ガルパンの素晴らしき世界観を全て無視してコトコト煮込みました。
張り詰めた空気が今にもみほを押しつぶしそうだった。
今この部屋には三人いる。みほと机を挟んで二人、じっとみほを見つめている。
「みほ、今回の事は今、あなた自身で決めなさい」
静まり返った空間に力強い声が響き渡る。
みほは伏し目がちに正面を見る。背筋をピンと伸ばしじっとこちらを見てる。
彼女の母、しほだ。
「お母様」
彼女の横に同じく姿勢良く座る姉のまほが口を挟む。
「私は今みほと話しをしているのです」
しかし、しほは振り返りもせず口だけで制す。まほは何か言いたげだったが一度みほに目線を送るとそのまま黙った。
「あ、あの私」
なんとか声を絞り出すみほ。自分が決めなければいけないことはわかっている。しかし、言葉がうまく出ない。
「私、お母さんの事情も、お姉ちゃんの事情もわかってて、二人に迷惑はかけたくないから、その」
最後の言葉がなかなか出てこない。しほもまほもじっとこちらを向いて黙っている。
拳を痛いぐらいに握りしめ少ない勇気をかき集める。自分が汗を書いているのがわかる。
意を決し顔を上げ、しほの顔を正面から見る。
いつもどおりの無表情。見慣れた顔だがどこか、いつもと違う。
「私、この家を、黒森峰を出ていきます」
再び部屋の中が沈黙に支配される。
永遠に続くかと思った静寂も、小さなため息によって破られた。
「わかったわ、なら好きにしなさい」
それだけ言い残すと、ゆっくり立ち上がり部屋から出ていく。
残された二人は何も言わず微かに震えるその後姿を見つめていた。
ふすまの閉まる音で部屋の中の緊張感が溶けたような気がした。自然と二人の表情も穏やかになる。
「ごめんね、お姉ちゃん……」
「みほが謝ることじゃない。私達にもう少し力があればみほを守ってやれた。謝るのは私達のほうだ」
悔しそうな顔を浮かべる。しかし、今のまほにできることはない。それが歯がゆいのだ。
「それで、行くあてはあるの」
心配そうな目で見つめてくる。みほは少し笑みを浮かべながら頷く。
「とりあえず北に向かってみるつもり。あっちは学園艦も多いし人もたくさんいるから」
「そうか。一応知り合いにも協力してくれるように頼んでみるつもりだ。もしよかったら訪ねてくれ」
「え、でも私と関わるとお姉ちゃん問題があるんじゃ……」
「姉が妹を助けるのに理由などいらん。私が勝手にやっていることだ」
あの人もそうだろうな、っとまほは思ったが口には出さない。どこで聞いているかわかったものじゃないのだ。
「さ、これから忙しくなる。部屋に返って準備しなさい」
そういいまほも立ち上がる。みほもそれに習い立ち上がろうとするが足がしびれてしまっていたうまく立ち上がれない。
そんなみほをみてまほが思わず笑う。釣られてみほも笑ってしまう。
こんな日常も、もうすぐ終りを迎える。
みほはまほの開けたふすまの先を見つめる。
どこまでも続く荒野。遥か彼方に横たわる学園艦。
そんな世界に西住みほは一歩、足を踏み入れた。
プロローグってどこまで書けばいいかいつもわからなくなっちゃいます。
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