召喚されて勇者やってたけど平和になったので料理屋をやってます。 (kaenn)
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ドラゴンのすてーき

暇つぶしに書いた初オリジナル作品です。

最近、異世界で料理を作るラノベがあったので面白そうだなぁと思って書いて見ました。


異世界 リストアール大陸

 

今より30年前にリストアール大陸で始まった人魔戦争…、魔軍と呼ばれる者達が大陸を支配する状況を変えようと、人間やエルフや獣人などの種族が暴政を覆すため立ち上がり、異世界から召喚された勇者と呼ばれる者と共に戦った。

 

その甲斐あってか、現在では魔軍最高司令官にして魔国国王のフェンリルとも和解して平和な世の中になりつつあった。

 

 

 

…チュンチュン…

小鳥の囀りが聞こえ始める時間

朝陽が射し込む白い煉瓦造りの建物内で1人の男が料理をして居る。

 

ートン、トントン……グッグツグツ…ー

 

まな板の上に置いた胡瓜の様な野菜をリズム良く刻んだかと思うと、瞬間的に五歩ほど離れた鍋の煮え具合を確認している。

 

男は鼻歌を歌いながら料理を作っていた。

 

すると、男の背後にある住居側の扉から金髪の少女が入って来て、

 

「おはようお父さん!…今日は何からお手伝いしようか?」

 

と、声をかけてきた。

 

そう、入ってきたのは自分の娘で、ニコニコと笑顔を浮かべ、ふさふさな髪と同じ金色の尻尾を嬉しそうに左右に振りながら歩いてくる。

 

「おはようリア、そうだなぁ…じゃあサラダの盛り付けを頼んでもいいかな?」

 

と、言いながら娘のシルフェリア・ジル・D・将紀(愛称はリア)の頭を撫でる。

 

「お父さん、くすぐったいよ〜。」

 

リアの頭の獣耳に手が当たるたび耳と尻尾がピクピクと動きながら嬉しそうに上目遣いで見上げてくる。

 

満足したのかトテトテと、自分から離れていくと、クリスタルで出来たボールを3つ食器棚から取り出し、準備しておいた野菜を盛り付け始める。

 

「そう言えばリア、タマはまだ寝てるのかい?」

 

ふと、いつもは一緒に降りてくる妻がまだ降りて来ない事に気づいてリアに質問すると、

 

「ん?お母さん?今日は体調が”良くなりすぎる”日だから落ち着いたら戻って来るってお外に行ったよ。」

 

リアの言葉に冷や汗をかき、今日の夜は大変だなぁ……と考えていると店の勝手口から金色の獣耳とふさふさの尻尾を持つ、リアをそのまま幼くした様な幼女が入って来た。

 

「お前さま、リア!いま帰ったぞ!」

 

扉を開け放ったのは自分の妻の玉藻・D・将紀で、腰の辺りまで伸ばした金色に輝く髪を風にたなびかせ、晴れやかな笑顔を浮かべている。

 

「お帰りなさいお母さん、今日は何狩ってきたの?」

 

リアが玉藻に近所のスーパーで何を買って来たの?といった感じで質問すると玉藻は、

 

「散歩しておったら、下級トカゲ風情が喧嘩を売って来たもんでな?つい、こう、キュッと…な?」

 

そう……満面の笑みで店の裏口に立つ妻の右手に捉まれているのは赤い大きなドラゴンの尻尾でした…勿論その先には胴体も頭も残っています……。

 

「お前さま!今日の朝のオススメはドラゴンのすてーきか、はんばーぐじゃな!」

 

朝からステーキやハンバーグは重いな…と思いつつも妻の

ーこれでもか!!ー

と、言わんばかりに揺れ続ける尻尾とドヤ顔を見て、

 

「じゃあ取り敢えず解体しとくから、タマはまずお風呂に入って来なさい。」

 

頭を撫でながらそう言うと、

 

「うむ、分かったのじゃ!焼くのは妾に任せるのじゃぞ?お前さまが焼いてしまうとみでぃあむになってしまうのでな!」

 

レアが好きな妻だが、俺が焼くと長年の経験からどうしてもミディアムかミディアムレアで焼いてしまうので、レアに焼く場合は玉藻が焼くのが家のルールになっていた。

 

「お母さん元気だね、………そうだ!お父さん、私ね?弟か妹が欲しいな!」

 

風呂に入りに住居側の扉を開けて中に消えた玉藻を見て、少ししてからリアは俺の方に向き直って、妻に負けず劣らずの笑顔でそう言い切った。

 

ガクッ、とコケた後

 

「リ、リア?急にどうしたんだい?」

 

克馬は唐突に放り込まれた娘の爆弾発言の意図を確認するとリアは不思議そうに、

 

「マリーちゃんがお母さんが元気すぎる時にお父さんにこう言えば弟妹が出来るって教えてくれたんだけど…間違ってた?」

 

と、言ってきたので

また親友の娘の影響か…と頭を抱えてた。

その時リアの背後には、母親譲りの銀髪を掻き上げながら高笑いする何処かの国の王女が見えた気がした。

 

 

「お前さま!切り分けは終わったかのう?」

 

風呂から出て少し上気したピンク色の肌と髪から湯気と石鹸の良い匂いを漂わせながら玉藻が俺に声をかけてきた。

 

「あぁ、切り分け終わって鉄板も準備出来てるよ。」

 

「うむ!では妾が、れあすてーきを焼こうではないか!」

 

俺が切り分けておいたドラゴンの肉をみて玉藻は九本の尻尾を振りながら鉄板の前に立つと徐に鉄板に油をひき始める。

油が鉄板に馴染んだ頃に下味をつけておいた肉を鉄板に乗せて焼くとじゅうじゅうと良い音と煙と香ばしい匂いを立ちのぼらせていく。

 

「ふん、ふん♪ふん〜♪………」

 

鼻唄を歌いながら料理を作る玉藻を見てふと思う。

玉藻は結婚してから相当練習してきたので、今は安心して見ていられるが、冒険していた時や、結婚当初は危なっかしくてとても見ていられなかったのだが、子供ができると今までの事が嘘の様に安定して料理を作れる様になった。

 

「出来たぞ!さぁさ!せっかくの新鮮なすてーきじゃ!暖かいうちに食べようぞ!。」

 

肉だけが魔法で浮いて空中で玉藻の包丁捌きを受けて一口サイズに切り分けられてテーブル上の皿に盛りつけられる。

某中華料理の漫画みたいになっているような気がするが気にしたら負けだ…この世界は異世界なのだから……

 

まだじゅうじゅうと音を立てて、ちょうど良い具合に油も落ちた熱々のレアステーキが食卓に並ぶと、玉藻が尻尾を振って「早く食べよう!」と無言の催促をする。

俺もリアも苦笑しながら席に着き手を合わせて食べ始める。

 

「「「いただきます!!。」」」

 

「リア、すまんがそこにある醤油を取ってくれんかの?」

 

「ん、はいお母さん。」

 

リアに取ってもらった醤油を小皿に入れ、山葵を乗せ切り分けたステーキに、醤油を少し付けて玉藻は自分の口に運ぶ。

 

「んん〜〜〜んまいのう♪流石!妾の焼いたすてーきじゃ!リアもそう思うじゃろ?」

 

嬉しそうなドヤ顔で娘のリアに美味しい?と聞く玉藻にリアは少し困った笑顔で、

 

「うん♪お母さんの焼いたステーキは大好きだよ!……でも私はお父さんの焼いたステーキも美味しいと思うよ?」

 

と、返すと、玉藻も顔を赤くして俯きながら、

 

「………いや、確かに克馬の方も美味いが……じゃが、それを認めてしまうと妾の母親の威厳が………うーむ………。」

 

玉藻が呟きながら悶えていると、外から慌てた男の声がする。

 

「…………ドーラックス卿はいらっしゃいますか!火急の用がっ……。」

 

聞こえる声は、この国の騎士で城からの連絡役として良く来るクリスティアーノという青年の声だ。

 

「ぬぅ…なんじゃ朝っぱらから騒がしい!妾が出る故お前さまは座っておれ。」

 

玉藻が、ばっ!と、顔を上げると立ち上がり扉の前まで歩いていく。

 

「…全くなんじゃと言…」ーバンッー

 

「ドーラックス卿!申し訳御座いません、火急の要請で御座います!付近の街道に大型のレッドドラゴンが現れたそうで………?ドーラックス卿?何故、そんな顔を…?」

 

扉を開け放って目当ての人物を見つけたクリスティアーノは、その人物とその娘が自分に向けて哀れそうな視線を向けているのを見て、どうしたんだろうと考えていると、不意に肩に手が乗っかる感覚がする。

 

「えっ?」

 

背後から恐ろしい殺気を感じてクリスティアーノが恐る恐る振り向くとそこには…

 

「若造……妾に扉をぶつけて置いて謝罪の一言も無しとは……少し…灸を据えてやらねばいかんかのう?」

 

背後に幻影の炎を纏ったラスボスが立っていた。

 

 

 

「それでクリス君?火急の用とはレッドドラゴンの事で良かったのかな?」

 

ひとしきり玉藻の叱責が終わった頃に、克馬はクリスティアーノに声を掛け、用事の確認をする。

 

「……ハッ!そうです!国王様からの正式な要請でドーラックス卿にレッドドラゴンの討伐を…?」

 

使命を思い出したクリスティアーノは要請を伝えていると、克馬は困った様な顔をして背後の中庭を指差す。

 

不思議に思いながら窓から中庭を覗き込むと其処には、

 

巨大なレッドドラゴンが横たわっていた。

 

「へっ?ナンデココニ?」

 

視線を戻すと、困った様な顔の勇者、これでもか!というほどのドヤ顔をした狐耳の幼女、ん?何かあったの?といった顔の狐耳の少女がこちらを見ていた。




続くかは分かりませんが物書きは続けていこうと思いますのでどこかで読んだらオッ?また書いてるな?ぐらいの気持ちで読んで見てください。

5月8日
別サイト様に投稿の為少し加筆しました。


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ドラゴンのハンバーグ

何故だろう?他の作品よりアイディアが浮かんでくる?

と言うわけで2話目です。


第2食 ドラゴンのハンバーグ

 

「やっと着いたぜ!此処がセイルレイか!」

 

東方の剣士風の青年がセイルレイの港に降り立つと此処まで送り届けてくれた船の乗組員達に礼を言い、謝礼を渡して別れを告げた。

 

「ふーむ、此処が勇者の治める土地か…確かにいろいろな種族がいる様だな………。」

 

青年は港を出て直ぐの広場へ行くと耳が長くて色素が薄いエルフの女性や額から角を生やした大柄な美女、金髪で金の尻尾を振りながら歩く少女などを見てそう呟く。

 

「まぁいい、取り敢えず冒険者ギルドに行くとするか……えぇと、確か……あそこか?」

 

港の渡航者管理事務所というところで聞いた白い煉瓦造りの建物を発見したが冒険者ギルドの看板ではない様に見えた、しかし白い煉瓦造りの建物が他に見つからない為取り敢あえず中に入る事にした。

 

中開の扉を開けるとそこには……

 

「リアちゃん、朝定食お願い。」

「こっちは焼き魚定食で。」

「あっ私も朝定食!」

 

何故か料理を注文する人々が居た。

 

何故冒険者ギルドで食事を頼んでいるのだ?やっぱり建物を間違えたか?と青年が悩んでいると、注文を受けていた狐耳の少女が「いらっしゃいませ!」と元気な挨拶をしてから席に案内してくれた。

 

「……まぁ良いか、ちょうど腹も減ってたし…どれ……んん?。」

 

少女から渡されたメニューに目を通すとそこには見たこともない様な料理の綺麗な絵が記載されており説明文まで細かく記載されていた。

 

「ん?兄さん見ない顔だね、冒険者かい?」

 

隣の席に座っている老夫婦の男性が青年に声を掛けてきた。

 

「あぁ、となりの大陸から今日船で渡ってきたんだが…大陸変わると此処まで料理が違うんだな……驚いたよ。」

 

と、返事を返すと老人は笑いながら「ココは特別なんだよ」と言って最初は朝定食がいいかもしれないね。とすすめてくれたのでそれにする事にした。

 

「嬢ちゃん!朝定食1つ!」

 

手を挙げて注文をすると、狐耳少女は俺の前まで歩いてきて、

 

「お客様初めてだと思いますが、朝定食で宜しいですか?今日はドラゴンのハンバーグなんですが?」

 

ハンバーグ?………っていうかドラゴン!?いったい金貨何枚するんだよ!!!

と、驚いていると何かに気づいたのか少女は、

 

「ハンバーグっていうのは肉を細かく砕いたものを纏めて焼いた肉団子みたいなものでして…朝からはちょっと重いかもしれませんがお兄さんは冒険者さんですよね?だったらバフ効果もあるし、ちょうど良いかもしれないですね。朝定食で良いでしょうか?」

 

と、こちらの心配とは別のハンバーグという料理の説明をしてきた。

 

俺は慌てて、

 

「いや、そうじゃなくてドラゴンの肉だろ?……その…高いんじゃないのか?ここの相場は判らないが俺の居た大陸じゃ100グラスで金貨3枚ぐらいだったし、こっちでもそれぐらいじゃないのかと思って…俺隣の大陸から来たばかりであまり持ち合わせが無いんだが…。」

 

と、言うと少女は、ぽんっ、と手を叩き申し訳無さそうに、

 

「あぁ…そうでしたね、家では日常的に食べてたからあまり相場が分からなかったんですが、他所だと高いんでしたね?ウチはちょっと仕入れが特殊なんで一人前で銀貨1枚ですよ。」

 

なんでも無いことの様にあっけらかんと言い、ふと隣のテーブルに出された皿を見ると100どころか200グラスぐらいはありそうな肉の塊が乗っているのにたった銀貨1枚で食べられるのか?!と驚いて思わず頼むと、

少女は「かしこまりました、少々お待ちください。」と、苦笑しながら言って裏へ下がっていった。

 

レッサードラゴンの肉だとしてもあの量で銀貨1枚は安すぎる……そうか!勇者がドラゴンを倒してこの店に無償で卸しているのか?でも何故?

考えても答えが出ないのが分かってはいるが考えずにはいられなかった、そうこうしているうちに俺のテーブルに人の気配がして顔を上げると先程の少女が笑顔で、

 

「こちらが本日の朝定食のドラゴンのハンバーグ定食です、冷めないうちにどうぞ!」

 

と料理をテーブルに置いてくれた。

 

そこには、鉄板の上に肉の塊が乗せられており美味しそうな匂いと熱気が食欲を刺激してくる。

 

「おおっ!こいつは凄い!…なぁ嬢ちゃん?こいつは本当に銀貨1枚で良いのか?」

 

もう一度だけ確認すると少女は、

 

「はい、それとご飯とお味噌汁はお代わりできますのでお申し付けください、どうぞごゆっくり。」

 

目の前の肉の塊に我慢ができなくなった俺は慌てて食べ始める。

先ず肉の塊にフォークをさしてみると思いの外やわらかい様でスッと刺さっていった。

 

「おわっ!すげぇ肉汁じゃねぇか!」

 

フォークをさした場所から肉汁が溢れ出てきて鉄板に広がる、切り分けた肉を恐る恐る口に運ぶと今まで食べたことのない様な不思議な食感とドラゴンの肉とは思えない臭みの全く無いスパイシーな味が口の中に広がる。

 

「美味ぇ!そして力が漲ってくる?レッサードラゴンの肉なんかじゃねぇ…これは少なくとも成竜の肉だ、さすが勇者…こんな化け物を軽々と料理屋に渡しちまうとは恐れ入ったぜ!」

 

と、感激していると、ふと隣のテーブルに座る老夫婦の会話が聞こえる。

 

「それにしても朝からハンバーグは腹にくるのう。」

 

「でもねぇ、玉藻ちゃんに勧められたら断れないもの、美味しかったし今日は持ち帰りをして孫達の所にでも行きましょうか?」

 

「そうじゃのう、最近は騎士団の仕事も忙しい様だしこちらから行ってやるとするかのう。」

 

話からするに先程の少女が玉藻というのかな?と思っていると先程の少女よりは少し歳下かな?と言う年恰好の少女が出てきたので、

 

「お嬢ちゃん、お姉ちゃんにオススメ料理美味しかったよ、と伝えておいてくれないか?」

 

と、言った瞬間に周りの空気が凍った様に誰もが固まってしまった。

 

「あれ?なんで……」

 

不思議に思っていると目の前の少女が小刻みに震えているのがわかる。

怖がらせてしまったのかと思い声をかけようとすると少女は、ばっっ!!と此方を睨んで口を開く。

 

「なんじゃお主!妾がリアより幼く見えると言っておるのか!!妾はリアの母親じゃ!………」

 

年下の少女改め少女の母親は怒気をあらわにすると、奥から出てきた料理人に、奥へと連行されて行った。

 

それと入れ替わる様に少女が店内に戻ってくると常連さんだろう男性が俺に声をかけてきた。

 

「いやぁ、久しぶり見たぜ…そこの兄さん悪い事は言わねぇから玉藻ちゃん戻って来たら謝っときな、最悪命を落とすぜ?」

 

そんな馬鹿な、しかし獣人は若くみえると言うしあれでいて結構高位の冒険者だったりするのかと思い素直に聞き入れる。

 

「そうか、分かったよ……しかし命を取られるというのは大袈裟だろう?俺だって隣の大陸じゃ少し名の知れた冒険者なんだぜ?」

 

「いやぁ兄さん、さすがに相手が悪過ぎるよ。相手は…パーティーの大魔導士だぞ?」

 

常連風のドワーフが俺にそんなことを言ってきた。

よく聞き取れなかったのでもう一度聞こうとすると、最初に給仕をしてくれた少女が、

 

「お客様申し訳ございません、私はこの店のオーナー夫婦の娘でシルフェリア・ジル・D・将紀と申します。母が失礼を致しましたが、これからもよろしくお願いします。」

 

と、丁寧な挨拶をしてくれた。

 

「あぁよろしく、俺は隣の大陸から来た炎燈火って言う冒険者だ。……D、ドーラックス?……!?ドーラックスって勇者の?」

 

少女の名前を聞いて目の前のシルフェリアが、かの英雄の娘と分かり驚愕しているとある事に気がつく…

 

「そ、そう言えばさっき君にそっくりな女の子が居たんだけど………お母さんだったのかな。」

 

自分の考えが間違っていることを願い、シルフェリアに確認すると、シルフェリアは困った様な笑顔で人差し指を口に立てて俺に一言、

 

「あっ、お母さんお店に出てたんですね?トウカさん、お母さんは最近、私より幼く見えると気にしてますので気をつけた方がいいですよ。」

 

と、注意をしてくれた。

 

「………できれば…もう少し早く教えて欲しかったよ………。」

 

喧嘩を売った相手が英雄の1人”紅蓮の大魔導士”だと確信した俺は、戻って来た玉藻さんに土下座で謝り倒す事になった。

 

その後稽古をつけるとの名目でぼろぼろの燃え滓になるまで燃やされたのは言うまでもない。

 




一応強さの基準としては、

リインフェリア>フェンリル>克馬=玉藻>>英雄>>>>一流冒険者=将軍・佐官クラス>>>一般軍人=冒険者>>>>民間人

という設定にしてあります。
能力値や人物設定はまた後日に。

それでは。


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設定いち

一応世界観の設定です

あまり関係ないかも知れない能力値も載せてあります。

数値は途中で変わる可能性が高いですがね。


異世界

リストアール大陸

 

 

ヴァイスハルト国

人間やエルフなどの人種が多い国

人魔戦争時の国王は勇者を召喚し魔国を滅ぼそうとしたが、召喚した勇者と自らの息子に倒された。

現在は、当時の王太子が国王になり様々な人種を受け入れる豊かな国になっている。

中世の様な街並み

首都はセイブラウ

 

フォレストブランド国

豊かな森に囲まれたエルフ族の多い国

人魔戦争には不干渉を貫いていたが出奔していた娘の進言を受けて終期に参戦し和平締結に尽力した

国王はハイエルフのトーラス・ナルバレッタ

首都はフォートワーナス

 

 

ギルヴィフスク国

魔国とも呼ばれる魔族が多く住む国

人魔戦争時は国王であるフェンリルが謎の闇に操られており、魔族以外の種族を滅ぼそうとしたが、ヴァイスハルト国に召喚された勇者と自分の娘に倒され意識を取り戻した。

全体的に戦国時代の日本の様な街並み

首都はバシャマール

 

 

人魔戦争

人族対魔族の戦争で30年ほど続いていたが、人族の一つヴァイスハルト国で勇者召喚が行われ、異世界の日本から将紀克馬という高校生が勇者として召喚された。

召喚された克馬は実家でふ教え込まれていた剣術とドワーフの名工が打った刀を武器に魔族の将を倒して行く。

旅の道中、仲間が増えていきそのうちの1人であった玉藻という魔族の姫と結婚することになる。

人魔戦争中期に魔族側の総大将、魔国ギルヴィフスク国王フェンリルと戦い勝利する。

その後、戦勝報告と和平交渉の為、ヴァイスハルト国に凱旋するも当時のヴァイスハルト国王から「魔族側に付き国を滅ぼすつもりだろう!」と、言われ国を追われる。

仲間の助けを借り、色んな人の誤解を解き、操られていた国王を解放して改めて和平交渉を執り行い平和になった。

 

 

セイルレイ

人魔戦争を終結させた褒美としてヴァイスハルト国とギルヴィフスク国から譲渡された緩衝地帯にできた街

領主は勇者の克馬・D・将紀

 

 

食堂”祈”

克馬に最初に料理を教えてくれた祖母の名前から取ったセイルレイにある克馬の作った食堂

地球の料理を再現して出している。

冒険者ギルドの窓口も有り、客はいつも多い

 

 

冒険者

未だ未開の場所が多いリストアール大陸で開拓したり、宝探しをしたり、モンスターを倒したり、依頼を受ける何でも屋をする者の総称

ランク制であり自分のランクより上の依頼は受ける事が不可能、下の依頼に関しては飽和状態のみ受ける事が可能

 

 

ギルド

冒険者ギルド・商工会ギルド・魔導ギルド・傭兵ギルド・仲介ギルド等様々なギルドが存在する

 

 

闇ギルド

非合法な仕事を請け負う反社会的組織の総称

 

 

ヴァイスハルト王国騎士団

国王であるケインクロードが騎士団長も兼任する人族最強の騎士団

人魔戦争を生き残った古強者が多い事から魔族に良い印象を持っていない者もいる。

 

 

神剣レギンレイブ

ドワーフの鍛治職人ボルケインが神鉄リインブレイクを鍛えて創り上げた神剣

全属性の魔法を使用可能な魔法発動体でもあるが剣術が主な攻撃手段の克馬はあまり魔法を使う機会は無かった。

因みに意識が有り喋ることも可能

現在はシルフェリアが所持している。

 

魔導士

魔法発動体を用いて魔法を使う者の総称

 

 

リインフェア教会

創生神リインフェリアを祀る教会、人族の殆どは何かしらの形でこの教会に属していると言われている

 

 

 

 

 

 

 

 

登場人物

克馬・D・将紀

 

主人公?

現代の日本で普通に高校生をやっていた青年

高校2年の時にリストアールに召喚されて勇者となる。

人魔戦争を終結させ、ヴァイスハルト国を救った英雄

現在ではセイルレイという港を擁する町の領主をしているが実務は冒険者時代の仲間が行なっている為暇になる。

人魔戦争終結後にパーティーメンバーの魔導士だった魔神と結婚しており娘も居る。

暇を持て余して凶悪モンスターを狩って居たがふとしたことから料理屋を始めた。

現在30歳で冒険者ギルドのギルド長とセイルレイ領主、料理屋"祈"のオーナー店長を兼任して居る。

 

 

シルフェリア・ジル・D・将紀

 

勇者である克馬・D・将紀と魔国の姫である玉藻・D・将紀の娘で12歳、金髪橙眼で身長は150cm

金色に輝く髪と獣耳、尻尾を持つ少女、瞳はオレンジ色で覚醒状態になると紅くなる。

克馬に習って地球の料理を覚えており、克馬が経営?する料理屋で看板娘として働いている。

両親の力を受け継いでおり訓練によって武器は一通り扱える。

性格は温厚で誰にでも優しいが、母親譲りの感で悪意のある嘘は100%見抜ける

祖父のフェンリルに溺愛されており、過去シルフェリアが誘拐された際に、フェンリルは人魔戦争の時以上の力を発揮し、誘拐した組織を文字通り壊滅させたという伝説を持っている。

二つ名は”陽光の巫女”

愛称はリア

 

Level 16

生命力 380

魔力 58000(+????)

攻撃力 250

防御力 150

魔攻撃 7800(+????)

魔防御 8000(+????)

速力 2000(+200)

運 9600(+????)

 

スキル

・フェンリルの加護

祖父でもある神狼フェンリルの加護

強大な魔力上昇効果と氷結系魔法の適性を最大にする、氷結系魔法を受けると吸収する。

更に速力も少し上昇

 

・九尾狐の加護

母でもある魔神の加護

強大な魔力上昇効果と炎系魔法の適性を最大にする、炎系魔法を受けると吸収する。

 

・世界神の加護

リストアールの神リインフェリアの加護

なぜ付いているのかは不明だが運と魔力に測定不可能な程の上昇効果が付いている。

 

・武芸百般

ひと通りの武器が使用可能

 

・神事の巫女

特殊魔法の召喚魔法が使用可能になる、召喚出来るのは氷結・炎・神聖の3種類のみ

 

参考値

*王国騎士団一般兵

Level35

生命力 700

魔力 200

攻撃力 500

防御力 580

魔攻撃 380

魔防御 200

速力 220

運 100

 

 

【挿絵表示】

 

 




登場人物が増えたらまた追加するかもしれません。

11月22日挿絵?
シルフェリア
玉藻
安夜禍
のイメージ画像を追加

3月19日
小説の内容再編によりリアの年齢を12才に変更


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シーサーペントの蒲焼き

蒲焼き美味しいですよね?

私の友人はタレだけでご飯を食べてしまう人もいますがやはり身は必要だと思います。

と言うわけで第3話です。


第3食 シーサーペントの蒲焼き

 

森の中を少女が走っている。

 

「お腹空いたなぁ………でも…この辺りに魔族OKな街なんてあったかなぁ……。」

 

紫色の長い髪をポニーテールに纏めた160cm位の身長をした少女は自分のレオタードの様な服の上からお腹をさすりながら呟いた。

 

「ふぅ……フェンリル様も無茶振りしてくれるよね〜〜、何せ「どんな魔症も治せる薬が隣の大陸には有るそうだ、探してこい!」……だもんなぁ…。」

 

空腹から、こんな事になったそもそもの原因である自分の主人の言葉を思い出し怒りを覚えるが、グゥ〜と鳴り続けるお腹の音に怒りが霧散する。

 

「うぅ、本当にヤバい…このまま人族に襲われたら”加減できなくて殺しちゃうかもしれないしなぁ……”。」

 

そう口にする少女の下半身を見ると”8本の長くて黒い蜘蛛の様な”足が高速で動いていた。

 

「人化の魔法は残りの魔力じゃ出来ないし…かと言って盗むのは私の尊厳が許さないし…………ん?明かりが…やった!大きな街なら大使館とか有るだろうし何とかなるかも!!」

 

大きな街の明かりが見えた少女は最後の力を振り絞って更に速度を上げて走って行った。

 

街に近づくと検門があり、審査を受けるが偽名を用紙に記入して銀貨を払うとすんなり通される。

不思議に思いながらも空腹に耐え切れず気にしない事にした。

少女が街に入るとその街が異様な空間である事に気がついた。

何故なら人族と魔族が街中で”笑い合っている”のだ。

 

途中の色街の様な街区で「キレイなねーちゃんだなぁ!金なら有るからいいことしねぇか!!」などと声を掛けてくる人族も居てアラクネである私を怖がっている様子すらない。

私が軽く「商売女じゃ無いんだけど?」と、言うとあっさり引いて、美味しい料理を出す店を聞くと”祈”という食堂を教えてくれて迷惑を掛けたからと迷惑料までくれた。

 

異様な光景に違和感しか感じなかったが、街の中心部に近づくにつれて良い匂いが漂ってくる。

 

匂いにつられてふらふらと歩いて行くと大きな白い煉瓦造りの建物が見えてきた。

 

「何これ?セイブラウの魔国大使館より立派じゃない?……グゥ〜〜〜〜〜……。まぁ!とにかく入ろう!」

 

驚いて食堂らしき建物を見上げていた少女は自らの腹から響く悲鳴にハッとなり周囲の生温かい目に羞恥を感じて足早に店内に入った。

 

 

 

「いらっしゃいま「姫様!?」せ?」

 

私は来店してきた女性に挨拶をすると、挨拶の途中でその女性客は驚いた様な声と大好きな母がお化けを見たときの様な顔をして驚いていた。

 

「いや、姫様のわけが…いや、30年も経てば?…いやいや、ないない……ごめんなさいねお嬢さん、ちょっと知り合いに似ていたものでね。」

 

女性は不思議そうな顔で思案していたが勘違いだった様で謝ってきた、私が何か粗相をしたわけではないと分かり安心して女性客を席に案内してメニューを渡す。

 

「此方がメニューになります。ご注文が決まりましたらお呼びください。」

 

と、声を掛けて立ち去ろうとすると女性客が声を掛けてくる。

 

「ねぇお嬢さん?私この街初めてで私を見ても誰も怖がらないんだけど、この街って魔族…うぅん、アラクネ族を見ても普通に接してくれるのね?」

 

と、言ってきたので私は、

 

「うーん……私はこの街以外あんまりわからないんですよね…でもこの街は人族とか魔族とかあんまり気にしてないと思いますよ。」

 

「………そうなんだ……。さっきのお詫びに何か1つ頼みごとタダで聞いてあげるわ、私は安夜禍(あやか)っていう名前で、魔国じゃちょっと名の知れた冒険者でも有るんだ、お嬢さんはなんて名前なの?」

 

「安夜禍さんですか…何処かで聞いた事があるような……あっ!私はシルフェリアと言います、この食堂の娘で一応冒険者やってます。」

 

安夜禍と名乗った女性は嬉しそうにそう言ってきたが、頼みごとが思い浮かばなかった私は考えておきますとだけ伝えた。

 

「それにしてもシルフェリアちゃん?この街の中まで漂う良い匂いは何なの?」

 

「リアで良いですよ安夜禍さん、この匂いは昨日お父さんが倒したシーサーペントの蒲焼きですね。」

 

と、返すと安夜禍さんは来店したときの様な顔で立ち上がり、

 

「シーサーペント!?小型でも軍の中隊が動くレベルのモンスターじゃない!」

 

と、驚いていた。

魔法で遠くからなら私でも倒せるけどなぁ?と思ったがお母さんから「リアは父上と妾の魔力を受け継いでおるから特別じゃ」と、言われていたことを思い出したので何とかお茶を濁して注文を受ける。

 

 

「お父さん!シーサーペントの蒲焼きひとつ注文入ったよ!」

 

娘の元気な声にはいよ!と返事を返して厨房に声が響くと身体が勝手に動き出す。

 

もう捌いて串打ちまで終わったシーサーペントの身を炭火で焼きながらタレに漬ける、何度か繰り返すうちに余分な脂が落ちて身はタレを吸って良い色に染まっていく。

 

昨日、ヴァイスハルト国王でもある親友のケインクロードから依頼を受けて狩ったシーサーペントがあまりにも大きかった為、今日のサービス料理として出していたが残りあと一つがなかなか注文が入らなかった。

リアにシーサーペント完売だから表のボード消して来てくれ、と頼んで仕上げをする。

 

「…丼に載せてっと…良し出来た!リア3番テーブルの蒲焼きあがったよ!」

 

と言って娘に渡す。

 

 

シーサーペントを料理しようとは…ここの店主はなかなかに豪胆の持ち主だな…まぁ、私はお腹が満たされればいいが…

 

空腹から鳴り続けるお腹を思考で誤魔化していると私の座るテーブルに料理が運ばれて来た。

 

「どうぞ!シーサーペントの蒲焼き丼です!」

 

リアという姫様に似た少女が、丸い器を開けるとそこには、茶色い多分シーサーペントの身を焼いたと思われる物の下に、確か人族の主食の一つで米というものが敷き詰められた食べ物が現れた。

どうぞごゆっくりと言っているリアちゃんを尻目に、私は箸を手に取り茶色い蒲焼き?なる物を口に入れる。

 

「?!何これ!すごく美味しい!!コレがシーサーペントなの!!ふっくらしててこの甘辛のタレがなんとも言えない味で私すごい好き!」

 

一心不乱に食べるといつの間にか丸い器は空っぽになってしまった。

もうひとつ食べたかったなぁ…と思っていると店主らしき男性が私に近づいてきて、

 

「お客さん、良い食べっぷりだね良かったらおかわりするかい?」

 

と、聞いてきた。

 

最後の、という会話が聞こえていた私は、

 

「でも、さっきので最後って言ってたわよね?」

 

と、残念そうに聞くと店主は、賄い用に少し取っておいたのがあるからそれで良ければお出ししますよ?と、言ってきたので二つ返事でお願いした。

 

「ふぅ〜〜〜満足だわ……ごちそうさま、美味しかったわ……………これでやっとフェンリル国王様に薬をお渡しに向かえるわ。」

 

と、一息ついていると聞いていたリアちゃんが顔色を青くさせながら、

 

「フェンリル?フェンリルお祖父ちゃん何処か悪いんですか?この間行った時は元気そうだったのに…無理してたのかな…」

 

と、小声で言っていた。

 

「???お祖父ちゃん?それってどうい…」

 

ーバンッー

 

急に入口の扉が開け放たれたと思って顔を向けると、

 

「リア!!お前さま!!其奴から離れるのじゃ!!其奴は元魔軍十六将の1人で父上がおかしくなり始めた頃に姿を消した奴じゃぞ!!」

 

紅いオーラを漂わせくないを両手で構える”見慣れた”紅い着物を着た女性が立っていた。

 

「えっ?姫さま?元って?姿を消したって?何で戦闘態勢なんですか?」

 

只々混乱する私を見て何かを感じ取ったのか食堂の店主が姫様に近づく、危ない!と、思った私は咄嗟に飛び出そうとするが、リアちゃんが大丈夫ですよ?と、言って退いてくれない。

 

「ん?…………そうか、お前さまがそう言うなら………」

 

姫様に近づいた店主は姫様の耳元で何かを言う

と、オーラは霧散し矛を収めた。

 

この後、私は任務でまたこの街に来ることになるとはその時は思っていなかった。

 

 

 

その後、ギルヴィフスク城謁見の間

 

「うむ、まずは長旅ご苦労であった。」

「はっ!ありがとうございます。………ところで主人様?私は任務で別大陸に赴いていた、と記憶しているのですが、何故か姫様に刃を向けられました、どう言うことでしょうか?」

 

誤解を解いてフェンリル様直筆の命令書を見せて納得すると姫様が転移門の魔法で王城迄送ってくれた。

そこで急遽フェンリル様、姫様、私、他の魔軍十六将(当時とは顔ぶれが大分変わっている)で謁見となり、私の立場がどうなっているのか尋ねてみた。

 

「むぅ…………………………。」

 

フェンリル様は眼を閉じて眉間にしわを寄せて何かを考え込む様な仕草をして固まってしまった。

異様な沈黙の中、痺れを切らしたのか姫様がフェンリル様の隣から、

 

「如何したのじゃ父上?安夜禍は父上直筆の命令書を持っておったし教会の魔女の精神感応と妾の感、リアの感にも悪意は感じられんかったぞ?」

 

と、聞くとフェンリル様は意を決した様に眼を開き一言こう言った。

 

「安夜禍が居て、儂が暗殺命令出したらほぼ必ず成功してしまうであろう?よって当面戻ってこれない様な任務を適当にでっち上げた、そしてその事を今の今まで忘れておった。…………すまん…な?」

 

その言葉を聞いた古参の十六将は納得した様にうなづき、新参の十六将は疑問顔に成ったが殺気は無くなった。

そしてフェンリル様は横に立って居た玉藻姫様に思いっきり頭を叩かれていた。

 

 

更に数日後

 

魔軍十六将の席が埋まっており、居場所が無くなった私は姫様の提案で、リアお嬢様の護衛兼将紀家メイドとして働く事になった。

依頼でよく家を空けてしまう姫様と旦那様の代わりに店を営業できる様に料理も一通り覚えた。姫様に「何でそんなに上手いのじゃ!理不尽じゃ!」とか喚かれたが…。

 

 

「リアお嬢様、おはようございます。姫様はまだお布団の中ですか?」

 

旦那様の代わりに朝食の準備をしているとリアお嬢様が住居側の扉から顔を出した。

 

「安夜禍さんおはようございます。うん、お母さんはまだお布団の中で気持ち良さそうに包まってます。」

 

お嬢様が苦笑しながらそう言うと、ちょうど出来上がった鍋の火を止めてエプロンを外しながら姫様を起こしに向かう。

 

「安夜禍さん?お母さん起こしに行くんですか?今日は穏便にお願いしますね?」

 

と、お嬢様に不安そうな顔でお願いされるが、

 

「大丈夫ですよリアお嬢様……今日は眷属を20匹ほどにしておきますから。」

 

と、言って私はスキルの透明化と高速移動、更には壁走り、無音移動術を併用し、姫様が寝ている部屋の天井に到達すると毒のない眷属を布団の中に潜り込ませるのだった。

 

「ふふっ、姫様?ご自宅とはいえ油断大敵ですよ?」

 

天井に蜘蛛の足で逆さまに立ってる安夜禍は嬉しそうに微笑んだ。




こっち書いてるとご飯を食べたくなるのでもう一つの趣味が手につかないんですよね。

まぁ、コッチも趣味だからいいんですがね?


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おにぎり

いつの間にか第4話目……

ご飯はほとんど出てこないが料理屋の話…多分




第4食 おにぎり

 

ヴァイスハルト国首都セイブラウ

王城・国王私室

 

「……と言うわけで、昨日依頼したシーサーペントの住処だった海中の遺跡調査に行ってもらいたい。」

 

部屋の中で4人の男女が椅子に座りその中の金髪の青年と言っても差し支えがない程の男性が徐に口にすると、狐耳の幼女?が反論する。

 

「何が…と言うわけで…じゃ!何も説明しとらんではないか!!」

 

「まぁまぁ、タマ、ケインはこういう奴だって分かってるじゃないか…で?調査は何で必要なんだ?」

 

憤慨している玉藻を宥めながら黒髪の男性(克馬)が国王の金髪青年(ケインクロード・ファルクス・ヴァイスハルト2世)に理由の説明を求めると、ケインクロードの横に座る王妃で長い銀髪の女性が手櫛で髪を梳かしながら、

 

「さすがは克馬!どっかのロリババァとは大違いだな、どっかの満足にメシも作れねぇ惰狐とはな!老化が進んで遂に思考まで放棄したか?」

 

と、その清楚な感じに反して口汚く玉藻を罵り見下していた。

 

「貴様こそ妾と50ぐらいしか変わらぬ若作りの牛乳女ではないか!!…………ふんっ、哀れよのう…そんな無駄な物のせいで頭が悪くなってしまったのじゃな…だから魔法が使えんのではないか?だいたい今は普通に飯ぐらい作れるわ!!」

 

「テメェ…魔法使えねぇのは体質だって知ってんだろうが!!俺の魔弾でその薄〜〜い胸をえぐれ胸に改装してやろうかぁ!!」

 

売り言葉に買い言葉とばかりに玉藻と銀髪の王妃(ライン・ナルバレッタ・ヴァイスハルト)はお互いに罵り合っていた。

 

「ライナも相変わらず元気そうで安心したよ…で?ケインは何であの遺跡が気になるんだ?」

 

「いや何、昨日の夜、文官の娘が興味深い本を持ってきてね?これなんだが…」

 

自分達の妻の喧嘩を放って置いて会話を進める男達

ケインは徐に克馬に1冊の本を手渡す。

読んでみろ、と言われて疑問を浮かべながらもページをめくる。

 

「!?まさか!」

 

3ページほどめくったところで克馬が驚き声をあげる。

それに気がついた玉藻がライナとの口喧嘩を辞めて隣から本を覗き込む

 

「…………?何々、ふむ…アトランディア語か?随分と古い文献の様じゃが……」

 

驚きで固まったままの克馬の横で玉藻が読み進めていくと驚くべき記実が眼に入った。

 

ーい…来たら…コレを起動し、故郷に…る…我等の地球にー

 

「……地球?………?!お前さま!!確か地球というのは?」

 

玉藻が下から克馬の顔を覗き込むと、克馬は驚きながらも一言

 

「まさかこんな所で地球への帰り方が分かるとはな…10年探してたんだけどな。」

 

 

 

「まぁ確定ではないが、克馬が故郷に帰る目処がたったという事だが……この文献を調べて調査団を送った結果…あの遺跡の中心部が異世界への転移門だという事が解った。しかも一度だけではなく何度も出入りして検証した結果、安定して使える事が判明した。」

 

「調査団を送って転移出来たなら先に進めばいいだけじゃないのか?」

 

ケインの言葉に克馬が反応して質問すると顎に手を当てた玉藻が、

 

「ふむ、転移門の先で何かが邪魔をしておって、妾と克馬にはその排除を依頼する…と言ったところかのう?」

 

と、呟くように言うと

 

「おーー!さすが俺の夫、分かりやすいように態々噛み砕いて話してやるとは…能天気勇者とロリババァにも優しいじゃねぇか。なんか転移した先にいるゴーレムが恐ろしく強いらしくて調査団の雑魚どもじゃ歯がたたねぇらしい。……まぁ、惰狐には無理かもしれねぇけどなぁ〜〜。」

 

ライナの言葉を皮切りにまた女同士の口喧嘩が始まったが男2人は気にせず話を続ける。

 

「話を戻すぞ?調査団の中に鑑定士が居て鑑定した結果、レベル不明のマシンゴーレムだそうなんだが…俺やお前なら楽に勝てるだろう?調査ついでに帰郷して来ても構わんぞ?」

 

近くの温泉に行ってくれば?的な軽いノリで克馬の叶わなかった願いを許可する親友に笑顔を浮かべて、

 

「……じゃあちょっと行ってくるかな?……なぁ、リアも連れてっていいか?ちょっと顔を見せたい人達が居るんだが?」

 

と、言うとケインは何でもないかの様に、

 

「好きにしろ……何せ”勇者が自ら”調査してくれるんだからな、取り敢えず期間は1週間程で一度帰って来て報告を頼む。」

 

と、笑いながら言った。

 

 

 

 

「リア!!!出掛けるぞ!!準備しなさい!」

 

セイルレイの自宅兼店舗に帰った克馬はギルド兼料理店の扉を勢い良く開けるなり大声で叫んだ。

 

「?!ひゃう!……お父さんどうしたの?そんなに慌てて?」

 

店の常連客のシスターから注文を取っていたリアは克馬の見た事ないぐらいはしゃいだ様子を見て驚きながら理由を聞くと克馬の後ろから見慣れた紅い着物を着た幼…もとい、女性が入ってきた。

 

「リア、今の克馬に何を言っても無駄じゃ…兎に角支度をせい、お出掛けじゃ。安夜禍、妾の準備を手伝ってくれ。」

 

お母さんが入ってくるなり疲れた様な顔をして、準備を促してきたので取り敢えず準備をする為に住居の自室に戻る。

 

「まぁ!それでは……えれ…あちら側………孫……ですもの……御喜びになりますわ。」

 

部屋の外でお母さんと安夜禍さんが何やら話しているがよく聞こえない。

すると部屋の扉が外からノックされたので慌てて扉から離れるとーガチャーと、扉が開く。

 

「何じゃリア、まだ準備出来とらんかったのか?仕方ない妾が手伝ってやろう。」

 

と、お母さんと安夜禍さんが揃って入ってきた。

 

「あれ?お母さんその服………。」

 

入ってきた母の服がいつもの紅い着物ではない事に疑問を浮かべると母は、

 

「うむ、何やら”あちら”では妾の様な髪色の者が着物を着ていると目立つ様でな…やはり似合わんか?」

 

恥ずかしそうに自分の服を眺めながら口にしたので私は慌てて、

 

「いつもの着物も似合ってるけどそのヴァイスハルト風もよく似合ってるよ!」

 

と、言うとお母さんは顔を赤くしながら

 

「そ、そうか?妾は何を着ても似合うからのう。」

 

その横で安夜禍は思った。

確かに似合っているが……それは巷ではゴスロリと呼ばれるタイプの服で、その中でもそれは完全に子供服です…本当にありがとうございます!。と、思いつつ記録用魔結晶を起動し続けていた。

 

 

「じゃあみんな!1週間程留守にするから後をお願いするよ!」

 

「すまんのう安夜禍、ギルドと料理店両方とも任せてしまってのう?」

 

「行ってきまーす!」

 

1時間後ギルド兼店の入り口で多くの人に見送られる形で克馬達3人が旅立っていく姿を見送った人達は

 

「今週はリアちゃんの笑顔がみれねぇのかぁ〜…仕事休もうかなぁ…」

「良かったねぇ、克馬さん本当に嬉しそうで良かったじゃないか。」

「あれ?ギルドと料理店はどうなるんだ?まさか休業とはならないよな?」

 

ふと、克馬と玉藻が不在のギルドと料理店はどうなるのか不安になりあらためて祈の扉を開けると

 

「「「「大丈夫でございます、料理店の方はこの安夜禍が受け持たせていただきます。」」」」

 

と、4人に分身した安夜禍が丁寧なお辞儀をしていた。

 

まさかギルドの方も安夜禍かと思い目線を向けると、

 

「ワタシガ代理ノギルド長ノエルフ仮面デス。」

と、これまた実質的な領主業を行なっている筈の町長にそっくりな仮面のエルフ?が爆誕していた。

 

「おい、アンタ町長だよな?まさかアンタがギルド長代理…」

 

スキンヘッドの冒険者がその旨を伝えるとエルフ仮面?は

 

「イイエ……ヒトチガイデス…………。きっと。」

 

と、遠い目をしながら答えた。

 

その頃玉藻の転移魔法で海中遺跡の最深部付近に転移をした

 

直ぐに調査団に合流し、転移門を抜けるとマシンゴーレムが立ちはだかった。

 

「リアは下がっとれ!妾と克馬で排除する!!」

 

と、叫ぶとマシンゴーレムが完全に此方に振り向き終わり戦闘態勢に入った。

 

「ーーーピー、ガーー警告、ココカラ先ハ立入禁止デス、速カニオ戻リ下サ……!!!最上位権限者ヲ確認、警戒モードヲ解除シマス、最上位権限者様、新ナゴ命令ヲドウゾ」

 

と、思ったら急に大人しくなった。

 

「は?何で?最上位権限者って誰?」

 

と、克馬が混乱しているとマシンゴーレムはゆっくりと動き出し克馬と玉藻の背後に居たリアの前にひざまづいた。

 

「ーー最上位権限者様、新ナゴ命令ヲー」

 

目の前でひざまづくマシンゴーレムにリアはキョトンとしながらも、

 

「お名前はなんて言うの?」

 

と、質問するとマシンゴーレムは立ち上がり蒸気をあげながら、

 

「個体名・識別コードナシ、作製者カラハ巨人ノ鎧(タイタスアーマー)ト、呼バレテオリマシター」

 

「タイタス?でもそれ名前じゃないんだよね?じゃあ……バックスォーム!リアの大好きな絵本の騎士様の仲間の名前だよ!」

 

「個体名バックスォーム承認、コレヨリワタシハバックスォーム、トナリマシタ以後ヨロシクオ願イシマスー」

 

両親2人を置き去りにしたままリアとマシンゴーレム(バックスォーム)は楽しそうに会話をして何やら魔導契約までしてしまった様だ、何やら強い繋がりを感じた。

 

「でもその話し方だとお話ししづらいよね?私はもっとバックスォームとお話ししたいな!」

 

と、無邪気に言うがそれは無理だろうと克馬と玉藻が思っていると、

 

「ーー了解シマシターーーーーーモード変更ガーディアンより…サーヴァントへー変更完了しました……マスターこれでよろしい…でしょうか?」

 

と、聴きやすい言葉遣いに変化した。

 

「「馬鹿な!?」」

 

と、2人が叫ぶとリアは更に、

 

「そんなに大きいと一緒にお出掛けできないからもっと小さくなれないかな?」

 

とお願いすると、

 

「畏まりました………モード変更…コアモードに移行します…危ないので少し離れて下さい……」

 

リアが離れたのを確認するとバックスォームは両手を広げて空を仰ぎ見る様な仕草をしたかと思うと巨大な装甲が浮き上がり収納魔法で装甲が少しづつ仕舞われていき、最後は光る手のひらサイズの球が残り、ふよふよと浮かび上がりリアの肩に止まった。

 

「ふぅ…マスター…?どうしたの…私…何処か変…?」

 

光の球体は少しづつ光が薄くなり、完全に晴れるとそこには、色素の薄い髪と肌をした10cm程の人形の様なものが首を傾げながらリアの肩に腰掛けて居た。

 

「可愛い〜〜!バックスォームなんだよね?どうやったの〜!」

 

リアは肩に座った人型を掴むと嬉しそうに抱き上げながらクルクル回る。

 

「…ああ…ダメ…マス、グゥ〜〜ギュル〜〜〜〜グューー!!………ター、申し訳…ない…補給を……お願い…。10000と…2000年前から…休眠状態に…あった…補給…を…」

 

補給?どんな物が必要なんだろう?、と克馬と玉藻が考えているとリアはバックの中から克馬が出かける前に作っていたおにぎりを取り出して、

 

「コレでいい?美味しいよ!」

 

と、手の中のバックスォームに食べさせようとする。

 

いや、それは流石に無理だろ?と、考えた克馬はエネルギーパックのような物を探すが、

 

「…ありがとう…マスター……パクっ、はむ、はむ、……………美味しい…。」

 

と、リアの手の中で自分と同じくらいの大きさのおにぎりを食べ始めた。

 

「…………………本当に何なんだこの子は?」

 

克馬はついさっきまで巨大なマシンゴーレムだった存在に興味が湧いてリアと一緒に観察していた、玉藻が周囲に危険が無いか調査して、安全が確認されたので転移門の向こうの調査団を連れてきた。

 

「かわいいです!」

「ホント、どうやって動いてるのかしら?」

「先輩私も!私も!」

 

「……うぅ、マスター…助けて…」

 

調査団がこちら側の転移門に入って来ると、リアの手の中でおにぎりをパクつくバックスォームを見て、女性陣がリアとバックスォームを取り囲み揉みくちゃにしていた。

 

「ごめんねバックスォーム、お姉さん達には逆らえないから我慢してね。」

 

女性陣の質問されたり突かれたりで補給が出来ずリアに助けを求めると、我慢してと言われ20分程経った頃ようやく解放された。

 

「おーい!みんな取り敢えず飯にしようか!」

 

克馬の声で人が集まると、差し入れとして持ってきた大きな弁当箱を玉藻が収納魔法から次々と取り出していた。

 

「わーー!美味しそ〜〜!!」

「おう、”祈”の飯は久し振りだなぁ…故郷のお袋の味を思い出すんだよな……。」

「おにぎり!克馬様っ!!サモアのフレークはどれですか?」

 

と、目の前に広げられた色とりどりの御菜と大量のおにぎりが詰め込まれた弁当箱を見て騒ぎ出す。

 

その喧騒の片隅で、リアとバックスォームが仲良くおにぎりを食べている光景を見て克馬が近づくと、

 

「マスターの…お父様…?私に…何か…?」

 

「いや、君がここの管理者なのか気になってね?何かここの事を教えてもらおうかと思ったんだが…」

 

バックスォームが克馬を見上げて声を掛けると、克馬はバックスォームに質問した。

 

「以前の管理者…という点では同意…現在は…全てマスターの物…。…………………!そう言えば…あなた達の中…転移門の魔法…使用者…居る…?」

 

淡々と語るバックスォームだったが何かを思い出したかのように転移門の魔法が使える者が居ないか聞いてきた。

 

「タマなら使用出来るが…分かった取り敢えず呼んでくるから待っててくれ。」

 

離れた所で給仕をしている玉藻を呼ぶため立ち上がると歩いて行った。

 

 

「何じゃお前さま、まだ皆に配り終わってないのじゃが…おおっ、リアとスーではないかちゃんと食べておるか?」

 

三角巾と割烹着を着た玉藻が克馬に手を引かれて来るとリアとバックスォームの頭を撫でて微笑む。

 

「…マスターのお母様…くすぐったい……………出来れば…先程の…小さい赤い粒の入ったおにぎりを…もう一つだけ……。」

 

恥ずかしそうに俯きながら美味しかったおにぎりをバックスォームが所望すると玉藻は嬉しそうに、

 

「赤い粒?……おぉ!サモアの卵じゃな、……匂いは…あちらじゃな、待っておれ?直ぐに持ってきてやるからのう。」

 

と言って走って行った。

戻って来た玉藻からサモアの卵が入ったおにぎりを受け取ると、ぱぁ〜〜、と笑顔になり夢中で食べはじめる。

 

食べ終わった頃に玉藻が、そう言えば何故呼ばれたんじゃ?と、聞くと、そもそも転移門の魔法を使える者を呼んでくれと言われた事を克馬は思い出し、食べ終わって幸せそうな顔をしてリアの肩で寛いでいるバックスォームに声を掛けた。

 

「はっ!…そう…転移門…お母様…使える?…。」

 

「おお、使えるぞ?何じゃ何処か行きたい所でもあるのかのう?スーもこのような所で永きに渡り待ち人をしておったのなら行きたい所もあるじゃろうしのう。どこでも言うがいい!」

 

自分も長年封印されていた玉藻はどこか思うところがあるのか上機嫌で行きたい場所を聞くと、

 

「違う…私の居場所…マスターの隣…転移先は地上…多分…日本?…。」

 

幸せそうな顔から一転させ真面目な顔で玉藻の質問に答えるバックスォーム、頬っぺたに大きな米粒を付けていなければカッコがついたのだが……いろいろ台無しだった。

 

「日本?!って事は今此処は地球なのか!?」

 

日本と言う言葉に克馬が興奮してバックスォームに詰め寄ると、

 

「肯定…現在地は地球…地底に該当すると推察…理由として…衛星画像からの客観的な判断…。」

 

淡々とバックスォームは説明をする。

それを聞いた克馬はどうすれば地上に出られるのかを聞くと、

 

「転移門の魔法を使用……座標を伝えます…此方に…。」

 

バックスォームに促されて玉藻が近づくと玉藻の頭の中に次々と見たことのない景色が浮かび上がってくる。

 

「おおっ!凄いのう、今ので地球?と言う場所なら何処でも行けるようになったぞ………克馬?」

 

 

「……バックスォーム…教えてくれ…今は西暦2000年から何年経っているんだ?」

 

固まったままの克馬を心配した玉藻が声を掛けると、克馬はバックスォームに今の年代を訪ねる。

 

「新聞等を確認…マスターのお父様…現在2012年程と推測…。」

 

その答えを聞いた克馬は涙を流し、

 

「帰れる………日本に…俺の故郷に……。」

 

と、立ち尽くしていた。

 

 

「お前さま、落ち着いたかの?調査団の者達には報告の為戻ってもらったでな、では行くとするか……克馬の故郷へのう。」

 

それから2時間ほど経った頃、調査団を返し終えた玉藻は、転移門の魔法を唱えると、落ち着きを取り戻した克馬と期待感からそわそわしているリアとスーと共に青白い転移門の中へと入って行った。




参考までに
身長は
シルフェリア140cm

玉藻125cm

バックスォーム
コアモード10cm
ヒューマンサイズ100cm
マシンゴーレム12m
ちなみにイメージは、某魔剣ゲームの超電磁砲の妹です。

くらいに設定してます。


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親子丼

皆さんお久しぶりです。

データ移送中に停電が起きて書き溜めた物が消えてしまいました
(原因は近所の祭り)

思い出しながら書いていたらだいぶ時間がかかりましたが、

やっと1話完成したので投稿します。

楽しみにしてくださっている方が居たらどうぞご覧ください。


…ざわざわ…ざわ……

 

神奈川県東部のとある山奥にある村

 

村人の殆ど全員が武道の有段者であり、武道で名を馳せたものが多い事から武将村と呼ばれる村。

 

「…ホントに……が戻ってくるのかねぇ?」

 

「んだども、将紀んトコの……は3年前から連絡つかねぇって言ってねがったか?」

 

「他でもねぇ、巫女になった棗ちゃんの受けた御神託じゃろ…違いねぇんじゃろかの?……おぉ、噂をすれば……。」

 

村でも最年長の3人の老人が、神託で示された村はずれに有る物置小屋の前で雑談を交わしていると、村の端にあるバス停の方から全力で走って来る少女が見える。

 

木の生い茂る山道をまるで運動場のトラックを走るかの如く疾走してる少女が見える。

 

「皆様お疲れ様です!!将紀棗!参上です!」

 

3人の雑談する物置小屋に辿り着いた棗は長い黒髪から汗が流れて制服の胸元が少し透けて見えているが、気付かずに戦隊モノの様なポーズを決める

 

「?!ジジイども見るんじゃないよ!!」

 

鼻の下を伸ばした2人の爺さんに目潰しをくらわせた老婆は自身の上着を取り敢えず棗に着せた。

 

「??どうしたの佐伯の婆様?私寒くないですよ?」

 

何故か肩に掛けられた上着に疑問符を浮かべる棗に佐伯の婆様は溜息を吐きながら、

 

「………良いから着替えといで、鞄に体操着くらい入ってるんだろう?」

 

「うん、入ってますけど?…まぁいいや着替えてきますね?」

 

「行っといで」と、送り出すと目潰しを受けた2人が復活して抗議をしてくる。

 

「ちっ!クソババア!!せっかく棗ちゃんのサービスショットを!!」

 

「全くじゃ、老い先短い老人の細やかな楽しみを奪うとは何事か!!」

 

抗議を受けた老婆は冷たい目で一言「潰すよ…」と言うと顔を青ざめさせながらすごすごと引き下がり、老婆の背後の小屋から体操着に着替えた棗が出てくる。

 

「どうしたんですか?何かありました?。」

 

「いや…何でもないんじゃ、気にせんでくれ。」

 

「うむ、…………そうじゃ!そう言えばそろそろ時間じゃなかったかのう?」

 

棗に心配された老人達は、ばつが悪そうに気にするなと言い、急に話題を変えた。

 

「そうですね……そろそろ時間何ですけど誰も来る気配が無……!?」

 

老人の言葉に周りをキョロキョロと見回しながら気配を探るが、動物の気配のみで人の気配は目の前の3人のもの以外は全くと言っていいほどなかったが、目の前のひらけた空間に光が集まり2メートル程の薄い光の板の様なものが現れた。

 

棗は突然現れた為に警戒しながら竹刀袋に入れた神刀”神楽舞”を構える。

老人達は驚いているが何処か懐かしいものを見る様な眼差しで見ており警戒はしていなかった。

 

「何です?!こんなに近付くまで気がつかなかった?くっ、妖の類ですか!」

 

警戒する棗をよそに老婆は「ほーー久しぶりに見たねぇ……60年ぶりくらいかの?」などと感心しながら眺めている。

すると光の板が歪んで中から何かが出て来たので、棗はいつでも居合いが放てる様に気を張っていると…

 

 

 

「おおっ!!此処は婆ちゃんの家の裏山じゃないか!と言うことは此処は本当に地球か?」

 

克馬が小学生の頃に作った案山子を発見して感動していると玉藻が服の端を掴み克馬に警戒を促す。

 

「お前さま…如何やら敵意を感じるでの、感激しておるのは分かるが、もう少し警戒してくれんかのう?」

 

転移門の魔法が消えていくと反対側で刀を構える少女と老人達の4人が見え、玉藻が鉄扇を構えながらリアを背後に庇うように立つ

 

克馬の方は老人達3人に見覚えがあったので警戒を完全に解いて近づくと、刀を構えた少女がこちらを威嚇してきた。

 

 

 

中から出てきたのは何処か見慣れた感じがする男性で、その背後から金髪の少女が”2人”出てきた。

 

男性の方は完全に人の気配なのだが、少女達の方は妖の気配を感じた為に警戒を強め目の前の3人の一挙手一投足に注視していると、ふと光の板が消えていく。

 

完全に消えると、先頭の扇子を構えた少女が背後の少し背の高い少女を庇うように立ち、最後尾に男性が無警戒で立っていたがこちらを確認すると近付いてくる。

 

「お待ちください、あなた方は何者ですか!」

 

妖の気配がする少女達の先頭に居る方には如何やっても叶わない事を自覚しながら、いつでも刀を抜ける様にして居ると男性が止まって話しかけてきた。

 

「ん〜?……お前…棗か?大きくなったな〜俺だよ兄ちゃんだよ。」

 

気さくに話しかけてきた男性はどう見ても自分の兄より年上であるが兄の面影もある為どうしたらいいか背後の老人達に確認しようと後ろを向くと

 

「おー、克馬かぁ〜?大きゅうなったのう〜。」

 

「ふむ、稲荷様の面影があると言うことは稲荷様の眷属かのう?まぁ妖の類ではなさそうじゃな、敵意も……これ棗!刀を引かんか。」

 

老人達は目の前の人を兄だと認めて警戒を解くように怒られる。

 

 

「理不尽です…棗は皆様を護ろうとしただけなのに…………だいたい!兄様も兄様です!何でそんなに大人になっておられるのですか!」

 

頬を膨らませてぷりぷりと怒りながら急に成長した兄に対して文句を言う棗に

 

「まぁ、12年も経てば歳も取るだろうよ…と言うか、何でお前はあんまり変わらないんだ?お前、もう27だろ?何で山向こうの学校の体操着を着てるんだ?………いい歳してコスプレか?」

 

自身の感覚ではあちらの世界で12年すごして、子供も10才になってる事を考えて、当時男の子向けの戦隊ヒーローモノにはまっていた妹が変な趣味に目覚めたのか?と思って聞くと、棗は無言でプルプルと震えて握り拳を作って兄の目の前のまで歩いて行き、

 

「………ん?どうし!…痛っいなぁ!何で殴るんだよ!」

 

「あっ……当たり前です!棗はまだ16才ですよ!!通っている高校の体操着を着て居て何か問題でもありますか!!」

 

幼い頃から憧れていたが朴念仁の兄の言葉に怒りの鉄槌を下した。

 

そんなやりとりをして、棗は服の裾を掴まれる感覚がしてその相手を確認する為にふりむくと、

 

「あ…あの…お父さんの兄妹ですか?」

 

兄と一緒に現れた金髪少女姉(棗判断)が質問してきた。

 

「えっ?お父さん?……そうだよ、棗は将紀克馬が妹将紀棗だよ!よろしく!……えーと、お名前は何て言うのかな?」

 

「ひ、ひゃい……お父さんの娘でシルフェリア・ジル・D・将紀と申します……よろしくお願いします棗姉さま。」

 

リアの挨拶を聞いた棗はあまりの可愛さに驚愕して無言で脇に手を入れると自身の顔の上まで抱き上げて満面の笑みで「可愛い〜!!」と、言いながらくるくると回り出してしまった。

 

「で?此方の方はどなたかね?何やら儂等じゃ叶わなそうだしのう…」

 

「まぁ、天性の巫女があれ程気に入っておるし大丈夫じゃろう。」

 

「そうじゃな、取り敢えず無事に克馬が帰ってきたんじゃ……克馬、取り敢えず祈のとこ行って、ただいまと言っておやり、祈は夕餉を作って待ってるはずだよ。」

 

老人達に囲まれて口々にまくしたてられたと思ったら、自分の祖母が待っているはずだから家に帰れと言われ、その言葉を皮切りに老人達3人はバラバラの方向に去って行ってしまった。

 

落ち着いたのかリアが目を回したからやめたのか分からないが棗がリアを背負って近づくと玉藻に話し掛ける。

 

「ゴメンね〜お姉ちゃん取っちゃって!リアちゃんが起きたら貴女もやってあげるからね!」

 

玉藻がジト目で棗を見ていることに何かを勘違いしたのか、棗はそう声を掛ける。

すると、玉藻は鼻をフンッと鳴らして憮然とした表情で、

 

「妾は玉藻じゃ。妾はリアの母親ぞ?あのような子供騙しを妾にしようなら、妾が魔法で其方を空の彼方まで飛ばしてやるぞ、義妹よ?」

 

と、言い放つと棗は目をグルグルと回しながら

 

「アレ?リアチャンガ兄様ノムスメデ玉藻チャンガ兄様ノ奥サン?えっ?エッ!…………………。」

 

混乱していた。

 

混乱して遂には気絶した棗を克馬が背負って先頭を歩き、その後ろに先程気がついたリア、続いて玉藻が歩いていると大きな武家屋敷が見えてきた。

 

「久しぶりだなぁ……まさかまた帰って来られるなんて………ん?どうした、棗?…。」

 

 

感慨深くなって入口の前に立っていると少し前に気がついた棗に手を引かれて門をくぐる。

 

「お帰り兄様!」

 

振り返りそう言った妹は、今日一番の笑顔だった。

 

ーガラガラー

 

入口の引き戸を開けると外まで漂っていた美味しそうな匂いが充満しており、懐かしい匂いに惹かれていくと台所に着いた。

 

「あら、克馬お帰りなさい。ずいぶん遅かったねぇ、もうすぐご飯だから準備手伝いなさい?」

 

其処には祖母である祈が異世界に行く前と同じ様に料理を作っている姿があった。

 

「お祝いですこし豪華な食事にしようかと思ってあれこれ悩んだのだけど、結局は克馬の好物だった親子丼にしちゃったわ、貴女達もどうぞ召し上がれ。」

 

座卓に俺、ばあちゃん、棗、リア、玉藻の順で円になって座ると目の前に置かれている親子丼の蓋を取った。

 

「おおっ!これっ!これだよ!!俺が食べたかった親子丼だ!!」

 

ふわふわでかつ半熟、そして出汁の旨味を多量に含んだ柔らかくジューシーな鶏肉に斜め切りされた長ネギの合わさった具がご飯の上に乗っている自分史上最高の丼モノ、親子丼

コレを食べたくて、リストアールでコカトリスやフレスベルグ、フェニックスを何度か狩りに行ったことは苦い記憶だ………なにせ食感が、味が、全てが良い意味で鶏肉を上回ってしまいこの親子丼に辿り着けなかったんだから…………。

一瞬回想をしてしまったが、冷静になると周りの家族が暖かい目で見ていることに気がついた。

 

「さぁ!食べようか!頂きます!!」

 

俺は恥ずかしさを隠すため大きな声で言った。

 

 

「ふぅ、妾も満足じゃ…お祖母様ごちそうさまでした。挨拶が遅れて申し訳ございません、妾はこちらとは別の世界、リストアールという大陸にて此方の克馬さんと結婚させて頂きました、玉藻・D・将紀と申します、どうかよろしくお願いいたします。」

 

食べ終わると玉藻が三つ指ついて祈に向き直り挨拶をすると祈は笑いながら「此方が挨拶の機会を与え無かったようなものだからいいんですよ。」

と俺を退けて玉藻の横に行き「此方こそ不出来な孫ですがどうかよろしく………それで……そちらのお嬢さんはもしかして?」

 

祈は玉藻に似ているがすこし大きい娘を見ながら玉藻に伺いながら聞いてきた。

 

「えぇ、リアこっちへ来なさい、お祖母様にご挨拶するのじゃ。」

 

リアに声を掛けるが返事がない事に疑問に思った玉藻がリアの方へ振り向くとリアは棗に猫可愛がりされており身動きが取れずに居た。

それを確認すると祈は、玉藻と克馬が視認できないほどの速度で移動して棗の頭をはたき、リアを解放した。

 

「ごめんなさいね?うちの棗は可愛い子が居るとどうも落ち着きがなくて。」

 

「いいえ私お姉ちゃん欲しかったんで嬉しいです、会ったばかりなのにこんなに良くしてくれて……あっ…私、シルフェリア・ジル・D・将紀と申します……よろしくお願いします、お祖母さま?」

 

リアは祈の質問に答えた後、挨拶がまだだったことを思い出し挨拶をするが父の祖母ならひいお祖母様と呼べば良いのかそれとも普通にお祖母様と呼べば良いのか分からず疑問形でお祖母様?と呼んでみると、

 

「まぁ!可愛い!これが曾孫というものなのね!!」

 

と、棗以上に猫可愛がりを始めてしまった。

 

「お祖母様ああなったら止まらないからねぇ〜、で?玉藻さんがお兄様の奥さんでよかったんだよね…ですよね?」

 

と、棗は祈に叩かれた場所をさすりながら玉藻と克馬に質問する。

 

「そうだよ、玉藻が俺の奥さんでリアは俺と玉藻の娘だ。」

 

「………ふーん……兄様はロリコンだったのか…だから先輩達……あれだけ誘惑して不発だった理由がそれじゃさすがに分からないですよね………。」

 

それから30分後

 

「フゥ………あら?ごめんなさいね、余にリアちゃんが可愛くて我を忘れてしまったわ、それで克馬さんと玉藻さんには少しお話があるのだけれど良いかしら?棗さん、リアちゃんを客間で寝かせてあげて下さいな。」

 

俺と玉藻と棗の3人で、ばあちゃんが飽きるまで雑談をしているとリアを堪能したのかツヤツヤしたばあちゃんが真面目な顔をして確認してきた。

リアは疲れと緊張からか寝てしまったようで、棗にお姫様抱っこされて客間に連れていかれた。

 

「実は克馬さんが彼方に行き、此方に戻ってくることは3年前のあの日に分かっていたのです。しかしそれを克馬さんに伝える事は”あの方”に禁じられていましたので話せずにいました。」

 

棗とリアが居なくなった部屋で祖母は俺と玉藻に対して真剣な表情のまま言葉を紡ぐ。

 

「しかし、帰って来たら連れて来るように言われていたので、疲れているかもしれませんが今から裏の神社に行きましょう。なにせ”あの方”は200年程お待ちだと言っていましたしね。」

 

そう祖母に促され、祖母、俺、玉藻と3人で連れ立って家を出て、我が家が管理する神社へと向かった。

 




アトリエの新作も消えたのでちょっとショックですがしょうがない。

例え人災だったとしても………

例え、近所の住人が原因だとしても……

例えその人が以前から必ずトラブルを起こす人だとしても……




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きつねうどん

だいぶ時間が空いてしまいましたが続きが出来ましたので投稿しました。

楽しみにして居る方や呼んでやろうかという方はどうぞご覧ください、


第6食 きつねうどん

 

家を出て着いたときは若草色に染まっていた山が夜の蚊帳が落ちて全体的に暗くなっていた。

そんな夜道を懐中電灯を持ったばあちゃんに案内されて、幼い頃一度だけ入った事のある本社の中に入った。

 

「閻尾様、連れて来ましたよ!入りますよ!」

 

社の中に入ったばあちゃんは一番奥の御神体が祀ってある部屋で手をパンパンと叩くと御神体に向かって声をかけた。

 

何をしているんだろう?と、考えていると不意に目の前の空間が歪んできた。

 

「?!何じゃ!この魔力は!?お前さま、警戒せよ……何か居るぞ。」

 

現れた襖の向こうに絶対強者の気配を感じた玉藻が表情を強張らせながら、武器である鉄扇と戦闘形態でしか出さない九つの尾を出しながら警戒を促してきた。

玉藻の本気を感じ取った克馬は空間魔法で神剣レギンレイブを呼びだし構える。

 

それを見た祈は「あらあら。」と言い、少しも驚いた素振りを見せずに強大な魔力の渦巻く襖を開けてしまった。

 

ーガラーッー

 

「ん?……んぐっ……、………よいしょ………遅かったのう祈、おおっ!玉藻!久しいのぅ…儂じゃ、お前の母じゃぞ!…横に居るのがおぬしの番いかの?」

 

そこには玉藻をそのまま大きくした様な狐の美人がうどんを啜って座って居た。

美女はこちらに気づくとうどんの器を背後に置くと祈に挨拶をして、玉藻に抱きついた。

そのまま首を克馬の方に向けると玉藻の夫か?と聞いてきた。

俺は肯定する為に首を縦に振ると「ヨシヨシ!源十郎や十蔵に似ていい男じゃのう!」と満面の笑みで目の前の閻尾さんは俺を眺めている。

 

「じいちゃんと父さんを知ってるのですか?」

 

その発言が気になって、玉藻を自身の豊満な胸で包み込んだままの閻尾さんに聞くと横からばあちゃんが、

 

「克馬、そのアバズレの駄ぎつねが何を言っても無視しなさい。なにせその駄ぎつねは私の夫だけでなく息子…そして孫にまで手を出そうとする色ボケの老害ですからね。」

 

「祈!駄ぎつねと老害は否定させてもらおうか!アバズレと言うのは少し違う、良いオスが居れば子種を求めるのは正しいメスのサガじゃ!諦めい。」

 

笑顔のまま言いきると、閻尾さんは玉藻を抱えたまま少し怒り気味に反論する。

 

「認めましたね?源十郎さんを誘惑していたって……それに十蔵にも最近ちょっかい出しに行ったでしょう?桔梗さんから苦情が来ていましたよ。」

 

母の名前が出て来た所で、そう言えば両親に会っていないことに今更ながら気付いてばあちゃんに質問すると、ばあちゃんも「説明を忘れてたわ。」と言ってポンと手を叩き話し始めた。

 

「そう言えば、十蔵と桔梗さんは退魔の仕事と剣術指導の為にアメリカに行っていますよ。なんでも…彼方ではハリケーンの中に龍が居るそうで、その龍を退治するために、この前は閻尾様が呼ばれたんでしたよね?」

 

ばあちゃんが先程までの暴言がなかったかの様に閻尾さんに問い掛けると閻尾さんはうむうむとうなづきながら、

 

「さよう、十蔵から救援要請を受けたのでな?ちょいと転移して意気がっておった雑魚龍種をしめに行ってきたのじゃ!」

 

得意げな顔でまさにドヤ顔をこちらに向けてくる閻尾さん

 

退魔の仕事?確かに気で身体能力強化とか何か見た事もない獣を討伐していたような気がするけどまさかアレは魔物だったのか?………そう言えばリストアールで似た様な魔物をよく見た気がするけど……あれ?…閻尾さんの胸に抱かれている玉藻がピクリとも動いていない。

心配になり「玉藻?大丈夫?」と、声を掛けるが返事が無い。

 

慌てて閻尾さんから玉藻を取り返すと玉藻は酸欠で目を回していた。

 

それから少しして玉藻が快復して閻尾さんに話しかける。

 

「しかし、母様は妾が幼少の頃、旧神に滅ぼされたと父様とタルカス様が言っておりましたがご無事で何よりです。」

 

玉藻が心からの笑みを浮かべて閻尾さんにそう告げると、閻尾さんは何故か凄く嫌そうな顔になり

 

「チャラ男と下僕が何だって?儂が滅ぼされた?ハッ、よう言うわい、儂の鍛錬が嫌になって結託して儂を地球まで飛ばして次元を閉じる様な奴らの事かの?」

 

その発言に玉藻は目を丸くして、父様とタルカス様が虚言を?そんな……まさか………と呟きながら思考モードに入ってしまうと、閻尾さんは俺を見て期待感で目をキラッと輝かせ

 

「それで克馬よ!わしの孫は何処じゃ?千里眼では声は聞こえんから会って話すの楽しみにしとったんじゃがのう!儂に似てさぞ愛らしいんじゃろうなぁ……。」

 

まくし立て「早うせい、あんまり焦らすと狐火浴びせるぞ?」と本気か冗談か分からないが剣呑な笑みを浮かべながら催促してくる。

 

俺が言いづらそうにして居ると横からばあちゃんが、

 

「あら?リアちゃんなら来ませんよ?疲れたみたいだったし今頃は棗と一緒にお布団で寝てるのではないでしょうか……まぁ、私はリアちゃんを堪能できましたし、充分に、満足するまで……ね。」

 

と、勝ち誇ったかの様な(ん?ばあちゃんこんなに愉快な感じの人だったっけ?)顔で閻尾さんに告げると閻尾さんが九つの尻尾を逆立てさせて

 

「祈!貴様抜け駆け無しで、孫を可愛がるのは同時にやろうと言っておったではないか!裏切りおったなこの性悪女!!」

 

ばあちゃんを罵るがばあちゃんは何処吹く風?とばかりに

 

「えぇ……私は”孫”を可愛がるのは…と、言ったはずですよ?私にとっての孫は克馬とその嫁の玉藻さん、後は棗ですし、リアちゃんは私にとっては曽孫になるのですから何ら間違っていませんよ?何をそんなに怒っているのです?カルシウム足りないんじゃないですか、きつねうどんばかり食べていないで………だいたいいい歳して………。」

 

「そう言った屁理屈ばかり!だいたい貴様は昔から……十蔵を閨に誘っただけでわしに真剣で斬りつけてきおって!源十郎は諦めたのだからよいであろうに!!」

 

いつの間にか双方とも刀を取り出し鍔迫り合いをして刀身からは火花が散っている。

 

「………………ん、…んん、はっ!?此処は何処じゃ?」

 

そうこうしているうちに閻尾さんに気絶させられていた玉藻が起きて動きだす。

 

玉藻は小さい鼻をひくひくと動かすと、閻尾さんの後ろの方にまだ手つかずの”きつねうどん”を発見して手に取ると、添えられていた箸を使って持ち上げる。

 

「………………。」

 

ばあちゃんと閻尾さんが繰り広げる喧騒を後目に何も言わずうどんを啜ると目尻から涙が溢れる。

 

玉藻が泣くのはリアが生まれた時以来で、驚いた俺が心配していると、玉藻が口を開く。

 

「………懐かしい…コレは……確かに母様の味じゃ…。」

 

と、言いながらずるずるとうどんを啜っていた。

 

「そうじゃった、ほれ?婿殿も食べるがよい!」

 

ばあちゃんと剣を交えていたはずの閻尾さんはいつの間にか俺の隣に立ってきつねうどんを渡してきた。

ばあちゃんの方を見ると呆れたように刀を鞘に収めてスタスタと歩いてくるのが見える。

 

俺は受け取ると玉藻の横で食べ始める。

 

「……ん?このうどんもしかして…手打ちですか?」

 

細いのに思いのほかコシの強い麺に驚いて確認すると、閻尾さんは満面の笑みでうなづいた。

 

「さすがリストアールで料理屋をやっているだけあるのう?わしの手打ちうどんじゃぞ!」

 

「ええ、そうですね…”唯一の”得意料理ですものね?」

 

自慢気な閻尾さんの後ろから近づいてきたばあちゃんは、一部を強調すると閻尾さんが反論する。

 

「コレ!祈、強調せんでもいいじゃろう?…………確かにこれ以外できんが……。」

 

狐耳が折れて沈んでいるのが見て取れる、最後は小声だったが聞き取れてしまった。

出来ないんだ…と思っていると、玉藻がうどんを食べ終わり閻尾さんを見つめる。

 

「母様!そう言えばさっき、父様とタルカス様が妾を謀ったと仰いましたが誠ですか?」

 

その質問を聞くと閻尾さんは先程の様な剣呑な雰囲気を漂わせながら、

 

「うむ、そうじゃのう………ん?玉藻や、お前確か転移門を使えたかのう?」

 

「はい、妾の行ったことのある場所でしたら可能ですが?」

 

閻尾さんが質問し玉藻の答えを聞くと、

 

「それでは当事者達の前で話をするとしようか!!玉藻や、今駄犬と下僕は一緒におるか?」

 

「えーと……おそらく今の時間ですと会議が終わり謁見の間で2人だけでお話をされているかと思いますが…」

 

「よし!祈、ちと出掛けてくるぞ!婿殿も来るがよい!」

 

玉藻の返事を全て聞く前にばあちゃんに声を掛け、俺の手を引いて転移門の魔法の範囲に俺を巻き込む。

玉藻も真実を知るためならばと魔法を発動させる。

 

 

 

 

転移門を潜ると懐かしいフェンリル様の城の謁見の間に出た。

 

柱の影に出たらしくまだ2人は気付いていない様だったがフェンリル様の鼻がピクリと動き、

 

「ん?玉藻と婿殿の匂い………?なんだ?この寒気のする匂いは……何故か懐かしい気もするが…………。」

 

「どうしたフェン?顔が青ざめておるぞ?」

 

「タルカス兄は気付かんか?この気配…何処かで………。」

 

「む?確かに膝が笑っておる、なんじゃこの気配は…………まさか!!」

 

フェンリル様と宰相で元ドラゴンロードのタルカス様は俺と玉藻と閻尾さんが居る柱の影を怯えた表情で見る。

 

おいおい、幾ら何でも魔国の王で神狼とエンシェントドラゴンロードが怯えるってどういう事だよ。

と、考えて居ると閻尾さんが柱の影から出て2人に見える様になる。

 

「久し振りじゃのう?駄犬に…下僕ぅ?」

 

犬歯を剥き出しにして三日月を思わせるほどの口の形を作った閻尾さんを見た神狼と龍帝は驚きと驚愕の表情をしたかと思うと即座に土下座をかました。

 




ストックはほぼ無いので亀更新ですが、続けては行きますのでよろしくお願いします。


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クリームシガール

だいぶ遅れましたが続きを投稿しました。

続きを書いてはいるんですがプロット含めすべて消失はちょっと笑えなかったですね(苦笑)


 

「駄犬が魔王で下僕が宰相?ほぅ…わしがおらん間にずいぶんと偉くなったもんじゃのう?」

 

ニィッ、と擬音が付きそうな目が笑っていない笑顔で土下座している魔国の王と宰相に近づくと、閻尾さんはフェンリル様の頭に自身の足を載せて

 

「謝る角度が足りんのう、ほれ!もっと下げい!」

 

と、言うとフェンリル様の頭が謁見の間の地面にめり込む…地面にひび割れがおきてフェンリル様はピクピクして居る。

 

「次は……下僕ぅ?」

 

「ひっ!」

 

タルカスさんも相当怯えた声を出すが顔を上げない……閻尾さんは、にやにやして見下ろしているが何もしない………あっ、タルカスさんが顔を上げた。

 

「下僕ぅ?わしが許したとでも思うたか?…甘いわ!!」

 

恐る恐る顔を上げたタルカスさんは顔面に回し蹴りを喰らい玉座の横まで吹き飛ばされた。

 

 

「ふぅ、さてと冗談は置いといて……起きろ!!」

 

冗談?いや、結構やばそうだけど?と思ったが閻尾さんの号令を聞いたフェンリル様とタルカスさんは素早く立ち上がると閻尾さんの前に直立不動で整列した。

 

「え、閻尾さん…お、おかえりぃ?」

 

「姐さん!お久し振りです!」

 

絵面だけ見るとヤンチャそうなお兄さんと何処かの組長さんが一般女性に絡んでいる様にしか見えないが先程のやり取りを見た後だと恐ろしく思える。

 

「おう、貴様らの悪戯のお陰で娘に300年ぶりにあったわ、で?わしがおらん間に偉くなったもんじゃのう?」

 

「えっ?いやぁ…そんなことないよ〜〜?所詮国を統一したぐらいだしね〜、なっ?タルカス兄?」

 

「はっ!?あ…あぁ、そうじゃな我等に比べたら姐さんの方が偉大じゃな?」

 

フェンリル様とタルカスさんは小刻みに震え閻尾さんの顔色を伺う

 

「ほぅ、国を統一?下僕ぅ、貴様自分の国はどうした?まさか駄犬に明け渡したとか言うまいな?ん?」

 

「い、いえ、まさか…龍帝国は姉の娘ドライに継がせてフェンリルの力になりに参りました!」

 

閻尾さんはそれを聞くとフン、と鼻を鳴らして

 

「ドラーナの娘?奴がまぐわう程強い雄がいたかのう……………まさか!其奴年は幾つじゃ?」

 

タルカスさんの発言を聞いて考え込むとハッとした閻尾さんはドライの年齢を聞く。

 

「え、えぇと……」

 

「まさか…300歳ぐらいじゃなかろうな?」

 

「ひっ!…」

 

タルカスさんはもはやHPがゼロなのではないかと思う程憔悴している様に見えるがその態度から肯定と思った閻尾さんは、

 

「やはり!源十郎の子かーーーー!!!!あの雌トカゲめーーーーー!!!!!」

 

と、吼えた。

 

ん?源十郎の子?…………じいちゃんの子?!

 

「ふぅ……………くそう、わしも夜這いを掛ければ良かったわ……おっと、本題を忘れておった、駄犬!下僕ぅ!何故わしがリストアールから居なくなったか玉藻と婿殿に教えてやれぃ!」

 

「はっ!閻尾さんの鍛錬に嫌気がさしていた俺とタルカス兄は龍族の秘術とゲートを使って閻尾さんを異世界に飛ばしました!」

 

「えっ?……母様は旧神との戦いで亡くなったと………。」

 

「「えっ?」」

 

玉藻が呆然としながら呟くと、俺と玉藻の存在を認識したのかフェンリル様とタルカスさんが驚きながらこちらを見る。

 

「聞いたじゃろ?此奴らは自分達が楽をするためにわしを異世界に飛ばし、魔力の大半を奪ったのじゃ、お陰で転移門は開んし、言葉も分からんかったから大変じゃったわ。」

 

閻尾さんはコキコキ、っと肩を鳴らして

 

「さぁ帰るかのう?可愛い孫が待っておるでな。」

 

と、言って玉藻と俺の手を取ると自分の魔力で転移門を開いてくれた。

 

呆然とする2人を後目に、同じく呆然としている玉藻を連れて転移門を潜ろうとすると何かを思い出した閻尾さんはフェンリル様とタルカスさんに一言

 

「あぁ、貴様らのお仕置きは孫を堪能してからじゃからな?楽しみに待っとれよ。」

 

これを聞いた2人は膝から崩れ落ちたと後で知った。

 

 

転移門を抜けると、ばあちゃん家の台所で棗とリアがオーブンで何かを焼いていた。

 

「あ!お父さん、お母さんお帰りなさい!えっと…お母さんのお母さんですよね?シルフェリア・ジル・D・将紀です、よろしくお願いします。」

 

とことこ歩いて俺たちの前に来たリアが首を少し傾けながら言うと、

 

「可愛い!わしは閻尾じゃ!おばあちゃんでも閻尾さんでもどう呼んでもいいわ〜〜!」

 

「それじゃ、おばあちゃん?棗お姉ちゃんとお菓子作ったから食べてみて!」

 

リアが差し出したお盆にはクルクルと薄いクッキーを巻いて中にクリームを入れたお菓子が盛られていた。

 

「あぁ、棗は菓子作りが得意だったもんな、家庭料理は酷いもんだったが………。」

 

昔の惨状を思い出して思いにふけっていると、

 

「ヤメて…アレは黒歴史…今は…そこまでじゃないです…少しはマシです……。」

 

と、後ろから棗の怨みに満ちた声が聞こえてきた。

 

一頻り笑うとテレパシーの魔法が入って携帯電話で言うハンズフリーモードで繋ぎみんなに聞こえる様にする。

 

「あっ、姫様?申し訳ございません、安夜禍でございます、お忙しいところだと思いますが宜しいですか?。」

 

何でも、休暇をあげた安夜禍さんは魔国の城でメイドの仕事をしようと城に入ると、兵や文官それに使用人まで全員が慌てて騒ぎになっていたと言う。

何でもフェンリル様と宰相のタルカス様が双方共何かに怯える様に部屋に引きこもってしまったらしい。

 

「大丈夫じゃ、わしがちょいと脅かしたからじゃろうて……安夜禍、息災な様で結構じゃ!」

 

「?!?!え?…………………あの……どちら様でしょうか?聞き覚えはあるのですが…。」

 

玉藻に繋いだはずのテレパシーの魔法から、玉藻以外の声が聞こえて混乱しながらも自らの記憶を手繰り寄せ思い出そうとする安夜禍さん

 

「悲しいのぅ、城の片隅で縊り殺されるところを助けて、尚且つ舐められんように育ててやったのになぁ?………なぁ?安夜禍?」

 

そこにわざとらしい嘘泣きをしながら思い出せないか?と聞く閻尾さんは声は悲しそうだが顔はニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべている。

 

「………育て?………………!!?!まさか!閻尾様でございますか?

そんな!…300年前旧神同士の衝突でお亡くなりになったと………。」

 

声からでも、安夜禍さんが慌て混乱しているのが眼に浮かぶ様に見えてくる……あの、何時も玉藻を揶揄い微笑を浮かべて余裕の表情を崩さない我が家のメイド長が………。

 

「まぁ、今はわしの可愛い孫娘を愛でる時間じゃから、後で玉藻と婿殿とリアと其方に顔を出すでの。しばらく待っとれ!」

 

そう言い切ると、テレパシーの魔法が、閻尾さん側から一方的に切断されたのが分かった。

 

「さぁ!では、可愛い孫娘の作った菓子を食べるとするかのう!」

 

先程のやりとりが無かったかの様に爽やかな笑顔を浮かべるとリアと棗の差し出す菓子を受け取り食べ始める閻尾さん

 

「………あの〜〜?いいんですか?さっきの安夜禍さん、そうとう焦っていたみたいなんですが…。」

 

リアを撫で回しながら美味い美味いと連呼する閻尾さんに声を掛けると、

 

「構わん構わん!何せ安夜禍はわしが育てた隠密だからのう…言わば、わしは育ての親も同然!親のやる事に何の疑問が浮かぼうか!」

 

かっかっかっ!と笑いながら気にするな、と言い

続けて菓子を食べ続ける。

 

「克馬?その色ボケに何を言った所で意味はありませんよ。」

 

呆然とする俺に金髪の美人さんが話しかけて来た。……………ん?金髪の美人?貴女だれ?

 

「…?如何したのです克馬?そんなにだらしなく口を開けて、だらしない。」

 

金髪の美人は親しげに俺に言うがどこを如何見ても見覚えがない……強いて言えばライナに似ている気がする………っていうかその耳エルフじゃないは

 

「克馬?どうしたんですか?………あぁ、そう言えば幻影魔法を解いてしまったんでしたね、私のこの姿は初めて見ましたか?克馬、コレが私の本当の姿…イノセント・ナインリーフ・ナルバレッタ

…過去に妖精女王を名乗っていた姿を…。」

 




ばあちゃんの正体は……っていう話です。

因みにじいちゃんも生きてます。


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熊本ラーメン

やっと書けた…

結構前のボカロの曲を聴いて描きたくなった。

コレによりタグの追加をしなければ…




「お待たせレナ!コレが父さん直伝ラーメンだよ。」

 

ギルド兼料理屋のこの店に何度足を運んだだろうか?

店主で勇者で領主で命の恩人な目の前の男が爽やかな笑顔で初めて見る湯気の立つ温かいドンブリを私の前に置いた。

 

私はブリジット・レナレウス、ヴァイスハルト国

の都市のセイルレイという所の教会でお務めを

するシスターです。

 

突然ですが私はラーメンが大好きです。

 

"今の"私は食べた事が無かったんだけど大好きなんです…………、

ん?どういう事だって?

 

…… その事を説明するには1人の男の話をしよう、日本に住んでいた田所総士と言う男の話だ。

 

その男は平凡な男だった。

小学生の頃はただ少しかくれんぼが得意な正義感の強い少年だった。

 

少年は成長し、高校生の頃には部活で始めたライフル射撃でオリンピック選手の候補に選ばれるほどの腕前を手に入れ、かくれんぼが得意で正義感の強いライフル射撃が上手い青年になっていた。

 

その運命が変わったのは、総士が大学に入って少しした頃

ある日の帰り道、家の近所で幼なじみの神宮寺 咲が暴漢に誘拐される所を目撃した事が全ての始まりだった。

 

ワゴン車に押し込まれる咲を目撃した総士は、乗っていたバイクで尾行し、廃工場で停車して暴れる咲を無理矢理中に連れて行く男達に怒りを覚えながら助けるタイミングを計っていた。

 

途中で警察に連絡を入れていた事もあり、誘拐だけなら人質は傷つけないだろうと考えていた総士だったが、咲の前に立ったチャラい男が下卑た笑みを浮かべ咲の服に手を掛けると強引に引き裂いた。

 

咲の叫び声が聞こえ、目の前が真っ赤になった。

更に視界の端には眼鏡を掛けた男が注射器を持ってにやにやしているのが見えた。

 

最早我慢が限界に達した総士は5人の男達に立ち向かった。

 

結果は鍛えていた総士に5人の男達がボコボコに延されたのだが、総士は男達の執念を甘く見ていた。

 

延した1人の男がのろのろと立ち上がり、咲の身を案じて話しかけている総士の背後から拳銃で発砲、総士を狙ったが外れて咲の腹部に当たってしまった。

 

気がついた時、総士の手には拳銃が握られており、足下には拳銃の持ち主だった男が頭部から血を流して倒れていた。

 

警察に連絡を入れていた事もあり、その後10分くらいでパトカーや白バイが何台も現れて拳銃を持った総士は取り囲まれて捕まった。

 

総士は警察署で事の次第を話したが取り合ってもらえず、唯一の証言者となる幼なじみは意識不明の重体で話す事もままならなかった事も重なり釈放されなかった。

 

何日か同じ話を警察官にしていると、警察署の廊下で咲を襲っていた男達の1人が前から歩いてきた。

その男は手錠もしていなければ警察官に横柄な態度で接して居て総士は何かおかしいと感じた。

 

すれ違いざまに男が一言、

 

「テメェ覚えてろよ、俺たちの邪魔したこと絶対に後悔させてやるからな。」

 

と、言ってきた。

 

結局咲の意識が戻らず、俺は廃工場に遊びに来た大学生グループを偶然手に入れた拳銃で襲った殺人犯として刑務所に送られた。

何度も無実だと言っても取り合ってもらえなかったのは恐らくあの男達の中に警察に圧力をかける事の出来る人物でも居たのだろう。

 

それから1ヶ月、警察署でなんとか過ごしていると咲から手紙が届いた。

意識が戻ったのか、と安心して読んでいると何かおかしな事が書いてある。

 

つい先日、総士の自宅が火災にあい両親と妹が亡くなったと言うのだ。

 

そんな馬鹿な、と思い手紙の返事を書く。

 

更に3日後に帰ってきた手紙には依然として同じ内容と謝罪が書き連ねてあった。

目の前が真っ暗になった総士はそれから全く動かなくなり2日間寝込んでしまった。

 

牢屋の前で誰かが高笑いをしている。

此処は凶悪犯の収容施設の為、小部屋になっている筈だが?煩いと思い声の方に目を向けるとそこには、

 

「おっ?やっとこっちに気づいたか、久しぶりだな偽善者野郎、どうだ?後悔したか?」

 

と、嬉しそうにしている、取り巻きの男達も一様に同じ様な顔で総士を見ていた。

 

なんでこいつらが此処に居る?捕まった?いや、手錠もしていなければ私服のままだと?

 

混乱している総士にリーダー格の男が一言

 

「テメェのせいでオヤジには怒鳴られるしジジイには媚び売らなきゃいけねェし散々だったぜ、まぁテメェの母親と妹はあの時ヤリ損ねた姉ちゃんの替わりにおいしく頂いてヤッといたぜ!」

 

「あの時のテメェの妹の様子録画してあるから今度見せてやるよ!」

 

「わんわん泣き喚いて煩かったから容赦しなかったからな、まぁそれはそれで楽しめたんだがな?」

 

「母親も2人産んだとは思えねぇ上物だったなぁ勿体無いことしたな。」

 

コイツらは何を言っている?

 

妹の様子?録画?

 

母さん?何故コイツらが2人の事を?

 

考えるまでもなくコイツらが総士の家族に手を出したのは明白だった。

コイツらは腹が立ったと言うだけで総士の家族を蹂躙し、家に火を着けて殺したのだと気がついてしまった。

 

それからだいぶ暴れたのだろう…総士には更に厳重な警戒がされていた。

しかし、総士には才能があった…"隠れんぼ"の才能が…。

 

生まれながらに持っていた不思議な力で脱獄し、男達に復讐していった。

 

最後の1人となった時、総士は神出鬼没の暗殺者として世間に認知されていた。

 

最後の1人は南米で麻薬組織の一員になっているらしく総士は1人でその組織に侵入していた。

 

これで最後、コレが終わったら俺も死のう。

そう考えながら進んでいくと、忘れもしないあの声が聴こえてきた。

 

「で?ボス?ホントに打っちゃっていいんで?ヤバイっすよ核は?」

 

核?何のことだ?と思い聞いていると、

 

「問題ない、我らの同志がそれを契機に表に出る。そうすれば世界は我々のものだ。キミにも良いポストを用意しよう。」

 

「此処は近いけど大丈夫なんですよね?」

 

「大丈夫だよ、その施設は核シェルターになっていて発射と同時に一時閉鎖されて安全だ。

君はそこから大国の崩壊する様子を眺めていると良い。」

 

了解っす。と、軽く返事をする復讐相手

 

何やら大変な事になってるなと思ったが復讐する事に変わりは無く、ついでに妨害してやろうと決心した。

 

奴が移動する、隠れんぼの才能を使い尾行していると総士の他にも奴を尾行する存在を確認した。

 

「声を出すな…敵じゃない…お前は奴の仲間か?」

 

尾行者の背後に回り問いただすと、驚き肩をビクッとさせた後首を横に振る。

 

「アナタは何者ですか?もしかして此処に来る途中の見張りが何人か居なくなっていたのはアナタがやったんですか?」

 

尾行者の質問に肯定の意思を示す為首を縦に1回だけ動かし目は奴を見続けている。

すると奴は総士が工作する迄は厳重な警備を施されていた扉の前で立ち停まる。

 

ーピッ、ピッピッピ……ピーー

 

奴が電子ロックを解除するとドアが左右に開く

尾行者と共に隠れんぼの才能を使いドアが閉まる前に侵入する。

 

目の前の光景は何だ?

 

何だこのミサイルの量は?

 

混乱していると、尾行者が、情報通りか…と呟いた。

 

格納庫らしき場所の天井に陣取り奴の行動が見えて動きがあったら止められるぐらいの距離で漸く一息ついた総士達は此処で始めて自己紹介をした。

 

相手は退魔?組織の人間らしく何でも人間を滅ぼそうとする妖がこの施設を運営していて調べにきたらしい

随分若いので年齢を聞くとまだ16だと言い名前は将紀 十蔵君と名乗った。

 

俺らの様な裏の人間には名乗らない方が良い、と忠告してあげると、ありがとうございます。などと素直に礼を言って来る。

 

総士もこの後死ぬつもりだったので名乗ると十蔵君はたいそう驚いたのか声を出さずに目を丸くしながらこんな事を言ってきた。

 

「アナタが有名な"霧隠れ"さんでしたか!あの…サインして貰えませんか?」

 

どっからか取り出したサインペンとノートを総士に差し出してきた。

 

呆れながらもサインを期待している彼にサインを書きながら奴の方を監視する。

 

「……そう言えば、霧隠れってどういう事だ?俺は指名手配されている筈だが…」

 

それを聞いた十蔵君は不思議そうに首を傾げ

 

「えっ?知らないんですか…」

 

と総士の名前を知った時の様に驚く

 

理由を聞こうとした時、視界の隅で奴が動いた。

 

唇の動きから、「今からミサイルを発射する」と言っていたので素早く動く。

 

呆気にとられて出遅れた十蔵は総士に遅れて着いて行く

 

「じゃあ!俺を認めない世界にサヨウナラ〜!そして!!ようこそ!俺の天下!!」

 

ミサイル施設の一室で男は高笑いをあげながらコンソールを操作する。

 

そこに、

 

ーバキッバキッバキッバキッ……ドーンー

 

自分が先程入ってきた扉が枠ごと壊され、外には黒髪に蒼い目をしたぼろぼろのコートを羽織った男が立っていた。

 

「何だテメェ!此処が何処で俺が誰か分かっててやってんのか!!あぁ?!」

 

男は怒りをあらわにしながら総士に問いかける。

 

「……分かっているさ10年前のあの日から…キサマが唯の……クソ野郎だって事がなぁ!!!」

 

詰め寄る男の顔に全力の拳を叩きつけると吹っ飛び壁に叩きつけられた、そして男は何かブツブツと呟く。

 

その瞬間、危険な気がして背後に跳ぶと先程まで自分の立っていた場所がズタズタに切り裂かれていた。

何故?と思い男を見ると姿が豹変していた。

腕に無数の鎌のような物が付いた体格も大きい"

鬼"とでも言うべき存在に。

 

「ガァァァ!!!ニンゲンゴトキガァ!」

 

追撃が来た、死を覚悟した総士の前に刀を持った十蔵君が立ち、一言

 

「やはり人では無くなっていましたか…斬!!」

 

まさに一閃、奴?は十蔵君に斬られると黒い煙のようになって消えた。

 

呆然とする総士を余所に十蔵君がコンソールを見ているがよく分からないみたいだ。

 

総士は1人で行動していた為なんでもできる必要があったのでコンソールを起動して操作ログなどを確認する。

 

結果としてはミサイルが発射される事は無くなったが、妨害された場合には妨害者諸共この施設を自爆させる様に設定されていた。

案の定自爆シークエンスが開始されているのを確認した総士は十蔵にその事を伝えて逃走を開始した。

 

出口直前になって十蔵が総士に質問する、

 

「総士さんは日本に戻っても逮捕されません!保証します!それより総士さんは日本に帰ったら何を食べたいですか?」

 

総士が10年程抱えていた問題を何でもないと言う様に食べ物の話をする十蔵。

 

「……そうだな…近所のラーメン屋のラーメンを食べたいなぁ……熊本?の黒い油の入ってる少し変わったラーメンなんだが、美味かったんだよなぁ…。」

 

つい思い出して口走ると、「じゃあ一緒に行きましょう!」と走りながら元気に笑う十蔵君に心の中で謝罪しながら走る。

 

大きな扉の前に一つだけある小さな部屋に入る

逃げる際に必ず通らなければならない部屋だ。

 

「十蔵君、ちょっとだけ操作が必要だから先にその扉から出ていてくれないか?」

 

出口が開いていてそこから出ている様に促すと素直に言う通りにする……だから気をつけろと言ったのに。

 

十蔵君が扉を出た瞬間扉が閉まる。

そこで異常に気がついた彼は総士に声をかける。

 

「総士さん?何で扉を閉めたんですか!」

 

叫ぶ十蔵に驚く程清々しい気持ちになった総士が答える。

 

「…悪いな、だがその扉…1人しか出られないんだよ、さっきコンソールいじってて気づいたんだ。」

 

扉の外から金属音が聞こえる…恐らく刀で開けようとしているのだろう。

 

「そのままで良いから聞いてくれ、俺は人を殺しすぎた。時には巻き添えで善人も殺してしまった事だってある。

そんな人間が今更大手を振っておもてを歩けないよ、何より…俺には復讐を果たしてしまって後悔も未練も無い、十蔵君のお陰で最後の1人…1鬼?も殺せたしな。」

 

心底可笑しそうに笑う総士に十蔵が問い掛ける。

 

「でも!ラーメンを食べたいと言った貴方の言葉に偽りはなかった筈だ!」

 

確かに総士は死ぬ前にもう一度だけあの味を味わいたかった言うなればたった一つの後悔だ

 

「それでも…さ、最後に君の様な人間の命を救える事を誇りにこのまま逝かせてくれ、それに後10分もすれば自爆が始まってしまう。さぁ早く此処を出るんだ。」

 

チャキッと刀を納める音がすると

 

「何か伝言する事はありませんか?」

 

と、聞いてきた。

 

「……特には……あぁ、俺の幼なじみに一つだけ伝言を頼む、神宮寺咲と言う女だ…あの時ちゃんと守ってやれなくて悪かった……と、俺が言いに行くのが筋なんだろうが頼む。」

 

「分かりました!命に代えても必ず!……ありがとうございました!!」

 

礼を言って走って行く音が聞こえた、命に代えたら駄目じゃないか?と考えてまた笑う。

そう言えば、笑ったのも礼を言われたのも何年ぶりだろう、気分が良いのも相まってさらに笑う。

それから数分経って施設が完全ロックされた事が館内放送された。

 

ひどく時間がゆっくりと流れている様で目の前の扉が紅くなり、溶けていき、隙間から青白い光が漏れ出す……あぁこれで死ぬのか、と思ったら先程の十蔵君との会話が思い出される。

 

後悔も未練も無い

 

…もう一度だけあの味を

 

…幼なじみの女の子に伝言を

 

 

何だ……後悔も未練もあったじゃないか。

 

そう思った瞬間全てが白に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?俺は死んだんじゃないのか?

 

身体が動くのが分かる

 

あの場所にいて生きているとしたら俺も奴の様に化け物になってしまったのだろうか?

 

恐る恐る目を開けるとそこには金髪の美人がいて一緒に居た金髪の鎧姿の男?が嬉しそうに俺を抱き抱えた。

 

「おはようレナ!今日も元気にしていたか?」

 

「あなた?レナが驚いているわ、ほら目を丸くしているもの…ねぇレナ驚いたわよね?」

 

レナ?誰の事?などと考えるのは辞めた。

明らかに目をこちらに向けているし、俺が大人だとしたらこの人達は巨人になってしまう。

大学時代の友人がよく読んでいた転生系という奴なのだろう胡蝶の夢かもしれないが楽しませてもらうとするか……とりあえず寝よう…Zzz……。

 

それから色々あったが今は割愛しておこう、ラーメンが伸びてしまう。

 

「それにしても父様、普段料理作らないのに何でラーメンだけはあんなにこだわるんだろうね?」

 

夏休みを利用してリストアールに来ていた店長兼領主の克馬の妹である棗がレナにラーメンを出して厨房に戻ってきた克馬に質問すると、

 

「ん?何でも命の恩人が食べたかった物らしい、としか母さんから聞いてない。何でも母さんに逢う前の話らしい。」

 

「んん〜美味し〜〜マー油が!いい!!」

 

そんな会話を余所に嬉しそうにラーメンをすするレナ

 

 

 

「ん?レナのやつ来ておったか、ほぅ"上手くすする"もんじゃのう、妾もまだ出来んというのに。

いつもあれぐらい大人しければ可愛げがあるものを、隙あらば克馬を誘惑しよるからの。」

 

と、給餌をする狐神に思われていた。

 




補足

名前だけ出したことがありますが

・将紀十蔵
克馬と棗の父退魔士の主力として活動中の現当主
母である祈からリアの写真を見せられてかなり悔しがっていた。
ミサイル施設脱出後日本に戻り伝言を伝えてラーメン屋で修行
味の合格を貰った日の帰りに退魔活動中の女性(現在の妻)に出会う

3月19日誤字を発見したので訂正
将生(誤)→将紀(正)


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サンドウィッチ

連投出来たので連投しました。


 

 

澄み渡る青空の下、10人に満たない集団が山道を歩いている。

 

「兄様?棗は異世界っぽいところが見たい!と言ったはずですが周りの風景だけなら家の山と変わりないのですが?」

 

夏休みを利用してリストアールに旅行に来ている棗は克馬に対して不満を漏らす。

それに対して克馬は申し訳無さそうに後頭部をぽりぽりと掻きながら、

 

「悪いと思ってるよ、だが一応勇者で領主だからな?領地経営を友人にお願いしている身とあっては大型モンスターの討伐ぐらいはやっておかないと肩身が狭くてな。」

 

「うーん、兄様が領主っていうのがまだ実感が湧きませんが良いです!だって今日はリアちゃんだけでなくマリーちゃんともお出掛けですから!」

 

不満そうな顔から一転して自らの左右に居る少女達を抱き抱えるとリアは恥ずかしそうに、マリーと呼ばれた少女は悪態をつきながらも嬉しそうに受け入れた。

 

「棗お姉ちゃん、くすぐったいよ。」

 

「ちょっと!私は王女だぞ、師匠と克馬さんの家族だからと言って気安く触るな、あっこら、やめ、辞めて。」

 

ウリウリと言いながら頬を擦り付ける棗

兄さんとしては棗がリアクションを取るたびに揺れるモノを見ていちいち反応して居る親友の息子を解放してあげたかったんだが……。

 

今日は朝から領内に出たグランドドラゴン討伐の為目撃証言があった地域をピクニックしながら探索していた。

 

「か、克馬さん!一度休憩を挟みませんか?

女性陣も喉が渇いたでしょうし!」

 

依然として揺れる棗のモノを見たディアンケヒト・ウィード・ヴァイスハルト君がしどろもどろしながら提案すると

 

「そ、そうね!ヘタレのくせに気がきくじゃない!そろそろ休憩をとりましょう。」

 

棗から逃げて来た妹のマーナリィ・フェスタ・ヴァイスハルトが賛同してお茶にすることになった。

 

 

俺とリアの時空魔法でテーブルセットとティーセットを出すと同行してくれたメイドの安夜禍さんがテキパキとして準備を始める。

手伝おうとするが

 

「旦那様?メイドの仕事まで取り上げられたら安夜禍は困ってしまいます。

それともやはり夜伽をさせていただき……」

 

「いかん!いくら安夜禍でもそれは妾が許さんぞ!」

 

唇を舌で湿らせながら妖艶に微笑んだ安夜禍さんが言い切る前に玉藻が反対の意を示す

すると安夜禍さんはいつものようにクスッと笑うと

 

「あらやだ姫様冗談ですわ?…………いただくときはこっそりといただくつもりですし…フフッ。」

 

最後に何か呟いていて背筋がゾクッとしたがそれは聞こえなかった。

 

お茶の準備が終わるとみんなで席に着きお菓子を食べ始める。

 

「ん!このお菓子見たことないけど美味いぜ!克馬さんの所の新作か?」

 

マリーが初めて食べるガトーショコラに舌鼓をうち克馬に聞くと正面に座っている棗が(マリーが嫌がった為)ニヤッとしながら

 

「ふっふっふ、マリーちゃん?それは棗が作ったものです、もっと食べたければ「棗お姉ちゃんお願いだからもう一度作って!お願い!」と元気にぃ゛…………って兄様何するんですか?痛いです。」

 

マリーちゃんが食欲と羞恥心の狭間で葛藤しているのと、棗の暴走を止める為克馬は斜め45°の角度から棗の頭を叩くと棗が抗議して来た。

 

「いい加減にしとけ、マリーちゃんが真っ赤になっちゃたじゃないか……嫌われるぞ?」

 

その言葉に顔面蒼白になった棗は自分の分を差し出して許しを得ていた。

 

「そう言えば兄様?グランドドラゴンってどういう生物なんですか?」

 

棗はグランドドラゴンの討伐と聞いていたがそれがどの程度の相手か聞いていなかった為質問してみた。

 

「グランドドラゴン?あーそうか棗は初めてだもんな…えーと、なんていうかぁ……肉が美味い!」

 

と、克馬

 

「ん?グランドドラゴンじゃと?散歩がてらに倒したことがあるくらいかのう?」

 

と、玉藻

 

「うーん、お母さんと一緒に魔法の練習した時に倒しました。」

 

と、リア

 

「面倒だぜ?」

 

と、マリー

 

「私では火力不足で倒せません。」

 

と、安夜禍

 

「ええと、体長が最低でも10メートル以上で今まで確認された最大個体は1キロメートルに及ぶほどとも、体表面の鱗が硬くてスキルか魔法を使わなければ倒せないとも言われています。今回は高台から発見できないらしいので大きくても30メートルぐらいかと思われます。」

 

と、唯一まともな情報を言ってくれたディアンケヒト君にハグして感謝を伝えると顔を真っ赤にして頭から煙を出してしまった。

 

「兄様?棗はまだ人間辞めてませんのでそんな怪物倒せませんよ?」

 

「いや?多分いけるだろうと思う。

実際にやれば分かると思うがアレなら母さんの結界の方がよっぽど硬いぞ?」

 

兄の言葉にそんな馬鹿な?母様の結界は硬いが、そんなファンタジー世界のモンスターの方が弱い訳がないじゃないですか⁉︎と言ったが「俺もそう思ってた」と言いながら笑っていた。

 

休憩を終えて歩き出すと山道を大きな岩山が塞いでいた。

 

「あれ?落石ですかね?兄様迂回路はどちらで……ってなんで皆様武器を構えて……まさか⁈」

 

棗が声をあげると岩山が動き出す。

 

「グルルゥー…グワァーーーー!!!」

 

その時棗は思った、いやいやコレより母様の方が硬いとかありえないでしょ?

 

 

 

 

 

 

 

……そう思っていた時期が棗にもありました。

見た目に反して刀で斬りつけるとスパッと斬れて驚き返す刀で迫り来る尻尾にも刀を斬りつけると同じくスパッと斬れた。

 

拍子抜けしていると皆様も攻撃を加えてあっという間に岩山の如きグランドドラゴンはただの肉塊

 

「よっしゃ!コレで当面肉は買わずに済むな!!」

 

訂正、食材になったようだ…兄様がホクホク顔で肉をアイテムボックスに放り込んでいる。

 

兄様は肉を一塊残すと目にも留まらぬ速さで切り分け玉藻さんを呼ぶ

 

仕方ないのう、と言いながら玉藻さんが火を出すといつのまにか取り出した鉄板で肉を焼き始めた。

 

後ろを振り向くと安夜禍さんが既に食事の準備を整えて居り

 

「棗様もお座りくださいませ。」

 

と、言われて大人しく席に着いた。

 

 

 

「お待たせ皆!グランドドラゴンのサンドウィッチだ!」

 

徐に出されたサンドウィッチを手に取ると今までに嗅いだことのない香ばしい香りがして一口食べる

 

「お、美味しい!何これ何コレ!お肉がトロけます!神戸で食べたお肉より美味しいかも……。」

 

あまりの美味しさに惚けていると兄様が、

 

「棗……お前凄い顔してるぞ?」

 

と鏡を見せてきた。

 

其処には見た事もないくらい恍惚として口の端からヨダレを垂らした自分の姿が映っていた。

 

あまりの恥ずかしさで棗はその場から全力で駆け出した。

 

「お前さま…妹御とはいえ、その仕打ちは鬼じゃぞ?」

 

「あ、あぁアレやられたら俺も女として恐ろしく後悔しそうだぜ…。」

 

「あぁ、旦那様そういったぷれいがお望みでしたら是非安夜禍にお申し付けください。」

 

と、女性陣から散々?な評価をもらい

最後の救いを求めて(天使||リア)の顔を見ると

 

「お父さん最低です!」

 

その言葉を聞いた時克馬は膝から崩れた。

 

 

その後ろでディアンケヒトはあるところを抑えるのに必死になっていた。




新キャラヴァイスハルト兄妹登場設定は後程公開します。


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