決闘者も異世界から来るそうですよ? (フライ)
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プロローグ

目を覚ますと俺は真っ白な世界に居た。

そこは、壁も天井も無いただ白い世界だった。

もちろん、こんな世界に見覚えは無い。

俺が戸惑いながら周囲を見回していると、土下座をしている老人を見つけた。

 

「済まなかった」

 

そして、いきなり謝罪された。

訳の分からないまま戸惑っていると老人は顔を上げて話始めた。

 

「自己紹介が遅れたのぅ。ワシは神じゃ。いきなりで悪いが、お主は死んだ。それもワシのせいでな」

 

「はい?死んだ?俺が?アンタのせいで?」

 

俺が、動揺しながら聞き返すと神と名乗る老人は話を続ける。

 

「あぁ、本来ならまだ死ぬはずの無いお主をワシのミスで死なせてしまった。大変申し訳ないと思っている。そこで、提案なのだがお主、転生する気は無いかのぅ」

 

「転生?小説とかによくある異世界転生か?」

 

俺が聞き返すと神は頷きながら答える。

 

「うむ、その認識で間違い無い。ちなみにお主が行く世界は【問題児たちが異世界から来るそうですよ?】じゃ」

 

「問題児か、でも転生したとしても俺はギフトを持って無いぞ。どうするんだ?」

 

「そこは心配ない、元はと言えばワシのミスじゃ。転生してくれるならお主にはワシの力で特典を3つまで付けよう」

 

俺の質問に神は自信満々そうに言う。

 

「「転生してくれるなら」って、しなければどうなる?」

 

俺の質問に神は

 

「うむ、転生しなければお主の魂は死者として消えるだけじゃな」

 

と、答える。

俺は、少しの間黙り、そして口を開いた。

 

「分かった。転生しよう」

 

「うむ、そうか。では特典を選んでくれ」

 

「なぁ、その特典って何でも良いのか?」

 

「あぁ、何でも良いぞ。漫画やアニメの力から、身体能力などでもな」

 

俺の質問に神は答える。

俺はその答えに安心した。欲しい特典はもう決まっていたからだ。

 

「なら特典は

<遊戯王のモンスターや魔法、罠カードの実体化能力>

<そこそこの身体能力>

<原作知識を消す>

で頼む」

 

「うむ、遊戯王のカードに身体能力か、それは良いが原作知識を消してしまって良いのか?」

 

「あぁ、先が分かっちまったら面白く無いだろ」

 

「なるほどのぉ。分かった、では転生時にお主の記憶から原作知識のみを取り除こう。

そして、ほれ」

 

そう言うと、神が俺の左腕に触れる。

すると、左腕が一瞬光り、光が収まると俺の左腕にはデュエルディスク(遊星Ver.)が装着されていた。

 

「それは、ワシからのプレゼントじゃ。ちなみにデッキはお主が頭の中で思い描いた物になっておる」

 

「デュエルディスクか!ありがとうな神様!」

 

まさかデュエルディスクまで貰えるとは思わなかった俺は嬉しさの余り声が大きいなる。

 

「うむ、元々ワシのミスじゃからの。ちなみにそのデュエルディスクはペンデュラム召喚もできるようになっておるからの。あと罠カードは一度セットしなければ発動出来なくなっておるから注意しとくれ」

 

「分かった。ありがとうな」

 

「あぁ、言い忘れとったが転生と言っても赤ん坊からではなく原作の始まり。つまり黒ウサギに呼び出されるところからなやなるがよいか?」

 

「あぁ、むしろその方がいいぜ!」

 

神の質問に俺はそう答える。

 

「そうか。では達者でな」

 

「あぁ、いろいろありがとうな神様」

 

そう言うと俺は神の前から姿を消した。

 



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YES!ウサギが呼びました!
第1話


1話目です。
それではどうぞ!


俺の名前は九重 遊

突然で悪いが今俺は上空4000mに放り出されていた。

 

「何でだああああぁぁぁぁぁーーーーーー」

 

叫びながら周りを見てみると俺の他に3人と猫が一匹いる。

下はどうやら水辺のようだがこの高さから落ちたらいくら着水でも死ぬ、死んでしまう。

 

「あっ、そうだカード、モンスターを」

 

俺は、この状況を何とか出来るかも知れないとカードをドローしてみた。

ドローしたカードは《神竜 ラグナロク》だった。

よしこのモンスターなら全員を乗せて飛ぶことができる。

 

「俺は、《神竜 ラグナロク》を召喚」

 

「グォォォォォォォン!」

神竜 ラグナロク

レベル4

ドラゴン族

ATK1500

DEF1000

 

デュエルディスクにカードを置くと、巨大な竜、《神竜 ラグナロク》が出現する。

 

「ラグナロク、頼む」

 

俺の言葉に反応してラグナロクは俺達を自身の背に乗せる。

 

「うぉっ!」

 

「キャッ!」

 

「ッ!」

 

「ニャッ!」

 

3人と一匹は突然の事に驚いているが今は構っている暇はない。

 

「ラグナロク、とりあえず地面まで下りてくれ」

 

俺が指示を出すとラグナロクはゆっくりと地面へ下りて行った。

 

 

「ありがとうな、ラグナロク」

 

そう言って俺はラグナロクの背から降りるとカードをデュエルディスクから離す。すると、ラグナロクは光の塵となり消滅した。俺はそのカードをデッキ戻す。

そして、俺は他の3人方に振り向く。

 

「よぉ、さっきは助かったぜ、ありがとな」

 

3人の内の1人、金髪で学ランを着たヘッドフォンを着けた少年が俺に話しかけてきた。

 

「確かにさっきは助かったわね。ありがとう」

 

「ありがとう。君とさっきの竜が助けてくれなかったら三毛猫が溺れていた」

 

他の2人の少女も話しかけてきた。

 

「あぁ、別に構わねえよ。あのままじゃ俺も落ちてたしな。

俺は九重 遊。よろしくな」

 

「私は久藤 飛鳥よ。よろしくね、遊君」

 

「春日部 耀。よろしく」

 

「逆廻 十六夜だ。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろったダメ人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

 

「そう。取り扱い説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

 

「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

心からケラケラと笑う逆廻 十六夜

傲慢そうに顔を背ける久藤 飛鳥

我関せず無関心を装う春日部 耀

空中で巨大な竜を召喚した九重 遊

 

(うわぁ、なんか問題児ばっかりみたいですね)

そんな彼らを物陰から見ていたウサギ耳のついている少女、黒ウサギは自分で召喚しておいてアレだが陰鬱そうに重くため息を吐くのだった。



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第2話

2話目です。
それではどうぞ!


「それはそうと3人にもあの手紙が届いたのか?」

 

全員の自己紹介が終わった頃、十六夜がそう話し出す。

 

「えぇ、私もその手紙を読んだらここに飛ばされたわ」

 

「私もそう」

 

(手紙?何のことだ?まあ俺は原作知識を消しちまったからな。ここは話を合わせておくか)

 

「で、遊はどうなんだよ」

 

「あぁ、俺にも届いたな」

 

十六夜の質問に俺は頷きながら答えた。

 

「で、呼び出されたはいいけど何で誰も居ないんだよ。この状況だど、招待状に書かれた箱庭ってのの説明をする人間が現れんじゃねえのか?」

 

「えぇ、そうね。説明ぐらいして欲しいわね。このままじゃ動きようがないもの」

 

「と言うか、お前らこの状況で落ち着き過ぎじゃないか」

 

「貴方も人の事言えない」

 

(全くです)

 

黒ウサギは心の中でツッコミを入れた。

4人とも落ち着き過ぎているので出るに出られないでいた。

 

(仕方ないですね。とりあえずこれ以上不満が噴出する前にお腹を括りますか)

 

黒ウサギが出ていこうとした時、十六夜がため息交じりに呟く。

 

「仕方ねえな。なら、そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」

 

ビクッ!!

 

その言葉を聞いた黒ウサギは心臓を掴まれたかのように飛び跳ねた。

4人の視線が黒ウサギに集まる。

 

「なんだ、貴方も気づいてたのね」

「当然。俺は、かくれんぼじゃ負け無しだぜ?そっちの2人も気づいてたんだろ?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「アレって隠れていたつもりなのか?」

 

軽薄そうに笑う十六夜だか目は全く笑っていなかった。遊が召喚したラグナロクのお陰で水に落ちることは無かったが、それでも理不尽な招集を受けたため腹癒せに殺気の籠った視線を向ける。

すると黒ウサギがビクビクしながら出てきた。

 

「や、やだなあ皆さん。そんな狼みたいな怖い顔で見ないでくださいよ。そんな顔で見られたら黒ウサギは死んでしまいます。古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな脆弱な黒ウサギの心臓に免じてここは一つ穏便に話を聞いて頂けたら嬉しいでございますヨ?」

 

「断る」

 

「却下」

 

「お断りします」

 

「ヤダ。あと《オオカミ》を召喚。そして攻撃」

 

「ガゥ」

 

オオカミ

レベル3

獣族

ATK1200

DEF800

 

「あっは、取り付く暇も無いですねってギャァァァァァァ!」

 

俺が召喚したオオカミは行きよいよく黒ウサギに襲いかかる。黒ウサギは全力で逃げる。それは俺がオオカミのカードをデュエルディスクから離すまで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐすっあ、あり得ないのですよ。普通狼が天敵と言った側から狼を召喚しますか?」

 

「ごめんごめん、イラっときたからツイね」

 

「ごめんですめば警察は要らないので「オオカミを召」ごめんなさい、ごめんなさい、マジやめてくださいお願いします。」

 

再びオオカミを召喚しようとした俺に全力で謝罪をする黒ウサギ。それを見て十六夜達は腹を抱えて笑っていた。

 

「さて、そろそろ説明してくれよ」

 

俺がそう言うと黒ウサギは咳払いを一度して説明を始めた。

 

〜黒ウサギ説明中〜

 

「箱庭の事やギフトゲームのルールは分かった。だが黒ウサギ、1つだけ聞きたい事がある」

 

そう言うと十六夜は視線を巨大な天幕に向ける。そして一言

 

「この世界は・・・・・・面白いか?」

 

「YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界よりかくだんに面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 

そして、俺達は箱庭の天幕へと向かった。

 



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第3話

3話目です。
それではどうぞ!


「ジン坊ちゃーン!新しい方を連れてきましたよ!!」

 

俺達は、黒ウサギの案内で箱庭の入口に来ていた。入口の近くには噴水のある広場があり、そこには数人の子ども達がいた。その内の一人、緑髪の少年が前に出てきた。

 

「お帰り、黒ウサギ。そちらの三人が?」

 

「はいな、こちらの御四人様がーーーー」

 

くるりと振り返り、石の様に固まる黒ウサギ。

 

「え、あれ?もう一人居ませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から‘俺様問題児!’って感じのオーラを放っている殿方が」

 

「ああ、十六夜君のこと?彼なら『ちょっと世界の果てを見てくるぜ』って言いながらあっちの方に走って行ったわよ」

 

そう言うと飛鳥は俺達が歩いてきた道の逆の方向を指さす。

街道の真ん中で呆然となった黒ウサギは、ウサ耳を逆立てて三人に問いただす。

 

「な、なんで止めてくれなかったのですか!」

 

「『止めてくれるなよ』って言われたから」

 

「なら何で教えてくれなかったのですか!?」

 

「嘘です、絶対嘘です!三人共面倒くさかっただけでしょう!」

 

「「「うん(ああ)」」」

 

ガクリ、と黒ウサギが前のめりに倒れる。

そんな黒ウサギとは対照的にジンは顔面蒼白になっていた。

 

「たっ大変です!世界の果てにはギフトゲームのために野放しになっている幻獣が居ます。早く連れ戻さないと」

 

「幻獣?」

 

「はっはい、ギフトを持った獣のことです。特に世界の果てには強力なギフトを持ったものがいます。出くわしたら最後、人間では太刀打ちできません!」

 

「あら残念、彼はもうゲームオーバー?」

 

「ゲーム開始前にゲームオーバー?・・・・・・・斬新?」

 

「あぁ斬新だな」

 

「冗談を言っている場合ではありません!」

 

ジンは必至になって訴えるが、三人は叱られても肩を竦めるだけである。

そんな中、黒ウサギは黒ウサギはため息を吐きながら立ち上がった。

 

「はぁ、ジン坊ちゃん申し訳ございませんが御三人様の案内をよろしくお願いします」

 

「わかった。黒ウサギはどうするの?」

 

「問題児を捕まえて来ます。それでは皆さん、一刻程で戻ると思うので箱庭ライフを御堪能あれ」

 

そう言うと黒ウサギは髪の色を桜色に変えて来た道を逆走しながら飛び跳ねて行った。それを見ていた飛鳥が呟く。

 

「箱庭の兎は随分速く跳べるのね。素直に感心するわ」

 

「黒ウサギなら余程の幻獣がいない限り大丈夫だとは思いますが」

 

「そう。なら黒ウサギも言っていたし、お言葉に甘えて箱庭を堪能しましょうか。エスコートは貴方がしてくださるのかしら?」

 

「あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一の若輩ですがよろしくお願いします。三人の名前は?」

 

「久藤飛鳥よ。そこにいる猫を抱えているのと腕に機械を着けているのが」

 

「春日部耀」

 

「九重遊だ。よろしくな」

 

ジンの丁寧な自己紹介に倣って一例した。

 

「それじゃあ箱庭に入りましょう。まずはそうね。軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ」

 

「あぁそうだな。なん腹減ってきたし」

 

「異議なし」

 

そう言って飛鳥はジンの手を取ると、胸を踊らせるような笑顔で箱庭の外門をくぐるのだった。

 



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第4話

4話目です。
前回までが短過ぎたので今回から少し長くしました。
それではどうぞ!


俺達は箱庭の中に入ると近くにあった“六本傷”の旗を掲げるカフェテラスに座る。

すると、注文を取るために店の奥から素早く猫耳の少女が飛び出てきた。

 

「いらっしゃいませー。ご注文はどうしますか?」

 

「紅茶を3つと緑茶を1つあと軽食にコレとコレとコレ」

 

『ネコマンマを!』

 

「はい!ティーセット4つとネコマンマですね」

 

ん?と俺に飛鳥、それにジンが不可解そうに首を傾げる。だが耀は驚きを隠せずに店員を見ていた。

 

「三毛猫の言葉、分かるの?」

 

「はい!私、猫族ですからね。」

 

「箱庭って凄いね。私以外にも三毛猫の言葉が分かる人が居たよ」

 

『良かったな、お嬢』

 

「ちょっとまって、貴方もしかして猫の言葉が分かるの?」

 

「うん。猫だけじゃなくて生きていれば誰のの言葉でも分かるよ」

 

「俺が召喚したモンスターの言葉も分かりそうか?」

 

「うん。さっきの狼は黒ウサギのこと『兎だ!餌だ!』って言ってたよ」

 

「そ、そうか」

 

「それが本当なら強力なギフトですね。箱庭でも幻獣との意思疎通は難しいですから」

 

「ねえ久藤さん、九重君」

 

「飛鳥でいいわよ」

 

「俺も遊でいいぞ」

 

「うん、飛鳥に遊。2人はどんな力を持ってるの?」

 

「俺の力か?」

 

「私の力は酷いものよ、だって・・・」

 

「おんやぁ?誰かと思えば[名無しの権兵衛]、ジン=ラッセル君じゃあないか今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないのかい」

 

俺と飛鳥が自身の力の説明をしようとしたとき、スーツを着た身長2mはある大男が下品な喋り方で声を掛けてきた。

 

「何しに来たんですか?フォレス・ガロのガルド・ガスパー。それに僕達のコミュニティはノーネームです」

 

「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せたそうじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくもまだコミュニティを続けていられるな。そう思いませんか御三方」

 

ガルドと呼ばれたピチピチのタキシードを着た大男は3人の座る席の開いた椅子に行きよいよく腰掛ける。

3人に愛想笑いを向けるが、男の失礼な態度に3人は冷ややかな目で返す。

 

「同席は構わないが、せめて名前くらい名乗ってくれないか」

 

「おっと失礼、私は箱庭上層に陣取るコミュニティ“六百六十六の獣”の参加である「烏合の衆の」リーダーをしている、って待てやゴラァ!!誰が烏合の衆だ小僧オォ!!!」

 

ジンに横槍を入れられたガルドは怒鳴り声を上げながら激昂する。口は耳元まで裂け、肉食獣のような牙とギョロリと剥かれたが怒りとともにジンに向けられる。

 

「口を慎め小僧ォ・・・・・・紳士で通っている俺でも聞き逃さないものがあるぞ」

 

「森の守護者であった貴方なら別でしたが、今の貴方はただの獣でしかありませんよ」

 

「ハッ、そういう貴様こそ過去に縋る亡霊と変わらんだろうが、自分達のコミュニティの状況も理解できないのかい?」

 

「ハイ、ちょっとストップ」

 

険悪な2人を止めたのは飛鳥だった。

 

「2人の仲が悪いのはよく分かったわ。

でも、今の会話について幾つか質問したいのだけれどもいいかしら、ジンくん」

 

「そ、それは・・・・・・はい、分かりました」

 

刺すような飛鳥の視線にジンもしぶしぶ了承する。

そして、俺達は聞いた。

コミュニティの旗印と名前の事を

ジンや黒ウサギ達のコミュニティの状況を

魔王の事を

 

「なるほどね。だいたい理解したわ。つまり、ジンくん達は魔王に滅ぼされかけた崖っぷちのコミュニティを変えるために私達を呼び出した。そういう事ね」

 

「は、はい」

 

説明を終えて納得するかのように言う飛鳥にジンは縮こまりながら返事をする。

 

「ジン=ラッセル達のコミュニティの現状は分かったでしょう。そこで提案なのですが、3人とも黒ウサギと共にうちのコミュニティに来ませんか?うちのコミュニティなら全戦全勝ですよ」

 

「なっ!!」

 

ガルドの提案にジンが反応する。すると飛鳥が口を開いた。

 

「悪いけど、その提案にはのれないわね。だって私はジン君のコミュニティに入るって決めたし。春日部さん遊君貴方達はどう?」

 

「俺もジンのコミュニティだな」

 

「私はどっちでも、この世界には友達を作りに来ただけだし」

 

「あら、なら私がその友達1号に立候補してもいいかしら」

 

「なら俺も2号に立候補させてくれ」

 

「うん。2人ならいいよ」

 

「ふふ、ありがとう。よろしくね春日部さん」

 

「よろしくな、耀」

 

「うん。よろしく。2人が入るなら私もジンのコミュニティに入ろうかな」

 

俺達が笑顔で話しているのをガルドが驚愕をしながら見ていた。

 

「理由を聞かせてもらってもよろしいですかな」

 

「ん、あぁ簡単よ。貴方、なんか信用出来ないんだもの」

 

「同じく」

 

「お言葉ですが、」

 

「黙りなさい」

 

「ッ!」

 

飛鳥の一言でガルドの口は閉まり開こうとしても開かない。

 

「今からする質問に嘘偽りなく答えなさい。貴方はさっき“全戦全勝”と言ったわね。普通勝負事に置いてそう言い切ることは出来ないはず。なのにそう言い切ると言うことは余程の自信があるかもしくは何か卑怯な手を使っているということになる。そこはどうなのかしら」

 

飛鳥が言い終えるとガルドの口が勝手に話し出した。

 

「や、やり方は簡単だ。対戦相手のコミュニティから子供を連れ去り人質にする」

 

「なっ!」

 

ガルドの言葉にジンは驚愕している。俺と耀は無言でガルドと飛鳥を見ていた。

 

「ふぅん、それでその子供達はその後どうしたの」

 

「殺した」

 

「「「「ッ!!!」」」」

 

ガルドが発した言葉に4人とも目を大きく開く。そしてガルドは話を続けた。

 

「最初は幽閉していたが泣き喚いてうるさかったから殺した。それから攫ってきたガキは攫ったその日に殺している」

 

「はは、これは驚いた。思った以上に屑ね、貴方。ねえジン君、この場合箱庭ではどうなるの」

 

「はい。この事を箱庭上層部に伝えればガルドは裁かれるはずです。ですが、その前に箱庭から出られてはどうしようもありません」

 

「そう、それは残念」

 

と、飛鳥が溜息交じりに言った瞬間

 

「貴様らあぁぁぁ!!」

 

拘束の溶けたガルドが顔と手を虎に変身させて飛鳥に飛びかかった。飛鳥は身構えるが俺は素早く立ち上がりデュエルディスクを構え

 

「<黒竜の雛>を召喚」

 

俺の言葉とともに飛鳥の前に卵の殻から頭のみを出した小さな竜が現れる。

 

「ふん、そんなもの!!」

 

しかしガルドは止まらない。だが

 

「黒竜の雛の効果発動!このモンスターをリリースすることで<真紅眼の黒竜>を特殊召喚する」

 

「キシャァァァァァァァ!」

 

真紅眼の黒竜

レベル7

ドラゴン族

ATK2400

DEF2000

 

<黒竜の雛>は光の塵になったが、そこには新たに真紅の眼を持つ巨大な黒い竜、<真紅眼の黒竜>が現れた。真紅眼の黒竜は、そのまま突っ込んできたガルドを足で踏みつけ地面に押さえつける。その姿にジンに飛鳥、耀は言葉を失っている。そして俺は踏みつけられたガルドに近づいた。

 

「なぁガルド、箱庭から逃げうが裁かれようがどの道お前はもうこの世界には居られない。それは分かるな?」

 

「くそっ」

 

俺の質問にガルドが悔しがりながら答える。

 

「そこで提案だ。俺達とギフトゲームをしよう。おまえらはフォレス・ガロの存続を俺らは誇りと魂を掛けてな」

 

そして俺達は、フォレス・ガロに宣戦布告した。

 

 

 

 



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第5話

5話目です。
それではどうぞ!


「なんであの短時間に他のフォレス・ガロのリーダーに接触して喧嘩を売るなんて事になるんですか!?しかも場所は敵の本拠地で日取りは明日!?準備のためのお金も時間もありません!一体どういうつもりですか4人とも!」

 

「「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」」

 

「黙らっしゃい!」

 

口裏を合わせる4人に激怒する黒ウサギ。

それをニヤニヤしながら見ていた十六夜が止めに入った。

 

「まぁ、見境無く喧嘩売ったんじゃないんだから許してやれよ」

 

「十六夜さんは面白ろければいいと思っているかもしれませんが、このゲームはリスクが高すぎるうえに得られるのは自己満足だけです。見てください、この契約書類《ギアスロール》を!」

 

そう言って黒ウサギは、十六夜に契約書類を見せた。

 

「“参加者が勝利した場合、主催者は参加者の言及する罪をすべて認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する”か、確かに自己満足だな。時間をかければ立証できるものを、わざわざ取り逃がすリスクを負ってまで短縮させたんだからな」

 

ちなみに遊達のチップは“罪を黙認する”というものである。今回だけでなくこれ以降も口を閉ざさなくてはならなくなる。

 

「でも、時間さえ掛ければ必ず罪は暴かれます。それに人質の子供達はもう・・・・・・」

 

黒ウサギがそこから先を言うのを躊躇う。彼女もフォレス・ガロの噂は聞いていたが、ここまで酷いとは思わなかったのだ。

 

「あぁ、既に人質はこの世に居ない。そこを責めれば罪は暴けるだろうが、それでは時間が掛かり過ぎる。それに今ガルドを逃せば、いつか俺達に被害が及ぶ。それに、何より俺はあの外道が許せない!」

 

「はぁ〜〜。分かりました。まぁフォレス・ガロぐらいなら十六夜さん1人居れば楽勝でしょう」

 

俺の言葉に溜息を吐きながら了承する黒ウサギ。すると十六夜が

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねえぞ」

 

「当たり前よ。貴方なんか参加させないわ」

 

「えっ、イヤイヤダメですよ!。コミュニティの仲間なんですからしっかり協力しないと!」

 

フン、と鼻を鳴らす2人に黒ウサギは慌てて食ってかかった。だがそれを十六夜が止める。

 

「そういうことじゃねえよ黒ウサギ。この喧嘩は、コイツらが売ってヤツらが買った。なら俺が手を出すのは無粋ってもんだろ」

 

「あら、わかってるじゃない」

 

「あぁ、もう好きにしてください」

 

と、呟きながら肩を落とす黒ウサギにジンが話しかけた。

 

「それで、これからどうするの。とりあえずコミュニティに帰る?」

 

「あ、ジン坊ちゃんは先にお帰りください。ギフトゲームが明日なら“サウザンドアイズ”に皆さんのギフト鑑定をお願いしないと」

 

俺達4人は首を傾げて聞き直す。

 

「“サウザンドアイズ”?コミュニティの名前か?」

 

「YES。“サウザンドアイズ”は特殊な瞳のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭全土に精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」

 

「ギフト鑑定ってのは?」

 

「もちろん皆さんの秘めた力や起源などを鑑定することです。自分の力を正しく把握していた方が引き出せる力は多くなりますから。それに皆さんも自分の力出処は気になるでしょう」

 

そう言うと黒ウサギは“サウザンドアイズ”の支店に向かって歩き出す。4人は特に異論は無いのか黒ウサギの後について行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目的の店が見えてくる。すると

 

「いぃぃぃぃやっほぉぉぉぉぉぉ!!

久しぶりだ黒ウサギィィィィィ!!」

 

「イヤァァァァァァァァァ!」

 

店の中から1人の少女が出てきて叫びながら黒ウサギに向かって突っ込んできた。そのまま黒ウサギと少女は転がりながら浅い水路に落ちていった。

 

「あぁやっぱり黒ウサギは触り心地がいいのぉ。ここかここがいいのか?」

 

「白夜叉様!?どうしてこんな下層に!?ていうか、離れてください!」

 

そして黒ウサギは白夜叉と呼ばれる少女を投げ飛ばした。白夜叉は回転しなが十六夜の方に飛んでいく。それを十六夜は足で受け止めた。

 

「てい」

 

「ゴバァ!お、おんし、飛んできた美少女を足で止めるとは何様だ!」

 

「十六夜様だぜ。和装ロリ」

 

その光景を見ていた俺達3人は思い出したかのように白夜叉に話しかける。

 

「アンタこの店の人か?」

 

「おぉ、そうだとも。この“サウザンドアイズ”で白夜叉じゃ。おんしらは黒ウサギの新しい同士かの?話しなら店の中で聞こう」

 

こうして俺達は店の中に移動した。だが案内されたのは店の奥の和室だった。

 

「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で我慢してくれ」

 

そして俺達は部屋の中に入り座った。全員が座ったのを確認すると白夜叉が喋り出した。

 

「もう一度自己満足しておこうかの。私は四桁の門、3345外門に本拠を構えている。“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊した後でもちょくちょく手を貸している器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

 

「はいはい、お世話になっております本当に」

 

黒ウサギが投げやりな言葉で返す中、耀は首を傾げていた。

 

「外門って何?」

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」

 

黒ウサギが書いた上空からの図を見た俺達は各々の感想を口にした。

 

「大きな玉ねぎかしら?」

 

「いや、どちらかと言えばバームクーヘンだろ」

 

「ああ、確かにバームクーヘンだな」

 

「バームクーヘン、食べたいな」

 

何故か耀だけ感想になっていなかった。

 

「面白い例え方をするのぉ。ちなみに私のいる四桁以上が上層と呼ばれる階層だ。その水樹の持ち主の神格も私が与えた恩恵なのだぞ」

 

そう言って白夜叉は十六夜が貰ってきた水樹を指さした。すると白夜叉の言葉に十六夜が反応する。

 

「へぇ? じゃあお前はあの蛇より強いのか?」

 

「ふふん、当然だ。私は東側の”階級支配者”だぞ。この東側で並ぶ者がいない、最強の主催者なのだからの」

 

“最強の主催者”それを聞いた瞬間俺達4人は目を輝かせた。

 

「東側最強か、ならアンタのゲームをクリア出来れば、俺達が東側最強のコミュニティってわけだ」

 

「無論、そうなるの」

 

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けたぜ」

 

闘争心をむき出しにして白夜叉を見る俺達、白夜叉もそれに気がついたのか高らかと笑い声をあげた。

 

「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら私にギフトゲームを挑むと?」

 

「ちょ、ちょっと御四様方!?」

 

黒ウサギは慌てているが白夜叉が止める。

 

「よいよい黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている。だが、その前に1つ確認しなければならんことがある」

 

そう言うと白夜叉は袖から1枚のカードを取り出した。

 

「おんしらが望むのは挑戦か?それとも決闘か?」

 

そして、世界が破れた



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第6話

6話目です。
それではどうぞ!


白い雪原、凍る湖畔、そして水平に廻る太陽。

今、俺達はそんな世界にいた。

 

「なるほど、白夜と夜叉か。あの太陽やこの土地はお前自身を表現しているってことだな、白夜叉」

 

「如何にも。この白夜と雪原の世界は私が持つゲーム盤のひとつだ」

 

「これだけの莫大な土地が、ただのゲーム盤!?そんなデタラメな」

 

「しかも、ひとつってことはこの世界ほ他にもまだゲーム盤を持っているってことかよ」

 

「如何にも。して、おんしらの返答は?“挑戦”であるなら、手慰み程度に遊んでやる。だがしかし“決闘”を望むなら話は別だ。魔王として、命と誇りをかけて戦おうではないか」

 

俺達はその質問に即答出来ずにいた。勝ち目がないのは一目瞭然だ。しかし、自分達が売った喧嘩をこのような形で取り下げるのをプライドが邪魔していた。

しかし静寂の後、諦めたかのように笑う十六夜が挙手をした。

 

「参った。やられたよ白夜叉、降参だ。」

 

「うむ。それは試練を受けるということかの?」

 

「あぁ、アンタの力はよく分かった。今回は黙って試されてやるよ魔王様」

 

十六夜の答えに白夜叉は声を上げて笑った。そしてほかの3人にも質問をする。

 

「他の3人もそれで良いかの?」

 

「ええ、私も試されてあげてもいいわ」

 

「同じく」

 

「俺も同じだ」

 

俺達がその質問に答えると一連の流れを見ていた黒ウサギが、ホッと胸を撫で下ろした。

 

「もう、お互い相手を選んでください!それに白夜叉様が魔王だったのはもう何千年も前のことじゃないですか!!」

 

「ってことは、元魔王ってことか?」

 

「はて?どうだったかの」

 

悪戯っぽく答える白夜叉に黒ウサギはガクリと肩を落とした。すると、山の方から甲高い叫び声が聞こえた。

 

「何、今の鳴き声。初めて聞いた」

 

「ふむ。なるほど、奴ならお前達の試練には適任かもしれんのぅ」

 

白夜叉が1人で納得していると、山の方から一体の獣が現れた。上半身が鷲で下半身が獅子、グリフォンであった。

 

「うそ、本物!?」

 

「如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王 “力”“知恵” “勇気”の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」

 

白夜叉が指示を出すとグリフォンは地上に降りた。

 

「さて肝心のゲームの内容じゃが、こんなのでどうじゃ」

 

そう言うと白夜叉は契約書類を出現させた。

 

『ギフトゲーム名“鷲獅子の手綱”

 

プレイヤー一覧

逆廻 十六夜

久藤 飛鳥

春日部 耀

 

クリア条件

グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

クリア方法

“力”“知恵”“勇気”の何れかをグリフォンに認められる。

敗北条件

降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

宣告

上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

“サウザンドアイズ”印』

 

ギフトゲームのルールを確認する俺達。だが俺には1つ疑問があった。

 

「あれ?俺の名前が無いぞ?」

 

「あぁ、おんしには別にゲームを用意してあるからそちらをしてもらうぞ」

 

「あぁ、分かった」

 

俺は白夜叉に納得した。

 

そして3人のギフトゲームが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギフトゲームは耀が出場して見事勝利した。そして、白夜叉は俺の方を向き口を開いた。

 

「さてと、おんしのゲームも始めようかの」

 

白夜叉がそう言うと俺の目の前に契約書類が出現した。俺はそれを手に取り読む。

 

『ギフトゲーム名“白夜と決闘者の闘い”

 

プレイヤー一覧

九重 遊

 

クリア条件

白夜叉と闘う。

クリア方法

白夜叉にちさ“力”と“勇気”のどちらかを認められる。

敗北条件

降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

宣告

上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

“サウザンドアイズ”印』

 

「なるほど、つまりアンタと闘えってわけか」

 

「うむ。そういう事だな」

 

「ちょ、白夜叉様本気ですか!?」

 

俺と白夜叉がお互いに納得していると黒ウサギが慌てて食ってかかった。

 

「無粋なことするなよ黒ウサギ。これは俺の闘いだ。誰にも邪魔はさせねえよ」

 

「ですが」

 

「此奴の言うとうりじゃ。下がれ黒ウサギ」

 

白夜叉の言葉に渋々下がる黒ウサギ。

そして、ギフトゲーム盤始まった。

 

「うむ、初手は譲ってやろう。かかってくるがいい!」

 

「あぁ、最初から飛ばして行くぜ!俺は<サイバードラゴン>を特殊召喚」

 

「ガアァァァァァァ!」

 

サイバードラゴン

レベル5

機械族

効果

ATK2100

DEF1600

 

俺の言葉とともに機械の竜<サイバードラゴン>が出現する。

 

「このモンスターは、相手の場にのみモンスターがいる時手札から特殊召喚できる。(こいつを特殊召喚出来たってことは白夜叉はモンスター扱いなのか)」

 

「ほう、召喚系ギフトか」

 

「驚くにはまだ早いぜ!更に俺は、チューナーモンスター<ソード・マスター>を通常召喚」

 

「フン!」

 

ソード・マスター

レベル3

チューナー

効果

ATK1200

DEF0

 

「行くぜ!俺はレベル5の<サイバードラゴン>にレベル3の<ソード・マスター>をチューニング!」

 

<ソード・マスター>が3つの光の輪となり<サイバードラゴン>はその輪の中に入った。すると、<サイバードラゴン>は5つの白く輝く星になった。

 

レベル3+レベル5=レベル8

 

「集いし願いが、新たに輝く星となる。光射す道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ、<スターダストドラゴン>!!」

 

「グオォォォォォォォォン!」

 

スターダストドラゴン

レベル8

ドラゴン族

シンクロ

効果

ATK2500

DEF2000

 

輪の中が光り、その光りが収まるとそこにはまるで星のような龍、<スターダストドラゴン>が出現していた。

 

「なに!?龍の純血種を召喚したじゃと!」

 

「なっ!」

 

「へぇ」

 

「綺麗」

 

「すごい」

 

スターダストの登場に俺以外の全員がそれぞれ違う反応をする。

 

「そして俺は、カードを2枚伏せる」

 

俺の言葉と共に足元に2枚のカードが出現した。

 

「待たせたな、白夜叉。行け!スターダスト、白夜叉に攻撃だ!響け、シューティングソニック!!」

 

俺が指示を出すとスターダストは口からブレスを放つ。しかし

 

「ふん、甘いわ!」

 

白夜叉はスターダストのブレスを片手で受け止めた。

 

「何!」

 

「ふん!何を驚いている。私は元とはいえ魔王だったのだぞ。この程度の攻撃など効かぬわ!」

 

そう言うと白夜叉は攻撃を止めていた腕を振るいスターダストのブレスをかき消した。

 

「では次は、こちらから行くぞ!」

 

そして白夜叉は炎の球体を作り出しスターダストに向かって投げつけた。

 

「くっ!スターダストは殺らせない。罠《トラップ》発動!<くず鉄のかかし>攻撃を無効にする。そしてこのカードを再セットする」

 

俺の足元に伏せられていたカードのうち1枚のが開きスターダストの前にくず鉄で作られたかかしが出現した。そして白夜叉の攻撃は<くず鉄のかかし>に阻まれ消滅した。

 

「ほう、モンスターだけでなく特殊な能力を宿したカードもあるのか。だがどうする?そのドラゴンでは私に傷ひとつ負わせることは出来んぞ」

 

「まぁそう慌てるなよ。ゲームはまだ始まったばかりだろ」

 

「まぁ、そうだな。では特別に新たなモンスターを召喚するまで待ってやろう」

 

「ハッ!その言葉、後悔するなよ!」

 

白夜叉の言葉に俺は強気で返す。

 

「行くぜ!魔法カード<ワン・フォー・ワン>を発動。手札のモンスター1体を墓地へ送りデッキからレベル1のモンスターを特殊召喚する。俺は<レベルスティーラー>を特殊召喚」

 

レベルスティーラー

レベル1

昆虫族

効果

ATK600

DEF0

 

「へぇ、伏せずに発動できるカードもあるのか」

 

「そのようですね。手札から発動できるのが魔法カード、伏せてから発動させるのが罠カードといったところでしょうか」

 

「あぁ、そうみたいだな。だが、あのモンスターで闘えるのか?」

 

十六夜の疑問はもっともだ。

そう、レベルスティーラーの攻撃力は600。攻撃力2500のスターダストの攻撃で無傷の白夜叉をどうにかする力はこのモンスターには無い。だが、これで終わりではない。

 

「更に今墓地へ送った<伝説の白石>の効果発動、デッキから<青眼の白龍>を手札に加える」

 

「“白龍”、新たなドラゴンか」

 

と白夜叉は呟いたが今の俺には関係ない。

 

「そして、手札から魔法カード<二重召喚>を発動。これにより通常召喚を2回行える。俺は<ゴブリンドバーグ>を召喚」

 

ゴブリンドバーグ

レベル4

戦士族

効果

ATK1400

DEF0

 

「更に、手札のカゲトカゲはレベル4のモンスターを通常召喚した時、手札から特殊召喚できる」

 

カゲトカゲ

レベル4

爬虫類族

効果

ATK1100

DEF1500

 

「ゴブリンドバーグの効果発動、レベル4のモンスターを特殊召喚。来い、<ガガガマジシャン>」

 

「ハアッ!」

 

ガガガマジシャン

レベル4

魔法使い族

効果

ATK1500

DEF1000

 

「さぁ、行くぜ!まず俺は<レベルスティーラー>と<カゲトカゲ>をリリース」

 

2体のモンスターが光の塵となり消えた。

 

「これにより、<青眼の白龍>をアドバンス召喚!」

 

「シャアァァァァァァァァァ!」

 

青眼の白龍

レベル8

ドラゴン族

ATK3000

DEF2500

 

「2体目のドラゴン!」

 

「すごい」

 

「まだだぜ!」

 

青眼の登場に驚く黒ウサギと目を輝かせる耀。だがまだ終わってはいない。

 

「俺は<ガガガマジシャン>と<ゴブリンドバーグ>でオーバーレイ!」

 

その言葉と共に<ガガガマジシャン>と<ゴブリンドバーグ>は光の塊となり黒い渦に吸い込まれた。

 

「エクシーズ召喚!<カチコチドラゴン>」

 

カチコチドラゴン

ランク4

ドラゴン族

エクシーズ

効果

ATK2100

DEF1300

 

次は全身が鋼に包まれたドラゴンが出てきた。

 

「3体目か。だが、その程度」

 

「俺は<スターダストドラゴン>と<カチコチドラゴン>をリリース」

 

「「「「「っ!!」」」」」

 

俺の言葉に全員が驚いていた。せっかく召喚したドラゴンをリリースしたからだ。

 

「闇に輝く銀河よ、希望の光となりて我が下僕に宿れ。光の化身、ここに降臨!<銀河眼の光子竜>!!」

 

「グオォォォォォォォォン!」

 

銀河眼の光子竜

レベル8

ドラゴン族

効果

ATK3000

DEF2500

 

「更に俺は、魔法カード<死者蘇生>を発動!このカードの効果により蘇れ<スターダストドラゴン>!!」

 

「グオォォォォォォォォン!」

 

「ドラゴンが3体!」

 

「すげえな、こりゃ」

 

「さてそろそろ来るかの?」

 

「あぁ、行くぜ!3体のドラゴンの同時攻撃。

響け、シューティングソニック!!

滅びのバーストストリーム!!

破滅のフォトンストリーム!!」

 

俺の指示に3体のドラゴンが同時にブレスを放った。

 

「ぐっ!ガアァァァ!」

 

白夜叉は防ごうとしたが防御ごと攻撃に飲み込まれた。

 

「やっ、やったか?」

 

俺は攻撃終了後に白夜叉がいた所を見て呟いた。

しかし、そこには右腕を負傷しているものの、しっかりと立っている白夜叉がいた。

 

「おいおい、これでもダメなのか」

 

「いや、おんしの力しかと見せてもらった。ゲームはおんしの勝ちじゃよ」

 

こうして俺も無事試練をクリア出来た。

 

 



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第7話

7話目です。
本日2度目の投稿です。
短めですが、それではどうぞ!


「白夜叉様!」

 

「遊君!」

 

俺と白夜叉のギフトゲームが終わると黒ウサギ達4人が俺達の方に向かってきた。

 

「大丈夫ですか白夜叉様!」

 

「あぁ、このくらい何ともない」

 

俺が召喚したドラゴン3体の攻撃で右腕を負傷した白夜叉だがどうやら大事にはいたらなかったようだ。

 

「いや、見事な攻撃だった。まさか龍を3体も召喚するとはの大したもんじゃ。それで黒ウサギ、今日の依頼は何だったかの?」

 

「えぇ、ギフトの鑑定をお願い出来ればと」

 

「何!?鑑定じゃと、もろに専門外なのだが」

 

黒ウサギの言葉を聞いて苦い顔をする白夜叉。しかし、すぐに明るい顔に戻る。

 

「まあ、よかろう。主催者としてゲームをクリアした者には恩恵を与えねばならんしな。復興の前祝いだ、受け取るがよい!」

 

白夜叉が手を2回叩くと俺達4人の前にそれぞれ色の違うカードが出現する。

 

コバルトブルーのカードに逆廻十六夜

ギフトネーム

“正体不明”

 

 

ワインレッドのカードに久藤飛鳥

ギフトネーム

“威光”

 

 

パールエメラルドのカードに春日部耀

ギフトネーム

“生命の目録”

“ノーフォーマー”

 

 

ホワイトシルバーのカードに九重遊

ギフトネーム

“デュエルモンスターズ”

“デュエルディスク”

 

 

それを見て黒ウサギは驚いていた。

 

「まさか、ギフトカード!!」

 

「何それ?御中元?」

 

「御歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「商品券?」

 

「ち、違います!それはギフトカードといって、顕現しているギフトを収納できるうえに所有者のギフトネームがわかるという超貴重な恩恵なのです!」

 

「それの正式名称は“ラプラスの紙片”全知の一端だ。今、黒ウサギが言ったとうり恩恵の名前がわかるぞ」

 

「へぇ、じゃあ俺のはレアケースってわけだ」

 

「何!?」

 

十六夜の言葉に反応した白夜叉は十六夜のギフトカードをのぞき込む。そして、十六夜のギフトネームを見た瞬間、驚愕した。

 

(“正体不明”じゃと!ギフトカード、ラプラスの紙片でも判定出来んとは、これは面白くなってきたのぉ。じゃが、魔王の爪痕を見てどこまで余裕でいられるかのう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白夜叉とのゲーム後、俺達はノーネームの本拠に向かった。だが、そこは視界一面の廃墟だった。

 

「こっ、これは!?」

 

その光景に俺と十六夜は目を細め、飛鳥と耀は息を飲んだ。

十六夜が木材の残骸を手に取るが、掴んだ瞬間木材は乾いた音を立てて崩れていった。

 

「おい、黒ウサギ。魔王とのギフトゲームってのは今からいったい何百年前だ?」

 

「わずか3年前でございます」

 

「3年!?」

 

「マジかよ、軽く見積もっても200年は経っていると思うんだがな」

 

黒ウサギの返答に俺と十六夜は驚愕し、十六夜は自分の感想を述べる。

 

「土が死んでる」

 

「ハッ、いいねえ。こりゃあ想像以上に面白そうじゃねえか!」

 

そして俺達はノーネーム本拠の住居区に向かうのだった。

 

 

 



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第8話

8話目です。
それではどうぞ!


白夜叉とのギフトゲームの翌日俺達はガルドとのギフトゲームのためフォレス・ガロの本拠の門の前に来ていた。しかし

 

「なあ、黒ウサギ。フォレス・ガロの本拠ってジャングルなのか?」

 

「虎の住むコミュニティだ。おかしくはないだろ」

 

「いえ、以前はもっと普通だったはずなのですが」

 

そこは、赤黒い木々が生い茂る不気味なジャングルだった。

ジンが、その木の枝に触れる。すると、木は鼓動するかのように脈打つ。

 

(鬼、鬼種化の恩恵。まさか彼女が?)

 

「ジン君、ここに契約書類があるわよ」

 

飛鳥が発見した契約書類を俺達全員が見る。

 

『ギフトゲーム名“ハンティング”

 

プレイヤー一覧

九重 遊

久藤 飛鳥

春日部 耀

ジン=ラッセル

 

クリア条件

ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐

クリア方法

ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は“契約”によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。

敗北条件

降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

指定武具

ゲームテリトリーにて配置。

 

宣誓

上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

“フォレス・ガロ”印』

 

「ガルド自身をクリア条件に、指定の武具で打倒!?」

 

「こ、これはまずいです!」

 

「指定武具ってことは、俺達のギフトが効かないってことか。厄介だな」

 

「自分の命をクリア条件にしたことで、勝負を五分に持ち込んだわけだな」

 

「迂闊でした。あの時ルールもその場で決めていればこんなことには」

 

ジンが悔しがっていると、飛鳥が黒ウサギに質問する。

 

「指定の武具ってことは何らかの形で指示されていると考えていいのよね」

 

「YES。それは、間違いありません」

 

「モンスターで、外傷はあたえられなくても防御したり押さえつけたりすることは可能か?」

 

「YES。可能だと思われます。ただ、飛鳥さんのギフトはガルドには直接の効果は無いかも知れません。他に質問はありますか?」

 

「いや、それだけ聞ければ十分だ」

 

「まぁ、何とかなるでしょ。さぁ、行きましょ」

 

「大丈夫、私も頑張るから」

 

「まぁ、何とかなるだろ」

 

黒ウサギに質問し終わると俺達はジンを励ましながらゲーム会場に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャングルの中を進む俺達は、その中で1軒の屋敷を見つけた。耀が言うにはガルドはあの屋敷の中に居るらしい。俺達は警戒しながらその屋敷の中に入った。

 

「外のジャングルは奇襲のためではなかったのね。いったい何が目的かしら?」

 

「本人に聞くしかないかも」

 

「素直に話してくれたらね」

 

「確かにな」

 

話しながら屋敷の中を見て回ると最後に大きめの扉の前にたどり着いた。俺達は全員が目を合わせた後、その扉を行きよいよく開ける。するとそこには一匹の虎が呻き声をあげながらこちらを睨んでいた。

 

(鬼、しかも吸血種。やっぱり彼女が)

 

ジンはガルドのことを分析していると壁に刺さっている銀の十字剣を見つけた。

 

「アレです!おそらくアレが指定武具です!」

 

「ガアァァァァァァ!」

 

ジンの声と同時にガルドが襲いかかってきた。

 

「止まりなさい!」

 

飛鳥はギフトを発動するが、ガルドは止まらずにそのまま攻撃してくる。

 

「下がって!」

 

耀が前に出てガルドの攻撃を受け止めた。

 

「2人とも逃げろ!」

 

俺は飛鳥とジンに逃げるように言う。だか、飛鳥はジンにだけ逃げるように言った。

 

「ジン君、あなたは逃げなさい」

 

「そんな、僕だって闘えます!」

 

「いいから『逃げなさい』」

 

「はい」

 

そう言うと、ジンは飛鳥を抱えて走り出した。

 

「ちょ、ちょっと逃げるのはあなた1人でよ!」

 

2人はそのまま屋敷の外まで走り去ってしまった。耀がガルドを押し返して、そのまま自身も跳躍して十字剣の所まで跳び、十字剣を掴んだ。そして、俺の横に着地した。

 

「耀、俺がガルドを拘束するからその隙に攻撃してくれ」

 

「出来るの?飛鳥のギフトは効かなかったみたいだけど」

 

「あぁ、おそらくは物理的な物なら効くはずだ。行くぞ!」

 

そう言うと俺はデュエルディスクを構えた。

 

「俺は、魔法カード<光の護封剣>を発動!」

 

俺の言葉と共に3つの光の剣が出現してガルドの動きを封じた。だが魔法カードでは効果が薄いのか抵抗するガルドに光の護封剣は今にも壊れそうになっていた。

 

「耀、今だ!」

 

「ハア!」

 

動きの止まったガルドに向かって十字剣で攻撃すようとする耀。だが、ガルドは耀の剣が届く前に光の護封剣を破壊してその爪で耀に攻撃した。耀の剣はガルドの攻撃に阻まれ背中に少しかする程度になってしまった。だがガルドの攻撃は耀の右腕に直撃し爪で耀の腕の肉を切り裂いた。

 

「くっ!」

 

「耀!」

 

俺は、後退した耀に駆け寄る。耀は、膝をつき腕からは血を流している。

 

「ごめん、失敗した」

 

「いや、俺の考えてが甘かった。ここは、一端引くぞ。<ガード・オブ・フレムベル>を守備表示で召喚」

 

「ガアァァァァァァ!」

 

ガード・オブ・フレムベル

レベル1

ドラゴン族

チューナー

ATK100

DEF2000

 

「頼む、時間を稼いでくれ」

 

そして俺は、十字剣を持つ耀を抱えて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃ジンと飛鳥は、屋敷の外のジャングルまで来ていた。

 

「吸血鬼!?」

 

「はい。ガルドは人化の術を覚えた虎が魔王の力で悪魔化した者です。おそらく、その人の部分を吸血鬼によって鬼種に変えられたのでしょう」

 

「だから銀の十字剣か、でも、いったい何故吸血鬼がガルドに・・・」

 

2人が話していると後ろの茂みがガサガサと音を立てて揺れた。

 

「っ、誰!」

 

「俺達だよ」

 

茂みから出てきたのは右腕を負傷した耀と、耀を抱えた遊だった。

 

「春日部さん!大丈夫!?」

 

「耀さん!」

 

ジンと飛鳥の2人が、負傷している耀に駆け寄る。俺は耀をそっと地面に下ろした。

 

「大丈夫じゃ、ない。泣きそう」

 

「済まない。俺の考えが甘かったせいで」

 

負傷した耀と拳を固く握りしめる俺を見て飛鳥は髪に縛っていたリボンを解いてジンに渡した。

 

「ジン君、これで出血を止めておいて」

 

そう言うと飛鳥は、耀の落とした十字剣を手に取り屋敷に向けて歩き出そうとする。

 

「待て、飛鳥」

 

しかし、俺は飛鳥に声を掛けて止めた。

 

「あら、止めたって私は行くわよ」

 

「いや、そうじゃない。俺も行く」

 

そう言うと俺は飛鳥の横に立つ。

 

「策はあるの?」

 

「あぁ、ひとつだけな」

 

「そう、なら行くわよ!」

 

「あぁ!!」

 

そして、俺と飛鳥の2人は屋敷に向けて歩き出した。

 



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第9話

9話目です。
それではどうぞ!


「それで、策があると言っていたけどどうするつもりかしら?」

 

「あぁ。だが、これは策と言うより掛けに近い。成功する確率は五分だ。それでもやるか」

 

「えぇ、それでガルドに勝てるのならね」

 

飛鳥は、失敗した時のことを聞かなかった。失敗すれば敗北。成功すれば勝利。これさえはっきりしていれば今の飛鳥には十分だった。そして、遊は説明を始めた。

 

「まず、時間稼ぎに残してきた<ガード・オブ・フレムベル>にガルドをここまで誘導させる」

 

そう言って俺は、デュエルディスクに乗っているカードを飛鳥に見せた。

 

「そして、このカードを使う」

 

俺はデッキから1枚のカードを取り出して飛鳥に見せた。そのカードは、魔法カード<融合>だった。

 

「魔法カード<融合>。このカードで俺のモンスターと飛鳥を融合して、飛鳥の力を底上げする」

 

「それで、その融合のどこが掛けなの?」

 

「成功するかどうかわからないのと成功したとしも飛鳥の意識を保っていられるかどうかだな」

 

「でも成功すれば勝てるのでしょう」

 

「あぁ、このゲームの勝利条件は指定武具の十字剣でガルドを討伐することだ。身体能力でガルドを上回れば勝利できるはずだ。それに元に戻す方法もある」

 

説明を受ける飛鳥。しかし彼女には疑問に思う事があった。

 

「何故、遊君ではなく私なのかしら?」

 

「このカード<融合>は俺自身に発動することが出来ない。他の魔法カードなら可能だが融合だけはどうやらダメみたいだ」

 

「・・・・・・わかったわ。その掛け乗りましょう」

 

飛鳥は少し考えた後に答えを出した。

 

「よし。なら、今からガルドをここに誘導するぞ」

 

そして、しばらくすると炎を纏った竜とともにガルドが茂みから姿を現した。俺と飛鳥はガード・オブ・フレムベルが時間を稼いでくれている間に融合の準備を進める。

 

「俺は、儀式魔法<カオスの儀式>を発動。手札のレベル4<ガガガマジシャン>と<レアメタルドラゴン>を墓地に送り<カオスソルジャー>を儀式召喚!」

 

「ハァ!」

 

カオスソルジャー

レベル8

戦士族

儀式

ATK3000

DEF2500

 

「更に、魔法カード<融合>を発動!行くぞ、飛鳥!」

 

「ええ!」

 

「フィールドの<カオスソルジャー>と久藤飛鳥を融合!」

 

俺の前に融合のカードが出現し、渦を発生させて、そこに飛鳥とカオスソルジャーを吸い込んだ。

 

「支配の力を持つ少女よ、戦士の力と一つとなりて剣士として生まれ変わらん。融合召喚!<支配の剣士久藤飛鳥>!!」

 

「ハァ!」

 

支配の剣士久藤飛鳥

レベル6

戦士族

融合

効果

ATK?

DEF?

 

渦が収まると、そこには十字剣を構え騎士の鎧を着た飛鳥が居た。

 

「飛鳥?行けるか?」

 

「えぇ!大丈夫、行けるわ!」

 

どうやら成功したようだ。心も飛鳥のものだ。

 

「よし、なら行くぞ!<支配の剣士久藤飛鳥>の効果発動。このモンスターの攻撃力、守備力は飛鳥と融合した戦士族モンスターの数値+500となる」

 

ATK3500

DEF3000

 

「『拘束なさい』」

 

飛鳥がギフトを発動しガルドの周りの木々がガルドを拘束した。だが、ガルドは木々を引きちぎり飛鳥に攻撃を仕掛ける。飛鳥はそれを見て自らも十字剣を構えてガルドに向かって突っ込んだ。そして、交差する両者。

 

「くっ」

 

飛鳥は片膝を付いてしまうが、ガルドは灰になって消えた。

 

「これで、ゲーム終了ね」

 

「あぁ、俺達の勝ちだ」

 

こうして、ガルドとのギフトゲームは俺達ノーネームの勝利となった。




タグに「オリカ有り」を追加しました。

オリカ説明

支配の剣士久藤飛鳥

レベル6
戦士族
融合
効果
ATK?
DEF?
久藤飛鳥+レベル5以上の戦士族モンスター
このモンスターの攻撃力と守備力は素材に使用した戦士族モンスターの元々の数値+500となる。
1ターンに1度以下の効果から選択し発動できる。
・相手モンスター1体のコントロールを得る。
・相手モンスターの表示形式を変更する。
・相手フィールドの表側表示で存在する魔法、罠、モンスターの効果を使用する。


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第10話

遅れてすみませんでした。
10話目です。
それではどうぞ!



「ゲームが延期?」

 

ガルドとのギフトゲームが終わり俺達はノーネーム本拠に帰ってきていた。あのあとフォレス・ガロは解散となりその傘下にあったコミュニティも名前と旗印を返された。耀の傷はノーネーム本拠に有るギフトで2、3日で治すことができるらしい。本拠の居住区画の1室で俺達は話をしていた。どうやらノーネームの昔の仲間を掛けたゲームが延期になってしまったらしい。

 

「はい・・・・・・申し込みに行った際に知りました。どうやら巨額の買い手が付いてしまったようで、このまま中止になる線もあるそうです」

 

そう言いながら黒ウサギはうさ耳を萎れさせ、口惜しそうに顔を歪めて落ち込んでいる。ソファーに座る十六夜の顔が不快そうに変わった。おそらく俺も同じような顔をしているだろう。

 

「チッ、所詮は売買組織ってことかよ。エンターテイナーとしちゃ五流もいいとこだ。サウザンドアイズは巨大コミュニティじゃなかったのか?プライドはないのかよ」

 

「仕方が無いですよ。〝サウザンドアイズ〟は群体コミュニティです。白夜叉様のように直轄の幹部が半分、傘下のコミュニティの幹部が半分です。今回の主催は〝サウザンドアイズ〟の傘下コミュニティの幹部、〝ペルセウス〟。双女神の看板に傷が付く事も気にならない程のお金やギフトを得れば、ゲームの撤回ぐらいやるでしょう」

 

十六夜と黒ウサギが話す中、俺は一つ気になる事があった。

 

「ところで、その元仲間ってどんな奴なんんだ?」

 

「そうですね………一言でいえば、スーパープラチナブロンドの超美人さんです。指を通すと絹糸みたいに肌触りが良くて、湯浴みの時に濡れた髪が星の光でキラキラするのです」

 

「へえ?よく分からんが見応えは有りそうだな」

 

「それはもう!加えて思慮深く、黒ウサギより先輩でとても可愛がってくれました。近くに居るのならせめて一度お話ししたかったのですけど・・・・・・」

 

「おや、嬉しい事を言ってくれるじゃないか」

 

俺達ははっとして窓の外を見た。そこにはコンコンと叩くガラスの向こうで、にこやかに笑う金髪の少女が浮いていたのだ。跳び上がって驚いた黒ウサギは急いで窓に駆けよる。

そして窓を開けその少女を部屋の中に招き入れた。

 

「レ、レティシア様!」

 

「様はよせ。今の私は他のコミュニティに所有されている物だ」

 

そう言うとレティシアは部屋の中に入り黒ウサギの近くによる。

 

「黒ウサギ、もしかしてその娘が?」

 

「はい。この方が先程話していたレティシア様です」

 

「こんな所からの入室ですまない。黒ウサギの元仲間のレティシア・ドラクレアだ。種族は吸血鬼だ」

 

自己紹介をするレティシアに十六夜は目を細める。

 

「あぁ、だが一つ聞きたい事がある。ガルドに手を貸したのはお前か?」

 

「あぁ、君達に今のノーネームを救う力があるかどうか試させてもらった」

 

十六夜の質問にレティシアは少し申し訳なさそうに答えた。

 

「へぇ。で、結果は?」

 

「あぁ、ガルド如きでは当て馬にもならなかったよ。だから私が直接来たわけだ」

 

「ほぅ。なら」

 

「あぁ、試させてもらうぞ。お前達の力を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は住居区の建物の外に移動していた。そこには、十六夜とレティシアが対峙していた。俺、飛鳥、黒ウサギ、ジンは一箇所に集まりその様子を見守る。

 

「では始めようか」

 

レティシアはそう言うと黒い影のような翼を出現させて空へと飛んだ。

 

「へぇ?箱庭の吸血鬼には翼がはえてるのか?」

 

「あぁ、翼で飛んでいる訳ではないがな。制空権を支配されるのは不満か?」

 

「いいや。ルールにそんなのなかったしな」

 

(なるほど、気構えは十分。あとは実力が伴うか否か・・・・・・!)

 

満月を背負うレティシアは微笑と共に翼を広げ、己のギフトカードを取り出した。金と紅と黒のコントラストで彩られたギフトカードを見た黒ウサギは蒼白になって叫ぶ。

 

「レ、レティシア様!?そのギフトカードは」

 

「下がれ黒ウサギ。力試しとはいえ、これが決闘である事に変わりない」

 

ギフトカードが輝き、長柄の武具が現れる。

 

「互いにランスを一打投擲する。受け手はとめられねば敗北だ。悪いが先手は譲ってもらうぞ」

 

「好きにしな」

 

そして、レティシアは投擲用に作られたランスを掲げ

 

「ふっ!」

 

呼吸を整えランスを一気に放つ。その衝撃で空気中に視認できるほどの巨大な波紋が広まった。

ランスは一直線に十六夜に向かって落下していく。その流星の如く大気を揺らして舞い落ちる槍の先端を前に、十六夜は牙を剥いて笑い

 

「カッ、しゃらくせえ!」

 

殴りつけた。

 

『は・・・・・・!!?』

 

十六夜を除く全員が素っ頓狂な声を上げた。

槍は砕け鉄塊とかしその破片はレティシアへと向かう。

 

(これほどのものとは!?)

 

レティシアが驚愕しながらも十六夜の実力を認め、覚悟を決めたその時

 

「レティシア様!」

 

黒ウサギが二人の間に割って入り破片が当たる前にレティシアに抱きついた。バランスを崩したレティシアはそのまま黒ウサギと共に落下した。

地面に落ちると黒ウサギはレティシアのギフトカードを手に取り確認する。

 

「ギフトネーム"純血の吸血姫"。やはり、ギフトネームが変わっている。鬼種は残っているものの神格が残っていない」

 

「なんだ?ひょっとして力落ちてたのか?道理で張り合いねぇ訳だ」

 

「レティシア様、どうしてこのような事に」

 

「そ、それは・・・」

 

レティシアが返答する前に空から光が迫ってきた。レティシアは黒ウサギや俺達を庇うように前に出てその光を浴びてしまう。光が収まるとそこには、石になったレティシアが居た。

 

その時、俺の中で何かが切れた。

 

そして、タイミングを見計らったかのように甲をかぶった集団が翼の生えた靴で飛行してきた。

 

「いたぞ!吸血鬼は石化させた。すぐに捕獲しろ!」

 

「ノーネームの連中もいるようだがどうする!?」

 

「邪魔するようなら構わん、切り捨てろ!」

 

「ゴーゴンの首を掲げた旗印・・・コミュニティ"ペルセウス"」

 

「例のゲームを中止にしやがった奴らか。ハッ生まれて初めてオマケに扱われたぜ」

 

十六夜が不機嫌そうに言っているとペルセウスの集団が地面に降りてきた。

 

「それから離れろ名無し風情が。その吸血鬼は我々のコミュニティの大事な“モノ”だ」

 

「ありえな「おい」っ!」

 

黒ウサギが何か言おうとした時、俺が割って入り前に出た。

 

「いきなり出てきてレティシアをモノ扱い。しかも邪魔するなら切り捨てろだと。ふざけるのも大概にしろ!」

 

俺はかつて無いぐらい怒っていた。コイツらは許さない。

 

「フィールド魔法<破邪の魔法壁>を発動」

 

発動と共に六芒星の描かれた結界が発生した。

 

「な、なんだこれは!?」

 

「これで、お前達はもう逃げられん。黒ウサギ!」

 

「は、はい!」

 

いきなり名前を呼ばれて驚く黒ウサギ。だが今のそんなことを今の俺は気にしない。

 

「レティシアを頼むぞ!」

 

「っ!はい!」

 

黒ウサギが石化したレティシアのそばに寄りながら返事をする。どうやら察してくれたようだ。これで全力を出すことができる。

 

「貴様ら、覚悟しろ。相手フィールドにのみモンスターが存在する時このモンスターは特殊召喚できる。来い!<サイバー・ドラゴン>!」

 

「ガアァァァァァァ!」

 

サイバー・ドラゴン

レベル5

機械族

効果

ATK2100

DEF1600

攻撃表示

 

「更に魔法カード<エボリューション・バースト>を発動!その飛行ギフトを破壊する。

エボリューション・バースト!」

 

「何!?」

 

サイバー・ドラゴンがブレスを吐き連中の飛行ギフトを破壊した。落下するペルセウスの連中は地面に描かれた六芒星の上に着地する。

 

「まだだ!魔法カード発動!<パワー・ボンド>!このカードはフィールドまたは手札の機械族モンスターで融合召喚を行う。場の<サイバー・ドラゴン>1体と手札の<サイバー・ドラゴン>2体を融合」

 

更に2体のサイバー・ドラゴンが出現する。そして、3体のサイバー・ドラゴンが光の渦に吸い込まれた。

 

「現れろ!<サイバー・エンド・ドラゴン>!!」

 

「「「ガアァァァァァァァァァァ!」」」

 

サイバー・エンド・ドラゴン

レベル10

機械族

融合

効果

ATK4000

DEF2800

攻撃表示

 

現れたのは三つの首を持つ機械龍だった。一つ首のサイバー・ドラゴンは白夜叉のゲームの時も使用されたが、このモンスターは威圧感がその比ではない。

 

「な、なんだコレは!?」

 

「馬鹿な!?ノーネームがこれ程の召喚獣を使役するだと!」

 

「パワー・ボンドの効果、このカードを使用して召喚された融合モンスターの攻撃力は2倍となる更に<破邪の魔法壁>の効果で攻撃力300ポイントアップだ!」

 

ATK4000→ATK8300

 

「攻撃力を2倍にするギフト!?」

 

「おいおい、こいつは」

 

パワー・ボンドの効果にペルセウスの連中だけでなく黒ウサギや十六夜も驚きの声を上げる。

 

「バトルだ!行け!サイバー・エンド・ドラゴン!」

 

サイバーエンドがブレスの構えをとる。

ペルセウスの連中が盾を構えた。

 

「無駄だ!サイバーエンドには守備を貫通する能力がある。サイバーエンドの攻撃!

エターナル・エボリューション・バースト!!」

 

サイバー・エンド・ドラゴンのブレスがペルセウスの連中を飲み込んだ。

攻撃が止むとペルセウスの連中が気絶して倒れていた。

俺はフィールド魔法を解除して皆の所に向かう。

 

「すまない、怒りを抑えられなかった」

 

「いえ、遊さんがしていなければ黒ウサギがやっていたのですよ」

 

「あぁ、そう言ってくれると助かる」

 

「なぁ、アイツらどうするんだ」

 

「拘束してペルセウスに突き出す?」

 

「いや、それよりも白夜叉の所に行こう。もちろんアイツらは拘束してな。だがその前に、魔法カード<融合解除>を発動」

 

「ガアァァァァ!」

 

「ガアァァァァ!」

 

「ガアァァァァ!」

 

魔法カードの発動と共にサイバー・エンド・ドラゴンが3体のサイバー・ドラゴンに分離した。

 

「コイツらに見張りをさせよう」

 

「何で分離させたんだ?」

 

「<パワー・ボンド>は召喚されて一定時間たつと召喚したモンスターの攻撃力分のダメージをうけるんだ」

 

強いカードにはデメリットが付き物である。

 

「そ、そう。それじゃあジン君レティシアをお願いね」

 

「は、はい」

 

そして俺達はレティシアをジンにペルセウスの連中をサイバー・ドラゴン達に任せサウザンドアイズ支店へと向かった。



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第11話

11話目です。
それではどうぞ!


ペルセウスの連中をサイバー・ドラゴンとジンに任せた俺達はサウザンドアイズの支店前に来ていた。そこには、蒼髪の女性店員が俺達を待っていたかのように立っていた。

 

「お待ちしておりました。中へどうぞ。オーナーがお待ちです」

 

女性店員に案内され俺達は先日訪れた白夜叉の私室に到着した。そこには白夜叉ともう一人。コミュニティ“ペルセウス”のリーダー、ルイオスが居た。俺達は用意された座布団に座ると黒ウサギがここに来た経緯を説明した。そして、黒ウサギはペルセウスに対して決闘を申し込むが

 

「いやだ」

 

「はい?」

 

しかし、唐突にルイオスは言った。

 

「決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れ回ったって証拠があるの?」

 

ルイオスは黒ウサギの言葉を信じていなかった。仮にここで“レティシアの石化を解いて聞いてみろ”などと言っても口裏を合わせているだけと思われるだけだ。だが

 

「証拠ならあるぜ」

 

「何?」

 

「石化したレティシアと一緒に暴れ回ったお前のコミュニティの奴らを捕らえてある」

 

「なっ!」

 

思いもよらない情報にルイオスは余裕のある表情から驚いた顔になる。

 

「ここで、提案だ。俺達との決闘を受ければ勝ち負けに関わらずお前の仲間達は返してやる。そして、俺達が勝ったらレティシアをノーネームに引き渡せ」

 

「くっ!」

 

ルイオスは任務に失敗したメンバーなどどうでもよかったがこのままノーネームに舐められたままというのが許せなかった。

 

「いいだろう。そこまで言うならその決闘、受けてやる」

 

「よし、ならお前の仲間達はすぐに解放しよう。決闘の日は3日後でどうだ」

 

「いいだろう」

 

そして俺達は決闘の準備をするために本拠へ帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして3日後、ペルセウスとの決闘の日。俺達はペルセウスの本拠の入口前に居た。そして、そこには契約書類が壁に貼ってあった。

 

『ギフトゲーム名“FAIRYTAIL in PERSEUS”

 

プレイヤー一覧

逆廻 十六夜

九重 遊

久遠 飛鳥

春日部 耀

“ノーネーム”ゲームマスター ジン=ラッセル

“ペルセウス”ゲームマスター ルイオス=ペルセウス

 

クリア条件

ホスト側のゲームマスターを打倒

 

敗北条件

プレイヤー側のゲームマスターによる降伏。

プレイヤー側のゲームマスターの失格。

プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

舞台詳細・ルール

ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。

ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。

プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に姿を見られてはいけない。

姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦資格を失う。

失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行する事はできる。

 

宣告

上記を尊重し、誇りと旗印の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

“ペルセウス”印』

 

「姿を見られたら失格、か。つまりペルセウスを暗殺しろってことか」

 

「それなら伝説に倣ってルイオスも睡眠中ということになりますよ? 流石にそこまで甘くないと思いますが」

 

「YES。そのルイオスは最奥で待ち構えているはずです。それにはまず宮殿の攻略が先でございます。伝説とは違い、黒ウサギ達はハデスのギフトを持っておりません。不可視のギフトを持たない黒ウサギ達には

 

「持ってるぞ」

 

「はい?」

 

突然の俺の言葉に黒ウサギは間抜けな声を出した。

 

「だから持ってるぞ。不可視のギフト」

 

「本当にですか!?遊さん!」

 

「あぁ、ただし3人までだかな。だからチームを2つに分けよう。俺、十六夜、ジンは俺の不可視のギフトを使い最奥へ。飛鳥と耀はそのあいだ敵を引き付けていてくれ」

 

「うん、分かった」

 

「仕方ないわね。今回は譲ってあげるわ」

 

「ありがとうな。十六夜とジンもそれでいいか?」

 

「あぁ、それでいいぜ」

 

「はい、問題ありません」

 

作戦が決まると俺はデッキからカードを3枚出して発動した。

 

「魔法カード<透明>を3枚発動。対象は俺、十六夜、ジンだ」

 

すると俺達3人の姿が透明になり見えなくなった。そしてゲームが開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の魔法カードで透明化した俺、十六夜、ジンの3人は白亜の宮殿をまっすぐ進み最奥の最上階にたどり着いた。そこに天井はなく闘技場のような造りになっていた。そこで俺は透明を解除する。

 

「遊さん、十六夜さん、ジン坊ちゃん!」

 

最上階で待っていた黒ウサギは俺達3人の姿を確認すると安堵してため息を漏らす。

そして、眼前に開けた闘技場の上空を見上げると、見下ろす人影があった。

 

「・・・・・・ふん、本当に使えない奴らだ。これが終わったら粛清決定だな」

 

空に浮かぶ人影には、確かに翼があった。

膝までを覆うロングブーツから、光り輝く翼が。

 

「ともあれら、ようこそ白亜の宮殿・最上階へ。ゲームマスターとして相手をしよう」

 

そう言うとルイオスは炎の弓をギフトカードから取り出した。

 

「炎の弓?てっきり精霊殺しの鎌“ハルパー”を使うと思いましたが・・・」

 

「僕は空を飛べるんだ、わざわざ君達に合わせる必要はないだろう。それに、メインで戦うのは僕じゃない」

 

そして、ルイオスは首のチョーカーに付いている装飾を外して頭上に掲げた。

 

「目覚めろ!アルゴールの魔王!!」

 

「GEEEEEEEYAAAAAAaaaaaaaaa!!!」

 

甲高い叫び声と共に現れたのは拘束具と捕縛用ベルトを巻かれた女性形の怪物だった。

 

「ッ!」

 

「避けろ、黒ウサギ!!」

 

突然、頭上から巨大な岩が落下したきた。俺達その岩を避けるが落下した岩は最上階の床に大穴を開けた。

 

「飛べない人間ってのは不便だよねぇ、落ちてくる雲も避けられないんだからさ」

 

「まさか、空に浮かぶ雲まで石化させるなんて・・・」

 

「なるほどな・・・そいつは“アルゴルの悪魔”か」

 

「あぁ、星の力を背負う大悪魔、星霊アルゴール。こいつが僕の切り札だ!」

 

「なるほどな。そいつの能力で雲を石化したのか」

 

「あぁ、だが石化させたのは雲だけじゃない下を見てみろ」

 

「何っ!」

 

「なっ!」

 

俺達は床に開いた大穴を見るとそこには飛鳥と耀がペルセウスのメンバーと共に石化していた。

 

「飛鳥さん!耀さん!」

 

「お前、自分の仲間ごと」

 

「名無し風情を止められなかった奴らにはいい体罰だよ」

 

どうやら奴はコミュニティのメンバーを仲間と思っていないらしい。

 

「十六夜、アルゴールは俺にやらせてくれ。頼む」

 

「何?」

 

「奴が切り札を出したんだ。こっちもとっておきのを出す。それに、こいつは自分の仲間さえ石化しやがった。1発ぐらいぶちかまさねぇと気がすまねえ」

 

「はっ!そこまで言うならわかったよ。負けんじゃねえぞ!」

 

「あぁ、任せろ!」

 

「作戦会議は終わったかい?」

 

「あぁ、待たせたな。お詫びにお前には神を見せてやる」

 

そう言うと俺はデュエルディスクを構えた。

 

「行くぞ!。俺はスケール1の<星読みの魔術師>とスケール8の<時読みの魔術師>でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

俺の言葉と共に2体の魔術師が現れた。その下には1と8の数字があり2体の間にはペンデュラムが揺れていた。

 

「これで、レベル2から7のモンスターが同時に召喚可能。揺れろ魂のペンデュラム、天空に描け光のアーク。ペンデュラム召喚!いでよ、我が僕のモンスターたちよ!」

 

そしてペンデュラムの描いたアークから5体のモンスターが出現した。

 

「レベル3<シルバー・フォング><クレーンクレーン>レベル4<レアメタルドラゴン><トップ・ランナー>レベル7<オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン>!!」

 

「クオオオオオオォォォォォん!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

レベル7

ドラゴン族

ペンデュラム

効果

ATK2500

DEF2000

攻撃表示

 

「何だと!?」

 

「す、すごい!1度に5体も!」

 

「まだだ!更にレベル3の<シルバー・フォング>と<クレーンクレーン>でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!現れろ<No.30破滅のアシッド・ゴーレム>」

 

「ゴガガアアアアァァァァァァ!」

 

No.30破滅のアシッド・ゴーレム

ランク3

岩石族

エクシーズ

効果

ATK3000

DEF3000

攻撃表示

 

「更にレベル4の<レアメタルドラゴン>に同じくレベル4の<トップ・ランナー>をチューニング!王者の鼓動、今ここに列を成す 天地鳴動の力を見るがいい。シンクロ召喚!現れろ<レッド・デーモンズ・ドラゴン>」

 

「ガアァァァァァァァァァァ!」

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン

レベル8

ドラゴン族

シンクロ

効果

ATK3000

DEF2000

攻撃表示

 

「さぁ、ここからだ。いくぜ!俺は<オッドアイズ><アシッド・ゴーレム><レッド・デーモンズ>の3体を生贄に捧げる!」

 

3体のモンスターは光の粒子になって消えたが代わりに俺の持つ1枚のカードが光だした。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「これは」

 

「何かの呪文か?」

 

「くそ、殺れ!アルゴール!」

 

今までドラゴンや巨人のせいで動くことのできなかったルイオスだがその3体が消えた途端攻撃を仕掛けてきた。アルゴールの髪から発生した蛇が遊に迫る。しかし

 

「・・・・・・・・・いでよ、<ラーの翼神竜>!!」

 

その攻撃は俺の言葉と共に現れた黄金の球体に阻まれる。そして、その球体は形を変えていき、大きな翼を持つ黄金の竜に姿を変えた。

 

「こいつが俺の真の切り札、<ラーの翼神竜>だ!!」

 

「グギャアアアアァァァァァァァァァ!」

 

ラーの翼神竜

レベル10

幻神獣族

効果

ATK?

DEF?

攻撃表示

 

「何だ、こいつは」

 

「これは、まさか神格!神格を持つ竜を召喚し操っているというのですか!?」

 

「<ラーの翼神竜>、<ラー>か。エジプトの太陽神の力を持つ竜か。さすがに驚いたぜ」

 

「<ラーの翼神竜>の攻撃力と守備力は生贄に捧げたモンスターの合計となる」

 

ラーの翼神竜

ATK8500

DEF7000

 

「く、何が出ようと関係ない。殺れ、アルゴール!」

 

「GEEEEEEYAAAAAAAAAaaaaaaaa!」

 

ルイオスの命令と共にアルゴールが石化の光を放つ。しかし

 

「な、なぜ貴様のモンスターは石化しない!?」

 

明らかに動揺しているルイオスに俺は言った。

 

「<ラー>はモンスターではない、神だ!神に石化の光など通用するものか!」

 

そう叫んだ後俺の体が霧状に霧散した。霧散した俺の体はラーの頭部に集まりやがてラーと融合し頭部から上半身を生やす姿となった。

 

「「「「ッ!」」」」

 

全員が驚いているようだが俺は構わず続ける。

 

「<ラーの翼神竜>の特殊能力。それは術者と融合し更なる力を手に入れる」

 

ATK8500→16499

 

「行くぞ、バトルだ!行け<ラーの翼神竜>、アルゴールを攻撃!

ゴッドブレイズキャノン!!」

 

ラーの口から放たれた巨大な火球にアルゴールは一撃で消し飛ばされた。

その後、ルイオスを十六夜が倒しこのゲームは“ノーネーム”が勝利した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「じゃあ、これからよろしくメイドさん」」」」

 

「「・・・・・・・・・はい?」」

 

ゲームが終わり本拠に戻るとメイド服をきたレティシアが居た。まぁ俺達が着せたのだが。

 

「ゲームで活躍したのは私達だけですものね」

 

「私なんか石化させられた」

 

「あ、それ私も」

 

「遊がアルゴールを、俺がルイオスを倒したから所有権は2:2:3:3だな」

 

「あぁ、異議なし」

 

「何を言っちゃってるんでございますかこの人達は!!?」

 

俺達の発言に黒ウサギがツッコミを入れているとレティシアが少し笑い。

 

「ふむ、そうだな、メイドか。確かに今回の事で、君達には大恩が出来たな。親しき仲にも礼儀ありと言うし、君達が望むなら家政婦を喜んでやろうじゃないか」

 

「レ、レティシア様!?」

 

こうしてレティシアもノーネームに戻りペルセウスとの一件は幕を閉じたのだった。




魔法カード<透明>は遊戯王ARC-Vに登場するアクションカードです。
<ラーの翼神竜>の効果はアニメ版です。


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あら、魔王襲来のお知らせ?
第12話


12話目です。
ここから2章に入ります。
それではどうぞ!


「これは・・・・・・」

 

ペルセウスのゲームから1ヶ月、俺の体に変化が起こっていた。右腕に、竜の頭の形をした赤い痣。シグナーのドラゴンヘッドの痣があったのだ。確かに白夜叉とのゲームで<スター・ダスト>を、ペルセウスのゲームで<レット・デーモンズ>を召喚したが、まさか赤き竜の痣が現れるとは思いもしなかった。おそらくだが、この痣が<ラーの翼神竜>の召喚の手助けや<No.>への耐性を与えてくれたのだろう。

 

「だけど、この痣が現れたってことはこの世界に赤き竜がいるってことか?」

 

もしそうなれば地縛神などの邪神や冥界の王なども存在することになる。今後、気をつけなければならない。

 

「おっと、そういえば今日は黒ウサギと農園区を見るんだったな」

 

俺のギフトのデュエルモンスターズはモンスターの他に魔法カードなどもあるので荒れ果てた農園区に使えるカードがないか試す約束をしていたのだ。

 

「さてと、待たせちゃ悪いし行くか」

 

そう言うと、俺は黒ウサギ達が居るであろう農園区に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな黒ウサギ、遅くなって・・・・・・どうした?」

 

農園区に着いたが、そこには1枚の紙を破れそうなほど引っ張りながら見る黒ウサギとその隣で同じ紙を見るレティシアがいた。紙は黒ウサギの力に耐えられずにそのまま破れてしまった。

 

「あの問題児様方ああああぁぁぁぁ!!」

 

黒ウサギが叫んでいる間にレティシアから事情を聞いた俺は黒ウサギが落ち着いた後に話しかけた。

 

「まったくあいつらは。おい、黒ウサギ。俺達も北側に行くぞ。どうせアイツらも白夜叉あたりに頼んで北側に行ってるだろうしな」

 

「えっ、でも黒ウサギだけならともかく遊さんはどうやって北側まで行くつもりですか?かなりの距離がありますよ」

 

「あぁ、そこは問題ない。出来るかどうか分からないが転移できる方法がある」

 

「ホントでございますか!?」

 

「あぁ、まぁ見てな」

 

そう言うと俺はデュエルディスクを構えた。

 

「俺は魔法カード<ワン・フォー・ワン>を発動。手札のモンスターを1枚墓地に送り<レベルスティーラー>を特殊召喚」

 

レベルスティーラー

レベル1

昆虫族

効果

ATK600

DEF0

 

「更にチューナーモンスター<トップ・ランナー>を召喚」

 

トップ・ランナー

レベル4

戦士族

効果

チューナー

ATK1100

DEF800

 

「墓地の<ボルト・ヘッヂホッグ>はチューナーが場にいる時特殊召喚できる」

 

ボルト・ヘッヂホッグ

レベル2

獣族

効果

ATK800

DEF800

 

「俺は、レベル1の<レベルスティーラー>とレベル2の<ボルト・ヘッヂホッグ>にレベル4の<トップ・ランナー>をチューニング!」

 

レベル1+2+4=7

 

「その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て! シンクロ召喚!現れろ、レベル7 ! <クリアウィング・シンクロ・ドラゴン>!」

 

「ガアアアアァァァァァァ!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン

レベル7

ドラゴン族

シンクロ

効果

ATK2500

DEF2000

攻撃表示

 

「ほぅ、遊がドラゴンを呼ぶのを見るのは初めてだな」

 

「そういえばレティシアに見せたのは初めてだったな」

 

「遊さん、このドラゴンに転移能力が?」

 

「あぁ、俺もやるのは初めてだがな」

 

転移能力のあるモンスターは俺の知る限り2体、1体は赤き竜のため、まだ召喚は不可能だろうがコイツなら可能だった。

そして、俺は黒ウサギとレティシアと共に<クリアウィング>の背中に乗る。

 

「さぁ、いくぜ。頼む、<クリアウィング>!」

 

「ガアアアアァァァァァァ!」

 

<クリアウィング>の咆哮と共に俺達3人は転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、転移は成功したみたいだな。黒ウサギ、ここって北側であってるか?」

 

「はい!確かに北側に着いてます」

 

「すごいな、遊のモンスターはこんな事までできるのか」

 

「まぁ、転移能力があるのはなかなかいないがな。お、アレは十六夜達じゃないか?」

 

俺達は今、<クリアウィング>に乗って空を飛んでいるがちょうど下に十六夜達を見つけた。

 

「あ、本当です!やっと見つけたのですよ問題児様方あああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

黒ウサギは叫び声を上げながらしたの十六夜達の元へと飛び降りて行った。

 

「・・・・・・俺達も行くか」

 

「あぁ、そうだな」

 

「<クリアウィング>下りてくれ」

 

「ガアアァァァ!」

 

俺とレティシアも<クリアウィング>と共に黒ウサギの後を追って行った。



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