DQ単発短編集 (アドライデ)
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DQ11 Endless〜勇者の十一番目の選択〜
ドラゴンクエストXIの短編です。
真? 裏? エンディング後のネタバレ注意。
誰もが一度は考えちゃう話だと思います。
主人公の名前【イレブン】です。
あなたはDQ11を何周プレイしましたか?
★☆★
「イレブン!?」
「あれ? カミュがここに来るなんて初めてだ」
少し驚いたように目を瞬かせる。
ここは忘却の塔。既に忘れ去られた場所。
最初は誰だっけ、ベロニカだったかな。
ケトスに乗らないと来れないのに、これじゃ何時になっても、つけられているのに気付かない鈍感野郎だね。
自嘲気味に笑う。もしかしたら、一番最初に皆が皆で『行くな』と止めてくれた事が嬉しくてずっと覚えていたから、敢えて、見過ごしてしまったのかもしれない。決意は揺るがないと言うのに…。
「おいイレブン。お前何周するつもりだよ!」
「そこまでバレているのか」
隠すのはだいぶ慣れたと思っていたのに…。
どこがおかしかったのかな。ああ、慣れ過ぎて逆に周囲の感情に鈍感になってしまっているのかもしれない。反応が予測できてしまっているから、見逃したのかもしれない。
だけど、何度も時を巡っているなんて、バレたくなかったな。
「おい、イレ…」
「まだダメだよ。まだ完璧にクリアできていない。皆を救えていない」
「もう止めろ。世界の全ての人を救うなんて無理だ!」
もう、十分に多くの人々を救っているじゃないか。世界の人々も傷つきはしたが全員生きている。
全員生きているだって? カミュは本当にそう思っているの?
ほらちゃんと思い出して、最後の最後で何かが救えてないんだ。
最初はベロニカと多くの人々。
次はホメロスと町の人々。
次は…お母さんとお父さんと城の人々。
次は…xxxxとxxxxの人々。
次は…。。。
次は…。
あれ何度目だっけ?
「カミュ…勇者は諦めちゃいけないんだよ」
「…イレブン」
女王のセレン様が教えてくれた大切な言葉。
大丈夫、ちょっとずつだけど、ちゃんと救えているのが分かった。セレン様の言葉は本当だったんだと、実感できている。
だから、最後まで諦めない。
もうこれ以上強くはなれないけれども、ニマ師匠に教えてもらって寿命も弄れるようになったし、この前覚えた【アストロン】の上位の能力で、体感の時間を飛ばせられるようにもなった。失敗しても何時でも宝珠を割れば時間を遡れる。
「だから、何も問題ないよ」
おかしいな。ちゃんと笑えているはずなのにカミュがとても苦しそうだ。
「違うだろ。そうじゃないだろ。どの記憶が本当なのか、もうグチャグチャになって来たけど、お前は…」
ごめん。そこから先は聞きたくない。
一番はじめの情けない姿を、勇者として何も救えなかった愚者を思い出したくない。
「カミュ、次はローシュだけでなく、ウラノスもちゃんと救うよ」
会話を強制的に切り、何の躊躇いもなく勇者の剣を振り下ろす。
「やめろぉぉぉーーー!!」
砕け散る宝玉。光の渦が辺りに広がる。
その中で、勇者はとても和かに笑えていた。
「またね」
Next〜XI〜
★☆★
思いつきと勢いで書きました。
勇者の力は主人公の心なので彼が諦めない限り、一次的に渡したとしても勇者の力は残り、時の宝珠を壊せば何度も過去に行ける。
セニカの立証により、彼女はローシュの所に行けたと仮定すれば、戻りたい過去の宝珠を割ればその過去に戻ることができると推測できる。
つまり、主人公の時渡りの可能性が無限に広がるのではないか?
と言うのを形にしたものです。
短編内では伏せましたが、上記以外にもアーサー王とか、バンデルフォンのお城などを救う事で、新たな可能性が見えてきて、まだ救える人がいることを知るという感じです。
そして、主人公は徐々に過去へ過去へと戻っていくのです。
最後は…聖竜でしょうかね?
矛盾だらけだと思いますが、一種の妄想の先の可能性と捉えてください。
この世界観を生み出してくださった本家ゲーム様には感謝いたします。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
アドライ
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DQB こうして作られた世界
ドラゴンクエストビルダーズの短編です。
エンディングまでプレイしてない人はネタバレになるかもしれません。
ある男の話。
★☆★
何もない空間だった。いや、ただ広い平野が続いていたと言うべきだろうか。どこを見ても広がる地平線が見えるだけである。
その中央に一人の男が立っていた。なぜその場に居るのか理解できないでいる。いくら周りを見渡しても何もなく、状況を説明してくれる者もいなかった。
何時までも立ち止まっていては何も始まらない。男は歩き出した。方向なんてわからない。目印になるものが何もないからだ。
どのくらい歩いたであろう。代わり映えのしないその世界に飽きてきた。幾ら進んでも風景が変わることはない。変わると言えば空の雲ぐらいだろう。
「……空?」
今まで意識していなかったが上を見上げると青い空が広がっていた。青い空があるのなら方角が分かる太陽ぐらいあるだろう。直ぐにそれに思い当たらなかった自身を恥ながら、男は太陽を探す。日はまだ高く、この光が平和な世界を照らしているのだろうと思う。
闇が支配していた、あの時は、この日の光の恩恵が少なく何時も黒い雲に覆われていた。
光は生命の息吹、草花が生え、木々が生い茂り…心地よい風が吹く。
「…風」
無風だった世界から、そよそよと頬を撫でる微風。それに乗せて草木の擦れる音を聞いた。不思議と思い視線を空から地上へと戻す。
「馬鹿な…」
男は愕然とし辺りを見渡す。先ほどまで何もなかった世界に色とりどりの花が咲き、草木が生い茂り、平坦だった世界に凹凸ができていた。
「ははは…まさか、魔物とか想像したら出てくるんじゃないだろうな」
空を思い草木の生命力を想像した今、今まで知っている世界に生息している生き物を思わず考えてしまった。人と言うものは体験したことは容易に想像でき、体験していないものはなかなか想像できないものだ。
草木から飛び出して来た青い雫型のプニプニしたモンスター。名はスライム。突如現れたそれを目撃する事で、己の想像が現実に反映していると言う信じがたい現象を理解した。
「何だここは」
改めて異様な世界を目の当たりにすると背筋が凍った。スライムにスライムベス、ドラキー、ゴースト。これ以上は想像したくないとフルリと頭を振って、目の前にいる輩の討伐に専念する。
男はこの時初めて客観的に己の姿を見ることができた。魔物を討伐することに意識が向いたからか、何時もの黒き鎧と兜、そして手には嘗て伝説の武器と言われた自身の世界で最強と歌われたロトの剣。柄に金の鳥の文様が描かれた青色の剣。中央の赤い宝石が良く映える。
我ながら容赦がない想像だと、逃げていくものは追わずに、来るものだけを一刀両断していく。
すっかり見慣れた世界になってしまったと改めて周りを見る。この分だと川や海どころか、町まで出て来ても驚かないと苦笑する。
再び歩みを進めると木々の間から山が見えて来た。そして反対側には川いや海が見える。
「あれ?」
男は何もない平野に出て首をかしげる。己の想像が現実になっているのなら、ここにあるものが出現するはずであった。しかし、そこには何も無く想像と違うことに改めて首を傾げた。
男が想像したのは城とそれに隣接する城下町である。良く出入りした場所で記憶にも残っており想像しやすかった、その場所だったのだが、何の因果か、そこにそれが出現することはなかった。
そして漸く、保留にして来たこの世界について考えざるおえなくなった。太陽を想像したからか時が流れ出し、夕暮れになってしまった。
町や城を想像したがそれは現実にならず、街明かりもないまま夜になってしまうのは困る。食料も調達しなければ、このままでは生きて行けない。余計なことを考えたからか、空腹を感じるように腹の虫が鳴いた。
何が可能で何が不可能か、アレコレとその場にしゃがみ込み考える。最終的に出た結論は、直接的想像は難しいが材料は可能。変な話だが、斧は出てこないが形の良い石と木の棒は可能。家は無理だが加工済み木材は可能と言う冷静に考えるとそれはどうなんだと思わないでもないが、取り敢えず実のなる木は手に入ったので飢え死にすると言うことはないだろう。木材を叩き作った簡易竃(焚き火に近い)を元にアレコレと野宿開始である。
「漸く落ち着いたな」
粗方作り終えてごろりと横になる。日は落ちてキラキラと輝く星がくっきりと見える。新月なのか月は見えなかった。
(今日はこれでいいが明日からどうしよう)
あれ? 雲行きも怪しくなってきた。雨の心配をしてしまった所為かもしれない。屋根のある場所を作らないと、洞窟を想像すれば何とかなるかもしれない。
できる限界はあるがアレコレと想像通りになるのは面白い。また、色々試すのも悪くないかもしれないな。予定を立てる楽しさがある。怪しくなった雲行きも雨が降ると言う懸念から遠のいていた。
「……俺は何をしているのだろう」
独りで暮らしていると色々麻痺してくる。そんな中でも時折、ふと冷静になる瞬間がある。
どれぐらいの月日が経ったのかもうわからない。いつも明るく照らしていた太陽が憎らしくなって、今では常時、雲に覆われている。小鳥が囀る音が五月蝿く感じて、追い払って無音になっている。
鮮やかな色は眩し過ぎて孤独に耐えられない。気がつけば食料は適当に呼び出し、周りは灰色の世界が広がっていた。
建物も木から石の作りへと変貌を遂げていた
。鮮やかな想像が豊かにできていたのは何時までだったか。
制限があるも何もかも思い通りの俺の世界だがひたすら孤独である。モンスターもいろいろ呼び出したが所詮倒す相手。何故、人を呼べない。町を作れない。
「誰からも何も言われない世界は楽だ」
楽でこのまま惰性に過ごすのも悪くないと思う自分と、このままではダメだ元の世界に戻らねばと言う思いが、なぜか鬩ぎ合っている。
この世界はここまで思い通りになるのだから、現実ではあり得ないきっと何時か戻れるはず。いずれもどる…いつものにちじょうに…。
「………」
何時もの日常? ここへ来る前はどんな生活を送っていた。思い出せない。
この灰色の世界が普通の世界のような気がしてくる。いやそんなはずはない。
色があったはずだ。
色? それはどんな色だ。
どんな生き物が生息していた?
俺はなにを食べて生活していた?
「オレはダレだ?」
おもいだせ…!!
ここに来る前の最後の記憶は………。
『もしわしの味方になれば世界の半分をお前にやろう。どうじゃ? わしの味方になるか?』
ア。……ココハ。
『お前の旅は終わった。さあ、ゆっくり休むがよい! わあっはっはっはっ 』
……セカイノハンブン。
END
★☆★
はじめに、あの闇の戦士が【勇者】であると仮定しています。
そこから、『なぜ【勇者】は魔物となったのか?』と言う妄想です。
竜王が与えたものはラライの現象に近いのではないか。
【勇者】が求めていたのは自分で考える力と誰にも影響されない世界。
しかし、それは孤独と引き換えで、徐々に心が壊れていった末路ではないでしょうか。
そう妄想したので形にしてみました。
『はい』と答えた理由は様々だと思いますが、そこから数百年ずっと生き続けていると思うと切ないです。
ビルダーズの話には勇者がいません。よって、この【勇者】を救える人もまたいません。
竜王を倒せても勇者の奇跡はありません。
そう言う仄暗さがこのゲームにはあるような気がします。
この世界観を生み出してくださった本家ゲームに感謝します。
ここまでお読みくださいましてありがとうございます。
アドライ
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DQB2 からっぽの世界で
ドラゴンクエストビルダーズ2の短編です。
エンディングまでプレイしてない人はネタバレになります。
プレイ中に思った事。
好奇心は猫を殺す
そんなつもりではなかった。彼を傷つけるつもりはなかった。後悔してももう遅い。
何もない島にたった一人佇んでいた彼。破壊衝動に苛まれ、幾多のモンスターの骸を超えてきた無邪気な少年。
物を作るという初歩的なことができない不思議な男である。
己と彼の違いはいくつもあげられるが、共に何もない島に町、いや国を作ろうとしている最大の相棒であることは間違いない。
共に歩むことを疑っていなかったし、創造と破壊は紙一重であるから、物資調達はすごく役に立っている。
確かに物を必要以上に収穫したり、『これも必要か?』といらないものまで持ってきたりと、彼の少しずれた感覚に呆れることは何度かあった。
だけれども、モンスター退治など、強敵相手に目が輝いている姿を見ていると己も嬉しくなる。自分のできることをしている時の満面の笑みは格別であった。人の役に立つことが最大の喜びであるようだ。
そう、これでも信頼して、信用していた。
ただ、ほんのちょっとした好奇心だった。冗談のように、だけれども少し期待して…別に彼が裏切るとか、悪いモンスターであると疑っていたわけじゃない。
記憶もなく、昔のことを覚えていない彼は一体、どんな存在だったのかと。人とは少し違う真紅の鋭い目、尖った耳、笑う時に見える鋭い犬歯。
真実を映すと言う鏡なら、多少なりとも手掛かりが得られるのではないか。そんな些細な好奇心。
結局その鏡は何も映すことはなく、彼に悲しそうな表情を作らせただけであった。
「お前がそんなことするなんて信じられない」
そう、この好奇心は彼の心を傷つけた。ごめんなさい。そんなつもりではなかったと何度も謝罪した。
しかし、忙しないモンスターとの攻防の中、そちらの対処に追われて、中々互いにゆっくりと話し合う時間がなかった。
表面ではそれなりに元の態度に戻っていたから、少し安心してしまっていた。しかし、一度ついた疑心は彼の中で解けることはなかったのだろう。
己と彼の関係に追い討ちをかけられるように、周りの波に飲まれて、騙されると言う形で彼を牢屋に閉じ込めてしまった。しかもその牢屋を作ったのは己自身であった。
やられたと思ったがもう遅い。
何度、交渉しても取り合ってくれず。疑いが完全に晴れるまで彼は牢屋から出ることができなかった。
こうなったのは全て魔物の所為と言えるが…彼の心は閉ざしたままである。そうじゃないと叫ぼうが、違うと喚こうが、もう、己の言葉は彼に届くことはない。
そう、たった一つの好奇心で彼との絆を己は壊してしまったのだ。
「ごめんなさい」
ただひたすらに謝り続ける。
そして、ただひたすらに想う。
泣き腫らした夜は、終わりを告げる。
唯々囚われた君を助けてる為に動き出す。
この世の理とは何か。
世界とは何か、今見えているものでも作り出された幻であると、所詮とある大神官が描いが幻想。
破壊の神を崇め、滅びこそ美しいという教えの元。この世界は成り立っている。
創造と破壊。表裏一体の秩序。
何もなければ破壊することもできない。
だから作る者が…ビルダーが必要となったのだろうか。
かつて要塞都市メルキドと呼ばれた今は亡き町。そこの遺跡探索を行なっていた時に魔物にさらわれた。
そして、この幻の大地に降り立った。
遠い昔、お伽話のように聞かされた勇者なき世界で闇に堕ちたアレフガルドを復活させた伝説のビルダー。
その足跡を辿るように新米ビルダーは島々を探検し、聖地ロンダルキアを目にする事となる。
全ては泡沫、夢の世界。神をも恐れぬ幾多の幻覚の創造。
己の身を捧げる事で破壊の神の力がその地に宿り、偽りの世界を真とした。
「お前も作りたかったんだろ? お前の理想の世界を」
壊すだけが目的ではない。この世界を作り出した意義、それが彼の理想の世界だった。しかし終わりである。再び相違した世界を壊すのを阻止する人々によって…。
シドーの心が切り離され、そして融合する。世界の破壊は創造への架け橋。
そして、崩壊する世界を再び描き出す。
「お前との出会いが運命だとしたら、その運命とやらは悪くないと思うぜ!」
ありがとう。その言葉を紡ぐシドーの顔から笑みが溢れている。それを見て心底安心した。
己もそうであるように、あの一時の過ちを許してくれて、瞳から流れる雫を止めることが出来ない。
「バカだなー。いや、バカなのはオレか」
オレは『破壊神』そう呼ばれた。その冠する言葉通り、破壊の衝動が制御できなかった。あの時は複雑に感情が乱れた。疑われたという懐疑。対魔物兵器の威力による己の存在意義の崩壊…。アイツの楽しそうな姿を見れば見るほど、面白いほどに負の感情に囚われていく思考。
アイツはいつでも手を差し伸べていたというのに…笑って俺を信じてくれていたのに…。
でも、もう大丈夫だ。
オレだって立派に創造できた。なあそうだろ?
オレはもう破壊するだけの神ではない。
「ありがとな。やっぱり、お前は…根っからの…」
END
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