幻想郷を一方通行に (ポスター)
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第一章 全ての始まり
物語の始まり


小さな島国の日本。

その日本に存在する学園都市。総面積は東京都の3分の1を占める広さを持つ。

総人口は約230万人、その8割が学生である。

そこは科学的に超能力開発を成功した場所で、外部からは文明レベルが約30年程先に進んでいると言われている。

 

最先端の科学技術が研究や運用されている科学の町。

そしてそこは特に、超能力開発や実験に没頭している。

 

そして、そして、だ。その町の夜。

学園都市のとある学区の薄暗い裏路地で今、夜に光を灯すかのような白い髪に白い肌で赤い瞳の、ここ日本ではとても目立つ容姿の少年か少女か区別が難しい中性的な人物の周りに好戦的な目をした男三人が立っていた。

 

不良1「おい、お前が一方通行(アクセラレータ)か」

不良2「噂で聞いていたより弱そうじゃねぇか」

不良3「アハハハハッ!!こりゃ案外楽勝だな、学園都市の頂点なんてこんなザコみてぇなヤツがなれんなら俺達でも余裕で最強になれるぜ!」

 

そう言って、物騒な勝負を仕掛けようとしている者達は自分達の勝利を確信した様に、ニタニタ笑って金属バットを握っていた。

彼らはいわゆる不良というヤツだ。

だから『最強』と言う称号をアホみたいに欲している。

 

そして。

この町で最強の位置に座する一方通行と呼ばれてる白髪の人物はそんな奴らを見て

 

一方通行「くっだらねェ………」

 

心底つまんなそうに呟いた。

その次の瞬間であった。不良の男三人が一斉に手に握られていた金属バットを白が特徴の人物に振り下ろした。

 

不良1「これで俺が最強だーッ!!」

不良2,3「「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!」」

 

鉄パイプより危険な武器として扱われた金属バットは頭に向かって振らなければ命を奪う可能性は少ない。

しかし、だ。

彼ら不良少年達は殺意剥き出しで白が特徴の人物の頭部目掛けて雄叫びと共に振り下ろした。

 

だが、だった。

白髪の人物は焦りの表情を一つも見せず普段と変わらぬ様子と同じ落ち着いて避けずにただ瞳を閉じて立っていた。

そして次の瞬間、

大きな怪我をしたのはまさかの攻撃を仕掛けた不良少年達だった。

怪我の具合は手が曲がってはいけない方向に曲がり男三人は、自分のやった愚かな行為を後悔しながら惨めに、哀れに涙を浮かべて地面に転がっていた。

 

一方通行「で?“最強”に踏み潰された気分はどォだ?」

 

学園都市の第一位は不良達のリーダーと思われる頭を踏んでいた。

残りの二人の不良はその光景を見て全身を小刻みに震わして酷く怯えていた。

 

不良1「…………た……っ…………た、すけて…………っ…くだ、さい…………」

 

一方通行「勝手に攻撃して来て勝手に自滅して何言ってンだ?」

 

一方通行は頭を踏んでいた男を壁に向かってサッカーボールのように蹴り飛ばした。

蹴られた男は壁に強く激突し、気絶して大の字で地に倒れ落ちた。

次に、だ。

最強の超能力者はゆっくりギラギラした瞳で残りの二人の方を見て、

 

一方通行「オマエらはどォなりてェンだァ?」

 

ゆっくり、ゆっくり……と。

不良少年達の心の奥に恐怖を刻むには十分な程、裂いたように悪魔のような笑みでひしひしと距離を詰める。

すると、

 

不良2,3「「……う、うわぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!」」

 

二人の男はその姿がどれ程情けないとしても、

白髪の人物に恐怖して泣き叫びながらその場から逃走を試みた。

だが一方通行がそれを許す訳がなく爪先をちょんと地面に当てる。すると、二人の足元が地雷が爆発したかの様な衝撃波が発生した。

 

一方通行「この俺から逃げれると思ったかァ?」

 

無様に一方通行の前に転がり倒れる不良少年の二人。

その二人にだ。

この町の『怪物』は鳥を一瞬で殺せそうなほど、心が凍り付くぐらい殺気を込めて睨む。

その目を見た哀れな不良二人はこれ以上ない恐怖を覚え体が硬直してしまった。

 

その後。二人は彼の『最強』の能力で心身ともに打ちのめされたのだった………。

 

痛々しい傷が所々ある白目を向いて口をかっ開き倒れる男達を見向きもしないで、いつもの様に学園都市の頂点に君臨する白い怪物はその場から去っていった。

そして、薄暗い細い路地を歩いている最中不思議なことが起きた。

なんと、音もなく突如目の前に真っ黒な扉の様な物が出現したのだ。

 

一方通行「あン?何だこりゃあ?」

 

今まで見た事がない現象を不思議そうに眺めていた。

だが急にその真っ黒な扉の様なものは一方通行を吸い込もうとしたのだ。

なんとか踏ん張ろうとしていた白い怪物は御自慢の能力を駆使して抵抗していた。

しかし。

真っ黒な扉の引力の方が彼の能力より上だったのか、その真っ黒な扉のような物に一方通行の体は吸い込まれてしまい次に瞳を開くと一方通行は見た事もない場所に立っていた。

 

一方通行「………ここは、どこだ?」

 

きっとあの黒い扉のような物のせいで訳の分からない所に飛ばされたと理解はできた。

新しい空間移動系の能力かと警戒していたら目の前には学園都市で見た事が無いボロボロの神社があった。

空を見上げれば厚くて黒い雲にこの世は覆われていた。

 

そして、だ。

目の前にあるボロボロの神社の中から巫女の服を着た一人の黒髪の少女が出て来た。

 

???「……………アンタ、誰?」

 

一方通行「オマエこそ誰だよ?」

 

強力な敵意を向けながら口を開く。

だが巫女の服を着た少女はその敵意に一切動じずに、

 

霊夢「…………博麗霊夢(はくれいれいむ)よ。アンタは?」

 

一方通行の質問に答えるのに少し間が合ったが巫女の彼女は名乗る。

すると次は、

 

一方通行「…………一方通行(アクセラレータ)だ」

 

霊夢「………随分変わった名前ねぇ」

 

一方通行「うるせェ」

 

霊夢「見ず知らずの場所に飛ばされて色々と困惑してると思うし、頭の整理が追い付くのに時間が欲しいと思うけどこっちは緊急事態なの、急で悪いけどこの世界の話をしたいから家に上がってくれない?」

 

一方通行に「あン?おい、それはどォいう事だ?」

 

霊夢「それを話してあげるから家に上がって、って言ってるのよ。全く……」

 

最後にため息を吐いた。

そして、霊夢という少女はそれから何も言わずボロボロの神社の中に入って行った。

一方通行は彼女から情報を得るためその後を追うように神社の中に入って行ったのだった。

 

一方通行「…………これはひでェな」

 

霊夢「始めに言っとくけどこれは私のせいじゃ無いからね?」

 

彼女の後ろを付いて行ってボロボロの神社の中を進み到着した部屋は酷く散らかっていたのだ。

 

一方通行「でェ?なにから話してくれンだよ」

 

そして、だ。

ギリギリ座る場所を確保できる部屋に二人は腰を下ろす。

 

霊夢「…………そうね。まず最初はこの世界が何故こうなったか話すわ。実はね、本当はこんなボロボロじゃ無かったのよ。この世界も、この神社もね。でも前兆もなく急に私の知り合いや他の皆が暴れはじめて今じゃこの有り様よ……」

 

霊夢の声色は悲しそうであった。

一方通行は黙って彼女の話を聞いていた。

 

霊夢「そして今もなお私の知り合いや他の皆は暴走したままこの世界をまだ破壊し続けているわ」

 

一方通行「それで、だからどォした」

 

遂に口を開いた一方通行。

話を聞く限りこの世界は危険に陥っているらしい。

だが「そンな事知らねェ」と言うであろう彼は同情など一切せず無表情のままであった。

 

霊夢「…………もうこの世界で正気を保っているのは私ただ一人。それでも私は皆を止めるために暴走してしまった皆と戦った。でもね__________」

 

巫女服を着た少女は自分の手を爪が掌に食い込むほど強く握り締めて……、

 

霊夢「__________絶望に抗おうとどんなに努力したって私一人の力じゃなんにも出来なかった。それで、この絶望に満ち溢れた最悪な状況を打破する術はないかと書物を漁っていたらどこに置いていたか知らないけど見付けた一冊の古い本にこの世界を救えるかもしれない方法が記されていた。この世界を救える人を呼ぶ事が出来る方法がね」

 

一方通行「…………それで俺がこの世界に呼ばれたって訳か」

 

霊夢「そう言う事みたいね」

 

一方通行「チッ。くっだらねェ」

 

霊夢「えっ……?」

 

そんな台詞を吐き捨てて一方通行は立ち上がるとこの神社から出て行こうと霊夢に背中を向けた。

すると最後の、本当に最後の“希望”へ視線を向けて、

 

霊夢「お願いこの世界を、『幻想郷』を助けてほしいのッ!!」

 

涙を浮かべて縋るように声を発する。

その言葉を聞いて一方通行は足を止めた。

そして振り返ることもしないで、

 

一方通行「ふざけンなよクソガキが、自分の都合ばっか押し付けやがって。でェ?俺を元の世界に戻す方法は知ってるのか?」

 

霊夢は暗い表情で下を向きながら、、、

 

霊夢「ごめんなさい。知らないわ……」

 

彼女の回答を聞くと一方通行は何も言わずボロボロの神社から出ていってしまった。

 

 

 

そして、だ…………。

一方通行がこの高い位置に存在する博麗神社から下に降りる階段を下っていると神社の方からとても巨大な爆発音がして一度は振り向くが、気にするとこなく正面に向き直してそのまま階段を降りて行った。





ポスター「よーしこれから頑張るぞー!!」

一方通行「オマエじゃ無理だろ」

ポスター「酷いッ!!」


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2話

※誤字脱字のミスが必ずどこかにあると思います。
それをご了承のうえ読んでいただけると幸いです。















長い階段を降りている途中さっきの会話を思い出した。

 

一方通行「“助けて”……か」

 

真っ白な彼に挑み圧倒的な力の差に己の敗北を悟ると自分の命可愛さに助けを求めるものは多かったがあのバカどもは自分以外のものを助けてと言う者は誰一人居なかった。

そんなどうしようもないクズどもを思い出しているとさっき居た神社から爆発音が聞こえた。

 

一方通行「なンだ?」

 

一度振り向くが気にすることなくそのまま降りていった。

 

一方通行(何でこの俺様が知らねェ世界を救わなきゃいけねェンだよ。………クソったれが)

 

だが。やはり上の状況が気になっていた。

 

 

 

一方。

神社では霊夢が一方通行を追おうと思って外に出たら、自分に向かって光輝く攻撃をされた。

 

霊夢「くっ、あ……っ、!!……誰ッ!?」

 

なんとか攻撃に反応できた霊夢はその光線を()わして自分に攻撃を放ったであろうヤツの気配がした場所へ視線を向けるとそこには巫女服を着た少女が良く知る人物が居たのだ。

 

霊夢「魔理沙(まりさ)ッ!?」

 

魔理沙「………………」

 

上空には箒に股がった白と黒の魔女のような服装の金髪ロングの少女。霊夢の友人である魔理沙は一言も喋らず再度光線のような攻撃を撃ってくる。

 

霊夢「……っ。やばい………今まともに力を使えないのにどうしよう………」

 

確実に息の根を止める躊躇もない攻撃を横に全力で跳躍することで回避した。

そして冷や汗をかきながらも、とにかく今どうやってこの状況を打破するか考えた。

 

でも相手の考える時間など与えてくれることもなく魔理沙はまた光線の攻撃を放つ。

次の攻撃には頬を擦ってしまうがなんとか直撃は回避できた。

しかし。その後、光線が地面に当たると爆発した。

霊夢はその爆風により三メートルほど前方へ吹っ飛び地面に転がり倒れる。

 

霊夢「お願い魔理沙もうやめて!!もうこれ以上アンタが幻想郷を、人を傷つけているところを私は見たくないのッ!!!」

 

肉体の所々が痛むが立ち上がった。

現在、特別な力が使えない自分ができること。それは説得だった。

だが悲しいことにいくら全力で声を発してもその声が魔理沙に届くことはない。

しかし諦める事が出来なかった。

友達を、親友を、助けたいから。

 

その後、

次々と来る攻撃を全力で()わす博麗霊夢。

 

だが、とうとう、

 

霊夢(ふっ……もう、無理よね。この世界を救えるかも知れない人を呼んでもその人から救いの手は差し伸ばされなかった。…………)

 

かれこれ皆が暴走してから1ヶ月ぐらい経っていた。

体はへとへと。心も限界。

遂に諦めかけてしまっていた。

もう避けることすら止め棒立ち状態だった。

その時、空から光線の『魔法』を魔理沙が撃ってきた。

 

これが直撃すれば楽になれる。

もう苦しまないで済む。

 

瞳を閉じて、死を受け入れた。

その瞬間だった。

 

「回避くらいしたらどォだ?そンなに早死してェのかオマエ」

 

霊夢の前に“希望”が舞い降りた。

 

霊夢「…………アンタ、どうして?」

 

一方通行「あン?なンか騒がしかったからなァ。それで様子を見に来た」

 

光線のようなものを違う方向へ飛ばし、激しい暴風と共に自分の目の前には、先程どこかへ行ってしまったはずの白髪が特徴的な一方通行が立っていた。

 

霊夢「……だって…………さっき……」

 

一方通行「おい、アイツは何だ?」

 

自分の質問は無視され一方的に話し掛けてきた。

でも、希望を無くさずに済んだ。

もう駄目だと思ったけど助けてくれた目の前に立つ白い人物に。

 

一方通行「チッ。おい、だからアイツはなンだって聞いてンだが……?」

 

彼は少し怒りの表情を見せた。

博麗霊夢は少しぼーっとしてたが、、、

 

 

霊夢「……あぁ、ごめん。あの子は霧雨魔理沙(きりさめまりさ)、魔法使いよ」

 

一方通行「ハァ?魔法使い?なンだそりゃ?」

 

漫画やアニメでしか聞いたことのない単語が彼女の口から飛び出してきて難しい顔を作る。

 

霊夢「知らないの?魔法よ魔法!!」

 

そんな事を話していると、もう一度光の球体が銃弾と同じ速度で二人目掛けて撃たれた。

 

霊夢「やばッ避けて!!」

 

一方通行「なるほどなァ_________」

 

こちらに飛んできた攻撃は一方通行に当たると思われた直前またあらぬ方向に飛んでいってしまう。

 

白い彼は空に居る敵へ視線を向けていた。

そして。

 

一方通行「_______魔法。俺がまだ触れたことのない未知のベクトル……か。だからさっきも正確に反射出来なかったことか。おいオマエ、後は何を知ってる?」

 

霊夢「お前じゃないわ。もう一度自己紹介が必要なようね、私は博麗霊夢。霊夢って呼んで。それで、ええとそうね、一番気をつけた方がいいのは__________って言ってる側からヤバいの来るわよッ!!」

 

一方通行「あン?なンだァ……?」

 

空に浮いている箒の上に立つ白と黒の魔女が二人に片手を向けて構えた。

すると二人に向けられた片手に光が集結していく。

 

そして、、、

 

 

霊夢「『マスタースパーク』。幻想郷の中でも最強クラスの攻撃よ!!」

 

そして、次の瞬間その場全体が光に包まれた。

 

二人に強力な極太の白く輝くレーザーが放たれたのだ。

だが一方通行はそれを片手で受け止める。

 

一方通行(魔法ってのにはまだ俺の知らねェ未知のベクトルが存在している。だから正確に反射ができない___________)

 

一方通行の能力、それは『ベクトル操作』。

あらゆるベクトルを触れただけで操る能力だ。

 

だがさっきの攻撃も『反射』したつもりだったが予想と違う方向へ飛んでいってしまった。

 

一方通行(_____________だが知らねェならそれを理解すりゃあイイだけだろォがァッ!!!)

 

次に一方通行は瞬時に未知のベクトルの解析を始めた。

そして……、

 

一方通行「解析完了だ。オマエの最強は底が掴めたぞ」

 

極太のレーザーの向きを真上に操作する。

するとマスタースパークは天に一直線に飛んで行き厚い雲を穿つ。

 

霊夢「嘘でしょ……、どうやって……?」

 

一方通行「説明するのが面倒くせェから後で話す。この後はどうすりゃイイ?」

 

自分の後ろに隠れていた霊夢に視線を向ける、

 

霊夢「そうねぇ、あの子を捕まえてほしい。絶対殺したりしないでよ?」

 

一方通行「チッ、生け捕りか。面倒くせェ」

 

背中に風の翼を生成すると一方通行は魔理沙に向かって突進する。

だが自分に向かって飛んで来るのを良く思わないと思ったのか魔理沙は次々と光の弾丸の攻撃を仕掛けてきた。

でも、それはもう無駄なのだ。

白と黒の魔女が使う『魔法』とやらのベクトルを完全に掌握した白が特徴な彼は自分に放たれた攻撃の向きを操作して全く違う方向へ飛ばす。

 

一言も喋らないが焦り始めたのか、魔理沙は距離を取ろうとしたのだ。

 

が、

 

一方通行「遅ェッ!!!」

 

 

風を切って一瞬で距離を積める。

そして一方通行は次に魔理沙の体に触れ体の中に流れている電気を操り気絶させ、その金髪魔女を抱え地面に着地する。

 

霊夢「魔理沙!!」

 

大事な友の名前を叫びこちらに走ってきた。

 

霊夢「魔理沙!魔理沙!!しっかりして!!」

 

自分が抱える魔女を見て、声をあげていた。

そんな彼女に舌打ちを打ち、

 

一方通行「チッ。慌てンな、気絶してるだけだ」

 

霊夢「そう………。ありがとう。本当にありがとう……っ」

 

涙目で霊夢は言ってきた。

初めてだった、自分のような血に染まった『怪物』にお礼を言ってきたのは。

 

ここで、急にだ。

魔理沙の体の中から直径5センチ位の黒い玉が出てきたのであった。

 

霊夢「なに、これは………?」

 

霊夢は驚き一方通行は無表情で見ていた。

ゆらゆらと出て来た黒い玉を一方通行は問答無用で握り潰す。

 

霊夢「えっ!?何やってんの!?」

 

一方通行「多分これのせいだろ、この金髪がおかしくなったのは」

 

霊夢「あの黒い玉を知ってるの?」

 

一方通行「知らねェよ。あくまで勘で言っただけだ」

 

霊夢「………色々調べたい事があるけど、その前に魔理沙を手当てしなくちゃね。家まで運ぶからお願いね」

 

一方通行「ふざけンな。オマエこいつの友達なンだろォが、自分で運べよクソったれ」

 

霊夢「私も怪我してるから無理よ。それに良いじゃない少しぐらい、すぐ近いんだから」

 

 

一方通行は、舌打ちをした後に金髪魔女を神社の中に霊夢に付いて行って運んで行った。

 






ポスター「いやー、どうしようか?アクセラさん」

一方通行「勝手に略すなクソ野郎」

ポスター「またまた~、嬉しいくせに~ッ」


次の瞬間。
ポスターは壁の染みになった……。


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3話

なんか原作のところ変えることが出来ました。焦ってた自分馬鹿みたい(´・ω・`)


















神社の中に入り、またぐちゃぐちゃに散らかった部屋に一方通行と霊夢、そして気絶した魔理沙が居た。

ゆっくり気を失っている金髪魔女の魔理沙を床に寝かした一方通行はあることに気が付く。

それは

 

一方通行「そォ言えばオマエらの服変わってンな」

 

霊夢「アンタ、人の事言えるの?」

 

一方通行の服装はシンプルかつ独特なデザインが特徴の黒地に白いラインが入った半袖のTシャツ、それとグレーのズボン。

 

一方通行「俺は普通だ」

 

その言葉を聞いて、ため息をついた霊夢は一方通行に

 

霊夢「魔理沙を手当てするから少し出てって」

 

一方通行「オマエ手当てできンのか?」

 

霊夢「できるわよそんぐらい」

 

『失礼ね』っと心の中で霊夢は呟く。

 

少し信じられないが大人しく一方通行は部屋から出て行った。

そして少し時間が過ぎて中の部屋から、

 

霊夢「もういいわよ」

 

その言葉を聞き一方通行は部屋に入った。

そこには適切とは言えないがある程度手当てされていた金髪魔女が寝ていた。

 

一方通行「俺はてっきり雪だるまの様に包帯を巻かれてると思ったぜ」

 

霊夢「私そんなに不器用に見える?」

 

ちょっと、いじけた様子の霊夢は少し間があったが改めて一方通行に話し掛けた。

 

霊夢「あの時、何で助けてくれたの?」

 

一方通行「………………気分が変わっただけだ。しかしこいつはこンなに怪我をしてのか?」

 

霊夢「これはね多分昔の傷だと思うの。でも昔って言っても1ヶ月ぐらい前だけどね…………」

 

一方通行「1ヶ月前からこいつは暴れてたのか………」

 

霊夢「そうね、始まりは魔理沙からだったわ。そして急に暴走して無差別に破壊していった。でもその魔理沙を止めるために何人も戦ったけど途中からその皆も暴走していった…………」

 

一方通行「感染するのか、この暴走は?」

 

霊夢「それも分からないの、急に始まった事だから………………」

 

一方通行「もしかして、この世界で正気なのは今は俺とオマエだけか」

 

霊夢「お前じゃないわ霊夢よ!れ、い、むッ!」

 

怒りながら強く言ってきた。

余りにも強く言われた一方通行は珍しく小さく謝り、話を戻す。

 

一方通行「とにかくこの世界で正気なのは俺達だけって事か」

 

霊夢「そうね…………。今はそんな感じでも、もう既にピンチかも……………………」

 

困った様子の霊夢を見て一方通行は気になって質問する。

 

一方通行「どォ言うことだ、それは?」

 

聞かれた霊夢は寝ている魔理沙の方を見ながら

 

霊夢「魔理沙の事よ。この状態じゃ魔理沙が気が付いても逃げる事も出来ないわ…………………」

 

一方通行「この世界に薬はねェのか?」

 

霊夢「あるけど……。でも、そこが厄介な場所なのよ。そこは永遠亭て言う所なんだけど、その場所にたどり着くのは"絶対"不可能よ」

 

視線を彼へ向け直す。

 

一方通行「なンでだ?空にでもあるってのか?」

 

一方通行は馬鹿にしながら言ってきた。

でも、霊夢は真面目な表情をして言葉を返す。

 

霊夢「迷いの竹林の中にあるからよ」

 

一方通行は少しでも情報が欲しいため黙って聞くことにした。

霊夢は話を続ける。

 

霊夢「迷いの竹林はね、案内人が居るんだけどその子も今は暴走してると思うから無理なの…………」

 

一方通行「案内人無しで自力は無理なのか?」

 

霊夢「無理よ。あそこに無知なる者が入ったら…………永遠亭に着くことは疎か出る事すら出来ず、その竹林の中で悲惨な最後を迎えるわ」

 

そのまま表情を一つ変えず断言してきた。

でも、もうどっちみち選択肢は無かった。

だから、一方通行は

 

一方通行「チッ。その場所を教えろよ、迷いの竹林て言う所の」

 

それを聞いた霊夢は声を荒げながら

 

霊夢「無理って言ってるでしょ!!それにアンタがもうそこまでする必要はない、だって……………ッ!!」

 

一方通行は、霊夢の話に割り込み

 

一方通行「じゃあオマエに出来るのかよ。まともに動けねェオマエに出来るのか?」

 

睨みながら言ってきた。確かに今、力を使えるのは一方通行しか居ない。

霊夢は休憩する時間がない極限状態だったため、力が回復してない。だから有する能力で空を飛ぶことすら出来ないのだ。

 

霊夢「…………何で、そこまでするの?」

 

一方通行「この世界に興味を持った。ただそれだけだ…………」

 

そんなビックリな回答をしてきた。

興味本位で命を危機に晒すことが出来るか?

でも、白髪の彼に賭けるしかもう道は無かった。

 

覚悟を決めた霊夢は、

 

霊夢「良い?絶対襲ってくる人を殺さないでね、妖怪もよ」

 

(妖怪?何の事かしらねェが)

っと考えながら…………

 

一方通行「面倒くせェが出来るだけやってやるよ」

 

分かってくれたのか、くれなかったのか知らないが、霊夢は迷いの竹林の場所を教えた。

場所を聞いた一方通行はゆっくりと立ち上がり外へ出て行った。

 

本当にあの一方通行と名乗った者がこの幻想郷の救世主なのか霊夢は少し疑問を感じていたが、それでも少し確信を持てた。

この幻想郷を救える事を。

そして、霊夢は寝ている魔理沙の方を見て、

 

霊夢「魔理沙。気がついたらまたいっぱいお話しましょうね。くだらなくても良いの、貴方の居ない日常は退屈だから………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の話だ。

一方通行は背中に風の翼を生成し霊夢に教えてもらった場所へ飛んでいった。

 

自分でも不思議だった。知らない人を、知らない世界を、助けようとしているのだから。

空を飛んでる途中、下を見て見ると何処も荒れていて暴走している妖怪や人間が、まるでゾンビ映画のように歩いていた。

 

たまに一方通行の存在に気付き、攻撃して来たがその攻撃を反射して難なく倒していた。

そんな事をしていると目的地に入る所に着き、静なか地に着地する。

 

言われとうり深い霧が立ち込め大きな竹が生えていた。

 

 

 

一方通行「…………さァて、楽しい迷路の始まりだァ!!」

 

 

 

 

そして、怪物は楽しそう笑いながら竹林の中に入って行った。








ポスター「酷いよ、壁の染みにするなんて…………」

一方通行「今のオマエは、閲覧注意だなァ………」

ポスター「だけどー………、復ッ活ッ!!」

一方通行「不死身かよォ……………」


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4話

はい、しょっちゅう字を間違えてるポスターです。
キャラ崩壊は一応付けていますが、自分ではキャラ崩壊してないと思っています。

………………キャラ崩壊してるのかな?

あっ!!後、ルビの振り付け方が分かりました!!










迷いの竹林に入る時は、すごくテンションが上がっていた一方通行はというと………………、

 

一方通行「ここは全然荒らされてねェのなァ」

 

ここは『迷いの竹林』。

暴走してもここは危ないと分かるのだろうか?

 

そんな事を一方通行は考えていた。

 

落ち着きを取り戻して一歩一歩警戒しながら歩いている最中に、だ

誰かが自分を追う気配を感じた。

 

一方通行(誰か俺の事をつけてやがる………………)

 

それからより警戒しながら歩き続ける事、10分ぐらい経過したが、『俺は進ンでるのかァ?』と思うぐらい全然景色が変わらない。

まだまだ道は長いらしい、

 

一方通行「チッ、にしてもいつまで追ってくンだクソったれ」

 

もう10分以上は尾行されている。

一方通行は追ってきてる奴の方を見るか見ないか悩んでいた。

見てしまえば追ってる奴に気づいてる事をバレるし、このまま追われるのも腹が立つ。

だから一方通行は決心した。

一度立ち止まり爪先(つまさき)でちょんと地面を蹴り脚力のベクトルを操作した。

そして、尾行してる奴の足元が地雷が爆発したかの様に炸裂する。

尾行してる奴がその爆発でこっちに飛んできて、一方通行の前に姿を表した。

 

その者は性別は女だった。

容姿は銀髪のロングヘアーに深紅の瞳を持ち、髪には白地に赤の入った大きなリボンが一つと毛先に小さなリボン複数つけていた。

服の上は白のカッターシャツで下は赤いもんぺのようなズボンをサスペンダーで吊っており、その各所には護符が張られていた。

 

一方通行は尾行してきた奴に、

 

一方通行「…………オマエ、尾行下手すぎだろ」

 

一方通行は挑発と同時に確かめていた。

この女は暴走しているのか、してないのか、と。

だが答えがすぐ分かった。

 

???「………」

 

一言も喋らなかった。

暴走している奴は喋らない、魔理沙と戦ってる時にそれは気づいていた。

だから、この者は暴走している者だ。

 

一方通行「まァ……ここの奴には変わらねェから___________」

 

一方通行は臨戦態勢をとった。

ここの奴らは一方通行の住んでた学園都市の奴らとは全く違う方法や能力で攻撃をしてくる。

そう考え一方通行は本気で今、目の前に居る敵を

 

一方通行「______________倒すッ!と言っても、殺さねェ様に戦うのは面倒くせェがな…………」

 

銀髪のロングヘアー女は、炎を足に纏ってこちらに向かって駆け出す。

段々距離が近づいたら銀髪のロングヘアーの女は炎を纏った足で一方通行の顔に目掛けて蹴りを繰り出す。

だが、その足は一方通行の肌に一ミリも触れられず反射し、蹴りを繰り出した銀髪のロングヘアーの女は吹っ飛んだ。

 

一方通行「…………オマエみてェなバカ正直な物理攻撃じゃあ、この一方通行(アクセラレータ)に傷一つもつけられねェぜ?」

 

ニタニタ笑う白い怪物。

だが、彼女は暴走しているため言葉は届かない…………。

 

銀髪のロングヘアーの女は離れた距離に倒れていたが、苦もなく立ち上がった。

そして次は、手にも炎を纏っていた。

 

一方通行「学習能力ゼロかよ…………」

 

一方通行は呆れながら呟く。

銀髪ロングヘアーの女は、また同じ様に走って近付き燃える拳を放つがその攻撃も反射され、また背後に吹っ飛んだ。

 

一方通行「オイオイ、ここはバカしかいねェのか?」

 

一方通行は吹っ飛んだ銀髪ロングヘアーの女を見ながら口を開く。

だが、銀髪ロングヘアーの女は吹っ飛んてる途中で体勢を建て直しまた地に倒れる事を防ぎ、地面に着地した。銀髪ロングヘアーの女が次に取った行動は、見たこともないカードを取り出し、

 

不死「火の鳥-鳳翼天翔-(ふしのひのとりほうよくてんしょう)

 

言葉なく宣言された、技。

それは、

突如、銀髪ロングヘアーの少女の方から一方通行に向かって火の鳥を模した火弾が飛んでくる。

 

一方通行「……あァ?なンだこりゃ?」

 

初めて見る攻撃に、一方通行はその攻撃を片手で受け止めながら知らないベクトルと思い演算し始め。

そして

 

一方通行「なるほどな、もう分かった」

 

そう言うと、火の鳥を模した火弾は内側から弾ける。

 

一方通行「これがアイツのとっておきか知らねェが、終わりだ……………………」

 

一方通行は、銀髪ロングヘアーの女の周りの重力のベクトルを操作し、重力を何十倍に変化させた。

重力が何十倍にもなった銀髪ロングヘアーの女は手と膝を着きうつ伏せに地面に打ち付けられた。

 

一方通行は銀髪ロングヘアーの女の方に歩いて近付き、首に手を伸ばして触れ、体の中に流れている電気を操り気絶させた。

そして、だ。

その後、銀髪ロングヘアーの女の体から直径5センチ位の黒い玉がゆらゆらと出てきて、一方通行はそれを握り潰した。

 

一方通行「…………そォいや、こいつが案内人なのか?」

 

 

気絶させてからこんな疑問を持ったが、とにかくここに置いてく訳にもいかないので一方通行は銀髪ロングヘアーの女を右脇に抱えたまま、迷いの竹林の中を進んで行く。




ポスター「さぁて☆次回のアクセラさんはー? ポスターで_____(殴」

一方通行「オマエなに○○○(ピーー)さン見てェな事してンだよ…………」

ポスター「良いじゃん!やってみたかったんだもん!!」

一方通行「はァー……。粉塵爆発と血液の逆流、どっちがイイ?」

ポスター「どっち選んでも死ぬやん!!」


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5話

やっべぇぇ!!黒い玉の事忘れてた~!あ、でも急いで直して来ました(^-^)v
ミスしないようにこれからも頑張ります!








迷いの竹林の中を歩くこと30分。

一方通行は右脇に抱えてる銀髪ロングヘアーの女をチラチラ見ながら歩いていた。

この者がここの案内人なのか?それともここに迷っただけなのか?

それはどっちでも良いが、もしこの状態で敵が来たらまずい。その事だけは確かだった。

 

一方通行「…………クソったれ。いつ永遠亭とやらに着くンだよ」

 

だんだんイライラしてきた。

歩いても歩いても目に映るのは竹だけ、おまけに霧もある。

一方通行は愚痴を吐きながら歩いて行く、いつか永遠亭に着くまで。

 

 

 

そして遂に!!

 

 

 

一方通行「………………………………なンだ、あれ?」

 

建物らしき物がうっすら見えてきた。

一方通行はもしかしたらまた戦う事になると感じ、右脇に抱えていた銀髪ロングヘアーの女を近くの竹に寄っ掛からせる様にそーっ、っと置いた。

 

建物の場所に行く前に周りを見て、安全か確認してから向かった。

 

一方通行「こンだけ歩いたのは初めてだ…………」

 

そんな事を呟いた。

そして建物の方へ歩いていったら、やはり建物の前に敵らしき者が待っていた、しかも4人も。

一人は、ストレートで腰より長い程の黒髪を持ち、前髪は眉を覆う程度のぱっつん系で、服の上がピンクで大きめの白いリボンを胸元にあしらわれており、袖は長く、手を隠す程ある。そして下は、赤い生地に月、桜、竹、紅葉、梅と、日本情緒を連想させる模様が金色で書かれているスカートを着用。

二人目は、長い銀髪を三つ編み?にしている。前髪は真ん中分け。左右で色が分けられている特殊な配色の服を着ていた。具体的には、青、赤?のツートンカラー。上の服は右が赤で、左が青、スカートは上の服の左右逆の配色となっている。頭には同じツートンのナース帽を被っており前面中央に赤十字マークがついていた。

三人目は、足元に届きそうな長い薄紫色の髪を持ち、頭にはヨレヨレのうさみみが生えている。

服装はどっかの学生が着てそうな、そんな制服的な衣装だった。

四人目は、癖っ毛の短めの黒髪と、ふわふわのうさみみ。

服は桃色で袖に縫い目のある半袖ワンピースを着ていて、ニンジンのアクセサリーを着けていた。

 

そんな彼女達に、一方通行は臨戦態勢を取った。

今まで以上に警戒しながら。

 

 

 

一方通行「とにかく一匹一匹潰してくしか、道は無さそうだな…………」

 

とにかくターゲットを決めてから行動すると考える。

そして、そして

 

 

一方通行「まずは…………オマエからだァ!!」

 

 

一方通行は、足の運動力の向きを操作し砲弾の用なスピードで、あっという間に黒髪のストレート女に近づいた。

そして、そのスピードを乗せ殴ったが見事避けられてしまった。

空振りの拳を見ていたら背後から薄紫色の髪のうさみみ女が殴りかかってきたが、その攻撃は自動機能している反射が発動して攻撃をしてきた薄紫色の髪のうさみみ女は背後に吹っ飛んで行った。

 

 

一方通行 「クソったれが。これは少しやべェな…………」

 

 

一人が吹っ飛んで行ったとしてもまだ三人もいる。

しかも、どんな攻撃をしてくるか分からない。

でも、一方通行は、

 

一方通行「だが、この指先が少しでも触れれば俺の勝ちだ…………」

 

自分の手を大きく広げてから強く握り直してそう呟く。

確かに触れれば勝ちだ。

 

そう触れれば………………………

 

 

一方通行(手加減はできねェか。仕方ねェ…………少し本気出すか)

 

一方通行は、また足の運動力の向きを操作し砲弾の用なスピードであっという間に黒髪のウサミミ娘に近づいた。

そのスピードはさっきのより何倍も速く、掴む事ができた。

 

顔面を掴まれた黒髪のうさみみ娘を、一方通行はその子の顔を地面に容赦なく叩きつけた。

 

一方通行「オラァッ!!!」

 

その後、黒髪のうさみみ娘から黒い玉がゆらゆらと出て来て一方通行はそれを蹴って破壊した。

 

一方通行「……後三人。か…………」

 

銀髪のナースの女と、黒髪ストレートの女が一斉に一方通行に攻撃を仕掛けてきたがそれを反射出来なかった。

 

一方通行「なに!?クソっ!!どォ言う事だッ!?」

 

自分でも分からないが左腕を負傷してしまった。

確かに反射に設定しておいたが、反射出来なかった。

多分まだ未知のベクトルがあるとゆうことだろう。

 

一方通行は一端距離を取るため、地面を蹴り飛ばすと同時に運動力の向きを操作して跳躍距離を伸ばし5メートル位離れた。

だが、相手はそんな事を許すわけがなく、銀髪のナースの女が一方通行に矢を放った。

しかしその攻撃は反射できた。

 

 

そしてそして。

 

その後も激しい攻防が繰り広げられた。

 

一方通行は、未知のベクトルを演算して全ての攻撃を反射する事に成功。

そして、演算を終わらせ次々と自分に向けられた攻撃を反射して見事全員を倒すことに成功。

一方通行は全員から出て来た直径5センチ位の黒い玉を破壊した。

 

その後、倒した四人と後一人、外に置いていた者も永遠亭の中に運んだ。

永遠亭の中は和な感じでとても落ちつきのある屋敷だ。

 

一人一人違う部屋に寝かせ、一方通行は傷付いたその身で壁を背に座りながら……………………

 

一方通行「………………………………疲れた」

 

と、一言苦労から出るため息を吐き呟く。

少し時間が経つと一つの部屋から物音が聞こえた。

 

段々と音が近づいてきて、自分の居る部屋の扉が開かれた。

そして、

 

???「貴方誰?何でここにいるの?」

 

微弱の敵意を向けながら銀髪のナースの女が話し掛けてきてが、次に銀髪のナースは床にゆっくりと座った。

 

一方通行「…………名前を聞きてェなら自分から名乗りやがれ」

 

永琳「………………私は、八意永琳(やごころえいりん)。この永遠亭の薬師よ」

 

一方通行「………………一方通行だ」

 

永琳「アクセラレータ?聞いたことない名前ね……」

 

一方通行「俺はこの世界の住人じゃねェからな」

 

永琳「もしかして、最近幻想郷入りしたって事?」

 

一方通行「無理やり飛ばされただけだ」

 

その話の後に、この世界の状況と自分達の状況を永琳に話した。

最初に向けられた敵意はもうすっかり消え、一方通行の話に結構ビックリしていたが、その話を続ける。

 

白い彼の目的は薬を手に入れること。

しかし、少し状況が変わったのだ。

 

『この世界についてもっと知る必要がある』っと一方通行は思い、

 

一方通行「オイ、永琳」

 

永琳「何?」

 

一方通行「この世界に図書館とかあるのか?」

 

永琳「本がいっぱいある場所なら知ってるけど、どうして?」

 

一方通行「この世界の事が知りたくてな。情報を集めるのには本が一番手っ取り早い」

 

永琳「じゃあ、私が知ってるこの世界の事を話すわ」

 

一方通行「イイのか?そンな事、俺に話して………」

 

永琳「えぇ良いのよ。だって命の恩人だからね」

 

それから、

永琳はこの幻想郷の事を色々話してくれた。

一方通行はそれを大人しく聞いていた。

そして、その話の途中に紅魔館と言う話が出て来て、

 

一方通行「じゃあそこの紅魔館(こうまかん)に本が大量にあるンだな?」

 

永琳「えぇ、あるけど。一人で行くつもり?」

 

一方通行「だったらなンだ、なにか問題あるのか?」

 

永琳「皆が暴走してるからあそこは危険よ。紅魔館の子達は特に、ね。あそこは結構戦闘向きな能力者が居るから……………………」

 

一方通行「だったらそいつら全員ぶっ潰せばイイだけだ」

 

多分彼を止めようとしても永琳は無理だと思い、止める事を諦めた。

一方通行は、霊夢、魔理沙の事を思い出し、永琳に相談をする。

 

 

一方通行「永琳。少し動けるか?」

 

永琳「えぇ。少しなら」

 

一方通行「だったら頼み事がある。霊夢の居る神社に行ってくれるか?そこに怪我人が居るからその二人に適切な手当てをしてくれ」

 

永琳「そのぐらいは良いけど、少し時間が掛かるけど良い?まずはここに居る皆の手当てしなくちゃ…………………」

 

一方通行「あァ、構わねェ」

 

そう最後に言ってこの場を去ろうとする。

永琳は一方通行を見て、

 

永琳「貴方も怪我してるじゃない。手当てするからちょっと待って」

 

一方通行「俺は別に構わねェから他の奴にやれ」

 

一方通行はそう言い残し外へ出ていってしまった。

そして、永遠亭の外に出ると風で成功した翼を作り飛ん次の目的地である紅魔館を目指す。

 

その後、永琳はまだ寝ている他の子達をちゃんと、手当てを出来る部屋へ運んだあげた。

 

少し時間が過ぎた頃に銀髪ロングヘアーの子が目覚める。

 

???「ここは…………?」

 

永琳「永遠亭よ、眼が覚めたのね」

 

???「あっ!そうだ!!あの後、皆はあの後どうなったんだ!?」

 

永琳「それを話すから一度落ち着いて妹紅(もこう)ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奇跡的に永遠亭に行けた一方通行の次の目的地は紅魔館。

 

 

『次はもう少し楽だったらイイなァ』と思う一方通行であった。

 

 

 












ポスターだった物「………」

一方通行「………」

ポスターだった物「………」

一方通行「………」

ポスターだった物「どうしてくれるのさ………」

一方通行「知るか」


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6話

ポスターの文章力は?ゼロ~♪

って、えぇぇ!?Σ( ̄ロ ̄lll)


永遠亭から紅魔館へ向かって飛んでいる一方通行は永琳が話していた事を思い出す。

それは『弾幕』。

一方通行の知らないベクトルが存在する攻撃。

でも、その弾幕と言う攻撃のベクトルも解析したがまだ完璧とは言えない。

だからまだこの世界の情報を集める必要がある。

 

一方通行「……………しかし、この雲はどォなってンだ?」

 

飛んでる最中に空を見てこんな疑問を感じた。

ここまで真っ黒で凄く厚い雲、こんな雲は初めて見た。

 

一方通行「とにかく急ぐかァ……………」

 

飛行速度を上げた。そして猛スピードで目的地に向かう。

 

 

 

一方、あのボロボロの神社に居る霊夢達は

 

 

 

 

魔理沙「……………………………………………………………… ん?ここは、博麗神社か……?」

 

ゆっくりと眼をあけ、見覚えのある場所の名を言った。

霊夢はその声を聞いた瞬間に慌てて駆け寄り魔理沙を抱き締めた。

 

 

霊夢「…………もう、心配かけないでよ………………………」

 

魔理沙「…………お、おう………」

 

魔理沙は何の事か知らないが返事をする。

その後、金髪魔女は自分の体を見てボロボロだと気付き何か異変が起きたと考えた。

 

魔理沙「………………霊夢。何があったんだ?」

 

霊夢「記憶無いの……?」

 

魔理沙「今、覚えてる記憶は自分の家に帰ってる途中に………………ダメだ。そこから先の記憶がない」

 

頭を抱え、中々出てこない記憶を必死に探したが起きたばっかりなので頭が回らない。

そしてその後、霊夢から今の状況を聞くと

 

魔理沙「えぇ!?マジか!!幻想郷はそんな事が起きてるのか!?」

 

霊夢「えぇ、マジよ」

 

魔理沙「マジなのか……………」

 

とにかく眼を覚ました事に一安心だ。

そして霊夢から聞いた『一方通行(アクセラレータ)』と言う異世界人の話に

 

魔理沙「で、今その一方通行(アクセラレータ)?って奴が永遠亭に行ってるのか?」

 

霊夢「………えぇ。でもこれは賭けだから上手くいくか分からないの…………」

 

 

 

珍しく暗い表情になっていた。

今日、初めて会ったのだがそれでも心配なのだ、

 

もしかしたらまだ迷いの竹林の中なのだろうか?

もしかしたら永遠亭に行けず、途中で倒れてしまったのだろうか?………………っと。

 

しかし、だ。

静寂のなかに

 

 

???「じゃあその賭けは成功したって事ね」

 

 

突如、声がしたところに一斉に振り向く。

すると、そこには自分達が知る人物が居た。

 

 

魔理沙「おっ、永琳!!どうしたんだ?」

 

この部屋の中から見える庭の方に立っていた永琳に魔理沙は手を振る。

霊夢は永琳を見ると、

 

 

霊夢「アンタが来たってことは、本当に成功したのね……………………」

 

息を吐いて、彼の安全を確認出来て一安心する。

 

永琳「えぇ、そうみたいね。彼、結構面白かったわよ………………?」

 

クスッと、笑いながらそう話した。

 

一方通行が面白いかは、まあさて置き傷に良く効く薬を霊夢に渡して、そして次に永琳は魔理沙を手当てする。

 

霊夢「良く此処まで来れたわね……………」

 

永琳「運が良かっただけよ」

 

魔理沙「なぁ、話してくれ。今の外の状況を」

 

元気になってきた魔理沙が興味深々で言ってきて、永琳は外の状況と一方通行の次の目的地を話した。

彼の次の目的地を聞いた霊夢は驚愕する。

 

霊夢「え?次は紅魔館!?馬鹿じゃないのあいつ………ッ!!」

 

魔理沙「大丈夫なのか?その一方通行って奴は?」

 

霊夢「うーん………多分ね。確かになんか能力を持ってる事は分かってるけど詳しく聞いて無いからなぁ………………」

 

永琳「もう紅魔館の方に飛んで行って随分経つわよ?」

 

魔理沙「ヤバいじゃねぇか。霊夢、早く助けに行くぞッ!!」

 

霊夢「魔理沙は大丈夫なの、体?」

 

 

体が勝手に動いてしまったのか、寝てはいられないと立ち上がった。

 

そして霊夢は、彼女の体を心配する。

だが、魔理沙はじっとしていられないタイプなので縁側からこの神社を出た。

 

 

もう金髪魔女を止められないと悟るが、自分は自分で一方通行の事が心配だから彼を助けようと動く。

 

永琳は二人の背中を見て「無茶しない様にね」と忠告する。

 

すると、

 

 

魔理沙「了解!」

 

霊夢「まぁ、ほどほどにね…………」

 

軽く返事をして、あの戦いの後に回収した魔理沙の箒に二人で乗り一方通行が向かっている紅魔館へ一直線に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空を飛んでから結構時間が経つ。

少し傷が痛むが、まあそんな事はどうでも良い。

早く目的地に着けば良いだけなのだから………………

 

一方通行「あン?あれが紅魔館、か…………?」

 

その建物は真っ赤で大きな城のような作りをしていた。

一方通行はその建物の門から少し離れた場所に着地した。

 

大きな建物に向かって歩いていると、だ。

門の前に人影が見えた。

 

一方通行「……………………門番か」

 

その者の容姿は、華人服とチャイナドレスを足して2で割ったような緑色を主体とした衣装を着ていて、髪は赤く腰まで伸ばしたストレートヘアー。

側頭部を編み上げてリボンを着けて垂らしている女性だった。

 

一方通行が慎重に門番の彼女に近付くと、急に自分の周りにナイフが何十本も現れた。

そして、次の瞬間。

そのナイフは白が特徴的な彼を串刺しにするかと思いきや一方通行の『反射』が機能してナイフはどこかへ振っ飛んで行った。

 

目の前に居る敵とは違う敵が居ると思い周りを見渡すと突然、目の前に居た赤いストレートヘアーの彼女は腕に光るオーラの様なものを纏い、一方通行に向かって弾幕を撃ってきた。

 

 

避ける事は出来たが、もしかしたら未知のベクトルかもしれないと思い、手をズボンのポケットに突っ込んだままその攻撃を受け、彼の手前でその弾幕は止まる。

 

 

一方通行「チッ。ただエネルギーを溜めて撃っただけかよ……………………」

 

そしてだ。

その弾幕を反射する。

すると、赤いストレートヘアーの女に向かって弾幕は放たれ勝手に自滅した。

 

余程強く撃ったのだろう、まともに受けた本人は膝から倒れた。

 

 

一方通行「こいつはエネルギーを使って戦うのか。だったらさっきのナイフはなンだ?」

 

 

倒れてる所を見た後に、周りを見て警戒しながら紅魔館の中に入ろうとしたら、いつの間に目の前にメイド服を着た銀髪の女性が現れた。

その女性は髪型はボブカットであり、揉み上げ辺りから三つ編みをしていて髪の先に緑色のリボンを着けている。

 

 

 

一方通行(なンだこいつは。急に現れたぞ!?しかもテレポートじゃねェな………………どンな能力だァ?)

 

学園都市でも結構珍しい空間移動の能力。

だがテレポートとは全く違う気配がする。

 

 

 

一方通行「なンだが知らねェがぶっ潰す!!」

 

 

 

 

一方通行は足の運動力の向きを操作して一瞬で距離を詰めたが、その場にさっきまで居たメイドは居ない。

そして、周りに自分を囲む様にナイフが飛んで来たが、全て反射する。

 

 

一方通行「………チッ。無闇に近づいてもダメか。だったらこいつはどォだァッ!?」

 

 

 

次に右足で地面を踏んでベクトルを操作して、姿を現したメイド女の足元が爆散する。

が、もうその場所には彼女の姿は無く、また彼を囲むようにナイフが飛んで来た。

 

しかしそれでも問題ない。

先程と同じ攻撃方法ならこちらも同じく『反射』すれば良いのだ。

 

 

 

一方通行「……………コイツは何故近づいて来ねェンだ?」

 

 

離れてナイフを投げる攻撃しかしてこない敵に疑問を感じたが、一方通行は相手がどんな能力なのか考える事にした。

 

そして、

 

 

 

一方通行「………………………………時間か。時間を止めてるンだなこいつは」

 

 

 

テレポートとは違う能力。それは時間を操る能力。

他に違う案もあったがこれが一番可能性が高い。

 

そして次の瞬間だった。

一方通行は不思議な世界を体験する。

それは時間も何もかも止まった世界。静寂が支配する空間。

 

一方通行はその中を動いているメイドに猛スピードで上から近づき、殴り付けた。

殴られたメイドは、地面に叩き付けられ地に倒れる。

 

すると、その女性からゆらゆら出て来た黒い玉を蹴り壊す。

 

 

だが、彼の前に次々と敵が現れ大きな力と力が真っ正面から打つかる……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方である。

 

 

 

霊夢「もう少しスピードでないの?」

 

魔理沙「そんな速度出るわけないだろ、二人も乗ってるんだぜ?」

 

箒で空を飛んでるのでスピード出したら落ちるかも知れない。

それにどちらも万全ではない。

だからいつも二人乗りしている飛行速度より遅いのだ。

 

 

 

魔理沙「でも霊夢はあそこに待ってれば良かったのに。何で来たんだ?チカラ全然使え無いんだろ?」

 

霊夢「だからといってアンタを一人で行かせる訳にもいけないでしょ」

 

魔理沙「心配無用だぜ!この通り完全回復したからな!」

 

強がってる魔理沙に霊夢は怪我してる場所をちょんと触れると…………………、

 

魔理沙「ッ!!??痛って何すんだよッ!!」

 

ちょっと涙目で怒りの表情に変わる魔理沙に、霊夢は

 

 

霊夢「…………それが完全回復と言えるの?」

 

魔理沙「…………………………少し痛いだけだ」

 

霊夢「はいはい。強がらなくて良いから早く行って、紅魔館へ」

 

魔理沙「分かったよ。だから落ちるなよ!!」

 

 

今自分が出せる全力を使いスピード上げて飛んで行った。

霊夢は久しぶりにあの神社から出たが、外の酷い光景を見て、

 

 

霊夢(早く何とかしなくちゃ……………。昔みたいに戻れなくなるかも知れない)

 

余りにも幻想郷は破壊されていて、昔の面影もないただの荒れ地と成り果てていた。

 

 

 

魔理沙「ん?おい、霊夢。もう少しで紅魔館が見えてくる、覚悟決めろよ!?」

 

霊夢「全く………誰に言ってるの?魔理沙こそ大丈夫なの?」

 

魔理沙「ック、アハハハハハッ!!その意気だ。行くぜッ!!」

 

 

そして、二人は紅魔館の近くで着地し大きな音のする方へ走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、の話だ。

屋敷の前で一方通行は何か小さい人影に襲われていた。

 

一方通行「………コイツらなンだ?」

 

見たこともない奴が次々と攻撃して来た。

途中、赤い長髪で頭と背中に悪魔みたいな羽を付け、白いシャツに黒のベスト、ベストと同色のロングスカートでリボンを着けている奴が襲って来たが、その者はすぐ倒した。

倒した奴からも直径5センチ位の黒い玉がゆらゆらと出て来て一方通行はそれを破壊する。

 

段々、紅魔館の玄関前に近かずくと、次に一気に三人の女が姿を現した。

一人は長い紫色の髪をリボンでまとめ、服は寝間着の用な見た目をしてた。

二人目は、青みがかった銀髪で可愛らしい服を着ていた。

三人目は薄い黄色の髪をサイドテールにまとめていて、服は半袖ミニスカートで、その背中には結晶の様な翼が生えていた。

 

 

そして結晶の様な翼が生えてる幼女がこちらに手を掲げその手を握ってから開く。

 

一方通行は危機を感じて自分の立っていた場所から真横に全力で飛んだ。

すると…………………、

 

自分の立っていた場所は粉々に破壊されていた。

 

 

一方通行「…………。オイオイ何だその能力は、でたらめ過ぎるぜェ!!」

 

自分の命の危機だというのに一方通行は裂いたように笑っていた。

 

自分みたいに強力な能力者に会った事がなかったが、この世界に来て、自分みたいに化け物染みた能力者に出会い。

楽しそうに、だ。

 

一方通行「イイねェイイねェ最っ高だねェ!!学園都市にはここまで俺を楽しませる奴は居なかったぜェ!!」

 

テンションが上がり、さぁこれから反撃だ。

っと、いう時に後ろから、

 

???「ちょっと待って!!」

 

一方通行「あン?」

 

声のする方を向くと二人の少女が居た。

 

一人は黒髪の巫女でちょっと怒りながら

もう一人は金髪魔女で、少し引いていた。

 

 

魔理沙「………………おい、霊夢。こいつが一方通行か?なんか、結構ヤバそうな奴だぜ…………………」

 

霊夢「目つきは悪いけど。まぁ、大丈夫よ」

 

一方通行「チッ。なンの用だ?」

 

一方通行は折角テンションが上がってたと言うのに邪魔が入りイライラした様子だった。

 

霊夢「一旦落ち着いて話すから隠れるわよ。付いて来て」

 

一方通行「チッ」

 

一方通行は舌打ちしながらも霊夢達に付いて行った。

 

そして、さっき戦ってた所から離れた場所に隠れる。

 

 

一方通行「………………それで。なンの用だよ?」

 

霊夢「さっきの勢いで行ったら完璧ヤバかったでしょ。永琳に話は聞いたわ、結構乱暴な戦い方してるんだってね……?」

 

魔理沙「少しは手加減しろよな。相手は女の子だぜ?」

 

一方通行「手加減はしてるぞ十分」

 

霊夢「してないから言ってるんでしょ。全く…………」

 

 

一方通行はもう話は済んだと思い、

 

 

一方通行「帰れ。オマエらは邪魔だ」

 

霊夢「怪我してるに何言ってるの!私達は戦うためにここに来たのよ」

 

一方通行「オマエら戦えンのかァ?」

 

魔理沙「あったり前だぜ!だから来たんだぜ、此処に」

 

霊夢「情報欲しくないの?あの子達結構強いわよー?」

 

霊夢は意地悪な笑みを浮かべていた。

 

確かにあいつらの能力を知って損はない。

だから、一方通行は

 

一方通行「チッ。教えろ、オマエの知ってる情報全て」

 

魔理沙「…………なるほど。つまりスリーサイズも教えろって事か」

 

霊夢「えっ!?何セクハラッ!?」

 

一方通行「アイツらの能力を教えろって言ってンだァッ!!」

 

一方通行は怒鳴り付けた。

すると、二人は

 

魔理沙「全く…冗談通じないな~」

 

霊夢「全くね~」

 

二人は左右に首を振りながら呆れてた。

 

一方通行は拳を強く握りもう殴ってやろうと思ったがなんとか堪えることにした。

そして、その後霊夢から、弾幕、能力、魔法、をある程度教えて貰う。

 

 

一方通行「足手まといはゴメンだぜ?」

 

霊夢「こっちこそ!!」

 

魔理沙「さて…………、暴れるかッ!!」

 

 

そして、三人は紅魔館へ向かい歩いて行った。









一方通行「なンでこンな事書いてるンだ?」

ポスター「ん?何の事?」

一方通行「"ここ"の事を言ってるンだよ」

ポスター「………………………」

一方通行「まさか何もェのかよ、意味……………」


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7話

お願いします文字を間違えない方法を教えて下さい。

ーーー努力しろーーー

フッ。でっすよね~(^^;)










一人ずつ誰の相手をするか、もう決めてあった。

一方通行は、青みがかった銀髪幼女。

霊夢は、金髪幼女。

魔理沙は、寝間着少女。

 

 

この案は霊夢が出した。

二人は何も意見を言わずにそれに従い、それから紅魔館に向かった。

 

そして、まず最初に出会ったのは寝間着女だったので、

 

魔理沙「パチェリーは私だな。二人とも早く行け!」

 

魔理沙が一人で相手をした。

そして、次に会ったのが金髪幼女。

こいつは霊夢の相手だ。

 

 

霊夢「はぁー…………。次は私か」

 

面倒くさそうに言って金髪幼女と戦闘を繰り広げる。

 

 

すると、最後は…………………………

 

 

 

一方通行「コイツは運命を操るンだよな」

 

一方通行の目の前に青みがかった銀髪幼女が現れた。

コイツは運命を操る程度の能力者らしい。

そんな不確かなものを操るかなんだか知らないが一方通行は目の前にいる敵に、

 

一方通行「運命にもベクトルがあると思うか?」

 

学園都市でこんな変な質問をしたら笑われると思う。

だがここは『幻想郷』。

不思議な事がいっぱい起きる世界だ。

 

 

足元の運動力の向きを操作して一気に距離を詰め、接近戦を仕掛ける。

しかし、振るった拳は空振りで終わった。

 

青みがかった銀髪の幼女は背中にある悪魔の様な翼を使い空へ飛んだ。

その後を追うように一方通行も背中に風の翼を生成し空へ飛ぶ。

 

 

一方通行「おらおらどォしたァ!?そンな速度じゃ追い付かれるぜェ!!」

 

一方通行は笑いながら青みがかった銀髪幼女に挑発する。

そしたら青みがかった銀髪幼女は逃げる様に空を飛び回ってたのに急に紅魔館の屋根に降り、彼もその屋根に着地する。

すると、次の瞬間。

一方通行の体に異変が起きた。

それは…………………………

 

一方通行(クソったれ……。息が、できねェ………………?)

 

呼吸が出来なくなっていた。

これが運命を操る程度の能力なのか?

 

一方通行は苦しみながらも敵から目を反らさずにいた。

青みがかった銀髪幼女は何処からが出したのか分からないが、真っ赤で大きな槍を構え、一方通行に向かって全力で投げる。

今、とにかく息をするために能力を全て演算に回してるため反射なんて出来ない…………………。

 

 

 

 

が、その槍を飛んできた方向へ反射し一方通行は呼吸をしていた。

 

 

 

 

 

一方通行「……………………………………………………間一髪だったぜ。喜べ、ひょっとして世界初じゃねェの?この俺を死ぬかもと思わせたのは…………」

 

 

 

一方通行はズボンに手を突っ込んだまま余裕の表情で屋根に突っ立っていた。

 

そして、だ。

暴走している青みががった銀髪幼女がまた運命を操ろうとしてたがもう無駄だ。

 

その能力のベクトルを完璧に掌握しているため反射する。

 

 

そしてそれから激しい攻防が、まだまだ続く……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方。

 

魔理沙は今、空で激しい魔法戦をしていた。

得意、不得意もあるがどちらも上級魔法使い。

 

油断したらその瞬間終わりだ。

 

数多く自分に向かって撃たれた弾幕を回避して飛行するなかその光弾が魔理沙の右肩に直撃した。

 

魔理沙「……く…………ッ!!やっぱり、強いなパチェリーは…………。だったらコレだぁぁぁああああああああああああああああああああああッッ!!!」

 

 

覚悟を決め魔理沙は『パチェリーごめん』と呟き

 

魔苻「スターダストレヴァリエ」!!っと宣言する。

 

すると、だ。

星の様な形の弾幕が寝間着女に降り注いだ。

余りにも弾幕が多いため躱しきれず直撃。

爆発音と共に地面に寝間着女が落ちていった。

 

そして、魔理沙は寝間着女の落ちた場所に急いで降りる。

 

 

 

魔理沙「パチェリー大丈夫かァッ!?」

 

少し力を入れすぎたため心配したが、何とか軽傷で済んでいた。

その事に、

 

魔理沙「ふぅ………、良かった」

 

一安心してると、寝間着女の体の中からゆらゆらと直径5センチ位の黒い玉が出て来る。

 

 

魔理沙「これが話にあった黒い玉ってやつか……………」

 

魔理沙は、その黒い玉を殴り破壊。

その後、寝間着女を安全な場所に運び

 

魔理沙「…………じゃ。行ってくるぜ」

 

寝間着女に小さく微笑んでそう言って魔理沙は霊夢の元へ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ここは紅魔館の周りにある林の中。

隠れられる場所を探してる霊夢の状態は結構ピンチだった。

 

すると、そこでだ。

 

空から物凄く大きな声で、

 

魔理沙「霊夢ーっ!!私の方は終わったから助けに来たぜ!!」

 

霊夢(あの馬鹿………)

 

その声を聞いて霊夢は大きくため息を吐いた。

 

そんな事を知らない魔理沙は、

 

魔理沙「おっ、フラン。悪いがまた勝たせて貰うぜ!!」

 

 

まさかの空で霊夢より前に金髪幼女に遭遇した。

 

臨戦態勢をとって戦うことを決める。

そうしたら下から、だ。

 

霊夢「私は援護するから魔理沙はそのまま空中戦よろしく!!」

 

何処からか知らないがそんな指示を受け、魔理沙は

 

魔理沙「ああ分かった!!けど逃げんなよ?」

 

 

霊夢「逃げるかァッ!!!」

 

 

そんな言葉を交わした後に激しい弾幕の撃ち合い始まった………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、能力も弾幕も魔法も全て反射出来るようになった一方通行は空で壮絶な追いかけっこをしていた。

 

 

一方通行「いつまで逃げるつもりだ、あァッ!?」

 

 

まるで、誰かを待ってるように逃げ続ける青みがかった銀髪幼女。

そして突然、屋敷の上で止まった。

 

一方通行は7メートル位離れて、空中で静止していた。

すると横を猛スピードで通った物体は金髪幼女。

 

そしてその後を追う者が一人、

 

 

 

魔理沙「逃がすかぁぁぁぁああああああああああああああああっ!!!!_______________________って、一方通行?どうしてこんな所で止まってんだ?」

 

一方通行「…………そォいうことか。アイツはあのガキを待っていたのか」

 

一方通行は敵の方を睨んでいた。

魔理沙は一方通行が空で止まってる事に驚いていたが

その後、相手の二人の方を見て、

 

魔理沙「ふーん。2対2って事だな…………」

 

一方通行「おい、魔理沙。余り出しゃばンなよ?」

 

魔理沙「素直に手を貸せで良いだろ!!」

 

 

そして、だ。

 

 

魔理沙から攻めて行った。

一方通行もその後を追って敵の元へ向かう。

 

そして、魔理沙は宙を舞ってガンガン魔法を撃つ。

それから、だ。

二人が戦闘を繰り広げているなか霊夢は下から援護していた。

 

敵の幼女姉妹は同時に弾幕を物凄い勢いで放つ。

 

それを華麗に回避しながら飛んでいた魔理沙に弾幕が当たりそうになった瞬間、一方通行は

 

一方通行「チッ。足手まといはいらねェって、言ったンだがな…………」

 

背中を使って庇ってくれた。

 

魔理沙「…………悪い、助かった…」

 

魔理沙は頬を赤く染めていた。

すると、だ一方通行は魔理沙に軽くチョップをして、

 

一方通行「次はねェぞ………」

 

魔理沙「………」///

 

魔理沙はチョップされた頭を手で押さえてぼーっとしてると、

 

一方通行「なにぼーっとしてンだ。行くぞ」

 

魔理沙「…………っわ、分かった」///

 

顔が熱い。

それになんだろうこの気持ち。

 

魔理沙は一人で考えてた。戦闘中なのに、だ。

 

まだまだ戦いは続いてく、どちらが倒れるまで…………

 

だがその戦いにも決着がつく。

 

一方通行は、ある作戦を魔理沙に伝えその作戦に白と黒の魔女は乗る。

 

その作戦とは、

一方通行を先頭に立たせ、魔理沙は後ろ彼に付いて行く。

一方通行は全ての攻撃を反射できる優秀な盾として

魔館沙は一気に高火力を出せる優秀な矛として

 

それぞれが役目を一つ決めて他は相方に任せるという作戦だった。

 

 

そして、だ。

 

一方通行「行くぜ。魔理沙ァッ!!」

 

魔理沙「了解だぜっ!!」

 

一方通行を先頭に飛んでくる無数の弾幕の中に突っ込んで行った。

そしてそのまま敵の場所までたどり着き、青みがかった銀髪の幼女へ白い怪物が手を伸ばし戦闘不能にする。

 

もう一人は、

 

魔理沙「逃がすかよォッ!!!!」

 

もう後の事なんて考えてない。

"今"に全力を出す。

 

魔理沙は背を向け勝てないと思いこの場から逃走する金髪の幼女へ夥しい程の弾幕を放つ。

 

しかし、あそこまで数多く弾幕を撃ったのに一撃も当たらなかった………………

 

『もうダメか…………』

とは諦めない。

 

あの自分を正気に戻してくれた彼が信じて任せてくれたのだ。

だったら…………

 

と、次の弾幕を放とうとしたら

 

 

霊夢「そこよッ!!」

 

 

下に居た巫女の放った一撃で、なんとか倒せたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金髪の幼女と青みがかった銀髪の幼女からも直径5センチ位の黒い玉が出て来て、それを破壊する。

 

魔理沙「いやー…………。にしてもあの作戦は良かったぜ!」

 

一方通行「オマエ何様だよ?」

 

紅魔館の門から外へ出て居る最中だった。

 

魔理沙「あの時は助かったぜ。ありがとなっ!」

 

そう言って一方通行の背中を叩いたら、ベチャッ!!っとおかしな音がした。

 

その後、叩かれた彼は魂が抜けた様に仰向けで倒れた。

 

魔理沙はその事に言葉を失い、恐る恐る一方通行を叩いた自分の手を見ると、

そこには………………真っ赤な血がびっしり付いていた。

 

 

 

魔理沙「うぅ、うわぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!?!??」

 

 

 

魔理沙は自分の手を見た後に一方通行の方を見ると背中から大量の血が流れていた。

 

 

そして、それから霊夢がその叫び声を聞いて駆け寄って来た。

 

 

 

霊夢「どうしたの魔理沙ッ!?」

 

魔理沙「………どうしよう…………一方通行がぁ……………っ……」

 

魔理沙は涙目で一方通行の側で膝を付いていた。

それを見て、

 

 

霊夢「とにかく、一方通行を永遠亭に運ぶわよ。早く!!」

 

 

魔理沙「…………分かった。でも、紅魔館の皆は?」

 

霊夢「後で私が何とかするから。魔理沙は早く一方通行を永遠亭にッ!!」

 

それからは早かった。

魔理沙は霊夢に言われた通り血を流して気絶している一方通行を大事に抱えながら箒に乗り、永遠亭に向かう。

 

 

 

 

 

 

魔理沙(……………頼む。生きててくれっ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 











ポスター「皆は凄いよな。字とか間違えて無いから……………」

一方通行「あァ、そうだな」

ポスター「……自分はどうしたら良いかな?」

一方通行「星になれ」

ポスター「えぇ!?」


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8話

今まで出した話を少し直して来ました……。

スゲー疲れた、もう二度とやりたくねェッッ!!!


はい。続きをどうぞ………………









???「実験を開始します、とミカサは伝えます」

 

ここは学園都市。

そしてここはその町で全然人が立ち寄らない場所だ。

 

 

一方通行「早く終わらせるかァ……」

 

 

そして、『実験』が始まり、

一方通行は目の前に居る常盤台の制服を着た少女を能力を駆使して殺害する。

 

 

一方通行「……………後、何回()りゃあ終わるンだ?」

 

無事に今回も一方通行の勝利で終わった『実験』。

そして、夜空を見ながら白い怪物はそう呟いた。

今、学園都市最強の怪物、一方通行がやってる実験の名は絶対能力者計画(レベル6シフト)

超能力者(レベル5)・序列、第三位のクローン二万回殺害することで一方通行が絶対能力者(レベル6)に進化すると言う実験らしい。

今回で何回目か忘れたが今日の実験は終わった。

 

そして、死んだクローンをまた違うクローンが回収していたがそんなの無視して彼はその場を去る。

 

一方通行(コーヒー買って帰るか……………)

 

一方通行は帰ってる途中でコンビニに寄って大量にコーヒーを買い物カゴに入れ、レジに向かい会計を済ませ自分の住んでる学生寮へ帰った。

 

家に帰ると、手に持っていた袋を適当にガラス製の長机に投げて、ベットに寝転がり床に就く。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日にだ。

一方通行は午後ぐらいに目を覚まし、少し家で時間を潰してメールで送られた今日の実験場所に向かう。

 

 

こんな生活を彼はずっと続けていくのだ。

 

 

いつか自分が絶対能力者(レベル6)になるまで………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「いつまでこんな事を続けるの?」

 

どこかで聞いたことがあるような、ないような女性の声が聞こえた。

その声は続く……………

 

???「今、自分がやってる事が間違ってるって分かってるんでしょ?」

 

一方通行「あァ?何言ってンだ?」

 

???「貴方が求める物のは何……?」

 

一方通行「絶対的な力を手に入れる事だ」

 

???「そんな力を手に入れて何になるの?」

 

一方通行「……………………オマエには関係ェねェ」

 

一方通行は少し間があったが質問に答える。

 

すると、だ。

聖母のような、優しく癒されるような『女性の声が、』

 

 

 

???「貴方が本当に求めてる物は____________」

 

 

 

 

そして、それから声は途切れてしまった。

最後"彼女"はなにを言おうとしてたのだろうか。

 

 

 

(俺が本当に求めてモンは_________________)

 

 

 

 

一方通行は聞こえなくなった声はなにを伝えたかったか知らないが、

それでも、無視できる話ではなかったことは確かだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______『君は、光の世界には行けない』________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行(アクセラレータ)

彼は白い髪に白い肌と赤い瞳が特徴の幻想郷に無理やり連れて来られた外来人。

 

しかし、紅魔館と呼ばれている怪しくも美しい館での戦闘で大怪我をした。

そして、だ。

無事に優しく魔理沙に抱えられて永遠亭に運ばれた一方通行は目を開けると部屋の天井が見えた。

 

すると、背中に激痛は無く逆にふかふかの感覚がある。

どうやら布団で寝かされているらしい。

 

どこか見覚えがある場所だと、思いながら上体を起こす。

そしたら体左右に何かが当たる違和感を感じる。

だから、すっと毛布を捲ると……………だった。

 

 

 

霊夢「……すぅ………すぅ………っ」

 

魔理沙「…………………ん………ぅ…、っ…………」

 

 

紅白の巫女と白と黒の魔女が両隣で寝ていやがった。

 

一方通行「………………何でここで寝てンだァ?」

 

なぜ、このような事が起きているのか不明だが、霊夢と魔理沙を起こそうとしたが面倒だから止める。

 

そして、一方通行は自分の体を見ると上半身に包帯が巻かれていた。

誰か適切な手当てをしてくれたのだろうか。

 

それも分からぬまま、彼は動かずぼーっとしていると、

 

この部屋の襖が開かれた。

 

 

「あら?目が覚めたのね」

 

 

そして、永琳が部屋に入ってきた。

 

 

一方通行「おい………ここは何処だ?」

 

自分の居る布団の隣に腰を下ろした彼女にそう質問する。

すると、ニコッと微笑んで、

 

永琳「永遠亭よ」

 

一方通行「これはオマエがやったのか?」

 

永琳「ええ、私が治療したの」

 

一方通行「じゃあ、コイツらはなンでここで寝ている?」

 

 

最後にだ。

彼は今、一番気になっている事を霊夢と魔理沙に指を差しながら質問した。

 

そしたら、永琳はクスッと笑い

 

 

永琳「貴方の事を心配して見ていたら、何だか眠くなって寝ちゃったみたい」

 

 

 

一方通行「………そうか」

 

 

そして、一方通行は自分の両隣で寝て二人を眺める。

すやすやと気持ち良さそうに寝ている。

こんなのを叩き起こして邪魔などしてはいけないだろう。

 

そうは思わない彼は、やっぱり邪魔だから、と。

 

 

一方通行「コイツらどかせ」

 

 

永琳「霊夢、魔理沙。一方通行が起きたわよ?」

 

 

霊夢「~~~~っ。…………ん……?本当だ、起きてる」

 

魔理沙「…………………あ……お。一方通行、体大丈夫か!?」

 

 

永琳の声に反応して霊夢と魔理沙は目を覚まし、一方通行の顔少し近づいて来た。

 

 

一方通行「イイからどけ、邪魔だ…………」

 

霊夢「あ……、ゴメン」

 

魔理沙「あはははっ、…………悪い悪い」

 

 

霊夢は素直に離れ、魔理沙は頭を掻いて謝り離れた。

 

 

一方通行「それで、何でここで俺は寝てたンだァ?」

 

霊夢「えっ、覚えて無いのッ!?」

 

魔理沙「こっちはスゴくびっくりしたんだぜッ!!」

 

永琳「貴方、大怪我して倒れたのよ……?」

 

 

それを聞いてだ、

 

 

一方通行「………………やっぱり反射できて無かったか」

 

 

魔理沙「やっぱり、って…………。じゃあ、何であの時私を庇ってくれたんだ?」

 

一方通行「…………………意味はねェよ。ただ、あの時は体が勝手に動いた。それだけだ」

 

 

一方通行に平然とそんな事を言った。

すると、だ。

魔理沙は真っ赤にしてうつ向いた。

 

永琳「…………とにかく目が覚めて良かったわ。そうだ、お腹空いてない?ご飯にしましょ」

 

霊夢「そうね。そう言えばご飯食べて無いわ」

 

魔理沙「おう、飯だ飯ッ!!」

 

まだ、魔理沙の頬が赤く染まっていたがそれに触れずに一方通行も歩けるぐらい回復しているので、皆で永遠亭の食事が出来る部屋に移動した。

 

そして、だ。

料理が出来る霊夢と魔理沙は永琳と三人で台所へ行った。

 

 

そして、待つこと数分。

 

和食のど真ん中に置かれた質素な丸形のテーブルに大きな握り飯が山のように積まれた皿が置かれ、それを作ったであろう三人は床に腰を下ろした。

 

さあ、四人机を囲んで食事………………だが?

 

 

霊夢「久しぶりのご飯は美味しいなぁー♪」

 

魔理沙「ご飯と言ってもお握りだけどな…………」

 

永琳「文句があるなら食べなくて良いのよ?」

 

永琳はにっこりと笑っていたが、それがとても怖かった。

だから、か

 

魔理沙「いやいや、文句はないぜっ!?本当にないぜ…………………」

 

永琳「そう、ならいいけど」

 

一方通行「チッ。くっだらねェ…………」

 

 

一方通行はそう呟き、次のお握りを食べていた。

いや、だがだった。彼は思う。

 

どんなに質素で、料理とは言えない握り飯でも

 

ファミレスや、コンビニとかではない、

誰か手作りの食事を出されたのは何年ぶりだろうか、と。

いいや、下手したら初めてかもしれない。

 

こうやって誰かと一緒に食事をするのも、だ。

 

絶対にこんな光景を見ることは無い人生を歩むと思っていた彼は、

そんな事を考えながらも、黙々と素朴な握り飯を食していた。

 

 

そして、皆お腹いっぱいになってお茶を飲んでいると霊夢が

 

 

霊夢「…………あ、そう言えば。いつになったら教えてくれるの、アンタの能力?」

 

一方通行「あン?あァ。そォ言えば言って無かったなァ………………」

 

魔理沙「確かに………、それは気になるぜ」

 

永琳「私も気になるわ」

 

皆、一方通行に視線を集めた。

別に隠す気なんてないから、

 

一方通行「…………俺の能力。それは、ベクトル操作だ」

 

霊夢・魔理沙「「ベクトル…………操作……?」」

 

永琳「ッ!!??」

 

霊夢と魔理沙はベクトルと言う初めて聞く単語に首を傾げた。

しかし、彼女は違った。

 

そう永琳だ。

永琳は彼がどのような能力を持っているのかと、理解すると背筋が凍る感覚を味わった。

 

 

 

 

一方通行「運動量・熱量・光・電気量。全てのベクトルを触れただけで操作する能力だ、理解出来たかァ?」

 

まだ霊夢と魔理沙は分かっていないらしく、首を傾げたままであった。

だから、だ、

 

永琳「力には必ず向きがあるのは知ってる?」

 

霊夢「……そうなの?」

 

魔理沙「?」

 

永琳「そして、ね。彼、一方通行は向きを操るを有している」

 

霊夢・魔理沙「「つまり……??」」

 

 

永琳「全ての攻撃が効かなくて、自分の攻撃が倍になる能力ってこと」

 

まあまあ、ざっくりとであるがそんな説明をしてあげた。

そしてやっと一方通行の能力を理解すると、

 

魔理沙「そんなの…………、チート過ぎるぜ…………」

 

霊夢「そうなの、一方通行?」

 

一方通行「まァ、そンな感じ」

 

永琳「………………ねえ。一方通行」

 

ふんわり理解した巫女と魔女を余所に永琳は一方通行に真剣な表情を見せた。

そして名を呼ばれた白い怪物は、その呼んだ相手の顔を向けた。

 

一方通行「あン?」

 

永琳「貴方の世界に自分の敵になる人は居た?」

 

 

一方通行「いなかったぜ。全員俺にとっては雑魚だったぞ?」

 

永琳「やっぱり、そう。そんな能力を持っていたら、そうだったでしょうね………………………」

 

魔理沙「ん?」

 

霊夢「どうしたの、永琳?」

 

永琳「…………なんでもないわ。気にしないで」

 

珍しく暗い表情を見せた永琳だった。

いや、それは同情の顔だったかもしれない。

その事が気になったが、魔理沙と霊夢は彼女をそっとしておこう、っと決めたのだった。

 

 

そして

その後、皆で静かにお茶を飲んだ。

だが、一方通行が

 

一方通行「なァ。永琳」

 

永琳「何?」

 

一方通行「此処にコーヒーはあるか?」

 

永琳「確かあった気がするけど………それがどうかしたの?」

 

一方通行「だったら、悪りィがコーヒーをくれ」

 

そんは事を言ったらだった。

自分の持っていたコップを永琳に差し出す。

すると、優しい彼女はそのコップを受け取り彼が望んでいるコーヒーを淹れに行ったのだった。

 

そして数分が経過すると、

 

永琳「久しぶりに淹れたからもしかしたら不味いかもしれないけど…………、どうぞ」

 

ことっ、と置かれたコップの中には真っ黒な温かい液体が入っていた。

 

それを一方通行は一口、飲んだ。

 

そしたら

 

 

一方通行「………………………………………………うめェ」

 

疲労があるなか、食後に出してくれた久し振りに飲んだコーヒーはとても美味しかった。

だから、か。心の中で呟いたと彼は思っているが、まさかのガッツリ声に出していた。

 

その後、永琳は自分の出したコーヒーを褒められた嬉しさに微笑んでいた。

 

が、だ。

 

永琳「とにかく。一方通行は絶対安静ね」

 

霊夢「確かに」

 

魔理沙「ああ。一方通行、お前はゆっくり休んでいてくれ」

 

なんだか悔しい気分だが仕方がない。

今、この中で一番弱っているのは自分だ。

 

だから何の反論もなく、

一方通行「……あァ、分かった。だが、俺のTシャツは何処だァ?」

 

今、彼は上半身に包帯をぐるぐる巻いて、グレーのズボンをはいてるだけの状態だった。

 

永琳「今、鈴仙(れいせん)に縫って貰ってるわよ」

 

一方通行「あン?なンで縫ってンだ?」

 

永琳「背中がぱっくり空いた服を着たいたら渡すけど?」

 

一方通行「………………続けて縫っといてくれ」

 

するとだった。

急に霊夢が面白い事を思い出したのか、ニヤニヤ悪そうに笑いながら、一方通行の肩をちょんちょんと軽く指で触れる

 

霊夢「ねえねえ、聞いて」

 

一方通行「あン?」

 

霊夢「アンタが寝てる時、魔理沙がね______________」

 

魔理沙「ッ!?」

 

自分の事を話していると気付いた魔理沙はビクリと分りやすく話に反応する。

しかし、だ。

霊夢は続けた、

 

 

霊夢「_________『このまま一方通行が起きなかったらどうしよう……………』って泣きながら言ってたの知ってた?」

 

一方通行「知ら______________」

 

一方通行が口を開いて直ぐだった。

顔を真っ赤にした魔理沙が慌てて、

 

魔理沙「ちっ、違うッ!!私はそんなこと言っていないぜっ!!」////

 

霊夢「嘘言っちゃてー。わんわん泣いてた癖にー」

 

魔理沙「泣いてはないぜ!!」////

 

霊夢「へー………そう。泣いては、ねーっ?」

 

魔理沙「~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!!」////

 

霊夢「っく、ハハハハハハハハハハハッッ!!!」

 

まんまと親友の罠に引っ掛かったと気付き、もう何も言えなくなった顔真っ赤な魔理沙が帽子を深く被って、その顔を隠す。

その姿を見て霊夢は随分楽しそうに笑っていた。

しかし、永琳に友達に意地悪するのを怒られた霊夢はその後、ちゃんと魔理沙に謝ったのだった。

 

まあまあ、それは良しとしてだ。

魔理沙は一番この話を聞かれたくなかった一方通行の方を見たが……………………

 

まさかの寝ていたのであった。

 

魔理沙「……ふう。寝てて助かったぜ………………」

 

霊夢「いやー。ごめんね、魔理沙」

 

魔理沙「もー、次は本気で怒るぞ!」

 

魔理沙は霊夢に結構強く怒っていたが、それより『一方通行を寝室へ運ばなくては』と、思った永琳は二人に

 

永琳「ちょっと仲良ししてる時に悪いけど、どっちか一方通行を運んでくれる?」

 

霊夢「しょうがない。私が運ぶわ」

 

魔理沙「じゃあ私はどうすれば良い?」

 

永琳「今日はもう皆寝なさい。お風呂に入った後に、ね」

 

魔理沙「やったー!風呂だ、風呂!」

 

もう今日は遅い。

それに、まだこの世界には突然暴走した者で溢れ返っている。

だからその者らを正気に戻すためには、まずは体力の回復が不可欠。

そのため、永琳と魔理沙はこの永遠亭の風呂場へ行き、霊夢は眠ってしまった一方通行を抱き抱え彼の今使用している部家へ運ぶ。

 

しかし、運んでいる最中、

 

霊夢(コイツ軽ッッ!!??)

 

自分より身長が大きい彼だが持ったらビックリ仰天。

もしかしたら自分より軽いと思ってしまうぐらい、一方通行の体重は軽かったのだ。

 

そして、一方通行を部屋に運んで布団に寝かせる。

 

霊夢「寝顔は素直なんだなぁ」

 

すやすや眠る彼を見てそう呟いた。

 

そして、

 

霊夢「………………………………誰も見てないわよね?」///

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢は一方通行の寝ている暖かい布団に入って、寝たのであった。

 




ポスター☆「どう!?」

一方通行「あン?」

ポスター☆「前、星になれって言われたからなって見たよ!!」

一方通行「冗談に決まってンだろ」

ポスター☆「マ、ジ、かッ!?」


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9話

前回はほのぼの回でしたね、でも今アクセラさんが怪我してるから今回も…………?

では、続きをどうぞ。













学園都市の頂点に立つ、真っ白な怪物は出来損ないクローンの少女を次々と殺害する。

その方法はある時は両手両足を引き千切ったり頭を踏み潰したり胴体を真っ二つに割ったり、と。

同じ顔のクローンを見るも無残な姿へと変えていく。

 

そして、

 

 

(『絶対』の力を手に入れてやるッ!!)

 

 

 

一方通行と呼ばれる怪物はその後も殺しという罪を重ね続けるのだろう。

 

だが、今はその実験も出来ない…………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行は目を覚ます。

今日は最低な気分で朝が始まった。

 

ここ最近、『妹達(シスターズ)』を殺してる自分の夢を見る。

それは、あの実験を忘れるなとでも言いたいのだろうか………………………

 

 

一方通行(俺は、この異変が解決したら何をしたら良いンだろうなァ……………………)

 

 

この異変が解決しても学園都市に帰れば、またあのような実験の日々に戻るだろうか。

いや、しかし。

今はとにかく今はこの異変を解決する事から考えた。

でもその前に解決しなくてはいけない事が一つ。

それは………………………

 

霊夢「………………」

 

一方通行「…………あァ?」

 

自分の布団に霊夢が一緒に寝ていたのだ。

とにかく、誤解を招く前に一方通行は彼女を起こすことにした。

 

一方通行「オイ、起きろ。何でここで寝てンだよ?」

 

霊夢「…………………………ん。あ、もう朝……?」

 

一方通行「朝か分からねェがとにかく起きろ。このままじゃ誤解されるぞ」

 

霊夢「…………あッ!!起きるわっ!」///

 

霊夢は慌てて彼の居る布団から出る。

そして、少し距離を取った場所に座る。

 

霊夢の頬が赤く染まっていた気がしたが。まぁ、それは気のせいだろう。

 

 

一方通行「なンで俺が寝てる布団で一緒に寝てンだよオマエ?」

 

霊夢「えっと……………それは、その………」///

 

頬を赤らめて、胸の前で指先と指先をちょんちょんと付けたり離してたりとしていたが、全然訳を話さないから一方通行は訳を聞くのを諦めた。

 

一方通行「まァ、良い。ともかく俺も起きるか…………」

 

そう言うとだ。

一方通行は布団から出る。

そして、今が朝だと分かった二人は一緒に前食事した場所に向かって行く。

その最中に、廊下で永琳と出会った。

 

永琳「二人ともおはよう。良く眠れた?特に霊夢は?」

 

霊夢「…………………ぅぅ、」///

 

一方通行「まァ、少しな」

 

どうやら二人が一緒に寝ている事は永琳にバレていたらしい。

しかし、一方通行は特に気にせず会話をしていたが隣の霊夢は顔を赤くしてうつ向く。

そして永琳はそのままニコニコ笑いながら食事部屋へ向かい、その後、二人も彼女の後ろを付いて行った。

 

部屋に到着するともう全員集まっていた。

勿論、朝食も机の上に用意されていたから、皆が集まったので朝食の時間が始まる。

 

もぐもぐ、と。

未だに食料はそこまで良いものが調達出来ていないので、皆で握り飯を食べていた。

しかし、中には昆布や梅干しなど入っていて、ただの塩むすびからは大分変化していた。

 

そして、だ。

今、一番頼りになる永琳が一つの握り飯を食べ終えると、

 

永琳「ともかく。暴走している者を正気に戻さなきゃね………………」

 

霊夢「あのね、そう簡単に言うけど結構大変なのよ?あいつら倒すのって」

 

魔理沙「でも、アイツらを倒せるのはこの幻想郷で私達しかいないんだぜ?」

 

一方通行「オイ。紅魔館の奴らはどォした?」

 

白と黒の魔女がの言葉を聞いて、一方通行はある者達を思い出す。

それは、最近戦って正気に戻した紅魔館の少女達だ。

そして一方通行の質問に永琳は、

 

永琳「紅魔館の子達は自分の屋敷に帰ったわよ?」

 

霊夢「えぇっ!?もう帰っちゃったの?私達がやってることを手伝って貰おうと思ったのに…………」

 

永琳「それなら大丈夫よ。どうやら妖怪達はあの子達が解決してくれるらしいわ」

 

魔理沙「そうなのか!?それなら少しは楽になったな」

 

霊夢「確かにそうね。アイツらの力なら暴走してる妖怪達だって難なく倒せるわ。はー、良かったー。人間より妖怪の方が厄介だしそっちをレミリア達が担当してくれるのなら私達は相当楽になったわ」

 

一方通行「…………つまり。俺達は人間の方をやりゃあ良いンだな?」

 

永琳「そう言う事。つまり暴走してる人間、いや、『暴走者(ぼうそうしゃ)』を早く正気に戻してって事」

 

霊夢「暴走者、ね。正直すごく面倒だけどやるかー……………」

 

魔理沙「なあ、霊夢。どっちが多く倒せるか勝負するか?」

 

霊夢「嫌よ、面倒くさい」

 

そして、だ。

朝食も無事終わり霊夢と魔理沙はまだ暴走している人を正気に戻すため里へ向かって行った。

 

……………残った一方通行と永琳は、

 

永琳「一方通行。貴方は三日間位は絶対安静ね。まだ能力使えないんだから」

 

一方通行「あァ…………」

 

現在、一方通行は能力を使えない。

 

しかし、霊夢は能力が使えるようになっていた。

どうやら寝不足で力を使えなかったらしい。

だがこの永遠亭で十分休めたため、能力が使用出来るで回復した。

まぁ、あんな状態で寝れる訳が無いから当たり前だ。

 

 

そしてなぜ、一方通行が能力が使えなくなったかというと、それはどうやら頭の使い過ぎらしい。

彼は演算して能力を使うのだが、今までの戦闘で相当頭に負荷がかかったらしく、今は全然能力が使えないのだ。

 

一方通行「………………また寝るか。しかし、いつ俺の服は縫い終わンだァ?」

 

食事部屋から出て、一方通行は廊下を歩きながらそんな事を呟いていたらだった。

今、自分が借りている部屋に到着したと思ったらその部屋の前にうさみみが頭に付いてるのか生えているのか分からないが、ウサミミに制服とツッコミ所が多い少女が立っていた。

 

???「…………貴方が、一方通行……?」

 

一方通行「あァ、そォだが。オマエ誰だ?」

 

鈴仙「私?私は鈴仙(れいせん)優曇因院(うどんげいん)・イナバ」

 

一方通行「すげェ名前だな」

 

鈴仙「もしかして馬鹿にしてる?」

 

一方通行の言った言葉に、鈴仙は少し怒りの表情を見せた。

そんな彼女に、

 

一方通行「馬鹿にはしてねェよ。ただ率直にそう思っただけだ」

 

鈴仙「そう、なら良いけど。あ、はいこれ。貴方のでしょ?」

 

そう言って渡して来たのは一方通行のTシャツだった。

すると、白い彼は軽く礼を言ってそのTシャツを受け取り、すぐに着る。

 

一方通行「………………オマエは何て呼べばイイ?」

 

鈴仙「好きに呼んで良いわよ」

 

一方通行「じゃあ鈴仙って呼ばせてもらうぜ」

 

鈴仙「そう。じゃあ私は貴方のこと一方通行って呼ぶわ」

 

そして、だ。

もう用が無いためこの場から去ろうとしたが鈴仙はあることを思い出し足を止める。

 

鈴仙「あ、そうだ。先生の薬は良く効くけど、無理はしないでね。傷が開くから」

 

一方通行「………チッ。ハイハイ、分かったから早く行け」

 

適当に、面倒臭そうにそんな返しをした枯れにウサミミの制服少女はその言葉通り、また背を向けたのだった。

 

 

鈴仙「何よあの態度。せっかく親切に忠告したのに…………っ!」

 

 

一方通行の態度にムカついたが鈴仙は自分の仕事に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そして。

 

時間が過ぎ、夜である。

現在、永遠亭ではまた仲良く皆で夜ご飯であった。

今回は前まで居なかった鈴仙も一緒だ。

 

霊夢・魔理沙「「はぁー……………………。疲れたー………………………………」」

 

深い、深い。とても深いため息を吐いたのは昼間、暴走した者達を次々と正気に戻して来た紅白の巫女と白と黒の魔女、霊夢と魔理沙だ。

 

どうやら、人間達はほぼ全員正気に戻して来たらしい。だからか二人とも、スゴく疲れている。

 

 

霊夢「ねえ、少しは外に出て手伝ってよ。特にそこの二人!!」

 

疲れているせいか、イライラした様子で霊夢は永琳と鈴仙を指差して言った。

すると、二人は

 

永琳「私は薬作るのに精一杯だから無理よ?」

 

鈴仙「私も無理かなー。先生のお手伝いしてるので…………」

 

魔理沙「諦めろ、霊夢」

 

霊夢「だって次は残った人間達と私達の知り合いよッ!?少しぐらい手伝ってくれても良いじゃない!!」

 

今日、共に頑張った魔理沙に永琳と鈴仙が自分達の手伝いを諦めるように言われてもだった。

 

今回は正直、準備運動。次回からが本番なのだ。

そう、特別な能力を有した者達が暴走しているのでその者達を正気に戻すため、明日は明日でどったんばったんと戦闘である。

 

 

永琳「異変の解決は貴方の役目でしょ。博麗の巫女さん?」

 

霊夢「…………………はぁ。分かった、自分達で何とかするわよ。ったく………」

 

永琳に痛いところを突かれ諦めたのか、それから霊夢は黙った。

そしてその後。皆で食事が終わると、それぞれの部屋へ向かった。

しかし、廊下で一方通行を鈴仙が呼び止めた。

 

鈴仙「待って、一方通行」

 

一方通行「あン?なンだよ?」

 

鈴仙「お風呂の場所分かる?」

 

一方通行「いや、知らねェな…………」

 

鈴仙「やっぱり。場所教えるから付いてきて」

 

そして、鈴仙は彼を風呂場へ案内した。

どうやら"今は"一方通行は女性の後に入るように、と時間で決められてるらしい。

前までの永遠亭なら利用している者は全員女性なのでそんな事をする必要は無いのだが、"今は"だ。

 

そのルールをちゃんと伝えた鈴仙は、

 

鈴仙「___________って、ことだから少し待ってて。そうそう、私達がお風呂に入ってる間絶対に覗かないでよ……?」

 

一方通行「チッ、誰が覗くかクソったれ。早く入って来いよ、場所は覚えた」

 

そう言うとだ。

一方通行は鈴仙に背を向け、今自分が借りている部屋へ帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

それから少し時は過ぎ、今日の疲れを風呂で癒している少女達。

 

 

永遠亭のお風呂は随分と和な作りであった。

しかし、広さは十分。四人五人で利用しても大丈夫だ。

 

 

霊夢「こうしてゆっくりお風呂に入るのは良いわねー」

 

魔理沙「はぁ~。疲れが取れるぜー…………」

 

永琳「そうねー…………」

 

 

霊夢、魔理沙、永琳はとても大きな浴槽に浸かっていた。

が、それから鈴仙も入って来た。

そして、外はまだまだ荒れているがそんな事を忘れてしまう程穏やかな時間を過ごす彼女達は、湯に浸かりながらお話をしていた。

 

だがその話題が一方通行になり、

 

 

 

鈴仙「あの一方通行って言う人間、何者なんですか?」

 

 

 

霊夢「それが分からないのよね。けど、なんか自分の世界であったのは間違いないわね」

 

魔理沙「そうか?私はそんな感じしないけどなー」

 

永琳「まあ、あんな強力な能力を持ってるんだから揉め事に巻き込まれても不思議じゃないわね」

 

鈴仙「一方通行、っていう人間。そんなに強い能力を持ってるんですか?」

 

永琳「そうね。この幻想郷では、反則レベルの力を持った能力者が多く存在しているけど、一方通行はその者達より遥かに越えているかもしれない能力を持っているわ」

 

鈴仙「そんな強いんですか?私にはただのもやしにしか見えませんが………………?」

 

霊夢「……ッ、ック!!ぷっ、もやし……………ッアハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!!!」

 

魔理沙「確かにもやしだな、あはははははははっっ!!」

 

永琳「多分、能力に頼って生きてたからあんな華奢な体になってしまったんじゃない?」

 

鈴仙「そうなんですか?」

 

霊夢と魔理沙は大爆笑していだが、永琳は一方通行があんな体になってしまった理由を予想をしてた。

 

まさか、自分の一言でこんな盛り上がるとは思って無かった鈴仙は少し黙ることにした。

 

永琳「そろそろ私達の時間は終わるし、出るわよ?」

 

その一言を聞いて少女達は浴槽から上がった。

そして、自分の服を着て更衣室から出る。

 

そして、皆それぞれ部屋へ帰って行ったが鈴仙は忘れ物をしてそれに気付き慌ててお風呂場の更衣室に戻る。

 

すると、そこには上半身裸の真っ白で華奢な彼の姿が……………

 

 

 

一方通行「オイ。今は俺の時間じゃねェのかよ……………」

 

鈴仙「そう、なんだけど。忘れ物があって…………その…………」///

 

鈴仙は真っ白な彼の半裸を見て顔を赤くしてたが、一方通行は何も動じずに突っ立っていた。

 

 

鈴仙(うそー………こんなに細くて白いとは思わかった!!) ///

 

下手したら自分より綺麗なお肌をしている彼に驚いていた。

しかし、そんな彼女を無視して鈴仙の忘れ物らしき物を見付け、一方通行はそれを渡した。

 

一方通行「チッ。ホラよ、これだろ?忘れモンは」

 

鈴仙「あぁ、ありがと______________って、なに勝手に触ってんのよッ!!」

 

一方通行が勝手に触った物とは鈴仙の下着だった。(上の)

 

 

一方通行「あン?なに怒ってンだァ?」

 

鈴仙「女性の下着を勝手に触るなんてデリカシー無さすぎ!!」

 

一方通行「そンなの知るか、早く出てけ」

 

一方通行は適当にあしらうが、鈴仙は怒っていた。

 

鈴仙「もうっ!!次勝手に触ったらぶっ飛ばすわ!!」

 

一方通行「だから早く出てけよ。風呂に入れねェだろが………」

 

鈴仙「フンッ!!」

 

鈴仙はやっと出て行った。

ようやく風呂に入れると思い下の服も脱いで風呂場へ向かった。

そして一方通行が体を洗っていると更衣室の方から声がした。

 

鈴仙「ねぇ、体洗える?」

 

一方通行「そンぐらい洗えるに決まってンだろ。バカにするな」

 

鈴仙「でも背中は慎重に洗わなきゃ、傷が開くわよ?」

 

鈴仙は一方通行の背中の大きな傷を見ていたため、心配していたのだ。

 

一方通行「じゃあどォすりゃ良いンだよ……」

 

鈴仙「ちょっと待っててね」

 

一方通行「………………あン?」

 

すると更衣室の扉が開いた、そして体にタオルを一枚だけ巻いた鈴仙が一方通行の居る風呂場に入ってきたのだった。

 

 

一方通行「何やってンだよ……・…………」

 

流石にそんな状況にあえば彼だって表情を変化させるのだ。

 

 

鈴仙「そんなジロジロ見ないでよ……………」///

 

呆れた視線を向ける彼に自分の体を布一枚巻かれているが腕や手を使って肌を隠す。

その時、鈴仙の顔には赤色が見えた。

 

 

一方通行「見てねェよ……………」

 

 

一方通行は椅子に座って鈴仙を見たがすぐ前を向いた。

そして、鈴仙は一方通行の後ろに座り背中を洗い始める。

 

 

一方通行「…………何で服まで脱ぐ必要があったンだよ」

 

鈴仙「誰だって服が濡れたら困るでしょ……?」

 

一方通行「はァ……。だからと言ってこンな事するか普通?」

 

鈴仙「貴方は怪我人だから大人しくしてれば良いの!!」///

 

とても恥ずかしいが、いま目の前に居る彼は自分達を助けてくれた恩人なので、彼女は何かお礼をしたかったのだ。

そう、だから、

 

 

鈴仙「皆を、助けてくれてありがとう」

 

一方通行「あァ?何だよ急に?」

 

鈴仙「貴方にお礼が言いたかったのよ………………」

 

一方通行「だからってこれはやり過ぎだろ」

 

鈴仙「ちっ…違う。これは怪我が心配したからやってだけで…………ッ!!」///

 

一方通行「心配、ねェ……?」

 

鈴仙「ん?どうしたの?」

 

一方通行「……………………何でもねェ、気にするな」

 

人に心配されるのは久し振りだった。

確かに学園都市では彼の周りに居る人間はほとんど頭のネジが吹っ飛んだイカれた科学者だらけだが、珍しく一方通行を怪物とも実験動物とも見ずに、ただ一人の哀れで可哀想な子供として優しく接してくれた大人は居た。

その事を彼は思い出していたのだ。

 

 

 

鈴仙「背中を流すからじっとして」

 

一方通行「さっきからじっとしてンだろうが…………」

 

ある程度背中を洗えたので体に付着した泡を流してもらった。

そして、後は自分でやると一方通行が言うと鈴仙は、

 

鈴仙「分かった。じゃあ私はまたお風呂に入ろうかな………」

 

一方通行「はァ?なに言ってンだよ……………」

 

鈴仙「だって所々泡が跳んだし、それにまた汗かいちゃったんだから良いじゃない」

 

一方通行「オマエ頭大丈夫かよ……………」

 

鈴仙「心配無用、大丈夫よ。あ、そうだ___________」

 

一方通行「あァ?」

 

鈴仙「__________絶対こっち向かないでよ」

 

一方通行「…………………………………………………………………………………」

 

今は彼の時間なのにそんな事を言われたが何も言い返さずに黙って体を洗った。

一応、一方通行は腰にタオルを巻いており、見えてはいけない部分は隠れているがそれでも鈴仙は緊張していた。

 

一方通行「オイ、あっち向け。風呂に入りてェ」

 

鈴仙「わっ……分かった………」///

 

無事に全身洗い終わった彼が浴槽に浸かる。

二人は背中を合わせる様に湯に浸かっている。

そして、それから数十分経つと鈴仙から風呂を上がり、二人とも別々の時間に着替えた。

 

もう鈴仙は自分に部屋に帰ったのだろうと思いながら更衣室から廊下に出たら扉の横にその鈴仙が立っていた。

 

 

鈴仙「あの、今回の事は黙っていてよ」///

 

一方通行「分かったからオマエは部屋に帰れよ。もう今日は遅いぜ」

 

鈴仙「………………うん。じゃあ、また明日」///

 

小さく手を降ってその場を去った。

 

 

自分の部屋へ帰ってる最中の鈴仙は……………

 

 

 

鈴仙(あーっ!!やっちゃったーっ!!どうしよう、明日顔まともに見れるかな………………………?)///

 

鈴仙は顔を赤くしながら歩いて行った。

 

 

一方通行は自分の部屋へ帰り布団でゆっくり寝た、少しでも早く傷を治すために…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「そろそろ私も動こうかしら。早く彼に会いたいしね♪」

 

 

そこはいったい何処なのだろうか分からないが、

 

誰かがそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






ポスター「今回長すぎ~!」

一方通行「自分で書いて何言ってンだ?」

ポスター「すみません」

一方通行「書きてェ事をまとめてから書けよな三下」

ポスター「三下はひどくねッ!?」

一方通行「事実だろ」

ポスター「うそ、だろ……………………」


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10話

そろそろシリアスにしたいなぁ~

続きをどうぞ。

























白い怪物こと、一方通行が能力を使えなくなってから二日目。

朝、もう恒例となった皆での朝食。

そしてその後、霊夢と魔理沙は暴走者を正気に戻すため、まだ暴走をし続けてる者を探しに行った。

勿論、一方通行は能力が使えないしまだ傷が治らないため今日も絶対安静。

 

 

 

一方通行「……………寝るか」

 

 

 

 

一方通行は今、自分が借りている部屋で寝ようとした時に、だ。

扉をノックして、ウサミミの制服少女が入ってきた。

 

鈴仙「傷薬持って来たよ」

 

一方通行「あァ、そうか」

 

鈴仙「あぁ、そうか。じゃないでしょ!背中見せて!」

 

そう言われると、一方通行はTシャツを脱いでうつ伏せて寝転がる。

そして、鈴仙は彼の背中に傷薬を塗っていた。

 

鈴仙「…………………そろそろ治りそうね」

 

一方通行「だったら良いがなァ」

 

鈴仙「先生の薬を信じて無いの?」

 

一方通行「あいつの薬は良く効くって事ぐらい理解してる」

 

塗り薬を塗っている最中にだ。

ウサミミに制服のような格好の彼女は頬を染めて、

 

 

鈴仙「…………ねえ、昨日の事なんだけど」///

 

一方通行「その事なら話してねェよ」

 

鈴仙「…………そう。なら良いけど」

 

流石に昨日の事は自分でもやり過ぎたと思っている。

だから、だ。

誰かにその事を知られると非常に不味い。

しかし一方通行は昨日の事を誰にも喋ってないと言ったので鈴仙は一安心する。

 

そして、傷薬も塗り終わり一方通行はTシャツを着る。

 

これでこの部屋に居る理由は無くなった。

 

だが、

 

鈴仙「その、一方通行。少し話さない…………?」

 

一方通行「あン?何を話すンだァ?」

 

鈴仙「そうねー。あ、一方通行の居た世界の事を話してよ」

 

一方通行「俺が話すのかよ……………」

 

相手が勝手に吹っ掛けて来たのにまさかの自分が話さなくてはいけないなんて。

でも、一方通行は怪我を負っていて、今日も外に出れない。

なので、今現在彼は非常に暇なのだ。

 

だから、断る理由はなかった。

 

 

一方通行「………俺が居た世界の話か。聞いてもつまンねェぞ?」

 

 

鈴仙「それは私が決めるから、早く早く」

 

 

彼女は興味津々だったのだ。

永琳が言うように強い能力者だったらどんな環境で過ごしてたのか…………と。

 

一方通行は舌打ちを打った後に口を開いた、

 

 

一方通行「俺が居た所は学園都市って言うクソったれの町だ」

 

鈴仙「………ん?一方通行は自分の居た世界は嫌いなの?」

 

一方通行「はっ、あンな所を好きでいるヤツは頭がおかしいぜ」

 

鈴仙「???」

 

随分と前に居た世界を意味嫌っていた。

その事に鈴仙は首を傾げる。

 

鈴仙「それはどういうこと?」

 

 

一方通行「学園都市には人体実験を繰り返すイカれた科学者がわンさか居る」

 

鈴仙「………………人体実験」

 

人体実験。

この言葉だけで分かった。

何故、一方通行がその『学園都市』という場所を嫌っているのかを。

そんな中で生きて来たんだ。彼は。

 

 

一方通行「だから簡単に首を突っ込むな、オマエらは光に当たって生きれりゃ良いンだよ」

 

そう言って寝てしまった。

どうやら一方通行はとんでもない闇を抱えてるらしい…………。

そしてその夜。

皆で食事をしてる途中に霊夢は今日の成果を話す。

 

霊夢「やっと人間全員直せたわー」

 

永琳「お疲れ様」

 

魔理沙「こんなに疲れたのは久し振りだぜ……」

 

人間全員は元に戻せたらしい。

後、残ってる妖怪と妖精

 

 

そして………………

 

 

一方通行「神だと?オイオイどンだけここはメルヘンなンだよ」

 

霊夢「ホントに居るわよ、神」

 

一方通行「マジかよ………」

 

まさか神が居るとは思わなかった。

明日から一方通行も外に出て戦える予定で霊夢と一緒に行動する事になった。

どうやら、魔理沙には助けたい奴がいっぱい居るらしく、別々で行動する事になった。

本当は一方通行は一人で行動すると最初に言ったのだが病み上がりなので一人では駄目と皆から反対された。

 

そして話はこの異変を起こした犯人に変わる。

 

魔理沙「なあ、誰がこんな事をしたと思う?」

 

霊夢「どうせ(ゆかり)でしょ」

 

魔理沙「オイオイ即答か。少しは考えようぜ?」

 

霊夢「どうせ皆の考えも一緒でしょ?」

 

魔理沙「ま、まあ……うーん、うん」

 

永琳「そうね…………」

 

鈴仙「はははっ………………」

 

黒幕は八雲紫(やくもゆかり)で決定らしい。

だが、その者を知らない一方通行は

 

一方通行「おい、紫とは誰だ?」

 

素直に質問した。

もしもソイツが黒幕ならば情報は少しでも欲しいのだ。

 

そして、彼の質問に霊夢は

 

霊夢「八雲紫。この幻想郷を創った一人と言われてる妖怪よ」

 

一方通行「あァ?世界を、作る………?」

 

魔理沙「こんなこと聞いただけじゃ信じられ無いと思うがお前は既に出会ってるだろ?この世界には運命を操るとかありとあらゆる物を破壊するとか、そういった常識では考えられない能力を有する者が数多く存在している」

 

確かに、だ。

この幻想郷には妖怪も神も妖精も存在している。

ならば、世界を創るとかそういった能力があっても不思議ではない。

 

 

一方通行「なンでそいつだと思うンだ?」

 

その質問を聞いてため息をついてから、霊夢はこう答えた。

 

霊夢「その八雲紫っていう妖怪以外、こんなバカみたいな真似をできる奴がいないからよ」

 

霊夢は『当たり前でしょ?』とでも言いたげな表情であった。

 

霊夢「ともかく紫も探す事にしましょ」

 

魔理沙「分かったぜ!」

 

永琳「薬はいっぱい作っとくから安心してね」

 

鈴仙「もちろん私はそのお手伝いですよね………?」

 

永琳「貴方にそれ以外の仕事があると思って?」

 

鈴仙「ははははは。はぁー……………」

 

皆やる事を決め、明日の為に準備をしてお風呂に入った後、寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の朝。

今日、霊夢に無理やり起こされて機嫌の悪い一方通行は林の中を歩いて居た。

 

一方通行「朝っぱらからうるせェよ、霊夢」

 

霊夢「全然起きないんだからしょうがないでしょ!!」

 

口喧嘩をしながら歩く二つの影。

片方は紅白の巫女の少女、霊夢。片方は白が特徴な中性的な顔が整った怪物、一方通行だ。

二人は林の中を進む最中に時々暴走者に会ったりしたが前みたいにガンガン襲っては来なかった。

 

一方通行「随分少ねェな暴走者」

 

霊夢「当たり前でしょ、頑張って戦い続けてたんだから」

 

一方通行は誰かに尾行されてる事に気づく。

 

一方通行(後方から気配が…………)

 

霊夢「どうしたの?」

 

一方通行の態度が急に変わり霊夢は隣に居る白い彼に声を掛けた。

すると、だった。

一方通行は突然急に別々に調査しようと提案して来たのだ。

それを霊夢は一度断る。

心配だったのだ。

確かに能力が使えるまで体も体力も回復した。

しかし、それでも病み上がり。

『ベクトル操作』という反則級の能力を有していても『もしかしたら…………』と考えていたのだ。

だが、断られても一方通行はもう一度全く同じの提案を霊夢にする。

 

 

そして、ため息が一つ。

それは霊夢のため息だった。

 

そして、霊夢はその提案に乗った。

 

 

 

 

 

 

博麗の巫女が一方通行の前から去って直ぐの話。

 

 

 

一方通行「…………出て来い」

 

???「あらあら、いつからバレてた?」

 

一方通行「ずっと前からだ」

 

一方通行の前にスキマができ、その中から金髪ロングの女性が出て来た。

 

一方通行「誰だオマエ」

 

???「どうせ知ってるんでしょ?」

 

一方通行は目の前の現れた怪しい雰囲気を漂わせる女性に敵意を向ける。

だが彼女は普通に話してきた。

 

一方通行「八雲紫か」

 

紫「正解。そうこの私が八雲紫。この異変をこの世界で一番知る存在よ」

 

一方通行「つまりオマエがやったって事か」

 

紫「いいえ私じゃなわ。貴方が知る『人間』がこの異変を起こしたのよ」

 

一方通行「俺が知る奴が……?」

 

この『幻想郷』は一方通行が居た世界からすると未知の世界。

異世界と言える所だ。

そうだから自分が知ってる人物が今現在この世界に起きてる地獄のような異変を起こしたと言われても誰がやったのか分からなかった。

 

 

一方通行「何故、俺達を付ける?」

 

紫「付けてないわ。貴方を見てたのよ」

 

一方通行「俺を見てただとォ?」

 

可笑しな答えが帰って来た。

尾行してたんじゃなくて見てたらしい。一方通行を。

 

紫「でも残念。今の貴方じゃ私を倒せないわ」

 

一方通行「じゃあ今やってみっかァ?」

 

上体を少し前に倒し両手を開き指の間接を鳴らす。

今からでもその容易く絶命させる両手が八雲紫を襲おうとしていた。

 

しかし、だった。

 

紫「貴方にはもっと強くなって貰わなきゃ困るのよ、私は」

 

一方通行「そりゃどォ言うことだ?」

 

紫「全く。腹が立つことに私にもあの黒い玉が体内にあるのよね」

 

一方通行「あン?だとすると何故オマエは暴走してねェンだ?」

 

紫「あんなので暴走する訳無いでしょ」

 

一方通行「八雲紫。教えろ、この異変とやらをやったのはどこの誰だ?」

 

紫「それは自分で考えなさい」

 

急に紫の後ろにスキマが開きその中にゆっくり紫は入っていった、が……………

 

去る瞬間。八雲紫という大妖怪は、

 

 

紫「また会いましょ。一方通行」

 

柔らかく笑ってたことに疑問を感じた。

だがそれよりも疑問に思ったのは、

 

一方通行「俺は一度もアイツに自分の名を名乗ってねェぞ?何故アイツは俺の名を知ってンだァ?」

 

その後、霊夢と合流して暴走者を次々と倒して行った。が、一方通行は八雲紫と出会った事は話さなかった。

 

 

そしてそれから日は経ち、幻想郷は少しずつ昔の様に戻って行った。

暴走者はまだ見付かって無いたくさん居る。

だがその者らを皆を正気に戻してこのクソったれな異変を解決する。

それが一方通行の今の目的になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある場所で、

 

紫「貴方の計画どうりにはさせない」

 

???「君に私が止められるかな?」

 

 

 

 




黒幕の正体を暴くのは誰だ

そして紫と話してる奴は誰なのか………

次回、この物語は一気に進み始める…




次回をお楽しみに( ´∀`)


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11話

さあ、始めよう。
世界を__________するために…………





???「そろそろ私も動くとするか…………」

 

見知らぬどこかで誰かがそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行が幻想郷に来てから一週間が経った。

暴走者の数は約一桁まで減り、この世界を立て直すためそれぞれ皆動いていた。

そして今、一方通行は永遠亭に居た。

 

一方通行「オイ、永琳。これで最後か?」

 

永琳「えぇ、そうよ。手伝ってくれてありがとね」

 

一方通行は永琳の手伝いをしていた。

彼は外来人のため、住む場所が無い。

永遠亭に住まわしてもらってる。

 

鈴仙「一方通行が手伝ってくれて本当に助かるよ」

 

鈴仙は永琳の手伝いを一人でしてたのでそれが二人になり、結構楽できてるらしい。

 

一方通行「…………………コーヒー飲ンでくる」

 

鈴仙「あ!そう言えば貴方の事、姫様が呼んでたよ?」

 

一方通行「あァ?輝夜(かぐや)が俺を呼ンでる?」

 

あれから少しして目覚めた輝夜はちょくちょく一方通行を呼ぶらしい。

何かあったのか知らないが、どうやら一方通行が永遠亭を歩き回ってる時に偶然、輝夜の部屋に入ってしまったのだとか。

 

 

一方通行「チッ、しょうがねェ。少し行ってくるか……………」

 

一方通行は心底面倒そうに、輝夜の部屋へ向かった。

そして、

 

 

一方通行「こっちは暇じゃねェンだよ輝夜」

 

輝夜「……………早く座って」

 

一方通行は輝夜の部屋にたどり着いた。

そこには当然輝夜の姿があった。

そして、ワガママ姫様は隣をポンポンと叩き座るように促す。

すると、一方通行は素直に座ったのだった。

 

一方通行「で、今日はなンの用だよ?」

 

輝夜「いつもと同じ理由に決まってるでしょ?」

 

一方通行「はァー…………。またかよ」

 

輝夜「今日こそ私が勝つっ!!」

 

そう言ってテレビゲームを始めた。

一方通行と輝夜はなにがあったというと、実は輝夜がテレビゲームをしていた時に彼はお姫様の部屋に入ってしまったのだ。

そして、一方通行が少しそのゲームをやりたいと言い対戦相手の居ない輝夜は了承したのだが………………

 

 

輝夜はボロ負けしたのであった。

そして、それから何度も一方通行を呼んではリベンジ戦を挑むが毎度毎度、輝夜の敗北で終わっている。

 

一方通行「また俺が勝つけどなァ……………」

 

二人は格闘ゲームをした、ゲームを初めて30分後。

 

勝負の結果は一方通行の連勝で終わった。

 

輝夜「何で、勝てないの………………」

 

一方通行「大技狙い過ぎだバカ」

 

輝夜「うー……………。もう一回ッ!!」

 

一方通行「疲れたから無理だ。また今度相手してやるから今日は諦めろ」

 

輝夜「じゃあもう少しここに居てくれる?」

 

一方通行「あン?なンでだよ…………?」

 

輝夜「もう少し一方通行と一緒に居たいから………………」///

 

輝夜は頬を赤く染めていた。

そんな彼女の姿を見た一方通行は一度立ち上がったが何も言わず座る。

 

一方通行(……………………少しぐらいなら別にいいか)

 

そして、自分のお願いを聞いてくれた一方通行に輝夜は、

 

輝夜「あの、本。一緒に見ない……?」

 

一方通行「あン?まさか、オマエ字ィ読めねェのか?」

 

輝夜「読めるに決まってるでしょ。良く一方通行が本を読んでるから一緒にどうかなって思っただけ」

 

一方通行はホントによく本を読んでいる。

その理由はこの世界をもっと良く知るためだ。

 

一方通行「別にイイぜェそンぐらい」

 

輝夜「やった。じゃあ、持って?」

 

輝夜は一方通行に本を渡し、ご満足そうな姫様は彼に寄りかかって本を見る。

本を渡された一方通行は、今自分が手に持っている本を気になり質問する。

 

一方通行「これはなンだ?」

 

輝夜「知らない」

 

一方通行「知らねェのかよ」

 

輝夜「だって適当に持って来たんだもん」

 

まあ、読んで見れば分かるだろう、言うことでその本を開く。

そして、読み進むとこの本の内容が分かった。

これはただの歴史の小説であった。

黙々と読み続ける一方通行だったが、輝夜は彼の隣で寝てしまった。

 

それに一方通行は気付いたが輝夜を起こさない様に小説を読み続ける。

 

そして小説の最後らへんで輝夜が目を覚ました。

 

輝夜「……………んっ。………………寝てた…………」

 

一方通行「あァ。ガッツリ寝てたな」

 

輝夜「本は、どのぐらい進んだ?」

 

一方通行「もォ終盤」

 

輝夜「そんなに寝てたんだ、私……………」

 

一方通行「チッ。そンなにつまンねェなら何で本を見るなンて言ったンだ?」

 

輝夜「そんなの私の自由でしょ」

 

そしてその後、一方通行は輝夜に本を返して部屋を去った。

一方、部屋の中では……………

 

輝夜(どうしよう、一方通行の前で寝ちゃった………………っ!!)///

 

両手を頬に手をあてて輝夜は恥ずかしそうにしていた。

そして、そんな事が自分の去った部家で起きているとは知らない一方通行はこの永遠亭の廊下を歩いていた。

 

すると、突如頭上に金属製のタライが落ちてきた。

しかし、そんなのは彼の『反射』で防げた。

 

 

一方通行「………………………てゐか」

 

すぐに犯人が分かった。

それは何故かと言うとそれはいつもイタズラする奴がこの永遠亭でさてゐしか居ないのだ。

そして、後方の影からこちらを見てるちいさな人影が一つ。

 

てゐ「チッ。失敗か」

 

少し悔しそうにそう言って逃げて行った可愛らしいウサミミの少女。

 

しかし、だ。

一方通行がのこのこ逃がす訳がなく能力を全力で使用して、てゐを追いかける。

 

一方通行「バカが。俺から逃げれる訳ねェだろ」

 

そして、それから永遠亭の中でてゐと一方通行の追いかけっこが始まった。

 

 

てゐ「今日こそ逃げきってみせるっ!!」

 

一方通行「今日"も"捕まえてやるっ!!」

 

てゐ「_____________________って、速っ!?」

 

一方通行から本気で逃げてる途中、

廊下を曲がった瞬間てゐは足を廊下で滑らして走るスピードが落ちた所で白い怪物に捕まった。

 

そして、捕まえたてゐの頭に連続チョップを落とす。

 

てゐ「痛ッ!?なにするの!?」

 

一方通行「壁の染みになンねェだけマシだろ」

 

てゐは頭を押さえながらしゃがんでいて、それを上から見下す様に一方通行。

そんな所に、鈴仙が来た。

 

鈴仙「また一方通行にイタズラしたの?てゐ…………」

 

てゐ「別にいいじゃん」

 

一方通行「よくねェよ」

 

それから鈴仙はてゐと一緒に何処かに行った。

 

そう、一方通行はここでは毎日がこんな感じであった。

だから、だ。もう慣れているのだ。

 

一方通行(………………コーヒーでも飲むか)

 

本来の目的を思いだし台所へ向かった。

そして、温かい目的のコーヒーを飲むと次は外へ出た。

迷いの竹林の抜け方はもう完璧に分かってるため問題は無い。

 

一方通行(八雲紫。アイツを探さなきゃこの異変を解決できねェ………………)

 

幻想郷で一番この異変に詳しいと言いやがった八雲紫。

そいつを捕まえて洗いざらい吐いて貰うしかこの異変を解決できないと一方通行は考えていた。

そして考えながら迷いの竹林を歩いていると、突如自分の背後から声が聞こえた。

 

「この世界はどうだね?」

 

一方通行「ッ!!」

 

気配も察せられないで一方通行の背後に立った者に彼は慌てて後ろを振り向いた。

そしたら、全身に緑色の服を着ていて髪は薄水色の足まで届いた長髪、そして手には身長と同じ位の長さの杖を持っていた地から足を浮かせた者が一方通行の瞳に映る。

 

???「ここに来てから随分強くなったな、一方通行」

 

一方通行「オマエは、誰だ」

 

アレイスター「私か?私はアレイスター。アレイスター=クロウリー。学園都市統括理事長だ」

 

一方通行「アレイスター……?なぜ、オマエがここに?」

 

白い怪物の彼が珍しく驚愕の表情を浮かべた。

まさか、学園都市統括理事長が幻想郷に来てるとは思ってもなかったのだ。

 

アレイスター「何故ここにだと?それは、私の計画を実行しに来ただけだが?」

 

一方通行「……ま、さか。オマエがやったってのか。アレを……ッ!!」

 

アレイスター「ああそうだ。それがなにか問題かね?」

 

なんの罪悪感も持たずに平然と答えた、学園都市統括理事長。

一方通行はそんな野郎に、強く殺意を抱いた。

 

そして、それからそのすました顔面に一撃お見舞いしてやろうとしたその刹那、

 

突然白が特徴的な彼の横にスキマが開かれ。その中から

 

紫「…………まさか、アレイスター、貴方自らお出ましになるとは思ってもなかったわ」

 

一方通行「………八雲紫。なぜ今になって姿を現す?」

 

紫「それは簡単。今、貴方の目の前に居るクソ野郎を倒しに来たからよ」

 

紫は一方通行の横に立って言った。

それを聞いたアレイスターは大妖怪に指を差す、

 

アレイスター「……………そうか。だが残念だな。今の君にはできないよ、忘れたのか?君の体の中にある物を………?」

 

紫「あんなので私を操れるも思ってるの?」

 

アレイスター「いや違う………、あの玉が体の中に一定の時間あり続けるとその者は"確実"に死ぬ」

 

一方通行「まさか…………まだ、オマエの中にあるのか?」

 

紫「……………えぇ。だけど、アレを取り出すのには時間がかかる」

 

あの黒い玉を取り出すには気絶させるしか無いが、まずは暴走状態にならなきゃ取り出せる事はできない。

それに誰よりも先に気付いた八雲紫であるが、それを自分でするには計算に計算をして、ある程度可能性が見付からなくては出来ない。

一か八かの賭けでやるのは追い詰められて、最後の最後方である。

 

 

一方通行「オマエの目的はなンだ、アレイスター…………」

 

紫「それは私が話す。学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリーの目的はただ一つ、この幻想郷を破壊する事。そうでしょ?」

 

アレイスター「ふんっ。少し違うな、私の目的はこの世界を破壊してから、次に全く新しい世界を創造すること。それが私の計画だ」

 

もう限界だった。

確かに学園都市は治安は悪いし、救いようの無いクズがゴロゴロ居る。

しかし、それだけではないのだ。

普通に良い人も居るし、表の方は治安が良い。

 

だが、一方通行は学園都市の裏。真っ黒な世界を嫌って程見てきた。

だから知っているのだ。学園都市に来た結果、悲劇に遭い悲痛な涙を流し、最後までこの世に希望はないのだと絶望してまだ先のある若い人間が次々と学園都市を理由に一生を終えているのだと。

 

 

…………………………限界だ。

これ以上、あの統括理事長(クズ)のせいで悲劇に遭うヤツを見たくない。

 

 

そして、そして、そして、だ。

 

怪物と呼ばれている彼は、

 

一方通行「このクソ野郎ォッ!!オマエはどこまで悲劇をバラ蒔けば気が済むンだァ!!オマエのその身勝手の理由で善人を絶望の底に叩き落としやがってッ!!今ここでオマエをブチ殺してやる!!」

 

限界だった一方通行は憤怒した。

学園都市に飽きたらずこの世界でも自分の様な実験をするつもりらしい。

 

しかし、

 

アレイスター「では、私は次の場所に行くとしよう……………」

 

彼の声がその耳に届いていないのだろうか。

そう言って表情一つ変えずアレイスターは一瞬にして姿を消した。

 

一方通行は絶対にヤツを殺すことを決めているため後を追おうと思った。

 

 

だが、

 

 

 

紫「待って一方通行!!」

 

一方通行「どけェ紫ッ!!あのクソ野郎ォ必ずぶっ殺してやるッ!!!」

 

紫「貴方一人の力じゃ勝てない。そんぐらい分かるでしょ!!」

 

大妖怪・八雲紫の言葉を聞き一度動きを止めた。

そして少し冷静になると、一方通行は自分の腕が彼女に掴まれていたことに気付いた。

 

 

紫「……………まずは私からあの黒い玉を取り除いて」

 

一方通行「……………別に構わねェが。それを何故俺に言う?」

 

紫「貴方しか、頼めないのよ」

 

一方通行「チッ………、怪我しても知らねェからな」

 

紫「できるだけお手柔らかに」

 

 

そう言って穏やかに笑って掴んでいた手を紫は離す。そしてその後、彼女は一言も喋らなくなった。

 

 

 

それは………、暴走状態になったことを示す。

 

 

 

 

 

 

一方通行「……………さァて。早く終わらせるか」

 

 

完全に敵となった八雲紫に立ち向かうというのにズボンのポケットに両手を突っ込んでいた。

 

 

そして、大妖怪と白い怪物の戦いが始まる。





幻想郷をここまで酷い状態に追い込んだ黒幕は、学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリーだった…………………。



次回

一方通行はアレイスターの計画を止める事が出きるのか………?




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12話

一方通行は紫に勝つことができるのか?
無事にこの異変を解決できるのか?

さあ、幕は開かれた。
待ったは無しだ_______________


迷いの竹林が戦いの場所となった一方通行と紫。

 

一言も喋らなくなった彼女は躊躇なく、一方通行に攻撃を仕掛ける。

 

一方通行「______________ッく!!………反射が機能しねェだと……………?」

 

普通の拳を受けた一方通行。

そして、その攻撃を受け体制を崩した彼の隙を突いて紫は背後に不気味な空間の裂け目のようなものを開きその中に消えた。

すると、次は一方通行の後ろに不気味な空間の裂け目が開きその中から薄紫色の鋭いレーザーのような光線が飛んできた。

 

 

一方通行「ッ!!チッ、クソったれが…………ッ!!」

 

なんとか背後から攻撃を察知できて回避する。

しかし、そのレーザーが足を掠めた。

 

 

八雲紫の姿は全然確認出来ない。

が、宙に跳躍した瞬間。一方通行の周りの空間には無数の不気味な空間の裂け目が出来ていた。

そして、その空間の裂け目全てから薄紫色の鋭いレーザーが一方通行目掛けて一斉射出。

 

全て当たれば、

いいや、一つでもその鋭い光が体を貫けば相当なダメージとなる。

今、白い怪物は何故か『反射』が機能していない。

だからその場から能力を全力で使い、地面に向かって回避した。

しかし、だ。

その回避した先に突然不気味な空間の裂け目が出来、八雲紫が出現。

そして、腹部に大妖怪の回し蹴り直撃する。

 

一方通行「……………………っ……ご、がッ!?」

 

本当に突然の事で避けることが出来なかった一方通行はそのまま背後へ吹っ飛ぶ。

しかし、ベクトル操作を駆使してなんとか後方の竹に打つかることを避ける。

 

そして、大地を揺らす程の咆哮が一つ。

その出所は白い怪物からであった。

 

そしてその白い怪物は地面を思いっきり蹴って地面を揺らす。

すると、だ。

周りの竹が重力を無視して八雲紫に向かって飛んでいった。

が、しかし。その攻撃は彼女の能力で防がれる。

そう、一方通行が放った竹は不気味な空間の裂け目に飲み込まれたのだ。

 

でも、だ。その…………

ホントにほんの少しの空間に裂け目を開くその隙を見逃さず、一方通行は紫に向かって突進する。

 

 

一方通行「そのスキマを作るのに限度があるンじゃねェかァッ!?」

 

 

しかし、だ。

幻想郷に君臨する大妖怪・八雲紫を舐めてもらっては困る。

 

彼の突進をたった一つの空間の裂け目を開くだけで防いだのだ。

 

そして、その突然の勢いのまま空間の裂け目に飲み込まれた一方通行はとある場所に飛ばされた。

 

そこは、

 

 

一方通行「…………………………ここは、空か」

 

足を付ける場所が無い空。

このままだと重力に従って地面に激突してしまう。

 

だが、だ。

彼は大気の流れを操り背中に四つの竜巻を生成して自由に宙を移動可能にしたのだった。

そして、その後に紫も姿を現す。

 

 

一方通行「……………クソッ。なに呑気に座ってンだァァァァァァああああああああああああああッッ!!!」

 

 

戦闘の最中だというのに。

彼は学園都市で最強の超能力者だというのに、

 

一方通行に対峙する大妖怪は宙に開いた空間の裂け目をまるで公園のベンチのようにして座っていたのだ。

 

そのことが示すのは余裕である。

 

今まで、白い怪物に挑んだ者達は切羽詰まった表情していた。

しかし、八雲紫は暴走状態だとはいえ意識があるのかと考えてしまうほど一方通行を敵と見ていないような顔をしていた。

 

 

それが、彼の逆鱗に触れる。

 

 

スキマに座ってる紫に向かって一方通行は高速で砲弾の如く飛んでいった。

 

が、八雲紫はそのスキマにするりと入り違う場所に移動する。

 

 

一方通行「クソったれ!!面倒くせェなァッ!!」

 

近づいても逃げられるし遠距離の攻撃でも避けられる。

 

今まで一方通行が戦ってきた誰よりも紫は強い…………

 

 

だが、白い怪物は楽しそうに口角を引き上げていた。

 

 

 

一方通行「これは避けれるかァッ!?」

 

 

 

頭上へ手を伸ばし、空気を圧縮した。

すると高電離気体(プラズマ)を生成する。

 

そのプラズマの大きさは約直径20メートル。

そして、そして。

 

 

その頭上にある巨大な光を無数のレーザーのようにして八雲紫に向かって放つ。

 

だが、だ。

いくら光の同等の速度の攻撃だとしても、それをまともに食らう大妖怪じゃない。

 

ここら一体に空間の裂け目を開き次々とその中に入り移動することでその高電離気体を避けていく。

 

 

一方通行「オラオラどォしたどォしたァッ!?まだまだ終わりじゃねェぞォ!!」

 

もう一度空気を圧縮し先程と同サイズのプラズマを頭上に生成。

そしてまた、無数の鋭い光を放つ。

 

が、しかし………………

 

一方通行「あァ………………?紫はどこだ……?」

 

 

彼の視界に八雲紫の姿が無かったのだ。

 

そして、次の瞬間。一方通行は左肩に激痛を覚える。

それはなぜか?

その理由は大妖怪が一方通行の背後にこっそり小さな空間の裂け目を開き『弾幕』を放ったからである。

 

 

一方通行「ッ!………ァァァあああああああああッ!!」

 

左肩には見事なトンネルが出来ていた。

しかし、一方通行は後ろに振り反る時に大きく無事な右腕を振るうと同時に風のベクトルを操作して背後に攻撃的な暴風を吹かせる。

だが、そこには勿論八雲紫の姿はない。

 

 

一方通行の攻撃は一度も当たらず大妖怪・八雲紫の攻撃は何度も食らってるため現状、白い怪物の彼の方が劣勢であった。

 

一方通行(…………この状況が続けば俺は確実に負ける。だったら、速攻ォケリをつけるしかねェッ!!)

 

 

もう、八雲紫の行動パターンは大体把握できた。

だから大妖怪が次にどこへ移動するかある程度は予測できる。

 

一方通行はまた突然に前方に現れた紫に向かってベクトル操作によって作り出した風の砲弾を放つ。

そして、その攻撃を紫はスキマの中に入って躱した………………………

 

が。スキマから出た先には裂いたように笑う一方通行が居たのだった。

 

一方通行「この距離じゃ逃げれねェよなァッ!!」

 

そして、一方通行の固く握られた拳を避けようとしたが間に合わなかった紫はその拳が左腕に直撃する。

しかし、忘れてはいけない。

 

白い怪物の能力はベクトル操作。

力を制御し、我がものとする能力だ。

 

だから腕を殴った筈なのに八雲紫は勢い良く吹っ飛んで行った。

 

が…………………………

 

一方通行「…………………チッ。しぶとい野郎だ」

 

 

すぐ一方通行の前に紫が裂け目に座って姿を現す。

 

そして、大妖怪は自分の後方に無数の不気味な空間の裂け目を開いき、その裂け目から夥しい量の薄紫色と水色に輝く『弾幕』を放った。

 

 

一方通行「チッ!!」

 

 

強い舌打ちを打つと、

一方通行はその『弾幕』を華麗に躱わしながら宙を舞う。

が、回避していた時に自分の目の前に急に空間の裂け目が開き、

 

一方通行「___________________なにッ!?」

 

 

八雲紫が一方通行の前に現れた。

そして彼女の右ストレートが彼の顔面に突き刺さる。

一発、拳を当てると大妖怪はまたもや姿を消した。

 

一方、一方通行は体制を崩したがなんとか立て直す。

が、しかしその刹那であった。

 

彼に放たれていたその夥しい数の『弾幕』が全て一方通行に直撃した。

 

 

そして、空から

ドォォォォォォォンッッ!!!!

っと、爆音が響く。

 

しかし、その中から全く違う音が…………

 

いや、それは声だった。

 

 

 

 

一方通行「ォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!!!」

 

 

 

一方通行の咆哮が空間を震撼させる。

すると弾幕の爆発で発生した黒煙が一瞬で晴れる。

 

 

そして、

 

 

その中に真っ黒な、

 

噴射に近い真っ黒な翼を背中から伸ばす一方通行の姿があった。

 

 

そして、そしてそして。

 

 

一方通行「_______________コレで終わりだァァァァァァああああああああああッ!!!!」

 

 

 

噴射に近い黒い翼を大妖怪に向かって放つ。

紫はその攻撃をまたも空間の裂け目に飲み込ませ防ごうとしたがその黒い翼はそのスキマを貫き、粉々に粉砕する。

そして黒い翼が八雲紫の体に直撃し、暴走した彼女を気絶させる事を成功する。

 

 

気絶した八雲紫は地面に力無く重力に従って地面に落ちて行ったが、一方通行は地面に彼女が激突する前に横抱きし、そのまま地面に降りた。

 

一方通行「…………………………あの黒い翼はなンだったンだァ………?」

 

自分の背中に突然出現した黒い翼。

それは使った本人ですら知らない力だった。

 

だが今はあの黒い翼の正体はなんなのかと考えるよりも先にやるべき事がある。

 

それは、八雲紫の体から出て来た黒い玉の破壊である。

 

 

一方通行はそのゆらゆら出てきた黒い玉を握り潰した。

 

 

一方通行「……………チッ。早く起きろ」

 

彼女を地面に下ろし、体の中に流れてる電気を操り無理やり起こした。

 

紫「………………ッ!!痛いじゃない何するのッ!?」

 

一方通行「生体電気(せいたいでんき)を操った」

 

紫「もう少し優しく起こしてよ」

 

飛び起きた八雲紫。

まあ、イタズラアイテムとして売っているビリビリペンとは比べものになら無いほどの電気ショックを受けたのだから当然である。

 

 

一方通行「あァハイハイ。悪かった悪かったァ」

 

そんな適当に返した時だった。

 

アレイスター「君の進化はどこまでいくのかね、一方通行」

 

一方通行「アレイスター………」

 

紫「あら?用は済んだのアレイスター?」

 

突如二人の前に姿を現したのはこの異変を起こした張本人、学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリーだった。

 

 

アレイスター「ああ…………。後は君達の力を少し見たら私は学園都市に帰るとするよ」

 

一方通行「……………」

 

一方通行はただ黙って統括理事長を睨んでいた。

 

一心即発。

 

今のこの場の空気はそんな感じだった。

 

紫「…………怪我を負ってる私は足手纏いになるから下がっとくわね」

 

一方通行「あァ。オマエはアイツが何をしたのか探ってこい」

 

大妖怪の彼女は自分は下がるように伝えた。

 

そして一方通行の命を実行するため八雲紫は"スキマ"と呼ばれている空間の裂け目の中に消えて行った。

 

 

 

一方通行「後を追わなくてイイのかよ…………?」

 

アレイスター「私は君に興味があるからね。あんな女など私の視界に入っては無いさ」

 

一方通行「そォかよ_____________________」

 

パキパキ。

ボキボキ。

 

体のあちこちの関節を鳴らした後、まるで鉤爪のように両手を開く。

 

そして、

 

 

 

一方通行「____________________ブチ殺してやるよ。学園都市統括理事長さンよォッ!!」

 

アレイスター「…………さあ、来い一方通行(アクセラレータ)。私の最高傑作」

 

 

 

 

 

一方通行とアレイスター。

その二人が遂に幻想郷で激突する。

 

 

 

勝つのは最強の超能力者かそれとも学園都市統括理事長か………………?

 

 

だが、この戦いはただでは終わらない………。









次回。

一方通行対アレイスター


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13話

幻想郷で学園都市のバケモノが暴れ回る。

さて、勝利を手にするのどっちだ………?












「アレイスターァァァァァァァァッ!!」

 

強大な咆哮は大地を震撼させる。

その声の出元である真っ白な怪物、一方通行は幻想郷の、自分の敵に向かって突進した。

しかし。アレイスターは、

 

アレイスター「まだ君は私に触れる事すらできない」

 

学園都市統括理事長は手に持ってる捻れた大きな杖を一方通行に向けた。

すると白い怪物に鋭い風の刃が放たれた。

 

一方通行「そンなモン効くかァッ!!」

 

ただの風を鋭く放っただけだと思い一方通行はそのまま突っ込んだ。

しかし、その風の刃は白い彼の体を貫く。

 

一方通行「ッ………!!なにッ!?反射できねェ!?」

 

突進する勢いは殺されその場に止まる。

 

アレイスター「私の攻撃は君の能力、一方通行(アクセラレータ)で反射できないぞ」

 

一方通行「………まさか、魔法か」

 

アレイスター「……さあ?何だろうな?」

 

一方通行「チッ。クソったれが」

 

風の向きを操り、アレイスターに向かって風の砲弾を放つがそれは何食わぬ顔で防がれる。

 

アレイスター「…………肩は大丈夫か?」

 

学園都市の頂点に君臨する怪物との戦闘は一瞬の油断が命取りだというのにアレイスター=クロウリーはその彼の体を心配する。

 

一方通行「心配いらねェよ、こンなモン」

 

アレイスター「そうか。では、だったらこれはどうだ?」

 

一方通行を囲むように周りには竜巻が発生した。

 

それを白い怪物は腕を振り消してみせる。

しかし、視界が晴れた時にはアレイスターの姿は無かった。

 

一方通行「チッ。あの野郎どこ行った………ッ?」

 

アレイスター「___________上にいる」

 

一方通行「ッ!?」

 

一方通行が上を向いた瞬間に体が重くなった。

 

重力を操る力なのか知らないが、一方通行は未知のチカラに成す術がなく手と膝を付いて地面に打ち付けられた。

 

 

一方通行「体が……重めェ…………っ!!」

 

 

アレイスター「おや?背中がガラ空きだぞ?」

 

地に打ち付けられ身動きが取れない彼の背中に向かってアレイスターは上から風の刃を撃つ。

 

その風の刃はそのまま、一方通行の体を豆腐ように意図も簡単に貫くだろう____________が、しかし。

 

しかし、だ。

 

 

 

 

一方通行「クソったれがァァァァァァァあああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!」

 

 

 

一方通行は咆哮に答えるようにその背中から真っ黒な噴射に近い翼が出現する。

そしてその黒い翼は風の刃を防いでみせた。

 

アレイスターは一方通行の背中に突然現れた黒い翼を見るとニヤリと笑った。

 

アレイスター「そう、そうだ。私はその力を私は見たかった」

 

一方通行「ァァァァァァアレイスターァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!」

 

ゴッッッ!!!!!

と、重力の縛りを吹き飛ばす。

そして、背中から黒い翼を天へ伸ばす怪物は地面に立つ。

 

そして、その二本の黒い翼を一つに融合させてアレイスターに向かって高速で放つ。

アレイスターは自分に向かって飛んでくるその黒い翼に無数の風の刃を撃つ。

 

 

強大な破壊力のある黒い翼、

 

絶大な貫通力がある風の刃、

 

その二つが天地を震撼させる勢いで真っ正面から衝突した。

 

そして、そして。

 

バンッッ!!!!!!

と、その二つが弾け空気に塵となって消えていった。

 

 

 

 

アレイスター「ほう………………。これほどとはな」

 

その結果を見たアレイスターは少し意外そうな表情を浮かべていた。

対する一方通行は、

 

 

一方通行「ォォォォォォォォォおおおおおおおおおッ!!!!」

 

 

もう体の限界は来ている。

しかし、ここで倒れる訳にはいかない。

目の前に居る学園都市を支配する心の無いアレイスターの好きにさせる訳にはいかないから……………。

 

 

一方通行は最後の最後の力を引き出した。

 

正真正銘、文字通り最後の全力。

絶叫と共に背中にある噴射に近い黒い翼は約百メートル程に空へ広がる。

 

 

が、しかし…………………………

 

 

_______________バタン。

っと、一方通行は正面から地面に倒れてしまった。

 

 

 

 

一方通行「…………………クソ。……アレ、イ……スター…………………」

 

背中から黒い翼が消えてしまっても諦めず、ふらふらしながらも立ち上がったが、本当に体は限界なのだ。

だから、膝から倒れてしまう。

 

そんな彼を見る地に足を付けていない、病人のような格好の学園都市統括理事長は、

 

アレイスター「まだまだ弱いな。一方通行」

 

一方通行「チッ……黙れ………………」

 

次は近くにある木を使って立ち上がった。

もう、その時には最強として学園都市で君臨していた一方通行の姿はなかった。

 

惨めに負け、体はボロボロ……………。

まともに立つことすらできなかった。

 

 

 

アレイスター「君には何かを守る事はできない」

 

 

後にある木を使いながら立って、肩で呼吸する一方通行にアレイスターはそう言い放つ。

しかし、それを聞いた白い怪物は、

 

一方通行「あァ…………そンぐれェ分かってる」

 

アレイスター「君は何人も殺してる、そう数え切れないほどに。そんな君が何を守ると言うんだ?」

 

一方通行「_________だがなァ……………、この世界は関係ねェだろ」

 

一方通行は考えてた。

この世界はとても眩しい、自分のようなバケモンが居て良いのだろうかと、数え切れないほど人を傷付けてきた自分がこの世界を守っても良いのかと。

 

もしかしたら、俺はなにかを守りたいなンて考えちゃいけないかもしれない________________

 

 

___________だが、と。

 

 

一方通行はこの世界が破壊されるの光景をただ黙って傍観することは出来なかった。

そう、許せなかったのだ。

 

なんの罪もないのに、

何も悪いことをしてないのに、

 

この学園都市とは無関係な幻想郷が壊されるのは。

 

 

 

 

一方通行「____________たとえ、俺達がどンなに腐っていてもよォ、どうしよォもねェクズだとしても」

 

体に激痛が走る、舌にはドロリとした赤い液体が乗り気持ち悪い味がした。

だが、一方通行は止まらない、

 

一方通行「__________________この世界が壊されてイイって理由にはなンねェだろうがァッ!!!!!」

 

アレイスター「君はヒーローにはなれない」

 

 

 

もう、ここから能力や体の問題じゃない。

 

気持ちの問題だ。

 

 

心が折れた方が敗けである。

 

 

 

そして。

 

 

ボッ!!!!

と、爆発したかのような音と共に一方通行はもう一度、背中に黒い翼を出現させる。

その現象はもう奇跡と言ってもいい。

 

いや、これは彼の強い気持ちが生んだ得体の知らない力なのだろうか……?

 

 

そして、アレイスターに向かって最後の力を放つ。

 

しかし、アレイスターはその攻撃を避けて一方通行の居る場所にどんな仕組みか知らないが、破壊的な光の柱を落とした。

 

 

ゴォォォォォォンッッ!!!!!

大地は揺れ、この場一帯に砂煙が発生する。

 

そして、その光の柱が落とされた場所には大きな大きな深い穴が空いていた。

 

 

アレイスター「とても楽しかったよ………………」

 

 

もう、彼には動く力は残っていない。

あの黒い翼は攻撃にしか使えない。

 

一方通行「なに勝った気でいンだよ、アレイスター…………」

 

だが、だった。

完全に決着がついたと思ったが黒い翼を生やす怪物はあの光の柱を避けていた。

 

砂煙を振り払い、その場に君臨する一方通行に、

 

 

アレイスター「だが……これで終わりだ」

 

そして。

アレイスターは銀の大きな杖を翳す。

すると、この辺一帯に暴風が吹き荒れる。

 

そして、縦に伸びる細い一つの風の刃がアレイスターの前に出来ていた。

 

 

アレイスター「真っ二つにならないよう頑張ってくれ」

 

ニヤリと笑って指を鳴らす。

 

それは合図だった。

 

そう、"アレ"が動きだす。

 

動きだした"アレ"とは、巨大な風の刃である。

それは、

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンッッッ!!

と、目の前にある通るもの全てを真っ二つにしながら、一直線に一方通行に向かってく突き進む。

 

 

それを一方通行は目の前に黒い翼でバツ印を作り、その漆黒の盾で風の刃を受け止める。

 

 

一方通行「…………………チッ、クソッ!!」

 

アレイスター「今の君にこれは防げない」

 

 

ザザザザザザザザザザザザッ!!!!と、風の刃に後ろ後ろへ押される。

 

しかし。

 

一方通行「ォォォォォォォォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッ!!!!!!!!」

 

一方通行はその攻撃を黒い翼で防いでる最中に黒い翼に亀裂が入る。

 

___________ビキビキキギッ!!!!

 

___________バリバリバリッ!!!!

 

 

 

そして。

 

そして、そして。

 

黒い翼がガラスのように砕けた。

が、しかし。

 

それで終わりではない。

 

その砕けた漆黒の中から純白がこの世界に溢れる。

 

 

それは、何色にも染まってない白だった。

 

 

それは、純粋に真っ白な翼であった。

 

 

今自分に何が起きたとか理解出来ていない、無我夢中の一方通行の背中に真っ白な翼があり、頭上には天使の輪っかのようなものが出現していた。

 

そして、白く輝く光がこの場全体を包み込む。

 

一方通行「……………はァ……………はァ…………はァ……………ッ…………」

 

 

突如、彼の背中で黒から白に変化した翼は何とかアレイスターの攻撃を打ち消した。

 

アレイスターはその彼の変化を見てニヤッと笑っていた。

が、

 

アレイスター「……………ん。そろそろ時間だ、私はこの辺で失礼するよ」

 

そう言ってアレイスターは消えてしまった。

 

 

一方通行「…………………………………………………クソったれ」

 

 

逃げられてしまった。

多分、学園都市に帰ったのだろう。

一方通行はアレイスターの後を追う方法を知らないため、その一言しか絞り出せなかった。

 

そして、

 

 

紫「一方通行。アレイスターはどこ?」

 

一方通行「どっかに消えちまった……。クソったれ」

 

霊夢「それより酷い怪我じゃない大丈夫?」

 

 

彼の前に不気味なデザインのスキマが開かれた。

その中からは大妖怪・八雲紫と、紅白の巫女、博麗霊夢が現れた。

 

そして、霊夢はもう前に歩く事もできない一方通行に肩を貸してあげ、三人はゆっくりとこの林の中を歩いて行った。

 

その歩いてる途中、霊夢が口を開く。

 

霊夢「ねえ、一方通行。帰ったら宴会があるんだけど、アンタ来る?」

 

一方通行「俺、未成年だぜ。良いのかよ…………………」

 

霊夢「そんなの幻想郷には関係ないわよ」

 

紫「あら。私は誘ってくれないの?」

 

霊夢「どうせ勝手に来るでしょ、アンタは………」

 

紫「まぁねー♪」

 

霊夢「で、どう。来る……?」

 

一方通行「チッ。酒は飲まねェぞ…………」

 

霊夢「そう、良かったわ。アンタの事皆に紹介したかったし」

 

それを聞いた紫は霊夢の耳元で小さな声で、

 

紫「好きな人として?」

 

霊夢「うっさいッ!!」///

 

一方通行「……………?」

 

なにを話したのか分からない一方通行は小さく首を傾げる。

 

 

紫「さて………と。宴会は楽しみだけども、まずは一つ解決しなきゃいけない事があるの」

 

霊夢「ん?何?」

 

一方通行「早く言え」

 

紫「今、幻想郷に巨大な太陽が落ちて来てる」

 

霊夢「えっ!!嘘でしょっ!?」

 

紫「本当よ。これは多分魔術で擬似的に作られた太陽ね」

 

一方通行「チッ、あのクソ野郎。時間ってそォいうことかよ…………」

 

霊夢「心当たりあるの?一方通行」

 

一方通行「あァ」

 

紫「どうしましょうか?アレをどうにかしなくては宴会も糞もないわ」

 

 

その言葉を聞いて、だ。

一方通行は立ち止まり空を見る。

そして、

 

一方通行「_________________俺がやる」

 

霊夢「ッ!?こんなにボロボロなのに何言ってるのッ!!」

 

 

霊夢は無理でも一方通行を止めようした。

しかし、彼は紅白の巫女を紫の方に押す。

 

 

そして、もう限界で倒れてもおかしくない一方通行は白い翼を勢い良く背中から噴き出し、頭上には輪もできていた。

 

なぜ、このような現象が彼に起きたいるのだろうか。

 

『守りたい』っという強い想いの力だと言うのだろうか…………

 

 

 

重力を無視して空へ空へと宙に浮いていく一方通行は、

 

 

一方通行「オイ、霊夢。宴会はいつからだ……………」

 

霊夢「…………夜の八時ぐらいから始まる」

 

 

霊夢は一方通行の姿に見惚れていたが質問に答えた。

 

一方通行「……………………八時か。分かった。じゃあ行ってくる」

 

一方通行が翼を大きく広げ空へ飛ぼうとした瞬間、霊夢は一方通行の足を掴んだ。

 

霊夢「待ってッ!!」

 

一方通行「あン?反射解いて無かったら腕吹っ飛ンでたぞ?」

 

霊夢「ごめん…………でも」

 

紫「霊夢、止めなさい」

 

紫が霊夢の一方通行を掴む手を離した。

 

紫「貴方、人の覚悟を踏みにじるつもり………?」

 

霊夢「………………………分かった。でも約束して、必ず帰ってくるって」

 

 

一方通行「……………あァ。約束する」

 

 

ボワッ!!!!

白い翼を大きく羽ばたかせ一方通行は一瞬で幻想郷に向かって来てる太陽に到達した。

そして、

 

 

 

一方通行「はァァァァァああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!」

 

 

 

 

白い翼を持つ、白い怪物はその巨大な太陽と真っ正面から打つかった………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あァ………。これがなにかを守るための戦いなのか_______________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。

 

博麗神社では宴会をやっていた。

 

あれから頑張って博麗神社を直したらしい。

 

魔理沙「なに暗い顔してんだよ霊夢?」

 

霊夢「いや、アイツ遅いなって考えてただけよ…………」

 

赤い布を地面に敷いて、その上で杯でお酒を飲む紅白の巫女、博麗霊夢。

そんな彼女の隣に居るのは、白と黒の魔女、霧雨魔理沙。

 

 

あれから、この幻想郷には太陽は落ちて来なかった。

多分、一方通行があのボロボロの体にムチを打って、全力で防いでくれたのだろう。

 

 

魔理沙「少し遅れてるだけだよ。気にすんな」

 

霊夢「そうね………………」

 

周りには結構人が居た。

呼んでもないのに………

 

だが、この宴会場となった博麗神社に一つのスキマが開かれた。

 

そして、そこからは白い髪に白い肌そして赤い瞳の杖をつく『人間』がこの宴会場に登場する。

 

???「あァ?…もォ始まってンのかよ…………」

 

霊夢「________________一方通行ッ!!!!」

 

 

その者を彼女は知っている。

異変を解決するため、この幻想郷に自分が呼んだ存在。

 

最初は断られたが、それから体を張って異変解決を手伝ってくれた自分のヒーロー。

霊夢は一方通行の元に走りそのまま彼の前に止まることなく、抱きついた。

 

一方通行は杖をついてるので彼女を受け止めきれず後ろに倒れてしまう。

 

一方通行「………………………オイ。こっちは怪我人だぞ、クソったれ」

 

霊夢「良かった、生きてた………………ッ!」

 

一方通行「勝手に殺すな」

 

霊夢は涙目で一方通行に抱きついた彼女を、それを見た周りの皆は

 

「「「ヒューヒューっ!!」」」

 

その声を聞いた霊夢は慌てて一方通行から離れる。

 

霊夢「ちがっ…………これは…その………ッ」///

 

誤解だと霊夢は皆に説明をしに行っていた。

そして、なにがなんだか分からない一方通行はとりあえず舌打ちをする。

すると、彼に伸ばされる一本の腕が、

 

魔理沙「よっ!久しぶりだな一方通行」

 

一方通行「そンなに時間経ってねェよ」

 

一方通行は自分に伸ばされた魔理沙の腕を掴んで立ち上がった。

パンパン、とズボンについた砂を叩いて落としている彼に紹介したい少女が居る魔理沙は自分の隣に視線を向ける。

 

魔理沙「ほらっ、ご挨拶」

 

アリス「アリス・マーガトロイド。よろしく」

 

一方通行「あァ。俺は一方通行だ」

 

魔理沙の隣にいたのは、金髪に薄い青い瞳の持ち気品を感じさせる服を着用している少女であった。

その少女の周りには手作りか知らないが可愛らしいお人形が、まるで自らの意思を持っているかのように自由に舞っていた。

 

アリス「貴方の事はよく魔理沙から聞いてるわ」

 

一方通行「そォかよ」

 

魔理沙「良し、紹介も済んだし。じゃあな一方通行。私達はあっちら辺に居るから、なんかあったら来いよ!」

 

そう言って赤い布が敷かれた場所に行った。

そして、次は現代的なカメラをこっちに向けながら彼に話し掛けてきたのは黒髪のボブに赤い瞳を持ち、黒いフリルの付いたミニスカートと白いフォーマルな半袖シャツを着用していた少女であった。

 

???「あなたが一方通行さんですね?」

 

一方通行「あン?誰だ?」

 

文「私は射命丸文(しゃめいまるあや)です、よろしくです」

 

一方通行「あァそォ」

 

特に興味がないので、いくら可愛い女の子が相手だとしても白い最強様は背を向ける。

 

文「ちょっと待って下さい。実は取材をお願いしたいのですが……………」

 

すると、そこに説明を終えた霊夢が来た。

 

霊夢「あ、でたらめ書くから断わっときなさい」

 

文「あやや、そんな事ないですよーっ?」

 

一方通行「…………………面倒くせェ」

 

一方通行は文と霊夢の言い合いを無視して赤い布に座った。

適当に腰を下ろした一方通行の隣には、金髪に金色の瞳の狐のような金色の毛並みの尻尾が九つ生えた少女が居た。

 

???「はじめまして一方通行さん」

 

一方通行「あァ?」

 

藍「私は八雲藍(やくもらん)と申します」

 

一方通行「あン?八雲だと………?」

 

藍「あ、はい。私は紫様の式神なんです」

 

一方通行「式神ねェ。なァ」

 

藍「……なんでしょう?」

 

一方通行は藍に付いてる尻尾に指を差して、

 

一方通行「なァ、それは生えてンのか?」

 

藍「はい、そうですが。それがどうかしましたか?」

 

一方通行「触ってみてもイイか?」

 

藍「えっ!?か、構いませんが……………」

 

一方通行は普通に興味があった。

初めて聞いた、式神とはどんなものなのか。

飾りじゃない尻尾や耳には自分が知らないベクトルが存在しているのか、と。

 

一方通行「…………………………」

 

藍「……………あぁ…………あぅ……………ッ!」///

 

霊夢「……………ねぇ。アンタ、ナニやってんの?」

 

ジロリ、と。とても冷たい視線を向け一方通行の前に腕を組んで立っていたのは紅白の巫女であった。

 

一方通行「見て分かンだろ…………?」

 

霊夢「セクハラにしか見えないわよ」

 

一方通行「許可なら取った、嫌なら止めるが」

 

藍「嫌じゃ……ないです……ぅ……………っ」///

 

霊夢(こいつ……まさか……)

 

その瞬間、その刹那。

霊夢は一方通行に『何か』を感じたがそれを口にするのは止めた。

 

そして、藍の尻尾などになんのカラクリも分かった一方通行は手を離す。

思う存分撫でられまくった藍は頬が真っ赤に染まっていたが、それには全く気付かない最強。

 

 

そして、その最強の近くに薄い茶色のロングヘアーの小さな少女が来た。

だが、その少女は、やはり流石『幻想郷』っといった所だろうか。

普通の容姿ではなかったのだ。

その頭には彼女の身長には不釣り合いに、ねじれた長い角が生えていた。

 

???「あんた強いんだってー?」

 

一方通行「……あン?なンだよガキ」

 

???「ガキとは失礼だな。わたしゃこう見えて君の倍以上生きてるんだよー……………」

 

一方通行「あー、そォですかァ」

 

萃香「私は伊吹萃香(いぶきすいか)、よろしくねー」

 

一方通行「………………あァ」

 

萃香「その怪我が治ったら妖怪の山においで。そしたらそこで勝負しようねー」

 

 

 

それからもいろんな奴らが挨拶をしてきた。

そして、霊夢が両手を広げて一方通行に言った。

 

霊夢「一方通行、アンタを私達は歓迎するわ。ようこそ、幻想郷へッ!!!」

 

 

これからも一方通行はこの幻想郷で生きて行く、ここにいる仲間達と一緒に。




おまけ☆

魔理沙「コーヒーばっか飲んで無いで酒も飲めよー」

一方通行「ふざけンなこの酔っぱらい……ッ!!」

魔理沙「おりゃっ!!」

一方通行「ぐぶほぉわァ!?」

魔理沙「うわっ!?酒を飲んだらすぐに倒れてちゃったぜ!?」

霊夢「うーわ、よっっっっっわ」

紫「怪我人に何やってんのよ、貴方達………………」


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第二章 幻想郷を大冒険
1話


タグが一つ増えました。まぁ、そう言う事です。

第二章は結構長いと思います。
それでは幻想郷を一方通行に第二章スタート!!








あの戦いから数日経った。

 

白い怪物こと、一方通行は学園都市の統括理事長・アレイスターの手により創られ幻想郷に放たれた擬似太陽と衝突して幻想郷が完全消滅するのを防いだ。

だが。自分が宇宙から幻想郷に落ちるスピードはとても速くて、着地する瞬間少しベクトル操作をミスをしてしまい左足を粉砕骨折をしてしまった。

でも、その怪我はもう治った。

 

 

そんな幻想郷のヒーロー、一方通行はまだ永遠亭に居た。

 

 

一方通行「あァ……、眠みィ……」

 

 

幻想郷を救った彼は現在、永遠亭の風呂に浸かっていた。

永遠亭に泊まらせもらってる身ではあるが一方通行は朝起きてからお風呂に入るを日課にしていた。

 

一方通行「…………そろそろ出るかァ」

 

 

もう十分体は癒されたので風呂から上がる。

そう、一方通行は体の汚れを落とすというより体を癒すという目的で毎朝お風呂に入っていたのだ。

 

 

そして。

脱衣場に移動し濡れた体をタオルで拭いて服を着ようとしたら、どこかで見た事がある"スキマ"を発見した。

 

一方通行「……………。なにしてンだよ紫」

 

 

紫「あららっ、バレちゃった☆」

 

 

不気味なデザインなのに両端には可愛らしいリボンが飾られたスキマから顔を出した大妖怪・八雲紫は手を伸ばして一方通行の服を掴んでいた。

 

一方通行「でェ?俺の服をどォするつもりだァ?」

 

紫「貴方に新しい服を持ってきたから古い服と交換するのよ」

 

一方通行「大妖怪サマの御好意には感謝するが、この世界の服はあンまり好きじゃねェ。だからさっさとその手を離してここから去りやがれ」

 

紫「安心して。貴方の好きなブランドの服よ」

 

そう言って八雲紫はスキマから全身を出して素っ裸の白い怪物が居る部屋に足を付ける。

そして。掴んでいた一方通行の古い服をスキマの中に適当に投げ入れ、次に紫は本当は隠れて渡す予定だった服を手渡しする。

が。それは白とグレーの網柄の長袖Tシャツとグレーの長ズボンだった。

 

それに見覚えがありまくった一方通行は、、、

 

 

一方通行「おいこれ………、俺の服じゃねェか?」

 

紫「そうよ」

 

渡された服。

それは自分の家のタンスに眠っていた秋服であった。

それを八雲紫は学園都市から勝手に持ってきたのだ。

 

 

紫「さて、じゃあ用も済んだし私帰るわね一方通行」

 

 

そして。

大妖怪はスキマの中に消えていく。

 

しかし。

 

 

一方通行「おい待て」

 

紫「あら大胆♪」

 

彼女の腕を掴みこの場から去る事を許さなかった。

その時の一方通行の瞳は鋭く真面目な表情であった。

 

一方通行「茶化すンじゃねェ」

 

紫「何を?」

 

一方通行「俺はオマエに聞きてェことがある。オマエだろ、あの時俺の夢に入って来た奴は」

 

妹達(シスターズ)』と呼ばれる殺される為だけに大量に造られた哀れな少女達。

その少女達を殺害するあの『実験』から異世界に飛ばされ、結果的に実験から離れる形となった一方通行は良くクローンの少女を殺す夢を見るようになった。

 

しかし。その夢に異変が起きた。

それは見知らぬ声の乱入である。

所詮は夢。

だが気にならない訳では無かった。

 

そして一方通行は八雲紫と初めて出会った時、衝撃を受けたのだ。

 

あの夢に突然現れた声と同じ声だったのだ。大妖怪・八雲紫の声が。

それをただの偶然とは考えなかった。

彼女は一つの世界すら創ったと言われている妖怪。

そんなヤツが他者の夢に入れても不思議では無い。

 

そして、八雲紫はいつも通り怪しく微笑んだ後に………、

 

紫「正解よ。貴方の夢の中に入ったのは私。だけどそれがどうしたって言うの?」

 

一方通行「答えろ八雲紫。オマエは俺の事をどこまで知っている?」

 

紫「どこまで知ってる?……ね。そうねぇ……、全て。そう、貴方の全てを私は知っているわ」

 

一方通行「あン?全てだと?」

 

紫「ええ。全てよ」

 

ここまで来ると不気味と思えてきた。

そして眉をひそめた一方通行に、だ。

 

紫「ああ、そうだ。これは後で教えてあげようと考えていたけど夢の声の正体に気付いた貴方に良いこと教えてあげるわ。一方通行、貴方はこの幻想郷から出られないわ」

 

一方通行「出られねェ、だと……?」

 

紫「貴方にかけられた『願い』という呪いのせいでね。貴方が幻想郷に無理矢理引きずり込まれたあの時霊夢が無意識にかけてしまった呪い。それはこの幻想郷を救いたいという強い気持ちによって生まれてしまった。そしてこの呪いにかかってしまった者は幻想郷に一生縛りつけられる。幻想郷を守る盾として、幻想郷の敵となる者を穿つ矛として……ね。でも、貴方の反射が上手く効いて幻想郷から出れないぐらいにしかならなかったみたい。本当なら人格すら変化するんだけど」

 

一方通行「……その呪いと俺を幻想郷に呼ンだ時に使った魔法とは関係ねェのか?」

 

紫「ないわ。あれにそんな特別な力なんてないもの」

 

一方通行「あァ?なぜそォ言い切れる?」

 

紫「だってあの魔法は私が作成したものだからね。貴方をこの幻想郷に連れてくるため"だけ"に」

 

一方通行「俺を呼ぶため?」

 

紫「そうよ。昔貴方に出会った時に考えたの。幻想郷にこの子が来たらもっともっとこの世界は楽しくなるなって」

 

一方通行「………昔に会っただと?俺と、オマエがか?」

 

紫「忘れてるのも無理無いわ。私と出会ったのは貴方が小さい頃だから」

 

一方通行は黙って昔の記憶を掘り返す。

だかしかしそれらしい記憶は思い出せなかった。

 

紫「ねえ、一方通行。お願い、霊夢の事を恨まないで。別にその呪いは悪意の中から生まれたものじゃない、さっきも説明したけど強い思いによって偶然生まれてしまったものだから」

 

一方通行「恨まねェよ、そンな小せェ事で」

 

紫「良かった。じゃあ後もう一つ、紫お姉さんが教えてあげるわ♪」

 

一方通行「まだあンのかよ」

 

もう一方通行はげんなりしていた。

彼は別に話を良くする方ではない。

 

確かに学園都市に居た時よりは色んな人達と話をするようになった。

だが。

だが、だ。

まだ長く話をするのには慣れていないのだ。

っと言うよりは面倒臭くなったと言えば正解だろう。

 

そして一方通行はげんなりしていると理解しているが、八雲紫は口を開く。

 

しかしそれは衝撃的な言葉であった。

 

 

紫「貴方はもう人間じゃない」

 

一方通行「はっ、そンなことかよ。言われなくても昔っから知ってるっつゥの」

 

何を今更……。

そんな言葉が頭に浮かんだ。

一方通行は自分で自分が人間ではないと誰よりも理解している。

多くの人間から『バケモノ』と罵られ、怯えられ

挙げ句の果てに…………、

 

彼の周りに誰一人も近付かなくなった。

 

そんな状況になってでも自分は人間と言えるだろうか。

いいや、言えない。

言えるヤツが居るすればとびっきりのバカか現実を受け入れられないヤツだ。

 

だが一方通行は違う。

受け入れた。

手に入れた能力で自分は恐怖の象徴。

誰よりも圧倒的に強い『怪物』として学園都市に君臨したのだ。

 

だが。紫は言う、

 

紫「一方通行の考えてる事と違うわよ、私が言いたいのは」

 

そして紫は一方通行に指を差して、

紫「一方通行。貴方は神様になっちゃったの」

 

一方通行「………………………は?」

 

紫「詳しく言えば神を越えた存在ね」

 

とても信じられ無かった。

まさか自分が神になってしまったという事を。

 

バカにしたように笑いながら言われたら当然信じる訳がない。

しかし、背後に開いた多くの目玉が覗き込む不気味なスキマをベンチのように座りながら話してる大妖怪はそんな嘘を吐いても何もメリットがないと思い一方通行はその事を一応覚えとく事にした。

だが完全に信じた訳ではない。

 

紫「それじゃあ私は帰るわよ。こんなんだけど結構暇してる訳じゃないし」

 

一方通行「あっそォ。オマエのことなンてどうでも良い。早く俺の前から消えろ」

 

紫「あらあら冷たいわね。まあ、良いわ。昔の事を思い出したら話してあげる、貴方の知りたい事を全てを。後、学園都市からこっちに持ってきたい物があったら遠慮なく私に言ってね」

 

一方通行「分かったから早く消えろ。何度も言わせてンじゃねェよ」

 

紫「では、ごきげんよう幻想郷のヒーローさん」

 

笑顔で小さく手を振り八雲紫でスキマの中に消えた。

そしてやっと邪魔なヤツが消え、一方通行は紫から渡された白とグレーの網柄の長袖Tシャツとグレーの長ズボンを着る。

 

一方通行「あ?これは携帯か」

 

ズボンのポケットの中に何かあると思い手を突っ込むと 携帯と財布が入っていた。

だが、こんな所では財布は使いどころはあると思うが携帯は使い道がないだろう。

そして、一方通行は永琳達の居る場所に向かって行った。

 

一方通行(いつまでもここに厄介になる訳にもいかねェよなァ。チッ、学園都市に帰れねェとなると面倒くせェが幻想郷(ここ)で暮らすしかねェ。どっか空いてる家を探すかァ……)

 

そんな事を考えながら永遠亭内の廊下を歩いていると鈴仙に会った。

 

鈴仙「あ、一方通行。キズの方は良くなった?」

 

一方通行「あァオマエ達のお陰で完治したぜ」

 

鈴仙「そう、それは良かった」

 

心底嬉しそうに笑みを浮かべるウサミミ制服の少女。

その笑みの中には彼が完治したと言う喜びと傷が治ったのは自分達のお陰と言ってくれて嬉しいという二つの意味が込められていた。

 

一方通行「鈴仙、俺はここを出ていく。これ以上オマエ達に厄介になる訳にもいかねェからな」

鈴仙「えっ?貴方家無いでしょ?まさか野宿でもする気?もしもそう考えていたならまだここにいた方が良いと思うけど……?」

 

一方通行「家は探す。じゃあそォ言う事だ。今日まで世話になった、アイツらにはよろしく伝えといてくれ」

 

鈴仙「えっ、ちょっ、待って!!ちょっと待ちなさい!!見送りぐらいさせてよ!!」

 

一方通行が背を向けて歩いて行くと鈴仙は慌てて駆け寄り彼の腕を掴んだ。

 

一方通行「チッ。そンな事しなくてイイっつの」

 

鈴仙「絶対貴方を皆で見送るってもう決めたの。だから何て言おうと一方通行を見送るからね」

 

一方通行「…………………………分かった。分かったから腕離せ」

 

鈴仙の真剣で真っ直ぐな目を見て一方通行はため息を吐き諦めた。

そして、その後鈴仙が皆を呼んで来て玄関前でこの永遠亭から去る一方通行に、

 

輝夜「たまになら泊まりに来ていいわよ」

 

一方通行「あァ」

 

永琳「一方通行。人手が足りないときは手伝いに呼んでもいいかしら?」

 

一方通行「面倒くせェが長い間世話になった礼だ、手伝いが必要になったら呼ンでくれ」

鈴仙「そんな大怪我しないでよ。心配するから………」

 

一方通行「もォ怪我しねェと思うがまァ覚えとく」

 

てゐ「……………」

 

いつも明るくイタズラ好きなてゐは元気が無かった。

てゐ自身、自分でも分からないがとても悲しかったのだ。

下を向いて元気の無いてゐに頭部に一方通行は軽く手刀を落とす。

そしたらてゐはチョップされた頭を押さえながら怒って、

 

てゐ「痛ッ何すんのっ!!」

 

だが一方通行は次にてゐの頭に自分の手を乗せてたのだ。

そして、

 

一方通行「ハッ、調子出てきたじゃねェか。オマエに暗い顔は似合わねェ、そォやって明るい方が俺は似合うと思うぜ」

 

その言葉を聞いたてゐは、ボフッ!!っと沸騰したみたいに顔が赤くなり、下を向いてしゃがんでしまった。

 

てゐ「……………………」///

 

一方通行「あン?どォした腹でも痛ェのか?それとも珍しいアリでも居たか?」

 

てゐ「なんでもないよッ!!」///

 

 

ため息があった。

それはてゐの隣に居た者達から出たものだった。

 

『これ程分かりやすい反応を見ても気付けないのか………………………』

そんな言葉が胸の中にあったがその言葉は胸の中に留めておくことにした。

 

そしてその後一方通行は永遠亭から出て行きそ迷いの竹林の中を進む。

 

すると、、、

 

歩いてる最中に妹紅と会った。

一方通行は妹紅と話した事があり知り合いではある。

 

一方通行「____________案内はいらねェぞ」

 

妹紅「少し話があるから来ただけだよ」

 

一方通行「話とはなンだ?」

 

肩を並べて歩く不死身の少女にそう質問する。

 

妹紅「オマエに会って欲しい奴がいるんだけどさ。別に今からって訳じゃないよ?時間が空いた時とかで良いから会ってくれないか?」

 

一方通行「なンで俺にソイツを会わしたいンだよ?」

 

妹紅「一方通行って頭良いだろ?私の知り合いが先生をしてるから他の世界の知識教えてあげたくてさ」

 

一方通行「幻想郷にも学校はあるのか…………。まァ、オマエにも世話になったしな。暇になったら別にイイぜ」

 

妹紅「そうか良かったー。その………後一ついいかな?」

 

一方通行「あン?なンだよ?」

 

妹紅「たまにお前と会いたいんだけどその時は会ってくれるか…………?」///

 

一方通行「別に構わねェぞ」

 

妹紅「_____ッ!!!そ、そそそうか!!またいつか会おうな!!絶対だぞ!!約束だからなっ!!」

 

そして、、、

 

妹紅は笑いながら手を振って見送ってくれた。

一方通行は軽く返事をして迷いの竹林を抜けた後に空を飛んでとある場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一方通行の向かった場所は博麗神社。

そこに行って人間の里の事を霊夢に聞こうと思ったのだ

 

そして博麗神社の前に着地すると

 

一方通行「よォ、霊夢」

 

霊夢「もう掃除中にそらから来ないでよ!!あともう少しで終わる所だったのに散らかっちゃったじゃない!!」

 

霊夢が神社の周りを掃除中に一方通行が空から降りて来たためその風圧で折角箒で集めた葉っぱが散らかってしまったのだ。

 

一方通行「チッ、うるせェなァ……」

 

百パーセント自分のせいだが舌打ちを打つ。

そして、風のベクトルを操り一ヶ所に葉っぱを集めた。

 

それを見た霊夢は、

 

霊夢「すごっ…………じゃあ次は家の中頼める?」

 

一方通行「やるわけねェだろクソったれ。オマエに話しがあるから来ただけだ」

 

霊夢「残念。ま、良いわ。奇遇ね私も一方通行に話があるの」

 

一方通行「こっちから話すがイイかァ?」

 

霊夢「どうぞ」

 

一方通行「家を探してるンだが、人間の里には俺のような外来人でも住む場所あンのか?」

 

霊夢「あるわよ空いてればね」

 

一方通行「もし無かったらどこかに自分で家建てるしかねェな」

 

霊夢「ハイ、じゃあ次は私ね。アンタ宛に手紙が届いたから渡したかったの。これよ_________」

 

霊夢から手紙を渡された。

一方通行はすぐにその手紙を読んだ。

そして読み進めていると気になる事が書いてあった。

 

一方通行「あァ?紅魔館……?」

 

霊夢「え?紅魔館からなのそれ?」

 

一方通行の後ろから手紙を除きこんだ。

そしてそこに確かに書いてあったのだ、

 

_____________『紅魔館』と。

 

それを見た霊夢は一方通行に

 

霊夢「一方通行、あの場所に行くのは止めなさい」

 

一方通行「あン?どォしてだ?」

 

霊夢「あそこに居るヤツらは全員まともじゃない。いくらアンタが強くても傷一つ付かず生きて帰って来れないかも知れないわよ」

 

一方通行「…………だが、あそこにある本に少し興味があンだよなァ」

 

霊夢「はあ…………。一応止めたからね、後は自分の好きにしなさい」

 

霊夢は神社の中に入って行った。

一方通行は少し考えたがどうしても紅魔館にある本が気になっていたので、

 

一方通行「……………チッ。家探しは後にするとすっか」

 

 

そして。

ゴッ!!!!と大地を蹴って空高く跳躍した一方通行は次に背中に大気のベクトルを操作して風の翼を生成し、それを利用して紅魔館へ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 











ポスター「久し振りだなこのコーナー」

一方通行「今までシリアスだったからなァ」

ポスター「あーそうだ!!今回からゲスト来るよ!!」

一方通行「なにやってンだよ………」

ポスター「それでは早速ゲストのご紹介です!!ゲストはこの人!!!」

霊夢「博麗霊夢よ、よろしく」

一方通行「なンでここに来ちまったンだよ………」

霊夢「仕方ないじゃない呼ばれたんだから」

ポスター「では、次回からはこの三人でお送りしまーす☆」

一方通行「ここまで読ンでるヤツ居るわけねェからそンなこと言ったって無駄だからな」

ポスター「…………マジッすか」



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2話

書きたい事がいっぱいあって話全然進まねぇ……………

まあそれはさて置き、
ではでは、続きをどうぞー









怪しく聳え立つ紅の館へ通ずる一つの道に白い影があった。

ポケットに手を突っ込んで進む白い怪物こと一方通行。

彼の目的地は『紅魔館』。

気高い吸血鬼の少女が支配する館である。

 

そして、一方通行は紅魔館の門の前で足を止めた。

その場所に門番が居たのだが……………、

門番は器用に地面に尻を付けず門を背にして座って寝ていたのだった。

 

一方通行「コイツ、門番だよなァ……?」

 

???「……………………………」

 

いくら呼ばれたとは言え、だ。

無断で入るのはダメと一般的な常識を持つ一方通行は一応入って良いのか確認を取りたかったのだが、

すやすや寝ているようだし、門番を起こさないように横を通ろうとしたその時、

 

寝ていた女性が突如目を覚まし、一方通行の前に立った。

 

???「許可なくここは通せません!!」

 

一方通行「チッ。ここの奴に呼ばれたンだよ」

 

面倒そうな表情の一方通行はそう言って自分に送られた手紙を門番の女性に見せる。

その手紙を見た門番の女性は慌てて、

 

???「すいませんっ客人でしたか!!」

 

一方通行「そォ言う事だ。さっさと退きやがれ」

 

???「___________ですが、それは出来ません」

 

一方通行「あァ?」

 

???「客人と言う事は貴方が一方通行さんってことよろしいですね?」

 

一方通行「それがどォした」

 

美鈴「私の名は紅美鈴(ほんめいりん)。突然ですが、今から貴方に試合を申し込みます」

 

一方通行「試合を申し込むゥ?面倒くせェ……」

 

美鈴「それで、答えはどっちですか?イエスですかノーですか?」

 

一方通行「チッ………、遊ンでやるか。来いよ格下、すぐ終わらせてやる」

 

その言葉を聞いて美鈴はどこかのカンフー映画で見たことがあるような構えをした。

が、対する一方通行はポケットに手を突っ込んだままだった。

 

美鈴「ああ、そうだ。ご存知です?貴方は幻想郷でこう言われてるんですよ。幻想郷"最強"の能力者と」

 

一方通行「最強、さいきょう、サイキョー、ねェ…………チッ。ここでも俺は最強か」

 

美鈴「さて。では、いきますよッ!!」

 

一方通行「いつでも掛かって来い」

 

その言葉を聞いた瞬間、美鈴は一瞬で一方通行の背後に移動。

そして全力の拳を白い怪物目掛けて放った。

が、しかし攻撃した筈の紅魔館の居眠り門番さんは背後に吹っ飛んで行ってしまった。

 

一方通行「ハァ……暴走状態の時より少しはやれると期待したンだがなァ。バカ確定だ。もう気ィ済ンだかァ三下?」

 

一方通行はとても詰まらなそうな表情で美鈴の方角へ顔を向ける。

だが、あれほど派手に吹っ飛んだ美鈴は難なく立ち上がってみせた。

 

美鈴「なるほどなるほど。これが噂に聞く『反射』ってやつですか。だったら____________」

 

さっきのは"幻想郷最強"を確かめただけだ。

次からが本番である。

その証拠に美鈴は掌に溜めたエネルギー物質。『気』を地面に撃ち込んだ。

その威力は、もしも岩に『気』を打つけたら一瞬で岩が塵になる。

それほど高威力な攻撃なのだ。

だというのに一方通行は微動だにしなかった。

 

そしてそして、地面に撃ち込んだ『気』は一方通行の真下から勢い良く天へ昇る。

だがしかしその気に一方通行の反射が発動。

すると、地面が轟音と共に爆散して砂煙が発生した。

 

美鈴「見えない攻撃は反射できますかッ!?」

 

上手く砂煙を利用し、一方通行に拳が届くまで接近した。

そして全力の拳を放つがそれもまた反射され美鈴は背後に吹っ飛ぶ。

 

一方通行「あーあァ……、ったくよォ。俺の反射は"自動"なンだぜェ?目眩ましなンて古風なモン効くわけねェだろォが」

 

美鈴は素早く動き一方通行に攻撃をしたが反射されまたまた吹っ飛んだ。

それを繰り返してる美鈴に一方通行は、

 

一方通行「もうオマエのバカ加減に飽きた。そろそろ終わらせてもらうぞ」

 

重力のベクトルを操り美鈴の動きを封じる。

そしてゆっくりカンフー門番に歩み寄っていった。

 

一方通行「これで終わりだなァ?」

 

美鈴「そう、ですね_______________貴方がねっ!!」

 

これが最後の抵抗だ。

美鈴は気を一点に集中させ一方通行に放つ。

 

美鈴「攻撃と反射は同時にはできない筈!!」

 

だが一方通行に放った気の光線は真上へ、

空へ飛んで行った。

その事に口を開いて驚愕する。

 

しかし、白い怪物は

一方通行はニタニタ笑い、

 

一方通行「ギャハハハハッ!!そっかそっかァ。攻撃と反射は同時にできねェと思ったのかァ________」

 

そして一方通行は両手を広げた

 

一方通行「_____悪ィなァ。それが可能なンだよこれが」

 

すると美鈴の重力が更に重くなる。

内臓が地面に吸われる感覚がした。

下へ下へ、体が引っ張られる。

 

美鈴「う…………ッ!?」

 

一方通行「どォする?まだまだ耐えてみっかァ!?」

 

そして、

そして。

 

美鈴「……参り……ました」

 

体が動かせなくても『気』を放てる。

しかしその攻撃が効かない一方通行に、だ。

美鈴は降参したのだ。

そして、

その言葉を聞いて一方通行は能力を解除した。

 

美鈴は重力の縛りから解放されゆっくりと立ち上がる。

 

美鈴「強い、ですね。さすが幻想郷最強の能力者と言われるのも納得です」

 

一方通行「もォ通って良いか?」

 

美鈴「あっ、はいどうぞ。____________って、わあッ!?」

 

案内しようと思い歩いたら足元にあった小石に躓いてしまい転びそうになった。

 

が、一方通行が転ぶ直前体を支えてくれたのだ。

 

一方通行「足元見ろよ。ったく」

 

美鈴「す、すいませんっ!!」///

 

一方通行「で、いつまでも俺はお前を支えてれば良いンだァ?」

 

美鈴「わッ!すいません」///

 

一方通行「次からは足元を気を付けて歩け」

 

美鈴「はいッ!」///

 

そしてそれから、

一方通行は紅魔館へと歩いて行った。

だが、何かに気付いたのか美鈴の元へ戻って来た。

 

一方通行「おい、少しじっとしろ」

 

美鈴「えっ、えぇッ!?」

 

ぐいっと顔を近付ける一方通行。

なにか知らないが言われるがまま動かなかった美鈴は目を瞑った。

すると一方通行はゆっくり美鈴の肩に手を置き、そして能力を使い服の汚れを弾き取った。

 

一方通行「これで大丈夫だな」

 

美鈴「………はい」///

 

一方通行「次こそ行って来る」

 

美鈴「……お、お気を付けて」

 

そして一方通行はまあ紅魔館へ歩いて行った。

 

そんな彼の背中を見つめながら、、、

 

美鈴(なんだろう……、何故かあの人の事を思うとなんかドキドキする…………)///

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一方通行は紅の館の中へ入った。

その紅魔館は、玄関のドアを開けるとすぐ目の前には大きな階段がある。

 

そして一人の女性が突然音もなく姿を現した。

 

 

???「紅魔館へようこそ、お客様」

 

一方通行「出迎える気はねェのかクソメイド。客人を上から見下ろすとは随分と良いご身分だなァ」

 

???「ふふふっ……。貴方は客であり、そして__________」

 

メイド服の女はナイフを構えた。

そして一方通行に向かって一本の刃物を投げてきたのだ。

 

???「___________敵よ」

 

一方通行「はァ……、ったく。この世界のヤツらも好戦的なヤツばっかだなァ。どこもかしこも変わらねェってか?まァ………、そォいうの俺は嫌いじゃねェがな」

 

たった一本だけ投げたように見えたが気付けば何十本のナイフに囲まれていた。

だが、だ。

全てのナイフを反射した一方通行はポケットに手を突っ込んだまま余裕に立っていた。

 

そして、出会ってすぐ刃物を投げた紅魔館のメイドはナイフをまたもや構える。

 

咲夜「私の名は十六夜咲夜(いざよいさくや)。この紅魔館のメイド長を勤めさせていただいております」

 

一方通行「自己紹介どうもアリガトウ。それで、なぜオマエの主は俺を紅魔館に呼ンだ?」

 

咲夜「それは私に勝ったら教えてあげますよ」

 

一方通行「………………………チッ」

 

舌打ちがあった。

そして次の瞬間には一方通行の周りに無数のナイフが一直線に飛んできた。

だかこれも全て反射する。

 

すると反射された数多くのナイフは壁へ突き刺さった。

 

一方通行「時間を操る程度の能力か」

 

咲夜「時間を操る『程度の』能力?…………いえ、違います____________」

 

そして、

ナイフを投げると同時に発動する。

『時間を操る能力』。

それによって世界の時間が停止した。

 

 

咲夜「_______________私の能力は時間を操る能力です」

 

 

時が静止したこの空間で動けるのはただ一人。

紅魔館のメイド長、十六夜咲夜のみ。

 

だが、、、

 

一方通行「だからどォした?」

 

咲夜「ッ!?」

 

一方通行「まさかこの俺の時間を止められると思ったのかァ?」

 

世界の時間を完全に止めた。

なのに、なのに、なのに。だ。

真っ白な怪物は普通に動いていたのだ。

 

一方通行「そォかそォか。なるほど、な。能力名の『程度』ってのが無くなったのかァ____________」

 

ニヤリ、と。

引き裂いたように口角を上げた一方通行は地面を思いっきり蹴る。

そして、砲弾のように真っ直ぐ十六夜咲夜というメイドに突進した。

 

一方通行「_________だが、俺には勝てねェよ」

 

咲夜に接近した瞬間、一方通行は拳を彼女顔面目掛けて飛ばした。

だが、躱されてしまった。

 

そして、そして。

時間はまた先程と同じように動き始め、

時を止める瞬間に投げたナイフは誰もいない場所に飛んでいった。

 

咲夜「まさか、私以外に止まった時間の中を動けるとは…………」

 

一方通行「あァ……?なンだよネタ切れかァ!?もう少し客を楽しませてみろよメイド長さンよォッ!!」

 

咲夜「_________だったら」

 

すると、

ナイフを一本だけ持ち一方通行に向かって駆けて行く。

しかし、しかし。

たった一回の瞬きをした時には既に視界から紅魔館のメイド長の消えていた。

 

そして、

 

咲夜「こんなにも易々と背後を取られてよいのですか最強様?」

 

一方通行「なにッ!?」

 

背後に気配を感じた一方通行は後ろを振り返る。

すると、視界から消えたメイド長・咲夜が立っていたのだ。

そして一方通行の頭にナイフを振り下ろした。

しかし、その攻撃も反射され持っていたナイフの刃の部分が粉々に散る。

そして回し蹴りが来たので咲夜は一瞬で一方通行から離れた。

 

一方通行「時間を止めてねェのにあの速度。…………どォなってやがる」

 

咲夜「貴方の求めるぐらいは楽しくなってきた?」

 

一方通行「…………くくくくくかかかかかっ、アハッ!!ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

 

咲夜「ッ!?」

 

突如笑いだした一方通行に動揺する咲夜。

頬から冷たい汗が流れる。

背中にぞぞぞぞ、っと鳥肌が立つ。

心の底から嫌な予感もした。

なにか開けてはいけない蓋が開いてしまったような感覚だ。

 

今まで会ってきた誰よりも感じたのだ。

目の前に立つ白い怪物から『狂気』を。

 

一方通行「ああそォだ最っ高だッ!!やっと面白くなって来やがったぜェッ!!」

 

ボフッ!!!

っと爆発音がした。

それは白い怪物の背中からだった。

 

そして、一方通行の背中には、、、、

 

咲夜「…………黒い…………翼!?」

 

一方通行の背中には真っ黒は翼が出現していた。

その翼を見て咲夜が驚愕する。

初めてだったのだ。

 

確かにこの世界には翼を生やした者は多く居る。

だがしかし。

何もない背中に急に翼を生やすという者は居ない。

しかも、こんなこの世の漆黒を一ヶ所に集め方ような翼なんて異例中の異例だ。

 

そして。

裂いたように笑う怪物はその背中から伸びる黒い翼を咲夜に目掛けて放つ。

目にも止まらぬ速度だった。

だが、十六夜咲夜はその黒い翼をまるで瞬間移動したかのように躱わす事に成功する。

 

それを見て一方通行はある事に気付いた。

 

一方通行「……………………そォか。オマエ、時間を飛ばして移動してンのか」

 

咲夜「正解。良く気が付いたわね」

 

一方通行「ハッ……。種が分かりゃあ大した事ねェな」

 

咲夜「それはどうかしら?」

 

時間を飛ばしながら瞬時に移動する。

現れ消えて、また現れてを繰り返すと同時にナイフを投げる。

 

そして、気付けば無数のナイフに囲まれていた。

だが、たった一振りだ。

黒い翼をたった一回振るっただけで空中のナイフが全て粉々に消え散った。

 

しかし、これまでは計算通りだ。

咲夜はナイフを囮に使い一方通行の視線を自分から外したのだ。

一瞬で良い。

ほんの少しでも自分の姿が彼の視界から消えればそれだけで勝ちを確信できた。

 

そして、どこにでも居る完璧なメイド長さんは時間を飛ばし最後の移動をする。

そこは、一方通行の真上だ。

 

だが、、、、

 

咲夜「_______________ッ!?居ない!?」

 

真下に居た筈の黒い翼を背中から伸ばす白い怪物の姿がなかった。

 

一方通行「これで終わりだァッ!!」

 

咲夜「__________なにっ!?」

 

正面を向くとそこには下に居た筈の一方通行の姿があった。

そして一方通行はまるでバスケットボールを持つかのように十六夜咲夜の顔面を掴んだ。

そしてそして、黒い翼と御自慢のベクトル操作により壁に向かって思いっきり突っ込み、

 

壁に思いっきり叩きつけた。

 

咲夜「ぐ……がっ…………は、……っ!!」

 

後頭部のみに留まらず、

全身が悲鳴を上げた。

 

電流のように身体中に痛みが走ったのだ。

 

一方通行「オマエのよォなヤツなら分かってると思うが、殺意を持って攻撃したら相手に殺される覚悟はあるって事だよなァ。そ、う、だ、よ、なァ?」

 

咲夜「っ……、く……。私が今まで会った人間の中で一番狂ってるわ貴方…………」

 

顔を手で覆われていたが指と指の間から相手の顔が見えた。

狂気を染まったギラギラ輝く赤い瞳。

 

間違いない。確信した。

今自分が相手している怪物は間違いなくこの幻想郷で一番の狂気を持つ存在だ。

 

一方通行「………………死ね」

 

指にほんの少しの力を入れる。

それだけだ。

それだけで、人の命を簡単に奪える。

 

だがしかし。

 

 

「___________そこまでよっ!!」

 

 

急に表れた第三者の声。

そして、

一方通行は声のした方を向いた。

そこには悪魔の様な翼の生えた幼い容姿の少女が宙に浮いていた。

 

一方通行「………ったく、ここの奴らは上から見下ろすが好きなのかァ?」

 

咲夜「お……、お嬢様ッ!?」

 

「命令よ。咲夜を離しなさい」

 

一方通行「…………………………」

 

一方通行は咲夜を離した。

そして咲夜は地面に落ちた。

 

「余りその子に乱暴しないでよ。嫁入り前の女の子なの」

 

一方通行「だァからなにか?攻撃されても抵抗しちゃいけねェってかクソガキィ」

 

レミリア「まあ、ごもっとな回答ね。そうだ、自己紹介が遅れたわ。私はレミリア・スカーレット、決してクソガキじゃないわ」

 

咲夜「申し訳ありませんお嬢様」

 

レミリア「咲夜。そこでゆっくりしてなさい」

 

咲夜は立ち上がりこの場から消えた。

そして残ったのは二人。

 

レミリア「全く、仕事熱心なんだから。ゆっくりしてなさいって言ったのに」

 

一方通行「表の門番と違ってサボらねェのは雇ってる身として嬉しい限りじゃねェか、なァ?クソガキ」

 

『クソガキ』という単語を聞いて眉を動かして反応する。

先程名を名乗ったのにも関わらず白い客人は、吸血鬼の少女の名を呼ぶ気は無いらしい。

 

レミリア「ああ、もうその様子だと気付いたようだけど貴方を呼んだのは私よ」

 

一方通行「あっそ」

 

レミリア「興味無さそうね」

 

一方通行「ねェよ」

 

素っ気なく回答する一方通行。

他から見たらちょっと無愛想な会話に見えるだろう。

しかし、両者普通に会話しているように見えるがどちらも殺気立っていた。

 

一方通行「それで?いつまで見下ろすつもりだァクソガキ?」

 

レミリア「そうね。これからずっと、っと言ったところかしら?」

 

一方通行「それが遺言で良いンだよなァ?________」

 

レミリア「咲夜をキズ付けた挙句に、私のことをクソガキクソガキって連呼して_______」

 

一方通行「_________覚悟は良いかァクソガキ!!」

 

レミリア「_________絶対許さないッ!!」

 

どちらも誰もが認める強者だ。

しかしこれは勝負。勝つのは一人である。

 

一方通行「まずは上から人を見下す態度を改めさせてやらァッ!!」

 

片手を振った瞬間ベクトルを操作して風の砲弾を作る。

その風の砲弾を飛んでいるレミリアに向かって飛ばした。

 

が、避けられてしまった。

 

レミリア「屋敷を荒らさないでよね」

 

一方通行「知るか」

 

レミリア「次は私の番ね」

 

レミリアは大きな槍を出した、その槍を一方通行に向かって投げたが反射してレミリアの方に飛んで行きその槍をレミリアは打ち消した。

 

一方通行「そンなもン効くわけねェだろ」

 

レミリア「そう。じゃあこれは?」

 

すると無数の弾幕が飛んできた、だが全ての弾幕を反射しながらゆっくりレミリアの方に歩いて来た。

 

一方通行「これで終わりかァ?」

 

レミリアは弾幕を打つのを止め、能力を使用する。

 

レミリア「私の能力知ってる?」

 

一方通行「『運命を操る"程度"の能力』だろォ」

 

レミリア「違う、私の能力は『運命を操る能力』よ!」

 

吸血鬼、レミリア・スカーレット。

彼女はちょいと力を使うだけで他人の運命を決めれる。

誰であろうとレミリアにとっては手の平で踊る、雑魚なのだ。

 

そして、紅の館の主は一方通行に能力を発動。

彼の運命を変えたのだ。

『ここで死に果てる』という運命に。

しかし、一方通行は平然とこちらに歩いてきた。

 

レミリア「ッ!?何で死なないの!?」

 

一方通行「知ってかァクソガキ?運命にもベクトルはあるらしいぜ」

 

一方通行は笑いながら階段を上がり、とうとうレミリアの前までたどり着いた。

 

レミリア「嘘…………でしょ。私の能力が効かない…………!?」

 

一方通行「覚えとけ。これが最強と呼ばれる力だ」

 

弾幕も能力も全て、

そう……全ての攻撃は白い怪物には効かなかった。

そして、いつの間に宙からレミリアは地面に降りていて目の前には真っ赤な瞳で一方通行が見下ろしていた。

 

レミリア「………………強いわね」

 

一方通行「…………」

 

ゆっくりとレミリアに手を伸ばす。

レミリアは目を瞑って殺されるっと思ったら、、、

 

 

レミリア「え……ッ?」

 

 

頭の上に彼の白い手が乗せられていた。

その事に驚き顔を上げる。

すると、一方通行はニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。

 

そして益々状況がつかめないレミリアはただただ混乱していた。

 

レミリア「何で殺さないの?」

 

一方通行「あのメイドに頼まれたからなァ」

 

レミリア「咲夜が?」

 

一方通行「あァ。立ち去る瞬間に言われたンだよ」

 

ズボンのポケットに手を突っ込んで話していた。

だが信じられ無かった。

頼まれたからと言ってこっちは命を奪うつもりだったのだ。

しかし、彼は。

一方通行は最初から殺す気は無かったのだ。

 

つまり、あの戦闘中に感じた殺気は偽物。

 

あれ程の殺気が偽物だったと気付いて驚き、最初から殺す気が無かったと気付き、もうレミリアは驚愕しっぱなしだった。

 

が、

 

一方通行「いつまで座ってンだよ。立て」

 

レミリア「…………ッ、……あれ?腰が抜けちゃって立てない」

 

一方通行「チッ」

 

レミリア「_________きゃあっ!!」

 

面倒くさそうな表情の一方通行は紅魔館の主レミリアを横抱きする。

 

レミリア「~~~ッ!!恥ずかしぃ…………」///

 

一方通行「我慢しろ」

 

レミリアに道を教えてもらいながら歩いて行った。

 

レミリア「…………」///

 

無言で一方通行の事を見つめているとそれに気付いた一方通行は

 

一方通行「あァ?なンだよ」

 

レミリア「なんでもない……」///

 

質問したが顔を真っ赤にしながらそっぽ向いて答えて来た。

 

レミリア(かっこいい )///

 

そんな事を、考えてると目的の部屋につき一方通行は能力を使い扉を開けた、そこには紅茶を用意していた咲夜がいた。

 

咲夜「お嬢様どうしたんですか!!??」

 

一方通行「腰が抜けたンだとよォ」

 

咲夜「良くもお嬢様を……ッ!!」

 

レミリア「良いのよ咲夜。それより早く下ろしてくれる?」

 

一方通行はレミリアを椅子に座らせた。

 

咲夜「貴方も座っていいですよ」

 

細長い机の椅子に一方通行は座った、咲夜はレミリアの斜め後ろに立っていた。

 

一方通行「で、話はなンだよ」

 

レミリア「その前に飲み物よ。えーと、確か内には紅茶とコーヒーがあったわね。貴方は紅茶とコーヒーどっちが良い?」

 

一方通行「じゃあコーヒー」

 

レミリア「咲夜。お客様にコーヒーをお願い」

 

咲夜「…………。かしこまりました」

 

一方通行の前にコーヒーが置かれそのコーヒーを飲んでみると物凄く美味しかった。

 

一方通行「……………………悪くねェ味だ」

 

レミリア「だってよ咲夜。良かったわね」

 

咲夜「お嬢様にお誉めの言葉をいただいたら嬉しいですが、お嬢様以外に誉められても一ミリも嬉しくないです。」

 

咲夜はそっぽ向いていま。

 

レミリア「さて、喉も潤したし本題ね。貴方を呼んだ理由を話すわね」

 

一方通行「…………、」

 

レミリア「…………私の妹を部屋から連れて出して私の前に連れて来て欲しいの」

 

 

 

 

 

 

レミリアの表情は暗くなっていた。

だが、一方通行はそんな彼女を見て面倒事が始まると何となく察したのだった。

 

 

 












ポスター「もう駄目だ、頭が………」

霊夢「なんか言ってるわよ~?」

一方通行「無視しとけェ」

ポスター「…もう………駄目……だ……ッ……」

霊夢「ん、倒れた」

一方通行「無視」


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3話

私は純粋な日本人です。
だがしかーしッ!!!!
漢字って難しいですね……。(・・;)


あ、続きをどうぞ~♪




一方通行「…………。あァ?それが理由か?」

 

レミリア「えぇ。それが貴方を呼んだ嘘偽りもない理由よ」

 

一方通行「そンなのオマエがやれよ。オマエら姉妹の問題だろォが。なンで俺が関わらなくちゃいけねェんだ」

 

腕を組んだあと、目を細める。

そして一方通行は乱暴に机の上に足を乗せた。

 

しかし、その行動に動じずレミリアは

 

レミリア「私だって可能なら自分一人で解決したいわよ。でも、出来ないの。私は妹に会うことが出来ない。私はあの子と会うことに…………、恐怖を抱いている」

 

咲夜「お嬢様………」

 

体を少し震わせる悪魔のような翼を生やす小さな吸血鬼の少女。

普段のレミリアを知っている者からは想像ができない姿だろう。

しかし、こんな姿を話でしか知らない白い彼に見せてでもこの頼み事を承諾してほしいのだ。

…………そう、なんとしても。

 

一方通行「理解できねェな。相手は自分の妹だろ?家族だ、しかも年下だ。どこが怖いってンだよ?」

 

レミリア「私の妹。"フラン"はとても恐ろしい力を持っているの」

 

一方通行「………ほォ。それで、ってか?」

 

レミリア「いいえ、違うわ。"フラン"はその力を完全にコントロールできなくて余計なものまで『破壊』してしまうの。そして私はもしもあのままフランを自由にしてしまったらいつかこの幻想郷すら跡形もなく壊してしまう。そう考え深い地下室に閉じ込めた…………。フランの心境を頭にも入れずに……ね」

 

とても辛そうで、悲しい顔をしていた。

多分それは後悔から出た表情だろう。

 

そして、レミリアの話を聞いて一方通行は自分の昔の事を思い出していた。

あの……、光も無い暗闇で生きるしか出来なかった幼い自分の姿を…………。

 

レミリア「_______________あの子の能力はありとあらゆるものを破壊する程度の能力……。"だった"……」

 

一方通行「だった?それはどォいうことだ?」

 

レミリア「あの子の能力も突然進化したのよ私達と一緒でね。そして、『ありとあらゆるものを破壊する能力』となり前より歯止めが効かない程能力は増幅され、更に危険で強力で強大な力と化した」

 

一方通行「だから閉じ込めたのか」

 

レミリア「"だから"じゃないわ。能力が進化する前から閉じ込めていた。昔からフランは特に理由もなく破壊と殺戮を繰り返していた。その性格も直すためにも閉じ込めたのだけど……………。忘れられないのよ、あの子の最後の表情が」

 

額に手を当てて下へうつ向く。

 

そして、今でも鮮明に思い出せる。

自分のたった一人の肉親たる妹のフランを地下に閉じ込めようとした時最初は抵抗された、

しかし他にこの紅魔館に住まう者に手を借りてやっと彼女を抑え込むと、もう抵抗はせず素直に従って自分の足で地下室に入っていった。

 

しかし。最後、、、、

 

真っ暗な地下室の中に消えていく時、振り替えり自分の顔を見ていた表情はとても悲しそうであった。

もしかしたら、『やっぱりいいわ、フラン』と手を掴んで止めてくれるかもと思っていたのだろうか…………。

 

だがレミリアはただ黙って表情ひとつ変えず暗闇に消えていく妹の姿を見送ったのだ。

 

一方通行「質問するぞ、オマエはその妹を何年閉じ込めた」

 

レミリア「そうね…………、軽く百年は越えてるわ」

 

一方通行「百年以上……か」

 

レミリア「本当は私が地下室に行ければ良いのだけど、あそこに行くのがとても怖いのよ。もしも拒絶されたら、って考えてしまって。自分で閉じ込めておきながらこんな事を考えてしまうなんてね、自分で自分が情けない…………。だから、ここで待ってあの子に会うため心の準備が必要なの。でもフランはきっと私が言ってももうあそこから出る気はないみたいなの。無理やりフランを地下室から引っ張り出してここまで運べるのはきっとフランと同じ世界をひっくり返せるような強大な能力者だけ。そう思って_________」

 

一方通行「_________俺を呼ンだってか」

 

レミリア「……こんな姉妹の面倒事に巻き込まれるのはきっと嫌でしょう。表情や態度で分かるわ。……でも、それでもお願いさせて。あの子と向き合うためには貴方の力が必要不可欠なの」

 

咲夜「私からもお願い致します」

 

二人が頭を下げいた。

そして少しの沈黙の空気があった。

 

一方通行はコーヒーを飲んだ後に、

 

一方通行「ふざけンなよクソったれ。勝手に呼び出されて来てやったらどォだ?俺を殺そうとしてきやがったオマエらに親切に手を貸せだと?自分の都合しか考えられねェクズになンで俺が手を貸さなきゃならねェンだよ_____________」

 

ごもっともだ。

しかし、

 

一方通行「__________っていつもの俺なら言うが、今回は違ェ。良いぜ、やってやるよ。オマエらがそンなに言うなら地下室に籠った困ったちゃンは相当強ェンだろ?実は今猛烈にリハビリ相手が欲しかった所だ」

 

レミリア「…………や、やってくれるの?」

 

一方通行「二度同じこと聞かなきゃ記憶できねェのか?」

 

レミリア「…………………ホントに、ありがとう」

 

一方通行「だからその引きこもりの居る地下室の場所を教えろ」

 

ポケットに手を突っ込み椅子から立ち上がる。

 

レミリア「咲夜。一方通行をフランの元へ案内しなさい」

 

咲夜「承知しました。ついて来てちょうだい」

 

そう言って部屋を出た咲夜に一方通行はついて行った。

この館は何度も説明するが広い。

目的の部屋へ行くだけなのに、ちょうど良い散歩が出来るほどだ。

 

そして、ほんの30分ぐらい歩くと

 

咲夜「_________ここよ」

 

案内された場所は深い深い地下室に通ずる階段であった。

地下室もあるとは驚きだが今はそんな事を考えてる場合ではない。

 

一方通行「この先にいるのかァ?」

 

咲夜「ええ」

 

一方通行「ンじゃ、ちょっくら行ってくるか」

 

タン……、タン……、タン。っと、ゆっくりと階段を降りて行くと頑丈そうな作りをした鉄の扉を発見した。

そこで下へ降りる階段はなくなっていた。

ここが目的の引きこもりお姫様が居る部屋で間違いないだろう。

 

一方通行はなんの躊躇もなくその鉄の扉を開く。

そして部屋の中へ入った。

 

一方通行「あァ?……誰もいねェのかァ?」

 

明かりは付いていた。

部屋の中は散らかっていたが、とても可愛らしいお姫様の部屋ってかんじだった。

しかし、ここで問題が…………、

壁や床など、所々に血痕があったのだ。

だからだろうか。少し異臭もする。

だが一方通行は闇に生きていた怪物、このぐらいの異臭など何度も何度も嫌ってほど嗅いできたのでそこまで気になることはなかった。

そして、周りを見渡してみるがレミリアの妹らしき影が見当たらない。

 

すると、、、

 

???「久しぶりのお客さんだ。ねーねー、貴方はだぁれ?」

 

一方通行が周りを見渡してると突如急に後ろから声がしたので振り返ると、

そこには可愛い熊のお人形さんを抱いている背の低い真っ赤な瞳の少女の姿があった。

一方通行は、この少女がレミリアの話に出ていた妹だと理解して金髪でカラフルな宝石を吊るす小枝のような翼を生やした吸血鬼の質問に答えた。

 

一方通行「俺は一方通行だ」

 

フラン「えっへへへ、変わったお名前だね。私はねフラン。フランドール・スカーレット」

 

ニッコリと笑う幼い少女。

可愛らしい人形も大事そうに抱えており、こんな子が無差別に殺戮を犯すなんてある訳がない。

…………と。一方通行は思わなかった。

一瞬だ。

一瞬で少女は変貌する。

ギュッ!!と抱いている人形を潰した瞬間能力を発動。一方通行に攻撃した。

しかし、間一髪だ。

目に見えなかったが後方へ高速移動することにより攻撃を回避。するとフランは手を叩いて楽しそうに笑っていた。

 

フラン「アハハハハハハハハハハッ!!よーけた避けた!!最初の一発を避けた人間は久しぶりだなあ、あはっ!!キャハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

一方通行「……チッ。思ってた通り壊れてやがる」

 

先程まで立っていた場所を見る。

すると、そこはまるで重機ですくい掘られたような、ボコッとへこんだ穴となっていた。

自分の部屋だろうがお構い無しのようらしい。

そう、だからだ。

フランはどこから取り出したか分からないが、手に燃え盛る大きな炎の剣を持ち、

 

フラン「アハハハハッ!!あそぼあそぼ、アクセラレータ!!」

 

一方通行「__________あァ。来いよ……」

 

自分の身長より何倍も大きい炎の剣を持って突進するフラン。

そして一方通行の前まで辿り着くとその手に持つ炎を纏う大きな剣を振り下ろした。

しかし、白い怪物はその剣を躱わし吸血鬼の少女を横から蹴り飛ばす。

 

一方通行「おら立てよ。まだ始まったばかりだぜ?お遊びはよォ」

 

壁に強く激突した後、地面に倒れる。

しかし、さすが吸血鬼といったところだろうか。

フランはまるで何事もなかった様にすぐ立ち上がったのだ。

 

フラン「ふ~んっふっ~ふ~♪いいね強いね。だけど、私はもっとツヨイヨ?」

 

白い怪物に手を向けて拳を握ると一方通行の立っている場所が"弾けた"。

 

フラン「どーお?すごいでしょ!」

 

一方通行「そンな単純な攻撃は俺には効かねェぞ」

 

手応えがあった。

確かに攻撃が当たった…………。

だが、一方通行は無傷で立っていた。

 

フラン「あ、あれ?無、傷……ッ!?」

 

さすがにフランも驚いていた。自分の能力が当たったのに効かない相手など初めてだ…………。

そして、フランが驚いてる隙に一方通行は地面を踏みつける。

その時にベクトルを操作することによりフランの立っている場所が弾けた。

 

フラン「_____________ッ!!」

 

勘ではあったが危機を感じてその場から跳躍。そして宙を飛ぶことに回避した。

だがその一瞬で一方通行はフランの前から姿を消していた。

 

フラン「あれ?……どこ行っちゃったの?」

 

一方通行「後ろだ、クソガキ」

 

声のした後ろへ慌てて振り返るとそこには一方通行の姿があった。

フランは白い怪物の姿を確認した瞬間能力を使おうとしたがそれは叶わなかった。

一方通行はフランの髪を掴み思いっきり振り落としたのだ。

 

一方通行「もう終わりか?クソガキ」

 

手には綺麗な金髪の髪があった。それをぱらぱらと手を振って落とす。

床に激突、そして倒れた金髪の吸血鬼の少女の前に着地した一方通行は挑発するようにニタニタ笑っていた。

フラン「クソガキじゃ……、ないもん!!」

 

破壊の力を司る吸血鬼の少女の逆鱗に触れた。

勢い良く立ち上がりフランは一方通行を睨む。

その眼には殺意と狂気がぐちゃぐちゃに混ざっていた。

しかし、一方通行はそんな瞳を向けられても怖じけることはなかった。

そして、フランは全力全開で能力を一方通行に向かって発動した。

そう……、『ありとあらゆる物を破壊する』能力を。

 

フラン「原型が無くなるまで壊れちゃえぇぇぇぇええええええええッ!!!」

 

その能力は目に見えない。しかもこんな至近距離だ。

しかしそんなのはどうでもいい。

破壊の能力にだってベクトルが存在している。

だから一方通行はその目に見えないフランが放つ能力のベクトルを操作して片手で受け流す。

そして、流された破壊の能力は壁に衝突し、ボゴン!!と轟音を立てて壁に大にな穴を開けた。

 

一方通行「……オマエはこォやって全てを拒絶してきたのか」

 

フラン「………………」

 

一方通行「能力でドンパチしてからだから信じられねェと思うが俺はここに遊びに来た訳じゃねェンだよ」

 

フラン「?………じゃあなんでここに来たの?」

 

一方通行「オマエの姉貴、レミリアに頼まれたからだ」

 

フラン「お姉さまに…………ッ」

 

明からに雰囲気そして表情が変化した。

『レミリア』という言葉を聞いたらフランは急に縮こまったのだ。

そして、一方通行は続けた。

 

一方通行「聞いた話によるとどォやらオマエはここに百年以上も閉じ込められてるらしいなァ」

 

フラン「それが……、なに?」

 

一方通行「百年以上"も"閉じ込められたンだぞ、憎くねェのか?レミリアのことが」

 

フラン「お姉さまは悪くない!!全部、フランが………フランが………」

 

さっきまで狂気に満ちた笑みはすっかり消えており、幼い姿の吸血鬼の少女フランの声と体は震えていた。

 

一方通行「実は俺もなァ、クソったれな場所に閉じ込められたことがある」

 

フラン「___________えっ?どうして……?」

 

一方通行「オマエと共通の理由……。強力な力を持っていたからだ。しかもそこら辺のヤツらよりもずば抜けて強ェ力をな」

 

フラン「強力な……力……」

 

一方通行「まァ、オマエみたいに百年もって訳じゃねェがな__________」

 

すっかりフランは一方通行の話に夢中だった。

 

一方通行「________だが、オマエの気持ちは少し分かる。辛かっただろ、寂しかっただろ。ここにサンドッバック代わりに送り込まれた人間をいくら殺しても埋められねェよな『孤独』ってやつァ。オマエが本当に求めてるのは暇潰し程度に殺せる人間じゃねェ、本当に求めてたのは何だ?それは________」

 

目線を合わせるように一方通行は片膝を床につけた。

 

一方通行「______『自由』。どこに居ても、行っても良い"自由"。皆に受け入れて欲しかったンだろ?認めて欲しかったンだろ?自分をよ。言ってみろ、打ち明けてみろよ本心を。もォ我慢なンてする必要はねェ、俺がオマエをここから解放してやる。オマエの『味方』に、『理解者』になってやる」

 

フラン「………無理だよ。フランは絶対に自由を手にすることはできない。フランはバケモノだから……、お姉様を、皆を不安にしてしまうからこの地下に縛られてなきゃいけないんだ。じゃないと皆が安心できないんだ」

 

一方通行「言っただろ、俺はオマエの味方になってやるって。他のやつらが、例え全世界の人がオマエを拒みオマエを居たくもない場所へ縛ろうとするなら俺がそいつらを蹴散らしてやる」

 

フラン「___________ッ!!」

 

一方通行「なァ……オマエはまだこンの所に居たいか?」

 

フラン「…………ぅ……あ…………っ…………」

 

両手で必死に口を抑えていた。

何十年、百年以上ここに居て多分叫んだのだろう本心を。

しかし、それはダメなのだと堪えてきたのだろう。

『自分の本当の願いは言ってはいけない』。

そう思い続けることにより癖になってしまったのだ。

願いを、想いを言えないように自分の手で口を抑えることが。

 

それを一方通行は解く。

 

一方通行「いいンだよ、言いてェことは言っていいンだ。我が儘だろォがなンだろォが言ってみろ。全て俺が聞いてやる」

 

フラン「………………良い、の?」

 

震える声。震える唇。瞳から頬へつたわり流れた涙。

そして、

 

一方通行「あァ」

 

っと、その一言で今までフランを何百年も縛り続けた心の鎖が解けた。

それからは自分でも解らない程涙が溢れた。

 

フラン「ぅぅ………、うわぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああッ!!!」

 

そして、

涙を流しフランは一方通行に抱きついた。

一方通行は泣きじゃくる少女の頭を撫でる。

 

もうそこには化け物と言われる吸血鬼はいなかった。

ただの一人の少女、フランドール・スカーレット。

彼女は自分を受け入れてくれた白の光に存分に泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「___________ほら、涙拭けよ」

 

フラン「……うん…」

 

ベットにフランを座らせて一方通行は近くにあったハンカチをフランに渡す。

 

フラン「ねぇ、アクセラレータ」

 

一方通行「あァ?」

 

隣に座ると、だ。

涙を拭き終えたフランはハンカチをベットに置き一方通行の腕を抱く。

しかし一方通行はその手を振り払うことなくフランの話を聞く。

 

フラン「フランね………外に出たことないんだ」

 

一方通行「ここにずっと引きこもってりゃ、そりゃそうだろ」

 

フラン「だからね、外に出てみたい」

 

一方通行「出ればイイじゃねェか」

 

フラン「でも、ダメだと思うの…………」

 

一方通行「だったら俺がオマエを外に連れ出してやる」

 

フラン「えっ?いいの!?」

 

一方通行「あァ、約束する。オマエを"絶対"外に連れ出してやるよ」

 

フラン「でも、お姉さまが………」

 

一方通行「知るかそンな事。オマエが望むならどンなに立ち塞がる壁があろうと俺はオマエを外に出してやる」

 

フラン「ありがとうアクセラレータっ!!」

 

一方通行「だからよォ………フラン」

 

フラン「ん?」

 

一方通行「まずはオマエの気持ちをレミリアに言いに行くぞ」

 

フラン「お姉さまに……」

 

一方通行「大丈夫だ、俺が一緒に付いて行ってやる。それじゃあ不満かァ?」

 

フラン「ううん、全然。アクセラレータが一緒ならどこに行ったって怖くないもん」

 

一方通行「そォか、なら早速出発だ。まず最初の一歩前進だ、これが上手くいかなきゃ今後に繋がらねェ。それは分かってるな?」

 

フラン「うん♪」

 

二人ともベットから腰を上げレミリアのいる部屋へ向かうためフランの部屋から出る。

そして階段を登り深紅の深紅の廊下へ出た。

 

すると、

 

フラン「ねぇ、アクセラレータ」

 

一方通行「あン?」

 

フラン「そ、そのー…………て、手を、繋いでもいい……かな?」///

 

一方通行「別に構わねェぞ。ほら」

 

フランに手を差し伸べた。

フラン笑いながらその手を掴む。

 

フラン「ふふ~んふっ~、ふっふっふ~ん♪」

 

一方通行「そろそろ着くぞ」

 

手を繋いで歩いていると、レミリアのいる部屋へ着いた。

 

フラン「…………どうしよ、緊張してきた」

 

一方通行「立ち止まってたって何も始まらねェ。開けるぞ」

 

扉を開けると椅子に座っているレミリアが居た。

 

一方通行「よう、レミリア。フランを連れて来たぞ」

 

レミリア「あっ、…………ありがとう」

 

フラン「……………………………」

 

とてもフランは緊張していた。

そしてゆっくりとフラン達の方へレミリアが歩いて来た。

 

一方通行「隠れるな、フラン」

 

フラン「うぅー…………うん」

 

一方通行の後ろにフランは隠れようとしたが阻止し、こちらに歩いて来たレミリアは少し離れた場所で止まった。

 

レミリア「久しぶりね、フラン」

 

フラン「うん……………久しぶりお姉さま」

 

レミリア「……何度も貴方に会いに行こうとしてたけど勇気がなく今まで行けなかった。なんて言っても信じてくれないわよね……」

 

フラン「…………………」

 

レミリア「ところでいつまで手を繋いでるつもり一方通行?」

 

一方通行「俺のことは無視しろ。空気だと思え」

 

レミリア「え……えぇ、分かった」

 

フラン「………………ねえ、お姉さま。なんで私を一人にしたの」

 

一方通行の手を握ってる手を強く握って言った、それを聞いたレミリアは少し暗い顔をした。

 

レミリア「それは…………………」

 

フラン「ずっと………ずっと……ずっとずっと寂しかったんだよっ!!」

 

レミリア「__________ッ、フラン…………」

 

フランの瞳には涙があった。

それはレミリアが一番見たくないものだった。

自分のせいで唯一の肉親たる最愛の妹が涙を流しているのだ。

 

フラン「なんで……、なんで!!なんでお姉さまは会いに来てくれなかったの!!」

 

レミリア「会いに行くのが怖かったのよ」

 

フラン「お姉さまから見ても、私は化け物なの……?」

 

レミリア「そんは訳ないじゃない。いつだってずっとフランは私の可愛い妹よ」

 

フラン「じゃあなんで、会いに行くのが怖かったの?」

 

レミリア「フランに恨まれてるんじゃないかって、嫌われてしまったんじゃないかって、私は恐くて恐くて………………」

 

フラン「そんな………そんなわけないじゃん!!私はずっとお姉さまのこと好きだよ!!絶対絶対嫌いにならない!!!」

 

走ってフランはレミリアに抱きついた、そしてレミリアもゆっくりフランを抱きしめた。

 

レミリア「私はただ、フラン。貴方を…………っ」

 

フラン「私はもう大丈夫だよ。お姉さまに会えるだけで…………それだけで、私は………………」

 

レミリア「ごめんなさい、フラン……」

 

フラン「良いんだよ、お姉さま。もうそんな"小さな"ことは………………」

 

二人は抱き合いながら泣いていた。

その光景を見て一方通行は音を立てずに部屋から出ていった。

 

そして扉の横に咲夜が立っていた。

 

一方通行「良いのかよ、オマエの大事なお嬢様の感動の現場だぜ。アイツらの涙を拭く役目はオマエだろ」

 

咲夜「血の繋がった姉妹の絆がまた一層強く固い結ばれた瞬間よ。そんな場所に私如きが居たら邪魔だって気付けないと思って?」

 

一方通行「そォかい。じゃあ俺はまた家探しをしにいくか」

 

ポケットに手を突っ込んで歩いて行こうとしたら咲夜に呼び止められた。

 

咲夜「待って一方通行」

 

一方通行「なンだ?」

 

咲夜「ありがとうございます」

 

めんどくさそうに振り向くと、咲夜が頭を下げて礼を言ってきた。

 

一方通行「……………………チッ」

 

舌打ちをしてそのまま歩いて行った、咲夜は頭を上げ一方通行の背中を見ていた。

 

咲夜「あの舌打ちは照れ隠しかしら?」

 

小さく笑いながらそう言った、そして一方通行の背中を見続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「…………………………クソったれ、迷っちまった」

 

 

 

 

そして一方通行は紅魔館の中で迷っていた。

 

 

 




霊夢「私の出番こないかな~」

一方通行「今は紅魔館編だから無理だろォ」

霊夢「ま、ここに出てるから良いけどね」

一方通行「だったら良いじゃねェか」

霊夢「でも少し暴れたいのよね~」

一方通行「だったらイイ的があるぜェ」

ポスター「えぇ!?俺!?」

霊夢「ヨシ、じゃあ。ハアァァァァッ!!!」

ポスター「えっ…ちょ…わぁぁぁぁ!!」ドカーン

霊夢「スッキリした~♪」

一方通行「あァ…そォだな……」

ポスター「………」チーン

一方通行(まじでヤりやがったァ……)


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4話

紅魔館編が終わると思ったか?
その幻想をぶち殺す!!

はい、調子乗りました。
心から謝罪します、ごめんなさい。

クソつまんない続きを書きました。どうぞ、暇潰し程度に読んでいただけると光栄です。








無事、姉妹を仲直りさせた一方通行はというと、、、、

 

 

…………紅魔館の中で迷っていた。

 

 

一方通行(チッ、ここは迷宮かよ……)

 

歩いても歩いても、出口は見つからず遂にはイライラし始めてきた。

そしたら、適当に近くの扉を開けてみたらとある部屋に辿り着いた。

 

一方通行(本が大量に置かれた部屋。ここは図書館か?)

 

それはとても大きくどこまでも奥に続いているような図書館に辿り着いていた。

そしてその時、一方通行は紅魔館には大きな『図書館』があると永琳に聞いたのを思い出した。

どんな運命のイタズラか、ここに来た本当の目的の場所に無意識に着いたのだ。

 

見たところ人の姿が見えない。

中に入って良いか確認は誰かに取れないし、一方通行は黙ってその図書館の中を進む。

 

 

一方通行「どれもこれも見たことがねェモンだらけだ。ここは数多くの種類の本が置いてあるよォだなァ」

 

これなら自分に足りない知識が手に入る。

そう思いながらまだまだ奥に続く図書館を歩いている時に、 一人の女性に出会った。

 

???「ん?貴方誰?」

 

ふわふわ、と。

体を宙に浮かせて寝ながら読書をする寝間着のような服を着た不思議な女性に出会う。

そして、一方通行はそんな彼女の方へ首を向ける。

 

一方通行「あン?ここに人が居たのか」

 

???「うーん、初めて見る人間ね。名前は?」

 

手に持っていた書物を本棚に戻したら、ゆらゆらと一方通行に近付く。

警戒心は無いらしい。

 

一方通行「………一方通行だ」

 

???「あくせられーた……?あっ、貴方が"あの"一方通行?」

 

一方通行「あァ」

 

パチュリー「これは失礼、自己紹介が遅れたわね。私はパチュリー・ノーレッジ。実は貴方の色んな話を聞いて興味があったの」

 

一方通行「話だと?」

 

パチュリー「そうね……。一番有名な話だと、貴方の能力がどうやら面白いって聞いたわ」

 

一方通行「俺からしたらオマエらの能力の方がよっぽど面白ェよ」

 

パチュリー「そうだ、立ち話もなんだし座ってお話しましょ。良い?」

 

この大きな図書館の中に椅子と机がある場所に案内された。

そして二人は椅子に腰を下ろす。

向かい合うように座るパチュリーと名乗る女性と一方通行は、

 

パチュリー「ねえ、初っぱなからがっつくようで申し訳ないけど貴方の能力を教えてくれる?隠したいのなら無理に吐かせる気は無いわ」

 

一方通行「別に隠すこともねェしイイぜ。俺の能力はベクトル操作。あらゆるベクトルを触れただけで操る能力だ」

 

パチュリー「ベクトル操作…………。『ベクトル』つまり力の向きを操作する能力、か。へー、私の想像以上の凄い能力ね。噂って余り信じない方だけど今回だけは信じて良かったわ」

 

一方通行「さっきも言ってなァ噂って。チッ、そンなもンが流れてンのかよ」

 

パチュリー「この図書館から一歩も出てない私でさえ知ってるんだから、貴方が思ってる以上に噂は広まってると考えた方が良いわよ?」

 

一方通行「クソッ。これから面倒くせェことになンねェように願うしかねェか………」

 

パチュリー「あー、そうそう。貴方ここに何か用でもあるの?」

 

一方通行「………………」

 

ここで一方通行は考えた。

確かに図書館に用があったのは事実。

しかし、それを忘れてスカーレット姉妹を仲直りさせたらそそくさと帰ろうとしたのも事実だ。

 

それで、だ。

用があったと言うべきか、迷ってこの館の出口を探してたらたまたまこの図書館に着いたと正直に話すべきか、と。考えた。

そしてそして。

 

一方通行「別にィ用って呼べるものはねェ」

 

その一言で片付けた。

すると、ここでパチェリーは一方通行の発したどこか引っ掛かる言葉に首を傾げて、

 

パチェリー「じゃあなんでここに来たの?」

 

一方通行「……………………」

 

何で来たのか?

そう質問したら、顔を反らし硬く口を閉じる一方通行。

そして、少しの間があった次の瞬間だった。

 

長い沈黙を貫いていた白い彼が、

 

一方通行「………………………チッ、迷った」

 

パチュリー「フッ…………」

 

吹き出してしまった口を押さえる。

初対面だし、ゲラゲラと笑ってやるのは失礼だと知っているパチュリーは笑いを堪えた。

しかし、その態度が余計に一方通行を怒らせる。

 

一方通行「おい今笑ったな、笑ったよなァ?」

 

パチュリー「だって、迷ったって………。ん、ッククっ………、あー、ダメ。可笑しくって笑っちゃう」

 

もう我慢の限界だと言わんばかりに小バカにした様子で笑わっていたパチュリー。

しかし、迷ったのは事実。

だから言い返す言葉が見つからなかった。

 

一方通行「チッ……、迷ったついでだ。ここの本を読みてェンだが良いか?」

 

パチュリー「ん?本に興味があるの?」

 

一方通行「本っていうよりはこの世界の事をもっと知りてェ」

 

パチュリー「そうなの。良いわよ別に、汚したり傷付けたりしなければね」

 

一方通行は椅子から立ち上がり本を探しに行った。

そして、パチュリーは咲夜に一方通行が迷った事を魔法で伝える。

そんな事を知らない一方通行はというと、

 

一方通行「…………」

 

???「えっ!!誰ですか貴方!?」

 

一方通行「あァ?」

 

どこにどの本があるとか知らないからとにかく、手当たり次第片っ端に本を取り読んでいるとこのとても大きく広い図書館の中でもう一人の女性と出会った。

その女性は悪魔のような翼を生やし、濃いピンク色の腰まで届くとてもロングな髪をしていた。

 

一方通行「…………」

 

???「ちょっ、いやいやいやいや!!無視しないでぐたさいよ!!」

 

一度振り向いたがその女性を無視して本を読もうとしたら近くまで近付いてきたと思ったら耳を塞ぎたくなるよつなうるさい声量で話かけて来た。

 

???「分かりました。あなた侵入者ですね、そうなんですね!!」

 

パチュリー「違うわ、コア。その人は客人よ」

 

???「パチュリー様!!って、この人お客様なんですか?」

 

パチュリー「ええ。だからちょっかいださないでよ」

 

???「はーい!!」

 

コアと呼ばれていた女性はこの図書館のどこかへ飛んでいった。

そしてそのまま、本を読んでいると咲夜が来た。

 

咲夜「こんな所に居たのね、一方通行」

 

一方通行「……あァ?」

 

咲夜「お嬢様が呼んでるわ、早く来て」

 

一方通行「次はなンだよ…………ったく」

 

咲夜「それにしても、ホントに迷っているとわ……貴方って意外と天然?」

 

一方通行「違ェよクソったれ。見た目よりこの屋敷の中が広過ぎンだよ」

 

咲夜「それはね、実は私の能力で屋敷内の空間を広げたのよ」

 

一方通行「器用な能力の使い方だと誉めてやりてェが、広げ過ぎだクソメイド」

 

咲夜「私もそう思ってるけど、広げてしまったものはしょうがないのよ」

 

一方通行「……………、」

 

パチュリー「おーい、お二人さん。早くレミィの所に行ってあげたら?あの子結構我慢できないタイプよ?」

 

咲夜「そうですね。お嬢様をこれ以上待たせるなんてそんな失礼できません。急ぐわよ、付いてきて」

 

一方通行「………………あァ」

 

そして、次の瞬間時間が停止する。

時間が止まっても動ける二人はそのままレミリアが待つ部屋へ向かった。

咲夜は地面を駆けて、

一方通行は背中から竜巻のような翼を伸ばして移動して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そして。

流れに身を任せて急いでレミリアの待つ部屋へ行った一方通行は、咲夜と共に無事レミリアの機嫌を損ねることなく素早く部屋へ到着する。

 

レミリア「なんで急に帰ろうとしたの?」

 

一方通行「俺にもやる事があンだよ」

 

レミリア「だとしてもよ。お礼にご飯でも誘おうと思ってたのよ?」

 

一方通行「あァ、そォかい。そりゃあ悪かったなァ」

 

フラン「アクセラレータと一緒にご~はんごはん~♪」

 

部屋へ着き。

足を組んで座るレミリアと、その隣にゆらゆらと上半身を前後ろと揺らす上機嫌なフラン。

その二人の正面にさっきまで他人の館で迷子をかました一方通行が座っていた。

 

一方通行「……こちらの用は結構急ぎだが。まァ、飯ぐらいなら良いぜ。金もそこそこしかねェし、今は貰えるモンは全部受け取る」

 

レミリア「じゃあ決まりね。そうだ、どうせなら今日泊まってく?」

 

一方通行「おいおい……、イイのかよ。初対面の相手だぜ?俺は」

 

レミリア「うん、そうね。だから?」

 

フラン「別に良いじゃん♪」

 

一方通行「警戒心ってのがねェのかよ、このバカ姉妹は…………」

 

咲夜「貴方だから特別に良いのよ。感謝しなさい、一方通行」

 

一方通行「…………じゃあ。その言葉に甘えて今日は泊まらせてもらうぜ」

 

そしてその後の話だ。

パチェリーや図書館に居た悪魔のような翼を背中に生やした腰まで伸びた濃いピンク色の髪をした女や、全然仕事してない居眠り門番も一つの部屋に集まり、皆で夕食を食べた。

出された食事はこの大きな紅魔館に似合う気品溢れる料理ばかりだった。

高級レストランで出されそうなものだらけだったのだ。

見た目も良いが、味もそして香り良かった。

見ても、嗅いでも、食しても旨い。

だからだろうか。

一方通行は何も言わず黙って食事していた。

特に肉料理を好んで食べていた。

 

咲夜「食事は済んだわね。だったら次はお風呂場に案内するわ」

 

一方通行「あァ?まだコーヒー飲ンでる途中だ。あとにしてくれ」

 

食事も終わり、パチェリーと悪魔女は図書館に帰っていった。

フラン、レミリアも自分の部屋へ帰ったらしい。メイド長の咲夜は色々なやるべき仕事があるため一つの部屋へ留まってることは滅多にない。

だから食事を用意し、自分も食事を済ませると直ぐ様仕事に取り掛かっていた。

そう、つまり部屋に残っていたのは一方通行だけだった。

そして、食後に欲しいと頼んだ咲夜に淹れてもらったコーヒーを飲んでいたら…………、

突如、隣にメイド長が立っていた。

そして言う。次は風呂だ、と。

しかし、今は美味なコーヒーを舌で存分に楽しんでいる最中。

なのに…………。

 

咲夜「じゃあすぐ飲んで。さあ、イッキよイッキ」

 

一方通行「チッ……」

 

なんか従うのは癪だが、自分は客人だ。しかも色々と世話にもなってしまった。

ならばこの館のルールに従わなくてはいけない。

そう、だから風呂の時間だと言われれば素直に風呂に入るのが正解。

一方通行は残りのコーヒーをイッキ飲みして、お風呂場へと咲夜に案内された。

 

咲夜「ここよ。壊さないでね」

 

一方通行「誰が壊すかよ。俺ァそこまで不器用じゃねェぞ」

 

一人で入るには余りにも広すぎる風呂。

軽く十人~二十人くらい一斉に入れるほど広かった。

そして、冗談を言った後に咲夜は去っていった。

一方通行は服を脱ぎ、腰にタオルを巻いて風呂に入ろうとしたら……、、、、

 

フラン「私もお風呂入るーッ!!!」

 

一方通行「________あァ!?」

 

体にタオルを一枚巻いただけのフランが乱入して来た。

一方通行は慌てて声のした方へ振り返る。

するとフランは走った勢いのまま一方通行の背中に抱きついた。

 

そして、、、、

 

咲夜「妹様っ!今は一方通行が_____________」

 

一方通行「…………………」

 

フラン「ふんふ~ん♪」

 

咲夜「____________きゃぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!???」/////

 

そして次は咲夜も来た。

ルンルンと、鼻歌を歌いながら随分楽しそうに風呂場へ向かっていくのをたまたま見かけたから、今は一方通行が入っていると伝えるため全力ダッシュで駆け付けたのだ。

だが、しかし。

次に咲夜は目にした光景に絶叫した。

そしたら次はレミリアも来て………、

 

レミリア「すごい声が聞こえたけどどうしたの咲夜!!」

 

咲夜「白くて細くてムカつくーッ!!」

 

一方通行「………………………………」

 

フラン「あっ、お姉さま」

 

レミリア「____________きゃぁぁぁあああああああああああああああああああああああッ!?!?」/////

 

叫び声を聞いて、何か問題でも起きたのかと慌てて来てみたらタオルを巻いてるとは言えそれ以外は肌が露出している一方通行をその瞳に映してしまったレミリア。

当然、心構えもしてないから頬を染めて絶叫した。

 

レミリア「フラン、出なさい」

 

そしてそして、

おれから少しは落ち着き、咲夜とレミリアは手のひらで目を覆って今の一方通行見ないようにしていた。

しかし、チラチラ指の間から見たりして?

 

フラン「やだ!!フランはアクセラレータと一緒にお風呂入るのっ!!」

 

レミリア「どうしても?」

 

フラン「どうしても!!」

 

咲夜「どうしますかお嬢様?」

 

レミリア「…………うーん。まっ、しょうがないわね。じゃあフランのことよろしくね」

 

一方通行「いや待て。俺の意見を聞け」

 

レミリア「一方通行。フランに変な事しないでよ?」

 

一方通行「だから俺の意見__________」

 

二人は一方通行に耳を傾けることなく出ていってしまった。

そして、フランはニコニコしながら一方通行に抱きつていた。

 

一方通行「…………チッ、クソったれ」

 

もう諦めて二人でお風呂に入ることにした。

そして一方通行はフランの髪を洗っていた。

 

一方通行「………」

 

フラン「髪洗うの上手いね」

 

一方通行「そりゃあどォも」

 

フラン「あっ、シャンプー目に入った……ッ!!」

 

一方通行「目ェ瞑ってろ」

 

フラン「んー。分かったー」

 

一方通行「頭ァ流すぞ」

 

フランの髪を流してあげ、後は自分で洗えと言った、そしてフランは一方通行に寄っ掛かりながらお風呂に浸かっていた。

 

フラン「♪~」

 

一方通行「随分と楽しいそォだなァ」

 

フラン「うん!アクセラレータと一緒にいるとね、すっごく楽しいのっ!!」

 

一方通行「…………………そォか」

 

フラン「……、アクセラレータは楽しくないの?」

 

一方通行「……………………」

 

フラン「…………ごめんなさい」

 

一方通行「なぜ謝る?」

 

フラン「フランの事怒ってるんでしょ」

 

一方通行「怒ってねェよ」

 

フラン「じゃあ楽しいの?」

 

一方通行「チッ……、あァハイハイ楽しいよ」

 

フラン「………」///

 

一方通行は頭を掻いた後に、フランの頭を撫でて言った。

 

一方通行「そろそろ風呂上がるぞォ」

 

フラン「うん!」

 

二人は風呂から上がり体を拭いた後に、自分の服を着て食事した場所に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レミリア「一方通行に変な事されなかった?」

 

フラン「髪洗ってもらった♪」

 

一方通行「コーヒーくれ」

 

咲夜「カフェインの過剰摂取は体に毒よ。っと言っても聞きそうにないわね、全く」

 

レミリアはフラン話をしていて、一方通行は咲夜にコーヒーを淹れてもらっていた。

そして時間は過ぎ、寝る時間になった。

 

一方通行「俺はどこで寝ればイインだァ?」

 

レミリア「咲夜、案内してあげなさい」

 

咲夜「承知しました」

 

案内された部屋はすごく豪華な部屋だった、だが一つ問題が合った、それはフランがついて来ていた。

 

フラン「私もここで寝る~……」

 

一方通行「ついて来てたのかよ……」

 

咲夜「妹様、それはいけません」

 

フラン「もう眠いからここで寝るのー………。ふぁー……おやすみ~………………」

 

そう言ってベットで寝てしまった。

部屋はたくさんあるがもう結構時間が遅いためここで寝ることにした。

 

咲夜「はあ……、一度寝てしまったらちょっとやそっとじゃ妹様は起きないわ。仕方がない。妹様をお願い」

 

一方通行「…………チッ」

 

そしてフランと一方通行は一緒のベットで寝た。













一方通行「おい、なかなか紅魔館編終わらねェぞ?」

ポスター「そう簡単には終わらせないよ?だって僕紅魔館のメンバー全員好きだもん。特に咲夜さんねっ!!咲夜さんサイコーッ!!咲夜さん可愛いーッ!!貴方の為ならこの命惜しくはないぜッ!!!」

一方通行「黙れ、オマエがキモイのは初めから十分理解出来てっから要らねェ自己紹介するな。そンな事より霊夢がよォ……」

霊夢「………………」イライラ

ポスター「ヤバイな。めっちゃイライラしてる…………」

霊夢「私の出番がない!!主人公なのに!!」

ポスター「えっ?いや……。主人公は一方通行だよ?」

霊夢「えっ!?」


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5話

編集する時間はあったんですが、

書く時間がなくて書けませんでした。











一方通行「……………………ン。あァ?」

 

咲夜「あら、起きたの」

 

目を覚ますと咲夜が覗きこむように一方通行の顔を眺めていた。

 

一方通行「何か用かァ?」

 

咲夜「起こしに来たのよ。もう10時よ」

 

一方通行「……そォか」

 

『もう10時』。

っと言われても、彼は"もう"とは思わなかった。

それは幻想入りする前に居た世界

 

『学園都市』と呼ばれる高度な科学技術を持った町で一方通行は住んでいたときでも朝早く起きることは決してなかった。

だから、まだ彼にとっては"もう"10時と言うよりは"まだ"10時だろう。

 

 

咲夜「妹様はそのまま寝かしといて」

 

 

咲夜にそう言われたので一方通行はフランを起こさない様にゆっくりと大きなベット出た。

そしてその後、首の関節をコキコキっと鳴らした後にズボンのポケットに片手を突っ込んで部屋を出ていった。

 

咲夜「ちょっと、どこ行くの?」

 

一方通行「図書館だ」

 

部屋を出て行ったら、咲夜が後を追ってきて質問をしてきたが軽く返事をした。

 

咲夜「そう。それにしても一人で大丈夫?また迷わないでね?」

 

一方通行「オマエ俺のことバカにしてるだろ」

 

咲夜「いや。全然」

 

と言いながら咲夜は小さく笑っていた。

その事に一方通行は舌打ちをして、この場を去った。

 

咲夜(にしても、一方通行の寝顔は意外だったわ)

 

思い出す一方通行の寝顔。

いつも見せる顔とは違い、とても素直な顔をしていた。

 

咲夜(起こすのを忘れてずっと寝顔を見ていたとは誰にも言えないわね………………)///

 

一方通行の寝顔に見とれてたと言う事を誰にも言わないと誓うメイド長、咲夜だった……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッと、ドアを開け図書館の中に入った。

もう迷うことはない、紅魔館の中は大体把握した。

 

一方通行「パチュリー。本を読みに来たンだが良いか?」

 

パチュリー「そう。本を傷付けないなら読んでも構わないわ」

 

勝手に本を見る訳にもいかないので、パチュリーに本を見て良いか、確認してから本を見た。

 

パチュリー「どんな書物をお求めなの?」

 

一方通行「この世界の情報が書いてあるやつ」

 

興味があるのか、一方通行の探してる本がどんなのか質問してきた

 

パチュリー「本探し協力しましょうか?」

 

一方通行「じゃあ、頼むわァ」

 

その言葉を聞いたら、パチュリーは違う本棚へ向かって歩いて行った、どうやら本当に本探しを協力してくれるらしい。

 

一方通行「ここら辺かァ?」

 

周りにいっぱいある本棚を転々としてると、自分の探してる本があるかも知れない本棚へたどり着いた。

 

???「あわわわッ!?って、わぁぁぁぁぁぁぁッ!!??」

 

一方通行「……あン?」

 

そして本を探してると、上から本を大量に抱えた女性が落ちてきた。

 

一方通行「チッ……。何してンだよ」

 

???「すみません……」

 

落ちてきた少女を一方通行は横抱きする形でキャッチした。

そして呆れた顔を向ける。

地面に激突するかと思ったがそれを防いでくれた彼に横抱きされてる彼女は少しビックリした表情をしていた。

 

???「あの……、助けてくれた事にとても感謝してるのですが…………その、下ろしてくれませんか?恥ずかしい、です」///

 

一方通行「?………ほらよ」

 

お姫様抱っこをされていたため、恥ずかしかったらしい。

だがそんな事に気付けない鈍感さんは何が恥ずかしいのかり。

 

そして下ろしてやると、だった。

 

???「その、ありがとうございます。助けてくれて」

 

一方通行「って言うかオマエ誰だ?」

 

???「いやいやいや!!一度お会いしましたよね!?」

 

一方通行「名前聞いてねェ」

 

???「ああ、そうでしたか。えっと私は_________」

 

パチュリー「__________勝手に住み着いた小悪魔よ」

 

???「パチュリー様!?」

 

名乗ろうとしたら、急に現れたパチュリーが喋って来た

 

一方通行「分かった。勝手に住み着いた小悪魔だな、確かに覚えた」

 

???「いやそんな事覚えないで下さい!!違いますよ!!」

 

パチュリー「事実でしょ」

 

小悪魔「そそ、それは、そうなのですが…………。私は小悪魔です!!」

 

力強くそう名乗った。

からかってたパチュリーはその事に小さく笑い、一方通行は本気で『勝手に住み着いた小悪魔』と覚えようとし

ていた。

 

そしてそれから小悪魔も一方通行の目当ての本探しに協力してくれて思ってた以上に早く目当ての本全てを揃えることが出来た。

 

大量の本を机に置いて、椅子に座りながら読書を開始する一方通行。

小悪魔とパチュリーは彼と反対側にある椅子に座りパチュリーは一方通行と同じ読書を始め、小悪魔はただただぼーっとしていた。

 

 

するとすると、

 

 

フラン「あーっ!!ここに居たんだぁアクセラレータ!!」

 

パチュリー「フラン?珍しいわね、ここに来るなんて」

 

小悪魔「ホントに珍しいですね~」

 

ドカーン!と強くドアを開け、図書館に入って来た、そして一方通行に指を差して笑っていた。

 

一方通行「…………………………」

 

フラン「あれ?読書中?」

 

パチェリー「そうらしいわ。邪魔しないであげてね」

 

フラン「んー……………。コレで遊ぼーっ!!」

 

そう言ってチェスを取り出した、その行動にパチュリーと小悪魔は驚き、『人の話聞いてたァ!?』っと二人同時に心の中で叫んだ。

 

一方通行「あァ?別に構わねェよ」

 

フラン「やったっ!!」

 

一方通行は大きな本を机に置いたまま片手で読んだ、こうすればもう片手が空くため、フランとチェスをすることができる。

 

パチュリー、小悪魔「…………」

 

フラン「んー……、ここ!!」

 

一方通行「ン……………。ホラよ」

 

フラン「うー、うー、うーん?どうしよう?」

 

一方通行のやってることに、パチュリーと小悪魔は驚いていた。

だって本を読みながらチェスをしてるのだから。

しかも読書する速度は早いしチェスは強いし……………、

 

もしかしたらこの一方通行と言う者は、

 

パチュリー「天才ね」

 

小悪魔「あんなこと私じゃできませんね」

 

そして、フランと一方通行のチェスはとうとう決着がつくかと思いきや、またもやこの図書館に人が来た。

 

レミリア「次はここよ」

 

フラン「お姉様!!」

 

咲夜「お邪魔します」

 

パチュリー「どうぞ。にしても今日は人が多いわね」

 

小悪魔「なんか楽しいですね!」

 

レミリアはフランと協力してチェスをしていて、咲夜はパチュリー達とちょっと小話を、そしたら急に大きな爆発音が

 

一方通行「あァ?何だァ?」

 

本を読み終わり、次の本を読もうとしたら爆発音が聞こえたため、立ち上がり少し周りを見てみた。

 

レミリア「魔理沙ね」

 

フラン「魔理沙?」

 

咲夜「魔理沙ですね」

 

パチュリー「魔理沙でしょ」

 

小悪魔「そう、でしょうね…………」

 

一方通行「あン?魔理沙ァ?」

 

一方通行以外、皆意見は一致していた、だが一方通行は何故魔理沙なのか全然分かんなかった。

 

美鈴「くっ、ここまで来てしまった…………」

 

魔理沙「邪魔するなよ。私はただ本を借りに来ただけだぜ?」

 

美鈴「貴方っ!!そう言いながら全然本返してくれないでしょぉ!!」

 

魔理沙「だーかーらーっ!!死ぬまで借りてるだけだって毎回毎回言ってるだろ!!」

 

ドアから美鈴が吹っ飛んできてが体勢を立て直し、立った、そして魔理沙は箒にまたがりながら飛んでいた。

 

一方通行「マジで魔理沙だなァ」

 

レミリア「あの子、時々ここにある本を盗みに来るのよ」

 

パチュリー「それには本当に困ってるの」

 

咲夜「おてんば娘ですが、彼女は結構な実力者ですからね。追い返そうとすると中々苦労させられます」

 

フラン「アハハハハハハハハッ!!魔理沙"で"遊ぼうかなぁ?」

 

小悪魔「お止め下さい。死人がでてしまいます」

 

魔理沙「くそっ____________________ん?」

 

なにか声がしたのでその方向へ首を向ける。

そして、声のする方へ向くとそこには白が特徴的なこの幻想郷を救った者。

ここに住む他の紅魔館メンバーと一方通行の姿があったのだった。

 

魔理沙「アク、セラレータ?お前なんでここに居るんだ?」

 

一方通行「まァ、少し事情があってなァ」

 

魔理沙「へー。服変わったな」

 

一方通行「あっちの方が動きやすかったが。まァ、衣装チェンジって所だ」

 

魔理沙は一方通行がここに居たことに驚いていたが、それより二人が知り合いという事に紅魔館一同は驚いてた。

 

レミリア「二人とも知り合いだったのね」

 

一方通行「まァな」

 

パチュリー「そんな事より魔理沙を止めなくちゃ。本がまた持ってかれちゃう」

 

咲夜「そうですね。ここは私が追い出してやります」

 

一方通行「いや、俺が追い出してやるよ」

 

そう言って魔理沙の方へ歩いて行ったが、

 

途中、一方通行は紅魔館の彼女達に振り返って、

 

一方通行「無事魔理沙を追い出せたら報酬としてコーヒーを一杯淹れてくれ」

 

そして美鈴の肩に手を置いて、

 

一方通行「ここはもォ下がれ。選手交代だ」

 

美鈴「は、はい………」

 

美鈴は彼の言う通りに後ろに下がった。

そして魔理沙と一方通行が向き合う。

 

一方通行はズボンのポケットに両手を突っ込んで立っていた。

 

魔理沙「まさかと思うが私の邪魔するのか?」

 

一方通行「あァそォだ。ここには借りがある。たがらその借りを返す」

 

魔理沙「ん?借りってなんの借り?」

 

一方通行「コーヒーの借りだ」

 

魔理沙「……………………、そう言えば一方通行って異常なまでにコーヒー好きだよな」

 

一方通行「だから……………。いくぜェ魔理沙ァ!!」

 

魔理沙「いくら一方通行が相手だからと言っても手加減はしないぜッ!!」

 

一方通行「あァ、俺に手加減なンて必要ねェ。全力で掛かってこいっ!!だが………オマエが全力を出そうがすぐに終わっちまうがなァッ!!」

 

ボバッ!!!

と、一方通行の背から爆発したかのように噴き出てこの世に姿を現した二本の噴射に近い真っ黒な翼。

 

その翼を見た者は恐怖の感情を覚えてしまうだろう

 

何もかも吸い込みそうな真っ黒な翼に。

 

 

魔理沙「………翼、なのか。それは………?」

 

 

冷や汗をかく魔理沙。

それはそうだろう、

こんな強力な力を見たのだから。

 

だが、一方通行はそんな事をお構い無しに黒い翼を魔法使いの彼女へ放つ。

 

魔理沙「_____________うおッ!?危なッ!!」

 

一方通行「へェ………、避けンのは上手いじゃねェか」

 

ニヤニヤしながら小馬鹿にするように口角を上げて笑う一方通行。

その事に魔理沙は怒りを覚え本気でレーザー型の弾幕を五から六発ぐらい連続で放つ。

 

しかし。

 

一方通行「_____________遅ェな。そンな速度じゃ百年遅ェよ!!」

 

魔理沙「なっ!?」

 

数々の弾幕を跳躍して避けた。

そして上から黒い翼を叩き付ける。

しかし、なんとかその黒い翼に反応することが魔理沙は間一髪回避に成功する。

 

一方通行「ン、まっ。こンなンでオマエを倒せるとは思ってねェけどな」

 

魔理沙(……………危なかったぜ。さっきのをまともに受けてたら一発でお陀仏だ)

 

一方、その戦いを見ている紅魔館一同はというと、

 

パチュリー「なに、あの翼みたいなの……………?」

 

小悪魔「あのー、あの人って本当に人間ですか?さっきから戦ってる姿を見させてもらっていますが全部が全部人間離れした力ですよ!?」

 

レミリア「人間………………。かもしれない」

 

フラン「アクセラレータ、やっぱりスゴーイ!!」

 

パチュリー「そうね、フラン。ホントにすごいわ、彼は…………」

 

驚きを隠せなかった。

 

初めて見る力。

常識では語れないその強さ。

 

そんな力を余裕で振りかざす姿はまさに…………、

 

 

 

『怪物』そのものだった。

 

 

 

咲夜「確かにスゴい。ですがあれでも一方通行は本気ではありませんね」

 

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

 

 

咲夜の言葉に皆一斉に振り向き驚く。

あれでも本気ではないだと?

もしもそれが冗談だとしても笑えない。

 

だが咲夜は一方通行の黒い翼を見て口を開く

 

咲夜「私はあの状態の一方通行と戦いました。ですがあの時、何かの違和感のようなものを感じました……」

 

レミリア「違和感?」

 

咲夜「……はい。あの時、私に一方通行に遊ばれてる様に感じたのです。まだまだこの人には底知れない力がある。あの時私は必死でしたが、そう確信しました」

 

パチュリー「あれでも本気じゃない………!?」

 

レミリア「成る程。じゃあ私と戦った時も一方通行に遊ばれてたってのね」

 

底知れない力。

その力を持っている白い怪物に皆恐怖を感じた。

だが、それと同時に『頼もしい』と思った。

 

一方通行「オラオラどうしたァ!?まだまだ追いかけて来るぜェ!!ギャハハハハハハハハッ!!」

 

魔理沙「戦闘となるとお前性格変わりすぎだろ!!」

 

二つの黒い翼が追って来る。

これじゃ本を取る事が出来ないし、反撃の隙もない。

 

だがここで魔理沙は思いきった選択をする。

 

それは……………………、

 

一方通行「はっ、そうきたか。面白ェなァオイ!!」

 

『一方通行に向かって猛スピードで突っ込む』

魔理沙のその考えを分かった一方通行は楽しそうに笑っていた。

そしてまだまだ怪物の背中から伸びた黒い翼は白と黒の魔女の少女を後ろから追う。

 

魔理沙(自分の攻撃で自滅させてやるぜ!!)

 

一方通行「嘗めンなよカスがァ!!」

 

魔理沙は一方通行に真っ正面から()つかるギリギリで上に上昇、

そして金髪の魔女の少女の後を追っていた黒い翼は一方通行に当たらず方向転換して魔理沙を追う。

 

しかしここで白い怪物は気付く。

良く見ると魔理沙は本を持っていたのだ。

 

一方通行「なにッ!?本をいつ取った!?」

 

魔理沙「だははははっ!!翼にお前の意識を集中させたのさ、そうしたら少しの隙が出来る。私の目的は最初から本の獲得。これで私の勝ちだぜ!!」

 

一方通行「魔理沙ァァァァッ!!」

 

勝ち誇って魔理沙が図書館から出ようとした瞬間、強烈な暴風が魔理沙を襲う。

その暴風は一方通行の能力によって放った烈風だった。

 

魔理沙「くっ……!!……だが、この程度なんともないぜー!!」

 

魔理沙を止める事は出来ず、そのまま逃げられてしまった。

一方通行の背中にはもう黒い翼はなかった。

そしてさっきまで騒がしかった図書館は静まり返った。

 

一方通行「…………………………………………」

 

レミリア「惜しかったわね、でもありがとう一生懸命戦ってくれて」

 

フラン「カッコ良かったよ!」

 

咲夜「本は取られたけど、頑張りを讃えてコーヒーはあげるわよ」

 

パチュリー「まぁ、貴方たちの戦いは見てて楽しかったし、別に責めたりしないわ」

 

小悪魔「凄いですね、一方通行さん!私、驚いてばっかりでしたよ」

 

美鈴「そうですよ、私も驚いてばっかりでした!」

 

紅魔館の皆で一方通行を慰めていた。

だが当の本人は、、、

 

一方通行「なに言ってやがる?」

 

紅魔館一同「えっ?」

 

皆の方を向いて手を目の前に出す、そうしたらその手に魔理沙が取った本が落ちて来た。

 

一方通行「俺が本すら取り返せねェヤツだと思ったかァ?」

 

レミリア「えっ?だって。ええ!?」

 

フラン「おー!!」

 

咲夜「これはこれは。一本取られたわ」

 

パチュリー「………えっ?」

 

小悪魔「ホントに貴方には驚かされてばっかりですよ」

 

美鈴「なんで、取られた本が……?」

 

一方通行「仕組みは簡単だァ。あの時放った烈風は魔理沙から本を取り返すためだけに放った。そして本は上に飛ンで行き俺の手元に落ちてきた」

 

フラン以外皆ポカーンとしていたが、

だがその後皆は笑顔になっていた。

 

一方通行(…………… まっ。こンなモンかァ)

 

そして本をパチュリーに渡した。

 

一方通行「ホラよ。傷は付いてねェと思う」

 

パチュリー「ありがとう。もしもまた魔理沙が来たらその時はよろしくね☆」

 

一方通行「チッ。次はオマエでやれよクソったれ」

 

こうして魔理沙から本を守る事が出来た。

 

そして、一方通行は紅魔館の皆とより仲良くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、魔理沙はというと……、

 

魔理沙「ふーふふーふーん♪さーて本は______________ って、あれあれ無い!?」

 

自分の家に帰ってる途中自分の服の中に隠した本が無いことに気付いた。

 

魔理沙(…………………………やられたぜ)

 

一人で落ち込んでいた。







ポスター「13話人気スギィ!!」

一方通行「あン?それがどォしたァ?」

ポスター「あのー。第一章の13話って面白い?」

霊夢「そんなの知らないわよ。それより私の出番は?」

ポスター「まだ無いよー?」

霊夢「クソ………。二重結界ッ!!」

ポスター「えっ?ココで使うかそれぇぇぇぇええええええええええええええええええッ!?!?」

一方通行「じゃあ俺と出番変わるかァ?」

霊夢「バカ。アンタと一緒に出たいのよ………///」

一方通行「あン?なンか言ったかァ?」

霊夢「もうッ!!バカァァァァァァァッッ!!!」

一方通行「あァ!?」


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6話

ホントはですね!前回で紅魔館編は終わってる筈だったんですよ!!!

クソ……。続きをどうぞ( ゚д゚)ノ


無事、魔理沙から本を守った一方通行はまた椅子に座り読書を始めたが紅魔館一同はそんな白い彼ををじーっと観察していた。

 

が、

 

一方通行「ン?…………なンだよ」

 

自分に向けられた視線に気付き質問をする。

 

パチュリー「確認するはね、貴方の能力はベクトル操作であってるのよね?」

 

一方通行「あァ。それがどォした?」

 

パチュリー「じゃあ、あの黒い翼はなんなの?」

 

その質問に紅魔館の皆は興味津々だった。

それはそうだろう。

だって突然人間からあんな翼が生えたんだから。

 

一方通行「………知らねェンだ、俺でも」

 

「「「えっ!?」」」

 

一方通行の発言に紅魔館の皆が同時に驚いた。

 

レミリア「知らないの?自分の力なのに?」

 

フラン「んー?じゃあなんであの翼の使い方は分かるの?」

 

一方通行「突然俺の背中に現れたンだよあの翼は。そして使い方は本能的に分かった」

 

パチュリー「不思議ねー。そんな事が起きるなんて」

 

小悪魔「もしかしたら一方通行さんの能力はベクトル操作じゃ無いのかもしれませんね」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

疑問に思った者が一斉に小悪魔に振り向く。

振り向かれた小悪魔は焦っていた。

 

小悪魔「わわっ!?そんな一斉に見ないで下さいよ。ただ適当に言っただけですよ」

 

パチュリー「なんだ……。脅かせないでよ」

 

咲夜「ですがあの力、ベクトル操作とは言えませんよね。それとは別の……なにか異なる力に私は感じました」

 

美鈴(???……全然分からない……)

 

一方通行(……チッ。あの翼の正体をつきとめねェとな)

 

それぞれの考えたが答えは出なかった。

 

そして、一方通行の話はまだまだ続く。

 

咲夜「ねえ、疑問に思ったけどベクトル操作ってどんな事が出来るの?」

 

一方通行「向きを操るぐれェだ」

 

咲夜「具体的に話して」

 

一方通行「あァー……。例えば風の向きを操って空気を一箇所に集め圧縮することにより高電離気体(プラズマ)を作ったり、体の中に流れている生体電気を操り痩せる事が出来たり_____________________ってなンだよ……?」

 

『痩せる』と言うワードが出た瞬間皆の一方通行を見る目が変わった。

 

一方通行(生体電気を逆流させて殺すって言うよりイイと思ったンだが。不味かったかァ?)

 

レミリア「その話……本当なの?」

 

一方通行「あァ…………」

 

答え瞬間皆が一方通行の周りに集まった、そして次々と質問をしてきた。

 

レミリア「じゃあ痩せたいと思ったらすぐ痩せれるの!?」

 

フラン「他には何が出来るのー?胸とか大きく出来る?」

 

咲夜「生体電気を操れるのよね、だったら肩のマッサージとかも出来るの?」

 

パチュリー「じゃあ一方通行が痩せてる理由は能力のおかげなの?」

 

小悪魔「痩せれる能力なんですか?そうなんですか!?」

 

美鈴「いつでも痩せたいと思ったらすぐ痩せれるんですか?それとも時間は少し掛かるんですか?」

 

一方通行「俺は聖徳太子じゃねェンだ。一人ずつ質問しろ。数人に同時に答えられるかっての」

 

紅魔館メンバーそれぞれの質問が投げ掛けられる。

しかし、彼が自身で言った通り一方通行は聖徳太子ではない。

一人で数人同時に話をできないのでいっぺんに答えられない。

 

そして。

皆は落ち着き、一人一人の質問に一方通行が答えた。

 

一方通行「まずはレミリアからだ。生体電気を操って痩せされるから一気に痩せさせる事は出来ねェ、もしも一気に痩せさせようとすると体に影響が起きちまう、生体電気を使ってるからなァ」

 

レミリア「ふ~ん…なるほどねぇ」

 

一方通行「次はフランだ。やろうと思えば出来る。だが、俺はそンな事しなくてイイと思うぞ」

 

フラン「うー。分かった…………」////

 

一方通行「咲夜の質問は簡単だなァ。その悩みはすぐ解決できるぜェ」

 

咲夜「つまり出来るのね。なら、今度頼もうかしら?」

 

一方通行「あー…………くそっ。だンだン面倒になってきたァ。次はパチュリーか。好きでこうなったンじゃねェ、以上」

 

パチュリー「へー、細いの気にしてるのね…………フッ」

 

一方通行「小悪魔はバカ。以上」

 

小悪魔「えぇ!?何でですかぁ!?」

 

一方通行「美鈴の質問はレミリアに似てるなァ、痩せるには時間が掛かる」

 

美鈴「確かに似てますね…そうですか分かりました」

 

全ての質問に答えた(小悪魔を除く)、そして質問を答えた一方通行は疲れていた。まさか痩せると言うワードでまさかこうなるとは……

 

一方通行「クソったれ……疲れたァ…」

 

レミリア「一方通行が急にあんな事言うからよ」

 

一方通行「あァ?なンか変な事言ったかァ俺ェ?」

 

美鈴「女性に向かって痩せれるって言ったじゃないですか」

 

一方通行「だからどォした?」

 

咲夜「それが原因って事よ」

 

一方通行「あン?チッ、くっだらねェ」

 

パチュリー「くだらなく無いわよ。女性は皆体のあちこち気にしてるのよ」

 

小悪魔「どうせ、一方通行さんには関係無いですけどねー」

 

そして一方通行の周りから離れて椅子に座りながら話す。

 

一方通行「そンなモンかねェ…………」

 

フラン「あのねアクセラレータ、女の子は痩せたいと思ってるし、可愛くになりたいとも思ってるの」

 

一方通行「あァ?オマエら十分可愛いだろ」

 

紅魔館一同「……」/////

 

その言葉に紅魔館一同は照れていたが言った本人は何事もなかった様に本を読もうとしていた。

 

レミリア「ねぇ一方通行、さっき言った事本気で思ってるの?」///

 

一方通行「あン?……あァ」

 

レミリア「……」/////

 

本を開いた瞬間に言われたので本を閉じて質問に答えた、そしてレミリアは頬を赤く染め、手で顔を隠していた。

 

フラン(もう…アクセラレータったら、急にああ言う事言うんだもんなぁ……嫌じゃ無いけど)////

 

咲夜(……ダメだ、意識し過ぎて顔見れない)////

 

パチュリー(初めて男の人に褒められた……結構良いものね)////

 

小悪魔(ッ~~~!……嬉しいような、恥ずかしいような……)////

 

美鈴(まただ…凄くドキドキする、これってもしかして……)////

 

そしてレミリアに続き皆頬を赤く染めていた。普通この状況を見たら誰でも気付くだろうが一方通行は……

 

一方通行「あァ?何黙りこくってンだァ?」

 

紅魔館一同(お前があんな事を言うからだ!!!)

 

と、心の中で叫んだ、と言っても聞こえ無いがな。

そして一方通行はある事を思い出す、それは

 

一方通行「そォ言えば咲夜、コーヒーまだか?」

 

咲夜「えっ!ああ…そうね(今それどころじゃ無いのにーッ!!)」///

 

一方通行「…………忘れてたのか」

 

咲夜「今すぐ持って来るわよ。それより美鈴には話があるわ」

 

美鈴「は、はい……(絶対怒られるなぁ………)」

 

そして咲夜と美鈴は椅子から立ち上がり、この図書館から出て行こうとしていた。

 

パチュリー「コーヒー好きなの?」

 

一方通行「あァ、まァな。好きか嫌いがで言ったら好きの類いだ」

 

レミリア「でも、いくら好きと言っても飲み過ぎは毒と思うけど?カフェインって過剰摂取すると結構危ない目に遭うわよ」

 

一方通行「ほっとけ。アイツのコーヒーがうめェのが悪ィ」

 

小悪魔「カフェイン中毒者ですね」

 

フラン「カフェイン中毒者?」

 

そして。

出口に向かって歩いてる最中の美鈴と咲夜はそんな話し声が聞こえ、、、

 

美鈴「________ですって!良かったですね咲夜さん!」

 

咲夜「そんな事より早く門に戻りなさい!じゃないと刺し殺すわよ!!」///

 

美鈴「えぇ!?わっ、分っかりましたぁぁぁぁッッ!!!」

 

図書館から出て、少し歩いてたらそんな事を顔を真っ赤にした咲夜に両手に何本ものナイフを指の間で挟むように持って言われたので美鈴は思いっきり全力で走って自分の仕事場所。門へと向かって行った。

 

咲夜(ふぅー……全く。今日は変に疲れる日ね)

 

一方。

美鈴は、、

 

美鈴(にしても咲夜さん珍しく顔真っ赤にしてたな。まさか、咲夜さんも……?)

 

そして、少し時が過ぎた。

皆それぞれやることがあるため一方通行とフラン以外椅子から立ち上がり自分の居場所へと戻っていった。

 

一方通行(これで終わり……か。まァ、この世界は大体分かったが、なぜアレイスターはこの世界を選ンだンだァ?)

 

大量に持ってきた本を全て読み終えた。

どうやら、この幻想郷は今までも不思議な事がいっぱい起きるらしい。

が、『だからこの世界を破壊して自分の好きな様に改造してから自分が思い描いた世界でも作りたいのか?』

……っと、一方通行は思った。

 

一方通行(クソっ……、あの野郎ォ今度こそぶっ殺してやる!!)

 

もうアレイスターの事を考えるのは止めた。

『次会ったら殺す』これでもう良いだろっと思い後はボケーっとして咲夜のコーヒーを待つことにしたのだ。

 

咲夜「遅れてごめんね。はい、コーヒー」

 

一方通行「咲夜……、オマエ毎回毎回時間止めて移動してンのかよ」

 

少しの時間を止めて図書館まで移動してきた事に一方通行は呆れていた。

そんな一方通行の隣に居たフランが、

 

フラン「ねえねえ、咲夜。フランにはないの?」

 

咲夜「御用意してます。どうぞ、紅茶です」

 

フラン「やったっ♪」

 

一方通行「メイドってのも案外大変だそォだな」

 

咲夜「慣れてしまえば楽よ。まあ、それはどんな仕事にも言えることだけどね」

 

念願のコーヒーを飲んだ後にそんな事を言っていた。そしてレミリアと咲夜は図書館から出て行った。

 

一方通行「さァて、じゃ行くとしますかァ」

 

フラン「ん?どこに?」

 

本を片付けようとしたらフランが手伝ってくれて、すぐ片付けられた、そして両手をズボンのポケットに突っ込んで隣に居るフランに振り向いて話す。

 

一方通行「あァ?…約束忘れたのかァ?」

 

フラン「!?もしかして外に……!!」

 

一方通行「あァ、行くぜ」

 

フラン「やった~!」

 

二人は図書館を出て行き、長い廊下を歩いていった。

 

小悪魔「聞きましたパチュリー様?」

 

パチュリー「えぇ、でも一方通行が一緒なら大丈夫でしょ」

 

小悪魔「ふふっ……楽しかったですね」

 

パチュリー「そうね、次は私が一方通行を呼ぼうかしら」

 

小悪魔「おっ!パチュリー様、あの人の事気に入ったんですか?」

 

パチュリー「……少しね」

 

小悪魔(凄いなー、一方通行さんは。まさかパチュリー様が魔理沙さん以外の人に興味を持つなんて……)

 

パチュリー「なに突っ立てんの?仕事しなさい」

 

小悪魔「はい!分っかりましたーッ!」

 

そして小悪魔はパチュリーに頼まれた本を取りに飛んで行き、パチュリーはいつもどうりに読書に没頭していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そして。

所変わってここは紅魔館の玄関。そこに二つの影が……。

 

一方通行「緊張してンのかァ?」

 

フラン「うん。でもアクセラレータが一緒だもん、すぐにこの緊張も解けるよ!!」

 

一方通行「そォか。なら行くぞ、外へ」

 

吸血鬼は太陽の光に弱いとゆうことを知ったので日傘を探したらとても可愛らしい日傘を見つけた。

 

そしてその日傘を差して二人は外へ散歩に出かけた。




一方通行「……………………オイ」

霊夢「なによ」

一方通行「なぜ距離をとってンだよ」

霊夢「別に意味なんて無いわよ」

一方通行(あァ?訳わっかンねェぞコイツ)

霊夢(もうこのコーナーから出ようかな……………)

ポスター「おーとっ!!そいつは困るな霊夢さん。いくらアクセラさんと居るのが気まずいからって」

一方通行「あン?気まずいィ?」

ポスター「そうなのそうなの☆前回_________」

霊夢「人の心を勝手に読むなァァァッ!!!」

ポスター「えっ嘘!?またこのパターンかよ!?」ドーン!

霊夢「ふう…………。危なかった」

ポスター「……………………」

一方通行「オイ霊夢。前回がなンだって?」

霊夢「教えないっ!!」


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7話

今年最後の投稿です。

って、俺は最近書き始めたばかりですけどねッ!!!

さて、お待たせしました。
どうぞどうぞ☆(どこの誰も待ってねえよ…………)


初めてフランは館の外に出て、嬉しそうに周りを見ていた。

 

フラン「わー………、眩しい」

 

一方通行「まァそォだろォな。あンな暗ェ場所にずっと居りゃあな」

 

そして二人は門にたどり着く。

 

するとそこには美鈴と咲夜が居た。

 

咲夜「なぜ魔理沙が彼処まで進めたか教えてもらえる?」

 

美鈴「えっ。あ、あのですね。それは………」

 

咲夜「なに?」

 

美鈴「きゅ…………、急に猛スピードで突っ込んで来たんですよ!!」

 

咲夜「そんな事貴方ならどうと言う事は無いでしょ?」

 

美鈴「………………………………………」

 

咲夜「やっぱり…………、寝てたのね!!」

 

どうやら怒られてた。

そんな事を気にせず一方通行とフランは通り過ぎようとしたら声をかけられた。

 

咲夜「全く!!_____________ん?一方通行と、妹様ッ!?」

 

一方通行「あン?」

 

フランを見た瞬間美鈴と咲夜は驚愕していた。

 

そして咲夜は二人の前に立つ。

 

咲夜「どこ行くつもり?」

 

一方通行「散歩に行くだけだっつの」

 

フラン「うん。散歩だよー」

 

美鈴「…………でも流石に……」

 

咲夜「妹様はダメです」

 

そして二人の後ろで美鈴は困っていて、前に立っている咲夜はそのメイド服に仕込まれたナイフに手を伸ばした。

 

一方通行「どけ。コイツと約束したンだよ、外に連れ出してやるってなァ」

 

咲夜「だからと言って…………」

 

美鈴「良いじゃないですか別に」

 

美鈴が前に出て来て話して来た、どうやら美鈴は自分達の見方になってくれるらしい、そして咲夜は悩んでいた。

 

咲夜「……………………はあ、分かったわ。どうぞ」

 

フラン「わ~い!!」

 

美鈴「良かったですね」

 

咲夜はナイフから手を離して道を開けた。

そして見方してくれた美鈴は笑っていた。

フランはニコニコしながら一方通行と手を繋いで歩いて行った。

 

咲夜「お嬢様に何て報告しようかしら…………」

 

美鈴「普通に報告したら良いじゃないですか。妹様は散歩にお出掛けしました、と」

 

二人の背中を見ながら会話していた。

フランが外に出ることは危ないと知っているが、もう止めることは出来ない、だって、あんなに幸せそうなフランを見てしまったから。

 

咲夜「ええそうね。そうさせてもらうわ。じゃ、普通に報告しに行ってくるわ」

 

美鈴「行ってらっしゃーいっ!」

 

そう言って咲夜は屋敷の中に歩いて行った、そして美鈴はいつもどうり、門の横に立って警備をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色んな所を歩いた。

 

そして最後に行き着いた場所は

 

フラン「ここは、どこ……?」

 

一方通行「湖だろ」

 

そうここは湖。

 

透き通る水に綺麗な青空。

そして眩しい太陽。

 

ここはとても綺麗な場所だった。

 

フラン「それにしてもこんなに歩いたのは初めてだなー」

 

一方通行「あンな所に何年も居りゃあこンなに歩けねェしな」

 

一つの日傘を二人で入りながら綺麗な湖を見ていた。

 

だが一方通行が、あることを切り出す。

 

一方通行「なァフラン。俺はそろそろやらなきゃいけねェ事があるからオマエ達の前から去らなきゃいけねェ」

 

フラン「えっ?そう、なんだ…………」

 

下を向いてしょんぼりするフラン。

だが一方通行は落ち込んでしまっているフランを優しく頭を撫でる。

 

一方通行「実は俺には住む家がねェンだ。だから俺が住める家を探してるンだよ。だがこれが終わったら俺は暇になるだろォな……………」

 

フラン「ん?」

 

一方通行「分からねェか?家探しが終わったらまた会えるって事だよ」

 

フラン「そうなの!?またアクセラレータに会えるの!?」

 

一方通行「あァ。だからそンな顔するな」

 

優しく撫でてたがいきなりフランにチョップして意地悪そうに笑う。

そしてチョップされた頭を押さえながら笑うフラン、また一方通行に会えるとゆう事が嬉しいらしい。

 

一方通行「ったく。あ、俺が家見つかったら家の場所教えてやるよ」

 

フラン「ホント?」

 

一方通行「次はオマエが俺に会いに来いよ。いつでもオマエが入れるように鍵は開けとくぜ」

 

フラン「うん!!次は私がアクセラレータに会いに行く絶対ね!!」

 

ニコニコ笑いフランは一方通行と約束をする。

 

もう一度会うと言う約束を。

 

そして一方通行は持っていた日傘をフランに渡し、湖の方へ歩いていく。

 

フラン「待ってアクセラレータ落ちちゃうよ!!」

 

一方通行「俺がオマエに試練を与えてやる」

 

フラン「…………試練?」

 

フランは片手を伸ばして止まれと言ったが、なぜか一方通行は試練と言う変な事を口にした。

自分は湖に落ちそうなのに、だが一方通行は続けて話す、どうやら湖に落ちるという概念は頭に無いらしい。

 

一方通行「ここから一人で紅魔館に帰れ。それが俺がオマエに与える試練だ」

 

フラン「えっ?」

 

フランは二つの事に驚く、

一つは自分はここから一人で紅魔館に帰ると言うこと、そしてもう一つは一方通行が湖をまるで普通の道のように歩いていること。

 

一方通行「分かったかァ?」

 

フラン「う……うん、でも何で一人で?」

 

一方通行「俺が側にいて何でもやっちまったらオマエは成長できねェ。だからこの試練はオマエが成長する第一歩だ」

 

そう、この試練はフランを普通の女の子にするという考えのもと、出来た試練なのだ。

一人で外に出て、一人で帰る。このぐらいはできて欲しいと思った。

どうやらフランは一人になるのが怖いということは一方通行はもう分かっていた。

なぜそれが分かったのか?それはフランがずっと自分の側から離れなかったからだ。

食事の時も、お風呂の時も、寝る時も、読書する時も、ずっとフランは一方通行の側に居た。

だから一人になっても大丈夫にするため試練を与えたのだ。

 

一方通行「出来るか?フラン」

 

フランの立っている場所から少しの遠い場所で止まり吸血鬼の少女の方を向いて話す。

フランは少し考えていたが答えは出たらしい。

 

その答えは……、、、

 

フラン「うん出来るよ。アクセラレータが居なくて寂しいけどまた会えると思うと大丈夫!!」

 

一方通行「そォか。じゃあなフラン。紅魔館の奴らにはよろしく伝えといてくれ」

 

フラン「分かった!じゃあまたねアクセラレータ!!」

 

そして、水面の上に立っていた一方通行はドッバーンッッ!!っと大砲でも撃ったかのような音と共に水飛沫を撒き散らし飛んで行ってしまった。

残ったフランは日傘を握りしめて紅魔館へ帰って行った。

一人はやっぱり寂しい。

この周りに誰も居ないという空気は何百年経っても慣れることは絶対に出来ないだろう。

でも大丈夫。平気だ。

例え今、目の前に居なくても記憶の中に彼が居る。

あの真っ白な彼の声を覚えている。

それにまた会えるのだ。そう約束した。

 

この世で唯一自分の"理解者"になってくれたアクセラレータといつかまた会える。

それさえ分かっていればフランは、どんな困難にも立ち向かうことが出来る。

 

フラン「私、強くなってみせるよ。アクセラレータのように……、優しくて強い人に、ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美鈴「あれ?フランお嬢様なぜお一人何ですか?一方通行さんは?」

 

一人で帰って来たフランに驚き駆けつけた。

だがフランは笑いながら話す、今まであったことを

 

フラン「あのね、アクセラレータの家が見つかったら会いに来いって言ったんだ」

 

美鈴「そうですか。でしたら皆で一方通行さんの新居に祝い品を行きましょう」

 

フラン「うん行こ、皆で一緒に!!」

 

笑う。ただ嬉しいから笑う。

 

これが普通なんだ。

これが普通の女の子と言う事なんだ。

 

一方通行は化け物と呼ばれていた少女を普通の女の子にしたとゆうよりかは……………、

 

 

フラン(楽しみだなあアクセラレータにまた会うの……………)///

 

恋する乙女にしただけなのかもしれない?

 

 

そして一方通行が去った紅魔館はいつもどうりに時間が過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

湖からド派手に飛んだ一方通行は背中に竜巻を作り空を飛んでいた。

 

だが、あることに気付く。それは………………

 

一方通行(俺が今行こうとしてる場所は人間の里?だっけか。もしかしたらこのまま行ったら不味いか?)

 

このまま、

つまり飛んで人間の里に着いたらどうなるか、っと言うことだ。

 

一方通行(この世界の連中は超能力の事を知ってンのかァ?)

 

飛びながら考える。

 

面倒ごとになると本当に面倒だから。

結果。一方通行が出した答えは、

 

一方通行(……チッ。歩いて行くとしますかァ)

 

背中の竜巻を解除して一直線に地面に降りた。

 

一方通行「よっ……と。結構周りは荒れちまったが、まァいっかァ」

 

降りた場所は道の開けた森の中だった、でも一方通行のせいで周りはボロボロになってしまった。

 

一方通行(ここから人間の里までどれぐらいだァ?)

 

なんて事を考えてると、一方通行の前におかしな連中が出てきた。

 

???「見つけたぞ偽者!」

 

???「止めなよ、チルノちゃん」

 

???「……お腹空いたー」

 

一方通行(なンだァコイツら?)

 

小さい女の子が三人一方通行の前に突然現れた。

青い服装の女の子が一方通行に指を差して、

 

???「あたいと戦え!!」

 

一方通行「断る」

 

真っ正面からの決闘の申し込みを、一言で断る幻想郷最強の能力者、そして女の子三人を無視して歩いて行ったら後ろから尖った氷が六つ飛んできた。だが、一方通行に当たらず空に向かって氷は飛んで行ってしまった。

 

???「あれ?」

 

???「やっぱり止めなって。この人にチルノちゃんは勝てないよ」

 

???「そーなのかー」

 

一方通行(……………あのクソガキ、なンつーパワーだ)

 

振り返り素直に驚く。

氷系の能力者には学園都市で飽きる程会ったがこれ程強い氷系の能力者に会うのは初めてだ。

 

一方通行「おいクソガキ。戦えって言ったよなァ?」

 

???「ああ言った!!後あたいはチルノだ!!」

 

一方通行「そンな事はどうでもイイ。気分が変わった。しょうがねェから戦ってやるよ」

 

チルノ「フッフッフッ。望むの頃だ!!」

 

???「自分で申し込んだんだから望んで当然でしょ……全く」

 

???「そーなのかー」

 

チルノと名乗った子の後に居る二人は、少し後ろに下がりチルノの戦いを見守る事にした。

 

チルノ「偽者!!あたいはお前に勝つ!」

 

一方通行「偽者ォ?さっきから言ってるがなンのことだ?」

 

チルノ「お前は幻想郷最強の能力者らしいがそれは違う!!あたいが最強だ!!」

 

一方通行「最強がそンなに欲しィかよ。別に俺は最強なンていらねェがそう簡単にはあげられねェなァ!!」

 

チルノ「だったら奪うだけだ!!」

 

先ほど同様、尖った氷を周りに生成し一方通行に向かって飛ばしてきた、だが同じ事、また反射してチルノの方へ飛ばせば終わり……と、思いきや

 

一方通行「なるほどな。そォいうことも出来ンのか」

 

チルノ「ハッハッハッ!!凄いだろ!?」

 

自分の方に飛んできた氷を、能力で作った氷の剣で破壊した、どうやらチルノの能力は氷を飛ばすだけの能力じゃ無いらしい。

 

一方通行(だが、これ程のパワーがあるならもっと他にもできるだろ。もしかして、コイツ………………)

 

チルノ「おりゃぁーッ!!」

 

考え事をしていると、チルノは氷の剣で一方通行を切りつけようとしたが、当たる直前、氷の剣は粉々に弾けて散った、そしてチルノは背後に少し吹っ飛んだ。

 

一方通行(____________バカだ。今ハッキリと分かった)

 

チルノ「また当たらなかったか……………。だが、次こそ!!」

 

一方通行「………………終わりだ」

 

チルノ「ッ!?」

 

大きな氷を一方通行に落とそうとしたが、なぜか急に体が動かなくなってしまった。そして一方通行は片手をチルノの方へ伸ばして手を強く握った、するとチルノは身動きすらできなくなってしまった。

 

チルノ「………………苦……しい……ッ!?」

 

一方通行「風のベクトルを操作して、360度全てから風圧が来てるから苦しくて当然だ」

 

チルノ「だが。せめて、これを喰らえェェェェッ!!!」

 

最後の気力を振り絞り上から大きな氷を落とした。

だがその氷は一方通行に当たる直前に粉々に散った。

 

一方通行(……これぐらいにしておくかァ)

 

能力を解除してチルノを離して上げた。

 

チルノ「……くっ。まだまだ………これからだッ!!」

 

???「もう止めなよチルノちゃん!」

 

緑の髪をした女の子がまだ戦おうとしているチルノに止めろと伝えたが

 

チルノ「まだ、あたいは…負けてない!」

 

一方通行「…じゃあ、まだやるってかァ?」

 

チルノ「もちろん!………」

 

強く睨みながら一方通行はチルノに言う。そしてチルノは明るく答えようとしたが、途中までしか言葉が出なくて自分でも驚いた。何故、途中までしか言葉がでないのだろか、そんな事を考えるよりも早く、体が膝から崩れ落ち、膝をついた状態でボケーっと一方通行の顔を見ていた。

 

一方通行「あァ?なに座ってンだよ。立て」

 

チルノ「………」

 

そして次は全身がガタガタ震えている、何故自分が膝から崩れ落ちたり全身がガタガタ震えているか分からない、だが一つ分かるのは、今、目の前に居る化け物が

 

チルノ(……怖い)

 

初めての恐怖、その感情に全身が支配されていた。

そしてゆっくりと歩いて来た、幻想郷最強の能力者が

 

一方通行「まさかオマエ、ビビってンのかァ?」

 

チルノの表情を見て分かった、どうやら目の前に居る女の子は恐怖しているらしい、この一方通行に。

 

???「止めて下さい!この子を、チルノちゃんをこれ以上傷付け無いで!」

 

両手を広げて一方通行の前に立つ緑の髪の少女。

 

一方通行「別にこれ以上やらねェよ、面倒だし」

 

???「良かった~」

 

一方通行「だが、少しソイツと話てェから、どけ」

 

???「?…分かりました」

 

一方通行の前に立っていた少女はどいた、そして一方通行はチルノに目線を合わせるように片膝をついて座った。

 

一方通行「おいチルノ、オマエに話がある」

 

恐怖して震えているチルノに一方通行はあることを話すそれは……

 

一方通行「俺が、オマエを強くしてやるよ」

 

一方通行はチルノの顔を見ながらそう言った。言われたチルノは恐怖を感じながらも、疑問に思ったため『えっ?』っと返した。そして驚くのはチルノだけでは無い、チルノの仲間である他の二人もだ。

 

???「どういうことですか?……それは…」

 

一方通行「言葉の通りだ」

 

???「つまりチルノを強くする、っと言うことー?」

 

一方通行「あァそうだが、問題か?」

 

???「大問題ですよ!!この幻想郷が誇る(バカ)に何かを教えるなんて!」

 

???「あたいは(バカ)じゃなーい!!」

 

チルノ復活!!っと言いたいが…………

怒って復活とは。まあチルノらしいと言えばチルノらいし。

 

恐怖が吹っ飛び復活した氷の妖精の少女はは緑の髪の毛の少女の前に腕を前に組んで立ち言い争っていた。

取り残された金髪の少女は一方通行の手を掴んで居た。

 

一方通行「あン?どうしたァクソガキ?」

 

???「ねえねえ、アナタって人間?」

 

一方通行「人間ではねェ。そして妖怪でも無いぜ」

 

ルーミア「そーなのかー。私はルーミア、妖怪だよ。よろしくー」

 

一方通行「急な自己紹介だなァ。まァ、ヨロシク」

 

いつから癖になってしまったんだろうか………………、

 

何故か知らないが一方通行は少女の頭を撫でていた。

そしてチルノと緑の髪の毛の少女の口論も終わり、さっきの話に戻った。

 

チルノ「なあなあ、本当にお前はあたいを強く出来るか?」

 

一方通行「あァ出来る。オマエの弱点を知ってるから俺の教えでその弱点を無くせばオマエは強くなる」

 

チルノ「あたいに弱点?フッ、そんなもの_________」

 

一方通行「オマエの弱点。それはオマエはバカと言うことだ」

 

弱点なんてない。

とバカにしながら話そうとしたら一方通行に決定的な弱点を言われた、そう!皆知ってるとうりチルノはバカ!しかも普通のバカでは無い、超がつくほどだ。その決定的な弱点を一方通行は無くすと言い張るが、どうやると言うのか……る

 

???「フフッ。この人にまで言われたねチルノちゃん」

 

チルノ「うーッ!!!あたいにバカじゃなーいッ!!」

 

両手を強く握り、怒りに任して叫ぶ。あまりにもうるさいため一方通行はチルノが叫んでる途中で音を反射して自分だけうるさく無いようにしたが、残りの二人は一方通行の分までチルノの怒鳴り声を聞いた。

 

???「うるさいよチルノちゃん」

 

???「耳がキーンとするー」

 

一方通行「ともかくその弱点を認めろ。じゃなきゃ強くなれねェぜ」

 

チルノ「……………ウッ。分かったよ。あたいはバカ!」

 

強くなれないと言われたからか、あっさり認めた。

そして一方通行はチルノを冷静に分析して話す。

 

一方通行「オマエの能力……いや、この幻想郷の能力者達はとてもチート染みた能力ばっかりだ。だがオマエは弱ェ、その理由はなァ自分の能力を限界まで極めて無ェからだ」

 

どんな雑魚みたいな能力でも、極めれば最強の武器になる、と言う事だ。

 

???「確かに……。チルノちゃんはフルパワーで能力を放ってるだけだから、工夫して能力を使えば……」

 

一方通行「あァ、強くなる……その前にオマエの名はなンだァ?」

 

大妖精「あっ!自己紹介が遅れました、私は大妖精です」

 

一方通行「大妖精?それが名かァ?」

 

大妖精「はい!」

 

人の事を言えないが、変わった名前だなぁと一方通行は思った。そして話はチルノの方へ戻る。

 

一方通行「まァ…あれだ、もっと工夫して能力を使えってことだァ」

 

チルノ「分かったー!、一応覚えとく」

 

一方通行「何様だ、クソガキ」

 

大妖精「そうだよチルノちゃん、師匠にその口の聞き方は無いよ」

 

一方通行、チルノ「師匠?」

 

大妖精「えっ?違うんですか?」

 

どうやら大妖精の頭の中では一方通行はチルノの師匠になったらしい。だが大妖精は間違ってはない、一方通行はこれからチルノの師匠になるのだ。

 

チルノ「……………しょうがない。あたいがお前を師匠と認めてやる!!」

 

一方通行「本当によォ……………。さっきから何様のつもりだクソガキ!!」

 

指を差して偉そうに言ってるチルノに、能力込みの一方通行のチョップが頭に直撃。

 

頭部に激痛が走ったチルノは頭を押さえながらしゃがむ。

 

チルノ「うー……。"アイツ"の頭突きと同じぐらい痛い」

 

ルーミア「そーなのかー」

 

一方通行「オマエさっきからそればっかりだなァ」

 

まだ手を掴んでいるルーミアを見ながら話す。そして痛みが引いたのか、チルノは立ち

 

チルノ「ともかく!次会ったら勝って最強はこのあたいになってやる!!」

 

次の試合を申し込んで、飛んで行ってしまった。

 

大妖精「もうチルノちゃんったら……。ではまた会いましょう。ルーミアちゃん、チルノちゃんの後を追うよ!!」

 

ルーミア「分かったー。バイバーイ」

 

大妖精とルーミアは一方通行に手を振って別れを告げた後、急いでチルノを追って飛んで行った。

 

一方通行「……ったく、あンな騒がしい連中の相手なンて二度とゴメンだ」

 

紫「あら?ああいうのはお嫌いなの一方通行?」

 

また突如、音も立てず気配すら感じさせずに現れる紫に一方通行は驚かずに大妖怪の方を振り向いた。

 

一方通行「後ろから現れるとか、随分悪質なストーカーだな」

 

紫「ストーカーじゃないわよ。失礼ね」

 

一方通行「で?ストーカー妖怪。なンの用だ?」

 

紫「だから違うって………。ああもう良い、これを貴方に渡しに来たのよ」

 

何かを企んでる様な笑みを浮かべながら八雲紫はある物をスキマから取り出す。

 

それは……、、、

 

 
















霊夢「投稿ペース遅れたわね」

ポスター「ぐっ!!痛いとこ突くじゃないか霊夢さん」

霊夢「投稿ペースが遅れた理由をここで話なさい」

ポスター「分かりました。投稿ペースが遅れた理由はですね、1話1話を長く書くことにしたからです!」

霊夢「何で急にそう思ったのよ?」

ポスター「このまま書くと軽く150話位いきそうだなっと思ったから……」

霊夢「ふーん、でも100話位は越えると思ってるんでしょ」

ポスター「はいっ!!」

霊夢「だって一方通行。貴方に暇は無さそうね」

一方通行「そォかい、だったらソイツを殺せば……」ゴゴゴ

ポスター「命の危機を感じた時は、俺は逃げる事にした!」ダッシュ

一方通行「逃げても無駄だ」プラズマビーム!

ポスター「………」チーン


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8話

明けましておめでt_______(ベクトルキック)

一方「もォそンな時期とっくに過ぎンぞ」

作者「だからと言ってベクトルキックは酷いじゃないか!!」










一方通行「まァたかよ……」

 

八雲紫から渡された物を受け取り、いま手に持っている物を見て面倒臭そうな表情で彼は呟いた。

 

一方通行「……ったく、次はなンだよ?」

 

渡された物は手紙。

『というかなンで手紙なンだよ……』と、思いながらもピンク色の手紙を読んでいると、

 

紫「その送り主はね、私の友達からなの」

 

一方通行「なに………ッ!?」

 

珍しくビックリしている一方通行に紫は少し戸惑いの表情を見せた。

 

紫「えっ?なんでそこまでビックリするの?」

 

一方通行「オマエ、友達居たのか………?」

 

紫「失礼ね私にだって友達ぐらい居るわよッ!!」

 

どうやら一方通行は紫には友達と言う存在が居ないと思っていた。

だから珍しく驚いたらしい。

 

一方通行「で。オマエのオトモダチからこの手紙を渡されて、この俺に渡しに来たってことか」

 

紫「そう言うこと。なんでも、その子に貴方の話をしたら興味を持ったみたいなの。行ってくれるわよね?」

 

一方通行「断る」

 

紫「ダメ。強制よ」

 

一方通行「オイ、オマエなら分かるだろ。俺にはそンな訳の分かンねェヤツに構ってる暇はねェンだよ」

 

紫「何を言ってるの?貴方はもういつでも暇じゃない」

 

一方通行「あァ?」

 

紫「だって、あの実験に行きたくても行けないんだから」

 

持っている傘を閉じ、その傘の先端を地面に突き刺してから怪しく微笑む大妖怪。

 

"実験"と言う単語を聞いて一方通行は少しピクリと反応した。

その微かな彼の反応に気付かない八雲紫では無い。

 

紫「だってそうでしょ?貴方はこの幻想郷から出れないんだから、あのお遊び実験に行けない。違う?」

 

一方通行「俺は家探しをしてるから暇がねェンだ…………。次、実験の事をお遊びって言ってみろ、オマエの綺麗な顔面を絶望一色に染め上げてやンぞ」

 

強烈な殺意を向けながら紫のことを睨む。

 

しかし、紫はどこからか取り出したか分からないが扇子を手に持ち、その扇子で口元を隠しながら次はうっすら笑うのだった。

 

紫「絶望一色に………ね。今の貴方にならこの世に居る生物全てを絶望の顔に変えれるかもね。ふふふっ」

 

なぜ紫は笑うのだろう。

本当にそう思っているのなら笑うなんてする訳がない。

 

いや、そもそも笑うことなんて出来ないだろう…………………。

一方通行「チッ」

 

紫「さて。素直に行ってくれるわよね?私の友達の所に」

 

ピンク色の手紙にもう一度目を通した。

 

どうやら白玉桜(はくぎょくろう)という場所にこの手紙を出した奴が居るらしい。

ここからそこに行くのは面倒だが、一方通行は少し気になってしまったのだ。その白玉桜と言う場所を。

 

これは知識欲と言うのだろうか?

この幻想郷に来てから一方通行は色んな事を知りたいと考えるようになっていた。

知らない事を知ろうとするのは罪なのか?

いや、罪では無い。

追及心を抑え込む方が罪なのだ。

 

家探しは確かに重要。

だが、この知識欲に比べるとどうだ?

 

考え、そして一方通行が導き出した答えは、

 

一方通行「チッ。手紙を出せば来るとかいう噂が流れたら面倒だが、オマエが態々この手紙を持って来たンだ。しょうがねェから行ってやる」

 

紫「ありがとう。ん?なんか面倒な噂でも流れてたの?」

 

一方通行「あァ、とびきり面倒な噂がなァ」

 

本当に面倒な顔をしていた。

たがらこそ気になる。

一方通行が面倒と思う噂とは、と。

 

紫「それってどんな噂?」

 

一方通行「なンでも、俺がこの幻想郷で最強の能力者なンだと。チッ、こンなの流れたら学園都市と変わらねェ日々を送りそォだ。くそっ、面倒ったらありゃしねェ」

 

紫「そんな噂が、ねえ?」

 

そんな噂をしそうな奴が居ないか思い出してみる。

と、言うか一方通行の事を知っている者などごく限られている筈。

そう考えると一方通行と共に戦った者がその噂を流したのだろうか…………

 

いや、大体なぜそんな噂を?

 

考え込めば考え込む程、疑問が次々と浮かんでくる。

 

 

紫(でも一方通行の事を話す子なんて…………………………まさか!?)

 

一方通行「あン?どォしたァ紫ィ?」

 

先程から黙っていた八雲紫の表情に突然変化が見えた。

何かに気付いたのか知らないが、答えが出た。

 

そんな表情であった。

 

紫「もしかしたら噂の元は…………、私?」

 

一方通行「は?」

 

紫「前に貴方が強いって事は話した事はあるわ。だからそれが噂の元となり、そしてその噂がだんだん膨らんだ結果が…………」

 

一方通行「根源はオマエかよ」

 

紫「うぅー……、ごめんなさい」

 

一方通行「………………………あン???」

 

あの大妖怪・八雲紫が素直に謝った。

それから間があった。

そして、その間があいてから珍しく一方通行は驚きを感じた。

 

紫「だって貴方……、ッ!!…………いや、何でも無い」

 

一方通行「あ?何か言いかけてたろ、なンだよ?」

 

紫「何でも無いわ。そう言ったでしょ」

 

一方通行「……………あァ、そォかい」

 

紫は言いたくないみたいだからこれ以上詮索はしない事にした。

そして二人は少し沈黙状態になったが紫が閉じてた口を開く。

 

紫「…………自分の家をどうしたいか勉強して来たら?実際、その子の家は紅魔館とはまた違ったタイプの家よ」

 

一方通行「チッ。ずっとなにか視線を感じると思ってたがやっぱりオマエ能力を使って覗き見てやがったな」

 

紫「何の事かしら?さっぱり分からないわ」

 

一方通行「チッ、クソったれ。とぼけやがって」

 

あっという間にいつも紫に戻っていた。

だが紫の言いかけた事を忘れる事は出来ない。

 

だから、いつまでも紫の言いかけた言葉を覚えておこう、

 

……………………その続きの言葉を聞くまでは。

 

紫「ねえ、一方通行。貴方はどんな家に住みたいの?」

 

お洒落な傘を開き後ろにスキマを開く。その中に入る直前、一方通行の方を向いた。

 

一方通行「学園都市に居たときは五月蝿くて音を反射しなきゃ寝れなかったからなァ。そンな面倒なことをしなくても寝れる物静かな家だ」

 

紫「そう……、そういう家が見つかるといいわね」

 

そう言って紫はスキマの中へと消えて行った。

残った一方通行はピンク色の手紙をズボンのポケット雑に入れた。

 

そして手紙には白玉桜という場所に行くための地図が記されており、一方通行はその場所に向かって飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「ふう。疲れた…………」

 

藍「お帰りなさいませ紫様」

 

 

ここは神出鬼没の大妖怪・八雲紫が住まう家。

その場所に彼女は帰って来たの。

 

紫の家は広くて、落ち着く内装をしている。

『やっぱり我が家が一番落ち着くな…………』と思いながら紫は周りを見渡していた。

 

藍「どうかしましたか紫様?」

 

紫が周りを見渡していたので気になり質問する。

 

紫「(ちぇん)は居ないの?」

 

藍「居ると思います」

 

(ちぇんまたはだいたい)と結構名前が長いため、略して(ちぇん)と呼ばれている。

その子が居ると言うのだが姿が見えない。

 

橙「紫様、お帰りなさい」

 

居ないと思っていたら、急に姿を現す猫耳少女。

藍「どこ行ってたの橙?」

 

橙「お散歩です!!」

 

ニッコリ笑いながら藍の質問に答える。

 

紫「……もう、今日は外に出たくないわ」

 

藍「そんなにお疲れになったのですか?」

 

紫「ええ。でも、私のせいだししょうがないんだけどね」

 

部屋でくつろぎながらそう話す、そして橙はお茶を持ってきてくれた。

 

橙「どうぞ、紫様」

 

紫「ありがとう、橙」

 

橙「えへへ~」///

 

礼を言いながら橙の頭を優しく撫でてあげたら、とても嬉しそうな表情で照れていた。

 

紫「あっ、そうだ。次一方通行に会ったらこの家に誘ってみようかしら?」

 

藍「一方通行さんを、ここに?」

 

橙「私はその一方通行さん?に会った事がないから会ってみたいです紫様」

 

紫「来てくれるといいわね、藍?」

 

藍「えっ……!!なぜ、私に言うのですか?」

 

紫「だって藍、一方通行の事を…………ねぇ?」

 

藍「えっ?ち、違いますよ?」///

 

頬を赤く染めながら話す藍、その様子を見て橙は分からなかったが紫は分かって居るため口元を扇子で隠しながらうっすら笑っていた。

 

橙「何が違うんですか藍様?」

 

藍「えっ?…………そ、それは」///

 

紫「そうよ。何が違うの?」

 

藍「ッ~~~!!」/////

 

 

今日も今日とていつも通り八雲家は平和である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「チッ。これを登ンなきゃ行けねェのか………」

 

手紙に書いてあった通りに目的の場所へ空を飛んで移動したが、目の前には上へ上へと伸びるとても長い階段があった。

どうやら目的の白桜玉という場所へ行くにはこの階段を登らなくてはいけないらしい。

 

一方通行「……………面倒くせェ。一気に行くか」

 

力強く地面を踏んだ瞬間に能力を使い砲弾の如く、空中を高速で進むように跳躍をした。

 

一方通行(………あァ?誰か居ンなァ)

 

跳躍して階段の頂上へ進んでるいる最中に人影が見えた。

そのため一方通行はベクトルを操ってその人影の前で止まることにした。

 

一方通行「_____________オイ。この階段を登りきったら白玉桜に着くのか?」

 

その人影に声を掛ける。

"彼女"の容姿は銀色・白色の髪で緑色の瞳をしていた。

 

でも、普通の少女では無いだろう。

何故なら立派な日本刀が腰に差してあったのだから。

 

しかも二本も、

 

多分、ここで住んでる奴だと思い質問をした。

 

だが、答えは返ってこなかった。

目の前に立つ銀と白の髪を持つ少女が黙ったままだったので少し怒りを覚えたが怒りを打つけるよりもこの階段を登りきったら白玉桜なのかどうか知る方が大事と思った。

 

一方通行「………オイ、もう一度質問をする。この________」

 

???「一方通行さん、ですか?」

 

人が話してる最中だと言うのにそれを無視して自分の質問を切り出す。

 

一方通行「チッ。あァそォだ」

 

もう面倒なので相手の話を聞いてから自分の話をしようと、一方通行は決めた。

 

妖夢「私は魂魄妖夢(こんぱくようむ)といいます」

 

一方通行「あっそ」

 

別に名などどうでも良い。

だから一方通行は真底興味が無さそうだった。

 

一方通行「なァ、この世界の奴等は見下すのが好きなのかァ?」

 

妖夢「さあ?私に言われても分かりません」

 

今二人が居るのは場所は階段。

そして一方通行が下の方に居て妖夢と名乗った少女が上に方に居る。

この状況を誰もが見たら妖夢が一方通行を見下してる様に見えるのだろうか?

 

一方通行「ホラよ。それは白玉桜の主が書いたやつだ。もし、オマエがここの門番だとしたら面倒だから渡しとく」

 

持っていたピンク色の手紙を回しながら投げて渡す。

そしてその手紙を受け取り、手紙に目を通す妖夢。

 

読み終わったのだろうか。

彼女はその手紙をポケットの中にしまい一方通行の顔をを真っ直ぐ見る。

 

妖夢「コレは幽々子(ゆゆこ)様が書いた手紙です。っということは本当に貴方が今日の客人で間違いないようですね」

 

一方通行「オマエに嘘ついてどォすンだよ」

 

妖夢「さて………、では。私と一戦良いですか?」

 

腰にあった二本の日本刀を抜く。

そして、その瞬間には空気が変わり始めた。

 

一方通行「一つ聞く。俺と戦うのはその幽々子って奴の命令かァ?」

 

妖夢「いいえ、違いますよ。貴方と戦う理由は私一個人の理由です」

 

一方通行「そォかい。そりゃ結構。じゃあやるかァ」

 

妖夢「幻想郷最強と言われる力、見せてもらいます!」

 

一方通行「無駄にやる気出しやがって……。良いぜ見せてやるよ、格の違いってヤツをなァッ!!」

 

一方通行は引き裂くような笑みを浮かべる。

実験をやっていた頃に狂った科学者から聞いた話だ。

なんでも強い敵と戦えば戦うほどに能力者は強くなるらしい。

まるでRPGゲームのようなことを言われ、そんな事現実ではないと思っていたが最近それが真実だと考えるようになった。

何故なら実質、強敵と戦えば戦うほど自分が強くなっているのだから…………。

 

妖夢「ハァァァァァッ!!!!」

 

叫びながら突撃してくる二本の刀を構える少女。

だが、一方通行は避けない。

いつもどうりの戦闘スタイル。相手の力を利用して勝つ。

 

一方通行「_____________弾けろ」

 

低い声で呟く。

妖夢は何の事か今は分からなかったが。その後気付く、その言葉の意味を。

 

妖夢「ッ………!!何故攻撃を仕掛けた私がダメージをッ!?」

 

日本刀が一方通行に当たりそうになったら瞬間、衝撃が刀から伝わり上空へ体が舞うように吹っ飛んだ。

 

一方通行「へェ。階段だけじゃねェンだなここは」

 

上の段にぶっ飛んでいった妖夢の後を追うようにゆらりゆくっくりと階段を登って来た。

そして、二人が居るのは階段の途中にある真っ直ぐな道。

だがこの道の先は階段である。

 

一方通行「おいどォしたよォ?立てよ」

 

なんとかしゃがむ形で着地し、またしゃがんでいる妖夢を見て普通とは言えない笑みを浮かべる。

すると妖夢は立ち上がり二本の刀を力強く握り構えた。そして、目にも止まらぬスピードで移動し一方通行から数メートル先で背を向ける形で立っていた。

 

妖夢「見え、ましたか。私の動き?」

 

一方通行の方を向いてもう一度刀を構える。

 

一方通行「いやァ、全然。でもあのスピードで攻撃できるとしても俺の敵じゃねェ」

 

妖夢「ふふっ、何を言って____くッ!!」

 

実は猛スピードで移動した最中に刀で攻撃をしていた。

しかし傷を負ったのはまさかの妖夢の方であった。

肩に切り傷が出来ていたのだ。あのスピードでも一方通行に傷一つもつけられないのか……、

 

一方通行「さァて。今度は俺の番だぜ」

 

妖夢の方に向く、そして片手を大きく振る。

能力を使用して風の向きを操り、大きな竜巻を発生させる。

 

一方通行「こン中に入ったら人肉ジュースの完成ぜェェ!!」

 

ゴォー!!と竜巻から音がする。

その竜巻の大きさはとてつもなく大きい。

そのためこの竜巻をどうにかしなくては一方通行に近づく事は出来ない。

 

一方通行「あはぎゃはッ!!オラオラ!ドンドン近づいて来たぜェ!あはアハあはははは!!」

 

竜巻の向こうで爆発的に笑って居る一方通行。

一方通行の作り出した竜巻がゆっくりと妖夢の方へ進み始める。

それはまさに死までのカウントダウンのようであった。

 

妖夢(信じるんだ。自分の刀を、自分の力を!!)

 

二本の刀を鞘に納め、下を向いている。

しかし、勝負を諦めた訳ではない。

 

一方通行「降参ってかァ。あァ!?」

 

妖夢「違います。これを!!____」

 

一本だけ刀抜く。

その刀を抜くスピードは誰もが見えぬほどに早かった。

 

妖夢「斬り裂くために!!___」

 

言葉のどうりに妖夢は竜巻を斬り裂いた。

 

妖夢「___集中しただけです」

 

一方通行「なるほど、抜刀術かァ」

 

剣術の一つ、抜刀術。

鞘に納めた状態で帯刀し鞘から抜き放つ動作で一撃を加える。

その剣術で竜巻を斬り裂いたのだ。

 

妖夢「良くご存知で。もしかして剣術とか習ってました?」

 

一方通行「いや、前に読ンでた本に載ってたンだよ。つゥか学園都市には剣よりイイ武器あるっつの」

 

妖夢「学園都市?」

 

一方通行「こっちの話だ、忘れろ」

 

ヒュー、と風が吹き二人の髪を揺らす。

妖夢は二本の刀を構え、対する一方通行は指を広げパキパキと音を鳴らす。

 

妖夢「……ふっ!!」

 

一瞬で距離を詰めて斬りつけたと思ったがそこに一方通行の姿はなかった。

 

妖夢「ッ!?あれを……躱した!?」

 

一方通行「オマエは直線的に速ェだけだ。そンな単純な攻撃この俺様に当たる訳ねェだろォが」

 

さっき居た場所から十メートルぐらい離れた場所に、一方通行は立っていた。

 

妖夢「ただ後ろに下がるだけで私の攻撃を回避できる、っと言いたいのですか?」

 

一方通行「あァ。オマエが近づいて来た瞬間、運動量のベクトルを操り後ろに移動する。ただそれだけでオマエの攻撃は回避する事が出来ンだよ、この能無しが」

 

妖夢「私が本当に能無しかどうか、試してみますか……?」

 

一方通行「試す必要もねェ」

 

妖夢「ッ!!!」

 

一方通行の一言で妖夢は激怒する。

もう一度直線的に高速移動し強烈な斬撃を繰り出す。

だが一方通行は言ったとおりに運動量のベクトルを操り後ろに移動し回避した。

でも妖夢は諦めずにもう地面を蹴って白い怪物の懐に潜ろうとするが、、、

接近してもすぐに離れられてしまう。

刀とは確かに接近戦ならこれ以上に最適な武器はないだろう。しかし当たらなければ意味がない。

 

妖夢はもう一度、もう一度と同じ事を繰り返す。

いつかこの刀が届くまで……と。

 

妖夢「はぁぁ!!____やばっ!!」

 

真っ直ぐに一方通行に突っ込んで居る最中に一方通行の表情を見た。

その顔は罠にはまった奴を馬鹿にする顔だった。

そして次の瞬間、一方通行は思いっきり地面を踏みつける。すると妖夢が立っている地面から物凄い衝撃が来る。

それを妖夢は躱わす事は出来なかった。

 

妖夢「くっ、うあああッ!!」

 

妖夢の体は空中へ飛び、気を失ってしまった。

 

一方通行(チッ……クソったれ)

 

敵が気を失って居る事に気付く、だから妖夢がどこに落ちるか計算し、その場所へ能力を使用して高速移動した 。

 

一方通行「………どォすンだよ。これ」

 

無事、妖夢を横抱き(お姫様だっこ)でキャッチしたがこの状況をどうするか悩んでいた。

 

一方通行(この階段を登りきったら白玉桜があるのかも分かンねェが、とりあえず登ってみるか。だが登ると言ってもコイツは俺が抱えてなきゃいけねェか……めンどくせェ)

 

うだうだ考えてばかりもいられないので妖夢をお姫様だっこしたまま空を飛ぶ事に決めた。

 

一方通行「あァ?あれがそォか」

 

ほぼ無限のように続く階段を飛んで進んで居ると建物らしき物を見つける。

 

一方通行「チッ、こンなに飛ぶ事になるとはなァ」

 

妖夢「…ん、……あ、……あれ、何故私は空を?」

 

建物に着いたらちょうど妖夢が目覚めた。

 

一方通行「よォ。ここが白玉桜だよな」

 

妖夢「えっ?……はい」

 

状況がうまくつかめないが、ここが白玉桜と言う事だけは分かった、そして妖夢は自分の状況に気付いた。

妖夢「わぁ!下ろして下さい」////

 

一方通行「こンな所で暴れンな!!言われなくても下ろしてやるっての…………チッ」

 

ゆっくりと下ろしてあげた。

妖夢は頬を真っ赤に染めて周りをキョロキョロ見ていた、もしかしたら誰かに見られたら不味いと思って居るのかもしれない。

 

一方通行「オイ。あァー、妖夢?だっけかァ、俺の事を呼ンだ奴はどこに居る?」

 

妖夢「はい!えっと……多分…」///

 

まだ頬を赤く染めて居る妖夢に聞いた、一方通行は自分の事を呼んだ奴が具体的どこに居るかは分からない。

 

???「おかえりー妖夢ー」

 

妖夢「幽々子様!」

 

ともかく建物の中へ進もうとしたら、なんかゆるい女性が登場。

自分の事を呼んだ奴に会った一方通行は、少し幕をひそめた、やはり警戒はしとくべきと思ったのだろう。

 

???「ん、お客さん?」

 

妖夢「幽々子様が呼んだお人ですよ」

 

妖夢と話して居る女性が一方通行が居る事に気付くと、ひょこっと妖夢の影から顔を出した。

 

幽々子「西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)よ、よろしく」

 

一方通行「……あァ」

 

目の前に立ちご挨拶、でも一方通行にとっては挨拶などどうでもいい、ゴミにも等しい行為だ。

 

幽々子「ふ~ん、紫が言うとうり無愛想ね」

 

一方通行「ほっとけ。で、なンの用だよ、ただ気になったから呼ンだ訳じゃねェンだろ?」

 

幽々子「ええ、そうなんだけど。一つ、良いかしら?」

 

一方通行「あン?」

 

妖夢(幽々子様?)

この場の雰囲気が変わる。

幽々子と妖夢の仲良し雰囲気とは違う、とてつもなく緊張感漂う雰囲気だ。

空が薄暗くなり、風が吹く。

そして幽々子から殺気を感じた。

 

幽々子「妖夢の肩に傷があるじゃない?あれ、貴方がやったの?」

 

一方通行「あァ」

 

いつものように返事をする。

 

幽々子「そう……よくも妖夢に傷を………」

 

妖夢「幽々子様!」

 

大切な子を傷付けられて幽々子は、もう妖夢の声すら届かなくなっていた。

 

幽々子「ねえ。1回、死んでみる?」

 

一方通行「……離れろ妖夢。今のコイツは普通じゃねェ」

 

妖夢は一方通行の忠告聞いて離れる事にした。

両者睨み合う、どちらも殺意むき出しだ。

 

幽々子「私の能力は"死を操る能力"。そう、だから私に殺せない生物は居ないわ」

 

一方通行「あはははギャハハハヒヒヒはは!!」

 

狂ったように笑う一方通行に妖夢と幽々子は、恐怖を感じたが、次に一方通行の言う事に更に恐怖を感じる事になる。

 

一方通行「死を操る、ねェ。そンな事ならこンな俺にだって出来るぜェ。なンせこの手で、何千何万もの命を奪って来たからなァ!!」

 

妖夢(嘘……………。何万もの命をたった一人でっ!?)

 

幽々子「…………紫には悪いけど。貴方はここで死んでもらうわ」

 

死を深く知る二人がぶつかる。

この二人が戦うと死闘になるのか、一方的な戦闘になるのか、誰も分からない。







次回。一方通行の身に予期せぬ何かが起きる。

良いことか悪いことか…………、

次回で明らかに、、、




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9話

あれ、ですね。コメントがくると

嬉しいもんですね♪


幽々子「……家が壊れたら困るから空で良いかしら、戦う場所は」

 

一方通行「どこでも構わねェよ」

 

幽々子の体が重力を無視して上へ浮いた。

そしてそして、一方通行も続くようにベクトル操作によって空へ浮かせる。

一方通行は背中に竜巻を生成し空でも自由に移動できるようにしている。

が、しかし。幽々子は普通に空を飛ぶ事が出来るので、見た目には変化がなかった。

 

幽々子「………さて、始めましょうか。ちょっとしたオシオキの時間よ」

 

一方通行「返り討ちにあって惨めに泣くのはオマエだぞ?」

 

幽々子「ふふふっ。それはそれは、楽しみね」

 

遂に戦いが始まった。

まず最初に動いたのは幽々子だった。

先程までおっとりした雰囲気を醸し出す彼女の顔はどこか恐怖を感じさせる笑みをしていた。

そんな幽々子は、自分の後ろに無数の弾幕を出現させる。

その弾幕はとても美しく、空を照らすように輝いていた。

 

幽々子「さてさて、これだけの数……避けられるかしら?」

 

無数の弾幕を一斉に一方通行に向かって発射する。

肉眼でギリギリ捉えられるほど素早い速度だった。

 

が、しかし。

 

一方通行「そンな程度じゃ俺には届かねェ」

 

突如、一方通行の周りには大きな竜巻が発生していた。

その竜巻に幽々子の弾幕は全て飲み込む。

まさにそれは光さえ喰らうブラックホールのように。

 

一方通行「……次はどォすンだァ?」

 

周りにあった竜巻は消えていた。勿論、弾幕もだ。

どうやらあの竜巻は弾幕を消すためだけに能力で発生さてたものらしい。

 

幽々子「へー……、じゃあ次はこれよ」

 

まず一撃目は、完封された。

しかし、幽々子の表情は変わらない。

閉じた扇子の先端を唇に当てて怪しく微笑み。そして、第二撃目の弾幕を出現させた。

 

一方通行「あァ?さっきのやつとは違うな」

 

また幽々子は弾幕を出現させるがさっき出した弾幕とは違う感じがした。

色も違う、というのもあるが本能かもしくは勘のどちらか。

そのどちらかは一方通行自身でも分からない。

だがしかし、分かっていることはただ一つ。

さっきの弾幕より、今幽々子の背後にある弾幕は強力だということだけだ。

 

幽々子「踊りなさい」

 

ぴっ、と。閉じた扇子の先端を一方通行に向けた一斉に弾幕が射出。

さっきとはまた違うパターンで弾幕が一方通行を襲う。

光弾。光線。その二種は容赦はしない。

『弾幕ごっこ』ではないただ単純な闘争であるならば、もしもその弾幕が直撃するとただでは済まない。

病院行きは確定だろう。

 

一方通行「チッ………」

 

舌打ちをした後、一方通行は幽々子の弾幕を空中で避けていた。

すると、弾幕の動きはワンパターンで避けるのは苦ではない。

逆にただ宙に浮いてるだけの幽々子に攻撃を仕掛けた。

手のひらに風のベクトルをかき集め砲弾を生成し、その風の砲弾を幽々子に向かってぶん投げた。

が、しかし途中で弾幕に打ち落とされてしまった。

 

一方通行「_______クソったれ」

 

幽々子「あらあら、惜しい惜しい♪」

 

余裕。

明らかに下に見ていた。

幽々子から、笑みは消えない。

 

幽々子「次はこれね」

 

また新しい弾幕を幽々子は出現させる。

 

一方通行(チッ。アイツの攻撃は俺には効かねェ、だが無視する訳にもいかねェか…………)

 

幽々子「あら、どしたの?すぐ終わらせるんじゃなかったっけ?」

 

一方通行「舐めてンのかァ……この俺を!」

 

幽々子「さあ、どうかしら?」

 

桜符(さくらふ)完全なる墨染の桜(かんぜんなるすみぞのざくら)

 

光輝く弾幕が一方通行の方へ飛んでくるが、一方通行はその弾幕を恐れずにその弾幕の中へ突っ込んでいった。

 

一方通行(俺が反射した弾幕と俺の方へ飛ンでくる弾幕を打つける!)

 

幽々子「ここに居たら不味いわね」

 

一方通行は幽々子の居る所まで一直線に進む、そして幽々子は危機を察したので今自分の居る場所から後ろの方へ下がった。

 

一方通行(クソッ…下がりやがったか。だったらッ!!)

 

幽々子に近づく事を諦める。

一方通行は両手を広げ空を見上げていた。

 

幽々子「?……ッ!?」

 

何をやってるか幽々子は分からなかったが、だんだん風の向きが変化していることに気付く。

 

一方通行「俺は近づいて戦ったほうが得意だが仕方がねェ。オマエが離れて戦うと言うンなら、俺もそォしてやる!」

 

一方通行は頭上に高電離気体(プラズマ)を生成。

 

幽々子「それをどうするつもり?」

 

一方通行「あァ?分かンだろォ、これをオマエに向かって放つンだよ」

 

一方通行はニヤリと笑いながら言う。

 

幽々子「そう。だったらその前にそれを破壊さしてもわうわね」

 

一方通行「もォ遅せェよ」

 

高電離気体は一筋の光線となって幽々子に襲いかかる。

 

幽々子「ふふっ……そうとは限らないわ」

 

弾幕が高電離気体が激しく打つかる。

 

一方通行「なるほどな、力を比べってかァ!?」

 

幽々子「いつまで持つかしらね?それ」

 

光と光が打つかり、とても眩しく宙に輝く。

しかし、一方通行の高電離気体は無限に放つ事は出来ない。

だが、幽々子はほぼ無限に弾幕を放つ事ができる。

 

一方通行「クソッ!」

 

幽々子「あらあら……もうおしまい?」

 

結果。

一方通行は押し負けてしまった。

 

一方通行「もォ一度生成する」

 

幽々子「させると思って?」

 

西行寺無余涅槃(さいぎょうじむよねはん)

 

一方通行「………チッ……!」

 

頭上に小さいが高電離気体を作ったが、それを幽々子の弾幕に消されてしまう。

 

一方通行「だがオマエの攻撃は効かねェンだよ!」

 

幽々子の弾幕が自分に触れた瞬間ベクトルを操作して、違う弾幕に打つける、だがこの状況をどうにか出来た訳では無い、本体、つまり幽々子をどうにかしなくては勝つことは出来ない。

 

一方通行「力ずくで進ンでやる!」

 

ドカン!ドカン!と弾幕と弾幕が打つかるたび聞こえる。

一方通行は移動速度を一気に上げ幽々子に近付き腕を大きく降り風の砲弾を作る。

そしてその風の砲弾を幽々子に向かって放つが弾幕に邪魔される。

 

幽々子「……ふふっ」

 

一方通行「……が……ぐっ……!」

 

幽々子は笑いながら優雅にふわふわと空を移動する。

弾幕と弾幕が打つかる瞬間、煙が目の前に出来てしまう。

一方通行はその煙を手を降って消した瞬間、弾幕が360度全てから一方通行に向かって襲いかかる。

そしてついに一方通行に幽々子の弾幕が当たる。

 

一方通行(……俺の計算式にくるいはねェ。なのに何故俺の反射が破られた?)

 

弾幕が当たって体勢が崩れてしまったが、何とか踏ん張った。

 

一方通行「クソったれ……本気で潰してやる!!」

 

幽々子を強く睨みそう決意する。

一方通行は砲弾よりも速いスピードで空を飛び回るが、幽々子から十三メートルぐらい離れた場所で止まる。

 

幽々子「さすがに撃ちすぎたわね。少し疲れたちゃった」

 

そして幽々子は弾幕を撃つのを止めた。

 

一方通行「オマエに恐怖を刻み込ンでやる……ッ!!」

 

低い声でそう言い放つ。

そして一方通行の背中には黒い翼が生えていた。

 

幽々子「ッ!!………その力はッ!?」

 

八雲紫のように怪しく微笑んでいた幽々子の表情が変化していた、

 

この世の闇を一ヶ所にかき集め形にしたような真っ黒な翼を見て。

 

 

一方通行「さァて、どォ料理して___________あァ?」

 

いつもと違う感じがしたので自分の背中から伸びる黒い翼へ顔を向ける。

 

その翼は噴射に近い。

 

黒い翼の噴射速度が以上に早く、天まで届くぐらい大きくなっていく。

 

一方通行(黒い翼を本気で使った事はねェが、こォなるとはな。チッ……いつもと違うが俺なら…………)

 

制御が困難だが自分なら出来ると思い能力解除しなかった、それが最悪の展開へとなる事も知らずに。

 

一方通行「くっ……ァァァァあああああああ!!」

 

突然苦しみ始める一方通行。

 

幽々子「いったい、あの子の中で何が起きてるの……?」

 

妖夢「幽々子様ッ!!」

 

黒い翼が大きく荒れ狂う。

そして幽々子の事が心配になり妖夢が幽々子の元まで飛んできた。

 

一方通行(……コロス……コロス……コロス……コロス……コロス……コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!壊す、破壊する、ぶっ壊す!この世界全てェッ!!)

 

心の底から出てきた破壊衝動。

それにもしも身を委ねてしまったら周りも、そして自分も危険な状況になってしまうと分かっていた一方通行は、なんとか破壊衝撃に飲まれないように抗っていた。

 

だが、それも限界だ。

 

下を向いたまま彼は内心で壮絶な葛藤をしていると知らない幽々子と妖夢は、

 

妖夢「ともかく離れましょう、ここは危険です……」

 

幽々子「………ええ、そうしたほうが良さそうね」

 

一方通行を見て、警戒しながら離れて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫『________________もしもの話よ』

 

 

 

 

 

 

こんな時に、

 

こんな時だからと言うべきだろうか、

一方通行から距離を取っているとき幽々子は前に紫が話していた事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日付は覚えていない。

しかし、天気が余り良くなかったのは覚えている。

天気が悪ければ家から出てこない幽々子の友と呼べる大妖怪・八雲紫が珍しく天気が悪い日に家に遊びに来た。

そして、いつも通り茶菓子とお茶を机の上に並べ向き合うように座る二人。

すると、紫が急に真面目な顔をして話始めた。

その話には最近幻想入りした現在幻想郷で一番噂されている"真っ白い彼"の話だった。

 

紫『___________あの子が『暴走』しそうだったら止めてあげて』

 

幽々子『なんで?』

 

紫『あの子はまだ力に目覚めたばかりだし、それに呪いのせいで無理やり能力を底上げさせられたから本気で能力を解放してしまうと、余りにも強力な力により暴走してしまうのよ』

 

幽々子『その子はすぐ暴走しちゃうの?』

 

紫『いえ、そう簡単に暴走はしないと思うわ。もしもって、先に言ったでしょ?』

 

幽々子『なんで、なんでそれを何で私に?』

 

机の上にある和菓子をパクっと食べた後に、紫に質問する。

 

紫『これは……、貴方にしか頼めないことなの』

 

幽々子『それは友達として?』

 

紫『それもあるわ。けど、他にも理由はあるの。それはこの事を霊夢には頼めないから』

 

幽々子『博麗の巫女に頼めない事なのこれは?』

 

紫『私は霊夢にこの呪いの事は知られたくない。呪いの事を教えたくないのよ』

 

珍しく紫は暗い表情をする。

 

紫『一方通行にかかった呪いは全て善意で出来たもの。でもそれは結果的に彼を幻想郷に縛り付けることになってしまった。この事を知れば霊夢は自分を責めるわ。そもそももとはと言えば原因は私_______』

 

幽々子『もういいわ紫』

 

紫『幽々子』

 

幽々子『貴方、前より優しくなったわね』

 

ニッコリと笑いながら幽々子は紫に言う。

 

幽々子『要は博麗の巫女には呪いの事を隠したい、って事でしょ。そして貴方は友達が少ないから私にしか頼めない……と言う事?』

 

紫『最後の所は悪意があるけど……まあそんな感じね』

 

幽々子『そう。しょうが無いわね。いいわよ』

 

紫『ありがとう幽々子』

 

話は一件落着、と思ったが紫は大事な事を思い出す。

 

紫『最後に忠告良いかしら?』

 

幽々子『んー?』

 

真剣な顔で紫は話す。

 

紫『一方通行が暴走したら気をつけて。あの子はこの幻想郷を簡単に破壊する力を持ってるわ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢「幽々子様、幽々子様!」

 

幽々子「ッ!……どうしたの妖夢?」

 

妖夢「すいません、幽々子様がぼーっとしてたもので」

 

紫と話していた事を思い出していたため、ぼーっとしていたらしい。

 

妖夢「どう、しますか幽々子様?」

 

今にも暴れ始めそうな一方通行を見て妖夢は幽々子に話す。

 

幽々子「そうねえ、白玉桜が破壊されたら困るからあの子を止めるとするわ。それに紫との約束もあるからね」

 

妖夢「それでは、お供させていただきます!」

 

刀を構える妖夢。

 

幽々子「大丈夫。と言いたいけど私一人の力じゃ無理だから、お願いね妖夢」

 

妖夢「ッーーー!!……はい!」

 

頼られた事がとても嬉しくてニヤけそうだったが何とか耐えた。

一方、一方通行は

 

一方通行(…こiuoをonsfxちゃmupiい)

 

背中にある黒い翼が十本ぐらいになっていて、幽々子と妖夢の方を向いていた。

 

一方通行(……oauign言bjurk分huxye)

 

幽々子「そろそろ来そうね」

 

妖夢「…ふぅ~……ッ!」

 

一方通行が黒い翼を止めてるのだろうか、黒い翼がガタガタと震えて居る。

幽々子は弾幕を自分の背後に設置、そして妖夢は深呼吸をした後に刀を構え直した。

 

一方通行「mero殺wp」

 

最強の化け物がついに動いた。

黒い翼が妖夢と幽々子に襲いかかる、その黒い翼の速度はとても速く目で追える速度では無い。

 

幽々子「ッ!!……妖夢!」

 

妖夢「…く……うっ……!」

 

幽々子は何とか翼を避けた。

そして妖夢は黒い翼を刀で受け止めたが刀は弾かれてしまいそのまま翼が妖夢を襲い地面に叩きつけられる。

 

幽々子「……ッ!……妖夢の事が気になるけど、妖夢の所へ行けない」

 

もう一度黒い翼が襲いかかるが、また何とか回避。

気を抜けば黒い翼に殺される、そんな状況で他人を心配する暇なんてない。

 

一方通行「reku離yo」

 

幽々子「……うっ!……何て言ってるの、あの子?」

 

黒い翼が幽々子の肩を擦める。

意味不明な言葉を発する一方通行に疑問を持ったが、今はそのような事を考えている暇ではないと思った。

 

妖夢「……幽々子様が……戦っているんだ……私も!」

 

ゆっくりと立ち上がり空で戦ってる幽々子を見る、そして妖夢は空を飛びもう一度暴走状態の一方通行の所へ向かう。

 

幽々子「今思ったけどこの子を止めるって、どうすれば良いの?………ッ!?妖夢!」

 

妖夢「はっ…ふっ!すいません。お怪我は?」

 

幽々子「大丈夫。って、妖夢のほうが怪我してるんじゃない」

 

襲いかかって来た黒い翼を妖夢が刀で斬り払う。

妖夢はたった一撃でボロボロに、それ程一方通行の力は強いのだ。

 

妖夢「幽々子様。どうすれば一方通行さんを止める事が出来ると思いますか?」

 

幽々子「んー、ともかくダメージをあたえれば___ッ!」

 

妖夢「幽々子様!___うっ!」

 

空を飛び回りながら黒い翼を回避していたが、幽々子が翼に当たってしまう、そして妖夢が幽々子を心配して止まってしまった。

止まった妖夢に黒い翼が向かって来て、妖夢は横腹を擦った。

 

一方通行「何nebd俺iukohc聞nadx」

 

黒い翼は十本だったが、それが百本ぐらいに。

 

幽々子「……凄い子を呼んじゃったみたいね」

 

妖夢「…幽々子様……」

 

二人は大きく広がる黒い翼をもう眺める事しか出来なかった。

もう死を覚悟する、二人で戦っても傷一つ付けることも出来なかったのだ、この化け物に。

でも異変を感じる、何故なら次の攻撃が来ない。

 

幽々子「…どうしたのかしら?」

 

妖夢「?黒い翼が……止まった」

 

一方通行の黒い翼がガタガタと震える、そして

 

一方通行「くtargァァァあああああああああああ!」

 

大地を揺らす程の咆哮する一方通行、その後の背中には黒い翼は無かった、そして気を失い地面へ落ちていった。


















ポスター「一方さんのノイズ書くの難しい!」

一方通行「俺に言うな、三下ァ」

ポスター「一方さん以外言えるか、こんなこと!」

一方通行「オマエ、俺の事なめてンのかァ?」

ポスター「い……いいえ」ビクビク

一方通行「……つゥか、霊夢はどこだァ?」

ポスター「どっか行っちゃった☆」


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10話

ある異変が起き、幽々子と一方通行の戦いに決着はつかなかった。

その背中に真っ黒な翼を生やし暴走する白き怪物。

 

彼はどれ程強いのか誰も想像もつかない。

 

だが、これだけは分かる。

次、もしも一方通行が暴走したら"悲劇"の一言では収まらない事態になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは白玉桜のある一室。

そこで一方通行はふかふかの布団で寝ていた。

 

一方通行「………ン………あァ?」

 

目覚めると知らない部屋で寝ていたことに気付いたが、大したことではないと思った。

 

一方通行「………俺は……、あの時……」

 

思い出す、あの瞬間を。

黒い翼が暴走し心の底から沸き出てくる殺意と破壊衝動。

それに耐えていたが自分に限界が来て、黒い翼に意識が飲み込まれてしまった。

 

一方通行「フッ。この俺が自分の力を操作出来なくて暴走か…………笑えねェ」

 

自分の事を静かに嘲笑う。

 

一方通行「とりあえず、ここが何処か調べに行くとしますかァ」

 

ふかふかの布団から出て、自分が居る部屋の襖を開けると手入れされている庭が見えた。

 

一方通行「……あァ、此処は白玉桜かァ」

 

一目見て気付く、何故なら白玉桜に入った瞬間この庭は目に入っていたのだ。

 

一方通行「チッ。暴走の次は記憶障害かよクソったれ」

 

暴走した事には起きた瞬間分かったが記憶がちょくちょく飛んでいて訳が分からなっていた。

だが、もう大丈夫だ。全てを思い出した。

 

一方通行は部屋から出て縁側を歩いて居ると自分の靴を発見し、そして自分の靴を履いて白玉桜の庭へと出る。

 

もう幻想郷はすっかり夜だった。

月は綺麗に輝きこの地を照らしている。

 

 

一方通行(……………………)

 

 

手入れされて庭を歩いていると池と橋を見つける。

一方通行はその橋を渡っていたがその途中で足を止め、夜空を見上げ月を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の話だ。

 

妖夢が今いる場所は白玉桜の風呂場、そこで服をゆっくり脱ぎ湯船に浸かる。

 

妖夢「痛てて……、やっぱり傷に染みるな」

 

ゆっくりと大きな湯船にに入ったがあの戦いで傷を負ったため湯が傷に染みる。

 

妖夢「ふぅ……。なんだが今日は一段と疲れた」

 

いつもは家の掃除や料理を作るだけだが、今日は戦ったのだ。しかも同じ人と二回も。

そして、お風呂で疲れた体を癒せたので妖夢はお風呂から上がる。

 

妖夢「♪~~~。ん、幽々子様?」

 

幽々子「……………」///

 

お風呂上がりで機嫌が良い妖夢が鼻唄を歌って縁側を歩いて居ると縁側で座って庭を眺めて居る幽々子を発見した。

だがなにか、少し変だ。

幽々子様は頬を赤く染めていたのだ。

 

妖夢「どうしたんですか、幽々子様?」

 

幽々子「___ッ!?妖夢、お風呂入って来たの?」

 

急に声を掛けられ驚く幽々子。

いつもはこんな反応は絶対にしない。

それほど何かに夢中になっていたのだろう。

妖夢は幽々子が驚いた事に驚いたが、

 

妖夢「は、はい。それにしても珍しいですね、幽々子様があんなに驚くなんて。何かあったんですか?」

 

幽々子「な、何にも……、無いわ」////

 

妖夢「そう、ですか……」

 

頬を染めながらそっぽ向く幽々子に妖夢は「絶対何かあっただろ!」っと言いたかったが立場上言えなかった。

 

妖夢「何を見てたんですか、幽々子様?」

 

幽々子「そ……それは……えーと」////

 

妖夢「ん?あれは一方通行さん?」

 

恥ずかしい気持ちがあるが幽々子はある所に指を差すとそこには白い影。

真っ暗な夜のなか、月の光に照らされていた一方通行が居たのだ。

 

幽々子「………綺麗ね」///

 

妖夢「そうですね」

 

ニッコリと妖夢は笑い幽々子に言葉を返す。

すると幽々子も笑ったのだった。

一方。一方通行は、

 

一方通行(あン?なァにアイツら俺の事見てンだァ?……あァそォか。俺の事監視してンのか)

 

誰かに向けられた視線に気付く。

一方通行はその二人の方へ首を向け話掛ける。

 

一方通行「オイ、イイのかァ俺の事自由にさしちまって?もしかしたらオマエらを殺すかも知ンねェぞ」

 

幽々子「もし貴方がそう思ってたらそんな事私達に言う必要無いんじゃない?優しいのね」

 

一方通行「俺が優しいだとォ?寝言は寝て言え」

 

幽々子「フフッ、照れてるの?………さて、寝ましょ妖夢」

 

縁側で座っていたが幽々子は立ち上がり背筋を伸ばした。

 

妖夢「えっ!?お食事は?」

 

幽々子「お腹空いてるけど、それ以上に疲れたから眠いの」

 

妖夢「(幽々子様が夜ご飯を食べないだと!?珍しい……ッ!!)そう、ですか。分かりました。明日の朝食に夜出すはずだった料理を出しますね」

 

幽々子「そうそう、貴方。あんなに暴れたんだもの、相当疲れてるんじゃない?寝て疲れを取りなさい」

 

一方通行「あァ?何言ってンだァオマエ?」

 

幽々子「さっき居た部屋に帰って寝なさいって言ったの。分かりやすく伝えたはずだけど伝わらなかったかしら?」

 

一方通行「俺はオマエらを殺しかけた、そンな奴を自分の家に泊めるなンて頭のネジ外れてンじゃねェのか?」

 

幽々子「たしかに。でも、私の見た限りじゃ貴方は危険な人じゃなさそうだからね。ゆっくり休みなさい」

 

二人は自分の部屋へと歩いて行き一方通行は一人庭で立っていたが眠いのでさっきいた部屋へ行った。

そしてまた布団に入り深い眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空に光輝く太陽が昇る。

そして鳥達はチュンチュンと鳴いている、

 

そんな平和な朝だというのに一方通行は妖夢に大声で起こされていた。

 

妖夢「もうっ!!いい加減起きてください!!いくら客人といえどこれ以上のお寝坊は許しませんよ!!」

 

一方通行「チッ。うるせェな」

 

なかなか起きて来ない一方通行を起こしに来た妖夢。

だが一方通行はそう簡単には起きない。

 

妖夢「あっ!何もう一回瞳を閉じて寝ようとしてるんですか、起きてください!!」

 

一方通行「……まだ起きるには早ェよ」

 

妖夢「早く無いです!!どちらかと言うと遅すぎます!!だーかーらー起ーきーてーくーだーさーいっ!!」

 

一方通行「はいはいはい、分かった。起きればイインだろォ。……ったく」

 

あまりにもしつこいため諦め素直に起きた。

そして少し寝惚けている一方通行を妖夢が案内した場所はこの白玉桜の茶の間。

そこに幽々子は既に来て居て座っていた。

 

妖夢「それでは、お食事を持って来ますね」

 

幽々子「よろしくー」

 

一方通行が茶の間に来た事でやっと皆が揃った。

ので、妖夢は食事を取りに台所へと歩いて行く。

そして一方通行は幽々子とは反対の方に座った。

 

幽々子「おはよう一方通行。良く眠れた?」

 

一方通行「………」

 

幽々子「あら、おはようは?」

 

一方通行「俺にそンな事求めるな」

 

幽々子「朝の挨拶は大事よ。親に言われなかった?」

 

一方通行「俺は家族なンて居ねェから言われた事ねェよ」

 

幽々子「そう…なの。ごめんなさい」

 

不味い事を言ってしまったと幽々子は後悔。

だが一方通行は、

 

一方通行「気にすンな、別に何とも思っちゃいねェよ」

 

机に肘を付きながらあくびをする一方通行は早く起きると言う事は学園都市で住んでる時は無かった。

学校は書類上は通ってる事になっているが行く必要が無いため行ってはいない。

そして"絶対能力進化計画"は人目にかからない時間帯、つまりよく夜にやっていの。

結論、朝早く起きる必要無い。

だから一方通行は朝に弱いのだ。

 

一方通行「……そォいやよォ、俺を呼ンだ理由はなンだ?どォせ面倒な理由なンだろォけどよォ」

 

幽々子「勿論あるわ。それはねえ____」

 

妖夢「お待たせしました!」

 

幽々子が言おうとした瞬間に妖夢が豪華な食事を持って来た。

豪華過ぎて朝に食う量では無いと一方通行は見た瞬間に思った。

でも幽々子は普通の顔をしている、まさかこの量を食うつもりらしい。

 

一方通行「朝食にしては多すぎねェか?」

 

幽々子「昨日の夜に出す予定だったからねー、妖夢」

 

妖夢「でも少し減ってましたよ。幽々子様、もしかしてつまみ食いしました?」

 

幽々子「し……、してない……よ?」

 

妖夢は幽々子がつまみ食いをしたと知っておきながら質問をした。

質問された幽々子の反応は目をそらし落ち着きがなかった。

 

妖夢「はぁー……。ごめんなさい一方通行さん」

 

一方通行「あァ?何故俺に謝る?」

 

妖夢「この料理は貴方のために作った物なんですけど。それなのに幽々子様ったら、全く」

 

呆れながら妖夢は横目で幽々子の事を見た。

幽々子は反省をしていたが「多分またやるな」っと妖夢は心の中で言った。

 

一方通行「はァ?…俺のために作ったァ?」

 

幽々子「私は貴方にとても感謝してる。だからここに呼んで妖夢の美味しいご飯を食べて貰おうと思ったの、感謝の気持ちを形として伝えたくてね」

 

微笑みながら幽々子は一方通行に感謝の気持ちを伝えた。

だが一方通行は何故感謝されたのか分からなかった。

 

一方通行「俺はオマエらに感謝される覚えはねェぞ」

 

幽々子「この幻想郷を救ってくれたじゃない、忘れちゃったの?」

 

一方通行「幻想郷を救ったのは霊夢だ、俺じゃねェ」

 

幽々子「紫から話を全部聞いたけど、私は貴方が救ったと思うげとなー」

 

一方通行「……ともかく。感謝される理由はねェからこれは食わねェ」

 

こンな下らねェ理由だったのか……。

っと一方通行が立ち上がろうとした瞬間、それを見ていた妖夢は、

 

妖夢「ま、待って下さい!」

 

慌てて一方通行の腕を掴んだ。

 

一方通行「チッ、離せ」

 

妖夢「せっかく一方通行さんの為に作ったんです。食べていって下さい……。少しでも良いので」

 

誰かの為にと、作られた料理がそのまま放置なんて可哀想にも程がある。

妖夢の表情を見て一方通行は一回ため息をつく。

そしてチラッと幽々子の顔を見ると楽しそうな顔していてイラッとした。

 

一方通行「はァ……。分かった、分かりましたよォ。食えばイインだろォ食えば」

 

幽々子「素直じゃ無いわね」

 

むかつく。

幽々子に対してはその言葉しか見付からないがとりあえず、だ。

一方通行はご飯に食べようと自分の前に置かれた箸を手に撮った。

が、何故か妖夢が隣に座ったのだった。

 

一方通行「あァ?オマエはあっちじゃねェのかよ?」

 

妖夢「どこに座るのも私の自由です」

 

一方通行「あァ、そォかい」

 

もう全てが面倒くさくなってきたので一方通行は黙って目の前の和食を食べる。

 

一方通行「……何だよ」

 

じーっ、と隣の銀髪の少女が見てくるのでたまらず質問する。

 

妖夢「どうですか、お味は?」

 

一方通行「……旨い」

 

ギリギリ妖夢に聞こえる声で一方通行は呟いた。

そしてその言葉を聞いた妖夢はニッコリ笑って、

 

妖夢「そうですか、よかったです!」

 

その後三人は話をしながらご飯を食べていた。

そしてその途中、一方通行は気になる事があったから二人にその気になる事を話した。

 

一方通行「そォいやよ。この世界に神ってのが居るらしいがどこに行ったら会えるか知ってるか?」

 

幽々子「んー?何で神に会いたいの?」

 

一方通行「もしも本当に神ってのが居るンだとしたらどういうヤツなのか一目見てみてェ。って理由だがこれじゃダメか?」

 

幽々子「別にいいんじゃない?でも貴方が思ってるような神様じゃ無いわよこの世界の神は。それでも会いたい?」

 

一方通行「一目見てェだけだって言ったろ」

 

幽々子「う~ん。教えてあげたいけど私、神が居る場所は知らないのよね。妖夢~、神の居場所知ってる?」

 

妖夢「すいません。私も詳しくは知らないです」

 

悩みに悩んだが妖夢は分からなかった。

一方通行は二人の言葉を聞いた後に小さくため息を吐いた。

 

一方通行「そォかい。なら自分で探すか」

 

次に幽々子は神の居場所を知っている知り合いが居ないかどうか考えていると一人の人間を思い出す。

この幻想郷を飛び回り、率先して異変解決に向かう者。

その者とは、

 

幽々子「___ッ!!博麗の巫女に聞いてみたら?あの子結構この世界に詳しかったと思うけど」

 

一方通行「情報提供に感謝する。だがその前にやる事があるンだよ。だから霊夢に聞きに行くのは後だ」

 

妖夢「やること、ですか?」

 

一方通行「あァ。なかなか進まねェンだよオマエ達みたいな邪魔が入るとな」

 

幽々子「ふ~ん、やる事って何?」

 

一方通行「俺の住む家を探すこと」

 

幽々子「だったら簡単じゃない」

 

一方通行「あァ?」

 

"簡単"と幽々子は言い放った。一方通行が悩んでいる事を、だ。

 

幽々子「ここに住めばいいじゃない」

 

一方通行「はァ?」

 

妖夢「えぇ!?」

 

幽々子は笑いながらとんでもない事を口にだす。

一方通行は「コイツ頭大丈夫か?」と思い

妖夢は「何言ってるんですかぁ!!」と思った。

二人が何も言わないので幽々子は片手を頬に当てながら

 

幽々子「どうかしたの?」

 

一方通行「今、オマエの頭がどうかしてるって事が分かった」

 

妖夢「幽々子様、流石にそれは……」

 

幽々子「一方通行が居たら楽しいと思ったから言ったんだけど、ダメだった?」

 

一方通行「昨日会ったばかりの人間でしかもオマエらを殺しにかかった野郎だぜェ俺は。そンなヤツと一緒に住ンだらヤベェって考えは浮かばなかったのかよ」

 

幽々子「んー、そうねぇ。思わなかったかな?」

 

一方通行「妖夢、オマエの(あるじ)警戒心ゼロだ。オマエが頑張ンなきゃヤベェぞ」

 

妖夢「そうですね。今まで以上に気を引き締めてなきゃ大変なことが起きそうです」

 

二人は幽々子を見ながらそんな会話をしていた。

そして、多過ぎた食事は幽々子が軽く平らげたことに一方通行は少し引いていた。

 

そしてそして、妖夢がお皿を片付けている最中。

 

妖夢「あの幽々子様。あともう少ししたら今日のご夕飯の分が無いので買い出しを後で行ってきます」

 

幽々子「そう。一方通行はどうするの?」

 

一方通行「人間の里に今から出発する予定だ。オマエ達には本当に世話になった。じゃあな」

 

もうここから出る準備は出来ているためすぐ出ようとしたら

 

妖夢「私も人間の里に行くので一緒に行っちゃダメですか?」

 

一方通行「だったら早くしろ」

 

妖夢を待つため一方通行は足をだすように縁側にすわった。

 

妖夢は慌ててお皿を片付けていた。

そして幽々子は縁側に座っている一方通行に話しかけたとても優しい声で。

 

幽々子「ねえ、一方通行。もし困った事があったらいつでもいらっしゃい」

 

一方通行「……覚えとく」

 

妖夢「お待たせしました!」

 

一方通行と妖夢は縁側から外に出て行った、それを見ながら幽々子は小さく笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「これを下るのか……」

 

大きな階段の上から一方通行は下を眺めていた。両手をズボンのポケットに突っ込みながら。

 

妖夢「降りないんですか?」

 

一方通行「オマエは下に果てしなく続くこのバカデカい階段を普通に降りてンのか?」

 

妖夢「はい。慣れてますから苦ではありませんよ」

 

「まァ慣れてりゃそォだろうな」と、一方通行は心のなかで呟く。

そして次に速く人間の里に着く良い方法を思いついた。

 

一方通行「人間の里はあっちか。___よっ、と」

 

妖夢「_____ッ!?」

 

一方通行は妖夢に近付き、そして妖夢を横に持つ形で抱き抱えた。

妖夢は一方通行が近付いて来たとき、顔に何か付いてるのか?と思った。

だが違ったのだ一方通行が思っていた事は。

だから今、自分がどうなってるか分からなかったがあの時の目線と一緒だ。

お姫様抱っこされている時と。

 

一方通行「口を閉じてじっとしてろ。じゃねェと舌噛むぞ」

 

妖夢「えっ?」///

 

頬を真っ赤に染めている妖夢に一方通行はいつもどうりに普通に話す。

そして次の瞬間。一方通行の背中に四つの竜巻が生成させ、それを利用して空を飛んでいた。

 

一方通行「あの高さを利用して飛ぶと結構楽だなァ」

 

妖夢「……うぅ……」///

 

もう恥ずかし過ぎて妖夢は両手で顔を隠していた。

そんな彼女に、

 

一方通行「オイ妖夢。このまま人間の里に着陸してイイのか?」

 

妖夢「えっ?多分……。いや絶対ダメです!!」///

 

一方通行「そォか……。そォだよな(空から人が降ってきたら注目を浴びて面倒事でも起きそォだしな)」

 

妖夢(知り合いにこんな姿見られたくない!!)///

 

空を猛スピードで飛んでいたら人間の里付近に着いたのでそこからは誰にも見つからないように静かに地面に降りた。

そして、

 

一方通行「こっから道案内頼むぞ」

 

妖夢「その前に一つ二つ言いたい事があります!!」

 

怒りの表情を浮かべながら妖夢は人差し指を顔の前で立て、もう一方の手は腰に当てていた。

そして、

 

妖夢「まずは一つ何か言ってから……その……お姫様抱っこして下さい。……ビッ、ビックリするので……ッ!!」///

 

一方通行「?……悪ィ」

 

妖夢「そして二つめ。私も空を飛べます」

 

次に妖夢は両手を腰に当てて胸を張る。

これでも、っとでも言いたいのだろうか。

 

だが自分勝手な白い彼は、

 

一方通行「それは知ってる」

 

妖夢「だったら何故私に「飛んで行こう」って言わなかったんですか?」

 

一方通行「あァやって行った方が速ェだろ」

 

妖夢「私もあのぐらいの速度で飛べますよ!!」

 

一方通行「あァ、ハイハイ。悪かった悪かったァ」

 

妖夢「絶対思って無いですよね!?___って、そっちじゃないですよ里の方角は!!」

 

もう面倒になり妖夢の言葉を無視した一方通行は適当に歩き出した。

だがそっち里がある方角とは全く別の方角。

妖夢は慌てて一方通行の後を追い、頼まれた里への案内を開始した。

 

妖夢(もう自分勝手すぎる!!でも、なんでだろう。何で私はこんな人が"嫌いでは無い"……。って思っているんだろう……?)///

 

一方通行「あァ?何黙りこくってンだ?まさか、こっからは分からねェとかぬかすンじゃねェだろォな」

 

妖夢「ッ!?ち、違いますよ!!何でも無いので黙って付いて来て下さい!!」///

 

何故か一方通行と一緒に居ると心臓の鼓動が早くなる。でも何故か苦しくは無い。逆に楽しいのだ。

なんなのだこの"気持ち"…………は?

 

妖夢(もしかして……私……いや、"まさか"。"まさか"………ね)

 

一方通行「……ン……?」

 

隣で一緒に歩いている一方通行のチラッと見る。

そしたら一方通行と目があった。

その瞬間、心臓がドクン!!と今までで一番大きな鼓動音を響かせる。

 

妖夢はモヤモヤしながら、

そして、一方通行は面倒くさそうに歩いて行った。

 

それから二人は黙って歩いていると人間の里に入るための門に着いた。

 

一方通行「門番は居ねェンだな」

 

妖夢「そうです。ここは妖怪の集落よりは平和ですからね」

 

二人は人間の里に入った。

やっと一方通行は目的地である人間の里に着きひと安心。っと言ったところだろうか。

 

そしてそして。

ここで、妖夢は

 

妖夢「すいません。案内してあげたいんですが……私は用があるのでここでお別れです」

 

一方通行「あァ。世話になったな」

 

妖夢は一方通行に微笑む顔を見せて、「気を付けて下さい、お元気で」そう言うと彼女は彼女の目的の場所へ歩いて行った。

そして、一人になった一方通行は物件探しのためこの里を歩き回ることにした。

 

すると、通り道で

 

文「おっ!一方通行さーん!」

 

一方通行「……あァ?誰だオマエ?」

 

文「あやや!?忘れちゃったんですか。一度会いましたよね?そしてその時自己紹介もしましたよね?」

 

とても目立つ白い髪に下手したら女性よりも白い肌の彼の姿に気付き手を振りながらこちらに近付いて来た鳥のような黒い翼を生やした少女。

彼女は、一方通行の前に立ち一方通行の足を止めた。

 

一方通行「あァ…。あの時、取材がどォとか言ってた奴か」

 

文「思い出してくれたんですね!!あの時は邪魔が入りましたが。今なら____って、どこ行くんですか!?」

 

長い話になりそうなのでメモ帳を取り出してる時に逃げれる隙を見付けたので黙って去ろうとしたら文に見つかり、腕を捕まれてしまった。

 

一方通行「……ウゼェ、消えろ。そして手を離せクソったれ。ぶち殺すぞ」

 

文「うっ………。お願いします。少しで、少しでいいんで取材を……」

 

一方通行「…………チッ。分かった、少しだけな」

 

一方通行の殺気に見事耐えた文。

そして自分の腕を握る強さでどのぐらい必死か分かった一方通行は仕方がなく了承した。

彼にも優しさあるのだ。

 

文「やった!ではでは、あの団子屋でお茶をしながらっていうのはどうですか?」

 

一方通行「何処でもイイからさっさと済ませろ。こっちは暇じゃねェンだ。オマエに長く付き合ってられねェンだよ」

 

文と一方通行は団子屋に入り、客が利用できる畳に座る。

そして勿論ここは団子屋。だから二人分のお茶と団子を文は注文した。

 

一方通行「別に俺は茶だけで良かったンだが?」

 

文「言うの遅いですよ。もう頼んじゃいました……」

 

席に着いてまず出されたのは温かいお茶だった。

そのお茶を飲む一方通行に文は、

 

文「それではいいですか?取材」

 

一方通行「俺が答えられる程度は話してやる」

 

気を取り直して文は一方通行に気になっていた事を質問する。

 

文「貴方が居た世界の事をお聞かせ下さい」

 

メモを取るためメモ帳とペンを取り出す。

新聞のネタになるというのもあるが彼女自身。

他の世界が気にならない訳じゃない。

別世界。異世界。まだ誰も知らない未開の土地。

そういう響きは胸を踊らせてくれる。

 

一方通行は湯飲みを机に置き肘をついた。

 

一方通行「オマエらは機械って知ってるか?」

 

文「ハイ、知ってますが。それが?」

 

一方通行「俺の居た場所の名は"学園都市"。オマエらが考えが及ばないようなハイテクな機械があり、超能力者と無能力者、そのどちらも居る世界だ。そこは大人よりガキの方が多くてな____」

 

そしてそれから学園都市の事を話す。

真っ暗な闇の部分は隠して…………。

 

そしてその話の途中、

 

文「なるほど。どうやら貴方の居た世界は結構便利な文明を築いた所だったんですね。しかも大人より子供の方が多いとは…………」

 

一方通行「そォいえば幻想郷に学校はあンのか?」

 

文「学校というか、寺子屋があります」

 

一方通行「寺子屋ァ?なに時代だよここは……」

 

文「貴方の居た世界とはやっぱり全然違いますか?ここは」

 

一方通行「まァな。俺が居た世界では演算して能力を発動する。だが、オマエ達は違うだろ」

 

文「演算……ですか。ほうほう、それで?」

 

一方通行の言った事をメモりながら相槌をする。

そうやって話していると団子が机に置かれた。

頼んだ団子はみたらし団子だ。

このお店の看板メニューだ。

 

文「____ふー……。なかなかいいネタをゲットだぜ!!それではお礼にどうぞ!!」

 

一方通行「甘いモンは好ンで食わねェが。まァ貰うか」

 

文はとても嬉しそうに笑って団子が乗った皿を渡してきた。

それを一方通行は素直に受け取り団子を食べ始めた。

だが……、

 

一方通行(そォいや俺ァバカみたいに朝食食ったけな……)

 

一本食っただけでお腹がいっぱいになった。

だから一方通行は残りを文にあげる事にした。

 

一方通行「……後はやる」

 

文「いいんですか?」

 

女性は甘いものが好きと言うが、まさにその通りだなと思った。

幸せそうに団子を食べる文は嬉しそうに団子を受け取る。

そして食べることに夢中になっていたのか。美味しそうに食べていると口元にみたらし団子の餡が…………。

それを発見した一方通行は、

 

一方通行「オイ、口元に付いてンぞ」

 

文「えっ!?ど、どこですか!?」

 

手を伸ばし親指で優しく吹いた。

すると手にはみたらし団子の餡が。

 

それを一方通行はペロッと舐める。

 

一方通行「……よく、こンな甘ェもンあンなに食えンな____って、何だよ?」

 

文「……えっと、いやー、そ、そのー………」////

 

一方通行のやった行動に団子屋に居る人全員が驚く。

文は口元に餡が付いていた事は恥ずかしかったが、もっと恥ずかし事が起きた。

だからだろうか。

心臓が五月蝿い。顔が、体が熱い。

 

文は頬を真っ赤に染めて下を向いていた。

 

一方通行「あン?どォした?」

 

文「い、いえ、そ…その……」///

 

まともに一方通行の顔を見れなくなっていた。

しかも心臓はまだバクバク鳴っている。

 

文「何でも……ありません……ッ!!」////

 

一方通行「あっそ。つゥか何か注目してンぞ俺達」

 

多くの目線に気付き周りを見ると、

 

「今の若い子はああなのかしら?」

 

「あんな可愛い子と……くそっ!!」

「若いわね~」

 

おばさんに、爪を噛んで嫉妬する若いお兄さんに、緩いお姉さん……などなど。

多くの者が何か小声で話していた。

 

そんな中、文は一人で考え込む。

 

文(………どうしよう、今まで感じたことの無い気持ちだ。もしかして、これって……。確かに顔立ちは素敵だしなにか惹き付ける不思議な雰囲気を持つ人だけど___ってなに考えんだ私はッ!?)////

 

顔を両手で覆ってブンブン顔を振ったり、指と指の間から一方通行の顔をチラチラ見たり………と。

なんだが落ち着きの様子がなかった。

しかし、そんな事気にならない真っ白な彼は

 

一方通行「もォ取材終了だよなァ。だったら俺は行くぜ」

 

文「______あっ!待って下さい!!」

 

気付けば一方通行は団子屋から出て行ってしまった。

慌てて文はお会計を済ませ一方通行を追いかける。

その手には折り畳んだ紙が、

 

道のど真ん中で一方通行は止まり文の方に振り向く。

そしたら近くまで文が走って来た。

 

文「こ、これを……!!」

 

一方通行「あァ?何だコレは?」

 

文「とあるお人から。……いや、とある鬼から渡されたお手紙です、受け取ってください」

 

手に無理やり渡された紙。

それがなんだか分からないが、

またまたコレは面倒な事の種になりそうだ。

 

そして手紙を渡すと文は頬を真っ赤に染めたまま何処かへ飛んで行ってしまった。

 

何がなんだか分からない一方通行は手紙を持ったまま、

 

一方通行「チッ……。俺ァいつ家を探しに行けンだ?」

 

そんな事を呟いた後折り畳まれた紙を開き書かれている文章を読んだ。

 




☆霊夢の雑談コーナー☆

一方「あン?何だこりゃァ?」

霊夢「ここの新コーナーよ!!」

一方「マジかよ……」

ポスター「よーっす!……って。えェェッ!?」

霊夢「フッフッフッ」

一方「……ふァ~、眠ィ」


ポスター「コーナー乗っ取られたァァァあああああああッ!?」


※次回からマジで始まります。



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11話

続きです、どうぞ。

ん?なんかこの台詞、懐かしいな……。


流石に道のど真ん中で突っ立ってるのは非常識と思ったのか、一方通行は道の隅に行く。

そして見知らぬ店を背にして、新聞屋の文に渡された手紙を読む。

しかし、それは学園都市に居た時に良く貰ったやつとそっくりだった。

 

一方通行「……"挑戦状"か。フッ、これで懐かしく思うなンてな」

 

渡されたのは挑戦状。

学園都市に居た時は"第一位"という称号は、一方通行からしたら別にあっても無くてもどうでいも良いもの。

なのに、不良どもはその称号をとても欲しがっていた。だから一方通行に挑戦状を叩きつけ勝負を仕掛けてくる。

逃げても別に良いが格下に舐められるのは非常に腹が立つ。

一方通行は素直にその紙に書かれた場所へ向かい、一人残さずその日の内に病院送りにしてやった。

 

そして、

いくら数を集めよォが強力な武器を持ってこよォが俺に勝てねェって気付かねェのか?

そう呟いて、その場を去る。

無能力者だろうが、例え高位の能力者だろうが一方通行に傷一つ付ける事もできない。

もしも、第一位に挑もうものならソイツは絶対的な恐怖を胸に刻まれるだろう。

 

一方通行「場所は妖怪の山ァ?……と言う事は相手は妖怪か」

 

そォいや文は鬼からだって言ってたなァ。っと、そう次に呟いた。

そしてその手紙にはご丁寧に待ち合わせ場所も書いてあった。

一方通行はその手紙を暗記したため適当に自分の後ろへ投げ捨て、妖怪の山へと行くため人間の里を出る。

 

一方通行(この俺に挑戦とはな。イイ度胸じゃねェか……ッ!!)

 

まだ見ぬ相手にもう殺意を向け、一方通行はいつもの様に背中に竜巻を生成し空を飛んで行った。

 

その『鬼』と戦うために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪の山へと飛んで向かっている最中に川を発見した。

 

一方通行「…………あァ?」

 

特に理由もなく川を見ているとその近くに緑色のリュックを背負っている少女を見付けた。

 

一方通行「……ッ……、あァ!?」

 

どこにでも居る普通の人間だろうと思い無視……。

とはいかなかったのだ。

 

その少女が持っていた物を見てからは、、、

一方通行はその場で止まり下に居る少女をじーっと視界から外すことなく見ていた。

一方通行が気になっていた物は少女が両手で大事そうに持っていた機械だ。

この世界の文明は大分遅れていると思っていた。

人間が着ている服は学園都市では絶対着ない服だろうし、店や家があったとしてもとても古い構造物ばかりだ。

 

だから機械なんてあるわけ無いと思っていた。

だが、一方通行は文との会話を思い出す。

 

一方通行(そォいや文は"機械"っていうワードに引っ掛かってなかったなァ)

 

機械を知らない者に"機械"なんて言ったら「機械っ何?」とまずは質問するはずだ。

だが文はまるで機械を知っているようだった。

つまりこの世界でも機械、『科学』があるのかも知れない。

 

一方通行「幻想郷独自の科学技術。興味があるな、ちょっくら行ってみっかァ」

 

背中の竜巻を消す。

すると一方通行の体は重力に従い地面へと落ちて行った。

 

落ちている最中、一方通行は少女の目の前に落ちる様に風のベクトルを操作する。

 

一方通行「よォ……。リュック野郎ォ」

 

???「うわわわわ!!?」

 

突然急に自分の前に人が空から落ちて来たのだ、驚いて当たり前だ。

 

一方通行は巨大なリュックを背負った少女から3メートルぐらい離れた場所に着地した。

そこから話かけたが返事が返ってこない。

だが当然だ。突然空から人が降ってくるわ何事とも無かったように話かけてくるわで、混乱して話をするどころじゃないだろう。

 

一方通行「オイ、突然で悪りィがオマエが持ってるもン見せてくれ」

 

まるでカツアゲのような事を言って来た白い人間。

それに緑色の急にリュックを背負っていた少女は、

 

???「きゅ……、急に空から降って来て……そんな奴にだ、誰が見せるか!!」

 

一方通行「まっ、その反応が当然だよなァ。チッ、やっぱりあの登場は不味かったかァ」

 

一方通行は落ちている最中、流石にこの登場はなにかと問題があるのでは無いかと考えてはいたのだがもう行動に移ってしまったし今からじゃ止めようとすれば止められるが『もう良いや』的な気分でリュックを背負った少女の前に現れた。

だがやはり失敗だったらしい。

頭を掻き、この後の事を考えて無かったので今から考えていた。

 

すると少女の方から話かけてきた。

 

???「もしかして……人間?」

 

まあ一方通行の容姿を見た者はまず人間と思うだろう。

だが一方通行はもう人の姿をした神を越えた存在なのだ。

 

一方通行「あれやこれや説明すンのが面倒だから人間って思ってくれても構わねェ」

 

???「人間じゃないの?」

 

一方通行「………"元"人間だ」

 

???「人間!?」

 

ササッ!!と近くにあった大きな岩の後ろに隠れる。

 

一方通行「あァ?人間が嫌いかァ?」

 

???「ううん、嫌いじゃない。むしろ好きだよ。でもその、人見知りで……。妖怪相手じゃこうはならないんだけど…………」

 

一方通行「面倒くせェな」

 

大きな岩からちょっとだけ顔を出して少女は会話をしていた。

この光景……。他人が見たら勘違いするかもしれない。

 

一方通行「……オイ、見せるのが嫌なら交換でどうだ?」

 

???「交換?」

 

一方通行「あァ。俺はオマエ達みたいに言ったら幻想入りした外来人ってやつだ。だからオマエの知らねェ、知る由もなェ知識や技術を知っている。異世界の機械、オマエは見たくないかァ?」

 

???「異世界の機械!?どれどれ!!」

 

一瞬で一方通行の懐に潜る。

目にも止まらぬ速度であった。

まるで新しくおもちゃを買って貰える子供のような目で一方通行を少女は見つめる。

 

一方通行「ちょっと待て。つゥか人見知りはどうした?」

 

???「そんな事より早く!早く!」

 

一方通行「チッ、分かった分かった。あァ?……オイオイ、マジかよ」

 

ポケットから携帯を取り出したがヒビが入っており壊れていた。

だが、少女はその壊れた携帯を、、、

 

???「それが異世界の機械!?」

 

目をキラキラ光らせながら見ていた。

だが、、、

 

一方通行「壊れてやがる……。まァ、あンなに激しく戦ってたらポケットに入ってるもンは壊れるわなァ」

 

壊れている携帯をポケットにしまい一方通行は斜め下を見て舌打ちする。

 

そして。

 

一方通行「やめだ。俺のブツが壊れてる、これじゃ話にならねェ」

 

???「いいよ壊れてても、見せて!!」

 

一方通行「……イイのかよ、壊れてンぜ?」

 

???「うん!!」

 

満面の笑みでうなずいて了承してくれた。

一方通行はもう一度ポケットから壊れた携帯を出しそれを少女に渡し、少女は持っていた機械を一方通行に渡す。

 

一方通行「これは……学園都市の奴らじゃ作れねェな」

 

一方通行は近未来的な機械を見ながら呟いた。

珍しく感心しながら見ていると物は両手で持てるぐらいの大きさで重さは多分重いのだろう(能力を使って持っているので分からない)。

 

一方、少女の方は

 

???「すごーいっ!こんなの見た事ない!!……うぅ、中も見たいなあ…………」

 

一方通行「分解してもイイぜ。それ壊れてるしなァ」

 

???「えっいいの!?じゃあ早速___」

 

近くにある机代わりにするには丁度いい石に携帯を置く。

そして背負っていたリュックから工具を取り出し分解を始める。

 

一方通行「そォいやオマエ妖怪か?それとも人間か?」

 

???「私は妖怪。そして河童だよ」

 

一方通行「河童ァ?」

 

思っていた河童とは違っていた。

河童とはなんか頭に皿を乗せた、真緑の半魚人のようなものだと思っていたが全然人間っぽい。

まあ、ここは幻想郷。

常識にとらわれてはいけないのだ。

 

???「…………もしかして、妖怪が怖い?」

 

質問をしているとき自称・河童の少女の表情は少し暗くなっていた。

 

一方通行「ハッ……。この俺が妖怪ごときにビビっかよ。もしかしてオマエが妖怪だと知ったら人間はビビるのかァ?だったらこの世界の人間は腰抜けばっかだな」

 

???「例え幻想郷という世界で共に生きているとしても人間と妖怪の間には目には見えない境界線のようなものが引かれてる。人間と妖怪が一緒に暮らす事はできないよ。だって妖怪には力がある。だから生まれながら非力な人間は力を持つ妖怪を恐れている……」

 

一方通行「俺はもしも力が無くたってオマエの事を怖いなンて思わねェよ」

 

???「えっ!?」/////

 

暗い顔をしていた少女の顔が変わる。

頬を赤く染め一方通行の方を見る。

 

一方通行「オマエは人間が好きなンだろ?もし、俺に能力なンて無かったら俺もどこにで居るモブのような平凡で普通の人間だ。だが弱者たる人間だとしても好意を向けてる相手をビビる必要は無いだろ」

 

???「そうは無らないよ……、きっと君も」

 

一方通行「じゃあ約束する。俺はオマエを絶対怖いとは思わねェ。つか、オマエのようなヤツ怖いとか嫌いとか思わねェよ」

 

???「……お前じゃ、ない……。にとり、川城(かわしろ)にとり」///

 

一方通行「にとりか。俺は一方通行だ」

 

名前を呼ばれたら心臓がドクン!!と大きく鳴った。

そしてにとりの体温は徐々に上がり顔は更に赤くなった。

 

一方通行「?」

 

にとり「_____ッ!?」

 

何故か真っ赤になっているにとりを不思議と思い一方通行はにとりに顔を近づける。

 

心臓よ、少し黙ってくれ。

嗚呼……何でだろう。

一方通行と顔があうと何故か顔が、体が熱くなる。

 

にとり「う、うぅ……ッ」///

 

一方通行「あン?」

 

ここまで解りやすい反応をすれば普通の男なら気付くだろうが一方通行は"超"が付くほど鈍感。

それに元々自分にはそういう感情を向けられるなんて考えてもいないのだから気付く筈か無い。

 

にとり「ね、ねえ。盟友って呼んでもいい?」///

 

一方通行「好きにしろ」

 

にとり「うん!」///

 

そして。

にとりは密かに心に決意した。

いつか。そう……、いつか秘めたこの想いを伝えよう。

…………と。

 

にとり(……この想いはいつか伝えよう。いや伝えたい。その時まではこの人は私の盟友だ)///

 

一方通行「そォいや妖怪の山に行ってる最中だったけな。またな、にとり」

 

にとり「うん……って、これはどうするの?」

 

本来の目的を思い出し見せてもらったモノを返す。

そして妖怪の山へと歩き始めた一方通行ににとりは慌てて手に持っている壊れた携帯電話を指差して質問する。

 

すると。

 

一方通行「それはオマエにくれてやる。そしてそれを元にしたもンが出来たら見せてくれ」

 

にとり「……うん!絶対盟友をアッと驚く物を作って見せるよ!」

 

一方通行「そォか。そいつは楽しみだ」

 

にとりの言葉を聴いて一方通行は笑う。

だが、その笑みはまだ満面とは言えなかった。

いつか一方通行は純粋な笑みを浮かべて笑う日は来るのだろうか……?

 

この幻想郷で……。

 

そして。

にとりは貰った物を胸の前で握りしめ、手を振って一方通行を見送った。

 

にとり「またね、盟友!!」

 

一方通行も『またな』っと返した。

そして地面を踏みつける。その瞬間にベクトル操作能力を使用すると一方通行の体は速いスピードで空へ向かって一直線に飛んで行き、ある程度の高さまで上がったら背中から四つの竜巻を伸ばし自由に空を翔る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そして。

にとりと別れ、妖怪の山へと着いたら?

 

一方通行「チッ。どけ、殺すぞ」

 

天狗1「そうはいくか!!」

 

天狗2「ここは妖が住まう所、貴様のような者が足を踏み入れて良い場所ではない。もしも我々の言葉を無視してこれ以上進もうと言うのなら実力行使で貴様を排除する!!」

 

妖怪の山に着くなり二匹の天狗の大男に道の邪魔されていた。

 

一方通行「(コイツらに手紙を見せれば………)クソっ。捨てちまったな」

 

あの時手紙を捨ててなければこんな事は起きなかったかもしれない。

だが、一方通行は手紙を捨ててしまった。

 

しかしもう過ぎたことだ。

「しょうがねェ……」

そう小さく呟き諦めた。

 

一方通行「バカ鬼と戦り合う前に準備運動だ。オマエら、俺の邪魔をするなら無様に叩き潰してやらァ」

 

天狗1「行かせるか!!!」

 

天狗2「うおおおぉぉぉぉッッ!!」

 

二匹の天狗の男は一斉に一方通行を襲う。

だが、相手が悪かった。

この幻想郷で"最強"と謳われる能力者。

 

その者とこの世界で対等に戦えるの者はごく僅かだろう。

 

二匹の天狗の男は一方通行に近付いた瞬間、視認できない力によって天高く吹っ飛ばされてしまう。

そして地面に強く落下した。

 

だが。片方の天狗は気絶したがもう一人の天狗は意識を保っていた。

 

「行かせはせん、生かせはせんぞ人間風情がァァ!!」

 

懐に隠していた羽団扇を取り出してそれを思いっきり振る。

すると、普通の人間ではとても立っていられない強風を吹かした。

 

だが、しかし。

 

一方通行「………………………………で?」

 

「____なにっ!?」

 

一方通行には全く効かなかった。

風はいとも簡単に奪われてしまったのだ。

 

「そ、そんなバカなっ!?私の風をどうやって防いだ!?」

 

一方通行「簡単な話だ。風のベクトルを操ってこの手のひらに集めた」

 

一方通行の手の平には螺旋の形となった風があった。

それは天狗の大男が一方通行に向かって放った攻撃だった。

だがしかし。それはもう一方通行のモノとなってしまったのだ。

 

そして。

 

一方通行「ほらお返しだ。ちゃンと受け取れよ?」

 

ブン!!っと大きく腕を振るい奪った烈風を天狗の大男に放った。

今、自分に放たれたものは元々自分自身で生み出したもの。

ならば、防げる。

 

っということは無かった。

天狗の大男は烈風と共に遥か彼方へ吹っ飛んでいった。

 

残っている気絶したもう一人の天狗男を無視して一方通行は進む。

 

そして、そしてそして。

頭にねじれた大きな角を生やした背丈が低い少女に出会った。

 

萃香「おー、来た来た」

 

一方通行「…………オマエ、か。手紙の送り主は」

 

二人は多くの木に囲まれた開けていて闘いの邪魔になるものが殆ど見えない場所で出会う。

 

萃香「結構早く来たね。もう少し遅れるかと思っていたよ」

 

一方通行「面倒事は早く終わらせるに限るからな」

 

そして一方通行は戦う前に「一つイイか?」と言う。

すると萃香は頭を傾げて反応する。

 

一方通行「オマエ誰だ?」

 

萃香「……え?アレ?あの時宴会で会ったよね?」

 

一方通行「……………………あァー。そォいえば会ったよォな気がすンなァ、オマエみたいなガキに」

 

"ガキ"と言われると萃香は眉をピクッと動かす。

だが、、、

 

萃香「全く。約束したでしょ?いつか勝負しようって」

 

一方通行「言ってなァそンな事。ま、俺はそれを承諾した覚えはねェけどな」

 

萃香「じゃあ何でここに来たの?」

 

一方通行「あァ?最初に言っただろ?面倒事は早く終わらせるに限るってな。だがそれとは別の理由もある、それはなァ____________」

 

まるで悪魔の様な笑みを浮かべながら一方通行は目の前の何かを持つように片手を伸ばし、

 

一方通行「_____________オマエの様なクズをぶっ潰す為に来たンだよ」

 

そして片手を強く握った。

持った物を握り潰したように。

 

一方通行が握り潰した物は何だろうか?

心臓か。世界か。もしやこの世界の生物全ての命か?

その真実は誰も知らない。

 

だが、なにか。そうなにかを白い怪物は握り潰した。

目に見えない…………なにかを

 

萃香「フフッ、やる気あるってことだね。だったら話は早い。さあ思いっきり戦ろうかッ!!」

 

手に持っていた瓢箪(伊吹瓢)を木の影に投げる。

だが少々乱暴しても壊れない頑丈な瓢箪だから投げたのだ。

投げてからこんな説明をされても信じれないと思うがその瓢箪、伊吹萃香にとってはなくてはならない大切な物なのだ。

 

一方通行「相手が酔っぱらいだろうガキの見た目してようが、この俺に勝負を仕掛けて来たンだ。覚悟は出来てンだろうなァ!!」

 

一方通行は両隣に2メートル弱の竜巻を発生させる。

これは勿論一方通行が能力を使用して作ったものだ。

 

一方通行「こっちからいくぜェ!!」

 

竜巻を投げる様に一方通行は両腕を大きく振るう。

竜巻はクルクルと回りながら萃香に向かって飛んで来た。

だが、それを萃香は避けようとはしなかった。

 

萃香「こんなの…………、片手で十分!!」

 

片手を萃香は大きく振る。

すると近くまで来てた竜巻の姿は形も残さずに消えた。

 

萃香「まだまだあるんでしょ?見せなよ。君ならできるだろ、暇で暇で死にそうな戦闘狂のこの私を楽しませることをッ!!」

 

一方通行「ハッ、後悔すンなよ!!!」

 

先程、生成した竜巻を遥かにしのぐ大きさの竜巻を一方通行は五つ以上生成する。

 

一方通行「……やれ」

 

低い声で一方通行は命令する。

すると竜巻はさっきとは違うパターンで萃香に飛んでくる。

だがそれを萃香は軽快な動きで軽々避けながら、なんと一方通行に近付いて来たのだ。

 

萃香「拳を交わしあってこそ闘いってもんだ。なあ、そうでしょ!!」

 

一方通行のすぐ側に接近して殴るため拳を握り大きく振りかぶる。

……だが、

 

一方通行「フッ………。三下が」

 

萃香「_______ッ!?…………ふぅ。なるほどね」

 

何もなかったのに萃香の下から竜巻が空へを上るように地面から出てきた。それを萃香は少し驚いたが、一方通行の表情を見て危機に勘づいて竜巻を身を捻って躱わす事に成功。

そして一方通行から離れた場所に着地した。

 

一方通行「オマエは俺に触れる事はできねェ。オマエの様なバカはな」

 

萃香「へーそう。…………さて、準備運動は終わり。そろそろ本気を出していくかッ!!」

 

肩を回したりして体を萃香はほぐしてそう言った。

でも一方通行は鼻で笑いニヤリと唇を歪ませる。

 

一方通行「本気出そうが俺に_____チッ!」

 

態度から見て一方通行は余裕そうであった。

だがそれは直ぐにその余裕は消えた。

突如、萃香の姿が視界から消える。

でも動く瞬間は見えた。

完全にこの世から存在を消した訳ではない。

つまり速すぎて目で追うことが出来ないスピードで移動したのだ。

 

そして一方通行は次に萃香が姿を現す場所を風の向きを読み取ることで解り、そこへ一瞬で移動する。

そして、拳を大きく振りかぶり殴り付けた。

たがその拳は鬼に片手で受け止められてしまい、萃香の反撃が来る前に一方通行は右足で強く地面を踏み運動量のベクトルを操作しその場から退避した。

 

一方通行「クソっどォなってやがる!?あれが鬼の力だってのか!?」

 

萃香「はァァァーッ!!____う……ッ!?」

 

逃がす事を許さない萃香は避ける一方通行に追い付き、萃香は一方通行に殴り付ける。

すると殴る事に成功______とはいかなかった。

最強の力。最強の壁。

それに防がれてしまう。萃香の殴る力は異常だ。そんな威力の力を一方通行は反射する。

当然、萃香の体は背後に吹っ飛び木に打ち付けられた。

 

一方通行「くくくっ、ギャハハハハ!!まさか俺があンなので驚く訳ねェだろうが!!調子に乗って接近しやがって。だからオマエはバカなンだよこのクソ脳筋!!」

 

一方通行は萃香を嘲笑う。

驚いたふりをして接近させ殴ってきた所に反射。

すべては一方通行の作戦だったのだ。

それを知らずに萃香は全力で一方通行を殴ってしまいそのまま力を反射され吹っ飛んでしまう。

普通なら鬼レベルの本気の拳を受けてしまえばいくら 鬼といえど倒れてしまう。

 

でもこの戦いは続く……、

 

萃香「よっ…面白い能力だね」

 

木を背に座って居たが何事も無かった様に萃香は立ち上がる。

 

一方通行「……ヘェ、結構タフじゃねェか」

 

萃香「う~ん……。手が少し痛むけどまあいっか。いくよ!!」

 

一方通行「(バカが、また反射して___)ぐっ……

!?」

 

萃香が走って突っ込んで来たが一方通行は避けなかった。いや、避けようとはしなかった。

構えを見る限りまた考えなしに殴り付けてくるのだろう。

ならば、避けずにその攻撃を反射すれば良いだけ。

 

だが、、、

萃香の拳が一方通行の腹部へ突き刺さり一方通行の体は背後へ吹っ飛んだ。

しかし一方通行は何とか後ろへの勢いを足で堪えたのでそんなに遠くまで吹っ飛ばなかった。

 

萃香「おー、当たった当たった。?……あらら」

 

拳を突き出したまま萃香は意外な顔をしていた。

そして痛みを感じた拳を見てみると指が青く腫れていたのだ。

 

一方通行「クソっ、この野郎ォ_______________まさかッ!?」

 

強く睨みつけ一方通行は萃香に殺気を打つける。

だが、萃香の手を見て白い怪物の顔は驚愕の表情へ変化した。

 

一方通行(一回目殴った時には手にアザなンて出来て無かった。つまりさっきので出来たのか。……クク…あはアハハハ!!そォかそォか。コイツ……ッ!!)

 

なぜ萃香が自分にに攻撃を当てることが出来たのか分かった一方通行は萃香を"警戒"する。

『コイツは俺の"敵"になれるヤツ』だと。

 

一方通行「オマエ、俺の反射を力だけで破ったな」

 

萃香「反射、か。それが君の能力?」

 

一方通行「クソっ…………。まさかこンな事ォ出来る奴がこの世に居たとはな。世界はまだまだ広いってかァ?」

 

萃香「どうしたの?御自慢の力が破られたからってもう降参?」

 

一方通行「バカ言え。降参なンてすっかよ、楽しくなるのはこっからだろォが」

 

萃香「そりゃ良かった。もしも降参しちゃったら白けるところだったよ」

 

空気が静まり返る。

一方通行はもう油断などしないと決意する。

認めたのだ。

伊吹萃香という鬼を自分が全力を出すに値する敵だと。

 

そして。萃香はまず周りの木に向かって跳躍する。

だがただ木に飛び移るためそんなことをしたのではない。

ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!と萃香は木から木へ移るように高速移動していたのだ。

 

しかし、一方通行は

 

一方通行「オラァ!!ブッ飛べえェェ!!」

 

地面を強く踏みベクトルを操作することによって烈風が天へと昇る。

……だが、

 

萃香「そんなの無駄さ」

 

一方通行「何っ!?___が……ッ!?」

 

音も気配を感じさせないで萃香はいつの間に急接近して

一方通行を横腹から蹴りつけ吹っ飛ばした。

 

一方通行の体は軽い。

だから攻撃が一度当たれば普通の人の倍は飛ぶ。

でも一方通行は足を使い遠くに飛ばないように耐えたが…………、

 

萃香「まだまだァ!!次は上から!!」

 

一方通行「……ッ!?」

 

上から鬼の容赦の無い拳が振り下ろされた。

 

一方通行「調子に乗ンなよ三下ァァァッ!!!」

 

顔面から体が地面に打ち付けられたが自分を中心に一方通行は風を起こし竜巻を作る。

 

一方通行「クソ………、俺が____あァ?」

 

立ち上がり口元を手の甲で拭くと血がそこにはあった。

 

一方通行「この俺があンなガキに……………。くっ、そがァァァあああああああああああああ!!!」

 

自分を中心に回っている竜巻を一方通行はだんだん広げていった。そうすればいずれ……

 

一方通行「ギャハハハハ!!空に思っきしぶっ飛ばしてやるぜ!!」

 

萃香を飲み込み大きな深傷を負うことになるだろう。

 

だが萃香はその竜巻に___

 

萃香「……ふっ!……と」

 

____自ら突っ込んで行った。

でも萃香の体には傷一つ無い。

 

一方通行「あァ?」

 

予想とは違うことが現実に起きた。

その予想を覆した鬼は、

 

萃香「私を倒すため作ったやつがまさか自分を閉じ込める檻となるなんて、こういうのを皮肉って言うのかね?」

 

一方通行「もう奇跡は起きねェよ!!」

 

背に四本の竜巻の翼を作り人がどれだけ必死に走ってもけっして追い付けない異常な速度で萃香に突進。

そして鬼目掛けて拳を放つ。

 

萃香「あははっ遅い遅い!止まって見えるよ!」

 

一方通行「……グ……ッ!!??」

 

萃香の見事なまでのカウンターが綺麗に一方通行は顔面に炸裂し、背の竜巻は消え一方通行は後方へ地面をゴロゴロと転がり倒れた。

 

萃香「んー……。はー、なんか君思ってたより随分弱いね。もうヤメようか、つまんなくなっちゃった。これならお酒を飲んでる方がよっぽど楽しいよ」

 

飽きたように萃香は倒れてる一方通行を見る。

もう立ち上がる気力も体力も無いだろう。

しかし、だけど。

一方通行はゆっくりと立ち上がった。

 

一方通行「……終わ…れっ…かよ。……終われっかよ!!この俺にこンな屈辱を味あわせてタダで済むと思うなよォォォッ!!」

 

ズキズキと痛む体を動かし一方通行は山の中で咆哮する。

 

萃香「やる気十分なところ悪いけどさ、弱い者とこれ以上戦っても詰まんないだけなんだよ。だからこの戦いは止め止め。じゃあねー」

 

一方通行「ォォォォォォォおおおおおおおおッッッ!!!!」

 

萃香「ん?__________________ッ!?」

 

もう背を向け萃香は瓢箪を取りに歩いていると何かに気付き一方通行の方を向く。

 

すると……………、

 

暴風の中心地に黒き翼を生やした白い怪物がそこに居た。

 

一方通行「第2ラウンド開始だ………ッ!!」

 

萃香「あはははっ!!良いね、最っ強に最っ高に面白いよ君は!!」




☆霊夢の雑談コーナー☆

霊夢「さて、まずは雑談する人を探さなくちゃ」

一方通行「………………」

霊夢「まず一方通行はメンバー確定ね」

一方通行「はァ?ふざけンなよ霊夢」

霊夢「う~ん。魔理沙だったらOK出してくれるかな……?いや、魔理沙も確定ね」

一方通行「チッ。コーヒー持ってくるか」

霊夢「ヨシ、魔理沙を呼んでこよう。一方通行、一緒に来て」

一方通行「…………………(コロス!!)」


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12話

一方通行(タイムリミットは、三……二分半か)

 

自分の能力が暴走してからこの『黒い翼』に制限時間を作った。

あの時まではこの力を使ってもなんもなかったが今は違う。

心の底から涌き出る殺意、そして破壊衝動。

 

それに飲み込まれたら多分もうおしまいだ、

 

 

自分も、この世界(幻想郷)も。

 

 

 

一方通行は自分の力を"危険"と感じていたのだ。

 

萃香「ふっ……んッ!!」

 

鬼の少女は一方通行に向かって自動車と同等の速度で駆けて行った。

そして近付いたと同時に岩をも軽く粉砕する拳を振るう。

普通なら反応出来ないが、今の一方通行は違う。

 

一方通行はその場から一瞬で真上、上空100メートル位まで飛んだ。

そして黒い翼を上から萃香のいる場所へ勢い良く突き刺す。

 

萃香「よっ、と……!!危ない危ないっ♪」

 

上空から咄嗟に危険を察知して華麗に躱わす。

そして、上に居る一方通行を見ながら楽しそうに微笑んだのであった。

 

萃香は次に地面に落ちている小石を三つ拾い、その拾った小石を全力で一方通行に向かって遠投する。

 

投げられたのはただの小石。

だが、ただの小石だと思ってもしも受けたのなら軽くその身に見事なトンネルが出来るだろう。

 

しかし、一方通行はその小石を避けなかった。

 

白い怪物に当たったと思った次の瞬間、

彼の能力。

ベクトル操作に備わっている『反射』が機能して萃香の方へ飛んでくる。

 

萃香「やっぱり駄目だったか。しょうがない」

 

投げた本人に小石は向かっていった。

が、萃香はその小石を全て地面に叩き落とす。

そして何かを諦めたように呟いた。

 

 

 

 

一方通行「クッ……ソッ…たれ……ッ!!!」

 

 

 

上空に居る一方通行は息苦しくなっていた。

 

黒い翼の噴射速度が時間進むごとに速くなっていく。

それが意味するのは黒い翼の力が増幅してるということ

 

 

一方通行(早めにケリ付けねェとコッチがやべェ)

 

このままだ黒い翼の力が増幅し続けるといずれ操作出来なくなってしまう。

だから、早めに決着をつけようと一方通行は黒い翼を萃香が居る場所へ何度も何度も突き刺した。

 

 

だが萃香に一回も当たらない。

 

こんな単純な攻撃は当たらないのだろうか。

 

 

そして、一方通行が上空から地面へと降りてきた。

 

萃香「おー、落ちてきた。どうかしたの?」

 

一方通行「上からじゃオマエに攻撃を当てられねェからな。だから下に来た」

 

萃香「ふ~ん。ま、私的には地面に来てくれた方がやりやすいからいいけどね」

 

そんな会話をしていたら萃香の体がだんだん薄くなっていった。

 

萃香「私の能力は"密と疎を操る能力"。だからこんな事が出来るんだよ?」

 

一方通行「あン?消えやがった………?」

 

目の前に居たはずの萃香の姿が消える。

そして一方通行は周りを見て何処に行ったか探していると、、、

 

一方通行「ぐっ…!!………チッ、そォ言う事か!!」

 

目に見えない攻撃が横腹にきた。

 

右肩を殴られた一方通行は何とか吹っ飛ばないようにこらえた。

 

何かを理解した一方通行は黒い翼を全方位へ振るう。だが、攻撃が当たった感触はしない。多分避けられたのだろう。やはり目に見えない敵に攻撃を当てるのは難しい。

 

だが、一方通行は諦めない。

 

一方通行は目を閉じ、耳をすませた。

 

いくら透明になれたとしてと足音を消すことは出来ないと思ったのだ。

 

一方通行「……あァ?…くっ……!」

 

音のした場所に黒い翼を振るう。でも当たらなかった。そして腹に物凄い衝撃がくる。萃香に殴られたのだろう。

 

一方通行「チッ、面白ェ………、最っ高に面白ェぞオマエ!!」

 

幻想郷に来てから、何度もピンチになった。絶対に破られないと思っていた反射の壁は破られ、そして自分を殴れる存在が居るとは。学園都市では退屈な日常だった。この世界では毎日が新しいことばっかりだ。それがとても楽しい。

 

一方通行「く、」

 

ニヤリと一方通行は笑う。

 

一方通行「くか、」

 

そして頭上へ両手を伸ばす。

 

一方通行「くかき、」

 

この世界の風の向きを操る。

 

一方通行「くかきけこかかきくけききこかかきくここくけけけこきくかくけけこかくけきこけききくくくききかきかきくこくくけくかきくこけくけくきくきこきかかかーーーッ!!」

 

すると一方通行は上空に高電離気体を生成する。そのサイズは三十メートル以上。

 

萃香「…なに……あれ…」

 

驚きのあまり姿を現してしまった。萃香は冷や汗を流す。

 

一方通行を中心に黒い暴風が吹き回る。

 

周りの木がゆらゆら揺れる。そして落ちている葉は高電離気体へ吸い込まれるように舞い上がる。

 

一方通行「…さァて、オマエはこれからどォする?」

 

萃香「!?」

 

黒い翼を生やした悪魔は、両手を頭上に伸ばしたまま、萃香へ質問する。

 

一方通行「俺はなァ、この高電離気体をレーザーのようにしてオマエに打っ放すつもりだ」

 

これから何をするか一方通行は説明する。普通ならこんなことは言わない。もう勝った、とでも思っているのか。

 

萃香「そのエネルギーの球体は相当なモンだよ。でも当たらなかったら何も意味無いと思わない?」

 

一方通行「ククッ……あァ、確かにそォだな。だが知ってっか?避ける時には隙が出来ることを?」

 

萃香「まあ、少しは隙が出来るだろうね。だから?」

 

一方通行「高電離気体(これ)を避けンのはイイけどよォ"俺はどォすンだ"?」

 

萃香「ッ!?」

 

一方通行は萃香が気付いた瞬間、裂いたような笑みを浮かべる。

 

一方通行「オラァ!いくぜェェ!」

 

高電離気体を気にしていたら一方通行の攻撃がくる、けど高電離気体を無視出来ない。この状況を一方通行は作った。両方をどうにかしなくては、ならないが。そう簡単に出来る訳が無い。

 

高電離気体がレーザーのように萃香の頭上へ放つ。それを何とか回避したが、黒い翼を生やした悪魔が一瞬で萃香に突進し、萃香の隙を突く。

 

一方通行「歯ァ食いしばれェ!!」

 

萃香「…うっ……!?」

 

萃香は腕をクロスし、防御した。だがその上から一方通行の固く握られた拳が飛んでくる。

 

背中まで衝撃がくる。物凄い威力だ。

 

攻撃を何とか防御したが萃香のガードが崩れた。すると一方通行はもう一本の腕を降り

 

一方通行「もォ一発かましてやるよォ!」

 

全力で殴る。

 

もう一回ガードする事が出来ず、強烈な一撃を萃香は腹部に食らう。

 

萃香「……うっ……ぁぁぁあああああッ!!」

 

萃香の体は猛スピードで背後に吹っ飛ぶ。

 

萃香「……うっ……痛てて」

 

さっきいた場所から遠くへ吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられた。

 

少しの時間、萃香が仰向けで倒れていると誰かの足音が聞こえる。音のする方を向くと、ズボンのポケットに両手を突っ込んで歩いている一方通行がいた。背中には黒い翼は無かった、解除したらしい。

 

一方通行「結構ォ吹っ飛ばされたな」

 

萃香「そう……だね」

 

一方通行「まだ戦るか?」

 

近くに来て一方通行は言った。そして真っ赤な瞳が萃香を見下す。

 

萃香「いや、いい。私の負けだ」

 

目を閉じ萃香は負けを認めた。

 

一方通行「……立てるか?」

 

萃香「…ッ!……ダメだね。少し時間が経てば動けると思う」

 

立ち上がろうとするが体に激痛が走る。そして一瞬で力が抜けてしまった。

 

一方通行「…チッ。じっとしてろ」

 

萃香「え?なにを…。わあっ!?」

 

一方通行は優しく萃香を横抱きをした。

 

萃香「少し恥ずかしい…な」///

 

一方通行「我慢しろ。オイ、どっか休める場所はねェのか?」

 

萃香「あるけど、その前にさっき居た場所に行ってくれる?」

 

一方通行「あァ?何でだ?」

 

萃香「あそこに大事な物があるからそれを取りに行きたい」

 

一方通行「はァ…。ちゃンと掴まっとけよ」

 

萃香「うん」

 

一方通行は背に竜巻の翼を生成し空を飛んだ。そしてさっき居た場所へ着いた。

 

一方通行「…オイ、オマエ大事なモンとやらは、どこだ?」

 

萃香「ん~……。あ、あれ!!」

 

指を差した場所にあった物は瓢箪だった。

 

一方通行は瓢箪がある場所へ歩いて行って、膝を立ててしゃがむ。そして萃香が瓢箪を拾った。

 

萃香「ありがとう」

 

一方通行「…チッ。大事なモン忘れンなよ」

 

萃香「これを持ったまま戦うことは出来ないから置いたんだよ。それに私を吹っ飛ばしたのアンタだよ?」

 

一方通行「……あァ、ハイハイ。悪かった悪かったァ」

 

適当に一方通行は言った。

 

一方通行「で?休める場所はどこだ?」

 

萃香「案内するよ」

 

萃香の案内で一方通行は萃香を横抱きしたまま妖怪の山を歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「ホラよ」

 

萃香「ん、ありがと」

 

二人は妖怪の山にある滝の近く着いた。そして一方通行は近場にある大きな石に萃香を座らせ自分もその隣に座った。

 

萃香「いいでしょ、ここ」

 

一方通行「あァ?……分かンねェ」

 

周りを見たが何がいいのか分からなかった。

 

萃香「さて、勝負した後は。これ!」

 

そう言って杯を取り出した。そして杯に瓢箪に入ってる酒を注いだ。

 

萃香「ん……あれ?これしかないや」

 

もう一つ、杯を取り出し酒を探す。だが、もう一つ別の酒を用意してたが無い。

 

萃香「……あ!飲んじゃったんだ私……あはは」

 

そして萃香は思い出す。

実は一方通行を待ってる時に飲んでしまったのだ。

 

一方通行「さっきから一人で何やってンだ?」

 

何かの準備をしてる萃香が気になり質問する。

 

萃香「一緒に酒を飲もうとしたのに、これしかなくて…」

 

瓢箪を見せながら萃香は落ち込んでいた。

 

一方通行「あァ?酒ェ?ふざけンな、誰が飲むか」

 

宴会で無理やり酒を飲まされてから一方通行は酒が大嫌いになった。

 

萃香「残念…と言うか無理か。はぁ~…」

 

一方通行「……チッ……かせ」

 

萃香から酒の入ってる杯を一方通行は強引に取った。

 

萃香「あっ!ダメだよ!それは鬼専用の酒だから」

 

一方通行「あァ?鬼専用?」

 

萃香「うん、それは鬼しか飲めないキツイ酒なの。それを人間が飲んだら大変な事が起きるよ」

 

一方通行「へェ…。なら、これが普通に飲めたら俺は、酒に強くなれンのか」

 

萃香「え?」

 

一方通行「…ッ………はァ~…」

 

一気に杯に入ってる酒を一方通行は飲んだ。

 

一方通行は宴会で倒れたことを少し気にしていた。あの後、周りに馬鹿にされたのだ。何か言い返そうとしたが言葉が見つからず言い返せずにいた。だが、この酒が飲めたら、どうだろうか。アイツらはイジっては来ないだろう。

 

そう思い一方通行は酒を飲む決意をした。

 

萃香「だ…大丈夫?」

 

一方通行「ハッ…余裕…だっ……つ……の…」

 

言葉が途切れ、何か大事なものが抜けたように一方通行はバタン!と倒れ、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「……」

 

とある少年が居た。

 

苗字は二文字、名前は三文字で、ごく普通の名前だ。

 

生活も普通。何もかもが普通の少年に一つ異常な事が起きる。

 

それは……超能力の発現。

 

それからは、毎日が異常だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある少年が喧嘩をした。

 

???「……」

 

少年A「うおおおお!____ッ!?……うあっ!!」

 

殴りかかってきた少年Aがとある少年に触れた瞬間、吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「……」

 

大人1「見つけたぞ、やれ!」

 

大人2「了解」

 

大人3「……」

 

大人4「……」

 

大人5「……」

 

拳銃を持った大人数の大人がとある少年を囲んで、拳銃の引き金を引く。

 

バン!バン!と銃声が響く。

 

撃たれた少年は、無傷だった。そして銃弾は飛んで来た拳銃へ飛んで行き、拳銃を破壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「……」

 

何故かこの町には人が一人も居ない。

 

道路の上にある橋を歩いていると、戦車が見えた。

 

どうやら自分に向かって戦車が来てるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「……」

 

アイツらの目的が分かった。

 

どうやら自分を捕まえたいらしい。

 

できないと思うがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「……」

 

いつからだろう。目が赤くなり、髪が白くなっていた。おまけに肌は女性のように白くなった。

 

まだ、アイツらが追ってくる。

 

捕まえられるはずが無いのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「……」

 

あれからいっぱい歩いた。

 

けど、まだ追ってくる。

 

しつこい。うざい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「……」

 

もう捕まえるつもりは無いらしい。

 

自分に向かって、核ミサイルを飛ばして来た。

 

だが、少年は無傷。

 

殺しに来たのだ。アイツらは。この世界は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「……」

 

もう一度、自分に向かって核ミサイルを飛ばして来た。

 

もちろん無傷。そしてその衝撃で大きな穴が出来た。一番深い場所で立っていると、武装した人、戦車、武装ヘリ、が穴の上から自分を狙っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下にある道を歩いていると

 

スーツの男「やあ、はじめまして」

 

???「……あァ?」

 

サングラスをかけたスーツの男が後ろから話かけてきた。とある少年は声のした方を向く。

 

スーツの男「…にしても、君の力は凄いな」

 

とある少年の周りには武装した男が何人も倒れてた。それをスーツの男は見てからそう言った。

 

???「何だ?オマエを俺を殺りに来たのか?」

 

スーツの男「そんな訳無いだろ。君に勝てる…いや、君を殺せる人間は居ないよ」

 

???「用が無いなら消えろ、殺すぞ」

 

小さい少年とは思えない目だった。

 

スーツの男「用ならあるよ。君に来て欲しい場所があるんだ」

 

???「ハッ…そォきたか。俺の力を利用しよってかァ?」

 

スーツの男「今の生活を変えたくないかい?」

 

???「……」

 

とある少年はその言葉を聞き、ピクッと少し反応した。

 

スーツの男「僕と一緒に来れば、君の生活が変わる。絶対にだ」

 

???「そこは何て言う場所だ?」

 

スーツの男「学園都市。君のような能力者が普通に生活してる場所だよ」

 

???「そこに俺を連れてって。色々やろうって魂胆だろ」

 

スーツの男「そんな事は無いよ。けど、少し実験には協力してもらよ」

 

???「ハッ…面白ェ。オイ、連れてけ」

 

スーツの男「そうか、じゃあ行こうか。少年___いや」

 

スーツの男がとある少年を学園都市に案内するため歩いて行った。だが、後ろに居るとある少年の方へ向く。そしてスーツの男がニヤッと笑って

 

スーツの男「___一方通行(アクセラレータ)

 

一方通行「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、テレビの砂嵐の現象が起きる。そして砂嵐が消えると記憶に無い記憶を思い出す。

 

いつの記憶だろうか、とある少年、いや幼少期の一方通行が誰も居ない町を歩いていると

 

???「ねえ…坊や」

 

一方通行「あァ?」

 

後ろから優しい声の女性が話かけて来て後ろを振り向く。すると金髪ロングでおしゃれな傘を______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「…ッ……ン……」

 

萃香「お……起きた?」

 

一方通行「あァ……チッ…頭痛ェ」

 

萃香「だから言ったのに……」

 

一方通行「…オイ、一つ……イイか?」

 

萃香「ん?」

 

一方通行は異常に気付き萃香へ質問する。

 

一方通行「なンで俺を膝枕してンだァ?」

 

自分が空を見ながら寝てる事に気が付く。頭に柔らかい感触、そしてこの目線。どう考えても、おかしい。そして一つの答えを見つける。

 

自分が膝枕されてるとゆう事を。

 

萃香「そこら辺で寝かす訳にもいかない……から?」

 

一方通行「何で疑問系なンだよ」

 

萃香「それにしても、いいものが見れたよ。ありがとね」

 

一方通行「あァ?イイものォ?」

 

萃香「うん」

 

一方通行が意識を失い、倒れると萃香は少しでも楽にするため膝枕をしてあげた。その時、見たのだ。

 

いつも凶悪な顔をしている一方通行の純粋な寝顔を。

 

その顔を見て萃香は一瞬、時が止まったような気がした。そして一方通行を膝枕しながら酒を飲み始めた。

 

萃香「…その…意外……だったよ」

 

一方通行「いや、何がだよ」

 

何の事か分からず一方通行はツッコんだ。

 

一方通行(はァ~…一体あれは何だったンだァ?)

 

意識を失い見た昔の自分。普通ならそんな気にしないが、最後に見た記憶がどうしても気になってしまう。

 

一方通行(…アイツは…一体…。…何処かで会ったような気がする……)

 

顔は全然見えなかった。けど何故か見覚えがあるような、無いような。

 

一方通行(チッ…今考えても分かンねェし、後で考えるとすっかァ…)

 

萃香「?…どうかした?」

 

一方通行「あン?何でもねェよ。つか、俺ァどン位寝てた?」

 

萃香「さあ?でも、一時間は経ってないと思うよ」

 

一方通行「そォか。っと、いつまでこォしてる訳にはいかねェしな……。あァ?何をしやがる?」

 

立ち上がろうとしたら萃香に邪魔された。

 

萃香「少し安静にしなきゃダメだよ」

 

一方通行「……はァ…。分かった」

 

諦めたように一方通行は言った。そして萃香は膝枕しながら、一方通行は膝枕されながらこの状態で時が過ぎるのを感じながらゆっくりしていた。

 

萃香(……久しぶりだな。こんな気持ちになったのは///)

 

一方通行は気が付かなったが、萃香は空を見上げながら頬を赤く染め、笑っていた。

 

あれから何分かして一方通行は立ち上がり、萃香と山道を歩いていた。

 

萃香「勝負は楽しかった?」

 

一方通行「オマエはどォだった?」

 

萃香「楽しかったよ」

 

一方通行「そいつァ良かったな。じゃ、俺はまた人間の里に行くとすっか」

 

萃香「う…うん。(あれ?答え聞いて無いような…)」

 

一方通行「じゃァな」

 

萃香「また勝負しようね~!」

 

一方通行「気が向いたらな」

 

背中に四つの竜巻で翼のようなものを作り、それを使って人間の里へと飛んで行った、萃香に手を振られ見送られながら。




☆霊夢の雑談コーナー☆

霊夢「色々やって人が集まったけど……」

一方通行「……」

魔理沙「……」

霊夢「何で私の家!?」

一方通行「場所がねェから、オマエの家にした」

霊夢「場所ぐらい用意してよ!」

魔理沙「それはさすがに我がまますぎるぜ……」

霊夢「いーでしょ…と言うか久しぶり魔理沙」

魔理沙「おう、久しぶり。はあ…皆、私の事忘れて無いよな?」

一方通行「最初は出てたけど、二章入ってからは出てねェなオマエ」

魔理沙「作者は「出番結構あるよ」とか言ってたけど、信じられないぜ」

霊夢「え!?そんな事言ってたの?」


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13話

人間の里の近くに降り門の所まで歩く。

まるで外から歩いて来たどこにでも居る普通の人のように。

 

そして一方通行は門を潜り人間の里に入った。

 

一方通行(……チッ、俺は何してンだァ?)

 

全然目的を果たせない自分に心の中で呟いた。

 

そして一方通行は人間の里の大きな道をまるでこの世界の住人のように普通に歩く。

目立たないように。

面倒事に巻き込まれないように。

そう意識して、

 

一方通行(……"アレ"に頼った戦い方は止めねェとな)

 

一方通行の言う"アレ"とは黒い翼のことだ。

自分のピンチを救ってくれた力。

だが、あの力は危険だ。

やはり自分ですら完全に掌握してない力を使ってはいけないのかもしれない。

 

そして次に一方通行は自分の体に何らかの異変が起きたと考えた。

能力が時が経つほど益々強力になっていっているのだ。

だから、戦闘になった時はあまり全力を使わないようにしようと考えた。

何故このような事を突然思ったというと、この先また戦う事があると思ったのだ。

 

勿論、戦う相手は幻想郷の住人たちだ。

 

一方通行(………………俺の能力に変化が起き始めてる。自分がコントロール出来ねェほどに。チッ、俺に何が起きたってンだァ?)

 

自分が暴走したあの時から力が増してきたと感じ始めた。

まるで力を蓋してた物が取れたように。

 

一方通行(まァ、アイツらも異変が起きてるか。『程度』ってやつが能力名にあった筈なのに無くなってやがる。それを自覚してるって事も謎だな)

 

考えれば考える程謎が膨らむ。

家を探しながら一方通行は考えながら里の中を歩く。

 

一方通行(……チッ、ともかく"アレ"を使う事は控えた方がイイか)

 

学園都市第一位の頭ですら謎の答えは分からなかった。『ともかく黒い翼を極力使わない』と一方通行は自分に誓った。

 

そんな誓いを立てた一方通行はある人物と出会う。

 

それは………………、

 

魔理沙「……おっ、探したぜ一方通行!!」

 

ザ・魔女と言える格好をした少女、霧雨魔理沙だ。

魔理沙は一方通行に指を差していた。

 

一方通行「探してたァ?何で俺を探してたンだよ?」

 

魔理沙「理由は後で話すから。とりあえず行くぜ!!」

 

一方通行「あァ?_______________チッ、待て!!引っ張ンなァッ!!」

 

猛ダッシュで一方通行に近付き腕をガシッ!!と掴む。

そして魔理沙は散歩を拒む犬のような一方通行を無理やり引っ張りながら走る。

そして手に持ってた箒に跨り空へ飛ぼうとしてた。

引っ張られた一方通行は箒で飛ぶと理解し箒に座る。

 

そして箒は宙に浮き、スピードを出して飛んでいった。

 

一方通行「オイ、何で探してたか理由を聞きてェンだが?」

 

箒を横の方向を正面にしてに座る一方通行が少し怒りを感じていた。

勝手に腕を引っ張られ自分の用があった里から離れて行ってるのだ。

 

一刻も早く家無しから脱したい彼がそうやって怒るのも無理はない。

 

魔理沙「着いたら分かると思うぜ」

 

一方通行「何処かに俺を連れて行ってるって事は分かった」

 

また面倒な事になったと思い一方通行は息を吐く。

 

魔理沙「なあ、もしかして怒ってる?」

 

一方通行「あァ。かなりな」

 

そう言われた魔理沙は暗い顔をして下を向いた。

 

一方通行(逃げようと思えば逃げれるが…………。まァ、イイか)

 

このまま魔理沙が自分を連れて行く所に一方通行は黙っていこうと思った。

 

そしてそれから二人は口を開かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「そろそろ着くぜ…………」

 

暗い顔。

元気の無い声で、魔理沙は一方通行に言う。

 

一方通行「そォかい。だが、その前にその面を何とかしやがれ」

 

魔理沙「……努力するぜ」

 

だんだん箒の高度が下がる。どっかに下りるのだろうか。

 

魔理沙の足が地面に着く。

そして一方通行は飛び降りるように箒から降りた。

二人の前に洋風な家があった。多分、魔理沙はここに一方通行を連れて来たかったのだろう。

 

魔理沙「ちょっと待っててくれ____ん、何だよ?」

 

箒を家の周りにある柵に寄っ掛からせ、家に入ろうとしたら一方通行に腕を掴まれた。

そして魔理沙は一方通行の方を体全体で向く。

 

一方通行「言ったよな、その面を何とかしろって」

 

魔理沙「……」

 

真っ赤な瞳が魔理沙を睨む。

 

一方通行「はァー……、俺はもう怒ってねェよ。そンな面ァされたら怒りも吹っ飛ぶっつの」

 

いつもの魔理沙からはかけ離れたとても暗い顔。

そんな顔を見てるとこっちの調子が狂うのだ。

 

一方通行「俺が幻想郷に来てから色ンなヤツに振り回されて降り回されることももう慣れてきた。フッ、まァ自分で言ってて慣れちゃいけねェモンだと思っているがな」

 

魔理沙「でも私は私の都合しか考えてなくて一方通行に迷惑をかけたのは事実だ」

 

一方通行「迷惑、ねェ。まァ確かに迷惑だ。だが、まァこォいうのも悪くねェと思ってる俺もいるのも事実だ_____」

 

そう言うと魔理沙の顔が少し明るくなった。

 

一方通行「_____だから、これでこの件は終わりだ」

 

魔理沙「痛ッ!」

 

ビシッ、と一発。一方通行はチョップした。

 

魔理沙「いきなり何すんだ!」

 

驚きと怒りを感じ、魔理沙は一方通行を怒鳴る。すると一方通行はいじわるな笑みを浮かべて

 

一方通行「ハッ…調子出てきたじゃねェか」

 

魔理沙「ッ~~~!ちょっとそこで待ってろ!」///

 

顔を真っ赤にして魔理沙は家の中へと歩いて行った。

 

魔理沙(……あんなの反則だぜ!!)////

 

ガチャ、と玄関を開け魔理沙が家に入っていった。

 

少し時が経つと魔理沙が玄関を開け

 

魔理沙「お~い!入っていいぜ!」

 

一方通行は少し警戒しながら家の中に入る。するとその家にもう一人、人が居た。

 

アリス「宴会以来ね」

 

一方通行「……誰だ?」

 

白いソファに座る金髪の女性に一方通行は見覚えがなく、質問する。

 

魔理沙「忘れるなよ、私が紹介しただろ?」

 

アリス「別に忘れてても私は構わないけどね」

 

反対側にあるソファに、体を預けるように魔理沙が座る。

 

一方通行「…あァ……、会ったな宴会で」

 

壁に寄っ掛かり片手の親指だけポケットに突っ込む。

 

魔理沙「さて!私は少し出掛けてくるぜ!」

 

座ったばっかりなのに魔理沙は立ち上がる。そして家の外へ出ていってしまった。

 

一方通行「……」

 

アリス「…とりあえず座ったら?」

 

いつまでも壁に寄っ掛かってる一方通行に、アリスは片手を案内するように動かした。そして一方通行は黙ってソファに座る

 

アリス「魔理沙が帰ってくるまで、おとなしく待っててね」

 

一方通行「……」

 

ガキ扱いしやがって、と言いたかったがもしかしたらこの一言で何か起きるかもしれないと思い、心の中で言った。

 

少し時間が経つとアリスは何かの準備を始めた。

 

アリス「…ねえ、聞いていい?」

 

準備を終え、作業に取り掛かる。そしてアリスは窓から外を見てる一方通行に質問する。

 

一方通行「…答えられる範囲ならな」

 

アリス「一つめ質問ね。貴方は何者なの?」

 

はっきり言ってアリスは他人に興味はない。

そんなアリスがこんな質問した。

もしこんなことを知人が聞いたら驚くだろう。

 

一方通行「ただの悪党だ」

 

アリス「………………二つめ。この世界に異変を起こした人物を知ってる?」

 

一方通行の回答を聞いてアリスは息を吐き次の質問をする。

 

一方通行「知ってる」

 

だんだん一方通行の目が鋭くなる。

 

アリス「貴方は何者なの……?」

 

最初の質問に戻った。そしてアリスは戦闘用の人形を操る。3つの人形が槍の先を一方通行の首に向け、そしてその他の人形は一方通行の周りに槍や剣などを構えて宙に浮いてた。

 

一方通行「ハッ、安心したぜ。オマエのようなヤツが幻想郷に居て」

 

自分に武器を構えてる人形が居るというのに一方通行は余裕をみせて笑っていた。

 

アリス「私の質問に答えて」

 

その瞳を一目見れば分かる。

アリスは一方通行に敵意を向けていた。

 

アリス「貴方は危険な存在なのか、それとも危険な存在じゃ無いのか」

 

一方通行「危険な存在?ハハッ、あァ危険な存在だぜ。俺はこの世界で一番危険なバケモンだ」

 

狂気に満ちた笑みを浮かべた一方通行。

アリスはその笑みを見て背筋がゾワッ!!としたのを強く感じた。

恐怖を感じたのだ。

今、目の前居る怪物に、

アリス「……そう。魔理沙は貴方の事信用してるけど、やっぱりそうだったのね……」

 

人形達が動き始めた。でも、一方通行は動かない。

 

そして人形達は一斉に一方通行を持っている武器で攻撃を仕掛けた。

 

普通ならもうそれで全身血だらけ……、

だが。彼は、、、白いバケモノは普通とはかけ離れた存在だ。

 

人形達の攻撃は当たらず、逆に一斉に人形達は背後に吹っ飛んでいった。

 

アリス「嘘!?」

 

一方通行は手も足も動かしていない。

そう、何もしてないのに人形達は吹っ飛び動かなくなってしまった。

 

一方通行「ったく。やってることは念動能力(サイコキネシス)と変わンねェな。そンな三下芸なら俺は飽きるほど見てきたっつの」

 

首の間接をコキコキと鳴らしながら一方通行は興味無さそう言った。

 

アリス「………ッ!?」

 

さっきので人形は全滅……っという訳でもない。

そうだ。予備に自分の後ろに隠してた一人の人形を操り攻撃を仕掛けた。

その人形の待ってる武器は鋭く尖った剣だ。

 

右横から剣を構え向かってきた人形を一方通行は掴み、床に叩き付けてから踏みつける。

そうすると人形は動けなくなってしまった。

 

一方通行「…………」

 

アリス「…………」

 

両者一言も喋らず睨み合う。どちらも動かない。

しかし。

その沈黙の時間が破られた。

アリスはため息を吐く。そして、

 

アリス「………煮るなり焼くなり好きにしなさい」

 

自分の敗けを、敗北を宣言する。

 

一方通行「………………」

 

アリス「……?」

 

目を瞑り、逃げ出したい気持ちを圧し殺して、じっとする。殺される覚悟を決めたのだ。

 

もしかしたら原型が無くなる程殴られるかもしれない

 

もしかしたら刃物で滅多刺しにされるかもしれない

 

もしかしたらゆっくりと痛めつけながら殺されるかもしれない

 

そんな事をアリスは考えてた。けど、物音がしない。

何故なのか。そう思いゆっくりと目を開けてみると普通に座る一方通行が居た。

 

アリス「……え?」

 

一方通行「あァ……?」

 

そしてアリスは口を開けて驚く。

一方通行は踏んでいた人形を拾おうとした瞬間に言われ、人形を拾おうとした手を止め、声のしたアリスの方を向く。

 

アリス「………何で、なにもしないの?」

 

一方通行「はァ?オマエ何言ってンだァ?」

 

アリス「だって私は貴方の事、殺そうとしたのよ!!なのに……!」

 

一方通行「だからどォした?」

 

敵意を向けた。殺意を向けた。武器を向けた。けれど一方通行は何もせずに黙って座り、踏んでいた人形についてたホコリを能力で取っていた。

 

一方通行「もしかして俺が仕返しにオマエを殺すとでも思ってたのかァ?」

 

人形を目の前にある机に乱暴に投げる。

 

一方通行「オマエみてェに、警戒心があるヤツはこの世界に必要だ。……この世界のバカどもは警戒心が無ェからな………ったく」

 

いいや一方通行にだけ警戒心が無いのだけど、

それを真っ白な彼は見事に勘違いしていた。

 

アリス「……ごめんなさい。…私、勘違いを……」

 

一方通行「勘違いィ?ハッ……、今オマエが思った事が勘違いだ」

 

イイか?と一方通行は続けて

 

一方通行「オマエがあン時、俺を危険と感じ攻撃したのは正しい。俺みたいな悪党を正義のヒーローが殺ンなくちゃなァ……。ただ、俺はまだ死ぬ訳にもいかねェから抵抗しただけだ」

 

アリス「?……」

 

一方通行「簡単に言うとだな。気にするな、って事だァ」

 

頭を掻きながら一方通行はアリスに説明した。

 

アリス「でも……私」

 

一方通行「チッ、グチグチうるせェな。黙ってオマエがやろうとしてた事をしやがれ」

 

そう言うと一方通行は椅子から立ち上がり周りにある人形を回収し始めた。

アリスは言いたいことがいっぱいあるが、また一方通行に怒られそうなので口を閉じ黙って作業に取り掛かる。

 

一方通行(まだ、死ぬ訳にはいかねェンだ。アレイスターを殺すまではな)

 

全ての人形を回収し机に置く。

そして一方通行は息を吐いた後ソファに座った。

人形が全て机に置かれるとアリスはその人形を操り、元のあった場所へ移動させた。

 

アリス「……ねえ、お詫びに人形の作り方を教えてあげる」

 

一方通行「断る」

 

アリスは人形を作っている最中、一方通行に詫びたいのだけどいい案が見つからず悩んでいると作ってる人形を見て思い付いた。

 

人形の作り方を教えよう、と。

 

アリス「……そう」

 

一方通行「………はァ、どォやンだ?」

 

一度断るがやっぱり教えてもらうことにした。

理由は簡単だ。暇だからだ。

 

アリス「!!ええとね、人形の作り方はね____」

 

そしてアリスは人形の作り方を丁寧に一方通行に教える。聞いてる一方通行は途中アクビをしたりするが、ちゃんとアリスの説明を聞いていた。

 

ある程度教えてもらい、今から人形を一方通行は作り始めた。

 

一方通行「そォいやオマエは何で人形を作ってンだ?」

 

アリス「いつもは私の目的のためだけど、これは違うの。魔理沙のためよ」

 

一方通行「頼まれたのか」

 

アリス「頼まれてないわ。私があの子にプレゼントしたいから作ってるの」

 

手に持ってる、あともう少しで完成の人形を見てアリスは優しく微笑む。

 

アリス「いつも頑張ってるあの子にサプライズプレゼント。ってところかな?」

 

一方通行「ふーン、あっそ。イインじゃねェ?そォいうの」

 

アリス「魔理沙ね、私が知る中で一番の努力家よ。ホントにいっぱい努力をして強くなろうとしてる。けど最近はもっと努力し始めたのよ。どっかの誰かさんの隣で戦えるようにね」

 

一方通行(どっかの誰かねェ……霊夢かァ?)

 

二人は人形を作りながら会話をしてた。ちょくちょく一方通行は失敗し舌打ちをしたりしてイラついてたが人形作りを止めはしなかった。

 

アリス「……何をイメージして作ってるの?」

 

一方通行「あァ?……オマエ」

 

アリス「えっ?なんで私?」

 

だんだん一方通行の人形が完成し始めるが、どんなに人形になるか分からず質問する。すると一方通行はアリスを見ずに手に持ってる作ってる途中の人形を見ながら言った。

 

一方通行「目の前に居るから。ただそれだけだ」

 

アリス「そ、そう……」

 

その後、長い沈黙状態が続く。

 

黙って人形を作っていると、まず最初にアリスの人形が完成した。手のひらサイズの小さくて可愛らしい人形だ。

次に一方通行の作ってた人形も完成した。

アリスが作ってた人形と同じサイズの人形だ。

 

一方通行「チッ。本物のオマエみたいに綺麗に作れなかったが……まァ、始めてにしては上出来か?」

 

作った人間を一方通行は机に置きアリスにそう言ったら、アリスは頬を赤く染める。

 

アリス「……え……ッ~~~!!」////

 

一方通行「オイ、これの感想を聞きてェンだが?」

 

突然、綺麗と言われアリスは物凄く照れていた。

しかし一方通行は自分が作った人間に指を差しアリスに感想を聞く。

 

一方通行「チッ……何とか言いやがれェ」

 

アリス「そ、そうね……上手に出来てるわ」///

 

一方通行「そォか……。人形作りをマスターしても俺にはいらねェスキルだが、いつか役に立つこともあるかもしンねェな」

 

こんなことを言ってはいけないと思うが、一方通行にとっては無駄なスキルを習得。

今後、人形を作れるというスキルを使う事は多分無いと思うが魔理沙を待ついい暇潰しになったと思った。

 

その後アリスがティーカップを二人分持ってきて、カップに紅茶を注ぐ。

 

アリス「は、ハイ、どうぞ……」

 

一方通行「?あァ、悪りィな」

 

何故かアリスはそっぽ向きながら紅茶の入ったカップを一方通行の前に置く。

 

アリス(…あれから私、ずっとこの人の事意識してる。何で?何でなの!?)

 

一方通行「……、(コーヒー……)」

 

もしかしたらコーヒーと思った自分がバカだった、と一方通行は思いながら紅茶を飲んでいた。

そしたらドアの方から足音が聞こえてきて、外が見える窓から外を除くと魔理沙が肩掛けバックを身に付けて歩いてきた。

 

玄関がガチャと開く。そして魔理沙が、

 

魔理沙「ふー…、ただいまー!」

 

と言って笑っていた。

 

アリス「お、お帰り。魔理沙」

 

一方通行「人を無理やり引っ張った挙げ句に待たせるとは。イイ度胸してるじゃねェか」

 

魔理沙「わら悪かったぜ、待たせちまって」

 

帰って来て、アリスが少しいつもと違う反応をしたが、魔理沙は気にならかった。そして一方通行は待たされた事にイライラしていて、待たせていた時間が結構長かった思い魔理沙は心の中で反省した。

 

魔理沙「じゃ、じゃあ二人とも。座って待っててくれ!」

 

そう言うと魔理沙は台所へ行ってしまう。

 

一方通行「まァた待たされンのか……」

 

待つ事を好きでは無い一方通行は下を向いてため息をつく。

 

アリス(何で台所に行ったのかしら?)

 

結構長い付き合いなので、魔理沙は無言で台所を使うことが出来る。が、台所を使って薬を作ろうとするとアリスに物凄く怒られる。

 

一方通行「何かイイ匂いがすンなァ」

 

アリス「もしかして料理でもしてるのかしらね」

 

外をボケーっとして見ていると香ばしい匂いする。

アリスは本を読みながら一方通行に答えた。

 

そして魔理沙が、待たせたな!と言って二人の前に木のお椀を持ってきた。

その中を除くと美味しそうなシチューが入っていた。

 

アリス「ねえ魔理沙。これって……」

 

魔理沙「んー、時間的には昼御飯ってところだな」

 

一方通行「で?これをどォしろと?」

 

魔理沙「食べてくれ!」

 

ちゃんとスプーンも机の上にあり、そのスプーンをアリスと一方通行はほぼ同時に持つ。そしてシチューをスプーンで掬ったら魔理沙が

 

魔理沙「キノコは新鮮だから旨いと思うぜ!」

 

そしたら一方通行はピクッ、と動きが止まる。

 

アリス「なるほど、さっきはキノコを取りに行っていたのね」

 

魔理沙「まあな」

 

一方通行「オイ、ちょっと待て」

 

アリス、魔理沙「?」

 

一方通行「もしかして、そこら辺に生えてるキノコを取って来たンじゃねェのか?」

 

魔理沙「そうだぜ。それが何か問題か?」

 

一方通行「大問題だクソボケ!!」

 

スプーンをお椀の上に置き、一方通行は怒鳴る。

 

一方通行「あの意味不明な森に生えてるキノコなンて全部毒に決まってンだろ!!」

 

窓から見える森を指差しながら一方通行が言うと魔理沙は

 

魔理沙「あのなぁ、私はキノコは結構詳しい方なんだぜ?ちゃんと毒が無い美味しいキノコしか入れてないぞ。なあ、アリス」

 

アリス「いや私に言われても、一緒に作ってないし」

 

一方通行「……。(見た目は旨そうだが。キノコって聞くと毒のイメージしかねェ……ン?待てよ、俺毒効かねェか)」

 

もしキノコに毒があったとしても、能力を使えば何も問題は無い。

 

一方通行「………………」

 

そしてもう一度スプーンを持ちシチューを食べる。

 

一方通行(これは……スゲェな)

 

シチューを口に運んだ瞬間、一方通行の動きが止まる。そしたら魔理沙とアリスが見守るように見てると

 

一方通行「……」

 

また、スプーンでシチューを掬い口の運ぶ。

 

魔理沙「あ、味はどうた?」

 

無言で食べているので気になり質問する。すると一方通行は

 

一方通行「……イインじゃね?」

 

魔理沙「そ、そうか!良かったぜ!」

 

はっきり言ってめちゃめちゃ美味しい。けど、一方通行はそんな事、言うタイプではないので美味しいとは言わなかった。

 

魔理沙は嬉しそうに笑いながら台所へ行った。

 

その後、魔理沙も自分の分を持ってきて一方通行の隣に座り三人仲良くシチューを食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見事、全員完食。

 

シチューしか食べてないのに、お腹いっぱいだ。だから動くことが一方通行は出来ず、お椀を魔理沙に方付けてもらった。

 

魔理沙「そう言えばさっきから気になってたげど。これ、アリスに似てないか?」

 

ついでにアリスのお椀も片付けた魔理沙が一方通行の隣に座ると机に置いてある手のひらサイズの人形を持つ。

 

一方通行「まァ、ソイツに似せて作ったからな」

 

魔理沙「…えっ!?もしかしてこれ、一方通行が作ったのか?」

 

一方通行「あァ?何か問題か?」

 

魔理沙「お前、器用だったんだな」

 

両手で人形を持ちながら魔理沙は驚いていた。

 

アリス「(渡すには絶好のタイミングね)ハイ、魔理沙」

 

魔理沙「ん?可愛い人形だな」

 

アリス「それプレゼント」

 

魔理沙「えっ!くれるのか。やったぜ!」

 

先程作った人形を魔理沙にあげると、嬉しそうに魔理沙は笑っていた。

 

魔理沙「……でも何でくれるんだ?私、誕生日でも何でもないぜ?」

 

アリス「理由は無いの、ただ魔理沙のために作っただけよ」

 

一方通行「あァ?何言ってやがる、さ_____」

 

アリスが人差し指を口の前で立てていた。それを見て、一方通行は察し最後まで言うのを止めた。

 

魔理沙「ん?ん?何だよ?」

 

一方通行が言おうとしたことが気になっていたが、聞いても答えてはくれなかった。

 

 

話の話題を変え、魔理沙とアリスは楽しそうに会話する。たまあに一方通行もその会話に混ざったりした。

 

一方通行「……はァ~…。寝やがった」

 

右肩に寄っ掛かりながらスヤスヤ魔理沙が寝ていた。とても幸せそうな寝顔をしながら。

 

アリス「…さっきは、ごめんなさいね」

 

一方通行「別に構わねェが、理由を聞かせろよ」

 

魔理沙が寝てると確認すると読んでいた本をパタンとアリスは閉じ、謝る。

 

アリス「実はね、魔理沙は努力してるを知られるのは嫌いなのよ。もしあの時、貴方が最後まで言ってしまったら最悪な状況になってたでしょうね」

 

一方通行「なァるほど。それが理由ってか」

 

アリス「この子にも悩みってものが無さそうに見えて沢山あるのよ」

 

ソファから立ち上がりアリスは一方通行の隣に座る。

 

一方通行「オイ、何でこっちに来ンだよ」

 

アリス「さあ?何でかしら?」

 

一方通行「チッ……何で俺が移動しなきゃいけねェンだ……」

 

三人座れるサイズのソファだが、はっきり言って邪魔。だから向かい側にある、際ほどアリスが座ってたソファに移動しようとすると

 

アリス「あら動くの?別に良いけど魔理沙を起こさないでね」

 

一方通行「……クソったれ……」

 

アリスが意地悪な顔をしながら言う。すると一方通行は隣に居るアリスを睨んだ。

 

肩に寄っ掛かって寝ている人を起こさないで動くなんて時間を止めたりしないと不可能だ。けど、一方通行は時間何て止められないので諦めて三人でソファに座る事にした。

 

アリス「ふふっ、結構貴方って暖かいのね」

 

一方通行「……はァ~…」

 

アリスは、一方通行の肩に寄り掛かりる。

 

今日何度めのため息か知らないが、一方通行は面倒くさそうにため息をついた。

 

一方通行「ったくら俺はオマエらの枕じゃ……」

 

言葉が途切れる。

 

何と、まさかアリスまで寝るとは思わなかったからだ。

 

そして一方通行は吐き捨てるように「クソったれ」、と言った。

 

一方通行「…………」

 

二人の眠気が移ったのだろうか、一方通行を眠気が襲う。だがこれに抗う理由何て無いからゆっくりと目を閉じ一方通行は両肩に可愛らしい少女を寝かせながら自分も寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「…ッ………くっ、ふァー……」

 

一番最後に寝たのにまさか一方通行が最初に起きた。まだ、二人は寝ているが一方通行に寄り掛かって寝ていないため起こさずに立ち上がる事が出来た。

 

窓から見れば外はすっかり夜だ。けど、一方通行は外に出ようとする。泊まるのは悪いと思ったのだ。

 

玄関の前に移動し、玄関を開けようとしたが魔理沙とアリスを見る。すると二人仲良く寄り掛かって寝ていた。

 

一方通行は黄色い薄い毛布が目に入る。そしてその毛布を仲良く寝ている二人にかけてあげた。

 

玄関を二人を起こさないように静かに開け一方通行は家から出て行った。

そして月日が照らす魔法の森の中を進んで行った。








あ、どうも。自分をポスターと書くか作者と書くか、うP主と書くか悩んでる………です。
まだ悩んでるよ俺……。


第一章と同じ話数記念というかUA一万回突破記念というか、まあ何かあとがきが書きたくなったので書きます。


第二章が終わったらキャラ設定などを書こうと思います。
この物語自分の予想してた通り長いので設定がごちゃ混ぜになるかもしれません。
ふっ……ま、設定ガバイんすけどねこれ。


後、少しだけ謎要素を入れてるのは起きず気ですか?
謎と呼べる謎じゃ無いけど、アハハ…………、


アレイスターと決着はついて無い一方さん。
一方的に一方さんがボコられたけど一様、激戦と思ってくれると助かります。


一方通行の過去。
自分なりに少しいじってみました。
一方通行の過去は原作でそんな明らかになってないので。



黒い翼使いすぎの件。
アレ使わないと倒せないと思ったんですよ。
だって登場した能力者が『程度』って能力名を無くして強化してしまったんだもの。


まあ、ちょくちょく黒い翼を使わず倒してましたけどね…………


『程度』が能力名から消えた理由は二章で分かると思います。





こんな事言いたくなったんで書いちゃいました☆
次回も楽しみして待っていてくれたら嬉しいです。


ここを見て人は居ないと思いますが長文失礼しました。
(…………ここに書いたこと、ネタバレなのかな?)


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14話

魔法の森を一方通行は警戒して進む。

すると、だった。

歩いている最中なにか違和感のようなものを感じる。

 

今は夜。

ならば妖怪などがさ迷っててもおかしくないと思うのだが妖怪の姿が全く確認出来なかった。

 

この魔法の森には幻覚作用をもつ茸が生えてる。

が、一方通行は自分に害となる物は全て反射している。

だがら悪影響を及ぼす物があろうと無かろうと関係無いのだ。

 

一方通行「出口はまだ、か…………」

 

まるで普通の森を歩いてように歩いているが、普通の人間がこの森の中に入ったらそこら辺に倒れて自然の一部になるだろう。

 

一方通行は出口はなんとなく解っていた。

魔理沙の箒の後ろに座ってる時に森を見渡していたのだ。

と言っても地面まで日光は届いてなくてそんなに見えてはいなかった。

 

 

 

歩いてから何分か何十分かは経った。

けど、一方通行は森の外へ出ては居なかった。

もしかしたらこのままだと迷いの竹林の時のような気紛れな奇跡を願って歩くしか無いのだろうか。

 

歩いてる最中『空を飛ンで行けば良いンじゃねェか?』と思ったが何かの言葉にできない危険を感じ止めた。

 

一方通行「…………………?」

 

魔法の森は抜けたのだろうか

 

歩いている途中、周りの雰囲気が変わる。

 

一方通行「……人間の里はあっちか……」

 

建造物が多くある所を発見。

建物の中に光が見える。

この世界に建物が沢山あり囲われるように壁がある場所は人間の里以外あり得ない。

 

一方通行「このまま真っ直ぐ行けば着くな」

 

夜の人間の里の門には門番が居るがそんな事を知らない一方通行は警戒をせず安心しきって人間の里へ足を進める。

 

 

すると、

 

 

一方通行「______________ッ!?…………ハッ、少しでも警戒を解いた俺がバカだったぜ」

 

空から攻撃的な何かが自分に向かって飛んで来てる事を感じ、運動力のベクトルを操作して後ろ五メートルへ瞬時に移動した。

 

さっきまで自分が歩いて居た場所に砂煙が出来ていた。

が、それも少しずつ消えていった。

 

そして、見えて物体は三又のトライデントのような槍。 その槍は地面に亀裂が入る程強く刺さっていた。

 

???「さっきのを避けるか。ま、当たったとしても足に穴が空く程度の怪我だったけどね」

 

槍のところに黒髪のショートボブで右三枚左三枚の奇妙な翼を生やす女性がふんわり着地し白い怪物の前に姿を現す。

 

一方通行「誰だ、オマエ」

 

姿を現した少女を一方通行は鋭く睨む。

 

ぬえ「今から死ぬヤツに自己紹介はしても意味無いと思うけど、冥土の土産ってやつ?私は封獣(ほうじゅう)ぬえ」

 

一方通行「(ぬえ?という事は妖怪の類いか)オマエは何で俺に攻撃を仕掛ける?理由ぐらいは聞かせろよ」

 

ぬえ「理由?そんなの簡単だよ________」

 

奇妙な翼を生やす女性が地面に突き刺さる槍を片手で抜く。その時、少し地面が荒れてしまったが、まあ関係無い。

 

ぬえ「________お前が人間だからだ」

 

持っている三又の槍の先端を一方通行に向けぬえと名乗る少女は言い放つ。

 

一方通行「ハッ、オマエ今から眼科行った方がイイぜ。この俺をただの人間と見えちまうその目ェ治してきな」

 

小馬鹿にしながら挑発するような態度を一方通行は取る。

 

ぬえ「そう言って逃げようとしても無駄だよ。お前は人間だ。卑怯で、愚かな、弱く、醜い」

 

一方通行「オマエのような三下から誰が逃げるかっつの」

 

面倒くさそうな態度をとりながら一方通行は首の間接をコキコキと鳴らした。

 

ぬえ「この私に三下、ね。________________ッ!!!!人間風情がァァァああああああッ!」

 

ぬえは激怒した表情に変わる。

 

そして、槍を構えながらぬえが突進して来て一方通行に向かって槍を突いた。

だが、その槍は彼の体を貫くことはなかった。

 

一方通行は右側に点と点が移動したように一直線に移動してぬえの槍を避けたのだ。

そしてさっきまで自分が立って居た場所の方をくるっ、と横に半回転して地面を強く蹴る。

 

すると、ぬえの足元が爆弾も無いのに地雷が爆発したかのように弾けた。

 

ぬえ「っく、う………ッ!?」

 

突然地面が爆発してぬえは跳躍し防御するように構える。

が、下から石などが高速で飛んで来てぬえはその小石の数々がその身に直撃したが、難なく地面に着地する。

 

すると口角を限界まで上げて笑う白い怪物が砲弾のような速度でぬえに直進、

 

そして、

 

一方通行「吹っ飛べェェェッ!!」

 

ぬえ「ッ!?……うっ……!!!」

 

突進の勢いを右手に乗せぬえの腹部目掛けて拳を放つ。

 

その拳を食らったぬえは背後に吹っ飛び後方に生えてる木に打ち付けられる。

そして力が抜けたように地面へ落ちた。

 

だが倒れてる自分の体を打ち付けられた木を使いながらぬえは何とか立ち上がる。

 

すると前方から地を、草を踏みながら自分の居る方向へ進む足音がした。

 

 

足音のする方を向くと楽しいそうに笑う一方通行の姿があった。

 

一方通行「あン?もォギブアップかァ?」

 

そしてぬえから三メートル位離れた場所に一方通行は立ち止まる。

 

ぬえ「くっ、少し強い能力があるからって調子乗りやがって………………」

 

一方通行「で?どォするよ、これだけの差を見せつけられてもまだ続ける気かオマエ?」

 

ぬえ「ッ!!ブチ殺すッ!!」

 

槍をくるくる回した後に構える。

一方通行はどう足掻いても自分に勝てないのに自分に向かって来るぬえにため息を吐いて呆れていた。

 

そしてそして。

ぬえがその場で大きく槍を振るうと、サバイバルナイフが飛んで来るように一方通行は見えた。

だが、本当に飛んで来てる物は『弾幕』。

ぬえは弾幕を飛ばすときに"正体を判らなくする能力"を使用した。

 

一方通行「こンなモン____________ッ!!?」

 

サバイバルナイフを反射しようとするが反射は出来ず、一方通行の体に直進。

 

そしてその当たった衝撃で少し蹌踉ける。

 

 

一方通行(この当たった感覚、ナイフじゃねェな………)

 

 

ナイフがもし当たったとしたら体に刺さる筈だ。

だがそうではなく、何かが爆発した感じだった。

 

一方通行(自覚障害とかそォいう系の能力か…………)

 

ぬえと名乗る妖怪がどんな能力か、思考した時だった。

 

またぬえは弾幕を放つ。

しかし一方通行の目にはナイフや刀や斧という様々な物に見える。

 

そして一方通行はその正体不明の攻撃を解析するため少し触れながら避ける。

ぬえの能力は正体を判らなくする能力だ。だが絶対正体を判らなくする能力では無い。つまり正体を掴む事は可能。それなら問題ない。

 

正体不明だろが何だろうが判らなければ解析すればイイ。その程度にしか一方通行は思わないだろう。ぬえの能力を知ったとしても。

 

一方通行(……解析完了だ。オマエの力の正体を掴ンだぜクソったれ)

 

ぬえは能力を使用しながら弾幕を放ち続けるがもう無駄だ。白い化け物に能力の正体を掴まれてしまう。

 

弾幕などのベクトルはもう解析済み。だから能力を解析してしまえばただの弾幕。

 

ぬえ「なに!?」

 

一方通行「……もうオマエの能力は効かねェよ」

 

攻撃を避けていた一方通行の動きが止まる。そして弾幕が当たると思ったが当たらず、反射されぬえの方に飛んで行った。

 

ぬえ「一体……何を……?」

 

自分に向かって来た弾幕を華麗に避け、ぬえは冷や汗を流す。

 

一方通行「そンな事よりイイのかァ?驚いてる暇なンてねェぞ」

 

地面を蹴り、ベクトルを操作して衝撃波をぬえにくらわしてやろうと思ったが、ぬえの雰囲気が変わり、止めた。

 

ぬえ「……」

 

手に持ってる槍をぬえは、グッ、と力強く握り一方通行を睨む。

 

一方通行「……あン?」

 

ぬえと一方通行の目が合うと、ぬえが肩から力が抜けたように下を向く。

 

ぬえ「……が…………んが…………人間がッ!!!」

 

下を向きながらか細い声で言っていたが、最後は一方通行と同じ紅い瞳を見開いて顔をあげ、はっきりと言って叫ぶ。

 

ぬえ「憎い。憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いーッ!!!!!」

 

一方通行は説明が面倒だったら言わなかっただけだが、ぬえは、はぐらかしたと思った。そしてはぐらかし事にイラっとすると過去の出来事を思い出し腹の底から、憎いとゆう感情が溢れだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

過去の話をしよう。

ある、妖怪が居た。

 

その妖怪の正体は不明。そして恐ろしい力を持ってるとゆう。

 

恐ろしい力を持つ妖怪を皆恐れ近付かないようにしていた。

 

だが、その妖怪に近付き仲良くなった人間が居た。

 

村娘「あっちに行こ!」

 

ぬえ「う、うん……」

 

指を差してぬえの手を掴み村娘はその方向へ走っていく。楽しそうに笑いながら。

 

 

二人の出逢い。それは、ぬえが人を脅して遊んでる時に、たまたまこの村娘を助ける形になり村娘はぬえを自分を助けてくれた人と勘違いした。そしてその勘違いから友情が生まれ、今このように二人で遊ぶようになった。

 

ぬえ「…?…ねえ、どこに向かってるの?」

 

薄暗い林を手を強く繋いで走っている。が、何か村娘の雰囲気が違う。

 

村娘「まあまあ、着いたら分かるよ」

 

ぬえの方を向かずただ真っ直ぐを見ながら村娘は答えた。

 

ぬえ「どこ向かってるかぐらい話してよ」

 

村娘「そんな事より、あたしと一緒に居て楽しかった事って何?」

 

話をはぐかされたがぬえは村娘の質問に答えた。

 

ぬえ「一緒にこうやって遊びに行く事かな」

 

村娘「そう……なんだ……」

 

走ってた村娘の足が止まりぬえも止まった。

二人が着いた場所は木に囲まれた場所。

 

村娘「私はね……」

 

ぬえを木に囲まれた開けた場所の真ん中に置いて、村娘は真っ直ぐ歩きながら話していた。

 

周りの木がガサガサと揺れる。そして村娘は歩みを止め、ぬえの方へ向き直る

 

村娘「お前が妖怪だと知ってから、一緒に居て怖かった」

 

ぬえ「ッ…!!?」

 

村娘の目に光はなかった。そして木の上とかに隠れて居た大人の男達が様々な武器を持って襲い掛かってきた。

 

 

そしてぬえとゆう妖怪は男達に退治された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぬえ「あんたら人間は私を騙して苦しい思いにさした………ッ!!」

 

たった一人で人間に挑むように、空に吠えるようにぬえは、

 

ぬえ「人間は弱く醜く卑怯で臆病だ!そんな人間が私を!私を……!!」

 

一方通行(人間に騙されて…苦しく思い……か)

 

眼をゆっくり瞑って一方通行は心の中で言った。

 

一方通行(コイツは人間のクソったれの部分を沢山見て生きてきたのか。チッ……しょうがねェなァ……)

 

一方通行はぬえが人間の弱く醜く卑怯で臆病な部分を沢山、見て生きてきたと知って少し自分と重ねてしまった。

 

一方通行(……コイツがこのまま憎しみを持ったまま生き続けたら、いつか俺のような化け物になっちまう。そいつは困ンなァ、化け物はこの世で俺たった一人で十分だ……!!)

 

この幻想郷を一方通行は光の世界と思っている。でも、やっぱり光あるところに闇はある。今、目の前に居る闇に飲み込まれそうな、ぬえを見てそう思った。

 

そして次に、一方通行はフランの事を思い出す。

初めてフランを見たとき、驚いた。闇に堕ちそうな哀れな少女を見て。

このままコイツが闇を抱えたまま生きていったら俺のようになっちまう。と、一方通行は本能的に思った。でも、まだコイツは足の爪先から頭のてっぺンまで闇に浸かってはいない。とゆう事は、もしかしたら闇に生きなくて済むかもしれない。

なら、闇から俺が光へ引っぱり出してやろう。

俺は遅かったが、コイツはまだ、間に合う。

そして一方通行はフランの心の闇を払い、自分のような救いようの無い化け物にならないようにした。

 

今、目の前に居るぬえとゆう女性。コイツも心の闇があり。俺のような救いようのねェ化け物になりかけてる。

今回もしょうがねェ。やるかァ。

とても暗い闇の底に堕ちそうなコイツを、光へ引っ張り出してやる。

まだ、間に合う。傷つく心を持ってンだしな。

この世に化け物は俺一人で十分だ。この化け物とゆうレッテルを背負えるのは俺しか居ないのだから。それにこの世界の奴等に化け物とゆうレッテルは似合わない。

 

一方通行「ったく……フランとイイ、オマエとイイ、 俺と少し似たヤツが居るとはなァ……」

 

ぬえ「憎い憎い憎い憎い!!人間が憎いぃぃぃッ!!」

 

一方通行(ハッ…似合わねェ真面目な面して、柄にもねェ事やっててやろォじゃねェか。血みどろにな……)

 

裂いたように一方通行は笑った。

 

一方通行「オラ、来いよ!俺がオマエの大っ嫌いな"人間として"戦ってやる!」

 

ぬえ「おおおおぉぉぁぁぁああああッ!!」

 

憎しみとゆう感情に体を任せ突進する。そして手に持つ槍を一方通行へ突き刺す。

 

普通ならこんなの当たらない、何故なら一方通行には反射がある。だが

 

一方通行「くっ……ッ……!」

 

ぬえ「……えっ?」

 

槍が一方通行の細い足に突き刺さった。

その事にぬえは驚き、声を洩らした。

 

ぬえ「……何で……だってあんた……」

 

槍を足に突き刺したままぬえは驚いた顔をして一方通行の顔を見る。

さっき見て反射を出来ると知ってるが、憎いという気持ちでいっぱいでそんな事を考えてはなかった。

けど、槍を突き刺さった瞬間、何か大事な感情を取り戻した感じがぬえはした。

 

ぬえ「こんな攻撃効かない筈じゃ……」

 

一方通行「オイオイ……こンなモンなのかァ?オマエの憎しみってやつはァ……」

 

右太股から血を垂れ流しながら一方通行は笑っていた。

 

一方通行「俺が人間として戦ってやってンだ……もォ少し本気でこいよ」

 

人間として、つまり能力の無い状態で戦うとゆう事。

 

能力の無い一方通行はただ頭の良い程度の人間だ。

だが、能力があるから学園都市の化け物と呼ばれ。狂気に満ちた悪魔と言われる。

 

ぬえは槍をそっと抜き、後ろに跳躍して一方通行から十メートル位離れ綺麗に地面に着地した。

 

一方通行「人間としての俺の体は(もれ)ェ。だから長くは付き合ってやれねェぞ……」

 

ぬえ「さっきから何言ってんの……?」

 

一方通行「あァ?俺がオマエの溜まりに溜まった鬱憤を晴らしてやるってンだ……クソったれ」

 

ぬえ「…何でそんな事……」

 

一方通行「理由はねェよ」

 

呼吸をするように一方通行は嘘をついた。

 

ぬえ「……今までの怨みを込めて…いくよ!!」

 

息を吐いた後、ぬえはうっすら笑い大きな声で言った。そしてありったけの力を込めて無数の弾幕を放った。

 

その弾幕を一方通行は正面から全て受ける。

結果、その華奢な体は吹っ飛びゴロゴロと地面を転がっていった。

 

一方通行「…ッ……くっ、はっ……!」

 

吹っ飛んで倒れてたが立ち上がろうとする。が、体に激痛が走り体勢を崩し一方通行の口から真っ赤な血が飛び散る。吐血したのだ。

 

そしてボロボロの体をもう一度起こし、無理やり立ち上がる。

 

一方通行「……くっ……!」

 

ぬえ「バカだね、本当に受けるなんて」

 

一方通行の近くまで歩み寄りボロボロの体を見て言った。

 

一方通行「だが、オマエはこォしたかったンだろ……?人間をよ」

 

ぬえ「……」

 

ニヤリ、と笑う一方通行を口を開けず黙ってぬえは見てた。

 

一方通行「感想はどォだァ……?」

 

足が震える。立っているだけで限界なのだ。

でも、一方通行は座らずぬえの眼を真っ直ぐ見ていた。

 

ぬえ「………」

 

一方通行「チッ。感想は無しか……」

 

吐き捨てるように言った後、一方通行は人間の里へ行くため傷む体を引きずって歩いて行った

 

ぬえ「……待って……!!」

 

一方通行「あン?」

 

が、ぬえに呼び止められる。

 

ぬえ「理由……あるんでしょ…!」

 

さっき理由は無いと言っていたが、ぬえはそれは嘘だと気付いていた。

 

ぬえ「教えて、何で……」

 

一方通行「……俺もオマエと同じ。人間の醜い部分ってのを飽きるほど見て生きてきた……」

 

ぬえ「えっ…?」

 

一方通行はぬえの方へ体全体で振り向くが、白く細い体の所々から流血をしていて、とても痛々しい。

能力を使って流血を止める事が可能だが、血を流しすぎてしまい演算する余裕何てものがなく意識を保とうとするだけで頭は限界だ。

 

一方通行「だからと言ってオマエに同情なンてしてねェ……。だが、まァ…何となく、オマエの気持ちを少し理解しちまったから、自分でもバカだと思う事をしただけだ」

 

誰にも理解されなかったぬえの気持ちが理解された。

その時、今まで感じた事の無い感情が芽生える。が、この感情はとてもやっかいだった。

鼓動は速くなる。顔は熱くなる。といった事が起きた。

そしてこのままだと何かやばい、とぬえは思い、話を変えようとする。

頑張ってどんな話をしようかと考えてる時に一方通行と目が合う。

その瞳を見てぬえは更に鼓動は速くなり顔を熱くなる。

でも、発見した。新しい話の話題を。

一方通行の瞳も自分の瞳も同じで、紅い。

よし、これを話そう、とぬえは思い

 

ぬえ「…あんた、少し私に似てるね。例えば、その眼とか」

 

何とか顔は赤くしないで普通に話すことが出来た。

 

一方通行「…そォだな……。もしかしたら俺達、結構ォ気が合うかもしンねェな」

 

ぬえ「けっ、それはゴメンだね」

 

一方通行「冗談だ。本気に……すンな」

 

ふらっ、と話してる最中、気を失うが何とか一方通行は耐え、また人間の里の方へ歩いて行くが気を失い、バタン、と糸が切れたように倒れる。

 

ぬえ「本当にバカだ、自分の体をこんなにボロボロにしてまで、私の攻撃を正面から受けるなんて。それに自分を殺そうとした者の前で意識を無くすとはね」

 

倒れてる一方通行に近付き三又の槍を一方通行の頭へ向ける。

 

ぬえ「……そこで、倒れて死にな」

 

槍を向けてたが、止めて、森の中へ歩こうとする。が

 

ぬえ「…そう言えばこの辺り妖怪多かったな。フッ…あんた、そこら辺の妖怪に食われて死ぬかもよ」

 

振り返り、血塗れで倒れてる一方通行に馬鹿にしながら話すが返事は無い。当然だ、気を失ってるのだから。なのにぬえは一方通行に話し掛けていた。

 

ぬえ「まあ、あんたがどんな死に方しようが私には関係無い…か…」

 

また森の中へと歩こうとするが、一方通行の事が気になってしまい

 

ぬえ「…あ……ん……、~~~~~ッ!ああぁ!もう!」

 

倒れてる一方通行に近付きその華奢な体を優しく抱き抱える、そして自分の知る安全な場所へ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「…チッ…、またこのパターンかよ…」

 

ゆっくりと眼を開け見知らぬ天井を見てから、自分が布団で寝かされてるとゆう状況が分かって、一方通行は言った。

そして何か体が締め付けられる感じがして、寝ている体を起こし自分にかけられてる布団をどかす。

 

一方通行「…何だよ、こりゃァ…」

 

腕や足に雑に巻かれてる包帯を見て、呆れながら言う。

 

一方通行「……此処は何処なンだァ?……」

 

流れてる血が止まるんじゃないかと言いたいぐらい締め付け感のある包帯をとりあえず取り、立ち上がろうとすると

 

スーっ、と、この和風の部屋の襖がスライドされる。

 

そして姿を現したのは右に三枚左に三枚の不思議な翼を持つ女性、ぬえだ。

 

ぬえ「……死んでなかったか。案外しぶといね」

 

一方通行「オマエが、俺を運ンだのか……」

 

ぬえ「あんたを助ける為にじゃないからね…。そこを勘違いするんじゃないよ」

 

一方通行「そォか。ま、そンなのはどうでもイイが、此処は何処なンだ?」

 

ぬえ「命蓮寺(みょうれんじ)って、言っても分からないでしょ」

 

一方通行が寝てる布団以外、何もない広々とした和風の部屋にぬえは入り、一方通行の近くに座る。

 

一方通行「寺、ってぐらいは分かる」

 

ぬえ「そ、目が覚めたなら早く出て行ってくれない?あんたのことばれたら私、迷惑なのよね」

 

包帯を回収し、ぬえは立ち上がる。そしてこの部屋から出て行ってしまう。

 

一方通行(出て行けって、言われても出口どこだよ…。それにバレずにとか……チッ、面倒くせェ)

 

出て行けと言われたので早く命蓮寺とゆう寺から出ようとする一方通行。

 

体に痛みは無いが、傷などは完治して無いので無理は出来ない。

 

荷物は無いので直ぐにでも出ようとするが、襖が、スーっ、とスライドされる。

すると金髪に紫のグラデーションが入ったロングウェーブに金の瞳を持つ女性が現れ

 

???「…やはり、私達以外の人が居ましたか……」

 

襖を閉めてから言った。

 

一方通行(チッ…、初っ端からゲームオーバーか…)

 

???「ぬえが誰かを勝手に運んだのは知ってましたが…まさか殿方とは」

 

一方通行(敵意は無ェようだが、こォゆう奴が結構危険なンだ……)

 

スタスタ、と自分の所へ歩いてくる金の瞳を持つ女性に警戒する一方通行。

 

白蓮「そんな警戒しなくていいですよ。私は聖白蓮(ひじりびゃくれん)といいます」

 

白蓮と名乗る女性が一方通行の近くに行儀よく座る。

 

一方通行「オマエは此処でトップのヤツか…」

 

白蓮「一様、そうですね…」

 

行儀よく座ろうが優しい顔をしてようが、一方通行は警戒を解かなかった。

 

一方通行「で、何の用だよ。出てけってンならそンな事言う必要無ェぞ」

 

白蓮「いいえ、そんな事を言いに来たのではありません」

 

一方通行「あァ?…もしかして頼み事か」

 

白蓮「はい、そうです」

 

布団に座る一方通行の真っ正面に白蓮は正座し

 

白蓮「…あの子の、ぬえの閉ざした心を開いて下さい。お願いします」

 

頭を下げる。そしてその頼み事に一方通行は頭を掻いてから答えた。「お断りだ」と。

 

白蓮「…そう、ですか…」

 

顔を暗くし、下を向いて白蓮は落ち込んだ。

 

一方通行「…と、イイてェが。オマエがその願いに見合う代価を支払えンなら考えてやってもイイぜ」

 

白蓮「……えっ?」

 

断られたと思い落ち込んでいたが一方通行の言葉を聞いて顔を上げる。

 

一方通行「さァ…どォする?」

 

白蓮「わ、分かりました。これもぬえのためです…」

 

何かの覚悟を決めた白蓮は何故か自分の着ている服に手をかける。そして脱ぎ始めようとしていた。

 

一方通行「あァ?オイ、待て。ナニしようしてンだァ?」

 

白蓮「そ、そんな事を言わせるのですか…」///

 

頬を赤く染め、白蓮はモジモジしながら恥ずかしがっていた。

 

一方通行「…はァー…。オマエ何か勘違いしてンぞ」

 

白蓮が何故服を脱ぎ始めたのか、何故恥ずかしがっているのか、一方通行は分かった。

 

白蓮「勘違い…ですか?」

 

一方通行「まず一つイイてェ。俺はそンなに溜まってるように見えンのか?」

 

白蓮「??」

 

一方通行「チッ…俺はただ一杯コーヒーくれりゃァイイと思ってたンだがなァ…。もしかしてオマエ、欲求不満なのか?」

 

白蓮「ッ!!!……。ち、違います」////

 

自分が勘違いしてた事に恥ずかしくなり今よりもっと顔が赤くなる。

 

一方通行「で…用意、出来ンのかァ?」

 

白蓮「ハ、ハイ……」///

 

一方通行「そォかい。……だったらやってやる」

 

白蓮「…ありがとうございます!」

 

嬉しそうにニッコリと、白蓮は笑った。 だが、心の中で自分が勘違いしたことを恥じていた。

 

一方通行「それにしても、まさかああ考えるとはな……。随分愉快な頭してンだな、オマエ」

 

意地悪そうな笑みを浮かべながら一方通行が言う。

 

白蓮「も…もう!その話はお止めてください!……男性はそうゆうのがお好きと言っていたので…その…」///

 

最初の方は強く怒鳴ったが、最後らへんは小さく誰にも聞こえないように白蓮は言った。が

 

一方通行「……誰から聞いたンだよ」

 

ちゃんと最後まで一方通行は聞いていて、面倒くさそうに言った。

 

白蓮「…男性のお人達が言っていたのを聞いて…」

 

一方通行「だからと言って、よく初めて会った_____」

 

白蓮「その話は止めてください。っと、言いましたよね?」

 

一方通行の言葉を白蓮が封じる。

 

優しそうに笑いながら白蓮は言う。だがその笑みの奥から何か怖いものが見えそうだ。

白蓮が怒る姿を見た者は居ない。でも、もしこの話を続けるのなら、もしかしたら……

白蓮が笑った後、ここの空気が静かになった。

 

一方通行「コーヒー、いつ持って来ンだァ…?」

 

今日、久々にコーヒーが飲める。だから一方通行はこの静かな空気など気にせず言った。

 

白蓮「…ただいま持ってきますね」

 

ゆっくりと立ち上がり、白蓮は部屋から出て行き、そして一方通行は静かにコーヒーを待っていた。










☆霊夢の雑談コーナー?☆

霊夢「一方通行も魔理沙も用事があって休みか………」

霊夢「暇ね………、とりあえず前回勝手にこのコーナーを使ったヤツを宇宙空間まで吹っ飛ばしに行きますか」








ポスター「?……何か自分の危機を感じた……」


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15話

もう一方さん。誰?状態。
キャラぶっ壊れ過ぎ…………。
でも良いよ、なんでも良いよって方はどうぞ。



コーヒーを待つこと五分。

一方通行の居る部屋の襖が開き白蓮が現れた、そしてその手には何日かぶりのコーヒーがあった。

 

白蓮「どうぞ」

 

退屈そうに待っていた一方通行の近くに座り、手に持っていたコップを渡す。

 

一方通行は、「ン」とだけ言ってコップを受け取り、その真っ黒な液体を味わいながら飲む。

 

白蓮「どうですか?……不味かったですか?」

 

一方通行「味は悪くねェ…………」

 

コーヒーを一気に飲み干した一方通行に少し心配しながら白蓮が言う。

 

白蓮「そうですか、よかったです」

 

 

一方通行の言葉を聞いて白蓮は安心したように笑った。

そしてコップを一方通行から受け取り床にそっと置き、ぬえの事を話始める。

 

白蓮「では。ぬえの閉ざした心を開いてほしいと言いましたが、詳しい事などを言って無かったので説明します」

 

先程の笑みは消え、白蓮の表情は真剣だった。

 

白蓮「あの子は、人間の平均寿命とは比べられないほど長く生きてきた妖怪です。ですが、その生きた長い時の中で何回何回も人間に裏切られ退治されてきたのです」

 

話を眼を瞑りながら聞いていた一方通行。

それは別に眠いだとか、興味がないだとかそんな理由ではない。

彼なりにちゃんと聞くためなのだ。

 

そして、

白蓮はちゃんと話を聞いてるか心配になったが話を続ける。

 

白蓮「そして何度も裏切られ続けたぬえの心に人間に対して強い憎しみが生まれてしまいました。そして人間を見たらその憎しみに体を乗っ取られ無差別に襲うようになってしまうようになり………………」

 

一方通行「そンな事情も知らねェヤツからしたら迷惑ったらありゃしねェな」

 

白蓮「………………あの子の性格そのものを変えてほしいとは言いません。私は…………、私はぬえの本当の気持ちを知りたいのです」

 

一方通行「頼みを了承してから言うモンじゃねェと思うが、そのぐらいならオマエでも出来ンじゃねェのか?」

 

白蓮「っ………、私では無理ですよ__________」

 

諦めたように白蓮は下を向いて笑った。

そして続けて

 

白蓮「_________あの子の心の闇は余りにも大きく深い。……………笑えてきますよ、どうしようもなく無力な自分に」

 

一方通行(この件は簡単に終わらねェな…………。ったく、面倒くせェ)

 

ぬえを闇から引っ張り上げると簡単に言う事は出来るが、実際に出来るかどうかは難しい。

 

 

『言うは易く行うは難し』っということだ。

 

 

一方通行「一つ聞く。何故それを俺に頼む?」

 

ふと疑問に思った事を暗い顔をしてる白蓮に話す。

 

白蓮「…………それは、貴方からぬえに似た雰囲気を感じたからです」

 

一方通行「似た雰囲気ねェ…………。まァ、俺もアイツと少し似てると思うが、アイツと似てるって事がどォいう事か分かるよなァ?」

 

白蓮「…………はい」

 

一方通行「ハッ、随分と大きな博打をしたモンだ」

 

息を吐きニヤリと一方通行は笑う。

妖怪・ぬえと似てるという事は同じ数々の命を奪ってきたということ。

それに敵と認識したら誰であろうが一切の躊躇いがない。

 

白蓮「ぬえのため、皆のため。貴方のようなお人に賭けるしかもう道は無いのです」

 

一方通行「…………くっだらねェ。が、了承しちまった以上やるしか道はなさそォだな」

 

白蓮「くだらない、ですか……。なら、私が人も神も仏も妖怪も皆平等と思う考えもくだらないと思いますか?」

 

一方通行「(絶対平等主義者か、コイツ)……あァ、そっちの方が余っ程くだらねェよ」

 

切り捨てるように言って、一方通行は居た部屋から立ち去った。

 

 

白蓮「あの人が本当はどんなお人か知りません。ですか、もうあの人に賭けるしか……っ…………」

 

両手を固く握り力を込める。

そして白蓮はもしかしたら自分は間違ったことをしてるのかと考えたが、

その思いを圧し殺し、今は真っ白な彼だけを信じることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぬえ「チッ……どいつもコイツも」

 

腕を組んで命蓮寺と呼ばれる寺の裏で、壁に寄りかかりながら一人でぬえはイラついて居た。空は青く晴れていたのに。

 

 

何故、イラついて居るかと言うと。

外出しよう、と思い外へ出ようとしたが、いつも違い正面から出て行くと、命蓮寺の門徒の人間と会ってしまう。するとぬえを見た人間はコソコソと小さな声で話始めた。多分、話してる内容は悪口ばっかだろう。

 

そんな出来事があり、ぬえはイライラしている。

 

だが、寺の正面の方から人間の話し声がしてきて気になってコッソリと寺の裏から覗く。すると

 

ぬえ「誰にも見付からずに出ろって言ったのに…………、アイツ」

 

自分が運んできた白い悪魔が人間に絡まれていた。

 

 

「見ない顔だな……」

 

「細いがたいだなー、お前」

 

「チッ、コイツ気に入らねえ」

 

「ああ、俺も気に入らねえよこいつは。新入りなのか知らねェが歳下の癖になんだよその面は」

 

一方通行「…………、どけ」

 

白く大きな階段を下りると、この寺の門徒らしきヤツらに絡まれる。

 

一方通行の前に横並びしている男達は命蓮寺の門徒の奴等だ。

 

男2「………………ああ?生意気言ってんじゃねぇぞゴラァ!!」

 

男1「ここに最近入った若いヤツだろコイツ。なら、先輩にはどんか口の聞き方をすれば良いか体に教えてやろうぜ、素晴らしい先輩として」

 

男3「そうだな。俺達は後輩思いなんだ。先輩への口の聞き方をちゃんと教えてやんなきゃなあ」

 

指の関節をパキパキ、と鳴らしながら笑ったり腕を組んで偉そうにしてる男達など一方通行の眼中に無く、その後ろへと視線を向けていた。

 

そして男達が一斉に襲い掛かった。

が、しかし男達は一方通行を殴る事が出来ずそれぞれ背後に吹っ飛び拳にアザができていた。

 

でも、腕がおかしな方向へ曲がらないだけ有り難いとおもってほいし。

本来なら腕が折れ更に一方通行の反撃が来るのだから。

 

男達「う、ううぅ、ぁあわぁぁ……ッ!!!」

 

拳を手で抑えながら踞ってる男達を一方通行は紅い瞳で見下していた。

そして一人、近くに居た別の男の頭を踏みつける。

 

男1「ぐ、ッ……!!!」

 

一方通行「オイ、答えろ三下。ぬえ、っていうヤツが何処に行ったか知ってるか?知ってンなら話せ、顔面が埋まる前に」

 

ポケットに手を突っ込んだまま、男の頭を踏みつけてる足に力を更に加える。

 

男2「お、お前、あの化け物の知り合いかッ!!く、クソ!!」

 

男4「チッ、………お前ら化け物は全員死んじまえ!!」

 

一方通行「……あァ?」

 

拳を抑えながら吠える男達に強く睨み付けると、「ヒイィィッ!!」と情けない声を踏まれてる男以外の奴らが洩らした。

 

男3「お、お前ら化け物は生きてる価値なんて無いんだ!!」

 

そして一人の男が震えながら立ち上がり一方通行へ吠える。

 

男3「人間をオモチャのように遊んだ挙げ句に、命をなんとも思ってない化け物はみんな皆、死んじまえ!!」

 

一方通行「この寺のルールってやつはよく知らねェがオマエらの頭である白蓮は絶対平等主義者だ。オマエらはアイツの考えを無視して"化け物"を排除しよう、ってかァ?」

 

男3「…聖様の考えを否定するわけでは無い。ただ、人間を何とも思わない化け物はこの世に居ない方がマシだと思っただけだ!!」

 

一方通行「じゃァそれをアイツの前で言ってみろよ」

 

とても冷たい眼で男達を一方通行は睨む。

 

一方通行「……、出来ねェよな。それをアイツに言う事すら出来ねェオマエらじゃなァ」

 

男3「当たり前だ!お前ら化け物は分からないだろ、 人間とゆう弱者の気持ちを!」

 

一方通行「……なら、オマエらも知らねェだろ。アイツの気持ちを。……妖怪は人間より長く生きる。それはつまり人間より長く楽しめたり長く苦しむって事だ」

 

男の頭を踏んでいた足を上げ、一歩、二歩、三歩、と後ろ歩きする。

 

一方通行「……もしも、人間のせいで化け物になった妖怪が居るって言ったら、どォする?」

 

その言葉を聞き、男達はピクリ、と少しだけ肩が動き反応する。

 

一方通行「どォでもイイ、って言って吐き捨てるか?それとも少し罪悪感でも持つのか?…なァ、オマエらどっちだ?」

 

男達「………………」

 

皆、様々の方向へ目線を反らし口を閉じている。

そして俺達の中で苦虫でも噛み潰したような表情をするヤツも居た。

 

一方通行「俺ァオマエらに説教を垂れる程、誉められた人生を送っちゃいねェが言わせてもらうぜ」

 

この場の空気が静まり返る。

俺達は一方通行へ攻撃しようとせず、黙って今から一方通行の話を聞くことにした。

 

一方通行「アイツは何度も人間に裏切られ、バカみてェに長い時間苦しンできた。だが、人間のオマエ達は長く生きたとしても百年位だ。だからそン位しか苦しむ時間ねェ。なのに、アイツが抱える闇も知らず、自分の気持ちばっかアイツに打つけてンじゃねェ!!」

 

そんな事を言ってる一方通行を、寺の影でコッソリ、と覗いてるぬえの鼓動がドクン、と脈を打ち。そして何故か手に力が入る。

 

足が竦んで立ち上がれ無い男三人は様々の方向へ後ずさりしてるなか、もう一人、立ってる男は両手を強く握りしめて、一方通行を睨んでいた。

 

男3「傷付く心の無い化け物が言う事かぁぁッ!!」

 

先程まで震えていた男はもう震えなど忘れたように怒鳴る。

 

一方通行「チッ、他者の気持ちを知ろうともせず自分のことしか考えられねェクズが。妖怪は人間の倍辛い時間があるって事位分からねェのかァ!!」

 

男3「うるっ…………、うるせぇぇえええええってんだッ!!このバケモノがァァァァあああああッ!!!!」

 

もう何もかも分からず頭の中が真っ白になった男は暴力とゆう手段に入った。

右拳を構えたまま、男が一方通行の方へ走る。

すると一方通行の前に

 

白蓮「もうお止めなさい!!」

 

両手を広げて白蓮は一方通行を庇おうとしていた。

 

男3(聖様_______ッ!!?)

 

白蓮の突然の登場に気付いても、もう自分の拳は一方通行へ飛んでいて、止めることが出来ない。

 

一方通行「チッ」

 

男の拳が白蓮に当たるのに一秒もかからないだろう。

が、一方通行は瞬時に判断し行動する。

舌打ちし、白蓮の腕を乱暴に掴む。そして片足に力を込めた瞬間、能力を使用し斜め後ろえと跳躍する。その時、命蓮寺の前に綺麗に敷かれてる縦に長く四角く、近くにある大きな階段と同じ、白い石床の所々が抜けて空へ吹っ飛ぶ。

 

空中で白蓮を自分が楽になるように一方通行は抱き抱え、階段の一番上に綺麗に着地する。と、同時に抜けて出た石床も地面へ落ちる。

 

白蓮「…………」////

 

咄嗟の事に白蓮は驚きを隠せないが、自分の今の状態に恥ずかしがっていた。

 

そして驚いてたのは白蓮だけではない、この場に居る一方通行以外、全員だ。

 

一方通行は皆、驚いてるなか、白蓮を優しく下ろす。

 

白蓮「あ…ありがとう……ございます」///

 

頬を赤らめながら頭を下げて礼を言う白蓮。

普通助けた男なら、大丈夫?とか、怪我は?など言うと思うが何処までも白く細い悪党は

 

一方通行「邪魔だ…、すっこンでろ」

 

と、一言、言って切り捨てた。

 

そして一方通行は階段を一気に飛び降り、一人だけ立っている男の近場に着地した。

 

一方通行「さっき、邪魔が入ったからもォ一回やれよ。だが、今度はそォやって満足に立てなくなるがな……」

 

裂いたように笑う一方通行。

そしてその笑みを見た男達は、今後これより上が無いと思う程の恐怖を心に刻まれる。

 

もしも、男の拳が一方通行の近くまで飛んでたら反射され大怪我を負うだろう。

そう、今度は手加減など一方通行しない。

拳のベクトルと今触れている全てのベクトルを殴り掛かってきた男に向け瀕死状態にしていた。

別に一方通行は誰も彼も助ける主人公(ヒーロー)では無く、自分のやりたい事だけやるマイペースな悪党だ。

 

男達「………………」

 

白蓮「この話はもう終わりです。あの、後は私に任せてはくれませんか?」

 

まだ何か言いたそうな男達を見ていたが白蓮は白く大きな階段を下り、間を割って自分の意見を一方通行に言う。

 

一方通行「……、別にイイぜ」

 

白蓮「ありがとうございます。では、貴方達、私の後に付いて来てください」

 

寺の方に向き直り、白蓮は白く大きな階段を上って行った。

そして男達は「ハイ…」と、だけ言って白蓮の後を付いて歩いて行った。

そして階段の一番上にたどり着くと、白蓮は何かにひらめき、参道の方へ向く。

 

白蓮「…響子(きょうこ)、居ますか?」

 

誰かの名前だろうか。

白蓮は大きな声で誰かを呼ぶ。すると

 

響子「ハイ、何かご用意ですか聖様?」

 

ぴょこん、と髪の色が緑青でウェーブのかかったショートボブの少女が姿を現す。

でも良く、その少女を見ると。

瞳は緑色。そして茶色に薄く斑点模様の入った大きな垂れ耳と、小さな尻尾を持っていた。

 

白蓮「参道が少し荒れてしまったの。直しといてくれる?」

 

響子「え……。あ、本当だ!」

 

ポカーン、としたまま話を聞いてたが白蓮が参道と言ったので参道を見る。

そしたら縦に長い四角く白い石が所々抜けていた。

 

白蓮「では、お願いしますよ」

 

そう言って白蓮は男達を連れて命蓮寺の中へと行ってしまった。

 

響子「……直してと言われても、どうしよう……」

 

今まで掃除などは良くしていたが物を直せと言われたのは初めてで、困っていた。

 

一方通行「まァ、此処を荒らしたのは俺だからな、俺がやる」

 

困っていた響子に頭を掻きながら一方通行は面倒臭そうに話しかける。

 

響子「(誰だろう……この人?)そ、そうですか…」

 

さっきからずっと居た白い少年を不思議そうに響子は見てると、その白い少年は地面を強く踏んだ。すると地面にバラバラに転がってる石床が勝手に宙に浮き、所々空いてる場所にスポッ、と綺麗に嵌っていった。

 

それを見ていた響子は

 

響子「す、凄いですね!どうやったんですか?」

 

一方通行「あン?見りゃ分かンだろ」

 

響子「分からないから、質問したんですが…」

 

一方通行「…、ベクトルを操作してあの石っころを移動させた。って言えば分かるかァ?」

 

響子「……?」

 

説明してあげたが、響子はその説明を理解出来ず、頭の上に『?』マークが浮いていた。

 

一方通行は理解出来て無いであろう響子を見てため息を吐く。そして石床をもっと強く嵌め込むためもう一度地面を踏む。その瞬間、ズンッ!!と響く。

 

響子「何をしたんですが?」

 

一方通行「オマエバカだから言ったって分かンねェよ」

 

参道は綺麗になっていた。

また、響子が質問して来たが一方通行は断る。

 

響子「(酷い…)」

 

どストレートの罵倒に響子は落ち込む。が、そんな事を無視して周りを見渡す一方通行に、気が付き響子は質問する。

 

響子「何かお探しですか?」

 

一方通行「あァ。だが、一つオマエに言わせてもらうぜ。声デケェよ…」

 

響子「すいません……」

 

普通の話し声とは思えないほど響子は大声だ。だからその事に一方通行は少し苛立っていた。

 

一方通行「ったく、それがオマエの個性かどォか知らねェが俺と話す時は声のボリュームを下げろ。うるせェ、耳障りだ」

 

響子「すい………ま、せん。う、うるさくて……」

 

さっきの大声などすっかり消え。震えた声で響子はうつ向いて話している。

それをただ、一方通行がぼーっと見ていると

 

響子「わ、私が……う……うる……ッ」

 

一方通行「ッ!?」

 

響子が急に泣き出してしまい、その事に一方通行は今までで、一番困っていた。

 

一方通行(チッ。こォいう時どォすりゃイインだァ!?ガキのあやし方なンて俺は知らねェぞ……っ!?)

 

泣き出してしまった少女をどうやって泣き止ますか、知らない一方通行は頭をフル回転させ、この状況をどうにか出来る答えを探す。

 

一方通行(クソッ、柄にもねェ事をまたやンなきゃなンねェのか……)

 

この件は全て自分のせいだが、一方通行は心の中で愚痴を吐く。

 

泣いてる響子の側に一方通行は近付き、ポン、と片手を響子の頭に乗せると、「ふえっ?」と言って驚いた顔をして顔を上げる。

 

一方通行「わ…悪ィ……」

 

精一杯声を振り絞り、謝罪をする。でも声はギリギリ聞こえるぐらい小さかった。

 

響子「何で…謝るんですか…?私が悪いのに……」

 

一方通行「…こっちに非があったと思ったからだ」

 

響子「そんな事無いです…私が___ッ!?」

 

一方通行は響子の言葉を封じるように頭を乱暴に撫でた。

 

一方通行「この俺が謝ってやったンだ、素直に受け取りやがれェ」

 

そう言って撫でるを止めて適当な方向へ振り向き、舌打ちをした。

 

響子「…なら、仲直りの証に…。もう一度私を撫でてくれますか?」///

 

一方通行「?……別に構わねェが……」

 

眼を瞑り頬を赤く染め、頭を預けるように下を向く響子を不思議そうに見ながら一方通行は響子の頭をもう一度撫でる。すると嬉しいそうに響子は笑っていた。

が、一方通行はそれを知らない。

 

それを寺の影から見てるぬえは

 

ぬえ(…、何かムカつくな……アイツ)

 

勿論、ぬえがムカついてる人物は一方通行だ。

 

 

 

一方通行「もォイイか?」

 

もうイイだろ、と思い撫でている手を止め、ポケットに手を突っ込んだ。

 

響子「ハイ、満足です!!……あッ……」

 

また大声でうるさいと言われると思いを響子は、慌てて両手で口を抑える。

 

一方通行「…何やってンだよ」

 

響子「すいません先程注意されたばかりなのに「違ェ」……えっ?」

 

一方通行「その手を見て俺は言ってンだ……」

 

響子が自分の口を抑えてる手を一方通行は指を差しながら言う。

 

一方通行「もォオマエは声のボリュームを気にして話さなくてイイ」

 

響子「???」

 

一方通行「……この話はもう止めだ。分かったな?」

 

響子「…ハイ、分かりました」

 

言いたい事などが沢山あるが、またややこしくなると思い一方通行は強引に話を止めた。

 

そんな事をしてると寺から白蓮が出てきた。

 

白蓮「おや、もう参道は直せたんですか。流石ですね響子」

 

響子「いや、これはこ______________」

 

一方通行「あァ、コイツが血眼になって直してたぜェ」

 

白蓮に話し掛けられ白蓮の方を二人は向く。

響子は自分がやってないと否定しようとしたが一方通行に強引に口を押させられる。

 

白蓮「それは疲れたでしょう。少し休んできなさい」

 

ゆっくり、階段を下りながら白蓮は話す。

 

響子「……………はい」

 

もう口は押させられてなく自由に話せる。でも、返事だけ言って響子はこの場から去っていった。

 

白蓮「さて…………。あ、あのー、今さら聞くのは失礼だと思うのですが貴方のお名前は?」

 

一方通行の近くに来て、胸の前で手を叩き何か話そうとしていたが、気が抜けたように一方通行に話しかけた。

 

一方通行「アクセラレータ」

 

白蓮「では一方通行さん。ぬえを見かけてませんか?」

 

一方通行「あァ?アイツを探してるのか?」

 

白蓮「はい。あの者達にぬえに謝ってもらおうと思うのですが…」

 

チラッ、と白蓮が階段の上に居る男達を見る。すると男達はビクッと反応する。

怒鳴られたりはしてないと思うが確実に白蓮を恐れていた。

 

一方通行「そォかい」

 

ぬえ「……ッ!?」

 

ニヤッ、と笑いながら一方通行は寺の裏の方を見る。

その時、ぬえは目が合った気がした。

そして一方通行は片足を上げ、踵から地面に落とす。

 

すると寺裏から「うわっ!?」と、驚いた声でぬえが誰かに背中を押されたように出てきた。

 

白蓮「ぬえ…」

 

ぬえ「…チッ……あのもやし野郎」

 

ずっと隠れて居るつもりだったが、一方通行が能力を使用し影から引っ張り出された。

白蓮は声のした方を慌てて向く。

 

一方通行「よォ、ぬえ。あのクソどもがお前もに用があるらしいぜェ」

 

イライラしながらも、しょうがなく白蓮の近くに歩いてきてるぬえを見ながら話す。

 

ぬえ「あっそ。私は無いからここから去るよ」

 

白蓮「待ちなさい、ぬえ」

 

スタスタと歩きながら去ろうとしてるぬえの腕を掴む白蓮。その眼はとても真剣だった。

 

白蓮「あの者達の話を聞きなさい」

 

ぬえ「……聞くだけね」

 

色々世話になってるので断れなかった。

そしてぬえの前に横並びする男達。

 

男達「…………」

 

ぬえ「…………」

 

男達「すいませんでした!!!」

 

ぬえ「……は?」

 

息を合わせて誤ってきた男達に眉を少し動かしぬえは驚く。

 

男達「私達が勝手なことを言って、不快な思いをしたのなら、どうか私達を殴ってください!」

 

後ろに手を組み、空に向きながら眼を瞑る男達。

 

ぬえ(何これ、どうすりゃいいの?)

 

一方通行「おい、ぬえ」

 

ぬえ「ん……?」

 

少し遠くから見てる一方通行に話し掛けられ、困ってる事を隠しながら向く。

 

一方通行「ソイツらは覚悟を決めたンだ。だから思いッきし殴れ」

 

ぬえ「…………いや。私やらない」

 

白蓮「なら私がやります☆」

 

「え?」

「はァ?」

 

まさかの白蓮が優しく笑いながら拳を握りながら言う。

 

白蓮「では。歯、食いしばって下さい☆」

 

男2「あ、あの聖様…………」

 

一人の男が何か言おうとするが、白蓮から見て右側の男からただ痛いビンタを白蓮はする。

 

バシッ。バシッ。バシッ。バシンッ!!!!と一人一回、叩かれる。

最後だけ何か力加減がおかしいような気がするが気のせい気のせい。

 

一方通行(最後のヤツだけ泡吹いてンぞ……)

 

男達は皆仲良く気絶。

 

ぬえ「……こいつらどうすんの、聖」

 

倒れてる男達をチラッ、と見て言う。

 

白蓮「私が運びます」

 

一方通行「その必要は無ェよ」

 

いつの間に一方通行はぬえ達の近くに来て、地面を軽く踏む。すると寺の中に吸い込まれるように男達は飛んでいった。

 

一方通行「…さて、と。ぬえ、俺はオマエに話がある」

 

ぬえ「話、ね。そんなの聞くわけないじゃん……。なるほど……二人はグルだったんだ」

 

次こそ何処かへ行こうとするが、また白蓮に腕を掴まれる。

 

一方通行「……オマエ、俺がさっき言ってたこと聞いてたろ」

 

ぬえ「……」

 

一方通行「無言は肯定とみなすぜ。なら、俺がイイてェ事、分かるなァ?」

 

ただ真っ直ぐに一方通行を見るぬえ。眼には敵意などの感情が混ざっていた。

 

一方通行「はァ…………。まァ、俺が言えた事じゃねェが、自分の気持ちばっか打つけて相手の気持ちは無視ってのは少しおかしくねェか?」

 

もう自分が言おうとしてる事、やってる事に一方通行は反吐が出そうだった。

とにかく何故かこの件は無視できず、ため息を吐き、最後までやることを決意する。

 

ぬえ「なら人間の気持ちを受け入れ死ねって言うのか、消えろって言うのか………ッ!!」

 

一方通行「オマエはゼロか百しかねェのかよ。ンな事言わねェよ。少しは人間を理解しようと思えって事だ」

 

ぬえ「…………」

 

一方通行「ねェだろ?人間を理解しようとしたこと」

 

ぬえ「お前はあるのか?人間を理解しようと思ったこと?」

 

一方通行「いいや、全くねェ」

 

きょとんとしながら吐いたその一言に白蓮とぬえは普通に驚いた。

 

一方通行「だからさっきから言ってンだろォ。俺が言えた事じゃねェ、って」

 

とてもつまらなそうに言う一方通行。

 

一方通行「だから俺が言ってることを覚えておきたくねェならそォしろ。だが、オマエのために必死になってるヤツが居るって事だけは覚えとけ」

 

ぬえ「えっ?…………。聖」

 

強く、強く、握られてる自分の腕。それを見た後に自分の腕を掴んでる白蓮の顔を見る。さっきも見た真剣な表情。

 

白蓮「私は、無力です。貴方の孤独も憎しみも何もかも、力になることはできません。だけど話を聞いたりなどは出来ます。だから貴方が抱えてきた事を話して。大丈夫、私達はぬえの事をいつも想ってるわ」

 

ぬえ「……何その顔、笑える」

 

馬鹿にするように話すぬえ。でもその顔は、とても嬉しそうに、楽しそうに、笑っていた。

 

白蓮「全く私は真剣に…」

 

ぬえ「その位分かるよ、顔見れば。………何かこの空気嫌だからどっか行くね……」

 

白蓮の手を振りほどき、空へぬえは飛んでいく。だが、一度振り返る。

 

ぬえ「……」

 

一方通行「……」

 

振り返ったぬえはズボンのポケットに手を突っ込んだまま此方を見る一方通行を見てから、遠くへ飛んでいってった。

一方通行はぬえと目が合ったとき、見間違いかどうかは知らない。けど、微かに純粋な笑みでぬえが笑っていた気がした。

 

一方通行「なァ、白蓮」

 

白蓮「何ですか?」

 

空から白蓮へ視線を変える。

 

一方通行「俺が今日言った事は全て忘れろ」

 

白蓮「何故、ですか?」

 

一方通行「オマエのようなバカはどォせ俺の事"良いヤツ"とでも思っただろ。そォ思われンのがこっちからすると迷惑なンだ」

 

白蓮「何故です?貴方は良い人じゃないですか。今遠出してる人達に紹介したいぐらいです」

 

一方通行「簡単には信用するなって言ってンだ。信用ってのはな、すぐ裏切られンだよ」

 

白蓮「もし、裏切る予定があるのならそんな事言わないと思うのですが?……やはり、貴方はお優しいです。だからあの時、私を助けてくれたんですよね?」

 

優しく微笑みながら話す白蓮に

 

一方通行(………この馬鹿は俺の手に負えねェ)

 

と、口の中で一方通行は言う。

 

一方通行「チッ……白蓮、神が何処に居るか知ってっかァ?」

 

白蓮「神…………ですか」

 

科学の街で生きてきた一方通行は、非科学なもの全てに興味を持っていた。

だから見てみたいのだ。童話や神話などに登場する神を。

っと思ってる一方通行に『鏡を見ろ』と思う者が居ると思う。

 

白蓮「私の知り合いに居ますが、何故神の居場所を?」

 

一方通行「一目でイイから見てみてェ。理由がこれじゃ駄目か?」

 

白蓮「いえ、大丈夫です。貴方は悪い考えで行くわけ無いですからね」

 

「チッ…」と、一方通行は舌打ちをする。

 

白蓮「では教えますね___________________」

 

今いる場所がどの辺にあるのか、神の居場所が何処にあるのか丁寧に教えてもらう。

 

白蓮「___です。が、地図でも書いた方が良いですか?」

 

一方通行「いらねェ。世話になった。じゃあな」

 

白く大きな階段を一段一段下りながら話す。

 

白蓮「いつでもいらしてください。貴方を紹介したい人が居るので」

 

一方通行「ここに用が出来りゃあ嫌でも来るっつの」

 

手を振って見送る白蓮を見ずに、背中に四本の竜巻を生成し空へ飛んで行った。

 

白蓮「…………」

 

響子「おや、あの人行ってしまったんですか?」

 

空を見続けてるといつの間にか響子が近くに居た。

 

白蓮「ええ。一方通行さんは忙しいみたいよ」

 

響子「(アクセラレータ?ああ、あの人の名前か)へぇー、私にはそうは見えませんでしたよ。…………聖様、また来て欲しいですか?」

 

白蓮「そうね。また、お会いしたいわね」////

 

響子「(私もまた会いたいな…。あの人に)そうですか」///

 

 

 

 

二人は一方通行が飛んでいったであろう方向を見ていた。

そしたどちらも微を赤く染めていた。

 

 

 












霊夢「とうとうコーナー名を書かなくなったわねアイツ」

魔理沙「別にどうだっていいだろ?そんな事」

霊夢「ま、私もどうだっていいんだけどね。……って、なに、何も言わず普通に居るのよ。前回これ雑談じゃ無くね?って、コメントで言われたのよ!?」

魔理沙「悪い悪い」

一方通行「どォでもイイ」

霊夢「はぁ~…………。ここのメンバー自由過ぎるわ」

一方通行「オマエが言うかそれ」

魔理沙「一番自由なの霊夢だぜッ☆」


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16話

皆様、遅くなって…………

すいません!!


多分、誤字や脱字があります。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。


命蓮寺から飛んで移動している最中、

 

一方通行「ここはホント自然豊かだなァ。チッ、迷うのはゴメンだから帰り道を確保するため歩いて行くか」

 

高度をだんだん低くし、緩やかに地面に降りていく。

そして華麗に着地した。

が、やはり周りを見渡せば大きな木や雑草などがほぼ無限のように生えて見える。

もしも、空が飛べなくなったらこの森の中を歩く事になるだろう。

だから、迷わないようにするため周りを見ながら警戒して進む。

 

 

すると

 

 

???「グルウァァァァァァァッ!!!」

 

っと、聞いた事もない獣のような咆哮が聞こえる。

一方通行は気になりその場所へと近付く。

 

 

一方通行「………………」

 

 

すぐ近くだったので数分で着いた。

 

……………………のはいいのだけど、目の前の光景に彼は言葉を失う。

 

 

あの一方通行が言葉を失う光景というのは、

 

多分妖怪だろう。

この世のものとは思えない姿をしている生物の頭を鷲掴みしている少女を目撃した。

その少女は片手に日傘を持っていて癖のある緑の髪に真紅の瞳をしていた。

 

???「…………あら?誰、なにか私に用?」

 

その癖のある緑の髪の女性は一方通行の存在に気付いた。

 

一方通行「あー………、何やってンだァ?オマエ」

 

???「暇潰しにこの雑魚妖怪を博麗神社へ投げようとしてるよ」

 

さっき聞こえた咆哮は今、鷲掴みにされてる妖怪のだろう。

 

 

だが、もうその妖怪は無様にぷら~んと伸びていた。

 

 

一方通行「別に他人の邪魔をする趣味はねェが、それ止めろ。博麗神社に居るヤツと俺は知り合いなンでな」

 

???「へー、そう。なら止めるわ。だから______________」

 

突然。

瞬間。

刹那であった。

 

強烈な殺意と共に、

 

ブン!!!っと癖のある緑の髪をした女性は閉じた日傘を大きく振る。

その瞬間、大きな烈風が吹き近場に生えてたものが一斉に吹き飛ぶ。

 

???「___________私の暇潰し相手になってくれる?」

 

一方通行「オマエの邪魔しちまったし、別にイイが本気で来い。じゃねェとなにもできず惨めに死ぬことになるぞ」

 

烈風がこようが、銃弾の嵐がこようが、平気な顔で立っていられる一方通行は、自分に来た風を反射したから無傷。

風を反射しても目の前に居る女性は普通に立っている。

そして、冷たく鋭い瞳で一方通行は睨みながら言う。

 

幽香「私は風見幽香(かざみゆうか)、貴方のご希望どうりに本気でいくわ」

 

掴んでいたモブ妖怪をゴミを捨てるように投げ、名乗ってきた。

 

一方通行「アクセラレータだ。一応(いちお)ォ名乗っとくぜ」

 

幽香「アクセラレータ?フフッ。最近噂の最強さんに出会えるなんて今日はついてるわ」

 

とても嬉しそうに楽しそうに微笑む。

 

幽香「暇潰し相手にどうかと思ってたのよね__________________貴方を!!」

 

一方通行に向かって、その場から動かず日傘で突き刺す。

その動作で衝撃波が発生し、それが目に見えない速度で向かってくる。

が、だからどうした。

そんなものが飛んできても一方通行に届かない。

衝撃波は反射され、幽香の方へと飛んで来る。

 

幽香「面白い能力ね」

 

自分の向かって来た衝撃波を日傘を開き防ぐ。

 

一方通行「俺からするとオマエらの能力の方が面白ェよ」

 

一歩も動かずただ突っ立ってるだけ。

なのに、白い彼から強者の雰囲気を感じる。

 

一方通行「さて、オマエの小ネタも見たし。反撃させて貰うぜェ……」

 

両手をポケットに突っ込んだまま、ゆっくり前のめりになる。そして、一方通行は片足を地面に付けたまま思いっきり蹴る。

すると体は砲弾のように真っ直ぐ幽香のもとへ進む 。

 

一方通行「…………あァ……?」

 

瞬時に近付き、右の拳を強く握って殴る。でも、その攻撃は日傘に防がれる。

 

そして日傘を幽香は閉じて、そのまま一方通行に向かって叩き付ける。

その日傘をまともに受ければ彼の華奢な体はポッキリ折れてしまうだろう。

そう、彼女は不通の日傘ですら凶器に変化させる怪力があるのだ。

だか、一方通行にその攻撃は当たる筈がない。

 

 

白い怪物には『反射』があるのだ。

 

 

 

幽香「…ッ……!?……バリアでも張ってるの?」

 

一方通行にあと、十センチ、とゆう所で日傘が宙で止まる。そして衝撃が返されたように弾かれる。

幽香は一方通行の周りに壁でもあるかのように感じた。

 

一方通行「バリア、ねェ。まァオマエから見たらそォなるか」

 

幽香「……違うのね。でも、それ…これまで、ってゆう限度があるんじゃない?」

 

一方通行「オマエに通じるか分かンねェが。核を撃っても大丈夫、ってゆうキャッチコピーはあるぜ」

 

幽香「…………へー。それは破ってみたくなるわね。そんなキャッチコピーがあるなら………ッ!!」

 

大人びた表情から一変、戦闘を好む者のような表情へ変化する。

一方通行は左手を広げ、そこに風のベクトルを集める。

すると渦巻くような風の球体を完成させ、それをニヤっと笑いながら思いっきり投げる。

 

幽香「……フッ…」

 

一方通行「チッ……」

 

投げたものを幽香は綺麗に避けて、一方通行の方へ走りながら進む。二人の距離はだいたい十五メートルぐらい。

一方通行は幽香が近くに来る事に、少し危機を覚える。

だから地面をドン!!!と、強く踏みつける。

地面は下から突き上げられたように振動する。そして一方通行の足元から中心に亀裂が広がっていき、周りに猛烈な風が空へ登るように吹き荒れる。

 

地面は土。そのため、砂煙が発生。するが一瞬で消える。

幽香が日傘を振るい砂煙を消したのだ。

 

一方通行「ハッ。自分の居場所を教えたのも同然だぜェェ!!」

 

横に移動したのだろうか、さっき走っていたルートと違うような気がした。

でも、一直線に走ってくる事は変わらない。だから、一方通行は片足を上げて踵を落とす。すると、音を立てながら衝撃波が幽香の方へ真っ直ぐ向かってくる。

 

が、それを跳躍して回避する。そして幽香の体は上から一気に一方通行へ近付く。それにはさすがに一方通行は驚く。

 

攻撃する相手の斜め上から、幽香は「元祖マスタースパーク」を日傘の先端から放つ。

 

マスタースパーク。それは幻想郷でも有名な攻撃だ。

触れたら跡形もなく消えそうな極太のレーザー。それが一方通行のすぐ近くで放たれる。

その攻撃は強烈だから、勝利。の、筈が無い。

 

幽香「ッ!?」

 

「元祖マスタースパーク」は反射され、空へと登る。

至近距離で撃つが、その攻撃が幽香の方に、一瞬で襲いかかる。

一秒もかからず自分に向かって反射された、ため。防ぐ事は出来ず、まともに食らう。

 

一方通行「…さっきのはマスタースパーク、か。魔理沙以外にも使えるヤツが居ンだなァ」

 

余裕の表情で突っ立てる最強の能力者。

 

一方通行「……、結構ォ頑丈なヤツだな」

 

空へ舞うように吹っ飛ばされた幽香が落ちてきた。

痛む声など発さず、すぐに倒れた体を起こす。そして服についた砂やホコリを叩いてた。

 

一方通行「オイ、まだ()るかァ?」

 

幽香「………………」

 

日傘はどっかに飛んでいき、手に持っていなかった。

 

幽香の眼は鋭く尖っていた。その尖った眼からはとてつもない殺意を感じる。

 

幽香「……潰す!!」

 

両手を強く握って、そう言い放つ。

 

幽香の両手が光輝く。そして両手を開くと光の球体が。

その光の球体を一方通行へ向けるように両手を伸ばす。

二つの光の球体から極太のレーザーが放たれる。

もしもこの攻撃を命名するなら「元祖ダブルマスタースパーク」

 

周りのあるものを全て吹っ飛ばしながら極太のレーザーが来る。が、一方通行の周りにある、反射する見えない膜に打つかる。

 

一方通行「マスタースパークを二つ同時に撃てンのかァ…………」

 

ジリジリ、とだんだん一方通行に届きそうなレーザーを見ながら少し楽しいそうに言う。

そして一方通行がニヤリ、と笑うと。ピキィィン!!とゆう音が聞こえた気がした。瞬間、極太のレーザーが幽香の方へ反射される。

 

幽香「…ッ……!!……これを!!??」

 

敵に向かって撃ったレーザーが、自分の方へ反射され驚く。

 

二本の極太のレーザー右左に分かれ、自分にギリギリ当たらない程度に反され、幽香は無傷。でも、双方のレーザーは止まらず、飛んでいった方の木などを跡形もなく消した。

そして幽香は力が抜けたように尻餅をつき、何処か冷たい風が吹く。

 

一方通行「………………立てるか?」

 

スタ、スタ、と幽香の側に近付き、見下しながら言う。

 

幽香「なんだ……………結構優しいじゃない。けど大丈夫よ、自分で立てるわ」

 

自力で立ち上がり、幽香はまたホコリなどを叩いて落とす。

 

幽香「最強ってのは伊達でじゃあないわね。ホント、私が戦ってきたなかで一番貴方が強いわ」

 

一方通行「そりゃどォも_______ッ!!!」

 

話してるなか、幽香の後ろに怪しい影が見える。

その影の正体は、さっきまで伸びていたモブ妖怪だ。多分、この二人が戦ってる時に起きた衝撃で眼を覚ましたのだろう。

 

一方通行は幽香の肩をガシッ、っと、掴み自分の方へ引き寄せる。

そして襲い掛かってきたモブ妖怪の攻撃を一方通行は見事反射し、遠く遠くへ吹っ飛ばした。

 

幽香「…………」

 

何が起きたか、数秒してから幽香は解った。

 

幽香「……。助けてくれてありがとう。けど、あんな雑魚にやられるか弱い女に見えた?」

 

助けてくれてありがたいが、悪態を吐く。

 

一方通行「……だったらどォする」

 

幽香「…えっ……?」////

 

両手をポケットに突っ込んだまま、モブ妖怪が吹っ飛んだ方を見ながら一方通行は言った。

 

幽香は思いも寄らない事を言われ、頬を赤く染めて驚く。

 

幽香「…それ、本気で言ってるの?」///

 

顔が熱く、鼓動が速い。けど、一方通行に聞きたいことがあり質問する。

そしてその質問に一方通行は「あァ」とだけ言って答えた。

 

幽香「へぇ…そう……なんだ」///

 

化け物染みた力を見せても、辺り一帯を吹っ飛ばすレーザーを放っても、一方通行にはただの女性にしか見えない。らしい。

その事に幽香は嬉しかった。

自分の力を見るとこの世界の男達は尻尾を丸めて逃げる。そんな弱い男に向ける感情に好意何て無かった。

 

だから、初めてだ。男に好意を持ったのは。

 

一方通行「…あン?……」

 

幽香の方を振り変えってみると、下を向きながら、手をいじっていた。

それを一方通行は、じーっ、と見てると、ある事に気が付く。

 

一方通行「…オマエ……」

 

幽香「ッ……!?」////

 

一方通行「傘どこやった?」

 

幽香「…………」

 

一瞬、ドキッ!としたが。一方通行が気付いたのは日傘を持っていなかった事だ。

 

幽香「…ああ、多分何処かに飛んでったんだと思う」

 

一方通行「チッ……なら、早く探さねェとな」

 

幽香「手伝ってくれるの?」

 

一方通行「吹っ飛ばしたのは俺だ。だから探す……面倒くせェがなァ」

 

本当に本当に、心の底から面倒くさがっていたが、日傘を探す事に一方通行は協力した。

 

一方通行「……早く来いよ、一人じゃあンな小せェモン探せる訳ねェだろ」

 

周り一帯のもんは吹っ飛んで何も無くなっていたが、雑草や木は無限に生えてるように見えた。

 

日傘が吹っ飛んだであろう所へ向かってる最中、一方通行は振り返り幽香に面倒くさそうに言う。

 

幽香「その前に…………」

 

一方通行「?……」

 

幽香は手を軽く振るう。それを一方通行は不思議そうに見る。

 

幽香「これは、木や草達の変わり」

 

戦闘によって木や草が無くなって場所に、幽香は様々な花を咲かせる。

 

一方通行「……これがオマエの能力か」

 

花畑を見ながら言う。

 

幽香「ええ、花を操る能力よ」

 

一方通行「あの馬鹿力はその能力と関係ェねェのか」

 

幽香「関係ない。この能力は戦闘向きではないから使わない(たまあに使うけど……)」

 

一方通行「あっそ。早く傘探しに行くぞォ」

 

幽香「ハイハイ(ま、コイツと一緒に居られるなら、見付からなくて良いけどね)」

 

小走りで一方通行の近くに着き、二人並んで日傘を探しに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事、日傘は見付かり幽香は何処かへ去って行った。

そして一方通行は目的地である守矢神社(もりやじんじゃ)とゆう場所へ、歩いて行った。

 

だんだん景色も変わり、始める。

 

周りを見渡す。すると

 

とても綺麗で立派な神社を発見する。

多分、この神社が目的地だと思い一方通行はそこへ進む。

 

一方通行「………?…」

 

???「………わっ。本当に人が来た」

 

門をくぐり、真っ直ぐな参道を歩く。

すると参道に一人、女性が居た。

その女性は胸の位置まである緑のロングヘアーで、髪の左側を一房髪留めでまとめ、前に垂らしている。

 

一方通行「……ここに神が居るって聞いたンだが、オマエが神か?」

 

何か自分を見て、驚いてたがそんな事を構わず質問する。

 

???「私は神様じゃありません。ですが、ここに神様は居ますよ」

 

一方通行「俺はその神ってのを見てェンだが、イイか?」

 

???「えっ。それは………………」

 

???「この私がお前が見たがっていた神だ」

 

???「一応私も神様よ」

 

緑のロングヘアー女性が困っていると、後ろから急に神を名乗る者が二人登場する。

 

まず最初に言葉を発した者は、髪は青髪。サイドが左右に広がった、非常にボリュームのあるセミロング。瞳は茶色に近い赤眼で背中に、複数の紙垂を取り付けた大きな注連縄を輪にしたものを装着していた。

そしてその横に居る者の髪型は金髪のショートボブ。青と白を基調とした「壺装束」と呼ばれる女性の外出時の格好をしていて、頭には目玉が二つ付いた帽子を被っていた。

 

一方通行「……ほォ」

 

突如、登場した神を名乗る者へ視線を向ける。

 

神奈子「私は、八坂神奈子(やさかかなこ)。そしてこの小さいのが洩矢諏訪子 (もりやすわこ)だ」

 

自分の名を名乗った後、隣にいる諏訪子の帽子の上からポン、と手を乗っけてから諏訪子の名を言う。

 

諏訪子「小さいとか、言わなくても良いと思うんだけど……」

 

不機嫌気味に言う。

 

神奈子「あはは……一言余計だった?」

 

いつもこのような感じ過ごしてる守矢神社の住人。

 

一方通行は視線を後ろに向け、歩き始めた。が

 

神奈子「…!……ちょっと、待ちな!」

 

一方通行「…あァ?」

 

声をかけられ振り返る。

 

神奈子「何か用があって来たんだろ?…何故急に帰る?」

 

一方通行「用は済ンだ…たった今な」

 

早苗「…え?もしかして本当に神様を見に来ただけなんですか?」

 

一方通行「……だからどォした」

 

驚きながら話す早苗に視線を向ける。

 

早苗「本当にそれだけ…なんですか…」

 

神奈子「……まあ、君が用が済んでも私に今、用が出来たから帰す訳にはいかないよ」

 

一方通行「オマエの用なンて知ったこっちゃねェ。帰らせてもらうぜェ」

 

神奈子「自分の事を知りたくないのかい?」

 

一方通行「あァ?」

 

また、帰ろうと歩きだすが神奈子が言うことを気になり足を止め振り返る。

 

一方通行「そりゃどォ言う事だ、オマエは俺の何を知ってる」

 

神奈子「…神を見に来たと言ってたけど、自分も神だと知らないのかい?……いや神と言うか、半人半神か」

 

一方通行「あン?半人半神だと?」

 

神奈子「君は神だ。けど完全ではない。半分人間が残ってる、これは結構珍しい事だよ」

 

一方通行「何故、オマエはそれが分かンだ?」

 

神奈子「なんだろうね。私の特技みたいなもんだよ」

 

一方通行「特技、ねェ。まァ自分が神だと言われて、そンな信じて無かったが今回オマエに言われて確信したわ」

 

少し気になってたのだ。自分が神になった事を。

どうやら紫が言っていたことは真実だったらしい。

 

一方通行「それだけか?用ってヤツは」

 

神奈子「いや、もう一つ君に用があるよ。半分人間と言う事は元は人間とゆう事だ。つまり、神になったばっかりと見た。どうだい?君の力を私に見せてくれないかい?」

 

一方通行「…新神(新人)を確かめようってかァ?……ハッ、いつもなら断ってたが神と()ンなら話は別だ。イイぜ、俺が神を試してやろうじゃねェか!」

 

神奈子「随分、下に見られたもんだ」

 

一方通行「実際、オマエは俺より下だ」

 

神奈子「……二人とも、安全な所まで下がってくれるかい?」

 

諏訪子「良いけど、あんまり荒らさないでよ」

 

早苗「あ!それは私からもお願いします」

 

神奈子「分かってるって」

 

本当は諏訪子も早苗も止めよう思った。けど、その気持ちは吹っ飛んだ。

 

一方通行も神奈子も、戦る気満々だ。

 

神奈子「さあ、初めようか……ッ!!」

 

一方通行「あァ。だが早く終わンなよ?楽しくねェからなァ!!」

 

ガン!!!と、力強く地面を踏みつけ一方通行の足元に地割れができる。そして天高く飛び上がった。

 

神奈子「まさか、空に行くとは。けど、私からするとありがたいね!!」

 

片手を空へ掲げ、自分の能力(ちから)を発動する。

 

一方通行「…さァてと…(あン?風の向きが変わり始めやがった)……」

 

上空1000メートル位で止まっていると、雲の流れる速度が加速し初める。

 

そして次の瞬間。風の向きが一方通行を地面へ叩き落とそうと動きだした。が、それを反射し防ぐ。

 

一方通行「…さっきのがアイツの能力か。だが、まだ何かありそうだな」

 

風の向きを操るだけの能力だと思わなかった。多分、神奈子の能力の核は他にあると考える。

 

一方通行「……、まずは一発、喰らわせてやるか」

 

風の向き。そして重力の向き。その二つの向きを自分の体が地面に落とすように集中させる。すると一方通行の体はとても速いスピードで落ちていく。

 

 

神奈子「…ッ!?……来た……!」

 

日の光が眩しく、手で光を隠して空を見てたらとても速いスピードで此方に落ちてきてる一方通行を発見する。

 

一方通行「…オラァ!いくぜェェ!!」

 

飛び蹴りの体制をとって、一方通行が落ちて来る。

 

神奈子は能力を使用し、風を操作し落ちて来てる一方通行を上空へ戻してやろうとする。でも

 

神奈子「何!?」

 

向けられた風は一瞬で爆ぜる。

 

一方通行「あはぎゃは!!…効かねェンだよ、ンなモンはよォ!」

 

大地を揺らすほどの衝撃で一方通行が落ちてきた。

 

砂煙が出来て神奈子がどうなったか、分からない。

 

一方通行「……、あンなンじゃオマエは倒せねェか」

 

風が吹き、砂煙が消えていく。そして見えたのは無傷の神奈子。

一方通行が落ちてくる瞬間、神奈子はその場から跳躍して回避してた。

一方通行は無傷だった事を何も驚かず、ニヤリと笑いながら話す。

 

神奈子「全く。デタラメな能力だね」

 

一方通行「褒め言葉と受け取っとくぜ」

 

神奈子「…………はあ。さっきみたいな攻撃はもうここではしないでくれ」

 

参道などを見ると荒れに荒れていて、ため息を吐く。

 

一方通行「もォしねェよ。あれはオマエを試してみただけだからなァ」

 

神奈子「ふーん。つまりこれからは本気で戦ると?」

 

一方通行「そォだなァ。少しぐれェは本気で戦ってやるよ」

 

神奈子「それは良いけど。そんなにここを荒らさないでくれよ!!!」

 

天へ片手を向ける。

そして上空で風を鋭く回転させ一本の槍のような物を作り、片手を落とすと同時に一方通行の頭上へ普通の人間がギリギリ見える速度で叩き落とす。

 

一方通行は大気に触れただけでベクトルを操作でき、把握する事ができる。つまり自分、目掛けて来てる物なんてお見通し。

 

上から来てる風の槍を足を少し動かし、運動量のベクトルを操作して後ろに高速移動し回避する。そして

 

一方通行「そンなモン、俺にも出来ンだよ!!」

 

片腕を神奈子へ伸ばす動作をする。そしたら神奈子と全く同じ風の槍を生成し、飛ばす。

 

神奈子「……なら、こうゆうのは出来るかい?」

 

風の槍を躱わす。

神奈子は、一方通行へ片手を大きく開き伸ばす。

 

すると、一方通行の上空に出来たのは黒と白が混ざった雲。

 

 

一方通行「あァ?…オイ、もしかしてオマエの能力は……」

 

違和感を感じ、空を見上げる。そして上の光景を見た後に視線を神奈子に向ける。

 

上空の雲がゴロゴロと鳴る。そして複数の複雑な形をした光る線のような物が一方通行の周りに落ちて来た。

 

神奈子「……雷の味はどうだい?」

 

地面に華麗に着地し、神奈子の攻撃で発生した砂煙の中を微笑みながら見て言う。

 

神奈子が上空に生成した物。それは雷雲だ。

 

さすがに一方通行が死んではないと神奈子は思ってるが、大ダメージを与えたと考える。

 

一方通行「………微妙だ」

 

神奈子「なにッ!?」

 

風が周りの砂煙を跡形も無くすように吹く。

神奈子は目に映る光景に驚愕する。

一方通行はまるでサッカーボールを持ってるかの様に、雷を光の球体にして手のひらから数センチ浮かして持っていた。

 

一方通行「…………っつゥかオマエの能力が分かったわ。オマエの能力。それは天を操る。いや、天を創造する能力だろ」

 

神奈子「…………、百点満点じゃ無いけど正解だ。けど、何で天を操る能力じゃないと思ったんだい?」

 

一方通行「答えは二つだ。まず一つ上空での出来事だ。俺は風の向きが変わったように感じたが、それは違ェ。あの風の向きの変化は無から風が生成され起きた。次に二つ。これで一番確信したンだか、あの雷雲だ。雷は雲の中で起きる静電気であの現象が起きる。が、おかしくねェか?空を見ても雷雲が出来そォとは思えねェし、それにあの雷雲も何もねェ無から突然出現しやがった」

 

雷で出来た光の球体を粒子レベルに分解し跡形もなく消した。

 

神奈子「なるほど、だから天を創造する能力だと……ハハッ、九十点だ。けど教えよう。私の能力は乾を創造する能力だ」

 

一方通行「乾…。八卦における天の事か」

 

神奈子「そうだよ…。でも、良く知ってるね。何で?」

 

一方通行「昔っから覚えるのは得意でな。この世界の知識を半分以上ォ頭に叩き込ンだ」

 

神奈子「……へえ(この世界の知識を覚える。つまり外来人という事か。薄々そうだと思ってたけど、まさかね)」

 

一方通行「さて、お喋りはここまでだ。続きをヤろォぜ」

 

神奈子「私はまだ少しお喋りたかったけどね。例えば君の能力の話、とか」

 

一方通行「俺ァ戦ってる最中に気が付いたンだ。オマエもそォしろ。答えが合ってるかどォか、俺が採点してやるよ」

 

神奈子「…………そうかい。ならそうするよ!!!」

 

一方通行「あァ……………。そォしろォッ!!!」

 

再び、神と神が激突し大地を揺らし空間を震わせる。

時間が経つほど戦いの激しさは増すばかり。

 

 

 

 

 

 

 

一方、早苗と諏訪子は大人しく離れて戦いを見ている。

 

早苗「…………」

 

諏訪子「…驚き過ぎじゃない?早苗」

 

体を震わせながら驚愕する早苗にたまらずツッコむ。

 

早苗「だ、だって相手はただの人間ですよ!?なのに何で神奈子様と互角何ですか!?」

 

諏訪子「互角…ね。鈍くなったわね早苗」

 

早苗「えっ?それはどういう……」

 

見据えた目をしながら諏訪子が言う。そして早苗は諏訪子の言った事に疑問を感じた。

 

諏訪子「互角なんかじゃない。圧倒的に白い子の方が上よ」

 

いつも見せる表情とは全く違う真剣な表情で話す。

 

早苗「そ、そ、そんなの、冗談…ですよね?」

 

諏訪子「冗談を目の前の状況を見て言わないよ……。こんな事言いたくないけど、もし、このまま神奈子が戦い続けたら確実に負ける」

 

早苗「…………何者なんですか、あの人?」

 

驚き過ぎて少し硬直したが、諏訪子へ質問した。

 

諏訪子「分からない。けど、分かる事が一つある。それはあの子の強さは私達とはまるで次元が違う」

 

 

 

 

 

 

両者、一定の距離を離れ警戒していた。

 

神奈子「……はぁ……はぁ……はぁ……」

 

一方通行(チッ……コイツ、重い攻撃は絶対避けやがる……!)

 

激しい戦いを繰り広げてるが、体は綺麗。なのに息が荒い神奈子。そして対する一方通行は呼吸が全然荒くない。

 

神奈子「……やっぱり体を動かさなきゃね。結構私、体鈍ってるわ」

 

もう自分の体力がほとんど無い事を実感し、少し焦り初めた。

 

神奈子「……、そろそろ決着を着けようか!」

 

息を吐き呼吸を整える。

 

一方通行「……そォだな」

 

両者。今、考える最大の攻撃を準備する。

 

神奈子は頭上に無数の御柱を出現させる。

対する一方通行は右の拳にベクトルを集中させる。その瞬間、大気が右拳に吸い込まれてるようだった。

 

そして二人、同時に動き出す。

神奈子は頭上にある御柱を音速とほぼ同レベルの速度で放つ。

その御柱を一方通行は運動量のベクトルを操作し真っ正面から激突する。

勝負は一瞬。

一方通行は御柱から伝わる衝撃を反射して御柱を砕く。そして神奈子の側まで接近すると

 

一方通行「…これで終わりだ!クソったれェェェ!!」

 

神奈子「……ッ……!?……が……っ!!」

 

ベクトルを集中させた右拳で神奈子の腹目掛けて思いっきり殴り掛かる。

一方通行の拳が神に届いた。

拳から伝わる衝撃は物凄い。腹の少し上を殴られた神奈子は呼吸が一瞬止まる。この症状を起こす技をみぞおちと言う。

勿論、一方通行はそれを狙っていた。

 

一方通行「どォやら、俺の拳は神様に届くらしィな」

 

神奈子が吹っ飛ばないように殴っため吹き飛ばなかった。

 

当てた拳をまるで刀を突き刺し力強く抜く侍のように引っ込め、その拳をズボンのポケットに入れる。

そして膝を付き、崩れ落ちた神奈子を冷たい目で見下す。

 

一方通行「まァ……こンなモンか……」

 

そう呟き、背中を向け立ち去る。

 

神奈子「…………あ、甘いよ。本気の勝負では無いとは言え意識ぐらい奪っときな!!!」

 

崩れてた体を立ち上がらせ、右、正面、左、と。三方向に御柱を撃つ。

 

一方通行「……ったく、面倒くせ____ッ!?」

 

神奈子「…何でそこに!?」

 

一方通行は面倒くさそうに振り返る。が、驚く。そして神奈子も驚く。

何故、驚いたのか……理由は一つ。それは

 

早苗「……え?」

 

放たれた御柱の一つの方向に箒を持っている早苗が居た。

 

何故、そこに早苗が居たとのか。

少し、時を遡る。

 

 

 

激しく打つり戦ってる二人を黙って見ている早苗と諏訪子。

 

早苗「………あれは!?」

 

諏訪子「ん?…どうしたの早苗?」

 

目を疑ってしまうほど驚く光景を目にする。それは

 

早苗「…彼処に箒が!」

 

諏訪子「それがどうかしたの?」

 

一般的な反応をした諏訪子に体を震わせるながら早苗は振り向く。

 

早苗「諏訪子様!お願いします。能力を使ってあの箒を取ってくれませんか?」

 

諏訪子「んー、あの二人の邪魔しないように取るのは難しくて無理かな」

 

早苗「そう、ですか……だったら……!」

 

諏訪子「ちょ、え……!早苗!」

 

二人が激突する、近場にある箒の所へ小走りで行く。

 

早苗(あの箒が壊れたら、神社の掃除できなくなっちゃう!だって、あの箒の替えがもう此処には無いから!)

 

と、ゆう事があった。

 

 

 

 

一方通行「チッ…!…クソ……ッ!!」

 

神奈子(…早苗!)

 

気付いたとしても早苗を助ける事が神奈子は無理だと思う。

そう、思ってしまうのは無理もないだろう。

だって、御柱が早苗に当たるまで一瞬の出来事だろう。

 

でも、一方通行は行動する。

背から竜巻を四つ伸ばすかのように生成する。

けど、この竜巻を使用しても早苗が御柱に当たらないようにするのは無理だろう。

だから、移動速度を上げるため竜巻を大きくさせる。そしたら四つだった筈が二つになった。

本当に一瞬。瞬間移動でもしたかのように一瞬で移動し、早苗を片腕で抱き寄せもう片腕を御柱へ向け、誰も居ない所へ反射する。

 

早苗「………、!あ、ありがとございます」

 

一瞬の出来事に驚きボケーっとしてたが、助けられたと気が付き丁寧にお礼を言う。

 

一方通行「………」

 

早苗「?……痛っ!」

 

舌打ちをした後に、早苗を離す。

早苗は少し怒ってそうな表情をしてる一方通行を見てると、一方通行は腕を上げた。そして頭に一回、チョップしてきた。

当然、無警戒の早苗は避けず、当たった。

 

その光景を見ていた神奈子と諏訪子は、表情だけ驚いていた。

 

一方通行「…そンぐれェで済ンだだけでありがたいと思え。で、何であンな所に居たか説明しろ」

 

早苗「……え、っと。この箒を取りに行ったら……」

 

一方通行「はァ?まさかその箒のためだけにあンな所にいたってかァ?」

 

早苗「はい……すいません」

 

箒を強く握りしめながら謝ってる早苗を一方通行は呆れた目で見ていた。

 

一方通行「……はァ、その箒ごときの為に危ェ場所に行くか普通?」

 

早苗「箒ごときじゃないですよ。この箒が無かったらここを掃除出来ないんですよ?もし、掃除もせずに居たらここ来る参拝客が____」

 

一方通行「あァーうるせェうるせェ。ンな事聞きたくねェし聞くつもりもねェ」

 

とても面倒くさそうに言い一方通行は早苗から距離をとった。

 

その時「あ、そォいや」と呟き神奈子の方へ向く、

 

一方通行「意識ぐらい奪っとけ。とか抜かしてたよなァ、オイ」

 

神奈子「ああ。……いや、降参だ。私の負け負け」

 

両手を上げ降参の意を示した神奈子。

 

一方通行「あ?」

 

戦う気、満々だった筈の神奈子か急に降参と言い、少し首を傾げた。

 

一方通行「どォいう事だ、そりゃァ」

 

神奈子「さっきのスピードを見てね、こう思ったんだよ「勝てないな」って。君が手加減してたのは分かっていたが、ああも実力差を見せ付けられたら戦う気が失せるもんだよ」

 

一方通行「そォかい、なら俺は帰って「だが」____あァ?」

 

神奈子「手加減してるとしても女性のお腹を殴るのはどうかと思うよ。もし、子を産めなくなったらどうする?」

 

一方通行「そォだなァ……責任をとる(何かを差し出す的な意味で)」

 

神奈子「えっ!?(結婚的な意味で!?)」////

 

少し考えた結果、一つの答えにたどり着き、それを話す。すると、神奈子は頬を赤く染め少し照れていた。

 

神奈子「………ほ、本気で言ってるのかい?」///

 

一方通行「悪ィが俺は下らねェ嘘は言わねェぞ」

 

神奈子「……、もしも(結婚的な意味で)責任をとった場合、後悔しない?」////

 

一方通行「後悔?ンな事すっかよ」

 

その言葉を聞き、神奈子は頬だけと言わず顔全体が真っ赤になる。

 

一方通行「……まァとりあえず調べとくか」

 

神奈子の所まで歩み、近付く。そして頭へ手を伸ばした。

その時、能力を使い、体の状況を調べる。結果は大丈夫だった。

けど、神奈子は

 

神奈子「~~~~ッ!!」////

 

ダメだった。

 

一方通行「あン?……体温上がってやがる。それに鼓動も速ェ。何か体に異変でも起きたのか?」

 

まだ、頭から手を離してない一方通行は顔を赤くしてる神奈子へ質問する。

しかし、神奈子は質問に答えず。バッと凄い勢いで一方通行から離れた。

 

神奈子(何かさっきから私、おかしいな。何でだろう……)///

 

一方通行に背を向け、神奈子は勝手に一人で考え込んでいた。

 

一方通行「?たいした異常じゃねェ。って言いてェのかそれは」

 

そう言うと神奈子は、コク、と一回顔を立に振る。

 

一方通行「そォかい。なら俺は帰る「待って!」___なァ、そろそろキレそォなンだが……」

 

守矢神社から出ようとするとまた、声をかけられ眉間にしわを寄せ、振り返る。

 

一方通行に声をかけた人物。それは

 

諏訪子「君に試したい事がある」

 

いつの間に諏訪子は一方通行の近場まで来ていた。

一方通行「はァ~、数秒無駄にした。ンな事に付き合ってられっかよ」

 

諏訪子「君の反射を貫ける。とか言ったら付き合ってくれる」

 

一方通行「何?」

 

背を向け歩きだした一方通行へ諏訪子は興味を持つような事を言う。すると、一方通行は立ち止まった。

 

諏訪子「多分、君の能力は反射だけじゃないと思うけど。どんな攻撃も跳ね返す君に攻撃を届かせてみせるよ」

 

一方通行「随分面白ェ事言うじゃねェか。ホラ、やってみろよ」

 

ニヤッと笑いながら諏訪子の方を向き、両手を広げる。

 

諏訪子「ん、やるのは私じゃないよ」

 

一方通行「は?」

 

諏訪子「お願いね、早苗」

 

二人が話してる所から、少し離れた場所。

神奈子が何かおかしいので近くに行き心配そうに見ていると急に自分の名を言われ声を出し、体をビクッとさせ反応する。

 

早苗「何を……ですか?」

 

諏訪子「今からあの子と戦って」

 

指を一方通行へ諏訪子は差し、無茶な事を平気に言う。

 

早苗「えぇ~!?無理ですよ!あの神奈子様でも勝てない人と私、戦ったら確実に死にますって!」

 

諏訪子「大丈夫。…って、それより。見て…白い子の眼を……」

 

言われたとうり早苗はゆっくりと一方通行の眼を見る。

 

結果、見えたのは

 

早苗「……もうダメだ……あの人、完全に戦る気だ……」

 

紅く鋭い瞳の奥にある光。それはまるで獣が獲物を狩る前に見せるものと良く似てた。

 

一方通行は少しだけニヤリとしながら、スタ、スタ、と早苗の方へと歩む。

その時、早苗の中は怖いとゆう感情でいっぱいだった。

あの神奈子を倒した化け物が、とても速いスピードで移動できる化け物が、指先を相手に触れただけで殺せる化け物が、化け物が化け物が化け物が化け物が化け物が…………

 

一方通行「あのガキが自信満々に言ったンだ……だからよォ……少しは楽しませてくれよ……」

 

………少し歩けば手が届く距離まで来た。

 

早苗(何で諏訪子様は私に………。いや、理由はどうあれ、神奈子様の仇を取れるチャンス!だから一回ぐらいは攻撃を当ててやる……!奇跡を起こして!!)

 

一方通行「……あン?」

 

早苗の中にあった恐怖が無くなり、出てきたのは仇を討ってやるという闘志。

 

ビクビクしてた早苗から一変。何処からか幣を取り出し一方通行を真っ直ぐ見て構える。

 

早苗「………、参ります!!」

 

後方に跳躍する。そして空中で星の形をした弾幕を出現させそれを一方通行目掛けて放つ。

 

が、それを全て綺麗に避けられた。

 

早苗(……速い……と、いうよりこの人戦闘慣れしてる……まるで毎日戦ってきたみたい…)

 

一方通行「…まァ、オマエが俺に攻撃を当てる何て無理だと思ってンだけどよォ……さっきの一発で分かっちまったら全然面白くねェ。だから次はもっと工夫しろ!じゃねェと永遠に終わンねェぞ!」

 

手のひらを一方通行は強く地面に打つけ、少しこの場が揺れた。

下を向いてた一方通行が顔を上げる。

 

すると一方通行の周りの地面から土で出来た大きな針のようなものが五つ生えてくる。それを地面を思いっきり踏みつけ上へ飛ばし、一方通行は飛ばした高度と同じ所へ跳躍する。そしてそれを空中で連続で早苗へ蹴っ飛ばす。

 

それを早苗は全力で避ける。が、避けるのに夢中で一方通行を見失ってしまった。

 

早苗「……、一体どこに…?」

 

一方通行「……後ろだ」

 

バッ!!っと慌てて振り向くが、遅かった。

ちょんと少し腰に手を当てられた。それだけなのに早苗は腰から吹っ飛び地面に転がり倒れた。

 

一方通行「はァ……やっぱ大したヤツじゃなかったなァ……あァ?」

 

震えながらも早苗は無理をして立ち上がる。それを見た一方通行は楽しそうに笑う。

 

早苗(……ま、まだ、倒れる訳にはいかない。一回、一回は絶対弾幕を当てて……みせる!!)

 

一方通行「立ち上がった事は褒めてやる。だが、どォすンだァ?こっから」

 

早苗「……こうします!!」

 

先程とは比べられないほど星形の弾幕を出現させ、勢い良く撃つ。

 

一方通行はその弾幕を上空へ移動し回避する。

今、無数の弾幕を避けるので一方通行は精一杯と見た早苗は力一杯幣を握り、空を飛び、一方通行へ突進する。

そして

 

早苗「ここだぁぁぁああああッ!!」

 

弾幕に紛れて一方通行へ幣を振り下ろす。

 

一方通行「ハッ……俺が気付いてねェとでも思ってたのかクソボケェ!」

 

が、それを躱わされて一方通行の容赦のない攻撃が、またくる。

腕を振り下ろすと同時に大気の流れの向きを早苗に向け、地面へ叩きつける。

そして、一ヶ所に風のベクトルをかき集めてそれを殴る。

すると、一つ一つに散り刃と化し、それが早苗へ降り注ぐ。

 

早苗は倒れてる場合ではないと自分に心の中で言い、倒れてる体制で前に飛び、一回し立った状態で着地する。

まだまだ風の刃が降り注ぐ。しかし早苗は避けない。

 

自分の周りの星形の弾幕を出現させる。けど、これは攻撃するために出したのではない、攻撃を防ぐために出したのだ。

星形の弾幕は風の刃を一つも通さず、全て打ち消す。

 

一方通行「チッ、面倒くせェモン張りやがって……ぶっ壊してやる!!」

 

片手に風の向きを集中させる。そして下に居る早苗へ手の平を向け衝撃波を放つと同時に自分は地面へ降りた。瞬間、地面を蹴り早苗に突進する。

 

衝撃波は防がれた、けど、少しでも自分から視線を変えられたらそれだけで十分だ。

早苗は一方通行が自分に向かって突進して来てると気が付いたのは、自分までの距離、後3メートルと言うところだった。

 

多分、弾幕では直接一方通行の攻撃は防げない。だから、アレに頼ろう。

奇跡ってやつに。

早苗は呪文詠唱を始めた。

すると幣にある紙垂に光が集まり巨大化し幣が剣のように変化する。

 

幣を振れば当たる距離まで一方通行が近付く。と、言っても幣が巨大化し当たる距離が伸びただけだ。

 

早苗「はぁぁぁぁぁッ!!」

 

力を込めて巨大化した幣(剣)を振る。

が、一方通行は地面をひと蹴りし突進する勢いを殺さず跳躍して回避。そして幣は普通の常態に戻ってしまう。

もう、後二人の距離は、数十センチだ。

 

一方通行は早苗目掛けて拳を飛ばし、早苗は幣を一方通行に向かって振る。

当たった攻撃は一つ。それは

 

一方通行「…グ……ッ!?」

 

幣で顔面を殴り付けられ右方向に無理やり向かされた。

突進する勢いはまだあったけれど、突然の衝撃を喰らい、早苗を通り過ぎ斜め右方向へ吹き飛び地面へ激突する。

 

早苗「…や、や、やった!やりました!」

 

当たった感触がした早苗は嬉しそうに喜びながら笑っていた。

 

一方通行「……くそ、どォなってやがる!」

 

倒れた体を起こし痛む頬に少し触れる。

 

 

諏訪子「やっぱり、早苗の能力なら君に攻撃は届くらしいね」

 

遠くで見てた諏訪子が口を開く。

 

一方通行「そりゃどォいう事だ。説明しやがれ」

 

また、自分の反射を破られ怒る。が、この怒りは相手にむけてるのではない。自分に向けてるのだ。

 

諏訪子「説明するより早苗の能力を聞いたら分かるよ。早苗、教えてあげな」

 

早苗「私の能力は、奇跡を起こす能力です」

 

一方通行は早苗の能力を知った瞬間、少し眉を潜めた。

けど、笑っていた。楽しそうに。面白そうに。

 

一方通行「……、はっ、面白ェ事聞いてテンションが最っ高に上がっちまったぜェ!!」

 

早苗「……まだ続けると。いいでしょう、またその顔にこの幣を叩き込んでやりますよ!!」

 

両者、身構える。相手を倒すため。勝利を掴むため。

 

 

 

諏訪子「あ~あ、全く早苗ったら……」

 

分かりやすい程、諏訪子は一人で呆れていた。

すると

 

神奈子「…ん、どうしたんだい?諏訪子」

 

先程まで勝手に一人で考え込んでいた神奈子が諏訪子の隣に立つ。

 

諏訪子「ああ神奈子。いや、ほらさっきまでは早苗、自信が無かったんだけど一度攻撃が当たって自信がついちゃったみたい……」

 

神奈子「まあ元々早苗は自信家だからね、しょうがないよ」

 

諏訪子「だけど自信が有りすぎるのはどうかと思うけど……。ま、とりあえずこの勝負は次の攻撃でおわりだね」

 

神奈子「どっちが勝つと思う?」

 

質問された諏訪子は一度、驚いた表情を浮かべる。

そして次にクスッと笑って

 

諏訪子「それは勿論_______」

 

 

 

 

 

一方通行「ぎゃはははッ!!」

 

ドン!!と地面を強く一方通行は踏む。すると、早苗の体が宙に舞う。

 

早苗(地面から物凄い衝撃が……!)

 

気付いたら自分が空へ吹き飛ばされていた。

が、縦に一回転し態勢を整える。

すると、背中に四つの竜巻を伸ばした一方通行が猛スピードで近付いて来るのが見えた。

 

一方通行「ォォォォらァァァ!!」

 

左腕を大きく振り顔面を掴もうとする。が、早苗に上体を反らされ回避されてしまう。しかし、一方通行は左腕を振った勢いで回転して再度、掴もうとした。

結果、

 

早苗「…う、ぐ……ッ!?」

 

顔面をまるでバスケットボールのように掴む。

 

一方通行「オマエ、疲れてそォだから寝かしつけてやるよ。無理やりなァァ!!!」

 

早苗の顔面を掴んだまま、地面に壮絶な速度で真っ逆さまに落ちる。

そして、早苗を地面に埋め込む程強く叩き付けた。

 

一方通行「…奇跡を起こせる。それは凄ェよ褒めてやる。けどなァ、奇跡に頼った戦い方をしてるよォじゃ俺には勝てねェよ。けどオマエ、ヒーローみてェな能力持ってンじゃねェか……」

 

気絶してる早苗に吹く風と共にそんな台詞を吐く。けれど、最後スタスタと歩き背を向けて話していた。

 

諏訪子「やっぱり早苗では勝てなかったか」

 

一方通行「それを知ってて、アイツを出したのかよ」

 

目の前に立って話をする諏訪子へ一方通行は視線を向けて話す。

 

諏訪子「まあね。君の能力の正体は分からなかったけど早苗の持つ能力。奇跡を起こす能力で一発ぐらい攻撃は当たるかな~…って、思って早苗を出したの」

 

一方通行「あっそ。まァ俺は帰るぜェ」

 

諏訪子「ダメ、早苗を運んでから。と、ゆうか暗いなか帰るのは危険だよ?」

 

そう言われ周りを見た後、一方通行は空を見上げる。すると、すっかり夕日が沈む時間だと気付く。

 

一方通行「だとしたら、どォしろってンだよ……」

 

ともかく、早苗を抱きかかえ神社へ運ぶ。

運んでる最中、隣には諏訪子が居た。

 

諏訪子「!……だったら一晩泊まってく?」

 

どうするか考えてると諏訪子がひらめく。

 

一方通行「は?」

 

諏訪子「神奈子!今日この子泊まるよ、良い?」

 

神奈子「えっ!……別に構わないけど」

神社の階段に座る神奈子に急に話しかける。

 

一方通行「オイ、ちょっと待て。勝手に話進めンじゃねェ」

 

諏訪子「まあまあ。入って入って」

 

神社の中に入り、手招きしていた。

 

一方通行はチッと舌打ちをし早苗を抱えたまま神社の中へと入って行った。




にしても今回一方さん三連戦か。

ま、まだまだ戦ってもらうからこんなんでバテたら困るんですけどね。

はぁ………………。
ともかくこの物語をもっとガンガン進めたい!!

けど、現実(リアル)が忙しくなったので書く時間がそんな無く………………書けん!!

ですから投稿ペースがもっと遅れるかもしれません。
それでも良いよという方は今後ともよろしくお願いします。


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17話

多分、誤字や脱字があると思います。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。



守矢神社に入って、まず見えたものは綺麗に敷かれた畳。

そして、和太鼓が一つ端に置いてあった。

けど、これだけではない。

奥に綺麗な円形の鏡の周りに幣などが飾られていた。

多分、これは神を祀るための物だと考えられる。

 

一方通行「で、コイツは何処に置けばいいンだァ?」

 

早苗を抱えてる一方通行は諏訪子に質問する。

すると

 

諏訪子「隣に家があるからついてきて」

 

諏訪子に案内されるまま早苗を抱えた一方通行は神奈子と共に隣の建物に行くための太鼓橋を渡りその建物の中へと入る。

内装はやっぱりこの幻想郷に似合う和風の造りをしていた。

案内された場所はリビング。

一方通行は気を失っている早苗を床にそっと置く。

すると、諏訪子が早苗へ薄い毛布をかけてあげた。

 

諏訪子「じゃあ私は皆が荒らしちゃった地面を直して来るね」

 

一方通行「オマエそンな事出来ンのか?」

 

そしてそして。

神奈子は縁側に座り、一方通行は壁に寄りかかって座る。

皆一息ついた。

が、諏訪子は座らず腰に手を置いて立っていた。

 

諏訪子「出来るよ。私の能力、坤を創造する能力でね」

 

一方通行「坤。八卦における地の事だな」

 

諏訪子「うん、そうだよ」

 

神奈子の能力は乾を創造する能力。

そして諏訪子の能力は坤を創造する能力だ。

二人の能力はまったく真逆。

だけど、力を合わせれば軽く星の一つや二つ作る事が可能。

 

 

全く、幻想郷に居る者達は恐ろしい能力を持っているものだ。

 

 

諏訪子「じゃ、行ってくるねー」

 

手を降ってからこの部屋を出て行った。

 

 

 

早苗「………ん~………ッ、あれ?ここは……?」

 

 

 

眼を瞑ったまま、体を起こし腕を上へ伸ばす。

そしてゆっくりと眼を開けると見慣れた風景が、

 

神奈子「おや、目が覚めたかい?早苗」

 

早苗「神奈子様!それに……」

 

一方通行「………あン?」

 

チラッと壁に座る一方通行へ視線を早苗は向ける。

 

一方通行「何だ、居ちゃ悪いってか?」

 

早苗「いえ……そんな事は……」

 

神奈子「家の子を苛めないでくれよ」

 

一方通行「ンなクソったれなことすっかよ」

 

早苗は神奈子の側に移動し座る。

 

神奈子「まあ、ともかく。早苗。凄いじゃないか、私は一回も攻撃を当てられ無かったのに攻撃を当てて」

 

早苗「ッ、ありがとうございます」

 

ニッと笑いながら神奈子は早苗の頭を撫でる。

その時、早苗はまるで親に褒められた子供のようだった。

 

神奈子「ねえ、今聞くのも変なんだけどさ。名は何ていうだい?」

 

一方通行「アクセラレータ」

 

早苗「その名はもしかして………………、最近来た外来人の名前ですよ神奈子様」

 

神奈子「へえ………。君が霊夢や魔理沙が言ってたヤツか。あ、そう言えばこの子を紹介して無かったね。この子は東風谷早苗(こちやさなえ)。そして、人間であり神でもある子よ」

 

ポンと頭に手を置き早苗を紹介する。

 

一方通行「ン?オイ待て、ソイツ神なのか?」

 

神奈子「そうだよ」

 

一方通行「じゃあ何で神じゃねェ何て抜かしやがったンだよ、オマエ」

 

早苗「えっ、それはー……………、どちらかと言ったら。みたいな感じです」

 

一方通行「そォかよ。だったらもォ少し力ァ加えても良かったな」

 

早苗「いやいやあれでも結構力強過ぎるぐらいですよ?まあ私、普通の人間よりは体頑丈ですけど……、でも顔を掴んで地面に叩き付けるなんて………………」

 

一方通行「本当は宇宙空間まで吹っ飛ばしてやろォと思ってたンだか。そっちの方がお望みだったか?」

 

神奈子「なあ、加減って意味知ってるかい?」

 

一方通行は斜め下を向き、チッと舌打ちをした。

その後、諏訪子が神社の表の地面を完全に直して帰って来た。

が、

 

早苗「あれ?諏訪子様……トレードマークのケロ帽子が……」

 

諏訪子「ん?………あれっ…無い!?」

 

早苗が頭を指差し驚いて居るので探るように頭を触る。

すると、季節変わろうがずっと被っていた帽子が無いことに気付く。

 

諏訪子「ちょっと探しに_____________」

 

「_______待ちな諏訪子!!」

 

諏訪子「_________なに?」

 

ダッ!!と、急いで外へ出ようとする。

たが、声を上げて神奈子が呼び止める。

 

神奈子「もう外は暗い。だから明日皆で探そう。ね?」

 

諏訪子「………………分かった」

 

表情は暗かったが了承してくれた。

あの帽子は大事なものだし愛着もある。

はっきり言って"宝物"呼べるぐらいだ。

 

 

 

皆で机を囲みご飯を食べ、一人一人別に風呂に入った。

リビングで話をしていたが、早苗と諏訪子は眠くなり寝室に行った。

つまりリビングに残っているのは神奈子と一方通行。

 

神奈子「まだ寝ないのかい?」

 

一方通行「………まァな」

 

そう言うと急に立ち上がり始めた。

 

神奈子「どこに行くんだい?」

 

質問されると一方通行は「どっか」とだけ言って去ってしまった。

が、意味を悟った神奈子は眼を瞑って微笑んでいた。

 

 

神奈子(ふふっ。結構優しい所あるじゃないか、最強)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「さァてと………………」

 

今、一方通行が何処に居るかと言うと外

もっと詳しく言うと守矢神社の参道だ。

 

一方通行は手を開き前に出す。

そして空気を圧縮して高電離気体を作る。

サイズは手のひらぐらいだ。

 

それを、地を照らす光として利用する。

 

もう分かるだろう。

一方通行がやろうとしてる事は、

 

そう、諏訪子を帽子を探そうとしてるのだ。

 

一方通行(チッ……、くっだらねェ)

 

と、口の中で言うが一方通行は帽子が見付かるまで探していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝。

ちゃんと部屋着に着替えて諏訪子、神奈子、早苗はそれぞれの部屋で寝ていた。

 

諏訪子「………ッ、んー。アレ?帽子がある!」

 

眼を覚ますと体の上に帽子が。

それを、両手で持つ。

 

諏訪子「でも…………、何で?」

 

首を傾げて考える。

けど、答えなど見つからなかった。

だがまあ、とりあえず寝間着から普段着ている服に着替え顔を洗うため洗面台に行く。

そしてリビングに行くと皆昨日と同じ場所に座っていた。

今日は一番遅く目覚めたらしい。

 

そして諏訪子は座り机に手を置いて、

 

諏訪子「……おはよう」

 

早苗「おはようございます諏訪子様。あっ!帽子あったんですね!」

 

諏訪子「うん。何か体の上に置いてあった」

 

その言葉を聞いた神奈子はニヤニヤして一方通行を見る。

 

それに気が付き諏訪子は

 

諏訪子「?なに急にニヤついてんの」

 

神奈子「なんでもないよっ☆」

 

と言いながらまだニヤニヤしてたので諏訪子は不思議そうに眉をひそめた。

 

早苗「さて、皆様揃ったということで朝食持ってきますね。………………ん?一方通行さん大丈夫ですか?」

 

一方通行「あァ?何がだよ」

 

早苗「いえ、疲れてそうだったので……」

 

目付きが鋭い一方通行が更に目付きが鋭くなっていた。

が、早苗は一方通行の顔を見て疲れてそうと感じる。

 

けど、とりあえず朝食を持ってこよう。と思い部屋を出ていく。

 

一方通行「なァ、もォ少し厄介になってもイイか?」

 

神奈子「別に構わないよ」

 

諏訪子「私も」

 

二人の言葉を聞くと力が抜けたように寝っ転がる。

そして、数秒すると寝息が聞こえた。

 

諏訪子「寝ちゃった……」

 

神奈子「ねえ諏訪子。一方通行が起きたらちゃんと礼をゆうんだよ」

 

諏訪子「何で?…………。ッ!?まさか……ッ!?」

 

何故、帽子があったのか。何故、一方通行が疲れてたのか。意味が分かった。

 

神奈子「そのまさかだよ」

 

諏訪子はゆっくりと寝ている一方通行へ視線を向ける。

すると、相当疲れてたのだろうか。

爆睡、とゆう言葉が似合う程、寝ていた。

でもそんなのどうでもいい。

あるものに眼を奪われ、それしか見えなくなる。

凶悪な表情をしてる一方通行の睨んだだけで殺せそうな一方通行の………

いつも見せない素直な表情をした寝顔。

 

神奈子(おや、これはひょっとして私はお邪魔かな?………………それにしても、一方通行。彼は随分罪なお人だな。いや罪な神様かな?)

 

そう心の中で呟き口元を緩めて笑って立ち上がり、リビングを後にしてこの場の空間を二人だけにした。

 

そして。

 

諏訪子はそっと一方通行の側に近寄る。

そして彼の真っ白な頭へ手を伸ばす。

すると驚愕する。

それはそうだろう。

 

ダメージゼロの髪を触る何て滅多に無いことにだから。

 

諏訪子「……えっと、帽子探してくれてありがとう。それと、お休み」////

 

頬を赤く染め、微笑む。

優しく頭を撫で礼を言うと、諏訪子は部屋から去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「……ッ……アイツらはどっかに行ったみてェだなァ……」

 

むくりと、体を起こし細い眼をゆっくりと開ける。

もう、朝食は済んだんだろうか。諏訪子、神奈子、早苗の姿が見えない。

が、どうでもイイ。

ともかく休めた事だし、この場所には用は無い。

外へ出よう思い立ち上がろうとするが

 

一方通行「…あン?こりゃ毛布か……」

 

誰かがかけてくれたのだろうか。

優しい匂いがする薄い毛布が自分にかけられてた事に気が付く。

 

一方通行「……ったく、この世界の奴らは……ッ !?」

 

フッ、と鼻を鳴らす。

しかし、一方通行は自分に毛布をかけられてた事に驚愕する。

それは何故か

 

一方通行(俺は24時間フル反射に設定してる。寝てようが反射は機能してる筈だ。なのに………………)

 

受け入れてるベクトルはある。

例えば、光、酸素、などなど………………、

生活に欠かせないものは反射外である。

だけど、毛布はどうだ

一般的には生活に必要だが寒さも感じない一方通行にとってはそんなに必要ない。それに毛布は凶器に変えられる事も出来るので反射してると思う。

 

一方通行(チッ……無意識に反射を解除しちまう何てな、気ィ抜きすぎだクソったれ)

 

自分に向かって吐く。

そして、反射を解除してたので、設定し直し反射をまた張る。

今度こそ立ち上がり、今居る部屋から出る。

すると、神社の方から話し声が聞こえてくる。

多分、あの三人が居るのだろう。

一方通行は太鼓橋を渡り、守矢神社の中へ入る。

 

神奈子「おはよう。っと言っても今は昼だけどね」

 

早苗「疲れは取れました?」

 

諏訪子「………」

 

三人は畳に座っていた。

けど、何故か諏訪子の様子が変だった。

 

一方通行「…悪ィな朝にはここを出て行こうと思ってたンだが、お陰で疲れは取れた」

 

首の間接をパキッ、と鳴らす。

 

一方通行「……そォいや緑頭。オマエ、俺と最初に会ったとき『本当に来た』って言ったよな?俺が来る事誰かに知らされてたのかァ?」

 

早苗「確かに緑頭ですけど。名は早苗です!!ええと、それはですね……」

 

神奈子「私が説明しよう。が、その前に座ったら?」

 

一方通行は壁に座った。

 

神奈子「私の特技なようなもの。それは相手の力を感じる事が出来るんだよ、あ、そう言えば確か諏訪子も出来るな。まあとりあえず説明に戻すとだね、一方通行が来る数分前に私と諏訪子は君の力を感じた。そして早苗に見に行ってもらった。すると__________」

 

一方通行「____________俺が居たと。成る程な、そォいうカラクリだったのか」

 

神奈子「そういうこと、他に気になった事はない?」

 

一方通行「じゃあもォ一つ。そのチビガキの様子おかしくねェか?」

 

諏訪子へ指を差して話す。

一方通行の言うとうり諏訪子の様子は変だった。

帽子を深く被り、顔を隠している。

そして、落ち着きの無い手。

 

本当に何時もの諏訪子とは様子が変だ。

だが

 

神奈子「今は、ちょっと……ね?」

 

一方通行「?………まァ、何かの病気じゃなさそォだしほっとくか。さァてと」

 

スッ、立ち上がる。

 

一方通行「これ以上厄介になる訳にもいかねェし、早く出るとするか」

 

神奈子「気にしなくてもいいのに。っと、言っても無駄か。分かった。なら、見おくりぐらいしてもいい?」

 

一方通行「好きにしろ」

 

神奈子「ほら、行くよ諏訪子」

 

諏訪子「…んー」

 

手を掴み無理やり外へ諏訪子を移動する。

 

 

今、一方通行は守矢神社の鳥居の下を居た。

 

神奈子「さて、また用があったら何時でも来な。歓迎するよ」

 

一方通行「あァ。オマエの歓迎が面倒な事じゃねェと祈って来るとするぜ」

 

神奈子は一方通行の言葉を聞くと「ハハハハッ!」っと楽しそうに笑った。

 

一方通行「じゃあ、あばよ」

 

ポケットに手を突っ込み歩きだした。

三人は一方通行の背中を見送る。が、

 

諏訪子「待って!!」

 

一方通行「あァ?」

 

鳥居をくぐった一方通行に向かって走りだした。

そして諏訪子は両手でギュッと一方通行の手を掴む。

急に走りだしたせいなのか息が荒く頬が赤く染まっている。

 

一方通行「…チッ、何か用かよクソガキ」

 

反射を急いで解いて良かったと、心の中で思いながら諏訪子へ視線を向ける。

 

諏訪子「……あ………ありがとう!帽子を探してくれて!」

 

やっと言えた。

寝ている時に言えたが、何故か起きている一方通行に言えなく言葉が出なかった。だが、今、この瞬間。勇気を振り絞り口を開き感謝を言う。

 

一方通行「……、次は無くすなよ」

 

帽子の上から優しく頭を撫でた。

その瞬間、諏訪子は鼓動が速くなったのを感じた。

顔が熱くなり赤くなる。それを両手で隠すようにした。

 

一方通行は片手が解放されたので歩きだした。そして、地面を蹴って跳躍し何処かへ飛んで行った。

 

一方通行の姿が見えなくなると早苗と神奈子は神社の中へ行こうと思い歩く。

 

神奈子「……ほら、いつまでそこに居るつもり?早く中に入るよ」

 

まだ、移動しない諏訪子へ言葉をかける。

タッ、タッ、と諏訪子は建物の中へ移動してる二人に並んだ。

 

早苗「にしてもあの人が霊夢さんや魔理沙さんが話してた一方通行さんか……。あの二人が言うとうり目付き悪かったですね、諏訪子様神奈子様」

 

神奈子「ああ、そうだね」

 

諏訪子「ねえ……神奈子」

 

普段のテンションで話す早苗とは反対に、諏訪子は真剣な表情で

 

諏訪子「いいの?私達の考えを皆に伝えなくて…………」

 

神奈子「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行が守矢神社に着く、数分前の事である。

神奈子、諏訪子、早苗は神社内に居た。

三人が楽しく話してる最中

 

神奈子、諏訪子「「………ッ!!??」」

 

早苗以外の二人は自分達とは次元の違う力を持つ者がだんだん近付いて来てる事に気付く。

その瞬間、冷や汗をかくほど驚愕した。

 

神奈子「早苗。少し表に出て来てくれない?お客さんが来るかも知れないから」

 

早苗は神奈子に言われた後、返事しすぐ表に行った。

 

諏訪子「こんな強い力を持ってるなんて。何者だと思う?」

 

神奈子「分からない。ただ私達の敵では無いことを祈るしか無いね」

 

諏訪子「そうだね。こんな凄まじい闇の力を持つ者が敵だったら流石に勝てる気しないからね」

 

二人が感じた力は光と言うよりかは闇。

でも、全て闇という訳ではない。

光と呼ぶべき力もちゃんと持っていると分かる。

 

 

だが、その光の力の奥にある闇に二人は恐怖を覚えた。

 

 

そして、だった。

 

 

諏訪子「来た……ようだね。ここに」

 

神奈子「そうみたいだね。さて、じゃあ会いに行くとするか」

 

諏訪子「…………うん」

 

はっきり言って行きたく無い諏訪子。

怖いんだ、今まで会ったことの無いような力を持つ者を。

 

それを、察した神奈子は

 

神奈子「大丈夫だよ。どうやらまだ相手は完璧に力を使える訳じゃ無さそうだよ。もし、本当に危険だったら今のうちに消しとけば良いだけだろ?」

 

諏訪子「うん、分かった」

 

その後、二人は一方通行の前に姿を現す。

すると、更に二人は驚愕する。

やはり遠くから感じるより近くで感じた方が分かる。

目の前に居る白い化け物から放たれる溢れんばかりの膨大な力。

そして、その奥から見つめる闇が。

この時諏訪子と神奈子は思った「こいつは危険」だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諏訪子「もしもあの黒い力をあの子が使ったら……」

 

神奈子「それはないだろう……。だってそんな事をするようなやつに私は見えなかったからね。そうだろ?諏訪子」

 

諏訪子「うん、そうだね。あんな優しい一方通行がするわけないよね……」////

 

二人は思い出すあの一方通行の事を。

すると、やはり顔が熱くなり鼓動が速くなる。

もしかしたらすると、これが

 

早苗(……、あの御二人がまるで恋する乙女の表情をするなんて……も、もしかして!!)

 

神奈子と諏訪子が一方通行に特別な感情を(いだ)いてる事に気付いた早苗は口を開き驚く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

守矢神社から飛び立った一方通行は今、林の中を歩いていた。

が、歩いてる事、数分。何か不思議な物を発見する。

それは

 

一方通行「……!………こいつは……!?」

 

道に落ちていた黒い球体を拾う。だが、これは何か見覚えがある。

 

一方通行「暴走者をぶっ倒したら出るやつにそっくり……っつゥか出て来た黒い玉じゃねェか、これ」

 

暴走者を倒すごとに出て来た黒い玉。

謎の物体を拾った。

しかし、喜ぶ事は出来ない。むしろ腹が立つ。

アレイスター=クロウリー。っとゆうヤツを思い出すから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷の何処かにある屋敷。そこに紫と藍が居た。

 

紫「……さてと、彼も動き出しそうだし。私も動くとするわ」

 

藍「?……紫様?」

 

リビングで、寛いでた紫が急に立ち上がりニヤリと笑った。

それを不思議そうに見つめる藍。

そして、紫は背にスキマを作り

 

紫「少しの間留守にするからよろしくね」

 

姿を消した。

何処に行ったのか分からない藍はただただ一人で考えていたが、家を任せる。と、言われたので全力で警備すると、心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「一方通行。貴方と持ってる物に用があるわ」

 

一方通行「………あァ?」

 

いつもどうり突然姿を現す紫。

もうそれに一方通行は慣れていた。

紫は一方通行が握り締めてる物に指を差しながら話す。

 

一方通行「…紫か…で、用と来たか」

 

紫「ええ、その黒い玉を調べるから。手伝ってほしいの……どう?」

 

宙にあるスキマに座りながら紫は話す。しかし、家から急に出てきたので靴は履いてなかった。

だから、手元にもう一つのスキマを生成し靴といつも持っている日傘を取り出す。

そして、靴を履き地面に降り日傘を差す。

 

一方通行「あの野郎が絡ンでンなら協力してやる。が、これを調べるか。どっかあてはあンのかよ」

 

紫「ある。貴方が会って来た子達のなかにね」

 

一方通行「俺が会ってきたヤツらのなかにィ?……ソイツは一体……」

 

紫「その子が協力してくれるか分からないけど、一方通行が居れば協力してくれるでしょ」

 

そう言って紫は一方通行に近付く。そしてスキマを目の前作り

 

紫「さあ、行くわよ……入って」

 

一方通行「……チッ、家探しはもォ少し遅くなるなァこりゃ」

 

紫がスキマに入る。それを追うようにスキマ入ろうとした瞬間、一方通行は小さい声で呟き黒い玉をポケットにしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「あァ?……何だァここ?」

 

スキマを通った先に見えた景色。それはこの幻想郷に似合わないものだった。

様々な機械が並べられた凄く広い部屋。床は畳などではなく硬い鉄の床。それと壁も鉄だった。

その部屋の中心に一方通行と紫は居た。が、奥から足音が聞こえる。

その方向に視線を向けると

 

にとり「…あれ?盟友……何でここに……」

 

一方通行「にとり……オイ、紫。協力者ってにとりの事かァ?」

 

にとり「紫?……!もしかして八雲紫!?」

 

一方通行が視線を隣に向ける。と同時ににとりも向ける。

すると見えた人物は、この幻想郷で凄く有名な妖怪。

八雲紫の姿が。

 

紫「突然で悪いけど貴方の力を借りたいの……いいかしら?」

 

カン!!と日傘を閉じ傘の先端を鉄の床に打つける。

 

にとり「……い……嫌だ。って、言ったら?」

 

冷や汗を流しながらにとりは断る。

その言葉を聞くと紫は首を少し傾げ眼を閉じ、息を鼻から吐いた。

 

紫「……しょうがないわね、一方通行。ちょっと耳を貸しなさい」

 

一方通行「?……あンだよ」

 

紫が手招きして話す。

そして、一方通行が耳を紫へ差し出すとゴニョゴニョ、っと小声で話してきた。

 

紫「___________って。あの河童に言いなさい。分かった?」

 

一方通行「訳分かンねェが、言えばイインだろォ?」

 

そっと紫は顔を離す。

一方通行は紫に話された事を完璧に覚えた。

そしてにとりへ向き

 

一方通行「にとり…これはオマエにしか頼めねェ。だから頼む。俺はオマエが必要なンだ(こンなンで、オーケーっつゥわけ………)」

 

真剣な表情で一方通行は話す。

それを聞いてたにとりは、ボッ!と一瞬で顔が赤くなる。

そして、手をモジモジさせながら

 

にとり「わ…分かったよ……盟友」////

 

一方通行「………(マジか……)」

 

紫「じゃあ協力してくれるって事?」

 

にとり「……うん」///

 

顔を赤くし少し嬉しそうな、にとり。

それを見ても分からない一方通行はやはり鈍感中の鈍感。

とりあえず、協力してくれるので自分達がやろうとしてる事を説明するためとりあえずポケットに入れた黒い玉をにとりに渡す。

 

にとり「……これは?」

 

一方通行「もしかしたら、オマエらを暴走させた元凶」

 

紫「もしかしたらじゃないわ。それが幻想郷を完全崩壊しかけた物よ」

 

そう言われると、にとりは手に持っている黒い玉を見て体の底から震える。

 

紫「…だからね、それを調べて欲しいの。多分、それは機械よ」

 

にとり「…わ…分かった…」

 

背中に背負ってるデカイリュックから取り出したのは近未来の装飾をされた両手で持てる四角い箱。

その箱の横にあるボタンを押すとプシューっと上が煙を吹いて開く。

そして、その中に黒い玉をそーっと入れる。

時間はそんな掛からなかった。

ピピッ、と箱が鳴ると正面にある液晶画面に解析結果が表れる。

 

一方通行「……っつゥかよォ、にとり。オマエが持ってるモンは何だ?」

 

にとり「私が作った解析装置。……なになに、え……っ?」

 

顔を液晶画面に近付け見る。しかし、画面に表示された結果を見て驚愕する。

 

紫「……何か分かった?」

 

にとり「う、うん。分かったよ……あの黒い玉が壊れてるって……」

 

一方通行「はァ?」紫「え?」

 

黒い玉の解析結果で分かった事。それは壊れてるとゆう事。

それを伝えたれた一方通行と紫は思わず声を洩らす。

 

一方通行「…っつゥことはよォ……、詰ンだって事か」

 

紫「……直せないの?」

 

にとり「んー……部品はどう作られてるか分からないから私が直すのは無理だけど、破損してる所の代えのパーツがあれば直すのは可能だよ」

 

紫「今から黒い玉を探す装置を作るのは可能?」

 

にとり「そんなのを作るのは朝飯前だよ」

 

奥にある鉄の自動ドアの部屋へ走りだし、入る。

今から紫から頼まれた物を作るのだ。

数分後、部屋からにとりが出てくる。が、手には何も持ってはいないように見えた。

 

紫「……作れた?」

 

にとり「うん……これ!」

 

二人の前に握られた手を出し開く。すると手のひらにあったのは腕時計の形の黒い玉発見装置。

 

一方通行「こりゃ、腕時計みてェだな……」

 

紫「……とりあえず一方通行。着けて」

 

一方通行「あァ?……何でだよ…」

 

紫「私はこの河童と作る物があるからここを離れる訳にはいかないのよ。だから、それで黒い玉を探しに行くのは貴方に任せるわ」

 

一方通行「…チッ…分かった、分かりましたよォ…俺がやりァいいンだろォ……ったく」

 

ふて腐りながらも一方通行は了承し、腕時計型の発見装置を腕に巻く。

ピピピッ、と腕に巻いた装置の画面をいじる。するとこの幻想郷の地図が表示された。そして小さく黒い玉のマークが七つ表示される。

 

一方通行「あれ以外無ェと思ってたが、案外まだ有るみてェだな……」

 

にとり「操作方法教えてないのによく分かったね。さすが盟友!」

 

眼を輝がさせながら両手を握り胸の前に出していた、にとり。

 

一方通行「…こォゆうのは結構、俺は得意なンでな。っつゥか凄ェのはにとりだろ、たった数分でこンなの作りやがって……あの科学者(クソヤロウ)どもじゃ出来ねェ芸当だ」

 

そっと手をにとりへ伸ばす。そして頭を優しく撫でる。

これは一方通行にとって感謝の気持ちを伝える行為だった。

にとりは嬉しそうに笑う。これ以上、上がない程に。

 

紫「……そうゆうのは他でやってくれる?私、居るんだけど」

 

一方通行「あン?何がだよ…」

 

紫「……貴方、いつか痛い目合うわよ」

 

呆れながら言われるが一方通行は全く紫が言ってる意味が分からなく考え込む。が、直ぐ考えるのを止める。

今はつまらない事を考えるより、黒い玉を探す事が先。

そう考え腕時計型の発見装置をいじり

 

一方通行「一番近ェのはここか……あ?移動してやがるぞ……」

 

紫「それは不味いわね……」

 

ポン、っと手を一方通行の肩に置く。しかしその事に一方通行は眉を顰める。

 

一方通行「オイ……今俺は反射を解いてねェ。なのに何でオマエは俺に触れられンだァ?」

 

眼を鋭く尖らせ強く睨む。しかし紫は口元を美しい扇子で隠し笑う。

 

紫「そう言えば、言ってなかったわね。私の能力は境界を操る能力……それが私の能力よ」

 

一方通行は表情に出さなかったが紫の能力知り驚愕した。が、それと同時に心の奥底で笑う。

 

一方通行「境界を操る…ねェ。随分と反則染みた能力を持ってンじゃねェか」

 

紫「あら?貴方が言えた事かしら?」

 

一方通行「チッ……、オマエは俺の周りの空間にスキマを開け、俺の反射を無効化してンだろ」

 

紫「正解よ……さすがね、一方通行…」

 

一方通行「クソったれ……、ここから黒い玉に一番近ェ所に空間を繋げやがれ」

 

紫「ハイハイ」

 

手を空間へ向けると空間が裂け目的の場所へと繋がる。

紫が作ったスキマへ一方通行はポケットに手を突っ込んで無表情で入って行ったが。姿が消える直前、紫は真っ赤な瞳に睨まれた気がした。

 

紫「……さてと河童さん。貴方に今から私と一緒に作って欲しい物が有るのよ……四つも」

 

怪しく微笑みながら紫は設計図と見られるものをにとりに手渡す。

 

にとり「……これは……ッ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行がスキマを通り着いた場所は、幻想郷と言われるだけの幻想的な森の何処かだ。

とりあえず、腕時計型の発見装置を見る。

すると、だんだん自分に近付いて来るのが分かる。

っつゥかよォ、自分のマークがガキの書いた河童みてェなマークなンだが……

と、腕時計型の発見装置の画面に移る自分のマークを見て心の中で呟く。

そんな事を思っていると、腕時計型の発見装置が響く音を鳴らす。

 

一方通行「チッ……うるせェな_____あァ?」

 

あまりにも五月蝿いのでイラつくが、チラッと見え人影を見てそんな気持ちが吹っ飛ぶ。

見えた人物は少女。

夜目では薄紫色がかって見えるピンク色のロングヘアに、同じ色の瞳と睫毛。

服装は青のチェック柄の上着に長いバルーンスカート。上着には胸元に桃色のリボン、前面に赤の星、黄の丸、緑の三角、紫のバツのボタンが付いている。

そして、その少女が手の平でコロコロと転がしてるのが今自分が探してる黒い玉だった。

一方通行は直ぐに行動する。まず、腕時計型の場合装置が五月蝿いので画面をいじり音を止める。

面を頭からずらして着用している少女に近付き、その少女の目の前に姿を現す。

 

 

 

 

一方通行「……よォ…仮面女。急で悪ィが、オマエの持ってるモンをよこせ。素直に渡せば痛ェ目には合わねェぞ」

 

正面から少女を見ると女の仮面を着けていた。

一方通行は無表情で冷たい声で脅す。が、少女は無表情だった。

 

???「……これが欲しいの?……いいよ」

 

ハイ、っと言って手渡しでくれた。

軽々とくれた事に少し驚きながらも一方通行は黒い玉をポケットにしまう。

 

一方通行「……悪ィな_____「その代わり」あァ?」

 

背を向け、次の黒い玉の場所へ飛ぼうとすると後ろから声をかけられ振り向く。

 

こころ「貴方に付いて行っていい?私は(はたの)こころ」

 

一方通行「断る。ガキのお()り何て面倒くせェ」

 

面倒くさそうに吐き捨てると、こころが着けている面が突如変わる。

変わった面は般若の面だった。

 

一方通行「どォなってンだよ…それ」

 

こころ「そんな事より私を子供扱いするなんて!……少しイラっとしちゃったよ!」

 

一方通行「無表情じゃねェか。何がキレただ……ポーカーフェイスにも程があンぞクソボケ」

 

こころ「ッ~~!!もう怒っちゃった!!罰として私を連れてけーっ!!」

 

一方通行「付き合ってられっかよ…………」

 

ため息を吐きその場から去ろうする。

しかしこころと名乗る少女は後ろから般若の面を着けながら付いて来る。

そして、気付けばこころは隣を歩いていた。

 

一方通行「はァ~……帰れよ」

 

こころ「やだ!付いていく!……そうだ!!」

 

何かを閃いたのだろうか、こころと名乗った少女は胸の前で手を叩いた。

そして一方通行の手へ視線を向ける。

 

すると

 

こころ「こうすれば逃げれないよ!!」

 

一方通行「はァー……。チッ、クソったれが…………」

 

ガッチリと自分の手をこころに掴まれる。

一方通行はまた無意識に反射を解いていて反射出来なかった。

もう、隣に居る仮面少女を一緒に連れて行こう。

と諦めたのだった。

もう一回断ったら面倒な事になるだろうと考えたのだ。

 

そして二人は仲良く(?)手を繋いで森の中を進む。

途中、途中、こころがこちらを見てくるが無視だ無視。

 

一方通行(コイツ、無表情な所は妹達(アイツ)らに似てるな。チッ、なに柄にもねェ事考えてンだ俺は…………)

 

『妹達』と書いてシスターズと呼ばれる。

学園都市に7人しか存在しない。超能力者(レベル5) 、第三位超電磁砲(レールガン)の哀れなクローンの事を一方通行は思い出していた。









さあ!さあ!!さあ!!!

第二章を投稿してから数ヵ月が経ち。
やっと物語が進みます!

次回をお楽しみに( ´∀`)


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18話

とあるの三期10月放送決定!!

ヒャッホーーー!!!( ☆∀☆)

ふー……落ち着こう……

多分、誤字や脱字があると思います。
ですから、発見した場合私に報告してくれると助かります。

(-_-)(オチツイテル…………( ☆∀☆)(カクセイ!!












一方通行「オイ、手を離せ」

 

自分の手と繋ぐこころに向かって話す。

どういうカラクリなのか、頭に着けている仮面が最初会った時の女の仮面に戻っていた。

 

こころ「やだ。絶対離さないもん」

 

一般的な男性が聞いたら勘違いしそうな言葉を放つ。

が、一方通行は通常時の表情で

 

一方通行「両手を使わなきゃこれが使えねェンだよ」

 

今、自分がどこら辺に居るか次の黒い玉はどの場所にあるか分かるため腕に着けている装置を使う必要がある。

だから、右腕に装着している腕時計型の発見装置を見せる。

 

こころ「離したらどっか行かない?」

 

一方通行「行かねェよ。だから離せ」

 

こころ「…………分かった」

 

パッ、と繋いでた手を離す。

すると、一方通行は舌打ちをした後に腕に着いてる装置を操作する。

 

一方通行「もォ一つも移動してンな。つか、同じ場所に五つも固まってやがるぞこれ」

 

装置の画面を見ると、一つの反応がある場所は少しではあるが動いていた。

しかし、五つも固まって反応した所は動いては無かった。

 

一方通行(動いてる所から回収した方がイイな。っつゥ事は次行った方がイイ場所はここか)

 

次の目的の場所を決め、行動しようとする。

が、一方通行は急に何者かの気配を感じ警戒する。

 

こころ「どうしたの?」

 

一方通行の雰囲気が変わり首を傾げて質問する。

すると、何も言わず一方通行はこころを自分の後ろに隠す。

 

こころ「?……ねえ____」

 

一方通行「誰を敵にしようとしてるか分かってるのかクソ妖怪ども。いくら数を揃えてもアリはどれ程集まってもアリであることは変わりねェぞ、あァ?」

 

もう、こころの声が届いてなかった。

一方通行は完全に臨戦態勢に入っていた。

しかし、まだ今の状況が分からないこころは困惑してたが、自分達を囲むように突如現れた異様な外見をした妖怪達が現れてやっと状況を理解する。

 

すると、こころが頭に着けている仮面が狐の仮面に変化した。

 

こころ「ここは私がどうにかするしかないようだね」

 

一方通行の隣に移動し自分の持つ霊力を使い、薙刀を生成しようとする。

 

が、

 

一方通行「俺一人で十分だ」

 

隣に居るこころの前に手を出し、敵を睨みながら言い放つ。

 

こころ「えっ?貴方なんか能力を持ってるの?」

 

一方通行「あァ、オマエらの能力より殺すのが得意な能力をな」

 

こころ「だとしたら二人で協力して戦った方がいいよ。実は私、一人で戦おうとしたけど逃げる時間しか稼げないと思ったもん。けど、二人なら……」

 

一方通行「俺が言いてェのは弱ェヤツは下がれって事だ」

 

こころ「自分で言うのはなんだけど、私こう見えて結構強いよ?」

 

一方通行「チッ。オマエは俺が守ってやるから隠れてろォ!!」

 

そう言うと白い怪物は、ガン!!と強く地面を踏みつけ周りの妖怪全て空中へ吹き飛ばす。

 

こころ「…………………ッ」////

 

今、こんな状況だと言うのにこころは頬を赤く染めていた。

この時、こころの着けている仮面は女の仮面はだった。

 

だって、仕方がないじゃないか。

初めて異性から『守る』何て言われたんだから。

 

そしてこころは一方通行の言われたとおりに隠れるため木の影に移動した

 

 

が、その木の影からちょこっと顔を出し一方通行を見ていた。

 

 

一方通行「そンじゃまァ…………、始めるとしますか」

 

狂気染みた笑みを浮かべ

 

一方通行「お片付けだ。直ぐに終わらしてやる」

 

妖怪達へ死を送る悪党が動く。

 

 

最強のチカラを持って。

 

 

妖怪達が奇妙な咆哮を上げながら突進してくる。

しかし、一方通行は一歩も動かない。

そして攻撃を反射し妖怪達の腕などを弾き飛ばす。

と、同時に地面を踏み土の針を地面から伸ばしそれで妖怪達を串刺しにする。

 

一方通行「愉快なオブジェが完成……、ってなァ」

 

妖怪を殺した。

しかし、まだまだ妖怪の姿は見える。

だが、一方通行は楽しそうに笑っていた。

 

そして、一匹。妖怪が早い速度で突撃して来る。

が、重力の向きを下に向け妖怪を地面に打ち付ける。

 

一方通行「オマエら妖怪は人間と似た体の造りをしてる」

 

だからよォ、と笑いながらうつ伏せて地面に倒れてる妖怪に近付き

 

一方通行「人間が死ぬことをやりゃ、オマエら妖怪も死ぬっつゥ事だ」

 

ぐちゃぐちゃ、と生々しい音を立てながら一方通行は妖怪の背中に手を手刀の形で突っ込む。

すると、妖怪が叫ぶがそんなのを聞いて止める一方通行では無い。

傷んで叫ぶ妖怪の声が止まった。それは何故か。

死んだんだ、妖怪は。

が、そこに死体は無かった。あったのは飛びっ散った血と肉片だけだ。

 

一方通行「血流操作。血の流れの向きを逆にした。そォするとよォ、簡単にぶっ壊れンだよ人間も妖怪も」

 

血が飛び散ったと言うのに一方通行には一滴も血がついてなかった。

ただの肉片と化した妖怪へ視線を向けながら風に流すかのように台詞を吐く。

 

一方通行「さァて、次のヤツは生体電気を逆流して殺してやンよ」

 

今、この場に完全に君臨した。

幻想郷最強にして最凶の化け物が。

 

一方通行「……あァ?」

 

まだ、後数十体は居るだろう。

しかし、残りの妖怪達は後退りしながら怯えていた。

だけど妖怪は恐怖を自分の中で無理やり打ち消し、標的とする化け物に一斉で襲いかかる。

 

だが、同じ事だ。反射をして妖怪達を吹き飛ばす。が、一方通行は一体だけ顔面を掴み捕まえる。

そして、先程自分が言った事を実行した。

生体電気を逆流された妖怪は体をビクビクと震わせる。だけどたった数秒で震えは止まった。

 

一方通行は先程まで息があったモノを舌打ちをして、つまらなそうに捨てる。

次々と仲間が殺された、妖怪達は

もし、コイツから逃げれたとしても絶対何時かは殺される。

と、思った。

だから、これからも生きるため化け物を排除しようとするが

 

ある妖怪は四肢を弾き飛ばされ、ある妖怪は一瞬で体の内側から弾け、ある妖怪は風に首を掴まれもがき苦しんで、ある妖怪はぐるんっ、と顔が回転し……

 

気付けば、妖怪は後一体だ。

と、言ってもボロボロで倒れてるがな。

 

一方通行「オマエで最後か」

 

飛び散った血と肉片。そして、大量の死体のなかを進みながら最後の妖怪へ歩む。

最後の最後の意地と言うヤツか。

妖怪は立ち上がり固く握られた拳を一方通行へ飛ばす、が、現実は残酷だ。

力を振り絞って打った拳も反射され、腕の皮膚が裂け、そこから血が飛び散り。吹っ飛んで仰向けで倒れる。

 

一方通行「はは、アハぎゃははははははッ!!」

 

狂ったような笑いながら一方通行は

 

一方通行「愉快な解体ショーの始まりってなァ!」

 

跳躍し、妖怪の胴体を地響きが鳴る程強く踏みつける。すると口を大きく開き両手を空へ伸ばし苦しい表情を浮かべる。

が、一方通行は伸ばされた両手をガッシリ掴みミチミチミチミチ……、と生々しい音を立てながら引っ張り、

そして、

 

両腕を無理やり引き千切る。

だがまだまだ楽しい解体ショーは始まったばかり、

 

 

次に両足を強く掴む。

バギッ、と骨を折る。

そして片手で一本、もう一本と足を千切る。

ここまでされれば普通の人間や妖怪は死んでいるだろう。

がしかし、目の前に居る妖怪は運が悪いことにまだ息があった。

 

 

その事に白い怪物はとても愉快に楽しそうな表情を浮かべる。

 

 

一方通行「ぎゃははははははははははははははっ!!!」

 

ぐちゃべちゃぐちゃ、と耳を塞ぎたくなる音を立て笑いながら胴体を開き内臓を引きずり出し、そして最後に心臓を引っこ抜く。

 

一方通行「……ハッ、遊び過ぎたなァこりゃァ」

 

引っこ抜いた心臓を捨て、手についた血や汚れを能力を使って完全に落とす。

見渡せば、残酷と言う一言では表せない景色がそこにはあった。

 

一方通行「そォいやあのガキは何処だ」

 

こころと言う少女の姿が見えない。

少し歩くと木の影で座っている少女。こころを発見する。

 

一方通行「ここに居たか。ほら、行くぞ」

 

こころ「う、うん」

 

ズボンのポケットに手を突っ込みながら一方通行は先を歩く。そしてこころは小走りで一方通行の隣に着き、そのまま隣を歩いていく。

 

一方通行「…そォいや何で付いてくンだよ」

 

黙って歩いてたが、隣に居る少女に質問する。

 

こころ「付いていく理由?……面白そうだから、かな?」

 

一方通行「……ンなくだらねェ理由かよ」

 

こころ「でも……もう一つ理由あるんだよ」

 

その言葉を聞き一方通行は少し首を傾げる。

 

こころ「私は表情が変わらないから頭に着けている仮面で表情を表してるんだけど、それが少し面倒くさいから表情を変えられるようになるため旅をしているの」

 

一方通行「へェ……」

 

こころ「それでね、もしかしたら貴方と一緒に居たら表情を変化できると思って一緒に行動しようと思ったの。それが、もう一つの理由」

 

一方通行「……そォかい。だが、俺と一緒に行動すると危ェ目に合うぞ。例えばあのクソ妖怪どもみてェにな」

 

妖怪ども虐殺してる最中、実は一方通行はこころの視線に気付いていた。

 

こころ「でも……あの時言ってくれたよね?私を守ってくれるって。悪を倒すヒーローみたいに」

 

一方通行「悪を倒すヒーローねェ……。ハッ、あの場に悪は一つ。俺しか居なかったぜ?」

 

こころ「貴方が悪?なんで?」

 

一方通行「これまで俺は一万以上の命を奪ってきた。これが悪と言わず何て言うンだ」

 

こころ「もし、それが事実だとしても。理由があった筈」

 

一方通行「理由?……ンなモン___」

 

___戦うと思う気が起きなくなるぐらい絶対的なチカラ。無敵ってのを手に入れりゃ……もォ…誰も___

 

一方通行「……無ェよ」

 

頭の中で浮かび上がった言葉を無視し、自分の今思ってることを話す。

すると、こころは

 

こころ「いやある筈。だって、守ると言った貴方がそんな酷いことするわけ________」

 

表情に変化はないがそれでも彼女が真剣に話してるのは伝わる。

しかし、一方通行は『くっだらねェ』と吐き捨て早足で歩く。

 

こころ「……わっ、待って!」

 

急に歩く速度を上げられ驚くが必死に付いて行こうと思い小走りで一方通行の隣に着く。

そして白い彼の手を掴む。

 

一方通行「………チッ、______________ッ!!?」

 

手を掴まれ面倒くさそうな表情をしてこころを見た。

 

 

_______________筈だった、

 

 

 

今、隣に居るのはこころという表情が変わらない少女のはずなのに、

 

一方通行のその目に映ったのは壊れた軍用ゴーグルを頭にかけ、血だらけの体に常盤台中学の制服を身につけた少女。

 

 

今まで、自分が9981回殺して来た"妹達(シスターズ)"だった。

 

 

そして一方通行は珍しく驚愕して、こころから繋がれた手を無理矢理振り払う。

 

こころ「?……急にどうしたの?顔色悪いよ」

 

一方通行「うるせェ……何でもねェよ、クソったれ」

 

あれは、さっき見たのは幻覚だ。

だが、心臓が一回止まったようが気がした。

けど、止まってはいない。逆に鼓動が早くなる。

が、今はとりあえず黒い玉を探そう。

 

 

そう思い、一方通行は黒い玉の反応があった場所へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ハァ…ハァ…ハァ……ハァ…」

 

ここは人間の里。

その薄暗く細い道を全力で走る茶色の髪のロングの少女。

何故、全力で走る理由があるかと言うと

 

「おーい待て待てー♪」

 

「鬼ごっこってかーっ?」

 

「捕まえちゃうぞー♪」

 

若い男。三人に追われてるからだ。

 

「____________キャッ!!」

 

小石を踏み、体のバランスが崩れて地面に転ぶ。

すると、男達はうつ伏せて倒れてる少女に近付き腕や足を二人がかりで押さえる。

そして

 

「んー。いいねー、この子」

 

「ささっ、早くヤっちまおうぜ」

 

「そう焦んなよ。ゆっくり楽しもうぜ?この子の、か・ら・だ♪」

 

愉快に楽しそうに下卑た笑みを浮かべる男達。

 

「そうだな。だがよ、いつも同じ穴じゃつまんねえよな?」

 

少女の上に乗り両手を押さえてる男が口を開く。

 

「ああ?じゃ、どーすんだよ?」

 

「昔からヤってみたかったんだよな~。眼の穴でっ☆」

 

狂気染みた台詞を聞き、押さえられてる少女は心の底から、ゾッとし震え上がる。

 

「あーっっハッははははは!!狂ってやがるぜお前!だが、良い案だ。じゃあよお、この際何処が一番キモチイイか、この子の体を使って探そうじゃねぇか」

 

リーダー格と思われる男は下品な笑い声を上げ、押さえられてる少女の前にしゃがみ

 

「けど安心しな。最初は常識的な事からハジメテヤルカラヨ」

 

もう、少女は絶望と言う感情に体を支配されていた。

 

犯される、

 

この男達に。

それだけを感心していた。

 

男達は少女が抗う力が抜けたと理解すると、少女を仰向けにしてリーダー格の男が少女の服をポケットにしまってあったナイフで切ろうとする。

 

 

「その子から離れろ下衆な者共!!」

 

男の手が止まる。

 

この場に少女と一人、男三人。

だったが、腰まで届こうかと長い青いメッシュが入った銀髪を持ち、服は胸元が大きく開き上下が一体になっている青い服で袖は短く白。

襟は半円をいくつか組み合わせ、それを白が縁取っていて、そして胸元に赤いリボンをつけていた少女。

 

上白沢慧音(かみしらさわけいね)が襲われてる子を助けるべく男達の前に姿を現しこの場の人数が合計五人となった。

 

「あ~?ハハハッ!!オイオイ今日はラッキーだな!!もう一匹オモチャが自分から飛び込んで来たぜ!」

 

「オイ待て。もしかしたらアイツ、不思議な力持ってんじゃねえのか?」

 

盛った男一人が慧音を襲おうとする。

だが、リーダー格と思われる者が止めた。

 

「……確かに。正義感で助けようとしても男三人に女一人が勝てるわけねえもんな」

 

「だとすると?やることは一つ……だよな」

 

すると男二人が、少し希望を感じ始めた少女を押さえリーダー格と思われるヤツからナイフを受け取り。

 

「動くな。こいつが殺されたくなかったらな、ってやつよ!!!」

 

ナイフの先端を少女の首元へ向ける。

 

慧音「………くっ!!」

 

「この里に居る不思議な力を持つ者。そのなかの一人なんだろう?お・ね・い・さ・ん♪」

 

リーダー格と思われる男は勝ち誇った風に話す。

そして、だんだん慧音に近付いて来る。

 

「あの子を助ける為に来たんだろ?だったら動く筈無いよな!!あーーーーっはっははははハッ!!」

 

慧音は動けなかった。

いや、動ける。が、しかし動いてしまえばあの少女が殺されてしまう。

今、目の前居る男達は簡単に人を殺せるだろう。

でも、でも、でも。

動かなくては確実にこの連中に犯される。

 

仕方がない。

そう、心の中で呟く。

知り合いに良い医者が居る。だから、もし首を刺されても少しでも息があれば助けられる。

 

慧音は手足に力を入れ、目の前のヤツらを倒す。

と、決意した。

だって、そうしなくては自分も少女も助からない。でも、このやり方は少女が傷付いてしまう。

だけどしょうがないじゃ無いか

 

 

この場には、

 

 

この幻想郷には、

 

 

ピンチになったら必ず現れるヒーロー何て居ないんだから

 

 

だが。

 

だが、だった。

 

 

 

「……よォ」

 

 

 

この幻想郷には

 

 

一方通行「ナニ小せェ事してはしゃいでンだ三下ァ」

 

 

悪党(アクセラレータ)が居る。

 

 

 

「ああ!?何だと!!」

 

慧音「?」

 

自分の後ろから声がする。

そして、慧音は後ろを向く。

すると髪は白く眼が赤く、華奢な体の白い悪党が居た。

 

一方通行「………幻想郷も学園都市と同じバカは必ず居ンだな」

 

「何一人で喋ってんだ!!つーか、俺達を三下と呼びやがって!!余程死にてぇようだなクソガキィッ!!」

 

とても哀れなものを見るような目で一方通行は男達を見る。

すると、リーダー格と思われる男が慧音何か無視して一方通行に向かって駆ける。

そして、この場に突如現れた白が特徴的な一方通行へ拳を飛ばしてきた。

でも、それがどうしたと言うんだ。

 

「うおおおお!!______ん…ぎ……っ!?」

 

殴り掛かってきた男の腕がおかしな方向へ曲がる。

 

そして

 

一方通行「壁の染みにでもなるかァ?」

 

強烈な右からの蹴りを腹部へ食らう。

すると男は強く壁に打ち付けられ、意識を失った。

それを、見た男二人は

 

「よくも!……だが、動くな。こいつがどうなっても_____」

 

怒る。が、冷静になり。ニヤつきながら少女の顔へナイフの刃の部分を向ける。

が、しかし

 

「___う、がぁぁ!!」

 

「お、わぁぁぁぁぁ!!」

 

一方通行は地面を強く踏みつける。

すると、少女を押さえる男二人が地面からきた激しい衝撃波と共に左右の別れて、壁に打つかり座り込む。

 

慧音「凄いな。ああ、ありがとう助けてくれて」

 

一方通行「まだだ………………」

 

慧音「?」

 

押さえれてた少女へ歩む一方通行へ礼を言う。だが、この場をおさえた悪党は

 

一方通行「まァ……とりあえず。オマエは寝とけ」

 

少女に近付くとしゃがみ、ゆっくりと頭へ手を伸ばした。

そして、その少女の体の中に流れる生体電気を流れを操り、意識を奪う。

すると、少女はスイッチが切れたロボットのように寝た。

 

一方通行「さァてと。オマエら、随分面白そうな事してきたそォだな。目ェ見りゃ分かンぜ……」

 

すーっ、と立ち上がる。

そして、一人の男に近付き

 

一方通行「この……クッソ野郎がァ!!!」

 

地面に置かれてる手を踏みつける。

 

「ッ!!……ああああ!!_____あが……っ!?」

 

片手が粉砕骨折した。

余りにも痛く叫ぶ。が、大きく開かれた口に靴の先端が突っ込まれる。

 

一方通行「うるせェなァ……あァ!?」

 

ガン!!と、靴を口に突っ込んだまま男の後頭部を壁に打つける。

そして、続けて。ガン!!ガン!!ガン!!ガン!!と男の後頭部を壁に打つけた。男の後頭部が壁に打つけられるたび壁にヒビが入り、赤い血がつく。

そんな事を何度も続ければ……

 

一方通行「あァ?……チッ、直ぐ壊れちった。やっぱ、人間てなァ脆いなァ……。なァ?」

 

ぐりんっ、ともう一人壁に座る男に赤い瞳が向けられる。

すると、ひぃぃ。と、声を洩らす。

 

「う…う、うわぁぁぁ!!助けてぇぇええ!!」

 

そして、男は情けない面で走り出しここから逃げようとする。

だが、白い悪党が。最強の化け物が。それを許すわけなく。

 

一方通行「俺から逃げられるとでも思ってンですかァ?」

 

片手の人差し指を上に向ける。

すると、走り出した男の体が宙に浮く。

 

「うっ、わわわわわ!?」

 

一方通行「オマエの下から風を吹かせ体を浮かしてやった。あはぎゃはっ!!どォだ!?浮いた気分はよォ!!」

 

「……あ、が……ッ!!!」

 

一方通行「っつっても、浮いたのは数秒だけどなァ」

 

次は逆に風の向きを下へ向け地面へ強く打ち付ける。

そしてうつ伏せて地面に転がる男の方に歩く。

 

一方通行「でェ?俺は浮いた気分はどォだと聞いたンだが…あァ!?」

 

地面に血が広がるぐらい強く男の頭を踏みつける。

そしたら、男はショックで気を失う。

 

一方通行「チッ……誰が寝てイイったよ、ゴラァ」

 

ガシッ、と足を掴み持ち上げる。すると男を逆さまに吊るしてる形となる。

 

 

 

 

慧音「…………」

 

ただ、黙って一方通行の一方的な暴力を見ていた慧音。

だが本当は動けないのだ。あの化け物を見てると。

それは恐怖、それともう一つ。

 

それはあの化け物の持つチカラ。

その二つが合わさると、金縛りと思ってしまうほど体が動かなくなってしまう。

 

でも、でも動かなくては。

絶対あの化け物は男達全員殺してしまうだろう。

いくら、あの男どもクズ野郎だろうが生かさなくては。

生きて罪を償わせる事が出来ない。

 

だが体は言う事を聞いてくれない。

 

 

だから止める事ができない。

慈悲の無い、とても惨く目を塞ぎたくなる容赦の無い暴力を。

 

 

 

 

 

「……ッ……!」

 

一方通行「よォ、起きたかよクソ野郎」

 

生体電気の流れを操り無理矢理、男を起こす。

 

「う、あ、あれ?体が、動かない……!?」

 

一方通行「知ってかァ?人間は体を動かすとき、脳の電気信号を筋肉、神経に送って体を動かすって。っつゥ事は…だ。俺がオマエの体に触れ生体電気の流れを操りゃァオマエの全身を支配できるっつゥ訳だ」

 

「な……なにを、言ってやがる?」

 

一方通行「あァ…バカに言っても分かンねェか。だったら、バカに分かるように言うとだなァ……」

 

足の持ち方を逆にし、男の体を上に振りかざし

 

一方通行「俺に触れられてると動けねェっつゥことだァ!!」

 

「……ふ、ッ!!!!」

 

地面にヒビが入るほど打ち付ける。

すると、男は顔面から打ち付けられたため顔面がぐちゃぐちゃに潰れ大量の血が飛び散る。

 

一方通行「……次は、アイツか……」

 

壁に向かってただの肉の塊となったものを投げ捨てる。

次、いや最後のターゲットへ視線を向ける。

 

慧音「ま、待ってくれ」

 

一方通行「あァ?」

 

少し震えながらも慧音は口を開く。

 

慧音「もう、これ以上私の愛する人間を殺さないでくれ」

 

一方通行「……知るか」

 

強風が慧音の後ろから吹く。そして、その強風は気絶してた男を攫う。

すると、前にゴロゴロゴロ、と転がり倒れてきたのでそれを一方通行は足で止め、仰向けにさせ。胸付近をバキベギと骨の折れる音を鳴らしながら踏みつける。

 

「ぐっ!!があぁぁあああああ!!!」

 

口から血反吐を吐く。

肋骨などは全部折れただろう。

 

一方通行「ギャハハッ!どォだイイキモチだろォ?あはぎゃは!あはアハははぎゃはッ!!!」

 

グリグリ、と踏みつけながら背筋がゾッとするほどの笑みを浮かべ笑う。

 

しかし

 

一方通行「…………あァ?ナニ?俺と戦るってか?半分女」

 

慧音「……ッ!?……まさか」

 

やっと体が動いた。

だから止められる、あの化け物を。

慧音は一方通行へ向かって全身に力を入れ歩いていく。

が、たった一言。一方通行の言葉を聞き足を止める。

 

一方通行「オマエ、あれだろ?俺と同じ人間と半分に何か混じってンだろ」

 

慧音「良く見ただけで分かったね」

 

一方通行「まァ…最近変なヤツらに会いまくってなァ。そォゆう特技を身につけちまったンだよ」

 

慧音「……そう。ああ、私はキミと戦う気は無いよ。ただ、その男何て無視してそこに寝ている少女を運ぼうとキミに提案しようとしただけだ」

 

一方通行「そォかい。なら、オマエはあのガキを運べよ。俺ァコイツを血風船したら俺とはぐれたガキを探す」

 

慧音「……はぐれた子が居るのか。だったらその子探しに行きなよ」

 

一方通行「ハッ、そンなにコイツを助けたいか」

 

慧音「いや、そんな事を……」

 

嘘だ。

本当は助けたくてしょうがない。けど、それを正面から言ったら絶対あのか細い命は消えるだろう。

そう思い、遠回しに言っていた。が、やはり気付かれる。

 

一方通行「だが、まァイイか。ほっときゃコイツは死ぬしな」

 

道を歩こうするが倒れてる男が邪魔だから端に蹴っ飛ばす。

 

一方通行「じゃ、あばよ」

 

背を向け歩き出す。

しかし、足を止めた。

そして一方通行はとても冷たく、体が凍りついてしまうほどの声で

 

一方通行「そォいやオマエ。もし、あン時俺と戦り合ったら……」

 

白い化け物が振り返り

 

一方通行「"確実に死ンでたぞ"」

 

その言葉を聞き慧音は思った。

ああ、そうだろうな…と。

 

一方通行はまたズボンのポケットに手を突っ込んで歩き出す。

そして、慧音は気絶しているであろう少女を抱き抱える。

その時

 

慧音(アイツを一人にしたら不味そうだ。もしかしたらまた人間は殺しかねない)

 

そう思い一方通行を呼び止めた。

すると、慧音は一方通行の隣に小走りで着く。

 

慧音「この子の家を探すの手伝ってくれる?そしたらキミの探してる子を一緒に探すよ」

 

一方通行「手伝わねェし、ガキを探す協力なンていらねェよ」

 

面倒くさそうに吐き捨て、歩き出す。すると慧音は一方通行の隣を歩く。

 

慧音「そう言わずに手伝ってくれよ、この里は結構デカイんだ。だから、一人じゃ無理だよ」

 

一方通行「チッ…だったらよォ」

 

慧音が抱き抱える少女へ手を伸ばす。そして、生体電気の流れを操り目を覚まさせる。

 

「…ッ……あれ?……私は……」

 

慧音「おお、目を覚ました」

 

一方通行「そのガキは後もォ少しすると自分で歩けるようになる。だから、それまではオマエが運べ。っつゥ訳だ、ガキから家の場所聞いてつれてけクソったれ」

 

「ま、待って下さい!!」

 

もう行こう。多分、こころは今頃キレてるかも知れない。すると、とても面倒で面倒で面倒だ。

だがら足を動かし前に進む。が、しかし少女が呼び止める。

 

一方通行「はァ、何なンですかァ?何か用ですかァ、クソガキ」

 

「礼を……お礼をさせて下さい!」

 

一方通行「いらねェ……断る」

 

「……お…お礼を……」

 

キッパリと一方通行は断る。

すると少女はウルウルと眼に涙を浮かべながら言う。

 

慧音「こらこら。女の子を泣かすんじゃ無いよ。罰としてこの子のお礼を受け取りこの子を優しく家まで運びなよ」

 

一方通行「最後はオマエが楽してェだけじゃねェかっ!!ゴラァ!!」

 

慧音「バレた?」

 

もうどうにでもなれ。

一方通行は少女を抱き抱え家へ運ぶ事にした。

そして、慧音はその光景を見てうっすら微笑んだ。

 

こうして、三人は薄暗い細い道を出て表の道を歩く。

少し人間どもの視線があるが全力で一方通行は無視をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女の家へ向かってる最中、少女は歩けるようになり自分の足で歩く。

そして、少女と歩くこと数分。目的の所に着く。

 

「おおー、お帰り我が娘よ。…………ん?友達?それともお客さん?」

 

少女の家は茶屋だった。

そしてその店の奥から少し一般男性より背が高く髪は耳の位置ぐらいの長さで、髪の色は黒の少女の父とみえる者が姿を現す。

 

「ううん、恩人さんだよ。私が襲われてる時に助けに来てくれたの」

 

「何だと!!!我の娘を襲っただと!?その野郎ぶっこr……!……。ふー、落ち着こう。さて、助けてくれたお二人には礼をしなくてはな、座ってくれ」

 

店の前にある赤い敷物が敷かれる長い椅子に片手を向ける少女の父。

その後少女とその父は店の中へと消える。

 

慧音「ではお言葉に甘えて」

 

一方通行「……チッ」

 

二人、少し距離をおいて座る。

 

慧音「何だ?隣に座るのは照れくさいか?」

 

一方通行「ほざけ……クソ(アマ)

 

睨み付け吐き捨てる。そして

 

一方通行(そォいや俺、彼処に行った理由は玉っころの反応があったからじゃねェか)

 

あの薄暗い細い道の道程は覚えているが一応腕に着けている発見装置を弄り確認する。

すると

 

一方通行「あン?……この近くにあるだと?」

 

この場に黒い玉の反応が二つ。

一つは自分が持っている物だろうがもう一つは別のやつだろう。

しかし、だとしてもだ。一体、もう一つは何処にあると言うのだろうか。

 

一方通行「……もしかして……」

 

隣に座る慧音を見て呟く。

 

一方通行「オイ、半分女。もしかしてこォいう玉持ってねェか?」

 

ズボンのポケットに入ってる黒い玉を取り出し、慧音に見せながら話す。

 

慧音「その呼び名は止めてくれ、私は上白沢慧音だ。……ん?それって、これかな。私の寺子屋に通う子供が渡してきたんだ」

 

黒い玉を慧音は取り出し、手の平に乗っけて見せつける。

 

一方通行「おォ、それだ。それを俺によこせ。寄越す気ねェなら力ずくで奪う」

 

慧音「??……何だか良く分からんが欲しいならあげるよ。ほれ」

 

手渡しで慧音から黒い玉を貰う。

 

一方通行「これで二つか。だが、後一つの場所行きゃ玉探しも終わンな」

 

そう、次の反応ポイントは何とまさかの残り五つが固まってるのだ。

そこに行き黒い玉を回収すればこの幻想郷にある全ての黒い玉が集まる。そして、にとりに預けてる黒い玉を直し解析すれば。

何故、あれが体内にあると暴走するのか、などの理由が明らかとなる。

 

まあとりあえず手に持ってると邪魔なのでズボンの両方のポケットにしまう。

そして、あの少女の父のお礼とやらを待っていると

 

「おー。慧音、久し振りだな」

 

慧音「…?…。妹紅?」

 

銀髪のロングヘアーで深紅の瞳を持つ少女、妹紅が慧音に気付きこちらに近付いて来た。

 

慧音「…と言うか久し振りって。昨日会ったでしょ」

 

妹紅「そうだっけ?あ、そうだっな。_____________って、一方通行!?」

 

楽しく話す最中、チラッと慧音の隣に居る人物を見る。

すると、妹紅の目に映ったのは何処までも白い化け物。

一方通行の姿だった。

 

慧音「え?妹紅の知り合い?……て、キミが一方通行!?」

 

一方通行「あァ?…なンだよオマエら。人の顔見て驚きやがって。ケンカ売ってンですかァ?」

 

妹紅「いやいや、まさかここで会えるとさ思ってなくて、つい…ね。と、言うかまさか二人が出会ってたとはな~」

 

慧音「会ったのはついさっきだぞ。まあとりあえず妹紅、立ち話も何だ。座ったらどうだ?」

 

妹紅「じゃ、じゃあ……」///

 

肌が真っ白な妹紅が頬を赤く染めると、凄く分かりやすい。

妹紅は照れながらも一方通行側に座る。

 

一方通行「あ?……何でこっち側に座ンだよ。普通あっちだろ、オマエら友達何だろ?」

 

妹紅「…あの、こんな機会は滅多に無いから……その……」///

 

もじもじ、と照れているが一方通行は様子が変だなぐらいにしか思わなかった。

が、慧音は直ぐに察する。同じ女だからなのか…

 

一方通行「…チッ…まァ、何処に座ろうがオマエの勝手だから文句は言わねェよ」

 

慧音(やっぱり妹紅は一方通行が好きなのか。しかしこの一方通行と言う男……相当鈍感だぞ!?)

 

そして

 

「お待たせしました。うちのご自慢のお茶をどうぞ、美味しいですよ!」

 

両手でお盆を持ち、そのお盆に暖かいお茶を淹れた湯呑みを二つ乗せ店の奥から運んで来た。

 

「……あれ?もう一方居たとは。今、もう一つ持ってきますね」

 

妹紅「??……何か良く分からんが、悪いな」

 

一方通行と慧音の近くに湯呑みを置くと慌てて店のなかに入っていった。

 

慧音「…あのね妹紅。私達はあの子の御礼としてこのお茶をもらったんだぞ?」

 

妹紅「え?そうなのか……だったら本当に悪いな。はあ、お茶なんて買う気無かったが悪いしお金払うか」

 

「お茶だけじゃ飲むの進まないだろ。ほれ、茶菓子だ!」

 

がはははは、と笑いなから少女の父が和な器に芸術的な茶菓子を盛り付けて持ってきた。

そして、それを一方通行と慧音の間に置き、去った。

 

一方通行「……コーヒーが良かった、甘ェモンは嫌ェだ」

 

慧音「こら。人の好意で受け取ったモノにわがまま言うもんじゃないぞ」

 

一方通行「チッ………ッ!……」

 

舌打ちをした後お茶を飲もうとする。が、しかしお茶が唇につくと熱くてビクって体が反応する。

それを見ていた二人は

 

慧音「……ぷっ、あ、熱かったら。フーフーすると良いぞ……ッ、ふふふふっ」

 

妹紅「……ッ、ッ~~~~~~!!!」

 

慧音は笑いながら小馬鹿にするように話し、妹紅は何とか全力で笑いをこらえていた。

 

一方通行「……クソったれが」

 

はっきり言って今すぐ慧音と妹紅をぶん殴りたい。

しかし固く握りすぎて震える拳を収め、我慢する。

偉いぞ、一方通行。

 

そんな事をしてると少女が妹紅の分のお茶を運んで来た。

そして三人。お茶を飲みゆっくりする。

だが、この場に新な乱入者が

 

「あ、居た!やっと見つけた!」

 

一方通行「あァ?」

 

無表情な少女、こころ。そう、一方通行と離れてしまった子だ。

こころは一方通行を発見すると直ぐさま近付く。

 

妹紅「ん?付喪神か。珍しいな、こんな所で会う何て」

 

こころ「……近い」

 

妹紅「え?」

 

するとこころは一方通行と慧音の間に置いてあるモノをどかしその間に座る。

そして、一方通行の腕を掴み抱き締める。

 

妹紅「ッ!?」

 

一方通行「……茶が飲めねェ」

 

慧音(おや、これは修羅場と言うヤツかな?)

 

こころの行動に驚愕する妹紅。だが、ただ驚愕して止まる妹紅では無い。

もう一本。フリーな腕。つまり自分側の一方通行の腕を妹紅は抱き締める。

 

妹紅「……」

 

こころ「……」

 

バチバチと二人の間では稲妻が走るが、その間に居る超鈍感真っ白化け物は

 

一方通行「……面倒くせェ」

 

と、見るからに面倒な顔をしてため息を吐いていた。




いや~どうでしたか?今回の一方通行は?

新約二十巻を読んでテンションが上がり今回は書けました。

……一方通行、最高っ!!


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19話

多分、誤字や脱字があります。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。


今、まさに激闘というものが始まろうとしてた。

その戦いに挑むのはこころ、そして妹紅。

だがその状況をたった一言でぶち壊す者。

 

それが、

 

一方通行「……オイ、とりあえず離せ。胸ェ当たってンぞ」

 

表情を少しも変えず普通に話す。

が、その言葉を聞いた主に一般人の男性陣は一方通行に妬みと怨みを込めて睨む。

しかし、周りの雰囲気が変わろうが気にしないのが一方通行。

 

だからそんなのを気付く訳もない。

 

「「……………………………」」/////

 

『当ててんのよっ☆』的なお決まりな台詞を言えないピュアな少女二人は顔を赤く染める。

そして、こころと妹紅はすーっと大人しく一方通行の腕を離した。

 

一方通行「チッ……、なにか新しい遊びか知らねェが俺を巻き揉むンじゃねェよ」

 

もう思わず…………だ。

『コイツ何言ってんだ?』と鈍感野郎以外全ての者が大声で言いたくなったが何とか彼の周りの皆はぐっと堪えた。

 

慧音「いや、本当にそれ本気で言ってるのか?その二人はね____________」

 

突如、慧音の唇が止まる。それは何故か?

答えは簡単だ。

こころと妹紅が一方通行にバレないように口の前で人差し指を立てて『しーっ……』としてた。

二人は察したのだろう。

いや察したと言うか二人は出会い自分以外にも一方通行へ特別な"好意"を持つ者が居ると知りまさかと思ったのだろうか。

まあ、とりあえず鈍感野郎に自分でちゃんと気付いて欲しいと二人は思い慧音の口をジェスチャーで封じた。

 

一方通行「あン?二人が……、なンだ?」

 

慧音「ううん。何でも無いさ。ふう…………お茶旨いなー」

 

最強の鈍感は無視をしよう。

慧音は一方通行の質問を適当に蹴りお茶を飲む。

 

こころ「で、貴方。そいつとどういう関係なの?」

 

やはり一方通行の手を握っていた方が落ち着く。

だからこころは妹紅に視線を向けながら自然に手を握ってみせた。

 

妹紅「それは私も気になるな。一方通行、その付喪神とどうゆう関係なんだ?」

 

一方通行「ただの知り合い」

 

妹紅「私は?」

 

一方通行「ただの知り合い」

 

こころ、妹紅「「………ふっ」」

 

一方通行の言葉を聞くなり、二人はライバルを見るなり鼻で嘲笑う。が、しかしただの知り合いと言われたのはこころと妹紅。

つまり、両方だ。その事に気が付くと。

 

こころ(…やっぱり、会ったばかりだから進展してないな。私)

 

妹紅(……もう少し攻めた方が良いのかな?)

 

これからの作戦を頭の中で考える恋する乙女。

でも、特別な好意を向けられてる一方通行はというと。もう一度腕に着けてる装置を弄っていた。

すると

 

一方通行「…………やっぱなァ」

 

こころ「どうしたの?」

 

「「…………?」」

 

発見装置の画面を見るなり一方通行が呟くので、三人は不思議そうに見る。

 

一方通行「どォやら次の目的地は博麗神社らしィぜ」

 

こころ「そうなの?」

 

一方通行「あァ。反応ポイントがある方向と博麗神社に行く方向が全く一緒だ。つまり……」

 

そう、つまり黒い玉が五つ集まってる場所は博麗神社。霊夢の居る所に間違いない。

しかし、何故博麗神社なのか。そんな疑問が浮かぶが今はとりあえず人里に近い博麗神社へ向かおう。そこが一応今ん所のゴールなのだから。

 

一方通行は空いてる方の手で自分の湯呑みを掴む。そして、もう冷めただろうと思い一気にお茶を飲み干す。

ことっ、と空の湯呑みを椅子に置き立ち上がり前に進む。

 

慧音「どうした、もう行くのか?」

 

一方通行「あァ。こォ見えて大忙しなンでな。で?こころ。まだ俺に付いて来ンのかァ?」

 

いきなり立ち上がるので、驚いて手を離してしまったこころに質問する。

 

こころ「うん、付いてくよっ!!」

 

ぴょこん、と椅子から飛び降り。自分の定位置である一方通行の隣に移動する。

 

一方通行「……そォか」

 

と、こころが隣に来るなり息を吐き、少しだけ下を向いた。

 

一方通行「っつゥ事だ。菓子はオマエらにくれてやるよ」

 

慧音「何か本当に悪いね。まあ、お言葉に甘えて貰っておこう。が、少し待ってくれるか?」

 

一方通行「ン?……何だ?」

 

急に真剣な表情になるなり立ち上がる慧音を見て首を傾げる。

 

慧音「キミがあの時来てくれなかったら、私もあの少女も助からなかった」

 

たがら、と続ける。

 

慧音「ありがとう。それをキミに言いたかった」

 

素直に頭を下げ礼を言う。

 

一方通行「チッ…何言ってやがる。俺ァオマエらを助けた覚えはねェよ。ただあン時は三下どもが道の邪魔だからブッ潰してやっただけにすぎねェよ」

 

慧音「でも、だ。そのお陰で今この里で問題となってた事が解決した」

 

頭を上げ、真っ直ぐ彼の赤い目を見て話す。

 

一方通行「………そォかい。そりゃ良かったなァ、じゃァ俺は行くぜ」

 

妹紅「あー…待ってくれよ」

 

一方通行が足を動かした瞬間。妹紅は慌てて立ち上がる。

すると、彼はとても面倒くさそうな表情をしてこちらを見てきた。

 

一方通行「はァ。下らねェ事ォ言いやがったら骨折ンぞ、コラ」

 

妹紅「おいおい。命の恩人に向かってそんな口聞いて良いのか?」

 

一方通行「命の恩人ねェ…………死ぬまで言ってろ。あ?オマエ死なねェか」

 

妹紅「そういう事だ。つまりずっと言い続けるぞ。って、こんな事を言う為に呼び止めたじゃ無いんだっだ」

 

一方通行「じゃあなンだよ……?」

 

妹紅「覚えてるか?一方通行。前にお前に会って欲しいヤツが居るって言ったこと」

 

一方通行「あァ……そンな事言ってたなァ。でェ、それが?」

 

妹紅「その会って欲しいヤツってのが、この慧音だ」

 

慧音に手を差し伸ばし話す。

 

妹紅「でも私は慧音をゆっくりとお前に紹介したいんだ。だから、また次。会ってくれるか?」

 

一方通行「別に構わねェよ」

 

妹紅「そうか!………あ、呼び止めて悪いな。さっ…行ってくれ、目的地の博麗神社に」

 

楽しそうに話す妹紅。やはり自分の言ってた事を覚えてくれてた事は嬉しいのだろうか。

話したい、もっと話していたい。が、彼は忙しい身。だから見送ろう。

また。そう、また何時か会えると思うから。

 

一方通行「あァ、そォさせて貰うぜ。って訳だ、行くぜ。…………こころォ!!」

 

こころ「え……?あわわっ!?」

 

話し合ってるなか大人しく待っていたこころの方を見るなり、その細く軽い体を一方通行は抱き抱える。

そして、博麗神社へと飛び立って行った。

 

慧音「行ってしまったな、妹紅」

 

妹紅「ああ。だが、あの付喪神をお姫様抱っこする必要ないだろ………………」

 

急に飛び立って行った二人の方向を見ながら話すが、妹紅は分かりやすいほど不機嫌だった。

 

慧音「しかし、妹紅。なんであの彼にそんなに夢中になってんだ?」

 

視線を妹紅へ向け、疑問を投げる。

 

妹紅「えっ!?…………そ、それは」////

 

余りにも、ドストレートの質問に頬を赤く染め可愛らしく照れる。

ああ、多分。これが恋する妹紅の姿なのだろう。

 

妹紅「え、と。その……理由を話すと、だな」////

 

少し長話になるだろう。

だから、先程まで座っていた茶屋の椅子に二人は座る。

 

 

そして続きを話す。

 

 

過去に一方通行と妹紅に何があったのか…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を遡ること、、、

 

一方通行が幻想郷に落ちる太陽と正面衝突する数分前。

 

 

妹紅は迷いの竹林のなかを進んでいた。

何故、迷いの竹林のなかを歩いているかというと…………

 

自分が正気に戻ったと理解したあの時、暴走する仲間が心配になり近くに居た永琳に質問する。

そしたら答えが返ってきた。

今、外来人が暴走する者達を倒し正気に戻してるらしい。

が、一人では無理だろうと妹紅は考えそれを伝える。

 

すると、

 

永琳「だったら迷いの竹林を妹紅ちゃんに任していい?」

 

妹紅「えっ?」

 

永琳「彼から。つまり私達を正気に戻した外来人から聞いた話によると、迷いの竹林には暴走する人は妹紅ちゃん以外居なかったと言ってたわ」

 

けど、と続けた

 

永遠「一方通行は迷いの竹林を隅々探索してないと思うの______」

 

妹紅「だから私に探索しろ……と?」

 

永琳が続けて話をするなか途中で口を開き話に割り込む。

 

永琳「ええ……、今私と妹紅ちゃんしか身動き出来る人がいない。けど、私はまだ目覚めてないあの子達を治療しなきゃ。それに、迷いの竹林はこの幻想郷で妹紅ちゃんが一番詳しいでしょ?」

 

妹紅「そうだな……、じゃあ今すぐ行ってくるよ」

 

腕が折れようが、足が切断されようが再生する不死の体を持つ彼女はこの部屋の襖に移動した。そして、襖をスライドさせ部屋を出てく。

 

 

そう、その後は毎日毎日迷いの竹林を探索した。

暴走する者が居ないと知っていても念には念をとゆうやつだ。

 

妹紅「………………、」

 

そして、今に戻る。

あれから永遠亭の連中全員目を覚まして怪我も完治している。

 

こう毎日毎日迷いの竹林のをなかを歩くのは退屈だが

 

博麗の巫女。

霊夢が外来人と共に暴走者達に反撃の刃を突き立て頑張ってるんだ。

だから、と。

わがままや文句を言わず黙ってやろうと心に誓う。

 

すると、その瞬間だった

 

妹紅「……?何か熱いしやけに明るくないか?」

 

もんぺのポケットに手を突っ込みながら歩いていると、何かの異変に気付く。

 

今彼女が居る迷いの竹林は深い霧が立ち込める。

だから、そんなに光と呼べるものは無い。

にも関わらず空から赤い光が迷いの竹林を照らす。

 

妹紅は光射す空へ顔を上げる。

 

そして、見えたのは……………………

 

 

 

妹紅「……う、そ………だろ…………ッ!?」

 

 

 

自分の目を疑ってしまう程の巨大な赤い光の球体。

太陽に似た何かがだんだんこの幻想郷に落ちてきてる事を直ぐに察した。

 

妹紅(どうするこのままだと、…………クソっ!!)

 

守る。守ってやる。

自分の持つチカラと不死の体で自分の住む幻想郷を。

 

そう妹紅が決意するのはたった数秒だった。

それから直ぐにあの太陽を止めるべく全身を炎で燃やす。

そして、その炎を背中に集中させた。

すると妹紅の背中に不死鳥のような気高く美しい羽を纏ってみせる。

 

妹紅「私は不死身だ。だから…………」

 

自分の中のイメージはとてもシンプル。

太陽目掛けて飛び上がりあの太陽を押し返す。

そんな単純な馬鹿げた作戦を実行しようとする。

 

 

しかし

 

 

ゴバァァァァァァンッ!!!!

と、落ちてきてる太陽が弾け空から熱波が幻想郷全てに吹き荒れる。

 

妹紅「…う、……ん……!!」

 

余りの勢いの強い熱気が吹き荒れ思わず眼を瞑り、片腕を顔の前に持ってくる。

 

妹紅「……ん……、何だったんだ?今のは?」

 

もう背中には炎の羽は無い。無意識に解いてしまったんだ。

理解不能の現象が起き、周りを見渡し空を見上げる。

 

妹紅「あ………あれ……?」

 

すると、何が起きたのか。

落ちてきてた太陽は跡も形もすっかり消えていた。

その事にただ混乱して、妹紅は熱気とは逆の涼しい風に当たっていると

 

妹紅「……………、ッ!?」

 

風を切って何かが落ちてきてると気付き上を見ようとした瞬間、目の前その何かが落ちてくる

その時、妹紅は落ちてくるものが目の前に現れた時、まるでスローモーションのように遅く落ちてきてるように感じた。

見た色は白と赤。

真っ白で華奢な体に見てるだけで痛くなるような傷から真っ赤な血が流れていた。

でも、その落ちてきてた何かは人の形をしていて頭から落ちてきてた。けど、その人の形をしたものは頭上に天使の輪があり背には真っ白な翼を生やしてた。

 

そして、その天使のような人の形をした者が地面に衝突する数秒とゆう所で、カッ、と赤い眼を開く。

すると頭から落ちてきてる体勢を立て直し、ドンッ!としゃがむ形で地面に着地する。

 

妹紅「(月のヤツらか……?いや、それよりこいつは敵なのか!?)」

 

目の前で落ちてきた者にもう頭上に天使の輪のようなものや背に白い翼はなかった。

だが、だ。

何者か知らないので警戒する。

しかし

 

白い者が立ち上がる。そして、糸が切れた様に倒れ込む。

 

妹紅は倒れた者に少しずつ近付く。

多分少年だろうか、パット見たら中性的な見た目をしてるが、よ~く見ると男のように見える。

 

妹紅「お、おーい。生きてるか?」

 

声を掛ける。

でも、返事はしない。

 

妹紅(まあ、とりあえず永遠亭に運ぶか……)

 

敵だったら倒せば良い。と自分の中で決め白い少年を横抱きし永遠亭に運ぶ。

 

 

白い少年を永遠亭に運び

 

妹紅「おーい!!怪我人持ってきたぞーー!!」

 

永遠亭に入り大声で人を呼ぶ。

 

鈴仙「はいは~い早く運んでくだ_______っ!?一方通行!!??」

 

面倒くさそうに歩いてきた鈴仙は妹紅が抱えてる人を見た瞬間、慌てて近付く。

 

鈴仙「なによこの怪我!?師匠!お師匠様!!」

 

永琳「どうしたの鈴仙?……これは…………ッ!?」

 

慌てて声を上げて自分のことを呼ぶので小走りで鈴仙の声のする所に行く。そして見たのは鈴仙と同じ

自分達を助けてくれた、外来人。一方通行、だった。

 

鈴仙「これ、治りますか………?」

 

心配。そう顔に書いてあるかのように目頭に涙を浮かべる鈴仙。

 

永琳「そんな事を考える暇があったら手術の準備をしてきなさい!!妹紅ちゃん早く医療室に運んで!!」

 

妹紅「あ、ハイ!!」

 

珍しく大声で話す永琳に驚くが、とりあえず医療室に運ぶ。

そして、先程叱られた鈴仙が手術の準備をして待っていた。

 

もう、ここからは自分の出番はない。だから白い少年を手術用のベットに置き部屋を後にする。

 

その後、手術は成功したらしい。それ以外は知らない。

でもとりあえず幻想郷は救われたと聞いた。

救った者の名は一方通行。自分が運んだ少年だ。

だからと言ってその少年と会話なんてしてない、まあ永遠亭に居るらしいが。

 

 

そして、この幻想郷に平和とゆうものが訪れる。

妹紅はその平和の日常を迷いの竹林で過ごしてた。

だが、永遠亭に用があり寄ると

 

妹紅「ッ、お前……私が運んだヤツか。元気、じゃ無さそうだな」

 

一方通行「あァ?……」

 

頭や体に包帯を服の上から巻き、そして左手で木製の杖を突いていた白い影、いや一方通行と出会う。

 

一方通行「オマエ……、藤原妹紅か?」

 

妹紅「あ、ああ。そうだが。何だお礼か?」

 

一方通行「そンなンじゃねェよ。ただオマエに用があっただけだ」

 

そう言うと一方通行は妹紅に近付き、手を掴む。

 

妹紅「え?……なにを…」

 

一方通行「とりあえず外に出ンぞォ……」

 

逃がさないように妹紅の手を掴み永遠亭を出る。そして迷いの竹林のなかを歩く。

 

妹紅「おっ、おいったら!!乱暴過ぎるぞ!!」

 

呆気に取られてたが気をしっかり持ち足を止める。すると一方通行も足を止め舌打ちしてこちらを向く。

 

妹紅「用があると聞いたが何のようなんだ?……というか何で外に出たんだ?」

 

一方通行「オマエ、この迷いの竹林に詳しいンだろ?だったら俺に迷いの竹林の道を教えやがれ」

 

妹紅「それが人に頼む態度か」

 

一方通行「オマエが何て言おうと道を教えなきゃ俺達この竹林で行き倒れだぜ?」

 

妹紅「…………そうか、成る程。お前頭良いな」

 

意地悪そうに笑う一方通行。

妹紅はその白い彼の言葉を理解しうっすら微笑む。

 

一方通行が言ったこと、

それは迷いの竹林の中に入ってしまえば嫌でもこの迷いの竹林の道を案内せざる終えない。

 

そうするため、強引に妹紅を連れ出した。

 

一方通行「で、どォするよ?」

 

妹紅「……………はぁー。分かった分かったよ。案内するよ」

 

でもその前に、と繋がれた手を前に出して

 

妹紅「この手を離してくれ」

 

一つ、一方通行に誤算がある。

それは行き倒れるのは二人ではなく一人。一方通行だけだ。

一方通行は永琳から妹紅の情報を聞いたがそれは瀕死の自分を運んでくれたと白髪(銀髪?)と眼が赤く肌が真っ白だとしか聞いてない。

だから一方通行は妹紅が不死身と知らないのだ。

けど妹紅はそれを知っていても迷いの竹林に連れ出された自分の負けだ。と彼女は自分の中で呟き、了承する。

 

そして了承条件として手を離せと言うが

 

一方通行「ふざけンな。今、オマエの手ェ離してどっかに行かれると情けねェ話。俺ァこの竹林で迷っちまう」

 

妹紅「そんな事しないよ。だから__________」

 

一方通行「はァ……。話す暇ァあったら早く道を案内しろ。永琳に黙って出た事バレたら面倒だ」

 

妹紅が話してる途中に一方通行は自分の事を話す。

はあ、どうやら彼は俺様系らしい。だから何を言おうと聞いてくれないだろう。と妹紅は思い少し照れくさいが彼と手を繋いで迷いの竹林を案内しようと決めた。

 

それからちょいと小話をしながら二人は歩いていく。だが、妹紅は急に足を止める

 

一方通行「………、あン?」

 

急に止まるから一方通行も止まる。そして妹紅の方を向く。

すると彼女は少し悲しそうに

 

妹紅「やっぱり手を離しなよ……」

 

一方通行「…………?」

 

妹紅「化け物と手なんか繋ぎたく無いだろ?」

 

一方通行「……………、」

 

妹紅「私は不死身の化け物だ。腕が切断されようが顔が吹き飛ぼうが心臓が潰されようが何事もなかったかのように傷は再生し決して死なない。オマケにそこらの妖怪なんて数秒で灰に出来るチカラを持ってる…………」

 

無意識に手に力が入ってしまう。

 

"不死身"。

 

それは持って無い人からするとまるで夢のようだろう。

 

だが、それを手に入れた人からすると

 

 

 

______________ただの悪夢だ。

 

 

 

周りの皆は不死身の自分を受け入れてくれた。

しかし、普通の人間が彼女の事を知ったら気持ち悪いと言って引いて行くだろう。

それを妹紅は誰より自覚してた。

だから自分を"化け物"と、"異質な生物"として認めていた。

 

妹紅「…………な?だから手を離した方が良い。大丈夫だちゃんと案内するさ」

 

悲しい表情で笑う妹紅に一方通行は、

 

一方通行「…………くっだらねェ」

 

と、詰まらなそうに一言吐き捨てる。

 

そして、

 

一方通行「不死身ィ?妖怪を数秒で灰にチカラァ?ハッ、だからなンだよ?それで自分は化け物ですってかァ?何言ってやがる______」

 

ただ真っ直ぐに自分を化け物と蔑む妹紅の眼を一方通行は見て

 

一方通行「_______オマエはオマエだろ。それ以外の何者でもねェだろォがよ」

 

妹紅「____________ッ!?」

 

白い少年の言葉が妹紅の悩む心に突き刺さる。

 

妹紅「私は不死身なんだぞ。怖いとか気持ち悪いとか思わないのか………?」

 

一方通行「別に何とも思わねェよ。へェ、そォですかァぐらいだ」

 

その時、だった。

妹紅は自分の中にある何かが弾けた音を感じた。

 

何かが吹っ切れた、

 

そんな気がした。

 

 

 

妹紅「…………ははっ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

 

 

一方通行「あン?」

 

妹紅「くくくっ、ああ、すまない突然笑って。いやなんかつい……な」

 

笑いすぎて思わず眼に涙が浮かび、それを片手で拭う。

 

一方通行「何か知らねェが手は離した方がイイのかァ?」

 

妹紅「いやいや、良いよ。離さないでくれ」

 

ニコッ、と楽しそうに微笑み前に歩む。

すると一方通行も杖を突き歩く。

 

そして、

 

妹紅「さ、案内再開だ。っと言いたいが一つ聞きたい、お前の名は何て言うんだ?」

 

一方通行「アクセラレータ。覚えなくてイイ」

 

妹紅「フフっ、覚えとく_____」

 

もう一方通行は前を見てた、だから顔を赤くしてもバレ無いだろう。

と、言っても。もしかしたらもう顔が赤くなってるかも知れないな、何とも言えないこの気持ちが表に出てしまって。

 

その後妹紅は先の台詞の続きを口の中でこう呟く。

 

妹紅「(____________好きヤツとして)」/////

 

それから二人は迷いの竹林の中を歩いた。

 

そして、一方通行は完璧に道を把握し妹紅に礼を言い去った。

 

その後、永遠亭に帰ると永琳と鈴仙に勝手に出歩いた事がバレて滅茶苦茶怒られた事は内緒の話だ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妹紅「_______________って事があってな。それから、そのっ…………」///

 

一方通行との話を全て話した。

 

慧音「へえー。そうか、それは良い出来事だったな」

 

思い出して頬を赤く染める妹紅。

それを慧音は嬉しそうに見た後、空を見上げる。

そして妹紅に視線を戻す。

 

慧音「……が、妹紅。アイツには気をつけなよ、何か恐ろしいチカラを持ってるぞ」

 

その時の慧音は真剣な顔であった。

そう、妹紅の話を聞いても彼女は決して忘れなれない。

 

あの薄暗い細い道で起きた恐怖の出来事を。

 

 

妹紅「……はあ。あのなあ慧音______」

 

 

_______そんな事、私はとっくに知ってるぞ、

 

と、空気が重くなる声で言う。

 

慧音「知ってても………怖くないのか一方通行を?」

 

妹紅「怖い?……ああ、怖いな。あいつが離れてしまったらと考えると」

 

慧音「…………、相当惚れ込んでるな妹紅」

 

妹紅「ああ。あの時、迷いの竹林で私の心を奪った時からな」

 

何を言っても無駄だ。

彼女の瞳は真っ直ぐに一方通行を見つめてる。

 

それを変える事なんて誰にも出来ない。

 

慧音「まあそれは良いが。多分ライバル多いと思うぞ?」

 

妹紅「あー……そう、だろうな。あの様子じゃもしかしたらとんでもない数フラグ立ててそうだ」

 

はははっ、と乾いた様に笑う。

 

慧音「そのフラグを立てられた者達に知り合いが居たりしてな」

 

妹紅「………それは最悪だな」

 

今はあれこれ考えるようりも、とりあえず友と茶を飲みのんびりするとしよう。

 

 

そう、今後もし修羅場の中へ飛び込むかもしれないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行は人間の里から飛び立ち、直ぐに博麗神社に着いた。

 

一方通行「よォ、霊夢」

 

こころ「…………………」////

 

霊夢「……………」

 

毎日神社の縁側に座り温かいお茶を飲んでゆっくりしてる博麗神社の巫女、博麗霊夢。

そんな彼女の前に突然空から現れたのは頬を染める少女を抱える一方通行で、、、

 

霊夢「……あー、とりあえず一方通行。十回死んでくれる?」

 

一方通行「なンでだよ」

 

霊夢「とりあえず、よ(この鈍感)」

 

一方通行「チッ。とりあえずで死ンでたまっかよクソッたれ」

 

霊夢「まー、そうでしょうね。さっきのは半分冗談だから忘れてちょうだい。さて、アンタが此処に来た理由でも聞こうかしら。座ったら?」

 

タンタン、と縁側を叩く。

すると一方通行はこころを自分が座る横に座らせ自分は霊夢の横に少し距離を座る。

 

霊夢「で?今回はなんの用なの?」

 

一方通行「オマエ、こンなの持ってねェか?」

 

ポケットから黒い玉を取り出し霊夢に見せる。

そしたら

 

霊夢「それ………、私持ってるわよ五つ程」

 

一方通行「そォか。なら話は早ェ、オマエの待ってるモン五つ全部寄越せ」

 

霊夢「?……別に良いけど理由聞いても?」

 

一方通行「オマエにゃ関係ねェことだ。首を突っ込むな」

 

霊夢「…………ハイハイ。分かったわ、今からそれを持ってくるわね」

 

手に持つ湯飲みを縁側に置き立ち上がる。

そして、神社の中へ入って行った。

が、直ぐに持ってきた。

 

 

紫色の布で包まれた黒い玉を。

 

 

霊夢「ハイどうぞ、私の知り合い達が見付けるとこの神社に持ってきた物よ。本当は香霖堂(こうりんどう)に持ってこうと思ったけど……」

 

そう言いながら霊夢は一方通行の膝の上に紫色の布で包まれた黒い玉を置いた。

 

一方通行「あァ?香霖堂?なンだそりゃ」

 

霊夢「あれ?アンタ魔法の森行ったのよね?」

 

一方通行「魔法の森ィ?」

 

霊夢「嬉しそうに魔理沙が言ってたわよ……って、何よこころ」

 

二人が自分の存在を無視して話してるからこころは一方通行の影からひょっこり、と霊夢を無表情で見る。

 

こころ「弾幕ごっこじゃ負けたけど…………。これは負けられない」

 

霊夢「へぇ~、そう。別に良いわよそんなヤツ興味無いし」

 

こころ「じゃあ私が貰うね。ツンデレ娘」

 

霊夢「誰がツンデレ娘よッ!!この万年ポーカーフェイス!!」

 

一方通行「おいコラ。話の腰を折ンじゃねェよこころ。っつゥかオマエら何を話してンだァ?」

 

こころ、霊夢「何でも無い!!(この鈍感が!!!)」

 

一方通行「あァ……?」

 

まあともかく五つ黒い玉を貰ったから一方通行は自分の持ってる黒い玉を二つ紫色の布に包み、布に合計七つ包むことになった。

そして立ち上がる。

 

一方通行「まァこれ貰ってくぞ」

 

霊夢「いいわよ。あっ、香霖堂はね、魔法の森の入り口ら辺にあるから暇があったら行ってみなさい。魔理沙に連れられた森が魔法の森よ」

 

一方通行「そォかい………。紫ィ全部集まったぜェ!!」

 

突如大声で叫ぶ一方通行にこころは無表情で驚く。が、霊夢は"紫"とゆう言葉に驚く。

 

霊夢「……ちょっと待ちなさい。それを集めた理由って紫に頼まれたから?」

 

一方通行「あァ……まァ、そォだな」

 

霊夢「少し嫌な予感がするわね。ねえ、それ_________」

 

 

 

 

話が途中で途切れた。

 

理由は簡単だ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

首根っこを掴まれスキマに引きずり込まれ、にとりの開発施設に無理矢理移動させられた。

 

一方通行「…ッ……クソっ、この俺を首根っこ掴ンでスキマに引きずり込むとは随分楽しい事してくれンじゃねェか……!御礼にミンチにしてやンよ、紫!!」

 

紫「そんな御礼は要らないわ。私が欲しいのは貴方が持つ"それ"よ」

 

一方通行が持つ紫色の布で包まれた黒い玉に指を差し話す。

すると、一方通行は舌打ちし紫に向かって黒い玉をつつんだ布を投げる。

 

紫「はいご苦労様。じゃあ河童を呼ぼうかしら」

 

パシッ、と綺麗にキャッチしてにとりを呼ぶ。

 

にとり「…呼んだー?あ、盟友お帰り」

 

奥の部屋から扉を開けて、にとりが手に近未来の装飾された両手で持てる四角い箱を持って来た。

 

紫「さて、これを使って一つの黒い玉を直してくれる?」

 

にとり「うん……じゃあこれに全部入れて」

 

四角い箱の上を開き前に出す。

 

一方通行「あァ?オイ待て。そりゃ解析装置だ、直すなンて機能ねェだろ」

 

にとり「ふっふん。実は盟友があの玉を探してる時に改造して解析と修復が出来るようになったんだよ」

 

一方通行「そォかい。俺はてっきりオマエらは俺が玉探してる時仕事してねェと思ってたが、そォでも無かったらしィな」

 

にとり「うん。紫と一緒に新しい装置を造ってたよ」

 

一方通行「紫と?……そいつは一体____」

 

紫「それは後で話すわ、だから早くしなさい」

 

一方通行の言葉を遮る。

にとりは紫に言われて慌てて黒い玉を七つ解析装置に入れた。

 

ピー…ピー…ピー…ピピっ。

どうやら修復と解析が終わったと考えられる。

 

にとり「解析完了!……さてさて………」

 

今、自分達が解析した物は幻想郷を崩壊させかけた物だ。

でも、わくわくしてたので少し微笑みながら解析装置の前にある画面に解析を見る。

そして映ってた結果は

 

にとり「力増幅機……?」

 

画面に映ってた結果はこうだ。

この機械の中に魔術が仕組まれておりこの機械が体内に侵入しその生物の、能力などをぐんと上げ進化させます。

この黒い玉の機械は生物の体に傷一つ着けず、更に違和感すら感じさせず体内に侵入出来る性能を持っています。

この二つが合わさり一つになった物がこの黒い玉です。

まあ簡単に言うと力増幅機ですね、これ。

 

にとり「______________だって」

 

解析結果を全て話す。

 

一方通行「…オイ紫。魔術って何だ」

 

紫「貴方の世界じゃ魔法を魔術と呼ばれてるのよ」

 

一方通行「っつゥ事はあの黒い玉は魔法と科学が合わさって出来た物か」

 

紫「……ええそうね。ふう。何か秘密でもあるかと思ったらただの力増幅機、ね」

 

八雲紫は解析結果を聞いて詰まんなそうであった。

 

一方通行「まァ黒い玉のせいでアイツらの能力名から『程度』ってのが消えたのは分かったが。紫、力を増幅する魔術なンて都合良くあンのかァ?」

 

紫「貴方の世界に魔道書が何十万冊あると思ってるの?そしてその一冊の魔道書に何百の魔術が書かれてると思ってるの?」

 

一方通行「ハッ……俺ら学園都市に住むヤツらはオカルトから離されてたって事かよ……」

 

魔道書。魔術。自分が生きて来て初めて聞いた言葉。

それを知らずにのうのうと過ごしてた自分に

自分の居た世界にもオカルトの力があった、だがそれに触れずに最強気取ってたあの頃の自分に

とても、とても、とても、とても、腹が立つ。

 

紫「まあ魔術を知らなかったのは無理も無いわね。貴方達学生に魔術に触れさせない様にしてたのはアレイスター=クロウリー、その人だからね」

 

一方通行「チッ……あのクソ野郎。どこまで世界を弄ってンだァ」

 

紫「さあ?それが分かったら苦労しないわよ」

 

一方通行「…………クソったれ」

 

と、吐き捨てる。

今やっと黒い玉の正体を掴んでも良い情報何て無かった。

一方通行は自分がやった事は無駄だったと思ってしまう。

 

紫「…………、っ!?(予想より早く動いたわね……)」

 

この場の空気が重くなる中、紫はこれからの事を考えているとある場所に何かを感じる。

 

紫「一方通行。悪いけどもう一回頼まれてくれる?」

 

一方通行「あァ?……。あァ別に構わねェよ」

 

紫の真剣な顔を見て断る気になれなかった。多分、また学園都市と関係があるかも知れない。

なら、やるしかない。

 

紫「じゃあ私からの頼み事はこの手紙に書いてあるから、霊夢と一緒に読んで」

 

手元にスキマを造り手を突っ込み、白い折り畳まれた紙を取り出す。

そしてその手紙を渡し博麗神社と繋がるスキマを一方通行の前に造る。

 

一方通行「霊夢と、か。ならこのスキマは博麗神社に繋がってンのか」

 

紫「そうよ」

 

一方通行「チッ、面倒くせェ。が、ンじゃまァ行って来ますかァ」

 

にとり「待って!!!」

 

一方通行「あン?」

 

前にあるスキマに入ろうとした瞬間、にとりに呼び止められ足を止めた。

 

一方通行「なンか用か?」

 

にとり「うん。解析結果がまた表れたの。一つは黒い玉が一定の時間体内にあると死んでしまう、そして二つめは_________________」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「……さっき振りだな、オマエら」

 

霊夢「急に消えてビックリしたわよ」

 

こころ「私もー」

 

無事、博麗神社にスキマで移動し着いた。

すると、霊夢もこころも縁側に座って待っていてくれた。

 

霊夢「アンタ、紫と何やってるの?」

 

一方通行「それはこれが終わったら話してやる」

 

そう言いながら、手に持つ折り畳まれた白い紙を見せる。

 

霊夢「コレ?何をやるの?」

 

一方通行「さァな、俺にも分かンねェ。だからこの紙を読ンで理解すンだ」

 

こころ、霊夢が近くに来た。

すると一方通行は紫に渡された手紙を二人が見える様に開く。

 

 

そして見た内容とは、

 

 

こころ「……これ、本当?」

 

霊夢「ホント冗談キツいわよ、紫」

 

一方通行「………あの(アマ)、相当面倒な事俺達に頼みやがったな」

 

 

 

 

手紙にはこう書いてあった、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今から数分後に完全に暴走した妖怪、十万が人里に押し迫る。

 

その暴走者を全て撃退せよ。

霊夢と一方通行は強制参加☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそして。

 

これから数分後に幕を開ける。

『人里完全防衛戦』と、言うなの激しく残酷で血が飛び散るただの地獄が

 

 

 

 

 









一方通行。キミはその血に汚れた手で人を本当に守る事が出来るのか?





地獄まで、後…………数分


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20話

はい、前回で何で妹紅にフラグが立ってるか分かりましたね
……っと、言っても妹紅には興味無かったですか?

さてさて、皆さんに言いたい事はいっぱいありますが
また1ヶ月もまたしてしまったので言いたい事はしたのあとがきに書きます。


多分、誤字や脱字があります。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。










手紙に書いてあった事を読み、こころと霊夢は流石に驚かずにはいられ無かった。

しかし、一方通行はただ面倒くさそうに舌打ちをするだけだった。

 

霊夢「どうする一方通行?」

 

一方通行「クソったれ……。強制参加なンて書いてようが俺は断る」

 

だが、と頭を掻いて

 

一方通行「あのクソ野郎の計画は全てこの俺がぶっ潰すっめ決めててなァ………」

 

霊夢「アンタが言うそのクソ野郎ってのは、あの地獄のような異変を起こしたヤツで良いのよね?」

 

一方通行「あァ」

 

霊夢「そう………。まあ、ともかくやるの?」

 

一方通行「ハッ……、やってやるよ、徹底的にな」

 

こころ「私もやるよ!!」

 

頭の仮面が狐の仮面に変化させ、手を上げる。

すると何故か一方通行は口角を上げてニヤっと笑っていた。

そして、こころに近付く。

 

こころ「?」

 

一方通行「オマエも参加すンのか?」

 

こころ「うん!!」

 

顔は無表情のままだ。

だが、心の中では笑っているように感じた。

一方通行はやる気満々のこころの頭に手を伸ばし、撫でてあげる。

 

そして。

 

一方通行「_________悪ィな」

 

こころ「えっ?___________ッ……!!」

 

突如こころは意識を失い膝から崩れ落ちる。が、しかし一方通行は地面に倒れる前に横抱きし、無事地面に倒れる事を防ぐ。

 

霊夢「アンタ……、なにをしたの?」

 

一方通行「気絶させた」

 

霊夢「なんで?こころにそんな事する必要ないでしょ?」

 

一方通行「あァ、そォかもしれねェな」

 

こころを縁側に目覚めないようにそっと置き部屋の奥にあった薄く赤い布を風のベクトルを操り自分に向かって飛ばす。

そして、その布を見事キャッチしてこころに掛けてあけげて、その上に腕に装着してた発見装置を置く。

 

霊夢「ふーん……。その子には結構優しいのね」

 

腕を組んで一方通行の行動を見ていた霊夢。

 

一方通行「チッ……。俺はただ、ガキが戦いの表に出るのが邪魔だから寝かし付けただけだ」

 

ポケットに手を突っ込み霊夢の方へ向く。

 

霊夢「ハイハイ、分かった分かった」

 

一方通行「霊夢。オマエは参加すンのか?」

 

霊夢「やるに決まってるでしょ。異変解決は私の役目よ」

 

一方通行「そりゃあご立派なこったァ」

 

霊夢「でも二人でってのは無理過ぎない?相手は十万でしょ?」

 

一方通行「人数は心配無用だ。どォやら紫が手伝ってくれるヤツをスカウトして来るらしい」

 

霊夢「あの紫がそんなことをねー。意外っちゃあ意外だけど、今回ばかりはありとあらゆる物を利用しなきゃダメだもんね」

 

一方通行「この紙はもォゴミだな」

 

紙をくしゃくしゃに丸め込み博麗神社の一室のリビングにあるゴミ箱に向かって投げ入れる。

 

一方通行「とりあえず霊夢、人里の奴らに家に入れって言ってこい。だが妖怪には何も言うな」

 

霊夢「え?」

 

一方通行「多分、人里の妖怪は全て暴走者だ」

 

霊夢「っ!?……何、言ってるの……?」

 

一方通行「はァ~……説明してやるからちゃンと聞けよ……」

 

ため息を吐き、一方通行は霊夢に説明する。

博麗神社に向かおうとした瞬間、にとりに呼び止められ新たな解析結果を言われる。

一つはアレイスターが言ってたように黒い玉が一定の時間、体内にあるのその生物は絶命する。

次に二つ目だ。それはとても驚く結果だった。

何と、あの黒い玉はタイプは二つあるとゆう。それに気付けた理由はあの集めた黒い玉の七つの中に一つ、違う設計をされた物が混ざっていたから。

一つのタイプは普通の力増幅機だ。だが、もう一つのタイプはスイッチであの黒い玉の効果が作動する仕組みだと言う。

にとり曰くタイプ2は、その黒い玉が作動するスイッチを押すと起動し能力や力を増幅させる。そして多分暴走させるのだろう。

だが、問題は一つ。

スイッチを押さない限り黒い玉は起動せず、ずっと暴走しないでその生物の体内にあるとゆう事。

つまり、暴走しない限り暴走者と分からないので見付けようにも見付けられない。

 

霊夢「……だけど。それで何で人里に居る妖怪達が暴走者だって言うの?」

 

一方通行「勘だ。だがこの勘が正しけりゃ、暴走させるスイッチは多分、里に向かって来てる暴走者達だ」

 

霊夢「…………分かったわ。妖怪達には何も言わず人間達を家に避難させるわね」

 

そう言うと家から霊夢は陰陽玉、お祓い棒、封魔針、お札などを持ち出した。

そしてそれを服の中にしまい、人里に向かって飛び立った。

 

一方通行「後、数分後か」

 

風に吹かれながら霊夢が飛んで行った方へ視線を向ける。

 

一方通行「守ってやる。あのクソ野郎の計画からアイツらを!!幻想郷を!!」

 

彼は眼を鋭くさせて再度、強く心に誓う。

自分が悪党だとしてもクズだとしても、守ってみせる。

 

 

例え、それで俺が朽ち果てても。と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうすっかり人里には人影は無かった。

物凄く早く、霊夢が家に避難させてくれたんだろう。

 

そしてその避難させた霊夢はというと。

 

霊夢「…………ふぅ」

 

里の大通りのド真ん中で手にお祓い棒を持ち腰に両手を当てて立っていた。

そしたら霊夢に人間を家に避難しろと命令をした男、一方通行が目の前三メートル付近に空から着地する。

 

霊夢「アンタの言うとり人間全員家に入ったわよ」

 

ふん、と鼻から息を吐き一方通行の隣に移動した。

 

一方通行「ご苦労ォ」

 

霊夢「何かムカつくわね。まあ、いいわ。アンタに報告する事があるわ」

 

一方通行「あン?……報告だと、言ってみろ」

 

霊夢「ええ、一つ目はこの里に居た私達と同じ特殊な能力を持ってる人達にね、私はもしも暴走者が里に入ってしまったら退治してと言ってきたわ」

 

一方通行「イイ判断だ。だが、そいつらは一体どンな奴らだァ?」

 

霊夢「一人は寺小屋の先生と、もう一人はその友達の不死身の案内人」

 

一方通行「慧音と妹紅か……」

 

さっき出会った二人との情報が一致したため、その二人の名を、呟く。

 

霊夢「ふ~ん……、あの二人とはもう会ってたのは良いけど、何もして無いでしょうね?(フラグ立てる的な意味で)」

 

一方通行「何もしてねェよ。で?それだけか報告ってのは」

 

霊夢「いいえ、二つ目もあるわ。それが結構面倒と言うかラッキーと言うか……」

 

一方通行「なンだよ、早く言え」

 

困ったように笑いながら手を弄る霊夢。

 

霊夢「えーっと………里に居た妖怪何だけど。人間が慌ててるのを見て、里から出て行っちゃった☆」

 

一方通行「…………、」

 

霊夢「そんな目で見ないでよ。私だって結構頑張ったのよ?」

 

無言でギロッ、と睨まれ頬に冷や汗を流しながら言い訳をする。

そしたら一方通行は深いため息を吐き

 

一方通行「まァ…オマエの言ったとうり、ラッキーって事にしておいてやる」

 

スイッチである人里に迫りくる暴走者を、里内に居る妖怪達に近付けないようにしようとしたが。

この計画が崩れた。しかし、これが逆にラッキーだ。

だって里内に居た妖怪達と迫り来てる暴走者が会えば、妖怪達は暴走して固まって一斉に人里に向かってくる。

つまり簡単に一掃できると言う事だ。

だが、上手くいけばの話だがな。

 

霊夢「そうしときなさい」

 

一方通行「オマエ、ナニ様?」

 

大きな態度をとる霊夢にイラっとし、ゆらりと首を傾げる。

そしてやっぱり一発ぐらいは殴ってやろうと思った瞬間、この場にもう一人登場する。その者とは

 

ウェーブがかかった金髪に、片側だけ垂らした三つ編みに白いリボンの付いた黒い三角帽子。そして白ブラウス・黒系の服、白いエプロンを着た少女。

 

霊夢と会ってから次に一方通行が会った人物。

 

魔理沙「よーうっ二人とも!!この私、霧雨魔理沙が参上だぜ!!」

 

大きな声が上から響き渡る。

そして、一方通行と霊夢は声のする方へ向く。

すると空中に浮いてる箒の上に立っている魔女っ子、魔理沙の姿を発見する。

 

霊夢「魔理沙来てくれたの!?」

 

友の姿を見て、思わず嬉しくなってしまった。

 

魔理沙は箒の高度を少しずつ下げながら霊夢達に近付き、地面付近に箒が着くと飛び降りた。

そしてふわふわと降りてきた箒を手に持ち、片手で持ったまま地面に立てる。

 

魔理沙「おうよ。紫が手伝ってくれーっ、て言うから仕方が無くな」

 

霊夢「そう……、でも何を手伝うか分かってる?」

 

魔理沙「ああ勿論だぜ。この里に暴走者が十万くらい来るんだろ?全く、まだ居たとはな…………」

 

霊夢「ええ私も暴走者がまだ居たとは驚いたわ。しかし十万よ?大丈夫?」

 

魔理沙「心配御無用、大丈夫だぜ。一応アリスも呼んである。多分その内着くだろうぜ」

 

霊夢「だとしても…………ねえ」

 

一方通行「考えて込むのは後にしろ霊夢。魔理沙、オマエはどォする?」

 

魔理沙「ん?何をだ?」

 

一方通行「俺達がやンのは防衛戦だ。そして守る所は二つある。一つは表で、もう一つは内側。つまり里の中だ」

 

魔理沙「ハハハっ!!決まってるだろ、私は表を守る」

 

霊夢「なら私も表を守るわ」

 

一方通行「と、なると表は三人か……、後一人欲しいなァ」

 

自分は絶対表、と決めてたから数に入れる。

しかしこの里は上から見ると四角い。

だから最低四人は必要だ。でも、今居る人数は三人。

慧音や妹紅には里内を守って欲しいから数に入れられない。

どォする。そう考えてると

 

「なら……私が後一人になりましょうか?」

 

またまたもう一人に来た。

三人は声のする後ろに振り向くと

 

少し遠い距離に

銀髪のボブカットで、もみあげ辺りから三つ編みを結っている。そして青と白の二つの色からなるメイド服であり、頭にはカチューシャを装備してる紅魔館のメイド長

 

一方通行「……あン?」

 

霊夢、魔理沙「「咲夜!?」」

 

十六夜咲夜がそこに居た。

 

咲夜「どうも皆様お久しぶり。里がピンチと聞いてお嬢様が行けと命じたため、しょうがなく来たわ」

 

手でスカートの裾、両方を摘まみ上げ。腰を少し低くして丁寧に挨拶する。

 

霊夢「まさか。アンタが来るとはねー……」

 

魔理沙「意外過ぎるぜ……」

 

咲夜を良く知る二人は驚きを隠せずにいた。

 

一方通行「そンなのはどォでもイイ。咲夜、オマエさっきの言葉は本気か?」

 

咲夜「ええ…本気よ。後、それと少しの時間でパチュリー様が応援に駆けつけて下さると思うわ」

 

この場に集まった者達は

一人は最強の巫女、もう一人は幻想郷最強の能力者、もう一人は最強の魔女、そして最後の一人は最強のメイド長。

今、此処に錚錚たるメンバーが集まる。

 

魔理沙「おいおいパチュリーが来るのか?ははっ!雨でも降りそうだぜ」

 

霊夢「パチュリーが、ねぇ。良く来る何て言ったわね」

 

咲夜「本当はお嬢様と妹様が来る筈だったけど、御二人は日の光に当たると不味いから」

 

一方通行「そりゃ吸血鬼だならなァ…日に当たったら大問題だ。っつゥか、あの二人が来たら追い返すがなァ」

 

魔理沙「何でだ?あの二人凄く強いぜ?」

 

一方通行「ガキは邪魔なンだよ……、そろそろ始まる所にはな」

 

咲夜「言っとくけどね一方通行。貴方よりお嬢様達は歳が遥かに上なのよ」

 

一方通行「俺がガキっつってンのは容姿と中身だ」

 

霊夢「容姿には目を瞑りなさいよ、吸血鬼なんだ______ 」

 

久々に再開し、話してるなか突然

 

「ガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

と、轟く雄叫びを四人は耳にする。

 

一方通行「………来やがったなァ、クソ野郎どもが」

 

霊夢「その様ね……」

 

魔理沙「少しの会話も許してくれないらしいぜ。お客さんたちは」

 

咲夜「そう。ならそのお客様を全て消してから、ゆっくりと楽しい会話でもしようじゃない」

 

とても重く張り摘めた空気に変わる。

もう皆、完全に臨戦態勢に入った。

 

一方通行「さァてと。じゃあ誰がどこ行くか決めンぞ」

 

霊夢「じゃ、私は南」

 

魔理沙「私は東だ」

 

咲夜「それじゃあ私は、西ね」

 

一方通行「と、なると俺は北か」

 

それぞれ、どこを守るか直ぐ様決めた。

 

本当にもう後、数分後に始まる。

たった数人でこのデカイ人間の里を守り抜く、防衛戦が。

 

一方通行「オマエら、持ち場につけ。もォ時間がねェ」

 

自分が向かう方角へ向いて話す。

すると咲夜が、

 

咲夜「ふふっ……時間が無い?大丈夫よ、私が移動時間を飛ばしてあげるわ」

 

霊夢「そんな事出来るの………、もう反則ね」

 

魔理沙「それをお前が言うか霊夢」

 

四人はもう自分が向かう方角へ向いていた。

 

一方通行「じゃあ咲夜。頼む」

 

咲夜「ええ了解。だけど時を飛ばす瞬間は一斉によ」

 

霊夢「ならカウントダウンをすれば良いじゃない」

 

魔理沙「そうだな。それじゃ私からいくぜ!!_______さんっ!!」

 

浮かした箒に跨がりニッ、と笑う。

 

霊夢「_______にぃ!!」

 

身構え、体を能力を使用して宙に浮かす。

 

一方通行「________いィち」

 

面倒くさそうにしながら、首の関節をコキコキ鳴らす。

が、それが終わると赤い瞳をギラギラさせながら見開き口角を限界まで引き上げる。

 

咲夜「_______ゼロ!!!」

 

足に力を加えた時に言葉を発した。

 

瞬間、ヒュンッッッ!!!!と皆の姿が消える。

まるで音速レベルの何かに攫われたみたいに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「おォ…こりゃ楽だ。もォ着いちまってたぜ」

 

人間の里の北の方角の壁の外に、着いていた。

前を見ればやはり自然の景色が広がってる。

 

一方通行「……はっ、来たなァ。クソったれどもが」

 

百五十メートルぐらいだろうか。そのぐらいの距離に暴走者と見える者を目撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「……よ~っ、と。大分移動時間を飛ばしたな。結構早く着けたぜ」

 

勢い良く飛んでいて止まるのに苦労したが、何とか止まれた。

そして魔理沙は箒の高度を上げ、箒の上に立つ。

 

魔理沙「おー………結構居る、ってレベルの数じゃないぜ。あれ」

 

遠くが見えるように上半身を前のめりにする。

そしたら見えたのは一方通行と同じだ。

暴走者の群れ。それを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「今考えるとホント面倒よねー_____」

 

ふわふわと自分の持ち場で体を浮かせていた。

 

霊夢「____だってこんな数が、一斉に来るとは想像して無かったもの」

 

木を薙ぎ倒しながら里に進む暴走達。

それを見て霊夢はため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲夜「皆の移動時間。ちゃんと飛ばせたかしら?」

 

人間の里を囲むように建てられた壁の上にナイフを構えて立つ。

 

咲夜「_____って、考える暇はもう無さそうね」

 

音がする。聞こえる。

荒く、激しく、轟く、轟音が。

 

もう直ぐ近くまで来てるのだ、暴走者達が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれは確認した。

眼を光らせた、普通の妖怪より何倍も図体がデカイ

 

完全に暴走した妖怪、数千を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これより。人里、完全防衛戦が始まる。

 

一方通行「さァて!!ミンチになる覚悟は出来てンだよな!!クッソ野郎ォォ!!!」

 

もう暴走者達との距離は二十メートル。

 

一方通行はたった一発。地面を踏んだだけで、辺り一体をまるで下から突き上げたように振動させ衝撃波で吹き飛ばす。

 

暴走者達は遥か彼方に飛ばされた。

多分、頭から地に落ちて命を落とすだろう。

 

でも、その一発の攻撃を何とか回避した暴走者達はまだまだ居た。

でも、それがどうした。

その者達の前に塞がるのは幻想郷最強の能力者だ。

 

一方通行は一匹も里の入れず、向かってくる暴走者全てを原型が無くなるほどぐちゃぐちゃに裂いて、殴って、蹴り付けてみせた。

だが、百、二百、三百、と殺しても

何匹も何匹もまだまだ里に向かってくる。

 

一方通行「チッ………切りが無ェな」

 

まるで獣のように襲い掛かってきた暴走者の顔面を鷲掴みする。

その時、一方通行はある事に気付く。

 

一方通行「……あン?……コイツ、生体電気も血流もあンぞ……」

 

今掴んでる暴走者だけでは無い。完全に暴走した者。

つまり、一定の時間体内に黒い玉があった者達は死ぬと言われた暴走者だ。

だが完全に暴走した暴走者の心臓が動いてる。

 

一方通行「もしかしたら黒い玉が、体を動かすため生かしてンのかもしれねェな」

 

掴んでた暴走者の血流を逆にして内臓と血管を根こそぎ爆発させた。

反動で血が飛び散るが一方通行には一滴も付いていない。

 

一方通行「……考え込むのは後にすっか。今はコイツらを一気に片付ける事だけに集中だ」

 

両腕を大きく広げた。

そして出来たのは一帯を飲み込みそうな程巨大な竜巻。それが暴走者を中に吸い込み細切れにした。すると竜巻の色が血の色に染まる。

 

 

一方、魔理沙は

 

魔方陣を何個も展開して、一斉に発動させて暴走者達に白く光る弾幕を降り注がしていた。

 

魔理沙「どうだ!!これで少しは居なく………、ならないんだよなこれが」

 

空を箒で自由に飛び回りながら何度も何度も魔方陣を展開しては発動させて暴走者を消していた。

しかし数は減るどころか増えていく。

やはり本当に十万もの数が来るのかもしれない。

 

でも魔理沙は諦めない。もし、自分が諦めたら人間達が死んでしまう。

だから、と。戦い続ける。

 

魔理沙「魔符「ミルキーウェイ」!!食らえぇぇぇええええええッッ!!」

 

緑と青の星の形をした弾幕を魔方陣から放たれる。

まるで流れ星のように降り注ぎ暴走者の数を少し減らした。

 

魔理沙「…………。まだ居るか。弾幕はパワーだ!覚えとけぇぇぇぇ!!!」

 

箒をまるでサーフボードのように乗りこなし、背に巨大な魔方陣を展開する。

そして七色に輝く弾幕を乱れ打つ。

 

大地を揺らす勢いで弾幕は地に打ち付けられ、そこらに人一人がすっぽり埋まる穴を開けていく。

 

魔理沙「舐めるなよお前ら。私は結構強いぜ!!」

 

口を大きく開き、跳躍して魔理沙に向かって暴走者が来る。

でも魔理沙は逃げない。

スカートの中からミニ八卦炉を取り出し

 

魔理沙「そしてこれが今日最初の!!マスタースパークだ!!」

 

超極太の白く輝くレーザをミニ八卦炉から放つ。

するとレーザに当たった多くの暴走者達は塵と化した。

 

魔理沙「?……おー、一方通行も派手にやってるな」

 

一旦、箒を空中で停止させ物凄い音がする方向へ向く。

そしたら見えた物は超巨大な赤色の竜巻。

こんな派手過ぎる事、一方通行以外出来ないと考え台詞を吐く。

 

魔理沙「ははは、弾幕はパワーだが。派手さも必要だよな!!」

 

笑いながら魔理沙は箒に立ち乗りして、また空中を自由に飛ぶ。

そして里に近付く暴走者を片っ端に弾幕で撃ち抜く。

 

 

魔理沙が空中を自由に飛び回って戦ってる一方、霊夢は

 

 

霊夢「これでも食らいなさい!!」

 

片手にお祓い棒、もう片手に何枚ものお札を持ち地上を駆け抜けて戦っていた。

 

遠くに居る暴走者に向かって霊力を込めたお札を投げ付け、見事命中させる。

 

霊夢「ったく、こんだけ多い妖怪を相手にしたのは初めてよ」

 

一匹一匹は雑魚だ。でも束になって掛かってくると少し厄介。

一息つく間もなく暴走者は襲い掛かる。

しかし、霊夢はその暴走者全てを息を荒げる事なく次々と退治していく。

 

霊夢「…………ふっ。さあ、まだまだ掛かってらっしゃい、博麗の巫女が相手よ」

 

犬のように走り通り過ぎようとした暴走者を見ずにお札を投げ、命中させる。

 

余裕に戦う霊夢。

 

一方、咲夜は

 

咲夜「…………この里には、一歩も入れないわよ」

 

一瞬でナイフ何百本も投げ、全て暴走者の頭に直撃。

でも暴走者の数は何百とゆうレベルではない。

だから、その攻撃を掻い潜る者だって中には居たのだ。

 

しかし、咲夜はそれを許さない。

 

壁の上に立ちナイフを投げ続けていたが、それを避け近付こうものなら時間を飛ばしその者の背後に移動する。

そして

 

咲夜「______遅いわ。一秒も」

 

ナイフで首を()ねる。

するっ、と何をされたのかも分からない表情の暴走者の顔が地面に落ちた時にはもう咲夜は壁の上に戻っていた。

 

そう。

そうやって近付く者は直接して殺し、離れた者にはナイフを脳に向かって投げ付ける。

 

咲夜「……そろそろ体も暖まったし本気でいくわよ______」

 

ナイフを構え、眼を鋭く光らせる。

すると咲夜の周りには七色のナイフの形をした弾幕が出現する。

そして、手に持つナイフと弾幕のナイフ。その二つを一斉に放つ。

 

二種のナイフは其処らに生えてる木を貫通して暴走者の頭を貫く。

 

だが、一匹の暴走者が咲夜の目の前に来た。

 

「グガァァァァアアアアアアアアア!!!」

 

咲夜「______」

 

でも、襲ってきた暴走者の動きが止まる。

そして咲夜は落ち着いた様子でナイフを心臓に刺す。

その時、血は一滴も出なかった。

 

咲夜「貴方だけの時間を止めた。でも、ごめんなさい」

 

スタ、スタ、と。暴走者に背を向けて

 

咲夜「時間の針は再び時を刻む」

 

そう発言した瞬間、暴走者は刺された心臓から大量の血を吹き出し。壁から落ちて動かなくなった。

 

咲夜「……これは。メイドの仕事よりキツい仕事ね」

 

ある程度の暴走者を倒したが、まだ此方に向かって走ってくる影は何千と居る。

その光景を見て、流石に咲夜はボソッと呟いた。

 

 

一方。人里に、あの子が到着していた。

 

アリス「私は里の中を守れば良いのよね」

 

複数の戦闘人形を自分の周りに浮かせ、操っていた。

里の道を歩きながら呟く。

 

アリス「魔理沙……大丈夫かしら?」

 

魔理沙が守ってる所から里に入った。だから魔理沙が今、何をしてるか承知してる

一応、魔理沙に「手伝おうか?」と言うと。「アリスは里の中を守ってくれ!もしかしたら、私達が通らしちゃうかもしれないからな!」

と、一生懸命に戦いながらも言っていたので。里内を守ると決めた。

しかし、こう何も無いと少し退屈だ。

 

アリス「………やっぱり……」

 

手を握り、胸の前に持ってくる。

そして魔理沙が戦ってる方向を心配そうに見つめる。

 

その時だ。空から声がした。

 

「そんなに魔理沙が心配?アリス」

 

アリス「_______パチュリー!?」

 

声のした方へ向くと、まるで宙に寝転がってるように浮いてる、寝間着のような服を着た少女を発見した。

するとその少女はふわ~、とアリスの目の前に着地する。

 

アリス「……珍しいわね。貴方が外に出るなんて」

 

パチュリー「私は出たくて出たんじゃないのよ。レミィと咲夜がどうしても、って言うから仕方なく」

 

アリス「そう……。で、貴方も里内を守るの?」

 

パチュリー「ええ……咲夜が「私達が表を守ります。ですからパチュリー様は里内を」って言ってたから。多分そうね」

 

アリス「成る程。貴方は咲夜が守ってる所から来たのね」

 

パチュリー「そうよ。貴方は?」

 

アリス「魔理沙の所から」

 

パチュリー「へー…そう。しかし、後二人表を守ってるのは誰なのかしら?」

 

アリス「貴方、八雲紫から聞いて無いの?」

 

パチュリー「何を?」

 

アリス「多分…里内居ないから。紫が言ってた二人。霊夢と一方通行が表を守ってると思う」

 

パチュリー「八雲紫がそんな事言ってたの。って言うか霊夢と一方通行がねぇ」

 

アリス「何…貴方、一方通行と会ってたの」

 

パチュリー「ええ……前にね」

 

二人は会話した後。どちらが何処を担当して見回りするなどを話し合いで決めてそれぞれに別れた。

どちらも表で頑張って守ってくれてると知っていても、油断せず。警戒して里内を見回りしていた。

(パチュリーは、ふわふわと宙で寛ぎながら見回りをしてた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暴走者達が人里に向かって襲い掛かってきて、数分経った。

四方で里の表を守る四人は、まあ少し余裕がありながら防衛する。

 

一方通行「………あァ?第一ウエーブが終わったかァ?」

 

真っ赤な巨大竜巻を消す。

そして、大量の肉片と血が広がる光景に視線を向け呟く。

 

一方通行「_________ン?」

 

少しの休憩時間。

一方通行はポケットに片手を突っ込みあくびをした。

そしたら突然、目の前に空間の裂け目が出来る。多分、紫の仕業だろう。

しかしそんな事はどうでも良かった。

その裂け目から渡すように投げられた小さな物体が問題なのだから。

 

ひょいっ、と紫はスキマから少し手を出し一方通行に向かって小さな物体を投げる。

それを一方通行は一応キャッチした。

 

一方通行「_______こりゃァ……」

 

小さな物体を握った手を自分の前に持ってきて開く。

すると手にあったのは青い口元の所までマイクが伸びたイヤホン型の通信機だった。

それを一方通行は何か意味があると考え、右耳に着ける。

 

魔理沙『……これが何だって言うんだぜ』

 

霊夢『こう…かしら。このちっこいの、着けるの結構難しいわね』

 

咲夜『何か少し耳に違和感があるわ』

 

一方通行「________そォ言う事か」

 

魔理沙、霊夢、咲夜『『『えっ?』』』

 

一方通行は渡された意味を直ぐに察した。

でも魔理沙と霊夢、咲夜は耳に着けた謎の物体から遠くに居る筈の声を聞き驚く。

 

霊夢『えっ……と。私の声聞こえるの?』

 

魔理沙『お、おう…………』

 

咲夜『私も聞こえるわ』

 

一方通行「オマエら。未知の装置に混乱してると思うがまずは俺の話を聞け。多分、紫はこの通信機を使って遠い所からでも話が出来るようにしたンじゃねェか」

 

霊夢『何でそんな事を……?』

 

咲夜『理由は簡単よ。遠い所からでも話が出来れば、状況報告や会議が出来るでしょ』

 

魔理沙『そうか!それは凄い便利だな!』

 

一方通行「っつゥ訳だ。何か異常とかが起きたら報告しやがれ、分かったなァ」

 

霊夢、咲夜、魔理沙『『『了解』』』『だぜ』

 

一方通行「………で。来たか、第二ウエーブ」

 

地震が起きたように地面が振動する。

多分、超大人数の暴走者が里に向かって走って来てるのだろう。だが、この第二ウエーブには。

何と空を飛べる妖怪も混ざっていた。

だから次は空と地。二つを意識して戦わなくてはいけない。

それを四人は空と地から迫り来る暴走者を見て、理解した。

 

一方通行「________オマエらにもアイツら同様、天国への片道切符をプレゼントしてやるよォォォ!!!」

 

また、表で里を守護する者達は。

暴走者達、数万と衝突した。

 

所々から爆発が響き渡り、地響きが起こる。

多分皆、壮絶な闘いを繰り広げてるのだろう。

 

 

 

 

しかし、この防衛戦が始まって十分。

 

魔理沙「…………っ…………は……っ!!」

 

空を飛び回り上から弾幕を降り注がせ暴走者を倒してたら自分の正面から黒い弾幕が飛んできて、それと衝突してしまった。

 

空中で黒い爆発煙が起き、その中から魔理沙は箒と共に追い出され里内に打ち付けられたように落ちる。

 

魔理沙「……………………、や、ヤバい!暴走者達が!!!!」

 

軽く意識を失ってたが、意識を取り戻し転がってた体の上半身を起き上がらせる。

でも、もう遅い。

騒々しい音を立てながら数多くの暴走者が里に入って来てると魔理沙は気付いた。

ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。

自分の過ちを責めて責めて責めまくりたいがそんな時間は無い。

 

魔理沙「ともかく連絡を_______」

 

耳に着けてる通信機に手を当て話そうとした瞬間

 

「ゥゥゥゥゥウウウウウウウァァアアアアアアアアア!!!」

 

一匹の暴走者が襲い掛かってきた。

実は魔理沙はさっきの攻撃で足を痛めていた。だから立ち上がる事が出来ないのだ。

でも、それでも。諦めない。

指をピストルのように構えてその前に黄色く光る弾幕を出現させ、暴走者に向ける。

 

だが

 

魔理沙「……え?」

 

襲い掛かってきた暴走者の首が、まるで斜めの(さか)から落ちる(いた)のように落ちた。

首から大量の血を吹き顔を失った暴走者は膝から崩れ、ただの肉の塊と化した。

 

そして魔理沙は暴走者を倒したであろう宙に浮く、剣を持った人形を発見する。

 

「危なかったわね……、魔理沙」

 

魔理沙「________アリス!」

 

声のした方向へ向く。すると

優しく微笑みながら自分が信頼する存在。

アリスが複数の戦闘人形を操り、立っていた。

 

魔理沙「……グットタイミングだったぜ」

 

アリス「それは良かったわ」

 

笑いながら手を差しのべると、魔理沙はその手を掴み立ち上がる。

 

魔理沙「()っ………さて連絡を……」

 

足に痛みを感じたが、堪える。

そして、チラっとアリスの操る人形を見ると返り血を浴びていて怖かった。

まるでホラー小説に出てくる殺人人形ぐらいに。

 

魔理沙「あー…悪い。守りを崩しちまったぜ」

 

霊夢『えぇ!?何やってんのよ魔理沙!!』

 

咲夜『そう怒らないの霊夢。まずは魔理沙の心配をしなさい』

 

霊夢『心配しなくて大丈夫よ。どうせピンピンしてるわ』

 

一方通行『ンな事言ってる暇はねェ。オイ、魔理沙』

 

魔理沙「な……何だ?」

 

イヤホンから聞こえる音で皆が闘ってる事を理解した。

そして魔理沙は緊張しながら返事をする。

 

一方通行『別に俺はオマエを責めねェ。俺は最初からあのまま守りを崩されねェと思ってなかったからなァ』

 

魔理沙「そうか……」

 

一方通行『ンで。オマエはどォする。妖怪どもを力尽くで押し返すか、それとも逃げながら防衛すンのか』

 

魔理沙「選択しになってないぜ、それ。私の答えはたった一つ_____」

 

ニッ、と楽しそうに笑い

 

魔理沙「妖怪どもを力尽くで押し返す……だ!」

 

一方通行『ハッ……イイ答えだ。っつゥ事だ、霊夢、咲夜、魔理沙。また何か異変とかが起きたら連絡しろ』

 

霊夢『分かったわ』

 

咲夜『覚えとくわね』

 

魔理沙「おう」

 

結構ピンチだが、魔理沙は笑っていた。

しかしその様子を見てたこの場に居る人物、アリスが

 

アリス「ねえ……一人で何喋ってるの?」

 

ちょっと困惑してそうな表情を浮かべながら質問する。

 

魔理沙「ん?ああ…一人で喋ってんじゃ無いんだぜ」

 

トントン、と。耳に装着している通信機を指先で叩き

 

魔理沙「仕組みは分からないが、この機械の御掛げで遠く離れた人と話す事ができるんだ」

 

アリス「へぇ~…それは便利なアイテムね」

 

魔理沙「だろ!黙って持って帰ってやるんだぁ♪これ」

 

アリス「…………(盗む気なのね、魔理沙……)」

 

悠長に話す時間なんてものが無い時に、話してれば暴走者が物を破壊し暴れ回るだけだ。

それに気付いた二人は直ぐに目の色を変え暴走者撃退に向かう。

 

その後は何とも言えぬ攻防。

里の中を飛び回り魔理沙は弾幕を降り注がせる。そしてアリスは操る戦闘人形で暴走者を切り裂く。

すると地には赤い血が雨上がりの水溜まりのように所々にあった。

 

だが、これは里内だけの話ではない。

一方通行、霊夢、咲夜が戦ってる場所でも血が水溜まりのように其処らにあった。

その血の水溜まりを一方通行は踏みつけ、林のなかを高速で移動する。

 

一方通行「………!……、あァ?」

 

何者かを発見した一方通行は、ガガァァァァァ!!と移動速度を両足を地面に着けて落とし止まった。

見えた者は今、里に向かって来て居る暴走者よりも5倍も図体が大きい暴走者だった。

 

一方通行「何だァ……中ボスかァ?」

 

図体が大きい暴走者と7メートル離れた場所から笑いながら話す。そしたら

 

一方通行「あァ?」

 

首をバッ!!と此方に向いた。

 

そして、次の瞬間

 

もう一方通行の目の前に図体のデカい暴走者が居た。

 

一方通行「_________あン?」

 

特に驚きはしなかったが一方通行は目の前の図体のデカい暴走者を睨む。

しかし見えたのは顔ではない。

見えたのは、自分目掛けて振り下ろす拳だった。

 

一方通行「……コイツ」

 

振り下ろされた拳は一方通行の反射膜と打つかる。

そう、直ぐに反射出来なかったのだ。

とりあえず一方通行は後方へ跳躍し距離をとった

 

一方通行(多分、この野郎萃香と同等。いやそれ以上のパワー持ってやがる)

 

自分の反射を唯一、力業で貫いた萃香を頭によぎらせながら考える。

でも

 

一方通行「チッ」

 

そんな時間はなかった。

巨大な暴走者が絶叫しながらもう一度殴り掛かってくる。

一方通行はそれに答えるかのように巨大な暴走者目掛けて拳を飛ばす。

 

そして二つの拳が打つかる。

 

一方通行「________飛べ」

 

低い声でそう言い放つと暴走者はまるで流れ星のように空、斜め上に吹っ飛んでいった。

 

一方通行「チッ……」

 

少し、手に痛みを感じてチラッと見てみると巨大な暴走者の拳を殴った自分の拳に、擦り傷が出来ていた。

 

一方通行「少し面倒だったが、俺の敵じゃねェな。しかし、あの暴走者。一体だけとは限らねェ」

 

もしも、そう、もしも。

あの巨大な暴走者が多く居たら…………

 

一方通行が考えてると、ザザ!と通信機から音がする。

 

霊夢『一方通行!!ごめん此方も暴走者通しちゃった!』

 

咲夜『私も暴走者に押されて……』

 

一方通行「…………分かった、作戦変更だ。霊夢、咲夜。オマエらは同様外から来る暴走者を撃退だ」

 

霊夢、咲夜『『了解』』

 

一方通行「そして魔理沙と俺で里内の暴走者を叩く」

 

魔理沙『了解だぜ!』

 

そして、プツン。と通信機が切れる。

 

一方通行「ったく、面倒くせェなァ」

 

地面を踏みつけ、宙に飛び背に四つの竜巻を生成して里に向かって飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「…………」

 

直ぐに里の上に着いた。

空から里を眺めるといつもの人里の影はなく。

地が血に汚れた戦場となっていた。

 

一方通行は、すっと地面に着地して周りを見ると

 

「ギャァァシャァァァァァァ!!!」

 

バカな暴走者が一方通行に向かって襲い掛かってくる。

だが、その暴走者が来るや否や一方通行はその暴走者の頭を指一本で弾き、ぶっ飛ばした。

 

一方通行「チッ、クソったれ」

 

居た。また居た。"ヤツ"が。

一方通行が居る通りに巨大な暴走者を発見。

すると、その巨大な暴走者が一方通行を見ると「アアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」っと叫び突進してきた。

 

一方通行はまた吹っ飛ばしてやろうとし、拳を握る。

しかし

 

「ふふっ……大人気ね。一方通行」

 

一方通行「あァ?オマエ……」

 

巨大な暴走者よりも先に自分の目の前に癖のある緑の髪に真紅の瞳。そして手に日傘を持っていた女性がいた。

 

だが、その女性は巨大な暴走者が凄いスピードで来たがたった一撃。

日傘ひと振りで撃退した。

 

一方通行「俺に助けなンていらねェぞ、幽香」

 

幽香「助けたつもりは無いわ。そうね……暇潰しに殺っただけよ」

 

一方通行「そォかい。オイ、暇なら手を貸せ」

 

幽香「いいわよ。貴方の頼みだし」

 

幽香は笑って日傘をさした。

 

一方通行「即答かよ。まァイイ…ならこの里内に居る暴れてるヤツを倒せ。だが協力者はやンなよ」

 

幽香「協力者?」

 

一方通行「あァ。どォせオマエの知り合いだ、見たら分かンだろ」

 

そんな台詞を吐き、一方通行は里の外へ飛んで行ってしまった。

一方通行が飛んで行った方向を幽香は見つめ

 

幽香「もう少しぐらい、話たかったわね……」////

 

頬を赤く染めて呟いていた。

が、空気の読めない暴走者が来ると日傘を閉じて暴走者をゴミをみる目で見て貫く。

 

もう幽香の乙女タイムは終了です。

これからの幽香は真紅の瞳を輝かせ口先を引き上げた

 

幽香「さて、この里に真っ赤なお花。咲かせましょう」

 

バケモノと化す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう時間が経ったのかすら分からぬ程、一方通行達は戦い続けた。

しかし魔理沙の通信機が壊れたり、咲夜は右腕を負傷し、暴走者の数が倍になったりなどなど

 

それはもう面倒が時間が進むたび増えてく一方だった。

そんななか皆必死に戦うが限界がくる。

 

咲夜『…ごめん……なさい、もう…………』

 

霊夢『咲夜!?_____っ!!こんのぉぉぉ!!』

 

一方通行「……、」

 

耳に着けてる通信機からピンチな声が、そして里内からは暴走者達の雄叫びが聞こえた。

初めはそんな仲間が居なかっけど、少しずつではあるが仲間の数が増えた。

しかしだからどうした。

現状は最悪。絶望的な状況だ。

 

そんななか一方通行は林で何もせず無表情で突っ立ってるだけだった。

 

一方通行「ハッ……俺には何かを守る事なンて出来ねェってかァ?」

 

静かに笑いながら呟く。

すると一方通行に気付いた暴走者が突進してくる

 

が、

 

一方通行「……______ふざっけンじゃねェぞォォ!!!クソったれがァァァァァァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

怒りに満ちた声で叫び無意識で地を割り周りを吹き飛ばす。

 

そして、一方通行は里の上。上空に向かって飛んで行った。

 

移動速度は新幹線何てよりも速かった。

たがら直ぐ里の上空へ到達する。

 

一方通行「ォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

必死に暴走者と戦ってる霊夢達、そして暴走者ですら動きを止め大きな声をした方へ向く。

 

見えたのは

一方通行が自分で封印した

 

何もかもを飲み込みそうな

 

この幻想郷を簡単に破壊する

 

真っ黒で、まるで悪魔のような化け物のような

 

二本の噴射に近い黒い翼。

 

霊夢「何よ………あれ……………」

 

暴走者達に流され里の中にいた霊夢は上空に居る一方通行を驚愕した目で見る。

 

違う、あれは違う。あの時見た美しい白い翼ではない。

だから霊夢は黒い翼に恐怖を覚えた。

すると

 

魔理沙「まあ最初見たらそんな反応だろな」

 

霊夢「魔理沙……」

 

隣に今来た友に顔を向ける。

 

魔理沙「ビビる事はないぜ霊夢。あの状態になった一方通行は無敵だぜ」

 

笑いながら上空にいる一方通行を見る。

 

霊夢「そう……でもあの黒い翼、何か嫌だわ。それに私が見た翼とは違う」

 

霊夢はまた、上空に居る一方通行に向く。

 

魔理沙「ん?違う?____」

 

霊夢の言葉に疑問を感じ質問しようとした次の瞬間。

 

一方通行「アアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

空間を揺らす程の絶叫が響き渡る。

一方通行は背中に生えた真っ黒な翼を何十、何百、と増やしそれを一気に空から叩き付ける。その時、耳に着けてた通信機が取れ黒い翼に当たり粉々に粉砕した。

そして真っ黒な翼は避ける事すら不可能な速度で暴走者達全てを貫き、暴走者全員の命を奪った。

 

たった一瞬。たった一撃。

そう言うしか言葉が見つからない程の出来事。

 

霊夢「………………」

 

魔理沙「あ~あ、結局一方通行一人で終わらせやがったぜ。なあ霊夢」

 

霊夢「そ…そうね」

 

冷や汗をかきながらそう返すと

 

紫『霊夢!魔理沙!咲夜!』

 

霊夢「紫!?」

 

通信機から紫の声がした。

 

紫『貴方達の状況は理解してるわ。だから、だから!今すぐ一方通行を無力化しなさい!早く!』

 

霊夢「急に何よ紫。それに一方通行を無力化なんて」

 

咲夜『説明ぐらいして欲しいわね』

 

魔理沙「何だ?何だ?紫と話してるのか霊夢?」

 

霊夢と咲夜は紫と話してるが魔理沙は通信機が壊れてしまい何を話してるのかさっぱり分からなかった。

 

紫『そんな時間は無いの!早く一方通行を無力化しなさい!じゃないと幻想郷が彼一人に壊されるわよ!』

 

霊夢「えっ………」

 

魔理沙「どうしたんだ?霊夢」

 

霊夢「今すぐ一方通行を無力化しなきゃ、幻想郷が壊されるって………」

 

魔理沙「はあ!?何言ってんだ霊夢!一方通行がそんな事_______」

 

「何か」を感じた、背筋に寒気が走った。

それは恐怖と言う一言では表せないほどの

 

霊夢「……!?」

 

魔理沙「____する訳………」

 

二人が、いや皆が見たのは一方通行の背中にある黒い翼が荒れ狂う姿だった。

その時、霊夢、魔理沙、咲夜は紫の言葉を理解した。

一方通行を無力化しなきゃ本当に幻想郷が壊されるって。

 

魔理沙「や、やるしかないぜ霊夢。紫は信用できないヤツたが今回だけは信用しなきゃ本当に………」

 

霊夢「待って魔理沙!!」

 

震えながらも魔理沙は箒に跨がろうとした。

しかし、霊夢に腕を掴まれ動きを止めた。

 

魔理沙「何だ霊夢?」

 

霊夢「一方通行の様子が………」

 

魔理沙「えっ?」

 

二人は一方通行へ視線を向けると

 

必死に黒い翼と抑えてる一方通行の姿を目にする。

そして一方通行は少しだけ残った意識で黒い翼を操り自分を囲むように黒い翼を操作した。

 

結果、出来たのは真っ黒な翼で出来た球体。

 

それが上空で制止している。

 

霊夢「どうやら私達がやるよりも一方通行が自分自信でやったみたいね」

 

魔理沙「しかし、何で紫は一方通行を無力化しろなんて言ったんだろうな」

 

霊夢「見て分からなかったの?一方通行、暴走しかけてたじゃない」

 

魔理沙「何!?まさか一方通行は暴走者なのか!?」

 

霊夢「あー……後でゆっくりバカなアンタに説明してあげるわよ」

 

魔理沙「ちょっ!!バカって何だよ霊夢!!」

 

あはははは、と笑う霊夢につられて魔理沙も笑う。

一応ではあるが騒動が解決したのだ。

その解放感からか、自然と笑みが溢れる。

 

 

 

そう、終わったんだ。何が正義て何が悪か分からぬままただひたすらに暴走した妖怪を倒す地獄のような事が。

と考えてた者は戦った者達のなかに何人かは居ただろう。

 

しかし、闇は広がる。悲劇は更なる悲劇へ。

 

 

魔理沙「全くお前とゆうやつは………、っ!!?」

 

霊夢「どうしたの?魔理沙」

 

はははははははは、と笑ってた魔理沙の表情は笑みとかけ離れた驚愕した表情へ変化していた。

 

魔理沙「………あは、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハっ!!!」

 

霊夢「っ!?」

 

まるで狂ったように腹を抱えて笑う魔理沙。

 

霊夢「ど、どうしたの!?魔理沙!?」

 

魔理沙「無いぜ!!それは無いぜ!!」

 

霊夢「ん?」

 

笑い過ぎて震える指を空。斜め上に魔理沙が向ける。

そして霊夢はその差された方向へ向くと

 

霊夢「へ……何で_____」

 

目にはいった景色は黒。いや闇だ。

 

この里を覆いこみそうな程大きい黒いゲート。

そのゲートを霊夢は知ってる、魔理沙は知ってる。

知り合い達は皆知っている。

とっても有名だからだ。

 

霊夢「_______魔界のゲートが里の上空に出現してるの………?」

 

つー、と頬に汗が流れる。

 

魔理沙「な、言ったろ。それは無いって」

 

霊夢「…魔理沙」

 

魔理沙「どうやらそう簡単に終わらしてはくれないらしいぜ、この異変」

 

フッ、と口先を上げ笑う。

 

魔理沙「それに見ろよあれ」

 

霊夢「どれ…?」

 

顎で指された方へ見ると

 

黒く大きな魔界のゲートの中心に、まるで一輪の花が咲いたように白い翼を六枚生やし肩口がゆったりした赤いローブを着用した白銀色の髪の左上でサイドテールの神。いや唯一神の神綺(しんき)が居た。

 

アリス「(あの姿………やっぱり……)」

 

幽香「あら、懐かしいお客さんね」

 

昔、神綺と出会った事がある二人は昔の事を思い出しながら見ていた。

 

そしてその唯一神の神綺は

 

神綺「さあ、お行きなさい。愚かしき人間に罰を与えるために」

 

両腕を大きく広げて言う。

すると呼ばれたようにゲートからは妖怪や悪魔が出現する。

 

それを眺めてた霊夢達は次の戦いのため身構えた。

しかしもう皆体はへとへと、体力もない。それに負傷だってしている。

でも、やるしか無いんだ。だって自分達以外にやれる人が居ないのだから。

 

魔理沙「霊夢……やるぜ」

 

箒を横に突き立て覚悟を決める。

 

霊夢「言われなくともやるわよ。魔理沙、アンタはヤバくなったら逃げなさい。私はせめてあのゲートの真ん中に居る神様を道連れにするから」

 

魔理沙「その必要は無いぜ。二人であの神をやるんだ」

 

霊夢「魔理沙………、フッ……分かったわ足引っ張んないでよ!」

 

魔理沙「お前がな!霊夢!」

 

そしてゲートから流れ出てきた妖怪と悪魔が里に降り立つ。

 

「くうぅぅウウウウウウウウウウアアアアアアアアア!!!!!」

 

魔理沙「来たぜ!」

 

霊夢「分かってるわよ!!」

 

叫び襲い掛かって来た妖怪の後ろに、悪魔も向かって来てた。

 

妖怪と悪魔に襲い掛かれてるのは別に霊夢達だけの話ではない。皆。そう皆が襲い掛かれている。所々負傷してるのに体力も残りわずかしか無いのに。

 

 

 

 

 

里が本当の戦場と化した一方、一方通行はと言うと

 

自分が暴走して外に出ないように自分を封印した黒い翼で出来た黒い球体の中で意識を失った状態で無気力のように宙に浮いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある夢を見ながら

 

 

 




どうでした?今回の話は?

ラストに意外なキャラが登場した………
と、思った人も居たのでしょうか?

それはさておき、この物語では東方の旧作とのストーリーは繋がってる事にしてあります。
しかし、霊夢と魔理沙は旧作での出来事の記憶は失っております。
けどアリスと幽香は覚えてます。だけど、あえて昔の事は言わない。的な事を二人は思っています。


本当は神綺様にはこの物語の最後の最後に出て来る予定でしたが………………

私が我慢出来ず、二章で出しちゃった☆(テヘッ☆
だって旧作の人物が揃っちゃったんだもん!

さぁてと、とりあえずふざけるのはここまでにします。

良い所でまた終わらせてしまい、投稿が遅くなってしまい。
誠に申し訳ございません。
また投稿に時間が空いてしまいますが次の話をまた待って、そして見てくれたら私はとても嬉しいです。

そう!この小説で一方通行のファンを!東方ファンを増やすのだ!!

と、言っても自分…東方はにわかですけどね(フッ‥


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21話

どうも、ポスターです。

前回東方の旧作のストーリーと繋がってる。と、言いましたが簡単に言うと。

靈夢=霊夢。

旧魔理沙=今魔理沙。

みたいな感じです。
旧作は色んな話がありますが、私は旧作の出来事は繋がってると思っています。
だから、靈夢と霊夢は同一人物。(魔理沙も)
と考えてます。
ですからこの物語では話を繋げてみました。

さて、話はここまで。

幻想郷を一方通行にの続きをどうぞ。



多分、誤字や脱字があります。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。


眼を鋭く光らせ複数の妖怪、悪魔が襲い掛かってくる。

霊夢と魔理沙はどちらも体力は残っていなかった。

だから二人は共に移動し、複数の敵を分裂させ、一体、一体確実に仕留める。

そとで魔理沙が気付く。

 

魔理沙「おい、霊夢………」

 

霊夢「ん?なに?」

 

魔理沙「こいつら、もしかしたら暴走者だ……」

 

霊夢「え?………、どうしてそう思ったの?」

 

魔理沙「目とか暴走した奴等にそっくりだ。けど、一番似ている部分はこのあり得ないほどのパワーだ……………」

 

霊夢「確かに雑魚にしては強すぎるけど………それだけじゃ……………」

 

魔理沙「ああ、確信できない。だからこの事を一応頭に入れとこうぜ」

 

霊夢「そうね、そうしましょ」

 

敵はもしかしたら暴走者。

と、一応思って戦おうと決めた時、道の向かい側から走って来てる者を発見する。

 

魔理沙「……、アリス!!」

 

霊夢「_______助けるわよ!」

 

後ろの悪魔に追われながら走るアリスを発見。

直ぐに助けに二人は向かい、霊夢は残りの霊力のほんの少しを絞りだし薄く青く光る細いレーザーを放ち、見事悪魔の頭を吹き飛ばす。

 

アリス「………はぁ、はぁ、はぁ。あ、ありがとう」

 

魔理沙「大丈夫か?」

 

無事、助けたと同時に他の人と合流をする。

 

アリス「ふぅ……ええ、何とか」

 

霊夢「珍しいわね、人形を連れてないなんて」

 

アリス「私の人形は、全滅したわ……………」

 

顔を薄暗くして、アリスは落ち込んだ様子で話す。

 

魔理沙「そうか………、だったらアリスは危険だ。お前は人形が居なかったらまともに戦えないだろ?」

 

アリス「ええ、そうね。けどこっからどうやって逃げると言うの?」

 

この人里には逃げれる所は無い。

いや、あるにはあるが。そこは人の家だ。

けどもし自分が敵に狙われていて家に逃げ入ろうものならその家に住む人ごと襲われてしまう。それだけはしたくない。

 

魔理沙「そうだった……もう飛ぶ魔力すら残ってないからな~…」

 

霊夢「なら私達と行動しましょ。そうしたら少しは安全よ」

 

アリス「迷惑じゃないならそうさせてもらうわ」

 

魔理沙「良し決まりだ、なら早く__________ん?待てよ。なあアリス、まだ確か一体人形残ってるんじゃないか?」

 

アリス「いえ、残ってないわ」

 

魔理沙「いやいや残ってるだろ。服のなかに」

 

アリス「え、あれは………」

 

霊夢「何よ、残ってるなら勿体振らないで使いなさい」

 

魔理沙「そうだぜ、あの一方通行に似てる人形を」

 

霊夢「_______え…………?」

 

驚き過ぎて思わず霊夢は魔理沙の顔を見てしまう。

 

アリス「……い、言わないでよ………魔理沙」////

 

霊夢「!??!?!!?」

 

そして次にアリスが頬を赤く染めて照れ始めたので、もう霊夢は勝手に一人で大パニック。

 

霊夢「ね、ねえ……アリス。貴方、もしかして……………」

 

アリス「……………」////

 

魔理沙「?」

 

ビンゴだ。そう確信して霊夢は大きく深いため息を吐く。が、魔理沙は分からないようだ。

 

霊夢「全く………あの鈍感。百回死ねばいいのに……………」

 

何処か、誰かの愚痴を洩らす。

そしてその直ぐにこの場に異変が起きる。それは

 

霊夢、魔理沙、アリス「_______!?」

 

突如、三人がいる場所の近くに何かが落ちてきた。

 

 

速い速度で落ちてきた何かのせいで砂煙が発生した。

が、それがだんだん消えて何かの正体を三人は見る。

 

目に映ったのは白い六枚の翼に白銀の髪をサイドテールした神。

 

神綺「随分面白そうな話をしてるわね。恋バナ?」

 

霊夢「…………」

 

魔理沙「……、ラスボスの登場か」

 

アリス(神綺様……………)

 

三人の前に君臨したのは唯一神の神綺。

そして、その神綺はまるで隣の家の人に世間話でもするかのような感じで声をかける。

が。霊夢、魔理沙は警戒する。

しかしアリスは神綺を見て懐かしく感じてしまい、警戒をせずに居た。

 

すると神綺は、

 

神綺「お久しぶりねアリスちゃん」

 

アリス「はい……。そうですね神綺様」

 

我が子のアリスへと歩む。

が、

 

魔理沙「______アリス!!」

 

アリスの前に庇うように魔理沙が立つ。

 

しかし

 

神綺「………邪魔よ、"貴方達"」

 

先程まで優しく高い声だった神綺の低い声がこの場所に響く。

そして目に見えぬ攻撃が霊夢と魔理沙の腹部へ炸裂する。

 

霊夢と魔理沙は何が起きたか分からぬまま後方へ吹っ飛んで行った。

 

アリス「ッ!?_____魔理沙!霊夢!」

 

神綺「へー、私よりあの子達を優先するの?」

 

アリス「……………神綺様。何でこんな事を」

 

神綺「最初に私が言った通り、貴方達に罰を与えにきたのよ」

 

アリス「罰……?私達が一体なんで罰を受けなきゃ____」

 

刹那。

神綺は、六枚の白の翼を羽ばたかせ後方へ飛ぶ。

 

アリスは神綺が何故急に飛んだのかは自分の横を通り過ぎた白く光る弾幕を見てから理解した。

 

神綺「久し振りに再会した我が子との会話を邪魔しないでほしいわね」

 

魔理沙「そんなの知らないぜ。お前が倒されればこの異変が解決するんだ。だから倒されてもらうぜ」

 

霊夢「_____そう言う事よ、神様」

 

アリスの後ろ二メートルに霊夢と魔理沙が横に並んでいる。

 

 

神綺「全く………、今回は絶対負けないわよ________靈夢(れいむ)、魔理沙」

 

自分の前に赤と黒の色の魔方陣を出現させ、神綺は触れたら塵も残さない赤く光るレーザーを撃つ。

 

この攻撃を防ぐ方法がない三人は、ただ立って自分達に放たれた赤いレーザーを見ることしか出来なかった。

 

 

終わった。これで確実に死んだ。

やっぱり体力も霊力も魔力も少ししか無いんじゃ無理だ。

そう諦めるのは不思議ではない。

しかし

 

「何勝手に諦めてるの貴方達」

 

三人の前に現れたのは、赤いレーザーを日傘で弾いたのは、

 

霊夢「______幽香!」

 

幽香「………まさか、私が貴方達を助けるとはね。自分でもビックリよ」

 

日傘を前に突き立てる。

 

神綺「ああ……、貴方も居たの」

 

幽香「ええ。暇潰しにね」

 

両者笑っているが、この場の空気は緊張感が張り詰め重くなっていた。

 

幽香「貴方達は妖怪や悪魔を相手しなさい。この分身は私が相手するわ」

 

魔理沙「ぶっ、分身!?」

 

霊夢「___________ッ!!」

 

幽香の言葉に驚きを隠せず魔理沙は驚愕の表情を浮かべ、そして霊夢は上へ視線を向ける。

すると魔界のゲートの中心にはまだ神綺が居たのだった。

 

神綺「良く気が付いたわね。褒めてあげるわ、よしよししてあげましょうか?ふふっ」

 

魔理沙「分身なんて出来たのか…………」

 

幽香「相手は世界を創造する力を持った神様。はっきり言って何でもありな存在よ」

 

『だから、まだまだ何か仕掛けてくるから気をつけなさい』。と幽香は忠告する。

すると三人は何も言わずこの場を去った。

が、多分『そんなこと言われなくても分かってる』とか思っていたのだろう。

 

幽香「さてと……。直ぐに消してあげるわ、神綺」

 

神綺(分身)「本体の百万分の一しかチカラは無いけど、それでもこの里ぐらい平気で消し飛ばせるわよ?」

 

そして両者打つかる。

遠くから激しい爆風が吹き轟音が響き渡る。

もう、それだけでどれだけ凄まじい死闘なのか理解するのは簡単だ。

 

 

 

一方。

幽香に助けられた霊夢と魔理沙とアリスは確実に妖怪や悪魔を一体一体、仕留めていく。

 

途中、『紫に応援に来て』と通信機で話したがどうやらにとりと紫がいる場所に強力な結界が張られて出れないと言われた。

紫が言うにはこれは神綺の仕業らしい。

一応出ようと努力してるが、出るには予想では二時間ぐらいかかると言う。

 

 

応援も来ないこの絶望的な戦場に居る霊夢達。

一番の攻撃力を誇る一方通行が居ないとやっぱり不利だ。

 

 

 

……………………だが、

 

 

 

 

上空にある黒い球体にヒビが入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰も居ない、車すら消えた(もぬけ)の殻の町。

その町の道路の真ん中をまるで毎朝散歩してるかのように歩く一人の少年。

その少年の歳は3~4歳ぐらいだろう。

白の半袖のシャツに茶色の半ズボンを履いてる白髪に赤い眼の少年は、ただただ、歩き続ける。

目的地もなく本当にただ………ひたすらに………。

 

この散歩日常(ライフ)は2日前から始まった。

その少年は児童養護施設にこの世に生まれた瞬間、直ぐに入れられた。

理由は簡単。少年は、一方通行は。生まれて直ぐに親に捨てられたのだ。簡単に、まるでゴミを捨てるように。

だから児童養護施設で生きていた。

しかし、事件が起きる。

それは超能力の目覚め。

皆、超能力に目覚めたら凄いと褒め羨ましいと近付いて来るだろう。

でも、一方通行の能力は異常な程に恐怖と言う一言で片付けて言い程に恐ろしく強力な能力だった。

だから児童養護施設の大人はたった3~4歳の子供を外へ放り投げ「二度と私達に近付かないで!!このバケモノ!!」と恐怖した目を向けその子供を棄てた。

 

 

それからだ世界に"第一級危険生物"と言われ、命を狙われる散歩日常が始まったのは。

 

だがこの"たった一人"の散歩日常は二日で終わる。

それは

 

「ねえ………坊や」

 

と、後ろから声をかけて来た金髪ロングのおしゃれな日傘を持つ綺麗な女性(一般から見ると少女)と出会ったからだ。

 

一方通行「________あァ?」

 

声のした後ろに振り返る。

 

 

 

しかし顔は見えない。

 

 

 

何故だ、何でなンだよ。

何で顔が見えねェンだよ。

一体オマエは誰なンだ。

 

分からねェ、俺の記憶にねェンだ。

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「____________ッッッ!!!!!!」

 

爆睡してるのにまるで電気ショックで起こされたように目覚める。

 

 

すると見えたのは闇、黒の色だった。

 

 

一方通行(そォか………俺は確か…………………)

 

今の自分の状況を理解する。

 

頭に激痛が残ったままだが一方通行は普通に息を吐き、そして吸う。

 

一方通行(しっかし誰なンだよ、アイツは……………)

 

前回と同じ所で見えなくなる。

その事にイライラしっぱなしだった。

 

でも。

今はとりあえずは外に出たい。

 

 

だが、

 

 

背中の黒い翼は勢い良く噴射している。

消せない。消そうとしても出来ない。

 

(今の俺では制御出来ねェのか…………)。

そう心の中で呟いた。

 

だが。

 

それでも。

 

 

(それでも、やンなきゃなァ。これは俺にしか出来ねェンだ)

 

次に一方通行は頭の機能全てを演算に使う。

そして複雑な計算式を組み立てた。

それは黒い翼を制御するためのものだ。

 

でも、やっぱり消えない、

 

一方通行(クソッ!!何で消えね___________ッ!!!!!!)

 

また頭に激痛が走る。

その痛みは普通なら頭を抱えて転げ回る程のものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____

_______

__________

 

「素晴らしい!おめでとう少年!!」「最強の先、絶対の力に興味は無いか?」「そしたら少しは君の世界が変わるかも?」「それでは実験を開始しますとミサカハ___」、クッダラネェ、アァツマンネェ、アハギャハ、アハギャハ、あはアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!

ウテ!___ハヤク!___コロセ!_____バケモノ!________コロセ!____バケモノ!_____バケモノ!___バケモノ__バケモノバケモノ____________キミハ___アレハニンゲンジャナイ!

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__________

_______

____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「ゥゥゥゥゥゥゥううウウウウウウウウああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッッ!!!!!!」

 

感じるのは頭に走る痛み

 

気が狂いそうな程の痛み

 

一方通行は頭が真っ二つに割れそうな痛みに眼を見開き目の前が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ………坊や」

 

また聞こえた。

 

 

誰か知らないヤサシイコエガ

 

 

一方通行「____________あァ?」

 

 

フリカエル、ダケドカオハミエナイ

 

 

 

しかし、だけど、

 

 

 

一方通行「誰だオマエ?」

 

続く。

 

昔の記憶らしき夢が

 

「私?私は_______」

 

彼女は笑いながら日傘をさし、くるっと回して

 

「_____八雲紫。可憐で素敵な妖怪よ♪」

 

_____________

__________

_______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「………………………………あ」

 

激痛は消え黒い翼の勢いが弱まった気がした。

そして頭に流れ込んできたのは『"何か"』の計算式。

一方通行はそれを解析し完璧に理解したら思わずニヤっと笑ってしまった。

 

 

一方通行「さァてと____________」

 

 

と、白い彼は呟く。

 

 

一方通行「このくそったれの所から出なきゃなァ………」

 

手を黒い翼で出来た球体に当てる。

 

聞こえる。

 

守りたいものの、アイツらの声が。

 

失いたくない

 

守りたい。

 

だから一方通行は前にある黒い壁を

 

 

 

 

 

 

 

 

破壊する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャシャーン!!と上空からガラスが割れたような音がした。

 

音が聞こえた者達は空を見る。

 

すると、

 

 

黒い球体を粉々に吹っ飛ばした、

 

白い翼を生やした、

 

一方通行を目撃する。

 

 

一方通行「……………あン?どォなってやがンだァ?」

 

なんか里は前よりも荒れてるし空に禍々しい黒い何かが出現してるし、、、

誰かこの事態を知ってる人に説明して貰わなきゃ分からない状況になっていた。

 

でも流石に一つぐらいは理解した。

それは

 

今、自分に向かって来ている妖怪どもを蹴散らさなきゃいけないということ。

 

 

 

一方、地上の霊夢達は

 

霊夢「あれ………、一方通行よね……?」

 

魔理沙「そうだぜ。だがなんか変化してるよな。ほら、翼の色が白くなってるぜ」

 

アリス「観察してる暇はないわよ。早く助けなきゃ、一方通行に気付いた妖怪達が向かって行ってる」

 

霊夢「そうね、こっから弾幕を________」

 

魔理沙「ああ、撃って少しでも数を__________って!!??」

 

 

三人は、いや皆が見たのは一方通行が片手を妖怪達に手を向ける姿。

そしてその向けられた手一箇所に光が集まり……、

 

魔理沙「おい。おい、おいおいおい!!それは…………ッ!!!」

 

高大な音と共に一方通行の手から白く輝く極太のレーザーが放たれた。

 

その極太のレーザーは空を駆けるように真っ直ぐ飛んでいった。

そして一方通行を襲い掛かろうとした妖怪や悪魔を完全に跡形もなく消した。

 

その極太のレーザーの名は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「___________マスタースパーク」

 

白の噴射に近い翼を生やした化け物はレーザーを撃った方向を見て呟いた。

 

そして、下。里内を見ると近くに霊夢達を確認。

一方通行は白い翼を使い霊夢達の所へ体を落下させ、綺麗に霊夢達の前に着地する。

 

一方通行「よォ、オマエら」

 

霊夢「………………」

 

魔理沙「………………」

 

アリス「………………」

 

一方通行「あァ?なンだァ?」

 

何も言わず突っ立ってる三人に首を傾げる。

すると魔理沙が、

 

魔理沙「「あァ?なンだァ?」じゃないぜ!何がどうなったらその背中に白い翼が生えんだ!!なんで私のマスタースパークが撃てんだ!!ああもうっ!!どうなってんだ!?」

 

一方通行「チッ、うるせェ。それは後で話してやるよ。だから良いからとりあえず状況を話せ」

 

霊夢「それはいいけど………。その背中の翼消えないの?そっちばかり意識しちゃって集中出来ないわ」

 

一方通行「あン?消せるぜ。ほらよ」

 

シュン………………。と、彼の背中にある白い翼が空気に消えていった。

 

アリス「なんか変わった?」

 

一方通行「あァ、大きくな。だがさっきも言ったがそれを話すのは後だ。今はこのクソったれな事態を終息させることが優先だ」

 

そして霊夢達に一方通行は今の状況を話してもらい理解した。

 

一方通行「_____________とりあえずあのクソ(アマ)をぶっ倒せばいいンだろ?」

 

霊夢「まっ、そうっちゃっそうなんだけど、そんな簡単に______」

 

アリス「___ええ、いかないわ。貴方は神綺様の強さを知らない。あの御方は魔界の神。他の神とは比べ物にならないわ。いくら貴方でも神綺様相手じゃ勝負にならない。闘うだなんてバカな考えは止めなさい。今回ばかりは相手が悪い、話し合いで解決するべきよ」

 

一方通行「アイツの強さを知ってようが知らねェだろうが障害となるならぶっ潰すまでだ」

 

魔理沙「確かにお前は強い、それは重々承知してる。だがアイツはホントに次元が違うぜ」

 

一方通行「チッ。オマエらは雑魚を相手してろ」

 

再び背中に白い翼が出現させる。

そして、

 

一方通行「俺があの女を片付ける。それで話は終わりだ」

 

次に体をだんだん上昇させる。

 

だが、

 

一方通行「______二つオマエらに言っておく。一つは時計の時間を三十秒遅らせろ、もう一つは______」

 

 

 

 

 

 

 

 

「______オマエらが十分間耐えれたら俺達の勝ちだ」

と、一方通行は飛び立つ時に言った。

 

そして一瞬で一方通行は神綺に接近した。

そして、固く握られた拳で神綺に殴りかかる。

しかし神綺は白い六枚の翼でガードする。

 

でも、一方通行の拳にはこの星の自転エネルギー三十秒程の力が乗っており神綺は人里から遠く遠く離れた場所へ吹っ飛んで行き、一方通行はその後を追うかのように神綺が飛んで行った方向へ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神綺は吹っ飛んでいる最中、六枚の白い翼を大きく広げ飛ぶ勢いを殺し空で止まる。

そして直ぐに白い翼を生やした白い怪物が来た。

 

神綺「普通、初対面の女性を殴るかしら?」

 

一方通行「オマエが普通の女なら俺も殴らねェよ」

 

神綺「そう………、にしても随分遠くに飛ばされたわね」

 

一方通行「そりゃあオマエ、この星の回転時間を三十秒遅らせた自転エネルギーを乗せて殴ったからな」

 

神綺「うふふふっ………」

 

急に手を口に当て笑う神綺に一方通行は眉をひそめる。

 

神綺「貴方、あの子達を守るために私を吹っ飛ばしたのね」

 

一方通行「………、」

 

神綺「無言、って事は図星かしら?もしもそうだとしたらそれは大きな失敗よ。私相手に一人で挑むなんて愚かな行為だわ。力に自信があったとしても私にとっては所詮下等生物は下等生物_____」

 

何も言わない白い怪物に神綺は魔方陣を無数に展開して、

 

神綺「___人の里に居る者達全員でなら少しは私相手でも勝負と言えるものになったのかも知れない。でももう遅い。だって貴方は今これから消えるんだから」

 

一気に力を解放する。

紫色の弾幕を撃ち、黄色く光るレーザーを放つ。

目に見えぬ速度で放たれた攻撃は一方通行の体を蜂の巣にして一瞬にして絶命させるだろう。

だが、、、

 

 

「______遅せェ」

 

神綺「ッ!?……く………っ!」

 

すぐ背後から声のして後ろを振り返る。

するとズボンのポケットに両手を突っ込みながら自分に脚を大きく振る一方通行の姿が見えた。

しかし、避ける時間はない。

神綺は白い六枚の翼を器用に使い防ぐ。

 

神綺「………何処に……………?」

 

見えたのは一瞬だった。

攻撃を防げたのは良いがあの白いヤツを見失ってしまう。

 

だが、また

 

「______遅っせェ」

 

神綺「ッ!!」

 

次は堂々と直ぐ目の前に現れた。

が、一方通行の靴の底が神綺の腹部へ突き刺さる。

そして一方通行はそのまま脚を押し出し神綺をまたまた吹っ飛ばす。

 

 

体の自由が利かないぐらい威力の蹴りを受けた。

だが、魔界を創る程の力を持つ神綺は無理やり吹き飛ぶ体を止める。

 

神綺「……スピードには自信があるみたいね」

 

一方通行「………、」

 

黙って一方通行は神綺を見る。

 

神綺「黙りね。………なら、その塞がった口が開くほどの私の速さを見せてあげる」

 

そう言うと神綺の体が消えた。

そして瞬き厳禁の速度で一方通行の居る所に巨大な六枚の翼が空から振り下ろされる。

 

神綺は直ぐに一方通行よりも上空に移動し巨大化させた翼を振り下ろしたのだ。

 

神綺「坊やには速すぎたかしたら?」

 

余裕な笑みを浮かべた。

確実に当たった。確信がある。

仕留めたのだ。

 

しかし、

次の瞬間。

 

一方通行「_____言ったろ、遅せェって」

 

斜め上に白いバケモノが裂いたような笑みを浮かべて

 

神綺「………う………っ!!!」

 

その背から生えた神綺とは見た目も力も全く異なる白い翼を一方通行は叩き込んだ。

その攻撃をまともに食らい、神綺は地面をほど強く強く地面へ打ち付けられた。

 

しかし神綺は十秒もしないで目の前に戻ってきた。

 

一方通行「遅っせェ遅っせェ遅っせェなァ………。そンな速度じゃ百年遅せェってンだよ。ったく、スクーターと競争してる気分だぜ」

 

自動二輪車よりも、車よりも、飛行機よりも高速に移動できる彼からするとスクーターの速度なんて、幼児の自転車と同じ速度と思ってしまう。

そんな一方通行は積まんなそうに吐き捨てる。

 

神綺「私が遅い………?なら、本気でやってあげる」

 

白い六枚の翼が変化する。

 

色は黒。

そしてその翼に呪いのような赤い線の模様が入っていた。

 

神綺「………貴方をこの世から消してあげる。私のチカラ、破壊と再生、創造と消滅で"完全"にね」

 

一方通行「やってみやがれ神サマ」

 

白と黒の六枚の翼を持つ神と、白と黒の翼を持つ超能力者が別次元の速さで激突し、この幻想郷が壊れてしまうと心配するぐらいの力量で両者戦う。

でも神綺の攻撃は当たらず、攻撃を食らってばかりで余りにも一方的だった。

 

神綺「食らいなさい!!」

 

空を舞うように飛び回ってるが、黒の六枚の翼を巨大化させ、その翼から無数に光る弾幕を放つ。

だが一方通行はそれを軽々避け、なおかつ反撃を繰り出す。

 

光る弾幕を避けながら撃たれた白い翼が神綺を襲う。

 

 

一方通行「…………で、まだ続けるかァ?」

 

ボロボロ、とは言えないが。所々傷付いた体を動かす神綺。

正面から一方通行の攻撃を受けても動ける。やはり唯一神と言われるだけの事はある。

 

神綺「……調子に乗りすぎたわ、貴方」

 

両手を一度合わせてから、開く。

すると白、いや銀色に輝く球体のエネルギーが神綺の手の中で誕生する。

 

一方通行「あン?」

 

神綺「私は魔界を創った。だからその逆も出来るの」

 

一方通行「だとするとその逆の力とと言やァ、破壊の力か」

 

神綺「ええ、そうよ。だけどただの破壊じゃ無いの。私は考えを変えた。罰は里だけに与えるんじゃない、この世界全体に与えるの」

 

私が言いたい事分かった?と続けて話す。

 

一方通行「ハッ……おい、その破壊の力の威力は_____」

 

神綺「________この世界全てを破壊する威力よ」

 

ゆっくりと神綺は一方通行に、いや違う。

この世界に、幻想郷に破壊のエネルギーの弾幕を撃つ。

その弾幕の速度は物凄く遅い。しかし威力はとてつもなく強力だ。

 

神綺「さあ、これで終わりよ」

 

エネルギーの形がぐにゃぐにゃと変化する。多分、一気に破裂させるつもりなのだろう。

そしてエネルギーが破裂し始めたら神綺は眼を瞑る。

 

 

 

 

 

数秒後、眼を開ける。

 

するとそこには、人が居ない、草木、自然がない、時間すら無い。無の世界が広がっている。

 

 

 

筈だった。

 

 

神綺「………え?」

 

見たのは、さっきと変わらない普通の幻想郷のあるべき姿。自然が豊かな景色。

 

と、一方通行。

 

神綺「ど……………どうやって………?」

 

一方通行「なァ、この幻想郷は同等、またはそれ以上の力を打つけるをどンな攻撃を打ち消せンだろ?」

 

神綺「……!?………ま、まさか!?」

 

驚愕の表情を神綺は浮かべる。が、対する一方通行はニヤリと笑う。

 

一方通行「あァ……、そォいうことだ」

 

少し話は戻る。

 

そう、それは破壊のエネルギーは破裂する一秒前。

一方通行は破裂する破壊のエネルギーの弾幕に近付き、力強く殴っていた。

 

だが、だ。

普通に殴っても、この幻想郷を簡単に消せるエネルギーは打ち消せない。

にも拘らず、一方通行はたった一発の拳で打ち消す。

もう、彼の次元は誰も行けない所へ到達したのかもしれない。

 

一方通行「で。オマエはあれ以上の技持ってなきゃ終わりなンだが、他にはねェのかァ?小ネタはよォ……」

 

笑いながら楽しそうに一方通行は神綺があれ以上の事は出来ないと知ってながらも話す。

 

神綺「……………」

 

一方通行「あン?黙りかァ?神サマ」

 

あァ、そォか。と続けて

 

一方通行「奥の手ェ使っちまって、何もねェンだよなァ悪ィ悪ィ………。だがこの状況を作ったのはオマエだ。オマエは引いた、銃口が頭に向けられた引き金を……………だからここで_______」

 

________死ね。

と一方通行は言う。

すると

 

神綺「…………黙って聞いてれば、生意気に言ってくれるじゃない!!」

 

黒い翼を大きく広げ、赤いローブからある物を取り出す。

それを見た一方通行は微かに眉をピクリと動かし、反応した。そのある物とは

 

神綺「……いいわ。この私の魔界を壊した元凶の黒い玉で、貴方を殺してあげる」

 

手の平にあるのは、あの忌々しい黒い玉だった。

 

神綺「これはね、力を急激に上げる危険な物体よ。だけど、この黒い玉をうまく使えば貴方を簡単に殺して見せるわ」

 

そう言い、黒い玉を握る。するとその黒い玉は消えた。

多分体の中に入ったのだろう。

 

神綺は黒い玉を握った後、直ぐに体に異変が起きた。

それは

 

神綺「っ………!!これは……………結構辛いわね………………」

 

背中の黒い翼がコントロール出来ない程に巨大化する。

 

神綺「だけど、意識ぐらいは保てるわ」

 

両手を広げ、腕を上げる。

そして超巨大な黒い魔方陣を空に展開した。

 

神綺「……これじゃ逃げれないわよ。覚悟はいい?」

 

一方通行「________チッ………」

 

舌打ちして「面倒くせェ」と言い

 

一方通行「少しこちらも本気を出してやる」

 

と頭をかいた後に神綺を睨む。

そして一方通行の頭上には天使の輪のようなものが出現する。

 

一方通行「はァ……、ったく。なンで少しでも力を強めるとこのクソったれの輪っかが俺の頭の上に出ンだよ………」

 

自分の頭上に存在する天使の輪のようなものを見てため息を吐いてしまう。

自分自身で理解している。

こんなの俺には似合わない、と。

 

一方通行「さて………じゃあ俺を殺してみろよ、神」

 

神綺「ええいいわよ。存在すら消し、殺してあげる」

 

両者、己の敵を睨む。

 

この場の空気は静まり返る。

近場を飛ぶ鳥はここから慌てて逃げ、雲は勢い良く流れていく。

今ここに存在する全ては察したのだ。ここに居ては不味いと。

 

そして、神綺は、一方通行は

 

遂に動いた。

神綺は魔方陣を発動させようとした瞬間、頭部に衝撃が走る。

 

一方通行に踏まれたのだ。

 

そしてその神綺の頭を踏んだ一方通行は白い翼を、一回大きく羽ばたかせる。

すると、たった一回羽ばたかせただけなのにもう宇宙空間に居た。

 

一方通行は拳を振りかぶり、狙いを定める。

勿論狙う相手は神綺だ。

 

直後、腕に片方の白い翼を纏い、拳を振るう。

 

放たれたのは先端が鋭く尖った白い渦巻く衝撃波。だが、この衝撃波は空間を斬り神綺の巨大な魔方陣を打ち砕き地上に人里の何倍も広さの大きな底なしのような穴を空ける。

この出来事はたった(わず)か1秒の出来事だ。

 

一方通行は白い翼を使い宇宙から地上に降り自分が空けた大きな穴の近くに着地し、白い翼を消してから見る。

 

一方通行「あン?………ちとやり過ぎちまったかァ?」

 

ま、諏訪子に直してもらうから良いか、と心の中で呟き林のなかを進む。

 

すると居た。

背中にあった翼が消え、木に寄りかかるように座り込む神綺が。

 

回避できるように手加減したが、やっぱりやり過ぎたようだ。

 

服の上からでも見えるナイフで斬られたような擦り傷やアザなどなど………。

もう、こんなにボロボロなら動けないだろう。

一方通行は座り込む神綺に近付く。

 

神綺「……………」

 

一方通行「………よォ、生きてるかァ?」

 

神綺「………ギリギリ……って、とこかしら………」

 

ふぅ、と息を吐き下向いて

 

神綺「貴方強いわ。いや、強すぎる。全く……こんなやつが居たとは計算してなかった………。でも、負けたけど気分は良いの。だって人間達にはもう罰は下せてると思うし」

 

一方通行「………オイ、答えろ神。何で人間に罰を与えンだ?俺ァ人間が泣き叫ンで死のうが滅ぼうが関係ねェが、理由を聞かせろ」

 

神綺「………ある一人の人間に魔界がめちゃくちゃに壊されたからよ。その人間は、黒い玉を魔界にばら蒔きどっかに行ってしまってそれからは………魔界人、妖怪、悪魔。それぞれが持つチカラをまるで魔界に打つけるかのように暴走して……もう、私の魔界は……………」

 

話を聞いただけで神綺の言う人間が分かった。

犯人はアレイスター=クロウリー。間違いない。

つまり、今起きてる全ての元凶はアレイスターのようだ。

そう一方通行は確信すると(ひたい)に血管が浮かび上がってしまうぐらいに、静に怒りを(あらわ)にする。

が、今は

 

一方通行「へェー……そォかよ」

 

神綺「反応薄いわね。あぁ……貴方、人間何てどうでもいいって言ってたわね。でもね………私は、私の魔界に住む者達を結構大事にしてるのよ?だから……だから許せないの。魔界の世界を地獄に変えた人間が_____」

 

一方通行「_____で、その人間が何処に居るか分かンねェからとりあえず人里を襲ったって訳か」

 

神綺「……ええ」

 

一方通行「(チッ……あのクソ野郎、あの短時間で魔界にまで行ってたのか。クソ、千回死ンでも俺があと一万回殺してやる。まァ、今はとりあえず_____)その人間がどンなヤツか、何処に居るのか俺は知ってる。だから俺と____」

 

手を組まねェか?と話す。

 

神綺「え……?」

 

一方通行「俺達が手を組む理由は、一つ。共通の敵をブチ殺す事だ。そしてその敵はムカつくことに強ェ……、なら手を組ンで協力してぶっ潰す方が楽だし殺せる確率が少しは上がる。………どォだ?俺と手を組むかァ?」

 

神綺「………、」

 

一方通行「あァ悪ィな。オマエの手を組む条件を聞いて無かったなァ……。何か望む条件はねェか?」

 

神綺「………無い。と言うか、少し待ってくれる?頭の処理が追い付かないの……」

 

一方通行「まァ……ぶっ殺しに来たヤツが急に手を組もうなンて言ったら普通驚くか。だが……言っとくぜ。オマエがもし手を組むっつゥなら俺がオマエを、オマエの守りてェモン全て守ってやる」

 

神綺「っ!?…………本気?」

 

一方通行「あァ」

 

彼は簡単に。一呼吸して直ぐに返す。

その事にただ神綺は驚く。

 

神綺「私が守りたいものは物凄く多いわよ?それに私を守るなんて……それがどういう意味か分かってる?」

 

そう神綺を守るなんてハッキリ言って普通出来ない事だ。

彼女は強い。しかし神綺にも命の危険は人生に一つや二つはあるだろう。だが神綺が命の危険を感じた時はとても危険な状況と言えるだろう。それはもう天と地がひっくり返るぐらいに。

だからそんな彼女を守ると言うと事は。とどの詰まり、

天と地がひっくり返る程の所に飛び込むと言う事。

 

一方通行「あァ?何だァ?俺が女の一人や二人を守れねェ腰抜けに見えンのかァ?舐めンな、余裕で守れるっつの。つか、俺の守りてェモンはその中にオマエ一人ぐらい入っただけで手に負えないほど小せェモンじゃねェンだよ」

 

神綺「……!………」////

 

初めて女と言われた。初めて女として扱われた。

 

初めて

 

 

 

 

 

初めて気が遠くなるほど生きてきて誰かに"守る"と言われた。

 

それに神綺は初めての感情を持ち頬が赤色に染まる。

 

一方通行「で、どォすンだァ?……手を組むなら助けてやる、手を組まねェならここで殺す」

 

神綺「……………いいわ。手を組みましょう」

 

微笑みながらゆっくりと腕を上げ、神綺は手を前に伸ばす。すると一方通行はその手をパシッ!と静かな空間に音を響かせ掴む。

 

一方通行「交渉成立。か……」

 

神綺「そー言うこと」

 

一方通行「だったらこンな所に居る暇はねェな。早くこの面倒極まりねェ事を終わらせねェと」

 

神綺「そうね。早く、皆に______く………っ!!!」

 

一方通行「……チッ」

 

立ち上がろうとした神綺が失敗してまた座り込む。

やはり、ダメージは相当なものなのだろう。

 

一方通行は神綺を見て舌打ちして、もう少し近付く。

そして

 

何も無い手に、傷に効く良い薬を出現させる。

それを見た神綺は目を丸くして

 

神綺「……驚いたわ………、まさか貴方も創造のチカラを?」

 

一方通行「違ェよ。俺の能力は、そォだなァ……オマエら風に言うと『全てを本物に限りになく近く摸倣(もほう)する能力』って所か」

 

神綺「摸倣?………つまりコピー能力ね」

 

一方通行「あァ……つってもこの能力は今日目覚めたンだけどな」

 

神綺「今日!?じゃあ貴方の他の能力は?」

 

一方通行「向き(ベクトル)操作」

 

神綺「向きを操れてコピー能力までも持ってるとは…、それにあの神より上の次元の翼。貴方本当に何者?」

 

一方通行「ただのバケモンだ。ほら……。お喋りは終わりだ。傷を見せろ、薬を塗る」

 

塗り薬の蓋を開け人差し指で掬う。

 

神綺「別に良いわよそんな事しなくて。後で勝手に治るわ」

 

一方通行「良いから見せろ。俺は救いようのねェクズだが流石に女に傷を残したら目覚めが悪ィ」

 

神綺「そ、そう………な、なら」////

 

一方通行の言葉に照れながらも、腕や脚の傷を見せる。

すると一方通行はその傷に薬を塗り始め、ついでに体のベクトルを操作して黒い玉を体内から出しそれを砕く。その時神綺はキョトンとしてた。

やはり黒い玉のことを詳しくは知らないらしい。

 

そしてそのキョトンとしてた神綺は

 

神綺「……凄い。染みないし傷が一瞬で消えたわ」

 

傷跡も残さず、一瞬で治す塗り薬に驚いていた。

 

一方通行「だがこれは本物に限りになく近ェ薬だ。だから多分、デメリットがある」

 

神綺「?…………、っ!?」

 

一方通行「あン?………何だ?」

 

神綺「体が動かない……」

 

一方通行「はァー………、それがデメリットか」

 

神綺「どうしましょ、これじゃあ…………」

 

体が動かない神綺は少し焦る。

自分が里に戻り、里で暴れてる者共を何とかしなくてはいけないのに動けないんじゃ話になら無い。

どうする。そう考えてると、一方通行が神綺に背を向けてしゃがむ。

 

神綺「?…………」

 

一方通行「動けなくても、オマエなら少しぐらい腕は動かせンだろ」

 

背を向けてしゃがむ一方通行の考えを理解した神綺。

 

神綺「えっと……この歳でおんぶされるのは恥ずかしいと言うか……その……」

 

一方通行「早くしろ。じゃねェと二つ目の考え。思いっきりオマエをブン投げるにすンぞ」

 

少しイライラされながら言われ、神綺は本当にそうされるかも、と思い。大人しく腕を一方通行の首に回す。すると一方通行は神綺の脚を持ち立ち上がる。

これでおんぶの完成だ。

 

一方通行「……ンじゃ、行くぜ。掴まってろ」

 

神綺「………ええ」

 

足に力をいれ、前へ跳躍する。そして重力に従い体が落ちると、木を蹴り飛ばしまた跳躍する。を繰り返し里に向かう。

 

途中

 

神綺(……暖かい♪………、あれ?………ね、む………く………____________)

 

一方通行の背中の体温を感じていると、突如眠気が襲う。そしてその眠気は神綺を包み、意識を奪った。

 

神綺が寝たと知らない一方通行は、声を掛け、後ろに振り返る。

 

すると、見てしまう。

気持ち良さそうに寝る神綺を。

 

一方通行「掴まってろっつったが、寝ろとは言ってねェぞ。(チッ………、寝てンじゃ聞けねェだろォが。オマエが言った『もう人間達には罰は下せてる』っつゥ意味を)」

 

ため息を吐き、また前を見て里に向かう。

だが、やはり気になる。神綺の『もう人間達には罰は下せてる』と言う言葉を。

これは負け惜しみなのか、強がりなのか、それとも本当に人間達に罰を下してるのか。

本当の意味は分からない。

 

寝てるが、起こして聞いてやる。と一瞬は考えたが、今は一秒でも早く里に着く事が最優先。

だから一方通行は進み続ける。里に着くまで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、神綺と一方通行の決着がつく前のこと。

 

パチュリーは表に出て活動するタイプではないので、やはり体力は人の一倍無い。でも魔力は膨大だ。

 

そんなパチュリーは里の大通り居た。が、前に一人のメイドが現れる。

 

そのメイドはロングの金髪で赤い半袖のメイド服を着ていて、胸元には黒い紐を蝶々結びにしていた。

 

「寝間着で彷徨(うろつ)くなんて。人間達の頭はおかしくなったのかしら?」

 

パチュリー「いきなり現れたと思ったら……喧嘩でも売りにきたの?メイドさん?」

 

メイドの持つ、シンプルのデザインの剣、二本を見て、パチュリーはあらゆる魔法が記された本を宙に浮かせ開く。

 

「喧嘩…?いえ、私は貴方達に罰を下しに来た魔界人よ」

 

パチュリー「つまり敵、って意味で良いのよね?」

 

夢子「貴方に言う事があります。それは今から貴方に罰を下す私の名は夢子(ゆめこ)。そして______」

 

突然燃え盛る(あがる)剣を二本構え

 

夢子「_______貴方じゃ私の敵にならない」

 

パチュリー「……っ………!?」

 

夢子の姿が消えたと理解した時には、もう燃える剣が首に向かって振り下ろされていた。

 

燃える剣はパチュリーの首を落とし、体を燃やし尽くすだろう。

 

が、しかし

パチュリーは一瞬でその場から離れていた。

 

"まるで時間を止めて移動したみたいに"

 

パチュリー「え?……何で私は………?」

 

「御無事でしたか?パチュリー様」

 

自分の意思で避けた訳では無いパチュリーは困惑してた。すると、紅魔館で聞く、あのメイドの声が後ろからする。

 

パチュリー「………咲夜?」

 

咲夜「はい。咲夜です」

 

振り返り、後ろに立つ者を見る。

そしたら優しく微笑む紅魔館のメイド長が居た。

 

パチュリー「……助かったわ。あのままだったら私、死んでいたわね」

 

咲夜「パチュリー様、あの者の相手は私がやります。任してくれますか?」

 

パチュリー「ええ……アイツと私は相性悪いから任せるわ」

 

咲夜「ありがとうございます」

 

パチュリーは頭を下げる咲夜に、この場を任せ違う場所へ楽な姿勢で飛んで行った。

 

咲夜「では………お相手してあげるわ。光栄に思いなさい、この世で最も高貴で気高いレミリア・スカーレットお嬢様に支えるこの私が貴方を仕留めてあげる」

 

顔を上げ前に居る自分の同じメイドを睨む。

 

夢子「調子に乗らないことね。貴方みたいな人間なら数えきれない程に殺してきた。それに……そんなおもちゃじゃ私に勝てないわよ?」

 

一人のメイドはナイフを構え、もう一人のメイドは剣を構える。

 

そして一瞬で。地面がナイフだらけになった。

 

それは咲夜は時間を止めて、空からナイフを投げたからだ。

しかし、夢子はそれを剣で弾き、避ける。

 

夢子「大道芸なら頼んで無いわ!!」

 

正面から剣を構えて突撃する。

すると咲夜はナイフを投げて後方へ宙を跳び、距離を取ろうとする。

だが

 

咲夜「……く………っ!!」

 

後ろから剣が飛んで来た。

そう、刃物を投げるのはべつに咲夜だけの得意分野ではない。

そんなことぐらい夢子にもできるのだ。簡単に。まるで、日課をするかのように。

 

咲夜「いつの間に後ろから……、…………はっ!!」

 

ギリギリ剣を(かす)る程度で避けたが。つい、後ろへ向いてしまった。すると急に気配を感じ慌てて前を見る。すると指の間、一本一本に剣を持ち、振るう夢子の姿を見る。

だが、一瞬でも時間があるなら、咲夜は時間を止め回避できる。だから咲夜は時間を止めた。

 

そして時間の止まった世界が広がる。

 

咲夜は夢子から離れ、地に足が着くと囲むようにナイフを投げて

 

静止した時間を動かせる。

 

夢子は自分に向かってくるナイフを剣で弾き、咲夜に飛ばす。

が、綺麗に咲夜はそれを避ける。

 

夢子「……時間を操る能力………ね」

 

スタッ、と着地してポツリと呟く。が、しかしその声は咲夜に届く

すると

 

咲夜「……正解よ、良く気付いたわね」

 

夢子「バカにしないで、そのぐらい簡単に気付けるわよ。にしても時間操作、ね______」

 

______しょうがない、と言い

夢子はある物を服の中から取り出す。

それは

 

咲夜「……、っ!?」

 

夢子「その顔を見ると"コレ"を知ってるみたいね」

 

取り出した物は。"コレ"とは。あの黒い玉のことだ。

 

そして夢子はその黒い玉を握り締めた。そしたら黒い玉はうっすらと消えていき最後は完全に消えた。

神綺のときと同じだ。体の中へと消えていったのだろう。

 

咲夜「……まさかアレを持っていたとは………、少し厄介ね」

 

夢子の雰囲気が変わり、さっきより警戒して身構える。

でもそれは無駄のようだ。

 

夢子の動きはとても眼で追えるスピードではなくなっていた。

咲夜はそれに気付いた時は自分が地面に打ち付けられ、服の両肩に剣を刺され、身動き出来なくなってたときだった。

 

そして咲夜に空から剣が降り注ぐ。

砂煙が発生してしまうほど剣は強く投げられた。

 

突如、風が発生しその砂煙を消し、その場がくっきりと見える。

が、そこには咲夜の姿は無く、地面に突き刺さる剣しか見えなかった。

だが

 

「甘いわ。まるでホイップクリームのようにね_______」

 

咲夜が打ち付けられた所、数メートル付近に居る夢子の後ろから声がした。

暴走者となっているが、危機や音が聞こえたとかは普通の人間のように黙視することは出来る。

だから夢子は後ろを見ようとするが、背中に衝撃が走る。

 

それはまるで鉄の拳に殴られたみたいに。

 

夢子の体は地面に数回バウンドして吹っ飛ぶ。

しかし体勢を立て直し、しゃがむ形で止まる。

 

咲夜「_____じゃあ終わらせましょう。この仕事(闘い)を」

 

自分が持つナイフ、殆どを空にばら蒔くように投げる。

空にばら蒔かれたナイフは夢子の周りをクルクルと回転しながら宙に浮いていた。

 

咲夜「チェックメイト。これで貴方の敗北が決定した」

 

と言われた夢子は首を傾げた。

 

だが、咲夜は一本のナイフを微笑みながら構える。

そしてそのナイフを投げるとき

 

咲夜「_____私の能力は時間を操る能力。つまり、時間を止めることも、遅らせることもできる______」

 

_____最後に言うわ。と言い ナイフを投げた。

すると投げられたナイフはカンカンと金属音を立ててナイフからナイフへと弾かれていく。

が、夢子の周りの宙にクルクル回るナイフは遅く複雑な回転をしながら宙に浮き続けていた。

 

咲夜「________時は加速する」

 

そう言い放つ。

そして時間を遅くされて夢子の周りにあったナイフは時速五百キロの速度でその上、予想不可能な動きで夢子を襲い、戦闘不能にする。

 

咲夜「急所は外したわ______」

 

地面に倒れてる夢子に近付き、側でしゃがむ。

そしたら夢子の体の中から黒い玉が浮き出てきた。

 

咲夜「_____これは同じメイドである私の情けよ」

 

そして咲夜は出てきた黒い玉を破壊し、夢子を横抱きして並べく安全な場所へ運ぶ。

 

 

夢子を運ぶ最中、咲夜は気付く。

何か里のなかが静かになってることを。

多分、他の皆が妖怪や悪魔を全員片付けたのか。

まだこの目で確認した訳ではないからその真実は分からない。

 

ただ、荒れに荒れた里が静かになったことを、

 

 

もう闘いが終わったことを、安堵しよう。

 

 

 

___________

_______

___

 

 

そして、今終わった。

 

里の防衛戦が。

 

 









今回、長くてすみません。

いや~……、一方通行に新たな能力が………!!
はい。ハッキリ言ってあの能力はチートです。
それにお気付きの方は流石です。

さて、第二章もあと少しで終わりです。


ここまで、読んでいただきありがとうございます。
それではまた次回、お会いしましょう。


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22話

第二章、今回で最終回です。

多分、誤字や脱字があると思います。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。


里内。まだ、防衛戦が終わってない時の話だ。

霊夢、魔理沙、アリスの三人は暴走者と闘っていた。が、魔理沙が暴走者を確実に仕留める事が出来ず敵を気絶させる程度に倒してしまう。

すると、倒れた敵からふわふわと黒い玉が浮いてきた。

その瞬間魔理沙は自分が考えてた事があっていたと悟る。

 

そして魔理沙はその黒い玉を破壊した後、周りに居た霊夢とアリスに敵は"完全に暴走していない正気に戻せる暴走者"と話す。

すると霊夢達は、

『敵を正気に戻し魔界のゲートにブン投げよう!!』という作戦を組み立てる。

そうすると敵を仕留めるよりかは体力の消耗は少ないが少し面倒ではある。

しかし、自分達は体力無いしこれしか無いと言いその作戦を実行する。

 

それからは何と言ったらいいだろう。

『お前ら真面目にやれよ…………』と叫びたくなる光景が広がる。

 

霊夢とアリスが暴走者を黒い玉を取り除き、箒を構える魔理沙に放り投げそれを魔理沙がバッティングセンターに居る野球選手のようにカキーン!!と見事に魔界の妖怪や悪魔を魔界のゲートに向かって箒で打つ。

 

そんな事をずっと続けていると他の皆も暴走者を正気に戻せると気付き、霊夢達を真似をして魔界のゲートに放り投げていた。

そして数分ぐらいで暴走者達が里から一匹も居なくなった。

 

霊夢「はぁ~……疲れた…………」

 

魔理沙「ははは……流石に私も疲れたぜ……」

 

アリス「お疲れ様……」

 

自分の血と返り血を体の所々に付着して大きな里の通り道に立ち尽くす三人の少女。

もう彼女達は何かをする体力すら残って無い。

 

そしたら、

 

幽香「ここに居たの。お疲れ様」

 

優しく微笑みながらボロボロの幽香が霊夢達と合流する。その後、他のメンバーも合流していき気付いたらこの場に大人数が集まる。

 

後は、、、、、一方通行だけ。

と思うと。

 

 

「________よォ」

 

 

霊夢「ッ!!………一方通行……?後ろに背負ってるのって……」

 

一方通行「おォ。今回の主犯だ」

 

神綺を背負った一方通行が合流する。

 

魔理沙「お前……勝ったのか。魔界の神に……?」

 

一方通行「だから背負ってンだろ。つか、神になら前に勝ってるっつの」

 

霊夢「アンタ、今まで何やってたのよ……」

 

一方通行「家を探してただけだ_____」

 

咲夜「___なのに紅魔館に来て」

 

アリス「___魔法の森に来て」

 

幽香「___私と闘って」

 

慧音「___里の裏路地で少女を助けて」

 

妹紅「____いたと」

 

一方通行「…………、」

 

まだ他にやっていた事があったが、全てあっている。

 

そして最後に、

 

パチュリー「ホントに何やってるの?」

 

朝昼夜ずっと寝間着のような格好をしている紅魔館の大図書館の管理者に呆れながらそう言われた。

 

一方通行「チッ。うるせェな、っつゥか何時まで狸寝入りするつもりだ。起きろクソ神」

 

神綺「あら?バレてた?」

 

ひょいと一方通行の背中から顔を出して微笑む。

すると一方通行とアリス以外は警戒心を剥き出しにした。

 

が。

 

一方通行「止めろ。コイツにもう敵意はねェよ」

 

神綺「そうね……。もう無いかしら」

 

一方通行は神綺を降ろした。

 

魔理沙「そ、それなら別にいいが……」

 

警戒した者達はちょっと後ろに下がる。

やはり、そう簡単には信用することは出来ない。

 

神綺「にしても……、結構この里綺麗ね。てっきり夢子ちゃんが跡形もなく破壊してると思ってたのに」

 

一方通行「そォか、成る程な。オマエは自分の右腕的な存在を里に送っていたのか」

 

神綺がもう罰は下せてると言ったのはその夢子と言う者が里にいたから、なのだろう。

しかし

 

咲夜「その夢子いうメイドなら魔界に帰しときましたよ」

 

神綺「っ!?……ま、まさかあの夢子ちゃんを倒したの?」

 

咲夜「少し手こずったけどね」

 

神綺「ふっ。本当に本当に…………、私の完敗ね」

 

これ程圧倒的に勝負に敗けたのは初めての経験だった。

だが、不思議と怒りなどの感情はない。

 

逆に清々しい気持ちであった。

 

神綺「さて。じゃあ私はどうしたらいいの?…………えっと、貴方名前は?」

 

一方通行「アクセラレータだ。そォだなァ、まずはオマエの世界の暴走したヤツらの正気に戻す方法でも教えてやるから黙って聞け」

 

神綺「戻せるの!?本当に!?」

 

一方通行「俺は下らねェ嘘はつかねェよ、だから少しは落ち着け。オマエの世界に暴走する玉がばら蒔かれた時期は俺がクソ野郎と殺り合ってるときだ。だから1ヶ月半以上の時間は経ってねェ。なら正気に戻す事は可能だ。ンじゃ説明すンぞ戻す方法。まず、暴走者の意識を奪え。そしたら黒い玉が体から浮き出るからそれを破壊しろ。それで終わりだ」

 

神綺「……なんか、随分原始的な方法ね」

 

一方通行「だがこれが戻す方法だ」

 

神綺「そう…………」

 

簡単に納得する方法ではないが白い彼が言うならそれが本当に戻す方法なのだろう。

ならば信じよう、一方通行の言葉を。

 

神綺は聞いた言葉を完璧に記憶すると一方通行に、

 

一方通行「_____あン?」

 

素直をに頭を下げた。

そして

 

神綺「ありがとう」

 

顔を上げた時、お礼を言っている表情はとても嬉しそうであった。

 

一方通行「……チッ。早くオマエの世界に帰れ、じゃねェと面倒事が終わンねェだろ」

 

神綺「そうね。だけど少し良い?」

 

そう言い、神綺はアリスの元へ行く。

 

神綺「ねえ、アリスちゃん」

 

アリス「はい…………」

 

神綺「こっちに来てからどう?元気に暮らしてる?連絡をくれないから私はそれだけが心配だったの。だって、私は貴方のお母さんなんだから」

 

アリス「ッ、………」

 

少し悲しそうに、寂しそうに微笑む神綺をアリスは目にする。

どれだけ心配してたのだろう……………………、

 

神綺の目には涙があった。

 

アリス「大丈夫です。ここでは元気に暮らしてます……よ」

 

神綺「それなら良かったわ。安心した。けど、たまには実家に帰って来なさい、他の皆もアリスちゃんのこと心配してるのよ?」

 

アリス「すいません。なら、今日家に帰ります」

 

アリスは神綺の隣に立ち

 

アリス「じゃあ、私。今から少し魔界に行ってくるわ」

 

魔理沙「おう、こっちは任せろ!!」

 

親指を立ててニッと笑う。

 

アリス「では、行きましょう神綺様」

 

神綺「その前に_____」

 

魔界のゲートと反対の方向に歩み、

 

 

そして、

 

 

一方通行「___________あァ?」

 

神綺「また会いましょ。ア、ナ、タ♪」//

 

頬を染めながら一方通行の頬にそっと口付けする。

その光景を見た一同は言葉を失い石のように固まった。

 

そして、神綺はスタスタとアリスの元へ行き

 

神綺「さっ、行きましょアリスちゃん♪」

 

アリス「あ、あの神綺様。もしかして____し、し、神綺様!?」

 

魔界のゲートへ飛んで行った。そして初めて見る神綺に戸惑いながらもアリスは着いていき、二人は魔界のゲートをくぐった。

 

すると魔界のゲートは空から消えた。

 

 

一方。

一方通行はと言うと、

 

一方通行「クソったれ。詰まンねェ事しやがって…………」

 

と、魔界のゲートの方向を見て呟いていた。

彼はあの行動を冗談かイタズラかと思っているらしい。

 

鈍感とは恐ろしいものだ、

 

_____________だって、硬直状態だった少女達の殺意に満ちた睨みに気付いてないのだから。

 

だが?

 

一方通行「_____あン?何だよオマエら?」

 

振り返り一方通行は気付いた。

自分がまるで親の仇みたいに睨まれてる事に。

 

霊夢「とりあえずアンタ一万回死になさい」

 

一方通行「最初の時より数がバカみてェに増えてンぞコラ」

 

慧音「流石に私もそんぐらい死んだ方が良いと思っているぞ。皆の気持ちを考えるとな」

 

一方通行「???……あァ?」

 

さっぱり解ってなお彼には多分何を言っても無駄だろう。

だから少女達はお決まりのように心の中で叫ぶ、

 

 

『この鈍感がッッ!!!!!』

 

 

と。

 

 

 

まあ、そんなひと漫才した時だった。

 

「やあやあ君達かね?里を守った人達は?」

 

一方通行「あァ?…………チッ」

 

薄青い色の浴衣を着たお腹周りがご立派な中年のおじさんが優しそうな笑顔で手を顔の位置ら辺に上げて声を掛けてきた。

 

が、一方通行はそのおじさんに会うと舌打ちをしてから霊夢を睨んだ。

 

一方通行「オイ。人間に外に出ねェように言ってねェのか」

 

霊夢「一応言ったわ。けどその人はその言葉を無視して出てきたようね」

 

外に出てきては不味かった。

そうおじさんは思ったが、

 

「勝手に出てきた事は謝らせてくれ。けど私は、私はもしたら君達が黙って何処か行ってしまうかもと思って出てきたんだ」

 

一方通行「あン?俺達が黙ってどっか行ったらオマエに何か不都合でもあるってのか?」

 

「それはあるさ。だって君達が去ってしまったら出来ないじゃないか…………、お礼が」

 

一方通行「………ンなモンいら_________」

 

断ろうとした瞬間だった。

誰よりも速く、そして大きな声で、

 

霊夢「______なら、お金が欲しい!!!」

 

礼を貰う気満々で自分の欲を叫ぶ紅白の巫女。

 

するとそれを聞いた皆の反応はとても静かであった。

 

だが心の声は、

 

 

『お前どんだけ生活キツいんだよ』と言う言葉を口にせず自分の中でそう呟き眼に『¥』のマークを写してる霊夢をただ眺めてた。

 

そしてその言葉を打つけられたおじさんはニコニコして、

 

「ああそんな事か。良いだろう!!金なんて私が使いきれない程にあるからな!!」

 

霊夢「やったぁぁぁああああああッ!!」

 

嬉しすぎて思わず拳を空へ突き上げた。

 

………………が、その喜びなんてたった数秒で終わってしまう。

 

魔理沙「なあ、霊夢さん?」

 

霊夢「…………ん?」

 

悪魔に。

いや、魔理沙に肩に手を置かれた。

 

そして

 

魔理沙「今回、お前一人で解決してないよな?そのぐらい分かってるだろ?」

 

霊夢「な……、何を…………言いたいの?」

 

ゴクリと、音を立てて唾を飲み込む。

とても嫌な予感がした。

 

魔理沙の何かを企んでる顔を見て。

 

魔理沙「なぁに簡単な話だ。報酬金を寄越せとは言わない。ただ金を皆で使おうぜって話だぜ?」

 

霊夢「それって……まさか……ッ!?」

 

魔理沙「ああ……、貰った金で今日は宴会だぜぇぇぇえええええッ!!!!」

 

霊夢「嫌ァァァァァァああああああああああああッッ!!もしも皆で宴会なんてやったら1円も残らないじゃない!!」

 

今期最大の声量で思いっきり断る。

しかし誰にでも聞こえるが小さな声で

 

咲夜「あのね、霊夢。私達タダで力を貸すなんて言ってないわよ?」

 

後ろに意地悪そうに微笑む者や、純粋に笑う人達が霊夢に視線を集中させていた。

 

それを見て、だ。

 

 

霊夢「…………あ、…………____________ったわよ」

 

もう良いや

 

何かを吹っ切れた霊夢は、

 

霊夢「分かったわ宴会すれば良いんでしょ!?今夜の酒は特上よォォォッ!!」

 

貰った金で今後の生活が少しは楽になると思った自分は愚かだったとガッカリしながらヤケクソ気味に叫ぶ。

 

だがその空気に置いてかれた二人は…………、

 

「な、なんか知らんが喜んでくれて何よりだ…………」

 

一方通行「……言いてェ事言い終えたンならさっさとどっか行け」

 

ズボンのポケットに手を突っ込み、吐き捨てるようにおじさんに言った。しかし

 

「あっ、待ってくれ!君にも礼をしたい。君なんだろ?里を守った中心的な人物は?」

 

一方通行「……ンなご立派なモンじゃねェよ、俺は」

 

幽香「_______何カッコつけてんのバカ。ハイハイ、コイツよ中心は」

 

早くこっから去ってしまおうとスタスタと歩き出そうとした時にはもう既に手をガッシリと幽香に掴まれていた。

 

一方通行「……………………、」

 

幽香「そんな顔しないの。人の好意はちゃんと貰っとくものよ?」

 

「そうだとも。私の御礼を貰ってくれ」

 

一方通行「………っつったってなァ。欲しいモンがねェ」

 

パチュリー「あら?さっき欲しいもの言ってたじゃない」

 

一方通行「_____あァ?」

 

他の者はうんうんと顔を縦に振って頷いていた。

だが、自分が欲しいものを言ってたのか?

と、一方通行は考える。

するとある一人がもうドストレートに言った。

 

霊夢「コイツ、家が欲しいって」

 

普通、礼をする人に言う言葉ではない。

遠慮はいらないよと言われても『家をくれ』と言う人はまず居ないだろう。

しかし、ここは幻想郷。

 

"異常"が"普通の"世界だ。

 

だから、

 

「ん?家か。ああいいさ、プレゼントしよう!!君に家を!!」

 

一方通行「………はァ?」

 

これで長く探してた家探しは終了する。

なんとも呆気ない幕引きだ。

 

霊夢「良かったわね。一方通行」

 

魔理沙「後で場所教えてくれよ。祝いの品を持ってってやるから」

 

右と左。

左右から背中にポンと手を当て、霊夢はいつもどうりの表情で、魔理沙は自分のように嬉しそうに笑って一方通行の顔を覗く。

 

一方通行「………ああ。やっと終わった…………のか」

 

「さて、なら早速君にプレゼントする家を紹介しよう。だから巫女さん、礼金は後で渡すね」

 

霊夢「ええ。多分、ほんの数時間で無くなると思うけどね…………」

 

「ハハハッ!!それはそれは渡しがいがあるな!!あ、行こうか少年」

 

一方通行「あァ…………」

 

そしておじさんと一方通行は少女達の見送られ、歩いて行った。

幻想郷で生きていくための一方通行の新居へと。

 

 

 

 

 

 

歩くおじさんの二メートルぐらい離れれて歩く一方通行。

だが歩いてる最中

 

「そう言えば誰なんだい?」

 

一方通行「あン?何がだ?」

 

「君の彼女さ。あのなかに居るのだろう?」

 

一方通行「いねェよ。俺に彼女()は」

 

「えっ!?居ないのかい?と言うか君はあの子達を見て何も思わないのかい?」

 

一方通行「思わねェよ。くっだらねェ」

 

「あははっ!!私ならもうゾッコンだな~。あんな綺麗な子達が周りに居たら一人や二人には」

 

とてもとても下らない話。

 

しかし、

 

だが。

 

空気が変化する。

それはもの凄く重い空気へ。

 

 

一方通行「______そろそろ下手な芝居は止めろ。臭ェンだよオマエ」

 

「芝居?臭い?酷いなぁこれは本音だよ。それに毎日私は体を洗っているよ。まあ、加齢臭は目を瞑ってほしいがね」

 

一方通行「なに言ってやがる。毎日全身を汲まなく洗おうがソイツにこびり付いて落ちねェンだよ……………………。血の匂いはよォ」

 

ピタッと、優しいおじさんが足を止めた。

すると一方通行も続くように足を止める。

 

そしてちょっと間を空けた後にだった。

 

「ック、ククッ………。アハハハハハハハッ!!バレてたか"俺"の正体なんて!!」

 

一方通行の方に振り返るおじさんのその顔つきはさっきの優しく振る舞っていた人とは考えられな程、百八十度も変わった顔となっていた。

悪党。闇に居る人間。

そう例えれるぐらいおじさんは表情は変化していたのだ。

 

「血の匂い、ね…………。なら君からもするぞ?この大量殺人鬼」

 

一方通行「ハッ。善人ぶりたかったら少しはマシな演技をすンだな、三下が」

 

光なんか届かぬ世界。

闇の底の底で生きてきた二人はもう顔つきは変わっていた。

 

 

闇の人間の顔へと。

 

 

「三下とは酷いな少年。まあ、良いか。今回は俺はただ君に御礼をしたいだけだしね」

 

一方通行「…………一つだけ言っておく」

 

「ん?」

 

幻想郷最強の能力者は、学園都市超能力者(レベル5)のバケモノはこの里の闇を支配するおじさんに告げた。

 

一方通行「_________俺の守りてェモンに指一本触れてみろ。オマエにこれ以上ねェ絶望と恐怖を刻ンでやる」

 

「おお怖い怖い☆おじさん震えちゃうよ~」

 

と口では言うが馬鹿にした態度で笑っていた。

 

「フフッ。まあ、そんな事しないさ。俺は君と良い関係を築きたいからね」

 

一方通行「なら、そォなるよォ無駄な努力でもしてろ」

 

「良い。ホントに君は良いよ。………………ほれ」

 

笑いながら投げられた物を一方通行は受け取った。

 

「この道を右に曲がると二階建ての青い瓦の家がある。それが今日から君の家だ」

 

一方通行「そォか。じゃあな。二度と会わねェように願ってろ三下。次はオマエの敵となって俺が現れるからなァ」

 

一方通行はおじさんの横を通り過ぎる時、そう呟いた。

 

 

 

……………………そして。

白い彼の姿が見えなくなると、

 

「あーあ。君とは良い関係を築けると思ったのに残念だ。ははハハハッ。次は敵、か……………」

 

 

おじさんはこの場に笑い声を置いていき暗い暗い闇へ帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行はおじさんに渡された家の鍵で扉を開けた。

そして眼に写ったのは、何も無い広い部屋だった。

 

一人で住むには広すぎるがたった一人でバカデカイ部屋に閉じ込められた少年時代もあったため何も思わず二階へ上がった。

 

この家は一階にトイレや風呂などの部屋を含むと七部屋。そして二階は六部屋とゆう構造らしい。

まあそんな事どうでもいいか。

どうやら初日からお掃除らしい。

 

床の畳を踏みつけ能力で剥がすと赤黒い液体が撒き散らされた跡のようなものを発見する。

 

もしかしたらここで…………人間を……、

 

一方通行「チッ。ったく、面倒くせ__________っ!?」

 

急に頭がくらっとして床にうつ伏せて倒れた。

 

一方通行(……な………………ンだ、体に……ち…………か…ら_____________)

 

そこで一方通行は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑い声が聞こえる。話す声がする。

とても寝るには五月蝿すぎて眼を開けた。

 

一方通行「…………あァ?」

 

見えた景色は白く輝く月に綺麗な夜空。

 

一方通行は自分が今、何処に居るか理解出来なかったが、

 

紫「お目覚めかしら?ヒーローさん」

 

覗きこむように顔を見つめる一人の女性と目が合った。

 

一方通行「……紫、俺は今何処に居る?」

 

紫「宴会場。そして一番の特等席よ」

 

大きな大木の中心部分に板を組み建て赤いはみ出る程大きな布を敷いた人が何人も座れる場所。そこに一方通行は寝ていたそうだ。

 

一方通行「……俺はどのくらい寝てた?」

 

紫「そうねー……。二時間程度」

 

一方通行「チッ………体にガタがきたのか。俺も歳かァ?」

 

紫「じじ臭い事言うわね。まあ正確に言うと頭に大きな負担がかかったから一時的に気を失っただけよ」

 

一方通行「その口振り、どォやらオマエが俺を見つけたのか」

 

紫「ええ、そうよ」

 

頭に負担が大きくかかった。

全く倒れた理由まで知ってる何てどこまで紫は一方通行を知ってるのだろう。

 

一方通行は上半身を起こし周りを見渡す。

そしたら今まで会ってきた奴等が居た。

 

赤や白の布を敷いて酒を飲み飯を食べる。

まさに宴会場。

 

一方通行「…………、」

 

紫「いつまでここに居るの?起きたのなら下に行きなさい。皆が貴方のことを待ってるわ」

 

一方通行「下はうるせェだろォからここで寝る」

 

紫「宴会なんだから少しは楽しみなさい一方通行」

 

一方通行「……あン?___________オマエ!!」

 

指を鳴らす紫。

一方通行は自分が居る場所の下にスキマを開けられたと気付いた時にはもう体の半分がスキマに入っていた。

 

そして一方通行は、、、、、

 

 

霊夢「ん?」

 

魔理沙「お?」

 

霊夢と魔理沙が居る場所へ落とされた。

 

一方通行「______クソったれ……」

 

座ったまま宙から落とされ、尻を強く打った。

 

一方通行「あの(アマ)いつか絶対ぶっ殺す」

 

霊夢「なに物騒な事言ってんのよ」

 

魔理沙「そうだぜ。宴会だぜ、宴会。楽しく酒でも飲もうぜ」

 

片手に徳利、もう片手にお猪口を持っていた。

多分中身は熱燗だろう。

魔理沙はイライラしてる一方通行に酒を注いだお猪口を差し出す。

 

しかし、、、、、

 

一方通行「俺は酒は飲まねェよ」

 

そんな捨て台詞を吐き何処かへ去ってしまった。

 

 

残された霊夢と魔理沙は

 

魔理沙「あーあ………。どっか行っちゃったな、霊夢」

 

霊夢「そうね………、って何でそれを私に言うの!?」

 

魔理沙「いや?何か残念そうな顔してたからさ」

 

霊夢「してないわよそんな顔っ!!」

 

魔理沙「とか言ってー。本当は一方通行と一緒に居たかったくせにぃー。素直になれよー」

 

霊夢「うっ、うるさいわね!!それは魔理沙でしょ!」///

 

魔理沙「んなっ!?そそそ、そんな事ないぜ!!」///

 

頬が赤くなってるのは酒のせい。そうだ。絶対そうだ。

 

と、なんか知らんが勝手に自分で納得する。

 

そしてその後、二人は黙って酒を呑んだ。

 

 

 

 

酒から離れた場所に行きたい一方通行は誰も居なさそうな場所を探していると、

 

諏訪子「ん?一方通行。何か探し物?」

 

一方通行「あン?諏訪子か。…………、ソイツ酔い潰れたのか?」

 

一方通行は酔い潰れた早苗とその早苗を膝枕している諏訪子と会う。

 

諏訪子「うん、早苗はお酒弱いからね。呑んだらすぐに顔を真っ赤にして寝ちゃうんだ」

 

一方通行「だったら呑ませンなよ」

 

諏訪子「アハハッ、この子が呑みたいって言うから……ついね」

 

一方通行「まァ、呑みてェっつゥならしょうがねェか。俺は呑みたくねェからここからずらかるぜ」

 

諏訪子「そうなんだ……。一緒に呑みたかったげど呑みたくないなら仕方がない。いつか一緒に呑める機会があったら一緒に呑もうね」

 

一方通行「あァ、そォだな_________俺が酒を呑めるようになったらなァ」

 

去るときにとても小さな声で呟き、歩いて行った。

 

宴会場は一ヶ所に集まって飲んでるのではなく、間を空けて皆呑んでいる。

だから歩いていると、まあまあ知り合いに会うわけで、

 

…………結局、

 

フラン「アクセラレータ♪」

 

一方通行「あァ?フラ_______ぐ………はっ!

!」

 

可愛い幼女に頭から突進され紅魔館に住む人達が居る場所へフランが上に乗る形で押し倒された。

 

フラン「あはははっ!!久し振りーっ!!」

 

一方通行「…………、殺す気か」

 

可愛い幼女だとしてもフランは吸血鬼。腕力は一般男性よりあり、そんなフランが全力で突進すればまあ痛い訳で

 

一方通行「っつゥか俺の上から降りろ」

 

フラン「はぁーい………」

 

ちょっといじけながら一方通行の上から降り、隣に座った。

 

一方通行「クソったれが…………、今ので腰の骨折れねェだろォな俺」

 

レミリア「もしもそうだったらお笑いね、最強さん」

 

一方通行「…………レミリア」

 

宴会場だと言うのに優雅に紅茶を飲んでるレミリア。

そして

 

美鈴「どうもお久しぶりです。折れたんじゃなく脱臼なら私が直せますよ?」

 

小悪魔「それ……ちゃんとした治療方法ですか?」

 

咲夜「どうせ気を撃ち込んで無理やりはめるんでしょ」

 

パチュリー「…………眠い」

 

一方通行「はァ~……、もォイイ…………」

 

どうやら彼は静かな所に行くという事は出来ないらしい。

だから一方通行は諦めた調子で呟いた。

 

一方通行「咲夜、コーヒーくれ。そしたら俺は寝る」

 

咲夜「……はいはい。ちょっと待ってね」

 

もう既に準備はしてたようで、コーヒーを淹れ始めている。

 

そしてコーヒーを待っている時間。

 

 

レミリア「にしても随分楽しい事してたようじゃない」

 

フラン「フランも混ざりたかったー!」

 

一方通行「………次はオマエらも混ざれるかもな」

 

心にも無いことを吐き捨て、周りを見た。

そしたらお前の腹の何処に入ってンだよと言いたくなるほどご飯を食べる幽々子、そしてそれを唖然して見てる妖夢。ガチの殺し合いをしてる輝夜と妹紅、慧音はそれを止めず頭に手を当てため息を吐いていた。

チルノ、大妖精、ルーミア、と名の知らない妖精たちは楽しくただ騒いでいた。まあ楽しいのは良いが鈴仙は何か怪しい薬を酒に混ぜている。

酔っているのだろう、にとりは何故かミサイルを取り出して、爆発させようしてた。

萃香は酒を片っ端に呑んでいる。と、まあまあ皆宴会を楽しんでいる様子だった。

 

一方通行「……ン…………?」

 

周りをまだ見ているとちょっと忘れてた子と目があった。

 

一方通行「……こころ」

 

ポツリと名を呟いたが、怒ってるのか。こころはプイッとそっぽ向いてどっかに行ってしまった。

 

 

そして紫の居る場所に神奈子と藍、そして猫耳娘が居る。おまけにその近くには永遠亭のてゐと永琳も居た。

 

 

一方通行「…………、」

 

フラン「さっきから何でキョロキョロしてるの?」

 

一方通行「あァ?……静かな場所ねェかなって探してるだけだ」

 

フラン「気になる子を探してるとかじゃないよね?」

 

一方通行「いねェいねェ。ンなやつ」

 

手をふらふら振って答える。フラン的には安心が半分と残念が半分。といったところだ。

そしてやっと待っていたものが後ろから顔の横に差し出された

 

咲夜「はいどうぞ、お待たせ」

 

一方通行「ン」

 

渡されたのはコーヒー。

もう何日も飲んでなく、とても久し振りだ。

 

一方通行はコーヒーを手に取りごくっと一口飲む。

…………ああ、と珍しく落ち着いた様子で呟いてしまう。

そして

 

一方通行「……うめェ……」

 

褒め言葉をそんな言わない彼から出た言葉に周りの者達は驚く。しかし一方通行は落ち着く味のコーヒーを味わっていて周りの反応は気付いていない。

 

一方通行「…………、」

 

こと、と空のカップを置いた。

もうコーヒーは飲み終わったらしい。

ならやることは一つ。

 

一方通行「ンじゃ、寝る」

 

と言って一方通行は横になった。

 

フラン「え~…ホントに寝ちゃうの~?」

 

一方通行「寝る。マジで疲れてンだよ、俺ァ……」

 

ため息混じりで、疲れた様子で話す。本当に疲れてるらしい。まあ、あれだけの戦闘をしてたのだから仕方ないか。

だが

 

フラン「う~…………」

 

久し振りに会い、もっともっとお話などしたかったフランは分かりやすくいじける。

 

 

もう気が付けば一方通行から寝息が聞こえる。

でもフランはかまって欲しい。なら、やることは一つ

 

フラン「寝ちゃうのはいいからさ。宴会が終わったら、また二人っきりでお風呂入ろ♪♪」

 

あの一方通行が困ってしまう言葉(爆弾)を投下すればいい話。

すると案の定、この宴会場が石ではなく氷のように固まった。

 

そして、

 

霊夢「ちょっと!!それはどう言う事!?一方通行!!」

 

だらだら巫女さんから先に、質問攻めを食らう事になる鈍感悪党。

 

一方通行「あァ?何がだよ?」

 

大声で目を覚まし辺りを見る。

すると一方通行は周りに沢山の少女達に囲まれていた。

 

霊夢「何がだよじゃないわ!このロリコン!」

 

レミリア「ロリ……コン?…………まさか、やっぱり私の可愛い妹に何かしたの?」

 

一方通行「なンもしてねェよ。なァ?フラン」

 

寝転がりながらフランへ問う。

大丈夫だ、俺は白。無実だ。

 

だが

 

フラン「………気持ち、良かった……」////

 

頬を染め恥じらいながらちょいと照れてフランは話す。それは男女が同じベットで一夜を過ごした後みたいな感じで

 

 

 

「「「この変態がぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!」」」

 

 

見事に勘違いした集まって居た少女達の叫びが響き渡り。そして一方通行は無実だったのに黒になってしまう。

 

 

一方通行(あ……フランのヤロウ。こォなるって思って言いやがったな…………)

 

本気の攻撃を少女達に繰り出される数秒前、一方通行はフランのニコニコする顔を見て自分は嵌められたと悟った。

 

次の瞬間、酒や宴会料理が飛び散り一方通行の居た場所は隕石が落ちてきたみたいな穴が空いていた。

 

一方通行「…………、、、」

 

瞬時に回避行動をとり、無事に避け地面に立つ。が、自分の居た場所が跡形も無く消えていて流石に言葉を失った。

 

 

 

 

しかし、濡れ衣を着せられイラっときてる訳で

 

 

一方通行「マジで殺す気かァァ!!オマエらァァ!!」

 

「「「死ねぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」」」

 

 

宴会場が殺伐とした戦場へ変化してしまう。

でもそれは一方通行の自業自得だ。

 

 

 

一方通行「……あァァァァッ!!イイぜ!!上等だ!!オマエら全員愉快なオブジェにしてやンよ!!!!」

 

眠気は吹っ飛んだ。

今は全力で目の前に立つヤツらに自分が無実だと知ってもらうため自暴自棄になった一方通行はとりあえず、本気で潰しに掛かった。

 

 

 

結果は、説明する必要すらない本気で能力や弾幕を打つける現場になった。

 

 

その現場から少し離れた場所で、

 

妖夢「……すいません、幽々子様。ちょっと私用事が出来ました______」

 

人を殺り行く殺し屋のような目でチャキンと刀を構える。

 

幽々子「そー、奇遇ね。私もちょっと用事が出来たの。多分妖夢と同じだろうけどね」

 

ふふふっ、と微笑み話す。

 

妖夢「え…………?それって……」

 

しかし、幽々子の言葉の意味を知った妖夢は固まってしまう。

だけど

 

幽々子「さ、行きましょ。妖夢」

 

優しく手をとってくれた、幽々子の顔を見て自然に笑みが溢れた。

そして幽々子と妖夢は大乱戦のなかに飛び込んだ。

 

 

もう一つの場所。

 

 

藍「紫様、少し席を外します」

 

ある人物へ、鋭い視線を向ける藍。

 

紫「どうぞ。もう一人はとっくに行ったみたいだし」

 

一緒に酒を呑んでいた神奈子は御柱をぶん投げた後、一方通行の所へ行っていた。

 

藍「…………では」

 

サッ、と姿を一瞬で消した。

残ったのは紫と

 

橙「??……紫様~。何で藍様は行ってしまったんですか?」

 

下の状況をあんまり理解してない猫耳娘は片方の頬に指を当てて質問する。

 

紫「そうね。貴方がもう少し大人になったら分かるんじゃない?」

 

酒を上品に呑み、フッと大人びた笑みで返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃の一方通行は、怒る少女達と戦闘を繰り広げていた。紅の槍を投げられたり、超高圧の水を連続噴射されたり、数えきれぬほどの弾幕を一斉に放たれたりと自分は無実だと言うのにもう散々である。

 

 

そんな中、攻撃を避け続ける一方通行の体に異変が起きる。

それは

 

一方通行「……チッ、そろそろ反撃といく_________ッ!!?」

 

軽快に宙で体を一回転して、足が地面に着いた時だ。一方通行は自分の体の力が一気に抜けるような感覚を感じた。そして全身の力が抜け地面に倒れる。

 

怒りに身を任せていた少女達はその光景を見て一斉に体を止める。

皆動きを止めた。しかし、そこに一人だけ動く者が居た。その者とは

 

 

紫「あ~あ………せっかく体が少し回復したのに、また倒れてしまったわね一方通行」

 

 

少女達と一方通行の間の空間にスキマが発生しその中から紫が姿を現す。

 

 

一方通行「紫……オマエその口振り。俺の体に何が起きれてるか分かってンな」

 

自分の顔の前に女性らしくしゃがむ紫へ視線を向けて話す。

 

紫「ええ、勿論。貴方のことなら何でも知ってるつもりだからね」

 

一方通行「なら教えろ。俺に何が起きた?」

 

紫「ふふっ……簡単よ。一方通行、貴方は新たな能力(チカラ)に目覚め更に強くなった。けどその反動で脳には超人ですら耐えられない程の負荷が掛かったのよ。前に貴方は神を越えた存在になったと言ったけど体はごく普通の人間。だから新たな神を遥かに凌駕するチカラに脳が耐えられず、体の力を抜き体を休ませようとしてるのよ脳が」

 

一方通行「結果、俺は一定時間行動不能って事か」

 

紫「そういうこと。それじゃ説明したから______「待て 」_______ん?」

 

さて、と立ち上がりまた酒を飲もうと移動しようとした時だ。一方通行から声を掛けられ、止まった。

 

紫「何?なにか用?」

 

一方通行「………………思い出した。昔、オマエと会った記憶を」

 

真っ直ぐな紅い瞳でそう言った一方通行。

そしてその言葉をしっかりと聞いた紫の反応は一瞬、目を丸くするだけだった。

しかし、紫が目を丸くするなんて滅多に無いことで、その事に一方通行は眉を微かに顰める。

 

紫「……………そう。でもその顔だと思い出したのはほんの一部みたいね。そして少ししか思い出して無いから昔のことを私の口から全部教えろ…………と?」

 

一方通行「気持ち悪ィぐらい正解だ。っつゥ訳で話が聞きてェ」

 

紫「それは別に構わないけど。私、面倒事は嫌いよ?_________」

 

だから、と言って隣の空間にスキマを創る。

 

 

紫「___あの子達の相手をし終わったら話してあげる」

 

一方通行「………………、」

 

 

 

最後に紫は微笑みながらこの場から姿を消した。

そして、取り残された一方通行は背の方向から感じるギラギラした殺意に生まれて初めて冷や汗を流す。

 

 

「「「今だ!!!!やれぇぇぇぇええええええええええええええええええええええっっっ!!!!!」」」

 

 

少女達の叫びを聞き、この後自分がどうなるか悟った一方通行は…………ただ…………

 

 

一方通行「…………クソっタレがァァァァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」

 

と叫ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

その後少女達は色々な酒をビンから一方通行の口に直接ブチ込み無理矢理酒を飲ませた。

飲ませた酒の中には妖怪すら酔い潰れる滅茶苦茶強い酒も混じっていて一方通行は一瞬で全身を真っ赤にして酔い潰れる。

 

 

 

 

全く、この哀れな姿が幻想郷最強の能力者と言うのだからやはり幻想郷の恋する女性は異常までな程強いらしく。

 

 

反対に一方通行は女性に弱い…………かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそして一応ですが。

一方通行が幼女に手を出したと言う容疑は晴れた。

 

フランが"頭を洗ってもらって"気持ち良かったと訂正したのだ。

 

しかし、少女達はアホみたいにフラグを立ておまけにイイ思いしている一方通行はこうなって当然。

と、判断して一方通行を布が敷いてある所へ寝かせ再度宴会を開催した。

 

 

 

 

宴会後、一方通行は酒は"嫌い"から"大嫌い"に変化したそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

___________

 

_______

 

____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園都市のとある高校で

 

「それじゃ、俺。帰るわ」

 

ツンツンとした頭が特徴な何処にでも居る普通の男子高校生が、クラスメイトである青い髪にピアスを開けたヤツと逆立たせた金髪のニャーニャー野郎に帰りを告げる。

 

「おー、またなーカミやん」

 

「気を付けて帰るんだぜい。今、学園都市は今までで一番危ないからにゃー」

 

「え?そうなのか?土御門?」

 

土御門「あれ?なんだ知らないのか?"最近の噂"」

 

「噂……?なあ、青ピはその噂知ってるのか?」

 

青ピ「勿論。有名な噂と有りとあらゆる可愛い女の子の情報は僕は知ってるんよ」

 

「最後の情報は女子を敵に回しそうだな………」

 

と、ツンツン頭の男子生徒。上条当麻がそれを知ったら何か不幸な事が起きそうと心の中で呟き、呆れながら話す。

 

青ピ「後で教えてもええで?」

 

上条「結構だ。それよりなんだよ?最近の噂って」

 

土御門「…………最近、学園都市で革命的な事が起きたんだ。それが噂の正体」

 

思わず、上条はゴクリと唾を飲み込む。

 

上条「革命的な……ことって…………?」

 

土御門「超能力者(レベル5)にして、この町の生徒の頂点に立つ能力者が姿を消した」

 

上条「はあ?なんだそりゃ?」

 

たった一人の生徒が姿を消した。それだけなのに土御門は革命的と話す。

だが上条は何故、革命的なのか理解していなかった。

 

土御門「まー……カミやんみたいのがこの町じゃ珍しいんだせい」

 

上条「??……そうか?」

 

土御門「……超能力者(レベル5)の第一位が消えたって事はだせい。今、この町の頂点は居ないってことだ。だから能力者と無能力者は自分が頂点になるためチカラを見せつけて最近所々で大暴れって訳だ」

 

上条「あ~……それで最近、俺が事件に巻き込まれるわけだ」

 

 

「「それは違う」」

 

 

と二人の息ピッタリの台詞に上条は盛大に吹いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園都市の光照らすとあるファミレスにて

 

四人の女子中学生が今日の学校の疲れをドリンクバーだけ頼みジュースを飲んで癒していた。

 

その四人が話すのは赤の他人からは下らない話だった。

しかし黒髪のロングヘアーのスレンダーな子が

 

 

「あ!そうだ。白井さん、御坂さん知ってますか?ある噂♪」

 

目をキラキラさせながら仕入れた噂話の事を聞く。

 

「「噂?」」

 

常盤台中学に通う、大能力者(レベル4)の白井黒子。そして超能力者(レベル5)第三位の常盤台超電磁砲(レールガン)こと御坂美琴が黒髪ロングヘアーの少女の言葉に少し首を傾げる。

 

「はい、噂です。最近有名な」

 

白井「あ~……もう分かりましたの……」

 

風紀委員(ジャッチメント)はその噂のせいで、苦労ばかりですからね」

 

氷とジュースが入ったコップに、ストローを挿す頭に花をかたどった髪飾りをかぶる白井黒子と同じ風紀委員(ジャッチメント)に属する初春飾利が乾いた笑い声と共に話す。

多分、二人は風紀委員の仕事で疲れきってるのだろう。

 

御坂「ふ~ん。で、佐天さん。噂って?」

 

佐天「お、聞きたいですか。実はですね______」

 

初春「____超能力者の第一位が姿を消したー。ですよね」

 

佐天「あ!もう……、私が言いかったのに……」

 

先に言われてしまい、ちょっと落ち込む佐天を横目に御坂はその噂を聞いて誰にも気付かれずにため息をこぼす。

 

面白く無いものを聞いた。というかその噂なら世間に流れる前から知っていた。

絶対能力者進化の実験に飛び込み、実験を止めようとしたあの夜に知ったのだ。

御坂は多分、自分のクローンの死骸を見るのだろう。と覚悟しながら実験場に行ったが待っていたのはポカーンとアホな面をした自分と瓜二つの武装クローンだった。

 

自分のクローンから御坂は一方通行が決められた時間にこないと説明され、驚愕する。が、それを好機を考えクローンをその場から連れ出し無事命を救った。

その後、あらゆる手を使って絶対能力者進化を調べた結果、一方通行が行方不明のため実験を凍結したらしい。

 

 

と、まあこんな思い出したくもない事を思い出し御坂はため息をこぼしたのだ。

 

しかし、そんな御坂を無視して白井、佐天、初春は噂話から話題を変え、美味しいスイーツ話を楽しそうに話している。

 

が、パリーン!!!と窓ガラスを割って暴れ回る一人の強能力者(レベル3)の男子生徒がファミレスへ乱入する。

すると、白井は自分のなかのスイッチを入れた。

 

初春「……白井さん」

 

白井「分かってますの」

 

御坂「手伝おうか?黒子」

 

白井「いえ結構ですの。これは私、風紀委員(ジャッチメント)の仕事ですから。お姉様達は私の活躍を見ながら優雅にお飲み物を味わっていて下さいませ」

 

佐天「頑張れー!白井さん」

 

「じゃあ、言って来ますの」と言って能力。空間移動(テレポート)で暴れ回る男子生徒の前に移動して

 

 

 

白井「ジャッチメントですのっ!」

 

右手を下に向け左手で腕に着けた腕章を相手に見えるよう横に引っ張り構えた。

 

そして、ほんの数秒。白井の手によって男子生徒はお縄となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは学園都市の闇。

とあるマンションのある薄暗い部屋にホストのような服を纏い肩位まで伸びた金髪の暗部に属する青年がソファに寛いで座っていた。

そしたら部屋の扉が開き派手なドレスの少女が入ってきた。

 

「……そっちの仕事はどうだった?」

 

「退屈するぐらい簡単だったわ」

 

ドレスの少女は金髪の青年の反対側のソファにゆっくりと座り、今日の仕事の事を言う。仕事、と言っても闇の仕事なので誰かの命を奪うとか物を略奪すると言った犯罪的な仕事なのだろう。

 

二人が居る部屋。それは学園都市の暗部、"スクール"と呼ばれる暗部が所有する場所だ。

だからここでゆっくりしてると

 

「どうも、ただいまっス」

 

360度にプラグが挿してあり無数のケーブルを腰の機械に繋げた土星の輪のように頭全体を覆うゴーグルが特徴の少年が部屋に帰ってきた。

 

「あぁそうだ。良い土産話持ってきたっスよ」

 

ゴーグルの少年はソファに座らず壁に背を寄りかかり仕事場所で聞いた話を言おうとした。

だが、ドレスの少女こと心理定規(メジャーハート)

 

心理定規「どうせ第一位が消えたとかって話でしょ?」

 

ゴーグルの少年「………話早いっスね」

 

「下らねえ…………」

 

金髪の青年。

学園都市の超能力者(レベル5)第ニ位の垣根帝督が閉じてた口を開く。

 

ゴーグルの少年「え?…………下らないっスか?」

 

垣根「ああ、どうせテメェらも思ってんだろ。あの第一位がそんな簡単に死ぬ訳ねぇってなあ」

 

ゴーグルの少年「まー……そうっスね」

 

心理定規「私もその話は嘘だと思ってるわ。まあどっかのバカな暗部は一方通行の死体を探してるらしいけど」

 

垣根「………俺はその話は上の奴等のでっち上げだと考えてる。だからその話の裏を知りゃあ上の奴等を地獄に突き落とし、俺達の目的にまた一歩近付ける」

 

彼等、スクールと呼ばれる暗部のメンバーの他のメンバーも集まり、自分達の目的と作戦を話し合う。

光も届かぬ闇の底の底で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最先端の科学の町、学園都市。

 

そして。

その学園都市の光溢れる明るい道で、

 

「わぁーい!!今日はショッピングだーってミサカはミサカは全身で喜びを表してみたりー!!」

 

「喜ぶのは良いけど、転けないでね?」

 

「ハハハッ!こんだけ喜んでもらえると嬉しいじゃんよ!」

 

 

一人の少女と二人の大人の女性が並んで歩いている。

 

この三人には色々な事情があるがそんな事を知らない他の人達から見れば愉快なファミリーに見えるだろう。

 

 

そして、三人はショッピングモールに向かって歩き続ける。

 

 

明るく、

 

眩しく、

 

暖かい、

 

太陽の光を浴びて。

 

 

 




必要ないと思いますが、一方通行に家をプレゼントしたおじさんの設定を話します。


あの、おじさんは里で有名な資産家。
しかし裏の顔は裏社会のナンバー2
主な仕事は誘拐と麻薬売買、そして奴隷売買をしている。

趣味は無抵抗な女性を殴り殺し徹底的に犯すこと。

だが、里で起きた異変の数日後、おじさんと里の裏社会の人達はいつも集まる場所で酷い殺し方で殺されていた。
それを発見したのは里で警察的な仕事をしている若者。
実はその若者、裏社会の闇を暴こうと一人で動いていた。
しかし、見つけたのは残酷な大量な死体だけだった。

さて?誰がこんなことをしたのだろう?












さてさて、それでは次章の予告です。

どうぞ……






幻想郷に平和が訪れる。
そしてその平和な幻想郷にある一つの神社に二人の男女の姿が


博麗神社に住む巫女、博麗霊夢

「あ~……退屈ね…………」

幻想郷最強の能力者にして神を超越した存在、一方通行

「別にイイじゃねェか。退屈なのは平和だからだ」


と縁側でお茶を飲んでゆっくりとしていた。



だがこの二人から世界を揺るがすトラブルに巻き込まれる。




次章。
第三章、科学の復讐。



お楽しみに♪


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キャラクター紹介や設定(第二章までの)

ネタバレを含みますので、一章、二章の全話見てからこれを見てください。

※変なこと、矛盾した所があるかも知れません。
そういうのが嫌な方はブラウザバックがオススメです。




多分、誤字や脱字があります。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行(主人公)

 

種族

学園都市に居たときは人間

第ニ章後半までは半人半神

第ニ章最終戦時で神を超越した存在(この説明なのは一方通行と同じ存在がいないためである)

 

 

性別。不明(男?女?)

 

学園都市に7人しか存在しない超能力者(レベル5)の第一位に君臨する最強の称号を持つ怪物。

いつものように過ごしていたら急に幻想郷にとばされ、そこで生活する事になってしまう。

 

 

性格。面倒臭がりであり無関心だ、しかし自分の前に敵が現れたら全力で潰しにかかる。

 

 

能力。ベクトル操作

 

運動量・熱量・光量・電気量など、体表面に触れたあらゆる力の向きを任意に操作する事が出来る。

そしてデフォルトでは重力や酸素などの生活に必要最低限の無害な力を除いた全てのベクトルを『反射』するよう、無意識下で設定している。

この能力の応用範囲はとても幅広くもしかしたら『どんな敵にも対応出来る可能性』がある。

 

 

翼(黒)

 

最初は無意識で発動したまだ謎の多いチカラ。

 

このチカラを使うと心の底から破壊衝動が湧き出る。

見た目は噴射にも似た一対の漆黒の翼。

戦闘方法は数えきれぬほど分裂して数の暴力を仕掛けるか、一気に力を解き放ち目に止まらない速さで貫くなどなど、まだ戦闘方法は一方通行にかかれば星の数ほど思い付くだろう。

 

黒い翼を幽々子との戦闘で使用した時には暴走をする。その話で紫の言葉を聞く限りまだ完全にはコントロール出来ないかもしれない。

 

翼(白)

 

見た目は黒い翼と一緒。違うのは色と頭上に天使の輪のようなものが出現するとゆうこと。

 

強さは黒い翼を遥かに凌駕する。

瞬き程度の時間で宇宙空間に移動したり、ほんの少しの力量で地面に人里の何倍の広さの底なし穴を開けたりと、結構ブッ飛んだチカラだ。

 

しかし白い翼も黒い翼同様、正体が不明である。

 

 

 

第ニの能力(この作品オリジナル)

 

全てを本物に限りなく近く模倣する能力

 

 

『全て』と言う事は模倣できるものに限界はない。

だから例えば人だって、能力だって模倣出来る。

しかし模倣するにはその模倣するものを完璧に解析、理解する必要がある。そのためオマケとしてこの能力には『自動解析能力』がありその『自動解析能力』は一方通行が見るか触れるかで発動する。

能力を模倣したら、能力名に『程度』という言葉がつく。

この能力はベクトル操作と一緒で演算する事によって発動する。

 

呪い

 

一方通行が霊夢に無意識にかけられた呪いは『幻想郷を一生救わせる』と、強制的に救わせるというもの。

だから普通、性格も超善人に変わり体が勝手に動いて誰でも笑顔で助けるヒーローのようになる。だが、それは一方通行のベクトル操作、反射が機能して性格は変わらなかった。

しかし反射は完璧に出来ず幻想郷から出ることは出来なくなってしまう。

 

 

 

 

危険度。C~???(測定不能)

 

危険度が変わるのは、いつもの一方通行は危険度C。

だが、彼に邪魔、敵として認められたら危険度???(測定不能)となるからだ。

 

※一応幻想郷の最高危険度評価がSである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗霊夢

 

種族。人間

 

性別。女

 

 

「幻想郷」と外の世界の境に位置する「博麗神社」と呼ばれる神社の巫女で幻想郷と外の世界を隔てる博麗大結界の管理者である。魔理沙とは友達だ。

そして一方通行を幻想郷に無理矢理とばし、呪いをかけた張本人(この事に本人は気付いていない。と言うか知らない)

 

 

性格

 

単純だが裏表が無い。喜怒哀楽が激しく、人間・妖怪を問わず惹き付ける不思議な雰囲気の持ち主。

全ての物事に対し、一生懸命取り組むことを嫌う、ただの面倒臭がりの少女。

 

能力。空を飛ぶ程度の能力

 

文字通りの能力。

だが色々な究極奥義がある。しかし本編では使用してない。

噂によると無敵状態になれるとか。

 

 

あと、この能力の他には霊力を操ったりだとか不思議な力を持っている。

 

 

危険度。B

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧雨魔理沙

 

 

種族。人間

 

性別。女

 

 

一方通行が幻想郷に来て二番目に会った魔法使いの少女。『だぜ』『だ』が口癖。

霊夢とは友達。

 

性格

 

負けず嫌いでひねくれ者。努力家で勉強家だが、そのことを人に知られるのは嫌い。

物を捨てられない性格。

「派手じゃなきゃ魔法じゃない」「弾幕は火力だぜ」

と言っていたらしい。

だから戦闘方法はパワーでゴリ押して戦う。

 

 

 

能力。魔法を使う能力

 

以前は『程度』と付いていたが、それが無くなり出来る事が増え、前より威力が強い魔法を使える。

 

主に光と熱に関する魔法を使う。

しかしそれらは全て破壊にしか使えない。だが破壊に特化した能力だから幻想郷最強クラスと言われる『マスタースパーク』と言う技を持っている。

 

 

危険度。B

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八雲紫(超重要人物)

 

種族。スキマ妖怪(他に同じ種族の妖怪が存在しないから通称として呼ばれいる)

 

性別。女

 

 

 

色々と謎があり色々と知ってそうにほくそ笑み、昔から存在する大妖怪あり幻想郷を創った一人と言われている。

一方通行が小さい頃、一度会った事もある。

 

性格

 

何手も先を見通して居ながら多くを語らず、裏が全く読めない性格。

基本は異変が起きても動かない。

面倒臭がりではなく、これは高みの見物をするためだ。

しかし、幻想郷の危機とあれば重い腰を上げ動き出す。

 

 

 

能力。境界を操る能力

 

紫も魔理沙同様、程度が無くなり能力が強化された。

「境界」と名の付くものならほぼ何でも支配下に置く事が出来る能力。

空間の境界を操って裂け目を作ることで、離れた場所同士をつなげてしまう事が出来る。

 

この能力は「対策も防御法も一切存在しない、神に匹敵する力」と評価された事もある。

 

 

 

危険度。C~S

 

通常時は大人しい女性といった感じ。だがもしも彼女の逆鱗に触れたら最後、その者は人生のエンディングを迎えるだろう。

 

 

 



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第三章 科学の復讐
1話


闇も不幸も悲劇も全て連鎖する。




多分、誤字や脱字があります。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。


ある日、突然起きた大異変。"狂妖怪里防激戦"と今後語り継がれる事が終え、一ヶ月ぐらいの月日が経った。

 

時が過ぎ行くなかで色々な事が起きていた。

まずひとつ。それは人里に妖怪が一人も居なくなった。

あの妖怪が暴走してから人間は妖怪が任意的に里を襲ったと勘違いして妖怪を恐れ、受け入れるのを止めた。

だから前、にとりが言った『人間と妖怪の間に見えない線が引いてある』が現実に出来てしまう。

しかし、慧音は半人半獣と人間にバレて居ないため里にまだ住んでいる。まだまだ慧音の他にも人間に正体がバレていない者も居るがその説明はまだ先の話。

 

二つめ。

一方通行は自分の家を持つと、祝い品を持った知り合いが凄い数、押し入ってきた。

一応、フランとの約束もあり家の鍵を開けていたからこの結果はしょうがないとため息を吐くしかない。

 

一方通行の家の内装は結構シンプルであり、学園都市に居たときの家に大分近付けて作った。

 

 

 

 

 

 

 

そう…………色々あったのだ。やっと落ち着きを取り戻しつつある幻想郷は前より変わってはいるが

 

けど

 

 

 

『幻想郷になんか………、行きたくないっ!!』

 

と、誰かが口にしただけなのに。

 

幻想郷に異変が起きてしまった

 

 

誰も望まぬ異変が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里。

 

人間が通る道を一人の白い華奢な少年が歩いていた。

その白い華奢な少年の本名は多分、知っている者は数少ないだろう。

しかし、本名とは別に違う呼び名をその少年は持っている。その名は一方通行(アクセラレータ)

 

 

一方通行は里に住んで、月日は経ったため結構ここの暮らしに慣れていた。

 

金は霊夢や魔理沙と一緒に妖怪退治をして稼いでる。

まあ、金を稼がなくともクズ野郎達から奪って大量に持ってるが、暇だし頼まれたりするから気分的に妖怪退治をしている。

 

魔理沙は最近、やたら手料理を一方通行に食べさしてる。

どうやら一方通行の不健康でバランスの悪い食事を気にしての事らいし。

前までの彼女ならこんな事はしないだろう。と言うか絶対にしない。

しかし、一方通行のためを想ってやっている。が、こんなこと恥ずかしくて言えないし言わない。

 

一方通行(さァて……。買い物は済ンだし、帰るかァ)

 

そんな事をされても気持ちに気付けぬ一方通行は、両手にコーヒー豆が入った袋を大量に入れた買い物袋を持って歩いていた。

 

 

 

一方通行は一週間に一回爆買いをして食品やコーヒーを補充する。それが今日だったらしい。

 

いつものように歩き、いつものように帰りそして癒しのシャワーを浴びてコーヒーをグッと飲む。

そこまでのプランを頭に浮かべてる時だ。一方通行は周りの人々の視線や表現の異変を感じる。

 

一方通行(あァ?……。なにコイツら俺を見てやがる?)

 

いや違う。と次に一方通行は思った。

そう人々の視線が自分の後ろだ、と気付いたのだ。

 

一方通行(チッ……、誰か俺の後ろに居るってのか________)

 

足を止め後ろを振り向いた瞬間、思わず「は?」と言葉が出てしまった。

 

見えたのは銀髪でショートの髪をしていて、髪と同じ色をした片翼を持ち、口を手で塞いでる少女の姿。

 

「…………」

 

一方通行「………オマエ、なに人にくっついてやがる」

 

少々、容姿に驚き言葉を洩らしてしまったが落ち着いて質問する。

 

 

「…………」

 

返ってきたのは沈黙。その事に一方通行は少し、眉間にシワを寄せる

 

一方通行「はァ……。オマエナニ?何だよマジで。俺に喧嘩売ってンのかァ?」

 

イラついた態度で相手の沈黙に言葉を返す。

すると片翼の少女は左右に首を振って一方通行の言葉に態度で答えた。

 

一方通行「じゃあ何だよ。何で俺に付いて来る」

 

「…………」

 

片翼の少女は何も答えないし微動たにしない。

 

話しても埒が明かない。だから一方通行は空間を自分の家に繋げそのスキマに両手に持つ買い物袋を投げ入れ、片翼の少女の手を掴む。そしてどよめく人達を無視して、人気の少ない所に向かって一直線に走った。

 

 

息を荒げる事も無く走り人気の無い細い道にたどり着いた。

 

一方通行は掴んでいた手を離し壁に寄りかかり片翼の少女を見る。

やはり、彼の行動に驚いていたらしい。

片翼の少女は声は出さぬものの、驚愕の表情を浮かべ此方を見ていた。

そして、口を塞ぐ少女へ一方通行は口を開く。

 

一方通行「オマエここまでのされても無口なンだな。もしかして喋れねェのか?」

 

片翼の少女は首を左右に振る。

 

一方通行「じゃあなンで喋らねェ。っつゥか何で俺に着いて来てた」

 

「…………」

 

また返ってきたのは沈黙。

全っっっっ然、反応もしないしジェスチャー的な事もしない。

 

 

一方通行「…………………………………………………………………………………………………………はァ」

 

あの幻想郷最強すら困らせる片翼の謎の少女。

相手の意思を読み取る能力何て一方通行は持っていない。だからとりあえず、ため息を吐いた。

もうため息が癖に成りそうだ。

 

一方通行(こいつは困ったなァ____________)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「__________っつゥ事でここに来た」

 

霊夢「いや何で??」

 

博麗神社に移動して、縁側に座る霊夢の隣に一方通行は座っている。

一応、飛ぶ際に片翼の少女も着いてきていて一緒だ。

 

一方通行「さっきの説明で話してたアイツに、俺は困ってンだ」

 

木に寄りかかってる片翼の少女に指を差す。

 

霊夢「……ん?」

 

指の差された方向へ視線を向けるとそこに居たのは、自分の知り合いと言うか言わないか。まあ、知り合い(?)が居た。

 

片翼の少女の名を霊夢は知っている。

 

霊夢「あら、サグメじゃない。何で幻想郷に?アンタ、月に居たはずじゃ」

 

一方通行「月だと?まさかアイツは月の民なのかァ?」

 

霊夢「ふ~ん。少しはこの世界以外のことも勉強してたの」

 

一方通行「俺の質問に答えろ」

 

霊夢「…………そうよ。アイツは稀神(きしん)サグメ、月に住む神霊……、ってとこかしら?」

 

一方通行「何でそンなヤツが幻想郷に居る。ってか俺に付き纏う?」

 

霊夢「知らないわよそんなこと。話でもしたら分かるんじゃない?」

 

一方通行「あァ?オマエあいつ無口で会話にすらなンねェンだぞ?そンなヤツとどォ会話すンだよ」

 

霊夢「紙にでも字書かして擬似会話なさい」

 

そう言うと霊夢は一方通行にメモ帳と鉛筆を渡す。そして部屋に入り襖を顔が出るくらいに閉めて

 

霊夢「じゃ。面倒そうだし私はここまでって事で」

 

一方通行「ふざけンじゃねェオマエが________」

 

霊夢「頑張ってねー。あ…後ソイツに喋らせないでね、面倒事が増えるわよ~」

 

バタン!と襖が閉まった。

どうやら霊夢は情報を教えるだけ教えて後は一方通行に任せるらしい。と言うか、押し付けた。

 

 

静寂な空間に取り残された一方通行はただ、怒りを抑えて黙って座っていた。

しかし、立ち上がり片翼の少女、いやサグメに近付く。

 

一方通行「オマエ、これに俺がした質問の返答を書け」

 

メモ帳と鉛筆をサグメに渡した。そしたらカキカキの書き始めた。

そして書き終え、メモ帳を一方通行に見せた。

書いてあったのは

 

サグメ『帰れない。帰りたい』

 

一方通行「そォかい。で?それで何で俺に着いてくる」

 

またカキカキと書き始め

 

サグメ『貴方から他の人と違うオーラを感じた。だから貴方なら私の悩みを解決してくれると思った』

 

メモ帳に書かれてる文を見てまた、ため息を吐きたくなったが何となく堪えた。何の意味もなく。

 

一方通行「………、オマエ俺が誰でも助ける様なヤツに見えンのか?悪ィが俺は俺の目的以外は動かねェ。だからオマエを助けねェし助けるつもりもねェ」

 

サグメ『お願いします』

 

書かれていた字で分かる。彼女は今、必死なんだ。

 

 

だからどうした。一方通行はそんな事を知ったとしても助けの手を差し伸べない、救わない。

彼には彼の正義()がある。彼の世界がある。

彼はヒーローでは無い、彼は善人では無い。

 

しかし、彼は。一方通行は

 

一方通行「………チッ、しょうがねェな。断ってもどォせ着いて来そうだし、手伝ってやるよオマエを月に返すの」

 

柄にもねェ。と頭を掻いて心の中で呟く。

 

サグメ『ありがとう』

 

一方通行「くそったれ。それはオマエが帰れてから言えっつの」

 

 

ここでは何かと面倒だし場所を変えたい。

一方通行は背中に竜巻を四つ生成、そしてその竜巻を利用して博麗神社から飛び立つ。

するとサグメも着いてきた。

 

そんな長時間飛ばず、直ぐに目的地に着いた。

そこは何の変哲もない森。

 

一方通行「さってと………ここなら問題ねェな」

 

サグメ(???)

 

一方通行の言葉にサグメは困惑した。しかし一方通行はそんなサグメを無視して、作業に取り掛かる。

 

一方通行「実はオマエを月に返す方法なンて、もォ俺はとっくに知ってたンだぜ?」

 

手を何も変わらぬ空間に伸ばす。そして紫の能力、『境界を操る程度の能力』を使用する。

何を隠そう、もう彼はコピーした能力ほとんどを完璧に操作できる。

だからここの空間と月に空間を繋げる事なんて朝飯前だ。っと言っても今はお昼の時間だが。

 

一方通行の第二の能力、『全てを本物に限りなく近く模倣する能力』それは能力すら模倣できる。

しかし、この能力は模倣するものを完璧に解析、理解する必要があるが、もうそんなのは戦いの中で済んでいた。

第二の能力のオマケ能力。『自動解析能力』がこの幻想郷に来てからずっと発動してたから。

第二の能力は一方通行が幻想郷に来てからもう既に持っていたのだ。だが、それに気付けず時が過ぎていってた。

まあ、『自動解析能力』じゃなく、彼の元々持っていた能力で敵として出てきた幻想郷の住人の能力を解析していたから二度手間と言えるが。

 

 

そして、一方通行はこの場の空間を月の空間に繋げて見せた。

 

一方通行「ホラよ。これを通れば月だ」

 

サグメ(!?)

 

まさかの直ぐにお悩み解決となった。

サグメが紫のスキマとデザインが違う、ただ真っ黒いスキマを通れば

 

一方通行「早く行け。帰りてェンだろ」

 

サグメはコクっと頷く。

 

ゆっくりとスキマに歩くサグメ。

 

面倒だったが、もう悩み解決。

 

 

そう、、、、思っていた。

 

この時は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あと一歩で、サグメがスキマを通る瞬間だ。

 

サグメ(!?)

 

急にスキマが崩壊し黒紫の稲妻がスキマから放出され、空間が閉じ大爆発が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「……チッ、一体何が起きた……?」

 

サグメがスキマを通ろうとしてた時、もう一方通行は背を向け帰ろうとしていて大爆発が起きた所から少しだけ離れていた。

しかし、普通なら大爆発に巻き込まれ死んでいただろう。

だが、彼の『反射』が機能したようだ。

 

一方通行は煙を振り払い視界を確保した。

そしたら見えたのは

 

一方通行「なンだ…………こりゃ……………」

 

木は燃え折れ、炎が燃え広がっていた景色だった。

 

一方通行「………っ!?アイツは!?」

 

サグメの事が頭によぎった。そして一方通行は周りを見渡しサグメを探す。

すると居た。荒れ、燃える大地に傷だらけで倒れるサグメが

 

一方通行はサグメの所へ駆け寄り、

 

一方通行「オイ!!一体何が起きたァ!!話せ!!」

 

上体を少し起こさせて大きな声で質問する。

 

サグメ「………………………………っ、…………」

 

目をゆっくり開けたサグメは、地面に落ちてる燃えかけのメモ帳に書き始めた。

が、手の力が抜け気絶して、書ききる事は出来なかった。

そして、メモ帳は灰となった。

 

 

一方通行「クソッ何が起きたンだ!!いや、それは後……か。とりあえずこいつをここから運ぶ」

 

一方通行はサグメを横抱きして、背中から竜巻を四つ伸ばし、上空へ飛び上がる。

 

一方通行「チッ…………。くそったれが」

 

そんな台詞を燃える森を見て吐き捨てた。

しかし、風のベクトルを操作して火を鎮火させ、この場から去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周りが石や岩の川の近くに降り、サグメを寝かせる。

次に一方通行は模倣能力で、永遠亭で見た傷薬や包帯を模倣し、適切な手当てをした。

 

一方通行「………マジで、一体何が起きたンだ…………」

 

ため息を吐いて座り込む。

背を向けていてあの現場を作った元凶を見ていなかった。

だから何が起きたか分からない。何でサグメが大怪我をしたのか分からない。

 

一方通行「…まさか、俺の創ったスキマが原因か…?」

 

頭に手を当て、冷たい地面の石を見つめる。

その時だ。自分の腕が掴まれた。

 

一方通行「あン?…………目ェ覚めたか…」

 

自分の腕を掴んだ者の正体はサグメだった。

 

サグメは自分の腕を掴むと首を左右に振る。

『貴方のせいじゃない』とでも言いたいのか。

 

一方通行「……なァ、あの時何が起きた?」

 

メモ帳と鉛筆を模倣して、サグメに手渡す。

すると寝転がりながら字を書き始めた。

 

サグメ『貴方の創った扉が閉じ大爆発した。私はどうやら幻想郷から出れないみたい』

 

一方通行「……は…………?」

 

返ってきた返答は理解しがたかった。

自分が創ったスキマが閉じ、大爆発したのは無理に理解する事は可能ちゃぁ可能。

だが幻想郷から出られないとはどういうことだろう。

 

一方通行は最後の文に疑問を感じ

 

一方通行「何で、スキマが爆発しただけでオマエが幻想郷から出れねェっっつゥ答えがでンだよ」

 

サグメ『実は……心当たりがある』

 

一方通行「?」

 

 

 

話はサグメが今日、幻想郷に来てしまった前の話になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

稀神サグメは月に。

いや詳しく話すと月の都に住んでいた、数々の仲間達と共に。

そんなある日のことだ。

サグメは月の都を歩きながら幻想郷が記された本を暇潰しに読んでいた。

 

サグメ「…………(へぇ~…)」

 

口を手で塞ぐことが癖になってしまったため、口を無意識に塞いで読書していた。

その時だ

 

「サグメ様、地上の本を読んでたわよ」

 

「へえー…」

 

女の月の民の話声が聞こえた。

 

サグメ「…………(なに?悪いのかな?前、一度行ったから少し興味あるだけなのに……)」

 

ちょっと足を止めてしまった。

別に不愉快に思ったとかイラっとした訳ではない。

ただ何となく。女の月の民があの話のあと、何を話すか気になるだけだ。

 

「もしかして地上に行きたいのかしら?」

 

「あ~……多分ね。ほら、地上に堕ちた月の裏切り者達が居るじゃない?そいつらに毒されたのかも……」

 

「なるほど。どうしてそんなに地上に行きたくなるのかね?お偉い人たちは……?」

 

「さあ?私達じゃ分かんないことよ」

 

あはははは、と。

こそこそ話ながら地上(幻想郷)をバカにする話で盛りやがる二人の女の月の民をサグメは無視をして、本を閉じスタスタと自分が住まう屋敷に帰って行った。

そして急ぎ足で自室に入る。

 

サグメ(別に……行きたい訳じゃないのに)

 

モヤモヤする。

あの女の月の民の会話が頭の中をグルグル回る。

 

サグメ(私は………別に………別に…………)

 

『もしかして地上に行きたいのかしら?』

 

サグメ「!?」

 

あの言葉が頭に響いた。

そしたらサグメは

 

遂に

 

サグメ「幻想郷になんか………行きたくないっ!!」

 

我慢しきれず、声に出してしまった。

その時、サグメは『はっ!!』と口を押さえたがもう、遅い。

 

発動してしまった。

その強力で、自分では操作出来ない恐るべき能力が

 

 

 

 

 

 

その恐るべき能力とは

 

 

 

 

『口に出すと事態を逆転させる程度の能力』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サグメ『___________って、事があった』

 

長文でこれまでの事を書き、それを一方通行に見せた。

 

一方通行「『口に出すと事態を逆転させる程度の能力』ねェ。随分とぶっ飛ンだ能力だ。もしかしたら世界を百八十度ひっくり返せる力じゃねェか」

 

傷の痛みが和らぎ岩に座るサグメに一方通行は少しのニヤ付いて話す。

 

一方通行「……もし。オマエの言った能力が本当で、発動しちまったっっつゥならオマエが幻想郷から出れねェて答えを出したのも納得だなァ」

 

口に出すと事態を逆転させる程度の能力とは。

そのままの意味である。

だからサグメが『幻想郷に行きたくない』と言えば逆の事が起こり幻想郷に強制的に行かされる。

そしてサグメの能力は自分ですら制御出来ないので、『幻想郷に行きたくない』を『幻想郷から出たくない』意味にして能力効果を増やしてしまう。

つまり、あのたった一言で。

サグメを幻想郷に行かせ、幻想郷から出させなくさせてしまったのだ。サグメの持つ恐るべき能力は。

 

サグメ『だから、私はもう幻想郷から出れない。もう月に帰れない』

 

一方通行「………、」

 

無表情で、紙に書き、それを一方通行に見せる。

 

サグメ『……ごめんなさい、もう大丈夫。この後は私、一人でやる。あの時私の頼みを聞いてくれてありがとう』

 

ビリビリと文を書いた紙を丁寧に破り、投げ渡す。

そして一方通行が紙をキャッチした時にはもうサグメの姿は無かった。

 

一方通行「チッ……なに勝手に一人で納得して勝手に諦めてンだ。まァ、俺には関係ねェ。家に帰ってコーヒー飲むかァ…………」

 

くしゃくしゃに渡された紙を丸め、ポイっと投げ捨てた。そして背中に竜巻を四つ生成してこの場から飛び去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サグメ「…………」

 

何の存在も感じぬ森の場所に飛び降りた。

 

するとサグメは近場の木にズルズルと寄りかかるように座り込む。

 

ハッキリ言って今、自分の状況は絶望的だ。

自分の能力はON・OFFが出来る訳では無いので能力が発動してしまうと永遠と能力効果は続く。

だからもう二度と幻想郷から出れない。

もう泣き出したいぐらいだ。

 

サグメ「…………!?」

 

瞳から涙が流れ出そうになった時だ。

ガンガンゴンガン!!と鉄を叩く様な音がそんな遠くない所から聞こえてきた。

そんな興味もないが、体がそこへ勝手に動いてしまった。

 

音のした所に近付き木の影から顔を少し出して覗くと

 

 

 

中年男性が巨大な鉄の塊をハンマーで叩いてるを目撃する。

 

が、ガサガサと葉を踏んで音がなってしまう。

すると中年男性は音のした方へ驚いた様子で向く。

 

 

 

「何だ!!…………ッ!?…………」

 

サグメ「……?」

 

中年男性はサグメの顔を見るなりもっと驚愕した表情を浮かべた。

 

「も、も、もしかして…………サグメ……様……?」

 

サグメ(何で私の名前を……?)

 

「おやおや?その表情。私をお忘れですか…………」

 

持っていたハンマーで捨て両腕を広げて近付いて来た。

まるで私は敵ではありませんと言いたげに、

 

しかし、サグメは余りにも中年男性が不気味で後ろへ下がる。

 

「私は……ですね。"前まで月で暮らしてた者ですよ"」

 

サグメ「!?」

 

「あはははははははははっ!!だから貴方の事を知ってるんですよ!!詳しくねえ!!!」

 

下卑た大きな笑い声で笑うと、急にサグメ目掛けて走りだしそしてサグメを押し倒した。

 

「はははは、ははははは!!!何て俺はついてるんだ!!あの時。クソカスどもに月から追放されて今後俺の人生はくっっそくそだと思ったが…………、今日!!今日から俺は最高の人生が歩めるぞッ!!!!」

 

サグメ(……!?)

 

「おやぁ?『動けない』って顔ですね。それはですね、俺が貴方を押し倒すときにこの麻酔薬を打ったからですよ」

 

サグメ(ッ!!)

 

中年男性は注射器を見せびらかしてから、投げ捨てた。

 

「それじゃあ早速だが貴方の持つ能力でこの俺を最高の人生の勝者にして貰おうか」

 

ぐへへへと、口からヨダレを垂らしサグメの顔に中年男性は顔を近付ける。

 

「大丈夫ですよぉ……全ては"正義"の為ですから」

 

サグメ「…………」

 

「チッ……、何だよ。言うこと聞けねえってか!?あははははははは!!!だったら屈辱を味わせて無理矢理にでも従わしてやる!!!」

 

下半身からナニか気持ち悪い突起物のような感触がする。

多分、これはこの下衆な中年男性の"ソレ"だろう。

サグメは今から自分がなにをされるか理解出来た。

いかにも人らしい最低で心底軽蔑した行為だ。

 

心の中でそう蔑む事は簡単だ。

しかし現実はそう簡単ではない。

何度も心の中で軽蔑しようが何を言っても、この下品な中年男性に犯されるのはどうやっても避けれない。

 

嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ………………。

 

恐怖が。絶望が。サグメの心を苦しめる。

そしてその恐怖と絶望が表情に出てしまい涙が流れてしまう。

すると中年男性は、

 

「うひゃはははははははははっははははは!!!!泣いて絶望して恐怖してる女を犯せるってのは最高だぜぇぇ!!!!」

 

何十年も寝かせたワインの栓を開ける時のような心の底からの笑みを浮かべた。

 

 

サグメの体をやらしい手付きで触り服を破ろうとした、

 

その時だった。

 

 

 

中年男性は横からの砲弾のような暴風に吹き飛ばされ木に激突した。その瞬間、口から血を吹いていた。

 

サグメが呆気に取られてると、

 

 

「随分と積まンねェ遊びではしゃいでンなァゴミクズ」

 

「…………ぐっ!!だ、誰だ!!お前!!」

 

サグメ(あ……、あの人は…………ッ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

その白く華奢な体の少年は裂いたような笑みで言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「……ただの悪党だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?悪党だと?ふざけるなぁぁぁぁああああああああ!!!」

 

一方通行「うるせェな。黙れ」

 

「うっ!!……………………っ!!」

 

激怒する中年男性を一方通行は能力全開で地面に顔面が埋まる程伏せさせた。

 

そして涙を浮かばせてるサグメを発見した。

 

一方通行「……あー。そォか、そォかよ。オマエ、死ぬこと確定したわ」

 

顔面が埋まる程伏せさせた中年男性の頭を踏みつけた。

中年男性はジタバタ苦しそうだがそんなの知ったこっちゃない。

 

一方通行「でェ……。さっきの話声聞こえてたンだけどよ、オマエ。"正義"っつってたけどよォ、ナニ?オマエ正義のヒーロー気取りかァ?」

 

ズボっ!!と頭を乱暴に片手で掴み地面から抜き取り気を失いかけてる男性に質問する。

 

ちょっとした間があったが

 

「…………正義の……ヒーロー…気取りなんかではない。俺は正義のヒーロー、だ」

 

一方通行「……へェ………」

 

「俺は……そう、ヒーロー。そうあの時、若い女を殺したのも無理やり少女を襲ったのも野郎を拉致してサンドバッグにしたのも全て。全て正義のため……ッ!!」

 

一方通行「それで…、オマエは誰を救えた?」

 

「あは……ははは、それはな…………世界…さ」

 

一方通行「…………、」

 

「正義。その正体は力。何をしてもいいということ。それで世界は________」

 

中年男性が話してる途中。

一方通行は次は殺す気で顔面を地面に埋め込ました。

 

一方通行「あァ……悪ィ悪ィ。オマエの話長くて聞いてらンねェわ。だからよォ___________」

 

ぐぐぐ…………、っと頭を掴む力が益々強くなっていく。

 

一方通行「____________とりあえず、ここで死ね」

 

トマトでも握り潰すようにいとも簡単に人の頭を潰した。

ブシャッ!!と大量の血が飛び散ったが一方通行には一滴も付いて無かった。

 

サグメ「………」

 

今、この瞬間。

人の命が奪われた。

その事は理解できる。しかし、その命を奪った白い少年は、いつものように。この事が当たり前のような態度でただ立っていた。

 

が、サグメは思った。

「自分のせいでこの人の手を汚させてしまった」と。

だから此方に歩いて来てる一方通行に

 

サグメ『ごめんなさい』

 

と紙に書いて見せた。

すると

 

一方通行「はァ?なに謝ってやがる。悪ィと思ってンならさっさと立てよ」

 

サグメ『麻酔を打たれて動けない』

 

一方通行「そンなモン俺にかかれば直ぐ治る」

 

頭に手を置き。

麻酔の効果。脳の電気信号を一時的にブロックする事をベクトル操作を使うことで麻酔を打ち消した。

 

一方通行「これで腕だけじゃなく、全身動かせンだろ」

 

サグメ(ッ!?………あれ、立てた?)

 

一方通行が頭から手を離すと、さっきまで立ち上がれ無かったのが嘘みたいに。すんなりと立てた。

 

サグメ「うっ………………んっ……ぐすっ…………」

 

今日、絶望して恐怖して、諦めて麻酔を打たれ。と色々な事があった。

そして麻酔が消えたと同時に恐怖も消えた。

すると我慢して我慢して我慢してた。涙が流れた。

彼が助けてくれたから、ここ最近一番の安心を感じてサグメは幼い少女の様に

 

一方通行「……あン?……チッ………」

 

薄く頼りなくて、暖かい彼の胸を借りて泣いた。

一方通行は避けることもせず、反射もせず。ただ自分の胸で泣くサグメを慰め撫でることもせず、頭を掻き、舌打ちをしただけだった。

そして数分。

森に少女の泣き声が響いた。

 

 

一方通行「………そろそろ。動きてェンだが…………」

 

サグメ「…………」///

 

何分も無意識に彼にくっ付いて泣いてた事を一方通行の声を聞き、自分の状況を見て。恥ずかしく思い、頬を染めながら離れた。

 

一方通行「オマエ神霊なンだろ。だからアホみてェに長生きしてると思うンだが、中身は結構ガキなンだな」

 

サグメ「…………」

 

彼の一ミリも気を使わない言葉を聞き、流石にあのサグメでもキレそうになった。

しかし

 

一方通行「ハッ……。暗くなったり泣いたりキレそォになったり。最初会ったころより随分表情が変化するようになったなァオマエ」

 

サグメ「………!!」

 

気付いてしまった。

最初の頃は不安で一杯だったが彼と一緒に居てからどうやら自分は不安が安心に変化してたそうだ。

それは多分。彼の雰囲気がそうさしたのだろう。

 

 

なんか、ちょっと………

 

彼を見ると今まで感じたことのない感情が溢れる。

 

サグメ「…………」///

 

一方通行「………あっ、そォだ。オマエを月に返す方法思いついた」

 

知らんが、もじもじしてるサグメを横目に一方通行は彼女に言った。

 

一方通行「まァ、っつっても。結構な荒業だけどな」

 

サグメ「……?」

 

一方通行「どォする?やるかァ?」

 

 

……………………ない。

絶対にない。

 

 

あの絶望的な状況を助けてくれた、誰も助けに来てくれ無かったのに救ってくれた彼の提案を『断る』理由がない。

 

サグメはコクっと頷いて、

 

サグメ『勿論』

 

一方通行「……オマエ、どォやら思っていた以上に面白ェヤツらしィな」

 

少年の普通の笑顔とは言えない、裂いたような笑みを浮かべて一方通行はサグメに近付いた。

 

一方通行「じゃあ行くぜ。掴まれ」

 

何色にも汚されてない真っ白な、噴射に近い翼を背中に出現させた。

その時、勿論頭上には天使のような輪っかも一緒に。

 

サグメ「!?…………」

 

その美しく素晴らしい光景をサグメは一度見てから、絶対に忘れないと思った。

ただ、真っ白な翼に。神々しい見た目に。

呆気を取られてしまったが。

 

一方通行「オイ、早く掴まれ」

 

サグメ(…………あ)

 

ちょっとキレ気味なトーンで言われて、サグメは慌てて一方通行の右腕にしがみつく。

すると

 

一方通行「ある程度、オマエに不可がかからねェようにするが。一応、全身に力入れとけ」

 

サグメはコクっと頷いた。

そして一方通行は昼間なのに見える月を見てから、背中の翼を大きく羽ばたかせ、月に向かって一直線に飛んだ。

 

 

移動速度が速すぎるせいで全てのものが、原型もなく見えた。

 

途中、バギーン!!!と何か砕ける音がしたと感じた時にはもうサグメは月の都に足を付けて立って居た。

まあ、月の都に居るといっても都の外れだが。

 

一方通行「………ここが、月の都か。随分幻想郷とは違ェなァ」

 

サグメ「………」

 

一方通行「あァ?何故行けたと思ってンな。答えはシンプルだ。幻想郷は同じかそれ以上の威力の力を打つけると力は消えンだよ。だから俺はオマエの能力以上の威力で、幻想郷から飛び出したっつゥことだ」

 

信じられない。

自分の能力は、もしかしたら世界を百八十度ひっくり返せる程の力だというのに。

それを意図も簡単に突破して、自分を月に返してくれた。

 

一方通行「じゃ、あばよ。二度と面倒なこと起こすなよ_________あ?」

 

固まってるサグメを無視してスキマを開け、地上に帰ろうとしたとき。

優しく服を引っ張られた。

 

一方通行「_____なンだよ。俺は直ぐ帰ってコーヒー飲ンで寝てェンだが…………」

 

一方通行が振り返ると引っ張った手を離し、メモ帳にサグメは文を書き始めた。

 

 

サグメ『一言で伝えられない程感謝してる。ありがとう』

 

一方通行「…………、そォか。だったら俺がさっき言ったことを守れ、いいな?」

 

サグメ『分かった』

 

口を塞いでなかったから、見えた。サグメの笑顔が。

 

一方通行は自分の目の前に家の空間に繋げたスキマを創る。そして何も言わず、黙ってそのスキマを潜った。

 

サグメも家に帰ろうと、足を動かした。

 

いつもどうり口を塞ぎ歩く。

が、何故か彼のことを思い出すと、じんわり暖かくなる。

 

 

 

 

 

 

サグメ(あの人の名前聞いて無かった。何て言うんだろう…………。また、会えるかな?________)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サグメ(また、会いたいな)///

 

白銀の片翼の少女は頬を染めて、軽く心の中で呟いた。

しかし、その呟きは同時に願いにもなっていた。

 

 

 




どうもポスターです。

いや~本当はサグメをこの物語に出す予定無かったんですよ。

なら、何故出した?と言うと

ありがたいことに、この小説をお気に入り登録してくださってる皆様の中に「東方のサグメ」がお好きという方が居たんです。

が、私はその時「サグメ?誰?」と思ったんです。
ですが、その後サグメというキャラクターを調べ
「この子いい!」と思い物語に無理やりブチ込んだ
って感じです。

ま、第三章に今回の話は関わってないです。
おまけみたいなものですね。


ですから次回からストーリーに関わった話を投稿します。

ここまで見て下さった方々、この小説を読んで下さった方々。読んでいただき誠にありがとうございます。


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2話

招かれざる者が、幻想郷の地に立つ!!!!!





多分、誤字や脱字があると思います。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。


幻想郷にある、一つの神社の縁側にて白い少年と巫女が暖かくもない常温のお茶をのんびりと飲んでいた。

 

霊夢「あ~……退屈ね…………」

 

手に持っていた濃い緑色の湯呑みをことっと隣に置き、そう呟く。

すると

 

一方通行「別にイイじゃねェか。退屈なのは平和だからだ」

 

続いて彼も、湯呑みを隣に置き息を吐いてから言う。

 

霊夢「でも、よ。何か最近刺激的な事ばっかだから少し物足りないと言うか………その……」

 

一方通行「わざわざ面倒事に首突っ込みてェなら、俺は止めねェぞ」

 

霊夢「………、本っ当何でアンタはそういう感じにしか返せないの?」

 

一方通行「そォゆう性格だからじゃねェの?」

 

霊夢「あ~……少しはそんな自覚あったのね」

 

ふん、。と鼻を鳴らしてボケーと空を見る一方通行。

何か随分とこうゆう感じの雰囲気に、慣れてきた。

 

前の自分だったならこんな感じになってるとは思いもしなかっただろう。異性と妖怪退治をして、こうやってただただゆっくりと時を過ごすなんて。

 

だからこそ。気になる事が霊夢にはあった。

一方通行と会い会話したあの時から

 

霊夢「ねえ……少し、いい?」

 

一方通行「ン?」

 

霊夢「アンタが最初に名乗った『一方通行(アクセラレータ)』って。本当の名じゃないでしょ、何者なの?」

 

一方通行「……、」

 

霊夢「たしかに、外見や肌の色とか見ればそうゆう名前かも知れないと思うけど。顔のパーツとかそれに身長とかも全部合わせると私とかと同じ、日本人らしいのよね」

 

一方通行「……そォだな。そォだ、俺の本名は一方通行じゃねェし、俺は純粋の日本人だ」

 

霊夢「でしょ?……なら、さ。何で本名を名乗らないの?」

 

一方通行「…………」

 

別に本名何て隠す必要なんて無い。

だって可笑し不思議な名前じゃないし、馬鹿みたいで笑ってしまうような名前でも無い。けど、それでも。一方通行は言えない。

それは自分の名前を自分なのに知らないからだ。

 

何も言わず、黙る一方通行を見て霊夢は

 

霊夢「ま、言いたくないなら別にいいわ」

 

少し暗い笑みで地面を見て微笑む。

そしたら

 

一方通行「………なァ霊夢。俺がオマエらに本名を名乗るまで俺を信用するな、何時でも俺を危険と思ったら殺しに来ても構わねェ」

 

霊夢「は?」

 

思わず一方通行の顔を見るなり首を傾げてしまった。

 

一方通行「理解出来ねェなら、簡単に説明してやる。が、もォ簡単に説明してンだがな。それは俺を信用するなって言ってンだ」

 

霊夢「急に何よ。ってかそんな事、普通自分から言う?」

 

一方通行「だが本名も名乗らず謎が多いヤツを信用出来ねェだろ。俺がオマエらが考えてる事に気づいてねェとでも思ってたのかァ?」

 

もう、だ。とっっくのとうに気づいていた。自分が、不思議な眼差しで見られていた事に。

でも普通誰でもそう思ってしまうだろう。突然来た外来人が、幻想郷を救いそして最強として君臨したのだから、

それは不思議で不思議で不思議で不思議で仕方がない。

 

霊夢「本気……、なの…?」

 

一方通行「オマエらは人を直ぐ信用し過ぎだ。だからこォやってストレートに言わなきゃ分からねェだろ」

 

霊夢(本気、みたいね)

 

その眼に偽りは無かった。

だから一方通行は本気で言ったのだ。

 

何時でも殺しに来い、と。

 

霊夢(バカね…………そうゆう事じゃないのに。私は、私だけに本名を教えて欲しかっただけなのに………)

 

ただ一人だけが気付き、確信出来る信用を勝ち取りたいだけだった。それが本名を教えて貰うだけだったのにどうして彼はこうゆう考えしか出来ないのだろう。

 

霊夢「分かったわ覚えとく」

 

随分と落ち着いた声音で言い、二つの湯呑みを持ち台所へと片付けた。

そして片付け終えたら一方通行の隣にしゃがみ、霊夢は顔を除きこむような形で

 

霊夢「ね、買い物に付き合ってくれる?」

 

さっきまでの事は忘れはしないが、今は考えるのは止めよう。

霊夢は先程の話を流すかのように、微笑んで言った。

そしたら一方通行は舌打ちをだけをして立ち上がり玄関に歩いて行った。

どうやら付き合ってくれるらしい。

 

今から楽しい楽しい買い物の始まりだ。

 

 

だけど、やっぱり、難しいな。

 

 

自分達は信用してるのに、その彼から『俺を信用するな』と言われたショックを一時的でも良いのに忘れることは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢がそんな思考をした瞬間、

 

暗い暗い闇で

 

 

 

 

これから起こる悲劇を

 

笑う

 

一人の、白衣を羽織った長身の男性。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里に着いて

 

昼間だか店の多い道は混んではいなかった。

 

その道を一方通行と霊夢は並んで、ではなく。一方通行が霊夢から二・三歩離れて歩いていた。

でも

 

霊夢「ちょっと歩くペース遅くない?何も持ってないのよ、もしかしてヒョロヒョロだから遅いの?」

 

後ろを見て挑発気味に言う。

すると、タッ、ダッ、タッ、タッ、と。直ぐに一方通行が霊夢に並んだ。

 

一方通行「………、」

 

霊夢「ちょっとムキになった?」

 

一方通行「なってねェ」

 

此方も見ずポケット手を突っ込んで歩く一方通行を見て。何か悪いが、やっぱり無理だ。少し、霊夢は笑ってしまった。

そうするとやっぱりした。舌打ちを。

 

霊夢「にしても、アンタが買い物に付き合ってくれるとはね。火矢でも降ってきそう」

 

一方通行「誘っておいて何言ってやがる。家に帰るついでに付き合ってやってるだけだ」

 

霊夢「そう」

 

いつも彼はそうだ。

何処か突き飛ばす、遠ざけるような口調で話す。

だけどそれでも楽しいものだ。

初めて恋をして、初めてその恋をした少年と一緒に里を並んで歩いているのだから。

 

霊夢「さて、とりあえず安売りしてる所から__________________ん?」

 

隣に居る一方通行を見た。

そしたら何故かその眼はいつも鋭いが、今日はそれ以上に鋭く、何かに気付いた表情に変化してた。

 

霊夢「どうかしたの一方通行?」

 

一方通行「………。どォやらオマエは随分と平和ボケしてたらしィな。右斜め後方、俺達を観察してる野郎が居る」

 

霊夢「は、え?」

 

一方通行「見るな。見たらバレた事に気付いちまう」

 

霊夢「どうする?」

 

一方通行「二手に別れンぞ。そして追いかけられた方がソイツを撃退しろ。だがもしオマエの方に行った場合は気ィつけろ、この気配………暗部の野郎だ」

 

霊夢「……暗、部?」

 

一方通行「チッ、説明は後だ。俺は左にオマエは右に走れ。分かったか?」

 

霊夢「…………分かった」

 

一方通行「なら直ぐ実行だ」

 

ダッ!!と左右の細い道に分かれて走った。

里の人間はそれを見ても何も思わない、危機を感じない。

だからこそ、二人を追う黒い近代的な武装を全身にした男性は堂々と大きは道そして細い道と、一人を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その追う者のターゲットは

 

「よォクソ野郎。そンなに慌てて、ナニか大事ナヨウデモアンノカ?」

 

「ん、んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!?」

 

ズサーー!!と人気の無い細い道で慌てて足を止めた。

白く華奢な体で、悪魔のように笑う化け物を見て。

 

一方通行「ハッ、ただの腰抜けかよ。っつゥかやっぱ俺を追ったか」

 

「気付いてたか」

 

腰ら辺に隠し持っていた銃を抜き、銃口を一方通行に向ける。勿論安全トリガーも解除済みのため、引き金を引けば直ぐに人を簡単に絶命させる銃弾が放たれる。

 

一方通行「……一応ダメもとで聞くが、どこの所属だ?」

 

「答えると思うか?」

 

一方通行「だよなァ……、オーケーオーケー」

 

ゆらりと片腕を少し上げ、化け物は宣言した

 

一方通行「ブチ、コロス」

 

そしてベクトル操作を駆使して武装暗部の男に接近し、内蔵を口から吐き出してしまう位の威力の拳を一方通行は腹部へ飛ばした。

見事命中すると、持つ銃を落とし男性は地面に大量の血を口からぶち撒け虚ろな目で空を見上げるように膝から崩れ落ちた。

 

「う、ぐっ……………………ごっ……は、は…………はぁ…………ぁ」

 

一方通行「喋れるぐらいに手加減してやった。だから喋れンだろ、話せ。じゃねェと殺す」

 

落とし銃を拾い、武装暗部の男性の眉間に銃口を押し当て冷たく息を吐く。

 

「は…………は……話し…たら、助けて……くれ…るのか?」

 

一方通行「さァ?どォだろォな」

 

「お、お前が助けてくれると、し、信じて、話す_____________________________________________________________________________________________________なんてなぁ!!!!!!

 

一方通行「あ?」

 

 

 

次の瞬間だ。

カチッと嘲笑う表情で何かのスイッチを武装暗部の男性は押し木っ端微塵に爆発した。

全身に爆弾でも装備してたんだろう。

 

これが、暗部の掟。

死んででも、情報を漏らさない。だというのか。

っと、いつもならそう思うだろう。

しかし、一方通行は見逃さなかった。例え武装暗部の男性がバカにするような表情をしてたとしても爆死する瞬間の目の奥には、"恐怖で怯える"感情が露になっていた事を。

多分、もし仮に情報を言いこの場から生きて帰れたとしてもその恐怖で怯えてしまう誰かに始末されてしまうから自ら命を絶ったのだろう。

 

一方通行は無傷な体で、木っ端微塵の肉片を見下す。

武装暗部の男性が爆発する瞬間、『反射』が機能して無傷だったのだ。けど『反射』したため、武装暗部の男性は倍の爆発を食らっただろう。

だが、そんな事知った事では無い。彼は自分が無事ならオールOKの人格者だから。

 

 

そして直ぐにこの場に一人の少女が登場する。

 

霊夢「ねえ、何かさっき爆発音みたいなのしたけどなに?」

 

ひょこんと背後に登場霊夢さんに、白い化け物は極当たり前のような口調で

 

一方通行「あァ?見りゃ分かンだろ」

 

霊夢「?……………………な、に、これ?」

 

一方通行が目を向ける方向に進むとそこにあったのは無惨で吐き気がするほどの肉片。

それを見るな否や察した。これは元人間の物だと。

 

霊夢「ま、さか。…………アンタが、やったの?」

 

恐る恐る質問する。

すると

 

一方通行「…………あァ」

 

シンプルな一言。

でも、それで全部答えたと言っても過言では無かった。

目の前には証拠、そして彼の発言。もしこれが警察と呼ばれるものがこの世界に存在しこの二つを見て聞いたのなら問答無用で逮捕確定だ。

だが、ここは幻想郷。殺し殺され憎み憎まれが起きても法は無い。人を殺してはいけないとゆうルールは人外の者達には存在しない。

だからこそ巫女の少女は何も言えない。何も言わない

 

 

 

霊夢「…………………………そう」

 

とだけ返すのみだ。

この時の自分はどのような顔をしてるのだろう。泣いてる?怒ってる?悲しんでる?それとも無の表情?

その答えを知ってるのは一方通行だけで、彼の言葉を借りるなら「ビミョーな表情」。

 

そして二人はもう何も話さかった、

 

 

 

 

「「________________ッ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空気を震撼させるほどの巨大な爆発音がするまでは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「なによさっきの音……?」

 

一方通行「チッ。やっぱりこの世界に来たのは一人だけじゃ無かったか……」

 

霊夢「どういう事?」

 

一方通行「悪りィそれも後で話す。今はデケェ花火を上げたアホに会いに行くぞ」

 

霊夢「はぁ、分かった」

 

化け物を化け物と言わせるスイッチが完全に入った。

それはもう簡単に分かるんだ。

あの楽しそうにそして狂おしいような表情で笑う化け物の顔を見れば。

 

そしてまた彼は命を奪うだろう。

残り一つのパズルのピースを嵌めるみたいに簡単に。

でもそれが間違ってるとは言えないし思えない。でも、それでも。

何か心に引っ掛かるのは何の思いだろうか。

 

 

 

 

燃えている。また爆発音する。里を走る二人の人影。

一人は白い化け物そしてもう一人は紅白の巫女。

慌て、泣き叫ぶ人達を、足を怪我して走れない子供を無視して人達が逃げる逆の方向へ走り、

 

たどり着く。まるで里を戦争真っ最中みたいにしたクズ野郎達の所へ。

 

一方通行は眉を顰めるだけだったが、霊夢は目の前の人達や見たことも無い黒い箱みたいな物を見て冷や汗を流して驚愕する。

 

 

前方に居たのは全身武装の暗部に所属する人達が約二十名。

そしてこの幻想郷に絶対に存在しない、フルスモークの黒いバンが四台。

 

 

霊夢「ねえ、一方通行。アイツらって…………」

 

「一方通行?」

 

一人の全身武装の暗部の男性が、『一方通行』とゆう言葉に反応して声のした方を向く。

どうやら、彼等は十メートル程度離れた所に居る霊夢や一方通行など視界に入ってなど無く、里を壊すのに夢中だったそうだが、一人の暗部の男性が向くと他の暗部の連中も向き始めた。

 

「こちら目標を発見。直ちに排除、確保します」

 

『あァ?そう。まあ一応俺もそっちに向かうわ』

 

「承知しました」

 

一人の暗部の男性が通信機で話し終わると、一斉に暗部の連中が手に持つ学園都市生産のマシンガンを向けた。

 

 

「それじゃあ殺すが、何か言い残す事はあるか一方通行?」

 

霊夢(一方通行の事を知ってる!?)

 

一方通行「…………悪党の遺言を聞いてどォすンだよ?」

 

複数の銃口を向けられても落ち着いて話し、ゆっくりと霊夢の前に立つ。

 

一方通行「つか、早くそのつまンねェオモチャを使えよ。クズ野郎どもが」

 

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………死ね」

 

一斉に引き金を引き鳴り響く銃声。そして風を切る弾丸。

だが、弾丸は一方通行に届かない。勿論霊夢にもだ。

なら弾丸はどこに飛んで行った。誰の体に風穴を開けた。

 

 

二人が無事なら、一方通行にベクトル操作という能力があるなら分かるだろう。

 

風穴を身体中に開き逆に殺されたのはバカで哀れな暗部の連中達を、ついでに生きてたとしても帰りの黒いバンも穴だらけにされた。

そんな哀れな連中に

 

一方通行「………………くっだらねェ」

 

吐き捨てる。

しかし後ろに居た霊夢はにとりが作りだしたような人を簡単に殺せる武器を所持してる者がまだ里に居ると思うと安心なんて出来ない。彼のように詰まんなそうに吐き捨てられない。

 

一方通行「さァて、運よく生きてるヤツが居たら吐かせるか………………。霊夢、オマエは帰れ。この件は全て俺が終わらせる」

 

霊夢「え……?ちょっと待って何で勝手に決めるの!!私もやるわ!!」

 

一方通行「……さっきから見りゃ分かンだよ。オマエにゃこっから先は無理だ」

 

霊夢「だからそうゆうのを勝手に決めないでって言ってるの。私もやるっての…………守りたいから、あの日常を…………」

 

一方通行「…………………………」

 

霊夢の言葉に思わず黙ってしまった。

が、しかしこれは自分の問題。だからやっぱり帰ってもらおうと説得しようとした。

 

次の瞬間だ。

 

ある一台の黒いフルスモークのバンが奥から此方に走ってきて目の前に止まる。

そしてその中から一人の男が出てきた白衣を羽織った長身の男。その男は研究者のくせに顔面に刺青を掘っていて両手に細かいフォルムの機械製のグローブがはめられていた。

そのグローブは別にお飾りって訳じゃなく、マイクロマニピュレータという百万分の一メートルクラスの繊細な作業を可能にする精密技術用品だ。

 

 

一方通行は出てきた男を知ってる。

だが、吐きたくなるほど嫌いだ。

 

 

「あーあ、ガキ相手だからって甘い方法とりやがって。あのガキ潰すにはやっぱりダメだよなぁ、この俺じゃなきゃ」

 

部下の頭を蹴飛ばしてそう言った。

 

霊夢は出てきた男が転がってる奴らの上に立つ者だと秒で分かった。

だからこそ、彼が理解出来ない。

あの人をコマとしか思ってない野郎を。

 

まあ、理解なんてしたくないが。

 

そして霊夢は目の前の居る男を全力で警戒した時、

 

一方通行「くっ…………、ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!木原くンよォ!!ンだァ?その思わせ振りな登場はァ!?人の面ァ見ンのに目ェ背けてたインテリちゃンとは思えねェよなァ!!」

 

目の前に現れた者の名は木原数多(きはらあまた)

かつて学園都市最強の超能力者(レベル5)の能力開発を行っていた男。

そして暗部『猟犬部隊(ハウンドドッグ)』のリーダー。

 

 

木原「いやぁ、俺もテメェ何かに会いたくないんだけどな。上に命令で仕方なくだ。つか、会ってそうそうビックリだわ、まさかあの大量殺人のクソガキが女ァつれて善人気取った顔してんだもんなー」

 

一方通行「……下らねェ事言い終えたらとっとと帰って死ね。それともなンだァ?この一方通行に殺されたいご趣味の変態さンかァ?」

 

木原「はぁー……何で上は俺にクソ知らねェ異世界に飛ばしてこのクソ面倒な命令をしたんだよ。あー、ムカつくし目の前のクソガキが殺すか。前から殺してみたかったしぃ?……………………って訳で殺すわクソガキッ!!」

 

そして木原は一方通行に向かって走り、全身の力を集中させ、機械製のグローブをはめた拳を飛ばした。

一方通行は木原が自分の能力を良く知ってるのに取った行動がバカ過ぎて笑うがとりあえず

 

霊夢を横に吹き飛ばし、自分は後方へ跳躍し、木原の拳を回避した。

 

木原「あ……?」

 

空振り拳を見て、パカッと口を開く。

"まさかあの一方通行がただの拳を避けるとは思わなかったのだ"

 

木原「お、おいおい!!どうしたんだァ!!御自慢の反射はよーッ!!」

 

一方通行「オマエバカだろ。俺の能力を知ってる野郎ォが気持ち悪ィ顔で近付いて殴って来たンだ、"普通"避けるだろ?」

 

そう、挑発的に言うがそれでもおかしい。

絶対無敵の壁『反射』が十八番の第一位がただの拳を避けるなんて……………………、

 

木原「あっはっはっは、あームカつくムカつく。で?それでまさか勝ったつもりかクソガキ?」

 

一方通行「端から俺の勝ち確定だクソ野郎」

 

木原「………、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!そうだといいな。しかしなぁ、現実は違うもんなんだぜ!!」

 

一方通行「オマエがいくら工夫しようがこの俺に拳一つ当てられねェよ」

 

あの時、木原が殴り掛かって来たときに。一方通行は、"あの木原が"普通の手段で殴らないと知っていた。

それはあのクソな研究所での生活の中で木原数多がどんな人間なそれなりにわかっていたから。

 

普通、如何なる攻撃を反射する絶対の壁を知ってそれに殴りかかる馬鹿はいない。

しかし、木原は殴ってきた。

それが意味するたった一つの答えとは"絶対と思われた反射の壁を貫く方法を人間の身で見つけたとゆう"事となる。

それを一方通行は、あの時あの瞬間に考えそして行動したのだ。

 

 

霊夢「_____________って、てってって。ちょっと急に痛いじゃない!!」

 

忘れてはいけない、あの時何も言わず吹っ飛ばされた霊夢が、ゆらゆらと一方通行の方へ歩みながら怒る。

見た目以上にダメージは無い。手加減を十二分にしたからだ。

 

一方通行「おい、こっちに来るな。オマエは離れてろ」

 

霊夢「ちょっと流石に____________」

 

一方通行「離れてろ」

 

霊夢「…………………………………………ハイ」

 

あの紅く鋭い眼球で睨み、低い声で言い放たれ無意識で敬語で返してしまう。

 

 

木原「どこ見てんだよクソガキィッ!!」

 

突如、木原が殴り掛かる。しかし人間程度の速度。

そのような攻撃避けるのは容易い事。

 

しかし

 

一方通行「…がッ…………ご!!!!」

 

また、後方へ回避すると木原は一方通行の回避スピードより速く動き顔面に一発、拳を届かせていた。

 

ドカッ!ゴロゴロゴロと地面にうつ伏せて倒れた一方通行の所に彼の名を読んで走り、側にしゃがみ心配する紅白の巫女。

 

木原「チッ……、そんな勝手に動くなよ"鍵"」

 

霊夢「え?…………アンタ今、なんて……」

 

木原「俺がお前の事を知らないとでも思ったか?生憎、博麗の巫女。そして警戒すべき妖怪八雲紫などとか。そうゆう情報はちゃーんと頭に入ってんだよ」

 

霊夢「どうやらアンタを五体満足で返す訳にはいかなくなったわね_____」

 

すっと立ち上がり戦闘態勢を取る。

だが、、、

 

一方通行「……俺は、離れてろって言ったよなァ」

 

霊夢の肩に手を置きそして、乱暴に突き飛ばす。が、霊夢が倒れる事はなかった。

 

霊夢「ここを離れて。アイツをここから返す訳にはいかないのよ、だってアイツは__________________ッ!?」

 

パシュンと小さく何か速い音がすると、力が抜けたように霊夢は倒れる。しかし、銃に撃たれたのに血が吹き出すどころか一滴すら血は垂れなかった。

 

木原「おー。見事命中だー」

 

一方通行「………木ィィィィィィィィィィ原ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

銃口を向けてニヤつく木原に一方通行は地面を蹴って突進し、拳を飛ばす。

が、

 

木原「ダメなんだよなぁ、それじゃあ」

 

なんて先を読むかのごとく拳を避け、一発、二発と避けると同時に拳を叩き込む。

 

横の店に吹き飛び、木製の商品棚に激突して商品に埋もれる一方通行。

しかし立ち上がると同時にその商品や瓦礫を吹き飛ばす。

 

一方通行「……オマエ、その身体能力……。自分の体に超能力の開発をしやがったな」

 

木原「ぶっ………アハハハハハハハハ!!!!あー違う違う、そうじゃねぇ。そォいうのはお前らモルモットの仕事だろ?答えは『発条包帯(ハードテーピング)』ってのを服に仕込んでな、常人よりも優れた運動機能を手にいれたって訳だ。だからお前のスピードにもついていけるし直ぐにお前の顔面もジャムに出来るって訳」

 

一方通行「ハッ……アレを使ったら体がどォなるか知ってンのかよ」

 

木原「そこがお前らガキと違うんだなぁ。俺ァよ、あのバカげた物をこの手で改造して、運動機能は少々落ちるがデメリットのねェ物に仕上げたんだ。だから俺が自爆することは絶対にねェ」

 

一方通行「だとしても、無駄な努力だったなァ!!!」

 

大気のベクトルを操作して、鉄すら切り裂く暴風を生成し、それを木原の真上から落とす。だが

 

奇妙で耳を塞ぎたくなる音が聞こえるとその暴風は空中でバラバラになりただの風となり、吹かれていった。

 

一方通行「………な…………っ!?」

 

木原「芸がねェなぁ」

 

一方通行「…………ぐ、…………!!」

 

自動車何かよりも速く移動して、一方通行の顔面に一発正面から殴りそして顔面を掴み地面へ叩き付けた。

 

木原「ふぅ。あ、……ははっ、ギャハハハハハハハハハ!!!!そう言えばテメェ『俺の勝ち確定』とか抜かしてたが今の状況でも言えんのかぁ?」

 

一方通行「くっ、そっ、た、れ……」

 

メキッ……。下品で、全力で顔面のシワを引いて笑う。そして鈍く響く肉叩きの音がした。

例え地面に伏せさせても……、自分が絶対的に有利だとしても木原数多という人間は容赦がない。

それは一方通行のように

 

いや、それ以上かもしれない。

 

木原「しっかし、お前は俺が反射の壁を破る方法を知ってると見抜きやがったな。まっ、それを見抜けたとしても、だ__________」

 

ガギ、バッ、ドガ、ガ、ガ、が!が!が!がががががががががががががががががががががががががッ!!!

何発も何発も何回も何回も何十回も何十回も

殴る。殴る。殴る。殴る。

顔面を腕を足を肩を頭部を顔面を腰を、

一発で地面にビビっを入れる程の力量で容赦なく、まるでストレスを発散するスポーツマンみたいに。

 

それは一方通行の顔面が腫れ上がろうが、出血しようが止まらなかった。

 

木原「___________テメェのようなガキを潰すのなんて訳ねェんだよ。分かるかなぁ?お前は最強でも無敵でもないんだ、俺の手にかかればな。それは俺はお前の癖、演算、自分だけの現実(パーソナルリアリティ)全部把握済みだからだ」

 

一方通行「…………、チッ。さっきの、風は………あの……うるせェ……音…………か……ッ」

 

木原「おう、正解だ。ちったぁ大人の思考についてける脳に成長したのかなー?一方通行ちゃーん」

 

一方通行「……ブッ…………コロスッ!!」

 

木原「………うるせぇ口が塞がらねえな。なら!!凄く良いモンくれてやんよ!!!」

 

もうボロボロで、意識も朦朧としてるなかの白い化け物に数年の努力に見合うご褒美を貰ったような良い笑みで右手で掴む一方通行の頭をもっっと強く地面に押し、白衣の内側のポケットから特殊な形をした一発限りの拳銃を見せびらかすかのように取り出し、その銃を地面に置いてある一方通行の左手に向け

 

バンッ!

 

気持ちが良い銃声が一発。

幻想郷に鳴り。特別な弾丸が一方通行の左手の甲に埋まる。

 

一方通行「ッ!!!!あァァァァァァァァァッ!!!!」

 

木原「ギャハハハ!!良い悲鳴じゃねぇか!!!」

 

あまりの痛さ。

とゆうよりは、一方通行の体が、脳が。

これ以外の痛みは危険と、意識を強制に無くす。

 

意識を無くした一方通行を木原はトドメを刺す。

 

 

 

と、思いきや

 

 

あの最強の学園都市第一位の一方通行を殺せるのにガン無視して、近場に倒れてる霊夢の元へ歩んだ。

 

 

木原「テメェを殺すのは簡単だ。だが、まだまだ、まだだ。テメェはもっと苦しめて殺さなきゃ後味が悪りィからな、特別に見逃してやるよ。まぁ俺の本命はクソガキじゃなくこの博麗の巫女、"博麗大結界の鍵"だからなァ」

 

スタ。

強力な麻酔銃を撃ち込まれた霊夢の所へたどり着く。

そして、ズボンのポケットから通信機を取りだし、無能で使えないクソクズ共に命令を下す。

それは『目標を確保』『幻想郷から、学園都市に帰還』

『少し人を残して里を徹底的にブッ潰す』

だ。

 

他の所に居た、まだ里の内に居る部下達は動揺や下らない意見を述べたヤツもいたが「殺す」の一言で黙り素直に従った。

 

そして、木原が出てきた黒いバンから残りの部下が出てきた。

 

「………それでは私達は残り里を破壊します。しかし、一方通行はどうしますか?回収しますか?」

 

木原「いやぁ、回収はしないよ。あんなの要らないもん。あっ、そうだ。お前達は折角残って面倒事をやってくれるんだ、クソガキのサンドバッグにする権利をやるよ」

 

「は、はぁ…………」

 

木原「なんだよ、上司からのプレゼントだぞ嘘でも喜べよ。ま、いいか」

 

直ぐに残るヤツ達の代わりに車を運転する者が合流して、ソイツに霊夢を黒いバンに積めさせた。

そして一歩、バンに踏み込んだ時

 

木原「あ、そうだ。お前らぁ、そのクソガキの"左手に演算妨害する特殊爆弾"を撃ち込んだから気をつけろよー」

 

さらっと、

超大事な事を言う。

流石にその時部下達は『言うの遅ぇよ』と思ったがそのような事言えばクビ(物理)確定だ。

 

そして、木原を乗せる黒いバンは荒れ果ててまだ燃えてるところが所々ある里を後にした。

 

残ったのは里破壊を命令された五人の猟犬部隊のクズ。

 

「で、どうします?」

 

「木原さんの命令を全うする。それ以外あるか」

 

「じゃ、第一位をサンドバッグにも?」

 

「ああ」

 

ととと、

五人の木原の部下は哀れに倒れてる一方通行を囲む。

 

「そ、そう言えば、演算妨害する爆弾撃ち込んだとか言ってたよな」

 

「えーっと、確か右手だっけ?」

 

「左手だよ!!ちゃんと聞いとけバカ!!」

 

そそそ、

そーっと一方通行の顔を除き込む。

すると、呼吸はしてるが意識は完全に失なってることを確認できた。

 

「なあ」

 

確認した男が口を開く。

 

 

「「「「ん?」」」」

 

そしてその男に一斉に振り向く。

 

「俺から最初にこのガキ殴っていい?」

 

「な、なんで?」

 

「だって、よお。そりゃこのガキが憎いからに決まってんだろ!!こいつァ俺達の仲間を殺した張本人だ!!」

 

ごくり、と、

生唾を飲み込む。

 

「そう……だよな。こいつはアイツらを殺したヤツだ!!」

 

それから俺達は燃えた。

復讐の炎に

 

全身を焦がすほど

 

そして叫び狂ったかように五人は銃を周りのガタガタの建物に乱射し、火炎式爆弾をありったけぶん投げ

里の住人からすると地獄、絶望の光景を作ってみせた。

だが、五人の居る場所。帰りの道には炎は無い。

 

「じゃあああああ!!やるぜ!!クソガキをサンドバッグだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「「「「ォォォォォォォォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!」」」」

 

全員少し距離が離れてしまったが最後のデザートと呼ぶべき最強のサンドバッグに目標を決めた

 

その時に、

 

 

 

 

 

「____________やってみろよ」

 

この場に五人しか居ないのに六人目の声がした。

 

いや、それは新しい六人目の登場で無い。

 

それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「雑魚どもが」

 

 

化け物の目覚めを意味した。

 

 

「うあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

一人の男は立ち上がった化け物の目覚めに恐怖した。

 

しかし、残りの四人は

 

余裕、余裕。超余裕な態度だ。

それはそうだろう。

 

「そうビビんなよ。コイツ能力使えないぞ」

 

「…………あ、そうだった」

 

一方通行「はァ?何言ってやがる?…………ッ!?」

 

「はは、気がついたかベクトルの演算式を組み立てられないことに。理由はその左手に撃ち込たれた特殊弾丸だ」

 

男の言葉を聞くと一方通行は弾丸を触ろうとしたが、

 

「おっと止めとけ。そりゃ爆弾なんだ、下手すりゃお前はドカン!!……だぜ?」

 

一方通行「…………クソったれ」

 

嘘を言ってるように見えない。と、言うよりあの木原数多ならそんな事しそうだから信じざる終えなかった。

嫌だし、ムカつくが。

 

「ははははっ、分かったよな?」

 

「さーてっ!!武器は無いから楽に殺せないやゴメンね☆」

 

「だから悪いけど殴り殺されてくれる?あははははははははははは!!!!」

 

ジリジリと少しずつ五人の男達が近付いて来る。

体格的に、一方通行は殴りあうとすると100%負けるだろう。

化け物は能力無しなら、ただのひょろい子供だからだ。

 

 

考える。近場に霊夢が居ない、攫られたのか……と。

この状況をひっくり返しそして木原の野郎をブチ殺しにいける突破口を

考え考え考え、た。

そして結果一つしか考えつけなかった。

 

だがしかしそれは賭けだ。

でも。それでも。

 

一方通行「………………………………」

 

 

 

やるしか…………なかった。

 

ここで無様に倒れるくらいならと。

 

 

 

 

 

それは、

 

 

なによりも黒く

 

なによりも荒く

 

なによりも恐ろしく

 

吹き荒れる風が一方通行を囲むように吹き覆ったように見えた。

 

五人の暗部の男達は風が強いが、吹き飛ばされることはなかった。

 

だが

 

 

 

この後

 

 

 

あの時吹き飛ばされた方がマシだと思う

 

 

 

 

「う…………そ……………だ…………ッ!!」

 

あるものを見て恐怖した五人達のひとりが、ガタガタ震える口を開き

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「……ztsh死rb」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし、五人があの姿の一方通行を見ても生きて幻想郷から出れたらこう語るだろう

『化け物は漆黒の悪魔の翼を纏った』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「…………はァ、はァ、はァ、はァ……はァ、はァ、はァ……」

 

両膝、両手を地面につけ荒く呼吸する。

 

五人は仲良くミンチにしてやったが、やはり背中にある"暴走状態の黒い翼"は完全にコントロール出来ない。

 

また、意識が飲み込まれ周りを破壊したくなってしまう。

だから一方通行は少しでも黒い翼を自分の意思で動かせる時に、上空へ上る。

そして黒い翼を器用に使い風を吹かせ里の火を鎮火する。

 

するとそこで黒い翼を解除した。

もしあと数秒でも黒い翼を使おうものなら暴走してしまうと悟ったから。

 

黒い翼で上空に静止、上がる事が出来ていた。

だが、そのチカラはもうない。

そしたら簡単。一方通行の体は重力に従い落ちる。

だんだん加速して。

 

一方通行は『この後は生きてるか俺の運しだい』と賭けた。

暴走した翼を模倣したことに続いて彼がこうやって続いて天任せなど珍しいことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその後は誰も知らない。

 

落ちた所が瓦礫でほんの少しでも地面に激突した衝撃を抑えられたことを。

 

地上がうるさいからと地霊殿の主に里を見てきてと命を下されたペットが瀕死の白い化け物をそのペットの家に運んで手当てしていたことを。

 

 

 

 

 

 

 

白い怪物を運んでいるペットを偶然見掛けた者は右手は大きな多角柱状の物体で覆われて、胸部に赤い目のような球体があり黒いロングヘアーを緑の大きなリボンで纏め、背中にはかなり大きめの鴉の黒い翼を持つ奇妙な生物だったと後に語っていた。





一方通行(アクセラレータ)
君以外、学園都市から幻想郷を守れる者は居ない。

走れ!!間違った方法でも救え!!霊夢を!!










しかし……?

次回。第三章、三話。
これはシリアスな話か?これをシリアスと言ってもいいのか?



お楽しみに~♪
(自分事ですが、これを書いてから一年経ちましたー)


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3話

一方通行はロリコン、って言ってるヤツが多くて嫌になる今日この頃。
ま、ネタにされる程人気なのは知ってんだけど………………ね~…………。


多分、誤字や脱字があると思います。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。


主の命令により、地上を飛ぶ鴉らしい真っ黒な翼を持つ霊烏路空(れいうじうつほ)

その彼女が目的地はともかく音がする所。

つまり、今のところは衝撃音が鳴り響く里といったところだ。

 

別に急ぎの用って訳じゃないが空を飛行する速度を上げた。

 

空「?………お、発見!!」

 

順調に空を飛んでいると里付近に到着して上空で制止し、見た。

目に映ったのは里が燃え壊された光景で、目を見開いてしまうほど酷いと感じた。

 

空「これはさとり様に報告しないと…………、_____________ッッ!!!!!」

 

主の元へ帰ろうとした時、空は突如起きた暴風に襲われた。

しかし遠くに吹き飛ばされたり、切り傷のような怪我も無い言葉がおかしいだろうがどこか優しい暴風だった。

 

空「………………アレは!?」

 

なんと、里の炎が鎮火してる。

それはあの風が原因なのか、だとしたらその風を起こしたのは誰なのか。

鳥頭とバカにされてるが、必死に考える。

だが、先程の説明通り空は頭の回転はいい方ではない。

 

空「……………ッ!?」

 

まだまだ頭を悩ませてると、空から里へ落ちる白い少年か少女のような人の形をしたものを発見した。

それからは行動が早かった。

あの高さから人が落ちたならまず、命はないだろう。っと、ゆうのもあるが。何故か、そう何故か気になるのだ。

あの落ちていく白い人が。

 

空「たしか………この辺りに…………」

 

多分、白い人が落ちたであろう所の上空で制止して辺り一体を見渡す。

でも、里は火が消えたといっても瓦礫が多くあり人一人探すのが結構苦労する。

 

しかし、空は諦めない。

そこまでするほどあの人とは仲良くない。とゆうか知らない。けどほっとけない。

それだけ。それだけの理由で必死に探し続けた。

 

そして、ようやく。見付けた。

瓦礫の山に全身から血を流し意識を失なってる一人の人。

 

空はその白い人の近くに降り、そっと近付き、上体を優しく抱く。

 

確信はそんな持てないが、男だろう。体つきは女性みたいだが胸部は平らだし、少しだけ男性的な筋肉の固さがある。

 

空「素敵…………」///

 

彼の顔を見ていると軽く頬を染め意識せずに口から洩れた言葉。それは本当に思っているから出たのだろう。

が、「ハッ!」と思い出す。

自分の主の命令を。

 

 

こう止まっている訳にはいかない。

直ぐ様、空は白い少年を横抱きして主の家へと飛んで行く。

 

急がないと

彼の体温がだんだん低下してくのを肌で感じる。

早く!早く!早く!早く!

初めて会ったけど。名前も知らない少年だけど。

 

この人が死んでしまったら、世界が終わる気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして空は瓦礫の中から王子様を拾いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下卑た笑い声。

機嫌を損ねてしまうような嫌な音。

そして、なにも無い。

まるで空のカンの中に雫を一滴たらした音と共に心に染みた敗北。

 

それが彼の中に奥の奥まで浸透していった。

 

一方通行「…………………………………………………………………………ン」

 

パチ

ゆっくり瞳を開けた。

多分、何処かの屋敷に救われたのだろう。

 

大きな天井や部屋。

そしてこのキングサイズベットを見れば屋敷と確信するのは容易い。

 

一方通行「…………チッ。またこのパターンかよ……」

 

まだまだ先のある人生だが何度も気を失っては誰かの家に運んでもらい治療される。

……と、このような経験を何度もしていると一般の人からすると普通は感動ものだが、一方通行からするとため息ものだった。

 

とりあえず上体を起こし自分の体、次にこの部屋を見る。

治療方法は永琳と比べたら悪いがそこまで完璧と言えない。

というか永琳の腕が他の奴らと比べ物にならないからなんとも言えないが………………

 

一方通行「………………………?」

 

この屋敷の主の所へ、礼と挨拶でもと。思いベットから出ようとした時。違和感を感じた。

それは左手からだった。

 

 

すこしずつ毛布から左手を出す。

そして彼が見たのは自分の黒い手だった。

 

だが別に一方通行の肌が黒くなったのでない。

黒い布製の作業用グローブが彼の左手に填められていた。

 

もしかしたら治療したヤツは左手に埋め込まれた爆弾に気付いたのか?

まあそんな事はどうでもイイ。

 

体が動かせるなら目的は一つ。

木原を殺し、攫られたであろう霊夢を無傷で救う。

それだけ。

 

それだけしか、今の一方通行の頭の中にはなかった。

 

しかし。

 

 

……ガチャン。

 

 

玄関にありそうな扉が開いた。

勿論この部屋のだ。

 

そして、

 

「やっとお目覚めですか」

 

やや癖のある薄紫のボブに深紅の瞳にフリルの多くついたゆったりとした水色の服装をして下は膝くらいまでのピンクのセミロングスカートで頭の赤いヘアバンドと複数のコードで繋がれている目のようなものが胸元に浮いている少女が扉を開け姿を現す。

 

一方通行「誰だ」

 

多分、この屋敷の主で間違い無いだろうがとりあえず敵意を向けた睨みを一回。

 

だが

 

「ああ、そう警戒しなくて良いですよ。私はこの地霊殿(ちれいでん)の主、古明地(こめいじ)さとり。どうぞよろしく」

 

ご丁寧な挨拶をした、少女。

でも、どうしても。

このさとりと名乗った少女が危険に感じるのはどうしてなのか。

 

一方通行「……、挨拶が遅れて悪ィな、俺は一方通行。オマエらから見たら外来人ってヤツだ」

 

さとり「おや、外来人でしたか」

 

ただの言葉の交わし合い。

でも、さとりは眉をひそめた。

 

一方通行「もォ少しマシな演技は出来ねェのかよクソガキ」

 

さとり「……………」

 

ベットから出る。

そして一歩、一歩と確実に距離を詰めて最終的に手を伸ばせば届く距離まで近付いた。

 

一方通行「オマエ、俺の心を読ンだな?そして俺が考えてる事を知って動揺しなよな?」

 

さとり「………ッ……………………」

 

一方通行は挨拶と同時にちょっと仕掛けてみた。

そう、名乗った時に軽く考えてみたのだ、"この屋敷に居るヤツ全員殺す"と。

 

一方通行「俺はよォ、オマエの能力に近い力を持ったヤツとは結構会ってきてなァ。相手の大体の能力は予想出来ンだぜ?」

 

さとり「……………………。そう人を試すのは本来私の方なんですけどね」

 

一方通行「相手が悪かった。それだけだ」

 

さとり「しかし疑問ですね。何でそう思ったんですか?」

 

一方通行「俺がこの屋敷の主を探そうとした時、大分オマエとの距離はあっただろ。だがオマエは離れた距離からでも俺の心を読めた。そのぐらい高位な能力を持ってンならどォせ言葉にしなくても分かってンだろ」

 

さとり「結構な評価ですね」

 

クスクス、

手をそっと口に添えて笑う。

 

一方通行「で、ここまで話しても説明しなきゃ駄目か?」

 

さとり「いえいえ、大丈夫です。貴方が能力者が多く存在する所に住まいそして能力者達との戦い、研究者達との会話など見せてもらいましたから。これら全てをまとめれば分かります、貴方は少しの時間しか生きていないのに私達より多くの知識を持ってることを」

 

一方通行「それこそ過大な評価だっつの。まァ…イイ、とりあえず俺がどのくらい寝てたか教えろ」

 

さとり「3時間と10分です」

 

一方通行は「そォか」とだけ言ってさとりの横を通り過ぎ、扉を開けてこの屋敷の出口へと行こうとした。外に続くか知らないけど

 

 

そんな彼の腕が掴まれた。

 

一方通行「…………離せ」

 

赤く鋭い、ひと睨みでカラスを殺せそうな目を腕を掴んださとりへ向けた。

 

さとり「それは出来ません」

 

一方通行「あ…………?」

 

さとり「貴方が行おうとしてる事は分かっていますが、此方には此方の事情があります。ですから少し付き合ってもらいますよ?」

 

一方通行「…………この俺がオマエの用事に付き合ってくれる程優しいヤツに見えるか?生憎俺ァ悪党だ。邪魔をするなら殺す。それだけだぞ」

 

さとり「ではこうゆうのはどうでしょう?ここは旧地獄。地上に存在しない地下に広がる洞窟空間の世界。ですからこの屋敷を出たとしても本当の意味で出るには案内無しだと相当困難を極めますが、…………それでも外に行くと?」

 

一方通行「…………」

 

さとり「おっと。上に向かって勢い良く飛び地上へ出ると考えは良いと思いますがそれだと多くの迷惑を掛けます、それでも?」

 

一方通行は「チッ」と一回、舌打ちをした。

流石、この一つの屋敷の主と言ったところだ。

さとりは瞬時に一方通行の心を読み、地上へ出ようとする行動がどれだけ哀れか伝え、そして自分達が地上へ出る方法を知ってると言った。

だが…………しかし………それでも、例えここが幻想郷じゃない世界だとしても白い化け物は嘲笑うかのように目的地に帰る方法を知っている。

でも、この事をさとりは知らない。

 

 

さとりは彼はどうやら口で言うほど悪人じゃ無いと思う。

あの時、過去を言葉なしに伝えた事や。

理由なしで命を奪わない事や。

誰かを守りたいと思ってる事や。

それら全て、悪人ならしないだろう。

まだ、隠してる事はあると思うがそれでも、

 

あの血肉と死しかない、惨劇の『実験』を見してくれた事は本当に凄いこと。

それは評価するしかないぐらい。

 

一方通行「一時間だ…………、一時間だけオマエに時間をくれてやる。だがその一時間を越えてみろ、そン時は手段を選ばねェぞ?」

 

さとり「ご安心下さい。貴方から時間を貰いますがその時間に見合う手伝いはしますので」

 

一方通行「オマエが俺に手伝うメリットは無ェと思うが?」

 

さとり「私はこの地霊殿からそんな出ないので外の情報は良く知らないんですよ。だから情報収集がてらお手伝いでも……と」

 

一方通行「あァそォ。つか、いつまで腕を掴ンでるつもりだ?」

 

さとり「……………………、?」

 

どうやらまだ腕を掴んでたことを気付いてなかったらしい。

それに一方通行はため息を吐く。もう癖ってレベルじゃないほどに。

 

さとり「……一応まだ掴んでおきますね。逃げられたら困りますから」

 

一方通行「そォかよ、だったら腕じゃなくて手にしろ。そっちの方が違和感がねェ。っつゥかよォ、俺の心読ンでンなら逃げねェ事ぐらい分かンだろ」

 

さとり「先程心を読んだとき嘘を()きましたからね。保険に、ですよ」

 

一方通行はさとりに舌打ちで答え、部屋を出た。

そん時は可愛らしい少女と手を繋いで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タン、タン、タン、タン、タン……………

二人の足音だけが響く長く豪華で赤と黒とたまに紫色の廊下。

 

その廊下を手を繋いで歩く白い化け物と嫌われ者の妖怪少女。

 

一方通行「………で?オマエは俺を何処に連れてこうってか?」

 

さとり「……答える前に一つ、そのオマエとゆうのを止めて下さい。私には『さとり』と名前があります」

 

一方通行「チッ………あァハイハイ。さとり、俺を何処に連れてくつもりだ?」

 

さとり「まずは貴方を助けた私のペットに会ってもらいます。会ってみたいと先程考えてましたよね?」

 

一方通行「オマエが助けた訳じゃ無かったのか」

 

さとり「私の体を見て下さい。男性一人運べるように見えますか?」

 

一方通行「…………無理だな」

 

さとり「ハイ無理です。いくら貴方が一般の人より軽すぎる体格をしてるとしてもです」

 

一方通行「…………」

 

さとり「おや?気にしてるんですか?」

 

一方通行「………うるせェ」

 

クスクス、

一方通行には悪いが笑ってしまった。

そして二人の空気が和んでいった時、大きな扉の前に立ち。足を止めた。

 

そこは一方通行を助けた霊鳥路空が居る部屋。

さとりはまだ手を繋いだまま、扉を開ける。その時に手を離し言った。

 

さとり「お進みください。私は後ろに居て見てます」

 

一方通行「別に逃げたりしねェよ」

 

ポケットに両手を突っ込んで、面倒な顔をして部屋を進む。

 

一方通行(しっかしさとりはペットって言ってたが調教しだいで動物が自身で考えて行動するもンか?)

 

可愛くふわふわのクッションが広がる部屋を奥へ奥へ。

しかし、その部屋に居る多くの種類の動物達は一方通行をじっ……と見つめる。

その目は警戒。

犬や猫は勿論、殆んどの動物達は縄張り意識が存在する。そのため見知らぬ匂いを漂わせる生物が自室に入ろうものならいつでも主人のため、排除しようと少しは考えるものだ。

 

そんな中の一方通行に

 

さとり「ああ………そこに寝てるのが貴方を助けた私のペットです」

 

扉から一方通行の方へ歩くさとりが指を差して話した。

 

一方通行「……あァ?」

 

素直に指の差された方へ向く。

そこには大きなクッションの上に気持ち良さそうに寝る少女らしき姿が。

 

一方通行「さとり。質問がある」

 

さとり「はい?」

 

一方通行は少女の姿をしてるのにペットと呼ばれた空を見るなり、振り返りさとりに質問する。

 

一方通行「ここは旧地獄で、地下の世界なンだよな?」

 

さとり「そうですが?」

 

一方通行「もしかしてこの地下の世界は地上の世界と違い"奴隷"っつゥのが存在してやがンのか?」

 

人の形をしたものをペットと言っているため奴隷と勘違いしたのだ。

 

さとり「奴隷、ですか。そうゆうのは無いと思いますよ。ここに居るのは妖怪ばかりですから支配するよりかは命を奪う方が好きな方が多いですからね」

 

にっこり。

笑って少女は言った。

しかし、もし人間がさとりの言葉を聞いてその笑顔見てみたら背筋が凍るほどゾッとするだろう。

 

でも勘違いしてはいけない。

たしかに旧地獄には亡者や妖怪、怨霊がうようよ居るが殺伐としてない平和な世界である。

 

一方通行は「そォか」とだけ返して疑問を打ち消す。

さとりの言葉には嘘や偽りは無いだろう。

だから信じる、この少女の言葉を。

 

さとり「さて。空、客人ですよ」

 

空「…………ぅ~~~。うにゅ?さとり様?」

 

まだ寝惚けてそうだが目を擦ってから欠伸(あくび)して上体を起こす。

 

さとり「ほら、貴方が助けた人がお礼に来たのよ」

 

うとうとしてる空にさとりは近付きそっと頭を撫でる。

そして一方通行の居る方向へ視線を向ければ空も視線を向けた。

 

空「…………?」

 

一方通行「寝てる最中に邪魔しちまって悪ィが俺ァ一方通行。ちっとばかし挨拶に来たモンだ」

 

クッションに座る空の前に立ち言った。

その時にはもう二人だけの空気。さとりは(なにかを邪魔するヤツは馬に蹴られてなんとやら……)と、もうとっくに空に芽生えた感情を理解していて遠くに離れてペットに囲まれて二人を座って眺めていた。

 

さとり「フフっ………」

 

それはもう子を見守る母親のような表情で。

 

空「あー、あなたがあの時の………。私が拾った時は真っ赤だったから最初見たときは分からなかったよ~」

 

一方通行「そォかよ。ま、俺がオマエに言いてェのは感謝してるっっつゥ事だけだ」

 

明るい笑顔で話す空に対して一方通行は笑う事もせず、ただいつもの表情で返した。

 

一方通行「オイ……名前聞いてもイイか?」

 

空「うん!霊鳥路空。空でもお空でも好きに呼んで」

 

一方通行「空……か、覚えとく」

 

空「あなたは、えっ……と…………パセリとレタス?」

 

一方通行「それでオマエは何を作ンだよ…………。アクレラレータ、このぐらい覚えられるだろ鳥頭」

 

空「頑張る…………」

 

ため息が出た。

喋らなければ大人っぽいが話せば話すほど段々年齢が低く見える(頭の)。

まあ、それは愛嬌ってことで勘弁して欲しいと遠くで見守るさとりは思う。

 

空「……………」

 

一方通行「…………、あァ?」

 

さて、と。

もう挨拶も済んだしこの部屋を出てさとりの用に付き合おうとしたが空が何故か、じ~…っと見てくる。

 

一方通行「……………」

 

空「………………」///

 

理由も無しに訳が分からないが一方通行の顔を見てしまう、声を聞きたくなる、ちょっとでも一緒に居たくなる。が、しかしその感情がなにか空には分からなかった。

ただ、彼を見てると頬が少し熱くなるのはどうしてだろう?

 

 

空がその感情に気付くのは、少し先の話。

 

さとり「……今日はここまでにして貰えますか?今後の楽しみに取っておきたいので」

 

さとりの言葉を一方通行は理解出来なかったがとりあえず相槌(あいずち)をした。

そして

 

一方通行「邪魔したなァ空」

 

と言ってユラユラ水色の炎のようなものが周りに浮いてる二本の尻尾を持つ黒い猫を抱くさとりと、一方通行は部屋を出て行き、空は「う……うん」とだけ言って頬を染めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さとり「それでは次です」

 

一方通行「…………」

 

また廊下を歩く。

でも前と違う所が一つ。

それはさとりが不思議な猫を抱いているというところ。

しかし、ペットを飼っていて溺愛してるのならどこもおかしな所はない。

一方通行は黙ってさとりが行こうとしてる部屋に黙って付いていった。

 

 

 

 

 

また違う扉の立ち止まる。

 

さとり「さあ、本題にいきましょうか。救世主さん」

 

木製の扉をさとりは器用に黒猫を片手で抱え開く。

 

部屋のなかは食事をする場所。っといったところだろう。

長いテーブルに、綺麗に置かれた椅子。

周りはとても薄暗い。だが、天井にステンドグラスが設置されていて明かりはちゃんと確保できる。

 

さとり「お座り下さい。ちょっと私は飲み物を取ってきます」

 

一方通行「その飲みモンってのはいくつ持ってくンだ?」

 

さとり「???…………私と貴方の分なんですなら二つに決まってるじゃないですか。この部屋には"私達二人しか"居ないんですよ?」

 

なにをとんちんかんの事を言っている?っといった声音で返した。

まあ、今はこれから喉が渇くだろうし黒猫を下ろし飲み物を持ってこよう。

さとりはこの部屋の右にある扉を開きその中に入る。

そして一方通行は椅子に座った。

黒猫は自由に歩き、落ち着ける場所を見つけるなり丸くなるように寝た。

 

 

さとり「どうぞ。コーヒーがお好きなんですよね?」

 

一方通行「心読ンでるオマエなら聞くまでもなく知ってンだろォが」

 

自分の前に置かれたコーヒーに目をやる。

とても旨そうだ。

しかし、手をつけない。

そう例え好物が置かれても"嘘"をついてるヤツが出したものを口に入れるのは気が引ける。

 

さとり「その様子。どうやら私が聞きたい事をもうとっくにご存知ですね」

 

一方通行「あァ、すぐに(さっ)せるっつの。俺から今現在何が起きてるか聞くつもりなンだろ?」

 

向かい合うように二人は座っていた。

 

さとり「フフっ。やはり貴方は他の方と比べて頭の回転が恐ろしく速い。ハイ、その通です。先程も言いましたが私は外にあまり出ないので情報量は少ないんで貴方…………、つまり今現在近くに最も情報を持ってる者から聞こうと思いまして」

 

一方通行「ハっ。だったら俺の心を読ンで知りゃァイイじゃねェか。オマエのその能力は何の為にあるンだっつの」

 

さとり「そう……、そこです。普通なら私はそうします。が、しかし貴方は知識だけで私に嘘をつきましたそんな人間……ああ失礼。そんな"神"に真っ正面から聞くほど私は間抜けじゃありませんよ」

 

一方通行「へェー……だったらしょうがねェ、面倒だが話してやる。だがどォ何だ?知っちまったら、いつもの日常に戻れねェがそれでも聞くか?」

 

さとり「覚悟は出来てますよ」

 

一方通行「オマエは別にイイだろ。俺は他のヤツ等に聞いてンだ」

 

さとり「他のヤツ……ですか?」

 

一方通行「……この部屋に猫が一匹、ガキがもォ一人っつったところか」

 

さとり「まさかただの猫に言ってたんですか?……それにもう一人居るなんて………………」

 

一方通行「ぎゃははは!!俺の能力についてオマエはどこまで覗き見れた?」

 

さとり「ベクトル操作…………です」

 

一方通行「あー……やっぱなァ……正解なンだが惜しい、もォ一つ俺には能力がある。説明すンのが長くなるから短く言うとコピー能力、そしてそれにオマケとして自動解析能力もついてンだ」

 

さとり「そんな………!?」

 

ベクトル操作。

この能力だけでもさとりは厄介と感じたのにまさかのもう一つあったなんて。そしてそれがコピー能力だなんて。

もう滅茶苦茶すぎる。

 

一方通行「……で。解析した結果……この部屋に化け猫一匹とクソガキもう一人を見つけたってわけだ」

 

まだ、俺に嘘を吐き続けるか?

一方通行はそう言い放つ。

 

さとりはため息を吐いた。

そして

 

さとり「…………降参です」

 

落ち着いた様子で一口、紅茶を飲む。

すると

 

くるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくるくる…………パパーン!!

と、黒猫が猫耳娘に大☆変☆身☆

 

「いや~……はっはっはっ!!これはこれは凄い人が居たねーさとり様。あ!間違た神様だった☆」

 

一方通行「…………………」

 

黒のゴスロリっぽい服に身を包み、赤毛を二束の三つ編みにしている少女が派手に登場。

しかし、頭蓋骨が水色のような炎を纏いながら猫耳と尻尾がある猫耳少女。

 

一方通行はあの大人しい猫がまさかこんなに明るく五月蝿いヤツだとは考えもしてなく、こめかみがピクピクするのは仕方ない。

 

「どうも自己紹介が遅れたね。あたいは火焔猫燐(かえんびょうりん)、燐って呼んで。そしてさっき化け猫って言ったけど、あたいは妖怪火車だよ」

 

一方通行「…………………」

 

返事も無し。相槌も無し。

基本こういうのは関わるとうるさくなるだけだから白い化け物は口を一切開かず黙っていた。

が、猫が姿を現したのは良い。

でもまだ居る。

 

しかしまだその少女は姿を現さない。

だからキレた様子で

 

一方通行「……もォ一人の方はそのまま隠れてるつもりか?」

 

さとり「……こいし。もういいよ」

 

「うん」

 

隣に誰も座って無いのに優しくさとりは呟く。

すると見えなかった姿が見えた。

一方通行は解析能力で分かってはいたが。

 

こいし「初めまして~!!」

 

ニコニコ笑う薄緑っぽい癖のあるセミロングに緑色の瞳の少女。

服装は鴉羽色の帽子に、薄い黄色のリボンをつけている。結び目は左前辺り。上は、黄色い生地に、二本白い線が入った緑の襟、鎖骨の間と胸元とみぞおちあたりに一つずつ付いたひし形の水色のボタン、黒い袖。

下のスカートは、緑の生地に白線が二本入っている

だがここまできて疑問が、

 

こいしと呼ばれた少女はさとりと同じ左胸にコードで繋がれた目があった。

だがその目はさとりと違い閉じている。

まだ一方通行がその理由を知るのは後の話だが、人の心なんて見ても落ち込むだけで、良い事なんて何一つ無いとの理由で閉じている。そのためさとりと同じ覚妖怪だが、姉のように他者の心を読む事は出来ない。

 

こいし「あ~あ!じっとしてたから何だか動きたい気分!」

 

さとり「別に良いけど、今はダメよ?」

 

燐「あたいは頑張って猫っぽくするの大変だったな~、ま……猫だけとね☆」

 

一方通行「…………チッ」

 

何かさっきの雰囲気がバカみたいだ。

いつからこんなに賑やかになってしまったのか、知らないが一方通行は舌打ちする。

 

燐は賑やかで接しやすい少女。どっかの悪党さんとは大違いだ。

そして流石こいし。

幻想郷には一方通行のようなタイプの男性は存在して無かったが無邪気で放浪癖のある彼女はニコニコ接することができる。

どっちも明るいからシリアスブレイクなんてお手のもの。

 

一方通行「そンじゃま、説明するが……もォ一度聞く。覚悟は出来てンな?」

 

真ん中にさとり、右にこいし左に燐と座る彼女達に質問した。

 

さとり「………はい。もうとっくに」

 

燐「オッケー!」

 

こいし「はーい!」

 

この地霊殿の主以外軽い返事だが…………

それからはちゃんと面倒臭がりの彼は丁寧に説明した。

今現在の状況を、学園都市のことを、自分のことを、幻想郷の敵と呼ぶべきアレイスター=クロウリーのことを。しかし一方通行は全てを話した訳ではない、まだ伝えてない事が一つ二つ、いいや手で数えられる数以上に隠してることがある。

例えばあの『実験』のことを。さとりには教えたところで何か面倒事も無いだろうし教えてはいるが。

ガキとバカにはする必要はない。

 

途中、さとりは驚き表情に出たりしてたが無視して一方通行は話す。

 

そして

 

さとり「そう、でしたか。あの暴走事件は外の世界の人が元凶…………」

 

一方通行「……ま、俺が知ってンのはここまでだ。何か質問あるか」

 

燐「はいは~い!!さっき『今までの日常に戻れねェ』的なこと言ってたけどあの話を聞く限りそうは思えないけど?」

 

元気一杯。勇気百倍。

そんな様子で手を上げた燐。

しかし、一方通行はため息を吐いて

 

一方通行「オマエバカだろ」

 

燐「えぇ~!?」

 

さとり「良い?燐、彼が言いたいのはこう。"私達はいつでも命の危険があった生活を送っていたの、けどそれに私達は気づいてなくいつも変わらない日常を過ごしてた、でももし命の危機が寝てる時でもお風呂に入ってる時でも何処にいてもさらされてるとしたら?それはもう……笑って生活出来なくらるんじゃない?"…………と、まあこんな感じ?」

 

燐「…………」

 

こいし「…………」

 

燐はともかくこいしすら理解してなかったらしく、頭上に『?』が浮いて見える。

 

一方通行「あー…短く簡単に例えると、"オマエ達は頭上に隕石がありました、だがそれを知らずアホな顔で過ごしてたが、ある時それを知って大慌て"っつーこと」

 

もしも、と。

考えて見よう。

命の危険を感じずに生活していた人類が宇宙にカメラを打ち上げた。

するとなんと地球にあと二時間で打つかる巨大な星を発見する。

そしたら人はどうするだろう。

毎日、いつもどうりに仕事に向かい、学校に向かい、遊びに向かったり寝たりするだろうか。

いや、否である。

極僅かな人達は毎日同じ生活をするだろうが、そう簡単に命を与えられた生物は強い意識が無くては簡単に命を捨てることは出来ない。それが例え子を守ろうとする親も例外じゃなく。

だからこそ、命は尊いものだのだ。

だから命の危険を感じた生物は、その命を守ろうと必死に足掻くのだ。

だかしかし、その命を守る方法を知らず自分達じゃ解決出来ないと悟ったらそれはもう、どのような生活をするか一人一人違う考えをするがある一つの考えはこうだ。

"頑張って頑張って頑張って悔いの無い人生を送ろうとするが結局最後に「死にたくない」と呟くだろう"

 

そしてこの幻想郷はそれに限りなく近い状況に立っている。

いつ来るかわからない敵が、命を脅かし幻想郷を破壊しようと計画(プラン)をたてている。

 

燐、こいし「「ん~………?理解した」」

 

 

一方通行はあんまり喋らないが、今日は結構話したから喉が渇いた。

そして目の前あるカップに注がれたコーヒーを手に取り飲む。

 

さとり「一方通行さん。これからの行動を聞いても?私はその手伝いをするので聞きたいです」

 

一方通行「あァ?学園都市に乗り込み木原を殺す、霊夢を"無傷"で助ける。これだけだ」

 

ニヤニヤ。

猫耳娘は何か面白い物でも見つけたみたいに笑い

 

燐「無傷ですか……もしかしてあの巫女は想い人か何かで?」

 

一方通行「俺にそンな感情あると思うか?」

 

さとり「止めなさい燐。からかう対象を間違えると死にますよ」

 

燐「あはは~………ハイハイ」

 

さとり「ごめんなさい、この子に決して悪気はないんです」

 

一方通行「別になンとも思っちゃいねェよ」

 

こいし「ね~!ね~!質問タイムはまだ続いてる?」

 

一方通行「ン?」

 

まさかの意外な子が次に手を上げた。

 

一方通行「なンかあンのか」

 

こいし「うん!質問っというよりかお願いなんだけど私もお手伝いして良い?」

 

さとり「っ!!どうして!?こいしは別に_______」

 

こいし「お姉ちゃん。私、あの時…………考えてたんだ。皆が暴走するなか一人で、ずっと…何で私は守られてばかりなんだろう、何で私は隠れる事しか出来ないんだろう……って。けどね、私。強くなったんだ!!命蓮寺の人達と一緒に!!」

 

暴走者が暴れ回ったのはこの地下の世界も同じ。

旧地獄に住まう者達は、異変が起きたと知ったのを遅れたためバラバラに行動していた。

でも地霊殿の住人は運良く一ヶ所に集まっていた。

そして突如来たのだ、知り合いの鬼や妖怪、それに人間が百八十度変わった様子で。

その時は今でもくっきりと思い出せる。

空、燐は暴走者に立ち向かい敗れさとりはこいしを逃がそうと自ら盾となり庇った。

もう……一人。大事な家族は暴走者へ。

こいしは涙を流してひたすら無意識を操る程度の能力を発動して逃げに逃げた。

それでも悲しい。

無意識を操る程度の能力を使用して他者に関知されなくなっても、いずれは暴走者に見つかり皆と同じように、、、

 

だがもう。あの時のこいしではない。

能力も分からないが『程度』という言葉は消え、可能な事も増え力も増した。

だから今は意思さえあれば、誰にだって…………

 

こいし「だから、お願い!!私にも手伝わせて、逃げて任せるだけじゃもう嫌なの!!」

 

さとり「はぁ…………。気持ちは十分伝わったわ。けど、その理由が七割興味が三割でしょ?」

 

こいし「ハハハっ。やっぱりお姉ちゃんには敵わないね」

 

一方通行「オイオイちょっと待て。誰がイイって言った?」

 

さとり「お願いです。この子も一緒に___________」

 

一方通行「違ェ違ェそォじゃねェよ。俺がいつオーケーって言った?」

 

さとり「え?」

 

ガタン!

乱暴に立ち上がり、座っていた椅子が後ろに倒れる。

 

一方通行「だァから"俺がいつオマエに"オーケーって言ったって聞いてンだよ」

 

さとり「私もですか…………いやだとしたら良いんです?ここから出る方法は_______」

 

次の瞬間、さとり、こいし、燐は驚愕の表情を浮かべた。

 

一方通行は自分の隣にとある場所に繋げた空間を創る。

 

さとり「それはスキマ妖怪のッ!?」

 

一方通行「説明したよなァ。俺の能力はベクトル操作だけじゃない、模倣能力も持っていると。そンな俺が能力のコピーをしてないとでも?まァ安心しろよ、オマエらはもォ俺の役にたった。心を読む能力、無意識を操る能力、死体を持ち去る能力、核融合を操る能力…………全て本物と違い『程度』は付くがもうとっくにコピー済みだ」

 

さとり「最初からそれが狙いで出れない演技を…………ッ!!まさか一時間とは!?」

 

一方通行「あァ模倣するまでの時間だ。非科学の力はコピーすンのに時間がかかってなァ、そりゃ俺が幻想郷に染まりきってないって証拠なンだけどな」

 

今日、初めて理解した。

目の前に居る裂いたように笑う白い化け物は規格外の力を持っていると。

話では強い強いと言われているが、やはり目で見た方がハッキリと分かる。

この神より上の次元に立つ一方通行は、自分達がいくら手を伸ばそうと届かない存在なんだと。

 

一方通行「ま、っつゥ事だあばよ。精々巻き込まれねェように地下に居てろ、その方がオマエらにお似合いだ」

 

恩を仇で返すような口調で言い自分の創り上げた真っ黒いデザインのスキマを通ろうとした時、

 

ガシッ!というか、バシッ!と腕が掴まれた。

そしてそして

 

こいし「凄い凄い!!お兄ちゃんすんごい力持ってんだね!!」

 

一方通行「…………………あ?」

 

もうキラッキラッした目で見上げて腕を掴む少女に一方通行は首を傾げることしか出来なかった。

 

一方通行「は?」

 

訳が分からん。

その様な表情だった。

 

さとり「ええ、確かに。一時間と言いましたが正確に言うとまだ三十分も経っていない……なのに短時間で何一つ間違えもなくコピーするとは…………」

 

燐「それにそれに、他の人達の能力も一杯コピーしてるな~…………いやー凄い。流石救世主と言ったとこなのかな?」

 

最後の捨て台詞は無視かよ、と。

まさか貶されたのにこの反応。

ホントにこの連中は大丈夫かと心配しちゃうぐらいだ。

 

一方通行「…………」

 

こいし「ねー!やっぱり私はお兄ちゃんに付いて行きたい!!だって楽しそうだもん!」

 

燐「おや~…あれはもう無理ですねー」

 

さとり「そうね、何を言っても付いて行くわ」

 

一方通行の手をブンブン降って、まるでスーパーやコンビニに居るお菓子を強請(ねだ)る子供のようにこいしは言う。

そしてだめ押しのように

 

さとり「そうなっては私達じゃ、どうもできませんよ?」

 

一方通行「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

黙る、ただブンブン降られる腕を見て、楽しそうなこいしを見て黙る。

そして、息を吐いて

 

一方通行「…………分かった、分かった分かりましたァ、付いて来いよクソガキ」

 

あの学園都市が誇る第一位がもう投げやりである。

 

さとり「では私も。良いですよね?」

 

一方通行「もォ何でもイイ………どォでもイイ」

 

燐「ああ。もう気力ゼロって感じだー」

 

笑う猫耳娘を横目に舌打ちをした。

 

こうして一方通行は片方にこいしそしてさとりと、二人の少女と共に旧地獄から地上へ黒いスキマを使って出る。

 

燐はお仕事があるため留守番。




さて、今回はこの辺で終わりに…………
次回はもっとストーリーを進めたいなー。



それでは読んでる皆様、次回をお楽しみに。


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4話

一方的に攻撃されるのは誰だって癪だ。
だがら次はこっちの番だ。

な?そうだろ?学園都市。


多分、誤字や脱字があります。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。


黒いスキマを通り三人が着いた場所とは

 

こいし「ここどこ?」

 

一方通行「俺の家」

 

正確に状況報告すると生活感が全然無いリビング。

この家は一人で住むには大き過ぎて部屋を使おうとしても精々使うところは一つから四つぐらいで空き部屋が多い。

 

そして家に移動出来たのは良いがここで問題。

 

さとり「にしては随分と開放的な家ですね」

 

綺麗に笑ってしまうほど家が真っ二つ。

横を見れば隣人と、こんにちは。

つまり軽く崩壊してるのだ、家が。

 

一方通行「ここまでやってやがったのか……クソ」

 

空はまだ青い。

時間にしたら三時か四時かどちらかだろう。

しかし今はそんなのどうでも良い。

 

一方通行は人が集まれる屋根のある所を探してたのだ。

そして自分の家は空きが多いから、行ったのは良いけどまさか、暗部の奴らがここまで派手にやってるとはちょっと計算外。

 

こいし、さとりを家具とかボロボロだがまだ綺麗な場所がありそこに座らせた。

 

一方通行「少しここで待ってろ。俺は用がある」

 

こいし「は~い!」

 

さとり「分かりました」

 

自分の前に黒いスキマを創り、それを一方通行は面倒臭そうに通った。

待ってろ、と言われた少女二人は

 

こいし「ねぇお姉ちゃん。何で私やお燐を隠すような真似をしてあのお兄ちゃんの話を聞かせたの?」

 

さとり「…………_______________________」

 

一方通行が気を失ってる時の話だ。

空が慌てて血だらけの少年か少女かどちらの性別か知らない人を地霊殿に運んで来た。

その時、さとりは自分のペットを信用しているから空室にあるベットに寝かせ空と一緒にその人を手当をした。

さとりはほぼ毎日、本を読んでいるから知識は豊富。

そのため治療など朝飯前だ。しかし治療途中空が白い化け物の左手に爆弾を見つけ、衝撃を与えると危険とさとりが伝えちょうどこの部屋にあった特殊衝撃吸収生地で出来た作業グローブを左手にはめる。

だが思うのだ、この人は誰だろう?何でこんなにボロボロなんだろう?何で左手に爆弾なんて埋めてるんだろう?と。

 

空は上の状況を報告すると自室に帰ってしまったし今から聞くとしたら手間だ。

だからさとりは一人で考える。

そしてある話を思い出した。

『この幻想郷に突如現れた白い少年が、絶望を打ち消し希望で世界を照らした』

間違いない、この人は私達を救ったヒーローだ。

なら全身全霊で命を救わなければ。

っというのもあったが、ずっっっと違和感を感じていた。

『なぜあの異変を詳しく知ってる人は居ないんだろう?なぜあの異変を起こした犯人を誰も知らないんだろう?』

普通なら知り合い達からそういう情報は流れてくる。

しかし、あの暴走事件はそれがない。

その事にさとりはずっと疑問に感じていた。

が、だ。

その疑問の答えを、このモヤモヤを晴らせる者が目の前に居るじゃないか。

だからこの時さとりは寝ている一方通行を見て、思う。

『私達の知らない幻想郷の状況をこの人は知っている。だったら話して貰おう。なに、もし話さないなら私の能力で読み取ってみせる』

 

 

そしてさとりは幻想郷の状況をせめてこの地霊殿に住む者達には知って貰いたいと考えたのだ。

 

 

 

こいし「ねぇ…………、お姉ちゃん聞いてる?」

 

さとり「_________ん?あ、聞いてるよ」

 

こいし「???」

 

まるで故障した洗濯機のように、フリーズした姉に首をかしげるが、次にさとりは笑って答えてくれた。

 

さとり「それはね、こいし。貴方達に少しでも感じて欲しかったの……何かこの幻想郷がおかしなことを」

 

こいし「幻想郷がおかしい?」

 

さとり「ええ」

 

こいし「ふ~ん。私はそんな事感じなかったなー」

 

さとり「そう……ま、いいわ。ともかく一方通行さんの話を聞かせたかったから聞かせた。そしてこいしと燐を隠れる様に言ったのはあの人が友好的じゃなかったら…………っていう保険にね」

 

こいし「フフフっ、お姉ちゃん考えすぎだよー。そんなに頭動かしてると疲れちゃうよ?」

 

さとり「私一人疲れただけで皆を危険から遠ざけられるなら喜んで」

 

優しく、つられて笑ってしまうような笑顔でさとりは言った。

例え嫌われ者の覚妖怪でも。

大切で、宝箱にしまっておきたい程大事な存在、家族がある。

だから地霊殿の主は頭を回し世界を知ろうとし。

動くのだ。

守るとは、そういうことだから。

 

こいし「今思ったけど何でお空は居なかったの?」

 

さとり「あの子は後で燐に話の内容を伝えて貰うつもりだったの。だって多分、空はあの人の話に集中出来ないでしょうから」

 

こいし「うん?何で?」

 

さとり「大人になりなさい。そしたら分かるわよ」

 

後何年、何十、何百年したらこの可愛い妹に空と同じ感情が芽生えるのか。

今後の楽しみが増えに増える。

やはり、幻想郷で生活するのは楽しい。

こんな事考えもしなかったがもし地霊殿の皆が恋をしたらどうなるんだろう。

さとりは新しい楽しみを思い浮かべ、笑う。

しかしこいしは笑顔の姉にまた首をかしげる。

 

 

そんな会話をしていると、、、

 

こいし・さとり「「っ!?」」

 

音もなく黒いスキマが自分達が居る部屋に出来た。

そしてそのスキマの中から声がした。

 

「こっちに来い、待機場所変更だ」

 

今日聞いた声。

一方通行の声だ。

さとりとこいしは迷わず立ち上がり、黒いスキマに入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さとり、こいしが着いた場所は屋内の宴会場。

木の長いテーブルが縦に二列、そして一つ一つ綺麗に置かれたそこまで柔らかくない座布団。

ここは人里から離れた霊夢達が利用する飲み会の場。

 

一方通行「適当に座れ」

 

白い化け物は宴会場のステージと呼ぶべき場所にまるで自室のように何も敷かず、天井を見上げるように寝転がっていた。

 

さとり・こいし「………………」

 

何だこの緊張感のない雰囲気は、と。

ツッコミたいがとりあえず一方通行に言われたとうり適当に座る。

 

一方通行「…………あァ?」

 

さとり「適当に座れと言ったので」

 

こいし「良いでしょ、ここ?」

 

右にさとり、左にこいし、と一方通行を挟むように腰を下ろす。

 

一方通行「…………、まァどこでもイイか」

 

さとり「あの、質問良いですか?」

 

こいし「待ってお姉ちゃん」

 

さとり「?」

 

こいし「今日のお姉ちゃん変だよ?何で質問するの?能力を使って心を読みとれば良いじゃん」

 

なんと言ったら良いだろう。

もうプライドを貶された様な事をしたこの一方通行を説明しなくては。

面倒とかそんなんじゃない。

ただともかく自分の能力の裏をかかれた事にさとりはショックを感じていた。

だから、説明をする前に嫌みを吐き出すかのようにため息をひと吹き。

そして

 

さとり「詳しくは分からないけど、どうやらこの方は私の能力が効かないみたい……」

 

こいし「そうなんだ、だから……」

 

さとり「全く……、どうやってるんだか……」

 

チラッ。

さっきから何も言わず天井を見て寝転がる一方通行を横目に見る。

するとこいしは、笑って

 

こいし「ねぇねぇ!!どうやってるの?」

 

ど真ん中、百五十キロ豪速球。

何の捻りもない質問。

一方通行は自分に言われたと気付き「あン?」と口を開く。

まあ、今はある人物を待ってる最中だし暇潰しにでも。

一方通行は、ゆらっと上体を起こし右膝をたてる。

 

一方通行「………。別に特別な事はしてねェ、心を読む能力を持ってるヤツらの大抵の癖をとらえてるだけだ」

 

さとり・こいし「…………癖?」

 

一方通行「必ずとは言えねェが何かを隠そうとするとそれだけを考えちまうだろ。そォすると心を覗けるヤツらからすると絶好の的だ。だから工夫してどォにか嘘を吐こうとするがそれも無駄。だったらどォやって嘘を吐く。どォ隠す。答えは二つ、バレたくねェ秘密を忘れるか、ブラフを強く考え、読ませて秘密を後ろに隠す。心を読む能力を持ってるヤツはどォも表の感情を見ちまう、それは実験の確率で判明してる。バカは心を読めるヤツほどひねくれ者だと言うが真実はその逆、アホみてェに正直者」

 

さとり「つまり………癖とは表にある感情が『本当』という思い込み!?」

 

一方通行「そォいうことだ」

 

頭を動かせば分かるだろ?

と言いたげな表情で言う。

 

心を読む能力とは言えど本人が忘れた記憶は読めない。

だが、それをやると大事なことを忘れるデメリットがある。

なら一方通行がやってるのは二つ目の答え。

ブラフを読ませ、本当に思ってること隠す。

少し考えば、心を読める能力者でも気付けそうだが癖というのは直すのに時間、努力が必要。

そのため直ぐに気付くのは不可能に近い。

 

さとりは一方通行の言葉を聞いて勉強出来たと感じる。

が、しかし、それと同時にあることも感じた。

 

さとり「おや……それを私の前で言って良かったんですか?その情報は能力者本人にバレたら流石に不味いのでは……?」

 

まるで勝機を得たみたいに笑いながら言う。

 

一方通行「あン?何言ってやがる。もォ必要ねェから話したに決まってンだろ」

 

さとり「…………え、必要が……ない!?」

 

まさか、と唇が動く。

 

さとり「正気ですか!?もう私に丸裸にされたも同然なんですよ!?」

 

そう。

通常なら考えられない。

人も妖怪も神にも死者にさえ、知られたくない事がある。

それは生きてきて、心を読み続けた彼女なら誰より理解できた。

だが、ここに来て未知な事が。

 

しかし、一方通行はそんなさとりを無視して話す。

すらすら字でも書くかのように、風に流すかのように。

 

一方通行「だからどォした?それで俺が狼狽えるとでも?冗談でも笑えねェぞ、そりゃ。もォオマエにこれから嘘吐く理由もねェからイイじゃねェか」

 

さとり「え…………、そ、そ、そんな……」

 

聞いたことない言葉。

聞いたことない宣言。

これが正気な状態だとしたら、なんで、なんで、ナンデ、ナンデ、ナンデ、ナンデ。

ぐるぐると思考する。

 

 

ああ………………。

さとりは"心の奥で笑った"

 

 

説明が遅れたが、さとりは一方通行に能力が通じないと思うと能力を解除していた。

しかし、胸元にある第三の目は開いてる。

この目にも心を読む能力があるが意識しなければ発動しない。

だからもう、あの時から心を読んではいなかった。

 

が、今使用した。

そして見えました。彼が嘘を吐いていないと。

大丈夫、先の説明を意識して心を読むがやはり、偽りはない。

 

これからさとりはどうするだろう。

能力をフル発動させている?

いいや、違う。

 

答えは新しい刺激に微笑む。

 

それが彼女のとった行動だった。

 

さとり「ふふっ………、何か今、もっと貴方を理解出来た気がしました」

 

一方通行「………ハッ。オマエが俺を理解?アホ、そンなのは勘違いだ」

 

さとり「だったら___________」

 

これからの"刺激"に、

長く続く人生でこれよりの困難はないと確信して

 

さとり「"いつか理解してみせますよ"……………そう。いつか、です」////

 

ライバルが多そうだ。

空にはどう謝ろう。

だが今はとりあえず、初めて真っ直ぐで美しい心を持った方に会ったことを祝福するかのように優しく笑う。

 

___________________頬を染めて。

 

 

 

 

 

 

「なんかズルーイ!!!!!!!」

 

穏和かした空気に、子供のような声が響く。

 

こいし「私も混ぜて~~~!!!」

 

もう我慢の限界だ。

何か分からんが二人だけの雰囲気みたいになっちゃって。

 

さとりと一方通行に、こいしは両手を広げるお父さんに飛び付くかのように二人へ飛ぶ。

 

そして、この宴会場のステージが振動する。

 

さとり「……いたた…………急にどうしたの?」

 

こいし「ズルイよ!二人だけで話してて!私も~!!」

 

一方通行「…チッ。分かった、オマエも構ってやる。だがその前に俺の上からどきやがれェェ!!!」

 

半身、半身と。

二人の上に覆い被さるようにこいしがいた。

 

残念そうにこいしは「は~い」と言ってどく。

しかし、一方通行はこいしが退く瞬間、デコピンを一発額にくらわせる。

 

こいし「痛った~い!」

 

さとり「自業自得」

 

三人はまたさっきの配置に戻る。

 

さとり「…………。そういえば"オマエも"、っと言ってましたね。まさかこの私も構ってやってたつもりだったんですか!?」

 

一方通行「そォだが?あの状態をそれ以外どォ言うンだ?」

 

子供扱いして、と。

ぷくっと頬を膨らませる。

すると

 

こいし「もー。また二人で~………」

 

さとり「ハイハイ、分かったわ。じゃあどんなお話しをする?」

 

こいし「ん~とね~ッ♪_____________」

 

ユラッ、ユラッ、と。

頭を左右に可愛らしく振り、考える。

さとりは最初からこいしに付き合うつもりだったが、まさかあの一方通行も舌打ちをして付き合ってやることにした。

 

お話の話題を考えること十秒。

 

こいし「あっ!!初めて会った時から考えてたんだけどね。お兄ちゃんの目ってすっごく綺麗だよね」

 

さとり「そう……?んー、良く見れば確かに。ここまで真っ赤な瞳は見たことが無い」

 

グイッ、と。二人の少女が彼の瞳が良く見えるように顔を近付ける。

 

こいし「何で何で?生まれつき?それとも他の理由?」

 

一方通行「近ェっつの」

 

とん。

両手で優しく二人を押し自分の顔から距離を離す。

決して照れたり恥ずかしい訳ではない。

ただ本当に邪魔で邪魔で近いからと。

 

一方通行「っつゥかさっきから、そのお兄ちゃンて呼ぶの止めろ」

 

こいし「え~、良いじゃん」

 

一方通行「良くねェ」

 

こいし「、だってお兄ちゃんの名前って『一方通行(アクセラレータ)』って言うんでしょ?噛んじゃいそうだし言いずらい!」

 

いーっっ!!と。

舌の先を噛む。

 

一方通行「クソガキが…………」

 

さとり「大人なら普通、ここで折れますが?」

 

一方通行「……………クソッたれ」

 

さとり「フフっ。こいし、お兄ちゃんと呼んで良いって」

 

こいし「やった~!」

 

両手を上げて喜ぶ。

そして

 

こいし「ならさっきの質問!何でそんなに目が綺麗なの?」

 

一方通行「俺の目が綺麗ねェ。そンなの初めて言われたが、こォなったのは俺の能力のせいだ。詳しくは分かンねェが皮膚でも髪でも眼球でも体の色素ってなァ紫外線から身を守るためのモンなンだ。だが俺ァ余計な紫外線を全部"反射"してっから体が色素を必要としてねェンだ」

 

こいし「能力?反射?ん???」

 

さとり「反射とは貴方が元々持っていたベクトル操作の一種ですね」

 

一方通行「あァ…。俺の話を理解出来たオマエに命令する。そこのガキに分かるように説明しろ」

 

ピッ。

頭ん中がハテナで一杯のこいしを指差す。

 

さとり「命令とは……、まあ良いですよ」

 

まるで内緒話をするかのように、さとりはこいしの片耳に手を添え口を近付ける。

 

一分、、、、二分、、、、、三分、、、、。

チクタク、チクタク、チクタク、チクタク……

 

こいし「~~~~ッ!!何となく分かった!!」

 

さとり「………良かったわ」

 

まあまあの時間が掛かったが無事、理解出来たようだ。

 

こいし「でもでも凄いね。まさか目だけじゃなくて髪や肌もそんなに綺麗になるんだね、お兄ちゃんの能力って」

 

一方通行「……………………………」

 

学園都市、超能力者(レベル5)。序列、第一位。

そんな彼は今日初めて、見た目を褒められた気がした。

 

白い肌、白い髪、赤い瞳。

この容姿はそれなりに浮いていた。

日本人にしては異例すぎるからだ。

アルビノ、という病気があるそうだが彼の場合は違う。

まあアルビノだとしても周りから浮くのは目に見えているが。

そんな彼は良く聞く言葉がある。

それは

気持ち悪い。化け物。怪物。悪魔。死ね。死ね。死ね。死ね。

全て容姿を見たり能力を見てからの罵倒だ。

 

殺意、悪意、敵意。

ありとあらゆるドス黒い感情を向けられた少年はどうなる。`ど`う`壊`れ`る?

 

 

実感したのだ、自分の化け物性を。

そして化け物は狂気の渦の中心に立ち。狂ったように、、、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う、笑う。

 

おかしな事はないのに、理由もなく。

 

 

 

誰も努力しても近付けない圧倒的なチカラを持ち、一方的に破壊する化け物。

一生洗い流せないぐらい血で染まった化け物。

 

それが学園都市の一方通行のイメージ。

 

 

 

なのに。

 

この幻想郷に来たからは?

一方通行とゆうイメージはどうだろう。

 

自分でも感じる、好意。

 

ゲロが喉奥から出てしまう程の平和なあの日常。

 

『この俺が、あンな"幸せ"な生活………………』

 

 

一方通行「__________________」

 

こいし「どうしたの?」

 

一方通行「あァ?なンでもねェよ」

 

手が勝手に動いた。

白い化け物はこいしの頭を撫でていた。

 

しかし、こいしはその手を優しく自分の手で包んでから離す。

そして一方通行の前に座り彼の頬に両手を当てる。

 

一方通行「何してやがる」

 

こいし「ダメだよ、考えて込むのは。お姉ちゃんもお兄ちゃんも考え過ぎ!!もっと気楽に過ごさなきゃ!」

 

さとり「こいし…………」

 

この小さな少女も覚妖怪だが、他者の心を読むことは出来ない。その能力を自信で封じてるから。

だがそんな少女でも分かる事だってある。

こいしはバカじゃない。

現在の状況だって危険だって分かる。

けどこのままだと、"あの幻想郷"に戻れない気がした。

 

一方通行は真っ直ぐ自分を見る緑色の瞳をただじっと、見た。

そして

 

一方通行「あァ……そォだな。たまにはこいしみてェにアホになるのも悪くねェ」

 

こいし「も~!私はアホじゃなーい!!」

 

一方通行「俺はオマエをそォ見てる」

 

一方通行はこいしの両腕を掴み、痛みを感じない力量でどかした。

その時、彼はどの顔をしてたのか。

 

 

笑っていたのだ。

 

柔らかくでもなく、優しくでもなく、普通にでもなく。

 

鼻で笑っていた。

別にこいしを馬鹿にして笑ったのではない。

彼は皆のように、ただ素直に笑えないだけ。

 

だがその顔が

 

こいし「………………」///

 

何故か大好きだ、と。こいしは言いたくはないだろう。

 

さとり(…こんな短い時間で………ッ!!)

 

こいし「………………」///

 

シュタタタ、と。

一方通行の前から立ち上がり姉であるさとりの後ろに頬を染めて隠れるように座る。

 

一方通行「あン?」

 

さとり「………恐ろしい」

 

こいし「うぅ……」///

 

宴会場の三人はまだ待つ。

一方通行しか待機理由は知らない。

しかしさとりは心を読み待機理由を知った。

 

つまり、理由を知ってるのは合計二人だ。

 

 

 

時は進む。

 

夕陽が沈むなか………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「________」

 

さとり「_________」

 

こいし「________」

 

もう、何分、何十分、何時間経っただろう。

かれこれ話続ければネタも尽きるだけで、口を開くこともなくなる。

しかし

 

一方通行「………クソ。やっと目が覚めたかクソ(アマ)

 

今、居る宴会場の中心にスキマが出来た。

それは一方通行が創ったものではない。

 

時空の空間が開かれたようなスキマ。

そのデザインは両端にキュートなリボンが飾ってあり、複数の目がスキマを見た者を睨むように、スキマの中から見てる。

 

これは、、、強いてゆうならオリジナルのスキマ。

つまり

 

「私が寝てる間に、随分と酷い状況になったわね」

 

空間の裂け目から微笑んで、登場した。

金髪のロングで毛先をいくつか束にしてリボンで結んでいる人と変わらぬ見た目の妖怪。

 

一方通行「紫、オマエと呑気にお喋りしてる時間はねェ。だから手短に話す。俺達が知ってる実力者の能力者を集めろ、オマエの考えを教えろ、霊夢が何故、"鍵"と呼ばれてるか教えろ」

 

紫「…………ふっ。まさか貴方が私に頼るなんて、頭でも打った?」

 

一方通行「言ったろ、"緊急事態"だ。呑気に話してる暇はねェ。オマエはただ縦に首を降って俺の言うこと聞けば良いンだよ」

 

気付けばステージに居た一方通行は、八雲紫の前に立っていた。

 

紫は赤い瞳の彼の直線的な目を見て、ため息を吐いてから

 

紫「……ハイハイ。まずは落ち着いて状況報告しましょ?私もこう見えて結構混乱してるの」

 

 

まるで子供をあやすように言って、近くの座布団に座った。

すると一方通行は舌打ちをしてから、さとりとこいしにステージに居てもらい。

自分だけが話すように、紫の隣に座りテーブルに肘を付け、手で顔を支える。

 

そして話す。

木原のこと。霊夢のこと。自分の失敗を。

 

紫「んー…。私の寝てる間にねー」

 

一方通行「木原の野郎はオマエのことを警戒してた、だからオマエが寝てる間に幻想郷を襲ったンじゃねェか?」

 

紫「多分ね。しかし霊夢を攫られたのは世界崩壊の危機ってレベルじゃないわよ」

 

一方通行「あァ、そこだ。何で霊夢を攫った??飾りにでも"鍵"と呼ばれてンだ、そこそこの理由はあンだろうな?」

 

紫「あの子と言うか、霊夢のチカラを鍵と呼んでるのよ。この幻想郷にはね二種の結界が張られてる、その一つが極僅かな者を除くけど幻想郷に出入り出来ないようにする役割を持っている」

 

一方通行「オイちょっと待て。出入りできねェ?だったらどォなンだ?極僅かとか抜かしてたが木原の野郎や暗部のクソ共、アレイスターもその極僅かなのかよ。そしたら随分と多いなァ極僅かがよォ」

 

紫「それが今、私の悩み…………って話がずれたわね。霊夢が鍵と呼ばれてる理由を説明しても?」

 

一方通行「悪ィ、続けろ」

 

紫「………結界は説明したけどね。貴方が多いと言った極僅かは私や霊夢のことなの。私は能力で移動できるけどあの子は違う。博麗大結界を管理する博麗の巫女。つまり博麗大結界を自由に操れるのよ、だから人を幻想郷に入れることも出来るし外の世界に出すことも出来る」

 

一方通行「なるほどなァ、博麗大結界を玄関と例えれば霊夢は管理者権限でその玄関を開ける鍵ってことになンのか」

 

だが、と続けて唇を動かす。

 

一方通行「何故霊夢を攫う?アイツらそンなチカラに頼らなくても幻想郷に出入りできンだろ?」

 

紫「えぇ……けどね、さっきちょっと口にした悩みってね。私も霊夢も誰も貴方以外の学園都市の人を幻想郷に受け入れてないのよ」

 

一方通行「……っつゥ事は_________」

 

紫「アイツらは私と霊夢が知らない場所から幻想郷に入って来た。最初、アレイスターが来たときからずっと…………」

 

一方通行は幻想郷のこと少しは理解出来てるつもりだった。

しかし、現状はどうだ。

世界史を読んだだけで、全世界を隅々知っていると語るバカに瓜二つじゃないか。

 

一方通行「……クソったれが…………っ!!」

 

ドン!!

強く、怒りを込めた拳を目の前のテーブルに振り下ろす。

このまま暴れたら少しはイライラを抑えられるだろうか。っと思ったが。

脳内に稲妻が走ったように、一方通行は感じる。

 

アレイスター、木原、暗部の奴等。

 

紫や霊夢のみならず、全ての幻想郷の住民に気付かれずこの世界に出入り出来る。

 

なら、何故霊夢を攫う?

なら、霊夢を必要とする?

なら、何故バレずに幻想郷に入れるなら、核兵器でも撃ち込まない?

 

謎がやはり解けない。

ただ感じた。喉に魚の骨が刺さったみたいなあの違和感を。

 

一方通行「……だが、霊夢のチカラを聞いてもやっぱりパズルが埋まらねェ。なにか引っ掛かりやがる」

 

紫「うん、そこよ一方通行、私も霊夢を攫られて思ったのは。霊夢が攫られて世界の危機って表現したけどね、それは学園都市に全力で兵器をほぼ無限に送り込まれたらって話。でもそれが一向に無い、アレイスターならそんな事直ぐ実行できるのに…………」

 

まだ、話続ければ多分。答えに近付けるかもしれない。

でも今はそれよりも人を集めなくては。

 

だから

 

一方通行「……チッ。とりあえずお喋りはここまでた。オマエは俺がさっき言った事を実行しろ、三十分以内にだ」

 

紫「了解よ。しかし、何で私を頼るの?さっきまで私を待ってるように見えたし……」

 

タッ、タッ、タッ。

用件が済んで一方通行はもう紫に背を向けて、さとりとこいしの方へ歩いていた。

そんな彼が振り向かず言う。

 

一方通行「今回はオマエが必要と思った。それだけだ」

 

紫「…………………」

 

まさかの言葉に、あの紫でも動揺は隠せなかった。

 

紫「ふ~ん、そう。もしかして一方通行、貴方からの私の評価って高い?」

 

微笑んだ様子で、彼に話す。

 

一方通行「早く仕事しろ。殺すぞ?」

 

紫「もう……分かったわ」

 

ドスの聞いた一方通行の声を聞いて紫はスキマを出現させて、その中に消えた。

 

 

 

スキマ妖怪が消え、宴会場に居るのは元居た三人は

 

さとり「やっと………作戦会議が始まりますね。まあ、三十分後ですが」

 

こいし「なになに?もしかしてお姉ちゃん、これからのこと知ってるの?」

 

さとり「勿論……一方通行さんの心を読んだからね」

 

こいし「えぇー……じゃああの時間私だけだ。退屈だと思ってたの」

 

一方通行「安心しろ、全員退屈してた」

 

見下ろすように、一方通行はさとりとこいしの前に立つ。

が、こいしは一方通行の顔を見るなり姉の影に隠れる。

 

さとり「もう……。まさかこの子がこう反応するとは……………」

 

一方通行「あン?」

 

自分の顔を見て、さとりの影に隠れたと分かったが姉の反応は落ち着いてる。

けして、怖いとかそうゆう感情じゃないだろう。

しかし一方通行には理解出来ない。

 

でも、今は

 

一方通行「オマエら……もう普通にあっちに座れ」

 

手を顔付近に上げ親指を立てる。

すると後方へ指を差す形となった。

 

さとり「分かりました」

 

こいし「うん………」

 

一方通行「俺は家に一度帰り、シャワー浴びてから着替えてくる」

 

さとり「あの半壊した家に?」

 

一方通行「あン時見たが着替えがある場所と風呂場は奇跡的に無傷だったからな、それに気分転換がしてェ」

 

さとり「そうですか、いってらっしゃいませ」

 

こいし「…………いってらっしゃい」

 

姉は堂々としてるが、肝心の妹は小声で小さく。

 

そして一方通行はスキマを創り、自分の家に一時的に帰る。

 

さとり、こいしは彼の言ったとうり座布団が敷かれてる場所に座った。

右のテーブルの右の列に。

 

 

 

 

 

 

一方通行は半壊した家に帰るとシャワーを浴び、上下と丸きっり同じ柄の服に着替える。

これは同じ服を複数枚持ってるからだ。

彼曰く「楽でイイ」だそう。

 

そしてまた、あの宴会場に戻るため黒いスキマを創り、それを通る。

その時の一方通行は気のせいか、通常時より目が鋭くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワイワイ。ガヤガヤ…………。

 

 

黒いスキマを通った先から数々の声音が聞こえる。

相当、能力者を集めてくれたのだろう。

 

そしてさっぱりとした一方通行は宴会場へ帰って来た。

 

が、

 

一方通行「…………多くねェか?」

 

ある光景を見てたまらず思った事を声に出してしまった。

 

ステージの場所にスキマを繋げていた。

 

だから一体を見渡せるのだが………………

 

集まったメンバーが、

 

 

古明地さとり、こいし。八雲紫は居るのは分かる。

しかし、その他は

 

霧雨魔理沙。アリス・マーガトロイド。

 

レミリア・スカーレット。フランドール・スカーレット。

 

十六夜咲夜。パチュリー・ノーレッジ。

 

魂魄妖夢。西行寺幽々子。

 

川城にとり。伊吹萃香。風見幽香。

 

八坂神奈子。洩矢諏訪子。東風谷早苗。

 

鈴仙・優曇華院・イナバ。因幡てゐ。

 

チルノ。ルーミア。

 

八雲藍。橙。

 

これで合計一方通行達を含めると24人。

だがあと一人、呼ばれてないのに噂を聞き付け来た人物、それが射命丸文。

彼女は新聞を作り、スクープを求める。だから来たのだろう。

 

しかし多すぎる。

提案者の一方通行はせめて5~9人ぐらいしか来ないと思っていた。

いくら危機といえどそれを理由にそう簡単に集まれるとは普通思えないだろう。

 

 

一方通行はただ黙ってステージに立っている。

すると、やっぱり目立つわけで

 

フラン「アクセラレータ♪!!」

 

大人しく座ってた歪さと輝かしさを併せ持つ異様な翼を持つ、吸血鬼の少女に見付かり、全力抱きつきをかましてきた。

 

それを一方通行は避けることも、カウンター攻撃もしないで

 

一方通行「………ぐっ…………!!」

 

まともにまた喰らい、フランが上に乗る形で後ろに倒れた。

あの時の宴会みたいだ。

 

フラン「アハハハハハハハ!!!」

 

一方通行「……ッー。オマエはタックルをしなきゃまともに挨拶できねェのか!?」

 

フランの頭にチョップを一撃。

すると

 

チルノ「今日こそ最強を頂くぞ!!」

 

宙に浮いて先端が尖った三メートル程度の氷を飛ばしてきた妖精。

 

一方通行「チッ。何も考えず攻撃しやがってッ!!」

 

シンプルな行動。

フランを抱き、立ち上がる。

そしてチルノが飛ばした氷を、高熱の炎を摸倣して空中で蒸発させた。

 

フラン「あっ…………」///

 

一方通行「クソガキが…………」

 

無事、攻撃は回避出来たが。

フランは自分が一方通行に抱かれてると思うと照れ始めた。

しかし、それには一方通行は気付いてはいなく。そして複数の少女は鈍感な彼を睨む。殺意剥き出しで。

 

チルノ「……んー。勝ったと思ったのに」

 

一方通行「急になにしやがンだチルノォォォォッ!!」

 

フランを降ろし、キレた調子でアホな妖精を地面に掴み落としチョップを一発。

 

チルノ「痛ったぁぁぁぁぁぁいっ!!!」

 

一方通行「それで済ンだだけ有り難く思え!!」

 

てゐ「アハハッ!!早速忙しそうだね?」

 

一方通行「……あァ。大忙しだ」

 

左側のテーブルの左側の中間の座布団に鈴仙の隣に、ニヤニヤ此方を見て笑うてゐを見る。

 

そして。だからよォ、と

 

一方通行「このガキを大人しくするのを手伝え」

 

イタズラ好きでウサ耳の少女の反対側にチルノを無理やり座らせる。

 

一方通行「ンじゃ、よろしくゥ」

 

てゐ「え…………ちょ」

 

チルノ「ッ~~~~!!!」

 

鈴仙「ついでに私にも押し付けたわねあのクソモヤシ…………」

 

 

一方通行「…………あン?」

 

バカ一人を黙らせた。

少しは静かになるだろう。

スタスタと歩きステージ側に歩く。

すると、ちょんちょん。と服が後ろから引っ張られる。

 

振り返ると

 

橙「わぁ~!!やっぱり近くて見ると更に白い!!」

 

一方通行「なンだこのガキ?」

 

藍「コラコラ。すいません一方通行さん」

 

茶髪の猫耳少女が目をキラキラしていた。

しかし、誰か知らない一方通行は首を傾げる。すると金色の狐の尾が九つ扇状に伸びている藍が橙の背後に登場。

 

慌てた様子で頭を下げる藍に

 

一方通行「あァ?頭上げろ。キレちゃいねェよ」

 

藍「そ、そうですか…………」

 

一方通行「それより、ソイツは?」

 

藍「この子ですか?この子は橙、私の式神です」

 

ポン、と。

橙の頭の上に手を置き、一方通行の質問に答える。

 

一方通行「……オマエも式神だったよな。つまりあれか、そのガキは式神の式神か?」

 

藍「まあ、そんな所ですね」

 

一方通行「そォかい。まァそれは良いンだが…………………なンだよ」

 

さっきからずっと橙は一方通行の顔を見てる。

いくら白い化け物といえど気になるには気になる。

 

橙「いえ、宴会の時から一方通行様は真っ白だな~って思ってて。そして近くで見たらもっと白いな~って、それに細_________」

 

藍「コラッ!!では私達は紫様の側に……」

 

バシン!!!と藍は橙の口を両手で塞ぎ、そのまま連行するかのように紫のもとへ行った。

 

 

一方通行「?…………、」

 

にとり「ねぇ盟友!!」

 

サッ!と藍と橙が消え、取り残された一方通行の近くに座るにとりが声を掛けてきた。

 

一方通行「どォした?」

 

にとり「私達、盟友が集合をかけたからって集まったんだけど……何で?」

 

にとりを含む、理由を詳しく聞かされてない少女達は一方通行の顔を見ていた。

 

どうやら、紫は多くを語らず集めてきたらしい。

 

一方通行「そォだな。訳を話さなきゃ分かンねェよな」

 

 

歩く、歩く。

 

少女達に見られながら。

 

そしてステージに、少女達を向き合うように腰を下ろす。

 

 

 

一方通行「_____だが、"あと一人"ここに来てからな」

 

魔理沙「オイオイ。後、誰が来るんだ?」

 

レミリア「後一人と言ったら霊夢かしら?」

 

紫「いいえ、霊夢はここに絶対来れないわ。一方通行、後誰だと言うの?」

 

魔理沙、レミリアが口を開き質問するが、あの紫ですら質問した。

つまり、それは集めに走った人物すら知らないとなる。

そのことに一同は、静かになった。

 

そしてある子達は除くが。皆、彼の話に集中する。

そしたら一方通行は急に自分の隣の空間にゲートを摸倣する。

 

アリス「……っ!!それは!?」

 

幽香「あの時の…………ね」

 

一方通行「あァ、あの時。里の上空に出現した魔界に繋がるゲートだ」

 

魔理沙「お前……それどうやって??」

 

白い化け物はニヤリ、と。

口角を引き上げて笑う。

そして一方通行は本物に限りなく近い魔界に繋がるゲートに手を突っ込んだ。

 

まるで細い隙間にコインを落とした人みたいに、手探り探りしてる一方通行をただ、黙って一同は見る。

 

そしたら

 

一方通行「_______________見つけた」

 

一同『見つけた???』

 

意味が分からん事を呟く彼に、少女一同は同じ言葉を言う。

 

そして一方通行は、『何か』を掴み。それを引っ張る。

 

すると、すると、

 

「あら?何かご用かしら?」

 

なんと一方通行が魔界のゲートから引っ張り出したのは魔界を創造し。悪魔を創り。

アリス・マーガトロイドの母に当たる存在。

 

ある時は白。ある時は黒の六枚の翼を持つ唯一神。

 

神綺だった。

 

一方通行はガッチリと、神綺の腕を掴み引っ張り出す。

 

 

頭、腕しかゲートから出ていないが。

忘れもしない、その顔。

 

しかし、神綺といえばあの肩口がゆったりとした赤いローブのような服を纏っている。

でも何故だ。

手、腕、と同じ素肌が見える。

 

一方通行「よォ、神綺。オマエの魔界も事件が起きてるか教えろ」

 

神綺「『魔界も事件』?と、ゆうことは貴方達の世界はなにか事件が起きたのね」

 

一方通行「あァ、とびきり面倒のな。つか、早く出ろ。このままの格好で喋るのオマエは嫌だろ」

 

神綺「えぇ、だけど少し待ってくれるかしら。小さな用があるの」

 

一方通行「小せェ用なら後だ。今は…………チッ」

 

ぐぐぐぐぐぐぐぐぐ。

一方通行は外に引っ張ろうとし神綺は何故かゲートの中に帰ろうとしてる。

 

神綺「お願い、本の数分で終わるから」

 

一方通行「こっちは急いでンだ、却下に決まってンだろ」

 

神綺「ッ……!?お願い!!本当にお願い!!あと一分でも良いから!!!今の私を外に引っ張らないで!!!」

 

急に自分の腕の引っ張る強さが上がると、顔を青ざめて慌てる。

 

一方通行「あァ?訳分からねェ。とにかく急いでるって言ってンだろォが」

 

まるで、大の大人が全力フルパワーで綱引きをしてるように見える。

しかし、それも後、数秒で終わる。

 

 

 

引っ張り出したのは上半身だけ。

 

だが。

見えたのは

 

美しく可憐な細い腕。

 

モデルのような豊満な胸。

 

磨かれた括れた腰。

 

これら全て。一枚も布を纏わぬ、裸の姿だった。

 

一方通行「_______________あン?」

 

 

神綺「っ!!??きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!???」////

 

 

 

そしてとある宴会場で女性の絶叫と、一発のビンタの炸裂音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「………………。全員集まったしィ、始めンぞォ」

 

顔に見事までの紅葉があるが、とりあえず一方通行はステージに座り話を進める。

 

神綺「………お、お風呂入ろうとしてる時に呼ぶなんて………んっ…ぐすっ…………」

 

アリス「……神綺様…………、涙を拭いて…」

 

魔理沙「えっと……その。まあ、元気出せよ!」

 

神綺「……ひっ、うっ、うん。ありがとアリスちゃん魔理沙」

 

ちゃんといつもの服に着替え、右テーブルの左側、前付近に神綺はアリスと魔理沙の間に慰められながら座っていた。

 

それを見た少女達は

 

咲夜「最低」

 

パチュリー「最低」

 

妖夢「最低ですね」

 

幽々子「最低ね♪」

 

早苗「ドン引きです」

 

こいし「……酷い」

 

文「……とんだスクープをゲットです」

 

 

一方通行「…………………」

 

 

 

と、心の声が漏れていた。

しかし、そっちの方がマシだ。

 

他の少女達は思いを言葉にせず、ただじっと目で訴える。

こっちの方が罵られるより数十倍つらいだろう。

視線が痛いとは。まさにこのこと。

 

 

だが、そんな視線クソ食らえってことで。

 

 

一方通行「チッ……、とりあえず会議開始だクソッたれ」

 

無理やり、と。

吐き捨てるかのように言い、会議が始まる。

 

 

霊夢を救い、どう学園都市を欺くかの。





この物語を書いてる私はバカです☆
だから『ん?』って思う場面があるかも知れません。
そこをどうにか承知の上で読んで頂けると幸いです。
(まあ、最初からバカ丸出しだから皆さん分かってるか☆)







次回予告。

第三章、五話。

闘う舞台は…………学園都市へ。


お楽しみに


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5話

幻想郷ではない

ここは学園都市だ

さあ楽しい楽しい夜の時間だ、だから踊ろうじゃないか血や人肉を浴びて




多分、誤字や脱字があると思います。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。


魔界は無事なにも事件は起きていなかった。

それを神綺が伝えてから

 

たったの数十分間の説明。

しかし、それだけでバカやガキを除く少女達は今、幻想郷の状況と一方通行の全能力を理解出来た。

 

皆、あの暴走事件は覚えている。

だがそれを詳しく知っているとは語れない。

 

でも、今は詳しく語れる。

一方通行が八雲紫が隅々、丁寧に全てを話してくれたから。

 

 

そして、いつもはうるさく騒がれる屋内の宴会場は静かな空気が走る。

が、一人の少女が口を開く。

 

魔理沙「おい、それを…………何で、黙ってた」

 

ステージには今、一方通行と八雲紫が距離をとって座っている。

魔理沙はその二人に視線を向けて質問した。

 

紫「なにを黙ってたって?」

 

魔理沙「だから…………、何で!!あの異変からもう一ヶ月以上経っていたのに敵のことを詳しく私達に言わなかった!!」

 

ただ純粋の怒りが底の底から涌き出る。

一方通行と八雲紫。

この二人しか、あの暴走事件の状況を知っていなかった。

なら、自分達は。

なんで教えられなかった。

なんで暴走者を無力化するだけで、その後は。ポイっとまるでゴミを捨てるみたいに蚊帳の外にされた?

 

魔理沙は声を上げて、自分の質問を質問で返した紫に怒鳴る。

 

すると

 

一方通行「__________邪魔だった。それ以外理由はねェよ」

 

白い化け物は、火に油を注ぐような言葉を口した。

勿論、皆にそれは聞こえる。

 

魔理沙「っ!!それは………どういう意味だ。まさか私達じゃ力になれないってことか!?」

 

一方通行「そォだ」

 

魔理沙「……、こんのっ!!!!」

 

アリス「落ち着きなさい魔理沙!!今はこんな事を言い合ってる場合じゃ_______」

 

バシ。

立ち上がり、一方通行の横っ面を殴ろうとした魔理沙の拳をアリスは抑え、座らせた。

だが、

 

魔理沙「分かってる!!今は下らない事をしてる暇は無いって…………ッ!。………だけど…………………」

 

爪が手に食い込む力量で、拳を握りしめ下を向く。

 

神奈子「少し、良いかい?」

 

守矢神社の一人の神。八坂神奈子が

 

神奈子「魔理沙の気持ちは分かるし、私もアンタらに怒りを感じる。だけどね、『オマエらは無力だ』って知らしめるためにこの場に集めて話した訳じゃないんだろ?」

 

一方通行「その通りだ。別に俺ァオマエらをキレさせるために集めた訳じゃねェ_________」

 

紫「時は来た____________ってこと」

 

一方通行が話してる途中に、紫は口を挟む。

それからは

 

紫「私は良かったのよ?貴方達を弱者と罵倒して何ヵ月前に落ち込ませても、けどそれでどうするの。なにも手を打てずただずっとやられるがままって知って…………貴方達はそれで満足出来た?」

 

静かな空間。

沈黙と、思考。

その二つしかこの場に存在しなかった。

 

紫「だけど今回は違う。今日はアイツらの計画を崩して時間を稼げるかもしれない。だから話したの……、今回ばかりは貴方達という数が必要だからね」

 

パチュリー「時間を稼ぐねぇ~………今回で全てに終止符を打つことはできないの?」

 

寝間着のような服を纏う、紅魔館の図書館に住む魔法使いは話す。

そしたら

 

一方通行「アハぎゃははははははハハハハはははははははははははははははははははははははははははははははっっ!!!!!!」

 

狂ったように、まるで何も無い所で転んだ人をバカにするような表情を浮かべて白い化け物は笑った。

 

一方通行「……イイねェ、そりゃ一番イイ。なら全員力ァ合わせて学園都市をブッ潰しに行こうじゃねェかッ!!無関係な人間を巻き込ンでなァ!!!」

 

そう。敵は学園都市というが本当はアレイスター、一人。

他に学園都市に住んでるのは無関係な人間ばかりだ。

だが、幻想郷の能力者を集めて一斉に無差別攻撃を仕掛ければ都市の八割程度塵に変えられる。

そうしたら、いくらアレスターといえど少しの時間は壊れた所を復旧に全力にチカラをいれるだろうから、ちょっとの平和を望める。

 

____________背負い切れない罪を犯して。

 

詰まり、その作戦を実行しても真の平和は手に入らない。

 

でも、一方通行はこの作戦で良かった。

道連れや、痛み分けなどとは違うがそれでも。

幻想郷やアイツらの辛さが、少しでも分からせてやれるならと。

 

しかしそれは"自分ひとり"なら、だ。

 

一方通行「俺は良いンだぜ?あンなクソな所に居る奴らを殺しまくってもォ。一万以上、人を殺してきてるしなァ!!」

 

 

だが今回は皆で実行する作戦だ。

 

 

パチュリー「…………………………」

 

黙った。思考すら止まった。

それは決してパチュリーだけでは無い。

他の全員全てだ。

そして衝撃が一方通行の『罪』を知らなかった少女達を襲う。

 

幻想郷を、私達を助けてくれた人は、化け物だった。狂った人殺しだった。

そう、思った子も居たしに恐怖を白い化け物に感じた子も居た。

 

一方通行「はァ~…………、ヤメだ」

 

ジェットコースターの急降下と、表現できる程一方通行の上がりきったテンションは冷めた。

 

一方通行「さっきの提案はかなり良い。だがそれは一人でも迷っちまったらそこから染みができて、内側から必ず崩壊する」

 

少女達の顔を見て、そう言った。

たしかにあの提案を良いとゆう意見を持った子も居るのは分かる。

しかし、それだけの理由で実行に移せない。

 

それを一方通行は誰よりも知っていた。

『狂った事は、狂って壊れたヤツしか出来ない』

これは短いが彼の歩んだ人生で分かったこと。

 

 

一方通行「っつゥことでパチュリー。オマエの提案はボツだ」

 

パチュリー「……だったら貴方の提案は?」

 

一方通行「あァ?霊夢を速やかに救いだし、ちょいとクソ野郎を地獄に導く」

 

最初から考えてたことを、下らなそうに伝える。

 

紫「私もそれで良いと思うわ。けどもう少し普通に言いなさい。えー……と、一方通行が提案した作戦は霊夢を救う。霊夢を攫った人にちょっと痛い目にあって貰う_________」

 

全く……。と言いたげな表情で紫が話す。

そして

 

紫「_____って事何だけど他の提案ある?」

 

決を採った。

すると、誰も挙手もしない。

これは全員一致と言っても過言ではなかった。

 

 

紫「フフっ。無いのね……だったら話を続けましょう」

 

ハイ一段落。

 

そして。カチ、カチ、と。

時が刻むように話し合いは続いた。

 

霊夢を救うと言っても、そこは紫や一方通行を除く者達は未知の世界。

暗闇の迷路の中を壁に手を当てて進むような、危険な真似をしながらじゃ霊夢は救えない。

 

一方。

チルノ、ルーミアは端で遊び始めた。

萃香は酔っ払っていて寝てしまい、つられて橙も寝る。

 

でも、他の皆は思考や意見を飛ばし会う。

そんな中、悪魔に似た翼を持つ吸血鬼の少女が

 

レミリア「______ねぇ。こうゆうのはどう?五人程度のチーム二つを組んで別々に行動するってのは」

 

紫「それは……つまり?」

 

レミリア「仮に一つのチームが作戦を失敗しても、もう一つのチームがサポートする。だけど十人で動いては目立つじゃない?だから、片方のサブウエポンと言うべきチームは情報収集に集中するとか」

 

紫「それでメインが失敗したら、サブがサポートね」

 

レミリア「自分で言うのもどうかと思うけど良い作戦じゃない?でも、ここの人数じゃ作戦で残って貰う子は居るわね」

 

_________出番の無い子はごめんなさい。とレミリアは続けて言う。

 

 

紫は考えた後、他の者達に視線を向けた。

そしたらどうだろう。

首を縦に降ったりして、納得したように見える。

 

が、

 

 

「__________却下」

 

黙って唇を動かして無かった白い化け物が

 

一方通行「言っとくが却下、っつゥのは今までの作戦全部だ」

 

レミリア「それは………冗談かしら?」

 

一方通行「冗談?そォだなァ…………」

 

ギシリ、と。裂いたように笑ってレミリアに言い放った。

 

一方通行「新ネタだ」

 

そして、ため息を吐く。

 

一方通行「………、なンかよォ…………俺が思ってもねェ展開に進ンじまったから黙ってたけどよォ。霊夢を救うのも木原を殺すのも俺一人でやるっつの。オマエらは幻想郷の警備をしてれば良いンだよ」

 

幽香「それこそ冗談?って聞きたいわね」

 

微笑んだ調子で幽香は話す。

 

幽香「一方通行。貴方は霊夢を攫った人に負けたんでしょ、敗北したの。その貴方が一人でやるって?出来るって?随分とアホに成り下がったわね最強さんは」

 

一方通行「なンとでも言え。だがここに居る奴等が現在の幻想郷の最高戦力と知って俺は言ってンだ、だからこそレミリアの作戦は却下だ。ここの半分も学園都市に行って必死してみろ、アレスターはその隙を狙って幻想郷を襲うかも知れねェぞ?そォなったらどォするってンだ。霊夢を救って帰って来たら幻想郷が跡形も無く崩壊してましたァってかァ?笑い話にもならねェだろクソったれ。だったら一番学園都市に詳しくて一番守るンじゃなく破壊に特化した俺が一人で行った方が現実的な作戦じゃねェか?」

 

 

今日何度目かの沈黙。

それは思考する時間を意味する。

 

鈴仙「……………たしかに一方通行なら一人で出来そうだし、もしかしたら私達は足手まといになるかも知れない」

 

____________けど、と。鈴仙は続けて言いた。

でも、口が動かない。

これは別に特別な能力を使ってるとかそんな下らないイカサマをされてる訳じゃない。

 

それは皆そうだ。

言いたい、彼を止めたい。

 

しかしそれが出来ない。

もし自分が行った場合、足を引っ張る様子などを想像してしまったから。

 

だったら

_________私達が信じるヒーローを一人で、と。

 

 

だが、ある一人のスキマ妖怪は一方通行の作戦を許さない。

 

紫「却下。それは絶対に却下よ」

 

一方通行「なンでだ。俺が失敗するとでも?」

 

紫「失敗以前の問題でしょ。貴方は________」

 

唇がそれ以上動かなかった。

 

誰にも聞かれたくない、知られたくない話。

それは一方通行が『願い』という呪いにかかってること。

決して呪われてる事を知られたくない訳では無い。

呪いをかけた人物が知られたくないのだ。

 

霊夢。

あの子を紫は人一倍理解してる。

だからこそ、呪い。『願い』を知られたくない、拷問されても口を割らない人にさえ。

 

人に知られるということは情報が移動すると考えても良い。

もし、仮に脳を直接食べて情報を引き出す能力者が居て秘密の情報をたまたま知られたらどうする。

そして仮にその能力者が口が柔らかかったらどうする。

 

考えれば考えれば考えれる程、答えが、違う未来が広がる。

 

紫は恐れている。もし、どこにでも居る能力者に『願い』という呪いをかけた霊夢の事が知られてしまったらと。

 

なのに、そう思ってる自分が。今、こんなに人がいるなか何を話そうとしていた?

 

紫「__________________」

 

大人しく、口を閉じた紫を疑問の表情を浮かべて見る子達もいたがそんなことより。一方通行は注目を集まるようにステージの真ん中に立ち、話を続ける。

 

一方通行「今回もオマエ達のチカラは必要ねェ。だが勘違いすンなよ、霊夢救出に必要としてねェだけでこの幻想郷を守るには必要だ。だから俺が霊夢を助け出すまで、オマエらに幻想郷の守備を頼みてェ。もしそォしてくれンなら俺は思いっきりあっちで暴れられる」

 

諏訪子「大変良い作戦だと思うけど、一方通行。貴方がしくじったら全て終わりよ?」

 

一本の優秀な矢を放ち。それに全てを賭けて全力で防御する。

そのような作戦だと、諏訪子は思った。

だから心配。不安を感じ質問すると

 

一方通行「あァ………そォだな」

 

素直な答え。

それがまさか、あの一方通行の口から出ると考えてはなくて戸惑った子も居た。

が、それだけではなかった

 

一方通行「だから…、俺はここで誓ってやるよオマエらに。霊夢を無傷で救いだしてやる、あの平和な日常を奪ったヤツらに地獄を見せてきてやる。これを俺は絶対に守る」

 

フラン「ねえ、良いの?それをしたらアクセラレータは二度と自分の世界に帰れないんだよ…………」

 

吸血鬼の妹の少女の不安。

 

もう、後戻り出来ない作戦。

今日この日この時より一方通行は学園都市に反旗を翻す者として、存在し続けることになる。

だが

 

一方通行「なに言ってンだ。俺の家は幻想郷にある、俺の守りてェモンは幻想郷にある。だが、元居た世界にゃなンにもねェ、あンのはクソったれでクソったれなクソの思い出だけだ。そンな所に躊躇する理由はどこにもねェ」

 

意図も簡単に白い化け物は世界に、神にすら唾を吐きかけ敵に回せる。

狂ってるからだとか、イカれてるだとか、ちゃちなモンなんかじゃない。

 

守りたいからそうするだけ。

こんな単純な動機だけど彼にとってはそれだけで十分だった。

 

 

 

 

そして、時間が進み。

皆で決めた作戦を実行する時となった。

 

想いが交差して、いっぱい話し合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こいし「お姉ちゃん」

 

地下の空間に広がる世界にある地霊殿の前に立って少女は話す。

 

こいし「お兄ちゃんはなにを考えてんだろうね」

 

さとり「…………………、分からない」

 

こいし「え…………?」

 

さとり「もう、あの人の心が読めなかった…………」

 

こいし「そっか………………」

 

二人の姉妹は自分の家に帰り一方通行から伝えられた通り、地下の世界を守る事に全力を尽くす。

それだけ。

 

それだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人の化け物と一人の酔っ払いが宴会場に残っていた。

 

一方通行「オイ、オマエは妖怪の山担当だ」

 

萃香「あらら~………、寝ちゃてたか~……あははは」

 

ゲシゲシ。

と、寝ていた萃香を蹴って起こす。

 

一方通行「ちゃンと聞いてたンだろォな」

 

萃香「大丈夫~、大丈夫~……、聞いてたってー」

 

ふらんふらんして、立ち上がる。

それは路上で酔い潰れた親爺と似てると言って良いほどに。

 

そして

 

一方通行「____________あン?」

 

ポスッ。

 

小さな拳が優しく一方通行の腹部に突き刺さる。

 

萃香「あ~……悪いね~……」

 

まだふらんふらんしてる萃香は軽く謝る。

一方通行は酔っ払ってるし、わざとじゃなそうだしと見逃してやろうとする。

 

しかし、空気が一変。変化した

 

それは奇襲が来たとか、急に隕石が落ちて来たとかでもなく。

 

萃香「なんかムカついたから、つい。やっちゃった」

 

その時の萃香は忘れもしない。

いつもは呑気な飲んだくれのとしか見てなかったのに、今日の彼女は正しく本物の鬼だった。

 

萃香「随分と私達は舐められたモンだね。それはあんたが強くなったから、それとも元から?今回の作戦、どうせ守備を頼んだけど勝手に一人で片付けるつもりでしょ?」

 

一方通行は喋らない、反論もしない、アクションすらしない。

彼は黙って萃香を見ていた。

 

萃香「まあ、皆思ったと思うけどね。あんただけ危険を冒して私達は安全な所で無事を願ってれば良いだけ…………って。そんなに……そんなに私達はあんたからしたら弱い?」

 

小さな彼女は震えていた。

それを優しく包むこともせず、一方通行はこの宴会場を後にする。

 

 

 

しかし、出る瞬間。

 

彼は言った

 

 

『悪ィ』と。

 

 

 

 

 

萃香「…………鬼は嘘は嫌いなんだ。例え優しい嘘だとしても………………」

 

 

 

強者との闘いを好む鬼が、見た目とは裏腹に可愛くない力を持つ少女が自分の無力さを知った。

 

なんて私達は弱いんだろう。

 

 

歳は遥かに上なのに、守られてばかりだ。

 

 

あの、一方通行という少年に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「………………………………………」

 

とある幻想郷の夜の森を歩いていた。

自分のポジションへ行くため。

 

その時だ

 

「一方通行!!!!」

 

後ろから大きな声が聞こえた。

それは自分の名を呼ぶ声。

 

一方通行は振り返った。

 

夜の森は暗いが、彼女の髪は金髪で凄く目立ち分かった。

 

一方通行「どォした、魔理沙」

 

魔理沙「『どォした』じゃないぜ。行くなら少しは声かけろよな…………」

 

息が荒い。

多分、走って追いかけて来たのだろう。

 

魔理沙「全く……、ホラ」

 

ドス。

何かを握った拳を一方通行の胸に打つける。

 

魔理沙「なんにも効果ないが、お守り変わりに持ってけ」

 

拳を解除すれば握っていた何かは落ちる。

が、しかし一方通行はそれをちゃんとキャッチした。

 

 

自分が持っていたのはミニ八卦炉。

これは魔理沙の宝物と言える物だった。

 

一方通行「…………、預かっておく」

 

魔理沙「ああ。ちゃんと帰って来た時は返せよな、それは私の宝物なんだぜ」

 

魔理沙は笑っていた。

 

彼が大量の人殺しだとしても、死んで欲しくない。

その気持ちだけしか彼女には無かった。

 

一方通行「ハッ……そりゃ責任重大だなァ」

 

緊張や不安を感じず、いつもの調子で笑う。

そしたら

 

魔理沙「_____________霊夢を任せたぜ」

 

唯一無二の、絶対欠けてはなら無い親友を思って言った。

 

それを彼はたった一言で答えた。

 

 

一方通行「___________任せろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙は暗闇に消えていく一方通行の背中を見て思う。

 

あんなに必死に考えられて、

 

助けて貰う立場になっている、

 

 

 

霊夢が羨ましい…………と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の森の真ん中に立ち止まる。

 

目的の場所、とゆうよりかは目的の人物の場所に着いて。

 

紫「で、どうするの?一方通行。ああ皆に言ったけどまず幻想郷から今の貴方は出れないのよ」

 

一方通行「それは今からどォにかする」

 

紫「ふ~ん…………」

 

察した紫はそれから黙って目を瞑る一方通行を見守る。

今、彼は自身の能力。解析能力を使い呪いを解析してるのだろう。

 

そして

 

 

 

一方通行「…………よし、解析した結果"今の俺のベクトル操作の能力"でも調整できる事が判明した」

 

ゆっくりと瞼を開き、そう言った後一方通行は呪いの解析結果を紫に告げる。

 

そして解析の結果はこうだ。

呪いの力にもベクトルが存在していて、ベクトル操作の能力を使うことによって幻想郷に縛られてる呪いを消すことは出来ないが一定の時間だけ外の世界、すなわち学園都市に行けるとゆうこと。

らしい。

 

しかし、ベクトル操作の能力は木原数多の手によって封じられている。

が、そんなクソのような小さな心配はない。

実際一方通行の左手には特殊な黒い作業用のグローブで隠されてはいるがベクトル操作の能力を使うための演算妨害機能を持つ爆弾が埋め込められてベクトル操作の力は使えない。

 

でも、彼は言うだろう。『そンな小せェ事で今の俺は止められねェ』と。

 

 

紫「調整……ね。でもそれは呪いを無理やり力でねじ伏せるから、本来の力を十分に発揮できないわよ」

 

一方通行「はっ、それでも俺は霊夢を救いだしてやるよ」

 

余裕な表情で一方通行は鼻で笑う。

しかし紫はその奥にある微かな焦りを見破る。でもそれを顔に出すことも口にする事もしない。

 

紫「それは結構。じゃ、私はスキマを学園都市に繋げるから貴方はベクトル操作で呪いを封じ込める事に集中してなさい」

 

他の人から何も言わず一方通行は立っているだけに見えるだろう。

が、彼は呪いを封じ込める様に十メートル先の針穴に長い割り箸で糸を通す程のようなレベルの集中をしている。

 

紫「さて、そろそろ行けるかしら?」

 

一方通行「あァ」

 

もう、幻想郷から出れるようにしたら学園都市に繋がっているスキマがある所に立つ。

そして一方通行は何も言わずスキマを通ろうとしたが

 

紫「私達は絶対に追撃が来ないのに守備してれば良いのよね?」

 

一方通行「________________チッ」

 

 

スキマを通る瞬間一方通行は舌打ちをした後、幻想郷から学園都市に行った。

 

 

 

 

紫は見送った後、息を吐いてからこの場に居る予定の無い第三人目に

 

 

 

 

紫「……さて、なんか用?魔理沙」

 

後方の隠れてた木に紫の背中が見えるように寄りかかり

 

魔理沙「紫、一方通行でなにをするつもりだ。前から気になってたんだ、何故か一方通行が関わる事に協力的なお前をな」

 

紫「"で"……ね。酷いわねまるで他者を利用する悪者みたいじゃない」

 

魔理沙の方へ振り返りもせず

 

紫「何もしないわよ。けど、企んでるより……そうね、彼が関わってる計画はあるわ」

 

魔理沙「計画か。それが危険なら私はお前を退治、じゃないな…………殺す、だぜ」

 

別に肉眼で見たわけではないが、多分魔理沙の目付きは鋭く光を当たって生きてきた人間とは思えないものだろう。

しかし怪しさマックスのスキマ妖怪は夜空を向いて笑った。

 

紫「随分と変わったわね魔理沙。まあ、良いでしょう。勘づいた貴方に私の昔から決めてた計画を聞かせてあげる」

 

 

そして、それから驚愕してしまう計画を紫から魔理沙は告げられる。

 

紫「_________________________。これが私の昔から考えてた計画」

 

魔理沙「それが………………そんなことが……………………お前が昔から決めてた計画だってのか!?」

 

紫「ええ、時が来るまで内緒よ♪」

 

くるん、と紫は人差し指を立ててる手を口元に当て微笑んで魔理沙へ振り返る。

楽しそうな雰囲気を漂わせて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「懐かしィ空気だ………………」

 

ポツポツと頭や顔それに体に雨が当たりながら白い髪の怪物は大きなビルの屋上にあるフェンスに立って呟く。

 

 

9月30日。時間帯は夜。

 

その日、その瞬間に、一瞬で姿を消したとある最強の能力者。一方通行が帰還した。

 

「…………あン?」

 

化け物の目に映ったのは巨大な光る翼だった。

 

しかし、ちょっと疑問に思ったがそんな事より霊夢を救うのが最優先。

 

そして

 

「……さァて、学園都市に血の雨を降らしてやるぜ!!」

 

ニッと裂いた様に笑った後、ゆっくり前から飛び降り霊夢の能力。空を飛ぶ程度の能力を使って夜空を自由に飛んで行く。

 

まず、一方通行の目的の場所は情報が簡単に採取出来る場所。

そことは闇に居た自分には知っている、統括理事長(アレイスター)を除くと十二人しかいない都市統括理事長会に若く抜擢された人物の家。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人気を感じさせない夜の都市を風を切るように空を飛んでいたら思ったより早く、目的地に着く。

 

今、一方通行が居る場所はとある玄関の前。

この家に目的の情報がある。

 

一方通行はインターホンを使わないで、ドアをノックして家の中に居る野郎を呼び出す。

すると、急いだ様子もない廊下の足音が玄関奥からでも聞こえた。

 

そして、この後惨劇を自分が経験するとも知らないボンボンのアホ外人坊っちゃんは無警戒にドアを開ける。

 

するとそこで、一方通行は咲夜の能力。時間を操る程度の能力を使って時間を停止する。

そしたら模倣した神力、魔力、妖力を込めた白銀に光る足で、バカ面のボンボン坊っちゃんを蹴り止まった時間を動かす。

蹴られたと知らないボンボンの坊っちゃんは綺麗に背後へ吹っ飛んで、高級なソファに打つかったが勢いは収まらず結局壁に激突した。

しかし、万が一のためボンボンの坊っちゃんは防弾チョッキなど命を守る装備を服の中に何時も着ていて死ぬことは回避できた。

 

 

そんなのはどうでも良い一方通行は冷静に玄関ドアを閉め、部屋奥へ進む。

 

すると目的のパソコンを見付けすぐさま起動させた。

 

ポタッ、ポタッ、と。雨で濡れてしまった髪から雫が落ちるがそんなのをお構いなしにパソコンから学園都市のデータを探る。

 

裏で(おこな)われていた実験などのデータがあるフォルダを発見し、それを開く。

そしたら『猟犬部隊(ハウンドドッグ)』と暗部の情報が出て来た。

マウスでまだまだ情報を集めていると気になる名が

 

それは『打ち止め(ラストオーダー)』と書かれていた

 

一方通行「ラスト…………オーダー?」

 

『妹達』20001号のクローン。

続いてそう書いてあり、これも霊夢と同じ攫う事が猟犬部隊の仕事らしい。

だが、一方通行は引っ掛かった。

自分がやっていた実験に必要なクローンはジャスト二万。

と、いうことに。

 

一方通行(………。どォやら俺の知らねェ所でクソッたれどもは何かをやっていたのか)

 

打ち止めの情報を全て読んだ。

このクローンの少女は死ぬために作られたんじゃない。

ただ全妹達の司令塔として生み出しただけ。

本当にそれだけだった。

絶対能力進化計画(レベル6シフト)が終わったら秘密裏に育てていく。と、打ち止めの未来は暗闇の世界で始まり、そして終わるかもしれない。けど、それでも死ぬよりかはマシだろう。

 

そう。死ぬ理由が無いなら、意味無く死ぬなんて三下以下のやる事だ。

 

 

そして、自分が知らなかった哀れな存在のクローンの情報を知って一方通行はこの時、もう一つ目的が出来てしまった。

 

無関係で、闇じゃなく光で生きていける打ち止めも一緒に闇から救ってやると。

 

 

続いてデータを読む。

 

次に出た言葉は『超高圧電波発生装置』。

その機能とは機械名通り電波を発生させるだけ。

だが、

 

一方通行(…!………時空に歪みがあると、そこは不安定で想像も出来ねェ強力な電波を当てると異世界の扉が開くだと!?)

 

やっと幻想郷に能力無しで来れてる理由が分かった。

そしてその後書かれた説明文は

 

時空を歪ませる能力を持つ者はこの世界には居ない。

しかし、約十数年前に異世界から来た来訪者。

この後名前が分かった八雲紫とゆう異世界人は特別で、時空を歪ませる別次元の能力を持つ。

そのため、八雲紫が繋げた時空の場所は不安定でモグラの尻尾を掴むような小さな可能性しかないが成功すれば異世界の扉が開く。

だが、成功しても失敗してもこの装置を発動すると莫大な電気量が必要で連続で使用は不可。

 

 

一方通行(これがあンのは、地下深くの実験施設か………。チッ、ムカつくが今回は破壊しに行ける時間はねェな)

 

その装置がある限り、学園都市の魔の手は絶対に収まらない。

でも一方通行は時間制限と本来の力の十パーセントにも満たないほどの力しか使えない。

そのため、今回自分が可能なのは霊夢と打ち止めの救出だけなのだ。

 

しかし、これは大きな発見だ。

敵の移動方法を知れたのだから。

 

 

 

まだまだ、一方通行はパソコンの画面と睨み合う。

 

次は霊夢だった。

 

霊夢を攫った理由。

『超高圧電波発生装置』は莫大な電気量がかかる。しかも連続で使用出来ない。

だから統括理事長(アレイスター)が手に入れた情報。

博麗の巫女にたどり着いた。

 

博麗の巫女は幻想郷に張られた結界を自由に操作し、内側からでも外側からでもまるでコンビニに入るような軽い気持ちで異世界に移動出来る。

そのため博麗の巫女を確保して研究、解剖をして博麗の巫女の力を手に入れる。

 

博麗の巫女の命は問わない。

 

 

一方通行「……………………」

 

ミシミシ…………。

文を読み何も言葉を発さず、手に力が入りマウスから壊れそうな音がした。

もう、怒りは噴火寸前というところ。

 

ても。でも、これから先を読んでもクソ過ぎる闇を見るだけだ。

しかし、それでも一方通行は飛び出そうな感情を抑えてデータを見る。

 

次は

 

天使(エンジェル)

 

一方通行(はァ?)

 

学園都市に帰ってきたとき見た巨大な翼を思い出したが、これは自分達は関わって居ない。

だから無視すると決めた。

 

 

 

もう、データのページは最後まで来た。

そこには

 

一方通行「……、ウイルス…………か」

 

打ち止め、霊夢。

どっちにも違う種類のウイルスが頭に打ち込まれてる。

 

だから仮に二人の肉体を奪い去っても、最後は両方人格崩壊して終了のバットエンド。

 

しかし、それを見ても希望を捨てない。絶望なんてしない。

 

通常の人間より遥かに頭の回転が良い一方通行はどっちもクソったれのパッピーエンドにしてやれる。

そう確信して、最後に乱暴にガダガダと連続でキーを押す。

 

『猟犬部隊』の待機場所発見。

 

一方通行(見つけたぜ……。やる事は簡単、俺が再び闇に戻りアイツらを殺し、そして奪う。それだけだ!!)

 

 

パソコンは落とさずぶん殴って永久停止させた。

 

そして今居る家から拳銃を一丁調達してから出て行った。

 

向かう場所はもちろん猟犬部隊が居る場所だ。




もしかしたらどんなヤツでも殺す時でも一方通行には少しの躊躇はあったのかもしれない。
だが、それもここまで。
もう絶対にないのだ躊躇とか、そんなもの。

目を見開いてろ、今見せてやるよ

これが本物の


化け物だ


怪物だ


超能力者だ


この俺………………一方通行だ



次回予告

第6話

木原対一方通行

お楽しみに~…………


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6話

『0930』事件。
それは二人のヒーローが中心になった事件。
ある一人はツンツン頭のどこにでも居る男子高校生。
もう一人はアルビノな見た目と異常な能力を持つ少年。

この二人は今日、自分が絞り出せる全ての力を振るって守りたい人を助けたい人を、守るため助けるために……



多分、誤字や脱字があると思います。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。


どこを見ても高層ビルがある区の誰も使わなくなったオフィスに待機中の猟犬部隊。

 

木原「はははは!!スゲーなオイ!!ありゃあ一体何なんだ!?」

 

窓ガラスの向こう側、数百メートル先で周りのビルを破壊する大量の光る巨大な羽。

今、木原達は羽を出してる本体は見えない。

 

現状何かを言うとしたら、狂った科学者達が歓喜をあげてるとゆう事だけだろう。

 

 

木原「ちくしょう!飛んでやがるなアレイスター!理論のりの字も分かんねぇぞ!?科学者のくせに科学を否定するたぁ、何たる科学者だよオイ!!」

 

周囲に居る五人の部下達は戸惑っているが、木原は違う。待ちに待った光景を、富士山を登り山頂で頂を見たような、そんな晴れ晴れした表情で未知の領域を眺める。

 

木原「アイツを使って学園都市の敵と異世界をぶっ潰すのが目的かよ!はははっ!!確かにあんなモン用意すりゃ不可能なんて存在しねぇ、非現実染みた事も可能って訳だ!!見ろよテメェら!聖書ってのはいつから飛び出す絵本になっちまったんだ!?」

 

戸惑っている部下に目を向けると、何故かガラス窓の外を見ていた。

しかしそれは遠くに存在する『天使』に向けられた視線では無い。

 

今まさに、此方に空を飛んで来て窓を蹴り破る一方通行を見ていた。

 

次の瞬間。

一方通行は窓を破り、そのままの勢いで窓に一番近かった黒ずくめを飛び蹴りした。

蹴られた者は一直線に後ろの壁へ激突して、壁に全身が埋まり気を失う。

 

ほぼ一瞬の事で防ぐ事が出来なかった。

ギラギラとした赤い瞳の化け物はたった一人のターゲットへ

 

一方通行「木ィィィィィィ原くゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!」

 

ポケットから一丁の拳銃を取り出し、一発の弾丸を撃つ。

狙った場所は心臓。

確実に命を奪う場所だ。

 

だが、木原は近場の部下を自分の前へ蹴飛ばして盾にしそれを防ぐ。

そして無様に盾にされた部下は運悪く、体勢を崩しまさかの顔面に弾丸を食らい、死亡する。

 

木原「ほォら、ちゃーんと狙えよ。じゃねぇと皆の迷惑だぜ!!」

 

挑発した木原を無視して、一方通行は武器を構えてる最中の黒ずくめへ視線を向ける。

すると、イイコトを思いつき行動に移る。

 

まず拳銃をポケットにしまう。

おどおどまだ戸惑ってる部下に向かって地面を蹴った、その時、妹紅の妖術を模倣して背中から赤く燃え上がる炎の翼を二本伸ばし、移動速度を加速させる。

そしたらどうだろう。

あっとゆうまに一人の黒ずくめの懐に飛び込み、装備してる武器を見ると肩付近に四つの手榴弾を発見した。

そしてその手榴弾に手を伸ばし四本のピンを指で抜く。

 

一息つく暇もない程素早く、最後に腹部を蹴りもう一人の黒ずくめに飛ばすと手榴弾がその時起爆した。

 

二人は仲良く爆発して、汚い血肉が飛び散る。

 

後、邪魔な部下は一人。

 

「動くなぁぁぁぁあああああっ!!!!!」

 

これからもしかしたら自分もあんな目に。

そう確信した最後の黒ずくめは事務机の上に並んで寝ている二人の少女へショットガンの銃口を向ける。

散弾銃は、並んでいれば楽に二人でも三人でも致命傷を負わすことは可能。

 

人質として盾にすれば、いくら一方通行でも動けないと考えたんだろう。

 

でも、それは

 

火に油を注ぐような行為だった。

 

 

一方通行は奥歯を噛み締める。

そして背中の二本の炎の翼の色が赤から青へと変化すると、化け物の怒りを表現するかのように後方へ大きく燃え広がる。

 

まるで空間移動(テレポート)でもしたみたいに一瞬で一方通行は黒ずくめに距離を積める。

その速度は人間程度では反応出来ない。

そのような速度を乗せ、黒ずくめの頭を掴んでそのまま壁へ叩き付けた。

 

ブシャ!!とトマトみたいに頭部が潰れると同時に隣の部屋に行ける新しい通路が出来た。

それはもう、業者に頼んだみたいに壁に大きな穴が出来たのだ。

 

もう邪魔な部下は居ない。

残るはあと一人。下衆な科学者だけだ。

 

 

木原「カッコイーーッ!!惚れちゃいそうだぜ一方通行!!」

 

一方通行「さァてスクラップの時間だぜェ!!クッソ野郎がァァァァァッ!!!」

 

両者は一言で表すなら悪。

光と善から遠く離れた存在。

その二人が衝突する。

 

 

一方通行が学園都市に居れる時間、あと5分。

その時間は能力を使えば使うほど減少する。

 

 

木原は運動機能を補強して、強能力者(レベル3)と互角に殴り合いできる力を手にいれている。

しかし、一方通行はこれ以上大きく能力を使えばこの世界に存在できる時間が減る。

この事実は最初は分からなかったが、まず最初に能力を使った時に分かった。

 

だから?それで?

なにか問題でもあるってのか

 

一方通行はそのルールすら壊す勢いで両手と両足に青い炎の翼と同様のチカラを纏い、殴り、蹴る。

だが、ハッキリ言って一方通行は殴り合いはずぶのど素人。

あのベクトル操作とゆう超能力に頼ってなにもかもを鎮めてきたからだ。

 

だからその結果は

 

一方通行「が…………ッ!……ぐふッ!!」

 

木原の見事なカウンターと、回し蹴りが炸裂して、吹き飛ぶがそれでも立ち上がり一方通行は何度でも何度でも、拳を飛ばし、飛び蹴りを繰り出し、体を掴もうとする。

 

だが、それら全て一発も当たらず強烈な拳を食らい硬い床に転がる。

その時に纏う炎が全部消えてしまう。

 

木原「ぎゃははははっ!!クソ野郎が!!どの面下げて俺の前に立ってんだ!?」

 

下卑た笑い声で笑い、転がってる最強の顔面を正面から蹴り飛ばす。

縦に一回転して一方通行は壁に激突した後、力無く膝を付く。

 

一方通行「く………そ…、調子乗ってンじゃねェぞォォ!!」

 

叫びながら銃を取り出し、残りの弾丸を撃つ。

 

が、

 

木原はその行動を笑い放たれた弾丸を全て空中で掴む。

 

一方通行「……な…………っ!?」

 

木原「ぎゃははははははは!!!良いなぁそのアホ面!!こんだけ近けりゃ当たると思ったか!?残念だったな、答えはノーだ!!」

 

いくら補強してるとしても、流石に木原の運動能力は漫画のように人外過ぎた。

 

パラパラと掴んだ弾丸を捨て

 

木原「しっかし一方通行、お前さっきから何なんだそのチカラ。ベクトル操作は俺特性の弾丸で封じてる、だがあの青い炎はなんだ?新しい能力だってのか?」

 

一方通行「答えると思ってンのかよ、マゾ野郎が…………」

 

その答えに木原がとった行動は腰に両手を当ててため息を吐く。

次に

 

木原「流石だぁ……良いムカつきっぷりだ!!全て奪って殺してやるよ!!一方通行ァァああああああ!!!」

 

一方通行「ォォォおおおおァァああああああああああああああああ!!!」

 

再び衝突する。

 

何度やっても結果は変わらない。

悲しくなるぐらい一方通行の拳は当たらない。

 

 

もう、一方通行の体はボロボロ。

アザに擦り傷、それに血が口から流れる。

 

それでも、それでも、それでも。

体は止まらない。

時間がある限り、体力がある限り、全力で殺す気で攻撃する。

 

 

楽々拳を避けて

 

木原「テメェさ、もしかして自分で自分をすげー格好いいと思ってんのか」

 

次に重い拳を打つけると、この空間に鈍い音が鳴り響く。

 

木原「たった一人で巨大な悪の組織に立ち向かい、哀れな少女達を助けるために奔走して、そういった行動で自分の人生全てチャラにできると思ってんのかよ」

 

諦めず立ち向かってくる一方通行を次は両手を使わないで、強烈な横蹴りを腹に突き刺しそのまま薙ぎ払う。

 

木原「ふざけんじゃねぇよ、テメェは一生泥ん中だ!!」

 

一方通行(分かってンだよ…………そンぐれェ、俺は一生泥の中だ。だが俺が求めてンのは________)

 

力が入らない足をぶっ叩き、無理やり立ち上がる。

視界は歪んでいる。

 

でも、

 

一方通行(______俺が泥の中から這い上がる事じゃねェ。アイツらが平和に過ごせる世界を!…………クソッたれ!ドイツもコイツもアイツらを巻き込みやがって!!ふざけンじゃねェぞクソ野郎がァ!!)

 

人のためだとか自分のためだとか、そのような事はドブにでも捨てておけ。

今は、ただ目の前の男を殺すことだけ考えろ。

 

 

意思を更に強く持ち、拳を強く握り歩き出そうとした時だ

 

体が脚から崩れ落ちた。

 

 

一方通行「っ……………、クソ!!クソ!!クソったれェェェェェェェェッ!!!」

 

木原「ははははははははははっ!!!!とうとう脚からきやがったか!!」

 

無茶をすればとかもう、そのような状況ではない。

もう気紛れな奇跡とゆうやつに頼るしかなかった。

 

 

指の一本も動かせない程、ダメージを受けてしまいもう霊夢や打ち止めを助けると考えるなんて余裕がない一方通行を笑う木原。

 

 

木原「無様だなぁ、一方通行。あ、そうだ!知ってると思うがあのガキ達にはそれぞれ違うウイルスが頭に打ち込まれてんだけどよ、それを治療することが出来るデータがあんだ」

 

そして懐から小さなチップを取り出し

 

木原「それがこれだ……なぁ、これをどうすると思う?」

 

質問したが答える前にチップを床に投げつけた後、だめ押しに踏み砕く。

 

一方通行の最後の希望が砕かれた。

実は専用の機械があれば、脳にウイルスを打ち込む事も、そのウイルスを消す事も知っていた。

だがその情報も全て無駄だった。

 

今、救う可能性が0%になってしまったから。

 

 

暗い表情に変わった一方通行の近くでしゃがみ

 

木原「オイオイ、感想はねェのかよ?あぁ?」

 

__________ガシ。

 

木原「あ?」

 

あの動けない筈の一方通行の腕ががっしりと木原の腕を掴む。

 

一方通行「……………コロス」

 

ポツリと出た言葉。

 

もう一方通行は冷静じゃなかった。

怒りとゆう感情に完全に体を任せる

 

一方通行「……ブチコロス、キハラァァァァァァァァああああああああああああああああああッッッ!!!!」

 

理性を失った化け物になっていた。

そしてバギッ、と力強く掴んだ木原の腕が折れる。

 

木原「ガッぁぁあああああぁああああああッ!?」

 

あまりの痛みに顔が歪むが、もう一本の拳で一方通行の顔面を殴る。

すると掴まれていた腕は離された。

 

木原「ちっくしょう!!腕が…………クソ痛てぇじゃねぇかぁ!オイ!!」

 

慌てて距離をとる木原。

だが折れた腕から激痛が襲いかかる。

 

対する一方通行はゆらりと立ち上がりボツボツ『コロス』を連呼する。

 

空気がピリつくなか、ここでまさかの

 

 

「ここだ!」

 

 

白い修道服の少女が乱入する。

その少女の名は『禁書目録(インデックス)

今日起きた事件に深く関係することになった一人である。

 

インデックスの目的は一つ。

天使を止める鍵。

まず、あの白衣を纏う者は違う。

なら白い人?いいや違う。

 

だれだ。誰なんだろう。

 

そう考えてると事務机の上に転がってる少女達へ視線を向ける。

 

もしかしたら、と。

インデックスは二人の方へ歩む。

 

すると

 

木原「誰だ!!チッ!勝手な事してんじゃねぇぞ!!」

 

白衣の科学者が止めようとするが、隙を見せたら一番ヤバい化け物が襲いかかって

バシッ。

一方通行の拳が木原の体に突き刺さる

 

木原「クソ…………ガキがぁぁぁあああああ!!!!」

 

やっと一発攻撃が当たった。

しかし大きなダメージは与えられてない、でも木原はそれに激怒して、標的を一方通行一人に絞る。

 

 

インデックスとゆう少女は殴り合う二人を無視して考え、時には知り合いに分からない所を電話で教えてもらい事務机の上に転がってる少女達を見る。

 

インデックス(この子が鍵だけど、もう一人のこの巫女はなんだろう?)

 

『打ち止め』の隣に寝ている霊夢に視線を向け、疑問に思う。

 

 

 

色々考えて

 

 

最後に、微かに聞こえた気がした。

 

鈍い音が鳴り響く空間に

 

インデックス「祈りは届く。人はそれで救われる。私みたいな修道女はそうやって教えを広めたんだから!!」

 

決意を固めた少女の目はただ純粋に真っ直ぐだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

互いの闘志と殺意を燃やす肉弾戦。

 

しかしそんな中、心が落ち着くような歌が聞こえた。

だが一方通行と木原は耳に届く歌など聞こえただけで、それ以上でもなくそれ以下でもない。

 

 

拳が飛び交うなか、強烈な一撃が一方通行の顔の横から突き刺さる。

すると、それはボクシング中継などで見るような素人でも見て分かる勝負が決まった感じに一方通行は倒れた。

 

だが、

 

一方通行「き……………原………」

 

震える手で体を支えて、寝ていた方が楽なのに立ち上がる。

 

一方通行「木ィィィィィィィィ原ァァァァァァァァッッ!!!!」

 

危ない感じに倒れても決して最強の化け物は完全に心が折れることはなかった。

あの強烈な一撃が目を覚まさしたのか分からないが、さっきのような理性を失った感じではなかった。

木原は決まったと思ったが、立ち上がった一方通行へ笑みを浮かべる。

 

木原「あはぎゃははははっ!!そーだよな!!そんな簡単に倒れちまったらつまんねーもんなぁ!!サービス精神旺盛で助かるぜ一方通行!こっちも今までテメェにゃムカつきっぱなしだったんだ。殺す前に拳でたっぷり沈めてやるぜええええええ!!!!」

 

拳を構えて突っ込んで来る木原と全身で突進する一方通行。

両者は標的へ走り出す。

 

木原「おおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

喉が潰れてしまいそうな程の咆哮をして、拳を飛ばす。

一方通行はその拳を片手で掴み防ぐ。

 

木原「っ!?」

 

一方通行「ォォォォらァァあああああああああああああああああああ!!!!」

 

木原の拳を掴んだ腕を割れてしまったガラス窓へ大きく振るう。

そしたら木原の体は宙を舞い、窓をぶっ壊して外へ投げ出される。

そして一方通行はその後を追うように外へ飛び出す。

 

 

木原「こんなんじゃ俺は死なねぇぞ!!」

 

見事、道路に着地したが同じく道路に着地した一方通行に向かって走り殴りかかる

 

 

バギッ。

 

木原「…………は?」

 

拳は一方通行に当たらず、腕が可笑しな方向へ曲がっていた。

 

木原「ああああああああああああああああああ!?これはぁぁあああああああ!?反射ぁぁああああああああああああ!?」

 

一方通行「………………、」

 

膝をついた木原に、冷たい赤い瞳を向ける。

 

木原「クソ!!どうなってんだ!?家一件軽く建てられる金で作った演算妨害の弾丸はまだテメェの左手に埋まってるはずだ!!」

 

一方通行「あァ、確かに俺はベクトル操作は使えねェ。だがそれだけじゃねェンだ俺の能力は………無料サービスで教えてやるよ、全てを本物に限りなく近く模倣する能力。それが俺のもう一つの能力だ」

 

木原「あぁ!?なんだそりゃ!!」

 

一方通行「ただのコピー能力だ。でももしそれで"俺のベクトル操作をコピーした"っつったらどォする?」

 

絶対に演算妨害の弾丸は機能している。

そのためベクトル操作は使えない。

しかし、全てを本物に限りなく近く模倣する能力は能力は封じられていない。

だからベクトル操作を模倣して使っても、全てを本物に限りなく近く模倣する能力を封じされていない限り模倣したベクトル操作は使うことが可能。

 

それで、そのチカラで呪いも一時的に封じている。

 

木原「クソがぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

両腕は折れ、まともに拳は使えない。

なら残った両足で攻撃を仕掛ける。

 

木原は雄叫びをあげて目の前に居る化け物に向かって全力で走る。

大丈夫だ、いくらベクトル操作が使えるとしても何も問題はない。自分が研究に研究を重ね、たどり着いた『反射』を突破する攻撃方法。

殴る動作を一方通行に触れる寸前で返し、ベクトルを逆転させることにより引き付けさせて攻撃を行う。

これがある。

 

しかし、一方通行は全てを本物に限りなく近く模倣する能力でコピーした自分の能力。

ベクトル操作、いや違う。

『力の向きを操る程度の能力』を使い、木原の周りの重力の向きを一ヶ所にかき集めるように操り何十倍も重くした。

 

木原「ごが…………っ!!ぁ……っ!!」

 

バキバキバキバキ!!と足の骨は全部砕け、仰向けの体勢で倒れる。

それでも一方通行は能力を緩めることはしない。

道路にビビが入り、体が埋まり骨が折れる音がしても、血反吐を吐いても強く。強く、強く強く。

 

木原「…………はぁ、くそ………………………………が」

 

一方通行「オマエが作った爆弾の威力__________」

 

倒れる木原へ歩む途中、左手にしていた黒いグローブを取り投げ捨てる。

 

一方通行「二人で味わおうぜェ?」

 

木原「……あがっ!?」

 

腹を踏みつけ、爆弾が撃ち込まれた左手を木原の口に突っ込む。

 

木原「ふほはひはあああああああっ!!!」

 

口に手が突っ込まれ、何を言ってるか分からないがもしかしたら『このクソガキが!!』とでも言ってるのか。

 

一方通行は突っ込んだ自分の左手を燃やす。

するとその炎は爆弾に届き、起爆した。

そして左腕は見事吹っ飛んだが木原の頭も吹っ飛んだ。

 

 

頭部のない死体を見下した後、塵も残らない威力の炎で燃やす。

 

一方通行「……………」

 

吹き飛んでしまった腕は『老いる事も死ぬ事も無い程度の能力』を発動して再生させる。

 

この能力は要は不老不死になる能力。

だから再生能力も持っている。

 

一方通行「すげェな。本当に元に戻りやがった」

 

再生された腕や手を見て呟く。

そして、一方通行は霊夢や打ち止め、それに突然あの場所に来た白いシスターがいるオフィスへ空を飛んで戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタン。

 

三人の少女がいる廃棄オフィスへ白い影が壊れた窓から入って来た。

 

一方通行は呆気に取られてる白いシスターの横を通り、打ち止めと霊夢に触れ解析を行う。

すると

 

インデックス「その二人はもう大丈夫だよ」

 

一方通行「あァ、そォみてェだな。オマエがやったのか?」

 

声のした方へ向かず、話す。

 

解析した結果撃ち込まれたウイルスは両方、体を蝕むように動いていない。詰まり、停止してる状態。

だがこれで良い。

打ち止めは定期的に行っている病院に行けば学習装置(テスタメント)があり、それを使えば再調整可能だ。

霊夢の方は永琳に任せれば大丈夫だろう。

 

インデックス「うん」

 

一方通行「そォか。オイ、このガキをある病院に運べ」

 

インデックス「え!?それは無理なんだよ、流石にこの子がいくら軽くても私は子供運ぶ力なんて無いんだよ。それにある病院じゃ分からないよ」

 

一方通行「病院がどことかは心配ねェよ俺が直接繋げてやる、それに運ぶっつってもホンの数秒だ」

 

そう言ってある医者がいる病院に行ける黒いスキマを開く。

 

インデックス「こ、これは?」

 

一方通行「ただのワープゲートでも思っとけ、ホラよ」

 

初めて見た力に驚いてるインデックスに、打ち止めを抱えて近づく。

そして、抱えるように差し出す。

 

しかし

 

インデックス「だから無理なんだよ。多分、筋力ないから落としちゃう」

 

一方通行「チッ、しょうがねェな」

 

無理と言うなら仕方がない。

一方通行は打ち止めを黒いスキマの中へと入れ、そっと置く。

スキマの先は病院の待合室。

だから並んでる椅子とかが、あるわけでそこに寝かせるように置いたのだ。

 

一方通行「次はオマエだ、さっさとここから消えろ。そして二度と闇に関わるな」

 

インデックス「闇に関わるとか関わらないとか分からない。私はただ友達を助けるために…………」

 

一方通行「なら尚更だ。そンな純白の修道服を着たシスターさンには早く退室して貰わなくちゃ困る」

 

インデックスは見た、彼の眼を。

言葉無しに語っていたまだこの事件は終わってないと。

そして邪魔だからどっかに行けと。

 

インデックス「……………」

 

一方通行「あァ?」

 

黒いスキマの前に立ち止まるインデックス。

少し、震えるように見える。

もしかして

 

インデックス「ちょとこれ怖いんだよ」

 

一方通行「はァ…あと一歩は俺が押してやるよ」

 

ポン。

一方通行はインデックスの背中を押した。

そしたら白いシスターの少女は黒いスキマの中へと消えていった。

だが、黒いスキマを通る時少女は聞こえた。

自分の背中が押された瞬間、「助かった感謝する」と。

 

ある病院に繋がる黒いスキマを閉じる。

一人のシスターと一人のクローンの少女が居なくなり、残ったのは幻想郷の住人二人。

 

一方通行は霊夢を抱えると、次に永遠亭に繋がる黒いスキマを開く。

繋げた場所は医療室。

ここに置いとけば、勝手にウイルスを取り除いてくれるだろう、というか紫が永琳に説明して治療してくれる。

紫は前にこんな事を話してた。

『貴方が開いたスキマなら、何処に繋げたかどの場所に開いたか分かるのよ』

このことから、そう考えた。

 

一方通行「さて…………」

 

霊夢を永遠亭に置き、スキマも閉じた。

作戦は終了だ。

だがゴミ掃除は終わっていない。

あと一人残っている。

それは最初、飛び蹴りをかましたあの黒ずくめだ。

アイツはまだ生きている。

 

壁に埋まっていたがずり落ち、壁に座って気を失ってる野郎の前に立った。

 

一方通行「よォ、良く眠れたか?」

 

「……………………あ、あれ。何が……起きた?」

 

ベクトル集中の飛び蹴りを食らったんだ、だから脳震盪が起きるのは確実だ。

そして一時的な記憶障害も起きてしまうだろう。

 

最後の黒ずくめは、気を取り戻すと前を見る。

すると

 

「あ、あ、あ…………一方通行!?」

 

恐怖の結晶のような化け物が立っていた。

次、聞こえたのは静寂。

それで最後の黒ずくめは理解した。

木原さんは、仲間は全員殺されたんだ。

 

「…………、お……俺をこ、殺すのか…」

 

肋骨はボロボロ、重度の脳震盪で動く事も出来ない。

逃げることが出来なので絶望に顔を染める。

 

一方通行「あァ殺す。そりゃァ美術館に展示されるような愉快で素敵なオブジェのようになァ」

 

「ひ、ひははははは!!そうだよな、そうだよな…………そうだよな……」

 

一方通行「だが安心しろ。俺は悪党だが超一流の悪党だ、オマエを楽に殺してやる」

 

「それは、優しいな」

 

黒ずくめはそれから喋らなくなった。

ただ"最後"の顔は笑っていた。

 

一方通行「あァ…楽に殺してやるよ。なンたってこれからこの俺に喧嘩を売ったらどォなるか恐怖を植え付けるための贄になンだからなァ…………アリガトウよ、クソ野郎」

 

息をしない肉の塊に笑いながらそう言った。

 

 

それからその廃棄オフィスへ来た暗部の連中は壁に貼り付けられた"ソレ"を見て、言葉を失った、胃の中のモンをぶちまけた。

そして血でよくスプラッター映画で登場する残酷に殺された死体を見ても平気になってしまうぐらい無残な血肉や骨の塊の横に書かれた字はこう書かれていた。

 

つぎはおまえだ

 

その書かれた一言に、暗部の連中は心の底から恐怖した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ雨が降りしきる夜の学園都市。

ある大きな十字路の真ん中に立つ白い影が一つ。

 

一方通行「あのまま帰っても良かったンだがなァ、流石に挨拶無しじゃダメだよな」

 

裂いた様に笑う。

そして次に地面に足を強く打ち付ける。

すると一方通行の体は空へ上がる。

 

一方通行「さってとォ……今の俺の全力を打つけてやる!!」

 

上空で静止するため背中から風の翼を伸ばし、ポケットから魔理沙から預かったミニ八卦炉を取り出す。

今の一方通行は幻想郷に居る時より力は出せないし、それよりこんな事をする時間なんて無い。

しかし、それでも無関係な奴らを巻き込みやがったこの怒りを抑えることはできないのでポケットから取り出した物を片手で強く握りアレイスターが居るであろう窓の無いビルに向けて『マスタースパーク』を放った。

 

放たれた極太なレーザーは学園都市の空を一直線に通り抜け窓の無いビルに当たる直前、音もなく粉々に粉砕される。

なに一つ傷も付かず今日もいつも通りな姿で窓の無いビルはそこにあった。

 

一方通行「くそったれ、随分頑丈に守ってやがンな」

 

風の翼を背中から消し地面に着地して呟く。

マスタースパークを防がれたが不思議とそんなに不快な気分じゃなかった。

 

 

突然、急にプルルルと機械音が聞こえた。

 

一方通行「あァ?」

 

音のした方へ視線を向けるとそれは公衆電話だった。

この人気のない夜の学園都市には勿論歩いている人は居ない走る車も無い。

 

まだ鳴る公衆電話の受話器が突如落ちて、電話ボックスの扉が開く。

 

「久しぶりだね一方通行」

 

受話器から声がした。

その声はあのクソ野郎の声に似ていた、とゆうよりあのクソ野郎の声だ。

 

一方通行「チッ、無駄な科学力を使って話し掛けてきてンじゃねェよアレイスター」

 

アレイスター「なんだね不服か?なら君の頭に直接私の声を届ける事も出来るが次はそれにしようか」

 

一方通行「止めろ気持ち悪ィ、そンなンされたらゲロが出そうだ」

 

アレイスター「はははは、そうだろうね。君なら確実にそうなるな」

 

一方通行「チッ」

 

アレイスター「お遊びはこの辺で。それでは一方通行、私の城にレーザーを放ったそうだが何のようかな?」

 

一方通行「挨拶」

 

アレイスター「ほう……それはご丁寧に」

 

一方通行「それと_________」

 

歩きだし扉が開いてる電話ボックスに入ると、落ちてる受話器を手に取る。

 

一方通行「_________宣戦布告だ、クソ野郎」

 

アレイスター「それは本格的に学園都市の敵になると言う事か」

 

一方通行「元々全世界が敵だったンだ、都市一つ敵に回したところで大きな問題はねェよ」

 

アレイスター「……面白い、ならその宣戦布告に対し私は良いことを教えてあげよう。まあ今回は君の勝ちだしそれを理由に話す事もないが」

 

一方通行「オマエの話を俺が聞くと思うか?」

 

受話器を手放し、電話ボックスから出て。

そして幻想郷に繋がるスキマを目の前に創る。

 

だが背を向けた電話ボックスから

 

アレイスター「私は頻繁にこのビルの外に出れない」

 

一方通行「…………」

 

ピタッ。

歩く足が止まる。

 

アレイスター「これでも統括理事長でね、他に沢山仕事はあるんで幻想郷ばっかに時間を使えないんだよ」

 

一方通行「………」

 

アレイスター「おや返答がないか、本当に行ってしまったのかな。まぁいいか。そこに居るか居ないか分からないが最後に言っておこう"次も私は行けない"」

 

ピー……

通話終了。

 

一方通行はスキマを通り、幻想郷に帰った。

ただ最後彼の一歩は地面に亀裂が入るほど力強く踏み出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓の無いビルの中。

広い部屋の中心に赤い液体に満たされた円筒容器の中に逆さに浮かんでいるアレイスターは、空中に四角い数々の映像を見ていた。

その一つに学園都市から幻想郷に戻る一方通行の姿を映したものも。

 

アレイスター「私の言葉は最後まで伝わったか。さて………次の計画に移るとするか」

 

不気味に口角を上げて、そう言った。




この日から本当の意味で幻想郷と学園都市の争いが始まる。

だが、それはまだ先の話。






次回予告。

七話。

作戦終了、宴。そして……………


お楽しみに。


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7話

一方通行は幻想郷のヒーローになった。
だが。それを彼は認めていない
いや、自分が善人だなんて認められない

他の誰もは認めているとゆうのに…………



多分、誤字や脱字があると思います。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。


スキマを通り抜けた先は永遠亭。

その玄関に入り、靴を脱ぎ廊下を歩く。

 

鈴仙「あら一方通行じゃない。久しぶりね」

 

一方通行「あァ。オイ、患者を一人ここに運ンだンだが知らねェか?」

 

廊下で出会ったのはウサミミに制服と完全にコスプレのような容姿の鈴仙。

 

鈴仙「あー、それなら安心しなさい。治療は既に施しておいたわ、あと三日間ぐらいここで入院してたらもう完治すると思う」

 

一方通行「そォか」

 

「私が貴方の代わりに言ったのよ」

 

背後から声がした。

鈴仙は一方通行の後ろに居る奴を見ると、顔をしかめる。

 

鈴仙「…………八雲紫」

 

紫「人の顔を見るなりその顔とわね、傷つくわ」

 

そう言ってるが落ち込んだ様子など一ミリもなく、平然といつものように怪しく微笑む。

 

紫「しかしそれはさておきお疲れ様一方通行。何もかも無事に成功したみたいね」

 

腕を首に回し豊満な胸を背中に押し付け、彼の顔横からひょっこり顔を出す。

この体勢はつまり、

 

鈴仙「な、何やってんのよ!!良い歳したおばさんが!!」

 

体を密着させて後ろから抱きつく紫に向かって、思いっきり罵倒を口にする。

が、あの八雲紫にはノーダメージだろう。

生きる者死んでる者、ありとあらゆる全ての存在を出し抜き騙せそうな知能と冷静さを持つ大妖怪なのだから。

 

だが?

 

紫「おばっ!?おばさんですって!?私はピッチピチよ!!あんな梅干しみたいに老けてないもん!!」

 

鈴仙「中身と歳は誤魔化せないのよ?そんなこと分かってるんじゃなーい?」

 

直ぐ様紫は一方通行から離れ、自分の気にしてる事を言いやがったウサミミ少女の前に立ち反論する。

そして鈴仙はその反論をかき消すように追撃の言葉を発する。

 

まさかの空気になってしまった一方通行はとりあえずうるさいので指で耳を塞ぐ。

 

そんな事をしてると

 

「賑やかね」

 

一方通行「あァ?」

 

声は微かにしか聞こえない、しかし隣から声がしたから横に首を向けるとそこにはくすっと笑う永琳が居た。

 

一方通行「オマエか。霊夢の治療ご苦労だったな、アリガトよ」

 

永琳「ふふふっ、ぎこちないありがとうね。ま、どういたしまして。って所かしら?」

 

一方通行「…………、」

 

永琳「?」

 

自分の言葉は届いたのか。まあ耳を塞いでるしもしかしたら届いてないかもしれない。

その真実は知らないが彼の見ている方向はもう自分では無くなっていて、視線を向けられていたのは声をあらげて言い合う紫と鈴仙へ。

それを察知すると永琳は

 

永琳「はいはいその辺にしなさいお二人さん。もう……ってゆうかとっくに今は夜よ?大人しく寝なさい」

 

紫「…………」

 

鈴仙「…………」

 

中間に入り言い合いを止める。

ほぼノンストップで言い合っていた二人は息を切らしていた。

 

永琳「一方通行、貴方はこれからどうする?ここに泊まっていく?」

 

振り返りそう質問した。

 

一方通行「家半分崩壊しちまってるしな、その言葉に甘えて泊まらしてもらうぜ」

 

もう耳栓を外していてちゃんと声が耳に届く。

 

永琳「そう。ならついて来なさい、案内するわ客室へ」

 

 

それから一方通行は客室へ案内され、その後の永遠亭の連中と食事をした。

一息つくと風呂に入り疲れた体を癒す。

そして最後に眠いから布団に入り、瞼を閉じ意識を手放した。

 

 

紫はというと永遠亭に泊まらず自分の家に帰ったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの『0930』事件から四日と時は過ぎた。

 

今、日はだんだん昇っており朝とゆう時刻となる。

 

暗部の奴らに壊された物の修復状況は。

まだ一方通行の家は軽く修理された程度、それは人里も同じ状況。

しかし、それでもあのいつもの平穏な日常は過ごせていた。

人里は今日も大通りに人が大人数通り、ワイワイガヤガヤと賑わっている。

 

 

そして、博麗神社は。

 

霊夢「あー……退院してやっと普通な食事が出来たわ」

 

一方通行「そりゃ良かったですねェ。はァ……」

 

二人は反対側に冬になったらこたつに変わるテーブルに座っている。

テーブルの上には空の食器が二つ。

 

霊夢は久しぶりのまともな食事をした後、暖かいお茶を飲み落ち着いた様子で息を吐く。

反対側に座る一方通行は、少し疲れた様子とイラついてる感じだった。

 

霊夢「?………もしかして美味しくなかった?」

 

出された食事は全て霊夢の手料理。

だから不味いとか美味いとか気になる。

 

霊夢は一方通行が吐いたため息が気になり質問した。

もしかしたら自分の作った料理の味に何か問題でもあったのかと思ったのだ。

 

一方通行「あン?………あァいやァ、美味かったぜェ。ただなァ___________」

 

霊夢「???」

 

一方通行「____朝っぱらから叩き起こして、そして自分が入院してた時に依頼が来た妖怪退治を俺にさせンじゃねェよ!!」

 

ぐっすりと眠っていた朝。

ドン!!!と勢い良く開けられた扉の音が、今日の目覚ましになった。

鍵は掛けておらず、誰でも入れる状況の一方通行の家。

そのため、今日は朝早く起こされ面倒臭い妖怪退治を無理やりやらされたのだ。

 

霊夢「しょうがないじゃない。永琳からはまだ安静にしなさいって言われてたんだから」

 

一方通行「だったら後回しにすりゃイイだろォが」

 

霊夢「そしたら報酬が貰えるのが遅れるでしょ!?それに他の人に頼まれて解決されたらどうするの!?報酬はゼロよゼロ!!」

 

一方通行「そしたら食費とか俺が出してやるよ、オマエが入院することになっちまったのは元を辿れば俺のせいだからな」

 

霊夢「え!?なら頂戴!!ほら!!ほら!!」

 

目をキラキラさせて両手を差し出す。

 

一方通行「今回の件でそれはチャラだ。残念だったなァ」

 

霊夢「え~……アンタ結構ケチね」

 

一方通行「チッ。しょうがねェなァ……じゃあ一つ言う事を聞くってのはどォだ?」

 

霊夢「いいわ、それに決定」

 

一方通行はまた、ため息を吐いた。

霊夢は反対に機嫌が良く、楽しそうにお茶を飲む。

 

ここで突然一方通行はある事が気になり質問した。

 

一方通行「そォいや霊夢。オマエ、あれからどこもおかしくなってねェよな?」

 

霊夢「ん?ああ…なにも問題無いわ。もしかして心配してくれてるの?」

 

一方通行「だったらなンだよ、なにか悪ィか」

 

霊夢「いっ、いや。そうだとしたら、ちょっと嬉しいなって」///

 

一方通行「?」

 

頬を染め、声を小さくして話す。

そのため一方通行にはその声は届かなかった。

 

「そうそうなにも問題無かったわ。体には一つも傷は無かったし、ちゃーんと処女も__________」

 

霊夢「いらんことを話すなぁぁあああああ!!紫ぃぃぃいいいいいいいいいいいいい!!!!」

 

姿は見えず声だけがこの場に登場し、そして空間に開いたスキマを見ただけでどこの誰なのか分かった。

 

霊夢はさっきとは違う意味で頬を染めて大きく叫ぶ。

あのクソ妖怪の声が一方通行に聞こえないように。

 

紫「ふふ、処女(まだ)の事をそう隠す必要ないんじゃない?結構誰でも貴方程度なら気付けそうよ」

 

いつの間にかテーブルに座った紫は笑いながら言う。

 

霊夢「んな訳ないでしょ!!って言うかその話やめろ!!」

 

紫「なーんだ。つまらない」

 

一方通行「紫、何故ここに来た?どっちかに用でもあンのか」

 

デリケートな話をしていたと言うのに一方通行は意味なく現れる筈のない八雲紫に間をわって質問を投げる。

 

紫「ええ、あるわよお二人に」

 

一方通行「俺達二人にだと?」

 

霊夢「どうせ面倒事でしょ」

 

紫「んー、一方通行にとっては面倒事だけど霊夢にとっては楽しい事よ。今日、あの宴会場で夜の9時から霊夢の退院を祝して宴があるんだけど。来る?」

 

霊夢「え?本当!?行く、行く行く!!」

 

一方通行「俺はパスだ」

 

霊夢「ダメ、アンタも行くのよ」

 

一方通行「ふざけンな、朝早く起こされた上にそこまで付き合ってやるつもりはねェ」

 

霊夢「アンタさっき、言う事一つ聞くって言ったわよね?」

 

意地悪く笑いながらそう言うと、一方通行は歯を食いしばりなにも言わなかった、とゆうより言えなかった。

 

そして絞り出した言葉は

 

一方通行「………………くそったれ」

 

霊夢「よし、素直でよろしい。と、言う事で私達二人その宴に参加するわ」

 

紫「そう、良かった。主役の二人どっちかが不参加だったら宴が台無しになるとこだっわ。ねー?」

 

横に座る一方通行に最後の追い討ちのごとく視線を向ける。

すると、斜め下を向き一方通行は舌打ちをした。

 

霊夢「やったー!!何日かぶりのお酒だー!!」

 

入院生活は、ずっとベットに寝っ転がってるだけで結構ストレスが溜まっていた。

だからそのせいか退院した霊夢は少し、明るくなっていた。ってか明るくなりすぎていた。

 

一方通行「…………」

 

紫「ありがとう一方通行。貴方が取り戻してくれたお陰で平和な日常を過ごせているわ」

 

さっきまでとは雰囲気は違って、幻想郷の住人を代表をするような。そのような感じに感謝を述べる。

 

一方通行「…それは一時的なものだ。まだ元凶であるアイツを殺しちゃいねェ」

 

紫「一時的だとしても、十二分に感謝してるのよ。私達は」

 

一方通行「…………」

 

この日常を。この平和を。コイツらを。

どうやったら最後まで、守りきれるだろうか。

一方通行はそんな事を考えながら、紫と霊夢が喋ってる風景を眺める。

決して失いなくない大事なもの。

 

それだけが彼の目に映っていた。

 

 

 

それからは日は昇りきると、次は落ち始めた。

 

 

時は刻む。

宴が始まるその時刻まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は夜の9時。

 

霊夢の退院を祝してと、何でも良いから理由をつけて開かれる宴がはじまる時間。

 

あの宴会場には、もう多くの人物が集まっていた。

メンバーは全然変わらない。

しかし、それは今回ではない。

地霊殿の面々と魔界の主とアリスが参加することになった。

 

そして、「乾杯!!」と掛け声で宴が始まる。

 

実は宴会が始まる前の話。

一方通行は別にどこでも良いから座ろうとしたら、紫がため息混じりでステージに誘導してそこに座らせた。

 

それは百点満点の行動だ。

もし、一方通行をそこら辺の席に座らせたらちょっとした乱闘が起きるのは確実だ。

まあ、それが起きたとしても鈍感な"自称"悪党さんには分からないだろう。

 

一方通行「………………」

 

ステージにちょこんと座りながら、酒が飲めないから好きなコーヒーを飲む。

そのコーヒーは咲夜が淹れたもの。

 

彼の前に映る光景は騒がしく、楽しく酒を飲み飯を食う自分が今回も守れた奴ら。

 

正直眠い一方通行は体勢を崩し、肘を立てて寝る。

すると

 

「おいおい、寝るにはまだ早いぜ?」

 

正面に座り、顔を除かせる魔理沙。

 

一方通行「………魔理沙か」

 

魔理沙「はははっ、しっかしお前はいつも眠そうな顔をしてるよな」

 

一方通行「毎回毎回オマエらがバカ騒ぎするときは俺が疲れてる日なンだよ」

 

魔理沙「タイミングが悪いってやつか」

 

一方通行「そォゆうことだ。あァ、そォだ。これオマエに帰すの忘れてたわァ」

 

寝っ転がりながらポケットをゴソゴソ探り、取り出し。

そして、ミニ八卦炉を魔理沙に返す。

 

魔理沙「お!ちゃんとなくさないでくれたか」

 

一方通行「おォ。御守りになったか知らねェが一応感謝しとく」

 

魔理沙「なんだよ一応って。ちゃんと感謝しろよな」

 

一方通行「はいはーいィ……」

 

軽く適当に気の抜けた返事で返した。

 

「あれ?お兄ちゃんお眠なの?」

 

次に一方通行の周りに来たのはこいし。

先程まで命蓮寺の同じ修行者のこころと楽しく飲んで居たが一方通行の周りに女が居たから飛んで来た。

 

一方通行「あァ……クソほど眠ィが眠れねェンだよ」

 

こいし「そうなんだ…………………うーん???」

 

どうやら困っているらしい。

今回も幻想郷を救ってくれたお兄ちゃんのお悩みを解決したい。

そう考え、思考する。

 

魔理沙「すごい集中力だぜ…………」

 

雑音が耳に届いていない。

瞳を閉じ、人差し指を顎に当て首を傾けるこいしを魔理沙は感心混じりに眺めていた。

 

こいし「…………!良いこと思いついた。私が膝枕してあげる!そしたらぐっすり眠れるよ!」

 

その一言は宴会場を一瞬、物音を完全に消す威力の台詞だった。

 

一方通行「……枕なくても俺は寝れるが?」

 

こいし「お兄ちゃんは家で寝るときは枕をちゃんと使ってる?」

 

一方通行「おォ」

 

こいし「なら一回試してみようよ。ほら!」

 

正座をして、自分の太ももをポンポンと叩く。

頭を乗せろと体で表現してるのだ。

 

一方通行「…………しょうが__________」

 

_______ねェ。

と、試そうとしたら

 

魔理沙「待ちやがれ!!そんなお子様体型で膝枕なんて十年早いぜ!!ここは私が______」

 

神綺「そんな四十点の体でなに言ってる?ここは百点を越えて百五点のスタイルを持つ私が_____」

 

アリス「わ、…………私が_____」

 

フラン「フランがやる~!!」

 

魔界の主が参戦すると、それからは

 

一人目、二人目、三人目、四人目。

まだまだまだまだ、「私が」と。手を上げる者が増えに増えた。

 

気がつくと、一方通行の周りがこの宴会場で一番騒がしい場所となっていた。

 

一方通行「…………」

 

隙を見るや否や。

音も立てず、こっそり抜け出した一方通行は静かな場所へ避難する。

 

紫「…………どうぞ。お隣に」

 

たどり着いた場所は紫と酔いつぶれた橙を膝枕する藍。

そして白玉桜の魂魄妖夢と西行寺幽々子の二人が居る場所だった。

 

一方通行「悪ィがここに避難させてもらうぜ。何故か知らねェがあそこがアホみてェにうるさくなっちまったからなァ」

 

幽々子「原因は貴方なんだけどね~」

 

妖夢「それは言わないお約束ですよ」

 

一方通行「あァ?俺がなンだよ?」

 

神様のイタズラか、幽々子が口を開いた瞬間騒ぎが一層うるさくなり一方通行の耳にはその声は届かなかった。

 

妖夢「ほら、こうなるんですから」

 

幽々子「それも軽く天性の才能かしらね?」

 

一方通行「オイ、さっきからなに言ってやがる」

 

妖夢・幽々子「「なんにも~」」

 

一方通行「?」

 

息ぴったりに返され、そして答えも聞かしてもらえず。

鈍感さんには一つ、頭の中にクエスチョンマークが浮かぶ。

 

紫「そういえば三人はアレに参加しなくて良いの?」

 

軽く酒を飲み、発されたその言葉に妖夢、幽々子、そして藍の体が無意識に反応してしまった。

 

妖夢「別に私は………」

 

幽々子「もう紫たったら。からかわないでよ~」

 

藍「何で私も数に入ってるんですか……」

 

紫「そう。なら私が________」

 

反対側に座る一方通行の隣に座り、見せつける様に体を密着させる。

すると、三人はさっき言ってしまった言葉に後悔した。

それを紫は感じると口元を扇子で隠しながらほくそ笑む。

 

一方通行「紫。丁度良い、オマエに聞きてェ事がある」

 

紫「ん?何かしら?」

 

一方通行「前からずっと聞きそびれてたが、俺とオマエは昔会ってたンだよな。それを詳しく聞きてェ。俺が思い出せているのはほンの少しだからなァ」

 

紫「あぁそう言えば話してなかったわね。いいわ話してあげる、昔の出来事を__________」

 

 

 

 




とうとう明かされる紫と一方通行の出会った過去。

二人は昔、出会いそしてなにをしていたのか?



次回予告。

第三章 科学の復讐、最終話
ゼロ話と8話。

お楽しみに


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ゼロ話と8話

ゼロ話とはこの"幻想郷が一方通行に"が始まる前の話。
つまり、一章の『物語の始まり』より前のお話ということです。
8話は前回の続きです。

前回の話ですが、ちょっとおかしくなかったですか?
そう、実は前回は物凄く短かったんです。
理由はあのまま書き続けると、終わり方が少し変になっちゃうなって思って途中で手を止めて、編集して投稿したんです。
ですから今回のゼロ話と8話は、物凄く長いです。

あ、後これは気分的にやる過去に書いた話の誤字や脱字を探してる時に気付いたんですが『俺の小説読みにくくね!?』と感じました。
でも、このスタイルは変更できねー。

さて、と。
今さらかよと思うかも知れませんが、この物語は私のオリジナリティが含まれてる事をご報告させていただきます。
多分、誤字や脱字があると思います。
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります。

それでは三章、最終話をどうぞ!!


ここに一人、大妖怪が居た。

その妖怪は本当はどんな種族なのか分からず、"通称"としてスキマ妖怪と呼ばれていた。

 

名は八雲紫。

知る者はその名を聞くと、嫌な顔をするだろう。

 

八雲紫の良い噂は聞かない。

ただ、幻想郷に危機が迫ると博麗の巫女と共に異変解決をしてるとかしてないとか。

そのような目撃情報が流れていた。

 

そんな八雲紫は今日。

暇だから、家で寛ぎながら手当たり次第にスキマを開いて自分が居る世界とは違う、別の世界を覗いて暇を潰していた。

 

紫「…………ん?」

 

ある一つのスキマにだ。

気になるものを発見した。

いや人だ。

 

大きな建物。整備された綺麗な道。

そして、

 

白い髪に赤い瞳の幼い少年が歩いていた。

 

紫はその少年に目を奪われた。

気になって気になって、仕方がなくなってしまったのだ。

 

それからはどんな手品か、あのだるくて暇だった心は楽しく踊る一方に。

これが好奇心だというのだろうか。

 

居ても立っても居られなくなった紫はすぐに立ち上がり、お気に入りの日傘を持ってあの少年が映っていたスキマに入り会いに行く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからどれ程の距離を歩いたのだろうか。

行く先も、ゴールも、目標も無いままひたすらに歩く白い少年。

 

今、止まったら何か起きるのか。

と思った時だ。

 

「ねえ………坊や」

 

この町は避難警告が発令されていて誰も居ないとゆうのに。

人の声が。優しい女性の声が背後から聞こえた。

 

白い少年は、後ろに振り返る。

もしいつも追ってきて、殺しにかかる野郎どもだったら無視。

そう決めながら振り返ったのだ、

 

「________あァ?」

 

だがどうだろうか。

 

あの殺傷能力の高い武器はどこにもない。

おまけに防弾服も着ていなかった。

 

その人は久しぶりに見る、一般的な人間の姿だったのだ。

 

「誰だ…?オマエ………」

 

紫「私?私は_______」

 

笑いながら、差してる日傘をくるくる回し

 

紫「_____八雲紫。可憐で素敵な妖怪よ♪」

 

とても頭の可笑しな発言をしやがった。

 

紫「今、暇かしら?」

 

「暇か暇じゃないかと聞かれたら、暇」

 

さっきのは触れない事に決め、ちゃんと質問に答える。

 

紫「そうなの。お姉さんも暇なのよ、どう?一緒に行動してみない?暇潰しにお喋り相手にはなるかもよ?」

 

「俺と一緒に居ると死ぬぞ」

 

紫「坊やが大人の心配しないの。ただの人間程度じゃ私を殺せないわ」

 

「オマエも何か変な力持ってンのか?」

 

紫「ええ。私は神に等しい………いえ、神より上の力を持っている妖怪よ♪」

 

「ようかい……?さっきも言ってたが頭沸いてンじゃねェの?」

 

二度も言い、流石に触れられずにはいられなくなった。

 

紫「そんな言葉、誰から聞いたのよ。まったく、坊やが使う言葉じゃないわね」

 

「ほっとけ」

 

白い少年は、そう吐き捨てるように言った後、またあてもなく歩き出す。

 

紫はその少年の隣を日傘を差して歩く。

こうして二人は不思議な時間を過ごす。

お互い誰なのか、どこに居てどんな存在なのか分からないまま。

 

 

 

とくに何も話さないまま、一時間と経った。

そしてやっと口を開いた。

それは

 

紫「…………はぁ、はぁ。ねぇ、ちょっと休憩しない?」

 

だらだらと、全然運動をしていない大妖怪様だった。

 

紫は毎日、一般の睡眠時間(人間の)より多く寝て移動方法は行きたい所にスキマを開きそれを通れば『ハイ到着』と。

楽をして生活をしてたから、いくら人間より妖怪の方が力があると言っても体力は殆んど無みたいなものなのだ。

まあ途中途中、隣を歩いていると息を切らしていて白い少年は「コイツ体力ねェな」と思っていたらしいが。

 

「勝手について来て何言ってンだ………。まァいいか、腹が減ったし飯にするか」

 

周りを見渡す。

そしてあったのはコンビニだ。

 

今、この町は避難警告を発令されていて無人。

金を払わず商品を取ったって止められないし、万引きだと騒がれない。

 

白い少年を先頭に無人のコンビニに入る。

すると

 

「あそこに座る場所があるだろ。そこにでも座ってろ」

 

このコンビニにはフードコードがあって、そこに指を差して言った。

 

紫「………………疲れた…………こんな歩いたのは何年?いや、下手したら何十年ぶりかしら……」

 

ぐてー、と椅子とセットにあるテーブルに上半身を預けて座りながら呟く。

 

そしてそんな時間が経たずにあの白い少年が隣に座った。

このフードコードは角にあり、外が見えるガラス壁にピッタリと長いL字にテーブルが設置されている。

 

「飲み物と食い物だ。いらねェなら捨てろ」

 

紫「あら、私の分まで?ありがとう貰うわね」

 

コロコロ。

雑に自分の前に飲み物が入ったペットボトルと、袋に入ったパンが転がされた。

この少年は言葉は荒いがどうやら、優しい心は持っているらしい。

紫はそう感じながら、飲み物を飲もうとしたのだが

 

紫「……………………」

 

なんだこれ。どう飲めば良い。

飲み物が入ってるのが見て分かるがこんな容器、幻想郷には無く全くどんな仕組みか分からない物だ。

とりあえず手に持ち、ちゃぽんちゃぽんと音を立てながら色んな方向に傾ける。

 

「……なにやってンだよ」

 

パンコーナーに置かれてたハンバーガーを食っていると隣でヘンテコな行動をしているお姉さんに堪らず呟く。

すると

 

紫「あの……これどうやって飲むの?」

 

「………………はァ?」

 

このバカなに言ってやがる。

そんな言葉が頭に浮かぶ。

 

白い少年はペットボトルを開けるなど日常では良く起きること。

それは白い少年だけと限った訳ではない。

この世界に住む人間もだ。

だから、ペットボトルを開けられない完璧大人な容姿の女性に驚いた。圧倒的にと表現しても良いほどに。

 

白い少年はなにを言うわけでもなく、紫が持っているペットボトルを取り、そしてキャップを開け。渡した

 

すると紫はその行動を驚いていた。

嘘や偽りなど、そういった様子は一切無く。

 

紫「へぇ~……そう開けるのね」

 

「ペットボトルもねェ文化の場所で住ンでたのかよ、オマエ」

 

紫「そうよ。私が住んでる場所は幻想郷といって、この世界とは全く違う世界なの」

 

「…………やっぱオマエ、頭沸いてるわ」

 

意味不明な言葉はやはり深くツッコむことはしない。

次は紫は袋の開け方に悩まされていたが、それも白い少年がやってあげた。

 

紫と白い少年。

二人は多く話し合わず、黙々と食事を続けた。

そして時は経ち、十分に腹は膨れ体力も回復。

休憩は万全に出来た。

 

「さて…………」

 

そう呟くとゴミも片付けずに椅子から飛び降り、コンビニから出る。

 

紫「もう行くのね、全く。もう少し休めば良いのに」

 

ペットボトルは空。パンも全部残さず食べた。

何かに追われるように急いでるみたいに出た白い少年の後を追う。

 

「…………まだついて来ンのか」

 

紫「言ったでしょ?暇だって」

 

今日一日。

歩き、途中休み。また歩く。

それを繰り返し続けた。

 

するともう夜になっていた。

どこのどんな場所に自分達が居るか分からないが、近くのビジネスホテルに入り勝手に利用した。

勿論説明するまでもなく、そこは無人である。

 

「…………ここまでついでに来ンのかよ」

 

一つの部屋に二つのベットがある部屋に泊まる事にした。

のだが

 

紫「暇じゃなくなったら貴方から離れるわ。それまでよろくね♪」

 

紫はもう一つのベットに寝っ転がり、微笑み混じりで呆れる白い少年に向けて話した。

 

「…………チッ」

 

まさかここまでついて来るなんて想像もしてなかった。

何を言っても多分この女は離れないだろう。

分かるのだ、そういうのは。

この「誰の言うことも聞かん」と、オーラを放つのを見れば。

白い少年は舌打ちをするとベットに潜り目を閉じる。

そして数分後、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八雲紫と出会い、そして共に過ごすこと今日で四日目になった。

 

それほど長い時間を共に居たと言えないが確実に初めて会ったときよりは心の距離は縮まっている。

全部をほったらかして第一級危険生物から人が逃げ、蛻の殻の町の朝は静かである。

わざわざ歩道を歩く必要がないから、道路を歩く白い少年。

と、隣を歩く八雲紫。

 

「…………」

 

紫「……………」

 

二人は同じ時間に目覚め、何も言わず支度してホテルから出て歩き始めた。

 

下らない事を話もしないで

 

「まだオマエは暇じゃなくならねェのか」

 

紫「ええ。あっちの世界はまだ平和らしいわ」

 

「…………オマエが離れねェのは分かってる。だが今だけは離れろ、あいつらが来た」

 

空からヘリコプターの音がした。

それは詰まりあの連中が白い少年を見つけ、排除しに来たということ。

 

自分は何をされても絶対に無傷だ。

だがこの女は?

もしかしたら能力を持っているとしても、傷を負うかもしれない。

下手したら、命を落とすかもしれない。

 

紫「そうみたいね…………数は、十。いや十五」

 

パチーン!

手を掲げ指を鳴らす。

 

地上からはなにも来ていない。

空から一方的に攻撃を仕掛ける、作戦だ。

でも、片方はどんな兵器を使っても殺すことが出来なかった少年で、もう片方は神以上の能力を持つ妖怪だ。

 

紫は背後に無数のスキマを開いた。

それは空に続くほど広く。

 

紫「お邪魔虫はね、早く駆除するのが一番なのよ。それにこんな小さな子にあんな野蛮な物を向けるなんて腹が立つわ………」

 

会った時からそうだった。

この子は、何故か自分から離れるように言っていた。

初めは分からなかった、人と接するのが嫌だとかそんな感じはしていなく疑問に思っていた。

だが、今日。今、この時。

やっと理解した。

 

この子は自分が命を狙われていて、そして自分の近くに居ると傷付いてしまう。

そう思い、自分から離れて欲しかったんだ。

 

なんて優しいんだろう。何でこんな優しい子が命を狙われなくちゃいけないんだ。

紫は滅多に怒りの感情を表すことはない。

しかし今回は珍しく怒りの感情を抱いた。

それはこの世界に、この子が命を狙われなくちゃいけないこの現実に。

 

背後に開かれたスキマから、薄紫色に光る鋭い弾丸のようなレーザーが発射された。

そして複雑な軌道で空からこちらに向かって来ている軍事用ヘリコプターを次々と撃沈させる。

遠くからは爆発音が轟き、空が灰色に染まっていた。

 

ここからは悲鳴や叫び声などが聞こえないが確実に軍事用ヘリコプターに乗っていた者の中に死人はいるだろう。

理解不能な攻撃に襲われ、ホーミング性能120%の弾幕レーザーだ。

パラシュートでヘリコプターから逃げ出しても顔面を貫かれ顔のない人間一丁上がり。

まあ、それでも上空1000メートルから落下したら、ぐちゃぐちゃなお肉の完成になってしまうが。

 

「…………………」

 

紫「さ。邪魔者は消えたわ、散歩の再開よ」

 

「…………あァ」

 

問題は消えた。

毎度返り討ちにされるバカどもは、また白い少年を殺せず任務を失敗する。

しかし、相手のことなんて知るか。

勝手にやって勝手に自滅してるだけだ。

今回も、たまたま隣に妖怪が居て、その逆鱗に触れてしまい全滅した。

 

 

そしてそれから二人は歩いた、夕方になるまで。

 

 

 

 

今日は早くホテルに入った。

あの爆発場所から離れたが、それでもアイツらがまた襲ってくるかもしれない。

流石に夜に来るとウザイ。

だから、早く姿を消したのだ。

 

十分な食料も確保している。

そのため、何日かここでじっとするのも一つの手だ。

 

白い少年と、紫は今回も同じ部屋に泊まる。

今回のホテルは一番豪華なホテルだった。

 

 

「………………」

 

紫「ねぇ、アレが貴方が一ヶ所にじっとしないで毎日移動する理由?」

 

「…………別に」

 

紫「そう……」

 

そして二人は食事をして、貸し切りの風呂に別々に入り、決してここだと決めてないが最初に入ったその一室に帰って来た。

 

「…………なァ」

 

紫「?」

 

一つのベットに紫は座りちょっと隙間を開けて白い少年が寝ていると口を開いた。

 

「オマエが良く言ってる幻想郷って、どォゆう所なンだ ?」

 

紫「んー………、不思議な森があったり地獄があったり天界があったり妖怪が居たり人間が居たり神様が居たり、色々な所があって色んな子が居る楽しく騒がしい日々が送れる世界よ」

 

「それは……随分なンでもかンでも突っ込ンだみたいな世界だな」

 

紫「ええ、けどそんな世界でも私は退屈したわ。けどね貴方と一緒に居ると、とっても楽しいのよ?」

 

「俺と居て何が楽しいンだよ………」

 

紫「こうやって話してるとき、一緒に歩いてるとき。全部が全部私にとっては退屈なしの生活」

 

「………そォかよ」

 

紫「貴方って面白いのよ。興味が尽きないわ」

 

満面の笑みで笑っていた。

しかし

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

 

返答は無かった。

寝てしまったんだろう。

 

紫は白い少年にちゃんと毛布をかけてあげ、そして自分にも毛布にかけて今だけとは言わず今後から、この子がどこに居る子みたいに安心て寝れるよう願いながら寝た。

 

だが最後に______________から完全に意識を手離した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五日目。

 

今日は遅く起き、遅く出た。

良い子はお昼ご飯を食べ終え笑顔で公園に遊びに行く時間。午後といったところだろう。

 

なにも変わらない。

また二人で歩くと

 

思ったが

 

紫「ねえ、私ね。今日で貴方とお別れしなくちゃいけないの」

 

「……………………」

 

道路を歩いてる途中に切り出したのは、別れだった。

 

紫「私がいる世界で異変が起きたの、それを解決しなきゃいけない。いつもは私は関わることはしないけど今回ばかりはそうは言ってられないわ」

 

「……へェ。ならすぐに行けばイイじゃねェか、オマエは別の世界で生きてるンだろ?」

 

紫「……うん。やっと信じてくれたの?」

 

「所々ずれてたりすりゃ、無理でも信じるだろ」

 

紫「ふふっ……そう、それは嬉しいわ。いつか貴方が幻想郷にこれたら良いわね」

 

「行きたいとは思ってねェよ?」

 

紫「私が、よ。だって貴方と居ると退屈しないし、それに貴方だって平穏な日常が過ごせるのよ」

 

グニャン!!と目の前の時空が歪み、スキマが出現する。

 

紫「どう…………来る?」

 

スキマを背後にして話す。

 

そこに行けば本当に平穏が待っているのかもしれない。

そしてこの地獄から解放されるかもしれない。

 

しかし

 

「行かねェ………じゃァな」

 

紫を通り過ぎ、白い少年は真っ直ぐに歩いて行った。

その背中は小さく、どこか悲しくなるような冷たいもの。

だが、紫は知っている。

それは彼から距離を取って見た者からだと。

彼は優しい、例え命を狙われ悪意と憎悪を向けられているとしても

 

 

紫「…………また、会いましょ」

 

彼の背中を見た後、そう呟いてスキマの中へ消えていった。

 

 

そして、その七日後。

白い少年は学園都市と出会い、一方通行(アクレラレータ)と呼ばれる化け物となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「______________ま、こんな所かしら」

 

一方通行「その無駄に長ェ話を要約すると、ただ昔に五日間だけ一緒に飯食ったりしてただけだろ」

 

紫「ええ。なにか特別なことは起きなかったわ。だから何か期待してたらごめんなさい」

 

ただ、昔。

出会っていましたよー、と言っただけみたいな話をした。本当にそれだけ。

 

一方通行「してねェよ。なンか知らねェが気になったから聞いただけだっつの」

 

縦長の宴会テーブルにつき、目を閉じて軽い口調で呟く。

一つ、気になっていた事が解けた。

その些細なことが終えたのだ。

 

そしたら

 

『へぇ~……二人にそんな過去が』と、

一人や二人、三人ぐらいの声数じゃない。

無数の声が一斉に同じ言葉を放つ声が背後からだけと限らず前からも聞こえた。

 

一方通行「あァ?」

 

眠いからもうここで寝てしまおうと、瞳を閉じてたが開く。

するといつの間にか、あの騒いでた奴らだけじゃない。この宴会に参加した連中全員が一方通行の周りに集っていた。

 

一方通行「なに集まってやがンだ?」

 

紫「さあ?貴方の話が聞こえたからじゃない?」

 

一方通行「はァ?」

 

さっぱり分からん。意味不明なことを言われた。

だが一方通行はそれを無視して、また瞳を閉じる。

 

周りはうるさいが、それでも。

イライラなどしなかった。

逆に楽しいという感情が、内側から感じる。

しかしそれは顔には現れなかった。

 

一方通行「チッ、うるせェな」

 

さとり「貴方もうるさくすれば良いじゃないですか」

 

萃香「そうそう、バーっと飲んで」

 

ルーミア「いっぱい食べて」

 

大妖精「歌ったりして」

 

藍「途中休んだりして」

 

霊夢「とりあえず飲め!!宴会はそっから始まるのよ!!アレを見てみなさい」

 

チラッと一方通行は見た。

霊夢が片手に酒を持って指差した方向には

 

チルノ「あははははははははははははは!!!!アタイは最速最強ぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

顔を真っ赤にしてこの宴会場を、暴走したジェット機みたいに飛び回るチルノの姿が。

 

霊夢「アレぐらい酔いなさい、分かった?!」

 

一方通行「…………角で吐いてるぞ」

 

霊夢「え?…………えぇぇえええええええ!?コラー!!吐くなら外って言ったでしょ!?」

 

大妖精「大丈夫チルノちゃん!?」

 

ルーミア「あはは!!吐いてるー!!」

 

三人は吐いてるチルノのに駆け寄っていった。

 

一方通行「…………………オイ」

 

ほんの少し目を離した隙に、自分の前にはガラスのコップがあり透明な水が入っていた。

しかしそれは匂いで分かった。

これは普通の水ではない、アルコールが含まれる飲み物。すなわち酒。

 

一方通行「誰が置きやがった……」

 

妖夢「…………?」

 

幽々子「…………?」

 

紫「…………?」

 

橙「zzz…………」

 

藍「だ、誰でしょうね?」

 

一方通行「オマエだろ、藍」

 

最後の藍だけ顔を反らして言い、明らかに嘘を吐いた反応だった。

 

藍「違いますよ、ね。紫様」

 

紫「そうねー、一方通行が飲めるような弱い酒を自前で持ってきていてそれを注いだなんて、私は口が裂けても言わないわ」

 

藍「バッチリくっきり丁寧に全部言っちゃってるじゃないですか!?」

 

紫「ふふ、私ったら♪」

 

藍「何ですかそのわざとらしい反応はー、もー……」////

 

いじけた仕草をして照れていた。

そして一方通行はその話を聞いた後、ガラスのコップを持つ。

その瞬間、周りの女子達は動きを止めた。

 

妖夢「え………まさか…………」

 

一方通行「……これは弱ェ酒なンだよな」

 

藍「は、ハイ。とびきり」

 

一方通行「…………そォか」

 

そう呟くと、コップを口元まで運び。

そして酒を一口飲んだ。

 

皆はそれを固唾を飲んで見守っていた。

 

で、見守もられていた一方通行は

 

一方通行「……………………………………いける」

 

長い沈黙の後、ポツリと呟く。

 

その声が皆の耳に届くと、わーッ!!!!!!とまるでオリンピックで金メダルを取ったかのように騒がしくなった。

 

魔理沙「さぁー!!一方通行が酒を飲めた事に乾杯だー!!」

 

ステージに立ち、お猪口を掲げて叫ぶ。

すると

 

「「「かんぱーい!!!!」」」

 

次は皆が持っていた酒を掲げて叫ぶ。

 

一方通行「…………オマエら、それが言いてェだけだろ。チッ、くそったれ」

 

面倒臭そうな口調で呟くが、このバカ騒ぎにかき消された。

 

魔理沙「そーだ、一方通行。飲めるようになったんだ、他の奴らとも飲むよな?」

 

一方通行「あァ?そンな_____________」

 

魔理沙「よし!!順番に飲みに行くってよ!!お前ら待っとけ!!」

 

言葉は途中で遮られた。

そして了承してないのに、知らない内に話しは進み一方通行はこの宴会に居るすべてのグループと飲むことになった。

 

文句の一つ二つ。

いいや、百や二百と時間が経つにつれ出てくるが一方通行はそこでため息を吐いて諦めた。

半分はヤケクソだ。

 

この宴会にはグループが存在する。

例えば

今、居るグループは白玉桜グループ。

などとそういった感じだ。

 

そしてこの宴会にいるグループは、永遠亭。紅魔館。地霊殿。妖精達と妖怪達。守矢神社。博麗の巫女とその他。

一方通行はこれら全員と飲まなくてはいけない。

 

まずは

 

永琳「いらっしゃい」

 

一方通行「おォ」

 

永遠亭の連中が集まってる場所に来た。

 

永琳「無理して飲んでも大丈夫よ、良い薬があるから」

 

一方通行「それはオマエが持ってるビンのやつか。だったら遠慮しとく、ガッツリドクロマークある薬をハイそうですかっつって飲むわけねェだろ」

 

縦長の宴会テーブルの右側の中心に一方通行が座っている。その隣にてゐと輝夜。

左側には鈴仙、永琳、妹紅との順番だ。

詰まり一方通行の前には永琳が座っている。

 

一方通行「………っつゥか思ったンだが、順番に飲むってなンだよ?」

 

鈴仙「順番に移動して話す、ってこと」

 

一方通行「それはアレか、俺は毎回毎回移動する度に話のネタを探さなきゃいけねェのか」

 

てゐ「アハハハ!!まっじめ~!そんなの気にする必要なんか無いよ、ただあなたは一緒に飲めば良いの。ホラ」

 

そう言って取り出したやかんからコップに注がれたのは、ゴポゴポと泡が立つ猛烈に熱い赤い液体だった。

 

てゐ「さ……グイッ!と」

 

居酒屋に居そうな、気の効いた姉ちゃんのような、そのような表情で絶対に飲み物じゃないクソ熱赤液体を勧めやがったから、

 

一方通行「あァ_________って、飲むわけねェだろォがァァ!!!」

 

一度飲もうとする行動を起こした、だがそれはフェイクで隣にいるてゐの頭をガシッ!と掴み持ってるコップに入ってる液体をてゐの口に流し込む。

 

てゐ「ッ!!!ガッ!…………ボブバファッ!?ババババババババッッ!!!?」

 

一方通行「さァて一人片付いた」

 

一撃KO。

その赤い液体の正体は熱く温めたありとあらゆる辛いものを混ぜ込んだ激辛ジュース。

しかし、辛いわ熱いわでお口と喉は大パニック☆で、どんな猛者でも倒せる究極のイタズラ兵器。

 

鈴仙「いやいやいや!?一人ずつ片付けていくのが宴会じゃないからね!?」

 

一方通行「あ?なに言ってやがる。俺の宴会の最後の記憶はオマエらに無理やり喉奥まで酒をブチ込まれたやつだぞ?」

 

鈴仙「……あー、アレは一方通行が悪い」

 

妹紅「うん」

 

輝夜「うん」

 

永琳「関係ないけし、知らないけど私もそう思う」

 

一方通行「………四対一かよ」

 

コップを交換して、それに酒を注ぎ飲む。

 

一方通行「チッ…………」

 

妹紅「なー、一方通行。お前どうやって生活してんだ?」

 

輝夜「どうしたの急に?」

 

妹紅「気にならないか?仕事もしないで生活してるんだよ?」

 

輝夜「へー……たしかに」

 

永琳「どっかの誰かさんと一緒ね」

 

鈴仙「もう目で分かっちゃいますよ師匠。完璧その人に目がいっちゃってます」

 

一方通行「あン?輝夜と一緒にすンな、俺は働く必要がねェだけだ。前に金がたンまり手に入ったンだよ」

 

妹紅「なにそれ!?犯罪臭が凄いすんだが!?」

 

輝夜「いちいちソイツの台詞にツッコミをいれたらキリがないわよ?」

 

鈴仙「たしかにそうですね」

 

一方通行「まァ一応答えを言うと、何人も__________」

 

永琳「ストップ。その話はここではしないの」

 

一方通行「………チッ、酔いが回ってた。忘れろ」

 

ゴクゴク。

アルコール度数が低くても酒は酒。

飲み続ければ必ず酔いは回るもの。

オマケに一方通行は酒に弱い体質なのだ。

だが永遠亭の連中と酒を飲み、軽くおつまみを摘まむ。

 

輝夜「そろそろ移動みたいよ、行ってらっしゃい」

 

一方通行「あァ、いつかまた永遠亭に世話になる時が来るかもしれねェ。そン時はよろしくなァ」

 

鈴仙「了解よ」

 

永琳「いつでも来てね」

 

妹紅「途中私の所も寄れよな」

 

一方通行「覚えとく」

 

こうして永遠亭の人達と飲むことは終わった。

次に向かった場所は

 

フラン「やったー!!アクレラレータだ!!」

 

一方通行「さっきからずっとこの宴会場に居るだろうが………」

 

紅魔館メンバーが居るところ。

席は右側のまたまた中心で、フランとレミリアに挟まれた状態。で、左側にパチュリー、咲夜、美鈴、小悪魔だったのだが。

ここで急遽変更となった。

フランが「なんかアンバランス」と訴え

 

フラン「これでバランスが良くなった!」

 

一方通行「……オイ」

 

フランの席は一方通行の膝の上。

そしてさっきまでフランが座ってた席には小悪魔が座る事になった。

 

レミリア「フランの次は私ね」

 

フラン「良いよー!!」

 

一方通行「勝手に決めンな」

 

レミリア「咲夜…………」

 

咲夜「はっ」

 

名前を呼ばれ視線を向けられただけなのに、それだけで主の命令が伝わり行動に移る。

 

咲夜「…………どうぞ」

 

一方通行「なァ、コーヒー渡せば何でもやると思うなよ?」

 

レミリア・咲夜「えっ!?」

 

一方通行「本気で思ってやがってたか、クソったれ」

 

出されたし、飲むか。

だが彼の本心は咲夜の淹れるコーヒーが今まで飲んできた中で一番美味しく、金を払って飲みに行きたいほど。

そのため"飲むか"、じゃなく"飲みたいから飲む"。が正解。

 

酒を飲んでいたが、ここにきて一方通行はコーヒーを口にした。

やっぱり、俺は酒よりコーヒー。

そう確信したのは言うまでもない。

 

一方通行「でェ、ここでは俺は何をすりゃ良いンだ?」

 

フランが膝の上にいるのはもう良い。

退かすことは諦めた。

 

パチュリー「レミー達の話でも聞いてあげなさいよ」

 

一方通行「話ねェ……ンなもンあンのか?」

 

パチュリー「聞かれてるわよー」

 

レミリア「え?そうね。あぁ、前から聞いてみたかったんだけど、たまにうちにバイトしに来ない?」

 

一方通行「はァ?」

 

レミリア「正直あの家広すぎて、咲夜だけじゃ足りないのよ。他の使用人は全然使えないし」

 

美鈴「ちょっと待って下さい!!私は!?」

 

咲夜「居眠り門番は黙ってなさい」

 

美鈴「…………、はい」

 

しゅん、と。

枯れた花のように、美鈴は萎れた。

そしてブツブツと呟きながら酒を飲む。

 

レミリア「で?どうなの?返答は」

 

一方通行「………考えとく」

 

レミリア「そう。にしてもこれが言えてよかったわ、あんたって殆ど霊夢が連れ回してるじゃない…………少しは私の所にも来なさいよ」////

 

最後の方は小声になってしまう。

顔が熱くなるほど恥ずかしいが、それでも伝えたかった。

 

一方通行「?…………悪ィ」

 

おいおい嘘だろ!?

そんな言葉がどこからか、聞こえたが気のせいだろう。

一方通行は素直に悪いと思った。

何故かと、聞かれれば答えることは出来ないが。

 

レミリア「う~……恥ずかしい」////

 

咲夜「……お嬢様」

 

一方通行「……はァはァして鼻血を垂らすな、クソメイド」

 

それは変態と、蔑まれる領域に足を踏み入れた熱狂的なアイドルファンのような、危ない目に淫らな顔。

酒が入ってるせいか、今まで隠してた咲夜のもうひとつの顔が明らかになる。

 

小悪魔「我々紅魔館からすると、いつものことです。気にしないでください」

 

一方通行「何でここに来て、オマエがまともぶってンだよ」

 

小悪魔「生まれてからずっとまともですよ!!」

 

一方通行「…………常識人は勝手に人の家に住まねェよ」

 

小悪魔「うっ……痛いところを」

 

パチュリー「でも貴方よりはまともよ?」

 

小悪魔「パチュリー様………」

 

パチュリー「今日だって…………あれ?こあの、まともなエピソードが浮かばない…………」

 

小悪魔「って!!何ですかそのオチ!!上げて下げるパターンですか!?」

 

パチュリー「そんな大声出さないで、飲み過ぎた…………頭に響く」

 

小悪魔「パチュリー様?パチュリー様ぁぁあああ!?」

 

ぐらんぐらん、頭を回したと思えば後ろに倒れた。

パチュリーは余り外出をする方じゃない、それに宴会参加する柄じゃない。

無理をしたのか、してないのかは本人しか知り得ないがとりあえず休ませてあげよう。

小悪魔は倒れたパチュリーを気にかけ、氷水を作り側にいてあげる。

 

一方通行「そォいや宴会が始まって、どンぐらい時間が経ったンだ?」

 

自分の膝の上に座っているフランの頭の上に頭を乗せる。

もうなんだか何もかも面倒になってきた。

座ってることすらも。

 

咲夜「もうかれこれ一時間以上は経過したんじゃない?」

 

一方通行「まだ続くンだよな……これ」

 

フラン「嫌なの?」

 

一方通行「いや、俺の体はどこまで持つかなァ……てなァ」

 

美鈴「そのような心配はする必要がないかと。それに私達と一緒に飲む時間は終わりのようですよ、次に移動ですって」

 

一方通行「だ、そうだ。どけフラン」

 

フラン「…………もっと一緒に居たかったのに」

 

一方通行「オマエの姉に忠告されたとうり、オマエらにも顔を出す」

 

フラン「ホント?」

 

一方通行「あァ。もしかしたら、そン時は庭の掃除をしてるかもしれねェがな」

 

レミリア「……それって!?」

 

フランを持ち上げ横に座らせた。

そうすれば自分が立つ邪魔をする者は居ない。

 

一方通行は立ち上がり、次に向かう。

 

さとり「お待ちしてましたよ、どうぞ」

 

燐「あらら、顔が赤くなってますね。これ以上は酒を飲まない方が良いのでは?」

 

一方通行「安心しろ、最悪の場合俺のバックには毒薬がある」

 

燐「何で真顔で、背後に毒薬宣言…………」

 

お次は地霊殿のメンバーが集う場所。

一方通行はまたも姉妹に挟まれる。

そして反対は燐と空が座っている。

 

空「えっと……あくせら…………れーた?」

 

一方通行「良く覚えられたな、鳥頭」

 

こいし「毎日紙に書いて覚えてたからね。楽勝だよね?」

 

空「はい!」

 

一方通行「楽勝って意味分かって使ってるか?」

 

こいし「簡単にできるってことでしょ?」

 

一方通行「そォだ。簡単に覚えれるヤツはな、毎日紙に書くなンてしねェで聞いて一発で覚えれるンだよ」

 

こいし「そうなの?お空は毎日紙に書いても覚えられなかったものがあったよ?」

 

一方通行「…………どォしよォもねェな」

 

人それぞれに価値観というものが存在する。

ゴミクズを宝に見える者や、見えぬ者。

金貨がゴミで、塩が高価。

などなど。

 

それに似たようなものだ。

何度も書いて覚えたと、何度も書いても覚えられなかったもの。

何度か書いて覚え、楽勝と胸を張るのも。

 

こうゆう時の正解な答えは

 

一方通行「……しっかしアレだ。良く覚えられたなァ、素直に褒めてやるよ」

 

褒める。

柄じゃないとか、心の中で吐き捨てているが。

それでも言った。

 

別に一方通行は冷たい人か冷たくない人と問われれば、冷たくない人に分類される。

冷たい人が他者を助けるだろうか?

冷たい人は頼み事を引き受けるだろうか?

 

彼自身、自分をどう思ってるかは何となく分かるがそれでも。

この世界の意見からすると、温かい人の側に彼は立っている。

 

空「うん……、覚えたかったからすぐ覚えられたんだ」////

 

一方通行(………たった数文字を覚えられねェ、っつったら笑い話の元になるもンなァ________)

 

いい加減、気づけるだろうが。

と他の女性達は自分の中で呟く。

 

そして、ここでも言おう。

決して空は覚えの悪い方ではない。

頭の回転も悪くない。

しかし、それは自分が大事と認識しない限り、一般的な頭脳は働かないのだ。

毎日紙に一方通行と書いてたと言うが、それは彼に特別な感情を抱いてる故の行動。

 

こいし「…………」

 

さとり「…………」

 

空「うにゅ!?」

 

 

二人の姉妹が動く。

その行動に空は目を丸くした。

これが横に座る特権。

とでも語るような、そのような目を空に向けて、こいしとさとりは片方ずつ一方通行の腕に抱きつく。

姉妹は空が抱いてる感情は知っている。

しかし、それは自分もだ。

些細なことがきっかけだとしても、それでもこの感情は曲がりのない真の心。

家族もクソも関係ないというヤツだ。

 

ここで、一人。

この甘々な雰囲気に取り残されたのが燐だ。

さとり、こいし、空は何か楽しく一方通行を中心にやっている。

しかし、燐は一人でその楽しそうな雰囲気を眺めるだけ。

 

燐(…………楽しそうだなー。____________あ!!)

 

だがしかし、暇になった燐は見た。

それは

 

一方通行(……両手が使えねェから食えねェ…………)

 

テーブルの上にある宴会料理を、じっと見つめる一方通行だった。

燐はその姿を見て思い付く。

自分もあの三人と一緒にこの不思議な雰囲気に混ざる事が出来る方法を。

 

燐はすぐに行動に移す。

まず、一方通行が見ていた宴会料理を自分の箸で掴む。

それはローストビーフ。

男女問わず好きな食べ物と言っても過言ではない。

安いものは不味いが、この宴会に出された料理の数々は超高級品。

金持ちが二日に一回食べれるようなものだ。

そして燐はローストビーフを箸で掴んだまま、優しく微笑んで一方通行の顔の前に差し出す。

 

これは恋愛漫画やラブラブカップルが良くやる『あーん♡』である。

 

燐「さあ!どうぞ?」

 

一方通行「…………」

 

楽しそうだ。

そう、一方通行は思った。

しかし空やさとりにこいしは思考が止まってしまう。

 

燐「どうしたの?これが食べたかったんじゃないの?」

 

一方通行「………………」

 

こういう場合どのようにすれば正解なんだろう。

幻想郷最強にして、神より上の次元に君臨する一方通行は悩む。

これは悪意か善意かは分かる。

善意だ。

 

なら…………。

と、一方通行は首を前に動かし口を開きパクっとローストビーフを食べる。

 

一方通行「………………、これで満足か?」

 

食べたものを飲み込んだら、質問を燐に投げる。

 

燐「…………うん(まさか、ホントに食べるなんて………)」

 

一言の回答。

それとまさかの出来事。そのふたつが燐の頭の中に浮かび、答え。そして驚く。

 

しかしそんな燐は置いといて、さとりとこいし、空は黙っていられない。

自分達も箸を持ち宴会料理を掴む。

そして一方通行に料理を食べさせていた。

そんなバカバカわんこそばみたいにハイペースではないがそれでも一方通行はキツく途中で能力を使って脱出した。

 

こうして一方通行の移動時間と脱出時間が奇跡的にマッチして理想的な感じで逃げれた。

 

 

『あーん♡』も出来たし、彼と一緒に酒も飲めた。

さとり、こいし、空は十分納得して一方通行を次に見送る。

燐は一方通行に食べさした時に使った箸を眺めていた。

 

燐(…………一方通行ね、ちょっと良いじゃん)

 

小さな、なにかが心の奥に咲いた。かもしれない。

 

 

 

 

一方通行が逃げた先、これがここだ

 

慧音「様子は……大丈夫そうだな、座りな」

 

ルーミア「どうぞどうぞ~♪」

 

チルノ「気持ち悪い…………」

 

妖精達と慧音が座るテーブル。

そこに一方通行は腰を下ろす。

 

一方通行「…………あァ?」

 

見ない顔が二人。

一人は肩まで伸ばしてない薄紫のふわっとした髪に禍々しいデザインの服を身に纏い、異様な翼と耳と爪と羽を持っていて羽の飾りが付いてる帽子を被っていた。

もう一人は首元までかからない位の緑色のショートカットヘアに甲虫を模したようなマントを羽織り、白いシャツと紺色のキュロットズボンを着ている子だった。

 

その二人は反対側に座っている。

一方通行の隣には慧音、そしてその隣に酔い潰れたチルノ。残りの大妖精とルーミアは反対側だ。

 

一方通行「知らねェガキが居るな。っつゥかさっきから聞きたかったが教師やってるオマエはガキが酒を飲ンでも何にも感じねェのか?」

 

片膝を立てて横を向き、話す。

すると隣にいる慧音は首を傾げて

 

慧音「……この子達は妖精と妖怪。酒の年齢制限はないんだよ」

 

一方通行「ガキはガキだろ?」

 

慧音「まぁ、それはそうなんだが………これが日常的に起こる事だしね」

 

一方通行「……そォだったな、普通を求めた俺が悪かったな」

 

慧音「待て待て。この子達は普通の子供達同様、ちゃんと私の所で勉強してるぞ」

 

一方通行「……オマエは人里で寺子屋を開いてるンだったな、その中には妖怪や妖精のガキも居ンのか」

 

慧音「ああ、最初は人間の子供だけだったよ。けど暇してそうだったし無理矢理取っ捕まえて寺子屋にブチ込んだんだ」

 

一方通行「……………イイ趣味してンなァ」

 

その言葉は褒め言葉かじゃないかと言ったら、じゃない方だ。

一方通行は酒をコップに注ぎ、そして酒を飲む。

 

慧音「………だけどねもう妖怪は里には入れない、知ってるだろ。あの暴走者が里で大暴れした日から里の人間は妖怪を恐れ今日まで一人も妖怪を里に入れてない。だから、だからあの寺子屋とは違うまた別物の寺子屋が必要なんだ」

 

狂妖怪里防激戦のことだ。

あの日、里には狂い暴走する数々の妖怪を家の中で見た人間が多く居た。そして想像し、恐怖する。自分より、力が強く武器を持ってしても敵わない。

なのにまた妖怪が、里に攻めてきたらどうしよう。

もう一度、あの日のような事件が起きたら今回みたいに一人も死者が出ずにことを納められるだろうか。

こういう場合人間はプラスに考えない、最悪の結末。超マイナス的に考える。

そうした結果が、とある特別なルート以外は、容易に里に入れなくなってしまう。それは妖怪だけじゃない、人間以外の種族全員だ。

そのせいで、今日まで慧音は裏で努力をしていた。

誰に頼ることもせず、一人で必死に。

 

一方通行「……それで?」

 

慧音「森の中にもう一つ寺子屋を作ったんだ、雨の日は利用できないけど…………」

 

一方通行「あァ……だいたい察しがついた」

 

思い浮かんだのは大樹に黒板を張り付け、そしてその前には木製の椅子や机がセットで並んでいる風景だ。

 

慧音「この話も?」

 

一方通行「……あン?なにかこの話には目標のゴールがあンのか?」

 

慧音「ああ、実はキミにその森の中にある寺子屋で教師になって欲しいんだ」

 

一方通行「……………………はァ?」

 

頭がフリーズする。

それは電池が切れたロボットのように。

 

慧音「妹紅がな、頭の良いヤツを見付けたって言っててな、それがキミなんだが。それを私は聞いてキミに提案したかったんだ。新しくもう一人の教師になってくれって」

 

一方通行「……俺が教師か。随分と似合わねェと思うが?」

 

慧音「いやバッチリ合っているよ。私は歴史は結構得意だが数学や漢字は一般程度さ。キミは数学や漢字はどうせ気持ち悪い程完璧なんだろ?」

 

一方通行「……オイ、俺にそンなドストレートに言いやがった路地裏のクソ共は壁の染みにしてきたぞ」

 

慧音「別に構わないぞ?それで教師をしてくれるならな」

 

一方通行「………………チッ」

 

慧音「答えはすぐにじゃなくて良い。ならべくゆっくり考えて欲しいからね」

 

一方通行「………分かった」

 

慧音「…………ありがとう」

 

体勢を崩した状態で上を向く。

考える時はこうしてなにもない所を見れば良く考えることができる。

そして、息を吐き次は下を向く。

唯でさえ今は酒を飲んで酔いも回っているのに、それでもこの件は慎重に悩む。

だがこれが一方通行だろう。

もうなにもかもに面倒になり、考えるのを止めた。

 

一方通行(…………)

 

慧音「そういえばあの二人に自己紹介させようか?」

 

一方通行「あァ?」

 

慧音「名前を知らない子と酒を飲むのも何か変だろ」

 

一方通行「この状況もう変だが………………」

 

慧音「それはこれ以上ツッコムな、ややこしくなりそうだ」

 

一方通行「……そォですかァ、だったらもォなにも言わねェよ。好きにしろクソったれ」

 

慧音「よし。じゃあこのお兄ちゃんに自己紹介して貰おうかな」

 

そう言って名の知らない妖怪の少女の二人に視線を向ける。

二人は顔を合わせると、同時に首を傾げた。

しかしもし断ったものならあの半人半妖の手加減なしの頭突きがくるかもしれない。

それを想像すると顔が真っ青に染まる。

 

嫌だ。酔った状況で"アレ"を食らうと脳がぶるんぶるん揺れて気持ち悪くなって死ぬ。

いや冗談抜きで。マジで。

 

「……ミスティア・ローレライ、よろしく」

 

「リグル・ナイトバグ、です」

 

慧音「……ありがとね。この人は一方通行よ、って知ってるか」

 

リグル「有名人ですからね。それに前の宴会でも会ってますし」

 

そう、前の宴会でリグルとミスティアは一方通行を目にしている。

だが、その時は既にあっちこっち移動してたり、大騒ぎしてたりで会話する時間はなかった。

 

ミスティア「それにチルノが普段うるさく言ってますからねー、『白くて細いのが一方通行だ!!』って」

 

一方通行「…………」

 

慧音「はははっ!!それは言ってあげるなよ、チルノの寿命が縮まりかねないから」

 

ピクリ。

自分の名を呼ばれたと感じたチルノはふらふら起き上がる。

 

チルノ「………んー?あたいを呼んだ?」

 

慧音「いいや。呼んでないからまだ寝てな、気持ち悪いんだろ」

 

チルノ「……うん………、だけどあたいも混ざりたいー」

 

一方通行「…………チッ」

 

舌打ちをしたらと思うと、一方通行は手をチルノへ伸ばし、肩へ触れる。

 

チルノ「……なにか付いてたー?」

 

一方通行「じっとしろ、酔いが回ってていつもみてェには能力使えねェンだよ」

 

そして十秒、二十秒経過する。

すると、チルノは体の変化を感じた。

 

チルノ「……?あれ、気持ち悪く………ない?」

 

慧音「え?何をしたんだ!?」

 

チルノから手を離し、肘をテーブルについてる一方通行へ質問する。

たった手を触れただけなのに、顔色が悪かったチルノが突如復活したのだ。

疑問に感じるのは当然と言えば当然だろう。

 

一方通行「……酔いの元を分解した」

 

慧音「そ、そんな事もできるのか……」

 

一方通行「ベクトル操作はただ反射するしか能のねェ能力じゃねェ。向きがある限りなにもかもを操る能力だ」

 

慧音「なるほど、体の中の流れを操ってアルコール分解の時間を早めたのか」

 

一方通行「……そォいうことだ。良い勉強になったか、慧音先生よォ」

 

人を小バカした態度で笑う。

すると、慧音はぷくっと怒りを表情で表すが一方通行にはどこ吹く風だ。

 

『復っ活!!』とチルノはまた酒を皆で飲んでいる。

楽しそうに、愉快に、素敵に。

そのバカ騒ぎをなにか言うわけでもなく、黙って飲んでいると

 

ちょんちょん。

袖が引っ張られた気がした。

一方通行は誰も居ないはずの方へ向くと

 

大妖精「お隣いいですか?」

 

一方通行「……あァ、構わねェよ」

 

もう座っていたが、ちゃんと確認を取る。

そして一方通行の返答を返されると、礼を言って微笑んでいた。

 

大妖精「……あの、前から一方通行さんと話してみたかったんです。いいですか?」

 

一方通行「いちいちそォいう確認取る必要はねェよ。話してェ時はいつでも話せ」

 

大妖精「はい……、ではお言葉に甘えて」

 

コホン。

今からスピーチでもするかのように、真面目な顔をしていた。

 

大妖精「なぜ、貴方は自分の世界に帰らないのですか?」

 

一方通行「……………くだらねェな」

 

大妖精「……え?」

 

疑問に思っていたことを打つけてみると、まさかの一言。吐き捨てるように言われた。

 

一方通行「あっちの世界より、こっちの方が居心地イイからに決まってンだろ。まァうるせェのは五分五分だが、それでもこっちは俺が求めてたゆっくりする時間があるしなァ……ってのが理由だが、それで満足か?」

 

大妖精「……なんか、サッパリした理由ですね」

 

一方通行「人間なンてそンなもンだ。大抵動機はこンな感じにくだらねェ理由をぶら下げて動いてる」

 

箸を持った。

腹が少し減り、食べ物でも口にしよう。

だが

 

ルーミア「これいただき!!」

 

ルーミアに取られてしまう。

しかし大丈夫。

まだまだ肉料理はある。

 

だがだが?

 

ルーミア「これもこれもこれもこれも!!」

 

一方通行「…………」

 

次々と取られ、一方通行は箸を握り黙るだけだった。

その光景を見ていた今自分のいるテーブルに座る者達は皆笑っていた。

 

リグル「あははははっ!!ごめんなさい……笑ってはいけないと思うんですが…………ック、ははははは!!」

 

ミスティア「…………ぷっ。ハハハハハハッ!!全部取られてる!!」

 

チルノ「アハハハハハハ!!一方通行が負けた負けたー!!」

 

大妖精「ッ~~~~!!!っ、ハハハハハハ!!」

 

慧音「わざと譲ってあげたのか!?優しいな!!ははははははは!!」

 

一方通行は箸をバギッ!!とへし折る。

だが怒りが沸き上がるのでなく、ため息しか出なかった。

 

一方通行「チッ…………」

 

その後はそれが切っ掛けでリグルやミスティアも、気軽に話しかけてきた。

噂では最強など、無愛想など言われてるが話してみればそうではない。

 

優しく受け答えをちゃんとする、一人の少年だった。

 

 

そして楽しい時間は経ち、一方通行の移動時間が来る。

手を振られ見送られ次に移動する。

 

 

 

そこは。

 

神奈子「よー!!待ってたぞ」

 

諏訪子「待ちくたびれるぐらいね」

 

守矢神社の神様と巫女がいる場所だ。

一方通行は諏訪子と早苗が座ってる方じゃなく神奈子が居る方へ座る。

 

一方通行「やっぱり、そいつはダウンか」

 

諏訪子「……一口か二口目ぐらいでかな?」

 

一方通行「クソ弱ェじゃねェか」

 

諏訪子「違うよ、これは神奈子が強い酒をイタズラで何も言わず注いでそれを飲ましたからだよ」

 

神奈子「ほら、ピーマンとか黙って食べさせると克服できるじゃない?そのノリでやってみたんだけどね……」

 

一方通行「その理論で何でも克服出来りゃ、この世の中の奴らは好き嫌いがなくなるぞ。だが何故好き嫌いがまだあると思う、それが間違いだからだ」

 

神奈子「そう詳しく言うなよ、ノリだよノリ」

 

一方通行「ノリかァ……酔っぱらいは怖ェな」

 

諏訪子「神奈子、もう二度としないでよ?」

 

神奈子「はいはい」

 

何と適当な返答だろうか。

手をふらふら降って、まるで聞こえてないのに受け答えする若者のような反応。

その適当な神奈子を見た、二人は

 

一方通行「こりゃァ次もやるぞ」

 

諏訪子「間違いなくね」

 

これ以上ない確信を持つ。

 

一方通行「___________ったく、頭回らねェ時にこう面倒事を増やすなよ」

 

舌打ちをして、立ち上がる。

壁に座る早苗の近くにしゃがみ、頬に手を当てた。

今回もチルノと同様、ベクトル操作でちょちょいのちょいだ。

 

早苗「…………っ、私は……寝てたんですか?」

 

諏訪子と神奈子は驚いた。

すると一方通行はまた、丁寧に自分の能力の紹介をしてもと居た席に座る。

ここで諏訪子が一つの疑問が

 

諏訪子「ベクトル操作で酔いを治せるなら、何でそれを自分に使わないの?」

 

ごもっともな質問だ。

酒に弱い体質でも、ベクトル操作でアルコールを分解しながら飲めばガブガブ酒をジュースの如く飲めるだろう。

一方通行はそれを出来る。酔いが回っても、その程度の演算は簡単だ。

しかし

 

一方通行「俺がそれをしねェのは、ただムカつくからだ」

 

諏訪子「ムカつく?誰を?何に?」

 

神奈子「?」

 

ここだけの話だ。

一方通行がムカつくのは自分と皆にだ。

酒に酔ったからといって能力を使うのは、嫌だ。

まるで『自分はこれが弱いです』と自己紹介でもしてるみたいだから。

皆に、とは。それは多分、アルコール分解に一方通行が能力を使おうものならバカにして笑うだろう、周りの連中が。

これは未来予知をするまでもなく、脳裏に浮かぶ光景だ。

まあ、実際はこの二つの理由は小さいことなんだが。

彼が一番に思うのは、『皆と一緒に何の小細工無しで酒を飲みたい』これが本当の理由。

しかしそれは胸に秘めておく。決して言わない。

 

 

一方通行「………オマエらで考えろ」

 

早苗「……あの…………」

 

吐き捨てるように呟くと、声がした。

 

一方通行「あン?なンだ?」

 

早苗「一方通行さんが酔いを治してくれたんですよね。ありがとうございます」

 

一方通行「あァ。次からは、ちゃンと飲むもンは自分で注いで飲め」

 

早苗「あははは…………、そうします」

 

神奈子「隙を私に見せたら最後だぞ?」

 

諏訪子「早苗は私が守るわ!!」

 

神奈子「過保護過ぎるのは良くないぞ。我が子を思うなら崖から突き落としてもだな成長を________」

 

諏訪子「_________百獣の王でも育てるつもり!?」

 

わー!わー!と。

いつもどうり、宴会でも守矢神社に居るときでも同じテンションで会話する。

途中途中笑い、怒りなど。色んな感情を表して。

 

早苗「一方通行さんはお体の方、大丈夫ですか?」

 

一方通行「……生憎絶不調だ。これ以上は限界だな」

 

早苗「少しでも気分が良くなるように、氷水を作ったんですがどうぞ」

 

ガラスのコップから水滴が垂れる。

そのコップを揺らせば、カランカランと氷とガラスコップが当たる音が響く。

 

一方通行「…………」

 

黙って、その差し出されたコップ受け取り、飲む。

喉を通るのは、キンキンに冷えた氷水。

この水をがぶ飲みしようものなら、かき氷を頬張った時のように頭痛が起こるだろう。

だから、一気に飲むのではなく一口。

そう一口だけ飲む。

それだけだが気のせいか体が少し落ち着き、それが凄く気持ちいい。

 

一方通行「……これで毒薬を飲まずに済ンだな」

 

早苗「ど、毒薬!?この後そんな危険なものを飲もうとしてたとは…………驚きですよ!」

 

一方通行「そンなンで驚いてたら今後生きていけねェぞ。所でオマエンとこはなにか問題ねェのか?」

 

早苗「どうしたんです急に?」

 

一方通行「ここに来るまで、頼み事を聞いてきてな。もしかしたらオマエ達もあるンじゃねェかってな」

 

早苗「私達はないですよ。参拝客も増えてきてますし……ですよね?諏訪子様、神奈子様」

 

諏訪子「…………ん?ああ、うん。これに困ってるってのは無いよ」

 

神奈子「強いて言うなら、たまに顔を見せろってぐらいじゃない?」

 

一方通行「オマエ達もか。分かった、たまにで良いなら可能だ」

 

諏訪子「……にしても珍しいね。どうしたの?」

 

一方通行「……気紛れサービスだよ。くそったれ」

 

言いたくない台詞だ。

だが、たまには良いだろうと思う自分も居るのも事実。

全く幻想郷やこの世界に生きる連中は不思議だ。

思いもしなかっただろう。

一方通行自身、こうも自分が変わるとは。

 

神奈子「ふふっ、そうか。ならその気紛れついでに私が飲む酒を飲むか?」

 

一方通行「お断りだクソ女」

 

諏訪子「私が飲むお酒は優しいよ?」

 

早苗「氷水はまだあります」

 

一方通行「あのなァ……氷水は万能薬じゃねェぞコラ」

 

今までではここが一番静かに酒を飲めた。

一方通行は宴会が終わってもそう思うだろう。

騒がず、叫ばず……

ただ神奈子や諏訪子や早苗の話を聞いて、自分も話して、と。

そんなこんなで時間が経った。

 

早苗「おや、そろそろ移動時間のようですね」

 

諏訪子「次は大変そうだね………」

 

神奈子「ありがとね、楽しかったよ。行ってらっしゃい」

 

一方通行「あァ……俺も、悪くはなかった」

 

小さく呟き立って、次に行ってしまった。

勿論、三人は一方通行の声は聞こえていた。

だから、彼の言葉を聞いてくすっと笑う。

別にバカにしたとかじゃない。

純粋に嬉しかった。それだけだ。

 

 

 

 

 

 

さて、お次が最後の席。

 

霊夢「遅かったじゃない、潰れたかと思ったわ」

 

魔理沙「またまた~、心配したの間違いだろ?」

 

霊夢「…………」///

 

にとり「よ!盟友!」

 

萃香「まだ飲めるか~?」

 

一方通行「……少しならな」

 

腰を下ろした。

この宴会場で一番大きなテーブル。その端に一方通行は座っている。

 

こころ「…………久しぶり」

 

一方通行「おォ。表情を変えられる旅は順調か?」

 

こころ「全然」

 

隣に居たのはこころだった。

 

こころ「貴方はまた今回も大活躍らしいね」

 

一方通行「あァ、クソったれ」

 

神綺「あら、お二人で何の話?」

 

一方通行「……これといったことでもねェよ」

 

正面には神綺が座っていて、その隣にアリス、魔理沙、霊夢との順番。

一方通行の側はこころから、にとり、萃香、幽香の順番だ。

 

神綺「そう。ならこんなに集まってるんだし、皆でお話しましょう」

 

一方通行「………構わねェ」

 

幽香「こういう場合、言い出しっぺが話を降るんじゃない?」

 

神綺「……そうね。うーん…………」

 

分かりやすく悩んでいる。

『よし話せ』と言われてすぐに答えれるほど頭は回らない今の現状。

結構厳しい。

だがしかし、言った責任は取らなくては。

 

悩み抜いた結果。口を開き

 

神綺「話題が思い浮かばないから、"王様ゲーム"でもする?」

 

ここで説明しよう。

王様ゲームとは、メンバーが五~十人程度で行えるゲーム。

必要なのはメンバーとくじである。

くじとは割り箸などで作る。

作り方は簡単。割り箸に一つだけに王様の印を付け、その他は番号が書く。

そしてその王様の印があるくじを引いた者は説明不要だろうが王様だ。

くじで決まった王様は「○番が○で○○をする」「○番と○番が○○をする」などの「命令」を出す権限を手にする。

王様の命令は絶対。これは何が起きても変えられない。

それと命令を下した後の命令変更も。

それではその説明を神綺して、やるかやらないかと多数決を取ると面白そうだと言って半数以上が手を上げ、ゲームをやる事に決定する。

 

神綺「さて、手を上げなかった三人。多数決よ、分かってるでしょうね?」

 

幽香「これが数の暴力ね」

 

アリス「……はぁ、まさにその通り」

 

一方通行「…………嫌な予感がすンだが」

 

魔理沙「まぁまぁ、そう言うなよ。もしかしたらめちゃめちゃ面白いかも知れないぜ?」

 

それではスタートだ。

やる回数は三回。

だが予想以上に盛り上がったら、無限にやるらしい。

 

神綺「それじゃあ良い?」

 

じゃらじゃらと、神綺は割り箸を両手で持って混ぜる。

これで番号や王様の印がどこにあるかは、分からない。

 

神綺「もう一度言うけど、引くときは一斉。それに掛け声は『王様だーれだ?』よ」

 

そしてテーブルの真ん中に両手を差し出す。

すると各々の決めた割り箸を掴む。

 

「王様だーれだ(ァ)?」

 

一斉に引かれた。

割り箸を両手で持っていた神綺は自動的に残ったのを選ぶことになる。

これは、またまた『言い出しっぺだし』との理由で決まった。

 

そして皆が自分の割り箸を見ると

 

アリス「あ、私が王様だ」

 

魔理沙「おー、運が良いなアリス!」

 

霊夢「で?命令は?」

 

笑顔でアリスを褒める魔理沙とは違い、霊夢は冷静に質問をする。

 

アリス「なににしましょ?」

 

こころ「何でもいいんだよ」

 

萃香「○番がお酒を飲むとかでも良いよ~」

 

にとり「だけど死ねとかは無しだよ」

 

一方通行「にとり、オマエ急にどォした?」

 

アリス「…………王様が○番に、とかは良いのですか?」

 

神綺「んー。それも盛り上がりそうだし大丈夫にしまょうかしら」

 

アリス「ということはオーケーなんですね」

 

ここでピキーン!!とアリスは閃いた。

王様が命令を下すと言っても、それは罰ゲーム。

だからなにか苦しまなくてはならない。

 

それで、アリスが閃いた罰ゲームとは…………

 

アリス「じゃあ私の全力擽りを七番が二十秒間耐える」

 

霊夢「……うわ、本物の罰ゲームキタコレ」

 

八番と、書かれたくじを見てほっとしながら話す。

 

魔理沙「良かったぜ、二番だ」

 

こころ「残念だ、擽られたら私の表情変わるか知れたのに、六番だ」

 

萃香「おや……七?いや一番か?」

 

にとり「一番だよ、私は五番」

 

幽香「四番」

 

一方通行「俺が三番……っつゥことは…………」

 

チラッ。

皆の顔がここまで喋ってないヤツヘ向けられる。

 

神綺「私が……七番よ」

 

アリス「そうですか、神綺様ですか…………」

 

神綺「……え?なにその極悪な笑みは…………、遊びよね。軽くよね。なになに!?なんか私、アリスちゃんに酷いことした!?」

 

そんじゃ、罰ゲーム執行。

皆が見るなか、アリスは持ってる人形全てを操り全力で神綺を擽る。

すると

 

神綺「あひゃははははははははは!!!だ、ダメ!!こきゅ、こっ、呼吸が!!!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 

笑い転がる神綺をこれでもかと、いうぐらいアリスが操る人形が擽る。

そして二十秒が経過すると

 

神綺「……はー、はー、はー、はー、…………笑い死ぬところだったわ」

 

幽香「そんな死に方は十分幸せじゃない?私はアレはゴメンだけど」

 

アリス「ふー……、スッキリした」

 

魔理沙「アリス。お前に一体何が…………」

 

萃香「……アレぐらいの罰ゲームか。王様になれたら楽しそうだね」

 

一方通行「________________あン?」

 

ここで一方通行は足元に何かが落ちてることに気付く。

感触は布で、大きさはまあまあデカイ。

そんな物、この宴会場で落ちてるとしたら……

もしかしたら、これは人形だ。

神綺が暴れるものだから擽る人形が吹っ飛ばされたんだろう。

一方通行は足元に転がってる人形を拾った。

 

一方通行「……オイ人形、落ちてたぞ」

 

アリス「ありが_______あぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!??」/////

 

一方通行が渡してきた人形をアリスは見ると赤面して、慌てて彼から奪い取る。

その光景は皆から見ても異様な光景だった。

 

一方通行「あァ?そンなに大事なもンなのかよ…………だがあの人形なンか__________」

 

アリス「黙って黙って黙って!!何も言わないで!!」

 

こころ「一方通行に似てたー」

 

その一言に…………

 

アリス「ッ~~~~~~~~~~~~~!!!!」

 

頭から湯気が出る程顔を真っ赤にアリスはなる。

別に一方通行は何も思わないが、それでも彼女にとっては今期最大の事件になってしまう。

 

さて、気を取り直して

 

「王様だーれだ(ァ)?」

 

次々とくじを引っこ抜き、印を見る。

 

にとり「やった~!!王様~♪」

 

萃香「命令は決まってるの~?」

 

にとり「うん。王様になったらって考えてたんだ~♪」

 

ニコやか爽やかスマイル。

だが、それが王様になってからの笑顔で不気味で仕方がない。

他の者達は自分の番号が呼ばれないように、じっとにとりを見る。

 

幽香「それじゃあご命令を、王様」

 

にとり「八番と一番が今から私の発明した物の実験台になる」

 

神綺「……え?」

 

アリス「まさか、またですか?」

 

神綺「いいえ、三番よ」

 

次に八番と一番が名乗る。

 

一方通行「俺が八番だ」

 

こころ「私は一番」

 

にとり「成る程。面白い実験になりそうだ」

 

そう言って大きな真ん丸のリュックから取り出したのはカラフルな花の装飾と河童のマークが入った縦三十センチ、横十二センチの赤いガラスが煌めく飲み物サーバー。脚はくるんと丸くなってる棒状の鋼で、その飲み物サーバーの中心には小型の蛇口が付いている。

にとりはその飲み物サーバーの上の蓋を取り、適当にそこら辺の酒を中に注ぐ。

 

にとり「………これはね。どんな飲み物でも、変換させる不思議な発明品!!さあ飲んで!!」

 

じょぼじょぼじょぼ、と。

飲み物サーバーからコップに入れ、そのコップをこころと一方通行に渡す。

 

にとり「美味いか不味いかは運だよ」

 

霊夢「随分楽しい発明したわね」

 

萃香「今日の為だけに作られたみたいな機械だね~」

 

魔理沙「はははッ!!確かにな」

 

皆が見守るなか。一方通行とこころは、ぐっと何も文句を言わず一気に飲み干す。

すると

 

こころ「…………?ちょっと苦いだけかな?」

 

反応は微妙。

だがこれはこころに問題があるだろう。

彼女は表情の変化が全くとは言えないが、そこまで変わらない。

……………………失敗か。

そう思うと

 

一方通行「__________がっ!?クッッソ!!!甘ェェェェえええええええええ!!!!…………バカですかァこりゃァ!!?」

 

結構なリアクションを頂けた。

一方通行の顔は青くなり、急いで近くにあったコップを取り口直しをする。

こころが飲んだのは抹茶程度の苦さ、しかし一方通行が飲んだのは砂糖水より百倍甘い水。

糖尿病になるんじゃないかと心配するレベルの甘さだ。

 

一方通行「……ウッ、吐きそうだァ………マジで……………………」

 

アリス「………そんなに甘いの?」

 

魔理沙「あの顔を見てみろ、冗談抜きでヤバいぜ」

 

にとり「うんうん。実験大成功!!」

 

一人はご満悦だが、あの一方通行がこんな反応するとは。

他の者達は、にとりの発明品に恐怖を抱かざるを得なかった。

 

霊夢「さーて、三回目よ」

 

にとり「イエーイ!!」

 

ノリノリな者も居れば、そうでは無い者。

簡単な区別だ。罰ゲームを受けたか受けてないの違いだ。

 

「王様だーれだ(ァ)?」

 

また各々のくじを引く。

そして王様になったのは

 

神綺「わ・た・し♪が、王様~!」

 

幽香「(この中で一番王様になっちゃいけないヤツが王様になったわ………)」

 

神綺「ん?なにか言った」

 

幽香「…………いいえ」

 

空気が静まり返る。

先程の幽香の台詞。それはこのメンバー誰もが神綺が王様になった瞬間全員が頭に思い浮かべた言葉だ。

本当にヤバイ。こういうゲームの提案者は、にとりのように『私が王様になったら』と考えは必ずあるもの。

しかし、にとりの命令の方がまだマシだったって、後々そう言うかもしれないと。思ってしまう。

ドキドキと胸の鼓動がうるさい中、神綺は命令を下す。

 

それは

 

神綺「こういうゲームのお決まり。一番と二番がキスよ♪」

 

カチン!!と氷のようにこの場が凍る。

しかし次の瞬間

 

萃香「私二番~」

 

一方通行「……俺が…………一番だ」

 

『……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………… 』

 

数値が計り知れない衝撃が彼女らを襲い、完全に頭を真っ白にする。

頭の中はホワイトアウト。

そう例えれば、もっとお分かりになるだろう。

 

萃香「……じゃ、やる?キス」

 

一方通行「…………オ_______________」

 

神綺「___________ストップストップーッ!!命令変更!!」

 

萃香「……?急になに?」

 

神綺「絶対ダメ、それはダメー!!」

 

魔理沙「王様が言ってんだ…………、そうだよな。うんうん」

 

霊夢「王様が言うんだし?………………ね」

 

にとり「あの……その、め、盟友…………」

 

幽香「ここは王様の命令に従って、命令変更ってことに…………」

 

こころ「命令変更。良い」

 

アリス(う、ウソ。一方通行が……き、キス!?)

 

ここで一発。

命令変更を推してくる者達に、萃香の重い口撃(こうげき)が繰り出される。

 

萃香「"命令をしてからの命令変更は出来ない"だったっけ?」

 

一方通行の隣に萃香は立つ。

そして

 

萃香「さ、ちゃっちゃと済ませちゃおう?」

 

瞳を閉じた。それを意味するのは一つ。

 

一方通行「……チッ、嫌な予感的中だくそったれ。だがすぐ済ませるのは賛成だ。こォいうのは長引かせれば長引かせるほど、面倒な事になるからなァ」

 

一方通行は立ち上がり、萃香の方へ体を向ける。

容姿は小さく、幼く見えるがそれでも。一般的な男性は一方通行が見る景色を見るだけで、理性が崩壊し男という獣になるだろう。

だが、彼はそうはならない。

 

面倒臭そうに、目を閉じる萃香の口に自分も瞳を閉じて唇を近付けると

 

「それはダメェェェェえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」

 

と、王様ゲームメンバー以外も含めた叫び声と共に弾幕が一方通行に放たれた。

 

一方通行はというと、その叫び声に目を開け叫び声がした方向へ振り向いた。

するとどうだろう。手加減なんて一切なしの、全力投球の弾幕が自分の方へ撃たれていた。

それからの行動は萃香の前に立ち、自ら盾となった。

ここで一つ、情報が。

現在、一方通行は酔っ払っている状態。そのせいで自動反射は解けている。

 

一方通行(………クソッ、結局俺の宴会の最後は…………!!)

 

ドッガーン!!!

テーブルや食器。それに床がバラバラに吹っ飛び、その威力の弾幕をまともに食らった一方通行は壁へノーバンで激突し、気を失う。

 

庇ってもらった萃香は無傷で事なきを得た。

その後、破壊してしまった物を皆で片付けたそうだ。

一方通行はギリギリ破壊を免れたステージに移動され、そこで寝かされていた。

 

萃香「あ~あ。あともう少しだったのに……」

 

霊夢「え?……アンタも、もしかして…………」

 

萃香「ははは!!ライバルが多いね。私も、霊夢も」

 

弾幕の全力発射事件は水に流し。

一方通行が気絶中も、この宴会は朝方まで続いた。

だが寝ずに飲み続けれた者は居なく、そっこらへんで皆雑魚寝して宴会終了となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「……………………ン……」

 

パチリ。

目を開けた。

自分が弾幕を受けたことは記憶にあり、それで気絶した事を覚えてる。

 

一方通行は上体を起こしてから立ち上がった。

周りを見れば宴会メンバーが雑魚寝してる姿がちらほら。

しかし、それを何にも思わないで雑魚寝してるやつらを踏まないように歩きこの宴会場から出た。

外に出てみれば木が鏡合わせのように植えられていて、その間を通れるように大きな土の道が続いている。

空を見れば青と水色に染まっていて、灰色の雲に隠れた太陽の光が漏れていた。

いつもは一方通行はこんな早く目覚めない。だからこのような景色を見たのは記憶に無かった。

でも、その景色に見惚れるとかの感情はなく、ポケットに手を突っ込んで土の道を歩いて行った。

 

歩いていると、正面に人影が

 

一方通行「………紫」

 

スキマ開き、それをベンチのように座る妖怪の名を呟く。

 

紫「…………」

 

一方通行「…………」

 

なにも言わない紫の前に一方通行は立ち止まった。

 

紫「……ねぇ、楽しかった?」

 

一方通行「…………」

 

紫「黙り……。そうやって、楽しいとか嬉しいとか言わないわよね貴方は。少しは良いんじゃない?過去に何があったって楽しかったら笑って、嬉しいなら嬉しいって言って」

 

一方通行「……そンなことを言うためだけに、待ってたのかよ」

 

紫「そうよ。貴方はあの子達の好意は受け入れているけどそれを貴方は向けない。今は上手くいってるように見えるでしょう、だけどそれが今後ずっと続くとは私は思えない。だってそうでしょ?自分達は信頼しているのに、自分達は好意を向けているのに、貴方はどう?守るだけ?そうやって黙って去ってピンチになったら颯爽登場してまた守る。コミュニケーションを深めようとしてない…………いや、それを恐れているのかしら?一方通行」

 

一方通行「…………お説教か」

 

顔色や表情に変化はない。

 

紫「そう、説教。いつまで貴方はそうしてるつもり、良いのよ。ここは幻想郷、学園都市第一位の最強の一方通行なんて知らない、貴方はただ一人の幻想郷の住人でしょ」

 

一方通行「……それで…、違う世界に行ったからって俺の過去の罪を忘れろってか。ふざけンなよ、そンなに罪ってのは軽いモンじゃねェンだよ。まして歳が一桁の時から命を奪って生きてきたバケモンが俺だ。そンな俺が好意を向ける?良い訳ねェだろォが」

 

余りにも罪が重すぎる。

一人の少年には背負いきれない程に。

しかし、それでも一方通行は決して罪を投げ捨てないで背負い続けると誓った。

この世界で光を見たから、それで過去の過ちに気付いたから。

 

紫「別に罪は忘れろとかは言ってない。覚えておきたいなら覚えてれば良い。だけどね、一方通行。覚えておいて、今のままで居るとあの子達との関係は必ず崩壊するわ」

 

一方通行はその言葉を聞くと、舌打ちをして紫の隣を通り過ぎた。

だが、紫から二メートル程度の離れた所で足を止める。

 

一方通行「________________俺とオマエは、出会うべきじゃなかった」

 

紫「……え?」

 

驚き、スキマから飛び降りて振り返った。

すると、空の状況は変化していて雲の中から発せられる太陽の光が薄くなり一段と空が暗くなっていた。

白い少年の姿は薄暗く、光がなくてはもしかしたら見失うかもしれない。

 

一方通行「_____________________________」

 

全てを話した。

学園都市が紫の開いたスキマの跡からこの幻想郷に侵入したことを。

そして、そこから思考して出した結論を。

 

紫「そんな……私のスキマが開いた場所から…………?」

 

一方通行「あァ。だからこれからを考えンなら学園都市にスキマを開くなよ」

 

そんな台詞を最後に姿を消した。

一方通行は帰る途中、自分が学園都市で開いてしまったスキマを考えていた。

それで、アレイスターはスキマ跡を利用して刺客などを送り込んで来るだろう。

なら、それらを潰してやる。

全て()ね除けてやる。

一方通行は折れない覚悟を決め、今日も幻想郷で生きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫(私が……幻想郷をこんなにした元凶か。でも、それを知っていても貴方に会えるなら私は…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はいはーい、前書きを長く書きすぎたポスターです。
どうでしたか三章の最終話は?宴会のオチはまたこのパターンかよ!?と感じた方はいらっしゃったと思います。
それについては何も言わない方向でおねがいします。
で、ですね。
ここで急なんですが次章の予告を下に書いたので、最後まで見て下さるとありがたいです。








新しい事をしたり、と一方通行は日々を過ごしていた。
だが平和を破壊する………『奴ら』が来た。






四章 純黒(じゅんこく)に生きる侵略者







(俺は、なにを言われてもアイツらを守り抜く!!)

「この俺に……『未元物質』に常識は通用しねぇ」


結末は…………


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第四章 純黒に生きる侵略者
1話


最近読み始めたよというお方、どうも!!前回から待ってたよー!っというお方、本当に本当に本当に大変お待たせしました!!!!
ポスターです。

さあ、前回の予告にあった四章も始まりました。
…………ですが、この四章の前半は日常編が続きます。
そしてその日常編が終わると、あの予告にちょっと出た人も登場するストーリーが始まります!!


でも、なー…………
どうせどんなストーリー展開か皆様分かってらっしゃるんでょ?
だって第三章の予告した時にコメントで『次回からは学園都市……楽しみです』って言われたんだぜ!?
って、章の題名がネタバレすぎんだよ!!おまけに次回予告もなぁ!!
っと言う私の独り言は無視して良いので第四章、第一話をどうぞ。


多分、誤字や脱字があります
ですから、発見した場合は私に報告してくれると助かります


宴会の日から時は経った。

人里の破壊された場所は直りつつある。

これは里の人間全員の力を集めた結果だ。

決して万能な人が何人居ようが成せない事。

そんな里にいち早く家の修理を終わらせたとこがあった。

そこに住んでるのは白い髪に白い肌、赤い瞳の両性的な容姿の人物。

その者は今日行く所があった。

 

その場所とは、

 

一方通行「……よォ」

 

寺子屋。

里の子供達が通う所。

しかし今の時間はお昼時だ。

だから子供達は昼飯を食べため一旦帰宅している。

そのためその寺子屋の一つの教室に人影はない。

 

一人を除けば、だが。

 

慧音「おや、来てくれたか。っと言うことは……」

 

一方通行「あァ。やってやるよ、教師ってやつを」

 

慧音「そうか……、そうか……。それは嬉しいな」

 

普通の人間とは違う半人半獣の彼女は一方通行の言葉を聞くと凄く嬉しそうに微笑んでいた。

 

一方通行「チッ……、そンなに俺にやらしたかったのかァ?」

 

慧音「君は才能がある。超人から見てもずば抜けた才能がね。そんな君が教師をしたら多分、あの子達は普通の人間のようにまともになれるかもしれない。それに私は思うんだ、あの子達には君が一番合っているってね」

 

一方通行「………ガキ達のために、か。オマエは骨の髄まで教師って訳か。で?その困ったガキどもが居る場所はどこだ」

 

慧音「あ、待ってくれ。今地図を書くよ」

 

そう言って並んでいる机の上に紙を置き片手に鉛筆を持つ。

そしてすらすらと書き始めた。

 

慧音「_____良し、書き終わった。ここだよ」

 

ピラッと、渡された紙には線が細かく書かれていたし、ちゃんとその場所の名前も書いてあった。

これなら、迷う心配は無いだろう。

 

一方通行「ここか……」

 

一度紙を見てからそう呟き歩き出す。

目的地はもちろんこの紙に書かれている場所だ。

 

行動が早かった。

そのため慧音がなにか言おうとした時には彼の姿はなかった。

 

慧音「はははっ……やっぱり。彼を選んで正解だったな」

 

あの子達はもう大丈夫。

安心した慧音は、今日も一日子供に学業などを教える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、そんな事があったのだが

それは前の話である。

今は、一方通行は教師が板に付き、あの子供達とも上手く接している。

 

そして、今日。子供達の授業が終わった。

時間は午後の二時。

この時刻が一日の授業を終わらす平均の時間だ。

 

チルノ「…………ねえ!!」

 

なんとも自然に溢れた教室にある、全木製の教卓の上で教科書をまとめていると、一人だけ帰らなかった妖精の少女が強気な口調で話しかけてきた。

 

一方通行「………あン?」

 

チルノ「いつになったら、あたいを強くしてくれるの!!」

 

一方通行「あァ、そォいやそンな約束したなァ俺」

 

チルノ「まさか忘れてたんじゃ……!?」

 

一方通行「じゃあ……今日からやるか?」

 

チルノ「うん!!やるよ!!やるやる!!」

 

一方通行「なら移動するぞ」

 

カッカッタン。と、教科書を纏めて教卓の上に置いた。

そして人などが居なさそうな場所へ歩いて行く、その後をスタスタとチルノが追いかけて行った。

 

途中まで、歩いて行っていたが時間が結構かかると気付くと空を飛んで移動した。

そうすると、すぐに草木が生えている開けた場所にたどり着く。

そこは風が優しく吹いていて、サンドイッチを片手にピクニック気分に浸るには最適な場所だろう。

しかし、一方通行達はそんな事をするためにこの場所に来たのではない。

 

一方通行「……ここでイイか」

 

チルノ「さて、初めようか!!」

 

一方通行「待てバカ。身構えてなにを初めようっつゥンだ?」

 

チルノ「強くなるにはやっぱ修行でしょ?だからお前と戦えばあたいはもっと強くなる!」

 

一方通行はその言葉を聞くと大きく息を吸い込むと、一気に吸った息を吐く。

これは今までに無い、思いっきり全力のため息だ。

 

チルノ「ん?どうしたの?」

 

一方通行「いやァ、オマエがバカだと知ってはいたが俺が思ってる以上のバカだから、普通に進められると思っていた俺がバカと思っただけだ」

 

チルノ「???」

 

一方通行「……チッ、戦えば戦うほど強くなるってのは違うと言い切れねェが。オマエが強くなるためには頭を鍛える。そのためにこのだだっ広い所に来た」

 

チルノ「頭を鍛える?」

 

一方通行「オマエの能力はなンだ?」

 

チルノ「冷気を操る能力」

 

一方通行「それは前まで『程度』ってのが付いてたろ?」

 

チルノ「うん、それが?」

 

一方通行「能力名の『程度』が無くなったのは、決して能力の威力が上がっただけじゃねェ。前まで出来なかった事が出来るようになった訳だ」

 

チルノ「それで何で頭を鍛えるの?」

 

一方通行「………、少しは考えろ。想像力は武器であり力だ。オマエは能力を使って氷の剣を作ったりしてた、そのように能力で出来る事を頭を使って考えろ」

 

チルノ「つまり、ここであたいの出来る事を探せってこと?」

 

一方通行「あァ、分かったならさっさと初めろ」

 

腰を下ろし胡座をかく。

だがチルノは立ったままだ。

 

チルノ「えっ!?ヒントとかくれないの?」

 

一方通行「最初は自分の力だけでやれ。限界になったら俺がヒントをくれてやる」

 

それから、チルノは能力を使い続け、可能性を探る。

しかしどんなに工夫してもそれは『程度』が付いていた時にでも出来た事ばかりだった。

 

チルノ「………………」

 

一方通行「それが、オマエの限界か」

 

続け、続け、続け、続けた。

だが動きを止め立ち尽くす。

これは、『もう限界』と伝えるには充分過ぎる。

 

一方通行「まァ、知ってたンだけどな」

 

そんな台詞を吐いて立ち上がる。

そしてチルノの元へ行った。

 

チルノ「…………えっ」

 

地面の草や木は凍りつき、生えてる草を踏めばザクザクと音がする。

しかし、一方通行の周りだけは凍ってなかった。

それはチルノの制御技術もあるが、一方通行の反射も機能している。

だが一方通行はもうその場所には居ない。

今はチルノの前に立っている。

 

一方通行「オマエは自分の能力を知らなすぎる。だからこの程度なンだよ」

 

チルノ「……だったらどうすれば良いの?」

 

一方通行「最初に言ったろ。頭を鍛えると」

 

ブワン!!と一方通行は熱気を模倣して、それを全体に放つ。

すると周りの氷全てが溶けていった。

 

一方通行「良し、じゃあ教室に帰るぞ。次は楽しい楽しい勉強の時間だ」

 

チルノ「……え、…………えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

それから、一方通行とチルノはさっきまで居た森の教室に帰った。

そして、辛くて泣きだすぐらいではないが、厳しい特別授業が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………数時間後。

 

チルノ「うぇ~……もう無理。頭痛い~…………」

 

ぐて~と、上体を机の上に倒す。

チルノの頭からは、煙が空へ上るように出ていた。

頭をいつも以上に使ったから、オーバーヒートしたのだろう。

 

一方通行「……今日はここまでにしとくか」

 

空は暗く時刻は夜になっていた。

 

一方通行「つゥことだ。もォ帰れ」

 

チルノ「…………明日、明後日は休みだよね?」

 

上体は机に預けたままだが顔だけ上げて呟いた。

 

一方通行「……あァ」

 

チルノ「その二日間って一方通行暇?」

 

一方通行「特に用はねェ」

 

チルノ「だったらあたいに付き合ってくれない?」

 

言葉を聞いた後、少しの間があったが彼は答える。

 

一方通行「……イイぜ。俺の二日間をくれてやる」

 

チルノ「あたいはその二日間で今と比べものにならないほど強くなってみせるよ!!」

 

一方通行「………イイ意気込みだが、最後までその気持ちを持たせろよ」

 

チルノ「うん。ってな訳でお前の家に泊まるね、二日間」

 

一方通行「………………はァ?」

 

こうして、了承してもいないのにチルノが一方通行の家に泊まる事が決定した。

 

正面からチルノは里に入れないため、一方通行は自分の家にスキマを開き、そこからチルノと二人で帰宅する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝。

空は青く、鳥が元気良く鳴く。

そして森の教室には

 

チルノ「今日一日、よろしくね!」

 

一方通行「…………チッ」

 

朝、自分の部屋で寝ていたら上に乗っかられ大声でチルノに起こされた一方通行は今日も一日、一人の生徒のため特別授業である。

そして、授業が始まるが教卓に一方通行の姿は無い。

チルノの隣の席に座り、足を組んでいるのだ。

一方、チルノはというと自分の能力関連の本を開き、紙に書いて勉強中。

読んで覚えるより、書いて覚えるを実行中だ。

 

途中途中、チルノが分からない所があれば一方通行はヒントを教える。

しかし、質問全部を答え、教える訳ではない。所々『自分で考えろ』と一言吐き捨てる場面もあった。

 

チルノ「………………」

 

一方通行「……………………」

 

体勢を変え、肘をつき、集中して勉強中のチルノを見る。

この時、一方通行は疑問が頭に浮かんだ。

 

一方通行「なァ。オマエはなンでそこまで強くなりてェンだ?」

 

チルノ「え……?」

 

ピタッ、と手が止まる。

そして声を掛けられた方へ向く。

 

一方通行「やっぱり最強ってヤツになりてェのか?」

 

チルノ「うん___」

 

持っていた鉛筆を机に転がして答える。

が、続けて

 

チルノ「___最初はね。でも、今は違うんだ。最近、幻想郷は危険なことばかりでしょ。だからその危険から守りたいの、大ちゃんやルーミアやそれに他の皆やこの幻想郷も。初めて本気で何かを失う恐怖を感じてからこの事ばかり考えてあたいは強くなろうと思っていたんだ…………」

 

一方通行「…………」

 

普段のチルノの態度を見ていたらなにも考えてなさそうな癖にその口からは見る目が変わらずにはいられないチルノの心境を表した言葉が出てきた。

 

一方通行「もし………だ」

 

チルノの心境を聞いて一方通行は質問する。

力を求めて過ちを犯した自分の過去を思い出しながら、

 

一方通行「オマエは二万人ぶっ殺せば最強を手に入れられると言われたらやるか?」

 

力を欲している、最強を欲している、子供には難しい質問だ。

この世は何かを手に入れる為に何かを失わなければいけない。そういう現実を子供には突きつけるのは早すぎる。なのに、、、

 

チルノ「やらないよ」

 

真っ直ぐな瞳で間もなく答える。

そして続けて

 

チルノ「あたいが欲しい最強は大切なものを守る最強。奪ったり破壊して手にする最強なんて要らない。それにもしそんな事をして手に入れた最強で、誰かを守るなんて絶対に出来ないと思うな」

 

一方通行「…………そォか」

 

一言呟く。

別にこの質問に意味は無い。

最強、力を欲しているチルノを見てふと思ったから質問しただけだ。

だが、この時一方通行は確信を得た。

もしこの小さな氷の妖精・チルノが最強の力を手にしたとしても、間違った道には行かず正しい光に溢れた道を歩むと。

 

自分とは違い、正しい力の使い方をするのだと……。

 

一方通行「なら、楽な道を選ばずもっと勉強しろ。じゃねェとオマエが欲しい最強にはたどり着けねェぞ」

 

ドスンッッ!!と辞書レベルに分厚い本を何冊もチルノの机に出現させる。

 

チルノ「………………………」

 

自分の机の上に真っ黒なスキマが開いたと思ったら、分厚い本が何冊も重なって落ちてきてその光景に言葉を失う。

一方通行の方を見たら、これら全ても目を通せとなにも言葉を発さず表情にも出さず訴えていた。

それを、察すると……、、、

 

チルノ「うひゃァァァァァァァァッ!!!?コレ全部ゥゥゥゥゥゥッッッ!!??」

 

大きな声で驚かずにはいられなかった。

しかし、だ。チルノは投げ出さない。諦めない。

腹を括って再び勉強に取り掛かる。

昨日、今日と来てこの集中力は凄いと褒めてもバチは当たらないだろう。

 

そして集中力を切らさず午後四時の時刻まで勉強を続けた。

 

チルノ「………………」

 

一方通行「おい」

 

もう、終わりの時間なのにそれに気付かず、机に齧り付くチルノに一方通行は声をかける。

そしたら

 

チルノ「…………ん?」

 

隣に座る、一方通行へ視線を向けた。

 

チルノ「どうしたの?」

 

一方通行「もう、今日はここまでだ」

 

椅子から立ち上がり、チルノの座る机の前に移動する。

そしてノートや本を纏め、黒い自宅に繋げたスキマを開き、そこに適当に投げ入れた。

だが、それでは終わらない。

 

一方通行「俺と一回。手合わせしたらな」

 

開いたスキマを閉じ、そう話す。

 

チルノ「手合わせ?」

 

一方通行「あァ。オマエが今日と昨日で自分の能力がどォいうものか、どンな事が出来るのか大抵は分かったはずだ。だが、それだけじゃダメだ。次は実際に能力を使って理解しろ」

 

チルノ「その為に手合わせ?」

 

一方通行「そォだ。場所はもォ決まってる。このスキマの向こうだ」

 

手を横に向け、また新たなスキマを開く。

 

一方通行「俺は先に行ってる。オマエは少し休ンでから来い」

 

そして開いたスキマの中に一方通行は消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「俺は少し休めと言ったが?」

 

チルノ「あたい休むほど疲れて無いよ?」

 

二人は昨日来た、あの草木が生えてる開けた場所に立っていた。

 

一方通行「まァ、イイ。なら始めるが、一つ言っとく」

 

チルノに背中を向けて距離を取ってから、またチルノに向き直り

 

一方通行「俺はオマエの能力のコピー。冷気を操る『程度』の能力しか使わない」

 

チルノ「なんで?」

 

一方通行「そこは自分で考えろ。良し、初めンぞ」

 

次に両手を広げて

 

一方通行「ほら、どっからでもかかってこい」

 

挑発するかのように、手合わせ開始を宣言した。

 

考えても分からないチルノは

 

チルノ「うん。とりあえず…………そうする!!!」

 

体を宙に浮かせ、周りに無数の氷の刃を出現させて、それを放つ。

だが、それは自分と同じ能力に防がれる。

 

チルノ「__ッ!?」

 

一方通行「なに驚いてやがる?最初に言っただろ、俺はオマエと同じ能力を使うって。だったらオマエと同じ事が出来ねェ訳ねェだろォが」

 

氷で出来た壁の向こうに、立ちながら彼は言った。

そして

 

一方通行「それに手合わせだからって気を抜くなよ?大怪我しても知らねェぞ」

 

チルノ「…………。上ッ!!」

 

気付いた時は、もう遅かった。

高速で上空から地面に真っ直ぐに飛んできた、約十メートルの氷の塊は、チルノの手前に激しい音と共に落下した。

すると、衝撃波が発生しチルノは吹き飛ばされる。

だが、それは問題ではなかった。

大した距離に吹き飛ばされなかったのだ。

そう、問題は一つ。

 

あの一瞬の隙を作り、一方通行は姿を消していたのだ。

 

チルノ「居ない…………?」

 

この時、これがどういう意味か分からなかったが次の瞬間には理解する。

 

チルノ「わっ!?」

 

そう、どっから来たか分からない尖った氷の塊が、チルノに向かって飛んできたのだ。

それに一回驚くが、自分も尖った氷の塊を飛ばし、攻撃を粉砕する。

しかし、チルノは冷や汗をかく。

 

チルノ(次はどっから攻撃がくる!?)

 

どこから来るか分からない攻撃とは怖いものだ。

次は後ろか次は前か次は下か次は上か、いや、まさか次は非常識的な所から…………かも。

相手は、あの"一方通行"だ。

他の者が言うように彼は頭が良く回る。

だからこそ、この状況に追い込まれてしまったことに、非常に危険と感じたのだ。

 

一切の気を抜かず、集中して周りを警戒する。

そしたら

 

チルノ「…………え」

 

ここら一帯の地面が凍り付いた。

 

チルノ「………なんで地面なんかを…?」

 

ピシッ。

一度、地面に足を付け一方通行の考えてることを探る。

 

が、直後、真下の地面から巨大な氷柱伸びてきた。

それを横に飛び間一髪、避ける。

ピシッ。

 

だがもう一度チルノの真下から巨大な氷柱が伸びる。

だから横に飛んで避け

 

 

ピシッ。

またまた巨大な氷柱がチルノの真下から伸びたから、宙に浮いて避ける。

 

チルノ「……………はぁ、はぁ。危なかった」

 

もう少し上に上がった所で宙で静止する。

しかし、一方通行の姿は見えない。

 

チルノ(にしてもなんで隠れて攻撃してくるんだろう?そんな事しなくても一方通行なら正面からだって普通に勝て……………………はっ!!)

 

そこで思い出した最初に言っていた言葉を。

『俺はオマエの能力のコピー。冷気を操る"程度"の能力しか使わない』

 

"程度"。

たかが程度、されど程度だ。

能力名にこの『程度』があるか無いかで力は大きく変わる。この事からある考えがチルノの頭に浮かんだ。

それは現在"一方通行は正面から戦うほどの力を持っていない"。

 

少し考えれはすぐ分かるでしょ。っとチルノは自分を責める。

一方通行が使ってる力はあくまで前までの自分の力だ。

しかし、今の自分はあの時とは比べられない程強くなっている。

ならば…………と。チルノは口角を上げて、

 

チルノ(この勝負。一方通行を見つければあたいの勝ちだ!!)

 

今居る場所を見える所を予測して宙に浮きながら移動する。

もし、一方通行を見つけても一発目の攻撃のように防がれてしまうという心配は無い。

一方通行が作り出す氷の壁を貫くことができる強力な一撃を繰り出せば良いだけの話だ。

 

そしてチルノは先程居た所を中心に、円を描くように飛ぶ。

すると

 

チルノ(……、見つけたっ!!!)

 

木の影に隠れている一方通行を発見すると直ぐ様

 

チルノ「凍り付けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!」

 

一方通行に向かって、急接近する冷気を放つ。

そしたらその冷気は、通った場所を問答無用で冷却させながら一直線に進み続け

 

「__ッ!?」

 

気付くのが遅れた一方通行に直撃した。

 

彼の体は勿論、近場の木や地面も一緒に凍り三角形の巨大な氷の塊となっていた。

 

チルノ「ふふーん。今回はあたいの方が一枚上手だったみたいだね」

 

凍り付いた一方通行の前にドヤ顔で着地する。

 

チルノ「さーて、____が……っ!?」

 

勝った。勝利した。

勝負は終わったと思い気を抜いて能力を解除しようとした瞬間だ。

 

パリーン!!と目の前の三角形の氷は砕け、チルノの腹部には三センチぐらいの、小さな物体が直撃する。

 

チルノは両膝を地面に付け、分からぬ物が当たった腹部に手を当てる。

しかし、手で触れてみても当たった何かは無く、何が当たったか正体不明だった。

と、その時

 

「俺は確かに言った筈だ、気を抜くなって」

 

奥の方から声がした。

 

チルノ「えっ、アクセラ…レータ!?何で………じゃ、じゃあさっき居たのは一体……っ!?」

 

一方通行「偽物だ。まァ、人形とも言えるがな」

 

チルノ「人、形………?」

 

ザクザクと氷を踏みつけながら歩き、チルノの前に一方通行は立ち止まった。

 

チルノ「なに、それ……。もしかして最初言ってた事は嘘だったの!?他の能力は使わないって……!!」

 

一方通行「はァ?他の能力ゥ?使ってねェよ。俺はオマエの能力しか使ってねェ」

 

チルノ「そんな……。あたいの能力じゃあんなの…………」

 

一方通行「作れる。ただオマエがその考えにたどり着けなかっただけだ」

 

次に一方通行は自分に瓜二つな氷で出来た人形を作り出す。

 

一方通行「どォだ?こンぐらい誰でも思いつけると思うンだが?」

 

チルノ「………それって……………」

 

一方通行「あァ。ただ氷で作った人形だ。だがこれは俺の思い通りに動くしちゃンと表情も変化する。それにやろうと思えばこの人形は戦うことも出来るぞ」

 

そして、ギャシャンッ!!と隣の氷人形を足裏で蹴り砕く。

 

一方通行「で、だ。チルノ、オマエに質問だ。俺は何処に居たと思う?」

 

チルノ「ここよりもっと奥?」

 

一方通行「そォだ。このことを聞いてなにか疑問はないか?」

 

チルノ「何でそんな遠い場所からあんな正確にあたいに攻撃出来たんだろう……って」

 

一方通行の氷人形を見つけた地点は、この草木が生い茂る林ではチルノの居た場所をギリギリ見えるかどうかだ。

だがしかし、一方通行はそんな場所よりもっと奥に居たというのにチルノの居る所を正確に捉えていた。

 

一方通行「答え合わせをしてやるよ、どォして俺が遠い場所からでもオマエの位置を分かったか。それは音だ」

 

チルノ「音?」

 

木を背にして座る一方通行の隣にチルノは腰を下ろす。

 

一方通行「まず最初俺は地面に氷を張った。それは氷を踏ンで割れる音を聞くためだったンだ。俺とオマエ以外この辺りに生物は居ない。だからもし、氷を踏んで割れる音がしたらオマエが居る位置が分かるって仕組みだ」

 

チルノ「へぇ~……」

 

一方通行「これで分かっただろ。オマエの能力は敵の位置を確認することも出来るし、ダミーも作り出せる。それに________」

 

説明を続けながら手の平に氷で出来た一丁の拳銃を造った。

 

一方通行「作れる武器は剣だけじゃねェンだぜ」

 

チルノ「ん?なにコレ?」

 

一方通行「銃。まァ、俺の前まで居た世界に存在する武器の一つだ」

 

チルノ「ふーん。そうなんだ~」

 

その氷の銃を手に取り不思議そうに見ていた。

が。触っている最中チルノの指がトリガーを引き、、、

バンッ!!と氷の弾丸が放たれた。

しかし運が良かった。

銃口は下を向いていてどちらも怪我はない。

 

チルノ「……………………」

 

一方通行「言い忘れたがそれをさっきオマエに撃った」

 

チルノ「え、えぇ!?良くあたい無事だったな………」

 

一方通行「そンなモンを俺が考え無しに撃つと思ってンのか。ちゃンと計算してオマエが作った氷で銃弾の勢いを殺したっつの」

 

そう。最初から一方通行はここまで計算していたのだ。

そして全て計画通り事を進ませ、勝利した。この手合わせを。

 

 

そして手合わせが完全に終了した時には、もう空はオレンジ色に染まっていた。

だから今日はここまでにして、二人は一方通行の家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

守りたい。失いたくない。

大事に、大事にしているもの。

もしもそれが無くなってしまったら今の自分は完全に崩壊する確信がある。

 

だから。あたいは、努力というものがどんなにカッコ悪くても、ダサくても、女々しくても、全部の危機から守れるほど強くなりたい。

 

 

だけどね…………そのあたいの守りたいものの中にお前が居るんだよ、一方通行。

 

たった一人で、多くのものを守ってきた。

そして毎度事件を無事に終わらせ、あたい達の元に帰ってくるお前が、一方通行があたいは___________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の5時。

 

 

チルノ「…………………」

 

そっと一方通行の居る、部屋に忍び込み顔が良く見える場所に座る。

そして熟睡する彼の表情を見て、チルノは小さく笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この楽しくて、嬉しくて、苦しくて、熱い気持ちは一方通行

お前に出会わなければ、一生あたいは抱かなかったと思う。

 

そう……思うの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行が目を覚ました時には、チルノは家に居なかった。

だが、何処に行ったのか一枚の紙で分かった。

 

一方通行(『先に行ってる』…………か)

 

この一人で住むには大きすぎる家の、リビングの机の上にお握りが二つ乗っかってる皿の横に置いてあった紙を手に取り、読んだ。

そして次に小さなお握りを見る。

この家に居たのは自分とチルノだけだ。

 

つまり、この家で朝早く起きて、小さなお握りを作れるのは一人しか居ない。

 

一方通行「…………」

 

手紙を置き小さなお握りを手に取る。

そしてパクっとお握りを頬張った。

 

一方通行「…………………………チッ、塩気が多すぎだクソったれ。どンだけ多くの塩使って握ったンだあのバカ」

 

顔を顰めながらそんなことを言っているが、一つ食べ終わるともう一つのお握りへ手を伸ばし、その塩気が多すぎるお握りを頬張る。

 

一方通行「………………。俺も行くか」

 

お握りを全て平らげ真っ黒いスキマを開く。

そしてあの自然に溢れた場所にある教室に行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チルノ「……お。やっと来た」

 

一方通行「待ってたのか?」

 

チルノ「うんっ、自習しながらね。で、今日は何をすれば良いの?」

 

一方通行「なンもねェよ」

 

チルノの隣の机に足を組んで座りそう言った。

 

チルノ「…………えっ?」

 

一方通行「オマエは昨日一昨日で知恵は充分身につけられただろう。そうなると後はオマエ自身でどォにかするしかねェ。俺がオマエにしてやれるのは能力についてヒントやアドバイスをすることだ。だからもう俺の役目は終了だ」

 

チルノ「………結局あたいは本を読んで書いて覚えてしかしてないよ。それで強くなれたのかな?」

 

一方通行「頭を鍛えると言っただろォが。それで良いンだよ。後はオマエが手に入れた知識をどンな風に工夫するか確かめて全て終わりだな」

 

チルノ「確かめるって前の時みたいに見せれば良いの?」

 

一方通行「違う。今からオマエは今までの知識を元に試行錯誤しろ。そして、ある程度の自信を持ったら昨日手合わせした場所に来い。そこで俺は待ってる」

 

スッと腰を上げスキマを開く。

 

チルノ「…………試行錯誤しろって言われても」

 

今にでも、行ってしまう彼の背中に弱音を溢す。

だがしかし一方通行は振り返りもせず、立ち止まることもせず黙ってスキマの向こうへ行ってしまった。

 

 

そして、一人残ったチルノは

 

 

チルノ「……………………………………。ふー。やるか!!それしかあたいに道はないんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チルノ「…………お待たせ」

 

あのままスキマは繋げたままであり、そこからチルノが待ち合わせ場所に来た。

 

一方通行がチルノの前から去って、二時間。

たった二時間でチルノはこの場に来た。

 

チルノ「じゃあ始めよう」

 

一方通行「あァ。その前に今回は前回と違うところがある。それは今回俺は普通に自分の能力を使わせてもらう」

 

チルノ「構わないよ。全然」

 

一方通行「そォか」

 

呟いた次に一方通行は首の関節を鳴らす。

そして、

 

一方通行「チルノ、今から見せて貰うぞ。オマエの集大成」

 

チルノ「うん。一方通行をガッカリさせないように頑張る」

 

その言葉に思わず、少し口角が上がってしまった。

でも、だからと言って負けてやる理由にはならない。

 

一方通行「手合わせ、開始だ」

 

ズンッッ!!!!

一方通行から、全体に烈風が吹き荒れる。

チルノは宙に体を浮かせ、空を自由に舞い、一方通行から距離を取る。

 

そして、離れた空からチルノは余りにも巨大過ぎる氷の塊を飛ばす。

しかし、それだけで終わらない。

更にその後ろから、無数の氷柱を放っていたのだ。

 

後ろから放たれた氷柱は巨大過ぎる氷の塊を砕く。

だが砕けた氷の塊の破片達の勢いはそのまま。っということは氷の塊の破片と無数の氷柱。

その両方がチルノが見渡す地上全体に降り注ぐ。

 

勿論、一方通行の居る場所にも降り注いでいる。

 

一方通行は迫る氷柱と氷の塊の破片を地面を強く殴り、その衝撃でチルノの全ての攻撃を粉砕した。

別に衝撃が出来ればどこを殴ろうが蹴ろうが変わらない。

一方通行はたた衝撃を欲していた。

そして、その衝撃を空全体に向け氷を砕く。

それがしたかっただけなのだ。

 

だから、思いっきり殴られた地面は何も変化はない。

これは殴って生まれた衝撃を全て、空へ向けた証拠でもある。

 

一方通行「チッ。これじゃ前と変わンねェぞ」

 

空に居るチルノへ片手を伸ばす。

すると、大気のベクトルを操り、自分の元へ集める。

そしたらまるでブラックホールのように、周りの物全てが一方通行に吸い込まれる。

だが心配はない。

普通ならこれは自殺行為に近いが、物体が彼に近付いた瞬間、反射が発動して粉砕される。

 

 

空に居るチルノは

 

チルノ「……う、ぐぐぐぐぐ、体が引っ張られる……!!!」

 

大気の流れと葛藤していた。

この状況は非常に不味い。

 

もし、このまま体が引っ張られ一方通行の元へ吹っ飛ばされたら、彼の反射を食らいゲームオーバー。

だがこれの他にチルノはもう一つ、考えが浮かぶ。

それは

 

チルノ(今、全ての物が一方通行の元へ引っ張られてる。なら、どんな攻撃でも一方通行の所に飛んでいく!?)

 

そう、今。どんなに適当な場所に攻撃を放とうが良い。

そうどうでも良い。だって勝手に一方通行の場所へ行ってくれるのだから。

その事実を発見すると

 

チルノ「それそれー!!いけいけぇぇぇえええええ!!!!」

 

どんな形をしてようが関係ない。

氷を豪速球で当たれば怪我は確定。

なら、と。

チルノは空に氷の粒を撒き散らした。

 

すると、その氷の粒は一直線に一方通行の所へ

 

 

だが

 

一方通行はその行動を見て笑う。

まるで罠にかかった獲物を見るが如く

 

そして大量の氷の粒は一方通行に向かって飛び、当たる…………と思った瞬間反射が機能する。

そしてだ。解除した。

自分の元へ全ての物を引き寄せてたベクトル操作を

 

結果

今まで通り、反射された物体は飛んでいく。

もしも、さっきのままだったら反射された物体は吹っ飛ばされる力と引き寄せられる力、その両方が一気に襲い粉々になる。

だが今はそれが、無い。

 

チルノ「う、うわっ!?」

 

無数の氷の粒が反射され、自分の所へ飛んできた。

だからチルノは慌てて目の前に氷の盾を生成する。

しかし、遅かった。わずか数秒程度だが……

 

チルノ「…………っ…………くっ」

 

ほんの少しの数は防げなかった。

身体中に切り傷が出来た。が、一ヵ所。

大きな傷が右肩に、、、

 

チルノは右肩を押さえて地面に立つ一方通行へ視線を向ける。

 

 

 

 

一方。

 

 

一方通行「さっきのように適当に作った氷なら、注意する必要はねェ。だが、もし考えて作った氷なら注意してぶち壊す」

 

背中から、四つの竜巻の翼を伸ばす。

そして自分も空へ舞う。

 

両者、空を飛ぶ。

が、しかし一方通行とチルノは結構離れた距離に居る。

 

間があった

 

そして最初に行動したのはチルノだった。

一瞬で背後に円上に水色の弾幕を設置する。

そして両手に氷で造形された剣を持ち、スカートに飾るように同じく氷の剣が何本も。

 

そして、雄叫びがあった。

その声の主はチルノだ。

 

チルノは雄叫びと共に一方通行に突撃する。

次に両手の剣を振り下ろした。と同時に弾幕が一斉射撃。

しかし、一方通行はチルノが振り下ろした剣を片腕を払っただけで破壊し、弾幕を反射する。

反射された弾幕はチルノに直撃して、爆発音が轟き、灰色の煙が立った。

 

突撃をし、吹き飛ばされた………のだが。

チルノは笑っていた。

それに一方通行が気付いた時に、チルノは吹き飛ぶ勢いを殺し、体勢を立て直し宙に立つ。

 

 

チルノ「……………………ダメだね」

 

一方通行「?」

 

チルノは笑っていた。一方通行に一発も攻撃を当てられていないのに、劣勢と呼ぶべき状況に立っているというのに、だ。

 

チルノ「どんな事をしてもあたいの攻撃は当たらない。一方通行を相手に工夫してどうこうなるとは思えないよ__________」

 

ただし、と続ける。

その時その瞬間。チルノのは全身に力が一段と入っていた。

 

チルノ「それは前までのあたいだったらの話だっ!!!!!!」

 

片手を空へ伸ばしスカートに纏っていた氷の剣がチルノの背後で円を作りまるで時計の針のように円を描く。

そして、冷気を全力全開で放ち

 

チルノ「いくよ一方通行!!これがあたいの努力の集大成だ!!!!!」

 

パキーン!!!!!!

 

チルノが放つ冷気は凍らした、

 

 

 

絶対に不可能と思われた『時間』をも。

 

 

 

チルノは自分を中心に半径200メートル必要な酸素以外全てを凍らせた。

 

だが凍らなかった化け物が一人、

 

一方通行「………………こりゃァ」

 

チルノ「うーん、一方通行は反射だっけ?それがあるからやっぱり凍らなかったかー」

 

失敗。

しかし、表情や声などは全然落ち込んだ様子ではなかった。

 

一方通行「冷気で時さえも凍らしたのか」

 

周りを見渡す。

世界は止まっていた。

音は無い。動きも無い。ただ、静かで冷たい全く別の世界。

 

一方通行「すげェな。コレがオマエの成果か……」

 

素直に褒めた。

まさか、冷気を操り能力で時を凍らせるとは思ってはいなく、意外過ぎて口角が上がってしまう。

 

チルノ「うん。前から『止める』と『凍らす』ってのがどこか似てると思っててやってみたら出来たんだ。でも……"この真完全凍結(パーフェクトフリーズ)はこっからが本番なんだよ?"」

 

そう言うとチルノは弾幕をいくつも背後に設置、そして放つ。

が、時間が止まってるため宙で制止する。

なのに次は円の形を作っていた氷の剣も一方通行へ飛ばす。しかしこれもさっきの弾幕と同様宙で制止する。

 

すると、弾幕と氷の剣に一方通行は囲まれ逃げ場など無くなる。

 

一方通行「………………」

 

宙で自分に向かって来るものが制止しているというのに冷静に、一歩も動かず空に立っていた。

 

一方、

 

チルノ「解除!!!!」

 

それは能力の解除を意味していた。

つまり、凍っていた時が動き出すという事だ。

で、だ。

一方通行を囲むように飛ばされた弾幕や氷の剣も動きだした、が。

それら全ての攻撃が直撃することはなく、反射された。

 

反射された弾幕や氷の剣はチルノに向かって飛んでいく。

チルノは弾幕や氷の剣から逃げるように遠く遠くへ飛んで行った。

 

そして一方通行から結構離れると、急に止まり氷の壁を作り反射された弾幕と氷の剣を受け止める。

だが追撃をするかのように一方通行が背中の四つの竜巻を利用して突っ込んで来る。

物凄いスピードだ。

 

しかしチルノはそれを間一髪で避ける。

 

一方通行「でェ?次はどンな技を見せてくれンだァ?」

 

チルノ「ふ、…………フフフ。真完全氷結(パーフェクトフリーズ)の効果はこっからだ!!」

 

振り返り手を後ろに伸ばし、その手の中で氷を作るが、それは小さかった。

しかし、

 

チルノ「くらえぇぇぇぇえええええええええええええええええええ!!!!」

 

手の中でも出来た氷を投げた瞬間、投げられた氷は手の中で作られた氷とは思えない程、巨大で強固な氷柱となっていた。

 

一方通行はそれを両手で受け止める。

だが

 

一方通行(ッ!?なンだこりゃ、あの一瞬で作られた氷か!?)

 

反射してそのベクトルで氷柱を砕こうとした。のに、巨大な氷柱にはヒビが入る程度しかダメージはなかったのだ。

仕方がない。

一方通行は巨大な氷柱を地面へ投げ捨てる。

 

チルノ「どう?凄いでしょ。コレが真完全氷結(パーフェクトフリーズ)の効果」

 

一方通行「…………………………そォいうことか」

 

チルノは言う。

これが真完全氷結(パーフェクトフリーズ)の"効果"だと。

それを聞き、考えれば分かる事だったのだ。

 

一方通行「オマエの真完全氷結(パーフェクトフリーズ)とやらは咲夜の時間停止と違い時間停止する場所が半径200メートルと限られている。だから時を止めた半径200メートルとそれ以外の空間には時間のズレが生じる。オマエはそれを利用してさっきの攻撃を___」

 

チルノ「___正解!!さっき止めた時間は約30秒。そしてあたいが居る場所は半径200メートルにギリギリ入っている位置。面白いカラクリでしょ?この半径200メートル以内ではどんな小さな氷を作ろうが、この半径200メートル以外の場所に出せば約30秒の時が一瞬で経ち氷は変化する。だから一瞬であんなに巨大で強固な氷になったんだよ」

 

そして、

 

チルノ「さて。あたいはこっからバンバン氷を投げて攻撃するけど大丈夫?」

 

一方通行「はっ、舐めンなよ。平気だっつの。それに弱点も見つけたしな。オマエのその半径200メートル以内から投げ、その半径以外の場所に出たら氷はその後の姿になる。だったら簡単だ、俺がオマエの領域の中に入ればイイ」

 

チルノ「あたいがそれを黙って許すと思う?」

 

一方通行「………関係ねェよ」

 

後方へ後方へと一方通行は距離を取る。

 

一方通行「オマエが許す許さないとか関係ねェ。俺がやるかやらねェかだ」

 

チルノ「……ねぇ、一方通行。あたい本気を出した一方通行と戦いたい」

 

一方通行「………急になンだよ。なぜそンな事言う?」

 

チルノ「見て、みたいんだ。あたいが目指す場所に立ってる人の全力を」

 

一方通行「………………はァ」

 

ため息を吐いた後だった。

一方通行の背中にある四つの竜巻は消え、別のものへ変化していた。

色は黒。

噴射に近い、真っ黒な翼。

それが彼の背中にあったのだ。

 

一方通行「悪りィが、もう一つの方はオマエには使えねェ。だから全力っつゥか、全力の一歩手前って感じだ」

 

チルノ「……そう、ありがとう」

 

一瞬表情が暗くなったが直ぐに明るくなり笑っていた。

 

チルノ「良いんだ、別に。だってどっちにしたってあたい勝てなさそうだし」

 

でも、と続ける。

そして両手を後ろに伸ばしその手の中で球体の氷を作る。

 

チルノ「勝てないからって、諦める訳じゃないけどね!!」

 

一方通行「イイな。イイ台詞を吐くじゃねェか!!チルノォォォォ!!!!!」

 

黒き翼。投げられた巨大で強固な二つ氷柱。

その二つが激突。

 

だが、呆気なかった。実に呆気ない結末だった。

二本の黒い翼は二つの氷柱を嘲笑うように意図も容易く貫き砕く。

そしてチルノが次の攻撃を繰り出そうとした時にはもう見えぬ一撃を食らい、高速で地面へ叩き落とされていた。

 

 

 

こうして、最後は余りにも差があったが決着がついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チルノ「…………………………っ、んん……」

 

一方通行「目ェ覚ましたか」

 

チルノ「…………あ」

 

今、多分自分達はあの戦った場所より離れた場所に居るのだろう。

しかし、それに気付くよりチルノは違う事に目を丸くして驚く。

それは木を背にし足を伸ばして座る一方通行のその伸ばされた足を自分は枕変わりにして寝ていたのだと

 

だから

彼の、一方通行の顔を下から覗くことにチルノはなっていていつもより顔が近く感じる

 

チルノ「……え、えーと……?」

 

一方通行「俺の能力で模倣した傷薬をオマエに塗った。だがその薬にはデメリットがあってなァ、しばらく動けなくなっちまうンだ。だからこのまま安静にして寝てろ」

 

チルノ「……うん」

 

寝返りすらうてないほど、体の自由がきかないのでずっとこのまま一方通行の顔を見つめることになる。

だが意識してしまって正直なはなし、凄く恥ずかしい。でも、でもだ。

どうにもできないから、もう諦めた。

 

チルノ「ねえ、一方通行」

 

一方通行「あン?」

 

顔が熱く頬が薄く染まる。

が、しかし話す。

 

チルノ「あの時、黒い翼を出したときこれは全力じゃないけど全力の一歩手前の力だって言ってたけど……。あれ、嘘でしょ?」

 

一方通行「………………」

 

チルノ「気付かないと思った?そのぐらいあたいでも分かるよ。だって……一方通行があの程度で全力の一歩手前ってみんな首を横に降って否定するよ」

 

一方通行「……騙して悪かった」

 

チルノ「ん?ううん、責めてる訳じゃないよ。知ってるよ全力を、いいやある程度以上の力を使えないって」

 

一方通行「それもあるが。全力をもし出したら加減ができねェンだ」

 

あの天才と称される一方通行ですら、コントールが難しいチカラ。

ベクトル操作や激似模倣能力、黒い翼、白い翼。

これらは完璧に掌握している。

 

違うのだ、また別の"なにか"が自分の底の底に眠っている。それはある程度、強力な力を振るうと勝手に目覚めそして暴走して全てを破壊するだろう。

それが分かっているから、本気というものを簡単には出さないと決めている。

 

チルノ「へぇ~、だったら力を完璧に制御できるように努力しなきゃだね」

 

一方通行「……まさか、それをオマエに言われるとはな」

 

 

そしてこの後、20分経つとチルノは動けるようになった。

そうすればここで休んでる理由はない。

一方通行、チルノは並んで歩いて行った

 

山が近くに見える林の中を歩いている最中

 

 

チルノ「そういえばあの時間を止めた半径200メートルの場所時間がズレたままだけど大丈夫かな?」

 

一方通行「それはもう直しておいたぜ」

 

チルノ「あぁそうか、皆のチカラを使えるんだもんね。時間操作もできて当たり前か」

 

一方通行「オマエの真完全氷結(パーフェクトフリーズ)とやらはそンな乱用すンなよ。あちこちの時間をズラしたら幻想郷の空間が捻じ曲がるぞ」

 

チルノ「そうなんだよねー。時間を止めることができるようになってもそこ以外の時間とでズレが生じちゃうから新技なんだけど自分自身で後始末出来ないからそんなに使えないんだよなー」

 

一方通行「……だがピンチになったら誰がなンと言おうと問答無用で使用しろ。そのあとはそン時になったら考えろ」

 

チルノ「うん!そうする!」

 

師匠が、あの一方通行が言うんだ。

チルノは笑って答えた。

 

チルノ「…………。ねぇ、手を出して?」

 

一方通行「?」

 

立ち止まって訳の分からないことを言われたが断る理由もないため片手を出して立ち止まる。

すると、チルノはその手を掴んだ。

 

チルノ「さっ、帰ろう一方通行。あたいに付き合ってくれたお礼に今日の晩御飯はあたいが作ってあげるよ!!」

 

一方通行「…………チッ。朝の時みてェに調味料の分量間違えンなよ?」

 

チルノ「え………、もしかしてしょっぱかった?」

 

一方通行「岩塩を直接口に放り込まれたかと思うぐらいな」

 

チルノ「あっ、あはははははっ!!」

 

一方通行「つゥことで次は料理を教えてやるよ」

 

チルノ「は~いっ!!ちゃんと学んで一方通行に美味しいご飯を作ってみせるよ!」

 

 

こうして二人は手を繋いで帰った。

その時、チルノは楽しそうに微笑んでいた。




どうでしたか?チルノのお話は?

もう、ね。
私はこの話を一方通行がチルノと出会った時から書きたくて書きたくて仕方がなかった!!
っと言う事で次回もただ私が書きたいだけでこの『幻想郷を一方通行に』のストーリーにそんな関係ないお話が投稿されます。

一応次回予告をさせて頂くと次は紅魔館でのお話となっております












ポスター「よーし!次の話を書くぞーー!!!」

霊夢「勝手にやってなさい。私達はこの下の余った場所で自由にしてるから。ね、魔理沙?」

魔理沙「おう!新メンバーも加えてな!」

一方通行「チッ。またうるせェのが一人増えンのかよ。つか何で俺はここに居ンだァ?」

霊夢・魔理沙「「強制参加」」

一方通行「…………クソッたれが。で、一人増えるっつってたが誰だよ?」

霊夢「私。魔理沙。一方通行。といったら決まってるでしょ?」

魔理沙「そうそう、この面々が揃ってアイツが居ないのはおかしいぜ」

一方通行「…………まさか、アイツか」


















紫「私、ここに呼ばれたけどなにすれば良いの?」


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2話

やっと……やっと…………………

書き終わったぜぇぇぇえええええ!!!

っということでお久しぶりです
小説を書くとは違う趣味と仕事で小説を書けなかったポスターでございます。
いや~……仕事が忙しいんすけど休みはちゃんとあるんですよ?
ただ休みを全てこれとは違う趣味に使ってしまったため書けなかった………………
あ、仕事終わりに書くなんて無理です
仕事から帰ってきたらもう家で死んでますから

……ってオイオイ私の言い訳なんて誰も聞きたくないよ


さて、ようやく一段落つきこの物語を進めて行こうかと思います。
…………が?こっそり裏で違う小説を書こうと計画中







今まで待っててくれた方々本当にお待たせしました。
最近読み始めた方々だけじゃなく全ての方々、これの更新は相当遅いから私以外の素晴らしい小説をお読みになってください。

でも読むぜっという仏のような方々
多分というか絶対誤字があります
ですから発見した場合はお暇な方だけ報告してくれると助かります。


…………フッ、自分だったらこんなクソカスなヤツの小説は読みませんね


一方通行「………………」

 

朝、目覚め自分で淹れたコーヒーを椅子に座って飲んでいると玄関ドアを叩く音が聞こえた。

一方通行はコップを机に置き、玄関に足を運ぶ。

そしてドアを開けた。

 

そしたら

 

美鈴「おはようございます」

 

一方通行「…………なンの用だ?」

 

美鈴「実は、レミリアお嬢様からの頼み事をお伝えに来ました」

 

一方通行「レミリアからの頼み事だと?」

 

美鈴「はい。お話を聞いてくれますか?」

 

一方通行「……話せ。それから考えてやる」

 

美鈴「あ、はい。今日、咲夜さんが風邪で倒れてしまい紅魔館が大ピンチなんです。それでお嬢様がこの危機を打破するために出した結論が一方通行さんなら咲夜さんの仕事をこなせるじゃないか、っと言う事で、今日だけ。今日だけで良いのでメイドの仕事をしてくれないでしょうか」

 

一方通行「なンだ簡単じゃねェか、咲夜のとこに案内しろ。俺が治してやる」

 

美鈴「それは困ります!!」

 

一方通行「はァ?」

 

美鈴「あ、あの……咲夜さんは最近全然休まないで働きっぱなしだったので休んで欲しいんです。それで今回、風邪を引いたのでそれを理由に、お嬢様の優しい気持ちで一日休ませたいと…………」

 

一方通行「つまり、全然休まねェ咲夜が風邪を引いて倒れたからそのまま一日たっぷり休ませてェと。それで俺が咲夜の変わり使用人の仕事を……か」

 

美鈴「こんな面倒な事をお嫌いなのは重々承知してます。ですが、どうか…………」

 

深々と頭を下げる美鈴。

それを目の前にした一方通行は

 

一方通行「チッ……。分かった、頭を上げろ。そォいや紅魔館に顔を出すって約束してたし、それのついでにやってやるよ。だが咲夜の仕事をやるっつってもあのメイド服は着せられねェよな?」

 

美鈴「あ、はい。多分一方通行さん専用の使用人服が渡されると思います」

 

一方通行「…………私服で仕事は禁止なのか。そォいう所はこだわってンだなァ」

 

こうして、今日一日紅魔館で使用人の仕事をすることが決定した。

しかし面倒臭がりな彼がこういうのを引き受けるのはとても珍しい…………

いや、一方通行が珍しい事をするのはもう今更か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吸血鬼が支配する紅魔館。

一方通行は美鈴と共にその館の玉座の間にいた。

そして二人の前方に存在する玉座にはこの怪しくも美しい紅魔館の主、レミリア・スカーレットが座っている。

 

美鈴「お嬢様。一方通行様をお連れしました」

 

レミリア「ご苦労様、持ち場に戻りなさい」

 

美鈴「承知しました」

 

そして美鈴は一方通行を玉座に連れ、ちょっとレミリアと会話したと思ったらすぐにペコリと頭を下げた後、部屋を出て自分の持ち場である紅魔館の門へ行ってしまう。

それを見送った一方通行は

 

一方通行「で?呼ばれて来てみたが具体的に俺は何をすればいいンだ?」

 

レミリア「う~ん、一から十まで説明したいんだけどその前に使用人服に着替えてくれる?」

 

一方通行「メンドくせェ、このままじゃダメなのかよ」

 

レミリア「別にいいんだけどね。用意しちゃったしホラ、勿体ないでしょ?」

 

一方通行「……わざわざ用意しやがったのか。チッ、しょうがねェ。どこにあンだ、服は」

 

レミリア「口で説明するの面倒だからついて来て」

 

そう言うとレミリアは玉座から立ち上がり、宙を飛んで広いこの部屋の扉の前まで行き

 

レミリア「じゃ、行きましょ」

 

扉の前で地に降り、扉を両手で開ける。

そして紅魔館の赤い廊下を進み、その後を一方通行は歩いて付いていく。

 

歩き続けること9分。

二人は普通サイズの扉の前に立っていた。

 

レミリア「ここにあるから、着替えてきて」

 

一方通行「はいはい……」

 

想像していた以上に面倒なことが始まりそうだ、と思ったが来てしまったからには逃げたす訳にもいかず、このまま今日は紅魔館で働こうと扉を開ける時考えていた。

 

そして、だ。

 

一方通行「サイズピッタリじゃねェか、これ?」

 

着替え終わり部屋から出た時の一言がこれであった。

 

レミリア「………………」

 

扉の横で壁を背につけて待っていたレミリアは、使用人服を着た一方通行を見て何も言わなかった

 

いや

 

レミリア(カッコいい、一生見ていたい…………)

 

使用人姿の一方通行を見た感想が言葉にするのが恥ずかしくてなにも言えなかったというのが正しいだろう。

 

一方通行が着た使用人服は男性用のものである。

色は白と黒が多めの二色だけだが色のバランスは丁度良く仕上がっている。

だが、ここで一つ。レミリアはある違和感を感じた

それは

 

レミリア「……あれ、ネクタイは?」

 

用意した使用人服は、下は黒いズボン。上は黒い上着に白いシャツに黒いネクタイの筈だが……

 

一方通行「ネクタイは苦しいから外した」

 

レミリア「…………まっ、それぐらいいっか」

 

まあ、着たくれたしいっか。

ということで使用人服に着替えた一方通行にレミリアは

 

レミリア「さて、じゃあ一つめのお仕事を頼むわ。フランを起こしてさっきの部屋に連れてきてちょうだい」

 

一方通行「分かった」

 

レミリア「あ、フランの部屋がどこにあるか…………ってもう」

 

一つ返事で、一方通行はフランの部屋の場所へ行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館はとても大きな大きな館である。

だが一方通行は前にここで少しやっかいになったことがあったため、館の中は大体把握している。

 

だからこそ、迷わずフランの部屋へたどり着く。

そして扉を開け部屋へ入る。

中は前に入った時と全然変わらない

女の子らしい家具が並びカワイイぬいぐるみが床に所々転がっている。

そんな部屋に居るフランはさすが大きな館のお嬢様と言わざるを得ない白とピンクのお姫様ベットに寝ている。

 

一方通行はそのスヤスヤ眠るフランを起こし、フランの姉であるレミリアの居る場所へ連れていかなくてはならない。

 

一方通行「……………………よォ」

 

お姫様ベットの枕元に腰を下ろし、寝てるフランの額に指をはじく。

 

フラン「……………んんっ……いひゃ、い…………」

 

まだ寝ぼけてるのだろう。

動きがハキハキしていないが、ゆらゆらと手を動かし痛みを感じた額に手を当てる。

そしてもう片方の手で閉じてる目を擦る。

 

フラン「……………………ん?…………あく、せら、れーた?」

 

やっと目が開いたフランは自分の額に一撃くらわした相手を確認する。

 

フラン「……え、え、え?アクセラレータ?なんでなんで!?」

 

居る訳がない一方通行が自分のベットに腰を下ろし、此方を見ていて驚愕し慌てて上体を起こす。

 

フラン「……いや、夢なのかな?」

 

一方通行「バカが。ちゃンと目ェ覚ませ」

 

ベッドから立ち上がりペチッともう一発フランの額に指をはじく。

 

フラン「いたっ、って痛いって事は現実?」

 

一方通行「やっとお目覚めか、お嬢様?」

 

フラン「…………う、うん」

 

一方通行「じゃあレミリアがオマエを呼ンでるから、行くぞ」

 

そう言って移動しようとしたら

 

フラン「その前に良い?なんで使用人の服着てるの?」

 

一方通行「あン?あァ…咲夜がぶっ倒れてな、それでその代わりで俺が今日一日使用人にって訳だ。平たく言えばアルバイト中」

 

フラン「へぇ~。ならフランのお願いごと今なら聞いてくれるんだ………」

 

一方通行「………喉が乾いたから、逆立ちして飲み物持ってこいとか言ったら千発尻叩きだからな」

 

フラン「そんなイジワル言わないよ?」

 

一方通行「あっそォ。で?オマエのお願いごととはなンだ?」

 

フランが座るベットの前で膝をつく。

 

フラン「あのね。髪をとかして欲しいな」

 

一方通行「そンなことかよ。だったら………」

 

立ち上がり一方通行はフランの頭に手を当てた

すると、寝癖で酷かった髪は一瞬でさらさらに

 

一方通行「ホラよ終わりだ」

 

フラン「…………なんか思ってたのと違う………」

 

一方通行「この俺になにを期待してたか分からねェがさっさと着替えろ。俺は外で待ってる」

 

フラン「…まって!!」

 

一方通行「今度はなンだよ………」

 

部屋の外へ出ようとしたのに、面倒臭そうにフランへ振り返る。

 

フラン「もう一つお願いあるの……きいて、くれる?」

 

一方通行「チッ………ったく、ワガママなお嬢様だせ。次はなにがお望みだ?」

 

フラン「着替えさせてほしいな」

 

もじもじと、照れているのか恥ずかしいのか分からないがそうしながら次のお願いをする。

 

一方通行「フラン………オマエまさかその歳で自分一人で着替えらンねェとか言うンじゃねェだろォな?」

 

フラン「うー、そんなんじゃないもん!!」

 

一方通行「じゃあなンだよ…………」

 

フラン「アクセラレータに、私の何でもいいから任せてみたいの……」

 

ポッと頬を染めて言った。

それは恥ずかしいという感情が表に出て頬が染まったのではない、それ以外の感情の理由で頬が染まっている。

それは普通の者ならどんな感情を抱いているか簡単に分かる。

だがしかし相手は一方通行。

超ド級の鈍感確定と皆の頭のノートに印鑑を押された彼だから

 

一方通行(今の内に、この俺を使ってやろうって魂胆か)

 

ホント。

ここまで分かりやすい彼女達を見ても何故気付けないのだ………

 

一方通行「けっ、仰せのままにお姉様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

着替えさせてもらった上機嫌なフランとこれからまた面倒が降りかかるかもしれないと考えている一方通行は、手を繋いで赤で統一された廊下を歩く。

最初は一方通行の提案でスキマを開きそれを潜って一瞬で移動しようとしたがここでまたフランお嬢様のお願いだ。

『手を繋いで歩きたい』

それは一度断った。

しかし、彼女の計算か無意識かは知らないが最強と謳われる彼の弱点。

少女の悲しそうな表情でお願いを聞かせた。

 

それで、今に至る。

 

 

でも楽しい時間とは直ぐに過ぎてしまうものだ。

気付けばもう、レミリアが待つ玉座の間に通ずる扉の前に立っていた。

 

 

ガチャン

 

扉を開ければ玉座に座るレミリアが

一方通行とフランはその玉座の前に行き

 

 

一方通行「連れて来たぞ。次は何をすれば良い?」

 

レミリア「昼まで自由にしていいわよ」

 

一方通行「ホントにいいのか?」

 

レミリア「構わないわ」

 

フラン「なら、私達と一緒にいよ!」

 

レミリア「それはダメ。フランは私と二人っきりで大事なお話よ」

 

フラン「え?大事な話ってなに?」

 

レミリア「一方通行がどこかに言ったらそれを話してあげる」

 

そう言うとだ。

一方通行の姿が一瞬で消えた

咲夜同じ時間を停止させて何処かに移動したのだろう。

 

そして一方通行が居なくなった玉座の間で

 

レミリア「じゃあお話をしましょうか。今日一日全部使って絶対に成功させたいことを」

 

フラン「……………………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「適当に廊下に出たがどォすっかなァ………」

 

昼まで自由の使用人さん(仮)は赤い廊下を歩く。

すると

 

一方通行「…………………………………………あン?」

 

寝間着少女が廊下のど真ん中で倒れてるのを発見した。

一方通行は倒れてるパチュリーに近付き、足の爪先で頭をつつく。

 

 

一方通行「オマエいつも廊下で寝てるのか?」

 

パチュリー「…………んな、わけないでしょ……」

 

一方通行「だったらこンな所でなにしてンだァ?」

 

パチュリー「珍しく図書館から出てみたけど、体が弱いからここで倒れちゃったのよ。体力も気力もないし魔法なんて使えない、今だって少し回復した力を振り絞って会話してるの…………」

 

姿形を見ればパチュリーはとても若い少女だが、今は少女の姿をした明日死んでもおかしくないおばさんに近い

それに、言葉が途中途中止まっている。

 

一方通行「………そォか」

 

一言、吐き捨てその場に背を向け歩き出す。

しかしそれはいつもの一方通行ならだ。

 

今日の一方通行は使用人(仮)だ

ならやるべき行動はただ一つ

 

一方通行(………この状態で出歩きやがったのか……)

 

しゃがみ、彼女の体に触れ能力で体の状態を把握する。

彼女自信が言っていたが元々パチュリーは病弱。

だから部屋から出るのは体調が良いときだけなのだ

 

しかし今日は体調が悪かった。だがそれを自分で気付けず体を無理させてしまった。

どんな物でも無理をさせれば不具合、最悪の場合壊れてしまう。

 

パチュリーの状態は酷い。

でもちょこっと一方通行が触れ、ベクトル操作の能力を使えば

 

 

パチュリー「……………………あれ、なんか体が楽になってきた……?」

 

一方通行「ベクトル操作だ。殺すことしかできねェと思ってた力だが、オマエの喘息の症状を和らげることができたらしい」

 

パチュリー「………ありが、とう」

 

意外や意外、あの一方通行が自分を助ける訳がないと思っていたから少々体が硬直してしまった。

しかし、いつまでも廊下で寝ているわけにはいかない。

パチュリーは立ち上がるがよろけてしまった

 

が、それを直ぐ様片手で抱き寄せ倒れるのを防ぐ一方通行。

 

一方通行「………………チッ」

 

パチュリー「…………………」

 

白と赤。

その二色しかない一方通行の顔が間近にあるという理由もあるが今の自分の状況を理解し頬からだんだん熱くなってしまう。

 

パチュリー「……あの、もう…_______________きゃ!」

 

一方通行「満足に歩けねェだろォから今から俺が部屋に返してやるよ。お嬢様」

 

パチュリー「あ………あぁ……あぅ…………」

 

もう限界だ。

急にお姫様抱っこされそれでも赤面確定だと言うのに、慣れないお嬢様扱い

 

パチュリーは顔を赤くして頭から湯気からゆらゆらと出ていた。

 

 

一方通行「オイ、そォいう反応されると逆に俺が恥ずかしくなるだろォが」

 

パチュリー「…だってぇ……」

 

帽子を深くかぶり真っ赤な顔を見えないよう隠す。

それからパチュリーはピクリとも動かず黙りだ。

 

 

とにかく一方通行はパチュリーを大図書館に運ぶ。

今日は一方通行は使用人。

紅魔館の住人を助けるのもお仕事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界にピンチに駆けつけるヒーローなんて居ない。

そう思っていた。

 

自分のことは自分でなんとかする。

それが普通、それが常識。

 

だがそれは残酷だと思う。

だってひとりで何でもかんでもできるのなら人はひとりで生きていける。

でも、こんな言葉がある

『人はひとりでは生きていけない』

 

その言葉は人間だけじゃない

神、妖怪、魔物、悪魔などなど……

そう、この世に生きる全てに言える言葉だ。

 

だからこそ、残酷だと思い矛盾してると感じる。

しかしだ。

そんなことを思ったって自分はただ魔法を使えるだけだし、体は普通の人間より脆弱

 

そして今。

私はピンチというやつに陥る。

気分転換にあの大図書館から出て、屋敷の中を散歩していたら体が急に重くなり胸が苦しくなって意識が飛んでしまい、糸が切れたように気絶してしまった。

気付けば、真っ赤な廊下で力なく倒れていた。

 

この状況はまずい。

気がついたもののまだ意識はまだはっきりしていなくて、魔法が思うように使えない。

 

自分の問題は自分で解決

そんなの無理だ

力というものは確かに人よりある

だがそれが今は使えない。

だから……誰か…助けて

 

 

同じ館に住む家族に近い存在の者達は居るが、あの子達はこのバカデカイ館の中でポツリと倒れてる私を見つけ助けてくれるだろうか………いや無理だ。

咲夜ならワンチャン。と思ったが今日咲夜は高熱で倒れそれからずっと寝たきり。

 

 

悲しいな、不幸とは突然に訪れる。

まさか、私は自分の家で呆気なく死ぬのだろうか……

そう諦めた時だった

 

 

この幻想郷を一度だけじゃない

 

二度も救ってくれたヒーローが私の前に現れた。

 

それから彼は難なく助けてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてよろけた私を支えてくれた。

まだ、歩けない私を横抱きして大図書館まで返してくれるらしい。

 

顔が……近い。

 

あれ、どうしてだろう。

彼の事を見ると顔が熱くなる

頭の中が彼のことでいっぱいになる

 

 

あぁ……そうか。

 

皆と同じようにこのヒーローに

 

 

私も___________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________落ちちゃったのね…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バタン。

扉は触れずに開きそして閉じる

 

一方通行とパチュリーは大図書館に着いた。

 

前に来たときと全然変化はない

どこを見渡しても本、本、本、本、本、本、本、本。

 

大量の本が綺麗にきちんと本棚に並べられている。

そんな大図書館の中を進む

 

そして、だ。

どこかにあった椅子が勝手に浮き宙を移動したと思ったら一方通行の前にカタンと落ち、その椅子にパチュリーを下ろす。

 

一方通行「そこから動くな。動こうとしたら両足をへし折る」

 

一般から見れば怖い表情だったが、もうパチュリーからすれば全然怖くない。

むしろどんな顔をしててもずっと視界に入れていたいぐらいだ

 

まあ、そんな事を考えていたら一方通行は『本を借りる』と一言吐き捨て本を探しに行った。

 

パチュリー「……………………」

 

手前に二人で使うには丁度良い円形の小さい机が空から下りてきた。

多分姿は見えないが一方通行が能力で持ってきたのだろう。

 

パチュリーはその机に肘をつき待つことにした。

 

 

 

そして数分後。

 

一方通行「……ちっとばかしオマエに聞きてェ事があるが構わねェな?」

 

魔法などが記された書物。

魔道書を三冊ぐらい持ってきて、それを机に置き近場にあった椅子を能力で自分のもとまで運ぶ。

 

パチュリー「それは魔道書ね。魔法に興味が?」

 

一方通行「あァ、そォなンだが…………チッ、邪魔が来た」

 

パチュリー「え………?」

 

なにを急に?と言おうとした時、ドガーン!!!とここの扉が破壊された音が図書館に響き渡る。

 

一方通行「………………誰が来たか分かるな?」

 

パチュリー「…………もちろん。貴方はとっくにご存知だったみたいね。レミィの力を使ったの?」

 

一方通行「運命を操って少し覗いてみたら、な」

 

と、話していたら「また貴方ですかぁぁぁぁ!!!いい加減にしてくださいよぉ!!!」「ケチケチすんなよ!こんなにいっぱいあんだからさー!」と声がした。

小悪魔と魔理沙の二人の声だ。

 

 

 

そして箒に股がり宙を移動する魔女の少女は図書館の中で逃げ回りつつ目当ての本を探す。

 

魔理沙「ったく、しつこいぜ。ちょっとはゆっくり本を見ながら回りたいっての______________ん?」

 

パチュリー「………………」

 

一方通行「…………………」

 

魔理沙「………げ」

 

じーっと自分を見つめる影が二つ。

寝間着の魔女と使用人服を着た最強の超能力者だ。

 

パチュリー「ねえ。私が次になにを貴方に頼みたいか分かる?一方通行」

 

一方通行「どォせアイツをここから追い出せだろ。別にやってもイイが俺もオマエも魔理沙も争うよりかは平和的な方法で解決してェと思ってるはずだ」

 

パチュリー「そうだけど……嫌よもう魔理沙に本を貸すなんて……………」

 

一方通行「だろうな。そして魔理沙も本を取らなきゃここから意地でも出ねェだろ。だが俺はどちらも満足できる解決方法を思いついた、だから魔理沙。とりあえず黙って降りてこい」

 

魔理沙「………降りた瞬間バーンとか無しだからな」

 

一方通行「しねェよ」

 

そしたら魔理沙は箒をのり宙を浮いていたが、だんだん高度を低くし最終的には一方通行とパチュリーが居る場所へ降りる。

その時、股がっていた箒は床に立てるように持つ。

 

魔理沙「お前がさっき言っていた平和的解決ってのが気になるがその前になんで使用人の服なんて着てんだ?」

 

一方通行「今日咲夜がぶっ倒れて、俺がその代わりをやってるだけだ」

 

魔理沙「ふーん。つまりバイト中?」

 

一方通行「おう。で、今からオマエらの願いを叶えるが…………来い小悪魔ァ!!オマエに命令だ!!」

 

小悪魔「はいは~い!!この声は一方通行さんですね~」

 

ヒューんと急いで飛んできた小悪魔はスタンと一方通行達の前に着地する。

 

小悪魔「それで、今日咲夜さんの代わりを任されたお人が私になんのご命令ですか?」

 

一方通行「魔理沙が借りてェ本を一緒に探して来い。探し終わったら図書館の中央に来い」

 

小悪魔「え、まさか魔理沙様に本を貸せと……?」

 

パチュリー「ちょっと話が違うじゃない。どっちもの願いを叶えるって………」

 

一方通行「だから本を持って来いって言ってンだよ。さっさと行ってこい」

 

魔理沙「よく分からんが持ってくれば良いんだよな。じゃいくか」

 

言われるがまま、魔理沙と小悪魔は本を探しに行った。

そして残った二人は

 

一方通行「さて、移動するぞ」

 

パチュリー「……これからなにが起こるかさっぱりだけどとりあえず貴方の言うことを聞くわ」

 

さあ、立って移動だと思ったが

 

パチュリー「………え、え!?体が!?」

 

なんと勝手に体が宙に浮いた。

そして

 

一方通行「誰がもう歩いてイイと言った?オマエにゃ用がある、変な所で倒れられたら困ンだよ」

 

パチュリー「……………………」

 

またまたお姫様抱っこである。

さっきと違うところがあるとしたら、一方通行が持ってきた本を自分の体に乗せられているところぐらいだ

 

そして移動し

 

一方通行「…………後はここで待つか」

 

パチュリー「…………え、えぇ」

 

この大図書館の中央には大人数が一度に利用できる四角いテーブルがある。

そこの椅子にもじもじしてるパチュリーを下ろした。

そしてパチュリーは無理やり持たされた本をテーブルに置く。

 

魔理沙「お~い、持ってきたぞ~」

 

小悪魔「今回は随分少ないですね」

 

二冊ずつ本を手に持ちならがら二人は一方通行とパチュリーが待つ場所へ来た。

 

魔理沙「……よっ、と。それでこれから何をするんだ?」

 

小悪魔「それは私も気になります。さっきから具体的に話してくれませんでしたからね」

 

持ってきた本を机に重ねておき二人とも椅子に座らず立ったままにいた

 

一方通行「説明すンのが面倒だから言わなかっただけだ。今から起こることを見て自分で勝手に考えやがれ」

 

そう言うと人差し指を魔理沙達が持ってきた本に乗せる。

そして瞳を閉じ一息する。

 

その様子を三人が見守っていたら

 

ポンッ!!とコミカルな音と共に四冊の本が机の上に出現する

それは、魔理沙達が持ってきた本にそっくりだった。

 

魔理沙「……な、なにが起きたんだ?」

 

パチュリー「分からない。分からないけど、魔道書が増えたってことは確かよ」

 

小悪魔「……………そのようですね」

 

一方通行「魔理沙。オマエの前にある本が俺が作った本だ、本物と間違えねェように早くしまえ」

 

魔理沙「お、おう。分かったぜ…………」

 

腰に巻いてあるオシャレなポーチに一方通行が作った魔道書をしまう。

 

パチュリー「……作ったてことは、まさか模倣能力で作ったの?」

 

一方通行「あれは本物に限りなく近く作る力だ、そしてその力は例えばさっきみてェに本を模倣をすると本物と若干違う部分がある。ある時は素材ある時は字とかな。だから模倣能力でコピーすればもしかしたら大事な文を間違えて作っちまう」

 

小悪魔「じゃあどうやって?」

 

一方通行「はァ……結局説明しなきゃいけねェのか。なに単純だ。模倣能力にはおまけで自動解析能力があってなそれで魔道書を解析し神綺の創造の力で全く新しい魔道書を作ったってわけだ」

 

魔理沙「あー、神綺の力か。だから…………」

 

と自分の背中を指差すから、一方通行は自分の背に目を向ける。

 

一方通行「…………なンだこりゃ?」

 

神綺の力のせいなのか、無意識に神綺の背から生える白い翼が自分の背中にも生えていた。

 

魔理沙「前に見た白い翼となにか違うと思ったらなるほど、神綺の翼か」

 

一方通行「チッ」

 

下打ちをして、背中の白い翼を消す。

そして一方通行は学習した、神綺の模倣した力を使えば自分の意思と関係なく神の白い翼が生えてしまうということを。

 

一方通行「とりあえずこれで無事解決ってことでいいな?」

 

パチュリー「………そうね。私は本を失わず、魔理沙は目当ての魔道書を手に入れた。どちらもハッピーって感じ」

 

一方通行「ならここからは俺の自由にさせてもらうぜ」

 

そう言って椅子に腰を下ろしやっと自身で持ってきた書物を読む。

一方で

 

小悪魔「でー?魔理沙様はいつまでいるつもりですか?」

 

魔理沙「いや~……ちょっと、な」

 

パチュリー「彼の珍しい姿を目に残しておきたいんでしょ」

 

魔理沙「…あの……そのー………………あはは」

 

小悪魔「うわ……この最強様は何人の女を落としてるんですか……」

 

パチュリー「さあ?ただ私は魔理沙の気持ちは分かるわよ。彼の使用人服姿、結構似合ってるもの」

 

魔理沙「ま、ま、ま、まさか…………パチュリー、お前…………」

 

小悪魔「嘘ぉぉぉぉ!!!パチュリー様!!パチュリー様までこの人を!?」

 

なんやかんや話しているが、そんな声は一方通行の耳に届かない。

そして今、彼が読んでいるのは魔道書。

魔法の使い方、魔法とはなにか?などなど記されてある。

 

その書物を読み続け一方通行は魔法の知識を得る。

そしてバタンと最後の魔道書を閉じ

 

一方通行「大体は覚えた」

 

そう発言する。

が、前に紫が言ってたことを思い出す。

 

一方通行(……クソ、紫のヤツこの世界では魔術は魔法と言っているとか抜かしてたが全然違ェじゃねェか、この世界でも魔法は魔法、魔術は魔術だ。知ったかしやがったなァ………………。いやそンな訳ねェ、アイツは人間が想像も出来ねェほど長生きしてる妖怪。もしかしたらこの俺より頭は回る存在、そンなヤツがただ知ったかをしたと思えねェ。なにか………なにか意味があるはずだ……………………)

 

考える。紫のあの嘘の中にある伝えたかったことを

そして一方通行は二つの考えが浮かぶ

一つは『自分は嘘をつくからあまり信用するな』

もう一つはまるで『魔法と魔術は同じだと思わせようとしてる』だ。

 

が、考えるのを止めた。

これ以上は面倒になったのだ。

 

 

元、科学の町に住んでいた者からすれば魔法というオカルトなど信じがたいが幻想郷入りし、目撃しそれに触れた一方通行は魔法という力を認めている。

だが、魔法の仕組みはとても難しい

なのにパラパラ魔道書を読んだだけ一方通行は魔法を会得する。

それを示すように一方通行は腕を前に出し手のひらを天に向ける。

 

するとその手のひらに赤い魔方陣が浮かぶ。

そして

 

ボッ!と炎が出現する。

 

魔理沙「………うわっ、魔道書を軽く読んだだけでマジで魔法を使えるようになってやがる」

 

パチュリー「天才な一方通行なら炎魔法なんて余裕でしょ」

 

小悪魔「ですがですが早すぎません?」

 

簡単に魔法を会得した一方通行に驚いたり、彼なら余裕と冷静な彼女達を横に

 

一方通行(模倣(コピー)能力でじゃなく、俺自身で魔法を使うのは初めてだがこれなら問題ねェな……)

 

模倣した魔力でじゃなく、体内で生成された純粋な魔力を使用して魔法を発動したがなにも異常事態にならなかった。

 

っと思っていた。ここまでは

 

 

魔法を消しどうせ本を片付けなきゃパチュリーがうるさくなるだろうから魔道書をしまいに行こうとした時だ

 

一方通行「……ッ……く………………ゴハッ!!」

 

全身に激痛が走り大量の血を吐き床に手をついて倒れる。

その時、手にしてた本は地面にバラバラに落としてしまった

 

魔理沙「一方通行!!大丈夫か!?」

 

一方通行「…大したこと…………ウッ、が……!!」

 

魔理沙「こんなに吐血を………………ヤバいだろ!早く治療をしなきゃ!!」

 

パチュリー「………回復魔法ね、今やるわ」

 

小悪魔「さすがパチュリー様!!こんな時でも冷静に状況を判断し行動に移すなんて!素敵すぎます!!」

 

急に体に異変が起きた一方通行を心配して駆け寄ってくれた魔理沙にパチュリーそのおまけで小悪魔。

そしてパチュリーが回復魔法を展開するが

 

一方通行「このぐれェ平気だ…………」

 

回復魔法が発動する前に一方通行は自身で体を治す。

そして、先程大量の吐血したと思えないほどけろっと立ち上がった。

 

一方通行(そォいうことか…………)

 

ここで一方通行は紫のあの言葉に隠された本当に伝えたかった事を分かった。

二つの考えのどっちかではない。

 

どっちもなのだ。

 

『自分も嘘をつくからそう簡単に信用するな』それと『魔法と魔術を同じように思わせようとしてる』。

最初から紫は分かっていたのだ、一方通行が今後魔法に触れそれを操ろうとするということを。

だから魔法を使っても魔術を使っても体が壊れてしまうと遠回しに教えようとしていたのだろう

 

全く、紫はどこまで知っているのだろう。

強力な能力を持つ妖怪より並外れた頭脳の妖怪のほうが恐ろしい。

しかし紫は強力な能力を持ち並外れた頭脳をしている。

そして味方か本当は敵か………………

 

やはり、アイツの存在は警戒した方が良いだろう。

 

だが今は心配そうにしている奴らに自分は無事なことを伝えよう。

 

一方通行「俺には模倣能力で手に入れた再生能力がある。前にオマエら集めた時に説明しただろ」

 

魔理沙「…あ、あぁ。だがさっきのは異常だぜ!?一方通行、お前になにが起きたんだ?」

 

一方通行「それを今から調べる」

 

まず先程同様、魔力を体内で生成しそれを使用した魔法を展開する。

使用する魔法はなんでも良い。

だからとりあえず水を生成する魔法を発動。

すると一方通行の前に魔方陣が展開。そしてその魔方陣から球体の水が生成された。

 

だが

 

一方通行「…………ぐっ…………!!」

 

体に異変が起き、すぐに魔法を消す。

さっきみたいに血反吐を吐くことはなかったが、血が口いっぱいになり、その口横からは血がちょびっと流れる。

さすがに血をまた吐くと掃除が面倒だから今回は我満だ。

 

そしてこんな事をしただけで自身を解析しながらだったから大抵のことは理解できた。

 

一方通行(どォやら俺は魔力や魔法といった、オカルトに過剰な反応を起こすみてェだな。そォいや初見の時は魔法をうまく反射出来なかったし、俺の能力。つまり科学の力はオカルトの魔法と相反する存在。そのため科学の力を持つものは魔法や魔力を使用すると副作用みてェなモンが発生するってことか………………)

 

だが……とここで一方通行は思った。

前の話だ

霊夢が学園都市に攫われたあの日。

一方通行は魔法ではないが魔力を使用した。

あらゆる力を足に纏わせた蹴り技。

その使用した力を数字にするなら、神力40、魔力20、妖力60。

この時、力の調整は無意識だった。

だがそれでも魔力を使用しているのになぜ?

使用した力が模倣した偽物だからなのか?

 

疑問に思った一方通行は口内の血を飲み込み、次に模倣した魔力をシンプルに使う。

 

 

一方通行(あ?…………__________くッ!?)

 

模倣した魔力なら大丈夫なのか

そう思ったがやっぱり違うみたいだ。

体内がズタズタに引き裂かれた感覚ある

これは魔法使ったときの現象だろう。

 

なにがなんでも魔力を使えばダメ。

っという訳ではなかった

 

そう一方通行は気付いたのだ。

序盤、魔力を使用した時は異変が起きていなかった。

一方通行は魔力を使用したらだんだん向上するように発動させる。

全て一発で最高火力を出せば魔力を扱える体でもガタが来てしまう。

だからこそ魔力は絞り出すように発動させているのだ。

 

ここで、だ。

誰もが気づくだろう。

最初らへんに魔力を使ったとき、問題ない。だがその後は副作用みたいなものが起きる。

最初の魔力は微力。途中ともなれば魔力は増幅している。

この二つの事実を重ね考えると

……………………魔力を抑えて使えば問題ない?

 

オカルトの力は科学の力と相反すると言えど絶対に使えない訳ではなかった。

魔力をあえて抑えてなら使えるのだ。

 

だからあの時学園都市で魔力を使っても異変が起きなかったのだ。

 

 

ここでパズルのピースが填まった気がした。

 

 

自分は無意識で魔力を抑えて使用していたから副作用みたいなことが起きてなかった

 

一方通行(体内で生成された魔力は最初から俺が無傷で扱える力を越えちまってて、無理だ。だが模倣した偽物の魔力を抑えて使えば俺でも使えるのか…………)

 

 

「_____ぃ_________________オイ!!」

 

一方通行「あン?」

 

大きな声を掛けてきたのは魔理沙だった。

 

魔理沙「さっから呼んでるのに聞こえなかったのか?それで、なにか分かったのかと聞きたいがその前に口から血が垂れてるぜ」

 

ちょんちょんと自分の口横を差し、教える。

それで一方通行は垂れてる血を手で拭った後

 

一方通行「……………………あァ」

 

魔理沙「それで。何が分かったんだ?」

 

一方通行「俺は容易く魔法を使えねェらしい」

 

魔理沙「なんでだ?」

 

一方通行「超能力があるからそれに魔力や魔法の力が反応して、副作用みてェなのが発生すンだ。だから」

 

魔理沙「超能力があるからって………超能力あるけど魔法を使える奴は居るぜ?」

 

一方通行「忘れたか?俺は外来人だこことは違う世界の人間、オマエ達とは違うンだよ。だが元俺が居た世界にもオカルトの力があった、が、俺はその存在を知らなかったンだ。なにか………あの世界に俺が想像もできねェような何かがある。それを知れば分かるかもしれねェ。何故、俺は魔力や魔法を使うと体がぶっ壊れるのか…………」

 

魔理沙「超能力を持つ者が魔法を使えるが、一方通行は違う世界の人間だから容易くは使えない。しかしそれが分かっただけであって、何故そういう現象が起こるかは不明っと。なんか難しい話になってきたな…………」

 

一方通行「……今考え込ンでも無駄だ。だからこの件は後で情報を多く集めてからゆっくり考える…………そォいや確か俺は本を片付ける途中だったけか」

 

魔理沙「それなら私も手伝うぜ!」

 

地面にバラバラに落ちた本を拾った時、体内がズタズタに引き裂かれているのを思いだし再生能力で治す。

そして何故か本を片付けを手伝ってくれる魔理沙と一緒に大図書館の中を歩いて行く。

 

小難しい話をしていて、その話には入り込めず完全に蚊帳の外となっていたお二人は

 

パチュリー「………………」

 

小悪魔「な、なんか二人で解決しちゃったみたいですね。私達を無視して」

 

パチュリー「そうみたいね」

 

小悪魔「パチュリー様はなんか思わないんですか?」

 

パチュリー「ん?"は"とはどういう事?こあはなんか思うところがあるの?」

 

小悪魔「いや~あははは、いやだな~…………全然ないですよ~」

 

パチュリー「そう。なら一方通行の血を綺麗に拭き取っといて」

 

小悪魔「承知しました!」

 

小悪魔は頼まれた仕事に移る。

そしてパチュリーはいつもと同じく読書に没頭する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本を片付け時計を見れば思っていた以上に時間が経っていた。

一方通行は魔理沙やパチュリーや小悪魔にこれから用があると言い、大図書館を去った。

魔理沙は、どうやらまだここに用があるみたいで家に帰らず残ると言っていた。

 

そして一方通行はこの館の玉座の間に向かう。

 

 

一方通行「昼になったから来たぞ。それで仕事はなンだ?」

 

レミリア「……真面目なのか不真面目なのか、ホント判断難しいわね貴方は」

 

フラン「わーい!さっきぶりーアクセラレータ!!」

 

一つの玉座を仲良く二人で座る姉妹。

その玉座の前に存在する少しの階段の前に一方通行はズボンのポケットに手を突っ込んで立っている。

 

レミリア「…………さて、これからお昼を支度して欲しいんだけど料理できる?」

 

一方通行「一般レベルになら」

 

レミリア「なら構わない。私、フラン、パチェ、小悪魔の四人分にお昼を用意して頂戴。作ったら食堂に運んでくれる?そしてそれが終わったら私達を食堂に呼んで。あ、そうだ咲夜のも用意して。もちろんあの子は病人なんだからお粥よ。それでお粥を作ったら咲夜の部屋に持っていってね、そうねついでにそのまま看病をしてあげて」

 

一方通行「美鈴はどうすンだよ」

 

レミリア「あ、忘れてた。彼女は簡単なおにぎりでいいわ」

 

一方通行「……………分かった。最初に言っておくが不味くても文句言うなよ」

 

 

そして厨房の場所をレミリアに教えてもらった後、一方通行は厨房に行った。

 

厨房に着いたが、どんなものを出せば良いのかと悩んでいたら一冊のノートを発見した。

そのノートを開くと一行一行ビッシリ献立が書いてあった。

このノートは咲夜のだろう。

 

助かった

一方通行は館に住む者達の気持ちなど知らない。だから昼になにを食したいとか分からないのだ。

けど、このノートがあればもう安心。

 

紅魔館のメイド長を長く勤めた者のノートだ信頼できる。

一方通行は今日の献立を見て料理を開始する。

 

そしてそこで☆向き(ベクトル)クッキング☆の始まりである。

 

ベクトル操作とは便利な能力だ。

紫外線を防げるし、核兵器を跳ね返せるし、空を飛べるし料理にも使える。

 

 

一方通行は能力を活用して料理をするが凄かった。

なにが凄いというと食材に少し触れれば丁度良く細かく切れる、食材や食器や調理器具などが自由に宙に浮き一方通行が必要とすれば前に落ちてくる。

それを遠くから見ればなにがどういう原理で動いてるのか分からなくて混乱してしまうだろう。

 

 

そしてだ。

そんなこんなでこの館に似合うお昼ご飯が完成する。

和、洋となんでもごさる。

しかし食べるのは女の子達、量は少なめである。

 

完成したお昼は次々と食堂に運ばれる。

どう運んでるのはか大体想像つくだろう。

スキマを開き、厨房と食堂を繋げそこから食堂の机に料理を置いているのだ。

事あるごとに紫の能力を模倣した力を使うが仕方がない、だってすごい便利なんだから

 

 

全ての料理を運び終えたらレミリア達を食堂に呼んだ。

彼女達は机の上に並べられている料理に驚いていたが、一方通行にはまだまだお仕事ある。だから次に美鈴にお昼ご飯を持っていってあげる

簡単なお握りで良いと言われたが、ただの塩むすびではない。

ちゃんと鮭や梅などの具材を入れたお握りを渡す

 

美鈴は喜んでいた。正直、結構美鈴は粗末な扱いを受けている。だからだろうがまあ門番なのに寝てしまうんだからしょうがないちゃしょうがないか…………

 

まあまあまあ、それは良いとして美鈴にお昼を渡したし次だ。

と、いうより最後。

 

咲夜にお昼を作りそれを渡すと、それのついでに看病。

っと仕事を頼まれても一方通行は咲夜の部屋を知らない。

だがそれを美鈴に言うと咲夜の部屋の場所を教えてもらい一方通行は美鈴に礼を言った後、咲夜のもとへ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「……………………入るぞ」

 

ほかほかのお粥を載せた木製の盆を持ちながら部屋の扉を開き、足で扉を閉じる。

意外にも咲夜の部屋は結構シンプルだった。

その部屋を進むとある普通サイズのベッドには寝込む寝間着の咲夜の姿が

 

一方通行「……オイ、飯の時間だ。起きろ」

 

咲夜「……………………っ、ん………………………へ?」

 

どこかで聞いたことがある声が聞こえぼやぼやとしながら目を開けると、珍しくキッチリとした服装の一方通行が視界に入った。

 

一方通行「…………その顔、なにかいくつか質問がありそうだが悪りィが飯が先だ。さっさと黙って食いやがれこの俺がわざわざオマエの為に作ったンだからよォ」

 

咲夜「………あ…は、はい」

 

思わず敬語になってしまったが上体を起こす。

するとほかほかのお粥を載せた木製の盆が咲夜の膝上に置かれる。

そして一方通行は適当に椅子を探し発見するとベットの近くに持ってきてそれに足を組んで座る。

 

一方通行「……………………」

 

咲夜「…………美味しい」

 

お粥をスプーンですくい口に運ぶ。

口の中では卵の味が広がりほかほかのお粥のお陰で体がぽかぽかと暖まった。

 

一方通行「…………そォか」

 

咲夜「本当に……本当に美味しい。ありがとう一方通行」

 

一方通行「…………分かったからさっさと食え」

 

それから咲夜は黙ってお粥を食べる。

寝込んでから何も食べていなかったのか、食べる勢いは凄まじくあっという間に見事完食だ。

 

咲夜「ごちそうさまでした。誰かの手料理なんて食べたの、久し振りだわ…………」

 

一方通行「そンなモン手料理と言えるモンじゃねェけどな。つゥか結構がっついてたがそンなに腹が減ってたのか病人なのに?」

 

咲夜「それはその…………」

 

視線を反らす咲夜だが頬は赤く染まっていた。

恥ずかしいのかそれとも病気の熱でなのかそれともお粥のせいなのか、その正解は一方通行には分からなかったがそもそもそんなのを気にする訳がない。

 

咲夜「あ、あの食事も終えたことだし質問良いかしら?」

 

木製の盆をベット付近の小さな机の上に置き一方通行に顔を向ける。

 

一方通行「どうして俺が紅魔館に居るのか、何故使用人服を身に纏ってるのかだろ?その答えはオマエだ」

 

咲夜「私?どういう事?」

 

一方通行「オマエ勘が絶望的に悪いなァ。オマエがぶっ倒れたからに決まってンだろアホ」

 

咲夜「……………………そう、なの。ごめんなさい私のせいで」

 

一方通行「気にするな、この世界に来てからこォいうのに慣れた。だからオマエはただ寝て休ンでろ」

 

咲夜「そういう訳にもいかないわ。貴方なら私の病気を治せるんじゃない?お願い私を治して」

 

一方通行「それはレミリアに善意を踏み躙ることだが良いのか?」

 

咲夜「………それは…どういう……?」

 

一方通行「最初俺も咲夜、オマエがぶっ倒れて紅魔館がヤベェと聞いてオマエを治せば万事解決と提案したが、全然休まねェオマエを見兼ねてレミリアは病気を理由にゆっくり休ませてェンだと」

 

咲夜「…………お嬢様」

 

一方通行「だがオマエの穴が開いた紅魔館は十分に機能しねェ、だから俺がオマエの代わりにここで働いてるわけだ。全部理解したか?」

 

咲夜「うん、ちゃんと理解したわ。私はなんて幸せなのかしら………」

 

一方通行「ハッピーなのは良い事だがオマエは病人だ。寝てろ」

 

咲夜「ねぇ、今一方通行は使用人なら頼みって聞いてくれるの?」

 

一方通行「内容によっては断るぞ」

 

咲夜「体が汗でベタベタなの、このままだと気持ち悪いから拭いてくれる?」

 

一方通行「咲夜……。それを誰に言ってるか分かってンのか…………」

 

さすがの一方通行も咲夜の一度は耳を疑ってしまうような頼みを聞いて表情に変化が

 

咲夜「分かってるわ。さあ早く脱がしてくれる?力が入らないの」

 

一方通行「確かに飯を作ってオマエの所に運ぶついでに看病も頼まれたが…………」

 

咲夜「あらそうなの……なら何を躊躇ってるの?」

 

一方通行「オマエ女だろ。そォいうのは同姓に任せるのが普通だろうが」

 

咲夜「使用人ならこういうのは男女関係なく頼まれるの。あ、タオルなら私が盆を置いた机の引き出しに入ってるからお願いね」

 

一方通行「………分かった。それがオマエの望みならなァ」

 

こうして一方通行は汗で体がベタベタして気持ち悪いと訴える咲夜の体を拭くことになった。

まず最初はタオルを手に取るとこから始まる

机の引き出しに入ってるといわれたタオルを取り、次は咲夜の着る寝間着に手をかける。

その見た目とは考えられないちょっと口が悪いが子供っぽい寝間着だった。

そしてそれのボタンを一つ一つ外したが?

 

咲夜「………ブラも外してくれる?」

 

一方通行「……………なに?」

 

咲夜「だから、ブラよブラ」

 

一方通行「…………はァ」

 

ため息を吐いた後、貞操概念どうなってンだよっと思ったがまあやるしかなかった。

そしてブラジャーのホックを外し

 

一方通行「じゃあ拭くからな…………」

 

それから腕や脇や首の周り、そして胸部などなどの汗を拭いていたら

 

一方通行「……………………」

 

咲夜「随分手際が良いわね。誰かにこんなことしたことあるの?」

 

一方通行「ある訳ねェだろ」

 

咲夜「そう。なら私が初めてなのね……」

 

不思議な空気だ

病気のせいか何故か今日は素直になれてる気がした。

そして、だ。

体を拭き終え

 

一方通行「どォだ、少しは良くなったかよ」

 

咲夜「うん、ありがとう」

 

一方通行「チッ」

 

ここにきて咲夜は本当に力が入らないのか、とか疑問に思ったがもう終わったことだしどうでも良いことだ。

 

女性を半裸にしとくなんか悪趣味はない

一方通行は咲夜にブラをつけてその上から寝間着を着させる。

 

咲夜「…………なんか…眠くなってきたわ」

 

一方通行「急にかよ。まァイイ安静にしてろ、この紅魔館は今日は俺が何とかしといてやる」

 

咲夜「…………頼むわ」

 

ゆっくりと目蓋を閉じ床に就く。

それを確認した一方通行は空の器が載った木製の盆を片手で取り部屋を出た。

そして木製の盆を持ったまま厨房へ向かう。

 

厨房に着き木製の盆を台所に置くと次に食堂に行った。

食堂はもう誰も居なかったが作った料理は気持ち良いぐらい綺麗に完食されていて置き手紙に『美味しかった、ごちそうさま』っと書いてあった。

誰が書いたのかとか疑問に思わず食堂の机の食器を片付ける。

 

そして食器を片付けた後はそれらを洗いついでに食堂を掃除する。

なんか、今日初めてなのに使用人が板に付いてきた。

 

黙々と一仕事をし、それが終わったら………………疲れた。

時々(うご)くがほぼ毎日自堕落の生活の一方通行は体力がそんなにない。

学園都市に居た時も少し動いていたが幻想郷の生活に比べればその生活が活発と言えるだろう。

 

疲れが見えてきたが、まだ午後になったぐらいだ。

この程度で倒れる訳にはいかない、というかこの程度で倒れたらカッコ悪いから意地でも倒れてたまるか

 

 

一方通行(くそ……体力なさ過ぎるだろ俺。チッ、情けねェがそれは後だ。レミリアはフランと何か大事な話をしてたンだったな、だったらこっからは俺が勝手に考えてうごくとするか…………)

 

ここまでくれば使用人の仕事がどんなのか大体解ってくるものだ。

だから一方通行は次になにをすれば良いのか分かっている

 

次はそう、買い物だ。

買うものは主に食べ物、つまり食材だ。

 

料理をしようとした時の話だ。実は食料保管庫が大分空きのスペースがあったのだ、それにあの厨房で発見した咲夜のノートにも今日は買い物の日と書いてあった。

 

ということで一方通行は金は持っているし紅魔館から出て人間の里へ飛んで行った。

説明するまでもないと思うが、門番の美鈴は立ちながら寝ていた。

…………ちゃんと仕事をしてくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「………ちゃっちゃと済ませるか」

 

いつもと違う服を纏い人間の里でお買い物だ。

 

里は午前より午後のほうが人が多い、だから買い物をするなら午前だがこればかりはしょうがない。

 

一方通行は食料保管庫に足りない大体のものを把握しているため片手にメモを持ってお買い物というお決まりの絵面ではなかった。

 

「よう白髪の兄ちゃん!!今日は雰囲気が違う服じゃないか」

 

一方通行「うるせェ。バイト中なンだよ」

 

一方通行が色々な店が横並びする通りを歩いていると馴れ馴れしく声をかけたのは珈琲豆専門店の店主だ。

最初は声をかけるのを躊躇ってしまっていた店主だったが自分の店の常連になった一方通行はもう顔馴染みみたいなもの

 

「使用人のバイトか、頑張れよ!!」

 

一方通行「あァ、また豆が切れたら店に来る。俺が買うモンは在庫残しとけよ」

 

「ああ、君は常連様だ。たんと仕入れとくよ」

 

今日は珈琲豆専門店には用はないからスルー。

 

野菜や肉などを買いたいため、そういうのを取り扱っている店に向かっている最中………………

 

霊夢「……あ…………一方通行?」

 

一方通行「霊夢か。オマエも買い物かァ」

 

霊夢「妖怪退治でお金が入ったからね。ってそれより何よその格好、そんな服持ってたの?」

 

一方通行「これは俺のじゃねェよ。今、紅魔館でバイトしてっからそれで着せられてンだ」

 

霊夢「へぇ~なんか色んなことやってんのねアンタ」

 

一方通行「あァ、これでも大忙ししてンだ。じゃあな」

 

こうして一方通行は食料を取り扱っている店に向かって行った。

その背中を見た霊夢は

 

霊夢(………あんな使用人が居て紅魔館の連中は良いなぁ。ってなに考えてんよ私は!!でもでも……………………)

 

いつもと違うというのはここまで破壊力があるのか

たまに里に買い物しに来た時、一方通行を出会うことがあるが今日はなんか…………変だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事買い物も終了。

買ってきた物を食料保管庫に置くと次はお掃除だろう。

 

食堂や厨房などは使用したから汚れなどが見えたが、いつも咲夜の完璧な掃除技術により一日や二日掃除をサボったって良い。

しかし、ひとつの部屋だけは無視できない。

 

それは大図書館だ。

彼処はパチュリーの管理下であり、いくら咲夜と言えど無言で入ることは禁止。

だが今日は一方通行が使用人だ。

 

パチュリーがなんて言おうがお構い無しである。

 

と、いうことで大図書館に直行だ。

 

 

扉を開き

 

一方通行「ここを掃除しに来た」

 

パチュリー「………そう、仕事熱心ね。本を傷付けないなら構わないわ」

 

あれから微動だにしなかったのか、机に大量の本を置いて読書しているパチュリー。

 

一方通行「魔理沙は帰ったのか」

 

パチュリー「ええ。またここに来たときはお願いと言っていたわ」

 

一方通行「誰が二度とあンな面倒なことすっかよ」

 

それから一方通行は図書館の中を歩く。

 

一方通行(ここでイイか。俺の能力で一ヶ所にゴミを集める_______________あァ?)

 

さあ、ベクトル掃除だ

っという時だった。

 

上から何か落ちてきてると気付く

床に見える影から推測すると降ってきてる物のサイズは本より大きい、そしてその物から「きゃあああああああ!!!!」と音というか声が聞こえる。

 

そして

 

「ふぎゃっ!!!!」

 

一方通行「………………」

 

上から落ちてきた物。いいや落ちてきた小悪魔が一方通行の目の前に落ち、床に強く激突する。

 

小悪魔「ッ~~~!?!?痛たたた…………ん?一方通行さんここに何の誤用ですか?」

 

一方通行「掃除をしにきたンだが」

 

小悪魔「そうですか、正直言ってここは汚ないですからね相当大変だと思いますよ?」

 

一方通行「問題ねェ。つか、いつまで床に座ってンだよ」

 

ひょいっと小悪魔の手を掴み、引く。

 

小悪魔「おわっ!?ちょっと女性の扱い雑すぎますよ」

 

一方通行「知るか」

 

小悪魔(……こんな乱暴な性格で恐ろしい力を持っているのになんで多くの女の子から好意を寄せられているのだろ。確かに、イケメンなのは認めるけど……………………)

 

一方通行「あン?なに人の顔じっと見てンだよ、なンか付いてンのかァ?」

 

小悪魔「い、いいえ」

 

一方通行「そォか。それでオマエはなンで上から降ってきたンだ?」

 

小悪魔「飛んで移動してる時に余所見してしまって、それで本棚に正面から打つかってしまって…………」

 

一方通行「…………ったく、バカが。次からは余所見して飛ぶンじゃねェぞ」

 

そう言ってまたこの図書館内で違う場所に移動する。

もうここでゴミを一ヶ所に集めたいが、衝撃的な光景になると思うため誰も居ない所に行こうと思ったのだ。

小悪魔は強く床に激突した。のにすぐ早く立ってここから立ち去れなんてそんな外道なこと一方通行は言わない。

 

小悪魔「あ…………はい」

 

ただ小悪魔は一方通行の最後の台詞を聞いて、分からないが彼の背中を見つめていた。

 

 

そしてそして一方通行はまたまた移動して、次こそベクトル掃除開始。

いくら巨大な図書館と言えど掃除は簡単だ。

さっきやろうとしたこと、一ヶ所にゴミや埃を集めてゴミ袋に入れる。

それだけで図書館は見違えるほど綺麗になる。

 

 

で、だ

 

 

一方通行「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

 

一ヶ所にゴミや埃を集めスキマを開き取り出したゴミ袋に次々と入れたが、必要になったゴミ袋の量に驚き言葉を失った。

ゴミや埃と言っているがほとんどが埃。

しかし埃だけのゴミ袋が五つ。

 

あり得ない。一般の大掃除をしてもこの量はあり得ない。

 

 

もう衝撃的な埃の量を見たくない一方通行は、ゴミ袋をゴミ置き場に繋げたスキマに全部投げ入れる。

 

 

これで終わりだ。

 

本当に終わりなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのなんやかんやあり夜。

使用人の仕事は終わり疲れを洗い流すため紅魔館の大きなお風呂を貸してもらった。

そして一方通行は銭湯にあるような湯船で一人、ぼけーとする……予定だったが

 

一方通行「なンでオマエらまで入ってンだよ…………」

 

フラン「………え?」

 

まあ、フランは勝手に入ってきてもそんな抵抗感はない。

しかし

 

レミリア「別に良いでしょ?ここは私の館よ。いつ入っても勝手だと思うけど?」

 

美鈴「…………私はお嬢様からのお誘いで…………」

 

小悪魔「…私はパチュリー様からのお誘いで……」

 

パチュリー「ただ一人でお風呂に入っても詰まらなさそうだから皆で、ね?」

 

一方通行「俺ァ一人の方が良いンですゥ。つかよォ……」

 

ちらりと何も言わず黙って体を洗ってるメイド長を見る

 

一方通行「病み上がりで風呂に入るとぶり返すぞ、咲夜。せっかく人が治してやったのに俺の労力を無駄にするつもりかァ?」

 

使用人の仕事が終了する直前、一方通行はレミリアの最後の頼みで咲夜を回復させていた。

だがだが?

 

咲夜「大丈夫よ。私はそんなひ弱な体じゃないわ」

 

一方通行「ぶっ倒れてた分際でなに言ってンだ駄メイド」

 

咲夜は体の泡を蛇口を捻り丁度良いお湯を風呂桶に溢れない程度まで溜め、溜まったら体に湯をかけて洗い流す。

それを四回ぐらい繰り返し、終わったら一方通行達が居る湯船に浸かる。

 

咲夜「ふぅ………駄メイドじゃなく略さないでちゃんと駄目メイドと言いなさい」

 

一方通行「突っ込むとこそこかよ…………」

 

パチュリー「貴方達変な会話してるわね」

 

レミリア「何か面白そうだから少しそのままにしときましょ」

 

一方通行「聞こえてンぞ、コラ」

 

そしてため息を吐いた。

一方通行の隣には彼の腕を嬉しそうに抱き締めるフラン。

少し遠くには恥ずかしくて丸くなってる美鈴と小悪魔。

レミリア、パチュリー、咲夜は一方通行の近くに居る。

 

この現状を見て思うことは

 

一方通行「しっかしあれだな。風呂で素っ裸な女に囲まれてると"そォいう"店に来た気分だな」

 

咲夜「あら、だとしたら相当お値段が高いでしょうね。こんな綺麗な女の子が六人だもの」

 

フラン「"そォいう"店?"そォいう"店ってなぁにアクセラレータ?」

 

レミリア「ちょっとフランに余計なこと教えないでよ!」

 

パチュリー「へぇ~、そっち方面はまだ教えてないのレミィ。これを機に教えてあげたら?」

 

レミリア「え?………………いやいや!!まだフランには早い、早すぎるわ!!」

 

美鈴「な~んであの方達は普段通りでいられるんでしょう…………」

 

小悪魔「きっと頭のネジがバカになってるんでしょう。きっとそうです」

 

美鈴「急にどうしたんですッ!?そんなこというキャラじゃなかったでしょう貴方は!?」

 

あっちでもこっちでもなんか大騒ぎ。

だがその話が終わると次は

 

レミリア「そういえば一方通行。貴方随分と肌綺麗よね」

 

一方通行「あァ?」

 

咲夜「確かに前はちょっとしか見えませんでしたが、こう改めて見ると下手したら頑張って美容液など使ってケアしてる私達より綺麗ですねお嬢様…………」

 

パチュリー「なにか仕組みでもあるの?」

 

一方通行「肌が綺麗だの言われても嬉しかねェがこォなったのは俺の能力だ。紫外線とか反射してっから今までダメージ一つ受けてねェってわけ」

 

フラン「よく分からないけどアクセラレータは肌が凄いスベスベってことだね」

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

一方通行「あン?」

 

バシャーン!!と水飛沫を立てて急に立ち上がる、レミリア、咲夜、パチュリー、小悪魔、美鈴。

 

一方通行「どォしたオマエら?」

 

「「「「「触ってみたい」」」」」

 

一方通行「______はァ?」

 

何を言ってンだこのバカ達………

そう思った瞬間だった。

 

レミリア「フランだけズルいわ、私達にも触らして!!」

 

咲夜「お嬢様の望みよ、抵抗したら許さないわ」

 

一方通行「___________オイ」

 

パチュリー「興味があるわ、今まで紫外線などのダメージ負わなかった肌。どれほどのものなのか」

 

小悪魔「あ、私もです」

 

美鈴「すいません一方通行さん。少し触らせてもらいます」

 

一方通行「_________ちょっと待て落ち着け」

 

フラン「んふふ~♪」

 

一方通行の腕を抱き御満悦なフランの表情。

それでもう物語っている

 

一方通行の肌は誰も触れたことのないような素晴らしいものだと!!

 

ならば!!!

どのぐらい素晴らしいものなか触れてみたい!!!!

 

………………っというとこで、、、

 

一方通行「オイ待て、なに考えてンだクソッタレ!!なンでオマエら目を光らせンだ!!____って、オイっ!?」

 

バシャーン!!!!と、また水飛沫が上がる。

まあ、一斉に一方通行に飛びかかったらそうなるだろう。

 

レミリア「凄いこれが!!」

 

咲夜「まさに女性が思い描く理想の肌!!」

 

パチュリー「…………これは想像以上ね」

 

小悪魔「……頑張ってケアしてるのに、私より上!?」

 

美鈴(私、一方通行さん触れちゃってる!?これが……これが…………一方通行さんの感触)

 

フラン「フランも皆に雑ざるぅ!!」

 

一方通行「だァァァァァァクソッ!!!ベタヘダ触ンじゃねェェェェェえええええッッッ!!!!!!」

 

今日の紅魔館のお風呂場はやけに騒がしかったが、みんな楽しそうだから良いだろう。

 

おや?皆?

失礼。

一方通行以外でしたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「あァー……、何か余計に疲れた」

 

もう使用人ではない一方通行は普段の服装に戻っていた。

そして今、居る場所は食堂であり縦長のテーブルに肘を付いて椅子に座っている。

 

フラン「元気ないよ大丈夫?」

 

一方通行「オマエらの…………もォイイ」

 

風呂場の一件も終わり、紅魔館メンバー皆+一方通行で夕食。

食材は今日バイト使用人(仮)さんがが買ってきたため大量にあった。

それを元気に回復した咲夜が料理する。

 

さすがベテランメイド

机に並べられている料理は全て、高級感が漂いとても美味しそうだった。

 

パチュリー「少し調子に乗ってしまったわ、ごめんなさいね」

 

小悪魔「その、私も…………ごめんなさい」

 

美鈴「一方通行さん。先程はすいませんでした」

 

一方通行「もォイイって言ってンだろうが。肉食って珈琲飲ンで忘れる」

 

レミリア「じゃあまた触らしてくれるのね」

 

一方通行「次は能力をフルに使って抵抗してやる」

 

咲夜「皆様。御夕食が全て並び終えました。どうぞお召し上がり下さい」

 

フラン「いただきます!」

 

一方通行「イタダキマス」

 

咲夜「うふふっ、別に慣れてないなら無理に言わなくて良いのよ?」

 

一方通行「…………チッ」

 

そしてレミリアやパチュリーなども手を合わせ食事を始める挨拶をする。

それから食事をしていると

 

レミリア「あ、そうだ咲夜。貴方にプレゼントよ」

 

咲夜「私に、ですか……?」

 

レミリア「そう。今日皆でこっそり用意したのよ、いつもの感謝を伝えるために」

 

フラン「じゃじゃ~ん!!それがコレ!!」

 

長テーブルの下に隠していた両手で持てるぐらいの包まれた箱を取り出す。

長テーブルには床につくほどのテーブルクロスがひいておりちゃんと隠せていたのだ。

 

パチュリー「私達からの贈り物よ。受け取ってくれるかしら」

 

咲夜「はいっ、もちろんです!!」

 

小悪魔「私のプレゼントはリボンですよ」

 

美鈴「ちょ!?言っちゃダメですよ」

 

レミリア「まあ、開けてみたら誰からのプレゼントとか分かると思うわ」

 

嬉しそうな表情でフランから包まれた箱を受け取った咲夜。

そんな光景を横目に肉を頬張る一方通行。

 

一方通行(そォか。これを秘密にしてたのか)

 

あの時、一方通行を部屋から出したのはこのサプライズをバレたくなかったからだろう。

レミリアはあの時から一方通行を咲夜の看病に向かわせるつもりだった。

もしも看病をしてるその時、うっかり一方通行が口を滑らせて知られてしまったら努力が無駄となる。

一方通行が秘密を喋るなどないと思うが念には念をということで

 

レミリア「良し。サプライズ成功!」

 

フラン「イエーイ!!」

 

ハイタッチをする可愛い姉妹にパチュリーが

 

パチュリー「そしてもう一つのサプライズでしょ?」

 

レミリア「そうね。フラン、次のやつを取り出して」

 

フラン「はぁーい!!」

 

またまたテーブルの下から包まれた箱を取り出す。

 

咲夜「?」

 

一方通行「?」

 

フラン「はいっ、アクセラレータ!」

 

一方通行「……俺にかよ。でもなンでだァ?」

 

受け取ってから言うのはどうかと思うが、そんな疑問を感じた。

 

小悪魔「今日一日頑張ってくれたじゃないですか。だからですよ」

 

美鈴「それは私達全員で選んだ物です。大切に使って下さいね」

 

一方通行「…………あァ。貰ったモンを捨てる趣味はねェから帰ったら早速使わせて貰う。つか物なのか、どンなモンなンだ?」

 

フラン「開けてからの、お・た・の・し・み♪」

 

レミリア「そういうことよ。じゃ、全てのサプライズが完了ということで食事再開といきましょう」

 

フラン「うん♪」

 

そしてまたみんな食事に戻る。

 

咲夜「今日はホント、幸せな日だわ」

 

一方通行「……そりゃ良かったじゃねェか」

 

咲夜「貴方は?」

 

一方通行「あ?…………まァ、俺としても悪くねェ一日だったな」

 

レミリア「激レアね。一方通行がそんなこと言うなんて」

 

一方通行(チッ………前までの俺だったらこンなこと言わねェっつの。オマエらと関わってから自分だって気付けるほど変わっちまったンだよ俺は…………)

 

フラン「どうしたの?」

 

一方通行「………………なンでもねェよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………ああ、こんな平和がずっと続けば良いのに』

 

この場に居る誰もがそう思った。




ハイッ、これで紅魔館のお話は終わりです。
これが、この話が俺は昔から書きたかった!!!
ですが長かったですか?
だからこれだけ待たせてしまったんですよ
………………マジですいません!!


そういえば一方通行に贈られたプレゼントはコーヒーミルです。
どんなのー?と思った方にご説明させていただくと珈琲豆を挽くヤツです。
オマエの説明じゃ分からねぇ、っという方はググって下さい

で、ですね。
実は一方通行、コーヒーミルもう持ってるんですよね。これ裏話ですけど
だけどそれを使わず今後からはレミリア達から貰ったコーヒーミルを使います。
まあ誰もが自分が買ったやつより人から貰ったやつを使いますよね。
………違う人も居るのかな?
勿体無くて使えない的な?

あ、私のお話は終了です。これから下は霊夢達の雑談コーナーです。
興味のある方だけお進み下さい。
それでは最後まで読んでいただきありがとうございました!!
次回は一方通行が色々やるよってお話です、お楽しみに!!
(…………一体何ヵ月後に更新されるんだろう、コレ)
























博麗神社の縁側で

霊夢「ほんっっっっっっっっっっと久しぶりね」

魔理沙「まあまあ、今回の話に出れたんだから文句言うなよ」

紫「だったら私は言って良いわよね?出てないんだもの」

一方通行「名前だけは出てたけどなァ」

紫「名前だけでしょ?全く…………」

霊夢「さて、今。なんでこの四人なの?っと思った人、今すぐ第二章のキャラクター説明に行ったら答えがでるわ!!」

魔理沙「そこに載ってるやつらがこの物語の重要人物ってわけだ」

一方通行「…………オマエら急になに言ってンだよ」

紫「前回の答え合わせよ」

一方通行「…………………自由だなァオマエら」

霊夢「ここは幻想郷よ。自由にしないやつなんて居ないわ」

魔理沙「…………ま、自由過ぎるのもどうかと私は思うがな」

一方・霊夢・紫「「「オマエが言うな」」」

魔理沙「ふえぇっ!?!?」






























結構待たせてしまったのですが、まだまだ第四章のストーリーが日常編が終わるまで始められないので少し四章のストーリーのチラ見せ




「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」

一方通行と同様怪物として学園都市の皆から恐れられてる彼女が______に全力で能力を振るう





















そして霊夢達の前にこの物語史上"最強"の敵が姿を現す。
希望を打ち砕き絶望一色に染める"最強"が


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3話

もう私はこの『幻想郷を一方通行に』の話をガンガン書く予定なのでよろしくっ!!

っと言っておりますが過去に何ヵ月も放置した野郎が私なので信じないで下さい、お願いします。
あ、そうだそうだ!!
今回の話には文ちゃんが出ます!!
え?なんでそれを先に言うのかって?

第三章の宴会の話に出し忘れたから
それの報告をまず最初にしたかったからです。
文ちゃん、君の存在忘れていたよ………………ゴメンよ


絶対、誤字があります。
ですが発見した場合、面倒だったら無視してくれて構いません。
お暇なお方や心優しいお方は出来たらで良いので誤字やそれ以外のミスを見つけたらこんなダメな私に報告してくれると非常に助かります。


幻想郷の里にあるとある場所に一人で住むにはデカすぎる家に珍しくもない平和な朝がやってきた。

そこに住む者は白い髪に白い肌、赤い瞳で中性的な整った顔の一方通行と呼ばれている外来人。

 

そして一方通行は起きると朝にはコーヒーが絶対必要だと台所に行き、昨日紅魔館で働いて貰った給料(受け取った給料袋には一方通行が紅魔館の食料を買ってきてくれたから、その代金もその給料袋に入っていた)と別にレミリア達からプレゼントされたコーヒーミルで挽いた豆をドリッパーにセットしたペーパーフィルターの中に入れる。

それからドリッパーをコップの上に置き、上からお湯を粉全体にお湯がまんべんなく行きわたるように中心かららせん状に注ぐ。

本当はもっと美味しいコーヒーを淹れるにはやる事があるのだけど、そこまでやりたくないから毎度毎度そこら辺は適当だ。

しかしこれだけで結構面倒と感じているがこの世界ではこの方法以外コーヒーを飲む事ができない。

外にすぐ出れば缶コーヒーとか売っていれば良いのだが、幻想郷とは歴史の教科書に載ってそうな古き日本のような世界なので自動販売機とかはないのだ。

 

そしてコップの上にあるドリッパーをどかし、やっと完成したコーヒーを片手にリビングにある一つの椅子に座る。

 

一方通行「…………………ふゥ………」

 

今日もなンか面倒事に巻き込まれそォだ、と巻き込まれ体質になった自覚をしながらコーヒーを一口飲んだ時だった

 

一方通行「………………あァ?」

 

ことっ、と温かいコップを机に置いたら床に何か嫌な予感がして下に顔を向ける。

 

一方通行「こいつは_____________________」

 

なにかを見て、口を開けたがもう遅かった。

床に突如現れたなにかに一方通行は"落ちて"行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「_______________オイ、紫ィィィッ!!!」

 

椅子と一緒になにかに"落ちて"行き、椅子は転がって行ったが一方通行は見事着地した。

刹那。自分の下になにかを開き、そしてそれに落とした犯人である大妖怪へ怒鳴る。

が、怒りと同時にこの場所はどこか見覚えがあると感じていた。

 

紫「はいはいちょっと落ち着いて。急にこちらに呼び出したことは悪かったわ、けどそれには訳があるの」

 

一方通行「ンなモン知ったこっちゃねェンだよ!!今からオマエは血風船だァァ!!」

 

にとり「ちょちょ、ちょっとストップ盟友!!」

 

一方通行「にとり?…………そォか、ここは…………」

 

どこか見覚えがある場所だと最初この場所に落とされてから思っていたが、前に来た時あるにとりの機械の開発兼、実験場であった。

 

にとり「うん、私の地下開発施設ってところかな?それで、ね。ここに無理やり呼び出したのは理由があるの、それをちゃんと聞いてくれる?」

 

一方通行「紫も言ってたなァ、そンなこと。チッ……話せ、できるだけ俺をキレさせねェよォになァ」

 

十分キレているが、それでも紫一人じゃなくにとりも関わっている事で少しは怒りが抑えられていた。

もしも、紫一人独断で一方通行を無理やり呼んだのなら確実に幻想郷半分を紫を消すついでに吹き飛ばしていただろう。

 

にとり「え~と、その。里防衛戦のあの時に使っていた無線通信機って覚えてる?それを私達は皆に配ろうとしてるんだよ」

 

一方通行「あァ……アレかァ。なンでそンなモン?」

 

紫「幻想郷側の人達、つまり私達全員も離れていても情報交換や会話などできたら便利でしょ?本当はもっと早く作りたかったけど、素材となる物は全然無いうえに色々あって予想以上に時間が掛かっちゃってね」

 

にとり「盟友がくれたあの機械と紫が持ってきた、機械。その二つはどちらも通話機能があるからこの二つの仕組みを完璧に理解し、いちから設計図を組み立てたからしょうがないよ」

 

にとりと紫は二人でなにか裏でこそこそやっていたのだろう。

その証拠に二人は前より仲良くなっているように見えた。

 

一方通行「おい待て。俺が渡した機械ってのは携帯だろ。それは分かる、だが紫が持ってきた機械ってのが引っ掛かる」

 

紫「前に猟犬部隊ってヤツらが来たでしょ。あの日、貴方の命令で能力者を集めるついでに私はアイツらが身に付けていた無線機を他の幻想郷の住人に持ってかれる前に全部回収していたのよ」

 

一方通行「やっぱりオマエ、裏で色々やっていやがったか」

 

まぁね♪といつも通りに紫は微笑んだ。

 

紫「そしてここから貴方と呼んだ理由なの。にとり、完成品を一方通行に見せてあげて」

 

にとり「了解!」

 

ごそごそ、と背中の大きなリュックを下ろしその中を探る。

そしてにとりは一つの機械を取り出した

それは

 

にとり「じゃじゃ~ん!!」

 

トン、と三人で囲む四角い金属製のテーブルに置かれたのは俗にいう携帯電話であった。

しかし携帯電話と説明してるが、ガラケーでは無い。

まるでそれは最新技術が詰まった私たちの知るスマートフォンと酷似していたのだ。

それを目にした一方通行は無意識に「ほォ」と口にする。

 

一方通行「こりゃスゲェな。マジで心からそう思うぜ」

 

置かれたスマートフォンと酷似した通信機を手に取る。

そして軽く弄ってみた。

横に小さなボタンがあり、多分電源を入れるスイッチだろうと思って押してみた。

するとやはり電源を入れるスイッチらしく、にとりと紫オリジナルのスマホが起動する。

 

無言でポチポチと触れてる一方通行に

 

にとり「どうどう?良いでしょ!?盟友が私に機械をくれた時に絶対に良い物を作るって約束したけど、どうかな?」

 

一方通行「何度も言わせてェのか?スゲェよこれは」

 

紫「一応それを作るのに私も関わったこと忘れないでよ?」

 

にとり「別に一人の手柄と思ってないよ?」

 

でも、と一方通行は口を開く

そして

 

一方通行「………こンなスゲェモンを数多く配るのか?大丈夫か、相当コストかかると思うぞ?他のヤツらは良い思いをするがにとりだけ大損じゃねェか」

 

にとり「ご心配なく!!費用その他諸々、全て紫が負担してます!!」

 

一方通行「なに?」

 

紫「幻想郷の為よ。私も身を削る覚悟はしてるわ」

 

まさかであった。

あの紫が、あの八雲紫が。

っとそう思ったがなんやかんや紫は幻想郷を守るため行動をしている。

それは重々承知している、しかしそれでも何故か信用が出来ないのだ。

底の見えぬ大妖怪だから知らないが

 

そんな彼女が言った

身を削る覚悟はしている、と。

 

その発言に一方通行は表現が微かに変化する。

 

紫「だって……当たり前でしょ?」

 

そして紫は笑う。

凄く凄く優しい顔で

 

一方通行「…………、オマエ達が裏でやっていた事は分かった。それで何故俺を呼ンだ?それが本題だろ」

 

紫「そうね、じゃあ説明しまょうか。今、貴方が持ってる物は一方通行なら分かると思うけどいわゆる携帯電話ってヤツよ。でも貴方の世界には数多くの種類の柄や形の携帯電話があるでしょ?」

 

まさか、と一方通行は口を開く。

そして朝、今日嫌な予感はしたがこれだったのかと理解した。

 

紫「全く同じの形や柄じゃ嫌だから、今から皆にどんなのが良いか聞いてきてくれる?おねがぁいっ☆」

 

にとり「盟友が聞き回ってる間、私達は作業を進めるから☆」

 

一方通行「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

言葉に出来ない程の怒りが底の底から湧き出てきた。

要するに、だ。

この命知らずの彼女達は、はじめから幻想郷で最強の能力者であり神というものを遥かに超越した存在の一方通行をパシる目的で呼んだのだ☆

 

…………ホント、紫とにとりは凄い思考回路をしている。

 

だが。まあだった。

今、彼女達がやろうとしてることは幻想郷のための行動だ。

だから、今回はしょうがない。

 

チッ…………、しょうがねェなァ…………

っと

 

一方通行「…………分かった分かった。だが一つ聞く、何故同じ柄は嫌なンだァ?」

 

紫「私達、女の子よ♪そういうの(こだわ)るの♪」

 

一方通行「……、ハイハイそォですかァ。ただいまよりクソ大妖怪サマの頼みを聞かせていただきますゥ」

 

もうどうにでもなれ、だ。

一方通行は素直な感想を言うのなら、「別に同じ柄でも良くね?」だが女の子達はそうでは無いらしい。

 

紫「レディにクソはどうかと思うけど?紳士様?」

 

一方通行「…………チッ。これは誠に申し訳ありませンでしたァ、とっても美しい大妖怪サマに訂正させてくださァい」

 

紫「絶対そんなこと思ってないでしょ?まあ、良いわ。聞いてくる数はできるだけで良いからって……………………行っちゃった」

 

適当に返し、一方通行は面倒事に取り掛かるため紫と同じであって同じではないスキマを開きその中へと消えた。

どうやら不満たらたらだが協力してるらしい。

そして一方通行が去ったにとりの地下開発施設では

 

紫「はぁ。じゃ、私達も作業に取り掛かるわよ」

 

にとり「うん。ん?なんか紫、口角微妙に上がってない?もしかして盟友に容姿褒められて嬉しかったの?」

 

紫「…………………………………う、うん」////

 

にとり「う~わ、カワイッッ!!」

 

紫「うるさいうるさーーーいっ!!!」/////

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の話である。

にとりと紫がなにかむふふな会話をしてる時、一方通行はとりあえず自分の家に戻っていた。

 

一方通行「……………………チッ、冷めてやがる」

 

もうあれから時間が経っている。

机の上にあるコーヒーカップは冷たくなっていた。

が、一方通行はその冷めたコーヒーを一気に飲み干しコップを片付ける。

そして家を出た。

今日一日、絶対丸潰れの面倒事を終わらせる為に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽がまだ登り続けてるこんな時刻なら、早い早い朝だと一方通行は言うだろうか。

しかしだ。

普通に生活をしてるのなら朝早く起き、夜寝るが当たり前である。

だから知り合いはほとんど起きているはずだが、一方通行は「多分寝ているンじゃねェか」と心配しながらも幻想郷の空を風の向きを操り背中から伸ばす竜巻のような翼で飛ぶ。

 

そしてそしてまず最初に向かった場所はもちろん"あの"場所だ。

そう、一方通行が初めて幻想郷に飛ばせれたいうより召喚に近い方法で呼び出された場所

 

一方通行「今の時間なら魔理沙も居るかァ?」

 

目的地である博麗神社の上空で制止していた。

が、しかし。風の向きを操り作られた竜巻のような翼を背中から消して体は重力に従って落ちていった。

 

で、だ。

 

一方通行「…………よォ。やっぱり居やがった」

 

魔理沙「お、おう?」

 

霊夢「……朝早く珍しいわね。なにか私達に用事?」

 

朝の日課のように縁側で座る博麗の巫女とその友達の魔女の前に着地する。

 

一方通行「実は______________」

 

「ねぇその人誰?」

 

一方通行「________あァ?」

 

話そうとした時、霊夢達が座る奥の部屋から一人女性が来た。

その彼女は頭にお団子が二つ、服は胸元に花の飾りがあり、服は前掛けの部分に茨の模様が描かれていた。

しかしだ。可愛らしい服を纏い綺麗な顔をしているが右腕全体は包帯がグルグル巻きで左手首には囚人達がつけてそうな鎖が少し残った鉄製の腕輪がついていた。

 

一方通行「こっちの台詞だ。オマエ誰だ?」

 

「ああそうね、まずは名乗らなきゃ。私は茨木華扇(いばらきかせん)。仙人っていうヤツよ」

 

一方通行「……あっそォ」

 

華扇「ん?私が聞いたからまず最初に丁寧に名乗ったのだから次は貴方の番では?ん?ん?」

 

魔理沙「あー、コイツこういうのうるさいから早く名乗ってくれ。じゃないとお前の大っ嫌いな面倒な事になるぞ」

 

一方通行「……、一方通行。それが俺の名だ」

 

華扇「そう…………ふ~ん。貴方が、ねえ……?」

 

霊夢達の隣に座りポケットに手を突っ込み心底面倒臭そうな一方通行を足の爪先から頭の天辺まで見る。

 

華扇「話で聞いてたより随分弱そうね。こんなのが幻想郷で一番強いって言われてるの?」

 

霊夢「ま、初めて一方通行を見たらそんな反応が当たり前よね、けど言わせて貰うわ。華扇、一方通行はアンタなんかじゃ絶対手が届かないほどの領域に余裕で立ってるの。私が言ってること分かる?要するにアホみたいに強いチート野郎ってことよ」

 

ふう、と霊夢は落ち着いた様子で暖かいお茶を飲んだ後、息を吐く。

その隣に片膝を立てて座る魔理沙は無言で首を縦に振る。

 

華扇「………二人は随分この子を評価してるのね。そんなに言われたら少し貴方のチカラを見たくなったわ。ねぇちょっとチカラを見せてくれない、最強さん?」

 

一方通行「なンだ、オマエを太陽まで投げりゃイイのァ?」

 

華扇「そうそう。ちょっと手合わせしてくれればいいの」

 

縁側の下にあった自分の靴を出し、それを履く。

そして縁側から腰を上げた。

 

華扇「そっちもやる気ありそうだし、良かったわ」

 

魔理沙「お、おい……悪い事は言わないぜ、やめた方がいいぜ」

 

霊夢「もう無駄よ。どっちもやる気満々って感じ。二人とも!!やるのは勝手だけどここを荒らしたら責任もって直してもらうからね!!」

 

華扇「……ありがとう。分かったわ」

 

霊夢と魔理沙が座る縁側から離れた所が一方通行と華扇の戦う場所となった。

そして距離を取り、向かい合う仙人と最強の白い怪物。

 

華扇「荒らさないでよ、だって。貴方は守れる?」

 

一方通行「………黙れ、さっさと始めるぞ」

 

ピリピリと空気が張り積めそして重く感じる。

その時、華扇は理解した。

ああ、そうなのか…………と。

 

最初見たときは弱そうで指一本で勝てそうな、そんなただの弱者な人間に見えた。

だが、今は違う。

『戦う』と、いうより『確実に叩き潰す』と決めた一方通行の雰囲気をこの空気で分かった。

で、それで

普段隠してたのであろう、一方通行のその狂気で塗りたくられた攻撃的な一面が見えたのだ華扇は

 

一方で。

縁側に呑気にお茶を飲んで座る二人は

 

魔理沙「しっかし珍しいよな。いつもの一方通行なら絶対断ってるぜ」

 

霊夢「でしょうね。あれじゃない?弱そうとか言われたからプチンときたんでしょ」

 

魔理沙「いやいや一方通行がプチンとキレたらここやばくね?」

 

霊夢「う~ん…………どうだろうね?ま、なんとかなるでしょ。止めるのとか面倒だし私は流れに任せるわ」

 

魔理沙「よく霊夢は落ち着いていられるな。羨ましいぜ…………」

 

で、で、だ。

 

 

 

 

そんなお二人の視線の先に立つ仙人と怪物は

 

華扇「さ、参りますっ!!」

 

一方通行「…………、」

 

正面から打つかった。

ゴォォォォンッッ!!!!

と空間が震える

それでどれだけ強いチカラ同士が打つかったか分かるだろう。

でも、だ。

 

だから良い勝負になる訳じゃない。

 

たった一瞬だ

たった一瞬で終わった

 

一方通行「……………………、」

 

華扇「…………っ、……く…………」

 

互いが重なる瞬間、華扇は一方通行がどんな攻撃を仕掛けてきても対処できる構えをしていた。

 

気付いた時には自分の背中は地面に打ち付けられ青い空を見上げていた

白い怪物に腹部を踏まれながら。

 

一方通行「…………終わりだよなァ?」

 

華扇「………え、ええ………………そうね」

 

一方通行「そォか。だがよォ、オマエ俺を殺すとまではいかねェが半殺しぐらいになる力ァ使ったよなァ?」

 

華扇「?…………っぐ!?」

 

裂いたようににたにた笑う怪物が腹を踏む力を強くし

 

一方通行「そンな力を向けるっつゥことは、だ。"オマエは半殺しになる覚悟はあるンだよなァ"、なァそうだろォ?」

 

たった一発で地を割る拳を構えた。

そして

 

一方通行「そォいや俺のチカラをみてェって言ってたし、覚悟があるのか試すついでに見せてやるよ!!良かったなァ!!"間近"で見れるぜェェッ!!!!」

 

グンッッ!!!

大地を揺らす力量の拳が華扇の"顔面"に振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華扇「………………………………はっ!?」

 

バサッ!!と自分にかけられてた毛布が勢いよく起きたせいで少し飛んだ。

 

華扇「…………ここは」

 

周りを見渡せば自分が霊夢の部屋で寝かされていたと理解できた。

そして、だった

この部屋の襖が開かれ

 

魔理沙「おっ!よぉ、目が覚めたか。うんうん、顔はちゃんと治ったな。正直ヤバかったんだぜ?顔面がぐっちゃぐちゃでほんの少しでも治療が遅れたら命を落としてたかもしれなかったんだから…………全く、一方通行にはもう一回説教だな」

 

水とタオルが入った桶を持って様子を見に来た魔理沙は手に持っていた物を床に置き、華扇の近くに腰を下ろす。

 

華扇「あの、後は?」

 

魔理沙「霊夢と私が猛ダッシュで華扇をこの部屋まで運び一方通行の模倣能力で作られた薬をお前のぐっちゃぐちゃになった顔に塗った…………って、思い出したく無いぜあの時のお前の顔。さすがの私ですら吐き気がするほどグロかったんだぜ…………」

 

魔理沙の顔を見ると真っ青になっていた

それでどれだけ酷い顔面になっていたか容易く分かった。

 

華扇「………はあ、負けたのね。私は」

 

魔理沙「気を落とすな。負けて"当たり前"だ、逆にアイツと戦って生きてるのが凄いって褒められるレベルだぜ?って、そうだ一方通行がいうには模倣能力で作られた薬には副作用みたいなのがあるらしくて、少し体が動かなくなるらしいぜ。だから体が汚れてそうだし私が拭いてやるよ」

 

華扇「え?…………あ、ホントだ。さっき上体は起こせたけどそこからは動けない」

 

目覚めた瞬間、反射的に動けたが腕や足に力が入らない。

これは薬の影響ってだけじゃない。

普通に脳に受けた余りにも大きなダメージのせいである

 

華扇は腕や足に力が入らないから魔理沙に濡れタオルで腕や脚をを拭いて貰っていた。

そして

 

服を脱がし、華扇が下着姿になった時だった

 

「邪魔するぞ」

 

すーっとこの部屋の襖が開かれた。

そしてそこに立っていたのは

 

あの顔面ぐっちゃぐちゃ事件の犯人さんで?

 

華扇「……っ!?」/////

 

魔理沙「わっ!?」

 

一方通行「あン?」

 

当然フリーズする空気

当たり前だ、下着姿の女の子が居る部屋に招かれざる客が来たのだから

 

が?が?

 

 

華扇「~~~~~ッ!?!?」

 

魔理沙「女子が居る部屋に入る時はノックしろ!!バカァァァァァァアアアアアアアアあああああああああッッッ!!!!」

 

一方通行「バカはオマエだろォがァァァッッ!!!!!」

 

華扇は腕が上げられないから胸を隠すことも出来ず顔を真っ赤にする、そして魔理沙も顔を真っ赤にしてトチ狂ったのか全力のマスタースパークを一方通行に放ち

 

一方通行は自分に放たれたマスタースパークへ両手を伸ばし

そして、圧殺する

 

んでんで?

 

一方通行「なに考えてンだクソッたれ!!気軽にしかもこンな至近距離でマスタースパークを打つなァ!!」

 

魔理沙「良いから出てけぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええっっ!!!!!」

 

バンッ!!!と乙女心など不理解な一方通行を部屋から追い出した。

 

魔理沙「はぁ、はぁ…………あのな、華扇。こんな事があった後に言うのはおかしいと思うだろうが、アイツ全然悪いヤツじゃないんだぜ。それを分かって欲しい」

 

華扇「う、うん」////

 

襖を背にして息が荒い魔理沙を見て、まあ嘘を言ってる顔じゃないし最初からそんなこと分かっていたが一つ返事をした。

 

 

 

 

大騒ぎの後、一方通行は霊夢の居る冬にはこたつに変わるテーブルがある部屋へ行った。

 

一方通行「くそ…………」

 

霊夢「すごい叫び声が聞こえたけど、なんかあった?」

 

とすっ、と腰を下ろした一方通行に霊夢は質問をした

すると

 

一方通行「あァ?体ァ拭いてる時に行っちまったら魔理沙のバカが全力マスパを打ちやがったンだよ俺に」

 

マスパとは

一応説明させてもらうと『マスタースパーク』の略しである。

 

そして可愛い女の子の下着姿を見ても嬉しそうな顔なんてせず、不機嫌な顔をしてる"バカ"に

そう"バカ"に

 

霊夢「あー、それはアンタが悪い。っていうかアンタは腕一本ぐらい吹っ飛ばされればいいのよ」

 

女の子の下着姿を見たと理由とは関係なしに鈍感野郎は一回裁かれればいいと思う霊夢さん。

うん、俺もいいと思うよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

騒ぎの後の後、魔理沙が霊夢と一方通行の居る部屋に戻って来た。

そしてもう体は拭き終わったと伝えられたプラス、次からはちゃんとノックしろと怒鳴られた。

 

そしてそして

 

一方通行「……入るぞ」

 

ちゃんとノックして、変事を聞いてから襖を開けた。

 

華扇「……………………」

 

一方通行「……さっきは悪かった。それとあとなンこかを伝えに来た」

 

華扇「……………良いですよ。ちゃんと反省してるみたいだし」

 

謝るということが慣れていないが非を認めた一方通行は微笑んで許してくれた華扇の近くに座る。

そして

 

華扇「それでお伝えしたいこととは?」

 

一方通行「アイツらにはもう聞いたが、今から話すことがここ来た理由だ」

 

そして話す。

紫とにとりで造り出した通信機というなの幻想郷オリジナルのスマホの事を。

離れた場所からでも話ができる機械と聞いたら華扇は驚愕していたが一方通行はそれに構わず話を進めた

 

一方通行「で、俺はどうでもイイが柄や形ってのが選べるらしくてなァ。オマエはどンなのがお望みだ?」

 

華扇「話を聞く限りそれはお仲間の為に作ってるのよね?何で私に?」

 

一方通行「霊夢にこの話したらオマエにも渡してェンだと。この世界で作られたスマホは、メールと通話しか機能がねェがそれでも便利だと思うし持っていても損はねェぞ」

 

華扇「そう……そうね。貴方や霊夢が言うのなら信じましょう。それで形や柄ねぇ?」

 

考えたがやっぱり形というか大きさは持ち歩くのなら小さい方がいいと伝え、そして色は三色と伝える。

ピンク、白、薄緑だ。

三色団子と同じ色?

そんなの知らないなぁ?

 

一方通行「…………それがオマエの望むやつだな、覚えた」

 

華扇「え?メモった方がいいんじゃない?これから何人、いや何十人って聞きに行くのでしょう?」

 

一方通行「五分でクソ分厚い本を何冊も暗記できる俺にはメモなンて古いモン必要ねェよ」

 

華扇「ふふふっ……霊夢の言う通りね。とんだチート野郎だこと」

 

一方通行「そしてもう一つオマエに頼みがある。それが___________________________」

 

華扇「………えっ!?本気!?」

 

その見た目で頼むには驚きの事を一方通行は話した。

それで

 

一方通行「あァ。"仙人のオマエ"にしか頼めねェことだ頼む。俺にはオマエが必要だ」

 

華扇「ッッッ!!?!??」/////

 

曇り無き眼と言うのだろか、とにかく彼の目は真っ直ぐであった。

だから本気で頼んでるのだろう、しかしだ。

最後!!最後にすらっと言った台詞が問題である。

 

華扇「えっと……あの、そ、そういうことは気軽に言ってはいけませんよ?」////

 

いくらなんでも仙人様ですら照れてしまう台詞を注意する

が、だ。

 

一方通行「あァ?誰にでも言うわけねェだろアホ。オマエだから言ってンだよ」

 

華扇「うっ!!?!??!」/////

 

限界です、もう降参です

っと言って両手を上げたいぐらいだ

しかし現在両腕は上がらない。

 

とにかく華扇は自身の顔が真っ赤だと把握していて、それを誰にも見られたくないから

 

華扇「分かった、分かりました!!良いですよ!!時間が空いたら遠くからでも話が出来る機械で私を呼んでください!!貴方に付き合います!!ですから早く貴方は今、自分がやるべき事をやって下さい!!」

 

一方通行「?あァ、分かった」

 

訳が分からン。っと、とにかく次に聞きに行くヤツを決めて部屋を出た。

そして顔面をぐちゃぐちゃに殴り潰したのに、こんなあっさり頼みを了承されると思っていなかった一方通行は霊夢達に次に行くと伝え、博麗神社から飛びだった。

 

もう、今は良いや。いつかで良いから彼女達の気持ちに気付いてくれよ一方通行さん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一方通行が去った博麗神社では

 

霊夢「それにしても、私達に黙って紫や一方通行は結構裏で変な事やってるのね。あの里防衛戦の時に使ってた通信機を改良してそれを皆に配るだなんて」

 

魔理沙「いいじゃんいいじゃん。私は嬉しいぜ?あの時欲しくて通信機を盗んでやろうと思ったら紫のヤツに阻止されたんだから。だが今回渡されるのは自分のって堂々と言えるんだぜ?」

 

霊夢「……盗むって、やっぱり少しは盗んでる自覚あるのね」

 

魔理沙「ん?ああ、紅魔館での話は違うぜ。本は借りてるんだ、死ぬまでなっ☆」

 

そんな会話をしながら華扇が居る部屋へ行っていた。

そして襖を開き

 

魔理沙「よーっ!!一方通行から話は聞いたか?楽しみだよな通信機ってヤツ!!」

 

霊夢「アイツは通信機をスマホ?って言ってけどね。それが多分正式名称じゃない?」

 

元気良く、これから楽しみにしているスマートフォンの話をしたが

 

華扇「っ!?霊夢、魔理沙っ!?!?」

 

「「え………………」」

 

襖を開いたらあらビックリ。

普通に生活をしていたのなら絶対に見せない赤面した華扇の姿が二人の目に入る。

そして霊夢と魔理沙は三秒停止した。

しかし、だった。

 

三秒経ったら

 

華扇が赤面した理由は簡単に分かった。

何故って?そりゃ自分を含め彼と会って"そういう"顔をした女の子達を多く見てきたからだ。

特にこの二人は、だ

 

だから霊夢と魔理沙は

 

「「あんのクソ女ったらしがァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!!!」」

 

と、憤怒(ふんど)してとある最強様へ叫ぶ。

 

が、悲しいことにその彼へは言葉は届かないのであった

 

あーあー残念。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅白の巫女と白と黒の魔女の少女二人が叫んでると知らず、空を飛ぶ一方通行は次の目的地へ向かう。

次は命蓮寺だ

 

あそこは最初行ったきり全然行ってないし、そこに居るヤツらとは一度しか会っていない。

命蓮寺の奴らは酒を飲んではいけないのだろか?

その真相は分からないが命蓮寺で出会った奴らを宴会場で見たこと無いのは真実である。

 

だから、なにか異常があるかないか確かめに行くついでにスマホの形や柄を聞きに行く。

 

 

が、その途中の出来事だった

 

一方通行「……、チッ……………………」

 

ゴォォォォォォ!!!!っと猛スピードで自分に向かってるというよりは突っ込んで来てる"ヤツ"を一方通行は舌打ちをしてかわす。

 

「ちょっと、こんな可愛い女の子が抱きつこうとしてたのにかわすとはどういうことですか!?」

 

一方通行「…………、殺すぞ?」

 

「あややっ!?顔が、顔がマジ顔で怖いですよ!?」

 

空を飛んでいたら、まさかのうるさいヤツと遭遇だ。

一方通行はため息を吐く。

それを見た文は、ため息に触れることもなく

 

文「ま、貴方に会えて良かったです。実はネタがなくて困ってたんですよ、なにか良いネタありませんか?」

 

一方通行「ねェ。ほら答えたぞ。次は俺の話を聞きやがれ、断ったらオマエのその翼を千切る」

 

文「こわっ!!?分かりました分かりました。お話を聞かせて下さい」

 

そして一方通行は話した。

(幻想郷オリジナルの)スマホを皆に配る計画と、そのスマホの柄や形を自分で決められることを

 

文「ふむふむ、なるほどぉ。それは便利な物をお作りになりましたね。そしてそれがどんなのが良いのか、ですか…………」

 

考えた結果、形は普通で良いから色は黒にして欲しいと文は言った。

 

一方通行「分かった。じゃあな、文」

 

文「はい。にしても良いこと知れて良かったですよ。ネタが見つかりましたからね、ふふふ…………」

 

一方通行「あン?まさか、俺がさっき説明したことを新聞に書くつもりかァ?」

 

文「え?ダメですか?」

 

一方通行「ダメに決まってンだろ、バカか?俺の知ってるヤツにしか配るつもりはねェし、配らねェヤツには極秘にするつもりだ」

 

文「えー………わっかりました~」

 

不満。

そう文の顔に書いてあった。

しかし、ホントに知られたくないのだ。

もしもスマホの事を一般の奴らに知られれば簡単に情報が漏れてしまう。

それは絶対に阻止したい。

だから、だ。

一方通行は"信用"出来るヤツだけに聞き回るつもりでいる。

 

一方通行「忠告だ。もしこの事を新聞に書きやがったらオマエの所に殴り込みに行くからな?」

 

そう最後に吐き捨てて去ってしまった。

一方通行自ら殴り込み。

想像しただけで体の震えが止まらない

 

ああ、もしも。っと想像して見えた光景は

 

地獄。

その一言で十分説明できるのだ。

彼だけは敵に回したくない文は敬礼のポーズで一方通行を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気を取り直して命蓮寺へ向かった。

そして、たどり着いた。

 

一方通行「誰もいねェ?」

 

スタッ、と命蓮寺という建築物の前に見事着地したが人ひとり姿が見えない。

もしかしたら中にいるかもしれねェ、と命蓮寺の中へと進もうとした時だった

 

「許可なく入ったら殺すぞ、クソもやし」

 

一方通行「あァ?」

 

自分の後方で空から何か落ちて来た音と声がして振り返った。

すると背中に赤い鎌のような右翼と、青いぐねぐねとした左翼を持ち物騒な三又の槍を手に持った所々跳ねた黒いショートボブのぬえという少女が居た。

 

一方通行「ぬえか。ちょうどイイ。白蓮は居るか?」

 

ぬえ「なに?答えて貰えると思ってるの?」

 

攻撃的な目であった。

ぬえという少女は友好的ではない。

しかし今の一方通行には関係ない話だ。

 

一方通行「……いや。もうイイ分かった。白蓮は中に居るンだな?それが分かりゃオマエは用済みだ」

 

ぬえ「な、なんでっ!?」

 

一方通行「心を読ンだ。それだけだ。ま、確認出来なくてもとりあえず中に入るつもりだったけどな」

 

ぬえ「チッ。くそ、案内してやるよ付いて来い」

 

嫌々。

そんな雰囲気を醸し出していたが、ぬえは命蓮寺の中へと歩いて行く

 

一方通行「あン?どォいう風の吹き回しだァ?」

 

ぬえ「…………付いて来い。二度も言わせるな」

 

一方通行の前方で立ち止まり、そう言い放つ。

そして、ぬえはそのまま寺の中へと入っていき一方通行はその後を歩いて行った。

 

命蓮寺の中へ入り進むとある部屋に着いた。

そしてそのたどり着いた部屋の襖を開き中に入ると

 

ぬえ「ただいま~、っと」

 

ポイっと持っていた三又の槍を放り投げ、入った部屋の適当な場所で腰を下ろしす。

 

「お帰りなさい、ぬえ。えっ………一方通行さん?」

 

一方通行「久しぶりってところか?白蓮」

 

四つも襖が並んでるから大きな部屋だろうと想像していて、まあ予想通りの広さの部屋であった。

 

響子「あーーっ!!お久しぶりでーす!!!」

 

一方通行「相変わらずオマエは声がデケェな、ったく」

 

白蓮、響子と宴会場では会わないメンバーだ。

だがその他のヤツらもバラバラに座って居て

 

一方通行「でェ、ちょいと話をしに来たンだがそいつらはなンなンだ?」

 

その他の"奴ら"に一方通行は視線を向けた。

 

白蓮「えーと、この寺で修行をしてる者達とお伝えさせていただきます」

 

一方通行「………今から大事な話がある。が、どォやらそいつらにも話した方が良さそうだなァ」

 

これまでこの世界で何人も変わった奴らを見てきた。

だからもう分かるのだ。

普通のヤツか、普通のヤツじゃないのか、と。

そしてここに居るヤツらは"普通じゃない"ヤツらだ。

しかし、スマホを渡すヤツは普通じゃない方が良いのだ。

スマホを渡される

その理由をちゃんと理解して欲しい

何故、メールや通話出来る物を渡されるか?

なにも青春を謳歌する女子高校生がやる、夜遅くまで無駄に電話をするためだとか、美味しい料理店を見つけたからシェアするためメールだとか、そんなクソくだらない理由で渡されると思っているのなら言ってやろう。

 

スマホを渡された瞬間、お前はこの幻想郷を守る者として学園都市のヤツらと戦うグループに入ったのだと

 

だからこそ、だ。

普通じゃない、そこそこの力を持つ者が必要なのだ。

まあ、紫はそういう目的だが一方通行は違うがな。

 

……なに、アイツらの安否が確認出来ればそれでイイ。

そう思っているのだ。

彼は彼女達に任せず、出来れば自分一人で一から十まで全部片付けたいと考えている。

 

一方通行「じゃ、説明するからよォく聞けよ。が、まず一つ言っておくと俺は朝から嫌な事があって機嫌がスゲェ悪るくてなァ。ちょっとでも不快な事があったら暴れるからよろしくゥ」

 

そして命蓮寺のなかで説明会だ。

で、で。

 

一方通行「__________________って訳だ。柄、形が決まったらすぐ言え。それ以外の質問は全員合わせてで二つ聞いてやる。あまりここに時間を使ってられねェから早く答えろよ」

 

………………が、誰も口を閉じて黙りだった。

まあ、当然だろう。

急に現れて未知の世界の話をされるは、時間がないから早くしろとか、しかも白蓮や響子やぬえは一方通行と面識はあるがその他の子達は初めましてである。

 

一方通行「…………オイ、早くしろよ。今日一日でこのクソ広い幻想郷にバラバラに居るヤツらに聞きに行かなきゃいけねェンだよ」

 

「す、すいません。急なお話でして混乱していまして」

 

まず、命蓮寺のメンバーで一番最初に口を開いたのは金と黒が雑ざった髪を持ち頭上に花の飾りを乗せていて虎柄の腰巻きをつけ、背中に白い輪を背負っている。

寅丸星(とらまるしょう)という僧侶としては二番目に偉い少女である

 

「いえ。皆、ご主人と同じ気持ちですって」

 

そして次だ。

次に口を開いたのはクセのあるダークグレーのセミロングに深紅の瞳をしていて、頭には丸いねずみみが生えており、腰からはネズミの長い尻尾がありその先に子ネズミたちの入ったバスケットを吊るしている。

そして先のほうが切り抜かれた奇妙なセミロングスカートを着用していて肩には水色のケープをはおり、首からはペンデュラムをさげている幼い少女の姿の子であった。

星をご主人と呼ぶ、その子の名はナズーリンという。

 

「っていうか、いきなり来て訳の分かんないこと言って、さあ早く答えろだなんて何様なのアンタ?」

 

そう言ったのはウェーブのかかった黒のショートヘアーで、サイドヘアーの長さは耳が見えるくらい短く、目は青緑色の瞳で、そしてセーラー服を纏うまたまた少女である。

その少女の名は村紗水蜜(むらさみなつみ)という

 

一方通行「あァ?」

 

水蜜「しかもその態度。普通そっちが頼んでんだから頭を下げるのが当たり前じゃない?」

 

一方通行「…………、」

 

水蜜「はぁ……黙り、ね。聖、こいつここからつまみ出して良い?」

 

白蓮「だめです。っというより貴方では一方通行さんをつまみ出すなど不可能ですよ?」

 

水蜜「はぁ?コイツぬえにボコボコにやられたんでしょ?そんなやつに何が出来るっての?」

 

白蓮「あの時、一方通行さんはあえて全部の攻撃を受けたそうです。もし、一方通行さんがぬえと本気で勝負をしたのなら確実にぬえは敗北していたでしょう」

 

水蜜「いやいや、ないって。話では聞くよ?この人が"あの"一方通行ってやつなんでしょ。けどいざ見てみたらガッカリ。こんな脆弱くんが最強って………幻想郷に居る奴らはなに?弱くなっちゃったんじゃない?」

 

ぬえ「なら勝負してみたら?ボッコボコにされたら笑ってあげるから」

 

水蜜「えっ?…………ぬえまでこいつを過大評価してるの?」

 

驚きであった。

あのぬえが、人の側について話したことが

 

ぬえ「別にー…………」

 

一方通行「なンか話が変な方向にいったが、アレか?オマエは俺と殺り合いてェのか?俺はどっちでも良いぜ。選べよ、パパッと答えて丸く納めるか、オマエが俺にスクラップにされて泣きじゃくるか」

 

水蜜「へぇ、言うじゃん。ならやろうよ、私アンタがムカついてムカついて仕方がなかったんだ…………」

 

どちらも、もうダメだ止まらない。

始まる、始まってしまう……血みどろの争いが

 

しかし、だった。

 

響子「ケンカはやめてくださぁぁぁぁいっっ!!」

 

たった一人の絞り出した勇気が争いを止める。

 

水蜜「うわっ、ビックリした。なに響子?」

 

響子「ケンカは、だめ…………絶対っ」

 

ピリピリしてる空気に頑張って声を上げた響子の瞳には涙があった。

それを見て水蜜は息を吐き落ち着きを取り戻した。

そして

 

水蜜「…………あー、はいはいごめんね。でも私はそんな悪くないでしょ?そっちがそういう不機嫌な雰囲気を放つのが悪いと思うけど?」

 

チラッ、と一方通行へ視線を向けた。

 

一方通行「…………フン」

 

白蓮「う~ん…………」

 

「なに考えてるんですか、姐さん?」

 

無事争いにならなかったが、その一件を見て腕を組んで悩む白蓮にやっと口を開いた最後の子。

その子は髪色は水色で目の色は灰色がかった黒眼で、主張の少ない雲のように白い長袖の上着を纏い。

下のスカートは、上は白、下は藍色の2色に分かれていて、境目は富士山を思わせる様な紋様が施されている。

その最後に口を開いた彼女の名は雲居一輪(くも いいちりん)という。

 

で、一輪が視線を向けてる白蓮は小声で

 

白蓮「…………前に一方通行さんはコーヒーを報酬として頼んでましたし、コーヒーが相当お好きなのでしょう。なら、お好きなものを与えれば少しは機嫌が良くなるのでは?と考えたのですが一輪はどう思います?」

 

一輪「いーや、それはどうでしょう?そんなことで機嫌良くなるような人には私には見えませんよ?」

 

二人は小声でこそこそと話をしている。

そしてその話は続き

 

白蓮「物は試しです。ちょっと実行してみますね」

 

一輪「…………頑張って下さい、成功を祈っております」

 

そしてそして、

『不機嫌な一方通行をどうにかしよう作戦』が始まった。

白蓮は「席を少し外します」と言って部屋から一時的去る。

で、だ。

 

時間が少し経つと温かいコーヒーの入ったコップ持ってを戻ってきた。

 

白蓮「あの、少し時間がかかるかもしれないのでそのお詫びとして。どうぞ…………」

 

一輪「……………………、」

 

白蓮が一方通行の前に黒い液体が入ったコップを置く。

その瞬間、ドキドキッ、ドキドキッ、っと白蓮と一輪は緊張していた。

で、白蓮は元の場所に座りコップが置かれてから間があった。

緊張しているせいかその間が何分、何十分と感じる。

そしてピリついたこの空気を変えようとした二人の勇者が見守るなか、一方通行はコップを取り

 

一方通行「チッ、コレが飲み終わるまで待ってやる」

 

((ヨシッ!!))

 

二人は心の中ではがっつり、ガッツポーズであった。

二人の作戦は成功。

まあ、実行者は一人だからたった一人と言っても良いだろう。

しかし、一輪は成功を祈っていたので作戦のメンバーに数えてあげたい。

 

そして一方通行は黙ってコーヒーを飲んでいた。

『飲み終わるまで待ってやる』っと言ってもだった。

グイーッ!!っと素早く飲んで、ハイ飲み終わった早く答えろ!!っというガキみたいな事をする訳がない一方通行はゆっくりと、だ。

ゆっくりとコーヒーを味わっていた。

 

まだまだ他のヤツらにも聞きに行かなきゃいけないけど、今の一方通行はそんなこと頭になかった。

一にコーヒー、二にコーヒー、三にコーヒーである。

そこまで好きなのかよ!?っと思うだろうが、缶コーヒーのない世界だから自分で淹れて飲むっというのが面倒臭がりの彼にとっては結構苦痛なのだ。

そして、だ。

誰かが淹れたコーヒーはなにも苦労せず飲めるという素晴らしいもの。

だからそれだけで一方通行には価値のあるものに変化する。

 

 

時は進む。

するとちょくちょくスマホのデザインが思い浮かぶ彼女達。

で、一方通行がコーヒーを飲み終わった後にはもう全員アイデアを出し終わっていた。

 

一方通行「…………………それで終わりか。じゃあ次に行きてェが白蓮。命蓮寺に来てから気になってたが、オマエら以外ここに人影がねェ。なにがあった?」

 

白蓮「えっ…………それは………」

 

一方通行の質問に一気に白蓮は表情を変化させた。

それは思いだしたくもないような、それについて考えたくないような、そんな顔だった。

 

一方通行「?…………」

 

白蓮だけじゃなかたった。

一方通行以外全員が暗い顔になっていた。

そしてそして、だ。

この暗くなってしまった空気のなか、一人が口を開く。

 

一輪「では…………ここは私が説明しましょう」

 

一方通行「なにか、問題が起きたみてェだな」

 

一輪「………はい。この命蓮寺がこんなに寂しくなってしまったのは__________________」

 

この幻想郷では異変というものが多々発生する。

その異変のなかにひとつにこんなのがあった

 

狂妖怪里防激戦。

これは結構記憶に新しいものだ。

リミッターが外れ、無差別に襲い狂う妖怪達。

それを見たり知った人間達は、妖怪達を恐れるだけじゃない。

人外すべてを恐れた。

一般以上の力を持つもの、例外は居るが殆ど全員ああやって狂う可能性があるかもしれない。

そう思った人間は例外の人以外全てを遠ざけた。

で、それはこの命蓮寺でもおきていた。

 

命蓮寺は妖怪と人間、どちらもいる寺である。

そして命蓮寺で居た人間は狂妖怪里防激戦の事を知り、命蓮寺に居る妖怪達も、もしかしたら自分達を襲い殺しにかかるかも知れないと思って

命蓮寺から修行中の人間全員が逃げたした

 

え?なに?可愛い女の子がそんなことする訳がない?

何を言ってるのだ。

可愛いだの、カッコいいだの優しそうだの関係ない。

そういった恐ろしい力を持っているのなら容姿なんて関係ない。

そう考えるのが人間だ。

ヤツらは弱者だから、弱者なりの臆病な考えがある。

 

そして、たった一夜で命蓮寺から九割の修行中の者達が消えた。

 

そして、その日に。

白蓮は今までにないほど絶望した。

 

あの明るく楽しかった命蓮寺の日々は夢だったのでしょうか…………

静かすぎる、寂しい。

たった数人にしか居ないとこの寺は大きすぎます…………

 

ああ……、今までの努力はいったいなんだったんでしょう?

 

なにがおかしいという訳でもなく、何故か知らないが笑みがこぼれた。

ただ、口角は上がっていても目は楽しそうじゃなく

とても……とても…………

 

_________________悲しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………そォだったのか」

 

命蓮寺がこんなに寂しい場所となった原因を聞いて、一方通行はそう呟いた。

 

白蓮「すみませんでした。里での異変以降、幻想郷がまた危機に陥っていたのは知っていました。ですが私達はそれにお力を貸せる余裕がなく、自分達の問題を優先してしまい…………」

 

一方通行「いや、構わねェ。そォいうのは俺が全て解決する不可能だとしても絶対にだ。だからオマエらは自分達の用事を最優先にして良い…………それに元々、暴走事件の元凶は俺だと言ってもイイしなァ」

 

えっ!?

一方通行の最後の発言に命蓮寺一同がそう驚いた。

 

で、だ。

 

水蜜「……アンタが……………………アンタがッッ!!!!!」

 

バンッ!!!と床を叩き力強く立ち上がる。

そして最悪の元凶である怪物を鋭い目付きで睨む。

 

水蜜「クソッ!!なんだよ、ホントにさっ!!全てアンタのせいなのかよ!?それなのに良くものうのうとこの命蓮寺に来たのかよ!!!なあっ!!??」

 

一方通行「あァ、そォだな。俺もそォ思うぜ?で、なンだ。オマエらはなにか俺に求めるのか?俺ァ別に構わねェよ。なンだって支払ってやる。腕を引っこ抜いて差し出せばイイのか?この命蓮寺から消えた人数分心臓を潰せばイイのか?あァ?」

 

水蜜「はっ、出来ないことをペラペラと…………」

 

そう言った時だった

一方通行は右腕を正面に伸ばす。

そしてだった

 

バギバギメギャグチャグチャッ!!!!!!

っと一方通行の右腕が複雑に折れ曲がる。

それはまるで、枯れ木の枝のようになっていた。

 

もしもそんな腕に麻酔なしでされたら、痛すぎて確実に泡を吹くだろう。

そして一方通行はもちろん、麻酔なんてせずに痛覚がちゃんとある状態でそれをやった。

しかし

何か起きたかァ?

って言いたげなほど、腕をおさえて転げ回ることもせず、表情一つ変えず普通に座っていた。

 

そしてそんな光景を目撃した一同は声が出せないほど、驚愕する。

なかには、その姿が痛々しすぎて手で目を覆い隠す者も居た。

 

一方通行「……まァ、こンな"程度"で覚悟があると言われても納得いかねェだろォが。ここを汚ェ血で汚す訳にもねェしィ?次は外でやってやるよ。大腸を引きずり出せば良いかァ?」

 

ナズーリン(狂ってる…………私が出会ってきたヤツで断トツに…………)

 

響子「や、やめて下さいっ!!見てるこっちが痛いです!!もっと自分の体を大事に…………っ」

 

星「そ、そうですっ!!少なくとも私達は貴方を傷付けて贖って貰おうだなんて思ってません!!」

 

当然の反応だし、自分を大事にしろだなんて当然の当然。

しかし

 

一方通行「こンなの全然痛くねェよ。それにオマエらの誰か一人でもこォいう罰ってやつを望むなら俺は喜ンでやってやる。いいか?肉体への痛みなンざなァ、オマエらが舐めた心の痛みに比べりゃ屁みたいなモンなのさ」

 

知ってるさ、ああ知っているとも。

体が傷付き、血が流れたりアザができたりなど、そういう痛みは薬で和らげたり、時間が経ち治ればすぐに忘れる。

だが、だ。

心を蝕む痛みは万能薬があっても不死の体を手にいれても腕のいい医者が居ても簡単に治すのは無理なのだ。

 

心の傷を治すのは薬でもなけりゃ不死の体でも一千万人救った医者でもない。

時には言葉が、時には人が、時には物が、心の痛みを跡形もなく消す。

そしてそういう心の傷を治すものは心の傷が深ければ深いほど簡単に見つかるものではない。

 

一万以上の命を奪い、白い怪物だの言われてきた一方通行にだってそんなこと知っている。

だから、だ。

少しでも彼女達が抱える痛みというやつを柔がる事が出来るのなら一方通行は自身を傷付けることを躊躇などしない。

 

水蜜「な…………なに?」

 

そして。

こんな状況にさせた水蜜へ命蓮寺一同が視線を向ける。

で、だった。

水色の髪の彼女が

 

一輪「いいや?一方通行さんは嘘を言ってないと証明したから、貴方はどんな事を言うのかなって?」

 

水蜜「………………………チッ。悪かった。柄にもなく当たった」

 

大人しく水蜜は座った。

本当は分かってる。

一方通行が元凶じゃないことを。

もしも、だ。

あれがああなったからだとか、ヤツが来たからだとか、そういう感じだったとしても元凶じゃないのさ。

本当の元凶とは、真っ黒な悪夢を実行したその人である。

 

一方通行「オマエは悪くねェよ。だから謝らなくて良い。俺が勝手にやった、そう思っとけ」

 

不思議の不思議。

複雑に折れ曲がっていた一方通行の右腕はさっきまでの、健康な腕に戻っていた。

 

ぬえ「おわっ……気持ち悪。もう人間はでも怪物でもないねアンタ」

 

一方通行「……おォそうだな。俺も自分は何者なのか、どうやって表現すれば良いのか分からねェよ」

 

まあ複雑に折れ曲がった腕が治る光景は少しじゃないな、ものすごくグロかった。

そしてそれを見たぬえはたまらずそんな台詞を吐き捨てる。

 

一方通行「……それにしても、そォだなァ。これをやったからだとかで、俺がやらかしちまった事を無にできるとか思っちゃいねェが。協力させてくれ…………命蓮寺の復興ってやつの」

 

星「復興、ですか。それは今我々の望みですから、その為に貴方ほどの人が加わってくれるのなら喜ばしいことですね、聖」

 

白蓮「そうですね、星。私達から頭を下げてお願いしたいぐらいですよ一方通行さん」

 

今の幻想郷は一方通行を中心に回っていると言っても過言ではない。

前は博麗の巫女と白と黒の魔女が中心であった。

しかし、時代というものか変わるのだ。

 

他者への影響力のある一方通行がもしも、だ。

命蓮寺を宣伝してくれたらどれだけ人達が集まるのだろう。

 

そしてそして。

一方通行は彼女達に約束する。

 

『オマエらの命蓮寺は必ず守り通す』と

 

『絶対ェこの寺を復興させる』と

 

そう約束してる時の一方通行の瞳には

絶対に砕けないほどの強固な意思というものがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

命蓮寺の外。

というか参道だった。

そこには白い髪に白い肌で赤い瞳の怪物がいた。

一方通行は白蓮には、「他の事は良いから、まずは自分の問題を解決しろ」っともう一度言っておいた。

響子には「もっと自分を、自分の体を大事にして下さいっ!!」っと怒られた。

小さな女の子だが、自分のことを心配しているからこそ本気で怒ってくれた。

それが分からないほどの鈍感ではない。

だから珍しく「悪りィ……」っとだけ言ったそうだ。

 

そして他の子達からは質問攻めに近いくらい、質問される。

まあ、彼は幻想郷で一番話題の人だ。

そのぐらい許してやろう。

 

で、で。

 

一方通行「………………………………、なンだ?」

 

背後から気配がした。

振り返れば、もしかしたら自分のように救いようの無い怪物へ変化を遂げてしまう可能性があった少女が居た。

 

ぬえ「……………………」

 

一方通行「あァ?」

 

ぐっ!!と固く口を閉じて両手を握り締めて突っ立っていて、何がなんだか分からなかった。

 

が、

 

ぬえ「ま、また…………、ここにこれるもんなら来てみろバカッ!!」

 

一方通行「……………………、」

 

わぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!っとぬえは本当に言いたかった事が言えず頭を抱えてしゃがむ。

そんな彼女に

 

一方通行「あァ」

 

と、たった一言を返す。

するとぬえは、バッ!っと立ち上がりすぐに命蓮寺の中に帰ってしまったため良く顔が見えなかったが

真っ赤な頬。

それだけは確認できた。

そして一方通行は

 

一方通行「……………………次はオマエかァ?」

 

水蜜「ふんっ。噂通りのやつだな」

 

寺の柱の裏に隠れていたが、水蜜は姿を現した。

 

水蜜「私は、ああはならないからな」

 

一方通行「何を言ってやがる?」

 

水蜜「…………あー、そういうヤツね。ま、いいや。ここに協力するのは別に勝手にすりゃ良い。だけど復興できたとしても私はアンタを永遠に恨むぞ?」

 

一方通行「良いぜ。それで」

 

水蜜「チッ。すごい力があることは分かったよ、けどだからどうした。人間の体ってのは変わらないんだろ?だったら脆くて一発でも攻撃を当てられれば、すぐに壊れるんでしょ」

 

一方通行「フッ……」

 

水蜜「なんだよ。 なに笑ってんのさ」

 

一方通行「いやァ?俺をビビらしてェのが丸分かりでよォ。それがスゲー面白くてなァ」

 

ニヤリと、性格の悪さが滲み出た笑みであった。

 

水蜜「~~~~~~ッ!!!!とにかくっ!!余裕でいられるのも今のうちだ!!アンタの方が強いのは認めてやるが隙を見せたら絶対墓に埋めてやる!!」////

 

何も言えないほど、図星を突かれた水蜜は顔を真っ赤にして命蓮寺に帰った。

 

そしてそして。

一方通行は命蓮寺から次の目的地へ飛び立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それで、一方通行の去った命蓮寺では?

 

星「あの人、一方通行さんでしたか。とてもワイルドなのに優しくて魅力的な人でした…………」////

 

ナズーリン「え、あ、うん。うん!?なに言ってんのご主人!?」

 

星「あ、いけないっ。思ってしまったことをつい………」////

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ナズーリンは言葉というものが出てこなかった。

ただ、自分の主人が女の顔をしていてそれに頬から雫を垂らして困った顔であった。

すると

 

一輪「ちょっと周りを見てみな、ネズミさん?ビックリってもんじゃないよ?」

 

ちょんちょんと、ナズーリンの肩をつつく一輪。

そしてそのネズミさんは言われた通り、周りを見た。

そしたら…………

 

響子「一方通行さんはコーヒーがお好きなんですか聖様?だった次は私が一方通行さんにコーヒーを淹れたいですっ!」

 

白蓮「いくら響子でもそれは譲れませんよ?うふふっ……」

 

ぬえ「あァ……って。あァ、だって。えへへっ………」////

 

水蜜「クソっ、あんなヤツ。あんなヤツ……………………あんな、やつ」////

 

ナズーリン「なんだ……ここはっ!?」

 

なんだ!?なんだ!?なんなんだ!?

っと気付いたら甘ったるいお花畑オーラむんむんな恋する乙女の顔になっていた白蓮、響子、ぬえ、水蜜に口を広げて驚愕した。

そして、だ。

 

ナズーリンと一輪は顔を合わせた後、同時に縦に首を振る。

そして思ったのだ

 

『『これが"あの"一方通行のチカラかっ!?』』

 

っと。

 

"噂"は真実であった。

一方通行は恐ろしく強力な力を持ち、この幻想郷で最も狂った人格崩壊者であるが

 

何故か多くの女の子達が、その彼にその怪物に

 

……………………落ちてしまう、と。

 

なので、裏では彼に会ったら注意しろ。

っと言われてたり言われてなかったり?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大空を自由に飛ぶ。

それはどんなに楽しいのか。

そう思わないだろうか?

 

全く普通な者はもちろん特殊な能力など無い。

だから、もしも空が飛べたらとか、無敵と言われる力を手に入れたらとか考える者はなかにはいるだろう。

 

しかし、だ。

空を飛べて、無敵かのような力を持つ者が言うには

『空が飛べたってつまンねェぞ?』

だ、そう。

 

そんな一方通行は次に向かったのは山である。

この幻想郷で山といったら、あそこしかない。

そう妖怪の山だ。

 

で。その山で、ひとつの小さな人影を見つけてその人影付近に最強さんは着地した。

 

一方通行「朝。昼。夜と、構わず酒を飲ンで楽しそォだなァ?萃香」

 

萃香「ん~っ?その声は……一方通行か?」

 

今の季節は秋だ。

そのため綺麗な紅葉が視界いっぱいに広がる山のとある場所。

そのとある場所にある大きな岩に座る一人の鬼に声をかける。

で、その幼い少女の容姿の鬼は

 

萃香「おー、なんだー?一緒に酒を飲みにきたのかー?」

 

一方通行「俺は酒が嫌いなのは知ってるよなァ?だったら違うって分かるだろ?」

 

萃香「じゃあなんの用なのさー?」

 

一方通行「それを今から説明する」

 

そして萃香の隣に腰を下ろし、今日何度目かのスマホの説明をした。

いつも酔っ払ってるから話を聞いてるか心配だがまあ、言わないよりか言った方が良いだろう。

 

 

で、話は終わり

 

 

 

一方通行「____________つゥことだ。オマエはどンなのが良い?」

 

萃香「んー?…………この瓢箪みたいなのがいいなー」

 

隣に置いてある瓢箪をゆらゆら~、と揺らして一方通行に見せる。

 

一方通行「…………分かった。じゃあ俺は次に行く、あばよ」

 

萃香「あばよ……か。そうやって私達から離れて行くんだね」

 

一方通行「あァ?」

 

岩の上に立ち、次に聞きに行こうとした時だった。

あの萃香が珍しく暗くなっていた。

 

一方通行「……俺が、離れてく?」

 

別に離れて行こうとしてる自覚はないから質問する。

すると

 

萃香「……んくっ、ふぁー。そうだよ、離れて行ってるじゃん。まあ、最初から近い存在とは思って無いけどさ。それでも一緒に酒を飲んだ仲じゃん?だから少しは近い人だと思っていたら気付いた時には一方通行は前に前に進んで行っていて、私はただこうやってひたすら酒を飲むだけ。鬼だから力はあっても、外のやつらが来ても誰一人守れないで守ってもらってるだけ…………もう、守ってもらうだけは嫌だけど、なにをどうしたら良いのかなんて私には分からないよ」

 

学園都市のやつらに霊夢が拐われた日であった。

その日、萃香は自分の無力さを痛感した。

 

この幻想郷では萃香の実力はかなりのものだ。

だがしかし、それでも一方通行が立っている場所には到底たどり着けない。

 

彼が別次元の存在だと知っていても

自分にだって力と呼ばれるものはある。

ああそうだ、守れる力はあるのだ。

 

だが自分は足手纏いになるから、と

守られてばかりというのがどうしようもなく辛く、悔しいのだ。

 

すると、だった。

 

一方通行「オマエは強くなりてェのか?」

 

萃香「強く?……うん。強くなれるなら強くなりたいよ」

 

一方通行「……そォか。良いぜ、じゃあ俺がオマエを強くしてやる」

 

萃香「えっ?」

 

驚きであった。

軽い感じに言われたが、彼の目は本気だったのだ。

 

一方通行「今、森の中に妖精のガキどものために作られた教室で俺は教師をしてンだけどなァ。まァ俺の気分で開いてるから毎日って訳じゃねェがそこに来ンのなら、オマエが強くなるための手助けをしてやるよ」

 

萃香「まさか……私に子供達に混ざって勉学に励めっていうの?」

 

一方通行「いや、生徒はこれ以上いらねェ。つゥか増えたら困るしウゼェ」

 

萃香「じゃ、じゃあなに?」

 

一方通行「そろそろ探そうかと思ってたンだよ、副担任ってヤツを。どォだ?やってみねェか?」

 

萃香「それをやったら何で強くなれる?」

 

一方通行「ガキどもには手こずっててなァ。そのクソガキどもをオマエが抑えてくれりゃ助かる。で、もしも副担任としてガキどもを抑えてくれンなら、その見返りとして授業が終わったらオマエが強くなるために毎回俺が付き合ってやるよ」

 

萃香「ふ~ん。なるほど……タダではない、か。で、普通授業のその後の特別授業が私の給料ってことで良いのかにゃー?」

 

一方通行「金が欲しけりゃ渡すぞ?」

 

萃香「ふふっ、いいね。乗った!!」

 

その小さく細い腕が一方通行に伸ばされ。そして

パシンッッ!!!っと二人の手がガッチリ繋がれた。

 

萃香「なんか遠くからでも話ができるスマホ?だっけ。それで私をその森の教室に呼んでよ。先、生?」

 

一方通行「あァ。覚悟しろよ?あのクソガキどもは厄介だぜ」

 

 

今後探す予定であった森の教室の副担任。

それが萃香に決定した。

 

全く、思いがけないことであったが

一方通行からしてみれば万々歳なので。

良かった、である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そして、そして。

その後も一方通行は幻想郷を回り続けた。

 

自分が知る人には全員聞けたし、にとりと紫が待つ場所

地下開発施設へスキマを繋げてそしてそれをくぐり戻った。

 

時刻は夜であった。

昨日は紅魔館で使用人になり、今日は幻想郷を飛び回った。

しンどい…………。

 

飛んでるから疲れないとか、能力使ってるくせに疲れないでしょとかじゃない。

まあ、体力的にも疲れたが精神的にも疲れたのだ。

 

 

へっとへとな一方通行が戻ってきて

 

一方通行「任務完了だ。クソどもォ…………」

 

紫「お帰りなさい。随分疲れた顔をしてるわね、みんなの要望をこの紙に書いたら適当に休んでいいわよ」

 

ぴらっと渡された紙に今まで皆から聞いた事を書く。

そしてこの研究部屋の端にある椅子というか朝ここに自分と一緒に落ちてきた椅子に腰を下ろす。

その時、七連勤疲れのサラリーマンのおっさんか?というぐらい、深い深いため息を吐く。

 

目を瞑り、下を向いていて紫とにとりが何をやってるか分からないが聞こえる声を聞く限り、

もう元になるやつは完成していて、柄や形を変化させれば良いだけらしい。

 

で。

紫とにとりはこの部屋とは違う部屋へ移動した。

 

そして、三十分。

 

ガチャンっ!!

っと扉が開いた。

 

が、一方通行は寝にくいであろう椅子で睡眠していた。

 

にとり「完成したよーっ!って、盟友寝てる!?」

 

紫「あー、あれは音を反射してるから声は届かないでしょうね」

 

二人はそれぞれ大きな大きな箱を持って一方通行の居る部屋に来た。

紫とにとりは手に持っている箱を金属製のテーブルに置く。

で、

器用に椅子で寝る一方通行の前に立った

 

にとり「どうする?っていうか起こせるの?」

 

紫「ここは私に任せなさい☆」

 

なにか策があるのだろうか。

自信ありげな紫は一方通行へ手を伸ばす。

 

ここで一つご報告。

現在、一方通行は音だけを反射してる訳ではない。

有害とあるもの全てを反射している。

 

だからもしも、何も考えなしに彼に触れようものなら…………

ぐりんっ!!っと腕は回転して、下手したら大事な大事な腕が吹き飛んでしまう。

 

 

 

だが?

 

紫「えいっ☆起きて、完成したわよ?」

 

反射は機能せず、紫の人差し指が一方通行の額をつつく。

すると

 

一方通行「……………………あァ?」

 

にとり「お、起きた?」

 

見事一方通行が目覚めた。

で、スマホの完成を伝え金属製のテーブルを三人で囲む。

 

一方通行「あァ……クソ(ねみ)ィ。でェ?そのバカデカイ箱に完成品が入ってンのか?」

 

にとり「そうだよ。そしてこれが盟友のっ!」

 

ゴソゴソっと箱の中を探し、にとりがひとつのものを取り出す。

それの形は小学生、中学生、高校生、大学生、社会人。その他のじっちゃんばあちゃん赤ん坊達でも

現代では絶対に見かけることがあるスマートフォンと全く同じであった。

 

だが

にとりから渡されたスマートフォンは

 

一方通行「おい………この柄」

 

紫「貴方が前に着てた服と同じよ。気に入った?」

 

前に着ていた夏服と全く同じ柄であった。

 

一方通行「……俺は柄はどうでも良い。そう言っただろ?」

 

まあ、他のと区別は簡単だし良しとしよう。

スマホをポケットにしまった後

 

一方通行「完成したのは良いが、それ全部どうやって配るンだァ?始めに言っておくが俺はパスだかンな」

 

紫「大丈夫大丈夫、安心して。夜中に皆の枕元に私が置くわ。サンタさんみたいでしょ?」

 

にとり「ふぇー……あー。仕事したっ!!」

 

一方通行も大変であったが忘れてはいけない。

紫とにとりもちゃんと仕事をしていたのだ。

それで金属製のテーブルに椅子を持ってきて三人は座る。

 

にとり「ホントにホントに疲れたぁ。明日は休もー」

 

紫「お疲れ様にとり。あ、そうだ一方通行。このもう一つの箱があるでしょ?この中にあるやつは今後、貴方がスマホを渡しても大丈夫って人がいたら渡して良いわよ」

 

一方通行「だったら俺の家に送ってくれ」

 

紫「……ほいっ、と。じゃあ少しここで休憩したら私と一方通行は自分の家に帰りましょうか」

 

一方通行「俺ァこの椅子で良いから今すぐ寝てェンだが………」

 

紫「ダメに決まってるでしょ?ここ一応女の子の家よ」

 

にとり「………………別に私は構わないけど」

 

なんか最後小声でとんでもないことが聞こえたが、触れないことにしよう。

そして、だった。

ある疑問を感じた一方通行は

 

一方通行「そォいやスマホの充電はどォすンだ?充電器とかねェのかよ?」

 

にとり「安心して。電池は永遠に切れないから」

 

紫「無限の電池が搭載されてるのよ、それ」

 

一方通行「マジかよ。無限の電池なンて学園都市の野郎どもが知ったら大発狂だな」

 

河童の技術と大妖怪様の豊富な知識により、我々が夢見る永遠に電池が切れないスマートフォンが完成していた。

メールと通信しか出来ないが元々携帯とはそういうもの。

ゲームアプリやネット検索などは、携帯というよりはパソコンに必要な機能なのだ。

が、スマートフォンはほとんどパソコンに近いし大声では否定できないのが難しいところ。

 

紫「…………これで。これがあれば少しは被害が抑えられるかしら」

 

一方通行「…………やっぱりな。オマエ自分を責めてるなァ?」

 

紫「当然よ。だって私の…………私のせいでっ」

 

一方通行「オマエ一人じゃねェだろォが。俺とオマエだ。俺達二人が幻想郷を一度ぶっ壊した元凶だ。ナニ一人で背負おうとしてやがる」

 

紫「良いじゃない、私一人で背負わせてよ。それに貴方は関係ないでしょ?」

 

にとり「…………ねえ。なに、言ってるの?」

 

紫「……………………………いつか。いつか言うつもりだったし貴方は私を信じてくれたから話すわ。幻想郷が何故、学園都市という場所から狙われたかを」

 

今日、話すつもりだった。

分かっている、大妖怪と呼ばれ藍や橙以外誰にも信用されていないことを。

しかしこの河童は、にとりは信用してくれたのだ。

だから話そう。

 

罵られても良い、無数の刃物で刺されても良い。

ただ優しいこの子には隠し事なんてしたくない。

 

紫「学園都市って知ってるでしょ。それが私達の敵よ。それでね、なんで外のヤツらにこの世界が襲われたというと、この幻想郷は二種の結界が張られていてその一つが外部の世界には認識出来ない機能があるの。けど私がこの幻想郷と学園都市の世界を繋げてしまって、そして__________」

 

____________始まった。

あちらの世界の科学技術により幻想郷の結界の僅かな歪みを見つけ穴を空けられこの世界に『黒い玉』がバラ撒かれ、幻想郷が完全に滅ぶギリギリまで追い詰められた地獄が。

 

もうあの時のことを思い出したくない。

紫だけじゃない、みんな忘れたいのだ。

 

なんで、なんで仲の良い仲間同士で殺し合わなくちゃいけない。

なんで大切な人が幻想郷を破壊する光景を見なくちゃいけない。

 

あの地獄に、だ。大妖怪の紫は涙した。

 

そして恨んだのだ。

アレイスター=クロウリーというたった一人のクソ野郎を

 

紫「____________ごめんなさい。謝っても許されないことをしてしまった…………私が幻想郷と学園都市を繋げてしまったからあちらの世界のやつらにこの世界が認識されてしまい、あのクソ野郎の魔の手が…………」

 

にとり「…………なーんだ。そんなことだったんだ」

 

紫「えっ?」

 

にとり「全然紫のせいでも盟友のせいでもないじゃん。そのクソ野郎ってヤツ?そいつが全部悪いんでしょ?」

 

怒ることもしないでいつも通りのテンションで、いつも通りの表情で言葉を返す。

 

にとり「確かに、幻想郷が学園都市って所に知られちゃったのは紫のせいと言えるけど、さ。悪い事を実行したのは誰?盟友?紫?違うでしょ。クソ野郎、アレイスターだっけ?前に聞いたけど。そいつじゃん」

 

紫「…………、」

 

にとり「私も他の人も、この話を聞いても紫と盟友を恨まないよ。逆に感謝だよ、紫と盟友が出会わなければ私はこんな楽しい日々を過ごせなかった。辛い時もあるよ?けどそれが人生じゃん。泣きたいほど辛い日もあるしとっても幸せな日もある、そして人生とはそう簡単に上手くいくものじゃないから楽しいと感じる。と、私はそう思うよ?」

 

紫「ふっ。全く、お人好しなんだから」

 

にとり「それはお互い様っ!!」

 

にっ!!っと、とても明るく眩しいにとりの笑顔を見て

 

釣られて笑ってしまい

 

そして

 

どこか。なにか。

 

紫は背負っていた重たいものが、軽くなった

 

__________________そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「さっきのだけど。一方通行に出会えたから良かったって言わなかったけど良かったの?もしも言っていたら他の子より一歩リード出来たかもよ?」

 

にとり「紫のそういうところ嫌い…………」

 

一方通行「コソコソなに話してンだ?」

 

「「なんでもな~い」」






うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
長いよー!!前回に引き続き長いよー!!!
さてさてそんなのどうでもいいんで
で、ですね。
新キャラが登場するなか、久しぶりに命蓮寺の子達も出してみました。
この『幻想郷を一方通行に』のストーリーには全然出せないキャラ達なのですが。まぁ、たまにはいっか!!
っという軽い気持ちで出しました。

ですがちゃんとストーリーの裏でも話は進んでるんですよ?
それが今回証明できたと思います。
そして、ここでひと~つ!!

私は命蓮寺のキャラを全然知らないんすよ。
あんな感じで良かったですかね?
分かりませんが、ここではあの子達はあんな風なキャラとなっております。
っというか大体、私は命蓮寺のキャラ達をこの物語りに出すつもり無かったんですよ!!
じゃあなんで出したかって?

私と同じというのは失礼なので
私の書いてる一方通行×東方のクロス小説より何億倍と素晴らしい一方通行×東方のクロス小説を書いてる人の話に影響されて出したんです。

ああ、『ハーレム王』シリーズと言えば分かる方が居ると思います。
それでその、『ハーレム王』シリーズを知ってる人は分かるでしょう。

二章のぬえの話がね!!二章のぬえの話が丸パクりと言っても過言じゃないほど一緒なんですよ!!
ええ、認めますよ。ええ、認めますとも。
パクリました☆

え?パクリはダメだって?
んなもん知ってますよ。もちろんです。
なのに書いたのですよ(確信犯)
しかし、思うのです。
こそこそしてるより、もう堂々とパクったって言った方が良いって!!※なんにも良くない
あ、でも一方通行が使用人になる話はパクリじゃないです。
この同じサイトで自分なんかより遥かに分かりやすくて面白い東方と一方通行のクロス小説で先に書かれてましたが、それが投稿されるもっと前から『あ、一方通行を紅魔館で働かしてみよう。ついでに執事の服を着せよう』って思ってましたから。
ま、でもあちらの方が面白いので私はあちらの作品を皆様にオススメします。
さあ!!こんな駄作は捨てて今すぐあちらへ、ゴー!!


さて、ほとんどの人が居なくなったと思いますが
ここに残っている物好きなお人達。
もう少しこんな私のお話に付き合ってくれると嬉しいです。
じつはこの『幻想郷を一方通行に』という物語りを書いた一つの理由が、私からすれば先輩?と言えば良いのでしょうか。
まあ、その先輩様達が書いた一方通行のクロス小説を読んで「バチクソに面白いッ!!!!」っと感動と元気を貰ったからなのです。
だから今後、もしかしたら有名なクロス作品に似てる部分が多々見られるでしょう。
そういうのが嫌な人や、
私が書いてくものを、ゴミ!!駄作!!クソ!!
っと思ってる方はああいうスゴイお人の所へ行った方がいいですよ!!
まあそう思ってる人はここまで見てないと思いますが………………
多分ここまで見てる人、多くて一人か二人?


それにしても、う~ん。
後書きなのに長文になったなー。
ま、これ以上はウザイだろうし自分自身こんなに文を書いてダルくなったのでここら辺で私は去ります。


このまま進むと霊夢達の雑談コーナーです。
興味のある方だけお進み下さい。
それでは次回またお会いしましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

あ、今回は次回予告なしです。

書くのが面倒くさい…………あ、やべっ!?本音が!?



















博麗神社の縁側にて

魔理沙「なあ一方通行、お前の能力はすごいよな」

一方通行「………なンだよ急に?」

魔理沙「いや~毎回毎回会ったり、お前の能力を間近で見たときにそう思うんだよ。最初はベクトル操作って聞いても頭の上に『?』マークが浮いてたがベクトルというものを知れば知るほど凄さが分かってきてな~」

霊夢「まあ仮に魔理沙がベクトル操作という能力を手に入れても一方通行のように上手く扱えないでしょうけどね」

魔理沙「話に入ってきたと思ったらなんだよその言い方。なんか根拠でもあるってのか?」

霊夢「アンタの発言、性格、戦闘方法。それら全て一言で納めると超が付くほどの脳筋でしょ?そんなヤツがベクトル操作という不器用なバカには扱えない能力を手に入れても、宝の持ち腐れよってやつよ」

魔理沙「脳筋って………、まあ否定はしないけどな!!高火力は正義!!火力なき者に正義無し!!だもんな私は、アハハハハハッ!!!」

霊夢「うわ~……嫌だ嫌だ。ちょっと離れてくれない魔理沙?脳筋が移る……………」

魔理沙「おいおいなんだよその目!!脳筋をバイ菌扱いか!?ダメ巫女さんよぉ!!」

霊夢「なによダメ巫女って。私はちゃんと博麗神社の巫女として仕事してるから、けっしてダメ巫女なんかじゃないわ」

魔理沙「へーへーそうですか、一日中部屋でぐうたらゴロゴロするのが巫女の仕事なんだ。じゃあ毎日参道とかこまめに掃除してる早苗がダメ巫女なのか、そ~なのか~。へ~……へー!!へーッ!?」

霊夢「うるっさいわね!!脳筋バカで頭の中空っぽのくせに!!」

魔理沙「痛いところ突かれたらキレやがって、あーあーダメダメニート巫女は器が小さいな~」

霊夢「うがぁぁぁぁぁあああああああッッ!!もうキレたブチギレた!!表でろ魔理沙ァ!!弾幕ごっこでスクラップにしてやるわ!!!」

魔理沙「いいぜ上等だ!!返り討ちにあってミンチになんのはお前だからなぁ!!あぁ!?」



紫「…………ねぇ、貴方の口の悪さが移ってんだけど。やめてくれる?昔はあんな攻撃的なこと言う子達じゃなかったのよ」

一方通行「……知るか」



「「はぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああッッッ!!!!」」
























そろそろカウントダウンを始めるか…………
楽しい楽しい侵略までの


逆さの人間がそう呟き、今後始まる"悲劇(計画)"の準備に取り掛かっていた。


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4話

どうもお久しぶりです、ポスターです。

今回は前に頂いたコメントについてお話します。
それは、この作品の中では東方メンバーの能力名にある『程度』を『その程度』しか、みたいな扱いをしています。
しかしコメントで、ですね。
アレはありがたいことに結構長いコメントだったので要約すると
能力名の『程度』って、その程度しか出来ないみたいなことじゃなくね?
です。

ぶっちゃけ、多分そうなんでしょうね。
自分は東方はにわかなので、詳しくは知りませんが多分そうだと思います。
ですが、この作品を読んでる人はご存知だと思いますが東方メンバーの能力、強化されてるんですよね。
それで自分は、能力強化をどうやったら分かりやすくできるのかと考えて「あ、程度を取ったら良いんじゃね?」っと思い、実行しました。

まあ、能力名の程度が取れた所でその能力の威力が上がったり出来る範囲が広がった程度なのでそこまで変化ない、のかな?分からないや。

ま、そんな感じです。
説明下手なのでよく分からないと、言われたら
とりあえず自分のバカ具合を呪いながら土下座します。
そして、一応ここで謝ります。すいません。


あ、あと一つ。
これは結構前に頂いたコメントなんですがね。
第二章の、白玉桜編の話です。

もう今から書き直すの面倒なので、ここで捕捉説明します。
あの話で幽々子は最初はブチキレて一方通行に喧嘩を吹っ掛けたのになんか急に仲直りしてましたよね。
実はアレには話に書かれてない裏話があるんです。

あの、ですね。
実は幽々子は怒ってません。
マジかよ!?って思いました?
でも、そうなんですよ。
でもそれは私の頭の中だったらですよ?

あの時は今より文章力がないから小説としては随分粗末なものでしてね、自分の考えてる事が上手く伝えられなかったんです。
だからここで長くなりますがお話します。

幽々子は紫に一方通行の話を聞いていて、ちょっと彼を試してみただけです。
確かに大事な妖夢は傷付けられましたよ?
でも、殺してないしちゃんと手加減されたと知っていたので怒ってなかったんです。
でも一方通行の力を見たいからって、ちょいと演技したって訳です。

それで一方通行が戦闘中に暴走したのでそれを止めようと、普段通りの優しい幽々子様に戻り、無事にその暴走も止まり。
その後、月光を浴びてカッコ良く映る一方通行の姿に一目惚れしましたと。めでたし、めでたし。
(この作品の幽々子は夜と桜が似合う男性がタイプです)

これがあの話の全てです。
あん時の俺!!このぐらい伝えられるように勉強してから小説書きやがれ!!
ま、今でもあれから全然成長できてないんで何も言えませんがね。ハハッ!!(○ッキー風に)


さて、まだお伝えしたいことがありますがそれは下でします。
まあ、こんなの誰も読んで無いと思いますが
出来たらここも、下で書く話も見てあげてください。
ポスターっていう、ゴミ虫が喜ぶそうです。



絶対、誤字があります。
ですが発見した場合、面倒だったら無視してくれて構いません。
お暇なお方や心優しいお方は出来たらで良いので誤字やそれ以外のミスを見つけたらこんなダメな私に報告してくれると非常に助かります。


この幻想郷にハイテクな端末型携帯、スマートフォンというものがある一部の人達に配られた。

しかし、そのハイテクが理由で渡されてもスマホの使い方が分からない者達が続出。

だから一方通行がパソコン教室ならぬ、スマホ教室を開いた。

幻想郷オリジナルのスマホの機能は通話とメール。

実はそれ以外の機能は存在しているが、今は秘密しておこう。

そして、スマホ教室に話を戻すが

スマホ教室と言ってもみんなを一つの場所に集めて、一方通行が黒板に立ち、生徒は机に座る。

と、いう光景では無い。

 

そう。そうなのだ、そんな必要は無いのだ。

スマホの機能の一つ。

通話機能の出番だ。

 

同時に複数に通話が可能な上にビデオ通話も可能であるスマホを利用してスマホ教室を開いたのだ。

この事からスマホにはカメラ機能がある事が判明する。

 

で、だ。

そんな事は三日前の話である。

 

 

そして、三日も経てばみんなはスマホを自由自在に操っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで今日の分は終わりよ。お手伝いありがとう一方通行」

 

そんな声があった場所は永遠亭の一室、永琳専用の部屋。薬調合室だった。

薬調合室と言っても、魔女が『にっひっひっひ』と不気味に笑って不思議なドクドクと泡がふいて出る鉄鍋を混ぜてるような部屋ではない。

ごく普通の和風な部屋である。

 

そして、今日。

朝早くから永琳の手伝いをしていた最強さんは

 

一方通行「……いや、礼には及ばねェ。こっちも得られるものがあった」

 

前にも手伝いをした事があったがそれでも永琳の手伝いを毎回毎回するたび、得られる知識や技術は多い。

 

永琳「そう?そう言ってもらえると助かるわ。それにしても、もう貴方はこの永遠亭で十分働ける技術を持ってるわね。どう?一緒にここで働かない?」

 

今日の分のバイト代を渡しながらそう言った。

しかし

 

一方通行「断る。俺はここで働くためにオマエの技術を見て盗ンでンじゃねェンだよ」

 

なぜ、彼は永琳の手伝いをするか。

金銭目的でバイト?いいや違う。

永遠亭は人手が足りないから、仕方なく?いいや違う。

 

目的は最初から一つ。

常識的に考えられない永琳の治療技術と不治の病すら容易く治せる薬の調合方法やその薬の材料、

それらを知るためだ。

だから嫌々朝早くから手伝いをしている。

 

しかし、一方通行はこれまででもう永琳から結構なものを得れた。

そのため一人で病院を開けるレベルである。

 

一方通行「さて、じゃあ俺は帰るぜ…………」

 

そして、まだなぜ永琳から薬や治療技術を見て盗んでるのか理由を話さない一方通行は、そう最後に言って永遠亭から出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠亭を出てから、だ。

真っ直ぐ帰らず一方通行は魔法の森でとある植物を採取していた。

 

そのとある植物とは、前に本を読んで知った猛毒のキノコだ。

何故、そんなモノを採取しているか?

理由はその猛毒のキノコの成分は確かに、ありとあらゆる生物の命を奪ってしまう程大変危険。

しかし『毒薬変じて薬になる』と、ことわざがある通り。

そう、その毒キノコの成分を上手く利用すると万能薬を作れるのだ。

それを一方通行は永琳の手伝いをしてプロレベルに成長した技術、紅魔館の大図書館で手に入れた知識、その二つを合わせて彼しか理解し得ない万能薬のレシピを閃いたのだ。

 

と言うことでポンポンと誰も取ることが無い毒キノコを家の倉庫に繋がるスキマに放り込む。

 

そしてある程度の採取したらもう手を止め、自宅に帰ろうと行動する。

 

 

 

家に帰ってる途中の一方通行は魔法の森の中を背中から四つの竜巻を伸ばして飛んでいた。

 

まあ、魔法の森の上を飛んでも良いが森の上を飛ぶのはあまり良くないと言われたのでやめた。

紫の能力を使い、スキマを開いて瞬時に移動。

と、次に考えたがスマホの柄を聞き回れと雑に使われたあの日。

紫から『貴方最近スキマを開きすぎよ』と注意された

だから一方通行はスキマを開くことを最近控えている。

 

そして、だった。

 

魔法の森を後もう少しで抜ける、という時

 

一方通行「……………………、あァ?」

 

一つの建物を見つけた。

それは家と言われればそう見えるが、何かの店のようでもあった。

 

一方通行はその建物が気になりその前に着地。

そしてもう一度その建物を見る。

 

その時だった。その家のような何かの店のような建物に看板があり『香霖堂』と書いてあった。

そして一方通行は前に『黒い玉』を探し回った時の日に霊夢が言ったことを思い出す。

 

霊夢は『黒い玉』を一方通行が来なければ魔法の森の入り口付近にある香霖堂という場所に持っていこうとしていた。らしい。

 

一方通行「そォか、ここが香霖堂なのか」

 

ここが霊夢が『黒い玉』を持って行こうとしてたところ。

なんなのか知らない物を引き取る場所

かもしれない?

 

 

だから一方通行は香霖堂がどんなところなのか調べるためにその建物の中にドアを開いて入る。

 

一方通行「…………、」

 

中に入ったら驚いた。

色々なものが並べてあったのだ。

そうホントに色々だ。

 

しかし、それに驚いた訳じゃない。

その色々な物が並べてあるが、建物の中はぐっちゃぐちゃでごちゃごちゃだったのだ。

こんな場所では落ち着いていられる者は居ないだろう

 

だが、だ。

 

「おやこんな時間から珍しいな。いらっしゃい、そんな売り物はないがゆっくり見ていってくれ」

 

ゴミ屋敷というぐらいではないが、それに近いぐらいぐっちゃぐちゃな室内で椅子に座り読書をしていた一人の"男性"。

 

その"男性"は白髪のショートボブに一本だけくせ毛があり、瞳は金色で眼鏡をかけていて

そして服装は黒と青の左右非対称のツートンカラーをした洋服と和服の特徴を持っている服装で、首には黒いチョーカーを着けていた。

 

すると、だった。

その"男性"は突然の客の顔を見ると

 

(白い髪、白い肌、赤い瞳…………それに肉が全然ついてない細い体。この特徴はまさか…………?)

 

 

この店の常連が言っていた話に出てきた人物の特徴と完全に一致していた客に

 

 

「あの。も、もしかして君は一方通行という人かい?」

 

一方通行「あァそォだが。それになにか問題があるか?」

 

その言葉を聞くとこの店の店主は椅子から腰を上げ

 

「やっぱりそうか!!魔理沙の話に出てくる人物と特徴が似ていたからもしかしたら、と思ったらやっぱり!!」

 

一方通行「あァ?魔理沙ァ?」

 

「ああ。自己紹介が遅れたね。僕は森近霖之助(もりちかりんのすけ)。この香霖堂の店主で霊夢や魔理沙とは昔からの知り合いなんだよ」

 

一方通行「へェ…………」

 

霖之助「いやー、まさか幻想郷の英雄様がこの店に来てくれたとは。嬉しい限りだね」

 

一方通行「俺ァそンな大層なモンじゃねェよ。ただの悪人だ」

 

霖之助「いいや。君がもし、ただの悪人だったらこの幻想郷はとっくに滅んでいるよ。しかし今、幻想郷は普段通りに存在出来ている。この事から君は英雄だと僕は思うね」

 

一方通行「チッ………、ホントにこの世界のヤツらは人の話を聞かねェなくそったれ」

 

なにが英雄だ、なにがヒーローだ。

そう自分の中で吐き捨てる。

 

ああいう超善人で、生暖かい表の世界で生きている

が、全く知らない他人でもその人が苦しんでいるのなら、危険が迫っているのなら腰を上げ意図も簡単に人を救う。

というような漫画やアニメの中に居そうなヒーローや英雄様とは命というものを粗末に扱ってきた自分とは似ても似つかない存在だ。

 

霖之助「…………あ、そう言えば。なぜ君はこの店に来たんだ?何か探し物や僕に修理して欲しい道具でもあるのか?」

 

一方通行「いや、ただ寄ってみただけだ。霊夢が言ってたからどンなところか気になってなァ」

 

霖之助「そうか。まあ、なにか欲しい物が見付かったら言ってくれ、売れる物なら売るよ」

 

一方通行「………………、」

 

そう言われて周りにある物を見るが、値札がある物が殆どなく、最初に言われた通り売り物という売り物が全く無い。

しかし、珍しいものは多々あった。

 

ビンの黒い炭酸水(コーラ)(賞味期限切れ)。

空のペットボトル。

壊れかけの炊飯器。

錆びだらけの剣。

付録がないファッション雑誌。

ボロボロの自転車、などなど……………………

 

ありとあらゆるガラクタが置いてあった。

 

 

が、だった。

ガラクタの中には珍しい道具がちらほら

 

それを能力で解析する。

すると、並べてある道具の正体を知った。

 

ごちゃごちゃに並べてある道具の正体は人里では絶対お目にかかれない冥界の道具

そして魔法の道具や妖怪の道具と、結構な代物だった。

 

冥界の道具とか妖怪の道具とか気になったが一方通行はそれらを買う必要は無い

 

だからこの店に一方通行が金を払い買う物は無い

 

しかし

 

一方通行「…………礼金だ、受け取れ」

 

霖之助「え?」

 

今日の朝、永琳の手伝いをして手に入れた金を全て霖之助の前の机に置いた。

そして

 

一方通行「あと、オマエにこれを渡しておく。使い方は霊夢か魔理沙から聞け」

 

一方通行がスキマを開いてその中に手を伸ばして取り出し霖之助に支払った金の隣に置いた物は幻想郷オリジナルのスマホであった。

が、置いた物の説明をせず背を向け店から出て行こうとしている彼に慌てて霖之助は

 

霖之助「ま、待ってくれ!!全てだ!!全てなにがなんだか分からない!!頼むから一から質問させてくれ!!」

 

一方通行「チッ」

 

混乱の混乱である。

理解不能な事が起きて軽くパニクってる霖之助に答えて足を止めた。

そして

 

霖之助「まず一つだ。君はこの金を渡す時、礼金だと言ったがなんの礼金なんだ?」

 

一方通行「さっきここにある道具を解析し、俺は模倣できるようになった。だからその礼金だ」

 

霖之助「模倣?」

 

一方通行「なンだ、魔理沙から聞いてねェのか。この俺は『ベクトル操作』と『全てを本物に限りなく近く模倣する能力』の二つの能力がある」

 

霖之助「………………………………」

 

なんだそのぼくのかんがえたさいきょうのちからみたいな能力、と言葉が出ない程とんでも無い能力を二つも持つ一方通行に驚愕した。

 

霖之助「そ、そうか、だからさっき八雲紫のチカラを。なるほど。では二つ目の質問だ、この初めて見た物はなんなんだ?」

 

そしてその質問に一方通行は答えた。

 

話を聞き終わった霖之助は驚きを隠せずにいた。

それはそうだろう。

離れたところから話ができるのだこの小さな機械で

 

もしも江戸時代に炊飯器を見せたら

て、考えたら江戸時代の者達がどう反応するか理解できるだろう

そう、

 

想像も出来ないハイテクに顎が外れるぐらい驚愕するのだ。

 

霖之助「…………これは、すごいな。本当にすごい!!こんなすごい物僕は初めて見たよ!!今日からこれは僕の宝物だ!!」

 

操作方法を少し彼から教えてもらいスマホを弄る香霖堂の店主は目をキラキラしていた。

それはまるで、欲しかったおもちゃをプレゼントされた子供のようだった。

 

一方通行「気にいってもらって結構ォ結構ォ。じゃあ俺は今度こそ消えるぜ」

 

霖之助「ああ……もう止めやしないよ。この、すまほ?っというやつをくれてありがとう。大切に扱わせてもらうよ」

 

一方通行「なにか異変があったらオマエにも連絡する。そン時はオマエも少々力を貸せ」

 

霖之助「…………………………それは、無理かな」

 

突然。

『力を貸せ』という言葉を聞いた瞬間、霖之助の表情から明るさが消える。

 

一方通行「あァ?」

 

霖之助「ははっ……情けない話なんだが僕には霊夢達のような戦える力は無いんだ。だから………………無理なんだ」

 

一方通行「………………だったら、自分の出来ることをやれ。何も出来ねェ無能じゃねェンだろ?霊夢や魔理沙が頼りにしてる野郎だ。『僕には何も出来ません』って言って棒立ちなンざ、アイツらの期待を裏切る行為だぞ」

 

そう風に流すように発した言葉は

 

霖之助「僕には…………僕には力は無い。頼りにされったって、期待されたって、僕には特別な力なんてものは無いんだよ………………」

 

 

 

霖之助の胸へ深く突き刺された。

 

 

だが彼は、

 

一方通行は小さく呟かれた言葉に耳を貸すこともせず、背を向けて店から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそして。

香霖堂から出て、家に帰るため里方面へ歩いていた。

 

飛んで行っても良いが、空を飛んだり不思議な力を普通の人間に見せると彼の容姿が一般的な人間とは全然違い妖怪などに間違われるので歩いて帰っているのだ。

 

距離は大分あるが別に時間はあるし、能力のお陰で疲れやしない。

 

森の中程草木が生い茂ってないがポツリポツリ生えている木を通り過ぎている時だった

 

 

一方通行「……………………………………誰だ」

 

ある気配を木の影から感じその方面へ視線を向けて足を止める。

するとだった

 

「あれ?バレちゃった。では大人しく姿を現すとしますか…………」

 

木の影から出てきた人間は眼鏡をかけた少女だった。

その少女はやや癖のついた茶色の髪と、その髪と同じ色の瞳。

そして真っ黒なマントと大きな帽子を被っていて、マジシャン?と思わせるような服装をしていた。

マントの裏地には赤い色のルーン文字が浮かび上がっていて、マジシャンか魔法使いか判断が難しい格好だった。

 

「初めまして、私は宇佐見菫子(うさみすみれこ)。この幻想郷を研究してる東深見高校一年の女子校生、泣く子も黙る本物の超能力者よ」

 

一方通行「…………こいつは驚いた。オマエ外来人かァ」

 

菫子「そうだよ。君と同じでね」

 

一方通行「……………俺になンの用だ?」

 

菫子「…………この幻想郷は本当に変な異変が良く起きる。そしてその異変の中で一つ、今までに無いとんでもないことが起きた。幻想郷の住人が急に無差別に攻撃するという異変、そのせいでこの世界は崩壊ギリギリまで追い込まれた。しかし、その絶対絶命の異変を解決したのは一人の外来人。その者は外来人の癖に誰よりも強く、次々と暴走した者達を薙ぎ倒す。そして、その外来人はその異変以降この幻想郷の最強の座に君臨する」

 

一方通行「…………………………………………」

 

菫子「それが君でしょ。最強の"超能力者"、一方通行」

 

長々と喋り、最後

最強の名を口にした時にその女子高校生は怪しく微笑んだ。

 

そして。

 

菫子「この話は全てが事実である。だからこそ私は疑問に思うの。この幻想郷で最強と言われていたのは紅白の巫女、博麗霊夢。大妖怪八雲紫。その二人のどっちかだった。なのに暴走異変以降は急に現れた外来人、一方通行という自分物の一択」

 

一方通行「……………………つまり、オマエはこの俺が何故最強と言われているのか疑問に思うと?」

 

菫子「あっ、理解出来た?いやー、なんだバカじゃないんだね。良かった良かったー」

 

見下すように、

小馬鹿にするように笑う超能力を有する女子高校生。

 

菫子「なら話が早いや。ねえ、私と同じ外来人で私と同じ超能力者なのに何で君は私と違い最強と言われているの?」

 

一方通行「………………はっ。なにを言うかと思いきやクソ下らねェ事聞きやがって。オマエはそンな下らねェ事を聞くためにこの俺の前に態々出てきたンじゃねェンだろォが。俺がオマエのような小物の本心を見破れねェとでも思ってンのかよ」

 

菫子「……んふふっ……。本当に、本当に話が早くて助かるよ。私が考えてることなんてもうとっくにお見通しって?」

 

一方通行「オマエのような目をしたクズには何度も何度も嫌って程出会ってきた。だからこの俺に無謀に挑ンで来たクズはよォ__________________」

 

『___決まってスクラップにしてきたぜェ?』

裂いたように笑いそう言い放つ。

その瞬間、その刹那、

 

この場の大気が震えた。

 

菫子「へぇ……、話に聞いた通りだ。頭の回転は早く、そして………戦闘時に見せる常軌を逸した狂気と殺気」

 

そして菫子は身構えた。

 

菫子「じゃあ見せてもらうか。最強さんの実力ってヤツを」

 

一方通行「…………それはイイがここは里に近すぎる。ちょいと遠くに移動するぞ」

 

菫子「良いよ、好きな所を選んでよ。私は君の後を付いて行く」

 

一方通行「いいやァ?オマエそのまま立っていろ。俺が優しく運ンでやっからよォ!!」

 

ガッ!!!!

地面を蹴り菫子へ向かって高速移動する。

そしてその移動速度を乗せて菫子の顔面を鷲掴みした。

 

突然のことで反応出来なかった菫子はそのまま一方通行に顔面を掴まれたまま、山の方へ持っていかれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おわァァァァァあああああああああああああああああああああああああッッ!??!?」

 

ブンッッ!!!!

と乱暴に空中で投げ捨てられた。

 

しかし自身の超能力を駆使して宙を浮く。

 

 

一方通行「ここなら関係ねェヤツを巻き込まねェだろ。なァ?」

 

菫子「……………………人の顔を掴んで運ぶのがどこが優しいのよ」

 

一方通行「…………ぶっ飛ばして運ばれねェだけありがたく思えクソガキ」

 

菫子「______ッ!!!」

 

完全に見下している。

完全に遊んでいる、自分で。

 

それが分かった菫子は両手を天へ向けた

すると赤く赤く燃える巨大な炎が出現した。

 

菫子「もう、幕は開かれた。今から戦闘開始だぁぁぁぁッッ!!」

 

赤く燃える巨大な炎を白が特徴の相手へ向かって放つ。

そんなモノを普通の人間が食らえば大火傷では済まない

全身が炎に包まれ肉は焼け、血は一滴も残さず蒸発してしまう

 

しかし、しかし、しかし。

 

一方通行「………………ほォ、発火能力(パイロキネシス)か。浮いてるのチカラは念動能力(サイコキネシス)。オマエ多重能力者(デュアルスキル)か」

 

彼は普通の人間ではない。

 

人間の肉体を持ちながらも妖怪も悪魔も神もこの世の全ての存在を超越した

 

誰も到達することが出来なかった領域に君臨する怪物であり神である

一方通行(アクセラレータ)という最強の唯一無二の存在なのだ。

 

そして片手で巨大な炎を打ち消した彼は言う

 

一方通行「威力は相当なモンだ。もし学園都市でオマエのレベルを測ったら確実に超能力者(レベル5)だな。だが………俺の敵じゃあねェ」

 

と。

 

菫子「言ってくれる………。だったらこれはどうだァッ!?」

 

 

突然遥か下にある無数の木が消える。

しかしこの世から消えたのではない

 

菫子の上空へ瞬間移動したのだ

 

一方通行「…………次は空間移動(テレポート)。オマエ多才だなァオイ」

 

そんな呑気に観察してる一方通行へ

 

瞬間移動させた木を鋭く能力で削り、灼熱の炎を纏わせる。

すると燃える無数の巨大な槍が完成する

 

それを超能力者の彼女は絶対に逃げ場を無くすように、一方通行を囲むように勢い良く放つ。

 

巨大な木製槍に纏う炎はその勢いの風で益々大きくなっていった。

気づけば無数の槍に纏う炎は一方通行の周りで円を描いていた

 

しかし、だ。

彼女には悪いが言わせて貰おう

これからどんな工夫をしようが"絶対に"

 

そう"絶対に"白い怪物へ攻撃を届かせることは不可能なのだ

 

それを示すように怪物は見せる

 

一瞬で自分を倒す為に放たれた炎槍を木っ端微塵にフッ飛ばす所を

 

菫子「なっ!?」

 

一方通行「随分面白ェ攻撃だがよ、自然はもっと大切にしろよ?なンてなァ」

 

絶対に当たると思っていた攻撃を呆気なく『反射』されて木っ端微塵に宙に消えたのを見て驚愕する彼女に一方通行は笑ってみせた。

 

一方通行「…………そォいやよォ。オマエ外来人なのになンで幻想郷を研究してンだ?」

 

菫子「そ、そ、そういえば?さっきの攻撃を見てもなんとも思ってないっ!?」

 

一方通行「おォい俺の話聞いてるかァ?」

 

菫子「聞いてるよ………………。この幻想郷を研究している理由ね。そんなの決まってるじゃん、興味があるからだよ。ここにね」

 

一方通行「興味、ねェ?」

 

その時眉を動かしその言葉に反応する。

 

菫子「そう。君もあんでしょこの幻想郷に興味がさ。じゃなきゃこの世界に住む筈が無い。私は寝ている時にしかこの世界に入れないけどそれでも暴いて見せる。幻想郷の秘密をっ!!」

 

グッ!!と胸の前で強く握られた拳を見て彼女の本気度を知る。

だから………だ。

 

だから……、白き怪物は言う

 

一方通行「そいつは立派な心意気だ。だが、だからこそオマエは___________________」

 

________________________今日ここで完膚無きまでボロボロのボロ雑巾にブッ倒さなきゃいけねェ、

 

と。

 

その時の彼の瞳には強い誓いと覚悟があった。

 

初めから思っていたが、彼女の話を聞けば益々しなきゃいけないと思う。

外来人全て、この世界に対する『恐怖』をその心に刻まなくては………………と。

 

一方通行にはそうしなくてはいけない"とある理由"があるのだ

 

そう。だから

 

一方通行「さて……、じゃあ続きをヤルか。そろそろこちらからも仕掛けさせてもらうぜ」

 

菫子「…………やっと見せてくれるのか君の力。私は最初から知っていたよ、私の攻撃を防いでいた力は君の有する能力のほんの一部だとね」

 

一方通行「…………それに気付いても尚ヤル気ってことはオマエ頭が相当悪いな」

 

菫子「その逆ッ!!私は誰よりも頭が良いのよ遥かにねッ!!!」

 

ヒュンッ!!

超能力者の彼女の姿が突如消える。

だが逃げた訳ではない

 

一方通行が言っていた通り菫子はまだまだ彼と戦う気なのだから

 

菫子「これが本物の超能力。サイコキネシスを応用した金縛りだッッ!!」

 

音も無く、ほんの、本当にほんの僅かな時間差で菫子は一方通行の背後に瞬時に移動。

そして全力の念動能力を当てる

 

菫子「これで君は身動きできない。後は私に体を操られて自分で自分を傷付けるがいい!!」

 

一方通行「そォかそォかァ…………オマエは俺が視認できない攻撃は防げないと考え、テレポートで俺の背後と取りそのまま身動きを封じたのか」

 

金縛りとは厄介な攻撃手段だ。

そんなものを受けてしまったら人は動揺や不安の表情を見せるだろう。

しかし、だ。

 

怪物は焦ることもしないで余裕に、

 

だがよォ…………、

と続けて

 

一方通行「その作戦は最初から失敗してるぜ。だって、ほら。俺はこの通り動けるぞ?」

 

背後に居る菫子へ正面を向かせる。

そして首の間接をコキコキ鳴らし腕を自由に動かして見せる

 

 

その光景に

 

 

菫子「そんなバカなッ!?だってだってサイコキネシスを食らっているはず、私に体を支配されてるはずっ!?」

 

驚いている菫子。

だが、だ。

そんは哀れな現役JK(女子高生)

 

一方通行「オイオイ誰が誰を支配だって?俺は誰にも支配されねェよ。だが逆に俺は誰でも支配する事が可能だ。例えばオマエとかを……………、なァッ!!」

 

ガシッ!!とその白く冷たい怪物の手はまた超能力者の少女の顔面を鷲掴みする。

そして

 

一方通行「ホォラァ!!自分で自分を死に導けよォッ!!あはぎゃは、ぎゃははハハはハハはハハハッッ!!!

 

生体電気の流れを操られて彼女の脳にある電気信号送られる。

それは自分の手で自分の首を絞めるというものだ。

 

菫子「っ………………かっ………………て、てれっ………………ポート……ッ!!」

 

一方通行は自分の手で彼女がどんな苦痛に悶える顔を作っているのか見えない。

しかしそんななか、菫子は息が出来ず苦しいが絞り出した力を使い空間移動を試みる。

 

だが、悲しいかな

 

その(こころ)みは最強の手で打ち砕かれた。

 

菫子「………………………そ…………………そ……っ、ん………………なっ!?」

 

一方通行「オマエ、空間移動しようとしたろ?だが俺の能力の前じゃその行動は無と化す。俺の能力は空間移動者(テレポーター)が利用する全ての次元のベクトルすら自在に操作可能だ」

 

菫子「っ………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

一方通行「あン?そろそろ限界か。しょうがねェ離してやるよ」

 

ポイッと宙にまるで生ごみように捨てられた菫子だったが、まだギリギリ意識があったため地面に落ちることはなかった。

 

やっと呼吸が出来て肩で大きく息を吐きそして吸う。

 

そして

 

菫子「べ、くとる。そうか…………そういうことか。お前の能力はベクトルを操る能力!」

 

一方通行「他のヤツらから俺の話をちゃンと聞くンだったなァ。最初の村から出てその世界の何も知らねェレベル1の勇者がラスボスの魔王に勝てるRPGゲームがあるか?」

 

菫子「……………………ベクトルを操る能力。なるほどそんなのは確かに最強だ。でもこの幻想郷にはそんな普通じゃ考えられない能力だらけだ。お前の能力もその一つに過ぎないんだよ!!」

 

ああ確かに向きを操る能力は最強格のチカラだろう。

そうだ。だから一方通行は学園都市約二百三十万人の頂点にある玉座に座っているのだ。

 

しかしそんな事実を知ったとしても菫子は最強に挑むだろう。

彼女は幻想郷で住む白い怪物と同等の世界をひっくり返せる能力を沢山見てきたのだから…………。

 

でも。

彼女が相手にしている怪物はそんな世界をひっくり返せる能力を持つ幻想郷に住む者達の頂点に立つのだ。

 

嗚呼…………。

それに気付けばこれから自分の身に降り注ぐ地獄を体験せずに綺麗な体でいられたのに……………、、、

 

 

 

 

 

菫子は下の山から大きな木や岩を能力で自分の周りのところまで持ち上げる。

 

菫子「一息つく間もない程の連続攻撃、全て防げるか!?避けれるか!?今から試してみなよーッ!!」

 

そしてサイコキネシスを纏い通常の何倍も硬化した木や岩を一方通行へ放つ。

しかしそれで終わらない

 

巨体に燃える球体の形をした炎も岩や木と同じく無数に放つ

 

そしてサイコキネシスで空気を一ヶ所に集める。

するの目に見えない空気玉を完成させる。

 

それを手の平に乗せたまま自分の敵に向いたまま後方へ移動する

 

 

そして、そして、そして。

 

あれだけの攻撃にも一ミリも動かず、その場で宙に立つ一方通行に

 

菫子「これでその身全ての骨がへし折れなぁぁぁあああああああああああああああああっっ!!!!」

 

グンッッッ!!!!!!と空気玉を超能力の力を全て乗せた拳で強く殴りつける。

すると空気玉は空気砲となり一方通行に一直線で飛んでいく

 

もし、そんなモノをマトモに受けると肋骨が全てへし折れるだけで済んだら奇跡と言えるほど壮絶な威力。

 

 

菫子はベクトル操作で全ての攻撃を防げても、その能力で操れないほどの威力の攻撃なら彼の能力を突破する筈と踏んだのだ。

 

 

そして目眩ましの木や岩や炎を凪ぎ払い一発の空気砲が一方通行に直撃したかのように見えた。

 

彼は背後へ吹っ飛び、この勝負は

菫子の勝利で終わる。

 

 

そう思っていたのに

 

全て、

 

全て全て全て全て全て全て全て全ての

 

全ての攻撃を一ミリも動かず自分の能力のおまけ程度の『反射』で防ぐ

 

ああ、そうだ。

 

『反射』なのだ

 

ならば

全て一方通行へ向けられた攻撃は

 

攻撃を放った菫子を襲う。

 

今までは『反射』ではなくベクトル操作でその木や岩や炎にベクトルを向けてその威力で粉砕してた。

 

しかし今回は、何度もしつこいだろうが『反射』

 

 

相手を倒す為に威力を上げた、自分が放った攻撃の数々を有する能力で完璧に防げなかった菫子……………

 

 

彼女の帽子は無くなり服やマントはボロボロに破け、体には火傷やアザそして木の破片が所々刺さり、空気砲は腹部に直撃。

威力は少し抑えれたがそれでも骨の何本が折れてしまった。

そして背後へ吹っ飛んで行く菫子よりも早く、一方通行は彼女が飛んでいく方向の先に移動して後方回転蹴りを繰り出し地面に向かって叩き落とす。

 

 

 

 

まるで空から隕石が落ちてかたのように地面に無様に落ちた菫子はちょっとしたクレーターを作り、その中心にうつ伏せの状態で倒れていた。

 

 

圧倒的な力を見せた怪物はそんな無様に倒れる彼女の近くに着地する。

 

一方通行「………咄嗟に能力で衝撃からその身を守ったか」

 

本来なら空から人間が一方通行に蹴り落とされたのなら、地面に直撃した瞬間クレーターは出来るが、完全に地面の染みになっていただろう。

まあ彼は彼女が自分の身を衝撃から守れると見抜いていたから蹴り落としたのだ

 

一方通行「………………よォ。隕石の気分を味わった感想はどォだ?」

 

ちゃんと彼女の頭に足の爪先を当てる。

そして菫子の体は宙に浮き刺さっていた木の破片は全て抜け、直ぐ様次は仰向けの状態で地面に打ち付けられた。

 

菫子「…………っ、か………………はっ!?」

 

気絶している人間の頬を叩き起こすように

ダウンしたボクサーに氷水をぶっかけて目を覚まさせるように

 

気を失っていた菫子を爪先を頭に当てた瞬間、彼女の生体電気の流れを操り脳に電気ショックを与えた。

 

脳にある程度のショックを与えると記憶を失ったり体に障害が起きてしまうが一方通行の能力はベクトル操作。

力の調整なんて朝飯前なのだ

そんな怪物が考え無しにそんなことはしない

 

気を戻せる程度の電気ショックを受けた菫子は人生で一番最悪な目覚めを今日体験した。

 

菫子「………うっ……………痛っ…

……………!!!……………………ここ、は…………?」

 

まだ朦朧とする意識のなか半開きの目で周りを確認する。

その時だった

 

真っ白な怪物と目と目が合う

 

菫子「……、っ!?……………………くっ!!」

 

立ち上がろうとするが生憎手足は動かない。

今、菫子は呼吸するのと眼球を動かす程度しか出来ない。

そして体はボロボロのボロだ。

彼女の御自慢の本物の超能力とやらは使えない

 

これが手も足も出せなかった敗者の姿である。

 

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………負け……」

 

近くに水の流れる音がする。川があるのだろうか

風が吹いたのだろうか、森が奏でる音が聞こえる

 

ぼー、っと嫌になる良い天気の空を見上げながら菫子はポツリと呟いた。

敗北を認めたのだ。

 

最初から同じ外来人で超能力者だから、お試し程度に挑んでみたが完敗だ。

弾幕を使わず超能力と超能力の正面衝突。

弱い方が押し負け強い方が穿つ。

 

そんな勝負だった。

いいや、あれは勝負と言えるのだろうか?

そう思えてくるほど菫子と一方通行との間に差があった。

 

 

これからどうしようか

元の世界に戻ったらこの傷じゃ満足に学校に登校できない

一、二週間…………いや下手したら一ヶ月か二ヶ月か、または半年か

 

この幻想郷には腕がとびきり良い医者が居るらしいがその医者がどこに居るか知らないから頼れないな

 

そんな事を考えていたらだった。

 

突然右腕に激痛が走った

 

それは戦いで負った傷のせいじゃない

 

 

今、一方通行に強く右腕を踏みつけられからである。

 

菫子「ッ!!!が、あぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああっ!!!」

 

一方通行「なァに燃え尽きて勝手に終わらせてンだよ。あァ?」

 

菫子「…………くっ!!わた、私の負け。もう終わった…………でしょ!?」

 

一方通行「だーかーらーよー!!なに勝手に終わらせてンだって言ってンだよォ!!!」

 

菫子「なっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!!!」

 

ボギッ!!

その鈍い音が何を意味しているか菫子は瞬時に理解した。

右腕の骨は少しヒビが入っているだけだったのに

 

一方通行が足に力を更に入れた瞬間その骨は小枝のように意図も簡単に折れた。

 

菫子「おね、がい…………お願いします、ゆ…………許してぇ………………」

 

一方通行「ユルシテ?なンのことだ?まさか、俺がオマエにキレてるからこンな事ォしてると“勘違い"してンのか?」

 

レンズが割れた眼鏡の上からでも確認できる。

涙を流し恐怖で引きつった表情だった。

 

一方通行「はァー。最初に言っただろォが。俺ァ俺に挑ンできたクズは決まってスクラップにしてきた、ってなァ!」

 

菫子「………………ッ!!」

 

一方通行「その理由を説明してなかったなァ。その理由はよォ、俺の時間をクズの為に割いたからその時間の支払料として暇潰しにクズの体で存分に俺が飽きるまで遊ぶンだよ」

 

赤いその目は見開かれ口角は限界まで裂いて笑っていた。

その笑みに菫子は狂気と恐怖を感じる。

 

一方通行「今後誰かを拷問をするかもしれねェしちょうどイイ。喜べよ!!俺の実験台になれたことをよォ!!」

 

狂ったように笑い菫子の腹部を踏みつける。

そして、その白く細い腕を“実験台"の顔面に伸ばす。

 

一方通行「痛覚も体を動かす時も全ては脳の電気信号だ。そのベクトルを操作するとよォ、どン位の痛みとかも調整する事ができンだぜェ!!今から刃物で刺されたぐらいの痛覚信号をオマエの脳に送ってやるから楽しめよ!!」

 

人の壊し方など

命の奪い方など

 

この世の誰よりも理解している。

あの罪もない子供達が悲劇に遭う町がひた隠ししてきた真っ黒な闇の中で生きることしか出来なかった彼はそうやって誰かを傷付けなきゃ

命を奪わなくては生きて行けなかった

 

自分は人間の皮を被った怪物

恐怖を振り撒く存在なのだ

 

そう大人達は指を差して

自分もそうなろうとしていた………………。

 

 

だからあの町で小さな子供時代から得ていた他者を気付ける方法で

 

この、

 

その目の前の、外来人の少女を更に更に傷付ける。

 

 

 

全身に痛みが走り喉が潰れるぐらいの声で叫ぶ。

その絶叫は普通の女子高生なら絶対にする人生を歩まないはずなのに

不幸にも菫子はその絶叫を上げる。

 

一方通行「くっ、ぎゃはあははハハハハハハハハッ!!!体がホントに刺されたと勘違いして内出血を始めたぜェ!!ダメだよなァ勘違いしたままじゃなァ!!特別サービスだ!!本物の痛覚もちゃンと味わわせてやる。偽物と本物ちゃンと区別つくかァ!?」

 

空いていた手には一本の模倣された抜身(ぬきみ)の日本刀が握られていた。

一方通行はその日本刀を菫子右足に突き刺した

そしてもう一本日本刀を模倣して次は左足に、

っと、その時

 

一方通行「オマエの能力『超能力を操る程度の能力』を使ってやる。もォ楽しくてたまンねェだろォ!!なァ!!楽しいって言えよォ!!!!」

 

あの戦闘のなかである。白い怪物は超能力を操る少女の力を既に解析済みったのだ。

その証拠に左足に突き刺す予定の刃を、菫子の能力を使い発火能力で熱してみせた。

 

一方通行「この熱された刀はオマエを刺した瞬間その傷口を焼いて塞ぐ。っつゥことは、だ。俺が態々血流操作で血を流させねェようにしなくても良いって訳だァ。さァ、熱を纏った刀で刺されるなんて普通の日常生活の中じゃ滅多に体験できねェぜェ!!よォく味わえよォッッ!!」

 

菫子「ゥゥァァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアッッッ!!!!」

 

容赦なく突き刺した焼き刀が菫子の血肉を焼く。

 

そしてもう一本、全く同じように刃を熱した刀で右腕を刺した。

そしてそしてまたもう一本全く同じように刃を熱した刃で次は左腕に笑って刺す。

 

一方通行「貴重なハジメテだぜェ!?こォいう時は笑顔だろォがァッ!!笑ってみせろよ!?ぎゃはハハハッ、あはははハハハハハハッッッ!!!!」

 

菫子「ンンンンンンンーッ、ゥゥゥゥああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」

 

この場では

ゲラゲラ笑い狂う怪物の声

苦痛に悶え泣き叫ぶ少女の声

 

突き刺された刀に纏われたその熱で血肉を焼く音

 

悲しいことにそれだけの残酷度を嫌でも伝える音しかなかった。

そして

 

一方通行「どォだ!?本物の偽物の痛覚を同時に味わってェ!?頭ンなかぐっちゃっぐっちゃで訳わかンねェだろォ!!」

 

固く握られた拳を菫子の顔面を掴む手の上に振り下ろす。

しかし一方通行に痛みはない

ベクトル操作によって本来彼へ来る衝撃は菫子へ向けられた。

そして

 

一瞬で彼女の爪が剥がれ歯が粉々に砕かれる。

しかし、だ

 

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も拳を振り下ろす。

 

もうなにを殴っているのだろうか

 

人の形はしているが、、、

 

微かに呼吸はしているが、、、

 

そのボロボロの布を纏う血肉の塊は意識を完全に失っていた。

それでも打撃を続け、

 

その残虐な行為が終わった時には顔面は跡形もなく変形していた。

 

 

一方通行「………………………………」

 

自分が一人の女子高生をこんな酷い姿にした。

一方通行はその少女を無表情で見る。

 

全身の肌の色はアザの薄紫色と血肉の赤黒い色に変色していて、

目は作り物の人形のように生気が無かった。

ぱっくりと開いている口横からは血が流れていてその口はあるはずの白色はなく、真っ赤に染まっていた。

 

突き刺した模倣された日本刀を消した後、

瀕死状態の菫子を抱きかかえた。

 

 

そして、だった。

 

目の前にスキマを開きその中へ消えていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「……………………」

 

妹紅「むむむ………………」

 

輝夜「………ポーカーフェイスポーカーフェイス。そんなに力んだ顔してると手札がバレるわよ?」

 

あれから時は経ち一方通行は永遠亭の一室

輝夜の部屋で妹紅と輝夜と三人でババ抜きをしていた。

 

 

 

スキマの中に消えたあの後の話である。

ボロボロの菫子を永遠亭に運んだのだ

 

そして一方通行が抱えている酷い姿をした少女を見て驚愕している鈴仙を無視して『患者を連れきた。手当てしろ』と言って床に雑に落とし

『じゃあ俺は適当にここで時間を潰してる、終わったら教えろ』と背を向け永遠亭の中を歩いていった

 

そして輝夜の部屋へたどり着き、その部屋に居た妹紅と三人で今、暇潰しにババ抜きをしているのだ。

 

 

一方通行「………………早く選べよ」

 

妹紅「んー…………これだ!!うわっババだ!!」

 

輝夜「…………だから口にするなって言ってるじゃない。って言うか妹紅、貴方ババ抜き弱すぎ」

 

そんなそんな楽しく遊んでいる三人は

 

一方通行「ン?」

 

妹紅「ん?」

 

輝夜「ん?」

 

ドタドタドタドタドタドタダズサーーッッッ!!!!

っと廊下を走り急ブレーキした音が聞こえた。

 

そしてその次の瞬間

 

バーン!!!と襖を開き

 

 

鈴仙「ウォイ一方通行っ!!言いたいことは沢山あるがとりあえず今から貴方をブン殴るッッ!!死ねぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!」

 

目が紅く光る怒り狂ったウサミミ少女が乱入。

 

妹紅「ウォォォォォォぉおおおっとォっ!?落ち着け鈴仙ちゃん何があったんだ!?」

 

トランプをしてる場合じゃないと慌てて妹紅は鈴仙を止める。

 

鈴仙「何があったってえ!?いろんな事がありまくったんですよこんちくしょう!!良いですか!?そこのクソ野郎は急に現れたと思ったらどこから連れてきた分からない重症患者を『手当てしろ』とほざいてそれ以外は語らないまま私の前から消えやがったんですよ!!その後どれほどお師匠様と私が苦労したことかっ!!」

 

妹紅「そ、そうなのか一方通行?」

 

全力で今にでも一方通行に襲い掛かりそうな鈴仙を抑えながら質問した。

そんな苦労している妹紅と反対に胡座をかいている一方通行は肘を膝について、

 

一方通行「おォ、そいつが言っていることは全部事実だ」

 

輝夜「今日何の用で来たと思ったらそういうことだったの………」

 

鈴仙「問題はそこじゃない!!最大の問題はあの子をあんな酷い姿にしたのは貴方だってことよ一方通行!!私やお師匠様はもう長い間この仕事を続けてきてる。だから傷を見たら分かるのよ『何でこうなった』かって!!貴方とあの子の間になにがあったかなんて知らない!!けど貴方ならあんな酷い姿にさせなくても難なく揉め事は解決出来た筈よ!!なのになんで、なんでなのよ!!!!」

 

一方通行「………………全てアイツの為だ」

 

鈴仙「アイツの為?あの子の為に…………あんな残虐なことを……?」

 

一方通行の言葉に戸惑いがあった。

しかしそれでも怒りに身を任せ暴れようとしていた気持ちは無くなったのだった。

 

それから彼の説明を聞くため鈴仙は床に座る。

 

そして妹紅も腰を下ろしこの部屋に四人全員は座った状態に

 

 

一方通行「…………何故アイツの為にあンなことをしたのか。その訳は、今この幻想郷は極めて危険な状態、いつまた学園都市と戦争が起きてもおかしくねェ。そして俺はその争いにこの幻想郷と無関係なヤツを巻き込みたくねェ。だから俺はアイツを幻想郷から遠ざけるため今幻想郷には恐ろしい怪物が居ると脳裏に焼き付け、二度とここに来たいなンて考えねェように徹底的に苦痛を与え地獄を見せた」

 

鈴仙「確かにあの子は外来人、幻想郷には全く関係ない人間。だけど幻想郷を全然知らない訳じゃない、今幻想郷は危険だと伝えれば力を貸してくれるかも知れない。そうは思わなかったの?」

 

一方通行「そォだな、アイツはどうやら何度も幻想郷に来た経験があるらしい。だが、だとしても俺はあの心底下らねェ争いに絶対ェ外来人は巻き込みたくねェ__________________」

 

________________なンならオマエ達だって

 

口にはしなかったがそう心の中で呟いた。

 

 

この幻想郷と学園都市を創設したアレイスターとの衝突は全て自分が原因だ。

もしも一方通行という人間が生まれてなければ、

もしも自分が超能力なんてものに目覚めなければ

 

この幻想郷は至って普通に回っていたのだ

 

しかしそうはならかった。

普通に世界に生まれたはずのその子供はいつしか神と同等の力を宿し、白い怪物として学園都市の頂点に立つ。

 

八雲紫があの世界にスキマを開かなければ、との考えもあるがそれは違う。

彼女がアレイスターに確認されたきっかけは全て悲しいことに一方通行なのだ

 

それを知っている一方通行は自分のせいで、いつまた関係ない者達が血を流さない為にも

出来るだけ幻想郷に関係ない者達を遠ざけ

出来るだけ自分のせいで起きた異変は全て自分一人で解決しようと決意している。

 

鈴仙「…………はぁー、不器用なんだから。少しはその優しさを器用に扱ってみなさいよ、貴方頭良いんでしょ?」

 

一方通行「チッ。悪りィな、俺は血みどろの選択しかできねェンだ」

 

善人ならば

自分がヒーローならばまた違う選択をしていただろう。

だが自分は悪党だ。

 

どんなに綺麗に事態を収束させようと努力しても結局血と涙が溢れる結末を迎えてしまう

 

でも自分が悪党だとしても

クソったれのエンドしか迎えられないとしても

 

絶対最後の最後には掴んでみせる

 

クソったれのハッピーエンド、ってヤツを。

 

 

一方通行は『傷が完治したら霊夢にアイツを元の世界に返してもらえるように俺の代わりに頼ンでくれ』

そう伝えて永遠亭を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、これからも自身のそのボロボロに崩れた手を真っ赤な血に染めよう

 

これからも罪を重ね続けよう

 

 

それが一方通行という怪物のこの世に対する戦いであり生き方なのだから………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも気付いてくれ………、、、

 

 

それで君は人を救えても、君自身は救われていないということを。

 

 

 






はい、今回はここで終わりです。

さあ、いきなりですが上で書けなかった事のお話です。
まず一つ!!

前回で霊夢の雑談コーナー終了です。
まあ、あれは元々自分の書きたい小話を書いていただけなので別にこうやって話すことでもないと思いますが一応ね、一応お伝えさせて頂きます。

あ、終了って本当に終了です。
もう二度と霊夢の雑談コーナーを書きません。
霊夢、すまねえ☆

なんでかは、二つ目の話が理由です。

それは次回で四章の日常編がやっと終わります。
そして、やっと四章のストーリーが始まります。

するとですね、四章のストーリーはすごいシリアスなのでこの下でふざけてるとなんだか、温度差がすごいので霊夢の雑談コーナーを思いきって完全終了させました。


はあ、あと次回で自分がこうやって話すのが最後になります。
ちゃんと真面目に話を書きたいのでね。

ではでは、次回。
第四章、日常編ラスト!!
お楽しみに~!!


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5話

どうも、ポスターです。

今回で第四章・日常編、ラストになります。

では、どうぞ!!



絶対、誤字があります。
ですが発見した場合、面倒だったら無視してくれて構いません。
お暇なお方や心優しいお方は出来たらで良いので誤字やそれ以外のミスを見つけたらこんなダメな私に報告してくれると非常に助かります。


一方通行は今日は朝から森の教室で授業だ。

 

そして妖精の子供達が集う森の教室では?

 

一方通行「よォし、これで今日の授業は終了だ」

 

スマホを配ったお陰で連絡が取れるようになり、妖精の子供達を集めやすくなった。

前まではこの森の教室に子供達を集める方法は空へ向かって空気を圧縮して作った高電離気体(プラズマ)を放ちその光と音で子供達を集めていた。

 

しかしそんな面倒なこともしないで、現代のハイテクを利用できる世界に変化しつつある幻想郷のその小さな森の教室の全授業が終わった。

 

ここは元々一方通行の気紛れで開き気紛れで終わらせる。

今日は副担任に就任した授業中でも堂々とマイ酒をかっ食らう萃香の紹介が目的だっため午前で終わる。

 

チルノ「よっしー、終わった終わった。じゃあ勝負だ一方通行!!」

 

大妖精「止めなよチルノちゃん。何度も挑戦するその精神の強さは凄いと思うけど、全て負けで終わってるじゃん」

 

ルーミア「そーなのかー…………」

 

いつもの仲良し三人の少女。

それとプラス二人の少女

 

リグル「良いじゃん良いじゃん。あの勝負を見なきゃ授業が終わったって思えなくなってきたし…………」

 

ミスティア「あ、それは私もー」

 

一方通行「チッ……………………」

 

このクソガキども………………

 

そう心の中で吐き捨てた。

大妖精は唯一の優等生だがその他の生徒は問題児である

 

一方通行「オイ、チルノの相手を頼む萃香」

 

萃香「うん任された」

 

やる気満々のチルノの前に立ちはだかったのは今日からこの森の教室の副担任に就任した鬼の少女の姿をした萃香だった。

 

チルノ「一方通行の前にお前か。良いよ秒であたいの力で土の一部にしてやるっ!!」

 

萃香「悪いけどお子様じゃ私に、指一本触れること出来ないよ?」

 

チルノ「言ったなーっ!!」

 

ッッズバンッ!!!

 

この小さな森の教室で鬼と氷の妖精が力と力を衝突させた。

 

…………しかし?

 

チルノ「キュー……………………っ」

 

萃香「片付いたよー」

 

チルノは秒で倒された。

その光景を見た問題児達は『ヒエッ』と声を上げる。

 

一方通行「ご苦労。今日は午前で終わったが今後は午後まで授業がある日もある。そン時はヨロシクな」

 

萃香「良いよ良いよー、授業がある日はいつでもスマホで呼んでよ。何だかんだこの仕事楽しいし、それにこの後の私だけのお楽しみ特別授業があるし…………ねっ♪」

 

そう一方通行へ頬を染めて微笑む。

 

だがであった

 

その『特別授業』という単語を聞いた生徒達は

 

ミスティア「なになに特別授業って!?聞いてないんだけど!!」

 

リグル「先生それは(まこと)ですか!?」

 

大妖精「先生達だけなんてお楽しみなんてずるいです。私たちも…………その…………うぅ……」

 

ルーミア「……………私も特別授業したいー」

 

一方通行「オイ何だ急に?俺に纏わり付くな!!」

 

気絶した地に倒れるチルノの以外の生徒が一方通行の周りを囲み彼の腕や服を掴む。

が、しかし

 

チルノ「特別授業だと?あたいも参加するーっ!!」

 

気絶していたと思っていたがどうやら意識があったらしい。

鬼の一撃を頭部に受けたのにピンピンしているとは

 

耐久力は本当に最強なのかも知れない?

 

 

わらわらとチルノも一緒に囲み身動き出来ない先生を助かるためもう一人の年中酔いどれ先生が

 

 

萃香「コラコラー。一方通行が困ってるだろ離れなよ。それに特別授業は私の報酬なんだよ、だからゴメンだけど皆は参加出来ないの。まあこっから先は大人の授業だからお子様が参加するにはまだ早いかな?」

 

白い先生から生徒を振り払いそして一方通行の腕を抱き締める

 

それはこれからは一方通行は自分一人のモノと見せびらかしてるように見えた

 

リグル「大人だってお子様だって関係ない、私だって私達だって先生のことを!!」

 

ミスティア「そ、そうよそうよ!!!!」

 

大妖精「なんか勢いでとんでもないこと口走ってるけど……………………でも私だって…………」

 

ルーミア「うー!うー!うーーーっ!!」

 

チルノ「一方通行はあたいのししょーだ、だから一方通行はあたいのだー!!」

 

萃香「ほー……これは驚いた、こんな所にもライバルが。でも悪いけど私はどんな勝負でも負けないよ?」

 

一方通行「………………チッ、俺の周りで暴れるなよオマエらァ」

 

 

深いため息を吐く。

一人副担任が増えただけで更に更に賑やかになった森の教室。

 

しかしそこはある激戦区なってしまっていた。

 

ああ、君は罪なお方だな…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから揉めに揉めたがなんとか収まり

一方通行と萃香の二人っきりの特別授業が始まる。

 

所変わってここは山の中である。

 

ここなら少し暴れた程度じゃ地形は変化しないし、丁度良い場所だ。

 

 

 

一方通行「……………………さて、報酬の時間だ」

 

萃香「待ってましたー!!私がこれ以上の強さを手に入れる手伝いヨロシク!!」

 

距離を取って向かい合う両者。

その光景はまるで今から組手をする格闘家のようであった。

 

萃香「……………………………………で?なにするの?」

 

前に約束をしてくれて更なる強さの高見に昇らせてやる

そう言ってくれたが具体的なにをするのか不明であった。

萃香は幻想郷の中でも結構な実力者

今の力でどんな敵とでも互角または圧倒していた

 

しかしそんな時はとうに通り過ぎ、今の力では互角に戦えるか疑問に思うレベルと彼女自身考えている。

 

一方通行「オマエは単純な力で言ったらそれ以上はレベルアップしねェしそうする必要がねェ。萃香の能力も研究すればチルノのように新たなる可能性を発見して強く成長できるかもしれねェがそれよりも前にやる事がある」

 

萃香「ん………?」

 

『修行かも』と思った萃香。

マイ瓢箪は近場の木の影に置いて来たし問題ない。

 

 

一方通行は続けて

 

 

一方通行「オマエは間違いなく強者だ。しかしオマエには一つ強者に必要不可欠なモノを失っている」

 

萃香「それ…………は?」

 

一方通行「"自信"だ。自分の力を信じ、誰が相手でも自分の力で勝利を必ず掴める。オマエはそンな自信を失っている」

 

萃香「………………、」

 

一方通行「自信を失ったのは俺のせいだろ?俺がオマエを………………オマエ達を頼らねェで勝手にひとりで解決しようとしたあの事件以降。オマエは、目の前にある戦いに自分は力不足と思うようになっちまった」

 

萃香「……………そう、だな。そうだよ、あの日私は自分の無力感を強く憎んだ。霊夢が酷い目に合ったと聞かされてもあの時、私は何も出来なかったっ!!何をすれば良いか分からなかったっ!!」

 

 

そこは俺のせいしろよ…………

舌打ちをして誰にも聞こえない聞こえる筈がない、心の中でそう呟く。

 

一方通行「…………………自信ってのはすぐに取り戻せるものじゃねェ。薄っぺらい言葉を並べて『ハイ、自信持って』なンて言われて、そンなので自信を取り戻せるヤツなンて最初から自信は失っていねェ。本当に自信を失ったヤツってのは自分の全てを呪い、目の前が真っ黒な闇しか広がってねェ世界を虚無感に襲われながらもただただ歩み続けるしか出来ねェヤツだ」

 

だから、と

 

一方通行「………………自信を取り戻すのは時間が掛かる。だがな、オマエの場合早く自信の取り戻せる方法があるってのは幸運だな」

 

萃香「それは?」

 

一方通行「簡単だ。要は自分の力がどれ程のものなのか再確認すれば良い。その為にはオマエが思う強者と戦えば手っ取り早いって訳だ。居るか?オマエはオマエに強者と思わせた相手は?」

 

その言葉を聞いてだった。

鬼の少女は随分とご機嫌な様子で笑った

そして

 

萃香「うん♪居るよ、私の目の前にッ!!」

 

一方通行「あァ、知ってる」

 

刹那!!

大地が、天が、この山が小刻みに震えた。

強大な力と力の打つかり合い。

その衝撃は世界を震わせる。

 

しかし二人はまだ衝突していない

 

なのにこの世界は震えてしまったのだ

 

一方通行「こちらも全力でいくぜ。俺は伊吹萃香という鬼を一度たりとも見下したことはねェ。俺の『反射』をその拳だけで突破したその戦闘能力。この一方通行(アクセラレータ)が認めてやるよ、オマエは俺が戦ってきた中でトップに入る俺の強敵だッ!!」

 

萃香「私のなかじゃ一方通行が一番の強敵であり、戦って一番楽しい相手だっ!!!だから、全力で。息の根を止めるぐらい出し惜しみ無しで、全力で戦わせてもらうっ!!!」

 

 

 

普段は可愛い少女の伊吹萃香。

しかし、戦闘時にはその鬼の顔を見せる

 

戦いの高揚感、あの胸の高鳴り

 

それだけしか考える事が出来なくなった彼女は戦闘狂のように表情を歪ませる。

 

 

そんなヤツと対しているのは最強の称号を持つ怪物、一方通行。

 

彼は面倒臭がりではあるが、でも戦っている時は違う。

能力をフル活用して相手を捻り潰すあの感覚

 

一発一発、倒すためだけに放つ攻撃の数々

 

その戦闘の中で怪物は思う、『面倒』じゃなく『タノシイ』と。

 

 

 

 

そうこの二人は戦闘狂

 

 

これは戦闘狂と戦闘狂の戦闘だ。

 

 

さあ、もう我慢できない今すぐにでも始めよう

 

 

そして

 

そして

 

そして。

 

二つの強大な力が真っ正面から打つかる。

その衝撃音は幻想郷中に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の戦いは地上だけでは留まらない

 

地を蹴って跳躍したり

 

木を上手く利用して戦ったり、と。

 

周りのもの全て躊躇なく薙ぎ払いながら、地上、空中で見せた激しい攻防。

 

 

しかし、それは既に終わっていた。

 

大きな滝の岩壁の下に倒れた小さな鬼の少女。

その近くに白い怪物が空中から着地する

 

 

空で強烈な一撃を受け岩壁に打ち付けられ力なく倒れた萃香に

 

一方通行「……………………どンな気分だ?」

 

ズボンのポケットに手を突っ込みながらそう質問する。

すると

 

萃香「うわ~!!負けた負けたーっ!!悔しいぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッッ!!!」

 

その傷の数々はまさかメイクか?

そう思わせるほど傷ついた体になんとも思わず岩の地に背をつけて、まるでスーパーで欲しいお菓子を買ってと強請る子供のように手足をバタバタ暴れさせる。

 

そんな萃香にため息一つ吐いて

 

一方通行「チッ………傷を癒す。じっとしてろ」

 

萃香「え…………?あ、う、うん…………………………」

 

優しく抱きかかえられ岩壁に背に座らせられる。

そして自宅に繋がったスキマを開きその中から包帯や薬を取り出す。

 

一方通行「にしてもアレだな。良くこンな小せェ手で、あの威力の攻撃を打てるな」

 

萃香「私を子供扱いしないでよ。こんなんでも立派な大人だよ」

 

一方通行「そンなこと知ってるっつの。ただこうも小さくてやらけェ手なモンで不思議と思っただけだ」

 

萃香「やっぱり~……………………」

 

手当ては続いた。

さっきまでの戦闘の空気は何処に行ったのだろか

 

今は自然の中で水の流れる音に心を落ち着かせ、のんびりと穏やか時間を二人は過ごしていた。

 

萃香「ねえ…………そんなに丁寧に手当てしなくても良いよ?」

 

一方通行「あ?」

 

萃香「私、ほら鬼だし。ある程度の傷は自然に治るし、もし傷跡が残ったって勲章だと思えば___________」

 

一方通行「ふざけるな。嫁入り前の女に傷を残してたまるか。ったく、オマエは鬼の前に女だ。ちっとは自分の体を大事にしやがれ」

 

萃香「は……………………はいぃ」////

 

珍しく敬語なんて使った萃香は頬が染まっていた。

それを見て

 

一方通行「…………熱か?」

 

見える限りの傷に薬を塗り、大事をとって両手には包帯を巻いた。

それが終わり、萃香の顔を見たら赤くなっていて体温を図るため手を彼女の頬に伸ばす。

 

一方通行「脈拍がやけに早いが熱って訳じゃねェな。川が近ェしこの場所は涼しいはず…………どォしてだ?」

 

オイ気付けや鈍感。

 

まあそんな言葉は置いといて、理解が出来てない彼の手を退かし

 

萃香「なんでもっ…………なんでもないっ!!大丈夫大丈夫っ!!」////

 

 

アルコールが抜けて素が出て来そうだ。

酒を飲んで酔っぱらいたい所だが瓢箪は遠くにある

 

どうにかしてこの状態を切り抜けようと試行錯誤してると

 

 

一方通行「チッ、体痛ェ。次は俺自身を回復するか」

 

実は一方通行は先程の戦いに勝利したが無傷とはいかなかった。

反射を力ずくで突破されたのを教訓に反射するタイミングをずらしたりなどしていたが悉く失敗。

最終的には反射なんて最初から無かったように戦い、あの黒い翼を駆使して勝利をもぎ取ったのだ。

 

一方通行「腕、足。所々骨にヒビがいってる。やっぱりオマエは大したヤツだな」

 

萃香「負かされた相手に言われと嫌みに聞こえるー」

 

一方通行「褒めてンだバカ。オマエは本当にスゲェンだぜ?この俺を単純にその身のみで攻撃なンざオマエ以外出来ねェ芸当だ」

 

確かに前、里防衛戦の時に萃香よりパワーがある暴走者と戦った。

しかしソイツと萃香は全然違う。

 

萃香は人間が想像も出来ない程長い年月を生き、その人生の中で多くの戦いにより積み重ねた経験、そして生まれ待った戦闘時に働く勘と鬼としての才能。

ただのパワー自慢のバカとは違う、それらを兼ね備えた彼女は単純なチカラばかと評価するのは愚かなことだ。

 

実際、『反射』のタイミングをズラした時、萃香は戦いを好む鬼の勘と才能が発揮して一方通行の策を打ち砕いてみせた。

 

それは一方通行にとっては結構衝撃的な事だった

だから表情には出てなかったが珍しく動揺して焦ったりした。

 

萃香「でも一方通行の周りの壁を突破するの結構手が痛いよ?」

 

一方通行「痛ェだけで済ンでるだけで十分オマエも怪物だ。普通なら俺を殴ろうとしたその腕が弾けて、クズはその痛みに哀れに転がって泣き叫ぶ」

 

それで?

そう続けて

 

一方通行「自信はどのぐらい取り戻せた?」

 

萃香「…………全然っ。やっぱりどこか前の事を引きずってる」

 

一方通行「そォか。ならまた今度ヤロォぜ?時間はあるンだ、オマエが完全に自信を取り戻せまでずっと俺が付き合ってやるよ」

 

萃香「……………………えっ?ずっと?」

 

一方通行「あァ、不満か?」

 

不満だって?

そんな訳ない。

もし、ずっと彼と手合わせできるのから一生自信を取り戻せなくてもいい。

そのぐらい、だ。

 

そのぐらい嬉しい、一方通行とまたこうやって戦う事がてきるのが。

 

だから、萃香はひょいひょいと手で招く。

近くに座る一方通行は訳が分からないが顔を近付ける

 

すると

 

萃香「…………これが約束の証だよ☆」///

 

 

 

 

 

勇気を振り絞り、可愛い鬼の少女は白い怪物の頬に一つ口付けをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前は終わり午後の時間。

一方通行は人里の中を歩いていた

 

家に帰っている途中なのだ

 

 

そして店の建物が並ぶその道を歩いている時だった

 

急に自分の前に出て、立つ少女の姿が

 

その少女の容姿は

濃い青色の瞳を持ち、髪は緑色で、王冠のようなデザインの帽子に紅白のリボンを着けていた。

服装は上は白い長い袖で濃い青色のどこか気品感じる、下はやはり少女か男性が絶対に着ない黒色のミニスカートでそのスカート下の部分には半分赤半分白のリボンが縫うように通されていた。

 

そして、その少女は片手で握って持てるぐらいのサイズの金色の尖端が三角形のお位牌のような、なにかを意味する黒色の文字が刻まれた薄い板棒で一方通行を差して

 

「ちょうど良いところで出会(でくわ)しましたね。前々から貴方を説教したやりたいと思ってましたが、それはまたの機会にしましょう。今日は私の不真面目な部下が職場からこの里に逃げましてね、その者を探す手伝いをして下さい」

 

頼んでいる癖にやけに大きな態度の少女を一方通行は

 

「………………………………あれっ?」

 

全力で無視するのであった。

 

見向きもされず横を通り過ぎられたその少女は

 

「ちょちょ、ちょっと!!この私を無視なんていい度胸ですね。良いでしょう貴方は地獄行き、地獄行きしてやります!!!」

 

しつこく彼の後ろについて大声て話す

しかしそれも無視だ。

 

聞こえてないのだ、全ての音が

 

余計な音を全て『反射』してる一方通行には全ての声が届かない。

それを知らない態度がデカイ少女は

 

「は、話聞いてますか!?はーなーしーをーきーいーてーまーすーかーっ!?」

 

諦めず何度も何度も大声で声を掛ける。

しかし無視であった

 

「もう聞いてよっ!?聞いて下さいお願いしますぅっ!!ホントに困ってるんです!!うわぁぁぁぁぁぁあああああッッ!!!!」

 

流石にこうも『誰か居る?』ぐらい無視されたのは初めてなので本来の姿がぶっ壊れ、泣き出してしまう。

 

それでも一方通行は気付かなかったが、周りの目を見て自分の方になにか視線が向けられてると感じる。

 

そして周りのヤツらが見るなにかに視線を向けた

 

 

すると地面に膝を付けて泣きじゃくる少女の姿が目に映る。

 

一方通行「…………………………誰だ?」

 

やっと音の反射を解除した。

 

すると

 

「やっと私の存在に気付きましたかバカーッ!!!」

 

 

何故か怒られたのであった。

 

 

 

 

それからその少女の嗚咽も収まり、地に足の裏をつけて涙を手で拭いながら

 

「ひぐっ…………っんぅ。この私に涙を流させるなんて、酷いです。絶対に地獄に落としてやります…………」

 

一方通行「あァ?誰だって聞いただけだが?」

 

「結構前から貴方に話し掛けていたのに無視したでしょぉ!?」

 

一方通行「………………余計な音を反射してて聞こえなかった」

 

「あー……そう言えば貴方の能力はベクトル操作でしたっけ。それで音を反射なんて…………絶対友達居ない人がやりそうなことですね」

 

一方通行「…………オマエ、ナニ?何の用だ?」

 

「やっと自己紹介ができますよ。私は四季映姫(しきえいき)・ヤマザナドゥ、呼び方は四季で結構です。実は私は閻魔なんですがね、その仕事の部下が今日"も"逃げましてそのおバカさんを探すのを手伝って欲しいんです」

 

一方通行「閻魔サマねェ、随分とご立派な御方だァ。だが断る。他ァ当たれクソガキ」

 

映姫「ク、クソ!?私をクソガキ呼び!?ええ確かに貴方は全ての頂点に君臨しているのは存じてますが、それでも歳は私の方が上なのですよ!!そこんとこ御理解してますか!?」

 

一方通行「歳は関係ねェ。その容姿とオマエの中身を見てガキだと言ったンだよ、ク、ソ、ガ、キィ」

 

映姫「貴方失礼をとことん極めてますね。分かりました、私の説教を全部聞き部下を探す手伝いをすると首を縦に振るまでずっとずっと付きまとってやります!!」

 

それからであった。

 

一方通行の後ろを映姫は歩き続けた。

いつかは諦めて何処かいくだろう

 

そう思っていたのにもう気付けば家に前に着いてしまう。

 

映姫「ほー…、ここが貴方のお家ですか。神々の頂点に立つのにこのような普通の一軒家なんて、意外です」

 

一方通行「………………………はァ」

 

このまま、だ。

勢い良く家に入り鍵を閉めたってこの閻魔様はドアを叩き続けるだろう。

 

別にうるさくされても音を反射すれば問題ない。

だがここは里であり住宅街だ。

他の人間の目がある。

 

もしも少女が永遠とドアを叩き続けるのを見られたら間違いなく面倒事になる

 

諦めた

 

諦めさせようとしていた白い怪物は諦めてしまった。

 

ため息と舌打ちのダブル技だった、

 

 

一方通行「チッ………………おい、クソガキ。部下の特徴を教えやがれ」

 

映姫「ふふっ………良いでしょう。頼まれたのならお教えてあげますよ」

 

してやったり!!

 

そんな顔であった。

 

それから閻魔様から逃げ出した不真面目バカの特徴を聞く。

 

その者は性別は女性で容姿は赤い癖のある髪でツインテール、そして髪の色と同色の瞳を持つ。

服装は半袖でロングスカートの着物ようなのを着用しており、腰巻をしている。

そんな服装はこの幻想郷では珍しくない

 

だがその彼女の一番の特徴は、先端部分がぐんにゃり歪んだ大きな刃の鎌を持ってるのだそうだ。

 

一方通行「デケェ鎌ねェ。良くそンなモン持ってンのに逃げ回ってンなァ、そいつ」

 

映姫「先程言いましたが、今日"も"逃げたのです。"も"ですよ。つまり彼女は常習犯なんです」

 

一方通行「クビにしろよ、そのバカ」

 

映姫「えぇ、私もそうしてやりたいですよ。実際、クビにしかけた時もあります。が、あの世の仕事は人手が足りないので、そんなおサボりさんでも雇っていかなくてはいけないんです」

 

一方通行「………あの世って案外忙しいンだなァ」

 

気にも思わなかったが、この世はこの世で忙しいがあの世はあの世で忙しいらしい。

一方通行は映姫の、その仕事疲れからでるその深いため息を見て呟いた。

 

 

 

それから二人はそのおサボりさんを探しに里の中を回る。

 

まずは情報収集だ。

結構特徴があるから、誰にでも目に止まり記憶に残っているかもしれない

 

慣れないがそこら辺の人間達に声を掛ける

 

だがだが?

 

 

声を掛けた瞬間、人間達はそそくさと逃げていった。

 

 

 

一方通行「……………………オイ、オマエを見た瞬間表情変えて逃げてくぞ。オマエなにかアイツらにしたのか?」

 

映姫「いいえ別に?ただ頻繁にこの里に来てありがたいお説教を手当たり次第してるだけです」

 

一方通行「そりゃ血相変えて逃げてくわけだ」

 

映姫は別に悪いことをしてると思っていない。

いやお説教とは元々悪い行為ではない

逆に閻魔様自らこの里に足を運びお説教だなんて、人間からしたらありがたいことだったのだろう。

 

しかし頻繁に、なのだ

 

頻繁にお説教をされれば『またかよ…………』っと思い映姫に声を掛けられたら長いお説教が始まる

そう脳に刻まれた者達は逃げる選択をするのが当たり前なのだ

 

閻魔の少女自身、お説教が好きらしいので少し楽しそうに説教をする。

 

その姿を見た者達は人に不快感を与えるのが好きな悪い神様と勘違いしてしまうものだ。

 

 

 

情報収集は失敗か。っとは、諦めきれない。

里の中だから派手に能力を使えないから、地道におサボりさんを見つけるしかないのだ。

 

だから一方通行はまた次に声を掛ける相手を探している時だった。

 

ある建物を発見する。

 

そこは……………………

 

一方通行「クソガキ。あそこに行くぞ」

 

映姫「ですからクソガキと呼ぶのを止めて下さい。自己紹介の時に言いましたよね、四季と呼んでくださいと」

 

一方通行「チッ…………、四季。あそこに行くぞ」

 

映姫「はいっ、良くできました。それであそことは?」

 

彼が指を差す方向へ視線を向ける。

するとそこはうどん屋さんであった

食事でもと思ったのだろうか

 

映姫「………お腹空いたんですか?」

 

一方通行「そォいや朝から何も食ってねェから、何でも良いから食いモンを腹に入れてェ気分なンだ。つか、ああいう所なら大抵の人は逃げねェし店のヤツには金を払うから情報提供してくれるかもしれねェぞ?」

 

映姫「成る程、それは名案ですね。私も朝から食事してませんでしたし、小町(こまち)を探し歩き回る前にご飯を食べて行きましょうか」

 

そうして二人はうどん屋さんに入った。

睨んだ通り、人は逃げなかった。

 

一方通行と映姫はカウンター前の椅子に座る。

 

そしてかけうどんを二つ頼んだ。

で、そのうどんを待っている時二席離れた場所に座る一人の男性に話を掛ける

 

一方通行「…………食事中少しイイか。今日、デケェ鎌を持った赤髪の女を見かけなかったか?」

 

「鎌を持った赤髪の女?悪いね、見かけてないよ。なんだい?その子を探しているのか?」

 

一方通行「あァ。そォだが見かけてねェならイイ」

 

映姫「ではここら辺に人が多い居酒屋はありますか?」

 

「おわっ、貴方様はっ!?い、いい居酒屋ですかっ………人が多いかは分かりませんが自分の知ってる居酒屋はですね________________________」

 

映姫の姿を見ると慌てて質問に答えていた。

そして全て答え終わると急いでうどんを口に流し込み、

男性は金を払ってこの店から出て行く。

 

映姫「やっと情報ゲットです」

 

一方通行「……………オマエ相当嫌われてるなァ。いや、恐れられてるのか?」

 

映姫「んぅ??」

 

丁度、だった。

ガラガラガラガラッ、バタンッッ!!!と慌てて扉を開かれた雑音で、彼の言っていることが聞こえなかった閻魔の少女は首を傾げる。

その時であった

 

「はいお二人さん。当店御自慢のうどんだよ!!」

 

店主のオッサンが何年も何年も研究して完成されたかけうどんが二人の前に出された。

 

モチモチのうどんの麺に、キラキラ光るつゆ。

そして上にはカリカリと天カスに蒲鉾が二切れ。

細切れのネギが少々。

 

そしてそして?

 

一方通行「あン?オッサン、天ぷらは頼ンでねェぞ?」

 

「サービスサービスゥ☆うちはカップルにはえび天をサービスしてるんだよ」

 

一方通行「カップルじゃねェ………」

 

「ハハハッ!!照れちゃってー、いいねぇ若いねぇ。おじさんにもそんな青い時代があったなぁ………」

 

なんか勝手に勘違いされて勝手に過去の思い出に行ってしまった店主。

全然話を聞かないが、まあえび天を貰えてラッキーって思っておこう。

 

一方通行「チッ…………まァイイ。食うか」

 

映姫「え、えぇ。そうしましょう……………………」

 

そして二人はうどんを食べ始めた。

他の客は一方通行と映姫を店主の話を聞いてカップルと勘違いしてなにか気味悪くニヤニヤして見てくる。

 

だがそんなのを気にしないのが最強の怪物様だ。

しかし閻魔の少女は違うみたいで?

 

映姫(うぅ…………恥ずかしい。絶対私達を勘違いして見てる…………………今日は変な事ばかり起きるなぁ)

 

温かいうどんを食べて体温が上がるが、それとは違う意味でも体が暖かくなっていた。

 

一方通行「…………ズズーッ。…………っン。そうだオッサン、オマエは今日赤髪のデケェ鎌を持った女を見なかったか?」

 

「んー?赤い髪の毛の鎌を持った女性ねー。あー、小町ちゃんか。俺は見ていないが俺の知り合いは一緒に酒を呑んだと言っていたなー」

 

一方通行「その知り合いが居る場所はどこだ?」

 

「南の方にね__________________」

 

まさかまさかであった。

適当に入ったうどん屋で重要な情報を収集した。

 

 

「____________________________って行ったらつくよ。そう言えばさっきのお客さんにも聞いてたね。なんだまたあの子は逃げてるのか」

 

一方通行「あァ、そうらしィ。そして俺はソイツを探す手伝いをさせられてるってことだ」

 

「四季様の彼氏さんだからだろー?」

 

一方通行「だから…………なァ」

 

映姫「もう違うんですッッ!!勝手に決め付けないで下さい!!」

 

「いやー、若い!!若いね!!おじさんあの頃のようにドキドキしちゃう☆」

 

映姫「だーかーらーっ!!違うんですって!!もう、貴方はお説教が必要みたいですね!!良いでしょう。してあげますよありがたーい、お説教をねッ!!」

 

 

いつも賑やかな店主が居るうどん屋は普段以上に外まで大きな声が届いていた。

 

他の客も店主のオッサンも笑い

映姫は全然話を聞かない人達に顔を赤くして怒鳴る

 

そんな光景に一方通行は、

絶対に関わらないようにと、黙々とうどんを食べていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそしてだ。

うどん屋の扉を開き暖簾をくぐり、外に出た。

 

映姫「はぁ………ごちそうさまでした…………」

 

一方通行「おう」

 

食事代は一方通行が全て払った。

飯を奢ってもらって今日はついてる、ピースピースゥッ☆

 

とはならかった四季映姫。

これから変な噂が里に流れたらどうしよう…………

やっぱり一人で探した方が良かったのか…………

 

そんな考えが頭に浮かぶ。

 

 

一方通行「しっかしオマエらは人間の里に居てもなンも言われねェのな。里は人外全てを受け入れてねェと思っていたが……………………」

 

映姫「ああ………そのことでしたら心配なく。私達は他の人達より信頼が里の人間との間にありますから。それに私は閻魔様です、なにかあったら地獄に落とされると思ってぞんざいにされませんよ。そして小町は私の部下ですから、彼女も人間達は上手く接してくれてるみたいです」

 

一方通行「…………………………、」

 

いつか、

 

そうだいつか戻してみせる。

幻想郷を本来の幻想郷の姿に

 

妖怪も人間も神も関係ない。

種族を越えた絆がある幻想郷という世界。

 

 

自分のせいで種族の線を引かれてしまった

 

それを全て消してやる

 

 

あのクソ野郎をぶっ殺し人間達の誤解を解けば

 

絶対に、

絶対に戻るはずだ。

 

 

映姫「さて……行きますよ」

 

一方通行「あァ……さっさとそのバカを探して俺は帰って寝てェ」

 

 

それから二人は里の居酒屋を中心に探し続けた。

小野塚小町(おのづかこまち)は人当たりが良く、酒が好きらしい。

だから里に多くの飲み仲間が居るらしく、大体昼間からでも居酒屋に居るらしい

 

だが、だった。

何件目かの居酒屋の扉を開き質問する

 

「あー、あの子ねぇ。なんだか急に用があるって出て行っちゃったよ。もっと話したかったんだけどねー」

 

一方通行「クソ……………またか」

 

映姫「また一歩遅れましたね」

 

昼間から酔っぱらってるオッサンに聞いたが、やはり" また"だ。

 

 

どうやら子町は此方の動きを知っているらしい。

じゃなきゃおかしい。

 

毎回毎回酔っぱらいに聞くたび言うのだ『今さっき出ていった』と。

 

一方通行と映姫はその居酒屋を後にする。

そしてまた次の居酒屋へと歩き始めた

 

 

 

映姫「うーんこのままだと鼬ごっこですね。そろそろ決着をつけなくては………………」

 

一方通行「……………………」

 

映姫「…………私の話聞いてますか?全く大体貴方はですね_________________」

 

それからである。

映姫の話は小町から一方通行の話になっていた。

 

そしてそしてそれはお説教となっていたのだ。

 

ペラペラその口からは淡々とお言葉が出るに出る。

 

映姫「_____________言動は荒いし、目付きが悪すぎます。それになんですかあの普通の家は。貴方は神々の頂点、私の上に立たれる方なのですよ?もっと立派なところに住んで下さい。私達が恥を掻くじゃないですか。貴方は凄い偉大な神を越えた存在なのです、神社や神殿を建てられ崇め讃えられるのが普通なんですよ。それなのにこの多くの人間が住む里でポツリと生きているなんて。しかも、人間や妖怪にいいように使われ何か思わないんですか?貴方が下に見られれば、一緒に私達の価値も下がるんですよ。それを十分理解できてます?」

 

一方通行「…………………………」

 

映姫「ふぅ、まだまだありますからね。言いたいことは…………………」

 

道を歩くなか通り過ぎる人達は

口うるさくお説教が続き、それをただ聞くことしか出来ないように見える白が特徴の中性的な人物。

その光景を見て顔を顰め、一歩二歩と下がる。

そして可能な限り距離を取り、巻き込まれないようにしていた。

 

 

ざわめき始めた里の住人達を見て

 

映姫「………………………………知ってますよ、私だって。お説教をされるのが好きな人間なんて居ないことなんて。みーんな私の顔を見たら反射的に逃げて行くんです。そりゃそうですよ、当たり前です。貴方もそうでしょう?口うるさい私なんて大っ嫌いですよね。生憎この性格は変えられないし、私はこのまま永遠に嫌われ続けるんです」

 

説教が好きな自分。

しかし説教が嫌いなのが人間。

いや、妖怪も悪魔も、同じ神すらも説教が嫌いだろう。

 

知っているさ、その事実を嫌ってほど。

 

 

誰もだ。

この世で誰も、表情一つ変えずただ黙って話を全部聞いた者は誰も居ない。

 

 

別にストレス発散に当たってるのではない。

 

他者を思い、善意でやっている。

 

それなのに受け入れてくれないなんて………………

 

空回りしてるのか、根本的に間違っているのか

考えてしまうのさ。

 

私がやっていることは黒

 

悪なのかと。

 

 

映姫「…………すいません。小町探しと関係ない話をしてしまいました」

 

反省、反省だ。

いけない、今は頭を使うのはおサボりさん探しにだ。

下らないお説教になんて、使っていられない。

 

しかし

 

一方通行「あン?なンだ、もう終わりか?随分オマエの説教は短いな。こンなンで人は血相変えて逃げてくのか。覚悟を決めてた割には拍子抜けだ」

 

映姫「…………えっ?き、聞いてくれていたのですか?」

 

一方通行「オマエの説教全部聞かなきゃ俺から離れねェンだろ?だったら聞くしかねェだろォが。あンだけしつこく喋ってたのに自分で言ったこと忘れたのか?」

 

映姫「あ………………そうでした」

 

一方通行「チッ、マジで忘れてたのかよ。だったら黙ってりゃ良かったァ。そォしたらバカ見付けたらすぐ帰れたのによォ」

 

失敗したなァ………。

一方通行はいつもの様子でそう呟いてた。

その時、映姫は衝撃を受けていた。

 

だって、だ。だってだって

彼は全部聞いていたのだ口うるさく説教を。

それでしかも、自分ですら忘れた約束を覚えていた。

 

ああ…………………………と、閻魔の少女は悟った。

確かに隣に居る一方通行は言動は荒いし、目付きが悪い。

正義か悪と問われれば悪の側に立っているだろう

 

しかし、じゃあその心に優しさ持っていないのかと問われれば違うと答えれる。

今日、初めて会った自分が一方的にした約束を守る気だし、なんだかんだおサボり部下を探す手伝いにも出来る限り力を尽くしてくれている。

そんな、

 

そんな彼に、だ

 

映姫「貴方は説教されて、不快に思わないんですか?」

 

一方通行「あン?そりゃあウゼェし早く話終われよとか思うぜ。だが説教なンてそンなモンだろォが、いくらそン中に愛情があったってガキも大人もそう思う。もし、説教されるのが好きなヤツがいるとしたらソイツは、猿轡を咥えてブヒブヒ鳴く根っからのマゾヒストだ」

 

映姫「じゃあ……何故、私の話を聞いてくれるんですか?」

 

一方通行「さっきも言っただろ。全部説教聞かなきゃオマエが俺から離れねェからだって」

 

ため息を吐いて

『その耳は飾りか?それとも記憶が三秒で消える愉快な頭をしているのか?』

そんな顔をしていた。

 

映姫「貴方なら、そんな面倒に付き合わなくでも私から簡単に逃げることができるでしょう?」

 

一方通行「まァな、だが……あれだ。勘違いするなよ、別に俺はマゾじゃねェ。変態と勘違いしたら殺すからな」

 

映姫「…………???」

 

何を言っているのだ。

困惑する映姫に一方通行は頭を掻いて

 

一方通行「チッ……、俺に説教するヤツなンざ居なかったンだよ。だから一度はありがたいお説教ってヤツをされてやって良いかなって思ったンだ。それに、説教するヤツが閻魔サマだ。断るに断れねェだろ……?」

 

閻魔の少女はその言葉を聞いてあっけらかんとした。

間があったが、その後だ。

 

映姫「ンフフフッ…………」

 

一方通行「……くそっ」

 

映姫「………あ、ごめんなさい。別に貴方を笑った訳ではありません。素直な方だな、と。お可愛い方だなと思っただけです」

 

一方通行「それはそれで腹が立つが?」

 

映姫「…………なんだ、なんだ。私はどうやら勘違いをしていたらしいです。貴方は話で聞いたような方じゃないのですね」

 

一方通行「………………オイオイ、閻魔サマ。俺がどンなヤツか見抜けねェのか。だったらその目ン玉取り替えて来い、こンな悪党すら見抜けねェンなら仕事でミスすンぞ」

 

映姫「そうやって、自分を"悪"と言うですね。そうやって自分を責めてるのですね。私は閻魔です、その者の過去に重ねた罪を見抜くのは得意ですし、貴方のその背中に背負う罪は他の者から聞きました。しかしやっぱり話を聞いて実際に貴方に会い、こうやって会話をしてもどうも私は貴方を"悪"とは思えないんです。その逆、正義を強く持つ者だと思うのです」

 

一方通行「ハッ………、この俺に正義ィ?笑えた話だな」

 

映姫「真っ黒な闇のなかで生きていたからこそ、何が悪で何が正しいと誰より理解している。だから貴方は人一倍の正義を持っているのですね」

 

なんて明るい笑顔なのだろうか。

眩しくて、思わず目を瞑ってしまいそうだ。

 

一方通行「話の聞かねェガキだな。チッ、勝手にそう思ってろ。実際は違うがな」

 

 

 

 

どいつもこいつもホントにホントに話の聞かない連中だ。

この俺のどこに正義がある?

どこに優しさがある?

 

血に染めたこの身に

死体の山をいくつも築いたこのくそったれの怪物に、どンな所にあるってンだ。

 

こういう勘違いバカは、いくら最強の超能力者でも手に負えない。

だから諦めるのだ。

それが正しい対処方法だと知っているから。

 

 

しかし、この胸の奥に刺さってる違和感のようなモノはいつになったら抜けるのだろうか。

薬でも能力でも何度寝ても消えない。

 

これは………、なんだろうか?

 

 

 

一方通行は、それと今日もまた葛藤する。

そして今日も"ソレ"に手の打ちようが無いのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれからもおサボリ部下、小町との追いかけっこが続いていた。

 

 

映姫「また、また、またですよ。なんで彼女は仕事をしてる時は脳をフル活用してないのに、こういう下らない逃げてる時には全力を出すのでしょう………。捕まえたら一時間二時間じゃ収まりません、一日二日ぶっ続けで説教してやりますよ。キッヒッヒッヒッヒッ……」

 

 

またもや一足遅れ、居酒屋から出る二つの影。

 

ため息を吐いて、このまま地面に寝転がってギブアップと宣言したらどれ程楽になれるだろうか。

そんな考えが絶対に浮かばない閻魔の少女、四季映姫は捕まえた後の事を想像して極悪人のように笑う。

そんな彼女の隣に居る白が特徴の影は、

 

一方通行「………次の、次だ。あと二手でチェックメイトだ」

 

映姫「え?なんでそんなことが分かるんですか?」

 

一方通行「今までの行動パターンを解析、そして次にどの行動をするか計算した」

 

映姫「そ、そんなことできるんですね貴方は……。もし貴方が死んだら私の右腕として仕事を手伝って欲しいです」

 

一方通行「閻魔サマの仕事の手伝いか。ハッ、死後にそンな大役が待ってると思うと死ぬのが楽しみになっちまうだろォが」

 

ぽん……と、だ。

その細く白い手が四季映姫の帽子を被る頭の上に置かれた。

閻魔の少女はどうしてそんなことをするのか、不思議そうな表情をして彼の顔を見た。

 

そしたら、

 

 

笑っていたのだ。

子供が見せる純粋無垢な笑顔とは程遠い

友に見せる楽しいという感情一つで見せる笑顔と違うが

 

嘘偽りを言ったとは思えない、

確実に楽しみにしてそうな、そんな笑みであった。

 

 

映姫「ぁぅ……………………はうはうぅぅ……っ」/////

 

ぽっ、と。

なにかの導火線に火がつけられ、自分の知らぬもの爆発してしまったのか。

キリッとしていたお堅い少女の顔は緩くなり熱くなって頬が染まる。

 

だが、一方通行はそんな彼女の顔を見ずに

 

 

一方通行「さァて。じゃあこっから先、走り続けるがついて来れるか?」

 

映姫「っ、はいっ!!」

 

元気に敬礼の構えをして答える。

 

一方通行「イイ返事じゃねェか、四季。あっちも能力を使わず逃げてンだ、こっちだって能力を使わねェ。使ってたまるか。この俺に頭脳戦を仕掛けやがって、絶対後悔させてやる。なァ、捕まえたらたっっっっぷりお仕置きしてやろォぜ?」

 

映姫「はい、良いですね。それにしても最初の頃と比べると随分と乗り気ですね?」

 

一方通行「あァ、嫌々習い事をさせられたがそれが趣味になっちまった気分だ」

 

 

さァ、覚悟をしやがれ

 

それがよーいドンの合図となった。

 

そして、

タッ!!タッ!!タッ!!タッ!!タッ!!タッ!!

っと一方通行を先頭に里の中を走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ………はあ……はあ………はあ…………はあ……………はぁ」

 

大きな大きな、とても大きな

もし、その物を人に振り下ろしたのなら、するりと刃が体を通り真っ二つできる大きな鎌を持つ赤髪の女性の姿があった。

彼女は今、上司から逃走中のため走っているのだ。

 

そして、休憩場所である場所につく。

そこは日が出るこの時刻より、日が沈んだ時刻の方がやっていた方が似合うところ、

そんな所だが、ここなら安全なのだ

 

「よォ」

 

「ッ!!」

 

そう、思っていたのに

 

「この俺を出し抜こォだなンて考えた瞬間、オマエは敗北の道に転がり落ちた」

 

「小町、覚悟ーッ!!」

 

 

安全だと踏んだ場所が、この逃走劇の終わりを告げる場所になっていた。

 

 

昼間からでもやっている居酒屋の中から二人の影が出てきた。

片方は白が特徴的な容姿で、悪人ズラをしていた。

片方はこの世で自分以外の顔で一番見た顔であった。

 

 

「ど、どうしてここに……ッ!?」

 

戸惑いの顔を見せたのは前に立つ二人を困らせた張本人、小野塚小町だった。

 

小町「ここなら、ここならまだ………ッ!!_____」

 

一方通行「_______"到着するのに時間がかかる"。だろォ?」

 

小町「ッ!?」

 

ニヤリと笑いながら自分の考えを言い放たれて動揺の顔を見せる。

 

一方通行「オマエはこの場所に自分しか使えねェ最短で行ける道を使い来た。その最短の道とは民家だ。飲み仲間の家を通り道として利用して今までの逃げ回っていた、そうだろ?」

 

小町「何故、それを……?」

 

一方通行「考えればすぐに分かる。俺達が利用する道とオマエが利用する道での到着時間が明らかに違う。まるで敷かれた道をゲームのズル技のように無視してりゃ気付く。だが、だ。オマエは便利な道を使い続けた結果大事なことを見落とした」

 

ぴっ、と小野塚小町へ指を立ててなにかを差す。

その指が差したものは大きな鎌だった。

 

一方通行「オマエはそのデケェ鎌を持っていたせいで、自分が使えねェ細い道は俺達も使わない勝手に思い込み本当のここまでの最短距離を図り間違えた」

 

小町「………そうか。そうだった、あの道を使えばここにあたいより早くつける……ッ!!」

 

一方通行「やっと自分のミスに気付いたか?」

 

小町「でも……、待てよ。あたいが細道を勝手に使えないと思い込んでると気付いてもなんであたいが次に来る場所が分かったんだ?」

 

難しい顔をして質問する彼女に一方通行はため息を吐いて、

 

一方通行「フェイントにフェイントを重ねて自分の次の目的地予測を狂わせようとしても、だ。それをこの俺に何度も通じると図に乗ったことが大きな誤算だったな。俺の頭はオマエ達とは出来が違くてなァ、オマエ程度の三下の行動パターンなンざ数分もありゃあ把握するのは訳ねェぞ?」

 

映姫「ふふん♪どうだ参ったかァッ!?」

 

小町「いや何で四季様がドヤ顔決めてんですか…………。まぁ、参りましたよ。降参です」

 

鎌を持っているため両手でとはいかなかったが、

兵士や騎士が白旗を振るように、

ボクシング中継で見るセコンドがタオルをリングに投げ入れるように、だ。

空いた手を挙げて降参を態度でも示す。

 

その時、ハイタッチの音が聞こえた。

 

映姫「やりました、やりましたよ!!貴方のお陰で予想以上早く小町を捕まえることができました!!」

 

一方通行「そいつァ光栄だ。良かったな四季」

 

映姫「あの………。それで、ですね………」

 

もじもじと顔の前で手を弄りながら、

 

映姫「もし、良ければですね。貴方に、一方通行さんには私は映姫と呼んでほしい………、です」

 

一方通行「構わねェぞ?だったらオマエも俺のことを呼び捨てにしろよ。さンなンて呼ばれると背中が痒くなる」

 

映姫「それは出来ませんっ!!一方通行さんは誰よりも偉大な御方。呼び捨てなんて滅相もないっ!!」

 

一方通行「………どォせそれについて違うだの言ったって無駄、か。チッ」

 

なんだかんだ、だ。

今日この閻魔の少女を多く会話をして彼女がどんな性格なのか理解している。

だから、無駄が嫌いな彼は最初から舌打ちをして否定するのを諦めたのだった。

 

そして、そしてそして?

 

「さァて」

と、 ぐりんと赤い瞳をおサボリさんに向ける。

 

 

一方通行「とりあえずオマエ逮捕な」

 

小町「________へ?」

 

ガチャリと彼の能力で創られた手錠が小町の腕にかけられた。

 

一方通行「あとは紐だな。よォし、これで完成だ」

 

小町「へ?うぇ!?な、ななななななんだいこれはぁぁぁぁぁアアアアアアアアアッッッ!?!?」

 

そして手錠の間の鎖に丈夫な紐の先を結ぶ。

 

で、だ。

その紐を

 

一方通行「ほらよ。こォすればコイツは逃げれねェぞ」

 

映姫「わーっ☆ありがとうございます!!」

 

自分にかけられた手錠に結ばれた紐をニッコニコに笑って掴む映姫に、

 

小町「えぇぇぇえええええええッ!?!?どうしちゃったんですか四季様!?今までの四季様ならこんなあたいの姿を見たら助けてくれたはずなのに!!」

 

映姫「貴方が悪いんです。何度も逃げるから。私だって時には鬼になります」

 

一方通行「あ、コレ鍵。世界に一つしかねェからもしも紛失したらそのバカ一生そのままな」

 

映姫「なにからなにまで………。感謝しかありません」

 

二人はなにかを発散するように悪い顔をして生き生きしていた。

そんな一方通行と四季映姫を見て死神・小野塚小町は恐怖を覚え今までの行いを悔い頬から冷たい滴を垂らすのであった。

 

一方通行「ついでに首輪もつけるか?猿轡でもムチでも何でもあるぜ?」

 

映姫「なんでもですか?悩みますねえ………」

 

小町「変なこと教えないで!!悩まないで!?あたいが悪かった!!大人しく、大人しく帰りますからこれから真面目に仕事するからコレ以上はどうか勘弁して下さいーっ!!!!」

 

まさかこんなことになろうとは考えてもなかった小町は涙を浮かべてドSスイッチ全開の二人に許しを乞う。

 

小町「…………ぐすっ…………ン…………ひぐぅ………あ、たい。あたい今日から良い子になるからぁ………」

 

映姫「言いましたね?私はちゃんと聞きましたよ。もし、嘘吐いたら知ってると思いますが針千本の刑です」

 

小町「はぃ…………ぐすっ」

 

映姫「ん、まっ☆今日はコレは絶対外しませんよッ☆」

 

小町「せめてお手洗いの時とお風呂の時は外してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

 

神様。仏様。閻魔様の四季映姫に大量の涙を流して抱き付く。

そんな小町にどっかの怪物に毒された彼女はまだまだ黒い笑顔であった。

 

 

一方通行「さて。じゃあ、説教も聞いたしバカも探したし。俺は帰るぜ」

 

そう言うとだ。一方通行はスキマを開いて二つのスマートフォンを取り出す。

そしてそれを四季映姫に渡した。

 

一方通行「それの使い方は多分オマエ達の知り合いのどいつかが知ってるから教えてもらえ。俺はもう帰る気力しか残ってねェから今からは教えられねェ」

 

映姫「おお、これが話に聞いたスマホというヤツですか。大変便利の代物をいただき感謝します。ほら、小町も」

 

小町「ありが、とう、ございます……」

 

普段の彼女を知っているのなら今の小町を見たらどのぐらい驚くのだろうか。

一方通行に恐怖心を抱き、一時的に内心幼児化してる彼女は四季映姫の後ろに隠れて小さな声で礼を延べた。

 

一方通行「あァ。あばよ映姫、サボリ魔ァ」

 

映姫「ハイ、私は貴方に今日出会えて良かったです。もしも会えなかったら一生誤解したままでしたからね」

 

一方通行「けっ。俺もオマエに会えて考えが変わったぜ。閻魔サマってのは、思っていたより可愛い女の子なンだってなァ」

 

映姫「んなッッ!?!?」////

 

一方通行「本物を見たこと無い人間が描いた閻魔サマは髭が立派な威厳のあるジジイなンだぜ?俺もそンな野郎だと想像してたが、蓋を開けたらどォだ?まさかのくそ生意気なクソガキでしたってなァ」

 

映姫「ッ~~~~~~!!!!!ちょっといい人って思っていたのに!!やっぱり貴方は酷い人です死んだら地獄に叩き落としてやりますからねーっ!!!!」

 

そんな全力で叫んでやっても一方通行は振り返ることなく、その背中を向けたまま消えていった。

 

ただ、だ。

 

映姫「………………ふふ、もうっ」////

 

もしも、彼が振り返ったのなら四季映姫の微笑んだ姿を目にしていただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一日の終わりは、やはり風呂に限る。

しかも今日も今日とて、疲れた一日であった。

 

幻想郷に来てからは、人々との付き合いが増え周りに学園都市に居たときには想像も出来ない程人が増えた。

こんな生活など自分は縁がないと思っていたが、まあ嫌な気分では無いし

 

このままでもイイか。

いや、このままが良い。

そう思考するほど、満足のいく生活だ。

ただ、この表の光の世界の裏、

どうしようもない闇しか広がらない、くそったれの世界。

その世界の魔の手が何時如何なる時でも、あいつらに向けられる。

だから、その問題を解決すれば

 

真の、

更なる幸福が、真なる平和がこの幻想郷に訪れる。

そうするため、彼は。怪物は。

幻想郷の第一位・最強の超能力者一方通行(アクセラレータ)は戦い続ける。

 

 

だがであった。

そんな彼が一日の疲れを癒すように、家の風呂に浸かってる時だ。

 

 

浴槽の底に人ひとりがすっぽり落ちるぐらいの大きさの"スキマ"が開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バシャーンッッ!!!!

とある場所に存在するとても大きな温泉。

そんな所に一つの白い影が落ちてきた。

 

 

一方通行「__________ふざっけンじゃねェェッッ!!!風呂の時ぐらいゆっくりさせろやァァァァァァッッッ!!!」

 

不格好に湯の中に叩き付けられたが水飛沫を上げて勢い良く立ち上がった。

その時の一方通行は説明するまでもないが、表情は怒りに染まっていた。

 

紫「まあまあ、そう怒らない怒らない。せっかくの温泉よ?楽しくスマイルなさい。それより座ったら?藍が落ち着かない様子だし__________」

 

一方通行「……あ?」

 

こんな事をだ。

何度かされれば自分にふざけた真似をした犯人など嫌でも分かる。

 

最強と言われる怪物を問答無用で知らない温泉に叩き落としやがったのは大妖怪・八雲紫だ。

彼女は湯に浸かっているのだから勿論布一枚纏わない姿であった。

しかし、彼女は湯にプカプカ浮かせた熱燗を乗せたお盆から愛用の扇子を取ってそれを開き怪しく微笑む。

そして紫が目が見てる方向に、だ

 

藍「ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!?!?!!」//////

 

顔も体も全部真っ赤にして片手で大事な部分を隠しもう片手で目を覆う、

 

彼女は八雲藍。

八雲の名がつくように、八雲紫に身内のような存在。

大妖怪様の式神だ。

 

そんな彼女は説明不要だろうがここは風呂、温泉だ。

布など纏ってる訳がない。

そもそも湯にタオルなどをつけるのはマナー違反。

例えここが自分達専用の場所だとしてもやってはならない。

 

一方通行「………………………………………………」

 

すーっ、と。

無言で一方通行は座る。

そして

 

一方通行「どォいうことだ。この状態は…………」

 

紫「何一つ隠さない会話をしたいからこの温泉に貴方を呼んだのよ。裸の付き合いってやつよ、一方通行」

 

一方通行「ふざけた野郎だな、チッ。ただ一つ言わせてもらう。藍は俺がここに来た事に動揺してやがる。そいつに相談もしないで実行しやがったなクソ女。俺ァ泣きたいぐらいオマエにこンな扱いをされても慣れちまったから、面倒だが話に付き合ってやるよ。が、藍の居ねェ場所にしろ。女は特に異性に裸を見られるのが嫌ってのはこの俺でも知ってる」

 

紫「大丈夫よ。この子も大人なんだから。ねー、平気よね藍?」

 

藍「いえ……、あの、むりぃです。恥ずかしくて体が溶けてしまいそうです………っ!!」/////

 

紫「へ、い、き、よ、ね?」

 

藍「紫様ぁ、いじわるしないで下さい!!」/////

 

それは、主からの圧力であった。

頬を赤く染めて自分の尻尾に(くる)まって、体を隠す藍の腕を掴み黒い笑顔の紫。

その光景を見て一方通行は珍しく藍に同情の感情を向けた。

 

紫「さて、じゃ。お酒でも飲みながらゆっくりお喋りしましょ?」

 

藍「橙がのぼせた時に、私も出ればよかった………………」

 

そして、不本意ながら参加させられた藍はできるだけ体をその複数の尻尾で隠して、白い彼の華奢な体を見ないように見ないようにと努力していた。

対する紫はお猪口を手に取り呑気に飲んでいた。

 

一方通行「酒は飲まねェよ。さっさと話を済ませて俺を家に帰らせてくれ」

 

ここはどこだろうか。

上を見れば星星が夜空に輝いてる。

幻想郷のどこか、なのだろうが見慣れない周りの風景。

元々八雲紫はどこに居て、どの場所に住んでるか不明だ。

多分ここは八雲紫が所有する数ある家の一つ、なのかもしれない。

たが、そんなことはどうでも良いと吐き捨てるであろう一方通行はプカプカ浮かしてあるお盆を手で押して返す。

 

紫「はあ……、つれないわね。まあいいわ。私が貴方とお話したいことはね、一方通行。今、貴方はどんなことを考えているのか聞かしてほしいのよ」

 

一方通行「ハッ…………、どォした大妖怪サマ?オマエは俺のことなンか何でも知ってンじゃねェのかよ?」

 

紫「そうよ。けど、貴方自身の口から聞きたいじゃない。本心ってやつを」

 

一方通行「…………………………………チッ」

 

舌打ちを一つ打つ。

それからこの温泉の水面に映る自分の顔を見た。

別にその行動に意味はない。

 

電車に揺られるスーツを着た社会人が、目の前の窓の奥に聳え立つ数々のビルを眺めるように

ワンちゃんの散歩途中に、たまたま視界に入った地面に転がる小枝を見るように、

なんの意味の無い行動なのだ。

だが、その無意識の行動の途中に考えることは可能だ。

 

 

一方通行「俺が考えることなンか下らねェぞ?それでも聞きたいか?」

 

紫「ええ。こんな機会は滅多にないし何でも良いから話てちょうだい」

 

そんな笑みを浮かべることができたのか。

酒が回ってると理由があるかも知れないが八雲紫は普段見せないであろう、やさしく優しく

まるでそれは太陽か、星か

 

そのぐらいの明るい表情で頬を少し染めて微笑んでいた。

 

一方通行「………。次に学園都市が攻めて来た時はどォするか、どうオマエ達の幻想郷を守るか。そればっかりだ。チッ、分かってる。俺のようなどうしようもねェバケモノがこンなことを思ってるなンて似合わねェってことぐらい。だが、それでも俺がそうしたいと思ってンならやるしかねェだろォが。もう自分を殺して、命を奪うなンざしたかねェンだよ」

 

 

過去に大きな過ちを繰り返しても、彼はそれらを全て投げ捨てずに、とても一人じゃ持てない程重いその罪を背負い歩き続ける。

誰かのせいだ、とか

ホントはしたくなかったとか、言ったって。だ。

 

では、誰が過ちを犯したか。

 

それは自分だ。

この一つの体が、命を奪い、罪があっても無くても関係なく多くの人を傷付け続けていた。

 

後ろからのしかかる、どす黒いものから逃げる気はない。

彼は一方通行(アクセラレータ)

最強を手にし、その先の"絶対"にこの世で最も近い存在なのだ。

 

自分が信頼する守るべき者にしか背を預けない。

絶対に、敵という存在には正面しか見せないのだ。

 

 

藍「別に………似合わないとは思いませんよ。悪人だろうが聖人君子だろうが誰にだって大切なものがあります。その大切なものを守る為に行動してるのを笑える者は居ません。でも………、貴方の周りには、貴方の幻想郷には私たちも居るんです。貴方に助けられた私たちはずっと貴方の力になりたいと、次は私達が一方通行さんを守りたいと思っています。だから自分一人で背負わないで。私達にもその荷物を一緒に背負わせて下さい。貴方は、もう一方通行さんは孤独じゃ…………独りじゃないんです」

 

 

温かい、優しく柔らかいその手は白い怪物が罪を重ね続けた手を優しく包んでいた。

 

一方通行は怪物だ。

たった一撃で、小さな行動で勝負を終わらせる能力を持つ。

過去にたった一人で約一万の命を奪ってきた。

 

それを知っていても、

その恐ろしい事実を知っていても藍は彼の手を取る。

 

誰にだって黒い部分はある。

誰にだって消してしまいたい過去がある。

だから、と。彼女は受け入れる。白い彼を、どす黒い過去を持つ怪物を

 

いいや、自分の。幻想郷の主人公(ヒーロー)を。

 

 

一方通行「……………………見えてるぞ?」

 

藍「ん………?_______きゃぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!?!??!!」/////

 

『はぁ~……』と紫のため息が聞こえたが、

八雲藍は体が無意識に動いてしまって自分がどんな姿をしているか忘れて一方通行の正面に居たのだ。

 

が、気付くとだ。

水飛沫を上げて高い声で叫んだ。

 

一方通行「………………………………………おい」

 

藍「えとえと、あのっ…………、すいませんっ!!」////

 

紫「いい加減慣れなさい☆ら~んランッ♪」

 

思いっきり湯を顔面に浴びて少し怒りの表情を見せる一方通行。

それを無視して八雲紫は藍に体重を預けるように抱き付いた。

 

藍「なんですかその子供みたいな呼び方!!普通に藍とお呼びしてほしいです!!」

 

紫「あー、私の式神が可愛いすぎて辛い……………」

 

 

なにをやっているのやら。

ただの戯れを見たくもないのに見せられた一方通行は、舌打ちを打った。

 

 

紫「それにしても。私が言いたいことは全部言われちゃったわ。でも良いわ。貴方に私達の存在を再確認してもらえれば別に」

 

一方通行「…………………………くそったれ」

 

もう御満足したのだろう。

藍から離れていた。

 

そして一口酒を飲んだ後、

 

紫「…………一方通行」

 

一方通行「あン?」

 

紫「この下らない状況が終われば良いわね……」

 

一方通行「あァ、そォだな。早く終わらせるためにも柄にもねェことをするしかねェだろ。特に俺とオマエは、な」

 

紫「…………………………ええ、そうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わりはいつ来るのだろうか。

普通はいつ、戻ってくるのだろうか。

 

 

 

 

大妖怪と怪物は、

全てを元に戻すため今日も頭を動かす。

 

 

 

 

 

 

 

その時どこかに居る逆さの『人間』は不気味に笑った。

 

 

 

そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『絶望』の弾丸の引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

計画名『目覚め(リバース)

 

 

それが今、始動した。

 

 

 

 

 

 

そして幻想郷に『悲劇』が迫る。

 

 

 




次回・第四章、6話。


その日で平和が終わった。
そして、戦いの幕が切って落とされたのであった。





さあ、時間は与えたぞ。
そろそろ、動き始めても良いだろう。

行くぞ、幻想郷。

今まで続いたこの戦いを………………終らせる。


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6話

『絶望』が、

『最悪』が、

ヒシヒシと平和だった幻想郷に迫る。



「さあ、楽しい楽しい"悲劇"を味わうといい幻想郷」


計画(プラン)名"目覚め(リバース)"始動。









絶対、誤字があります。
ですが発見した場合、面倒だったら無視してくれて構いません。
お暇なお方や心優しいお方は出来たらで良いので誤字やそれ以外のミスを見つけたらこんなダメな私に報告してくれると非常に助かります。
それと、もうひとつ。
私の小説を読んでいて『ここはこういう表現の方が良いよ』っと、思ったらできたらで良いので気軽にコメントしてくれると嬉しいです。










空は青く広がり、白い大きな雲は優雅に流れる。

ここは、独自の文化を築いた

 

自然豊かな幻想郷。

 

種族関係なしに、多くの者達が伸び伸び生活できる世界だ。

確かに、異変などが起きるがそれは心配要らない。

異変解決のスペシャリストが居るからだ。

 

 

そして、時刻は9時24分。

朝である。

こんな時間なら、鳥の囀りに耳をすましたり新たな一日の始まりに準備運動したりなど、

色々なことをする者達がいるだろう。

 

しかし、だった。

 

 

霊夢「最ッ低!!!!」

 

軽蔑と怒りが込められたそんな声が博麗神社の中から聞こえた。

 

外見は神社だが、中を覗けば普通の家のような設計の博麗神社のある一室。

そこで博麗霊夢、霧雨魔理沙、一方通行の三人はひとつの机を囲んでいた。

 

霊夢「アンタ絶対忘れなさいよ!!いや、あの事件を忘れたら殺す!!!」

 

魔理沙「言ってることが滅茶苦茶だぜ。でも、ま。霊夢の言ってることは分かるぜ。一方通行、二度と"あんな"事すんなよ?」

 

一方通行「だァから悪かったって言ってンだろォが」

 

 

 

 

何故、こうなってしまったのか。

説明するためにも時を遡ろう。

 

あれは……………………………、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

里の、とある場所にある一人で住むには大きな一軒家。

 

そこに、たった一人で住んで居るのは白色が特徴の幻想郷最強の能力者・一方通行。

彼は突然幻想郷に無理やり飛ばされ、ここでは珍しい幻想郷入りした人物である。

 

ならば、帰ったら良いだろうと思う者も居るだろう。

しかしそれが不可能なのだ。

 

その理由は『呪い』である。

 

白い怪物を幻想郷入りさせた張本人。紅白の巫女・博麗霊夢。

彼女が無意識に掛けてしまった呪いとは幻想郷に彼を縛り付けて一生をかけてこの世界を救わせるという強制的に性格も変えて超善人なヒーローにしてしまうものだった。

 

だが一方通行の有する能力、ベクトル操作に備わっている『自動反射』によりその呪いの一部分は『反射』出来た。

しかし、幻想郷に縛り付けるという呪い効果だけはどうにもできなかったのだ。

 

でも、もしも。その呪いが解けたとしても彼は幻想郷に居続けるだろう。

 

それは…………この世界に魅了されたからだ。

元、居た学園都市からしたらこの世界は『異世界』。

 

この世界に触れることなく、一生を終える人生を歩んだかもしれない。

だが、今の彼はそんな人生を歩むのはゴメンと言うだろうか。

 

幻想郷は、彼女達は、

 

その身を血に染めたどうしようもない怪物を

どんな戦いも一撃で終らせる強大な能力を持つ一方通行を、

 

『そんなのはどうでも良い』と受け入れてくれて、もう見ることは出来ないと思っていた"光"に導いてくれたのだ。

だから、だ。

もしかしたら彼が魅了されたのは、この幻想郷ではなく

 

彼女達………………かもしれない?

まあ、その真実は一方通行自身しか知り得ないことだ。

もしかしたら違うかもしれない。

 

 

 

 

話を戻すが彼は人間の里にある、大きな家に住まう。

そして今の時刻は8時ジャストだ。

 

こんな時間なら若い者は起きてて当然だろうが一方通行は違う。

 

 

吐息を立てて、寝室で敷かれた布団で寝ていたのだ。

だが、であった。

 

両脇になにか、違和感を感じて目を覚ます。

すると、自分のじゃない寝息が左右から聞こえた。

 

それを確認するため、首を左右に動かした。

 

そしたら…………………、、、、

 

一方通行「………………………………は?」

 

 

自分の布団に紅白の巫女・博麗霊夢と、白と黒の魔女・霧雨魔理沙が何故か知らないが入っていて、すやすや寝ていやがった。

 

一方通行「こりゃどォいうことだ?」

 

 

あの最強様ですら頭を悩ます事が起きている。

しかし、理由を聞かなくては話が始まらない。

 

なら、と。

 

布団から出て、二人を起こしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢と魔理沙を起こし、

そして、あれからである。

 

一方通行、霊夢、魔理沙は山の中を歩いていた。

 

一方通行「…………チッ。さっさと終わらせて帰りてェ」

 

霊夢「それは私もよ。こんな朝早く仕事しなきゃいけないなんて。あー、面倒だわ」

 

魔理沙「二人とも、ちゃんとしてくれよな。今から行うのは妖怪退治なんだぜ?一つの油断が命の危険に繋がるぞ」

 

一方通行「しっかしよォ………良くもまァ、人が寝てる間に布団に勝手に入って寝やがったよな。オマエら」

 

ポケットに手を突っ込みながら、心底面倒な表情をしながら横目で彼女達を見る。

 

霊夢「いやー、ホントはアンタを叩き起こして6時ぐらいからこの妖怪退治に行きたかったのよ?でもアンタがあまりにも気持ち良さそうに寝ていたから眠気が移っちゃってね。一緒に寝ちゃったわ」

 

魔理沙「あれは凄いぜ。『誰でも眠くさせる程度の能力』とでも言って良いぐらいだ」

 

ハハハハッ!!!

と口を大きく開いて笑う魔理沙。

その隣の霊夢は『確かにそうね』と言って微笑むのであった。

そんな彼女達に一方通行は舌打ちを一つ打った。

 

 

そして、それから

 

霊夢「……………、そろそろ情報にあった場所に着くわ。お喋りは終わりにして仕事に移るわよ」

 

魔理沙「………ああ。私は空から妖怪達を襲撃する。二人は地上から頼むぜ」

 

一方通行「………お片付けの時間か。さっさと済ませるぞ、まだ朝食も食ってねェンだ」

 

霊夢は、縦長の四角い白い紙に赤い色の漢字が書かれた護符とお祓い棒を片方片方で持って構えた。

そして、魔理沙は片手に持っていた箒に股がり、空を自由に飛翔して、一方通行は地面を強く蹴り気配がする場所へ駆けて行った。

 

 

さあ、

 

さあ、

 

 

里の者を困らせた愚かな妖怪どもよ、粛清の時だ。

 

 

君達は、あの三人から逃れることができるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「……………これで終わりだ」

 

ブシャッ!!!!

っと、白い五本の指で首を掴まれ地面に足を付くことを許されず、一方通行に片手で持ち上げられてる不気味な容姿の妖怪が体の内側から弾けた。

そしてその汚い血肉は周りの自然を汚す。

が、しかし。

白い怪物は白いままであった。

 

 

だが?

 

一方通行「…………あ?」

 

 

仕事が終わり帰ったらコーヒーでも飲もうかと次に考えた瞬間、なにか視線を感じその方向に首を向ける。

するとそこには先程弾けた妖怪の血が体にビッシャリ付着した霊夢と魔理沙が居たのだ。

 

ああ、妖怪の血が赤で良かった。

もしも、妖怪の血の色が白でドロドロとしていたら非常に不味い絵面になっていただろう………………………。

 

 

 

霊夢「オイッ!!このサイコ野郎!!良くもやってくれたわねッ!!前から言ってるでしょ!?血肉爆破は止めてって!!お陰で服が汚れちゃったじゃないどうしてくれるのッ!!!」

 

魔理沙「はあ……………、服が血でベトベトだぜ」

 

一方通行「あァ。オマエら居たのか、悪りィ悪りィ」

 

霊夢「悪いと思ってんなら早くこの血を落としてよ!!アンタの能力ならできるでしょ!!」

 

自分でしてしまったことだが一方通行は舌打ちをして二人の肩に手を乗せる。

そして、ベクトル操作によって服に付いた血を弾く。

 

そう、いくらどんなにしつこい汚れだろうと彼の能力を使えば簡単に汚れは落ちる。

 

が、しかしだった。

 

 

これで一件落着かと思ったら、

 

一方通行「あ」

 

っと、口をパカッと開いていた。

 

その事に霊夢と魔理沙は、なぜ一方通行がそのような顔をしているのか疑問に思ったら次の瞬間、

 

 

一方通行「____________ベクトルの演算ミスった」

 

 

刹那。

 

 

____________バリバリビリビリビリッ!!!!!

と、霊夢と魔理沙が纏っている布全てが木っ端微塵に粉砕した。

 

 

 

「「キャァァァアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!?!?!?」」

 

そして、だ。

突然服が粉々に飛び散った魔理沙と霊夢は大事な部分を隠すように腕で生まれたままの、女性らしい綺麗な肌を露にしている体を出来るだけ隠し、絶叫しながらしゃがみ込む。

その時、二人の顔は真っ赤に染まっていた。

 

一方通行「はァ………。昨日は結局、紫のクソ女に付き合ってあのまま夜遅くまで酒を飲ンだし、今日は昼まで寝てればこの疲れが取れる予定だったンだがなァ。やっぱり、疲れてる状態で能力は使うのは危険だよなァ」

 

ため息を吐いて、一応目を閉じた。

能力、力では神を超越した存在だが彼の体はこれからも人間だ。

だから疲れていれば小さな失敗、大きな失敗はするのだ。

 

 

そんな、大きな失敗をした一方通行に、

 

 

霊夢「良いから私達を神社に帰せぇぇぇえええええええええええええええッッ!!」

 

魔理沙「こっちを見るなよこの変態ッッ!!!!」

 

そして、それから。

一方通行は博麗神社に繋がるスキマを二人の前に開き、無事に建物の中に入れた二人であった。

 

 

その後、一方通行は一人で依頼人から金を受け取りそれを博麗神社に持っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は戻る。

 

 

一方通行「チッ…………」

 

霊夢、魔理沙の服を粉々にしてしまったがここは博麗神社。

霊夢の巫女の服はある。

だが魔理沙の服は無いため、一方通行が能力で彼女の着ていた服を複製した。

勿論、帽子もだ。

 

だが、ここは室内。

白と黒の魔女はその帽子は自分の隣に置いていた。

 

 

霊夢「……………ったく。これ以上文句を言うと止まらなくなるからちゃっちゃと朝食作ってくるわね」

 

そう言って霊夢は立ち上がり、台所へ向かう。

しかしその途中、一方通行の横を通った時だった、

 

一方通行「オイ、霊夢」

 

霊夢「ん?なに?」

 

一方通行「オマエ血の匂いがするぞ。怪我したのか?それともまだクソ妖怪の血が体に付いているのか?」

 

霊夢「え?___________________あっ………………」

 

なんのことだろうか。

そう、思ったが"アレ"の事だと気付いた霊夢は人差し指の先を顎に当てて口を開く。

 

霊夢「あー…………コレは大丈夫な出血よ。気にしないで」

 

一方通行「あン?血が出てンなら大丈夫じゃねェだろ。見せろ、止血してやる」

 

霊夢「えぇっ!?見せる!?嫌よ大丈夫だから!!」///

 

顔を赤くして全力で断っていた。

そんな霊夢の反応を見て、魔理沙は『あー、アレか』と心の中で呟き解ったのだった。

 

一方通行「チッ、しょうがねェな」

 

魔理沙「ちょっと待て一方通行。まさか解析するつもりじゃないだろうな?」

 

一方通行「教えてくンねェなら仕方ねェだろ」

 

魔理沙「大丈夫、ホントに霊夢は大丈夫なんだ。私が保証する。多分、貧血気味になったり急にイライラし始めたりすると大丈夫なんだ。なっ!!」

 

そんな事を言われても一方通行はさっぱり分からなかった。

だから、この幻想郷に来てから目覚めた第二の能力。

『本物に限りなく近く模倣する能力』に備わっている『自動解析』の能力を霊夢に向かって発動する。

 

 

実は、だ。

その『自動解析』の能力はある設定がされているのだ。

それは、能力や物は自動解析するが、人の体は自動解析しないというものだ。

 

これは、一方通行の能力を全て知られた時に彼女達が強くお願いしたのだ。

だって、そうだろう。

 

勝手に体も解析されるなど、一目会っただけで丸裸と同じだ。

しかも、彼女達。相手は女の子である。

勝手に乙女の秘密を解析するなど、許される訳がないのだ。

 

だが、今。一方通行はその設定を外そうとしていた。

やはり、『出血』は見過ごせないのだ。

 

 

 

霊夢「ァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああっ!!!もうッ!!!」

 

霊夢は覚悟を決めて、両手を固く握り床を強く踏んだ。

 

魔理沙「お、オイ。霊夢、まさか……………?」

 

ここからじゃ別に腕を伸ばした所で止められない。

 

が、

 

魔理沙は嫌な予感をしつつ、行く宛てがない手を霊夢の居る方向へ伸ばす。

 

 

 

そして、そしてだった。

 

頭が良いのに分からないヤツに、

今世紀で一番鈍感な彼に、爆発したかのように

 

霊夢「"生理"じゃボケェェェェェええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!!!!」

 

 

魔理沙「あーあ。言っちまいやがったぜ…………」

 

 

自暴自棄にでもなったのだろうか。

頬を染めて叫ぶ霊夢に魔理沙は額に手を当てて天井を仰いだのだった。

そして、だ。

言葉にされてやっと理解した鈍感さんは、

 

 

一方通行「あァ…………、生理か」

 

魔理沙「なんだよその反応……………。まあ、これで分かったろ?だから霊夢の出血は大丈夫なんだ」

 

一方通行「悪りィな霊夢。気付けなくて」

 

霊夢「もう良いわよ。じゃ、さっさと生理の薬飲みたいからご飯作ってくるわ。魔理沙、早く作りたいから手伝って」

 

魔理沙「へいへーい」

 

適当に返事した魔理沙は台所へ向かって行った。

 

霊夢「じゃ、一方通行。ご飯できるまで待っててね」

 

一方通行「なァ。俺の能力なら生理の症状治せるぞ」

 

霊夢「……………アンタねえ、何でもかんでも能力に頼るのは悪い癖よ。そのまま能力に頼ってばっかりだと体弱るからね」

 

魔理沙「そうそう。いやー、能力に頼りっぱなしで運動不足になり太っちゃった人が言うと説得力があるなー。だから霊夢は今ダイエット中なんだぜッ☆」

 

 

 

霊夢「…………………………………………………………今日の朝は特大なハンバーグかステーキになるかも」

 

 

その後だ。

余計な事を言ってしまった魔女に怒り狂った巫女が台所へ行った途端、

台所が戦場かと勘違いしてしまうぐらい騒がしくなっていた。

 

 

だが、一方通行は面倒だから止めに行こうとはせず、黙って瞳を閉じて座って待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、だ。

無事に朝食も完成して皆で囲む机の前に並べられた。

前に置かれた朝食は和食であった。

 

温かい味噌汁に、白いほかほかのお米、野菜の煮物と目玉焼き。

これが三人の今日の朝食だ。

 

そして

 

 

「「「いただきます」」」

 

と、両方の掌を合わせて三人同時に食事前の挨拶をした。

それから、食事を取る。

そして、モグモグと食べている時にだった。

 

 

突如急に三人が囲む机の上に十センチぐらいの大きさの、長方形の黒い機械が落ちた。

 

 

一方通行「あン?」

 

霊夢「なに、これ?」

 

魔理沙「見たことない物だな。機械なのは分かるが、なんだコレ?」

 

一方通行「録音機…………か」

 

そして、だ。

ピッ!とその小さな黒い機械から起動音がした。

すると

 

 

 

 

『やあやあ、元気かね?幻想郷の諸君』

 

 

 

一方通行「…………………アレイスター」

 

霊夢「アレイスターっ!?それって学園都市の親玉の名じゃ!?」

 

魔理沙「マジか、なんで…………っ!?」

 

朝から嫌な声を聞いたといつもの彼なら吐き捨てて無視するだろうが今回は違う。

一方通行は人差し指を口の前で立てる。

『静かにしろ』ということだ。

 

 

アレイスター『突然だが。今日、今から一時間後に私は幻想郷を攻める。だが今回も私は幻想郷に行けない。だから"暗部"の者達を送ることにした___________________』

 

 

平和とは何故、こんな簡単に終わってしまうんだろうか。

ずっとずっとこのまま過ごせたら良いと思っていたのに、

 

学園都市を創設した学園都市統括理事長、アレイスターは幻想郷を徹底的に破壊しなきゃ気が済まないのだろうか。

そして、なぜここまで幻想郷に拘るのだろうか?

そんな疑問が浮かぶ。

 

 

そして、その録音の再生は続く、

 

アレイスター『________あ、そうだ。月にも私の実験に付き合ってもらったよ。自ら自分の世界を破壊し続ける月の民を見捨てるなり助けるなり好きにしたまえ。では、今回もせいぜい足掻くと良い』

 

 

……………………………………ピピッ。

その機械音は再生の終了を意味した。

 

すごく、ものすごく短い音声だったがそれでも重要な事は全て言っていた。

 

そしてそれから直ぐに、三人が居る部屋の空間に一つの裂け目が出来た。

 

その中からは、

 

「三人揃っていて良かったわ。これから学園都市が攻めてくるらしいのだけど、対策を考えたいの。時間はあるわよね?」

 

大妖怪・八雲紫が三人の前に現れた。

幻想郷を守るためなら彼女は行動が速い。

 

そうだ。今回もアレイスターの好きにさせる訳にはいかない。

 

 

…………だが?

 

 

魔理沙「ちょっと待って。今、飯の途中なんだよ」

 

紫「え?」

 

霊夢「紫、適当に座っててくれる?直ぐに済ませるから」

 

紫「あ………貴方達。幻想郷の、私達の命の危機がまた来たのよ?なにを呑気に________________」

 

一方通行「…………チッ、紫。おすわり」

 

まるで大妖怪様を犬か猫のように扱うかの如く、一方通行は床を叩く。

 

紫「……………は、はぃ………」

 

もっと慌てふためいてるかと思いきや、三人は冷静にご飯を食べていた。

流石に、そんな反応をされたら従うしかなかった紫は一方通行の隣に腰を下ろす。

そして、一時間後。学園都市の者達が攻めて来るというのに呑気に食事をしてる三人は、

 

一方通行「オイ霊夢、醤油はどこだ?」

 

霊夢「醤油?なんで?」

 

一方通行「あァ?目玉焼きには醤油だろ」

 

霊夢「いやいや、目玉焼きには塩でしょ」

 

魔理沙「いやいや、目玉焼きにはソースだぜ」

 

一方通行「はァ?ソースゥ?バカかオマエ」

 

霊夢「うーわ………ソースって。舌壊れてんじゃない魔理沙?」

 

魔理沙「なんで総攻撃なんだよ!?一回試してみろよ美味しいぜ?」

 

霊夢「嫌よ、私まで舌がバカになるじゃない。やっぱり塩よ塩。塩が最強」

 

一方通行「塩もおかしいだろ、なンで塩なンだよ。普通醤油だろ」

 

霊夢「私の普通が塩なのよ」

 

魔理沙「………だったら私だって、ソースが普通なんだが」

 

「「オマエ(アンタ)は論外」」

 

魔理沙「論外って酷くないか、なあ!?」

 

 

 

紫「幻想郷もうダメかもしれない、………………」

 

 

 

紫はそんな事を呟いた。

一方通行、霊夢、魔理沙は異変解決でも頼りになる存在だ。

 

なのになんか知らないが『目玉焼き』には何が合うかなどと、そんなクソ程どうでも良い話をしていた。

 

 

しかし、その話は揉めていたが争いも起きず既に終わっていた。

 

 

紫「ねえ、一方通行。私に一口分けてくれない?」

 

 

ちょんちょんと白が特徴的な一方通行の隣に座る紫は彼の方を指で軽く突く。

 

一方通行「あン?」

 

紫「余りにも美味しそうに皆が食べてるから、私も食べてみたくなっちゃった☆」

 

一方通行「…………チッ。ほら」

 

面倒臭そうであったが、それでも一方通行は箸で野菜の煮物を掴む。

そしてそれを紫へ差し出した。

 

紫「はむ…………っん。あ、美味しい。貴方達とっても美味しいものを食べてたのね」

 

口の中には優しい味が広がった。

その味は八雲紫は好みの味で、頬に手を当てて柔らかく微笑んでいた。

 

だが、だ。

だかそんな仲の良い光景を許せなかった霊夢と魔理沙。

思わず、手に力が入りピキピキと持っている箸に亀裂が………………………

 

 

そんな二人を見た紫は面白そうに、意地悪そうに微笑み一方通行の腕を抱き締めたのだった。

そしてその腕は彼女の豊満な胸と胸の間に挟まっていた。

 

大人の女性としての魅力を全力で使っている大妖怪に、

 

 

魔理沙「そう言えばまだ退治出来てない妖怪が居たなー?霊夢」

 

霊夢「そうね。今からソイツをブチ殺しましょうか」

 

紫「あらあら。嫉妬とは醜いと言うけれど、こうやって目の当たりにすると醜いと言われる理由がよく分かる☆」

 

 

今から血で血を洗う戦いが起きてもおかしくない現場であった。

その爆心地となる可能性がある中心に居る一方通行は黙って動かずにいた。

 

実は彼の周りでは良くこういうことが起きる。

どうせいつもの戯れだろうと思っているのだ。

 

 

全く、鈍感とは恐ろしく感じる。

いつか刃物で後ろから心臓を刺されても文句は言えないだろうな。

 

 

 

 

そして。

魔理沙と霊夢が八雲紫に向かって全力で殺意を向けながらであったが、朝食は無事に終えた。

その時には可愛い反応にご満足したのか、紫は一方通行の腕を離していた。

 

 

 

食器は全部霊夢が片付けた。

彼女は面倒くさがり屋であるが、やる時はやる少女だ。

そんな、霊夢は最後の食器は台所へ運んで帰って来たときに畳まれた掌サイズの薬包紙を持っていた。

その中には散薬が包まれている。

 

霊夢「………………ッ、ふう」

 

そして、自分の座って居た場所に腰を下ろしたと思ったら薬包紙を開きその中の散薬を口内に含み目の前にあったお茶を飲んでその薬を胃の中へ流し込む。

その光景を見た紫は、

 

紫「霊夢、体調悪いの?」

 

魔理沙「ただいま霊夢に女の子の日が到来中だぜ」

 

紫「それはそれは大変ね。大丈夫?」

 

魔理沙が霊夢の変わり答えた。

同じ女性としては、その辛さが分かる紫は霊夢を心配する。

だが、その時に同時に思ったことがある。

『運が悪い』……………と。

 

今日、一時間後にまた戦争が始まるというのに、と。

 

 

霊夢「まあ、平気よ。今回はバカみたいに血が出るからタンポンをすぐに交換しなきゃいけないけどね」

 

紫「痛みは?」

 

霊夢「永遠亭の薬を飲んだから大丈夫」

 

魔理沙「あそこの薬はすぐに効くから助かるよな」

 

一方通行「………………………、」

 

 

女の子の会話に入れない一方通行は黙るしかなかった。

もしも、場違いな彼がここで口を開いたならどうなることやら…………

 

だから沈黙を貫き通すしか道はない。

しかし一方通行が居ることを忘れてしまったのか、三人の女の子の話は続いた

 

魔理沙「なあ、そう言えば妖怪にも生理ってあるのか?」

 

紫「生殖器があるんだから妖怪でも女性ならそういうのがあって当然でしょ」

 

霊夢「じゃあ紫も生理来るんだ。知らなかったわ」

 

紫「妖怪でも見た通り体の構造は人間と同じなのよ。全く、私をなんだと思ってるの?」

 

そして

「失礼しちゃうわ」と扇子を口前で広げる八雲紫。

 

 

だが、

 

 

一方通行「…………………………オイ」

 

 

とうとう、だった。

我慢の限界が来た。と、言うよりは彼女達の為を思って沈黙を破った一方通行。

 

一方通行「オマエら、俺が居るってこと忘れてねェか」

 

「「「あっ…………」」」

 

そして、だ。

一方通行を除いたこの場の三人は少女は口を開いたままであったが、口元を手で覆う。

 

紫「………完全に忘れてわ。ごめんなさい、貴方からしたら居ずらい話をしてたわね、私達」

 

霊夢「コラー、魔理沙。アンタがあんな話を切り出すから」

 

魔理沙「あははっ…………、ゴメンゴメン」

 

一方通行「チッ。そォいう話は俺が居ねェ時にしろよな」

 

 

 

そしてそして。女の子の話も終わり

 

それからだった。

 

 

紫「さーて、では。こっから真面目な話をしましょうか」

 

そうやって話を切り出した八雲紫は机の上に長方形の小さな黒い機械を置いた。

これは先程、博麗神社に送られた物ではない。

まだ別の物であった。

 

紫「これは私の元に送られた物よ」

 

一方通行「内容は?」

 

まず最初に質問したのは一方通行だった。

そして、八雲紫はそれに答える。

 

紫「幻想郷に来る暗部のチーム名と、月に設置した核兵器の存在」

 

霊夢「月に核兵器を設置、ね。随分良い趣味してるわ敵の親玉さんは」

 

腕を組んで息を吐く霊夢。

前回はまんまと捕まり、今回で一矢報いてやると考えていた。

 

紫「月に設置した核兵器は、月を破壊するのではなく月から里に向かって撃つのが目的らしいわ」

 

そして、と八雲紫は続け

 

紫「幻想郷に送り込まれる暗部は合計三チーム。『アイテム』『スクール』『グループ』。本来はもう少し送るつもりだったらしいけど他は暗部同士の潰し合いで消えちゃったみたいよ」

 

霊夢「三チーム、ね。で、人数は?」

 

紫「それは知らなくて良いわよ。幻想郷に来る暗部の人達は三チームで別々に行動してくる。一人一人、未知の異世界で個人個人で動くのは自殺行為。その事に気付けないほどバカじゃないから三つの団体として動くだろうし、その三つの団体を叩いてしまえばそれで終わり。それにどうせ殆どは私達にとっては雑魚同然よ」

 

魔理沙「そこまで教えてくれたのか?」

 

そんな疑問が浮かんだのは魔理沙であった。

確かに自分達に送られた音声とは違うらしいが。でも。

いくらなんでも敵は詳しく教えすぎだ。

 

紫「ええ、前回は自分が敗北の形で終わったからって言ってね。『敗者はいつも不利であり、勝者はいつも有利に立つものだよ』とか、そんな戯れ言をほざいていた後にクソムカつく声で教えてくれたわ」

 

魔理沙「だからって……………………、敵の親玉はバカなのかな?」

 

一方通行「違ェよアホ。そンな情報を俺達に与えてもアレイスターは自分の思い通りなるって考えてるってことだ。クソったれが」

 

前の机に肘をつけて手に顔を乗せ、そう吐き捨てたのは一方通行に紫は視線を向けて

 

紫「そう、そういうことよ一方通行。今回のアレイスターは自信たっぷりだった。それがとても気になるわ」

 

霊夢「なにか裏があるってこと?」

 

紫「そう考えたほうが妥当ね」

 

 

 

一方通行「関係ねェ____________」

 

そう口を開いた一方通行はズボンのポケットからスマートフォンを取り出し、

 

そして。

 

一方通行「__________裏があるだの関係ねェよ。今回もアイツらを負かしてやれば良い話だ。その策をオマエらに伝える」

 

 

手慣れたように字を打ち込み、今回の作戦を一斉に皆に送った。

 

すると。

ぶるぶるぶる…………と、振動音と共に三人のスマートフォンが小刻みに震える。

そして、一方通行が送った作戦を確認するため霊夢、魔理沙、紫は各々の場所からスマートフォンを取り出した。

 

 

………………………………………が?

 

 

霊夢「……………へー。アンタが立てたにして意外な作戦ね」

 

紫「"次"に繋げる、ね。ふふっ、これはこれは面白くなってきたわ」

 

魔理沙「ああ、そうだな。此方の"数が多い"方が良いしなって________________って、お前どこにスマホしまってたんだよ紫!?」

 

最強の白い怪物が立てた作戦にしては意外と口にしてしまう程、しつこいだろうが本当に意外であった。

が、しかし。

三人がスマートフォンを取り出した時に事件が起きた。

 

なんと、八雲紫はスマホを胸の谷間から取り出したのだ。

 

紫「え?私の服にはしまう場所がないからなんだけど?」

 

きょとんとする豊満な胸を持つ大妖怪様に、

 

魔理沙「だからってなァッ!!だからってなんでそこなんだよ!!なあッ!!??」

 

紫「………………………ふーん」

 

魔理沙「な、なんだよ…………?」

 

 

小さな沈黙の後に開いた扇子の裏で怪しく笑う紫。

そう、その顔はとても面白いことに気付いた顔だった。

それになにか嫌な予感がする。

 

 

そして。

 

 

紫「もしかして自分のじゃ出来ないからって妬いてる?」

 

魔理沙「________________ッ!!!!」

 

紫「ふふっ。その顔その反応。大当たりだったりして?」

 

 

魔理沙「…………………………………………………」

 

長い長い沈黙であった。

が、しかし。

 

しかしである。

次に山の噴火の如く、

 

 

 

魔理沙「うるせえェェェェェェええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッッ!!!!」

 

 

 

魔理沙の怒りが爆発した。

その怒号は空気を、博麗神社を揺らす。

 

魔理沙「私のマスパで削り取ってやろうかその贅肉!!ああッ!?!?」

 

紫「あら、魔理沙にも女の子らしい悩みがあったのね。可愛いっ☆」

 

魔理沙「バカにしやがってこのクソババアァッ!!!」

 

紫「そんな事私に言って良いのかしら?貴方のような悩みがある子の弱点なら私は熟知してるけど?」

 

そう言うとだ。

八雲紫は自分の隣にスキマを開く。

そしてその中に腕を伸ばし、ある物を掴んだ感覚がしたらその腕は抜きスキマを閉じる。

 

紫「ほらあった。やっぱり思っていた通りだわ☆」

 

一方通行「あン?なンだそれ?」

 

紫が掴んでいた物を三人の前に置いた。

一方通行はその置かれた物は理解出来なかったが、霊夢が"それ"を見た時は顔を青ざめて『うわー………』と声を洩らしたいた。

 

そして、だ。

その置かれた物に一番反応したのは

 

 

魔理沙「うわァァァァァァああああああああああああああああああああああああああッッ!?!?!?」/////

 

 

魔理沙は全力で机の上に置かれた物を上半身を使って隠す。

そして顔を真っ赤に染めながらその物を抱きしめていた。

 

紫「で、可愛い可愛い魔理沙ちゃん。それは今は着けているのかしら?こ、こ、に♪」

 

黒い笑顔で紫は自分の胸元を指差す。

 

魔理沙「着けてない着けてないっ!!今は着けてないっ!!」/////

 

紫「今は、ねえ?ふふ…………」

 

魔理沙「~~~~~~~~~ッ!!!!」/////

 

 

その赤さは、湯気が出てしまう程の熱があった。

そして体温が上昇し続ける魔理沙の隣に居る、霊夢はため息を吐いた後に

 

 

霊夢「まんまと罠に填まっちゃって。それにしても、アンタそこまで気にしてたのねー………」

 

 

別にもうご説明不要かと考えているが紫がスキマから取り出しのを一応ご説明させていただくと、それは胸とブラジャーの間に挟む、バストアップしたと誤認させるパッドであった。

 

現代のようなシリコン製ではない。

肌に優しい柔らかい布製のものだ。

 

そして、

 

そしてそして。

 

 

魔理沙「________________せ__ぇ_」

 

霊夢「?」

 

ぼそり。と、魔理沙の口から声がした。

しかしその声量は耳をすましても聞こえるかどうかと言うぐらいだ。

 

だから、隣に居る霊夢でも聞こえなかった。

 

が。が。

 

魔理沙「うるせえってんだよクソったれ!!ああそうだよ周りが巨乳ばっかで自分の見窄らしい胸を気にしてたんだよォォォォッ!!!!」

 

霊夢「はいはーい落ち着いて魔理沙。アンタ今興奮してヤバイこと口走ってるわ」

 

魔理沙「もうここまで来て何を言ってんだ!!クソッ!!どいつもこいつも駄肉ぶら下げやがってその肉ミンチにしてやろうかッ!!あぁ!?」

 

霊夢「僻むな僻むな。ってか、アンタそんなに悩む歳じゃないでしょ?」

 

魔理沙「悩んじゃうんだよお前のせいでなァッ!!」

 

霊夢「わ、たし…………?」

 

魔理沙「ああそうだよ!!なんで一番歳が近いお前と私とでこんなに差があんだよ!?」

 

ガシッ!!とその乱暴に振られた手は霊夢の胸を鷲掴みする。

 

が…………………………

 

魔理沙はそっとその手を離した。

 

霊夢「ど、どうしたの?」

 

先程、霊夢の胸を掴んだ震える腕をもう片方の手で掴む魔理沙。

そしてポツリと呟いた、

 

魔理沙「だ、弾力があった…………ッ!!」

 

と。

 

 

霊夢「ホントにどうしたのアンタ?」

 

困った顔とはこういう時にするのだろう。

絶望に顔を染めて落ち込む友人にかける言葉を失う霊夢。

すると、だ。

 

紫「そんなに悩んでるなら胸が大きくなる良い方法を紫お姉さんが教えて、あ、げ、る☆」

 

そして。

とてもとても、他には聞こえない声で八雲紫は魔理沙に耳打ちする。

 

紫「__________________すれば良いのよ☆」

 

魔理沙「んなっ!?!?」/////

 

ボフッ!!!

と頭上から煙が吹き出てしまうぐらい、魔理沙が顔を真っ赤にして紫の言葉に反応した。

 

八雲紫がどのようなことを言ったのか、霊夢と一方通行は聞こえなかったが魔理沙の反応を見る限りまともなことを言ってないというのは確かだろう。

 

紫「もしも、今すぐにと言うのなら一方通行に手伝ってもらう?」

 

魔理沙「良いっ!!もう良いよこれからの自分の望みに賭けるよ!!」/////

 

一方通行「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、さあ。

気を取り直してだ。

 

紫「で、一方通行。先程のメールには月の件が書かれてなかったけど、どうするつもりなの?」

 

一方通行「月の方は任せろ。俺がやる」

 

全然緊張もしてない様子で淡々と言ってみせる白い怪物。

確かに一方通行は幻想郷の第一位の実力者。

 

が、しかし。

 

霊夢「月の広さはご存知でしょ?たった一人でやんなら時間は相当掛かるわよ」

 

一方通行「霊夢。いつ誰がひとりでやるって言った?」

 

足を伸ばして座る白い彼はそんな言葉を良い放つ。

だが、だった。その言葉に三人は驚愕した。

 

霊夢「ごめんなさい。アンタはてっきり一人でやると言ってるかと思ってたわ」

 

 

そう。いつも一方通行は自分一人の力でどうにかしようとしていた。

そして、自分だけを危険に晒し他を守る。

そんな行動ばかりしていたのに………………………

 

彼は成長したのだ。

一人では無い。

 

『皆』でアレイスターに勝つ、と。

 

 

 

一方通行「月は地球よりデケェ。そンなことガキでも理解してる。例えこの俺でもたったひとりじゃそのデケェ月の騒動を静めてからここに帰って来るとなると霊夢の言っていた通り相当な時間が掛かる」

 

だから、と一方通行は続けた。

 

一方通行「一分一秒でも早く月の騒動を静めるため俺と一緒に月に向かってくれるヤツが欲しい」

 

白い怪物のその紅の瞳は真っ直ぐだった。

 

それを見たらだ。

その瞳に答えるように魔理沙から、

 

魔理沙「良し分かった!!私達はお前に付いて行くぜ、一方通行!!」

 

霊夢「しょうがないから、ね」

 

紫「そう言ってる割には嬉しそうな表情してるじゃない霊夢?」

 

 

三人はやる気は十分。

 

月の方はもう暴走者の破壊が始まっている。

今からでも出発しなくては

 

が?

 

 

一方通行「オマエ達はここに残れ」

 

魔理沙「えぇ!?嘘だろーッ!?今の流れはこの場の四人で行く流れだったろーよ!?」

 

一方通行「オマエ達はこの地上に残らなきゃいけねェ存在だ。だからダメだ。だが、今から俺と一緒に月に向かうヤツを探すとなると無駄な時間が掛かるか…………」

 

もう帽子も被り、身も心も十分準備出来たのに、と。

魔理沙は月に向けていたそのやる気に困っていた。

しかし、そんな魔女を無視して

 

一方通行「____________八雲紫、オマエに頼みがある。オマエの式神を俺に貸してくれ」

 

紫「藍を?」

 

一方通行「あァ。アイツの実力なら暴走者が溢れる月に行っても問題はねェ筈だ」

 

紫「…………なるほど。分かった、良いでしょう。でも藍だけじゃ私が不安だから橙も一緒に向かわせましょうか」

 

一方通行「礼を言う」

 

 

約一時間後の戦争の為にもう準備をするため、四人は呑気に座ってる訳にはいかない。

八雲紫は指を鳴らす。

すると、この部屋の中に人が通れる程の大きさの空間の裂け目が開かれた。

 

紫「藍と橙を呼んだわ。後は二人が来るまで待っててね」

 

一方通行「そォか」

 

ズボンのポケットに手を突っ込んで立って待つ一方通行。その隣には腕を組む大妖怪の影が。

 

藍と橙。

その二人が来るまで待つしか出来ない。

 

しかしだ。

 

一方通行と紫以外のこの場に居る二人の少女はと言うと、

 

 

魔理沙「ちぇー。良いよ良いよ、どうせ私なんかお荷物ですよーだ……………」

 

霊夢「そんな落ち込まないでよ魔理沙。あーもー、面倒くさいなー」

 

部屋の角で膝を抱えてブルーになって居る魔理沙の隣で両手を腰に当てて一息吐く霊夢。

 

その光景を見て、

 

一方通行「チッ。クソったれ」

 

白い彼はその場へ足を運んだ。

そして、膝を抱えて座る魔女の少女の後ろで片膝を立ててしゃがみ彼女の肩に片手を乗せる。

 

一方通行「オイ、バカ魔理沙。なに勘違いしてやがる。俺はオマエをお荷物だからここに残すンじゃねェ。アレイスターが送り込ンでくるヤツらは結構な手練れだと俺は踏ンでる、だが今回俺は月の件で手一杯だ。だから地上はオマエ達に任せるしかねェ。それは頼りにしてるからだ。魔理沙、霊夢、紫。オマエらは他のヤツらに悪いが特に頼りにしている」

 

魔理沙「どうせ本当に頼りしてるのは紫と霊夢だけだろ。私なんて魔法を()(ぱな)すしか能がないんだから。他のヤツらとは違って不器用だし……………………」

 

一方通行「あァ、そォだな。だからだ。そンな魔理沙だから俺は頼りにしてる。オマエはごちゃごちゃ考えず、真っ直ぐ前に進む。下手に賢いヤツは重要な場面で立ち止まっちまうが、オマエは違う。オマエはその何も考えず自分の意思を通すその真っ直ぐな心がオマエの一番頼りになる長所だ」

 

魔理沙「それってただバカにしてるだけだろ……………」

 

一方通行「まァ、半分はバカにしてる」

 

魔理沙「ははっ、正直に言いやがって。じゃあ見せてやるよ、天才。バカが全力を出せば天才では不可能なことを可能に変えれるってことを」

 

一方通行「あァ。月からでもオマエ達の活躍を見せてもらうぜ」

 

 

二人の表情には明るさがあった。

魔理沙は立ち上がると一方通行も立ち上がる。

 

そして、魔女の少女は自分とは真逆の存在。

才能に満ち溢れた白い彼に拳を突き出し、一方通行はその拳を掌で受け止めた。

 

魔理沙「へへっ」

 

一方通行「フッ」

 

 

 

 

「羨ましいわね」

 

そんな声があった。

その声の出所は、

 

紫「人間って羨ましいわ。挫けても周りには立ち直らせてくれる人が居る。集団で生きてるからこそそんな事ができる。妖怪は独りでも生きていける力がある。妖怪は自分させ良ければ他のヤツなんてどうでも良いってヤツが多いからホントに羨ましいわ。助け合う生物、人間って…………………」

 

八雲紫はその瞳に映る光景に素直にそう思っていた。

彼女は孤独。

唯一無二の存在。

 

同族なんてそんなもの居ない。

 

だから、か。

珍しく『羨ましい』なんてそんな事を思ってしまった。

 

「あら、アンタにも居るじゃない。立ち直らせてくれる人が」

 

紫「え?」

 

声がした隣を向いた。

すると自分の隣に立って魔理沙と一方通行を眺めていたのは博麗霊夢であった。

 

霊夢「あそこに二人。アンタの隣に一人。今からここに来る式神が二人。まだまだ居るわよ、アンタの周りにはね」

 

紫「……………………………………。ねえ、霊夢。貴方も私が心が折れてしまったら、立ち直らせてくれるの?」

 

霊夢「当然でしょ。私達は同じものを守ろうとする"仲間"なんだから」

 

紫「…………………………ありがとう」

 

 

大妖怪、八雲紫。

彼女はやっと気付いた。

 

自分は独りではない。孤独の存在ではない。

この幻想郷には、周りには多く人が居た。

 

 

孤独ではない知って、八雲紫は柔らかく微笑んだ。

 

その姿を見て博麗の巫女は、

 

霊夢「へー、意外。アンタもそんな風に笑えるのね」

 

紫「………………え?私笑ってた?」

 

霊夢「うん。もうそりゃあニッコリとね」

 

紫「恥ずかしい…………」////

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そして。

 

「遅くなって申し訳ありません紫様。藍、ただいま到着いたしました」

 

「橙もただいま到着しましたーっ!!」

 

八雲紫が開いていたそのスキマから二つの影が姿を現す。

ひとりはその髪と同じ金色の尻尾を九つ持つ、モデルのような体型の大人な女性。

 

もうひとりは、頭部に猫耳を生やしその左耳には金のピアスを付けていた。

それに彼女にも尻尾が生えていた。

しかしその隣に立つ者のような尻尾ではなかった。

尻尾の本数は二本。

そして細長かった。

 

 

紫「良く来てくれたわね藍、橙」

 

藍「それで紫様。御用とはなんでしょう?」

 

紫「うん、時間がないから一回しか説明できないわ。藍は多分大丈夫だと思うけど、橙。貴方は頭をフル回転させてちゃんと聞くのよ」

 

橙「はーいっ!」

 

 

 

そして、紫は二人にこれから幻想郷に危機が来たことを説明する、

 

二人の役目は月に行って核兵器の停止、月の民が暴走者になってしまったので正気に戻すことだと。

 

 

紫「それでね、ここに来てもらって早々で悪いけど。もう今から月に向かってもらいたいのだけど、大丈夫?」

 

藍「はい、紫様の命とあれば」

 

橙「月かー。月ってどんな所なんだろー?」

 

 

紫「……………………。じゃあ二人を頼んだわよ、一方通行」

 

チラリ、と。

八雲紫は両手をズボンのポケットに突っ込み立っていた白が特徴的な一方通行の方向を向いた。

 

一方通行「あァ」

 

そして、彼は一言返事をして藍と橙の方へ進む。

 

一方通行「もォオマエらは覚悟決まってるよォだし行くぜ、月へ」

 

藍「はい」

 

橙「はーいっ!」

 

 

片手に靴を持って、

 

 

そして、それから八雲紫によって開かれた月へ通ずるスキマへ三人は姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは月。

穏やかで静かな場所。

 

そこは、まるでおとぎ話にでも出てきそうな風景、

 

 

______________だった。

 

 

 

だが、今は…………

 

一方通行「おォおォ、こりゃあ随分騒がしい場所だなァオイ」

 

何処(どこ)彼処(かしこ)も轟音と爆音が響き、煙と炎が所々立ち昇っていた。

そんな破壊を繰り返していたのはこの月の民達。

 

アレイスター=クロウリーが造り出したあの"黒い玉"により暴走してしまっているのだ。

 

 

そんな光景を月の地から高い位置に浮いて眺めている三つの影、

 

藍「これを今日中に…………か。想像していた以上に大変そうだな」

 

橙「でも、藍様も居るし一方通行様も居るのでなんとかなるのでは?」

 

一方通行「オマエでも弱音は吐くンだな、藍。だがそンなのを聞いてる暇はねェ。さっさと手当たり次第にぶっ倒すぞ」

 

そう言ったらだった。

見覚えがある姿を見つけた。

 

背に白鳥のような真っ白な翼が右にしか生えてない、隻翼の銀髪少女

前に、自身の能力によって不本意ながら幻想郷の地に降りて来てしまった月に住むサグメを発見した一方通行。

 

彼女の能力はとても強力だが"暴走者"になると叫ぶ以外は声を発さない。

だから、強い能力者なのに暴走状態の方が倒しやすいのは嬉しいと思うべきだろうか………………

 

彼女は最初の内に味方に入れて、暴走者を正気に戻すのを手伝ってもらえたら相当助かる。

 

だから、と。

まだ肉眼で見えるぐらいの距離にサグメが居る間に、

 

一方通行「オマエ達にこれを渡しておく」

 

正面に真っ黒なデザインのスキマを開きその中に手を突っ込み何かを掴んだら手を抜き、もう用が無いスキマを閉じた。

そして一方通行はスキマから取り出した二人分あるそれを藍と橙に渡す。

 

藍「……こ、これは?」

 

一方通行が二人それぞれに渡したのは手のひらサイズの布の袋だった。

『中には何が入ってるんだろう…………?』と八雲藍の隣に居る橙が紐で閉じた袋を開き中を確認する。

すると、その中には紫色のビー玉のような小さな丸い玉が袋に沢山入っていた。

 

そして、その紫色の小さな丸い玉っころを一つ手にして

 

橙「……これって何に使うんです?」

 

一方通行「暴走者を正気に戻して、自分達の力になりそうだと思ったらソイツにそれを飲ませろ。それは俺が独学で勉強して調合した薬だ。余り酷い怪我じゃなけりゃ直ぐに傷が治るしその後普通に動くことができる。だがその薬は体の治癒力を無理やり飛躍的に上昇させ、明日明後日の体力を前借りさせるから普通の人間や体力のねェやつに飲ませると逆に殺すことになるから気をつけろ」

 

藍「なるほど。一方通行さんは最初からこの三人でやるつもりはなかったのですね。確かに、正気に戻った暴走者だった人に今の月の状況を説明すれば他の暴走者を正気に戻すのを手伝ってくれるかもしれない。そうすれば早く終わるし私達の体力の消耗も軽減できますね」

 

一方通行「そォいうことだ。じゃあ俺は単独で行動するがオマエ達は二人で行動しろ。良いな、絶対無理をするなよ。流石に相手の数が数だ、この俺でもオマエ達を気遣いながら戦うなンて出来るかどうか分かンねェ。だからヤバイと思ったり死にかけたら自分の命の安全だけを考えろ。これは命令だ、絶対に死ぬな!!」

 

「「はいっ!!!」」

 

余りにもの気迫だったので無意識に背筋を伸ばし藍と橙は敬礼をして答えた。

 

そしてその返事を聞いた一方通行は背中から、ボッ!!と爆発音のような音と共に真っ黒な噴射に近い翼を伸ばす。

 

相手は月の民。

正直、どんな能力を持っているか分からない。

 

にも拘わらずこちらの人数は三人とごく少数にも程がある。

 

 

しかし、

 

 

しかし、だ。

 

 

例え絶望的な状況だとしても真っ正面から打つかってもぎ取ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くそったれのハッピーエンド、ってやつを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そして。

地上の幻想郷より、時早く月でたった三人で挑む激戦が始まった。

 

 

 

 

 

 




次回予告

一方通行(アクセラレータ)達が月でアレイスターの魔の手によって暴走者になってしまった者達を正気に戻そうと戦いを繰り広げている時に、幻想郷の地上に純黒に生きる"奴ら"が来た。



次回、第4章第7話。


『アイテム』


遂に"儀式"が始まった。
目覚(めざ)め』の刻、来たれり……………………


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7話

暗部『アイテム』。
その構成員の中には一方通行と同じ超能力者(レベル5)が居た。
だが、だからと言ってそのままにしとく訳にもいかない。
そいつらが敵と言うのなら倒すまでだ。



絶対、誤字があります。
ですが発見した場合、面倒だったら無視してくれて構いません。
お暇なお方や心優しいお方は出来たらで良いので誤字やそれ以外のミスを見つけたらこんなダメな私に報告してくれると非常に助かります。


一方通行達が月に向かってから時は経ち、

 

侵略者が幻想郷に来る時間まで時が進んだ。

 

 

 

 

そしてそして、

 

幻想郷のとある場所にある自然が生い茂る緑の中を進む五つの影が

 

 

「いやー、にしても『異世界』へ行ける道具なんて説明されて送られた物でマジに異世界とやらに行けるなんて、この腕輪みたいな物を学園都市の科学者達は超努力して開発したんでしょうね」

 

五つの影の、その中の一人。

中学生ぐらいの身長だというのに丈がかなりギリギリな下が結構大胆なふわふわしたニットのワンピースを着た首もとまで伸びた明るい茶髪の絹旗最愛という名の少女が右手首に巻いたシルバーバングルを見てそう呟いた。

 

周りに居る他の仲間も全く同じものを右手首に巻いているが誰一人その"機械"がどんな仕組みだとかどんな風に作動しているとか理解していない。

 

ただ依頼した仕事に必要だからとその仕事の依頼主から特に説明されず顔を合わせず送られた物なのだ。

 

「そんな無駄なこと考えなくていいのよ絹旗。私達は依頼された仕事をこなす。それだけよ」

 

次に口を開いたのは暗いオレンジ色の胸まで伸びた髪で薄いベージュ色の半袖コートを着た、五人の中で一層大人な容姿の他の『アイテム』という学園都市に存在する暗部のメンバーを束ねるリーダー、麦野沈利という名の能力者はあの一方通行(アクセラレータ)と同じ超能力者(レベル5)で、序列は第四位である。

性別は女性だ。

 

目標(ターゲット)は学園都市の上層部が大事に大事にしていた"第一位"。その大事な第一位を捕獲じゃなく殺害って………………。まあ、どっちにしても結局、今までで一番面倒なお仕事って訳よ」

 

そして、ため息を吐いた後に口を開いたのは腰まで伸びた綺麗な金髪で黒いレディースのベレー帽を被り女子高生の制服を着た青い瞳の少女、フレンダ=セイヴェルンであった。

彼女は絹旗や麦野と同じく暗部『アイテム』のメンバーである。

 

「………………ここ、変。今までに感じたことがない感覚がする。気持ち悪い…………」

 

「それは滝壺の能力が原因なのか、それともまた違う理由なのか?…………だが、まあ__________」

 

先頭の三人から少し後ろに付いて歩いて居る二人。

片方は性別は女性で上下どちらもピンク色のジャージを着た少女で、もう片方は髪は金髪で耳にピアスを開けていて、下はジーパンで秋物の茶色の上着を着た不良少年だった。

その不良少年の名は浜面仕上。

 

彼は隣を歩く年中ジャージ少女こと滝壺理后を横目で見た後に前を歩くの三人に視線を向けた。

滝壺はこのまるで漫画やアニメで出てきそうな『異世界』とやらに来てから体の調子が悪いようだ。

浜面は暗部『アイテム』でただの下っ端として酷い扱いをされている。

無能力者(レベル0)集団・『スキルアウト』の元リーダーだったのだが暗部という汚い仕事しかしない、その身を血に染めるしかない暗黒まで堕ちてしまい今やこの様である。

しかし、

 

しかし、だ。

それでも酷い扱いをされていても、例え自分が彼女達を庇って死んだとしてもなんとも思われないとしても、

 

『仲間』なのだから心配はするのだ。

 

だが、今回の仕事は大きな仕事らしく先頭の三人は滝壺 が使い物にならないと知ると具合を悪そうにしていても『アイテム』のリーダー麦野は「付いてきて」の一言だけで済ませ、体調を気遣ったり肩を貸すなどを一切しなかった。

そしてリーダーの麦野がそんな態度をとれば他の二人もそれに従った。

 

これが暗黒に住まう『暗部』の"普通"の光景なのだ。

 

でも暗黒に染まりきってない浜面はそうやって『仲間』を、『人間』をぞんざいに扱うなんてできない。

 

だから、滝壺の手を握りできるだけ歩くペースに合わせて歩く。

 

 

浜面(殺すターゲットはあの第一位だ。しかもその仕事の依頼主は学園都市統括理事長………………。だから意識しなくても力が入るのは分かる。だけどこんなのってねえだろ……ッ!!!)

 

息遣いが荒く、表情をとても辛そうに歪ませていても歩いて三人に付いて行かなくては"いけない"滝壺の姿を見てひとり心の中で叫んだ

 

 

この世界の残酷さに。

 

 

滝壺「…………大丈夫?はまづら、辛そう…………」

 

でも、

 

でもその残酷な世界で生きてきた彼女は浜面を心配する。

 

感情が無意識的に表情に出てしまったのだろうか、

 

 

いいや、今はそんなのどうでもいい。

 

ただこんな自分にでも優しい滝壺に、

 

浜面「ん?なに言ってんだよ、無能力者(レベル0)な俺だが体力だけは自信があるから大丈夫大丈夫。 だからさ、滝壺。歩けないぐらい辛くなったらいつでも俺に言ってくれ、おぶっていってやるからさ」

 

 

『辛いのはお前の方だろっ!!』と、本当に彼女にかけたい言葉が言えなかった。

そしてその直後になんにもできない自分を恨んだ。

 

 

 

彼女に救いの手を差し伸ばしたくても、

 

もしも手を伸ばしてもその手は無力………………

 

 

 

 

力があれば、

 

能力とやらがあれば変われるのだろうか?

 

 

 

そんなことを考えると決まってこんな答えが返ってくる。

 

『お前はクズだ、他人も自分も守れないクズだろうが。力があったってなくたって、"変われるかも"としか思えないなら"変わる"なんて大層なことできない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗部『アイテム』が自然が広大に広がる林の中にある、

人が通れる道と呼べる場所を歩いていたら、

 

 

「あーらよっと!!」

 

スタッ!!っと、

五人の前に突如空から見事着地したのは一人の金髪の少女。

 

その金髪少女は、片手に箒を持ち魔法を扱う白と黒の魔女のような格好をしていた。

 

「えーっと。お前らがアレイスターとやらが送り込んだ刺客ってことで間違いないな?」

 

彼女の名は霧雨魔理沙。

正真正銘、この不思議な幻想郷に住む本物の魔女である。

 

 

浜面「…………おいおいおい、情報が漏れてるじゃねぇか!?隠密任務じゃなかったのかよ!?」

 

麦野「アホ面晒してんじゃないわよ浜面。それにしてもあの統括理事長が情報を漏らすなんてへまをする筈がない。っと言うことは統括理事長が自ら情報を漏らしたと考えるのが妥当ね。はあ……、色々考えるよりも先に今はっ!!____________」

 

 

暗部『アイテム』のリーダー、麦野は能力を発動した。

すると、彼女の周りに一つの薄緑色の光の球体が発生する。

 

そして次の瞬間、、、、

 

その光の球体が一筋の光線となり、霧雨魔理沙を襲う。

 

が、しかし。

 

しかしであった。

その一筋の光線を魔理沙はその手に握る箒に魔力という名の白く輝く光を纏い麦野が放った光線を打ち返す。

 

本当は彼女目掛けて跳ね返したつもりだったが余りにも光線の威力が高かったのか、

暗部『アイテム』の連中の斜め上へ光線は飛んでいった。

 

麦野「チッ、さっきので終わってくれれば良かったのになー。まあ、私達の存在を知ってて堂々とバカ正直に前に出てきたってことはなにか能力を持ってて当たり前か。私はとりあえずこの脳内愉快そうなクソガキをぶっ倒す。フレンダ、アンタはその援護。残りの絹旗、浜面、滝壺は私達と別行動で第一位の野郎を探しなさい」

 

そう言われると、彼女の後ろに居る者達の行動は早かった。

それは正に一切迷い無しの行動。

 

 

そして、暗部『アイテム』絹旗、浜面、滝壺の三人は言われた通り自分達の後方に向かって進んでいった。

 

 

魔理沙「お前が言っている第一位って一方通行のことだよな?ってことはお前らの目的は一方通行か。でも、アイツを見つけて『ハイ終了』ってそんな誰も血を流さない、平和に終わらせる目をしてないな。と、いうことはだ。一方通行を探したらやっぱり殺すのが目的なのか?」

 

麦野「…………ふっ。情報にあった通り。あの怪物の周りに多くの人が居ると聞いてまさかと思ってたけど、本当に居たとはね。じゃあお前を半殺しすれば吐いてくれるかな?第一位の居場所」

 

魔理沙「別にお前らごとき一方通行に会わせてもどうせ返り討ちに遭うだろうし、心配ないから教えてやっても良いんだけどな。でもな、知人に対して殺意をギラギラさせてるヤツにそいつの居場所を親切に教えるバカはこの世に居ないんだよ」

 

麦野「あのクソったれを庇う価値なんてないのによくやるわ。あいつがここでどんな顔をしてたか知らないけど、私達の世界で第一位は約一万人殺したただの狂気に満ちた怪物なのよ」

 

魔理沙「ああ、知ってるぜ。たった一人で一万人も殺したなんて初めて聞いた時は驚いた。だがな、アイツは、一方通行はそれだけじゃないんだよ。一方通行はな、口では言ってなかったが自分はやってはいけない事をしたと悔いていたぞ。私は、お前達の世界で一方通行がどんな評価をされてようが知ったこっちゃない。私は、私のこの耳と目で見て聞いて、信用できると確信してるから一方通行がいくら多くの命を奪った殺人狂だとしても全力で信じてる。ただそれだけさ」

 

麦野「けっ、気持ち悪い友情ごっこね。それより_____________」

 

あの三人は即座に行動した。

しかし、しかしである。

 

自分の援護を頼んだ筈の金髪ロングの制服少女は、なんの緊張感もなくただただ麦野沈利の隣で突っ立っていた。

そんなフレンダを横目で見る。

 

 

麦野「______フレンダ。アンタなぁに呑気に突っ立ってんの?私がクソ下らない話して時間稼いでやってんのにさー」

 

フレンダ「えー?あんなヤツ麦野一人で十分でしょ?結局、私は不要って訳」

 

麦野「二人でやれば時短になるし、楽だからって考えは浮かばないの?ねえ。フ、レ、ン、ダ?」

 

フレンダ「………………、分かった」

 

さっきまで、面倒だから超能力者(レベル5)の彼女に全て任せようとしていたのに何故、こんなにも素直に従ったのか?

その理由は簡単だ。

それは、フレンダが見た麦野の目であった。

 

使えないと判断したら、いくら苦楽を共にした『仲間』といえど容赦なく殺す。

そういう彼女だと理解しているフレンダは、麦野の冷たく鋭い恐怖の眼光を目にしたから素直に従ったのだ。

 

 

そしてそして。

フレンダは、トラップを仕掛けたり爆発物を用いた戦闘スタイルである。

爆発物をただ敵目掛けてぶん投げるだけで、倒せる敵なんてたかが知れている。

だからこそ、

 

相手を仕掛けたトラップまで追い詰めてとことん戦意を喪失させる。

そんな風に戦うフレンダには、トラップを仕掛ける時間が必要なのだ。

それを考えていた麦野は、時間稼ぎをしていたのだ。

 

 

そして。

トラップを仕掛けようとフレンダが行動した次の瞬間

 

 

それを許さない白と黒の魔女が、

 

魔理沙「させるかよっ!!」

 

片手に持っていた箒をフレンダに目掛けてサイドスローで投げた。

が、しかし。

投げる体勢を崩してしまったのだ。

 

それは、薄緑色の一筋の光が無数に魔理沙に飛んできたのだ。

それを躱わしつつ投げたその箒の先端が見事フレンダの背中に突き当たる。

 

そして、その投げた勢いのまま金髪ロングの制服少女は奥へ奥へ飛んで行ったと思ったらその箒はフレンダの体を空へ持ち上げた。

 

高い高い空へ背中に箒に先端が突き当たったまま持ち上げたと思ったら次の瞬間だ。

 

急に。そう、急に箒はフレンダの体を次は地面目掛けて打ち落としたのだ。

 

 

すると、だった。

 

高い場所から落とされたフレンダは地面に激突した。

 

 

魔理沙「さあ、まず一人はダウンみたいだぜ」

 

麦野「チッ。役立たずが」

 

轟音と砂煙と共に魔理沙と麦野の間に落とされたフレンダはピクリとも動かない。

確実に意識を失っているし、最低でも骨の二本か三本は折れているだろう。

 

そして、数々の殺傷能力が高い光線を全て避けた白と黒の魔女の手に空から降ってきた箒が握られていた。

 

そしてその箒の先端を麦野に向けて、

 

魔理沙「お前もこうなりたくなかったら大人しく投降しろ。お前は私に天が引っくり返ったとしても勝てないっ!!」

 

麦野「………………………………、」

 

 

なんにも、、、、

 

なんにも言わなかった。

ただ黙ったまま『アイテム』のリーダーの麦野は倒れているフレンダに近づく。

 

そして、

 

 

強烈な蹴りをフレンダに浴びせた。

すると、軽々数メートルもフレンダの体は吹っ飛び周りに生えていた木に激突した。

 

魔理沙「______なっ!?なにやってんだアイツはお前の仲間だろっ!!!」

 

とても信じれなかった。

投降する気は無いのだと、彼女の瞳を見て分かっていた。

 

一応言ったが無駄だったと思っていて、だからこれから戦闘になるだろう………………。

そう覚悟していた魔理沙は、麦野は倒れている金髪ロングの制服の少女をどこか闘いの巻き添えを食わない場所へ移動させると思いきや、そんな気もない蹴りを浴びせて追い討ちを与えたのだ。

 

さっきので、余計な骨を折ったフレンダは口から血を流していた。

 

口から血を吐き気を失っている少女なんか見向きもしないで

 

麦野「あー?使えないゴミを片付けただけよ、なに騒いでんの?」

 

魔理沙「使えないゴミだと!?お前人を……、人間をなんだと思ってやがる!!」

 

麦野「ピーピー騒ぐなよクソガキ。私達は一度のミスで死に繋がる闇の世界に立ってんのよ。生温い光しか浴びてこなかったガキが一々吠えるな。それより___________」

 

そこからだった。

この場の空気がどっしりと感じるぐらい重くなる。

 

緊張感が嫌でも肌に伝わる。

 

そして、一番変化したのは魔理沙の前に立つ女の超能力者(レベル5)だった。

 

眼が一段と細くなったと思ったら、口角は限界まで引き上げていた。

そんな彼女は、

 

麦野「_________さっき、面白い台詞をこの私に吐きやがったわね。『お前は私に天が引っくり返ったとしても勝てない』だっけ?………………っく、はははっ。あはははははははははははははははははははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

 

 

ゲラゲラと上を向いて笑う異世界からの侵入者。

 

その姿を見た魔理沙は何故か背筋が凍る冷たさと不気味さを味わう。

 

麦野「私に舐めた台詞を吐きやがって!!!」

 

笑みは憤怒へ変化した。

 

そして、

 

 

麦野「ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね」

 

 

一方通行と同様怪物として学園都市の皆から恐れられてる彼女が魔理沙に全力で能力を振るう。

 

 

先程から同じの薄緑色の光線。

だが、さっきから向けられていたのとは比べものにならない数と精密な狙いだった。

 

魔理沙「っ…………く!!アイツさっきから本気じゃなかったのかっ!!」

 

身軽に光線を避けていたが、彼女の能力。

原子崩し(メルトダウナー)』が魔理沙の頬を掠める。

 

このまま地面に居ればいずれ蜂の巣にされるのは時間の問題。

そう考えた魔理沙は地面より高速に移動できる空へ避難した。

 

魔理沙(…………チッ。これをまともに受けるとヤバイな………………)

 

攻撃を受けた頬を触れてからその手を見る。

すると手には赤い液体が付いていた。

 

いや、それよりも気になるのは熱である。

あの薄緑色の光線が掠った場所が異様に熱いのだ。

 

魔理沙「弾幕に似ている…………、いや、弾幕に似てるようで似つかないな。これは油断していると一瞬で殺されちまうぜ」

 

頬に汗が見えた。

その雫は先程受けた傷に触れて染みる。

 

が、しかし。しかしだ。

今はそんなちょっとした痛みを気にしている場合ではない。

視界に入っている限り、あの薄緑色の光線を放つあの女をどうにかしなくては傷がどうこうと言っている暇はないのだ。

 

魔理沙も負けじと光弾と光線。

その二つを同時に空からビーム女へ撃つ。

 

そして、

 

超能力『原子崩し』と魔法。

その相反する二つが彼女達の間で激しく衝突した。

 

 

魔理沙「威力はほぼ互角か。まあ、本気を出せばあんなヤツ消し炭にするのは容易いが今回の作戦はそうじゃないからな。…………はあ、"手加減"って案外難しいなー」

 

幻想郷の魔女・霧雨魔理沙の切り札と言うべき技

『マスタースパーク』。

あれを放てばいくら学園都市の超能力者(レベル5)と言えど一瞬で勝負をつける事が可能だ。

だが、今回幻想郷側の狙いは単なる敵の撃破だけではない。

 

魔理沙「だが、こんな派手な勝負ができるとはな。ハハッ、楽しくなって来やがったぜっ!!」

 

再度、光と光が衝突する音が炸裂した。

 

まるで花火でも打ち上げたのかと勘違いするぐらい輝く空。

そんな中で戦う白と黒の魔女はどこか楽しそうに口角を歪ませていた。

 

そして次の行動に移る。

 

魔理沙「能力は遠距離系。ならば接近戦は不得意な筈…………。よしっ!思いっきりぶん殴って気持ち良く眠らせてやるか!!」

 

ぐうんっ!!!

っと、魔理沙は箒の進行方向を学園都市からの『刺客』麦野に変えた。

 

風を切り直線に進みまずは地面に近付く。

そして、そして、

 

そこからはゴールしか見えてないフルスロットルのF1カーのように直進あるのみだった。

 

麦野「正面から突っ込んで来る気かよ、舐めんなよガキがァァァァァッッ!!!!」

 

怒号と共に放たれた"原子崩し"。

だがそれを魔理沙は避けると同時に箒から降りて勢いはそのままで麦野沈利に駆けて行く。

 

二人の間の距離は約三メートル。

その時だった。

 

魔理沙は隣を並走する箒をあの時、フレンダに投げたようにサイドスローで正面に居る麦野へ投げた。

 

だがしかし。

それは惜しくも躱わされてしまった。

 

だが、しかし。

だがしかしだった。

 

避けるという行動でできてしまうその隙を見逃さないのが、幻想郷の白と黒の魔女・霧雨魔理沙という少女なのだ。

 

箒を躱わして少し体勢を崩した麦野目掛けて放たれた魔理沙の渾身の右ストレート。

それを、

 

 

麦野沈利はまるで蚊でも叩き落とすかのように体勢を崩した状態で左手で薙ぎ払う。

そして、肉弾戦を仕掛けてきた魔理沙の腹部を思いっきり足の裏で蹴り飛ばした。

 

魔理沙は、くの字で背後にノーバウンドで数メートル吹っ飛んだ後、地面を転がり倒れる。

 

魔理沙「……う、っ……ごは……っ!?クソっ…………なんだよ話が違うぜっ!?ああいう能力者は能力に頼りきったせいで肉弾戦不得意じゃねぇのかよ!?逆だぜ、逆。逆に思いっきり蹴られてこっちが一発貰っちまったぜ!?チッ、読みが外れ_____________あ、ヤバッ!?」

 

腹部から伝わる強烈な痛み。

しかし、それを痛がってる暇はなかった。

『原子崩し』の追撃だ。

 

その追撃を倒れている状態でもなんとか回避して、魔理沙は立ち上がった。

 

そして、

 

魔理沙「ちくしょう、やっぱりアイツとは離れて戦う方が良さそうだ。戻ってこい!!」

 

手を翳してある物を呼ぶ。

それは、箒であった。

 

自由に宙を舞う箒は魔理沙が居る場所へ進む。

そしてとりあえず麦野のから距離を取りたい魔理沙は後方へ走って行った。

箒はその隣を並走する。

 

魔理沙「まずは作戦だ。まずは明確な作戦を立ててから仕掛けなきゃ絶対に勝てない………っ!!」

 

後ろからは何発も何発も原子崩しが飛んでくる。

それが頬、肩、腰、足に数ヶ所掠めてしまっても痛がりもせず緑の自然の中を駆けて行った。

 

 

 

魔理沙「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はー………………ふーっ。なんとか隠れる事に成功したな」

 

あの薄緑色の光線が飛んでこない。

どうやら自分を見失ったようだ。

 

木の影に隠れる魔理沙は肩で呼吸しているが、可能な限り静寂を意識して気配を消していた。

 

魔理沙(………………痛てて。それにしてもアイツの足は丸太でできるのかよ!?人間の生足で蹴られた感覚じゃなかったぜアレ!?あっ……そう言えば仲間を数メートル蹴り飛ばしてたな。………チッ、ちゃんと観察してから仕掛けるべきだった。油断して負けたなんて知られたら良い笑い者にされちまうぜ………………)

 

とりあえず、スマートフォンを取り出して他の仲間に連絡をした。

たった一人であの一つの暗部の連中を仕留める筈だったがバラバラに行動されてしまって一人では仕留められないと考えたのだ。

 

応援連絡を済ました魔理沙はまだ痛む腹部へ掌を当てて摩りながら、息をひとつ吐いてスマートフォンをポケットにしまう。

 

魔理沙(これで良し。応援なんてカッコ悪いがそんな事に拘ってる訳にもいかないしな……………………)

 

ああ、そうだ。

そうなのだ。

 

これは生き死にを互いに賭けた戦争。

私はこうしたいからとか、

こうじゃなきゃ嫌だとか、

 

そんな糞程どうでもいいことに拘るなど愚の骨頂。

 

魔理沙(作戦だ作戦。殺さないで、出来る限り傷付けないでどうやって無力化するか。頭を使え霧雨魔理沙っ!!私にはそれが出来るはずだ。考えろ、考えるんだ…………っ!!)

 

口を手で覆い、瞬きもしないぐらい一点を見つめて集中する。

脳は今まで以上にフル回転する。

 

色んな情報から立てた無数の作戦。

それを合わせて合わせて合わせて、

 

百パーセント成功する作戦を思考する。

 

 

そして、魔理沙はある事に気付いた。

 

 

魔理沙「…………アレ?私いつから頭を使って戦うようになったんだ?」

 

彼女は異変が起きたならその犯人にとりあえず言葉を交わす前に魔法を一発ブチかます。

頭?そんなのは使わない。

うだうだ考えたって勝手に問題は解決してくれない。

 

ならばすることは一つだ。

自分の出来ること、自分が最も得意なことをしてその問題とやらを解決する。

そうやって得意な魔法をとにかく打っ放し続けたのが魔理沙だ。

どこでそれが変わった?

どこで変えようとした?

 

いや違う。

変わりたかったのだ……………………、

 

"彼"のように。

冷静に物事を判断して他とは比べられないほど優秀な頭脳を駆使して何もかもを綺麗に解決してみせる彼がとても眩しく輝いて見えた。

『羨ましい』

そんな素直な感情もあっただろう。

才能にも恵まれ、自分が努力に努力を重ねてやっと手に入れた力を遥かに凌ぐ能力を持つ。

 

"彼"は、、、、、

 

一方通行(アクセラレータ)はどこか霊夢に似ている。

才能に恵まれ何でもかんでも難なくこなす。

 

そんなのを間近で見て『羨ましいな……』と、嫉妬していたのだろうか。

それで慣れない頭を使って一方通行みたいに戦おうとしていたのだろうか。

 

だか、それは______

 

 

魔理沙「__________私らしくないぜ。私はうだうだ考えない。魔法を打っ放し、敵を倒す。それだけだ、それだけなんだよ……………………」

 

才能に恵まれなかった。

魔法に手を伸ばさなかったらもしかしたらこんな世界を知らないどこにでも居る普通のか弱い少女だったかもしれない。

しかし普通の少女として生きる人生を拒み、

 

知られればそのまま心が折れてしまう努力もして、

霧雨魔理沙は手に入れた、『力』を。

幻想郷最強の『技』を。

 

それを否定して今更才能に恵まれている者と同じ戦い方をしようとしていた。

だが、

 

魔理沙「私は魔法を打っ放すしか能がない。それ以外出来ない不器用な女の子だ………………、だがそれで良いんだよ。だってそれが私、霧雨魔理沙だっ!!」

 

短所と長所は表裏一体。

ただの短所と笑うも良し、短所を個性と捉え長所と言うも良し。

 

そうだ。

ただの短所と笑わず、それを褒めてくれたのは誰でもない一方通行だ。

 

魔理沙「あはっ、はははははっ!!アハハハハハははははははははははははははっっ!!!さーて、さーて、さーてとっ!!私は私らしくやるか!!頭を使わず本能と勘のみで戦い、高威力のゴリ押しで敵が才能マンだろうが小難しい戦略を立ててようが悉くぶっ潰す。それが私らしい戦い方だ。なあ、そうだろ一方通行ァ!!」

 

ブワッ!!!

と、風が上へ昇る。

 

勢い良く上空へ箒に乗って魔理沙は飛んだ。

そんな事をすれば敵のいい的だ。

 

しかし、

 

魔理沙「さあ、派手にやろうぜ!!勝つか負けるか。勝負にはそのどちらかしかないからなーッ!!」

 

笑っていた。

楽しそうに、愉快に。

なんのストレスも感じてない笑顔で魔理沙は上空で箒の上に立っていた。

 

 

麦野「現れたと思ったら逃げて隠れてまた現れて、って。どちらかにハッキリしろやァッ!!」

 

一応、麦野は麦野で自分なりに魔理沙がどの辺りで隠れているか計算して探していた。

そしたら、急に空から大きな声で叫ぶ阿呆を発見。

 

木の隙間隙間から見えた白と黒の魔女に、御自慢の能力『原子崩し』を撃った。

 

それを魔理沙はそれと同威力の光線を撃つことによって打ち消す。

 

そして、

それからは一息吐く暇も無いほどの激しい撃ち合いが始まった。

どちらも考えることはただ一つ。

 

『敵を倒す』。

 

ただそれだけだ。

 

 

自由に空を舞う魔女に対して超能力者(レベル5)麦野沈利はそんなに動いていなかった。

もしも、自分の元まであの光弾や光線が届こうとしても彼女の能力によって防ぐ事ができるのだ。

 

学園都市、超能力者(レベル5)・序列第四位、麦野沈利。

彼女の能力名は原子崩し(メルトダウナー)

だが、その能力の正式な名称は粒機波形高速砲だ。

そしてその力は本来『粒子』又は『波形』のどちらかの性質を状況に応じて示す電子をその二つの中間である『曖昧なまま』の状態に固定し強制的に操ることができる。

 

『曖昧なまま固定された電子』は『粒子』にも『波形』にもなれないため、その場に「留まる」性質を持つようになる。

この「留まる」性質により質量を持たない電子が擬似的な「壁」となり、

『曖昧なまま固定された電子』を強制的に動かし放たれた速度のまま対象に叩きつけることで絶大な破壊力を生み出すことが出来るのだ。

まあ、だがアレだ。

簡単に説明するとなれば、

とにかく全身からビームが撃てるよ(☆)。

…………っと、いうことだ。

 

しかし、しかしなのだ。

原子崩しというその力はただビームを撃つだけではない。

その場に原子崩しを展開して強力な防壁を張る事も可能。

光線を撃つのと防壁の展開を同時には出来ないが、それでも超能力者(レベル5)クラスの力ともなれば十分過ぎる戦闘力になる。

 

そう、だから、

彼女は俊敏に動く必要はない。

そんなに動かなくても精密な狙いで強力な攻撃を放てる。

相手の攻撃が来たのなら防壁を展開して防げばいい。

これが超能力者、これが麦野沈利という学園都市に存在する一人の怪物の戦闘方法なのだ。

 

 

魔理沙「…………にしてもアイツ凄いな。いやー、素直にそう思えるぜ。こんだけ弾幕を撃っても当たりもしない。それに比べて私は直撃とはいかないが掠りはしてるしな。これならもう少し本気を出しても大丈夫そうだな…………………ん?」

 

やっと、

 

やっと一息吐く暇ができた。

っというよりは余りにも魔理沙が上空で激しく自由に舞うものたがらまた見失ってしまったのだろう。

麦野は、林の中から上を向いて光線を放っている。

 

しかし、周りの木に邪魔をされて空全部を見れる訳ではないのだ。

木と木、枝と枝、

その間から目に留まった白と黒の魔女目掛けて原子崩しを撃っていたのだ。

 

そして、麦野が魔理沙を少し見失っていた時にだった。

 

魔理沙「あーっやっぱり!!おーいっ、妖夢こっちだこっち!!」

 

上空では応援に駆けつけた魂魄妖夢の姿を発見した。

流石にこの林の中で一人は寂しかったのだろうか、魔理沙は妖夢を見つけると大きな声で手を振って彼女を呼ぶ。

 

だが、それは敵に自分の位置を教えたも同然。

そのため、麦野は声のした方向へ原子崩しを放つ。

 

妖夢「____________もうあの人は……ッ!!」

 

 

魔理沙に向かって攻撃を放たれたといち早く気付いた妖夢は飛翔速度を爆発的に上げた。

すると、薄緑色の光線が魔理沙の体に直撃する前に彼女と原子崩しの間の宙に立つ。

そして腰に吊るした二本の刀を抜刀して、見事その動作のみで薄緑色の光線を弾いてみせた。

 

妖夢「今の感覚的に………下の上、いいや中の下と言った所でしょうか。アレが全力ではなかったにしろ、もう相手の実力は大体理解できました。なるほど、紫様が仰った事は間違いじゃないようですね。あのお方ぐらいの実力者から見て大したことないと言ったのかと思っていましたが、これなら私達でも余裕で屠る事が可能です________________ですが」

 

チラッ、というよりはギラッ!!であった。

ある方向へ妖夢は視線を向ける。

 

それは、魔理沙の居る場所であった。

 

妖夢「___________いくら力の差があるとしても油断しすぎですよ。弾幕ごっこのようなお遊びでは無いのです、こちらには命を奪う意識はありませんがあちらには命を奪う意識はあると十分御理解した上で行動して下さい」

 

魔理沙「怖い怖いよ、妖夢。分かった分かったからその目は止めてくれ。背中を預けた瞬間刺されるかもって不安になるだろ……………」

 

 

そう空で二人が会話をしてる時、地面に立つ麦野は自身が放った能力が弾かれた感覚はしたが、まだ敵の確かな居場所は分からずにいた。

 

妖夢「……それで、応援に駆けつけた私は何をすれば良いんですか?今回は貴方の命に従うよう幽々子様から申し付け受けましたので」

 

魔理沙「ああ、えーと、実は私が見つけた一つの暗部の人数は五人なんだけどさ。一人は私が今戦ってるヤツで、もう一人は倒したんだよ。妖夢には後三人を見つけてもらって無力化したのち捕まえてほしいなー……って。多分まだこの近くに居ると思うから」

 

妖夢「この広大な林の中からたった三人を見つけてくれって、なんですかそのハチャメチャに難しい人探しのお願いは」

 

魔理沙「いやいやいや、考えなしには言ってないぜ?あっち側の方角に行ったってのは確かなんだよ」

 

魔理沙はあの三人が行った方角を指差した。

 

妖夢「はあ……、そうですか。分かりましたバカみたいに少ない情報提供ありがとうございます。それでは私はその三人を探してきますので貴方は貴方で自分の役目を全うしてください」

 

魔理沙「なあ、何かお前の言葉一々刺がないか?私達仲間だろ?友好的にいこうぜ」

 

妖夢「一度負かされた相手に友好的になんてするわけないじゃないですか」

 

魔理沙「まだ根に持ってたのかよッ!?もう忘れろよ大分前の話じゃねぇか!!」

 

妖夢「忘れる?それは無理ですよ。負かされたとしてもその相手なら仕方ない、そう諦められれば良いのですが貴方に負かされたなんて今でも認めたくないです」

 

ふん…………、と鼻で息を吐き二本の刀を鞘に納める。

 

魔理沙「うわー…………、私ってお前の中じゃ評価相当低そうだな………」

 

魔理沙は肩を下げてため息を吐いた。

今まで、白と黒の魔女の少女は紅白の巫女より幻想郷の異変解決を率先して来たのに妖夢からは酷い評価であった。

だが、それには理由があるのだ。

 

それが、

 

妖夢「それはそうでしょう。本業が泥棒の魔法使い(笑)なのですから貴方は」

 

魔理沙「なんだよ魔法使い(笑)って!?しかも本業が泥棒っ!?待て待て、誤解も誤解だぜそれは!!」

 

妖夢「でしたら今回少しは頑張って誤解を解き評価が上がるよう努力して下さい。では、私はそろそろ残りの三人とやらを探しに行きますよ」

 

魔理沙「あ、ああ…………、行ってくれ___________あっ!!言い忘れたことがあった!!」

 

妖夢「なんですか?」

 

もう背中を向けてしまっていた妖夢を呼び止める。

そして、

 

魔理沙「その三人の特徴だよ特徴。金髪の男が一人、全身ピンク色の服を着た黒髪の女が一人、茶髪の白い服を着たちょっと幼い女の子が一人だぜ」

 

妖夢「…………とんでもない事を言い忘れてるじゃないですか。それで良く_______________」

 

魔理沙「___________はいはいはいハイッ!!後でいっぱい文句聞くから早く行ってくれ!!お前とこれ以上話してると胃に穴が空きそうだ!!」

 

もう限界も限界だったのだ。

流石にこれだけぐちぐち言われるとストレスがヤバイ。

 

多分残りの三人がいる場所を指差した。

そして、妖夢はその指差された方向へ飛んで行った。

 

 

空中に浮く箒の上に立つ魔理沙は、

 

魔理沙「うぅ……、もー……っ」

 

テンションが下がる下がる。

額に手を当てて下を向く。

 

妖夢とは余り話をしなかったが、久し振りに話をしたらこの様である。

『泥棒じゃない借りてるだけだぜ』とか、

『魔法使い(笑)ってバカにしてるだろ』とか、

あの時、そんな言葉が頭に浮かんでいた。

だがやはり、もうこれ以上言われたくなかったから早く探しに行くように言ったのだ。

 

 

だが、

 

だか。

 

 

もう、この事は忘れよう。

戦いの邪魔になるから、、、、、

 

 

 

っと、考えた瞬間。

 

地面から空へ多くの光が昇る。

その光を、魔理沙は見覚えがあった。

 

そうだ、あの"女"が自分に何度も何度も撃ってきた光だ。

 

薄緑色の光線。

それが何キロメートルも伸びたレーザーカッターのように下の木を切断して薙ぎ倒していた。

 

魔理沙は、箒に跨がり飛翔して絶大の切断力が隠しきれない閃光のレーザーを避け続ける。

右から、

左から、

下から、

正面から、

後ろから、

 

何度も何度も何度も襲いかかる光。

 

しかし、その光が収まったのだ。

それを不思議と思うだろうか、

 

いいや、違う。

 

あの光は自分を狙っていなかった。

 

 

麦野沈利の狙いは魔理沙ではない。

周りの大木であったのだ。

 

大木を片っ端から薙ぎ倒した彼女の周りにはもう、空を見ても邪魔になる自然の目隠しがない。

 

 

麦野「………みぃーつけたぁ……」

 

魔理沙「_____________ッ!!!!!」

 

ドクンッ!!!!

肉体が生きている限り動き続ける心臓。

 

その鼓動音がたった一度だけ、他の人に聞こえるのではないかと思ってしまうぐらい大きく響く。

その現象が起きたのは、薄緑色の光により壊された自然の中心に立つあの"怪物"と目が合った瞬間だ。

 

 

カエルは蛇に睨まれると動けなくなると言う。

『もう、ダメだ……………』とか、

自分の終わり悟った者は死に忠実になるのだ。

生にしがみつこうと向かい来る死に抗わない。

 

その感覚を麦野の目を合わした魔理沙は感じた。

 

そう、そして。

その一瞬に殺傷能力が高い『原子崩し』は白と黒の魔女の向かって発射された。

 

その数、約七。

数秒気迫に圧倒された魔理沙は判断と行動が一歩遅れる。

だがしかし、直撃はなんとか回避した。

 

 

魔理沙「はああああああああああーッ!!!」

 

 

本格的な戦いが始まる。

叫び声を上げたと共に魔理沙は魔道具を使用した。

 

特大サービスだ。

巨大な魔法陣が背後に展開される。

その中からは星の形をした数百もの光弾が地面に降り注ぐ。

 

だげではない。

魔道具だ。

 

一見、ただの割り箸のような物に魔力を注入することによって自在に操作する事が可能になる。

それは、何かに打つかると爆発を起こすのだ。

 

爆発する魔道具、正真正銘本物の魔法。

それが反撃の隙が無いほど麦野の身に降り注いだのだ。

 

攻撃と防御。

それを同時にこなせない学園都市の"怪物"として君臨していた彼女は、『原子崩し』を光の壁として展開して防御に徹底していた。

 

そして、そして、

 

魔理沙「これは防げるかァッ!!!!」

 

服の中からアレを取り出す。

 

魔理沙の切り札。

ミニ八卦炉だ。

この魔道具の使い道は幻想郷最強の技と謳われる彼女の代名詞『マスタースパーク』を放つ為には必要不可欠の物だ。

 

そのミニ八卦炉を天へ向ける。

そして、

 

魔理沙「マスタースパァァァァァクッッ!!!」

 

山を一瞬で塵に変える極太の白く輝く光線。

それが天へ昇る。

 

魔理沙(マスタースパークを当ててしまえば軽く人間の命を奪ってしまう。だから敢えてマスタースパークを弱めて放つ方法を見出だした。_______それがコレだっ!!)

 

ぐんぐんと昇るマスタースパーク。

だがしかし、それは宇宙空間に飛び出すほどの勢いはなかった。

すると、どうなるか。

 

答えは一つ。

重力に従って地面に落下するのだ。

 

しかし、その落下してる時に一つの極太の光線のマスタースパークが分裂していった。

 

一つの『光線』が無数の『光弾』へ変化する。

魔理沙は威力は落ちるがマスタースパークを光線から光弾に変えるため、態と空へ撃ったのだ。

 

だが、

 

だが、だ。

威力は落ちたとしても、元は幻想郷最強クラスのマスタースパーク。

さっきから放っていた光弾とは比べ物にならない威力だ。

 

魔理沙「さあっ!!流星となって降り注げマスタースパークッ!!」

 

両手を大きく広げ、宙に浮く箒の上に立つ。

 

その上からは、

無数に地面に降り注ぐ光弾となったマスタースパーク。

もう、麦野が自然を破壊していた。

だから、だろうか。

もうこれ以上荒らしてしまっても問題ないと思ったのか、

周りのことなんか考えないで、使用したのだ。

 

 

麦野「クソッ!!」

 

一方。

地面に居る麦野は『原子崩し』の防壁を解除する。

 

そして、『防』から『攻』へ転じた。

『原子崩し』の乱れ撃ちだ。

 

ただ防御しているだけではいつになっても勝ちの目がない。

ならば、攻めに転じるのが一番だ。

 

矢だろうが、隕石だろうが、なんだろうが、

この身に降り注ぐ危険を全て打ち落とす。

 

狙いなんてしない。

可能な限り、

全力で『原子崩し』を乱れ撃った。

 

だが、、、、、

 

麦野「_______________なにっ!?」

 

空中で『原子崩し』と光弾型『マスタースパーク』が衝突する。

が、しかし。

光弾型の、

 

敢えて弱く撃ったマスタースパークに『原子崩し』は押し負けた。

 

結果。

 

麦野「クソがァァァァァァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーッ!!!!!」

 

ニヤリ、と勝ちを確信して笑う白と黒の魔女に吠えた。

その次の瞬間。

 

魔理沙の下にある自然が爆発爆音、爆風、轟、轟、轟、轟、轟に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、マスタースパークが降り注がれた林の中では、、、、

 

 

浜面「…………、は、はっ、はあ、くっ、あ…………。だ……大丈夫か滝壺、絹旗!?」

 

団体で林の中を歩いていたら急に爆撃にあった暗部『アイテム』の下っ端、浜面仕上。

 

砂煙が酷いが、ギリギリ周りの景色が見える。

口を手で押さえながら、時に咳をしながらもさっきまで一緒に居た二人の少女を探す。

 

浜面「クソッ、なにが起きてんだよくそったれ!!」

 

アレスター=クロウリーから依頼を受けてから訳が分からないことだらけだ。

だが、今を全力で"生きる"。

それしか知らない浜面はとにかくあの二人を探すことを止めなかった。

 

すると、

 

 

「浜面、こっちに超居ます」

 

浜面「絹旗!?」

 

声のした方向を向く。

すると、無傷とは言えなかったが、なんとか無事であった絹旗と滝壺を発見する。

浜面は慌てて、二人が居る方へ走っていった。

 

 

浜面「良かった、無事だったか…………」

 

絹旗「ええ、なんとか。ですが、滝壺さんが…………」

 

浜面「……………まさか足を!?」

 

絹旗の肩を掴み立っていた滝壺はさっきので、足を負傷してしまったのだ。

この『異世界』に来てから体調を悪くしていたのに更に足を怪我してしまうとは………………、

 

浜面「滝壺。俺がおぶってやる、さあ」

 

滝壺の前で背中を向けてしゃがむ。

すると、それを見て、

 

滝壺「でも、それじゃあ浜面が…………」

 

浜面「気にするな、今は自分のことだけを考えろ」

 

絹旗「滝壺さん。私もそうした方が良いと思います」

 

滝壺「分かった………………」

 

二人に従った滝壺は大人しくその身を浜面の背中に預けた。

 

浜面(_______うおっ!?背中に柔らかい感触が!?)

 

こんな状況だというのに、やはり思春期か。

滝壺の胸の膨らみの感触にどこか気を引いてしまう女性の甘い匂い。

それが今の浜面の脳内をいっぱいにする。

 

浜面「……よ、よーし。行くぞ絹旗」

 

絹旗「浜面、今やらしいこと超考えてませんでしたか?」

 

浜面「バッカ!!そ、そ、そんな訳ないだろ………ッ!?」

 

動揺が隠しきれてない。

顔が赤くなり、どこか目に元気がある浜面を横目で見るが仕事が先だ。

早く一方通行の殺害を実行しなくては、

 

 

砂煙もなくなり、歩く場所がギリギリある林を進む。

 

「運が良いですね。魔理沙さんの空から地面全方位に放った攻撃の中に居たというのに歩けるぐらい傷が浅かったようで…………」

 

浜面「絹旗!!」

 

絹旗「言われなくても超分かってます!!」

 

どこから現れたとか、

そんな疑問を抱かなかった。

 

彼ら、彼女らの前に音もなく気配を感じさせず突然現れた二本の刀を腰に吊るした銀髪の少女。

その少女の目が語っていた。

 

『貴方達を斬りに来た』と。

 

絹旗「浜面、貴方は滝壺さんをとにかくここではないどこかへ、安全な場所へ運んで下さい。滝壺さんはこの何も知らない世界で唯一第一位を最速で見つけることができる能力者です。私はコイツを片付けたのち二人に合流します」

 

浜面「…………、信じてるからな。絶対無事に終わらせて帰ってこいよ」

 

絹旗「下っ端のくせに生意気に超言いますね。…………さあ、早く」

 

滝壺「絹旗………………」

 

背中を向けてとにかくその場から逃げた無能力者、浜面仕上。

彼におぶられている滝壺は、自分達を逃がす為に敢えてあの刀少女の相手を引き受けた絹旗最愛の背中を見る。

 

が、しかし。

二人には戦う力はない。

怪物と怪物が生き死にを賭けた戦争の中に飛び込める力がないから、取るべき行動は逃走であった。

 

 

妖夢「あの人達とはとても良い関係のようですね。敵ながら仲間の為に私の前に立つ貴方が美しいと思えます」

 

絹旗「さっさと終わらしてあの二人に合流したいので、申し訳ありませんがここで遺言を聞く前に殺しますよ」

 

 

臨戦態勢の二人。

すーっ、と緩やかに人に振るうには余りにも危険な刀を抜く妖夢。

しかし、抜いた刀は一本だ。

 

対する絹旗最愛は能力を発動する。

彼女の能力、それは窒素装甲(オフェンスアーマー)

窒素を自在に操る能力である。

その能力を使うことにより、その能力名通り強力な装甲を自分の周りに張ることができるのと、拳に纏うことにより一撃で人間の頭を吹っ飛ばす威力を引き出せる。

 

 

 

そして、そして、

 

妖夢は絹旗に接近して刀を振り下ろす。

しかし、

 

絹旗「先に超言っておきますが、そんな古い武器を使ってるようじゃ私には傷一つ付けられませんよ。私は接近戦なら超無敵ですっ!!」

 

ガキンッッ!!!

と、絹旗の体に当たる直前に横に振るわれた刃が宙で止まる。

そう、これが彼女の窒素装甲の力である。

 

そして、お返しだと言わんばかりに絹旗は能力を纏った拳を放つ。

それを妖夢は刀を盾にするようにして防御する。

 

だが、あの細い腕から放たれたとは思えない程妖夢の体は背後に振っ飛んだ。

 

絹旗「…………まともに受けたのに壊れないとは、見たところ随分頑丈な(なまくら)ですね」

 

妖夢「ええ、まあ。私の自慢の刀です」

 

あの一振り。

それで彼女の大体の力を把握した。

 

ダメだ、ダメなのだ。

"弱すぎる"。

もしも、全力じゃなくてもあの周りの防壁を突破するのは容易い。

が、しかし。だがしかし。

今回の目的は殺害ではない、捕獲だ。

 

刀は命を奪うにもってこいの武器である。

料理に使う包丁ですら人間の命を奪うことができるのに、包丁より長くそして鋭く研がれた刀。

しかも妖夢の持つ刀は妖怪でも十人以上の敵が居ても一度に全て下半身上半身へと、真っ二つにできる恐ろしくなんでも斬れる刀なのだ。

その力を全て引き出せる妖夢でも、加減して刀を振ることができるが目の前の彼女は余りにも"弱すぎる"。

『加減して振るっても、命を奪ってしまうかもしれない』

 

そう心配した直後だ、

 

接近戦が得意な彼女が仕掛ける。

妖夢の元へ駆けて、そして拳を振るう。

 

それを、

 

妖夢(動きが単調で無駄な動きが多すぎる。能力に頼りきった戦闘をしてきた証拠だな…………)

 

余裕で避ける事ができる。

なんなら隙を見付けて反撃もできてしまう。

しかし、

 

妖夢(………………、刀を使うなら峰打ちの方が良さそうか)

 

殺す訳にはいかない。

腰にあるもう一本の刀を坂手で抜く。

 

逆手で持つ、刀。

順手で持つ、刀。

 

逆手と順手。

片方片方持ち方が違うがこれも列記とした二刀流の持ち方である。

そして、峰打ちを意識して刀を振るった。

反撃のチャンスは何度もあったから、その反撃のチャンスがあったときに刀を振るったのだ。

 

だが

 

ガキンッッ!!ガキンッッ!!

刀は当たることはなく弾かれてしまった。

 

 

妖夢「ふー…………っ」

 

絹旗「最初に言ったはずですよ、そんな古臭い武器では私を覆う装甲を破れないと」

 

妖夢「……そう………、ですか__________」

 

 

_________刹那。

 

瞬きすら遅いと感じるその一瞬であった。

超人ですら反応できるかどうか分からない一刀があった。

そしてその動作により刀の切先から発生した鋭い斬撃波。

それが絹旗最愛に"届いた"。

 

 

妖夢「貴方は接近戦なら超無敵なんですよね。古臭い武器である刀で傷を負った今でもその台詞を吐けますか?」

 

絹旗「_________この…………ッ!!!!」

 

どんなバカでも分かる挑発であった。

 

首にある切り傷。

傷は浅いがそれは先程の斬激波によって切られた傷から垂れる血液を触れ、

手に付着した赤い液体を見て絹旗最愛は知った。

 

『今、目の前に居る奴は"いつでも"自分の首を切断することが可能』だと。

目に見えなかった。

自動防衛の窒素装甲が反応出来なかった斬激波でこの傷である。

ならばその斬激波を発生させる程の神速の刃がもし、

 

そう、もしも直接この身に振り下ろされたら……………

 

 

間違いなく、右と左

左右に肉体は真っ二つになるだろう…………。

 

妖夢「これでもうお気付きになりましたか?死にたくなかったら降参して下さい。そうすればこれ以上傷を負うことはありません」

 

絹旗「生憎ですが、そう易々と降参するほど素直に生きてきてないんですよ私は…………ッ!!!」

 

 

ガキンッ!!!!!

と、鋼と鋼。鉄と鉄が打つかったような音を二人は響かせる。

どちらもやらねばいけない事がある。

 

 

だからここで譲るわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一方である。

不調子のピンクジャージを着た滝壺をおぶってとにかく進むことを止めない浜面仕上は

 

浜面「……………………、ッ!?」

 

あるものを発見して慌てて少女を背中に担ぎながら倒れた木の草影に姿を隠す。

息もできるだけ小さくした。

 

浜面(早く通り過ぎてくれ…………っ!!)

 

草と枝の間から空を見る。

今、彼が視線を向けてるのは

 

翼もなく、なにかの特殊能力で浮いているであろう紅白の巫女の服を着た茶色が少し入った黒髪の少女である。

浜面はその少女見た瞬間理解したのだ。

『アイツも自分達の敵だ』と。

 

それを直ぐ様察知した力もない無能力者は隠れるしか選択肢はないのだ。

 

 

浜面(…………滝壺の様子がさっきから酷くなってく一方だ。この世界にも医師が居るだろうからソイツに見せるしか助ける方法はない。だが、どうする。どうやってこの訳の分からない広い世界で携帯も使えない状態で医者を探すってんだ)

 

息を殺しながら、自分の背中でぐったりしてる滝壺を見る。

病気かなんなのか分からないが苦しんでいる。

そんな彼女を助けたいと思っている浜面は時が進むにつれ焦る一方であった。

 

そして、その時、

 

浜面「_____________う………ッ!?」

 

もう一度、空に目を向ける。

瞬間。

 

紅白の巫女の少女と目と目が合った。

あのまま上を通り過ぎたのかと、思っていたが宙に立ち止まっていたのだ。

 

浜面(ヤバイヤバイヤバイッ!!どうする、どうすれば良い!?)

 

今日一番の大パニックだった。

特別な力なんてない、

持っている武器は袖腕に隠してある拳銃が一丁。

そんなのが通用するかしないのかは分かっていた。

 

 

間違いなく通用しない。

 

この世界の連中は強い。

あの怪物麦野やフレンダ、それに絹旗があれから自分達の所に戻って来ない。

いつもなら、悪態のひとつやふたつ吐いて早く帰ってくるのに今回は全然帰ってくる気配がない。

思いの外手こずっているのだろう。

 

そんな連中なのに、だ。

彼女らより遥かに弱い自分になにができるのか、

 

 

だが、それでも、と。

ここですんなり諦めることは出来なかった。

 

浜面「…………クソッ!!やってやる、来るなら来い!!」

 

袖の中に隠していた拳銃を取り出して握る。

 

 

が、しかし。

 

浜面「…………………………え?」

 

宙に居た巫女の少女はどこかへ行ってしまった。

 

浜面「もしかして、目が合ったと思ったけどひょっとして俺の勘違い……?」

 

 

まあ、

 

危機を回避したと思っておこう。

そして、浜面はまた滝壺を背中に担ぎかながら林の中を進むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、、、、、

 

鋭く、長い普通の人間が扱うのが難しい刀を巧みに振るう少女とそれを躱わすのがやっとの少女が居る場所では、

 

妖夢「________フッ!!!」

 

絹旗「う……く……ッ!!」

 

暗部『アイテム』絹旗が劣勢であった。

命を奪う気はないと言われても、

だからと言ってあの刀に当たっても大丈夫ということではない。

 

一太刀一太刀確実に躱わす絹旗に、

 

妖夢「はあ………さっきから無駄な足掻きに必死ですね。どんなバカでももう気付けますよ?貴方と私の間には何年経っても埋めれない差があると」

 

妖夢は疲れたような、

呆れたような表情でひとつため息を吐き動きを止める。

それに、だ。

 

絹旗「ええそうですね。悔しいですが私と貴方とじゃ歴然たる差があるそうです。『世界は広い』とか『上には上が居る』という言葉はこういう場面で頭に浮かんでしまいますね。ですが_____________」

 

そして、絹旗は腕に巻かれたシルバーのアクセサリーを取る。

それはこの異世界にこれた道具でもあるのだ。

その大事なシルバーアクセサリーを、

 

思いっきり目の前の銀髪刀娘に投げつけた。

だが、それをバカ正直に受けるほど優しくない妖夢は投げつけられた物を刀で真っ二つに切断した。

左右に割れて飛んで行った学園都市の上層部に飼われてる科学者の努力の結晶と言える白物。

 

そして、

 

絹旗「____________絶対に勝ち目がないと言うわけではないですよ」

 

妖夢「何故その自信に溢れた顔ができるのか、訪ねても?」

 

絹旗「貴方の一つ一つの攻撃に殺気が込もってない。つまり、貴方は私を殺す気はない。それと先程からしつこく降参を進めること。この二つを掛け合わせての憶測ですが、貴方は私を……、いや"私達"を捕らえに来たのでは?」

 

妖夢「もし、それが仮にあっていたとしても私に勝てる見込みはないと思われますが?」

 

絹旗「殺さないように、並べく傷付けないようにと甘ったれた考えで戦ってる相手に対してこちらは遠慮なく全力で戦える。それは大きな差と言えるのでは?」

 

妖夢「………………、手加減してる相手に全力で挑めるから力の差があっても勝てると…………。まあ、確かに貴方の仰ってることは正しい。正解ですよ。私はあるお人からの命により貴方達を捕らえに来ました。しかし___________」

 

手に持つ二本の刀を鞘に納める。

そして、

 

妖夢「私はその人の期待を裏切るつもりはありませんよ………?」

 

 

刹那、

一本の刀を高速で抜いた。

 

絹旗「ッ…………………………、」

 

絹旗最愛は言葉を失う。

それは驚愕のあまりであったからである。

 

抜刀。

下から縦に抜かれた刀で発生した斬激波。

それは自分の真横の大地を綺麗に抉るように切断していた。

明らかにさっきから自分に振られていた攻撃より強力だった。

 

ゆっくり、ゆっくりと眼球を動かして斬激で抉られた大地を見る。

頬からは冷たい汗が垂れる。

手も足も今はピクリとも動かない。

 

金縛りにかけられたような気分だった。

 

何故、絹旗最愛はそうなってしまったのか。

妖夢の放った攻撃に込められた『殺気』が原因だ。

 

あれは確実に殺すため、命の灯火を消すために放たれた攻撃。

それが自分の真横を通り過ぎただけでも怯えてしまうのは無理もない。

 

そして妖夢はまた刀を鞘に納め、

 

妖夢「とても良い情報をご提供してあげます。この幻想郷にはとびきり優秀な腕をお持ちの薬師がおりまして、その人にかかれば腕や足が消えようが、上半身下半身と二つに別れようが元の体に完璧に治すことができるのです______」

 

______だから、と。

そう続けて、

 

妖夢「________どうかご安心下さい。貴方は決して死ぬことはありません。しかし死ぬほど痛い痛覚を味わうだけです」

 

刀に手を添えて構えた。

妖夢の瞳の緑色の中に深紅の色が混じる。

その眼光には殺気が込められていた。

 

そして、、、

 

ダッ!!と強く大地を蹴る。

その瞬間、刀を持つ少女を中心に地面が沈む。

 

そして、

殺気を強く打つけられたからか知らないが体が固まってしまった絹旗の前に瞬時に移動、

 

 

絹旗(あっ、死___________)

 

突然目に見えない速度で距離を詰められ鞘から抜かれた刀を左斜め上からの振り下ろす銀髪剣士の少女の姿をその瞳に映した絹旗。

彼女はその時に一番最初に思ったことは"回避"でも"反撃"でもなかった。

『死』である。

 

いくら峰打ちと言えど、だ。

刀は刀。鋼の塊だ。

そんなので神速と呼べる速度で殴りつけられたら怪我で済まないだろう。

 

 

でも。ここで予想だにしなかった事が起きた。

 

振り下ろされた刀が宙で止まったのだ。

 

 

絹旗「…………ッ!?」

 

あの振られた刀で発生した風圧だけが顔面を襲う。

が、しかし。

それだけで済んだのは幸運と言えるだろう。

 

一方。

自分の左後方側から手を伸ばし刀を"素手"で止めたその巫女を確認した妖夢は、

 

妖夢「__________なんのつもりですか霊夢さん………」

 

霊夢「なんのつもりはこっちの台詞よ。もしもこの刀がその子に届いたら間違いなく内部の骨は粉々に砕け最悪命を落とすかも知れなかったのよ。忘れないで、私達の目的はあくまで捕獲よ。殺害じゃないの」

 

妖夢「………………、」

 

ぱっ、と。

刀から手を離した霊夢を横目で見た後に鞘に刀を納める。

 

霊夢「アンタは真面目過ぎるのよ。少しは気を楽にしなさい。だからすぐに熱くなっちゃうの、本来の目的を忘れるぐらいにね」

 

とりあえず敵の目の前で悠長に会話をする訳もいかないので妖夢と霊夢は同じ方向へ跳躍して移動してから地に立った。

そして、

 

霊夢「ねえ、あの子が一方通行が言っていた…………、えーと、あんこだっけ?」

 

妖夢「暗部です。そんな甘そうな敵が居るとは聞いてません」

 

霊夢「そうそう暗部ね。その暗部ってのはあの子だけ?」

 

妖夢「魔理沙さんが言うには見つけた一つの集団は合計五人と聞いてます。そして魔理沙さんは一人は倒しもう一人は現在戦闘中。私も見ての通り一人と戦闘中ですが、後二人。男女二人がどこへ逃げています」

 

霊夢「ふーん。大体状況は分かったわ。妖夢、アンタその逃げてる二人を追ってちょうだい。ここは私が引き受けるから。実はここに来る途中に見かけてるのよね、その残り二人を」

 

妖夢「………………、なんか面倒事を私に押し付けてません?」

 

霊夢「違う違う。ほら、アンタこういう捕まえるって苦手そうだから追う方をさせようかなって。じゃあ、ここからあっち側にそこまで遠くない場所に居ると思うからよろしく☆」

 

妖夢「はあ……。今回はこんな役ばっかりだ…………」

 

霊夢の指差す方向へため息を吐いた後に飛んで行った。

まあ、確かにある程度傷付けないように捕まえるのは得意ではないと今日分かったし、

ならば、ただ人を探すだけの方が自分にあっているかもしれない。

 

霊夢「さて____________」

 

そして、

妖夢を見送った霊夢はふわふわニットの茶髪少女へ視線を向けた。

 

霊夢「____________そういうことだから。今からは私がアンタの相手よお嬢ちゃん」

 

絹旗「……………………」

 

霊夢「まあ、そう気張んなくて良いわよ。直ぐに終わらせてあげるから」

 

絹旗「ここの人達は誰も上から目線なんですね」

 

霊夢「だってアンタごとき、私の敵じゃあないもの」

 

絹旗「っ__________」

 

限界の限界だ。

さっきの銀髪の剣士娘にバカにされまくり、次は変な巫女に見下される。

分かってはいる。

確かに自分はさっきの女剣士にも、この巫女よりも弱いだろう。

が、しかし。しかしである。

だからと言って見下されるのは気持ち良くない。

 

絹旗は地面を蹴り直線に突っ込む。

その時、窒素装甲(オフェンスアーマー)を器用に使い移動速度を加速させる。

まるで大砲から発射されたように突っ込むと次は力一杯握った拳を繰り出した。

 

霊夢はその拳を片手で受け止める。

 

しかし、

 

霊夢「……、っ!?」

 

全然威力はないと思いきや衝撃が背中まで伝わった。

そして霊夢の体は背後に吹っ飛ぶ。

 

霊夢「…………、あら。なかなか____________」

 

着地して視線を正面に向ける。

すると見えたのは、あと数ミリで顔面に直撃する拳であった。

 

そして、

 

避ける暇もなかった霊夢は思いっきり顔面を殴りつけられ背が地に埋まる形で倒れた。

 

絹旗「格下と舐めたからこうなるんですよッ!!」

 

倒れている巫女の顔面に絹旗は拳を振り下ろした。

彼女のか細い腕から放たれているとは思えない威力の拳。

それがもしも真下に振り下ろし、殴られる場所が顔面だとするの間違いなくぐちゃぐちゃに潰されてしまうだろう。

 

しかし。しかし。

 

絹旗「____________なっ!?」

 

自分の拳は間違いなくあの生意気な巫女の顔面をぐちゃぐちゃに潰してる。

そう思っていたのに、

 

自分が殴ったのは地面であった。

視界には自分の拳を中心に亀裂が入った地面。

そのことに口を開けて驚愕した。

すると、自分の背後から声がした。

 

霊夢「いやー、ビックリした。すごい能力ね、久々に鼻血なんて出したわ」

 

絹旗「こ_____________ぐ……ふァ………ッ!!」

 

完全に振り返ることは出来なかった。

絹旗は背中から蹴られたのだ。

しかし。彼女には自動防御の窒素装甲(オフェンスアーマー)がある。

 

だがしかし。

その能力は発動しなかった。

 

絹旗「な、…………なんでっ!?」

 

顔面から地面を滑るように吹っ飛んだ絹旗は鮮血に染まる顔をあげる。

すると鼻から垂れた血を腕で拭い紅白の巫女は、

 

霊夢「自分の防御能力が機能しなくて驚いた?その答えを教えてあげるわ。それはね、アンタの周りの体を守るようにある壁のようなものを私の能力で浮かしたのよ」

 

絹旗「オアァッ!!」

 

霊夢「そしてもうアンタは私に指一本触れられない」

 

立ち上がり拳を握り駆けてきた絹旗に対して霊夢は棒立ちであった。

そんなことをしてればあの強力な拳が直撃する。

 

だが、、、

 

絹旗「_______っ!?」

 

巫女目掛けて放たれた拳は彼女の周りに到達すると、何故か空へ逸れてしまった。

 

そして拳が思わぬ所へ逸れてしまい体勢を崩した絹旗の腹部へ強烈な巫女の右拳が突き刺さる。

 

絹旗「う……ご………はっ……!!」

 

今まで受けたことがないほど強烈な拳。

絹旗は膝から崩れ落ち胃から込み上げてきたものを必死に口を押さえて堪えようとしたが、、、、

 

絹旗「ぅぅ…………うっおぁぁぁ………ッ!!」

 

目尻に涙を浮かべて地面に嘔吐した。

 

その姿を見ながら、

 

霊夢「あっははは!ごめんなさい。狙いが外れちゃった☆ちゃんと狙った場所に届いていたら一瞬で眠らせてあげられたのに、大丈夫?」

 

絹旗「…………くっ!!」

 

顔が鮮血に染まろうが、

みっともなく嘔吐した姿を晒そうが、

 

少女は諦める訳にはいかなかった。

今の体勢で繰り出せる攻撃。

立ってる相手に有効な蹴り技。

 

絹旗は水面蹴りを繰り出した。

 

だが、、、

 

軽くジャンプすることで楽々躱わされ

そして顔面を横から蹴りつけられて地面に頭を激突させる。

 

絹旗「……ま、けれ…………ない……っ」

 

もうフラフラだった。

気を抜けば一気に意識を失いそうだった。

 

視界が真っ赤に染まりぐにゃぐにゃに歪む。

だが、絹旗は立ち上がる。

 

彼女の姿は痛々しかった。

両目は頭から流れる血で真っ赤になり、頬は受けた蹴りにより膨れていた。

 

絹旗「…………た……き…………つぼ……さ、んを_______________」

 

彼女は分かっていた。

自分達にはもう"帰る方法がない"と。

 

学園都市統括理事長に"捨て駒"にされたのだと。

だがそれでも、、、

 

この事はきっと他のメンバーは知らないだろう。

だがなにか、

自分一人でも希望があると信じてこの名も知らない世界で必死に使命を果たそうとしたのだ。

 

そう。

あの銀髪剣士の少女が言った腕の良い医師。

ソイツに見せればきっと滝壺理后は回復するであろう。

だからその医師の居場所を敵を倒し聞き出す。

 

それまではいくら自分より遥かに強い相手だろうと倒されるわけにはいかない。

 

 

だか………………、

 

 

前から力無く倒れたふわふわニットの茶髪少女

 

 

 

霊夢「…………ああ、そうだったの。アンタは自分のためじゃなく誰かの為に戦っていたのね」

 

意識を完全に失った少女をそっと抱きかかえた。

 

霊夢「胸を張っていいわよ。アンタは立派だった。だから、もう安心して眠りなさい」

 

 

そして、霊夢は絹旗という少女を抱いて妖夢が向かったあの残りの男女二人がいるであろう場所へ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「ちくしょう!!なんだよアイツ化け物かっ!?」

 

 

所変わって魔理沙はというと低く飛行しながら倒れた木を上手く利用して薄緑色の攻撃的な閃光を避けていた。

 

そうだ。

あの攻撃を耐えたのだ。

 

"ヤツ"は。

 

魔理沙「ン…………く…………ッ!!」

 

光を避けると箒から地面に転がり落ちてしまった魔理沙。

 

魔理沙「クソ…………、私としたことが……」

 

肩を使って呼吸をしている。

正直な話、体力にもう余裕がないのだ。

 

 

そして、地面に片膝を付けて休んでいると

 

 

パキ……、パキ……、スタ……、スタ……、

 

 

誰かがこちらへ歩く音がした。

その方向へ顔を向けると、

 

服は所々破け汚れている、

頭からは血が流れている、

超能力者の怪物が立っていた。

 

麦野「はあ……………はあ………はあ…………」

 

怪物も肩で息をしていた。

相手も体力がなくなってきたのだろう。

 

 

麦野「………………………」

 

魔理沙「……………………」

 

顔を合わせた両者。

だが。

 

指一本も動かさず静寂だけがそこにはあった。

 

そして、

『怪物』麦野沈利、

『魔法使い』霧雨魔理沙、

 

両者同時に動く。

 

 

麦野「ォォォァァァああああああああああああああああああああああアアアアアアアァァァッッ!!!!!」

 

魔理沙「『威力軽減型』ミニマスタァァァァァァァァァスパァァァァァァァクッッッ!!!!!!」

 

麦野の周りにある小さな薄緑色の球体が一ヶ所に集まり、それを全力で前方に放つと一つの極太の光線となった。

それに対して魔理沙は切り札と呼べるミニ八卦炉を取り出し殺さない程度に威力を軽減した『マスタースパーク』を放つ。

 

光線と光線。

光と光。

その二つが二人の間で激突する。

 

魔理沙「…………く、……っ……!!」

 

後ろへ後ろへと体が押される。

だがガッチリと地面に足を付けて堪えていた。

 

だが、、、

 

麦野「死ねやクソガキがァァァァァァァッ!!!」

 

自分に迫り来る『原子崩し』の威力が跳ね上がり………、

 

魔理沙「___________ぅぁ…………ッ!?」

 

マスタースパークは押され負けてしまい白と黒の魔女は薄緑色の光線の中へ消えた。

そして、、、、、

 

『原子崩し』は大気を一直線に飛んで行った。

 

 

麦野「ん…………ククッ、アハハはははははははははははッ!!!」

 

まるで宝くじにでも当たったように、

高揚感が溢れたように清々しくゲラゲラ笑っていた。

 

居ない。

もう怪物女の前に誰も居ない、

何もない。

だが、

 

「あーららー、スゴイわねぇアンタ。魔理沙を吹っ飛ばすなんて中々よ」

 

拍手音と誰か第三者の声がこの場に現れた。

 

麦野「____________________あ?」

 

声が聞こえた方へを首を向ける。

そこには微笑んだ様子で手を叩く、倒れている木をまるで公園に置かれているベンチのようにして座る紅白の巫女が居た。

 

麦野「お前、あいつの仲間か…………」

 

霊夢「まあそんなところよ。つまりアンタの敵って訳」

 

麦野「__________チッ!!」

 

舌打ちがあった。

そして『原子崩し』を放つ。

しかし、霊夢はその光を座った体勢でしかも素手で軽々と弾いて見せた。

 

麦野「クソがァッ!!!!」

 

霊夢「ハイハイ、焦らない焦らない。そんなに慌てなくても相手してあげるわよ。だけどその前にあのバカと決着をつけて来てね。そう、だから"今は"アンタの相手は私じゃない」

 

自分に向かって放たれた無数の光線を掻い潜り点と点が移動したみたいに、

霊夢は麦野の目の前に急接近した。

先程まで座っていた木は穴だらけだった。

だがしかし、あんな単純な真っ直ぐに飛ぶだけの光線。避けれないほどでもない速度。

幻想郷を護るという大義がある紅白の巫女にとっては今まで闘ってきたヤツらの弾幕に比べれば止まって見えるほど遅かった。

だから座っていた状態だとしても能力攻撃を避け、怪物麦野の目の前に立つなど造作もないことなのだ。

 

そして最強の巫女、霊夢は

 

霊夢「______________フッ……、次に魔理沙と戦う場所は空よ。それじゃあ行ってらっしゃーいっ☆」

 

彼女の両肩に手を乗せたと同時に能力を発動。

そして麦野沈利は重力の向きを無視して上へ体が浮いて行った。

 

だが、相手の思うがままにされるほど超能力者(レベル5)は甘くない。

原子崩し(メルトダウナー)』を紅白の巫女に向けて撃った。

が、しかし。

その能力は反動が思ってる以上に凄く大きい。

麦野沈利だから立ちながら放つ事ができると言っても過言ではない力。

もしもこの能力を他の誰かが手にして考え無しに使うと余りにも大きな反動により自分の体が背後に吹っ飛ぶ。

 

しかしだ。

今、彼女は無重力。

その状態で上へと強力な反動が来るとどうなるのか?

答えは簡単だ。

いくら馬鹿力の持ち主でも反動を堪えようと地に足を付けることができないなら関係ない。

そのまま上空へ一直線に飛んで行くのだ。

 

そして、

 

霊夢「魔理沙は誰よりも負けず嫌いだし、一度目をつけられたらしつこいったらありゃしない。けど私は魔理沙以上に努力できる人間を知らない。努力を否定する私に見せてよ、努力の天才にして"幻想郷(いち)"の魔法使いさん。努力は才能を凌駕するのだということを」

 

霊夢は風へ流すようにそう呟いた。

その時、眼を瞑っていたが笑っていたのだ。

 

そして背を向ける。

今後どんな展開になるかまるで知ってるように………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「_______________くっ!!」

 

これ以上、体が上へ持ってかれないように空へ『原子崩し』を放ち上への勢いを殺すことができた。

 

麦野「……………………、生きていやがったか」

 

「霊夢の仕業か。チッ、余計なことしやがって。…………っと、言ってやりたいが今回ばかりはナイスと褒めておくか」

 

上空では原子崩しの光の中へと消えた筈の白と黒の魔女と出会った。

箒に跨がっていたが、麦野の姿を確認すると魔理沙はその上に立った。

そんな魔女に麦野は、

 

麦野「あの一撃で完璧に捉えたはずだ。ちゃんと手応えもあった。なのに、どうやってあの状態から生還することができた?」

 

魔理沙「へへっ、簡単な話だよ。押し負けると分かるや否や私は瞬時にお前に撃っていた光を自分の体を守る鎧のように展開したんだ」

 

戦いの中でも進化する。強くなる。成長をするのが霧雨魔理沙なのだ。

実は自分の撃っていた『マスタースパーク』を光というエネルギー物質を体を守る壁として纏ったのは、麦野が『原子崩し』を防壁にしてるのを思い出し、瞬時に頭の中の考えを現実したのだ。

魔女の彼女は言うだろう『これはパクリじゃない、オマージュだっ!!』と。

 

麦野「…………、」

 

魔理沙「お前の能力を箒で弾いた時に見ただろ?私は光を放つこともできるし何かに纏わせることもできる」

 

麦野「だけど……、私の攻撃を全部防げたって訳じゃなさそうね」

 

くいっ、と麦野が顎で差したのは腕である。

詳しく説明するならば右腕だ。

 

特殊な力により宙に浮く箒の上に立つ白と黒の魔女。

しかし彼女の右腕は指先から肘まで皮膚が焼け焦げていたのだ。

 

魔理沙「ハハハっ、まーな。攻撃から身を守るために光を自分に纏うなんて初めてだったんだ。けど初めてにしては上出来だったんだぜ?これでも」

 

麦野「………………、」

 

初めて会ったときからそうだった。

魔女みたいな格好をする目の前の少女は良く笑う。

それは緊張感が無いからと麦野は感じていた。

 

初めての経験。

学園都市の最高位に君臨している超能力者(レベル5)の自分に手加減でもされてるような感覚。

 

それは麦野の逆鱗に触れるには充分過ぎた。

 

だから、爆発した。

炸裂した。

噴火した。

 

能力を全解放する。

 

光が輝く。

熱が籠る。

血流が加速する。

 

 

麦野「じゃあ次こそお前を塵も残さず跡形なくこの世から消っ去ってやるよ」

 

魔理沙「正真正銘最終ラウンドって訳か。さあ、美しく、可憐に、魅了する闘争を繰り広げようぜ」

 

幻想郷の荒れてしまった一帯の自然。

その空が昼間にしては眩しく光を放った

 

それは太陽が生み出した光ではない。

能力によって生まれた光だ。

 

光線と星の形をした光弾を放つ、霧雨魔理沙。

原子崩し(メルトダウナー)』と呼ばれる能力で放つ光線。

 

麦野はもう空で戦うのに慣れていた。

光の攻撃を放てばその反動で後ろに体が飛んでしまう。

しかしそれを上手く利用することにより、宙を自由に移動する。

霊夢の力があるからだが、

無重力状態なのに自分の意思で思う場所に動けるように短時間で出来なのは流石と言えるだろう。

そして魔理沙は元から空を自由に飛ぶことが可能だが今まで受けたダメージにより少し動きが鈍っていた。

反応も遅れている。

 

魔理沙(最後の……、次が今の私が繰り出せる最強にして最後の一撃だ。これでもしダメだったら私は負ける。…………確実にな)

 

距離を取りながら箒の高度を高くした。

そして周りに赤色の星形をした光を五つ、五角形の点のように設置する。

 

次の瞬間。

ぐいっ、と。箒の先端の方向を変えた。

狙いは別の世界から来た"怪物"。

魔理沙はその怪物目掛けて勢いよく突っ込む。

その時に赤色の星から光線が射出。

 

だがこれで終わりではない。

魔理沙は言った『最後の一撃』だと。

こういう時はもしも失敗しても自分が一番誇れる一撃で負けても悔いはない。

そう思える一撃に全てを賭けるのだ。

 

魔理沙の一番誇れる一撃。

それは、、、、

 

ミニ八卦炉をまだ感覚が残っている左手に持つ。

そして、その手に持つ魔理沙の宝物を言える物を、

なんと自分の後方へ向けたのだ。

 

そして、宣言する。

 

魔理沙「一気に飛ばすぜッ!!『威力最大』マスターァァァァスパァァァァァクッ!!!」

 

箒を飛ばす力と、

マスタースパークの撃つときに生じる反動。

その二つの力を融合させ、銃弾よりも、

砲弾よりも、弾幕よりも、

はやく、早く、速く、飛翔速度は加速して魔理沙は流星の如く空を翔ける。

 

しかし。

ただその行動に黙っている訳がないのが麦野沈利。

もうこの空でも戦い方のコツは掴めた。

 

原子崩し(メルトダウナー)』の反動を上手く利用してなんと、

怪物は魔理沙が突っ込んでくるのなら迎え撃つのではなく、距離を取ったのだ。

 

麦野(お前のやりたいことは分かってる。特攻。突撃だろ。能無しのガキが良くやる事だ。なら、充分誘き寄せて確実に体をブチ抜いてやるっ!!)

 

彼女は能力も強力だが頭も回る。

天才とは、そのような者に相応しい称号だ。

 

麦野は赤い光線を避け、絶対に背を向けずに後方へ移動する。

そして、魔理沙は最後の力も振り絞る。

 

光のように、

星のように、曲がりもせず、揺らぎもせず、

ただ真っ直ぐに……、直進あるのみ。

 

もの凄い速度で突っ込んでくる魔理沙に麦野は光の攻撃を放つ。

発射された光線は全部で六発。

だがそれは端から当てる気が無かった。

 

魔理沙の逃げ場を無くすために撃ったのだ。

 

麦野「さあこれで逃げ場は失った!!良かったなーッ!!穴を増やしてやるから精々それを上手く利用して新しいプレイでも探してるんだなァ!!まあ、生きてたらの話だがなァ!!!」

 

上、左、右、下。

斜め下。斜め上。計、六発。

全方向に当たると火傷じゃ済まないの光線がまるでボクシングのリングロープのように逃げることを許さない。

しかし、魔理沙に逃げるなんて選択肢は最初から無い。

 

『敵を倒す』そして、『無事生きて帰り、また皆で酒を飲んでバカ騒ぎをする』。

それだけしか考えていない。

 

魔理沙「逃げ場なんて必要ない。私はこの最後の一撃でお前に勝つッ!!!」

 

麦野「今度こそ死ねェェェェェェええええええええええええええええええええええええええええッ!!」

 

そして、そしてそして。

二人の距離は縮まる。

もう、魔理沙は『マスタースパーク』に残り全ての力を使ったので他の光の飛び道具は使えない。

それを見抜いている麦野は二本の光線を撃った。

 

急に曲がれない。身を捩り避けることも出来ない。回避不可。

全方向へ移動できないのだ。

しかし、詰みではない。

 

なんと霧雨魔理沙は、、、、、、

 

魔理沙「ハァァァァァァァァッ!!!!!」

 

そのまま突っ込んだのだ。

そして、撃たれた『原子崩し(メルトダウナー)』は魔理沙の両肩を貫く。

だが、、、、、、、魔理沙は止まらない。

今までに感じたことのない痛みが肩から走ろうが、ミニ八卦炉を手放さない。

そう。逆に思いっきり前に箒から飛んだのだ。

 

そして、そして。

鈍い音が炸裂した。

 

それは魔理沙の繰り出した跳び蹴りが、麦野の顔面に直撃したのを意味した。

狙い通りに両足裏が顎に当たった。

蹴った本人の足の骨にヒビが入るほどの威力だ。

ならば、当然その蹴りを受けた者はただでは済まない。

麦野は脳震盪により一瞬にして意識を失った。

 

魔理沙「へっ………、力の優劣よりどちらの覚悟が上か、その差で勝敗が決するんだぜ。覚えておけ小娘」

 

向こうの彼方へ吹っ飛んでいく麦野に囁くように、

風のように呟いた。

ぽっかり空いた肩の傷口から大量の出血。

体力は無い。出しきった。スッカラカンだ。

しかし最後に勝利を手にすることが出来たならどれもこれも安い代償だ。

……………………、が?

 

魔理沙「__________って。カッコつけてる場合じゃねェ!!着地どうしよーッ!?そこまで考えて無かったァァァァァァァァあああああああああああッッ!!??」

 

今になって気付いた。

辛くも勝利しだが『倒す』しか考えていたかった魔理沙は重力に従い地面に急降下。

どうりで自分の肩の傷穴から流れる血が空へ上っていく訳だ。

だがしかしここで重要な話なのだが魔理沙は魔力、体力どちらもない。

箒は先程乗り捨てたので、どこか知らない場所へ行ってしまっただろう。

と、いうか魔力もないし飛んでいるかどうかも不明。

分かりやすい絶体絶命のピンチだった。

 

魔理沙「うわぁぁぁぁあああああああああああああッ!!!勝ったのに地面に激突してあら不思議、私は愉快なミートソースに☆なんて嫌だァァァァァァァァあああああああああッッ!!!」

 

流石に流石にこんな時に笑ってられない。

珍しくその目から雫が流れていた。涙だ。

それほど、危機に陥っていたのだ。

 

魔理沙「______________わっ!?」

 

しかし、しかし。

体が空中で止まった。地面が近付かなくなったのだ。

それに腰には誰かに腕を回されている感覚。

ゆっくり自分を脇に抱えている誰かさんに首を向けた。

 

「お疲れ、魔理沙。カッコ良かったわよ、最後の所以外はね」

 

魔理沙「一言余計だっつの。でも、ま。ありがとう助かったよ"霊夢"」

 

霊夢「礼金はちゃんと貰うからね?」

 

魔理沙「金取んのかよ!?」

 

ちゃんと霊夢は魔理沙が倒した全身ビーム女こと、麦野沈利も脇に抱えていた。

遠い場所へ飛んでいく前に気絶した彼女を回収してから、自分が地面に落ちる前に空中でキャッチしてくれたのだ。

本当に本当に感謝の言葉しか出ない。

 

魔理沙「はははっ、っ痛てて…………」

 

霊夢「酷い傷ね、早く永琳に見せないと。紫には連絡しておいたからもうアンタが倒したヤツは紫が一足先に永遠亭に送ってくれたと思う。私が倒したヤツも永遠亭に送ったし、魔理沙とあと私が脇に抱えてるこいつも永遠亭に運ばせてもらうわよ。大丈夫安心して、後は私と妖夢でやっとくから」

 

魔理沙「二つの理由でゴメンと言わせてもらうぜ。一つは私の血で霊夢の服を汚しちまったことだ。もう一つは私の我が儘を聞いてくれ」

 

霊夢「服のことは気にしないで、こんな時に血が付いた程度で文句を言うバカは居ないわよ。それより我が儘って?」

 

魔理沙「たった一人で送り込まれた暗部とやらの三つの中の一つの集団を叩こうと始めたのは私だ。だから、最後まで私は居たい。勝手におっ始めたのに後は誰かに任せるなんてそんな無責任はしたくないんだ。頼むよ、酷い怪我だってのは自分で理解してる。…………、だけど一人の友人として、幻想郷を守ろうと全力を尽くした一人の魔法使いとして我が儘を言わせてくれ。この件を最後まで私に見送らせてくれ」

 

霊夢「…………………………。はあ……、良いわよ。魔理沙には我が儘を言う権利がある。だけど本当にヤバイと思ったらアンタの意思なんて関係ない。問答無用で紫のスキマにブチ込んで永遠亭のベットに直行させるからね」

 

魔理沙「ありがとう霊夢。私はいい友人を持って幸せだ」

 

霊夢「ちょっ!なによ急に……、恥ずかしいじゃない………っ!」////

 

魔理沙「おーっ?なんだ照れてんのかよ可愛いヤツめ。もしもお前の貰い手が居なかったら私が嫁に貰ってやるよ。なんて、冗だだだだだだだだダダッ!!腰っ!!腰を強く締めるな骨が折れるーッ!!今朝食ったモンが口から出ちまうだろーがコラーッ!!」

 

 

 

 

 

それから、八雲紫の能力により気絶している麦野沈利は永遠亭に運ばれた。

魔理沙は薬草で作った塗り薬や包帯など

医療道具を入れたポーチを持ってきていたらしく、それを樹木が広範囲に並び立つ林の中に置いてきたと言った。

まあ……、もう木々は倒れ果て地面は割れに割れていたが…………。

魔理沙が放った空からの強力な弾幕を降り注がせるという攻撃で医療道具が入ったポーチが塵と化してないことを祈りながら霊夢と魔理沙は下へ降りた。

そして魔理沙はほんの少ししたら飛べる程度の力は回復した。

どうやら霊夢は箒も回収してくれていたらしくそれに感謝しながら魔理沙は箒に横に座って移動していた。

まず、目的の場所は医療道具を入れたポーチがある場所。

次はあの"残り"の二人が居る場所だ。

妖夢から送られたメールによるともう捕らえているらしい。

『刀を向けたら大人しくなりましたー』って。

いやいや、そりゃそうだろ。

 

まっ…………まあ、だ。

 

 

これから"一方通行"の作戦が本格的に始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、来ました来ました。ここですよー」

 

倒れた木を背にして座る金髪の外来人。

"彼"はとても大事そうに一人のぐったりとした上下どちらもピンク色のジャージを着た少女を抱えていた。

 

金髪の外来人。

その者の名は浜面仕上。

学園都市の闇に関わってしまい二度と出れない漆黒に両足を突っ込んでしまった哀れな不良少年と言った所だろうか。

そんな浜面に無表情で刀の尖った先端部分を向けている銀髪の少女、魂魄妖夢は空いている手を振った。

その彼女が見ている方向から二人の少女が来た。

霊夢と魔理沙だ。

 

その二人は妖夢の隣まで来て、

 

霊夢「ご苦労様。捕らえた上にこうやって話を出来るように大人しくさせてくれて」

 

魔理沙「おーおー、ホントに捕まえてやがるよ。良くあんな少ない情報量でしかもこんな広い場所で人を探せたな。スゲー助かったぜ、ありがとうな妖夢」

 

妖夢「あー、その件はちゃんと自覚あったんですね……。まあ、私にかかればこのぐらい当然です。っと、今回ばかりは胸を張ってもバチは当たりませんか」

 

魔理沙「はははっ!!妖夢には張る胸は無いがな、なんつって☆」

 

妖夢「喧嘩を売りに来たんですか?良いですよ。斬る、刺す、殺すッ!!」

 

霊夢「ハイハイ、ストップストップ。真面目な話をするんだからふざけないで。それに張る胸が無いのは魔理沙も一緒でしょ?」

 

魔理沙「___________ぐ、はっ!?」

 

浜面「………………、、、」

 

どうしたら良いんだ。

現在自分の人生の中で一番絶体絶命だと理解してる浜面は声が出なかった。

目の前には三人の少女。彼女達は多分自分と滝壺を捕まえたいのだろう。

しかし、相手は少女だ。だが自分は男。しかも喧嘩慣れしている。

だから余裕で三人をぶっ飛ばし逃げれる。

…………とは一ミリも考えなかった。

 

今、目の前に三人が居るということはフレンダや絹旗やそれにバケモノだった麦野も敗れたということだ。

それを瞬時に理解した浜面には絶望しかなかった。

あんなバケモノ連中を屠った相手に対して自分は何が出来る?

答えは一つ。しかもそれは明確で簡単だった。

『完全敗北』だ。

降参である。

 

自分が敵だと言うのにキャッキャッ楽しそうに会話を弾ませている彼女達の言いなりになるしかない。

『煮るなり焼くなり好きにしろ』っというやつだ。

 

だから浜面はただ黙って滝壺を抱えて座ってることしかすることが無かった。

 

霊夢「さて、お話をする前に名前を聞いておきたいわ。私は博麗霊夢。そこの箒に乗ってる金髪が霧雨魔理沙、そしてアンタに刀を向けてた銀髪の子が魂魄妖夢よ。一応頭に入れておいてね。それで、こちらが名乗ったからそちらも名乗って欲しいの。アンタ名は?」

 

浜面「……浜面仕上、そしてコイツは滝壺。あんた達が倒したヤツの名も言った方が良いか?」

 

霊夢「いえ、"今"はアンタの名前さえ聞ければ十分よ。それで、今自分がどんな状況かちゃんと頭で理解出来てる?」

 

浜面「可愛い女の子に囲まれてハーレム状態。なんて冗談を吐けば俺はどうなる?」

 

霊夢「……フッ。自分がヤバイ時だってのに冗談を吐けるなんてね。良いわ、アンタ凄く良い。アンタみたいなのが"私達の側"に立ってくれたら心強いわ」

 

浜面「私達の側……?それはどういうことだ?」

 

霊夢「単刀直入に言わせてもらうとね。私達の仲間に加わって欲しいの」

 

浜面「…………は?仲間だと?」

 

霊夢「そう。この世界を、幻想郷をアンタ達の親玉……アレイスターの魔の手から守るため、そしてアレイスターを倒すため協力して欲しい。これが私達の狙いでありアンタにする頼みよ」

 

浜面「…………、」

 

紅白の巫女の表情や声に嘘は見えなかった。

それがより一層浜面を混乱させる。

 

浜面「アレイスターの野郎がこの世界。幻想郷?だっけか。その幻想郷とやらに何かしてこようがお前らの力なら俺のような雑魚の手を借りるまでもなく返り討ちに出来るだろ……?」

 

魔理沙「それが、なんだよなーこれが」

 

金髪の白と黒の魔女、魔理沙が口を開いた。

そして、続いて

 

魔理沙「自分で言うのもなんだが確かに私達は強い。そりゃあお前の仲間を手加減しても尚勝てる位にな。だが、アレイスターたった一人に私達全員……、なんなら幻想郷というこの世界も敗北した。実はな、この幻想郷は一度滅んだんだ。だが一方通行のお陰でまた息を吹き返した」

 

浜面「一方通行、が?アイツがそんなこと……っ!?」

 

妖夢「あなた方の世界での彼の行動からは想像できない。っと言いたいでしょうが事実なのです」

 

霊夢「私達が貴方のような学園都市と呼ばれる場所で自由に動ける人を仲間として欲してる理由は学園都市の内側からアレイスターが企てる幻想郷への攻撃を妨害出来る人が欲しいからなの。私達だってねやろうと思えば学園都市に殴り込みできるのよ?だけど、学園都市がどんな場所でどんな地形なのか全く分からない。だからアンタのような学園都市に詳しい人間を仲間に引き入れたいの」

 

浜面はまた黙った。

考えているのだ。

どちらに荷担するか、どちらも切り捨てるか、っと。

もう自分は学園都市と幻想郷の戦争に足を踏み入れてしまった人間。

どちらもどうなろうと構わない、好きにすれば?

……とはいかないのだ。

 

そう。すると、ここで急に魔理沙は先程から気になってたことを口にした。

 

魔理沙「なあ、さっきからずっと気になってたんだがその子は具合でも悪いのか?」

 

腕は上がらないが魔理沙が指を差したのはピンク色のジャージを着た滝壺である。

 

浜面「あ、ああ。詳しくは分からねぇがここに来てから調子が悪いみたいなんだ。今朝は絶好調だったんだが……」

 

それを聞いても、だ。

霊夢と妖夢はなにも思わなかった。

しかし、しかし。魔理沙は違った。

 

魔理沙「今朝は元気だったのに幻想郷に来た途端調子を崩したのか。ここに来てその子に変化はなかったか?」

 

浜面「見たところなんもなかったよ。ただなんかここは変な感覚がする、気持ち悪いと言ってた」

 

この幻想郷に来てそういうことを言う大抵の者が"ある共通"のことがある。

魔理沙はもしかして、と思い違う質問をした。

 

魔理沙「その子は能力者か?」

 

浜面「能力者だ。確か……AIMストーカーって呼ばれてる超能力を有してる」

 

魔理沙「AIMストーカー?どんな能力なんだ?」

 

浜面「俺はろくに勉強もせず、悪いことしてばっかで無能力者のバカだから原理は詳しくは分からないが、他の超能力者の位置などが分かる力だ」

 

魔理沙「いわゆる探知系の能力か……、なるほどな。分かったぜ、なぜその子が急に幻想郷に来た途端調子を崩したのか」

 

浜面「……本当か!?教えてくれなんで滝壺はこうなったんだ!?」

 

気になって気になって仕方がなかった浜面は、魔理沙にがっつくように聞く。

すると、魔理沙は落ち着いた様子で話始めた。

 

魔理沙「この世界……、幻想郷にはありとあらゆる力が存在している。結界なんてものあって、当然それにも力はある。しかし、そういった力は幻想郷で暮らしたとしても普通の人には分からないんだ。だがある一部の人はその力を感じ取ってしまう。それは探知系や察知系の能力者だ。探知系や察知系の能力で、しかもその能力が無意識で発動してしまうものならもっとヤバイんだ。力を情報として感じ取り、その者のキャパシティーを越えてしまう程力の情報を取り入れると最悪の場合人格は崩壊……、植物状態になったその後そんな時を経たずに…………死に至る。情報ってのは人は脳に取り入れ保管する。でもどんな物を一緒でさ、その器に限界以上にものを流し込まれれば爆発するだろ。それが察知系や探知系の能力者の場合は脳に体を蝕むほとの情報量が入ると人格化崩壊、そして死んでしまうんだ」

 

浜面「……嘘……だろ……」

 

衝撃な事実を告げられた。

このままだと滝壺は死んでしまう。

しかし、どうやって助ければいいか分からない。

 

だが、である。

白と黒の魔女は「だが___」っと続けて、

 

魔理沙「____その子をその苦しみから解放できる方法はある。簡単な話さ、この幻想郷に居るから体調を崩した。なら幻想郷から出れば良いんだ」

 

浜面「それが無理なんだ…………」

 

絹旗が分かっていたように、

浜面も分かっていた。

彼は腕に着けた銀の腕輪に視線を向けたあと、

 

浜面「俺達は高いビルに居るにお偉いさんに捨て駒として扱われた文字通りのゴミだ。ゴミはごみ箱。それはどこも当たり前のことだ。ゴミは、どこにも帰る場所も方法もない。どっかの掃き溜めに放り込まれて皆仲良くスクラップだ」

 

行きと帰りが可能と説明されて渡された銀の腕輪。

しかし、使った後に気付いた。

『これは片道しか使えないのだと』。

それはこの幻想郷に来た瞬間分かった。

この地に着いた瞬間、銀の腕輪機能するかどうか試してみたのだ。

すると、どうだ。うんともすんともしなかったのだ。

なにか操作方法を間違えたのかと、何度も何度も試した。しかし、現実は残酷だった。

試しに気付かれないように他の銀の腕輪も起動させたが自分のと同じ、しーん……とした静寂だけがあった。

 

この事から浜面仕上はクソったれな事実を知ることになる。

片道しか使えない銀の腕輪。

第一位・一方通行を殺害に成功したところで学園都市に帰る手段がない自分達は訳も分からない世界で死に果てるのだと…………。

 

魔理沙「つまり帰る手段が無いってことか」

 

だが、と魔理沙は続けて、

 

魔理沙「お前は運が良い。なんとだな、その子を元の世界に返すことが出来る人物がお前の目の前に居るんだぜ」

 

浜面「えっ?そんなことが出来るヤツが居るのか!?しかも俺も目の前に!?」

 

魔理沙「おう、そいつは__________」

 

「_______ちょっと待って」

 

口を挟んだのは博麗の巫女であった。

 

霊夢「少しアンタ達の会話を聞いて自分でもクソったれでゲスな考えが浮かんでしまったの。だけど今はどんなことをしてでも幻想郷を守りたい。だから今から私が話すことに割り込まないでね魔理沙。多分、アンタが嫌いな"方法"だから」

 

そして、霊夢は浜面の方を向いた。

そしてそして。

 

霊夢「見る限りその子はアンタにとってとても大事な人みたいね。助けたい?この私の力をもってすれば助けることができるわ」

 

浜面「助けたい」

 

即答。そう、しかし霊夢は自分の問いに対して浜面が即答するのは分かっていた。

だから…………、

 

霊夢「じゃあその子を助ける条件として、アンタは私達の側に立ってもらう。その子の為に裏切るの、学園都市を。もしも拒むならその子はここで見殺しにする。アンタにとってはこれは悩む必要がある選択肢?」

 

魔理沙「おいっ霊夢!!それはまるで脅迫みたいじゃねえか!!」

 

次に、霊夢は「やっぱり……」と呟いた。

あれだけ最初に魔理沙に言ってもこんな話を聞いたら我慢できる訳がない。

妖夢は少し、酷く残酷な手段でもある程度のことはこの世界の為ならと目を瞑る。

しかし、魔理沙は違った。

友だから知ること。

白と黒の魔女。泥棒。などなど…………。

そう言われている彼女は、実は自分のことよりも他者のことを思える優しい子だと霊夢は知っている。

例え、自分達の生活の為、幻想郷の為と言い訳をしてもそれで誰かが犠牲になるのは許せなかった。

 

だが、ここで

 

「いいんだ、その巫女さんを責めないでやってくれ」

 

魔理沙「え?」

 

浜面「もしも俺があんた達の立場だったら間違いなくそうしてる。なんならおまけに武器を突き付けて、な」

 

弁護したのは、まさかの敵であった浜面だったのだ。

 

浜面「良かったよ。俺はいい人に出会えたみたいだ。脅迫曲がりのことをしてもなんとも思わない人じゃないみたいだなあんた達は。『本当は嫌な方法』。そう思ってるのはなんとなく分かる」

 

そして、ここで覚悟を決めた。

 

浜面「頼む、滝壺を救ってくれ。もしもこいつを救えるなら俺は悪魔にだろうが神にだろうが魂でも心臓でもくれてやる。なんでこんなに誰かを助けたいなんて思ってるのか自分でも分からないが……、滝壺をこの苦しみから解放したいんだ。それだけは確かなんだよ!だから頼むよ。その為ならお前達と共にアレイスターに立ち向かってやるから!!」

 

霊夢「百点満点の回答ね。歓迎するわ浜面仕上、ようこそ幻想郷へ。この世で最も困難で険しい地獄の道を選んだ者よ、私はアンタのような勇敢な人を尊敬する」

 

これで、浜面仕上は今日から学園都市の『敵』となった。

ただ一人の少女を助けるため。

その為なら彼は、強大な敵なんて気にせず気合いと根性だけで突っ込める勇敢(バカ)者なのだ。

 

「……ま、っ…………て……はまづら」

 

浜面「滝壺!?」

 

霊夢「意識は一応あったのね」

 

ゆっくり瞳を開く滝壺。

しかし、変わらない。体調は絶不調。

息は荒く呼吸するだけで大変そうであった。

そんな彼女を見て霊夢はまだ意識はあることに、助けれる範囲な状態だと思った。

 

浜面「大丈夫だ。安心してくれ、喜んでくれ。お前は助かるんだ!!」

 

霊夢「話を聞いていたなら理解できてる筈よ今の自分の現状を。浜面の願いを叶えるためアンタだけは先に学園都市に戻してあげる。他の人は治療してから戻すから少し遅れるかもしれない。浜面は私達の作戦を伝えた後、直ぐに行動してもらうことになるからアンタ達の元に戻ってくるのは先の話になるわ。あー、そうそう。もしも私達の情報をアレイスターに流した場合その瞬間私達の敵と見なして次は手加減なしでぶっ倒すことになるからそこんとこよろしくね」

 

滝壺「そんなのどうでもいい。私は貴方達が何をしようがどうでもいいの。今は浜面と二人っきりで話をしたい」

 

霊夢「別に二人っきりで話したいのは勝手だけどそれは________」

 

滝壺「_________オイ、もしも邪魔をするというのなら私はお前たちを殺す」

 

言葉を割って入った声はとても低くいつもの滝壺という少女を知る浜面はただただ驚愕した。

そして、恐怖した。

彼女の目がとても鋭く、その一睨みでそこら辺の不良でも失禁してしまうぐらい威圧力があったのだ。

 

霊夢「……………」

 

滝壺「……………」

 

お互いが黙って睨み合う。

霊夢と、滝壺以外その他の者達は何も言葉が出なかった。

が、しかし。

 

霊夢「………………分かった。三分あげる、その時間内で話を終わらしなさい。でも悪いんだけど私達はここから下がった場所でアンタ達を見張んなくちゃいけないから完全に二人っきりてのは叶えられないけれど、それでも良い?」

 

滝壺「構わない」

 

そうすると霊夢は後ろへ振り返り、

 

霊夢「そういうことよ。妖夢、魔理沙。下がるわよ二人の邪魔になるわ」

 

スマートフォンを服の内側ポケットから取り出しタイマーをセットする。もちろんセットした時間は言った通り三分ジャストだ。

 

魔理沙「おいおい良いのかよ?私達が離れた瞬間にダッシュ……なんてされて逃げられたら紫から雷が落ちるぜ?」

 

妖夢「御安心を。そんな事にはなりませんよ」

 

魔理沙「なんか根拠でもあんのかよ?妖夢」

 

霊夢「分からないの?今あの二人の邪魔をしたら馬に蹴られて地獄に堕とされるから私は引いたの」

 

魔理沙「…………あー、なるほどな。そういうことだったのか!!」

 

妖夢「やっと御理解されましたか鈍ちん」

 

魔理沙「ほんっっっっと今日の妖夢は私に対して当たりが強いなこの野郎ォ!!」

 

妖夢「野郎ではありません」

 

そして、三人は滝壺と浜面がしっかり見える範囲で二人から離れた。

 

魔理沙「なあなあ、霊夢。なんか今日の妖夢私に対して当たりが強いんだ。どうしてだと思う?」

 

霊夢「アンタの日頃の行いが悪いからだと思うけど?」

 

魔理沙「お前もかよ…………ったく、アリスが恋しいぜ。あいつならこんなグサグサ言ってこないのに、なんでこの二人は人を平気で傷付ける台詞を軽々吐くかなー」

 

霊夢「アリスだって言うときは言うわよ?アンタに対してだけ優しいのよ、魔理沙のことアリスは相当気に入ってるみたいだからね。でもそうね、確かに今日の妖夢はやけに魔理沙に言うわね」

 

妖夢「まあ、自分自身。今日は魔理沙さんに対して特別強く当たってしまってる実感はあります」

 

腕を組み、背中の木に寄り掛かる妖夢。

 

魔理沙「だろだろ?だったら少しは_________」

 

妖夢「_______ですが。それには理由がちゃんと存在しています」

 

人が話している途中だと言うのに口を挟んだ妖夢は、ピシッ!と魔理沙に指を差した。

そして、

 

妖夢「結果よければ全て良し。私はそう思っているのであの無理面倒を押し付けたことは別に責める気はありません。しかしその後なんですよ問題は。なんですかその大怪我は!それほど酷い傷を負ったのならばこんな所に居ないで早く永遠亭のお方達に見せてより良い治療を受けるべきです!!後のことは私や霊夢さんに任せてね!!見たところ応急手当はしたそうですがやはり専門の知識と腕を持ったお人に見せるのが一番!それは貴方でも考え付くことでしょ!?」

 

魔理沙「……わ、悪かった。心配してくれてたんだな」

 

妖夢「当たり前です。確かに魔理沙さんは悪いところは沢山あります。ええ、それは数えきれないほどにね。しかしそれ以上に良いところもあると私は知っています。私は別に魔理沙さんのことを嫌ってません、逆に大好きなんですよ!!」

 

魔理沙「妖夢……。良し、帰ったら結婚するか!」

 

妖夢「お断りします。好きと言ってもそういう意味での好きではありません。全く、こんなに言ってもふざけるとは…………」

 

霊夢「ここまで魔理沙がバカにテンションが高いのには理由があるのよ」

 

妖夢「なんです理由って?」

 

霊夢「見て分かる通り魔理沙、結構な大怪我なんだけど一番酷いのが肩なのよ。まあ見事に肩に奥の景色が見えるぐらい穴がぽっかり空いちゃってね、そこに持参した塗り薬を塗ったんだけど相当痛かったらしく応急手当が終わった頃にはテンションがバカになってたわ。まっ、でも、意識が飛びかけるほど痛がってたしタガが外れてハイになっちゃうのも無理はないでしょ」

 

妖夢「あー……、なんかすんごい叫び声が聞こえてましたがあれは魔理沙さんのでしたか……」

 

霊夢「そうそう、最終的にはハンカチを噛んで我慢してたけどね」

 

妖夢「_____それで、霊夢さんの方は大丈夫なんですか?相当出血したように見れますが」

 

そう言いながら妖夢は霊夢の巫女服に付着した真っ赤な血を見ていた。

しかし、それに答える時霊夢は軽く笑って、

 

霊夢「あー、これは違うわ。魔理沙を抱えたときに着いたのよ。私も血を流したと言っても鼻血ぐらいだし」

 

妖夢「霊夢さんが鼻血!?そ、そんなにあの子は強かったんですか?」

 

霊夢「いや、ただ私が相手を軽く見て油断した結果一発もらっただけ」

 

妖夢「霊夢さん、自宅に帰ったさえには『油断大敵』と十回唱えたあとに紙に唱えた言葉を百回書いてください」

 

霊夢「アンタ私の性格知ってるでしょ?そんな面倒なことすると思って?」

 

妖夢「こういう時欲しくなるんですよね、力ってやつを」

 

魔理沙「なんだなんだ霊夢に嫌がらせか?なら協力してやるぞ」

 

霊夢「アンタ達良い性格してるわ」

 

「「お前が言うな」」

 

皮肉を込めた言葉をそのまま魔理沙と妖夢は返した。

 

 

そして、そして。

一方の話である。

 

滝壺と浜面は……、

おバカ三人組の声など届いていなかった。

 

浜面「なあ滝壺、話って?」

 

滝壺「はまづら……、死ぬ気でしょ?」

 

浜面「…………は?何を______」

 

滝壺「___________誤魔化せると思ってるの?私ははまづらより先に暗部へと堕ちた。だから分かるの、己の命を捨てようとしてる人の雰囲気とかを」

 

やはり隠し事は俺に向いてないか……。

っと、浜面は小さく呟いた。

そして

 

浜面「…………俺さ、今まで誰にも誉められない生き方をしてきた。自分がこんなんなのは取って付けた理由とかのせいにしたりして目を背け、耳を塞ぎ、言い訳ばかりしてきた。だけど俺と同じ一人の無能力者がさ、俺の下らねぇ"幻想"を打ち砕いた。まあ、負けたことは悔しかったけどそれ以上に悔しかったのは俺と同じ無能力者なのにそいつは自分のやりたいことを無能力者だからって言い訳しないで己を貫き通していたことだ。だから俺はそれから考えた。もしも次に自分が本当にやりたいことが出来たらそれに全力を注ごう、って」

 

滝壺「……でも、だからと言って…………」

 

浜面「俺はお前だけには辛い思いをしてほしくないんだ。どこに行ったって同じだった。クズはクズらしくぞんざいに扱われ、利用するだけ利用されて後は捨てられる。だけどお前は、滝壺は違った。初めてだった、誰かに優しくされたことが、優しくされたらこんな暖かい気持ちになるんだって。そんな気持ちを気付かせてくれた滝壺が苦しんでるなら俺はそれから解放したい。その為なら俺の命なんて欲しくねぇ」

 

滝壺「はまづらは勝手だよ。はまづらが死んだら悲しむ人だって居るんだよ」

 

浜面「……ははっ。そんなヤツは居ないさ、もう俺の周りには誰も居ない。こんなクズどこで野垂れ死んだって別に………」

 

どうせ、と。そう心の中でも呟いた。

自分は無意味な存在。無価値な人間。

それでも、そんなんでも確かな自分の心というものがあるのだ。

だから、ただ周りに流されて死に絶えるのは我慢ならない。

どうせなら自分のやりたいこと、やるべきことをやってから(くたば)ってやる。

 

しかし、だ。

アイテムという暗部へ放り込まれ散々な扱いを受けたが、たった一人。

自分を無能力者のクズではなく、ただの一人の人間として接してくれた彼女は言った。

 

滝壺「私は、はまづらが死んだら悲しいよ」

 

浜面「滝壺……」

 

滝壺「一人でなんて行かせない。私も一緒に行く、私は大能力者(レベル4)だからはまづらを守れる。そうすればはまづらは死なないし私も悲しまないで済む」

 

浜面「なに言ってんだよ、お前はずっと暗闇に居るべき人間じゃない。この件で少し身を隠すことになるだろうが全てが終わったら滝壺は日の光が当たる場所で普通に生活するべきだ。死ぬ死なないなんて命のやり取りをしないで普通に、平穏に……ッ!!」

 

滝壺「浜面が居ないなら平穏なんて要らない。普通の生活をしたとしても意味もなく平穏を恨む」

 

もう大分無理をした。

気分はとても悪い、呼吸も乱れる。今にでも嘔吐してしまいそうだ。

しかし、それでも滝壺は口を閉じて浜面をただ一人で行かせられなかった。

そんなこと許せなかった。

 

今にでも自分から離れて、もう手の届かない場所へ行こうとしてる浜面を止めたい。

いいや、止めるのではない。

浜面の手を掴み一緒に行きたい。

 

滝壺は残り微かな力と勇気を振り絞り浜面の首元に腕を回し自分の顔を彼の顔へ近付ける。

そして、、、、

 

浜面「……滝、壺?」

 

そっと彼の唇へ口付けをした。

 

一方、外野の三人達は、

 

魔理沙「うおおおおォォォ!!やったよやりやがったよ!!いやー、良いもん見たな。アレをおかずに私は白米三杯いけるぜ」

 

霊夢「魔理沙五月蝿い。静かにしてよ今良いところなんだから」

 

妖夢「魔理沙さんも霊夢さんもどっちもどっちですね。ああいうのはジロジロ見るものでは無いと思いますが…………、まあ監視しなくてはいけませんし、仕方なく、仕方なくです」

 

 

そしてそして、そんな三人の視線の奥に居る滝壺と浜面は、

 

浜面「……え、…………えっと……」

 

滝壺「ここまでしたら分かった?」

 

浜面「…………あ」

 

なんで自分が今目の前に居る高位の能力者の彼女を守りたいと、死んでほしくないと思っていたのか浜面仕上はやっと気付いた。

ついでにその滝壺の気持ちも…………。

 

そして、、、

 

浜面「知らねぇぞ、こっからは今までにない過酷が待ち構えてる。それでも付いて来るのか?」

 

滝壺「うん」

 

想いが爆発した浜面は滝壺の体を抱き締めた。

だが滝壺は苦しそうな顔なんてせず、逆に頬を染めて柔らかく微笑んだ。

 

今確かに大切なもの、守るべきもの、失いなくないものを浜面は抱いている。

彼女と未来を生きたい。

ならば、やるべきことはただ一つ。

 

 

 

…………そして、アラーム音が鳴り響いた。

画面をスライドしてタイマーを消した霊夢は二人を見て、

 

霊夢「さて、二人で話し合った結果納得ができる答えは出た?」

 

浜面「"俺達"は学園都市を裏切り、幻想郷の味方になる」

 

浜面と滝壺のがっちり繋がれた手を見て、霊夢は小さく笑った。

そして、

 

霊夢「改めて言わせてもらうわね。ようこそ幻想郷へ、"こっから先は一方通行よ"。進路変更はできないわ、ただその一本道を突き進むだけよ」

 

浜面「覚悟のうえだ」

 

魔理沙「よーし話は終わったな?じゃあ今すぐ永遠亭に行くぞ、お前達の仲間はそこで傷の手当てを受けてる。それにそこの女の子は早く永琳に見せた方が良い」

 

妖夢「それは貴方もねッ!!」

 

鞘に納めた刀を妖夢は思いっきり魔理沙へ振った。

紫の開いたスキマがあった。

だからそこへ向かって打ったのだ。

 

妖夢「さあ、急ぎますよ」

 

霊夢「安心して、アンタ達にはこんなことしないから」

 

浜面「……お、おう」

 

怪我人なんだからもっと優しくしてやれよ……、

っとか思ったがなんだかこれが当たり前みたいな雰囲気だったからその言葉は胸の中にしまっておいた。

 

滝壺「麦野達にもこの話をしてみようよ、多分なんだけど協力してくれると思うよ?」

 

浜面「そうだな、共に行動してくれたならアイツらの力は頼りになる。でもその話は滝壺が元気になってからだ」

 

霊夢「アンタ達を元の世界に戻す前にとりあえず滝壺ちゃんは永琳に見せるわよ。もしかしたら体の内部にそのままにしてら大変な腫瘍のようなものができてる、って可能性があるかもしれないしね。それに永琳なら滝壺ちゃんの症状を打ち消す薬を作れるかも。もしもそれが作れたらアンタの仲間にこの幻想郷で私も一緒に話をできるかもしれない」

 

 

そして、

彼ら彼女らは空間に開いた沢山の目がある不気味なスキマの中へと消えていった。

 

ここで報告する。

暗部組織『アイテム』。

撃退成功。交渉成立。

 

以上。




次回予告

アイテムとはまた別の暗部組織が"紅の館"へ誘われた。
「ようこそお客様。ここは紅魔館、貴方達の終わりを告げる館でございます」

次回・第四章、第八話『グループ』

赤好き?夜は好き?
私は貴方で甚振る(遊ぶ)のが好き




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8話

そこに踏み入ってしまったら、まず生きて帰れることを諦めた方が良い。
その館の主もその他の者達も善良な人ではない。

「私の手の中で踊らせてあげる、光栄に思いなさい」

気高く、そして美しい吸血鬼はそう言った。
さあ、ひれ伏せ、こうべを垂れろ、命を奪われることを快楽としろ。
君臨者、人を喰うバケモノ……、
いいや人の上に立つ生物に従え。
お前ら人間にはそれが相応しい。


絶対、誤字があります。
ですが発見した場合、面倒だったら無視してくれて構いません。
お暇なお方や心優しいお方は出来たらで良いので誤字やそれ以外のミスを見つけたらこんなダメな私に報告してくれると非常に助かります。


今日は天気が良いというのに、とある場所だけは薄暗く不気味な空気が立ち込める。

 

辺りにある木々達は風に煽られ自然の唄を奏でる。

そして、その中にまるで人工的に作られたと思われる一本道。

そこに三つの影があった。

 

「……なんだか不気味な場所ですね」

 

「だにゃー。こんなところ仕事じゃなかったら絶対に来たくない場所だぜい」

 

「女性の前でだらしない男どもね」

 

三人は暗部組織『グループ』の構成員だ。

そう幻想郷に乗り込んできた刺客なのだ。

まず最初に口を開いたの者の名は海原光貴。

本当の名は、エツァリというのだが訳あって他人の体に容姿を化けさせている。

次は土御門元春。

金髪にサングラスっというだけで個性全開なのだが更に学生服の下に緑色のハワイのお見上げ売り場で売ってそうな派手派手な服を着込んでいる。本当にこれで学生というのだから恐ろしい。

そして、最後。

たった一人の女性、結標淡希。

座標移動(ムーブポイント)』という能力を有した大能力者(レベル4)の超能力者。

『座標移動』。その能力は主な力は至ってシンプル。物体の"空間移動"(テレポート)だ。

結標の容姿は長い赤毛を後ろに二つに結び、肌寒い季節になりつつあるというのに下はミニスカートで上は前を全開きのブレザーを引っかけ桃色の布を巻いて胸を隠しただけである。

この中で一番まともと言える格好をしてるのは海原だけだろう。

彼はベージュ色のスーツを着ている、髪はそこまで長くない暗めの茶髪だ。

その三人達。暗部『グループ』の面々達も腕に銀色のバングルを巻いていた。

 

 

そして、道を進むこと一時間ぐらい経った頃だった。

『グループ』の面々はとある館を目撃する。

紅に染まるどこか怪しさを感じさせるとても大きな館。

その館の名は"紅魔館"。

 

「ん?」

 

まず最初に"彼女"に気付いたのは土御門だった。

 

紅色の館の前、門があるのだがそこの前に立つ女性。

珍しく起きていた居眠り門番の彼女は『グループ』の姿を確認すると、

 

「紅魔館へようこそお越し下さいました。土御門様、海原様、結標様」

 

「「「____ッ!?」」」

 

三人は驚愕する。

こことは違う世界に居た自分達と初めて会うはずなのに、きっちり三名の名を口にした門番。

紅美鈴。彼女はご丁寧に頭を下げた後、顔を上げる。

そして門を開いたのだ。

 

美鈴「さあ、どうぞお進み下さい。この先でお嬢様がお待ちです」

 

土御門「どうやらなんらかの力によって俺達はここに導かれたようだな」

 

海原「ええ、そうみたいですね」

 

なにかがおかしかった。

理解が追いつかない事だらけで頭で考えることが出来なかったが、そう……、何かがおかしかったのだ。

 

例えば、"足が勝手に前に進む"……とか。

 

『グループ』の三人は自分の意思とは関係なく紅魔館の中へと進む足に抗う術はなく、多分あの門番が言うお嬢様とやらの思うがままにされるしかなかった。

そして、三人が門を通るのを確認したら美鈴はその門を閉じる。

 

美鈴「……フッ。さあさあ、あの人達は"無事"に帰ってこれるかな?」

 

"無事"になんて一ミリも思ってない彼女は上から垂らされた糸に繋がれ操られてる人形のようなあの三人に背を向けたままそう呟いた。

 

そして、いつも通り門の守る番人として門前に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そして。

勝手に扉が開きそして閉じる。

 

館の中に入ってまず目に入ったのは大きな大きな階段であった。

すると、そこに

 

「ようこそ、お客様(食物)方」

 

メイドの格好をした女が階段の一番上の段に立っていた。

が、だ。

だからなんだ。

初めて会う。名も知らない。

しかし、最初に仕掛けてきたのはそっちだ。

戦るなら戦ってやる。

 

バンバンッ!!!っと二発。

乾いた銃声が響く。

土御門は腰に隠していた拳銃を抜き銀髪のメイドに向かって発砲したのだ。

 

…………だが。

 

「学園都市ではこういう挨拶が流行ってるのですか?」

 

土御門「…………まともじゃ無いぜい」

 

見下す様子で笑うメイドに土御門のみならず、隣の二人も冷や汗をかいた。

確かに当たったと思っていた。

ノーモーションだったのに、だ。

 

銀髪のメイド。十六夜咲夜はいつの間にか土御門の持っていた拳銃を手にし、階段の一番下に腰を下ろしていた。

 

では……撃った二発はどこに行ったか?

それは壁に直撃、そして埋まっていたのだ。

 

そして、

 

『お返しします』。

そう言うと咲夜は土御門の目の前に立っていて、勝手にその手を取り拳銃を掌に置いた。

突然のことだった。

さっきと同じだ。

時間が一秒を刻む前に瞬時に移動。

 

そして、グループの三人が咲夜の姿を確認した時にはもうそこには居なかった。

また、三人の前にある大きな階段の最上階に居たのだ。

 

海原「さっきから訳の分からないことばかりです。頭がどうにかなってしまいそうですよ」

 

土御門「安心しろそれは俺もだ」

 

結標「……………………」

 

不気味。

もうそれ以外の言葉が見付からなかった。

海原は黒曜石のナイフを手にし、土御門は返された銃を構える。

結標は黙って二歩下がった。

全く助け合う気は無い。お互いがお互いの目的のため利用し合う関係なのだ。暗部組織、『グループ』というものは。

 

そして。

 

「私が来る前に始めちゃうなんて酷いじゃない咲夜。貴方の活躍を拝みたいって私言ったでしょ?」

 

床に足を付けず浮いて移動する悪魔のような翼を生やすその幼い容姿の少女。

彼女が……、

彼女こそがこの紅魔館の絶対の支配者。

レミリア・スカーレットである。

 

レミリアは階段の上ると奥にある扉から姿を現し上層の床に足を付ける。

そして我が主を見た咲夜は、レミリアに対し片膝をつき頭を下げていた。

見るからにアイツが、アイツこそがこの館で一番偉いのだと『グループ』の三人は分かった。

 

咲夜「申し訳ありません。あのような下劣な存在、お嬢様にとっては見る価値がないと思い……つい」

 

レミリア「見る価値があるか無いか、それを決めるのはこの私よ。それより椅子が欲しいわ。用意してちょうだい」

 

咲夜「でしたら今、丁度良いものがあります___」

 

ニタリと恐ろしさを感じさせる笑みを浮かべ、紅魔館のメイド長はとある場所へ目を向ける。

そこは学園都市から送り込まれた"刺客"達だった。

 

そして。

 

咲夜「___どうぞ、お嬢様」

 

三人並んで立っていたはずだが……、そこから一人消えた。

その者は…………。

 

土御門「海原ーッ!?」

 

吸血鬼の少女の足元には両腕両足、肘膝と合計四ヶ所にナイフが刺され床に張り付けにされていた海原が居たのだ。

 

咲夜「椅子……、ではなく座布団になってしまいました」

 

レミリア「別に良いわ、床に座りたくなかっただけだし」

 

そう言うと、レミリアは足元に倒れた人間に腰を下ろす。

 

それを見た土御門は舌打ちを一つ打つ。

その後、後ろに居る結標を見ずに小さい声でとある事を話した。

 

土御門「____頼むぞ」

 

結標「……、了解」

 

そして、土御門の姿が消えた。

それは結標淡希の超能力。座標移動(ムーブポイント)の力によってである。

 

レミリア「ふーん、なるほどね。こいつを残して後ろへ逃げ出しても美鈴が居るから挟み撃ちにあう、それは得策ではない。ならば前に進むしかないわよね」

 

咲夜「あの男、中々頭が回るようですね。放置したら厄介になる可能性がありますが……。どうしますか?私ならば一秒も掛からないで仕留めてくることは可能です」

 

レミリア「咲夜は目の前の子だけを相手すれば大丈夫よ。アイツはフランの場所へ"行くようにした"から」

 

咲夜「それはそれで問題があると思います。妹様は未だに御世辞にも力のコントロールが完璧とは言えません。確かに以前よりは大分進歩したと思いますがそれでも………。うっかり殺してしまったら一方通行の作戦が……」

 

レミリア「そう、だからよ。だから今回でフランがどのぐらい力のコントロールが出来るようになったか、あの男で実験しようってこと」

 

咲夜「なるほど。人間ごときにはピッタリな役目ですね__」

 

__しかし。そう続けて咲夜は結標を見た。

 

咲夜「___攻撃を仕掛けてくると思ったがしてこなかったか。一見隙だらけ。そう見えるがそうではない。もしも私とお嬢様の会話中攻撃してきたら確実にその瞬間に"終わっていた"。もちろん、終わるのは貴方の命よ」

 

ゆっくり、ゆっくりと階段を降りていく。

その手に一本のナイフが…………と、思ったが二本。三本と時が進むごとに増えていった。

 

そして。

階段を降りきった時には両手に何本ものナイフを持っていた。

 

咲夜「さあ、精々お嬢様を退屈させないように踊りなさい。一瞬で終わってしまってはお嬢様も私も詰まらないから」

 

そう言った次の瞬間には、銀髪のメイド長の姿はなかった。

そして、結標の周りには今にでも串刺しにされそうな程無数のナイフが自分に向かって飛んできた。

 

だがしかし。

まるで逃げ場を無くすように覆われても、だ。

彼女は空間移動が可能なのだ。

 

過去にトラウマがあり、自分自身に能力を使うのを躊躇っているのだが今は関係ない。

命を優先するのが当たり前。それにそんなトラウマ、ここで克服すれば良いだけの事。

 

結標は、ナイフから遠く離れた並べく暗い所へ空間移動。

しかし、

 

結標「____ッ!?」

 

咲夜「どうも、さっき振りね」

 

目の前に柔らかく微笑む銀髪メイドが立っていた。

だが次の瞬間。キリッとした顔へ変わっていた。

そして、、、

ボゴンッ!!!っと一発腹部へ強烈な拳を叩き込まれた。

背後近くにはすぐ壁があり、拳が腹部へ突き刺さったまま結標は壁へ打ち付けられた。

 

一瞬意識が飛びかけた。

だが、ここで倒れる訳にはいかない。眠る訳にはいかないのだ。

結標には、彼女には目的がある。

そのためにクソったれな暗部まで堕ちた。

 

守るもの、命に変えてでも守りたいものがあるのだ。

だから、例え万に一つの勝機が無くても立ち向かうのだ。

 

シュンッ………と。

結標の姿が消え、また別の場所へ姿を現す。

足元には地面はない。

 

まず、一回。空中にテレポートしてからまたもう一回テレポート。

っという作戦だった。

 

だが、、、、

 

まず一回目のテレポート場所。つまり、移動先の空中に十六夜咲夜の姿があったのだ。

今回ばかりは反応できた。

身を捻り蹴りを繰り出す。

 

しかし、しかし。

あっさりそれは避けられ顔面を鷲掴みされ、

そして、思いっきり全力で後頭部を床に叩き付けられた。

 

咲夜「さあ、貴方ならこの状況でも私の手から逃げることは可能でしょう?ならば早く逃げなさい、そして次の手を考え実行してみろ。私は貴方が試行錯誤して導きだした一手一手を一片も残さず粉砕してみせる。立て、戦え。もっと……、もっと踊れーッ!!」

 

結標「____バケモノが……ッ!!」

 

地面に押さえていた人間が音もなく消える。

が……。

 

結標「やっぱりかっ!!」

 

何度やっても。何度もやっても。

絶対に自分の移動先には銀髪メイドが居る。

そして、何故かナイフではなく。拳や蹴りなどで攻撃してくる。

ここまでやったら気付ける。

いいや、なんなら最初の方で理解していた。

『こいつには勝てない………』と。

 

確実に格上の存在。

力の差が明確であった。

 

しかし。だが、だった。

弱点のようなものは発見できていた。

それがお嬢様と呼ばれている悪魔のような翼を生やした少女。

あのガキさえ抑えてしまえばいくら力の差があっても勝機はある。

銀髪メイドの態度を見る限り自分の命より主のことを大切にしている。

そう……大切なものを人質に取れば良いのだ。

そういうことに結標の能力は最適な能力だ。

 

だが、

 

近付きたくても近付けない。

十六夜咲夜を壁と例えるならば相当大きく、その前に立つだけで戦意が喪失してしまう強大な壁だった。

 

そして、また一発。

薙ぎ払うような蹴りを顔面に直撃させられた。

 

頬は赤く腫れ床で二三回跳ねた後、壁へ体が激突する。

 

そして床で倒れているとまた十六夜咲夜は言う。

『立て』『戦え』と。

言われなくても立つ。

言われなくても戦う。

 

だが、こんな格上と真っ当に()ったって同じことだった。

無慈悲で残酷な暴力をこの身で浴びるだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の話だった。

 

土御門は紅魔館のなかを詮索するため駆けていた。

 

そして、気付けば自分は奇妙な扉の前に立っていた。

硬く重く冷たい扉。

 

その扉を両手で開く。

錆びているのか、ギギギギギと鳥肌が立つような音がした。

そして手を扉から手を離すと、バタンッッ!!!!っと勢い良く勝手に閉じる。

 

土御門「この館に入ってから一番嫌な予感がするな…………」

 

オカルト的な知識がある土御門は見た瞬間分かった。

この館の主。つまりあの青みががった銀髪の少女、あれは間違いなく今や伝説的な存在『吸血鬼』だ。

不死身の肉体。人間の血を好む生物。

まさかこんな所で純血の吸血鬼に出会うなんて夢にも思ってなかった。

 

しかし、伝説とだけあって弱点も結構知れ渡っている。

ニンニク。十字架。日光。

それらを探すしかない。

まず一つ、日光は無理だ。

 

この館は日光を遮断する窓が張られている。

壁を打ち開けて日光浴びせたいがそんな力は土御門はない。

 

そして。

 

土御門「……………………ん?」

 

カチッ。っと音と共に明かりがついた。

あまり暗くてどのような所か分からなかったが一見豪邸ならばまあこんなものか、と。納得してしまう一般人の部屋よりも広くそして高そうな家具が並んでいた。

この家主はとにかく赤が好きなのだろうか?

土御門が今いる部屋も殆どのものが赤色であった。しかも暗めのやつ。

 

「ねえねえ、お兄ちゃんだぁれ?」

 

土御門「______ッ!?」

 

なんと、この地下室に人が居た。

しかも可愛らしい少女であった。

だが土御門はすぐに察した。

目の前の少女は普通ではない、と。

 

カラフルな結晶のようなものを吊るした小枝のような翼を背に生やす少女は、

 

「もしかして、侵入者。泥棒さんなの?」

 

土御門「違う_____」

 

嘘を吐くのは慣れている。

だから、

 

土御門「___俺は頼まれてここに来たんだ。お嬢ちゃんと一緒に遊んであげてくれってな」

 

見た限り子供である。

この館に入って出会った吸血鬼よりは知能も低いだろう。

妹とかそんなところだろうか。

この金髪の吸血鬼の少女からは寂しがり屋な感じがする。

床やベット付近には多くの人形があった。

それに自分の姿を確認するとパァっと明るい表情になっていた。

この薄暗い地下室に閉じ込められていたんだろう。

話し相手ぐらいなら誰でも求めて当たり前だ。それが子供なら尚更である。

 

土御門(このまま、騙せるか……?)

 

上手く話を作って誤魔化すつもりであった。

そして、隙を見て逃げて吸血鬼の弱点である日光を浴びせるため壁を壊せる道具を探す。

吸血鬼の弱点はニンニクや十字架など説明したがそれは、人間で例えるならゴキブリやムカデなど見たら不快な思いをする程度でコレと言った撃退の効果はない。

確実に命を絶つ為には日光。

それしかない。

聖水っという手もあるが『よし、吸血鬼を倒すためちょっくら聖水作るか☆』みたいな軽いノリで作れるものではない。

まあ、ニンニクや十字架などがあったならあったで助かる。

が、しかしここは吸血鬼の館だ。

そんなの置いている訳がない。

 

「へぇー、お姉様から頼まれたのかな?」

 

土御門「ああ」

 

上手く、上手く話を繋げろ。

一つのミスで自分の命はおろか大事なものまで失うことになる。

 

「私はフランっていうんだ。よろしくねお兄ちゃん!」

 

とても笑顔が可愛らしい少女はそう言って土御門に抱き付いた。

 

そして、

 

フラン「本当に私のお姉様は世界で一番優しいや。丁度オモチャが壊れちゃって暇してたところだったんだ」

 

土御門「……オモチャ?」

 

フラン「うん。ホラ、あそこの壁にあるでしょ」

 

そう言って抱き付いたまま、指を差す。

土御門は指の差された場所へ首を向ける。

その時、背筋が凍った。

心臓の鼓動はバカにうるさいのだが体温は低くなる一方だ。

 

フランが指を差した壁には全身血だらけで原型が留まってない肉の塊が張り付けにされていた。

 

フラン「じゃあお兄ちゃん。フランと一緒に____ア、ソ、ボ?」

 

土御門「_____ッッッ!!!!!」

 

今からその顔は絶対に忘れないだろう。

狂気に染まった瞳で口角を引き上げていた。

口の中のでは上の牙から下の歯へと唾液が糸を引いていた。

 

そして、能力を発動する。

ありとあらゆるものを"破壊"するという恐ろしい能力を…………。

 

が、しかしだ。

咄嗟の行動であったが、金髪吸血鬼の顔を見た瞬間危険を察知して反射的に彼女の腕を払い後方へ跳躍した。

 

土御門「……おいおい、マジかよ…………」

 

もう笑うしかなかった。

自分がさっきまで立っていた場所はあんな可愛らしい少女がやったとは思えないほどベッコリとへこんでいた。

 

もしも、あのまま彼女の腕の中に居たら……。

そう考えるだけだ寒気がする。

 

そして。

 

フラン「キャハハハッ!!あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!!!」

 

楽しそうに、芸を見て壺にでも嵌まったみたいにゲラゲラ笑う少女。

 

土御門「俺が今まで出会ってきた中で断トツだ………。断トツで狂ってやがるぜい……」

 

フラン「アレで大抵の人間は死んじゃうのにお兄ちゃんスゴイね!お兄ちゃんとなら長く遊べそう」

 

土御門「お兄ちゃんって呼ばれるのは好きだが……、お嬢ちゃんにそう呼ばれるたび心臓に痛みが走るな」

 

そして次の瞬間。

また、間髪いれずこちらに手を向ける。

数々の場数を踏んでる土御門は手を向けられてる場所に留まっては危険だと瞬時に分かった。

真横へ全力で移動することで攻撃を回避する。

 

そして、そして。

またまた自分が立っていた場所はベッコリへこんだ窪みのようなものができていた。

 

 

フラン「はーいっ、きゅっとして_____」

 

___ドカーンッ!!っと楽しそうにまた向けた手を握りそして開く。

 

土御門「クソっ、あまりああいう子には向けたくなかったが……っ!!」

 

ゴロゴロゴロっと転がって避けた後、弾数が少ないがここで悠長に後先のことを気にして出し惜しみしてる場合じゃない。

それにあんなに小さな女の子に拳銃を向けるなど、死んでもやりたくなかったが相手は正真正銘本物のバケモノだ。

仕方がない。

 

そして。

バンッ!!!っと一発の乾いた銃声が響く。

撃った弾丸は見事フランの眉間に直撃。

後頭部からは血飛沫を上げて弾丸が頭を貫く。

 

一瞬、なにが起きたか分からなかったが全身の力が抜けうつ伏せての形で金髪の吸血鬼のバケモノは倒れた。

 

土御門「…………、そういえば吸血鬼は銀が効くんだったっけか。銃弾には銀が混ざっている…………偶然ではあったが助かったぜい」

 

無関係な人間は傷つけたくない。

それは『グループ』の人間全員思っている。

だがしかし、今回は一方通行の殺害。もしもそれを邪魔する者が居たらソイツも殺しても構わないと命を受けた。

もしかしたら今自分が殺したバケモノは今回の件に無関係だったかもしれない、いいや無関係じゃなかったかもしれない。

 

後味の悪さが残るが今はただ死なずに済んだことを喜ぼう。

 

そう………一息吐いた時だった、、、

 

とりあえずこの部屋から出ようと扉の方へ歩いて行くと背から視線を感じた。

 

まさか……。まさか……。

 

『そんな訳が……』っと思いながらも振り返る。

 

土御門「嘘……だろ。頭を撃ったんだぞ………、鉛弾を脳に撃ち込んだんだぞっ!?」

 

サングラスの奥に隠れた瞳には明らかに動揺が見えた。

なんとあの金髪の吸血鬼のバケモノは生きていたのだ。

むくり、と立ち上がり何事もなかったかのようであった。

そして頬から伝ってきて口の中に入った血が混じった唾液をぺっ、っと吐く。

が、それからが驚きであった。

見る見る頭の傷が塞がり始めもう一度目蓋を閉じ開いたときには完全に傷が塞がり血も止まる。

 

フラン「アハキャハハハ!!痛かった、今の痛かったよ?でも大丈夫。フランはあの程度じゃコロセナイ」

 

頭に弾丸を撃たれても平気な顔で笑っている吸血鬼の少女。だが、それが更に土御門の恐怖を煽ることになる。

 

フラン「お兄ちゃんの番はさっきのでおしまい。次は……こっちの番だよネ?」

 

刹那。

フランは一瞬にして土御門の懐に潜った。

まるで、点と点が移動したみたいに。

超スピードと言えるぐらいに、瞬間移動と言えるぐらい速かったのだ。

 

フラン「はいっドーン☆」

 

反応出来なかった土御門がフランへ視線を向けようとした時には吸血鬼の少女の足裏が腹部へ突き刺さっていた。

 

ガンッッ!!!っと強力無慈悲な蹴りでくの字で背後へ吹っ飛び壁へ激突。

そして、たった一撃受けただけで内蔵はズタズタにされ大量の血を口から吐いた。

 

力無く前へ壁から倒れるとベチャっと吐血でできた赤い液体の溜まり場へ顔面から落ちた。

腹部が異常なまでに熱い。

上手く息を吸えない、呼吸が乱れる。

 

あんなか細い脚から放たれたとは思えない蹴りだった。

 

フラン「あれれー?もう御眠?まだまだこれからだよ、オタノミシは_____」

 

バゴンッ!!!!

寝てる暇すら与えず破壊の力を向けた。

だがだが、土御門は体に無理をさせることでなんとか攻撃を回避。

そして、もう戦闘なんて放棄して一心不乱に逃げようとした。

 

…………しかし。

 

土御門「____開かないっ!?」

 

鍵は閉まっていない。

なのに何故か開かないのだ。

 

今はまだ土御門は知らない。

それが紅魔館の主にして、気高い吸血鬼レミリア・スカーレットの仕業だということに。

 

土御門「…………やるしか、ないみたいだな」

 

扉を背にして振り返ると変わらず楽しそうに笑う吸血鬼のバケモノが立っていた。

 

フラン「アクセラレータみたいにフランを楽しませてくれる人は中々現れないんだ。お兄ちゃんはアクセラレータみたいにフランを楽しませてくれる?」

 

土御門「一方通行と面識があるのか……。話が繋がったぜい。そうか、俺達はここの世界に来てからもう既にお前達の手中で踊らされていたのか」

 

ニヤリ、と口角が上がる。

しかしそれは不適な笑みと強がれるものでなかった。

恐れや不安が容赦なく心を蝕む。

今にでも泣き叫んで逃げたい。

 

だが、やるしかない。

いいや、やるという以外選択が無いのだ。

 

サングラスを外し、ズボンのポケットに仕舞う。

そして。残り一発の弾丸を撃った。

乾いた音が炸裂する。

 

フラン「キャハハハ!!!アハハハははははははッ!!」

 

狂ったように笑いながら金髪の吸血鬼は突進した。

避ける、なんて弱者の行動はしなかった。

吸血鬼とは、気高く、強く、美しく。

弱者を強者が喰らう。

 

筈だった…………。

 

土御門「俺にも帰りたい場所が、守りたいものがあるんだ。______許せ」

 

胸に銃弾を受けても勢いは死なず突っ込んできた吸血鬼はそのまま腕を伸ばす。

体を掴み、地面に叩き付けてゼロ距離で破壊の能力を喰らわせようとしたのだ。

だが、その作戦は失敗に終わる。

 

何度も何度も何度も何度も危機を打破してきた土御門は、体を掴まれるより先に正面に一歩前進して拳を放ち顔面を殴り付けていたのだ。

そしてそして、それだけでは終わらせない。

殴られたことで後ろへ体が反れたフランを次に後頭部から地面に激突させるように相手の体を掴み正面に投げた。

すると、思い通り頭から倒れた吸血鬼のバケモノの頭蓋骨は砕け後頭部から大量に出血した。

 

土御門「………………、ふぅ」

 

安堵した息を吐く。

手応えはあった。

 

目はぐりんと上を向いて口を開き床に倒れる幼い容姿の吸血鬼。

少女を殺したことに罪悪感が無いと言えば嘘になるが、

それでも、

やらなければこっちが死んでいた。

 

土御門「_____さて」

 

何とか撃退出来た。

結標の方はどうなっているのか。

そう、考えたとき…………

 

土御門「…………………は?」

 

倒れていた吸血鬼の少女の姿が消えた。

綺麗さっぱり跡形もなく。

まるで、最初からそこにはなにも無かったみたいに。

 

「スゴイスゴーイっ!!良くフランを倒せたね」

 

土御門「嘘……、だろ?俺は悪夢でも見せられてるのか……?」

 

見たくもない光景を見た。

もしもこれが夢だと言うのなら両手を上げて喜びたい。

しかし、しかし。残酷なことに土御門の見た"ソレ"は現実なのだ。

 

なんと苦労して倒した吸血鬼の少女は生きていた。

元気良くピンピンしてたのだ。

しかも、

 

土御門「まさか四つ子だった……、な訳ないよな。幻影、もしくは分身ってところか」

 

フラン「そう♪これはフランの分身ダヨ」

 

どこをどう見ても全く一緒の姿が三つもあった。

だが、次の瞬間には三つが四つとなった。

その事にこれまでに無いほど土御門は絶望する。

たった一人でさえ、奇跡が起こせたからやっとこさ倒せたというのに、だ。

その相手がまさかの四人となったのだ。

 

逆立ちしても勝てるビジョンが見えない。

 

フラン「さーてっ!次は二人のフランを相手に頑張って。その次は三人。そしてその次は四人。キャハハハハッ!!お兄ちゃんはどこまで頑張れるかな?」

 

自分が玩具(オモチャ)として見られてるのはもう解った。

そして、次は絶対に死ぬのだということも…………。

だがこんな所では死にたくない。死んでたまるか。

 

だから、だから、

 

土御門「なあ、お嬢ちゃん_____」

 

ここからは嘘の時間だ。

 

この幻想郷に来る前から感じていた違和感。

それは携帯に依頼が来たときから始まった。

アレイスターから送られた依頼のメール。

それを見てなにか……。そう、なにか"自分達がなにかの出し"にされているのだと感じた。

依頼を見る限りその文の中にアレイスターの真意が見られなかったのだ。

しかしそれでも首を縦に振るしかなかった。

仕掛けられた罠に飛び込んで血にまみれた策で生還する他選択が無いのが今の土御門の現状だった。

 

土御門「___実は俺は一方通行の友達なんだ」

 

フラン「アクセラレータの、トモダチ?」

 

土御門「ああ、アイツの事が心配で俺達はここに来た。一方通行に嫌悪感を抱いていないなら協力してくれないか、アイツを元の世界に戻すことを」

 

フラン「………………、」

 

土御門「俺達に闘う意思はないんだ。頼む、もしも一方通行が元の世界に帰りたくないと言ってるならせめてアイツの居場所だけでも教えてくれ。友達として久し振りに話をしたいんだ」

 

土御門の話を聞いた後沈黙があった。

が、しかし。

 

フラン「……………………はぁー。チッ、クズが。調子に乗りやがって」

 

土御門「…………………………え?」

 

いったいさっきまでの明るく狂気に満ちた愛らしい吸血鬼のバケモノはどこにいったのだろうか。

突然変異したフラン。

その瞳に光は無く、闇を飲み込む紅色になっていた。

そして子供っぽい表情は消え去り、その変わりに下等生物を見下す正真正銘何百年もこの世界に君臨している吸血鬼となっていた。

 

子供のようなどこまでも響きそうな高い声ではなく、大人びた低い声で、

 

フラン「フランね、ここでいっぱいヒトを殺してきた。寂しいから、詰まらないから、ムカつくから、特に理由もなく殺したときもあったっけ………。それでね、トドメ刺そうとした時いつも見てきたんだ。人間が死にたくないと思うと誰かを騙してでも、見捨てても生きたいと必死に足掻く姿を。分かる?そんなのを何度も何度も目の当たりにしてきたフランに嘘が通用する訳ないじゃん。最初に言ったやつ、お姉様に頼まれてきたってのもそれも嘘でしょ?ナメるなよ、三下人間。オマエの臭い息を吐く口から出る嘘なんて見破るのは訳ないんダヨ」

 

土御門「はははっ……、俺も人のこと言えないがお前性格悪いな。騙すのが得意な俺が騙されていたってのか……」

 

フラン「もう少し泳がして暇潰しとして遊んでも良かったんだけどもう良いよ。壊しちゃうね」

 

バッ!っと四人のフランは土御門へ片手を向ける。

 

フラン「_______さようなら」

 

そして、、、、無慈悲で残酷な攻撃を放つ四本の腕からは逃れることは出来ず土御門元春は回避行動は取ったがそれでも………………。

金髪サングラスの四肢はバンッ!!っと皮膚の内側から肉と血が飛び出すように弾けた。

 

フラン「アクセラレータが言っていた学園都市から来る暗部とかいう組織の人間がまさかこの部屋に来るなんてね。……いや、これは偶然じゃない。お姉様の仕業か____」

 

自分の分身を消し、

床に転がる手足のない人間を冷たい瞳を向ける。

その時先程のことを思い出す。

そうだ。あの時のことだ。

 

このギリギリ息のある人間が部屋から逃げ出そうとしたとき鍵もかかってないのに扉が開かなかった。

それはつまりこの嘘つきはこの部屋に来る"運命"だったのだ。

そして運命を操り、ここから逃げれなくしたのだろう。

レミリア・スカーレットは運命を操る吸血鬼。

彼女の手にかかればある程度の問題はニヤリと笑うだけで解決する。

運命を操る。

それはつまり自分や他人や世界の運命さえも変えることはもちろん、この世に存在する万物の運命も見ることできる。

だから、初めて見る人でもその者の運命を見ることによりソイツの得意不得意などを見抜くことも可能だ。

 

フラン「____ってことはこれもお姉様の計画通りなんだろうな………」

 

多分まだコイツ以外も紅の主に運命を操られこの紅魔館に足を運んだのだろう。

だがしかし、ここはコイツらにとってはそこは終点だった。

 

フランは手足が消し飛んだ人間の体を踏みつける。

 

フラン「そういえばアクセラレータは学園都市の人間は捕まれろってメールしてたっけ。絶対に殺すなって………………あっ」

 

今、踏みつける物へ目を向けた。

一応息はある。だがあと生きていられるのはせいぜい数分といったところだった。

 

フラン「わぁァァァっ!?どうしようどうしよう!!このままじゃフランのせいでアクセラレータの作戦が失敗しちゃう!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!!アクセラレータに嫌われたくない!!」

 

っと言ったって、だ。

やってしまったのは仕方がないと言ったところか……。

フランには破壊する力はあるが直す力はない。

だから、この後数分……、いや後数秒に終わる命を助ける方法はないのだ。

 

しかし……。

 

「大丈夫ですよ、妹様」

 

フラン「えっ?……咲、夜?」

 

泣きじゃくりくしゃくしゃになった顔を上げる。

するとそこには音もなく気配を感じる暇もなくこの場に現れた優しく微笑む咲夜が立っていた。

 

フラン「大丈夫ってなにが大丈夫なの?」

 

咲夜「この者の時間を止めました。これで死ぬことはありません。後は永遠亭へ運んで時をまた再始動させれば勝手に治してくれるでしょう」

 

フラン「そうなの?ありがとう咲夜っ!」

 

咲夜「感謝の言葉をかけるのは私の方です。ありがとうございます妹様。邪魔な手足を消すことによって簡単に運ぶことができます。私は妹様のその優しさに胸を打たれました」

 

フラン「えっへへへ!!やったやった褒められた!!」

 

咲夜「では、お嬢様の所へ一緒に向かいましょう。妹様と紅茶を飲みたいと仰ってました。多分妹様の活躍を妹様自身から聞きたいのでしょう」

 

フラン「そうなのかな?だったら嬉しいなっ!」

 

そして。

フランと咲夜は手を繋いで部屋を出てレミリアが待つ食堂へ歩いて行った。

二人はとても楽しそうに明るく笑っていた。

 

 

だが……………、

メイド長が吸血鬼の少女と手を繋いでいない方の手は手足のない人間の髪を掴み、その肉体を引きずって運んでいた………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、、、

咲夜がフランの部屋へ来る前の話だ。

 

結標は右ふくらはぎに刺さっていたナイフを抜きそれを握り締める。

すると傷からは大量に出血する、もう右足は体を支える機能が無に等しくなっていた。

 

結標(…………早く私の役目を果たさなくては……)

 

足から抜いた自身の血に染まったナイフを見つめる。

結標は紅魔館のメイド長には、絶対に勝てないと確信していた。

しかし勝利する方法はある。

 

弱点を突けば良い。

あの小生意気なガキだ。

アイツがこの館で一番偉いのなら、アイツを捕らえればメイド長は必ず動きが止まる。

子供を人質にするのは出来ることならしたくない。だが、今は手段を選んでいるほど余裕などないのだ。

 

そして。

結標淡希に手加減無しの拳と蹴りが放たれた。

 

十六夜咲夜の攻撃は見てから避けれるものでは無かった。

突然自分の周りに現れ攻撃が当たったとこちらが気付いた時には遠くに悠々と立っているのだ。

だから、今日何度も受けた拳を三発受けたあと突くような蹴りを食らい結標は後方へ床に二回バウンドした後壁へ激突する。

 

レミリア「……………咲夜、お遊びはその辺にして早く終わらせちゃって良いわよ。あの男とフランが闘い始めた。私はフランを試すと言ったけれど自分の妹だとしてもあの子の力に絶対的な信用があるわけじゃない。無事無力化するよりうっかり殺す可能性の方が大いにあるわ。だからフランが殺す前に咲夜にはフランの部屋へ向かって欲しいの、出来るわよね?」

 

咲夜「承知しました。直ちにこの者の意識を刈り取ってみせます」

 

指と指の間に無数のナイフを挟んだまま咲夜は結標淡希が倒れている方向へ駆けていく。

そして、その途中で指に挟んでいたナイフを投げる。

が、しかし。しかしである。

 

投げられたナイフより明らかに多い数のナイフが結標を襲う。

だがここが根性を、覚悟を見せつける時だった。

 

咲夜「____ッ!?」

 

目を疑うという言葉は今使うのが正しいと確信がある。

今まで驚愕の顔を見せなかった咲夜が初めて驚愕の顔を見せたのだ。

それは、、、何故か?

 

結標淡希が刺されば確実に死に至る銀色の刃物へ自分から突っ込んで行ったのだ。

 

咲夜(不味いこのままでは……ッ!!)

 

 

避けれる攻撃だと思っていた。

だから、回避したところ拳を叩き込めば良い。

咲夜の作戦はそうだった。

しかしここでその計算が狂う。

このままでは刺客の彼女を殺してしまう。

殺害せず、無力化して捕まえることが咲夜のやらねばいけないことだ。

 

咲夜「どこにでも居る完璧なメイドというものを見せてあげる!!」

 

時を止める。

ナイフは結標へ当たる前に宙で止まる。

だが、だが。

 

咲夜「一体どこへ……?」

 

結標淡希の姿が無かったのだ。

首を振り周りを確認する。

しかし、ここで考えた。

今までは結標が空間移動して、"この世に現れて"から時を止めていたので攻撃が当たっていた。

だが今は違う。

ナイフが当たると思って慌てて時を止めた。

だから今はまだ、結標淡希は"この世に現れてない"かもしれない。

空間移動とは、別次元の空間を通って移動している。

それを知っている咲夜はため息を吐いた後に時を再始動させる。

『みっともない………』。

自分にそう罵倒する。

なにがどこにでも居る完璧なメイドだ。

慌てるなんて完璧なメイドはしない。

冷静に物事を見て判断して行動する。

だから今からはそうしよう。

 

次、この空間にあの女が現れたら自分の失態を反省すると同時にお嬢様の前でこんな失態をしてしまった原因のクソったれをボコボコにしてやる。

死なない程度に。徹底的に、、、

 

グサグサグサグサッ!!!

っと、ナイフ全てが壁へ突き刺さった。

 

そして咲夜は結標の姿を探す。

 

咲夜「____嘘ッ!?」

 

結標淡希は上に居たのだ。

別にさっきまで居なかったって訳じゃない。

咲夜が時を止めているともずっと無数のナイフの高さ数メートルぐらいに居た。

しかし、それを咲夜は見逃していた。

偶然と偶然が重なり絶対に敗北で終わる闘いに勝利する可能性というなの"奇跡"を結標は引き寄せた。

 

その"奇跡"をものにするため、、、

もう一度座標移動する。

飛んだ場所はもちろん、あの小生意気なガキの頭上だ。

 

咲夜が時間を止めるより結標が両手で強く握り持つ逆さに刃を向けたナイフがレミリアの頭に突き刺さる方が先なのは明確だった。

 

が、しかし。

 

レミリア「_____フッ……」

 

偶然に向けた刃物は普通のナイフではない。

咲夜が武器として所有するナイフは"吸血鬼を殺す"ことができるナイフだ。

どんなに頑丈で大きな刀で首を斬り落としたとしても、最先端の技術で作られた最高傑作の対物ライフルで体をぶっ飛ばしたとしても吸血鬼の息の根を止めることはできない。

しかし、結標が偶然に自分に刺さっていたナイフは吸血鬼を殺すことができる。

そんなのを向けられているのに、、、

後瞬き程度の秒数で頭に突き刺さるというのに、、、

 

レミリア・スカーレットは余裕の態度を見せて怪しく笑う。

 

そしてそして。

結標が振り下ろしたナイフはレミリアの頭に突き刺さ____________らなかった。

 

結標「………………………………え?」

 

そのことに一番驚いたのは結標自身だった。

確かにあのままだったら"こんなこと"にはならなかった。

 

結標淡希がナイフで突き刺したのはレミリアに座られている海原の右足だった。

 

結標「そんな____」

 

レミリア「___バカなって?」

 

結標「く……ッ!!」

 

ナイフを抜き再び刃を向ける。

だが、、、

だが、、、

 

結標「なんで……、なんでっ!?」

 

___私の手は言うことを聞かないッ!?

気持ち悪い。吐き気がする。

全身で振り絞った力を入れナイフを振るうが……、

ナイフで突き刺そうとするが……、

 

自分の体が自分の意思と裏腹にそれを拒む。

つまり何度も何度もレミリアに攻撃を仕掛けるが、それを自分の体が勝手にその攻撃を反らしているのだ。

 

結標「____私に一体何をしたッ!?」

 

間違いなくこの症状はこのガキのせいだろう。

結標は、叫びながらそれでも銀色に輝く刃を向けた。

 

しかし。しかし。

 

咲夜「お嬢様に貴様ァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

憤怒に震える咲夜が時を止め結標に急接近し、扉の方へ向かって顔面を殴り付ける。

だがそれだけでは済まさない。

 

吹っ飛んでいる最中に無数の打撃を食らわせた。

すると彼女の体は空中でピンボールの様に跳ね返りを繰り返す。

時を止め、殴り。また時を止め吹っ飛んで行った場所へ先回りしてまた殴りを繰り返しているのだ。

 

鈍い音が連続で炸裂する。

 

だが、最後。

〆の一発はもちろん顔面であった。

拳を突き当てたまま地面へと押し落とす。

 

______ドゴンッッッ!!!!

地面は揺れる。

そして、、、

崩壊した床の中心に完全に気を失い息があるか怪しいぐらい深手を負った倒れてる彼女へ、

 

咲夜「お嬢様に刃物を向けるとは万死に値するっ!もしも殺さないようにと言われてなかったら確実にお前を殺していた、愚劣な人間」

 

レミリア「さすが私の咲夜、お見事ね。クールに決めるその姿、惚れ惚れするわ____」

 

パチパチパチパチっと手を叩き自分に支えるメイドを褒める。

 

レミリア「____でもちょっとやり過ぎよ。私達は善か悪かと言えば悪の存在。下らない正義感に突き動かされ武器を持って私達を退治しに来た人間なんて数え切れないわ。もう刃物なんて向けられるのは慣れてしまってるのよ。私は"生きるために人を殺す"。どんな目的や理由があれ他者を殺すのならば誰かに殺される覚悟は出来ていて当然。もしもその覚悟が無いのなら失礼極まりない」

 

そうだとも。

彼女は"吸血鬼"。人間の血を摂取しなくては体から生命力が無くなりみるみる枯れていってしまう。

だから生きるために殺す。

死にたくないから殺す。

それが彼女の産まれてから背負いし業なのだ。

 

レミリア「素直に認めるわ、確かにさっきのは"危なかった"。偶然の行動から生まれた奇跡とはいえ私の命を絶つナイフがあともう少しといったところまで接近していたのだから。でもね咲夜、貴方が私を護ろうとしてくれるのは嬉しいのだけどあんな小娘にやられる私じゃないわ」

 

咲夜「それは十分承知しております。しかし……、」

 

レミリア「____しかし?」

 

咲夜「私の命より大事なお方に危険が迫っているのなら全力で排除するのが私の使命です。いくらお嬢様が私の手なんて必要ないほどお強い方だとしてもそれでも私はお嬢様の壁となり矛となる所存です」

 

レミリア「ありがとう咲夜。貴方のその気持ち、とても嬉しいわ」

 

咲夜「____あと、ですが……。それとは別にただ許せなかったと言うのが本音です。お嬢様に無礼をしたことが」

 

レミリア「彼女に……、いいやその子達に同情する箇所はある。哀れな運命を背負ってしまった子供達。運命の奴隷となってしまったのなら運命に従うしか道がない。それを知ってしまったから少し優しくしてあげたくなっちゃったの。咲夜、この後始末は美鈴に任せて早くフランの所へ行って。あの子……、やっぱりまだダメだったみたい。あのまま放っておいたら殺しちゃうわ」

 

咲夜「承知しました」

 

レミリア「あっ、私は食堂で待ってるわ。フランと一緒に来てね。一人でより二人で紅茶を楽しみたい気分なの」

 

咲夜「____はっ!」

 

そして、そして。

メイド長が姿を消すとレミリアは立ち上がり食堂へと向かって行った。

後ろから扉が開く音がした。

美鈴が屋敷の中に入ったのだろう。

いつも門番の仕事をサボってるから、他の仕事をさせても問題ない。

給料分の仕事はしてもらわなくては困るというものだ。

 

レミリア「『アイテム』は魔理沙達が、そして『グループ』は私達が片付けた。後は『スクール』……か」

 

運命を操ると言うことは運命を見ることも変えることも可能なのだ。

別に能力の対象は自分だけではない。

他の者へも可能なのだ。

 

紅色に瞳を灯らせると、

 

レミリア「……見えない。あと『スクール』のヤツの運命が見えない。私の能力が通じないとは相当危険な相手ってことは確実ね…………」

 

そして。

口元に手を当てて、

 

レミリア「嫌な予感がするわ。この先の運命が見ることが出来ないなんて………、一体私達にどんな運命が待ち構えてると言うの_______」

 

 

________一方通行(アクセラレータ)

最後に彼女はそう呟いた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそして。

その後『グループ』三人無力化し集めた所で報告する。

 

紅魔館にて『グループ』の無力化、捕獲完了。

 

すると大妖怪のスキマが開かれその中へ気を失っている三人をそっと入れる。

繋がれた場所はもちろん永遠亭だ。

 

 

永遠亭では、『グループ』三人の酷い有り様を見て「これはまた大変な患者が運ばれて来た…………」っとため息を吐いてる中、フランとレミリアは紅茶を楽しみながら会話を弾ませていた。

そしてその様子を少し離れた場所で嬉しそうに咲夜は眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

一方の話をしよう
月の戦争。救いを貪欲に欲する月面

もしも我らが倒れてしまったら、、、

「俺がやらなきゃ誰がやる」

一方通行達は何時間も死闘を繰り広げていた。

次回、第四章・第九話『月面制圧』
救済なンて俺には似合わねェ。だけど、護る。
救ってやるよ、

どこのどいつだって俺が助けてやろォじゃねェか!
血みどろの方法だが、
それでも証明してやる。
『俺には誰かを護れる力があるってなァッ!!!!』



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9話

偶には一番底に沈み絶望するのも悪くない。
だって一番底の絶望を味わったらそれ以上の絶望は無いのだ。

後は、沈んだら上るだけ、
思う存分落ち込め、だが決して屈するな。
希望は地面に転がってなんかいない、
前を見ろ、拳を握れ、前進せよ。
勝負は心から敗けを認めない限り続く。

さあ、闘え。
闘わなければ勝利を掴み取ることは出来ない。
心から屈した敗者になるな、
自分の道は自分で作れ。
笑って生き、最後は笑って死ね。

誰かの思い通りになンてされたくねェだろ?

純白の身に純白の翼が生え、
そして純白の怪物が月でその力を暴れさせる…………、


絶対誤字脱字ミスがあります。
ですが発見した場合、面倒だったら無視してくれて構いません。
お暇なお方や心優しいお方は出来たらで良いので誤字やそれ以外のミスを見つけたらこんなダメな私に報告してくれると非常に助かります。


地上で闘いが繰り広げられた。

そして、それは月面でも、、、

 

「…………とりあえず半分、って言ったところか」

 

月に来て最初からエンジン全開で暴走者を倒し続け黒い玉を取り除いていた彼こそ、幻想郷最強の超能力者・一方通行(アクセラレータ)である。

 

地面から離れた場所。

つまり、宙に立つ一方通行の隣に一人居た。

"彼女"は純白の隻翼を持つ銀髪の女性。

いつも口元を手で被う彼女の名は稀神サグメ。

 

一方通行はサグメを横目で見て、

 

一方通行「サグメ、オマエはまだいけるか?まだまだ暴走してるヤツは居る。限界だっつゥなら後は俺に任せて横になっても良いンだぜ。オマエはいま体に無理をさせて動いてる、これ以上無理をすると明日明後日にその反動が来て下手したら何ヵ月も寝たきりになるって可能性もあるぞ」

 

サグメ『大丈夫。まだまだ貴方の力になれる』

 

一方通行「…………………悪りィな、助かる」

 

今日の一方通行は素直だった。

しかしそれは珍しいと言うだろうか?

いいや違う。誰だって今から大量の人間が死ぬかもしれないという瀬戸際だったら素直になるものだ。

今、白い怪物の隣に隻翼をバサバサ羽ばたかせ飛んで隣に居る彼女も最初は暴走者だった。

だがこの月に来てからまず最初に一方通行が無力化させ、黒い玉を取り除いてから傷を癒す効果と体力を回復させる効果がある薬を飲ませ動けるまで回復させた。

そしてできる範囲で良いから暴走者となり月へ破壊攻撃を続けるヤツらの沈静化の手伝いを頼んだ。

断る訳はないと思ってはいた。

自分が住んでる場所が今まさに跡形も無く消えてしまうかも知れないのだ。

もしも自分がそんな状況になったら間違いなく嫌なヤツとでも良いヤツとでも力を合わせて立ち向かう。

 

皆一丸とならなくてはこの事態は集束できないのだ。

 

サグメ『このスマホというやつ使ってるだけで楽しい。月でもこういうの売ってくれないかな』

 

サグメは滅多に言葉を口にしない。

それは彼女の能力のせいである。

『口に出すと事態を逆転させる能力』。

これは一応使用条件など複雑な部分が色々あるのだが、この能力は一度発動してしまうとサグメ自身でも思ってもない力を発揮してしまう。

“こんな風に事態をひっくり返したい”っと思っても願った通りには発動してくれない。

コントロールというものができないのだ。

 

余りにも強力だが、余りにも扱いが難しい力。

もしも口に出すだけで願うように能力発動できるなら間違いなく彼女は全世界で最強の一角に数えられるだろう。

まあ、能力が上手く扱えなくてもサグメはそこらの奴らと比べれば比較にならないほど強い。

能力だけではなく弾幕の力も他のヤツらより格段に上の存在なので味方としてはとても心強い存在だ。

 

サグメの能力を知ってる一方通行はスマホを渡し使い方を教えて思ったこと、言いたいことをメールして伝えるようにした。

だがスマホはとても便利だしそれに未知の機械とはここまで心を踊らせてくれるのか、

ポチポチ画面を押すだけで楽しい。

 

今、月も幻想郷も、人間も月の民も、神も人間も、万人万物大変なことになってるというのに、、、

サグメはスマホを弄ってる時とても楽しそうであった。

 

一方通行「そろそろ月の民達を安心して寝かせられる場所を確保しなくちゃなァ。今屋根のある場所で寝かせてられてねェ。そこらの地べたで適当に寝かせてたら適切な手当ても出来てねェし傷が悪化するかもしれねェ………、それに一箇所に人を集めた方がこちらもことが楽に運べるしな」

 

サグメ『それだったら月の都が良いかも』

 

一方通行「あァ……、だろォな。だがあそこだけやけに暴走者が多いし他の暴走者より狂暴だった。まるで月の都には近付けたくないよォな…………」

 

この月での一方通行の目的は三つ。

まず一つ。暴走者となってしまった月の民全員を正気に戻すこと。

二つ目は幻想郷へ向かって発射される核ミサイルの停止、もしくは排除。

そして、一方通行個人の目的が一つ…………、

っと言ったところだ。

 

一方通行「俺達二人でも月の都を制圧できる。だが、人が多いに越したことはねェ。藍達と合流するか」

 

ズボンのポケットからスマホを取り出しメールを打つ。

藍達も月の都を見たと報告が来た。

だが余りにも暴走者が多いので後回しにしたらしい。

しかし、もう傷付いた月の民を硬い地面に寝かせ続けるわけにもいかない。

だから布団と医薬品を確保したい。

 

今回の事件で誰一人死なせない。死なせてたまるか。

ならば、やるしかない。

合流地点を送り一方通行はサグメに「付いて来い」っと行って藍達との合流地点へ向かう。

 

もう最初から全力の全力だった。

藍、橙、一方通行、サグメ。

この四人達のお陰で月の暴走者数は半分になった。

 

暴走者から正気に戻り傷を負ってはいるが動ける者は居た。だが闘う力はない。

そういうヤツには今の月の状況を伝え酷い怪我を負い動けない者の看病を頼んだ。

その中には医学の心得がある者が居たりしたのでそういう者には助けられている。

 

一方通行達は地上から来た。

月の民はあまり地上を良く思っていない。

しかし、助けてくれたのは事実。

だから今回ばかりは素直に信じて一方通行の頼みを聞くものが多く居た。

中には一方通行を怪しいヤツだと言って信じない者も居た。

だが一方通行の隣に居たサグメを見てその心が変わる。

 

『あのサグメ様が信じているのなら我々も……』と。

 

 

古風な日本の雰囲気を醸し出す建物が並び立つ月の都からそこまで離れた場所ではなかったので早く月の都付近に到着する。

 

一方通行「藍達はまだ来てねェか………」

 

まだ周りに藍や橙の姿は見えない。

一方通行とサグメは二人を待つ間月の都を少し離れた空から眺める。

建物は崩壊し、燃え盛る炎、立ち込める黒煙。

 

以前見た時より一層酷くなっていた。

 

サグメ『あの長閑で平和だった月の都が……、どうしてこんな地獄に……』

 

一方通行「………………大丈夫だ。月の都もそして月の民達も前の状態に戻してやる。この俺が戻してみせる。約束する、オマエらの平和は俺が取り戻す」

 

真っ直ぐな紅色の瞳で地獄と化した見つめる。

しかしその瞳には強い覚悟があった。力があった。

そして一方通行は、ぽん…とサグメの頭の上に手を乗せる。

 

サグメ『……………………』/////

 

許してくれ月の民達よ………。

今、"こんな気持ち"になってる場合ではない。ぽっ…と頬を赤く染めてる場合じゃない。

しかし、しかしだ。

少しだけこのぽかぽかと、ふわふわとした日溜まりのような気持ちに浸らせて欲しい。

 

そして。

 

橙「御待たせしましたー」

 

藍「申し訳ありません、少し手こずる数を相手にしていて遅れてしまいました。しかし御安心を。もうその者らは片付けて_______」

 

___おきました。

っと、頭の中では最後まで言えていた。

しかし藍の口は止まる。

 

そして。

 

藍「あ……、あのー、一方通行さん。その人は……?」

 

一方通行「メールで伝えたはずだぞ?こいつはサグメ、色々あってサグメが地上に来ちまった時に知り合ったンだ。今は月の沈静化の手伝いをしてもらってる。安心しろ俺達の協力者だ」

 

藍「そっ、そうではなくてッ!!!」

 

いつの間にかサグメは一方通行を腕を抱いて体を寄せていた。

まるで、親睦の仲だと見せつけるように……。

だがそれが藍の怒りに火を注ぐ、

 

藍「随分と仲がよろしいことだな。だがくっ付き過ぎだ」

 

橙(そうは言ってるけど藍様だって人のこと言えないじゃん………)

 

負けじと藍は藍で一方通行の空いている方の腕を抱き体を寄せていた。

白い彼の両腕には柔らかい感触があった。

女性の女性らしい部分に触れているのだ。だがこれは自分から当てていっていない。

彼女達が勝手に当ててるのだ。

腕もげろ。

 

サグメ「…………」

 

藍「…………」

 

一方通行を挟んでサグメと藍の間に火花が散り稲妻が走る。

『両者一歩も譲らない』っという感じだった。

二人に挟まれてる一方通行は思った、「またかよ……」と。

彼はこういうのに良く巻き込まれる。

自分を使って遊んでるのだと思っているらしい。

だからそういうのは下手に触れるから面倒になるので、無視をして収まるのを待つのが正しい対処方法だと考えている。

 

ホント、ここまで鈍感だとそろそろ刺されるよ?

 

橙「あのー、すみません。盛り上がってるとこ悪いのですが今は"そんな事"をしてる時ではないのでは……?」

 

体を小さくして顔の真横に手を上げる橙。

しかし、横槍を入れた橙へサグメと藍は鋭い眼を向けた。

『邪魔をするな』っとその瞳が語っていた。

 

橙「ヒィィィィィィ!!!!」

 

全身の毛が逆立つほど、

ただただ…………、怖かった。

まともなことを言ったはずなのに、

正しいことを伝えたはずなのに、

 

何故か睨み付けられた。

しかも殺気がバチバチした眼で。

 

橙(誰か……助けて……)

 

一方通行「はァ……、確かにな。ここまでオマエらは良く頑張った。息抜きに遊びてェってのも分かる。だがそれはこの異変が解決してからだ」

 

二人の手を振り払い、そして離れる。

遊び道具の自分が離れれば終わると思っての行動だった。

 

一方通行「……それにしてもオマエらって仲が良いンだな」

 

橙「一方通行様も一方通行様で問題があるからあんなことになったと言うのに……」

 

一方通行「俺がなンだ?」

 

橙は小声で呟いたので橙がなにを言ったのか全部聞こえなかった。

ただ、自分の名を呼ばれたのは確かだった。

 

橙「いいえ、何でもありません」

 

そして橙の口から溜め息が溢れた。

確かにこんな事態だというのに藍様も女神様も一方通行を取り合ってる場合ではない。

しかし、しかし。

一方通行がここまで鈍感なのも悪いと橙は思った。

 

そして。

サグメに橙と藍を紹介した後、話はどうやって月の都を制圧するかになった。

 

橙「………それで、月で一番の危険地帯となった都へどう攻め込むおつもりですか?」

 

一方通行「あァ?どうもこうもねェよ。正面から乗り込む。そして暴走者を見付け次第片っ端にぶっ倒す」

 

橙「え~………」

 

ここでも橙は溜め息を吐いた。

一方通行の噂話など聞いて橙は一方通行のことを知的な人だと思っていた。

が、どうだ?

まさかの超脳筋思考なヤツだったのだ。

 

そしてそして。

橙の溜め息にはもう一つ理由があった。

それは、、、

 

藍「…………………なに睨み付けている鳥風情が」

 

サグメ「翼は生えているが鳥ではない、私は女神だ。そこを正しく覚えておけクソ狐」

 

橙「……………………」

 

まだ藍とサグメは喧嘩中だった。

 

一方通行「チッ、戯れ合うのはその辺にしろ。そろそろ_____」

 

?????????。

なにか……、

なにか無視していけないことが起きた気がする。

それに逸早く気付いたのは一方通行だった。

 

一方通行「______はっ?サグメ、オマエ今喋ったのか?」

 

サグメ「……、うん」

 

一方通行「大丈夫なのか?」

 

サグメ「能力は使おうと思わなければ発動しない。ごく稀に無意識で使っちゃう時があるけど充分意識してれば大丈夫」

 

一方通行「それは知ってる。だからメールで会話だなンて回りくどいことしてなくても良いだろって言ったらオマエは『それは出来ない』って抜かしただろ。何でか理由を聞いても黙り決め込むしよォ」

 

サグメ「そっ、それは……まだあの時は貴方と声を出して話すのは緊張してて……」

 

一方通行「あン?良く聴こえねェぞ」

 

サグメはごにょごにょとハッキリとは口にしておらず何を言ったのか良く聴こえなかった。

一方通行は手を胸の前で弄り恥ずかしそうな顔をして俯くサグメに首を傾げる。

 

一方通行「……あの時はなにか理由があってダメだったが今は大丈夫ってことで良いのか?」

 

サグメ「うん、そうしといて」

 

一方通行「…………分かった」

 

野暮な詮索は止めよう。

女性の内面に関してあれやこれや聞くのは失礼だ。

そのぐらい一方通行でも分かっている。

そして、、、

 

一方通行「しっかし意外だった。オマエはそォいう声をしてたンだな。俺の予想とはちょっと違ったな」

 

サグメ「変…………、かな?」

 

一方通行「いいや全然、サグメらしい声だと思うぜ。だが、だからこそオマエの能力は厄介だよな。勿体ねェよ、良い声してンのに気軽に話すことが出来ねェなンて」

 

サグメ「良い……声?」

 

刹那。

カーッ!!っとサグメの頬は熱くなり赤く染まる。

心臓がうるさい。

全く、目の前に居る白い彼と居るも多くの"初めて"を覚える。

しかし、しかし。

これからも彼と共に居る限りもっと"初めて"を経験していくだろう。

 

サグメ「一方通行的には私の声は好き、なの?」

 

一方通行「あァ?まァ嫌いじゃねェし好きなンじゃねェの?」

 

サグメの声は語りかけるような落ち着いた涼しさがあった。

しかしだからこそサグメらしいと思った。

 

別に、一方通行はこういう声が嫌いとかこういう声は好きだとかはなかった。

だが「良い声だ」っと思ったりはする。

自分のことを怪物だのバケモノだの言っているが、彼自身ですら知らない“人間らしい”部分もあるのだ。

 

サグメ「そっか……。えへへっ」

 

一方通行「?」

 

褒められれば嬉しい。

神も仏も妖怪も人間も変わらない。

『舌禍をもたらす女神』様もそうであった。

そして、サグメは嬉しそうに一方通行へ微笑んだ。

 

しかし一方では…………、

 

藍(あんの鳥がァァァァァァァッ!!!!)

 

橙「凄いッ!!溢れんばかりの闘気だ!!では、その闘気を味方にではなく敵に打つけましょう!!ねっ!ねっ!!」

 

藍「………そうだな。今からこの怒りを都の暴走してるバカどもに打つけられると思うと悪いとは考えているがそれでも楽しくて楽しくて自然と口角が上がってしまうよ」

 

橙(全身に力が入ってるから首筋や手や顔に血管が浮かび上がってる………………怖っ)

 

藍が今の状態で里の中を歩いたらいくら人間で混雑してる道でもモーゼの十戒みたいに人々の群れは二つに別れ、一本の道が出来るだろう…………。

 

そして、都へ全身突撃をかます時が来た。

作戦はあった方が良いと思い一応ではあるが作戦を立てた。

 

まず最初に一方通行が攻めに入る。その次にサグメ、最後に橙と藍だ。

一方通行が派手に大暴れして多くの暴走者を集める。

 

そう、ここで最後なのだ。

月の都を最後の決戦場所に決めた。

月全体で暴れている暴走者全員を月の都に誘い寄せる。

誘い出された暴走者の相手は全て藍も橙に任せる。

一方通行は派手に大暴れした後、月の都に詳しいサグメと共にアレイスターが仕掛けた核兵器を見付ける。

それは早く終わらせるつもりだ。

暴走者を全員を藍と橙に任せるのだが、全て倒しきれるとは一方通行は思ってない。

藍と橙は強い。確かに強い、そんなのは分かってはいる。しかし、しかしだ。

体力の限界が来ている。

藍、橙、それにサグメや一方通行ですら万全な状態でない。

所々傷を負っているし、体力だってかなり消耗している。

月人は地上の人間より遥かに強かった。

そんなこと月に来る前から分かりきってはいたが想定していた以上の力を有していたのだ。

 

だから、一方通行とサグメに求められるのは早さだ。

素早く核兵器を発見すること。そして核兵器を停止、もしくは排除すること。

藍と橙に求められるのは一方通行とサグメを邪魔しようとする暴走者の輩を少しでも減らすこと。

 

たった四人。

しかし、その四人がこの月では最後の希望だ。

 

さあ、さあ。

誰も望んでないのに広がり続ける地獄を壊せ。悲劇を吹き飛ばせ。

月にあの頃のような平穏な平和を取り戻せ。

悪夢から覚まさせてやれ、

覚めない夢などありはしないのだから。

 

ボッ!!っと一方通行の背中から噴射に近い黒い翼が噴き出す。

 

一方通行「___オマエ達は俺の合図があるまでここで待機していろ。味方の攻撃で死にたかねェだろ?」

 

橙「一方通行様……。ご武運をお祈りします」

 

一方通行「……心配は要らねェよ橙。オマエらの帰りを地上で待つ紫のところに無事帰すまで俺は何が起きたって倒れねェ」

 

 

心配ではあった。

だがそんな橙にいつもの調子で返事をして、そして橙の頭の上に手を乗せた。

そして、次の瞬間には一方通行は真っ直ぐに月の都へと向かって飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「今日限りのクソったれなパーティーだァ、とことン楽しもうぜクソ野郎どもォォォォォォォォーッ!!!!!」

 

地響きと共に月の都の中心に降り立つ。

そして、空間を震わせる咆哮のなか黒い翼を大きく広げる。その数は百、二百と増えていった。

 

ここまで大きな音を立てて目立つ黒い翼を広げれば当然のごとく暴走者は一方通行の元へと集まる。

しかしそれが白い怪物の計画だ。

 

一方通行「ォォォォォォォォォォォァァァァァァあああああああああああああああああああーっ!!!」

 

二百以上の数となった大きな黒い翼で空気全体を凪ぎ払い台風と同等の風を巻き起こす。

その風は月の都の炎を拐うように消し飛ばし、一方通行を襲い掛かろうとした暴走者達は吹き飛ばされた。

その吹き飛ばされた暴走者の中には倒れた者もいたがそうでは無い者も居た。

倒されなかった暴走者は再び月の都へ攻撃を仕掛けようと動き出す。

 

一方通行「何一つアレイスターの思い通りにはさせねェ。あいつの幻想を砕いてやる……ッ!!」

 

天まで伸びた黒い翼は粉々に砕け、空から黒い粒子が降り注ぐ。

だがしかしそれはただの現象であってそれ以外の意味はなさない。

黒い翼の中から出てきたものに本当の意味がある。

 

純白。

『黒い翼』とは全く異なる一点の穢れもない『白い翼』が一方通行の背中にあった。

そして彼の頭上には天使のような輪が存在していた。

 

一方通行「…………来たか」

 

黒い粒子を降らすという合図を出してからポツリと呟いた。

 

空から自分の元へ向かってくる一つの影。

それは隻翼を持つ女神であった。

サグメは一方通行の立つ付近へ降りる。

 

サグメ「……………………」

 

一方通行「時間がねェ、さっさと行くぞ。とりあえず最初は地下だ。くそデケェモンでも余裕で入れれそォな広い地下室を探す。心当たりがある場所から片っ端に行け、俺はその後を付いて行く」

 

そして。

サグメは無言で翔けていき、一方通行は先程言った通りその後を追う。

 

だがだが……。

 

サグメ(確かスマホにはカメラ機能ってのがあるんだよね。一方通行の今の姿撮りたいなー、かっこいいし)

 

舌禍をもたらす女神様の頭の中は今の一方通行の姿でいっぱいだった。

自分の役目は分かっている。

案内だ。余計なことは考えるな。

そう……、思ってもちらっと自分の後ろを付いて来ている一方通行を見る。

 

サグメ(うん……、やっぱり何度見てもかっこいい。後で写真撮らしてもらおう、そうしよう)

 

一方通行「…………?」

 

チラチラ後ろを振り返るサグメが分からなかった。

ちゃんと遅れずに付いていってる。

なのに、どうしてそこまで後ろを確認する?

 

二人が都の中を翔ける速度は暴走者がとても追い付けるものではなかった。

だから暴走者が二人に仕掛けることは出来ない。

 

なのに、なのに、だ。

 

どォしてなンだァ?

っと、一方通行は考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月の都の外れ。

建物の建っていない所にあった大きな岩を一方通行が蹴ると散乱するように岩は砕けた。

そして、岩も無くなった所には、、、

 

一方通行「______ビンゴだ」

 

サグメ「こんなところ知らない、一体いつから……?」

 

そこは何もなかったはずだった。

だが、地下深く続く底が見えない穴があったのだ。

 

サグメが考えた核兵器が隠せそうな場所は隅々探した。しかし、どこを行ってもそんなものはなかったのだ。

そのことから次に一方通行はアレイスターは核兵器を隠せそうな場所を作ったのではないかと考えた。

 

そして、、、月の都をもう一度空から見渡し怪しい場所を隈無く探して探して、

 

当たりを引いたのだ。

 

一方通行「気を引き締めて行くぞ。どンな罠が仕掛けられてるか分かンねェからな」

 

サグメはコクりと頷いた。

そして二人は穴の中へと入っていった。

長く長く落下してようやく底に着地する。

 

一方通行「…………あれか」

 

とても大きなどこまでも奥に続いてそうな空洞の中に全長四十メートルの核ロケットとその発射台があった。

しかし制御コンピューターと思われるものも発見。

今からそれに向かおうと思った次の瞬間、

 

サグメ「一方通行っ!!」

 

一方通行「________チッ!」

 

地上にはこれ以上の熱が無い業火の斬激波が一方通行に向かって飛んで来た。

一方通行は地面を蹴って後方へ跳躍してサグメの隣に着地する。

 

一方通行「やっぱり、"誰か"居たよォだな」

 

先程自分が居た場所は抉れていて赤オレンジ色に焼け焦げ、

そして溶岩のように溶けていっていた。

いくら反射があるにしろ、さっきの攻撃はまともに受けたら白い怪物といえど一溜まりもない。

それに、もしも核にさっきの攻撃が反射されしまったら起爆してしまう。

 

サグメ「…………嘘。どこを探しても居ないと思ったらこんな所に居たの…………」

 

白い怪物に先制攻撃を仕掛けた者と、もう一人の者が核ロケットの後ろから二人の前に現れた。

しかしその二人を見たサグメは口元に添えていた手を震わせていた。

 

サグメ「依姫(よりひめ)……豊姫(とよひめ)……」

 

一方通行「知り合いか?」

 

サグメ「……うん。私の大切な人だ」

 

一方通行「……そォか。なら早くぶっ倒して正気に戻してやるぞ」

 

片方は、

日本刀を一刀構える薄紫色の長い髪を黄色のリボンを用いてポニーテールにして纏めていて、紫がかった赤い瞳の女性。

服装は半袖で襟の広い白シャツのようなものの上に右肩側だけ肩紐のある赤いサロペットスカートのような物を着ている。

ボタンが前面中央にあり膝上くらいからそのボタンを開けていた。

彼女は綿月依姫(わたつきのよりひめ)という。

そしてもう片方、

腰ぐらいまで伸びた亜麻色の髪に金色の瞳を持つ女性。

手には閉じた扇子を持っていた。

そして服装は長袖の襟の広い白いシャツのようなものの上に左肩側だけ肩紐のある青いサロペットスカートのような物を着ている。

その服も全面中央にボタンがあり膝上くらいからボタンを開けていた。

彼女は綿月豊姫(わたつきのとよひめ)

サグメは前方に立つ"姉妹"を見つめる。

決して視界から外しはしない。

もしも視界からこの姉妹が消えたらそれは自分達が危ないと分かっているのだ。

二人とも可愛い顔をしているがその姉妹の能力はとても恐ろしい。

一瞬の油断が死に繋がるのだ。

 

そんな相手が目の前に立っているというのに一方通行は冷静だった。

そして。

穴から落ちて来て着地する多くの音が自分達の後ろからした。

アサルトライフルやカービン銃など、現代的な武装をした月人が持っている武器を一方通行とサグメに向ける。

 

もちろん、一方通行達の前にも後ろにも居る者達は暴走者である。

 

サグメ「『挟み撃ち』……か______」

 

だが、と続ける

 

サグメ「今確かに私は口に出したぞ?その意味が分かるか?」

 

前にはあの霊夢や魔理沙では手に追えない力を有する二人。そして後ろには強力な銃を構える約二十人の武装した月人が、

 

だがしかし、サグメはニヤリと口角を引き上げる。

そして、そして。

 

サグメ「封は解かれ、時は満ち、機は熟した、______事態は逆転する……ッ!!」

 

口元を覆う手を離した時にはもう彼女の能力は発動していて、サグメの言った通り事態は逆転した。

挟み撃ちを逆転。

それをするとどうなるのか?

答えは簡単。挟み撃ちを仕掛けた者が挟み撃ちを仕掛けられる側に立たされるのだ。

 

この月の地下の空洞に居る者全員の立っている場所が変わった。

 

前方奥にはサグメが、中央には暴走者達が、

そして後方奥には純白の翼を生やす白い怪物が、、、

 

一方通行「ナイス判断だ、やるじゃねェかサグメ!!」

 

ボゴンッ!!!!!!

地割れが発生するほどの力量で地面を殴り付ける。

するとサグメと一方通行に挟まれている暴走達の足元が弾けた。

爆弾なんて物より強力な衝撃だった。

だがしかし吹っ飛びはしなかった。

暴走達全員が体を小刻みに震わせ白眼を向いて唾液を吐き出し糸の切れた人形のように地面に倒れ込む。

 

一網打尽とはまさにその事だった。

 

倒れた者どもから出てきた黒い玉は一方通行が背中の純白の翼を振るうと一斉に破壊された。

 

サグメ「…………………居ない」

 

倒れる月の民達。

全員さっきので仕留めれたと思っていた。

しかし、その中にあの姉妹の二人の姿がなかった。

 

サグメ「_______ッ!?」

 

刹那。

背後から背筋が凍り付く殺気を感じた。

サグメは反射的に前方へ飛ぶことにより『攻撃』を回避した。

 

サグメ「……………やっぱり、貴方達はそう簡単に仕留めることは出来ないわよね」

 

地面を滑り一方通行の隣まで移動する。

そして、

さっき自分に向かって刀を振るった者と、その者の奥に立つもう一人の女へ視線を向ける。

 

サグメ「協力して一方通行。貴方の力が無くてはあの子達を倒すことはできない。依姫と豊姫はこの月で5本の指に入る実力者よ」

 

一方通行「言われなくても端から協力する気だっつの」

 

ここから本番だ。

さっきの雑魚達は比べ物になら無い強敵。

それが一方通行達の前に居る姉妹なのだ。

 

サグメと一方通行は気を引き締め直した。

そして。

 

一方通行「教えろ。あの二人はどンな能力を持ってる?あいつらもどォせ能力者だろ」

 

サグメ「豊姫、帽子を被ってる子の能力は『山と海を繋げる程度の能力』。量子論を応用して月や地球、表の月と裏の月を繋ぐ事ができる。絶対に注意を怠ってはいけない能力よ、遠距離にあるものすらも瞬時に繋げて自分や物体、さらに他人すらも自分の望む場所に転送することができるわ」

 

一方通行「別空間と別空間を繋げる力か、紫の能力に似てるな。チッ、クソったれが。厄介な能力だな。で?もう片方は?」

 

サグメ「依姫、刀を持ってる子ね。あの子の能力は『神霊を呼ぶことができる程度の能力』。神降ろしの力、その身に神を降ろしその神の力を自分の力として攻撃も防御も高速移動もできる。恐ろしいことに降ろせる神は一人二人なんて少ない数じゃないわ、数百万の神の力を降ろしその神の力を使うことができる」

 

一方通行「あのチャンバラ娘を相手にするのは約数百万の神を相手にするのと等しいって訳か…………、はァー_____」

 

額に手を当ててため息を吐いた。

今日一番面倒臭いと思った瞬間だった。

 

一方通行「____どっちも一人だけで厄介だってのに二人同時に相手しなきゃいけねェってのかよ………。あいつらコンビを組むには能力も相性が良い、最高の組み合わせと言っても良いぐらいだ。だが誰を敵にしてるのかその体に教えてやるぜ……ッ!!」

 

サグメ「あの二人に対して打つ手はあるみたいだね。私は何をすれば良い?貴方に従うわ」

 

一方通行「サグメ、オマエは下がってろ。俺は荒らすのが専門だ。俺が前に出てあの二人の意識を俺一人に集中させる。そしたらそこでオマエの出番だ。あいつらの隙を俺がつくる、そしてあいつらの僅かな隙にオマエの全力を込めて攻撃しろ。分かったか」

 

サグメ「あの二人の隙が見えるまで私は待機ってこと?」

 

一方通行「オマエの能力は確かに強力だ。だが欠点もある。口に出せば事態を逆転できる。だがこうも言える、口に出せなければ能力を発動できない能力だと。オマエの力は口に出せなければ無意味だ。だから下げさせたンだ。あいつらはオマエが口に出すより先にオマエに攻撃を命中させることができる。だったら前に出て危険に晒されながら力を使うより安全な場所で力を使ったほうが良いに決まってる。______頼むぞ、オマエが切り札だ。最後を決めるのはオマエなンだ」

 

サグメ「……………………分かった」

 

責任重大だった。

だが、サグメは臆することはなかった。

隻翼を羽ばたかせ後方へ移動した。

そして一方通行は倒れる月の民達を遠くの場所へ『空間移動(テレポート)』する。

ただ遠くにやったのではない。

暴走から正気に戻った他の月の民達が居る場所へ送ったのだ。

 

一方通行「……………………いくぜ」

 

一瞬にして瞳が変わり、白い怪物は地面を蹴りつける。

空気は重くなった。

闘争の空気だ。

 

ならば繰り広げられるのは闘争ただ一つ。

 

 

 

一方通行「オアァ!!」

 

先に仕掛けたのは一方通行だ。

真っ正面からの突進、

まずは小手調べだ。

 

こんな単純な攻撃にどう対抗してくるか、、、

 

だが。

一方通行はこの瞬間に知った。

今敵にしているのは自分の命を絶つことができる存在だということを……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行(__________ッ!?)

 

白い怪物の視界が一瞬にして変わる。

口の中にはしょっぱい味が嫌ってほど送り込まれる。

 

塩水の底の底の底の底。

深海の中に一方通行は一瞬にして転送された。

あの豊姫とかいうやつの能力だろう。

『反射』は常に機能している。しかし、あのほわほわお姫様の能力は一方通行の反射を突破した。

それだけのことだ。

別にそのことに白い怪物は驚きはしなかった。

 

一方通行(初見の能力には俺の"反射"は効きやしなかったか。チッ……あのクソ女、能力紹介のつもりかよクソったれ。海なンて場所に送り込みやがって)

 

だが、とニヤっと唇を歪める。

 

一方通行(あの一発で反射の計算式は手に入れた。あいつのベクトルの情報さえ手に入りゃあこっちのモンだ)

 

ほんの一瞬の能力をかけられただけで一方通行は豊姫の能力を掌握した。

もちろん豊姫の能力のコピーを作れたのだ。

 

一方通行(後はここからあいつらの元へ戻るだけだな)

 

寒さは感じなかった。

逆に海なのに熱さを感じていた。

 

だがそれと同じく気掛かりな事があった。ここはどこかの海だ。

しかも深海、太陽の光が届かないほどの……だ。

しかし、明るかった。

それはしかも光が下からあったのだ。

何故なのか、それを確かめるために一方通行は下の方へ首を向ける。

 

一方通行「ッ!?」

 

暴走しているというのに頭が良いらしい。

一方通行が転送された場所は海底火山がある深海だった。

 

しかも………、

 

一方通行(海底火山ッ!?しかも噴火直前じゃねェか!?)

 

ボコボコボコボコッ!!!!っと下から熱い泡が噴き出す。

赤みがかったオレンジ色の光が見える。マグマだ。

 

一方通行(クソったれが……ッ!!)

 

白い怪物には焦りが見えていた。

ここに長居は危険だ。

一刻も早く一方通行は新しく手に入れた力

『山と海を繋げる程度の能力』を使い、自分を先程居た場所へ送った。

 

 

その直後海底火山は噴火した。

そして新しい土地を作るだろう。

そこはどこなのか知らない。

しかし、新たな島が誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「……はァッ……はァッ……はァッ……!!」

 

息が吸える場所へ戻ってきた。

だが、、、

一方通行は豊姫へ視線を向けた。

しかもそれは怒りを込めた瞳だった。

 

一方通行「あのクソったれ、俺の移動場所を変更しやがった。相手の移動先を上書きできるのか……、つくづく厄介なヤツだなクソったれがァァァァッ!!!」

 

両腕を広げ、爪を立てるように手を開く。

そしてその手には風の砲弾が出来ていた。

螺旋の風。それをチャンバラ娘とほわほわお姫様に投げた。

 

バゴンッッ!!

っと音が響き振動する。

しかしその攻撃は命中しなかった。

あの豊姫とかいうやつ、思っていた以上に相手にするには面倒なヤツだ。

 

自分と依姫を瞬時にさっき一方通行が放った攻撃の被害が無い安全な場所へ転送していたのだ。

 

サグメ「急に消えたからビックリしちゃったよ。それにしてもびしょびしょだね、どこに飛ばされたの?」

 

一方通行「海だ、しかも海底火山付近の深海。あいつ、俺を窒息死させるつもりだったらしい。しかもそれに加えて海底火山の噴火で死体を宇宙の果てまで吹っ飛ばす気だった」

 

スタッ、と着地を決める。

するとサグメがその隣に立った。

どうやら一方通行を海底に飛ばしたら、あの二人でサグメに攻撃を仕掛けていたらしい。

 

一方通行が消えてから戻ってくるのはほんの一二分のこと。

なのに、サグメの左肩には切り傷があった。

 

一方通行「次はこンなへまはしねェ。って言ったらオマエは信じてくれるか?」

 

サグメ「もちろん」

 

一方通行「なら下がれ、さっきのでもォ俺は目が覚めた」

 

安心したようにサグメは後ろへ下がる。

並び立つ姉妹に細めた眼を向け、

白い怪物の背中の純白の翼。それに力が込められた。

一方通行を中心に湧き出る風圧。

飛び散る水滴。

彼が立っている地面には一方通行を中心に音を立てて亀裂が入る。

 

一方通行「___効かねェよ」

 

約三太刀。

それで発生した衝撃波。

その衝撃波は如何なる鎧も貫き切り裂くだろう。

 

だが、冷たい息を吐いて白い怪物は片手で防いだ。

そして衝撃波は大気となって消えた。

 

一方通行「これからオマエらに御返しをする、受け取れよ?流石の俺もプレゼントを受け取って貰えなかったら悲しいからよォ!!!!」

 

裂いたような笑みで純白の翼を羽ばたかせる。

そして一瞬にして姉妹二人に接近する。

 

一方通行「もォオマエの空間を繋げる力は俺には効かねェよ。一度通じたからってもう一度通じるとは限らねェッてここで学ンどけェ!!」

 

急接近している途中に豊姫の能力が一方通行に放たれた。

しかしそれは無駄になった。

ほわほわお姫様の力のベクトルは既に掌握済みだ。

 

白い怪物は姉妹二人の腕を掴む。

そしてそのまま跳躍すると、なんと姉妹二人を地面に目掛けて投げ付けたのだ。

 

依姫と豊姫は重なるように地面へ打ち付けられた。

クレーターのようなべっこりとした穴に倒れている。

当然のごとく白い怪物はそこに追撃を仕掛けるつもりだ。

だが、一方通行は核ミサイルの上に立っていたのだ。

 

そして、コンコンっと乗っているミサイルを二回踏む。

 

一方通行「これ、邪魔だよな。あァ邪魔でしょうがねェ。ならこいつを消して綺麗さっぱりさせよォぜェェェェッ!!!!」

 

ガゴンッ!!!

一方通行の脚は核兵器を突き刺した。

それを意味するのは、、、

 

サグメ「一方通行一体なにをする気なの!?そんなことしたら……ッ!!」

 

ああ、そうだ。

始まる。

我々はその兵器のとてつもない破壊力の恐ろしさを知っている。

第二次世界大戦で起きた悲劇。原子爆弾。

一つの都市を更地の地獄と化した爆発。

 

『核爆発』だ。

島や山などを跡形もなく破壊する威力がある核爆発が一方通行の足元で始まる。

壊れる機械音、煙とオレンジ色の熱という名の光。

だが。だが。

 

一方通行「核を撃っても大丈夫っていうのはこォいう時に使うンだよ!!」

 

広がらない。

爆発は逆に小さく球体の形に変化する。

爆音はする。

凄い衝撃を感じる。

しかし、広がらない。広がりはさせない。

それを一方通行が許さない。

 

稲光を放つオレンジ色の球体。

それは核爆発の威力を残した光弾だった。それに数センチ浮いた場所に立つ、白い怪物。

 

一方通行「最初から核は俺の手で処理するつもりだった。だが事が変わった、核を利用させてもらうぜ」

 

サグメ(_____まさか……ッ!?)

 

一方通行「とっておきのプレゼントだ。受け取れ」

 

そして、そして。

白い怪物は蹴り放つ、核光弾を。

 

だがしかし。

それはこの空間から消えた。

豊姫の力だろう。

 

サグメ(やはり、遠距離攻撃はダメか。豊姫がどこかに転送してしまう…………)

 

遠くから見ているサグメは無敵と思わせる姉妹の対抗策は思い浮かばなかった。

一点に見つめていた。

多分、ここで能力を使っても無駄だ。

相手にダメージを与えることはおろか、一方通行の邪魔をしてしまう。

だからサグメはただ遠くから見ることしかできない。

 

だがだが、だ。

 

一方通行「少しでも俺から目ェ逸らしたろ?」

 

窪みに居る姉妹の上に白い影があった。白い翼があった。

重力を無視して天井にしゃがみ付く逆さの一方通行。

そして、冷たく呟いた。

 

一方通行「_______チェックメイトだ」

 

足裏を付けている天井を思いっきり蹴り頭から急降下する。

綿月姉妹は一方通行の姿を見失っていた。

だから避けることは出来なかった。

 

一方通行「サグメェェェェェェェェッ!!!!」

 

豊姫と依姫を頭を掴んで地面に押さえ込むことに成功すると彼女の名を叫ぶ。

そうだ、ここで出番だ。

『舌禍をもたらす女神』様の、

 

サグメ「今ここで私は口に出すわ、『貴方達は私達に敗北する運命から逃れることは出来ない』と……ッ!!」

 

宙に浮く彼女の隻翼が光を放つ。

そして、サグメの体から赤い稲妻が放出された。

だがそれは変化して形となる。

大きな大きな一本の光の矢。

 

その矢は綿月姉妹へ放たれた。

するとその矢は何十、何百と小さい矢へと分裂していった。

 

大量の黄金色に輝く矢。

それが綿月姉妹へ降り注ぐ。

 

一方通行「______っ!?」

 

白い怪物はギリギリまで綿月姉妹を押さえつけ、そしてそれを終えたら後は安全な場所へ移動すれば良いだけだった。

一方通行はどんな弾幕でも避けれる速度がある。

 

大丈夫だ。

そう、思っていた。

しかしここで不慮の出来事が起きた。

 

一方通行「こいつ____クソっ!!」

 

悪足掻きだ。

刀がひとりでに浮き、そしてサグメ目掛けて飛んでいった。

これも神の力だ。

依姫の力だった。

 

一方通行は綿月姉妹から手を離しサグメの方へ弾幕を掻い潜って飛んで行った。

 

そして、、、

 

一方通行「……………怪我はねェか?」

 

サグメ「う……、うん。お陰様で…………」

 

全心全力の一撃を放った時、サグメはあの刀を避けるもしくは防御する力はなかった。

全ての力をあの一撃に乗せたのだ。

そもそも自分に向かって刀が飛ばされたことも分かっていなかった……、が、最後の最後に刀が飛んできていると気付いた瞬間にはサグメは一方通行と地下の空洞の端の方で壁を背にしていた。

そして、白い彼の腕の中に居るサグメは一方通行と肌と肌が密着するぐらい近い距離に居るのだと分かると頬を染めていた。

だが、、、

 

サグメ「______一方通行ッ!?」

 

一方通行「掠り傷だ、気にするな」

 

サグメは無傷だった。

だが、一方通行の右腕には刀が突き刺さっていた。

その傷からは大量の血が流れ出る。

 

一方通行「まさか、な。押さえていたつもりだったが、刀を飛ばす力は使えたなンてな…………」

 

本来の一方通行ならそんなこと許さない。

しかし、何度も説明するがもうここ数時間闘いっぱなしだ。

息も上がっている。

生きているのだったら誰だってそうだろ?

動けば腹は減るし喉だって乾くし疲れたりする。

神を超越した存在たる一方通行だってそれは変わらない。

 

サグメ(一方通行は前線で闘える体じゃない。後は私が前に出るしかない……ッ!!)

 

前方奥に聳え立つ姉妹。

サグメの攻撃は全て防がれてしまった。

無傷で立っている姿を見て厄介極まりない相手だと再確認させられる。

 

白い彼は腕に刺さった刀を抜いて投げ捨てる。

するとその刀が消えた。

そして次に刀が現れた場所は依姫の手元だった。

 

その時だった、、、、

 

「もォ……無理だ」

 

サグメ「えっ?」

 

俯いて壁を背にして座る。

白い怪物から翼も輪も消えた。

覇気すらも、、、、

 

一方通行「止めだ止め、もォ諦めた」

 

サグメ「何を言ってるの!?確かに私達は限界に近いわ、だけど私と貴方二人でじゃなきゃあの姉妹には勝てないの!!だから諦めないで!!お願い、お願い立ってヒーローっ!!」

 

一方通行の両肩を掴む。

珍しくサグメの頬には雫があった。

ここまで絶望を感じたのは初めてかもしれない。

 

こんな初めて味わいたくなかった。

声を荒らげ、涙を(こぼ)す隻翼の女神。

こちらの手は打ち尽くした。

全身全霊の一撃は失敗に終わった。

 

だが、だが、

ここで諦めてしまったらその瞬間、この月は終焉に満ちる。

それはなにがなんでも阻止しなくてはならない。

その為に必要になるのはヒーローだ。

今、私の前に居るヒーローの力だ。

 

なのに、なのに、なのに、、、

どうして貴方は…………、

 

一方通行「_____あァ?なにか勘違いしてねェか?」

 

サグメ「……えっ?」

 

一方通行「俺ァ別にあいつらをぶっ倒すことは諦めてねェぞ?」

 

そっと手を隻翼の彼女に伸ばしその頬に流れる涙を手で拭う。

そして、きょとんとした顔のサグメに

 

一方通行「俺が諦めたのは本気を出さねェようにしてることを諦めたンだ」

 

サグメ「本気を出さないようにしてることを、諦める?」

 

一方通行「俺が全力を出すことは許されねェ。もしも全力を出したらその瞬間、俺の力に耐えきれずこの世界は消滅する」

 

サグメ「???」

 

一方通行「だからそれを知ってから加減を覚えた。"本気を自在に扱える"よォになっても本気は出さねェように体に覚えさせた。だがもォそれもここまでだ_____」

 

『ヒーロー』は立ち上がった。

白い怪物は立ち上がった。

一方通行は立ち上がった。

 

そして、サグメの頭の上に左手を乗せていつもの調子で息を吐く。

 

一方通行「____ありがとォなサグメ。ここまで手伝ってくれたことに感謝してる。その礼をオマエの大事なあの二人を正気に戻すことで返させてもらうぜ」

 

右腕はもう使えない。

再生能力は疲労により低下してしまっている。

だから今は傷を癒やすことが出来ない。

だか白い怪物は言うだろう、

『だからどォした?あンな雑魚二人片腕が使えれば十分だ』と。

 

ボッ!!っとまた彼の背中から白い翼が噴き出る。

そして頭上には輪が、

 

だが、しかし。

 

一方通行「俺は考えた。俺の全力にこの世が耐えきれねェならどォするか、って。そこで浮かンだ答えはこの世が俺の全力に耐えきれねェなら俺の全力に耐えれるよォにすれば良いってなァ______」

 

古代文字のような小さな光が無数に一方通行の周りを舞い、彼の左手には赤黒い魔方陣らしいものが展開される。

そしてそして。

 

一方通行「_____そォだなァ"これ"を命名するとしたら『隔離結界』ってやつだ。これでもォここは俺の全力に耐えきれる空間となった」

 

この空間だけを覆うように赤黒い結界が張られた。

そして、

ビキビキビキビキビキ!!!

ギシギシギシギシギシギシ!!!

大気に亀裂が入り、一方通行の翼に光が集まっていき、

そしてその集まった光が一気に放出された。

一瞬この場は白い光に覆われなにも見ることが出来なくなる。

だか、その光も消える。

 

すると、、、

 

サグメ「……………………、」

 

その姿を見て言葉を失う。

 

頭上には白く輝く大中とサイズがそれぞれ違う二つの輪に、輪と同色の十字が融合し、その輪の周りには十二個の逆さ十字がゆっくりと回りながら円を描いていた。

そしてそして、純白の翼は白銀の輝きを帯びていた。

 

全力。本気。白い怪物の全ての力を一つに纏めた完成形。

 

ただ見た目が変わっただけではないとサグメは瞬時に理解する。

近くに居るだけで体が震える。

余りにももの凄い重圧で心臓が今にでも潰れてしまいそうだ。

言葉は出ないっというよりは言葉が出せないが正解だった。

 

そして。

 

一方通行「…………こォなっちまったら俺も加減できるか不安だがなるべく傷は負わせねェよ。さて_____」

 

_____決着の時だ、一瞬で終わらせる

 

刹那。

サグメの目に映ったのは壁や天井や地に何度も何度も打ち付けられる綿月姉妹の姿だった。

それ以外は見えなかった。

一方的過ぎる力。一方的過ぎる戦闘。

相手の動きを全て封じて、自分の攻撃全てを相手に叩き込む。

反撃は不可能。

圧倒的、絶対的遥か上の力で捩じ伏せる。

 

サグメ「見えない……、私の目ですら一方通行の動きを追うことが出来ない」

 

散らばる月岩。

荒ぶる風。

連続で響く打撃音。

そしてそしてそして。

 

一方通行「今度こそチェックメイトだ」

 

姉妹を重ねて踏みつけて地響きと共に地面に着地する。

すると二人からは黒い玉が出てきてそれを蹴って破壊する。

 

サグメ(滅茶苦茶な力だわ…………だけど強い。誰よりも圧倒的に……)

 

一方通行「終わったぜ」

 

その背中からも頭上からも輪も翼も消えていた。

そして結界も解除された。

 

すとん、と後ろに二三歩歩いた後一方通行は地面に座る。

サグメは急いだ様子で綿月姉妹に駆けて近寄った。

 

サグメ「息はある……、だけどやり過ぎじゃないの?」

 

一方通行「……………………、」

 

サグメ「?」

 

地面に座り、俯いて何も話さない一方通行に首をかしげる。

だが次の瞬間には理解した、なぜ何も言わないのか。

それは彼の顔を見れば分かるのだ。

 

大量の汗、とても荒い息。

 

サグメ(アレは普通じゃなかった。この世にあんな力あるとは考えられないほど異質で異常な力。あの力を使うと相当体に負荷が掛かるみたいね……………)

 

その数分して息を整えた一方通行は、

 

一方通行「…………これを、飲ませろ。そうすればその傷は癒えるし体力だって回復する」

 

サグメ「ありがとう。でもそれはまず最初に貴方が飲むべきでは?」

 

一方通行「俺ァ飲めねェ。これは軟弱な人間用に作られた薬じゃねェ。これはオマエ達みたいなモンしか飲むことができねェ」

 

サグメ「???……そう、なら___」

 

二粒、紫色のビー玉みたいな錠剤を受け取りそれをサグメは姉妹二人に飲ませた。

 

一方通行「時期に目も覚める。そン時その二人は元気にピンピンしてンだろォぜ、自分が暴走してたなンて知らずにな」

 

サグメ「世の中には知らない方が良いことだってあるわ」

 

一方通行「だが俺は話すぜ。そいつらに暴走していた事実もこの月の都の有り様も」

 

サグメ「…………………辛い現実だけど、そうね、月の民達の上に立つ者としてどうして月がこうなったかを知っていなきゃダメだものね」

 

一方通行「やっぱりそいつらがこの月のお偉いサンか」

 

『運が良い』。

ここで一方通行はそう心の中で呟いた。

 

サグメ「にしても先の戦いには違和感あったわ。この姉妹二人、そして私達がここに来た時に現れた月の民達。理性も無くし暴走しているというのに核に一歩も近付けまいと守ろうとしていた。まるで____」

 

一方通行「____『どっかの誰かに操られてるみたい』だろ?合ってるぜ、その考え」

 

ドサッ、と背中から地面に倒れた。

そして左腕を後頭部に回し灰色の天井を見つめる。

 

一方通行「前に紫が言っていた、『あんなので私を操れるも思ってるの?』ってな。あン時はその言葉になンとも思わなかった。だが今なら分かる、あの時紫の体に埋められたのは埋め込められた者を暴走させ、そしてアレイスターの思い通りに操ることができるやつだってな。チッ、今になってもあいつ埋め込められた対象を操ることができる黒い玉があるって黙っていやがったとはな。紫らしいぜ、ったく。ヒントを与えたンだからそンぐらい自分で考えろおバカさンとでも思ってンだろ。やっぱり俺はあいつ嫌いだ」

 

サグメ「八雲紫はそういうヤツよ。私もどちらかというと嫌いだし」

 

女性らしく楽な姿勢で座るサグメ。

その近くにはまだ目が覚めない綿月姉妹、

 

一方通行「紫のこと知ってるのか?」

 

サグメ「当然。"月面戦争"で色々あってね」

 

一方通行「前に地上と月で戦争があったってのは知ってるが、それでか」

 

月面戦争。

そんなのが前に起きたらしい。

それには誤解があったらしく、その誤解も解け今は終戦しているらしい。

だが未だに月の民は地上は穢れに満ちていると考えていて、その穢れた場所に住む者どもも穢れていると考えている。

だが、そんなヤツしか居ないという訳ではない。

月の民の中には地上も地上で良いところでは?

っと興味を持っている者も居る。

 

サグメ「八雲紫は嫌いだ。そしてその式神も……」

 

一方通行「あン?戯れ合ってたしオマエと藍は随分仲よさそォだったけどな」

 

サグメ「どこをどう見たらそう思えるの?」

 

一方通行「?」

 

今まで人と深い交流がなかったのでやはりまだ人の分からない所はあるみたいだ。

だが、彼も成長途中。いずれ分かる時もくるだろう。

そうすれば女心だって…………、

 

そして。ため息を吐いた後、隻翼の彼女の視線は一方通行の右腕に移った。

 

サグメ「包帯とか持ってない?貴方の腕手当てした方が良いんじゃないの?」

 

一方通行「そォだな。このままにしとく訳にもいかねェか」

 

再生の能力で傷を治す事が出来ない。

ならば、っと。ベクトル操作で傷は一応ではあるが塞いだ。

しかしそれは応急措置であっていつまた傷が開くか分からない。

だったら包帯ぐらい巻いていた方が良いだろう。

 

上体を起こす。

そして、創造の力を使って包帯を創った。

だが、、、

 

一方通行に「上手く巻けねェ……」

 

利き手では無いので余りにも不器用だった。

それを見かねて、

 

サグメ「貸して、私が巻いてあげる」

 

それからはサグメは黙って怪我した一方通行の右腕に包帯を巻いていた。

 

一方通行「上手いもンだなァ」

 

サグメ「昔教えてもらったのよ、八意様に…………。懐かしいわ、あのお方より懸命で優しくて、ものを教えることが上手な人は居なかった」

 

一方通行「そォか、そォいや永琳は昔月に居たンだっけか。なぜ地上に居るのか知らねェが他人の事情を無神経に探るのは三下のすることだ。その事には一切触れねェよ」

 

サグメ「……………それが一番よ、あの時もそして今もどれもこれもクソったれな事ばかり起きた。どうして皆もっと上手く接して生きようと思えないのかしら_____」

 

そう、私も……。っと心の中で呟く。

 

一方通行「そりゃあどいつもこいつもテメェの幸せしか眼中にねェからだろ。他人の心配をするよりまずは自分の心配をする。それが普通の考えだ、自分さえ良けりゃあ何だってイイ。自分が幸せなら他人が不幸になろォが知ったこっちゃねェ。だが中には居るンだよ、自分が幸せになるより誰かの幸せを願う者が……。そォいうバカなヤツも稀に居る。だからこの世界に、人に絶望するな、希望をなくすな。そして自分なりに人生を楽しむ方法を考えろ。せっかくこの世に生まれたンだ、楽しまなきゃ損だぜ」

 

サグメ「それが貴方が人生を楽しむ為に導き出した答え?」

 

一方通行「俺だって何度も世界に絶望した。何度も人間を皆殺しにして全ての町を火の海に変えてやろォと思ったさ。どいつもこいつもクソったれだらけ。だが最近その考えが変わった、あのバカどもと出逢ってからな…………。こンな俺でも変われたンだ、オマエも変われるさ。こいつと一緒に居たら楽しい、この世もまだまだ捨てたモンじゃねェって」

 

サグメ「それなら既に私は変われている。出逢えたのよ、クソったれなヤツらなんてどうでも良くなるような一緒に居たら楽しい人と」

 

一方通行「良かったじゃねェか。ならそいつを大切にしろよ。そォいうヤツは滅多に会えるモンじゃねェ」

 

サグメ「…………うんっ」/////

 

隻翼の彼女は下を向いていた。

赤く染まった顔を見られたくないのだ。

だが、その表情は嬉しそうだった。

そして包帯も巻き終わった。

 

自分に巻かれた包帯を見て、

 

一方通行「上出来だ。さて、俺は都の様子を見てくる。オマエ達は少しここでゆっくりしてろ、疲れも溜まってるだろ?」

 

サグメ「それは一方通行、貴方もでしょ?都はあの二人の式神に任せた。二人ならなんとかしてくれるはずよ」

 

一方通行「あァ、もォ俺ァへとへとだ。だから様子を見てくるだけだって言っただろ。大丈夫だ、藍と橙はどちらも優秀なヤツだ。きっともォ制圧し終わってるだろ」

 

呼吸をするように一方通行は"嘘を吐いた"。

そんな訳がない。

いくら藍と橙が優秀なヤツだとしてもあれだけの数倒しきれる訳がないのだ。

確かに体力も無い、体を動かせば全身に痛みが走る。

しかし。だが。

この惨劇は元はと言えば"自分のせい"なのだ。

怪物、バケモノと恐れられていた彼にだって責任感だってある。

当たり前だ。怪物、バケモノといえど心がある。感情があるのだ。

 

一方通行は立ち上がるとこの地下の空間に結界を張る。

それはこの空洞が崩れないようにするためだ。

 

この地下の空洞は利用できる。

そう考えて結界を張った。

そして次の瞬間には一方通行は月の都へ着いていた。

 

音も無く姿を消した一方通行に、サグメはやはり一方通行はただ者ではないと思った。

彼が居ればどんな問題も解決するだろう。

頼もしい存在だ。

 

だが、脳裏にはこんな考えがあった。

味方とすれば頼もしいが敵となったらこれ以上恐ろしい人は居ない…………、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所々に穴が開き、今にも崩れて壊れてしまいそうな二十メートル程の建物の天辺に立っている白い影。

彼はいろんなところで銃の発砲音が響き爆発している月の都を眺めたいた。

 

一方通行「酷いことになってンなァ。せっかく俺が火を消してやったってのにまァた火が上がってンじゃねェか。どこの愉快なバカだクソったれ、火を付けるの大好きマンでも居るってのか……?」

 

一方通行が火を消した時より前よりは火はそこまで広がってなかった。

が、しかし。火は火だ。

そのままにしていたらいずれこの都全体を炭に変えてしまう。

 

一方通行「________あァ?」

 

額に赤い光のレーザーサイトが向けられた。

どこのヤツが向けてるのか、視線を向けてみると、、、

 

一方通行「ロケットランチャーか。そりゃあそンなモンバカバカ撃ってりゃ都がここまでぶっ壊れて当然だな。チッ、ロケットランチャーがあンなら火炎放射器とかもありそォだな____」

 

ロケットランチャーを構える月の民が引き金を引いた。

すると、先端のロケットは一方通行目掛けて一直線に飛んで行く。

 

一方通行「_____だが、どンな兵器があったって俺には傷一つ付けることはできねェよ」

 

発射されたロケットは一方通行に当たる前に爆発した。

そして当然のごとく白い怪物は無傷でズボンのポケットに手を突っ込んで立っていた。

 

一方通行「体が動く限り暴れてやるか……。時期に俺も倒れる……、その前に何とか月の暴走者どもを正気に戻す。地上は大丈夫だ、きっとあいつらが何とかしてくれている」

 

少し。

そう、少しの不安があった。

あいつらを信じている、心から信じているとも。

だがそれでも地上は大丈夫かと心配してしまう。

相手は暗部組織だ。アレイスターが送り込んできたやつらだ。

生き残る為に汚い手を平気で行う外道どもだ。

もう、余裕はない。

全力を使ってしまってもしも次倒れてしまったら起き上がれない自信がある。

その前に、何とか、何とかしなくては。

 

あの姉妹。

綿月姉妹が目を覚ますのを待って、あの二人が目を覚ましたら残っている暴走者を倒してもらう。

それが一番良い。一番安全だ。

そんなこと分かっている。

綿月姉妹は強い。多分今の一方通行より役に立つだろう。

だから残りの暴走者なんて、顔色一つ変えずに一匹残らず片付けることができる。

しかし、ここでも説明しよう。

この惨劇は元はと言えば自分のせいだ。

一方通行は責任の一つも取れない三下になんかなりたくないと思っている。

それにもしも後の事を月の民達で解決されてしまったら"一方通行の計画が狂う"。

 

 

だからやるしかない。

体にムチを打ってでも、それでも動かなくてはいけない。

闘わなくてはいけないのだ。

 

そして。

白い怪物は制圧を始めた。

しかし驚きの光景だった。

手負いのはずなのに、体力も底を突きそうなのに、だ。

 

一方通行は圧倒的な力を見せつける。

流石は、幻想郷最強といったところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藍「………っ………くっ!!」

 

手強い相手と出会した。

藍は空中で身を捻り体勢を整える。

そして、穴だらけの建物の屋根の上に着地した。

 

藍「地上で全然話を聞かないと思ったらこんな所に居たのか………、あの氷の妖精が知ったらビックリするな」

 

金髪のロングヘアーで赤みがかった紫色の瞳で松明を持ち、アメリカの国旗を服に仕立てたような全体的にピエロと思わせるような格好をした"少女"。

彼女を藍は知っている。

彼女は幻想郷で有名だし、月の民達から忌み嫌われる存在。

それだけではない。

敵に回すととても面倒臭い相手なのだ。

 

特にあの松明は注意しなくては………。

 

松明を絶対に視界に入れないようにピエロのような少女へ視線を向ける。

すると藍の隣に白い影が空から降ってきた。

 

一方通行「よォ。手こずってるみてェだな、藍」

 

藍「一方通行さん……、ここに来られたということは幻想郷に撃たれる核はどうにかなったのですね。それなのに…………、お見苦しいところ見せてしまい申し訳ありません。しかし_____」

 

一方通行「分かってる分かってる。あのクソガキ強ェだろ、しかも相当」

 

藍「地獄の妖精。実力主義の地獄で上位に君臨する程の実力を持っています。そして能力は『人を狂わせる程度の能力』。あの松明を見たら最後、その者は狂気に陥りまともな判断を失いあの妖精のオモチャにされてしまいます」

 

一方通行「へェ……人様にそンなことするガキがまだ居たとはな、そいつァ感心しねェなァ。ハッ、あのガキには少し躾が必要みたいだ」

 

藍「…………はい?」

 

隣に立つ一方通行は何か楽しそうな表情になっていた。

 

一方通行「良し。あいつは俺がやる、オマエは他の暴走者を相手しろ。俺はあいつを教師として責任を持ってボコボコに打ちのめしてやる」

 

藍「きょ、教師として……、ですか?」

 

一方通行「副担任もできたことだし丁度考えてたンだ、生徒を増やしても良いかなってな。あいつは合格だ、文句なしの満点だ。人外、しかも人様に迷惑をかける力。どォせ妖精だしあのクソガキもイタズラ好きなンだろ?」

 

藍「えぇ、まあそうですが。お気をつけて下さい。あの妖精の能力は危険です」

 

一方通行「人を狂わせる、ねェ。俺とは相性が最悪だな。俺ァ狂気の塊みたいなヤツだぜ?そンなヤツに狂気に陥りさせるなンざ、腹痛いから胃薬飲ンでまた胃薬飲むみたいなモンだ。同じことを何度繰り返したって結果は変わらねェ、目新しい変化なンざ起きねェンだよ。それともなにか、狂気ってのは重複するのか?そいつは愉快な話だ、笑いが込み上げてくるぜ」

 

藍(離れた方が良さそうだ。巻き添えを食らう前に……)

 

既に赤い瞳をギラギラさせている一方通行を見て藍の第六感は危険と告げていた。

そして、式神・八雲藍はその場から離れた。

出来る限り遠く、遠くへ。

 

残った地獄の妖精と白い怪物は、、、

 

一方通行「これがオマエの狂気か。弱ェ弱ェ、弱ェよクソガキ。もっとだ、こンぐらいの狂気じゃこの俺を狂わせることは出来ねェぜ!!あはギャハ!!アハハハハハハハハハハっ!!!」

 

地獄の妖精が持つ松明を見ても狂いはしなかった。

いいや、元々彼は狂っている。

 

裂いたような笑み、悪魔のような笑い声。

怪しく輝く赤い瞳。

どこまでも白い髪と肌。

まさにこの世のものとは思えない存在、怪物だった。

 

確かに一方通行に『人を狂わせる程度の能力』はかかっている。

放って置けば段々狂気に陥っていき、最終的には暴走者とさして変わらないまでになってしまうだろう。

だが、もうここは地獄の妖精と白い怪物、二人だけの世界だった。

 

一方通行「今からオマエは俺の生徒だ。それは今決めた、俺が決めた。さァ、俺が優ァしく可愛がってやンよォッ!!」

 

そして、屋根の蹴り飛び上がる。

すると地獄の妖精は無数に弾幕を放つ。

それは避けきれる数ではなかった。

 

しかし、

 

一方通行「_____遅ェよ」

 

地獄の妖精は彼の姿を見失う。

それはそうだろう。彼女は後頭部にも目があるわけではない。

 

一方通行「敵に背後を取られるな。まずこれがオマエに最初教えることだ_____ンま、つっても分かンねェか。あはぎゃはははははははハハハハッ!!!」

 

暴走者となった少女が振り向いた瞬間、一方通行は拳を飛ばす。

だが地獄の妖精はその腕で白い怪物の攻撃を防ごうとしていた。

しかし、その防ごうとした腕はへし折れ勢いは止まらずそのまま拳は顔面へ届く。

 

そして、ぶっ飛んで行く方向に地獄の妖精より先に一方通行が居た。

そして地獄の妖精が飛んで来ると、、、

 

一方通行「ここは月だ。ならクレーターが一つ二つあったって不思議じゃねェよなァ?増えたっておかしくねェよなァッ!!!」

 

右手をズボンのポケットに突っ込んだまま白い怪物の前方から来た地獄の妖精の足を左手で掴む。

そして足を掴んだまま次は地面に向かって落ちていき、その勢いを乗せて思いっきり地獄の妖精を地面に叩き付ける。

顔面から叩き付けれた地獄の妖精

しかしそれは一回だけで終わらなかった。

何度も何度も数十メートル跳躍しては落下して地響きと共に地面に叩き付けるを繰り返し、

そして。

 

一方通行「…………あぶねェ、勢い余って殺すとこだった。ハッ、少しは俺にも正気があったらしい、じゃなきゃ狂気に陥るなンてしやしねェモンなァ」

 

ここで自覚した。

やっぱり能力にかかってしまっていたのだと。

しかし、勝てたのでそんなことどうでも良いことだ。

一方通行はやっと頭部から血を大量に流す地獄の妖精の脚を離す。

すると、黒い玉が胸奥から出て来たので蹴り壊した。

 

一方通行「さて、次だ次」

 

次に一方通行は彼女の腕や頭の怪我をベクトル操作によって手当てする。

完全に治せる訳ではないがしないよりかはマシだ。

そして一粒、紫色のビー玉みたいな錠剤を飲ました。

これでもう大丈夫だ。

あともう少ししたら傷も癒え、元気に目が覚めるだろう。

 

まだまだ暴走者は居る。

右腕はまだ使えない。左腕は気を失っている妖精を脇に抱えいるので使えない。

だが、問題ない。

後残ってるのは多彩な銃を扱えるだけの雑魚どもだ。

両腕が使えなく、体力も僅かで傷を負うっていても問題なく余裕で倒せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白い影は空を翔ける。

そして。

 

「………………っ、…………んぁ……?」

 

地獄の妖精・"クラウンピース"。

怪物が脇に抱えている少女が目を覚ました。

 

クラウンピース「………えっ?なになにッ!?」

 

しかし、彼女が目を覚ました時に空から見た光景は崩壊ギリギリの月の都だった。

そして。

 

クラウンピース「お前誰だ!?」

 

一方通行「あン?目ェ覚ましたクソガキ」

 

襲い掛かってくる暴走者を踵落としで地面に蹴り落とし、脇に居る少女へ首を向ける。

下に俯せで打ち付けられた月人から出た黒い玉に一方通行は風の向きを操って発生した烈風を全方位から打つけた。

すると、黒い玉は音を立てて粉砕した。

 

クラウンピース「あたいに向かってクソガキだと!?人間風情が今すぐ_______」

 

___八つ裂きにしてくれるっ!!

っと、言おうとした。

だが…………、

体が動かなかった。指一本すらも、、、

 

一方通行「大人しくしてろ。まだ傷は癒えてねェだろ」

 

クラウンピース「まっ、まっ、まさか……っ!?」

 

地獄の妖精は焦り、そして恐怖を感じていた。

『"ご主人様"』の話を思い出したのだ。

 

クラウンピース「まさかお前、あたいに乱暴する気だろ!?」

 

一方通行「………………………………はァ?」

 

クラウンピース「"ヘカーティア"様が言っていた、男は性欲の獣だって。女に抵抗する力が無いと知るとその性欲を満たそうと………、嫌だァァァァァァッ!!!乱暴に犯されるーッ!!!」

 

一方通行「ウルセェ……。誰がすっかよ、ンな下らねェこと。っつゥかテメェの体ァ見てからそォいうこと言いやがれ、色気も無ェガキに欲情なンてすっかよ」

 

クラウンピース「中には幼い少女の体だからこそ欲情するヤツも居ると聞いた……、確かロリコンとかいうヤツ…………、うわァァァァァァァ!!!!助けてェェェご主人様ァァァァァァッ!!!」

 

一方通行「…………チッ」

 

舌打ちを打つ。

そして、体を落下させた。

見事着地に成功すると、、、、

 

クラウンピース「___ふぎゃぁ!!」

 

地獄の妖精を投げ捨てた。

そこは影に覆われた場所。ここなら暴走者に見付かることも無いだろう。

一方通行は心底面倒そうな表情で、崩れかけの建物を背にして座る。

 

一方通行「ほら、離してやった、自由にしてやったぞ。だから俺の話を聞け、これは命令だ」

 

クラウンピース「誰が大人しく聴くもんか怪しいヤツめ!!こんな暗い所に連れて来るなんてやっぱりオマエは___」

 

一方通行「___黙れ」

 

クラウンピース「____ッ!!!」

 

低い声、鋭い眼光。

紅の目に睨まれたクラウンピースは一瞬、全身に力が入らなかった。

威圧されたのだ。言葉に出来ない恐怖を感じた。

 

地獄の妖精といえど、白い怪物ひと睨みには臆したのだ。

そして。クラウンピースは息を吐いた後、一方通行と向かい合うように壁を背にして座った。

 

クラウンピース「……いくつか質問がある。それに答えたらお前の話を聴いてやる」

 

一方通行「分かった。こっちは面倒なことが立て込んでンだ、並べく早くスピーディーに質問しやがれ」

 

クラウンピース「まず一つ、あたいの松明はどこにある?」

 

一方通行「俺が持ってる」

 

クラウンピース「???」

 

何言ってるんだこいつ……?

クラウンピースの頭の中ではそんな言葉が浮かんだ。

だって持ってないのだ松明を。

両手はズボンのポケットに突っ込んだまま、体のどこかに隠し持ってるようにも見えない。

なのに、彼は言う『持ってる』と。

 

クラウンピース「どこに持ってるって言うのさ」

 

一方通行「なンだ、返して欲しいのか?」

 

クラウンピース「当たり前だ、アレはあたいのだ。あたいが持ってて当然じゃん。お前だって自分の物を誰かが持ってたら嫌だろ?」

 

一方通行「………確かに嫌だが、無闇に能力を使うな。これが約束できるなら返してやる」

 

クラウンピースの能力は松明を持って始めて発動する。

だから松明が無くては能力を使えないのだ。

だがしかし、能力が無くても問題ない。

クラウンピース。すごく強い、めっちゃ強く、バカ強いのだ。

素で強いのだから能力はほぼオマケと言っても良いぐらい。

 

だがやはり、松明は持ってる方が彼女は良いらしい。

気持ちの問題なのだろうか?

そんなことも考えず、返せと言われたから一方通行は松明を返す。

 

クラウピースの前に真っ黒なデザインのスキマが開かれた。

そして突如そのスキマから松明の棒が落ちてきたのだ。それを拾うと、

 

クラウンピース「……、どうやって?って言うよりどこに隠し持ってたの?」

 

一方通行「こことは違う空間。世界の狭間と狭間に置いていた。オマエと闘ったときにオマエが持ってたモンだし一応取っておいたンだよ」

 

クラウンピース「あたいと闘った?お前が?いつ?どこで?」

 

一方通行「この月の都で、さっき」

 

クラウンピース「じゃあ今あたいスゴイぼろぼろなんだけどまさかこれやったのお前?」

 

一方通行「あァ」

 

クラウンピース「やっぱりオマエあたいの体目当てなんだろ!?抵抗する力を奪った後にあたいの体をめちゃめちゃにするために……っ!!」

 

一方通行「………………………………はァー」

 

クラウンピース「キ……ッ!!!」

 

心底下らない。っと言いたげな顔でため息を吐いていた。

だが、それはクラウンピースの逆鱗に触れるには充分過ぎた。

怒りに燃える地獄の妖精は足音を立てて一方通行に駆け寄り、手を振りかぶる

そして______

 

バシンッ!!!っと向かっ腹が立つ白い彼の頬を叩いた。

平手打ちだ。

 

クラウンピース「人が真面目に話をしてんだぞ!!なのになんだその態度は!?あたいを嘗めてるのかバカにしてるのか!!」

 

向いてる方向が強制的に横に向かせられるほどの威力だった。

口の端からはツーッ、っと血が垂れる。

しかし。

ギロリ、と真っ赤な眼だけを動かしクラウンピースの方を見る。

 

一方通行「気は……、済ンだかよ?」

 

クラウンピース「っ!?」

 

地獄の妖精は震えていた。

分からない、解らない。が、震えるのだ。

心拍数が早くなる。変な汗も背中に滲み出る。

どうしてなのか、体がこんな反応をするのは………。

 

クラウンピース(こいつ……。人間なのか……ッ!?)

 

そんな疑問が浮かんだ。

根拠は無い、しかし確信に似たものがあった。

こいつは普通では無い……と。

考えてみれば確かにおかしい。自分と闘い傷を負わせる程の実力を持ち、そして予想ではあるが闘った記憶が無いということは自分は意識が無かったのだろう。

だが負けたのだ多分、目の前の白い人間に

 

それをどこかで理解してるから震えている……かもしれない。

 

白い怪物は、先程のビンタで口の中まで切れてしまった。

これなら口内炎にもなってしまうだろう。

だがしかし、血の味がする赤い唾液を吐き、

 

一方通行「まだ気が済まねェって言うなら殴ったってかまわねェ。だがそうしたら次は俺の話を黙って聞きやがれ、緊急事態なンだ」

 

クラウンピース「…………本当に、あたいと話がしたいだけなんだよな?乱暴する気は無いんだな?」

 

一方通行「信じられねェって言うなら俺を拘束でもするか?」

 

クラウンピース「……いや、良い。信じる、嘘を言ってるようには見えないからな。それより悪かった殴ったりして……、熱くなりすぎてしまった」

 

一方通行「構わねェほっとけば治る。それに貞操観念がちゃンとあるってのは良いことだ」

 

地獄の妖精は白い彼の隣に腰を下ろす。

 

クラウンピース「ねえ、もう一つ質問して良い?」

 

一方通行「あァ」

 

クラウンピース「さっきから月人が暴れてるのがちらほら見えるけど……。あんな姿見たこと無いよ、何がどうなってるの月は?」

 

一方通行「それが俺の話したかった事だ。良く聴け____」

 

そして。一方通行は全てを話した。

学園都市のこと、幻想郷で起きたこと、月の現在の状況。何一つ隠しもしないで、

 

クラウンピース「なんか、あたいが知らない間にスゴイことが起きてたみたいだね」

 

一方通行「あァ、全く面倒で下らねェことがな。そこでオマエにこの月の騒動を静める協力をして貰いたい。この月の都で暴れてるヤツを片付ければそれももう終わる。報酬とかが欲しいなら地上に戻ったらくれてやるが?」

 

クラウンピース「………………………………」

 

今、さっき、今日会ったばかりの人間だ。

だが彼女は分かっていた。

多分、こいつは普段こういうことを言わない人間だと。

必死なのだろう、誰かの力を借りてでもこの月の騒動を静めたいのだ。

 

でも、それが何?

知ったこっちゃない話だ。

自ら危険地に飛び込めと言うのか?ふざけるな、そんなの御免蒙る。

しかし。彼に協力するというのなら月で派手に暴れられる、

闘える(遊べる)のだ。

ならば答えは一つだった。

 

クラウンピース「良いよ、協力してやる。報酬なんてものは要らない。楽しそうな事に仲間に入れてくれるならね」

 

一方通行「安心しろ退屈なンてここにはねェ。勝つか負けるか、倒すか倒されるか。その選択が毎分毎秒迫ってきやがる」

 

クラウンピース「それはそれは、最高だ……っ!!」

 

心の底から出た楽しいという気持ちで作られた笑みだった。

地獄の妖精だ。地獄は好きだ、大好きだ。

だが、"悲劇"は嫌いだ。

クソ野郎は大嫌いだ。

 

誰にも言ったりしないが自分をいいように利用したそのクソ野郎は必ずブチ殺す。

どんなことしたって絶対に、だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これであらかた片付いたな」

 

ふぅ……。っと息と吐いたのは黄金色の髪に、それと同色の九つのふんわりとした狐のような尻尾と耳を持つ女性。

彼女は、己の手で倒し山のように積んだ月人の頂点に腰を下ろしていた。

月人、彼ら彼女らは元は暴走者だった。

だがやはり、大妖怪・八雲紫の式だ。

どんなに多くの人数で襲い掛かって来ようが容易く打ちのめした。

黒い玉は既に破壊済み。

生きているし、一応助ける側なんだから山のように積むなという意見があるが藍は地上側に属している。

少しぐらい月人に苦をさせてもなにも感じない。それにこの程度じゃ月人は死なない。

 

すると、そこに

空からやって来た二人。

白が特徴の怪物。そしてもう一人の一本の枝を持ったピエロのような格好をした少女。

 

一方通行「…………おい、藍……。少し丁寧に扱ってやれよ」

 

クラウンピース「きゃははははははっ!!!これは愉快なオブジェだな!!」

 

藍「一方通行さん、それに_____」

 

もう一人の少女へ視線を向ける。

見る限り正気には戻っている。

しかし暴走者でも、そうでなくても地獄の妖精は注意すべき存在だ。

藍は二人の前に降りた。

 

藍「さすがですね。こうも簡単に地獄の妖精を打ち負かし従わせるなんて」

 

一方通行「こいつが人の言うこと聞くと思うか?どちらも利害が一致したから協力関係にあるだけだ」

 

クラウンピース「そういうことだ。決してあたいを下に見るなよ式風情が」

 

藍「あ……?」

 

ピクリ、と耳が反応した。

眉間にはしわが寄り、その顔は藍の怒りを表していた。

だが…………。

 

一方通行「チッ、ケンカすンなバカども。藍、橙はどこに居る?」

 

藍「…………、橙はあちらの方角に」

 

一方通行が言うのだから今回だけは見逃した。

だが次は容赦しない、協力関係であろうがなかろうが絶対にボコボコのボコにしてやる。

 

藍は次の都に来てから橙が向かって行った方法へ指を差す。

すると、、、

 

一方通行「解った。今から俺は橙と、そして藍は______」

 

首を隣に向ける。

そして地獄の妖精の肩に手を乗せた。

 

一方通行「__こいつと共に行動しろ。もう暴走者は少ない数になった。だが、だからと言って油断はするな。最初にも言ったはずだ『死ぬな』ってな。それを破ることは許さねェ」

 

藍「承知しました。おい、一方通行さん(めい)だ。共に都の制圧を開始するぞ」

 

クラウンピース「『おい』とか『こいつ』とかであたいを呼ぶな。あたいはクラウンピース、ちゃんとした名前があるんだぞ」

 

一方通行「藍、クラピー。そっちは任せたぜ」

 

クラウンピース「クッ、クラピー!?おい待てヒョロもやし!!あたいのこと完っ全にナメてるだろ!?」

 

そうは言ったものの彼は止まることは無かった。

背を向け銃声や爆音が響く場所へ四つの竜巻を背中から伸ばして飛んで行ってしまった。

 

藍「クラピー、行くぞー」

 

クラウンピース「チッ……、どいつもこいつもあたいをバカにしやがって。身長が小さいのは認めるが、だからと言って中身まで幼い訳じゃないんだぞコノヤロー」

 

いじけたように足元の小石を蹴ってブツブツ呟く。

どうやって言えば自分を見る目を変えられるか、とか考えてみたが今は無駄だと一瞬で悟る。

しかし、諦めた訳ではない。

この異変が解決したら後でゆっくりじっくり話をしてやるつもりだ。

 

藍「そう言えば気になったのだが、なぜお前はこの月に居たのだ?」

 

クラウンピース「ん?ああ、一人で遊びに来てたんだよ」

 

藍「幻想郷が一度アレイスターにより、崩壊した時には居なかった。つまりその前から月に居たのか」

 

クラウンピース「うん。その時地上に居なくてラッキーだった……、って言いたかったがその後月でお前らと同じ目に遭ったんだ。不幸が遅れてやってきたってな、全くそのアレイスターってやつ人に悲劇不幸を贈るの大好きなんだな」

 

藍「幻想郷を一度壊した後、そこに新しく世界を創造するのが目的らしい」

 

クラウンピース「そうらしいね、そこまでのことを仕出かそうとは……そいつかなりの狂人だ」

 

藍「だが、あれから月日は経っている。なんで幻想郷に帰って来なかったんだ?相当幻想郷を気に入っていただろ?」

 

クラウンピース「……そ、それはねー…………」

 

藍「………………まさか、月に行けたのは良いけど帰れなくなったなんて間抜けなこと言わないよな?」

 

クラウンピース「っ!?ま、まっさかー!そんな事ないじゃん。あたいは地獄の妖精だよ?超強いんだよ?頭凄く良いんだよ?そんな間抜けする訳ないじゃん」

 

藍「そうだよな、あははははっ!」

 

っと言って笑っておるが心の中では『こいつ嘘吐くの下手だなー』っと思っていた。

 

クラウンピース「おい、勘違いするなよ?敢えて幻想郷に戻らなかっただけだからな」

 

藍「はいはい、分かった分かった」

 

まるで子供でもあやすかのように宥められたことに舌打ちをするクラウンピース。

だが、これ以上お喋りをしてる訳にもいかなかった。

 

ボンッ!!っと地獄の妖精が持つ木の枝に火が灯り、ニヤッと笑う。

 

クラウンピース「ヨシ、あたいに付いて来い!!イーッツ!!ルナティックターイム!!」

 

藍「さあ、最後の仕上げだ……ッ!!!」

 

二人は地面を思いっきり蹴って飛躍する。

そして、残りの暴走者が居る場所へ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって、月の都のとある地区。

そこでは銃声が酷く鳴り響いていた。

 

ババババババババババババババババババっ!!!!!!

っとアサルトライフルを構え連射する月の民達。

その者共は暴走者だった。

 

そして暴走者達の目的、それは猫耳が頭にあり二本の尻尾を生やす少女だった。

妖獣の彼女は背丈は低い。

だが、その幼い容姿に騙されてはいけない。

 

『橙』。式神・藍の式神。

そう、普通の少女ではないのだ。

橙は自分に向かって乱射される弾丸の雨を地面を駆けて、宙を跳び、建物の屋根から屋根へ跳び移り軽々と避けていた。

 

だが、だが。

銃を構える暴走者達の死角となる場所に着地したその時だった。

さっきまで相手にしていた暴走者とはまた別の女子高校生の制服のような軍服を着た三名の新たな暴走者が橙へ銃攻撃を仕掛ける。

橙のことをそこで待ち構えていたのだ。

 

ダダダダダダダダダダダダダダッ!!!!

なんの躊躇いもなく銃を撃つ。

しかし、橙はしゃがんだ状態だった。

着地したその刹那だったのだ。

反応できない、一瞬でその体に無数の風穴が空く。

っと思われたがなんと橙はニヤリと笑ったのだった。

そしてそして。

後方へ連続でバク転することで銃弾の躱わす。

 

が、、、

 

その先には屋根上にロケットランチャー構えるに一人の暴走者が居たのだ。

そして、火花を散らし白煙を撒いてロケットが橙目掛けて発射された。

だが橙は自身の体に直撃する前にそのロケットを掴み取り、さっきまで相手していた暴走者と軍服を着た暴走者、そいつらが丁度合流して集まり自分の所へ向かって来ていたのでそいつらに掴んだロケットを流すようにぶん投げた。

 

ボーンッ!!!っと空中で爆発する。

見事橙が投げたロケットが暴走者達に命中したのだ。

 

その衝撃でバラバラに吹っ飛んでいく月人。

体から黒い玉が出ていくのが見えたので、

ナイフのように鋭く伸びた爪を立て閃光の如く宙を翔けて移動して月人から出た黒い玉を粉々に切り裂き破壊する。

そして、、、

 

橙「貴方でラストーッ!!」

 

薄い赤と青色の弾幕をあのロケットランチャーを撃った暴走者に放つ。

 

橙「わたしって出来る子だなー、なんちゃって☆」

 

自分の弾幕が当たった屋根上の暴走者は倒れていた。

そこに橙は降りた。

バリーンッ!!っと月人から出た黒い玉を握り砕く。

これで、、、ひとまずこの地区の暴走者を片付けた。

後は最後の地区。

そこの暴走者を片付ければ橙が任された場所の暴走者は全て倒したことになる。

 

橙「一応安全な場所に寝かせておいてあげよー」

 

倒した月人を流石にそこら辺で適当に寝かせておくわけにもいかないので、そこまで破損が酷くない屋根のある建物の中に運ぼうと動いた時だった…………。

橙はなにか違和感を覚えてた。

 

橙「……、いち、にぃ、さん、よん______」

 

数えていたのはさっき倒した元暴走者だった月人だ。

 

橙「___五、六、七、八……あれっ?はち?」

 

先程闘っていたのは途中加わったやつらも含めると合計"九名"。

なのに、さっき破壊した黒い玉の数は八。

ちゃんと覚えている。数え間違える筈がない…………、

 

_____まさか。

そう口が動いた時に、だった。

 

橙「___ッ!?」

 

紅の目を光らせ、屋根から屋根へ移動し空中に眼光で一線一線描くボロボロの"暴走者"。なんとこいつはさっきのロケットを受けても倒されていなかったのだ。

そして、その暴走者は橙の懐に入り腰にあった刃渡り七センチのサバイバルナイフを抜く、、、

 

橙(___不味いこのままだと……っ!!)

 

その時、なにもかもが遅く見えた。

だが確かなのは自分に向かって突き刺すように抜かれたサバイバルナイフを回避する手段が無いということだった。

一瞬の油断。気を緩めたその刹那。

反応出来なかったのだ。

 

そしてそして、、、、

大量の血が空中に撒かれた。

 

だがその血は橙の血ではなかった。

 

「悪りィな、こいつは無事地上に返すって決めてンだ。俺の手が届く位置に居るならどンな事があろォがこいつに傷を付けることは許さねェぞクソったれ」

 

橙「一方通行様ッ!?」

 

二人の間に立つ白い影。

一方通行はなんとナイフが橙を突き刺す前に己の手で受け止めたのだ。

そして暴走者の腹部目掛けて蹴りを放つ。

足裏が見事暴走者に突き刺さり後方へ吹っ飛ぶ事なく前に力無く倒れる。

そして、それから黒い玉が出て来てそれを一方通行は蹴って破壊する。

 

一方通行「ここまで一人で良く頑張った、橙。核の心配はもう要らねェ、俺が排除した。後は残りの暴走者を倒すだけだ。それでこの異変は解決する。藍はクラウンピースと共に行動して暴走者を倒している。オマエは俺と共に行動して残りの暴走者を倒すぞ」

 

橙「……ひっ、ん……ぐすっ…………んっ……」

 

一方通行「……あン?どこか痛ェところでもあンのか?」

 

何故か涙を流す橙に一方通行は首をかしげる。

すると、、、

 

膝から崩れ落ち……橙は、

 

橙「すみません……、私の、私のせいで……っ!!」

 

一方通行「そンな事かよ……、なァに心配いらねェよ時が経てば勝手に治る」

 

そうは言ってるがナイフが刺さった手から大量の血が流れ出ていた。

もう、『反射』は時々しか機能しないほど能力は低下している。

そのぐらい一方通行は疲弊していたのだ。

だが、刺さったナイフを口で咥えて抜くと、、、

 

一方通行「立て、橙。さっきも言ったが俺と共に残りの暴走者を片付けに行くぞ」

 

橙「そんな!?ダメですっもう一方通行様は戦える体に見えません!!横になって楽になられた方が良いです!!」

 

右腕には血で赤く滲んだ包帯、所々見える傷。

もうボロボロだったのだ。

しかし、、、

 

一方通行「大丈夫だ、まだこの通り動ける。それにこの月に来てから最初から俺は倒れるまで戦い続けるつもりだった」

 

橙「そんなっ…………、でしたら____」

 

橙は立ち、予備のため持っていた包帯と傷薬を服の中から取り出し、薬を塗った後包帯を一方通行の左手に巻いた。

 

橙「___応急措置はしました。ですが、完璧に治せた訳ではありません。激しく動けば傷は広がってしまい更に酷くなる可能性があります」

 

涙が止まらない。

嗚咽は続いていた。

 

可能なら、出来るのなら本当は止めたい。

橙は知っている、彼は決めたらそれを達成するまで決して止まらない。

だからここで何を言っても、例え両手を広げて立ち塞がったとしても一方通行は暴れる暴走者の所へ傷を負った体を引き摺ってでも行くだろう。

 

橙「………………………、」

 

包帯を巻かれた手をその小さな手で包んでいた。

俯き、暗い表情の少女の頭にある耳に一方通行は息を吹き掛ける。

 

すると、、、

 

橙「うひゃあーっ!!一方通行様っ一体何を!?」////

 

驚いて手を離し声を上げる橙。

 

一方通行「あン?まるでイタズラして下さいみたいに耳を差し出されたらそれに応えるしかねェだろ?」

 

橙「そんなこと思ってませんよ!!私は一方通行様の体を心配していただけです!!」

 

一方通行「へっ、だが元気は出たな?」

 

橙「………………意地悪」

 

いつの間にか橙の涙は止まっていた。

 

一方通行「…………悪かったな」

 

橙「いえ、別にそこまで怒ってませんよ?」

 

一方通行「違う、月の都に残りの暴走者を集めた事だ。俺だって分かっている、そンな大人数相手にするような面倒事を増やす方法じゃなく一匹一匹確実に探して倒した方が安全だってな。だがもォ月で暴走者を捜索する体力は残ってねェ。だからは俺は残りの暴走者をここに集めて無理やり最後の決戦場所にした」

 

橙「そのことでしたら私はとても良い判断だと思っています。我々にはもう長期戦をする体力は残ってません、だったら短期決戦を仕掛けるしかもう手はありませんからね」

 

そして、それに……と続け、

 

橙「___ここに暴走者を集めた事により他の場所に居る正気に戻った月人は危険が無くなりました。別に悪いことばかり起きた訳ではありません。一方通行様は正しい判断をしたんです。____なのに私のせいで一方通行様の左手を負傷させてしまいました。だから私が全力で一方通行様の左手分援護します!!絶対足を引っ張ったりしません!!」

 

一方通行「……………………そォか。ならその言葉を信じて頼りにさせてもらうぜ橙」

 

能力で止血したが、動かせば傷が開き血が流れ出てしまう。

もう今日は血を流しすぎたためもう血を流すと失血死してしまう。

その為、両腕は使えない。

ズボンのポケットに両手を突っ込み封印する。

 

そこら辺で倒れている気を失っている月人はサグメ達が居る場所へ送った。

 

そして、

猫耳少女と共に暴走者がまだ暴れている次の場所に向かって白い怪物は飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

そして……、そして……、

それから数十分の時が経ち________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここに報告する。

月、制圧完了。

 

無事、誰一人も死なず任務完了。

 

以上。




次回予告

月の騒動も収まった
後は、思惑通りに事を進めるだけだ

次回、第四章・第十話『交渉』

笑いあり!?涙あり!?
ハプニングはあるッ!!
さあさあ、月では何が起こるのかな……?

惨劇は終わり極悪非道な悪意を跳ね除けたことに月人は喜び月の都は歓喜の渦に包まれていた

しかし、一方通行達は知る。
それは束の間の喜びだったと言うことに……、

そして再度認識することになった。
自分達はどんなやつと闘っているのかを…………


覚えておくと良い、
幸せって近いようで果てしなく遠い所にあるんだよ……
だが、絶望はすぐ『そこにある』




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10話

『交渉』


※絶対に誤字脱字などのミスが多々あります。
それをご了承のうえ読んでいただけると助かります。
しかし、そういったミスが多いのをご不快に思う方にはブラウザバックをオススメします。







『月面制圧』。

一方通行達、幻想郷で生きる者達は力の限りを尽くした。

それは血と汗を流してまで…………、

 

 

月にばら撒かれた黒い玉。

その悪意の塊で作られたものにより、理性を無くし暴走して自らの手で自分達の住む世界を崩壊させていった。

しかしそこに救済の手が差し伸べられた。

救いが到来する。

それが一方通行達なのだ。そう、地上の民達は次々と暴走者となってしまった月人を倒していき正気に戻させていく。

どんな企みや目的があるのか知らない。

けど……、血と汗を流してまで全力を持って月を救ってくれたのは事実だ。

それにより月人は幻想郷に感謝して、

一方通行達を、『英雄(ヒーロー)』を称えた。

 

そして。

月人達全員が正気に戻り、廃墟のような有り様の月の都を元の月の都の姿に戻そうと動いていた。少し一方通行の創造の力も借りたが月人達は言った。

『ここからは我々の力だけで、月の民だけでやります。我々も全て地上の者に頼るほど落ちぶれちゃいません』と。

その言葉を聞くと一方通行は小さく笑い、その場を去る。

 

頼もしい奴らだ。脆くない、簡単に折れない芯を持つ強いヤツらだ。

真っ白な彼は素直にそう思った。

そして、一方通行は本来の目的に移ることにした。

 

サグメが月で偉いヤツと対面する場を作ってくれたそうだ。まあ、あちらの方も話をしたいと言っていたらしい。

 

さあ、これからは『交渉』の時間だ。

うまくいくか、それとも失敗に終わるか、

 

始めよう。

楽しい楽しい腹の探り合い(お喋り)を…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月の都で一番目立つ一番大きな建物。

中国と日本を足して二で割ったような建物であった。

その中に一方通行、藍、橙、クラウンピースの四人は入った。

衣服は先の戦闘によりボロボロであったが替えの服もないし、最低限砂や汚れを叩き落とした。

そして見かけ通り中もとても広い建物。

だが、外見は中国と日本の雰囲気を醸し出すのに内装は洋風であった。が、所々和風な所もあったりする。

和、洋。そのどちらの良いところを取り入れた感じであったのだ。

まあ、そんなこと一方通行達御一行にはどうでも良いことだ。

そして、そして、

この月で偉い者に対面する一室へここの使用人か知らないがウサミミが頭に生えた女子高校生のような身なりの少女に案内された。

 

その中に入るとそこに“あの"姉妹とサグメが居た。

 

「お待ちしておりました、この月をお救いくださった勇敢で心優しい英雄様。この度は月の民を代表して感謝を_____」

 

一方通行「そォいうお堅い挨拶はイイ。こっちも話してェことがあるし、そっちも聞きてェことや話てェことがあンだろ」

 

洋風な部屋。

まるでそこは世界遺産として提示されている王宮の中にある客室のようだった。

ここは客室で間違いないのだが、それでもとても豪華な家具が並べられていた部屋。

一方通行や藍はいつも通りの様子だったが、橙は少しその表情に緊張を見せる。

クラウンピースは今日出会ったばっかり、

全然こいつの事を知らないが欠伸(アクビ)をしているし、緊張とかはしてないみたいだ。

 

そして、

対面場に入ると綿月姉妹は椅子の前で立ちサグメは壁に寄り掛かるように立っていた。

椅子に座らず立って待っていたのだ。

膝ぐらいの高さの長テーブル。

それを挟んで空席の椅子もあった。

多分、それが客用の椅子だろう。

 

そしてまず最初、綿月依姫が口を開いた。

が、しかし一方通行は依姫の話を割る。

 

依姫「…………では、椅子にお座り下さい。っと言いたい所ですがその穢れはこの部屋に入ることは許せません。いいやこの部屋はおろか、月に足を付けてるのも許せない……。我々月人は穢れを最も嫌っております」

 

クラウンピース「ほらね。言った通りでしょ?あたいはここの連中に嫌われてる、だから先にあたいを幻想郷に戻してくれよ。一方通行、お前の力ならそれができるんだろ?」

 

一方通行「…………チッ」

 

さっき案内してくれたウサミミの月人や、月の都に居る月の民達。

そして目の前に居る綿月姉妹。その者らが地獄の妖精の少女を見る瞳の中に嫌悪があった。

 

嫌われてることに慣れている。

ただ地獄で生まれただけなのに嫌われる。

小石を投げられても全然平気と笑うクラウンピース。

だが、その事に一人だけ怒りを覚えていた者が居た。

一方通行だ。

彼は、白い手を地獄の妖精の頭の上に乗せて、

 

一方通行「こいつにも俺達の話を聞かせてやりてェ。このガキには俺達の話を聞く権利がある。こいつも月の異変解決に貢献した。泣かせるじゃねェか、過去に月の奴らに迷惑をかけたからその償いのため今回俺達の中で一番奮闘したンだぜ?」

 

クラウンピース「はァ?なに______」

 

地獄の少女が口を開くがその口は白い手で塞がれる。

頭の上に置いていた手をクラウンピースの口にやったその時、バシンッッ!!っと叩かれた音が響く。

急に口を塞がれ、もがきながら口を塞ぐ手をどかそうとしているがそれを全力で最強の能力者は無視する。

 

すると、、、

 

橙「えっ?そんなこと言っ_____」

 

次に口を開いたのは橙だ。

だが余計な事を言う前に藍が両手で後ろから抱き締めるように口を塞ぐ。

 

藍「そうなんですよ。私もこの妖精がそんな想いで協力すると聞いた時はそれはそれは驚きました」

 

黄金色の九つの尻尾を持つ、式・藍は微笑みながらそう口を開く。

 

豊姫「……そうですか。なら良いでしょう、依姫も良いわよね?」

 

依姫「姉様がそう仰るなら……」

 

そして。

藍と一方通行はそれぞれ抑えていた手を離し、一方通行達の話を信じた綿月姉妹は地獄の妖精をこの場に居ることを承諾する。

何事も無く次はやっと話が出来ると思った。が、まさかのここで問題が起きた。

 

なんと、空いてる椅子が三つしかなかったのだ。

 

藍「私は立っているので結構です。一方通行さん椅子をお使い下さい。後、橙とクラウンピースもいいぞ」

 

一方通行「いや、そンな気遣いは必用ねェ。あるモンだけでどうにかする。クラウンピース、オマエは俺の膝の上に座れ」

 

誰よりも早く椅子に腰かけると自身の膝をタンタンと叩く。

だが彼の発言にこの場の誰もが驚きを隠せなかった。

特に、藍とサグメは……、、、

 

「「……………………」」

 

藍とサグメは背後に『ゴゴゴゴゴゴ……!!!』っと圧力がある擬音が浮かんでいた。

殺意と妬みを込めクラウンピースを睨む。

当然、そんな目を向けられてることに地獄の妖精も気付いている。

 

だから、、、

 

クラウンピース「別に良いよ。あたいは後ろでぷかぷか浮いてるから」

 

一方通行「無駄なところで力を消耗するな。それにこの俺が座れと言ってンだ。だから早くしろ」

 

クラウンピース「…………チッ」

 

どこまでも自分勝手なヤツだな、と唇を動かした。だがそれでも白い彼に従うことにした。

きっとこれ以上断ったとしても無駄だと思ったのだ。

 

そして、そして。

 

一方通行「思った通りだ。オマエは顎乗せにピッタリだ」

 

クラウンピース「このヤロウ………」

 

藍「………………」

 

橙「……はぁ、これ以上面倒なことにならなきゃいいな」

 

左から藍、一方通行、その膝の上にクラウンピース。そしてポツリと誰にも聞こえない程度の声音で思ったことを呟いた橙の順番に座っている。

その反対側には、、、

 

依姫「姉様、ここって真面目な話をする場で間違いないんでしょうか?」

 

豊姫「一応あちら側も真面目に話をするつもりだと……思う……。もしからしたらだけと……」

 

サグメ「………………」

 

二つの席に依姫、豊姫が座りサグメは壁に寄りかかっていつも通り口に手をやっていた。

 

一方通行「……まずはオマエ達から聞いてこい。サグメからある程度聞いてると思うが今日何が起き、そして何故あの悲劇が起きちまったか全部聞いた訳じゃねェだろ。この中じゃそれに一番詳しいのはこの俺だ。知りてェこと何でも聞け、答えてやる」

 

依姫「それはそれは感謝申し上げます。他の月人にも説明するためにも私達が今回の件の全てを知らなくてはいけませんからね」

 

クラウンピース(ヤバイ……眠くなってきた……)

 

一方通行「あァ?うとうとしてンじゃねェよクソガキ」

 

クラウンピース「……んぁ?……何か急に眠くなってきたんだよ。お前の体温が高いからかな?ほら、温かくなると人は眠くなるじゃん」

 

一方通行「俺の体温は普通だ。むしろ体温高いのはオマエの方だろ」

 

橙(そんなにくっ付いてりゃ誰でも温かくなるよ普通…………)

 

なんて、心の中で呟いたのだから二人にその言葉が届くはずもなく……。

『もしかしたらまともなのは私しか居ないのでは?いや、まともなのは私だけだ!!』っと確信した橙は終始呆れ顔で居るのかもしれない。

 

まあ、そんな猫娘の気も知らずクラウンピースを膝の上に座らせる一方通行は、、、

 

一方通行「…………あン?どォした?質問しねェのか?」

 

依姫「いえ、こんな場になると知らず貴方達が来るまで緊張していた私がバカだなぁと黄昏れていただけです……」

 

一方通行「?」

 

コホン、と。気持ちを切り替えた依姫は真面目な表情になっていた。

そして、

 

依姫「それではお聞きします。月で起きた異変、それを誰が起こしたかご存知なのでしょうか?」

 

一方通行「あァ。“そいつ"が誰なのか、何処に居るかも知ってる」

 

依姫「“そいつら”ではなく“そいつ"ですか。つまり敵は単体というのが正しい認識でよろしいでしょうか?」

 

一方通行「中枢となる人物は個人単体だが、もしもそいつを討つことになるとそいつが自由に動かせる大勢となる駒と殺し合い、総力と総力をぶつける全面戦争となる。そォなると今回の月以上の惨劇が起きる可能性があるぞ?」

 

情報だけで敵を認識してその顔も知らぬ者に殺気を向ける依姫を見て、一方通行は彼女達が逆襲しようしてることを感じとる。

 

依姫「これ以上誰も傷付かないためにも……仕方ありません。月の秩序と平和を守るのが我らの使命。ですから月の平和を脅かす者は一匹たりとも生かしておくつもりはありません。必ずや今回の事件を起こした犯人の息の根を止めてやるつもりです」

 

一方通行「……ハッ、良い覚悟だ教えてやる。オマエらの平和だった月を地獄に一変させたクソ野郎の名をな、そいつの名はアレイスター=クロウリー。学園都市と呼ばれる科学の町、人工的に超能力開発を成功した所のトップだ」

 

依姫「超能力を人工的に……?」

 

豊姫「誰もが才能を、強大な力を手にすることができると言うわけですか……」

 

サグメは最初の時からずっと変わらず瞳を閉じて腕を組んでいて、壁に寄りかかりながら部屋の端の方で話を聞いていた。

綿月姉妹は一方通行の『超能力を人工的に開発出来る』っという発言に驚きを見せる。

 

一方通行「いや、少し違ェな。確かに誰にでも超能力開発は出来る。ちっと強引な方法だと頭のネジが外れた科学者に体のあちこちを弄ってもらう必要がある、だがそれは下手したら死ぬリスクと隣り合わせだ。それにそンなリスクを背負ってやっと超能力に目覚めても個人差は出る。カスみてェな能力に目覚めるやつ、どンな兵器よりも危険な力に目覚めるやつにな」

 

依姫「……なるほど。それにしても貴方はその学園都市とやらに詳しいですね」

 

一方通行「そりゃあそォだろ。俺は元々その学園都市に居た人間だからな」

 

____ガダッ!!!

刹那。

依姫の目と気配が変わった。

足元に置いてあった刀を素早く掴み取る。

そして抜刀し一方通行へその鋭い刃の先端の部分を向ける。

 

依姫「一体それはどういうことですか?返答次第ではここで貴方の首が飛ぶことになりますよ」

 

片足を長テーブルに乗っけて刀を向ける依姫。

しかし、白い怪物は表情一つの変えない。

焦りというものが一切無かったのだ。

だが、一方通行の両隣は刀を向ける依姫に立ち上がりそれぞれ臨戦態勢に入っていた。

一方通行の膝の上に座るクラウンピース、彼女も一方通行と同様一切焦った様子もない。

普段通りであったのだ。

 

一方通行「落ち着け………、オマエら」

 

一気に空気が変わる。

橙は刃物のように伸びた爪を構える。

藍はボールを掴むように手を開き、中指の先を輝かせる。

それは光のエネルギーを溜めているのだ。

もしもその光を閃光のように放てば当たり所によっては人を絶命させることが可能だ。

 

式達の目も、依姫同様鋭く殺気を放つ目となっていた。

 

依姫「お前ら雑魚二匹で私を止められると本気で考えているのか?」

 

藍「出来る出来ないは関係ない、私は一方通行さんに刃を向ける者を許せないだけだ」

 

橙「紫様の敵は私の敵、藍様の敵は私の敵。それだけのこと。勝てないから挑まない理由にならない。主の敵ならば全力で挑む。それが私の使命ッ!!」

 

 

「_____やめなさい」

 

 

そう発言したのは、、、

 

依姫「………サグメ様?」

 

サグメ「依姫、刀を下ろし座りなさい。これはお願いではない、命令よ」

 

依姫はサグメの居る方へ首を向けた。

その時、依姫は驚きの顔だった。

滅多に口を開かないサグメ様は口を開いた。

しかもそれは月の敵かもしれない白い彼を庇う為だったのだ。

 

依姫「しかしこいつは____」

 

サグメ「私は刀を下ろし座れと言ったの。貴女(あなた)の意見を述べろとは言った覚えはないわ」

 

依姫「_____ッ!!!!」

 

声色で分かる。舌禍の女神様の表情を見るだけで恐怖に震えそうだ。

サグメ様は怒っている。間違いなく。

 

何故?

 

依姫は少し刀を握る力が抜けていった。

だが、まだ刀を向けている。

言うことを聞いていない小娘に、だ。

 

サグメ「ここは話をする場であって、刀を振るう場ではないはずよ。それともそれが依姫なりの話の仕方なの?だったら____」

 

そっと、その口を覆うように置いていた手を退ける。

それを意味するのは、、、

 

サグメ「___私は貴女(あなた)に力を振るうことになるわ」

 

依姫から完全に殺気は消えていた。

次、もしも何かサグメ様に口答えすればあの恐ろしい能力が自分に振るわれる。

普段優しいサグメ様がここまで怒るのは初めてかもしれない。

 

豊姫「依姫」

 

依姫「姉様………。申し訳ありませんでした。敏感に反応し過ぎてしまいました」

 

依姫は一方通行へ向けていた刀を納刀し、腰を下ろす。

そして頭を下げたのだ。

 

それを見たサグメは、

 

サグメ「一方通行、うちの子がごめんなさいね」

 

一方通行「気にすンな。疑ってかかるだろォって踏ンでたしこォなることも想定内だ」

 

争い事にならずに済んだことに橙、藍も腰を下ろす。

 

一方通行「敵と判断したら即座にかかる。いい判断だ。だが無関係な奴を巻き込ンで、ってのは感心しねェな」

 

依姫「すみません」

 

あの時、依姫は一方通行の膝の上に座るクラウンピースごと一方通行を斬ろうとしていた。

それを指摘する。

 

が、もう先程のような緊迫した状況は無くなり素朴な疑問が浮かんだ豊姫は一方通行が膝に乗せる地獄の妖精を指しながら、

 

豊姫「ところでそのお嬢さんとどんなご関係なのですか?」

 

それに一方通行はクラウンピースの頭に手を乗っけて答えた。

 

一方通行「こいつは俺の生徒だ」

 

クラウンピース「………………。はァ!?」

 

彼の発言にこの場で一番驚いたのはクラウンピースだった。

振り返って白い怪物の顔を見ながら、

 

クラウンピース「いつあたいがお前の生徒になった!?って言うか生徒ってなんだ!?」

 

一方通行「オマエのような人外の問題児を集めた森の教室ってのがあってな。俺はそこで教師をやってンだが、オマエは今日からそこの生徒になってもらう」

 

クラウンピース「勝手なこと言うなよ真っ白野郎!!あたいのことはあたいが決める!!それにあたいはご主人様以外の言うことを聞くつもりはない!!」

 

一方通行「オマエに拒否権はねェぞ?」

 

クラウンピース「えっ?」

 

次の瞬間。

クラウンピースは今までに味わったことのない地獄を見ることになる。

 

クラウンピース「痛たたたたたたたたたたたっ!!!!痛い痛い痛いーッ!!!」

 

一方通行「始めに言っておくがオマエが俺の言うことを聞くまで続くぞ」

 

左右から拳で挟んで、頭にぐりぐり攻撃を容赦なくする一方通行。

それをされているクラウンピースは涙を浮かべて暴れまくる。

だが頭を拳で挟まれていて身動きできない。

よって、大人しくぐりぐり攻撃を受けるしかないのだ。

 

クラウンピース「分かった分かった分かりましたーッ!!私は今日からお前の生徒だー!!」

 

一方通行「分かりゃァ良い」

 

クラウンピース「鬼!悪魔!!大魔王!!!」

 

ぐすっ、を鼻を鳴らし地獄の妖精のその瞳には涙が浮かんでいた。

 

一方通行「さて、こっちからもオマエらに質問がある。オマエらは暴走する直前の記憶はあるか?」

 

豊姫「目の前に真っ黒な球体が突如現れた所までの記憶ならありますが……」

 

依姫「私もです」

 

綿月姉妹は淡々と答える。

それに対して、

 

一方通行「…………そォか」

 

っと、一言息を吐く。

 

今回の暴走事件は地上で起きたものとは少し違うのかもしれない。

実は幻想郷で暴走者となってしまった者に意識が無くなる直前の記憶はあるのかと質問したら全員揃ってないと答えたのだ。

しかし、月で暴走者になってしまった月人達は暴走する直前の記憶があると言う。

そのことも引っ掛かるがもう1つ引っ掛かることが……、

 

どうやって月にあの黒い玉をばら蒔いた?

 

幻想郷には、八雲紫が幻想郷から学園都市にスキマで繋いだ時に現れるその時空の歪みに強力な電磁波を当てることにより強制的にそのスキマの歪みから時空の扉を開いていた。

だが、月から学園都市にスキマを繋いだ時は無いと聞いた。

それに月と、幻想郷はスキマで繋いだことは月面戦争であるらしいがもう幻想郷に紫が作ってしまったスキマの歪みは直した。

なのに、今日。幻想郷に録音機を送り込むこともでき、そして月に黒い玉をばら蒔くことも出来ていた。

もしかしたら学園都市は学園都市で別の世界へ繋がる扉を開く方法を手に入れたのかもしれない……。

 

豊姫「あの黒い玉。あれが今回の事件を起こした物なのでしょうが、一体あの黒い玉は何なんですか?」

 

一方通行「黒い玉。何のひねりもねェ安直なネーミングだが“暴走玉”(ぼうそうだま)っと呼称するか。その暴走玉は埋め込まれた対象が持つ様々な能力を飛躍的に強化させる。オマエ達も気付いてるはずだ、自分の能力が進化したことに。まだ暴走玉には謎な部分が残っているが、解ってることもある。それはあの玉っころを埋め込まれた対象から取り除いていも能力は強化されたままだってことだ」

 

依姫「それは敵側からすると喜ばしい効果ではないのでは?倒したい敵を強くさせてなんの得があるのですか?」

 

一方通行「敵を強化するために暴走玉を使ってンじゃねェ。アレイスターが暴走玉をばら蒔いた理由は、暴走玉を埋め込まれた奴は急激な力の強化により理性を失い無差別攻撃を開始する。だから理性を失い、しかも能力が強化されたやつらが勝手に自分の滅ンで欲しい場所をテメェらの手で滅ぼしてくれる、って訳だ。つまり暴走玉を埋め込まれた敵は自分の駒と変化する」

 

豊姫「“暴走玉”……ですか。とても恐ろしい兵器ですね。しかしその後はどうするのですか?」

 

一方通行「その後、ってのは敵地を滅ぼした後のことか?」

 

豊姫「はい。その後の処理はどうするのかと思いまして」

 

一方通行「さっきも言ったが暴走玉の正体を完全に理解できねェが暴走玉を埋め込まれたまま一定の時間を過ごすとそいつは確実に死ぬ。一定の時間ってのはこれも確かではねェンだが、俺の予想で2ヶ月ぐらいだ」

 

豊姫「敵が勝手に己の敵地を滅ぼした後、用済みとなったら勝手に絶滅してくれる……なんて恐ろしい」

 

"暴走玉"。それを知れば知るほど背中に鳥肌が立つ。

寒気がする。それは一方通行と会話していた豊姫の隣で聞いてる依姫もそうだった。

そんな当たれば勝ちが確定してしまう反則兵器。それを自分達の月に使用された。

もしも目の前に居る地上から来た英雄達が月に来なかったら……、

もしも救済の手を差し伸べてくれなかったら、、、

我々はの月は環境は崩壊し、終焉に満ちていただろう。

 

嗚呼……恐ろしい。恐ろしい。

それ以外言葉が見付からない。

 

一方通行「まだ聞きてェことはあるか?」

 

豊姫「私は知りたいことを知れまし、もう聞きたいことはありません」

 

依姫「私も姉様と同じ、もう聞きたいことはありません」

 

綿月姉妹はそう答えた。

すると、

 

一方通行「そォか……______」

 

___じゃあ、っと。

 

一方通行「ここからは俺の聞きたいことだな。いや、提案とも言えるな」

 

さァ『交渉』の時間だ。

一方通行はそう口の中でも呟いた。

そうだ。ここからが、本番。本当の目的なのだ。

今後の為にも、ミスは絶対に許されない。

 

依姫「提案……?」

 

一方通行「あァ。ここで確認する。オマエ達は本当にこの月の最高責任者、王や皇帝みてェ存在で間違いないな?」

 

依姫「王や皇帝などとは呼ばれたことは私達はありません。私達は月人達から『月の使者』っと呼ばれております」

 

豊姫「我々月の防衛を任された『月の使者』では不満ですか?」

 

一方通行「いや、構わねェ。今からする提案は有象無象のカスにすると無駄話になっちまうから一応確認しただけだ」

 

そして。

一方通行はズボンのポケットからスマートフォンを取り出し、前の机に裏面が上になるように置いた。

 

一方通行「月の防衛を任された『月の使者』。オマエら提案する。俺達、幻想郷と手を組ンでくれねェか?アレイスターをぶち殺すため」

 

依姫「地上の者達と手を組む、ですか……」

 

一方通行「アレイスターは厄介な野郎だ。だから多くのやつらと協力が必要だ。他のやつらの知恵や力が必要なンだ。勿論タダで手を組ンでくれと言うつもりはねェ、こちらもそれなりのものは支払う」

 

豊姫「仮に貴方達を手を組んだ場合、我々に望むものは?」

 

豊姫の表情や雰囲気が変わる。

さっきまで、確かに『月の使者』っと呼ばれる風格はあった。

だが今の豊姫はさっき以上の凄みを感じる。

 

一方通行「月独自で作られた武器や兵器などの技術の提示、後はこちらが協力して欲しい時に駆けつけると縦に首に振る。その二つで良い」

 

豊姫「で、貴方達は何を支払うと?」

 

一方通行「幻想郷独自に開発した通信機を渡す。そしてこの俺の力をオマエ達月の奴らに貸すと約束する」

 

豊姫「……貴方の力を?」

 

一方通行「実を言うとなァ、今オマエ達に話してるのは俺が勝手に他の奴らと相談もしねェでしている。だからこの俺が責任を取るのは当然のことだ。だがこの俺、一方通行には幻想郷最強って看板がある。その俺の力をオマエ達は全面的に利用できる。これはオマエ達に利点があると思うぞ」

 

依姫「最強、ですか。貴方が……?」

 

藍「一方通行さんが最強と呼ばれてるのは本当です。幻想郷で住む者達は皆、この方のお力を認めておりますし多くの信頼もあります。一方通行さんがもしも月の方達と協力してくれと頼まれたら絶対に幻想郷の他の者達も協力してくれます」

 

真っ白で体は細く、男か女か一目見ただけでは区別が難しい……、

脆弱そうに見える真っ白い超能力者からかけ離れた『最強』っと呼ばれているとは考えにくいと依姫が一方通行に疑いの目を向けると、それを察して藍が口を開いた。

 

「一方通行は強いわよ。貴女達の想像より遥かにね」

 

豊姫「サグ姉………」

 

サグメ「私には決定権なんてもの無い。けど、もしも今後の事を考えるなら一方通行達と手を組むのはありだと思うわ。まっ、ただこれは普段無口の女が吐いた独り言とでも思ってもらって構わない。決めるのは貴女達よ、お姫様方」

 

依姫「私は姉様の考えに従います」

 

豊姫「依姫。…………分かりました」

 

考えに。考えて、考えた結果。

豊姫は答えを出した。迷いはない。

正しい判断を脳内で下した。

そう確信できる。

 

豊姫「共通の敵を、“アレイスター”を倒すため私達月人は貴方達幻想郷と手を組みましょう」

 

一方通行「交渉成立だな。これからよろしく頼むぜ綿月依姫、そして綿月豊姫」

 

サグメ「ちょっと、私は?」

 

一方通行「あァ、オマエもよろしくな。稀神サグメ」

 

サグメ「うん♪」

 

上機嫌に微笑んだ舌禍の女神。

これから、月の民と一方通行達は協力関係になった。

共通の敵を倒す『仲間』になったのだ。

前は助けてもらっただけ、それ以外のなにものでもなかった。

だが今は違う。『仲間』だ。前の時よりもっと近い関係になれたとこにサグメは嬉しく思う。

 

一方通行「とりあえずスマホを10台渡す。足りなかったら後で言ってくれ」

 

そう言って一方通行は片手で空間にスキマを開きその中に腕を突っ込む。

そしてそのスキマからスマートフォンを10台取り出し机の上に置いた。

 

だが、

 

藍(いつも開くスキマよりサイズが小さい。それに能力を使った時、辛そうな表情をしていた。もう一方通行さんは限界なんだ……)

 

きっと、誰よりも疲れているはずだ。

それはそうだろう。

今回一番、多く戦ったのは間違いなく一方通行だ。

目蓋はとても重たいはず。早く横になって休みたいはず。

 

ここで藍はさっきの事を思い出す。

 

そう、依姫が刀を一方通行に抜いた時だ。

もしもあの時、依姫が一方通行に斬りかかったら今の一方通行には依姫の攻撃を防げるほどの力は残ってない。

それが分かっていても自分は一方通行の盾となることも出来ず、目の前で一方通行が斬られるのをなすすべもなく眺めてることしか出来なかっただろう。

 

『なんて私は無力なんだ……』

 

今回の件で彼の隣に立ち、力になれると思っていた。

助けもらってばかりだったが、今回は助けになれると思っていた。

なのに……、なのに……。

結局、最初から最後まで一方通行さんに頼る形になってしまっていた。

 

……強くなりたい。

一方通行さんを守れるぐらいと高望みするつもりにはない。

この人の隣に堂々と立てるぐらいの力が欲しい。

 

藍はそう思った。

自分がお慕いする白く誰よりも強い彼をその瞳に映しながら…………。

 

そして、である。

 

豊姫「これがサグ姉が使っていたスマホか……」

 

依姫「いざ手に持ってみると思ったより壊れやすそうですね……」

 

綿月姉妹は前に置かれたスマホをそれぞれに手に持ち眺めていた。

 

一方通行「使い方はサグメから聞け。あと、強度は中々のモンだ、ちょっとやそっとの衝撃じゃヒビ一つ入らねェ」

 

豊姫「一つ、よろしいでしょうか?」

 

一方通行「なンだ?」

 

豊姫「一方通行様のスマホと私達に渡されたスマホと少し違いがありませんか?私達に配られたこのスマホは全て同じ灰色模様です。なのに一方通行様のはオシャレな模様が施されていて……ちょっと……」

 

一方通行「???」

 

もじもじ、と。

言いたいことがあるのだが、その言いたいことを言うのを躊躇っている様子だった。

そんな豊姫の後ろに立ち、サグメは、

 

サグメ「そうね。私もこのスマホ渡されたときから思っていたわ。一方通行のスマホやそこの式達のスマホもそれぞれに違う模様になっていた。なのに私達のスマホは無地ってのは無料(タダ)で貰った身でこれはワガママだと承知してるけどちょっと納得できないのよね」

 

一方通行「今からオマエの望む柄のスマホを作れって言いてェのか?」

 

サグメ「頼めるなら頼みたいわ。けど、やっぱり難しい?」

 

一方通行「正直に話すとまた1から作るってのは難しいな。柄が気に入らねェならカバーでどォだ?」

 

サグメ「カバー?」

 

一方通行「スマホにもう1つ外装を取り付けンだ。カバーならスマホをまた一台一台作るより楽だし、カバーはスマホの強度をもう一段階上げることもできる」

 

『スマホのカバー』の説明をしながら一方通行は自分のスマートフォンを手に取る。

そしてそのスキマの1つの機能。スケッチ機能を使ってスマホカバーのおおまかな図を描く。

そしてそれを綿月姉妹、サグメに見せた。

 

一方通行「こォいうのならスマホを1から作るより早く作れる。柄はオマエ達が決めろ。これでも不満があるなら手帳型のスマホケースってのもあるが?」

 

豊姫「良いですね!カバーですか!」

 

依姫「私はちょっと強度が心配だったので、そのスマホカバーというの欲しいです」

 

サグメ「私は手帳型ってのが気になるわ。もっと詳しく話してくれない?」

 

綿月姉妹と舌禍の女神、その三人と一方通行がスマホカバーのことで話をしていると、

 

藍「良いなー。私もいつ傷ついてしまわないか不安だったのでそのカバー私も欲しいです」

 

一方通行「分かった、オマエの分もにとりに頼ンでやる。だが、オマエのはこいつらの後だ。それでも構わねェな?」

 

藍「はいっ!」

 

サグメ「………で、さっきから気になっていたんだけど、そこお子様二人はぐっすり眠ってしまったわね」

 

先程から橙とクラウンピースが静かだったのは眠ってしまったからだ。

月面制圧で相当疲れたのだろう。

ピクリとも動かず寝息を立てていた。

 

藍「起こしましょうか?」

 

一方通行「寝かせといてやれ。疲れてンだったら休ませるのが一番だ」

 

藍「……一方通行さんは大丈夫ですか?お疲れのようでしたらその妖精は私が預かりますが?」

 

一方通行「俺は平気だ。そォいうオマエはどォなンだ?」

 

藍「オンとオフ。しっかりと切り替えることができるので大丈夫です」

 

一方通行「そォか………」

 

綿月姉妹は自分のスマホカバーの柄をどうするか話し合っていた。

そんな二人を無言で眺める隻翼の舌禍の女神。

 

そして。

十分ぐらいの時間が経った頃には、それぞれにどんな柄にするか決まっていてそれを一方通行に報告する。

 

一方通行「……覚えた。後は聞きたいことはねェか?」

 

豊姫「カバーの費用はどのくらいになるのでしょうか?」

 

一方通行「あ?そンなの請求しねェよ。俺達は手を組ンだ一つの群れだ。それにこれもオマエ達と手を組む為の条件と考えていたし、全額俺が負担してやる。ってか俺が直直に作ることになるかもな」

 

豊姫「でしたら私達は完成するのを楽しみに待っていますね」

 

そして。

 

一方通行「さァてと……、こいつらが起きたら俺達は月から退散するか」

 

藍「今からにでも………。ふふっ、ええそうですね。この子達が起きるのをのんびり待ちますか」

 

ぐっすりと気持ち良さそうに寝ているその寝顔を見て、 無理にでも起こそうと思う気持ちは失せる。

 

一方通行「つゥ訳だ。少しこの場を借りたいンだが構わねェか?」

 

豊姫「全然構いませんよ。しかしすぐお帰りになるのはこちらとしては困ります。せっかく月へ来てくださり、しかも月をお救いになってくださった恩人様達を手ぶらで帰すわけにはいきません。せめて、お食事やお風呂などのおもてなしをさせてください」

 

一方通行「俺はオマエ達との交渉が成立しただけで大成功って万歳三唱のところだが………まァ、良い。厚意を踏みにじる趣味はねェし、オマエ達なりのおもてなしとやらを受け取らせてもらうぜ」

 

豊姫「ありがとうございます。では、まずお風呂ですね。最初はやはり一番疲労してるであろう一方通行様からどうぞ。汗や砂埃などでお体が汚れになったでしょう。この部屋を出れば扉の隣に"レイセン"がおります。彼女がお風呂場まで案内してくれるはずです。そしてお風呂に入ってる間にお洋服をお直しをこちらでしておきますね」

 

一方通行「なにからなにまで気が細かく利くことだなァ______ッ!?」

 

膝の上に座り寝るクラウンピースを両手で起こさないように持ち上げ立ち上がろうとしたのだろう。しかし、一方通行は一ミリも動かなかったのだ。

 

依姫「どうかなされましたか?」

 

たまらず依姫が訪ねる。

すると、、、

 

一方通行「………俺は後でイイから先にオマエらが入ってこい。オマエ達が風呂を堪能してる間俺は少しここで仮眠を取らせてもらう。だからこの部屋を俺1人に貸して欲しいンだが、良いか?」

 

豊姫「構いませんよ」

 

そして。

女性陣全員がこの部屋を出た。

クラウンピースはサグメが、

橙は藍が、優しく運んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、だ。

 

女性陣は大きな浴槽に浸かっていた。

 

今回の異変により、所々崩れてしまっている場所が多々あるがいつ崩壊するか気が気でならないぐらい心配してしまう程ではなかった。

ほんのちょっぴりではあるが、もう既にこの大浴場には修復作業が施されていた。

とても広い大浴場。

数人程度で使用するのは勿体無いと月の民達は考えない。

そう、誰もが使用できる所ではないのだ。

選ばれた高貴なお方のみが使用できる大浴場なのだ。

藍や橙、クラウンピースは綿月姉妹に承諾されたから、この存分に癒される湯に浸かれている。

 

藍「はあー………生き返るー……」

 

橙「らんしゃまー、だらしないお顔してますよぉ」

 

クラウンピース「どっちもだらしない顔してるっての」

 

とても疲れた体が癒しを求めていたらしく、湯に肩まで浸かり体がぽかぽか温まる。

やはり、お風呂というものは素晴らしい。と考える式神の二人であった。

そんな式神二人を横目に地獄の妖精は鼻息を吐く。

 

豊姫「いつもお風呂は1人だけと、たまにはこうやって複数で入るのも悪くないと思えるな。特に今日はサグ姉と一緒だしね♪」

 

依姫「あっ!お姉様ずるい私も!!」

 

サグメ(体は大きくなってもまだ中は子供だなぁ……。可愛い子達ね)

 

左右で子供のように明るく楽しそうに笑う二人の姫様の様子を見て、サグメは口元を手で覆い表情一つも変化は見られないが、それでも彼女は確かな幸せを感じていた。

 

依姫「そうだ、霊夢や魔理沙は元気にしてる?」

 

そんな質問を依姫は投げかける。

 

藍「霊夢も魔理沙も元気ですよ」

 

豊姫「では、貴女の主様は?」

 

次に質問したのは豊姫だった。

その質問に対して藍は一度、硬直した様子を見せるが次の瞬間に笑みを見せて、

 

藍「いつも通り。とだけお伝えすれば豊姫さんならばそれだけで察していただけますか?」

 

豊姫「ふふっ。今この瞬間、扇子で口元を隠しながら不敵な笑みを浮かべてあの頭の中で複雑な思考をするのに夢中になってるのでしょうね、いつも通りの八雲紫なら。そう、でも良かった。その様子だと他の人達も大きな変化は無さそうね」

 

藍「よろしければ幻想郷に来られますか?皆様にも幻想郷で会いたい人が居るのでしょう?月の復興が進んだら、の話ですが」

 

豊姫「それは良い提案ね。久しぶりに顔を見たい人も居るし、幻想郷の美味しい食べ物も食べてみたいわ」

 

依姫「地上へ行くのでしたら私も御一緒させていただきますよ、私も幻想郷の美味しい食べ物も食べてみたいですからね。しかし、食べた後はしっかり運動してくださいね姉様。最近お腹出てきてますよ」

 

豊姫「依姫ッ!?」

 

サグメ「……………………………」

 

豊姫「サ、サグ姉……?」

 

じとーっ、とサグメが何も言わず豊姫のお腹を見ていたが、次はなんと目を逸らしたのだった。

 

豊姫「サグ姉なんで目を逸らすの!?なんか言ってよ!!なにも言わないってのが一番傷つくよー!!」

 

依姫「姉様。例え姉様がふくよかな体型になっても私は見捨てたりしませんよ」

 

豊姫「なんでそんなこと言うのよ依姫!!しかも優しい目で!!私って太ってるの?」

 

藍「普段どんなものを食してるのですか?」

 

豊姫「あ、甘いもの、とか……」

 

藍「ああ、それで……」

 

依姫「影でむしゃむしゃ食べ続けているの。いくら果物と言えどある一定以上食べたら肥えていく一方。しかも姉様は運動を全然しないからぷよぷよボディの完成よ」

 

藍「ブヨブヨにならないだけ、マシなのでは?」

 

依姫「家族として、そして妹として姉が果物を貪るように食べてる姿を見てると心配になるのよ」

 

藍「あー、それはなんとなく分かります。紫様も橙も栄養バランスを考えずに食べたいものだけ食べていて、栄養バランスを考えて料理を作ってる側としては心配になっていて____」

 

どこにでもあるなんの変哲もない日常会話のお陰ですっかり、依姫と藍は同じような苦労を持つ同士として仲良くなっていた。

その会話での犠牲者となった豊姫は、

 

豊姫「ねぇ!ねぇ!サグ姉はどうなの?サグ姉も私のことを悪い子だって言うの?」

 

サグメ「……………………」

 

彼女はなにも言わなかった。

だが、なにもしなかった訳ではない。

サグメは優しく微笑み、豊姫の頭を撫でる。

 

豊姫「サグ姉………」

 

そして、そして。一方では、

 

橙(それにしても、どこを見てもスイカだらけだな………)

 

まだ、体が小さく幼い容姿の橙は嫌でも視界に入ってしまう“ある大きなもの”を見て、心の中で呟いた。

あと何年、何十年の時を過ごせば彼女達のような大人の女性になれるのかと思う。

たまにではあるが、自分が主様のように成長した姿を想像したりする。

だが、やはりそれはどこまでいっても想像は想像。

妄想にすぎない。

 

そうやって吐き捨てたりするが、心のどこかで本気で思ったりしている。

そして叶えてみせる。

自分が大人の女性になり、藍様と紫様のように成長して、心配をかけないで、次は自分はあのお二方を助ける側となってみせる。

 

橙(………………同じぐらい、だな)

 

隣に座るクラウンピースの胸部を見る。

肩まで湯に使っていて全体を完全に視界にとらえた訳ではないが、『負けてはいない』と確信していた。

だが、橙があまりにもじろじろ見るものだから、彼女がなにを考えているか読み取ったクラウンピースは、

 

クラウンピース「あのね、こう見えてもそこそこあたいもあるほうなんだよ」

 

橙「えっ?」

 

そして。クラウンピースは橙を腕を掴むと彼女の手を自分の胸に当てる。

 

クラウンピース「ほらね?」

 

橙「………………………………」

 

言葉が出なかった。ただ、手のひらから伝わる柔らかい感触から敗北感に………。

 

 

 

 

それからもそれぞれあの血で血を洗うような地獄から解き放たれ豊かで暖かい空間の中で命が奪われる恐怖も無く、穏やかな時を過ごす。

平和はやっぱり素晴らしい。

一生笑って仲良く争いも無い日常が永遠に続いてほしい。

 

時にはぶつかることも必要なのかもしれない。

意思と意思が擦れ違うこともあってもいいのかもしれない。

 

しかし、どんな理由があったとしても命をかけた殺し合いは間違っている。

 

これは“絶対”である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャリ………。

扉の開く音がした。

 

 

藍「一方通行さん……?」

 

ゆっくりと扉を開くとその室内に顔を覗かせる。

彼女は頭部には狐ような耳があり、そして後ろを見てみれば九つの金色の尻尾があった。

藍。八雲の名を名乗ることが許されている式神である。

 

女性の皆がお風呂上がったので、その報告にしに来たのだ。

 

黙って俯いた状態で椅子に座る一方通行に首を傾げる。

確かめるため、 藍は部屋の中へと進む。

そして彼の前でしゃがんで下から一方通行の顔を覗く。

すると、瞳を閉じて寝息を立てて熟睡していた。

 

藍(警戒心の高い一方通行さんがここまで寝ていらっしゃるなんて、相当お疲れになったんだろうな………)

 

ふふっ。と優しく笑う。

誰も彼のこの寝ている姿だけを見たら、絶対に想像もしないだろう。この白髪の若い子が世界を滅ぼしてしまうような力をその華奢な身に宿しているなんて……。

 

藍「こうして見ると、ただの子供なんだけどなぁ」

 

『これは多分、いけないことなんだろう』と思いながらも、藍は行動に移してしまう。

仮眠とは言えど、ちょっとやそっとのことでは起きないのなら、と藍は一方通行の頬へ手を伸ばした。

 

ドキドキドキドキ。

胸が高鳴る。もしも起きてしまったらどうしようと心配しながらも止まらない。

優しい手つきで一方通行の頬を触れていたが、次は彼の真っ白な髪に触れてみる。

 

まだ、寝ている。

 

起きている時は全然触れないのに、今だけは触れ放題なのか?

 

藍(起きない……、起きないなら………)

 

これ以上はさすがにヤバイ。理性が確かにそう告げている。

しかし、自分の本当の気持ちに嘘は吐けない。

私はこの人に恋心を抱いてしまっている。

可能な限り近付きたい。触れ合ってみたい。ずっと一緒に居たい。

 

“彼の特別な存在になりたい”。

 

幻想郷に戻れば数えきれないほどのライバルが居る。

二人っきり、そして一方通行の意識がない。このようなするには絶好な瞬間は、もう2度と無いかもしれない。

 

ここで出さずにどこで出すのだ、勇気を!!

 

 

そして。

胸の前で両手を握りながら、藍は自分の顔を彼の顔へ近付ける。

先程より、心臓の鼓動が加速する。

 

顔が真っ赤にながらも、、、

 

体が震えながらも、、、

 

藍は一方通行の顔へ自分を顔を近付ける。

 

しかし、あともう少しの所で____

 

 

___ガッチャンッッ!!!

まるで、嵐のような勢いで藍と一方通行が居る部屋の扉が開かれた。

 

橙「藍様ーッ!!」

 

藍「うきょわぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

橙「?……藍様、そんなに叫んでどうかなされましたか?」

 

藍「な、なんでもないよ!!!」

 

扉を開く音で驚いてしまい藍は悲鳴を上げて立ち上がり一方通行から離れる。

そして、何もなかったような素振(そぶ)りをするのだった。

 

橙「顔が真っ赤ですよ?それにちょっと泣いてます?」

 

藍「なんでもないったらなんでもないの!!」

 

橙「???」

 

怒ってる?それとも泣いている?

こんな藍を見たことない橙は、落ち着きがない主を見て不思議に思ったいた。

 

橙ちゃん、両方なんだ……

藍は怒ってるし、泣いているんだ…………。

だが君は悪くない。

 

 

一方通行「…………チッ。人が気持ち良く寝てるってのにギャーギャー喚きやがって、ケモミミどもが」

 

藍「あっ…………」

 

橙「あれ?ここってもしかして一方通行様がお借りしていたお部屋だったんですか?」

 

一方通行「だからここに俺が居るンだろォが、クソったれ」

 

そう吐き捨てると、眠そうに欠伸をしていた。

 

一方通行「でェ?オマエらはなにをしにここに来た?人様の睡眠を邪魔しに来ましたァ、とかほざきやがったら太陽系の彼方まで殴り飛ばしてやるぞ」

 

グググッ!!

と、藍と橙を睨み顔の横で力強く拳を握る。

 

藍「いえ、別に一方通行さんがお休みしているところを邪魔しになんてことをするために来たんではないんです。もう皆お風呂を済ましたので、そのご報告を一方通行さんのもとへ来たんです。大きな声を出したことはここにお詫び申し上げます、橙が音を立ててドアを開けるものだからビックリしてしまいました」

 

橙「そうだったんですか。………すみません、全て私のせいです。どうか藍様を怒らないで下さい。お叱りなら、どうか私1人だけに」

 

一方通行「二人して頭を下げるなバカどもが。別にオマエらを本気で殴ろォなンて思っちゃいねェし、そこまで怒ってねェよ。全て偶然で起きちまったことだ。それがさっきの話で分かった。悪意は全くねェンだろ?だったら頭を上げろ藍、橙」

 

式神の二人は『はい』とだけ返事して、頭を上げるのだった。

 

一方通行は片手を首に当てて首を動かし間接を鳴らす。

そして次は椅子から腰を上げる。

 

一方通行「風呂、だっけか。俺は風呂の場所を知らねェ、一度行ったオマエらならどこか知ってンだろ?案内してくれるか?」

 

藍「はい!喜んで!」

 

三人は部屋を出る。

だがやはり、さっきまでアレイスターの手により月の民が暴走していたので、廊下も所々ヒビや穴があった。

 

藍「……そう言えば、何故橙はあそこに来たんだ?」

 

橙「何故って、藍様をお探ししていたんですよ」

 

藍「私を?どうして?」

 

橙「藍様に今の私の姿を褒めて欲しくて」

 

藍「そういうことか。相変わらず橙は見た目も行動も可愛いな」

 

橙「ありがとうございます藍様♪」

 

藍は自分の隣を歩く橙の頭を撫でる。

その様子を一方通行はポケットに両手を突っ込みながら横目で見ていた。

 

藍、そして橙。

彼女達の服装はこの月に来た時の服装から変わっていた。

暴走した月の民達の鎮静化。その時の戦闘により、服が傷んでしまったのだ。

それを綿月姉妹の厚意で直してもらっているため、一時的ではあるが藍と橙は月の民の服を借りているのだ。

だが、それは民族衣装なんて言えるものではない。

どこからどう見ても、女子高校生の制服のようだあった。しかも下はミニスカート。

 

一方通行「……似合ってるぞ橙」

 

橙「やった!一方通行様にもお褒めの言葉を頂いちゃった♪」

 

藍「ああ、本当に似合ってるし可愛いよ橙。食べてしまいたいぐらいだ」

 

橙「ええっ!?」

 

藍「あははっ冗談だ、本気にするな…………半分はな」

 

さらっと最後何かとんでもないことが聞こえたが気のせいにしとこう。

多分、そこら辺に空いている穴から漏れた風の音で聞き間違ってしまったのかもしれない。

 

一方通行「似合ってるってのは藍、オマエもだぞ。オマエが着ていたいつもの格好もイイが、そォいうのも藍なら文句も言えねェぐらい着こなせてるぜ」

 

藍「あ、ありがとうございます。実はこういうのは着慣れていなくて、私が着たら変になってしまってしまうのではないかと不安になっていたんですが、一方通行さんがそう仰ってくださるのなら自信が出てきました」

 

そして。

それからも三人は廊下を歩きながら話をしていたら到着した。

 

 

一方通行「____っと、話をしていたら風呂場に着いたか。ここまで案内ご苦労だったなァ。オマエらはここからは自由時間だ、自由に過ごしてろ」

 

そう言うと1人で一方通行で中へ進む。

すると、まず目に入ったのは脱衣所であった。

そこには今着ている服を入れるカゴが置いてあり、その隣には持つ一つカゴがあり、その中には服を直してもらっている間に着る服が置いてあった。

 

一方通行は着ている服を全て脱ぐと入浴場へ向かった。

そして、まず最初に頭や体を洗う。

それらが終わると、湯へ浸かる。

 

一方通行「……すゥー…………はァー……ッ」

 

息を吸い、そして吐く。

湯に浸かっていると疲れが取れていくのを感じる。

 

一方通行「にしても広すぎるだろ、1人用の風呂とかねェのかよ。つか、俺は風呂ってよりかはシャワーの方が好みなンだけどなァ。まァこの世界ではそれは不可能か」

 

あまりにも広い浴槽にポツンと1人というのは一方通行でも少し思うような所はある。

だが、それは別に寂しいとかそういう感情はない。

別にここまで風呂は大きくしなくたも良いのではないか?とかその程度のことだ。

 

 

一方通行は浴槽の端にいた。

そこで縁に両肘を置いて、瞳を閉じていた。

この状態が一番リラックスできる。

 

____バシャバシャ

 

____ジャバジャバ

 

そんな音がする。

聞いた感じ、水の音だろう。

だがここは風呂場だ。溢れんばかりに湯があるのだ。

そのような音がしても不思議ではない。

 

 

 

「お隣、よろしいでしょうか?」

 

一方通行「こンだけ広いンだ。別にどこでもイイだろ“藍”………………あァ!?」

 

藍「えへへっ、来ちゃいました☆」

 

一方通行「………せめて何か布とか体に巻けよ、丸見えだぞ」

 

後ろから聞き覚えのある声がした。

そしてその声の持ち主の名を無意識に言ったあと、数秒脳が停止したが驚いた様子で一方通行は後ろへ振り向く。するとそこには藍がいたのだ。

 

……しかも、布一枚纏わぬ姿で。

 

藍「前に一度見られてるという事実があるのに、隠す必要がございますか?」

 

一方通行「オマエは女だろォが。男より隠すとこが多いし、裸を見られるのを嫌うモンだろ?」

 

藍「ふふっ、貴方の歳で女を語るにはまだ若すぎますよ?」

 

一方通行「そォかよ。そりゃあ失礼しましたァ」

 

藍「それで、お隣は良いのでしょうか?私も早く湯に入りたいんですが」

 

一方通行「お好きにどォぞ」

 

藍「それでは、お隣失礼しますね」

 

そして、そして。

一方通行の隣に藍は座る。

心なしか彼女には笑みがあり、それが一方通行は気になっていた。

だがそれを直接口にすることはやめた。

 

一方通行「…………さっきの話だが、俺は女を語るには若いと言ったな」

 

藍「ええ、言いましたが。もしかしてお気に障りましたか?」

 

一方通行「いいや、全然。その通りだと思ってなァ。女ってのはどいつもこいつも理解できねェ行動をしやがる、今のオマエのようにな。たまにオマエらがなにを考えているか分からなくなるぜ」

 

藍「一方通行さんはお若いです。ですからこれから色んなことを経験していけば、いつか分かる時が来ますよ。きっとです」

 

一方通行「そォか……」

 

その一言が出た時だった。

 

「藍様ーッ!!私も一緒に入りたいです!!」

 

一方通行「………オマエもかよ、橙」

 

橙「_____って藍様大胆過ぎませんか!?私のようにタオルを体に巻いて下さい!!一方通行様も腰にタオルを巻いて下さいよーッ!!見えてはいけないものが見えてしまいますう!!」

 

藍「タオルは湯につけてはいけない。そのマナーを知らない訳ではないだろ?」

 

橙「は、はい………ですが……」

 

顔を真っ赤にして顔を逸らしながら会話する橙。

 

「今回だけは特別に湯にタオルをつけても良い。そう私が決めればタオルをつけても文句は言われませんよ」

 

一方通行「チッ、次から次へと来やがって。まだ入りたりねェンだったら満足いくまで湯に入ってりゃ良かったじゃねェかよ。俺は別に急げなンて一言も言ってなかっただろォが、なァ綿月豊姫さンよォ」

 

豊姫「貴方と一緒にお風呂を入りたいからですよ」

 

ニコッと笑う一枚だけ体にタオルを巻いただけの姿で一方通行の前に来たのは豊姫だった。

 

一方通行「そォか。だったら茹でタコになるまで湯に浸かっていろ。もォ俺は1人2人増えても気にしねェよ」

 

豊姫「そうですか、では気の済むようにさせていただきます。ですがその前に一方通行様も腰にタオルを巻いていただけませんか?意識しないようにしていてもどうしても気になってしまいまして………」

 

一方通行「勝手に入って来やがったくせに注文するのかよ、お姫様ってのは全員我が儘だなァ、ったく」

 

そう良いながらも背中の方に置いてあったタオルを手に取る。そして器用に座りながらでも腰にタオルを巻く。

 

豊姫「ありがとうございます。では一緒に入りましょうか、橙ちゃん」

 

橙「あ、はい!」

 

何度も説明するがここは大きく広い浴槽。

だが一方通行、藍、橙、綿月豊姫。この四人は一箇所の場所に集まっていた。というよりかは途中から入ってきた三人の少女達が一方通行の所に集まった、というのが正解だろう。

 

一方通行「月に来るのは二度目だ。だが最初来たときはどンな場所か調べる前に帰っちまって正直どンなに頭を捻っても感想は一行も出てこなかった。だが、今なら言える。綿月豊姫、ここはイイところだなァ。また月に来ても良いか?」

 

豊姫「構いませんよ。英雄様ならいつ来ても歓迎いたします」

 

一方通行「そりゃあ嬉しいお言葉だァ」

 

と、言いながらも嬉しそうな顔は一つもしていなかった。

 

橙「私もまた来たいです!本来の月の都に戻った姿を見てみたいですからね!」

 

藍「悪いけど橙1人では行かせないぞ。無事に家に帰れなくなってしまわれたら困るし、迷子になったら探すのが大変だからな」

 

橙「では藍様と紫様と一緒行きます!」

 

藍「そうだな、次は三人で月の都に旅行しに来ようか」

 

豊姫「あらあら、それでは一刻も早く月の都の復興を進めなくてはねぇ」

 

それからも三人の少女はお喋りが途切れることはなかった。しかし、1人だけその会話に参加していないものがいる。

一方通行だ。

だが別に彼は人と話をするのが嫌いな訳ではないのだ。

 

藍「えっ?一方通行さん……?」

 

一方通行「悪りィな、肩を貸してくれ。眠くてよォ、真っ直ぐ座るのも辛くてなァ」

 

疲れきった体がぽかぽかに温まったら眠くなったのだ。だから口数が少なくなってしまっていたのだ。

 

一方通行「ウザくなったら退かしてくれて構わねェから」

 

藍「私の肩でしたらお好きに使って下さい。一方通行さん、今日は本当にお疲れ様でした。今は何も考えないてお休みください」

 

他人に体を預けて寝るなんて今まで一度もやったことない。

しかし。最強と呼ばれ、

怪物と呼ばれ、人間と呼ばれることがなかった学園都市で生活をしていたこんな気分を味わうことはなかっただろう。

 

一方通行(他人に体を預けるってのは、こンなにも落ち着くンだなァ)

 

 

 

そして。彼はまた眠ってしまった。

 

藍「……………………」

 

自分の肩に頭を乗せて眠る一方通行の寝顔を見て藍は頬をぽっと染めながら笑顔をであった。

 

『私は今、女としてとても幸せな時間を過ごしている』

 

藍と一方通行。その二人だけの空間になってしまったいて、

 

豊姫「ええと、藍ちゃんと一方通行様は結婚してるの?」

 

橙「ぜーんぜん違います。あと、それを本人に言わないでくださいね。特に藍様には。蒸発してしまいますし、爆発してしまいます」

 

豊姫「ああ、なんとなく分かってきたわ。もしかして藍ちゃんのような人って結構居るの?」

 

橙「幻想郷に戻れば掃いて捨てるほど」

 

豊姫「橙ちゃんは違うの?」

 

橙「違いますよ。まぁ、一方通行様は顔立ちが良く、素敵な方だと素直に思いますよ、身を挺してまで私を守ってくださいました。意地悪なところもありますし、キツイ言い方をしますが時より見せる優しい部分があるんです。私的にその優しい部分を見せてる時が一方通行様の本当のお姿だと思っておりますが、断じて違います」

 

豊姫「ふ~ん」

 

橙「あっ!違いますよ、違いますからね!?」

 

豊姫「分かってる、分かってるよぉ~」

 

そう言って、豊姫は面白いものを発見したように笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂の次は食事であった。

結構長風呂をしてしまい、のぼせてしまったが冷たい飲み物を飲み風に当たったりしてたら頭のボーッとした状態が解けた。

 

藍、橙、一方通行。

その三人は綿月姉妹と一緒に、とても和で宴会をするにはうってつけな部屋で食事する。

サグメはやることがあると、言って断った。

クラウンピースは1人で食事をしたいと言って、1人だけの部屋を借りそこでご飯を食べいるらしい。

 

一方通行「なかなか旨かったなァ、ここの飯も」

 

幻想郷のご飯も美味しかったが、月の料理もなかなか腹と舌を満足させてくれた。

地上と月。環境が全然違うせいか、月料理は変わった味がしていた。

しかし顔を歪めてしまうような味ではなく、箸が止まらなくなってしまう病み付きになってしまう味であった。

魚料理。肉料理。野菜料理。

暴走事件で都は荒れてしまい、いつも以上に貴重となってしまった食料を使って作ってくれた料理を振る舞ってくれた。

だから、だろうか。

橙がいっぱい食べ過ぎてしまい、寝たままで動けなくなってしまい、その近くには藍とが寄り添っていた。

綿月姉妹も橙が心配らしく藍と共に居る。

 

そして、一方通行はクラウンピースの用事があるので彼女が居る部屋へ廊下は歩き向かっている。

 

一方通行「こォいうモンを着るのは何年振りだろォな。学校なンて、片手で数えられるぐらいしか行ってねェし。そもそも制服なンて貰ってなかったからなァ」

 

一方通行も、月に来たときに着ていた服は汚れや破れなどしてしまい、綿月姉妹の使い人に直してもらうため預けている。

それで、彼も月人の副を借りていてそれを着ている。

 

藍や橙のと違い、学生服のような作りではあるが一方通行のは下はズボンである。

本来ならネクタイもあるはずなのだがそれはしていない。

理由はただするのが面倒だからだ。

 

一方通行「…………ここか」

 

教えてもらった部屋の前に到着した。

そして扉を開ける。

 

すると_____

 

一方通行「あァ?」

 

クラウンピース「あっ」

 

____下着姿のクラウンピースを目撃する。

彼女の手には、月の民に修復してしもらったいつもの服があった。

 

どうやら、着替えてる最中に扉を開けてしまったらしい。

また頭がボーッとしててノックをすンのを忘れちまったなァ。と、ここで一方通行が自分の行いに後悔する。

だが『後悔先に立たず』と言葉があるように、後悔したところで取り返しがつくということは無いのだ。

 

一方通行「…………………」

 

クラウンピース「………………」

 

静寂がそこにあった。

 

だが、

 

クラウンピース「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」

 

高い声がこの建物内に響き渡る。

クラウンピースは顔を真っ赤にしてしゃがんだ。

だが次の瞬間、近くあったものを乱暴に掴み取る。そしてそれを思いっきり一方通行へ投げた。

 

一方通行「オイ、物を投げるなあぶねェだろ。つゥかここ借りモンだって認識できてるかァ?」

 

クラウンピース「変態覗き魔め死ねぇぇぇぇぇ!!!!」

 

なにを言っても無駄だった。

クラウンピースは止まらず、物を投げ続ける。

だが、一方通行は彼女の耳障りな声に耳を塞ぎながら呆れた表情して突っ立っていた。

どんなに物を投げられても怪我はしない。

『反射』がある。『ベクトル操作』がある。

向かって来たものを適当な場所へ行くようベクトル操作をしていた。

しかしクラウンピースは、ついにはテーブルまでも投げしまう。

 

一方通行(チッ、仕方ねェか。まァ意図してなかったとはいえ女の下着姿を見ちまったしなァ)

 

そう心の中で呟くとため息を吐いた。

そして、投げられたテーブルが一方通行に直撃する。

衝撃は凄まじく、廊下の壁まで吹っ飛ばされた。

 

クラウンピース「えっ……?」

 

一方通行「あァ、クソ……痛ってェな。これで満足かァオイ?」

 

クラウンピース「わざと受けたの?」

 

一方通行「そうだよ、クソったれ。とりあえず扉を閉じて、服に着替えろ。そのあと少し話がある」

 

クラウンピースは言われるがままに、扉を閉じた。

そして中で彼女が着替えている間に一方通行はすっかり壊れてしまったテーブルを片付けいた。

 

クラウンピース「着替え終わったよ」

 

一方通行「そォか。なら中に入って話をしてェンだがイイか?」

 

クラウンピース「うん」

 

一方通行は部屋の中へ入る。

すっかり散らかってしまったが、椅子は無事だったのでそこに腰を下ろす。

 

一方通行「まずはすまなかったなァ、着替え途中なンて知らなくてよォ」

 

クラウンピース「レディが居る部屋に入る前はノックは必ずしてよね。次からはしないって約束をできるなら許してやる」

 

一方通行「あァ、もう二度としねェよ。俺ァ記憶力は良くてなァ、絶対約束を忘れねェ。誓ってやる」

 

クラウンピース「なら許す」

 

そして。それで、と続けて

 

クラウンピース「話ってなに?」

 

一方通行「こいつをオマエに渡す」

 

黒いスキマを開く。そしてその中から小さな物を取り出す。

“渡す”と口では言ったが手渡すとは言っていない。

一方通行はスキマから取り出したものをクラウンピースに向かって投げた。

 

クラウンピース「おおっと!?危ないな!投げるなら投げるって言えよ!」

 

一方通行「投げる」

 

クラウンピース「やった後に言ったって意味無いだろ!!こういうのはやる前に言うんだよ!!……で、これは?」

 

一方通行「スマホだ。オマエにもそれを渡しておく」

 

クラウンピース「なんで?これって貴重なものなんじゃない?それにこれは仲間のために作ったものなんでしょ?」

 

一方通行「オマエは地獄の妖精だよな。つまり、地獄を自由に出入りが可能だろ?地獄の様子を知りたくてなァ。その連絡手段として渡しとく。もし、他に仲間が居るならそいつらの分も渡すぞ」

 

クラウンピース「そういうことね。仲間、じゃなくご主人様が居てね。その方は地獄でとても偉い人なんだ。いや、人じゃなく神様か」

 

一方通行「地獄にも神様が居るのか。そいつにもいつか会ってみてェな。……ま、それはいつかでイイ。とりあえず他にも地獄の住人が居ると分かったし、三台ぐらい渡してやる。だが始めに言っておくが、それはオモチャじゃねェ。オマエのようななにか異能を持ち、そして強いヤツに渡してくれ」

 

向かい合うように互いに座っている二人。

一方通行は椅子から立ち上がりまた、スキマを開きスマホを三台取り出す。そしてそれをクラウンピースに渡した。

 

一方通行「それには誰の連絡先も入ってねェ。だから手始めに俺の連絡先を入れてやる」

 

そして。スマホの使い方を教える。

初めて触れる未知の機械。

それに戸惑いを見せながらもクラウンピースは彼の教えをちゃんと聞き、一時間もかからないでスマホの使い方をマスターする。

 

クラウンピース「へぇ~。写真に、メール、通話、だっけ?こんな小さなもので色んなことができるんだ。便利だねコレ」

 

一方通行「強度はあると言ってもそれは精密機械だ。乱暴に使えば簡単に壊れる。大切にしろよ」

 

クラウンピース「はいはい、分かってる分かってるって」

 

鼻歌交じりでスマホを弄るクラウンピースは離れて見たとしても上機嫌なのが分かるだろう。

 

クラウンピース「お前は地獄とも手を組むつもりなのか?アレイスターってヤツを殺すために」

 

一方通行「多くの協力を必要としてるのは事実だし、それを隠すつもりはねェ。だが無関係なヤツを巻き込むつもりはねェ。アレイスターの危害を受けてねェンなら、あのクソったれを知らずにいつもの日常を過ごしてもらいてェ。ただ、もし地獄のヤツらがアレイスターという存在を知りあのクソ野郎をぶっ殺す協力をしてくれるっていうなら俺は迷わず手を組ませてもらうつもりだ」

 

クラウンピース「あたいはアレイスターと言うヤツの顔も知らない。だが、そのクソ野郎のせいで散々な目に遭ったし、お前に協力するつもりだ」

 

一方通行「オマエは俺に協力してくれる。そう思ったからそれを渡した」

 

クラウンピース「ふん、あたいはバカは嫌いだし、変に賢すぎるやつも嫌いだ。だけどお前は嫌いじゃないよ。むしろ好きな方だ。お前と話していると退屈しない、なんでだろうな?他の人間はあたいを退屈させるのに」

 

一方通行「普通の人間とは俺はかけ離れてるからなァ。化け物同士気が合うってのは幻想郷に来て立証済みだ。俺もオマエもなンの力も持たねェ人間からしたら、強大な力を持つ化け物だ」

 

クラウンピース「じゃああたいは化け物でお前も化け物だから、あたいはお前と居て退屈しないの?」

 

一方通行「俺はそう思ってる。戯れ言と処理しても構わねェよ」

 

クラウンピース「……事実だよ。あたいは化け物さ。生者も死者も脅える地獄。地獄というその単語を聞いただけで顔面を歪める場所であたいという存在は誕生した。地獄の妖精。そんなの化け物以外なんだと言うんだよ?そう思うからお前はあたいを化け物と言ったんだろ?」

 

生まれた場所。そして、経験により人格が構成される。

ならば地獄で生まれ、地獄を経験してきたあたいの中には化け物が構成されている。

最狂の妖精。

そう呼ばれたりしている。

 

クラウンピースはそんな自分をたまにだが嫌いになる時がある。

ご主人様はあたいを好きだと言ってもくれた。

両手で抱えきれないほど、大きな愛であたいの身も心も包んでくれる。

 

だけど、思う。

道を歩いているだけで石を投げられ。

存在しているだけで忌み嫌われる人生。

 

この世に生まれたからには楽しく人生を歩んでいきたい。

愉しく可笑しく、生きていたい。

そうしたい。

 

けど、あたいはこれからも多くの人に嫌われる。

地獄の妖精だから。地獄で生まれた化け物だから。

 

『好きで、望んであたいは化け物になった訳じゃないのに……………』

 

そんな事を言ってもヤツらには響かない。

 

所詮、化け物の言ったことだから。

 

クラウンピース「あたいは化け物の自分を受け入れている。だけど涙を流し苦しんで受け入れた訳じゃない。笑って受け入れたのさ。化け物と罵られようとあたいにのすぐ近くにはご主人様が居る、一緒に可笑しく遊ぶ仲間が居るからね。毎日を楽しく生きていられるよ」

 

一方通行「そォだ、化け物であろうとオマエには仲間が居る、助けてと手を伸ばせばその手を掴ンでくれる仲間がなァ。孤高とか孤独なンてものは今時流行らねェよ。どンな人格であろうと、どンなに人間に脅えられようと、どンなに嫌われようとオマエにはオマエを好きでいてくれる仲間の居る。それを忘れるな」

 

クラウンピース「言われなくても」

 

一方通行「スマホに入れる連絡先、それはオマエが大切にしているやつだけを入れろ。俺のようにな」

 

クラウンピース「へぇ~。オマエみたいなヤツでも大切な人が居るンだ」

 

一方通行「あァ、そりゃあ沢山な。幻想郷はどンな手段を取っても守る。だがそれはあいつらが居るから守ンだ。入れ物なンて俺にとっては何の価値もねェ。大事なの中身だ。世界の行く末なンてどうでも良い。俺はあいつらが命を奪われる恐怖を一生覚えずに笑って過ごせる日常をあのクソ野郎から取り戻す。そのために力を使う」

 

クラウンピース「自分の為であり、そして人の為である。化け物のヒーロー、ね。キャハハッ!!なるほど、それは退屈しないわけだ。世の中広しといえど、どこを探してもお前のようなヤツは見付からないだろう。珍しい人間、今までに会ったこともないタイプの人間だ。そりゃあ刺激的なはずだ、愉快なはずだよ」

 

この白い化け物がどういうやつが理解できた。

人間であり、人間でない。

善でないのにヒーロー。

聞いたことも、想像したこともない人間だ。

 

どうしてこいつを気になってしまうか分かった。

本来なら一方通行のようなタイプは嫌いなのだ。

だが新しい好きで珍しい好きな自分だから、一方通行と話をしているた楽しいと思えるのだ。

 

一方通行「俺の大切なヤツの連絡先は必ずも持っている。だからよォ、愉快に笑ってるところ悪いがオマエの電話番号を俺に教えてくれねェか?」

 

クラウンピース「………………はぁ?」

 

一方通行「言ったよなァ、オマエは俺の大切な生徒だ。俺はオマエの教師としてオマエを守ってやる。どンな野郎であろうとオマエに危害を加えようとしたヤツは飛ンで駆け付けて片っ端から粉々にしてやるよ」

 

クラウンピース「平気だよ。あたいは強い。誰かに守って貰わなくても自分の身ぐらい自分で守れる」

 

一方通行「頭の悪いヤツだな。オマエがどれだけ強くても関係ねェンだよ。言ったよな“大切”だって」

 

椅子から腰を上げる。

すると一方通行はクラウンピースの前で片膝を立ててしゃがむ。

 

一方通行「そのスマホを渡したのにはまだ理由がある。それは遠くからでも助けを求められるため、もしも、自分1人ではどうしようもなくなっちまった時に助けを求められるためだ。そして俺がオマエの安否を離れていても確認できる為にスマホを渡した」

 

クラウンピース「…………もしも、あたいが助けてと連絡したらお前は来てくれるのか?」

 

一方通行「当然だろ。真っ先に優先してどこに居ても駆け付けやるよ」

 

その時。

クラウンピースの胸の内が、体が、顔が、熱くなった。

彼の赤い瞳が物語っていた。『嘘偽りは無い』と。

 

化け物に生まれて後悔はない。

こんな自分でも好きになってくれる人が居るから。

 

クラウンピース「ねぇ。そ、それ以外でも?」

 

一方通行「あァ?」

 

クラウンピース「ただ会話がしたいから、とか。会いたいからとかの理由じゃ連絡しちゃ……ダメ?」

 

一方通行「その時によるな。俺が暇だったら相手してやるよ」

 

クラウンピース「絶対だよ。約束してよ」

 

一方通行「約束してやる」

 

クラウンピースは頬を染め、笑ってみせた。

 

そして。

地獄妖精の電話番号を一方通行は手に入れた。

手のかかるクソガキの、

そして、大切な自分の生徒の。

 

クラウンピース「お前はホント変わってるよ。あたいが会ってきたやつらの中で一番だぜ」

 

一方通行「変わってるのはお互い様だ」

 

クラウンピース「初めてだよ。あたいを化け物と知り、化け物だと言いながらも人間扱いされたのは」

 

一方通行「人間扱いじゃねェよ。ガキ扱いだ」

 

クラウンピース「一方通行の登録名『カス』にしてやる」

 

一方通行「そういうところでムキになるからガキなンだよ」

 

クラウンピース「ほんっっっっっとムカつくなお前はよォッ!!」

 

立ってスマホをズボンのポケットにしまう一方通行。

クラウンピースは見上げて口を開く。

すると、一方通行は地獄の妖精の頭の上に手を乗せる。

 

一方通行「助けを求めれば駆け付けてやる。構って欲しけりゃ構ってやる。だからその為にも決してスマホを無くすなよ?」

 

クラウンピース「うるさい!!あたいは大人だ!!そう簡単に物を無くしたりするか!!っつか手を退けろ!!」

 

クラウンピースの頭から手を離すと小バカにするように笑うと一方通行は歩き始めた。

そして扉の前まで行くと、その扉に手をかけた。

だが彼は振り返る。

 

一方通行「オマエの服も修復が終わってるなら俺達のも直ってるだろォし、それを受け取って着替えたら幻想郷に帰るぞ。帰る準備とかあるなら早めにしておけよ」

 

クラウンピース「分かったから、さっさと服を貰って来いよ。そしてその一ミリも似合わない服から着替えな」

 

一方通行「やっぱり俺達気が合うなァ。俺も自分で似合ってねェて思ってたンだァ」

 

そして。

扉を開くと廊下に出る。

しかし、扉を閉じる時、

 

一方通行「向かいに来る。それまで大人しく待ってろよ、“クラウンピース”」

 

クラウンピース「____ッ!?」

 

 

廊下から歩く音が聞こえる。

服を貰いに行ったのだろう。

 

静寂がまた、戻ってきた。

たった一人の空間。

 

そこで地獄の妖精はあの白い彼が最後、自分の名を呼んでくれた事を思い出していた。

 

 

クラウンピース「クソ、初めてだ。なんだよこの気持ちは…………」

 

 

生まれて初めて抱くこの気持ち。

 

これはいったいなんなのだろうか?

 

 

それからも考えるが答えは見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下に出てから、だった。

 

一方通行「ここはオマエの家だ。だから好きにすればイイ。だが盗み聞きはあまり良い趣味だと言えねェぞ」

 

「一方通行様にお伺いしたいことがあったのでノックでもして入ろうとしたのですが、とても仲良くしていらっしゃったので外で終わるまで待っていたんです」

 

ふふっ。と、扇子で口元を隠して笑う姿はどこかの大妖怪と重なる。

彼女は綿月豊姫。

 

一方通行がこの月に来てから最も警戒している人物だ。

 

豊姫「でも、そんな急いで出て来なくても良かったんですよ?」

 

一方通行「そうもいかねェだろ。ガキの前で殺し合いなンてできるかよ」

 

豊姫「………二人っきりなれる場所があります。ついて来て下さい。あっ、でも二人っきりになった瞬間襲うのはNGですよ☆」

 

一方通行「時と場合による」

 

豊姫「うふふっ、正直なお方。私は正直な方大好きですよ」

 

一方通行「俺はオマエのようなヤツは嫌いだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______ガチャン。

重い扉が閉じる音がした。

 

豊姫「いつもなら月に都全体を見渡せる素晴らしい景色が見えるのですが、ご覧の有り様ですよ」

 

そこは豊姫の自室であった。

彼女の部屋には解放感のあるバルコニーがあった。

そこから見える景色は酷いものだった。

崩壊した建物。荒れた地面。

それらを一生懸命直している月人達。

 

一方通行「こっちは本当の顔を見せている。だからそっちも見せてくれよ“本当の顔を”よォ。じゃねェと幻想郷に帰りたくても帰れねェンだよ、性悪女」

 

豊姫「うふふっ………、くふふふっ…………」

 

口の前に拳を作って口を抑える。

プルプルと体を震わせていた。

笑いを堪えている様子だった。

 

だが。しかし。

いつまでも堪えるということは不可能だ。

必ず、終わりが来る。

 

豊姫「アハハハハ!!あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」

 

ここまで人は変われるものなのだろうか。

百八十度、顔も雰囲気を変わってしまった。

あの穏やかで優しい皆の綿月豊姫は完全に姿を消す。

 

豊姫「初めてお会いした時からでしたよね。一目で貴方は真の私を見抜いてみせた。心から嬉しかったですよ、本当の私を理解して下さったと知った時は」

 

彼女笑みには、確かな狂気があった。

誰かの能力でそうなったのではない。

薬物のせいでそうなったのではない。

 

これが。

現在、一方通行の前に居るのが“本当の綿月豊姫”なのだ。

 

一方通行「用件はなンだ?オマエは今まで隠し続けていたそのバカ笑いを俺の前に晒してなにがしたい?」

 

豊姫「お話をしましょう。私は貴方を知りたい。私は貴方を知りたくて知りたくて、解析したくて解析したくてたまらないのです」

 

一方通行「……………飲み物はあるか?なにもなしでお喋りってのはお断りだぜ」

 

豊姫「そういうと思いまして、あらかじめ紅茶をご用意していました。甘い果物と一緒に」

 

真っ白なのトレーの上に二つのティーカップにティーポット。そして切られた桃が乗ったお皿。

その食器達はどれもこれも美術品として飾られてもなんの不思議な思わないものだった。

 

そして。

向かい合えるように設置された椅子が2つ。その間にはテーブルがあり、そこに真っ白なトレーを置いた。

 

豊姫「さあ、どうぞ腰をお掛けください。一方通行様」

 

一方通行「チッ」

 

舌打ちをすると一方通行は豊姫が座す椅子に座る。

 

 

一方通行「………………でェ?話をするとしても、何を話すンだ?」

 

豊姫「一方通行様のことを根掘り葉掘りお聞きしたいのですが、それは『月の使者』としての仕事を終わらせてからにさせていただきましょう」

 

一方通行「………………」

 

豊姫はティーポットを取り、それぞれ二つのティーカップに甘い香りの紅茶を注ぐ。

一方通行は黙ってティーカップを取り紅茶を飲んだ。

 

豊姫「この月にも幻想郷同様結界が張られていました。しかし、ある時を境にその結界が破られてしまった。サグ姉が私達の前からお姿を消した時に」

 

一方通行「サグメが自分の能力を制御しきれず、幻想郷に来ちまった時があった。しかも厄介なことに能力のせいで幻想郷から出られなくなる始末だ。そこで俺はやつを月に戻すため強行手段を取った。そン時に俺は結界を破壊しちまったらしいな」

 

豊姫「もしも結界があり正しく機能していたら、暴走玉が月全体にばら蒔かれることはなかったでしょう」

 

一方通行「責任を取れ、ということか」

 

豊姫「幸いにもこれに気付いているのは私だけでしょう。一方通行様は神すらも超越したお力を持っておられます。ならば、新しい結界を張ることも可能なのではないのでしょうか?もしもこの事が他の者にバレでもすれば、また大きな争いの火種となってしまいます。私もそんな事が起きるのはなんとしてでも防ぎたいです」

 

一方通行「元々あった月の結界とは全くの別物、しかも俺好みに設定された結界でも構わないなら可能だ」

 

豊姫「それで構いません」

 

一方通行「そうか………」

 

一息吐くと、だった。

一方通行は徐に立ち、バルコニーに向かう。

 

白い手を天へ向ける。

そして、

彼の背中から真っ白な翼が出現する。

頭上には光の輪。

その姿は書物で見たことある天使そのものだった。

 

豊姫「なんて、綺麗……なんて神々しいのかしら……」

 

一方通行「結界を張った。これで満足か?」

 

思わず、ポロっと口にしてしまった豊姫。

だがその声は一方通行に耳には届いていなかった。

 

そして。

振り返った時にはもう彼から翼も輪も消えたいた。

しかし、これから何があろうと豊姫はあの一方通行の姿を忘れることないだろう。

瞳に、記憶にあの目も心も奪われてしまう一方通行の姿を焼き付けた。

 

豊姫「うふふっ」

 

一方通行「似合わないってのは自覚ある」

 

やることをやったら身を投げるように椅子に腰を下ろし、足を組む。

 

豊姫「まさか、その逆ですよ。すごくお似合いでした。一方通行様のあの姿を私は見たとき、まるで時が止まったような衝撃でした」

 

一方通行「そいつはどうも」

 

ティーカップを取り、また紅茶を飲む。

紅茶よりコーヒー派なのだが出されたのなら仕方ない。

 

そして。一切れの桃を手に取り口の中へと運ぶ。

とても柔らかく、老人の顎でも噛み砕けるほどだった。

甘い汁が口内で弾ける。

幻想郷にも、桃は存在している。

しかしこれは月という環境で育てられたもの。

肥料、土。そういったものが違うだけでいくら同じ果物でもここまで味が変わるものなのか。

 

甘いのは当然のこと、桃という果物は柔らかい食感と知ってはいるが、幻想郷の桃より月の桃を更に甘く更に柔らかかった。

 

豊姫「ッ~!!やはりこの桃は美味しい。これを食べてる時は辛いこと何にもかも忘れさせてくれる」

 

まるで頬っぺたが落ちてしまいそう。と、美味しいそうに豊姫は桃を食し、口の中からその甘い果物が無くなると次は紅茶を飲む。

 

豊姫「ふぅ……結界を張っていただきありがとうございます。これで私の月の使者としての仕事は終わりです。これからは____」

 

口角を限界まで引き上げて笑い、

 

豊姫「_____私一個人として、一方通行様とお話をさせてください」

 

彼女の頭の中ではいったい何がどうなってるのだろう。

常識外れの、規格外過ぎる力。

サグメが一時的に月から姿を消したことと、一方通行が舌禍の女神と面識があり一度だけ月に来たことがある。

前に一度だけ、自分の能力のせいで地上に転送され閉じ込められた事があったが“白い人”が助けてくれたとサグメから聞かされた事があった。

 

それらだけで、あの事件の全貌を把握した。

この白い怪物が結界を破壊した張本人だと気付けた。

頭の回転の速さはあの八雲紫に匹敵するだろう。

 

豊姫「一方通行様、貴方は人を何人殺しましたか?」

 

一方通行「…………この屋敷に居る人間の指を全部使っても数えれねェほど」

 

豊姫「やはり……、殺人鬼特有の目付きをしてらっしゃるから確実に人を殺していると思っていました」

 

一方通行「殺人鬼で、化け物。だからオマエはずっと俺を警戒していた。英雄だのなンだの口では言ってはいるが完全に信じちゃいねェ。そンなの百も承知だった。オマエは俺がどこに居ても監視しようとしていた、違うか?」

 

豊姫「素晴らしい思考速度をお持ちですね。その通りです。助けて下さった人、と存じていたとしても危険な人物だと疑いの目を向けていました。人同士で築かれた世界というものの仕組みは思ってる以上に複雑です。そうと分かっているから我々人は信じるという難しい行動より、疑うという楽な行動を取ってしまう………愚かな生き物ですね人というものは」

 

一方通行「信頼ってので結ばれる前には必ず疑いが入るモンだ。もしも疑うを省いて信頼で結ばれたら、それは軟弱なモンで結ばれた信頼だ。俺はオマエ達に背中を預けられる信頼を築きたかったから、疑いをかけられていても良かったと考えいた」

 

豊姫「一方通行様はまだ十代でいらっしゃいますよね?なのにそこまで考えられるなんて、千年という長い年以上生きてきた私の立場がございませんね」

 

一方通行「謙遜するな。この俺を越えれるほどオマエは賢い、この俺がそれを認めやる」

 

豊姫「ふふっ、ありがとうございます。あなたのような優秀な方にそんな言葉をいただけるなんて光栄です」

 

一方通行「嘘吐け。オマエは俺も含む全ての人間を見下している。本性を裏に隠し一切悟られずに相手を把握し呑み込む、自分が圧倒的有利になるため。オマエは軍隊の指揮を任されているらしいな。綿月依姫は力、綿月豊姫は頭脳として大きな軍隊を動かしている。ってのが俺の見解だ」

 

豊姫「恥ずかしいものなのですね。心の内を声にして言われると……。そう私は多くの命を預けられ指揮を任されております。だから敵味方含めても誰よりも賢くなる必要があった。生憎依姫と違い昔から戦闘は苦手で、私は幼い頃からあらゆる知識を頭の中に叩き込まれました。軍を率いる(かなめ)と育てるため」

 

一方通行「最初からオマエらは多くの人の上の立つ者として生まれてきたのか」

 

豊姫「はい……。多くを救うため、小を捨てる。月人の敵となるものは微塵も残さず殲滅する。誰もを出し抜くため、本心を決して悟られてはならない。辛かった。それは千年以上続き拷問に等しかった。上に立つ者として、上の立つ者の振る舞いをしなければならない。だけど、今は違います。今この瞬間本当の自分になれた。私の本心を見破ってくれた人が初めて現れた。その時、これまで我慢していたものから解放されました。そう貴方と出会うことで……ッ!!」

 

ギュッと胸の前で手を握る。

そして、ズイッと一方通行の方に上体を傾ける。

 

豊姫「私を唯一理解して下さった人よ。私は貴方の全てを知りたい!!こんな気持ち初めてなんです、他人にここまで興味を持ったのはッ!!」

 

一方通行「オマエが望むなら俺を可能なだけ教えてやる。その代わりオマエも可能なだけ俺にオマエを教えろ。これは等価交換だ」

 

豊姫「えぇ、はい、そうですね。そうしましょう。それがいいです」

 

両手を頬に当てているが、彼女の笑顔が見える。

それは純粋だった。しかし歪んでいた。

真っ黒な何かに染め上げられたような笑顔だった。

だが、それが“本当の綿月豊姫”なのだ。

 

そして。

それからも会話は続いた。

月と幻想郷のこれからのことも話したが、多くは二人の話題だらけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「思った以上に長話をしたな」

 

豊姫「そうですね。しかしとても有意義な一時でした」

 

満足そうな表情で一方通行に微笑みかける。

 

一方通行「そろそろ幻想郷に帰らせてもらう。俺の電話番号は既にオマエ達のスマホに入れてある。また話てェことがあったら連絡しろ、出来る限り答えてやる」

 

豊姫「まあ!では毎日掛けさせてもらいますね」

 

一方通行「スマホ取り上げてやろうかクソアマ」

 

どのくらいの時間話をしたのか確かではないが、長く座っていたのは事実だ。

その為、ずっと同じ体制でいたので立ち上がるとき少し困難ではあったがなんとかよろけず立ち上がる事に成功する。

 

一方通行「俺もオマエの電話番号を持っている。こちらかも連絡することがあるからその時はしっかり出ろよ」

 

豊姫「はい。この度のことは言葉で表せられないほどとても感謝しております。無事、ご帰宅できるよう私は願っております」

 

一方通行「なにも起きねェよ。ただ帰るだけだ」

 

豊姫「家に帰るまでが遠足ですよ?ご存じてはない?」

 

一方通行「…………そォだな。油断せず、警戒して帰るとする」

 

そして。

白い彼は豊姫の部屋から出た。

 

豊姫「………………」

 

バルコニーへと足を運ぶ。

そしてまた、月の都の様子を眺めていた。

しかし都の心配などこれっぽっちもしていなかった。

 

彼女の頭の中は一方通行ことでいっぱいだったのだ。

 

豊姫「嗚呼……、一方通行様、一方通行様、一方通行様。お美しい方、素晴らしい方、魅力的な方。私は貴方に心奪われてしまいました」

 

両腕を広げ天を仰ぐ。

 

豊姫「いつか、あなたを奪ってみせます。そして私だけのものとして誰にも見付からない所に幽閉して、二人が運命を共にするまで一生お話をしていたい。うふふっ、くふふはははっ!」

 

___コンコン。と、ノックされた。

 

そして、

 

「姉様。入りますよ」

 

豊姫「………良いわよ」

 

いつも腰に刀を差した豊姫の妹。

 

依姫「地上の者は帰るそうです」

 

豊姫「そう。報告ご苦労様」

 

振り返った時にはいつも綿月豊姫に戻っていた。

そう、皆の綿月豊姫に。

 

依姫「その、それで姉様。スマホを誰に配るか、なのですが。姉様のご意見もお聞かせ下さい」

 

豊姫「もう誰に配るか私の中で決まってるわ。これから名を上げるものに渡してちょうだい」

 

月は月で動き始める。

それは新しい風を起こすだろう。

そしてその風はどんな猛威も跳ね返す防壁となる。

 

新しい風を呼び込み進化する。

 

さあ、生まれ落ちてた時から背負った使命を果たそう。

 

役目を果たそう。

 

民を救え。敵を殲滅しろ。

平和が脅かされることもない生活を民に授けてみせろ。

 

民を導く者ならば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。一方では、

 

直して貰い、綺麗になったいつもの格好に戻っていた四人。

一方通行。藍。橙。クラウンピース。

 

彼ら彼女らは、都から離れた灰色の地面の上に立っていた。

 

一方通行「今回で大きな収穫を得れた。これは喜べる事だな。面倒なヤツで、話をしてるだけで虫酸が走るが八雲紫に続いて二人目だ、下手したら俺を越えている頭脳を持ったヤツに巡り会うことも出来た。アイツはイイ。今後も利用できるぜ」

 

藍(誰なんだろういったい……?)

 

地上に居る紫には連絡していた。

幻想郷に戻る、と。

 

すると幻想郷と月を繋げるためその場で待ってほしいときた。

今になって思うのだな、地上から遠く離れた月からでも連絡を可能とするその幻想郷産のスマホはそれまて存在していた携帯電話の常識を覆している。

 

にとりは言った。

このスマホは太陽系から出ても、全く異なる世界に行っても連絡を取ることが出来ると。

平気な顔して使っているが、これは後世に残すべき技術だと思う。

 

一方通行「あン?」

 

紫がスキマを開いてくれるまで待っていたら、ピカッと正面に球体の光が現れる。

が、それが消えると小さな機械が地面に落ちる。

 

『遥遥月まで来て私の計画を阻止するとはご苦労だったね。一方通行』

 

一方通行「……アレイスター=クロウリー」

 

録音機だった。

つまり、アレイスターは最初から一方通行がこの月に来ることはお見通しだったのだ。

もう既に結界が張られている。その結界は一方通行が認めなければ弾かれてしまう。

だが、これは結界を張った後に前に転送された。

 

聴いてるだけ拳に力が入る。

 

『だがこれも私の計画通りなんだ。これは強がりではない。今回は私は必ず勝利できると確信している。その理由を教えてやろう、今の私は機嫌がいいからね』

 

そして。それからも録音機はアレイスターの肉声を流す。

 

『____________________________________________________________________________________』

 

橙「嘘……だ。こんなの嘘に決まっている……。すべてデタラメ、そうですよね藍様!?」

 

藍「……………………」

 

クラウンピース「クソ野郎だ。こいつは邪悪から生まれた正真正銘のクソ野郎だ」

 

嘘か、本当かまだ確めることは出来ない。

だがもしも学園都市統括理事長の言ってることが本当ならば、、、、

 

橙「私達は誰もかけることなく、あの楽しく皆が過ごせる日常を取り戻そうとしていたのに……、それなのに、どうして、どうしてこうなるの!!うわぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!」

 

涙を流し、膝をついて橙は泣き崩れてしまった。

藍はなにも言葉が出てこなかった。

クラウンピースは今まで抱いたことのない嫌悪感に襲われる。

 

そして、一方通行は何一つ声も発することなく録音機に近付く。

 

一方通行「クソったれ………」

 

小さい声だった。

 

一方通行「クソったれが………」

 

だが、録音機を手で拾い上げる。

その手に持つ機械を握る力が増す。

 

ミシミシミシミシ………。

軋む音がするが、そんなのお構い無しだった。

 

一方通行「クソったれがァァァァァァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

全力だった。

能力までも使って握り締めた物を地面に投げ付ける。

月全体が振動する。

だが怪物は止まらない。

 

一方通行「アレイスター!!アレイスター!!アレイスタァァァァァァァァーッ!!!!」

 

藍「お静まり下さい一方通行さん!!これ以上は月がもちません!!」

 

粉々になっても一方通行は録音機の破片を何度も踏みつける。

彼の体が地面に吸い込まれていく。

大きな穴が底へ底へと深くなっていった。

 

一方通行「クソ……、クッッソォォォォォォォッ!!」

 

背中を藍に抱き締められた時、一方通行は止まった。

そして空間を揺らす咆哮を轟かせた。

 

受け入れられない敗北。

最初から“その違和感”に気付いていたら結果は変わっていたのかもと言っても過ぎたものはどうすることも出来ない。

 

一方通行「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」

 

こうなってしまえば無力なものだ。

本気で皆を守りきれると信じていた。

 

しかし、、、

 

 

気づかないうちに一方通行の手から守りたい大切な人が溢れ落ちてしまった。

 

守りきれなかった。

“この物語が始まった時から”あのクソ野郎の思惑通りになるしかなかったのだと痛感させられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷。そこは博麗神社。

その中に一方通行達は戻ってきた。

 

霊夢「すごっ、早く終わらせて来たわね。アンタ達も本気出しすぎじゃない?まっ、月人相手は本気でやらなきゃ命が危ないからまあ当然か。疲れたでしょ?アンタ達が月に行ってる間地上で何が起きたか話したいから疲れを取るついでにここで寛いで良いわよ」

 

魔理沙「そうだそうだ、聞いてくれよ一方通行。私は頑張り過ぎて肩に大きな穴が空いちまったぜ。永琳からは無茶し過ぎって何時間も説教されちまったよ、あははっ……散々な日だったぜ」

 

紫「…………どうしたの?浮かない顔をしてるけど?」

 

畳の上に置かれた和風な作りされたローテーブル。

そこに座るのは、霊夢、魔理沙、紫達。

 

一方通行「紫、クラウンピースを地獄に帰してやってくれ」

 

紫「え、えぇ。分かった……」

 

そして。紫はスキマを開いた。

 

一方通行「クラウンピース、オマエは地獄に居ろ。絶対そこから出てくるな」

 

クラウンピース「はいよ。一方通行、お前は出来ることをしろ。黙ってやられるがままなんてあたいは許さないぞ」

 

一方通行「…………」

 

地獄へと繋がるスキマを潜り、地獄の妖精は自分の世界に帰る。

 

紫「さっきのはどういう意味なの?一方通行」

 

一方通行「それを今から話す」

 

橙は藍の腕を掴み黙ったままだった。

藍は俯いたままだった。

 

 

霊夢と魔理沙は一方通行に不思議そうな顔をしていた。

 

そして。そして、だった。

白い彼は口を開く。

 

一方通行「………霊夢」

 

霊夢「なに?」

 

一方通行「俺は、オマエを_____」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「_____“殺す”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

一方通行から衝撃的な言葉が飛び出してきた
しかし冗談ではない
白い怪物は本気で霊夢に確かな殺意を向けていた


次回・第四章・第十一話『絶対禁忌』


博麗霊夢は初めて“死”を経験する。






私のサプライズプレゼントは喜んでくれたかな?喜んでくれたらなによりだ

逆さまの“ヤツ”は嘲笑う

結末を知った風に…………。


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11話


【絶対禁忌】(前編)


※絶対に誤字脱字などのミスが多々あります。
それをご了承のうえ読んでいただけると助かります。
しかし、そういったミスが多いのをご不快に思う方にはブラウザバックをオススメします。


 

 

 

 

「霊夢。俺はオマエを殺す」

 

 

 

 

魔理沙「……………はぁ?」

 

 

 

そこには戸惑いがあった。

地上。幻想郷。博麗神社の一室で一方通行の帰りを待っていた紫、霊夢、魔理沙の三人は白い彼の放った言葉に硬直していた。

しかし、黙ったままではいられなかった魔理沙が最初に口を開いた。

 

白黒の魔女はその後も続いて、

 

魔理沙「____あのなぁ……、冗談でもそういうことを口にするもんじゃないぜ。一方通行、お前はすぐに死ねだの殺すだの言うが、こんな状況下では特に笑えない冗談だぜ?」

 

一方通行「……………………」

 

紫「………一方通行。なぜその決断に至ったのか説明して。私達が理解出来るように、そして納得できるようにね」

 

魔理沙「おいおい紫。軽い冗談にそこまで反応するなよ?」

 

紫「バカは黙ってなさい。私は一方通行と話がしたいの」

 

八雲紫の表情は真剣そのものだった。本気だったのだ。

それは一方通行も同じである。

 

魔理沙もそれには気づいていた。

白と黒の魔女も頭の回転が鈍いわけじゃない。

紫と一方通行の話は笑顔なんて見せられないほどとても深刻なことなのだろう。

真面目な話を他者が言い出したら大人しく聞くことにする。不真面目なことは口に出さない。そんな弁えぐらい魔理沙はある。

借りたものを返さないとか、許可もなしに他人の家に侵入するなど数え切れないほどやってきた。

しかし、皆が思ってるほど魔理沙は非常識な人間ではない。

 

だがそれでも受け入れられなかった。

これから仲間内で“殺し”が行われるかもしれないということが。

 

一方通行「月でアレイスターの声が収録されたボイスレコーダーが新たに送られてきた。その収録内容をオマエらに伝える。そうすればオマエらも気付く、反吐が出るクソったれな現状を。俺達は最初からアイツの手のひらで踊らされていたことを、あのクソ野郎の計画通りになっちまったという事実をなァ_____」

 

 

そして一方通行はアレイスターから送られた録音機の内容を話すのだ。

 

 

本当に本当に、受け入れ難い残酷な現実を。

 

包み隠さず全て。

 

例えそれで誰かを傷付けてしまっても。

 

それでも、話すのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、目の前に転送されたボイスレコーダーからあの忌々しい学園都市統括理事長の声が流れ始める。

 

 

『___幻想郷であの暴走の騒動が起こる一年以上前から既に幻想郷に私は攻撃を仕掛けていた。お前達が生活している幻想郷は私には不快と思うほど邪魔な存在だったからね。だからまずは幻想郷を跡形もなく破壊する前に絶対私に歯向かってくるであろう幻想郷の住人を一人残らず駆除しようと考えた。でも言葉で言うのは簡単だ、しかし実際にそれをするというのは想像してる以上に困難を極める。大量の破壊兵器、そして武装した大量の兵隊、この二つを幻想郷に送り込むのにもこちらに相当なコストがかかってしまう。そこで私はコスト削減するため低コストで作製できる新兵器を開発した。それは一度、目標(ターゲット)をセットすればそこからは勝手に自動で目標(ターゲット)を殺害する兵器。対象に気付かれず暗殺に特化したものだ。それが君たちがよく知るもの。そう、あの『黒い球体』さ。私はそれに贈り物(イヴ)と名付けた』

 

やつが話しているのはあの“黒い玉”のことだ。

一方通行が『暴走玉』と呼称したが正式名称は『贈り物(イヴ)』というらしい。

しかし、なぜ贈り物(イヴ)と名付けたのか?

そう疑問に思ったときご機嫌な声色でやつは語り始める。

 

『____最初は記録に残すつもりはなかった兵器だっため、特別な名など付けるつもりはなかった。当初は隠密特化暗殺兵器とその(まま)の意味で呼んでいた。では、なぜ隠密特化暗殺兵器を贈り物(イヴ)と呼ぶようになったのか?それは開発した私でも予想だにしていなかった効果を発揮したからだ。それが幻想郷の諸君らも体験したもの、あらゆる力を強化するというものだ。これには私も頭を悩まされたよ。しかし本来の目的である“殺害”という機能も備わっていて、この兵器を埋め込められれば暴走して“忌々しい”幻想郷を幻想郷に住む奴等が勝手に破壊させてくれるオマケ付きときたものだ。幻想郷を滅ぼしたいと考えている私にとってはこれはこれで都合が良いため使用することにした。埋め込められれば即座に暴走するもの。埋め込められても即座に暴走はせずこちらがスイッチを一つ押せば暴走するもの。そして、その2種に加え『贈り物(イヴ)』を埋め込められた対象をこちらで遠隔操作できるもの。この3つのタイプの隠密特化暗殺兵器も製作した。私はとても慎重な性格でね、どんな予想外な事態が発生してもそれに対処できるよう配慮しておいたのさ。『備え有れば憂い無し』。ははっ、これは名言だな______』

 

それから愉快に笑う声が聞こえる。

ヤツのことだ。

きっとこちらがどういう顔をして聴いているのか頭の中で想像できているのだろう。

 

『______じわじわと死に近づきながら、力が強化されていく。そして強化された力を(もち)いて己の手で自分の世界を破壊する。我ながら恐ろしい兵器を開発したとしみじみ思うよ。隠密特化暗殺兵器・贈り物(イヴ)、これを私は幻想郷に住まう妖怪や神や人間など、例外なく“全てのやつら”の体内に埋め込んだ。重要なことだからもう一度言おうか、“全てのやつら”だ____』

 

“全てのやつら”。

この言葉を聞いて嫌な予感がしたと一方通行は語る。

 

 

『___お前達の中に一人だけまだ暴走してない者が居ないか?博麗の巫女“博麗霊夢”。彼女にも他のやつら同様贈り物(イヴ)を埋め込めこんでいた、しかもそれは一年以上前からだ。贈り物(イヴ)は2ヶ月以上体内にあればどんなに特別な存在であろうと死が確定する。博麗の巫女こそが幻想郷の住人の中で一番最初に学園都市の攻撃を仕掛けられていたんだよ。彼女は幻想郷の住人の中で一番学園都市にとって脅威となりうる存在だったからね。この話しを信じるか信じないかはお前ら次第だ。これを嘘だと思い無視するのもいいし、本当だと思うのなら早めの行動をおすすめするよ。そうだな、博麗の巫女を殺すか博麗の巫女が自分自身を殺害する前になにかくだらない話をしたりとかな。そのぐらいの猶予(ゆうよ)はくれてやろう。この録音された音声が終わってから1時間後にスイッチが作動する、そうすれば博麗霊夢は死が確定されながらも暴走するだろう。言っておくが生かして助けるなんて手段はないぞ?贈り物(イヴ)の影響で現時点では生命活動を維持できているが暴走を止め贈り物(イヴ)を取り除けばお前らは既に知っている通りその肉体は死体に変わる。それは決して避けては通れない運命。覆すことなど不可能な定めだ。最後に言っておく_____』

 

 

 

 

____覚えておけ、私は持てる全てを使いお前らとお前らの幻想郷を滅ぼす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「……ま、待てよ。なんだよ……それ……?」

 

一方通行「説明した通りだ。霊夢の体内にもあの黒い玉っころが埋め込められている。そして、これから霊夢は暴走者となる」

 

魔理沙「ヤツの……、アレイスターの、敵の言葉を信じるのか?口から出任せかもしれないだろ?」

 

紫「……信じられない。けど、無いとは言い切れない」

 

一方通行「俺は最初これを知らされた時、怒りのあまり暴れちまった。みっともなくな。だが、その後冷静になりヤツから出た嘘だと疑った。でも嘘だと思いそのまま放置するわけにもいかず一応確認することにした。霊夢は学園都市側からすると喉から手が出るほど欲しい人材。“鍵”だからな____」

 

一方通行はズボンのポケットからスマートフォンを取り出し、そのスマートフォンの電源を入れてから指で画面を操作する。

そして。“ある者”から送られたメールの内容を画面に表示させたらスマートフォンをこの場に居る全員が囲んで座っているテーブルの上に乱暴に投げた。

 

一方通行「___しかし、もしも学園都市(ヤツら)がもう既に鍵を手に入れていたら霊夢は用済みだともこれは言えねェか?」

 

紫「………まさかっ!?そんなっ!?」

 

一方通行の言葉に一人だけ反応する。

それは八雲紫だった。普段の彼女は如何なる時も冷静で、どのような問題が起きても表情一つ変わることはない。

しかし、あの大妖怪は声を上げて冷静さなんて欠片もない様子だった。

 

一方通行「紫、“そのまさか”だ。木原のクソ野郎に霊夢は誘拐されはしたが俺達は幻想郷に連れ戻すことに成功したあの日の後、永琳に依頼したよな?霊夢の体を隅々調べろ、と。俺達はあの時同じ不安を感じていた」

 

紫「で……、でも!!霊夢の体には異常はなかったって、 目立った外傷は1つもなかったじゃない!!」

 

一方通行「俺達が見たのは1回目のカルテだったらしい。アレイスターのクソ野郎から送られたボイスレコーダーを聞いた後にすぐに永琳に尋ねたら診察は計5回したらしい」

 

紫と一方通行だけの会話。

藍、橙、霊夢、魔理沙はその会話について行けず黙って聴くことしか出来なくなっていた。

 

一方通行「そして、その俺達が知らない4回の診察の中で見付かったそォだ。脇の下に“刺し傷”がな。まるで細いもので刺されたような傷。永琳はそれを“注射針”で刺されたものだと断定していた。まさか脇の下とはなァ、奴らも考えたンだろ本当の目的がこちらに悟られないようによォ」

 

冷たく、だがハッキリと一方通行は次に言い放つ。

 

一方通行「ヤツらはある意味、霊夢を学園都市に連れ去ることに成功していた。ヤツらは手に入れていたンだ、霊夢の“DNAマップ”をな」

 

紫「……そう、そうなのね。だからあの時は終わり方があっさりとしていたの。………封印された技術。禁忌。命を冒涜する行為_____」

 

八雲紫は珍しく頭を抱えていた。

しかし。だが。

その後、彼女の中で怒りが爆発した。

 

紫「____ゴミどもがッッ!!御坂美琴に続き次は霊夢の細胞情報を使い“アレ”を作りやがったっていうのかッ!!!!」

 

藍「紫様………」

 

長く、とても長く支えてきた八雲藍ですら初めて見た、声を荒げ物に当たるほどの激怒する主の姿。

 

一方通行がテーブルの上に置いたスマートフォン。

その画面には八意永琳から送られた、霊夢の診察結果が映されていた。

 

もう、確信した。

恐れていたことが起こってしまったのだ。

一度動き出してしまった歯車。

最悪な状況。

物に当たってもそれで物事が解決することはない。

地団駄を踏んだ所でこの身の内で激しく燃え盛る怒りの炎が鎮火されることは絶対にない。

 

紫「………鍵が既にアレイスターの手中と言うのなら霊夢が死んでも何も痛くない。ならば、アレイスターの言葉も嘘と断言できず、真実と捉えるしかない……わ。一方通行、これからの事でもっと深く話し合う必要があるわよ」

 

一方通行「先のことを見れるのはご立派だがなァ、その前に目の前の問題を_____」

 

「___ちょっと待ったァァァァッ!!!」

 

紫「………なに?」

 

大声を上げて二人の会話を中断させたのは、白と黒の魔法使い・霧雨魔理沙だった。

 

魔理沙「『なに?』じゃないぜ!何がなんだか分からないから大人しく黙っていたが、私達を置いて二人だけで話を進めすぎだ!私達のことも忘れないでくれよ!?」

 

紫「魔理沙………。これは貴女の知らなくて良いことよ黙ってなさい」

 

魔理沙「知らなくていいこと?黙ってろ、だと?ふざけんなよ紫!!バカな私でも分かるぞ!お前らが話してることは幻想郷のこれからに関わってるとても重要なことなんだろ!?私の大事な親友の霊夢が関係していることなんだろ!?黙ってなんか、蚊帳(かや)の外になんかされてたまるかよ!!」

 

紫「でも……これは………」

 

大妖怪の彼女とて、話せることは全て話したい。

魔理沙の性格は良く知っているつもりだ。

だが、話したくても話せない。

 

知らなくてもいいことはある。

いままでの八雲紫ならば淡々と平常心のまま、残酷な現実を告げることができた。

他者がどうなろうと、自分の発言で他人を傷付けしまってもほくそ笑むだろう。

だがもう違う。

 

霊夢や、魔理沙は仲間だ。

八雲紫は『大事な仲間』を傷付けたくないのだ。

 

しかし。

 

霊夢「紫……、頼むわ。アンタ達が話していたことを私達でも理解できるように説明してほしい。私が関係していることなんでしょ?自分のことよ、私は知りたい。例え残酷な現実を突きつけられても私は挫けないわ。今日まで一緒に戦ってきて、前よりもずっと距離が近くなったじゃない。大丈夫。私は、私達はそれほど弱くない」

 

紫「………霊夢。だけど……」

 

一方通行「それだけの覚悟あるなら話してやれよ。まァ、最初から俺は話すつもりだったがな」

 

紫「……分かった。良く聴きなさい____」

 

固く握られた両手をテーブルの上に乗せる。

今から話されることを聞いて確実に彼女は後悔するだろう。

 

紫「___霊夢が拐われた日を覚えてるかしら?学園都市の人間が幻想郷に入るためには、能力者、無能力者問わずどんな人間でも幻想郷に入れるよう製作した大型な特殊装置を使わなくてはならない。だけどその装置は起動するのに莫大な電力が必要とされるため、その装置を何度も何度も使用するのは学園都市側は難しいの。だから学園都市の連中は幻想郷を自由に出入りすることが可能な博麗の巫女である霊夢を誘拐をした。霊夢が有する博麗の巫女の力を利用しようとしたのね」

 

魔理沙「あぁ、それは知ってる。だが霊夢は取り戻したし、博麗の巫女の力も奪われてなかっただろ!?」

 

紫「そうね。私達全員そう思っていた。けど、本当は奪われていたのよ。奴らには“アレ”があるから……。絶対能力進化計画(レベル6シフトけいかく)って、覚えてる?一方通行が学園都市に居たとき、一方通行を中心に行われていた実験よ」

 

藍「学園都市では超能力にレベルというものがあって一方通行さんは7人しか存在しない超能力者(レベル5)でありしかも序列は第一位。そんな一方通行さんの能力を更に上の段階へと進化させる計画の名が絶対能力進化計画(レベル6シフトけいかく)。そして、その実験内容は超能力者(レベル5)第三位の武装したクローンと用意された二万通りの戦場で戦闘をして、そしてクローン二万体を殺害することで未だ誕生せず誰も到達していない絶対能力者(レベル6)へ一方通行さんは進化する。でしたよね?」

 

魔理沙「藍……お前マジか。まさかそこまで詳しく覚えてたのか、スゴイなその記憶力ちょっと羨ましいぜ。それで?それが今回の件と何が関係してんだよ?紫」

 

紫「藍が話してくれた話の中で注目すべきは“クローン”というワードよ。学園都市にはオリジナルと比べると劣るが瓜二つの人間を機械で作る技術を持っているの」

 

魔理沙「………ッ!!まさかっ!?」

 

霊夢「私達が気付かない内に私にそっくりな人間を学園都市は作っていたってこと……?」

 

紫「……えぇ。クローン製造には作る対象となる確かな細胞情報を必要とされる。爪やら髪の毛などからそれは得るのことができるの。だけど一番効果的でより正確にクローン製造を可能とするために必要とされるのは……………“血液”」

 

一方通行「木原の野郎は幻想郷に来た日、霊夢の博麗の巫女の能力を欲して人間の里で騒動を起こし異変解決を率先して行う霊夢を誘い出そうとしていた。だが、その前に霊夢と人里で遭遇し、麻酔薬の入った弾丸で霊夢を撃ち込み意識を奪うことで霊夢を学園都市に連れ去ることに成功した。そしてその後、俺は霊夢奪還のため学園都市に単独で乗り込み、無事に霊夢を幻想郷に連れ戻せた。だが、もォその時には遅かったンだ。奴らの真の目的は“霊夢の血液”だった。それを幻想郷側(こちら)に悟られないようにあれだけ事態をあえて大きくした。ってのが俺が考えたあの日の真相だ」

 

橙「あのー……、このようなお話に私が口を挟むのは無礼だと思うのですが、一つ疑問あります。霊夢さんのクローンを製造したとしても、そのクローンに博麗の巫女の力は宿るのでしょうか?」

 

紫「良い質問ね橙。そこは学園都市側もぶっつけ本番やってみなきゃ分からなかったことだと思うわ。けど超能力者(レベル5)第三位、超電磁砲(レールガン)という名で呼ばれている能力を持つ電撃使い(エレクトロマスター)の“御坂美琴”という成功例があったからほぼほぼ確実に博麗の巫女の力も発現すると結論付いていたのでしょうね。そしてやった結果、霊夢のクローンにもオリジナル同様博麗の巫女の力が発現した。だから今回のように学園都市から刺客を送り込めたのでしょうね。以前より断然結界は強化されていたのに、それをいとも容易く突破できたのは博麗の巫女の力を使ったから。こちらの力でこちらの結界を破る。あのクソったれが考えそうなことよ。違和感は最初から感じていた。なぜ、霊夢だけが黒い玉を埋められていないのかって。そうよ、考えればこうなるかもしれない予想はできていたのに………、それなのにそれに気付けず後手に回ってしまった結果、私達は窮地(きゅうち)に追いやられてしまった」

 

スキマを正面に開くと紫は暗部のやつらから回収ものを取り出しテーブルに並べた。

それは『シルバーリング』。

暗部のやつらが腕に装着していたものだった。

 

紫「……………これがやつらの狂気の実験で作られた学園都市なりの『幻想郷の鍵』ってところね。このリングを見たとき、何か私の力に近いものを感じてはいたけど、まさかね……」

 

魔理沙「霊夢のクローンを作り出し、そのクローンから博麗の巫女の力を何らかの方法で抽出して、その腕輪に組み込んだ。ってことか?」

 

紫「………違う。違うのよ魔理沙。そんな“優しいやり方”、やつらはしないわ……」

 

もう、八雲紫は気付いてしまった。

暗部のやつらが腕に巻いていた『シルバーリング』がどうやって製作されたか。

 

『シルバーリング』を見た時。そして、結界の守りを強固にしたのにそれを容易く突破して刺客を送り込めたことにずっと疑問を感じていた。

しかし。しかし、だ。

それはまるで埋まらないピースを探している感覚であったが、今さっき確かに紫の脳内ではピースが完全に埋まった。

 

紫「あいつらは嫌ってほど合理的で、誰も成し遂げなかった“成果”を手に入れるためならどんな残酷なことも厭わない。どんなに後ろ指をさされようと、幾万の大罪を犯してもなお、なおやるのよ。学園都市の狂った科学者達は…………」

 

魔理沙「?」

 

テーブルに乗せた紫の両手に力が入る。

『もうこれ以上は………』と、説明をしたくない気持ちが膨れ上がる。

しかし。しかし、である。

彼女達の覚悟は既に確認済みだ。

だから、だ。紫は奥歯を噛み締めた後に彼女達に伝える、、、

 

とても残酷な……真実を。

 

紫「この銀色の腕輪の正体はね……。霊夢のクローン“そのもの”よ。霊夢のクローンを生成したらどこに博麗の巫女の力が宿っているのか、学園都市の科学者は何体何十体何百体の霊夢のクローンを解剖をし、研究に研究を繰り返しデータを取り続けそしてそれを積み重ねていって学園都市オリジナルの“幻想郷の鍵”を創ることに成功した……。その成功の結果がこの腕輪なのよ」

 

その瞬間この空間には静寂が訪れた。

そして『シルバーリング』の正体を知った彼女達には衝撃が襲いかかる。

 

魔理沙「なんだよそれ……?ウソ……、だろ?それは本当なのか!?」

 

否定ができるのなら是が非でもしたい。その真実を。その存在を。

魔理沙はそう考えていた。

だがこういう時の紫は嘘を吐かない。

 

魔理沙「いくらクローンといえど、そこには確かな命がある……。作り物だとしても人間ってことは間違いないんだろ!?それなのに……ッ!!それなのにか!?どこまて腐ってやがるんだ学園都市の連中は!?学園都市統括理事長アレイスター・クロウリーは!?」

 

一方通行「他の世界を住人ごとぶっ壊そうって連中だァ。そンなことォするクソったれどもはまともな思考はしちゃいねェ、例え元は善人だったとしても学園都市の大きな闇に心身(しんしん)染まっちまったヤツァどいつもこいつも性根は腐りに腐ってやがる。俺は何度も見てきた、やつらは平気な顔をして人を形をしていてもバラバラに切り刻み愉快に命を(もてあそ)ぶ。そして、自分達の求めた成果とやらを手にする為なら目の前で誰が泣き叫ぼうと殺すぞ。それが俺達の敵だ。覚えておけ」

 

その場は冷たく静かな空気に包まれた。

体内で流れる血の音が、心臓の音がよく聴こえる。

 

衝撃に押し潰され静寂が支配した場で、だ。

 

霊夢「自分でも気付かないほど私は学園都市(やつら)にとって貴重な存在だったのね。だけど学園都市(やつら)にとって私はもう生かしておく価値はない。あっちはあっちで幻想郷の鍵は既に入手しているんだから。しかもそれは、ふっ……簡単に大量生成できるんだもの。そう……、だから黒い玉が私に埋め込められてるということは嘘と断言できない………か」

 

魔理沙「霊夢……」

 

紫「そうよ霊夢。黒い玉は確実に貴女の体に埋められている……一年以上前から贈り物(イヴ)が」

 

まともに霊夢の顔が誰も見れずにいた。

これから絶対に死ぬことが確定した者へどんな言葉をかけてやればいいか分からないのだ。

 

一方通行「eve(イヴ)。あの原初の人間であるアダムの妻、最初の女として生まれたイヴ。そのイヴという意味じゃないだろォな。夕方、晩………『前夜』か。贈り物(イヴ)によって起こったことは全てまだ序章に過ぎないってか?これから近い未来、“本番”ってやつが始まるのかよ?クソったれ、アレイスターの頭の中ではどンな地獄絵図が描かれてやがンだァ?」

 

魔理沙「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!?一方通行、お前のところにボイスレコーダーが送られてからどのぐらい時間が経っているんだ!?あとどのくらいの時間しか残ってないんだ!?」

 

一方通行「霊夢の暴走が開始するまであと40分、ってところだろォな」

 

魔理沙「クソっ!!だったら悠長にお喋りしてる訳にはいかねえじゃねぇか!!どうにか霊夢を救ける方法を探さなくちゃだぜ!!色んなやつらにこの事を説明して皆で情報を共有しながら探せばきっと見付かるはずだ!!お前ら早くスマホを出して今回の件で助けになってくれそうなやつから順番に霊夢の現状をメールで伝えてやってくれ!!」

 

ガバッっ!!と、勢いよく立ち上がり皆の顔を見た。

しかし、、、

 

魔理沙「____どうして行動に移さねぇんだよお前らはァァ!!」

 

誰ひとりとも動かなかった。

助けたい。救えるのなら救いたい。

その気持ちは誰も一緒なのだろう。

しかし、今回ばかりは両手を上げて降参するしかないと考える者が多かった。

 

藍「……普段はダラダラして自堕落を体現したようなのが霊夢だったが、いざという時は博麗の巫女として幻想郷に起きた異変を解決していたのは我々は知っている。それで助けられた者は数多く居るだろう。言葉にしてこなかっただけで私だって霊夢にとても感謝している。だから我々も救えるのなら救いたい……しかし_____」

 

魔理沙「_____しかしなんだ!?無理だってか!?八方塞がりってか藍!?ふざけんなよ諦めてたまるかよクソったれェェッ!!なにも打つ手がないからって目の前で見殺しになんてできるかよ!!霊夢は……、霊夢は私の大切な大切な友達なんだよーッ!!」

 

一方通行「落ち着け魔理沙。感情的になった所で状況が変わることはねェぞ?」

 

魔理沙「だったらどうするんだよ一方通行!?ご自慢のその頭でこの絶望的な状況をひっくり返せるのか!?」

 

一方通行「最初に言ったことをするだけだ。“霊夢を殺す”」

 

魔理沙「ふっっざっっけるなァァァァァァァァァァァァッッ!!!!」

 

怒りが込められたその絶叫は部屋から外に木霊(こだま)した。

 

 

『ダメだ。こいつらは霊夢を殺す気でいる……』

心の中で魔理沙は呟いた。

相手は妖怪。そして、敵と判断したら容赦なく殺す怪物。

人の心など無かったのだ。

少しでも自分達と関わり合うことで、人間の優しさという感情がこいつらにも芽生えたなどと思っていたが間違いだったと白と黒の魔女は思う。

 

霊夢は殺させない。死なせない。

ここから博麗の巫女を連れ出す作戦を練ろうとした、その時だった。

 

「…………ありがとう、魔理沙。私のために必死になってくれて嬉しいわ、けどもういいの。もう、いいのよ」

 

 

魔理沙「なに、言ってんだよ霊夢……?」

 

 

霊夢「黒い玉を一年以上前から私は埋められてた。確かさっき黒い玉は2ヶ月以上体内に黒い玉があったら死ぬって言ってたわよね?だとしたらもう私は手遅れよ。どう足掻いてもこれから迎える結末は変えられないわ。私がこれから死ぬという結末はね」

 

魔理沙「いいのか?お前はそれで本当にいいのか霊夢!?敵の思惑通りに死んで満足のいく人生だったと()めれるのかよ!?悔しくはないのかよ!?」

 

霊夢「アンタはチェックメイトと宣言されているのに『まだ終わってない』と口を叩けるの?それほどアンタはバカだったの?」

 

魔理沙「ああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァァーッ!!クソ!!!そんなお前の姿は見たくなかったよ。でも、私は諦めない。誰も協力してくれなくても私一人で霊夢を殺さず命を救う方法を見つけてみせるぜ!!」

 

そう台詞を残し、魔理沙は部屋から飛び出した。

多分どこを探しても霊夢を救える方法なんてないのかも知れない。

しかし。白と黒の魔女はたがらと言ってなにもしないで部屋の隅で(うずくま)るなんてことを嫌う。

 

霊夢「なんで、どっか行くのよ。最後ぐらい側に居てよ………魔理沙。アンタに話したいことが沢山あるのに………」

 

死は怖いものだ。

いずれ命あるものには終わりがくる。

しかし、それが唐突に襲い掛かるのだから声も震えてしまうのは仕方ないことだ。

 

もう一度言う。死は怖いものだ。

でも。ただ一人で死ぬのではなく誰かに看取られてなら少しは心が救われるのに……。

 

一方通行「……チッ。人の話は最後まで聞いてけよクソったれが」

 

紫「え?一方通行、今なんて……?」

 

一方通行「霊夢を救う方法は既にこの俺の頭の中にある」

 

人差し指で自分の真っ白な頭を突いた一方通行。

彼は冷静だった。

 

とても落ち着いた様子で、、、

 

 

一方通行「魔理沙を連れ戻せ紫。その後で話してやるよ、あの能面野郎の顔面を大きく変える、アレイスターのクソ野郎に吠え面をかかせられる霊夢を救える完璧な方法をな」

 

いつものようだった。

ニヤリと笑い、白い怪物は動揺している彼女らに言い放つ。

 

 

一方通行の頭の中にある“霊夢を救える完璧な方法”とは?

 

 

一体何なのか。それは魔理沙が戻ってから説明される。

 

 






次回予告

終わりを終わりとさせない……。
これから幻想郷の歴史に刻まれるは前代未聞の逆転劇ッ!!

「世の規則を破り禁忌に手を染めてでも、やつの思い通りになンかなってたまるかよォッ!!」

次回・第四章・第十二話

【絶対禁忌】(後編)

ここが明確な分岐点。
定められた運命に蹴りを一発かまして白い怪物は自分達の未来は自分達で手で掴むことを決意する。

その結果………ここで新たな物語は始まったのだ。


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12話


【絶対禁忌】(後編)

※誤字脱字などのミスが多々あると思います。
それをご了承のうえ読んでいただけると幸いです。
しかし、そういったミスが多いのをご不快に思う方にはブラウザバックをオススメします。



 

博麗神社。その一室にて、、、

 

一方通行「魔理沙。探しに行かなくても霊夢を救ける方法はこの俺の頭の中にある」

 

魔理沙「でもその方法でやったとしても結局、霊夢を殺すことに変わりはないんだろ?」

 

白と黒の魔女・霧雨魔理沙は明らかに不機嫌だった。

部屋から勢いよく飛び出し、箒に跨り空を猛スピードで翔けていたら首根っこ掴まれスキマ妖怪と呼ばれている八雲紫に彼女の能力で開かれた空間の裂け目の中へと引っ張られ博麗神社へと強引に戻されたのだ。

 

魔理沙は不機嫌でもあり、落ち着きもなかった。

こうやって話をしていても時間は当然だが進んでいく。時間との勝負に焦りは増すばかりだ。

 

このままだと霊夢が理性もない破壊と殺戮を繰り広げる『暴走者』へと変化してしまう。

そうなってしまったら何もかもがおしまいだ。

『暴走者』と変貌してしまったら倒すしか解決策は残っていない……。

魔理沙はどうしてもそれだけは絶対に避けたいと考えている。

もしも、だ。

 

もしもそうなってしまったら“霊夢の死が確定”してしまうからだ。

 

一方通行「あァ、これから霊夢の体から贈り物(イヴ)を取り除く。そンなことをすれば贈り物(イヴ)の影響でこれまで生きてこれた霊夢は確実に死ぬだろォな。だがその後、“霊夢を生き返らせる”」

 

魔理沙「………………………………はい???」

 

困惑するのも無理はない。

考えても為す術がないから頭がおかしくなってしまったのかとも思った。

しかし。一方通行は真剣な眼差しをしながら話を続けるのだ。

 

真っ暗な闇の中にある光を掴み取れる“希望”を。

 

邪悪でクソったれな敵を一泡吹かせる“方法”を。

 

一方通行「俺が幻想郷に来てからそこまで時間が経ってない頃の話だ。俺はこの幻想郷にしか存在しない知識や技術を得ようと闇雲に紅魔館の図書館で本を読みまくっていたら、死者の蘇生について書かれていた本を見つけた。その本は手に持って読むなンかできねェくらい分厚かったが、俺はその本を半信半疑ではあったが読ンだことがある。これからその本に書かれていたことを実践する。今その本は手元にはないが一度読ンだ本の内容は一字一句全てこの頭に記憶している」

 

紫「一方通行、その本には本当に死んだ者を蘇生できる方法が書いてあったの?」

 

一方通行「いいや、600ページも無駄に長ったらしく書かれていたがその本は“未完成”で終わっていた」

 

そして。

紫の問いに答えてから一方通行は読んだという死者蘇生の本の内容を話した。

 

死者蘇生の本の著者は一人の男性。その男はなんの特徴もない一般人。

なにか他者より秀でた特技もなければ特殊な能力もなく、魔法も使えない絵に書いたような凡人の中の凡人。

物語の主人公になんか到底なれないような人間だ。

 

だが。その者にはある大きな夢があった。

それは『死んでしまった妻にもう一度会いたい』というもの。

最初の30ページは本を書いた著者の最愛の妻との思い出やどれだけ妻を愛していたか書かれていた。

しかしそれから著者がどうすれば死んだ者を生き返らすことが出来るのかと研究結果や考察が綴られる。

 

そして。何十年も未踏の答えを探し彷徨い続けた結果辿り着いた……。

死んだ者の肉体を魔法などで復元して生命を宿らせても肉体に“魂”が無ければ意味がない。

器だけ用意したとしても無駄ということだ。

 

人や生き物の魂は死んだ瞬間に冥府へ(いざな)われ現世にはもう存在していない。

そもそもどうすれば現世に魂を降ろせるかとか、肉体にどうやって魂を入れ定着させるのかとか、その方法は不明。

凡人の頭では全く検討もつかなかったのだ。

 

著者の男性の妻は何十年も前に亡くなっている。

もう男の妻の魂は冥府へ行き、そしてもしかしたら全く違う人として生まれ変わったのかもしれない。

これは輪廻転生というものが実際にあるのなら、の話だが。

とにかく、だ。

一応は死者蘇生の仕組みを分かった。

しかし、仕組みは分かっても実行できる力が妻を亡くし生き返らせたいと願望を抱いている男には悲しいことになかった。

 

 

この本を書いた男は夢半ば死んでしまった。

 

 

本の最後のページに書かれた言葉はただ一つ、、、

 

 

 

『無念』。

 

 

 

魔理沙「成功例はない。未完成。なのにお前は霊夢を生き返らせることが可能ってか?」

 

一方通行「できる。俺の持てる全ての力を使えば可能だ。あの本の著者は凡人なりに真実に近付いていた。でも死ンだ妻を生き返らせることができなかったのはそいつに力がなかっただけだったンだ。だが俺は違う。俺には力がある。俺だけにしかない圧倒的な力がな」

 

紫「そうね、一方通行。貴方には他の者と比べて飛び抜けた(さい)と力があるわ。けど……それで、死んだ者を生き返らせるのにはどのぐらいのリスクがあるの?」

 

一方通行「………………………」

 

八雲紫が放ったたった一言。

それで一方通行の口は閉じた。

 

大妖怪は続けて、

 

紫「一方通行。貴方がその本の内容を信じるなら私も信じましょう。だけどこれだけは言わせてほしい。大それたことを実現させようとすればそれだけのリスクを背負うことになる。この世は優しさだけで成形されてない。避けようとしても避けられないとても厳しい残酷な現実というものが必ず我々の前に立ちはだかるわ。魔法を使えばそれだけの魔力を消費する。なにかを手にする為にはなにかしらそれに見合うものを支払う。等価交換ってやつね。一方通行、質問するわ。絶対に答えて頂戴(ちょうだい)。死者を蘇生するにもなにかしらの代価が求められるでしょう。それは一体なんなのかしら?霊夢の蘇生が完了したとして“貴方は無事でいられるの”?」

 

一方通行「失敗したら……俺も霊夢と一緒にお陀仏だ。成功したとしても俺がまともに言葉を交わせる状態でいるか怪しいとだけ言っておく」

 

霊夢「ッ!!!」

 

小さく吐き捨てた。だがしかし、ハッキリとこの場に居る皆の耳に一方通行の声は届いた。

 

八雲紫だけ『やっぱりね……』とだけ呟き瞳を閉じる。

が、しかしスキマ妖怪以外は驚いた様子だった。

でも霊夢は更にもう一つの感情があった。

驚愕もしていたが、それ以上に彼女が抱いた感情は“怒り”。

 

霊夢「なんで私なんかの為にアンタはそこまで命を張るのよ!?」

 

一方通行「…………オマエに、生きていてほしいからだ。俺が死ぬリスクを背負ってでも」

 

こんなこと言うのは似合わないと自覚している。

だけど、もう止められない。

口に出した言葉は戻らない。

 

一方通行「霊夢だけじゃねェ。当然オマエらもぞ?魔理沙、紫、藍、橙。それにここには居ねェ、俺のスマホの中に連絡先を登録しているやつら皆………生きていてほしいンだ。オマエらが居ねェ日々なンて考えられねェンだ、考えたくねェンだ!死ぬとしても、誰かに殺されるとかじゃなく寿命で死ね。静かに……安らかに……そして、事切れる瞬間イイ人生だったとなンの後悔もなく死ンでいってほしい」

 

月でアレイスターから送られたボイスレコーダーを聴いた時から覚悟を決めていた。

 

学園都市に居た頃から比べれば驚くほど一方通行は変わっただろう。

だが変わらなかったところもあった。

本当に思っていることを素直に言葉に出せなかったのだ。

幻想郷に来てから本当に本当に騒がしい毎日だった。

人の事情もお構いなしにズカズカと踏み込んでくるやつらだらけ。

幻想郷の女どもには振り回されて振り回されて振り回されまくった。

 

しかし“それが楽しかった”と一方通行が言ったら彼女達はどんな反応をするのだろうか?

 

そうだ。気付いた。知ったのだ。

白い怪物は幻想郷(ここ)に自分が求め続けていたものがあると。

 

学園都市最強の超能力者は“あの日”に本当に消えた。

 

“幻想郷最強の超能力者”は胸の内を曝け出す。

 

一方通行「俺はどォしようもねェほど悪一色に塗りたくられたバケモノで……クソったれな悪党だ。人を殺してもなにも罪悪感なンてなかった。これまで恨まれて当然のことをしてきた。いつ誰に殺されてもおかしくねェ。学園都市では闇に埋もれて闇の一部に溶け込ンでいき生きている意味も自分の存在も見失うだけだった。光も届かねェ底なしの闇……そこにしか俺の居場所はなかったンだ………」

 

舌打ちをしてから一方通行は頭を乱暴に掻きむしっていた。

 

一方通行「……クソったれ、クソったれがよォ。どうしてこンなにも多く失いたくねェモンができちまったンだよ俺はよォ。考えなくても嫌ってぐらい知ってンだよ、俺のようなクソ野郎が幸せってモンを求めちゃならねェってぐらい。………ったく、オマエらのせいだからな俺がこうなっちまったのは。オマエらが俺をこンな風に変えたンだ。今まで柄にもねェことをアホみてェにやりまくった。チッ、超能力者(レベル5)第一位のこの俺様が誰かと居て安心するなンて……、誰かと居て楽しいって思ってるなンて笑える話だぜ。俺ァたった一人で約一万の命を奪った張本人だぜ?バケモノだ。怪物だ。なのに有ろう事か大切なものを持ち、自分以外どうなろうがどォでも良かったのに自分以外の命を守ろうとしている」

 

顔が段々熱くなっていく。

普段は涼しい顔をしている彼が珍しく頬の部分に薄っすらとだが赤色が見えた。

感情が高まってきたというのもあるが『恥ずかしさ』というのもあったのだろう。

 

一方通行「____俺は、俺は……ッ。俺はずっとオマエらが幻想郷で楽しく生きていく姿を見ていたい!別にその輪の中に入りたいなンて考えてねェ。輪の外からで良いから眺めていたいンだ。もしも俺のずっと眺めていたい光景をぶち壊そうとするクソ野郎が居るのなら俺はそいつを本気でぶちのめす!!厳しく残酷な現実?不可能?上等じゃねェか。かかってこいよクソったれェ!!なにもかも薙ぎ払ってオマエらを連れて行ってやるよォ!夢のような甘ったるい世界に!!笑顔と平和が溢れた日の光に照らさている世界にだァ!!そこがオマエらの“本当の幻想郷”だ!!これは俺が決めた!決定した!今ここでだァ!!ガキ臭ェバカな話をしているのは自覚している。だがなァ俺ァ本気だぜ!?だから命を張ンだよ!!だから体を張るンだよ!!だから、だから柄にもねェことだと、面倒なことだと心の中では吐きながらも今まで柄にもないことをしてきたンじゃねェかバカ野郎ォッ!!」

 

そして。

一方通行は博麗の巫女に指を差した。

 

一方通行「霊夢!!オマエは俺をあのクソったれな場所から救ってくれた!!感謝してンだよ。形はどうあれ、幻想郷に召喚した理由はどうあれ、真っ黒な悪に堕ち腐っていくだけだった俺を日の光がある世界に連れ出してくれたことを。オマエは絶対死なせねェ。次は俺の番だ!必ずオマエを闇の中から救ってやる……ッ!!この俺の命を賭けてェッ!!」

 

霊夢「大人しく黙って聞いていたら大声で恥ずかしいことを長ったらしくペラペラペラペラとォッ!!アンタそんなキャラだったっけ!?急に変わらないでくれる!?ビックリするわ!!」

 

一方通行「あァ!?なンで命を張るのかオマエが聞いたからだろォがクソ霊夢ゥ!!」

 

霊夢「だからって口に出して胸の内を赤裸々に曝け出さないでよ!?聞いてるこっちが恥ずかしいじゃない!!皆の顔を見てみなさいよ!!アンタのせいで全員顔真っ赤よ!?」

 

一方通行「………………………」

 

霊夢「まっ、アンタが一番顔真っ赤だけどねぇ!!!!」

 

紫「落ち着きなさい霊夢。んーと、あのー、そーね。時には仲間(うち)でもぶつかることも必要だと私は思うわ。そうしなければ伝わないことだってあるからね。だからさっきのは決して無駄な時間じゃなかったと考えるべきよ。それに一方通行がこうやって胸の内を明かすとは思ってなかったからそれだけ一方通行には覚悟があるということでしょう。みんな、一方通行に賭けてみない?いいや、私はそれしか道はないと思うわ」

 

霊夢「紫……でもあまりにもリスクがありすぎる。私は自分のせいで誰かを死なせたくない。だったら私はひとりで死にたい」

 

一方通行「誰が死ぬって?失敗はしねェよ、必ず成功させてみせる。心配すンな俺は端から死ぬつもりはねェしオマエをあのクソったれの思惑通りに死なせてたまるかよ」

 

紫「霊夢。お願いよ、一方通行を信じて」 

 

霊夢「……………………………………一方通行」

 

一方通行「なンだ?」

 

静かに俯いた霊夢。

だが急に鼻水をすする音が聞こえてきた。

 

霊夢は嗚咽してしまうほど泣いていたのだ。

畳の床にはぽとぽとと巫女の少女が流した涙が落ちていく。

 

そして。次に霊夢が顔を上げたとき、くしゃくしゃな泣き顔がそこにはあった。

 

一方通行は本音を語ってくれた。

ならば私も、と霊夢は本音を口にする。

 

霊夢「わたし……、死にたくない。もっとみんなと一緒に居たい……ッ!!」

 

一方通行「その言葉を俺は聞きたかった。任せろ、オマエは絶対死なせない。こンなところで終わらせねェよ。今日もまたこの異変を解決したら宴会でも開いて皆で酒でも飲もうぜ。俺も付き合って酒を乗ンでやるよ、まァ、オマエ達が飲ンでるやつと比べるとアルコール度数が低いやつだが、それでも構わねェか?」

 

霊夢「ダメ、私達が飲んでるのと同じやつ………」

 

一方通行「調子に乗るなよクソ巫女」

 

霊夢「ふふっ」

 

一方通行「フン………」

 

 

紫「はいはい決まりーッ!じゃあ一方通行の出した案でいいわね魔理沙?」

 

魔理沙「あぁ……、もう私はこの件にはなにも口出ししないぜ。私も一方通行の言った方法でしか霊夢を救える方法はないと思ったからな。ここは大人しく一方通行にすべて任せて無事に成功することを心から祈ることしか、これから私にできることはないぜ。でもどうやってやるのか確認くらいはさせてほしいぜ」

 

紫「それもそうね。私も最初から聞くつもりだったし、一方通行、説明頼める?」

 

一方通行「まずは霊夢を俺の能力、ベクトル操作で傷一つ付けずに殺す。その後、次は俺が仮死状態になる。これで、死者の世界と生者の世界の間の空間に俺が魂だけの状態に行く。まァ、平たく言うと幽体離脱ってやつだ」

 

霊夢「驚いた。アンタそんなこともできんの?もうなんでもありね、逆になにができないか気になるわ」

 

一方通行「できるにはできンだがこれは俺の能力だけじゃあ不可能だ。だから科学(オレ)とは反対の魔法(オカルト)の力を使用する」

 

紫「オカルトの力とは魔法のことね。一方通行、貴方のような私達とは違う特別な系統で生まれた超能力者が魔法を使えばどうなるか、もうその身で体験して分かっているわよね?」

 

一方通行「当然だ。だがこれしかねェ。俺は霊夢の蘇生だけに集中したい。だからオマエらは博麗神社周辺で学園都市側からなにか邪魔が入らないかどうか警戒を頼まれてくれ」

 

魔理沙「すまないが私は無理だぜ。理由は見ての通りだ」

 

一方通行「……藍、橙。オマエらどちらか俺の渡した薬持ってねェか?あったら魔理沙に渡してくれ。そいつならあの薬を飲ましても問題ねェだろからなァ」

 

橙「はいはーい!わたし一粒だけだっら残ってまーす!!」

 

藍「私は全て月の民に飲ませたので残ってありません。橙、魔理沙にあの薬を渡してやってくれ」

 

すると。

橙は魔理沙に一方通行から与えられていた薬を手渡しで渡そうとするも

 

魔理沙「腕動かすと痛いから飲ませてくれ」

 

橙「え〜、面倒くさ〜い。さっきはあんなに勢い良く部屋から飛び出せたんだから薬ぐらい自分一人の力で飲めるんじゃないんですか〜?」

 

魔理沙「あれはすっごく我慢して体を動かしてたの!!」

 

橙「はいはいそうですか〜」

 

そして。

橙はビー玉サイズの球体の薬剤を魔理沙に飲ませた。

 

魔理沙「………………ん?ん??ん???うっっっそだろ!?あんだけ重症だったのに一瞬で傷が治っちまったぜ!?しかも傷跡すら消えてやがるときたもんだ!!」

 

正直な感想、橙が薬を袋から取り出した瞬間不安を感じていた。

見た目からして如何にも怪しい薬だったからだ。

しかし、薬を飲んだ瞬間である。体に異変が生じたのだ。

悪い意味にではなく良い意味で、であった。

あれだけ悩まされていた痛みが最初から無かったみたいに消えたのだ。

そして、腕や足に巻かれていた包帯を取るとなに一つ傷もない自分の肌が見えた。

 

魔理沙「すげーッ!すげーよ!!なんなんだあの薬は!?なぁ一方通行!」

 

一方通行「自然治癒力を瞬時に上げる薬だ。だが、難点がいくつかある。それはそいつの肉体の治癒力瞬時に上げる代償として一週間分の体力を消費することと貧弱なやつには使えないということだ。あの薬を飲ンでからは平気だと思うが後々疲れが出てくるぞ。そうなっちまったらしばらく寝たきりになるだろォからそれは覚悟しておけよ。あと、あの薬を飲ンでも平気ってことは魔理沙、オマエは人間だが普通の人間と区別するのは間違いだな。オマエは人間ひとりでじゃ扱えない魔力量を体に秘め、そしてその膨大な魔力をいとも容易く平気に操る。もうそれはただの人間という生物としての次元を逸脱しちまってる」

 

魔理沙「私は人間を辞めちまった、ってか?まぁ、それは確かに正解と言えば正解……かな。私もお前らバケモノの仲間入りしちまってるからなぁ……」

 

一方通行「はァ?」 

 

紫「気になるだろうけどその話は後でにしておきなさい。魔理沙が薬のおかけで重症だった傷が癒えた、これによりここを守る者が増えたわ。さて、一方通行。続きを聞かせてちょうだい」

 

一方通行「……あァ。生者の世界と死者の世界の間の空間に行くことに成功したら後は俺が現世にある霊夢の体に霊夢の魂を戻す。これで蘇生は完了する」

 

紫「魂が抜けた間、霊夢の肉体はどうするの?」

 

一方通行「俺の能力、ベクトル操作で血流の流れは維持しとく。これで体の心配はねェだろう。死後硬直が起こる前には蘇生を成功させるつもりだが、それでも一度死ぬってことには変わりねェンだ。血流の流れを維持させていたとしても、しばらく体を動かすのは無理だな。でも筋肉のマッサージとかすれば早く動けるよう回復するからそこについて問題はない」

 

紫「……………了解。大体は分かったもう十分よ。藍、橙。私と外に出て一緒に周囲の警戒に行くわよ」

 

藍・橙「「はいっ!!」」

 

そして。

八雲紫は八雲藍と橙を連れて博麗神社周辺で警備へと向かう為、部屋から退室する。

 

魔理沙「さて……じゃあ私も紫達に続いて外に出て周囲の警戒に行くとするか。一方通行。霊夢を、私の“親友”を頼んぜ」

 

一方通行「任された」

 

魔理沙「いい顔だな、そして強い決意を宿した眼をしてるぜ。ハハっ、ホントお前は頼りになるやつだよ一方通行。外は任せてくれ、私達が学園都市から横槍が入らないよう全力で警戒しておくからさ」

 

白と黒の魔女・霧雨魔理沙も外へ行ってしまった。

博麗神社の中に残っているのは博麗霊夢と一方通行だ。

 

一方通行「時間がねェからさっさと始めンぞ。霊夢、その場で仰向けになって横たわれ」

 

霊夢「え?なに?私に変なことするつもり?」

 

一方通行「……………………………………」

 

霊夢「ごめんごめん。そんなに睨まないでよ本気で怒ってるみたいじゃない。冗談だって、そのぐらい気付いてよ」

 

一方通行「オマエ……、今、自分がどンな状況に陥ってるか理解してンのかよ?」

 

霊夢「だから……よ。鈍感」

 

一方通行「あァ?」

 

死なずに済むという希望と失敗したら自分のせいで“好きな人”を道連れにしてしまうという不安。

その2つが博麗の巫女の中で衝突している。

 

暗い顔をしながらも霊夢は無理して笑うと、、、

 

霊夢「どうせならアンタの記憶の中に残る私を、笑っている私にしたいの………」

 

一方通行「ナーバスになるなって言っても無理な話か。俺にはオマエが今どンな精神状態なのか計り知れねェ。元気づける言葉すら見つからねェよ_____」

 

突然人は死を宣告されたらどんな気持ちになるのだろうか。

一方通行は数え切れないほど殺意、敵意、憎悪を向けられてきた。

しかしどんなに多い人数で襲われても怪我一つしないで、雑魚どもを蹴散らしてきた。

刃物を向けられても、拳銃を突きつけられても恐怖などしなかった。

重い病気もしてこなかった。

 

分からない。全く分からないのだ。

霊夢がなにを考えなにを思っているのか。

 

だから一方通行は、、、

 

一方通行「____だが、これだけ言わせてくれ。俺を信じろ。いや、俺を信じてくれ、頼む!」

 

霊夢「………バカね、そんなに真剣な顔で言われなくても信じてるわよ。アンタを、ずっと前から。そう、魔理沙を正気に戻してくれたあの時からずっと」

 

そして。

 

霊夢「___アンタに託すわ、私の運命を」

 

一方通行「始めるぞ。あのクソ野郎の計画を全てぶっ壊す」

 

霊夢は仰向けに寝る。

そして、その近くで座る一方通行は深く呼吸した。

 

霊夢「…………前にも見たけど、なんて綺麗な姿」

 

一方通行「チッ、どこがだ。はァ……目は閉じてろ」

 

霊夢「はーい」

 

壁や床に魔法陣が展開される。その数、二桁になるまであった。

一方通行の頭には天使の輪のようなものがあり、背中には白い翼があった。

その姿が恥ずかしかったのか白い彼は顔を合わしてくれなかった。

そして。

霊夢は一方通行の言う通り目を閉じる。

 

一方通行「…………………黒い玉、贈り物(イヴ)は心臓付近にある。それを取り出すに為にはその近くに触れなきゃならねェ。だから、その、なァ。オマエの胸を触ることになるが………我慢してくれ」

 

霊夢「別に気にしなきわ。さっさとやってちょうだい」

 

一方通行「………嫌だとか、思わねェのか?」

 

霊夢「あっ、勘違いしないでよ?どこ誰にだって触られていいって訳じゃないから。信頼してるアンタだからいいって話よ?それにそれは必要なことだって分かってるし、アンタは私の胸を(よこしま)な気持ちで触ろうとしてるわけじゃないってことも分かってるから」

 

一方通行「すまねェ」

 

霊夢「なに謝ってんのよバカ。この話にアンタが謝る理由はどこにもないわ」

 

小さく笑みを浮かべると霊夢は、、、

 

霊夢「____ねぇ、一つ聞きたいんだけど女性の胸を触るのは初めて?」

 

一方通行「当たり前だろォが」

 

霊夢「そう」

 

一方通行「?」

 

どこか博麗の巫女は嬉しそうな顔をしていたが、多分これは気のせいだろう。

 

そして、だ。

一方通行は霊夢の胸の辺りに手を置いた。

その後、ベクトル操作により彼女の体から黒い玉が重力を無視して浮いて出てきた。

それを一方通行は握り潰す形で破壊する。

 

実は一方通行は霊夢に触れた時、驚愕していた。

なんと霊夢の体内に心臓が無かったのだ。

心臓が無くてどうやって生きてこれたか?それはあの黒い玉のお陰なのだろう。

 

心臓がなくては全身に血液が流れるのは不可能。

しかし、一方通行にはベクトル操作がある。

彼は心臓がなくても血管を通して血液が流れるよう血流操作していた。

 

想像していた以上にこれは労力を要することになるだろう。

 

だがしかし。そんなことは関係ない。

 

一方通行はたった1人少女の未来のため全力を尽くすのだ。

 

 

一方通行「…………………“発動”」

 

展開されていた全ての魔法陣を発動させた。

 

 

さぁ、始めよう。

 

 

さぁ、歴史に刻もう。

 

 

前代未聞の大逆転を!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行『これがあの世と現世の狭間かァ。なンにもねェな。まァ当然か。こンなところに住人なンか居るわけもねェし、建物とか建っていたら変だモンなァ』

 

そこはどこまでも遠く果てしなく無限に続いていそうな空間だった。

どうやら幽体離脱の魔法は成功したらしい。

今の状態は魂だけの状態。

しかし能力は使える。と言ってもベクトル操作だけだが……。

 

一方通行『長居は危険か。早く霊夢を見つけてあいつの魂を現世に持って帰らなきゃな。霊夢の体内に心臓はなかったが、そこは俺の模倣能力で新たに心臓を作ってやりゃあどォにかなるだろ』

 

それは地面……、と言っていいのだろうか?

足が付いている感覚があるのは確かたのだが。

 

足元は白い煙で見えないが地面っぽいものはあるらしい。

 

足元の白い煙は周囲にも充満していた。

しかし周囲に広がる白い煙は薄く、なにも見えないってことにはならなかった。

が、しかし。これでは霊夢を探すのは大変そうなのは確かだが、あの面倒臭がりで自堕落巫女が見つかるまで探すしかないのだ。

 

一方通行『そォいや魂だけの状態だってのに手や足とかあンだな。てっきり妖夢の周りをウロウロしているあの雲みてェな状態になるかと思っていたンだが……。まァ、これは好都合だしラッキーってことにしておくか』

 

自分の体に目を向ければ現世の姿形をしていた。

もしも自分がこの状態になっているのなら、霊夢も現世の状態でこの場所に居るのかもしれない。 

 

方向感覚が狂いそうな場所をただただ歩いてく。

あの紅白の巫女が見つかるまで。

 

 

 

そして。そして。

 

そして、だ。

 

一方通行『………見つけた』

 

この色味がない空間では彼女の格好は目立つ。

博麗の巫女の服。特に赤色は。

 

一方通行『探したぞ霊夢。さァ、俺の手に掴まれ。早く現世に帰るぞ。こンなとこ長居していたら気が狂いそォだ』

 

思った通り、彼女も現世と同じ姿形していた。 

一方通行は茫然と立っている霊夢に後ろから手を差し伸べる。

 

が、しかし。

 

一方通行『あン?霊夢……?』

 

博麗の巫女は一方通行の手を掴まず、そのまま前に進み始める。

 

一方通行『オイ、ここに出口なンてねェぞ。俺の力以外じゃここから抜け出すのは無理だ』

 

『………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………』

 

ボソボソと、一方通行には聞こえない声でなにか呟いていた。

 

一方通行『オイ!霊______』

 

追いかけて彼女の肩を掴もうとした瞬間、一方通行の体は後ろに吹き飛ばされ濃い白い煙が充満する地面を転がる。

 

それはまるで“反射”されたみたいだった。

 

一方通行『…………まさか。遅かったって言うのか?』

 

もう既に霊夢の中からもしかすると『前世』として今までの記憶が無くなっているのかもしれない。

一方通行は生者のままこの空間に来れたが霊夢は死者としてこの空間に来た。

その違いで一方通行は記憶はなくなっていない。が、まだ確信はないが霊夢はもしかするとなにか大切な記憶がなくなっているのかもしれない………。

 

最悪な事態。

 

もしも本当に記憶が消失していたら霊夢はそのまま死者となり去ってしまうことになる。

例え命を与えても、その者は霊夢であって霊夢では全く別の誰かさんだ。

 

表情に焦りを見せる一方通行は起き上がると走り出し霊夢の前に立つと幻想郷最強の超能力者は見た。

霊夢の目は虚ろで、博麗の巫女の彼女からまるで生気を感じなかったのだ。

 

一方通行『チッ、オイ!オイッ!!俺が分かるか!?自分が誰だか分かるか!?』

 

『………………うるさい、“あなた”誰よ?』

 

一方通行『____ッ!!』

 

どうやら本当に始まっていた。

記憶の消去。

 

新たな存在として、生まれ変わりの進行が………。

 

一方通行『バカ野郎!!思い出せオマエは博麗霊夢!!昼間からだらだら部屋で寝てたり、宴の場では未成年だってのに酒豪のように酒を何升も飲む!!毎日ダラダラとして面倒くさがりで怠け者なオマエだが博麗の巫女として異変解決に率先していただろ!?』

 

『うるさい』

 

一方通行『ぐ、が……は…ッ!?』

 

紅白の巫女は手を大きく振るう。

すると彼女の背後には御札の形をした赤色の弾幕が出現する。

それを紅白の巫女は一方通行に向かって一斉に放つ。

 

白い彼は後方へ跳躍することで、まず最初の攻撃は回避できたが次に飛んできた弾幕は回避できなかった。

 

一方通行『……………………チッ』

 

自分から『反射』が消えていた。

いや、浮いていると言った方が正しいだろう。

きっと彼女の仕業だろう。

 

まともに弾幕を体に受けてしまった一方通行はダメージを負った。

魂の状態でも傷は負うらしい。

そして、本能的に魂の状態で傷を負えば現世にある肉体も傷を負うことになると理解していた。

 

一方通行(こっちの話は全部無視か。どォする?力で押さえつけるか?だが、それだと…………)

 

腕や頬の傷から血が垂れていた。

痛覚もちゃんとあった。

 

『ここがどこだか分からない。自分がどういった存在なのかも分からない。けど、このまま前に進んでいけばそこに幸せが待っているのは分かるの。邪魔しないでよ』

 

一方通行『…………本当にそこにオマエの幸せかあるなら邪魔しねェよ。けど、俺にはこの先にオマエの幸せがあるとは到底思えねェな』

 

『“あなた”本当にさっきからうるさいわ。これ以上私を不快な気持ちにさせるなら、さっき以上の攻撃を食らわせるわよ』

 

一方通行『…………やってみろよ。俺はなにをされてもここを退かねェ』

 

『うっざ。キモすぎてゲロが出そうだわ。いいわ、上等よ。自分から私の前から消えるよう痛めつけてあげる!!』

 

白い髪の彼は両腕を広げる。

紅白の巫女の攻撃を全て、その身で受けるつもりらしい。

 

一方通行(能力(ちから)に頼っての解決方法だと霊夢を傷付ることになる。それはダメだ。絶対にノーだ。俺は能力を使わず霊夢の記憶を蘇らせる!!)

 

大切な人達は傷付けない。

その誓いは絶対に守る。

 

『消えろ消えろ消えろーッ!!』

 

虹色の光弾。虹色の御札。 

その全ての弾幕は先程の弾幕より威力は桁違い。

 

それぞれ数は50づつ。

もしも全て、その身に受けたら重症なのは確実。

下手したら死んでしまうかもしれない。

 

なのに。

 

一方通行はその場で微動だにしない。

 

そして。

虹色の光弾と御札の弾幕は一歩も動こうとしない白い彼に放たれた。

自分の周りにはいつも身を守ってくれた反射はない。

ベクトル操作を使えば攻撃を防げるというのに、一方通行はあえて全ての弾幕をその身で受けた。

 

爆発。爆発。爆発。

 

弾幕が体に直撃するたび爆発が発生した。

 

魂の状態で傷を負いすぎれば死んでしまうのに、、、、

 

『うそ………、でしょ………ッ!?』

 

一方通行『ここは通さねェ。オマエが行くべき場所は幻想郷だ!幻想郷以外、どこにもオマエを行かせねェ……ッ!!』

 

『なにを勝手に!!“あなた”が私のこと決めないでよ!!“あなた”何なのよ!!私の何だって言うのよ!?』

 

一方通行『それはオマエしか答えられねェよ…………』

 

足がガタガタ震える。

立ってるのだけて一苦労だ。

呼吸だってしづらくなってきた。

視界もぼやけたりハッキリしたりの繰り返し。

あれだけの弾幕を浴びれば立っていられるだけで奇跡だろう。

 

一方通行『俺はオマエじゃねェ。オマエの気持ちなンて分かれるはずがないだろォが』

 

『私の気持ちが分からないなら邪魔しないでよ!!』

 

一方通行『オマエの……、オマエ達の気持ちは分からない。そォだ、分かろうとしなかった、これまでオマエ達の気持ちから俺はずっと逃げてきた。オマエ達が本当は俺のことをどう思ってるか、知ろうとするのが怖かったから……。もしも、本当は俺を恐れていたらって思うと恐怖で体が震えてくる。嫌だ、嫌なンだ。オマエ達に恐れられンのが、嫌われるのが、()けられるのが。誰かといて心が安らぐなンて、初めてだった。オマエ達と過ごす毎日が無くなったらって思うのが俺は怖いンだァ!!』

 

『はぁ?なにそれ???』

 

一方通行『…………これはワガママだ。もしも本当にこの先にオマエの幸せがあったとしても俺はオマエやあいつらの居ない幻想郷は嫌だ。だからこの先は行かせない。オマエの気持ちなンて知らない。これは全部俺の為、オマエの前に立ち塞がるのは俺の為だ!!』

 

『さっきこの先に私の幸せがあるのな邪魔しないって言ったじゃない!!』

 

一方通行『けど、幸せがあるとは思えないとも言った』

 

『……………なんで、“あなた”と話していると胸が締め付けられたように苦しくなるのよ。なんで、“アンタ”を傷付けたら私も痛くなるのよ!?』

 

一方通行『…………それはオマエだからだ、霊夢』

 

『くっ、うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァーッッッ!!!!』

 

絶叫を上げながら紅白の巫女は荒々しく一方通行に向かって走り出した。

そして、そのまま体当たりしてきて一方通行に馬乗りする形となった。

 

すると。

 

『分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からないの!!!!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れーッ!!!!お前は不愉快なやつだ!!私の前から消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろーッ!!!!』

 

紅白の巫女は一方通行の顔面を殴りつける。

力任せの殴打に続く殴打。

それを何度も、何度も。

 

何度も。

 

固く握られた拳で殴られるたび、周りに血が飛び散る。

鈍い音が周りへ響き渡る。

 

『はぁ、はぁ、はぁ。痛い、痛いよ………、なんで殴ってる私の方が痛い思いをしてるのよ。こんなの変でしょ、普通逆でしょッ!?』

 

一方通行『……………………れ、い……………む____』

 

『ッッ!!!』

 

一方通行『_____か………え、ろ…………う。あい………つ、らの……………ところ…………に………』

 

『う、う、う、う、うるさいッッッ!!!』

 

腕を上げ、振り下ろし白い彼の顔面を殴りつけようとしたが、、、

 

『腕が、動かない!?どうして!?』

 

紅白の巫女の拳は一方通行の血で真っ赤に染まっていた。

 

ぽと、ぽと、と。

雫が一方通行の顔に落ちていく。

それは赤くない。

“透明”だった。

 

『“アンタ”の傷付いた姿を見ていたら不思議と涙が出てきた………。なんで、なのよ。どうしてなのよ!?ねぇ、ねぇ答えてよ“一方通行(アクセラレータ)”!!』

 

はっ?なんてわたしは言った?

一方通行(アクセラレータ)

一方通行(アクセラレータ)とは、なんだ?

それは名前だ。いったい誰の名前?

分からない。分からない。

きっと答えはわたしの頭の中にある。

聞いたことないが、聞いたことがある気がする。

その名をした人間とは会った事がある気がする。

 

『う、うが、がが、ぃぃぃぃぃぃぃぃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』

 

今までに感じたことがないほどの激痛。

その痛みが頭を襲う。

 

紅白の巫女は頭を抱え激痛に悶える。

 

一方通行『霊夢…………』

 

優しく。包むように一方通行は霊夢を抱き寄せる。

 

 

 

霊夢『わた、し。なんてことを………アンタをいっぱい傷付けて……………』

 

一方通行『オマエは、悪くない………、オマエはなにも悪くない……。気にするな』

 

霊夢『ごめんなさい、ごめんなさい一方通行……ッ!!』

 

嗚咽するほど霊夢は泣いていた。

そんな彼女の頭を優しく撫で、、、

 

一方通行『あァ、良かった。ちくしょう、本当に良かった………』

 

学園都市では怪物と呼ばれていたとは思えない、安心したように柔らかい笑みを浮かべていた。

一方通行の優しい言葉に霊夢は更に涙が溢れてしまった。

 

一方通行『落ち着いたか?』

 

霊夢『うん………』

 

一方通行『別に顔を逸らさなくてもいいンじゃねェ?オマエの泣き顔ならここに来る前に見たし、今更恥ずかしがっても遅いと思うぞ?』

 

霊夢『ッ!?アンタねぇ!!人が気にしてることをそうやってハッキリと口に出して言うのは人としてどうかと思うけど!?』

 

一方通行『はっ、いつもの調子に戻ったな』

 

霊夢『……………はぁ。そう言えば、アンタってそういうヤツだったっけ』

 

弾幕による爆発で二人の周囲の白煙はなくなっていた。

そのお陰で地面を見ることができたが、その地面はまるで鏡のように一方通行と霊夢の姿を映していた。

 

一方通行と霊夢はその鏡の地面に座っていた。

 

一方通行『そろそろ、戻らなきゃな』

 

霊夢『そうね。あまり長いと皆が心配しちゃうからね』

 

一方通行『まずはオマエからだ。気を楽にしろ』

 

霊夢『ちょっと待って。アンタは?一緒じゃないの?』

 

一方通行『こンな興味深いところにせっかく来たンだ。俺は少しこの空間を調べてから現世に戻ることした。大丈夫だ、直ぐに済ませてオマエの後を追う』

 

霊夢『………ほどほどにね』

 

一方通行『あァ』

 

ぽん、と博麗の巫女の彼女の頭の上に手を乗せ撫でてから霊夢の魂を現世に戻した。

 

一方通行『死者の蘇生は“絶対禁忌”。それを行った者は代償として天罰が下される……………だっけか_____』

 

あの死者の蘇生について書いてあった本のなかに書いてあった。

本の著者は気付いていたのだ。

死者の蘇生は絶対にやってならないことだと。

もしも死者の蘇生なんてことをすれば、それを行った者はタダでは済まないと。

でもそんなことはどうでもいい。

この身、この命がどうなったって死んだ妻にもう一度会う。

それだけが“願い”なのだから。

 

一方通行『________さァ、来いよクソったれ。俺は天罰の一つや二つ受けた程度じゃ死なねェぞ』

 

白い頭の彼は立ち上がると両腕を広げて顔は上に向けていた。

 

回避なんてしない。逃げもしない。反射もしない。

これからこの身に降りかかるものはありのまま受ける覚悟だ。

今の状態でも立っているだけで辛いというのに、だ。

 

そして。そして。

 

一方通行に天罰が、、、

 

眩しすぎて周囲が見えなくなるほどの白く輝く十字架の形をした巨大な光が落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん。う、あ……あぁ」

 

霊夢は目覚めた。

復活に成功したのだ。

ドクン、ドクンと。自身の心臓の鼓動音が聞こえる。

 

一度は死んでいた肉体。

そのためか。目を開いたところで見えるのは白い景色のみだった。

しかし、段々視界に色がついてきた。

 

………………見えた、色は、、、

 

霊夢「____ッ!!きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!??」

 

全面赤一色の部屋。

天井からはポトポトと赤い雫が落ちていた。

 

その色の正体を霊夢はすぐに理解した。

 

霊夢「一方通行ッ!一方通行ッ!!しっかりして一方通行ッ!!」

 

体は満足に動かせない。

起き上がることはまだ難しい。

霊夢はどうにか首だけは動かし自身の体に上体を乗せて倒れる一方通行を心配していた。

 

それから何度も彼の名を呼ぶが返事はなかった。

呼吸しているのかどうかは不明。

 

しかし、確かに分かっているのは彼は全身血塗れだということだ。

誰が見ても分かるぐらいの重症。

 

魔理沙「どうしたんだ霊夢ッ!?」

 

霊夢の叫び声を聞いて慌てた様子で魔理沙が部屋へと入ってきた。

 

橙「……………こ、これは」

 

藍「この部屋の中でいったいなにが起きたというんだ?」

 

次に、橙、藍。

そして、、、

 

紫「一方通行ッ!!一方通行ーッ!!」

 

大妖怪・八雲紫も霊夢のところへ駆けつけてきたのだが、

 

紫「あっ、あぁ。一方通行の体温が、体が冷たくなってる……………」

 

その瞳から溢れる涙を拭うこともしないで紫は一方通行のところへ駆けつけ、普段ある白色がほぼ見えなくなるほど血塗れの彼のことを抱き寄せた。

そして、紫の言葉を聞いた橙は涙を流し膝から崩れ落ち、藍はただ茫然と立ち尽くすのみ。

 

霊夢、魔理沙もあまりの衝撃になにも言葉が出てこなかった………。

 

紫「………一方通行ッ!?」

 

「…………悪りィ……な……部屋ァ…汚しちまった……」

 

彼女達の声に反応したのか、一方通行は閉じていた目が開くが眼球まで鮮血に染まっていた。

そんな真っ赤になった目じゃ視界は赤いカーテンに遮られなにもかもが赤く見え、正確に視界にとらえてはないだろう。

しかし、声だけでも誰が近くに居るのは分かっているのか血だらけになりながら、一方通行は小さくそう彼女らに呟いた。

 

 

 





次回予告

一方通行が霊夢の蘇生に全力を尽くしていた時に、一つの戦いがあった。

その戦いは周囲のものが片っ端から吹き飛んでしまうくらい激しく、天変地異(てんぺんちい)すら引き起こすほどの強大な力と強大な力の衝突。

次回・第四章・第十三話

完全氷結(パーフェクトフリーズ)VS未元物質(ダークマター)


マイナスの真髄!!真なる覚醒!!才能開花!!

刮目せよ!!

これが少女が試行錯誤の末に出した答え!!

氷の妖精の進化した姿ッ!!辿り着いた“最終形態”!!

氷の妖精は超能力者(レベル5)第二位と熾烈な戦いを繰り広げる。

少女の体は戦闘の中で傷を負っていく。
しかし、全ては大切な皆が居る幻想郷を守るため。

不撓不屈。鋼の心。鉄の魂。
自身の底に眠る力を引き出し、全力を持って氷の妖精は屈することなく第二位に挑戦する。

「万物は我が下にある。跪け!怯ろ!あたいの世界の中で凍え死ねェ!!」

「俺の未元物質(ダークマター)が混ざったこの世界の中で死んでいけ」

暗部組織『スクール』のリーダー。

学園都市から送り込まれた最後の刺客。

学園都市に7人しかいない超能力者(レベル5)、その第二位。未元物質(ダークマター)。始動ッ!!















幻想郷が崩壊するまで、、、、、『3』


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13話


完全氷結(パーフェクトフリーズ)VS未元物質(ダークマター)


※誤字脱字などのミスが多々あると思います。
それをご了承のうえ読んでいただけると幸いです。
しかし、そういったミスが多いのをご不快に思う方にはブラウザバックをオススメします。



 

これは……、一方通行が霊夢を生き返らせている最中に起きた話。

 

 

「ここが『幻想郷』………か」

 

顔がとても整っているせいかよりホストのような格好に見える服を着た茶髪の青年。

彼は学園都市・超能力者(レベル5)序列“第二位”の垣根帝督。

 

垣根「チッ。アレイスターのクソ野郎からある程度この世界の情報は提供されているがここまでとは。学園都市と比べると随分文明が遅れてるな『幻想郷』は。クソっ、こんな電話も車もないところで目的の人1人探すのは苦労させられる。地道にこの世界の住人を探して、手当たり次第聞いて情報を集めていくしかねえのか?」

 

学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリーが学園都市から幻想郷に送り込んだ最後の暗部組織。名は『スクール』。

第二位の彼はその暗部組織のリーダー。

『スクール』には彼以外の構成委員も居るのだが今回の仕事には垣根帝督は同じ暗部組織のやつらは連れてこなかった。

それは今回の仕事では足手纏いになると考えてだった。

 

垣根「それにしてもアレイスターのクソ野郎、暗部の人間や他の学園都市の上層部のやつですら知り得てなかった秘密をどれほど隠し持ってやがんだ?別世界に空間移動(テレポート)できるこの俺でもどんなもんで製造されてるか分からねぇものまで持っていやがった。第一位をぶっ殺し、俺が第一位の座に君臨すれば今以上にアレイスターのクソ野郎がまだ隠している機密情報を得れる。あともう少しだ、あともう少しで俺は『第一候補(メインプラン)』になれる。『直接交渉権』まであともう少し」

 

超能力者(レベル5)だけ序列が存在している。

その序列は表からもそして裏からも学園都市全体の流れを操っている学園都市統括理事長により明確に決められている。

この序列はただ“能力の強さ”だけを重視して決められたものではない。

だが、第一位や第二位の他者を寄せ付けない圧倒的な強さは学園都市で暮らしている誰もが認知していることだった。

そして。こんな話があった。

第二位と第三位の間には絶対に埋められない差があるが、第一位と第二位の差はそれ以上だと。

これには学園都市の上層部の大人達も同意見だろう。きっと、学園都市統括理事長も………。

しかし。しかし、である。第二位の垣根帝督は第一位の一方通行に挑んだとしても“勝てるという自信”があった。

『勝算』というものが第二位の彼の頭の中にあるのだ。

 

垣根帝督はニヤリと口元を歪ませる。

アクシデントとは起きない。自分の能力と自分の優秀な頭脳をもってすればこれから行うことは全て完璧に、そしてうまくいくと確信しているから出た笑みであった。

 

垣根「にしても、歩いても歩いても鬱陶しい草木ばかり。俺の能力、未元物質(ダークマター)を使って人が多く居そうな場所に移動したほうが時短になるか。いいや、やめておこう。“あの姿”は目立つ。アレイスターのクソ野郎は俺達に敵対しているやつが居ると言っていたしな。できることなら、一方通行の野郎以外の戦闘は避けてぇしやっぱり地道に歩いて移動するしかねえか。面倒くせぇことはゴメンだ」

 

学園都市には車や電車があるので遠い場所にも楽に、そして疲れることなく移動できる。

が、しかし。

この幻想郷とやらには車や電車など移動手段として使えそうなものはあるように見えない。

 

ここは不本意だが、自分の足で歩いていくしかなさそうだ。

垣根帝督。超能力者(レベル5)第二位の能力の名は未元物質(ダークマター)

彼の能力を使えば歩いて移動なんて面倒なことしなくても済むのだが、あまり目立つことは避けたいのと“あの姿”は垣根帝督自身、できることならなりたくないので能力を使っての移動はやめることにした。

 

垣根帝督は静かに舌打ちをした。

 

と、次の瞬間だった。

 

第二位に向かって空から一つの氷の刃が降ってきた。

 

垣根「…………………誰だ?」

 

その氷の刃は自然現象で出来たものではない。

誰かが能力を使って攻撃を仕掛けてきたのだと第二位は分かっていた。

 

垣根帝督は自分に攻撃を仕掛けられたといち早く気付くと未元物質(ダークマター)によって生み出された第二位の彼の背中から伸びる光を帯びた白い6枚の翼でその氷の刃を防いだ。

この翼は垣根帝督の意思とは無関係に未元物質(ダークマター)を使用すると発現してしまうらしい。

 

「分かる、分かるぞ。ぱっと見ただけでもお前は学園都市からの『刺客』だとな!!つまりお前はあたいの敵ッ!!」

 

垣根「探す手間が省けたな」

 

奇襲を仕掛けた少女の背中には氷の羽が6枚あった。

垣根帝督は空に浮いているおかしな姿をした少女に目を向ける。

 

垣根「お嬢ちゃん。一方通行(アクセラレータ)って野郎知ってるか?いや、知っているはずだ。アレイスターが幻想郷サイドにあえて流した情報を知ってるってことはお前は一方通行の近くに居るやつってことになる。もしも正直に一方通行の居場所を教えるならさっきの攻撃はなかったことにしてやるが?どうするお嬢ちゃん?」

 

チルノ「い、や、だ☆一方通行はお前みたいな三下に構ってる暇はないんだ。あたいがボロ雑巾にして学園都市に送り返してやるよ」

 

垣根「そうか……。じゃあ力尽くで一方通行の居場所を吐かせることにするか、ガキを痛めつけるのは趣味じゃねえんだけどな。だが俺の大いなる目的のためだ。口が利けるぐらいには手加減してやるが、それでもこれからお嬢ちゃんには数年は寝たきりの生活になってもらう。もしかしたらもう二度と立って歩けなくなるかもしれねえ。俺と戦うってことはそういうことって、まず最初に理解してほしいな。それでもか?」

 

チルノ「あーあーハイハイハイ、自分の強さに自信があるんだろ?分かった分かったって。じゃあさっさとかかってこいよ、その自信を粉々に砕いてやるから」

 

垣根「なめるなよ、クソガキがァァァッッ!!!」

 

今日始めて会った少女だ。

しかもここは幻想郷。学園都市ではない。

だから自分が超能力者(レベル5)であり、しかもその第二位と言ってもなにがなんだか分からないだろう。

ここがもし学園都市だったら第二位の自分に挑むというのがどれだけ愚かなことだと説明するのは容易いのだが……。

しかし、もう一度確認するがここは幻想郷。超能力者(レベル5)第二位、垣根帝督と今から戦うのだと幻想郷で生きてきた少女は知る由もない。

だから仕方がないのだろう、あのむかつく態度と第二位の彼に取るのは。

でも。だが、だ。そうだと知っていても氷の妖精の人をバカにするような態度は垣根帝督を腹立たせるのに十分(じゅうぶん)すぎた。

 

激怒した第二位はその背にある白い6枚の翼から烈風をチルノに放つ。

しかし、氷の妖精は更に上空へ飛ぶことによりその烈風を避けた。

 

チルノ「さて、やるかーッ!出て来いあたいの分身ッッ!!!!」

 

そう言い放つと上空に浮いているチルノ自身を含めると氷の妖精の数が100となった。

 

チルノ「この森にはあたいとあいつ以外の生き物は居ない。ならば!!あたいは安心して戦える!!」

 

そして。

100人のチルノは大地に向けて全長5メートルはある氷の塊を無数に放つ。

 

垣根(あのガキなにやってんだ?あの攻撃は端から俺に向けてじゃねえ、なにか狙いがあるのか?)

 

背中に氷の羽がある変な姿の少女が大きな氷の塊を地面に向かって落とし続ける。

攻撃は攻撃なのだろうが、その攻撃からは敵意や殺気を感じれなかった。

 

垣根帝督はチルノや周りの様子を観察していた。

 

そして。

あるものに注目する。

 

それは、、、

 

垣根「冷えてきたな、あのデケェ氷そのものから“冷気”が発せられているのか。…………チッ、あのガキの狙いが分かった!!」

 

すると、垣根帝督はチルノの居る上空へ6枚の白い翼を大きく広げてから羽ばたかせ飛翔する。

 

垣根「“まさか”と一回疑ったがこれほどのパワー。不可能じゃねぇ______」

 

_____“一帯の大気温度を下げることが”。

 

垣根帝督の読みは正しかった。

 

チルノ(誰がクソったれな悪人と真正面から正々堂々戦ってやるものか。あたいは氷の妖精。冷たい場所で戦うのは大の得意!だけど、相手は能力者だという部分を除けばただの人間。人間は極端な猛暑の中や極寒の中では頭の回転が鈍くなる。学園都市の能力者は能力を使用するためにはどうしても演算が必要。思考能力が低下すれば能力の発生が遅れたり能力の威力が少しは低下すると考えられる。もしもそうならなくてもここまで寒くさせれば体の動きは鈍る。我ながら完璧な作戦ッ!!)

 

氷の妖精が放った氷の塊は半分地面に埋まっていた。

その氷の塊から冷気が発せられている。

静かにじわじわと、だが確実に森は凍っていき三分も経たずに森全体が凍りついてしまった。

 

チルノは自分の下に広がる森を凍らせた。

気温はマイナスにまで到達していた。

北極とほぼ同じ気温まで冷えきっていた。

 

チルノ「………にしても寒っ。ちょっとやり過ぎちゃったな。能力が強くなりすぎちゃってまだ力の制御がむずかしいんだよな〜。あたいが強くなれるよう修業してくれている時に、一方通行も力の制御の特訓をしていたけどすぐに全力を出した状態の能力の制御が完璧になってた。『どンなもンもコツさえ掴めば後は楽なモンだ』とか言って。天才肌の人間と一緒にするなっての。あたいのようなやつはコツコツ努力を重ねなきゃ無理なんだよ」

 

ゆっくり腕を上げた。

そして、一回指を鳴らす。

するとチルノが創り出した分身は粉々に砕け、小さな氷の粒になって凍った森にゆったりと降っていく。

 

チルノ「さて……、じゃあ気を取り直してあのクソほど似合わない羽を生やす悪人を料理してやるか」

 

そう言ってチルノは垣根帝督に視線を向ける。

しかし第二位の彼は6枚の翼に包まった状態で動かない。

 

チルノ「地上からこの空中に昇ってきたのは褒めてやる。お前の読みは正しい、正解だよ。あたいの能力により作り出された氷から冷気が発せられていて、その冷気によりこの極寒の現象が起こっている。なら、その現象の(みなもと)となっているところから離れれば、まぁ寒くないんじゃない?と言っても地上と空中の気温の差なんて少しぐらいしか変わらないと思うけどねッ☆」

 

次にチルノは白い翼で出来た球体に片手を向ける。

 

チルノ「そのままでいいの?身を守ってばかりじゃあたいには勝てないよ」

 

氷の妖精の背後には8つの氷の塊があった。

それは音を立てて割れていき、氷の塊から氷の棘と形成されていった。

そして、チルノはその8つの氷の棘を白い翼の球体に放つ。

 

だが、、、、

 

チルノ「…………硬いな。けど残念♪あたいの力にはそんな守りは無意味だよ。そんな状態じゃあたいの声が届くか分からないけどもしかしたら聞こえてるかもしれないし一応言っておくね。さっきも言ったけだあたいが作り出した氷は冷気を発している。その冷気は周りの気温をマイナスにまで下げるほどのものだ。じゃあその氷が直接当たってしまったら?答えは下を見れば分かるよ。そう、有無を言わさず凍り付いてしまうんだよ」

 

その言葉通りだった。

氷の棘から垣根帝督は身を守れた。

しかし氷の棘が刺さっていた白い翼は段々を凍っていく。

 

チルノ(こいつはもう終わりだな……。凍って動かなくなったら永遠亭のやつらのところまで持っていってやるか。面倒だけど、一方通行からの頼みだしね。あいつにはあたいが強くなれる助けをしてくれた恩があるし、しょうがないから頼みを聞きてやるか)

 

チルノは静かに白い6枚の翼で出来た球体が凍っていくのを眺めていた。

 

このまま決着がつくと思っていた。

 

が、である。

 

チルノ「……………光?」

 

白い6枚の翼の球体全体が凍る前に、その翼の球体は発光し始めた。

 

チルノ「眩しいな、しかもこの光から熱を感じる。…………熱ッ!?」

 

あまりにも眩しいため手で目を遮る。

しかしその光に当たった場所が熱くなっていた。

 

チルノはこのまま危険だと思いその発光する翼の球体から距離を取ると。

光はまだまだ強くなり、、、

 

そして。

 

地上の氷を全て溶かした。

一帯の気温も元通りである。

 

垣根「あー、寒すぎて死ぬかと思ったわ。クソっ、俺に死ぬかもと思わせるやつがこの世界に居たとはな、面白ぇところじゃねぇか幻想郷」

 

チルノ「あれー?思ったよりピンピンしてるな。まっ、さっきのは“試し目的”でやっただけだ。これは全然強がりじゃないよ、本当だもん」

 

氷の妖精の言葉は本当である。

もしも他の暗部組織の『アイテム』『グループ』がチルノと遭遇していたら先程の森の全体をも凍らせる攻撃だけで全滅していただろう。

 

チルノ(あたいの氷を溶かすほどの熱も操る、か。風を放つこともできてたしあいつの能力はどんな能力なんだ?できることが多過ぎてどういう能力か分からないな。まずは相手がどういう能力なのか、それから探った方がよさそうだな。あいつはちょっと……ヤバそうな感じがするし)

 

言葉にはできないが肌でチルノは感じ取っていた。

あの翼を背中から生やす青年は危険だと。

 

チルノ「じゃあこっから本当の勝負といこうか……ッ!!」

 

またしても氷の塊を無数に背後に設置する。

そしてそれは氷の棘の形を変えた。

やってることはさっきと同じこと。

 

しかし違うのは数である。

さっきより氷の棘の数が10倍以上もあった。

 

チルノ「さぁ、これだけの数捌ききれるかーッ!?」

 

今度は一斉にではなく連続で放つ。

氷の棘が飛んでくる速度は弾丸と大差なかった。

だが言ってしまえばそれは無造作な攻撃だった。

 

しかし、一つでも当たってしまったり掠ってしまったらアウト。

だから垣根帝督は自分に向かって飛んでくる氷の棘を全て空翔けて回避する。

 

チルノ「ッ!?あいつ避けながら攻撃を……!?」

 

大きな竜巻が迫ってきていた。

チルノがそれに気づいたときにはもうあと1メートルのところまで来ていた。

チルノはそれを右に大きく移動して躱す。

 

チルノ「まだ足りないか。ならァッ!!」

 

氷の妖精の氷の羽が一回り大きくなった。

彼女の周りの気温は下がっていく。

もしも今、チルノの近くに行けば嫌でも白い息が出てしまうだろう。

 

ババババババババババッッッ!!!!

遠くからでもハッキリ見えるくらい大きな氷の結晶が30近く展開する。

 

チルノ「特別に本物の弾幕ってのを拝ませてやるッッ!!!!」

 

氷の妖精が自身の後方に展開した氷の結晶からは青い光弾が数え切れないほど撃たれた。

その光弾も全て冷気を有している。

そうだ。避けるなんて不可能と思わせるほど撃たれた光弾に一発でも当たってしまっただけで全身が凍りついてしまうのだ。

 

垣根「風も……凍らせるか」

 

弾幕を押し返そうと烈風を放つが、その烈風は凍り砕けてしまった。

 

垣根「全部避けきるのは無理か、全て正面から撃ち落とすしかねぇな」

 

そして。

垣根帝督は背中の翼が浴びる太陽光を人を殺めることが可能になるまで引き上げ、そしてその太陽光を元に作られた白く光る光弾を青い光弾に打つけるように放った。

 

 

氷の妖精と超能力者(レベル5)第二位の間では青い光弾と白い光弾が打つかり合い爆発音が鳴り響いた。

 

2人の放つそれぞれ光弾の衝突。それは10分ほど続いた。

 

チルノ「へへっ、ちょっと本気でやったんだけどな。あたいの弾幕全て撃ち落とすか………」

 

垣根「次はこっちの番だ」

 

白い6枚の翼を大きく広げるとその翼は発光し、次は浴びる太陽光をレーザーのようにして放つ。

 

垣根「お前の能力は冷気を操る能力。広範囲の気温を下げるだけじゃ留まらず森全体も凍らせるほどの強力な冷気。能力は間違いなくレベル5クラス。だがそれでも俺には勝てねえよ」

 

チルノ「弾幕ごっこを多くやってきたあたいにそんなのが_____」

 

正面から飛んできたレーザーを避けたと思ったが避けたはずのレーザーがチルノの顔を掠めた。

 

チルノ「____なんで後ろから……?」

 

垣根「この俺に……『未元物質(ダークマター)』に常識は通用しねぇ」

 

チルノ「あたいに当たるまで誘導するビームか!?」

 

レーザーが掠った部分からは血が頬から顎へ流れていた。

痛みはある。

しかし痛いからといってその場で止まってしまっていたらあの背中に白い翼があるやつが放ったレーザーに体を撃ち抜かれてしまう。

 

空を高速で飛行して氷の妖精はレーザーを避けていく。

 

チルノ(この数、どうする!?)

 

チラッと後ろを見ると自分を追いかけてくるレーザーの数が増えていた。

 

チルノ「このまま逃げていても埒が明かないか。こうなったら!!」

 

追いかけてくるレーザーの数だけ攻撃を防ぐ盾として今までのより更に強固な氷の結晶を展開した。

 

が、しかし。

 

チルノ「が……ッ!?」

 

レーザーは防げた。

反撃に氷の槍を生成しそれを投げ飛ばしてやろうとしたが、チルノの腹部に垣根帝督が鞭のように撓らせて大きく振るった1枚の白い翼が直撃していた。

 

チルノ「う……あぁ……っ!?」

 

攻撃が直撃してしまったチルノはどこかに吹き飛ぶことはなく、その場で動きが止まってしまう。

普通ならあれ程の物量で殴りつけられなら吹っ飛ぶのは当然。

しかしそれが起こらないということはこの現象はやつが起こしているのだろう。

 

そして、だ、追撃がきた。

垣根帝督は高速でチルノに接近すると次は2枚の翼を束にしてそれで氷の妖精を上から殴りつける。

 

が、しかし。

その攻撃も氷の結晶の形をした氷壁で防ごうとするも、その氷の結晶の氷壁はガラスのように砕けてしまいまたしても白い翼の攻撃が体に直撃してしまう。

 

チルノ(完全に戦闘状態となった今のあたいの体から冷気が放出している。その冷気の影響でどんな攻撃であろうと五感のどれかであたいが認識すれば当たる前に凍り止まるはずなのにやつのあの天使みたいな白い羽は凍らなかった。あいつ羽も撃ってきたビームと同じく、あたいの冷気を突破できるだけの熱を纏ってやがるのか……ッ!)

 

斜め下に体が落下していくが、チルノは地面に激突する前に空中で体を静止することに成功させた。

 

垣根「ほら、さっさと一方通行の居場所を吐けよ。これ以上痛い思いはしたくねぇだろ?もうお前の能力の弱点は完全に掴めた。これ以上やったって負けは目に見えている。大体、なんで多くやつから死を望まれてるあのクソ野郎なんて庇うんだ?理解できねぇ」

 

チルノ「お前あたいよりバカだな!!答えはすっごく単純(シンプル)さ!!お前達は一方通行に死んでほしいって思ってるかもしれないけどな、あたい達は一方通行に生きてほしいって思ってる。だからだよバーカ!!」

 

垣根帝督は徐々にチルノに距離を詰めてきた。

『また新たな攻撃を仕掛けてくるつもりなのかもしれない』そう警戒してチルノは氷の剣を2本生成して、そしてその氷の剣を両手に1本ずつ握る。

 

チルノ「それに、大切な仲間を誰が敵に売るかァ!!」

 

垣根「まだ俺が優しくしてやってる間に吐いた方が身の為だ。俺は敵と判断し殺すと決めたら相手がどんなやつだろうと確実に殺す」

 

第二位はつまらなさそうな顔をして手で髪を風に靡かせる。

 

チルノ「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!ははははははははははははははははははははははははははっ!!!」

 

垣根「?」

 

チルノ「全然効くかそんな脅し文句!!それになんだなんだその余裕の態度は!?もう勝った気か!?トドメも刺せてないのに!?」

 

垣根「記憶力ゼロか。お前は一方通行と繋がりがあり、俺が探している一方通行の居場所を知っている。あのクソ野郎の居場所を吐くまでは殺さねぇように手加減してやってんだよ」

 

チルノ「ははっ!!本気が出せなかったから負けたとか言い訳されるのも癪だ。こうしよう、あたいを心の底からお前には勝てないと思わせろ。そうしたら教えてやるよ一方通行の居場所を!!」

 

垣根「まだこっから俺に勝てると思ってんのかよ?こっちはお前の弱点を完璧に把握しちまってんだぞ?」

 

チルノ「余裕余裕♪超余裕♪だってまだあたい全然本気出してないもん」

 

垣根「チッ、これだからガキは嫌いなんだ。負けず嫌いで目の前の現実もまともに見えちゃいねえ。わかった、お前は俺に絶対に勝てないと絶望させてやる」

 

チルノ「あたいを絶望させる?お前ごときができるかよ」

 

垣根(消え_____)

 

氷の妖精の姿が消えた。

それに驚いた時には垣根帝督の背中に衝撃が走る。

なんとチルノに背中を思いっきり足裏で蹴り飛ばされたのだ。

 

垣根「ガキがァッ!!」

 

すぐに振り返り翼を鋭くして放つ。

しかしまた、そこには氷の妖精の姿がなかった。

 

垣根「ッ!?」

 

ギャシャン!!!

垣根帝督の背中にある6枚の翼。

それが全て一瞬で切り刻まれていた。

氷の剣で斬られたのだ。

 

少女の能力によって作り出されたもの全てに冷気が宿っている。

氷の剣はチルノの能力によって作られたもの。

つまり、氷の剣も冷気が宿っている。

 

斬る。凍らせる。砕き、そして破壊する。

これらを同時にチルノはやってのけたのだ。

 

チルノ「落ちろ。そして、潰れろ」

 

一度の攻撃にしか使えないだけではなく、その氷の剣は特別製のため一度に何本も生成することは難しい。

チルノにとってそれは“切り札”の一つだった。

役目を終えた氷の剣は細かくなって砕け散る。

 

しかし。追撃はあった。

チルノは天へ腕を伸ばすと手のひらには数センチ浮いた状態の巨大な氷の塊があった。

その氷の塊の尖っている部分があり、そこから翼が無くなって体が重力に従い落下していってる垣根帝督に向かって巨大な氷の塊に纏われている冷気を操り投げ落とす。 

 

一見。これは絶体絶命に見えるだろう。

が、第二位の顔には余裕が見えていた。

また6枚の翼を背中から生やすとその場で静止して硬化させた6枚の翼を氷の塊へ打つける。

 

チルノ「へー、また生えてくるんだそれ。あははははっ!!まるでトカゲの尻尾みたいだ!だけど無駄だよ。さっきまでの氷とはその氷は強度も発する冷気も段違いだからね」

 

触れた部分から白い翼は凍っていく。

しかし。しかしだ。

 

垣根「ウオオオオオオあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーッッッ!!!!!

 

本気を出した時に出る雄叫び。

それは遠くまで木霊する。

 

氷の塊に押され地面に落ちて行っていく第二位。

だが、地面に打つかるよりも前になんとか垣根帝督は巨大な氷を受け止めることに成功した。

垣根帝督はこの戦闘の中で初めて安堵した息を漏らすと受け止めた巨大な氷を背中から生えた白い翼で砕こうと力を入れる。

と、その時である。

 

チルノ「言っただろ“無駄”だって_____」

 

_____こっちが本命だ。

 

氷の妖精は小さな少女から出た声とは思えない低い声で呟く。

 

無慈悲の攻撃。

まず最初に止めた氷の影に居るため“次”が見えていなかった。

 

更に、更に大きな氷の塊を垣根帝督に落とされた。

離れた位置から見れば(のろ)く見えるが氷の落下速度はとても速かった。

その速度。時速二百三十Km。

気づいたときには既に遅かった、というやつだった。

 

時速二百三十Km。

そんな速度で落ちてきたら、まず最初に垣根帝督が止めた氷の塊を衝撃で砕いてしまうかと思いきや次に落ちてきた氷の塊はなんと最初に落とした氷の塊とまるで磁石のようにピッタリくっついたのだった。

では、衝撃はどこにいった?

 

それは氷から氷に伝わり、、、

 

何一つの言葉も発せられず、氷から放たれた冷気により6枚の白い翼はその瞬間うまく機能せず垣根帝督は巨大な氷の塊を上にして地面に激突する。

 

チルノ「決まった……。しかも完璧に。普通の相手ならここで終わってる。けど、やつは“普通じゃない”」

 

警戒はまだしていた。

敵は格下だと思っているが、それでも一瞬の油断でこっちが劣勢に立たされる可能性は十分にあるとチルノは考えていた。

 

チルノ「はっ、やっぱりまだ意識はあるか。しぶとい相手だな」

 

風を切り凍りながらでも槍のように飛んできた白い翼。

もうこれが誰のものなのかとか考察してなくても分かる。

 

氷の妖精はその翼を回避すると空一面に小さな氷の粒を作る。

 

チルノ「これに当たれば怪我だけじゃ済まないぞ!!体に風穴開けたくなきゃ必死に防御してみなァァァッ!!」

 

そして。

一斉に大地に降り注ぐ氷の粒。

それは地面に生えている木を貫き、地面に無数の穴を作る。

チルノが作った氷の粒の硬さは鉄よりもあった。

 

銃弾よりも硬い小さな物体が恐ろしい速度で無数に落ちてきていると想像すればいい。

 

チルノ「あたいが上でお前が下。どっちが有利でどっちが不利なのかこれは一目瞭然ッ!!上であることを活かして遠慮なく、一方的に仕掛けさせてもらうッ!!」

 

敵の位置はハッキリと分かる。

例え草木の影に隠れようと、透明化しようとチルノは相手の正確な位置が分かるのだ。

 

垣根帝督の位置が分かるチルノは超能力者(レベル5)・第二位の真下から巨大な氷の棘を出す。

それはやつの体に傷を負わせるため。

 

チルノ「はははははははっ!!無駄無駄ァ!!遠くからでもお前の居場所は分かるぞ!!」

 

空からうっすらとだが見えた。

垣根帝督はチルノの攻撃を避けるため木を薙ぎ倒しながら地上スレスレの低空飛行で高速に移動していた。

 

チルノ「とった!!」

 

進行方向を読んでチルノは垣根帝督の前全てに冷気の烈風を吹かせる。

ぐわっ!!と翼を大きく広げると第二位の彼は急停止した。 

もしも危険を察知できずそのまま進んでいたら今頃氷漬けの世界の住人となっていただろう。

が、しかし。チルノの攻撃は二段構えだった。

 

垣根帝督が冷気を込めた烈風の攻撃を察知してその場で止まると予想していたチルノは第二位の彼の下から何十キロ離れてもしっかり視界に捉えられるほど巨大な氷の棘を天へと昇らせる。

 

チルノ「ここだ!『完全氷結(パーフェクトフリーズ)』!!!!」

 

打ち上げられた第二位に向かって100を超える数の弾幕を撃ってから瀕死状態にまで追い詰めたところで冷気を放ち凍らせた。

 

空には、白い翼が6枚生えた人間が入った氷が浮いていた……。

 

チルノ「くくく、あはっ。アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ!!!!完!全!勝!利ッ!!」

 

全力の笑顔でしっかりと決めポーズまでとっていた。

 

チルノ「あたいにかかればこの程度、超超超、超楽勝ってねッ☆苦戦してるように見えたけど、あれは全部演技!ギリギリの戦いのほうが盛り上がるじゃん?真の実力を最初から出してたら一瞬で勝負はついてた。これは断言できるね、だってあたいすっっっっっごく強いもん♪」

 

特別、誰に話してるのでもなくそれは大きな独り言。

 

それは続くが笑顔は消えていた。

 

チルノ「………でも。まさか。ここまでとはちょっと予想外だったな。正直、倒せてほっとしてる自分がいる」

 

自分の能力の冷気で凍らされ、身動きを封じられた学園都市から送り込まれた刺客を見つめる。

これだけは言える。『やつは強かった』と。

 

チルノ「刺客をなに一つ問題も起きず倒せたってスキマ妖怪に連絡するか。こいつ運ぶの面倒だし、あたいの能力で氷漬けにした白い羽を生やす変なやつを永遠亭に送ってもらっちゃお♪」

 

服の中にしまってあったスマートフォンを取出そうとしたその時である。

 

チルノ「………これは………白い…………羽根?」

 

上から何枚もの白い羽根がパラパラと降ってくるのだ。

 

チルノ「ぐぅ、あぁ……ッ!!」

 

その白い羽は空を羽ばたく鳥から抜け出た羽根なんかじゃなかった。

それは“やつ”の能力から生み出されたものだったのだ。

 

チルノの居る位置に降ってきた何枚もの白い羽根は突如爆発する。

 

「さっきまであんなに楽しそうだったのにどうしたお嬢ちゃん?そんな顔して、予想外のことでも起きたか?」

 

チルノ「なんで、お前が……ッ!?」

 

倒したはずのやつが。

氷漬けにしたはずのやつがチルノより高い位置からゆっくりと降下して来て、氷の妖精の前に姿を現す。

 

垣根「まっ、驚くか。俺の体温の反応はないんだもんな」

 

チルノ「ッ!?」

 

垣根「この程度のタネはすぐに見抜ける。超能力者(レベル5)を舐めるな。ここら一帯にはお前の冷気が充満している。そして、お前が冷気を充満させた理由は自身の冷気が充満している場所では敵の体温の感じることが可能で、敵の正確な位置を把握すること。そうだろ?」

 

チルノ「気づいていたのか……?」

 

垣根「死角に逃れたのにあんだけ正確に攻撃を仕掛けてきたら誰でも気づけるわクソボケ」

 

チルノ「一帯に撒かれた冷気。それと全く同じ体温に調整して、あたいの探知から逃れたのか」

 

垣根「そういうことだ」

 

チルノ「お前………。創造系の能力者だな」

 

垣根「へぇ、なぜそう思った?」

 

チルノ「お前の能力はやれることが多過ぎるんだよ。敵の一手一手にそこまで対応できる能力はあたいが知る限り創造系の能力だけだ」

 

垣根「御名答。そうだ、俺の能力は創造の能力。だがただ創るだけの能力じゃねえ。知ってるか?この世は全て素粒子によって構成されている。だが俺の未元物質(ダークマター)にその常識は通用しねえ。俺の生み出す未元物質(ダークマター)は存在しない物質だ。まだ見つかってないだの、理論上は存在するだのって話じゃない。本当に存在しないんだよ」

 

チルノ「それで?」

 

垣根「わからないか?いくらテメェが能力でどんな超常現象を起こそうと俺はそれに対応するだけじゃなく、物理法則を無視した予測不可能な攻撃で捻り潰すことが可能ってわけだ。お嬢ちゃんの能力は冷気を操る能力。なら、弱点となるのは熱。どれほど強力な冷気を俺に向けようが俺はその冷気を無効化する熱を生成するだけの話だ。その競争の最後、勝つのは俺だ。俺の能力に上限はない、やろうと思えばどこまでもやれる。アレイスターのクソ野郎がぶっ壊したがってるこの幻想郷だって俺一人で潰すことが出来る。唯一無二であり無限の力。それが俺の未元物質(ダークマター)だ」

 

チルノ「本当にそうか?」

 

垣根「はぁ?そりゃあどういう意味だ?」

 

チルノ「確かに、お前はあたいが1段階1段階冷気の威力を上げる度それに打ち勝てる熱を生み出していた。だけどそれは一瞬で、じゃなかったよな?対応するまでに時間差があった。やっぱり今まで出会ったことがない冷気にお前は戸惑ってるように見えたが?上限はない?無限?強がるなよ。お前のその能力、あたい達の世界には存在していない全く新しいものを生み出す未元物質(ダークマター)にだって限界はあるみたいだな。あたいもそうだ。あたいの能力も限界はある。だけど、あたいの限界はお前の限界とは違うぞ。あたいの限界はお前程度のやつがどんなに足掻いたところで絶対に届かない遥か高みにあるからな!!」

 

垣根「それは生物として違うからか?」

 

チルノ「……………お前」

 

垣根「この幻想郷には人間以外も居るんだろ?妖怪、あとは神とか、それ以外も居るって話だったな。お嬢ちゃんはどれなんだ?妖怪か?神か?それともそれ以外なのか?序盤の方から俺はお嬢ちゃんが人間以外の生物だって分かっていた。攻撃を当てた瞬間、人間とは全然違う感触をしてたからな。外見の体の構造は人間に似ているが、質は全然違うものだ」

 

チルノ「どうしてそれを知っている。それは幻想郷に送り込まれた他の暗部のやつらが知ってなかった情報だ」

 

垣根「ハッ。やはりな、いや当然か。あのカスどもじゃ幻想郷の連中相手だったらとっ捕まるか。拷問でもして学園都市の情報でも吐かせたか?だが誰もめぼしい情報は吐かなかっただろ?そりゃあそうだ、あいつらは最初からここで殺されるため送り込まれたんだからな。それを証拠にこの腕輪には片道分のエネルギーしか入ってなかっただろ?」

 

そう言って、垣根帝督は右袖を捲る。

第二位も他の暗部組織のやつら同様その右腕には『シルバーリング』があった。

 

チルノ「お前は違う、って言うのか?」

 

垣根「ああ。俺だけはこれに行きと帰りの分のエネルギーが入っている。そうだ、礼を言っとかなきゃな。あのカスどもを潰してくれて感謝する。俺もそうだが、アレイスターのクソ野郎も大喜びだろうな。あのカスどもを学園都市の方で処分する事もできたが面倒だしな、だったら敵を利用して処分しちまった方が楽ってもんだ」

 

チルノ「どうしてそんなことをする?あいつらはお前達になにかしたのか?」

 

垣根「やつらはいずれ学園都市に牙を剥く反乱分子になるとアレイスターは予測した。危険因子とまではいかないがそれでも面倒なことに学園都市は内側も外側も敵だらけだからな、小物一匹一匹に構ってられる暇は無いってわけだ」

 

チルノ「お前が、お前こそがアレイスターが送った『本物の刺客』だと?」

 

垣根「ああそうだ。あのカスどもが運良く一方通行に辿り着いたところで殺されるしかねえだろう。だが、俺は違う。俺は一方通行を殺すことができる。多くの人間をぶっ殺してその計算式の手に入れているからな。その中にお嬢ちゃんみたいなガキもいたっけな」

 

まぁ、アイツは死を望んでいたけどな。

と、垣根帝督は『暗闇の五月計画』の元被検者の一人の少女のことを思い出していた。

 

チルノ「どうしてそこまでするんだ。お前は無理やりやらされてない、自分からこの件に首を突っ込んだように見える。お前は学園都市の人間だとしてもお前は部外者、関係はないだろ!?これはアレイスターと幻想郷の戦争だ!一方通行がお前になにかしたか!?」

 

垣根「アレイスターは複数のプランを同時並行で進めてやがる。それらにはすべて第二候補(スペアプラン)が存在している。俺は一方通行の第二候補(スペアプラン)だ」  

 

チルノ「第二候補(スペアプラン)……?」

 

垣根「第二候補(スペアプラン)のままじゃダメなんだ。第一候補(メインプラン)にならなきゃ俺の目的の達成は不可能だ」

 

チルノ「目的だと?」

 

垣根「おかしい話だと思わねえか?俺より力もなく、そして俺よりも知能が低い野郎がこの俺に偉そうに命令しやがる。どいつもこいつも俺を下に見てやがる、弱いやつが強いやつの上に立ってやがるんだ。俺はこれに我慢ならねえ。だから血を流すことも知らず戦火の中に飛び込む勇気も無いのに戦争を起こし、いいとこで住んでは偉そうに酒を飲んだり、味がいいか悪いかも分からねぇ癖に高級料理を堪能している能無しのバカどもを引きずり下ろし俺が上に立ってやるんだ。もうこれ以上、あのバカどものいいように使われんのは癪に障んだよ。最初の方はあの街そのものをぶっ壊すって考えていたがあの街は利用できる。それに俺は最終目的を学園都市を手中に収めることにした。手に入れようとしてるもんをぶっ壊すってのは矛盾してる」

 

チルノ「学園都市の上層部、いいや学園都市そのものに恨みがあるのは分かったよ。だったら第一候補(メインプラン)だの第二候補(スペアプラン)だの気にしてないで学園都市の上層部を直接叩けばいいだろ!?お前のその力ならできるはずだ!!あたい達、幻想郷の人々や一方通行は関係ないじゃないか!!」

 

垣根「上層部を直接叩いたところでなにも変わらねえ。学園都市統括理事会の誰かを殺したとしても次のバカが補充されるだけだ。統括理事会の席に俺が座れることはない。だから必要なんだ、アレイスターとの『直接交渉権』がな。やつのプランの中枢の核となり俺を無視できねえ状態にしてアレイスターのクソ野郎が作った統括理事会に俺の席を用意してもらう。そして、俺が居なきゃ学園都市が存続できなくさせ学園都市のみならずアレイスターのクソ野郎自体も掌握することで表では学園都市のトップはアレイスターだが、本当に学園都市を操っているのはこの俺とさせる。それが俺の手にしようとしているの新世界だ」

 

チルノ「お前はその最終目的を達成するため、『直接交渉権』とやらを手にする為なら、一方通行を殺害することも幻想郷を目茶苦茶にすることもできるのかよ!?」

 

垣根「ああ」

 

チルノ「分かったよ______」

 

ここら一帯を覆い尽くしていた冷気がチルノのところへ集まっていく。

 

そして、、、

 

チルノ「______お前はここで死ね」

 

生まれて初めて氷の妖精は“人を殺す”覚悟を決めた。

 

チルノ(ここまでするつもりはなかったんだけどな。こいつをこのまま野放しにしとく訳にもいかない。こいつは幻想郷にとって危険な存在だ。ここであたいが確実に殺さなきゃこいつはあたいの友達を傷つける。そんなことさせてたまるか!!)

 

時は来た。

 

刮目して頂こう。

 

これより真なる“覚醒”が始まる。

 

チルノ「全力を持って“オマエ”を殺す。今の内に念仏でも唱えてなァ!!」

 

垣根「………アクセラ、レータ?」

 

氷の妖精の背中の羽に竜巻が発生していて、その竜巻を氷の羽は纏っていた。

その竜巻はチルノの能力により起こったものだ。

 

冷気を操る少女が光っているようにも見えた。

しかし、それは彼女の周りに小さな氷の粒が舞っていてその氷の粒が光を反射していることであたかもチルノが光を纏っているように見えているのだ。

 

垣根帝督はチルノの変わりようを見て無意識に一方通行の名を口にする。

 

チルノ「アハっぎゃはははははははははははッッ!!こォなっちまったら“オレ”は止まンねェぞォ!!」

 

垣根「こいつからどうしてAIM拡散力場が感知できてんだ。幻想郷の能力は学園都市の超能力とはまた別のものなんじゃねえのかよアレイスター!!」

 

チル丿「ォォォォアアッッ!!」

 

垣根「チィッ!!」

 

二人の間にあった開いた距離。

それが一瞬で縮まる。

 

裂いたような笑みを浮かべる氷の妖精は固く握られた鉄拳を第二位に放つ。

 

垣根「そうか、一方通行のヤロウ。このガキに学園都市の超能力の開発、そしてテメェの自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を植え付けやがったのか」

 

チルノの拳を背中の白い翼で防御するが、彼女の手から直接送られてくる冷気はあまりにも強力過ぎて彼女が変化する前の冷気までなら無効化できるほどの熱を宿していた白い翼が一瞬で凍り付く。

もしもこのままだと、垣根帝督本体にまで冷気が届いてしまう。

第二位はすぐに背中の白い翼を切り離し、そしてまた新たに白い翼を背中から生やすとチルノから距離を取るように後方へ飛行を開始した。

 

垣根「一方通行のクソ野郎。ただ第一位の王座でふんぞり返ってるだけのクソ野郎かと思いきや、ちゃんと第一位としての特権を存分に使ってやがったのか。この俺じゃ他人に能力開発なんてできねえ。できたとしても未元物質(ダークマター)を植え付けることだけだ。だがそれをやったところで俺の能力に耐えきれずそいつは自我を失い一分も経たずに廃人となる。クソったれ、俺はいつも学園都市が行ってきた重要の実験には参加させられなかった。これが第一候補(メインプラン)か。第二候補(スペアプラン)の俺じゃできねえことだ。第二候補(スペアプラン)じゃ知り得ない情報、それと自身のベクトル操作という能力を使って、このガキに学園都市の超能力開発をした。しかも超能力開発だけじゃなく元々持っていた能力の向上もさせてやがる」

 

幻想郷の能力者に学園都市の超能力開発を行うとどうなるか?

新たな能力に目覚める?

元々持っていた能力が更に強力なものに強化される?

 

どうやらその答えは後者だったようだ。

 

チルノ「どォしたどォしたァ!?鬼ごっこかァ!?」

 

垣根「クソ。一方通行の攻撃性だけじゃなく、やつの防御性もしっかり植え付けられてやがる」

 

背中の白い翼の形をした未元物質(ダークマター)を巨大化させて、左右から挟み潰すように6枚の翼を大きく振るった。

が、しかし。その翼はチルノの近くまで行くと凍り付き、凍った翼はひとりでに砕け散った。

 

氷の妖精が変貌する前から来た攻撃を凍らせる冷気は彼女の周りに貼られていたが、それは今までのとまるで違う。

 

そう。その目に見えぬ冷気のバリアは演算式があった。

一方通行の『反射』。その演算式を応用してチルノの冷気バリアが作られている。

しかもその冷気バリアは自動。

五感のどれかで感じずとも勝手に攻撃を凍らし防ぐことが可能である。

 

垣根「だが嬢ちゃん、失敗だったな。一方通行と同じってならやつは反射、嬢ちゃん凍結だか仕組みは一緒だ。無意識の内に有害と無害のフィルタを組み上げて必要のないものだけを選んで凍らせている。嬢ちゃんは人間ではなくても、周り全てのものを凍らせたら困るのは嬢ちゃんの方だ」

 

チルノ「あン?」

 

再び垣根帝督の背中に白い6枚の翼が顕現する。

 

垣根「さっき翼で攻撃をしたが、それぞれ翼1枚1枚に25000通りのベクトルを注入しておいた。後は凍結の具合から嬢ちゃんが無意識に受け入れているところから攻撃を加えればいい。ここはもう異物の混ざった空間。嬢ちゃんの知る場所じゃなくなっちまってんだよ!!」

 

チルノ「だからどォしたァ!!」

 

もう一度、垣根は白い翼を放つ。

チルノはそれをギリギリで躱すが頬を掠めた。

 

第二位の翼は氷の妖精に近付いても凍ることはなかった。

 

垣根「俺の未元物質(ダークマター)が混ざったこの世界の中で死んでいけ」

 

チルノ「なンだなンだァ?攻撃が届いてそンなに嬉しいかよ三下ァ。“オレ”の冷気のバリアをこンな短時間で突破できたのはスゲェよ、素直に感心しちまったぜ。だけどよォ、“オマエ”は“オレ”に触れられたら一撃死ってのは変わらねェンだよ。“オレ”の冷気は“オレ”から離れれば離れていくほど弱まっていく、が。“オレ”が直接相手に触れ冷気を送り込めばイイだけのことだ。今さっき体験したはずだ。そして知っただろ?“オレ”のこの手から直接送り込まれる冷気を無効化、もしくは押し返せる熱はオマエの未元物質(ダークマター)じゃ生み出せないってァ。だからオマエはずっと“オレ”から一定の距離を保っている」

 

垣根「当たらなきゃいい話だろうが……ッ!!」

 

チルノ「“オレ”のバリアだけ解析できただけじゃあ、まだ勝利には近付けてねェよ。バリアなンてあくまでオマケ程度のモンだからなァ!!」

 

垣根(チッ!確かにこのガキの言っている通りだ。さっきからあのガギがやっている瞬間移動。それがどういう原理でやっているのかさっぱり解らねぇ)

 

現れては消えて、また現れたと思ったら消える。

本当に少女の言っている通り、バリアなんてオマケ程度のものだったのだろう。

垣根帝督がバリアを突破する術を身につけたと知ると、氷の妖精は飛翔速度を加速させた。

それは視界情報の撹乱を狙ってである。

 

やつの能力は一つ。それは分かっているが、冷気を操る能力だけでどうやって瞬間移動を可能とさせている?

ただ速く移動している。だけじゃ説明できない移動速度だ。

 

それはまるで空間移動(テレポート)のようだった。

 

チルノ「オマエの能力は想像力と直結している。想像力が乏しけれりゃァ、“オレ”に攻撃を当てることはもう不可能だ!!まァ、ただの人間じゃァその程度で当たり前だろォがなァ!!」

 

垣根「チッ」

 

空で繰り広げられている高速戦闘。

槍の形や剣の形をした氷と白い翼から放たれた白い複数枚羽根が飛び交う。

垣根帝督はなるべくチルノを近付かせないように戦い、チルノはちょっとでも意識を逸らさせるように氷の攻撃を放ち垣根帝督が距離を縮まらせられる隙を見せると接近する。

 

が、

 

チルノ「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははッ!!ぎゃははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハーッ!!!!」

 

それはもう、一方通行と瓜二つのところまで達していた。

チルノの背中の氷は羽は全て無くなり、白い怪物と同じ噴射に近い二本の翼が氷の妖精の背中から伸びていた。

背中から飛び出て翼の形を作る冷気は勢いは凄まじい。

 

チルノ「イイねェイイねェ最っ高だねェ!!最っ高に気分がイイぜェ!!あはぎゃはハハハッッ!!!!」

 

垣根「制御が効いてねえ、能力が独りでに暴走をしてやがる。能力に意識が、脳が、体が追いつけてねえのか」

 

理性と自我。その2つ彼女の中から消えていく。

そして、自分の能力で自分自身が凍りついていっていた。

 

垣根「正気を失ってんな。まだ完全にものにできてねぇ力を使うからそうなんだよ。ここまで戦ったんだ、俺の能力でトドメを刺してやる」

 

ああなってしまったら一方通行の居場所は吐かせられないだろう。

 

垣根帝督は6枚の翼を一斉に放つ。

氷の妖精はもう自我は完全に失ってしまっている。

冷気を操る少女はその場で静止し狂ったように笑っているだけだで、こちらの攻撃には無反応だった。

 

垣根「これでお別れだ」

 

放たれた翼は少女の体を串刺しにして、垣根帝督のその白い翼は真っ赤に染まる。

 

………………そのはずだった。

 

 

垣根「なに……ッ!?」

 

ビキビキビキビキ!!

バリバリバリバリ!!

 

チルノは全身が完全に凍りついていた。

しかし、彼女の凍った体に亀裂が入っていく。

するとその亀裂から青い光が漏れ出ていた。

 

垣根「あのガキになにが起きてんだ!?」

 

白い翼の攻撃は氷の盾に防がれていた。

 

正体不明。理解不能の力を前に垣根帝督は動揺を隠せずにいた。

 

そして。そして。

 

氷の妖精の最終形態。真なる覚醒が完成する。

 

「万物は我が下にある。跪け!怯ろ!(あたい)の世界で凍え死ね!!」

 

垣根「なんなんだよ。テメェは誰なんだ!!」

 

「我は絶対の力を有する神を超えた神。氷の神の女帝。“神帝”である」

 

そこには“少女”は居なかった。

髪は腰まで伸びていた。

色は水色。しかし、髪の毛先の色は深みのある青色があった。

背丈もあり胸にも膨らみがあって、それは大人の女性と言えるほどである。

 

服装も変化している。

足が全体隠れるほどの淡い色の青いロングドレスを身に纏っていた。

胸の部分には小さな赤いリボンあり、腰にも赤いリボンが巻かれていて、右腰のところで大きく結ばれている。

ドレスのスカートの部分には氷の結晶のデザインが施されていた。

 

チルノ「絶対零度の世界では(あたい)の許しがなれば呼吸ことすら叶わない。さあ築こう、絶対零度の世界を。我が氷の城を。そこをオマエの墓標としよう」

 

氷の神帝の頭上には氷の輪があり背中にはこの世のものとは思えないほど幻想的な美しさのある2枚の氷の翼はあった。

 

彼女は動かない。

そこから指一本も動かさなかった。

 

が、しかし。瞬きする間に彼女の前に絶対零度の世界が広がっていた。

その場の気温はなんと−273℃。

 

能力を覚醒させたチルノは妖精から神以上の存在と進化した。

今の状態なら魔界の唯一神、神綺と純粋の戦いをしたとしても互角の勝負ができるだろう。

 

チルノ「フン」

 

高さはなんと百メートルを優に超える氷の城。

その前に優雅に着地する氷の神帝。

 

氷の城の巨大な扉を手を使わず開く。

 

4階まである城。

 

その城の3階まで中にある階段で登っていく。

 

到着した3階。

 

氷の城の3階は全体がなんとダンスホールとなっている。

その中心となる位置に氷漬けの人間が“一つ”。

 

チルノ「(あたい)の能力は防御不可能、完全で絶対の力だ。もし、そこから出れるとするなら(あたい)が力を解くしか無い。しかし、生憎そのつもりはない」

 

そして。

氷の神帝はダンスホールを一望すると、、、

 

チルノ「命以外を凍らした。殺そうとしたけど、ここまですればもうなにもできまい。こいつは悪人だが学園都市の上の連中に恨みがあり頑張って説得すればこちら側に立ってくれるだろう。それか力で言うことに聞かせればいい。さて、あとはこの絶対零度の世界が溶けていくのを見送るとするか。一気に溶かしてやりたいが、力が強力過ぎて自分でやったくせに溶かすのに時間が必要なんだよね」

 

勝敗は決した。

垣根帝督の能力と意識、そして時間が凍っている。

チルノの能力は目に見えぬものすらも凍らせる。

 

チルノは3階のバルコニーまで移動してゆっくりと氷の世界を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ俺は終わっちゃいねえぞ」

 

絶対零度の世界は蒸発した。

そして森全体が蒸気によって包まれた。

 

チルノ「ばか、な。バカなバカなバカな!!どうして!?」

 

垣根「俺の能力は創り、創ったものを操る能力だ。肉眼じゃ見ねぇくらい小さいマイクロサイズの未元物質(ダークマター)。それに命令したんだ、未元物質(ダークマター)がまた使用可能になるくらいに凍った本体を溶かせってな」

 

チルノ「まだ完全に凍らせられてなかったのか!?」

 

垣根「俺自体は完全に凍らせられたよ。いやぁ、ここまでとは予想できてなかった。あのままなにもしていなかったら俺は確実に死んでいたな。だが俺がテメェの冷気で凍らせられるのは計算通りだった。俺の未元物質(ダークマター)とお前の冷気らその二つを正面からぶつかれば俺の能力が負けるのは分かっていた。だから俺本体が凍らせられてもいいうようにって備えをしていたんだよ。テメェは言ったな?自分の能力は自分の体から離れれば離れていくほど弱くなると」

 

氷の城も蒸発して消えてしまった。

チルノと、垣根帝督は空に浮いた状態だった。

 

チルノ「オマエ……、(あたい)の冷気が届かないところ、(あたい)の絶対零度の世界の外側にまでオマエは未元物質(ダークマター)を撒いていたのか」

 

垣根「俺の未元物質(ダークマター)はお前の冷気と違い俺からいくら離れたところで能力が弱くなることはない」

 

チルノ「だからどうした、また凍らせてやればいいだけのこと!!」

 

油断をし過ぎた。

そう反省をしたいがそれは後だ。

絶対零度の世界に侵入できたとしても、それで凍った垣根帝督本体の周りの氷を溶かせられるはずがない。 

 

この変身は初めてだった。

変身するだけにも力を消耗する。

疲れが出てしまったのだろう。

ずっと気を張り詰めていたつもりだが、どこか気を緩めた瞬間がありそこを第二位に突かれてしまったのだ。

 

垣根「この俺がただ本体の氷だけを溶かしただけだと思うか?」

 

ニヤリ、と垣根帝督は笑う。

そして白い6枚の翼の大きさを変化させる。大きさは20メートル。

それはただ大きさを変えただけじゃない。

垣根帝督はこの戦いのなかで自身の能力を更に理解することができて、より強力なものと『未元物質(ダークマター)』を進化させた。

 

チルノ「ぐぁああああああああああああああああああッッッ!!??」

 

垣根「テメェの能力の解析は既に完了している。何度も言うがテメェの能力の弱点は熱だ。能力そのものや、人の時間を凍らせられてもその冷気を打ち消せる熱をぶつければお前の能力は無効にできる。その変身も例外じゃねぇだろ」

 

チルノ「………ハァ……、ハァ………ハァ………」

 

垣根帝督から放たれた熱が込められた波動。

それを浴びたチルノの体が蒸発していき、、、

 

そして、姿形が氷の妖精に戻っていた。

 

垣根「そう、時間な。常識外れな力だ。時間なんてものを凍らせられる力がこの世にあったとは」

 

余裕のある態度だった。

しかし垣根帝督は氷の妖精に恐怖していた。

もしもあのまま絶対零度の世界を解かなかったら、いくらその絶対零度の届かない場所に未元物質(ダークマター)があったとろこで本体の救出は無理だっただろう。

勝ったと油断して、力を緩めてくれたからこうやって形勢逆転できたのだ。

 

垣根(チッ。やつの油断あってこそのこの状況。認めたくねぇなクソボケが…………)

 

あのままなら死んでいた。

そう軽く言っていたが、この初めて味わう敗北感。

それは垣根帝督のプライドを大きく傷つけた。

 

垣根「殺す……ッ!!」

 

チルノ「クソったれが!!」

 

全身全霊で相手する。徹底的に、とことん最後まで、だ。

もうあんな思いをしたくないと、ここでこいつを生かして返せばもしかしたら次は殺されてしまうかもと、垣根帝督は能力を全力でチルノに向ける。

 

 

そして。

変身を解かれ、能力の余力も残り少なく絶体絶命の大ピンチ。

しかし少女の目から闘志は尽きていない

 

両方の手に冷気の竜巻を作り、それを垣根帝督に放つ。

 

 

垣根「威力が落ちているな。この翼で簡単に防げたぜ、しかも全然凍らせられずにな」

 

チルノ「く、クソ。だァァァァァ!!!」

 

真正面からの突進。

弾幕を撃つ力も残ってない。

 

最後の武器。

己の肉体。それを砲弾のようにしての突撃攻撃。

 

だが悲しいことにそんな攻撃では第二位に届くことはない。

 

向かってくる氷の妖精に白い翼の連撃を浴びせる。

後ろに吹っ飛ぶことはない。

もうこの場は垣根帝督の思うがままにできるのだ。

 

垣根「これは痛えぞ?」

 

チルノ「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーっ!!!???」

 

白い翼、その1枚でチルノの右足を掴む。

そして力を更に入れることで氷の妖精の右足を粉砕骨折させた。

しかし、それだけで終わらせない。

 

冷気を操る少女の足を掴む翼に300℃以上の熱を纏わせる。

 

垣根「はははははははっ!!散々やってくれたんだ、たっぷりお返ししてやるよ!右足がこんがり焼き上がったら次は左足だ。そして右手、左手って順を追って全身を焼いてやる。まぁ最後までテメェが意識を飛んでなかったらだがなァッ!!」

 

幼い容姿の少女相手だというのに容赦がない。

チルノは涙が目に浮かぶほどの痛みに絶叫をする。

 

垣根「氷の剣?そんなんで俺の未元物質(ダークマター)は斬れねえぜ」

 

チルノ「だ、けど。あたいの斬りたいものは斬れる!!」

 

氷の剣を作ると、その剣を両手で握り狙いを定めた場所に思いっきり振り下ろす。

 

………………、そして、だ。

 

チルノは垣根の白い翼から脱出を成功させた。

 

 

垣根「イカれてんのか、テメェ」

 

チルノ「正気だっつの。死ぬよりかは安いもんだろ、足の一本くらい」

 

声は震えていたし、涙は大量に流していた。

 

“片足の氷の妖精”。

失った右足があったところには赤い氷柱(つらら)があった。

多くの流血を防ぐため傷口と血を凍らせたのだ。

 

垣根「もう足は作ったか。じゃあこの足は要らねえな?」

 

チルノ「冷気の出力、全開ッッッ!!」

 

掴んでいた足をどうやってかは解らないが、垣根は白い6枚の翼を大きく広げるとそこにはチルノの右足はなくなっていた。

 

痛くなかった。と、言えば嘘になる。

傷口を凍らし感覚を麻痺させることで今は痛みがないが、自身の足を斬った時は激痛がした。

 

凍らしている場所は足以外にもある。

ここまで垣根帝督の攻撃を一発を受けてないと、いうわけではなかった。

彼女の服によって隠された場所にも傷が多くある。

チルノは、傷を負った場所全てを凍らせて感覚を麻痺させている。

痛みにより動きが鈍ることを避けるためだ。

 

背中から冷気が勢いよく飛び出す。

 

そして。そして、

 

垣根「速ぇな。まだそんな力が残っていたか」

 

不規則な動きで空を高速に飛ぶ氷の妖精。

背中の氷の羽も消え、力も残りわずか。

瀕死の状態でなにができるというのだろうか。

 

しかし、垣根帝督は全神経を研ぎ澄ませ次に来る攻撃に備える。

追い詰められたやつの捨て身覚悟の攻撃は一番警戒しなくてはならない。

暗部として活動して仕事をこなす日々の中、一つの仕事で追い詰められたやつが自分の命を顧みず敵を道連れにしようとしてきたやつが居たのだが、結果は垣根帝督は傷一つ負わなかった。

しかし、追い詰められたやつが一番危ないと思い知らされた。

 

垣根(読めねぇな。なにをしてきやがる)

 

この大空を存分に利用して、飛び回る氷の妖精。

 

垣根(撃ち落とすか?いや、無駄に能力を使わせることが狙いか?)

 

ここまで冷気を操る少女には何度も驚かされ、そして何度も負けるかもしれないと思わされた。

慎重になり過ぎとはならない。

 

それに第二位は見た。

あの氷の妖精は勝ちにきている。

やつの頭の中には自分を倒すイメージができているのだろう。

 

チルノ「冷気の出力を最大にしてその冷気を推進力に変化させることにより可能とする高速移動ッ!!この速度にやつの未元物質(ダークマター)は追いつけてない。あたいもそうだが、やつもこの戦いで疲れている。これなら、いける!!」

 

これが、最後の一撃。

残された武器はこの肉体一つ。

 

チルノ「絶対勝つ!!」

 

垣根「テメェは絶対に俺の未元物質(ダークマター)で殺してやる!!」

 

勝負は一瞬。

チルノは高速に第二位に向かって突撃する。

 

垣根「どこに_______」 

 

チルノ「だりゃァァァァァァァァああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!」

 

肉眼でも、能力でも捉えられない速度。

そんな動きをしてしまえば体にはとてもつもない重力の負荷がかかるだろう。

 

 

一直線に突撃してきたかと思ったが、チルノの姿が消える。

もう時間を凍らせられることはない。

垣根帝督は氷の妖精の時間を凍らせる力を無効にする対抗策を手に入れている。

あの変身さえなくなれば正面から戦えるのだ。

 

しかし、だが。

 

未元物質(ダークマター)の反応速度を超える一撃。

チルノは垣根帝督の背後に回ると体を縦に回転させてやつの頭に蹴りを食らわせてやる。

 

咄嗟に白い6枚の翼で防御に移るが、それよりも先にチルノが攻撃を食らわせたのだ。

 

そして。

 

第二位はそのまま地面に向かって蹴り飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チルノ「ぐ…………やった」

 

ふらふらと地面に着地する。

そこには巨大な穴があり、その奥底にはやつが倒れていることだろう。

 

チルノ「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。もうなんも力が残ってない。あたい………ここで、死ぬのかな………」

 

糸が切れたように地面に倒れ込む。

全ての氷が溶けていった。

足の血の氷柱も溶け、彼女から流れた血は地面の土に吸わていく。

 

チルノ(なんだろう、視界も……だんだん狭く………ああ、これは本当に死んじゃうな、あたい)

 

目蓋が重く、目がゆっくりと閉じていく。

 

が。

目が閉じていくなかで見えたものがあった。

 

それは最悪なもの、、、、、

 

チルノ「……………………まじ、か。あれを耐えるかよ。ってかせめて意識ぐらい失ってろよ。あたいが蹴ったのは頭だぞ…………?バケモノが……」

 

垣根「……………………………」

 

生気は抜けていき、重症の体で地面に倒れる少女の前に立つのは頭から血を流している第二位だった。

 

垣根「死ぬ前に負けを認め、一方通行の居場所を吐け」

 

チルノ「あたい、は……お前に負けてない…………」

 

垣根「………残念だ。だったら約束通りお前を絶望させてやる。この誰も助けも来ない状況でしかも瀕死の状態でテメェは俺の能力にどこまで耐えれるんだろうな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。

激戦が繰り広げられた森から少女の絶叫が響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 






次回・第四章・第十四話

【第一位と第二位】


もうそろそろだ。もうそろそろで“彼”が目覚める。

おはよう“私の希望”。“やつらにとって絶望”。

私からのお願いだ、忌々しい幻想郷を破壊してくれ。

跡形もなく、存在ごと抹消してくれ。


やつらはきっと泣き叫び、絶望することになるだろう。

今まで戦ったこともない絶対的な強者を前にして。


……………『最終計画』も近い。









幻想郷が崩壊するまで、、、、、『2』


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14話


【第一位と第二位】(前編)

幻想郷のヤツらに幸福が訪れるなんてことはない。幸せなんて見させない。
そんなことは許さない。

忌ま忌ましい。貴様らは我が手で根絶やしにしてやる。

※誤字脱字などのミスが必ずあると思います。
それをご了承のうえ読んでいただけると幸いです。
しかし、そういったミスが多いのをご不快に思う方にはブラウザバックをオススメします。


 

博麗神社に続く長い長い階段の頂上にある鳥居の下には一人の大妖怪が遠くを見つめながら胸の前で腕を組み佇んでいた。

 

紫「…………、中の様子は?」

 

魔理沙「まあまあ落ち着いたぜ」

 

振り返ることもしなかったが、誰が後ろから近づいてきたか八雲紫は気付いていた。

白と黒の魔女・霧雨魔理沙は紫の質問に答える。

 

魔理沙「“二人”は中でぐっすり眠ってるよ。霊夢はどこにも体に異常はない。だが一方通行の方は正直言って危険な状態だよ。どうしてあんな重傷な体になっているのに生きていられるのか、その前にどうしてあれ程の重傷を負ったのかどちらとも皆目見当(かいもくけんとう)もつかないぜ。あの部屋中に飛び散っていた血が全て一方通行のものだとするとあいつは今頃、出血多量で死んでいてもなんも不思議じゃない。いいや、出血多量で死んでて当然と言える。たまたま手から落としてしまったおむすびが地面を転がりそのおむすびが穴に落ちて、好奇心から穴の中に入ってみるとそこはネズミの王国でネズミ達に最高のおもてなしされ腹一杯にご馳走されて満喫した気分でいるとネズミ達に大判小判を渡されオマケにお土産も渡された。そして、今日は運がいい日だったって鼻歌まじりで家に帰っている道中、お次は突然竜宮城に招待されるぐらいの奇跡が一方通行の身で起きている。なあ、紫なら何故一方通行があんな状態になったか知ってるんじゃないか?」

 

紫「聞けば絶対に答えが返ってくると思わないで欲しいわね。1000を超える年を生きている私だって知らないことはいくつもあるわ」

 

魔理沙「……そう、だよな。悪い」

 

紫「………………はぁ。ごめんなさい、今の私は冷静さを()いている、気が動転しちゃっているの。それであなたに当たってしまったわ。常に冷静沈着だったあの八雲紫にあるまじき失態ね」

 

魔理沙「そう気を落とすなよ紫。私だって悪かった。誰だってあんなもん見たら気が動転して当然だし、頭が混乱して人に当たりたくなってしまう気持ちも分かる。私も全然気分が落ち着かなくてな、何事もなかったかのようにいつもの調子で平静に振る舞うなんてできないぜ」

 

そして。霧雨魔理沙は八雲紫の隣に立つと彼女と同じ方角に視線を向ける。

 

魔理沙「…………フッ」

 

紫「なに急に?どうしたの魔理沙?」

 

魔理沙「いやー、こうやってお前と肩を並べ同じ方角を見る日が来るなんて昔は思いもしなかったからさ。一方通行がこの幻想郷に来る前なんかは紫とは敵対ばっかりしていたし」

 

紫「………そうね。幻想郷に異変が起きても私は個で動くことが多かったからこうして誰かと長く一緒に居るっていうのはちょっと不思議な感覚だわ」

 

魔理沙「あっ、そうだ。そ、う、い、え、ばッ☆」

 

なにかを思い出した様子だった。

するとニヤニヤとしながら魔理沙は紫の顔を見ると、、、

 

魔理沙「お前が泣いてる姿なんて初めて見たぜー?意外だったな、あの大妖怪様が人を心配して涙を流すなんてよ。お前は冷徹で狡猾無慈悲な血も涙もないやつだと私は思っていたんだがな」

 

紫「まぁ、それが正解だと言えば正解だし違うとも言えるわ」

 

魔理沙「ん?ホントお前は難しい言い方するなー。どういうことなんだよ?」

 

紫「………はぁ。そういう一面もあるけど、でもそれが全部じゃないってことよ。あなた達が私はそういうやつだって勝手にイメージしてるからこちらもそういう風に振る舞ってただけ」

 

魔理沙「じゃあ本当のお前はどんなやつなんだ?」

 

紫「………ねえ、私はあの大妖怪・八雲紫よ?この私がそんな簡単に他人に本当の顔を見せると思って?」

 

魔理沙「ハハッ、それもそうだな。じゃあ宴会の時でいいから私達と同じところで一緒に酒を酌み交わそうぜ。酒の席だったら誰だって本性の一つや二つ見せるってもんだ」

 

紫「それは酔ってからでしょ?生憎だけど私お酒に強いから、あなた達が先に酔っ払って暴れるに一票」

 

魔理沙「ははははははははははははっ!!確かに!今そんな未来が容易に見えたぜ!!」

 

紫「なによ、ホント……」

 

霊夢は自分のせいで一方通行が傷ついてしまったことで罪悪感に押し潰され、自分を責めていた。

そして、一方通行が辛うじてではあるがまだ息があることに安堵したらその直後に気を失ってしまった。

一方通行は一方通行で体の中で無数の爆弾が爆発したかのように負傷をしていた。

内臓はめちゃくちゃ。血液が流れる血管もボロボロである。

 

なのに、だ。

あんな衝撃的なことがあったというのに、大きく口を開けて楽しそうに笑う魔理沙に紫は不気味と感じ始める。

 

魔理沙「そんな顔すんなって紫。別にお前のことをからかいたいとか困らせたいとかそんなこと考えてお前の隣に来たんじゃないんだぜ?ぶっちゃけ、昔はお前ことは嫌いだったんだけどな。今はお前のこと結構好きになってるんだぜ?」

 

紫「……ッ!!」

 

魔理沙「お前の印象はどれもこれも最悪のものばかりだ。ハッキリ言って関わりたくないやつランキング堂々の第一位だったよ。しかもそのランキングは不動のものだった。けど……、こうして幻想郷を守るため一緒に行動したり、その分会話をしたりしてさ。そしたら考えが変わったんだ。お前が結構いいヤツだって気づけたって訳ッ☆」

 

紫「ばか言わないでよ………もう」

 

頬を赤く染めて顔を白と黒の魔女の反対の方向に向ける紫。

そんな彼女に魔理沙は明るく微笑みながら、

 

魔理沙「へへっ。もっと見せてくれよ本当のお前を。私は知りたい、紫がどういうやつなのか」

 

紫「……………紅魔館の引き籠もり魔法使いさんや、人形遣いの子があなたに心奪われてしまうのもなんか分かる気がしたわ。あなたも一方通行と同じ、相当な人誑しだったのね」

 

魔理沙「???」

 

紫「真っ直ぐにそうやって気持ちを打ち明けられると、こちらもそれに答えたくなっちゃうじゃない………」

 

声が小さかったせいが大妖怪が最後なにを言ったのか魔理沙は聞こえなかった。

不思議そうにしている白と黒の魔女を見て『これが無自覚でやっていることなのだがら本当にタチが悪い』と八雲紫は心の中で呟いた。

そして。ため息を吐くと階段の1段に腰を下ろす。

 

紫「でも、そうね。あなたがそういう性格だったから私は誰にも言うつもりはなかった『例の計画』を言ってしまったのかもしれないわ」

 

魔理沙「例の、計画……?」

 

首を傾げる魔理沙。

八雲紫がなんの事を言ってるのかさっぱりだったからだ。

しかし、ハッとして思い出す。

 

魔理沙「あー……、『時が来るまで内緒よ♪』とか言ってた一方通行を中心にお前が行うとしてるやつのことか。って、アレ誰にも言ってなかったのか!?計画内容を聞く限り別に隠すようなことじゃないだろ!?」

 

紫「“この私に似合わないこと”だからよ。だって私って幻想郷の中でも特に嫌われてるじゃない?しかも自分以外心底どうでもいいヤツだとも思われてるし。そんなやつが“自分以外の人のために”……って。頭でも打ったんじゃない?て言われておしまいよ。急に私が変なこと言い出したで片付けられちゃうわ」

 

魔理沙「紫が嫌われ者だってのは否定しないが誰かの為に行動することを変なことだと言うやつ、お前の周りに居るのか?」

 

紫「……………居ない、けど」

 

魔理沙「じゃあ隠さず素直に話したって良いと思うぞ。多分?いや絶対みんな協力してくれると思うぜッ☆みんな一方通行のこと大好きだからなッ☆もちろん私も協力するぜ、それは私もみんなと気持ちは一緒だからなッ☆」

 

紫「こういうところでは言えるのに、いざ本人の前だと……ねえ?」

 

魔理沙「ほ、ほっとけ!!」

 

顔を真っ赤してる魔理沙を見て、紫は優しく微笑む。

こうも分かりやすい反応をするのだからいじめたくなってしまうのだ。

 

魔理沙「……でも、最初お前が完遂させようとその計画を聞かしてもらった時はそりゃあ驚いたよ。『あの紫が!?』ってな。だけど、お前が血塗れの一方通行を大事に大事に抱き締めて涙を流している姿を見て分かったよ。“お前も”……だったんだな」

 

紫「あら?意外だったかしら?」

 

魔理沙「うん。紫に“そういった感情”があるなんて考えられなかったからな。それにそういう素振りは見せなかったし………」

 

紫「あなた達が分かりやす過ぎるのよ。まぁ、私も女だったってことよ」

 

魔理沙「…………いつから?」

 

紫「ふふっ、いつからでしょうねー?」

 

魔理沙「う〜わっ!!ウザ過ぎこのスキマ妖怪!!」

 

服の中から扇子を取り出した。

そして、扇子を広げるとその奥で笑う紫の姿を見て魔理沙は引いた顔をしていた。

 

紫「さて……。私達がお喋りしている合間に終わったみたいね」

 

魔理沙「終わったって、なにが終わったんだよ?」

 

扇子を閉じるとその扇子を服の中にしまう紫。

すると次は立ち上がったのだった。

 

紫「戦いが、よ。最後にアレイスターが幻想郷に送り込んだ刺客と氷の妖精のお嬢さんのね」

 

魔理沙「チルノか。結果は?」

 

紫「………………氷の妖精のお嬢さんの圧勝、になるはずだった」

 

魔理沙「なるはずだった、って?」

 

紫「氷の妖精のお嬢さんは最後の刺客を幻想郷(こちら)の仲間として引き入れるんじゃなく殺すことにした。もしも氷の妖精のお嬢さんと同じ立場だったら私もそうするわ。一方通行は学園都市から送り込まれた人間を一緒にアレイスターと戦う幻想郷(こちら)側の仲間に引き入れる計画を企てた。それはとてもいい計画だし、私も賛成だった。けどやつは、第二位は幻想郷にとって危険な存在だった。生かしておけないわ。やつは一人で幻想郷を滅ぼすことだって可能とする力を有していた。それに氷の妖精のお嬢さんは気づき、第二位を殺す決断をした。だけど………」

 

魔理沙「だけど……?」

 

紫「迷っていた、迷っていたのよ。自分の下した決断を信じて第二位を殺すか、それとも一方通行の考えを尊重して第二位を生かして捕らえるかって。もしも第二位を捕らえることができたら、こちらに有利な情報が手に入るかもしれない。第二位はこれまで送られてきた刺客の中で特別な存在だったからね。それに第二位の力も間近で見てそして体験して、もしも第二位が仲間になったら幻想郷(こちら)にとって相当な戦力なると氷の妖精のお嬢さんは考えていた。でもね、あの子は一方通行に強い憧れがあった、一方通行という眩しい存在が彼女の脳裏にずっと居たのよ。それで氷の妖精のお嬢さんは迷いに迷い、迷い続け挙句の果てに一方通行の立てた計画に従うことにしたのよ」

 

魔理沙「迷いもなくそいつ殺していたらチルノは負けなかったって?」

 

紫「えぇ。あの子は本当に凄い子だわ。この私でも手の届かない場所に辿り着いた。唯一神の神綺と対等に渡り合えるほどの力を手に入れたのよ。それがどれだけ凄いことが一々説明しなくても魔界の神の力を見たことがある魔理沙なら分かるわよね?」

 

魔理沙「あの神綺と対等だと!?チルノが!?マジかよオイ!?」

 

紫「そこまでの力なら圧勝できていたはずなのよ。森一つ凍らせるなんて造作もない。周りのことを本当に気にしないで良いのなら惑星一つ、いいえ太陽だって凍らせられるのよあの子は」

 

魔理沙「そっかー、なんか遠い存在になっちまったなー。雑魚扱いしてたのが懐かしく感じるぜ」

 

紫「でも結果がすべてよ。あの子は『最後の刺客』に敗れてしまった。今は第二位に惨いことをされてるわ。目も当てられないほどのね」

 

魔理沙「…………私が行こう」

 

目の色が変わっていた。

白と黒の魔女は右腕を伸ばす。するとそこに箒が飛んできた。

 

箒の棒の部分をパシッと力強く魔理沙は掴む。

 

魔理沙「____紫、私ならその第二位にも勝てるだろ?」

 

相手はあの『アイテム』の連中よりずっと強いのだろう。

しかもたった一人で、あの『アイテム』以上ときたもんだ。

魔理沙は『アイテム』のリーダー・麦野沈利と戦い見事第四位の怪物を撃退できたが、その戦闘で魔理沙も重症の傷を負わされた。

だが、しかし。

箒を地面に突き立てる白と黒の魔女は自信に満ち溢れている様子だった。

 

紫「……えぇ、そりゃあ余裕で快勝できるわ。なんたってあなたは氷の妖精のお嬢さんよりも更に上、あの唯一神すらも超越した力を手にしたんだからね」

 

魔理沙「……………誰にも教えてないんだけどな」

 

紫「あらごめんさない、秘密にしていたかったのね。でも別に覗きたくて覗いたんじゃないのよ?とても強大な力が幻想郷内で発現したから、その発現した場所を特定してスキマを開き覗いてみたらそこには魔理沙、あなたが居た」

 

魔理沙「き、気づかなったぜ………」

 

紫「あれ程に大きな力を感じたのは初めてだった。でも恐ろしいことに私が感じ取った力はほんの一部に過ぎない。本当の力はもっともっと、なんでしょう?少なく見積もっても『一撃で太陽系にあるものすべて塵も残さず消し飛ばせる力』。まったく、あの力をもしも全力で使用されたらどこまでのものになるのか……。この私でも想像がつかないわ」

 

魔理沙「一撃で太陽系にあるものすべて塵も残さず消し飛ばすほどってのは言い過ぎじゃないか?……まあ、いいか。あれを知られたのは嫌だったが知ってるなら知ってるで話が早いや。まっ、そういうことだ。私なら無事にチルノを救出できるし『最後の刺客』にも勝てるだろうぜ」

 

紫「知ってるわ。そうよ、知ってるのよ。あなたがあの力を全開で使ったしまった瞬間“命を落としてしまう”ということもね」

 

魔理沙「チッ、そこまで知られちまってんのかよ幻想郷(ここ)にはプライバシーは無いのかプライバシーは。でもよ、それは_____」

 

そこで魔理沙は止まった。

大妖怪が手のひらを向けてきたからである。

 

紫「私が行きましょう。私なら相手があの第二位でもギリギリ勝てると思うわ」

 

魔理沙「なんで頑なに私を行かせてくれない?あの力を使わなくても勝てる相手だと思うだけどな」

 

紫「一方通行は倒れた。もう……、動けない。幻想郷の中で最も強い超能力者がしばらく戦闘に参加できない体になってしまった以上魔理沙、今はあなたが“幻想郷最強”。我々に残された最後の希望。最後の切り札なのよ。最初に言っておくけどなるべくそうならないよう私も全力を尽くすわ。でも、しかし、もしかしたらあなたの“あの力”に縋る時が来てしまうかもしれないわ。その時のためにちょっとでも魔理沙には力を温存していてほしい。可能なら魔界の神に頼りたいところだけど、面倒くさいことにあのババアは一方通行以外の頼みは聞かないだろうし。しかも幻想郷の結界の設定を一方通行が少し弄っちゃってるから魔界からこちらにあのババアを呼ぶのだって時間がかかってしまうわ。だから私なのよ。魔理沙、あなたを除いて幻想郷の中で“今の第二位”に勝てるとしたらこの私しか居ないわ。それほど危険な相手なのよ学園都市・超能力者(レベル5)の第二位、垣根帝督は」

 

八雲紫は辛そうに顔を顰めて拳を握る。

このまま順調に事を進め今回の騒動も無事に片付けられると思っていたのだろう。

しかし、予想外のことが起きてしまったのだ。

 

そしてその予想外は簡単に対処できるものじゃなかった。

 

紫「この世に存在しない物質を創り、そして自ら生み出した物質を自由自在に操る能力。未元物質(ダークマター)の垣根帝督。彼にも伸びしろは充分あった、だけどあの能力は人間が扱うにはあまりにも巨大な力。垣根帝督自身未元物質(ダークマター)を自在に操れてるようで100%の力を全然引き出せていなかった。なのに氷の妖精のお嬢さんとの戦いの中で能力の本質を(さと)り今では未元物質(ダークマター)を完璧にものにしている。まさかあそこまで成長するとは………これは“3人目”の出現か」

 

一人でブツブツ独り言を言っている紫。

 

魔理沙「ちょっと待てちょっと待て、“3人目”?その“3人目”ってのはなんの“3人目”だ?」

 

だが。霧雨魔理沙は大妖怪の独り言に気になる部分があったので質問する。

 

紫「“幻想郷の脅威となる存在”。それはその者が幻想入りした時点で幻想郷の存在そのものの消滅を覚悟しなくてはならないほど危険で突出した人間」

 

魔理沙「チルノと戦いそして勝ったやつ、確か名前は垣根帝督だっけ?そいつが幻想郷の脅威となる存在になったと?」

 

紫「えぇ。まあ、でも他の2人に比べればまだ垣根帝督なんて可愛いものよ。他の2人が特殊過ぎるからね」

 

魔理沙「その他の2人ってどんなヤツなんだ?もしも話せることだったら聞かせてくれよ」

 

紫「1人はあなた達も知ってるしもう既に会っているわ。学園都市の能力者達の頂点。第一位。最強の超能力者(レベル5)一方通行(アクセラレータ)。触れただけでありとあらゆるベクトルを操作することができる能力者。そしてもう1人は触れるだけで全ての異能の力を打ち消すことができる『右手』を持つ少年・上条当麻。でもこの2人は警戒しなくていいわ。一方通行は幻想郷サイドだしもう1人の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は学園都市の統括理事長アレイスター=クロウリーにだって思い通りにするできないこの世で最も特別な存在。“特異点”だからね」

 

魔理沙「………そっか。じゃあ私達は、今は垣根帝督だけをぶっ倒すことだけを考えてれば良いんだな?」

 

紫の話の中に気になるワードがあった。

『特異点』。

それはいったい何なのだろうか?

疑問に思いそれについて質問しようとしたが自分の頭じゃ理解出来ない複雑過ぎる説明が始まると思ったから霧雨魔理沙は質問するのをやめたのだった。

 

紫「そういうこと。ま、行くのは私だけだけど」

 

滅多なことでは動かないと有名な彼女が自ら出向き敵を排除しに行くとは珍しいことだ。

それだけ垣根帝督が危険な存在だということなのだろう。

 

八雲紫は目の前にスキマを開こうと能力を使用しようとしたその時だった。

やけに後ろが騒がしかった。

 

そう、博麗神社が建っている場所が、

 

「まっ、待って!お待ち下さい!!そんな状態の体で動いてしまうのは危険です!!お願いします中にお戻り下さい!!」

 

その声の主は八雲藍。

式神の彼女は慌てて外に出てきたため裸足だった。

 

魔理沙「藍……、それに_____」

 

藍の声が聞こえ魔理沙は振り返る。

白と黒の魔女の視界には藍ともう一人が居た。

 

「待てよ紫。俺が、行く。チルノは俺が助ける」

 

永遠亭は今も大忙し。

捕らえられた『グループ』『アイテム』。この二つの組織の連中の治療で手一杯なのだ。

特に『グループ』の奴らは紅魔館の少女らに酷く傷を負わされた。全身刺傷だらけだったり手と足がなくなっている負傷者が永遠亭に送られた時はそれはそれは永琳は大きなため息をついたそうだ。

 

“白い彼”は自分は後でも良いということで、今は博麗神社の中で寝ていてもらっていた。

しかし白い彼は重傷の体を引きずるように紫と魔理沙のところまで来た。

 

魔理沙「____一方通行(アクセラレータ)………」

 

改めて見るとやはりそれは酷いものだった。

日に照らされた場所では細かな傷もくっきりと見える。

腕や体は包帯でグルグル巻き。

額にだって包帯が巻かれている。

 

その包帯の色はすべて真っ赤だった。

 

一方通行「後のことを考えるなら切り札ってのは多く残していたほうがイイ。紫、オマエも力を温存しておけ。最後の暗部のクソ野郎は俺がぶちのめして来てやる」

 

魔理沙「聞いて……、いたのか……」

 

一方通行「…………あァ」

 

魔理沙の問いに一方通行はいつもの調子で静かに答えてみせた。

 

しかし、幻想郷の誰もがその実力を認めている最強の超能力者はボロボロ。

一瞬でそして一撃で敵を倒すことも、傷一つ負うこと無く一度に数多の敵を屠ることも平然とやってのける幻想郷最強は指一本で押せば倒れてしまいそうなほどフラフラだった………。

 

その場の彼女達全員が分かっていた。“一方通行は無理をしてる”と。

 

見ているだけで心苦しくなる姿だった。

 

彼の後を追ってきた藍、そして魔理沙や紫すらも今の一方通行の姿を見て心の底から辛いく思っていた。

 

そして、だ。一瞬、足の力が抜けてしまい一方通行は前に倒れそうになったがそれを察した八雲紫の式神・八雲藍は彼のもとまで駆け寄り一方通行の体を受け止め支えてあげることで地面に倒れることを未然に防いだ。

 

藍に体を支えてもらいながら、ひとりの力で立つことすらままならなくなった幻想郷最強の超能力者は、、、

 

一方通行「紫。早くスキマを開け、クソったれが居る場所に通づるスキマをなァ」

 

紫「……………………藍、命令よ。殴ってでも良いからそのバカの意識を刈り取り手足を鎖で縛り博麗神社の中に監禁しなさい」

 

藍「紫……さま………?」

 

紫「なにをしてんの藍?早く行動に移しなさい!!私の命令が聞けないのかッ!?」

 

藍「ひっ」

 

顔は見えない。

背を向けたままだが分かる。大妖怪が激怒しているのが。

 

藍がここまで怯えているのは初めて見る者は多いだろう。

その姿はまるで親に叱られている子供のようだった。

 

魔理沙「待て待て紫、落ち着けって。まったく勘弁してくれよこういうのは柄じゃないってのに……」

 

ため息を吐き被っている帽子の上から頭を掻いた。

すると魔理沙は、、、

 

魔理沙「一方通行、お前は回れ右で大人しく博麗神社の中に帰れ。藍もだ。月の一件で今日お前たちはいっぱい動いた、疲労困憊でへとへとってところだろ?もう横になってゆっくり休んでいいんだ。後はまだ元気のある私達でどうにかするぜ!!」

 

一方通行「ダメだ。これだけは譲れねェ、チルノのことは誰にも託せられねェ。俺じゃなきゃダメなンだ」

 

紫「藍ッッ!!私に二度も言わせるな!!早くそいつを博麗神社の中に監禁するのよ!!」

 

一方通行の一言を聞くと更に怒鳴り声が増す紫。

どうしてそこまで怒りの感情を露わにする?

そんな疑問が浮かぶが、、、

 

藍「……で……、できません私には、そんな恐ろしいこと……」

 

大きな子供が居た。

体をビクビク震わせ瞳に涙を浮かべる大妖怪の式神。

八雲藍も主人の八雲紫と同様表情がコロコロ変わることはあまり多くない。

しかし、現在の藍の姿は普段の彼女から程遠い姿だった。

 

魔理沙「あーっホントもうさァーッ!!いい加減にしろやァッ!!落ち着けって言ってんのが分からねぇのかゴラァ!!力ずくじゃなくても一方通行を無事説得して自分から博麗神社の中に帰らさせれば良い話だろうがァッ!!」

 

我慢に我慢を重ね我慢していた白と黒の魔女。しかし、抑えに抑えた感情が彼女の中で大噴火。

 

怒鳴ってるから怒鳴り返すなんてそんなことしたら一生怒鳴り合いが続き無駄に時間を費やす。

忘れてはいけない。緊急事態なのだ。早めの行動が大事だというのにこんなくだらないことで無駄に時間を使ってられないのだ。

今は誰が窮地に陥る氷の妖精を救出しに行くか?それを決めなくてはいけない。

 

だというのに、だ。

 

魔理沙も怒りの感情を露わにする。

避けようとしていた怒鳴り合いが始まってしまった。

 

紫「分かってないのよあなた達は!一方通行にとってどれだけあの氷の妖精のお嬢さんが大事な存在かってね!!一方通行は私達を信頼してくれているわ。だけど、それでも、一方通行はあの子だけは私達に任せることができない。それだけあの子が特別だってことなのよ!!____」

 

「「……ッ!?」」

 

大妖怪の言葉に藍も魔理沙も驚きの表情を浮かべる。

冷静になれと言われても声量が下がることはなかった。紫は続けて、、、

 

紫「____だったらもう実力行使で意識を刈り取るしか、一方通行を止める方法はないのよ!!」

 

大妖怪・八雲紫。

彼女は能力は発動させる。

背後に大きなスキマが開かれた。

そのスキマからは多くの気味の悪い目玉がこちらを覗く。

 

八雲紫はその一瞬の隙を見逃さなかった。藍と魔理沙が一瞬ではあるが止まったのだ。

 

そして。

八雲紫は一方通行に向かって弾幕を放とうと動き出す。

白い彼が重傷なのは百も承知。

だが、それでも死なない程度に加減をした弾幕を一方通行に撃とうとしたのだ。

その時に、だ。紫と一方通行の間にひとりの少女が両腕を広げて立つ。

 

「おやめください!!こんなことは……もう!!」

 

八雲藍は一方通行の看病を担当し、突如紫と一方通行の間に立った式神は霊夢の看病を担当していた。

突然現れた式神とは橙だった。

 

八雲藍の式神である。

式神の式神だ。

 

橙「どうして……、今は仲間内で争っている場合では無いはずです!!」

 

大粒の涙を流し鼻水だって垂れていた。

 

橙「もうやめてください。幻想郷の誰かが傷つく姿は見たくありません!私の心はもう限界です!!これ以上は誰も傷ついてほしくありません!!」

 

紫「身の程を知れ出来損ない。“八雲”も名乗ることが許されてないお前が私の前に立ちはだかるか。無礼者め、今から殺されても文句は言えないぞ」

 

橙「……………ッ!!」

 

全身から血の気が引いた感覚を味わう。

橙は恐怖した。そして『これから私は紫様に殺されるんだ』と覚悟した。

 

八雲紫は本当にやる気だった。

周囲の誰もがそれを感じ取る。

 

魔理沙「ったく、今までだったら毎度毎度私が勝手に暴走して止められる立場だったんだけどな。どうやら今回は止める側をやらなくちゃいけないらしい。なァ紫!!口で言っても分からねえバカは殴って止めるしかないってお前も思うだろ!?あァ!?」

 

白と黒の魔女は服の中にしまっていたミニ八卦炉を取り出し握り締めるとその取り出したミニ八卦炉を八雲紫に向ける。

 

式神の二人。藍も、橙も、

 

これから八雲紫と魔理沙が力と力でぶつかってしまうと諦めかけていたその時、

 

「もォイイやめろ」

 

絞るように声を出したのは最強の超能力者、一方通行(アクセラレータ)だった。

 

一方通行「オマエに悪役は似合わねェよ紫」

 

紫「…………………………………」

 

あの眼だ。あの眼が悪い。

 

あの赤い瞳………、

 

それを見てしまうとどうも体の力が抜けてしまう。

頑張って、頑張って、頑張って…………。

頭をフル回転させてこれから自分が更に嫌われるようになってしまっても良いから、恨まれてもいいから止めたかった白い彼の夜道の中でも目立つ赤い瞳を見ると紫は決めた覚悟が揺らいでしまっていた。

 

一方通行「紫、オマエは本当は優しいやつだってこの場の誰もが知っている。八雲紫を理解してる俺達の前じゃあ隠しきれてねェンだよ根の優しさがな。諦めな、演技でもオマエは俺達の前じゃ悪役になりきるのは無理だ」

 

大妖怪の背後に開かれたスキマは徐々に閉じていった。

鋭く殺意を宿した彼女の瞳の力がだんだん抜けていく。

 

一方通行「あァ、分かってる。きっとチルノを助けに行けば必ず戦闘になるだろォな、『刺客』の目的はこの俺を殺害することだからな。そしてこンな状態で戦えば俺は確実に死ぬ_____」

 

………………やめて。

 

八雲紫は心の中で強く願う。

 

弱っているからか?それとも違う理由なのか?

一方通行の顔には笑みがあった。

狂気に満ちた笑みでもなく、戦闘時に見せる悪魔のような笑みでもなかった。

とても、とても。穏やかな笑み。

 

もうすっかり紫からは殺気が消えていて全身の力が抜けてしまった状態になっていた。

 

一方通行「____だったらだ。俺が“あと一回だけ”戦える状態になればオマエらは俺がチルノを助けに向かっても構わねェって満場一致で首を縦に振ると勝手に解釈させてもらうぞ」

 

これが“とっておき”。最後の最後の最後まで残していた最後の切り札。

 

それを“使用”する時がきたのだ。

この幻想郷に来てから目覚めた第二の能力の模倣能力でコピーした数ある能力の一つ。

大妖怪・八雲紫の能力を発動させて一方通行のは自身の前にスキマを開く。

開かれたスキマはとても狭く腕一本入る程度である。

しかし無問題。腕一本入れば“取り出したい”ものは取れる。

 

目的のものを掴み取るとスキマから腕を抜いた。

 

一方通行が取り出したもの。

それを見た魔理沙や藍、それに橙はこれから何が起こるのか全く思い浮かばなかった。

 

だがひとりだけ…………。

 

スキマ妖怪。幻想郷を創った賢者の一人と言われている八雲紫だけは違った。

 

紫「バカッ!!それは_____」

 

慌てた様子で白い彼が行おうとしたことを止めようとする。

 

だが………、止められなかった。

 

紫「バカ野郎ォォォォォォォォッ!!あなた自分がなにを自身の体に“打ち込んだ”か分かってるんでしょうね!?」

 

一方通行「当然だ」

 

スキマから一方通行が取り出したもの。それは“注射器”だった。

そして。注射器の中に入っていた液体を体に打ち込むとあれだけ辛そうにしていたのに一方通行は普段と変わらぬ様子になっていた。

 

魔理沙「一方通行。お前……さっき自分になにを打ったんだ?」

 

白と黒の魔女。霧雨魔理沙は質問する。

だが一方通行は黙ったままだった。

だからか。変わりに八雲紫が答える。

 

紫「…………“麻薬”よ。それを体に摂取するだけで眠気や疲労感などがなくなる薬___」

 

だけど。と、続けて、

 

紫「___麻薬はとっても危険なものなのよ。疲弊した人や落ち込んでる人が抱えてる不安や恐怖といったマイナスの感情。それに、そうね。今の一方通行のように重傷な人が抱えてる痛みだってたった一回麻薬を体に摂取するだけで緩和してくれる代物(しろもの)だわ。けどいい効果だけ見ちゃダメなのよ。それに見合うだけの代償も存在している。麻薬ってのはね、摂取すれば摂取するほど精神や肉体が壊れていく。なら一回でやめたら?って考えるでしょうけど麻薬には恐ろしい程の依存性がある。頭では分かっているけどやめられなくなるのよ」

 

一方通行「それは純正のモノだったらだろォが。この俺が幻想入りしてから今日までずっと監視していたオマエなら態々言葉にして説明しなくても分かってるはずだ。俺がなンで永遠亭にまで足を運ンで永琳から直々に薬学を学ンだ理由が。さっき俺が打ち込ンだのは確かに麻薬だ。だが危険な成分は取り除き、モルヒネ注射と同じ感覚で使えるモンに仕上げた」

 

 

過去に一度、人間の里に“危機”が迫っていた。

里の人間が全滅してしまうかもしれないほどの“危機”が。

 

完全に暴走者となってしまった妖怪達が里を襲撃したきたのとは全くの別、人間と人間の問題で………。

 

幻想郷には制限なく他世界から色んなものがやって来る。

 

それは人だけではなく物もであった。

そして。

あるものが幻想入りをしてしまう。

それが“麻薬”だった。しかもその麻薬はそこら辺にあるものよりとっても危険なものだった。

成分などが他の麻薬と異なるため言ってしまえば今までにない全く新しい麻薬だったのだ。

そんな危険なものが幻想入りしたのに気付かない八雲紫ではない。

一刻も早くその危険麻薬を回収しようと行動を開始する。

だがその麻薬は大妖怪よりも一足早く幻想郷の人間の手に渡ってしまい、そしてその麻薬を手に入れていた人間により栽培などされ数は増えてしまいたったひとりでは回収しきれない量にまでなってしまったのだ。

 

藍と橙。この二名に危険麻薬の回収を協力してもらうことでたったひとりで回収していた時より幻想郷から麻薬の数を減らすことに成功した。

 

そして。そして、だ。

八雲紫を筆頭に藍や橙の(はた)きにより幻想郷から殆どの麻薬が消えた。

 

残る仕事は………。

 

麻薬の最後の所有者。幻想郷で危険麻薬を一番最初に手に入れ人間の里に麻薬を流行させた張本人。多くの人間の人生を潰し大金を獲得して豪遊に豪遊を重ねていた生活を送っているクソ野郎。表では資産家の善人として(つくろ)っているが裏では金に物を言わせて部下を動かし女性の誘拐などをさせていた。そして、その部下がさらってきた女性を自分のドス黒い欲望の吐きどころにしていた正真正銘最低最悪の根っからの極悪人を紫は藍と橙を連れて直々にそのクソ野郎のところに出向き、人ならざる手で始末してそのクソ野郎が持っている麻薬を処分してやろうとしたのだが彼女達よりも早くそのクソ野郎は違う者に殺害された。

 

それが幻想郷最強の超能力者・“一方通行(アクセラレータ)”だった。

 

麻薬を流行させたクソ野郎は一方通行に家をプレゼントしてくれた人だった。

 

だが、それでもクソ野郎はクソ野郎だ。生かしておくには危険なヤツだった。

 

一方通行は紫達よりも早く人間の里の裏で暗躍するクソ野郎が率いる組織をたった一人で壊滅させた。

その時、一方通行はやつらが蓄えていた金銭と一緒に麻薬も回収していた。

 

麻薬は処分するかと思いきや、最強の超能力者は大事に家の中に保管していたのだ。

 

紫は何故一方通行がそのようなことをするのか、その意図は全く理解できなかった。

しかし、彼のその後の行動で分かった。

 

一方通行は自分で使うために危険麻薬をクソ野郎達から奪ったのだと。

 

紫「ええ、確かに。あなたが自分に打ち込んだ麻薬は純製のものに比べれば“危険性は少ない”でしょうね。でもね、“危険性が少ない”だけであって“絶対安全なもの”じゃないのよ。あなたの他と比べてずば抜けた優秀な頭脳を持ってしてもあの麻薬の危険性を完全に排除できなかった………」

 

一方通行「悪りィな紫____」

 

チルノを助けに行く。そう言えば優しい優しい彼女らに止められると最初からわかっていた。

 

全力で反対される。例えどれだけの覚悟を示したとしても………。

 

だから一方通行は決意していたのだ。

自分を心配して引き止める彼女らの優しさを無下にしてでも強引に行くと。

 

そして……、

 

穏やか表情で、落ち着いた様子で、静かな声で、

 

一方通行「____俺の身勝手を許してくれ」

 

ゴバッッッ!!!!

それは一瞬だった。

一言その場に残すと一方通行はベクトル操作を駆使して目にも留まらぬスピードで飛び立ってしまった。

 

紫「バカタレ!!許すわけないでしょッ!!」

 

空を高速で飛んでいく一方通行の方へ腕を伸ばした大妖怪。

彼の背後にスキマを開き首根っこを掴み博麗神社に連れ戻そうとしたのだ。

 

だが………、、、

 

紫(クソったれ!!こんな時に邪魔をするか『呪い』め!!)

 

彼女の望みは叶わなかった。

 

魔理沙「…………………紫?」

 

小刻みに震える腕を空に伸ばしたまま動かない大妖怪に白と黒の魔女・霧雨魔理沙は首を傾げる。

 

紫「もういい……、もういいもういいもう知らない自分の体の状態も分かってないあんなバカ!!私は寝るわ!!あなた達も勝手になさい!!フンっ!!」

 

足音を立てて八雲紫は博麗神社の中へと歩いていった。

 

橙「藍様………わたし達はいったいどうすれば……?」

 

藍「答えが分かりきった質問だな。我々がすべきことは一つだよ橙、私と一緒に紫様のお側に居て全身全霊で仕える。それが今の私達にできる唯一のことだ」

 

橙「でも、ああいう時はお一人にさせてあげたほうがいいのでは……?」

 

藍「ああ、そうだな。きっと今の精神状態の紫様に近付いたら厳しいお言葉がいくつも飛んでくるだろう。それでも私達はその厳しいお言葉を受けて止め紫様のお側に居なくてはならないんだ。それが我々『式神』の役目なんだから」

 

式神の二人、藍と橙は手を繋ぎ博麗神社の中に帰っていく。

その途中だった。藍は未だに一方通行が飛びだった方角を眺めている霧雨魔理沙のところに足を止めずに振り返り質問する。

 

藍「魔理沙はどうするんだ?」

 

魔理沙「お前達と同じだよ。今の自分にできることをする。それが正しいか間違っているのかは後で考える。“とりあえず”だ。とりあえずやるしかないだろ?はぁ……、今後の命運がかかってるんだ、ちっとはこちらが決断するのに待っててくれてもバチは当たらない思うんだけどな。どうしてここまで時間ってやつに意地悪をされなきゃならないんだろうな、まったくよォ……」

 

藍「ふふっ。そっか、そうだな……。以前より逞しくなったようだな魔理沙」

 

大きくため息を吐いて下を向く魔理沙を見て扇状に伸びる九つの金色の尻尾を持つ式神は小さく微笑んだ。

 

八雲藍と手を繋ぐ歩いていく橙は見た。

その時の藍はとても嬉しそうに笑っていた。

 

そして、静寂な空間にて。

博麗神社の長い階段の頂上にある鳥居。

そこには箒を持つ白と黒の魔女が立っていた。

 

たったひとり、その場に残っていた魔理沙は、、、

 

魔理沙「行くぜ」

 

小さく呟き、八雲紫が危険とまで言う垣根帝督の手からチルノを救出するという目的もあるが現在の一方通行に無理をさせないという目的も果たそうと霧雨魔理沙は博麗神社から出発しようと足を前に出した。

 

しかし………?

 

魔理沙「わぁ……ぷっ!?」

 

見えない壁に道を遮られたのだ。

 

魔理沙「あん?これは結界か?まさか飛んでいく時に一方通行が張ったのか?あいつ結界なんて張れたのか?いや、一方通行はどんなことも実現できる力を持っているし結界を張るなんてちょちょいのちょいってか?」

 

紫の話の中に一方通行は幻想郷全体に張られている結界の設定を弄ったと説明していた。

つまり幻想郷の結界に接触していたのだ。

そして、その事をきっかけに結界というものの解析も完了していて模倣能力で結界を模倣したのだろう。

 

だが………。

 

魔理沙(それにしてもなんだこの結界は?すっごく嫌な感じだぜ。一方通行が張ったとは思えない結界だ。結界の壁が肌に触れた瞬間、全身の細胞から拒否反応が起きたような感覚がした……、これより先に進んでいけないと思ってしまうくらいの)

 

目には見えない透明な壁。

しかし、魔理沙は感覚で結界を感知していた。

 

どうやら博麗神社を覆うようドーム状に結界が貼られているらしい。

そして、この結界は半端な力じゃ打ち破ることはできないと何故か理解できた。

 

魔理沙「恐らくこの結界が原因だな……。あの時、一方通行のことを阻止しようと紫はスキマを開こうとしていた。だがなにか別の力にそれは阻害されスキマを開けずに終わった。でもやっぱりこの結界は変だぜ、結界の壁の近くに立ってると毎分毎秒嫌な気分にさせられる。一方通行、お前はここまでしてでもひとりの力でチルノを助けたいと言うのか……?」

 

ここまで拒絶されたら仕方がない。

白と黒の魔女は諦めた。いいや、諦めざるを得なかった。

 

魔理沙「はぁ……、チルノに負けた気分だぜ………」

 

風に流すかのようにポツリと呟いて霧雨魔理沙も式神の二人の後を追うように博麗神社の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして。それから5分も経たずに一方通行は垣根帝督の居る場所に到着すると最強の超能力者は目撃することになった。

 

変わり果てた氷の妖精の少女の“衝撃的な姿”を………。

 

 

 





次回予告。

第一位と第二位の戦いが始まった。
どちらも人知を超越した絶大な力を持つ超能力者、どれほど恐ろしい光学破壊兵器に囲まれても全然平気な顔でいられる怪物だ。

そんな両者がぶつかったらどれだけ周囲に被害が及ぶのだろうか?
想像もつかない激戦が始まったのだった………。


でも、始まりがあれば終わりもある。
戦いには勝者が居れば敗者も存在する。


ニヤリと口角を上げて怪しく笑う逆さまの人間は最初から知っていた。
第一位と第二位が戦ったとしてどちらが“勝ち”どちらが“敗ける”のか………。


次回・第四章・十五話

【第一位と第二位】(後編)


学園都市統括理事長・アレイスター=クロウリーは望んでいない。

この物語のハッピーエンドを。



幻想郷が崩壊するまで、、、、、『1』


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15話


【第一位と第二位】(後編)

二人の超能力者(レベル5)が幻想郷でその絶大な力を激突させる。

一方通行と垣根帝督はそれぞれ違う少女の姿を思い浮かべていた。

第一位は自分にまた新たな光を見せてくれた自慢の教え子を。
第二位は最後まで守りきることができず最終的に失うことになった哀れな少女を。

出会うべくして出会った超能力者(レベル5)同士の一歩も引けない戦いが始まった。


そして………。
幻想郷に学園都市の暗部達が襲来したことにより起こった異変は幻想郷の歴史の中でも“最悪の姿”で幕を閉じることになる。


※誤字脱字などのミスが必ずあると思います。
それをご了承のうえ読んでいただけると幸いです。
しかし、そういったミスが多いのをご不快に思う方にはブラウザバックをオススメします。


 

日が落ちようとしていた時刻に、であった。

空を高速で飛行する小さな物体があった。もしもそれが見えたとしても地上からだったら小さな点にしか見えないだろう。

 

白い頭に白い肌、そして赤い瞳。

学園都市だけに留まらず幻想郷でも最強と呼ばれている超能力者・一方通行(アクセラレータ)

 

最強の超能力者は自身の能力、ベクトル操作を駆使して背から4つの竜巻を伸ばし上空を飛行していた。

飛行速度は優に時速100Kmは超えていた。

 

一方通行の顔色には焦りが見えた。冷静なんて一ミリもなかったのだ。

天才的な頭脳の持ち主であり最強と呼ばれている一方通行が何故そこまで冷静でないのか?その理由は自慢の教え子である氷の妖精・チルノが現在危機的状況に陥っているからだ。

 

幻想郷に最後に到着した『刺客』と戦いチルノは敗れてしまったらしい………。

そして今はその『刺客』に惨いことをされているのだ。

その事実を知った一方通行は自慢の教え子を救出するため空を高速で飛翔している。

 

だが………、しかし。

一方通行の体は重傷。

頭も体も包帯でグルグル巻き。

体内だって内臓はズタズタのボロボロ。

傷は塞がってない。自身の能力『ベクトル操作』を使用すれば簡易的ではあるが傷を塞ぐことだってできるのだがそれは一方通行が能力を使うのに支障がなければの話だ。

 

現在の一方通行は重傷であり月の一件などで披露もあった。

そんな状況では超能力など少しも使えない。

 

ふかふかのベッドを用意してそこで睡眠を取らなければいけない。

一歩も動いてはいけない。外出するなんて論外だ。

もしも彼が一番やらなければいけないことがあるとしたらそれは“休息”である。

しかし一方通行は拒んだ。寝てなんかいられなかったのだ。

一方通行は自身の体に麻薬を投与して痛みや疲労感などを忘れさせることで一時的にではあるが動けて尚且つ超能力も使えるようにした。が、超能力が使えるようになったとはいえ使える能力は本来の半分にも満たない。

止血。傷を塞ごうと能力を使おうとすれば集中する時間を要するのだ。

一分一秒も無駄に出来ない今の状況で“たかが重症”だからと言ってどこかで休むわけにはいかない。

幻想郷最強の超能力者は我が身を労ることは一切せず、チルノの救出を最優先したのだ。

 

一方通行「クソったれ。どこに居る……ッ!?」

 

チルノがどこに居るのか正確な位置は知らない。

彼を心配して止めようとしていた博麗神社に居る彼女らを振り切り最強の超能力者はチルノの救出に向かった。

ここで少し最後の『刺客』とチルノの居場所くらい聞いてから飛び出せばよかったと後悔する。

しかし。しかし、だ。

 

一方通行「____そこか!!」

 

明らかにそこで大きな戦いがあったであろう痕跡が上空からでも発見できた。

普段ならそこは草木が生い茂る緑が溢れる地帯。

でも一方通行の目に映った光景は大地は荒れてたり抉れていたり、木々達は薙ぎ倒されていた光景だった。

 

一方通行はそこで幻想郷に最後に到着した『刺客』とチルノがそこに居ると踏んで飛翔速度を加速させる。

その途中、自分の服の中に手を突っ込むと体に巻かれている包帯を引きちぎり血で赤く染まった包帯を空中で投げ捨てた。

頭に巻かれている包帯も彼は取ってしまった。

だが、血が流れ出てくることはなかった。

ベクトル操作で傷口から一滴も流れないように血液の流れを操作しているからだ。

 

一方通行(待っていろよチルノ。必ずオマエを助ける!!)

 

そして、見つけた。

巨大な穴の付近で立っている6枚の白い翼を背中から生やす野郎と地面に伏せて踏みつけられている氷の妖精の少女の姿を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これまでのことで歯車が狂ったなんてことは一度もなかった。

 

なにも間違っていない。この物語が始まった最初の時点でこうなることは決定していたのだ。

 

『始まるぞ。楽しい楽しいショータイムが』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背から4つの竜巻を伸ばして上空を飛行していた一つの影が急速降下して地面に着地する。その時、大地は揺れ轟音が響く。

 

一方通行「離れろよ___」

 

垣根「まさかこっちのお目当ての野郎から俺のところに来てくれるとはな。そうか、そんなに大事かこのガキが」

 

一方通行「___今すぐチルノから離れろってのが聞こえねェのか三下ァ!!」

 

背中から6枚の白い翼を生やす一方通行と同じ超能力者(レベル5)で第二位の垣根帝督。

やつの足元には“普段とは違う色”のチルノが倒れていた。

 

垣根「三下……?この俺に向かって三下だと?ははっ、お前が初めてだぜ学園都市の人間で俺に面と向かってそんな台詞吐いたやつは。どいつもこいつも第二位であるこの俺の顔色伺って地雷踏まないよう言葉選んでよ、裏では見下したり罵倒してるっていうのに。それなのにテメェは俺の顔を見ながら確かに声に出して三下と言った。それはテメェが第一位だからできる立ち振る舞いってやつだ。格下の顔色なんて伺う必要ねえよなー?言葉なんか選ばなくてもいいよなー?でも___」

 

そう続けると、第二位は背中にある6枚の白い翼を大きく広げる。

 

垣根「___この状況じゃあ違うんじゃねえか一方通行?」

 

一方通行「…………ブチ殺してやるメルヘン野郎」

 

垣根「おいおい殺気立つなよ、テメェの殺気にあてられてうっかりこのガキを殺しちまったらどうするんだ?そうなったら困るのはそっちだろうが。テメェはこのガキを助けに来たんだろ?」

 

まだチルノに息はあった。そのことに一方通行は安堵する。

しかし動揺もしていた。

 

氷の妖精の少女は元々肌が白い方だった。でもそれは女の子の健康的な白さであってまるで作りもののような白さではない。

チルノは絵の具かなにかの塗料で塗りたくられたように異様なまでに白い肌に白い髪をしていた。

 

垣根「あ?このガキの変わりように驚いてるな?いいだろう教えてやるよ。まずは感謝しろよな一方通行、俺の慈悲あってこいつはまだこうして生きていられるんだぜ?もしもあのまま瀕死の状態で放置していたらこのガキは確実に死んでいた。だが俺は俺の能力、未元物質(ダークマター)でこのガキの負傷した箇所を治してやったんだ。失った右脚だってそう、俺の未元物質(ダークマター)で新たに脚を創ってやった。でもなこのガキを治してやっている時ちょっとしたサービスをしてな。傷を治してやってる時にこのガキの体全体に未元物質(ダークマター)を流し込み体の構造、細胞の一つ一つまで作り変えてやったんだ。つまりだ、このガキは俺の操る未元物質(ダークマター)そのものになったんだよ!!」

 

一方通行「クッソ野郎が……ッ!!」

 

垣根「だーから言ってんだろ殺気立つなって。落ち着けよ、なあ?」

 

今すぐに教え子を助けてやりたい。捕らえられたチルノをやつから開放してやりたい。

ニヤついてるメルヘン野郎を遥か彼方まで殴り飛ばして、チルノを取り戻し永遠亭まで運ぶ。

そうすればきっとあんな体になってしまっても永琳たちなら以前の元気に太陽のように笑ってくれるイタズラ好きのいつものチルノに戻してくれる。

 

だけど。最強の超能力者の足は動かなった。

 

垣根「俺の操る未元物質(ダークマター)になったってことはこのガキのすべてが俺の手中だ。それがどういう意味か分かるよな?」

 

一方通行「___関係ねェよ」

 

そうやって吐き捨てると一方通行は赤い瞳で垣根帝督を睨みつける。

 

一方通行「___俺は“第一位”だ」

 

垣根「へえ、じゃあテメェのそのご自慢の力で俺という悪党から助けてみせろよヒーロー。なあ!!」

 

ボギッッ!!!!

そして第二位は第一位の目の前で自身の足元で倒れている少女の腕を踏んでへし折ってみせた。

 

チルノ「あ……がぁ………ッ!?」

 

一方通行「チルノォ!!」

 

垣根「あはははははははははははっ!!!!だから言っただろうがこのガキの体は俺の操る未元物質(ダークマター)になったってよ!!体の強弱や痛覚に至るまですべて俺の意識で自在に調整できるんだぜ!?」

 

一方通行「やめろ……」

 

垣根「やめろ?違うだろ?やめさせるんだろうが第一位様よォ!!テメェの力に自信があんならその力で俺からこのガキを救ってみせろォ!!あァ!?」

 

そして、また垣根帝督はチルノの体の踏みつける。

全身の性質が未元物質(ダークマター)に変えられてしまった少女は腕や肋骨が折れてもすぐに治る。

しかし痛覚はあった。

未元物質(ダークマター)を操る第二位が言うには痛覚を上げることができるらしいので、尋常じゃない痛がり方をしているのを見る限り想像を絶する痛みなのだろう。

 

先程まで気絶していた少女を垣根帝督は痛めつける。

その光景を大人しく指をくわえて眺めているなんて第一位はできなかった。

しかし、もしもちょっとでも動けば第二位が何をしでかすか分かったものではない。

一方通行の中では不甲斐ない自分と垣根帝督への怒りが込み上げていた。

 

そして。そして、、、

 

「い、たいよ…………」

 

第二位の笑い声が響くこの空間に小さな声が聞こえた。

 

「怖いよ、たすけて…………一方通行」

 

その小さく弱々しい声の出所は直ぐに分かった。

 

“チルノ”だった。

大切で大切で仕方がない最強の超能力者の大事な生徒。

彼にできた初めての教え子から出た助けを求める声。

 

 

それから……、なにが起きたか一方通行自身わからなかった。

ただ、第一位の眼前には横幅が20メートル以上のそれがどこまで先に続いてるか調べるのが苦労しそうなほど、草木や小石もなんにもない一本の平坦な道ができていた。

 

そして、だ。

一方通行は地面に倒れていた全身が白く染まっていたチルノの体を抱きしめていた。

 

「よかった___」

 

そう呟いたのは“助けた者”ではなく、“助けられた者”。

氷の妖精・チルノだった。

 

少女は続けて、、、

 

チルノ「___“最後に”一方通行に会えて」

 

一方通行「なにバカなことォ言ってやがる。こンなところでオマエは死なせねェ。絶対オマエを元の姿に戻してやる」

 

チルノ「無理だよ。いくら一方通行が強くても、凄くても、不可能だ………」

 

一方通行「へっ、らしくねェなチルノ。気付いてねェのか?オマエの体は完全にやつの未元物質(ダークマター)になっちゃいねェ、まだ微かにだが元の部分が残ってる。微かだがその程度でイイ、少しでも元の部分が残ってりゃあ永琳ならオマエを元の姿に戻せる。まずは永琳のところに届ける前に俺のベクトル操作でオマエからやつ未元物質(ダークマター)を取り除いてやる___」

 

完全に詰みというわけではない。まだ希望はある。

一方通行はそう考えていた。

 

しかし氷の妖精は白い彼の顔を見ながら涙を流す。

 

チルノ「それはあたいが生きていたらの場合。……ごめんね、せっかく助けに来てくれたのに……もうあたいは死んじゃったんだ」

 

一方通行「____ッ!!!!」

 

チルノ「あたいの体だから一番あたいが理解してる。あたいね、やつとの戦いで力を全部使い切っちゃったんだ。もう……あたいにはなんにも残っちゃいない。こうして一方通行と話ができてるのはやつの未元物質(ダークマター)で生かさているから………」

 

チルノの瞳が、、、

 

一方通行の腕の中にいる少女の左目が黒く変色し始めた。

これがなにを意味するのか第一位はわかっていた。

 

時間が経つにつれて第二位の未元物質(ダークマター)の侵食は進んでいく。

一方通行はその侵食していく速度を自身の能力で止めようとした。

しかし遅かった。もう手遅れだったのだ。

チルノの言う通り氷の妖精の少女の肉体は死んでいた………。

 

一方通行「…………ふざけるな」

 

チルノ「………完全にやつの未元物質(ダークマター)になってあたいの意識が無くなり、やつの操り人形になってしまう前に言い残したいことがあるの」

 

一方通行「………ふざっ……けンなよ……」

 

どうにもならない。

叫んだところで状況がいい方向に傾くなんてことは現実では起こらない。

抑えられないその気持ちを周りにぶつけたってそれでチルノが助かるわけでもない。

 

霊夢にやった死者蘇生の魔法。

それには条件がいくつかある。

 

まずは蘇生したい者が死んでから直ぐに行わなくてはならないこと。

そして、次が蘇生したい者の魂を入れる器が必要なこと。

 

1つ目の条件は問題ないだろう。

 

しかし2つ目の条件が問題だった。

 

例え模倣能力でチルノの体を創ったとしても一方通行の模倣能力は本物を創れない。創れるのは偽物だ。

 

あくまで第一位が幻想郷に来て目覚めた第二の能力は本物に限りなく近く模倣する力。

 

 

肉体と魂。

この二つには相性のようなものが存在する。

どちらも液体であるというのに水と油を同じ容器に入れても混ざらないように、別の肉体に他の魂を入れると反発するかのように拒否反応が発生して魂が肉体から飛び出てしまうのだ。

 

本体の部分が8割ほど残っていたら良かったのに………。

 

氷の妖精は体の9割が未元物質(ダークマター)となってしまっていた。

 

チルノ「___一方通行(アクセラレータ)。“ありがとう”」

 

体の感覚もなくなってきた。

視界も狭まってくる。でも少女は口を閉じることはしなかった。

 

一方通行「なにがありがとうだ。俺はオマエを助けられなかった……ッ!!」

 

チルノ「____あたいは既に一方通行に救われていたよ。知っていた、あたいは最強じゃない。あたいは弱い。それを誰よりも知っていたから言葉だけでも、響きだけでも最強になろうとした。強くなりたかった。まるで自分が強者であるかのように演じた。あたいは弱いあたいが嫌いだった。でも変わろうとはしなかった。自分に自信がなかったんだ、誰もあたいが強くなれるなんて思っていないように自分でも強くなれるなんて思えなかった。けど、一人だけ違った。一方通行、お前だけはあたいが強く、最強になれると信じてくれた。でもね、ダメだったよ。あたい、弱いままだった。一方通行は信じてくれたのに、いっぱいあたいが強くなるために手伝ってくれたのに、なに一つ成長もできなかったダメダメで弱いあたいのままだった。ごめんね………」

 

一方通行「どこが弱い……オマエのどこが弱い!!自分の弱さを知りそして自分と向き合い、弱い自分から強い自分に変わろうとしたオマエはどこも弱くなンてない!!怖かったはずだ、目を背けたかったはずだ、逃げたかったはずだ。もしも努力しても変われなかったら、すべて無駄に終わってしまったらって恐怖したはずだ。でもオマエは恐れることもなく、まったく弱音も吐かず前を見て、前だけを見てこンなにも強くなれたじゃねェか!!オマエは最強だ!最強()が唯一認めた最強だ!!これは誰にも文句は言わせねェ!!」

 

チルノ「…………うん。ありがとう、ありがとう一方通行」

 

意識が遠のく。

 

その時、既にチルノは首から下の感覚はなくなっていた。

 

チルノ「幻想郷に来てくれてありがとう。幻想郷を救ってくれてありがとう。あたいと出会ってくれてありがとう……、生まれてきてくれてありがとう」

 

一方通行「………いやだ。ダメだ逝くな!勝手にこンなところで終わりやがったら許さねェぞチルノ!!オマエにはやり遂げてほしいことがあるンだ!!俺を超えた最強になってほしいンだ!!」

 

チルノ「一方通行、最後にあたいのお願いきいてくれる……?」

 

そして。

氷の妖精・チルノは弱々しく消えてしまいそうな声で言った。

『一方通行の手であたいを終わらせてほしい』と。

 

一方通行「………………………………………チルノ」

 

チルノ「大好き……、大好きだよ一方通行(アクセラレータ)

 

一方通行「ああ。俺もオマエが大好きだ……ッ!!」

 

知っている。

きっと自分の言っている“大好き”と一方通行の言っている“大好き”は違う。

しかし初めて彼の口から聞いたその言葉に、、、、

 

 

 

チルノは“最後に”穏やかに微笑んだ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この感じは覚えがあった。

過去に同じような経験をした記憶がある。

あれは……そうだ幼い頃、身寄りもない自分を大人達は研究所に放り込みそしてその研究所で研究に取り憑かれた科学者に体のあちこちを弄られていた頃の話だ。

 

そこには“真っ白な子供”と同じように科学者の実験動物にされている同年代の子供が居た。

しかし、他の子供たちと真っ白な子供は違った。

 

まだ幼いというのに髪が真っ白な子供だけ他の子供たちとは違う場所に隔離されていた。

 

それだからか、特別扱いされている真っ白な彼に興味を持ったひとりの子供が現れた。

 

たまにだが真っ白な子供が居る部屋の前を知らない子供が通ることがある。

他の子供達とは違う極めて特別な力を持ち既にこの世に存在する超能力者の頂点、最強の力を持っていた真っ白な子供の居る部屋は全面が戦車で砲弾を何発撃ったとしても破壊を困難とさせる超特別製強化ガラスだった。

全面をガラスにしたのは死角を無くして24時間いつでもどこからでも監視できるようにだろう。そして特別製の強化ガラスにしたのは脱走を防ぐためだろう。

しかしそんな強化ガラスも真っ白な子供の前では普通のガラスと変わらない。

脱走しようとすればいつでも脱走できる。

が、真っ白な子供は脱走なんてしようとも思わず反抗もせずその研究所で大人しく頭のネジが外れた科学者に従っていた。

 

言ってしまえば真っ白な子供はガラスの檻、透明な監獄に閉じ込められているようなもの。

そんなところに近付くやつはイカれた科学者だけだったのにそのガラスの部屋にひとりの子供がやって来た。

 

強化ガラス越しからでも声は聞こえる。

何故か分からないがその子供は真っ白な子供のところまで近づき話しかけてきたのだ。

 

一度だけ白い彼を見かけたことがあり、あまりにも真っ白な彼の姿が印象的だったため興味を持ったらしい。

一方的に話を始める子供は色々なことを話す。

 

自分の好物や趣味。自身の名前。この研究所でできた友達。どんな方法でここまで来たか、など。

 

ペラペラとよく喋るうるさいやつだった。

真っ白な子供は一方的に喋ってくる子供に見向きもせずどこかに消えてほしいと願っていた。

 

すると、だ。白衣を着た科学者がそこにやってきて一方的に話している子供の腕を掴みどこかへと引っ張っていく。

きっと元の居た場所に連れ戻すのだろう。

 

しかし腕を引っ張られながら一方的に話していた子供は笑顔で言った『また来るね』と。

 

そして。また数日経つと真っ白な子供のところにあのうるさい子供がやって来た。

それからも何度も、何度も。

ずっと無視をされているのに飽きずに勝手にやって来ては一方的に喋ってくる。

それが嫌になり真っ白な子供は言った『どっかに行け』と。

すると無視をされても話していた子供は嬉しそうに『初めてボクに話しかけてくれた!』と言った。

変なやつ。変わったやつだとその時、真っ白な子供は思った。

 

けど、、、

 

色んな科学者に体を弄くり回される日々、

 

データを取られる日々の中、白い彼はひとつ楽しみができたのだ。それがあのよく喋るうるさい子供が自分のところに来ること。

『オマエが来るのが楽しみになった』なんて言えば余計うるさくなるだろうから言わないが、誰も信じず自身が怪物であることを自覚して人を遠ざけるようにしていた白い子供はあのうるさい子供に好意を寄せるようになる。

 

しかし………。

 

突如、あのうるさい子供は自分のところに来なくなった。

 

飽きられてしまったのか?

自分よりも興味を持つものが現れたのか?

 

いいや、違う。もしかしたら別の研究所に送られたのかもしれない。

 

真っ白な子供はあのうるさい子供を忘れることにした。

 

だが……、真っ白な子供のところにあのうるさい子供が来なくなってから約半月が過ぎてから二人は再会することになる。

口や目は糸で縫われ声も出せず目も見えず自分がいったいなんなのかも分からなくなり、死んでるのか生きてるかも分からない鼻呼吸以外なにもできなくなった人の形をした肉塊と成り果てた“静かになった子供”と真っ白な子供は再会を果たす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方通行「…………………………………………」

 

人間の殺し方は知っている。命の壊し方は知っている。

 

どうして命とはここまで脆いものなんだろうか?

この手でちょっとでも触れてしまえば簡単に壊れてしまう。

 

これまで何度も殺しをやってきた。

 

しかし、これまでのとは今回は違う。

 

殺意も憎悪も悪意もなく『ただ安らかに眠ってほしい』と純粋に願い優しく抱きしめて自分の大切な教え子を体に一つも傷をつけず痛みも感じさせず殺した。

すると氷の妖精の少女の全身は徐々に崩れていき、淡い光の粒となって消えていった。

 

「なあ、どんな気分だ一方通行(アクセラレータ)?」

 

静寂に包まれた空間に翼の羽ばたく音が響く。

 

“やつ”は生きていた。

 

まるで異世界から持ってきたかのような翼を6枚背中に生やす超能力者(レベル5)第二位の垣根帝督は地面から離れた空中で静止していた。

 

垣根「あ?もしかして壊れちまったか?」

 

刹那。

ズンッッッ!!!!

森全体に衝撃が走る。

 

そして、大地も草も木もそこにあるすべてのものが重力を無視して空へ浮いていく。

 

その光景はまるで世界の終わりのようだった。

 

垣根「はァッ!?オイオイオイ!この世界を守りたいんじゃねえのかよ?テメェの手で幻想郷を壊すつもりか一方通行ッ!?」

 

その現象を起こしてるのが誰か?

最強。第一位。白い怪物。“一方通行(アクセラレータ)”だった。

 

垣根「チッ、こんなのに巻き込まれるのはごめんだ。つか、そもそも最初から俺の目的はテメェを殺すことだしな。絶望に押し潰されたまま死ねよ一方通行ァッ!!」

 

背中の6枚の白い翼を撓らせると次に烈風を放った。

その烈風の威力は台風を遥かに超えるものだった。

 

垣根「なっ、く……ッ!?」

 

垣根帝督は当たると確信していた攻撃を躱されたことに驚く。

が、しかしそれだけでは終わらない。

 

瞬間移動したみたいに第二位の前に真っ白の怪物が音を置き去りにして現れた。

そして、怪物はその剛腕から拳を放つ。

もしもその拳をまともに受けてしまえば怪我をするだけでは済まない。一撃であの世へ直行だ。

 

そうだ。第一位から繰り出された攻撃は一つ一つが必殺クラス。

 

第二位の垣根帝督は一方通行の攻撃に反応できた。咄嗟に背中の翼を前面に展開して翼の防壁を作り一方通行から放たれた拳から身を防ぐ。

未元物質(ダークマター)で形成された白い翼にはいくら視力が良くても肉眼ではハッキリと捉えることができない隙間がいくつもあってそこから衝撃を散らす。

だがしかし、一方通行のその腕から放たれた攻撃の衝撃すべてを散らすことはできず垣根帝督の体は背後に吹っ飛んていく。

 

が、第二位は背中の翼を大きく広げて吹っ飛んでいく勢いを止め遠くまで吹っ飛ぶことはなかった。

 

そして、だ。

 

垣根帝督は背中の翼から烈風を放つと同時に白い羽根を100枚以上も飛ばす。

そしてその羽根たちは光を帯び始めたと思ったら次の瞬間には光弾に変化した。

ビルもまるで紙のように吹き飛ばす烈風と装甲車すら簡単に破壊できる威力の光弾。

この二つが一方通行を襲う。

 

しかし………。

 

たった“一振り”だった。

 

手を鉤爪のように開いて一回右腕を振る。

そんな小さな動作一つで第一位は自分に向かってきたものすべてを消し飛ばした。

 

垣根「へっ。やっぱりこの程度じゃあテメェには通用しねえか」

 

____じゃあこっからは本気でいくぜ?

第二位はそう宣言すると第一位に向かって突進する。

相手は自分に向かって飛んできたものすべてを反射して少しでも手で人に触れれば人を簡単に殺すことができる学園都市最強の怪物。

しかし垣根帝督は恐れも迷いもせず一方通行に向かって突進した。

すると第一位も第一位でそれに迎え撃つかのように第二位に向かって突進した。

 

ノーブレーキの衝突。

天高い空で激しく正面から打つかった超能力者(レベル5)はどちらも後方へ吹っ飛ぶことはなかった。

 

垣根「俺の未元物質(ダークマター)でテメェを完膚なきまでにぶっ殺し俺は目的を達成してみせる。覚えておけ!テメェは俺にとってただの通過点に過ぎねえ!!驕るなよ一方通行!!テメェのようなカス野郎なんかに価値なんてもんは微塵もねえんだよ!!」

 

第二位の能力は第一位の反射を突破して攻撃を一方通行に届かせることが可能。

垣根帝督は攻撃のいくつかに何万通りのベクトルを注入していた。

そして。一方通行が無意識の内に受け入れているベクトル方向を探り当てることに成功している。

 

一方通行「……………………………………」

 

未元物質(ダークマター)。6枚の白い翼を受け止めている第一位は心の中で何度も呟いていた『コロス』と。

 

一方通行の強烈な殺意。それに彼の能力が応えた。

それで起こったのは一つの暴走。

第一位は自我のない殺意だけで動く怪物と成り果てる。

 

そして。

一方通行は人知れず自分の中で溜めに溜めていた力を解き放つ!!

 

一方通行「ォォォォおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああッッッ!!!」

 

目に見えない攻撃。

ベクトルを完全に掌握している一方通行は垣根帝督に対してその場の空間を歪めてしまうほどの威力を秘めた衝撃波を打つ。

すると第二位の背中から生えた6枚の白い翼は亀裂が入ったと思ったら次の瞬間には砕けていた。

 

垣根「…………やるじゃねえか」

 

遠くまで体が吹っ飛ぶことはなかった。

しかし確実にダメージを負っていた。

垣根帝督は直ぐ様背中から6枚の白い翼は生やすと口端から血を流しながらも笑っていた。

 

垣根「だがいい気になるなよ。最後に勝利を掴み取るのはこの俺だァッ!!」

 

 

大きな力と力が衝突して、衝突する。

怪物同士の戦いは地上から離れた空で行われていた。

 

一撃で人を殺す攻撃を何発も繰り出す。

空中ではその場の空間を震撼させるほどの爆音が轟く。

二人の超能力者(レベル5)の激しい攻防は誰にも止めることはできない。

 

が。そのまま激しい攻防が続くかと思ったが一方通行の動きが突如として止まる。

 

すると、、、

 

垣根「どうだ?スッキリしたか一方通行?」

 

一方通行「…………………………」

 

垣根「俺も同じだった。過去に目の前で大切なやつが死んだ時、俺は俺の中で爆発した感情を抑えきれず力が暴走して周りのもんを片っ端からぶっ壊したことがある」

 

それからも第二位は淡々と話し始めた。

 

垣根「結局テメェも俺と同じだ。なにも守れやしない」

 

一方通行「………違うな。オマエがどンな悲劇で壊されたか知らねェが俺は守る。守りきってみせる。あいつらを、この幻想郷を」

 

垣根「はぁ?なに都合よく忘れてんだ?守れなかっただろがあの冷気を操る能力者のガキを」

 

一方通行「チルノは完全に死ンじゃいねェ。まだ生きてる、この俺の中で」

 

垣根「じゃあ完全に殺してやる。あのガキもオマエも。俺の未元物質(ダークマター)で幻想郷諸共(もろとも)殺し尽くしてやんよ!!」

 

第二位はズボンのポケットに両手を突っ込んだ状態で不敵な笑みを浮かべながら背中の6枚の白い翼を動かした。

目にも留まらぬ神速の風の斬撃を6つ一方通行に向かって飛ばす。

しかし。次の瞬間、垣根帝督は目を疑うことを目撃することになる。

なんと第二位が放った風の斬撃が『反射』されたのだ。

 

垣根「………ど、どうなってやがる?」

 

全力で右に回避行動を取り『反射』された風の斬撃を躱した。

 

さっき垣根帝督は放った攻撃は防御不可能。不可避にして必中の攻撃だったはすだ。

しかし放った攻撃がそのまま返ってきたのだ。

一方通行の『反射』を無効化できる攻撃が、だ。

 

垣根「なにをしやがった一方通行ァッ!!」

 

一方通行「この程度で一々吠えるなよ犬野郎。紫の話を勝手に聞いててなァ、オマエの能力は戦う前から知っていた。オマエの操る未元物質(ダークマター)は確かにこの世に存在しない物質だ。存在しない物質には存在しない法則があり、存在しないベクトルがある。この世界の(ことわり)に従ってベクトル演算式を組み立てたンじゃ穴があるのも無理はねェ。だったらだ、この世界はオマエの未元物質(ダークマター)を含む素粒子で構成されていると再定義してオマエの公式を暴けばチェックメイトだ」

 

垣根「俺の底を掴み、俺の未元物質(ダークマター)を操ったっていうのか……?」

 

一方通行「そンな難しいことじゃねェ。オマエのような三下の底を掴むなンてな」

 

垣根「ッッ!!!!!」

 

一体いつから?そんな疑問が浮かぶがそんな疑問が吹っ飛ぶほどの怒りが垣根帝督の中で爆発する。

第二位は自分の背中にある白い翼を最大まで強化して第一位に向かって放った。

 

しかし無駄だった。もう能力は通用しない。

一方通行は自分に向かって飛んできた翼に手を伸ばしベクトルを操作して、まずはやつの未元物質(ダークマター)でできた白い翼を粉砕するとその次は重力の向きを操り第二位の体を地面に落下させた。

 

一方通行「チッ。運のイイ野郎だ、まだ意識がありやがる」

 

激しい戦闘の後で荒れに荒れた大地に高速で落下した垣根帝督。

背中から落ちたからか仰向けの状態で第二位は倒れていた。

そして。その近くに学園都市最強の超能力者・一方通行は着地する。

 

垣根「………やはりな。こうなることは分かっていた……」

 

腕も脚も動かない。というか感覚がない。

強く地面に激突させられたが打ち所が相当悪かったかのか、体の所々が麻痺してしまっている。

どう考えても一刻も早く病院に行き医者に診てもらわなきゃ今後の生活に支障をきたす後遺症が残ってしまうかもしれないほど垣根帝督は重傷だった。

 

が、第二位はうっすらと笑っていたのだ。

 

垣根「例えテメェの『反射』を無効化する術を取得したところでテメェの一方通行(アクセラレータ)と俺の未元物質(ダークマター)の差は全然埋まらねえ」

 

一方通行「………………………………………」

 

垣根「今こう思っただろ?『じゃあこいつはなんで最初から敗けると分かっていたのに挑んできたんだ?』ってな」

 

確かに追い詰められた状態だった。

誰が見たって勝者と敗者が決まっていた。

 

誰が思う?立ってるだけでフラフラで拳に力も乗せられない顔や体はアザだらけの人間が銃器を持ってる人間に勝てると。

誰が考える?限界まで疲弊した人間がウォーミングアップを完了した万全のボクシング選手にKOできると。

 

誰も思わない。夢にも思わない。

『不可能』という言葉が真っ先に浮かぶことだろう。

その場で静かに立つ一方通行は勝利を確信していた。

 

だが…………、、、

 

垣根「そうだ、誰も最初から敗けると分かってる戦いなんてしない。どうせ戦うなら俺だって勝ちにいくぜ。俺が言ったこと覚えてるか?しょうがねえからもう一度言ってやるよ“最後に勝利を掴み取るのはこの俺だ”」

 

一方通行(こいつ……ッ!?)

 

地面に倒れていた第二位の背中に再び6枚の白い翼が生える。

そして風圧を発した。

 

垣根「ここからだぜェ!!俺とテメェの本当の戦いはなァ!!」

 

第二位の上着の内側のポケットから20枚くらい紙が飛び出てきた。

その紙は光を纏うと垣根帝督の白い翼に吸い込まれていく。

 

すると、だった。

未元物質(ダークマター)でできた白い翼は虹色の輝きを帯びたのだ。

が、それだけでは終わらない。次はあれだけ重症だった第二位が一度と翼で包まれ翼を広げたらあの一瞬のうちに傷が治っていたのだ。

 

垣根「こいつは想像以上だ。まさかこれだけの力になるとはな」

 

ゆったりと起き上がり翼を羽ばたかせた垣根帝督。

一方通行は危険を感じて咄嗟に後ろに飛んでいた。

第二位から感じる異質な力。それに第一位である一方通行は警戒していた。

 

垣根「あっ、そういえば思い出したぜ。アレイスターの野郎からテメェに贈り物があるんだと」

 

自身の上着の内側にあるポケットに手をやりポケットの中にあったものを掴むと『ホラ、受け取れ』と言って一方通行に向かって投げる。

一方通行はその投げられたものを受け取らず垣根帝督が投げたものは第一位の前に落ちた。

 

垣根「ちゃんと受け取れよ。態々持ってきてやったんだからよ」

 

一方通行「黙れカス」

 

垣根「ハッ。まっ、敵からの贈り物なんて気色悪くて受け取らねえか」

 

一方通行の前に落ちているものは革製の巾着袋だった。

その巾着袋の膨らみ方でどんなものが入っているのかは大体予想できる。

だから、という訳でもないがアレイスターからの贈り物など学園都市統括理事長を憎んでいる一方通行が受け取るはずもない。

 

垣根「一応渡したっちゃ渡したしこれでアレイスターのクソ野郎からの依頼事の一つは済んだ。さて、続きだ一方通行。新たに手に入れたこの力で殺してやる」

 

虹色の輝きを帯びた白い翼から紫色の雷が放つ。

今までやってこなかった攻撃だったが一方通行はその紫色の雷攻撃を回避しようと動こうした。

 

が。

 

垣根「遅いな」

 

いつの間にか一方通行の背後には垣根帝督が立っていた。

そして第二位は背中の虹色の輝きを帯びた白い翼を鞭のよう振るい第一位の体にその翼を“直撃”させたのだ。

 

翼でぶっ飛ばされた一方通行の体は紫色の雷に向かって飛んできい雷の中に飛び込む形となった。

 

一方通行「…………ぐ………が…………ァ……」

 

垣根「チッ、死んでねえのか。確実に殺すにはもうちょっと威力が上げるた方がいいな。まだこの力に慣れてねえから調整が難しいぜ」

 

翼で殴られ雷もまともに受けてしまった。

ただでさえ無理して体を動かしてる一方通行にとってちょっとのダメージでも命に関わる。

なんとかまだ立っていられている一方通行は、、、

 

一方通行「…………この感じは魔力だな。オマエ、オカルトの力に手を出したな」

 

垣根「ハハッ、知っていやがったか。幻想郷には魔法ってのがあるらしいし知っていてもなんも不思議じゃねえか。だが俺が使用しているのは魔法じゃねえ、“魔術”だ」

 

一方通行「………………」

 

垣根「さっき翼に吸収させたのは魔導書と呼ばれているもんだ。確かアレイスターのクソ野郎は『原典』とか呼んでいたっけな。俺は『原典』の一部を未元物質(ダークマター)に吸収させることで自分だけの現実(パーソナルリアリティ)の拡大に成功した。そうしたことにより俺の能力には新たな可能性が生まれ新たな力を得た。俺はずっと勘違いしていたんだ。未元物質(ダークマター)は創るだけの能力じゃなかった。未元物質(ダークマター)は他のものを取り入れ全く別のものへと生まれ変える力、この世に存在するすべてを自分色に塗り替える力だったんだ」

 

『原典』の一部。膨大な魔術の知恵の一部を取り入れただけだというのに、垣根帝督は得た知恵をもとに未元物質(ダークマター)と混ぜた全く新しい魔術を何十万と生み出したのだ。

 

一方通行「オカルトの力をもう少し調べてからやるべきだったなメルヘン野郎。親切で教えてやるよ、俺達のような超能力(科学)の力を持つ者が魔力を使用するオカルトの力を使うと肉体に過負荷がかかンだよ」

 

垣根「げ……はぁ……ッ!?」

 

一方通行「形勢逆転できてもそれはちょっとだけだったよォだなァ三下」

 

吐血をしたら次は全身から流血して垣根帝督は鮮血に染まる。

せっかく傷を治したのに第二位は前よりも酷い重傷を負うことになった。

 

吐いた血と体から流れた血で垣根帝督の足元には血の水たまりができていた。

 

垣根「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!???」

 

次は背中の翼が消えると頭を抱えて発狂した。

第二位の垣根帝督が自身の能力に取り入れたのは『原典』。

それはとても危険なものなのだ。

優れた魔術師であっても『原典』を安易に読もうとしない。

 

『原典』には簡単に人の自我や脳を破壊する毒素が多くあるのだ。

 

一方通行「この世には大きな力を持っていたとしても触れちゃいけねェ危ないモンが多くある。オマエは触れちゃいけねェモンに触れただけじゃなく自分の中に取り込ンだ。軽率な行動の結果がそれだ。そのまま苦しンで死ね」

 

全身から大量の出血。

まるでそれは真っ赤な噴水ようだった。

頭を抱え発狂しながらのたうち回る垣根帝督に一方通行は冷たい目を向ける。

 

そして。そして。

 

静かになった。止まった。動かなくなったのだ。

 

血の水たまりの中心には真っ赤に染まった人間が……。

 

一方通行「チルノ……。終わったぜ」

 

倒れて動かなくなった第二位に背を向けるとアレイスターからの贈り物をぶっ壊すためアレイスターからの贈り物が落ちてる場所に歩み始めた。

 

終わった。これで本当に終わったのだ………。

 

一方通行「………しぶとい野郎だな、大人しく死ンでろよ」

 

第一位は足を止めた。

 

垣根「あー、あっちこって痛えー。頭も重いしベッドの上で横になりてえ」

 

一方通行「じゃあ俺がベッドより寝心地がイイ棺桶の中で寝かせてやるよォ!!」

 

振り返ると同時に脚を大きく振るう。

すると垣根帝督に向かって暴風が吹き荒れた。

 

一方通行「ッ!?」

 

今までのように垣根帝督は世中に顕現させた6枚の翼で防御したら、だった。

なんと第二位に向かって放った暴風が第一位にところにそっくりそのまま返ってきたのだ。

それは一方通行が何百回も何千回も何万回も見た現象。

 

『反射』だ。

 

一方通行(このパワーは!?)

 

回避なんでできるスピードではなかった。

だったらこっちも『反射』してやろうとしたがそれもできなかった。

暴風をまともに受けてしまい一方通行の体は後方へ吹っ飛びまだ倒れていなった一本の木に打つかる。

 

垣根「テメェだけの専売特許だと思ったら大間違えだぜ一方通行、俺もやろうと思えば『反射』くらいできんだよ。しかもだ。俺の場合は反射した攻撃を何倍にもして返すことが可能だ」

 

一方通行「………オマエ、どォして魔力を体内で生成してるのに無事でいられる?」

 

垣根「俺の体はさっきからずっと壊れ続けている。が、俺は自分の体内に未元物質(ダークマター)を流し込み未元物質(ダークマター)と一体になることで負傷しても再生できるようにした。その再生の精度や速度は今までと非にならねえほどだぜ?」

 

一方通行「オマエはオマエの能力で自分自身を作り変えたのか」

 

垣根「ああそうだ。これで問題なく魔術も使用できるようになった」

 

一方通行(こいつ、正真正銘本物のバケモノになりやがった………)

 

垣根「あの冷気を操るガキには感謝してるぜ。あのガキのお陰で俺は自分の能力を本質に気づけたし、自分の体を未元物質(ダークマター)と一体とさせたらどうなるかってのも分かった」

 

『原典』の毒はもう効かない。

魔力を大量に体内で生成して魔術を使用しても死ぬことはない。

『反射』に対しても小難しいことも考えなくていいし小細工をする必要もない。

一方通行の『反射』を正面突破できる莫大な力を得たのだ。

 

超能力者(レベル5)第二位の垣根帝督。

やつは魔術と科学の二つを組み合わせ、誰も到達していない“未知”を我がものとした全てに適応できる過去一度も現れてない新しい存在となったのだ。

 

垣根「付き合ってもらうぜ一方通行。この力がどこまでのものか試してみてえんだ」

 

魔術(オカルト)超能力(科学)が融合した全く新しい力。

それを全力で一方通行に向ける。

 

斬撃。打撃。砲撃。剣撃。銃撃。狙撃。爆撃。雷撃。衝撃。

考え()る限りのありとあらゆる攻撃を第二位は放つ。

なんと一度に放った攻撃の数は300を軽く超えていた。

 

垣根「アハハハハハハハハハハハッ!!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ!!!!」

 

なにが起きたか分からない。

しかし、周辺に存在していたものは形もなく消えていた。

 

そして。空に体が打ち上がった一方通行に向けて、、、

 

垣根「未元物質(ダークマター)ァァァァァァッ!!!」

 

ボトボトボト、と第二位の背中にある翼から地面に落とされていく真っ白な液体が垣根帝督の足元から広がっていく。

そしてその液体達は一方通行に向かって飛んでいった。

 

すると。すると、である。

 

自由に形を変えれる真っ白な液体は全長150メートルは超える柱となった。

ブクブクブクブクッ!!!

と次はその柱に気泡がいくつが発生するとその気泡はどんどん大きくなっていき最後は大爆発を起こした。

 

遠くに居ても聞こえる爆発音がした。

 

垣根「綺麗サッパリなにもかも跡形もなく木っ端微塵だ」

 

キノコ雲が発生してしまうほどの大爆発が起きた現場は元々あった緑が全部消えていた。

 

丸丸一つの森が無くなる大爆発を起こした垣根帝督の下には最深はなんと418メートルもある巨大過ぎる穴があった。

 

垣根「野郎との差が埋まったどころかこれじゃあ差が開き過ぎちまったな。まあ良いか。一方通行は死んだ。これで俺が第一位となったわけだ。野郎の死体を回収するか?“元第一位”だしな、なにかしら使い道があるかもしれねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝てない。

 

やつには勝てない。

 

麻薬で疲れや痛みを忘れさせて無理やり体を動かしている今の状態では絶対にやつには勝てない。

 

森が一つ消えるほどの大爆発が起きた場所には大きな穴しかない。

その穴の中層辺りには全身大火傷を負った一方通行(アクセラレータ)が倒れていた。

皮膚はただれ、焼けた体からは湯気が立っていた。

これでも彼の能力、ベクトル操作で防御できた方なのだ。

防御できてこの有り様なのだから、垣根帝督はどれだけ恐ろしい存在になったのかよく解る。

 

一方通行「………ゔゥ、あ……………ァ……………」

 

唸り声を出してモゾモゾと動く姿はまるで地面を這う虫のようだった。

今の一方通行の状態は危険なレベルではない。

 

不思議と痛みはなかった。

が、しかし分かっていた。“このままだと確実に死ぬ”と。

 

一方通行(……………………あン?)

 

なにかを手に掴んだ。

一方通行はなにかを掴んだ手をゆっくり開き目をそこにやると、、、、

 

彼が掴んだものとは、、、、、

 

一方通行(…………あァ……そォか……)

 

あんな大爆発の中にあったというのにそれは無事だった。

それを包んでいた革製の巾着袋は燃え焦げてしまったのだろう。

 

一方通行(最初からこォなることもすべてオマエの計画通りだったのか。“アレイスター=クロウリー”)

 

全身大火傷を負い数分で命を落としてしまう状態の一方通行が掴んでいたものはあの“黒い玉”だった。

 

一方通行(クソったれのクソったれのクソったれが……ッ!!)

 

やつからのこの『贈り物』はどういうものかなんて嫌ってぐらい知っている。

 

一方通行は心の中で叫んだ。

『アレイスターッ!!ここまではオマエの計画通りだろォがなァ!!ここからだ。ここからはオマエの思い通りに事が進むと思うなよォォォォォォッ!!!!』

 

と。

 

 

そして。そして。そして………だ。

 

一方通行は最悪な手段を“選ばされたのだった”。

 

他の誰でもないアレイスター=クロウリーに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ォォォォォォォォォォォォォォォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」

 

 

穴の奥から轟く絶叫があった…………。

 

それが最悪が始まる予兆。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きてしまったのね………始まってしまうのね。“終わり”が」

 

 

大妖怪は静かにそう呟く。

 

こうなることは避けたかった。

 

しかしこれから始まってしまうのだ。どうしようもない“最悪”が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒。黒くて黒い真っ黒な翼。

それは天高く伸び空を覆うように広がっていく。

 

その翼の出所は深い穴から。

もっと詳しく目を向けるのならば“白い怪物”からである。

 

垣根「あれで死んでなかったのか。しぶといのはどっちだよ。チッ!今度こそ地獄に送ってやるよ“一方通行(アクセラレータ)”!!」

 

マッハに到達した速度で背中に虹色の輝きを帯びた6枚の白い翼を生やす垣根帝督は黒い翼を生やす怪物に突進する。

 

垣根「死に損ないがァッ!!くたばりやがれェェッッ!!!!」

 

一点集中。渾身の一撃。

一枚の翼にすべての力を収束させて空間を歪めてしまうほどの速度でその翼を放つ。

 

が、しかし。

 

相手が悪かった。

 

もう“やつ”は瀕死状態ではない。

傷なんてない。疲れなんてない。痛みなんてない。

 

本物の暴走。

垣根帝督なんかじゃ相手にもなれない最強の怪物。

幻想郷の空を真っ黒にするほど噴射に近い大きな黒い翼を生やしている“やつ”は唯一無二の“絶対者”。

 

自分に向かって放たれた翼を怪物は根本から破壊する。

突進してきた垣根帝督は自分がなにがなにか分からず地面に黒い翼に叩き落とされた。

 

垣根「は、はは。そうか……その力………___」

 

ゆっくりと一歩一歩確実に迫ってくる“白い怪物”。

垣根帝督は恐怖していた。

体が震える。

 

しかし怒りもあった。

 

垣根「_____わかった。テメェの役割は、そして俺の役割は……ッ!!」

 

第一位を覚醒させるためにアレイスターに仕向けられたのだ。

それを知った垣根帝督は激怒するが、もう何もかもが遅い。

『俺は今からこいつに殺される………』と第二位の彼は静かに覚悟を決めた。

 

これまで何人も何人も殺してきた。

しかも自覚していたのだ『俺は外道でクソ野郎だ』と。

善人なんかじゃない真っ暗闇にしか行き場所がない極悪人。

そんなやつが普通に死ねるわけがない。

 

誰かに殺される覚悟もあった。

自分の最後が見るも無残になると覚悟していた。

垣根帝督は体の震えを自分の意志で止めた。

 

逃げない。

 

目も瞑らない。

 

ただ、、、

 

彼女に謝らなければいけない。

 

(ゆずりは)林檎(りんご)。彼女に近付いた理由は彼女が『暗闇の五月計画』の被験者だったから。

一方通行の演算パターンを植え付けられた杠林檎という少女から一方通行の演算パターンを得ようとしたのだ。

 

最初はどうでもよかった。

無愛想で無表情。そして口数も少ない。

 

こっちの用事が済んだら適当に捨ててやるつもりだった。

しかしどうしてだろう。一緒に行動していくなか、垣根帝督は杠林檎に対して今まで抱いたこともない感情を抱く。

あれは林檎が食事をしている時だ。

普段は無口で無表情なのに、食事をしている時はあんなにも明るい表情で美味しそうに食べている姿を見て垣根帝督は分からないがじんわりと胸の辺りがあったかくなっていたのだ。

 

一体それがなんなのかは分からない。分かろうともしなかった。

だがこの少女の笑顔を『守りたい』を思った。

 

しかし守れなかった。

 

林檎は死んだ。死なせてしまった。

 

 

統括理事会の席を手に入れる。そして学園都市のすべてを手に入れる。

 

これは垣根帝督の目的。しかしもう一つの目的があったのだ。

 

それが一番達成したいもの。誰にも言えない自分でどうかしてる思う心底くだらないと吐き捨ててしまう目的。

 

それは『林檎が安心して眠れる場所を作る』だった。

 

優しくて、穏やかで、静かで、平和な土地を手に入れる。

そこに林檎の墓を建てる。

 

だがそれもすべて達成できずに幻想郷という異世界で死ぬ。

林檎が自分の命を捨てでも渡してくれたものを無駄にして死ぬ。

 

一方通行に殺されるのだ。

 

垣根(林檎、今からテメェところに……いや違うか。同じ地獄でも俺が堕ちるところはテメェのようなクソガキは来れないもっと過酷な場所なんだろうな)

 

死が近付く。

 

垣根帝督は最後にこう願った『また林檎が飯を食ってる姿を見たい』と。

 

そして。そして。

 

荒れ狂う勢いが衰えることのない噴射に近い黒い翼を背中から生やす白い怪物は、、、

 

垣根「…………………………は?」

 

なんと、なんと。

白い怪物は垣根帝督の顔の前で腰を下ろす。

自分が予測していた行動とは違うことをしたことに驚き第二位の彼はあっけらかんな顔をしていた。

 

垣根「どうした俺を殺さねえのかよ一方通行。テメェの大切な人を殺した、テメェが大切にしてる世界も滅茶苦茶にした。俺が憎いだろ?殺したくて堪らねえだろ?殺せよ。認めてやる俺の敗けだ。チッ、こうなることもアレイスターのクソ野郎の計画通りってのはムカつくがテメェの大切なもんを奪い壊したのは紛れもないこの俺だ」

 

一方通行「………イイのか、オマエはそれで」

 

垣根「いいわけ……ねえだろうが!!高い場所から見物して人を見下してるクソ野郎を今すぐぶっ殺してやりてえよ!!林檎が死んだのはテメェみてえな能力者が生まれてきたからだ!!テメェが生まれてこなければ『暗闇の五月計画』なんてものはなかった。林檎があんなのに巻き込まれることもなかったんだ!!だがそれだけじゃねえ、あんなカスな実験をやりやがった学園都市の統括理事長であるアレイスターのクソ野郎のせいでもある。あのクソ野郎は林檎が普通に生活して普通に死ねる未来をぶっ壊したやがったんだ許せるかよあんなクソ野郎ォォォッ!!」

 

一方通行「じゃあ俺と手を組むか?三下」

 

垣根「本気かよ?俺はテメェの大切なガキを殺したんだぞ?」

 

一方通行「あァ、憎くてオマエの頭をトマトのように潰してやりてェよ」

 

垣根「だったらやれよ第一位。同情なんてすんじゃねえ、これ以上俺を惨めな思いさせるなら自分で舌を噛んで死んでやる」

 

一方通行「もしもオマエが舌を噛ンで死のうとしたら俺はそれを全力で止める」

 

垣根「………………………………」

 

一方通行「オマエはチルノを殺した。幻想郷を滅茶苦茶にした。その罪は償ってもらう。だがオマエのその罪はオマエのくだらねェ命一つじゃ償えるモンじゃあねェ。だから苦しめ。苦しンで苦しンで苦しみ続けろ。罪悪感に押し潰されながらオマエが殺した人間やこれまでで壊してきたモン思い出して何度も何度も謝り続けるンだ。死ぬまで罪に押し潰され続けやがれ」

 

垣根「………俺のような極悪外道で最低な野郎に罪悪感なんてものがあると本当に思ってんのかよ?」

 

一方通行「ねェなら芽生えさせるまでだ」

 

垣根「…………………殺して終わらせるんじゃなく生かして死ぬまで苦しめる、か」

 

なら、と第二位は口を開く。

 

垣根「テメェもそうしろよ悪党。苦しめ。テメェのせいで未来を奪われた人間は大勢居る。そいつらの(ツラ)と名前を一生忘れずに記憶しろ。これは義務だ。そしてどれだけテメェが殺してきたか理解しろ」

 

一方通行「(はな)からそのつもりだメルヘン野郎」

 

垣根「ホント、テメェは殺したくなるほどムカつく野郎だな」

 

倒れている垣根帝督に白い手が伸ばされ第二位は第一位の手を掴んだ。

 

一方通行「……………なにやってンだよ、立てよゴミ」

 

垣根「立てるわけねェだろクソボケ。ダメージを負いすぎて能力もまともに使えねえし、再生もできねえから体はズタボロのままなんだよ」

 

一度二人の間で交わされた握手。

が、しかし相当嫌だったのか直ぐに二人は掴んだ手を離した。

 

一方通行「チッ。手のかかるゴミだ」

 

舌打ちをしたら、だった。

一方通行をスキマを開きあるものを取り出した。

それは中に液体が入った小さな瓶だった。

 

一方通行「これを飲め」

 

垣根「ハイ分かったって飲むかクソボケ!!ドクロマークがあるもんを渡されて明らかに危険なもんだって頭で理解しながらも飲むバカがどこに居る!?」

 

一方通行「じゃあオマエがバカ第一号だ」

 

垣根「ふざけ_______」

 

体が全く動かすことが出来ない垣根帝督が抵抗できるはずもなく、一方通行に無理やり口の中に瓶を突っ込まれ中に入っていた液体を飲まされた。

 

垣根「ぐ、ゴホッ……ブハッ!!テメェぶん殴って…………あ?」

 

難なく立てるまで体が回復していたのだ。

 

一方通行「……マジで治りやがった。てっきり毒薬だと思ってたンだかなァ」

 

垣根「あァ!?テメェ俺で実験しやがったな!!」

 

一方通行が垣根帝督に飲ませたのは前に一方通行が宴会の時に永琳から渡された液体の飲み薬だ。

 

永琳は『良い薬』と言っていたがやはりただの酔い覚ますだけの薬じゃなかったらしい。

どういう効果の薬かは知らないが、まあ第二位が動けるようになったしそれでいいだろう。

 

一方通行「………………………………」

 

垣根「一方通行、テメェ………」

 

背中の黒い翼は引っ込んでいない。

なんなら時間が進むにつれて力が大きくなっていっている。

 

それを必死に一方通行は抑えていたのだ。

 

一方通行「ここから離れろメルヘン野郎。オマエ以外の暗部の連中もそろそろ学園都市に送り返していると思う。アレイスターの計画をすべてぶっ壊すその作戦は既にある。幻想郷で作ったスマホを八雲紫から受け取れ、スマホの中にその作戦の内容は入ってる」

 

垣根「チッ。この俺がテメェような無価値なカス野郎と手を組んでやったんだ、そっちで勝手に自滅なんてしやがったら絶対許さねえからな。あと、俺の名前は垣根帝督だ。特別に俺の名前を呼べる権利をくれてやる!!」

 

そう言い残すと垣根帝督は背中に6枚の白い翼を展開させて一方通行から離れるように遠くに飛んでいった。

 

深い深い穴の中に残った“白い怪物”。

 

彼は戦っていた。

 

自分の力と。

 

一方通行(こっからは俺達の番だ。アレイスターの計画はすべてぶっ壊す。そして手に入れる、俺達の求める世界を。安心して生活できる幻想郷を。そのための第一歩を踏み出したばかりなンだ!!)

 

しかし。

 

しかし。

 

ベクトル操作。この能力一つだけで人の身に余る力なのだ。

だがもう一つ彼は能力がある。それが模倣能力。

 

どっちも強大な力だ。

それに加えて模倣能力でコピーした能力の数々。

 

それらすべてがあの黒い玉、“贈り物(イヴ)”の効果で強化されている。

大きく膨れ過ぎた力。

自我なんて保てるはずもない。

 

どれだけ強い意志があろうと無理なのだ。

 

 

 

一方通行の中で暴走が再び始まる。

 

最悪の暴走はまだ始まったばかりだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはぎゃはハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハーッ!!なにもかも壊してェ!!片っ端から薙ぎ払いてェ!!どォせ最終的に全部壊れるンだ!!最後はなにも残らねェンだ!!いつ壊れてもイイだろォ!?ギャハハハハハハハ!!!!」

 

理性は無い。

 

あるのは破壊衝動のみだ。

 

それはまさに破壊の権化。

 

 

 

 

 

 

 

 

(頼む。誰か……俺を止めて(助けて)くれ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『目覚め(リバース)』は問題なく完遂できた。では次の“最終計画”を発動させよう。と、なると私の右腕の出番かな?いや彼の場合“右手”と言うのが正しいか」

 

窓の無いビルの中。

ビーカー型の生命維持装置の中に満たされた培養液に逆さになって浸かる人間、アレイスター=クロウリーは自身の前に浮かぶ映像の中に映るひとりのどこにでも居るツンツン頭の普通の男子高校生を見て笑っていた。

 

そして。最終計画の実行に移るのだった。

 

「必ず成し遂げてみせる。誤りは正してみせる。“ヒーロー”は私の味方さ。最後に笑うのは幻想郷(貴様ら)ではなく私だ。私の“ヒーロー”が残さず幻想郷(貴様ら)を必ず“殺すだろう”。消すでもなく、駆除するでもなく、排除するでもなく、消去するでもない。“殺す”のだ」

 

最終計画『幻想殺し(イマジンブレイカー)

 

それが動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

垣根「この腕輪で帰ろうと思えば帰れるが……。チッ、八雲紫からスマホを受け取れって言われてもその八雲紫はどこに居んだよ」

 

大気の流れが大きく変化していく。

 

そんな中、背中に6枚の白い翼を生やす超能力者(レベル5)第二位の垣根帝督は空を飛び移動していた。

 

すると、である。

 

「こっちよ!早く来なさい垣根帝督!!」

 

声のした方向に首を向けると、そこには空間にスキマを開きまるでそのスキマを公園に置かれているベンチのようにして座っている大妖怪が居た。

 

垣根「テメェが八雲紫か!?」

 

紫「ここはもう危険よ。他の暗部の子たちは学園都市に帰ったわ。後はあなただけよ、早く自分達の世界に帰りなさい!!あなた達には自分の世界でやるべきことがあるでしょ!!」

 

そう言うと八雲紫は持っていたスマートフォンを投げ渡した。

投げ渡したのは一方通行が大量生産したスマートフォンである。

 

垣根帝督は紫のところに向かって高速で飛行しながら自分に向かって投げられたスマートフォンを見事キャッチする。

 

垣根「あれをどうにかするのは俺じゃあねえ、せいぜい頑張りやがれ幻想郷!!」

 

そして。

八雲紫がもう一つ開いたスキマ。

学園都市に通づるスキマの中に垣根帝督は飛び込んだ。

 

紫「言われなくても分かってるわよ…………」

 

白い怪物を中心にして巨大で真っ黒な渦が発生していた。

 

その巨大な渦を眺めながら大妖怪は、、、

 

紫「終末特異点。幾千万の世界の壊滅者。絶対の頂点。唯一無二の絶対の存在。開闢の導き手。新世界の扉を開く者。無限虚無。今の一方通行を表す言葉はいくらでもある。今日が数多ある予言の日。旧世界が床に就き、新たな世界が起床する。終末の神が目覚め世界に降臨してしまったその瞬間をもって今存在している全てが古きものとなった。我々は決して今から起こることに怒りも悲しみも抱いてはいけない。これは遠い遠い遥か遠い昔、幾千万の宇宙が、遍く銀河が誕生する前から続いてきた神聖な儀式。創世の前に滅亡を。暴虐という名の神からの最後の贈り物。だけど私は………、それでも許せない。善人悪人問わず誰もこれ以上傷付けたくないと思い、一万以上の十字架を背負うことで誰も傷付けないようになろうと思ったがそれは失敗して真っ赤に染まった手と一生を使っても償うことが不可能な罪だけが残った。けどこれからも犯した罪から逃げず立ち向かおうとした一人の子供にこんなことをさせるなんて。許せない許せない許せない赦せないッッッ!!一方通行が最も望んでない力を持ってしまうようにしたこの世界がッ!!!_____」

 

 

 

_____嗚呼……、世界は終わる。

 

 

 

 

 

 

 

 





次回予告。

アレイスター=クロウリーの計画『目覚め(リバース)』はなに一つ弊害もなくやつの思惑通りに成就した。

誰もこれから起こることに抗うことはできない。
これはどこにでも溢れていて、誰にでも起こることなのだ。

その特異点の目覚めは終わりの到来を意味する。

最強。頂点。唯一無二の絶対者。

“アレ”が目覚めた時、世界は終焉に覆われる。


次回。

『幻想郷を一方通行に』第四章・純黒に生きる侵略者

最終話【終末特異点】

避けられぬ悲劇。逃れられぬ運命。

……………幻想郷は最後の時を迎えたのだ。


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