未来の王と落ちこぼれ (神座(カムクラ))
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第1話 真祖龍と天彗龍

 今回は古龍同士!古龍の中でもまだカワイイ方だと思う祖龍と天彗龍を題材にしてみました。人間はあまり出てきません。あらかじめご了承ください。

 第1話は主にバルファルク目線です。 


 ※この作品は初期に投稿したもので文章技術が不足しており、読みにくい箇所が多々あるかと思います。許していただけるかたはお進みください。(2019/4/4追記)
 
 


 

 

 

 ここは人の住む場所から遠く離れた場所。リオレウス基準で「塔」と言う場所から2日飛んだところにある緑豊かな地。そこには色々な草食動物や稀少種の火竜の番などが住んでいた。その辺りでもひときわ大きく透き通った湖に、誰もみたことのない美しい白龍が水を飲んでいる。

 

 彼の種は祖龍ミラボレアス。このあたりの主である。しかし広く知られている祖龍とは少し違い、象徴的な黒い角はなく、代わりに細く短い乳白色の2本の角が後ろ向きにまっすぐ生えている。理由は不明。塔の周囲を守る竜人族からは「新たな歴史の始点となる王」と言われ、それを裏付けるかのように彼は狩煉道の力を解放した。なぜ今王として塔に鎮座してないかという理由は簡単。彼の両親である先代の王がいるからだ。そしてその先代の王のある計らいでこの地に凄むことになった。

 

 彼はおよそ100歳弱。番や子供を持っていてもおかしくない年だが、古龍からするとまだまだ子供の分際である。顔もまだあどけなく、美しさだけでなくかわいさもあった。

 

 古龍は数が少ない故に子供を大切に育てる種が多い。彼も両親やその下僕、竜人から愛され心優しい龍になった。しかし、その性格と若さに反して絶大な力を持っているため、他の竜は彼が近づこうものなら全力で逃げる。加えて彼には兄弟がおらず、この地に来てから60年以上孤独だった。

 

  そこへ若い雌のバルファルクがやって来た。バルファルクは本来はるか上空に生息していて、胸の器官で生成した龍気エネルギーを翼から放出して飛び、その飛行最高速度は音速を超えることで有名だ。

 

 けれども彼女は火竜と同じぐらいの高度、スピードでやって来た。それには理由がある。

 

 数十年前、彼女は上空で天翔龍シャンティエンに襲われ、自身の龍気エネルギーを消耗したのでそれを補填しようと隙を見てエネルギーの生産を試みた。しかしその時シャンティエンの攻撃をまともに、しかも胸に食らってしまい龍気エネルギーが制御不能に。限界までためていたため、無理やり翼からエネルギーを逃がして内側から爆発することは免れたものの、強い負荷を受けた翼がボロボロになってしまった。

 

 成龍なら時間をかければ完全に治るのだが、当時彼女はまだ成長期だったため治るよりもはやく成長してしまった。結果何とか普通の飛竜と同じぐらいの飛行能力までは回復したが同族には遠く及ばず、今までのような高高度で飛べなくなったため会うことも出来ずにいた。

 

 そんな彼女は日々自分の運命を恨みながら、しかし自分で死ぬ勇気もなくさまよい続け、この地にやって来たのだった。

 

  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─  

 

 私は今、悩んでいる。正直、天彗龍として生きる資格があるのかどうか分からないからだ。飛べない訳じゃない。

でも同族からみれば幼龍より飛行能力は低い。今なんて歩いて移動している。

 

 『こんな姿同族に見せられないな…』

 

 と思って、あのとき以来同族に会っていないことを思いだしてさらに気分は落ち込んだ。

 

 そのままさまよっていると、ふと開けたところに出る。この地は緑豊かで美しく、もうここを住みかにしようかなと思うほどだった。そしてそこには透き通った大きい湖があり、しばし今までの落ち込んだ気分を忘れられた。

 

 『…おかしい、こんなに綺麗なところなのに草食獣どころか竜もいない』

 

 そう思って自慢の視力で辺りを見渡すと、一頭のみたことのない白龍を見つけた。股間にあるかすかな膨らみから雄であることがわかったが、雌の自分から見ても美しく、どこか神々しい。

 

 …とこっちを向いた。

 

 『気づかれた?距離は結構離れているのに!』

 

 こちらに飛んでくる。急いで身構えると、その龍は少し距離を取って着陸。こちらをじっと見つめ、何か話始めた。

 

 しかしかなり遠くから来たせいか何を言っているのか彼女には分からない。それに彼女はパニックに陥っていた。過去の体験と、それによる今までの彼女の生活が彼女を極度の臆病にさせていたのだ。故に彼女はこう言っていると思い込んだ。

 

 『ここは俺の縄張りだ。近づくなら容赦しない。』

 

 相手にとってはとんだ被害妄想だが、そう思い込んでいる彼女にとっては死活問題だ。死にたくない。その恐怖が彼女を攻撃的にしてしまう。

 

 (攻撃される…!)

 

 そう思い、できるだけの龍気エネルギーを練る。そしてそれを翼からその龍に向かって放出した。2発の気弾が飛んで行く。…がどういうわけか当たる前に爆発してしまった。龍は全く動いていない。もう一度、先程よりもさらに強く練った気弾を浴びせる。当たれば古龍でも大きなダメージとなるはずのそれは、また当たる前に爆発した。

 

 (コイツ雷を纏ってる!だから当たらないんだ!)

 

 そう。当たる直前に龍の周りに紅い電撃のようなものが発生していたのだ。だが雷に撃たれることなどよくあるバルファルクにとって電撃は恐れるに足らない。

 

 それならと一気に距離を詰めて肉弾戦に持ち込もうと踏み出した瞬間だった。龍が足踏みをしたと思ったのと同時に地面に紅の閃光が走って視界が真っ白になり、全身に激痛が走る。視界はすぐにもとに戻り痛みもなくなったので起き上がろうとしたが、膝が抜けた。全身がだるい。

 

 (まさか電撃でやられるなんて…しかも地面を媒介にしてるのになんで一直線に当たったの?空中でも一直線に落ちることなんてないのに!)

 

 相手は確実に、比べ物にならないぐらい格上だ。だが少し驚いた顔。逃げた方が良いか?…いや、予備動作があるなら避けられる。俊敏さには自信がある。倒せればここで暮らせる訳だし、負けて殺されても…それも良いかもしれない。のたれ死にするよりも龍として闘いの中で死ねるのならそれが本望だ。

 

 起き上がり、再び距離を詰めようとする。また足を上げたので、それが地面に着くのと同時に自分は地面から離れるように横へ跳んだ。

 

 甘かった────────

 

 閃光は途中まで一直線に進んだ後、あろうことか地面を離れて私に当たった。先程とは比べられないほどの激痛が走る。手加減していたのだ。それでさっきやられなかったから力を入れたに違いない。

 

 痛みはすぐに消えるも体が動かない。龍が近づいてくる。終わった。まぁいいか。最後くらい龍らしく潔く殺されよう。

 

 しかし龍はすぐには殺さず、私の匂いを嗅いだ。恐怖が募る。

 

 (はやく殺して…)

 

 龍が私の腹を舐めはじめた。食いちぎる前にやることもある行動だが、違う。息が荒い。舐める位置が下がっていきた。

 

 (まさか…欲情してる?)

 

 論より証拠。龍は私の秘部の周りを舐め始め、不覚にも甘い快感を感じる。そして生暖かいものが入ってきた。

 

 「キャァァン!(お願い止めて!)」

 

 と鳴いて言うことを聞かない体を必死によじって逃れようとするも腰をがっちり捕まれていて無駄だった。足をバタバタさせようとしても、瀕死の虫のように弱々しく宙を掻いただけで、龍の舌はさらに深くまではいり、じっくりと舐めあげる。ハァハァと自分も息が荒くなる。敵に襲われることなんて考えてないのか、周りを気にせず舐め続けられ、ついに体を激しく痙攣させて達してしまった。

 

 恥ずかしさで顔に血がのぼるのを感じる。もちろんここで終わりではない。龍は秘部から舌を抜き、覆い被さってきた。思わず股間に目をやると巨大な雄槍がそそりたっている。そしてがっしりと肩を掴むと秘部に押し付けた。初めてで、自分の膣よりも明らかに大きくしかも心は拒絶しているためか最初は弾かれるももう一度あてがうと、今度は慎重にその割れ目を押し分け侵入した。

 

 「アァウウゥ」

 

 と情けない声を出してしまう。だが先端が入ってしばらく進むと激痛が走り、悲鳴を上げた。メリメリと肉を掻き分けながら構わず侵入を続けられる。何度も引っ掛かり、その度に1度引かれ、奥に行くにつれ痛みは増していきあまりの痛みに首を左右に振りながら泣き叫ぶ。こんなまんま突かれたりしたら裂けてしまうかもしれないと思うほどだった。

 

 すると叫んだのが気に入らなかったのか、首を咬んできた。こんなにも痛いのに体から力が抜ける。所詮は生殖本能と言うやつなのだろうか。確かに雌の本能的な欲望である、強い雄と交尾する。と言う条件は満たしているが、どうしても受け入れる気にはならない。第一これが生殖目的なのかも分からないのだ。これが終わったらどうするのだろう。別の恐怖が襲った。

 

 そんなことを考えているうちに、お互いの下腹部が密着した。根本まで入ったのだ。拒絶しようと縮こまっていた子宮の入り口に先端が触れて更なる痛みが襲う。ここまで来たらもう抵抗する気も起きず、ただただ痛みと戦った。龍は首を咬むのをやめた。

 

 多少は気遣っているのか、龍はすぐには動かずこちらの様子を伺っているようだった。すると慣れとは何とも恐ろしいことか、痛みが引いていった。

 

 「フゥ…フゥ」

 

 と少し呼吸が落ち着くと龍が自分を抱き締めている腕の力を強めた。そして腰を引き、突き始めた。 

 

 「キギャッ!キギャッ!」

 

 突かれる度に痛みが走り、悲鳴をあげる。しかしさっきほどの激痛ではなく、代わりに胎内に異物が入っていると言う強い圧迫感と、痛みと同じかそれ以下の快感が与えられた。

 

 しばらく突かれ、違和感を覚えた。なかなか射精が始まらない。交尾自体は初めてだが見たことはあった。交尾中は隙だらけなので竜も獣もピストンにあまり時間をかけない。そのぶん交尾回数が多かったり量が多かったりするのだが、5分近くたっても射精の兆しが見えなかった。その理由を見つけるのに時間はかからなかった。

 

 (天敵がいないんだわ…)

 

 天敵がいない。だから早く終わらせる必要がない。龍の顔を見ると、恍惚とした表情で快感に浸っている。

 

 そしてもうひとつの違和感。それは、この雄を体が受け入れ始めているということだった。痛みは更に減って、気がつけば無意識に龍を自分の前足で引き寄せている。

 

 体が欲してる。この強い雄龍を。いや、温もりを。

 

 確かに誰かに抱き締められることなんて無かった。少なくとも今は私はこの龍に必要とされているのだ。このあと殺されるにしても、受け入れたほうが楽なんじゃないかと思う。そんなことを考えていると、龍の動きが激しくなり、呼吸もあらくなっていった。そして抜いて突く、と言うよりも押し付けるような動作にかわり、「グウゥ」といって私を力一杯抱き締め動きを止めた。何をされるか本能的に理解し、来るであろう衝撃に身構える。

 

 (くる…!)

 

 激しい脈動とともに子宮がカッと熱くなる。胎が重くなり、入りきらなくなった精液が結合部から溢れる。意識が遠くなるなか、無意識に顔を龍の胸に擦り付けた…。

 

  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─ 

 

 ドクドクと精を送る快感に浸りながら、ゆっくりと理性が戻ってきた。そして「しまった!」と思ったときには時すでに遅し。すぐに引き抜くも襲ってしまった雌龍はすでに気絶しており、射精もほぼ終わっていた。雌龍の顔には涙が残っている。

 

 (どうしよう…)

 

 やってしまった。何十年ぶりに自分を見ても逃げない龍に会い、言葉が通じなかったとはいえ嬉しかったのだが、まさか欲情して理性を飛ばして襲ってしまうとは…。泣き叫んでいたのを思いだし、かわいそうなことをしてしまったと後悔する。

 

 (とにかく巣に運ばないと)

 

 このままではいくら天彗龍とて食われてしまうかもしれない。湖で体を洗ってやると、両腕で抱えて運んだ。襲ってなければ番になってくれないかと言うつもりだったが無理だろうな…。番どころか友達にもなれないだろう。力づくで番にしたくない。強い自己嫌悪にかられながら介抱すべく塒に向かった。

 




 いかがでしたか?続きは随時作成します。
 …どうでもいいけどバルファルクって結構顔カワイイ。そう思う私は重症でしょうか(笑)
それではまた。


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第2話 意志疎通

 前話でやらかしてしまった祖龍君ですが、今回は少し活躍します。ところで…2匹の名前どうしよ(笑)ルーツとファルクじゃなんかかわいそうだしなー。いっそのこと無くてもいいか… 。

 バルファルク目線でスタートです。


 「ウゥ…」

 

 目が覚めると、私は自分がどこにいるかわからなかった。全身のだるさと、下腹部の鈍い痛みを感じて昨日の出来事を思い出す。見渡すと、崖の中腹にあるあの龍の巣にいるらしい。昨日食らった雷の影響でまともに動けそうもない。立ち上がっても余裕の広さのある空間で私は思う。

 

 (私、どうなっちゃうんだろ)

 

 食料としてか、玩具としてか、はたまた苗床としてか。

 

 (食べられることは無いだろうな)

 

 自分なんか食べるより草食獣を食べた方が美味しいだろうし、手間もかからないだろう。第一、もう太陽が真上に上っているのに殺されてないということは私の肉目的ではないということだ。死なずに済んだと安心する反面、これからどんなことをされるのか不安で仕方ない。

 

 すると、聞きなれない羽音とともにアプトノスを抱えた白龍が戻ってきた。恐怖を感じ、全身がブルブルと震える。私が起きていることに気がつくと、アプトノスを目の前に置いた。「食べろ」ということだろう。

 腹は空いていたので食べたが、味を感じる余裕がない。体は絶えず震え、何か音がするたびビクッとする。

 

 食べ終わると龍は残骸を巣の外に捨てた。そしてこちらに向かって何か言うが、当然通じない。すると龍が近づいて来たので目を剃らして全力で縮こまると、パリパリという音とともに龍が紅い雷を纏った。目をぎゅっと瞑って激痛に備えたが、その雷が私に当たると体が軽くなっていくのがわかる。龍がそれをやめたときには随分と回復した。

 

 しばらく龍が私の体を舐めたり擦ったりしていたが、唐突に私を両腕で抱き抱えると、巣からでた。

 

 (落とされる!)

 

 と思ったが、体が浮く感覚。体格は私の方が一周り小さいとはいえ軽々と運ぶとは。やはりただの龍ではない。しばらくすると昨日の湖についた。そこで下ろされると、

 

 「クーン」

 

 と鳴きながら私の顔に近づき、背筋が凍った。

 

 端からみれば白龍が申し訳なさそうに鳴いているだけなのだが、今の彼女は怯えきっていて理解できなかった。

 

 体を縮めながら顔を剃らすと更に近づいてくる。恐怖が増す。そして昨日を思いだし、交尾を求められていると勘違いし、分かったから痛め付けないでくれと自ら仰向けになった。

 

 

  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─

 

 僕はとりあえず彼女にアプトノスをあげた後、安心させようと甘えた声を出して舐めたりとかしていたが、完全に怯えきってしまっている。巣だから駄目なのかなと昨日の湖につれていったが、反応は同じだった。諦めずに続けると突然仰向けになり、涙を浮かべながらこちらをみる。言葉は分からないが、目は口ほどに物を言うのだ。察するに

 

 『交尾ならさせてあげるから、お願い酷いことはしないで!』

 

 もちろんそんなつもりはない。ないはずだった。最初は違うよと顔を舐めて起き上がらせようとしたのだが…。

 

 「クチャ…」という音が聞こえ、思わず彼女の下腹部を見ると、滑らかな腹の下に粘液で湿った秘裂が口を開けていた。昨日の粘液がまだ残っているのだろうか、強い匂いが辺りに充満する。また理性が追いやられて行く。必死に堪えてとりあえず立ち去ろうとしたが無理だった。体が反応し、自身がそそりたってしまう。こうなればもう理性が消し飛ぶまで時間の問題だ。ならばせめて優しくやるために理性が残っているうちに済ましてしまおう。昨日のように舐めようとしたが、余計匂いを嗅いでしまうし前回の粘液のお陰で十分濡れていたのでそのまま挿入することにした。

 

 ゆっくり、ゆっくりと奥まで入れ、優しく抱き寄せ額や首を舐めながら極力優しく動いた。しばらくして達したのか膣が急に締まる。すると向こうから抱きしめてきた。無意識なのか目の焦点が合ってない。そういえばいつのまにか震えが止まっている。最初は泣いていたというのに、よくみれば強張った顔も緩んでいる。そこで気がついた。皮肉にも一番の恐怖の根源であるこの行為が、彼女の恐怖を一時的に忘れさせるのだと。もうひとつ気がついた。どうでもよいことだが、理性が消える前に実行し、続けていればそのまま理性が保てる。本当にどうでもよい。

 

 そのまま動き続け、精を注ぐと顔を胸に擦り付けてきた。何とも複雑な気持ちになりながら顔を撫でる。それと同時に自己嫌悪にかられた。ペニスはまだ固さを保っていたが、欲は収まったのでそれを引き抜き逆流した精液を舐めとった。

 

 しばらくすると我に返ったのか震え、泣き出した。

 

 それから3日間、安心させようとするたびに彼女は仰向けになり許しをこいた。もとの体制に戻そうとしても、痛め付けられると思っているのか身をよじり泣いてしまう。こちらの顔を見ようとしないので表情で伝えることもできない。次第に匂いに支配され交尾するのだが、まるで洗脳しているようで気持ち良く無かった。

 

  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─

 

 私はもう半ば諦めていた。自ら体を差し出せば優しくしてくれる、痛め付けられないですむ。もちろん交尾などしたくないが、拒否して乱暴にやられたくもない。抵抗しても無駄だと言うことは分かっている。ならば少しは快楽のある、また一時的に意識が飛んで恐怖を忘れられる方を選ぶ。

 

 龍とであって6日目。起きたときには龍は居なかった。それはそこまで驚くことではないが、その日は帰ってこなかった。日が暮れても、日が昇っても。

 

 (今なら逃げられる…?)

 

 もしかしたら他の龍に襲われたのかもしれない。そう思うと急に元気が出てきた。体の調子も良い。巣から出ても龍の気配はない。近くにいたアプトノスを食べ、思いきって逃げた。

 

 少しの間飛んで、追ってきてないか確認するため1度振り替えるもそれらしい影は見当たらない。よし、と前を向いたとき、さっきまで居なかった龍がいるのに気がついた。

 

 「──────」

 

 凄まじい咆哮に怯む。全身鋼のような龍。見たことはないが聞いたことはあった。

 

 (鋼龍…!ここはこいつの縄張りだったの?なんでこんなに古龍ばかり…)

 

 一気に天気が悪くなり、強い風と雨が吹き付けた。相手はすでに臨戦体制。この強風のなか平然と飛んでいることから、飛行能力は並大抵ではない。警戒し、気弾を放つと華麗に避けられ一気に距離を縮められる。その突進をかわし、翼で叩くと「ガギン!」と重い音が響く。相手が少しよろけた隙にもう一度龍気弾を放つ。避けきれずに左足に命中。するともう一度咆哮をあげたが今度は怯まない。喉元めがけて一気に加速…したはずだった。

 

 (進みにくい!風を纏っているの!?)

 

 大して加速せず、そのままのスピードで突っ込んだお陰でかわされ、後頭部に剛腕を叩き込まれた。衝撃には強いはずだが、重い腕を非常識な速さで降り下ろされ平行感覚が一瞬おかしくなる。その隙に鋼龍は渾身の力を込めて息を吸い、吐き出した。

 

 ブレスでも吐くのかと思ったが、何も起こらないのでその隙に再度突っ込もうとしたときだった。目の前の木々が吹き飛んだのが見えたのと同時に激痛が走り、上も下も右も左もわからなくなった。

 

 (息で吹き飛ばされてる!?この私が!?)

 

 100m吹っ飛び、150m転がった。意識はあったが平行感覚が完全におかしくなり立ち上がれない。すると死んでなかったことに驚いたような表情でこちらを見、もう一度同じ動きをした。

 

 (殺される!)

 

 白龍のときよりも確実に殺される。ただ睨み付けることしか出来なかった……。

 

 渾身の風ブレスをもろに食らい、再び吹っ飛んだ。

 

 体がバラバラになってしまうような痛み。

 

 恐ろしいことに意識を失っていない。失えないのだ。次から次へと襲いかかる激痛。ひとつの痛みで意識が遠退いても次の痛みで引き戻される。痛みで何も考えられない。ただ叫ぶしかなかった。その断末魔に鋼龍も一瞬怯む。

 

 「キョォォォォォォォ!!!」

 

 突如その断末魔を完全に掻き消す凄まじい咆哮が鳴り響いた。空気が激しく震動し、全身がギシギシいって更に痛みが増す。だが、どこか温かみを感じた。

 

 朦朧とした意識のなか、自分の前にあの白龍が現れたのを確認した。天気は雷嵐となり、紅の稲妻が空に走る。

 

 白龍の見かけも少し変わった。爪や翼爪などが赤黒くなり、全身に紅の雷を纏っている。

 

 そして足踏み。閃光が相手を襲うも少し怯んだだけで大して効果がないようだった。鋼龍はまた同じ動きをし、息を吐いてきたが、それと同時に白龍も紅と白の混ざった色をした光輝くブレスを吐いた。風ブレスは雲散霧消し鋼龍が慌てて飛び退くと、ブレスの通った地面が深くえぐられた。直撃すれば致命傷どころじゃない。事実えぐられたところには何も残っていなかった。消滅したのだ。木々も、岩も。そして白龍が鋼龍に何かをいってこっちに向かってきた。雷を今度は私に浴びせると体から痛みが引いていくのを感じ、意識を失った。

 

 ────────────────────────

 

 気がついた、と同時に身体中に激痛。思わず悲鳴をあげるとドタドタと何かが走ってくる音。ゆっくり目をあけるとあの白龍がいた。さも心配そうな、けれどもほっとしたような涙目でこちらを見た。綺麗な顔だ。そういえばこの龍の顔なんてまともに見てなかった。

 

 首を動かし体をみると草と何かを練り潰したようなものが塗りたくってある。治癒効果でもあるのだろうか。

 

 意識が徐々にはっきりとしていった。すると白龍が寄り添って私の顔を舐める。意識と共に恐怖が戻る。まさか私がこの状態でも交尾する気なのか?だが少しして離れると何処かへ飛び去った。獲物でも取りに行ったのだろうか。助かったのか助かってないのか良く分からないが、命に別状はないようだった。

 

 しばらくして龍がアプトノスを持って戻ってきた。差し出されると腹が減る。現金な体だ。食いちぎろうと腹に噛みつくが、力を入れた瞬間身体中が痛み、とてもじゃないが食べれない。すると見かねたのか龍が皮を剥いでくれた。もう一度食べようと試みるがダメだ。今の私では柔らかいアプトノスの肉すら食いちぎれない。情けなくて涙が出た。

 

 そんな私を龍がじっと見る。「食えないのか?」と言っているようだ。せっかく獲ってきた獲物を粗末にされれば誰だって傷つき怒るだろう。マズイ、痛め付けられるか。でもどうしても痛くて食べれないんだ。だからもう好きにしてくれ。

 

 龍が私の目の前で肉を頬張る。そりゃあ粗末にしないためだろうが傷ついた。が、予想だにしなかった行動に出る。しばらく咀嚼するともう一度こちらを見た。何かを迷っているようにもみえたが、意を決したような目に変わると私の顔を持ち口を少し開けさせるとそのまま口移しで肉を送り込んできた。驚きながらも柔らかく噛み潰された肉を素直に飲み込む。なぜここまでするのだろう。口移しなんて親子か仲の良い番しかやらない。

 

 そのまま口移しで肉を与えられ続けた。咀嚼して柔らかくしているので、唾液まみれで普段ならきっと気持ち悪くて拒否するだろうが、今はそんなこと言っている場合ではない。食わねば死ぬ。それにさほど嫌でもなくいつしか自分からねだった。肉をくれる龍の目は限りなく優しい。ふと、この白龍は私に危害を加えるつもりはないのではと思い始めた。

 

 彼が近づき、例のごとく恐怖に震える私。だが彼は風から私を守るように翼を片方だけ広げて私を覆う。そして傷が痛まないよう気を付けながら私に寄り添った。疲れが一気に襲いかかり、眠りに堕ちるのに1分とかからなかった。

 

 次の日も同じように過ごした。口移しで肉をもらい、傷に何かを塗られ、あとは寝るだけ。彼は狩りのとき以外常にそばにいた。

 

 数日経って、肉が自分で食べれるようになり、傷に例のものを塗られている時だった。

 

 「………★□※▽△◎かい?」

 

 「え?今なんて?」

 

 通じないはずなのに、確かになんかいった。彼の深紅の眼をみると、彼も驚いている。そしてあどけない声で話し始めた。

 

 『僕の言ってることわかる?』

 

 『うん…でもなんで?』

 

 『わかるってことは僕に少し心を開いてくれたんだね』

 

 彼いわく、彼の一族は例え直接言葉が伝わらなくても、知性があり、自らに心を開いた竜と意志疎通ができるらしい。神かよ。そして、私が何か言う前に彼が口を開いた。

 

 『酷いことをしてしまって本当にすまない。でも君に危害を加えるつもりは無いんだ。…信じてくれなくても当然だけど、初めてあった日、君を襲うつもりは無かったんだよ。ただ、何十年も竜と話してないし雌と交わるなんて久しくなかったから匂いを嗅いだとたんに発情しちゃって…。辛かっただろうね。泣き叫んでたもんね。本当は友達になりたかっただけだったんだ…。』

 

 彼いわく巣を空けたのも私が逃げることを期待してのことで、本当は番にしたいとまで思っていたそうだが私が怯えきっていたのでそうしたらしい。でも見知らぬ鋼龍の気配を感じて追ってきてくれたんだと。へーそうなんだ。じゃあいいよ。なんて言うわけがない。

 

 『そんな!そんなこと言われたって!私がどれだけ辛かったか!もう普通に生きていけないかと思ったのよ!』

 

 『…ごめん』

 

 『なのにそんなあっさり許せるわk…』

 

 『大丈夫!?』

 

 傷が痛んで言葉を切った。

 

 『傷が治ったら私をどうするの?苗床にでもするつもり?』

 

 『傷が治ったら…好きなところへ行くといい。この辺りに住んでも良いし、そうじゃなくても良いし…それまでは守るよ。』

 

 『…どうしたかったわけ?』

 

 『…一緒に…いてほしかった…それだけ。』

 

 『…』

 

 『ごめん』

 

 『もう少し離れて。一人で考える。』

 

 …というと素直に巣の端っこまで移動。こいつ性格と力が一致してない。しゃべり方は子供じゃないか。こんなやつに恥辱されていたのかと思うと悔しくて傷が痛む。  

 

 だが、ふと巣の端でこちらに背中を向けて丸くなる彼を見ると、時々微かに震えるのがわかった。

 

 (もしかして泣いてる…?)

 

 声や息づかいはあまり聞こえないが、寂しげな彼の背中を見ると少し冷静になった。

 

 

 





 連休のお陰で連続投稿できました。もうこんなに連続して投稿することは無いかと…。

 それではまた。


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第3話 和解

 若ミラルーツの巣は霊峰のベースキャンプみたいなところだと思ってください。もちろんそんなに高いところではないけど。

 交尾のシーンを初めて描いたとき、若干恥ずかしくなっちゃいましたが、1度書き出しちゃえば全然気にならなくなりますね(笑)

 第3話はバルファルク目線です。


 彼と言葉を交わすことができてから1週間と少し。

 

 同時に、彼に「近づくな」と言ってから1週間と少し。

 

 彼は誓約を守って、私に草と何かを練り潰したやつを塗るときと、何処かに運ぶとき以外少し離れたところにいる。加えて必要時以外話さなかった。「塗るよ」とか「傷洗いに行くよ」とかそれくらい。私はそれに対して頷いたりはするものの話すことはない。無論、許すつもりもなく、治ったらどっかに行くつもりだった。

 

 ただ、彼のどこか寂しそうな後ろ姿。表に出そうとしないだけで、本当は寂しくて仕方がない、そんな彼を見ているともういいかと許してやりたくなる。いやいや、コイツが私に何をしたか忘れてはいけない。

 

 それでも彼の看病のお陰でなんとか歩けるようになると少し気持ちが楽になった。一応最後にお礼ぐらい言っとくか。あいつと出会わなければこんな目に遭わずに済んだのだが、つきっきりでしかも口移しで肉をくれたとなると流石に一言ぐらい言った方が良いだろうな。

 

 そんなことを考えながら狩りに行った彼の帰りを待っていると、ふと空を飛ぶ火竜に目がいく。銀火竜だ。この辺りに番で住んでいるらしい。1度湖で見かけたがこちら(白龍)を見るや否や一目散に逃げ出したっけ。それを彼は寂しそうな眼で見つめていた。

 

 彼が帰ってくる。私は元々高高度に住んでいる種なので視力がかなり良い。そのおかげで、彼があのときと同じ寂しそうな、悲しげな眼でこちらに飛んでくるのが見えた。こちらが見ていることに気がついたのか、すぐにいつもの表情に戻る。そして獲ってきたケルビ5頭を置かれると、なんだか申し訳なくなって思わず「ありがとう…」と言ってしまった。彼の方もビックリしたようで「へ?あ、うん」と間抜けな声を出して返事をした。

 

 これだけをみれば彼はただの成龍になりかけの子供だ。体格的には私より少し年上の150歳ぐらいだが、精神的には100歳いってない気がする。

 

 まぁともかく、これからは返事くらいするか。

 

 そのあといつも通り味気の無い1日を過ごし、眠りについた。最近気温が下がっている。今日も冷たい風が吹いていた。

 

 翌日は大雨だった。おまけに風もやや強め。龍気エネルギーを生産していればその時に発生する熱で上空にいても寒くないのだが、今は全く生産を行ってないので寒い。彼は狩りには行き、例のものを私に塗った。私も古い例のものを洗い落とすときだけ外に出たが、生まれて初めて凍えそうと感じた。

 

 夜になっても雨と風は止まず気温は下がる一方で、治ってきた傷が痛む。ふと、彼がこっちをチラチラ見ているのに気がつく。もしかしたら寄り添おうか迷っているのかもしれない。あるいは彼も寒いのかもしれない。私は巣の崖側にいるので風もある程度遮られるし雨も少し吹き込む程度だが、彼は外側のはしっこにいるので雨風にさらされている。

 

 そういえば私が瀕死の怪我を負ったばかりの時、少しの風が当たるだけで痛みが走り呻いていた私にずっと寄り添って風から守ってくれてたっけ。思い出すと急にあの温もりが恋しくなる。彼が非常に稀少な種だということはわかる。それゆえ私を子を産ませるための苗床にするつもりなのかと思っていたし、今も思っている。違う種と子をつくっても、血が混ざることが無いという特殊な種族がいると聞いたことがあるし、その子供が母親の腹を食い破って出てくる種族もいるらしい。

 

 だがそれにしても彼は優しすぎる。もしかしたら本当に彼は私を番にしたいと思っているのかと信じてみたい気もする。それが策略なのだろうか。

 

 「ねぇ…ねぇって」

 

 「へ?あ、何?どうかした?」

 

 「寒いから…こっち来て」

 

 「わ、わかった」

 

 寒さと孤独に耐えかねついに私は接近禁止令を解除した。彼は心なしか嬉しげに近づくと、四つん這いになって傷を刺激しないようそっと寄り添ってくれる。翼で私を覆いながら。

 

 「ねぇ…私が鋼龍にやられたあとってどれぐらい眠ってたの?」

 

 何となく気まずくなったので愚問を投げ掛けてみた。数時間じゃんそんなの。太陽の位置少ししか変わってなかったし。

 

 「うーん、10日ぐらいかな?多分そんぐらい。」

 

 「うそ…。そんなに?そんなに酷かった?」

 

 「そもそもあのブレスを2回食らってバラバラにならない方が凄いと思うよ。かなり全力だったし、あの龍も結構強い方だよ。」

 

 「10日たっても肉が噛めないなんて…」

 

 「そりゃあ僕が巣に着いた時はもう瀕死で、ほっとけば数分で死ぬような状態だったからね。もう駄目かと思った。」

 

 「あのとき龍になんて言ったの?っていうかどうやって助けたの?」

 

 ただの取り繕いのつもりで質問したのだが、思わぬ回答に質問が続出する。

 

 「『生かしてやるからこいつに手を出すな』って言った。そのあと止血して治癒して、口から肉を無理矢理流し込んだ。」

 

 「治癒ってあの草潰したみたいなやつ?」

 

 「それもある」

 

 「それもって…もしかしてあの電撃?」

 

 「そう。止血と、一時的に感覚を麻痺させたのもそれ。僕のこの力は…治癒能力を促進させることもできる。」

 

 「何よそれ…」

 

 「そんなに気にしないで。滅多使わないから。」

 

 そういう問題じゃないのだが。

 

 ふと、やられたあとのことを思い出す。

 

 「もしかして私…暴れた?」

 

 微かだが、自分が白龍に痛め付けられ、叫びながら暴れている夢をみた記憶がある。ただ、なぜかその時白龍も泣き叫んでいた気がする。それを言うと、少し気まずそうに

 

 「うん…。かなり。」

 

 と答えるのでどうやら夢ではなかったらしい。また気まずくなって、お互い少し黙る。そして、どうしても聞きたかったことを聞いた。

 

 「…なんでそこまでして助けてくれるの?あなたは─」

 

 「苗床にするつもりなんて無い。僕のせいでこんな目にあってるんだ、助けなきゃ。別に苗床にしても一族や周りから反発されることはない。君も分かってると思うけど、僕らの種は数がかなり少ないからね。」

 

 「…」

 

 「でも僕が嫌なんだ。それに───」

 

 一呼吸置く。そしてこっちを真っ直ぐ見る。そのあどけない深紅の瞳は真剣だった。

 

 「君が好きだ。出会った時から。要するに一目惚れしたんだ。」

 

 「…」

 

 「だから君のしたいようにしてくれ。行く宛がないなら紹介するし、この辺りでもいいし。」

 

 「…力づくで引き留めないのね。」

 

 「それは…そりゃあそれは…君の…君の自由だもの。」

 

 「…」

 

 嘘つけ。本当は寂しくて仕方ないくせに。今なんかもう顔に出てるぞ。

 

 嘘をついているのは私のほうなのかな。

 

 「信じて…いいの?」

 

 「?」

 

 「あなたが…守ってくれるって。」

 

 「それは…それはどういう意味?」

 

 「そういえば…最初にあなたが襲ったのを除いたら、あとは全部私が勝手に思い込んで差し出してただけだものね」

 

 「でもそれは僕が悪─────」

 

 「それなのに助けてくれて…つきっきりで診てくれて…それなのに私…」

 

 「けどそれは───────」

 

 「私…お礼も言わずに拒絶して…それでもそんなに想ってくれてるなんて…。」

 

 ほぼ自分に言い聞かせていた。もし逆の立場だったらこれほど尽くせるだろうか。

 

 「あなたを信じたい…信じたいと…思う。」

 

 しばらくして彼がすがるような目で、か細く言った。

 

 「…一緒にいてくれる?」

 

 今にも泣き出しそうな目。でも───────

 

 「それはあなたが私に言うことじゃないわ」

 

 この龍が自分と暮らしたいと思っていることは前に聞いた。半泣きの、しかし微かな期待を抱いた瞳を真っ直ぐ見て言った。

 

 「私を番にしてくれる?ずっと…傍にいてくれる?私は…本当は…あなたとの温もりが欲しい…だから一緒にいたいと…いたいと思う。」

 

 彼は答えなかった。しゃくりあげるのを我慢していたからなのかもしれない。代わりに額を私の額にコツンとつけた。そしてようやく震えた声で言った。

 

 「ありがとう…。」 

 

 額を離すと、私は彼の胸に頬を擦りつける。彼はそれに応えるように私の顔を抱き、額から首をそっとなめた。彼の力強い鼓動が聞こえ、あれほど恐怖していた相手に安らぎを覚える。すると彼が

 

 「口合わせ…しても良い?」

 

 「口合わせって口移しの食べ物無くしたやつだっけ?」

 

 「あ、知らなかった?愛情表現で、僕らは番になるときもやるんだけど。」

 

 「火竜がやってるのをみたことある…いいわ。」

 

 確か舌を絡めてた。私達の種族はそんなことしないが、彼となら良いだろう。彼の方に顔を向ける。

 

 「私口固いけど良い?」

 

 「気にしないよ」

 

 そう言って顔を近づけ口合わせをした。彼の柔らかい舌が入るのを感じて自分も舌を彼の口に入れ、そのまま絡めると不思議な安らぎを感じ眼を瞑った。。他の龍にやられれば舌を噛んで拒絶するだろうに、嫌気どころかもっとして欲しいとさえ思う。

 

 しばらくして短く糸を引きながら口を離し、顔を見合わせる。彼は満面の、優しい、優しい笑みを浮かべ再び額をつけた。きっと私も同じような顔をしてる。彼は私に全てをくれた。温もりも、優しさも、愛情も、そしてきっと…。

 

 本当ならこのあと契りを交わすのだろうが、残念ながら今の私では無理だ。ふと彼の股間を見るが、そこには微かな膨らみがあるだけだった。彼もそこは理解している。

 

 「ごめん。でも今度はちゃんと受け入れるから。だから治るまでもう少し待ってて。」 

 

 「うん。分かってる。」

 

 そう返事をして、微笑を浮かべながら脚を折り畳んで座り、私に寄り添った。私も彼に寄りかかる。

 

 (こんなに安心して眠れるのはいつぶりだろう。)

 

 そう思うか思わないうちに深い眠りに落ちた。

 

────────────────────────

 

 

 翌朝目覚めると、彼はまだ寝ていた。ずっとつきっきりでかつ私に気を使ってたんだ。疲れていて当然だ。その安らかで無防備でかわいい彼の寝顔をしばらく見ていると目を覚まし、こちらにすり寄り、

 

 「獲物獲ってくる」

 

 と言った。いつも彼は先に食べてから私に運んでいるので、一緒に食べたいなぁと思い

 

 

 「一緒に行って良い?」

 

 と言うと快く、むしろ嬉しそうに頷いた。

 

 アプケロス2頭を2匹で食べてる途中、ふと思い付いて(少し恥ずかしかったが勇気を出して)食べている彼の口元を舐めてねだる。彼はすぐにその意図を察し、肉を一口食いちぎって私の方を向く。そして口移しでその肉を貰った。嬉しくて思わず笑う。すると今度は彼が私の口を舐めてきたので、お返しをすると彼も「クックッ」と嬉しそうに笑ってくれた。

  

 そのあと草とキノコを混ぜたやつを塗り、周囲を散歩してその日は終わった。

 

 その後、私はなんとか飛べるようになり、より動き回れるようになった。

 

 彼に助けられて1ヵ月半経ちようやく痛みもなくなって草等も塗らなくなった。あとは鱗がもとに戻るのを待つだけだ。

 

 数日もすれば鱗は元通りになり、湖で彼と取っ組み合い、疲れて休んでから日も暮れたので巣に戻る。

 

 「良かった。もう少し長くかかるとおもったけど心配無さそうだね。」

 

 すり寄りながらそういう彼の言葉には恐らく二重の意味がある。まぁ番になると決めてから3週間ぐらい待っててくれたのだ。求めて当然だろう。

 

 「随分待たせちゃったわね。」

 

 そう言って彼の前で仰向けになる。

 

 「きて」

 

 彼は頷くと近づいて私の下腹部を、そして秘裂の周りを舐め、舌を入れてくる。

 

 「ン、ンンン」

 

 甘い刺激に思わず声を出す。舌でじっくりと舐められ早くも限界が近づく。発情した膣からは大量の愛液が分泌され、辺りにその匂いが充満する。

 

 と、まるで焦らすように舌が抜かれて彼を見るが、決して焦らした訳では無いことに気がつく。彼の股間からははち切れんばかりに立派な雄槍がそそりたっており、時折ピクピクと震えていた。今ではいとおしくも思える。

 

 目が合い、少し恥ずかしそうに笑うと覆い被さってピトッと先端を秘部に付け、体重をかけてゆっくり押し込んだ。

 

 あのミチミチと膣肉を掻き分けて入ってくる感覚。久しぶりの交尾なのでかなりの痛みを覚悟したが、そんなものはなかった。

 

 (い、痛くない…それどころか凄く気持ちいい…)

 

 奥に進むにつれ快感の波に襲われる。声を上げずにはいられなかった。

 

 彼を欲して下がってきた子宮を押し上げて根本まで入ると、電気が流れたような快感に体を痙攣させながら大きな声を上げて達してしまう。痛みもある。だが快感に比べれば虫が止まる程度だ。

 

 派手に達して恥ずかしくなって顔を背けると、彼がその顔を舐めた。

 

 「痛い?」

 

 「全然…むしろ気持ちいい…ハァ…でもちょっと待って」

 

 さらっと恥ずかしいことを言ってしまい顔に血が昇る。するとフォローするように

 

 「僕も気持ちいい…よくなったら言って。無理しないでね。」

 

 と恥ずかしそうに言って、誤魔化すように私を抱き締めた。私もそれに甘え、息が整うのを待つ。彼の鼓動が聞こえる。興奮のためかいつもより速い。

 

 「フゥ…フゥ…もう大丈夫。ありがとう。続けて。」

 

 「うん…」

 

 そしてゆっくりと突きはじめる。あんなに痛かったのに信じられないくらいの快感を感じ、喘いだ。気持ち次第でこれほど変わるとは。彼の興奮した熱い吐息がかかり、さらに興奮する。

 

 「首を噛んでも良いかい?」

 

 「もちろんよ!」

 

 首にある延髄を強く刺激すると排卵が促される。つまり彼は私と本気で子作りしてくれるということだ。嬉しかった。鱗にヒビが入るか入らないぐらいに噛まれ、自分の膣が締まるのを感じた。やがて首を放し、にっこり笑って私を舐めた。

 

 始めはゆったりとした動きだったが、次第に肉欲に任せ、お互いがお互いを激しく求めた。快感で意識が飛びそうになるのをなんとかこらえる。今意識を失いたくない。もっと感じていたい。

 

 前足で彼をしっかりと抱き締める反面、後ろ足はだらしなく伸び快感に震えていた。腰を打ち付ける音と、膣と肉棒が擦れる水音、そして喘ぐ声が巣に響く。何度も絶頂に達しその度に痙攣するが、羞恥心などとうに消え去った。

 

 彼の息がさらに荒くなり、動きに力がこもる。彼との子供が欲しい。彼との子供が産みたい。心からそう思った。

 

 私を抱き締める彼の腕に力が入り、私をさらに引き寄せる。それでよいと伝えるために、私も彼を抱き寄せた。

 

 「ウグッ…ウゥ」

 

 「キャウァッ」

 

 彼が思いきり子宮を突き上げ、動きを止める。そして熱い彼の精が爆発した。一気に子宮が膨らむのを感じ、満足感を覚える。彼の雄は激しく脈打ち、私を孕ませるべく大量の精液を送り込んだ。

 

 射精が終わってもしばらく抱き合ったままでいた。彼の雄槍は今だ固さを保っていたが、満足げにため息をつくと抜いてくれた。遠慮されてるのではと思い、聞いてみる。

 

 「満足…した…?」

 

 「うん。凄く良かった。今日はもう良いよ。君も疲れてそうだし。」

 

 実際かなり疲れていた。

 

 「なんか…申し訳ないわ」

 

 そんなことない、と首を横に振ると

 「ありがとう。これからもずっと守るよ。」

 

 「こちらこそ…ねぇ、子供…出来るかな?」

 

 「出来ると思うよ。そりゃあ確率は低いだろうけど。」

 

 「それなら良かった。そういえば、名前聞いてなかったわね。」

 

 「そうだった。ルークだよ」

 

 「シルバよ。」

 

 

 

 2匹は幸せそうに笑い、長い口づけを交わして眠りについた。

 

                     続く




 いかがでしたか?

 (祝)2匹の名前が決まりましたぁぁ!\(^o^)/
  
   「ルーク」はチェスでいう「塔」
   「シルバ」はバルファルクは銀翼の凶星と呼ばれているので「シルバー」からとりました。

 それではまた


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第4話 和解2

 
 シルバの誤解を解き、番となった彼ら。シルバはこれまでにない幸福感を感じるが、ルークに命の危機が迫っていることを知るよしもなかった…。

 中盤に出てくる冥海竜は3tryGで登場したラギアクルス稀少種のことです。


 

 彼女…シルバと番の契りを交わした翌日、僕が目を覚ますと彼女はすでに起きていた。起こさぬよう気づかってくれたのか、寄り添ったまま巣の外をボーッとみている。

 

 また少し寝過ごしてしまったのか太陽はすでにそこそこの高さまで昇っている。気づいたのかこっちをみて

 

 「あ、起きた?」

 

 「うん。ごめん待たせたね、狩りに行こうか。」

 

 伸びをしながら、昨日のことを思い返した。

 

 (番になったんだよなぁ。最初に誘ったの僕なのに実感わかないや。)

 

 これからは彼女と一緒に狩りをし、食べ、時には遊び、身を重ね、寄り添って寝る。いつか子供ができたら育てる。何匹かできるかもしれない。本当に実感がわかないな。

 

 食事が終わって湖で休みながら、ある言い訳を考えていた。次の満月の日に両親の元へ帰らなければならない。もちろん番ができたという報告もあるのだが、それよりも重大な用がある。まぁ、今シルバには報告だけとでも言っておこう。嘘ではないし。

 

 「ねぇ、シルバ」

 

 「なに?」

 

 「次の満月に僕の両親のところへ行くんだけど…」

 

 「あなたの両親のところ?なんで?あなた独り立ちしてなかったの?」

 

 「そうじゃなくて、君と番になったことを報告しに行くんだよ。それから多分、婚姻の儀をやることになると思う。」

 

 「え?わざわざ報告するの?それに婚姻の儀って…」

 

 余談だが、竜が番になるときに両親に報告もなにもしない。許可すら求めない。そんなことをするのは人間くらいだろう。

 

 「確かに普通の竜ならしないんだけど、流石に王の子供が番をもつとなると報告しないといけないから。」

 

 「王?どういうこと?…え?まさかあなたの両親って……」

 

 「言ってなかったっけ…?」

 

 これはマズイ。大切なことをいい忘れていた。自分は他と容姿が少し違うから気づかなくてもおかしくないのに。

 

 「僕の両親は祖龍ミラボレアス。今の龍王だよ。」

 

 シルバは絶句し、しばらくして震えた声を絞り出した。

 

 「じ、じゃああなたは…あなたも………?」

 

 「そうだよ。」

 

 「でも…でも…聞いていた姿と違う…」

 

 「確かに違う。父のような黒い角じゃないし、母みたいな白い一本角でもない。でも間違いなく僕も祖龍ミラボレアスだよ。」

 

 「確かに…角以外は…体も光ってるし……ほ、他に兄弟はいないの?」

 

 「今のところはいない。新しい子供ができたら僕も呼び出されるはずだから。それがないから今は僕だけ。」

 

 「じゃあ…じゃあ…あなたは…未来の…王なの?」

 

 「そういうことになるね。」

 

 再び絶句。当然だろう。祖龍の名を知らぬ竜など、産まれてすぐに捨てられるか両親が死んで群れもいない竜ぐらいだ。『その者、空と大地の一部であり、全ての意志はその者から発せられ、その者へ還る。その者、世界の均衡を保つ者なり。よって全ての生命を均しく滅ぼす。』皆そう教えられる。つまり絶対的存在。それが今目の前にいる。目の前にいるどころじゃない。

 

 絶句するのは想定内だが、いつぞやのように涙目で震えるのは予想外だった。

 

 「どうしたの?」

 

 「ご……ご免なさい…」

 

 「え?何が?」

 

 「私…気づけなくて…それで…その……随分と………無礼な態度を……助けてもらった上に番にもしてくれるっていってたのに……とても…失礼な態度を……」

 

 異種で王の番に選ばれるのは表現できないほど名誉なこと。世界でもっとも強い龍の番になるのだから。苗床ではないのなら尚更だ。龍として王にある程度の地位を認められる。だが馴れ馴れしくはできない。番とて王。格差はある。

 

 しかしそれはシルバには一番言われたくなかった言葉だった。

 

 失意を掻き消すように、四つん這いになって彼女の頭を抱く。

 

 「そんなこと言わないで。僕は君を対等な存在としてみている。君を見下すつもりはないんだ。だから今までどおりにしてくれ。言い忘れたことは謝る。だから僕が嫌になって離れるんだったら僕は何も言わないけど、血筋と地位を理由に離れるのは止めてくれ…。」

 

 シルバは、彼がその血筋のせいで孤独になっていたのを思いだし、シルバは「ごめんね」と言って口づけをした。

 

 しばらく抱き合い、離れると

 

 「わかったわ。いつ発つの?」

 

 「次の満月に間に合うように行くから、だいたい明日ぐらいかなぁ。」

 

 そんな会話をしているとき、バサバッサと不安定な羽音と共に甲高い悲鳴が響く。みれば金火竜の子供が制御不能になって湖に墜落するところだった。後ろからは親とみられる銀火竜が必死に追いかけているが間に合わない。そのまま湖に落ちてしまった。子供は浮き上がることが出来ず沈んでいき、銀火竜は絶望の声をあげ落ちたところを見つめる。

 

 シルバが行動するよりも圧倒的に早くルークが湖に飛び込んだ。まるで海竜のように驚くほどしなやかに体をくねらせ、水中で子供をキャッチすると浮き上がる。そして子供を抱き抱えるように仰向けになり、尻尾をくねらせ岸へ向かった。

 

 子供は息をせずにぐったりとしていたが、ルークが一瞬紅の電撃を浴びせると水を吐いて荒く息をした───

 

 「ンギャッ」

 

 とルークが小さな悲鳴を上げた。子供に意識を集中させていたせいで岸に頭をぶつけたのだ。シルバは必死で笑いを堪え体を震わせる。

 

 岸に上がって子供を降ろすと銀火竜が慌てて駆け寄ってきた。

 

 「そんなに笑わないでおくれよ。真剣だったんだから。」

 

 シルバがついに笑いを堪えられなくなり吹き出すと惨めな顔でルークが訴える。それが余計面白かった。

 

 「随分泳ぐの上手いのね。」

 

 「子供の頃冥海竜に教わった。いざってとき役に立つからって。」

 

 「冥海竜って…他に師みたいな竜いるの?」

 

 「主に両親だからね…あとはキリンにどれくらいの電気の出力で筋肉を動かせるかとか神経を麻痺させられるか教わったぐらいかな。」

 

 「普通の電撃も使えるの?」

 

 「少しね」

 

 そんな会話をしていると銀火竜が恐る恐る近づき彼に涙目で

 

 「本当に感謝致します…この恩をどう返せば良いのか…」

 

 と言った。シルバもレウスの言葉を理解できて少し驚く。それをよそにルークが

 

 「恩だなんて…僕が命からがら助けた訳じゃないんだから。それにそんなに改まらなくて大丈夫だよ。まだ王になった訳じゃない。」

 

 と言うとレウスは驚いたように目を開き、そしてもう一度礼を言うと後でレイアも連れてくると言って去っていった。

 

 「ねぇルーク、私あのレウスの言ってることわかったんだけど、それもあなたの力?」

 

 「あぁそれは…その…僕らには特別な力があるのはもう知ってると思うんだけど、その…特別な力をもつ竜は祖龍以外にも何種かいて、そういう竜は体の隅々に…鱗や血から唾液までその力がこもってるんだ。例えば鱗とかをかざすだけで天気がおかしくなるみたいにね。それで…その…多分…当然…精にも力がある…多分血や宝玉の次に強いくらい…子供にその力を受け継がせないといけないから…だから…。」

 

 「つまりあなたと交わってるとあなたの力が私に移るってこと?それで話せるようになったと?」

 

 「そういうことだと思う。」

 

 「へー…」

 

 どうでもいいけど、この話を恥ずかしそうに喋る彼がよくもまぁ私を襲えたものだ。衝動的なやつを除いたとしても昨日は確実に衝動的ではなかったはず。よっぽど言ってからかってやろうと思ったが、傷つけてしまいそうなので止めておいた。

 

 しばらくして金火竜がやってきて感謝の言葉と、今まで根拠なく畏怖していたことに対する侘びの言葉を述べる。ルークはそれに対し「これからは仲良くしよう。」などといった。

 

 すると金火竜はシルバのほうをみて、

 

 「見かけない顔だけど、あなたは彼の番?」

 

 「そうよ。よろしくね。」

 

 「もしかして、この間血まみれで彼に運ばれていた龍?」

 

 「多分そうよ。」

 

 「そう!あのときまだ生きていて助かったのね!それはよかった。…失礼になるかも知れないけど、彼が食うために殺して運んでいたのかと思って…その…かなりひどい状態だったから。ただ、最近夫が狩りに出たときに王の子と見慣れない龍がとても仲良さそうにしているって聞いてもしかしてと思ったの。」

 

 そこで事の真相をシルバとルークが説明する。

 

 「そうだったの…。それは大変だったわね。彼が間に合って本当に良かった。」

 

 そう言って、子供達が待っているからと去っていった。

 

 「良かったわねルーク、誤解が解けて。」

 

 「うん。最近は彼らが僕らを見かけて少し警戒も薄れていたみたいだしね。そうなると君のお陰だね。」

 

 こうして仔竜水没事件は幕を閉じた。

 

 日も暮れ巣に戻ると

 

 「シルバ…交尾しても良い?」 

 

 と言ってきてシルバは少し驚いた。昼間あんなに恥ずかしがってたのに自分からストレートに誘うなんて。もちろん嬉しい誘いなのだが。

 

 「えぇ。もちろんよ。」

 

 そう言って仰向けになると彼が秘部を舐める。私もすっかり彼に対し発情してしまったらしく、すぐに濡れて強い匂いが充満する。今日も私が達する前に彼が我慢できなくなって覆い被さり、ゆっくり挿れて私の息が整うまで待ってくれた。

 

 「動くよ…?」

 

 「えぇ。いいわ。」

 

 始めは首を噛みながらゆっくり大きく腰を振るもすぐに首を離して激しくなる。今更痛みなど感じないので、彼の雄槍に激しく突かれる感覚と与えられる快感を貪る。昨日よりもさらに激しいのは昼間私が傷つけてしまったからなのだろうか。

 

 私は前足で彼を掻き抱きながら喘ぐ。彼の吐息がかかって余計に興奮した。2、3度達し、彼も限界を迎えると私をきつく抱き締めて動きを止める。まるで腹の中の子供が胎動を起こしているかのような激しい脈動と共に下腹部が一気に熱くなった。この瞬間が好きだ。単純に気持ちいいというのもあるが、それよりも彼の精を受けているという満足感と幸福感が好きだ。

 

 相変わらず硬さを保ったままだが、1度引き抜いてくれた。結合を解けば粘液が一気に逆流する。それが収まるまで舐めて私の息が整うのを待つと、今度は遠慮がちに聞いてきた。

 

 「もう一回…良い?」

 

 「もちろん。私を番に認めてくれたんでしょ?もうこの事で遠慮はいらないわ。」

 

 「…ありがと。」

 

 と、ふと昼間のことを思いだし、ある案が思い付いた。

 

 「ねえ、私が上になっても良い?」

 

 ルークは驚いたがすぐその意図に気づき、頷いて恥ずかしそうに仰向けになった。

 

 雌が上になるということは雄が雌を対等以上と認めたことになる。先の失言を撤回するためのシルバの配慮だった。

 

 いざ彼に覆い被さったのは良いものの、そのままでは見えないので挿れられない。前足の間から覗いて自分の秘裂にあてがおうとすると恥ずかしさが込み上げてくる。何度か失敗し、角度を調節しながら先端を挿れると腰を降ろした。

 

 2匹に快感が襲い、シルバは体に力が入らなくなる。それでもしばらく抱き合った後なんとか踏ん張って腰を上下に動かした。なんとも滑稽な格好だろうと最初は恥ずかしさを感じていたシルバだが、動いたり下腹部に少し力をいれる度にルークが荒い息を漏らすと少し嬉しくなった。

 

 ルークは完全に力を抜き、シルバの脇腹を撫でながら与えられる快感に浸る。シルバは彼を満足させようと徐々に腰を動かす速度を上げるが、長くは続かなかった。いつもはない、先端が最奥をゴリゴリと押しつけるような感覚と、先の激しい交尾の後ということもあり早々と絶頂を迎えてしまう。幸福感も手伝ってかなり激しく。

 

 「クキャァァ!……クゥアッ!」

 

 電気が流れたようにビクッと体が仰け反り、結合部から噴き出さんばかりに愛液が漏れる。四股から力が抜けてルークに倒れこんでしまうが、それで終わらなかった。体のいたるところが絶えず痙攣し、その度に声をあげてしまう。彼の上でともあって、これまでとは比べ物にならない恥ずかしさを感じた。

 

 (自分で誘ってこんな…猫みたいに穴に潜りたいわ)

 

 情けなくて涙が出そうになる。恐る恐る彼を見上げれば遠慮なく「クックッ」と笑われた。嘲るというよりむしろ愛おしくてたまらないというようないつもの優しい笑みだったが、なんか悔しくて彼を睨む。が、また体が痙攣して変な声を出してしまいもう目を合わせられなくなった。

 

 「わかったから…私のま…クァッ!…負けだから…ハァ…動いて。」

 

 「そんな顔すんなって。遠慮しなくていいって言った君が恥ずかしがってどうするのさ。」

 

 笑顔でそういわれながら撫でられれば羞恥心は消し飛んだ。そしてそのままの体勢でルークが動く。シルバの下にいるので動きにくく、必然的にゆったりとした動きになるが、激しくしようとは思っていなかった。

 

 先程とは対照的に、互いに身を委ねながらじっとりと快楽を楽しむ。シルバにはゆっくりな分突くときの時の電気が走るような快感はないものの、抱き合って体を擦らせながら快楽と愛に浸るのも悪くない。むしろこっちの方が心地よく感じる。

 

 ルークも同じことを思っていた。そして今自分と抱き合っている、自分とひとつになっている彼女に子種を、精液という名の愛を注ぎたいと思った。徐々に熱い感覚がせりあがってくる。

 

 (シルバを守りたい。一緒にいたい。そのためにも両親に会わないと。)

 

 一体両親にどんな顔をされ、どんなことを言われるかと思うと背筋に寒気が走りせりあがってきた熱いものが無くなる。

 

 (会ってどうなるか考えるのはまた後にして今はこっちを楽しもう。)

 

 妻となった彼女が幸せそうに顔を自分の胸に擦り寄せている様子を見ると、再び熱い感覚がせりあがってくる。それを堪えてもっと感じていたいという欲求が、彼女に種付けしたいという欲求に負けると少しだけ動きを強くした。シルバもそれを感じたのか前足の力が強くなった──

 

 「ウゥ…クッ」

 

 「キューン…」

 

  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─

 

 その夜はそのままの体勢で眠りにつき、翌朝、狩りのあとシルバは初めての、ルークは20年ぶりに「塔」へ向かうべく飛び立った。実は20年前に下僕の婚姻の儀のため2日間だけ帰っていた。

 

 出発して1日目は知らない所で野宿して、次の日飛びながら

 

 「ねぇ、昨日聞き忘れてたんだけど、婚姻の儀って何?」

 

 「あぁ、それはね…下僕と親近者…両親くらいだけど、あと一部の竜人達の前で口合わせと交尾をするの。」

 

 「みんなの前で?」

 

 「うん。恥ずかしいけど、両親もやったらしいし下僕が番を持つときもやってた。」

 

 「色々おかしいよそれ……って大丈夫!?」

 

 ルークがバランスを崩し、危うく墜落するところだった。

 

 「どうしたの?大丈夫?」

 

 「ちょっと体調が悪いかも。」

 

 「休む?」

 

 「いや、あと少しだから早く行こう。」

 

 それから数分後、山を地面と平行に切り取ったような地形が見えてくる。かなり広大な土地だ。よく見ると平坦な訳ではなく、全く別々の種類の竜が何匹かいた。

 

 「この辺で降りるよ。いきなりは僕でも失礼にあたるから。」

 

 そう言って塔と呼ばれた土地のすぐ近くに降りる。するとすぐに見たことのない種の雌の雷狼竜が駆け寄ってきた。二つ名でもない。子供も連れている。

 

 「ルーク様!?ルーク様ではないですか!」

 

 「やぁ、久しぶりだねレイ。子供ができたの?」

 

 「はい!夫のガルも今来てます。」

 

 走ってきた雷狼竜の雄は通常種だ。

 

 ガル「お久しぶりですルーク様。」

 

 「久しぶり!確か20年ぶり位だっけ?」

 

 ガル「はい。私達の婚姻の儀以来です。」

 

 レイ「この子は息子のルトと言います。半年前に産んだばかりです。」

 

 ルーク「それはおめでとう!」

 

 レイ「ありがとうございます。してルーク様、そちらの天彗龍は?」

 

 ルーク「シルバ、僕の番になったんだ。」

 

 シルバ「よ、よろしくお願いします。」

 

 レイ「番ですか!ルーク様ももうそんなに…レイです。代々王に仕えている下僕の一匹です。以後お見知りおきを…ということは婚姻の儀を?」

 

 ルーク「そういうこと。…両親に会わせてくれる?」

 

 レイは何かを察した様だった。シルバには何を察したのかは分からなかったが。

 

 レイ「…わかりました。すぐに取り次ぎます。」

 

 ガル「俺が先に走って行こう。お前はルーク様達を後から連れてきてくれ。」

 

 そうしてガルは走り去り、ルーク達も彼の両親の元へ歩いていった。

 

 レイ「ルーク様体調は───?」

 

 ルーク「今は平気だよ。」

 

 シルバ「さっき墜落しそうになってたけどね。」

 

 レイ「あらあら、あなたの塒(ねぐら)は残してあるのでそこでゆっくり休まれると良いでしょう。他の下僕達も喜びます。それに今日は満月です。もうじき空の一番高いところに昇るはずです。今は薄い雲がかかっていますが、じきに見えるでしょう。」

 

 そうこうしている間に塔の中心地に着いた。彼に似た、2匹の祖龍が出迎えるのだがどこか空気が張りつめている。久しぶりに息子が帰ってきたのにどうしたのかとシルバは思った。

 

 体格の大きい、黒い2本の角を生やした方が先に口を開く。野太く、威厳のある声だ。

 

 「ルーク、自分から来るとはな。」

 

 「お、お久しぶりです父上、母上。」

 

 「あなたの隣にいるのは?」

 

 と1本の白く長い角を生やした方がシルバみて言う。優しい、慈愛に満ちた声だとシルバは感じた。

 

 「彼女は…シルバ。彼女と婚姻の儀をしたいのですが…」

 

 張りつめた空気が一気に緩む

 

 「番というわけか?苗床や友では無くてか?それはおめでたい。」

 

 と父親の方が言った。

 

 「我はグラド。こっちは我の番のセラだ。我らについてはせがれから聞いておろう。」

 

 「シ、シルバです。よろしくお願いします。」

 

 セラ「綺麗な龍ね。それに……フフッ良い番になるでしょうね。」

 

 グラド「そうか。セラが言うならばそうなのだろう。こやつには他者の心をある程度読みとる事ができるからな。」

 

 シルバは初耳だったがもはや驚かなかった。もう常識外れなことには慣れた。

 

 セラ「あなたももうそんな歳なのね…。」

 

 と母親が感傷に浸っている時だった。

 

 ルーク「ウ…ク……ウ…ウゥ…」

 

 ルークが突然苦しそうに呻き始めた。そして光が無くとも光っていた彼の体からどんどん光が失われていく。一瞬紅の雷が彼の体を包むがすぐに消える。

 

 レイ「ルーク様!!」

 

 シルバ「ルーク!?どうしたの!?ルーク!?」

 

 そしてガックリと膝をつき、前のめりに倒れた。とっさにシルバがルークの腹の下に潜り込んで支えたため体を打ち付けることはなかった。

 

 グラド「せがれを降ろせ、シルバ。レイも下がれ。」

 

 王の有無を言わせない口調に従うしかない。その間もルークは苦しみ続けた。それを何でもないようにグラドが

 

 「やはりわざわざ満月の日に来たのはこれが理由か。」

 

と言うと

 

 ルーク「ご…ごめ……んなさ……い……ガフッ!」

 

 吐血した。原因がわからなくても、吐血するということは命に危機が生じているということ。殴られたりしていないのなら尚更だ。

 

 「どうしちゃったのよ…ルークゥ…」

 

 得体の知れぬ恐怖がシルバを襲った。

 

 

                次話『代償』に続く




 補足ですが、レイはモンスターハンターフロンティアに出てくる極ジンオウガです。セラも同じくフロンティアの真祖龍(ユーザーの中での通称ミラコーン)です。知らない人で気になったらラギア稀少種とともに調べてみてください。

 それではまた。


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第5話 代償

 
 何事にも代償はあるんです…。


 

 「わざわざ満月の日に来たのはこれが理由か。」

 

 「ご…ごめ…んな……さい………ガフッ!」

 

 「どうしちゃったのよ…ルークゥ…」

 

 血を吐きもがき苦しむルークにシルバはただ寄り添うことしかできなかった。だがそれも彼の父によって禁じられる。

 

 グラド「我はせがれと話をする。下がれシルバ。」

 

 シルバ「…」

 

 グラド「では聞こう。最初に、なぜその力を使った。あれほど使うなと禁じたはずだが?」

 

 ルーク「シルバが……シルバが鋼龍に襲われて……それ…ゲフッ!……それで…あの龍も500歳ぐらいで───」

 

 グラド「それで怪我をしたからと言うことか?確かに500歳ともなればかなりの力を持っているだろうが、この天彗龍もなかなか丈夫そうにみえるがそこまで酷かったのか?」

 

 ルーク「ブレスを……2度…も…食らっ…ガフッ!…て…」

 

 ここで少しグラドとセラの顔に驚きの表情が浮かぶ。

 

 グラド「ほう!あれを2度食らったのか。生き返らせるようなことをしていなかったということは耐えたのか。よく耐えたな。さすが流星と呼ばれるだけある。それで?」

 

 ルーク「で……も…でも…」

 

 ルークの目に涙が浮かぶ。だがこれは悲しみの涙ではない。それもある程度はあるかもしれないが、それは苦痛故の涙だった。

 

 ルーク「僕が助けに来たときは……う…鱗と甲殻…が殆ど剥がれてて……片目もつぶれて…皮を…剥いだみたいな感じで…あち…こちの……骨が折れて……あちこち肉がもってかれて……骨が見えてるところ……も…あって……。」

 

 シルバ「そんな…そんな…」

 

 グラド「…セラ」

 

 セラ「…いいえ、嘘はついてませんわ。」

 

 これにはグラドも黙った。つまり愛する者が狩られ食われかけた獲物のような状態になっていたということだ。さすがに同情せざるおえない。

 

 グラド「力を使った理由はわかった。次の質問をする。なぜこうなることがわかっているはずなのに、力を使った後休眠しなかった?」

 

 ルーク「鋼龍を……殺した訳じゃ…ない……でも巣に…運ぶ時間も…ないから……」

 

 グラド「その場でやるしかなく、かつ眠ってしまえば追撃されるということか?」

 

 ルーク「は………い…」

 

 グラド「どれぐらい前だ?」

 

 ルーク「2ヵ月…たたない……ぐらい…」

 

 セラ「2ヶ月……!」

 

 シルバ「どういうこと!?ルークになにが起きたの!?彼はどうなるの!?」

 

 グラド「こいつは自然の理に反する力を不十分ではあるが使いこなすことができる。だが、それは我でさえ使おうとするだけで全身を捻じ切られるような苦痛に襲われる。それだけ負荷がかかると言うことだ。」

 

 苦しみ呻くルークを意に返さないといった様子で説明を続ける。

 

 セラ「普通、私達祖龍に限らず、何かしらの能力を持つ竜のその力は命に比例する。命が少なくなれば力も弱まり、力を使いすぎれば命が弱る。力を使いすぎたことによる命の消耗は、時間をかければ命も力も回復するのですが…」

 

 グラド「こやつは削れた命を回復させるため休眠に堕ちようとする肉体を、自らの力で誤魔化し続けたのだろう。結果、回復することなく肉体も命も傷つき続け、それを誤魔化すために更なる力を使い、さらに傷つくという循環に陥った。その末路がこれだ。もはや自己回復もできなくなってしまったようだ。」

 

 セラ「我らの力は満月の日に最も強くなる。これは普通良い意味なのですが、傷ついた彼にとっては逆効果です。」

 

 シルバ「回復できないって…じゃあ…彼は…死ぬってことですか?」

 

 グラド「うむ。このままでは明日ぐらいが限界だろう。そしてこのまま死の寸前まで苦しみ続けるだろうな。こっちへ来い、ルーク。いつまでも寝てるでない。」

 

 シルバ「そんなぁ…やっとお互い幸せになれたと思ったのに…あなた達は…なんとも思わないの?…自分の息子が苦しんでて…」

 

 レイがハッとしてシルバをみる。グラドとセラの表情に一瞬衝撃が走る。

 

 ルーク「待って、シルバ。」

 

 と、ルークがよろよろと起き上がる。だが二足歩行にはなれず、四足歩行で立つ。そしてシルバを遮るように彼女の前を通って、

 

 ルーク「シル…バに悪気は……ないから…。」

 

 と言うと、グラドはただこう言った。

 

 「もうよい。話は後だ。こっちに来い。」

 

 ルーク「はい……」

 

 ルークが両親の方へ歩こうとしたとき、雲が切れて月明かりが辺りを照らした。レイが息をのみ、グラドとセラの表情が明らかに焦りに変わった──────

 

 ルーク「グ、グギアァァァァ!ガハッゴハァァ…」

 

 悲鳴を上げて大量の血を吐き、呻きながら数歩よろけると倒れた。今度はシルバも間に合わないが、ルークが地面に叩きつけられることはない。母親のセラがしっかりとルークを支え、抱き締めた。

 

 セラ「もういいわ。さぁおいで、今楽にしてあげますからね。…いいでしょう?」

 

 グラド「あぁ、本人を問い詰めるのはまた後にしよう。レイ、シルバを塒へ案内しろ…いや、我も行こう。シルバにもう少し説明をせねばなるまい。」

 

 シルバ「彼はどうなるの?」

 

 グラド「セラが助ける。心配はないだろう。」

 

 セラは半ば引きずるようにしてルークを塔の中心部分へ連れて行った。

 

 「アガッアギャアァァァアアァァ!」

 

 更なる悲鳴に振り向けば、充血した目を見開き母親に抱きつくようにして泣き叫ぶルークの姿があった。セラは月光から庇うように翼を広げ、なだめるように舐める。

 

 シルバ「本当に大丈夫なの?」

 

 グラド「あぁ。このタイミングで雲が切れてしまうのは想定外だったがな。お陰で随分苦しんでいる。どれ程の苦しみかは我には想像できんがな。」

 

 レイ「ここです。」

 

 大きな平たい岩の影に、今までいた彼の巣とそっくりな巣があった。手入れもされていて材料の枯れた草木はまだ新しい。あそこより少し広い気もする。

 

 再度ルークの方を振り向くと、丁度中心部に着いたところだった。そこに彼をうつ伏せに寝かせ、セラが咆哮…というより美しい声を響かせた。優しいような、悲しいような声。すると光の波紋がかれらに向かって規則的に集まった。セラはルークの体に抱きつくように頬を着け、何か話しているようにも見える。

 

 グラド「大地の力を集めているのだ。それとともに彼女の命を注いでいる。」

 

 シルバ「そんなことが…!」

 

 グラド「我でもできるが、より愛情の強い母親がやった方がよかろう。我らの力は感情にも呼応するからな。」

 

 シルバ「でもそうしたらセラさんの命は?」

 

 グラド「自己回復が出来るようになる程度までしか注がんから終わったあとしばらく休めば問題ない。ルークはしばらくではすまぬだろうがな。以前この力を使ったときは半年目覚めなかった。実はあやつが力を使ったのを感じで、たまたまここに寄っていた嵐龍に様子を見に行ってもらっていて、その時は休眠している様子は無かったらしいから、力を十分制御できるようになったかと思ったのだが…まだまだだったようだな。」

 

 シルバ「半年!?それに前って?」

 

 レイ「…」

 

 グラド「あやつの力は肉体がついていってないとはいえ我々をはるかに越している。…我々祖龍には命を司る力を持っているが、その真の力を使えるものは滅多にいない。そしてあやつはその真の力を使うことができる。」

 

 シルバ「命を…司る?」

 

 グラド「そうだ。我々祖龍の役目は命の平衡を保つこと。乱れれば、平衡が戻るまですべての生命を滅ぼす。だが真の力を解放したあやつは滅ぼすどころか死者を甦らすことさえ可能だ。」

 

 シルバ「…!」

 

 グラド「最初はただの言い伝えだと我も思っていた。そもそも真の力を解放する祖龍でさえ少ないのに、自然の理を覆すようなことができるはずがない、とな。」

 

 一呼吸おいて続ける

 

 グラド「息子に真の力を解放する力があると知ってもそう思っていた。だがある日、あれは…あやつがまだ15歳の仔龍だった頃の話だ。今も忘れん。」

 

  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─ 

  

 

 15歳といっても祖龍は生まれてから一定期間の成長がとても遅いゆえにまだ幼龍ではなくなったばかりぐらいのころだ。

 

 我々の下僕のなかで特に信頼ある者や親しい者には子供の面倒も見させていてな、ルークにも1匹の下僕をつけていた。その下僕もまだ若く、仔龍の相手にはうってつけだと思ってな。真面目で優しく、我らも信用している下僕だ。息子とその下僕はとても仲が良く、いつも楽しそうにじゃれあっていた。他の下僕や竜人はその様子を見て、その下僕を将来の番にするのではと噂したぐらいだ。

 

 ルークが成長し、ある程度力を使えるようになってもあやつの無邪気さは相変わらずで、暇があれば遊びで取っ組み合っていたぞ。

 

 だがある日、その下僕が狩りに行ったっきり帰ってこなくなった。数日後、捜しに出ていた他の下僕に支えられながら血まみれになって帰ってきた。一目でもう助からないことがわかるほどの怪我と出血で、意識もほぼ無さそうに見える。そして戻ってきて我らを一目見ると呼吸をしなくなり、その目から光がなくなった。後で知ったことだが大勢の人間にやられたそうだ。その時だった。

 

 『嫌だ!死んじゃ嫌だ!』

 

 下僕に駆け寄って泣いていたルークがそう叫んだと思うと紅の雷が彼らを包み、それは瞬く間に強くなる。さらに、丁度今セラがルークにやっているような光の波紋が大地を伝い、同時に空が分厚い雲に覆われると紅の稲妻が大地に呼応するかのように波紋を描いて彼らの真上に集まった。

 

 それを見て我は決して起きてはならぬことが起きようとしていると直感でわかった。そして一言、

 

 『引き離せ!』

 

 すぐさま下僕たちが駆け寄ろうとするも雷に阻まれ近づけない。

 

 不意にルークが今まで聞いたことのないような叫び声を上げると空から閃光が彼らに向かって落ち、まばゆい光の柱となった。

 

 (これは…この力は…!)

 

 間違いない。大地のエネルギーが、全ての生き物の命の内の僅かが集結している。我でさえ未だに手を出すことさえもできない力。それをまだ仔龍の息子が使っている。

 

 『ウギァァァァァ!!』

 

 ゾッとするような悲鳴。やはりただでは使えないようだ。何度も吐き、吐くものが無くなれば血を吐いた。

 

 『もうやめて!あなたが死んでしまう!』

 

 セラが涙声で訴えるも届かない。なんとか引き離そうと閃光に突っ込んで行くが膨大な力に弾かれてしまった。他の下僕達も必死に呼び掛けながらブレスや気弾を放ったが、光の柱に変化はなかった。我々が一斉に自身の持つ一番強い技を使えば止められるかもしれない。しかし大地のエネルギーと一体化している以上、無理に引き離せばルークも無事では済むまい。

 

 さらに強い光が炸裂し、辺りにいたものは皆目を眩ました。

 

 視界が戻ったときにはもう光の柱は無く、下僕とその上に突っ伏しゼェゼェと苦しそうに呼吸するルークの姿があった。みな唖然とした。下僕は元通りだった。傷は跡形もなく消え、折れた角は痕跡なく生え、毛並みはむしろ良くみえ、そして何より息子とは対照的に安定した呼吸をしている。

 

 下僕『あ………れ?』

 

 ルークを助けなくてはいけない。そうと分かっているものの、目の前で起きたあり得ない出来事に我らを含め皆硬直していた。

 

 下僕『ここは……?ッッ!ルーク様!?一体…!?』

 

 その声に我に帰る。

 

 下僕『グ、グラド様!これは何が起きたのですか!?』

 

 それは我にも分からない。だが恐らく────

 

 『…全ての命を少しずつ集めてお前に注いだのだろう。言い伝えは知っているだろう?』

 

 下僕『そんな…ルーク様は!?どうなるのですか!?』

 

 『それは我にも分からぬ。ただ弱っておる。危険なほどにな。』

 

 『あなたのせいではありません。息子が勝手にやったことです。』

 

 泣いて詫びる下僕に対し、セラが生気の抜けた目で言った。げっそりして見える。

 

 『私が力を注いでみます。それで幾分かはましになるはずです。』

 

 その後セラが力を注ぐもルークは半年間眠り続けた。

 

  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─ 

 

 シルバ「その下僕はどうなったの?」

 

 グラド「ずっとせがれを看ていた。我々も辛い半年だったがその下僕にとってはさらに辛い半年だっただろう。自分を生き返らすため故のことだからな。」

 

 レイ「あれは…生きた心地がしませんでしたね。」

 

 シルバ「え?じゃあその下僕って…。」

 

 レイ「私です。私は本来この世にいない存在なのです。それをルーク様が自らを顧みずに助けて下さった。どんなに返しても返せない恩があるのです。」

 

 グラド「だがその力は自然の理に反する。それに我々の役目が世界の平衡を保つことであることもあり、その力は決して使ってはならぬ。故に半ば脅すように固く禁じていたのだ。」

 

 沈黙が流れる。シルバの目には涙が浮かんでいた。そういえば兆候はあった。普通より長く寝ていることや、あれ以来雷を使わなかったこと。火竜の子供を助けたときも、油断していたのではなく本当は苦痛を必死に耐えていたのかもしれない。それを笑ってしまった自分のなんと愚かなことか。それにしても彼の両親は、特に父親は彼のことが心配ではないのだろうか。先程も平然と質問をしていたし。それを読み取ったようにグラドが今度はシルバに質問をする。

 

 グラド「シルバよ。お前は苗床や下僕ではなく、番としていずれ王となるあやつに寄り添う覚悟はあるのか?」

 

 シルバ「もちろんです。」

 

 グラド「あやつを愛しているか?」

 

 シルバ「当然です。」

 

 グラド「そうだろうな。でなければ我らに先程のような物言いはしないだろう。我らにあんなことを言ったのはお前が初めてだ。」

 

 シルバ「そ、それは…」

 

 グラ「我もセラも同じだ、シルバ。あやつは我の大切な後継ぎである前に我とセラの大切な宝だ。真の力を夢見て我も何度かそれに手を出したが、100歳のときも、200歳のときも、400歳のときも使おうとするだけで死んだ方が楽なのではというほどの痛みを感じた。それをまだかなり若いあやつが使うのだ、その苦痛は計り知れない。」

 

 「…」

 

 グラド「我は先の言葉を訂正しよう。理に反するというのは所詮建前よ。我らが愛する子供に想像を絶する苦痛を味わって欲しくない、それによって泣き叫ぶのを見たくないのだ。」

 

 セラ「グラド?手伝ってくれないかしら?私だけでは引きずらないと運べないの。」

 

 いつの間にか光の波紋は止んでいた。

 

 シルバとレイが同時に

 

 「私が運びます!」

 

 と言って顔を見合わせる。

 

 レイ「お任せします。」

 

 そう言われ母親のところまで行き、彼を背中に乗せてもらうと巣に運んだ。深い眠りに就いた彼は重かったが足腰の力にはある程度自信がある。安定したルークの呼吸と鼓動を感じて少しホッとした。

 

 セラ「力持ちですね。美しい上にこれなら竜人達も文句を言わないでしょうね。」

 

 運びながらセラが感心したようにいった。美しいと言われて礼を言いつつ笑みをこぼす。ねぐらに戻るとグラドにも同じことを言われた。

 

 シルバ「…認めてくれるんですか?私と彼が番になることを。」

 

 セラ「もちろんよ。さっきグラドも言っていたけど私は他者の感情や思っていることを読み取ることもできるの。だからあなた達がお互いのことを強く想っていることも分かってる。引き離すことなんて出来ないわ。」

 

 グラド「引き離そうとなんかすればこやつが我々を消し飛ばしてしまうかもしれんな。母親に似て情愛の強い子だからやりかねんぞ。」

 

 そう言って2匹はふぐふぐと笑う。

 

 セラ「さて、私は疲れてしまったので休むわ。あなたもくつろいでいってね。レイも楽にしてね、あなたも大変なんだから。」

 

 シルバ、レイ「はい。」

 

 そう言って2匹は去っていった。彼を見る。穏やかな顔だ。いつまで眠り続けるか分からないと言うことは目覚めるまで世話をしなければならない。レイに頼めば快く引き受けてくれそうだが、任せることはしない。私は彼に甘えすぎた。出来ることはしなければならない。

 

 シルバはそう決意した。

 

 

                     続く




 今執筆中なのはこのシリーズだけですが、実は頭の中ではあと3作ぐらい考えてます。いつ具現化できるかなぁ。


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第6話 目覚め

 
 調子にのって3作品を同時製作してたらかなり大変になってしまった…。


 

 ルーク様が再び眠りについて早1週間。私は今日も息子と共にルーク様の側で留守番をしている。眠りについている間も食事をとらねば餓死してしまうので、今はシルバ様が口移しで肉を与えていた。以前眠りに落ちたときは私がしていたことだけど、今はシルバ様の役目だろう。私が彼らの分の獲物を獲りに行こうとしたときも、

 

 『レイ、私に行かせてくれない?私が大怪我してるときにルークがつきっきりで看てくれてて、そのお返しをしたいの。だから私がいない間ルークをお願いできない?』

 

 と言っていた。私としても息子のリトはまだ乳離れもしていないのでありがたい。

 

 「良い番をお持ちになりましたね…。」

 

 安らかに眠っている彼をみて思わずそう言う今の夫と出会うまで彼と番になっても良いと思ったこともあった。

 

 「あぁリト、よじ登っちゃ駄目でしょ。…やれやれ。」

 

 感傷に浸っているといつの間にかリトがルーク様の体に登っている。ルーク様が助けてくれなければ夫と出会うことなく、この子も生まれなかった。

 

 (私達はどこまでもついて行きます…ルーク様。)

 

 

  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─ 

 

 

 私はガルと一緒に獲物を探していた。流石に自分の番の獲物を子育て中の彼女に獲らせるわけにはいかない。ちなみにガルはレイの獲物を取りに来ている。

 

 「ねぇガル、ずっと気になってたんだけどレイって何の種なの?青白い雷狼竜なんて見たことない。」

 

 「レイは極吠える雷狼竜と人間には呼ばれているそうです。今は子育てをしているので普通ですが、いつもは常に帯電した状態を保てるほど強靭で、私が殺すつもりで襲いかかっても、足元にも及ばないでしょう。何で私を番に選んでくれたのか未だに疑問です。」

 

 「教えてくれないの?」

 

 「えぇ。気になって聞いてみたんですが濁されてしまいました。私はごく普通の雷狼竜なので一目惚れってことはないはずなんですが。」

 

 確かに、彼はレイより体格が小さい。というよりレイが雄と勘違いするほど大きい。

 

 「あなたから誘ったの?」

 

 「いえ、レイから誘われました。私も彼女に気があったのですが、彼女にとって私は弱すぎるので認められることはないと思い…だからここにきて共に暮らさないかと言われたときは驚きましたね。」

 

 「後でレイに聞いてみても良い?」

 

 「寧ろ私も知りたいです。シルバ様やルーク様が聞けば答えてくれるかも知れませんね。…この辺りです。」

 

 狩り場に着き、私達は各々の獲物を獲り、先に自分の分を食べてから塔に戻った。ガルはレイの尻に敷かれているわけでもないらしく、獲物を渡すとレイはガルにすり寄ってから食べ始める。ルークに肉をあげ終ると聞いてみる。

 

 「ねぇレイ、ガルとはどうやって出会ったの?」

 

 「以前彼が人間に捕らえられかけたところを私が助けたのが始まりでしたね。最初はただの情けでしたが、次第に変わっていって気がついたら彼を求めるようになりました。グラド様になんて言われるか気が気じゃありませんでしたが、セラ様の後押しもあって快く認めてくださいました。」

 

 「下僕って番持てないの?」

 

 「持てないわけではありませんが、持つものはあまりいません。今も私達くらいです。」

 

 

 …と、もはや嗅ぎ慣れた匂いが漂う。

 

 「ん…?」

 

 レイ「交わるということはセラ様のお力が元に戻ったようですね。」

 

 岩陰から覗くと少し遠くで2匹の祖龍が周りの目を全く気にせず交尾していた。見てもいないのにそう言うので

 

 「いつもなの?」

 

 「えぇ。最近はルーク様にお力を注いだので控えていましたが。」

 

 そういえばセラはうっとりと、多少喘いでいるだけでほとんど声をあげてない。自分とは対照的なので少し恥ずかしくなる。それとあることに気がついた。

 

 「みんなすごいみてる…。」

 

 他の下僕たちがその様子を少し離れたところから見ていた。羨ましそうにも、期待しているようにも見える。

 

 「次に選ばれるのを待っているんですよ。」

 

 「番を何頭も持つってこと?」

 

 「いえ、番はセラ様だけです。ですが祖龍が身籠れるのはほんの僅かな確率と言われています。なのでその血を絶やさないよう下僕とも交尾し、子をつくります。種が違ってもミラボレアスの子供は産まれますし、そうでなくともあの方の子供ですからかなり強い力を持っているでしょう。私がこのような他の個体と違う容姿なのもミラボレアスの血が混ざっているからです。」

 

 そういわれてみれば、下僕の大部分が雌だった。ガル以外はみな特異種で、雄の下僕は雌の下僕の番という感じでは無さそうだ。

 

 「あなたもグラドさんと…?」

 

 と聞けば微笑んで

 

 「いいえ。グラド様はご自分ではなくルーク様のお相手に私を指名しました。」

 

 「え!?じゃあルークと?」

 

 「もう随分前の話ですよ。それに子作りというより番を持った時のための練習相手です。もちろん宿してもおかしくはありませんでしたが。大丈夫ですよ、今私にはガルがいますし。」

 

 練習か…確かにルークは慣れた感じで優しかった…?あれ?じゃあ何で最初会ったとき理性飛ばすほど欲情してたんだろ?

 

 原因がシルバ自身にあることに本人が気づくのはもう少し後のことである。

 

 ガル「よく俺を選んだな。」

 

 ここで話は元に戻る。

 

 レイは深呼吸ともため息とも言える息を吐くと、

 

 「私はあまり同族とは縁が無くて、番を見つけるなんて考えてもいなかったのですし、いずれルーク様の苗床になりたいと思ったこともありました。そんなとき彼と出会って、その…なんと言いましょうか。普通だったら雌が自分より格下の彼を番にするなんてよっぽど飢えてない限りほぼない筈なんですし、今言ったように苗床になりたいとさえ思ってた私が彼と少しすごしたら今後もずっといたいと思い始めたんです。」

 

 「理由は無いってこと?」

 

 「そうですねぇ。同族と会う機会があまりなかったというのが理由でしょうか。…これはガルに失礼になるかもしれませんが、年下でボロボロだった彼を守りたいと思ったのかもしれません。彼が私に惹かれているのもわかっていましたし。」

 

 「そうなのか?」

 

 「えぇ。あなたは無口な分行動に出るんですよ。私達下僕は寵愛を受けることをとても名誉に思っています。私もそうでした。もちろんルーク様との事を後悔したりしている訳ではありません。とても名誉なことです。しかし私はガルと番になって本当に良かったと思っています。リトも授かりましたしね。」

 

 おとなしくちょこんと座っているリトを舐めてそう言った。

 

 「すごいなぁレイは。私なんてルークに甘えてばかり…。」

 

 ガル「そうでしょうか?献身的に尽くされていると思いますが?」

 

 セラ「私もそう思います。」

 

 一同「セラさん(様)…!」

 

 いつの間に終えたのかセラがこちらへ来ていた。代わりにこれまた見たことない轟竜が相手となっている。こちらは持ち前の声で喘いでいた。そんなのは気にもせず

 

 「お話し中すみませんね。最近ルークの様子を見ていなかったので。大丈夫そう────」

 

 グギュルルル~

 リト「ク~ン。」

 

 レイ「す、すみません。そういえばまだあげてなかったわね。」

 

 我慢の限界が来たのかリトがレイの口を舐めておねだりする。

 

 「キャンッキャンッ!」

 

 「ごめんなさいお乳をあげないと。」

 

 シルバ「そういえばすっかり忘れてた。ごめん、お腹すいちゃったよね…ここであげてもいいよ。待ちきれなさそうだし。」

 

 セラ「そのようですね。」

 

 母親の腹に手をかけおねだりするリトをみてレイも反論できなくなり

 

 「ではお言葉に甘えて…。」

 

 といって横たわると腹をすかせた幼子は飛び付くように後ろ足の付け根の間にある乳へ揉みながら吸い付いた。ガルがリトを舐めると何とも愛らしい顔で喉をならす。ホッコリとした空気が流れ、見ていた者たちも思わず微笑えんだ。

 

 シルバ「そういえば、祖龍って胎生と卵生のどっちなんですか?」

 

 セラ「どちらも、ですね。親によります。私は当時の下僕の、祖龍の血を持ったナルガクルガから胎児として産まれ、グラドは先代の女王から卵で産まれました。母親の影響か、私もルークを胎児として産みましたよ。」

 

 成る程、"祖"龍というだけあるのね。 

 

 「あなた達天彗龍ははどちらなの?」

 

 「それが…教わる前に落ちちゃったんです。仲間はいましたが、幼い子や身籠っている龍は周りにいませんでした。」

 

 と、まだ自分の生い立ちと翼のことを話してなかったのを思いだし、聞かせると

 

 レイ「そうだったんですか…それはお辛かったでしょうに。」

 

 セラ「そう…どうりで…この子は優しい子です。それに私達の息子と契りを交わしたというならあなたも私達の子。あなたの過去からの孤独が完全に消えるわけではないですが、遠慮なく甘えて良いのですよ。もちろん節度は持ってね。」

 

 シルバ「はい…。」

 

 レイ「そういえば、シルバ様とルーク様の馴れ初めを聞いてもよろしいですか。」

 

 セラ「私も気になってました。」

 

 ガル「何がきっかけだったのですか?」

 

 シルバ「そ、それは…」

 

 結局正直に話した。初めて会ったときのことも。

 

 セラ「そ、それは辛い思いをしたでしょう。そうならないようにレイと交尾させてたのですが…」

 

 シルバ「結果的に私は翔べなくなって良かったと思えるほど幸せなので良いんですけど、何で襲って来たんだろう?」

 

 レイ「失礼ながら、発情していたのでは?」

 

 シルバ「発情!?あのときの私が!?」

 

 ガル「だとしたらルーク様が反応するのも無理ないですね。あの匂いは私も未だに理性が追いやられますから。」

 

 レイ「私は古龍では無いので繁殖期があります。しかし古龍にはそれが無いと聞きました。なので…。」

 

 シルバ「私が彼をみて勝手に発情してたってこと?」

 

 セラ「長い間同族と巡り会えてないならあり得ますね。運命とは何と面白いものなのでしょう…。」

 

 ガル「シルバ様が卵生かどうかという話ですが、ルーク様に交尾したときの感覚を聞いてみればわかるかもしれませんね。」

 

 シルバ「どういうこと?」

 

 ガル「その…我々のように胎生なら子宮がある筈。レイと交わったときもそうでしたが、何か固いものに当たる感覚があったのです。」

 

 セラ「確かに卵生には子宮はありませんからね。そういえばグラドも同じようなことを言っていたかもしれません。聞いてみます?」

 

 シルバ「い、いや、そんなに急がないし…子宮があるってことは何となくわかってたので…奥の方を突かれてた感じもあったし…。」

 

 なんか、随分抵抗なく生殖について話せるようになったな私。

 

 レイ「ルーク様とシルバ様の子供かぁ。なんか嬉しいです。早く見てみたいですね。」

 

 ガル「リトの良い遊び相手になると良いですね。」

 

 シルバ「き、気が早いよレイ、ガル。」

 

 セラ「レイはルークが産まれたときからずっと着いていましたからね。良い姉弟のようですから。…今度機会があったら別の天彗龍に子育てについて聞いた方が良さそうですね。ミラボレアスの子なら問題ありませんが、天彗龍の子の方が産まれやすいですからね。」

 

 隣でそんな話をしているなんて知るよしもなく、若い祖龍は安らかに眠っていた。

 

 

 ──────────────────────

 

 セラ「さぁ、こっちにおいで。今楽にさせてあげますからね。」

 

 表現出来ないような苦痛の中、ようやく許しが与えられ母親のもとへ向かおうとしたが…

 

 (雲が…まずい!)

 

 それまで雲に隠れていた満月が姿を現し、月光が僕らを照らす。

 

 「グギャァァァァ!!ガハッゴハァ」

 

 死ぬ方が楽なんじゃないかと思うような痛みに耐えられるはずもなく、今度こそ倒れてしまった。しかし地面の衝撃の代わりに与えられたのは温もりだった。

 

 「もう少しの辛抱よ。さぁ行きましょう。」

 

 そう言われ半ば引きずられるようにして塔の中心部へと向かう。何とか歩こうとするも痛みはピークに達し、意識を保とうと母にしがみついた。

 

 「もう少し…もう少しよ…。」

 

 そのあとも母は言葉をかけ続けてくれたが、自分の悲鳴で何言っているか分からない。死にたい。今すぐ殺して欲しいという思いが、間違っているとわかっていても強くなる。シルバを思い浮かべ、両親を思い浮かべ、レイを思い浮かべ、ガルとその子供を思い浮かべ……何とか耐える。

 

 「ついたわ。始めますよ。」

 

 うつ伏せに寝かされて母が覆い被さる。母の天声と共に温かな光に包まれ痛みの増幅が止まった。

 

 「力を抜いて…。」

 

 苦痛は徐々に引いていき、代わりに待ち望んでいた決して耐えられぬ眠気が与えられる。

 

 「ごめん…なさい。」

 

 「もういいですよ。あなたは愛するものを死の淵から救ったに過ぎません。もう誰も咎めませんよ。」

 

 「はい…そうだ母さん…あそこの火竜達と仲良くなったよ。」

 

 「そうですか、それは良かった。あなたを随分恐れていましたからね。血や種族に関わらず、力ではない方法で和解する…それが我々の願い。それが出来るようになって欲しいから私達はあなたをあの場所に放したのです。見事に期待に応えてくれましたね、素敵な番も見つけてね。」

 

 「うん…。」

 

 「これで安心しましたよ…さぁ、ゆっくりお休みなさい。」

 

 母の温もりに包まれて、僕は深い眠りに堕ちた。

 

 

 ─2か月後─

 

 

 その日は満月だった。レイ、ガルが寝ているリトを見ながらシルバに塔について色々教えているとき、

 

 「…ン……ん?…シル…バ?」

 

 一同「ルーク(様)!?」

 

 「うん…クアァァァ。どれくらい寝てた?」

 

 いかにも良く寝てましたという感じに大あくび。まだ眠そうだが。

 

 レイ「2か月くらいです。」

 

 ガル「お元気そうでよかった。」

 

 ルーク「2ヶ月か…世話かけちゃったね。」

 

 シルバ「ごめんなさい。これからはちゃんと支えられるように頑張るから。」

 

 ルーク「らしくないね…。」

 

 そういって私をを引き寄せ額をつける。自然と涙が出た。

 

 「ほんと、迷惑かけちゃったね。ありがとうみんな。」

 

 レイガル「いえいえ。」

 

 「かわいいね。リト…だっけ?」

 

 シルバ「そうよ。あなたが寝ている間よじ登ったりしてたわよ。」

 

 「クックック…レイの子供ねぇ…なんか嬉しくなってくるなぁ。」

 

 シルバ「ほんと、姉弟みたいね。レイも同じようなこと言ってたわ。」

 

 「そうなの?…まぁ僕が産まれたときから一緒にいたからね。」

 

 レイ「随分と立派になられて嬉しいです。お体がもう大丈夫なら明日からでも婚姻の儀の準備をしますよ?」

 

 「そういえば父さんと母さんは?…いや、何でもないよ。」

 

 匂いが漂ってきて察したようだった。そういえば当然だけど久しく彼と交尾してない。というか、父上母上って呼んでなかったっけ?今日はセラと、側に待機していることからジンオウガ不死種(不死身虫と共生しているらしい。レイ達に教わった。)と交わるらしい。

 

 ガル「そうそう、言い忘れてましたがルルが子を宿したそうです。」

 

 ルルとはよくグラドと交わっていたティガレックス遷悠種のこと。

 

 ルークシルバ「そうなの!?」

 

 レイ「ということは弟か妹さんの誕生ですね。」

 

 シルバ「他にも兄弟はいるの?」

 

 ルーク「あと弟のナルガクルガのサンかな。ふえてなければ。あ…終わったかな?行ってくるよ。」

 

 そういって飛んでいった。

 

 「失礼します、父さん母さん、今目覚めました。」

 

 交尾の余韻に浸っていた2頭が驚いて振り向く。

 

 セラ「ルーク!良かった、もう大丈夫そうですね。」

 

 グラド「目覚めたか。全く無茶をして…」

 

 続いて下僕達が駆け寄ってきた。大丈夫か、久しぶり、シルバ達が尽くしていたなど口々に言う。しばし再会を楽しみ、セラと共に戻ってきた。

 

 セラ「みなさん迷惑をかけました。私もからも礼を言います。さて、婚姻の儀のために他の者を呼ばなければなりませんね。集まり次第行うということで良いですか?」

 

 シルバルーク「はい!」

 

 ガル「セラ様、ルルが身籠りました。」

 

 セラ「まぁ!それはおめでたいわね。クオル(雷狼竜不死種)とのまぐわいが終わったらグラドにも伝えます。」

 

 全く妬かないなんて、なれてるのかなぁ。私だったら妬いちゃうだろうな。

 

 セラ「そうそう、別に婚姻の儀まで待つ必要は無いので、あなた達も遠慮なく交わって構いませんからね。」 

 

 そういわれ、ルークが苦笑してこっちをみる。

 

 「ごめん、今日は寝て良い?」

 

 「えぇもちろん。もう結構遅いし、私も寝るわ。」

 

 レイ「ではお休みなさい。私達は下がります。」

 

 そう言って寝ているリトをそっとガルの背中にのせると去っていった。セラも竜人族に伝えに行くと言って飛び立ち、久しぶりに私達だけになる。遠くに聞こえるクオルの喘ぎ声を聞いて少しお腹がさみしい気もするがまぁしょうがない。

 

 「ルーク」

 

 「ん?」

 

 「ありがとう、助けてくれて。」

 

 「うん。シルバもね。」

 

 言葉はそれだけで十分だった。熱い口合わせをしたあと、彼の翼に包まれて眠りにつく。

 

 

 次の日ルークが目覚めていることを改めて確認し、心底ほっとする。

 

 どうやって伝えているか分からないが、早くもその日の午後から色んな竜が集まり始めた。彼に泳ぎを教えたという冥海竜や幻獣、さらには彼の塒の近くに住んでいた火竜夫婦とその子供もきて少し驚く。

 

 金レイア「久しぶりね!長い間見かけなかったから何かあったんじゃないかと心配だったのよ。」

 

 友との再会にルークも嬉しそうだった。

 

 挨拶の嵐が過ぎた時はすでに夕暮れになっていて、私とルーク、そしてレイとその家族と一緒にやすむ。レイもリトの誕生の祝福からようやく解放されたらしい。

 

 レイ「嬉しいですが、疲れますね。」

 

 リトも疲れたのか乳を飲むとすぐに爆睡。レイが珍しく愚痴をこぼす。私も、普段は遥か上空にいる天彗竜ということで珍しがられた。予想はしていたものの、言われることは大抵「これなら王の子を産むのにふさわしい。」とか「ルーク様は良い雌を選ばれた。」とかそんな感じで少し嫌気がさす。嬉しいと言えば嬉しいかもしれないが私は苗床ではないのだ。思わずセラに溢すと、

 

 「今のうちだけですよ。ルークが何とかしてくれます。」

 

 とだけ言った。それをルークに伝えると、

 

 「あぁ、体勢を考えれば大丈夫。」

 

 「体勢?交尾の?」

 

 レイ「基本的に王の場合は雌が仰向けに、女王の場合は雄が仰向けになるのですが、仰向けになるということは相手に服従を示すということなので上下関係がそれではっきりするわけです。でもルーク様はあくまでシルバ様と対等としたいのでしょう?」

 

 「そう。だからいつもと違うけど、儀式の時シルバは寝転がらずに立ってて。僕が四足歩行になって覆い被さるから。」

 

 「火竜みたいにってこと?」

 

 「そういうこと。別にいつも見下してる訳じゃないけどね。」

 

 「そう…じゃあ今は仰向けでも良い?」

 

 もう下腹部が疼いてどうしようもない。思わずそう言ってしまうとルークが恥ずかしそうに

 

 「うん…レイ、悪いけど下がっててもらえる?」

 

 「クスッ…わかりました。塒にいるので何かあったら呼んでください。」

 

 「おやすみ。」

 

 「おやすみなさい。」

 

 そう言ってリトをくわえると去っていった。見えなくなるのを確認すると彼の胸に顔を埋める。

 

 「ごめん、もしかして──」

 

 「ずっと待ってたわよ。」

 

 そういって彼の股間を舐めればすぐに肉棒がスリットから顔を出し、そそりたつ。ごろんと仰向けになれば彼も私の秘裂を念入りに舐め始め、彼は私を待たせたことを気にしていたのか今日は達するまで舐めてくれた。ジュボっと舌を抜くと、

 

 「良いかな…?」

 

 「はやく…」

 

 彼が覆い被さるのを前足で抱き締めながらはやくはやくと促す。秘裂にあてると一気に押し込んできた

 

 「クアァァアッ!」

 

 奥を押し上げ、根本まで入った彼の雄槍を締め付ける。苦痛を顧みずに助けてくれた彼に対して私が出来るのは寄り添って快感を与えるぐらい。もちろんそれだけでなく私も彼を求めている。

 

 「ハァ…ルーク…満足するまで続けて良いからね……ハム…ンンッ!」

 

 ルークはすぐには動かず、彼女に応えるように口合わせをする。が、彼女の膣が波打ち始めると我慢出来なくなり唾液を垂らしながら離れると開始した。

 

 突かれる度に奥の子宮が彼の精液を欲して疼き、膣が波打って彼の肉棒からそれを搾り取ろうとする。久しぶりの快楽。ルークもシルバも、今までの苦労がこれで報われたように感じた。匂いに気がついたのか、それともシルバの喘ぎ声につられたのか無数の視線を感じてシルバは声を抑えようとするも出来ない。ルークはそんな彼女を視線から守るように翼を広げて覆うと、空っぽの彼女を満たすべく最奥に熱く練られた精を放った。

 

 射精が終わってもしばらく繋がったまま抱き合い、そして離れた。

 

 「ハァ…フゥ…」

 

 「大丈夫?ちょっと激しくしすぎたかな。」

 

 「ううん…平気…フフッ暖かい。」

 

 そう言って嬉しそうに笑う、近いうちに妻と認められるであろう彼女の横に寝転がり、抱き寄せる。

 

 「誘っておいて悪いんだけど、また明日にしてくれる?疲れちゃった…。」

 

 「気にしないで。ずっと僕を介抱していたんだ、疲れて当然だよ。」

 

 

 

 夫との交尾を終えたセラは、塒へ戻ろうとする途中自分達のものではない雌雄のまぐわいの匂いを嗅ぎ、そのうちの片方が自分の息子のものであると分かると微笑を漏らして空を仰ぎ、寝床へ戻った。

 

   

  

 今後、未来の王は幸せと試練の両方が近づいていた。




 
 読み返してみましたが、なんかあんまりよくわからない話になってしまいましたね…。今後消すor大幅修正するかもしれません。次回以降はじっくりと、無駄話にならないようにしたいです。

             2017年12/10(追記)


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最終話『激動』


 前回が本当によくわかんない作になってしまってすみませんでしたm(__)m。
 
 今回は少しスピーディー(自称)に話を進めてみました。最後まで読んでくださればきっと"あれ"とか"あれ"がもう少し面白くなる…ハズ。それでは私の2番目の完結作、お楽しみいただければ幸いです。


 ここ数日で塔はかなり賑やかになり、挙げ句の果てに黒龍、紅龍まで集まった。ただの交尾ごときで大袈裟だなぁと正直思ってしまうのだが、まぁ彼が番を持てば大切な跡継ぎとなる子供が産まれるということだからと無理矢理納得する。

 

 ルーク「あ!トトリ!久しぶり~。」

 

 あれが前言っていた弟のナルガクルガか。純白でこちらも異様なオーラを発している。ぶっちゃけ居ずらい。ルークはずっとこんな感じで再開を喜んでいるが、そもそも単独生活の種族である私にはかなり不慣れで居心地が悪く、早くもとの彼の塒に戻りたいなと思い始めた。

 

 グラド「さぁ、」

 

 と呼び掛け唐突に婚姻の儀を始めると言われ若干動揺する。その合図で近辺にいた竜達は私たちを囲むようにして集まり、竜人達になんかよく分からないこと(繁栄を祈っているらしい。葉のついた木の枝とかを振ってた)をされて本題に入る。

 

 私は四足歩行なので彼もそれに合わせて口合わせ。やりずらかったが珍しく彼が積極的に舌を絡めてきたので少し安心し、極力周りを見ないようにする。でも囲まれてるし私目が良いから…目を閉じた。そっと離れれば唾液が舌同士を結び恥ずかしさが増すが、誰もそんな目では見ていない。

 

 「さぁ、シルバ。大丈夫、誰も笑ったりしないよ。」

 

 そう促され、予定通り四つん這いのまま腰を少し上げて尻尾を斜めに垂らす。すると今まで沈黙だった観衆がざわついた。

 

 「何故仰向けじゃない?礼儀を知らないのか?」

 

 「あれじゃルーク様に失礼じゃないの?」

 

 などなど。きっとそう言われるだろうと予想してたがやはりちょっと傷つく。そんなのは他所に彼が秘所を舐めれば徐々にトロンとしててきて、それに彼が私の体勢を気にせず前戯を始めたことで周りの反応も少し変わってきた。彼の舌が入ってくると周りのことを気にする余裕もなくなる。

 

 「フゥ……ン…」

 

 十分濡れたところで愛舐は終了。チラッと振り返れば大勢に見つめられ少し恥ずかしそうな表情を浮かべながらも肉棒をそそりたたせた彼と目が合う。無言の意思疏通をしていよいよ開始だ。覆い被さり、先端でまさぐり慣れない体勢なので少し手間取っていたが、ズニュズニュと入ってきた。

 

 「ク…ハァ…」

 

 「我慢しなくて良いよ。大丈夫。ここだけの話、レイも声だしてた。」

 

 そんなこと言われても…。でも耳元で囁かれれば私も一気に交尾モードに入り、彼を無意識に締め付けた。

 

 クチュックチュッ…

 

 静かな音をたてながら、コツンコツンと奥を突かれる。優しい腰使いとは対象的に、しっかりと私を抱いて撫でながら頬を擦り付けたり舐めたりと情熱的だ。ここまでされると私も声を我慢できない。不意に首を噛まれて達してしまった。

 

 「キャウッ!」

 

 ふと周りが気になって耳をすますが何も聞こえない。目を開いて少し見てみると、皆もようやく体勢の意味が分かったようで温かい視線が送られていた。それを確認して目を閉じ、行為に集中する。

 

 ズン…ズン…

 

 「クゥ…クゥ…」

 

 少しずつ突く重みが増していき、ルークの呼吸が荒くなっていく。顔に彼の熱い吐息がかかって再び絶頂が迫るのを感じた。

 

 「シ、シルバ…」

 

 その一言で察し、下腹部に力を入れて彼を締め付けてみれば私をさらに強く抱き締めて射精。同時に口合わせもした。注ぎ終わって引き抜かれると恥ずかしさが復活するが、

 

 セラ「これで彼らは"対等"な番となりました。彼らに祝福を。」

 

 という合図で竜達が一斉に遠吠えをし、儀式は終わった。

 

 グラド「まさか対等と認めるとはな。変わったやつだ。」

 

 セラ「そこがこの子の良いところです。ルークを頼みますよ、シルバ。」

 

 「はい…。」

 

 グラド「さぁ、戻って続きでもしていてくれ。物足りぬのだろう?」

 

 とルークを見て言ったので見てみると依然剛直は保たれたままの彼が照れ笑いしていた。実は彼の親戚も集まっていたということで最近は交尾を控えていて、その為私達は…まぁ、つまり溜まってる。欲が。

 

 塒に戻って今度は仰向けで激しく交尾。その後上下を入れ替わりながら何度も注がれ、ようやく彼の雄が萎えたときには辺りに体液が飛び散り、少しだが交尾前よりも明らかに私の腹が膨れていた。

 

 意識が飛びそうになるくらいの快感が終わり、私達はお互いを舐めたり噛んだりスリスリしたりと甘え合う。何故かは分からないが交尾後はいつも甘えたくなるのだ。

  

 「ねぇ、ルーク」

 

 「うん?」

 

 「こうしてるとさ、ずぅーっと前からこうしてた気がするの。変かな?」

 

 「じゃあ僕も変なのかな。僕も同じことを感じてた。」

 

 フフッと笑って眠りについた。

 

 

 

 翌日、婚姻の儀を終えて帰るはずだった竜達は再度集まることになる。

 

 ルーク「レイ!レイ!起きて!」

 

 レイ「うん?あ、ルーク様。どうしたのですか?」

 

 とにかく来いと呼ばれて家族と共に行ってみると、セラ様とグラド様に囲まれ、横たわりトロンとしているシルバ様の姿が目に入る。セラ様もグラド様もうっとりと微笑み、ルーク様はこれでもかと顔を輝かせているし…

 

 「ルーク様…まさか…」

 

 ルーク様がシルバ様のお腹を舐めたあと額を合わせているのを見てはっとする。

 

 セラ「間違いありません。宿りました。」  

 

 レイガル「!!」

 

 グラド「フフフ…婚姻の儀の日に身籠るとは…なんと縁起の良い。これからは下僕にも頑張ってもらわねばな。レイとガルは別だが。」

 

 ルーク「狩りには僕が行くよ。その間はレイに頼む。」

 

 セラ「構いませんが近くなったら側にいてあげてね。」

 

 ルーク「分かってる。」

 

 それから1ヶ月、先にルルが産卵。4つの卵が産まれ、その2週間後に全て孵った。

 

 ルル「お陰で全て孵りました。これからは自分で狩りに行くので引き続き子供達をお願いします。…次はシルバ様の番ですね。レイならきっとお気持ちを分かってくれるでしょう。頑張ってください。」

 

 2ヶ月経てば目に見えて腹は膨らみ始め、それからさらに半年後。

 

 ルーク「あ、動いた。でも前より弱くなった?」

 

 ルークがシルバの腹を撫でるとその中の子供が反応する。

 

 レイ「子供が大きくなったからでしょう。あぁリト…」

 

 シルバ「いいわよこれくらい。」

 

 とっくに乳離れしたリトは言葉が喋れるようになって、ルークと遊んだり今のようにシルバのお腹に耳を当てたりしていた。

 

 リト「ウゴイタ!コドモ、イツアエル?」

 

 シルバ「きっともうすぐよ。仲良くしてあげてね、リト」

  

 「ウン!ナカヨクスル!アソブ!」

 

 そして数日後、ついに産気づいた。レイ、ガル、リト、そして彼の両親は少し遠くから見守り、ルークは私のお腹を撫でるように擦りながら私と向かい合うように横たわる。

 

 「クゥ…フゥ…」

 

 彼女が顔を歪ませ始まった。僕は正直どうすれば良いか分からないので取り合えずそのままさすり続ける。お産はとても静かだった。膣口から大量に粘液が出ていよいよ本格的になり、その時だけ彼女は不安げにこちらを見たので口を重ね額をつけたのを最後、大きく深く息をしながらひたすら痛みに耐えゆっくりと確実に押し出していった。天彗竜の子供が少しずつ産み出されるのをみてなんとも言えない不思議な気持ちで見る。これが自分との子なのだからもっと不思議に感じた。

 

 「ウググ…」

 

 一番体周が大きい翼のところが出かかるとシルバが唸った。1度一呼吸置いて再開。ここは少し時間がかかったが、進み始めればそのまま止まることなく翼が出て、最後の一息で腰と後ろ足が出た。

 

 「ハァ…ハァ…終わった…?」

 

 「やったよシルバ!」

 

 見守っていた者達も無言で喜びの息を漏らす。シルバは間髪入れずに子供の頭にかかった膜を破り、続いてへその緒をちぎった。ピュッと血液が飛ぶもすぐに止まりそれが刺激となって子供が咳をし呼吸する。ここでようやくシルバも安堵のため息をついた。

 

 シルバ「ルーク、一緒に。」

 

 「え、いいの?」

 

 産まれたばかりの子供を舐めるのは母親の特権なのに。雌の天彗龍の子供で、リリネと名付けることにした。天彗龍なので僕の面影はないと思っていたのだが、

 

 「ルーク…この子の目…あなたの目ね。」

 

 そこには紅の瞳があり、僕らの子であることを象徴していた。

 

 「ありがとうシルバ。」

 

 「こちらこそ。飛べない私がこんな幸せを手に出来るなんて思ってもなかったわ。」

──────────────────────

 

 それから100年後。リリネの他にレントと名付けられた雄の天彗龍も生まれた。そして運命は廻る。

 

 

 

 塔には多くの竜が集まり、その瞬間を待っていた。

 

 中心にいるのはルークのみ。レイ家族やシルバとリリネ、レント、グラドとセラも彼らと並んでルークを囲む。

 

 そして満月が天上に登った頃、ルークが雄叫びをあげると周りの竜達はひれ伏し、天からは紅の閃光が、大地からは光の波紋が集まり彼に力を与えた。角や爪などが赤黒く変化し、完全に力を制御した真の祖龍が立つ。

 

 だが再び雄叫びをあげる前に囲みへ近づき、ひれ伏していた自身の妻の額を舐めて

 

 「一緒に。君は対等と認めたんだ。それに今なら何でもできる気がするよ。」

 

 そう言っていびつな形をした翼に手を当てる。

 

 シルバはまさかと期待する。その通りに紅い雷と痛みと心地よさが襲い、翼が伸びていくのを感じた。手を離したので見てみれば、過去に何度も夢見た立派な天彗龍特有の翼があり、感覚もはっきりしている。同時に胸のエネルギー精製器官もスッキリした。

 

 「さぁ、隣に。僕に合わせて。」

 

 中心に戻り、彼に合わせて雄叫びをあげた。

 

 キョオォォォォォ!!!

 ギャオォォォォォ!!!

 

 1テンポ遅れて頭を上げた竜達がそれに続く。

 

 その咆哮は海を越え、世界中の竜に新たな王の誕生を伝えた。

 

 ルーク「今日はこれだけじゃないんだよね。リリネ、リト。」

 

 呼ばれた若い雷狼竜と天彗龍が王達と場所を代わる。

 

 リト「本当に俺でいいんだな?同族じゃなくて。」

 

 リリネ「それはこっちのセリフよ。」

 

 そうして母譲りの白い体に父の碧色の毛を生やした雷狼竜と、母と瓜二つの体と父の紅眼を持つ天彗龍は互いを対等と認め交わった。

 

  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─

 

 

 しかし、それからさらに時が経つにつれある問題が発生する。

 

 ルーク「どうした!?」

 

 「母さんが…ルルが人間に殺された…!」

 

 レイ「なんてこと…」

 

 シルバ「これで下僕が殺されるのは3匹目ね…」

 

 近ごろ人間が竜の虐殺に拍車をかけているのだ。世界中で竜の嘆きが響き、その魔の手は塔まで迫っていた。

 

 ルーク「これから下僕は単独行動しないように。」

 

 それから数年ついに人間は竜人を出し抜き王を殺しに来た。数は4。皆古龍から造ったものを身に纏っている。竜人から彼らがどんな武器を使うのかは教わっていた。下僕には下がれと言い、直接話しかけてみることにしよう。

 

 ルーク「人間、何故竜を虐殺する。」

 

 動揺したものの答えずにボウガンを向け発砲。龍雷を纏って自身に当たる前に消し炭にした。

 

 「もう一度聞く。何故自然の摂理に反して殺す。」

 

 しかし答えず、遠距離は無理だと悟ったのか刃を抜いて距離を詰めようとしてきた。しかしそれが当たることはない。人間が踏み出してすぐに地面を足で叩き龍雷を伝わせ人間達を弾き飛ばした。

 

 1分もかからずして人間達は動けなくなるが殺しはしない。

 

 「お前達の長と話がしたい。竜人を介して返す。呼んでこい。」

 

 それから数年、何度か人間が襲いに来て、その度に同じことを言った。そしてついにギルドマスターという竜人が現れる。

 

 「何故自然の摂理に反して竜を虐殺する?」

 

 そこで話されたのは、ある大国が竜の根絶を目指し動いていること。ギルドという組織は反対しているもののその大国を止めることはできないということ。

 

 「だから大人しく滅びろと?ギルドマスターとやら、その王に伝えよ。このままでは世界の生命の平衡が取り戻せなくなる。虐殺を止めなければ世界浄化は時間の問題だとな。」

 

 そんな暗い情勢の中、一筋の喜びが訪れた。シルバが身籠ったのだ。それも祖龍の子を。腹は今まで以上に膨らみ、その瞬間が近づく。心配なのは無事で済むかと言うこと。ナルガクルガの祖母が母を産んだときは、途中で力尽き引っ張り出されたという。その後すぐに祖母は死んでしまったらしい。

 

 セラ「あなたならきっと大丈夫。ルークもついているわ。」

 

 年老いた母は嬉しさ半分、不安半分でそう励ました。

 

 そうした不安のなか、命懸けの出産は始まった。もう2度も経験しているというのに苦しみかたが尋常じゃない。絶えず唸り宙を掻く。進展は非常に遅く、鼻先が出るまでの時間に前の子は産まれていた。

 

 「ルーク…膜を…お願い…」

 

 そう言われ鼻を露出させる。これなら母親からの血液の供給が止まっても呼吸はできる。

 

 破水してから2時間、ようやく首が全て出たが大変なのはここから。1時間近くその状態が続き、悲鳴に近い声をあげ後ろ足で宙をもがくと翼の付け根まで出た。

 

 シルバ(あぁマズイ…。)

 

 腹が裂けているのではという痛みがさらに増し、深呼吸しないとと分かってているがハッハッと短い息になり意識が遠退く。

 

 「落ち着いて。シルバなら大丈夫。鋼龍のブレスを2回食らっても生きていたじゃないか。」

 

 そう言って抱き締められ、引き戻された。まるで昔に戻ったようだ。

 

 私の顔に息がかかるほどの距離で彼がゆっくり呼吸する。それになんとか合わせると意識がはっきりし、不思議と痛みが少し治まった。

 

 「そういえばいつもこうやって抱き締めながらずっと擦っててくれたっけね…。」

 

 変わらないね、と弱々しく笑う妻を見て少しほっとする。そして彼女は産まれかけの我が子を確認して呻きながら再び力を込めた。

 

 シルバ(こんな痛み、あのときに比べれば…私を救うために彼が味わった痛みに比べれば…)

 

 激痛が復活するが気力を奮い立たせた。彼を抱き締めながら力を込めれば僅かながら着実に進み、また止まる。

 

 ルーク「もう一踏ん張りだ…。」

 

 そう言われて見ればもう腰辺りまで出ている。

 

 

 彼女は僕をかなり強く抱き締めいきみ、励ませば軽く口付けして胸に額をつけた。

 

 「グゥゥ…ゥウアアァァ!…アグッ…ハァ…」

 

 ルークの鱗が軋むほど強く抱き締めもがきながらまさに絶叫。最後の力を振り絞って産み出した。

 

 「ルー…ク」

 

 何が言いたいか分かったので子供を取り上げ彼女の前に置く。へその緒を噛み切ったあとは2匹で舐め、胎盤を処理してようやく終わった。産まれたのは雄の祖龍。レントは天彗龍として生きていくことを決めていたが、この時のために戻っていた。

 

 シルバ「よかった…肩の荷が降りたわ。」

 

 祖龍を産めないのではないか。そんな心配をしていたからだ。ルークは下僕を苗床として扱っていなかったので余計不安だった。

 

 セラ「本当によく頑張りました。」

 

 グラド「あぁ。立派な子ばかりだ。」

 

 ルーク「ゆっくり休んで。」

 

 立てるようになるまで3日かかったが、その後は特に問題がないようで皆ホッとした。子供はランカと名付けしばし塔に和やかな雰囲気が流れる。

 

 

 だが数年経つといよいよ状況は悪化。眠りを妨げるほどの嘆きが聞こえ、ついにこの日が来てしまった。

 

 

 ルークが500歳を越えた頃、人間の大軍が塔を囲み、空を飛行船が覆った。だが反撃はせず交渉という面目でそのリーダーとギルドマスターを呼ぶことに成功する。

 

 シュレイド軍将軍「お前が竜王か。」

 

 ここにも結構な数の武装した人間を連れてきている。勝ちを確信しているのか将軍の顔には笑みが浮かんでいた。下僕達と家族を自分より後ろにやり

 

 ルーク「最後に警告する。今すぐ武器を捨て虐殺を止めよ。」

 

 将軍「何か勘違いをしていないか?そんなことを言える立場とでも?それともお前達だけでこの精鋭部隊と我が国の第1~5軍を倒せるとでも?確かに1対1では無理かも知れないが人間には知恵と知識がある。それがないお前達に勝ち目などない。」

 

 ギルドマスター「ここで隠居するならここに住む竜は保証すると───」

 

 ルーク「成る程、知識がないとダメか。」

 

 将軍「そうだ。だから服従──」

 

 ルーク「ならばお前達は我々の何を知っている?知識がないのはお前達もだろう。」

 

 将軍「……交渉決裂という訳だな。出撃許可!」

 

 狼煙を上げれば飛行船も動き出すが、ルークが咆哮を上げれば龍エネルギーの球体が大量に空から降ってきて接近していた飛行船をことごとく破壊。囲んでいた軍にも大きな被害がでた。動揺しているところに強烈なブレスを浴びせれば、白と紅のビームが通ったところにいた者は跡形もなく消滅する。間髪入れずに地面に雷を地面に這わせ残りの者を吹っ飛ばした。ただし将軍とギルドマスターを除いて。

 

 だがまだ潜んでいたと思われる人間が次々襲いかかり、ボウガンの弾が下僕に当たって弾かれたのをきっかけにルーク以外も動き出す。まず、レイとリトが極限雷光虫を飛ばして地面に雷を這わせダメージを食らっているところにルルの子供、ガオリが突進し蹴散らす。別方向では純白のナルガクルガでルークの弟のトトリが軌跡に鎌鼬を発生させながら文字どおり目に見えない速さで大群を一斉に切り裂き、シルバはそこに龍気弾を、リリネは空から持ち前の視力を生かして正確に攻撃した。

 

 ルークにも押し寄せてくるが腕を地面に叩きつけ前方に龍気超爆発を起こし、被弾した者はバラバラになる。

 

 ただでさえ普通の竜とは雲泥の差の力を持つ者達が、息を完全に合わせて戦えば人間に勝ち目など無かった。あっという間に部隊は壊滅。塔を囲んでいる兵もそこまで早くは来れない。唯一無傷の将軍とギルドマスターに向き直り、

 

 ルーク「さて、最後の警告はした。だがお前達は受け入れなかった。例えここでお前達が退いてもその心は変わらないだろう。これより、我が命を糧とし、世界の浄化を始める。」

 

 ギルドマスター「浄化?」

 

 「この世界の平衡が戻るまで全ての生命を対象とし滅ぼす。まぁ今平衡を乱しているのは人間だろうから影響を受けるのも大方人間だろうな。」

 

 将軍「そ、そんなことが!」

 

 あり得ないと信じたいが、その力を目の当たりにした人間達はそれが嘘ではないと認識する。

 

 僅かに生き残っていた者や息を吹き替えした者が武器を取るがレイが極限雷光虫を飛ばし一網打尽にした。

 

 さらに少し離れていた飛行船が接近するも、ルークが咆哮を上げながらエネルギーを天に放つとその飛行船目掛けて空から閃光が撃たれ、音もなく消滅して残骸が宙を舞う。

 

 「心配しなくても人間を根絶させるわけではない。我らを想うものは被害を受けぬだろう。」

 

 そう言い残し空高く舞い上がった。塔の周りを囲んでいた者達も目視したができることはなかった───。

 

 3度咆哮しすると光の波紋が大地を伝い、ルークの真下にくると雷となって彼に力を集中させる。それを天に放てば紅い稲妻を轟かせる雲が全世界を覆い、龍気隕石が降り注いで人間の文明を破壊。それで乱れないよう他の生命も多少影響が出たが、被害を受けたのは殆ど人間で、竜に関してはほぼそれは無かった。塔を囲んでいた軍にも生存者はほぼいない。

 

 

 大きな力を使った祖龍はもとの場所に降り立ち

 

 「何故お前達を生かしたか分かるか?」

 

 と聞いた。

 

 将軍「…もう刃向かうなということだろ?」

 

 「違う。来い。下で待っていよう。」

 

 そう言われて麓に行けば、古い社に案内された。

 

 ギルドマスター「これは…?」

 

 「今からおよそ600年前、竜人の過ちで1頭の竜が人間に殺された。ここはその竜とその子供、その子供の番を祀った祠だ。その竜は幼い子を連れ逃げてきたのだが竜人が侵略と勘違いして人間の狩人に撃退を依頼したのだ。間違いに気づくも時既に遅し、母竜は殺された。だが母竜が命を懸けて守った子供は人間の少年に救われたのだ。少年はその竜だけでなく他の竜も愛し、ついには竜を番に選んで自らも禁断の秘技を使い竜となった。救われた子竜はその後も竜となった少年を慕い、成長し番も持った。そのお陰で母竜の魂も救われたという。この祠は過ちを懺悔するために建てられ、そして時が経ち子竜が死んだあとは共に埋葬されたのだ。」

 

 ギルドマスター「竜を育て竜を愛し竜になった少年…まさか…月光の狩人、キルト…?」

 

 「ほう、知っているのか?私も産まれる前の出来事だが。」

 

 「古い記録にそれが…」

 

 「なら話は早い。その少年は竜となったあとも故郷で番と共に人間と共存したのだ。争うことなく寧ろ助け合った。その少年がしたことを他の人間にもしてほしいと思っている。」

 

 将軍「なっ!」

 

 「いや、竜になれとも、竜を番にしろとも言わない。だが今日のように力で平衡を保っていてはいつまでも変わらないのだ。その心。心を見習ってほしい。」

 

 将軍「どういうことだ?」

 

 「その少年は人と竜という"隔たり"を越えた。私は、その少年がしたようにいつか人と竜が本当の意味で共存してほしいと願っている。お前達にも伝えようとしたが耳を貸そうとはしなかった。だが我らが力と真意を知れば聞いてくれるかもしれぬ。お前達が動かなければこの問題は解決しないだろう。竜を殺すなとは言わない。生きるためにそうする必要は互いに出てくるだろう。だが自然の摂理に反する殺しはただの虐殺だ。さぁ、帰るが良い。お前達には知恵があるのだろう?ならば争うことなくこれを繰り返さないようにするにはどうすれば良いか、いずれ考えつくだろう。」

 

 将軍「…そうか。」

 

 ギルドマスター「肝に命じておきましょう。」

 

 

 生存者が帰ったあと、シルバは寿命を大きく縮めた夫に自らの寿命の半分を分けることを決めた。長らく側にいた彼女にはその程度のことはできるようになっていたのだ。

 

 ルーク「正気か?」

 

 シルバ「えぇ。大した足しにはならないかも知れませんが、それでも死ぬ頃にはランカはもう独り立ち出来るだろうし、心強い下僕と兄弟が居てくれます。私ばかり長生きするよりあなたが共にいた方がずっと良いと思うのです。」

 

 

 この150年後、孫達の顔を見た後、寿命を分け合った2頭は同時に、子供や下僕達など多くの竜と竜人に看取られ寄り添いながら安らかに息を引き取った。安定した未来を望んで…。

 

 

    『未来の王と落ちこぼれ』∞∞完∞∞





 最後までお付き合い頂きありがとうございました。ちょっと出産シーンが多かったかなぁ。しつこいと感じていたらご免なさい。ただやっぱ初めては描きたかったし、祖龍のときはいつもと違うって描きたかったし、でも最初に祖龍産まれたらつまんないし…(言い訳)

 さてさて(笑)、これからは『新たな子』に集中したいと思います。もちろん短編集『竜の愛』もね。引き続き応援よろしくお願いします!

 それではまた。






 あれ、最後のマークはどこかで見た気が…。


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