日常を取り戻したい主人公たちがおくる。一つの世界。 (空色 輝羅李)
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序章
1話


第一話~テンプレ~

 

 

俺はいま、眼前に聳え立つ建物を眺めている。前まで通っていた学校の校舎との相違点といえば、それはすべてと言えよう。

綺麗さ、装飾の有無、規模の大か小か。そのどれもが、この学校のほうが上だった。

 

「ふーん、ここが俺の通う、新しい中学校か。」

 

何か新しいことがあるのか。それとも、あまり変わらない普遍的な日常を送るのか。

...そんなことを考えて歩いていた。

 

そんな折。

 

「それで龍がさ...」

「おもしろいね、それ。」

 

前方で、おそらく見知った影が、楽しそうに歩いているのを、見つけてしまった。

...こりゃ、後者だな。

 

一人は金髪ロング、一人は黒髪ロング。

確定で知り合いだこれ。

 

「おい、二人とも、俺の悪口大会か?それなら俺も入れてくれよ。」

 

二人が振り向く。後ろに誰がいるのかわかっているのかそれとも否か、は知らないが、何食わぬ顔で、こちらを見る。

 

「あれ、龍。今日からこっちなんだね。」

「なんだ、言ってくれたら一緒に行けたのに...」

 

そんな、嬉しそうに言ったのは、空井千里。幼少の頃からよくつるむ。

小学生の頃は、女子みたいな恰好ばかりしていじめられていた千里だが、俺と話すようになってからは、それがなくなったようだ。俺も切亜も、安堵している。

 

寂しそうに言ったのは、神立切亜。幼少の頃から一緒に住んでいる。

十年前。ある事件が起きた。世界を恐怖に陥れるほど、大規模なものだ。その時に彼女の両親がなくなってしまった。たまたま近くにいたので、一緒に住むことを提案した。

 

「でも、あれほど嫌がっていたのに、どういう風の吹き回しでこっちに?」

 

理由、か。

こっちの中学は、受験によって入れる。魔法の適性試験がメインの。

もちろんそれは簡単に通れるが、いかんせん家から遠い。だから推薦すら無視した。

が、つい先日、前の学校の先生に、

 

「テスト百点しかとらない君は、来年から向こうの学校へ行ってね。手続きは終ってるから。」

 

と言われてしまった。

 

「だろうね。でもさ、最初からこっちにしておけばよかったのに。」

「めんどい。」

 

龍らしい理由だ、そういわれてしまった。

 

今日はそんな学校での、始業式だそうだ。

...忘れ物した。

 

「なんで体育館シューズ忘れるんだよ...」

「東洋の文化に慣れてないんだよ。」

 

そんな減らず口を吐きながら、右手で魔方陣を展開した。

 

「そんな派手にして、いいのかよ。」

 

大丈夫だろ。別に見られても減るものはない。

魔方陣の中から取り出し、魔方陣を消す。

 

「なぁ。早く行こうぜ。退屈だ。」

 

――――――

 

 

今、体育館にいる。

広い...天井高い...女子若干多い...ここが、天国か?

 

「そんなこと言ってたら、切亜が嫉妬するよ?」

 

なぜ切亜が?

切亜を見ると、目をそらし、顔を赤く染める。なんでさ...

 

校長の、ありがたくそ長い話を聞き流し、しゃべっていたら時間が過ぎていた。つまり終わっていた。

 

さて、教室に行こうか。

 

――――――

 

俺は転校生なわけで、教室の前で待機するようにと、先生に言われた。

満を持して、教室へ招かれた。

 

「じゃ、自己紹介してね。」

 

自己紹介、か...名前は聞いただろうし...そうだ。

 

「名前はいらないよね。じゃあ特技を見せよう。「ソラトニック・アロー」」

「「え?」」

「まじか...とりあえずはっと。「リフレクション」」

「「え?え?」」

 

無数の矢を放ち、切亜がそれをはじく。

先生と、切亜、千里、俺以外は驚いていた。

 

「これが特技の、魔法さ。」




書き直しました。文句は聞きます、クレームも聞きます。もとには戻しません。


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2話

第二話~きっかけ~

 

 

「これが特技の魔法さ。」

 

クラスの大半が、腑抜けた顔をしている。

そりゃそうか。いきなり転校生が、道具もなしに詠唱したんだもんな。

 

「それだけじゃねえ、学校で一、二を争うアイドルに、何してくれてたんだ!」

 

そこまで切亜が人気だったとは...

それだけでなく、ここまで怒られるなんて。

確かに切亜は、友達としてもかわいいと思う。友達でなくとも、かわいいと思う。つまり切亜は可愛い。

 

「なんでそんなに馴れ馴れしいんだ、屑が!」

 

屑とまで言うか...

馴れ馴れしいのも当然だろう。ガキの頃から一緒で、同じ家で暮らしてるんだから。

 

他の生徒もこちらを睨むやつがちらほら。

...やらかしたかもな。これからの学生生活が不安だ。

 

「同じ家に住んでいる?ふざけんな、どういうことだ。」

 

聞かれたら答える、別に隠すようなものでなければ、隠したいとも思わないからな。

ざっくりと説明をしたが、そんな都合のいい話なわけがないだの、転校生なんだから家は遠いはずだだの。

まったく、これだから単細胞ゴリラは。

 

「単に、俺の行ってた元の学校が、唐木だからだよ。」

 

すると見る目が変わる。馬鹿を見るような目だ。もう見飽きた、馬鹿らしくなる目だ。

 

「唐木ってことは、お前頭悪いんじゃねーの?」

 

周りの生徒らから、くすくすと笑い声が聞こえる。なんだこいつら、人を馬鹿にするのが好きなのか?

 

「それは違うよ大埜君。」

 

と、俺を擁護する先生。そして、俺にこの学校へ入学するよう手紙を書いたことも伝える。

...ほかの先生まで書いてたらしい。一体何人の教師が書いたんだ。全部ごみになっただけだぞ。

 

その時、教室の扉が開いた。この時間に誰がくるってんだ...

 

「あ、龍!ちゃんと来たのね!」

 

...姉さん。朝言ったのに、信じてなかったのか...

昔から姉さんは、うれしいことがあると俺に抱き着く癖がある。正直人前ではやめてほしい。

 

「姉さん、積もる話も家に帰ってからゆっくり、ね?」

「家でゆっくりお話だなんて、照れるわ///」

 

照れるなよ...顔を赤くしたのか、顔に当たる姉さんの頬が、少し暖かい。

 

じゃあまた家で。そう言い残して去っていった姉さんを見送り、教室の生徒らに。俺は告げた。

 

「これ以上騒ぐな。騒ぎたいのはわかるが。」

「驚きようがねえよ...」

 

満場一致で、ざわつきが少し、落ち着いた。

それで先生も、変わらず落ち着いた声で

 

「よしみんな。もう今日は終わりだから、帰っていいよー。」




書き直しました。元の文章というか文字数が少なかったので短いです。やったね。


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3話

第三話~一息つきたいのに~

 

家につき、扉を開ける。カギはかけていない。結界が常に展開されているので、部外者が立ち入れば警報がなる。つまり無防備だが警戒はできている。なんとらくなことか。

 

「なぁ、晩御飯なににするんだ?」

 

晩御飯...考えるのも嫌になる。朝昼夜と、ご飯を作っていれば、レパートリーはいつしか底を突いてしまう。むしろ何も食べたくねぇ...

が、切亜は純正の人間だ。何かを食べなければ生きていけない。

...人間て不便だな。

だが文句も言えない。俺は吸血鬼だし、たまに血液もらってるし、ことらからも対価を支払うのは、当然の義務だ。

 

晩御飯ねぇ...

 

「ポトフなんてどうだ?」

 

そういうと、めちゃくちゃ喜んだ。ポトフ好きなのか...

 

俺がキッチンへ向かうと、切亜は自室へ向かった。おそらく、道具でもいじるのだろう。

魔力限界開放(エレクトリック)。今の時代のやつらは、ほとんどがこれがないと魔法が使えない。不便な体になったんだよな...

 

ガチャリ。玄関の開く音がする。二人分の足音だ。

 

「「ただいまー」」

「お帰り。紗那、姉さん。」

 

紗那は妹だ。そして。いつもより楽しそうに、話したいことがたくさんあるという顔をする。天真爛漫で、最高にかわいい妹だ。

相反するような、学校とは違った冷淡な目で、それでも凛とした、落ち着きのあるかわいいのは姉さんだ。最高にかわいい姉さんです。

 

「お兄ちゃん!お姉ちゃんに聞いたんだけどね、今日から同じ学校に通うんだよね!」

「あ、あぁ。そうだよ。」

 

それがうれしくてたまらないらしい。今だぴょんぴょんしてる。かわいいな。

 

「そうか。そんなことで喜ぶなんて、流石は我が可愛くもない妹だ。」

「そんなこと言って...後で後悔しても知らないよ?」

 

...なぜ素直にかわいいといえないのか...

 

「ねえ龍。今日の晩御飯は何かしら?」

 

ポトフであることを伝える。鍋補指差し、もうすぐで火にかけるところだということも。

すると、花が咲いたかのようにいつも通りの明るい顔になる。こっちもこっちでかわいい。

 

「いいわね、それ!今から楽しみだわ!」

 

...ポトフはおかずじゃないのか。メインなのか。ご飯炊くのやめとこうかな...

 

そういえば、今日は姉さんの帰りがいつもより早い。疲れた顔(ただし普通の人が見れば怒っているような、先ほどまでの冷淡な顔のことである。)をしていたし、なにかあったのだろうか。

 

「そうなの。あなたが来てからと言うもの、先生達全員が、まいあがちゃってて。」

 

ソーナノカー。

 

よし、ポトフを作ろう。

今日はジャガイモ大きくしよっと。

 

ジャガイモと人参とパプリカの下処理はもちろん済ませる。ジャガイモの芽なんて食べれたもんじゃないからな。多分。

 

ジャガイモを四等分に切って(人数分のジャガイモ。今日は四個だな)、にんじんは乱切り。キャベツはざくざく、パプリカはさいの目。玉ねぎをくし切りにする。ウィンナーに適当な切り目を入れて、鍋に水と一緒に入れていく。

コンソメなんかで味付けをして煮詰めたら完成だ。

盛り付けるときにスライスチーズとか乗せたら、うまそうだな...

 

―――――――

 

ごちそうさまでした。その一言が染みる、このために飯を作ってる気がするぜ。

 

「ほら、風呂入って歯を磨いてこい。」

「「「はーい。」」」

 

そんな元気な返事をして、三人は脱衣所に向かった。

一人だけ扉から顔を出し、小悪魔のような笑みを浮かべている。

 

「覗いてもいいのよ?」

「ばーか。誰が覗くか。」

 

まったく。姉さんという人は...

さて。食べ終わって食器や調理器具が散乱するシンク。しっかり洗っていると時間が足りない。

ならすることは一つ。

 

「ラスト・ワールド」

 

時が止まる。宇宙塵ですらも動くことはできない。俺が動けと思ったものは動くけど。

これは魔法ではなく、俺が保持している固有スキルだ。俺以外の誰もラスト・ワールドを使うことはできない。

この止まった時間で洗い物でもすれば、時間が足りないなんてこともない。なんて便利なんだ。

 

「ふー、終わった」

 

時を動かし始める。先ほどまで止まっていた時計の針も、はじくような音を再び鳴らす。

布団でも敷こうか。

 

―――――――

 

「いい風呂だった!」

「いつもと変わらんだろうに。」

 

切亜はたまにジジくさい。若いのに...中学生なのに...

 

「そろそろねましょうか。」

「うん!お休みおにいちゃん!」

 

...さて、シャワー浴びて寝るか。

 

―――――――

 

みんなが寝てるところを歩くのって、踏みそうだから怖いんだよな。

 

「んー...おやすみ、龍...」

 

なんだこの可愛い切亜は。ありえない。いやまあかわいいのは事実だしいつもなんだが。

 

「おやすみ。切亜。」




頑張って書き直していってます。
伸びたらうれしい!


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4話

第四話~出会い~

 

「...きろ...おき...!起きろ!」

「ん...あと五年寝たい...」

 

そんなことをぼやいたら、たたき起こされた。理不尽である。

吸血鬼である俺に、睡眠時間はとても大切なのに。

 

切亜曰く、ご飯ができているらしい。まあ俺が寝坊したら誰かが作るのも当然か。

鉄アレイのように思い瞼をこすりながら、リビングへと向かう。

 

「あら、おはよう。ご飯が冷めないうちに食べてね。」

「姉さん...とうとう、電子レンジが使えるようになったんだね...!」

 

そうなの!と嬉しそうにしているが、俺としては少し皮肉を込めたつもりだった。

...純粋な姉さんには、通じなかったようだな。

 

「ふぁぁ...おはよう、お兄ちゃん ...」

 

なんだこの可愛い生物は。寝起きの妹が毎日かわいい。というか四六時中かわいい。

幸せとはこのことを言うんだな。

 

...なぜ目を閉じてこちらに顔を近づけるわが妹よ。

 

「おはよーのちゅう...」

 

しません!!!かわいいけど!妹に手は出しません!

 

「ブー...ケチ。」

 

ふてくされてしまった。俺悪くないよね?

 

「ご馳走様。おいしかったよ、冷凍食品。」

「それはよかったわ。ねぇ、学校の準備はすましたの?」

 

当然である。前日に時間を止めて行っていたのだ。

 

さて、部屋にでも戻ろうか。少しくらいゆっくりしたいし。

 

―――――――

 

まぁ、なにもなしに部屋にもどるわけではない。ゆっくりしたいのは本当だが、朝から気配を感じている。家の結界をくぐるやつは久しぶりなので、驚きを隠せない。

若干の恐怖を持ちながら、語り掛ける。

 

「そこにいるのは誰だ。今なら遊び相手になってやらんでもないぜ。」

「あれ?ばれちゃった?」

 

おどけた風に、少女が姿を現す。まさか家の中にいたのか...外からだと思っていたのに。

まあ?魔力を感じてはいたし?中にいるかもなーって思って?なかったです。

 

「...お前は誰だ。何でここにいる?」

「そうだね...私、霧咲雷花。あなたの師匠になりにきたの!」

 

...師匠なんて求めてない。そもそもそれは理由になっていない。

だがそうだな、こいつの魔力は...

 

「理由なんている?」

 

...なぜだ。俺は今、思ったことを、口に出しただろうか。

答えは否である。

確かにたまに、考え事を口に出してしまうことはあるが、それは意識的にしていることだ。だがしかし。今は完全に黙りこくっていた。

心を読まなければ、できやしない芸当だ。

 

「ふふ、君には、この能力を教えないとね?」

 

...心が読めるのなら...

 

帰れ。

 

「やだよ。それに、どうせ後で会うんだよ?」

 

知るか。帰れつってんだ。

 

「おぉ...なかなか怖い顔...仕方ない。」

 

また後で。そう言い残して、雷花という少女は去っていった。

 

...霧咲?どこかで聞いたことがあるな...

まぁいっか。




書き直すのしんどいっすね。


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5話

第五話~問答無用~

 

とりあえず、ひと段落したので眠りにつきたいところである。ざっと十年ほど。

しかし、それをよしとしない同居人が一人。

 

「もーそろ行こうぜ、龍。」

 

...もーそろとはなんだ、もーそろとは。ちゃんともうそろそろといいなさい、まったく。

ま、確かに時間的にはいい頃合いだ。今から家を出ればいい感じの時間帯にいい感じにつくだろう。いい感じに。

 

「そういえば、今日の時間割って...」

 

そういって確認する切亜。なぜ忘れるんだこの野郎。

...切亜は女子だからやろうじゃなくって尼か?

いつまでも自分のカバンを漁って時間割の書かれた紙を探すのを不憫に思い、俺の神を見せる。最初からそうすればよかったかもな。

 

「今日はこれだよ。」

「お、サンキュー。えーなになに?」

 

書かれている時間割は、一時間目国語、二時間目英語、三時間目道徳、四時間目HR、五時間目と六時間目に、魔法詠唱。

 

が、今日は始業式の翌日ということもあってか五時間授業、そして道徳の授業もHRの授業も、クラス交流となっている。

...いらねえだろ交流会。

 

「あー...今年から午後の授業は全部魔法詠唱なんだよな...」

 

そんなあからさまに落胆されても...

 

周りに青いオーラをまといながらも、思い出したことでもあるのか、自室になにか取りに行く。

 

「これがないと、だめだよな。」

 

魔力限界開放(エレキトリック)を持って、楽しそうにしていらっしゃる。

 

...俺は普段から使わないし、持ち合わせがないのに。

 

「オレが予備持ってくから安心しろよ。」

「サンキュー。必要だったら借りる。」

 

まあ、壊れないことを祈るが。

 

ということで、二人で家を出る。姉さんはもう出ているし、紗那はいつも最後に出ている。学校に行かないこともあるようだが。

 

...周りの目線がすさまじい。切亜が人気というのは、本当に本当のことだったようだ。集団でうそをついていないことも分かった。

だが、切亜だけでなく、俺にも目線が来ている気がする。朝になにかし忘れた気もするので、それが原因だろうか。

 

「間違いなくそれが原因だね。髪、隠せてないよ。」

 

...認識疎外の魔法をかけるの忘れてたのか。

切亜の指摘がなかったのは、普段から見ているから慣れていた。だからこそ気づかなかった。

流石に髪の毛で片目を隠しているやつを見つけたら、笑うしかないよな。悪い意味で。

...一応理由も、あるのだが、急いで認識疎外の魔法をかける。

 

「そういえば、今日はあれがあるね。」

「あぁ。そうだな。」

「「クラス交流会」」

 

―――――――

 

地獄である。クラス交流会なぞ、ただの地獄である。そんなことを考えながら歩いていると、昨日の生意気な生徒...大埜湧廼に出会った。めんどくさそう。

 

「あ、お前...」

 

おはようと切り返したら、

 

「尾は...じゃねぇ!何喰ってたらそんな呑気に」

「うるさいなぁ...消すよ。」

 

やれるものならやってみろ。そう言われたらやるしかない。力の差を明確に、わかりやすく教える必要がある。

人を簡単に支配するには、恐怖が一番手っ取り早い。欠点こそあれど、楽だし確実性も高い。ヒトラーも恐怖政治に頼ることがあった、らしい。この世界にいたわけではないので、事実かどうかは知らないが、どっかのパラレルワールドの歴史書に、書かれていた。つまり、恐怖で人は支配できる。

...一時的に。

 

「ソラトニックアロー」

「...ひっ!」

 

無数の矢が、目の前で自分を串刺しにする。その寸前ですべてが止まっている。

最高に怖いだろうな...

 

「君、俺に勝てるの?」

 

背後から、耳元でそう伝える。

湧廼は、膝から崩れ落ちる。痛そうなほど、鈍い音が廊下に響いた。中学生といえど、オーガの肉体はかなり重い。つまりダメージがでかい。

ちょっとやりすぎたかもしれない。

 

「だ、大丈夫...オエ...」

 

今にも吐きそうじゃないか。今までどんだけ平和に生きてきたんだ。

 

「...俺がお前を、みくびっていたようだ。すまない。」

 

そんなこと言われてもなぁ...トイレに行かれたらちょっと何も言えないかもなぁ。

 

――――――

 

 

現在、三時間目である。先生は

 

「宿題作るし、みんなで勝手にやっといてね。」

 

と言って、職員室へ向かった(と思われる)。

 

...転校生への注目とは、いつまでもつのか。それは大体、一週間にも満たない。

これが嫌いなのである。

 

「世界一めんどくさい時間だ!」

 

この叫びが、誰かに伝わることを祈る。




書き直せた...(2021/06/11現在)


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6話

第6話~哀愁漂うあの子の背中(前編)~

 

 

転校生という立場は、そんなにも貴重なのか。なぜ俺に対してそこまで質問がぽんぽん思いつく。

 

「前の学校はどうだった?」

「普通」

「勉強はどれくらいできるの?」

「普通」

「...そういえばさ。」

 

ん?こいつは確か...大埜か。こいつまで質問してくるのか...

 

「何で俺らみたいに、魔力限界解放(エレクトリック)を使わないで魔法使えるんだ?」

 

...なるほど。確かに歴史や種族なんかの違いに疎いなら、知らなくても普通か。

今のこの世界では、最古代についてなんて全くやらないし、種族ごとの違いはほとんど気にしなくてもいいようになっている。

理由が理由なだけに何とも残酷だ。今起きている争いのほとんどが、種族間ではなく、国家ごとでの争いだ。

だから種族について詳しい必要はほとんどない。だからそれを勉強する必要がない。

...話がすごく脱線しているな。

 

「俺の魔力の保有量がお前らより多いんだよ。」

「あ?どういうことだ?」

「お前らが一回でも魔力限界解放(エレクトリック)を使わないで魔法を詠唱すれば、すぐに魔力酔いする。もしくは魔力がゼロになって死ぬ。」

「そ...そうだな。」

「でも俺は、何回だって打てる。つまり、お前らとは天と地ほどの差があるんだよ。」

「んだと?」

 

そういうとものすごくすごんでくる。流石オーク。ちょっと気迫があるけど、でも。怖くはない。

 

「なんだ?また殺されかけるか?それとも――殺してやろうか。」

「ごめんなさい」

「「「あの大埜が引いた!?」」」

 

仲良しかよ。声そろえてみんなで言うな...

 

...オークともあろうやつが、みっともない。

 

「おい、さっさと顔上げろよ。」

「...あぁ。」

「...時間余裕あるみたいだし、皆で自己紹介でもしていこうか。」

「そうだな」

「「「クラスを誘導してる!?」」」

 

だから仲良しかよ!?

 

 

――――――――

 

 

チャイムが鳴る。つまり俺の昼寝ができる時間だ。ご飯食べるけど。

 

「龍!飯食べるぞ!」

「御飯といいなさいせめて...そういや、ここは屋上解放されてるらしいな。」

「そうだぞ!あっ!じゃあ先行ってるぜ!」

 

やんちゃ坊主か。まったく...でも、そこもまあ可愛い気も...はぁ。

 

「はぁ。千里?いくぞ。」

「はは、そうだね。」

 

...階段めんど...

そんなこと考えながら移動してたら、屋上へ着いた。

...不正なんてなかった。いいね?

 

「お?龍!こっちこっち!」

「はいはい。でもその前に、ちょっと用事があるやつがいるみたいだ。」

「...ほら、すぐだったでしょ?」

 

...そんな小悪魔みたいな笑みを浮かべられても...

というかストーカーじゃんやってること。

 

「あーはいはい。朝の変態野郎ね。」

「そうそう朝のー...って野郎じゃない!」

「変態は認めたな。」

「ぐぬぬ...」

 

いやそんなしてやられた感出されても。

そもそも朝にいきなり部屋から出てこられて弟子になれなんて言われても..いう方がおかしいだろ?

 

「さっさと帰れ、変態が。誰がお前の弟子になるか。」

「...残念だなぁ。君の魔力、とっても興味深かったんだけど」

 

...俺の...魔力...?

 

「決めた――――殺す」

「アハッ!そうこなくっちゃ!!」

属性融合(タイプシェア)光と水。限界覚醒(オーバートランス)

「...なかなか本気だね?それでいいよ。」

 

間合いをつめるために結界で足場を作り、地面と平行になって飛ぶ。

すぐに目の前に飛びつき、詠唱を行う。

 

「怪刀「斬鉄」、雷刀「蓬莱」」

「...二刀流...それに、持ち方も独特だね。」

 

独特といわれるのも無理はない。クナイのような持ち方をしているからな。

...大きさがすごく違うけど。

 

「私もちょっと本気出そうかな?雷刀「雷雲」」

「...めんどくせえな!!!剣舞「アサルトダンス」」




中学生の頃の自分を殴りたい()
どっかで見たことある程度で使ってた刀の名前を変えましたごめんなさいまじで
2023/03/11更新


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7話

第7話~哀愁漂うあの子の背中(後編)~

 

 

 

柊龍夜「...コロすのはヤメてヤル、アトアトめンどいシナ。」

霧咲雷花「え?あ、あぁ、ありがとう、うれしい...かな?」

柊龍夜「...「剣舞 アサルトダンス」」

霧咲雷花「また違う技か...捌きずらいよほんとに。」

雷花はそういうと、火炎斬を強く握りしめ、地を蹴り上げ高く飛び上がる

霧咲雷花「「炎火竜 獄炎ノトモシビ」」

柊龍夜「ワスレたか?おれハイま、水属性ヲ持ってるぜ?」

霧咲雷花「覚えてる。でも、それが?」

柊龍夜「チ、「水龍 全テヲ飲ミ込ム法円ノ器」」

霧咲雷花「わーお、火が消されたよ...」

柊龍夜「っ...たりめぇだよちくしょー。まさか無傷とは...」

霧咲雷花「お、話し方戻ったね。疲れちゃった?降参する?」

柊龍夜「するわけねえだろ...くそ、「ラスト・ワールド」」

そういうと、まあ、時が止まるわけですよ(語彙力)

柊龍夜「まったく、これで休めるって、思うじゃんふつう...なんで動いてるのかい?霧咲雷花さんよ...」

霧咲雷花「さて、なんででしょう?」

刹那、雷花は姿をけした-------と、おもっていると

霧咲雷花「「「だって、きみのじかんはおそいもの。ふふ♪」」」

柊龍夜(まずい、魔力の消費量が少ない魔法...あれだ!)

柊龍夜「...「縛 塵 風 臥」」

そう唱えると、あたり一帯に、湿った空間ができた。

霧咲雷花「無駄だと何度言うことになるのか心配だよほんとに。」

雷花はそういうと、上えと飛び上った。

柊龍夜「けっ、それこそ無駄だと...教えてやる!「炎神風瑠」」

霧咲雷花「な、なにこれ、上に行っても行っても...空が見えない...?」

柊龍夜「何言ってんだ、空はあんなに青いのに。お前の下にあるぜ?」

霧咲雷花「へ?...あ!」

雷花が気付いた時にはもう、空へ落ちていた(ごいりょ(ry))

柊龍夜「さすがに死なれちゃこまるな。よっと。」

霧咲雷花「え?///」

柊龍夜「んだよ、なんか文句あるの?」

霧咲雷花「そ、そうじゃないし!た、ただちょっと恥ずかしいだけだもん///。」

柊龍夜「しらねぇよ、降りるまで待てよ。」

霧咲雷花「うなー///」

数分後

柊龍夜「よく考えると、テレポすればよかった。」

霧咲雷花「このっ///」

柊龍夜「授業はじまる。じゃぁなー...子猫ちゃん。」

霧咲雷花「...いや待って、弟子になってくださいじゃなきゃ兄に怒られちゃうから。お願い」

柊龍夜「...わーったわーった、放課後うちに来やがれ。」

霧咲雷花「ありがとね、イケメンくーん。」

柊龍夜「んー、イケメンじゃねえけど、まぁいっか。」

神立切亜「おわった?じゃぁ授業いこうぜ!」

柊龍夜「あ、お前いたの?」

神立切亜「ひどいなおまえ...」

少年少女移動中...(運動場)

大埜湧廼「あ。」

柊龍夜「うぃーす。」

皆(((馴染むの早い!!)))

???(先生)「はい、みんな静かにねー。これから魔法詠唱の授業を行います。エレクトリック出してね。」

柊龍夜「先生、なくてもいいですか。」

先生「うん、いいよー。じゃぁまずは、火炎魔法の復習から。各自でやっていってください。」

柊龍夜(火力の調整についてはいわれなかったし、適当でいっか。)

そのとき、学校の上に...凄く大きい(語彙力の無さ)炎が、渦を巻いて現れた。

(龍夜、切亜、千里、先生除く)皆「「「な、なにあれ...でかすぎだよぉ...」

先生「...ごめんね、言うの忘れてたけど、弱めにね?」

柊龍夜「...はい、すみません。」

神立切亜「ハハ、龍、やりすぎww」

空井千里「切亜、笑うのはよくないよ」

柊龍夜「...!なぁ、それ、ちょっと見せてくれないか?」

???「え?別にいいけど...」

龍夜が、???(哉痲 那斗(かなめ くにと))のエレキトリックを手に取り、魔法陣を展開、中から工具を取り出した。

哉痲那斗「あ、あのさ、どうして壊れてるって、わかったの?詠唱した後ならまだしも、見ただけでなんて...」

柊龍夜「...切亜が、いつも壊して帰ってきたからね。」ボソッ

哉痲那斗「...そうなんだ。」

大埜湧廼「おい、おまえ、さっきのすげぇな。」

柊龍夜「そうかな。普通でしょ?」

大埜湧廼「普通じゃねぇよ...」

先生「じゃぁ、そろそろ先生と、実戦にしようか。今日は...柊くん、君にお願いするよ。」

柊龍夜「ん、すみません、待ってもら先生「待ちません。「銃雷」」

柊龍夜「ひでぇ先生だこと。結界「悲壮ノ華鉈」」

先生「流石です、柊くん。でも、まだ終わりません!スキル「風雷の極意」」

先生()は、緑と黄色の風を纏い、

柊龍夜「...スキル「クウモノクワレルモノ」召喚、テンペストドラグーン」

...こいつは右手に線のようなものがはしり、化身のようなものを召喚した。

先生「魔法を続けて発動するとは...やはり君を選んでよかったよ!」

柊龍夜「...何をおっしゃっているのかわからないですが、あまりいい気はしませんね。」

先生「まだ知らなくていいよ。さぁ、終わらせよう!「サンダーブレード」」

柊龍夜「魔法で剣の形を...あなたまさか..いや、今は必要ない。全力でかかってください。」

~~~数分後~~~

柊龍夜「ハァ、ハァ...先生、やりますね。やはり...」

先生「ゼェ、ゼェ...あなたも、なかなかですよ。さて、皆さん、今日の授業は終わり!気を付けてかえってね」

神立切亜「やっぱお前凄いな!」メヲキラキラ

柊龍夜「はいはい...」

先生「あ、柊くんと空井くん、それから神立さんはのこってね」

柊龍夜「...あいつどうしよ」

先生「心配しなくていいよ?その子もくるからね」

柊龍夜「...いやな予感がするぜ..」

 




長らくおっまたせー!久しぶりに投稿したので、間違ってるとこあるかも...
これからも長い目で見守ってください!
あと、哉痲那斗くんには、エレキトリックを返しています。描写しきれませんでした。
許してください何でもします(何でもするとは言ってない)


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8話

第8話~変わる日~

 

 

 

空井千里「ねぇ、あいつって誰?」

柊龍夜「...そのうちわかるさ。ろくでもねぇ奴だがな。」

先生「...あの子が来る前に、自己紹介させていただきますね。柊君。」

柊龍夜「...大体わかってるが、いいだろう。雷竜の使いめ。」

先生「おっと、ばれましたか。では、名前だけでも。僕の名は、霧咲雲英(きりさききら)と、申します。」

柊龍夜「...雷竜の、化身なら召喚できるが、本体は忙しいっていって、契約かわさないから、さっさと会いに来るようにいってくれ。」

霧咲雲英「わかりました。ですが、その必要はないですよ。」

霧咲雷花「ヤッホー。遅くなっちゃた!」

柊龍夜「...あーそーゆー...」

霧咲雷花「ごめんね~だましたみたいな感じになったけど、そゆこと。」

柊龍夜「...おい、雷竜。最近化身すら俺の召喚魔法に応じねぇ。どういうつもりだ?」

雷竜「すまない。いやなに、最近、魔力を大きく消費する出来事があってね。」

柊龍夜「事情があったにしろ、伝えるべきだろうに。礼儀もなってないのか?」

空井千里「まぁまぁ、伝えられる余裕がなかったんじゃないかな?」

雷竜「・・・」

柊龍夜「..たくっ。んで、何の用ですか、竜人さん?」

霧咲雲英「それについては僕から。実は、ある魔法、スキルなどを覚えてもらいたく。」

柊龍夜「...それだけか?」

霧咲雷花「フフフ、違うよ♪あと、一つ二つあるんだ。」

雷竜「ひとつは、われと本格的に契約してもらいたい。」

柊龍夜「...いいだろう。あの時の条件...覚えてるな?」

雷竜「あぁ、もちろんだ。」

柊龍夜「もう一つは?ほかにもあるんだろうが...」

神立切亜「まてまて、オレをほっておくなよ...」

空井千里「邪魔したらだめでしょ、切亜。」

柊龍夜「..すまないな、切亜、千里。」

霧咲雲英「..コホン、もうひとつは、いろんな世界から「オーブ」を取ってきてほしいんです。」

柊龍夜「...おもしろそうだな。で?オーブってなんだよ。」

霧咲雷花「それはね、雷竜、木竜、火竜、水龍、氷竜の、力てきな?」

柊龍夜「適当だな...それを集めろと...」

霧咲雲英「そうです。できますか?」

柊龍夜「...できないことはない。だが...」

雷竜「わかっている。ほかの竜人であろう?」

柊龍夜「あぁ。多分、契約を白紙にされる。」

雷竜「心配はいらない。話はつけてある。」

柊龍夜「..なんていってた?」

雷竜「仕方がない、すきにしろ、と。」

柊龍夜「...魔力を消費する期間が、ずいぶんながかったようだな。」

雷竜「...すまない...早速で悪いのだが、契約を「断る」なに?」

柊龍夜「...忘れたようだな、条件を。だが、オーブとやらは、集めてやるよ。」

雷竜「...そうか。」

柊龍夜「条件を思い出してからだ、契約は。じゃ、帰りますね、先生?」

霧咲雲英「え?あ、あぁ。きをつけてね。」

切亜・千里「「...さよならー」」

雷竜「...困ったことになった。」

 

少年少女帰宅中~~~

------------------------------------------------------------------------




ハイというわけで、こんな厨二くさい感じに(もとから)なりましたが、終わりです。
次の次からは、二次創作作品にて、投稿いたします(多分)
でわでわ。


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9話

第九話~めんどくさい~

 

 

 

-------柊宅----------

神立切亜「...なぁ、聞いていいか?」

柊龍夜「何をさ。」

神立切亜「お前が、雷竜に出した条件をよ。」

柊龍夜「...どうしても知りたいか?」

神立切亜「あぁ、どうしてもさ。」

柊龍夜「...一つだけ教えてやるよ。専用スキルと魔法を教えろ、ただそれだけだ。」

神立切亜「専用スキル...お前、この世のスキル、魔法は覚えてんじゃねぇのかよ。」

柊龍夜「まぁ、99%はな。あとは雷竜のものだけだ...と言いたいとこだが。」

神立切亜「?」

柊龍夜「あいつが言っていた、あるスキル、魔法はそれとは別。俺の知らないものさ。」

神立切亜「お前に知らないものがあったなんて...それのほうが驚きだよ...」

柊龍夜「誰にでも、完璧なんて言葉は当てはまらねぇよ...」

神立切亜「ま、まぁ、そりゃそうだわな。」

紗那「ただいまー!おにーちゃん!」

柊龍夜「ん、おかえり」

神立切亜「...はええよぉ」ボソッ

柊龍夜「なぁ、晩御飯何がいい?」

神立切亜「んー、肉じゃがとか。」

紗那「わたしはねー、アスパラベーコン!」

柊龍夜「食べ合わせが悪いな...アスパラは別で炒めようか。」

紗那「わかった!じゃぁ、宿題してくるね。」

柊龍夜「ん、早く終わらせろよ。」

紗那「えー?無理だよ、だって、お兄ちゃんみたいに頭よくないもの。」

神立切亜「そうかぁ?オレからしてみれば、結構頭いいと思うけどな。」

柊龍夜「...お前の学力はもとから低いだろうに。」

神立切亜「いわせておけば!!」

紗那「痴話喧嘩もほどほどにね?」

神立切亜「ミャッ!ち、ちわわわ」

柊龍夜「あ、意味が分かってないから同様してるふりしてる。」

紗那「面白ーい!」

柊龍夜「早く宿題をしなさい。」

紗那「あ、いっけなーい!」

柊龍夜「...切亜、お前も宿題しとけよ。」

神立切亜「そんなのあったけなー」

柊龍夜「...晩飯」

神立切亜「今すぐ速攻終わらせるさ!誰だ宿題なんて知らないといったのは!」

柊龍夜「お前だよ。ったく、威勢だけはいいよほんと。さて、1時間以内に作らないと宿題が...煮込みながらでいいかな。ははは。」

霧咲雷花「しんどそうだね。手伝おうか?」

柊龍夜「...しれっと入ってくんのな...頼むよ。で、何の用?」

霧咲雷花「特に用は...あ、えっとね?まずどこの世界へ行きたいかなって思って。」

柊龍夜「...決めれないな。まず、ほかの世界へ行くってのがピンとこねぇ。」

霧咲雷花「そりゃそうさ、誰だってそうなる。でも、君にしかできないんだ。お願い。」

柊龍夜「...男って、どこまで行っても女に弱い気がする...まぁ、そこまで言われて断るわけにはいかないんだよなぁ。」

霧咲雷花「えへへ、ありがとう。で、どこがいい?」

柊龍夜「てゆうか、選べるのか。なんでもいいのかな?」

霧咲雷花「もちろん!小説、漫画、アニメ、ゲーム...どこでもさ!」

柊龍夜「まじかよ...」

霧咲雷花「まじもまじ!大まじだよ!ささ、早くご所望の世界を!」

柊龍夜「...まぁ、慌てんなよ、もう少しくらい、話そうぜ?」

霧咲雷花「うーん..別にいいけど、何話すの?」

柊龍夜「一つ、お前の、いや、お前らの持つスキル...正確には違うが、“ソレ”は、零度と、刹那の組み合わせ...かな」

霧咲雷花「...ちょっと違う。でも、零度の属性はあってるよ。正解はね、零度とエターナル...永遠の組み合わせ..だよ」

柊龍夜「...Eternal zero...ん?永遠のゼロ...どっかで「それ以上はだめだよ?」アッハイ」

霧咲雷花「しかたないよ。だって、適当に考えたあいつがいけないんだ。」

柊龍夜「メタイわ!...あの時言っていたスキルのほうがこれか?」

霧咲雷花「うん、そうだよ。でもどうして?」

柊龍夜「もう習得している。未完成だが。」

霧咲雷花「え!?それは...未完成でも普通の人には無理だよ。」

柊龍夜「へー、そうなんだ。」

霧咲雷花「いや、へーって...」

柊龍夜「え?だって、俺吸血鬼だよ?」

霧咲雷花「へー、そうなのってえー!!」

柊龍夜「気づいてなかったのか。面白い魔力とか言ってたからてっきり...」

霧咲雷花「いや、魔力だけでわかるわけないよ。うん」

柊龍夜「そうかな。たいてい分かるだろうに。」

霧咲雷花「君たちはそうだろうけど...」

柊龍夜「いやいや、Eternal zeroでわかると思うんだが。あれ万能だし。」

霧咲雷花「それほんとに未完成?私より扱えてるよ。」

柊龍夜「...お前は、人の心が読めるだろ?」

霧咲雷花「うん、そうだよ?というか、元からそういうスキルだしね!」

柊龍夜「俺はできない。レベルと系統が違うからね」

霧咲雷花「系統なんてあったんだ。」

柊龍夜「何で知らないんだよ...俺のは、[氷・炎]だが、お前のは[氷・雷]だ」

霧咲雷花「なんでわかるの...」

柊龍夜「今見てるから..と、この話はいったん終わりだ。」

霧咲雷花「もう少しききたかったのに」ブーブー!!

柊龍夜「ほかに聞きたいことがあるからな。」

霧咲雷花「ほうほう、それは?」

柊龍夜「他の世界とやらにいってる間、この世界も時間経過があるのか?」

霧咲雷花「あるにはある。けど、君がほかの世界から帰ってきたとしても、一秒後とゆうことになるよ。」

柊龍夜「...俺はどういう歳のとり方なんだ?」

霧咲雷花「体や脳は、歳をとらないよ。成長を無理に止めるからね」

柊龍夜「反動が大きいんだろうな」

霧咲雷花「それに関しては、雷竜さんがね?反動は儂が請け負う!!っていってたよ。」

柊龍夜「そうか...それは..少し申し訳ないかもな。」

霧咲雷花「少しなんだ...それと、成長しないと記憶面が心配だっていう理系さん?」

柊龍夜「どちらかといえば...理系なんかもなぁ。」

霧咲雷花「心配ご無用!なんせ君は吸血鬼だからね!何千年と生きる君たちにはいらないほどに記憶容量が「しってるよ。」そ、そうだよね..ははは。」

柊龍夜「...とりあえず大丈夫かな。あ、アスパラ炒めないと時間がない。肉じゃがも、煮込み切れるかな..」

霧咲雷花「ふっふっふ、まかして!時間を進めるなんておやすいごようさ!」

柊龍夜「そうか、じゃぁ頼むよ。」

霧咲雷花「いいのいいの!でも、早めに決めてよ。異世界。」

柊龍夜「へんな略称をつくるな...あ、きめた。」

霧咲雷花「えっ!どこどこ!」」

柊龍夜「また明日言うよ。じゃ、宿題を..の前に、血をくれないか?」

霧咲雷花「?私のでいいなら。」

柊龍夜「助かる。」

霧咲雷花(吸血鬼ってたしか、血を吸う理由があったような...?なんだっけ...)

柊龍夜「」カプッ

霧咲雷花「あ、思い出した。」

柊龍夜「はひふぉ?」(なにを?)

霧咲雷花「吸血鬼が血を吸う相手に対しての意味。」

柊龍夜「?なんだそれ。」

霧咲雷花「あー、本当に知らないんだ...えっとね?そのー...」

柊龍夜「さっさと言えよ。」

霧咲雷花「..き...ていみ...」

柊龍夜「...もっかい」

霧咲雷花「う、だから!...好きって意味!」

柊龍夜「知らなかった。」

霧咲雷花「じゃぁ、はなれてよ~///」

柊龍夜「それは無理だ。血を飲まないと死にかける」

霧咲雷花「あぅ」

柊龍夜「てなわけで、ご馳走様。」

霧咲雷花「は、早いね?」

柊龍夜「...そうかな、それより、飯食ってくの?」

霧咲雷花「え?いいの?」

柊龍夜「あぁ、まだお姉ちゃんは帰ってきてな「ただいまー!」神がかったタイミング。聞いてくるよ」

霧咲雷花「わかったよ。」

ナアナアオネエチャン...ヨルゴハンアイツモイッショデイイカナ?/モチロン!ニンズウハオオイホウガイイモノ!

霧咲雷花「まさかあいつと呼ばれるとは...」

~~晩飯~~~~~

紗那「わーい!アスパラだ!...ベーコンは?」

柊龍夜「そういうと思って、やいといた。ほら」

紗那「流石私のお兄ちゃん!ありがとう!」

柊龍夜「はいはい、どういたしまして。」

霧咲雷花「...楽しそうな家庭だね。」

柊龍夜「...」

紗那「...」

魅倚奈「...」

神立切亜「そ、そうだろ?結構楽しいぜ?」

霧咲雷花「え?でもこれ..明らか地雷踏んだら不発弾!って感じだよ?」

神立切亜「どういう例えだよ...」

柊龍夜「まぁ、表面的には楽しそうな家庭だろうな。」

霧咲雷花「なんか..ごめん。」

紗那「仕方ないよ。人なんだからさ。」

柊龍夜「正確には違うらしいぞ。亜人だそうだ」

紗那「へー、亜人かぁ、どんな味かな?」

柊龍夜「やめとけ、麻痺がつく。」

紗那「もう飲んでたの?」

柊龍夜「あぁ。属性の耐性持ってないと飲めないから。」

紗那「...なら仕方ないかな。」

霧咲雷花「...いつの間にそんなに調べてるのさ。ほんとに。」

柊龍夜「飲んだ瞬間」

霧咲雷花「怖いなぁ..あ、そういえばさ、妹さんとお姉さんも、吸血鬼なんだよね?」

柊龍夜「あぁ。兄弟姉妹だっけ?だから。」

霧咲雷花「そうだよねー。じゃぁ、切亜は?」

神立切亜「純系の人間だよ。」

霧咲雷花「純系なんだ。珍しいね。」

柊龍夜「この世界では確かにな...ご馳走様。食器はつけといてくれ。」

皆(いうほどいない)「はーい」

~~龍夜の部屋~~

柊龍夜「三年くらい寝たい...けど、その前に、明日半強制的に異世界へ行く。が、不幸中の幸いだ。世界は選べる。今のうちにその世界について勉強、もとい、ログインせねば。」

霧咲雷花「寝なくていいの?」

柊龍夜「...驚かない自分がいる。なれって怖いな。...寝すぎはよくない、それに歯も磨いてないし宿題もまだ、さらにはお風呂もまだ。ねるわけにゃいかんぜよ」

霧咲雷花「ダサい語尾だね」

柊龍夜「うっせぇ。とにかく、もう帰れよ?心配するだろ、えっと...雲英だっけ?が。」

霧咲雷花「大丈夫だよ?それに、明日までここにいるしね?」

柊龍夜「...布団ないよ。」

霧咲雷花「ご心配なく。君の布団にはいるから」

柊龍夜「やめろ。変態」

霧咲雷花「大丈夫だって、何もしないから」ニヤニヤ

柊龍夜「ソファでねるか。」

霧咲雷花「泣いちゃうぞおい」

柊龍夜「おー怖い怖い。布団なだけありがたく思えよ。」

 

しばらくの間、沈黙の時が流れた。二人は、その沈黙を楽しんでいるようにも見える。

柊龍夜「そういえばさ、吸血鬼が血を吸う理由...少し間違えてるよ。」

霧咲雷花「え?そうなの?じゃぁ、どんな意味なのか教えて。」

柊龍夜「簡単にいって、一種の契約さ。」

霧咲雷花「んー...どんな?」

柊龍夜「服従...といえば聞こえが悪いが。まぁ、受けるかどうかくらいは決めれるけどな。」

霧咲雷花「へー...あれ?なんで知ってるの?」

柊龍夜「..アイジャック。自分の考えることを悟られないようにしていた。結構扱うのに気を取られるから、あまり使いたくはなかった。」

霧咲雷花「そうなんだ。それにしても、主従の契約...普通逆だよね?」

柊龍夜「お前を師匠と認めた俺が間違い...いや、認めた覚えなんてない。」

霧咲雷花「いやもう認めてよ...」

柊龍夜「俺より弱いくせに。」

霧咲雷花「何言ってるの?手加減だよ。手加減。」

柊龍夜「あっそ。ほら、さっさと決めろ。」

霧咲雷花「はぁ、仕方がない。受けるよ。」

柊龍夜「まじで?普通断るだろjk。」

霧咲雷花「そうかな。面白そうだし、何より、何事も経験になるからね。」

柊龍夜「...面白いやつだな。でも、めんどいから、また今度な。ほら、そろそろ風呂入ってきたら?」

霧咲雷花「ん、そうさせてもらうね。」ドアバタン

柊龍夜「ほんと、面白いやつだな...眠い。歯磨きしてたら風呂から上がってくるだろうし、もうひとふんばりかな。」

~~少年少女就寝準備中~~

柊龍夜「あぁー。ソファでねるなんて...ひさ..zzz」

神立切亜「相当眠かったんだな。」

柊龍夜「あうー..やめ..あぶな...ら..」

神立切亜「なんの夢だよ」

柊龍夜「切亜..エクスプロージョンはやめ..とけ.よ」

神立切亜「それは、お前だろ...おやすみ、龍。」

~~翌日~~

柊龍夜「よく寝た。だが、最悪の朝だ。」

霧咲雷花「ちょっと。ひどくない?」

柊龍夜「ほら、さっさと行かせてくれ。サクッと終わらせて、この世界で寝たいんだ。」

霧咲雷花「はいはい...昨日のあれ..でいいの?」

柊龍夜「あぁ、そこがいいんだ。」

霧咲雷花「わかった。いってらっしゃい!」

-------------------------ー-------------------------




ハイというわけで!どんどんわけわかめな方向へいってますが、次回は、他作品扱いでこれの続きということを前提で投稿します。
なんの世界へいくか、予想しておいてくださいね!
デワデワ!
(ちなみに下に他作品で続きのリンク貼ります)
https://syosetu.org/?mode=write_novel_submit_view&nid=171240


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10話

「やっとこっちに帰ってこれた...
「作者が言ってたんだが、こっちの作品文章が小説っていうより台本じゃん!だと。
「てわけで。文章形態が今までとは変わるってさ。少しはましになると思うぜ。
「あと、続けて見るのもいいけど、できれば[艦これ]の方を見てから来てほしいなと思ってるんだとさ。
「...あぁ、燃やすよ。また。


第二十一話~サブタイトルやめるね!~

 

ああああああああああああああああああああああああ!

 

 

 

痛い。体の全てが。これが移動の反動か。うん。確かに肉体の成長に関しては進んでいる様子がない。

...残念だ。記憶は残っている。

 

「お帰り、龍夜。」

「...あぁ。さっさと時間戻してくれ。」

 

わかったよ、といいながら、雷花は世界の時の流れを元に戻す。魔力の流れ的にも、完全に時間が進み出しただろう。

俺は学校へ向かう準備をしていた。

 

「ねえ、何か渡すもの、あるよね?」

「ない。」

 

彼女は驚く。まあ仕方ないことだろう。だって、渡して貰えると思っていたのに、あっさりnoが返ってきたんだ。

無論、何も無しに渡さない訳ではない。

俺はオーブについて、少し考察をした。これを回収するときに魔力に変換し、ストレージに詰めたが、明らかに魔力量が多い。俺のストレージの1%を占めたものは久しぶりだ...といっても、今までの人生が短いからという訳ではないが。

おそらくこのオーブは、意図的に作られている。魔法統括管理塔のBクラス職員が動いていたのも、その考えを助長させるに足りる。

そもそも魔法統括管理塔とは何か、だったな。

この世界には魔法が溢れ、魔力が溢れている。それを悪用する輩も当然いるし、悪用する気が無くとも、悪い方向に進むことがある。それを防ぐ、もとい、魔法使いの制圧を目的とした、全十二賢者が作った組織。

SからEまでの六段階で構成されている。Sクラスは賢者...今はそれの末裔ともいえる、子孫が就く。世界にある魔法はもちろん、政治そのものを握っていると言って差し支えない。Aクラスは魔法を扱うことに長けているだけでなく、魔法の研究も行っている。Bクラスは魔法を扱うが、Aクラスほどではない。よくAクラスにこき使われる。CクラスとDクラスは機械の整備に設備の整備...雑用だ。Eクラスは一般人でもなれるが、捨て駒...実験によく使われる。なくなった人は数多い。

そんな中で、Bクラスが俺を、いや。オーブを狙っていた。つまり、Aクラスが狙っている。もしくは隠匿したがっている。

...そんなもの、誰かに渡せるわけがない。俺は管理塔のやつを信用しないからだ。

 

「...まあいいけどね。君なりの考えがあるってことでしょ?」

「当然だ。龍神どもが何をしでかすのかも気になるし、これは俺が持っておく。」

 

さて。朝ごはんでも作って食って食わせていこう。

 

 

 

――――――――――――

 

学校の授業は面白くない。唯一面白いのは、五時間目か六時間目にある魔法詠唱の時間だけだ。

だが。また先生の相手になるとは思ってもなかった。

 

「龍夜君。お帰り、とでも言っておきましょうか。」

「ならば先生。あなたには馬鹿め、と言ってやる。」

 

こいつ...笑ってやがる。

向こうのほうで見てる切亜は面白そうに、そしてキラついた眼差しで見ている。湧廼はあくびしながら見てすらいない。千里は女子と話してる。那斗はエレクトリックが壊れてないかを気にしていた。一部の生徒は切亜と同じく、釘付けになっていた。

 

「さて、今回は本気で行きましょう。といっても、私はやはり、これがないと詠唱ができませんがね。」

 

といいながら。先生は剣の形をしたエレキトリックを構える。

...何故剣だよ。前は銃だったし。複数持ってたらそれはそれで楽だけどさ...

 

「じゃ、行きますか。先生。結界「悲壮ノ華鉈」展開「魔力の貯蔵庫(ゲート・オープン)」」

「ふむ...周りを囲んで、被害が出ないようにして、無数の剣を召喚しましたか。」

 

することはわかってるぞ、と言わんばかりにこちらをにらむ。んなこたぁ知ってるっていうより、大前提なんだよなぁ...

俺は無数の剣を飛ばす。それを全て避けるなり硬化したと思われるエレクトリックではじいていた。

...無策ではないようだが。さて、俺も仕掛けていこう。

 

「結月刀「付喪」属性付加(エンチャント)「烈火」」

「ほう...?」

 

俺は剣を構え、先生の懐に突っ込む。

...まあ、はじかれたけど。

 

「無策。無策にもほどがあります。あぁ、すみません、間違えました。愚策です。龍夜君。」

「知ってますよ。だからこそ。俺はあなたを斬るだけだ。俺にはこれしかできないが、できることをする。雷刀「蓬莱」「身体強化・腕」」

 

右手に持った剣を握りしめ、強く凪ぐ。先生は意表を突かれて呆気からんとしていた。

...もちろん寸止めで終える。

 

「私には手も足も出させない、ということですか。」

 

二っと笑い、こちらを覗いてきた。こちらも二っと笑い返す。

 

「あなたには、とっておきを見せて差し上げます。展開「晴天ノ霹靂」」

 

展開されたものは、剣である。俺のゲートより多くの剣を空へ広げていた。

 

「やばいですか?これ。」

「もちろん。やばいですよ。」

 

先生から遠ざかるために後ろに飛びのく。それと同時に自分の周りに魔力を霧散させ、障壁を作る。

飛んでくる剣は豪雨のごとく降り注ぐ。が、障壁にぶつかれば無駄である。魔力で構成されたものは無論魔力として吸収できるから。

...たまに本物混ざってるけど。

 

「まだ終わりではありませんよ。展開模写「クウモノクワレルモノ」」

 

なるほど...

身体強化の上。周りにある魔力という魔力を食う。つまり、俺の障壁が消える。

 

「さぁ、どうしますか?このままでは、結界も消えますよ?」

 

結界には無駄に魔力を割いてあるので、あまり問題はない。

が、問題は本物の剣のほうだ。これは剣で弾き、避ければ問題ではないが、なにぶん数が数だ。

策は、あるがな。

 

「水龍「全テヲ飲ミ込ム法円ノ器」」

 

剣が発現するところにこれをおいておけば、落ちてこない。

が、クウモノクワレルモノが発動されている状況下なら、ちょっとした時間稼ぎにしか使えない。

 

「さてと。先生はそろそろ飽きてきたんでね。決めます。雷龍「創世ヲ呼ブ雷ノ杖」」

 

...雷龍の技、か。あいつ...取っ捕まえて文句言いまくってやろう。

で?これをどうしろと。魔力を思いっきり込めた雷なんて食らえば俺、焦げるぜ?あーもー。いいぜやってやる。付喪を高々と掲げて、避雷針にする。雷全部魔力変換してやる。もう知らん。なんも知らん。

 

「これ全部魔力に変換したら、俺の勝ちってことには...」

「しません。」

 

だめだった。全く酷いこと。まあ、今も腕が痛いし付喪も悲鳴をあげている。早く終わってくれ...!

 

「そろそろ終わりにしますか。私の魔力が足りなくなってしまう。やはり効率が悪いですね、()()は。」

「使いどころが違うんだよ...まあいいか。早く終わりにしたいんです。形態(トランス)聖職者(プラスター)」」

 

先生は驚いた表情をこちらに見せた。あくびをしていたやつも、女子と話していたやつも、自分の所有物を気にしていたやつも、きらついた目線を向けていたやつも、全ての目が驚きに変わる。

 

「これはこれは...先生もびっくりです。形態変化と来ましたか。魔力の質も段違い。素晴らしいです。」

 

別にあんたに誉められたって、うれしかねえよ。

 

「当然です、先生。私は早く終わらしたいのですから。刻印「救済「灯成」天照の照命」」

「龍夜君...それは...あなたの存在まで変化させるものですよ?」

 

先生の言う通りだ。救済を体に刻印したとき、「正義」に対して強い執着を持つ。自分にとっての正義を誰かに押し付けるのではなく、その場において最も適切な正義を導き出す。悪があれば、それすらも正義に変えようとする。

使用を続けた場合、結果的因果もしくは蓋然的必然により、存在性が神に近くなっていく。

そして、プラスターは、救済と併用したとき、場合によっては疲れはてるそのときまで、蓋然的必然が強くなり、存在性は完全に神そのものになる。

つまり、俺は神だ。

 

「理「この世全ては善なり」」

「...ええ、そうですね、このままでは、私の魔法も、意味がない。全て消されるのですから。」

 

そうだ。悪意の有無に関係なく、すべてを善に変化させる、つまり無に帰す。だから、攻撃しようとしても、意味がない...これを無視する方法もあるにはあるが。

 

「私の敗けです。貴方に勝てるのは当分先のことになりそうですね。」

 

先生が降参の合図をだし、エレクトリックをストレージに仕舞った。

 

つまり

 

俺の勝ちだ。

 

―――――――――

 

「相変わらずすごいな、お前。」

「なんでさ。お前もできるだろうに。」

 

湧廼が首を強く横に振り、俺にはあんな早く考えたり動いたり、詠唱ができないという。

脳金ゴリラ湧廼君は羨望だか恐怖だかわからない目を向けてきた。ま、当然だよね。

...一応言っておくが、俺は詠唱を省略している。ただし法律には違反しない程度に。本当ならば無詠唱で行いたいのだが、捕まりたくはない!

例えばいつも使う付喪を出すのにも、長ったらしい詠唱がいる。言うだけで出てくるようになるまで、使い慣れる必要がある。体に馴染めば馴染むほど呼び出しやすくなる。

 

普通の魔法でも、使い慣れたら言葉や単語で出せるようになる。

 

「お前でもこれはできるだろう?バン」

 

と、火の球を打つ。

 

「流石にできるわ!バン!」

 

と、ちっちゃい火がひょろひょろと飛び、消えた。

今のは失敗だ、ともう一度したが、結果は火を見るより花火を見たい気分にさせられた。

 

ま、切亜もさすがに言葉でなければ詠唱ができないみたいだが。

 

「そういえば那斗。()()の調子はどうだ?」

「柊君!ごめんね、この前直してもらったのに、また壊れちゃった。」

 

...へぇ?

俺は勝手に那斗のステータスを見る。魔力の数値は普通の(ただし現状のこの世界でのだが)ようだ。

問題は魔力の質か...

 

「このエレクトリックは、那斗の魔力に適していないようだな。」

「え、そんな...!」

 

なぜそんなに目を引ん剝くのか...

理由を尋ねれば、おじいさんの形見らしい。そりゃあ使いたくなるのもわかるが...

 

「わかった。少し改造してもいいか、それ。」

「...うん。任せるよ。」

 

...エレクトリックの回路の中に、魔力を術式に変換する構造がある。そこで魔力が回路にあったものでなければ、ショートすることがある。この回路が受け付ける魔力の幅を増やせば、壊れることはないだろう。

それと、魔力をブーストさせる炉心もいじっておこう。所持する魔力が少ない那斗は、これがないと自分の身を守ることができなくなるかもしれない。

 

「できたぞ。多分これで大丈夫だ。」

「ほんとだ、壊れない!ありがとう!」

 

数度試し打ちを(湧廼に向けて)して、魔法を使えるようになったことを喜んでいた。

湧廼は切れそうになってたが。

 

「なあ龍、オレともやろうぜ!」

 

と、切亜がキラキラという効果音とアニメーションが付いていそうなほど元気にこちらに駆け寄ってくる。

千里とやれよな...

 

「疲れたんだ、明日でいいか?」

「あぁ!約束な!」

 

こういうところは、まあ...可愛くないこともねえ。

 

「...雷花。撃たないから出てこいよ。」

 

そして、透明化の魔術を解いた雷花がバレた?と言いながら現れる。バレバレだ、魔術を使用する際の魔力が駄々漏れなんだよ。

 

「何か用?」

「雷龍に会う。」

 

なんだよ、そんなに驚くなよ。




どもっす。
こっちの更新は約三年ぶりですね...かなしきかな。
これからも頑張ります!
デワデワ


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11話

第二十二話

 

俺は今、雲の上にいる。厳密に言えば雷龍の作る結界の中で、雲の上に立っているように思うだけだが。

さて。俺が雷龍に言うことはいくつもあるが、まず何より大事なのは、

 

「オーブを作ったのは、なぜだ。」

 

雷龍は返答に詰まる。しばらくなにかを考えていた。

その間俺はいくつかの理由を考える。

最悪の場合も...想定はしている。

 

「力を分散させ、世界の均衡を保つためだ。我々龍神族の力を、悪用せんとするものがいるからな。」

 

...悪用ときたか。なるほどそれなら、合点がいく。

BクラスもといAクラスがオーブを狙っているのだから、それくらいはないとな。

Sクラスも疑うべきだろうか。

...あそこには、親父がいるから、まだ関わりたくないのだが。

 

考えるべきことはいくつかある。一人の龍神がいくつのオーブを持っているのか。また、散らばっているのがどこか...まて、散らばってる場所は俺が行きたいと願う世界なのだろうか。そうでなければ、今回手に入れたこのオーブ、偶然あったということになる。

...なるほど、俺に回収させたいってことか。

 

俺はもとから木龍と雷龍以外の龍神とは完全な契約が済んでる。そんな俺に、力の一片を渡した方が、都合がいいってわけか。

 

「それと。君の願いをかなえよう。」

 

願い...ね。

 

「その前に。オーブは何個ある。」

「...一人一つだよ。」

 

一人一つかぁ...

五個かぁ...

 

骨が折れるなぁ。しかし、あと四回異世界に行けるのか!

 

「あ、一年に一回しか行けないから気を付けてね!」

 

雷花...そりゃないぜ...

 

オーブを作るのに時間がかかるのか、術式の組み立てに時間がかかるのか。

 

...俺のしらない魔法はそのほとんどが禁忌である。それを知りたいとは思わないが、実態が気にならないといえば噓になる。帰るときの魔法陣を読み込んでは見たが、根源が見つからない。どのような派生で、それぞれの式に与えられた意味が何で、どのように発生するのか、それがわからない。

 

「して。君の待望していたものだがね。結果を知っても、後悔しないか?」

 

当然だ。そのために、捨てる覚悟も、知る覚悟も。

...向き合う覚悟も、できている。

 

 

恐らく雷龍は、忘れたふりしていたんだな...

 

 

 

 

俺が雷龍に願ったこと、それは。幼少のころに遡る。

 

俺が小さい、4、5歳のころだろうか。母が亡くなった。その少し後にあいつに出会った。そして、その理由を知りたいと願った。

その答えが、今。帰ってくる。

 

それは、親父の研究が原因であった。

親父の夢は、原始宇宙、そして原始魔法の再現だった。

親父は魔法統括管理塔のSクラスの中で、一番上の人間であった。だが、他のSクラスからの信頼は薄かった。そしてある日、禁忌の原始魔法についての研究を糾弾された。その代償として、俺たち家族が狙わることになる。その時母が、俺と、魅倚奈と、紗那を守るため、一番恐れていた存在の、禁忌魔法に手を出してしまった。「全ての愛をここに(クリサンセマム・モリフォリウム)

一種の呪いである。これのおかげで助かったのは助かった。

そしてその時、母は一言と一つを残していった。

一言、「あなたは世界を、二人は龍夜を守って。」

一つ、俺の体に、母の刻印入りの血を混ぜた。

重すぎる。魔法なんか使わなくても、特大の呪術である。干からびるぞコノヤロー。

そして、母は...魔力の枯渇、管理塔のやつらの攻撃による疲労により、亡くなった。

 

「...なるほどね。大体予想通りだ。よかった。」

 

よかった。これで気兼ねなく、管理塔について調べて、手をかけることができる。

 

「ねえ龍夜。刻印入りの血液って、どういうこと?」

 

刻印。そもそもの疑問はここからだ。

今日の授業でも使っていた刻印。これは、体にある魔力に対して、直接魔力を流し、術式を描く。その種類によって存在性が変わる。描く人によって癖が違うので、誰の刻印かはすぐに分かる。

母の刻印は、その時描かれたものだが、質は一級ものだ。内容はすごく簡単なもので、魔力を徐々に増やす術式、外的要因による死を防ぐ術式、被魔法攻撃時のダメージを抑える術式、呪いを根絶する術式(ただし外的要因によるもの)、大気中の魔力を自身の魔力に変換する術式。

なかなかに守られている。母強し。

そして、俺は吸血種であり、母は純粋な人間だった。血液型など関係なく、俺の血との相性はよかった。だから、母の特性刻印入り血液は俺の血中にほどよく、馴染んだ。

 

「...まぁいい。雷龍、さっさとお前のスキルをくれ。」

 

雷龍は、重く、うなずいた。

 

 

――――――――――――――

 

 

このスキル...「創世ヲ呼ブ雷ノ杖」を得るということは、雷龍と完全な契約を結ぶという意味だ。

 

...これで、あとは木龍に伝えるだけ、か。

今日はもう遅いし、帰ろう。

 

家に帰るとき、後ろに雷花がついてきていた。理由を問いただすと、「あのスキル、未完なんだよね?」

...心眼。心を研ぎ澄まし、極限状態まで集中力を高める。うまくいけば、心も読めるようになる。それに、相手のステータスを掌握することもできるので、相手に合わせた戦闘を取ることもできる。

つまり最強。

 

が、今の俺は完全なまでに未完成である。あと一歩のところまで理解はできているが、それを具体化させることができない。まあそれでも、そこそこの機能性はあるのだが。

 

「君はまだエターナルで止まっている。だから、心眼に昇格させる必要があるの。」

 

それを教えてもらえると...悲しきかな、こいつは今、戦闘態勢に入っている。見て学べということか。

エレクトリックは使わないようだ。それを見るに、こいつもなかなかの魔力を保有しているらしい。

 

雷花の魔力は面白い。周りに放出している魔力は、体から出たり入ったりを繰り返した、循環型の魔力だ。大気の魔力を自身の魔力に混ぜ込み、増やしている。

 

「結界「雷霆ノ床庭」」

 

まずい。相手に有利性を取られてしまった。あいつは雷属性の魔力が体に流れる。結界が自身の属性に適していれば動きやすいし、魔法の威力も上がってくる。

 

...俺の属性は無だ。どれにでも馴染むが、得意なものはない。そして、得意な属性がないので、俺はどんな状況でも相手より強化の恩恵がない。

俺が作る結界は属性に関係なく強化させることはない。むしろまわりを守るための結界だから、あっても意味はほとんどない。

 

「戦闘中に心眼を使うのは慣れないけれど、それでもはっきりわかる。あなたは私より、強い。」

 

だからこそ、これくらいのハンデはもらってよね、なんて笑顔で言われてしまった。

 

仕方ない。お受けしますよこの喧嘩。

 

「トレース、タイプ「雷」Overtrance。爆破斬。結月刀「付喪」」

「相変わらず、二刀なんだね。いいよ、私も私らしく、魔法で応戦するからさ。」

 

そういって雷花は詠唱を始める。術式を口で唱えているが、あまり聞こえない。読唇術でもできたらいいんだが。

...勘違いかと思ったが、どうやら違うらしい。雷花は今、両手を重ねて、俺に向かって魔法陣を展開している。その魔法陣が、だんだんとでかくなっていた。

これ、普通に死ねるな。

 

「「銃雷」」

 

その一言で、魔法が完結したと知り、その一言で、魔法が放たれたことが分かった。

雷花との距離はそこそこ離れているので、まだ確認できる。この銃雷、でけえ。

いくら雷をトレースしたといえど、結界と相まった高濃度なもの、吸収するには扱いが難しい。

 

「だったら俺は、斬る。属性付加(エンチャント)「轟雷」」

 

相手が雷なら、こちらも雷である...トレースしたし当然だけど。

目の前に雷が飛んでくる。もうすぐで俺の射程...切っ先圏内だ。

だが。斬らなくてもいいだろう?

 

俺は跳ぶ。真上に。

 

俺の斜め下に雷があるのだ。であらばすることは一つ。

 

体を翻し、足元に結界を作る。これはなんの効力もない。ただの足場である。その足場を思い切り蹴飛ばした。

剣を構え、羽で加速する。

 

こういうでっかいもんは、叩き潰すに限る。

 

―――――――――――

 

 

「いやー参ったよ。まさかすぐつぶされるとはね。」

 

雷花は俺の家でご飯を食べながら、そんなことを言う。

ただ叩き潰しただけだがな。

 

切亜と紗那は不服そうに、姉さんは楽しそうにご飯を食べる。どうやら雷花は歓迎されててされてない。

ここに至るまでの経緯は話したが、それでも納得は得られないようだ。

 

雷花はしばらくの間、家にいる。そういったときに、姉さんだけが喜んでいたしな。

 

「まったく。ご飯食べたら風呂入って寝ろ。」

 

切亜は、ぶつぶつと文句を言っている。紗那はくっついてきて

 

「お兄ちゃんはあげないから。」

 

と雷花に言う。俺は誰の物でもねえよ。

 

 

 

 

俺は洗い物をしながら考える。先の戦闘の間、心眼の状態を確認していた。主に雷花の目を、見ていた。

そして、完全に理解した。理解してしまった。これは、原始魔法の一つである。禁忌に指定はされていない。が、扱うことは決していいこととは言えない。

原始魔法...今地球上にいる、それぞれの種族が扱う魔法は、原始魔法を普通の魔力でも扱えるように術式を変換させたものだ。なぜそんなことをする必要があったのか、それは、原始魔法を扱えるのは、神だった。

人やエルフ、ドワーフにゴブリン、他にもたくさん種族はいるが、その種族が生まれる前に、地上には神がいた。その神のなかでも特に優れた者が賢者でもあるのだが。

その神たちは、原始魔法で星を作ったり壊したり。世界を作ったり壊したり。でもそのうち飽きてしまった。

だから、現在生きている種族たちの、祖先を作った。所謂知的生命体だ。最初の内は無知極まりない、プログラムがまったくない機械のような彼らも、やがて知識を生んだ。そして、神を野放しにしていいのかを考える。だって、いつか自分たちが消されるかもしれないからだ。

 

神の扱う原始魔法を簡略化した、魔法を作り、神と対等になろうとする。だが、力の差は歴然だった。

暫くの間、神と知的生命体との戦争が、具体的には二百年ほどあった。最終的に協定が結ばれめでたしめでたし。

 

原始魔法ってのはつまり、神の扱う魔法ってことだ。使う魔力は少ないのに、威力や効果なんかは、魔法とは比べても意味がない。それほど、危ない魔法なんだ。

 

だが、そんなほとんどが禁忌として指定される原始魔法のなかでも、いくつかはそれを免れる。扱えるかは個人差があるが。

その免れたものの一つが、心眼である。ただし、それを理解できたのはつい先ほどだ。原始魔法だったなんて、まったく気づかなかった。

 

...だが、これで。

 

「ついに完成、か。」

 

心眼は、原始魔法の初歩、刻印だった。慣れ親しんでいる、刻印だ。

俺の体の中にも、流れている。

 

俺はすでに、原始魔法をいくつか、使てしまったというのか。俺は...親父にいいように使われたっていうのか。

 

...そうか。これが研究か。

 

「親父...やはりあんたは、敵だよ。」



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12話

第二十三話

 

 

私は今日、とてつもない勘違いをした。龍に誘われたので、てっきり二人で出かけるものだと...いや、別に好きとか期待してたとかじゃない!こんな唐変木に期待しても無駄だって、昔から知ってるし。

...その勘違いは、朝の出来事から始まる。

 

――――――――――――

 

 

「切亜。図書館へ行こう。」

 

今日は休日で、暇だ。それに那斗にこの間、

 

「僕に、魔法を教えてほしい」

 

なんて言われてしまった。

教えるのは簡単である。それに、エレクトリックさえあれば、だれでも魔法を扱うことができる。

 

ただし、術式をきちんと理解し、魔力の流れを読めなければならない。那斗が俺に教えを請うたのは、そういう部分についてだろう。

 

ならば本を、読めばいい。本以上に知識をくれるものは、知識の叡智はないのだ。

...それに、俺の魔法の知識も整理しておきたい。

 

「いいぜ、服着替えるから、待ってくれ。」

 

今だパジャマだということに、驚くのだが?

 

―――――――――――

 

 

「聞いてない。」

 

切亜が言う。そうだったろうか。俺は別に、誰と行くとか伝えてはないが、それは聞かれなかったからだ。隠す気もないし。

なぜふてくされるのかが、わからない。

 

那斗にはとりあえず、魔法の基礎から学んでもらう。それでもわからないところがあれば、俺に聞くように伝えた。

 

本を探し、十冊ほど渡すと、

 

「え、こんなに?」

 

と言われたので、一冊だけもとの場所に戻す。

 

まだ不服そうにしていたが、今の那斗にはこれくらい知識をつける必要性があると思う。

自分の魔力の質も見抜けていなかったくらいだ、相手の魔力の流れや、属性を見ることも難しいと思う。

どんなに嫌がられても、俺に頼んだんだ、文句は聞くが、やめるとは言わせない。

 

隣にはまだふてくされた切亜がいるが、放っておく。向かいには真剣に本を読む那斗がいて、その隣に千里がいた。

...ここにくる道中で、声を掛けたらついてくるというので、こうなっている。

千里もまた、真剣に本を読んでいた。タイトルは...他者の心、だった。

何か、悩みでもあるのか...?

 

さておいて。俺は禁忌魔法に関する本を探す。だが、

 

どこにもない。

 

歴史書に神との戦争に関する本はあったが、その中にも禁忌魔法に関する叙述もない。

原始にかかわるものも、そうである。

 

本棚を注意深く探して、気づいたことがある。元の本がなくなったかのように、不自然に隙間がある。あとから違う本で埋めたのか、小さな隙間が、いくつかの本棚にあった。

 

ならば、やはりもともとはその本があったのだろう。

職員の方に尋ねるか...

 

「すみません、少しいいですか。」

 

カウンターに座っている、眼鏡をかけた、エルフの方だった。めっちゃ様になってる...

 

なんですか?とおしとやかに返事をされて、少しどぎまぎしてしまう。

が、目的を忘れては図書館に来た意味がなくなってしまうので、我に戻る。

 

原始魔法について、それから原始についての本がないかを尋ねると、様子がおかしい。引き攣った顔で、じっとこちらの顔を覗く。魔眼でも向けてるのか...?

 

「お客様、なぜそのような本を?」

 

なぜ?その質問の意図がわからない。だが、答えは簡単である。

 

「知識欲に勝てる生物が、この世にいますか?」

 

そういい放つと、彼女が覚悟を決めたように微笑む。そして、カウンターから出て

 

「お客様、こちらへどうぞ。私も、好奇心には勝てませんので。」

 

おもしろいものをみたいと言わんばかりに、その目は輝いていた。若干の恐怖を孕みながら。

 

―――――――

 

奥へと案内される。人の姿はない。図書館にこんな場所があるとは、なんてテンプレート染みたセリフを思い浮かべる。

ある程度進み、立ち止まる。行き止まりに見えるのだが、どういうことだろうか。

少々おまちを、彼女がそういうと、なにか魔力の流れが変わる。どうやら壁に術式が組み込まれているようだ。

縦長な長方形の壁一面に魔力がこもり、変化が起こる。目の前に確かにあった壁は、姿をなくす。そして代わりに、ありえないほどの本が並んでいた。一年かけても読み切ることはできないだろう。

 

「どうぞ気の行くまま、知識を満たしてください。」

「ありがとうございます。」

 

...こんなたいそうな仕掛けの裏に隠すなんて、凝ってるな。

そこまでして隠したいものが、ここにあるってことかもな。

 

「...ラストワールド」

 

魔法のようで魔法ではない、不思議なものだ。だが、これで時間は止まる。この中で何年たとうが、外では一秒すら経たない。すべての本を読み切ってくれる。

...とまではいかないが、せめて五十は越えたいな。

 

――――――――――

 

「...お帰り。」

 

切亜は少し、怒りながらも嬉しそうにいう。読んでる本がおもしろいこと。恋愛のいろは、だと。

 

「切亜...好きな奴いたのか。よかったな。」

 

というと、ものすごく顔が赤くなる。そしてなぜか肩を殴られた。痛い...

 

余計にふてくされてしまったが、まあいいか。

 

那斗に目をやる。一冊は読んだようだ。まあ、あまり時間はたっていないしな。

 

「那斗。理解して読んでるか?」

 

と聞くと、明らかに目が動揺している。マグロでも飼ってるのか...

 

「えっとね...暗記しかできてない。」

 

...暗記か。

那斗が読んだ本を読む。一応一通り読んだので、那斗に暗記の内容を言わせることにした。

 

「えっと、出だしは「魔法とはそもそも、頭の中にあるイメージを具現化し、事象として表現したものである。つまり、虫でも細胞でも、想像さえできるのなら扱うことができるものだ。」だったと思うよ。」

 

なるほど。一言一句間違っていない。そこまで覚えることができるのか...

これが種族による能力ではないことはわかる。亜人は人とほとんど同じだ。だから異常な記憶力は、種族ではなく、本人由来の物だろう。

その先の分章も言わせてみる。やはりそうだ。すべてがあっている。ここまでの記憶力は...リザードマンや龍種、神なんかとも匹敵するかもしれない。

ハイパーサイメシア、だろうか?それならば納得もいくし、とても興味深いし、教え甲斐もある。

 

「那斗、三歳のとき...十年前の今日、何があったか覚えているか?」

「ニュースのこと?そうだな...隣の国で、魔猪の被害が増えてたらしいね。」

 

...そうか。やはりそうだ。一応新聞を確認するが、そのことが掲載されている。

 

「決めた。本を全部覚えろ。意味なんかまだ必要ない。文字だけでも覚えろ。」

 

それでいいの?といいながら首をかしげる。

それでいい。意味なんて所詮後付けだ。この記憶力を使うには、そうするしかない。

 

――――――――――

 

夕方、図書館を出る。夕立でもくるかという黒い空模様。早く帰りたいがそういうわけにもいかない。

 

この近くに、広場がある。そこには結界が張られているので周りに被害が出ることはないだろうが、念のため俺も結界を張っておく。

 

「構えろ。文字の後は実戦だ。」

 

ぽかんとした表情を浮かべる那斗は、急いでエレクトリックを手に取る。

 

最低限の詠唱はできるだろう。でなければ最初から詰め込むだけだが。

覚えるのは魔法だけだろう。剣やらなんやらで戦闘をしたいと望むなら別だが、そうとも思わない。実践と言っても、魔法使いの典型的な、魔法のぶつけ合いでいい。

 

魔法といえば、ルーンだよな。原初の魔法だし、扱いはたやすい。

 

火のルーンを描き、魔法陣につける。

 

「炎弾」

 

那斗に向かって火の弾を撃つ。一つだけなら避けれるが、避けるなんて選択肢が思い浮かばないほど、大量に撃ち込む。これならば何かしらの魔法を放つだろう。

 

「えっと...魔法陣を展開して...魔力を流して...」

 

俺の真似をしようとしてるのか?まずい、とめなければ。

魔力の量が少ない奴が、エレクトリックを使わず詠唱をすると、魔力切れで気を失ってしまう。急がなければ...

 

「よし、これで。「炎弾」!」

 

...予想外である。まったくもっての予想外である。

まさか、身近の切亜以外で、魔力を保有する量が多い奴がいるとは。

 

「...痛くないか、ケガしてないか?」

 

大丈夫だよ、と言われて安堵する。魔法を撃って打ち消そうとしたのはいいが、まさか半分も消せないなんて...

だが、エレクトリックを使用したのは魔法陣を展開するときだけだったので、納得もできる。質は悪くない。量も十分だ。だが、扱いこなせていない。

 

なんとかなるな。

 

「いいか、那斗。エレクトリックを使うことを忘れるな。多分お前なら、なくても魔法を使えるかもしれない。でもな、流れがつかめるまでは、それを使え。それから、さっきの本の出だしだ。それを実際にしてみるんだ。」

 

わかった、と、力強く頷く。

 

慣れるまでは、イメージが大事だ。どんな魔法を使うか、どんなものを作りたいか。

そういうものがうまく想像できれば、魔法はすぐ使える。

だから基礎の魔法として、火は選ばれやすい。誰もが一度は見たことがあるものだ。見たことのあるものは、イメージが湧く。強く思い描けば、しっかりとした火を生むこと間違いなし。

 

「イメージ...炎...魔力...」

「いくぞ。「炎弾」」

 

先程と同じように放つ。きっと那斗ならできるだろう。

 

「エレクトリックに魔力を流して...「炎弾」!」

 

 

―――――――――――――

 

「よかったぞ、那斗。その調子だ。」

「ありがとう。柊君のおかげだよ。」

 

...礼を言われるのは、悪くないな。

 

エレクトリックは、事前にいくつかの術式が組み込まれる。ものによって容量が決まっているから、内蔵される術式も違ってくる。自分の魔力の質にあった属性にすれば、魔法の威力や効果もよくなってくる。だから、魔力の流れや術式を理解しておかなければならない。

が、それ以前に、イメージをはっきり持つ。これも大事だ。まあ、俺には必要ないが。

 

でも、ルーンなんて久しぶりに書いたな...

威力の弱いものでないと、那斗を燃やすかもしれないから、ルーンでないといけなかった。ルーンであれば出力は全て弱くすむ。自分で調整すれば、間違って最大火力を出しかねない。

 

「...なぁ、龍。ルーンなんて使わなくていいだろ?」

「なんでさ。俺に人殺しになれっていうのか?」

 

それは違うけどさ~...なんて、少し残念そうに小石をける動作をする。かわいらしい。

 

だが、俺は今、異様な気配を感じている。ついこの間であったことのある、いかにも下っ端な魔力だ。

 

「...千里、結界張っとけ。ちょっと危なくなるかも。」

「わかった。那斗君、切亜、近くによって。」

 

千里の結界は、俺の結界より防御に優れる。だが、範囲が狭い。使い勝手は悪いが、少人数なら頼りになる盾だ。

 

とりあえず...こいつらを守ることが優先だな。

 

「出て来いよ、Bクラス。どうせいるんだろう?」

 

まただ。優れた認識阻害の魔法でも使えるのか、俺が呼んだ瞬間に前に現れる。

まったく。正々堂々と尾行しろよな...尾行に正々堂々はないか。

 

「よくわかったな。なんだ、この程度の芸、動作もないとでもいうのか?」

「そういうわけじゃない、そもそも、何かしていたのか?」

 

こいつ、とにらまれてもな...

しつこく付きまとってこられるのが初めてだから、どうすればいいのかわからない。それに今回は、人数が多そうだ。

 

「他に何人いる。まさか、子供一人に大人数人で挑むとは思わなかったが。」

「子供がそこまで強大な魔力を有するのが間違っているのだ。」

 

出て来い、その一言で、ざっと二十はいた。

...大人気ないな。

 

「で?一人でもAクラス、あるいはSクラスでもいるのか?」

「俺以外全員、Aだ。」

 

聞き間違いであることを祈るが、どうやら本当だ。魔力の流れが、集中しないとわからない。それだけ隠すのがうまいってことだ。

...時間を止めて、三人を安全な場所へ運ぶのもいいが、その余裕はなさそうだ。全員、俺を狙ってると思ったが、何人かは後ろを注視している。

 

やるしかないか。つい昨日、完成したばかりの()()を。

 

 

「刻印「心眼」真実の眼。」



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13話

第二十四話

 

一人の少年と、複数の大人が、張り詰めた空気を醸し出す。少年の後ろには三人の少年少女がいる。

少年は大人を見据え、大人は子供を嘲笑っている。

 

「刻印「心眼」真実の眼。」

 

そう、少年は、唱える。

大人は怯えた。

 

「ばーか、俺に、勝てると思うなよ。」

 

――――――――

 

私は盛大な勘違いを、今理解できた。

龍は恐らく、このことを予想していたんだ。

 

だからあらかじめ、千里に連絡をいれ、守る準備をした。

...なんで。どうして。

恐怖よりも、その疑問しか浮かばない。なぜ私たちに言わなかったのか。別に伝えてくれてもよかったのではないだろうか。

それとも、そんなにも私は、頼りにならないのだろうか。

 

「私だって...オレだって戦えるんだ!」

「...馬鹿。黙って守られてろ。」

 

そ、そんなこと言われたら...いや、でもなぁ...

 

――――――――

 

 

切亜がいくら戦えるとしても...戦力差がすさまじい。

恐らく、切亜が一対一に持ち込めたとしても、勝負はいいところ引き分けだ。

信じてないとかそういうのじゃない。ただ、負ける可能性は排除したい。

だから、今は...

 

「知らない!オレだって戦える!」

「何言ってんだ、相手は管理塔のやつらだ!」

「関係あるか?それ」

 

...まじかー。

考えてみれば関係あるの俺だけか...

 

だが、やはり危険というのに変わりはない。

 

止めようとしたとき、切亜はすでに結界から出ていた。

こうなればもう、止めることはできないか。

 

「任せろ、足手まといにはならないから!精霊「疾走の加護」」

 

切亜のおかげで、足が軽くなる。そのままの意味で、ただただ足が速くなる。

が、切亜の精霊は、練度が違う。そこらの精霊とは加護の強さが違う。

精霊に認められたら使うことができるが、ほとんどの人は認められてるようなものだ。精霊からの信頼度こそが加護の強さになる。つまり最強レベルですね。

 

今この時だけだが、アタランテ―より速い。多分。実際に比べたわけではないから、そう思ってるだけだが。

でも、もともと強化魔法をかけてるし、飛んだらマッハとかの単位でもたりないし、これ以上速度は必要じゃないんだけどね。

 

「子供が一人増えたところで、状況は変わらん。刻印を使えるのも一人。なれば勝てる。おとなしく捕まれ。」

「...嫌だね。()()とも、悪用されるなら、俺は誰にも渡さない。渡してしまったら」

 

渡してしまったら、親父の研究が、完成するかもしれない。

それだけは阻止しなければならない。

原始魔法も原始宇宙も、ただの害である。存在してはならないから消えたのだ。

 

本を読み、確信を得た。刻印は、禁忌ではないが、原始である。

俺は、いい材料だったろう、親父。

俺の体は大体の魔力が馴染む。耐えてしまうから。無属性であるから。

それゆえ。

原始も、馴染むのだ。俺を中心に、原始は再開する。

それだけはいけない。原始の再来は、生命の終了を意味する。

どうすれば...

 

そうか...オーブ。お前を取り込めば、いいんだ。

かつて母さんが、俺にしたように。魔力を体に直接流し込めば。血中に混ぜ込めばいいのだ。

それに龍神は、知っていた。俺の体に流れる原始を。

なら、それを抑えるなり強化するなり、何か仕掛けをするはず。だったら。

 

お前がそれを考えてることを祈るぜ、雷龍。

オーブをストレージから現物に変換する。オーブをみた職員らは目の色を変えてこちらにかかってくるが、

 

「バーカ!今はオレが相手だぜ!展開「神炎」!」

 

俺から数メートル離れた場所で、複数の魔法陣が浮かび、そこから炎が立ち上がる。

少しは足止めにもなるが、何人かは体制を立て直し、突っ込んでいる。

それに構う暇は俺にはない。

 

オーブに魔力を流す。それに応えるように光があふれる。

周りの魔力はあたり一帯を避けるような流れになり、周りはこいつの魔力であふれる。

...マナより多いのか。

その流れが俺の体に収束していく。若干意識が飛びそうになるが、この程度で酔ってたら将来酒を飲むのをためらうことになる。まだ倒れない。

 

「我が呼び声に、呼応せよ...!」

 

―――――――――――

 

やっぱり龍はすごい。僕は小さいころから彼を見てきたが、その小さいときから、すでに龍は龍だった。

彼は他者を誰よりも、自分より優先した。誰かが困っていれば、手を差し伸べる。間違った道に進めば、そっちじゃないと、元の道へと正す。

切亜も僕も、彼に助けられたからここにいる。

切亜も僕も、彼に助けられてばかり。

...だった、今まで。

 

今ではもう、切亜も誰かを守ることができる。

僕にはない余裕が二人には、ある。

 

この結界...「クロノスガイア」は、自分を守るための僕のイメージだ。これが一番、馴染むと知ったとき、僕はひどく納得した。だって、自分を優先する僕には、ぴったりだ。

一人の時間で、自分さえ守れたらいい。だから、強固な守りになる。

まあ、近くに誰かがいれば、その人も守ることができる。

でも、守りたい人を、守ることができない。

 

だから龍に、ずっと憧れた。守りたい人を守る力が、気概が、その在り方が、そうさせた。

 

「二人とも、すごい...」

 

こうやって、哉痲も、魅了させる。

 

彼に憧れを持つのも、必然か。

 

 

 

遠目に見ていて、気づくことは一つ。龍の魔力の質が、変わった。

厳密には、増えたというべきかもしれない。先ほど、丸い物体を持って、なにかを言っていた。その時にマナの流れが周りから途絶えた。

否。

龍を中心に、避けるような、取り囲むような流れになった。

 

...まだ、強くなれるんだ。

 

 

――――――――――

 

刻印が体に馴染み始める。心眼を完全に扱うにはもう少し時間がかかるかもしれない。ずっと発動状態にしているのに、まだ使えないなんて...

いや、それも当然か。今までの刻印は、体の中にあったんだ、慣れる必要がなかった。

 

「...さて、交代だ切亜。」

「お?もういいのか。なんなら共同戦線でもいいんだぜ?」

 

それもありかもな、と、目を合わせて、息を合わせる。

 

「さぁA,Bクラス。待たせたな。」

「てこずらせるな。我々の目的はお前だけだ、お前の中にある、原始を渡せ!」

 

なるほど。やはり目的は原始か。

研の成果は、いったいどこまで進んでいるのか。原始を扱える俺の体を研究すれば、おそらく原始に近づく。それはつまり、母さんのくれた刻印が混ざる、この血液を渡すことになる。

まぁ、渡さんが。裏切られた母さんのために、俺は...親父を許さない。

 

心眼のおかげか、少し意識を変えるだけで周りの時間の流れが遅くなる。

集中すれば、相手の心が読める。

意識を放てば、マナの流れが読める。

...心眼って、チートかな...まだあるけど、時間がもったいない。

 

「展開「魔力の貯蔵庫(ゲートオープン)」」

 

複数いるなら、一掃するのが安定だよな。あくまで逃げたいだけだが。

魔法陣から出てくる剣には、全てさまざまな属性を付与している。今まではできなかったが、魔力をうまく操作できる今、できることをしない選択肢が、ない。

 

「な、ななんだこれは!おいAクラス!何してるんだ!?」

「Bクラスがわめくな!こんなもの扱うやつを初めて見ただけだ。」

 

こんなものってなんだよ...意外と気に入ってんのに。剣がいっぱいあるんだぜ?男のロマンだろうが。

 

「展開模写「魔力の貯蔵庫(ゲートオープン)」」

 

...は?

待て待つんだブルータス落ち着け待ったブルータスはいない。

 

なるほど。術式を全て読み込んだわけではないが、それでも、属性付与以外は読めたのか。

...そんなすぐにまねをしちゃうのかぁ、Aクラス...

 

ルーンでも使うかな...ルーンを使える人はあまりいない。なぜかって?

複雑なんだよね。原始魔法の一番最初の派生魔法が、ルーンだから、知ってる人も少ないし、使えるひとはもっと少ない。だから、術式を隠しやすい。隠匿の魔術豊富だしな...

 

でも、それじゃあ、あまりにも卑怯か。あくまで対等にやりあって逃げる。そうしよう。

 

幸い、所詮まねごとの魔法であれば弾道...剣道は全く同じところで、剣同士がぶつかり合う。属性付与してるこちらの方が残って向こうへ飛んでいる。

 

逃げるなら今か。

 

「千里!」

「わかった!「閃光」」

 

――――――――――――――

 

 

なぜ、名前を呼んだだけで、連携を取れたのか、僕には不思議であった。

そもそも、神立さんと柊君が、アイコンタクトだけで連携を取れていたのにも、不思議に思う。テレパシーで会話でもしているのか...?

 

僕には、わからなかった。この三人が、まるで一人の人間のように動けた理由が。

 

あの、変な人たちに向かって閃光で、目くらましして逃げる時、周りが見えないはずなのに、彼らは手を取り合っていた。そんなの、普通に考えて不可能だ。不可視の空間で、どうやって互いを見つけるのか。

 

...それだけ、信じているのかな、お互いを。

 

「ねえ、柊君。」

 

どうした?と。僕の前で三人並ぶうち、真ん中の影が。僕らの上に結界で天井を作り、夕立から守る少年が。振り返り、尋ねる。

 

「僕と、と...友達になって、くれる...かな?」

 

少年は不思議そうな表情を浮かべる。両隣に目配せをし、三人は笑う。

もう一度こちらを向いて、彼が一言。

 

「もうそうだろ?那斗。」

 

と。

 

さも当然のように、僕に微笑む、三つの影。

当たり前のことを言うように、僕にとってあたりまえでないことを伝えた。

 

これほどまでに安心する出来事が、過去にはなかった。

それが、嬉しかった。そして、安心できる場所が、僕にもできたことを、夕立がやみ、キレイな虹が教えてくれた。

 

 

――――――――――

 

 

ただいま。お帰り。このやり取りをなぜ雷花とするのか...

あとから姉さんと紗那がお帰りという。

 

家の前で千里と那斗とは別れた。流石に時間も時間だもんな。親御さんが心配している。帰るべきだよね!

ご飯を作ろうと、献立について考えていたら、

 

「もう作っといたよ。温かいうちに食べてね。」

 

やるじゃないか雷花。俺がいない間に全員分の料理を作るなんて。

それが茶色のものばかりでなければよかったのにな。

雷花は頬を膨らませながら仕方ないじゃんと言う。なぜ仕方ないのか問いただせば

 

「私、あまり食べ物食べること無かったもん!」

 

と、答えられた。

つまり、今まで食事をまともにしていなかったのか?龍神の使いだからいらなかったのかもな...魔力で必要な栄養を補っていたのかもしれない。

ちなみに、魔力で腹を満たすには、まずはマナがわからなければならない。

マナというのは、大気中に存在する魔力だ。地球自身が保有し、放出、作成をしている。だが、普通ならマナすら扱うことが、今の生命にはできない。魔力を扱うための器官が退化しているから、体内に取り込むことができない。無論、体内の魔力も、最低限しか保有されていない。

何故退化したか、については、完全に話が変わるからやめておこうか。

つまり、雷花はそんなマナを使って、栄養補給をしていた。

...魔力でできているという線も考えられるか。

 

「なんでわかるの?」

 

なんで心読むの?

...魔力で構成されてるとか、真正の使い魔じゃねえか。

 

もういいや、歯を磨こう。

風呂に入ろう。

そして寝よう。

また明日、物事を整理するか...

 

 

 



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14話

第二十五話

 

さて、いつも通りくそみたいな授業は終わり、午後にある魔法詠唱の授業が始まる。

 

...始まる前から、嫌な予感がしているのはおそらく俺だけだ。

 

「さて、今日はクラス全員対柊君です。」

 

...はぁ。なぜ予感というのは、嫌なものほど当たってしまうのだろうか。

そしてなぜ、俺一人で全員...

 

「はじめ!」

「おい!勝手に始めんな!」

 

全員が血相変えてこちらをにらむ。俺何かしたか!?

 

「あーもういい!「ソラトニックアロー」!」

 

自分の上部以外に矢を放つ。厳密には矢の形をした魔力だが。

これで誰も近づかないだろう。

 

「...ボクが行く。」

 

...あれは...確か、沢城雅...

クラスでは大人しめの女子だ。誰かと話してるところを見たことはないが...まぁ何とかなるだろう。

 

「...剣舞「アサルトダンス」」

「...なるほど?剣戟で矢を落とすか。だが、量を増やせばなんとも...」

「まだまだ!こっちは全員だぞ!!「強化:腕」!」

 

...オークの腕力をさらに強化して、腕で防ぎながら進むのか...オークらしいといえばそうだがいかんせん...

 

「オレだって!「神炎」!」

「僕も。「ソラトニックアロー」」

 

ふむ、連携をとっているわけじゃないが、少しづつこちらに近づいているな...

そろそろちゃんと()()()やるか。

 

「展開「魔力の貯蔵庫(ゲートオープン)」」

「うわっ...流石にオレでもこれは...ちょっと弾くくらいしか...」

「俺の腕も...限界だ...」

「ボクも...魔力限界開放(エレクトリック)が耐えきれない...」

 

...連携の意味を知らないのだろうか。まったく...

 

「中断しよう。そして作戦会議といこう。」

「なんでだよ。お前を倒すためだぞ?」

それでも、今のままじゃ連携なんてとれるもんか。」

「...それは...」

 

とりあえず。

 

魔法が得意な奴。その中でも補助魔法と攻撃魔法に分ける。

物理が得意な奴。その中でも体と武器とで分ける。

 

おおざっぱであるが、このくらいでいいだろう。

 

「補助魔法が得意な奴は、攻撃するやつらに必要な強化を施し続けるんだ。例えば湧廼には身体強化、特に腕力を強化すればいい。回復をするのもありだ。」

「なるほどな。俺は確かに腕力を強化されると威力を上げられる。」

 

お前の場合身体強化が十分な練度だから回復してもらうだけで大丈夫だろ。

 

「攻撃魔法が得意な奴は、俺の放つ飛び道具なんかを撃ち落とせ。直接俺を狙うのはいいが、あくまで注意を引く程度にするんだ。武器を使って俺を狙うやつの邪魔にならないように。」

「なるほど...オレの魔法は広範囲なのが多いし、やりやすいかも!」

 

それはしらん。

 

「で、物理。何も考えず交代で俺に向かってこい。いっぺんに来るのは相当慣れてるペアでないとできないからな。」

「...わかった。」

 

雅とは剣でしっかり斬りあえそうだ。

 

「さて、では再開といきますか。あ、先生も行きますね!」

 

そんなさわやか笑顔で殺しにかかろうとするのはやめていただきたい。

 

「まったく...ほら、かかってこい―――!」

「おらああ!!」

 

最初に向かってくるは湧廼。とりあえずすることは...

 

「無視だ。お前は俺に触れられないからな。」

「やってみなきゃわかんねえだろ?」

 

といって、俺に殴打を繰り返す。だが

 

「なん...だと...」

「何かしたかい?」

「どういうことだ!」

 

俺に物理は通らない。理由は簡単だ。体の周りに結界を張っている。無駄だとしか言いようがない。

...そりゃあ、結界ごとえぐるように殴られたら当たるのは当たるけど。

 

「さて、展開「魔力の貯蔵庫(ゲートオープン)」これはしておかないとね。」

「強すぎだろそれ!?」

 

だが先ほどとは変わって、後方で魔法を使い撃ち落とすやつらが増えた。それでも全部を防いだりはできないようだが。

...まぁ、マシにはなったよな。

 

「僕も...何かしなきゃ...「炎弾」」

「「炎弾」」

「わっ...はやい...」

「那斗、連続で打つんだ。」

 

わかった、とうなづく。果たしてうまくできるかね...

 

「大埜、次はボクが行く。」

「...わかった。」

「へぇ...雅、剣をエレクトリックに変えるのは結構だが、それはもろくなるだけだぞ。」

「知ってる。でも、エンチャントしながらこの子を使えるから。」

 

...思い入れがあるのだろうか。なら少しいいことを教えてあげよう。

 

「エンチャントだけじゃなく、硬化も使え。その方が長く使えるぞ。」

「...わかった。」

「じゃあ俺も、「爆破斬」結月刀「付喪」」

「...二刀流...」

 

...?

少し動きが鈍くなったか?

 

「「炎弾」!」

「うわっ!爆破斬「業火」!」

「剣舞「アサルトダンス」」

「なんで火の中で平気なんだよ!?」

 

後方でにっと笑う姿...雷花!?

 

「一応同じクラスだしね!」

 

...属性耐性を付けたか...

だがまぁ...ゲートの武器の量を増やせば...

 

「展開「晴天の霹靂」」

「本当にやるのかよ!?あーくそ!!「創世ヲ呼ブ雷ノ杖」!」

 

剣をストレージへしまい、杖を持つ。どんなことができるかはその場のノリだ。何も知らないから。

 

「結界「雷霆ノ床庭」玄豪「電閃」」

「へぇ...結界で属性を、そして、雷龍との契約によるスキルで身体強化をしましたか。」

「...体壊れない?」

「彼の体のことを考えれば...問題はないですね。」

 

さて、ものすごく頭が痛い。なにが問題はないだ。大いにあるっての。

じゃ、本番と行きましょうかねぇ?

 

「見せてやろう...一振りで生まれる、回帰の雷を...「轟雷一閃」」

「うぇえ?流石に防ぎきれないよ!?」

「しょうがありませんね....降参です。授業も終わりですしね。」

「...そうか。つまんねえな。」

 

チャイムが鳴った。いろいろなところから、安堵のため息が聞こえる。そのため息に囲まれながら、杖をしまった。

 

「―――俺の勝ちだな。」

「また負けてしまいましたね。全員だったというのに。」

「はっ、俺に勝てるのは、俺だけだぜ。」

 

―――――――――――――

 

 

さて、昨日言っていた物事の整理でもしようか。

管理塔の現トップはあのくそ野郎...柊信義。つまりこいつをどうにかしなければ、俺は常に狙われ続ける。もしも俺が負ければ、宇宙は初期化され、今までがなかったことになる。

...それだけはさけなければならない。なんとしてでも。

次に、雷龍との契約によって使えるあの杖。あれはひどい。今の俺ではまだ完全には扱えない。これだけ魔力を有する俺を飲み込むくらいに魔力をもってやがる。

...今日あそこで止まってなければ、まずかったかもしれない。

あ、そうだ、木龍君に会いに行かなきゃ。

 

「...そんなノリで行くみたいに来ないでくれるかな?」

「だって...お前いつの間にか俺の家来てんじゃん。自由人かよ。」

「帰ったらあの子たちに怒られちゃうかもね」

 

おいおい...お前そんな子供みたいな見た目するからだろ...中身も子供か

 

「君よりは大人だよ!」

「どうだか。で、だ。さっさとくれよ。」

「仕方ないなぁ...ほら、地図。」

 

なんで地図...ん?これは...

 

「ダンジョンじゃないか。それも開拓済みの」

「そ。そこに、君を必要とする人物がいる。」

「..?知り合いか何かか?俺の。」

 

木龍は首を横に振る。じゃあなぜ俺を必要とするんだ。

 

「彼女は君を知らないし、君も彼女を知らない。でも、君じゃなきゃ彼女を救えない。だから言ったんだ。」

「言い方ってもんがあるだろ...」

「いいから行って来い!!!」

「ちょ、転移をいきなり―――

 

 

――――

 

 

するなよ!!」

 

無茶苦茶だ。

なんでもうダンジョンの目の前にいるんだ!!!

 

....

 

 

「はぁ....行くか....」




2021/10/08更新!



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15話

第二十六話

 

ダンジョン。それは多くの人をお宝という餌で誘いこみ、罠で仕留めたりモンスターで仕留めたり。奥に進めば進むほど、魔物の強さは上がっていく。最初から強いこともあるので、冒険者というものはそれなりに気を付けなければならない。

いや。ならなかったというべきか。

 

現時点でこの世界において、未発見、未開拓のダンジョンはもうほとんどない。それゆえか。観光目的のダンジョンも増えてきた。

 

だがしかし。今俺が目の前にしているダンジョンは、開拓済みのはずなのだが...

 

「魔力の発生源が多い...おそらく中には魔物が住んでいる...」

 

ありえない。ここは俺が一度最奥まで行ったことがあるダンジョンだというのに。

そして先ほどから、先頭の音がする。声からして、やや劣勢だ。

...応援にでも行ってやろうかな。

 

 

―――――――――――――――――

 

 

あれは...同級生くらいの女子じゃないか。なんだろう...すごく...魔力が弱い...

 

「くっ...この...!」

 

この子が発する魔法のどれもが、とても弱弱しすぎた。

こんなんじゃ、スライム一匹狩るのでも時間がかかってしまう...

 

「はぁ...結月刀「付喪」」

 

俺はいつも通り付喪を出して、魔物を狩る。こいつらは...ゴブリンか。

 

「俺に武器を向けるのは、たいした度胸だな。」

 

意思を持ち、攻撃してくるなら殺す以外ない。

考えなしに襲ってくるゴブリンを、ただ切る。一体切ったところで、ほかの複数体は陣形を整えた。

...少しは考えられるのか。はたまたここのゴブリンがたまたま知能があったのか。

 

「俺の知ったことではないがな...」

 

いくら体制を整えようが、弱い魔物に変わりはないので、一体目同様、すべてを切る。

 

それが終わったころ、少女がへたりと座り込んでいることに気づいた。

若干の涙目である。

顔は端正だ。どこか無機質な機械っぽさがあるが、可憐である。

 

「大丈夫か?立てる?」

「え...あ...だいじょうぶ、です。」

 

ゆっくりと立ち上がっている。背に壁をくっつけながら、重心を徐々に上げている。

 

ふむ...さっき見たときとは印象が違う。体つきはおそらく同級生だと思わせるほどだが、身に着けているものが業火なのに対し服がぼろついている。

 

「名前、聞いてもいいかな」

「...か、華怜...」

 

苗字はいいたくないのか...な?

まぁ、心眼を使えば見れないこともないが、それは趣味じゃないし、やめておこう。

 

「華怜はなんでここに?」

「...奥に、私の求めてるものがあるって、言われたから。」

 

求めてるもの、ねぇ。

 

「なら、一緒に行こう。」

「え?でも...」

「心配されるほど俺は弱くない。」

 

華怜は少し間をおいて、一緒に行くことを了承した。

 

...ここには昔、俺が置いたものが奥にあるだけだがな...

 

道中にはそこまで魔物が現れることはなかった。狩りすぎたことを今更ながら後悔している。

遊び半分とは言え、ここまでいなくなるとは思わなんだ。

 

最奥につくまでさほど距離はない。少しくらい話して親睦を深めておこう。

 

「華怜、出身は?」

「えと...その。カトワール、です。」

 

...中心じゃん。王都じゃん。いやまあ身に着けてる装飾の一部がぽかったけどさ?そんなわかりやすいことしないとおもうじゃん。

...まさかなぁ...

 

「...はぁ。帰りたくない理由は?」

「...なんでそんなこと聞くんですか?」

 

そりゃぁ...まぁ...

 

「王都出身で、同級生くらいで、家出してる華怜は一人しかいねえんだよ。たく...」

「...帰れとは、言わないのですか?」

「いう必要あるか?」

 

華怜は驚く。俺を珍しいものとして視ている。

...そこまで変なことでもないだろ?

 

「お前の事情はお前の事情だ。俺が首を突っ込むことじゃない。」

「...」

 

なぜ黙る。頼むから相槌くらいしてくれ。

 

でもまぁ、あの家を飛び出して帰りたくないのは...わからなくもない。王様がすごくわがままなのもわかるし、周りの期待が重いってのもわかる。

 

「...帰りたくなるまではさ、うちにいろよ。どうせ行く当てないんだろ?だったら少しくらいの間、飯と寝床と服、用意してやる。」

「...いいんですか...?」

 

家主がいいって言ってるんだ。家賃払ってるって言っても魔力で建て替えてもらってるけど。

 

彼女は少しうつむく。また間が空いて

 

「...よろしくお願いします。」

 

と、お辞儀をした。

 

そこまで礼儀ただしくする必要ないけど...

 

そこからはお互い黙ったまま歩いていた。最奥につき、本来ならいるはずのボスもいないので、俺の置いた宝箱を開ける。

 

まぁ予想通り。

 

「...これは...」

「俺が子供のころ...今も子供だけど、もっと子供のころ、おいていった宝物だよ。」

 

彼女は大事そうにそれを抱え、泣き崩れた。

 

「え、ど、どうしたんだ?」

「い、いえ...これは...私が小さいときに一緒に遊んでいた、男の子に上げた思い出の、ものなんです...」

 

...そういやそんな女の子いたなぁ...

回想はしないけどな。

でも確かに、その子からもらったものを大事にして、誰も立ち寄らないようなダンジョンに置いていたのは確かだ。

 

「私の...ペンダント...」

 

当時は高そうとか思わず、キラキラしてるからってだけでここにしまっていたけど、うん。やっぱり高価なものだろう。

このペンダントの価値を、今になって知ることになるとは、思わなかったな。

 

「...まぁなんだ、あんときはありがとな。」

「いえ、こちらこそ感謝しています。探し物もみつかりましたから。」

 

そういえばそんなことも言っていたな。だが探し物はどれのことだろうか。これは俺が頂いたものだから...あぁ、返した方がいいのかもしれない。きっととても貴重なものに違いないからな。

 

「ほら、これなんだろ?探し物って。」

「違います。あなたが探し物です。」

「...え?」

 

華怜はじりじりと迫りくる。静かに、長い時をかけて見つけた獲物を捕まえんとするその目は、俺に若干の焦りを与える。

俺は徐々に距離を取ろうとするが、相手も迫ってくるものだからあまり意味は感じない。

 

「な、なぁ華怜?なんで俺が探し物なんだ?」

「それは、今は知らなくていいことです。」

 

気になる言い方だな。しかしこれでは意地でも教えてくれそうにない。

しかして、この場になかったはずの魔力が、徐々に増えているのもほっておくことはできない。ひとまずこの件に関してはまた今度聞くことにしよう。

 

...道を少し戻る。地面には先ほどまでなかった、粘膜を引きづったような跡がある。スライムの匂いがするから間違いはない。だが、それ以外の足跡もあるな。

 

「華怜、スライムくらいは任せたぞ。」

「え?あぁ...えと、どうやって?」

 

...戦闘できない戦闘員ってなんだよ!何のためにいっぱい宝石もってやがんだよ!!

 

「...この宝石は、魔力が籠っていません。すでに消費してしまいました。」

 

どうやってその量を...ルビーは貯蔵量が三番目に多いんだぞ?それを、大量に持っておいて、全部消費した、だと?

ここまで戦闘が苦手、いや。下手だとは思わなかった。

しょうがない。全部やるか。

 

一番大きい魔力の正体はおそらく中型の竜種だ。足跡の大きさ的にもそうだろう。

やだなぁ竜...

 

「まぁまずはスライムをちょっと切ってみろよ。」

「え、え?」

 

俺はとりあえず短刀を錬成して渡す。魔力もある程度込めているので、少し触れただけで低級の魔族は死ぬ。ゴブリンとか。

華怜は必死にスライムを追いかけて切ろうとするが、腰が引けすぎているので、一振りも当たらない。

 

...華怜という人間はどこまで戦闘が、いや。()()()()が怖いのだろうか。優しいのはいいことだが、いざとなって自分を守れませんじゃ、だめだ。

 

「華怜。どんな生物もいつかは死ぬ。自分もそうだろう?ならば優先するべきはどの命だ。」

「...知りません。」

「わからない、ではないんだね、なら、大丈夫。大体の時なら俺が守るから。」

 

~華怜side~

 

私は渡された短刀を片手に、彼の言葉を聞く。彼の言葉に嘘はない。そのどれもが正しいことをわかっている。でも、命とは、どんな生命が相手でもないがしろにしてはいけない。自分と同等、もしくはそれ以上の価値がある。でも、それでも彼は、自分の命を優先しろと言う。それなりに理由はあるのだろう。だが、私にはその理由を理解はしても同意はできないだろう。だから、私は知らない。

 

互いに沈黙しながら、見つめあっている。少しこそばゆいが、目をそらすと負けな気がするのでそうしない。

と思っていた。私は負けてもいいので白状しよう。私の視界には今、二体の生命体が映っている。一つは彼、龍夜だ。もう一つは

「龍...」

「なんだ?」

「だから!竜だってば!!!」

 

~柊side~

 

漢字表記はややこしいから統一しろとあれほど....!

じゃなくて。

ここまで大きな魔力を消していたのは称賛に値するが、背後を撮られるのは大変腹が立つ。そもそも誰が

こんな竜をこのダンジョンに置いたんだよ...

 

「なあ竜...お前、誰だ?」

『我は呼ばれたから来た、それだけだ。』

 

呼ばれた、ねぇ...

 

「なら君に用はない。それに、ここでの用は終わったんだ。帰っても問題ないだろう?」

『...去るのか?』

 

去るよ?帰るよ?言ったじゃん?

 

『...しばし待て。』

「なんで待たなきゃ――――まぶしっ!!」

 

突然光に襲われる。ひとまず結界を展開するが、何が起きたのかいまいち状況がつかめない。後ろに華怜がいるのを確認し、なにかしらのアクションが起こるのを待つ。

 

暫く経つ。光は徐々に収まっていく。その中には人型の影が一つ存在した。

 

「待たせたな。」

「...え、どういうこと?」

 

華怜が驚くのも無理はないが、俺としてもわからない。

ひとまず、竜が人形に形を変えたと言うことしか...

 

「そなたの考えることが妥当だな。だが、言語で説明すると必ず矛盾が起きる。詳しくは説明しないでおこう。」

 

...とりあえず服を渡しておこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に着く。正確には玄関の前。

言い訳を考えるか素直に説得するか。

 

「僕的には、後者がいいと思うな。」

「よく言いやがるこの木龍が...」

 

試験は合格、それだけ言い残し目の前から消える。

全くこの木龍、いつも勝手である。

 

ひとまずは家に入ろう。そのあとのことはその時にでも...気が重いな。



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