れた者が集い、最も醜い人の世。

禁じられた全てを行い、軽い裁きの在る世界。

鬼以上に醜く、天の者程美しい。

『人間道』

全てが行き着くその先に、帰る道すら存在する。

俺の全てが存在し、俺の全てが消えていった。

今の俺が在る世界。

 

 

 

六つの世界を見て、俺は自分の力を理解した。

天智に獄羅、家族を殺した存在も、全て。

堺が何を求めここに来たのか。

あの子供が言っていたことも。

「………」

『やっと理解しやがったか。遅いにも程があるな。』

(……煩い。)

『手前が逃げ続けた事実と向かい合えよ。家族を殺したのは……お前だろ?』

(黙れよ……)

『獄羅が言う通りだ。向かい合うのは重要だ。』

(お前もか……)

『俺が言ってるのは家族についてじゃない。』

『俺だってそうだぜ?向かい合えってのは家族のことだけじゃねえ。』

『能力とだ。』

『俺達と向き合え。』

『堺を連れて帰るんだろ?』

(……)

『力を使うのに必要なのは理解。強くなるには記憶が必要だ。正確には経験がな。』

『手前には俺達がいる。お前の記憶から出来た存在がな。』

『俺達の消滅をもってお前は完成する。』

『他の四道も俺達に続く。』

『手前の選択だ。とっとと決めろ。お前が望む終わりをな。』

(……決まってる。)

「お前達も堺も、連れて帰る。それが俺の選択だ。」

『……くくっ今になって孤独に恐怖を得たか?今まで全部邪魔としか思ってなかったくせによ。』

「そうだな。孤独は怖い。お前達がいれば、俺は一人にならない。」

『偽物の俺達でか?』

「……今のお前達は本物だ。今までの全てが虚像だったなら、今から始めればいい。」

『霊夢達や元の世界の奴らか?』

「もちろん堺もだ。もう子供の強がりは終わりだ。行くぞ。」

俺は駆けた。

堺の元へ……

 

 

 

『天智、俺達にはなかったな。』

『そうだな。』

『俺達もあいつなのに、全く違う存在に見えるよ。』

『……成長してるってことだろ。』

 

 




獄羅と天智が区別つかない。自分でも思うので気にしない方がいいでしょう。一応獄羅の方が言葉多いからそのつもりで。では。


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第六十四話 ただ一人の家族

五、六ヶ月空いたですねぇー。………ごめんなさい。
僕高校卒業で大学試験もありましたし卒業試験がこれからあるし学費とか教材費とかの分バイトしなきゃだし五、六ヶ月の間暇がなかった上これからもそんな暇じゃないんですよー。だからまた遅れるかもしれませんが、まそんな人気ないし少ない読者さんには謝りながらお待ちいただくことを許していただきます。ではでは~


「やっと……見つけた……」

たった一人、生きていた……生きていてくれた家族を、やっと見つけた。

その姿は黒く染まり、周りには視認出来ない何かを纏っていた。

『あれは失敗だ。お前も下手したらあんなんなったんだぜ?』

『獄羅、どうでもいい話は後にしろ。それに、俺達だって成功なんて綺麗なものじゃないだろ。』

『それもそうだな。』

(煩えよ。)

「琴羽?」

堺がこちらに気付いたようだ。

「あははは♪琴羽だぁ♪」

その声は高揚していてとてもまともには思えなかった。

「見てぇ…この姿、力!これなら貴方にも勝てるよねぇ♪」

『来るぞ!』

堺から黒い炎が放たれ、俺は後ろに飛び退いた。

炎が当たった地面には、多くの針が突き刺さっていた。

(これは……獄羅の……?)

刺さっていた針から蛇が現れた。

『琴羽!あれはまずい!』

「!」

現れた蛇は、空間までも喰らって迫ってくる。

「あはは♪どんな死に方したい?火炙り?串刺し?それとも食べられたい?あはははは♪」

炎、針、蛇、今度はそれらがばらばらに飛んでくる。

「私……今とっても気分がいいの!今まで自分が何怒ってたのか全然分かんないの!でも楽しい♪気持ちいい♪まるで遊んでるみたい♪遊びじゃないのに!あははは♪」

笑いながらも攻撃を続ける。

「……こんなにしたのは俺…なんだよな……責任をとらなくちゃいけないな…」

俺は全ての能力を発動した。

草薙を右手で抜き払い、黒い炎を纏わせた。

更に雷を左手に纏い、槌の力を付与した。

「そうだ!どうせなら幻想郷も壊しちゃお♪全部全部壊して壊して壊しちゃお♪」

「させねぇよ、そんなこと。俺が止めるからな!」

攻撃を草薙で弾きながら、堺の元へと走る。

そして目の前まで迫り、左手を振りかぶった。

「…え?」

二つの能力を付与した拳は見事に堺の頬へ当たり、クレーターを作る程の威力で堺を壁へと叩きつけた。

平気で起き上がった堺の体は、無理矢理動かしているようにぼろぼろだった。

「何で……何で!?これほどの能力があって、何で……」

「お前の不安定な力で、俺に勝てると思ったのか?」

事実堺の能力は全て、獄羅の劣化だった。

攻撃の方法は針と炎と蛇の三つだけ。

天智の能力すら使えない。

「勝たなきゃ…勝たなきゃ駄目…敵を…討たなきゃ…」

正気を取り戻した堺は、黒い炎を纏った。

そんな堺に、説教のように言い放った。

「そんなこと、あいつらは望んでない!お前がそんな姿になることを、あいつらが望むはずがない!」

「……そんなこと……貴方…なんかに……言われなくったって、分かってる。私がしてることが、どんなに悪いことかも、皆がどうしてほしかったかも。全部……」

「なら…」

「でも、許せるわけがない……貴方を許せない……だからどれだけ悪になろうが……殺す!」

炎が大きくなり、堺を飲み込んだ。

地面に血や氷の塊など、様々なものが落ちた。

同時に、周りの炎や針などの全てが動き始めた。

「!何だ!?」

『堺の能力の操作が行われてるんだ!しかも地獄関連ばかり……本体叩かねえと止まんねえぞ!』

(そんな……)

「堺!もうやめろ!それ以上力を使うな!生命力である霊力を、限界を越えてまで使ったら、最悪死ぬんだぞ!」

炎が揺らぎ、堺の顔が少し見えた。

堺は泣いていた。

そして、確かに言葉を発していた。

か細く、今にも消え入りそうな声で言っていた。

 

―――助けて――――

 

「!」

俺は後ろに飛んで距離をとった。

『琴羽…』

「分かってる。あれが堺の本心だ。」

堺は救いを求めている。

それなのに、堺は止まらない。

六道の狂いは変わらない。

止めるにはもう……

「倒す。」

死なない程度に加減をする自信はない。

ほぼ間違いなく堺は死ぬ。

「それでも止める。これ以上堺が苦しむのは…もう見たくない…」

 

 

 

『生き残りの家族さえ手に掛けるか。幻想郷に来て随分と変わったなぁ?天智。』

『変わってないさ。いつも琴羽は、自分が苦しむ選択ばかりしてきた。最後の家族を手に掛けて、一番苦しむのは琴羽だ。』

『俺には分からんな。』

『そうかもな。』

 

 

 

飛んでくる攻撃を全て受けながら俺は進んだ。

針が体に刺さり、炎が体を焼き、蛇に体を喰われ、俺の体はぼろぼろだった。

それでも止まらない。

進み続ける。

これ以上何も失わないために。

何も失わせないために。

俺は半身近くが動かない体で、堺の下へとたどり着き、片手で堺を抱いた。

虚ろな目でいまだに攻撃を続ける堺に向け、か細く言葉を発した。

堺を救うため、解放のスペル以上のスペルを編み出した。

「侵食『全てを喰らいし餓鬼の群れ』。堺の能力を全て喰い尽くせ。」

その言葉の後、周囲に大量の人型弾幕のようなものが俺と堺の周囲を取り囲んだ。

 

 

 

 

やがて堺の体からは炎も針も、何もかもが無くなった。

霊力もなくなり、堺はただの人となった。

そこで俺の力も尽き、意識を失った。

 

 

 

 

 

「やぁ~面白いもの見せてもらったなぁ♪まぁお礼に送るくらいはしてあげるよ♪また会おうね♪琴羽君♪………次は死んだ後にでも…ね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日、俺は幻想郷の自分の家にいた。

あまり過ごすことのなかった家に。

たった一人の家族と共に。

「琴羽ー宴会だから、わざわざ呼びに来てやったぜ?」

魔理沙の声が外からした。

その言葉通り、今夜は宴会だ。

どうやら異変が終わった後は、いつも宴会となるらしい。

これが異変だったのかは定かではないが。

「分かった。行くぞ、堺。」

「ええ。」

 

 

 

 

 

「しかし琴羽?よくそいつ説得出来たな?大天狗とか外のことも全部そいつがやったんだろ?」

「悪いのは俺だ。堺がやったのは単なる復讐。責めないでくれ。」

「誰も責めたりしないと思うぜ?なんせこの世界、今回みたいなことした奴ばっかだしな。」

この世界は平気なのだろうかと思う日常の会話だった。

 

 




琴羽の怪我半身近くない状態でなぜ生きてたかはあの幼女の治療。その後完全に治すのに永琳の実験台。結果数日で完治。琴羽は人間やめてます。そして永琳は神です。……押しはメイド長ですよ?では。


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