Re:佐藤さんが始める異世界生活 (新田トニー)
しおりを挟む

第1話 そこで終わったはずだった


元々亜人が好きでこの間実写映画を見に言ったのですが綾野剛さんの演技とても佐藤さんと当てはまってました。もう一度行きたいくらいです。


 

「…………ええ、無事回収しました。はい、こちらに」

 

ヘリコプターのプロペラの音が響く部屋で男は誰かと無線を使い、会話をしていた。

 

「はい、頭部は専用の箱に………はい、了解しました」

 

男が大事そうに抱えているケースの中には、日本に甚大な被害を与えた最悪のテロリスト、佐藤の頭部があった。

 

佐藤は毒ガスをばら撒こうと画策していたが同じく亜人の永井圭によって終止符が打たれた。

 

ジュワジュワ…………

 

不可解な音に気がついた男は頭部が入った箱を開けてみる。そこにはあるはずの頭部が黒い霧を出し、そして消えた。

 

「な、何!?どうなってる!?」

 

そして始まる。もう1人の亜人、佐藤の異世界生活が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん………ここは?」

 

佐藤は細い目をパチパチさせ、辺りを見回す。そこは先ほどいた日本とは似ても似つかぬ中世のヨーロッパの商店街

であった。

 

「確かあの時私は断頭されたはず………だがこれはリセットされたわけではない。どういう事だ?」

 

佐藤は色々と思案するがすぐにやめてしまった。

 

「ハァ〜ここは日本じゃなさそうだしなぁ………そもそも私がいた場所ですらなさそうだ」

 

なぜそこまで断定できるかというと人ではないものが街を往来していたのだ。

 

「おっとそういえばなぜ持ち物に銃があるんだろう?私はあの時ナタしか持ってなかったはずだが………」

 

佐藤はそれについても考えていたがそれもやめた。考えるのもめんどくさかったが何より………

 

「これではもう戻れなさそうだなぁ。全く、永井君が邪魔さえしなければ良かったのに」

 

佐藤は一瞬落ち込むが

 

「でも黒い幽霊を同時に沢山出すのには驚いた!さすが永井君、彼には毎回驚かされるね!」

 

永井のフラッド現象を思い出し、感心していた。

 

「だけどこれからどうしようかな。目的がなくなってしまったし、しばらくこの街で観光でもしようかな」

 

と佐藤が歩き出すと

 

「おいオッサン。ちょっと金目のモン出せや」

 

「ん?君達は?」

 

「見てわかんねーのか?」

 

「ああ、なるほど強盗か。すまないね君達にあげるものはないんだよ」

 

「アァン!?持ってんだろその変な形した棒みたいな奴とかよぉ!」

 

「コレはダメだよ。君達にはあげられない」

 

「だったら力づくで奪わせてもらうぜ!」

 

「少しは歯応えがあると良いなぁ」

 

「アァン!?調子乗ってんじゃーー」

 

バキッ

 

佐藤はまず腰に隠していたナイフを持っているチンピラをダウンさせるため、顔面にストレートを打ち込んだ。

重い一撃を食らった男は水辺に落ちた。そして背が低い方のチンピラには鳩尾に蹴りを食らわせうずくまってる所で体格が良い方のチンピラに背の低いチンピラをぶつけよろめいた隙に首を絞め気絶させた。

 

「やっぱりチンピラだとこの程度か………はぁつまらないなぁ………」

 

と佐藤は残念そうに呟きながら街の広場へと戻る。すると

 

「ねぇ!私の徽章見なかった!?」

 

佐藤に話しかけたのは銀髪の少女だった。何やら慌てているようだ。

 

「いや?見てないけど。何かあったのかい?」

 

佐藤は正直にそう話すと銀髪の少女は疑いの目で隣にいる子猫にゴニョゴニョと話し始めた。

 

「ねぇパック、この人嘘ついてない?大丈夫?」

 

「大丈夫だよリア。このおじいさんからは感じないよ」

 

「そう………」

 

「いきなり疑うなんて酷いねぇ」

 

と佐藤が言うと銀髪の少女は

 

「あっごめんなさい!でもあの徽章はとても大事な物なの………」

 

と少女は俯きながら言った。それを見て気が変わったのか佐藤は

 

「なんだったら一緒に探すかい?ちょうど私も暇なんだ」

 

「えっ!?いいの!?」

 

「もちろん。今言ったじゃないか。暇だって」

 

「それじゃあお言葉に甘えて、手伝ってもらおうかしら」

 

それから佐藤と少女と子猫は行動を共にした。

 

「そういえばあなた、名前はなんて言うの?」

 

「私の名前は佐藤、亜人だよ」

 

と佐藤が言うと少女はキョトンとした。

 

「?どうかしたのかい?」

 

「だって亜人って人とは違う姿をしてるわよ?」

 

「私の国ではね、亜人は人間と変わらない容姿をしているんだ」

 

「えっ?でもそれだと普通の人と変わらないんじゃないの?」

 

「1つ違う所があるとすれば………絶対に死なない、ってとこかな」

 

と佐藤は平然と答えた。すると当然少女は

 

「死なない!?それって本当なの!?」

 

「なんだったらここで試してみるかい?」

 

佐藤はありえない提案をしてきた。

 

「ええ!?そんな事しなくて良いから!それで死んだら大変だし!」

 

「そうか………じゃあいいか。ところで君の名前は?」

 

「私?私はエミリア。ただのエミリアよ」

 

「よろしく。エミリアちゃん」

 

「こちらこそ!」

 

簡単な挨拶をした2人は情報を集めに別行動に移した。

 

「ねぇねぇパック、さっき話してたサトウの死なないって話、本当だと思う?」

 

とエミリアが子猫のような精霊、パックに聞いた。

 

「うーん嘘だと思うけど………でもそう見えなかったよ。それに………」

 

「それに?」

 

「彼からは嫌な気を感じるよ………」

 

パックは佐藤の背を半ば睨みつけながら言った。

 

「?」

 

 

「んん〜〜面白そうな事が起きそうだなぁ」

 

佐藤は楽しそうに呟きながら情報収集していた。普通、盗みをする人間は貧しい人種が多い。華やかな街がある分貧民街もあるはず。犯人は貧民街にいると考え、人に聞いて回った。

 

「ん?盗み?そういえばさっきフェルトが走って盗品蔵に入っていったような………」

 

「フェルト?」

 

「貧民街に住んでるガキだよ。よく人の盗んで売っぱらってる」

 

「なるほど………世話になったね」

 

「あぁ」

 

ある程度情報を得た佐藤はエミリアと合流するべく、集合場所へと向かう。

 

(さてと………あとはエミリアちゃんに報告かな)

 

ドンッ!

 

「おっとすまないね。立てるかい?」

 

「あら、優しいのね。ありがとう」

 

ぶつかったのは漆黒のドレスを着た怪しい雰囲気を持つ美女であった。

 

「……気のせいかしら?貴方からは尋常じゃない血の香りがするわ」

 

「奇遇だね。君からも私と同じようなモノを感じるよ」

 

「あらあら、もしかして私達両思いなのかしら?」

 

「今度2人でお茶でもするかい?」

 

「まぁ!それは良いわね!でも今は用事があるからまた今度にしましょう?」

 

そう言って女は去っていった。

 

「あの格好で寒くないのかなぁ………」

 

佐藤はそんな事を言いながらニヤリと笑った。まるでこれからゲームを始める子供のように………

 

「ククク………もしかしたら今までよりも面白くなりそうだぁ」

 

佐藤唇を歪めながら目的地へと向かった。

 

「どう?何か分かった?」

 

エミリアが期待の眼差しで見てきた。

 

「うん。それらしきところは見つかったよ」

 

「本当!?それじゃあ早く行かなきゃ!」

 

「君そんなに人の事信じて大丈夫かい?いつまでもそんな

感じだったらいつか騙されるよ?」

 

「そうだよリア、少しは人を疑いなよ」

 

「ええっ!?私そんなに騙されやすいのかな………」

 

「「うん」」

 

「もう!2人共同じタイミングで言わないでよ!」

 

そんなやりとりをしながら2人は目的地の盗品蔵に着いた。

 

「どうする?殺して奪うかい?」

 

「ええっ!?そんな物騒な事しないわよ!」

 

ドアを開けようとすると勝手に扉が開いた。どうやら向こうから開けたようだ。

 

「やめろ開けるな!殺されるぞ!」

 

「だから殺さないって言ってるのに!?」

 

そこにいたのは金髪の少女と身体が人の倍でかい老人、

そしてこの街に相応しくない服装をした青年がいた。

 

「あれ?その格好………もしかして君もかい?」

 

「えっ君もって………じゃあアンタも!?」

 

「ちょっと待てよ!お前ら一体なんの話してんだよ!?」

 

「まぁいいじゃねぇか、俺と同じ国のにんげ………」

 

「嘘だろ…………」

 

「?どうかしたかい?」

 

「アンタまさか………佐藤!?」

 

「ん?あぁそうか。そういえば私の名前ーー」

 

「!?危なっーー」

 

青年は佐藤の後ろに潜んでいた何者かが佐藤の首をはねようと刃物をかざそうとしたが

 

「遅いねぇ」

 

ナタを己の背後に回した佐藤は間一髪で一撃を凌ぐ。振りかざした女は佐藤と距離を取り、佐藤を見つめていた。

 

「ああやっぱり!必ず防ぐと思っていたわ!」

 

「危ないなぁいきなりナイフを向けるなんて。私が何かしたかい?」

 

「クソッ!よりによって殺人鬼とテロリストが来るなんてついてねぇなぁ!」

 

「てろりすとってなんだにいちゃん?」

 

「テロリストってのは………いや今はそんな事言ってる場合じゃねぇ!」

 

青年は汗を吹き出し、佐藤と女を睨みつける。

 

(間違いねぇ………あの殺人鬼もやべぇが佐藤も十分やべぇ!なんでこんな奴らが2人も!!」

 

「私は徽章を買い取りに来たのに……持ち主も連れてきてなんて言ってないわ。この場にいる関係者は全員皆殺し。そこの貴方も殺すのは惜しいけど、これも仕事だから許してほしいわ」

 

するとそれを聞いた佐藤は微笑みながら

 

「嘘は良くないなぁ。素直になりなよ。私は人殺しが好きです!ってさぁ」

 

その言葉を聞いた女はしばらく沈黙した後、突然笑い始めた。

 

「アハハハハハハハ!やっぱり貴方いいわ!最高よ!」

 

佐藤はすかさず拳銃を取り出し女の眉間めがけ、躊躇いなく撃った。

 

「えっ今何か飛び出た?」

 

青年以外は銃の存在に驚き、まじまじと見ている。

 

「いいわぁ………躊躇いなく殺そうとするその大胆さ……

本気で恋しちゃいそう………」

 

「いい反応だね。名前も知らずに殺すのは惜しい。君の名前は?」

 

「エルザよ。貴方は?」

 

「佐藤さ」

 

一瞬俯きながら佐藤はある一言を呟いた。

 

「ゲームスタートだぁ………」

 

俯きながら言ってたので遠くから見てた者には分からなかったが、青年だけは彼の本質を見抜いていた。

 

「行くよぉ!」

 

そういうと佐藤は拳銃ではなくライフルに切り替え、エルザを捉え撃ち続けた。

 

エルザはというと間一髪で避け、壁をつたいながら走り続けた。

 

「ありえない動きするねぇ。本当に人間かい?」

 

「貴方こそ!女性に対してそのおかしな武器で容赦なく撃ってくるなんて!」

 

佐藤達が戦ってる様子を見てエミリアが

 

「私達も援護するわ!」

 

というと佐藤は

 

「いやダメだ!これは私の獲物だよ!」

 

まるでおもちゃで遊ぶ子供のように無邪気に言った。

 

「あのじーさんなんか楽しんでねぇか?」

 

「あの状況で良く楽しめるのう………」

 

とフェルトとロム爺がやや混乱気味に言った。

 

カチカチカチッ

 

「ん!弾切れか」

 

佐藤は予備の弾倉に切り替えようとリロードをしようとしたが

 

「もらったわ!」

 

エルザは一気に跳躍し、佐藤の腹めがけてナイフで斬り掛かった。

 

「あっ間に合わないねこりゃ」

 

ザシュッ!!

 

と肉の切れる音がした。音のした通り佐藤の腹は切られ、今にも内臓が飛び出そうだ。周囲の人間が吐き気を催したり青ざめた表情で見ていたが佐藤は特に表情を変える事もせずあららとひとごとのように自分の腹を見ていた。

 

「サトウ!?大丈夫!?」

 

「?大丈夫だけどどうかした?」

 

「だってそれ…!」

 

「ああこれか。これじゃ動きづらいな………そうだ!君達にも見せてあげよう。亜人の力を」

 

それだけ言うと佐藤は拳銃を自分の顎に銃口を向け、こう言った。

 

「リセットだ」

 

ダァンッ!!

 

自分で拳銃自殺をした。佐藤は突然力が抜けたように倒れ、動かなくなった。だが………

 

ジュワジュワ…………

 

何かの音がすると同時に腹から飛び出ていた内臓は修復され、何事もなかったかのように起き上がった。

 

「ふぅ、もうこれが出来なくなるのかと思ったけどまさかもう一度出来るとは……感慨深いね」

 

「まぁ、本当に死なないのね!」

 

エルザは驚きと歓喜が入り混じった声で佐藤に言った。だがエルザ以外の人間は驚きを隠せずにいる。

 

「亜人は死なないのは知ってたけど…………生で見るのは初めてだ………」

 

「サトウってホントに死なないんだ………」

 

「嘘じゃろ………」

 

皆が驚きに包まれる中、エルザは

 

「それじゃあ何回でも腸を観れるのね!せっかくだしもう一度死んでちょうだい!」

 

エルザはナイフを構えると室内を回りながら佐藤に近づいていった。

 

一方佐藤は慌てる様子もなく銃の弾倉を変えている。

 

ガキィィンッ!!

 

と金属と硬いものがぶつかり合ったようなつんざく音が発生した。

 

「あら?これはなにかしら?」

 

エルザはナイフをもう一度振って見るが効果はない。

 

「な……んだ………?あの幽霊みたいなの………」

 

青年も驚きよりも恐怖が勝った声で呟いた。

 

「さっき亜人は死なないって言ったけど実はもう一つあってね、こんなのも出せるんだよ」

 

「コンナフウニネ」

 

黒い幽霊はエルザの腹に大穴を開けた。

 

「ガッ………ハァ…………!」

 

「う〜んあんまりこいつは使いたくなかったんだけど知ってもらった方が今後のためにもなるかと思ってねぇ」

 

「政府はコレをinvisible black matter………略してIBMって呼んでたりするよ」

 

「なにそれカッケェ!」

 

「私サトウの言ってる事がまだわかってないんだけど」

 

佐藤は床に倒れうずくまっているエルザをなんとなく一瞥しながらそんな事を言った。

 

「それじゃあもう終わりかな?君との勝負は楽しかったよ。ただもう少しガッツがあればさらに面白くなってたと思うよ」

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

エルザは高笑いをしながら佐藤を睨みつける。

 

「もう終わりですって?まだよ!まだ続くわ!もっと私を楽しませて頂戴!私を満たして!!」

 

「やる気かい?その身体で?亜人だったらリセットすれば良いけど君は人間だろう?」

 

「まだまだ出来るわ!さぁもっと踊りましょう?」

 

そこまでエルザが言うと佐藤はそれを待っていたかのように

 

「いいねぇ………これこそ獣同士の戦いだぁ………」

 

笑った。佐藤が銃を構え、エルザはナイフを構え直した。だが

 

「そこまでだ!」

 

何者かが2人を制止した。

 

「貴方は………」

 

「さぁ、舞台の幕を引くとしようか!」

 

現れたのはこの街では全員知っていると言っても過言ではない歴代最強の剣聖・ラインハルトだった。

 

「おっちゃん!増援連れてきてやったぞ!」

 

ラインハルトを連れてきたのはフェルトだったようだが佐藤はさっきまでの楽しそうな顔はどこに行ったのか黙り込んだままだった。

 

「…………」

 

「おっちゃん?」

 

「フェルトちゃん、だったかな?」

 

「お、おう」

 

「私はねぇ、盛り上がっていた所を邪魔されるのは大嫌いなんだ…………」

 

「出来れば覚えて欲しいんだ」

 

「いや、でもーー」

 

「覚えろと言ってるんだァァァァァ!!!」

 

今まで静かだった佐藤が突然キレた。そしてキレたと同時に黒い幽霊はフェルトの元へ一直線に走り出した。

 

「退け!!フェルト!!」

 

「ロム爺ッ!」

 

フェルトを庇おうとロム爺はフェルトの前に立ち棍棒で防ごうとした。

 

「大丈夫ですか?」

 

防いだのはラインハルトだった。おかげでロム爺は腹を貫かれる事なくフェルトを守りきる事が出来た。

 

「この幽霊は貴方のですか?」

 

「まぁね」

 

と佐藤はニコニコしながら返事をした。

 

「いやぁついついキレちゃったよフェルトちゃん。でも君が悪いんだよ?邪魔するような事するから」

 

「ふざけんなッ!!私を庇ったせいでロム爺が死ぬとこだったじゃねぇか!!」

 

「そんな事言われても………それは君のお爺さんの勝手だろう?」

 

「……ッ!!テメェ!!」

 

「よせっ!!死ぬぞフェルト!」

 

「でもっ!!」

 

「ここは僕に任せて下さい」

 

とラインハルトは前に出た。

 

(一瞬だったが龍剣レイドが鞘から抜けた………滅多に抜ける事は無いのに………この人には用心しないとダメだな)

 

「ラインハルトー!その人は殺しても死なねえから殺す気でやった方がいいぞ!」

 

青年はラインハルトにそうアドバイスをする。

 

「でもそれで死んだらまずいじゃないかスバル!」

 

「安心しろマジでその人死なないから!」

 

「でも僕にはこの人を殺す権利は無い」

 

とラインハルトは青年改めスバルに対し理由を言った。

 

「この人はこの子を殺す気は無かった。この幽霊は僕が来ても来なくてもどっちみち止めるつもりだったみたいだしね」

 

「そうだったのか?おっちゃん?」

 

フェルトは確認する為に恐る恐る聞いてきた。

それを聞かれた佐藤は

 

「ああ正解だよ。私はこの赤髪の子がどんな事が出来るのか知りたかったんだ。ごめんよ?怖がらせるような事をして」

 

(もしかしてキレたのもわざと………?)

 

とラインハルトは推測する。

 

「話が逸れましたが腸狩りのエルザ。貴方を拘束させていただきます」

 

「まぁ!こんなに屈強な男が2人もいるなんて!でも流石に同時はキツイし、私は退却させてもらうわね」

 

エルザが距離を取ろうとするとラインハルトは

 

「すみませんが逃すわけには行かないので」

 

と目の前に立ちふさがった。

 

「そういえば気になっていたのだけれど、その腰に携えている剣は使わないのかしら?」

 

「この剣はしかるべき時ににしか抜けないようになっているんです」

 

「あら?もしかして私なめられてる?」

 

「こちらとしては厄介なのですが………」

 

とラインハルトとエルザが話しているとエルザは思い出したと言わんばかりに佐藤を見つめ

 

「貴方は戦わないのかしら?」

 

とエルザは佐藤に問うたが佐藤はニコニコしながら

 

「いやぁこの赤髪の子が面白いものを見せてくれそうだと

思ってね、私は見ている事にするよ」

 

「そうしてくれると助かりますよ」

 

とラインハルトは苦笑しながら応えた。

 

「さて、これから僕は貴方と戦わなければなりませんが武器はコレでもよろしいでしょうか?」

 

そういうとラインハルトは転がっている剣を足で器用にすくい上げ、手に取った。剣を持った途端彼からは既に只者ではないと分かっているがさらに凄みを感じる。

 

「いいわ!素敵よ貴方!」

 

そして2人はお互い向き合い、鋼と鋼がぶつかり合うつんざくような音を出しながら戦った。ラインハルトはエルザの二本のうち一本のククリナイフを弾き飛ばした。

 

「やっぱり剣聖と呼ばれるだけあって凄いわね!一瞬でも気を抜いたら殺されそうだわ!でも………」

 

とエルザは背に手を当て自らが隠していた武器を取ろうとしたが

 

「気をつけろラインハルト!ソイツはまだ背中に隠し持ってる!」

 

とスバルはまるで知っていたかのように武器の位置まで教えた。

 

「あら?なんでバレたのかしら?」

 

エルザは隠し玉を教えられ、ラインハルトから距離を取った。そしてラインハルトは剣にマナを貯め、剣を天に掲げる。

 

「アストレア家の剣撃で貴方を仕留めさせていただきます」

 

そして剣を振り下ろした後の盗品蔵は天井が無くなった。

 

「ゲホッ……ゲホッ………すげえ………!」

 

剣聖の剣撃を目にしたスバルは感嘆の声を上げる。

 

「いやぁ………まるでゲームだね!」

 

佐藤は笑いながら感心していた。

 

「まぁ、確かにゲームっちゃゲームみたいですけど……」

 

スバルは冷や汗をかきながらつっこむ。

 

「やあ、無事かい?スバル」

 

「ああ、助かったぜラインハルト」

 

「ほう!スバルくんって言うのか!よろしくスバルくん」

 

「えっ!?あっは、はいこちらこそよろしくお願いします」

 

そういえばと佐藤は呟いた。

 

「スバルくんはなぜあの時エルザちゃんがナイフを持ってたなんて分かったんだい?」

 

と佐藤がスバルに聞くとスバルは少し困惑した後、耳打ちするように答えた。

 

「俺実は死に戻り出来るらしいんすよ」

 

「なんだって!?それは本当かい!?」

 

スバルは唐突の佐藤のテンションに若干ついていけなくなっていた。

 

「え、ええまあ。自分でもびっくりなんすけど佐藤さんと似たようなもんすね」

 

「いやいや!やり直せるなんて夢のような能力じゃないか!私達亜人は肉体をリセット出来るけど君は過去をリセット出来るじゃないか!素晴らしい能力だよ!」

 

「え、ええ!?そうすかぁ?まぁ日本であんな事しでかした佐藤さんに言われるとなんかなぁ……まぁ褒めてるならいいんすけど」

 

佐藤とスバルが談笑してる様子を微笑みながら見てるエミリアは当たりの物音に気づかなかった。死んだと思っていた腸狩りがエミリアを狙っていた。

 

「エミリア!危ねぇ!!」

 

スバルはエミリアに迫ってくる腸狩りからエミリアを守るべく転がっていた棍棒を拾い、床に固定した。

 

「斬れるもんなら斬ってみろやァァァァァァ!!」

 

「くっ………貴方本当にしぶといわねっ…!」

 

棍棒が邪魔で上手く斬れなかったエルザは佐藤に足を撃たれた。

 

「君も君でよく粘るねぇ………」

 

「こちとらゴキブリ並のしつこさだけはあると自負してるぜぇ?」

 

スバルは少し震える足を抑えながら睨みつける。

 

「大丈夫かスバル!?」

 

ラインハルトはスバルに急いで駆け寄る。一方エルザは撃たれた足を庇いながら

 

「いつか貴方達の腸を拝みにくるわ!それまで震えて眠る事ね!………それとサトウ?」

 

エルザは佐藤の名を呼ぶ。

 

「なんだい?」

 

「また会いましょう?」

 

そう言い腸狩りのエルザは去って行った。

 

「全く……足を撃たれてるのによくもまああんなに動けるね………」

 

「アイツもアンタも化け物だってのはみんな知ってますから」

 

そうスバルが茶化すが佐藤はスバルの腹を笑いながら見ていた。

 

「な、何がおかしいんすか!?」

 

「いやね………スバルくん腹切れてるよ」

 

「えっ?」

 

スバルは自分の腹を見ると絶句した。服には血が滲み、今も血が流れている。

 

「マジかよ………」

 

「スバルッ!?」

 

これは1人の英雄と怪物が始める異世界生活の始まりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





1話ですんごい量書いちゃいました………いつか佐藤にもフラット現象を起こさせる予定です!(史上最低のネタバレ)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 ひと時の休息


これからスバルは佐藤さんのしごきによって死への恐怖がほとんど無くなる予定です。それにしても佐藤さんあの顔で大量虐殺してるのがシュール過ぎて笑いが出てしまいます。 あとオリジナルのキャラ出てきます。


 

「………それは本当か?」

 

戸崎は一人険しい表情をしながら電話の内容を聞いていた。

 

「ああ。奴が逃げた事も知っている。だが頭部も無くなったとはどういう事だ?」

 

あの時佐藤を乗せたヘリは二台あった。一つは新しい佐藤を乗せたヘリ、もう一つは佐藤だった頭部。爆発したのは新しい佐藤を乗せたヘリだけであって頭部を乗せたヘリは爆発していなかった。では何故頭部は離れていたのに消えたのか?

 

「まったくどうなっているんだ………」

 

戸崎は頭を抱えて混乱していた。

 

 

 

 

 

 

 

「ん〜良い朝だねぇ」

 

戸崎が悩み苦悩している時に佐藤は相変わらず呑気な顔をしていた。

 

「起きている時も寝ている時も顔が変わらないのですねお客様」

 

「変わらな過ぎて逆に怖いわお客様」

 

朝から辛辣な言葉をかけてきたのは双子メイドらしき者達だった。

 

「あれ?そういえばここってどこだったかな?」

 

「ここはロズワール様のお屋敷ですお客様」

 

「もう歳なのかしらお客様」

 

「まったくひどい言い草だねぇ………」

 

佐藤はやれやれとため息を吐き、徐々にベッドから出た。

 

「それでは私達は次のお客様を起こして来るわお客様」

 

「……君達の喋り方聞いててこっちが疲れそうだね」

 

と佐藤が呟いたが気にすることなくメイド達は部屋から出て行った。彼女達が出て行くと佐藤は近くに置いていた銃を手に取り、残りの装弾数を確かめた。

 

「ハァ………やっぱりここには弾丸なんてある訳ないかな」

 

佐藤が今持って居るのは鉈とハンドガン、そしてフルオートライフルのみ。しかも昨日のエルザ戦で弾を大量に消費したので残って居るのは少々心許ない弾丸のみだった。

 

「幽霊だけで戦うのもつまらないなぁ………」

 

佐藤はめんどくさそうにベッドから這い出た。

 

 

 

 

 

 

「あっ佐藤さんおはようございます」

 

「おはよう。スバルくん」

 

昨日あんな事あったのによく眠れたな佐藤さん。

現在俺達は今、金髪のロリっ娘がいる図書館みたいな部屋に居た。何故か廊下を渡ってもつかなかったので怪しかったから何か仕掛けがあるのかもと思い、探索をしていたらこの部屋についた。

そういえばどうやって佐藤さんもこの部屋についたのだろう?

 

「銃を取りに行ったんだけどドアを開けたらここにいたよ」

 

銃取って一体何するつもりだよ。俺は若干冷や汗をかきながら佐藤さんの話を聞く。

 

「この世界にも銃が売ってたらなぁ」

 

「流石にそれはないでしょ。なんてったって異世界ですし」

 

「ちょっと、私を置いて話をしないでくれるかしら。ここはベティの禁書庫なのよ」

 

と先程までのけもの扱いされていた金髪幼女が俺達の間に割り込んで来た。

 

「ああすまねぇな。俺達ロズワールってやつに呼ばれてんだけど迷っちまってさ」

 

「ふん、そんな事なら案内してやるわ。だからとっととここから出て行くかしら」

 

 

 

「いやぁ〜昨日についてはエミリア様を助けてくれてあ〜りがとう」

 

現れたのは奇抜なピエロの顔と変な格好をした男だった。

 

「そんな君達に何か褒美を与えよ〜う。何か欲しいモノはあるかい?」

 

欲しいもの………そりゃもちろんエミリアたんの笑顔を見ていたいけど………。

 

「俺をここで働かせてくれ!」

 

俺はこれで良いが、佐藤さんはどんな事を言うんだろうか……。

 

それじゃあサトウさんは何がい〜い?とまた独特な話し方で聞いた。

 

「う〜ん……まあ私もスバル君と同じくここで働かせてくれないかな?」

 

とあっさり意外な回答をした。佐藤さんの事だからなにかぶっ飛んだ事を聞くものかとスバルは思っていたが。

 

「ふむ……分かった。それじゃ〜あ君達はこれからこのメイド達の指〜示を聞いて行動してもらお〜かな」

 

とロズワールが立ち上がり部屋を出ようとしたその時

 

「あっ、ちょっと待ってくれないかい?」

 

佐藤はロズワールに声をかけた。

 

「なんだい?分からない事はそのメイド達に………」

 

ロズワールはそう言ったが佐藤は首を振り

 

「これ、知ってるかい?私の国で作られていたものなんだけどここにもあれば欲しいんだよね……」

 

と佐藤は銃を見せた。銃を見せられたロズワールはうーんとまじまじと見ながら考え込んでいた。そして

 

「う〜ん………でも似たようなものを作っていた職人なら知ってい〜るよ」

 

とまさかの回答をした。

 

「本当かい?」

 

「も〜ちろん。これでも領主だ〜からね」

 

「じゃあその職人に会わせてくれないかな?」

 

「い〜いよ」

 

とまたもや独特な返答をした。

 

 

 

 

「それじゃあスバルくん、私は外に出てくるよ。くれぐれも殺されないようにね」

 

「いやそんな物騒な事言わないでくださいよ」

 

早速不吉な事を言う佐藤にスバルは軽く戦慄を覚えながら軽口を叩いた。

 

「そうかな?少なくともあの青髪の子はそうだと思うけど」

 

「え?」

 

佐藤がレムの事を言ったのでスバルはレムの方を見た。レムは一瞬だけ目が合い、そして逸らした。

 

「なんだろう。まるで監視されているような………」

 

「まあ、気をつけた方がいいよ」

 

そう言って佐藤は去っていった。

 

(さて………これから彼がどう仕上がるか楽しみだ……)

 

佐藤はニッと笑い広い屋敷の廊下を悠然と歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





投稿頻度遅くてすみません。テスト期間中だったので執筆できませんでした。これからはなるはやで書くつもりなのでどうかご容赦ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 ガンスミス


前回急ピッチで書き上げてしまったためオリキャラ登場させることが出来ませんでした。今回出ます。


 

「ホントにこんな所にあるのかい?ただの鍛冶屋じゃないか」

 

佐藤はロズワールに疑問を投げかける。

 

「も〜ちろんさぁただ貴方が望んでいるものかどうかは分からないが〜ね」

 

現在佐藤とロズワールは銃?を作っている所と思われる鍛冶屋に来ていた。

 

「サトウさん。ここルグニカ王国が王選をしているのはしっているね?」

 

雰囲気が変わったロズワールに佐藤は態度を変える事もせずにうんと相槌を打った。

 

「私は今、貴方が他の王選候補者の間者ではないかと疑っている。エミリア様に何かあったらと不安なんだよ」

 

ロズワールは先程までの口調から標準語に変わり真剣に話している事が分かった。

 

「貴方が白だという証拠が欲しい。だが貴方がそんなものを持っているとは思っていない。だからーー」

 

ロズワールが最後まで言う前に佐藤は鉈を抜き。ロズワールはしまったとばかりに目を鋭くした。だが

 

サクッ。

 

何かを切り裂いた音がした。だが切り裂いたのはロズワールではなく佐藤自身であった。佐藤は首元に鉈を深く刺し込みそれを思い切り右に引っ張った。

 

「何を……」

 

ロズワールは突然の出来事に状況が追いつかず立ち尽くすままであった。

 

だが佐藤は喉を切り裂いた後直ぐに立ち上がった。

 

「貴方は一体………」

 

「どう?これで疑いは晴れたかい?」

 

佐藤は自殺した事を気にもせずにロズワールに言った。

 

「本当に不死身だったとは………」

 

「私はエミリアちゃんにどうもする気は無いよ。する理由もないしね。それだけは分かって欲しい」

 

そう言われてしばらくロズワールは考え込む。

 

「ま〜あ証明するために自分から死ぬなんて人はあ〜んまりいないよ。うん信じよう。今まで疑って悪かったねサトウさん」

 

そう言われて佐藤はハァと息を吐き胸を当てながら

 

「いやぁ分かってくれて良かったよ。このまま陰険な雰囲気で話すのはいいもんじゃないからねぇ」

 

と笑いながら話している。だがこの2人は本心を出さない。表面上で笑っている。

 

(やはりナツキスバルとサトウはやり直す力を持っている。だが何か似ているようで違う………もう少し調べる必要がありそうだな)

 

佐藤とロズワールが鍛冶屋の前で待機してると中から店主らしき人が出てきた。

 

「なんだァさっきから店の前でウルセェなぁ………」

 

見た目は初老で無精髭を生やし、筋骨隆々で服はタンクトップとツナギを着た如何にも工場にいそうな職人と言った感じだった。

 

「やぁき〜みがここの武器職人か〜い?」

 

「なンだその気持ち悪りィ喋り方は」

 

ロズワールはそれじゃあ私はこの辺でと帰っていった。もしや今の発言で傷ついたのだろうか。

 

武器職人は鼻で笑いながらチラリと佐藤を見た。まるで品定めといったかのように。

 

「てめぇ……一体何人殺してきやがった?」

 

老人は佐藤の本質を見抜いた。だが全てではない。佐藤の心理は佐藤自身にしか分からない。

 

「さぁ?覚えてないよ」

 

「ケッ、そうかい」

 

そんなやりとりをしていると佐藤は本題に入ろうとして

 

「これ、どうやって作るか分かるかい?」

 

と銃を渡してきた。すると前に見た事があるのか老人は目を見開き佐藤の顔を見合わせた。

 

「オメェこりゃあ………」

 

「色々作ってくれたり弾丸を作ってくれたら嬉しいんだけどなぁ」

 

「サイコキラーに作る兵器なんざねぇ。おととい来やがれ」

 

軽く突き飛ばした。そんなぁと佐藤が残念がると後ろから数人の男達が邪魔だと佐藤にどついて来た。

 

「よぉガンスミス。そろそろ考えはついたか?」

 

「てめぇらに作るもんはねぇ。消えろ」

 

「オイオイそりゃあねぇだろォ!俺とお前の中だろ?」

 

とやたらとしつこく絡んで来た。

 

「そういえばお前んとこのムスメスンゲェ可愛いよなぁ。あんなん一度はすけこましてぇって噂だぜ?」

 

そこまで言われると老人は怒気を露わに男の手を振り払った。

 

「てめぇ…!俺の娘に手をーー」

 

そこまで言うと別の男が老人を鉄パイプのようなもので殴り地に叩き伏せた。

 

「まぁお前もこれだけやりゃ従うだろって思ってさらっといたよ。今日の夜まで待っててやっからそれまでにどうしたいか考えとけや。まあ断ったらお前んとこのムスメどうなってっか分かんねぇけどな」

 

そう言って男達は去っていった。その一部始終を全て見ていた佐藤はポカンとしながら

 

「大丈夫かい?」

 

と言った。

 

「ジャック!大丈夫!?」

 

店から飛び出して来たのは恐らく彼の妻であろうかそれでも佐藤は表情を変えずに、いやそれどころか

 

「もしかして娘さん人質に取られてるの?」

 

と聞いてきた。老人は聞かれたくない事を聞かれて顔をしかめた。すると彼の妻が

 

「お願い!リリーを助けて!助けてくれたら主人の武器をあげますから!」

 

「お前…!ダメだコイツは………」

 

「でも他に方法ないでしょ!!」

 

「いいよ」

 

佐藤は即答した。

 

「「えっ?」」

 

「くれるなら早く言ってよ。全く余計な時間を食ったじゃないか」

 

いきなりの佐藤の即答に終始ボーっとしていた2人はハッ我に帰った。

 

「ほ、本当にいいの!?」

 

「うん。彼が作る武器は喉から手が出るほど欲しいんだ」

 

そして佐藤は踵をあの男達が歩いた方へ変えようとすると

 

「待てッ!お前その銃だけじゃこころもとねぇだろ」

 

と指摘してきた。確かに弾薬は限られ鉈は少し刃こぼれしている。

 

「その鉈貸せ。俺が研いどいてやる。あとその銃も寄越せ。俺が見といてやる。代わりに別のやつ貸してやるよ。それとコイツらも持ってけ」

 

そう言って老人が渡してきたのは昔の古き良き銃SAAことシングルアクションアーミーと水平二連ショットガンとクロスボウだった。

 

「へぇ〜こりゃあ凄い!」

 

「オメェそのリボルバーとショットガンは分かんだろ。だがそのクロスボウは普通の矢と着弾すれば爆発する矢、それと目くらましと氷結させる矢と電撃を放つ矢がある。それさえありゃ足りんだろ」

 

と老人が説明すると佐藤はひとしきり銃を見ながら関心しきっていた。

 

「本当に凄いなねぇ。え〜と………」

 

「ジャックだ」

 

「うんジャック」

 

「あ、あの!」

 

ジャックの妻は佐藤に大きな声で呼び止めた。

 

「あの……娘をよろしくお願いします」

 

「うん、任せといて」

 

佐藤は新しい武器と戦いに心躍らせながら歩み始めた。

 

 

 

 

 

 

時刻は深夜を回っている。辺りは人の声などせずシンとなるばかり。だが倉庫の中では違った。

 

「いやぁおめぇ改めて見てみるといい体してんなぁ!どうよ?俺とーー」

 

男がそこまで言うとジャックの娘、リリーは手を払い、男をグーで殴った。

 

「気安く触んな!ゲロ男!」

 

「ッ!!このクソアマ……!」

 

「オイ!」

 

チンピラは立ち上がりナイフをちらつかせるそぶりをするとボスの風格を纏った男がチンピラを制止させる。

 

「そいつ殺して何になんだ。少しは頭使えバカが」

 

そう言われるとチンピラはチッと舌打ちしながらナイフをちらつかせ

 

「よぉボスが寛大で良かったなじゃなきゃ今頃ーー」

 

ズドォン!!

 

と派手な音が鳴った瞬間チンピラの頭はザクロのように弾け散った。

 

「いやぁ流石だ。この音はいつ聞いても惚れ惚れするねぇ」

 

恐らく見張りも殺したであろう佐藤は見張りの首をチンピラ共に投げつけた。

 

「ウワァァァァァァァァァァァ!?!?」

 

「なんだアイツ!?」

 

「アァ………悪魔だ………ありゃ悪魔ダップギャァ」

 

チンピラ共は口々に言うと佐藤の銃弾に当たり弾け散った。頭に当たればザクロのように。胴体に当たれば裂いた羽毛のように。まさに阿鼻叫喚の地獄絵図になっていた。

 

「クソッなんだアイツは!?」

 

ここのボスのような男は突然のイレギュラーに困惑していた。勿論ジャックの娘リリーも彼の出現にはびっくりしている。

 

そして

 

「オイッ!!!こっちを見ろォ!!」

 

ボスの男はリリーの喉元にナイフを突きつけ人質に取っている。

 

「動いたらァ!この女が死ぬぞ!!」

 

そう言われても佐藤は一切冷や汗をかかずうーんと唸っていた。

 

「オイ!オメェらやっちまえ!!」

 

そういうと仲間達が佐藤を囲い始めた。だが佐藤は抵抗する事なく身構えもせずに突っ立ったままだった。

 

「うん。この辺だね」

 

チンピラ共は佐藤の言ってる事は分からなかった。だがそれはすぐ後に分かった。

 

BOOM!!!

 

とド派手な音を鳴らし地響きを鳴らした。佐藤の周りでは爆発したり氷が突然出始めたり鋭い閃光が光ったりそして電撃などとありえない事が起こっていた。勿論その中に佐藤も居た為佐藤も巻き込まれた。

 

「ど、どうなってやがる………」

 

「驚いたかい?やっぱり君達も彼を狙っていたようだね」

 

爆煙のせいで煙が立ち周りが見えない中佐藤はボスに問いかける。

 

「コレ、ミエルカイ?」

 

無機質ながらも佐藤の声が僅かに聞こえた。正確に言えば聞こえたのはひとじちに取っているボスの耳元だ。

 

「ヒッ……!」

 

「ある強い感情を放つとコレが見える事がある。例えばそう、殺意とかね」

 

「た、頼む……助けて…………」

 

とうとう命乞いに出た虫ケラに佐藤は楽しそうにいいはなった。

 

「すまない。私は結構、殺しが好きなんだ」

 

「アァ………アアアア…………アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

その後ソイツの死体は発見されなかったという。

 

「リリー………頼む……!無事でいてくれ…!!」

 

ジャックがそう祈っていると

 

「パパーー!!!」

 

最愛の娘、リリーが彼の胸に舞ってきた。

 

「あぁ………リリー……無事でよかった!!」

 

「リリー!!」

 

彼の妻もやって来た。なかなか暖かい雰囲気だ。

 

「それじゃあ武器の件、よろしく頼むよ?」

 

「あぁ………分かったよ………………有難う」

 

「ん?なんか言ったかい?」

 

「なんでもねぇ!さっさと行け!!」

 

早朝ロズワールの屋敷に戻ってきた佐藤はエミリアに質問責めにされた。

 

「もう!一体何処にいってたの!?すごーく心配してたんだから!!」

 

「いやーごめんごめん」

 

「もう!!謝る気ないでしょ!!で?何してたの?」

 

エミリアが佐藤にそう聞いた。佐藤は少し考えた後ニヤリとしながら佐藤は意外過ぎる言葉を言った。

 

「人助けもたまには良いね」

 

 

 

 

 

 

 





どうでしたでしょうか?私自身オリキャラを出すのは他の作品含めて2回しか出していないのでとても不安でしたがそれでも見ていただければ嬉しい限りです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 黒い粒子


前回オリキャラ出しましたがいつか原作キャラも出ます。
まあ流石に永井達を出すのは無理だとは思っていますけどね。


 

「やあ、頼んでたやつは出来たかい?」

 

「ん?ああアンタか。持ってくるからちょっと待ってろ」

 

「あっサトウさん来てたんだ!せっかくだしお茶でも飲んでってよ!」

 

あの一件以来佐藤は厚い待遇を受け、空き時間が出てはここに寄り銃のメンテナンスを行ってもらう。それが今の日々の日課になっていた。

 

「毎回毎回ここに来てっけど一体なにやったらこんなに銃のメンテナンスしなきゃならねぇんだ?」

 

ジャックはふと疑問に思ったことを佐藤に聞いた。すると佐藤は表情を変えずに

 

「まあ、モンスターを育成中ってところかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうちょっと右だね」

 

「ウス!」

 

ロズワールの使用人、ナツキスバルは異世界生活らしからぬ道具を使っていた。それを両手で持ち、支えながら目の前の標的に睨みながら乾いた音と共にスバルは倒れた。

 

「うん、肘が曲がりすぎだねもう少し微調整」

 

「…ハイ」

 

ナツキスバルは佐藤にハンドガンの使い方をレクチャーしてもらっていた。流石に佐藤もこのままではダメだと思いスバルに空いた時間を見つけては教えていた。

 

「よし……今度こそ………」

 

「そういえばスバルくん!」

 

いきなり声をかけられたことで銃を空に上げてしまい慌ててキャッチしたスバルが困惑しながら佐藤に視線を合わせた。

 

「な、なんすか?」

 

「どうだい?あの青髪メイドちゃんとは。うまくやってるかい?」

 

佐藤にそう言われたスバルはあっそういえばと手をポンと叩き

 

「あの時佐藤さんが言ってなかったら、俺本気で危なかったかもしれないっすね」

 

「私が忠告してなかったら殺されてたかもね君。ハハハハ」

 

「笑い事じゃ済まないんですがそれは…」

 

少しは慣れたのかスバルは佐藤のマッドジョークをスルーしながらそう呟いた。

 

「いやぁ、なんか君を見てると田中君を思い出すよ」

 

「田中ってあの田中ですか?」

 

佐藤は空を見上げながら言う。

 

「結構君って亜人について詳しいねぇ」

 

「ああ、まあ俺引きこもってた時そういうのばっか調べてましたから……」

 

「でもその割には君結構鍛えるみたいじゃないか」

 

佐藤はスバルの腹に指を指しながら疑問を問う。

 

「やることなくて筋トレやってたんすよねぇ……」

 

「ふぅん……引きこもりでも鍛えるのか……」

 

「あんまそういうのやめてください結構来るんで」

 

2人がそんな他愛もない雑談をしてるとそれを見ていたエミリアが

 

「なにしてるの?スバル、サトウ」

 

「あっエミリアたん」

 

「射撃の練習だよ。スバルくんも少しは武器の扱いには慣れた方がいいと思ってね」

 

エミリアはシャゲキ?とはてなマークを浮かべた。

 

「使ってみる?」

 

「うーんそれじゃあ一回やってみようかな……」

 

佐藤がエミリアに銃を渡そうとしていたところでスバルはちょっと待ったと声を掛けた。

 

「ダメっすよ!なにちゃっかり渡そうとしてんスか!女の子にそんなの渡しちゃダメ!絶対ダメ!」

 

「そうか……じゃあダメだね」

 

エミリアはどうして?と首を傾げた。

 

「えーとエミリアたん。これはね、俺達のせか……国で作られてる武器で弓よりも早くて強力な武器なんだ。だからエミリアたんが触ったら怪我するかもしれない………」

 

「もう!スバルったら私だって立派な精霊使いなんだからね!」

 

エミリアの言葉になにか思い出したのかあっと声を上げた。

 

「ずっと気になってたんだけどここって魔法つかえんの?」

 

「なに言ってるの?当たり前じゃない」

 

「なんなら教えてあげようか?」

 

エミリアから出てきたパックが囁いてきた。

 

「えっマジで!?教えてください師匠!」

 

「それは気になるなぁ。私にも教えてくれないかい?」

 

「うんいいよ!」

 

パックは快く了承した。

 

「それじゃあまず二人の属性を調べるから。あっリアはもっとあっちに行って」

 

「エミリアたん凄い遠くに行っちゃってるけど大丈夫なんですよね!?パック師匠!?」

 

「大丈夫大丈夫」

 

「うそおっしゃい!!」

 

未だ落ち着かないスバルを横目に佐藤は早くしてくれないかなぁと急いていた。

 

「まず魔法ってのは自分自身の魔力、マナをゲートから放出して使うものなんだ。属性は火、水、風、土の4種類あるよ」

 

さてさてとパックはスバルの額に尻尾を付けた。

 

「スバルは………」

 

パックの言葉にドキドキワクワクしながらスバルは待った。がしかし

 

「陰だね」

 

「陰!?」

 

「あとサトウも」

 

「お揃いだね」

 

「いやいや同じ男同士にそんな事言われても……」

 

スバルは微妙な表情でパックに

 

「陰っていいのか?そもそも4種類って言ってなかったか!?」

 

「ああごめんごめん他にも陰と陽があったんだ。陰は確か……視界を遮ったり音を遮断したりできるかな」

 

「それ役に立つのか…?」

 

それを聞いた佐藤は

 

「いいね!凄く役に立つじゃないか!」

 

食い気味に言ってきた。

 

「それじゃあ試しに味わってみる?シャマクとかかな?」

 

パックが腕を振り下ろした瞬間、スバルの視界は真っ暗になり耳も一切音を感知しなくなった。自分が今何処にいるのか、今自分は立っているのかすら分からなくなってきたところでようやく元に戻った。

 

「大丈夫スバル?」

 

戻ってきたエミリアが心配そうに見つめる。

 

「………大丈夫!ヘーキヘーキ!……あれ?佐藤さん?」

 

何も喋らない佐藤にスバルが疑問に思い彼の方に視線を向けると

 

「これは……本当に役に立つね……」

 

顎に手を当て口元を綻ばせた。

 

「あ、あの……佐藤さん?」

 

「ああすまない。私は大丈夫だよ。少し感心してただけさところでパック君。あの魔法は私にも使えるのかい?」

 

「まあ練習すればもっと上の魔法も使えるよ」

 

「それ!それ俺にも使えるのか!?」

 

パックはうんと言った。その言葉にスバルはよっしゃとグッと拳を握りしめた。

 

「それじゃあまずは……あっリアはあっち行ってた方が良いよ」

 

「ちょっと待てそれ大丈夫なやつなのか!?」

 

「そんなに焦らないで。イメージして。自分のゲートからマナが出てくる感じで」

 

(出てくる感じか。うーん……ミョンミョンミョンミョンミョンミョン…………)

 

「あれ?おかしいなぁなんだか調子が………」

 

ボフン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫スバル!?どこか痛いところはない?」

 

気がつけばスバルはエミリアの膝の上で寝ていた。それが分かったスバルひ一瞬で飛び上がり

 

「びっくりしたわ!?エミリアたんちゃっかり膝枕してるの!?」

 

「あれ?ダメだった?」

 

「いや全然、むしろ良かったです!」

 

女性にこういう事をされた経験がない上本命の相手に膝枕をされては普通は驚くだろう。

 

「あっちょっと!まだ動かない方が……」

 

「いや、俺はまだ頑張らなきゃいけない。じゃねぇと殺される……」

 

「えっ最後なんて言ったの?」

 

「いいいいやなんでもないよエミリアたん!」

 

「?」

 

きょとんとスバルの焦った顔を見たエミリアは気をつけてねと言い残し去っていった。

 

「やべぇ俺はもっと頑張らないと……あの人は本気だ。本気で俺を」

 

「いいじゃないか。何度でも生き返るんだし」

 

「ウヒャオ!?!?」

 

ヌッとなんの前触れもなく近づいてきた佐藤にスバルは変な叫び声を上げた。

 

「びっくりさせないでくださいよ……」

 

「あっごめん。でも大丈夫さスバル君。君ならできる!」

 

俺が何故この人に怯えてるかって?元々シリアルキラーのサイコ野郎だけどある日この人は俺にとんでもない事を言ってきた。

 

 

 

 

「手が遅いですよスバル君」

 

「いやーごめんごめん超フルスピードで掃除するんで勘弁してください!」

 

俺が普通に掃除していたある日。俺はレムに疑われているという事を佐藤さんに言われ、自分はお前達の敵じゃない。それを必ず証明してみせると宣言した。

 

「………そんな事を言われてはいそうですかと信じるとでも?」

 

当然レムは疑いの目で見る。そんな時佐藤さんが現れ

 

「まあ信じないよね」

 

と言ってきた。どういう事だ?佐藤さんもしかして俺を……いや、佐藤さんがなんの考えも無しに俺は殺さない。せっかくの何度も時をリセット出来る俺の信頼を損なうはずはない。

 

だが佐藤は俺とレムに衝撃の一言を言い放った。

 

「もし怪しい事をしたら私がスバル君の首を断頭するよ」

 

「………は?」

 

レムは佐藤の一言に言葉を失った。俺もそうだ。俺を断頭……?

 

「そういう事だったらいいだろう?それに、ロズワール君から許可は下りてるよ」

 

「……ロズワール様が?」

 

「なんだったら今ここでしてあげようか?」

 

「えっ?」

 

佐藤はそれだけ言って俺に近づき俺に鉈をーー

 

「まっ、待ってください!分かりました!今は良いです!」

 

「そっか…………残念だな」

 

今さらっと何か聞こえた気が………

 

「まあそういう事だから。それじゃあね」

 

そういうわけで俺はなんとかレムに殺される危険性は少しは下がった。でも俺は勘違いしていた。

 

「あの」

 

「ん?なんだい?」

 

「あの時は、助け舟出してくれてありがとうございました。なんか俺助けてもらってばっかりすね」

 

佐藤さんはふっと笑い

 

「いやいや、君にも一応戦えるようになって欲しいしね」

 

佐藤さんは優しさなんかで俺を助けたりはしない。

 

「どういう事っすか?」

 

「そりゃあ君………戦争だよ」

 

俺は改めて知った。佐藤は自分の楽しみたいという欲求だけで動くという事を。

 

 

 

 





4話どうでしたでしょうか?自分だったら佐藤はこうするんじゃないかなと思いました。せっかく異世界に来たのに戦わないなんて勿体ない!みたいな精神で。佐藤はこの世界を破壊するのか、それともナツキスバルの頼もしい味方となるのか。果たしてどちらを選ぶのでしょうか?ご期待ください(ナレーター風)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 新しいゲーム


そういえば亜人ってアニメは永井のフラット現象で佐藤に圧勝したけど原作だとどうなるんですかね?楽しみです。


 

「なあ永井、転生って信じるか?」

 

「なんだ突然」

 

久しぶりに再会した永井と中野。佐藤と田中が脱走した事により再び招集された彼らは会議室で会話していた。

 

「ある訳ないだろ馬鹿馬鹿しい」

 

「そっかー……。もしかしたら佐藤の首が消えたのって、どっか別の世界に行ったんじゃねぇかって思ってんだよなー」

 

「そんな事言う暇あるなら佐藤の捜索を続けた方がいいんじゃないか?」

 

声をかけたのはチームの司令塔でもある戸崎だった。やっと事件が終わりホッとしていたのもつかの間、佐藤・田中脱走の一報を聞き事態は急変していった。

 

「分かってるよ戸崎さーん。でも今も探してるけど分かってないんでしょ?」

 

それを言われた途端戸崎はチッと舌打ちし、苛立ちを募らせ、フリスクを数粒噛み砕いた。

 

「……ああ。行方は分からずしかも永井のフラッド現象のIBMが切断した頭も突然黒い粒子と共に消えた。オグラ博士に聞いても全く分からんの二つ返事だ」

 

「でもまあ、断頭された佐藤については今は害はなさそうですしほっといた方がいい。問題は新しく作られた佐藤についてですが………」

 

永井達が新たな脅威に対抗するため思考を張り巡らせて時にまさか佐藤が別の世界でも同じことをしようとは思ってもいないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー戦争だよ」

 

突如佐藤に言い放たれた衝撃の一言。かなり前から佐藤の常軌を逸した行動には呆気にとられていたが今回もまたさらにスバルは度肝を抜かされていた。

 

「ちょっと待ってください!どういうことすかそれ!?」

 

「スバルくん。せっかく異世界に来たのにここで思い切り楽しまないなんて損じゃないか」

やっぱりこの人の考えなんて変わる訳なかった。殺す事しか考えてない。でもこの人をどうにか引き込めば必ず役に立つ!考えろ、ナツキスバル。考えるんだ!

 

「まず最初は元の世界じゃ出来なかった国を統治する事かな。でもその前に王選候補者が邪魔だな。先ずは彼女達をーー」

 

「あのッ!!佐藤さん!!」

 

大声で叫んだスバルに珍しく思ったのか佐藤はスバルに気づき振り返った。

 

「どうかしたかい?」

 

ここでダメなら、もう俺にもエミリアにも最悪この世界にも後はない。頑張れ俺!!

 

「佐藤さんってゲーム……好きっすよね?」

 

「もちろん」

 

「なら、また同じジャンルやるより別のジャンルやった方が楽しいじゃないっすか」

 

「ふむ……言われてみれば確かに同じゲームばっかりというのも飽きてくるかもね」

 

「でしょう!?だから今はまだ新しい事を探す事から始めましょうよ!」

 

佐藤の凶行を阻止しようとスバルはそれにと続ける。

 

「同じゲーマーとして、一つ言いたい事があります!」

 

「ほう、なんだい?」

 

スゥとスバルは深く酸素を吸い

 

「ゲームは一人じゃつまらない。でしょう?」

 

スバルは佐藤の目を見ながら言った。それを聞いてどこか思うところがあったのか

 

「ハハッ、君は面白いねぇ。いいよ。しばらくは新しいゲーム探しでもしてみようかな」

 

と笑いながら言った。彼の考えてる事は一般人には理解する事は難しい。ただ楽しいから殺す。面白いから殺す。

それだけの為にエミリアが死ぬのは納得出来ない。好きにさせるわけにはいかない。だが自分には佐藤を止めるための力も無い。だからこうして佐藤に説得するしか無かった。

 

「そういえば、君村に買い出しに出かけてたよね?」

 

突然の話題にスバルは困惑しつつもはいと答える。佐藤はさりげなく。本当にさりげなくスバルに

 

「あそこ魔獣除けのランプが切れてたよ。もしかしたら村やばいんじゃない?」

 

その言葉にスバルは一瞬思考が停止した、だがそれどころではないと自分に言い聞かせ、

 

「それ、マジすか…?だとしたら村の人達が危ねぇ…!

早く行かねぇと!」

 

「今の話、本当ですか?」

 

二人の話に割って入って来たのは双子メイドのレム。レムは冷たい目で佐藤とスバルを見ながら

 

「サトウさんはともかく貴方の疑いはまだ晴れていません。……貴方の魔女の残り香が私の鼻腔が捻じ曲がるようにイラつかせます」

 

「魔女の残り香……?オイ聞いてくれ、今行って被害が出てないうちに魔獣を殺しておかないと村人達が殺されちまうかもしれねぇんだ!頼む行かせてくれ!」

 

「根拠も無いのにどうしろと?」

 

「なあお前のせいで死んだらどうするんだ?お前は責任が取れるのか?助けることが出来た命をお前がそんな理由で台無しにするかもしれねぇんだぞ!?」

 

それを聞いたレムは顔を歪め苦しげな表情でスバルを睨む。その間佐藤はつまらなそうにあくびをしていた。

 

「ですが………」

 

「分かった。そこまで疑うんならお前も来い。それならいいだろ?あと俺もさっきお前らと買い出しに行った時に魔獣に噛まれちまったから急いでベア子ン所に行かなきゃマズイ!」

 

「………分かりました。行きましょう」

 

渋々承諾したレムは二人についていこうとしたその時エミリアが現れスバルの元にやって来た。

 

「どうしたのスバル?もしかしてまた危険な事するつもりなの?」

 

エミリアは心配そうにスバルを見る。そんなエミリアを見てスバルはそんな事は無いとエミリアに言う。

 

「大丈夫だよ。こっちには俺を殺そうとした凄腕メイドに化け物じみた人間もいるんだ。あっ亜人か」

 

「そう……もうスバルったらこんな状況でも茶化して、あっそうだこれ……」

 

エミリアがスバルに渡したのは先程魔法を使い果たし動かなくなっていた時に貰ったボッコの実。

 

「もしもの時に使って」

 

「エミリア……ありがとう」

 

元々決めていた覚悟を改めて決めたスバルは佐藤とレムに声を掛け

 

「それじゃあ行きますか!!」

 

いざ行かんと歩を進めた、

 

「あっ、スバル君。呪いはどうするの?」

 

「やっべぇ忘れてた!」

 

出だしからこの様にレムは呆れ、エミリアは笑っていた。

 

 

 





そういえば第1話の時になぜスバルにだけIBMが見えたのかと言うとスバルは元の世界で佐藤の存在と凶行を知っていた憎悪でIBMを視認する事が出来ました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 狩りの時間

誤字報告してくれた方々、どうもありがとうございます。
そしてフラッド現象をフラットとずっと読み間違えてきてしまい申し訳ございませんでした。これから誤字はなるべくしないようにしますがもしまた間違えていたらそっと報告してくれると助かります。


魔獣狩りのため、屋敷を降り村に向かう3人。佐藤はショッ

トガンとハンドガンに鉈といったいつもの標準装備。

 

メイドのレムは年頃の娘が持つには如何なのかと思わせる凶悪なモーニングスター。

 

そしてスバルは佐藤に手渡されたシングルアクションアーミーことSAA。二人の装備を見てどうも釈然としないスバルは

 

「あの、佐藤さん」

 

「ん?」

 

「なんか俺のだけなんつーかその……ショボくないですか?」

 

それを聞いた佐藤はいやいや、と首を振りながら

 

「だって君銃持ってまだ少ししか経ってないじゃないか。今の君はそのくらいの銃でいいよ」

 

「そっ、そっすか。いやそうっすね……すみません」

 

佐藤の発言にそれもそうかと半ば無理矢理納得したスバルはSAAを片手に持ち森の中を探索する。

 

「ですがまさか……こんなに早く魔獣が村に侵攻していたとは思いませんでした」

 

実は佐藤達が村についていた頃にはもう魔獣が既に村の子供達を攫っていた後だった。スバルは遅かったかと顔を顰めながら持っていた銃を握りしめる。

 

「私は……まだ貴方の事が信じられません。他にも何か企んでいるんじゃーー」

 

レムが喋っていたのを遮るように佐藤は諭すように

 

「まぁそんなに焦らないで。それに前に言ったじゃないか。怪しい事したら殺すって」

 

ビクッとスバルは背筋が凍った。それもそのはず、彼の命はこの2人に握られているのだ。

 

(まじ焦るわ……心臓に悪い2人だわ。………心臓に悪いと言えば……)

 

スバルはそういえばと思い返すように考え事をした。

 

(俺がこの世界に来た事情話そうとしたら心臓を掴まれたような感触だったな。……そうだ!)

 

何か良い事を思いついたのかスバルは自分の手のひらにぽんと手を置き

 

「佐藤さん佐藤さん」

 

「どうかしたかい?」

 

「あの、良い事思いついたんすけど、そういえば俺達まだ別の世界から来たって皆に言ってませんでしたよね?」

 

「うん」

 

「俺言おうとしたらなんか心臓握られたような感じになったんすけど佐藤さんなら大丈夫なんじゃないかなーて思ったんですけど……」

 

死なないし、と言おうとしたのは内緒だ。

 

「へぇ、なんか面白そうだね。ちょっとやってみるかな」

 

と佐藤がレムに声をかけようとするも、あっと言いながら佐藤は指を指した。

 

「アレじゃない?」

 

彼の指が示した場所は探していた子供達の姿。意識がないのか動きは無い。

 

「あんな所にっ…!早く助けにーー」

 

スバルは早く行かなければと足早に近づこうとした。だがスバルは佐藤に肩を掴まれた。何故だとでも言うようにスバルは佐藤を見つめる。

 

「なんで止めるんですか!?早く行かないと…!」

 

「まあそう焦らないで。よく見てみなよ…開けた場所に自分達が捕まえた獲物を放置、おかしくない?」

 

焦りすぎていたせいで周りをよく見ていなかったスバルに冷静に、当たり前だと言うように話した。

 

「でもこのままだと…!」

 

「じゃあ行ってきなよ」

 

「「えっ?」」

 

意外な回答にはスバルだけではなくレムまでもが驚いた。

 

「お、俺に死ねと?」

 

「違う違う。別に死んでも良いけどもし襲ってきたら援護するから。だから行ってきなよ、レムちゃんもさ」

 

俺が言うまいとしていた言葉を普通に言ったよこの人…。

 

「……分かりました。行きましょうスバル君。もし来たらスバル君は子供達を抱えて一目散に逃げてください」

 

「全員抱えんのは無理あるけど……まあ逃げるのは得意分野だ、任せとけ」

 

そう言い2人は警戒しながら子供達に近づく。周りに何かぎいるような気配はしない。何事も無く子供達にたどり着いたスバル達は周りを更に警戒しながら様子を見る。

 

来る様子は無い。安心したスバルは子供達の身体を見る。

が、少し遅かった。魔獣の掛けた呪いが身体にあった。

このままだと明日になる頃には死んでしまう。

 

とスバル達がより一層焦っている時に佐藤はと言えば、

 

「まだかなぁ……」

 

欠伸をしながら木にもたれかかっていた。スバルは彼を一瞥し、なんでこんな状況であんなに落ち着いていられるのだろうと思っていた。だがあんな形でも凄く強い。

 

「……一人足りねぇな。もしかしたらまだ奥に………」

 

そう。一人足りないのだ。良く村に訪れ遊んでいたから分かる。スバルは立ち上がり佐藤の元に行った。

 

「佐藤さん、一人足りないです。一緒に来てもらえませんか?」

 

佐藤はやっとかいと言いながら腰を上げ、銃を手に取った。

 

だがそうだとスバルはレムに振り向き

 

「お前の言いたい事は分かってる、でも行かせてくれ。このまま見殺しには出来ないんだよ」

 

「………死なないで下さい。貴方にはまだ聞きたい事が沢山ありますから」

 

「ああ!」

 

そうして2人は奥へと入って行った。佐藤は先程までとは違い冷静に周りを見ながら完全に足音を消しながら歩いていた。

 

スバルもそれを真似しながら歩いていた。

 

「……あそこか」

 

意外にもあっさりと見つかった。行こうとするスバルに佐藤は再び待ったをかける。

 

「分かってますって。そっと近づきますよ」

 

姿勢を低くし、足元に気をつけながら進む。そして無事最後の1人に近づく事が出来た。

 

(魔獣は……いねぇな。なんでこんなトコに置いたんだろ……)

 

スバルは少女を担ぎ上げ立ち上がった。するとスバルは立ったまま動かない佐藤に何かあったのかと声をかけようとした。

 

だがその後の佐藤の行動にスバルは目を見開いた。

 

片手にハンドガンをぶら下げ、無表情のままそれを天に上げた。

 

その瞬間彼の顔が一瞬だけ変わった。まさかと思ったスバルは今すぐに彼を止めようとしたが、少し遅かった。

 

「プレイボール」

 

乾いた発砲音が森の中に響いたーー。

 

 

 

 

 




投稿が遅れてしまい申し訳ございません。謝ってばかりですね。これからも遅れて投稿するかもしれませんがご容赦願います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。