英雄伝説 閃の軌跡3 灰の剣聖 (クロス レイブン)
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原作開始前
プロローグ


 晴れやかな日差しが照り、爽やかな風が吹く森林の中一人の青年が木を背にして目を閉じていた。

 

 これだけなら何処にである光景だっただろう。そう、隣に灰色の騎士のような巨人が居なければだが。

 

(リィン、そろそろ行かなくて良いのか?今年からトールズ士官学院の第Ⅱ分校の教員になる予定だっただろう)

 

 唐突に静寂を破るように青年の頭の中に声が響いた。

 

 青年は驚かずその声に答えるようにゆっくりと目を開ける。

 

「ヴァリマール、そうだなそろそろこの森ともお別れか…。」

 

「一年前この森に来た時は想像も付かなかっただろうな。この森が心地よく感じることなど。」

 

「あの時は俺もお前も生き残ることで精一杯だったからな。」

 

 そう言い一年前のことを思い出す。

 トールズ士官学院の卒業式のすぐ後、ユン老師に呼び出され唐突にこの森に連れてこられたのだ。

 この森は通称【死の森】や【魔の森】と呼ばれ、此処に出現する魔物は全て結社の執行者クラスの化け物ぞろいでろくに調査もされず、入るにはA級クラスの遊撃士の資格がいると言う場所だった。

 何故俺が入れたのかは、ユン老師のコネとしか言えないだろう。そして中に入ったあと、ユン老師は俺に「此処で一年過ごせ」と言い帰っていった。その後俺は神気の力や騎神の力を使いなんとか()()()()あったが今日この日まで生き残った。

 その甲斐あってか俺の八葉一刀流は独自の進化を遂げて、一ヶ月前にはユン老師から七の型奥義皆伝と《剣聖》の名を授かった。

 そう思考をしていると、

 

「だが、その場所を心地よく感じられるほどに私たちも成長できたのであろう。」

 

 と、ヴァリマールに言われた。

 

「ああ、そうだな。俺は《剣聖》の名を授けられ、ヴァリマールは第三段階まで行けるようになった。だが俺は《剣聖》としてまだまだ未熟だし、それにヴァリマールの第三形態も満足に使いこなせてはいないしな。」

 

「リィンそこまで急がなくてもいいのではないか?今でも十分強くなったと思うぞ、それこそ《劫炎》とも神気を使わずに渡り合えるぐらいに。」

 

「ああ、そうかも知れない。だが何故か嫌な予感がするんだ。もっと強大な力が動こうとしているような、それまでにもっと力を蓄えないと……Ⅶ組として皆との約束を守るためにも。……それにもう目の前で仲間を失うのは嫌なんだ。」

 

「そうか…なら私も力を貸そう。リィンおぬしは一人ではない。」

 

「ああ、頼りにさせてもらうヴァリマール………と、そろそろ時間か。行こうかヴァリマール。」

 

「うむ、行くとしようリィン。」

 

 これは八葉一刀流免許皆伝《灰の剣聖》リィン・シュバルツァーの物語である。




このリィンは現段階でオーレリアクラスの達人です。
さらに神気を完全に制御しており、常時死を身近に感じる空間にいたため精神もかなり成長しています。
ヴァリマールも現段階でゲームのラストの力を超えています。

これぐらいしないとラストを変えれないむしろもっと強化するかも?

誤字報告ありがとうございます。
鳩と飲むコーラさん


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半年前

唐突ですが、トールズに行く前に過去編2〜3話いれます。
トールズ編楽しみにしていただいている方には申し訳ないです。
今回はゲームより早くあの3人が登場します。


 半年前 魔の森

 

 やっと此処での生活に慣れてきて余裕が出てきた時の事。

 

「リィン気付いているな。」

 

「ああ、森に誰か入ったな……数は3人それもかなりの手練れだな(だがこの気配何処かで)………。」

 

 この半年で鍛えられたリィンの気配察知は最早人外レベルにまで達していた。

 

「リィンどうかしたか?」

 

「いや、何でもない(行けばわかるだろう)ヴァリマールは此処で待機、俺が様子を見てくる。」

 

「分かった。だが、危ないと思ったら直ぐに私を呼べ。」

 

「分かってるよ。それじゃ行ってくる。」

 

 そう言うと、直ぐに気配のある方向へと駆け出す。

 途中、死角から魔物が気配を殺して襲いかかってきたが「邪魔だ」と言う一言と共に放たれる一閃によりなんなく両断した。

 そうこうしている間に目の前に森の中を疾走する3人の騎士の様な格好をした女性の後ろ姿を発見した。

 リィンはその真ん中の茶髪の髪を団子にした女性を見た瞬間、(やっぱりか)と心の中で呟き一気にスピードを上げ、3人を追い越し、「止まれ」と言う言葉と共に3人の前の地面に斬撃を放ち3人の前に立つ。

 

「な、何ですの。」

 

 と、慌てたように茶髪の女性が言う。

 

「あらあら、お客さんみたいね〜。」

 

 と、冷や汗をかきながら表面上余裕を崩さない紺碧色の髪の女性が言う。

 

「ああ、かなりの手練れのようだ。」

 

 と、大柄な暗い紅色の髪の女性が言う。

 

「内戦以来だな《神速》のデュバリィ。」

 

「あ、貴方は、リィン・シュバルツァーですの!?。」

 

 驚いた様にそう言う。それも仕方ない、内戦の時よりあまりにも身に纏う気配が違い過ぎたのだから。

 

「他は……《魔弓》に《剛毅》だな、初めましてリィン・シュバルツァーだ。」

 

「あらあら、知って下さっているとは光栄ね()()()()()()》様、改めまして鉄機隊《魔弓》エンネアよ、あまり称号で呼ばれるのは好きじゃ無いの、名前で呼んでくださいな。」

 

「同じ鉄機隊《剛毅》アイネス、私も名前で呼んでもらいたい。」

 

「はは、気を悪くしたならすまない。情報局のファイルを少ししか見てなかったから名前を知らなかったんだ、これからはエンネア、アイネスと呼ばせてもらう。だがその代わり俺も《灰色の騎士》とは言わないでくれ、俺もあまりこの称号は好きじゃないんだ。」

 

「ふふふ、分かったわならリィン君と呼ばせてもらうわ。」

 

「了解した、では、リィン殿と呼ばせてもらう。」

 

「て、なっ何悠長に構えて自己紹介しているんですのぉぉぉ!敵同士で仲良くしてるんじゃありませんわ!」

 

「ああもういいですわ、シュバルツァーが何故此処にいるかは知りませんが此処であったが百年目、我ら鉄機隊の前に敗れるがいいですわ。」

 

 そう言うと、3人とも武器を構える。

 

「結社の連中がこの森で何をするつもりかは分からないがどうせろくなことじゃないだろう。即刻この森から出て行ってもらおうか?」

 

 リィンは刀を抜き構える。

 

「出し惜しみしている余裕はないので、結社最強と謳われる鉄機隊の力見せて上げますわ『星洸陣』」

 

 次の瞬間、3人が光の線で結ばれる。

 それは、Ⅶ組の戦術リンクとよく酷似していた。

 

「(戦術リンク…なのか?)まあ、戦ってみれば分かるか、ハ葉一刀流 中伝 リィン・シュバルツァー、参る!」

 

「結社身食らう蛇、7柱アリアンロード直属部隊、鉄機隊行きますわよ!」

 

 そして両者は衝突した。

 これが人外性を発揮しだしたリィン・シュバルツァーの初戦である。




と言うことで次回戦闘回です。
正直小説を書いたのも今回が初めてなので温かい目で見てください。

まさかこんなに多くの人に見られるなんて、皆んなの期待が重いぃぃ

P.S
急いで書いたので誤字・脱字があれば報告お願いいたします。

誤字報告ありがとうございます。
ぐ〜んさん
鳩と飲むコーラさん


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鉄機隊との戦い

戦闘シーン難物でした。


魔の森

 

鉄機隊との戦闘が始まって早くも十分近くが経とうとしていた。

 

「星洸陣、想像以上に厄介だな。」

 

リィンは攻めあぐねていた。

3人が互いにフォローし合うため、中々隙が作れないのだ。

 

「それはこちらの台詞です!なんで私のスピードについてこれますの、と言うか内戦の時より強くなりすぎですわ。」

 

「まさかここまで強いだなんて、死角から矢を放っている筈なのになんで首を傾けたるだけで避けたり、剣で斬りはらったり、挙げ句の果てに素手で掴んでへし折るなんてできるのかしら。」

 

「ああ、凄まじい技量だな。打ち合ってる筈なのにまるで手ごたえが無い、まるで葉っぱを斬っているようだ。」

 

そう、攻めあぐねて居るのは鉄機隊も同じだった。

リィンの危機察知能力は魔の森で鍛えられもはや不意打ちであろうと即座に察知し対応出来る程に進化していた。

 

「これぐらい出来ないとまずこの森では生きていられなかったからな。悪いが内戦の時より遥かに修羅場をくぐり抜けてきた。今回は勝たせてもらうぞ。」

 

刀を突きつけて言う。

 

「認めましょう。シュバルツァー貴方は内戦の時より遥かに強くなった。ですが、私達はあのお方の鉄機隊そう簡単に勝ちを譲るわけにはいきませんわ。」

 

そう言うと星洸陣の光が強くなる。

 

「鬼の力を使っても構いませんよ。それくらいなら待って上げます。」

 

「いや、鬼の力は使わない。俺は何処かでこの力に頼っていたんだろう。だが、それだけじゃ意味がないんだ。鉄機隊は技量で言えばかなりのものだろう。だからこそ、俺は俺の剣技を持って鉄機隊(あんた達)と言う壁を越えないと本当の意味で成長出来たとは言えないだろうからな。」

 

剣気を出しながらそう言う。

 

「っ…生意気ですわ。」

 

「ふふ、嬉しい事を言ってくれる。」

 

「本当にいい男ね、デュバリィがお熱になる気持ちもわかる気がするわ。」

 

「だ、だ、誰が誰にお、お熱つですって!」

 

デュバリィの顔が一気に赤くなる(エンネアやアイネスの顔も少し赤い気もするが)。

一方、鈍感男は、

 

「?何を話してるかは知らないが、そろそろ第2ラウンドと行こう。」

 

「誰のせいだと(ボソ)……ふ、ふん、鬼の力を使わなかった事後悔すればいいですわ。行きますわよ。」

 

そう言うと、一瞬で近づいてきたデュバリィから斬撃が放たれそれを剣で防御するが「そこだ。」と、直ぐにアイネスのハルバードがリィンに向かって薙ぎ払われる。

それをバックステップで受け流しつつ危機察知能力によって矢を察知し首を傾けるが「っ…(速い)」と避けきれず頬を掠る、そして無理をして避けようとしたため体制が崩れ「もらいましたわ。」と、デュバリィの剣が迫る。

それを剣に炎を纏わせ地面に突き刺し無理やり出力を上げる事で暴発させ、爆風で距離を取り回避する。

 

「流石だな(やはり3人の連携をどうにか乱さないと勝機はないか)。」

 

「大見得切っておいてこの程度ですか。」

 

「なら、次はこっちから行かせてもらう。『断空』」

 

緋空斬を強化した空間を断つ程の斬撃がエンネアに向かい放たれる。

一瞬デュバリィの気がそれた瞬間に二の型『疾風』で懐に入り居合を放つがギリギリで受け止められる。

次の瞬間アイネスのハルバードが振り下ろされるが分かっていた様に後ろへジャンプしつつアイネス、デュバリィにに向け目くらまし用に『断空』を放つ。

そして、エンネアが『断空』を避けようと体制が崩れたのを確認して刀を鞘に収め「二の型 改 『残光』」と二の型を改良した、相手の死角に強化した縮地による擬似的な瞬間移動を行い神速の居合を放つ技が放たれる。

連携の乱れた鉄機隊はこれを防ぐことが出来ず全員が地に片膝をついた。

 

こうして一度目の鉄機隊との戦いは幕を下ろした。




正直戦闘シーンの書き方がぜんぜんわかりませんでした。 だいぶ手探りな感じになってしまったのでいい感じに出来てるかどうか

過去編はもう1話続きます。

p.s
最近忙しく更新が遅れるかも知れません楽しみにしていただいている方に本当に申し訳ないです。

誤字報告ありがとうございます
ぐ〜んさん


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鉄機隊との共闘

少し長めです


 魔の森

 

「くっ、私達をどうするつもりですの。残念ながら此処に来た目的は話しませんわ。」

 

「まあ、知りたいとは思うが、無理矢理聞くつもりは無い。」

 

「じゃあ、なんですの。」

 

「何って、さっき言ったように即刻この森から出て行ってもらうだけだが。」

 

「なっ、捕らえないんです。」

 

「残念ながら今の俺は修行の身でな、この森からは出られないんだ。」

 

「後悔しますわよ。」

 

「その時は、その時後悔するさ。」

 

 と、言ったその時「ガァァァァア」と鉄機隊の隣から気配を殺して隙を伺っていた大きな虎型の魔獣が飛びかかって来た。

 

「ちっ……」と、リィンは自らの失態を悟った。鉄機隊との戦闘に集中し過ぎて、周囲の警戒を疎かにしてしまっていたのだ。たが、この魔物は幾ら警戒を疎かにしていたとは言え、リィンに気配を悟られずに潜伏していたのだ。つまりかなりの強さを持つ魔獣だと言える。

 

 咄嗟に鉄機隊も反応するが、さっきの戦闘の傷が癒えていないため動きが鈍い。

 

 魔獣は鉄機隊を薙ぎ払う様に爪を振り下ろす。

 リィンは鉄機隊を守るように魔獣の爪を剣で受け止めるが、「くっ……」と想像以上の重さに声をあげてしまう。

 

 リィンは警戒度を一気に引き上げ『鬼の力』か『ヴァリマール』を使う事を視野に入れる。

 

 どちらを使うか考えているといきなり魔獣が後退する。

 

 何だと思うとリィンを守るように鉄機隊が武器を構えていた。

 

「な、どうして、なんで逃げなかった。」

 

「それはこちらの台詞ですわ。どうして、私達を助けたんですの⁉︎」

 

「あなた達が悪人だとは思えないからな。たとえ敵であろうと、好き好んで見捨てようとは思わなかっただけだ。それに……いやなんでも無い。それよりあなた達はどうなんだ。」

 

 お互い立場なんかがある以上、単純に武で競い合いたいなど言えるはずもなかった。

 

「そんなもの決まっていますわ。守られてその上逃げ帰るなんて鉄機隊の恥、あのお方に合わせる顔が無いですから。」

 

「なるほど、なら此処は共闘と行かないか?」

 

「ふ、ふん。まあ、どうしてもと言うのなら共闘してあげなくも無いですわ。」

 

「あらあら、素直になれば良いのに。」

 

「リィン殿の力添えは心強い。」

 

「なっ、ま、まあ、そう言う事ですわ。行きますわよ。『星洸陣』」

 

 そうしてまた、鉄機隊が光の線で結ばれる。それと同時にリィンの《ARCUSⅡ》が反応しだす。

 

「なっ、これは星洸陣と共鳴してるのか⁉︎…………試してみるか。『戦術リンク オン』」

 

 そう言うと、青い線が3人に伸びていく。

 そして3人との繋がりを感じる。

 

「まさか本当に動くとは、驚いたな。」

 

「確かに、シュバルツァーとの繋がりを感じますわ」

 

「リィン君とのリンクが繋がった見たいね。今まで、鉄機隊のみんなとしか繋がった事がなかったから不思議な気分ね。」

 

「ふむ、そうだな。たが、これならいきなりだが動きを合わせられそうだ。」

 

「まあ、今は戦力が少しでも上がった事を喜ぶべきだな。と、そろそろ魔獣の我慢が限界そうだ。」

 

 そこには、今にも飛びかかろうとする魔獣の姿があった。

 その魔獣に剣を向けリィンが言う。

 

「八葉一刀流 中伝 リィン・シュバルツァーならび鉄機隊、共に大型魔獣を撃破する!」

 

「「ああ(ええ)。」」

 

「はい。て、なんでシュバルツァーが仕切ってるんですのぉぉ!」

 

「来るぞ!話は後だ」

 

 と、すぐに魔獣の薙ぎ払いがくる。

 それを、リィンは剣で受け止め、バックステップで距離を取る。

 だが、すぐに魔獣も追撃を与えに距離を詰めようとするが、その魔獣の目にエンネアの矢が突き刺さる。

 

 魔獣は痛みに悶え後ずさるが、その隙を見逃さず飛び上がったアイネスのハルバードによる振り下ろしが直撃する。

 

 魔獣は痛みのあまり暴れ狂うがそんな事知った事じゃ無いと言う様にリィンとデュバリィが速さで翻弄する。しかし、全身傷だらけになりながらもまだ魔獣は立っていた。

 

「なんてタフさだ。此処までしてまだ倒れないのか。」

 

「普通の魔獣じゃないみたいですね。」

 

「ああ、今まで半年間此処にいるが、こんな魔獣を見た事がない。」

 

「だが、後少しで倒せる筈だ。全員気を引き締め「グガァァァァア」なんだ。」

 

 黒い気の様なものを出しながら魔獣の闘気が急激に増大し始める。

 

「まさか、これは…上位の猟兵にしか出せないんじゃなかったのか?」

 

「ウォークライ………ですの。」

 

「ああ、見た事がある。たが、似ているようで違うような。」

 

「さしづめ、高位魔獣が使えるウォークライの様なものだと思った方が良さそうですね。どちらにしろ冗談にしては、タチが悪すぎるんじゃないかしら。」

 

「来るぞ!気を付けろ。」

 

 魔獣は一気に踏み込みエンネアの前で爪を振りかぶる。

 それを見たリィンは縮地を使い一気にエンネアの前に躍り出て爪を受け止めようとするが、その爪を見てリィンは瞬時に受け止めては駄目だと判断し、エンネアをお姫様抱っこして縮地で一気に離脱する。

 

 爪の振り下ろされた場所を見ると地面に深い爪痕が残されていた。

魔獣はさっきの一撃を避けられたのを、警戒したのか様子を伺っている様だった。

 

「ふぅ、いまのは危なかったな。」

 

「ありがとう。リィン君、でも早く降ろしてくれないかしら。」

 

 と、少し赤い顔で言うエンネアを二人の元に連れて行き降ろす。(一人にはジト目を向けてきていたが)

 

「ゴホン、とりあえずアレをどうするかだな。」

 

「さっきまでとは別物だと思った方が良さそうですわね。」

 

「みたいだな。それと、あの爪をまともに受け止めるのは避けた方がいい。」

 

「あの痕を見て、その気が起きる方がおかしいですわ。

 

「はは、そうだな。さて、始めるとしよう。総員最大限に協力して奴を仕留めるぞ!」

 

「はい(ああ、ええ)」

 

 そう言うとリィンは縮地で一気に魔獣の懐まで潜り込み強烈な『弘月一閃

 』を放つが魔獣は怯んだ様子もなくそのまま爪を振り下ろす。が、リィンはその一撃を知っていたかの様に慌てず「アイネス!」と言うと横から「承知」と放たれたハルバートの一撃で上に弾かれる。

 

 そして体制が崩れた瞬間「デュバリィ!合わせろ!」と言うと直ぐ後ろから「言われなくても!」と言う声と共にリィンとデュバリィが魔獣を中心にクロスを描くように斬撃を喰らわせる。

 

 だか、魔獣はそれでも怯まず直ぐに体制を立て直し腕を振る。

 それによりアイネスが吹き飛ぶ。リィンは直ぐに「エンネア!動きを!」

 を言うと「ええ、任せて。」と空から無数の矢が魔獣の動きを封じる。

 

 その間に縮地でアイネスの吹き飛ぶ方向に先回りしアイネスを受け止め「大丈夫か?」と言うと「あ、ああ問題ない。礼を言う。」とアイネスが体を起こす。「なら一気に決めるぞ!」と言うと四人で魔獣を取り囲む。

 

 そしてまず、アイネスが飛び上がり上からハルバードによる強烈な一撃を叩き込む。が、決定打にはならない。

 

 直ぐにエンネアの矢が残された目に向かうのだが学習したのかその矢を途中ではたき落とす。

 

 そして魔獣は勝利を確信し二人を殺そうと爪を振りかぶる。が、二人の勝利を確信した目を見てもう二人いたことを思い出す。

 

「シュバル…ああもう、言いにくいですわ。リィン合わせなさい!」

 

「はは、ああ、分かった」

 

 と、エンネアとアイネスが引きつけてくれていた間にリィンとデュバリィは自分たちの分身を2体づつ生み出し、計六人で魔獣を嵐の様に全方位から切り刻んでいく。

 

「「ハァァァァァァア」」

 

 更にスピードを増し凄まじいコンビネーションで切り傷の無い場所がないレベルで切り刻むと、二人で分身を消して魔獣の真正面まで移動し、「「これで……終わりだ。(ですわ。)」」と、魔獣の胸にクロスになるように強力な一撃を二人で放つ。

 魔獣は、その一撃が決定打になったようでゆっくりと消滅していく。

 

「終わったみたいだな。」

 

 四人ともが顔を見合わせ武器を収める。

 

「そ、その一応礼は言っておきますわ。べ、別にあなたがいなくても勝てましたけどこんなに早く倒せませんでしたし。」

 

「本当にこの子は………はぁ、もういいわ。私からもお礼を言わせてリィン君、ありがとう。あなたが居なかったら危なかったわ。」

 

「迷惑をかけたな。………あと、その…あんな風に受け止められたのは初めてで動揺して礼を言うのが遅れた。ありがとう助かった。」

 

「いや、別に気にしないでくれ。一時的な共闘とは言え、仲間であった事は間違いないんだ。仲間同士で助け合うのは当たり前だろ。」

 

「ふ、ふん。敵を共闘とは言え仲間扱いするなど、甘すぎますわ。」

 

「デュバリィ、そんな事言いつつ口元ニヤけてるわよ。でも、本当にお姉さん狙っちゃおうかしら。」

 

「ふふ、本当に気持ちの良い男だなリィン殿は。」

 

「そろそろ行くんだろ?……いつかあなた達とは立場なんて関係なく戦いたいものだ。」

 

「そんな日はこ「来ない…か、俺も最初はそう思っていた。だが俺たちは立場なんて関係なしに共闘し合えた。なら、そんな日が来ても不思議じゃないだろ?」……はぁ、本当に甘いですわね。ですが、まあ…そんな日が来るのも悪くはないかもしれませんわね。ですが、次会う時は敵同士です。手加減するなど許しませんわ。」

 

「当たり前だ、俺たちⅦ組の前に立ち塞がるなら容赦なんてしない。」

 

「本当にⅦ組命ですわね。私達はこの辺りで失礼させてもらいます。ああ、それとそろそろ結社が動き始めますわ。せいぜい気をつけると良いですわ。」

 

「なんだ、心配してくれてるのか?」

 

「そ、そんな事ある訳ないですわぁぁぁぁ!」

 

 と、逃げる様に走り去ってしまう。

 

「あ、おい。」

 

「あらあら、全く世話の焼けるわね。それとリィン君。次、鉄機隊が勝ったら私達の配下に加わってもらうわよ。」

 

「え、それってどう言う……て、もう居ないし。」

 

 言う事だけ言って直ぐにデュバリィの後を追って行ったエンネア。

 

「次の立ち合い楽しみにさせてもらう。」

 

「はぁ、もう勝手にしてくれ」

 

 そして、全員が去って行った。

 

(リィン、どうやら終わったみたいだな。)

 

 頭の中に声が響く。

 

(ああ、ヴァリマールか、今終わった。)

 

 そして、リィンは改めて結社の目的なんだったんだと思う。

 リィンは鉄機隊の進行方向にだった方向に目を向けていると、ある事を思い出す。

 

(ヴァリマール、確かこの先に古い石版が置いてあったよな?)

 

(ああ、そう言えばそんな物がたったな。)

 

 確かその石版には「此処ハ、《巨イナル一》ノ、生マレシ場所。」と、書かれていた筈だ。《巨イナル一》と言う存在がどんな存在か分からないが、この森と言い、あの魔獣と言い尋常な存在じゃ無さそうだ。

 どちらにせよ、この森を一度調べてみる必要が有りそうだ。

 

(リィン、どうかしたか?)

 

(いや、取り敢えずそっちに戻るよ。それから、今日あった事とか今後の事を話し合おう。)

 

 そうして、魔の森の謎は深まるばかりであった。

 

 

 

 




過去編は一旦終了です。この後リィンが何を知ったかはまだ秘密です。(な、何も考えて無いなんて言えない。)

星洸陣に反応する《ARCUSⅡ》の不思議(きっとARCUSの元に
なったのが星洸陣なんだよ。この小説内ではきっと。)
ウォークライみたいなのを使える魔獣、れ、歴戦の魔獣ならきっと(震え声)
魔の森とは一体なんなんだ(棒読み)

これは全部《巨イナル一》とか言う奴の所為なんだ。(ヤケクソ)

御都合主義と思って貰えれば幸いです。

あと、誤字報告ありがとうございます。助かります。


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序章。春、ふたたび
列車内にて


 ラマール本線旅客貨物列車

 

 車内では黒髪の青年と金髪の青年が話し合っていた。

 

「まさか、パトリックと会うだなんて驚いたな。」

 

「それはこちらの台詞だ、シュバルツァー。一年間も姿を眩ませておいてこんなところで会うなんて、一体一年間どこで何をしていたんだ。」

 

「いや、悪いな。少し修行をしていたんだ。」

 

「なるほど。そのせいか、随分と落ち着いたようじゃ無いか?」

 

「かなり苦労したからな。それに自分なりの答えを見つけたからかもしれないな。」

 

「本当に変わったな。大人びたと言うか、余裕が出来たと言うか。(これはまた、シュバルツァーに想いを寄せる女性が可哀想だな。)」

 

「はは、そうか自分ではあまり分からないが。」

 

 リィンは気づいていなかったが、纏う雰囲気がかなり変わり、余裕のある大人びた感じになっており、もともと顔が整っているのも合わさり少し微笑むだけで周りの女性が顔を赤くなってしまう始末である。

 

「それと、Ⅶ組や知り合いにちゃんと修行に出る事を言ったのか?」

 

「あっ、…………い、いきなりだったし、通信も繋がらない場所だったから。」

 

「ノーザンブリア併合で心配していた上トールズ士官学院を卒業後すぐに姿を眩ますなんてⅦ組やエリゼさん達の心配具合はやばかったぞ。(特に酷かったのは女性陣だったが。)」

 

「はぁ、これは一発殴られる覚悟はしておかないとな。」

 

「そうだな、覚悟はしておいた方が良いだろう。(まあ、必要になるのはもっと違う覚悟かもしれないが。)それでトールズ士官学院第二分校に務めるそうじゃないか?もうⅦ組やエリゼさん達はそのことを知っているのか?」

 

「ああ、多分な。「次はリーヴス、リーヴスです。貨物搬出のためしばらく停車………」と、そろそろ着くみたいだな。俺は着く前に一度ヴァリマールの様子を見てくるよ。」

 

「ああ、行ってくるといい。」

 

 そうして、リィンは席を立って列車の最後尾に向けて歩き出す。

 

「ねえ、あれ灰色の騎士じゃない?」

 

「ふむ、あれが噂の英雄殿か。」

 

「灰色の騎士てあんなにイケメンだったんだ。」

 

「なんと言うか纏う雰囲気が変わったよね。」

 

 リィンは思わず心の中で苦笑いする。

 一年間姿を消していたから少しは落ち着いたと思っていたんだがな。

 だが、何だか女性の視線が多いような……気のせいか。

 

 そうしているうちにもう最後尾に着いていた。

 警備をしている人に挨拶し中に入れてもらう。

 リィンが中に入ると、リィンの接近を感じてヴァリマールは起動する。

 

「ふむ……そろそろ到着か?」

 

「……ああ、窮屈な所ですまないな。本当なら転移で来ても良かったんだが、お前の力はなるべく隠しておきたいからな。」

 

「構わない。それに、宰相に力を悟られる方が厄介なのであろう。」

 

「ああ、第二段階もそうだが、第三段階の《《固有能力》》、灰が灰たる所以の力だけは、絶対にバレるわけにはいかない。アレは余りに強力過ぎる。それにまだ、満足に扱えてすらいないしな。」

 

「うむ……そうだな。当面の目標はアレを制御することになりそうだな。」

 

「ああ、だな。頼りにしているぞ相棒。お前は俺の切り札なんだから。」

 

「うむ、任された。」

 

「と、誰が来るな。」

 

 すると、後方のドアから金髪の少女と赤毛の男性が入って来て、貨物を調べ始める。

 

「えっと……あっ、ちゃんとありました。」

 

「ふう、やれやれ。」

 

「何を警戒しているんだか知らねぇが搬入にも立ち会わせないとはな。」

 

 と、金髪の少女と赤毛の男性が此方を見る。

 

「え………」

 

「なに……?」

 

「……すごい……」

 

「噂には聞いちゃいたが……」

 

 そう言い此方に向かってくる。

 

(……この二人は……)

 

「全長七アージュの人型最新兵器……《機甲兵》だったか?」

 

「ううん、違うみたいです。《灰の騎神》……ですよね?」

 

「そいつは……」

 

「ああ…その通りだ。一般人ましてや外国の人が知っているとは思わなかったが。」

 

「えへへ……こういうものに、結構興味がある方なので。」

 

「何が結構だ……一家揃って筋金入りのくせに。それより、よく俺たちが外国人だって気づいたな?」

 

「ほんの少し、アクセントの違いが。南の方……リベールあたりからですか?」

 

「あ……」

 

「クク、ビンゴだ。そうか……お前が《灰色の騎士》だな?」

 

「(驚いたな…それにこの男……随分とできる。まあ、悪意は感じないし、悪い人では無さそうだ)………ええ、本当によくご存知ですね。」

 

 そう言うと、すこしピリッとした空気が流れ、金髪の少女がオドオドし出す。だか、その空気を壊すように、後方のドアから「シュバルツァー、いるか?」という声と共にパトリックが姿を現わす。

 

「あと、少しで到着だぞ?準備の方は……」

 

 そこで、パトリックはリィン以外の二人の存在に気づく。

 

「おや………?」

 

「問題ない。いつでも降りられる。」

 

「邪魔したな。こっちも準備するぞ。」

 

「は、はいっ。……失礼しましたっ!」

 

 そう言い、二人は去っていく。

 

「なんだ……?一般人じゃ無さそうだが。」

 

「ああ、外国人で……彼らも次で降りるみたいだ。もしかしたら俺の就職先に関係しているかもしれないな。」

 

「……なるほどな。色々と胡乱な噂を聞いてはいるが……」

 

「リーヴス駅、リーヴス駅です。貨物搬出のためしばらく停車いたします。十分ほどお待ちください。」

 

「着いたみたいだな。話はこの辺で、俺たちも外に出よう。」

 

 

 

 

 

 リーヴス駅

 

 

 

 しばらくすると、《灰の騎神》や《灰色の騎士》の姿を見ようと人が集まり始める。

 

「フッ……相変わらずみたいだな《灰色の騎士》殿の人気ぶりは。」

 

「やめてくれ、一年間姿を眩せれば少しはマシになったと思ってたんだ。」

 

「残念だったな、思惑通りに行かなくて。」

 

「そうだな。あ、そう言えば礼を言うのが遅れたな。ありがとう、パトリック。二年間、共に切磋琢磨してくれて。」

 

「シュバルツァー………」

 

 すると、パトリックが右手を差し出す。

 

「フッ、栄えあるⅠ組の生徒として当然のことをしたまでだ。出席日数はギリギリ、いつも理不尽な難題を押し付けられながらーーー一人で足掻いてやり遂げてしまう。不器用な友人(ライバル)のことをせめて気にかけるくらいはね。」

 

「パトリック……」

 

 そう言いと、リィンも右手を差し出し握手する。

 

「そっちは海都で、侯爵家の名代を務めるんだったか……大変な役目だと思うけど、どうか頑張ってくれ。」

 

「フッ、アルバレアに後れを取るわけにはいかないからな。」

 

「君こそ曰く付きの就職先でせいぜい足掻いて頑張るといい。それとエリゼさんやほかの人にも連絡を欠かさないようにしたまえ。また、何も言わず姿を眩ますなんて事になったら、目も当てられないぞ。」

 

「あ、ああ。肝に命じておくよ。」

 

 すると、ホームに列車が出発する音が鳴り響く。

 それと同時に手を離す。

 

「元気でそのうちまた会おう!」

 

「ああ、そうだな!」

 

 そう言って列車のドアまで歩いて行くと立ち止まり振り返る。

 

「そうそう…言い忘れるところだった。二年前に交わされたと言う君たち《Ⅶ組》との約束。無事、果たされるといいな。」

 

「あ……」

 

 パトリックはそう言いと列車の中に入って言った。

 

 そして、列車が動きだしたのを見送りながら。リィンは決意を改めて固め、力尽く「ああ、勿論だ……!」と呟いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近、閃の軌跡の小説が増えてきて嬉しい限りです。

これからも少しづつ更新、頑張って行きます。

ぐ〜んさん、鳩と飲むコーラさん、泡泡さん、誤字脱字報告ありがとうございます。


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リーヴスでの再会

短めです。
ついにあの人登場、上手く書けているか不安でならない。


 近郊都市リーヴス

 

 

 リィンはリーヴス駅を出るとそのまま中央付近の噴水近くまで足を運ぶ。

 

(帝都西の郊外の街………今まで降りた事は無かったな。トリスタと同じくらいか……ライノの花も咲いてるみたいだ。)

 

 リィンはライノの花を見ながらトリスタや士官学院の事を思い出す。

 

(まさか一年間姿を消しているうちに、トリスタの士官学院が()()()()になるなんて夢にも思わなかったが……)

 

 そうリィンが思考していると、

 

「リ、リィン君………?」

 

 と、どこからか戸惑いと驚いた様な声がきこえた。

 リィンは直ぐにその聞き覚えのある声の方を見る。

 

「やっぱり……リィン君だ。」

 

 そう言うといきなり抱きしめられる。

 

「ト、トワ会長……」

 

 これにはリィンも驚く。

 

「心配したんだよ……一年間もなんの連絡も無しに消えて……」

 

 リィンはそこでやっとトワが泣いているのが分かった。

 

「………すみません。いきなり消えたりして……もう消えたりしませんから。」

 

 そう言うと、トワを抱き締め髪を撫でる。周りの住人は暖かい目で見ていた。

 

 

 しばらくそのままでいると、トワは公衆の面前だと思い出したのか顔を真っ赤にして離れる。

 

 それを見て、街の人々が騒ぎ立てる

 

「あら、若いわね〜〜〜」

 

「若い頃の私を見ている様だわ。」

 

「しっ、今良いところなんだから。」

 

 と、街の人たちの言葉でトワがますます真っ赤になる。

 

「トワ会長!とりあえず此処から離れましょう?」

 

 そう言うと、トワが小さく頷く。

 それを見てリィンはトワの手を引き歩き出す。

 

 しばらくの間、トワは黙ったまま腕を引かれていたが、すこし冷静さを取り戻した様子だったので、手を離して向かい合う。

 そのとき「あ………」と、小さく残念そうな声が聞こえた気がするが、気にしない事にしよう。

 

「トワ会長、改めて修行の為とは言え突然いなくなったりして、本当にすみませんでした。」

 

「もう、本当に心配したんだよ。一年間も音沙汰なしで……でも、無事で良かったよ。」

 

「はは、本当にトワ会長には頭が上がりません。」

 

「それと、私も取り乱しちゃてごめんね。それにしても本当に一年前より随分大人っぽくなってびっくりしちゃた。間違えてたらどうしようと思ってびくびくしながら声かけたんだよ?」

 

「そんなに変わりましたか?」

 

「あ、うん。えへへ……凄くカッコ良くなったよ///」

 

 そう、少しはにかみながら言う。

 

「そうですか、自分じゃ全然分からないので……トワ会長こそ、少し大人っぽくなって、その服も似合ってますよ。」

 

「そ、そうかな。で、でも…背も伸びてないし。」

 

「そのままでも十分魅力的ですよ?」

 

「もう。リィン君が意地悪だ。」

 

「はは、俺は本心を言っただけなんですが。」

 

「っ〜〜〜〜〜(その顔で、そんな事言うなんて反則だよー!)///」

 

 リィンが少し困った様に微笑んでそう言うと、トワは早足で学院の方に向かう。

 

「あ、待ってくださいトワ会長ー!」

 

 そしてどうにかトワの機嫌を直すと、二人で学院に向け歩き出す。

 

 そして二人は何故此処にいるか?や会長呼びを先輩呼びに変えたりなど話してながら学院へと入って行って行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




最近リィンに魔剣クラスの刀をもたせたい今日この頃。
いっその事、某スタイリッシュアクションゲームの半魔の鬼ぃちゃんの愛刀持ってくるのもアリかも。


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顔合わせ

話が進まない。


トールズ士官学院第二分校 本校舎・軍略会議室

 

 

 

会議室の中には、リィンとトワ、そして赤髪の服を少し着崩した男と金髪の堅苦しいそうな男がいた。

 

「よく来たな。リィン・シュバルツァー君。鉄道憲兵隊所属。ミハイル・アーヴィングだ。出向という形あるが、本分校の主任教官を務める予定だ。(資料で見るより達観してるな。少しは動揺すると思ったんだが、一年間行方知れずになっている間に何かあったのか)」

 

少し心配そうな顔をした様子のトワがリィンの方を見ていたが、リィンは気にした様子は無かった。

 

(監視の目は付くと思っていたが、鉄道憲兵隊の左官クラス一人だけか……これなら少しは動きやすいな。)

 

すると、此処まで黙っていた赤髪の男が会話に入ってくる。

 

「ハハッ、まさかこんな所で噂の人物お目にかかれるとはな。ランドルフ・オルランド。帝都軍・クロスベル方面隊からの出向だ。あんたの名前はあちこちで聞いてるよ。せいぜいお手柔らかに頼むぜ。(纏う雰囲気が只者じゃないな。下手すりゃ親父……いやそれ以上か。こりゃ、最近新たな剣聖が生まれたって話もあながち間違いじゃ無いかもな。)」

 

(たしか…前クロスベルで戦ったあの人の仲間だったか……なら、信用出来そうだな。さて、次は俺の番だな)

 

「リィン・シュバルツァー。昨年、トールズ士官学院の《本校》を卒業したばかりの若輩者です。よろしくお願いします。ミハエル少佐、ランドルフ中尉も。」

 

「ああ、こちらこそだ。《灰色の騎士》の勇名……共に働けることを光栄に思う。たが、此処で求められるのは、《騎神》による英雄的行為ではない。教官としての適性と将来性、遠慮なく見極めさせてもらう。」

 

「…肝に銘じます。」

 

そこからトワの話になり。トワが褒められた時、リィンが自慢の先輩だと褒め、それでトワの顔が赤くなった事件もあった。

 

そしてその話が一区切り着いたあと、分校長と特別顧問の話になる。話が終わる頃にずっと感じていた気配が後ろの扉に来ている事を感じ、リィンは後ろの扉に振り返りながら言った。

 

「そろそろ入って来てはどうですか?オーレリア将軍にシュミット博士。」

 

そう言うと、後ろの扉が開き二人の人物が入ってくる。

 

「フフ……一年半前より男前になったではないか?シュバルツァー。……それに随分化けたな、流石は《剣聖》と言ったところか?」

 

その言葉に周りが驚く気配がするが、そんな事は気にせずリィンはこう言った。

 

「はは、流石に耳が早いですね。オーレリア将軍。まだ《剣聖》の称号を貰って一ヶ月もたっていないはずなんですが。それと、シュミット博士もお久しぶりです。ヴァリマールの太刀の製作……あの時は本当にお世話になりました。」

 

「礼は無用だと言ったはずだ……特別顧問という肩書きだが私は自分の研究にしか興味はない。せいぜい役に立ってもらうぞ。シュバルツァー……いや《灰の起動者》。」

 

「本当にお変わりないようで安心しました。自分にできる事ならお手伝いさせていただきます。」

 

「……フン。」

 

リィンはここでオーレリア将軍に目を向ける。

 

「それで、オーレリア将軍……いや今は分校長とお呼びしたほうがよろしいでしょうか?」

 

「ほう、いつから気付いていた。たしか、分校長だと名乗った覚えはないが?」

 

「いえ、いつからとかではなく。まあ、ただの()ですよ。」

 

「そうか、ただの()か、ただの勘にしては鋭すぎる気がするがまあいい。改めてになるが、晴れて教官になるそなたら全員に名乗らせてもらおう。オーレリア・ルグィン…これより《トールズ士官学院第二分校》の分校長をつとめさせてもらう。」

 

こうしてお互いの紹介を終えたあと、入学式のためみんなでグラウンドに向かうのであった。

 

 

 

 

 




これからちょとずつ話のスピードを上げたいなとおもいます。

このリィンはレクターレベルの勘の鋭さも持ち合わせいます。(これでまた御都合主義が増えるぞ〜。)


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入学式

キャラ崩壊してないかな。


 トールズ士官学院第二分校 グラウンド

 

 グラウンドには既に入学生が集合していた。

 生徒たちは思い思いに過ごしていたが、誰かがグラウンドに降りてくる教官達に気づくとにわかに騒ぎ出す。

 

「ククッ……マジかよ。」

 

「ふふっ……予想外、ですね。」

 

「《灰色の騎士》………」

 

「…………うそ………」

 

 近づくにつれ生徒たちが騒ぎ出したのを見てリィンは、伊達メガネはやっぱり意味なかったなと、心の中で苦笑いした。

 

 そしてリィンは今日は随分と視線を感じる日だなと思う。その視線の中でジトーとした視線を感じそちらに目を向けると目が合った瞬間顔をそらす無表情ながらどこか拗ねたような感じを出す見覚えのある銀髪の少女がいた。

 

 リィンは一年前より随分と感情を感じられるになった事を嬉しく思うと、同時に彼女がいる事に驚く。

 

 その後つつがなく入学式が終わり。各生徒をクラスごとに分かれて行く。

 

 そしてクラスの発表されていない三人の生徒たちが《Ⅶ組・特務科》となり、リィンはその担当教官に任命される。

 

 また、リィン達Ⅶ組・特務科は列車の中で会った金髪の少女とシュミット博士、ミハエル少佐に先導され、大きな機械的な建物の前まで連れて来られる。

 

 

 

 

 アインヘル小要塞

 

 

 

「わああっ………!送られた図面で見ましたけど、こんなに大きいなんて………!」

 

「フン、この程度ではしゃぐな。伝えていた通り、お前には各種オペレーションをやらせる。ラッセルの名と技術、せいぜい示してみるがいい。」

 

「は、はいっ……!」

 

 リィンはシュミット博士と金髪の少女の話を聞きながらやはり第二の生徒だったかと思うと同時にラッセルと言う名に聞き覚えがある様な気がした。まあ、そんな事はさて置いてと、《Ⅶ組・特務科》について考えを巡らせる。

 

 そうしていると、ミハエル少佐が説明を始める。

 

「現在、戦術科と主計科はそれぞれ入学オリエンテーションを行なっているが……Ⅶ組・特務科には入学時の実力テストとしてこの小要塞を攻略してもらう。」

 

「こ、攻略……?」

 

 と、ピンク髪の女子が困惑したように声を上げる。

 

「そもそもこの建物は一体……。」

 

 と、蒼灰髪の男子は冷静に現状を把握しようと質問した。

 その質問答える様にシュミット博士が話し始める。

 

「アインヘル小要塞ーー第ニとあわせて建造させた実験用の特殊訓練施設だ。内部は導力機構による可変式で難易度設定も思いのままーー敵性対象として、()()()()も多数放たれている。

 

「な……!?」

 

「ま、魔獣ーー冗談でしょ!?」

 

 二人ともさすがに魔獣が放たれていると言う言葉に驚きを隠せない様だった。

 

 リィンはここまでの話を聞き「……なるほど。」と呟いた。

 

「《Ⅶ組》、そして、《特務科》》。思わせぶりなその名を実感させる入学オリエンテーションですか。新人教官への実力テストを兼ねた。」

 

「フッ、話が早くて助かる。と言っても、かつて君のいた《Ⅶ組》とは別物と思うことだ。教官である君自身が率いることで目的を達成する特務小隊ーーそういった表現が妥当だろう。」

 

「なるほど………それで。」

 

ちょ、ちょっと待ってください!

 

 ピンク髪の女子がいきなり大声を上げる。

 

「黙って付いてきたら勝手なことをペラペラと………そんな事を…ううん、こんなクラスに所属するなんて一言も聞いていませんよ!?」

 

 そんなピンク髪の女子にミハエル少佐が冷徹に言い放つ。

 

「適性と選抜の結果だ。不満ならば荷物をまとめて軍警学校に戻っても構わんが?」

 

「くっ……」

 

(軍警学校……?たしかクロスベルのーー)

 

「……納得はしていませんが状況は理解しました。それで、自分達はどうすれば?」

 

「ああーーーーシュバルツァー教官以下四名は小要塞内部に入りしばし待機。」

 

 そう言うと、ミハエル少佐はこちらに来て四種のマスタークオーツを渡してくる。

 

「その間、各自情報交換と。シュバルツァー教官には候補生にARCUSⅡの指南をしてもらいたい。」

 

「ーー了解しました。」

 

「フン。これでようやく稼働テストが出来るか。グズグズするな、弟子候補!十分で準備してもらうぞ!」

 

「は、はいっ!」

 

 そしてミハエル少佐を除き小要塞内部に入っていく。

 

 中に入ると博士達は制御室に向かった。

 

「機械仕掛けの訓練施設……博士ならではといった感じだな。ーーで、概要についてはどこまで知っているんだ?」

 

 と、リィンは銀髪の少女に尋ねるが、銀髪の少女は無表情でそっぽを向いていた。

 リィンはため息を出すとこう言う。

 

「そろそろ、機嫌を直してくれないか、アルティナ?」

 

 その言葉にやっと銀髪の少女いやアルティナが反応する。

 

「いえ。別に機嫌が悪いわけではないです。ただ、一年間連れ添ったパートナーに何も告げず、一年間も行方不明になった薄情で不埒な人に少し思うところがあるだけです。」

 

 リィンは思った以上に感情が育っている様子に驚き、そこを突かれると(一部納得出来ないところもあったが)痛いなと苦笑いしつつ思い。

 

「分かった。俺が悪かったよ、俺が出来る事なら出来る範囲で何でもするから許してくれないか?」

 

「……何でもですか?………今回はそれで許してあげます。」

 

 そう言うと、無表情が少し崩れ満足そうな顔を覗かせる。

 リィンはアルティナが意見を聞いて悩んだ様に見せていたが実際どこかその言葉を待っていた様にも見えた。

 

「ああ、でも、無茶な注文はやめてくれよ。」

 

「それは……リィンさん次第です。」

 

 その言葉を聞いた後、リィンはずっと気になって居た疑問を問う。

 

「それと、ずっと気になって居たんだが………誰の入れ知恵だ?」

 

「…………なんの話ですか?」

 

 そう言って、目を逸らす。

 リィンは言いたくなかったが仕方ないと思いながら言った。

 

「言わないと何でもの話はなかった事に「クレアさんです。」す………そうか。」

 

 リィンは何でもの話をなかった事にしようとした瞬間、顔を急に近ずけ元凶(クレアさん)を白状するアルティナに驚きつつ、クレアさんに次会った時に話すことが増えたなと思う。

 

「とりあえず。話を戻すが、概要についてはどこまで知ってるんだ?」

 

「詳しくは何も、ここに来ればリィンさんに会えると言われたので。」

 

 そう言ってアルティナは此方を見る。

 リィンはここまで心配をかけていた意味とアルティナがここまで自分の意思をしっかり持てていることに成長したなと言う意味で頭を撫でる。

 

「………やはり不埒な人ですね………」

 

 そう言うが言葉とは裏腹にもっと撫でろと言わんばかりに頭を近づけてくるアルティナにリィンは思わず微笑む

 

「…………そろそろいいですか?」

 

 と、蒼灰の髪をした男子がリィンに問いかける。

 リィンは「ああ」と言うと撫でていた手を離す。アルティナには何故か、不満そうな顔をされたが。

 

「その……二人は知り合いで?」

 

「ああ、少し縁があってな。まあ、こんなところで会うことになるとは、流石に想定外だが。ーーそれはともかく。準備が整うまでの間お互いに自己紹介しておこう。申し訳ないが、到着したばかりで君達の事は知らなくてね。」

 

 こうして自己紹介が始まり、ピンク髪の女子がユウナ・クロフォード、蒼灰髪の男子がクルト・ヴァンダールだという事がわかる。

 その後少しギスギス感はあったものの自己紹介を終えると、アナウンスが入る。

 

『お、お待たせしました!アインヘル訓練要塞、LV0セッティング完了です!《ARCUSⅡ》の準備がまだならお願いします!』

 

「これって、さっきの金髪の……」

 

 ユウナがそう言うと、クルトが肯定する様に言う。

 

「僕たちと同じ新入生だった筈だが……」

 

「了解だ、少し待ってくれ!」

 

 と、アナウンスに返信をする。

 そして、リィンは《ARCUSⅡ》を出しながら言う。

 

「さてーーいきなりになるが、三人とも、これを持っているか?」

 

「ええ、それならーー」

 

「送られてきたヤツね。まだ起動はしてないけど……」

 

 リィンは《ARCUSⅡ》の説明をしつつ、マスタークオーツを全員に渡してスロット盤の中心に嵌める様に言う。するとまた、アナウンスが入る。

 

『ーーフン、準備は済んだか。それと、シュバルツァー……わかっているな。』

 

 シュミット博士は、本気で戦うなと言いたいのだろうとリィンは即座に理解する。

 リィンは元よりそのつもりだったので直ぐに返事をする。

 

「シュミット博士。分かっているので、安心して下さい。」

 

 そのやりとりに他の皆んなは首を傾げるが、そんな事知った事では無いと言う様にシュミット博士は喋り始める。

 

『ならばいい。とっとと始めるぞ。LV0のスタート地点はB1、地上に辿り着けばクリアとする。』

 

 すると、アナウンスから金髪の少女の焦った様な声が響く。

 

『は、博士………?その赤いレバーって………ダ、ダメですよ〜!そんなのいきなり使ったら!」

 

 その言葉を振り払うようにシュミット博士は言う。

 

『ええい、ラッセルの孫のくせに常識人ぶるんじゃない……!ーーそれでは見せてもらうぞ。《Ⅶ組・特務科》とやら。この試験区画を、基準点以上でクリアできるかどうかをーー!』

 

 そう言うと、直ぐに床が斜めになる。

 リィンは下に空間がある事が分かっていたので即座に皆に忠告する。

 

「みんな、足元に気をつけろ!」

 

「えーー」

 

「なっ……!?」

 

 と、クルトとユウナが落ちて行くのでリィンは指示を送る。

 

「バランスを取り戻して落下後受け身を取れ!アルティナはーー「クラウ=ソラス。」……心配無用か。」

 

 リィンはアルティナにも指示を出そうとしたがクラウ=ソラスを展開したのを見て途中でやめる。

 

「リィンさん。どうやって傾いている床の上に()()()()()んですか?」

 

「うん?ああ、足場が悪いからと言って剣を振れないのは情けないからな、いついかなる状況だとしても剣を振れるように修行したんだ。

 それと、即座にクラウ=ソラスの展開の判断いい判断だった。もし、クラウ=ソラスを展開していなかったら、俺が受け止めようと思っていたが無駄な心配だったな。」

 

「いえ、修行して出来るものでもないと思いますが。それと、受け止めるなんて不埒ですね。」

 

「いや、どうしてそうなる。」

 

「なら、不埒じゃないと証明して下さい。」

 

 そう言うと、クラウ=ソラスを消す。

 リィンは咄嗟のことに驚きながら落下するアルティナをお姫様抱っこで受け止める。

 

「何やってるんだ。危ないだろう。」

 

「リィンさんなら受け止めてくれると思っていましたから。」

 

「信頼の高さに喜ぶべきか。はぁ、下までだからな。」

 

「はい、わかっています。思った以上に顔が近いですね。

 

「うん?何か言ったか?」

 

「いえ、別に……」

 

「なら行くぞ!しっかり掴まっていてくれ。」

 

 そう言うと、リィンは下に続く穴に降りて行く。

 

 リィン達が下に降りるとクルトがユウナの下敷きになっていた。

 

「こ、これはーー(なんか覚えがあるような……)」

 

 リィンは取り敢えずアルティナを床に下ろす。

 

「弾力性のある床……打撲の心配はなさそうです。しかしまた、リィン教官のような不埒な状況になっていますね。」

 

「だから誤解を招くようなことを言わないでくれ。って、教官って……切り替えが早すぎないか?」

 

「そういう仕様ですので。」

 

 そして、クルトとユウナは一悶着あり。リィンが最終的に三人の怪我の確認を行いまとめるのであった。

 その後、リィンの指示によりお互いの武装の確認を行う。その時、ユウナがクルトを挑発をかけたり、アルティナのクラウ=ソラスに驚いたりし残すところはリィンだけになった。

 

「ーーああ、ちなみに俺の武装はこれだ。」

 

 リィンはそう言うと、鞘から刀を抜く。

 

「《八葉一刀流》の太刀……」

 

「………あの時の……ううん、アリオスさんが使っていたのと同じ武器ね。」

 

 リィンはボッソと呟いたユウナの言葉に引っかかりを覚えたが今は目の前の事に専念しようと思う。

 

「ああ、帝国風の剣じゃなく、東方風の刀になる。はは、さすがに《風の剣聖》は有名らしいな?」

 

「……色々ありましたけど今でもファンは多いですから。どこかの国のせいで今も手配中みたいですけど。」

 

「ああ………そうみたいだな。」

 

 リィンはユウナの皮肉に内心苦笑いしながら返す。

 

「ーーよし。それじゃあ攻略を始めよう。現在B1、地上に出ればこの実力テストも終了だ。実戦のコツ、アーツの使い方、ARCUSⅡの機能なども一通り説明していく。迅速に、確実にーーただし無理はしないようにしっかりついて来てくれ。」

 

「っ……言われずとも!」

 

「…やるからには全力を尽くします。」

 

「それでは状況開始、ですね。」

 

 こうして、《Ⅶ組・特務科》のオリエンテーションが始まった。

 

 




このアルティナな一年間で割と感情を自覚しています。
次回は戦闘回になるかな?

そう言えば、ps4で閃の軌跡が来年の3月にでるみたいですね。次回作も来年には出したいと近藤社長が言ってたので今から楽しみです。


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入学オリエンテーション

まさかここまで続いている事に自分で驚いてます。
これも応援してくださっている皆様のおかげです。
本当にありがたい限りです。
今回で序章は終わりです。割と詰め込みました。

泡泡さん、誤字脱字報告ありがとうございます。


アインヘル小要塞・L V 0 B1

 

リィン達は順調にアインヘル小要塞を攻略していた。

 

ユウナとクルトは互いにいがみ合ってはいるが、もともと相性が良いのか戦術リンクを使った息の合ったコンビネーションを見せ、アルティナはこちらからの動きに合わせてクラウ=ソラスによる援護やアーツによる補助をこなし、リィンは生徒の技量に合わせ全員のサポートに回っていた。

 

そして、あっという間に後半地点まで足を進めていた。

 

リィン達は大型の魔獣を相手に足を止めていた。

 

「あの魔獣……他のより一回り大きいけど。」

 

「現在戦力では、若干手こずりそうですね。」

 

と、アルティナが冷静に戦力を比較する。

 

「ふぅ、まさかあんなものまで、徘徊しているとはな………」

 

リィンは、学生相手にここまでするかと思いながら製作者を思い出してため息を漏らす。

 

「……迂回して別ルートを探しますか?」

 

クルトが意見を出してくるが、リィンは実力を測るには良い機会だしそれに戦術リンクを使っていればまず間違いなく負けない相手だと思い正面から仕掛ける事を言う。

 

「いやーーここは正面から仕掛けよう。」

 

「正面からって………ちょっと無謀すぎません?」

 

「そうとも限らないさ。こちらは4人ーー今なら戦術リンクの連携も可能だ。ここまでの基本を抑えていれば必ずや撃破できる筈だ。」

 

「あ……」

 

「………いいでしょう。自分も異論はありません。」

 

そう話し合っているうちに魔獣がこちらに気づく。

 

「それじゃあ決まりだな!と、どうやら彼方もコッチに気づいたみたいだな。」

 

「みたいですね。ーー戦闘行動に移行します。」

 

全員が自分の武器を構える。

 

「状況を開始するーー一気に行くぞ。」

 

その言葉と共に戦闘が開始される。

 

 

大型魔獣はゆっくりと地に伏せた。

 

戦闘自体はそこまでなんら変わりはなく。少し苦戦はしたものの危なげなく勝利した。

 

「敵性魔獣の沈黙を確認。」

 

そうアルティナが言う。

 

「はああ〜………結構手こずったけど……」

 

「………(思っていたほど大した相手じゃなかったか。)」

 

ユウナとクルトが武装を解くとこちらを振り返る。

 

その瞬間、魔獣がまた動き出す。

 

ユウナとクルトが驚き後ろに下がる。アルティナもクラウ=ソラスを出し二人を守ろうとする。

 

一方、リィンは慌てた様子を見せず「良い機会だ。」と言うと、一瞬で魔獣の懐に入る。そして魔獣の身体に脱力した拳を当てるとこう言う。

 

「いいか?実戦で奇襲や想定外の事態が起きた時、得物を振るうより拳を振るった方が早い時がある。こんな風にな?」

 

そう言うと、脱力した状況から一気に力を込めて

 

「八の型 『重烈撃』」

 

と、東方の《鎧通し》と言う技術を用いて魔獣に打ち込む。そうするとまるで()()()()が当たった様な轟音が響き魔獣が内部から爆散する。

 

それを三人は唖然として見ていた。

リィンはその三人を正気に戻すため手を叩く。

 

「と、いった感じた。拳で戦える様になっていれば大抵の状況でも生き残れる。」

 

リィンはあの場所では最初の方は刀を抜く暇さえ与えて貰えず。ずっと拳で戦っているうちにいつの間にか、刀を使うより強くなっていた時期もあったなとしみじみ思い出しながら実感のこもった声でそう言う。もちろん今は刀を使った方が強いが。

 

「いやいや、おかしいでしょ!?何ですかあの威力!?」

 

やっと正気に戻ったユウナが一気にリィンに迫ってくる。

 

「確かに、常識を逸脱した威力でした。」

 

アルティナが動揺を隠しながらそう言う。

 

「……(なんなんだ。剣士が無手の方が強いって、八葉一刀流って剣術じゃなかったのか?)」

 

クルトはひたすらに悶々としていた。

 

リィンは収拾がつかなくなってきたなと思い。強引に話を進める事にした。

 

「とりあえず…アルティナ、咄嗟によく動いてくれた。それとクルト、ユウナ?」

 

「あ、は、はい。」

 

「……(いや本当に八葉一刀流ってなんなんだ……)」

 

リィンは聞こえなかったのか?と思いもう一度呼びかける。

 

「クルト?」

 

そうすると、

 

「え、は、はい。」

 

と、焦った返事が返ってくる。

 

「しっかり話は聞いておくように。二人とも魔獣の前で武装を解いたのがまずかったな?敵の沈黙を完全に確認出来るまで気を抜かないーー実戦での基本だ。」

 

「っ……はい。」

 

「………すみません。完全に油断していました。」

 

これには本当に懲りたようでユウナとクルトは反省した様子で言う。

 

「いや……偉そうに言ったが今のはどちらかと言えば指導者である俺のミスだな。やはり俺も、教官としてはまだまだ未熟って事だろう。」

 

そう話していると、

 

『いつまでそこで立ち止まっているつもりだ。さっさと先に進め。』

 

と、博士が催促してくる。

 

「さて、そうだな。そろそろ先に進もう。」

 

リィンがそう言うと、小要塞の攻略を再開する。

 

その後、ゴールが近い事もあり直ぐにゴールにたどり着く。

 

「外に光が見える。どうやら着いたみたいだな。」

 

リィンは外の光を見つけそう言う。

 

「はあはあ……全く信じられない。地下にこんな施設を作るなんて、これだから帝国人は。」

 

「いや、帝国人を一括りにしないでもらえるか。」

 

ユウナが疲れた様子で言った言葉にクルトが反論する。

 

「と、おしゃべりはここまでだな。全員、戦闘態勢」

 

リィンは内戦の時、嫌と言うほど感じた気配を感じ全員に戦闘態勢を指示する。

 

「センサーに警告。霊子反応を検出………来ます。」

 

そうアルティナが言うのと同時に魔煌兵が実現する。

 

「………!?」

 

「こ、これって………帝国軍の《機甲兵》!?」

 

クルトとユウナはどちらも驚いた様子を見せる。

 

「いや、《魔煌兵》ーー暗黒時代の魔導ゴーレムだ!まさかこんなものまで用意しているとは、内戦時に捕獲でもしたんですか。シュミット博士?」

 

『そう言った所だ。機甲兵より出力は劣るが自律行動できるのは悪くない。さあ、撃破してみせろ。』

 

「くっ、本気か!?」

 

「ちょっとマッド博士!いい加減にしなさいよね!?」

 

と、その言葉に流石に冷静さを保てないクルトとユウナ。

リィンも今の戦力では少しキツイかと思い、少しギアを上げるかと思うと、

 

『シュバルツァー、それ以上の力を出すのは認めていない。それ以上は正確なテストとは言えないからな。』

 

それを読んだ様にシュミット博士に釘を刺される。

 

『せいぜい、まだ使っていない《ARCUSⅡ》の新機能を引き出してみるがいい。』

 

『《ブレイブオーダー》モードを起動してください………!オリビエさんーーオリヴァルト皇子が、リィン教官ならきっと使いこなせるって言ってました!』

 

その言葉にリィンは《ARCUSⅡ》を渡された時の事を思い出し、全く殿下はと笑みを浮かべる。

そして、直ぐに気を引き締める。

 

「そうかーー了解だ!」

 

そう言うとARCUSⅡを取り出し、《ブレイブオーダー》モードを起動する。すると四人全員が青く光る。

 

「これはーー!?」

 

「な、何かがあの人から伝わってくる………!?」

 

「戦術リンクいえ、それとは別の……」

 

リィンは刀を魔煌兵に向ける。

 

「Ⅶ組総員、戦闘準備!《ブレイブオーダー》起動ーートールズ第二分校、Ⅶ組特務科、全力で目標を撃破する!」

 

「「おおっ!!」」

 

そこから魔煌兵との戦いがはじまる。

そこからはギリギリの戦いだった。しかしブレイブオーダーの力によりⅦ組の力は魔煌兵の力を僅かに上回っていた。

 

魔煌兵は受けたダメージにより消滅した。

 

「はあはあ……た、倒せた……」

 

「………っ……はあはあ……」

 

「…体力低下。小休止します。」

 

リィン以外の三人は体力がなくなったのか全員地面に伏せていた。

一方、リィンはブレイブオーダーの思った以上の力に驚いていた。それと同時にもうそろそろかと思い()()()()が出現する場所に目を向ける。そこには、先の魔煌兵より強化された魔煌兵が出現した。

 

「な!?もう一体!?」

 

「くっ、ここまでか。」

 

「戦力差は歴然…ですか。」

 

と、三人が絶望的な声を出すが、リィンは冷静に博士に問いかける。

 

「これが俺の実力テストですか?」

 

『フン、そうだシュバルツァー。お前は一人で奴を倒せ。それで今回の実力テストを終了とする。』

 

『き、聞いてませんよ〜〜』

 

「む、無茶よ!?」

 

「自分も……っ………戦います。」

 

「リィン教官…逃げてください。」

 

三人がリィンを引き止めるが、リィンは不敵な笑みを浮かべて

 

「みんなは休んでおいてくれ。この程度の相手直ぐに倒す。」

 

と言うと、それを肯定するように博士が言う。

 

『ならば仮にも《剣聖》の名を持つ者の力見せてもらおうか。』

 

三人が《剣聖》という事に驚きの声を上げる。

 

「すまない。実力テストの事で口止めされててな。改めて、八葉一刀流 七の型 奥義皆伝 《灰の剣聖》 リィン・シュバルツァーだ。」

 

リィンは済まなさそうに言う。

 

「お詫びと言ってはなんだが、自分達の目で自分の担任にふさわしい実力かどうか見極めてくれ。」

 

そう言うとリィンは剣気を少し放出する。それだけで空気がリィンに支配される。コートを剣気ではためかせ、リィンは刀を納めたままゆっくりと魔煌兵に近づいて行く。

 

これから放つ剣技はもう決まっていた。放つのはたった一刀。求めるのは()()の一撃。ただ速く、ひたすら速い一撃。鞘に片手を当て全身を脱力させ、いつでも放てる様にする。

 

一方、魔煌兵はゴーレムの筈なのに異様な雰囲気に当てられ一歩後ろに下がっていた。魔煌兵はその雰囲気を打ち払うように『高揚』を使い敵を排除すべく行動する。リィンを潰そうと腕を振り上げ振り下ろす。

 

リィンが魔煌兵に潰されそうになり、もうダメだと思われた瞬間、

 

「遅い。四の型 『迅雷一閃』」

 

と、言う言葉と共に魔煌兵の腕がリィンの頭上で止まった。いや、止まらざるおえなかった。魔煌兵の身体はゆっくりと横にずれ消滅する。そして、いつの間にかリィンは刀を振り抜いていた。そこに居た誰もが、Ⅶ組の様子を見に来た教官達や分校長でさえも、リィンの刀を抜いたところを見ていないのだ。まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()かの様に、気づけば刀を振り抜いていたのだ。

 

「嘘………」

 

「馬鹿な……」

 

「出鱈目です……」

 

Ⅶ組の三人はその光景を見て、一人は、そこまで磨き抜かれた剣技に尊敬の念を抱き、もう一人は、自分の無力さに悔しさを感じ、最後の一人は、いつかあの人の隣に立ちたいと言う願いを持った。

 

一方。リィンは刀を納め、三人の元に行き全員を立たせる。(クルトの目線がすごく尊敬したものに変わっていたが。)

 

『み、皆さんお疲れ様です。これで今回の実力テストは終了です。』

 

『流石は剣聖と言ったところか、強化した魔煌兵が一撃とはな。次からはもっと強化しても良いかもしれんな。』

 

「はは、流石は博士だな。とりあえず三人とも、よく頑張った。ARCUSⅡの新モード、《ブレイブオーダー》も成功ーー上出来と言って良いだろ。それぞれ課題はあるだろうが一つ一つクリアしていけばいい。」

 

「《Ⅶ組・特務科》ーー人数の少なさといい、今回のテストといい、不審に思うのも当然かもしれない。ロクに概要を知らない俺が教官を務めるのも不安だろう。希望があれば他のクラスへの転科を掛け合うことも約束する。だからーー最後は君たち自身で決めて欲しい。」

 

「自分の考え、やりたい事、なりたい将来、今考えられる限りの自分自身の全てと向き合った上でーー今回のテストという手応えを通じて《Ⅶ組》に所属するかどうかを。多分それが、《Ⅶ組》に所属する最大の決め手になるだろうから。」

 

と、リィンは旧Ⅶ組の事を思い出しながら言った。

 

「ーーユウナ・クロフォード。《Ⅶ組・特務科》に参加します。」

 

一番に名乗りを上げたのはユウナだった。それに驚く他の二人。

 

「勘違いしないで下さい。入りたいからじゃありません。あたしはクロスベルから不本意な経緯でこの学校に来ました。帝国のことは、あまり好きじゃないし、貴方のことも良く思っていません。」

 

「みたいだな。」

 

「……だけど、今回のテストで貴方の指示やアドバイスは適切でした。さっきの化物だって、貴方がいなければ撃破出来なかったでしょう。それに、もう一体出てきた時に何も出来ずに守られていた事は、正直言って悔しいですし、警察学校で学んだことを活かせなかったのも不本意です。ーーだから結果を出すまでは、実力を示せるまでは《Ⅶ組》にいます。《灰色の騎士》ーーいけ好かない英雄である貴方を見返せるくらいになるまでは。ただし、《灰の剣聖》である貴方にはご指導よろしくお願いします。」

 

ユウナの物言いにクルトは内心滅茶苦茶だなと思い。

リィンはどっちも俺なんだけどなーと苦笑いしつつ言う。

 

「分かった、《Ⅶ組》へようこそーーユウナ。」

 

「っ……ーーはいっ!」

 

「クルト・ヴァンダール。自分も《Ⅶ組》に参加します。正直自分の剣には自信があったのですが、あんな剣を見せられた今、自分の至らなさを痛感しています。《灰の剣聖》である貴方の剣に触れさせて貰えれば自分の剣ももっと高みに至れる気がするので、ご指導のほどよろしくお願いします。」

 

「ーー了解した、クルト。《Ⅶ組》への参加を歓迎する。」

 

「……はい。」

 

「ーー最後は君だ。アルティナ。」

 

「この一年貴方が消えて、何か胸にぽっかり穴が空いた様に感じました。正直、まだこれがなんなのか分かりません。ですが、貴方の側に居るとぽっかり空いた穴が埋まってポカポカします。ですから、私は貴方の側に居たとそう思います。それでは……ダメ…でしょうか?」

 

「いや、十分だ。よろしく頼む、アルティナ。」

 

「はい。」

 

と、アルティナは笑みを浮かべて答えた。

 

「アルティナ。今………いや何でもない。」

 

リィンはこれから先もきっと見ることになると思い途中で言う事をやめる。

 

と、いつの間か他の二人からジト目で見られていた。

 

「ど、どうした?」

 

「いえ、別に……」

 

「自分が言う事ではないので……」

 

リィンは強引に話を進めようとする。

 

「さて、それじゃーーそれでは、この場をもって《Ⅶ組・特務科》の発足を宣言する。お互い新米同士、教官と生徒というだけでなくーー仲間として共に汗をかき、切磋琢磨していこう!」

 

こうして《Ⅶ組・特務科》は発足した。

 

 

 

 

「リィン君………」

 

トワが安心したようにそう言う。

 

「フフ、アレが今のシュバルツァーか。あの一撃、私でさえ見えなかった。ますます欲しくなったな。」

 

と分校長がまるで獲物を見つけた様な目でリィンを見つめる。

 

「な、ぶ、分校長!?」

 

トワが焦った様にそう言う。

 

「おいおい、分校長でも見えないなんてどんだけだよ。」

 

ランドルフ教官が冷や汗をかきながらそう言った。

 

「一年前の資料が宛にならないようだな。だが、少し勝手がすぎるな一教官に生徒の所属を決定できる権限などないというのに。」

 

ミハエル教官がリィンの勝手さを責める。

 

「フフ、転科の願いがあれば私は認めるつもりであったが。」

 

「分校長、お言葉ですがーー」

 

「帳尻が合えば良かろう。彼らは己で決めたのだ。Ⅷ組、Ⅸ組共に出だしは順調、捨石にしては上出来の船出だ。ーー近日中に動きがある。せいぜい雛鳥たちを鍛えることだ。激動の時代に翻弄され、儚く散らせたくなければな。では、私は行くぞ。シュバルツァーを手に入れる方法を考えなければならないからな。」

 

「もう、分校長!」

 

「取られたくないならせいぜい気を張る事だ。シュバルツァーを狙う相手はかなり多いだろうからな。」

 

そう言うと颯爽に去っていく。

 

「本当に、分校長は………もっと積極的に行った方が良いのかな?(ボソッ)

 




うちのリィンは一体何処へ向かっているんだろうか……
リィンは今アルティナの好意を兄に向ける好意だと勘違いしてます。鈍感だからね、仕方ないね。

「八の型 『重烈撃』」《別名:防御なんて捨ててかかってこい》
破甲拳は身体全体で打つの対して、両足が地面に着いた状態で片手さえ相手に触れて入ればタメなしで放てる。やろうと思えば騎神の装甲さえ打ち抜ける。防御するには聖痕を使ったレベルの障壁が必要。

「四の型 『迅雷一閃』」《別名:相手が何かする前に斬って仕舞えば良くね》
速い居合。凄く速い。速すぎて抜くと言う動作が無くなりいつの間にか振り抜いている。初手殺し。(だ、大丈夫。きっと避けてる人は居る……はず。)


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一章:再開〜白亜の旧都〜
早朝の訓練


最近忙しく書く時間がない。
短めです。


誤字報告ありがとうごさいます。
GNTー0000さん、ぐ〜んさん、鳩と飲むコーラさん、とらうぃんぐさん、アポフィスさん。


 リーヴス 東街道

 

 

 

 

「はあはあ……」

 

 クルトは息を整え、手に汗を掻きながら双剣をしっかりと握りしめる。

 

「シッ……」

 

 と、一気に踏み込むと相手にむけて双剣を振るう。だか、相手は未来を読んでいるかの様に擦りともせず、体力だけが失われていく。次の瞬間、クルトは戦術リンクから流れてくる意思に従って後ろに下がる

 

「……そこ!」

 

 クルトが下がった瞬間、ユウナが相手の後ろから飛び出し武器を振るう。たが、相手は体を逸らす事でそれを回避すると武器を持っていたユウナの手首を掴みクルトに投げつける。

 

「へ……!?」

 

「クッ……!」

 

 ユウナは、攻撃を放ったと思えば宙を舞っている事に一瞬呆ける。クルトは避けずに横抱きで受け止める。

 

「ふう、大丈夫か?」

 

「あ、ありがとう。そ、それより速く下ろして!///」

 

 顔を真っ赤にしてユウナが騒ぎだす。クルトは言われた通り地面に下ろす。

 

「て、それより戦いは!?」

 

 ユウナはそう焦った瞬間凄まじく音と共に砂埃が舞い散る。

 

「な……!?」

 

「これは……!」

 

 と、クルトとユウナが相手の方に目を向けて言う。

 そこには、地面にクレーターを作り地面に倒れたクラウ=ソラスとアルティナを横抱きに抱えるリィン教官の姿があった。

 

 

 少し前

 

 リィンは三人に早朝の訓練を付けていた。最初はクルトに頼まれ了承したのがその事が他の二人に漏れそのまま三人に早朝の訓練を付ける様になったのだ。そうこうなった経緯を思い出しながらリィンは後ろから襲いかかってきたユウナをクルトに放り投げると。

 

「……今です。」

 

 上空からアルティナがクラウ=ソラスに乗ったまま、凄まじい速度で落下しながら攻撃くる。落下スピードと質量が合わさり並大抵では最早防げない威力になっていた。だか、此処にいるのは並大抵の人物ではない。リィンは既にどうやってアルティナに被害なく防ぐかと言う事を考えていた。

 

 リィンは片腕を突き出し向かってくるクラウ=ソラスに同じように片腕を突き出し衝撃を逃しながら少し運動エネルギーの方向を手首でかえてやる。それだけでクラウ=ソラスは一回転し大半の運動エネルギーを保ったまま凄まじい音を立てて地面にぶつかる。しかし、流石は戦術殻と言ったところかボディには傷一つはいっていなかった。それを見てリィンは、破壊するには刀を…いや全力で拳を振るえばいけるか?などと考えていた。(普通は破壊できません。)

 

 また、クラウ=ソラスが一回転した時に振り落とされ唖然としていたアルティナをリィンはその場から動く事なく受け止める。

 

 そして、アルティナを下ろし、リィンは手を叩き全員の注目を集める。

 

「これより総評を行う。まず、クルト。」

 

「はい!」

 

「クルトは手数ばかりを意識しすぎて一撃一撃に意識がいってない。手数を意識するのが悪いとは言わないがもっと、一撃一撃を大切にするようにしないといくら手数を増やしても意味がない。」

 

「……確かに手数ばかりに意識がいっていたかもしれません。」

 

 クルトは自分でも思い当たる節があるのか、リィンの言った言葉を噛み締めていた。

 

「次にユウナ。」

 

「はい!」

 

「ユウナ、君の武器は中距離と近距離を両方カバーできる事が特徴だ。もっと武器の特徴を活かして戦うべきだ。」

 

「…武器を特徴を活かす。」

 

 ユウナがなるほどと言ったように呟く。

 

「最後にアルティナだか。」

 

「はい。」

 

「不意を突いての攻撃は良かっただが、クラウ=ソラスに少し頼りすぎだな。クラウ=ソラスから振り落とされてから攻撃が出来るくらいには動けるようにならないとな。」

 

「単体での攻撃ですか……」

 

 アルティナはクラウ=ソラス無しの戦い方を考えだす。

 

「取り敢えず個人てきな総評はこんなところだな。次は全体の総評だが、前までの様な格上の相手に対して真正面から戦う様な戦いより随分マシになった。一人が相手を引きつけいる間に他の二人が攻撃する。この点は評価できるがまだまだ連携が荒いな。次からはオーダーを使っての戦略も考えてもらうから。心しておく様に。」

 

「「「はい!」」」

 

「それでは、早朝の訓練はこれで終わりとする。俺はこのまま学院に行くが皆は宿舎に戻ってシャワーでも浴びてくるといい。だが、くれぐれも遅刻するなよ。」

 

 そう言ってリィンは学院の方向に去って行く。

 

 

 

 リィンが去った後

 

「本当に出鱈目だな。」

 

 クルトが疲れた様子を見せていた。

 

「この程度で驚いていてはキリがないかと。」

 

 アルティナも無表情ながら少し疲れた様子を見せる。

 

「でも、三人で戦って一撃は愚か汗一つ流せないし。ましては片手しか使ってないし動いてもいないなんて、自信なくすわ。」

 

 ユウナが少し落ち込んだ様に言う。

 

「まあ、取り敢えずこんなところでうだうだ言っても仕方ない。そろそろ宿舎に戻ってシャワーでも浴びよう。」

 

「賛成です。身体がベトベトするので。」

 

「いつか絶対一撃与えるんだからー!」

 

 こうして三人は絆を深めながら宿舎に歩いて行った。




次回かその次回ぐらいに分校長を本気で落とす話を書きたい。(願望)

3話ぐらい戦闘シーン書き直すかもです。


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夜の語り合い

遅れました。
本当に書く時間がない。
短めです。

誤字脱字報告ありがとうございます。
十六夜10さん、名状しがたい人さん、メイさん。


本校舎一階 教官室

 

 

 

 

「さて、明日は自由行動日だがーーー連絡事項は以上だ。」

 

 

と、ミハイル少佐が明日の予定についての連絡を話し終えるとさっさと教官室から出て行ってしまう。

 

リィンがトワ先輩とランドルフ教官の二人と喋っていると、突然ドアが開く。その事に驚いた三人はドアの方に目を向けると、

 

「邪魔するぞ。」

 

と言う声と共に分校長が入ってくる。

 

「分校長!ノックしてから入ってきてください!」

 

トワが不満気にそう言う。

 

「そんな細かいことはさて置き「置かないでください!」まあ、とりあえずシュバルツァー、今夜暇だな。少し飲みに付き合え、用事が終わったら《バーニーズ》に来るように。」

 

と言いたい事だけ言うとさっさと去っていく。

 

これにはリィンもしばしば唖然としてしまった。

 

「全く、お前さんも罪な男だね〜。それじゃ、俺もこの辺で。」

 

と、ランドルフ教官も関わるつもりがないのか教官室からでていく。

 

「リ、リィン君!そ、その、あ、あんまりハメを外し過ぎたら、だ、駄目だからね!そ、それと、たまには私にも付き合って欲しいな……あ。の、飲みにだよ!飲みに!」

 

トワは最初は焦りながらそして最後は顔を赤くしながら言う。

 

「はい、機会があれば是非付き合わせて貰います。」

 

「そ、そっか。じゃあ、私も学院の見回りしなくちゃいけないし。それと、生徒手帳の件よろしくね。」

 

そう言うとトワも教官室からでていってしまう。

 

「はぁ、本当に話を聞かないな分校長は。とりあえずⅦ組のみんなに生徒手帳を渡しに行くか。」

 

リィンはこの後、Ⅶ組に生徒手帳を渡したりクラブで迷う生徒達の相談に乗ったりしていた。そしてもうそろそろいい時間かと思い、宿酒場《バーニーズ》に向かう事にした。

 

校門の前で一悶着ありつつ無事に《バーニーズ》に着く。

 

「さて、入るか。」

 

リィンが中に入ると分校長を探す。

 

「こっちだ、シュバルツァー。」

 

分校長がカウンター席に腰掛けて隣の席を叩いていた。

リィンは大人しくその席に座る。

 

「すみません。お待たせしましたか分校長?」

 

「いや、そこまで待ってはいない。それと今日の勤めは終わりだ分校長などと堅苦しい呼び名で呼ぶな。オーレリアでいい。」

 

「流石にそれは、オーレリアさんでどうでしょう。」

 

「まあ、今はそれでいい。とりあえず、何か頼むか。」

 

そう言うと料理と酒を二人分注文する。

そして、北方戦役の話をしているうちに料理が運ばれてくる。

 

「どうやら、料理が運ばれてきたようだな。話をする前に先に食べてしまうか。冷めてしまうからな。」

 

「ええ、そうですね。」

 

そう言うと、リィンは料理を食べる。たが、食べた途端リィンは忘れた事を思い出した様な顔をして固まる。

 

「どうした?ここの料理はそこそこいけるだろう。」

 

「そ、そうですね………美味しいです。」

 

と、リィンはどこか作った様な笑みを浮かべてそう言う。

 

「本当にどうした?口に合わなかったか?」

 

「いえ、少し食欲が無いだけです。」

 

「あまり無理はするなよ。」

 

そう言うと、食事を再開する。

二人が食べ終えると、オーレリアがまず口を開く。

 

「私はなシュバルツァー、強くなり過ぎたんだ。この大陸で私と互角以上に戦える者など数を数えるほどしか居ないだろう。そしていつしか空しさを感じるようになっていた。そこでだ、シュバルツァーいやリィン、お前は空しさを感じた事は無いか?剣聖という高みにいたり、自分は強くなり過ぎたと感じた事は無いか?」

 

と、オーレリアは心底知りたいと思う様に言う。

 

「自分は空しさを感じた事は無いですね。だって、まだまだ未熟ですし、自分にとって剣聖も只の通過点でしかありません。それに、自分の斬りたいものをまだ斬れていませんから。」

 

「ほう、今のお前にして斬れないものとはなんだ。」

 

「そうですね………敢えて言うなら()()でしょうか。」

 

「フフ、世界とはまた大き出たな。」

 

「まあ、ただの比喩ですよ。」

 

「だとしても世界とはな。並大抵の努力ではどうにもならないぞ。」

 

リィンは知っていた世界には努力ではどうにもならない事がある事を。そして、それこそが自分のやろうとしている事だと。

 

「ええ、()()()では無理ですが、いずれは……」

 

「そうか……」

 

オーレリアはその言葉に何かを感じたのか、それ以上聞こうとはしなかった。

 

「そろそろ、明日に響くので帰ろうと思います。」

 

そう言うとリィンは席を立つ。

 

「それと、オーレリアさんはもっと剣を何のために振るのか、考えると良いと思います。そうすれば空しさも少しはマシになる。でも、もし剣を振る理由が無いなら……俺がなりましょう。これでもそこそこ強い自信があるのでオーレリアさんが空しさを感じないよう俺が貴女の前に立ちましょう。安心して下さい貴女がどれだけ強くなろうと俺は貴女を凌駕します。」

 

リィンはそう言うと店を出て行く。

 

 

 

 

「お客さん。大丈夫ですか?顔が真っ赤ですが。」

 

「いや、大丈夫だ。少し酔いが回ってきたようだ。」

 

オーレリアにとってリィンの言った言葉は初めて言われた言葉だった。自分の強さを知っていながらそれより強いと、どれだけ強くなろうと凌駕すると、今までその様に言う男は居なかったのだ。

 

「リィン・シュバルツァーか……まさか落とすつもりが落とされるとは、私を本気にした罪は償ってもらわないとな。」

 

オーレリアのその顔は赤く染まっていたが、それが酔いのせいなのはそれとも………それは本人にしかわからない。

 

 

 

 

 

 

リィンは酒場を出た後直ぐに宿舎には戻らず橋に向かうと橋から川を見る様に手を置く。

 

「分かっていたつもりだったんだが……これは思った以上に…くるな。味が全く分からなかった。これじゃ………シャロンさんや母さんの料理も心のそこから美味しいとは……言えないな。」

 

いつしかリィンの頬を涙が流れる。

 

「いつか、この涙も出なくなるんだろうか。だが、必要な事なんだ。

運命を変えるためにはこの世界の強制力から外れる必要がある。この世界にとってイレギュラー()にならないと、もう、止まれないんだ。いや、止まるつもりもない。ただ、前に進まないと。」

 

そう決意を新たに歩き出すリィンの顔にはもう涙はなかった。しかし、その背中は痛々しく、崩れ落ちしまいそうなほどだった。

 

 

 

 




何故かシリアスを書いていた件(リィンの不幸にこそ輝く主人公だから。)。
最終的にハッピーエンドなら良いよね(終わりよければ全て良し。)
実は灰の剣聖にも意味があったりなかったり。


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