ライダーガールズ・スクランブル! (奏者りおん)
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第0話 仮面ライダー、参上。

0話目です。
とりあえず、こんな世界観だよって感じです。

体力の続く限り続けたいと思います。


並行世界。

 

聖遺物ギャラルホルンの先に無限に広がる、可能性の世界。

 

いるはずの人が居ない、あるいは、いないはずの人が存在する世界。

 

現実にいた人が、まるで別人のようになっている世界。

 

人々が知るものとは、真逆の運命を辿る世界。

 

「もしあのとき、ああしていれば。」「もしあのとき、ああしていなかったら。」

 

それが起こっている世界。

 

無限の選択肢によって、無限の可能性を孕んだ世界。

 

それが並行世界。

 

 

そして、この世界もまた「有り得たかも知れない世界」の一つである。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~〜~~~~

 

街のシンボルである大通りを、招かれざる客が我が物顔で闊歩している。

数年前から突如として発生した、触れたもの全てを炭へと変える特異災害、通称[ノイズ]だ。

 

 

「ほんっと、懲りないですよね~毎度毎度。」

 

「おー、おつかれ響。住民の避難は?」

 

「とっくに完了してますよ、奏さん。あ~!!お腹減った~!」

 

「さっきアタシの唐揚げ食べたヤツが何言ってんだ~?」

 

「えへへ~、だって美味しいんですもん、唐揚げ!」

 

その光景を前に、ビルの屋上で気の抜けた会話を交わす2人の少女。

私立リディアン音楽院高等科、1年生の立花響と3年生の天羽奏だ。

危険な生物を目にしてもなお、2人の顔からは焦りも恐怖も伺うことはできない。

 

 

「それにしても、最近多くないですか?数とか頻度とか」

「確かにな。それに、個々の力も強くなってきてる。加えて今日は一段と大漁だ。こりゃ明日は筋肉痛かもな」

「えぇ~..明日体育なんですけど..」

「あれ、響も?アタシもなんだよなぁ..」

「「はぁ...」」

 

『2人とも聞こえるか?』

 

 

愚痴をこぼす2人の耳に、インカムを通して声が聞こえる。特異災害対策機動部二課所属の研究者にして天才錬金術師、キャロル・マールス・ディーンハイムだ。

 

 

『その近辺に強力な個体の反応がある。俺の作ったシステムがあるからとて、油断するなよ。』

「心配してくれてありがとう、キャロルちゃん!」

『だからキャロルちゃんはやめろって言ってるだろ!作戦中だぞ!?』

「まあいいじゃん!助言ありがとう、キャロルちゃん?」

『お前らなぁ...まあいい、怪我するなよ?』

「「はーい!」」

 

 

通信を終えると同時に、2人の表情がほんの少し引き締まる。

 

「ふぅ...さて、そろそろ行くぞ。」

「はいッ!一気に片しちゃいましょうッ!」

 

そういうと、2人はそれぞれ腰に手をやる。

奏が取り出したのは、[左右非対称の赤いベルト]。響は[バイクマフラーのような青いベルト]を構える。2人が腰の前にそれをかざした瞬間、ベルトが自動的に定着する。

 

「見ててくれ、翼..」

 

奏はかつての相棒の名を小さく呟くと、懐に仕込んだ3本のメモリのうち、紫色のものを取り出してスイッチを押した。

 

 

【ジョーカー!!】

 

 

起動を知らせるガイダンスボイスを確認し、ベルトに装填する。

 

同じく、響がベルトのスロットを上げる。エンジンを蒸すような待機音と、それを合図に飛んでくる4台の小さなバイク。そのうち、ボディに[R]と書かれた白いバイクを、響は優しくキャッチする。

 

 

「よーしっ、行くよ!」

【PARARIRA!】

 

 

響の声に応えるように、クラクションを鳴らす白いバイク。ベルトに装填すると、ヘッドライトが点灯しガイダンスボイスが響く。

 

 

【シグナルバイク!!】

 

 

アイコンタクトを交わす2人。その後、

無駄のない動作で右手を顔の前で構える奏。凛とした表情を浮かべるその顔には、切り札を象徴する紋が浮かんでいる。

反対に、響は両腕で大きな円を作るように構える。その表情は、これから起こる「メインイベント」に心を踊らせるかのような笑顔。

準備は、整った。

 

 

 

 

 

「レッツ...「変身ッ!!」」

 

 

 

 

 

 

立花響と天羽奏。

 

普段は、かの有名な私立リディアン音楽院の高等科に通う2人。

 

だが裏の顔は、人知れずノイズと戦う特異災害対策機動部二課に所属する戦士。

 

仮面の下に不敵な笑みを浮かべる2人の戦士は、今宵も人々を守るために戦う。

 

命を救われた一般市民は、素顔を隠した彼女達のことをこう呼んだ。

 

 

 

 

 

【仮面ライダー】と。

 

<続>




有難う御座いました。

次回ようやく1話かな..という感じです。


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第1話 居残りと未来のご飯

やっと第1話です。

まだ変身しません。

よろしくお願いします。


 

ーーーーーー遡ること1ヵ月前。

 

 

「未来...やっと...やっとこの時が来たんだよ...私達、解放されるんだよ...」

 

私ー立花響ーは歓喜していた。あとから聞けば「あの時のビッキー、ヒナが止めてなきゃ昇天してたよ?」と言われるほどには歓喜していた。

 

「そんなに大げさなことかな..?」

「え!?未来嬉しくないの!?実力テストが終わったんだよ~!?」

「そうだけど...」

 

そう!今日は実力テスト最終日!リディアンに入って初めての「定期考査」というヤツが、今日やっと終わったのだった!

 

手応えは結構ある方だと思う。

慣れない環境の中、寝る間も惜しんで(とか言いつつ結構寝ちゃったけど...)猛勉強した甲斐があった。

そしてもう一つ...

 

「未来!約束、忘れてないよね!?」

「分かってる。響が頑張れたら、夜ご飯好きな物作ってあげる約束でしょ?」

「正解!それじゃあ...」

 

未来にお願いする献立を考えようとしたその時。

 

「立花さん。プリントの整理、手伝ってもらっていい?」

 

担任に呼ばれてしまった。まあ仕方ない..一応、日直だしね。

 

「ごめん未来、また後で伝えるね!」

「はーい、行ってらっしゃい。」

 

未来に一言告げて、先生の後に続いて事務室へと移動する。

あぁ、何にしようかな~、晩御飯!まあ、未来が作ってくれるならなんでも美味しいんだけど..

 

「じゃあ立花さん、これお願いね?」

「は~いッ!....って、こんなに!?」

 

私を待っていたのはとんでもない量のプリントの山だった。予想以上の量に困惑してしまう。この量1人でこなすのは流石にキツいよ...

 

「私は職員室にいるから、終わったら来てね。それじゃあ宜しくっ!」

「宜しくじゃなくて...あ、ちょっと!」

 

バタン!とドアが閉まった。

 

......ほんとに1人でやるの、これ?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「終わらない...終わる気がしない.....」

 

思わず独りごちてしまう。

西日が部屋を満たしはじめていた。幻想的な空気感なのに、それに浸ることを目の前のプリントが邪魔をする。

確実に減ってはいるが、まだ終わらない。

なによりお腹が減った....

 

(キーンコーンカーンコーン...)

 

下校時刻を知らせるチャイムが鳴る。普通なら、そろそろ未来がご飯作ってくれてる時間なんだけど。

.....ん?未来......?

 

 

「あぁッ!?未来、教室に放ったらかしだ!?」

 

 

とんでもないことをしてしまった。幼い頃からの友達を、自分の作業を優先して放ったらかしにしてしまった。

とりあえずメールしないと....あ、メール来てた。

 

 

[響へ。あんまり遅くなる前に帰ってきてね?響が食べたいものは大体分かってるよ。先に帰って用意しておくね。]

 

 

「あぁ.......」

 

だらしない声が漏れる。

なんて素晴らしい女の子なんだろう。

可愛くて、料理できて、おまけに私の好みを完璧に分かってる。

私が男の子だったら確実に堕ちてる。

 

「よし....もう少し頑張ろうッ!」

 

気合を入れて続きを終わらせようとしたその時だった。

 

「まだ終わってなかったのか?」

「ひゃいッ!?!?」

 

 

突然誰かに声をかけられた。思わず変な声が出る。

 

「うわっ!?そんなビックリしなくてもいいじゃん...」

「あ...ごめんなさい...」

 

どうやら相手を驚かせてしまったらしい。

とりあえず声の主を確認する。

 

腰まで伸びた紅い髪と、男勝りな口調。それに、よく通る綺麗な声。

もう2度と忘れられないような印象を持ってる、そんな人。

しかし、一つ疑問が..

 

「あの、さっき[まだ]って...」

「あーごめんごめん。さっきこの部屋の前通った時、お前が見えたからさ。んで、帰ろうとしたらまだいたの見えたから、思わず声掛けちまった」

「.....あれ、私仕事遅いのバカにされてる..?」

 

内心ちょっとショックを受ける。この人、悪気ないのにこういうこと言っちゃうタイプだ...

とその時、おもむろにその人がプリントの山に手を伸ばす。

 

「作業、まだ残ってるんだろ?手伝ってやるよ。」

「えぇ!?いいんですか!?」

 

この人、口調に似合わずいい人だ!!

と、続けて。

 

「この部屋の鍵締めるように、1年生の担任に頼まれててさ。アタシの都合で悪いけど、やらせてもらうよ」

 

......私、先生に忘れられてるよね?

そんなに私って存在感薄いのかな....。

気分のアップダウンを繰り返す私を尻目に、隣では既に作業を始めていた。

あ、そういえばまだ自己紹介してない。

 

「あの!私、1年の立花響です!よろしくおねがいしますッ!」

「あ、自己紹介まだだったな...。アタシは3年の天羽奏。よろしくな!」

 

 

 

まさかこの時の出会いが、あんなことになるなんて思ってなかったよね....

 

<続>

 




ありがとうございました。

ちょこっと世界線の説明です。
まず、天羽奏は生きています。
ですが原作と違い、ツヴァイウイングの活動もソロ活動もしていません。「今のところ」ごく普通の高校生です。

次に、風鳴翼はいません。
これは今後話があります。

次もよろしくお願いします。


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第2話 不穏の幕開け

第2話です。

まだ変身しません。

タイトル詐欺もいいとこですが、よろしくお願いします。


「ふぃ~、やっと終わったぁ!!」

 

思わず声を上げる。すべての書類の整理が終わったのは、既に日が落ちてからだった。

隣では奏さんが大きく伸びをしていた。

 

「やっといてだけど事務仕事は向いてねぇ...肩壊れる」

 

「ほんとにありがとうございますッ!これでようやく帰れますよ~...」

 

「礼なんて要らないよ。アタシがやりたくてやったんだし。それより、部屋の鍵締めるから先に行っていいぞ?」

 

「え...でも...」

 

「約束、あるんだろ?」

 

「あ、ありがとうございますッ!ではお先に失礼しますね!」

 

奏さんにお礼を言って部屋を出る私。

素敵な先輩と知り合えたなぁ...やっぱり今度、改めてお礼しなきゃ。

 

 

 

先生に報告を済ませ、学校を後にする。未来にメールを送ると途端にお腹がなった。

早く帰ろう...これ以上は倒れちゃう...

 

「未来、何作ってくれてるかな~。私の好きな物って分かるのかな...」

 

夜ご飯を想像しつつ帰り道を急ぐ。

が、ひとつ気になった事が...

 

(そういえば、なんで奏さんは約束知ってたんだろ?ちょっと雑談はしたけどその話はしてないような...)

 

...まあ、そんなこと考えてもどうしようもないや。今は未来のご飯だ!

大きな期待と少しの違和感を感じつつも、家へと向かう足取りは軽かった。

あの角を曲がればもう少しだ!

家に近づくと共にお腹の虫も一層声を上げる。

 

「ごはん♪ごはん♪ごは....」

 

 

でも、私を曲がり角で待っていたのは、

 

 

「...何、これ!?」

 

 

 

未来のご飯じゃなくて、無数の炭の山だった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そういえば、朝ニュースで見たばかりだ。

「最近[奴ら]の発生が増え、街が甚大な被害を受けている」と。

未来に早く帰るように言われたのを守らなかったことを、私は今になって後悔した。

炭の山は通りのあちこちに点在しており、既に[奴ら]が通った後のようだった。

 

 

「うそ...これって...」

 

「いやあああああああああああッッ!!!」

 

「!?」

 

 

気付くと体が動いていた。

出せる限界のスピードで悲鳴の聞こえた方へと急ぐ。

と同時に携帯を取り出し、未来へ電話をかける。

 

(警報は鳴ってないってことは、まだ未来は逃げてないかも...ッ!!)

 

1コールで未来に繋がる。

 

『もしもし響?もう帰り道かな?そろそろ帰ってくると思って、ごはん温め直そうとしてたんだけ「未来、今すぐ逃げてッ!!奴らが...[ノイズ]が来るッ!!」...え?』

 

話し終わる前に、矢継ぎ早に事を伝えた。

 

『ちょ、ちょっとまって!?響はいまどこなの!?』

 

「私は大丈夫ッ!とにかく、はやく近くのシェルターに避難して!!」

 

『ダメだよ!響を置いて逃げられない!』

 

「大丈夫だからッ!!いいから逃げてッ!!」

 

「...分かった、響も気を付けてね!?」

 

 

電話を切ると再び走ることに集中した。

 

(どこ...どこにいるの!?)

 

悲鳴の主を探していると、不気味に光る何かが通りの向こう側を進んでいるのが見えた。

あれこそがこの騒ぎの元凶、特異災害[ノイズ]だ。

そしてそれがゆっくりと進む先に...

 

「来るな...来るなぁ!!!あっち行けデスッッ!!!」

 

さっきの悲鳴の主と思しき女の子が座り込んでいた。

その光景を見ると同時に、私の体は更にスピードを上げる。と、近くのゴミ捨て場に空き缶が捨てられているのが見えた。

 

(これなら...ッ!)

 

私は走った勢いに任せて、拾った空き缶を思い切り投げ飛ばした。

ノイズの進行方向とは真逆へ...

 

 

ーーーーーカァン....

 

 

コンクリートに当たった空き缶が乾いた音を上げる。

すると、私の思惑通りにノイズが音のした方向へと進路を変えた。

この隙に女の子へと駆け寄る。

 

「大丈夫!?怪我とかしてない!?」

 

「だ、大丈夫デス。助けてくれてありがとうございますデス」

 

「お礼はいいよ!近くにシェルターがあるから、そこまで走れる?」

 

「は、はいデス!!」

 

女の子はどうやら無事な様だ。ひとまず安心...してもいられない。

私は女の子の手を取って、シェルターへと再び走り出した。

 

 

未来、無事だよね...ッ!!?ちゃんと逃げたよねッ!!?

 




ありがとうございました。

ライダーの前に謎の(?)キャラが登場してしまいました。

この子も後々出てくる予定です。

次回も宜しくお願いします。


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第3話 逃走と覚悟と...

第3話です。

変身...変身?

よろしくお願いします←


「うそ...シェルターが...」

「壊されてるデスよ...ッ!?」

 

 

シェルターへ向かう途中で未来から着信が入り、「近くの小学校へ避難した」という旨の連絡が来た。

ひとまず安心した私は女の子を連れて再び走った。

そして到着した目的のシェルターは...

 

既にノイズによって破壊され、入口から中を覗くと既に炭の山が出来上がっていた。

もう少し早くここに入っていればどうなっていたかと不安が襲ってくる。

それでも、諦める訳には行かない...!

 

「もう少し行けば別のシェルターがあるはず!もうちょっとだけ頑張ろう!!」

 

「ハァ...ハァ...ごめんなさいデス。これ以上はもう、体力が...」

 

「そんな!?...だったら!」

 

「へ?あ、ちょっと!?何してるデスか!?」

 

女の子が何か言おうとしていたが、構わず抱えあげる。

所謂、「お姫様抱っこ」だ。

ほんとは男の人がらやるはずなんだけど...いまはそんなの考えてる場合じゃない!!

 

「これなら大丈夫だよね?」

 

「だ、大丈夫デスけど...」

 

「ここから1番近いシェルターまで走るよ!」

 

言うが早いが私は駆け出す。

学校の授業で見たハザードマップのおかげで、シェルターの位置は把握済みだ。ちょっと授業中ウトウトしてたけど!!

頭の地図を辿りながらシェルターを目指す。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

かなりの距離を走った。

もうすぐ次のシェルターに着くはず...

 

「あ、あの...ッ!!」

 

今まで黙っていた女の子が声を掛けてくる。

 

「どうしたの?あ..体痛かったかな!?」

 

「そうじゃなくて、なんでそこまでしてくれるのデスか...?あなた1人で逃げた方が早いじゃないデスか!?」

 

「困ってる人を見捨てるなんて出来ないよッ!!」

 

当たり前のことを返す私。

 

「だけど...!!」

 

「それに...」

 

女の子に、今出来る精一杯に笑ってみせる。

 

「こんな形だけどあなたと話ができたんだ!ひとりで逃げたりなんかしたら、あなたと友達になれない!!」

 

「い、いま言うことじゃないデスよ!?」

 

「だからへいき、へっちゃ...うわッ!!」

 

へっちゃら、と言おうとして盛大に躓いてしまった。

倒れる直前に体を反転させ、女の子を庇う。

 

「いてて...大丈夫?怪我してないよね!?」

 

急いで女の子に声をかける。が、

 

「それはこっちのセリフデス!大丈夫デスか!?」

 

逆に心配されちゃった。

 

「だ、大丈夫だよ!それより早く...痛ッ!?」

 

立ち上がろうとした瞬間、右脚に痛みが走る。

力を入れようにも言うことを聞いてくれない。

 

「嘘...脚が動かない...!?」

 

「え!?」

 

 

何度も立ち上がろうとした。でも、その度に痛みが邪魔して座り込んでしまう。

 

そのとき、隣で女の子が私たちの後ろを指さした。

 

 

「あ、あの...後ろ...ッ!!」

 

「...ッ!?そんな...」

 

 

振り向くとそこには大量のノイズ。

さっき女の子に襲いかかろうとしていた量とは比にならないくらいのノイズが、もうそこまで迫っていた。

逃げなきゃ...そう思っても脚が一向に動こうとしない。

 

「動け!動け!動いてよ...」

 

気がつけば言葉に出ていた。

 

(逃げなきゃ...早くしないとこのままじゃ!!)

 

 

「ごめんなさい...わたしのせいでっ...わたしが迷惑かけたからぁ....」

 

「っ!!」

 

動けない私を見て不安と恐怖が限界を超えたらしく、女の子が泣き出してしまった。

必死に謝ってくるも、その体は恐怖で震えている。

 

私はそれを優しく、でも出来るだけ強く抱きしめる。

 

「大丈夫...大丈夫だから...!私が守るから...っ!!」

 

そう言った私の声も震えていた。

不気味に光るノイズが、目前まで迫る。

 

 

 

 

あぁ、ここで死んじゃうんだ。

 

 

 

 

そう悟った途端、何かが壊れたように涙が溢れる。

 

「嫌だ...嫌だよ...死にたくない...こんなところで...ッ!!」

 

「ごめんなさい...ごめんなさいぃ...っ!!」

 

 

結局私は何も出来なかった。

この子も守ってあげられなかった。

 

私は無力だった。

 

[+*#「>×%]

 

ノイズが腕を私達に向ける。

せめて女の子だけでもと、ノイズに背を向けて目をぎゅっと閉じる。

 

 

 

 

 

「ーーーーー未来...ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジョーカー!!マキシマムドライブ!!』

 

<続>




ありがとうございました。

最後に誰か来たようですね。


響が助けた女の子、解説するまでもなくあの子なのですがまだ話はでません。

気長に待って頂けると幸いです。

次回も宜しくお願いします。


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第4話 『J』oker

第4話です。

視点がすこーし変わります。

よろしくお願いします。


 

...あれ?

 

痛く、ない...?

 

体が炭になる感覚、よく分からないけど多分痛いよね...?

そう思って構えてたけど何も感じない。

でも抱きしめていた女の子が聞こえなくなっている。

 

恐る恐る目を開けると、女の子が驚きの眼差しで私を見ていた。

いや、正確には私のすぐ後ろを見つめていた。

まるで「憧れの誰かを目の前で見ている」ような目で。

...ん?憧れの誰か?

 

視線につられてゆっくりと振り返ると...

 

 

「悪りぃ、待たせたな」

 

 

黒い人影が立っていた。

そしてもう一つ、先程まで私達に襲いかかろうとしていたノイズが跡形もなく消えていた。

(えっと...良くわかんないけど、私達助かったのかな?)

そう思っていると、人影がこちらに向き直って近付いてくる。

 

 

夜に溶けるような黒い身体に、赤く輝く複眼らしきもの。淡く光る紫色のラインと、発達した手足。顔をよく見れば[W]の形をした角。そして真紅のベルトに輝く[J]の文字。

女の子が、驚きと喜びの混じった声でその名を呟く。

 

 

「仮面...ライダー...」

『怪我は無いか、2人とも?』

 

 

突然人影が私達に声をかけてきた。

聞こえてきたのは...女の人の声?しかも、何か聞き覚えが...

 

「わ、私は大丈夫なんデスが、この人が私を助けてくれようとして脚を...」

『なるほどな...やっぱりお人好しだな、お前』

「え...私のこと、知ってるんですか?」

『そんなことは後回しだ。それより...』

 

そういうと人影...仮面ライダーは耳の辺りに手を当て、誰かと通信を始めた。

 

『こちらジョーカー。逃げ遅れた民間人を保護した。救護班を頼む』

 

どうやら救護班を呼んでくれたようだ。

そして聞こえた会話から、ジョーカーというのが名前ということがわかった。

通信を終わらせると、再びこちらに向き直ったジョーカーさん。

 

『いまアタシの仲間を呼んだ。5分もすれば着くはずだ』

「あ、ありがとうございます!!」

「助かったデス...」

 

『...が、まだ安心はさせてくれないまたいだな』

 

そう言うと、ジョーカーさんが突然あさっての方向を向く。輝く複眼の先には...

 

「またノイズの大群デス!!」

「どうしよう...!?」

『ここはアタシが何とかする。お前らは絶対動くんじゃねえぞ』

 

ノイズの大群を前にしてもなお、落ち着きを見せるジョーカーさん。

迫る不気味な生物に指をさし、一言呟く。

 

 

『さぁ、お前の罪を数えろッ!!』

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

...マジかよ。

 

現場来たのはいいけどさ。

 

ノイズの反応に混じって生存者の反応があるから来てみれば、さっき別れたばっかの可愛い後輩じゃん...

 

まさかこの子を巻き込んでしまうとは。いやほんと、申し訳ない。

 

 

心の中で響に詫びつつ、ノイズの大群へ向かって急速で接近する。

 

 

『行くぜ...おりゃああああああああッ!!!』

 

 

まずは挨拶がわりの右ストレート。衝撃波で団体様の一角が丸ごと吹き飛ぶ。

続けて回し蹴りと、その勢いを利用してさらにキック。やっぱこの力、雑魚相手には強過ぎるよな...そう思いつつも向かってくる敵に容赦なく連撃を浴びせていく。

 

粗方雑魚が片付いた所で、残すは中型の奴一体だけ。

あの子達は...よし、ノイズは近づいてないみたいだな。長引かせても仕方ねえ、そろそろ終わらせようか。

 

ベルトに挿さったメモリを引き抜き、右側にあるマキシマムスロットに装填する。間髪入れずに小さな黒いボタンを叩いた。

 

【ジョーカー!マキシマムドライブ!!】

 

ガイダンスボイスが響き、右の拳に力が集中していくのを感じる。

 

『ライダー...パンチ』

 

小さく呟いて前方へ跳ぶ。その勢いのままに、紫のオーラが輝く右拳を前方に突き出す。

イメージは教え通り、《稲妻を喰らい、雷を握り潰す》感じで!!

 

『喰らえええええええッ!!!』

 

あたしの右拳はノイズの身体を真っ直ぐに貫いた。

渾身の一撃を喰らったノイズはまたたく間に黒く変色し、そのまま炭になって風に流れていった。

 

『...って、こんな感じで合ってんのかな?』

 

 

一言呟き、驚きの表情を浮かべた後輩の元へ戻る。

 

『おーい、大丈夫だったか?』

「は...はい!ありがとうございま「あのッ!!」」

『うおっ!何だよ?』

 

後輩が連れていた女の子が、言葉を遮って話しかけてきた。

アレ何この子、すっごい目キラキラしてる。

 

「あの!!仮面ライダーさんデスよね!?ニュースで話題になってる、《ノイズが出た時に現場に駆けつける謎の戦士》って!!」

『あ〜...まあ、そうだよ』

「どうして民間人に協力しているのデスか!?その力、一体なんなのデスか!?!?」

 

や、やべえ...押されてる...。

 

『ち、ちょっと落ち着いてくれ!な?もうすぐ救護班がくるから...』

「目の前に憧れのヒーローがいるのに落ち着いてなんてられないデスよ!」

「ね、ねえ?この人も困ってるみたいだし、そろそろやめたほうが...」

「好奇心は止められないのデス!」

 

するとあろう事か、女の子があたしのベルトに手をかけて...

 

「さっき、ここを触ったら凄い攻撃が出たような...」

『あ、待て!!いまそれ触ったら...あ』

 

ドライバーを閉じられ、メモリが抜き取られてしまった。

当然そんなことをされたらスーツが解けるわけで...

 

「...アレ?」

「嘘!?奏先輩!?」

 

 

うわやっべえ、どうしよこれ...

<続>

 




ありがとうございました。

変身!戦闘!からの速攻身バレでお送りしました。

次回もよろしくお願いします。


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第5話 連れてこられたその先は

おまたせしました、第5話です。

今回は変身しません&短めです。

よろしくお願いします。


「おぉ〜!これが仮面ライダーの秘密基地デスか〜!!まさか、かの有名なリディアンの地下とは...」

「リディアンにこんなところが...」

 

ノイズを殲滅したあと、すぐさま救護班が到着した。

幸い響は軽い捻挫で済んだようだ。脚が動かなかったのは怪我ではなく、単純に焦りで身体が言うことを聞かなかったらしい。

応急処置が終わった2人を、車に(ほぼ無理矢理)乗せて本部へ連れていく。

「かえしてくれるんじゃないんですか!?」とか「まさか私達、秘密を知ったから消されてしまうデスか!?」とか喚いてたけど...するかいなそんなこと...。

そんなこんなで、本部に通じる長い廊下を3人で歩いている。

 

「ねえ奏先輩!そろそろ教えてくださいよ!」

「まあ待ってくれよ。もう少しで分かるから」

「じゃあせめて先輩のことだけでも...」

「うわぁ...ここ、何の部屋デスかね?」

「って、勝手に開けるなよー?警報鳴るぞー?」

「わわっ!ごめんなさいデス...」

 

...緊張感ないなぁ、この子...。

 

暫く歩くと一つのドアの前につく。

 

「着いたぞ。今回の事件について話があるから、とりあえず入ってくれ」

「あぁ、はい...」

「なんか急に不安デス...」

 

にしてもこの子達表情変わるの早いな、なんか面白い。

 

「まーまー、軽ーく話するだけだからそう力むなよ」

 

そう言いドアを開け放つ。

 

 

 

「おーい、連れてきたぞー」

 

 

 

 

「「「「「立花響さん、暁切歌さん!ようこそ二課へ!!!」」」」」

 

 

 

 

盛大にクラッカーが鳴らされる。

あ、2人分の横断幕間に合ったのね。

 

〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜〜~〜~

 

奏先輩が開けたドアに押し込められるように入ると、そこは綺麗な装飾と豪華な料理でいっぱいになっていた。

天井から垂れ下がっている横断幕には【響さん、切歌さん、ようこそ二課へ!】の文字。

え...まさかの歓迎ムード?

 

「え、えと...とりあえず、歓迎されてるんですか?私達?」

「仮面ライダーの正体知っちゃったから、消されるのかと思ってたデス...」

「そんなことしねえって!?」

 

私達が戸惑っていると、赤いシャツを着た男の人が話しかけてきた。

って、大きすぎない!?すっごい見下ろされてるんだけど!?

 

「ん?どうしたんだ?そんなところに立ってないで、気楽にしてくれ!美味い飯もあるぞ!」

「司令はあんまり食べ過ぎないでくださいよ?立花さん達の分が無くなってしまいます」

「そうですよ!それに、まだあの子も来てませんし...」

 

司令と呼ばれた豪快な態度の人を、制服を来た2人が止めに入っている。

なんか凄い賑やかで楽しい雰囲気。

 

...じゃなくて!!?

 

「あ、あの~...」

「小日向未来さんの無事は確認しました。もう心配しなくて大丈夫ですよ」

「うわッ!?」

 

いつの間にか背後に立っていた男の人に話しかけられた。まるで忍者みたい...気配を全く感じなかったよ...って、いま未来のこと!?

 

「未来、無事なんですよね!?」

「はい。リディアンに近いシェルターで無事保護されたようです。ですから、もう大丈夫です」

「よ、良かった...」

 

とりあえず未来は無事なようだ。後で連絡しないと。でもなんて言えばいいのかな...「仮面ライダーに連れて行かれたんだーえへへ」なんて言っても信じてくれないよね?

それと、奏先輩と同じように男の人も未来のことを知っているようだ。未来、そんなに有名人だったのかな...?

ひとまず、混乱し続ける脳内を整理しようと奏先輩に話しかける。

 

「あの、奏先輩。もう教えてくれてもいいですよね?ここはどこで、私達はどうして連れてこられたんですか?」

 

「そうデスよ!モグモグ...いきなり連れてこられて...ムシャムシャ...わたしたちに何しようとしてるデスか!?もう1個くださいデス!!」

 

 

いや切歌ちゃんぜんぜん説得力ないよ...(名前は横断幕で知った。今までそんなことないよ...?)

 

「まあまあ落ち着けよ、響。時間はたくさんあるんだし、とりあえず腹ごしらえだ。美味いぞこれ?」

 

奏さんが食べかけの骨付き肉を差し出してくる。

そんなことしてる場合じゃなくてですね...?

 

 

「あ、ほんとに美味しい」

「だろ?」

 

 

よし、考えるのやめた!まずはご飯!!

<続>




ありがとうございました。

次回は5.5話、キャラ紹介回風になる予定です。

次回もよろしくお願いします。


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